編集 荒船次郎 東京大学名誉教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應 義塾大学名誉教授
は
本 書 は,新
じ
め
に
し い数 学 的 発 展 を も取 り込 ん だ,理 学 ...
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編集 荒船次郎 東京大学名誉教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應 義塾大学名誉教授
は
本 書 は,新
じ
め
に
し い数 学 的 発 展 を も取 り込 ん だ,理 学 部 や 工 学 部 の 学 部 ・大 学 院
生 レベ ル の解 析 力 学 の教 科 書 で あ る. 古 典 力 学 ・解 析 力 学 の 書 物 をあ ら た に書 く とい うか ら に は,そ れ な りの理 由 が なけ れ ば な ら な い で あ ろ う.と い うの も,世 界 中 で 現 在 出版 され て い る 力 学 の 書 物 は お び た だ しい数 に の ぼ り,日 本 語 の もの に か ぎ っ て も相 当 数 を数 え る か ら で あ る.も
ち ろ ん数 が 多 い とい う だけ で な く,質 の 面 で も,た
とえ ば 山 内
恭 彦 『一 般 力 学 』,伏 見 康 治 『古 典 力 学 』,ゴ ル ドシ ュ タ イ ン 『 古 典 力 学 』,ラ ン ダ ウ-リ フ シ ッツ 『力 学 』,な どの優 れ た 定 評 あ る書 物 も少 な くな い. しか し これ ら の 書 物 は,い ず れ も1950年 の で あ る.と る.そ
こ ろ が そ の 後30∼40年
うい うわ け で,20世
代 あ る い は そ れ 以 前 に書 か れ た も
間 に,古 典 力 学 は大 き な 変 貌 を遂 げ て い
紀 末 の 現 在 は,客 観 的 に 見 て あ らた な 力 学 書 が 登
場 して よ い 時期 に来 て い る とい え よ う. 1960年 代,つ の 学 習 は,ほ
ま り筆 者 た ちの 学 生 時 代 に は,物 理 の 学 生 に と って 解 析 力 学
とん ど も っ ぱ ら量 子 力 学 や 統 計 物 理 学 の 学 習 の た め の 助 走 の よ う
に しか 位 置づ け られ て い な か っ た.要 す る に 力 学 は,す
で に 出 来 上 が り完 結 し
発 展 の余 地 の な い学 問 で あ り,そ の 学 習 は た だ も っぱ ら,先 に 進 ん だ段 階 で 要 求 さ れ る技 能 を 身 に つ け る た め の トレー ニ ン グ で あ る と思 わ れ て い た の で あ る.し か し現 在 で は,状 況 は 大 き く変 わ っ て い る.い まや 解 析 力 学 は,そ れ 自 身 の 内容 の 面 に お い て も,数 学 的 定 式 化 の面 に お い て も,量 子 力 学 との 関 連 に お い て も,生 き た研 究 対 象 で あ り,発 展 途 上 に あ る. こ の 変 化 を促 した 大 き な要 因 の 一 つ は,1970年 達 と普 及 に あ る.コ
代 以 降 の コ ン ピュ ー タ の 発
ン ピ ュ ー タが 古 典 力学 に もた ら した もの の 第 一 は,一 般 の
力 学 系 理 論 や カ オ ス理 論 を発 展 させ た こ とに あ る.そ
して そ の 結 果,そ
れ との
対 比 で と くにハ ミル トン 力学 系 の 持 つ 構 造 安 定 性 な どの特 徴 が 浮 彫 りに され て い った の で あ る.第 二 に は,か つ てPoincareが
そ の 天才 的 直 観 力 で垣 間 見 た
積 分 不 可 能 な 系 の 存 在 とい う よ う な,古 典 力 学 の 深 層 が,コ 平 易 に 見 通 し う る よ うに な っ た こ と で あ る.こ 新 た な 展 開 や,可
ン ピ ュー タ に よ り
う した状 況 の なか で,摂 動 論 の
積 分 系 の 理 論 の 飛 躍 的 な 進 歩 が も た ら され た.こ
れ に は,
1960年 代 末 の堀 に よ る新 しい摂 動 法 の 開 発 や 戸 田格 子 の 発 見 も大 き な 契 機 に な っ て い る.ま
た,量 子 力 学 と解 析 力 学 の よ り深 い構造 的 関 連 が 明 らか に され
て きた こ と も,古 典 力 学 の発 展 に 数 え る こ とが で き る. しか し,こ の 間 の 力 学 の発 展 は,こ で は な い.も
う一 つ の 大 き な 発 展 は,Lagrange以
ら,PoincareやCartenに へ の転 換 が,お
の よ う な個 々 の新 た な テ ー マ の 開拓 だ け 来 の解 析 的 な解析 力学 か
よ り先 鞭 をつ け られ た解 析 力 学 の幾 何 学 的 な定 式化
も に数 学 者 の手 で す す め ちれ た こ とで あ る.そ の 結 果,力 学 理
論 の様 相 は大 き く変 わ りつ つ あ る.Arnoldが 語 っ て い る よ うに,い
名著 『 古 典 力 学 の 数 学 的 方 法 』で
まや 「ハ ミル トン 力 学 は 相 空 間 の 幾 何 学 で あ り,… …,
ハ ミル トン力 学 は 微 分 形 式 な しに は 理 解 で き な い 」の で あ る.い わ ゆ る 「力 学 の幾 何 学 化 」 と呼 ば れ る この 新 しい 見 方 は,最 近 の場 の 量 子 論 や 重 力論 の 視 点 に通 じ る もの で あ る. こ の よ うな 力学 理 論 の 変 貌 と発 展 に つ い て は,数 学 者 のサ イ ドか らは,こ の Arnoldの
著 書 の 翻 訳 だ け で な く,い
くつ か の 日本 語 の 書 物 も 出 さ れ て い る.
目に つ い た も の だ け を挙 げ て も,丹 羽 敏 雄 『力 学 系 』(1981),大 森 英 樹 『一 般 力 学 系 と場 の幾 何 学 』(1991),斎 藤 利 弥 『解 析 力 学 講 義 』(1991),深 谷 賢 治 『 解 析 力 学 と微 分 形 式 』(1996),伊 藤 秀 一 『常 微 分 方 程 式 と解 析 力 学 』(1998)な ど, 決 して 少 な い数 で は な い.し か し率 直 に い っ て 数 学 者 の書 い た 書物 は,物 理 屋 の もの と微 妙 に 問題 意 識 が 異 な る よ う で,力 点 の 置 き場 所 も少 しず つ 違 っ て い る だ け で な く,な に よ り も,物 理 学 科 や 工 学 部 の 諸 学 科 の学 生 や 大 学 院 生 に は とっ つ きが 悪 い.こ の こ とは数 学 者 に は な か な か 理 解 して も ら え な い よ うで あ る. 他 方 で,木 村 利 栄・ 菅 野 礼 司 『微 分 形 式 に よ る解 析 力 学 』(1988,増 補 改 訂 版 1996),大
貫 義 郎 ・吉 田春 夫 『力 学 』(1994,第2版1997)な
ど,物 理 学 者 ・天文
学 者 に よ り新 しい 立 場 で書 か れ た 良 質 の 書 物 も存在 す るが,主 題 が や や 偏 っ て い る き ら い は 否 め な い. 本 書 は,こ の30∼40年 サ イ ドか ら,で る.と
間 に な さ れ た 解 析 力 学 の 新 しい 定 式 化 を,物 理 学 の
き る だ け 広 く詳 し く,て い ね い に 展 開 し よ う と し た もの で あ
くに,状 態 空 間 ・相 空 間 上 の 力学 を,幾 何 学 的 な視 点 か らわ か りや す く
解 説 す る こ とに 主 眼 を お い た.こ れ が,筆 者 が 主 観 的 に考 え て い る,本 書 の 主 要 な 存 在 理 由 で あ る. そ の ね らい に あ わせ て本 書 で は,数 学 者 の手 に な る書 物 で は ス マ ー トに簡 潔 に 抽 象 的 に書 か れ て い る こ とで も,あ えて 泥 臭 く具 体 的 ・例 示 的 に論 じた と こ ろが 少 な くな い.数 学 は よ り一 般 的 な場 合 に た い す る議 論 を 眼 目 とす るが,物 理 学 は,一 般 論 だ け で は な く,そ の 一 般 論 を個 別 的 ケ ー ス に適 用 し,手 間 を厭 わ ず 腕 力づ くで も計 算 し きる とい うこ と を主 要 な 関 心 とす るか らで あ る. 数 学 に つ い て は,初 等 的 な解 析 学 と線 形 代 数 学 の知 識 だ け を前 提 と し,曲 面 論 か ら簡 単 な微 分 幾 何 学,テ
ン ソ ル 解 析,多
様 体 とそ の 上 で のベ ク トル 場 理
論,さ ら に は微 分 形 式 の理 論 に い た る まで,§1.2∼ §1.6に 独 立 の 節 を設 け て 一 か ち説 明 を して お い た.こ の よ うに本 書 を読 む た め に 必 要 な数 学 は ま とめ て 記 載 して あ る の で,先 第2章
を い そ ぐ読 者 は こ こ を飛 ば して,§1.1の
後,い
きな り
に移 って,必 要 に 応 じて §1.2以 降 に 立 ち返 り該 当 す る箇 所 を参 照 して
い た だ い て も よい.逆
に §1.2∼ §1.6を,新
し い物 理 数 学 の 入 門 と して 利 用 す
る こ と も可 能 で あ る.そ の程 度 に は て い ね い に書 い た つ も りで あ る. 力 学 に つ い て は,理 論 の 幾 何 学 的 定 式 化 の 解 説 に と くに 力 を い れ た.さ
ら
に,古 典 力 学 と幾 何 光 学 の ア ナ ロ ジー や 解 析 力 学 と量 子 力 学 の 関 連 とい う問 題,ま
た摂 動 論 の 発 展 につ い て,さ
らに は 正 則 で な い 拘 束 系 の正 準理 論 な どの
個 々 の テー マ に つ い て は,一 般 の 力 学 書 よ りは 詳 し く書 き込 ん だ つ も り で あ る.そ れ ら に は ま た,一 般 論 だ け で は な く,非 線 形 振 動 か ら天 体 力 学 や 原 子物 理 学,さ
ら に は加 速 器 科 学 に い た る まで の 広 い テ ー マ に わ た る 多 くの具 体 例 に
よ る 説 明 も加 え て お い た.こ れ らの 点 も,本 書 の特 徴 と して挙 げ て よ い で あ ろ う. 率 直 に い っ て 本 書 は,ボ
リュ ー ム か らい っ て も レベ ル か らい っ て も,学 生 諸
君 に と って 気 安 く簡 単 に読 め る本 で は な い とは思 うが,し か し じ っ く り とつ き
合 っ て い た だ け れ ば,筆 者 と して は そ れ に ま さ る喜 び は な い し,ま た そ れ だ け 得 る とこ ろ もあ る で あ ろ う との 自負 も も っ て い る. 執 筆 は,と
くに 明 確 に 分 担 を決 め る こ とはせ ず,互
い に 書 い て は も ち よ り,
議 論 し て 原稿 を仕 上 げ て ゆ く とい うや りか た を と っ た.原 稿 を書 く作 業 よ りも 筆 者 自 身 が学 習 す る こ と に,は
るか に 多 くの 時 間 を か け た こ とは 事 実 で あ る.
全 般 に わ た って 学 習 院 大 学 の 江 沢 洋 氏 に,ま た 第2章 以 下 の 力 学 と くに 摂 動 論 の とこ ろ は 国 立 天 文 台 の 木 下 宙 氏 に,第1章
の数 学 に つ い て は,明 治 大 学 の 故
林 喜 代 司 氏 と駿 台予 備 学 校 の 中 村徹 氏 に,そ れ ぞ れ 初 期 の 原稿 段 階 で 眼 を通 し て い た だ き多 くの 有 益 な ア ドバ イ ス を い た だ い て い る.た は,そ
だ し原 稿 そ の もの
の後 か な り書 き込 み 書 きな お し た の で,筆 者 の 思 い ち が い な ど も潜 ん で
い るか も しれ な い が,そ れ は も ち ろん 筆 者 た ち の 責 任 で あ る.林 氏 に は,完 成 し た本 書 をお 見 せ し た か っ た が,そ
れ が で きな く な っ た こ と は 大 変 残 念 で あ
る. 忙 しい な か に 原稿 を読 む労 を と って い た だ い た これ らの 方 々,そ
して,大 部
な書 物 が 忌 避 さ れ る出 版 界 に あ っ て,こ の よ う な書 物 の 出 版 を企 画 して い た だ い た朝 倉 書 店 に,こ の 場 を借 りて お 礼 を述 べ させ て い た だ き ます. 1998年7月 山
本
義
隆
中
村
孔
一
目
1 序 章―
数学 的準備
1.1 運 動 方 程 式 1.1.1
ニ ュ ー
次
1 1
トン力 学
1.1.2 拘 束 条 件 と 配 位 空 間 1.1.3 拘 束 力 と仮 想 仕 事
1.1.4 配 位 空 間 上 の 運 動 方 程 式 1.2 曲 面 上 の 拘 束 運動
1
2 5
8 12
1.2.1 曲 面 の パ ラ メ ー タ 表 示
12
1.2.2 加 速 度 ベ ク トル と運 動 方 程 式
14
1.2.3 拘 束 力 の 決 定
16
1.2.4 曲 面 上 の 運 動 方 程 式
18
1.2.5 慣 性 運 動 と 測 地 線
1.3 曲 面 上 の テ ン ソル と共 変 微 分
20
24
1.3.1 曲 面 上 の ベ ク トル
24
1.3.2 曲 面 上 の テ ン ソ ル
28
1.3.3 接 続 と平 行 移 動 1.3.4 共 変 微 分 と加 速 度
30 33
1.4 多 様 体 とベ ク ト ル 場
37
1.4.1 微 分 可 能 多 様 体
37
1.4.2 多様 体上 の 関 数 と 曲 線
39
1.4.3 方 向 微 分 と微 分 作 用 素
41
1.4.4 接 ベ ク トル と接 空 間
43
1.4.5 接 バ ン ドル とベ ク トル 場
46
1.4.6 積 分 曲線 と1径 数 変 換 群 1.4.7 引 き戻 し と微 分 写 像 1.4.8
リ ー
微
分
49 50
53
1.4.9 リー 括 弧 と リー 代 数
55
1.4.10
57
リー 群
と リー 代 数
1.4.11 1径 数 部 分 群 と指 数 写 像
1.5 双 対 空 間 と共 変 テ ン ソ ル 1.5.1 双 対 空 間 と1ベ
ク トル
60
66 66
1.5.2 反 変 ベ ク トル と共 変 ベ ク トル
67
1.5.3 共 変 テ ン ソ ル
69
1.5.4 交 代 テ ン ソ ル とpベ
ク トル
1.5.5 テ ン ソ ル の 交 代 化 と外 積 1.6 余 接 バ ン ドル と微 分 形 式 1.6.1 余 接 空間 と1ベ 1.6.2 1形 式(1次
ク トル
外 微 分 形 式)
72
73 79 79 81
1.6.3 テ ン ソ ル 場 と リー マ ン 計 量
84
1.6.4 p形 式(p次 外 微 分 形 式)
86
1.6.5 外
88
微
分
1.6.6 ポ ア ン カ レ の 補 題
90
1.6.7 微 分 形 式 の 積 分
93
1.6.8
95
ス トー ク ス の 定 理
2 ラグラ ンジ ュ形 式の力学 100 2.1 ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式
100
2.1.1 ス ク レ ロ ノ ー マ ス な 場 合
100
2.1.2 一般 的 な 場 合 へ の 拡 張
101
2.1.3 共
106
変
性
2.1.4 一 般 化 ポ テ ン シ ャ ル
109
2.1.5 ラ グ ラ ン ジ ア ン の ゲ ー ジ 変 換
111
2.2 対 称 性 と保 存 則
118
2.2.1
第1積
分
2.2.2 一 般 化 運 動 量 と そ の 保 存
118
120
2.2.3 系 の 対 称 性 と保 存 則
121
2.2.4 ハ ミル トニ ア ン と エ ネ ル ギ ー 積 分
124
2.2.5 配 位 空 間 の 簡 約 と 自 由 度 の 削 減
127
2.3 ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 の幾 何 学 的 表 現
144
2.3.1 基 本1形
式 と基 本2形
式
2.3.2 ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の 座 標 系 に よ ら な い 表 現
144
2.4 擬 座 標 と ポ ア ン カ レ方 程 式
146
148
2.4.1 擬 座 標 の 導 入
148
2.4.2 ポ ア ン カ レ 方 程 式
2.5 拘 束 条 件 と拘 束 力 2.5.1 拘
束
力
2.5.2 拘 束 系 の ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 2.5.3 非 ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束
3 変
分
原
理
150
153
153
155 157
3.1 ハ ミル ト ン の 原 理
164
164
3.1.1 作 用 積 分 とハ ミ ル ト ン の 原 理
164
3.1.2 拡 大 配 位 空 間
166
3.1.3 拡 大 状 態 空 間
168
3.1.4 基 本1形
式 と作 用 積 分
169
3.1.5 作 用 積 分 の 変 分 計 算
171
3.1.6 ハ ミル ト ン の 原 理 と ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式
175
3.1.7 ラ グ ラン ジュ 方 程 式 の 拡 大 配位 空 間 上 の表 現
176
3.1.8 ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法
178
3.2 ワ イ ス の 原 理 とネ ー ター の 定 理
182
3.2.1 ワ イ ス の 原 理 3.2.2 拡 大 配 位 空 間 の モ ー メ ン ト関 数 3.2.3 ネ ー タ ー の 定 理 の 拡 張
182 184
186
3.3 保 存 系 と最 小 作 用 の 原 理
195
3.3.1 保 存 系 と 作 用 の 導 入
195
3.3.2 最 小 作 用 の 原 理
196
3.3.3 ヤ コ ビ の 原 理
199
3.3.4 測 地 線 の 方 程 式
201
3.3.5 力 学 ・光 学 ア ナ ロ ジ ー
204
4 ハ ミル トン 形 式 の 力学
208
4.1 相 空 間 と正 準 方 程 式
208
4.1.1 ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の 狭 さ 4.1.2 正 準 方 程 式 4.1.3 相 空 間 と 正 準1形 4.1.4
208 209
式
リー マ ン 計 量
4.1.5 拡 大 相 空 間
213 215
216
4.2 ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル 場
217
4.2.1 シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多 様 体
217
4.2.2 正 準 方 程 式 の 座 標 系 に よ ら な い 表 現 4.2.3 ハ
ミル
220
ト ニ ア ン ・ベ ク ト ル 場
222
4.3 力 学 系 の 考 察
224
4.3.1 力 学 系 と は
224
4.3.2 相 流 と 不 変 集 合
226
4.3.3 平 衡 解 ・周 期 解 と そ の 安 定 性
227
4.3.4 線 形 化 方 程 式
229
4.3.5 2次 元 で の 考 察
231
4.3.6 平 衡 解 の 安 定 ・不 安 定 と分 岐
233
4.3.7 リ ャ プ ノ フ 関 数
238
4.3.8 ポ ア ン カ レ写 像
4.4 正 準 力 学 系
242
255
4.4.1 正 準 方 程 式 の 線 形 化
255
4.4.2 正 準 力 学 系 の 構 造 安 定 性
256
5
4.4.3 相 流 に と も な う体 積 変 化
257
4.4.4 リ ュ ウ ヴ ィ ル の 定 理
260
4.4.5 ポ ア ン カ レ の 再 帰 定 理
261
正 準変換
267
5.1 相 空 間 上 の ハ ミ ル トン の 原 理 5.1.1 ハ ミル トン の 原 理 の 相 空 間 へ の 持 ち 上 げ
267 267
5.1.2 ル ジ ャ ン ドル 変 換
270
5.1.3 相 空 間 上 で の ハ ミル ト ン の 原 理
274
5.1.4 局 所 座 標 系 に よ ら な い 表 現
276
5.2 積 分 不 変 式 とカ ル タ ンの 原 理
279
5.2.1 相 空 間 上 の ワ イ ス の 原 理
279
5.2.2 積 分 不 変 式
280
5.2.3 カ ル タ ン の 原 理 5.2.4 第1積
分 と 自由 度 の 削 減
5.3 正 準 変 換―
母 関 数 に よ る定 義
5.3.1 正 準 変 換 と は
283
285
5.3.2 変 換 の 母 関 数
5.4.2 母 関 数 と の 関 係
292 292
295
5.4.3 正 準 変 換 で あ る た め の 十 分 条 件
296
5.4.4 正 準 変 換 群
299
5.5 正 準 不 変 式
299
5.5.1 積 分 不 変 式
299
5.5.2 ラ グ ラ ン ジ ュ 括 弧
300
5.5.3 斜
302
交
積
5.5.4 リ ュ ウ ヴ ィ ル の 定 理(再 論)
索
285 287
5.4 シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 写 像 5.4.1 シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 条 件
282
引
303
第Ⅱ巻 目次 6 ポ ア ソン括弧 6.1 1径 数 正 準 変 換 6.2 ポ ア ソ ン 括 弧 と正 準 方 程 式 6.3 ポ ア ソ ン の 定 理 6.4 ポ ア ソ ン 括 弧 と リー 代 数 6.5 相 空 間 の簡 約 7 ハ ミル トン-ヤ コ ビの 理 論 7.1 ハ ミル ト ン-ヤ
コ ビ方 程 式
7.2 ヤ コ ビ の 定 理 7.3 力 学
・光 学 ア ナ ロ ジ ー
7.4 正 準 変 換 に も とづ く考 察
8 可
積
分
系
8.1 完 全 可 積 分 系 8.2 周 期 運 動 と作 用 変 数 ・角 変 数 8.3 多 重 周 期 系 の 運 動
9 摂
動
論
9.1 定 数 変 化 法 9.2 ラ グ ラ ン ジ ュ の 摂 動 方 程 式 9.3 正 準 摂 動 法―
フ ォ ン ・ツ ァ イ ペ ル の 方 法
9.4 永 年 摂 動 と解 の 不 安 定 性 9.5 リー 変 換 に よ る摂 動 法
10 拘束 系 の正準 力 学 10.1 デ ィ ラ ッ ク の 処 方
10.2 デ ィ ラ ッ ク括 弧 と相 空 間 の 簡 約 10.3 第1種
の 拘 束 量 とゲ ー ジ変 換
11 相対 論 的力 学 11.1 ガ リレ イ の 相 対 性 原 理 11.2 ロ ー レ ン ツ 変 換
11.3 相対 論 的運動 方程 式 11.4 相対 論 的解析 力学
例
一
覧
<第Ⅱ
<第Ⅰ 巻> 1.1.1 1.2.1 1.3.1 1.4.1
球面振子 円錐振子 球 面 上 のベ ク トル の平 行 移 動 と接 続 R2上 のベ ク トル場 と座 標 変 換
1.5.1 応 力 テ ン ソ ル 1.5.2 クロ ネ ッカー の デ ル タ とエ デ ィ ン トン の イ プ シロ ン 2.1.1 2.1.2 2.2.1 2.2.2
ラー モ ア の定 理 剛 体 の 回転 の方 程 式 軸 対 称 な 電磁 場 中 の 荷 電 粒 子 の 運 動 中心 力 に よ る2体 相 互 作 用
巻>
6.2.1 ハ ミル トニ ア ン と時 間移 動 6.2.2 運 動 量 と空間 移 動 6.2.3 線 形 系 と して の 調 和 振 動 子 6.2.4 角 運 動 量 と空 間 回転 6.3.1 2次 元 調 和 振 動 子― 固有値 問題 と し ての 扱 い 6.3.2 ケプ ラー 問題 と調 和 振 動 子 の 関 係 6.4.1 2次 元等 方 調 和 振 動 子 の 対称 性 6.4.2 ケプ ラー 運 動 の対 称 性
2.2.3 ケプ ラー 運 動 2.2.4 軸 対 称 な こ ま(ラ グ ラ ン ジュ の こ ま)の
7.2.1 7.3.1 7.3.2 7.4.1
運動 2.2.5 ベ ー タ トロ ン振 動 と弱 集 束
7.4.2 フ ッ ク型 ポ テ ン シ ャ ル と遠 心 力 ポ テ ン シ ャ ル の合 成
2.3.1 2.4.1 2.5.1 2.5.2
電磁場 剛体の 円筒 上 平面上
中 の荷 電粒 子 の 運 動 方 程 式 回転 に た い す る オ イ ラー 方 程 式 を転 が る 円 筒 を転 が る コイ ンの 運 動
調 和 振 動 子 とハ ミル トン の 主 関 数 一 様 な重 力 の も とで の放 物 運 動 ラザ フ ォー ド散 乱 減 衰 振 動 のHJ方 程 式 に よ る解
8.1.1 8.1.2 8.1.3 8.2.1 8.2.2
中心 力 ポ テ ンシ ャ ル の も とで の 平 面 運 動 中心 力 の場 の 中 で の粒 子 の 運 動 ケプ ラー 運 動 とケ プ ラ ー の 軌 道 要 素 井 戸 型 ポ テ ンシ ャ ル と断 熱 定 理 調 和 振 動 子 と作 用変 数 ・角 変 数
3.2.3 ケ プ ラ ー 運動 の対 称 性 と レ ン ツ ・ベ ク ト ル
8.2.3 8.2.4 8.3.1 8.3.2
ベ ー タ トロ ン振 動 の 断 熱 減 衰 モー ス ・ポ テ ン シ ャ ル の も と で の運 動 2次 元 ケ プ ラー 問題 と縮 退 マ グ ネ トロ ン内 の 電 子 の 運 動
3.3.1 2次 元 ケ プ ラ ー 問題 とヤ コ ビ の 原理
8.3.3 2次 元調 和振 動 子 と縮 退
4.3.1 剛 体 の 自由 回 転(オ イ ラー の こ ま) 4.3.2 加 速 器 の ビー ム 集 束 機 構― 強集束 4.4.1 ハ ミル トニ ア ン ・フ ロー と くま で 型分 岐 の一 例
9.1.1 ダ フ ィ ン振動 子 と定 数 変 化 法 9.2.1 地球 の偏 平性 の 人工 衛 星 の 運 動 へ の影 響
3.1.1 ダ フ ィ ン振 動 子 3.2.1 ガ リレ イ変 換 と保 存 則 3.2.2 N次 元 等 方 調 和 振 動 子 と隠 れ た 対 称 性
5.3.1 正 準変 換 の例1― 5.3.2 正 準変 換 の例2― 5.3.3 正 準変 換 の例3―
極座標への変換 ガ リレ イ変 換 ゲ ー ジ変 換
5.3.4 正 準変 換 の例4― 5.3.5 正 準 変 換 の例5―
系の時間的発展 減衰振動
9.2.2 9.2.3 9.3.1 9.3.2 9.5.1
水 星 の近 日点 移 動― 他 惑 星 に よ る摂 動 水 星 の 近 日点 移 動― 一 般 相 対 論 の効 果 ダ フ ィ ン振 動 子 と正 準 摂 動 法 ゼ ー マ ン効 果 の 古典 模 型 フ ァ ン ・デ ル ・ポ ル 方 程 式
10.1.1 外 的 な拘 束の あ る場 合 10.3.1 ゲー ジ 自 由度 とゲー ジ 固 定 10.3.2 拡 大 相 空 間の 正 準 形 式 11.4.1 ゾ ン マー フ ェ ル トの 原 子模 型
1 序章―
数学的準備
1.1 運 動 方 程 式
1.1.1 ニ ュ ー トン 力学 古典 物 理 学 は物 質 と場 の 二 元 論 よ りな っ て い る.つ 理 的 存 在 と見 な さ れ て い る.実 際,ニ
ま り物 質 と場 は別 種 の物
ュ ー トン 力 学 で は,力 の 作 用 の も とで の
物 質 的 物 体 の 運 動 が 論 じ られ る が,そ の さ い に 作 用 す る力 自体 の 法 則 は,通 常 は 力 学 の外 に あ る場 の 古 典 論 で 扱 わ れ るべ き もの とな っ て い るの で あ る. そ れ ゆ え ニ ュー トン力 学 の課 題 は,与 測 す る こ と(力 → 運 動),お る こ と(運 動 → 力),と
え られ た力 の も とで の 物 体 の運 動 を予
よ び物 体 の 運 動 か ら働 い て い る力 の性 質 を推 論 す
い う両 方 向 に 設 定 され て き た.事 実,力 学 は 歴 史 的 に
は ケ プ ラー の 法 則 で 表 さ れ る惑 星 の 運 動 か ら万 有 引 力 を帰 納 す る こ と(運 動 → 力)か
ら 出 発 し た が,そ の 最 初 の 成 功 は,逆 に そ の 万 有 引 力 を既 知 と して
運 動 方 程 式 か らハ レー 彗 星 の再 帰 を予 言 す る こ と(力 → 運 動)で
あ っ た.
力 学 の 課 題 の この 二 方 向性 は,力 学 の 原 理 で あ る運 動 方 程 式 の論 理 的 地位 を 曖 昧 な もの に して い る.そ れ は 次 の 事 情 で あ る. 3次 元 ユ ー ク リッ ド空 間R3内
のN個
Oを 定 め,α 番 目 の 質 点(質 量mα)の ニ ュ ー トンの 運 動 方 程 式(Newton's
の 質 点 の 運 動 を考 え る.R3内
に原点
位 置 をQα と す る.各 質 点 の 運 動 は
equation
of motion)と
呼 ば れ る方 程 式
(1.1.1) に 支 配 さ れ て い る.こ ト ル,Fαtotalは
こ にrα(t)=OQα
は α番 目 の 質 点 の 時 刻tで
そ の 質 点 に 働 くす べ て の 力 の 和(合
力)を
表 す.と
の位 置 ベ ク ころで この
運 動 方 程 式 は,あ
る と きは 与 え られ た 力 か ら運 動 を予 測 し決 定 す る因 果 方 程 式
と考 え ら れ,ま た あ る と きは 観 察 され た 運 動 か ら力 の 関数 形 を決 定 す る い わ ば 力 の 定 義 式 と も見 な さ れ,そ
して 現実 に は しば しば 同 時 に そ の両 者 で あ る.
運 動 方 程 式 の こ の 両 義 性 は,ニ
ュー ト ン 力 学 が 「物 質(物 質 的 物 体)」 と
「場 」 を別 種 の 実 在 と見 な し,場 につ い て の 法 則 は 力 学 の外 に 与 え ら れ た もの と して 扱 い,そ
し て場 の個 別 物 体 へ の 作 用 を 「力 」 とい う抽 象 概 念 に ま とめ あ
げ た こ との結 果 で あ る.つ
ま り,各 物 体 は 与 え られ た場 か ら個 別 的 に 力 を受 け
る と考 え ら れ て い る.そ れ ゆ え ま た ニ ュ ー トン 力 学 で は,個 々 の 粒 子(物 体) の それ ぞ れ は,た
とえ そ れ らの 間 の相 互 作 用 が 考 慮 され る場 合 で も,基 本 的 に
は 別 個 の 力学 的 対 象 と見 な され て い るの で あ る. この 物 質 と場 の 二 元 論 お よ び個 別 粒 子(物 体)そ れ 自体 を個 々 に 力 学 的 対 象 と し て扱 うニ ュ ー トン 力 学 の 一 面 性 と限 定 性 は,現 在 で は 場 の 量 子 論 に お い て 物 質 と場 の両 者 を量 子 化 す る とい う方 向 で の 解 決 が追 究 され て い る.場 の量 子 論 で は,個 々 の 粒 子 で は な く粒 子 系 が 単 一 の 対 象 と して 扱 わ れ,さ
ら に そ の粒
子 系 と場 が と もに 同 レベ ル の 量 子 化 され た場 と見 な され,同 種 の 基礎 方 程 式 で 統 一 的 に 扱 わ れ る の で あ る. そ して,場 の 量 子 論 へ の こ の移 行 を可 能 と した の が,ラ
グ ラ ン ジュ 形 式 お よ
び ハ ミル トン形 式 の解 析 力 学 な の で あ る.す な わ ち,解 析 力 学 に お いて は じめ て,第1に,質 に,有
点 系(物 体 系)全 体 が 単 一 の 力 学 的 対 象 と し て 扱 わ れ,第2
限 自由 度 の 物 質 の 力 学 と無 限 自由 度 の場 の 力 学 が 同 一 の数 学 的 枠 組 み で
記 述 さ れ,そ
して 第3に,個
別 粒 子 に 働 く力 とい う概 念 を必 ず し も必 要 と し な
い,そ の よ う な力 学 の 定 式 化 に 成 功 したの で あ る.し たが っ て 以 下 の 解 析 力 学 の 考 察 は,つ ね に こ の 方 向 を 目指 して 進 め られ て ゆ くこ とに な る.
1.1.2 拘 束 条 件 と配 位 空 間 そ の 第一 歩 と して,質 点 系(物 体 系)の 全 体 的 な 運 動 をひ と ま とめ に 表 現 す る こ とか ら始 め る. ま ず,N個 N個
の 質 点 系 全 体 の 運 動 を記 述 す るた め に 各 質 点 の 運 動 空 間R3の
の 直 積
全 体 の 配 置 を こ のR3Nの1点
を 導 入 す る.そ
し て こ れ を用 い て,質
点
で 表 し,こ
のxを
質 点 系 の 座 標 な い し 単 に 系 の 座 標 と い お う.
さ て,す
べ て の 力Fαtotalが 既 知 で あ る な ら ば,つ
ま り
(1.1.2) の 関 数 形 が あ ら か じ め 与 え ら れ て い る な ら ば(xはxの (1.1.1)のN個
導 関数dx/dt),
の 方 程 式 は しか るべ き初 期 条 件 と あ わ せ て 系 の 時 間 的 発 展 を
与 え る微 分 方 程 式 と解 釈 で き る.質 点 が 既 存 の 重 力 場 や 電 場 ・磁 場 か ら力 を受 け て 運 動 し て い る と見 な し う る場 合,あ
るい は 質 点 同士 が 重 力 や クー ロ ン力 と
い っ た 既 知 の 相 互 作 用 に よ り影 響 を及 ぼ し合 って い る場 合 な どが そ うで あ る. しか し,巨 視 的 物 体 は そ れ 以 外 に 他 の物 体 との 直 接 的 接 触 な どに よ って も力 を受 け る.そ れ らの 巨視 的 な 力,つ
ま り面 の抗 力 や 棒 の 張 力 な ど は,原 理 的 に
は分 子 間 力 の 合 力 で あ る け れ ど も,分 子 間 力 そ の も の の 関数 形 が 厳 密 に知 られ て い る わ け で は な い し,だ い い ち,巨 視 的 物 体 を構 成 す る1023個 に もお よぶ 分 子 間 力 の 合 力 を求 め る こ とは 事 実 上 不 可 能 で あ る.実 際,そ の 合 力 の 関 数 形 が 近 似 的 に で あ れ知 られ て い るの は,弾 性 ば ね に お け る フ ッ クの 法 則 の よ う な きわ め て 限 られ た ケ ー ス だ け で しか な い. した が って,い か,変
くつ か の物 体 が 事 実 上 伸 縮 し な い棒 につ な が れ て運 動 す る と
形 しな い 面 に 接 し て 運 動 す る と い っ た 場 合,棒
の張力 や面 の抗 力 な ど
は,現 実 に は 問題 を解 い て初 め て わか る 未知 量 と し て扱 わ れ る.つ
ま り,こ れ
らの 力 に よ り,諸 物 体 の 相 互 的 位 置 関 係 に あ る制 約 が 課 せ られ る こ とに な るの だ が,こ の 場 合 は 力 そ の もの で は な く,そ の結 果 と して の質 点 の 座 標 間 の 特 定 の 関係 だ け が 与 え られ て い る の で あ る. も と よ り巨視 的 力 学 で い う とこ ろの 物 体 な る もの 自体 が,そ の よ うな 扱 い の 上 に 成 立 して い る.た
とえ ば 剛体 とは,お び た だ し い数 の分 子 か らな る複雑 な
系 を,分 子 間 の相 互 作 用 を分 子 間 力 その もの に よ っ て で は な く分 子 間 距 離 が 一 定 とい う力 の 効 果 に よ っ て表 し,そ の こ とで構 成 粒 子 間 の相 対 運 動 を凍 結 させ る こ とで得 られ た理 想 化 概 念 な の で あ る. 一 般 的 に い う な ら ば,N個
の 物 体 が あ る相 互 作 用 を し て い る と き,相 互 作
用 そ の もの の 詳 細 は わ か ら な い け れ ど も,そ の 結 果 と して そ の 物 体 系 の座 標 成 分(x1,x2,…,x3N)が
あ る関 係 を取 り結 ぶ こ との み が 知 られ て い る,と い う こ
と で あ る.そ す)と
の 関 係 を 拘 束 条 件(constraint
conditions,「
束 縛 条 件 」 と も訳
い う.
と くに そ の 関 係 が
(1.1.3) と い う 形 で 表 さ れ る 場 合 を ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束(holonomic う(そ
う で な い 場 合,つ
る とか,あ
constraints)と
ま り 非 ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 は,条
件 が 不 等 式 で表 され
る い は 座 標 の 微 分 の 間 の 積 分 不 可 能 な 関 係 で 与 え ら れ る 場 合 で,こ
れ ら に つ い て は 後 述).な
お 拘 束 条 件(1.1.3)で
を レ オ ノ ー マ ス(rheonomous),そ (scleronomous)と
い う.本
時 間tを
陽 に 含 む と きの 拘 束
うで ない ときの拘 束 をス ク レ ロノーマ ス
節 で は ス ク レ ロ ノ ー マ ス な 場 合 に 話 を 限 る.
拘 束 条 件(1.1.3)か
ら 次 の こ とが い え る.
R3N内
満 た す す べ て の 点 と そ の 近 傍 で 行 列(∂fs/∂xi)の
の(1.1.3)を
ク がk(≦p),す す る.こ
い
な わ ち 少 な く と も1個
の と きx={xi}の3N個
に よ れ ばn=3N-k個
のk×k小
行 列 の 行 列 式 が0で
の 成 分 は す べ て が 独 立 で は な く,陰
の 独 立 な パ ラ メ ー タ(q1,q2,…,qn)を ,す
ラ ン ない と
関数 定 理
用 い て,局
所 的 に
なわ ち
(1.1.4) とパ ラ メ ト ラ イ ズ さ れ る.幾
何 学 的 に 表 現 す れ ば,拘
す 点 の 集 合 n次
は,R3Nに
元 超 曲 面 を 形 成 し,系
こ の 超 曲 面Nは n個
の 運 動 は こ のNの
配 位 空 間(configuration
space)と
coordinate)と
を 構 成 す る す べ て の 質 点 の 位 置)と
う し て 配 位 空 間 の 導 入 に よ り,系
*1 座 標 成 分qiの
添 字iを
呼 ば れ る.そ
して こ の
学 的 に は 局 所 座 標,物
呼 ば れ る*1.そ
位 空 間 上 の 点 の 位 置 と そ の 移 動 と し て,q={qi}お れ る.こ
埋 め 込 ま れ た
の 少 な く と もあ る領 域 で の 系 の
位 置 を 特 定 す る の に 必 要 十 分 な パ ラ メ ー タ で あ り,数 的 に は 一 般 化 座 標(generalized
満 た
上 に 限 定 さ れ る の で あ る.
の パ ラ メ ー タq=(q1,q2,…,qn)が,N上
時 刻 の 配 位(系
束 条 件(1.1.3)を
理
して 系 の あ る
系 の 時 間 的 発 展 は,こ
の配
よび そ の 時 間 的 変 化 で 表 さ
の 全 体 と して の 統 一 的 な記 述 と把 握
右 下 で な く右 上 に 書 くの は
,こ
の 段 階 で は 便 宜 上 で あ る が,後
に 右 上 に つ け る 添 字 と右 下 に つ け る 添 字 の 区 別 が 意 味 を も っ て く る(§1.3.1参 照).な お, パ ラ メ ー タ{qi}の 選 び 方 は 自由 で,角 度 な ど を 用 い る こ と も可 能 ゆ え,一 般 化 座 標 の 成 分 qiが 長 さ の 次 元 を もつ と は 限 ら な い.
に 向 け て の 第 一 歩 が 踏 み 出 さ れ た こ と に な る. な お,パ
ラ メ ー タqの
り も あ る た め で あ る.し
選 び 方 が 一 通 り で な い の は,局 か しnの
値,す
選 び 方 に よ ら な い.そ
れ ゆ え こ のnは
(degree
い わ れ る.
of freedom)と
さ て,運
動 空 間 が 超 曲 面N上
直 す な ら ば,各
標 系 の
系 に 固 有 の 量 で あ り,系
の 自 由度
に 限 定 さ れ て い る と い う こ と は,物
理 的 に見
質 点 に は そ の 質 点 をN上
る と い う こ と で あ る.そ
所 座標 の選 択が何 通
な わ ち 配 位 空 間 の 次 元 は,座
に 拘 束 す るた め の 強 制 力 が働 い て い
れ ゆ え こ の と き 運 動 方 程 式(1.1.1)は
(1.1.5) の 形 を とる.こ
こ にFα は その 関 数 形(1.1.2)が
あ らか じめ 与 え られ て い る 力
(力 の 場)の 合 力 で あ る の に た い して,Fα'は 系 をN上
に 拘 束 す る強 制 力 で あ
り,問 題 を解 い て 初 め て 求 ま る未 知 数 で あ る.以 下 で は,Fα (applied force), Fα'を 拘 束 力(constraint (1.1.1)のFαtotalはFα
force,な
を加 え られ た 力
い し 「束 縛 力 」)と い う.
とFα'の 和 で あ る.こ の よ う に地 位 の 異 な る2種 類 の
力 が 混 在 して い る こ との な か に,ニ
ュー トンの 運 動 方程 式 の 先 述 の両 義 性 が 見
て とれ る.要 す る に 方程 式(1.1.5)は,一
方 で は 未 知 関 数 と して の拘 束 力 を
と もな い,他 方 で は運 動 を決 定 す る に は過 剰 な座 標 を含 ん で い るの で あ る. そ こ で ま ず,拘 束 力 を運 動 方程 式 か ら消 去 す る た め,そ
の性 質 を調べ る.
1.1.3 拘 束 力 と仮 想 仕 事 多 くの 場 合,系 た い して,拘
の 与 え られ た瞬 間 に お け る拘 束 条 件 を破 らな い 無 限小 変位 に
束 力 は 系 全 体 と して 見 る な らば 仕 事 を しな い.
た と え ば 質 点 系 の 剛体 的 拘 束 や 伸 縮 しな い 糸 に よ る拘 束 の 場 合 が そ うで あ る.両 端 に物 体 をつ け て滑 車 に 吊 る した 糸 の 場 合,糸
が 一 方 の物 体 に す る仕 事
は 他 方 の 物 体 か ら され る仕 事 に 等 し く,そ れ ゆ え糸 の 張 力 が 系 全 体 に す る仕 事 の 和 は0で
あ る.あ る い は また物 体 が 滑 らか な面 上 に 拘 束 され て い る場 合,法
線 方 向 を向 い た 抗 力 は,面 の接 線 方 向 に しか 動 くこ との で きな い物 体 に た い し て 仕 事 を し な い.さ
らに は摩 擦 に よ り物 体 が 面 上 をすべ らず に転 が る場 合,接
点 は瞬 間 的 回転 中 心 で あ り瞬 間 的 に静 止 して い るか ら,こ の 摩 擦 力 はや は り仕
事 を しな い.他 方,物 体 が 動 摩 擦 に抗 して 面 上 を すべ る と きに は,垂 直 抗 力 を 拘 束 力 に,面 に 平 行 な 摩 擦力 成 分 を加 え られ た 力 に 割 り振 れ ば,こ の 場 合 もや は り拘 束 力 は 仕 事 を し な い. こ こ で与 え ら れ た 瞬 間 の 拘 束 条件 を破 ら な い 系 の 変位 とは,系 が 自由 に運 動 で き る超 曲 面Nを
そ の 瞬 間 に 固定 した と きの そ の 超 曲面 上 で の 変 位 の こ とで
あ るか ら,一 般 化 座 標 の 時 間 的 変位 を含 ま な い 無 限 小 変 位 δq={δqi}を 用 い て (た だ し と表 さ れ る*2.こ
(1.1.6)
)
の よ う な 無 限 小 変 位 を仮 想 変 位(virtual
displacements),ま
た こ の 表 示 を 仮 想 変 位 の パ ラ メ ー タ 表 示 と い う. こ の 仮 想 変 位 を 用 い れ ば,上
に 述 べ た 拘 束 力{Fα'}の
性質 は
(1.1.7) と 表 さ れ る*3.す
な わ ち 幾 何 学 的 に い い 表 せ ば,拘
曲 面Nと
直 交 し て い る.こ
(ideal)と
呼 び,以
束 力 の 集 合F'={Fα'}は
の よ う な 拘 束 を 滑 ら か(smooth)な
超
い し理 想 的
下 で は と くに 断 ら な い か ぎ り拘 束 は 滑 ら か と す る.
そ こ で ま ず 静 力 学 の 場 合 に つ い て 考 え て み よ う. 系 が 釣 り合 い に あ れ ば
(1.1.8) で あ る.仮 tual work)と
想 変 位 に た い し て 加 え ら れ た 力{Fα}の い い,拘
束 が 滑 ら か で あ れ ば,そ
す る 仕 事 を 仮 想 仕 事(vir
の仕事 は
(1.1.9) と な る. 系 が 釣 り合 い に な い と き に は,と
くに静 止 状 態 か ら微 小 時 間 に 現 実 に行 う運
動 を 仮 想 変 位 と し て と る こ と が で き る.そ
*2 以 下 断 り が な け れ ば
,上
の と き に は δrα=rα δtと し て よ く,
付 き 同 一 添 字 な い し下 付 き 同 一 添 字 の 量 が 分 母 分 子 に 分 か れ て
書 か れ て い る 場 合,ま た は 上 付 き と下 付 き に 同 一 の 添 字 が 登 場 す る 場 合,そ の 同 一 添 字i に つ い て1か らnま で の 和 を と る い わ ゆ る ア イ ン シ ュ タ イ ン の 規 約 に し た が う.な お そ の よ う な 同 一 添 字 は,上 下 を 同 時 に 別 の 文 字 で 入 れ か え て よ い か ら,ダ ミー(み せ か け)と い わ れ る. *3 本 書 で は ,R3やR3Nの ベ ク トル はaやbやxの よ う に ボ ー ル ド ・タ イ プ(太 字)で 表 し,そ の 内積(ユ ー ク リ ッ ド内 積)をa・bな い し(a・b)で 表 記 す る.な お(1.1.7)式 の Σαは α に つ い て1か
らNま
で の 和.
加 え ら れ た 力 の す る仮 想 仕 事 は
(1.1.10) と な る(二
つ 目 の 等 号 は(1.1.7)を
こ の 結 果(1.1.9),(1.1.10)は,「
系 が 釣 り合 う た め の 必 要 十 分 条 件 は 加 え
ら れ た 力 の す る 仮 想 仕 事 が0で
あ る 」 と ま と め ら れ る.こ
し て の 仮 想 仕 事 の 原 理(principle こ の 仮 想 仕 事 の 原 理 は,一
使 う).
of virtual
work)に
れ が静力学 の原理 と
他 な ら な い*4.
般 化 座 標 を用 い れ ば
(1.1.11) と 表 さ れ る.こ
こ にq={qi}は
す べ て 独 立 で あ る か ら,釣
り合 い の 条 件 を
(1.1.12) と 表 し て も よ い*5.こ を 一 般 化 力(generalized 限 ら な い か ら,一 さ ら に 力Fα
のF={Fi}は force)と
既 知 の 加 え ら れ た 力 だ け で 表 さ れ,こ
れ
い う(一 般 化 座 標 は 長 さ の 次 元 を も つ と は
般 化 力 も 力 の 次 元 を も つ と は 限 ら な い).
が ポ テ ン シ ャ ルUか
ら 導 か れ る と き に は,こ
の 釣 り合 い の 条
件 は
(1.1.13) す な わ ち釣 り合 い は系 の ポ テ ン シ ャ ル が極 値(一 般 に は停 留 値)を る(∂/∂rα は ∇α=(∂/∂xα,∂/∂yα,∂/∂zα)を 表 す).こ
と る点 で あ
う して 多 数 個 の物 体 か らな
る系 の 静 力 学 を,単 一 の 関 数 で表 現 され る単 一 の 原理 で とら え る こ とに成 功 し た. 解 析 力 学 は,動 力 学 に お い て もこ の 方 向,す な わ ち 単 一 の 関 数 で 表 さ れ る単 一 の 原理 か ら運 動 を決 定 す る こ と を 目指 す もの で あ る.
*4 厳 密 に い う な ら ば
,仮 想 仕 事 の 原 理(1.1.9)は 仮 想 変 位 が 可 逆 的,つ ま り あ る δrの 変 位 が 可 能 な ら ば-δrの 変 位 も 可 能 と な る場 合 に 成 り立 つ.そ う で な い と き,つ ま り運 動 可 能 領 域 の 端 で 変 位 が 一 方 向 に しか 許 さ れ な い 場 合 は,釣
ば よ い. *5 A:=Bな
い しB=:Aは
「BでAを
り合 い の 条 件 は δW≦0で
定 義 す る 」 と い う記 号
.
あれ
1.1.4
配位 空間上の運動方程 式
動 力 学 に お い て も,拘
束 が 滑 ら か で あ れ ば(1.1.7)が
べ て の δqiが 独 立 で あ る か ら,こ
成 り立 ち,さ
らに す
れ よ り拘 束 力 は
(1.1.14) を 満 た す.拘
束 力 の こ の 著 し い 性 質 を 用 い れ ば,運
動 方 程 式 か ら拘 束 力 を 消 去
す る こ と が で き る. 実 際,運
動 方 程 式(1.1.5)の
ユ ー ク リ ッ ド内 積)を
両 辺 と3次
作 り,さ
元 ベ ク トル ∂irαと の 内 積(R3で
ら に α で 和 を と る と,i=1,2,…,nに
の
た い して
(1.1.15) が 得 ら れ,こ
れ に は も は や 拘 束 力 が 含 ま れ て い な い.こ
化 座 標q=(q1,q2,…,qn)の
み で 表 し て,独
本 節 で は 拘 束 が 時 間 に よ ら な い(ス る の で,(1.1.4)よ
立 なqに
こ で さ ら に 左 辺 を一 般
つ い て の 方 程 式 を 導 く.
ク レ ロ ノ ー マ ス な)場
合 に 話 を限 っ て い
り質 点 α の 速 度 ・加 速 度 は
(1.1.16) (1.1.17) と 表 さ れ る.そ 拘 束 力Fα'を
し て こ れ ら を(1.1.15)に
代 入 し て,ひ
と ま ず の 目 的 で あ る,
含 ま な い 自由 度 の 数 だ け の 方 程 式
(1.1.18) が 得 られ る. こ の 方 程 式 を さ らに 書 き 直 す た め に,配 位 空 間Nの
幾 何 学 的 構 造 を調 べ て
み よ う.こ の 系 で は全 運 動 エ ネ ル ギー と し て,非 負 の 量
(1.1.19) が 定 義 さ れ て い る.そ
こで
(1.1.20)
とお く.そ して こ れ をn次
元 の 配 位 空 間Nを
動 エ ネ ル ギ ー と考 え れ ば, 見 なす こ とが で き る.こ
動 く質 量1の 仮 想 的 な質 点 の 運
を,そ の 質 点 がdt間
にN内
で 動 く距 離 と
う して 配 位 空 間Nに
(1.1.21) で 定 義 され る 計 量 を導 入 す る こ とが で き る.こ こ に
(1.1.22) こ れ ら(ds)2と{mij}は こ の 量{mij}は
§1.6.3で
一 般 に はqの
述 べ る 計 量 テ ン ソ ル と そ の 成 分 に あ た る.
関 数 でN上
の 点 ご と に 値 が 異 な る.
こ こ で さ ら に 次 の 量 を 定 義 す る:
(1.1.23) 明 ら か にCijk=Cikjで
あ り,ま
たmijの
定 義(1.1.22)よ
同 様 に
り
が 成 り 立 つ.そ
れ ゆ え(1.1.23)
で 定 義 され た 量 は
(1.1.24) の よ う に 表 さ れ る.こ symbols
の 量{Cijk}を
of the first kind)と
第1種
ク リ ス トッ フ ェ ル 記 号(Christoffel
い う.
こ れ ら の 諸 量 を 用 い れ ば,系
の 運 動 エ ネ ル ギ ー(1.1.19)は
(た だ し 他 方,運 Nの
動 方 程 式(1.1.18)は,既
(1.1.25)
),
知 の 一 般 化 力 と一 般 化 座 標qと
配位 空 間
幾 何 学 的 構 造 に 由 来 す る量 の み を用 い て,次 の よ うに 表 され る:
(1.1.26) と く に 力Fα
が 保 存 力 で,ポ
テ ン シ ャ ルU(r1,r2,…,rN)か
ら 導 か れ る 場 合,
一般化 力 の成分 は
(1.1.27)
とな り,上 の 運 動 方程 式 は次 の よ うに も表 され る:
(1.1.28) あ る い は 次 の よ う に 書 き 直 す こ と も で き る. い まdet(mij)≠0な 有 す る.た
ら ば,行
列(mij)はmijmjk=δikと
な る 逆 行 列(mij)を
だ し
(1.1.29) で あ り,こ
の δikを ク ロ ネ ッ カ ー の デ ル タ(Kronecker's
ロ ネ ッ カ ー の デ ル タ の 数 学 的 性 質 に つ い て は,p.29お 参 照 の こ と).そ
delta)と よ びp.78の
い う(ク 例1.5.2を
こ で この 逆 行 列 を 用 い て 量
(1.1.30) を 定 義 し,こ
れ を 第2種
の 両 辺 にmsiを に よ り,運
ク リス トッ フ ェ ル 記 号 と呼 ぶ.こ
か け てiに
つ い て 和 を と り,そ
れ を 用 い れ ば(1.1.26)
の 後 にsをiと
置 きか え るこ と
動 方 程 式 の も う一 つ の 表 現
(1.1.31) が 得 ら れ る. 以 上 に よ り,独
立 な 一 般 化 座 標qの
み で 表 さ れ,し
運 動 方 程 式(1.1.26),(1.1.28),(1.1.31)が
か も拘 束 力 を含 ま な い
得 ら れ た.こ
れ に よ り配 位 空 間
で の 系 の 運 動 が 決 定 さ れ る. 例1.1.1
球 面振 子
一 端 が 原 点Oに
固 定 さ れ た 長 さlの 軽 くて 変 形 し な い棒 の 他 端 に 結 び 付 け られ,
重 力 を受 け て い る 質 量mの 張 力 をSと
お も りの 運 動 方 程 式 は,お
も りに 働 く重 力 をmg,棒
の
して
(1.1.32) 棒 の 長 さ が 一 定 とい う こ とは,物
で 与 え られ,棒 は 張 力Sは
理 的に は張力 の ポテ ン シャルが
が 少 し で も伸 縮 す る と無 限 大 の 力 で 戻 さ れ る こ と で あ る が,実
際に
未 知 の 拘 束 力 と して 扱 わ れ, 拘 束 条 件:│r│-l=0
の も と で 運 動 方 程 式 を解 く こ とに よ り,r(t)と
(1.1.33)
と もに 決 定 さ れ る.
つ ま り こ の 場 合,こ
の 拘 束 条 件 に よ り 自 由 度 は2に
減 り,R3内
の この 式 で決定 さ
れ る2次 元 球 面 が 配 位 空 間 に な っ て い る.そ れ ゆ え こ の 振 子 を球 面 振 子(spherical pendulum)と
い う.こ
の 場 合,張
方 を 向 きS=-Sr/lと い.す
力Sは,そ
表 さ れ,し
の 大 き さ が 不 明 で あ る が,つ
ね に棒 の
た が っ て つ ね に こ の 球 面 に 垂 直 で,仕
事 を しな
な わ ち 拘 束 は 滑 らか で あ る.
そ こ で,は
じめ か ら こ の2次
うに す る.球
面 上 の お も りの 位 置 は,球
で指 定 され る.こ
の(θ,φ)を
元 配 位 空 間 だ け で 考 え る本 文 の や り方 で は,次 面 の 余 緯 度 θ と経 度 φの2個
一 般 化 座 標 に採 る と,お
のよ
の パ ラ メー タ
も り の位 置 の デ カ ル ト座 標 成
分は
(1.1.34) と書 け(図2.1.2参 ギー は(θ,φ)を
照,鉛
直 上 向 き をz軸
の 正 方 向 に と る),お
も りの 運 動 エ ネ ル
用 いて
(1.1.35) と表 さ れ る.こ
れ よ り(θ,φ)=(q1,q2)と
し て4個
のmijは
(1.1.36) ま た8個
の ク リス トッ フ ェ ル 記 号 は
(1.1.37) と求 ま る.そ
して こ れ ら と重 力 の ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー
(1.1.38) を あ わ せ て,運
動 方 程 式(1.1.28)は,こ
の場合
(1.1.39) と表 さ れ る.運 動 方 程 式 は 自由 度 の 数 だ け で あ り,こ の や り方 で は 拘 束 力 と して の 棒 の 張 力 は ど こ に も現 れ な い. な お ,得
ら れ た こ の(1.1.39)が
か れ る も の と 同 じ で あ る こ と は,次 分 の そ れ ぞ れ に(1.1.34)を
確 か に ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式(1.1.32)か
ら導
の よ う に 直 接 に 示 さ れ る.(1.1.32)のx,y,z成
代 入 し(符 号 を変 え る こ と に よ り)
(a) (b) (c) こ れ ら よ り
の操作 で
(1.1.40) さ ら に
で
(1.1.41) で
ま た
(1.1.42) (1.1.41),(1.1.42)は(1.1.39)の2式 方,(1.1.40)は 大 き さSを
に 他 な ら ず,こ
の2式
加 速 度(θ や φ に 比 例 す る 項)を 含 ま ず,こ
が 運 動 を 決 定 す る.他 れ は 運 動 か ら拘 束 力 の
決 定 す る 方 程 式 で あ る.
1.2 曲 面 上 の 拘 束 運 動*1
1.2.1
曲面のパ ラメータ表示
前 節 で 導 い た 拘 束 運 動 の 方 程 式(1.1.26),(1.1.28),(1.1.31)の
幾何 学 的
意 味 を 明 ら か に す る.た
何学 的 ・
だ し,数
式 の 迷 路 に は ま り こ む の を 避 け,幾
直 観 的 イ メー ジ を 明 瞭 に す る た め,一 す な わ ち 滑 ら か な2次
個 の 拘 束 条 件 に し た が う1質
点 の 運 動,
元 曲 面 上 に 拘 束 さ れ た 運 動 に つ い て 述 べ る.前
球 面 振 子(例1.1.1)は
そ の 一 例 で あ る.
質 点 の 運 動 空 間R3内
の2次
元 曲 面N上
の 点 は,パ
節 に見 た
ラ メー タ表 示 で
(1.2.1) と な る.た
と え ば半 径aの
球 面 上 の 点 は余 緯 度 θ と経 度 φ に よ り
(1.2.2) な お 以 下 で は 上 式(1.2.1)を
簡 単に
ない し の よ う に 記 す.こ
れ は(q1,q2)平
す こ と が で き る(図1.2.1).rの
面 の あ る 領 域Dか 各 成 分 はD上
か つ 必 要 な だ け 微 分 可 能 な 関 数 で あ り,さ
の ラ ン ク がD上
で2と
*1 先 を い そ ぐ読 者 は
ら 曲 面Nへ
の 写 像 と見 な
で 定 義 さ れ た(q1,q2)の
連続
ら に こ れ ら の 関 数 の ヤ コ ビ行 列
す る(∂i:=∂/∂qi).
,第1章
の こ の 後(§1.2∼
§1.6)を
う じ て §1.2∼ §1.6の 該 当 箇 所 を参 照 し て も よ い.
飛 ば し て 第2章
に 進 み,必
要 にお
図1.2.1 曲 面 とそ の 座 標
こ こ でq1を
固 定 しq2を
q1-曲 線 と 呼 ぼ う.同
変 化 さ せ れ ばN上
様 にq2を
q2-曲 線 と 呼 ぶ.q1とq2の 1点 が 決 ま り,逆 のq2の
固 定 しq1を
にN上
θ と経 度 φ で 指 定 さ れ,し
午 線)の
あ る か ら,こ
れ を
の 曲 線 の 交 点 と して 線 のq1の
値 とq2-曲
座 標 と す る こ とが で き る.た 網 の 目 で 覆 わ れ,そ
た が っ て(θ,φ)が
線
とえ ば
の 上 の 点 は余 緯 度
球 面 の 座 標 系 を 与 え る.
元 ベ ク トル
はq1-曲 ラ ン ク が2で
で こ の2本
の 各 点 は そ の 点 で 交 わ るq1-曲
球 面 は 等 緯 度 線 と 等 経 度 線(子
の3次
の 曲 線 が 決 ま る.こ
変 化 させ るこ とで決 ま る曲 線 を
値 を 決 め れ ばN上
値 で 表 さ れ る か ら(q1,q2)をNの
そ してR3内
で1本
はq2-曲
線 の 接 ベ ク トル で あ る.し の 二 つ の 接 ベ ク トル は1次
線 の 接 ベ ク ト ル,
か も上 の ヤ コ ビ行 列 の 独 立 で あ り,し
たがって
∂1rと ∂2rが 曲 面 上 の 各 点 で 接 平 面 を 張 る. た だ し1組
の(q1,q2)でNの
え ば 球 面 の 場 合,北 一 意 的 に 決 ま らず
す べ て の 部 分 が 表 さ れ る と は 限 ら な い.た
極 と南 極 で は 無 数 の 子 午 線 が 集 中 す る の で そ こ で は 経 度 は ,そ
の 点 で 上 の ヤ コ ビ 行 列 の ラ ン ク は1に
場 合,座
標 系 が(q1,q2)で
の で,他
の 部 分 を 含 む 曲 面 片 で は 別 の 座 標 系(q1,q2)を
表 さ れ る の はNの
あ る 部 分(曲
な る.そ
の よ うな
面 片)に
限 られ る
使 い,こ
う し てN
を そ れ ぞ れ 座 標 系 を も つ 何 枚 か の 曲 面 片 で 覆 え ば よ い(図1.2.1).た の さ い,異 φ:D→Dが
と
な る 座 標 系 が 重 な る と こ ろ で は,そ 定 め ら れ て い る とす る.
だ しそ
れ ら の 座 標 系 を つ な ぐ座 標 変 換
この曲面上 の線素 は
(1.2.3) で 表 さ れ る(本
節 で は 和 の 規 約 は1, 2に つ い て の 和 を 表 す).こ
こに量
(1.2.4) を 曲 面(1.2.1)の 形 式(1.2.3)を
第1基
本 量(first
曲 面 の 第1基
本 形 式(first
の 括 弧 内 は 質 点 の 質 量 をmと と し た と き と の 対 比,ま
fundamental
quantities),ま
fundamental
し た と き の,前
form)と
た 上 の2次 い う(上
式
節 で 定 義 し た(1.1.22)でN=1
た こ こ で のdsは(1.1.21)のdsと
は
の
関 係 に あ る). しか る に ∂1rと
∂2rが1次
独 立 で あ るか ら
(× は ユ ー ク リ ッ ド外 積) と な り,行
列(gij)は
こ の 量 も 第1基
1.2.2
逆 を も つ の で,そ
の 逆 行 列 を(gij)で
表 す.
本 量 と い わ れ る.
加 速 度 ベ ク トル と運 動 方 程 式
さ て 質 点 が 曲 面 上 を 運 動 す る と き,そ て ゆ くか ら,そ
の 軌 道 はR3で
の 座 標 成 分(q1,q2)は
時 々 刻 々変 化 し
の 位 置 ベ ク トル
(1.2.5) に よ り表 さ れ る.こ
れ は簡 単 に な い し
の よ う に も記 され る.こ れ は 曲 面 上 の 曲 線 の パ ラ メー タ表 示 で あ る. この 曲線 に そ っ た運 動 のR3空
間での速度 は
(1.2.6) で あ る が,∂ir(i=1,2)は 度 は つ ね に 曲 面Nに 同様 に加 速 度 は
点rに 接 し て い る.
お け る 曲 面 の 接 ベ ク トル で あ る か ら,こ
の速
(1.2.7) とな る.右 辺 第1項
は速 度 と同様 に 曲 面Nに
て は,一 般 に 曲 面 上 の 点 で のベ ク トル(3次
接 し て い る.他 方 第2項
につ い
元 ベ ク トル)は 曲 面 に 接 す る成 分
と曲 面 に 垂 直 な 成 分 に分 解 され る の で,点rに
お け る 曲面 の 単位 法 ベ ク トル
(1.2.8) を用 い て
(1.2.9) の よ うに 展 開 され る.こ の右 辺 の 第2項
の係数 は
(1.2.10) ま た 第1項
の 係 数 Γijkは,(1.2.9)式
と ∂nrと の 内 積 を と っ て
(1.2.11) を 満 た し て い る.こ
の 左 辺 の 量 を Γnjkと
表 す と,こ
れ ら の Γijk,Γnjkは,前
節
で 定 義 し た ク リ ス ト ッ フ ェ ル 記 号(1.123),(1.1.30)と
(1.2.12) の よ う な 関 係 に あ り,や な お こ の{Γnjk}と{Cnjk}の 用 い て(1.1.24)を
は り第1種
・第2種
関 係,お
ク リ ス ト ッ フ ェ ル 記 号 と呼 ば れ る.
よ び(1.2.4)の{gjk}と{mjk}の
書 き 直 す と,Γijkに
関係 を
つ い て も同 様 の表 現
(1.2.13) が 得 ら れ る. こ れ ら の 記 号 を 用 い れ ば 加 速 度(1.2.7)は,(1.2.9)よ
り
(1.2.14) し た が ってR3内
で の運 動 方 程 式mr=Fは
(1.2.15) こ こ でFは
質 点 に 働 い て い る す べ て の 力 の 和((1.1.1)のFtotal)で
の 方 程 式 は,力Fを
曲 面 に 平 行 な 成 分FTと
垂 直 な 成 分FNに
あ り,こ
分解 し
(1.2.16a)
(1.2.16b) と分 け る こ と が で き る. 前 者(1.2.16a)が,与 す る.そ
の 両 辺 と ∂lrの 内 積 を 作 れ ば
ま た は(gnlを
か け てlで
と な る.(1.1.7)の ば,こ
え ら れ た力 の も とで 質 点 が 曲 面 上 で と る運 動 を決 定
和 を と り,
条 件 よ りFTは
れ は(1.1.26)(1.1.31)に
1.2.3
拘 束 力 を 含 ま ず,{Clij}と{mij}で
書 き直 せ
他 な ら な い.
拘束 力の決定
後 者(1.2.16b)は,前 部 分 で あ り,こ 曲 面N上
の 書 き か え を し て)
節 で は拘 束 力 を消 去 す る と い う 目的 か ら消 去 さ れ た
こ で は そ の 意 味 を よ り明 確 に す る た め に,次
の 任 意 の1点r=r(q10,q20)=r0に
着 目 し,曲
の よ う に 考 え る.
面上 の関数
(た だ し )) を 考 え る(eN0は 上 で 点r0の
点r0で
の 単 位 法 ベ ク トル).内
積 ∂ir・eN=0で
あ る か ら,N
近 くの 点
で は,(1.2.10)を
考 慮す れば
(1.2.17) と な る.図1.2.2よ ら 曲 面N上
り 明 ら か な よ う に こ の 量 はr0で
の 点r(q)ま
で の 高 さ で あ る.{hjk}を
の 曲 面 の 接 平 面(TN)0か
曲 面 の 第2基
本 量,ま
た
(1.2.18)
図1.2.2 曲面 の接 平 面 と 法線 ベ ク トル
を 曲 面 の 第2基 さ てr0で
本 形 式(second
の 質 点 の 速 度r=υ
fundamental
form)と
い う.
と 法 ベ ク トルeN0を
含 む 平 面(NN)0を
考 え,
軌 道 を こ の 平 面 に 射 影 し た 曲 線 の 曲 率 半 径 を ρNと す る. い ま 質 点 が 微 小 時 間dt=ε す る と,r0で
τ の 間 にr0=r(q0)か
の 質 点 の 速 さ を υ=│r│と
し て,図
らr(q0+ε
ξ)ま で 動 い た と
よ り
(1.2.19) の 関 係 が 得 ら れ る.他 (1.2.19)を(1.2.17)と よ り,r0で
方,r0で
の 速 度 成 分 は
比 べ て
で あ る か ら, と な る.さ
ら に(1.2.14)
の加 速 度 の 法 線 成 分 は
(1.2.20) と表 さ れ る(eNの 点r0はN上
向 きが 図 と逆 な ら右 辺 に-(マ
イ ナ ス)が つ く).も ち ろ ん
で あ れ ば 任 意 で あ る か ら,こ の 式 は 曲 面 上 の ど の 点 で も成 り立
つ. し たが っ て,一 般 に運 動 方 程 式 の 曲 面 に 垂 直 な成 分(1.2.16b)は
(1.2.21)
と 簡 単 な 形 に な る(例1.1.1で ゆ え,(1.1.40)の
は,
で,つ
左 辺 は 確 か にmυ2/ρNと
な る).こ
ね に ρN=l
れは質点 が与 え られ た曲
面 上 で ど の よ うに 動 こ う と も曲 面 か ら離 れ る こ とは で き な い とい う条 件 だ け か ら得 ら れ る 式 で,運
動 を決 定 す る 式 で は な く,逆
(面 の 垂 直 抗 力FN)を
に 拘 束 条 件 と運 動 か ら 拘 束 力
決 定 す る 式 と考 え る べ き で あ る.
1.2.4 曲 面 上 の 運 動 方 程 式 他 方,質
点 の 曲 面 上 で の運 動 を調 べ る ため に は,パ
ラ メー タ と して 時 間tの
か わ りに軌 道 経 路 の 長 さ
(1.2.22) を 使 う ほ う が 便 利 で あ る.こ べ て の 点 で υ≠0な
こ で は υ=ds/dtは
ら ばs=s(t)か
任 意 の 点 で の 速 さ で あ り,す
ら 逆 にt=t(s)が
決 ま る の で,軌
道 上 の点
は
(1.2.23) で 表 さ れ る.こ
の と きr(s)に
お け る 軌 道 の 接 線 ベ ク トル は
(1.2.24) で あ り,こ で 表 す).そ
れ は 単 位 ベ ク トル で あ る(以 こ でr(s)に
下,sに
お い て 曲 面 に 接 し,か
よ る 微 分 演 算 を'(ダ つeTに
ッ シ ュ)
直 交 す る 単 位 ベ ク トル
(1.2.25) を と る.そ
う す れ ば 法 ベ ク トル はeN=eT×eGと
各 点 で 右 手 直 交 系 を作 る(も こ の よ う に す れ ば,速
表 さ れ,(eT,eG,eN)が
軌道 の
ち ろ ん 軌 道 上 の 点 ご と に 異 な る).
度 はr=υeTで
あ る か ら,加
速度は
(1.2.26) と 表 さ れ る(第2項 使 っ た).し
は 任 意 の 関 数fに
か る にeT・eT=1で
か ら,eT'はeTに
あ り,こ
た い し てdf/dt=υdf/dsで れ をsで
あ る こ とを
微 分 す る と2eT・eT'=0と
な る
直 交 して い る こ とが わ か り
(1.2.27)
す な わ ち,加 速 度 は 次 の 簡 単 な和 で 表 さ れ る:
(1.2.28) こ こ で 前 段 の 結 果(1.2.20)を
使 うと
(1.2.29) と な り,こ
の κNを 曲 面 上 の 曲 線 の 法 曲 率(normal
半 径 と い う.平
た くい え ば,κNは
を 表 現 し て い る.こ
の 曲 率 は,曲
法 曲率
曲 面 自体 の 湾 曲 に そ っ た 軌 道 の 曲 が り 具 合 面NがR3の
立 場 で 見 た と き に の み 意 味 を も ち,曲 に へ ば りつ い て 生 き て い る2次
curvature),ρNを
中 に埋 め 込 ま れ て い る と い う
面 内 だ け で 見 る 立 場 で は(つ
元 生 物 に は)理
ま り曲 面 上
解 で き な い量 で あ る.
ま っ た く同様 に 考 え る と
(1.2.30) は,軌
道 を 接 平 面TNに
射 影 し て 得 ら れ る 曲 線 の 曲 率 で あ り,し た が っ て そ
の 逆 数 が そ の 曲率 半 径 で あ る.実 際,軌
道 を点r0=r(S0)で
の 接 平 面(TN)0に
射 影 して得 られ る曲 線 は
と表 さ れ るか ら(添 字0はr0で
の 値),こ
の 曲 線r(s)の
曲率 円 の 半 径 を ρGと
す れ ば,前 段 と同様 に考 えて
(1.2.31) こ こ にr0は
任 意 で あ る か ら,一
曲 率(geodesic 合 を 与 え,そ
curvature)と
般 に い う.測
れ ゆ え 曲 面 内 の2次
以 上 よ り,R3内
が 成 り立 つ.こ
の κGを 測 地 的
地 的 曲 率 は 曲 面 内 で の 軌 道 の 曲 が り具
元 生 物 に も理 解(測
定)で
き る 量 で あ る.
で の 運 動 方 程 式mr=Fは
(1.2.32) あ る い は 成 分 に分 解 して
(1.2.33)
(1.2.34) (1.2.35) と表 され る.第1式
は加 え られ た力 に よ る軌 道 方 向 の加 速 を与 え,第2式
面 内 で の 軌 道 の 曲 げ を与 え る.他 方,第3式
は曲
に よ り,運 動 と 曲 面 の 曲 が りか
ら,質 点 に 働 い て い る拘 束 力(曲 面 か らの 垂 直 抗 力)が 決 定 され る.軌 道 曲面 にへ ば りつ い た2次 元 生 物 に とっ て は,は
1.2.5
慣 性 運 動 と測 地 線
と くに,拘 る.こ
じめ の二 つ の 式 だ け が 意 味 を もつ.
束 力 を 別 と し て,曲
の と き,は
面 内 で は 力 が 働 い て い な い場 合 の 運 動 を考 え
じめ の 二 つ の 方 程 式(1.2.33),(1.2.34)よ
り
υ=一 定 か つ
(1.2.36)
測 地 曲 率 κGが0と い う こ とは 接 平 面 に 射 影 した 曲 線 が 曲 が ら な い と い う こ と で あ るか ら,質 点 は(質 点 を曲 面 に拘 束 す る力 を の ぞ い て)曲 面 内 で 力 が 働 か な け れ ば 曲 面 上 を一 定 の速 さ で,(曲 面 自 身が もつ 曲 が り を の ぞ い て)い わ ば 「ま っす ぐ」 に 進 む.慣 性 の 法 則(law
of inertia)の 曲 面 上 で の 実 現,す
なわ
ち慣 性 運 動 で あ る. こ こ で 測 地 的 曲率 が0に
な る条 件 は
と書 き直 され る.そ の よ うな 曲 線 と して,方 程 式
(1.2.37) の 解 曲 線 を と くに 測 地 線(geodesic
curve),ま
た この方 程 式 を測地 線の 方程
式 とい う.こ の 測 地 線 が 曲 面 上 で の 自由運 動(慣 性 運 動)の 軌 跡 を与 え る. 測 地 線 は,以 下 に 示 す よ うに 局 所 的 最 短 曲 線 で あ る,つ に近 い任 意 の2点
ま りそ の 線 上 の 十 分
を結 ぶ 曲 線 の う ち で最 も短 い 曲 線 で あ る.し たが っ て,曲 面
上 の 自 由運 動 で は,質 点 は あ る点 か らい ま一 つ の 点 ま で そ の2点
を結 ぶ最 短 距
離 で移 動 す る(一 般 に は 距 離 が停 留 値 に な る経 路 を と る).こ の こ とは 光 学 に お け る フ ェ ル マ ー の 原 理 と同様 の 原 理 が 力 学 に お い て も成 り立 つ こ と を示 唆 し て い る.質 点 の 運 動 と光 の伝 播 との この ア ナ ロ ジー は きわ め て 重 要 で,以 下 で
本 書 の 全 体 を 通 して よ り詳 し く述 べ ら れ る. 測 地 線 が 局 所 的 最 短 曲 線 で あ る こ と は 次 の よ う に 示 さ れ る*2. 曲 線Cを ら にCの
と り,そ
のCに
各 点 を 通 りCに
そ っ て 測 っ た 長 さ を 表 す パ ラ メ ー タ を η と し,さ 直 交 す る 測 地 線Gの
か ら 測 っ た 長 さ を ξ と す る.(ξ,η)が 標 系 に と る こ と が で き る.こ
族 を 描 き,そ
あ ま り大 き くな い 範 囲 で は,(ξ,η)を
),
こ こ で ξ は 測 地 線 に そ っ た 長 さ で あ る か ら,測 .ま
た が っ て
た こ れ を η で 微 分 し て
測 地 線 で あ る か ら κG=0,よ
こ れ は 曲 面 に 垂 直,他
{G}と
地 線 の 接 ベ ク トルrξ は 単 位 ベ .し
を ξで微 分 した もの は
と こ ろ がGが
∂ξgξ η=0.ゆ
座
の とき (た だ し
ク トル で あ り
れ ら の 測 地 線 のC
直 交 し て い る か ら
か る にC(ξ=0の ,し
曲 線)は
な り, な わ ち
測地 線 族
たが って任 意 の ξに たい
な け れ ば な ら な い.
す な わ ち こ の 座 標 系 で は,計
の 形 を と る.そ
ξ=κNeNと
方rη は 曲 面 の 接 ベ ク ト ル ゆ え,rξ ξ・rη=0す
え にgξ ηは ξ に よ ら な い.し
し てgξ η(ξ,η)=0で
っ て(1.2.27)はrξ
れ ゆ え 図1.2.3の
量 は
測 地 線 上 に あ る2点PQを
結ぶ 任 意 の曲線 の
図1.2.3
*2 証 明 は 小 林 昭 七 逆,つ
『曲 線 と 曲 面 の 微 分 幾 何 』(裳 華 房1977)
ま り任 意 の2点
こ と は 後 に §3.3.4で
を 結 ぶ 曲 線 の う ち で,そ 示 す.
Ch .3, §6に 倣 っ た.な
お この
の 長 さが停 留 値 に な る もの が測 地 線 で あ る
長 さ は(2点PQが(ξ,η)を
座 標 とす る 曲 面 片 の 内部 に あ るか ぎ りで)
(1.2.38) この 式 の右 辺 は測 地 線 に そ っ て測 っ たPQ間
の 長 さ で あ るか ら,測 地 線 は 局 所
的 最 短 曲 線 で あ る. ここで 「 局 所 的 」 とい うの は,次 の 例 の よ う な事 情 を指 して い る. 地 球 の 表 面 を 半 径aの
球 面 と考 え,(1.2.2)の
位 置 を指 定 す る.球 面 上 の 線 素(第1基 ゆ え,あ
るい は(1.1.36)よ
り,第1基
よ う に余 緯度 θ と経 度 φで
本 形 式)は 本量 は
(1.2.39a) (1.2.39b) ま た ク リ ス ト ッ フ ェ ル 記 号 は,(1.2.12),(1.2.13),あ
る い は(1.1.37)よ 他 は0
り
(1.2.40a)
他 は0.
(1.2.40b)
し た が っ て 地 球 上 の 測 地 線 の 方 程 式(1.2.37)は
(1.2.41) 測 地 線 に そ っ て θ=θ(φ)と
す る と
し た が っ て(1.2.41)は
こ の 方 程 式 の 解 は,極(θ=0,θ=π)を
の ぞ け ば,φ=const.(子
で あ る.
午 線)ま
とす る と,後
たは
者の解 は
こ れ は 地 球 の 中 心 を 通 る 平 面 と 地 球 表 面 の 交 線 す な わ ち 大 円 の 方 程 式 で あ る. 実 際,こ
の 式 を 満 た す 地 表 上 の 点r=(asinθcosφ,asinθsinφ,acosθ)は,
定 ベ ク ト ルn=(sinθ0cosφ0,sinθ0sinφ0,cosθ0)と 平 面 上 に あ る.
直 交 し,地
球 の 中 心 を含 む
と こ ろ で 大 円 上 の2点PQを 球 上 でPQを
考 え る と,PQを
結 ぶ 大 円 の 短 い 方 の 弧 は,地
結 ぶ 他 の す べ て の 曲 線 よ り短 い が,PQを
(地 球 の 裏 側 を 通 る 弧)は
最 短 曲 線 で は な い.そ
結 ぶ大 円の長 い方の弧
の 意 味 で,測
地 線 が最 短 曲 線
で あ る の は 局 所 的 と い わ れ る. 例1.2.1
円錐 振 子
球 面 振 子 の 運 動 方 程 式(1.1.39)は つ.た
を満 た す.こ
(倒 立)の 他 に,g
φ=ω(const.),θ=θ0(const.)と
だ し θ0,ωは 範 囲 で
pendulum)で,お
軌 道 で,ω=φ>0で
は,eT(軌
が っ て,お
で あ
れ ゆ えeG=eN×eTは
も ち ろ ん 球 の 中 心(原 点O)方
も りに 働 い て い る合 力F=SeN+mgに
と書 き 直 さ れ る.こ な わ ち,運
図1.2.4a
の 第1式
緯度
向 を向 く
子 午 線 に そ っ た θの 増 す 向 き の ベ ク トル .し
り,(1.1.42),(1.1.41),(1.1.40)は
わ か る.す
考 え よ う.
道 接 線 方 向 の 単 位 ベ ク トル)は,等
線 に そ っ た φ の 増 す 向 き の ベ ク トル,eNは ベ ク トル,そ
も りは 水 平 面 内 で 等 緯 度
さ υ=lω sinα の 等 速 円 運 動 を行 う(図1.2.4a).
こ の 運 動 に つ い て,方 程 式(1.2.33),(1.2.34),(1.2.35)を 図 のCが
立),θ0=π
と な る運 動 状 態 が 可 能 で あ
れ は 頂 角 αの 円 錐 振 子(conical
線 に そ っ て 半 径l sinα,速
い う解 を も
れ よ り θ0=0(直
そ れ ぞ れ
と 第3式
が(1.2.33),(1.2.35)で
あ る こ と は,見
れば
動 方 程 式 の 軌 道 に そ っ た 成 分 と,曲 面 に 垂 直 な 成 分 で あ る.
円錐 振 子 の 軌 道
た
た い して
図1.2.4b
第2式
に つ い て は,次
お も り の 位 置Qで Q点
の よ う に考 え れ ば よ い.
の 球 の 接 平 面(TN)Q上
を通 る 大 円(eNとeTが
な り,他 方,お (TN)Qに
で は 直 線Lと
も りの 軌 道 で あ る 水 平 面 上 の 半 径l sinα の 円Cは,そ
た い して α だ け 傾 い て い る か ら,(TN)Qに
短 径
の 楕 円C'に
径 は
射 影 さ れ れ ば,長
な る.そ
は(1.2.34)に
他 な らず,運
1.3
1.3.1
の水 平 面 が 径a=l
して こ の 楕 円 の 点Qで
で あ り,こ の 逆 数 が 測 地 曲 率1/ρGで あ る.し
の 第2式
sinα, の 曲率 半
た が っ て,上
動 方 程 式 の 曲 面 内 の 軌 道 に 垂 直 な成 分 で あ る.
曲 面 上 の テ ン ソル と共 変 微 分
曲 面 上 の ベ ク トル
前 節 で は,質 部 分 空 間(埋 R3の
へ の 軌 道 の 射 影 を考 え る(図1.2.4b).
張 る 平 面 と球 面 の 交 線)C0は,(TN)Q上
点 の 運 動 す る2次 め 込 ま れ た 曲 面)と
ベ ク トル と し て 導 入 し,そ
垂 直 な 成 分 に 分 解 し,曲
元 曲 面Nを3次
元 ユ ー ク リ ッ ド空 間R3の
し て 捉 え た.そ の 上 で,そ
れ ゆ え加 速 度 や 力 を 最 初 は
れ ら を曲 面 に 接 す る成 分 と曲 面 に
面 上 で は 前 者 の 成 分 だ け が 理 解 可 能 な 意 味 を も ち,後
者 の 成 分 は 曲 面 の 外 の 空 間 か ら 見 な け れ ば 意 味 を も た な い と 区 別 し た. しか し は じめ か ら 曲 面 上 だ け で 考 察 す る な ら ば,つ や
ま り曲 面 の
「外 」 の 次 元 な る もの を知 ら な い 立 場 で 考 察 す る な ら ば,前
方 は 不 可 能 に な る.本
節 で も,2次
「外 」 の 世 界
節 の よ う な行 き
元 曲 面 に 話 を 限 る け れ ど も,曲
面上 だけで
考 察 す る と い う立 場 か ら前 節 の 結 果 を 捉 え 直 す. 曲 面N上
の 点 は,一
般 に 何 通 り も の 座 標 で 表 す こ と が で き る.す
座 標 変 換 =(q1,q2)で
に よ っ て 同 一 の 点Qが,あ 表 さ れ,他
の 座 標 系 で はq=(q1
下 で は こ の 変 換 に お い て,関 で,か
つ ヤ コ ビ 行 列 式 が
,q2)で
数qi=φi(q1,q2)が
な わ ち,
る 座 標 系 ではq
表 さ れ る(図1.2.1).以
連 続 で必 要 なだけ 微 分可能 で あ る とす る.
さて 一 般 に 力 学 に お け る ほ とん どの 物 理 量 は座 標 と速 度 や 加 速 度 の 関 数 で あ り,物
理 法 則 は そ の よ う な 物 理 量 の 関 係 で あ る.し
た が っ て そ の 具 体 的 ・個 別
的 表 現 の た め に は 特 定 の 座 標 系 を 用 い な け れ ば な ら な い.し 意 味 そ の も の は,使
か し法 則 の 物 理 的
用 す る 座 標 系 に よ っ て 変 化 し て は な ら な い.そ
座 標 変 換 に さ い し て 法 則 の 形 が 変 わ っ て は い け な い,い
の ためには
いか え れ ば 法 則 を表す
等 式 の 両 辺 や 各 項 は,座 標 変 換 の さ い に 同 じ よ うに 変 換 され な け れ ば な ら な い.こ の こ とは あ る関 係 が 物 理 法 則 で あ る ため に満 た され な け れ ば な ら な い大 前提 で あ り,こ の 要 請 を物 理 法 則 の共 変 性(covariance)と
い う.
こ の 共 変 性 を数 学 的 に よ り明 確 に 表 す ため に,座 標 変 換 に と も な う各 種 の 物 理 量 の 変 換 性 を調 べ よ う. た とえ ば 曲 面 が あ る陸 地 を表 して い る と し,陸 上 の 各 点 で 温度 や 電 位 が 決 ま る とい う物 理 法 則 が 意 味 を もつ た め に は,温 度 分 布 や 電 位 分 布 を表 す 関 数 は ど の座 標 系 を用 い て も同 一 の 地 点 で 同 一 の値 を と らな け れ ば な ら な い.す
なわち
(1.3.1) と変 換 され な け れ ば な らな い.こ のf(q)の な い 量 を 曲 面 上 の ス カ ラ ー(scalar)と
よ うに 座 標 変 換 に よ り値 の変 わ ら
い う.
つ ぎに 曲 面 上 の 曲 線 に そ っ た質 点 の速 度 を考 え る.速 度 が 物 理 的 に 意 味 を も つ ため に は 曲 面N上 り と して,3次
だ け で定 義 で き る もの で な け れ ば な ら な い.そ
元 空 間R3で
の手 がか
の速度
(1.3.2) を 考 え る.こ (q1,q2)に
の υ(r)は 確 か に 曲 面 に 垂 直 な 成 分 を も た ず,曲
お け る 接 平 面(TN)Q上
ベ ク トルrがR3の
の ベ ク トル で あ る(図1.3.1).そ
ベ ク トル で あ る とい う こ と を忘 れ て,ベ
図1.3.1
面 上 の 点Q= こ で,位
ク トル の 組
曲面 の 接 平 面 とそ の 基 底
置
(1.3.3) を接 平 面(TN)Qの
一 組 の 基 底 ベ ク トル を表 す 単 な る記 号 と見 る.そ
うす れ ば
(1.3.4) は 点Qで
の 速 度 υQの その 基 底 に 関 す る成 分 と解 釈 で き る.
こ の と き座 標 変 換
に た い し て こ の 基 底 と成 分 は,
そ れ ぞれ
(1.3.5) (1.3.6) の よ うに 変 換 され る と して よ い.そ
うす れ ば 速 度 そ の もの は
(1.3.7) の よ う に 表 さ れ,使
用 す る 座 標 系 に よ ら な い 意 味 を もつ.こ
こで
(1.3.8) で あ る こ と を 使 っ た. そ こ で,座 (1.3.6)と
標 変 換
に た い し て,速
度 成 分 の変 換則
同 一 の変 換 則
(1.3.9) に し た が う 成 分 か ら な る 一 組 の 量(A1,A2)を vector),Aiを
そ の 成 分 と い う.た
反 変 ベ ク トル(contravariant
とえば 座 標 成 分 の微 分 は
(1.3.10) の よ うに変 換 され るか ら,(dq1,dq2)は
反 変 ベ ク トル で あ る.
この よ うに して 定 義 さ れ るベ ク トル は 通 常 のユ ー ク リッ ド空 間 で 導 入 され る 起 点 と先 端 を結 ぶ 矢 線 ベ ク トル の よ うな 空 間 の2点 で 決 ま る対 象 と異 な り,曲 面 の 各 点 ご とに 決 ま る対 象 で あ る.そ
して 曲 面 の 同一 の 点 で の反 変 ベ ク トルの
和 や ス カ ラー 倍 は 反 変 ベ ク トル で あ り,し たが っ て 曲 面 上 の 各 点 で の 接 平 面 の
そ れ ぞ れ が ベ ク トル 空 間 に な って い る(以 下 で は,上 は,と
くに 断 りが な い か ぎ り 「点Qに
字Qを
省 略 す る).
に述 べ た よ う な 変 換 則
お け る変 換 則 」 を表 す も の と して,添
次 に 距 離(曲 線 上 の 線 素 の長 さ)は 座 標 変 換 で変 わ らな い量 で あ るか ら (1.3.11) を満 た す.し
た が って 第1基 本 量 の 変 換 則 は
(1.3.12) で な け れ ば な ら な い.当 な わ ちgij=ei・ejか そ こ で,任
然 の こ と な が ら,こ
れ は 前 節 で の 定 義(1.2.4a)す
ら導 か れ る変 換 則 と一 致 し て い る.
意 の 反 変 ベ ク トル(B1,B2)に
た い して (1.3.13)
で 定 義 さ れ る 一 組 の 量 を 考 え る.こ
の量 の成分の変換 則は
(1.3.14) (1.3.15) で 与 え ら れ る(関
係(1.3.8)を
使 う).そ
こ で 成 分 が これ と同 様 の変 換 則 に し
た が う一 組 の 量 を 曲 面 上 の 共 変 ベ ク トル(covariant ば ス カ ラ ー 関 数f(q)=f(q)の
の よ り に 変 換 さ れ る の で,共
勾 配
vector)と は,そ
い う.た
とえ
の成分 が
変 ベ ク トル で あ る*1.
そ して一 般 に (1.3.16) はgijの
定 義 か ら わ か る よ う に 座 標 変 換 に よ り 値 を 変 え な い ス カ ラ ー で あ り,
こ れ を ベ ク ト ルA=AieiとB=Bieiと A・Bで
表 す.ま
た
の 内 積(inner を ベ ク トルAの
product)と 長 さ,さ
い い,
らに
*1 ここ で 慧 眼で 注 意深 い読 者 は ,そ れ で は 「 共 変 ベ ク トル の 基 底 は何 か?」 な い し 「 共変 ベ ク トル の張 る空 間 は何 か?」 と問 わ れ るか も しれ な い.そ れ は重 要 な問 い だ が,そ の 点 に 関 して は後 節(§1.5.2)で 説明 す る.こ こ では共 変ベ ク トル につ いて は,そ の変 換 則 に だ け に 注 目 して も らい たい.
(1.3.17) で 決 ま る 角 度 θ をベ ク トルAとBの
な す 角 度 と い う.ベ
ク トル の 長 さ も角 度
も ス カ ラ ー で あ る. さ て,前
節 で 座 標 系(q1,q2)に
(つ ま りgijgjk=δik)を
お い て,行
導 入 し た.そ
列(gij)の
の 変 換 則 は,定
逆 行 列 の 要 素 と し てgij 義(1.2.4b)か
ら簡 単 に
見 て とれ る よ うに
(1.3.18) で な け れ ば な ら な い.こ の とき変 換 され た座 標 系 に お い て も
(1.3.19) と な り,行
列(gij)は
や は り行 列(gij)の
共 変 ベ ク トル(B1,B2)か
ら こ のgijを
逆 行 列 に な っ て い る. 用 い て 作 ら れ る量 (1.3.20)
は,そ
の 変 換 則 か ら わ か る よ う に 反 変 ベ ク トル で あ る.
こ の よ う に 反 変 ベ ク トル と共 変 ベ ク トル を 添 字 の 上 付 き ・下 付 き で 区 別 し て い る.そ
し て 第1基
座 標(q1,q2)そ
本 量{gmn}お
れ 自 身 は,反
よ び{gij}は
添 字 の 上 げ 下 げ の 機 能 を もつ .
変 ・共 変 の ど ち ら の 変 換 則 に も し た が わ ず,ベ
トル で は な い.し
か し そ の 微 分(dq1,dq2)が
で あ る か ら,qの
成 分 の 添 字 を 上 付 き で 記 し て い る の で あ る.
ク
す で に 見 た よ うに 反 変 ベ ク トル
1.3.2 曲 面 上 の テ ン ソル こ こ で もい ち い ち断 ら な い が,曲 面 上 の 点Qで トル を考 え る.そ
の 反 変 ベ ク トル と共 変 ベ ク
して これ らの 反 変 お よ び共 変 ベ ク トル成 分 の 積 と同一 の 変 換
則 に し た が う もの の組,す
な わ ち 変 換
に と も な っ て,そ の 成分 が
(1.3.21) の よ う に 変 換 さ れ る も の の 組T={Tij…kl…}をp階 (tensor)と
い う.ス
カ ラ ー は0階
テ ン ソ ル,ベ
反 変q階 ク トル は1階
共 変 テ ン ソル テ ン ソ ル で あ る.
と く に 上 に 見 た(gij)は2階
共 変 テ ン ソ ル,(gij)は2階
こ れ ら は 計 量 テ ン ソ ル(metric う に,(δij)は1階 1.5.2参
照,こ
反 変1階
tensor)と
反 変 テ ン ソ ル で あ り,
呼 ば れ る.ま
共 変 テ ン ソ ル(簡
た 直 接 確 か め られ る よ
単 に 混 合 テ ン ソ ル)で
こ で は ま だ 共 変 ベ ク トル に つ い て は,そ
は 語 っ て い な い の で,テ
あ る(例
の 属 す る 空 間 につ い て
ン ソ ル も そ の 変 換 則 だ け で 定 義 さ れ て い る).
こ の よ う に テ ン ソ ル 成 分 は 上 付 き や 下 付 き の 添 字 を もつ が,添 だ か ら と い っ て テ ン ソ ル 成 分 と は 限 ら な い.た る 偏 導 関 数 は テ ン ソ ル 成 分 で は な い.変
字 が付 い た 量
と え ば ベ ク トル 成 分 のqiに
換 則(1.3.6)を
よ
微 分す れば
と な る か ら で あ る. ま た ク リ ス トッ フ ェ ル 記 号 も テ ン ソ ル 成 分 で は な い.そ 倒 だ が 次 の よ う に す れ ば 求 ま る.共 式(ダ
ミー 添 字ijlmをjkmnで
さ らに この 式 でmnlを
の 変 換 則 は,少
変 計 量 テ ン ソ ル の 変 換 則(1.3.12)の
置 き か え た も の)をqlで
し面 第2
微 分 して
循 環 的 に 回せ ば
を書 き下 す こ とが
で き る.こ
う して 得 ら れ た 後 の2式
の和 か ら先 の 式 を引 き,2で
と な り,こ
う して ク リス トッフ ェル 記 号 の変 換 則
割 れば
(1.3.22) あ る い は,両
辺 にgpl=gab(∂aqp)(∂bql)を
か け てlで
和 を と り
(1.3.23) が得 られ る.こ れ らは テ ン ソ ル 成 分 の 変 換 則 で は な い. 以上 が 曲 面 上 で の テ ン ソ ル の定 義 と説 明 で あ る. 同 じ形 の テ ン ソ ル の 和 や 差 を そ の 成 分 の 和 や 差 で 定 義 す る.そ た もの は,明
らか に 同 じ形 の テ ン ソル で あ る.そ
う して得 られ
して こ の よ うに 座 標 変 換 に さ
い して 決 まっ た 変 換 則 に した が っ て 変 換 され る量 は,曲 面 上 で定 義 可 能 な 量, 使 用 す る座 標 系 に よ ら な い意 味 を もつ 量 で あ り,こ の よ うな 量 を幾 何 学 的対 象 (geometrical
objects)と
い う.そ れ に た い し て,た
と え ばq1q2と
かq1+q2
の よ う な量 は ス カ ラー で もベ ク トル で もテ ン ソル で もな く,特 定 の 座 標 系 で し か 意 味 を もた な い 量 で あ り,そ れ ゆ え幾 何 学 的 対 象 で は な い. とす る な らば,物 理 法 則 は使 用 して い る座 標 系 に よ らず 同 じ形 で表 現 され な け れ ば な らな い とい う共 変 性 の 要 請 は,物 理 量 は幾 何 学 的 対 象 で あ り,物 理 法 則 は それ らの 幾 何 学 的 対 象 の あ い だ の 関 係 で あ り,そ れ ゆ え 同型 の テ ン ソル 量 の あ い だ の 関 係 を与 え る もの で なけ れ ば な ら な い とい い 直 す こ とが で き る.実 際,物 理 法 則 に お け る等 号 は 同 型 の テ ン ソル の あ い だ に しか 成 り立 た な い. と くに 重 要 な こ とは,曲 面 上 で定 義 され た テ ン ソル の 変 換 係 数 に現 れ る
や な ど はす べ て 座 標 の 関数 で あ るか ら,曲 面 上 の 異 な る点 のベ ク トル や テ ン ソル は 異 な る変 換 則 に支 配 され て い る とい う こ とで あ る.そ の た め,ス 別 と して,異
カ ラー 量 は
な る点 のベ ク トルや テ ン ソ ル を足 し た り引 い た りす る こ とは意 味
が な い.こ れ が 通 常 の ユ ー ク リ ッ ド空 間 に お け るベ ク トルや テ ン ソル との決 定 的 な違 い で あ る.
1.3.3 接 続 と平 行 移 動 以上 の 議 論 をふ ま えて,曲 面 上 の 曲 線 に そ っ た加 速 度 を考 え る. 速 度 に つ い て は,3次
元 空 間 で の 速 度 υ=r=qiei(1.3.2),(1.3.4)が
曲
面 に垂 直 な成 分 を も た な いか ら,そ れ をそ の ま ま2次 元 曲 面 上 での 速 度 と して 定 義 す る こ とが で き た. 他 方,曲 面 上 だ け で 考 え る と きに は,加 速 度 を単 純 に 速 度 υの 変 化 率
(1.3.24) で 定 義 す る こ とは で き な い.と い うの も
と
は 異 な る点 で
のベ ク トル(曲 面 上 の 異 な る点 に 生 え て い るベ ク トル)で あ り,上 に 述 べ た よ うに 引 き算 が 意 味 を もた な い か らで あ る.ス カ ラー 関 数 の 偏 導 関数 がベ ク トル
の 成 分 に な る の に,ベ
ク トル 成 分 の 偏 導 関 数 が テ ン ソル 成 分 を与 え な い の は,
この た め で あ る(こ の よ うに,こ
こで は ベ ク トル が 曲 面 上 の どの 点 で の 接 空 間
の ベ ク トル か が 重 要 に な るの で,煩 わ し い け れ ど もベ ク トル が生 え て い る点 を 添 字 で 明 記 す る). そ こ で 加 速 度 を定 義 す る た め に,座 表 さ れ る点Q'で
標 が
の 速 度 ベ ク トル
座 標 がq=(q1,q2)の
点Qに
で を,ひ
平 行 移 動(parallel
と ま ず何 らか の 手 段 で
displacement)し
た ベ ク トル
を作 り,そ れ と υ(q(t))Qの 差 を考 え る.通 常 の ユ ー ク リッ ド空 間 で は,空 間 は 均 質 で あ るか ら,平 行 移 動 は単 にベ ク トル の 始 点 を移 す だ け で よ く,ベ ク トル の 成 分 は変 わ ら な い と して よか っ た.し か しそ の よ うな 単 純 な 平 行 移 動 を 曲 面N上
で見 れ ば,各
点 ご とに 基 底 ベ ク トル が 異 な る か ら,移 動
す れ ば 一 般 に 成 分 も変 化 す るで あ ろ う.そ の 上,そ
の よ うに 単 純 に移 さ れ た ベ
ク トル は,一 般 に は 曲面 の外 に 突 き出 て し ま う(曲 面 に 垂 直 な成 分 を もつ)の で,曲 面 上 だ け で考 察 す る立 場 で は は な は だ 都 合 が悪 い. そ の た め,Q'点
で の任 意 の 接 ベ ク トル
を 無 限 小 区 間 離 れ たQ点 の1次
まで
だ け 平 行 移 動 す れ ば,Δq
ま で とっ た とき そ の成 分 が
(1.3.25) の よ う に 変 化 す る と考 え る(多 に 点Q=qか
らQ'=q+Δqの
く の テ キ ス ト で は,「 平 行 移 動 」 を 本 書 と は 逆 向 き に 定 義 し て い る.そ
の と き に は 係 数Xijkの
符 号 が 逆 に な る こ と に 注 意). 一 般 に,曲
面 上 の2点QとQ'の
そ し てQとQ'が
十 分 接 近 し て い る と き,一
の ベ ク トル の 対 応 づ け(写 び つ け る から で あ る.と の 成 分(w1,w2)に fine
connection)と
と い う.
そ れ ぞ れ の 接 平 面 は,異
像)を
方 の 空 間 の ベ ク トル と他 方 の 空 間
接 続(connection)と
い う.異
く に 上 記 の 平 行 移 動 に よ る 写 像
つ い て 線 形 変 換 で あ る か ら,こ 呼 び,Xijkを
な る 空 間 で あ る.
な る空 間 を結 は,w
の 接 続 を ア フ ィ ン 接 続(af
そ の 接 続 係 数(coefficients
of connection)
上 の
「平 行 移 動 」 に よ っ て 得 ら れ た
が 確 か に 接 平 面(TN)Qで
の ベ ク トル で あ る た め に は,(1.3.25)の
右 辺 の 成 分 がwi(q)と
の 反 変 ベ ク トル 成 分 の 変 換 則(1.3.9)に
し た が わ ね ば な ら な い.そ
は も ち ろ ん,第2式
の[
同 様 にQ点
の ため に
]の か か る 項 が そ の 条 件 を満 た せ ば よ い.す
とな れ ば よ い.こ れ よ りその ため の 必要 十 分 条 件 と して,接
で
なわち
続 係 数 の 次 の変 換
則 が 得 られ る:
(1.3.26) こ れ が ク リ ス ト ッ フ ェ ル 記 号 の 変 換 則(1.3.23)と さ れ た い.こ
れ よ り
が 得 ら れ る.こ
の 式 は,Xpjk-Xpkjが
混 合 テ ン ソル の 成 分 で あ る こ と を示 し
て い る.し
た が っ て あ る 座 標 系 でXpjk-Xpkjが
で も0,つ
ま り あ る 座 標 系 でXpjkがjkに
移 っ て も や は り対 称 で あ る.そ 実 際 に は,こ さ らに
同 じ もの で あ る こ と に注 意
こ で,以
す べ て0な
ら ば,ど
関 し て 対 称 で あ れ ば,ど 下 で はXpjk=Xpkjと
の座標 系 の座 標 系 に
仮 定 す る*2.
れ だ け で は 「平 行 移 動 」 の 仕 方 は 一 義 的 に 決 ま ら な い.そ
こで
「平 行 移 動 」 に よ りベ ク トル の 長 さ が 不 変 に 保 た れ る と い う条 件
(1.3.27) *2 こ の 仮 定 の 意 味 に つ い て は な ど を参 照 の こ と.
,た
とえば 内 山龍 雄
『一 般 相 対 性 理 論 』(裳 華 房 1978)
p. 71
を 課 す.こ
の 式 でΔqの1次
ま で と っ てΔqkの
い 項 を落 とせ ば(wiな
ど は す べ て 点Qで
こ こ でgljXlki=Xjkiと
書 き直 し,さ
係 数 を 比 べ る と,両
辺 で等 し
の 値 で あ る と し て)
ら にijkを
循 環 させ た 式 を書 くと
(a) (b) (c) と な り,上
の 仮 定 よ りXpjk=Xpkjで
して(b)+(c)-(a)を
作 れ ば,接
あ る か らXpjk=Xpkjと
な るこ とに注 意
続係数
(1.3.28) (1.3.29) が 得 られ る.こ
れ は ク リ ス ト ッ フ ェ ル 記 号 で あ る か ら,確
す べ き 変 換 則(1.3.26)を (Levi-Civita
満 足 し て い る.そ
connection)な
か に接 続 係 数 が満 た
し て こ の 接 続 を レ ビ-チ ビ タ 接 続
い し リ ー マ ン 接 続(Riemann
connection)と
い
う.
1.3.4
共 変 微 分 と加 速 度
こ う し て 定 義 さ れ た 平 行 移 動 を 用 い れ ば,ベ
ク トルw=wieiの
点Qで
の微
小 変化 は
(1.3.30) と な り,こ
の
(1.3.31) はベ ク トル 成 分 の 共 変 的 な微 分 量 で あ り,そ の 微 分 係 数
(1.3.32) を 共 変 微 分(covariant
derivative)と
い う.す
で に 述 べ た よ うに 反 変 ベ ク ト
ル 成 分 の 単 な る 導 関 数 ∂jwiは テ ン ソ ル 成 分 で は な い け れ ど も,共 ン ソ ル 成 分 で あ る.
変微分 は テ
こ れ を 用 い れ ば,Q点 度 を υ=(q1,q2)と
で の 軌 道 経 路 に そ っ た 接 ベ ク トルwの
変 化 率 は,速
して
(1.3.33) で 定 義 さ れ る.こ れ をベ ク トルwの
υに よ る 共 変 微 分 と い う(∇ υwの よ うな
書 き方 もす る). と くに
と
す る こ とに よ り,曲 面 上 で の加 速 度 は
(1.3.34) と 表 さ れ る.こ
れ は,前
く らべ る な ら ば,3次 き,曲
節 で 求 め たR3空
間 で の 加 速 度 の 表 式(1.2.14)と
元 加 速 度 ベ ク ト ル の う ち,曲
面 に垂 直 な 成 分 を 取 り除
面 に 接 す る 成 分 だ け を 残 し た も の に 他 な ら な い.し
ク トル の レ ビ-チ ビ タ 接 続 に よ る 平 行 移 動 と は,い
見
た が っ て 曲面 上 の ベ
わ ばR3内
で そ の ま ま平 行
移 動 し た ベ ク ト ル の 曲 面 に 垂 直 な 成 分 を 切 り 捨 て た も の と い え る(図 1.3.2). そ し て 運 動 方 程 式 の 曲 面 に 接 す る 成 分(1.2.16a)は,簡
単 に
(1.3.35) とな り,と
くに 曲面 上 の 自由 運 動 は
図1.3.2
ベ ク トルの 平 行 移 動
(1.3.36) で 表 さ れ る.も
ち ろ ん 成 分 で 表 せ ば,(1.3.35)は(1.1.26)に
こ う し て 方 程 式(1.2.16a)お
一 致 す る.
よ び(1.1.26),(1.1.31)な
どが 座 標 変 換 に
よ ら な い 共 変 性 を もつ こ と が 示 さ れ た. な お,パ
ラ メ ー タ を経 路 長sに
とれ ば
(1.3.37) と し て,測
地 線 の 方 程 式(1.2.37)は
(1.3.38) と表 さ れ る.し
た が っ て,あ
る 曲 線 が 測 地 線 で あ れ ば,あ
そ の 曲 線 に そ っ て 平 行 移 動 させ る と,移
る 点 の 接 ベ ク トル を
動 し た 先 の 点 で の 接 ベ ク トル に な る こ
と が わ か る. 次 節 で は,以
上 の2次
元 曲 面 上 で の 運 動 に つ い て の 議 論 を,一
般 の 多様 体 上
の 運 動 の 記 述 へ と広 げ て ゆ くた め の 数 学 的 道 具 立 て に つ い て 述 べ る. 例1.3.1 R3内
球 面 上 の ベ ク トル の 平 行 移 動 と接 続
部 の2次
元 曲 面 と して,(1.2.2)で
表 さ れ る 球 面 を考 え る.点Q(θ,φ)で
の
接 ベ ク トル と し て
を と る.eθ は子 午 線 に そ っ た θが 増 す 向 きの ベ ク トル,eφ 増 す 向 き の ベ ク トル で,両
者 は 直 交 し て い る.そ
は 等 緯 度 線 に そ っ た φが
し て こ れ ら は と も に,球
図1.3.3
面 に垂 直
な ベ ク トル
に 直 交 して い る(図1.3.3).Qで
の 接 平 面(TN)Q上
の 任 意 の ベ ク トル は,eθ,eφ の1
次 結 合 で 表 さ れ る(eθ,eφ は 単 位 ベ ク トル で は な い). Qか
ら無 限 小 離 れ た 点
で の こ れ ら の 接 ベ ク トル は,Δ θ,Δφ の
2次 以 上 を無 視 して
こ れ らは と も に,Qで
の 接 平 面(TN)Qに
直 交 す るerに
外 に 突 き 出 て い る.し
た が っ て,点Q'で
の 接 ベ ク トル
をQ点
比 例 し た 項 を 含 み,(TN)Qの
に 接 続 す るた め に は,eθ',eφ'の そ れ ぞ れ か らQ点
の 接 平 面 と直 交 す る部 分 を
取 り除 い た
で も っ てeθ',eφ'を
置 き か え て,平
とす れ ば よ い(wiはQ点 (1.3.25)式
行 移 動 し た ベ ク トル を
で の 値,i,jの2重
で 定 め られ た 接 続 係 数 は,こ
添 字 は θ,φで 和 を と る).す
の場 合
他 は0 と な る.こ
れ ら を(1.2.40b)と
が 直 接 に 示 さ れ る.
見 くらべ て
な わ ち,
1.4 多 様 体 と ベ ク トル 場
1.4.1 微 分 可 能 多様 体 前 節 で論 じた 曲 面 概 念 の 自 然 な拡 張 と し て微 分 可 能 多 様 体(differentiable manifold)を
定 義す る.力 学 を 多次 元 の 配位 空 間や 相 空 間 に お け る点 の 運 動 と
して論 じる た め に は,こ の 拡 張 は不 可 欠 で あ る. 言 葉 の 説 明 は 後 ま わ しに して,は
じめ にm次
与 え る.Mは
次 の2条
(ⅰ) Mは
ハ ウ ス ドル フ 空 間 で,そ
リッ ド空 間Rmの
元 微 分 可 能 多様 体Mの
定義 を
件 を満 た す 点 の 集 合 で あ る:
開 集 合Vへ
(U,φ)を 座 標 近 傍,U上
の 各 点 の 開 近 傍Uか
の 同 相 写 像 φ:U→Vが
らm次
元ユー ク
あ る.こ
こ で組
の 点QとV⊂Rmの
座 標 との φ に よ る対 応 づ け
を局 所 座 標 系,V⊂Rmで
の 座 標(q1,q2,…,qm)を
局 所 座 標 とい う. (ⅱ) 二 つ の 座 標 近 傍(Uα,φ α)と(Uβ,φβ)が重 な りあ う と こ ろ で は,そ 中 の点
で表 さ れ るが,そ
は二 通 りの 座 標 系
の さ い 写像
で 与 え られ る座 標 変 換
(1.4.1a) を φ
と表 し た と き(図1.4.1),
図1.4.1
多様 体 と 局所座標
の
関数
(1.4.1b) が 何 回 で も微 分 可 能 で あ る. 説 明 を少 し加 え て お こ う.点Qの ハ ウ ス ドル フ空 間(Hausdorff の2個
開 近 傍 とはQを
space)と
含 む 開 集合 の こ とで あ り,
は,位 相 空 間 で あ っ て そ の 上 の 任 意
の異 な る点 を そ れ ぞ れ 共 通 部 分 を もた な い別 々 の 開 近 傍 に属 させ る こ と
が で き る もの を い う.実 際 に は 力 学 で 扱 う空 間(配 位 空 間,状
態 空 間,相 空 間
な ど)は す べ て こ の条 件 を満 た して い るか ら,あ ま り気 に しな くて よい. 写像 φ:U→Vが
同 相 写 像(homeomorphism)と
は,φ が 全 単 射 で,さ
らに φお よ び逆 写像 φ-1が連 続 の 場 合 をい う*1. そ の 場 合 は,Rmの
開 集 合V上
の 座 標 を φ-1でM上
り,座 標 系(q1,q2,…,qm)がU⊂M上 と もで き る.つ よ る像 がUに の 点Qを
に 引 き戻 す こ とに よ
に じ か に 書 き込 まれ て い る と考 え る こ
ま りqi=const.(i=1,2,…,m)と
い うRmの
平 面 族 の φ-1に
曲面 族 の メ ッ シ ュ と して じか に 書 き込 ま れ て い る と考 え,U上
そ のm枚
の 曲面 の 交 点 と見 な し簡 単 に(q1,q2,…,qm)で
表 し て もか
まわ な い. 条 件(ⅱ)は,異
な る座 標 近 傍 が 重 な っ て い る と こ ろ で は,そ
換 が 滑 らか に な る こ と を要 求 して い る.条 件(ⅱ)で 可 能 で あ る こ と を要 求 し て い るが,一 と もで き る.そ の 場 合 に は,そ と呼 ぶ.本
書 で はrが
般 に はr回
の間の座 標変
関 数 φkが 何 回 で も微 分
微 分 可 能 だ け を要 求 す る こ
れ で 定 義 され る 多様 体 をr回
微分 可 能 多様 体
無 限 大 の 場 合 の み を考 え る の で,以 下 で は 単 に 多様 体
な い し微 分 可 能 多様 体 とい う言葉 で,無 限 回微分 可 能 多様 体 を意 味 す る. 結 局m次
元 微 分 可 能 多様 体 とは,何 枚 もの ス ムー ズ に 重 な る近 傍 で 覆 わ れ,
ど の 点 で も そ の 点 の ま わ りに局 所 座 標 系(q1,q2,…,qm)が
書 き込 め,し
たが っ
て 局 所 的 に は ユ ー ク リッ ド空 間 の よ うに 扱 う こ とが で き る空 間(連 続 的 な 点 の 集 合)の
こ とで あ る.
*1 写 像 φ が 全 単 射(bijection)と も い い,Uの
す べ て の 点 がVの
は
,上 へ の1対1写 像(one-to-one, onto mapping)と す べ て の 点 と1対1に 対 応 す る こ と で あ る.し た が っ て
φ に は 逆 写 像 φ-1が 考 え ら れ る.な
お,上
へ の 写 像 を 全 射,1対1写
像 を 単 射 と い う.
1.4.2 多様 体 上 の 関 数 と曲 線 多様 体Mの
あ る部 分 に 何 枚 もの 近 傍 が 重 な り,し た が っ て そ の上 の 点 が 何
通 り もの座 標 で表 され る とき,前 節 の 曲 面 論 の場 合 と同様 に,そ れ らの す べ て の座 標 系 に 共 通 した 性 質 だ け を 多 様 体Mの 次 元 が そ う で あ る(Mの
次 元 をdim Mで
性 質 とい う.た と え ば,多 様 体 の 表 す).ま
た そ れ らの 座 標 系 の あ い だ
の 座 標 変 換 に よ っ て変 わ ら な い対 象 だ け が 幾 何 学 的 対 象 で あ る. 面 倒 な 議 論 を して い る よ うだ が,こ
うす る こ と に よ っ て は じめ て,解 析 力 学
で 導 入 され る状 態 空 間 や 相 空 間 の よ う な直 接 に は 実 空 間 に結 び つ か な い抽 象 的 空 間 上 の 幾 何 学 的 対 象(た 空 間Rmに ば,こ
とえば 曲 線 や 関 数 や ベ ク トル な ど)を ユ ー ク リ ッ ド
ひ き移 し て解 析 的 に 扱 え る よ う に な る の で あ る.さ
らに い う な ら
うす る こ とで,力 学 法 則 は 使 用 す る座 標 系 に よ らな い 意 味 を も た ね ば な
ら な い とい う共 変 性の 要 請 を,直 接 的 に 表 現 し検 証 す る こ とが 可 能 とな る. 多様 体M(dim
M=m)か
ら 多様 体N(dim
N=n)へ
の写 像
(1.4.2a) を 考 え る(図1.4.2).(Ua,φa),(Uβ',ψ Φが
「滑 ら か 」 と か
β)は そ れ ぞ れ の 座 標 近 傍 で あ る.写
「微 分 可 能 」 と い う の は,そ
像
の局所座標 表示
(1.4.2b) が
「滑 ら か 」 と か
「微 分 可 能 」 の こ と を い う.ま
Φ-1が 微 分 可 能 の と き,Φ
た Φが全 単射 で Φ お よび
を 微 分 同 相 写 像(diffeomorphism)と
い う.以
図1.4.2 多 様 体 間 の写 像 と そ の 座 標 表示
下
で は写 像 につ い て 必 要 な だ け の微 分 可 能 性 は仮 定 し,そ の こ と をい ち い ち断 ら な い. と くにNが1次 と き,Φ
をfと
元 空 間R(以
下R1をRと
記 す)で
ψ=id.(恒 等 写 像)の
記 して,写 像
(1.4.3) をM上
の 関 数(function)と
い う(図1.4.3).M上
つ ず つ 対 応 づ け る 写 像 の こ と で あ り,そ
の す べ て の 点 に 実 数 を一
の連 続 性 や 微 分 可 能 性 は局 所 座 標 表 示
に つ い て い う.
図1.4.3
な お 関数fの
多様 体 上 の関数
局 所 座 標 表 示 は,数 学 的 に律 義 に 書 け ばQ∈Uに
た い して
(1.4.4a) とす べ きで あ ろ うが,φ (q1,q2,…,qm)が
が 同 相 写 像 な らば,先 述 の よ うにU上
に局所 座標 系
じか に 書 き込 ま れ て い る と して よい か ら,簡 単 に
(1.4.4b) と記 して もか ま わ な い.と い う よ り,物 理 学 で は む しろ これ が 普 通 で あ る. 逆 に,Mが1次
元 空 間RでUが
そ の 開 区 間
.の と き
(1.4.5) をN上
の 曲 線(curve)と
い う(こ
の 場 合 Φ をcで
記 し た).日
常 用 語 で は
「曲 線 」 と は,写
像 の 結 果 得 ら れ る 点 の 連 な り な い し 動 点 の 軌 跡 を 指 す が,数
学用語 としての
「曲 線 」 は 写 像 そ の も の を指 し て い る.し
ら な く て も よ く,曲 とが あ る.そ
か しそ れ ほ ど こ だ わ
線 と し て 動 点 の 軌 跡 を イ メ ー ジ し た ほ うが わ か りや す い こ
し て(1.4.5)を
簡単 に
「曲 線c(t)」
と表 記 す る こ と も 多 い.
1.4.3 方 向 微 分 と微 分 作 用 素 次 に 多様 体 上 で の 速 度 ベ ク トル と接 空 間 を定 義 す るた め に,方 向 微 分 の概 念 を導 入 す る.前 節 ま で の 曲 面 論 で は,曲 面 の 接 平 面 は 曲 面 上 の 曲 線 に そ っ た動 点 の 速 度 ベ ク トル の 張 る空 間 と して 与 え られ た.こ こ で も 同様 にM上
の曲線
(1.4.6) と そ の上 の 動 点 の 速 度 を手 が か りに す る.I=(-a,a)はR(t軸)上
の区 間で
あ る. こ こ で局 所 座 標 系 に よ ら な い 形 で 速 度 を導 入 す る た め の 巧 妙 な 手 段 と して, この 曲 線 とM上
の関数
(1.4.7) の合成写像
(1.4.8) を考 え る(図1.4.4).こ
れ は1変 数tの
単 な る実 数 値 関 数 で あ るか ら,そ の
導 関 数 は解 析 学 で定 義 済 み で あ り,し か もMの
座 標 系 に よ らな い.そ こ で対 応
(1.4.9a) を,関
数fの
点Q=c(τ)(た
向 微 分(directional
だ し-a<τ<+a)に
derivative)と
い い,次
お け る 曲 線cに の よ う に 表 す:
or
こ の υQ≡dc/dt|t=τ(あ
そ った方
る い は 簡 単 にc(τ)と
(1.4.9b)
も 記 す)はQ点
図1.4.4
で 関 数fに
多様 体 上 の 曲線 と 曲線上の関数
作
用 す る微 分 作 用 素*2で あ り,次
の 性 質 を もつ:
(ⅰ) 点Qの
十 分 小 さ い 近 傍 でf=gな
(ⅱ) a,bを
実 定 数 と して
ら
, ,
(ⅲ) (性 質(ⅲ)は
ラ イ プ ニ ッ ツ の 規 則(Leibniz's
こ こ ま で は υQはMの 所 座 標 系(U,φ)を
rule)と
い わ れ る.)
局 所 座 標 系 と 無 関 係 に 定 義 さ れ て い る.こ
の υQを 局
用 い て 具 体 的 に 表 し て み よ う.
写 像 φ:U→Rmに
よ りM上
の 曲 線cの
上 の 点Q=c(τ)は
(1.4.10) に対 応づ け られ る.し た が っ て 曲 線cの
局 所 座 標 表 示 は,丁 寧 に 書 け ば 写像
(1.4.11) で 表 さ れ る.し =q(t)と
か し 問 題 に な る こ と も な い の で,以
記 す .ま
こ の 曲 線cに
た 関 数(1.4.4a)を(1.4.4b)の
そ っ た 関 数fの
下 で は 曲 線 を 簡 単 にc(t) よ う に 表 し た の と 同 様 に,
値 の 局 所 座 標 表 示,す
なわち
(1.4.12a) も,や
は り簡 単 に
(1.4.12b) と記 し て も か ま わ な い.そ
う す れ ば,微
分 作 用 素 υQの 機 能 は
(1.4.13) と 表 さ れ る(iに
こ こ で 関 数fは
つ い て1∼mの
和 を と る).
任 意 で あ るか ら,m個
の微 分 作 用 素
(1.4.14) を定 義 す る と,も
との微 分 作 用 素
は
ただし と表 さ れ る.こ れ を点Q=c(τ)で
(1.4.15)
の 曲 線Cに
そ っ た 方 向 微 分 作 用 素 と い う.
こ の 方 向微 分 作 用 素 は,操 作 的 意 味 を際 立 たせ るた め に は
*2 「微 分 作 用 素 」 は 「微 分 演 算 子 」 と も い う が
,本
書 で は 前 者 で 統 一 す る.
(1.4.16) と 表 す こ と も で き る(こ
の 式 に つ い て 詳 し く は,p.45脚
照).要
側 に く る 関 数 に 作 用 し て,そ
す る に υQは,右
そ っ た 変 化 率 の 点Q=c(τ)で
密 に は,曲
た 像 がRm上
線c(t)に
そ っ て 運 動 す る 点 を 写 像 φ に よ っ てRm上
点 の 速 度 ベ ク ト ル の 成 分 と 見 な す こ と も で き る.力 所 座 標q={qi}を
一 般 化 速 度(generalized
の 関 数 の 曲 線c(t)に
係数
で 動 く速 度 ベ ク トル の 成 分 で あ る が,そ
空 間 の 場 合,局
注9参
の 値 を 与 え る も の で あ る.
そ し て こ の 微 分 作 用 素(1.4.15)の
は,厳
注5,p.51脚
れ をM上 学 で は,と
に移 し
を動 く も と の く にMが
配位
一 般 化 座 標 と い う の に 対 応 し て,q={qi}を
velocity)と
い う
.
1.4.4 接 ベ ク トル と接 空 間 こ の よ うに,方 向 微 分 作 用 素 と速 度 ベ ク トル は密 に 関連 して い る.し た が っ て こ の 微 分 作 用 素 を接 空 間 の 定 義 に 用 い る こ とが で き る で あ ろ う と予 想 さ れ る.そ の こ とは先 行 す る2節(§1.2と1.3)の §12で
は,質
点 の2次 元 運 動 曲 面 を3次 元 空 間 内 の 曲 面 と見 な し,そ の 曲
面 上 を動 く点 の位 置 を,3次 r=r(q(t))と
議 論 と比べ る とわか りや す い.
元 空 間 の位 置 ベ ク トル を用 い て パ ラ メー タ表 示 で
表 した.そ の と き動 点 の 点Q=r(q(τ))に で 表 さ れ,こ
れ が 曲 面 の 点Qで
曲 面 が 湾 曲 し て い る と υQは曲 面 上 の 点Qか
お け る速 度 ベ ク トル は の 接 ベ ク トル に な っ た.
らそ の 外 に あ る3次 元 空 間 に い わ
ば 「突 き出 て い る」. 次 に §1.3で は,2次
元 曲 面 上 の 点 の 運 動 を,曲 面 上 だ け で,つ
ま り曲 面 に
へ ば りつ い た 生 物 の 立場 で考 察 した.そ の と きは そ の 曲 面 を 内 に含 む とこ ろ の 3次 元 空 間 な る もの は,た て と を忘 れ, 記 号 と見 な した.そ
とえ 存 在 す るに し て も理 解 で き な い か ら,方 便 と し
を考 え,そ の 上 でrが3次
元 空 間 のベ ク トル で あ る こ
を 接 平 面 の 一 組 の 基 底 ベ ク トル を表 す 単 な る の意 味 で,一 般 に(∂ir)Qの1次
結合
(1.4.17)
が 曲 面 の 点Qで
の 接 ベ ク トル で あ っ た(υiQは(1.3.6)で(υi)Qと
記 した も
の). 本 節 の 議 論 は2次 元 曲 面 を 多次 元 の 多様 体 に 拡 大 し た もの だ が,こ
こでは多
様 体 を超 曲 面 と して 含 む と こ ろ の よ り高 次 元 の 空 間 な る もの は,理 解 で きな い だ け で な く存 在 す る と も限 らな い.し た が っ て 点Qか 出 て い る」 ベ ク トルrの い.そ
よ う な もの を考 え る こ とは,方
便 と して も許 さ れ な
こ で そ れ に代 わ る もの と して,上 の よ うに 多様 体M上
方 向 微 分 作 用 素(1.4.15)を
考 え た の で あ る.と
か ら存 在 の保 証 され て い な いrを
と 書 い た も の に な っ て い る か ら で あ る*3.こ こ の 式 を ベ ク トル と 見 な す こ と が で き,そ の 点Qに
ら 「多様 体 の 外 に 突 き
お け る 接 空 間,(∂i)Qを
の曲線 に そった
い うの も,そ れ は,上
記の
形 式 的 に 取 り除 き,単 に
の 式 を(1.4.17)と
比 較 す れ ば,
れ ら の ベ ク トル が 張 る 空 間 を 多 様 体
そ の 接 空 間 の 基 底 ベ ク トル,qi(τ)(∂i)Qを
度 ベ ク トル と考 え る こ と は 自 然 で あ ろ う.一
速
般 的 に 書 け ば 以 下 の とお りで あ
る. 局 所 座 標 系 を 用 い る な ら ば,点Qに
お け る 微 分 作 用 素uQ=uiQ(∂i)Qは,任
意 の 関 数 に た い す る作 用
(1.4.18) で 定 義 さ れ る.二
つ の そ の よ う な 微 分 作 用 素 υQ,uQに
た い し て,和
と実 数 倍 を
(1.4.19a) に よ っ て,あ
る い は座 標 系 に よ ら な い形 で
(1.4.19b) と 定 義 す る こ と が で き る.し
た が っ て 点Qに
お け る 微 分 作 用 素 の 集 合 は,こ
の 和 と 実 数 倍 に 関 し て ベ ク ト ル 空 間 を 張 る*4.こ の 点Qに
お け る 接 空 間(tangent
*3 本 書 ではRn上
space)と
の ベ ク トル 空 間 を 多 様 体M
定 義 し て(TM)Qで
表 し,ま
た接
のベ ク トルや ベ ク トル 場 は 太 字(ボ ー ル ドタ イプ)で 表 す が ,一 般 の 多 様体 上 のベ ク トルや ベ ク トル場 に は太 字 を使 わ な い. *4 本 書 で は実 数体 上 のベ ク トル のみ を扱 うの でa∈Rと する .
空 間 の 元 υQをM上
の 点Qに
お け る 接 ベ ク トル と い う*5.こ
接 空 間 は 抽 象 的 な も の で,必
ず し も 点QでMに
接 し,そ
り 出 し て い る 現 実 的 平 面 の よ う な も の で は な い.た め,図
こで定義 され た
こ か らMの
外 に張
だ し わ か りや す くす る た
式 的 に は そ う い う 表 現 もす る.
明 ら か に(∂i)Qは(TM)Qの
元 で あ り,ま
た す べ て の(TM)Qの
元 は
(1.4.20) の1次
結 合 で 表 さ れ る.し
か も
際,
で あ れ ば
り立 つ の で,点Qに
座 標 のi成
f=q1と
と れ ば
υi Q=0と
独 立 で あ る.実
が 任 意 の 関 数fに 分 を 対 応 づ け る 関 数(座 と と れ ば υ2Q=0,以
つ い て成
標 関 数)をqiと
書 き,
下 同様 にす れ ば すべ て の
な る か ら で あ る.
し た が っ て 接 空 間(TM)Qの が そ の 基 底 に な っ て い る.こ
次 元 はmで,予
さ て 点Q∈Mの
近 傍
想 ど お り(1.4.14),(1.4.20)
れ を 自 然 基 底(natural
(∂i)Qを 基 底 ベ ク トル ら し く(ei)Qと
ぶ.こ
は1次
も 表 す.す
basis)と
い い,以
下 で は
なわ ち
で 局 所 座 標 系(q1,q2,…,qm)と(q1,q2,…,qm)を
選
の と き
の張 る空 間(TM)Qと
の 張 る 空 間(TM)Qは
一 致 し て い る.実
際,座
ラ ー 関 数 の 変 換
が 任 意 のfに *5 (1 t=τ
.4.16)式
と も な うス カ
に た い して
つ い て 成 立.し
た が っ て す べ て のiに
を 正 確 に い う と,
で の 接 ベ ク トル,υQはM上
はt軸(R)の の 曲 線cの
は 写 像 φ:M→RmでcをRmに 間 は 異 な る が,物
標 変 換(1.4.1)に
つ いて
区 間Iを1次
点Q=c(τ)で
の 接 ベ ク トル,
写 像 し て 得 ら れ る 曲 線 の 接 ベ ク トル を 表 し,属
理 で は 記 述 の わ ず ら わ し さ を 避 け る た め,(1.4,16)の
を事 実 上 等 し い と お く場 合 が 多 い.p.
元 多 様 体 と見 た と き の
51の
脚 注9式(c)参
照.
す る空
よ う に こ れ ら3つ
(1.4.21) が 成 り立 つ.つ .こ
ま りす べ て の(ei)Qが(ej)Qの1次 こ でqとqの
て 両 空 間 は 一 致 す る.こ で 決 ま る(用
役 割 を 入 れ か え れ ば の こ と は,上
に つ い て,詳
な お(1.4.21)式
は,座
換 則 と も解 釈 で き る.そ
,し
たが っ
に定 義 さ れ た接 空 間 が 多様 体 の構 造 だ け
い る 局 所 座 標 系 に よ ら な い)幾
る((1.4.21)式
結 合 で 表 さ れ る の で
し く はp.
51脚
何 学 的 対 象 で あ る こ と を示 して い 注9(b)式
標 系 の 変 換(1.4.1)に
参 照).
と も な う接 空 間 の 基 底 の 変
こ で 接 空 間 の ベ ク トルuQ=uiQ(ei)Q自
体 が座 標 系 に
よ ら な い意 味 を もつ ため に は
とな ら な け れ ば いけ な い が,そ の ため に は ベ ク トル の 成 分 の 変 換 則 は
(1.4.22) で な け れ ば な ら な い.こ し か る に(1.4.1)の
れ は 反 変 ベ ク トル 成 分 の 変 換 則(1.3.9)で
あ る.
座 標 変 換 に た い して
(1.4.23) で あ るか ら,qiQ=qi(τ)は
た しか に反 変 ベ ク トル 成 分 の 変 換 則 を満 た し て お
り,そ の 意 味 に お い て
を 多 様 体 上 の 点Qに
お け る速 度 ベ ク ト
ル と見 な す こ とが 可 能 な の で あ る. 要 す るに,方
向微 分 作 用 素
を与 え,し か も そ れ らのベ ク トルが 点Qで
が座 標 系 に よ らな い 速 度 ベ ク トル の 接 空 間(TM)Qを
張 るの で あ る.
1.4.5 接 バ ン ドル とベ ク トル 場 M上
の す べ て の 点 の 接 空 間 の和 集 合
(1.4.24) つ ま り,M上 gent (点)と
bundle)と
の す べ て の 点 の す べ て の 接 ベ ク トル の 集 合 を 接 バ ン ドル(tan い う.M上
す る 空 間 で,そ
の 各 点Qの
接 空 間(TM)Qの
れ 自体 が 一 個 の 多 様 体 で あ る.そ
接 ベ ク ト ル υQを 元 の 上 の 点 は(Q,υQ)の
組 で 指 定 さ れ,そ
の 成 分 表 示(q1,q2,…,qm,υ1Q,υ2Q,…,υmQ)がTMの
局 所 座 標 を 与 え る.し さ て,多
様 体Mに
た が っ てTMの
次 元 はdim
た い し て,Mの
各 点Qに
TM=2dim
自然 な Mで
あ る*6.
そ の 点 で の 接 空 間(TM)Qの
ベ
ク トル υQを 一 つ ず つ 対 応 づ け る 写 像
(1.4.25) をM上
の ベ ク トル 場(vector
は,点Qに
おいて
field)と
「値 」 υQを と るM上
こ う し て ベ ク トル 場 に よ りM上
い う.平
た くい え ば ベ ク トル 場 υ と
の ベ ク トル 値 関 数 で あ る.
に ベ ク トル の 分 布 が 与 え ら れ る.た
時 間 的 に 変 化 し な い 定 常 的 な 水 の 流 れ を 思 い 浮 か べ る と よ い.こ の 分 子 は 各 点 ご と に 決 ま っ た 速 度 を も ち,こ
とえ ば
の 例 で は,水
れ に よ り水 の 入 れ ら れ た3次
元空
間 の な か に ベ ク トル 場 が 形 成 さ れ る の で あ る. ベ ク トル 場uと
υの和 は
(1.4.26a) ま た実 数 倍 は,任 意 の 実 数aに
た い して
(1.4.26b) で 定 義 され,こ を張 る.さ
れ に よ りM上
ら に ま た,M上
の ベ ク トル 場 の 集 合 は実 数 体 上 の ベ ク トル 空 間
の 任 意 の 実 関 数fに
た い してベ ク トル 場
(1.4.27) を 定 義 す る こ と も で き る. こ こ でM上
に 座 標 近 傍(U,φ)を
は υQ=υiQ(∂i)Qと 表 さ れ る.そ
と る と,ベ
こ で,標
ク トル 場 υ の 点Q∈Uで
の値
準 ベ ク トル 場
(1.4.28) を 導 入 す る(こ れ をeiと も記 す).こ を 与 え るm個
れ に よ りU上
の 各 点Qに(TM)Qの
基底
の ベ ク トル場 の 組
(1.4.29) が 定 ま る.こ
れ を 基 底 場(base
*6 詳 し く は 次 の よ う に な る
.写
い ま
field)と
像 をMの
と 表 さ れ る,π-1(U)はU上
い う.
を 定 義 す る. 局 所 座 標 近 傍 と す る と, の 点 か ら 生 え て い る 接 ベ ク ト ル の 全 体 で あ る.
こ う し て 写 像 定 義 さ れ,(π-1(U),Φ)がTMの
が 自 然 な 座 標 近 傍 と な る.
この 基 底 場 とU上 え ば,ベ
の 各 点 で υiQの値 を とるU上
ク トル 場 υはU上
の 関 数 υiのm個
の 組 を使
で
(1.4.30) と 表 さ れ る.こ υm)を
の
を ベ ク トル 場 υ の 局 所 座 標 表 示,ま
た(υ1,υ2,…,
υ の 局 所 座 標 成 分 と い う.
次 にM上
の 滑 ら か な 関 数fに
た い し て,い
ま ひ とつ の 新 し い 関 数
(1.4.31) を定 義 す る.与 え ら れ たfに
た い し てMの
各 点Qに
け る写 像 で あ る.こ れ を 「ベ ク トル 場 υ を関 数fに と い う.局 所 座 標 表 示 で は υfの 点Qで
方 向微 分 υQ[f]を対 応づ 作 用 させ て得 られ た 関 数 」
の値 が
(1.4.32) で あ るか ら,簡 単 に
(1.4.33) と し て よ い*7.し
た が っ て ま たQの
局 所 座 標 を{q}と
す るとき
(1.4.32)' の よ うな 書 き方 もす る. ベ ク ト ル 場 υはM→TMと (TM)Qの
元 で あ る.し
い う 写 像 で あ り,他 方,ベ
ク ト ル υQは
た が っ て ベ ク トル は どの 接 空 間 の ベ ク トル で あ る の か
を指 定 しな け れ ば 意 味 を もた な い.そ の た め これ ま でベ ク トル に つ い て は,煩 わ しさ を厭 わず そ の 生 え て い る点 を添 字 で 明示 して きた.し か し上 に 見 た よ う に,操 作 的 に は,ベ
ク トル場 に つ い て の 関係 の 大 部 分 は,そ れ を特 定 の 点 に 限
定 す れ ば その ま まベ ク トル に つ い て の 関係 に 置 きか え られ る.そ の た め と くに 混 同 ・混 乱 の お そ れ が な い 限 り,ベ ク トル に た い して,そ れ が 多様 体 の 特 定 の 点 の接 空 間 で のベ ク トル で あ る とい うこ と を前 提 と して,添 字 に よ る点 の 明示 を省 略 す る こ と も 多 い. ま た 逆 に,ベ
ク トル 場 の 各 点 で の値(ベ
ク トル)に つ い て 成 り立 つ 関 係 は,
ベ ク トル 場 そ の もの に も成 り立 つ と して よい .し た が っ て座 標 変 換 に と もな う ベ ク トル の 基 底 と成 分 の 変 換 則(1.4.21),(1.422)か
ら添 字Qを
て,基 底 場 とベ ク トル場 成 分 の そ れ ぞ れ の 変 換 則 *7
υf(1
.4.33)とfυ(1.4.27)は
ま っ た く別 の も の で あ る.注
意!
取 り除 い
(1.4.34) が 得 ら れ る.
1.4.6 積 分 曲線 と1径 数 変 換 群 多 様 体M上
に ベ ク トル 場wが
与 え ら れ て い る とす る.M上
の あ る点か ら
出発 し,各 点 で こ のwに
よ って 定 め られ るベ ク トル に 導 か れ て 進 む 点 の 描 く
軌 跡 を考 え る.各 点Qで
の 速 度 ベ ク トル が,ベ
ク トル 場wの
その 点 での値
wQに 一 致 す る よ う な 曲 線 で あ る. 求 め る曲 線 をc(t)と
す れ ば,c(t)は
方程 式
or
(1.4.35)
な い し,局 所 座 標 表 示
では
(1.4.36) を満 た して い な け れ ば な らな い.こ れ は連 立微 分 方 程 式
(1.4.36)' に 書 き 直 す こ とが で き る. こ の 連 立 微 分 方 程 式 は 初 期 条 件 を 指 定 す れ ば 解 が 決 ま る(解 に つ い て は,適 q(0)=Q0と
の 存 在 と一 意 性
当 な 微 分 方 程 式 の テ キ ス トを 見 て い た だ き た い).初
す る 解 をc(t;q(0))と が 決 ま る.そ
解 曲 線 と い う(図1.4.5).力
す る と,こ れ をwの
学 の 問 題 は,ど
れ に よ っ てM上
期条件 を
に一 本 の 曲線
積 分 曲 線(integral
curve)ま
たは
の 定 式 化 に せ よ,基
礎方程 式 に よ
っ て 与 え ら れ た ベ ク トル 場 に た い す る 積 分 曲 線 を 求 め る と い う形 で 表 さ れ る .
図1.4.5 多 様 体 上 の ベ ク トル場 と 積 分 曲線
な お,任 意 の 初 期 条 件 に た い し
の 範 囲 で積 分 曲 線 が 存 在 す
る と き,す な わ ち積 分 曲線 の定 義 域 を(-∞,+∞)に
拡 張 で き る と き,そ の ベ
ク トル 場 は完 備 で あ る とい う.力 学 に あ ら われ る大 部 分 の 問 題 で は,通 常 こ の 条 件 は 満 た され て い る の で,以 下 で はベ ク トル場 の 完備 性 を仮 定 す る. こ の方 程 式 のq(0)を
初 期 値 とす る解 はc(t;q(0))で,Q0=q(0)か
し た 点 は ベ ク トル 場wに この 運 動 を与 え るM上
導 か れ て 時 間t後
に 点
ら動 き出 ま で 達 す る.
の写像
(1.4.37) は,M上 (phase
の 微 分 同 相 写 像 で あ る.そ flow),な
い し 流 れ(フ
し て こ の 写 像 の 全 体
ロ ー)と
い う.相
を相流
流 は そ の 定 義 か ら簡 単 に わ か
る よ うに
(1.4.38)
(恒 等 写 像),
(1.4.39) (1.4.40) を す べ て 含 み,群
を構 成 す る*8.こ
群(1-parameter
transformation
参 照).与
の 群 を ベ ク ト ル 場wが group)と
い う(詳
定 め る1径
数変換
し くは §4.3.2,§6.1.1
え ら れ た 初 期 条 件 の も と で 積 分 曲 線 を 求 め る 問 題 は,対
応 す る1径
数 変 換 群 を 求 め る 問 題 で あ る と い っ て も よ い.
1.4.7
引 き 戻 し と微 分 写 像
こ こ で は,ベ
ク トル 場 の 積 分 曲 線 に そ っ た 変 化 率 を 与 え る リー 微 分 の 概 念 を
導 入 す る た め の 準 備 と し て,写
像 φ に た い す る 引 き 戻 し と微 分 写 像 を 定 義 す
る. 多 様 体Mか
らNへ
の写像
(1.4.41) *8 あ る 集 合
の 任 意 の2個
の 元(要
素)a
,bに
た い し てGの
け る 積 演 算a°b=fが 定 義 さ れ,こ の 積 演 算 が 結 合 則 ∀a∈Gに た い し てa°e=aと な る 元e(単 位 元)とa°a-1=eと にGに
含 ま れ て い る と き,Gを
ま た 群Gの
群(group)と
部 分 集 合
き,Hに
はz°z-1=eが
group)と
い う.
含 ま れ る の でH自
元fを
対応 づ
を 満 た し,か つ な る 元a-1(逆 元)が とも
い う.
の 任 意 の 元 がz°y∈Hか 体 が 群 に な り,こ
つz-1∈Hを のHをGの
満 たす と 部 分 群(sub
とN上
の 任 意 の 関 数g:N→Rが
と見 な して φ*gと 表 す.す
あ る と き,合 成 関 数g° φをM上
の 関数
なわち
(1.4.42) こ の φ*g:M→Rを う.関
「gの φ に よ るM上
数 φ*gは 関 数 値g(φ(Q))と
へ の 引 き 戻 し(pull
し て はg(P)に
等 し い が,そ
back)」 れ がM上
とい の関
数 で あ る と い う こ と を 明 確 に す る た め に φ*gと 書 くの で あ る(図1.4.6).
図1.4.6
関 数 と その 引 き戻 し
次 に 上 の 写 像 φが 微 分 同 相 写 像 で あ る とす れ ば(M=Nで と も な いMの ク トルuPを
点Qに
お け る接 ベ ク トル υQにNの
も よ い),そ れ に
点P=φ(Q)に
お け る接 ベ
対 応づ け る写 像
(1.4.43) が 定 義 で き る(図1.4.7).こ
の接 空 間 か ら接 空 間へ の 写像
(1.4.44) を 「写 像 φ の 点Qに *9 写 像(1 は(微
.4.41)を
お け る 微 分 写 像(derivative 局 所 座 標 を 用 い て
分 作 用 素 に た い す る 添 字Pを
map)」
とい う*9.
と 表 す と,微
分 写 像(1.4.44)
省 略 し て)
と表 され る.こ れ よ り接 ベ ク トルの 成 分 と基 底 の 変換 則 が 得 られ る:
(a) (b) つ ま り写像 φに と もな う接 ベ ク トル 成 分 の 変 換 は,微 分 の 変 換 同様 に,ヤ コ ビ行 列 が
を変 換 行 列 とす る1次 変 換 で表 さ れ る.こ の こ と
「微 分 写 像 」 と い う名 称 の 由 来 で あ る.な
写 像 φ に よ り 空 間MとNが の よ う に 書 く こ とが 多 い.逆
と
お,写
像 φ が 同 一 空 間 の 座 標 変 換 の 場 合 や,
同 一 視 さ れ る 場 合 に は,φ*を 省 略 し(b)を に(1.4.16)は,て い ね い に書 け ば
簡 単 に(1.4.21)
(c) と な る.
図1.4.7 微 分 写 像
これ よ り,さ ら にNの 得 ら れ る が,こ
各 点Pに
を対 応 づ け る ベ ク トル 場uが
れ を φ*υと表 し,「 υを 写 像 φ:M→Nに
よ っ て うつ し て
得 られ るベ ク トル 場 」 と い う. P∈Nで N上
の 接 ベ ク トル す な わ ち微 分 作 用 素
の 任 意 の 関 数gに
の 関 数 へ の 作 用 は,
た い して
(1.4.45) で 与 え られ る.こ の 式 は 次 の よ うに証 明 され る:
こ の 式 の 両 辺 を(1.4.31)の し,さ
ら にP=φ(Q)で
書 き 方 で
あ る こ と を 使 え ば,後
と書 き 直 に有 用 な公 式
(1.4.46a) な い し(1.4.42)を
使 っ て 書 き 直せ ば
(1.4.46b) が得 ら れ る.QはM上 等 しい こ と を表 す.こ
の任 意 の 点 で あ る か ら,こ の 両 式 は両 辺 が 関 数 と して う い う書 き方 は 慣 れ な い と見づ らい が,関 数 もベ ク トル
場 も写 像 もすべ て 作 用 素(演 算 子)と 見 て,す え れ ば よ い.
ぐ右 に あ る もの に 作 用 す る と考
1.4.8
リ
ー
さ て 多 様 体M上 そ の と き,多
微
分
に ベ ク トル 場 υ と そ の 積 分 曲 線 が 与 え ら れ て い る と す る.
様 体 上 の 関 数 や ベ ク トル 場 な ど が そ の 積 分 曲 線 に そ っ て ど の よ う
に 変 化 す る か,そ
の 変 化 率 を 与 え る の が リ ー 微 分(Lie
(以 下 で は 記 述 の 煩 わ し さ を 避 け る た め に,こ てt=0と
す る.こ
derivative)で
れ ま でt=τ
あ る.
と した とこ ろ をす べ
う し て も一 般 性 は 失 わ れ な い.)
こ の 積 分 曲 線 に そ っ てtだ と表 す.こ
け 動 か す 写 像 を φt,Qを
の と きM上
の 関 数fの
始 点 とす る積 分 曲 線 を
リー 微 分 は
(1.4.47) で 定 義 さ れ る.こ が,そ
の 式 は 正 確 に い う と 関 数fの
の 意 味 は 点Qで
リー 微 分 に よ る 導 関 数 を 表 す
の 値 を 考 え る と わ か りや す い.(1.4.42)よ
で あ るか ら,上 の 導 関 数 の定 義 式 の 右 辺 の 分 子 の 点Qで Q=c(0)で
の値 と そ こ か らtだ け進 ん だ 点
り
の 値 は,関
数fの
点
で の値 の差 を とっ
て い る こ とに な る.し た が っ て
(1.4.48) 要 す る に 関 数 の リー 微 分 は 積 分 曲 線 に そ っ た 方 向 微 分 に 他 な ら な い.意 え る と 当 然 で あ る.ま
た(1.4.47)と(1.4.48)を
生 成 す る ベ ク トル 場 υ の 点Q=c(0)で
見 く ら べ れ ば,写
味 を考 像 φtを
の値 を
(1.4.49) の よ うに 記 号 的 に 表 す こ とが で き る. 次 に,ベ
ク トル 場uの
リー微 分 を
(1.4.50) で 定 義 す る.前
節 で 指 摘 し た よ う に,一
差 は 意 味 を も た な い か ら,こ た 点 φt(Q)=Q'で
般 に 多 様 体 上 の 異 な る 点 の ベ ク トル の
こ で も 点Qで
の ベ ク トルuQ'を
の ベ ク トルuQとQをtだ
直 接 比 べ る こ と は で き な い.そ
け進 め の か わ りに
こ こ で はuを
積 分 曲 線 に そ っ て-tだ
ク ト ル 場u'=φ-t*uを
作 り,そ
け 逆 向 き に ず ら して 得 ら れ る新 しい ベ
の う え で 同 一 の 点Qで
のuQとu'Qを
比べ る
の で あ る(図1.4.8).
図1.4.8
ベ ク トル 場 は 各 点 で 微 分 作 用 素 を 与 え る か ら,上 記 の リー 微 分 の 定 義 式 (1.4.50)の
点Qで
の 任 意 の 関数fへ
の作 用 を考 え る と
(1.4.51) と 表 さ れ る.こ 点Q'に
こ で 写 像 φ-tの 微 分 写 像 に つ い て 先 に 求 め た 式(1.4.46a)を
つ い て 書 くと
こ れ をQ'=φt(Q),φ-t(Q')=Qを
用 いて書 き直す と
(1.4.46c) し た が っ て 上 式(1.4.51)の
と な り,関
右 辺 の分 子 は
数 に た い す る リー 微 分 の 公 式(1.4.47),(1.4.48)を
使 え ば,第1
項 は
他 方,第2項
は,ベ
向 微 分,す
なわ ち
ク トル 場 υ の 積 分 曲 線c(t)=φt(Q)に
そ っ た 関 数ufの
方
を 与 え る.以
上 を ま と め て(1.4.51)は
こ こ にfとQは
任 意 で あ る か ら,ベ
ク トル 場 の リー 微 分 の 公 式 と し て
(1.4.52) が得
ら れ る*10.
1.4.9
リー 括 弧 と リー代 数
こ こ に 出 て き た
(1.4.53) をベ ク トル 場 υ,uの い う.も
リ ー 括 弧(Lie
bracket)な
い し 交 換 子(commutator)と
ち ろ ん こ れ は 丁 寧 に 書 く と 次 式 で 定 義 さ れ る:
(1.4.54) 局 所 座 標 表 示 で は υ,uの それ ぞ れ はM上 あ るが,そ
の 積 υuは2階
の 各 点 で1階 微 分 の微 分 作 用 素 で
微 分 作 用 素 を含 みベ ク トル 場 で は な い.し か し上 記
の リー 括 弧 は
*10 ベ ク トル 場 の リー 微 分 に つ い て は
,(1.4.50)の
定 義 か ら(1.4.52)の
を 用 い ず に 論 じ た の で 少 々 わ か りに くか っ た が,座 場 υ の 積 分 曲 線 上 の 近 接 し た2点 り,p.
51の
(こ れ はQ'で
脚 注9の
を
と す る.
式 を 使 え ば,
の ベ ク ト ルuQ'=ui(q')∂i'に
こ でQ'がQを
し て よ く
お い て,Q'で
通 る 積 分 曲 線 上 のQの で あ り,そ
注2に
の 基 底{∂i'}をQで
れ ゆ え(1.4.50)は
の υi(q)を
したが って こ の 式 の 別 の 導 き 方 は,p.318脚
標系 ク トル であ
に た い して
変 換 し た も の と考 え る こ とが で き る),そ
と表 さ れ る.こ
公 式 ま で,座
標 系 を 用 い れ ば 簡 単 に な る.ベ
あ る.
の 基 底{∂i}に
局所 座 標 表示 で
近 接 点 ゆ え, υiと 記 す),こ
と れよ り
(1.4.55) とな り,1階
微 分 作 用 素 の み を含 み 各 点 で接 ベ ク トル を与 え る(こ の 成 分 が 各
点 で 反 変 ベ ク トル 成 分 の 変 換 則 を満 たす こ とは 自分 で 確 か め て も ら い た い). M上
のベ ク トル 場 の 集 合 はベ ク トル 空 間VMを
ク トル 場 の任 意 の2個
張 る が,(1.4.55)は,そ
のベ
の 要 素 の リー 括 弧 がや は りそ の ベ ク トル 空 間VMの
要素
で あ る こ と を示 して い る. この よ うに リー 括 弧 は,ベ
ク トル場 の任 意 の2個
の 要 素 をベ ク トル 場 に対 応
づ け る写 像
で あ り,次 の
性 質 を もつ: (ⅰ)
(1.4.56)
(ⅱ) (ⅲ) 性 質(ⅰ)を
双 線 形(bilinear),(ⅱ)を
を ヤ コ ビ の 恒 等 式(Jacobi
identity)と
歪 対 称(skew
symmetric),関
い う.(ⅱ)を
前 提 に す れ ば(ⅰ)の
つ の 式 は 一 方 か ら 他 方 が 導 け る.(ⅲ)の
証 明 は,(1.4.55)を
け れ ど も や や 退 屈 な 計 算 を す れ ば よ い.読 一 般 に,ベ
ク トル 空 間Vが
あ り,そ
係(ⅲ) 二
用 いて初等 的だ
者 に 委 ね よ う.
の 任 意 の2個
要 素x×y∈Vに
対 応 づ け る 双 線 形 ・歪 対 称 な 写 像(演
義 さ れ て い て,そ
の 演 算 が ヤ コ ビの 恒 等 式
の 要 素x,y∈VをVの 算)V×V→Vが
定
(1.4.57) を 満 た す と き,こ
の ベ ク トル 空 間Vは
こ の 演 算 を 積 演 算 と し て リ ー 代 数(Lie
algebra)を
構 成 す る と い う.た
と え ば3次
元 ユ ー ク リ ッ ド空 間 の ベ ク トル の
集 合 は,ベ
ク トル 積 を 積 演 算 と して リー 代 数 を な し て い る.同
多 様 体 上 の ベ ク トル 場 の 作 る ベ ク トル 空 間 は,リ
様 に,上
で見た
ー 括 弧 を積 演 算 と し て リー 代
数 に な っ て い る. そ し て も と の ベ ク トル 空 間 の 次 元(dim う.ま
たVの
V=n)を
基 底 ベ ク ト ル を(e1,e2,…,en)と
そ の リー 代 数 の 次 元 とい し た と き,ei×ej∈Vで
あ る
から
と 表 さ れ る.そ
し て こ のn3個
の 定 数 の 組{Cijk}を
リ ー 代 数 の 構 造 定 数 と い う.
そ れ ぞ れ の リー 代 数 は こ の 構 造 定 数 に よ っ て 特 徴 づ け ら れ る. な お,リ
ー 括 弧 を使 え ば ベ ク トル 場 の リー 微 分 は リー 括 弧 で 表 さ れ る:
(1.4.58) 1.4.10
リー群 と リー代 数
リー 代 数 と関 係 の 深 い リー 群 を考 え る.リ ー 群(Lie
group)と
各 元 が 連 続 な 有 限個 の パ ラ メー タ の組 で 指 定 され,群G自
は,群Gの
体 が こ の パ ラ メー
タ の組 を座 標 とす る微 分 可 能 多様 体 を成 し,か つ群 の 演 算 が微 分 可 能 な 写像 で あ る もの をい う.群 演 算 が 微 分 可 能 な 写 像 で あ る とは,積gigjの
座 標 がgiと
gjの 座 標 の 微 分 可 能 な 関数 で あ り,逆 元gi-1の 座 標 がgiの 座 標 の 微 分 可 能 な 関 数 に な っ て い る こ とで あ る.な お 多様 体 と して のGの
次 元 を リー群 の 次 元
とい う. た と え ばn次 号GL(n,R)で
の 正 則 な実 行 列 の全 体 か ら な る集 合 を考 え る(こ の 集 合 を記 記 す).こ
のGL(n,R)が
行 列 の積 を 「 積 演算 」 と して群 に な
る こ とは 容 易 に わ か る.単 位 行 列 が 単 位 元,逆 行 列 が 逆 元 に な るか らで あ る. 他 方,行 列
の 行 列 要 素aijを 局 所 座 標 と見 なす と,GL(n,R)は
多 様 体 に な る(正 則 つ ま りdetA≠0の は一 致 しな いが,そ け られ る).さ
条 件 が あ る の で
に
の 開部 分 集 合 で あ り,そ れ ゆ え 自然 な形 でRn×nに
ら に群 と し て の 演 算(積 演 算 と逆 を 作 る演 算)は,行
対応づ
列演 算 と
見 れ ば行 列 要 素 の 多項 式 や 有 理 式 を作 る操 作 で あ るか ら,多 様 体 の 写像 と して は い ず れ も微 分 可 能 な写 像 で あ り,し た が ってGL(n,R)は Gを
リー 群 とす る.た だ し簡 単 の た め 以 下 で はGは
意 の 元gを
単位 元 と結 ぶG上
Gの 任 意 の 元gに
リー 群 で あ る.
連 結,す
な わ ちGの
任
の連 続 曲 線 が 必 ず 存 在 す る とす る.
た い して,Gの
左移 動Lgを
次 の よ うに 定 義 す る:
(1.4.59) この定義 よ り
(1.4.60)
が 成 り立 つ こ と は 容 易 に わ か る(同 様 に し て 右 移 動
が 定 義 で き,
同 様 の 式 が 成 り立 つ). リー 群Gは
多 様 体 で あ る か ら,単
トルx∈(TG)eを
位 元eに
お け る 接 平 面(TG)e上
一 つ 考 え る こ と が で き る.Lge=ge=gで
微 分 写 像Lg*((1.4.44)参
照)に
る 接 ベ ク トル に な っ て い る.そ
よ るxの こ でgをG全
像Lg*xは
の接ベ ク
あ る か ら,Lgの 多 様 体Gの
点gに
おけ
体 に 動 か せ ば ベ ク トル 場
(1.4.61) を 作 る こ とが で き る.こ
の ベ ク トル 場 は 任 意 のh,g∈Gに
た い して
(1.4.62) を 満 た し て い る.つ Lh*で
ま りベ ク トル 場Vxのgで
移 し た 先 は,同
1.4.9).こ
じ ベ ク トル 場Vxのhgで
の よ う に ベ ク トル 場Vxは
そ れ ゆ え こ のVxを,xに vector
field)と
い う(ま
の 値Vx(g)=Lg*xを の 値Vx(hg)に
左 か ら のGの
微 分写像 な っ て い る(図
作 用 に 関 し て 不 変 で あ り,
よ り定 義 さ れ る 左 不 変 ベ ク トル 場(left っ た く 同 様 に 微 分 写 像Rg*を
使 え ば 右 不 変 ベ ク トル
場 を 作 る こ とが で き る). さ て リー 群G上
で 定 義 さ れ た 左 不 変 な ベ ク トル 場,す
invariant
なわち
図1.4.9
(1.4.63) を満 たす ベ ク トル場Vの gの
全 体 が 作 る集 合 を考 え,こ れ をgと
任 意 の 二 つ の 元VとWに
は ま たgの
た い し て,そ
元 に な る.た だ しa,b∈Rで
の 任 意 の1次
書 く. 結 合aV+bW
あ り,aV+bWは
(1.4.64) で 定 義 さ れ る ベ ク トル 場 を 意 味 す る. さ ら に(1.4.53)で
定 義 さ れ る リー 括 弧[V,W]Lが
は す で に 示 さ れ て い る が((1.4.55)参 ゆ えgの
照),そ
れ が や は り左 不 変 で あ り,そ
元 で あ る こ と は 次 の よ う に 示 さ れ る.(1.4.46b)に
定 義 さ れ た 任 意 の 微 分 可 能 な 関 数fに
が 成
ベ ク トル 場 で あ る こ と
り 立 つ((1.4.46b)で,φ
右 辺 は(1.4.54)お
で
た い して
をLg,υ
よ び(1.4.46b)を
と 変 形 で き る.し
よ れ ば,G上
れ
を[V,W]L,gをfと
す れ ば よ い).
繰 り返 し 用 い る こ と で
た が って
しか る に 定 義 よ りLg*は 不 変 ベ ク トル 場Vお
全 単 射 で あ り,fは
任 意 の 微 分 可 能 な関 数 ゆ え,左
よ びW(Lg*V=V,Lg*W=W)に
た い して
(1.4.65) と な り,こ
う し て[V,W]Lも
左 不 変 で あ る こ と が 示 さ れ る.
以 上 を ま と め る と,V,W∈gな
らば
(1.4.66) す な わ ちgは 群Gの
リー 括 弧 を積 演 算 と し て リー 代 数 に な っ て い る.こ のgを
リー代 数 と呼 ぶ(右 不 変 ベ ク トル場 に つ い て も同 様).
リ ー群Gの
リー 代 数gの
応 させ る と,gか の 元xに
リー
元VにGの
ら接 空 間(TG)eへ
た い して ベ ク トル 場Vxを
単 位 元eで
の 値V(e)∈(TG)eを
の 写 像 が 得 ら れ る.逆 に(TG)eの 作 る と,先 に 見 た よ うに こ れ がgの
対 任意 元に
な る.し
た が っ て こ の 写 像g→(TG)eは
も 二 つ の ベ ク トル 場V,W∈gに
射)で
あ り,結
あ る.し
か
す れ ば,VもW
た い して
れ ゆ え ベ ク トル 場 と し てV=W,す
な わ ち 写 像 は1対1(単
局 こ の 写 像 は 全 単 射 で あ る こ とが わ か る.
し た が っ て ベ ク トル 空 間 と し てgと(TG)eは
同 型 で,そ
(多 様体Gの で あ り,gの
射)で
た い し てV(e)=W(e)と
も 左 不 変 で あ る か ら 任 意 のg∈Gに
が 成 り立 ち,そ
上 へ の 写 像(全
基 底 を(V1,V2,…,Vn)と xi=Vi(e)=ベ
の 組 他 方 で[Vi,Vj]L∈gゆ
次 元)
(1.4.67)
す る と
ク トル 場Viのeで
は(TG)eの
れ ゆ え
の値
(1.4.68)
基 底 ベ ク トル に な る.
え
(1.4.69) と一 意 的 に 書 くこ とが で き る.{Cijk}が この リー 代 数 の構 造 定 数 で あ る.さ に こ の ベ ク トル場 の 関 係 の 単 位 元eで
ら
の 値 を とる こ とに よ り
(1.4.70) が 得 ら れ る.こ
こ に ベ ク トルxiとxjの
括 弧 積 を,リ
ー 括 弧(1.4.54)を
用 い
て
(1.4.71) で 定 義 し た.こ ル 空 間(TG)eは る.こ
の(TG)eを
の 括 弧 積 は(1.4.56)の
三 つ の 性 質 を 有 す る.そ
こ の 括 弧 積 を 積 演 算 と し てgと リ ー 群Gに
れ ゆ えベ ク ト
同 型 の リー 代 数 に な っ て い
付 随 す る リ ー 代 数 と 呼 ぶ.結
局gと(TG)e
は ベ ク トル 空 間 と し て も リー 代 数 と し て も 同 じ も の と見 な し て よ い*11.
1.4.11
1径 数 部 分 群 と 指 数 写 像
リー 群Gの ト ル 場)に の,す
リー 代 数gの た い し て,こ
一 つ の 元V(す
の ベ ク トル 場Vの
な わ ちG上
の一 つ の左不 変ベ ク
積 分 曲 線 でGの
単位 元 を通 る も
なわち
*11 リー群 とそ れ に付 随 す る リー 代数 の い くつ か の 具体 例 に つ い て は ,後 述 §6.4を 見 て い ただ きた い.
(1.4.72) を満 た すG上
の 曲 線cv(λ)を
考 え る.
こ のcv(λ)に
つ いて
が 成 り立 つ.た
だ し右 辺 の 積 は 群 の 積 演 算 を 表 す.証
(1.4.73) い.σ
を 固 定 し λ を 変 数 と 見 な す と,左
を 満 た し,し
か も λ=0でcv(σ)に
を 満 た し,λ=0で 動Lcv(σ)の
微 分 写 像,ま
わ ち(1.4.73)の く,微
辺 は
よ る左 移
左 不 変 で あ る こ と を 使 う).す
一 の 微 分 方 程 式 を 満 た し,か
な
つ 初 期 条 件 も等 し
分 方 程 式 の 解 の 一 意 性 に よ り両 者 は 一 致 す る. 合
がGの
で あ る こ と を 表 し て い る.そ 部 分 群(1-parameter さ て,リ
る.つ
方,右
一 致 す る(Lcv(σ)*はcv(σ)∈Gに
た 最 後 の 等 号 はVが
両 辺 は,同
こ の(1.4.73)は,集
Vxが
辺 のcv(σ+λ)は
一 致 す る.他
や は りcv(σ)に
明 は 次 の よ うに す れ ば よ
ー 群Gに
一 つ 決 ま り,そ
部 分 群 で あ り,か
の 意 味 で こ の 集 合{cv(λ)}を
sub-group)と お い て,任
数群 数
い う*12.
意 のx∈(TG)eに
し て そ のVxに
つ1径
リ ー 群Gの1径
よ りGの1径
た い し て 左 不 変 ベ ク トル場 数 部 分 群{cvx(λ)}が
決 ま
ま り
と い う1対1の
対 応 関 係 が あ り,こ
と 呼 ば れ る(TG)eか
らGへ
れ を 使 え ば,指
数 写 像(exponential
map)
の 写像
(1.4.74) *12 (1
.4.73)と(1.4.39)は
定 義 さ れ る 写 像 が,写
よ く似 て い る が,そ
の 意 味 は 異 な る.(1.4.39)は(1.4.37)で
像 の 合 成 を 積 と し て 群 を 作 る と い う 主 張 で あ る の に た い し て,
(1.4.73)は す で にGの 群 の 演 算 と し て 定 義 さ れ て い る 積 演 算 を積 と し て,曲 の 点 に 群 構 造 が あ る と い う 主 張 で あ る.
線cv(λ)上
が 定 義 で き る. この よ うに定 義 され た指 数 写像 は,任 意 のx∈(TG)eと
λ∈Rに
た い して
(1.4.75a) を満 た す こ と が 次 の よ う に 示 さ れ る. い ま 任 意 の λ∈Rを
と な る か ら,σ 成 さ れ る1径
一 つ 固 定 す る と,σ ∈Rに
た い して
を 変 数 と 見 た と きcvx(σ λ)は 接 ベ ク ト ル λx∈(TG)eに
数 部 分 群 の 元cvλx(σ)に な る.す
こ の 式 で と くに σ=1と
なわち
す る と
等 号 は 指 数 写 像 の 定 義 に よ る).こ
よ り生
が 得 ら れ る(最 う し て(1.4.75a)が
示 さ れ た.ま
後 の
た この 式
よ り (単 位 元)
(1.4.75b)
が得 られ る. 結 局,式(1.4.75ab)は,リ xに
ー 群Gの
よ り決 ま る左 不 変ベ ク トル 場Vxの
単 位 元eに
お け る任 意 の 接 ベ ク トル
原 点 を通 る積 分 曲線,す
り生 成 さ れ る1径 数 部 分 群 が,
な わ ちxに
よ
で表 され る こ とを示 して い
る. 最 後 に指 数 写像 の 用 語 の 由 来 を具 体 例 で 説 明 して お こ う. リー 群Gと
し てGL(n,R)を
字 で 表 す).単 位 元I(n×n単
考 え る(こ の 場 合,元
は行 列 で あ る か ら大 文
位 行 列)を 通 る 曲 線A(λ)の
単 位 元A(0)=Iで
の接 ベ ク トル を
(1.4.76) と す る.A(λ)をB∈GL(n,R)に の 曲 線 の 元B=BA(0)で
こ う してXに
よ り左 移 動 し た 曲 線 は
,そ
の 接 ベ ク トル は
よ り左 不 変 ベ ク トル 場
(1.4.77)
が 決 ま り,単 位 元 を通 るそ の 積 分 曲 線 は
(1.4.78) の解 で与 え られ る.そ
して この 解 は,直 接 に確 か め られ る よ うに (た だ しX0=I)
と 表 さ れ る.こ
こ にeλXは
行 列 の べ き 級 数 で 定 義 さ れ た 指 数 関 数 で あ る が,
同 時 に 上 に 一 般 論 で 導 入 し た 指 数 写 像(1.4.74)の わ ち 例1.4.1
.以
(1.4.79)
具 体 例 に 他 な ら な い.す
下 で は 指 数 写 像 も指 数 関 数 も,と
も にexpで
な
表 す.
R2上 の ベ ク トル 場 と座 標 変 換
こ の 節 で は 少 々 な じみ の 薄 い 言 葉 や 記 号 が 出 て き た か も し れ な い の で,き
わめ て
簡 単 な 例 で 使 い 方 を示 して お こ う. 多様 体 と してR2自
体 を考 え,そ
の 二 つ の 局 所 座 標 系 と して
(1.4.80) を と る.両 者 は
(1.4.81a) (1.4.81b) で 結 び つ け ら れ て い る.こ ま ら な い か ら,Uβ
こ にUα はR2全
はR2か
で,φ βが 平 面 極 座 標,そ
ら 原 点 を 除 い た もの で あ る.要 し て
は そ の 逆 で あ る.こ (1.4.41)で こ のR2上
体 と一 致 し て よ い が,r=0で
と くに
す る に φαが デ カ ル ト座 標
は デ カ ル ト座 標 か ら極 座 標 へ の 座 標 変 換, の φ は,(1.4.1)の
具 体 例 で あ る が,こ
れ を写 像
の 場 合 と考 え て も よ い.
で の 二 つ の ベ ク トル 場V1,V2の
デ カ ル ト座 標 表 示 が,そ
の 座 標 変 換 の 式(1.4.81)よ
れ ぞれ
(1.4.82)
お よ び で あ る とす る.上
は θが 決
り,座 標 変 換 に と も な う各 点 で の ベ ク
トル の 基 底 の 変 換(1.4.21)は
(1.4.83a) (1.4.83b) (丁 寧 に 書 く と,左 トル 場V1,V2の
辺 は 脚 注9(b)式
の よ う に φ*∂x,φ*∂yと
極 座 標 表 示 は,(1.4.82)の
微分 写像 に よ り
な る).そ
れ ゆ え,ベ
ク
(1.4.84a)
(1.4.84b) と 求 ま る.こ
の 二 つ の ベ ク ト ル 場 の 様 子 は,図1.4.10で
(a)
表 さ れ る.
(b) V2
V1
図1.4.10
ベ ク トル 場 と 積 分 曲 線
こ のベ ク トル 場 の積 分 曲 線 を考 え よ う.二 つ の 方 程 式 お よ び は,デ
(1.4.85)
カ ル ト座 標 表 示 で は お よ び
(1.4.86)
で あ り,こ れ ら は 極 座 標 で は お よ び と表 さ れ る.極 座 標 表 示 の 方 程 式 は,い 点 とす る 積 分 曲 線 は,そ
ず れ も簡 単 に 積 分 で き,
(1.4.87) を始
れ ぞれ
(1.4.88a) (1.4.88b)
こ れ ら は,デ
カ ル ト座 標 で は φα(Q0)=(acosδ,asinδ)を
始 点 とす る 曲 線
(1.4.89a) (1.4.89b) で あ る.前 者 はQ0を 後 者 は 原 点 とQ0を
通 り原 点 を 中 心 と す る 円 で ω>0の
結 ぶ 直 線 で,λ>0の
交 して い る.V1もV2も で は 円 を1周 な お,ベ
と き反 時 計 ま わ りに 動 き,
と き原 点 か ら遠 ざか る 向 きに 動 く.両 者 は 直
ベ ク トル の 大 き さが 中 心 か ら の 距 離 に 比 例 して い るか ら,c1
す る 時 間 は 半 径 に よ らず 一 定 で あ る. ク トル 場V2のc1に
そ っ た 変 化 率 を与 え る リー 微 分 は,極 座 標 表 示 で は
(1.4.90) ベ ク トル場V1とV2は
つ ね に 直 交 して い るか ら,こ の こ と は 当 然 で あ る.
デ カ ル ト座 標 表 示 で の 方 程 式(1.4.86)を
直 接 積 分 す る に は,行
列 を用 い て
(1.4.91a) (1.4.91b) と表 せ ば よ い.こ
の と き,
を始 点 とす る解 は
(1.4.92a) (1.4.92b) と得 ら れ る.こ
れ は 指 数 写 像 の具 体 例 で あ る.上 記 の 行 列 は
して い る ゆ え,こ
を満 た
れ らは
(1.4.93a) (1.4.93b) と 表 さ れ る.も (1.4.93)は1径
ち ろ ん こ れ ら は,は 数 変 換(1.4.37)の
じ め に 得 ら れ た 結 果(1.4.89)と 行 列 表 現 と 見 て も よ い.そ
一 致 し て い る. の と き,こ
れ らの
変 換行列
(1.4.94) が 群 の 条 件(1.4.38),(1.4.39),(1.4.40)を 明 ら か で あ る.
満 た し て い る こ と は,行
列 の性 質 よ り
な お,こ
の 例 の よ うにMやNが
は い ち い ち 明 記 せ ず,ま
1.5
1.5.1
双 対 空 間 と1ベ
ベ ク トル 空 間Vの
事 実 上R2と
たV1,υ1,u1を
一 致 し て い る よ う な 場 合,φ αや φβ
律 義 に 区 別 せ ず 同 じ記 号 で 記 す こ とが 多 い.
双対 空 間 と共変 テ ンソル
ク トル
ベ ク トルu,υ
に 実 数 を 対 応 させ る 線 形 写 像
(1.5.1) を考 え る.写 像 ω の 線 形 性 は
(1.5.2) で 表 さ れ る.二 つ の こ の よ うな 線 形 写 像 ω,σに た い して,和
と実 数 倍 が 次 の
式 で 定 義 で き る:
(1.5.3) こ の 和 が た しか にV上
実 数 倍aω
の 線 形 写 像 で あ る こ とは,次
に つ い て も ま っ た く 同 様 に 議 論 が で き る.
そ れ ゆ え 線 形 写 像 ω の 全 体 の 集 合V*も(1.5.3)で に 関 し て ベ ク トル 空 間 を 構 成 す る.こ (dual
space,「
1ベ ク トル(1
のV*を
定 義 され る和 と実 数 倍 ベ ク トル 空 間Vの
共 役 空 間 」 と し て い る 本 も あ る),そ vector)な
こ こ でVをn次 ルu=uieiに
の よ うに確 か め られ る:
い し コ ベ ク トル(covector)と
元 と し て,そ 実 数uiを
し て,こ
双対 空 間
の線形 写像 ω を
い う.
の 一 つ の 基 底 〈e1,e2,…,en〉
を と り,ベ
ク ト
対 応 させ る 写 像
(1.5.4) を考 え る.こ の写 像 をベ ク トル
と な る か ら,εiは
線 形 写 像 でV*の
に適用す ると
要 素 で あ る こ と が わ か る.と
くに ベ ク ト
ルek=δikeiに
た い し て(1.5.4)式
を 書 け ば,次
の 関 係 が 得 ら れ る:
(1.5.5) 他 方,任
意 の1ベ
ク トル ω∈V*に
た い して
(1.5.6) と お く と,ωiは
実 数 で,任
意 のu=uiei∈Vに
た い して
が 成 り立 つ か ら
(1.5.7) す な わ ち 任 意 の ω は εiの1次 立 で あ る.と
い う の も,も
結 合 で 表 さ れ る.し し もaiεi=0な
と な る か ら で あ る.し 基 底 で あ り,こ い う.ま
ら ば す べ て のkに
た が っ て<ε1,ε2,…,εn>が
れ を 基 底<e1,e2,…,en>に
た こ れ よ りVとV*の
か も ε1,ε2,…,εnは1次 つ い て
双 対 空 間V*の
た い す る 双 対 基 底(dual
次 元 は 等 し い こ とが わ か る,す
独
bases)と
なわち
(1.5.8) 1.5.2
反 変 ベ ク トル と 共 変 ベ ク トル
ベ ク トルu=uieiと1ベ Vの
ク トル ω=ωiεiを 考 え る .
基底 の変換
(1.5.9) に た い して ベ ク トルuが
変 わ ら な い 意 味 を もつ た め に は
で なけ れ ば な らず,こ れ よ り基 底 の 変 換 則(1.5.9)に
対 応 す る成 分 の変 換 則
(1.5.10) が 得 ら れ る.他
方,(1.5.6)よ
り1ベ
ク トル の 成 分 の 変 換 則 は
(1.5.11) そ して こ の と き,1ベ
ク トル ω 自体 が 同様 に基 底 変 換 に た い して 変 わ ら な い 意
味 を もつ た め に は
で な け れ ば な らず,し
た が っ て 双 対 基 底 の 変 換 則 と して
(1.5.12)
が 導 か れ る. 以 上 を行 列 を用 い て表 せ ば,Vの
ベ ク トル
(1.5.13)
において基底 の変換 則が
(1.5.14) で あ れ ば,成
分の変 換則 は
(1.5.14)'
た だ し
で 与 え ら れ る.そ 変 換 則 は,次
し て こ の と き1ベ
ク トル ω∈V*の
成 分 と基 底 の そ れ ぞ れ の
の よ う に 表 さ れ る:
(1.5.15)
(1.5.15)'
こ の よ う に,Vの
ベ ク ト ルuで
逆 に 変 換 さ れ る の でuを がVの
基 底(e1,e2,…,en)と
ク トル と も い う.し
は 成 分uiが
基 底(e1,e2,…,en)と
反 変 ベ ク トル と い う.そ
れ に 反 し て ω で は 成 分 ωi
同 様 に 変 換 さ れ る の で,1ベ
た が っ て(1.5.13)に
いわ ば
ク トル ω を 共 変 ベ
対 応 し て 共 変 ベ ク トル を
(1.5.16)
と表 す こ とが で き る.こ
うす れ ば 写 像 ω のuに
お け る値 ω[u]は
(1.5.17)
と な る.計
算 に は,(1.5.4)を
用 い た.こ
う す れ ば ω[u]が
に た い し て 不 変 な こ と は 明 ら か で あ り,こ <ω│u>で
表 す.す
座 標 変 換(1.5.9)
の 量 を 双 対 内 積 と い い,本
書 では
なわ ち
も ち ろん こ こ で い う反 変 ベ ク トル ・共 変 ベ ク トル は,§1.3で 義 され た反 変 ベ ク トル ・共 変 ベ ク トル を(Vが
曲 面 上 の 各 点 で定
必 ず し も曲 面 の接 平 面 とは 限 ら
な い場 合 に も)一 般 化 し た もの で あ る. 実 際,Vが
曲 面 の接 空 間 でuが
曲面 の接 ベ ク トル の場 合 に は(1.3.5)よ
り
(1.5.18) で あ る か ら,双
対 基 底 の 変 換 則(1.5.12)は
(1.5.19a) そ し て1ベ
ク トル ω の 成 分 の 変 換 則(1.5.11)は
(1.5.19b) と な る が,こ ら な い.同 (1.3.9)に
れ は §1.3に 様 にuの
述 べ た 共 変 ベ ク トル 成 分 の 変 換 則(1.3.15)に
成 分 の 変 換 則(1.5.10)も
他 な
反 変 ベ ク トル 成 分 の 変 換 則
一 致 す る.
な お §1.3.1(脚
注1)で,共
題 に し て お い た が,こ
変 ベ ク トル の 張 る 空 間 と そ の 基 底 は 何 か を 宿
こ に き て そ れ は 双 対 空 間 と双 対 基 底 で あ る こ とが 判 明 し
た.
1.5.3
共 変 テンソル
ベ ク トル 空 間Vの
任 意 の ベ ク トル の 対u
,υ に 実 数 を 対 応 させ る 写 像
(1.5.20) がu,υ
の 双 方 に た い し て 線 形 の と き,す
なわ ち
(1.5.21) で あ る と き,こ
の τ をV上
た と え ば,2個
の1ベ
の 双 線 形 写 像(bilinear
ク トル ω,σ∈V*に
map)と
たい し
(た だ し
で 定 義 さ れ る テ ン ソ ル 積(tensor 双 線 形 写 像 で あ る(注
意!
product)
い う.
)
ω σ は,上
(1.5.22)
の条件 を満 たす ので
一 般 に は ω σ≠ σ ω).
双 線 形 写 像 の 任 意 の 元 τ,θ に た い し て 和 と 実 数 倍 を
(1.5.23) で 定 義 す れ ば,双
線 形 写 像 は こ の 和 と実 数 倍 に 関 し て ベ ク トル 空 間 を 張 り,こ
の 空 間 をL2(V)=V* こ こ で{ei}をVの
V*と
基 底,{εi}を
u,υ ∈Vは ら,上
い う 記 号 で 表 す. 対 応 す るV*の
と表 さ れ,こ
双 対 基 底 と す れ ば,任
こ に
意 の
で あ るか
の 双 線 形 写 像 τに つ い て
が 成 り立 つ.こ
こ にu,υ は任 意 で あ るか ら双 線 形 写 像 はつ ね に
(1.5.24)
た だ し の 形 に 表 さ れ る.し
か も こ の 展 開 は 一 意 的 で あ る.と
で あ れ ば τ[ei,ej]=Tij=T'ijと そ れ ゆ えn2個
が ベ ク ト ル 空 間L2(V)の で あ る.そ
す る τの テ ン ソ ル 成 分 と い い,と 次 にV*の
しも
な る か ら で あ る.
の テ ン ソ ル 積
し た が っ て ま た
い う の も,も
基 底 の 変 換(1.5.12)を
してn2個
のTijを
き に は こ の τ を行 列T=(Tij)で
基 底 と な り, 基 底
に関
表 す.
考 え よ う.τ が こ の 変 換 に よ り変 わ ら な
い 意 味 を もつ ため に は
(1.5.25) で な け れ ば な ら な い.す
な わ ち テ ン ソ ル 成 分 はTkl=TijCikCjlの
よ うに 変 換
さ れ な け れ ば な ら な い.と ベ ク トル の 場 合,変
く にVが
曲 面 の 接 空 間 で ベ ク トルu,υ
換 行 列 の 要 素Cikは(1
.5.18)で
が曲面 の接
与 え ら れ る か ら,τ
の成
分 の変換則 は
(1.5.26) と な り,こ 参 照).そ
れ は2階 れ ゆ え,こ
合 に も)2階
共 変 テ ン ソ ル の 成 分 の 変 換 則 に 他 な ら な い(式(1.3.21) の 双 線 形 写 像 τ を(Vが
共 変 テ ン ソ ル と い う.(同
曲 面 の接 平 面 とは か ぎ ら な い 場
様 に 双 対 空 間V*の1ベ
実 数 を 対 応 さ せ る 双 線 形 写 像 う.た
を,2階
ク トル の 対 に 反 変 テ ン ソ ル とい
だ し 以 下 で は ほ と ん ど 共 変 テ ン ソ ル し か 扱 わ な い の で,ま
き をの ぞ い て
「共 変 」 は 省 略 す る.)
と く に,2階
テ ン ソ ル τ∈L2(V)が
任 意 のu,υ
ぎ ら わ しい と
に た い して
(1.5.27) を 満 た す と き,τ と表 さ れ る.こ
を対 称 テ ン ソ ル と い う.こ
の 条 件 は 成 分 を 用 い れ ばTij=Tji
の 性 質 は 座 標 変 換 に よ り変 わ ら な い.
高 階 テ ン ソ ル も ま っ た く同 様 に 論 じ ら れ る の で,結 ベ ク トル 空 間Vのp個
の ベ ク トル の 組(u(1),u(2),…,u(p))に
せ る 写 像 て のu(k)∈Vに
果 だ け を 記 し て お こ う.
に お い て, つ い て 線 形 な も の をp階(共
がすべ
変)テ
ン ソ ル と い う.こ
テ ン ソ ル 全 体 の 集 合 を 記 号 ω,σ∈Lp(V)に
実 数 を対 応 さ
で 表 す.こ
た い し て 和 と 実 数 倍 を(1.5.23)と
の 和 と 実 数 倍 に 関 し てLp(V)は
のp階 の と き,
同 様 に 定 義 で き る の で,こ
ベ ク トル 空 間 に な る.
た と え ば ω(i)∈V*,u(i)∈V(i=1,2,…,p)と
した とき
(1.5.28) で 定 義 され る テ ン ソル 積
(1.5.29) はp階
テ ン ソ ル で あ る.そ
し てV*の
基 底 か ら 作 られ るnp個
の テ ン ソ ル積
(1.5.30) が ベ ク ト ル 空 間Lp(V)の
基 底 を な し,し
た が っ て
で あ る.
そ し てp階
テ ン ソ ル τ に た い し て
とす れ ば,τ
の
成分表示 は
(1.5.31) で 与 え ら れ る(Σ
1.5.4
は,i1,i2,…,ipの
交 代 テ ン ソ ル とpベ
2階 テ ン ソ ル τ∈L2(V)が
そ れ ぞ れ に つ い て の1∼nの
和).
ク トル
任 意 のu,υ
∈Vに
た い して
(1.5.32) を満 た す な らば,τ は2階 に2ベ
交代 テ ン ソル な い し2ベ ク トル とい わ れ る.要 す る
ク トル とは ベ ク トル 空 間Vの
ベ ク トル の 対 を実 数 に 移 す 写 像
(1.5.33) で,任
意 のu,υ,w∈Vに
た い して
(1.5.34) を満 た す もの をい う.後 者 の 関 係 を歪 対 称 性 とい う.そ して2ベ
ク トル 全 体 の
集 合 を記 号 Λ2(V)で 表 す. 2ベ ク トル に た い して 和 と実 数 倍 を
(1.5.35) に よ り定 義 す れ ば,こ
の 和 と実 数 倍 に 関 して 集 合 Λ2(V)は ベ ク トル 空 間 を な
し,そ の 次 元 は
で あ る.
明 らか に 交 代 テ ン ソル で は,任 意 のuに
た い して
(1.5.36) で あ る が,逆
に こ の 式 を 満 た せ ば 必 ず 交 代 テ ン ソ ル で あ る.と
と き任 意 のu,υ
い う の も,そ
の
形 に 表 さ れ る が,こ
れ
に た い して
と な る か ら で あ る. 成 分 表 示 で は,2階
テ ン ソ ル τ は 一 般 に(1.5.24)の
が 交代 テ ン ソ ル で あ る た め に は
(1.5.37) で あ れ ば よ い.し
た が っ て2ベ
ク トル は
(1.5.38a) と 表 さ れ,よ
って
(1.5.38b) ま っ た く 同 様 にpベ
ク トル(p階
ベ ク トル 空 間Vのp個
交 代 テ ン ソ ル)を
定 義 で き る.
の ベ ク トル の 組(υ(1),υ(2),…,υ(p))に 実 数 を 対 応 さ せ
る写像
(1.5.39) がp重 線 形 か つ 歪 対 称,す
で あ る と き,こ
なわ ち
の 写 像 をpベ
ク トル と い う.
そ し てpベ
ク トル に た い し て も,2ベ
定 義 で き,こ
の と きpベ
ク トル の 場 合 と 同 様 に,和
ク トル 全 体 の 集 合 Λp(V)は
の 次 元 は
,た
と実 数 倍 が
ベ ク トル 空 間 と な る.そ
だ しp>nで
は Λp(V)={0}と
す る.
1.5.5
テ ン ソル の 交 代 化 と外積
任 意 の テ ン ソ ル か ら 交 代 テ ン ソ ル を 作 る こ と を 交 代 化(alternization)と う.2階
テ ン ソ ル で は,交
と す れ ば よ く,A2を
代 化は
交 代 化 作 用 素(alternizer)と
ル の テ ン ソル 積 の 場 合
い
い う.と
く に τが1ベ
ク ト
(1.5.40) 一 般 にp階
テ ン ソ ル に た いす る交 代 化 作 用 素 は
た だ し π=p個 と 書 く こ と が で き る.こ と り,sgn(π)は
(1.5.41)
の 置換= こ に 和 はp個
そ の 置 換 の 符 号,つ
換 の と き-1の
値 を と る.た
の 数1∼pの
置 換 πの す べ て に た い して
ま り そ の 置 換 が 偶 置 換 の と き+1,奇
だ しp=0とp=1に
た い し て はAp=1と
置
す る.
これ を用 い れ ば
τが0階
テ ン ソ ル の と き A0τ=τ
τが1階
テ ン ソ ル の と き A1τ=τ
τがp階
テ ン ソ ル の と き Apτ=ωp
と な る.す
は 0ベ
ク トル(ス
カ ラ ー),
は 1ベ
ク トル(共
変 ベ ク トル),
は pベ
ク トル
な わ ち 高 階 テ ン ソ ル を 交 代 化 す る こ と に よ り高 次(共
が 得 ら れ る.と
く に
変)ベ
の 形 の と き は(1.5.40)と
ク トル 同様 に
(1.5.42) と 表 さ れ る. 次 に,pベ
ク トル の 外 積(exterior
は じ め に,2個
の1ベ
product)を
次 の よ う に 定 義 す る.
ク トル の 外 積 を
(1.5.43) で 定 義 す る(∧
を 「外 積 記 号 」 と い う).明
の た め 外 積 は 交 代 積(alternating
product)と
ら か に も い わ れ る.ま
で あ り,そ た
が 成 り 立 つ.し 称 の 写 像(す
た が っ て ω ∧ σ はVの な わ ち2ベ
は,n(n-1)/2個
ク ト ル)で
ベ ク トル の 対 か ら 実 数 へ の 双 線 形 ・歪 対 あ る.逆
に 任 意 の2ベ
ク ト ル(1.5.38)
の 外 積 εi∧εjを用 い て
(1.5.44) と 展 開 で き る. り,{εi∧ εj}が2ベ
で あ る か ら,こ ク トル の 空 間 Λ2(V)の
ま っ た く同 様 に,p個
の1ベ
の展 開 は 一 意的 で あ
基 底 に な っ て い る.
ク トル の 外 積 を
(1.5.45) で定 義 す る(p!の このp個 つ の1ベ
因 子 を付 け な い で 定 義 す る テ キ ス トもあ るの で 注 意).
の 外 積 は2個
の 場 合 を そ の ま ま 拡 張 した もの で あ るか ら,ど の 二
ク トル を入 れ か え て も符 号 が 変 わ り,し た が って
で あ り,線 形 性 と歪 対 称 性 は 次 の よ うに 示 され る:
(1.5.46a)
(1.5.46b)
し た が っ て がpベ
はpベ
ク トル の 空 間 Λp(V)の
ク ト ル で あ り,他
基 底 と な り,す
べ て のpベ
方 ク トル は 一 意 的 に
(1.5.47) の 形 に展 開 さ れ る(Σ
は
以 上 の外 積 の定 義 を一 般 化 してpベ を
の 範 囲 の和). ク トル(ωp)とqベ
ク トル(σq)の 外 積
(1.5.48) で 定 義 す る(右 和).こ
辺 は1,2,…,p,p+1,…,p+qの
す べ て の 置 換 πに つ い て の
れ が す べ て の υ(i)につ い て 線 形 で,か
つ 任 意 の υ(i)と υ(j)の入 れ か え で
符 号 を 変 え る こ と は ほ と ん ど 自 明 で あ る.上
式 は交 代 化 作 用 素 を用 いれ ば
(1.5.49) と表 す こ と も で き る.こ 例1.5.1
れ だ け の 準 備 を し て,次
節 で 微 分 形 式 の 説 明 に 入 る.
応 力 テ ンソル
3次 元 ユ ー ク リ ッ ド空 間 の ベ ク トル に つ い て の 基 本 的 な知 識 は 既 知 と す る.つ
まり
そ こ で の ベ ク トル は,正
れ ら
の 間 に 内 積(ユ
規 直 交 基 底(ex,ey,ez)を
ー ク リ ッ ド内 積)a・b=aibiが
るベ ク トル 空 間 をR3と
記 そ う((ax,ay,az)は
上 下 の 区 別 な くi=x,y,zに
用 い てa=aieiと
定 義 さ れ る.こ ベ ク トルaの
表 さ れ,そ
の よ うな ベ ク トル の 張 成 分 で あ り,同 一 添 字 は
つ い て 和 を と る).
と くに
と表 さ れ る(ey,ezも
り,こ れ が 正 規 直 交(orthonormal)の
同 様).そ
意 味 で あ る.こ
れ ゆ え,
であ
の基底 の変 換
(1.5.50) を考 え る.こ
の 新 し い 基 底(ex',ey',ez')が
や は り正 規 直 交 で あ る た め に は
(1.5.51) 他 方,こ
の 変 換 に よ りベ ク ト ルaの
a=aiei=ai'ei'ゆ
え,成
成 分 が(ax',ay',az')に
変 換 さ れ た と す れ ば,
分 の変換 則 は
(1.5.52) こ の と き す な わ ち,内
で あ る か ら,内 積 は 上 の 変 換 に た い し て 不 変, 積 は ス カ ラ ー 量 で あ る.
し た が っ て,こ
の ユ ー ク リ ッ ド内 積 をb∈R3に
線 形 写 像 と見 な す こ とが で き る.そ
よ っ てa∈R3を
れ ゆ え こ の 場 合 は,R3自
実 数 に対応づ け る
体 がR3の
双 対 空間 で
あ り,共 変 ベ ク トル と反 変 ベ ク トル の 区別 は な く,添 字 も 上 下 の 区 別 を す る 必 要 は な い.ニ
ュ ー トン力 学 に 出 て くる 速 度 や 加 速 度 や 力 は,こ
力 を 加 え た と き形 の 崩 れ な い物 体 で は,内
の よ う なベ ク トル で あ る.
部 に ひ ず み が 生 じ た と き,物 体 の 各 部
分 は 接 し て い る 面 を通 し て た が い に 力 を及 ぼ し あ っ て い る.こ 力 を応 力(stress)と
い う.物 体 内 の1点Pか
行 に 微 小 な 距 離PA,PB,PCを を考 え る(図1.5.1).面PBC,PCA,PABを
と り,PABCが
の 単 位 面 積 あ た りの
ら直 交 基 底ex,ey,ezの
そ れ ぞれ に 平
作 る 微 小 な 四 面 体(以 通 して 外 か ら物 体Kに
下,物
体K)
働 く応 力 を そ れ
図1.5.1
ぞれ
お よ び,面ABCを
とす る.こ
通 し て 外 か ら物 体Kに
れ ら は す べ てR3の
く応 力 のy成 △ABCの
働 く応 力 を
ベ ク トル で あ る.た
と え ば τxyはexに
垂 直 な 面 に働
分 を表 す. 面 積 をS,ま
と す る.α,β,γ
外 向 き法 線 ベ ク トル を
は 法 線 ベ ク ト ルnとex,ey,ezの
△PCA,△PABの
ま た,物 体Kの
た 面ABCの
面 積 は,そ
体 積 をV,平
な す 角 で あ る.こ
の と き,△PBC,
れ ぞれ
均 密 度 を ρ,加 速 度 を α,重 力 の よ う な 体 積 力 をVf
とす る と,そ の 運 動 方 程 式 は
そ こ で,面ABCを
通 し て 物 体Kが
外 部 に 及 ぼ す 単 位 面 積 あ た り の 力 をT(n)と
る と,作 用 ・反 作 用 の 法 則 よ りST(n)=-STで
物 体Kを
十 分 小 さ く と る と,S→0の
と表 され る.そ
あ り,上 式 を考 慮 す れ ば
極 限 でV/S→0ゆ
え,結 局
.そ
こ で い ま
の 成 分 は
別 の 単 位 ベ ク トル とす る と,mとT(n)の して 働 く応 力 のm方
向成 分
す
内 積,す
な わ ち各 点 でnに
を 垂 直 な面 を通
は,基
準 系 の と り方 に よ ら な い ス カ ラー 量 で あ る.
す な わ ち,変
換 則 に だ け 着 目す れ ば,一
般 に ベ ク トルa∈R3,b∈R3に
た い して
は ス カ ラー で あ り,し た が っ て 線 形 写 像
は2階
テ ン ソ ル で あ る.物 理 で は,こ
の τ=(τij)を応 力 テ ン ソ ル(stress
い っ て い る.弾 性 体 内 部 に 働 く応 力 を 決 め る に は,作 点 を通 る 面 ま で 指 定 し な け れ ば な らず,そ
tensor)と
用 点 の 位 置 だ け で は な くそ の
の た め 応 力 を 表 す の に,ベ
ク トル 場 で は
な くテ ン ソ ル 場 が 必 要 に な る の で あ る. ち な み に 「テ ン ソ ル」 の 語 源 は,「 緊 張 」 を 意 味 す るtension(ラ に あ る.物
理 用 語 と し て のtensionは
つ ま り 「テ ン ソ ル 」 は,元
英 語 で は 「張 力 」,仏 語 で は 「応 力 」 を 表 す.
来 は 「応 力 テ ン ソ ル 」の た め に 作 ら れ た 概 念 な の で あ る.
例1.5.2
ク ロ ネ ッ カ ー の デ ル タ と エ デ ィ ン トンの イ プ シ ロ ン
例1.5.1で
見 たR3の
二 つ の ベ ク トルu,υ
テ ン 語 でtensio)
正 規 直 交 系 を 考 え る(共 変 ・反 変 の 区 別 を し な い). の ユ ー ク リ ッ ド内 積 を
と書 く と,こ れ は,ク
ロ
ネ ッ カ ー の デ ル タ({δij})に よ る 二 つ の ベ ク トル の ス カ ラー へ の 双 線 形 写 像 と見 な し う るか ら,ク
ロ ネ ッ カー の デ ル タ を2階
テ ン ソ ル と 考 え る こ とが で き る.
こ の こ とは 次 の よ う に し て も示 され る.直 交 系 の 間 の座 標 変 換 の 行 列C=(Cij)は
(1.5.53)
(単位行 列) を 満 た す.こ
れ を(1.5.25)と
に 確 か に な っ て い る(こ 同 様 に,エ
見 く ら べ る と,こ
こ で は 上 下 の 区 別 な く,同
デ ィ ン ト ン の イ プ シ ロ ン(Eddington's
の 式 は2階
テ ン ソ ル{δij}の
一 添 字 は1∼3の epsilon)と
変換 則
和 を と る). 呼 ば れ る次 の 量 を定
義 す る: (i,j,k)が(1,2,3)の
偶 順 列,
(i,j,k)が(1,2,3)の
奇 順 列,
(1.5.54)
そ れ 以 外, す な わ ち,
そ の 他 は0で
座 標 系 の 変 換 行 列 は(1.5.53)を
あ る.
満 たす ゆ え
(1.5.55) 二 つ の 正 規 直 交 系 は,det と い う.det
あ る い は,列
Cを
C=1の
とき
「同 じ 向 き 」,det
直接 書 くと
を 入れか えれば行 列 式の 符号 が変 わ るか ら
C=-1の
と き 「逆 の 向 き 」
(1.5.56) 二 つ の ベ ク ト ルu,υ
∈R3に
た い し て,ベ
ク トル 積(vector
product)
(1.5.57) を定 義 す る.そ
の 変 換 則 は,ベ
こ こ で(1.5.56)の (det
ク トル 成 分 の 変 換 則ul'=uiCilを
両 辺 にCrjCskを
C)εijkCrjCsk=Cliεlrsが
か け てj,kで
得 ら れ,こ
用 いて
和 を と り,(1.5.53)を
れ を 用 い れ ば,上
使 う と
式 は
(1.5.58) さ ら に,u,υ,wに
た い す る ベ ク トル3重
積(vector
triple
product)
(1.5.59) を定 義 す る.ベ
ク トル 成 分 の 変 換 則 よ り,変 換 さ れ た系 で の こ の値 は
(1.5.60) (1.5.56),(1.5.58),(1.5.60)は,そ の 変 換 則 で あ る.こ 変 換 則 にdet 換 で は,そ
れ ぞ れ れ ら は 通 常 の3階
テ ン ソ ル,ベ
Cが か か っ て い る の で,
れ ぞ れ3階
テ ン ソ ル,ベ
は,向
ク トル,ス
な お,こ
ス カ ラ ー(pseudoscalar)と
余 接 空 間 と1ベ
前 節 の 議 論 に お い て,ベ Mの
点Qに
い う.
ク トル ク トル 空 間Vと
space)と
し て と くにm次
と っ た と き に,そ い い(T*M)Qと
記 す.
お け る 一 つ の 接 ベ ク トル を υQと し た と き,M上
関 数fのQで
の 方 向 微 分 は,Q点
を 通 り,Qで
元微 分 可 能 多様 体
れ に た い す る双 対 空 間 を
さ て 点Qに
任 意 の 曲 線 を
れ ら を区別 して 添字
余 接 バ ン ドル と 微 分 形 式
お け る 接 空 間(TM)Qを
余 接 空 間(cotangent
きを
れ に お う じて δや εの 添 字 も上 下 に 分 け れ ば よい.
1.6
1.6.1
き を変 え な い 座 標 変
テ ン ソ ル(pseudotensor),
こ で は 反 変 成 分 と共 変 成 分 を 区 別 し な か っ た が,そ
を上 下 に 分 け る と き は,そ
カ ラー の
カ ラー の よ う に 振 る舞 うが,向
変 え る変 換 で は符 号 が 変 わ る.そ れ ゆ え これ ら を順 に,擬 擬 ベ ク トル(pseudovector),擬
ク トル,ス
の任 意 の 実 数 値
の 接 ベ ク ト ル が υQに 一 致 す る
と して
(1.6.1)
で 表 さ れ る(§1.4.3の(1.4.9b)).こ
の 右 辺 は 実 数 で あ る.そ
ル υQと 実 数 υQ[f]の こ の 対 応 を(TM)Qか
らRへ
こ で,ベ
ク ト
の 写像 とみ な し
(1.6.2a) な い し簡 単 に
(1.6.2b) と 表 す.こ
の 写 像 は 明 ち か に υQに つ い て 線 形 で あ る か ら,(df)Qは(TM)Qの
双 対 空 間(T*M)Qの
元,す
な わ ち1ベ
ク トル で あ る.
局 所 座 標 表 示
,お
さ れ る 双 対 基 底{εiQ}を
使 え ば,上
式 は(1.4.18)に
よ び
で定 義
よ り
(1.6.3) と 表 さ れ る(dim こ で υQは(TM)Qの
M=mに
と っ て い る の でiは1∼mに
つ い て 和 を と る).こ
ベ ク トル で あ れ ば 任 意 で あ る か ら,写
像 についての等式
(1.6.4) が 成 り 立 つ.こ
れ を 関 数fの
(∂f/∂qi)Qを 成 分 と す る1ベ
ク トル(共
の ス カ ラ ー 関 数 の あ る 点Qで 値 が 決 ま る 量 で あ り,ベ あ る か ら,そ
ク トル(反
れ 自 体 は1ベ
の 微 分(differential)と
い う.こ
変 ベ ク トル)で
ま り 空 間M上
の 微 分 と は,変
表 さ れ る(df)Qが
あ る.つ
れ は
化 の 方 向 υQを 特 定 し て は じ め て
変 ベ ク トル)に
ク トル(共
ル 量 で あ る こ との 認 識 が,微 (1.6.4)で
点Qで
ス カ ラー を対 応 させ る 量 で
変 ベ ク トル)な
の で あ る.微
分がベ ク ト
分 形 式 の 理 論 の 一 つ の 鍵 に な っ て い る. 確 か に 共 変 ベ ク トル で あ る こ と は,座
標変 換
に と も な う成 分 の 変 換 則
が1ベ
ク トル の 成 分 の 変 換 則(1.5.19b)に
ら れ る.こ
の こ と は(df)Qが(1.6.2)に
な っ て い る こ とか ら直 接 に 確 か め よ り座 標 系 に よ ら な い で 定 義 さ れ た
も の で あ る か ら 当 然 で あ る. と く に 関 数fと (1.6.4)は
し て 座 標 関 数qi(点Qにqiを
対 応 づ け る 関 数)を
と る と,
と な り,こ
う して 得 られ る
(1.6.5) を余 接 空 間(T*M)Qの
自 然 基 底 とい う.こ
の と き(1.5.4),(1.5.5)は
(1.6.6) (1.6.7) ま た こ の 自 然 基 底 を 使 え ば,1ベ
ク トル(1.6.4)は
(1.6.8) と表 さ れ,逆
に(T*M)Qの
任 意 の1ベ
ク トル は
(た だ し の 形 に 展 開 さ れ る.こ ベ ク トル(反
れ は(1.5.7)と
変 ベ ク トル)
ル)
(1.6.9)
)
同 じ も の で あ る. と1ベ
ク ト ル(共
変 ベ ク ト
か ら得 ら れ る 実 数
(1.6.10) は,§1.5.2で
定 義 さ れ た ωQと υQの 双 対 内 積 で あ り
(1.6.11) の よ う に 表 さ れ る.と
く に
で あ り,こ
の 記 法 を使 え ば
の よ う に 表 さ れ る.
1.6.2
1形 式(1次
多様 体M上
外 微 分 形 式)
の す べ て の 点 の 余 接 空 間(T*M)Qの
和 集合
(1.6.12) を余 接 バ ン ドル(cotangent の す べ て の1ベ で あ る.余 い(§1.4.5と
bundle)と
ク トル の 集 合 で あ り,そ
い う.M上
れ 自体dimT*M=2dimMの
接 空 間 と余 接 バ ン ドル の 関 係 は,接 そ こ で の 脚 注6参
そ し て 多 様 体M上
の す べ て の 点 の 余 接 空 間上 多様 体
空 間 と接 バ ン ドル の 関 係 に 等 し
照).
の 各 点Qに(T*M)Qの
元 ωQを 一 つ ず つ 対 応 さ せ る対 応
(1.6.13)
をM上
の1形
式(1form,な
ば,1形
式 ω は 点Qで
の 関 数 で あ り,1形
い し1次(外)微
の そ の 値 が1ベ
式 と1ベ
分 形 式)と
ク トル(共
い う.平
変 ベ ク トル)ωQに
た くい え な るM上
ク トル の 概 念 的 区 別 は ベ ク トル 場 と(反 変)ベ
ク
トル の 区 別 に 対 応 し て い る. さ て1形
式 ω お よ び σ に た い し て,a∈Rと
し て,和
と実 数 倍
(1.6.14) が 定 義 され,こ
の和 と実 数 倍 に関 して1形
ま た,fをMの
各 点Qでf(Q)の
式 の 集 合 はベ ク トル 空 間 をな す.
値 を と る関 数 とす る と
(1.6.15) に よ り 関 数 と1形
式 の 積 が 定 義 さ れ る.
座 標 近 傍(U,φ)を
と り,そ
の と る 値 が ωQ=ωiQ(dqi)Qと 値 を と るU上
の 上 で1形
表 さ れ る と す る.そ
の 関 数 ωiのm個
底 を 与 え るm個
の1形
を考 えれ ば,1形
式 ω を 考 え た と き に,点Q∈Uで
の 組,お
こ でU上
よ び 各 点Qで
の 各 点Qで
ω ωiQの
その点の余接 空間 の基
式
式 ω はU上
で
(1.6.16) と 表 す こ と が で き る.こ た と え ば1ベ
ク トル(df)Qは
か ら,点Qに(df)Qを
は,同
れ を1形
式 の 局 所 座 標 表 示,ωiを 局 所 座 標 表 示 で は(1.6.8)の
対 応 づ け る1形
そ の 成 分 と い う. よ うに表 され る
式
じ局 所 座 標 表 示 で
(1.6.17) と表 さ れ る.こ さ ら に1形
の1形
式 を 関 数fの
式 ω=ωidqiと
<ωQ│υQ>=ωiQυiQの
全 微 分(total
differential)と
ベ ク ト ル 場 υ=υi∂iが あ る と き,U上
い う. の 各 点 で
値 を とる 関数
(1.6.18) を定 義 す る と,関 数 関 係 と して 等 式
(1.6.19) が 成 り立 つ.こ
れ を 「ベ ク トル 場 υに1形
と い う.つ ま り多様 体 の 各 点 で1ベ を与 え る関 数 を,1形
式 ωを作用 させ て得 られ る関数 」
ク トル の(反 変)ベ
ク トル に た い す る作 用
式 とベ ク トル 場 を使 っ て 同 じ形 に 書 くこ とが で き るの で
あ る.実 際 こ の書 き方 を用 い れ ば,関 数 関 係 と して次 の 諸 式 が 成 り立 つ:
(1.6.20) こ の 第3式
の 右 辺 はM上
関 数 を 表 す.と
の 各 点Qでfの
く に υ=c=qi∂iの
υQに よ る 方 向 微 分 υQ[f]を 与 え る
場 合,関
数
(1.6.21) を パ ラ メ ー タtに
関 す る 全 導 関 数(total
derivative)と
い う.
1形 式 の こ の よ う な 操 作 主 義 的 意 味 を 強 調 す る た め に,● 白)を
表 し て,ω
を ω[●]な
とは ●(ブ ラ ン ク)にM上
い し<ω│●>と
も 記 す.要
で ブ ラ ン ク(空
す る にM上
の ベ ク トル 場 を入 れ れ ば,M上
の1形
式
の各 点で双対 内積
を値 とす る実 数 値 関 数 が 出 て くるマ シー ン と思 え ば よい. な お1形
式 が 局 所 座 標 の 変 換
い 意 味 を もつ た め に は,す
に よ らな
なわ ち
(1.6.22a) を 満 た す た め に は,ωiとdqiは (1.5.19ab)に
各 点 で1ベ
ク トル の 成 分 お よ び 基 底 の 変 換 則
し た が わ な け れ ば な ら な い か ら,各
点 で
お よ び を満 た さ な け れ ば な らな い.言
い か え れ ば,2個
うな 関 係 が あ る とき に は そ の2個 お い て1形
(1.6.22b) の1形
式 の成 分 の 間 に こ の よ
の1形 式 は 同 じ もの な の で あ る.そ の 意 味 に
式 は 座 標 の選 び 方 に よ らな い 幾 何 学 的 対 象 で あ り,ベ ク トル 場 と と
もに,力 学 を共 変 的 に記 述 す る ため に 必 要 不 可 欠 な 道 具 とな る. (1.6.22)は
正 確 に書 け ば 次 の よ うに な る.
写 像
に た い し て,T*N上
の1形
式
の 引 き戻 し φ*ω を
(1.6.23a) で 定 義 す る(2形 り,座
式 以 上 も 同 様).こ
れ は 関 数 の 引 き 戻 し(1.4.42)の
標 を 用 い れ ば((1.4.44)とp.51脚
注9参
拡張 であ
照)
こ こ に υ は任 意 で あ る か ら
と くに
(1.6.23b) が 得 られ る.結 局,「 引 き戻 し」 とは写 像 後 の座 標 成 分{pj}を 写 像 前 の座 標 成 分{qi}で 表 す こ とに 他 な らな い.な お,MとNが の 場 合 や 写 像 φに よ って 空 間MとNが
同 じ空 間 で φが 座 標 変 換
同 一 視 さ れ る場 合 に は,(1.6.22)の
よ うに φ*を 省 略 す る こ とが 多 い.
1.6.3 テ ン ソル 場 と リー マ ン計 量 上 の 議 論 と 同様 に して,Mの
各 点Qで(共
変)テ
ン ソ ル τQが定 義 で き る.
そ の 張 る 空 間 が てMの
各 点Qに
をM上
のp階
空 間
のp階
テ ン ソ ル 場 と い う.つ
座 標 近 傍(U,φ)に 場 τが 点Qに
で あ る.そ
ら,関 数 τはU上
で
な わ ち τのQに
はUの の 点Qで
の テ ン ソ ル 値 関 数 で あ る.
基 底 を{(dqi)Q}と
お い て と る テ ン ソ ル,す
と表 さ れ る とす る.成 分
テ ン ソ ル を一 つ ず つ 対 応 させ る対 応
ま り τはM上
お い て(T*M)Qの
し
各 点Qご
し た と き,テ
ン ソル
お け る値 が
とに 決 ま る実 数 で あ るか
の 値 と考 え て よ く,そ の と きテ ン ソ ル場
(1.6.24) と 表 す こ と が で き る(Σ
はi1,i2,…,ipの
そ れ ぞ れ に つ い て の1∼mの
和).
本 書 の 目 的 に と っ て は 一 般 の 高 階 テ ン ソ ル 場 は あ ま り必 要 が な い の で,こ で は 計 量 テ ン ソ ル 場(リ
ー マ ン 計 量)に
2階 対 称 テ ン ソ ル 場 と は,任 を い う.そ
し てM上
正 定 値 の と き,つ
の2階
意 の 点Qに
お け る 値 τQが対 称 テ ン ソ ル の も の
対 称 テ ン ソ ル 場g:Q〓gQがM上
ま り任 意 の0で
こ
つ い て だ け 触 れ て お く.
の 各 点Qで
な い ベ ク トルuQ∈(TM)Qに
た い して
(1.6.25) の と き,こ
の テ ン ソ ル 場gをM上
ル と い う.局
の リ ー マ ン計 量,テ
所 座 標 表 示 で は,リ
ン ソ ルgQを
計量 テ ンソ
ー マ ン計 量 は
(1.6.26) と 表 さ れ る.曲
面 の 場 合 の 第1基 本 形 式(1.2.3)を
一 般 化 し た も の で あ る.
そ し て リー マ ン 計 量 を も つ 多様 体 を リー マ ン 多 様 体 な い し リ ー マ ン 空 間 とい う. リー マ ン 多 様 体 で はMの
各 点 で の接 空 間 に 内 積
(1.6.27) が 定 義 され る.こ れ は 局 所 座 標 表 示 で表 せ ば
(1.6.28) ま た リー マ ン 多 様 体 で は,(反
変)ベ
ク トル 場u=ui∂iを
計 量 テ ン ソル 場
を用 い て (● は ブ ラ ン ク)
の よ うに 双 対 空 間 に 写 像 す る こ とに よ っ て,1形
(1.6.29)
式
(1.6.30) が 得 られ る.こ れ は 計 量 テ ン ソル に よ る添 字 の上 げ 下 げ に 対 応 して い る.こ の よ うに リー マ ン 多様 体 で は,計 量 テ ン ソル を介 し て ベ ク トル(反 変 ベ ク トル) と1ベ ク トル(共 変 ベ ク トル),さ
ら に ま たベ ク トル 場 と1形 式 が1対1に
対
応 して い るの で,接 空 間 と余 接 空 間 は 同型 で あ る.そ の た め た とえ ば上 で 定 義 した2個 の 反 変 ベ ク トル の 内積
(1.6.31) は,1ベ
ク ト ル
とベ ク トルvQの
双対 内積
(1.6.32)
と 同 じ も の に な る.な
お
の よ う な表 現 も便 利 で あ る.gは
対 称 テ ン ソ ル ゆ え,こ れ ら の 式 でuと
υの
順 序 を 入 れ か え て も よい. ま た リー マ ン 多様 体 で は,曲 線 の 接 ベ ク トル
の長 さは
(1.6.33) し た が っ て,曲
線
の 長 さ が,計
量 テ ン ソ ルgを
使 って
(1.6.34) と表 さ れ る. §1.1∼ §1.3で 論 じ た 曲 面 は リー マ ン 多 様 体 で あ り,そ 結 果 を 先 取 り し て い る.と
くに §1.1の{mij}お
よ び §1.2で
1基 本 量 は 計 量 テ ン ソ ル の 成 分 に 他 な ら な い.そ 部 分,適
こでの議論 は本節 の 用 いた 曲面の 第
し て 力 学 で 扱 う 多 様 体 は,大
当 に 計 量 を 導 入 す る こ と で リー マ ン 多 様 体 に す る こ と が で き る.と
う の も,k個
の 拘 束 条 件 の あ るN個
内 に 埋 め 込 ま れ た(3N-k)次
の 質 点 の 系 の 配 位 空 間 は,R3N次
元 超 曲 面 で あ り,当
然 こ れ はR3Nに
い
元空 間
備 わってい
た 計 量 を 引 き 継 い で い る か ら で あ る.
1.6.4 p形 式(p次
外微 分 形 式)
一 般 の 高 階 テ ン ソル 場 は あ ま り必 要 な い け れ ど も,高 階 の 交代 テ ン ソ ル場 は 高 次微 分 形 式 と して 重 要 で あ る. Mの
各 点Qでpベ
す る.そ こ でMの
ク トル が 定 義 さ れ,そ 各 点Qにpベ
の 集 合 の 空 間 Λp((TM)Q)が
ク トル(ωp)Qを 一 つ ずつ 対 応 させ る対 応
(1.6.35)
た だ し が 考 え られ る.こ 座 標 近 傍(U,φ)を ク トル は,局
れ をp形
式(な
い しp次
と っ た と き,p形
所座 標表示 で
存在
微 分 形 式)と
式 ωpがQに
い う.
お い て 値 と し て と るpベ
と 表 さ れ る(Σ'は は 点Qで
の 範 囲 で の 和).こ
決 ま る実 数 で あ るか ら,関 数
の 値 と考 え て よ い.し た が ってp形
式 は,U上
の展 開 係 数 の 点Qで
で
(1.6.36) と表 され る.こ れ がp形
式 の局 所 座 標 表 示 で あ る.
外 積 の性 質 よ り,pベ
ク トル の 基 底 とp個 の(反 変)ベ
ク トル の 関係 と して
(1.6.37)
が 成 り立 つ((1.5.46b)参 の 表 記 法(1.6.18)に
照).そ な ら い,Mの
こ で,1形
式 の ベ ク トル 場 に た い す る 作 用
各 点Qで
(1.6.38)
を値 とす る 関数 を
(1.6.39) で 表 す.こ Mの
の 表 記 法 で は,p形
各 点Qでpベ
式 ωpとp個
ク トル(ωp)Qお
の ベ ク ト ル 場u(i)の
よ び 反 変 ベ ク トル(u(i))Qを
そ れ ぞ れ を,
値 に と る関 数 で
あ る と考 え れ ば よ い.
2形 式 の 場 合 に具 体 的 に い う と,こ
うで あ る.局 所 座 標 表 示 で は2形 式 は
(Σ'はi<jに 他 方,反 (1.6.20)を
変
ベ
ク
ト ル 場
はu=ui∂i,υ=υi∂iの
(1.6.40)
つ い て の 和), よ う に 表
さ れ
る.そ
こ で
使 い
(1.6.41)
と して,こ の 右 辺 をM上
の 関 数 と見 なせ ば よ い の で あ る.
こ の 表 記 法 を さ ら に拡 大 す れ ば,●
で ブ ラ ン クを 表 して,2形
式から
(1.6.42) (1.6.43) と す る こ と に よ り,右
辺 で 表 さ れ る1形
は,●(ブ
一 つ の ベ ク トル 場 を 入 れ れ ば1形
ラ ン ク)に
式 が 得 ら れ る.こ
こで も
式 が,二
つ の ベ ク トル
場 を 入 れ れ ば 実 数 値 関 数 が 得 ら れ る マ シ ー ン で あ る*1. 再 三 い う こ と に な る が,M上 関 係 を値 とす る 関 数 と し て,p形 す こ とが で き る.し
の 各 点 で のpベ
ク トル や 反 変 ベ ク ト ル の 間 の
式 や ベ ク トル 場 の 間 の 関 係 を 同 じ 形 に 書 き 下
た が っ て た と え ば 各 点Qでpベ
積 ωpQ∧ ωqQを 値 と す る 関 数 と し て,p形
ク トル とqベ
式 とq形
ク トル の 外
式の外積
(1.6.44) を 定 義 で き る の で あ る.
1.6.5
外
微
分
す で に 見 た よ う に,ス 得 ら れ た.こ
カ ラ ー 関 数(0階
テ ン ソ ル)の
の 操 作 を 次 の よ う に 一 般 化 し て,p形
る.こ
のp+1形
式 を 外 微 分(exterior
M上
の ス カ ラ ー 関 数fに
式 か らp+1形
derivative)と
た い す る 外 微 分 を,そ
全 微 分 に よ り1形
式 が
式 が 得 られ
い う.
の全微 分
(1.6.45) で 定 義 す る.次
に1形
式 ω=fidqiの
外微分 を
(1.6.46)
*1 な お<ω2│υ
,●>,も
っ と 一 般 的 に は<ωn│υ,●,●,…,●>の
よ う な ベ ク ト ル 場 υ とn次
微 分 形 式 ωnの 積 を数 学 で は 内 部 積(interior product)と い う.こ れ は,数 学 の テ キ ス ト で は な い しiυωnな い しi(υ)ωnの よ う に 表 記 さ れ て い る こ と が 多 い が,「 マ シ ー ン 」 と い う よ う な 操 作 主 義 的 な 見 方 を す る 場 合 に は,本
書 の よ う な 表 記 法 が 便 利 に 思 わ れ る.
で 定 義 す る.こ
こ に ∧ は 外 積 記 号,Σ'はi<jに
こ の 定 義 が 意 味 を もつ た め に は,外 な け れ ば な ら な い が,そ い ま,二
微 分 が 局 所 座 標 系 に よ ら な い こ とを示 さ
の た め に は 次 の よ う に す れ ば よ い.
つ の 座 標 系(q1,q2,…,qm)お
と 表 さ れ る とす る.こ
つ い て の 和 を 表 す.
よ び(q1,q2,…,qm)で
の と きdf=dfは
ほ とん ど 自 明,第2式
では
で な け れ ば な らな い か ら
最 後 の 等 号 で はdqk∧dqiがkiに つ い て 対 称 だ か ら 第2項
つ い て 反 対 称,偏
が 消 え る こ と を使 っ た.し
導 関 数(∂k∂iqj)がkiに たが って
す な わ ち,外 微 分 は 座 標 系 に よ ら な い. 上 の 定 義 を さ らに 拡 張 して,p形
(Σ'は
式
の 範 囲 で の和)に た い す る外 微 分 を
(1.6.47) で 定 義 す る.こ
れ が 局 所 座 標 系 に よ ら な い こ と の 証 明 は,上
と同様 に で き る の
で 省 略 す る.こ
の よ う に,M上
の 外 微 分 はM上
の(p+1)形
式 を 与 え る.た
例 と し て,R3(3次
にp形
だ し,ス
式 が 与 え ら れ る と,そ カ ラ ー 関 数 は0次
元 ユ ー ク リ ッ ド空 間)で
微 分 形 式 と見 な す.
の デ カ ル ト座 標(x,y,z)を
た 場 合 を挙 げ て お こ う: 例1
ス カ ラ ー 関 数(0形
i.e.
式)
;
(た だ しdr=(dx,dy,dz)).
(1.6.48)
用 い
例2 1形 式
(ただ しdS=(dy∧dz,dz∧dx,dx∧dy)).
i.e.
(1.6.49) 例3 2形 式
(た だ しdV=dx∧dy∧dz).
i.e.
こ れ ら の 例 か ら わ か る よ う に,外 勾 配(gradient)や
微 分 は3次
回 転(rotation)や
(1.6.50)
元 ベ ク トル 解 析 で よ く知 ら れ た
発 散(divergence)の
演 算 を 統 合 し一 般
化 し た も の な の で あ る.
1.6.6 ポ ア ン カ レの 補 題 外 微 分 の 定 義 よ り,以 下 の 公 式 が 導 か れ る:
(1.6.51)
(ⅰ)
(1.6.52)
(ⅱ) (ⅲ)
(1.6.53)
(ⅳ)
(1.6.54)
こ こ で ωp,σpはp形 (ⅰ),
(ⅱ)は
ス カ ラ ー 関 数 で あ る.
ほ と ん ど 自 明.な
と き,d(fg)=gdf+fdgと (ⅲ)は
式,fは
な る が,こ
次 の よ う に 示 さ れ る:
ま た(ⅳ)は,外
を考 慮す れば
お(ⅱ)はp=0,ωp=g(ス
積の線形性
カ ラ ー 関 数)の
れ は 「ラ イ プ ニ ッ ツ の 規 則 」 に他 な ら な い.
の場 合 に つ い て 証 明す れ ば 十 分 で あ る.こ の と き
こ こ で1形
式 ど う し の 外 積 で は
順 送 り にdqipの
と な る こ と を 使 っ て,dgを
後 ま で も っ て ゆ け ば(ⅳ)が
ツ の 規 則 」 の 拡 張 で あ る が,-(マ さ ら に,(ⅲ)を
得 ら れ る.(ⅳ)は
イ ナ ス)の
拡 張 し た も の と し て,任
「ラ イ プ ニ ッ
べ き乗 が つ く こ と に 注 意.
意 の 微 分 形 式 ω に た い して
(1.6.55a) が 成 り 立 つ.一 form),そ
般 に 微 分 形 式 Ω が Ω=dω
し てdΩ=0と
用 語 を 用 い れ ば,こ Ω=dω(Ω
と 書 け る と き Ω を 完 全 形 式(exact
な る 微 分 形 式 を 閉 形 式(closed
form)と
い う.こ
の
の命題 は が 完 全 形 式)⇒dΩ=0(Ω
が 閉 形 式)
(1.6.55b)
を主 張 す る もの で あ る.証 明 は 以 下 の とお り: こ れ も
の 場 合 につ い て 示 せ ば 十分 で あ る. (外 微 分 の 定 義(1.6.47)),
さ らに(ⅳ)を
用 いれば
しか る に外 微 分 の 定 義 に 照 らせ ば りd(df)=0で
,ま た(ⅲ)よ
あ るか ら,結 局d(dω)=0.
先 に 挙 げ たR3で
の例 に つ い て,こ
■
の 命 題 を具 体 的 に記 して お こ う:
(1.6.56) (1.6.57) もち ろん こ れ らは3次 元 ベ ク トル 解 析 で 周 知 の公 式
を 表 して い る. こ の 命 題(1.6.55)の
逆 を ポ ア ン カ レ の 補 題(Poincare's
lemma)と
い う,
す なわ ち dΩ=0(Ω
が 閉 形 式)⇒
Ω=dω(Ω
が 成 り立 つ こ とで あ る.そ の 意 味 は,Ω
が 完 全 形 式)
が 閉 形 式 で あ れ ば,あ
(1.6.58)
る ωが存 在 し
Ω=dω
と書 くこ とが で き る とい う こ と で あ る*2.
ポア ン カ レの 補 題 は 厳 密 に は局 所 的 に しか 成 り立 た な い(局 所 的 と い う意 味 は 後 で示 す).し
か し,力 学 で実 際 に扱 う 多様 体 で は た い が い大 域 的 に も成 り
立 つ と し て 問 題 は な い.こ 示 して お こ う.Ω
な ら ば,あ
が1形 式 で Ω=Eidqiの
る 関 数Φ
主 張 で あ る.R3上
こ で は Ω が1形 式 の 場 合 に つ い て,証
が 存 在 し Ω=dΦ,す
形 の と き,ポ ア ン カ レの 補 題 は
な わ ちEi=∂iΦ
で は
保 存 場 で あ る 条 件 で,Φ
明 の概略 を
と表 さ れ る と い う
と い う こ と で,こ が ポ テ ン シ ャ ル を 表 す.し
れ はEが
た が って 証 明 は
(1.6.59) が 成 り立 つ と きに ば よ い.こ
とな る関 数 Φ を作 れ る こ と を示せ
こ に各Eiは
の 関数 で あ る.そ の ため に は
(1.6.60) と と れ ば よ い.実
以 下,同
際,こ
うす れ ば
様 に す れ ば す べ て のiに
の た め に は 積 分(1.6.60)が の 補 題 が 成 り立 つ の は,す
た い し て ∂iΦ=Ei(q)が
存 在 し な け れ ば な ら な い.そ べ て のEiが
示 さ れ る.た れ ゆ え,ポ
だ しそ ア ンカレ
積 分 可 能 な 範 囲 に 限 ら れ る(こ
の点 は
節 末 で 再 び 触 れ る). *2 多 くの 数 学 書 で は(1 る け れ ど も,H.
.6.58)を
Flanders『
「ポ ア ン カ レ の 補 題 」,(1.6.55)を
微 分 形 式 の 理 論 』 岩 堀 長 慶 訳(岩
分 ・位 相 幾 何 』(岩 波 書 店1996),木 ウ ヒ ル1988増 補 改 訂 版1996)で
「そ の 逆 」 と し て い
波 書 店1967),和
達三樹
『微
村 利 栄 ・菅 野 礼 司 『微 分 形 式 に よ る解 析 力 学 』(マ グ ロ は(1.6.55)を 「ポ ア ン カ レ の 補 題 」 と 呼 ん で い る.
1.6.7
微分 形式の積 分
曲 線
に そ っ た1形
接 ベ ク トル 場 をc=qi∂i(た
式 ω1の 積 分 は,c=q(τ)の
だ しqi=dqi/dτ)と
して
(1.6.61a) で 定 義 さ れ る.こ cに
れ を 線 積 分 と い う.右
よ る 引 き 戻 しc*ω1を
辺 は 通 常 の 積 分 で あ る.な
お こ れ は,
用 いて
(1.6.61b) と考 え て も よ い.こ
れ が パ ラ メ ー タ τの 選 び 方 に よ ら な い こ と は,τ=τ(σ)
(た だ しdτ/dσ>0)に
よ り積 分 変 数 を σ に 変 換 し て 直 接 確 か め れ ば よ い.
同 様 に,2形
式 ω2の 曲 面 上 で の 積 分 は,曲
う に パ ラ メ ー タ 表 示 し,ξ=const.の
面N上
の 点 をP=q(ξ,η)の
曲 線 の 接 ベ ク トル と η=const.の
よ
曲線 の
接 ベ ク トル を そ れ ぞ れ
(1.6.62) と して,次 式 で定 義 され る:
(1.6.63) これ を面 積 分 とい う.こ こ にSはN上 積 分 領 域S上
の 積 分 領 域,Sは
パ ラ メー タ(ξ,η)が
で と る範 囲 で,右 辺 は通 常 の 重積 分,<ω2│u,υ>は
(1.6.64) と な る 関 数 で あ る((1.6.41)参 り,ま
た
照).た
だ し
で あ
は ヤ コ ビ行 列 式 を 表 す.
し た が っ て 面 積 分(1.6.63)は
次 の よ う に 書 き 直 さ れ る:
(1.6.65) こ れ は 数 学 的 に 丁 寧 に い う と,次 曲 面N上
の 点 をq(x,y)の
を 対 応 づ け る 写 像 φ:R2→Nを き戻 し
の よ う に な る.
よ う に パ ラ メ ー タ 表 示 し,平 考 え(図1.6.1),1形
面(x,y)と 式dqiの
曲 面N
φ に よ る引
図1.6.2
図1.6.1
(1.6.66) をR2上
で の微 分 形 式 と見 な す.こ
う して ω2自 体 をR2上
に 引 き戻 せ ば
(1.6.67) と な る(Σ'はi<jに
つ い て の 和,図1.6.2参
関 係
照).最
後 の 等 号 は,外
を 使 っ た.通
省 略 さ れ る 場 合 が 多 い が,こ
こ で は1形
と を は っ き り さ せ る た め に,φ*を し た が っ て,こ
微 分 の
常 は 左 辺 の φ*が
式{dqi}と{dx,dy}の
空間が異 なるこ
省 略 し な い で お い た.
れ よ り微 分 形 式 の 積 分 ど う し の 関 係
(1.6.68) が 得ら れ る(S=φ-1(S)と よ い.(1.6.65)で
す る).こ
れ を 面 積 分 の も う一 つ の 定 義 と考 え て も
の 面 積 分 の 定 義 は,こ
の(1.6.68)式
ぞ れ 積 分 パ ラ メ ー タ ξ,ηで 形 式 的 に 置 き か え,微 dξdη と 読 み か え た も の に な っ て い る.い コ ビ 行 列 式 が 出 て く る の で,曲
の 右 辺 でx,yを
分 形 式dx∧dyを
そ れ
面積 要素
ず れ にせ よ被 積 分 関 数 に 自動 的 にヤ
面 の 座 標 を(ξ,η)に
変 換 した と き
と な り,面
積 分 は 積 分 パ ラ メ ー タ の 選 び 方 に よ ら な い 値 を もつ.
な お,パ
ラ メ ー タ(ξ,η)が 正 し く曲 面 を 座 標 づ け る た め に は
で な け れ ば な らな い(≠0で
あ れ ば よ い が,そ
うで あ れ ば つ ね に 正 か つ ね に 負
で あ り,つ ね に 負 とな る場 合 は ξ と ηを 置 きか え れ ば よ い).し た が っ て,座 標 変 換 が 問 題 な くな され る ため に は,変 換 の ヤ コ ビ行 列 式 もつ ね に
で な け れ ば な らな い.い つ で も こ うな る よ う にN全 ど うか はNの
性 質 に よ る.こ
体 で 局 所 座 標 を とれ るか
う な る よ う に局 所 座 標 が とれ る と き,曲 面Nは
向 きづ け られ て い る とい う. 一 般 的 に は次 の よ うに い う. 二 つ の 座 標 近 傍 こ ろ で,ヤ
が 重 なって い る と
コ ビ行 列 式 が
の と き,二 つ の 座 標 近 傍 は 同 じ向 き で あ る とい う.さ ら に 多 様 体Mを
覆 い尽
くす 座 標 近 傍 系 を う ま く とる こ とに よ り,ど の 座 標 近 傍 も重 な っ て い る もの ど う し で は 同 じ 向 きに す る こ とが で き る と き,Mは able)と
向 き づ けが 可 能(orient
い う.
向 きづ け が 可 能 な 多様 体 の領 域Aで
の 積 分(Σ'は
のp形
式
の 和)は 次 の よ うに定 義 され る:
(1.6.69) こ こ にAは
パ ラ メー タ
が 積 分 領 域A上
で と る範 囲,ま
た
で あ る.
1.6.8
ス トー ク ス の 定 理
向 き づ け の 可 能 な 多 様 体Mの ∂D(そ
れ 自 体(n-1)次
で あ る か らDに ξ2,…,ξn-1)にDの
中 のn次
元 多 様 体)を
元 部 分 多 様 体 の 領 域Dと
考 え る.こ
た い し て も正 の 向 き を 決 め る.そ
の と きDも
そ の境 界
向 きづ け が 可 能
し て ∂Dの 座 標 近 傍(V;ξ1,
外 に 向 か う 座 標 軸 ξ0を 付 け 加 え た と き(ξ0,ξ1,ξ2,…,
ξn-1)がDの
正 の 向 きに な る な らば,境 界 ∂Dは 正 の 向 き で あ る と決 め る.た
と えばDが3次 Dの
元 空 間 内 の2次 元 平 面 上 の 閉 曲線 ∂Dで 囲 まれ た領 域 の 場 合,
座 標 を右 手 系 に と る な らば,境
界 に そ って つ ね に 内側 を左 に 見 て 回 る 向
きが ∂Dの 正 の 向 きで あ る(図1.6.3)*3.
図1.6.3 領 域 の 境 界 と向 き
n次 元 の 領 域Dと
境 界 ∂Dに 向 きの つ け られ る と き,任 意 の(n-1)次
微分
形 式 ω に た い して
(1.6.70) が 成 り 立 つ.こ
れ を ス トー ク ス の 定 理(Stokes'
理 解 の 便 宜 の た め に,証 例1
Dが
曲 線c(1次
theorem)と
い う.
明 に 先 立 っ て い くつ か の 例 を 挙 げ て お く: 元)で
∂Dが 曲 線 の 両 端A,B(0次
元)の
場 合,
(1.6.71) こ れ は 微 積 分 法 の 基 本 定 理(fundamental
theorem
of calculus)に
他 な らな
い.
例2 DがR2平
面 上 の 閉 曲 線 ∂Sで 囲 まれ た 領 域Sで
が っ て
,し た
の場 合,
(1.6.72) こ れ は,(x,y)そ
の も の を積 分 パ ラ メ ー タ に と っ て 通 常 の 積 分 に 書 き 直 せ ば
(1.6.73) *3 n次 元 多様 体 の 領 域Dに
た い して 「Dの 外 に向 か う」 とい うこ と を正 確 に 定 義 す る た
め に は,少 し うる さい 議 論が 必 要 で あ るが,込 み 入 った議 論 は数 学 書 に ゆ だね,こ 直観 的に 理 解 して も ら って よ い.
こで は
と な り,よ
く知 ら れ た2次
他 な ら な い.あ 例3
元 平 面 で の グ リ ー ン の 定 理(Green's
theorem)に
ら た め て 証 明 す る に は 及 ば な い で あ ろ う.
DがR3内
の 曲 面 上 の 閉 曲 線 ∂Sで 囲 ま れ た 領 域Sで
の 場 合,(1.6.49)す
な わ ちdω=(rot
F)・dsを
使 え ば,
(1.6.74) これ は3次 元 空 間 で の 通 常 の ス トー ク スの 定 理 を与 え る. 例4 DがR3内
の 閉 曲面 ∂Vで 囲 ま れ た体 積 領 域Vで
の 場 合,(1.6.50)す
な わ ち
を使 え ば
(1.6.75) こ れ は3次
元 空 間 の ガ ウ ス の 定 理(Gauss'
theorem)を
さ て 一 般 的 な ス トー ク ス の 定 理(1.6.70)に は 高 次 元 多 様 体 内 に 埋 め 込 ま れ た2次 で あ る か ら,そ 多 様 体Mの 域Sが
戻 る.実
際 に後 に 本 書 で 使 うの
元 曲 面 上 で の1形
式 の 線積 分 の場 合 だ け
の 場 合 に 限 っ た 証 明 を 与 え る. 中 の2次
あ る と き,∂Sに
元 曲 面N上 そ っ た1形
の 閉 曲 線 ∂Sと そ れ に 囲 ま れ たN上 式 の 線 積 分 を考 え る.N上
域 の 局 所 座 標 をq=(q1,q2,…,qm)と
と る(座
を 分 割 し て 後 で 足 し 合 わ せ ば よ い か ら,簡 き1形
与 え る.
のSを
の領 含 む領
標 近 傍 が 一 つ で 済 ま な け れ ばS
単 に 一 つ で 足 り る とす る).こ
の と
式は (iは1∼mの
和 を と る)
(1.6.76)
で 表 さ れ る. 他 方,2次
元 曲 面Nの
れ る か ら,(x,y)平
面R2か
を 考 え る と,(1.6.66)を
上 の 点 は パ ラ メ ー タ(x,y)に らNへ
の 写 像 φ を 考 え,φ
よ りパ ラ メ ー タ 表 示 さ に よ る ω の 引 き戻 し
使 い
(1.6.77)
他 方(1.6.67)よ
に た い して
り
した が って
(1.6.78) す な わ ち,外 微 分 を と って か ら引 き戻 して も,引 き戻 して か ら外 微 分 を と って も結 果 は 変 わ らな い*4.そ こ で ω のS上 るR2上
の 領 域 をSと
と な り,こ
う し て2次
元 曲 面 上 で の ス トー ク ス の 定 理 が 証 明 さ れ た.こ
リー ン の 定 理(1.6.72),そ
使 っ た 書 き 直 し,(3)は2次 し て(4)は(1.6.77)に
の等号 元 の グ
よ る 書 き 直 し,(5)は
あ る.
最 後 に 次 の 指 摘 を し て お こ う.上 あ れ ば,そ
対 応す
して
で,(1)は(1.6.68),(2)は(1.6.78)を
(1.6.61b)で
で の 面 積 分 を考 え る と,Sに
の 議 論 で,曲
の 領 域 内 の 任 意 の2点QとPを
を 考 え る と(図1.6.4),Sをcで
面Nの
あ る 領 域 でdω=0で
通 る 任 意 の 閉 曲 線c=c1+(-c2)
囲 ま れ た領 域 と して
図1.6.4
*4 この こ とは微 分 形 式 の外 微 分 が座 標 に よ ら な い こ と(座 標 変 換 に た い して 不 変 で あ るこ と)を 表 して い る.(1.6.78)は2次 式 に た い して も成 り立つ.
元 曲面 上 で証 明 した け れ ど も,n次
元曲面上の微分形
と な る.こ の こ とはQを
固定 した と き,PQを
結 ぶ 任 意 の 曲 線lに
たい し
(1.6.79) と い う点Pの1価
関 数 Φ が 決 ま り,そ れ ゆ え これ を用 い て
(1.6.80) と書 け る こ とを示 して い る.こ れ が ポ ア ン カ レの 補 題 で あ る.た だ しこ の証 明 よ り明 ら か な よ うに,こ
の 結 論 は 内部 にdω ≠0と な る点 を含 ま な い 単 連 結 な
領 域 に た い し て の み 成 り立 つ.そ
の 意 味 で,ポ ア ン カ レ の補 題 が 成 り立 つ の は
局 所 的 と以 前 に 断 っ た の で あ る. 以 上 で,必 要 最 小 限 の 数 学 の 準 備 が で きた.こ れ 以 上 の こ とは 必 要 に 応 じて 場 所 場 所 で 触 れ る こ とに し,次 章 か ら解 析 力 学 を体 系 的 に述 べ る.
2 ラ グ ラ ン ジ ュ形 式 の 力 学
2.1 ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式
2.1.1
ス ク レ ロ ノー マ ス な場 合
§1.1で
は,拘
束 力 を 消 去 す る こ と に よ り,一
数 だ け の 方 程 式(1.1.26),
(1.1.28),
(1.1.31)を
程 式 は 実 用 上 は 扱 い や す い も の で は な く,理 り,必
般 化 座 標 で 表 さ れ た 自 由度 の 導 い た.し
論 的 に 見 て も窮 屈 な とこ ろが あ
ず し も満 足 の ゆ く も の で は な い.
実 用 上 は,自
由 度 がnの
と き,n(n+1)/2個
の 計 量 テ ン ソ ル 成 分{mij}お
び さ ら に 多 く の ク リ ス ト ッ フ ェ ル 記 号{Cijk}を
す べ て 求 め る こ と は,nが
ほ ど大 き く な く と も 相 当 に 面 倒 な 計 算 を 必 要 と す る.実 由 度2の
か し こ れ らの 方
球 面 振 子 の 場 合 で さ え,計
し か し{mij}や{Cijk}が
際,例1.1.1で
よ それ
見た 自
算 は か な り 煩 わ し い.
す べ て 求 ま り運 動 方 程 式 が 書 き 下 さ れ た と し て も,
そ の か ぎ りで は そ の 方 程 式 は 配 位 空 間 の 特 定 の 局 所 座 標 系 で の 表 現 で しか な く,現
実 の 問 題 を解 く た め に は,座
一般論 としては
,そ
標 変 換 が 必 要 に な る 場 合 も 多 い.な
の 形 が ど の 座 標 系 に 移 っ て も 変 わ ら な い,す
な わ ち 方程 式
が 共 変 性 を も つ と い う こ と は,す
で に §1.3で 確 か め ら れ て い る.と
実 に 方 程 式(1.1.26),
(1.1.31)に
(1.1.28),
る 座 標 系 へ の 変 換 に と も な うmijやCijkの な い.し
るほ ど
は い え現
座 標 変 換 を 施 す た め に は,異
な
変換 則 が わか って いなけ れば な ら
か し計 量 テ ン ソ ル成 分 や ク リス トッフ ェ ル 記 号 の 変 換 を具 体 的 な場 合
に 実 行 す る こ と は,一
般 的 な 変 換 則 を 示 す の に 比 べ て 格 段 に 面 倒 で あ る.
そ の う え 理 論 的 な 観 点 で は,§1.1の ク レ ロ ノ ー マ ス な)場
議 論 は 拘 束 が 時 間 に 陽 に よ ら な い(ス
合 に 限 ら れ て い る か ら,方
程 式(1.1.26),
(1.1.28),
(1.1.31)も
座 標 変 換 もそ の 範 囲 に 限 られ て い る とい う狭 さが あ る.
それ に た い して,拘
束 が 時 間 に よ る(レ オ ノー マ ス な)場 合 に も拡 張 で き,
そ の 広 い範 囲 の 座 標 変 換 が 可 能 で,し か も座 標 変 換 が 簡 単 に実 行 可 能 で,そ の 座 標 変 換 に た い す る共 変 性 が 見 や す く,そ の 意 味 で理 論 的 に も実 用 上 も優 れ て い る運 動 方 程 式 が,単
一 の ス カ ラー 関 数 だ け を扱 う ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 で あ
る. 本 節 で は ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を導 入 し,そ の 一 般 的性 質 を調 べ る. 手 始 め に,方 程 式(1.1.26)を
次 の よ うに 変 形 して み よ う.そ の左 辺 は
(2.1.1) の よ う に 書 き 直 さ れ る.(た て 扱 う.ま
だ し偏 微 分 演 算 の さ い にqiとqiを
た 本 節 で はi,j,kの2重
添 字 は1∼nの
独 立変数 と し
和 を と る.)し
たが って運
動 エ ネ ル ギー の総 和
(2.1.2) を 用 い て,方
程 式(1.1.26)は
(2.1.3) と表 さ れ る.こ
2.1.2
れ を ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式(Lagrange
equations)と
い う.
一般 的な場合 への拡張
た だ し こ こ ま で の 議 論 は,拘
束 が ス ク レ ロ ノー マ ス な 場 合 に し か 成 り立 た な
い.し
.1.3)は,実
か し 得 ら れ た 方 程 式(2
は 以 下 に 示 す よ う に,拘
束 が レオ
ノ ー マ ス な 場 合 に も通 用 す る の で あ る. 拘 束 が 時 間 に よ り(1.1.3)で
表 さ れ る 場 合 は,位
置 ベ ク トル は
(2.1.4) と表 され る.こ の 場 合,局
所 座 標 がq={qi}で
表 され る超 曲 面(配 位 空 間)
は 時 間 と と も に変 化 す る の で,た {Fα'}がNと
と え 拘 束 が 滑 らか で各 瞬 間 に 拘 束 力 の 全 体
直 交 して い て も,系 の 時 間 的 発 展 に と もな う無 限小 変 位 た だ し
(2.1.5)
は 必 ず し も拘 束 力 と直 交 して い る とは 限 ら な い.し か し この 場 合 も,系 の その 瞬 間 の 拘 束 条 件 を破 らな い無 限小 変 位(仮 想 変 位)
(2.1.6) は そ の 瞬 間 に 固 定 さ れ た 超 曲 面N上 の 全 体 と 直 交 し て い る.し
で の 変 位 で あ る か ら,そ
の瞬間 の拘束 力
た が っ て{δrα}に た い し て は(1.1.7)が
成 り立
つ:
(2.1.7) た と え ば 動 く滑 ら か な 斜 面 に そ っ た 質 点 の 運 動 を 考 え れ ば よ い(図2.1.1).
図2.1.1 動 く斜 面 にそ った 質点 の 運 動drと 仮 想 変 位 δr
こ こ で ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式 を 用 い て 拘 束 力 をFα'=mαrα-Fα 書 き 直 せ ば,(2.1.7)よ
の よ うに
り
(2.1.8) が 得 ら れ る.こ
れ が ダ ラ ン ベ ー ル の 原 理(d'Alembert's
principle)で
あ る.
こ の 式 は 静 力 学 に お け る つ り あ い の 条 件 と し て の 仮 想 仕 事 の 原 理(1.1.11) に お い てFα
をFα-mαrα
え ら れ た 力(Fα)と
で 置 き か え た も の で あ り,そ
慣 性 力(-mαrα)で
の 意 味 は しば しば
「加
物 体 が つ り あ う 」 と 説 明 さ れ て い る.
し か し そ の 本 質 的 内 容 は 拘 束 力 の す る仮 想 仕 事 が0に
な る と い う点 に あ り,そ
の こ と を未 知 の拘 束 力 を含 まな い 形 で表 し た もの で あ る. 実 際,た
とえ ば例1.1.1で
見 た球 面 振 子 の 場 合,ニ
(た だ し デ カ ル ト座 標 でg=(0,0,-g))に 束 条 件│r│=lで
お い て,拘
ュ ー トン の運 動 方 程 式
束 力 で あ る 張 力Sは,拘
表 さ れ る 球 面 に つ ね に 直 交 し て お り,し
件 を 破 ら な い 仮 想 変 位 δrに た い し て δr・S=0,す
たが って この拘 束条
な わ ちSは
仕 事 を し な い.
これ よ り
が 得 ら れ,極
座 標(1.1.34)を
用 い て 書 き直 せ ば
こ の 式 で δθ, δφ が 独 立 ゆ え,そ ち に 方 程 式(1.1.39)が 同 様 に(2.1.8)式 れ のiに
つ い て0で
れ ぞ れ の 係 数 を0と
お く こ と に よ っ て,た
だ
得 ら れ る. で は す べ て のqiが
独 立 で あ る か ら,δqiの
な け れ ば な ら な い.す
な わ ち す べ て のiに
係数 が それ ぞ た い して
(2.1.9) あ る い は 少 し変 形 して
(2.1.10) が 成 り立 つ.こ
こ で(2.1.5)よ
り得 ら れ る 関 係
(2.1.11) お よび
(2.1.12) に 注 意 す る と,(2.1.10)の
左辺 は
と 変 形 で き る.し
た が っ て こ の 場 合 も,運
動エネ ルギー
(2.1.13) を 用 い れ ば,(2.1.10)の の 右 辺 は(1.1.12)で
左 辺 は(2.1.3)の
左 辺 と 同 一 に な る.他
定 義 し た 一 般 化 力 の 成 分Fiで
時 間 に よ る 場 合 も(2.1.3)と 力 が ポ テ ン シ ャ ルUか
あ る か ら,結
方(2.1.10) 局,拘
束が
ま っ た く同 形 の 方 程 式 が 得 ら れ る. ら導 か れ
(2.1.14) と表 され る と きに は,一 般 化 力 の 成 分 は
(2.1.15) と 書 け る か ら,方
程 式(2.1.10)は
(2.1.16) と表 さ れ る.こ
れ は さ らに
(2.1.17) で定 義 され る単 一 の 関数 を用 い て
(2.1.18) と ま と め ら れ る.こ
の 一 組 の 方 程 式(2.1.16)な
と 同 様 に ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 と い い,ま rangian)な
い し(2.1.18)を
た 関 数Lを
も,(2.1.3)
ラ グ ラ ン ジ ア ン(Lag
い し ラ グ ラ ン ジ ュ 関 数 と い う.
な お 以 下 で は,演
算記号
(2.1.19) を 用 い て,ラ
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式(2.1.18)を
簡 単 に
(2.1.20)
と記 す. こ の 方程 式 は単 一 の ス カ ラー 関 数 で表 さ れ るの で,取 扱 い が きわ め て 簡 単 で あ り,実 用 上 の 観 点 か らは 以 前 の 方 程 式(1.1.26)に る.実 際,力
比べ て格段 に優 れ て い
が ポ テ ン シ ャ ル か ら導 か れ る場 合,運 動 エ ネ ル ギーTと
シ ャ ル ・エ ネ ル ギーUを あ とはL=T-Uに
一 般 化 座 標qと
一 般 化 速 度qの
ポテ ン
関 数 と して 表 せ ば,
た い す る ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 を 機械 的 に 書 き下 す だ け で,
必 要 な運 動 方 程 式 が 自動 的 に得 られ るの で あ る.個 々 の物 体 に 働 く力や 拘 束 条 件 を考 慮 す る必 要 は ま っ た くな い.以 下 で は と くに 断 らな い か ぎ り,ラ グ ラ ン ジ ア ン が 必要 な だ け微 分 可 能 な場 合 の み を考 え る. 拘 束 の あ る系 の 配 位 は配 位 空 間N上
の1点
ン ドルTNを
space)と
とは,N上
力 学 で は状 態 空 間(state の す べ て の 点Qに
の 状 態 はTN上
の1点 はqか
ア ン はTN上
で指 示 さ れ る.そ い う.す
お け る接 空 間TNQの
で指 示 さ れ る.い
まNの
して(q,q)が
接バ
な わ ち状 態 空 間TN
直和 空 間 で あ る.そ 局 所 座 標 をq={qi}と
ら 自然 に 導 か れ るTNの
の 関 数 で あ る.そ
してNの
して 系 す れ ば,
局 所 座 標 で あ り,ラ グ ラ ン ジ 系 の 状 態 を表 す.系
の 状 態 とい
うの は 次 の よ う な意 味 で あ る. ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式(2.1.18)は
(2.1.21) と表 さ れ る.ラ
グ ラ ン ジ ア ン の ヘ ス 行 列
で あ る と き,ラ
グ ラ ン ジ ア ンLは
が
(2.1.22) 正 則(regular)と
い わ れ,上
式 を
(2.1.23) の形 に 解 くこ とが で き る.こ の 式 の右 辺 は(q,q)の 件 と して状 態 空 間上 の1点(qとqの
関 数 で あ るか ら,初 期 条
初 期 値)を 指 定 す れ ば,そ
の 後 の(そ れ
以 前 の)状 態 空 間上 の 位 置 は 一 意 的 に決 定 され る.そ の 意 味 で,正 則 な ラ グ ラ ン ジ ア ン で は 古 典 力 学 的 因 果 律 は 満 た され て い る の で あ り,(q,q)の
セ ット
を系 の状 態 と い う. ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 に よ り決 定 され る状 態 空 間 上 の 点 の運 動 と して 系 の 変 化
を論 じる 力 学 を,本 書 で は ラ グ ラ ンジ ュ形 式 の 力 学 と呼 ぶ.
2.1.3 共
変
性
ま た局 所 座 標 系(使 用 す る一 般 化 座 標)の 変 換 に た い す る ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 の 共 変 性 も,次 の よ うに 一般 的 か つ 直 接 的 に確 か め られ る. 本 節 で は 配位 空 間 を決 定 した 拘 束 条件 が 時 間 に よ る と して い るか ら,座 標 変 換 も時 間tを パ ラ メー タ と して 含 ん で よ い.そ こ で い ま配 位 空 間 の座 標 変 換
(2.1.24) を考 え,こ れ が 微 分 同相 写 像 で あ る と して,逆 変 換 を
(2.1.25) で 表 す.こ
の1対1写
像 を 点 変 換(point
こ の 変 換 よ りq={qi}の
transformation)と
い う.
変 換 則 お よび それ に付 随 す る関 係
(2.1.26) が 自 然 に 導 か れ る.逆 と 書 く.ま
変 換(2.1.25)の
ヤ コ ビ行 列 を,
た こ の 変 換 は 同 一 の 点 を 異 な る座 標 系 で 見 る も の で あ る か ら,ス
ラ ー 関 数 の 値 は 変 わ ら な い.そ
カ
こで これ に と もな っ て変 換 され た ラ グ ラ ン ジア
ンは
(2.1.27) で 定 義 さ れ る.こ
れ よ り
(2.1.28) す な わ ちEi[L]はN上
の座 標 変 換 に た い して 共 変 ベ ク トル の成 分 と し て変 換
され る. した が って,変
換 φ が正 則 す な わ ち
であれば
(2.1.29) す な わ ち ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 は 点 変 換 に た い して共 変 的 で あ り,配 位 空 間 の 座 標 変 換 に さ い して 形 を変 え な い.さ
らに ヘ ス行 列 の 変 換 則 は
で あ るか ら,変 換 が 正 則 で あ れ ば
(2.1.30) す な わ ち,ラ グ ラ ン ジ ア ン の正 則 性 は座 標 系 の 選 択 に よ ら な い. した が っ て また,正 則 な写 像 で 結 びつ く一 般 化 座 標 の 組 は,方 程 式 を解 くさ い の 難 易 とい う実 用 上 の優 劣 をの ぞ い て,互
い に対 等 で あ る.そ れ ゆ え 現 実 の
問 題 で は,問 題 ご と に積 分 に有 利 な座 標 系 に 移 れ ば よ い.の み な らず,そ の さ い の 座 標 変 換 は,単 一 の ス カ ラー 関 数 で あ る ラ グ ラ ン ジア ン に た い して だ け で 済 む.こ
の 点 に ラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式 の実 用 上 の 大 きな メ リ ッ トが あ る.
た と えば3次
元 ユ ー ク リ ッ ド空 間R3で
の質 点 の運 動 を デ カ ル ト座 標 で考 え
る と,ラ グ ラ ン ジア ン は
(2.1.31) で あ り,こ れ に た い す る ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 を作 れ ば ニ ュー トン の運 動 方 程 式
が 得 ら れ る.こ
こ で 図2.1.2の
よ う に3次
方 程 式 を こ の 極 座 標 で 表 す こ と を考 え る.変
元 極 座 標(r,θ,φ)を
導 入 し,運
動
換 式 は 次 の と お り:
(2.1.32) θ は 天 頂 角,φ
は 方位 角 で あ る.そ の さ い ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式 の 各 成 分 を
直 接 的 に極 座 標 に 変 換 す る の は か な り手 間 が か か る.そ れ に 比 べ て(2.1.31) の ラ グ ラ ン ジ ア ン 自体 を書 き直 す の は は るか に 楽 で あ る.R3の
線要素 を
図2.1.2 3次 元 デ カ ル ト 座 標 と極 座 標
の よ う に2通
りで 表 す だ け で よ い.そ
うす れ ば す ぐさ ま運 動 エ ネ ル ギ ー
(2.1.33) と,そ れ に と もな い ラ グ ラ ン ジ ア ン の局 所 座 標 表 示
(2.1.34) を得 る こ とが で き,後 は これ に た い す る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を 書 き下 せ ば よ い.こ
う して簡 単 に 方 程 式
(2.1.35)
が 得 ら れ る.こ
れ は 極 座 標 で 表 し た 運 動 方 程 式 で あ る.
こ の 例 で と く にr=l=const.と とす れ ば,例1.1.1に
い う 拘 束 条 件 を 課 し,さ
ら に
見 た 球 面 振 子 の 運 動 方 程 式(1.1.39)に
な る*1.mijや
Cijkを 使 う 計 算 に 比 べ て ど れ く ら い 簡 単 か が 感 得 で き よ う. そ の う え,上
の 座 標 変 換(2.1.24)は
時 間tを
含 ん で も よ く,し
た が って ラ
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は 任 意 の 動 い て い る 座 標 系 に お い て も成 り立 つ の で あ る. た と え ば2次
*1 そ の 場 合
元 ユ ー ク リ ッ ド空 間 で の 運 動 を,回
転座標 系
,一 般 化 座 標 は θ,φ の み で,Lは(2.1.34)でr=l,r=0と る.こ の 扱 い で は 自 由 度 は2に な り,(2.1.35)の 第1式 は 存 在 し な い.拘 い は,例10.1.1参 照.
お い た もの で あ 束 系 と して の扱
(2.1.36) で見 る.こ の 式 を 時 間tで 微 分 し,ω に 比 例 す る項 を移 項 す れ ば
(2.1.37) したが っ て 運 動 エ ネ ル ギー は
(2.1.38) こ れ に た い す る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は,変 (2.1.18)で
与 え ら れ る.そ
換 に 時 間 を含 ま な い と き と同 じ形 の
れ を 書 き 下 し,結
果 を 適 当 に 移 項 ・整 理 す れ ば,
(2.1.39) が 得 ら れ る.こ い る.右 gal
辺 第2項
force)で,い
れ は ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式 の 回 転 座 標 系 で の 表 現 に 一 致 し て が コ リ オ リ カ(Coriolis
force),第3項
ず れ も座 標 系 が 回 転 し て い る(加
見 か け 上 の 力 と し て の 慣 性 力(inertial
force)で
座 標 変 換 や 加 速 度 系(非
め に 生 じた
回 転 座 標 系 で 表 せ ば,慣
性
慣 性 系)へ
ま りニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式 は 時 間 を 含 む の 変 換 で は 一 般 に は 形 を 変 え る.し
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式Ei[L]=0は,こ り,任
速 度 を も つ)た
あ る.
こ の よ う に ニ ュ ー ト ン の 運 動 方 程 式mr=Fを 力 を 付 け 加 え な け れ ば な ら な い.つ
が 遠 心 力(centrifu
か しラ
の よ うな広 い変 換 に た い して も共 変 的 で あ
意 に 動 く座 標 系 に 移 っ て も 形 を 変 え ず に 成 り 立 つ の で あ る.こ
れ は
ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式 と の 決 定 的 な 違 い で あ る .
2.1.4
一 般 化 ポ テ ン シ ャル
こ こ ま で は,運 と き に,ラ
動 エ ネ ル ギ ー と速 度 に 依 存 し な い ポ テ ン シ ャ ル が 与 え ら れ た
グ ラ ン ジ ア ン を(2.1.17)で
式 で 表 さ れ る こ と を 示 し て き た.こ
作 る と運 動 方 程 式 が ラ グ ラ ン ジュ 方 程 こ で は よ り広 い 範 囲 の 力 に た い し て,逆
に
運 動 方 程 式 が ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 と して 表 され る よ うに ラ グ ラ ン ジ ア ン を作 る 方 法 を考 え る. 力 が 速 度 に よ る 場 合 で も,一
般 化 力 の 成 分 が 関 数U(q,q,t)を
用 いて
(2.1.40) と表 さ れ る 場 合 に は,ラ
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式(2.1.18)は
の よ う な 関 数U(q,q,t)を
そ の ま ま 成 り 立 つ.こ
一 般 化 ポ テ ン シ ャ ル(genealized
potential)と
い
う. た と えば 上 に 見 た 回転 座 標 系 で の 運 動 の 場 合
(2.1.41) とす れ ば,回
転 系 で 働 く力 の 成 分 は(2.1.40)に
こ のU'を
代 入 して
(F'η も 同 様) と導 か れ る(F'ξ
は 一 般 化 力 の ξ 成 分 を 表 す).そ
し て は(2.1.39)と
同 じ も の が 得 ら れ る.す
ン シ ャ ル を 与 え る.こ な お,こ
のU'の
第3項
な わ ち こ の 場 合U'が
一般 化 ポ テ
を 遠 心 力 ポ テ ン シ ャ ル と い う.
の 例 か ら わ か る よ う に,ラ
ジ ア ン だ け が 問 題 な の で あ っ て,そ
して ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 と
グ ラ ン ジュ 形 式 の 力学 で は実 は ラ グ ラ ン の 運 動 エ ネ ル ギ ー と ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル
ギ ー へ の 分 割 は 必 ず し も 一 意 的 に は 決 ま ら な い. 力 が 速 度 に 依 存 す る い ま ひ と つ の 例 と し て,電 (質 量m,電
荷e)の
運 動 を 考 え る.運
磁 場(E,B)中
で の荷 電 粒 子
動方 程式 は
(2.1.42) 右 辺 は ロ ー レ ン ツ カ(Lorentz
force)で
あ る*2.
ス カ ラ ー ・ポ テ ン シ ャ ル を Φ(r,t),ベ て,電
場Eと
ク トル ・ポ テ ン シ ャ ル をA(r,t)と
し
磁 束 密 度Bは
(2.1.43) で 表 さ れ る(B=∇ はrに と,お
×Aは
擬 ベ ク ト ル,υ
×Bは
ベ ク トル).演
作 用 し な い の で 等 式 よ び Φ(r,t)がrに
(Φ も 同 様), れ ば よ い.SI単
位 で は,ロ
が 成 り立つ こ
よ ら な い こ と を使 え ば,上
*2 本 書 は ガ ウ ス単 位 系 を用 い て い る
算 子 ∇=∂/∂r
.SI単
位 系('を
の運動方程式 は
つ け る)に
(Aも 同 様), ー レ ン ツ 力 はe'(E'+υ ×B'),ま
す る に は の置 きか えをす た(2.1.43)は
と書 き直 さ れ る.し たが っ て電 磁 場 中 の荷 電粒 子 の 運 動 に た い す る一 般 化 ポ テ ン シ ャ ル とラ グ ラ ン ジ ア ン は
(2.1.44)
(2.1.45) で 与 え られ る.
2.1.5 ラ グ ラ ン ジ ア ンの ゲ ー ジ変 換 な お,系
の運 動 を決 定 す る の は ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 で あ るが,所 与 の 運 動 方
程 式 を与 え る ラ グ ラ ン ジ ア ン は,必 ず し も一 意 的 に は決 ま らな い. い ま,ラ
グ ラ ン ジ ア ンLと
が
の 意 味 で 同 一 の ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 を与 え る とす る.こ こ で は 方 程 式 と して 同 一
,し た が っ て任 意 の 初 期 条 件 に た い して 同一 の解 を与 え る こ とを要 求 して い
るの で あ るか ら,そ の ため に は恒 等 的 に
す なわ ち
を,す
べ て のiに
た い し て 満 た さ な け れ ば な ら な い.こ
を 含 ん で い な い こ と に 注 意 す れ ば,こ kに
た い し て
の 形 を し て い る.こ
の 式 が 成 り立 つ た め に は,す
で な け れ ば な らず,し
れ よ り
こ でLもL'も{qk} べ て のiと
たが って Ω は一般 に
と な り,Ω が 満 た す べ き上 記 の 条 件 式 に代 入 して
しか る に一 般 化 座 標{qi}の
間 に は 拘 束 条 件 が な い か ら,こ の た め に は かつ
と な ら な け れ ば な ら ず,し
と な る 関 数 Λ(q,t)が
た が っ て ポ ア ン カ レ の 補 題(§1.6.6)よ
存 在 す る.そ
し て,こ
り
れ を 用 い て Ω とL'は
(2.1.46) と 表 さ れ る.逆 Ei[L']=Ei[L]が
に Ω が こ の 形 を し て い れ ば,Λ 成 り立 つ.す
な わ ち,ラ
が どの よ う な関 数 で あ って も
グ ラ ン ジ ア ン は(q,
t)の 任 意 の 関 数
の 全 導 関 数 だ け 不 定 で あ る. こ の 変 換
を ラ グ ラ ン ジ ア ン の ゲ ー ジ 変 換(gauge
transformation)と 変 で あ る.そ
い う.ラ
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は こ の ゲ ー ジ 変 換 に た い して 不
の 意 味 でLとL'は
等 価 な ラ グ ラ ン ジ ア ン と い わ れ る.
電 磁 場 中 の 荷 電 粒 子 の ラ グ ラ ン ジ ア ン(2.1.45)の け ば,ラ
場 合,Λ=(e/c)xと
お
グ ラ ン ジ ア ンの ゲ ー ジ変 換 は
(2.1.47) と表 され る.そ れ ゆ え この 変 換 は,電 磁 ポ テ ン シ ャル の 変 換
(2.1.48) と 考 え る こ と も で き る.こ は(2.1.43)に
の 変 換 に よ り電 磁 場(E,B)自
体 が変 わ らない こ と
直 接 代 入 す る こ と に よ り簡 単 に 見 て と れ る.電
の こ の 変 換(2.1.48)を
電 磁 場 の ゲ ー ジ 変 換 と い う.
磁 ポ テ ン シャ ル
例2.1.1
ラー モア の定理
一 様 で 弱 い 磁 場B=(0,0,B)の
中 で の 荷 電 粒 子(m,e)の
ル ・ポ テ ン シ ャ ル はA=B×r/2,し
運 動 を 考 え る.ベ
ク ト
たが って ポテ ンシャル は
(2.1.49) で 与 え られ る(U0は
磁 場 に よ る以 外 の 力 の ポ テ ン シ ャ ル).こ
運 動 量 ベ ク トル(擬 ベ ク トル)で あ る.こ の 回転 系 で 見 る.(2.1.36),(2.1.37)を
と 表 さ れ る か ら,回
の 運 動 をBに 使 え ばMの
こ に
平 行 なz軸
は角
ま わ りの 角 速 度 ω
第3成 分 は
転 系 で の ポ テ ン シ ャ ル と し て は(2.1.41)を
使 っ て
(2.1.50) が 得 られ る.し
た が っ て と くに 角 速 度
で 回転 して い る座 標 系 で 見 る な ら ば,こ
と な り,磁 場 が 弱 くてB2の
の ポテ ンシ ャルは
項 を 無 視 で き る近 似 で は磁 場 の 影 響 は 消 去 さ れ,粒
磁 場 が 働 い て い な い か の よ う に 振 る 舞 う.こ rem)と
(2.1.51)
ラー モア角速 度)
(電 子 では
れ を ラー モ ア の 定 理(Larmor's
子は theo
い う.回 転 系 で 見 た ロー レ ン ツ力
(2.1.51)の
場 合,コ
が,
リ オ リ力2mω(η,-ξ,0)に
よ っ てBの1次
の項 ま で打 ち 消 さ
れ る の で あ る.
例2.1.2
剛体 の回 転の 方程 式
剛 体 は,そ
の 中 の 任 意 の2点
間 の 距 離 が 時 間 に よ ら ず 一 定 の 物 体 と定 義 さ れ る.
平 た く い え ば ど れ だ け 力 を 加 え て も変 形 し な い 物 体 を指 す.も は 存 在 し な い 数 学 的 抽 象 で あ るが,現 か ぎ りで,そ
ち ろん これ は現 実 に
実 の物体 が 十分 に 堅 くその 変 形 が 無視 しう る
の 記 述 に と っ て有 効 な 概 念 で あ る.
剛 体 を相 互 の 配 置 を変 化 させ な い 質 点mα い る場 合 を考 え る.い トル をrα とす れ ば,剛
の 集 合 と見 な し,そ の1点
が 固定 されて
ま そ の 固 定 点 を 原 点 とす る座 標 系 を と り,質 点mα
の位 置ベ ク
体 の 原 点 ま わ りの 角 運 動 量 は
(連 続質 量分布 では そ れ ゆ えmα に 働 く外 力 をFα,ま
),
(2.1.52)
た 剛 体 内 の 他 の 質 点mβ か ら の 力 をfαβと して
(2.1.53) 左 辺 は 力 の モ ー メ ン トの 和 で あ る.こ
こに,粒
子 間 の 力 に つ い て は,作
法 則 の他 に 中心 力 で あ る と仮 定 す れ ば,
と な る こ と を使 っ た.す
用 ・反 作 用 の
が 成 り立 つ の で
な わ ち 固 定 点 の ま わ りの 剛 体 の 回 転 は,そ
の 点 の ま わ りの
外 力 の モ ー メ ン トだ け で決 定 され る(力 の モ ー メ ン トは擬 ベ ク トル で あ る). 剛 体 が 任 意 の 運 動 を して い る と き に も,次 の よ う に 考 え れ ば 同 様 に 扱 え る. 空 間 に 固 定 し た 座 標 系 で 見 た と き の 剛 体 の 重 心(質
量 中 心)の 位 置 ベ ク トル をR,
重 心 か らmα ま で ベ ク トル をrα とす る な ら ば
(2.1.54) で あ り,そ れ ゆ え 剛体 の 全 運 動 量 と その 変 化 は
(2.1.55) (2.1.56) で 表 さ れ る.作
用 ・反 作 用 の 法 則 よ り
ゆ え,こ れ は
(2.1.57) とな り,し た が っ て重 心 の 運 動(並
進 運 動)は,す
べ て の 質 量 とす べ て の 外 力 の 作 用
点 が 重 心 に 集 中 し た と き の 質 点 の 運 動 と同 一 で あ り,重 心 の ま わ りの 剛 体 の 回 転 と ま っ た く無 関 係 に 決 定 さ れ る. 他 方,剛 る.こ
体 の 重 心 ま わ りの 回 転 を 重 心 に 原 点 を持 ち重 心 と と も に 動 く座 標 系 で 見
の と き重 心 が 加 速 度Aを
質 点 に は 慣 性 力-mαAが でmα
もつ な らば,こ
の 座 標 系 は 非 慣 性 系 で あ る か ら,各
働 く もの と し な け れ ば な ら な い が,こ
の 位 置 ベ ク トル はrα で あ るか ら(2.1.54)が
成 り立 ち,角
の場 合 は重 心 が原 点 運動 量 の方程 式は
(2.1.58) と な り,上 の(2.1.53)式
と同 一 の 式 が 得 ら れ る.つ
ま り任 意 に 運 動 して い る 剛 体 で
も,重 心 に た い して は あ た か も固 定 点 で あ る か の よ うに 扱 って よ い. こ の よ う に 重 心 に 着 目す れ ば,重
心 の 運 動 と重 心 ま わ り の 回 転 運 動 を ま っ た く別
個 に 扱 う こ とが で き る.ち な み に こ の 剛 体 の 運 動 エ ネ ル ギー は
(2.1.59) と な り,や
は り重 心 運 動 と重 心 ま わ りの 回 転 運 動 の 和 に 分 離 さ れ る.
そ こ で 以 下 で は,固
定 点 の ま わ りの 剛 体 の 回 転 運 動,な
い し任 意 に 運 動 し て い る
剛 体 の 重 心 ま わ り の 回転 運 動 を,固 定 点 な い し 重 心 を 原 点 とす る 座 標 系 を 用 い て 同
一 に 論 じ る こ とに す る . こ の と き原 点 か ら各 質 点 ま で の 距 離 は 一 定 で あ る か ら
で あ り,し た が っ て あ る ベ ク トル ωαが あ り,各 質 点 の 速 度 ベ ク トル を
と表 す こ とが で き る.さ
ら に 原 点 か ら 見 た任 意 の2点
間 の角 度 も一 定 ゆ え
で あ るか ら,ど
の 質 点mα の 速 度 も す べ て の 質 点 に 共 通 な ω を使 っ て
と表 さ れ る.そ
こ で と く にr=κ
(2.1.60) し て は υ=ω ×r=0で
ω と い う点(κ は 定 数)を
あ る か ち,ω
考 え る と,そ
の 向 き は 回 転 軸 に 一 致 し て い る.さ
の な す 角 が α≠0で あ る 任 意 の 点 に た い し て│υ│=│ω×r│=│ω││r│sinで す な わ ち│ω│は 回転 角 速 度 の 大 き さ で あ り,結 局,ω
の点 に た い ら にrと
ω
あ る か ら, が剛体 の 回
転 角 速 度 ベ ク トル で あ る こ とが わ か る(図2.1.3).
図2.1.3 角 速 度 ベ ク トル と剛 体 内 の 点 の 速 度
こ の ω を使 えば,角
運 動 量は
(2.1.61) と書 き直 され る.こ
れは テ ンソル
(2.1.62)
と角 速 度 ベ ク トルω=t(ωx,ωy,ωz)を
用 い て(テ
ン ソ ルIに
掛 け られ る ときに は ω
は 縦 ベ ク トル を表 す もの と し て),縦 ベ ク トル で
(2.1.63) と表 さ れ る.こ ルIを
の テ ン ソ ルIを
慣 性 テ ン ソ ル(inertial
tensor)と
い う(慣 性 テ ン ソ
単 位 行 列 と混 同 しな い よ う).
他 方,こ
の 剛 体 の 回転 の 運 動 エ ネ ル ギー は 同様 に
(2.1.64) と表 さ れ る(tω は ω を転 置 し た横 ベ ク トル). 上 の 慣 性 テ ン ソ ル の 成 分 表 示 で は,固 る 座 標 系 は 任 意 で あ る.し 量 で あ るか ら,と
くに 剛 体 に 固 定 さ れ た(剛 体 と と も に 回転 す る)座 標 系 で 表 し た と
き を別 に す れ ば,一 る.そ
定 点 を 原 点 に と っ て い る こ と以 外 は 使 用 す
か し こ の テ ン ソ ル 成 分{Iij}は 剛 体 内 の 質 量 分 布 で 決 ま る
般 の座 標 系 では 剛体 の運 動 と ともに この テ ン ソル成 分 は変 化 す
こで 以 下 で は 剛 体 に 固定 さ れ た座 標 系 で考 え る.
そ の と き,こ
の 行 列(Iij)は 各 成 分 が 一 定 の 対 称 行 列 で あ り,対 角 化 可 能 で,そ
固 有 値(A,B,C)が
対 角 成 分 に な る.固 有 値(A,B,C)が
の
す べ て 異 な る と き に は,対
応 す る 固有 ベ ク トル は 直 交 し,そ の 固有 ベ ク トル の 方 向 を 剛 体 の 慣 性 主 軸(princi pal axis
of inertia),そ
inertia)と
し て(A,B,C)を
い う(A,B,Cに
主 慣 性 モ ー メ ン ト(principal
moment
等 し い も の が あ る と き(縮 退 し て い る と き)も,三
固 有 ベ ク トル を す べ て 直 交 す る よ うに 選 ぶ こ とが で き る の で,以
of つの
下 の議論 は変 わ ら
な い). そ こ で 剛 体 に 固 定 さ れ た 座 標 系 の(x,y,z)軸 す る.そ
うす れ ば,角
を こ の 慣 性 主 軸 の 方 向 に と る こ とに
運動 量 は
(2.1.65) 運動 エ ネル ギー は
(2.1.66) で 表 され る(な お(A,B,C)の
そ れ ぞ れ を,(x,y,z)の
各 軸 ま わ りの 主 慣 性 モ ー メン
トで あ る と い う こ と を は っ き り させ る た め に(Ix,Iy,Iz)と 剛 体 の 各 瞬 間 の 配 位 は,剛
体 固 定 系(慣 性 主 軸 の 方 向 を 向 い た(x,y,z)軸)が
と原 点 を共 有 す る 空 間 固 定 系((X,Y,Z)軸 表 さ れ る.す
な わ ち 図2.1.4の
ら にz軸
それ
とす る)に た い して 各 瞬 間 に と る 方 向 で
よ う に 空 間 系 のZ軸
の ま わ りの 角 φの 回 転 でX・Y
軸 が ξ・Y'軸 に 移 り,ξ 軸 の ま わ りの 角 θの 回 転 でZ軸 η軸 に 移 り,さ
記 す こ と も 多 い).
が 剛 体 系 のz軸
の ま わ り の 角 ψ の 回 転 で ξ・η軸 がx・y軸
こ の 三 つ の 角(φ,θ,ψ)で 剛 体 の 配 位 は指 定 され る.こ
にY'軸
が
に 移 る とす れ ば,
れ ら の 角 の と り う る範 囲 は
図2.1.4
オ イラ ー角 の 定 義 (X,Y,Z)は
空 間 固定 系
(x,y,z)は 剛 体 固 定 系
(2.1.67) で あ る(た だ し θ=0と
θ=π で は φ と ψ は 一 意 的 に は 決 ま ら な い).こ
の 組 を オ イ ラ ー 角(Eulerian
angles)と
い う*3.
空 間 系 か ら 剛 体 系 へ の 回転 は 要 す る に3次 を表 す 配 位 空 間 は3次
の三 つ の角
元 空 間 の 回 転 で あ るか ら,剛
体 の 回転
元 回 転 群 の 要 素 が 作 る 空 間 で あ る と い っ て も よ い.そ
して オ
イ ラー 角(φ,θ,ψ)は そ の 空 間 の 局 所 座 標 系 で あ る(「 局 所 」 と い うの は,θ=0の
点
と θ=π の 点 が 除 か れ て い るか ら で あ る). こ の オ イ ラー 角 を用 い れ ば,剛
で 表 さ れ る.こ
は そ れ ぞ れZ軸
こ にex,ey,ezは
体 の 回転 角 速 度 ω は,図
そ れ ぞ れx,y,z軸
よ り明 ら か な よ う に
方 向 の 単 位 ベ ク トル,他
方 向 と ξ 軸 方 向 の 単 位 ベ ク トル で あ る.こ
方
れ よ り,回 転 角 速 度 ω の
剛 体 系 で の 成 分 は 次 の よ う に 表 され る:
(2.1.68a) (2.1.68b) (2.1.68c) 以 上 よ り,剛 体 に 働 く外 力 の ポ テ ン シ ャ ル をU(φ,θ,ψ)と
す れ ば,そ
の ラグ ラ ン
ジア ンは
(2.1.69) *3 オ イ ラ ー 角 は 1959新
,本
版1983),
書 の と り方(H. Goldstein『 古 典 力 学 』 野 間 進 ・瀬 川 富 士 訳(吉 岡 書 店 L. D. Landau and E. M. Lifshitz『 力 学 増 訂 第3版 』 広 重 徹 ・水 戸 巌 訳
(東 京 図 書1974))の
他 に,2回
学 』(岩 波 書 店1941増 岡 書 店1989))が
目 の 回 転 をY'軸
訂 第3版1959),
あ る の で 注 意.
の ま わ り に と る 流 儀(山
J.J. Sakurai『
内恭 彦
『一 般 力
現 代 の 量 子 力 学 』 桜 井 明 夫 訳(吉
で 与 え ら れ る.そ を 与 え る.ラ
し て これ に た い す る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 が,剛
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は,用
に す る こ とな く扱 え るの で,こ
体 の 回転 の方 程 式
い て い る 座 標 系 が 運 動 し て い る か ど うか を 気
の よ う な 場 合 き わ め て 有 効 で あ る.
運 動 方 程 式 を角 速 度 ベ ク トル の 成 分 で 表 す ため に は,次
の よ うに す れ ば よ い.
上 の ラ グ ラ ン ジ ア ン に た いす る ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 の 第3成 分 は
とな る.こ
こ でz軸
ま わ りの 微 小 角 度 δψの 回 転 に と も な う変 化 と し て δψ の1次
で とれ ば
と な り,こ ば,こ
ま
で あ るか ら
こ に
が 力 の デ カ ル ト成 分 で あ る こ と を 考 慮 す れ
の 量 は 力 の モ ー メ ン トのz成
分 で あ る.そ
れゆ え上式 は ωの成 分 を用 いて
(2.1.70) と表 さ れ る. x,y,zに
つ い て 完 全 に 対 称 で あ る か ら,第1成
ま っ た く同 様 の 式(例2.4.1,
(2.4.33)式
い て の オ イ ラ ー 方 程 式(Euler
equation)と
の 直 接 的 な 導 き方 は例2.4.1で
述 べ る.
2.2
2.2.1
第1積
分 に つ い て も 第2成
い う.こ の 方 程 式 の ラ グ ラ ン ジ ア ンか ら
対 称 性 と保 存 則
分
力 学 の 問 題 を 解 く こ と は,つ
ま る と こ ろ 系 の 状 態 の 時 々 刻 々 の 変 動 を 知 る,
つ ま り与 え ら れ た 初 期 条 件 の も と で の 運 動 方 程 式(ラ q={qi(t)}を
求 め,状
解
の 点 の 軌 跡 を 経 路(path)と
か した とえ この よ う な意 味 で の 運 動 の 厳 密 な 時 間 的 追 跡 が 不 可 能 で
あ っ て も,経
路 が 状 態 空 間 の どの 部 分 空 間 に 限 定 され る のか が わ か る だ け で も
運 動 に つ い て 重 要 な 情 報 が 得 ら れ,運 う.少
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式)の
態 空 間 上 で の 系 の位 置 を表 す 点 が 時 間 と と もに どの よ う
に 動 い て ゆ くの か を 決 定 す る こ と と い え よ う.そ い う.し
分 につ い て も
参 照)が 得 られ る.こ れ を剛 体 の 回 転 に つ
動 の か な りの 特 徴 が 明 ら か に な る で あ ろ
な く と も 自 由 度 の 少 な い よ り簡 単 な 問 題 に 還 元 さ れ た こ と に な り,目
的
に よ っ て は そ れ だ け で 十分 な場 合 もあ る. こ の よ う な 限 定 は数 学 的 に は,系 程 式Ei[L]=0を
満 た す(q,q)に
の運 動 に そ っ て,す
なわち ラグランジュ方
た い して,関 係
(2.2.1) が 成 り立 つ とい う形 で与 え られ る.こ の よ う な 関係 を求 め る た め に は,運 動 方 程 式 を用 い て
(2.2.2) とい う形 の 式 を作 り出 せ ば よ い.力
学 で は こ の 保 存 量I(q,q,t)を
第1積
分
(first integral)と
い う.運 動 方 程 式 が2階 の 微 分 方 程 式 で あ る の に ひ きか え,
式(2.2.1)は1階
の 微 分 方 程 式 を与 え,そ の 意 味 で す で に 一 度 積 分 され た も
の に な って い るか ら で あ る.そ 一 つ の(1価
な)第1積
して こ の(2.2.1)の
関 係 を保 存 則 とい う.
分 は状 態 空 間 内 の 一 つ の 超 曲 面 を決 定 し,第1積
分
が 複 数 個 存 在 す る と き,運 動 は それ らで 決 ま る複 数 個 の 超 曲面 の 交 わ りよ りな る部 分 空 間 に 限 定 さ れ る.つ ま りそ の部 分 空 間上 の 点 を初 期 条 件 とす る経 路 は そ の部 分 空 間 か ら 出 る こ とは な い.そ れ れ ば,経
して この よ うな 関 係 が 十 分 な数 だ け得 ら
路 は 一 意 的 に決 定 され る.し た が っ て,力 学 の 問題 を解 くこ と は,
必 要 な 数 だ け の 第1積 分 を求 め る こ とで あ る とい って もよ い. もち ろん 現 実 に ど の よ うに して,ま
た どれ だ け 第1積 分 が作 られ るか は,与
え られ た 問 題 自体 の 性 質 だ け で は な く,用 い る座 標 系 に も左 右 され る.も っ と も簡 単 に 見 て 取 れ る例 と して,ラ 分qnを をn番
グ ラ ン ジア ンLが
一 般 化 座 標 のn番
目の成
陽 に 含 ま な い 場 合 を考 え る(座 標 成 分 の順 序 づ け は任 意 だ か ら,そ れ 目に と る).そ の とき,こ の座 標 成 分 に対 応 す る ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 は
(2.2.3) と な り,こ
れ よ り た だ ち に 一 つ の 第1積
分
(2.2.4) が 得 られ る.定 数 αnは初 期 条 件 か ら決 定 さ れ る.
2.2.2 一 般 化 運 動 量 とそ の保 存 この 式(2.2.4)の
左 辺 の偏 導 関 数 は,一 般 に―
で な い とき に も―
解 析 力 学 に お い て き わ め て 基 本 的 で 重 要 な 役 割 を果 た す
の で,と
保 存 量 で あ る と き もそ う
くに
(2.2.5) と 表 し,こ
のpiを
(generalized
一 般 化 座 標 成 分qiに
momentum)と
共 役(conjugate)な
一 般 化 運 動 量
呼 ぶ*1.
3次 元 ユ ー ク リ ッ ド空 間 に お け る1質 き の ラ グ ラ ン ジ ア ン(2.1.31)に
点 の 運 動 を デ カ ル ト座 標 で 記 述 し た と
お い て は,こ
の一 般 化 運 動 量
(2.2.6) は 初 等 力 学 の 運 動 量 と 一 致 す る(以 のmrを
線 運 動 量(linear
下 で は,一
momentum)と
ン ジ ア ン を極 座 標 で 表 せ ば(2.1.34)の
般 化 運 動 量 と 区 別 す る た め,こ
呼 ぶ).し
か し この 同 じ系 の ラ グ ラ
よ う に な り,方
位 角 φ に共 役 な 一 般 化
運動量 は
(2.2.7) と な る.こ
れ は 角 運 動 量(angular
ま た,ベ
ク トル ・ポ テ ン シ ャ ル がAで
m,電
荷e)の
が っ てrに
運 動 の 場 合,ラ
momentum)のz成
分 で あ る.
表 さ れ る 電 磁 場 中 で の 荷 電 粒 子(質
グ ラ ン ジ ア ン は(2.1.45)で
与 え ら れ る.し
量 た
共 役 な一 般 化 運 動 量 は
(2.2.8) と な り,こ
れ は 通 常 の 線 運 動 量 と は 一 致 し な い.こ
の よ う に,一
般 化運動量の
形 や 次 元 や 初 等 力 学 的 な 意 味 は 用 い る座 標 系 に よ っ て 異 な る の み な ら ず,相 作 用 や 力 の 場 の 種 類 に よ っ て も異 な る.し
か し一 般 化 運 動 量 は,そ
互
う い っ た個
別 的 ・具 体 的 な 例 に お け る 意 味 上 ・表 現 上 の 相 違 を 越 え る 重 要 性 を もつ. そ し て 上 述 の 保 存 則(2.2.4)は,ラ *1 一般 化 運 動 量piはqとqの
グ ラ ン ジ ア ン に 陽 に含 まれ な い座 標 成
関数 で あ るか ら ,以 下 で は そ の こ と を と くに 明示 し た い と き に は,こ の よ うにpi(q,q)と 書 い た り,pLiと 添字Lを つ け た り,あ るい は,も っ と は っ き りpi=φi(q,q)の よ うに 書 く.
分 に共 役 な一 般 化 運 動 量 が 第1積 分 で あ る こ と を表 し て い る.ラ グ ラ ン ジア ン に含 ま れ な い この よ う な座 標 を循 環 座 標(cyclic
coordinate)と
い う(そ の 命
お い て,座 標 成 分xが
ポ テ ン シャル
名 の 由来 は §8.2.1で 述 べ る). た と え ば ラ グ ラ ン ジ ア ン(2.1.31)に U(r)に px=mxは U(r)が
陽 に 含 まれ な い と きxは 循 環 座 標 で あ り,そ れ と共 役 な線 運 動 量 成 分 保 存 され る.ま た ラ グ ラ ン ジ ア ン(2.1.34)に
お いてポ テン シャル
方 位 角 φ を 含 ま な い と き φは 循 環 座 標 で あ り,共 役 な 角 運 動 量 成 分 は保 存 さ れ る.
もち ろ ん,循 環 座 標 が 複 数 個 あ れ ば 同様 の保 存 量 が 循 環 座 標 の 数 だ け得 られ る.た だ し循 環 座 標 の 数 は座 標 系 の 選 び 方 に よ って 異 な る.た
とえば ポテ ン
シ ャ ル が 回 転 対 称 で あ っ て も,デ カ ル ト座 標 系 を使 え ば循 環 座 標 は な い.し か しラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 は任 意 の 点 変 換 に た い して 共 変 的 で あ るか ら,問 題 を解 く とい う立 場 か らは,で
き るだ け 多 くの 座 標 が循 環 座 標 に な る よ うに座 標 系 を
選 ぶ の が望 ま しい.
2.2.3 系 の 対 称 性 と保 存 則 循 環 座 標 で あ る こ との 意 味 を い ま少 し考 え て み よ う.qnの もqnは
変 わ ら な いか ら,qnが
原 点 をず らして
循 環 座 標 で あれ ば ラ グ ラ ン ジ ア ンは 変 換 (2.2.9)
に た い して 不 変 で あ る.こ の と き,そ の ラ グ ラ ン ジ ア ン で 表 され る系 は,そ 変 換(つ
ま りそ の 方 向 へ の移 動)に 関 して対 称 性 を もつ とい う.た
ラ ン ジ ア ン がxを
陽 に含 ま な い と き に は,系
対 称 性 を もつ.同 様 に,ラ
はx方
の
とえ ば ラ グ
向へ の平行移 動 に関 して
グラ ン ジ ア ン が 方 位 角 φ を含 ま な い と き に は,系
は 第3軸 の ま わ りの 回 転 に 関 して 対 称 性 を もつ.そ
し て そ の い ず れ の 場 合 も,
そ の そ れ ぞ れ の 座 標 に 共 役 な 運 動 量 が 保 存 され て い る. とす れ ば保 存 則 の 存 在 は,変 換 に た い す る ラ グ ラ ン ジ ア ンの 不 変 性,つ 系 の対 称 性 と密 接 に 関 係 して い る こ とが 予 想 され る.実 際,た ジ ア ン(2.1.31)
(2.1.34)に
お い て,ポ
テ ン シ ャ ル がr=│r│の
まり
とえ ば ラ グ ラ ン み の 関 数 で方
向 に まっ た くよ らな い とす る.こ の と き系 は どの 軸 の ま わ りの 回転 に 関 して も 対 称 性 を も ち,し た が っ てz軸
の か わ りにx,yの
各 軸 の ま わ りの 回 転 角 を方
位 角 と と る こ と で,上 の 角 運 動 量 のz成
分 の保 存 の議論 が すべ ての軸 にた い
して 適 用 さ れ る.そ れ ゆ え こ の 場 合,循 環 座 標 に共 役 な 運 動 量 で は な い け れ ど も
(2.2.10a) (2.2.10b) の そ れ ぞ れ が(2.2.7)以
外 に 第1積
分 と な る.し
たが ってまた
(2.2.11) も第1積 分 で あ る. こ の よ うに,第1積
分 が 存 在 す るか ど うか は,本 来 的 に は 循 環 座 標 の有 無 に
よ るの で は な く,系 の 対 称 性 の有 無 に よ る.循 環 座 標 の 存 在 は 対 称 性 の特 別 な あ らわ れ で あ る が,た
と え循 環 座 標 が な く と も系 は 対 称 性 を も ち う る の で あ
る. こ の 対 称 性 と保 存 則 の 関 係 は 次 の よ うに一 般 的 に証 明 され る. 配 位 空 間N上
の 点Q=qに,連
続 な パ ラ メー タ λ∈Rを
もち,恒
等変換 と
連 続 的 に つ な が っ て い る変 換
(2.2.12a)
(た だ し ) を施 した と き,こ れ に よ り配 位 空 間 上 に 点Qを こ の 曲 線 の 点Qで
の 接 ベ ク トル は,N上
を 用 い,
始 点 とす る 曲 線 が 描 か れ る.
の 任 意 の 関数hの
方 向微 分
と して
(2.2.13) と表 さ れ る.さ で,N上
らに こ こ で 点QをN上
の す べ て の 点 に く ま な く動 か す こ と
の ベ ク トル 場
(2.2.14) が得 られ る. そ して この 配 位 空 間N上
の変 換(2.2.12)か
ら状 態 空 間TN上
の変換
(2.2.12b) お よ び,状 態 空 間 上 のベ ク トル 場
(2.2.15) が 自 然 に 導 か れ る.し
た が っ て 配 位 空 間 の 変 換(2.2.12a)に
ン ジ ア ン の 変 化 率 は,uλ
と もな う ラ グ ラ
の 積 分 曲線 に そ っ た 方 向微 分
(2.2.16) で 表 さ れ,こ れ よ り次 の恒 等 式 が 得 られ る:
(2.2.17) さて,系
が 変 換 Φ に関 して対 称 性 を も ち,し た が っ て 変 換 Φ が 状 態 空 間上
に 導 く変 換 Φ に た い して ラ グ ラ ン ジ ア ン が 不 変 に保 た れ る,す な わ ち
(2.2.18) が 成 り立 つ と す る*2.こ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式E[L]=0を
の と き(2.2.17)よ
り 運 動 の 経 路 に そ っ て,つ
満 た す(q,q)に
ま りラ
た い して 関 数
(2.2.19) は 一 定 で あ る.こ と い う*3.ま
の 関 数F(q,q)を
モ ー メ ン ト 関 数(momentum
function)
とめ る と
系 が 配 位 空 間 上 の 変 換 Φ に 関 し て 対 称 性 を も ち,そ
れ ゆ え そ こ か ら 自然
に 導 か れ る状 態 空 間 上 の 変 換 Φ に た い して ラ グ ラ ン ジ ア ン が 不 変 に保 た れ る と き,対
応 す る モ ー メ ン ト関 数 は 第1積
分 で あ る.
こ の 命 題 を ネ ー タ ー の 定 理(Noether's
theorem)と
で あ り,
ー タ ー の 定 理 で は,恒
*2 一般 の 点 変 換
ゆ え,ネ
(逆変 換Q〓q=φ(Q))に
い う.Φ(λ=0;q)=id. 等 変 換 の近 く
と も な い ラ グ ラ ン ジア ン は
に変 換 され る((2.1.24)∼(2.1.27)). と くに す な わ ち の とき,ラ グ ラ ン ジア ン は この 変 換 に た い して 不 変(invariant)と い わ れ る. *3 モ ー メ ン ト関 数F(q ,q)は モー メ ン ト写 像(momentum map)と もい わ れ る.そ の わ け はp. 347脚 注4参 照.
(無 限小 変 換)で
の不 変 性 だ け か ら保 存 量 が 得 られ て い るの で あ る.
ネ ー ター の 定 理 は さ らに 一 般 的 な 形 に 拡 張 で き る.そ の 点 に つ い て は 後 節 (§3.2)で あ ら た め て 論 ず る こ とに し,こ こ で は 二 つ の例 を挙 げ て お く. 3次 元 ユ ー ク リ ッ ド空 間 内 の 質 点 系 の 運 動 で,系 が 単 位 ベ ク トルnの
方向の
平 行 移 動 に 関 して 対 称 性 を もつ とす る.こ の 対 称 変 換 は
(2.2.20) (た だ しrα=(x1α,x2α,x3α),α mx2α,mx3α)と
し て,モ
は 粒 子 番 号)で
あ る.そ
れ ゆ えpα=(mx1α,
ー メ ン ト関 数 は
(2.2.21) とな り,こ れ が 第1積 分 とな る.こ れ は 全 線 運 動 量P=Σ に他 な らな い.も
同様 に,質
向成 分
ち ろ ん 系 が どの 方 向 の平 行 移 動 に 関 して も対 称 で あ れ ば,運
動 量 の すべ て の成 分 が 保 存 す る.た ン シ ャ ル がU(│r
αpαのn方
とえ ば 中 心 力 に よ る2体 相 互 作 用 で,ポ テ
1-r2│)で 表 さ れ る場 合(後 述 例2.2.2)で
点 系 が 単 位 ベ ク トルnの
あ る.
方 向 を 向 い た軸 の ま わ りに 回 転 対 称 と
す る.こ の 対 称 変 換 Φ を微 小 回転 角 θの場 合 に θの1次
まで 表 す と
こ れ は 成 分 で 表 して
(2.2.22) と な る.そ
れ ゆ え こ の 場 合 の モ ー メ ン ト関 数 は
(2.2.23) とな り({εijk}は エ デ ィ ン トン の ε),こ れ は全 角 運 動 量M=Σ
αrα ×pα のn
方 向 成 分 に他 な ら な い(角 運 動 量 は 擬 ベ ク トル で あ る).も ち ろ ん 系 が 完 全 に 回転 対 称 で あ れ ば,nは
任 意 で あ るか ら,そ の と きに は角 運 動 量 の す べ て の 成
分 が 保 存 す る(対 称 性 と保 存 則 の 関 係 に つ い て,群 論 を 用 い た 議 論 は §6.3, §6.4で 論 ず る).
2.2.4 ハ ミル トニ ア ン とエ ネル ギ ー 積 分 空 間 の 平行 移 動 に 関 す る対 称 性 か ら運 動 量 の 保 存 が 導 か れ る.「 時 間 の 平 行 移 動 」 に 関 す る対 称 性 か ら得 られ る保 存 則 は,次 の よ うに考 えれ ば よい.
恒 等式
(2.2.24) が 成 り立 つ の で
(2.2.25) と こ ろで 時 間 の平 行 移 動
(2.2.26) に 関 す る 対 称 性 と は,物 え 初 期 値q(t0),q(t0)が
理 的 に は 拘 束 条 件 や 外 力 が 時 間 に 陽 に よ ら ず,そ 同 一 で あ れ ば,系
の 運 動 を す る こ と で あ り,数
動 開 始 時 刻t0に
学 的 に は ラ グ ラ ン ジ ア ン がtを
と い う こ と で あ る.そ り ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式Ei[L]=0を 右 辺 は0,し
は,運
れ ゆ
よ ら ず,同
陽 に 含 まな い
れ ゆ え こ の と き 運 動 の 経 路 に そ っ て,つ 満 た す(q,q)に
た い し て,(2.2.25)式
た が っ て 上 式 の 左 辺 括 弧 内 は 一 定.こ
う し て 第1積
一
ま の
分
(2.2.27) が 得 ら れ る.一
般 に こ の 関 数,つ
ま り
(2.2.28) を ハ ミ ル トニ ア ン(Hamiltonian)と Lがtに き,HLが
陽 に よ ら ず,し 第1積
名 づ け る*4.
た が っ て ハ ミル トニ ア ンHLもtに
分 に な る と い う の が(2.2.27)の
陽 に よらな い と
主 張 で あ る.こ
の 場 合 を保
存 系 と い う. 一 般 に 系 の 運 動 エ ネ ル ギ ー は(2.1.13)す
*4 厳 密 に い え ば q=ψ(q,p,t)を
,ハ
なわ ち
ミ ル トニ ア ン と は,HL(q,q,t)のqに(2.2.5)を
代 入 し た,(q,p,t)を
解 い て得 られ る
変 数 とす る関数
を 指 す(§4.1.2(4.1.14)式).本 書 で は 用 い て い る変 数 の こ の 違 い を 添 字Lで 表 す が, ど ち ら もハ ミ ル トニ ア ン と呼 ぶ.な お 時 間(t)を 座 標 の 第0成 分q0と 扱 う拡 大 配 位 空 間 で 見 れ ば,q0=tと ハ ミル トニ ア ン の 符 号 を 変 え た も のp0=-HLの 関 係 が 一 般 化 座 標 と一 般 化 運 動 量 の 関 係 と 同 様 の 共 役 関 係 に あ り,そ れ ゆ えHLの 保 存(2.2.27)は,前 節の運 動 量 の 保 存 と 同 様,ネ
ー タ ー の 定 理 か ら も 導 か れ る(§3.1.4,
§3.2.2参
照).
の 形 を し て い る.し
た が っ て ポ テ ン シ ャ ルUがqを
含 ま な け れ ば,対
応す る
ハ ミ ル トニ ア ン は
(2.2.29) と な る.た
と え ば 運 動 エ ネ ル ギ ー が(2.1.38)で
ラ ン ジ ア ン に た い し て は,ハ
与 え られ る 回転 座 標 系 の ラ グ
ミル トニ ア ン は
(2.2.30) と表 さ れ る.{}内
の 第2項
回 転 系 で 見 た と き の 第1積 (Jacobi
integral)と
ま た,系
は 遠 心 力 ポ テ ン シ ャ ル に 相 当 す る.こ
の よ うな
分 と し て の ハ ミル トニ ア ン を と くに ヤ コ ビ 積 分
い う.
の 運 動 エ ネ ル ギ ー がqの2次
シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー がqを
同 次 式(bi=0,c=0)で
含 ま な い 場 合,ハ
か つ ポテ ン
ミ ル トニ ア ン は
(2.2.31) と な り,こ の 第1積
れ は 初 等 力 学 で 馴 染 み の 全 力 学 的 エ ネ ル ギ ー に 一 致 す る.こ
分 と し て の ハ ミ ル トニ ア ン を,エ
呼 ぶ こ と も あ る.そ た だ し,ラ
し て 関 係HL=Cを
グ ラ ン ジ ア ンL=T-Uが
う条 件 を 満 た し て い る だ け でTが た と えTがqの2次
ネ ル ギ ー 積 分(energy
の場 合
integral)と
エ ネ ル ギ ー 保 存 則 と い う. 正 しい 運 動 方 程 式 を 与 え る もの とい 系 の 運 動 エ ネ ル ギ ー と解 釈 で き な い 場 合 は,
同 次 式 で あ っ た と し て も,ハ
ミ ル トニ ア ン は 必 ず し も 系
の 全 エ ネ ル ギ ー に は な ら な い. た と え ば2次
元 等 方 性 調 和 振 動 子 で は,二
つ の ラ グ ラ ン ジア ン
(2.2.32) (2.2.33) の い ず れ に た い して も,ラ グ ラン ジ ュ方 程 式 を作 れ ば正 しい 運 動 方 程 式
(2.2.34) が 得 られ る.そ の か ぎ りで は この 二 つ の ラ グ ラ ン ジ ア ンは 等 価 で あ る.し か し こ の そ れ ぞ れ に た いす るハ ミル トニ ア ン は
(2.2.35) (2.2.36) と な り,前 い.も
者 は 確 か に 系 の 全 エ ネ ル ギ ー で あ る が,後
ち ろ ん い ず れ の ラ グ ラ ン ジ ア ン に もtが
陽 に 含 ま れ な い た め,ど
こ の 系 の 保 存 量 で あ る こ とに は 変 わ りは な い.H2Lの の 結 果 か は 後 節(例3.2.2,例6.4.1)で な お,ラ
ち らも
保 存 が どの よ うな 対 称 性
見 る.
グ ラ ン ジ ア ン(2.1.45)で
含 ま れ る が,ハ
者 は エ ネ ル ギー で は な
は,ポ
テ ン シ ャ ル 項 にrの1次
の項 が
ミ ル トニ ア ン は
(2.2.37) とな り,運 動 エ ネ ル ギ ー と静 電 エ ネ ル ギー の和 の 形 を して い るの で,こ
の場 合
の ハ ミル トニ ア ン は エ ネ ル ギー 積 分 で あ る(磁 場 は仕 事 を しな い か ら エ ネ ル ギ ー に 寄 与 し な い).
2.2.5 配 位 空 間 の 簡 約 と 自由 度 の 削 減 循 環 座 標 に 共 役 な 一 般 化 運 動 量 は 第1積 分 で あ り,そ の よ う な第1積 分 が 存 在 す れ ば運 動 空 間 は状 態 空 間 の 部 分 空 間 に 限 定 さ れ る.そ れ ゆ え 自由 度n(状 態 空 間2n次
元)の 系 に お い て ラ グ ラ ン ジ ア ン にqnが
系 の 運 動 は 状 態 空 間 内 のpn(q,q)=αnで
陽 に 含 ま れ な い と き,
定 め られ る(2n-1)次
限定 され る.し か し実 は この と き,系 は(2n-2)次
元超 曲面上 に
元 状 態 空 間上 の 運 動 に還 元
さ れ る の で あ る.(な お,系 の もつ 対 称 性 の 結 果 と し て あ る モー メ ン ト関 数 が 第1積 分 と し て得 られ た と き,そ の モ ー メ ン ト関 数 が あ る循 環 座 標 成 分 に共 役 な一 般 化 運 動 量 とな る よ うに局 所 座 標 系 を選 ぶ こ とが で き る.し たが っ て 以 下 の議 論 は,第1積
分 と して モー メン ト関 数 が一 つ 得 られ る場 合 な らば,は
じめ
か ら循 環 座 標 が 含 ま れ て い る場 合 で な く と もあ て は ま る.) い ま ラ グ ラ ン ジ ア ンが 正 則,つ (2.2.4)を
ま り
とす る.こ の と き
逆 に解 い て循 環 座 標 に対 応 す る一 般 化 速 度 成 分 を
(2.2.38) と 表 す こ と が で き る.そ
こ で,こ
れ を 用 い て も と の ラ グ ラ ン ジ ア ン か らqnを
完全 に消去 した関数
(2.2.39) を考 え る((q)nはqか
が 導 か れ る(こ を表 し,そ
ら 第n成
こ に[…]*は
分 を 除 い た も の).こ
の 関 数 に た い して
内 部 の 微 分 演 算 の 後 にqnに
の と き[∂L/∂qn]*=αn).し
ψnを 代 入 し た も の
たがって
(2.2.40) が 得 ら れ る(表
現 αnψnはnに
つ い て の 和 を 表 さ な い).そ
れ ゆ え関 数
(2.2.41) を定 義 す る な らば,こ れ も ラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式 を満 た す,す
なわち
(2.2.42) こ こ で,も
と の 配 位 空 間 でqnの
し て 得 ら れ る 空 間,数 わ る こ と の で き るN上 間,す
学 的 に い う な ら ば 変 換 の 点 を 同 値 と し て,こ
な わ ちN'=N/∼,お
そ のTN'上
の 同 値 関 係 でNを
割 った商空
考 え る.そ
の と き,
ラ グ ラ ン ジ ア ン とす る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 で
れ ゆ え 系 は,Rを
間,(q1,q2,…,qn-1)を
に よ り移 り変
よ び そ の 接 バ ン ド ルTN'を
で の 系 の 運 動 はRを
決 定 さ れ る.そ
値 だ け が 異 な る二 つ の 点 を 同 一 の 点 とみ な
ラ グ ラ ン ジ ア ン,N'を(n-1)次
元 配位 空
そ の 一 般 化 座 標 とす る 力 学 系 に 還 元 さ れ た こ と に な
る*5. こ の よ う に し て 対 称 性 を も つ 系 の 配 位 空 間 を,第1積 な い 空 間 に 置 き か え る こ と が で き る.こ (reduction),そ
し て こ のRを
ア ン(modified
Lagrangian)と
の 自由度 の 削 減 を配位 空 間 の簡 約
ラ ウ シ ア ン(Routhian)な い う(上
分 の数 だけ次元数の少
に 定 義 し たRの
い し修 正 ラ グ ラ ンジ 符 号 を変 え た もの を
ラ ウ シ ア ン と い っ て い る教 科 書 も 多 い). そ し て こ の ラ ウ シ ア ン に た い す る(n-1)個 *5 この 意味 で ,循 環 座 標 は 無視 し うる座 標(ignorable
の ラ グラ ンジュ方程 式が解 かれ
coordinate)と
もいわ れ る.
た な ら ば,そ
の 解qi(t)(i=1,…,n-1)を(2.2.38)に
が 得 ら れ,qn(t)は
そ こ か ら 単 な る 積 分 で 求 ま る の で あ る.
こ う し て 循 環 座 標 を 一 つ 含 む 系 は,ラ も つ(n-1)自
代 入 す る こ と でqn(t)
由 度 の 系 に 還 元 さ れ る.し
ウ シ ア ンRを
た が っ て すべ て の 座 標 が 循 環 座 標 に
な る よ う な 座 標 系 を 見 い だ す こ とが で き た な ら ば,問 に な る.つ
ラ グ ラ ン ジ ア ン と して
題 は お の ず と解 け た こ と
ま り 力 学 の 問 題 を解 く こ と は す べ て の 座 標 成 分 を循 環 座 標 と す る 座
標 変 換 を 見 い だ す こ と で あ る と い う こ と も で き る.こ
の ア プ ロー チ は正 準 方 程
式 か ら 正 準 変 換 論 へ と発 展 す る 解 析 力 学 の 一 つ の 指 導 原 理 で あ り,ハ ーヤ コ ビ 方 程 式 に お い て 達 成 さ れ る が ,そ 例2.2.1
ミル トン
れ に つ い て は 後 章 で 論 ず る.
軸対 称 な電磁 場 中の荷 電粒 子の運 動
こ の 場 合,対
称 軸 をz軸
Φ(ρ,z),A=(0,Aφ(ρ,z),0)と
とす る 円 筒 座 標(ρ,φ,z)を 用 い る と 電 磁 ポ テ ン シ ャ ル は な り,荷 電 粒 子(m,e)の
ラ グラ ンジア ンは
(2.2.43) で 与 え られ る.こ
の と き φ が 循 環 座 標 で あ り,z軸
ま わ りの 角 運 動 量 成 分
(2.2.44) が 第1積
分 を 与 え る.こ
の 場 合 は 角 運 動 量 に 電 磁 的 な 項 が 含 ま れ て い る.そ
のため
磁 場 が 時 間 と と も に な い し粒 子 の 軌 道 に そ っ て 空 間 的 に 増 加 す れ ば 力 学 的 角 運 動 量 mρ2φ が 減 少 す る.興 味 深 い事 実 で あ る. そ し て こ のM3の
保 存 を用 い れ ば,ラ
ウシア ンは
(2.2.45) と表 さ れ る.3次
元 空 間 中 の 運 動 の(ρ,z)平
シ ャ ル Aφ=0な
面 へ の 射 影 は,ρ 方 向 の 運 動 に ポ テ ン
が 余 分 に加 わ っ た2次 元 平 面 上 で の 運 動 と等 価 で あ る. ら こ の 項 は 遠 心 力 ポ テ ン シ ャ ル を与 え る.
例2.2.2
中心 力 に よ る2体 相 互 作 用
中心 力 に よ り相 互 作 用 をす る2物 体(m1,m2)の
系 の ラグラ ンジ アンは
(2.2.46) 配 位 空 間 はN=R3×R3で ル の 場 合 は,R3×R3か
重心座 標
あ る(Uは ら│r1-r2│=0と
中 心 力 ポ テ ン シ ャ ル,ニ な る 点 を 除 く).こ
,相 対座標
ュ ー ト ン ・ポ テ ン シ ャ
こ で
(2.2.47)
を使 っ て 書 き直 す と,
と し て,簡
単 な計算 で
換算 質量 (2.2.48)
た だ し が 得 られ る.配 位 空 間 の 次 元 は6,状 明 らか にRCM=(X,Y,Z)の
態 空 間 の 次 元 は12で
あ る.
各 成 分 が 循 環 座 標 で あ り,そ れ に 共 役 な 一 般 化 運 動 量
(2.2.49)
定 ベ ク トル が 第1積
分 を 与 え る.こ れ を運 動 量 積 分 とい う.も
う一 度 積 分 して
定 ベ ク トル.
これ を重 心 積 分 とい う.こ の6個
の 関 係 で,状
運 動 量 積 分 と重 心 積 分 の 存在(す
(α は 任 意 の3次 ア ン の 不 変 性 の 結 果 で あ る.そ るN内
こ で,こ
張 ら れ る3次
る.
動 量 保 存 則 と重 心 定 理)は,平
行移 動
元 定 ベ ク トル)に た い す る ラ グ ラ ン ジ
の 平 行 移 動 で相 互 に 移 り変 わ る こ と の で き
の 点 を 同 値 と し,こ の 同値 関 係 でNを
結 局N'はr=r2-r1で
態 空 間 の 次 元 が6減
な わ ち,運
割 っ た 商 空 間N/∼=N'を
元 空 間 で,こ
考 え る.
の空 間が簡 約 され た配位 空 間 で
あ り,こ の 簡 約 さ れ た 系 の ラ グ ラ ン ジ ア ン と して 上 のLに
た いす るラ ウシア ン
(2.2.50) を導 入 で き る(こ こ で は ラ ウ シ ア ン をL'で の も と で の 質 量mの1質
表 す).こ
点 の 運 動 に 還 元 さ れ る.つ
対 称 性 に よ り,配 位 空 間 の 次 元 が3,状
う し て 系 は ポ テ ン シ ャ ルU(γ) ま り3方 向 の 平 行 移 動 に 関 す る
態 空 間 の 次 元 が6減
っ た こ と に な る.
こ の と き系 は 球 対 称 で あ るか ら,角 運 動 量 ベ ク トル
(2.2.51) が 保 存 す る.こ 実 際,Mの
れ は3個
の 保 存 則 に 見 え る が,独
定 義 よ りr・M=0,r・M=0で
使 う とr・M=0が
得 られ,Mの2成
立 な の は こ の う ち の2個
で あ る.
あ る か ら,こ の 前 者 をtで 微 分 し 後 者 を 分 が 保 存 す れ ば 残 りの 成 分 も必 ず 保 存 す る こ と
が わ か る(こ れ は §6.3.3に 述 べ る ポ ア ソ ン の 定 理 の 特 別 な場 合 で あ る). そ こ でMの2成 の 保 存 を考 え,こ
分 の か わ りに,Mの
第3成
分M3とMの
大 き さM=│M│の
二つ
れ ら の 保 存 か ら何 が 導 か れ る か を 調 べ て み よ う.
そ の た め に まず,極
座 標(2.1.32)を
用 い て,L'を
(2.2.52) と表 す.(2.2.50)式
の 定 数 項
は,一
般 性 を 失 う こ と な くRCM=0と
座 標 系(重 心 系)に 移 る こ とが 可 能 ゆ え,捨
て る こ とが で き る.
極 座 標 で 表 し た 二 つ の 保 存 量 は,(2.2.7)お
よ び(2.2.11)す
なる
なわ ち
(2.2.53)
(2.2.54) 角 運 動 量M=mr×rはrとrの るか ら,M3/Mが
張 る 平 面 つ ま り軌 道 平 面 に 垂 直 な ベ ク トル で あ
一 定 と は,こ
の 軌 道 平 面 と(x,y)平
と を 意 味 し て い る(図2.2.1).iを
面 の な す 角iが
軌 道 面 傾 斜 角(inclination)と
定 数 で あ るこ
呼 ぶ.こ
のとき
(2.2.55) ま た こ れ を 使 っ て(2.2.54)を
と な る.iが 角 を
書 き直 せ ば
一 定 の と き,(x,y)平
ψと す れ ば,図
面 と軌 道 面 の 交 線ON(節
よ り
線)か
らr=OPま
での
す なわち
(2.2.56) で あ るか ら,こ
の2式
を 使 っ て 上 式 の 分 母 ・分 子 を 書 き直 す と,簡 単 な 計 算 で (2.2.57)
が 得 ら れ る(ψ>0と
し た).し
他 方,節
経 度 を Ω とす れ ば,Ω
線ONの
たが って
さ ら に 座 標 変 換 node)と
い う.こ
と ψ に よ りrの
を施 す.こ
方 向 を 指 示 で き る の で,
の Ω を昇 交 点 経 度(longitude
の座標 系 では
図2.2.1 惑 星運 動 の 軌 道 と軌 道 要 素
of
こ れ を上 式 と見 く らべ て
(2.2.58) こ の こ と は 軌 道 面 が 不 動,つ る.そ
して,こ
ま りベ ク トルMの
向 きが 一 定 と い う こ と を 示 し て い
の 座 標 系 で は ラ グ ラ ン ジ ア ン(2.2.52)は
(2.2.59) 結 局,M3とMの
二 つ の 保 存 か らベ ク トルMの3成
に な る.M3とMの
保 存 は,Z軸
分 の保 存 が導 き出 され た こ と
まわ りの 回 転 と定 ベ ク トルMの
す る対 称 性 の 結 果 で あ る か ら,そ
の 回 転 で 結 び つ く点,つ
ま わ りの 回 転 に 関
ま りrが
同 一 で Ω(な い
し φ)と ψが 異 な る 点 を 同 値 と して 得 られ る 同 値 関 係 で あ ら た め てN'を 間,す
な わ ち 座 標 をrと
す る実 軸
る.そ
して そ こ で の ラ グ ラ ン ジア ン,つ
割 った商 空
が さ らに簡 約 され た 配位 空 間 に な ま りL'に
たいす る ラウ シア ンは
(2.2.60) で与 え られ る.こ
う して 最 終 的 に 問題 は,ポ
テ ンシャ ル
(2.2.61) の も と で の1次
元配位 空 間
上 の 運 動 に還 元 さ れ た こ と に な り,こ れ は
求 積 法 で 解 く こ と が で き る.右 実 効 ポ テ ン シ ャ ル(effective
辺 第2項
potential)と
対 称 性 か ら,配 位 空 間 の 次 元 が2減 し た が って 運 動 は,状
い う.こ
こ で も2方
のU*を
向 の 軸 ま わ りの 回 転
っ た こ とに な る.
態 空 間TN"で
上の 運 動 に な るが,L"はtを
は 遠 心 力 ポ テ ン シ ャ ル で あ り,こ
考 え れ ば 次 元 が4減
陽 に 含 ま な い か ら,さ
っ た2次
元 平 面(r,r
らにエ ネル ギー積分
(2.2.62) を も ち,系
は状 態 空 間TN"=(r,r)
て ポ テ ン シ ャ ルU(r)
の こ の 式 で 決 ま る 曲 線 上 を 運 動 す る.し
たが っ
が 与 え ら れ て い る な らば,r=r(t)は
(2.2.63) を 積 分 す る こ と に よ り 求 ま り,得 ψ(t)も
ら れ たr(t)を(2.2.57)に
代 入 す る こ と で ψ=
決 定 さ れ る.
な お(2.2.57)式
よ り得 ら れ る
(2.2.64) を使 って 上 式 を書 き直 せ ば,軌
道 の方程 式
(2.2.65) が 得 ら れ る.こ
れは
(2.2.66) と 書 い た ほ うが 便 利 な こ とが 多 い.こ
の 方 程 式 か ら 軌 道 形r=r(ψ)は
決 定 さ れ,こ
う し て 軌 道 平 面 上 の 運 動 は 完 全 に 解 くこ と が で き る. な お(2.2.57)式
は
(2.2.67) と 書 く こ と が で き る.こ ケ プ ラ ー の 第2法
例2.2.3
こ にhは
則(Kepler's
面 積 速 度(areal
second
law)に
velocity)で
あ り,そ
の 保 存 は,
他 な ら な い.
ケ プ ラー運動
い ま 前 の例 で 見 た 中 心 力 ポ テ ン シ ャ ル が
(2.2.68) を 満 た し,か (2.2.61)が Eに
つ あ る 領 域 でU(r)<0と
図2.2.2aの
対 応 す る(r,r)平
分 か れ る).ど
示 さ れ た よ う に な る で あ ろ う(実 はU(+∞)=U0≠0で,
最 小 値r0を
の場合に
もつ.
場 合(
の と き はE
で は す べ て のEに (r,r)平
の それ ぞれ の場
あ れ ば よ く,そ の と き は
の 場 合 もrは
と く にE<0の
と え ば 実 効 ポ テ ン シ ャル
の と き 与 え ら れ た エ ネ ル ギー
面 上 の 曲 線(2.2.62)は,
合 に つ い て,図2.2.2bに あ る領 域 でU(r)
な る と す る.た
よ うに な る 場 合 を考 え る.こ
た い し て)rは
面 上 の 曲 線 は 閉 じ,簡 約 配 位 空 間N"(r軸
場 合,し
最 大 値r1も
も ち,簡
た が って 約状態 空間
上)で の 運 動 は
(2.2.69) の 範 囲 の 振 動 運 動 に な る(r0,r1は(2.2.63)の
根 号 内 部 の 零 点 と し て 決 定 さ れ る).
こ の 運 動 は 無 限 遠 に 飛 び さ る こ と が な い と い う意 味 で 束 縛 運 動 を 表 し,ま で あ る か ぎ り(2.2.57)よ
りdψ/dtが
原 点 の ま わ り を一 方 向 に 回転 し て ゆ く.E=-E0の そ し てrの じ る.実
と き は 半 径a0の
円 軌 道 に な る.
振 動 周 期 と ψ の 回 転 の 周 期 が 有 理 数 比 を な し て い れ ば,こ
は こ の よ う に 軌 道 平 面 上 で 軌 道 が 閉 じ る の は,引
トン 型 な い し フ ッ ク型 の い ず れ か,つ
たM≠0
定 符 号 で あ る か ら,軌 道 平 面 上 の 点(r,ψ)は
まり
の 軌道 は閉
力 ポ テ ン シャル が ニ ュー
(a)
(b)
図2.2.2 中 心 力 ポ テ ン シ ャル と簡 約状 態 空 間 の経 路 の 場 合 に 限 ら れ る.こ
れ を ベ ル ト ラ ン の 定 理(Bertrand's
以 下 で は ニ ュ ー ト ン ・ポ テ ン シ ャ ル 程 式(2.2.66)は
theorem)と
い う*6.
の 場 合 の 運 動 を 考 え よ う.軌
道の 方
この と き
と変 形 さ れ る か ら
*6 ベ ル ト ラ ン の 定 理 の 証 明 は 1984)問
題2-13お
,江 沢 洋 ・中 村 孔 一 ・山 本 義 隆 よ び そ の 解 説 参 照.
『演 習 詳 解 力 学 』(東 京 図 書
と お け ば,上
式 は
と な り,た だ ち に
で き る(ω は 積 分 定 数).し
の よ うに 解 く こ と が
たが って軌道 形 は
(2.2.70) これ は 円錐 曲 線 で あ り,エ
ネ ル ギーEの
値 に よ り次 の よ うに 分 類 さ れ る:
楕 円,
(2.2.71)
放 物 線, 双 曲 線. 束 縛 運 動 す な わ ちE<0で これ が ケ プ ラ ー の 第1法
は,軌
道 は 原 点(力
則(Kepler's
の 中 心)を
first law).そ
焦 点 とす る 楕 円 に な る.
して
(2.2.72) が 楕 円 の 離 心 率(eccentricity)を
与 え る.ま
た
で
(近 日点 ま た は 近 地 点)
で
(遠 日点 ま た は 遠 地 点)
と な る か ら,惑 星 の 運 動 で は ω は 節 線 か ら近 日点 ま で の 角 度 を 表 し,こ れ を近 日 点 引 数(argument 場 合 に は,黄
of perihelion)と 道 面 は 赤 道 面 に,天
近 地 点 引 数(argument
of perigee)と
φ:=ψ-ω=真 で あ り,さ
い う(図2.2.1,地
球 の まわ りの 人 工 衛 星 の 運 動 の
頂 は 天 の 北 極 に,近 い わ れ る).そ
近 点 離 角(true
ら に 楕 円 の 長 半 径(semi-major
日 点 は 近 地 点 に 変 わ り,ω は して
anomaly)
(2.2.73)
axis)aは
(2.2.74) こ のa,e,ω
お よ びi(軌
道 面 傾 斜 角),Ω(昇
あ わ せ て ケ プ ラ ー の 軌 道 要 素(Keplerian
交 点 経 度)そ
し て 近 日点 通 過 時 刻t0を
orbital elements)と
い う.
そ して こ れ ら を使 え ば 軌 道 角 運 動 量 は
(2.2.75) また軌 道の極 座 標表 示 は
(2.2.76) こ の 式 か ら わ か る よ うに,ケ が 一 致 し て 軌 道 が 閉 じ る.こ し,ケ
プ ラ ー 運 動 で はrの の こ と は,軌
振 動 周 期 と ψ=φ+ω
の回転 周期
道 面 上 で 近 日点 が 移 動 し な い こ と を 意 味
プ ラ ー 運 動 の 著 しい 特 徴 で あ り,ケ プ ラ ー 運 動 に は 中 心 力 で あ る こ と に よ る
幾 何 学 的 対 称 性 以 外 に も対 称 性 が 隠 され て い る こ と を示 唆 して い る(こ の 点 に つ い て は例3.2.3,例6.3.2,例6.4.2参 他 方,こ
照).
の 軌 道 上 の 運 動(時
間 的 移 動)は 方 程 式(2.2.63)を
積 分 して
(2.2.77a) に よ り決 定 さ れ る.t=t0(近
日 点 通 過 時 刻)でr=r0と
す る と,そ
の 後 はdr/dt>0
であ るか ら
(2.2.77b) こ こ に,E<0で
は(2.2.69)よ
り右 辺 の 被 積 分 関 数 の 分 母 の 根 号 内 は
と表 さ れ るか ら
(2.2.78) と変 数変 換す れば,上 の積 分 は簡 単 に実行 で きて
(2.2.79) が 得 ら れ る.u=0∼2π
で1周
期 で あ るか ら周 期Tと
平 均 角 速 度nは
(2.2.80) と表 さ れ,周
期 は 長 半 径 の3/2乗
nを 平 均 運 動(mean
motion)と
に 比 例 し て い る.な い う.以 下 で はnを
ケ プ ラー は 太 陽 系 の 惑 星 に つ い て 周 期 の2乗 に た い し て 等 し い,つ プ ラ ー の 第3法 (2.2.80)のmは
則(Kepler's
third law)と
換 算 質 量 で あ るか ら,太
と長 半 径 の3乗
の 比 がす べ て の惑 星
い わ れ て い る も の で あ る.正 陽(質 量M●)とi番 を使 う と(Gは
あ り,(2 .2.80)よ
が 得 られ る.こ
体 力 学 で は平均 角 速 度
ま り比 が 惑 星 に よ ら な い 定 数 で あ る こ と を示 し た.こ
に た い し て =G(M●+mi)で
お,天
こ の よ うに 呼 ぶ.
の 比 はmi≪M●
れ がケ 確 に は
目 の 惑 星(質 量mi) 万 有 引 力 定 数)k/m
り
を考 慮 しM●+mi≒M●
と近 似 す る こ とに よ っ て は
じめ て 惑 星 に よ ら な い 定 数 に な る. ま た上 のnを
用 い て(2.2.79)を
nt=u-esinu=平
とな り,こ れ は 平 均 運 動nで
書 き直 し た もの は(t0=0と 均 近 点 離 角(mean
し て)
anomaly)
回 転 し た と きの 回 転 角 を 表 す.ケ
(2.2.81)
プ ラー の 第2法
動 径 の 掃 く面 積 が 時 間 に 比 例 す る こ と を表 す か ら,図2.2.3でOを の 焦 点),Cを
楕 円 の 中 心,Pを
惑 星(r=OP),Bを
近 日点,∠NCO=ξ
則は
力 の 中 心(楕 と して
円
図2.2.3
が 得 ら れ る.こ
れ を(2.2.81)と
u=∠NCO=離
の(2.2.81)式
れ を 解 い てu=u(t)を
な お,E>0(e>1)の
比 べ てu=ξ,す
な わち
心 近 点 離 角(eccentric
で あ る こ と が わ か る.こ う.こ
楕 円 軌 道
anomaly)
を ケ プ ラ ー 方 程 式(Kepler's
求 め(2.2.78)に と き も(2.2.77)は
代 入 す れ ばr=r(t)が
(2.2.82) equation)と
い
得 ら れ る*7.
ほ とん ど 同様 に
(2.2.83) とすれ ば積 分 で き
(2.2.84) が 得 られ る(た だ し こ の 場 合 は 範 囲 で 行 わ れ,r1'に
,運 動 はr>r0の
物 理 的 な 意 味 は つ け られ な い).
*7 ケ プ ラ ー 方 程 式 の 解 き 方 は 次 の よ う に す る:
と フー リエ展 開す れ ば,展 開係 数 は
と表 さ れ る.こ
こ にJkはk次
公 式 Ⅲ 』(岩 波 書 店 1960) これ よ り
ベ ッ セ ル 関 数 で あ る(森 p. 178,犬
井鉄郎
口繁 一 ・宇 田 川銈 久 ・一 松 信
『特 殊 関 数 』(岩 波 書 店 1962)
p. 306参
『数 学 照).
例2.2.4
軸 対 称 な こ ま(ラ グ ラ ン ジ ュ の こ ま)の 運 動
1点 を 固 定 さ れ た 剛 体 の 回 転 の 方 程 式 は 例2.1.2で (2.1.69)に
イ ラー 角 を 局 所 座 標 系 とす る3次 元 配 位 空 間(6次 る.い
得 られ た ラ グ ラ ン ジ ア ン
た い す る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 と し て 書 き 下 す こ とが で き る.こ
ま こ の 剛 体 が 重 力 の 作 用 の み を受 け て い る とす る.剛
間 固 定 系 のZ軸
の系 は オ
元 状 態 空 間)に お け る 運 動 で あ 体 の 質 量 をmと
を鉛 直 上 向 き に と り,重 心 の 座 標 を(XCM,YCM,ZCM)す
し,空
る と,重 力
の ポ テン シャ ルは
で 与 え ら れ る.系 保 存 す る.こ
は 鉛 直 軸(Z軸)の
れ は 角 運 動 量 のZ成
ま わ り に 対 称 で φ が 循 環 座 標 で あ る か らpφ が 分 の 保 存 で,こ
の 保 存 則 に よ り配 位 空 間 は(θ,ψ)
で 張 られ る2次 元 空 間 に 簡 約 さ れ,さ ら に 保 存 系 で あ る か らエ ネ ル ギー が 保 存 す る. 一般 に は そ の 他 に は 第1積 分 を も た な い の で ,そ れ 以 上 は 解 くこ とが で き な い. しか し と くに 剛 体 が 軸 対 称 な こ ま で 重 心 が 対 称 軸(z軸)上 ジ ュの こ ま と い わ れ,主
慣 性 モ ー メ ン トはA=Bと
に あ る と きは ラ グ ラ ン
な り,求 積 法 で解 く こ とが で き
る. 固定 点(原 合,ラ
点)か
ら 重 心 ま で の 距 離 をlと す れ ばZCM=lcosθ
で あ り,A=Bの
場
グ ラ ン ジ ア ン(2.1.69)は
(2.2.85) と簡 単 に な る.こ
の と きは ψ も循 環 座 標 で あ り,第1積
分 と して
(2.2.86a) (2.2.86b) の 二 つ が た だ ち に 得 ら れ る.こ のpψ の保 存 は 対 称 軸(自 が 一 定 で あ る こ と を 意 味 し て い る.そ
して そ の 結 果,系
転 軸)ま
わ りの 自 転 角 速 度
は ラ ウ シア ン
(2.2.87) を ラ グ ラ ン ジ ア ン,実 効 ポ テ ン シ ャ ル を
(2.2.88) とす る 自 由 度1の
系 に 還 元 され る.Ueffの
形 は 図2.2.4.
こ の 場 合 の 簡 約 さ れ た 配 位 空 間 は,座
標 θが[0,π]の
軸 で あ る.し
ネル ギー保 存 則
か も保 存 系 で あ る か ら.エ
範 囲 の 値 を と る1次
元 の実
(2.2.89)
が 得 ら れ,こ
の 式 を 積 分 す る こ と で θ=θ(t)は
求 ま る.さ
ら に(2.2.86)の2式
よ り
(2.2.90) が 導 か れ る の で,も
う一 度 積 分 して φ=φ(t)も 求 ま り,次
に(2.2.86b)に
代 入 して
ψ=ψ(t)も 決 定 さ れ る. 簡 単 の た めcosθ=uと
書 く とエ ネ ル ギ ー 保 存 則(2.2.89)は
(2.2.91) と表 さ れ る.こ
れ よ り こ ま の 自転 軸(対 称 軸)は
を す る と 予 想 さ れ る.こ 2.2.4で
この右 辺が正 に な る範囲 で上 下 振動
の 範 囲 はE'≧Ueffに
な る 範 囲 で あ り,θ を 用 い る と 図
表 さ れ る.
図2.2.4
ラ グ ラ ンジ ュ の こ まの 実 効 ポ テ ン シ ャ ル
と く に 物 理 的 に実 現 しや す い状 況 と して,対 度 Ω で 回 っ て い る こ ま を,鉛 場 合 を考 え る.こ
称軸 の まわ りに十 分大 きな 自転角 速
直 軸 に た い し て
だけ傾 け て そ っ と置 い た
の と き(2.2.86b)は
(2.2.92) で あ り,ま
たu=cosθ
と φ の 方 程 式(2.2.91),
(2.2.90)は
とおけ ば
(2.2.93a) (2.2.93b) と表 さ れ る.こ
こ で こ の 場 合 の 初 期 条 件
を 使 う と,上
の2式
と な る か ら,定 数 間 に
は
の 関 係 が な け れ ば な らず,(2.2.93a)は
(2.2.94) と書 き 直 さ れ る.い
ま,こ
ま の 自転 角 速 度 Ω が 十 分 に 大 き く
と近 似 で き る と す れ ば,β/b2の2次
以 上 を無 視 す る近 似 で,上 式 は
(2.2.95) とす る こ と が で き る.た
だし
で あ り,軸 の も っ と も傾 く角 度 θ1,お よ び そ の 振 動 の 振 幅△ θ は
と決 定 さ れ る.こ
の と き(2.2.95)す
なわ ち
を与 えられ た初 期 条件 で解 けば
す なわ ち
(2.2.96) が 得 られ る.さ
ら に こ れ を(2.2.93b)に
代 入 し,同
じ近 似 をす る と
(2.2.97) が 求 ま る. (2.2.96)は
自転 軸(対 称 軸)の
ふ り運 動 を 表 して い る.こ
上 下 振 動 を 表 し,(2.2.97)は
の 運 動 は,原
点 を 中心 と し半 径lの
(す な わ ち 対 称 軸 が 球 面 を 切 る点 の 運 動)で の こ の 上 下 の お じ ぎ運 動 を章 動(nutation),首 い う.(2.2.97)よ
で,そ
の 変 化 は│L│=N(重
球 面 上 の 重 心 の運 動
表 す と わ か りや す い(図2.2.5).自
転軸
ふ り運 動 を歳 差 運 動(precession)と
り歳 差 の 平 均 角 速 度 は<φ>≒mgl/CΩ.こ
解 され る.自 転 角 速 度 が 大 き け れ ば,角
鉛 直 軸 の ま わ りの 首
運 動 量Lは
の こ とは次 の よ うに理
ほ ぼ 自転 軸 方 向 を 向 き│L│≒CΩ
力 の モー メ ン ト).こ こ に
で あ る か ら. と くに 自転 し て い る こ ま を鉛 直 に(θ=0の
状 態 で)そ っ と置 い た と き に は,解
は
(2.2.98) と な る*8.こ *8 例2
れ は あ た か も運 動 して い な い よ う に 見 え るの で
「(直立 な)ね
.1.2で 見 た よ う に θ=0で は φ と ψ は 一 意 的 に は 決 ま ら な い が,θ だ け な ら θ=0の 近 く で オ イ ラ ー 角 を 使 う こ と は か ま わ な い.
む りご ま
の 変 化 を考 える
図2.2.5 ラ グ ラ ン ジ ュ の こ ま の 歳差 と章 動
(sleeping
top)」
と い わ れ る.解
の 近 傍 で は│θ│≪1と
し て,
(2.2.99) で あ るか ら,自 転 角 速 度 が 十 分 大 き くて 擦 に よ り回 転 が 減 少 しΩ<Ωcに
例2.2.5
の と き安 定 で あ り,摩
な っ た と き,軸 が ふ らつ きだ し最 後 は 倒 れ る*9.
ベ ー タ ト ロ ン振 動 と弱 集 束
ベ ー タ ト ロ ン(betatron)や 称 な 磁 場 に よ っ て,荷
シ ン ク ロ トロ ン(synchrotron)は,軸
電 粒 子(m,e)を
対 称 で上 下 対
そ の 中 心 面 上 で 軸 の まわ りに 回 転 さ せ,軌
方 向 に 平 行 な 電 場 で 加 速 す る装 置 で あ る.加 速 は,ベ 磁 束 の 変 化 に よ っ て 生 じ る 誘 導 起 電 力 を用 い,シ
ー タ トロ ン で は,軌
ン ク ロ トロ ン で は,加
道
道 が 囲む
速 空 洞 内の
高 周 波 電 場 を用 い る. 磁 場 の 対 称 軸 に そ っ てz軸,中 る.粒 子 は 理 想 的 に は(つ
ン グ(真 空 ダ ク ト)内 を,広 は,こ
な る よ う に 円 筒 座 標(ρ,φ,z)を
ま り設 計 上 は)z=0,ρ=Rと
る.こ れ を平 衡 軌 道 と い お う.し は ば らつ きが あ る の で,粒
心 面 がz=0と
か し実 際 に は,粒
子 の 集 合 は,平
い う 円 軌 道 を 回 る も の とす 子 源 か ら 出 て きた 粒 子 の 速 度 に
衡 軌 道 を 中 心 と す る あ る 内径 の 中 空 の リ
が り を もつ ビ ー ム と し て移 動 す る.し
の ビー ム の 集 束 が 重 要 な 問 題 に な る.こ
た が って加 速 器 で
の 問 題 を考 え て み よ う.
以 下 で は ビー ム の 集 束 の み を問 題 とす る の で,加 磁 場 は 軸 対 称 で,ベ
と
速 を無 視 し,磁 場 だ け を考 え る.
ク トル ・ポ テ ン シ ャ ル がA=(0,Aφ(ρ,z),0)で
与 え ら れ る.
した が っ て磁 束 密 度 の 成 分 は
*9 こ ま の 問 題 に つ い て は ジ ャ イ ロ ・ コ ン パ ス な ど興 味 深 い 話 題 も 多 い が に つ い ては
『演 習 詳 解 力 学 』(p.134脚
注6)第6章
,そ を 見 て い た だ き た い.
れ ら の テー マ
(2.2.100) た だ しマ ッ ク ス ウ ェ ル 方 程 式 よ り,こ の 成 分 間 に は
(2.2.101) の 関 係 が あ る.系
は 軸 対 称 ゆ え,軸
ま わ りの 角 運 動 量
(2.2.102) が 保 存 す る(例2.2.1).ま
た ビー ム の 集 束 の み を 問 題 に して い る の で,平 衡 軌 道 に
垂 直 な 面 内 で の 変 位 の み を 考 え れ ば よ く,簡 約 さ れ た 配 位 空 間(ρ,z)で 論 じ る.対 応 す る ラ ウ シ ア ン は,(2.2.45),す
な わ ち実 効 ポ テ ン シ ャ ル を
(2.2.103) として
(2.2.104) で 与 え ら れ る.な
お,こ
の 簡 約 され た 空 間 で は,平 衡 軌 道 は 定 点 に な る.
ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は
(2.2.105a) (2.2.105b) ま た は(2.2.100),
(2.2.102)を
代 入 して
(2.2.106a) (2.2.106b) 平 衡 軌 道(z=0,ρ=R;以
下,添
字0で
記 す)で
は,z=0,ρ=0ゆ
え
(2.2.107a) (2.2.107b) 第1式
よ りBρ0=0,す
な わ ち磁 場 は 平 衡 軌 道 面 に 垂 直 で な け れ ば な ら ず,ま
式 は 遠 心 力 と ロ ー レ ン ツ 力 の つ りあ い を表 し,こ
た 第2
のとき
(2.2.108) す な わ ち,平 で ω<0,す
衡 軌 道 の位 置 で は,粒 な わ ち+z方
子 は 回 転 角 速 度 ω の 等 速 円 運 動 を 行 う(eBz0>0
向 か ら見 て 粒 子 は 時 計 ま わ りに 回 転).
こ の 平 衡 軌 道 か ら わ ず か に は ず れ た 粒 子 の 運 動 を 見 る た め に,
│ξ│≪Rと して,z,ξ
の1次
ま で と る近 似 を す る:
(2.2.109a) (2.2.109b) 前 の 式 で は,最
後 の 等 号 に(2.2.101)を
用 い た.後
の 式 は 次 の よ う に 導 く:
ここに
を使 え ば よ い. 以 上 よ り,(z,ξ)空
間 に お け る平 衡 軌 道 の 近 傍 で の 運 動 方 程 式 は (2.2.110a)
(2.2.110b) も し も こ の 右 辺 が0で れ ば,粒
あ れ ば,は
じめ にz方
向 や ρ方 向 に わ ず か で も 速 度 成 分 が あ
子 は い く ら で も平 衡 軌 道 か ら離 れ て ゆ く.し た が っ て ビー ム が 安 定 で あ る
た め に は,Bzは
ρに よ っ て 変 化 し な け れ ば な ら な い.そ
こ で,ρ=Rの
近 くで
(2.2.111) の よ う に 変 化 す る と し よ う.こ
の と き(2.2.110)は,
を考 慮 して
(2.2.112a) (2.2.112b) し た が っ て ビー ム が 安 定 で あ る(z方
向 に も ρ方 向 に も発 散 し な い)た め に は
(2.2.113) で な け れ ば な ら な い.nの 束(weak に,そ
focus)と
値 を こ の 範 囲 に 定 め て ビー ム を集 束 さ せ るや り方 を 弱 集
い う.こ の と き粒 子 は,平
衡 軌 道 の ま わ りで,z方
向,ρ 方 向
れ ぞれ 角振 動数
(2.2.114) の 振 動 を す る.こ
の 振 動 を ベ ー タ ト ロ ン 振 動(betatron
ま た こ の と き,(2.2.101)とBρ0=0を
考 慮 す る と,平
oscillation)と
い う.
衡 軌 道 の近 くで
(2.2.115) と な り,z〓0でBρ〓0ゆ
え 磁 場 は 図2.2.6の
よ う に な っ て い る.
図2.2.6 円形 加 速 器 に おける弱集束 のための磁場
2.3 ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の 幾 何 学 的 表 現
2.3.1 基 本1形
式 と基 本2形
式
物 理 量 は幾 何 学 的 対 象 で あ り,物 理 法 則 は そ れ ら の 関 係 を 与 え る もの で あ る.し た が って 物 理 法 則 は,そ
の 表 現 の ため に使 用 す る座 標 系 の 変 換 に た い し
て 形 を変 え て は い け な い.こ の 共 変 性 の 要 請 は,す
で に 見 た よ うに ラ グ ラ ン
ジ ュ方 程 式 に お い て は満 た され て い る.こ の 要 請 は,方 程 式 そ の もの の座 標 系 に よ ら な い表 現 が 得 られ た な ら ば,よ
り直 接 的 に見 て と る こ とが で き る.本 節
で は ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 の座 標 系 に よ ら な い表 現 を求 め る. ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は,配 位 空 間N上 決 定 す る も の で あ り,q={qi(t)}お
の 曲 線CL(t)と
よ びq+{qi(t)}は
そ の上 で の 速 度CLを その 局 所 座 標 表 現 にす
ぎ な い.し た が っ て ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式Ei[L]=0(i=1,2,…,n)の よ ら な い表 現 は,N上
座 標系 に
の各 点 で のCLの 接ベ ク トル を与 え るベ ク トル場
(2.3.1) につ い て の 関 係(方 程 式)を 直接 に与 え る もの で な け れ ば な ら な い.そ の 書 き 直 しの た め の 手 が か りは,{Ei[L]}がN上 り(§2.1.3参 照),し
の 各 点 で 共 変ベ ク トル の 成 分 で あ
た が っ てEi[L]dqiが1形
式 を与 え,こ れ を 用 い て ラ グ
ラ ン ジュ 方程 式 が 座 標 系 に よ らず
(2.3.2) と表 さ れ る こ と に あ る.そ
れ ゆ えCLで
与 え ら れ るベ ク トル 場 を,適
当 な2形
式 と 内 部 積 を と る こ と に よ り,こ れ ば 目 的 は 達 成 さ れ る.た こ の た め に,前
の1形
だ し,本
式Ei[L]dqiに
結 び つ け る こ とが で き
節 で は 保 存 系 の み を考 え る.
節 で 導 入 し た 一 般 化 運 動 量 の 変 換 性 を調 べ て み よ う.
点 変 換(2.1.24),(2.1.25)に
と も な う一 般 化 運 動 量 の 変 換
(2.3.3) の 変 換 則 は,関
係(2.1.26)を
考 慮す れば
(2.3.4) と得 られ る.こ の 式 はp={pi}がNの
各 点 で 共 変ベ ク トル 成 分 と し て 変 換 さ
れ る こ と を示 して い る.し た が っ て1形 式
(2.3.5) が 定 義 で き る.実
際(2.3.4)よ
りpidqi=PidQiが
成 り立 ち,θLは
確 か に 座
標 系 に よ ら な い 幾 何 学 的 対 象 で あ る. さ ら に(2.3.5)式
の 外 微 分 を と る こ と で2形
式
(2.3.6) を作 る こ とが で き る. 後 章 でハ ミル トン形 式 の 力 学 を論 ず る と き,(p,q)の を導 入 す る.そ は,ハ
し て こ の1形
張 る空 間 と して相 空 間
式 θLと2形 式dθLを 相 空 間 に 持 ち 上 げ た も の
ミル トン形 式 の 力 学 で は きわ め て 重 要 で 基 本 的 な役 割 を果 た し,そ れ ぞ
れ 「正 準1形
式 」 「正 準2形
式 」 と名 づ け ら れ て い る.し か し ラ グ ラ ン ジ ュ 形
式 の 力 学 で は あ ま り使 わ れ る こ とが な く,定 着 した 名 前 も な い よ うで あ る.本 書 で は これ をそ れ ぞれ 基 本1形
式,基
本2形 式 と呼 ぶ*1.
な お こ の基 本1形 式 を使 うな らば,前 節 で 導 入 し た モー メ ン ト関 数(2.2.19) は,ベ
ク トル場uλ=fi∂i(2.2.14)の
基 本1形
式 に よ る写 像(双 対 内積) (2.3.7)
で 表 さ れ る. *1
J -V る.
.E.
erlag
Marsden 1994)で
and は,ラ
T. S.
Ratiu,
Introduction
グ ラ ン ジ ア ン1形
式,ラ
to
Mechanics
and Symmetry
グ ラ ン ジ ア ン2形
式
(Springer
と名 づ け ら れ て い
2.3.2 ラ グ ラ ンジ ュ方 程 式 の座 標 系 に よ ら な い表 現 この 基 本2形
式 を使 って 速 度 ベ ク トル場CLを
写 像 す る な らば,1形
式
(2.3.8) が 得 ら れ る*2.こ
こで
を 用 い て(2.3.8)の
最 後 の 項 を 書 き 直 せ ば,恒
等式
(2.3.9) が 導 か れ る.HLは
ハ ミル トニ ア ン(2.2.28)で
こ の 結 果 を 用 い れ ば,ラ 方 程 式 と し て,局
あ る.
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式(2.3.2)を,曲
線CLに
つ いて の
所 座 標 系 に よ ら な い形 で
(2.3.10) と書 き 表 す こ と が で き る(左 れ をi(CL)dθLやdθL」CLの
辺 は2形
式dθLと
ベ ク ト ル 場CLの
よ う に 書 く本 も 多 い).こ
れ は 幾何 学 的 対 象 と して
の1形
式 ど う し の 関 係 で あ り,幾
る.そ
し て ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の こ の 表 現 は,後
理)に
よ る 力 学 原 理 の 定 式 化 に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た す(§3.1参
保 存 系 で な く,Lがtに
*2
i│CL>の
計 算(た
写 像 で あ り,p.
(1.6.23a)を
何 学 的 に表 され た ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 で あ
陽 に よ る 場 合 は,拡
そ の 場 合 の 議 論 と結 果 は §3.1.7に
注9の(c)式
の 変 分 原 理(ハ
しか し以下 で は,簡 単 に
照).
大 配 位 空 間 で 考 え る と よ く,
次 の よ う に 考 え れ ば よ い.CLはR(t軸)→ を用 いて 丁 寧 に書 け ば
使 え ば
こ こ にCL*dφiはR(t軸)へ
ミル トン の 原
記 す.
だ しφi=φi(q,q))は 51脚
内 部 積 で,こ
の 引 き 戻 し を 表 す.し
たが って
の よ う に 記 す こ と も 多 い.
.こ
れ
と
例2.3.1
電磁 場 中 の荷電 粒子 の運動 方程 式
電 磁 ポ テ ン シ ャ ル が Φ=Φ(r),A=A(r)で の 運 動 を考 え る.た
与 え られ る 電 磁 場 中 の 荷 電 粒 子(m,e)
だ し ポ テ ン シ ャ ル は 時 間tに
一 般 化 運 動 量 は(2.2.8)で
与 え られ る.よ
陽 に よ ら な い とす る.
っ て 基 本1形
式 と基 本2形
式は
(2.3.11) (た だ しr=(x1,x2,x3),υ=r=(x1,x2,x3),こ ず2重
添 字 は1∼3の
和 を と る).し
こ こ にCL=xi∂iと任意の関数f(x)に
こ で は 添 字 の 上 付 き ・下 付 き を 区 別 せ
たが って
た い して
.そ れ ゆ え
お よび
が 得 ら れ る(εijkは エ デ ィ ン トン の イプ シ ロ ン).以 上 ま とめ て
(2.3.12) 他 方,こ
の 場 合 の ハ ミ ル ト ニ ア ン は(2.2.37)で
与 え られ るゆえ
したが って
(2.3.13) とな り
す な わ ち(2.3.10)が
確 か に正 し い 運 動 方 程 式 を与 え る こ とが 示 さ れ た.
(ポ テ ン シ ャ ル(Φ,A)が 考 え る と よ い.)
時 間tに
陽 に よ る と きに は,t軸
も加 え た 拡 大 配 位 空 間 で
つ け 加 え る と,以 上 の 議 論 よ り,力 学 理 論 の 定 式 化 に は(q,q)={qi,qi}を す る よ り も(q,p)={qi,pi}を
変数 と
変 数 とす る ほ うが 理 論 が 対 称 的 で き れ い に な り,そ れ
ゆ え見 通 しが よ く な る こ とが 予 想 さ れ る.そ
の 点 は 後 章 の ハ ミル ト ン 形 式 の 力 学 の
と こ ろ で 論 ず る.
2.4 擬 座 標 と ポ ア ン カ レ方 程 式
2.4.1 擬 座 標 の 導 入 配 位 空 間(n次
元)の 座 標{qi}に
た い す る一 般 化 速 度 成 分 のn個
の互 いに
独 立 な1次 結 合
(2.4.1) を 考 え る.こ
れ ら は 互 い に 独 立 で あ る か らdet(ali)≠0.し
行 列a=(alj)は
逆 行 列 を も ち,そ
れ をb=(blj)と
たが って この とき
す ると
(2.4.2) そ こ で
と な る配 位 空 間 上 のn個
の微 分 形 式
(2.4.3) お よびn個
の ベ ク トル場
(2.4.4) を 考 え る.微
分 形 式{θk}とベ
ク トル 場{ul}は,(2.4.2)よ
り
(2.4.5) を 満 た し,双
対 関 係 に あ る.さ
ら に ま た(2.4.2),
(2.4.3)を
使 えば
(2.4.6)
お よ び が得 られ る.し た が って 配 位 空 間 上 の任 意 の 関数 の 外 微 分 は
(2.4.7) で 表 され る. と くに す べ て のlに
た い して θlの外微 分 が
(2.4.8) と な る 場 合,す
な わ ち ∂jali=∂ialjで あ る な ら ば,θlは
レ の 補 題(§1.6.6)よ
り θl=dQl,す
なわ ち
積 分 可 能 で,ポ
アン カ
(2.4.9) とな るQlが
存 在 す る.こ の 場 合 は ωlは 変 換 さ れ た一 般 化 座 標Qlに
速 度 成 分 で あ り,(2.4.1)は
たいす る
配位 空 間 の座 標 変 換(点 変 換)を 与 え る.
1形 式 θlが積 分 可 能 でωlが 一 般 化 速 度 成 分 に な る 条 件 をベ ク トル 場ulを 用 い て 表 す に は,次 の よ うに す れ ば よ い. 一 般 に,1形
式 θ=akdqkと
二 つ のベ ク トル場
に た い して,
次 の恒 等 式 が 導 か れ る:
(2.4.10) こ こ に[u,υ]Lはuとυ
の リー 括 弧 で あ る.
と く に
と す れ ば 双 対 関 係(2.4.5)が と な り,上
成 り 立 つ か ら,
式 は
(2.4.11) し た が っ て ωl=Ql(for ベ ク トル 場{ui}を
all l)と
な る 条 件,す
な わ ちdθk=0
(for
all k)は,
用 いれ ば
(2.4.12) と 表 さ れ る. 他 方,(2.4.8)な
い し(2.4.12)が
関 数 の 全 微 分 に は な ら な い.こ
成 り立 た な い と き に は,θlは
の と きuiとujは
なにか あ る
可換 ではな く
(2.4.13) と 表 さ れ る.一
般 にベ ク トル 場 の 集 合{ui}は
数 を 成 し,{cijk}は
を 使 う と(2.4.13)よ
リー 括 弧 を 積 演 算 と し て リー 代
そ の 構 造 定 数 で あ る(§1.4.9参
照).い
まの 場 合 は
り
(2.4.14) と 表 さ れ る.さ
ら に 次 の 関 係 も 成 り 立 つ:
(2.4.15)
し た が っ て{Cijk}≠0な
ら ば{dθk}≠0で
あ り,こ
の 場 合 は{ωk}は 一 般 化 座 標 の
速 度 成 分 で は な い. し か し{dθl}≠0の の 微 分,ま
と き も 形 式 的 に θlを 擬 座 標(quasi
た ωlを 擬 速 度(quasi
微 分 と 同 様 に 扱 い,こ
2.4.2
velocity)成
coordinate)成
分 と 呼 ん で,一
分(Ql
般化 座 標 成 分 の
れ ら を 用 い て ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を 表 す こ と が で き る.
ポ ア ンカ レ方 程 式
は じ め に ω={ωl}を
用 い た 新 し い ラ グ ラ ン ジ ア ンLを
次 式 で 定 義 す る:
(2.4.16) これ よ り
お よび
(2.4.17)
した が っ て
こ こ で右 辺 の 第1項
は ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 よ り0で あ る.ま た 第2項 の 係 数 は
と書 き直 さ れ る の で(左 辺 の 第2項
の ダ ミー 添 字 を
と置 き
か え る),最 終 的 に ω とqで 表 され た運 動 方 程 式
(2.4.18) が得 ら れ る.こ の方 程 式 の 最 後 の項(の 符 号 を変 え た もの)は
(2.4.19)
と 表 さ れ る が,こ
れ はωiに
対 応 す る 力 の 成 分 で あ る.さ
ら に(2.4.15)を
使
え ば(2.4.18)は
(2.4.20) と 表 す こ と も で き る.(2.4.18), れ た も の で,ポ
(2.4.20)は1901年
ア ン カ レ 方 程 式(Poincare
にPoincareに
equation)と
力 が ポ テ ン シ ャ ル で 表 さ れ な い 場 合 は,ま
よ り導 か
い わ れ る.
っ た く同様 に して
(2.4.21) と な る.こ
こ にJはqと
ω で 表 し た 運 動 エ ネ ル ギ ー,Flは
一般 化 力 の成分
で あ る. と く に す べ て のkに り,か
つ い てdθk=0で
つ ωk=Qkで,こ
あ れ ば,
で あ
の とき
(2.4.22) と な る か ら,方
程 式(2.4.18),
(2.4.20)は,通
常 の ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式
に 帰 着 す る. さ ら に ま た(2.4.1),
(2.4.3)の
か わ りに 時 間 軸 ま で 含 む 空 間 の 変 換 を考 え
て
(2.4.23) (た だ し こ こ で はali=ali(q,t))と
とっ た と きに は
(2.4.24) と し て 添 字 を0,1,…,nに
形 式 的 に 拡 大 す れ ば よ い.こ
nの
ー 括 弧[ui,uj]Lに
い ず れ か で あ れ ば,リ
の と きi,jが1,2,…,
は ∂/∂tが 含 ま れ な い か ら
(2.4.25) と な り,方
程 式(2.4.18)は,i=1,2,…,nに
た い して
(2.4.26) の 形 に 表 さ れ る(j,k,lは1∼nの
範 囲 で 和 を と る).こ
の方 程 式 は非 ホロ ノ
ミ ッ ク な 拘 束 の あ る 場 合 に 有 効 で あ る(§2.5.3参 例2.4.1
照).
剛体 の 回 転 に た い す る オ イ ラ ー 方 程 式
剛 体 の 固 定 点 の まわ りの 回 転 を 考 え る(全 体 が 並 進 運 動 して い る 場 合 も,例2.1.2 で 見 た よ う に重 心 を 固定 点 の よ う に扱 っ て よ い).固 し た 座 標 軸 を(X,Y,Z)軸,剛 を と り(x,y,z)軸
定 点 を 原 点Oと
し て 空 間 に 固定
体 に 固 定 し た 座 標 軸 と し て 互 い に 直 交 す る慣 性 主 軸
と し,こ の 慣 性 主 軸 の ま わ りの 慣 性 モー メ ン ト を(A,B,C)で
表
す. 剛 体 の 配 位 は オ イ ラー 角(φ,θ,ψ)を 用 い て 表 す(例2.1.2参 回 転 角 速 度 の(x,y,z)成
分 は(2.1.68),す
照).こ
の と き剛 体 の
なわ ち
(2.4.27) で 表 さ れ る.こ
の 場 合x,y,zが(2.4.1)に
お け る 添 字lに,φ,θ,ψ
が 座 標{qi}に
あ た る.こ れ らの 回 転 角 速 度 成 分 は い ず れ も擬 速 度 成 分 で あ る.実 際,た
と え ばωx
では (他 も同様) で あ るか らdωx=0と
な らずωxは
あ る角 度 の 変 化 率 で は な い.
こ の 角 速 度 成 分 を 用 い れ ば 運 動 エ ネル ギ ー は
(2.4.28) こ の場 合 ωzdt=θzがz軸
で あ る と す る と,そ
他 方,こ
の ま わ りの微 小 角 度 εの 回 転,す
れ に と も な う 任 意 の 関fの
な わち
微 分 は,(2.4.7)よ
り
の微分 は直接 的 に は
と求 ま る か ら,両 者 を比 べ て
(2.4.29) (こ の 場 合,x,y軸
は 剛 体 に 固 定 し た 軸 ゆ え,z軸
軸 ・y軸 自体 が 回転 す る こ と に 注 意).同
様 にx軸
ま わ りの 剛 体 の 回 転 に と も な いx ・y軸 の ま わ りの 回転 に た い して も
(2.4.30) が 得 られ,こ
れ よ り リー 括 弧 は
(2.4.31)
以 下 同様 に して{ux,uy,uz}よ
りな る リー 代 数 の構 造 定 数 は
(2.4.32) こ れ を 方 程 式(2.4.18)に
あ て は め れ ば,L=J-Uと
し て 剛 体 の 回転 の 方 程 式
(2.4.33) が 得 られ る.こ
う し て 剛 体 の 回 転 につ い て の オ イ ラ ー 方 程 式(2.1.70)が
あ らため て
導 き 出 さ れ た. た だ し い まの 場 合,(2.4.19)の
力 の 項 は,ωxに
対 応 して
(2.4.34) と表 され,こ れ はx軸 まわ りの 力の モー メ ン トで あ る.
2.5 拘 束 条 件 と拘 束 力
2.5.1 拘
束
力
これ ま で の議 論 は,未 知 の拘 束 力(束 縛 力)を 消 去 す る こ とに よ っ て,自 由 度 の数 だ け の 方程 式 を求 め る とい う方 向 で 進 め られ て きた.こ 力 そ の もの を求 め る こ とを 目的 と し て,ラ
こ で は逆 に 拘 束
グ ラ ン ジ ュ方 程 式 を見 直 す.
は じめ に 拘 束 が ホ ロ ノ ミ ッ クな 場 合 を考 え る.い
まN個
の 質 点 の 系 がp個
の拘 束 条 件(束 縛 条件)
(2.5.1) に 支 配 さ れ て い る と す る.rα ク トル で あ り,以 え,系
下,系
は 運 動 空 間R3に
お け る α番 目の 質 点 の位 置 ベ
全 体 の 運 動 を 直 積 空 間R3N=R3×R3×
… ×R3で
の 配 位 を ひ と ま と め にx=(r1,r2,…rN)=(x1,x2,…x3N)で
単 の た め 質 点 系 と考 え,(x1,x2,x3)=r1,(x4,x5,x6)=r2な 目 の 質 点,2番
表 す(簡 ど を そ れ ぞ れ1番
目 の 質 点 の デ カ ル ト座 標 系 の 成 分 と す る け れ ど も,議
よ う な 系 に も あ て は ま り,(x1,x2,…,x3N)も
考
論 は どの
そ の 配 位 を表 す も の で あ れ ば ど
の よ う な 座 標 系 の 成 分 で あ っ て も よ い). こ こ で
,す
な わ ち3N個
の 成 分 を も つp個
の ベ ク トル
(2.5.2) が1次
独 立 で あ る と す る(た
だ し ∂k=∂/∂xk).し
た が っ て,系
は実 際 に は 空
間R3N内
の 条 件(2.5.1)で
め 込 ま れ た 多様 体)上 N上
の 点xに
決 め られ るn(=3N-p)次
を運 動 す る.こ のNが
元 超 曲 面N(R3Nに
埋
配 位 空 間 で あ る.
た い す る仮 想 変 位(拘 束 条 件 を破 ち な い 同 時 刻 の 変 位)を
(2.5.3) と す れ ば,点x+δxもN上 (μ=1,2,…,p)を
の 点 で あ り,や
は り 拘 束 条 件fμ(x+δx,t)=0
満 た し て い る か ら,(2.5.1)と
あ わせ て
(2.5.4) で な け れ ば い け な い(以 下kの2重
添 字 は1∼3Nで
上 の 任 意 の 点 で の 仮 想 変 位 δxは,R3N内
のp個
と 直 交 し て い る.し
た が っ て ま た,N自
い る の で あ る(N上
の 任 意 の 点 の 接 空 間 が,そ
和 を と る).す
な わ ちN
の ベ ク トル
体 が こ のp個
の ベ ク トル に 直 交 し て
の 点 で の こ のp個
のベ ク トル
の 張 る 空 間 の 直 交 補 空 間 と な っ て い る). こ こ で は 拘 束 が 滑 らか な 場 合 を 考 え る(§1.1.3参 く拘 束 力Fα'(α=1,2,…,N)の ち,ひ
照).そ
の と き各 粒 子 に 働
全 体 は 仮 想 変 位 の さ い に 仕 事 を し な い.す
なわ
と ま とめ に 表 した拘 束 力
(2.5.5) は
(2.5.6) を満 た す.こ
の こ とは 拘 束 力F'が
味 し,し たが ってF'はp個
の
つ ね に 超 曲 面Nに
直 交 して い る こ と を意
∇fμ の1次 結 合 で
(2.5.7) の よ う に 表 さ れ る(た る).あ
る い は,拘
だ し∇ α=∂/∂rαで あ り,μ
束 力F'が
の2重
添 字 は1∼pの
和 を と
仮 想 ポ テ ン シ ャル
(2.5.8) か ら 導 か れ る と い っ て も よ い.拘 の 仮 想 ポ テ ン シ ャ ル の 値 が0の の 式 の 意 味 は 明 ら か で あ る.
束 条 件(2.5.1)を
考 慮 し,配
位 空 間Nは
等 ポ テ ン シ ャ ル 面 に な っ て い る と考 え れ ば,こ
こ
2.5.2
拘 束 系 の ラ グ ラ ンジ ュ方 程 式
そ れ ゆ え 拘 束 力 を 求 め る こ と は,つ こ と に 帰 着 す る.そ い ま,拘
ま る と こ ろ λμ(μ=1,2,…,p)を
求 め る
の た め に は 次 の よ う に す れ ば よ い.
束 力(2.5.7)を
考 慮 す れ ば,ニ
ュー トン の運 動 方 程 式 は
(2.5.9) あ る い は
を用 い て
(2.5.10) と 表 さ れ る.こ
の式は また
(2.5.11) とお け ば
(2.5.12) の よ う に 書 く こ とが で き る. こ の(2.5.12)(ま
た は(2.5.10))の3N個
束 条 件 か らxの3N個
の 方 程 式 と(2.5.1)のp個
の 成 分xiとp個
の λμが 決 定 さ れ,こ
の拘
う して 系 の 運 動
と拘 束 力 が 同 時 に 求 ま る の で あ る. な お 配 位 空 間Nの 上 で は,も
上 で
で あ る こ と に 注 意 す れ ば,N
と も と の ポ テ ン シ ャ ルUと
ン シ ャ ル
仮 想 ポ テ ン シ ャ ル を加 え た 新 しい ポ テ
は 同 じ も の で あ る こ と が わ か る .ポ
ル を 配 位 空 間Nか
ら 運 動 空 間R3Nに
拡 大 す る さ い に,fμ
の1次
テ ンシャ
結 合 の任 意 性
が あ る と い っ て も よ い. し た が っ て 上 の 結 果 は,仮
想 ポ テ ン シ ャ ル(2.5.8)を
含 め た ラ グ ラ ン ジア
ン
(2.5.13) を 作 り,こ
れ を(x,λ)={xk,λ
μ}を 拡 大 一 般 化 座 標 に も つ ラ グ ラ ン ジ ア ン と 見
な し て ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を 作 っ て も 導 か れ る.座 た い す る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 が 運 動 方 程 式(2.5.12)を に た い す るp個 は λμが 含 ま れ な い)が
の ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 拘 束 条 件(2.5.1)を
与 え る.
標xk(k=1,2,…,3N)に 与 え,座
標 (L0に
方 程 式(2.5.12)と
拘 束 条 件(2.5.1)を
ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 と 同 等 で あ る こ と は,次 拘 束 条 件 を解 く こ と に よ り,xの3N個 一 般 化 座 標q=(q1,q2,…,qn)を る.そ
組 み 合 わ せ た も の が 確 か にn個
の
の よ う に 直 接 的 に 示 さ れ る. の 成 分 は,独
立 なn=3N-p個
用 い てxk=φ(q,t)(k=1,…,3N)と
こ でφ(q,t)=(φ1(q,t),φ2(q,t),…,φ3N(q,t))と
の 表 され
し て,ラ
グ ラ ンジア ン
を
(2.5.14) で定 義 す る(以 下iお
よ びjの2重
添 字 は1∼nの
和 を と る).こ こ で
で あ るか ら
お よび
と な り,し
た が っ て,(2.1.12)す
な わ ち ∂iφk=d(∂iφk)/dtに
注 意 して
(2.5.15) が 得 ら れ る.以
上,[
変 位[δx]x=φ=(∂
]内 は,微
分 演 算 後 にx=φ(q,t)を
代 入.
φ/∂q)δqは 拘 束 条 件 を 満 た す 仮 想 変 位 ゆ え,(2.5.4)よ
が 任 意 の δqiに つ い て 成 り立 た な け れ ば な ら な い.し
り
た が っ て(2.5.15)で
(2.5.16) で あ り,そ
れ ゆ え(2.5.12)が
成 り 立 て ば,q=(q1,q2,…,qn)は
確 か にn個
の ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式
(2.5.17) を 満 た し て い る.そ xも
得 ら れ,そ
こ で,こ
れ か ら 得 ら れ る解qをx=φ(q,t)に
れ を 運 動 方 程 式(2.5.9)に
代 入 す れ ば,拘
代 入す れば
束 力 も
(2.5.18) と し て 求 ま る こ と に な る.
2.5.3
非 ホ ロ ノ ミ ック な 拘 束
こ れ ま で の 議 論 は,ホ
ロ ノ ミッ ク な拘 束 の 場 合 につ い て の もの で あ るけ れ ど
も,本
質 的 に は 拘 束 条 件 が(2.5.4)で
り,そ
の も と の 形(2.5.1)は
表 さ れ る こ とだ け を使 っ て い るの で あ
ど こ に も 使 っ て い な い.し
ミ ッ ク な 拘 束(nonholonomic
constraints)で
た が っ て,非
あ っ て も,条
ホ ロノ
件 が 微 分 量 の1次
式
(2.5.19) で 与 え られ て い る場 合 に は,こ れ が 積 分 不 可 能 で(2.5.1)の
形 に 表 され な く
と も,ま っ た く同 様 に論 じ る こ とが で き る. 実 際 こ の 場 合,仮
想 変 位(拘 束 条 件 を破 ら な い 同 時 刻 の 変 位)に
たい して
は,条 件
(2.5.20) が 課 せ ら れ る が,こ か ら,こ
れ は(2.5.4)の
∂fμ/∂xkをaμkで
れ ま で の 議 論 と ま っ た く 同 様 に し て,(2.5.12)の
置 きか え た だ け で あ る か わ りに 方 程 式
(2.5.21) が得 られ る.こ の 場 合,拘 束 条 件(2.5.1)に
相 当 す る の がp個
の微 分 方 程 式
(2.5.22) で あ り,(2.5.21)と(2.5.22)と
を あ わ せ て3N個
のxkとp個
の λμが 決 定
さ れ る の で あ る. な お,拘
束 力 の 表 式(2.5.7)を
議 論 を 始 め た け れ ど も,現
導 く の に,拘
実 に 用 い た の は,拘
束 が 滑 らか と い う と こ ろ か ら 束 が(2.5.6)を
満 た して い る
と い う こ と だ け で あ る.し
た が っ て た と え 滑 ら か な 拘 束 で な く と も,仮
が 仕 事 を し な い 場 合 で あ れ ば 同 じ議 論 が で き る.た 接 点 が す べ ら ず に 転 が る 場 合 に は(2.5.6)が は 非 ホ ロ ノ ミ ッ ク な(2.5.19)の =(F1'
,F2',…,F3N')の
と え ば,摩
成 り 立 ち,こ
形 で あ る が,そ
想 変位
擦 力 が あ って も
の 場 合,拘
の と き の 拘 束 力(摩
束条件 擦 力)F'
成分 は
(2.5.23) で 与 え られ る. 拘 束 が(2.5.19)で
与 え られ これ らが 積 分 不 可 能 な 場 合,前
節 で見た擬座標
を用 い る方 法 もあ る.こ の 場 合3N個
の{xk}の
う ち3N-p=n個
れ る の で,そ れ を
と し,擬 速 度 成 分 と して
は独 立 に と
(2.5.24)
(2.5.25) を と る.そ
う す れ ば 拘 束 条 件(2.5.22)は{ω
μ}に た い す る 条 件 と し て 単 純 に
(2.5.26) と 表 さ れ る.残
り の
は 積 分 可 能 で あ る か ら(2.4.26)式
で
(2.5.27) と し て よ く,(2.4.26)の
方 程 式 は
に た い して
(2.5.28) と 表 さ れ る(ρ=p+1∼3N,ν=1∼pで
和 を と る).こ
こ にL0は(2.5.24)を
解 い た もの を
(2.5.29) と して
(2.5.30) で 定 義 さ れ て い る.た (μ=1,2,…,p)と
だ し 拘 束 条 件(2.5.26)は
お く.し
微 分 演 算 を 実 行 後 に ωμ=0
た が っ て 方 程 式(2.5.28)は
ωμを 含 ま ず,
に つ い て の 微 分 方 程 式 で あ る. (な お 拘 束 力Fσ'=λν αν σ は(2.5.20)を す な わ ち 任 意 の
満 た す 任 意 の 微 小 変 位 に た い し て, に た い し て 仕 事 を し な い が,そ
の
た め に は (2.5.28)に
で な け れ ば な ら な い.し
た が って 方 程 式
は 拘 束 力 は 登 場 し な い.)
こ う し て 自 由 度 の 数(3N-p=n)だ れ に よ り
け の 運 動 方 程 式(2.5.28)が が 求 ま り,残
得 ら れ,そ
り のxμ(μ=1,…,p)は(2.5.22)
を 解 く こ と で 得 ら れ る. 例2.5.1
円 筒 上 を転 が る 円 筒
図2.5.1の
よ うに 固定 円 筒(半 径A)の
わ りの 慣 性 モ ー メ ン トI=ma2/2)が,軸 可 動 円 筒 の 中 心 が 半 径r=A+aの
上 を可 動 円 筒(半 径a,質
量m,中
心軸 ま
を水 平 に 保 っ て 転 が る とす る. 円 運 動 をす る の で
(2.5.31) ま た 接 点 が す べ らず に転 が る条 件 は,可
動 円 筒 の 中心 の 固 定 軸 ま わ りの 回転 角 を θ,
可 動 円 筒 の 軸 の ま わ りの 回 転 角 を φ と して
(2.5.32) 前 者(2.5.31)は る が,あ
ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 を 与 え る.後
者(2.5.32)も
実 は積分 可 能 で あ
え て この ま ま の 形 で 非 ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 と して 扱 お う.
ラ グラ ンジア ンは
(2.5.33) 対 応 す る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式(2.5.12)お
よ び(2.5.21)は
i.e.
(2.5.34)
i.e.
(2.5.35)
i.e.
(2.5.36)
図2.5.1 円筒 上 を ころ が る 円筒
さ て 拘 束 条 件(2.5.31)よ αφ=(A+a)θ.こ
り
この 式 に θ をか け,初
期 条 件 を θ=0で
こ れ よ り 求 積 法 で θ=θ(t)は (2.5.34)に
,ま
れ ら を 用 い て(2.5.35),
使 え ば,拘
(2.5.36)よ
θ=0と
求 ま り,し
で あ るが,こ
で,こ
た(2.5.36)よ
求 ま る.さ
ら に こ れ を
向 成 分 つ ま り垂 直 抗 力 は
そ れ ゆ え 半 径 比 に よ ら ずcosθ=4/7(θ=55°)でFr'=0と 定 円 筒 か ら 離 れ る.ま
り
し て積 分 す れ ば
た が っ て φ(t)も
束 力(2.5.7)のr方
た(2.5.32)よ
り λ2,φ を 消 去 し て
り,拘
な り,こ
束 力(2.5.23)は,こ
こで可動 円筒 は 固 の場 合
れ は 摩 擦 力 の モ ー メ ン トを与 え る.摩 擦 力 の 大 き さ は
れ も 円 筒 の 半 径 比 に よ ら な い.
例2.5.2
平 面 上 を 転 が る コイ ン の 運 動
摩 擦 の あ る水 平 面 上 を す べ らず に 転 が る コ イ ン(質 量m,半 比 べ て 無 視 で き る)の 運 動 を考 え る.図2.5.2の 平 面 上 にx軸 す る.ま
とy軸,鉛
た 重 心oを
直 上 向 き にz軸
径a,厚
を と り,接 点o'の
座 標 を(X,Y,Z=0)と
通 り コ イ ン の 面 と水 平 面 とに 平 行 な 軸 を ξ 軸,コ
行 で ξ 軸 と90° を な す 軸 を η軸,重
さ は半 径 に
よ う に 空 間 に 固定 した 座 標 系 と し て
イ ンの面 に 平
心 を通 り コ イ ン の 面 に 垂 直 な 軸 を ζ軸 と す る.
この ξ軸 ・η軸 ・ζ軸 は そ れ ぞ れ 慣 性 主 軸 で あ り,そ の 各 軸 ま わ りの 慣 性 モ ー メ ン トは A,A,C=2A=ma2/2で し た と き,こ
あ る.ま た 水 平 面 との 接 点 を通 り ξ軸 に 平 行 な軸 を ξ'軸 と
の ξ'軸 とx軸
の な す 角 度 を φ,ζ 軸 のz軸
ζ軸 ま わ りの 回 転 角 を ψ とす る.こ れ ら を使 え ば,重
と な す 角 度 を θ,コ イ ン の
心oの
座標は
(2.5.37) で あ り,重 心 の 速 度 成 分 は
(2.5.38) また重 心 まわ りの角 速 度成 分 は
(2.5.39) で 表 さ れ る.し
たが って ラ グラ ンジア ンは
図2.5.2 平 面 上 をこ ろが る コ イ ン
(2.5.40) こ こ に コ イ ン は 接 点 が す べ ら ず に転 が る の で,座 標 成 分 の 間 の 拘 束 条 件 と し て
(2.5.41) が 成 り立 つ.こ
れ は 非 ホ ロ ノ ミ ッ ク な(積 分 不 可 能 な)拘 束 で あ る.
こ れ か ら得 ら れ る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式(2.5.21)は
以 下 の と お り:
(2.5.42) (2.5.43)
(2.5.44) (2.5.45)
(2.5.46) こ こ に
を表 す.
こ れ らの 五 つ の 方 程 式 よ り,拘 束 条 件(2.5.41)を 去 す れ ば,最
用 い てX,Yお
よ び λ1,λ2を消
終 的 に回転 の運動 方程 式 として
(2.5.47) (2.5.48) (2.5.49) が 得 ら れ る.θ
≠0と
す れ ば(2.5.48),(2.5.49)よ
りた だ ち に
(2.5.50) とい う解(定 常 解)の
存 在 が わ か る.こ
の と き接 点 の 速 度 成 分 は(2.5.41)よ
で あ り,他
方(2.5.47)はC=2A=ma2/2を
と な る.そ
れ ゆ え こ の 定 常 解 は 次 の よ うに 分 類 さ れ る:
代 入 して
(i) θ0=90°の と き(コ イ ンが 鉛 直 に 立 つ 場 合)Ω ω=0で (i-a) Ω=0な
あ り
らば
軌 跡 は 直 線 で,コ (i-b) ω=0な
り
す なわ ち接 点 の イ ン は 水 平 な 軸 の ま わ りに 回 転 す る.
らばX=X0,Y=Y0と
な り,接 点 は 静 止 し,コ
イ ンは 鉛 直 軸 の
まわ りの 角 速 度 Ω の 回 転 運 動 を 行 う. (ii) θ0<90° な らば Ωω<0.こ
ま た γ:=R-acosθ0と
の と きR:=-(ω/Ω)aと
し て 重 心 は(簡
して 接 点 は
単 の た めX0=Y0=0と
し て)
で 表 さ れ る 円 運 動 を行 う.拘 束 力 は も ち ろ ん 摩 擦 力 で あ り,そ の 成 分 は
と求 ま る.も 座 標 のz成
ち ろ ん こ の 摩 擦 力(FX,FY)が
分Zを
円 運 動 の 向 心 力 を 与 え る.な
変 数 と して ラ グ ラ ン ジ ア ン に 用 い,拘
拘 束 力 と し て 水 平 面 か らの 垂 直 抗 力FZ=mgが
束 条 件Z=0を
得 られ る.
お接 点 の
付 加 す れ ば,
な お 回 転 の 方 程 式(2.5.47),(2.5.48),(2.5.49)の の 安 定 性 の 吟 味 に つ い て は,『 を 見 て い た だ き た い.
演 習 詳 解 力 学 』(p.
初 等 的 な 導 き 方 と(i-a)の 134脚
注6)問
題6-23と
解
その解 説
3 変
3.1
3.1.1
分
原
理
ハ ミル トンの 原 理
作 用 積 分 と ハ ミル トン の 原 理
ラ グ ラ ン ジ ュ 形 式 の 力 学 で は,系 に よ っ て 表 さ れ,そ
ラ ン ベ ー ル の 原 理(2.1.8)か
い ま 系 が 時 刻t1に
点Q1を
到 達 し た と す る.等
式(2.1.8)を
で あ る.い る と し て,上
の 点の移動
の 経 路 は ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 に よ り決 定 さ れ る.そ
ラ ン ジ ュ 方 程 式 は,ダ
こ こ で{δqi}は
の 時 間 的 発 展 は 配 位 空 間N上
出 発 しN上
ら 導 き 出 さ れ た.
の あ る 経 路 を 通 っ て 時 刻t2に
保 存 力 で ポ テ ン シ ャ ルUに
式 の 被 積 分 関 数 のrα
同 様 の 変 形 を 施 し,こ ラ ン ジ ア ン をL=T-Uと
点Q2に
この 経 路 に そ って 積 分 す れ ば
系 が 満 た す べ き 瞬 間 的 な 拘 束 を 破 ら な い 無 限 小 変 位(仮
ま 力{Fα}が
の ラグ
想 変 位)
よ り(2.1.14)で
与 え られ
を 含 む 項 に(2.1.10)∼(2.1.13)の
過 程 と
の 系 の 運 動 エ ネ ル ギ ー を す る と,上
,ラ
式 の左 辺 は
と 書 き 直 さ れ る. そ れ ゆ え 経 路 の 両 端(t=t1お
よ びt2)で{δqi}=0と
な る仮 想 変位 を と る と
グ
が 成 り立 つ.す
な わ ち系 が 実 際 に と る運 動 経 路 に そ っ た ラ グ ラ ン ジ ア ン の積 分
は,端 点 を(通 過 時 刻 も含 め て)固 定 して 途 中 の経 路 を仮 想 的 に 無 限小 だ け 変 化 させ て もそ の 値 を変 え な い(変 化 が 高 次 の 無 限小 で あ る). 逆 に(以 下 本 節 を通 して 見 る よ うに),系 が 配 位 空 間 の2点
を 通 る と き,端
点 を(通 過 時 間 も含 め て)固 定 した 経 路 の 無 限小 の 変 化 が そ の 経 路 に そ っ た ラ グ ラ ン ジ ア ン の 積 分 の 変 化 を 引 き起 こ さ な い とい う条 件 か ら,ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 が 導 き出 され る. この ラ グ ラ ン ジ ア ンの 積 分 を作 用 積 分(action な 無 限小 の 変 化 を 変 分(variation),そ
integral),ま
た こ の仮 想 的
して 経 路 の 変 分 に た い して 積 分 値 の変
化 が 高 次 の 無 限 小 に な る と き,そ の 経 路 を停 留 曲 線(stationary
curve)な
い
し極 値 曲 線 とい う. とす れ ば上 の 議 論 よ り,系 が 配位 空 間 内 で現 実 に と る経 路 は 作 用 積 分 の停 留 曲 線 で 与 え られ る とい う要 請 を,運 動 方 程 式 にか わ る新 し い力 学 原 理 と して お くこ とが で き る.こ の 要 請 を ハ ミル トンの 原 理(Hamilton's
principle)と い
う.静 力 学 で 系 の 釣 り合 いが 単 一 の ポ テ ン シ ャ ル関 数 が停 留 値 を とる条 件 で決 定 され る こ とに 対 比 され る,動 力 学 の 原 理 で あ る. 正 確 に は以 下 の よ うに 定 式 化 さ れ る. ラ グ ラ ン ジ ア ンLが
与 え られ て い る と き,配 位 空 間N上
の曲線
に そ っ た ラ グ ラ ン ジ ア ンの 積 分
(3.1.1) と して 作 用 積 分 を定 義 す る.こ れ は 曲 線 つ ま り関 数 を 変 数 とす る関 数 で あ り, 汎 関 数(functional)と
呼 ば れ る.つ
局所座 標表示 CL上
の点
CLの 接 ベ ク トル を用 い れ ば,q(t)の
汎 関 数 と して
ま り作 用 積 分 は 経 路CLの
汎 関 数 で あ り,
(3.1.2) と 表 さ れ る.こ
の と き,ハ
配 位 空 間N上
ミル ト ン の 原 理 は 次 の よ う に 表 さ れ る:
で 系 が 時 刻t1,t2に
ら れ て い る と き,t1にQ1を 現 実 に 辿 る 経 路CLは,作
通 りt2にQ2を 用 積 分I[CL]の
な お,次
の 注 意 を 補 足 し て お く.一
空 間TN上
の 関 数L:TN×R→Rと
q(t)は
か し 作 用 積 分I[CL]の 曲 線CL(t)=q(t)の
q(t)=dq/dtと
与 え
通 る曲線 の集合 の うちで系 が 停 留 曲 線 で 与 え ら れ る.
般 に ラ グ ラ ン ジ ア ンL(q,q,t)を 見 る か ぎ り で は,qはq点
間 の 任 意 の ベ ク トル で あ っ て よ く,し れ る.し
と る 配 位q(t1)=Q1,q(t2)=Q2が
た が っ てqはqと
での接 空
は 独 立 な 量 と見 な さ
被 積 分 関 数 と し て のL(q,q,t)に
接 ベ ク トル,す
し て 決 ま る 量 で あ る.そ
状 態
お い て は,
な わ ち 与 え ら れ たq(t)に
た い して
の 意 味 で 作 用 積 分 はCL(t)=q(t)の
汎 関 数 な の で あ る.
3.1.2
拡 大 配 位 空 間
と こ ろ で 一 般 に,あ い る と き,そ 路CLな
る 空 間 内 で空 間 の 点 の関 数 と して の あ る量 が 与 え られ て
の 量 の 経 路 に そ っ た 積 分 が 極 値(一
い し そ の 局 所 座 標 表 示q(t)を
般 に 停 留 値)を
と る よ うに 経
求 め る 問 題 を 変 分 問 題,そ
して 変 分 問 題
の 形 で 表 現 さ れ た 力 学 原 理 を 変 分 原 理(variational て 力 学 の 原 理 を 運 動 方 程 式(微
分 方 程 式)か
系 の 時 間 的 発 展 の 捉 え 方 に お け る180度
(N上
by
step)で
件 と し てt=t1で 他 方,ハ
の 際,運
の 配 位q(t1)と
ミル ト ン の 原 理(一
本 的 に 局 所 的(local)か
つ
の 各 点 ご とに 速 度 が 指 定 され
の 速 度 に誘 導 され て経 路 上 の 点 の位 置
動 方 程 式 は2階 速 度q(t1)の
微 分 方 程 式 で あ る か ら,初
般 に 変 分 原 理)に
ま り 系 が 時 刻t1にQ1を
こ と が わ か っ て い る と き,q(t1)=Q1,q(t2)=Q2と
期条
指 定 が 必 要 で あ る. よ れ ば,「 初 期 条 件 」 の か わ
「境 界 条 件 」 と し て 初 期 配 位 と最 終 配 位 が 与 え ら れ れ ば,そ
中 の 経 路 が 決 定 さ れ る.つ
し
の 転 換 が と も な っ て い る.
な わ ちN上
に 速 度 ベ ク トル 場 が 与 え ら れ),そ
が 順 に 決 定 さ れ る.そ
りに
あ る.す
い う.そ
ら 変 分 原 理 に 取 りか え る こ と は,
運 動 方 程 式 に よ る 経 路 曲 線 の 決 定 の あ り方 は,基 逐 次 的(step
principle)と
れ で も って 途
出 発 しt2にQ2に な る 曲 線CL=q(t)が
到達 す る その途
中全 体 の 積 分 の 振 る 舞 いか ら決 定 さ れ る.そ の 意 味 で ハ ミル トン の 原理 に お け る 軌 道 の 決 定 の 仕 方 は,本 来 的 に 大 域 的(global)か
つ 一 挙 的(all
at once)
で あ る. この よ うに 変 分 原 理 と して の ハ ミル トンの 原 理 が,系 の 時 間 的発 展 の 全 体 を い わ ば 「同 時 的 」 に捉 え る こ と を そ の 本 来 の 特 徴 とす るの で あ れ ば,作 用 積 分 とそ の 変 分 を,時 間軸 を含 む(n+1)次
元 の 拡 大 配 位 空 間N×R上
で表 示 す る
ほ うが よ り自然 で あ ろ う.そ の ため 本 書 で は,変 分 計 算 を こ の拡 大 配位 空 間 で 行 う. そ の と き に は 作 用 積 分 は,N上
の 曲 線CLで
は な く,CLをN×Rに
持 ち上
げ た 曲線(図3.1.1)
の 汎 関 数 と考 え られ る.τ は 経 路 の パ ラ メー タ で あ る.こ の 曲 線 は系 の 配 位 の 考 え られ る継 時 的 変 化 を全体 と して 静 的 に表 現 す る もの で,系 の 時 間 的 発 展 お よび 時 間 的 前 後 関 係 は,点 の 「移 動 」 に よ っ て で は な く,こ の 曲 線 全 体 とそ の 上 の 点 の位 置 関 係 に よ って 表 さ れ る.
図3.1.1 配 位 空 間 の経 路 と拡 大 配位 空 間 の経 路
このCLの
局 所 座 標 成 分 を
とす る.た だ し
(3.1.3) で あ り,t(τ)は も
パ ラ メ ー タ τの 単 調 増 大 関 数(な の よ う に 書 い てqの
る が,記
おqは
成 分qi(t)と
そ の 成 分 に た い して
区別 す る方 が 正 確 で は あ
号 の イ ン フ レ を避 け る た め 成 分 に は 頭 に ∼ を つ け な い).こ
の 接 ベ ク トルCL'=d/dτ
の 局 所 座 標 成 分 は,τ
の と きCL
に よ る 微 分 演 算 を'(ダ
ッ シ ュ)
で記 して
で 表 さ れ る.こ
の 成 分 を用 い て 作 用 積 分(3.1.2)を
書 き 直 す:
(3.1.4) そ こで この 被 積 分 関 数
(3.1.5) を拡 大 配 位 空 間 上 で の ラ グ ラ ン ジ ア ン と見 なす.Lに
よ る作 用 積 分
(3.1.6) は,値
と し て は も と の 作 用 積 分 に 一 致 す る が,CLの
3.1.3
汎 関 数 で あ る.
拡 大 状 態 空 間
と こ ろ で ラ グ ラ ン ジ ア ンL(q,q,t)は,初 の 被 積 分 関 数 と し て はqの
め に も 述 べ た よ う に,作
関 数 と 見 な さ れ,そ
ラ グ ラ ン ジ ア ン そ れ 自体 と し て は(q,q,t)の 量 で あ る.い
い か え れ ばL(q,q,t)は2n次
バ ン ドル)と
時 間 軸Rの
直積 空 間 上 の 関数
用 積分
の さ いqはdq/dtを
表 す が,
関 数 で あ っ てqはqと
は独 立な
元 状 態 空 間TN(配
位 空 間Nの
接
で あ る.こ
こ で 配 位 空 間 にq0=t軸
を加 え た 拡 大 配 位 空 間N×Rに
き,そ の移 行 を状 態 空 間 で見 直せ ば,一
見 した と こ ろ空 間 は(2n+2)個
の局所
で 表 さ れ る(2n+2)次
元 多様
座 標 成 分 体T(N×R)(N×Rの
移 った と
接 バ ン ドル)に 移 っ た よ うで あ る.し か る に 物 理 的 に は
独 立 な変 数 は も と の(q,q)お
よ びtの 合 計(2n+1)個
しか な い の だ か ら,余
計 な次 元 が1つ 付 け 加 わ っ た か の よ うに 見 え る. しか しそ れ は見 か け 上 の こ とに す ぎな い.実 際,こ のL(q,q')に べ て の{qi'}をk倍
と な る の で,こ
お いてす
す れば
のLは{qi'}の1次
同 次 式 で あ り,オ
イ ラー の 定 理 に よ り
(3.1.7) と表 さ れ る(本 節 で は,2重 場 合 が あ る の で,和
添 字 に つ い て の 和 はi=1∼nの
の 記 号 を 明 示 す る).す
な わ ちLは
場 合 とi=0∼nの 恒 等的に関係
(3.1.8) を 満 た さ な け れ ば な ら な い.こ い 特 徴 で あ る.つ
の こ の 関 係(3.1.8)を る.そ
3.1.4 さ て,こ
一 致 し,こ
基 本1形
際 に は(2n+2)次
満 た す(2n+1)次
し て こ の 超 曲 面 は,結
TN×Rに
の こ と は 拡 大 空 間 の ラ グ ラ ン ジ ア ンLの
ま り系 の 運 動 は,実
局,も
著 し
元 多 様 体T(N×R)内
元 超 曲面 上 に 限 定 さ れ て い る の で あ と の 状 態 空 間TNと
時 間 軸Rの
直積 空間
れ を拡 大 状 態 空 間 と い う.
式 と作 用 積 分
こ で 微 分 形 式(1形
式)
(3.1.9) を 定 義 す る.§2.3で 上 げ た もの で,や こ の ΘLと
定 義 し た 基 本1形 は り基 本1形
式 θL(2.3.5)を
拡大 配位 空 間 に持 ち
式 と い う.
θLの 関 係 を 明 ら か に す る た め に,ラ
グ ラ ン ジ ア ンLとLの
関係
(3.1.5),す
な わ ち
(3.1.10) に 戻 る.こ
れ よ りた だ ち に 等 式
(3.1.11) お よ び(iは1,2,…,nを
表 す と し て)
(3.1.12) ま たq0=tに
注 意 して
(3.1.13) が 得 ら れ る(最 後 の 等 号 はHLの 基 本1形
定 義(2.2.28)).こ
れ らの 関 係 を 考 慮 す れ ば
式(3.1.9)は
(3.1.14) の よ う に θLで 表 さ れ る.な
お(3.1.13)式
般 化 運 動 量 で あ る こ と を 示 し て い る.す こ の ΘLが
は-HLが
正則 な 座 標 変 換(拡
共役 な一
な わ ちp0=-HL.
θLと 同 様 に 局 所 座 標 系 に よ ら ず,し
あ る こ と は ほ と ん ど 自 明 だ が,直
時 間q0=tに
たが って確か に微 分 形式 で
接 的 に は 次 の よ う に 示 さ れ る.N×R上
の
大 配 位 空 間 に お け る 点 変 換)
(3.1.15) を 考 え る.逆
変 換 は
で 表 さ れ,こ
れよ り
が 得 られ る.こ の座 標 変 換 に と も な うラ グ ラ ン ジ ア ンの 変 換 は,こ の 場 合 の 変 換 が 同 一 の 点 を異 な る座 標 系 で 見 る もの で あ る こ とに 注 意 す れ ば
と 表 さ れ る.し
た が って
とな り,確 か に ΘLは 座 標 変 換 で不 変 で あ る.な お こ の こ とは
が 共 変 ベ ク トル で あ る こ と を示 し て い る. こ の 微 分 形 式 ΘLを 用 い れ ば,作
用 積 分(3.1.6)は
線積分
(3.1.16) に よ り局 所 座 標 系 に よ ら な い 形 で 表 さ れ る.実 際,経 で あ るか ら,局 所座 標 表 示 で
路CLの
接 ベ ク トル は
とす る と
(3.1.17a) (3.1.17b) と な り,(3.1.16)は
確 か に 作 用 積 分 で あ る.
こ の 拡 大 配 位 空 間 で は ハ ミル ト ン の 原 理 は 次 の よ う に 表 さ れ る.
拡 大 配 位 空 間N×R上 Q1Q2を
通 る と き,
結 ぶ す べ て の 曲 線 の 集 合 の な か で 系 が 現 実 に 辿 る 経 路 は,汎
I[CL]の
関数
停 留 曲 線 で 与 え ら れ る.
こ こ で 「N×R上 t2にN上
で 系 の 運 動 を 表 す 経 路 が2点Q1,Q2を
で 点Q1,Q2を
の 決 ま っ た 点Q1,Q2を
通 る 」 と い う 表 現 の な か に,「 決 ま っ た 時 刻t1, 通 過 す る」 と い う 内容 が 込 め ら れ て い る こ と
に 留 意 し て も ら い た い.
静 力 学 で 系 の釣 り合 い が 座 標 の 関数 で あ る ポ テ ン シ ャ ル が停 留 値 を と る条 件 か ら決 定 され る の と同様 に,ハ
ミル トンの 原 理 で は,動 力 学 で 系 の 運 動 が,座
標 の 汎 関 数 で あ る作 用積 分 が 停 留 値 を と る条 件 か ら決 定 さ れ るわ け で あ る.系 の 運 動 を 時 間 軸 を含 む拡 大 配 位 空 間 に お け る あ る種 の 釣 り合 い と見 る こ とに相 当 す る.
3.1.5 作 用 積 分 の 変 分 計 算 ハ ミル トンの 原 理 か ら ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 が 導 か れ る こ と を示 す ため の準 備 と して,作 用 積 分 の変 分 計 算 を行 う.ハ
ミル トンの 原 理 そ の もの は 経 路 の両 端
を 固 定 した変 分 だ け を 問 題 とす るが,変
分 を一 般 的 に扱 うた め に,こ
こ で は両
端 を 自 由 に し た 変 分 の 場 合 か ら 始 め よ う*1. 拡 大 配 位 空 間N×R上
で,曲
CL+⊿CL(両
端 をQ1*,Q2*)を
l1,l2と し,こ
の4本
線CL(両
端Q1,Q2)を
考 え,Q1Q1*,Q2Q2*の
の 曲 線 で 囲 ま れ た 面 をA,Aの
曲 線 を つ な い だ 閉 曲 線 を ∂Aで 表 す(図3.1.2).こ
わずか にず ら した曲線 そ れ ぞ れ を つ な ぐ曲 線 を 周 囲 す な わ ち こ の4本
の
の 閉 曲 線 に た い す る ス トー
クス の定 理 は
ただ し
(3.1.18) で あ り,こ れ を用 いれ ばCLの
任 意 の 変 化 に た い す る作 用積 分 の変 化 は
(3.1.19) と表 さ れ る.(3.1.6)を
考 え れ ば,こ
れ は ⊿I[CL]に
等 し い.
図3.1.2 拡 大 配 位 空 間 の 経 路 とそ の 変 分
そ れ ぞ れ の 積 分 値 を 求 め る に は,以
下 の よ う に す れ ば よ い.い
座 標 と し て 互 い に 独 立 な パ ラ メ ー タ(τ,η)を 使 う と,A上
ま,面Aの
では
(3.1.20) と表 さ れ る(q0も(τ,η)に
よ り変 化 す る と し て も よ い け れ ど も,い
わ し く な る だ け で 結 果 は 変 わ ら な い).た
だ し
た ず らに 煩 が 曲 線CL
上 の 点 に な る よ う に パ ラ メ ー タ η を と る.
*1 こ こ で は 局 所 座 標 を 用 い な い 計 算 を 行 う に,少
し ま わ り く ど い や り方 を し た が,も
.た
だ し変 分 計 算 の 意 味 が わ か りや す い よ う
う 少 し ス マ ー ト な 計 算 は,§5.1.3参
は じめ か ら 局 所 座 標 を 用 い た 変 分 計 算 は,§5.1.1参
照.
照.ま
た,
こ の と き 曲 線CLの
微 小 な 変 形 に と も な う座 標 成 分 の 変 化(変
よ う に 考 え ら れ る.い
ま,CL上
の 各 点CL(τ)を
の 接 ベ ク トル をuη=∂/∂ η と し て,変
分)は,次
始 点 と し,τ=const.の
の 曲線
分
(3.1.21) を定 義 す る.こ
れ は η の み の 変 化 に よ る 変 分 で あ り,こ
そ れ に た い し てCL上 と,そ
の 点 を 始 点 と す る 任 意 の 曲 線(パ
の 接 ベ ク トル は(こ
η の2個
れ ま でd/dτ
れ を δ-変 分 と い う*2. ラ メ ー タ λ)を 考 え る
と 書 い て い た と こ ろ を,以
下 で は τと
の パ ラ メ ー タ を 考 え る の で 偏 微 分 記 号 ∂/∂τ で 表 す こ と に し て)
(3.1.22a) で あ るか ら,そ の 曲 線 に そ っ た変 化
(3.1.22b) は,τ
お よ び η の 両 者 の 変 化 に と も な う も の で,こ
tion)と
い う.な
おt=q0(τ)は
れ を 全 変 分(total
varia
パ ラ メ ー タ τの み の 関 数 で あ る と し た の で,
そ の変 分 は
(3.1.23) と な る.結
局,δ-変
分 は 同 時 刻 の 変 分 を 表 す.
そ こ で(3.1.19)式
の 右 辺 第1,2項
し,さ
に 十 分 近 い こ と を 考 慮 す れ ば,lα
ら にQα*がQα
のlα の 接 ベ ク トル を υλα:=d/dλ αで 表 に そ っ た積 分 は
(3.1.24) と し て よ い(α=1,2).こ lαはQα
こ で は 両 端Qα
を任 意 に動 か す 変 分 を考 え て い るの で
を 始 点 とす る任 意 の 微 小 曲 線 で あ り,そ
れに そっての変化
(3.1.25) は 全 変 分 のQα
で の 値 で あ る.そ
*2 u
ηは,丁 寧 に 書 け ば,φ:(τ,η)平 uη=φ*∂/∂η で あ り と な る(p. 同 様).
51脚
注9(c)式
れ ゆ え(3.1.24)式
面 →N×R,ま
お よ び(1.6.23a)参
照,
は
たfをN×R上
の 関 数 と し て,
につ いて も
(3.1.26) と な る.こ […]内
れ が 端 点 の 変 化 に と も な う作 用 積 分 の 変 分 で あ る.た
の 量 の τ=τα(α=1,2),η=0の
他 方,(3.1.19)の
右 辺 第3項
だ し[…]τ αは
値 を と っ た も の と す る.
の 面 積 分 は,δ η の1次
ま で とれ ば
(3.1.27) と表 さ れ る(こ
こ にCL'=∂/∂
τ).こ
こ で さ ら に(3.1.14)式
の外微分
(3.1.28) を 使 う.特
に 保 存 系 の 場 合 を 考 え る.そ
し て よ く,ま
た
の と き
を考 慮 し て(以
と 下 で は η=0を
省 略)
(3.1.29) さ ら に(2.3.9)す
な わ ち
を使 えば
(3.1.30) と表 さ れ る.こ
こ で は 議 論 を 見 や す くす る た め に 保 存 系 の 場 合 を 考 え た が,実
は こ の 式 は,後
で(3.1.40)に
(3.1.22a)の
示 す よ う に,非
保 存 系 の 場合 に も,ま
形 の 任 意 の υλの 場 合 に も 成り 立 つ.こ
う し て(3.1.27)の
たuη が 面 積
分 は局 所座 標 表 示 で
(3.1.31) と 表 現 さ れ る(た
だ しt(τ1)=t1,t(τ2)=t2).
以 上(3.1.26),(3.1.31)を
あ わ せ て,作
用 積 分 の 変 分(3.1.19)は
(3.1.32a) (3.1.32b)
と表 さ れ る.こ
の 式 は,解
析 力 学 に お い て は き わ め て 重 要 で あ り,通
名 前 は つ い て い な い よ う だ が,本
3.1.6
書 で は 変 分 法 の 基 本 公 式 と 呼 ぶ.
ハ ミル トン の 原 理 と ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式
い ま,N×R上
の 経 路CLの
の 端 点Q1,Q2を 刻t=t1,t2で 辺 第1項
常 と くに
端 点Q=Q1,Q2を
固 定 し た 変 分(N上
通 過 時 刻 も 含 め て 固 定 し た 変 分)を は ⊿qi=0,⊿t=0と
の[
]内
は0に
考 え る.つ
な る 変 分 で あ り,こ
な り,作
で はCL
ま り端 点 通 過 時
の 場 合 は(3.1.32)式
右
用積 分の変分 は
(3.1.33) と な る.そ
れ ゆ えCL(し
た が っ てCL)が
系 の 現 実 の 経 路 で あ れ ば,CL上
で
ラ グランジュ方程式
(3.1.34) が 満 た さ れ て い る の で,こ わ ち,こ
の 作 用 積 分 の 端 点 を 固 定 し た 変 分 は0に
な る.す
な
の 節 の は じめ に 述 べ た よ う に ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の 解 曲 線 は 作 用 積 分
の 停 留 曲 線 で あ る*3. こ の 逆,つ
ま り作 用 積 分 の 停 留 曲 線 が ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を 与 え る こ と は,
次 の 補 題 を 用 い,さ す れ ば,た
ら にn個
の 変 分 δqi(i=1,…,n)が
独 立 で あ る こ と を考 慮
だ ち に 導 か れ る.
補 題 f(t1)=0,f(t2)=0を
満 た す 任 意 の 連 続 関 数f(t)に
た い して あ る連 続
関 数F(t)が
を 満 た す な ら ば,全
区 間[t1,t2]でF(t)=0で
な け れ ば な ら な い.
証 明 も し も あ るt0∈(t1,t2)でF(t0)>a>0で
あ れ ば,F(t)の
F(t)>a>0と
存 在 す る.そ
て 図3.1.3の
な る よ う な 区 間[t0-d,t0+d]が よ う な 関 数,つ
し
ま り
*3 数 学 で は を,オ
連 続性 よ り こ でf(t)と
,関 数F(x,x,t)の 積 分 が 停 留 値 を と る 条 件 を 表 す(3.1.34)の 形 の方 程 式 イ ラ ー 方 程 式 な い しオ イ ラ ー-ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 と い う.本 書 で は,関 数Fが ラ
グ ラ ン ジ ア ン の 場 合,こ
れ を ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 と 呼 ぶ こ と に す る.
図3.1.3
t
とな る関 数 を選 ぶ と
とな り,こ れ は 前 提 に反 す る(F(t0)<-a<0な
ら ば
と置 きか
え れ ば よ い).し た が って す べ て のt∈(t1,t2)でF(t)=0. 結 局,作
用 積 分 の 停 留 曲 線 で あ る こ とが ラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式 の解 で あ る ため
の 必 要 十 分 条 件 で あ る こ とが示 され た.し た が って,ニ
ュ ー トン の 運 動 方 程 式
な い し ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を力 学 原 理 に と るの と ま っ た く同 じ権 利 で,ハ
ミル
トン の 原理 を力 学 原 理 と して採 用 す る こ とが で き る の で あ る. た だ しハ ミル トン の 原 理 は ラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式 と 同等 で あ るが,は べ た よ うに 運 動 の 決 定 の 仕 方 は 異 な る.ハ
じめ に述
ミル トン の原 理 は,本 来 的 に は系 の
初 期 配 位 と最 終 配位 の み の情 報 か ら そ の途 中 の状 態 を決 定 し う る とい う主 張 で あ り,必 ず し もい っ た ん 微 分 方程 式 に ま で後 退 し,そ こ か ら改 め て 与 え られ た 初 期 条 件 の も とで積 分 し直 す とい う行 き方 を と らね ば な ら な い も の で は な い. 運 動 の,微 分 方 程 式 を経 由 しな い 直 接 的 決 定 の例 を節 末 に挙 げ る.
3.1.7 ラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式 の 拡 大 配 位 空 間 上 の 表 現 な お,作
用 積 分(3.1.16)と
所 座 標 系(一 般 化 座 標)に 曲 線 に な るか 否 か,し
そ の 変 分(3.1.19),(3.1.32a)は
よ らな い 形 で 定 義 さ れ て い る の で,あ
た が っ て また,そ
使 用 す る局 る曲 線 が 停 留
の 曲線 が ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 の解 曲線
で あ るか 否 か は座 標 系 に よ らな い事 実 で あ る.実 際 こ れ まで の 議論 と,と 式(3.1.33)に らば,ラ
くに
お い てuη が 任 意 の 曲 線 の 接 ベ ク トル で あ る こ と を考 慮 す る な
グ ラ ン ジュ 方 程 式 自体 を局 所 座 標 系 に よ ら な い形 で,幾 何 学 的 に
(3.1.35) の よ う に 表 現 す る こ と が で き る(●
は ブ ラ ン ク を 表 す).こ
の 式 は(2.3.10)
式 を 拡 大 配 位 空 間 で 表 し た も の で あ る. こ れ が 局 所 座 標 で 表 し た と き に 実 際 に ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を 与 え る こ と は, 保 存 系 の 場 合 に は(3.1.30)か 同 様 に 示 さ れ る.そ
の た め に は 直 接 的 に は(2.3.8)か
と 同 様 に す れ ば よ い.そ た が,こ
ら す で に 明 ら か で あ る が,非
の さ い(2.3.9)で
保 存系 の場合 に も
ら(2.3.10)へ
の変 形
は
で あっ
ゆ えHLの
こ で は
の か わ りに 恒 等 式
項 が な く,(2.3.9)
が 得 ら れ る と予 想 され る.実
際 ΘLの 外 微 分(拡 大 配 位 空 間上 の 基 本2形
式)は
(3.1.36) した が って
(3.1.37) (こ こ で は η は 考 え て い な い か ら ∂/∂τ をd/dτ
と 記 す).他
方,(3.1.7)式
を
使 うと
が 得 ら れ る.こ
の 関 係 を(3.1.37)式
の 右 辺 第2項
に使 え ば
(3.1.38) こ こ で(3.1.12),(3.1.13)式
を 使 え ばi=1,2,…,nに
た い し て
(3.1.39a)
(3.1.39b) (3.1.40a) し た が っ て ま た,任
意 の 曲 線 の 接 ベ ク トル υλ=d/dλ
に た い して
(3.1.40b) が 成 り立 つ.そ
れゆ え
す な わ ち(3.1.35)は
ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 と 等 価 で あ る.
な お(3.1.39b)よ
り恒 等 式
(3.1.41) が 導 か れ る.こ 第1積
れ は(2.2.25)で
あ り,Lが
陽 にtを
含 ま な い と き に はHLが
分 に な る こ とが わ か る.
3.1.8
ラ グ ラ ンジ ュの 未 定 乗 数 法
§2.5で
は 拘 束 の あ る 場 合 に 拘 束 力 を 求 め る た め に,ラ
見 直 し た.こ
グ ラ ン ジ ュ方 程 式 を
こ で は ハ ミ ル ト ン の 原 理 に つ い て の 同 様 の 見 直 し を,デ
カ ル ト座
標 を用 い て 論 じ よ う. §2.5と
同 様 に 拘 束 が ホ ロ ノ ミ ッ ク で,N個
の 質 点 の 系 がp個
の 拘 束 条件
(3.1.42) に 支 配 さ れ て い る 場 合 を 考 え る.γ αは α番 目 の 質 点 の 位 置 ベ ク ト ル で あ る. 前 と 同 様 に 系 全 体 の 配 位 を と す れ ば,系 n(=3N-p)次 N内
の 点xに
元 超 曲 面N上
で 表 す. は 空 間R3N内 を 運 動 す る.こ
の 条 件(3.1.42)で のNが
決 め られ る
配 位 空 間 で あ る.
た い す る仮 想 変 位 を
とす れ ば,点x+δxもN内
の 点 で あ り,(2.5.4)に
見 た よ う に{δxk}は
(3.1.43)
を満 た す(以
下kは1∼3Nで
和 を と る).
こ の 場 合 の ハ ミル ト ン の 原 理 は,空 通 過 す る 経 路 の 集 合 の う ち で,系 た ラ グ ラ ン ジ ア ンL0に
間R3N上
の2点
を あ る決 ま っ た 時 刻 に
が 現 実 に と る 軌 道 は,(2.5.11)で
定 義 され
た い す る作 用 積 分
(3.1.44) が,拘
束 条 件(3.1.42)を
表 現 さ れ る.す
満 た す 変 分 に た い し て 停 留 値 と な る も の で あ る,と
なわ ち
(3.1.45) た だ し こ の 場 合 は3N個
の
の す べ て が 独 立 で は な い か ら,
こ こ か ら た だ ち に 被 積 分 関 数 の{}内 は で き な い.実 り,し
際,{δxk}の
を そ れ ぞ れ のkに
あ い だ に は(3.1.43)で
つ い て0と
表 さ れ るp個
す るこ と の関係 が あ
た が っ て 任 意 の λμに た い し て
(3.1.46) を 満 た し て い る(以 に はtの
下 μ の 和 は μ=1∼pに
関 数 で あ っ て よ い が,そ
こ に λμは 一 般
の 他 の 点 で は こ の 段 階 で は ま っ た く任 意 で あ
り ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数(Lagrange's る.そ
た い し て と る).こ
こ で(3.1.45),(3.1.46)を
undetermined
multipliers)と
呼ばれ
組 み 合 わせ て
(3.1.47) を 作 る.さ
て3N個
の δxkの
う ち の た と え ば ン の 原 理 に よ り,(3.1.47)か
う ち のn(=3N-p)個
は 独 立 で あ る か ら,そ
を 独 立 に と っ て よ い.そ らn個
う す れ ば,ハ
の
ミル ト
の方程式
(3.1.48) が 得 ら れ る.他
方,p=3N-n個
の λμは 任 意 で あ る か ら
(3.1.49) を 満 た す よ う に λμ を選 ぶ.そ
うす れ ば(3.1.48),(3.1.49)を
の 方 程 式 が す べ て 得 ら れ た こ と に な り,こ
う し て3N+p個
あ わ せ て3N個 の 未 知 量{xk,λ μ}
が,3N個
の 運 動 方 程 式 とp個
の 拘 束 条 件 か ら 決 定 さ れ る.こ
に た い す る ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法(Lagrange's multipliers)で
method
れ が,変
分問題
of undetermined
あ る.
な お こ の 扱 い は,仮
想 ポ テ ン シ ャ ル
(2.5.8)を
含 む ラ
グ ラ ン ジア ン
(3.1.50) と拡 張 さ れ た 座 標 変 数{x,λ}に
た い して 変 分 原 理 を適 用 し た こ と に な って い
る. 例3.1.1
ダ フ イ ン振 動 子
ハ ミル トン 原 理 か らの 直 接 的 な(微 分 方 程 式 に た ち戻 る こ と の な い)運 動 の 決 定 の 例 と して,ダ
フ ィ ン 方 程 式(Duffing
equation)
(3.1.51) に し た が うダ フ ィ ン振 動 子(Duffing
oscillator)を 考 察 す る.た
とえ ば 振 幅 の4次
ま
で とっ た 剛 体 振 子
を想 定 す れ ば よ い.こ
の 方 程 式(3.1.51)の,境
界条件
ただ し を満 た す 運 動 を考 え る.た と に す る.そ
(3.1.52)
だ し│λ│が 十 分 小 さ い と し て,解
の と き振 動 子 は,振
は λ の1次
まで求 め るこ
幅 が 大 き く な け れ ば 周 期 運 動 を 行 い,そ
の周期
(2π/Ω)も 非 摂 動 の も の(2π/ω)と 大 き く異 な る こ と は な い と考 え ら れ る(振 幅 が 大 き くな け れ ば 周 期 運 動 に な る 理 由 は,例9.1.1参
照).そ
れ が 境 界 条 件 に付 け 加 え ら
れ た 「た だ し書 き」 の 意 味 で あ る. 運 動 方 程 式(3.1.51)に
対 応す るラ グラン ジア ンは
(3.1.53) さて,も との方程 式の 与 え られた境 界条件 を満 たす 試行解 として
を考 え る(Σ
はk=2,3,…
し作 用 積 分 を λの2次
に つ い て の 和).こ
れ を ラ グ ラ ン ジ ア ン(3.1.53)に
ま で 求 め る と,少 々 面 倒 で 退 屈 な 計 算 の 後
代入
が 得 ら れ る.ハ 留 値)を
ミル トン の 原 理 に よ れ ば,正
と る と き で あ る.そ
しい 解q(t)は
こ れ が 極 値(一
般 には停
の 条件 は
(ⅰ)
(ⅱ)
(ⅲ)
と表 され る. 後 の 二 つ の 条 件(ⅱ)(ⅲ)よ と 決 ま り,λ
の1次
りA2,A3,…
ま で の 解 はA1を
は,A3=A13/32+O(λ),そ
の 他 のAk=0
用 い て つ ぎ の よ う に 求 ま る:
(3.1.54) 与 え られ た Ω に た い す るA1は,は
じめ の 条 件(ⅰ)よ
り決 定 さ れ る.
こ れ は 境 界 条 件 と して 周 期 が 与 え られ た と きの 解 を求 め た もの で あ る. 通 常 の 運 動 方 程 式(微 分 方 程 式)に
よ る扱 い で は,こ
れ と は 逆 に,初
期 条 件 と して
た と え ば 振 幅 が 与 え ら れ た と き,周 期 は い く らか と 問 題 は 設 定 さ れ る.そ
の場 合 と
比 べ る た め に,初 期 条 件 を具 体 的 に
(3.1.55)
で と与 え よ う.上 の 解 と比 較 す る た め に は Ωt0=π/2と
し た が っ て こ の 場 合 は,こ
のAに
とれ ば よ い か ら
た い す る角 振 動 数 が 条 件(ⅰ)よ
り
(3.1.56) の よ う に 決 定 され,λ の1次
まで とった解 として
(3.1.57) が 得 ら れ る.こ 求 め た 結 果(『 い る(こ
れ はPLK法(Poincare-Lighthill-Kuo 演 習 詳 解 力 学 』(p.
134脚
注6)問
method)そ 題3-8,9,10な
の 問 題 の 摂 動 法 に よ る 解 き 方 は 後 述,例9.1.1,例9.3.1参
の他 の近 似 法 で ど 参 照)と 照).
一 致 して
3.2 ワ イ ス の 原 理 と ネ ー タ ー の 定 理
3.2.1
ワ イ ス の 原 理
ハ ミル トンの 原 理 は 力 学 原 理 と して は ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 と同等 で あ る.し か しハ ミル トンの 原理 は,本 来 的 に は,系 の 初 期 配位 と最 終 配 位 の み か らそ の 途 中 の 状 態 を大 域 的 に決 定 し う る とい う主 張 で あ り,そ こか ら ひ と まず ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 を導 きあ らた め て 積 分 す る とい う行 き方 を と ら な けれ ば な らな い もの で は 必 ず し も な い.も ち ろん,現 実 の 問 題 に お い て 系 の 時 間 的 発 展 を実 際 に 追 跡 す る ため に は,多
くの 場 合,微
分 方 程 式 に 依 拠 し な け れ ば な らな い が,
しか し一 般 化 座 標 を時 間 の 関数 と して求 め る こ とだ け が 系 の 物 理 的 性 質 を知 る た め の 手 だ て で は な い. 実 際,変 分 法 の 基 本 公 式(3.1.32)と
ハ ミル トン の 原 理 だ け か ら,ラ グ ラ ン
ジ ュ 方 程 式 を経 由 す る こ とな く,系 の 振 る舞 い の い くつ か の 興 味 あ る特 徴 を直 接 に読 み とる こ とが で きる.そ の 一 つ が 保 存 則 の 直 接 的証 明 で あ る. そ の こ と を述 べ る に先 立 っ て,ハ
ミル トンの 原 理 を変 分 法 の 基 本 公 式 と照 ら
し合 わせ る こ とで,こ の 原 理 に別 様 の 表 現 を与 えて お く.ハ
ミル トン の 原理 に
よ れ ば,系 が 現 実 に とる経 路 は端 点 を 固定 した 変 分 に た い して 作 用 積 分 が 極 値 を と る とい う条 件 で 決 定 さ れ る.そ れ ゆ え,逆 に 現 実 の経 路 に そ って 計 算 した 作 用 積 分 の 変 分(3.1.32)は,端
点 か ら の 寄 与 の み か ら な る で あ ろ う.し た
が っ て ハ ミル トンの 原 理 を い わ ば裏 返 しに次 の よ う に表 現 で き る: 拡 大 配 位 空 間 上 の 経 路CLが 必 要 十 分 条 件 は,CLに
ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 の 解 曲 線 で あ るた め の
そ っ て計 算 した 作 用 積 分I[CL]の
必 ず し も固定 し な い)変 分 が,CLの
任 意 の(端 点 を
端 点 か らの寄 与 の み か らな り
(3.2.1a) で 与 え ら れ る こ と で あ る.こ
こ にυλ=d/dλ.
ま た は,配 位 空 間 と局 所 座 標 を用 い れ ば 配位 空 間 上 の 経 路CL=q(t)が
ラグ ランジュ方程式 の解 曲線 であ るため
の 必 要 十 分 条 件 は,CLに
そ っ て 計 算 し た 作 用 積 分I[q]の
任 意 の 変 分 が,
CLの 端 点 か らの 寄 与 の み か ら な り
(3.2.1b) で 与 え られ る こ と で あ る. こ の 表 現 は と き に ワ イ ス の 原 理(Weiss' ple)と
呼 ば れ る.ワ
principleま
た はWeiss'
の 意 味 で 両 者 は 相 互 補 完 的 で あ る.
ワ イ ス の 原 理 か ら ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を 直 接 的 に(つ くの に は,次
の よ う に す れ ば よ い.こ
を 用 い な い や り方 を 示 す(局
ま り(3.1.32)を
用 い
こ で は 拡 大 配 位 空 間 で局 所 座 標
所 座 標 を 用 い る や り方 は §5.2.1参
十 分 に 短 い 時 間 間 隔[τ,τ+ε]の
で あ り,こ
princi
イ ス の 原 理 と ハ ミル ト ン の 原 理 を あ わ せ れ ば 変 分 法 の 基
本 公 式 が 得 られ る か ら,そ
ず に)導
action
照).
経 路 に つ い て の作 用 積 分 は
の変分 は
ワ イ ス の 原 理((3.2.1a)式)に
よ れ ば,こ
れが
に 等 し くな け れ ば な らな い か ら,方 程 式
が 得 ら れ る.さ (2.4.10)を
ら に リー 括 弧
使 う と,こ
を 考 慮 し恒 等 式
れ は
と書 き直 され る.こ こ でυλが 任 意 の 曲 線 の接 ベ ク トル で あ る か ら
と な り,こ
れ は 拡 大 配 位 空 間 の ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式(3.1.35)に
他 な ら な い.
な お,始
点Q0=q(t0)か
ら経 路 上 の 任 意 の 点Q=q(t)ま
て 計 算 し た 作 用 積 分 は,ワ あ る こ と が わ か る.こ function)と
イ ス の 原 理 に よ れ ば,そ
で現実 の経路 に そっ
の端 点 の 座 標 の み の 関 数 で
の 関 数 を ハ ミ ル トン の 主 関 数(Hamilton's
い い,SH(q(t),t,q(t0),t0)で
表 す.す
principal
なわ ち
(3.2.2) そ し て 端 点(q,t)を い す るSHの
無 限 小 だ け 延 ば した と きの そ れ ぞれ の座 標 成 分 の 変 化 に た
変 化 率 は,(3.2.1b)よ
り
(3.2.3a) (3.2.3b) で与 え られ る.こ れ は ワ イ ス の 原 理 の 別 の表 現 で も あ る.
3.2.2
拡 大 配 位 空 間 の モ ー メ ン ト関 数
さ て い ま,系 N上
が あ る 対 称 性 を も つ と し よ う.正
の あ る 点 変 換 Φ:q〓
た れ る,す
Φ(q)=Qに
確 に い う な ち ば,配
位 空間
た い して ラ グ ラ ン ジ ア ンが 不 変 に 保
なわ ち
(3.2.4) とす る(ラ
グ ラ ン ジ ア ン が 不 変 で あ る こ と の 意 味 はp.
123の
脚 注2参
照).
と くに Φ が 連 続 な パ ラ メー タ を もち,恒 等 変 換 と連 続 的 に つ な が っ て い る 変 換
の 場 合,
とお い て,λ=ε ≪1の と きの 無 限小 変 換
(3.2.5a) を考 え る.拡 大 配 位 空 間N×Rで
論 ず る と きに は,t=q0の
変 換 も含 め て
(3.2.5b) こ の と き §2.2.3で
行 っ た の と 同 様 に し てN×R上
の ベ ク トル 場
(3.2.6) が 定 義 で き る. と こ ろ で,q=(qo,qi)を
ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の 解 と す れ ば,上
の無 限小変
換(3.2.5b)を
系 が 現 実 に と る 経 路 か ら の 変 分 と 見 な す こ と が で き る.そ
と き に は,こ 理 よ り,こ
の(3.2.6)のuλ
を(3.l.22a)のυλ
と考 え て よ く,ワ
の 変 分 に と も な う作 用 積 分 の 変 分 は,端
の
イ スの原
点 か らの寄 与 だ け か らな り
(3.2.7) と 表 さ れ る.し
か る に,系
が 変 換 Φλに 関 し て 対 称 性 を もつ な ら ば,こ
に た い し て ラ グ ラ ン ジ ア ンL(q,q,t)お
よ びL(q,q')が
の変 換
不 変 で,⊿Iは
(3.2.8) と な ら な け れ ば な ら な い. し た が っ て,(2.3.7)に
な ら っ て 拡 大 配 位 空 間 の モ ー メ ン ト関 数
(3.2.9) を 定 義 す れ ば,経
が 成 り立 つ.こ
路 上 で 時 刻t1=t(τ1)とt2=t(τ2)に
こ にt1,t2は
任 意 で あ る か ら,次
た い して
の 定 理 が 得 ら れ る:
系 が 拡 大 配位 空 間上 の あ る変 換 に 関 して 対 称 性 を もつ な らば,拡 大 配 位 空 間 の モー メ ン ト関 数
が 第1積 分 で あ る,す な わ ち
系 の 時 間 的 発 展 の 過 程 で 保 存 さ れ る.こ こ にuλ は そ の 対 称 変 換 か ら導 か れ る拡 大 配 位 空 間 上 のベ ク トル場 で あ る. ネ ー タ ー の 定 理(§2.2)の 一 例 を 挙 け る と,糸 Lがtを Lは
拡 大 配 位 空 間 へ の 拡 張 で あ る.
の 拘 束 が 時 間 に よ ら ず,配
陽 に 含 ま な い 場 合,無
限 小 変 換q0〓Q0=q0+ε
不 変 で あ る か ら,(3.2.6)で
る モ ー メ ン ト関 数F=-HLが
位 空 間で の ラク ラ ンジア ン で ラ グラ ンジア ン と し て,対
保 存 さ れ る.こ
応 す
れ は エ ネ ル ギ ー積 分 に他 な ら な
い.
も ち ろ ん こ れ らの 結 果 は,§2.2で
や っ た よ うに ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 を 用 い
て 導 くこ とが で き る.し か し こ の こ とが 微 分 方 程 式 の 助 け を借 りず に,し
た
が っ て運 動 の 途 中経 過 を考 慮 す る こ とな く得 られ た こ とに変 分 原 理 の有 用 性 が 見 て とれ る.
3.2.3
ネ ーターの定理の拡張
以 上 §2.2.3と
§3.2.2で
は,系
の 対 称 性 を ラ グ ラ ン ジ ア ンの 不 変 性 と して
表 し,そ
こ か ら保 存 量 の 存 在 を 導 い て き た.し
に は,必
ず し も ラ グ ラ ン ジ ア ンが そ の 対 称 変 換 に た い して 不 変 で あ る 必要 は な
い.と
い う の も,運
か し系 が あ る 対 称 性 を も つ た め
動 を 決 定 す る の は ラ グ ラ ン ジ ア ン そ の も の で は な く,ラ
ラ ン ジ ュ 方 程 式 な い しハ ミル ト ン の 原 理 で あ る.し
グ
た が って 対 称 変 換 に た い し
て ハ ミル ト ン の 原 理 か ら導 か れ る 式 自 体 が 不 変 で あ れ ば,そ
れ だけ で 系 の対 称
性 は 保 証 さ れ て い る. と こ ろ で ハ ミル トン の 原 理 は 端 点 を 固 定 し た 変 分 原 理 で あ る か ら,端 定 し た 作 用 積 分 の 変 分(3.1.33)が
不 変 で あ れ ば よ い.そ
の た め に は,系
点 を固 の無
限 小 変 換 に と も な い ラ グ ラ ン ジ ア ン が 不 変 で な く の よ う に 変 換 さ れ て も,そ の あ る 関 数 の τに 関 す る 全 導 関 数 で あ れ ば よ い の で あ る.実 §2.1.5で
見 た よ う にL(Q,Q')とL(q,q')は
方 程 式 が
際 そ の と き に は,
等 価 で あ っ て,ラ
グ ラ ンジュ
の 意 味 で 不 変 に 保 た れ る.
他 方,こ
れ ま で は 対 称 変 換 と し て は(拡
式 や(3.2.5ab)式)と,そ ((2.2.12b)式)の
れ か ら(拡
み を 考 え て き た.し
大)配
大)状
位 空 間 上 の 変 換((2.2.12a)
態 空 間 に 自 然 に 導 か れ る変 換
か し前 節 の 議 論 で は,変
が 配 位 空 間 内 に 限 ら れ な く と も よ い こ と が わ か る.そ り に,k個
の 差 δLがq
の 無 限 小 パ ラ メ ー タ(ε1,ε2,…,εk)で
換q〓
Φ(q)
こ で(3.2.5b)の
か わ
表 さ れ る よ り広 い 無 限 小 変 換
(3.2.10) を 考 え よ う.無 は な くq'し
限 小 パ ラ メ ー タ を 複 数 個 に し た こ と の ほ か に,fがqだ
た が っ てqに
も よ る と こ ろ が(3.2.5)と
そ し て こ の 変 換 に よ っ て,ラ
け で
異 な る.
グ ランジアンの変化が
(3.2.11) と な れ ば,変
換 後 の 作 用 積 分 は(Λ(q(τ))=Λ(q(t),t)と
し て)
(3.2.12) と 変 化 し,端
点(τ=τ1,τ2)を
固 定 し た 変 分 に は Λ μの 項 は 影 響 せ ず,ハ
ミル ト
ン の 原 理 よ り得 ら れ る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は 変 換 前 と 同 じ も の に な る. ハ ミ ル ト ン の 原 理 が 不 変 に な る こ の 条 件 を,次 る.変
換(3.2.10)に
の よ う)い
い 直 す こ とが で き
と もな うラ グ ラ ン ジ ア ン の 変 化 を
と し た と きDμ[L]は
(3.2.13) と 表 さ れ る(1行
目 か ら2行
目 へ の 変 形 は(3.1.12),(3.1.13)を
と き ハ ミル ト ン の 原 理 が 不 変 で あ る た め に は,こ 関 数 で あ れ ば よ い.す
のDμ[L]が
使 う).こ
の
あ る関 数 の全 導
なわち or
と な る Λμが 存 在 す れ ば よ い.こ
の よ う な 変 換 を 系 が 許 容 す る 写 像 と い う.
他 方,上
の 無 限 小 変 換(3.2.10)をqの
式 の 解)か
ら の 変 分 と見 な せ ば,(3.2.12)よ
現 実 に と る 値(ラ
グ ラ ン ジ ュ方 程
り得 ら れ る
は 現 実 の 経 路 に そ っ て計 算 した 作 用 積 分 の変 分 で あ るか ら,ワ イ ス の 原理 よ り
に 等 し く な け れ ば な ら な い.k個 りk個
の パ ラ メ ー タ εμは 独 立 で あ る か ら,こ
れ よ
の 関係
が 得 ら れ る.す 等 し い.し
な わ ち,量
か る にt1とt2は
は 解 曲 線 上,時 任 意 で あ る か ら,こ
刻t1とt2と
で
れ よ りた だ ち に 次 の 定 理 が 得
ら れ る: 無 限 小 変 換(3.2.10)に
た い して
(3.2.14) とな る
が 存 在 す る な らば,こ
の変 換 に た い して
作 用 積 分 の 変 分 と ラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式 は 不 変 に保 た れ,k個
の量
(3.2.15) は 系 の 時 間 的 発 展 に た い して保 存 され る.し た が って,系 の 数 だ け,つ
ま り系 が 許 容 す る写 像 の 数 だ け 第1積 分 が 存 在 す る.
こ の 定 理 も ネ ー タ ー の 定 理 と い わ れ,こ Jk)は
ネ ー タ ー ・カ レ ン ト(Noether
ト は(2.2.19),(3.2.9)で あ り,こ
が有 す る対 称 性
のk個
current)と
の 成 分 を も つJ=(J1,J2,…, 呼 ば れ る.ネ
ー タ ー ・カ レ ン
定 義 し た モ ー メ ン ト関 数 を よ り一 般 化 し た も の で
の 定 理 が ラ グ ラ ン ジ ュ 力 学 に お い て 対 称 性 と保 存 則 の 関 係 を も っ と も
一 般 的 に 表 現 した もの で あ る こ の 定 理 は ま た,逆 き(3.2.14)が
に
.
「系 が 変 換(3.2.10)に
た い し て 不 変 な ら ば,そ
成 り立 た な け れ ば な ら な い 」 と し て 使 う こ と が で き る.
た と え ば,ラ
グ ラ ン ジ ア ン が(2.1.34)で
与 え ら れ る1質
点 の 系 が,球
で 原 点 を 通 る 任 意 の 軸 の ま わ りの 回 転 に た い し て 不 変 で あ る とす る.こ ポ テ ン シ ャ ル はU=U(│r│),ま り,第3軸 が,前
の と
の 他 に 角 θ(天 頂 角)の
て も 系 は 不 変 で あ る.そ
の とき
た す で に 見 た よ うに 方 位 角 φが 循 環 座 標 で あ
ま わ り の 角 運 動 量 成 分((2.2.7)M3=m(rsinθ)2φ)が
提 よ り,そ
対称
任 意 の 変 換 θ〓
れゆ え
と表 され な け れ ば な ら な い.し か る に ηが 任 意 で あ る か ら
保 存す る θ+ε η に た い し
で な け れ ば な らず,こ
れより
(3.2.16) が 得 ら れ る.こ な お,す
のMは
角 運 動 量 ベ ク トル の 大 き さ を 表 す(例2.2.2参
で に 注 意 し た よ う に(3.2.10)に
数 で あ っ て よ い.つ
お い て{fμ}はqとq'=qt'の
不 変 と い う こ と は,単
な る 空 間 的 対 称 性 だ け で は な く よ り広 い 対 称 性 を考 え て の よ う に ネ ー タ ー の 定 理 は,空
い し て だ け で は な く,よ
間 の 一 様 性 ・等 方 性 お よ び symmetry)に
り一 般 的 な 対 称 性 に た い し て も適 用 さ れ る.こ
な 対 称 性 を 隠 れ た 対 称 性(hidden
symmetry)と
た の よ う
い う.
空 の 幾 何 学 的 対 称 性 の 例 と し て の ガ リ レ イ 変 換 を,そ
対 称 性 の 例 と し て のN次 例3.2.1
大
が その よ うな 広 い意 味 の 変 換 で
時 間 の 一 様 性 の 結 果 と し て の 幾 何 学 的 対 称 性(geometrical
以 下 で,時
関
ま り拡 大 配 位 空 間 内 だ け で 閉 じ た 変 換 だ け で は な く,拡
状 態 空 間 全 体 に ま た が る 変 換 で あ っ て よ い.系
い る こ と に な る .こ
照).
して 隠 れ た
元 調 和 振 動 と ケ プ ラ ー 運 動 を 挙 げ て お く.
ガ リ レ イ 変 換 と保 存 則
ラ グ ラ ン ジ ア ン が
(3.2.17) で 表 さ れ る系 が あ る.こ
の 系 がbを
任 意 の 定 ベ ク トル と して 無 限 小 変 換
(3.2.18) に た い して,運
動 方 程 式 が 変 わ ら な い とい う意 味 で 不 変 で あ る と す る.そ
外 力 ポ テ ン シ ャ ルUαextが
の ため に
と るべ き形 を決 定 し,そ の と きの 対 応 す る保 存 量 を 求 め る
とい う問 題 を考 え よ う. な お 変 換(3.2.18)を
無 限 小 ガ リ レ イ ・ブ ー ス 卜(Galilean
こ の 変 換 に た い し て,作
で あ る.b=(b1,b2,b3)と て こ の 場 合fμiは
boost)と
い う.
用 積 分 の 変 分 が 不 変 に な る 条 件(3.2.14)は
し て こ こ で は 各 εbiが(3.2.10)の す べ てt.そ
D(1)i,Λ(1)iが(3.2.13),(3.2.11)のDμ
し てD(1)も
Λ(1)も3次
εμ に 当 た る.し 元 ベ ク ト ル で,そ
お よ び Λ μに 対 応 し て い る.こ
た が っ
の 各 成 分
の 条件 は
と 書 き 直 さ れ る.Λ(1)はrα
を 含 ま な い か ら,こ
を 満 た さ な け れ ば な ら な い.し =-(b・
Σ α▽ αUαext)t.し
const.,そ
れ を 満 た す Λ(1)と し て は
た が っ てb・ Λ(1)=(b・
か る に λ(t)はtの
Σ αmαrα)+λ(t),た
み の 関 数 で あ る か ら-(b・
だ しdλ/dt Σ α▽αUαext)=
れ ゆ え α 番 目 の 質 点 に 働 く外 力 は 定 ベ ク ト ル,
す な わ ち 外 力 は 一 様 で,外
力 ポテン シャル とラ グラン ジア ンの形 は (αに つ い て 和 は と ら な い),
(3.2.19) と な ら な け れ ば な ら な い.そ
と な り,bは
して こ の と き
任 意 の 定 ベ ク トル で あ る か ら,結 局 ベ ク トル Λ(1)を
と と れ ば よ い.こ
の 場 合 の ネ ー タ ー ・カ レ ン ト(3.2.15)は3次
元 ベ ク トル ・カ レ ン ト
(3.2.20) で,こ
の 各 成 分 が 第1積
分 を与 え る.し
た が っ て 運 動 方 程 式 を解 くこ と な く
(3.2.21) が 得 ら れ る.こ れ は,一 こ こ で さ ら に,aを
定 な外 力 の も とで の 重 心 積 分 で あ る.
任 意 の 定 ベ ク トル と し て た ん な る無 限 小 平 行 移 動
(3.2.22) を 考 え る.a=(a1,a2,a3)と
して,(3.2.10)の
εμは こ こ で は εaμ,fμiは1.系
には
外 力Fαextが 働 い て い る か ら,こ の 変 換 に た い して 上 に求 め た ラ グ ラ ン ジ ア ン は 変 化 す るけ れ ど も,外
力 が 一 様(ど
で 変 化 し な い.実
際
で あ る か ら,a・
Λ(2)=(Σ
こ で も同 じ)で あ るか ら,系 の 物 理 的 状 況 は 平 行 移 動
αFαext・a)tと
とれ ば ハ
ミル トン の 原 理 そ の も の は 不 変 に 保
た れ る.こ る.α
こ で もD(2),Λ(2)は
ベ ク トル 量 で,そ
の 各 成 分 が 本 文 のDμ
は 任 意 の 定 ベ ク ト ル で あ る か ら,
ネ ー ター
と Λμ に 当 た
と と れ ば よ く,こ
の場 合 の
・カ レ ン トは や は りベ ク トル ・カ レ ン トで
(3.2.23) と な り,こ の 各 成 分 も第1積
分 を与 え る.そ
して こ れ よ り
(3.2.24) これ は 運 動 量 積 分 で あ る. 以 上 の 結 果 は,全
質 量 Σ αmα=Mお
よ び 重 心(質
量 中 心)の 座 標 と速 度
(3.2.25) を 用 い れ ば,(3.2.21),(3.2.24)を
組み合 わせ て
と ま と め ら れ る. す な わ ち 系 が ガ リ レ イ 変 換 と空 間 の 平 行 移 動 に た い し て,ハ え な い とい う意 味 で不 変 で あ る な ら ば,系
ミル トン の 原 理 を変
の 重 心(質 量 中 心)は,そ
の点 にす べ て の
質 量 とす べ て の 外 力 の 作 用 点 が 集 中 し た と きの 質 点 の 運 動 と ま っ た く同 様 に 振 る舞 う.と
くに 外 力 が 働 い て い な い と き に は,重
心 は 等 速 度 運 動 を 続 け る.そ
し て,こ
れ だ け の こ とが 運 動 方 程 式 に ま っ た く依 拠 す る こ と な く得 ら れ た こ と に,変
分 原理
の 有 用 性 と意 義 が 見 て とれ る. な お 外 力 が 働 い て い な い 場 合(す べ て の αに た い し てFαext=0の
場 合),系
は等方
的 で ラグ ラン ジア ンは回転 変換 (Oは3次 で 不 変 で あ る.そ (3.2.26)の
元 直 交 行 列)
し て ガ リ レ イ ・ブ ー ス ト(3.2.18)と
合 成,す
(3.2.26)
平 行 移 動(3.2.22)と
回転
なわ ち
(3.2.27) を ガ リ レ イ 変 換(Galilean (§11.1)で
transformation)と
い う.ガ
リレイ変 換 に つ いて は 後節
詳 し く 述 べ る.
例3.2.2 N次
元 等 方 調 和 振 動 子 と隠 れ た対 称 性
ラグ ラ ン ジ ア ン が (Σkはk=1∼Nの
で与 え られ るN次
和)
(3.2.28)
元調和 振動 子 を考 え る.こ の系 は任 意 の軸 の まわ りの回転 対称 性
を もつ か ら,任 意 のi,jの
組 に つ い て,(qi,qj)平
面 で の 無 限 小 回 転
に た い し て ラ グ ラ ン ジ ア ン 自 身 が 不 変 に 保 た れ,そ
れ に対 応 す る
モ ー メ ン ト関 数
(3.2.29) が 保 存 され る.こ
れ は 角 運 動 量 の 成 分 で,こ
の 量 の 保 存 は 運 動 方 程 式qi=-ω2qiを
用 い れ ば 直 接 に 示 さ れ る. しか し この 系 は,回
転変 換以 外 に変換
(3.2.30) と い うqとqの
混 じる よ り広 い 変 換 に た い し て,作 用 積 分 の 変 分 と ラ グ ラ ン ジ ュ 方
程 式 を 変 え な い と い う 意 味 で 不 変 で あ る(εijは 無 限 小 パ ラ メー タ,i,j,kの2重 字 は1∼Nの
和 を と る).実
添
際 こ の と き,対 応 す る ラ グ ラ ン ジ ア ン の 変 化 は
ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の 解 曲 線 に そ って 見 れ ば,各qiは
運 動 方 程 式qi=-ω2qiを
満
た して い る ゆ え
と な り,D[L]が
全 導 関 数 で 表 され る.こ
した が っ て こ の と き 第1積
分 と して,ネ
こ に
と お い た.
ー タ ー ・カ レ ン ト
(3.2.31) が 得 られ る.こ
れ は 対 称 テ ン ソ ル ・カ レ ン トで あ る.こ
振 動 子 ご との エ ネ ル ギ ー 積 分 で,異 ぞ れ 保 存 さ れ る が,そ 他 方,非
の テ ン ソ ル の 対 角 成 分 は,各
な る 振 動 子 間 に 結 合 が な い か ら,こ
れ は 時 間 の 平 行 移 動(§2.2.4)に
れ らは そ れ
関 す る 対 称 性 の 結 果 で あ る.
対 角 成 分 の 保 存 は す で に §2.2.4で 見 た もの で あ り(式(2.2.36)),系
何 学 的 対 称 性 に 由 来 し な い 隠 れ た 対 称 性 の 帰 結 で あ る.
例3.2.3
ケ プ ラ ー 運 動 の 対 称 性 と レ ン ツ ・ベ ク トル
ケプ ラー 運 動 の ラ グ ラ ン ジ ア ン は(1質
点 の 運 動 に還 元 さ れ た 形 で)
の幾
(3.2.32) で 与 え られ(例2.2.2,例2.2.3参 の大 きさ に と る の で,ラ
照,な
お,こ
グ ラ ン ジ ア ン をLで
こ で はLを
記 す),こ
後 出 の レ ン ツ ・ベ ク トル
れ にた いす る ラグ ラン ジュ方
程 式 よ り,次 の ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式 が 得 られ る:
(3.2.33) この 両 辺 とrと
他 方,右
の ベ ク トル積 を作 る と左 辺 は
辺 はr×r=0よ
り0で
あ るか ら,た だ ち に 角 運 動 量 の 保 存 則
(3.2.34) が 得 られ る.こ れ は 働 い て い る 力 が 中 心 力 で あ る(rに
比 例 し て い る),つ
ま り系 が
回転 対 称 で あ る こ と の 結 果 で あ る. つ ぎに 運 動 方 程 式(3.2.33)と トル 積 を 作 る.右
他 方,左
単 位 質 量 あ た りの 角 運 動 量M/m=r×rと
のベ ク
辺は
辺 はMが
定 ベ ク トル で あ る こ と を 考 慮 す れ ば
と表 さ れ るか ら,両 辺 ま とめ て
が 得 ら れ,こ
れ よ り角 運 動 量 以 外 の ベ ク トル の保 存 則 と して 定 ベ ク トル
が 導 か れ る.こ の ベ ク トルLを こ の ベ ク トルLの
こ でrとLの
vector)と
い う*1.
性 質 を調 べ よ う.
Lは ベ ク トルrとrの か る.そ
レ ン ツ ・ベ ク トル(Lenz
(3.2.35)
線 形 結 合 で あ る か ら,軌
道 面 内 の ベ ク トル で あ る こ とが わ
なす 角 度 を Φ とす れ ば(L・r)=LγcosΦ
で,他
方,上
式 とr
の 内積 を作 れ ば
*1
Lは る が,歴 あ る.詳
,量 子 論 に こ れ を 初 め て 用 い たW. Lenzに ち な ん で レ ン ツ ・ベ ク トル と い わ れ て い 史 的 に 保 存 量 と し てLベ ク トル を 最 初 に 見 出 し た の は1710年 のJ. Hermannで し くは,山
本義隆
『古 典 力 学 の 形 成 』(日 本 評 論 社1997)参
照.
と な り,こ の 式 よ り軌 道 の 方 程 式
(3.2.36) が 得 ら れ る.こ
れ は 原 点 を 焦 点 とす る 円 錐 曲 線 を表 し,(2.2.76)と L/k=e(離
す な わ ち,レ
心 率),
ン ツ ・ベ ク トルLは
Φ=φ(真
(3.2.37)
大 き さ が 離 心 率 に 比 例 し,近
向 い たベ ク トル で あ る こ とが わ か る.例2.2.3で
見 く らべ れ ば
近 点 離 角),
日点(近 地 点)方
述 べ た よ うに,ニ
向を
ュ ー トン ・ポ テ ン
シ ャ ル の も とで の 束 縛 運 動 で は,γ
の 振 動 周 期 と φ の 回 転 周 期 が 一 致 して い る の で
近 日点 が 動 か な い.そ
こ で はLと
の こ とが,こ
の 存 在 で 表 され て い る の で あ る.た ギーEと
角 運 動 量 の 大 き さMで
だ しLの
い う近 日 点 方 向 を 向 い た 定 ベ ク トル 大 き さ は κeで,e(離
決 ま る の で((2.2.72)参
照),Lの
心 率)は
大 き さの 保 存 は
エ ネ ル ギ ー と角 運 動 量 の 保 存 とは 独 立 な 保 存 量 を 与 え る もの で は な い.こ く得 ら れ た保 存 量 は,Lの
向 き,つ
と こ ろ で 本 節 に 見 た よ うに,保 変 性 の 結 果 で あ っ た.こ
ま り ω(近 日点 引数)で
エ ネル
こで新 し
あ る.
存 則 の 存 在 は な に が しか の 変 換 に た い す る 系 の 不
の こ と を考 慮 す る な らば,Lの
保 存が どの よ うな変 換 に た
い す る不 変 性 に 由 来 す る の か が 問 題 に な る. そ こ でr=(x1,x2,x3)を
座 標 系 と し て,座
標 成 分 の微 小 変 換
(3.2.38) に た い し て 作 用 積 分 の 変 分 が 不 変 で,そ
れ に対 応 す る ネ ー タ ー ・カ レ ン ト
(3.2.39) の3成
分(μ=1,2,3)が,レ
ン ツ ・ベ ク ト ル(3.2.35)の3成
分
(3.2.40) を 与 え る もの とす る(こ 重 添 字 は1∼3の
こで は上 付 き ・下 付 き,ロ ー マ 字 ・ギ リ シ ャ文 字 の 区 別 な く2
和 を と る).こ
の2式
を等 置 して 整 理 す れ ば
こ の 式 が 恒 等 的 に 成 り立 つ ため に は,fμjと Λμを
(3.2.41) と と れ ば よ い. こ の と き 変 換(3.2.38)に と し て
と も な う ラ グ ラ ン ジ ア ン の 変 化 は,ε
の1次
ま で とって
と な る(変 形 に は 運 動 方 程 式(3.2.33)を 関 数 で あ る か ら,こ
使 う).こ
の 変 化 は 確 か にxの
の 変 換 に た い し て 作 用 積 分 の 変 分 は 変 わ ら ず,系
関数 の全 導 は不 変 に保 た
れ る.
3.3 保 存 系 と最 小 作 用 の 原 理
3.3.1 保 存 系 と作 用 の 導 入 §2.2で,ラ が 第1積 Rで
グ ラ ン ジア ンLがtを
陽 に 含 ま な い 場 合,ハ
分 と な る こ とを 述 べ た.時 間 軸 を含 む(n+1)次
考 え れ ば,こ
の 場 合 はq0=tが
ミル トニ ア ンHL
元 拡 大 配 位 空 間N×
循 環 座 標 で あ るか ら,そ れ に 共 役 な一 般
化 運 動 量 の 保 存 と し て エ ネ ル ギ ー保 存 則
(3.3.1) が 得 られ る.以 下 で はLがtを 保 存 系(conservative
陽 に含 ま ず,エ
system)と
ネ ル ギー 保 存 則 を有 す る系 を
い う.
も ち ろ ん エ ネ ル ギー 保 存 則 を導 くだ け な らば,こ
と さ ら拡 大 配 位 空 間 で論 じ
るに は及 ば な い.し か しエ ネ ル ギー保 存 則 を この よ うに循 環 座 標 に共 役 な一 般 化 運 動 量 の 保 存 と して 導 くな らば,§2.2.5で そ こか らn次
元 配 位 空 間Nへ
述 べ た ラ ウ シ ア ンの 方 法 に よ り,
の 射 影 が 自由 度 の 一 つ 少 な い 系 へ の 簡 約 と して
実 行 さ れ る.そ れ は エ ネ ル ギー 保 存 と い う条 件 に も とづ くもの で あ るか ら,単 に も との 配位 空 間 に戻 る わ け で は な く,こ の簡 約 に よ りハ ミル トン の原 理 に新 しい 表 現 が 与 え られ るの で あ る. 拡 大 空 間 のq0に 対 応 す る 自由度 の 削 減 に と もな っ て得 られ る ラ ウ シ ア ン は, §2.2で の 定 義(2.2.41)に
で 定 義 さ れ る.た
よれ ば
だ し*はq0'=dt/dτ
の と こ ろ に(3.3.1)を
解 い て 得 られ る
(3.3.2) を 代 入 す る こ と を 表 す(こ で
こ で は も と の 空 間 が 拡 大 空 間 で あ る か ら(2.2.41) の 置 き 換 え を し て い る).す
なわ ち
(3.3.3) が こ の 場 合 の ラ ウ シ ア ン で あ る.そ
こ で さ らに こ の ラ ウ シア ンRを
ラグ ラン
ジ ア ン とす る系 の 作 用 積 分 と して
(3.3.4) が 考 え ら れ る.こ 常,単
れ は(3.3.1)を
に 作 用(action)と
び(3.1.16)と
満 た す 空 間 内 の 経 路CLの
呼 ば れ て い る.そ
ま っ た く 同 様 に,N上
汎 関 数 で あ り,通
し て 前 々 節 で の 議 論(3.1.9)お
の 微 分 形 式(基
本1形
よ
式)
(3.3.5) を用 い れ ば,こ
の 作 用 は 局 所 座 標 系 に よ ら な い形 で
(3.3.6) と 表 さ れ る.(CL'=d/dτ と な る.詳
に た い し て
し く はp.
146脚
注2参
こ こ か ら 先 の 議 論 は,q0'=ψ0が
照.)
閉 じた 形 で 求 ま る場 合 と そ うで な い場 合 で
別 々 の 扱 い が 必 要 で あ る.
3.3.2
最小作 用の原理
エ ネ ル ギ ー 保 存 則(3.3.1)か で き な い 場 合 は,(3.3.1)を
らq0'を(3.3.2)の
形 に 明 示 的 に 表 す こ とが
付 加 的 な 拘 束 条 件 と し て 扱 え ば よ い.そ
の と き次
の よ う な 考 察 が 可 能 と な る. 拡 大 空 間 で 見 る と,系 関 係(3.1.8)で き,こ
は(q,q')を
決 ま る(2n+1)次
元 超 曲 面(拡
座 標 と す る2n次
(2n-1)次
元 超 曲 面 上 を 動 く.つ
こ の 曲 面 の 外 に 出 な い.し
元 状 態 空 間TNの
を動
っ た く 同 様 に 保 存 系 で は,系 な か の 関 係(3.3.1)で
決 まる
ま り初 期 状 態 が こ の 曲 面 上 に あ る 積 分 曲 線 は
た が っ て,こ
の(2n-1)次
の 配 位 空 間 へ の 射 影 を 等 エ ネ ル ギ ー 空 間NEと
い し て は,拡
元 多様 体 の な か の
大 状 態 空 間TN×R)上
の と き ハ ミ ル ト ン の 原 理 が 成 り立 っ た.ま
は(q,q)を
面,そ
座 標 とす る(2n+2)次
元 超 曲 面 を等 エ ネ ル ギ ー 名 づ け れ ば,保
存 系 にた
大 配 位 空 間 に お け る ハ ミル ト ン の 原 理 と相 似 の 変 分 原 理 が,等
エ
ネ ル ギ ー 空 間NEに
お い て 成 り立 つ こ とが 予 想 さ れ る.
そ の対 応 関 係 は次 表 の よ うに ま とめ られ る(表 で 作 用Aの 的 にt'dτ=ψ0dτ=dtと
作 用Aの
積 分 のdtは
形式
記 した もの で あ る):
変 分 は 次 の よ うに す れ ば求 ま る.い ま の場 合,経
つ ね に 等 エ ネ ル ギ ー 空 間NE内 で の 作 用 積 分 は,(3.3.1)を
路CLは
変 形後 も
に 限 定 さ れ て い る.そ の 場 合 に は 配 位 空 間N
用 い て被 積 分 関 数Lを
と な る.し た が って そ の変 分 は,上
書 き直 す こ と に よ り
に 導 入 し た作 用 を用 い て
(3.3.7) と 表 さ れ る.他
方,変
分 法 の 基 本 公 式(3.1.32)は,同
じ条件 で
(3.3.8) とな り,⊿Iの
こ の 二 通 りの 表 現 を比 べ て,た
だ ちに 作 用 の 変 分
(3.3.9) が 得 ら れ る. し か し,こ ⊿q=0)し
こ か ら す ぐ さ ま 「系 が 実 際 に と る 経 路 は,端
た 変 分 に た い し て ⊿A=0と
い け な い.と
い う の も,こ
の 消 去 さ れ た 座 標q0と
こ で はtは
し てq0'=ψ0を
な る と は 限 ら な い か ら で あ る.実
点 を 固 定(Q1,Q2で
な る条 件 に よ り与 え られ る」 と して は 単 な る積 分 変 数 で は な く,拡 積 分 し た も の で あ り,端
大配位 空間
点 で ⊿t=0に
際
で あ るか ら,途 中 の経 路 を変 化 させ れ ば 端 点 通 過 時 刻 も変 わ る.つ
ま り変 分 は
つ ね に エ ネ ル ギ ー 保 存 を満 たす よ うに とる の で,経 路 の変 化 に と もな っ て経 路 上 の 各 点 で の移 動 速 度 も変 わ り,そ の た め 経 路 上 の 点 を通 過 す る時 刻 が 現 実 の 経 路 に そ っ た もの と違 っ て くる の で あ る.し た が っ て,ハ 合 と異 な り,積 分 の 両 端 で ⊿q=0で され て い な い.ち せ た た め,逆
あ っ て も
の条 件は保証
なみ にハ ミル トンの 原 理 で は,時 刻 を変 え ず に 経 路 を変 化 さ
に 変 化 した経 路 で は エ ネ ル ギー の値 が 変 化 して い るの で あ る.
こ の 困 難 は,次 ば,保
ミル トンの 原 理 の場
の よ う に 細 工 す れ ば 回 避 で き る.式(3.1.41)を
存 系(∂L/∂t=0)に
考慮すれ
た い して 等 エ ネ ル ギー 空 間 上 で考 え て い る か ぎ り,
{qi}が ラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式 の 解 で な く と も,つ ね に
(3.3.10) が 成 り 立 つ.そ
の た め(3.3.9)式
=⊿qi-qi⊿tを
代 入 す れ ば ⊿tに 比 例 し た 項 が 消 え ,作
変 分 ⊿qだ
の 第2項
の 被 積 分 関 数 の δqiの と こ ろ に δqi 用 の 変 分 は最 終 的 に全
けで
(3.3.11) の よ うに 表 さ れ る. こ うす れ ば 端 点 で
と した変 分 に た い して ⊿A=0な
ば
で な けれ ば な らず,ま
ら
た その 逆 も い え る.す な わ ち
保 存 系 で 等 エ ネ ル ギー 空 間 に お い て 系 が 現 実 に とる経 路 は,作 用A[CL] の 停 留 曲 線 で 与 え られ る.す な わ ち2点Q1,Q2を
通 る 経 路 は,こ の2点
を結 び 等 エ ネ ル ギー 空 間 を通 る 曲 線 の 集 合 の う ち,端 点 を固 定 し た変 分 に た い して ⊿A[CL]=0を
満 た す もの で あ る.
こ れ を 最 小 作 用 の 原 理(principle 理(Maupertuis'
principle)と
こ の よ う にq0'=ψ0が
of least action)な
い しモ ー ペ ル チ ュ イの 原
い う*1.
閉 じ た 形 で 求 ま ら な い 場 合,系
空 間 に 限 定 す る こ と で 自 由 度 が 一 つ 減 ら さ れ,そ
の 運 動 を等 エ ネ ル ギー
の 結 果 と して最 小 作 用 の 原 理
*1 「最 小 作 用 の 原 理 」 とい う呼 び 名 は 歴 史的 な もの で ,現 実 の 経 路 で あ る ため に は作 用 が 停 留値 を とれば よ く,必 ず し も 「 最 小 」 で な く と もよい.
が 導 き出 され るの で あ る. な お,保 存 系 で の ワ イ ス の 原 理 と して,次 の 法 則 が得 られ る: 保 存 系 に お い て,等 エ ネ ル ギー 空 間 内 の経 路CLを とす る な らば,CLに
そ っ て計 算 した 作 用A[CL]の
系 が現実 に とる経路
変分は
(3.3.12) で 与 え ら れ る. し た が っ て ま た,系 q(t)ま
が 現 実 に と る 経 路CLの
で そ の 経 路CLに
始 点Q0=q(t0)か
そ っ て 積 分 し た 作 用Aは
の 関 数 を ハ ミ ル ト ン の 特 性 関 数(Hamilton's い,WH(q(t),q(t0))で
表 す.す
ら 任 意 の 点Q=
端 点 の み の 関 数 で あ る.こ characteristic
function)と
い
なわ ち
(3.3.13) こ こ にpi(q,q)=∂L/∂qiは (3.2.2)と
一 般 化 運 動 量.こ
れ は ハ ミル トン の 主 関 数
関係
(3.3.14) で 結 び つ い て い る.
3.3.3
ヤ コ ビの 原 理
他 方,エ
ネ ル ギ ー保 存 則(3.3.1)か
次 の よ う に す れ ば よ い.そ
閉 じ た 形 で 求 ま る 場 合 は,
の よ う な 場 合 と し て,と
の ハ ミル トニ ア ン が(2.2.31)の てTがqの2次
らq0'=ψ0が
形 を と る と き,つ
同 次 式 に な る 場 合 を 考 え る.こ
く に も と の 配 位 空 間Nで ま りHL=T+U(q)と
書け
の と き拡 大 配位 空 間 の ラ グ ラ
ン ジア ン は
(3.3.15) で あ り,明
ら か にq0は
循 環 座 標,ま
た エ ネ ル ギー 保 存 則 は
(3.3.16) と 表 さ れ,こ
れ を解 い て
(3.3.17) が 得 ら れ る.({mij}は(1.1.22)で 削 減 し た こ と に よ り,こ で,以
定 義 し た 配 位 空 間 の 計 量.自
の 段 階 で拡 大 配 位 空 間 は 配位 空 間 に 射 影 され て い るの
下 で は 配 位 空 間 の 座 標qで
ら れ る の で,2重 こ のt'=ψ0を
由 度q0=tを
添 字 は1∼nの
記 す.ま
た 添 字 はi=1,2,…,nの
範 囲 に限
和 を と り Σ を 省 略 す る.)
用 い れ ば,こ
の場 合 の ラ ウ シ ア ンは
(3.3.18) ま た,こ
の ラ ウ シ ア ン に た いす る作 用 は
と な り,こ
う し てq0'が
の 表 式 は(3.3.4)式
完 全 に 消 去 さ れ た 形 で 表 さ れ る.も
か ら 直 接 求 め て も よ い.
さ ら に ま た こ の 場 合,パ て よ い.そ
ち ろ ん こ の 作 用A
れ ゆ え,こ
ラ メ ー タ τそ れ 自 体 は 意 味 を も た な い の で 消 去 し
の 保 存 系 に た い す る ハ ミル ト ン の 原 理 は,次
の よ うに 系
の 時 間 的 推 移 を 含 ま な い 静 的 な 形 で 表 現 さ れ る: 系 の 運 動 が,等
エ ネ ル ギ ー 空 間 内 の2点Q1,Q2を
中 で 系 が と る 現 実 の 経 路 は,積
通 る な ら ば,そ
の途
分
(3.3.19) の 停 留 曲 線 で 与 え ら れ る. こ れ を ヤ コ ビの 原 理(Jacobi's な おq0'が
閉 じ た 形 で 解 け る た め に は,ラ
含 ん で も か ま わ な い.た 化 運 動 量 が(2.2.8)と (m,e)の
principle)と
グ ラ ン ジ ア ン がqの1次
の項 を
と え ば ラ グ ラ ン ジ ア ン が(2.1.45)で
与 え ら れ,一
般
な る 荷 電 粒 子 の 運 動 が そ う で あ る.簡
単 の た め1粒
子
場 合 で 述 べ よ う.こ
と な る が(Aは
い う.
作 用,Aは
の と き,作
用(3.3.4)は
ベ ク ト ル ・ポ テ ン シ ャ ル),エ
ネ ル ギー 積 分
(2.2.37)よ
り
が 得 ら れ る か ら,線
素 を(dr・dr)1/2=dlと
記 し て,ヤ
コ ビの 原 理 は
(3.3.20) と表 さ れ る.
3.3.4
測地線 の方程式
上 の ヤ コ ビの 原 理 は さ ら に次 の よ うに 書 き直 さ れ る.も 計 量mijに
と も との 配 位 空 間 の
た い して テ ン ソル 量
(3.3.21) を 全 エ ネ ル ギ ー がE,ポ の 計 量 と見 な す.こ
テ ン シ ャ ル がU(q)で
の{gij}を
与 え られ る 等 エ ネ ル ギ
ヤ コ ビ 計 量(Jacobi
metric)と
の 場 の 存 在 を座 標 系 の 歪 み に く り こ む こ と に 相 当 す る.こ
い う.こ
ー空 間 れ は力
れ を用 い て等 エ ネ ル
ギー 空 間 の 線素 を
(3.3.22) と 定 義 す れ ば,作
用(3.3.19)に
た い す る 変 分 式 ΔA=0は
(3.3.23) と書 き直 さ れ る.し
た が っ て ヤ コ ビ の 原 理 は,最
系 が 等 エ ネ ル ギー 空 間NE内
終 的に
で と る経 路 は,NEに
ポテ ンシャル に よ り
決 め られ る計 量{gij}を 与 え た と きの 測 地 線 で与 え られ る とい い表 す こ とが で き る.こ
こ で は 測地 線 とは,そ の 線 上 の 十 分 に近 い2点
を
両 端 とす る どの 部 分 を とっ て もそ の 両 端 を結 ぶ 曲 線 の う ち で 最 も短 い もの に な って い る もの,す よれ ば,力
な わ ち 局 所 的 最 短 曲 線 を い う.し た が って ヤ コ ビの 原 理 に
の場 に よ り空 間 の 曲 が りが決 定 され,系
の運 動 は その 曲 が りを考 慮
した 「距 離 」 が 最 も短 くな る よ うな経 路 に そ っ て行 わ れ る と い うの で あ る.い うな らば 力 学 の記 述 の 幾 何 学 化 で あ る.
以 前 に §1.2.5で し,そ
は,測
地 線 を 測 地 線 の 方 程 式(1.2.37)の
れ が 局 所 的 最 短 曲 線 に な る こ と を 示 し た が,こ
線 と し て 測 地 線 を 定 義 し て い る.そ こ と は,次
解 曲 線 で定 義
こでは逆に局所的最短 曲
して そ れ が確 か に測 地 線 の 方程 式 を満 たす
の よ う に 直 接 的 に 示 さ れ る.
変 分 パ ラ メ ー タ を η と し てq=q(σ,η)と り に 経 路 長 σ を と っ た も の で あ る.そ
お く.こ
れ は 図3.1.2の
τの か わ
うす る と ヤ コ ビ の 原 理 は
(3.3.24)
ここに
であり
となる.た だ し
を使 った.ま た,被 積分関数 は
で あ る か ら,部
分 積 分 し て 端 点 で δη=0を
と表 され る(2行
目の[ ]内 で は η=0ゆ え ∂/∂ σ をd/dσ に 置 きか え る).
こ こ で変分
が 独 立 で あ る こ と を考 慮 す れ
ば,こ れ よ りそ れ ぞ れ のkに
が 得 ら れ る(1行 ギ ー 空 間 の 第1種
用 い ると
目 か ら2行
た いす る運 動 方 程 式 の 成 分 と して
目へ の 変 形 はgki=gikを
用 い た).こ
れ は等エ ネル
ク リス トッフ ェ ル 記 号
(3.3.25) を用 い る と
(3.3.26)
と 表 さ れ,測
地 線 の 方 程 式(1.2.37)で
あ り,計
量 テ ン ソ ル{gij}が
シャルに よって定 め られ る等エ ネル ギー空 間で の 方 程 式 を 表 し て い る.(3.3.26)が る こ と は,こ
「自 由 運 動(慣
ポ テ ン
性 運 動)」 の
σ を 時 間 変 数 とす る 自 由 運 動 の 方 程 式 で あ
に た いす る ラ グ
れ が 自 由 運 動 の ラ グ ラ ン ジ ア ン
ラ ン ジ ュ 方 程 式 に な っ て い る こ とか ら も 見 て とれ る. こ の(3.3.26)が,実 の よ う に す れ ば,直
は 力 の 場 の 中 で の 正 し い 運 動 方 程 式 で あ る こ と は,次 接 的 に 確 か め ら れ る.変
さ ら に(3.3.21)と(3.3.22)よ
数 を σ か ら 時 間tに
り 得 ら れ るdσ/dt=2Tを
変 換 す る:
使 う と
で あ る か ら,(3.3.26)は
と な る.こ
こ で こ の ク リ ス ト ッ フ ェ ル 記 号 Γkijを,gijの
い て 書 き 直 し,も (1.1.24)で
と の 配 位 空 間 の 計 量mijと
定 義(3.3.21)を
用
ク リ ス ト ッ フ ェ ル 記 号Ckij
書 き表 す と
と な る か ら,上
式 は
と 書 き 直 さ れ る.い
ま の 場 合,系
は 保 存 系 でT+U=E(const.)で
あ り,
d(T+U)/dt=0.し
た が っ て最 終 的 に 次 の方 程 式 が 得 ら れ る:
(3.3.27) こ れ は 確 か に ポ テ ン シ ャ ルUに 式(1.1.28)に
よ って 与 え られ る力 の 場 の な か で の 運 動 方 程
他 な ら な い.
方 程 式(3.3.26)と(3.3.27)の こ み,し
違 い は,(3.3.26)で
た が っ て 力 の 効 果 を 座 標 軸 の 曲 が り で 表 し た た め,系
運 動 を し て い る か の よ う に 見 え た の が,(3.3.27)で ぐ な 」 座 標 軸 を と っ た こ と に な り,そ 曲 げ ら れ る わ け で あ る.(3.3.26)は
(3.3.27)は,力
3.3.5
は,い
は あ たか も 自由 う な らば
「ま っ す
の た め 系 は 力(-∂U/∂q)に
よ り経 路 を
力 が 空 間 の 計 量 を 決 め,物
体 は その計 量
空 間 内 を つ ね に 慣 性 運 動 す る と い うEinstein流
Newton流
は 力 の 場 を計 量 に く り
の 見 方 を 表 し,他
方,
が 物 体 を平 坦 な 空 間 の 慣 性 運 動 か ら そ らせ て ゆ く と い う の 見 方 を 表 して い る.
力 学 ・光 学 ア ナ ロ ジ ー
最 後 に ひ とつ コ メ ン トして お く.も との 配 位 空 間 の計 量 を用 い た 距 離 を
と す る.こ
こ に{mij}は(1.1.21),(1.1.22)で
元 を もつ 定 数 と す る(そ
の と きlは
間 内 で 系 が 現 実 に と る 経 路 は,ヤ
定 義 し た 計 量,mは
長 さ の 次 元 を も つ).こ
質 量の次
う す れ ば,配
位 空
コ ビ の 原 理 よ り条 件
(3.3.28a) に よ り決 定 され る.と
くに1質 点 の場 合 は,現 実 の物 理 空 間R3で
の経路 が
(3.3.28b) とい う条 件 か ら決 定 され る.こ こ でmを も とMaupertuis,
Euler, Lagrangeら
こ れ を,与 え られ た2点 な る経 路 を と る,す
そ の 質 点 の 質 量 に と る.こ れ が も と
に よ り扱 われ た最 小 作 用 の 原理 で あ る.
を通 る光 線 は所 要 時 間 が 最 小(厳 密 に は 停 留 値)と
な わ ち 屈 折 率 がn(r),位
中 で の光 線 の 経 路 は 変 分 式
相 速 度 が
の媒 質
(3.3.29) か ら 決 め ら れ る と い う フ ェ ル マ ー の 原 理(Fermat' よ う.そ
s principle)と
対比 してみ
こ で位 相 速 度 が
(3.3.30) で与 え ちれ る波 動 を考 え る と,ポ テ ン シ ャ ル がU(r)で 粒 子 の 運 動 は,こ
与 え られ る 力 を受 け た
の 波 動 の 伝 播 と相 似 な関 係 に あ る とい うこ とが で き る.こ の
対 応 関 係 を さ ら に推 し進 め れ ば,光 波 の 位 相
(3.3.31) に対 応 して,力 学 に お い て も,そ の位 相 が ハ ミル トンの 特 性 関 数 ・主 関 数 を用 いて
(3.3.32) で 与 え ら れ る 波 動 が 考 え ら れ,粒 に 決 定 さ れ る と い え る.そ (3.3.32)を
の 波 を ド ・ブ ロ イ 波(de
ド ・ブ ロ イ 波 の 位 相 と い う.こ
り,(3.3.31)か ω 〓E/hの
子 の 運 動 経 路 は こ の 波 に た い す る光 線 の よ う
ら(3.3.32)へ
想)で
の 議 論 は単 な る類 推 に
し か な い.
理 論 で よ り一 層 顕 著 で しか も確 実 な も の に な る が,そ は じ め て 明 ら か に な る も の で あ る(§7.3参
述 の ハ ミル トン-ヤ コ ビ の の 深 い根 拠 は 波動 力 学 で
照).
2次 元 ケ プ ラ ー 問 題 とヤ コ ビの 原 理
ポ テ ン シ ャ ル がV=-μ/γ め 単 位 質 量 で 論 ず る).エ
し た が っ て,作
して
お よび
の 段 階 で は,こ
粒 子 の 運 動 と 波 動 の 伝 播 の こ の ア ナ ロ ジ ー は,後
例3.3.1
wave),そ
作 用 の 次 元 を もつ 定 数 で あ
の 書 き 直 し は,
置 き か え に も とづ く.こ
依 拠 し た 飛 躍(予
こ にhは
Broglie
用(3.3.19)は
で 与 え ら れ る2次 元 ケ プ ラー 問 題 を考 え る(簡 単 の た ネ ルギー保 存 則 は
この場合
(ただし
で あ り,ヤ
コ ビ の 原 理 は ⊿A=0で
こ れ よ りた だ ち に,変
が 書 き下 され る.こ
が 導 か れ,第1積
表 され る.
分 法 に つ い て の オ イ ラ ー 方 程 式(p.
の 式 と,Fが
)
175の 脚 注3)
ψ を 陽 に 含 ま な い こ とを 使 え ば
分
(3.3.33) が 得 ら れ る(こ ラー の 第2法
こ で
則 で,α
を 使 っ た).こ
れ は ケプ
は(単 位 質 量 あ た りの)角 運 動 量 で あ り,こ の保 存 則 は 角 ψ が
循 環 座 標 で あ る こ との 結 果 に他 な ら な い. ま た こ の 式(3.3.33)よ
り軌 道 形r=r(ψ)に
つ い て の 方 程 式 と して
が 導 か れ る. い ま ε<0と
し て,r=r0=rminで
ψ=ω(近
日 点 引 数)と
と る な ら ば,こ
(ただ し
れ よ り
) (3.3.34)
が 得 ら れ る.た
だ し
.し
と積 分 変 数 を変 換 す れ ば,積 分 は実 行 で き て,ψ-ω=φ
たが って
と な り,軌 道 の 方 程 式
(3.3.35) が 得 ら れ る.も α=M/mと
ち ろ ん こ こ で 得 ら れ た 結 果 は,質
す れ ば,例2.2.3の
結 果 に 一 致 す る.
量 をmと
し て ε=E/m,μ=κ/m,
4 ハ ミル トン形 式 の 力 学
4.1 相 空 間 と正 準 方 程 式
4.1.1 ラ グ ラ ンジ ュ方 程 式 の 狭 さ ラ グ ラ ン ジ ュ方 程 式 は配 位 空 間Nの
座 標q=(q1,q2,…,qn)に
の 微 分 方程 式 で あ り,与 え られ た初 期 条 件(t=0で てN上
のq,q)に
つ い て の2階 た い す る解 と し
に一 本 の 曲 線(解 曲 線)が 決 定 さ れ る.し か し同 じ点 か ら異 な る初 速
度 で 出発 す る運 動 が 考 え られ る の で,配 位 空 間 で考 え るか ぎ り,ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の解 曲 線 は 同一 の 点 か ら何 本 で も引 くこ とが で き る し,し た が っ て また 異 な る解 曲 線 が 交 差 す る こ と もあ りう る. この 不 都 合 を避 け る た め に,ラ
グ ラ ン ジ ュ方 程 式 を
(4.1.1a) (4.1.1b)
た だ し と 書 き 直 し,
に つ い て の2n個
立 微 分 方 程 式 と し て 扱 っ て み よ う.つ ξ をqと
ま り運 動 を 状 態 空 間TNで
の1階
連
眺 め,速
度
は 独 立 な 座 標 と見 な す わ け で あ る.
こ の と き(q,ξ)はTNの そ し てTN上 程 式(4.1.1)の 満 た さ れ,そ
局 所 座 標 で,ξ
そ れ 自体 はqと
の 関 数 と し て ラ グ ラ ン ジ ア ンL(q,ξ,t)が 解 曲 線 上 の 点 に た い し て は 上 記 の2n個
は 無 関 係 で あ る.
与 え ら れ た と き,方 の 方 程 式(4.1.1)が
の と き は じ め て ξ が 解 曲 線 に そ っ た 速 度 ベ ク トルq=dq/dtに
一 致 す るの で あ る .
こ こ で ラ グ ラ ン ジア ンLが
正 則,す
なわち
(4.1.2) で あ る とす る.そ の と き上 記 の 方 程 式 は
(4.1.3a) (4.1.3b) と書 き直 され,初 期 値 問 題 は一 意 的 に解 け る.す な わ ち ラ グ ラ ン ジ ア ン が 正 則 な らば,系
の 状 態 を表 す 点 の移 動 速 度 は 状 態 空 間TN上
値 を と り,し た が っ てTN上
の 点 ご とに 決 ま っ た
で は解 曲 線 は 始 点(q(0),ξ(0))を 指 定 す れ ば 一 本
だ け決 ま り,決 して 交 差 しな い.こ
の よ うにn個
の2階 微 分 方 程 式 を2n個
の
1階 微 分 方 程 式 に 書 き直 す だ け で,幾 何 学 的 に は 解 の見 通 しが 大 幅 に 改 善 され る. そ れ ゆ え,状 態 空 間 の 各 点 に お いて ラ グ ラ ン ジア ン に よ り決 定 され る速 度 の 成 分 が(4.1.3)に
よ り与 え ら れ,こ
の 式 の 右 辺 で 表 さ れ る 「速 度 の 場 」 に 誘
導 さ れ て 点 が 移 動 して ゆ く とい う よ うに系 の 時 間 的 変 化 を イ メー ジ した い と こ ろ で あ る.し か しそ の 「速 度 の場 」 な る もの の 「幾 何 学 的 身分 」 は 不 透 明 で あ る.つ
ま り上 記 の 方 程 式(4.1.3)が
同 種 類 の 幾 何 学 的 対 象 間 の 関 係 で あ るの
か 否 か,座 標 変 換 に た い して 両 辺 が 同 一 の変 換 則 に 従 うか 否 か は,見
ただけで
簡 単 に わ か る こ と で は な い. そ の上 こ の 方 程 式 に はqと
ξ が き わ め て 非 対 称 に 現 れ る た め,代
数 的 な見
通 し もは な は だ 悪 い.
4.1.2 正 準 方 程 式 この よ うな不 満 足 な点 を手 直 しす るた め に,接 空 間 のベ ク トル と して の一 般 化 速 度
の か わ りに,余 接 空 間 の ベ ク トル と し て の 一 般 化
運 動 量 を用 い た運 動 方 程 式 の 表 現 を考 え る. 一般 化運動量成分
(4.1.4)
を使 え ば,ラ
グ ラ ン ジ ュ方 程 式 は
(4.1.5) と表 さ れ る. さ て い ま(q,q,t)が
そ れ ぞ れ 無 限 小 量(δq,δq,δt)だ
れ に と も な い(4.1.4)で ラ ン ジ ア ンLの
決 ま るpが
変 化 は,無
と表 さ れ る(∂i=∂/∂qi).こ
と書 き 直 し て み よ う.こ
δpだ け 変 化 し た と し よ う.こ
限 小 量 の1次
の式 を
他 な ら ず,こ
定 義 さ れ る(q,q)の
の ときラグ
まで とる と
の 左 辺 の 括 弧 内 は 以 前 に(2.2.28)で
トニ ア ンHL(q,q,t)に こ と を 示 し て い る.つ
け 変 化 し た と き,そ
ま り(q,p)の
の 式 は,HLが 関数H(q,p,t)が
定 義 し た ハ ミル
実 はqとpの
関 数 であ る
存 在 し,pが(4.1.4)で
関数 であ るとき
(4.1.6) が す べ て の(q,q)∈TNに
た い し て 成 り 立 つ の で あ る*1.
し た が っ て 一 般 化 座 標 を 用 い た 運 動 方 程 式(4.1.5)は,右 にHで
表 す の が 自 然 で あ る と考 え ら れ る.そ
辺 をLの
か わ り
の ため
(4.1.7) と 書 き 直 し て,上 (q,q,t)の Lに
の2式(4.1.4),(4.1.5)をHで
関 数,Hは(q,p,t)の
作 用 す る と き に はqを
表 そ う.そ
関 数 で あ る か ら,偏 一 定 に し て と い う 条 件 で,Hに
の さ い,Lは
微 分 作 用 素 ∂/∂qiは, 作 用す るときには
pを 一 定 に し て と い う条 件 で 用 い る い こ と に 注 意 し な け れ ば な ら な い.そ
のた
め 一 定 に 保 つ 量 を(…)│qの
の関
よ う に 記 し て,上
式 をqi,qiで
微 分 す る と,次
係 が 得 ら れ る: *1 (4
.1.6)つ
ま りHがqとp=φ
の 関 数 で あ る こ と を い う た め に は,ラ
則 性(4.1.2)を 必 要 と し な い こ と に 注 意.た のpiは す べ て が 独 立 で は な い.§10.1参 照.
グ ラ ン ジア ン の正
だ し ラ グ ラ ン ジ ア ン が 正 則 で な け れ ば,n個
(4.1.8)
(4.1.9) し た が っ て ラ グ ラ ン ジ ア ン が 正 則 で あ れ ば,(4.1.8)よ
り
(4.1.10) が 導 か れ る.こ
の こ と は,正
則 な ラ グ ラ ン ジ ア ン で は(4.1.4)が
一 意的に
(4.1.11) と解 け る こ と を 示 し て い る.つ 意 性 の 条 件(ラ
ま りラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式 の初 期 値 問 題 の解 の一
グ ラ ン ジ ア ン の 正 則 性)が
一 般 化 運 動 量 と一 般
化 速 度 の1対1
対 応 の 条 件 に も な っ て い る の で あ る. さ ら に(4.1.10)を(4.1.9)に
代 入 す れ ば,偏
導関数 の関係
(4.1.12) が 得 ら れ,こ
れ を(4.1.5)と
併 せ る こ とに よ り,pで
表 され た運 動 方程 式
(4.1.13) が 導 か れ る の で あ る. そ こ で(q,q)の
か わ り に(q,p)を
独 立 な 変 数 に と り,あ
ら た め て ハ ミル ト
ニ ア ン を(q,p)の
関数 と して
で 定 義 し 直 す.こ
れ が 通 常 ハ ミ ル トニ ア ン な い しハ ミル トン 関 数 と い わ れ て い
(4.1.14) る も の で,(2.2.28)のHL(q,q,t)のqに(4.1.11)を こ れ を 用 い れ ば,独
立 な(q,p)に
代 入 し た も の で あ る*2.
つ い て の 方 程 式(4.1.10),(4.1.13)は
*2 天体 力学 の テ キ ス トで は ,ハ ミル トニ ア ンや ポ テ ン シャル を本 書 と逆 の 符 号 で 定義 して い る もの もあ るの で,注 意 が 必要.
(4.1.15)
と ま とめ ら れ る.こ equations)と
れ をハ ミル トニ ア ンHに
い う.そ
し て こ の よ う に(q,p)を
立 な 変 数 と見 な し た と き に,qを 運 動 量(canonical ables)と
た い す る 正 準 方 程 式(canonical 系 の 状 態 を 指 定 す る2n個
正 準 座 標(canonical
momentum),(q,p)を
coordinate),
の独
pを 正 準
ま とめ て 正 準 変 数(canonical
vari
い う.
こ こ で 正 準 方 程 式 を(q,p)に
つ い て の 方 程 式 と い う と き,見
方 の転 換 が 遂 げ
ら れ て い る こ と に 注 意 し て も ら い た い. つ ま り,ラ
グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 の 立 場 で は,系
グ ラ ン ジ ア ンLが (q,q)の
与 え ら れ て い て,一
関 数 で あ り,(4.1.10)は
(4.1.13)のn個
だ け で あ る.他
般 化 運 動 量pは(4.1.4)で
定 義 され る
そ の 定 義 の た ん な る 結 果 で,運
動 方程 式 は
方,正
独 立 で 対 等 な 変 数 で あ っ て,(4.1.15)は 動 方 程 式 で あ る.運
動 量pに
へ の 名 称 の 変 更 は,運
の運 動 を支 配 す る もの と して ラ
準 方 程 式 の 立 場 で は,(q,p)は 系 の 運 動 を 決 定 す る2n個
互 い に の 対 等 な運
た い す る 「一 般 化 運 動 量 」 か ら 「正 準 運 動 量 」
動 量pの
身 分 の 変 換 で あ る と 同 時 に,ラ
グ ラ ン ジ ュ方
程 式 の 立 場 か ら正 準 方 程 式 の 立 場 へ の こ の 見 方 の 変 換 を 表 し て い る. 正 準 方 程 式(4.1.15)が(4.1.3)と し か し(4.1.3)よ
同 様 の1階
り も優 れ て い る の は,第1に
微 分 方 程 式 で あ り な が ら, 形 が き わ め て 単 純 で,配
間 の 座 標 変 換 に た い す る 共 変 性 が 見 や す い こ と と と も に,変 な 対 称 性 と い う代 数 的 メ リ ッ トが あ る(§4.2参 数(p,q)間
の こ の 特 異 な 対 称 性 の た め に,後
微 分 方 程 式 に 比 べ て 解 の 性 格,つ
照).実
節(§4.4)で
数(p,q)間
際,正
位 空 の顕著
準 方 程 式 は,変
見 る よ う に,一
般 の
ま り摂 動 に た い す る そ の 安 定 性 や 大 域 的 振 る
舞 い が き わ め て 「良 い 」. 正 準 方 程 式 が 優 れ て い る 第2点 換(点
変 換)に
換(正
準 変 換)に
に は,よ
は,ラ
グ ラ ン ジ ュ方 程 式 が 配 位 空 間 の 座 標 変
た い し て 不 変 で あ っ た の に た い し て,正 た い し て 不 変 な こ と で あ る(§5.3).運
準 方 程 式 は よ り広 い 変 動 方 程 式 を解
くため
り多 くの座 標 成 分 が 循 環 的 に な る 座 標 系 が望 ま し い こ と は す で に 見
た.そ れ ゆ え よ り広 い 変 換 を許 容 す る正 準 方 程 式 は,こ の 点 で も ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 を さ らに 上 回 っ て い る の で あ る.
4.1.3
相 空 間 と 正 準1形
式
ラ グ ラ ン ジ ュ 形 式 の 力 学 で は 系 の 状 態 は 配 位 空 間Nの 態 空 間)上
接 バ ン ド ルTN(状
の 点 で 指 定 さ れ る.
所 座 標 で あ る.そ
は そ の局
れ で は 正 準 変 数(q,p)を
局 所 座 標 系 と す る 空 間 は,ど
の よ う
な 空 間 で あ る の か. 与 え ら れ た ラ グ ラ ン ジ ア ン に た い し て 一 般 化 運 動 量p=(p1,p2,…,pn)が (2.2.5)な
い し(4.1.4)で
定 義 さ れ る が,そ
のpがN上
の座 標変 換 に た い し
て 共 変 ベ ク トル と し て 振 る 舞 う こ と は 以 前 に(2.3.3),(2.3.4)で
示 し た.こ
の こ と は 異 な る角 度 か ら次 の よ う に 示 す こ とが で き る. 配 位 空 間N上
の 点Q(局
の 接 空 間TNQ上
の 関 数,す
ル
所 座 標q={qi})で
の ラ グ ラ ン ジ ア ンL(q,q)を
な わ ちq={qi}の
関 数 と見 な し,接
そ
空間のベ ク ト
にたいす るその方向微分
を考 え る.こ
れ は 実 数 で あ り,し
(pl,p2,…,pn)は,ベ
た が っ てpi=∂L(q,q)/∂qiのn個
ク トルu∈TNQに
の 組p=
た い す る線 形 写 像
(4.1.16) を 与 え る.そ (TNQの
し て こ のTNQ上
双 対 空 間)を
形 成 す る.そ
運 動 量p=(p1,p2,…,pn)は ベ ク トル)で
あ る(§1
の 線 形 写 像 の 全 体 は,そ
れ 自体 が ベ ク トル 空 間
れ が 余 接 空 間 で あ っ て,T*NQと
こ のT*NQ上
の ベ ク トル(共
.5.1,1.5.2,1.6.1参
変 ベ ク ト ル な い し1
照).
こ の こ と は 配 位 空 間 の す べ て の 点 に た い し て 考 え る こ とが で き る.そ 座 標 が(q,p)で
表 さ れ る 空 間 と は,配
と い う(§1.6.2参 す な わ ち,正
あ り,数
れゆ え
位 空 間 の あら ゆ る 点 に お け る余 接 空 間 の
あ ら ゆ る ベ ク トル に よ っ て 作 ら れ る 空 間,す =UQ∈NT*NQで
記 さ れ,
な わ ち 余 接 空 間 の 直 和 集 合T*N
学 で は こ の 空 間 を 余 接 バ ン ドル(cotangent
bundle)
照). 準 力 学 で は 系 の 状 態 は 余 接 バ ン ドル 上 の 点 に よ っ て 指 定 さ れ
る.こ
の 空 間T*Nを
で 表 す*3.正
物 理 学 で は相 空 間(phase
space)と
準 変 数
い い,以 下 で はM
はM=T*N上
の局 所
座 標 系 で あ り,ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 か らハ ミル トンの 正 準 方 程 式 へ の 移 行 を も た らす(q,q)〓(q,p)の
変 数 変 換 は,幾 何 学 的 に は 接 バ ン ドル(状 態 空 間)
上 で の 力 学 の 記 述 か らそ の 双 対 空 間 で あ る余 接 バ ン ドル(相 空 間)上 で の 力 学 の 記 述 へ の変 換 で あ る(図4.1.1).そ
して 状 態 空 間TNか
ら相 空 間Mへ
の 写 像
のこ
は ラ グ ラン ジ ア ン
が 正 則 の と き全 単 射 に な り,TNの
点 とMの
点 は1対1に
対 応 す る.
図4.1.1
そ こ で,こ (T*N)Qの
の 写 像 に よ り配位 空 間Nの
基 底{(dqi)Q}を 用 い れ ば,点Qに
局 所 座 標 系{qi}か
ら 自然 に導 か れ る
お け る運 動 量 ベ ク トル は
(4.1.17) と表 さ れ る. *3 日本 語 の テ キ ス トで は 数学 で は くな い.
,phase
spaceを
「位 相 空 間 」 を別 の 意 味(topological
「位 相 空 間 」 と 訳 し て い る も の が 少 な くな い が, space)に
使 っ て い る の で,あ
ま り好 ま し
こ こ でN上
の す べ て の 点QにT*NQの
元 θQを一 つ ず つ 対 応 づ け る写 像
(4.1.18) を 定 義 し,こ
れ を 正 準1形
式(canonical 1-form)と
い う.θ
は局所座標 表示
では
(4.1.19) こ れ は 以 前 に状 態 空 間 上 で導 入 した 基 本1形
式 θL=pidqi(2.3.5)を
相 空間 で
表 現 し た もの に 他 な らず,解 析 力 学 で きわ め て 大 き な役 割 を果 た す. 正 準 方 程 式 に よ り決 定 され る相 空 間上 の 点 の 運 動 と して系 の 変化 を論 じる力 学 を,本 書 で は ハ ミル トン形 式 の 力学 な い し正 準 力 学 とい う. な お,上
の 議 論 か ら明 らか な よ うに,ラ
の 移 行 に さ い し て は,ラ
グ ラ ン ジュ 方 程 式 か ら正 準 方程 式 へ
グ ラ ン ジ ア ン の 正 則 性 の 条 件(4.1.2)が
きわ め て 重
要 な役 割 を果 た して い る こ とが わか る.そ れ ゆ え逆 に,正 則 で な い ラ グ ラ ン ジ ア ン に た いす るハ ミル トニ ア ン と正 準 方 程 式 の 導 入 は,特 別 な 注 意 と議 論 が 必 要 に な る.こ
の 点 は10章
で別 個 に 論 ず る こ と に し,以 下 で は ラ グ ラ ン ジ ア ン
を正 則 とす る.
4.1.4 リ ー マ ン 計 量 と くに ラ グ ラ ン ジ ア ン が局 所 座 標 表 示 で
(4.1.20) と表 さ れ る と す る.た
だ し任 意 の(q,q)に
た い し てT(q,q)≧0と
の と き 配 位 空 間 に は リー マ ン 計 量mij(q)dqidqjが
備 わ り,一
す る.こ
般化運動量成分は
(4.1.21a) と表 さ れ る. 実 際 このmij(q)を
を導 入 し,TNQ上
用 いれ ば,接 空 間TNQに
計 量 テ ン ソル
の 任 意 のベ ク トル
に よ っ て定 義 で き る.そ
して この と きTNQ上
の 内積 を
の 速 度 ベ ク トル(反 変 ベ ク トル)
υQ= qi(∂i)Qを この 計 量 テ ン ソル で写 像 す るな らば
(4.1.21b) と な り,運
動 量 ベ ク ト ル(共
こ こ で さ らに とす れ ば,対
変 ベ ク トル)が
得 ら れ る.
「Q点 で の 」 と い う 限 定 を 取 り は ず し て,mijをN上
称 テ ン ソ ル 場(計
の 関数
量 場)
(4.1.22) お よ び1形 式
(4.1.23) を 定 義 す る こ とが で き る. そ う す れ ばTN上
の 速 度 ベ ク トル 場 をq=qk∂/∂qkと
し て 正 準1形
式 は
(4.1.24) と表 され る.す な わ ち こ の 場 合,正 を計 量 テ ン ソル 場 でM=T*Nに 場 を介 して,ベ
準1形
式 θはTN上
の 速 度 ベ ク トル場q
写 像 し た もの で あ る.こ
ク トル 場 と1形 式 が1対1に
う して 計 量 テ ン ソ ル
対 応 づ け られ る.
4.1.5 拡 大 相 空 間 配 位 空 間Nを
時 間 軸 を含 む 拡 大 配 位 空 間N×Rに
拡 大 して 考 え る と き に
は,対 応 す る相 空 間 は 次 の よ うに 考 えれ ば よ い. N×Rの
局 所 座 標 を
とす る(た だ しq0=t).こ
の場
合 は,拡 大 空 間 の ラ グ ラ ン ジ ア ン
を考 え れ ば,こ
れ に た い し て 上 と ま っ た く同様 の 議 論 が 展 開 で き る.す な わ
ち,運 動 量
の成分 は
(4.1.25a)
(4.1.25b) で 定 義 さ れ((3.1.12)(3.1.13)参
照),こ
れ ら は 前 と 同 様 に,1形
式
(4.1.26) の 成 分 で あ る こ と が わ か る.そ
し て こ の(q,p)が(2n+2)次
元 余 接 バ ン ドル
T*(N×R)の
局 所 座 標 系 を 与 え る.
た だ し こ こ で は ラ グ ラ ン ジ ア ンLは す べ て 独 立 な わ け で は な い(こ も と の 空 間 で は,ラ
が 成 り立 ち,運
正 則 で は な い の で,(n+1)個
の 点 に つ い て 詳 し くは,例10.3.2参
グ ラ ン ジ ア ンLが
陽 にtに
τ に 陽 に よ ら な い か ら,つ
照).
よ らな い保 存 系 の場 合 に は
動 が 等 エ ネ ル ギ ー 面 に 限 定 さ れ た.こ
は ラ グ ラ ン ジ ア ンLは
の{pi}が
れ と 同 様 に,拡
大 空間 で
ね に
(4.1.27) が 成 り立 ち,そ の ため 拡 大 空 間 に お け る運 動 を も との 空 間 で の保 存 系 の場 合 と 同様 に 扱 うこ とが で き る.つ -Hで
を と る.そ
う す れ ば 空 間 は(2n+1)次
を拡 大 相 空 間(extended Rを
ま り運 動 は,余 接 バ ン ドルT*(N×R)内
定 義 され る超 曲 面 に 限定 され る.そ の(2n+1)個
phase
つ け 加 え た も の で あ る.そ
の 独 立 な座 標 と して
元 の
space)と
い う.実
のp0=
と な り,こ 質 的 に は,相
し て こ こ で は 上 記 の1形
れ
空 間 に時 間 軸
式(4.1.26)は
(4.1.28) と な り,こ れ を 「M×Rに
ひ き上 げ ら れ た正 準1形
状 態 空 間 で 導 入 し た ΘL(3.1.9)(3.1.14)を
式 」 と い う.以 前 に 拡 大
拡 大 相 空 間 で 表 し た も の で あ り,
以 下 で は θ とな らん で 重 要 な役 割 を果 た す. これ だ け の準 備 を して,次 節 で相 空 間 と正 準 方 程 式 の 幾何 学 的 構 造 を見 て ゆ く こ と にす る.
4.2
ハ ミル ト ニ ア ン ・ベ ク トル 場
4.2.1 シ ン プ レク テ ィ ッ ク 多様 体 相 空 間 上 で 正 準 変 数 を用 い て 記 述 さ れ る正 準 力 学 で は,正 準1形
式 θお よ
び そ の外 微 分
(4.2.1)
が き わ め て 重 要 な 役 割 を 果 た す(iの2重
添 字 は1∼nの
学 で は 正 準2形
い う*1.
式(canonical
2-form)と
和 を と る).こ
相 空 間 の 構 造 と こ の Ω の 役 割 を は っ き り さ せ る た め に,以
れ を力
下 の よ うな 書 き
直 し を 行 う. ま ず 正 準 座 標
で 表 す(tは
と正 準 運 動 量
転 置 記 号,zを
こ の と き,正 準2形
を ま とめ て
縦 ベ ク トル で 表 す の は 以 下 の 便 宜 の た め で あ る).
式は
(4.2.2) と 表 さ れ る(ギ
リ シ ャ 添 字 μ,ν は そ れ ぞ れ1∼2nの
添 字 は 和 を と る).こ
(∂i=∂/∂qi,∂i=∂/piを た は,ま
し た が って2階
ち ろ ん2重
こ に Ωμν=<Ω│∂μ,∂ν>(た だ し ∂μ=∂/∂zμ)は 局 所 座 標 表
示 で の Ω の 成 分 で あ り,(q,p)で
別 す る),ま
値 を と り,も
表 し,添
表す と
字 の 上 下 でqに
よ る 微 分 とpに
よ る微 分 を 区
とめ て
交 代(共 変)テ ン ソル と して の 正 準2形
式 は行 列 表 示 で は
(4.2.3a) と な る(0nはn次
零 行 列,Inはn次
単 位 行 列).さ
て 反 変 テ ン ソ ル 成 分 Ωμ ρ を定 義 す る.そ
の2階
ら に Ωμ ρ Ωρ ν=δ μνに よ っ
反 変 テ ン ソル の行 列 表 現 は
(4.2.3b) (反 変 テ ン ソ ル に た い す る 行 列 Ω'に は,共 る た め ダ ッ シ ュ を つ け る.た
だ し,行
変 テ ン ソル に た いす る Ω と 区別 す
列 要 素 で 表 した と き は 添 字 の 上 下 で 反
変 ・共 変 の 区 別 が つ くか ら ダ ッ シ ュ は つ け な い.ま は Ω2n,Ω'2nの
*1 こ れ は 正 準2形
よ う に 記 す.)な
,以 前 に 定 義 し た 基 本2形 式 を Ω=-dθ=dqi∧dpiで
た,次
数 を明 記 す る と きに
お 行 列 Ω は Ω2n2=-I2n,tΩ=Ω-1と
い う性 質
式dθL(2.3.6)を 相 空 間 で 表 現 し た も の で あ る.な 定 義 す る テ キ ス トも あ る の で,注 意 が 必 要.
お
を も つ(Ω'も
同 じ).
幾 何 学 的 に は,偶 代 テ ン ソ ル 場)Ω (symplectic
数 次 元 の 多 様 体Mに
が 備 わ っ て い る と き(M,Ω)を
manifold)と
い う.計
徴 づ け る の と 同 じ よ う に,Ω あ る.こ Ω が
交
シ ン プ レクテ ィック多様 体
が シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多様 体 を 特 徴 づ け るの で
の Ω を シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 形 式(symplectic 「閉 じ た 形 式(閉
式(2階
量 テ ン ソ ル 場 が リー マ ン 多 様 体 の 構 造 を 特
形 式)」 と はdΩ=0の
ま た 非 退 化 と は,
form)と
い う.
こ と で あ る(§1.6.6).
で あ れ ば 必 ず υ=0と
一 般 の 座 標 系 う.こ
閉 じ た 非 退 化 な 交 代2形
を と る.た
な る こ と を い う.
だ し
と し よ
の座標 では
(4.2.4) と し て,正
準2形
式は
(4.2.5) そ れ ゆ え
.し
の ν に た い し て ωμνυμ=0と と で,行
数)次
レ ク テ ィ ッ ク 形 式 が(4.2.2)の 明 さ れ る.こ (4.2.2)の
式 Ω が 非 退 化 と は,す
べ て
な る υ=υ μ∂μは ゼ ロ ・ベ ク トル し か な い と い う こ
列 ω=(ω μν)が 正 則(det
そ し て す べ て の 有 限(偶
た が っ て2形
ω≠0)と
い い 直 し て も よ い.
元 の シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多 様 体 に は,シ
ンプ
形 に 表 さ れ る局 所 座 標 系 が 存 在 す る こ と が 証
れ を ダ ル ブ ー の 定 理(Darboux's
theorem)と
形 の す る 座 標 系 を 標 準 座 標 系,(4.2.2)の
い う.以
下,Ω
を
形 を シ ン プ レク テ ィ ッ ク
形 式 の 標 準 形 と い お う. 任 意 の 座 標 系
で の 任 意 の 交 代2形
辺 の 形 に 表 さ れ る か ら,ダ
と な るz={zρ(x)}を 則 な2n次
ル ブ ー の 定 理 は,交
式 は(4.2.5)式
の右
代 行 列 ω=(ω μν)が 正 則 の と き
作 る こ とが で き る とい う主 張 で あ る.し か る に任 意 の 正
交 代 行 列 ω に た い して,あ
る2n次
正 則 正 方 行 列Sが
存在 し
(4.2.6)
とす る こ と が で き る*2.そ
れ ゆ え ダ ル ブ ー の 定 理 は ∂xμ/∂zρ=Sμρと な るzρ=
zρ(x)を す べ て の ρ に つ い て 作 る こ と が で き る と い う こ と で あ る*3. 結 局,相
空 間 は シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多 様 体 で あ り,力
幾 何 学 で い う シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 形 式 の こ と で,正 他 な ら な い.そ
学 で い う正 準2形
式は
準 変 数 とは その 標 準 座 標 に
し て ま た こ の 意 味 で
を シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 変 数(symplectic
variables)と
い う.
(シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多 様 体 に は そ れ を 特 徴 づ け る シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 内 積 と して 斜 交 積 を 定 義 で き る が,そ
4.2.2
れ に つ い て は §5.5.3参
照.)
正準方程 式の座標 系 によらない表現
正 準 方 程 式(4.1.15)は,ひ
と ま とめ に
(4.2.7)
と 表 さ れ る.い
ま
も 同 様,さ
に Ω'=(Ω
と し て 縦 ベ ク トル と し て のzと μ ν)を 用 い れ ば,こ
ら 行 列
れは
(4.2.7)' の 形 に 書 け る.Ω'の
成 分 表 示 を 用 い れ ば,こ
れは
*2 証 明 は 田坂 隆 士
『2次 形 式 』 岩 波 講 座 基 礎 数 学(岩 波 書 店1976)定 理4 .6,な い し 佐 武 一 郎 『線 型 代 数 学 』(裳 華 房1958増 補 改 題1974) p . 186f.参 照. *3 ダ ル ブ ー の 定 理 の 証 明 は ,た と え ばV. I. Arnold『 古 典 力 学 の 数 学 的 方 法 』 安 藤 韶 一 ・蟹 江 幸 博 ・丹 羽 敏 雄 訳(岩 波 書 店1980) §43,小 松 彦 三 郎 『ベ ク トル 解 析 と 多 様 体 』 岩 波 講 座 応 用 数 学(岩 1998) 4.5参 照.
波 書 店1995)
§5.3,伊
藤秀一
『常 微 分 方 程 式 と 解 析 力 学 』(共 立 出 版
(4.2.8a) で あ り,あ
る い は(4.2.7)'に
左 か ら Ω=(Ω ρ μ)を か け て Ωz=∇H,す
なわ ち
(4.2.8b) と表 す こ と もで き る. こ の よ うな シ ンプ レ ク テ ィ ッ ク変zと 式 の 書 き直 しは,た
行 列 Ω'な い し Ω に よ る 正 準 方 程
ん な る記 述 の簡 単 化 や 数 学 上 の 技巧 に と ど ま る も の で は な
い .
上 式(4.2.8a)の ル 場(反
左 辺,す
な わ ち
は,相
空 間M上
のベ ク ト
変 ベ ク トル 場)
(4.2.9) の 成 分 で あ り,他 方,右 辺 の
は1形 式
(4.2.10) の 成 分 で あ る.し た が っ て 用 い て い る座 標 系 に 左 右 さ れ な い 意 味 を もつ 方 程 式 を得 る ため に は,つ
ま り どの 局 所 座 標 系 に移 って も成 り立 つ よ うに両 者 を関 係
づ け る た め に は,両 者 を媒 介 す る もの と して2形 式(2階 必 要 と され る.そ
こ で相 空 間 に 備 わ って い る2形 式 と して 正 準2形
目 し,こ れ を用 い て ベ ク トル 場cを
を 作 り,こ
共 変 テ ン ソ ル 場)が 式 Ω に着
写像 して1形 式
の 式 と正 準 方 程 式(4.2.8b)を
見 く ちべ る.そ
うす れ ば 正 準 方 程
式 は簡 単 に
(4.2.11) と表 され る こ とが わ か る.こ の 方 程 式 は2個 の1形 式<Ω│c,●>お
よ び-dH
同士 が 等 しい とい う要 請 で あ るか ら,座 標 変 換 に た い して共 変 的 で あ り,し た が っ て正 準 方程 式 の 局 所 座 標 系 に よ ら な い 表 現 で あ る*4. な おΩ=dθ
*4 (4
.2.11)の
で あ る こ と を考 慮 す れ ば,こ
左 辺 は2形
な い し Ω 」c=-dHの
式 Ω とベ ク トル 場cの よ う に も書 か れ る.
の(4.2.11)は
内 部 積 で,(4.2.11)式
配位 空間 の ラ グラ
はi(c)Ω=-dH
ン ジ ュ 方 程 式(2.3.10)
を相 空 間 で の 式 に 書 き直 し た
も の で あ る こ と が わ か る.し (3.1.35)
た が っ て 拡 大 配 位 空 間 の ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 も 同 様 に 書 き直 す こ とで,拡
大相 空 間 の正 準 方
程 式 の 局 所 座 標 系 に よ ら な い表 現 と して
(4.2.12) が 得 ら れ る と予 想 さ れ る(こ 実 際,1形
式(4.1.28)の
の ダ ッ シ ュ は パ ラ メ ー タ τに よ る 微 分)*5. 外微 分 を とることによ り
(4.2.13) 他 方,c'の
座標 表示 は
(4.2.14)
し た が っ て(4.2.12)は
(4.2.15) (4.2.16) と等 価 で あ る.こ あ る(後
の(4.2.15)の2n個
の(4.2.16)式
4.2.3
は 正 準 方 程 式 か ら 導 か れ る もの で 独 立 で は な い).
ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル 場
し か し,も の 各 点 で 力F,ポ
と も と,力
は 非 退 化(Ω
し か しdΘ=dθ-∇zHdz∧dtは は,Ω 2nで,Ω
学 の 運 動 方 程 式 は,空
テ ン シ ャ ルU,ラ
が 与 え ら れ た と き に,そ
*5 Ω=dθ
の 式 は 確 か に 正 準 方 程 式(4.2.8b)で
れ に お う じ て 経 路c(t)が
は 正 則 でrank Ω
=2n)ゆ
非 退 化 で は な い.実
μν=Ωμν,Ω0μ=-Ωμ0=∂μH,Ω00=0で の 固 有 値0の
ク トル 場c'が,定
間(R3,N,M=T*Nな
グ ラ ン ジ ア ンL,ハ
固 有 空 間 は1次
え ,<Ω│υ,●>=0で 際,dΘ
あ れ ば 必 ずυ=0. を行 列 表 示 し た と きの 要 素
た が っ て=0と
数 倍 を の ぞ い て 一 つ 存 在 す る.
ど
決 定 され る とい う主 旨の もの
あ り,(2n+1)×(2n+1)行
元.し
ど)
ミル トニ ア ンHな
列 Ω はrank Ω= な る0で
な いベ
で あ る.そ
こ で 運 動 方 程 式 と し て は(4.2.11)の
だ け が 現 れ る 形 が 望 ま し い.そ
こ で,次
形 の も の で は な く,左
辺 にc
の よ う に 表 現 す る の が わ か りや す い で
あ ろ う. リー マ ン 多 様 体 で は 計 量 テ ン ソ ル 場 ル 場 が1対1に
対 応 づ け ら れ る よ う に,シ
2形 式 Ω=dθ=dpi∧dqiを れ,相
介 し て1形
互 に 置 き か わ り う る.つ
に よ り1形
式 とベ ク ト
ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多 様 体 で は,正
式 と ベ ク トル 場 が1対1に
ま りの
対応づ け ら
場 合 と 同 様 に<Ω│●,●>も,
● で 表 さ れ て い る ブ ラ ン ク の と こ ろ に 一 つ ベ ク ト ル 場 を 入 れ れ ば1形 ら れ,二
準
式 が得
つ ベ ク トル 場 を 入 れ れ ば シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 内 積 を 表 す ス カ ラ ー 関 数
が 得 ち れ る マ シ ー ン と 見 な す こ と が で き る(た ル で あ る か ら か っ た が,正
準2形
だ し計 量 テ ン ソ ル は 対 称 テ ン ソ
と な り,ベ
ク トル 場 を ど ち ら に 入 れ て も よ
式 は 交 代 テ ン ソ ル で
で あ る か ら,
ベ ク トル 場 を 入 れ る位 置 が 意 味 を も つ こ と に 注 意) . そ こ で,G(z)を に よ っ て1形
相 空 間M上
式dGが
の 滑 ら か な 関 数 し た と き,Ω
で写像 す るこ と
得 ら れ る よ う な ベ ク トル 場 υGを 考 え る.す
なわ ち
(4.2.17) i.e.
(4.2.18)
こ う して 得 られ るベ ク トル 場
(4.2.19) を 関 数Gに
よ っ て 生 成 さ れ る,な
ン ・ベ ク トル 場(Hamiltonian
い し関 数Gを
vector
生 成 関 数 とす る ハ ミル トニ ア
field)と
い う.
こ の 書 き方 で は 系 の 時 間 的 発 展 を 与 え る 正 準 方 程 式(4.2.11)は,ハ ニ ア ンH自
ミル ト
体 に よ っ て 生 成 さ れ る ハ ミ ル ト ン ・ベ ク トル 場 υHを 用 い て
(4.2.20) と して 表 す こ と も で き る.こ れ も用 い る座 標 系 に よ ら な い正 準 方 程 式 の 表 現 で あ る*6. *6 2形 式 Ω が(4 正 則 ゆ え,与 (4.2.17)は
=2.2)の
え ら れ たGに
形 を と る 標 準 座 標 系 で な く と も,Ω た い し て(4.2.17)よ
が 非 退 化 す な わ ち行 列 Ω が
り υGは 一 意 的 に 決 ま る.し
ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル 場 υGの 座 標 系 に よ ら な い 定 義 で あ る.
たが って
こ の 式 の 意 味 は,M上
の 曲 線c(t)に
そ っ た 点 の 速 度c(t)が,ハ
ミル トニ
ア ン ・ベ ク トル 場 の そ の 点 で の 代 表(υH)c(t)に 一 致 す る こ と を 示 し て い る.曲 線 の 局 所 座 標 表 示
を 用 い れ ば,上
式 の両辺 はそ
れぞれ
の よ うに 表 さ れ る.こ れ らが 等 し い こ とは 成 分 が 等 しい こ と で あ る と考 え て も,あ る い は こ れ を微 分 作 用 素 の 関 係 と見 な し て,座 標 関 数zν に 作 用 させ た もの が 等 し い と考 え て も よい. ν成分 のzで
の 値 を表 す.い
はベ ク トル 場υHの
ず れ にせ よ,こ れ か ら座 標 成 分 に つ い て の微 分 方
程式
(4.2.21) が 得 ら れ る.こ
れ は(4.2.8a)に
他 な ら な い.他
方(4.2.11)は(4.2.8b)に
対 応 す る. ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル 場υHは,Hが 流 れ(フ
ロ ー)の
速 度 が 指 定 さ れ る こ と を 表 し て い る.正
系 の 時 間 的 発 展 は,系 出 発 し,こ
与 え ら れ た な らば 相 空 間 の 各 点 で
の 状 態 を 表 す 点z=(q,p)が,t=0に
準 方 程 式 に した が う 点P0=z(0)か
の ベ ク トル 場 に 導 か れ て 相 空 間 上 を 時 間 と と も に 移 り ゆ く流 れ と し
て 表 さ れ る.そ
の と き 描 く 曲 線 が 積 分 曲 線 で あ る.そ
れ ゆ え 力 学 の 問 題 は,積
分 曲 線 を 求 め る こ と,あ
る い は そ の 性 質 を調 べ る こ と に 帰 着 す る.
こ の 点 に つ い て は,次
節 以 下 で よ り詳 し く論 じ る.
4.3
4.3.1 あ るn次
ら
力 学
系
力 学 系 の 考 察
と は
元 空 間(広
義 の 相 空 間N,座
ベ ク トル 場 (こ の 広 義 の 相 空 間 で は 正 準2形
標
と,そ
の上 の
が 与 え ら れ て い る とす る 式 が 備 わ っ て い る と は 限 ら な い の で,座
標 の
qとpの
区別 は な く,添 字 の 下 付 き ・上 付 きの 区 別 は しな い).そ の 積 分 曲 線
(解 曲 線)を 決 定 す る微 分 方程 式 系
(4.3.1) とこ の広 義 の 相 空 間 の セ ッ トを力 学 系(dynamical x(t)が 恒 等 的 に(4.3.1)を
満 た す と き,x(t)を
system)と
解 とい う.こ こ でtは 実 数 で
あ り,時 間 と呼 ぼ う.と
くにベ ク トル 場 がtを
(autonomous
自励 系 」 と も訳 す)と い う.
system,「
い う.ま たx=
陽 に 含 ま な い と き,系 を 自律 系
こ の微 分 方程 式 は,外 部 との エ ネ ル ギ ー 交 換(エ
ネル ギー の 供 給 や 散 逸)が
あ っ て正 準 方 程 式 で は 表 さ れ な い よ う な系 の運 動 方程 式 で あ っ て も よ く,さ ら に は 力学 とは 直 接 に 関 係 を もた な い,た 程 式 や,化
とえ ば生 物 種 の 個 体 数 の 変 動 を表 す 方
学 変 化 に お け る物 質 の 濃 度 変 化 を表 す 方 程 式 な ど で あ って も よ い.
要 す る に微 分 方 程 式 系(4.3.1)で
記 述 され る もの で あ りさ え す れ ば,具
な対 象 と して は何 で も よ いの で あ る.力 学 系 の理 論 とは,こ
体的
の よ うな 微 分 方 程
式 系 の個 々 の解 析 解 を見 い だ して そ の 性 質 を調 べ るだ け で は な く,む しろ解 の 集 合 全 体 を対 象 と して,そ の 長 時 間 の 振 る舞 いや 大 域 的 性 質 を考 察 す る もの で あ る. と くに 相 空 間 が 偶 数 次 元 で 正 準2形 式 を有 す る シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多 様 体 (狭義 の相 空 間)で,ベ
ク トル場 が ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル 場 の と き,そ の 力
学 系 を正 準 力 学 系 な い しハ ミル トニ ア ン力 学 系 とい う.そ して 本 書 の 目的 は基 本 的 に は正 準 力 学 系 の 考 察 に あ る.し か し,ハ
ミル トン力 学 に お い て も大 部 分
の 問 題 は実 際 に は 解 析 的 に 解 くこ とが で き な い.そ れ ゆ え力 学 系 の理 論 で一 般 的 に 考 案 さ れ た 考 察 方 法 は こ こ で も きわ め て 有 効 で あ る.の み な らず,一 般 の 力 学 系 を調 べ る こ とに よ り,そ れ との 対 比 で正 準 力学 系 の 特 徴 を 浮 き彫 りにす る こ とが で き る. そ こ で 本 節 で は,本 る.た だ し,ベ
書 の 目的 に と っ て 必 要 な範 囲 で 力 学 系 の 理 論 を概 観 す
ク トル 場 と して は 微 分 可 能 で,そ
れ ゆ え微 分 方 程 式(4.3.1)
の解 の 存 在 と一 意 性 が 保 証 され て い る もの の み を扱 い,ま た解 は,必 要 な らば t→ ±∞ まで 延 ば す こ とが で き,初 期 条 件 に 現 れ るパ ラ メー タ に つ い て 連 続 で微 分 可 能 とす る.
ま た 非 自律 系 の 場 合,t=xn+1と
し て(4.3.1)に
れ ば 自 律 系 の 扱 い が で き る の で,本
節 と次 節 で は 議 論 を 自律 系 の み に 限 る.
4.3.2
つけ加 え
相 流 と不 変 集 合
微 分 方 程 式(4.3.1)の にx=x(0)か x(0))に
方 程 式xn+1=1を
解 で,初
期 条 件 をt=0でx=x(0)と
ら 出 発 す る 解)をx(t;x(0))で
表 す.そ
す る も の(t=0 こ で 初 期 値x(0)をx(t;
対 応 させ る 写 像
(4.3.2) を 考 え,こ (phase
の 変 換 の 全 体{φt│t∈R}を
flow)あ
る い は 単 に フ ロ ー(流
微 分 方 程 式(4.3.1)が れ)と
い う.い
点 を 初 期 値 とす る動 点 を 一 つ の 分 子 と 見 な し,そ う に 見 な す の で あ る.自
律 系 で は,こ
定 め る相 流
う な ら ば,相
空 間上 の 各
の 動 点 全 体 の 集 合 を流 体 の よ
の 流 体 は 各 点 ご とに決 ま っ た速 度 を もつ
定 常 流 と し て 相 空 間 上 を 流 れ る. と こ ろ で 解x(t;x(0))に
つ い て は,明
らか に
(4.3.3) が 成 り立 つ.ま
た 自律 系 で は 時 間 の 原 点 を ず ら し て も方 程 式 は 変 わ らな い か
ら,x(t;x(0))が
解 な ら ばx(t+s;x(0))も
にx=x(s;x(0))か
解 で あ る.と
こ ろ が,こ
れ はt=0
ら出 発 す る解 で もあ るか ら
(4.3.4) が 成 り立 つ.さ
ら に も と の 微 分 方 程 式 でtを-tで
x(-t;x(0))で
与 え ら れ る.こ
に 他 な ら な い.し
置 きか え た方 程 式 の 解 は
れ は も との 方 程 式 の積 分 曲 線 を逆 に た ど る もの
た が って
な らば 以 上 の 議 論 に よ り,写
像(4.3.2)の
(4.3.5)
集 合{φt}は
(4.3.6)
(恒 等 写 像),
を満 た し,そ れ ゆ え この 変 換 の 全 体 す な わ ち相 流 は群 を な して い る.こ の群 が ベ ク トル場 υの定 め る1径 数 変 換 群 で あ る(§1 .4.6参 照). と こ ろ で 方 程 式(4.3.1)よ た な ら ば,与
りk(
の1価
な 第1積
え られ た初 期 条 件 の も とで の 積 分 曲 線 はn次
分{Ii(x)}が 求 ま っ 元 相 空 間N内
の
で 定 め ら れ る部 分 空 間 に 限 定 さ れ る.つ は こ の 外 に 出 る こ と は な い し,ま に 入 っ て く る こ と も な い.こ {dIi}(ま
た は{∇Ii})の
ば,NIは(n-r)次 て のt∈Rに
ま りこ の上 の 点 か ら出発 した 積 分 曲線
た この 外 の 点 か ら出 発 した積 分 曲 線 が こ の 中
の 集 合N1を
う ち のr(≦k)個
不 変 集 合(invariant が1次
元 多 様 体 に な る.一
集 合 と 呼 ぶ.そ
い う.
独 立(rank(∂Ii/∂xj)=r)な
般 的 に は,す
た い し て,
set)と
ら
べ て のx(0)∈NIと
すべ
が 成 り立 つ と き,NIを
れ ゆ え,た
不変
とえば
の よ う な 不 変 集 合 も考 え る こ とが で き る.
4.3.3
平 衡 解 ・周 期 解 と そ の 安 定 性
い ま ベ ク トル 場υ に た い し て,点x=x0で
(4.3.7) で あ る と す る.こ
の 点x0を
方 程 式 系(4.3.1)の
は,微
ベ ク ト ル 場υ の 不 動 点(fixed
特 異 点 と い う(そ
分 方 程 式 系(4.3.1)の
意 のtに
い し微 分
れ 以 外 の 点 を 通 常 点 と い う).こ
一 つ の 解 と考 え る こ と も で き る.し
は 相 空 間 上 で 動 か な い.そ ま た,任
point)な
の 意 味 でx=x0を
の とき
か しこの解
平 衡 解 と も い う.
た い して
(4.3.8)
(た だ し T>0) を 満 た す 解 を 周 期Tの
周 期 解 と い う.相
て く る も の で あ る.Tが
空 間 上 で 積 分 曲 線 が も との 点 に 戻 っ
周 期 な ら ば2T,3T,…
も 周 期 で あ る か ら,と
くに そ
れ ら の う ち で 最 も小 さ い も の を だ け を 周 期 と い う 場 合 が 多 い. 微 分 方 程 式 の 解 の 安 定 性 は 次 の よ う に 定 義 さ れ る. t=0にx=x(0)か
ら 出 発 す る解x(t;x(0))に
近 くの 任 意 の 点x(0)か
ら 出 発 し た 解 が,そ
き く離 れ ず に 動 く と き,こ でx(t;x(0))に
の 解x(t;x(0))は
収 束 す る と きx(t;x(0))は
と い わ れ る. 厳 密 に 表 現 す る な ら ば,次
の よ う に な る.
た い し て,t=0にx=x(0)の の 後 ず っ と動 点x(t;x(0))か 安 定(stable),さ
ら大
ら にt→+∞
漸 近 安 定(asymptotically
stable)
相 空 間上 の2点xとyの
で 定 義 し た と き,与
間の距離 を
え ら れ た ε>0に
た い し て δ=δ(ε)>0が
存在 し
ならば t>0に
た い し
(4.3.9)
を み た す と き,解x(t;x(0))を
安 定 と い う.と
な ら ば t>0に で 定 義 さ れ る.さ
ら に解x(t;x(0))が
く に 平 衡 解x=x0の
た い して 安 定 で,か
つ あ る δ'が 存 在 し
(4.3.10)
な らば をみ たす と き漸 近 安 定 とい う.と
安 定 は
の とき
くに 平 衡 解 で は
漸 近 安 定 で あ る. な お,不
動 点(平
衡 解)x=x0に
に 到 達 す る こ と は で き な い.と や は り不 動 点 で あ る が,も き た と す れ ば,tの
た い し て は,x0の い う の も,tを−tに
外 か ら 有 限 の 時 間 でx0 か え た 方 程 式 で も.x0は
と の 方 程 式 で 有 限 時 間 で 外 の 点 か ら 点x0に
符 号 を か え た 方 程 式 で は 有 限 時 間 でx0か
こ と に な り,こ
れ はx0が
例 と し て,相
空 間 を2次
到達 で
ら外 の 点 に 移 る
不 動 点 で あ る こ と に 反 す る か ら で あ る. 元 平 面,(x,y)を
そ の 上 の 直 交 座 標 と し,方
程式
(4.3.11) で 定 義 さ れ る 力 学 系 を 考 え る.た 明 らか にx=y=0は
す る.
平 衡 解 で あ る.
そ の 他 の 解 を 調 べ る た め に,極 と変 換 す る.こ
だ し こ こ で はa>0と
座 標(γ,θ)を
用 い てx=γcosθ,y=γsinθ
の と き方 程 式 は
(4.3.12) と な る か ら γ=a,θ=ωt+θ0,す
な わ ち
(4.3.13) は 一 つ の 周 期 解 で あ る. し か も(4.3.12)の あ る か ら,外
第1式
よ り0
か ら 平 衡 解 に 達 す る解 は な く,平
増 大,Y>aでYは
減 少 で
衡解 以外のすべ ての解 はつねに
r=aの
解 に接 近 す る.一 般 解 はrに
と す れ ば 得 ら れ る.こ
つ い て の 方 程 式 を変 数 分 離 して
の 方 程 式 の,初
期 条 件 がt=0でr=r(0)≠0の
解 は
(4.3.14) とな り,原 点 以外 の 点 か ら 出発 す るか ぎ り,す べ て の積 分 曲線 は,周 期 軌 道 の 内 側 の も の も外 側 の もの も,確 か に
の 周 期 軌 道 に 接 近 して
ゆ くこ とが わ か る(図4.3.1).
図4.3.1
した が っ て,こ
の 系 は 唯 一 の 平 衡 解(原
そ の うち 原 点 の 平 衡 解 は 不 安 定,他
方r=aの
点)と 唯 一 の 周 期 解r=aを
周 期 軌 道 は 漸 近 安 定 で あ る.そ
して こ の よ う な周 期 軌 道 を リ ミ ッ ト ・サ イ ク ル(limit cycle)と 期 解 」 とい う堅 苦 しい 訳 語 が あ るが,カ
も ち,
い う(「極 限 周
タ カ ナ語 が 常 用 さ れ て い る).
4.3.4 線 形 化 方 程 式 上 の例 は,解 が 厳 密 に 求 ま る場 合 で あ る.し か し それ は む し ろ例 外 的 な 場 合 で,方 程 式(4.3.1)は な い場 合,解
通 常 は解 析 的 な形 に 解 け な い.そ
こ で厳 密 解 が 求 ま ら
の 性 質 を調 べ る方 法 と し て,そ の 平衡 解 や 周 期 解 に 着 目 し,そ れ
らの 解 の近 くの解 曲 線 の 振 る舞 い,と
りわ け そ の安 定 ・不 安 定 を調 べ る こ とが
考 え られ る. 手 始 め に,平 衡 解 が 得 ら れ た と して,そ
の 近 傍 の解 の 様 子 を調 べ て み よ う.
適 当 に座 標 を平 行 移 動 す れ ば,不 動 点 を原 点 に す る こ とが で き る.そ の と き, υ(0)=0で あ るか ら,そ の 近 くで は(同 一 添 字 につ い て の 和 の規 約 を使 って)
(4.3.15) と 表 さ れ る.そ
こ でxの2次
以 上 を 無 視 す る な ら ば,方
程 式(4.3.1)は
(4.3.16) と近 似 さ れ る.こ
れ は 行 列K=(Kij)を
用 い れ ば,縦
ベ ク トル の 表 示 で
(4.3.17) と 表 さ れ る.こ Kを
れ を 方 程 式(4.3.1)の
力 学 行 列(dynamical
実 行 列 で あ る.こ
不 動 点 の ま わ り の 線 形 化 方 程 式,行
matrix)と
れ は 必 ず 解 け,そ
い う.こ
列
こ で 扱 っ て い る 系 で は,Kは
の形式解 は
(4.3.18) で 表 され る.こ
こでexpは
線 形 変 換
べ き級 数 で 定 義 さ れ る指 数 関 数 で あ る. に よ り,上 の 方程 式 は
(4.3.19) に 変 換 さ れ る.こ
の 変 換 に よ り行 列Kが
対 角 化 さ れ る な ら ば,Kの
固有値 を
λ1,λ2,…,λnと し て
(4.3.20)
(4.3.21)
と な り,し
た が っ て 解 は 次 の よ う に 明 示 的 に 表 さ れ る:
(4.3.22)
4.3.5
2次 元 で の 考 察
しか し,力 学 行 列Kは
対 称 行 列 とは 限 ら な い の で,つ ね に対 角 化 可 能 な わ
け で は な い. 具 体 的 に2次 元(n=2)の て 不 動 点 を原 点 に とれ ば,そ
場 合 を考 えて み よ う.こ の と きx=t(q,p)と
表し
の まわ りの線 形化 方 程 式 は
(4.3.23) の 形 に 表 さ れ る(a,b,c,dは
実 数).こ
の 力 学 行 列 の 固 有 値 は,特
性方程式
(4.3.24) の解
(4.3.25) で あ る.こ
こに
(4.3.26) (4.3.27) これ よ り力 学 行 列 の 対 角 化 は,以 下 の よ うに場 合 分 け され る. (ⅰ)
b=c=0:
す で にKは
対 角 化 済 み で,λ1=a,λ2=dで
(ⅱ) b≠0(b=0,c≠0な
ら 以 下 でpとqの
は じ め の 線 形 化 方 程 式(4.3.23)す
に お い てaq+bp=pと
あ り
お く と,第1式
役 割 を 入 れ か え れ ば よ い):
なわち
はq=p,ま
た
こ う して 次 の 対 角 化 され た方 程 式 が得 られ る:
(4.3.28) こ の解 は さ ら に 以下 の よ うに場 合 分 け され る. (ⅱ-1)
座標変 換
を施 す と,上 の 方程 式 は
(4.3.29) と表 さ れ,そ
の解 は
(4.3.30) 要 す るに,こ
の 場 合 は力 学 行 列 が 対 角 化 さ れ るの で,こ の 線 形 化 され た 力 学
系(4.3.23)はQ=λ1Q,P=λ2Pの2つ
の 独 立 な 力 学 系 に 分 解 さ れ る.し た
が っ て任 意 の 解 は,Q=eλ1t,P=0お れ る((i)の
場 合 も同 様).力
よびQ=0,P=eλ2tの
学 行 列Kは
線形結合 で与 え ら
実 行 列 ゆ え,そ の 固 有 値 λ1,λ2は,
と もに 実 数 か 互 い に 複 素 共 役 か の いず れ か に 限 られ る. 固 有 値 が 互 い に 共 役 な 複 素 数
の と き は,力 学
行 列 を対角 化 す る変 換 行 列 は複 素 行 列 に な る.こ の ときP=Q*で
あ るか ら
(4.3.31) ま たQ0=Aeiφ
と し て,方
程 式 と そ の 解 は,実
数 で書 け ば
(4.3.32a) (4.3.32b)
(ⅱ-2)
こ の と き(4.3.28)は ∴ P=P0eσt,ま
同 一 の 方 程 式 で あ り,P:=p-σqと
たQ:=qと
した が って こ の場 合,座
し てP=σP
して
,す
なわち
標変 換 は
そ の結 果 得 られ る 方程 式 は
(4.3.33) とな り,力 学行 列 は 対 角 化 さ れ な い.こ の 形 の行 列 を ジ ョル ダ ン標 準 形(Jor dan form)と
い う.
多次 元 の場 合,固
有 値 にm個
等 し い もの が あ り(m重
の 縮 退 が あ り)力 学
行 列 が 対 角 化 され な い と きに は,力 学 行 列 の そ のm×mの
の 形 ま で 変 換 で き,こ
部分 は
の 部 分 を ジ ョル ダ ン ・ブ ロ ッ ク(Jordan
block)と
い う*1.
4.3.6 平 衡 解 の 安 定 ・不 安 定 と分 岐 上 の 結 果 よ り,平 衡 解 の 線 形 化 近 似 で の 安 定 ・不 安 定 は,力 学 行 列 の 固 有 値 だ け か ら判 定 で き る.こ れ も以 下 の よ う に場 合 分 け され る. (Ⅰ)
固 有 値 は複 素 共 役 で
と して
:
この と き平 衡 解 は 渦 状 点(spiral).
*1 斎 藤 正 彦 (裳 華 房 1982) 波 書 店1976)な
『線 型 代 数 入 門 』(東 京 大 学 出 版 会1966) ch. 5 §6,杉 ど参 照.
浦光夫
『Jordan標
ch . 6 §2,岩
堀長 慶
『線 形 代 数 学 』
準 形 と 単 因 子 論 Ⅰ』 岩 波 講 座 基 礎 数 学(岩
近 傍 の 解(4.3.32b)の (Ⅰ-a)
振 る 舞 い は,σ
σ>0
の 符 号 に お う じ て 次 の よ う に な る:
(Ⅰ-b)
不 安 定 な渦 状 点. (Ⅱ)
σ<0
安 定 か つ 漸 近安 定 な 渦状 点.
と し て 固 有 値 は 純 虚 数 λ=±iω:
こ の と き平 衡 解 を 渦 心 点(center)な
い し 楕 円 不 動 点 と い う.
近 傍の解 は x=Acos(ωt+φ), y=Asin(ωt+φ). 安 定 な渦 心 点 (漸 近 安 定 で は な い).
(Ⅲ) κ=σ2>0;固
有 値 は 等 し い 実 数 λ1=λ2=σ:
平 衡 解 は 結 節 点(node).近
傍 の解 は (Ⅲ-b)σ<0
(Ⅲ-a)σ>0
不 安 定 な 結 節 点.
安 定 か つ 漸 近安 定 な結 節 点.
(た だ し こ れ はb≠0の り,こ
場 合.b=c=0,λ1=λ2=λ
と い う の は,a=dで
れ は 独 立 な 二 つ の 同 じ 振 動 子 が あ る と い う 自 明 の 場 合 で あ る.)
(Ⅳ) σ2>κ>0;固
有 値 は2実
根:
こ の と き も 平 衡 解 は 結 節 点 で,近
傍 の 解 はQ=Q0eλ1t,P=P0eλ2t.
(Ⅳ-a)
近傍 の解 は Q=CPλ1/λ2. 不 安 定 な 結 節 点.
(Ⅳ-b)
近 傍 の解 は P=C'Qλ2/λ1. 安 定 か つ 漸 近 安 定 な 結 節 点.
(Ⅴ)
κ=0;λ1=2σ>λ2=0ま
平 衡 解 は 焦 点(focus).近
た は
λ1=0>λ2=2σ:
傍 の 解 はq=Ae2σt,p=2σAe2σt.
σ>0で 不 安 定 な 焦 点, σ<0で 安 定 か つ 漸 近 安 定 な焦 点.
あ
(Ⅵ) こ の と き平 衡 解 を鞍 点(saddle)な
い し双 曲 不 動 点 とい う.
近 傍 の解 は.
不 安 定 な 鞍 点.
以 上 は 次 の 表 に ま とめ られ る:
以 上 よ り,平 衡 解 が安 定 で あ る た め に は,行 列Kの
固有値 の実部 が すべ て
0以 下(Reλ ≦0),ま た,漸 近 安 定 で あ る た め に は,固 有 値 の 実 部 が す べ て 負 (Reλ<0)で
な け れ ば な ら な い こ とが わか る.こ の 議 論 は 線 形 近 似 に も とづ く
もの で あ る.も
ち ろ ん 線 形 近 似 で不 安 定 で あれ ば,も
不安 定 で あ ろ う.し か し線 形 近 似 で安 定 な 場 合,も
との 非 線 形 系 に 戻 っ て も
との 非 線 形 系 で も安 定 か ど
うか は別 途 確 か め ね ば な ら な い こ とで あ る.そ の点 は 次 節 で 論 じ る. な お,漸 近 安 定 な 渦状 点 と結 節 点 と焦 点 を あ わ せ て 沈 点(sink),不 渦 状 点 と結 節 点 を あ わせ て 湧 点(source,「 似 の 方 程 式(4.3.23)す
で あ る か ら,沈
程 式 が 周 期 解 を も つ の は,固 divυ=0で
源 点 」 と も い う)と い う.線 形 近
な わ ち
点 で はdivυ<0,湧
安定な
より
点 で はdivυ>0で
あ る.他
方,線
有 値 が 純 虚 数 の 場 合 に 限 ら れ る が,そ
形化 方 の ときは
あ る.
ま た 沈 点 お よ び リ ミ ッ ト ・サ イ ク ル 上 の 点 の よ う に,t→+∞
でその点の ま
わ り の 軌 道 が 流 れ 込 ん で く る 点 を ア トラ ク タ ー(attractor)と ク タ ー に た い し て,そ
い う.ア
トラ ク タ ー が あ れ ば,相
トラ ク タ ー の 吸 引 領 域 に よ っ て 分 割 さ れ,現
あ れ,初
ア トラ
の 点 を通 る軌 道 が そ の ア トラ ク ター へ と流 れ 込 む すべ て
の 点 の 集 合 を 吸 引 領 域(basin)と
め ら れ る.そ
い う.各
空間 はア
象 は 定 性 的 に は ア ト ラ ク ター で 定
し て ア トラ ク タ ー に 接 近 す る 軌 道 は,力
学 系 が た と え決 定 論 的 で
期 条 件 に 関 す る す べ て の 記 憶 を 事 実 上 喪 失 し て ゆ く こ と に な る.
他 方,上
の 表 よ り見 て と れ る よ う に,ベ
ク トル 場 の パ ラ メ ー タ の 変 化 に と も
な っ て 平 衡 解 の 性 格(不
動 点 の ま わ り の フ ロ ー の 様 子)が
を 分 岐(bifurcation)と
い う.
た と え ば,力 と し よ う.不
学 系(4.3.11)でaに
虚 数 ま で 許 し,a2≡
動 点 と し て の 原 点(x=y=0)の
変 化 す る.こ
の現象
αが 正 負 の 値 を と る
近 くの 線 形 化 方 程 式 と力 学 行 列
は
で あ り,こ
れ よ り
で,
し た が っ て 先 述 の 議 論 よ り,σ=α=a2>0で わ ち 湧 点 で あ る.実
際,こ
の 場 合,(4.3.14)よ
任 意 の 点 か ら 出 発 す る 解 は,す 引 き 寄 せ ら れ て ゆ く.つ
は 原 点 は 不 安 定 な 渦 状 点,す り わ か る よ う に,原
べ て 原 点 か ら 遠 ざ か り,リ
ま り 円
な
点 近 くの
ミ ッ ト ・サ イ ク ル に
が ア トラ ク タ ー で,原
点以 外 のすべ て
の 点 は そ の 吸 引 領 域 で あ る. α を小 さ く し て ゆ く と,リ で,方
ミ ッ ト・サ イ ク ル(半
径
程 式 と そ の 解 は
の 円)は
縮 小 し,α=0
と な り,原
点 は
漸 近 安 定 な 渦 状 点 と な る. α を 負 に し て も(σ=α<0),原 あ る.実
点 は や は り漸 近 安 定 な 渦 状 点 す な わ ち 沈 点 で
際 こ の 場 合,解(4.3.14)は
こ と は,α>0の
と な る.こ
の
場 合 の リ ミ ッ ト ・サ イ ク ル が 収 縮 し,α ≦0で つ い に 原 点 に 一
致 し た も の と考 え る こ と が で き る(図4.3.2).こ
の と きに は 原 点 が ア トラ ク
タ ー で,全
点(平
空 間 が そ の 吸 引 領 域 に な る.た
に 無 限 の 時 間 を要 す る.
だ し,原
衡 解)に
到達 す るの
こ の 例 の よ う に,パ
ラ メー タの 変 化 に と もな っ て 不 動 点 の性 格 が 湧 点 か ら沈
点 に 変 わ る 現 象 を,と
くに ホ ッ プ 分 岐(Hopf
bifurcation)と
い う.
図4.3.2
4.3.7
リャ プ ノ ブ関 数
非 線 形 系 を 含 め て,一
般 に 平 衡 解 の 安 定 性 を判 定 す る 方 法 と し て,リ
ャプ ノ
フ 関 数 を 用 い る 方 法 が あ る. た と え ば2次
元(x=(q,p))の
力 学 系x=υ
で,原
点(q=p=0)が
不 動 点 で,
そ れ が 安 定 な 平 衡 解 で あ る た め に は,時
刻t=0に
か ら 出 発 し た 解 が,そ
内 部 に 留 ま ら ね ば な ら な い.そ
め に は 図4.3.3の
れ 以 後 つ ね にDの
よ う に,ベ
ク トル 場 υ がDの
原 点 の あ る 近 傍Dの
境 界 ∂Dで つ ね にDの
図4.3.3
内部 の た
内部 を
向 い て い る かDの
境 界 に 接 し て い れ ば よ い.
い まL(0,0)=0,か し て,(q,p)平 高 線).Lの cに
つ 原 点 の 近 く でL(q,p)>0と
面 上 の 曲 線
をcと
勾 配 を
,曲
線cの
そ っ た 方 向 微 分 は
,他
に そ っ たLの
方向微分 は
そ れ ゆ え,勾
配 ∇L(q,p)は
各 点 でcの
す る 向 き を 指 し て い る.し そ っ たLの
し,フ
の 点Qで
ロ ー はLの
方 程 式x=υ
す る(cはLの 接 ベ ク トル をuと 方,力
し て,Lの 積 分 曲 線
か もLが
増 大
なわ ち
つ ね にcの
内 向 き かcに
囲 ま れ る 領 域 に 閉 じ込 め ら れ,こ
の 安 定 な 平 衡 解 で あ る.そ
の 安 定 性 を 判 別 で き る.こ
学 系x=∇Lの
等
の 積 分 曲 線x(t)=(q(t),p(t))に
の ベ ク ト ル υQ=(υq,υp)は
等 高 線cで
高 さ がhの
接 ベ ク ト ル に 垂 直 で,し
た が っ てx=υ
方 向 微 分 が つ ね に 負,す
な ら ば,c上
な るあ る関数 が あ った と
れ ゆ え こ の 関 数L(q,p)に
の 関 数 を リ ャ プ ノ フ 関 数(Liapunov
接
の とき原点 は よ り平 衡 解 function)と
い う. リ ャ プ ノ ブ 関 数 は,そ え れ ば,イ
の 原 型 が 力 学 に お け るエ ネ ル ギー 積 分 に あ る こ とを考
メ ー ジ を 作 りや す い.
た と え ば 減 衰 振 動 の 方程 式
を 考 え る.相
空 間(q,p=mq)で
とな り,原 点(q,p)=(0,0)が
表せ ば
不 動 点(平 衡 解)で あ る.こ れ が水 平 なば ね に つ
なが れ た質 点 の 運 動 を 表 す もの とす れ ば,系 E(q,p)=(質
と表 さ れ,等
の各 瞬 間 の 力学 的 エ ネ ル ギ ー は
点 の 運 動 エ ネ ル ギー)+(ば ね の 弾 性 エ ネ ル ギー)
エ ネ ル ギ ー 線 は 不 動 点 を 囲 む 楕 円E(q,p)=const.で,そ
の 外 向 き 法 線 ベ ク トル は
の楕 円
で 与 え ら れ る. こ の エ ネ ル ギ ーE(q,p)は ル ギ ー 線 に 一 致 す る.し
で あ る か ら,運
λ=0な か し λ>0の
ら ば 保 存 さ れ る.つ
ま り解 曲 線 は 等 エ ネ
と きに は
動 に と も な い エ ネ ル ギ ー は 必 ず 減 衰 す る.こ
の こ とは,等
エネ
ル ギ ー 線 を 表 す 楕 円 上 の 各 点 で フ ロ ー の ベ ク トル
が つ ね に 楕 円 の 内 側 を向 き,そ の た め 積 分 曲 線 が つ ね に 原 点 に 向 か い,し が って 原 点 の 平 衡 解 が 漸 近 安 定 で あ る こ と を示 して い る.つ
た
ま り この 例 で は,
減 衰 の な い と きの 力 学 的 エ ネ ル ギ ー が リャプ ノ フ 関数 に な り,運 動 はつ ね に エ ネ ル ギー の減 少 す る向 き に進 む ゆ え,原 点(ば ね の エ ネ ル ギー が 最 小 で 静 止 つ ま り運 動 エ ネ ル ギー 最 小 の状 態)が 漸 近安 定 な平 衡 解 に な る(図4.3.4)*2.
図4.3.4
一 般 的 に い うな ら ば
,次
リ ャ プ ノ フ関 数
の よ う に な る.
相 空 間 の 原 点(x=0)がx=υ
の 平 衡 解 で,そ
の 近 傍D(x≠0)で
(4.3.34) *2 図4
.3.2と
図4.3.4は,丹
羽敏雄
もの を下 敷 に させ て い た だ い た.
『微 分 方 程 式 と 力 学 系 の 理 論 入 門 』(遊 星 社 1988)の
とな る関数 が 存 在 し,D-{0}で
(4.3.35) な ら ばx=0は
安 定,ま
たD-{0}で
(4.3.36) な らばx=0は
漸 近 安 定 で あ る.
この 方 法 に よ り,線 形 化 方程 式 の 固有 値 の 実 部 が0で 形 方程 式 の 平 衡 解 近 くの 軌 道 の 振 る舞 い,す
な け れ ば,も
との 非 線
な わ ち平 衡 解 の安 定 ・不 安 定 は,
線 形近 似 で得 ら れ る もの と一 致 す る こ とが,次 の よ うに示 され る. は じめ に 線 形 近 似 で 考 え よ う.次 元 数 を増 や し て も本 質 的 に 変 わ ら な い か ら,典 型 的 な ケ ー ス と して,6次 値2個(α,β),2重
で,力 学 行 列Kが
実 固有
固 有 値 一 組(γ,γ),複 素 共 役 固 有 値 一 組(σ ±iω)を もつ と
し よ う.適 当 な行 列Uに 角 化 さ れ,さ
元 の 力 学 系x=υ
よ る変 換UKU-1で
力学行列 の実 固有値 の部 分 は対
ら に 複 素 共 役 固有 値 の 部 分 は(4.3.32a)の
形 に変 換 さ れ,ま
た
2重 固有 値 の 部 分 は ジ ョル ダ ン ・ブ ロ ッ ク に な る.そ こ で,ε を任 意 の 正 数 と して この ジ ョル ダ ン ・ブ ロ ッ クの 部 分 を さ らに
と変 換 す る.全 体 の変 換 行 列 を
と して,線 形
化 方程 式 は
(空 白 の と こ ろ は す べ て0).そ
を 考 え る.こ
こで リャ プ ノフ 関 数 と して関 数
れ は 確 か にL(0)=0か
上 の 線 形 化 方程 式 に た い して は
つz≠0でL(z)>0で
あ る.
し か る に γ<0で
あ れ ば,ε
を 十 分 小 さ く と る こ と で
とす る こ
とが で き るか ら
が 成 り立 つ. そ れ ゆ え 固有 値 の実 部 が す べ て 負 で あれ ば,
と な り,z=0の
平 衡 解 は 漸 近 安 定 で あ る.逆 に 固 有 値 の 実 部 が 一 つ で も正 で
あれ ば,対 応 す る│zi│は 解(z=0)か さ て も との 非 線 形 の 方 程 式x=υ と,
ら離 れ て ゆ くの で,解 は 不 安 定 で あ る. に 戻 り,平 衡 解(原
点)の 近 く を考 え る
こ れ に上 と同 様 の変 換 を施 す こ とに よ り
(4.3.37) が 得 られ る.さ
らに 定 数Nを
用 い て ス ケー ル 変 換z=u/Nを
施せ ば
こ の場 合 も リャ プ ノ フ関 数 と して 関 数
を考 え る と
とな り,Nを
十 分 大 き くか つ ε を十 分 小 さ くと れ ばlの
の 実 部(α,β,γ,σ)の符 号 で決 ま る.し
符 号 は や は り固 有 値
た が っ て も との 非 線 形 系 も,固 有 値 の
実 部 が す べ て 負 な らば 漸 近 安 定 で あ り,固 有 値 の実 部 に 正 の もの が 一 つ で もあ れ ば 不安 定 で あ る.す な わ ち,固 有 値 の実 部 が0で
な い と き に は安 定 ・不 安 定
の判 別 が 線 形 近 似 で得 られ る もの と一 致 す る. し た が って,不 安 定 性 と漸 近 安 定 性 は 線 形 化 近 似 で得 られ る も の に 一 致 す る. この よ うに 力 学 行 列 の 固有 値 の 符 号 だ け か ら平 衡 解 の安 定 ・不 安 定 が 判 別 で き る こ とは,著
し い こ とで あ る.
4.3.8
ポ ア ン カ レ写 像
周 期 解 の 安 定 性 な い し 周 期 解 の 近 くの 解 の 振 る 舞 い を 調 べ る に は,ポ レ 写 像 の 方 法 が 有 効 で あ る.cを 点Pでcと
周 期Tの
交 わ る 面 Σ を 考 え る.た
直 交 す る 成 分 は0に
な ち ず,し
含 む こ と も な い と す る.こ
ア ンカ
周 期 解 の 積 分 曲 線 と し,c上
の1
だ し Σ 上 の 各 点 で ベ ク トル 場 υ の Σ に
た が っ て Σ は 解 曲 線 に 接 す る こ と も平 衡 解 を
れ を ポ ア ン カ レ 断 面(Poincare
section)と
い う
(図4.3.5a).
図4.3.5a
周 期 解 を 表 す 点 はPを Pの
図4.3.5b
ポ ア ン カ レ断 面
近 く の 点Q0を
通 過 し て 時 間T後
通 る 解cを
と 交 わ る 点 はQ0の
戻 る.そ
こで Σ 上 で
れ は 周 期 解 に 近 い か ら,再
の 点 をQ1と
せ る 写 像 π を ポ ア ン カ レ 写 像(Poincare と は か ぎ ら な い).cが
に 再 びPに
考 え る と,こ
近 く で あ ろ う.そ
2次 元 運 動 の ポ ア ン カ レ断 面
し た と き,Q0をQ1に
map)と
い う(Q0Q1間
び Σ 対応 さ
の 時 間 がT
Σ と交 わ る点 は 周 回 ご とに
(4.3.38) と 移 動 し て ゆ く.こ Q1がQ0に
の 点 列 を ポ ア ン カ レ ・ プ ロ ッ ト と い う.π
一 致 す れ ばcも
像 π に よ りQ0が
周 期 解 で あ る.解cが
が 恒 等 写 像 で,
周 期 解 で な い 場 合,こ
ど の よ う に Σ 上 を 移 動 し て ゆ く か が わ か れ ば,cの
解 が 得 ら れ な く と も,解cの
長 時 間 に わ た る 振 る 舞 い と 周 期 解cの
の写 厳 密 な
性 格 を知
る こ とが で き る. 簡 単 の た め,こ 解cに
こ で も2次
交 わ る 弧ABで
と す る(図4.3.5b).つ
元 で 考 え よ う.こ
あ り,そ
の 上 の 点 はAか
ま りAQ0=σ
の 場 合,ポ
ア ン カ レ断 面 は 周 期
らの 弧 の 長 さ σで 指 定 さ れ る
で あ る と き,値
σ で 点Q0を
表 す.こ
の
と き ポ ア ン カ レ写 像 は
(4.3.39)
で 表 さ れ る. も し も あ る σ に た い し て σ=π(σ)と 解 は 周 期 解 で あ る.そ
な れ ば,そ
し て こ の と き,こ
の σ に 対 応 す る 点Qを
通 る
の よ う な σ の 値 が 有 限 個 し か な い か,
さ もな け れ ば π(σ)が 恒 等 的 に σに 等 し い か の い ず れ か で し か な い こ と が 示 さ れ る.と
い う の も,も
限 区 間[0,
d](dは
は 無 限 個 の0点
し か り に そ の よ う な σ の 値 が 無 限 個 あ る と す れ ば,有
弧ABの
長 さ)で
定 義 され る 関数
を も つ こ と に な る.し
か し力 学 系 の解 が 初 期 条 件 に あ らわ れ る
パ ラ メ ー タ に つ い て 連 続 で 微 分 可 能 と し て い る か ら(§4.3.1),π(σ)もf(σ) =π(σ)-σ 0点
も 連 続 で 微 分 可 能 な 関 数 で あ る .そ
のf(σ)が
を も つ よ う な こ と が あ る と す れ ばf(σ)が
す な わ ち,π(σ)=σ
と な る σ が 有 限 個 で,そ
し か な く孤 立 し て い る か,さ
有 限 区間で無 限個 の
恒 等 的 に0の れ ゆ えcに
と き だ け で あ る.
近 い 周 期 解 が 有 限個
も な け れ ば π(σ)≡ σ と な り,cの
近 くの 解 は す
べ て 周 期 解 に な る か の い ず れ か で あ る. 前 者,つ
ま り孤 立 し た 周 期 解 の 場 合 を 考 え る.周
る σ を σPと す れ ば π(σP)=σPで あ る か ら,σPの い しbの をR
よ う に 表 さ れ る.い 表 せ ば,図aす
ま 弧AB上
な わ ち0<∂
期 解 を 表 すP点
に たいす
近 く で 関 数 π は 図4.3.6aな
で 点Rが
点Qよ
りA側
に あ る こ と
π/∂σ│σ=σP<1の 場 合
な ちば な らば す な わ ち,ポ つ ま りcを し て ゆ く.ま
ア ン カ レ 写 像 は 図 の 折 れ 線 で 表 さ れ,σ 通 る 軌 道 は,cの た 図bす
は σpに 接 近 し て ゆ く.
ど ち ら側 に あ っ て も周 回 ご と に 周 期 解cに
な わ ち ∂π/∂σ│σ=σp>1の 場 合
図4.3.6a
図4.3.6b
接近
な らば な らば す な わ ちcの
近 く を 通 る 軌 道 は,は
か ら 離 れ て ゆ く(π(σ)− σ=0が
期 解Pを
場 合,cは,│∂
π/∂σ│<1でcに
接 近 して ゆ
ち 離 れ て ゆ く.
も と の ベ ク ト ル 場 がn次 導 入 し,周
ど れ だ け 近 く て も 周 回 ご と にc
σ=σpで 重 根 を もつ 場 合 の 議 論 は 略).
同 様 に 考 え る と,∂ π/∂σ<0の き,│∂ π/∂σ│>1でcか
じ めcに
元 の 場 合,ポ
原 点 に と る.こ
ア ン カ レ 断 面 に 局 所 座 標
の と きQkの
座 標 を
を
と し て,ポ
ア ン カ レ 写 像(4.3.38)は
で 表 され る.こ れ は,行 列
を用 い れ ば 線 形 化 さ れ
(4.3.40) と 表 さ れ る.そ ば,Qkは が1よ
し て こ の 行 列Mの
周 期 解Pに
収 束 し,周
固 有 値 の 絶 対 値 が す べ て1よ 期 解 は 漸 近 安 定 で あ る.逆
り大 き い 固 有 値 を も て ば,周
つ ま り ポ ア ン カ レ写 像 は,周
り小 さけ れ
に,Mが
絶 対値
期 解 は 不 安 定 で あ る.
期 解 と その 安 定 性 の 問 題 を い わ ば低 次 元 空 間 の
不 動 点 と そ の 安 定 性 の 問 題 に 還 元 す る も の で あ り,周
期 解 の 考 察 に きわ め て 有
効 な 方 法 で あ る. 力 学 系 の 理 論 は 近 年 活 発 な 研 究 の な さ れ て い る 分 野 で あ り,新 ズ ム の 開 発 や カ オ ス な ど興 味 深 い 話 題 も 多 い.し
しい ア ル ゴ リ
か し 本 書 で は,正
そ の 解 の 特 徴 を 明 らか に す る の に 必 要 な 範 囲 に と ど め,こ
準方程 式 と
れ 以 上 話 を広 げ な い
こ と に す る. 例4.3.1
剛 体 の 自 由 回 転(オ
イ ラ ー の こ ま)
定 点 の ま わ りの 剛 体 の 回 転 は オ イ ラー 方 程 式(2.1.70)ま れ て い る.と
た は(2.4.33)に
支配さ
く に 外 力 の 働 い て い な い 自 由 回 転 で は,(2.4.33)でNx=Ny=Nz=0
で あ り,慣 性 主 軸 の ま わ りの慣 性 モ ー メ ン トを(A,B,C)と
して,オ
イ ラー 方 程 式 は
(4.3.41a) (4.3.41b) (4.3.41c) と 表 さ れ る.重 と い う.こ
心 を 支 点 と す る こ ま の 運 動 と 考 え て も よ く,こ
こ で(ωx,ωy,ωz)は,物
理 的 に は(2.1.68)で
れ をオ イ ラ ーの こま
表 さ れ る 角 速 度 ベ ク トル の
剛 体 固定 座 標 系 で の 成 分 で あ る.(2.1.69)は ら にU=0で
あ れ ば 角 運 動 量 が 保 存 し,と
保 存 系 ゆ え エ ネ ル ギ ー 積 分 を も ち,さ く に φ が 循 環 座 標 ゆ えpφ=∂L/∂ φ が 第1
積 分 で あ る. しか し こ こ で は(2.1.68)の の 座 標,そ
関 係 を 忘 れ,(ωx,ωy,ωz)を
た ん に3次
し て こ の 方 程 式 を そ の 空 間 の 力 学 系 と見 な す.し
元 広 義相 空間
か しそ の 場 合 も,第1
積 分 と して
(4.3.42a) (4.3.43a) の 二 つ が 得 ら れ る(こ れ らの 保 存 は 上 記 の オ イ ラ ー 方 程 式 よ り直 接 的 に 示 さ れ,も の 系 で はTは
運 動 エ ネ ル ギ ー,Mは
3次 元 空 間(ωx,ωy,ωz)内 の2次
角 運 動 量 の 大 き さ に あ た る).こ
元 曲 面(楕
円 面)で
角 運 動 量 成 分
と
の そ れ ぞれ は
あ る.
で 書 く と,こ れ らは
(4.3.42b) (4.3.43b) とな り,(Mx,My,Mz)を と球 を 表 し て い る.そ る.し
直 交 軸 とす る3次
それ ぞれ楕 円 面
して こ の 二 つ の 曲 面 の 交 線 が こ の 場 合 の 不 変 集 合 に な っ て い
か も こ の 不 変 集 合 は す で に1次
た が っ て,A>B>Cと
元 空 間(角 運 動 量 空 間)で
す れ ば,角
の そ れ ぞ れ の 場 合 に 図4.3.7abで
元 で あ る か ら,積
分 曲 線 に 一 致 して い る.し
運動 量 空間 内の軌 道 は
表 さ れ る.
図4.3.7a
も との相 空 間で考 え る と平衡 解(不 動 点)は
図4.3.7b
の 条 件 よ り,Ωx,Ωy,Ωzの
そ れ ぞ れ を定 数 と して
(4.3.44) の3点
で あ る.こ
れ ら が 解 に な る の は,そ
保 存 面 が 接 す る場 合 で あ る.こ 第1の
点Sxに
の点 で 図 の角 運 動 量保 存 面 とエ ネル ギー
れ ら の 解 の安 定 ・不 安 定 を 判 別 し よ う.
た い し て は,ωx=Ωx+x,
ωy=y,
ωz=zと
し て,x,
y, zの1次
ま
で と る線 形 近 似 を す る と
が 得 られ,力
学行 列 は
とな り,こ の 固 有 値 は
で あ る か ら,こ の 点 は 楕 円不 動 点(渦 心 点)で の 点Sz=(0,0,Ωz)も
こ の 平 衡 解 は 安 定 で あ る.同 様 に 第3
安 定 な 平 衡 解 で あ る こ とが わ か る が,い
ずれ も固有値 が 負 の実
部 を もた な い か ら漸 近 安 定 で は な い. 他 方,第2の
点Sy=(0,Ωy,0)で
で あ る か ら,Syは
は 固有 値 が
双 曲 不 動 点(鞍 点)で 不 安 定 で あ る.
こ の こ と は,(Mx,My,Mz)=(Aωx,Bωy,Cωz)を
ら ば,Sxに
対 応 す る点
動 量 保 存 面 の2つ
座 標 とす る角 運 動 量 空 間 で 見 る な
の 近 くの 運 動 は,エ
ネ ル ギー 保 存 面 と角 運
の 曲 面 の 交 線 で 表 さ れ る積 分 曲 線 が,図4.3.7aの
よ うに この点 の
近 く を 回 り,こ の 点 か ら大 き く離 れ る こ とが な い の に た い し て,Syに の 近 くの 運 動 で は,2つ
の 曲 面 の 交 線 が 図4.3.7aな
対 応 す る点 い しbの
よ うに
この 点 か ら大 き く離 れ て ゆ くこ と を 意 味 して い る. あ る い は 次 の よ うに い っ て も よ い. 不 動 点Szの
近 傍 の 運 動 は 線 形 化 近 似 で,方
に 支 配 さ れ て い る.こ (4.3.42a)に に2(A-C)xを
れ を(x,y)平
程式
面 で 考 え て み よ う.こ
れ は 点Szで
接 す る 平 面 上 に 射 影 し た 運 動 を 見 て い る こ と に 相 当 す る.こ 掛 け た も の と 第2式
に2(B-C)yを
掛 け た も の を足 せ ば
楕 円面 の 第1式
が 得 られ る.し
た が っ て 平 衡 解Szは
を リャ プ ノ フ 関 数 と して もつ か ら安 定 で あ る(平 衡 解Sxに の 場 合dL/dt=0で
つ い て も同 様).た
だ しこ
あ る か ら漸 近 安 定 で は な い.
最 後 に不安 定 な不 動 点Syを 通 る積 分 曲線,す な わ ち の 場 合 の 二 つ の 曲 面(4.3.42),
Mz=0の
でMx=0,
(4.3.43)の
点Qを
交 線 の 上 の 運 動 を 考 え よ う(図4.3.7b
通 る 白線 に そ っ た 運 動 で あ る).こ
の運 動 は
た とえば初 期値 が
の と き実 現 さ れ る.実
で,確
際 この とき
か にM2=2BTが
そ れ ゆ え,こ
満 た さ れ て い る. と お
こ で と な り,オ
く と,
イ ラ ー 方 程 式(4.3.41b)
は ただ し 初 期 条 件(t=0で
ωy=0
i.e.
ξ=0)を
考 慮 して こ れ を解 け ば
す なわ ち
こ れ よ りt→
0)に 到 達 す るの に 無 限 の 時 間 を要 す る.
点(0,
例4.3.2 例2.2.5で
す な わち,解 が不安 定 不動
〓 ∞ で ωx→0,ωz→0,
加 速 器の ビーム集 束機構 見 た,円
―
強集束
形 加 速 器 に お け る粒 子 の ベ ー タ トロ ン 振 動 を あ ら た め て考 え
る. 実 際 に は 加 速 器 で は,粒 ほ うが 重 要 で あ る.そ と くに い ま の 場 合,
子 の 運 動 状 態 の 時 間 的 変 化 よ り も,軌 道 に そ っ た 変 化 の
こ で,時
間 の か わ りに 経 路 長s=∫
υdtを パ ラ メー タ に と る.
と し て よ い か ら,φ>0に
と り
と し て,ベ
ー タ ト ロ ン 振 動 の 方 程 式(2.2.112ab)は
(4.3.45a) (4.3.45b) と表 さ れ る(ξ=ρ-R).初
期 値(z(0),z'(0),ξ(0),ξ'(0))に
た い す る解 は
(4.3.46a) (4.3.46b) (4.3.46c) (4.3.46d) さ ら に 円 形 加 速 器 で は,状
態 変 化 を軌 道 に そ っ て 連 続 的 に 見 る 必 要 は な く,1周
る ご との 状 態 変 化 が わ か れ ば よ い場 合 も 多 い.そ 変 化 す る 点 だ け 見 る と し よ う.こ の こ とは,も ρ'=ξ',φ,φ')で考 え る な らば,φ=φ0(mod カ レ写 像 を 見 て い る こ と に な る.そ
こ で 上 式 でsの 値 が Δs=2πRず
と の6次
す つ
元 状 態 空 間(z,z',ρ=R+ξ,
2π)の 面 を ポ ア ン カ レ断 面 とす る ポ ア ン
して こ の 場 合 の ポ ア ン カ レ 断 面 は,(z,z')平
面
Σzと(ξ,ξ')平 面 Σξと φ'の実 軸 の 直 積 空 間 で 表 され る. 上 式 よ り,φ の1回 は,行
転
に 対 応 す る(z,z')面
の ポ ア ン カレ写像
列
(4.3.47)
で 表 さ れ る こ とが わ か る.φ のk回
転(Δ φ=2kπ)に
対 応 す る写 像 は
(4.3.48) ((ξ,ξ')平 面 の 写 像 は,上 1点
φ'=1/Rで
表 さ れ,動
式 でn→1-nと か な い.)こ
す れ ば よ い.φ'=dφ/dsは,φ'軸 れ が(4.3.40)に
あ た る.こ
の結果 よ り
上 の
そ れ ゆ え,0
あ れ ば 点(zk,zk')は,ポ
ア ン カ レ断面
Σz上 で,楕
円
(4.3.49) の 上 を 動 い て ゆ く(図4.3.8),同
の 上 を 動 く.Σz上 が1に
様 に,点(ξk,ξk')も,Σ
の 軌 道 が 発 散 し な い こ と は,Mzの
ξ上 の 楕 円
固 有 値
の 絶対 値
等 しい こ と の 結 果 で あ る(ξ 方 向 も 同様).
図4.3.8
弱 集 束 の ポ ア ン カ レ ・プ ロ ッ ト
し た が っ て,ベ
ー タ トロ ン振 動 を用 い る こ の 集 束 の 仕 方(弱 集 束)で
ム が 動 く真 空 ダ ク トの 内半 径 は,上 (2.2.107b)よ
り
さ れ る磁 束 密 度Bの め に は,軌 1-nを
記 のa,bに
は,粒
子 ビー
よ っ て そ の 下 限 が 定 め ら れ る.他
で あ り(Bz0は
平 衡 軌 道 上 の 値),人
方
工 的 に作 り出
大 き さ に は 限 界 が あ る か ら,粒 子 の エ ネ ル ギー を大 き くす る た
道 半 径Rを
大 き く し な け れ ば な ら な い.と
大 き く とれ な い か ら,Rを
こ ろ が 弱 集 束 の 場 合,n,
大 き くす れ ば
は 大 き くな り,そ の た め エ ネ ル ギ ー を 上 げ る と真 空 ダ ク ト を太 く し な け れ ば な らず, し た が っ て 巨大 な電 磁 石 が 必 要 に な る. こ の 欠 陥 を取 り除 い た の が,強 n,1-nを
集 束(strong
大 き く と れ な い の は,nを
向 が 発 散 し,他 方,1-nを
focus)で
あ る.
大 き な 正 の 値 に す る と1-nが
大 きな 正 の 値 に す る とnが
負 に な りz方
負 に な り ρ方 向 が 発 散 す るか
ら で あ る.し 様 に,集
か し凸 レ ン ズ と 凹 レ ン ズ を並 べ る こ と で 光 線 を集 束 させ られ る の と 同
束 の 磁 場 の 領 域 と発 散 の 磁 場 の 領 域 を 交 互 に く ぐ らせ る こ と で粒 子 ビー ム
を集 束 させ る こ とが で き る.こ
れ が 強 集 束 で あ る.そ
の た め,こ
の集 束 方 式 に よる
シ ン ク ロ トロ ン を,交 代 勾 配 シ ン ク ロ トロ ン(Alternating
Gradient
―
べ て こ の 集 束 方 式 を採
略 してAGS)と
い う.現 在 の 大 型 シ ン ク ロ トロ ン は,す
Synchrotron
用 して い る. 具 体 的 に は,n1,n2を なn=n1>0の ク タ ー)を
磁 石(Dセ
大 き な 正 の 値(数
ク タ ー)と,図4.3.9bの
交 互 に 並 べ る.Dセ
セ ク ター で は,逆
にz方
百 ∼ 数 千 程 度)と
し て,図4.3.9aの
よ う なn=-n2<0の
ク タ ー で は,z方
よ う
磁 石(Fセ
向 に 集 束 し,ρ 方 向 に 発 散 す る.F
向 に 発 散 し,ρ 方 向 に 集 束 す る.D
(defocus)とF
(focus)
は ρ方 向 の 運 動 の 発 散 と集 束 を表 して い る.
図4.3.9a
図4.3.9b
そ れ ぞ れ の セ ク ター の 区 間 の 長 さ を ⊿Sと す る.(z0,z0')の し た粒 子 が(z,z')の
値 で 出 て ゆ く と して,こ
れ をDセ
値 でDセ
ク ター に 入 射
ク ター に よ る写 像
(4.3.50)
で 表 す(た だ し
).同
様 にFセ
ク タ ー で は,
と して
(4.3.51)
し た が っ て,1つ
のDセ
ク ター と1つ のFセ
ク ター の 組(こ
れ を セ ル と い う)に よ
る写 像 は
(4.3.52) こ れ が(4.3.40)に
あ た る.た
だ し(coshφ
をchφ,sinhφ
をshφ
と 記 し て)
(4.3.53) 粒 子 が セ ル(FDの
組)を い くつ も通 り抜 け て ゆ く と き の 変 化 は,数
行 列 に よ る 変 換 を繰 り返 し行 う こ と で 表 さ れ る.そ を次 の よ う に し て 調 べ よ う.な お,こ う に動 くか を考 え ず,1つ
の こ と は,も
との
と に 複 数 個 の ポ ア ン カ レ 断 面 を考 え た こ と に あ た
り,そ の あ い だ の ポ ア ン カ レ写 像 が,行 M=M-M+を
の 場 合 も,粒 子 が 各 セ ク ター の 内 部 で ど の よ
の セ ル ご との 写 像 だ け を問 題 と した.そ
配 位 空 間 の 中 で ⊿φ=2⊿S/2πRご
学 的 には この
の ときの粒 子 ビー ムの 集 束発 散
列Mに
よ っ て 表 さ れ て い る の で あ る.
対 角 化 す る相 似 変 換
を考 え る.
ゆ え λ1λ2=1で あ り,θ を 複 素
数 と して
とお く こ とが で き る.こ
れ を用 い れ ば,k個
の セ ルに よ る
写像 は
し た が っ て,k→ い)た め に は,θ
∞ で│zk│,│zk'│が 有 限 に な る(す な わ ちz方 が 実 数,す
なわ ち
向 に ビー ム が 発 散 しな
(4.3.54) で な け れ ば な らな い.こ
れ は,行
列Mの
固 有 値 の 絶 対 値 が1と
い う こ と を 表 して い
る. とす れ ば,こ
のz方
向 の 議 論 を そ の ま ま ρ方 向 に 置
きか え る こ とが で き る.し た が っ て,ρ 方 向 に ビ ー ム が 発 散 し な い た め の 条 件 は, として
(4.3.55) こ の2式
で表 さ れ る集 束 領 域 は,図4.3.10の
影 の 部 分 で 表 され る.図 は,そ
か ら,ネ
ク タ イ ・ダ イ ヤ グ ラ ム と称 され て い る.
図4.3.10
さ て,上
で あ る.そ
記 の 集 束 条 件 が 満 た され て い る とす る.上
の 形状
強集束の 集束領域
のcosθ の 表 式 よ り
こで
(4.3.56) と お く.こ
同様 に
れ よ り
(4.3.57) (4.3.58) とお く,す な わ ち
(4.3.59) こ の と き,detM=1ゆ
え
(4.3.60) そ こ で,行 列
(4.3.61) を 定 義 す る と,I2=I,J2=-Iで
あ り
(4.3.62) と表 さ れ,こ
れ を用 いれ ば
(4.3.63) が 示 さ れ る.す
な わ ち,k個
の セ ル に よ る写 像 は
図4.3.11
強 集 束 の ポ ア ン カ レ ・プ ロ ッ ト
(4.3.64) し た が っ て,点(zk,zk')は,ポ
ア ンカ レ断面上 で楕 円
(4.3.65) 上 を動 く.こ の こ と は 直 接 の 数 値 計 算 で確 か め ら れ る(図4.3.11).そ は,Rが
大 き くて もn1,n2の
して こ の 場 合
値 を十 分 大 き く と る こ と に よ り
(4.3.66) が 大 き くな ら な い よ うに す る こ と は,可 能 で あ る.
4.4 正 準
力 学 系
4.4.1 正 準 方程 式 の 線 形 化 正 準 力 学 系 は,相
空 間 が シ ン プ レ クテ ィ ッ ク 多様 体(狭 義 の 相 空 間)で ベ ク
トル 場 がハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル 場 の 場 合 の 力 学 系 を い う.方 程 式 は
(4.4.1) あ る い は 成 分 で表 して
(4.4.2) の 形 を して い る.以 下 で は ハ ミル トニ ア ンHはtを とす る.こ の 場 合,不
陽 に 含 ま な い(自 律 系)
動 点(平 衡 解)は
(4.4.3) よ り決 定 され る.前 節 と同様 に この 不 動 点 を原 点 に とれ ば,そ
の近 傍 でハ ミル
トニ ア ンは
(4.4.4) と表 され るか ら,不 動 点 の ま わ りの線 形 化 方 程 式 は
(4.4.5) また は ベ ク トル 表 記 で
(4.4.6)
こ こにzは
縦 ベ ク トル で,行 列
(4.4.7) はハ ミル トニ ア ン のヘ ス行 列 の 不 動 点 で の 値 で あ る. こ の ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル 場 の特 性 と,前 節 の 力 学 行 列 の 固 有 値 に も と づ く議 論 だ け か ら,正 準 力 学 系 の 振 る舞 い につ い て,い に 導 き出 さ れ る.た だ し,前 節 同 様,こ
くつ か の事 実 が た だ ち
こで も議 論 は 自律 系 に 限 る.
4.4.2 正 準 力 学 系 の構 造 安 定 性 上 の よ うに正 準 力 学 系 で は,力 学 行 列 は
(4.4.8) の 形 を と る.そ
こ で
(§4.2.1)を
考 慮す る と
(4.4.9) の 関 係 が得 られ る.し た が って そ の 特 性 方 程 式 は
と な り,こ れ よ り λがKの
固有 値 な らば 必 ず-λ
も 固有 値 で あ る こ とが わ か
る.ま た,力 学 行 列 は実 行 列 で あ る か ら,複 素 数 σ+iω が 固 有 値 な ら σ-iω も固有 値 で あ る.さ
らに シ ンプ レ クテ ィ ッ ク多様 体 が 偶 数 次 元 で あ る こ と を考
慮 す る な らば,正 準 力 学 系 の 力 学 行 列 の と り う る固 有値 は (i) 偶 数 個 の 0, (ii) 実 数 固有 値 の 対 ± α, (iii) 純 虚 数 固 有 値 の 対 ±iω, (iv) 複 素 固有 値 の4つ の 組 ±σ±iω の 組 み合 わせ に 限 られ る. した が っ て,固 有 値 の す べ て の 実 数 部 分 が 負 に な る こ と は あ りえ な い こ とに な り,正 準 力 学 系 は 漸 近安 定 な平 衡 解 を もつ こ とは で き な い. ま た と くに 自由 度1(2次
元)の 場 合,固
有 値 は は じめ の3通
りの い ず れ か
で しか あ りえ な い か ら,渦 状 点 を もつ こ とは で きず,固 有 値0の
場 合 を除 け ば
不 動 点(平
衡 解)は
渦 心 点(楕
円 不 動 点)か
鞍 点(双
曲 不 動 点)の
い ずれ か に
か ぎ ら れ る. さ ら に,ハ
ミル トニ ア ン が わ ず か に 変 化 し た(小
を 考 え る.不
さ な 摂 動 が 加 わ っ た)場
動 点 の 位 置 も 固 有 値 も わ ず か に 変 化 す る で あ ろ う.し
± α,±iω の そ れ ぞ れ の 組 は,2重 面 上 で そ れ ぞ れ 実 軸,虚
固 有 値 で な い(縮
退 が な い)か
軸 か ら 離 れ る こ と は な い.と
離 れ て 複 素 数 に な っ た とす れ ば 上 の(iv)よ が な け れ ば そ れ は 不 可 能 だ か ら で あ る.し
り4個
の よ う に,力
素 平
し も軸 か ら
の 値 が 必 要 で あ る が,縮
退
た が っ て 縮 退 が な い か ぎ り渦 心 点 ・ れ ぞれ の 特 性 は 変 化 しな
学 系 を す こ し 変 化 させ た と き に そ の 性 格 が 変 わ ら な い,つ
ま り不 動 点 の 固 有 値 の 構 造 が 同 一 で,し き,そ
か し固 有 値
ぎ り,複
い う の も,も
鞍 点 は 摂 動 に よ っ て そ の 位 置 が 移 動 し た と し て も,そ い.こ
合
た が っ て不 動 点 の 特 性 が 変 わ ら な い と
の 力 学 系 は 構 造 安 定(structually
stable)で
あ る と い う.そ
の意味 で多
く の 正 準 力 学 系 は 構 造 安 定 で あ る. ま た,一
般 の 力 学 系 で は,た
系 で は,摂
動 が 小 さ い 範 囲 で 周 期 解 は 周 期 解 に 変 わ る.実
合,周
い が い の 摂 動 は 周 期 解 を 破 壊 す る が,正
期 解 は 相 空 間 上 の 閉 曲 線H(q,p)=Eで
ポ テ ン シ ャ ル λV(q, p)が
表 さ れ る が,そ
加 わ っ て も,
範 囲 で は や は り閉 曲 線 で あ る(例9.1.1参
準力学
由 度1の
場
の 場 合 は,摂
動
は,λ
が小 さい
照).
摂 動 に た い す る 解 の こ の よ う な 安 定 性 は,正
4.4.3
際,自
準 力 学 系 の 大 き な 特 徴 で あ る.
相 流 に と も な う体 積 変 化
一 般 の 力 学 系x=υ(x)を x(t;x(0))と
す る.x(0)を
の 全 体{φt│t∈R}が
考 え,初 こ のxに
期 条 件 をt=0でx=x(0)と 対 応 さ せ る 写 像
相 流 な い し フ ロ ー で あ っ た.と
れ を ハ ミル ト ニ ア ン ・フ ロ ー と い う.対 ハ ミル トニ ア ンHに
くに 正 準 力 学 系 の 場 合,こ
応 す るハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル 場 が
よ っ て 生 成 さ れ る と き,こ
れ る ハ ミ ル トニ ア ン ・フ ロ ー,ま
す る解 を
の フ ロ ー をHに
よ って 生 成 さ
た はHを
生 成 関 数 と す る ハ ミル トニ ア ン ・フ
れ)」 と い う 言 葉 使 い は,相
空 間上 の あ る体 積 中 に あ る点 の 集 合
ロ ー と いう. 「フ ロ ー(流
を 考 え た と き,そ
れが系の
「運 動 」 に と も な っ て 流 体 の よ う に 全 体 と し て あ る
方 向 に 流 れ て ゆ くこ と を示 唆 し て い る.実 際,力
学 系 にお いて系 の状 態変 化
は,相 空 間上 の 積 分 曲 線 に そ っ た点 の移 動 で表 さ れ,し か も微 分 方 程 式 の解 の 一 意 性 に よ り,こ の 曲 線 は 枝 分 か れ し た り交 差 した りす る こ と は な い.そ れ ゆ え系 の 状 態変 化 を,そ の 位 置 が 系 の状 態 を表 す 仮 想 的 「粒 子 」 の 運 動 の よ うに 見 なす こ とが で き,そ れ らの 「粒 子 」 の 集 合 を あ た か も相 空 間 上 を流 れ て ゆ く 流 体 の よ うに イ メー ジす る こ とが で き る.た の 状 態 変 化 は,6N次
元 の 相 空 間 内 の1個
とえ ばN個
の 点 の 運 動,つ
の 分 子 か らな る気 体 ま り1個 の 「 粒 子」
の 運 動 で表 され る.統 計 力 学 で は,こ の 「粒 子 」 を無 数 に集 め た もの(ア ン サ ンブ ル)を 統 計 母 集 団 と して考 察 す るが,そ れ は ま さ し く相 空 間 内 を流 体 の よ うに 流 れ て ゆ くの で あ る. そ こ で相 空 間 の あ る領 域 を考 え て,そ の 領 域 の体 積 が こ の 流 れ に と もな っ て どの よ うに変 化 す る か を考 え よ う. 相 空 間 の あ る有 限 の 領 域Dが,時 Dの 内 部 の座 標 が
間 τの 後 に 領 域 φτ(D)に 移 っ た とす る. で 表 され,ま
た そ の体 積 が
(4.4.10) で 与 え ら れ る と す る.x=φ
τ(x)と す れ ば 時 間 τ後 に はDは
そ の 体 積 は,
φτ(D)に 移 り,
と して
と表 され る.し か る に も との 微 分 方 程 式 よ り,τ が 十 分 小 さけ れ ば
で あ るか ら
こ こ に
(iに つ い て 和 を と る)は
る. し た が っ て,領
域Dの
体 積 の変 化 率 は
ベ ク ト ルυ(x)の
発散 で あ
(4.4.11) で 与 え ら れ る.こ
れ を リ ュ ウ ヴ ィ ル の 公 式 と い う.
次 の よ う に 考 え て も よ い. 領 域D0内 体 積 は,時
の 点 間t後
を 初 期 値 とす る 解 をx=φtα
と す る.D0の
に
(4.4.12) に 移 る.こ
こに
(4.4.13) は,変 換
の ヤ コ ビ行 列 式 を表 す.行
列式の微分 の公式 よ り
(4.4.14)
(4.4.15) と な り,あ
ら た め て リュ ウ ヴ ィ ル の 公 式 が 得 ら れ る.
な お(4.4.14)は,変
換
に た い す る ヤ コ ビ 行 列 式(4.4.13)が
(4.4.16) で 与 え ら れ る こ と を 示 して い る.た
だ し
を 使 っ た.
4.4.4
リュ ウ ヴ ィル の 定 理
と く に ハ ミル トニ ア ン ・フ ロ ー で は,Ω'=(Ω
μν)の反 対 称 性 に 注 意 す れ ば
(4.4.17) し た が っ て 正 準 力 学 系 で は
と な り,相 空 間 の
領 域 は一 般 に は 時 間 と と もに そ の形 や 位 置 を変 え て ゆ くが,し か し そ の体 積 は 一 定 に保 た れ る.こ れ を リュ ウ ヴ ィル の 定 理(Liouville's theorem)と い う. こ の こ と よ り正 準 力 学 系 で は,第1に
湧 点 や 沈 点 が 存 在 しな い こ とが わ か
る.と い うの も湧 点 や 沈 点 で はdiv υ が 正 か 負 の い ず れ か で な け れ ば な ら な い か らで あ る.そ の た め不 動 点 と して は,す 安 定 な鞍 点 しか 存 在 しな い.第2に,漸
で に述 べ た よ うに安 定 な渦 心 点 か不
近 安 定 な 軌 道 も存 在 しな い.と い うの
も,も し も その よ うな軌 道 が 存 在 し た とす れ ば,あ がt→+∞
る時 刻 の そ の上 の 点 の近 傍
で そ の軌 道 上 の 点に 収 束 す る こ とに な るが,そ
す るか ら で あ る.し た が って また,2次
元(1自
れ は こ の定 理 に 反
由 度)の 正 準 力 学 系 は リ ミッ
ト ・サ イ クル す な わ ち孤 立 周 期 解 を もつ こ とが で きず,周 期 解 が 一 つ あ る とそ の 近 くの解 はす べ て 周期 解 で あ る.結 局,正 い.こ の よ うに 正 準 力 学 系 は,性
準 力 学 系 は ア トラ ク ター を もた な
質 が きわ め て 「良 い」,裏 返 せ ば 変 化 の 乏 し
い力 学 系 な の で あ る. 正 準 力 学 系 に た い す る リュ ウ ヴ ィ ル の 定 理 を 次 の よ うに 考 え る こ とが で き る.相 空 間 の あ る領 域Dの
内 部 に あ る 各 点 を初 期 値 と し て 運 動 す る 「 粒 子」
の 集 合 を考 え る.時 間 と と もに この 集 合 は雲 が 空 気 の 流 れ と と も に流 さ れ て ゆ く よ うに 一 斉 に動 い て ゆ く.そ の さ い そ の雲 の 形 は変 わ るか も しれ な い が,体 積 は変 わ ら な い とい うの が リュ ウ ヴ ィル の 定 理 で あ る. と こ ろ で そ の 過 程 で 「粒 子 」 の 軌 道 は枝 分 か れ や 交 差 す る こ とは な い か ら, 領 域 の境 界 面 上 の 「粒 子 」 はつ ね に 境 界 面 上 に あ り,そ の境 界 面 を越 え て 出 入 りす る粒 子 は な い.ま
た湧 点 や 沈 点 が 存 在 しな い と い うこ とは,こ
の 「粒 子 」
が 不 生 ・不 滅 とい う こ とで あ る.そ れ ゆ え そ の 領 域 内 に 存在 す る 「粒 子 」 の 数 も一 定 で あ り,し た が って 相 空 間 の 点 の密 度 は 一 定 で あ る. 直 接 的 な証 明 は 次 の よ うにす れ ば よ い. この 「 粒 子 」 の 密 度 を ρ,相 空 間 の 内 部 で の その 速 度 をυ とす れ ば,粒 子 が 不 生 ・不 滅 で あ る とい う こ とは,連 続 の 方程 式
で 表 さ れ る.と
くに ハ ミル トニ ア ン ・フ ロ ー で はdivυ=0で
あ る か ら,こ
の式 は
(4.4.18) と書 き 直 さ れ る が,こ が0で
れ に そ っ て 測 っ た流 体 の 密 度 変 化
あ る こ と を 表 し て い る*1.
な お,リ が,し
れ は 流 体 力 学 で は,流
ュ ウヴ ィル の 定 理 が 成 り立 つ こ とは正 準 力 学 系 の 著 しい特 徴 で あ る
か し リ ュ ウ ヴ ィ ル の 定 理 が 成 り立 つ か ら と い っ て 必 ず し も正 準 力 学 系 と
は 限 ら な い.た 0で あ る が,奇
と え ば(4.3.41)の
オ イ ラ ー 方 程 式 で 表 さ れ る 系 もdivυ=
数 次 元 で あ る か ら 正 準 力 学 系 で は な い.
4.4.5 ポ ア ンカ レの 再 帰 定 理 自律 正 準 系 は 保 存 系 で あ り,ハ
ミル トニ ア ン が 第1積 分 で あ る.直 接 的 に は
(4.4.19) と して 証 明 され る.し た が っ て 運 動 は相 空 間 上 のH=E(const.)の
超 曲面 に
限 られ る.つ ま りこ の超 曲 面 上 に初 期 条 件 を もつ 解 は そ の 曲 面 の 外 に 出 る こ と は な い.こ
の 超 曲面((2n-1)次
元 多様 体)を 等 エ ネ ル ギー 面 と呼 ぼ う.一 般
に 相 空 間 内 の 点 の 集 合Sで,そ
の 中 の 点 を初 期 値 とす るの が 決 し てSの
出 る こ とが な い と き,Sを
不 変 集 合 とい う(§4.3.2参
の 等 エ ネ ル ギー 面S(E)は
一 つ の 不 変 集 合 で あ る し,H=EとH=E+ΔEの
2枚 の 等 エ ネ ル ギー 面 で 囲 ま れ た 空 間S(E;ΔE)も そ こ で 等 エ ネ ル ギー 面S(E)上
はS(E)に
不 変 集 合 で あ る. 元 の 体 積 要 素)を
あ い だ の 距 離 をdρ と す れ ば, 垂 直 で あ るか ら,
=│∇H│dρ で あ り,そ れ ゆ えH=EとH=E+ΔEに の体 積 は
*1 リュ ウ ヴ ィ ル の 定 理 に つ い て は
照).保 存 系 で はH=E
の 面 積 要 素((2n-1)次
dσ,ま た こ のS(E)とS(E+ΔE)の
外に
,§5.5.4で
再 論 す る.
と してdH 囲 まれ た 空 間S(E;ΔE)
で 表 さ れ る.こ い.し
の 体 積 は,時
た が っ て,曲
間 をtだ
面S(E)の
け 進 ま せ る 変 換 φtに た い し て 変 化 し な
領 域Aの
「面 積 」((2n-1)次
元 体 積)
(4.4.20) も変化せ ず
(4.4.21) が 成 り立 つ.こ
れ は 等 エ ネ ル ギ ー 面 上 で の リュ ウ ヴ ィ ル の 定 理 で あ る.
こ の こ と よ り,ハ
ミル トニ ア ン ・フ ロ ー に つ い て 興 味 深 い 定 理 が 導 か れ る.
等 エ ネ ル ギ ー 面S(E)が 上 の 任 意 の 点P0の て,変
有 界(μ[S(E)]<∞)で
任 意 の 近 傍 と し て 閉 集 合U0を
換 φ=φ τを 繰 り返 し て 得 ら れ るU0の
を 考 え る と,リ
と り,τ
有 界 で あ る か ら,そ
あ るm(≧l)に
を任 意 の 正 数 と し
像
れ ら は や が て 重 な りあ う.す
た い し て,k1=m-lと
ぎ に こ の 共 通 部 分U1に
なわ ちあ る
して
空集合 と な る.つ
こで こ の 曲 面
ュ ウ ヴ ィ ル の 定 理 よ り こ れ ら は す べ て 同 一 の 「面 積 」 を も つ.
し か る にS(E)は l(≧0)と
あ る と し よ う.そ
空集合
た い して 同一 の 議 論 をす れ ば
空集合 と な るU2が
存 在 す る.こ の よ うに して 得 られ る閉 集 合 の列
を考 え る と,こ の 集 合 をU∞ にU∞
の 閉 集 合 列 の 全 体 に 含 ま れ る 点 が 必 ず 存 在 す る.そ と す れ ば,U∞
に 戻 っ て く る.す
内 の 点 を 初 期 値 と す る 解 は
な わ ちP0の
傍 に 戻 っ て く る 点 が 必 ず 存 在 す る.こ recurrence 例4.4.1 半 径aの
theorem)と
の よ うな点 ご と
どの よ う な近 傍 に も解 が 繰 り返 しそ の 近 れ を ポ ア ン カ レ の 再 帰 定 理(Poincare's
い う.
ハ ミル トニ ア ン ・フ ロ ー と くま で 型 分 岐 の 一 例 細 くて な め らか な リ ン グ に 質 量mの
小 さ な ビ ー ズ を 通 し,リ ン グ の 中 心
を 通 る鉛 直 軸 の ま わ りに 一 定 角 速 度 ω で 回 転 させ る(図4.4.1).ビ の 角 θ で 表 す と,ラ
グラ ンジア ンは
ー ズの位 置 を図
図4.4.1
こ れ よ り
と し て,ハ
ミ ル トニ ア ン は
また正 準方 程 式 は
こ の ハ ミル トニ ア ン はtを で 決 ま る 経 路c上
陽 に含 ま ぬ ゆ え,系
を 動 き,こ
のcが
は,相
空 間(θ,p)上
でH=E(const.)
正 準 方 程 式 の 積 分 曲 線 を与 え る.な
お,Eは,
実 効 ポテ ンシャ ル
の も と で の エ ネ ル ギー と見 て よい.右 こ の フ ロ ー の 様 子 は ω と
辺 第1項
は 遠 心 力 ポ テ ン シ ャ ル を表 す.
の 大 小 関 係 で 異 な る.そ
れ ぞれ の 場合 につ い
て 見 て ゆ こ う:
の場合 運 動 範 囲 は
よ り決 ま り,そ の た め に はE≧Umin=0.
不 動 点 は
お よ び
の み(θ
と θ+2π は 物 理 的 に は 同 じ位 置 ゆ え(+π,0)と(-π,0)は
同 一 の 点).対
応す る力学
行列 は
(-はO点,+はP点) こ れ よ り 点),Pは
ゆ え,Oは
不 安 定 な 鞍 点(双
近 くで は│θ│≪1と
曲 不 動 点)に
な る.実
際,相
安 定 な 渦 心 点(楕
円不動
空 間 上 の 経 路 曲 線 は,Oの
して (楕 円)
他 方,P点
の 近 くで は
と して
(双曲線) と な る.こ
の こ とは,実
効 ポ テ ン シ ャ ル が θ=0で
極 小,θ=±
πで 極 大 に な る こ と
に 対 応 して い る. 平 衡 解(不
動 点)以 外 の 解 はEの
値 に よ り次 の よ うに 分 類 さ れ る.
(1-ⅰ) 0<E<2mga,す
な わち
リ ン グ の 最 下 点(θ=0)と
最 高 点(θ=π)の
間 でE-U(θ)=0と
り,ビ ー ズ は│θ│≦ θ0の範 囲 で 往 復 運 動 を繰 り返 す.そ を と り,経 路 はp=0を 動(oscillation)と
横 切 る 閉 曲 線 に な る(図4.4.2のc0,c1).こ
い う.天 体 力 学 で は,こ
な る 点 θ=θ0が あ
れ ゆ えp=ma2θ
れ を秤 動(libration)と
は正 負 の値
の 周期 運 動 を振 い う こ と も あ る.
図4.4.2
(1-ⅱ)
E=2mga;
経 路 は
とい う2本
れ ら はP点(±
π,0)で 交 差 し,交 点Pを
うに 見 え る.し
か し実 際 に は,Pは
の 時 間 を要 す る.事 実,c2上
通 過 後,運
不 動 点 で,c2,
で は,θ=π
の 近 く
の 曲 線c2, c2'で 表 さ れ,こ
動 は一 意 的 に決 ま らな くな るよ c2'上 か らPに
到 達 す るの に 無 限 で
し た が っ て,こ
の 曲 線 のp>0の
部 分c2とp<0の
部 分c2'とP点
解 と見 るの が 自然 で あ る.曲 線c2, c2'を 分 離 枝(separatrix)と
は,異
な る3個
の
い う.こ の 曲 線 を 境
に 解 の 性 質 が 変 わ るか ら で あ る. (1-ⅲ)
E>2mga,す
こ の 場 合 はp=0に
な わ ちE>Umax;
は な り得 ず,つ
は θ は 増 加 し続 け(図c3),後
ね にp>0か
つ ね にp<0の
化 す れ ば 系 は 物 理 的 に 同 一 の 状 態 に 戻 っ て い る か ら,こ 転(rotation)と
い ず れ か で,前
者 で は θ は 減 少 し 続 け る(図c3').し
者で
か し θが2π 変
れ も周 期 運 動 で,こ
れ を回
い う.
の場 合 こ の 場 合,不 O, Pは
動 点O,
Pで
の 力 学 行 列 に た い し て
と も に 不 安 定 な鞍 点 で あ る.さ
ゆ え,
らに 正 準 方 程 式 よ り,
Q±=(± θ0,0)も 不 動 点 で あ る こ と が わ か る.こ れ はE=Uminの
と し て, 場 合 で,対
応 す る力
学行列 は
で あ り, テ ン シ ャ ル が
ゆ えQ± は 安 定 な 渦 心 点 に な る.こ の こ と は,実 効 ポ で極 大,θ=±
図4.4.3
θ0で極 小 に な る こ と に対 応 して い る.
こ の 場 合 の と り う る エ ネ ル ギー 範 囲 はE≧Uminで で 表 さ れ る.平 表 さ れ,こ
衡 解 以 外 の 経 路 曲 線H=Eは,
字 型 の 曲 線 に な る が,こ
れ も2本
の解 を表 す と考 え られ る.
曲 線c1で,こ で は,経
れ はOを
路 はc3で,回
ロー の 様 子 は 図4.4.3
で はQ± を囲 む 閉 曲 線 で
れ は θ=± θ0の ま わ りの 振 動 に 対 応 す る.E=0で
通 りQ± を 囲 む8の の3つ
あ り,フ
は,H=E=0はOを
の 分 離 枝cs+,
で は,経
cs-と 不 動 点O
路H=EはO,Q±
を囲 む閉
中 心 と し θ=θ0を 含 む 範 囲 の 振 動 で あ る. 転 を 表 す.E=2mgaで
は 経 路 は 分 離 技c2に
な る.c1,
c2, c3
の 運 動 の 様 子 は ω<ω0の 場 合 とほ ぼ 一 致 す る.
図4.4.4
こ の 問 題 で は,θ=0,
ω=ω0で 分 岐 が 生 じ て い る.(θ,ω)空
格 を 図 示 す る と,図4.4.4の な鞍 点 を表 す.こ
よ う に な る.図
くま で型 分 岐
間 で不 動 点 と その性
で 実 線 は 安 定 な 渦 心 点,点
の よ うな 分 岐 を く ま で 型 分 岐(pitchfork
bifurcation)と
線 は不 安定 い う.
5 正
準
変
換
5.1 相 空 間 上 の ハ ミル トン の 原 理
5.1.1 ハ ミル トンの 原 理 の相 空 間 への 持 ち 上 げ ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は 配 位 空 間 の 座 標 変 換(点 変 換)で 形 を変 え な い(共 変 的 で あ る).し た が っ て ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 か ら得 ら れ る正 準 方 程 式 も,点 変 換 よ り 自然 に 導 か れ る相 空 間 上 の座 標 変 換 に た い して 形 を変 え な い と考 え られ るが,じ
つ は正 準 方 程 式 は,よ
り広 い座 標 変 換(正 準 変 換)に た い して も形 を
変 えな い の で あ る.そ の こ と を論 ず るた め の 準 備 と して,本 節 で は ハ ミル トン の原 理 を相 空 間 上 に持 ち上 げ る. は じめ に 変 分 計 算 を 正 準 変 数 で表 す ため に,§3.1で
局 所 座 標 系 を用 いず に
行 っ た 配 位 空 間 上 の 変 分 計 算 を,座 標 系 を使 っ てや り直 す. 配 位 空 間 の 経 路cL(t)の
局 所 座 標 表 示 を
と し,cLに
そ っ た作
用積分
(5.1.1) と,こ れ に た い し て経 路 をcL+⊿cLに 差 を考 え る.経 路cL+⊿cLで 成 分 は
無 限 小 だ け ず ら し て 得 られ る積 分 との
は 通 過 時 刻 は
に 変 化 し,座 標
に 変 化 して い る とす る.こ こ に
(5.1.2) は 全 変 分,他 辺 第2項
方,
は,本
な の で,
は 同 時 刻 の 変 分(δ-変 分)で
来qi(t)⊿tと
あ る(右
書 か れ る も の で あ る が,
を2次 の 微 小 量 と して 無 視 す る 範 囲 で,上
の よ うに 書 い て
も よ い).こ
の 表 し方 で
した が って,経 路 の変 分 に よ る作 用 積 分 の変 分 は
(5.1.3) この 第1項
は 通 過 時 間 の 変 化 に よ る変 分,第2項
は 同 時 刻 の 変 分 で あ る.こ 度dq(t)/dtで
こ で はqはqと
す なわち
独 立 で は な く,CL上
あ る か ら,
を 動 く点 の 速
と し て よ く,部
分積 分 に
よ り
と 書 き 直 さ れ る.し
た が っ て(5.1.2)を
用 い れ ば(5.1.3)は
(5.1.4) と表 され る.こ れ は 以 前 に 導 い た変 分 法 の 基 本 公 式(3.1.32b)で 以上 を一 般 化 運 動 量 とハ ミル トニ ア ン を使 っ て表 す.ラ 直 せ ば
あ る.
グ ラ ン ジ ア ン を書 き
で あ るか ら,作 用積 分 は
(5.1.5) と表 さ れ る.た
だ し こ こ で はpL={pLi}は
独立 な量で はな く
(5.1.6) で 定 義 さ れ る(q,
q)の
関 数 で,そ
の こ と を 強 調 す る た め に 添 字Lを
しか し さ し あ た っ て こ のpLをqと の 被 積 分 関 数 の 右 辺 を 相 空 間 の 経 路cに
独 立 な 正 準 運 動 量pと を
そ っ た 積 分I[c]と
し て 扱 い,(5.1.5)
の 関 数,そ 見 な し て,そ
つ け た.
し て(5
.1.5)
の変 分 を考 え て み
よ う.こ
の 変 分 も,上
で 行 っ た の と ま っ た く同様 に
とな り,こ こ で も
を用 い て部 分 積 分 を行 う と
(5.1.7) が 導 か れ る.こ れ は 相 空 間 に 持 ち上 げ られ た 変 分 法 の 基 本 公 式 で あ る. こ こ で単 純 に 両 端 で ⊿q=0,
⊿t=0と
した 変 分 原 理 を要 請 す る な らば
(5.1.8) で あ るか ら,被 積 分 関 数 の そ れ ぞれ の()が0と
が 一 挙 に 得 ら れ る.逆 り,作
に(q,p)が
す れ ば 確 か に正 準 方 程 式
正 準 方 程 式 を 満 た し て い れ ば,⊿I=0と
な
用 積 分 は 停 留 値 を と る.
と は い え,も
と の ハ ミル ト ン の 原 理 は 配 位 空 間 の 曲 線CLに
の 変 分 に た い し て 述 べ ら れ た も の で あ っ た.し し て も,そ
の 場 合 の 運 動 量 は 一 般 化 運 動 量(5.1.6)で
用 積 分(5.1.5)は で はCHで
配 位 空 間 の 経 路CLを
表 す)に
そ っ た 積 分 で あ り,そ
そ った 作 用 積 分
た が って それ を運 動 量 で書 き直 あ る.い
いか えれ ば作
相 空 間 に 持 ち 上 げ た 経 路(こ
れ を以下
の上の点 は
(5.1.9) で 表 さ れ る.そ か ら,(5.1.8)の
の た め
は{δqi}に
被 積 分 関 数 の そ れ ぞ れ の()の
従 属 して い る量 で あ る
中 を 単 純 に0と
す るこ とは
で き な い. し か しCLを
相 空 間 に 持 ち 上 げ て 得 ら れ る 経 路CH上
で は,
に た い して
(5.1.10) で あ り,し
か もpLは(5.1.6)を
満 た す か ら,こ
れ よ り
(5.1.11a) し た が っ て(5.1.7)のI[c]の 積 分 関 数 の 前 半 部 分 は0に
経 路cをcHに な り,ハ
特 定 す る な ら ば,(5.1.8)の
被
ミル ト ン の 原 理 は 単 純 に
(5.1.12) と な る.そ
し て こ の 式 で は す べ て の δqiが 独 立 で あ る か ら,こ
こか ら方程 式
(5.1.11b) が 得 ら れ る.こ
の 導 き 方 で は,(5.1.11a)は
こ と の 結 果 で あ り,変
5.1.2
ば,結
分 原 理 か ら 得 ら れ た 方 程 式 は(5.1.11b)だ
限 定 した
け で あ る.
ル ジ ャ ン ドル 変 換
し か し,そ pをqと
相 空 間 上 の 経 路 をCHに
う い う面 倒 な 考 慮 抜 き に,は
じ め か らcを
は 独 立 な 正 準 運 動 量 と 見 な し て2n個 果 的 に は(5.1.8)式
相 空 間 の 一 般 の 経 路,
の{δpi}と{δqi}を
か ら 正 準 方 程 式 の2n個
独 立 に扱 え
の 組 が 同 時 に 導 き 出 され
る. こ の よ う に も と も と は 配 位 空 間 上 で 定 め ら れ た ハ ミル トン の 原 理 が,(q,
p)
を 独 立 扱 い す る 相 空 間 に 移 っ て も そ の ま ま 成 り立 つ こ と の よ り 一 般 的 な 理 由 は,
の 変 換 が ル ジ ャ ン ドル 変 換 で あ る
と い う こ と に あ る(以 変 数
下 で はLとHの
変 数 にtを
の 関 数F(x)が
書 くの を 省 略 す る).
下 に 凸,す
な わ ち2次
形式
(i, jに つ い て 和 を と る)
が 局 所 的 に 正 値 定 符 号 とす る(負 値 定 符 号 な ら ば-Fを の 条 件 は 結 局Fの い).こ
の と き,与
ヘ ス行 列 が 正 則,す
とれ ば よ い か ら,こ
な わ ち
え られ た
であれば よ
に た い し て
の関数 (iに つ い て 和 を と る) が 極 値 を と る
を考 え る.す
なわ ち
(5.1.13)
図5.1.1
ル ジ ャ ン ドル変 換
(5.1.14) を満 た すxで
あ る.Fの
と 表 さ れ る.(n=1の 傾 きyの
ヘ ス行 列 が 正 則 で あ る か ら,こ れ は 逆 に 解 け て
場 合,図5.1.1参
照.-Φ(y,x)は
直 線 が 縦 軸 を 切 る 値 で あ る.と
が 与 え ら れ たyに
等 し くな る 点 で あ り,こ
点(x,F(x))を
く にx=ψ(y)はF(x)の の と き-Φ
通 り
接 線 の傾 き
は 極 小 に な る.)こ
うす
れば
(5.1.15) で定 義 さ れ る関 数 はyを
変数 と し,そ の微 分 は 次 式 で 表 さ れ る:
(5.1.16) こ の 変 数 変 換
と,そ
れ に と も な う 関 数 の 変 換
に よ り定 ま る ル ジ ャ ン ドル 変 換(Legendre ル ジ ャ ン ドル 変 換 は 双 対 的 で,逆
transformation)と
を,F い う.
変 換 も ル ジ ャ ン ドル 変 換 に な っ て い る.実
際(5.1.16)よ
り
(5.1.17) で あ り,こ
の とき
が 成 り 立 つ か ら,Fが
下 に 凸 な ら ばGも
に た い し て,yが
下 に 凸 で あ る.そ
を 満 た す と き,こ
表 す こ と に す る.そ
う す れ ば
こ で 与 え ら れ たx
れ を 解 い た も の を
と
の関数
(5.1.18) は 与 え ら れ たxに し い.し
た い し てy=φ(x)の
た が っ て,逆
変 換
と き 極 値 を と り,そ と,そ
の 値 はF(x)に
等
れ に と もな う関 数 の変 換
(5.1.19) は 確 か に ル ジ ャ ン ドル 変 換 で あ る. そ こ で(5.1.18)の び
Ψ(x,y)を
独 立 な2n個
の 変 数
お よ
の 関 数 と見 なす と
(EXTyはyに
つ い て の 極 値 を と る 演 算 子),
した が って ま た
が 成 り立 つ.と と 見 な し た2n変
い う わ け で,結
局F(x)の
数 の 関 数 Ψ(x,y)の
極 値 を 求 め る こ と は,xとyを
極 値 を 求 め る こ と に 等 価 な の で あ る.
相 空 間 上 に 持 ち 上 げ ら れ た ハ ミ ル ト ン の 原 理 で,pをqと こ と に よ り正 準 方 程 式 が 導 き 出 さ れ た 根 拠 は,こ ル ジ ャ ン ドル 変 換 の 定 義 に よ れ ば,正 の 関 数 と見 た と き の,つ の 点Q={qi}で T*NQへ
ま りqを
の 接 空 間TNQ上
独 立
独 立 な 量 と見 なす
の 事 情 に よ る.
則 な ラ グ ラ ン ジ ア ンL(q,q)をq
パ ラ メ ー タ と し て,L(q,q)を の 関 数 と 見 た と き の,接
配 位 空 間N
空 間 か ら余 接 空 間
の 変数 変 換
(5.1.20) と,そ
れ に と も な う ラ グ ラ ン ジ ア ン か ら ハ ミル トニ ア ン へ の 変 換
(5.1.21)
は ル ジ ャ ン ドル 変 換 で あ る(た い た も の).し
だ し
た が っ て そ の 逆,す
をp=φ(q,q)と
は
を逆 に解
な わ ち
を逆 に 解 い た もの
し た と きの 変 換
も ま た ル ジ ャ ン ドル 変 換 で あ る. な お,点Qで
のTNQか
(5.1.21)は,す
らT*NQへ
べ て のq(配
の こ の ル ジ ャ ン ド ル 変 換(5.1.20),
位 空 間 の す べ て の 点)に
こ う し て 得 ら れ る 状 態 空 間TNか
拡 張 す る こ と が で き る.
ら相 空 間M=T*Nへ
の大域 的な変換
(5.1.22) を,力
学 で は,ラ
グ ラ ン ジ ア ンLに
よ り定 ま る ル ジ ャ ン ドル 変 換 と い っ て い
る. い まpをq,
qと
独 立 な 変 数 と し て,qとqとpの
関数
(5.1.23) を 考 え る.こ
れ をpの
関 数 と見 る な ら ば,与
え ら れ たqとqに
た い して
(5.1.24) を満 た すp=φ(q,q)で
極 値 を と り,そ
の 値 は ラ グ ラ ン ジ ア ン に 一 致 す る:
(5.1.25) こ の(5.1.24)の 経 路)に
条 件 を 課 す こ と は,相
特 定 す る こ と に 等 し い.実
で あ る か ら,(5.1.24)の (5.1.6)を
空 間 上 の 経 路 をcH
際,(5.1.21)よ
(cLを 持 ち 上 げ た
り
条 件 は 確 か に
,す
な わ ち
表 し て い る.
し た が っ て,関
数
Ψ(q,q,p)を
相 空 間 上 の 一 般 の 経 路cに
そ っ て積 分 し た
(5.1.26) で も っ て 相 空 間 上 の 作 用 積 分 を 定 義 す る と,こ て と く にpが(5.1.24)し 致 す る と き,こ
た が っ て(5.1.6)を
のI[c]は
作 用 積 分(5.1.1)に
極 値 を と り,し
一 致 す る.す
なわち
れ はpの 満 た し,そ
汎 関 数 で あ る.そ れ ゆ えcがcHに
し 一
か もそ の 極 値 は通 常 の 配 位 空 間 上 の
(5.1.27) と こ ろ が 配 位 空 間 上 のハ ミル トン の 原 理 は,こ 値(停 留 値)を
とる こ と を要 求 す るが,こ
の 右 辺 がqの
変 化 に 関 して 極
の要 求 よ りラ グ ラ ン ジ ュ 方程 式
(5.1.28) が 導 か れ る.こ な い.こ
の(5.1.24),
(5.1.28)を
う い う わ け で,pとqを
こ の こ と は,も
あ わ せ た もの が 正 準 方 程 式 に 他 な ら
独 立 扱 い し て よ い の で あ る.
っ と 簡 単 に は 次 の よ う に 考 え て も よ い.式(5.1.23)で
さ れ た 関 数 Ψ(q,q,p)を,(q,p)を
「一 般 化 座 標 」,Mを
間 」 とす る ラ グ ラ ン ジ ア ン と見 れ ば,ラ
定 義
「2n次
元 配位 空
グ ラ ン ジ ュ方 程 式 は
とな り,こ れ は正 準 方程 式 で あ る.そ れ ゆ え正 準 方 程 式 は(5.1.26)の 積 分 」 に た い す る(p,q)を
「作 用
独 立 に 扱 っ たハ ミル トンの 原 理 か ら得 ちれ る の で あ
る.た だ しそ の さ い,ラ
グ ラ ン ジ ア ン Ψ がpを
含 ま な い た め,ハ
原理 で 端 点 で の ⊿p=0の
条 件 を 必要 と しな い こ とに 注 意.
ミル トンの
5.1.3 相 空 間 上 で の ハ ミル トンの 原 理 そ の 数 学 的根 拠 は と もあ れ,い の2n個
ず れ に し て も(5.1.8)式
の 変 分 を独 立 に 扱 うこ とで,た
に お い て{δqi,δpi}
だ ち に正 準 方程 式 が 得 られ る.そ れ ゆ
え,変 分 原理 の 正 当性 の 物 理 学 的 根 拠 が 正 しい 運 動 方 程 式 を与 え る こ とに あ る の だ とす れ ば,配 位 空 間 上 の ハ ミル トンの 原理 に 杓 子 定 規 に と ら われ る こ とな く,は
じめ か ら2n個
の 正 準 変 数(q,p)を
独 立 に 扱 う相 空 間 上 の 経 路 に そ った
作 用 積 分 に た い して,直 接 に変 分 原理 を要 請 す る こ とが で き よ う. そ の さ い,次 の 点 に 注 意 す る必 要 が あ る.も 位 空 間 上 の 任 意 の2点Q1,
との ハ ミル トンの 原 理 で は 「配
Q2を 系 の 最 初 と最 後 の 配 位 とす る と き,そ の 間 に
系 が 現 実 に 辿 る経 路 は,経 路 に そ っ た作 用 積 分 が 停 留 値 を と る もの で あ る」 と 述 べ られ て い た.つ
ま り変 分 原 理 と して の ハ ミル トン の 原理 は,配 位 空 間上 で
始 点 と終 点 が 与 え られ た と き に系 が 辿 るべ き経 路 が 大 域 的 に 決 定 され る とい う 主 張 で あ っ た.こ の よ うな 主 張 が 可 能 な の は,配 位 空 間 で は 始 点 を定 め て も,
初 期 値 と し て どの よ う な速 度 を与 え る か に よ り い ろ い ろ な 方 向 の 経 路 が 可 能 で,そ
れ ゆ え始 点 と独 立 に終 点 を指 定 す る こ とが で きた か らで あ る.
しか し相 空 間 で は,そ
の上 の あ る点 を始 点 と して決 め れ ば,そ
の ことによ り
系 の 最 初 の 配 位 と速 度 が 同 時 に 与 え られ た こ と に な り,そ の 後 に 系 が 辿 る経 路 は 一 意 的 に 決 ま って しま う.し た が っ て相 空 間 上 で は,始 点 と独 立 に任 意 の点 を終 点 と し て指 定 す る こ とは で き な い.そ の ため ハ ミル トン の原 理 を相 空 間 に 移 植 す るに さ い して は,任 意 に 与 え られ た 始 点 と終 点 を通 る経 路 の決 定 とい う 大 域 的 な 主 張 は放 棄 しな け れ ば な ら な い.し か し,そ れ で も上 に 見 た よ う に正 準 方 程 式 の 導 出 は保 証 さ れ て い るの で あ るか ら,局 所 的 な主 張 は維 持 され て い る. し た が って,原 理 を次 の よ うに 限 定 して い い 直 す こ とが で き る. 相 空 間Mか よ びQ2に
ら配 位 空 間Nへ
の 射 影 演 算 子 を π と し,N上
た い して
D2と す る.D1の
とな るM上
点 とD2の 点 を結 ぶ 曲 線cが
の2点Q1お
の領 域 をD1お
よび
作用積 分
(5.1.29) の 停 留 値 を と る ため の必 要 十 分 条 件 は,(q,p)が
正準方程 式
(5.1.30) を 満 た す こ と で あ る. こ れ を 修 正 さ れ た ハ ミル トン の 原 理(modified う.こ
こ で はpとqは
の 汎 関 数 で あ り,そ
独 立 な 正 準 変 数 で,こ の 変 分 は(5.1.7)で
Hamilton's
の さ い 端 点 と して
分 は 経 路cを
し た 曲 線 π(c)の 両 端 を 固 定 し た も の で な け れ ば な ら な い.つ t1,t2で ⊿q=0,⊿t=0の
い
の 作 用 積 分(5.1.29)はqとp
与 え ら れ る.そ
が 指 定 さ れ て い る か ら,変
principle)と
配 位 空 間 に射 影 ま り変 分 はt=
も と で 行 う.
こ の よ う に 修 正 ハ ミル トン 原 理 で は 端 点 で ⊿p=0の
条 件 は 課 さ れ て い な い.
し か し 端 点 で ⊿pが 何 で あ っ て も上 の 主 張 が 成 り 立 つ と い う こ と は,⊿p=0で あ っ て も よ い わ け で,正
し い 正 準 方 程 式 を 導 く と い う 目 的 の た め に は,「 修 正
さ れ た ハ ミル ト ン の 原 理 」 を
相 空 間 上 で の 作 用 積 分 が,端 点 を 固定 した 変 分 に た い して停 留値 を とる と き,正 準 変 数 は 正 しい 方程 式 を与 え る. とさ らに 限 定 す る こ とが で き る.こ の 限 定 され た 形 の 原 理 を,後 に正 準 変 換 の 条 件 を導 くさ い に使 用 す る(§5.4.2).
5.1.4 局 所 座 標 系 に よ ら な い表 現 前 章 で は,正 準 方 程 式 が 配 位 空 間 の 局 所 座 標 系 に よ ら な い 形 で 表 現 で き る こ と を示 し た(§4.2.2).そ
う で あ れ ば,正
準 方 程 式 を導 き出 す こ との で き る修
正 され たハ ミル トン の 原理 も,座 標 系 に よ らな い形 で 表 現 で き るは ず で あ る. は じめ に作 用 積 分 とそ の 変 分 を座 標 系 に よ らな い 形 に 表 現 す る. な お こ こ で は 時 間軸 を含 む 拡 大 相 空 間M×R上 運 動 を表 す パ ラ メー タ を τ,M×R上
で論 じ,M×R上
の任 意 の2点P1P2を
での系 の
つ な ぐ経 路 をcと
し,そ れ に そ っ た 作 用 積 分 を次 式 で定 義 す る:
(5.1.31) こ こ に Θ=pidqi-Hdtは たc'はcの
先 に 定 義 し た 相 空 間 上 の 作 用 積 分(5.1.26)に
所 座 標 表 示
に 確 か め ち れ る.た そった
持 ち 上 げ ら れ た 正 準1形
式,ま
接 ベ ク トル で あ る.
こ の(5.1.31)が と は,局
拡 大 相 空 間M×Rに
一 致す る こ
で 表 す こ と に よ っ て,次
だ しt(τ)は
「速 度 ベ ク トル 」 は(こ
τの 単 調 増 大 関 数 と す る.こ こ で は 断 り な い か ぎ り2重
の よ う
の と き,cに
添 字 は1∼nの
和 を
と る も の と して)
(5.1.32) で あ る か ら(ダ
ッ シ ュ は τ に よ る 導 関 数),(5.1.31)は
(5.1.33) と な り,こ
れ は 確 か に(5.1.26)と
作 用 積 分 の変 分 計 算 は
,§3.1.5で
一 致 して い る. や っ た の と 同 様 に し て も よ い が,も
う少
図5.12
し ス マ ー トに は,次
相 空 間上 の経 路 とその 変 分
の よ う に す る.M×R上
ず ら し た 曲 線
線c=c(τ,0)を
を 考 え る(図5.1.2,η
パ ラ メ ー タ で,(τ,η)を (5.1.31)のI[c]の
で,曲
わずか に
は τと は独 立 な
の 作 る 面 の 座 標 と す る) .そ
の と き
変 分は
(5.1.34) 第1項 c上
は τの 変 化 に よ る 端 点 か ら の 寄 与,第2項 で 行 う.こ
恒 等 式(2.4.10)を
こ で
で あ り,
は 同 時 刻 の 変 分 で,積 と す る と
分 は ゆ え,
使 うと
した が っ て
(5.1.35) こ こ で §3.1.5と ベ ク トル を
同 様 に 端 点 を 始 点 と す る 曲 線l1, l2の パ ラ メ ー タ を λ,そ の 接 (3.1 .22a)と
す る と
と書 き直 す こ とが で き る. 以 上 よ り,作 用 積 分 の 一般 的 な変 分 は
(5.1.36) と表 さ れ る.相 空 間 に 持 ち上 げ られ た 変 分 法 の 基 本 公 式(5.1.7)を,拡
大相
空 間 上 で座 標 系 に よ らず に 表 現 した もの で あ る.た だ し
(5.1.37) で,こ
こ に
は,τ
全 変 分 で あ る(以 て,そ
下,被
積 分 関 数 は η=0,つ
お よ び ηの 変 化 に と も な う
ま りc上
の値 を とる もの と し
の こ と を い ち い ち 明 記 し な い).
さ て,修
正 さ れ た ハ ミル ト ン 原 理 は 端 点(τ=τ1,τ2)で⊿q=0,⊿t=0と
と き作 用 積 分 が 停 留 値 を と る こ と,す で⊿I=0と
な わ ち
な る こ と を 要 求 す る も の で あ り,し
した
の 条件 の も と た が っ て(5.1.36)よ
り
(5.1.38) と こ ろ が η は τ を 変 え な い か ぎ り で 任 意 の パ ラ メ ー タ で,か 分 で あ る か ら,こ
つ δη も任 意 の 変
れ よ りた だ ち に
(5.1.39) が 得 ら れ る.こ
れ は 拡 大 相 空 間M×R上
2n次
元 相 空 間M上
M上
で はtは
い.ま
た こ の と きパ ラ メ ー タ を η と す る 曲 線 はt=const.の
れ ば,そ
で は,次
で の 正 準 方 程 式 に 他 な ら な い.
の よ う に 書 き 直 さ れ る.
単 な る パ ラ メ ー タ で あ る か ら,
れ 以 外 の 点 で は 任 意 で あ る か ら,そ と し て よ く,こ
し た が っ てM上
で の 正 準2形
と書 き直 され る.こ らな い 表 式
式
と して よ 面 内 に あ りさ えす
の 接 ベ ク ト ルuη に た い し て
れ よ り
を 用 い れ ば,(5.1.39)は
こにuη は 任 意 だ か ら,こ れ よ り正 準 方 程 式 の 座 標 系 に よ
(5.1.40) が得
ら れ る.こ
れ は(4.2.11)で
あ る.
5.2 積 分 不 変 式 と カ ル タ ン の 原 理
5.2.1相
空 間 上 の ワイ ス の原 理
ハ ミル トン の 原理 が 配 位 空 間か ら相 空 間 に持 ち上 げ られ るの と同 様 に,そ れ と相 互 補 完 的 な 関係 に あ る ワ イ ス の 原理 も相 空 間 に 持 ち上 げ られ る. 相 空 間上 で のハ ミル トンの 原 理 に よ れ ば,経 件 で 作 用 積 分 の変 分 が⊿I[c]=0と 得 ら れ る.し
たが っ て 逆 に,cを
路 の端 点 で
な る と き,経 路cに
の条
た いす る正 準 方 程 式 が
正 準 方 程 式 の 積 分 曲 線 で あ る とす る な ちば,
そ の 経 路 を無 限小 変 化 させ た と きの作 用 積 分 の変 分 は,端 点 か らの 寄 与 だけ か らな る.こ の こ と を原 理 と して要 請 した もの が ワ イ ス の 原理 で あ る.す な わ ち 相 空 間 上 の 経 路cが
系 が 現 実 に と る 経 路 で あ る た め の 条 件 は,cに
そ っ て 計 算 した 作 用 積 分 の 変 分 が,端 点 か らの 寄 与 の み よ りな り
(5.2.1) で 与 え ら れ る こ と で あ る. も ち ろ ん こ れ を(5.1.36)と れ る か ら,こ
見 く ら べ る な ら ば,た
だ ち に(5.1.38)が
れ は ハ ミル ト ン の 原 理 の い い 直 し に す ぎ な い.し
か し,相
得 ら 空 間で
ハ ミル ト ン の 原 理 を 語 る と き に は 端 点 に つ い て デ リケ ー トな 言 い 方 を し な け れ ば な ら な い の に ひ き か え,ワ
イ ス の 原 理 は き わ め て 簡 単 明 瞭 で あ る.
ワ イ ス の 原 理 か ら確 か に 正 し い 正 準 方 程 式 が 導 か れ る こ と は,配 合(§3.2.1)と
ほ と ん ど 同 様 で あ る が,相
た だ し こ こ で は,§3.2.1と
空 間 の 場 合 に も 一 応 見 て お こ う.
異 な り局 所 座 標 系 を 使 用 し て 論 ず る.
十 分 短 い 時 間 間 隔[t,t+ε]の cに
あ い だ に 系 が 現 実 に と る 経 路 をcと
そっての作用積分 は
し た が っ て そ の 変 分 は,ε
位 空 間 の場
の1次
まで と っ て
す る と,
と 表 さ れ る.他
方 ワ イ ス の 原 理 に よ る な ら ば,こ
に 等 し く な け れ ば な ら な い.い の⊿Iの
れが
ま の 場 合,⊿q, ⊿p, ⊿tは
独 立 ゆ え,こ
の二 つ
表 式 を比 べ て
が得 られ る.こ れ は 正 準 方程 式 に他 な らな い.
5.2.2積
分 不 変 式
こ こで 拡 大 相 空 間M×Rに
お い て 始 点 をP1,終
す な わ ち正 準 方 程 式 の 積 分 曲線c(τ)を 考 え,さ
に そ っ て1周
させ る(l1は
と も な っ て 終 点P2も
点 をP2と
ら に こ の始 点P1を
閉 曲 線l2に
の 各 点c(τ)も
表 さ れ る こ と に な り(た [0,1]間
閉曲線
必 ず し も 同 時 刻 の 点 を 通 ら な く て も よ い).こ そ っ て1周
す る.閉
曲 線l2はl1上
あ る 時 間 だ け 正 準 方 程 式 に よ っ て 発 展 させ た 点 よ り な る.し つ な ぐ実 経 路c上
す る現 実 の 経 路,
れに
の各 点 を
た が っ てP1P2を
パ ラ メ ー タ λ に よ っ て 変 わ る 曲 線c(τ,λ)で
だ し
),こ
を 動 く の に と も な っ てl1l2を
両 端 の 切 り 口 とす る 管(経
う して λが 路 管)が
形 成
さ れ る(図5.2.1). そ こ でc(τ)に
そ っ て 計 算 し た 作 用 積 分 の 変 分(5.2.1)を
の 区 間 で 積 分 し よ う.(5.2.1)の
しか るに
λ の 変 化⊿ λ を 微 分dλ
λ に つ い て[0,1] で書 くと
図5.2.1
した が って
(5.2.2) す な わ ち,相 空 間 内 の任 意 の 閉 曲 線lに
そ っ た正 準1形 式 の 積 分
(5.2.3) は,系
の 時 間 的 発 展 に 関 し て 不 変 で あ る.こ
式(relative
integral
invariants)と
と く にlが
同 時 刻 の 閉 曲 線,す
曲 面 上 の 閉 曲 線 とす る.こ は θ=pidqiで ∂S=lで
い う. な わ ち 拡 大 相 空 間M×R内
の 曲 面 上 で は Δt=0で
置 き か え ら れ る.ま
あ る か ら,上
の 積 分 を カ ル タ ンの 相 対 積 分 不 変
た こ の と きlで
のt=const.の
あ る か ら,上
式 の1形
囲 ま れ た 面 をSと
超 式 Θ
す る と,
の 積 分 不 変 量 は ス トー ク ス の 定 理 よ り
(5.2.4) と書 き 直 さ れ る.し
た が っ て,こ
に 関 し て 不 変 で あ る.こ invariants)と
い う.
の 積 分 式
もや は り 系 の 時 間 的 発 展
れ を ポ ア ン カ レ の 絶 対 積 分 不 変 式(absolute
integral
5.2.3
カ ル タ ン の原 理
逆 に,積 分 式 ∫lΘを不変 にす る相 空 間 内の写像 は,正 準 方程 式 にの っとっ た点 の運 動 に 限 られ る こ とが 示 され る. 実 際,拡
大 相 空 間M×R上
と を考 え,そ
を 施 す.τ
れ にM×R内
た 閉 曲 線l0は,Pτ
し て い る と考 え る(図5.2.2).こ 考 え,A上
のdΘ
らPτ に い た る 経 路c
を 連 続 的 に 動 か し て で き る 閉 曲 線lτ に 写 像
う し て 写 像 φτに よ っ てl0か
あ い だ の こ の 経 路 管 にcに
Aを
通 る任 意 の 閉 曲 線
の τ を パ ラ メ ー タ とす る あ る 連 続 写 像 φτ
を 連 続 的 に 変 え て ゆ く こ と に よ り,点P0か
が 生 成 さ れ,ま さ れ,こ
の 任 意 の 点P0と,P0を
ら 経 路 管 が 形 成 さ れ る.τ=0と
そ っ た 切 れ 目 を 入 れ,経 こ で
路cに
τ=τ1の
経 路c+⊿cが
接
を 周 辺 ∂Aと す る 曲 面
の 面 積 分 に ス トー ク ス の 定 理 を 適 用 す る.
図5.2.2
こ の 場 合 は,cとc+Δcは
実 質 的 に 同 一 の 曲 線 で あ る か ら,ス
トー ク ス
の定 理 は
(5.2.5a) と 表 さ れ る.曲 をAの
面A上
の 点 は パ ラ メ ー タ(τ,λ)の 組 で 指 定 さ れ る か ら,こ
座 標 に 用 い れ ば,左
十 分 小 さ く τ1=Δ τ と とれ ば
辺 は(1.6.63)を
使 っ て 書 き 直 さ れ,と
れ
く に τ1を
(5.2.5b) と 表 さ れ る.(5.2.5a)の な り,し 線l0の
右 辺 は 写 像 φτが積分
た が っ て(5.2.5b)も0で
な け れ ば な ら な い.こ
接 ベ ク トル で あ る が,P0お
ら れ,結
∫lΘ を 不 変 に す る な ら ば0に
よ びl0は
こ にuλ=∂/∂ λは 曲
任 意 で あ る か らuλ も 任 意 と 考 え
局
(5.2.6) が 得 ら れ る.こ
れ は,正
準 方 程 式 に 他 な ら な い.ま
とめ る と
積 分 式 ∫lΘを不 変 量 とす る相 空 間 上 の 写 像 を φτとす る と,φ τに よ っ て生 成 され る相 空 間 上 の 点 の移 動 は 正 準 方 程 式 の積 分 曲 線 を構 成 す る.
これ をカ ル タ ン の原 理(Cartan's
5.2.4 第1積
principle)と い う.
分 と 自由度 の 削 減
ラ グ ラ ン ジ ュ 形 式 の 力 学 で は,第1積 る こ とが 示 さ れ た(§2.2.5).同
分 が 一 つ あ れ ば 自由 度 が 一 つ 削 減 され
様 にハ ミル トン形 式 の 力 学 で も,第1積
一 つ 存在 す れ ば 自由 度 が 一 つ 削 減 され ,し た が っ て相 空 間 の 次 元 が2だ られ る.こ の こ とは,カ
ル タ ン の 原 理 を使 え ば,次
分が け下 げ
の よ うに して 示 さ れ る.
簡 単 の ため に,保 存 系 で考 え よ う(非 保 存 系 で も拡 大 空 間 に移 れ ば保 存 系 の 扱 い が で き る か ら同 じで あ る).い
ま,自 由 度nの
系 で,1価
な 第1積 分
(5.2.7a) が 存 在 す る と し よ う*1.運 動 は2n次
元 相 空 間 の こ の 式 で決 ま る(2n-1)次
元
超 曲 面 上 に 限定 され る(保 存 系 で あ る か らエ ネ ル ギー 積 分 が 存 在 す る の で,F はハ ミル トニ ア ン 自体 で も よい). *1 こ こで第1積 分 が1価 で あ る とい う条 件 をつ け たの は ,次 の事 情 に あ る. た とえば2次 元 空 間(平 面) 上 の関数
を考 え る.曲
線
は,パ
と 表 さ れ る リサ ー ジ ュ 図 形 で あ り,よ に は,こ
の 曲 線 は 平 面N全
ラ メ ー タ表 示 で
く知 ら れ て い る よ う に ω1/ω2が 有 理 数 比 に な い と き
体 を 埋 め つ くす(証
明 は §8.3.3).し
た が っ て そ の と き に は, <続 く>
そ こで 時 間tの か わ りに た とえ ばqnを べ き領 域 で
独 立 変 数sに
と る.相 空 間 の しか る
とす れ ば,こ の 式 を解 い て
(5.2.7b) と表 す こ とが で き る.し た が って も との相 空 間 上 の 正 準1形
式は
(5.2.8) と書 き直 され る.そ 曲 線lで
して こ の 系 の ポ ア ン カ レの積 分 不 変 式 す な わ ち 同 時 刻 の 閉
の積分
(5.2.9) を,hを
ハ ミ ル トニ ア ン と す る 自 由 度(n-1)の
見 る こ と が で き る.す で あ り,し
な わ ち1形
系 の カル タンの積 分不 変 式 と
式 の
積 分
た が っ て カ ル タ ン の 原 理 よ れ ば,こ
す る 正 準 方 程 式 に 支 配 さ れ て い る.実
が 成 り立 ち,こ
う して た だ ち にhを
際,こ
の 系 はhを
が 不変 式
ハ ミル トニ ア ン と
の とき
ハ ミル トニ ア ン とす る正 準 方 程 式
(5.2.10) が 導 か れ る. こ の こ と は,直
をqn=sの
接 的 に は 次 の よ う に 示 さ れ る.い
ま2(n-1)個
の
関 数 で あ る と見 なせ ば,運 動 方 程 式 は
<前 頁 の 続 き> f(x,y)=α で 表 さ れ るNの 部 分 空 間 はN自 よ う に 任 意 の α に た い し て 曲 線f(x,y)=α は,い
い か え れ ば,点(x,y)を
と で あ り,そ 6.3.1
の 意 味 でf(x,y)は
(6.3.23)式
に あ り).そ
身 に 一 致 し,空 間 の 次 元 は 減 少 し な い.こ の がN上 の 任 意 の 点(x,y)を 通 る とい う こ と
定 め て もf(x,y)は し て 第1積
分(5.2.7a)が1価
無 限 に 多 価 な 関 数 を 除 く と い う意 味 で あ る(こ (岩 波 書 店 1994 第2版
1997)に
任 意 の値 を と る こ とが で き る とい うこ
無 限 に 多 価 と い え る(無
負 っ て い る).
限 に 多 価 な 第1積
分 の 例 は,例
と い う 条 件 は,こ
の よ うな
の 点 の 指 摘 は 大 貫 義 郎 ・吉 田 春 夫
『力 学 』
(5.2.11)
こ こ で(5.2.7b)を
をpi,qiで
も との ハ ミル トニ ア ン に 代 入 し た
微 分 す れ ば,恒
が 得 られ る.そ
等式
し て こ れ を 用 い れ ば,上
の 運 動 方 程 式(5.2.11)が(5.2.10)
と同 じ もの で あ る こ とが わ か る.
5.3 正 準 変 換 ―
母 関 数 に よ る定 義
5.3.1 正 準 変 換 と は ハ ミル トン 形 式 で は,系 る.い
の 状 態 は 相 空 間M=T*N上
の 点 に よ り指 定 さ れ
ま その 点 が あ る局 所 座 標 表 示 で
と表
さ れ る とす る.し か し座 標 系 の 選 択 は一 義 的 で は な く,異 な る座 標 系 に移 れ ば 座 標(力 学 変 数)は,最
も一 般 的 に は
(5.3.1) の 形 で変 換 さ れ る. そ れ らの 複 数 個 の 座 標 系 な い し変 数 は,数 学 的 に は平 等 で あ っ て も,運 動 方 程 式 を解 く とい う実 際 的 立 場 か ら は もち ろ ん の こ と,運 動 方 程 式 の解 の構 造 ・ 性 質 を考 察 ・吟 味 す る とい う理 論 的 観 点 か ら見 て も,大
きな優 劣 が あ る.実 際
に 運 動 方程 式 の厳 密 解 が 求 ま るの は き わめ て 限 られ た 問題 で あ り,た い て い の 場 合,解
は 閉 じた 形 で は 得 られ な い.し か した とえ解 析 解 が 求 ま ら な く と も,
う ま く変 数 変 換 を す れ ば 運 動 方程 式 が 単 純 に な り,系 の振 る舞 い につ い て の 見 通 しが きわ め て 良 くな る こ とが あ る. た とえ ば あ る変 数 で 記 述 した と き,運 動 方 程 式 が 正 準 方 程 式 で 表 され,か
つ
ハ ミル トニ ア ン にk番 る と す る.こ
目の
「座 標 」 が 含 ま れ な い,つ
の と き正 準 方 程 式
れ る か ら,ハ
ま りqkが
循環座 標 に な
よ り
.が 得 ら
ミ ル ト ニ ア ン は
と な り,こ
の 座 標 系 で は 自 由 度 は 実 質 的 に(n-1)に
下 が っ て い る.
こ の 処 方 を さ ら に 押 し進 め て い っ て 最 終 的 に す べ て の 「座 標 」 が 循 環 座 標 と な る 変 数 を 選 ぶ こ と が で き た な ち ば,そ (pk=αk)に
な り,ハ
の と き に は す べ て の 「運 動 量 」 が 定 数
ミル トニ ア ン は
と 表 さ れ,し
た が って
正 準 方程 式 の 解 は
の よ うに 求 積 法 で 求 ま る.こ
こ に(α,β)は す べ て 定 数 で あ り,初 期 条 件 か ら
代 数 的 に 決 定 さ れ るか ら,こ れ で い わ ば 問題 が 「 解 け た」 こ とに な る.こ の考 え方 で は,問 題 を解 くこ とは,す べ て の 「座 標 」 が 循 環 座 標 とな る よ うな座 標 系 を見 い だ す こ とに帰 着 す る. この よ う に座 標 変 換(変 数 変 換)は 理 論 的 に も実 際 的 に も重 要 で あ る.そ の さ い,す
で に述 べ た よ うに 正 準 力 学 系 は い ろ い ろ な意 味 で そ の解 の 性 質 が きわ
め て 「良 い」 の で(§4.4参
照),こ
す る変 換 に 焦 点 を あ て る.つ
こ で は と くに 正 準 方 程 式 の 構 造 を不 変 に
ま り変 数 変 換(5.3.1)を
施 し た とき に,方 程 式
(5.3.2) の 形 が 変 わ ら な い も の,す
な わ ち 新 し い ハ ミル トニ ア ンK(Q,P,t)が
存 在 し,
新 変 数 に よ る運 動 方 程 式 が
(5.3.3) の 形 に な る も の が 重 要 で,以
下 で は そ の よ う な 変 換 だ け を 考 え る.
正 準 方 程 式(5.3.2)は,修
正 さ れ た ハ ミル ト ン の 原 理
(端 点 で
)
よ り得 ら れ る. し た が っ て,変
数 変 換(5.3.1)で
め に 要 求 さ れ る 条 件 は,(Q,P)に
得 ら れ る(Q,P)が(5.3.3)を
満 たす た
た い し て も修 正 さ れ た ハ ミル トン の 原 理
(端 点 で が 成 り立 つ こ と で あ る.そ
の た め に は,一
)
般 に λを任 意 の定 数 と し て
(5.3.4a) す な わ ち
を(q,Q,t)の
任 意 関 数 と して
(5.3.4b) と 書 く こ と が で き れ ば よ い.実
と な り,こ
際 そ う で あ れ ば(5.3.4a)の
れ は 端 点 の 値 の み の 関 数 で あ る か ら,端
た そ の 変 分 は0に
と き だ け に 議 論 を 限 っ て よ い.と
と な る 定 数a,
た も の に 帰 着 す る か ら で あ る.そ
5.3.2
し
い う の も λ≠1で
bを 用 い て
ち た め て ス ケ ー ル 変 換 を 施 せ ば,変
transformation)と
点 で⊿q=0,⊿Q=0と
な る.
こ こ で と く に λ=1の あ っ て も,ab=λ
積分 は
とあ
換
の λ=1の
は 上 式 で λ=1と
し
場 合 の 変 換 を 正 準 変 換(canonical
い う.
変 換 の 母 関 数
した が って,正 準 変 換 は 次 の 条 件 で 定 義 さ れ る:
(5.3.5) ま た は1形 式 の 関 係 で表 して
(5.3.6) こ の 後 者 の 表 現 は,時 間 軸 を含 む(2n+1)次
元 多様 体M×Rで
左 辺 の微 分 形 式 が 全 微 分 で あ る とい う こ とを意 味 して い る.そ
考 え た と き, して この と き
(5.3.7) が 変 換 公 式 を 与 え る. 条 件(5.3.6)と
変 換 公 式(5.3.7)は,独
立 変 数 の 組 を変 え る こ とに よ り
(5.3.8) また は
(5.3.9) また は
(5.3.10) の よ うに も表 さ れ る.以 上 の結 果 は 次 の 表 に ま とめ ら れ る.
も ち ろ ん 関 数W1,
W2, W3, W4は
い ず れ の 関 数 も,旧
変 数n個
す べ て 微 分 可 能 で な け れ ば な ら な い.ま
と 新 変 数n個
の 関 数 に な っ て い る.そ
す べ て の 新 変 数 を 旧 変 数 だ け で 表 す た め に は,も れ ば な ら な い.た そ れ を 第2式
と え ば(5.3.7)の
に 代 入 し てP=P(q,p)が
第1式
た
の た め,
う一 度 代 数 方 程 式 を解 か な け
を 解 い てQ=Q(q,p)が
得 ら れ る.そ
求 ま れ ば,
してその操作 が可能 とな
るため には
(5.3.11) で な け れ ば な ら な い.W2,
W3, W4に た い し て も 同様 の 条 件 が 必 要 で あ る.し
か し これ らの 関 数 は,そ の 他 の 点 で は ま っ た く任 意 で あ る.し た が っ て正 準 変 換 は個 別 のハ ミル トニ ア ン とは 無 関係 に 定 め られ る. こ う して 旧 変 数n個
と新 変 数n個
の 関 数 を一 つ 定 め れ ば,そ
準 変 換 が 一 個 決 ま る.こ の よ うに 関数W1な
れに よって正
どは 一 つ の 正 準 変 換 を 「産 み 出 す
(generate)」
か ら,変
一 般 のn次
換 の 母 関 数(generating
元 空 間 の 座 標 変 換 で は,座
個 の 関 数 が 必 要 で あ る.し
function)と
呼 ば れ る.
標 成 分 の 変 換 則 を 表 す の に 通 常 はn
か し 正 準 変 換 で は,2n次
成 分 の 変 換 が 単 一 の 関 数 で 決 定 さ れ 表 さ れ る.こ
元 相 空 間 の2n個
の こ と は,正
の座標
準 変 換 の重 要 で
著 し い 性 質 で あ る. た と え ば 配 位 空 間 上 の 点 変 換 変 換 は こ の よ う にn個
を 考 え る.
の 関 数fi(q)で
定 め ら れ る.対
応す るラグランジアンの
変 換 は
ただ し
した が っ て,こ れ よ り導 か れ る一 般 化 運 動 量 の 変 換 則 は
そ して これ らの 変 換 は,
で 与 え ら れ る.す
を母 関 数 とす る正 準変 換 す な わ ち
な わ ちn個
の 関 数 で 決 ま る 配 位 空 間 の 点 変 換 か ら相 空 間 に
導 か れ る 変 換 は 正 準 変 換 で あ り,そ
れ が 単 一 の 関 数W3で
ま た と く に 母 関 数 と し てW3=Piqiを な り,こ
れ は 恒 等 変 換(identity
も ち ろ ん 正 準 変 換 は,時
と れ ば,(5.3.9)はpi=Pi,Qi=qiと
transformation)を
間tを
引 き起 こ す.
陽 に 含 ん で も よ い し,ま
動 量 が 混 ぜ 合 わ さ れ る 変 換 も含 み,そ
表 さ れ る の で あ る.
た 正 準 座 標 と正 準 運
の 意 味 で 配 位 空 間 の 座 標 変 換(点
変 換)
よ り広 い. 例5.3.1
正 準 変 換 の 例1―
極 座標 へ の変換
3次 元 デ カ ル ト座 標 か ら 極 座 標 へ の 座 標 変 換 あ る.実
際,母
関数
に よ り生 成 さ れ る変 換 は
は 正準 変 換 で
で 表 さ れ,こ る.し
れ は 確 か に デ カ ル ト座 標 か ら3次 元 極 座 標 へ の 変 換 公 式(2.1.32)で
あ
た が っ て こ の 座 標 変 換 に と もな う運 動 量 成 分 の 変 換 は
で 与 え られ る.こ れ よ りた だ ち に
(5.3.12) が 得 られ る.し
た が っ て も との ハ ミル トニ ア ン が
で与 え られ
て い る と き,極 座 標 表 示 で の ハ ミル トニ ア ン は
(5.3.13) と表 さ れ る.た 例5 .3.2
だ し こ の 場 合 は ∂W2/∂t=0だ
正 準 変 換 の 例2―
か らK=H.
ガ リ レイ 変 換
ハミ ル トニ ア ン が
で 与 え られ る 質 点 系 を考 え る.α, β は 質 点 の 番 号,rα 目の 質 点(質 量mα)の い し て,母
位 置 ベ ク トル,pα
は 運 動 空 間R3に
お け る α番
は そ れ に 共 役 な 運 動 量 を表 す.こ
の 系 にた
関数
に よ る 正 準 変 換 を施 す(uは
あ る 定 ベ ク トル).変
換 され た 位 置 ベ ク トル は
(5.3.14) で あ り,変 換
は ガ リレ イ 変 換 で あ る(例3.2.1).
こ の 変 換 に と もな う正 準 運 動 量 の 変 換 は
(5.3.15) で 与 え ら れ,ま
た ハ ミル トニ ア ン は
に 変 換 さ れ る,こ の 結 果 は,こ
例5.3.3
の 系 が ガ リ レ イ変 換 で不 変 な こ と を示 して い る.
正 準 変 換 の 例3―
ポ テ ン シ ャ ル が(Φ,A)で
電磁 場の ゲー ジ変換
表 さ れ る 電 磁 場 中 の 荷 電 粒 子(質 量m,電
ラ ン ジ ア ン は(2.1.45) 一 般 化 運 動 量 は
荷e)の
で 与 え ら れ る.こ ,そ
ラグ の とき
れ ゆ え ハ ミル トニ ア ンは
(5.3.16) と得 られ る.こ
の 系 の ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 は,電 磁 場 の ゲ ー ジ変 換
(5.3.17) に た い して 不 変 で あ る(§2.1.5参
照).こ
の 変 換 に と も な う運 動 量 と ハ ミ ル トニ ア ン
の変 換 は
(5.3.18) で 与 え られ る.座 標 の 変 換 は 恒 等 変 換
が 示 さ れ る か ら,ゲ
ー ジ 変 換(5.3.17),
とす る.こ れ よ り直 接 に
(5.3.18)は-ex/cを
母 関 数 とす る 正 準 変
換 で あ る.
例5.3.4
正 準 変 換 の 例4―
系 の時 間的発展
正 準 方 程 式 に の っ と っ た 時 間 的 発 展 を考 え る.こ る経 路cに
の とき相 空 間上 で系 が 現 実 に と
そって求 め た作用 積分
(5.3.19) は ハ ミル トンの 主 関 数 で あ り)(§3.2.1参 照),ワ
イ ス の 原 理(3.2.1b)に
よ れ ば,そ
の 任 意 の 変 分 は 端 点 の み の 寄 与 よ りな り
(5.3.20) と 表 さ れ る.そ
れ ゆ えSHは(q,t,q0,t0)の
関数 で
(5.3.21) の 関 係 を満 た す(た
だ しq0=q(t0)).
こ の 関 係 を(5.3.7)と
見 く らべ る な らば,保
存 系 に お け る正 準 変 数 の 時 間 的 発 展 を母 関 数 と す る正 準 変 換 で あ る
こ と が わ か る.す
な わ ち 系 の 時 間 的 発 展 は 正 準 変 換 の 一 種 な の で あ る.し
正 準 方 程 式 を解 く こ と は,そ
たが って
の 変 換 の 母 関 数 を 見 い だ す こ とに 還 元 さ れ る.こ
れが
後 述 す る ハ ミ ル トン とヤ コ ビ の理 論 に 導 く考 え 方 で あ る. な お,こ
の よ う に一 つ の パ ラ メー タ(こ の 場 合 は 時 間 変t)に
連 続 的 に 得 られ る正 準 変 換 を,1径
よ り恒 等 変 換 か ら
数 正 準 変 換 と い う.こ の 点 に つ い て は,§6.1で
詳 述 す る.
例5.3.5
正 準 変 換 の 例5―
減 衰振動
運 動方 程 式が
(5.3.22) で 与 え られ る振 動 子 を考 え る.ラ
グ ラ ン ジ ア ン は,た
とえば
(5.3.23) で 与 え ら れ る(こ れ に 限 ら れ る わ け で は な い).こ =mqe2rt,し
の と き一 般 化 運 動 量 はp=∂L/∂q
た が っ て ハ ミル トニ ア ン は
(5.3.24) こ の 系 にW3(q,P,t)=qPertを
母 関数 とす る正 準 変 換 を施 す.変
換公 式 は
した が っ て 変 換 さ れ たハ ミル トニ ア ンは
(5.3.25) と表 さ れ る.こ 例7.4.1)で
の ハ ミル トニ ア ン に た い す る 正 準 方 程 式 の 解 は 後 節 の 例(例6.2.3,
見 る(た だ し例6.2.3で
ミル トニ ア ンHはtを
は この γ をγω で 置 きか え る).な お,も
陽 に 含 む 非 保 存 系 で あ る が,こ
陽 に 含 ま な い か ら保 存 系 で,第1積
との ハ
の ハ ミル トニ ア ンKはtを
分 として
が 得 られ る.た だ し こ れ は 系 の エ ネ ル ギ ー で は な い.
5.4 シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 写 像
5.4.1 シ ン プ レ クテ ィ ッ ク条 件 本 節 で は正 準 変 換 の条 件 を書 き直 し,正 準 変 換 が シ ンプ レ クテ ィ ッ ク 多様 体 の標 準 座 標 の あ い だ の座 標 変 換 に な っ て い る こ と を示 す. 前 節 で与 え た 正 準 変 換 の 条 件 式(5.3.6)の
外 微 分 を と る:
(5.4.1) こ こ で(p,q),(P,Q)の
が い ず れ も正 準 方 程 式 を満 た す な ら ば
となるか ら
が 成 り 立 ち,こ
れ よ り
(5.4.2) が 導 か れ る.す 準2形
式
な わ ち 「変 数 変 換
が 不 変 で あ る(正 準 変 換 で あ る た め の必 要 条 件)」.
こ れ は 時 間 軸 を含 む(2n+1)次 るが,時
が 正 準 変 換 で あ れ ば,正
間 軸 を含 ま な い2n次
元 拡 大 相 空 間M×R上 元 の相 空 間M上
で 導 か れ た もの で あ
で 考 察 して も,同 じ結 果 が 得
られ る.そ の と きに は,た
とえW1がtに
に よ る と い う だ け で,tそ
の もの は 座 標 で は な く単 な る パ ラ メー タ に す ぎ な
い.し
条 件 は,M上
た が っ て(5.3.6)の
陽 に 依 存 して も,そ れ は変 換 が 時刻
の 微 分 形 式 の 関 係 と して は
(5.4.3) と な り,両
辺 の 外 微 分 を と る こ と に よ り た だ ち に(5.4.2)が
と こ ろ で,変
換 の 母 関 数 と し て
を と る と,変
導 かれ る 換 公 式(5.3.7)
は
(5.4.4) とな り,「 運 動 量 」 と 「座 標 」 が 入 れ か わ る.つ
ま りハ ミル トン 形 式 の 力 学 で
は,「 運 動 量 」 と 「座 標 」 の 区 別 は相 空 間 それ 自体 に よ り決 ま る もの で は な く, 特 定 の局 所 座 標 系 を指 定 した と きに は じめ て 意 味 を もつ相 対 的 ・便 宜 的 な もの で しか な い の で あ る.そ れ ゆ え 「 座 標」 と 「 運 動 量 」 を区 別 せ ず,ひ に 扱 う シ ン プ レ クテ ィ ッ ク変 数z=(q,p)の そ こ でz=(q,p)とZ=(Q,P)を
と ま とめ
方 が 自然 で あ る.
用 い れ ば,変
数 変 換
が正 準 変
換 で あ る ため の 必 要 条 件(5.4.2)は
(5.4.2)'
と表 さ れ る*1.あ
るいは また
(5.4.5) で 定 義 さ れ る変 換 行 列(ヤ
で あ る か ら,上
コ ビ行 列)を 用 い れ ば
の 条 件(5.4.2)'は
,す
な わ ち行 列 表 示 で
(5.4.6) と 表 さ れ る. こ の 両 辺 の 行 列 式 を 計 算 す れ ば =1ゆえdetM=±1
,す
列 は,(5.4.6)の
,し
な わ ち 変 換 行 列Mは
か る にdetΩ
正 則 で 逆 行 列 を も つ.そ
両 辺 に 左 と右 か ら そ れ ぞ れ Ω'とM-1を
の逆行
か けれ ば
(5.4.7) と 得 ら れ る.ま
た(5.4.6)を
Ω を か け て Ω2=-Iを
と 書 き 直 し,こ
使 う と
,さ
の式 の両側 か ら
ら に 右 か らtMを
かけて
(5.4.6)' と 表 す こ と も で き る(Ω=-Ω'ゆ
え Ω'を 用 い て も 同 様 に 表 さ れ る).
条 件(5.4.2)と(5.4.6),
(5.4.6)'は
必 要 条 件 で あ る が,実
は 本 節 後 半(§5.4.3)で
等 価 で,と
も に正 準 変 換 で あ る ため の
見 る よ う に,こ
変 換 で あ る た め の 十 分 条 件 で も あ る こ と が 示 さ れ る.そ 準2形
式(シ
ン プ レ ク テ ィ ッ ク 形 式)を
の 条 件 は正準
れ ゆ え,正
準 変 換 を正
不 変 に す る変 換 と し て 定 義 し て も よ
い.
と こ ろ で シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多 様 体 上 で シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 形 式 を(4.2.2) の 形(標
準 形)に
す る 座 標 が 標 準 座 標 で あ る か ら(§4.2.1),結
局,正
と は シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 多 様 体 上 の 標 準 座 標 の 間 の 座 標 変 換 で あ り,そ 幾 何 学 的 に は シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 写 像(symplectic *1 数 学 書 で は(5
.4.2)'式
は φ*Ω=Ω
と書 か れ る こ と が 多 い.つ
と こ ろ で 座 標 変 換 φ: に 変 換 さ れ る,引 も の((1.6.23ab)式
そ れ ゆ え 条 件 φ*Ω=Ω
参 照),つ
map)と
準 変換 の ため
も い わ れ る.そ ま り任 意 のzに
し
たい して
に よ り,
き戻 し 写 像 とは 変 換 さ れ た 関 数 を も と の 座 標 で 表 す
ま り
は,(5.4.2)'(5.4.6)と
同 じ こ と を 表 し て い る.
て そ の と き 条 件(5.4.2)'を (5.4.6)'は
シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 条 件 と い う.ま
そ の シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 条 件 の 行 列 表 現 で あ り,こ
す 正 則 行 列 を シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 行 列 と い う.し
た(5.4.6), の 条 件 を満 た
た が っ て 正 準 変 換 の 条 件 を,
「変 換 行 列 が シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク行 列 に な る こ と」 と い い 直 す こ と も で き る. す で に 見 た よ う に 正 準 変 換 の 母 関 数 は 新 旧 両 変 数 を 含 ん で い る た め,あ 換 が 正 準 変 換 で あ る の か 否 か の 判 定 の 手 段 と し て は,多 い る よ り シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 条 件,と が 直 接 的 で 便 利 で あ る.た 換
くの 場 合,母
く に(5.4.2)の
と え ば(5.4.4)で
る変
関数 を用
形 の もの を用 い る ほ う
母 関 数 を用 い て 導 き 出 され た 変
は
で あ るか ら,母 関数 を使 わ な く と も正 準 変 換 で あ る こ とが 直 ちに 見 て とれ る.
5.4.2 母 関 数 との 関 係 正 準 変 換 で あ る た め の 条 件 を シ ン プ レ クテ ィ ッ ク変 数Zで(5.4.2)'の に 表 す と,母 関 数 との 関 わ りが 不 透 明 に な るの で,そ
よう
の 点 に つ い て補 足 して お
こ う. 縦 ベ ク トル で表 した 正 準 変
は正準方程 式
(5.4.8)
また は を満 たす.こ
の 方 程 式 は,い
位 空 間,zを2n個
さ さか 技 巧 的 で あ るが,Mそ
の もの を2n次
元配
の一 般 化 座 標 とす る仮 想 的 な系 の ラ グ ラ ン ジア ン
(5.4.9) に た い す る ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 と し て 得 ら れ た も の と考 え る こ と が で き る.し た が っ て(5.4.8)は
ハ ミル トン の 原 理
よ り導 か れ る(こ れ は2n個
の δzμ が 独 立 で か つ 端 点 で
を 要 求 して い
るの で あ り,し た が って 相 空 間 上 の 修 正 され たハ ミル トン の 原 理 で,さ 点 で 同 様 に,変
ら に端
と限定 した もの に相 当 す る). 換 後 の 変 数Zが
同 型 の 正 準 方 程 式 を満 た す た め に は,変 換 さ れ
た ハ ミル トニ ア ン をK(Z,t)と
し て,新
しい ラ グ ラ ン ジア ン
が や は りハ ミル トンの 原 理
を 満 た さ な け れ ば な ら な い.し
た が って
(一般 に は被 積 分 関 数 は,λ を任 意 の 定 数 と してL*-λL*で =1の
よ い が,と
くに λ
もの の み を正 準 変 換 と い う).両 端 を 固 定 し て い る か ら,こ れ は 被 積 分
関 数 がzとZの
関 数 の全 導 関 数,す
なわ ち
で あ る こ と を示 して い る.こ こ で
な ど に 注 意 す る と,
こ の 式 は,微 分 形 式 で 表 し て
(5.4.10)
こ の こ とは,変 数 変 換
が
(5.4.11) を 母 関 数 とす る 正 準 変 換 で あ る こ と を 意 味 し て い る. 当 然 で は あ る が,(5.4.10)の
と な り,(5.4.2)',
5.4.3
(5.4.6)が
外 微 分 を と りd(dG)=0を
考 慮す る と
た だ ち に 導 か れ る.
正 準 変 換 で あ るた め の 十 分 条 件
シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 条 件(5.4.2)な
い し(5.4.6)は,実
は正準 変換 で あ る
た め の 十 分 条 件 で も あ る.こ 旧 変 数zは
の こ と は 次 の よ う に 示 さ れ る.
正 準 方 程 式(5.4.8)を
満 た す.こ
こ で変 数 変 換
(5.4.12) に お い て 変 換 行 列 件(5.4.6),
が シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク条
(5.4.6)'を
満 た す と す る.こ
の 条 件 は Ω=-Ω
を使 って書 き直
せ ば
(5.4.13) こ こ にMは
正 則 で あ る か ら,上
式(5.4.12)は
逆 に 解 け てzβ=ψ
β(Z,t)と
表
さ れ る. 新 変 数Zの
満 た す 方 程 式 は,(5.4.12)を
微 分 し て(5.4.8)を
用 い ると
(5.4.14) た だ し,
な ど は,す
こ で
べ て 縦 ベ ク トル.こ
と記 す と
で あ る か ら,(5.4.13)す
な わ ち
を 使 え ば,(5.4.14)は
(5.4.15) と表 さ れ る. さ て証 明 す べ きこ とは,新 変 数Zが
正 準方程 式
(5.4.16) を 満 た す こ と,言
い か え れ ば 新 し い ハ ミル トニ ア ン と し て こ の よ う なK(Z,t)
が 存 在 す る こ と で あ る. 変 換 φ:
が 陽 にtに
自体 が(5.4.16)を
与 え て い る か ら,す
変 換 φ が 陽 にtに
よ ら な い 場 合 に は ∂φ/∂t=0で
あ っ て(5.4.15)
で に 証 明 は 終 っ て い る.
よ る 場 合 に は,(5.4.15),
(5.4.16)を
見 くらべ る と
(5.4.17) と な る 関数Fが
存 在 す る こ とが 示 され れ ば よ い.言 い か え れ ば1形 式
(5.4.18) を考 え た と きに,f=dFと そ の ため にfの
な る関 数Fが
存 在 す る こ とで あ る.
外微分
を計 算 して み よ う.各 成 分 は
第1,第3項 え て,行
は 相 互 に キ ャ ン セ ル,ま 列 Ω の 反 対 称 性
た 最 終 項 で は,ダ を使 う と
最 後 に ふ た た び シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 条 件(5.4.6)を
で あ る こ とが わ か り,ポ こ と が で き る.す
ア ン カ レ の 補 題 よ り,あ
な わ ち(5.4.17)が
ミー 添 字 μν を 入 れ か
使 っ た.こ
るFが
示 さ れ,ZはK=H'+Fを
う して
存 在 しf=dFと
書 く
ハ ミ ル トニ
ア ン と す る 正 準 方 程 式 を満 た す. 以 上 で,正
準2形
式 の 不 変 性 す な わ ち シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 条 件 が,正
準変換
で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 で あ る こ と が 示 さ れ た. な お(5.4.17)は,上
と な る 関 数W(Z,t)が
と同様 に 考 え
存 在 す る こ と を 示 し て い る.し
た が っ て 新 し い ハ ミル
トニ ア ン は
(5.4.19) と書 け る.
5.4.4 正 準 変 換 群 正 準 変 換 の全 体 が 群 を構 成 して い る こ とは,シ
ンプ レ クテ ィ ッ ク条 件 を使 え
ば簡 単 に 示 され る.正 準 変 換 の合 成
,す
に た い す る合 成 変 換 換 行 列Mの
を満 たす.す
要 素 は,そ
なわち二つの正準変換
を考 え る.こ の 合 成 変 換 の 変 れ ぞ れ の 変 換 行 列 をM1,M2と
して
な わ ち 正 準 変 換 の合 成 は,シ ン プ レ クテ ィ ッ ク行 列 で あ る変 換 行
列 の 積 に よ り表 現 され て い る. しか る に2n×2nの
シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク行 列 の 全 体 か ら な る 集 合Sp(n)は
群 を なす(こ の 群 をR2n上
で の 実 シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク群 とい う).実 際
(ⅰ)
な ら ば で あ るか ら
(ⅱ) Miは 行 列 で あ るか ら (ⅲ) I(単 位 行 列)に た い して (ⅳ) す べ て のM∈Spに
た い して
(5.4.7)が
存 在 し,
ゆ えM し たが っ て,準
変 換Tの
(ⅰ)
全 体 か らな る集 合CTに
た い して も
な らば
(ⅱ) (ⅲ) T0(恒 等 変 換)∈CT, (ⅳ) す べ て のT∈CTに が 成 り立 ち,CTそ
た い してT-1が
の もの が群 を なす.こ
存 在 し,
れ を正 準 変 換 群 とい う.
5.5 正 準 不 変
式
5.5.1 積 分 不 変 式 一 般 に どの よ う な変 換 も,変 換 の さ い に 不 変 に 留 ま る もの(不 変 量)に
よっ
て 特 徴 づ け ら れ る.そ
れ ゆ え 正 準 変 換 を 特 徴 づ け る も の は,正
て 不 変 な 量 で あ る.そ
れ ら を 正 準 不 変 式(canonical
い ま て い る.そ
invariants)と
が 正 準 変 換 で あ る と す れ ば,条 こ で 拡 大 相 空 間M×R上
準変換 にたい し い う.
件(5.3.6)を
の 任 意 の 閉 曲 線lに
満 た し
そ っ た(5.3.6)式
の 積 分 を考 え る と
(5.5.1) が 成 り 立 つ.し
たが っ て 積 分
(5.5.2) は 正 準 不 変 式 で あ る.こ で の 閉 曲 線lに
こ にd/dλ
と る こ と に よ り,な
はlの
接 ベ ク トル.さ
い しM上
ら にlを
で 考 え る こ と に よ り,積
同一 時刻 分
(5.5.3) も 正 準 不 変 式 で あ る こ と が わ か る. 逆 に,あ
る 変 換
とな る 関数Wが
で 積 分(5.5.2)が
不 変 な らば
存 在 す るか ら,そ の 変 換 は確 か に正 準 変 換 で あ る.
こ れ らの積 分 式 は,以 前 に 系 の 時 間 的 発 展 に た い し て不 変 で あ る こ とが 示 さ れ,そ
れ ぞ れ 「カ ル タ ンの 積 分 不 変 式 」 「ポ ア ン カ レ の積 分 不 変 式 」 と名 づ け
ら れ た も の で あ る(§5.2.2).例5.3.4で
見 た よ うに,正 準 方 程 式 に の っ とっ
た系 の 時 間 的 発 展 は正 準 変 換 の 一 種 で あ るか ら,正 準 変 換 に た い し て不 変 で あ れ ば 系 の 時 間 的 発 展 に た い し て も不 変 な こ とは 当 然 で あ る.
5.5.2
ラ グ ラ ンジ ュ括 弧
ま た ス トー ク ス の 定 理 を 用 い れ ば,上
記 の 正 準 不 変 式(5.5.3)は
(5.5.4) と 表 さ れ る.た
だ しlで
メ ー タ を(ξ,η)と
し た.こ
囲 ま れ た 面 をA,ま こ で 閉 曲 線lは
た そ の 面 上 の 点 を指 定 す るパ ラ 任 意 で あ る か ら,双1次
式
(5.5.5) も正 準 不 変 式 で あ り,こ
れ は 双1次
共 変 式(bilinear
こ こ に δ は ξ の 変 化 に よ る 微 分 を,δ'は も ち ろ ん 上 式 の()の ジ ュ 括 弧(Lagrange
covariants)と
η の 変 化 に よ る微 分 を 表 す.
中 の 量 自体 も正 準 不 変 式 で あ る.こ bracket)と
い わ れ る.
い い,〔 ξ, η〕で 表 す.す
の量 をラ グラ ン
なわ ち
(5.5.6) (p,qの 順 序 を逆 に 定 義 して い る テ キ ス トが 多 い の で,注 意 す る よ う に).上 の 議 論 よ り明 らか な よ うに,ラ
グ ラ ン ジュ 括 弧 は 座 標 系 に よ ら な い形 で は
(5.5.7) と 表 す こ とが で き る.と と し た と き,ラ
く に座標
をz=(q,p)に
と り,
グ ラ ン ジ ュ 括 弧 は(5.5.6)の
よ う に 表 さ れ,こ
の こ
と を と くに 〔ξ, η〕zな い し 〔ξ, η〕(q, p)のよ う な 書 き 方 を す る. ま た ξ,η は 任 意 で あ る か ら,と
くに 正 準 変 数 に と っ た も の,す
な わち
(5.5.8) を 基 本 ラ グ ラ ン ジ ュ 括 弧 と い う.ち 変 数 で は な い)座 (4.2.4)は,ラ
標(x1,x2,…,x2n)を
な み に,相
空 間 の 座 標 と し て 一 般 の(正
と っ た と き の 正 準2形
準
式 の 成 分 ωμν
グ ラ ン ジ ュ括 弧 を用 い る と
(5.5.9) と 表 さ れ る. 基 本 ラ グ ラ ン ジ ュ 括 弧 が 確 か に 正 準 不 変 式 で あ る こ と は,直
接的 には次 のよ
う に 示 さ れ る. 一 般 の 変 数 変 換 をz=ψ(z0)と
表 し,
に と も な う ラ グ ラ ン ジ ュ括 弧 の 変 換 式 は 同 様 にg(z)=g(z0)と
,逆
して
変換
た だ し こ こ で は,
.し
た が っ て 基 本 ラ グ ラ ン ジュ 括 弧
の変 換 式 は
と くに 変 数 変 換 が 正 準 変 換 の 場 合,変
換 行 列M=(Mμ
ν)は条 件tMΩM=Ω
を満 たす ゆ え,基 本 ラ グ ラ ン ジ ュ括 弧 は 不 変 に保 た れ る.ま た逆 に,基 本 ラ グ ラ ン ジ ュ 括 弧 を不 変 に す る変 換 で あ れ ば,変 換 行 列 は
を満 た す か
ら,そ の 変 換 は正 準 変 換 で あ る.し た が っ て 基 本 ラ グ ラ ン ジ ュ 括 弧 の 不 変 性 が,正
準 変 換 で あ る た め の 必 要 十 分 条 件 に な る.
また上 式 よ り,変 数 変 換
が正 準変換 であれば
が 成 り立 つ.
5.5.3
斜
交
積
と こ ろ で
は,そ
れ ぞ れ2次
あ る が,ξ,η
元 曲 面 上 の
.と い う曲 線 の 接 ベ ク トル で
は 互 い に 独 立 で あ る か ぎ り任 意 の パ ラ メ ー タ で あ る か ら,そ
ぞ れ を 任 意 の ベ ク トル で 置 き か え て も よ い.そ
こ で そ れ ら を2個
で 置 きか え た もの
れ
の ベ ク トル
,す な わ ち
(5.5.10) を ベ ク トルu,υ
の 斜 交 積(skew
product)と
い う.こ
れ は 歪 対 称 ・双 線 形 で あ
る:
(5.5.11)
も ち ろん 斜 交 積 は2個
のベ ク トル(反 変 ベ ク トル)u,υ
の2形
式(2階
共変
テ ン ソ ル)に よ る写 像 で あ る か ら,配 位 空 間 の 局 所 座 標 系 の 変 換(点 変 換)に た い して不 変 で あ るが,上 の 議 論 か ら して,よ 変 な の で あ る.こ の こ とは 直 接 的 に は,次 座 標 変 換
に と もな っ て,ベ
の よ う に 書 き直 さ れ る とす る(υ
と 変 換 さ れ る(こ
る か ら,斜
の よ う に示 さ れ る.
ク トルuが
も 同 様).す
).こ
数 変 換
とも
の と き斜 交 積 は
が 正 準 変 換 な ら ば,tMΩM=Ω
で あ
交 積 は 確 か に 正 準 不 変 式 で あ る.
こ の 斜 交 積 は,正
準2形
式 Ω を も つ 相 空 間Mに
シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 内 積 と も い わ れ る.計 (N,g)の
な わ ち そ の 成 分 はu,υ
こ で は
の よ う に 変 換 さ れ る.変
り広 い正 準 変 換 に た い して も不
量 テ ン ソ ルgを
座 標 変 換 が リー マ ン 内 積を
る よ う に,シ
お け る 一 種 の 内 積 で あ り, も つ リー マ ン 空 間
不 変 に す る こ と で特 徴 づ け られ
ン プ レ ク テ ィ ッ ク 形 式 Ω を も つ シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク 空 間(M,Ω)
の 座 標 変 換 が,シ
ン プ レ ク テ ィ ッ ク 内 積<Ω│u,υ>を
不 変 に す る こ とで 特 徴 づ
け ら れ る の で あ る.
5.5.4
リ ュ ウ ヴ ィ ル の 定 理(再
論)
と こ ろ で,シ
ン プ レ ク テ ィ ッ ク 条 件tMΩM=Ω
が 得 ら れ る(こ
こ にdetΩ=1を
使 っ た).と
の 両 辺 の 行 列 式 を とれ ば
こ ろ が 実 は,変
換行列 は
(5.5.12) を満 た す.こ 2n個
の こ とは,斜 交積 を使 え ば 次 の よ うに 証 明 で き る.
の 独 立 なベ ク トル(縦 ベ ク トル)を
の ベ ク トル を正 準 変 換 し た も の を
,ま た そ れ ぞ れ と し,こ れ ら を列 成 分 とす る
行 列 を
で 表 す.こ
の とき
(a) 他 方
は,斜
素 と す る2n×2n反
対 称 行 列 で あ り,detΩ=1ゆ
交 積[u(α),u(β)]sを(α,β)要 え,こ
の 両 辺 の行 列 式 は
しか る に偶 数 次 の 反 対 称 行 列 の 行 列 式 は そ の 要 素 の 多項 式 の2乗 したが っ てdetuは か らdetuも
に 等 し い*1.
斜 交積 の 多項 式 で あ る.し か も斜 交 積 は正 準 不 変 量 で あ る
正 準 不 変 式 で あ る.す な わ ち
(b) 上 の(a)(b)を
比 べ てdetM=1.
この こ とは相 空 間 の体 積 要 素
が正 準 不 変 式 で あ る こ と を示 して い る.実 際,正 準 変 換
に と も な っ て この体 積 要 素 は
と 変 換 さ れ る.右 が,そ …
辺 で は α,β,…,ν の2重
添 字 は1か
れ ら の う ち 等 し い も の が あ れ ば 外 積 が0に
,ν)が(1,2,…,2n)の
な る か ら,結
置 換 に 等 し く な る 項 だ け 残 る.右
外 積 の 順 序 を 入 れ か え,さ
ら にdetM=1を
ら2nま
での 和 を と る 局,和
は(α,β,
辺 の この 残 った 項 の
使 えば
(5.5.13) と な り,正 準 変 換 に た い して 体 積 要 素 は(向
き を含 め て)確 か に 不 変 で あ る.
次 の よ うに考 え て も よい;
*1 た と え ば 『2次 形 式 』(p .220脚
注2)定
理4.7,『
線 型 代 数 学 』(p. 220脚
注2)p.
81参 照 .
以 下 同 様 に して,n個
の Ω の 外 積 に た い して
(5.5.14) と こ ろが Ω は正 準 変 換 で 不 変 ゆ え,体 積 要 素dVも
不 変 で あ る.
と くに正 準 変 換 が 系 の 時 間的 発 展 で あ る と き,こ の 結 果 は 時 間 的 発 展 に た い し て相 空 間 の 体 積 が 不 変 に な る と い う リュ ウ ヴ ィ ル の 定 理(§4.4.4)を
表 し
て い る. た とえ ば,正 準 方程 式 が
で与 え られ る調 和 振 動 子 を考 え る.(q0,p0)を
こ の 場 合,
初 期 条件 とす る解 は
の 変 換 が 線 形 変 換 ゆ え,こ
(∂z/∂z0)であ り,直 接 た しか め ら れ る よ う にdetM=1.こ の4点
のMが
変 換行 列
の変換 で相 空 間上 を 頂 点 とす る 面 積
⊿ q⊿pの 長 方 形 内 の 点 を始 点 とす る解 は,時 間tの 後 に
を 頂 点 と す る4辺 る.
形 に 移 り,そ
の 面 積 は(detM)⊿q⊿p=⊿q⊿pで,不
変 で あ
索
引
第I巻:1∼305頁,第II巻:307∼577頁.
ア
行
運 動 方程 式 R3内 で の ―
15, 19
R(3) 339
円錐 振 子 の―
ア イ コナ ー ル方 程 式 371
回転 座 標 系 で の―
ア イ ン シ ュ タ イ ン の 規 約 6
球 面 振 子 の― 10, 103 極 座 標 で 表 した― 108
ア トラ ク タ ー 237 ア ー ノ ル ドの定 理 430
23 109
ケ プ ラ ー運 動 の―
192
ア フ ィ ン接 続 31
減 衰 振 動 の―
ア フ ィ ン変 換 344
相 対 論 的―
安 定(力
電 磁 場 中 の荷 電 粒 子 の― 110, 147, 559 ニ ュ ー ト ンの ― 1,5, 155, 535
学 系 の 解 の) 227
鞍 点 236
239, 292, 396 560, 562
配 位 空 間 で の― E(3) 340, 538 ― ― ―
に付 随 す る リー代 数 344, 350 の1径 数 部 分 群 342 の 無 限 小 変 換 342
1形 式,1次
外 微 分 形 式 82
1径 数 正 準 変換,1径
数 正 準 変換 群 292, 311
1径 数 部 分 群 61, 308, 340 E(3)の ― 342 SO(3)の
8
運 動 量 120
― 342
1径 数 変 換 群 50, 226, 308, 328 1次 拘 束 条 件,1次
の拘 束 量 499
―
積 分 130, 191
―
保 存 則 124, 130
AGS(交
換 勾 配 シ ン ク ロ トロ ン) 251
HJ方 程 式(ハ
ミル トン-ヤ コ ビ 方程 式) 358
SI単 位 系 110 SO(3)
339, 538
―
に付 随 す る リー代 数 344, 348
― の1径 数 部 分 群 342 SO(3)×SO(3) 350
1ベ ク トル 66 一 般 化 運 動 量 120
永 年 項 461
SO(4)
350
一 般 化 座 標 4
永 年 摂 動 455, 461, 468
一 般 化 速 度 43 一 般 化 ポ テ ン シ ャ ル 110
永 年 変 化 461 エ デ ィ ン トンの イ プ シ ロ ン 78
一 般 化 力 7
エ ネ ルギ ー 積 分 126
井 戸 型 ポ テ ン シ ャル 425
エ ネル ギ ー 保 存 則 126, 195 遠 心 力 109
上 へ の1対1写 運 動 の第1法
像 38 則 535
運 動 の 第2法 則 535 運 動 の 第3法 則 536, 562
― ポ テ ン シ ャ ル 110, 263, 355, 397 円 錐 振 子 23 O(3) 339, 535
オ イ ラー 角 117
ガ リ レ イ ・ブ ー ス ト 189, 536
オ イ ラー の こ ま 245, 409
ガ リ レ イ変 換 191, 290, 536 カ ル タ ンの 原 理 283
オ イ ラー 方 程 式 剛 体 の 回 転 につ い て の― 剛 体 の 自 由 回転(オ ― 245
118, 153
イ ラ ー の こ ま)の
換 算 質 量 130 慣 性 運 動 20, 203 慣 性 系,慣 性 座 標 系 535
対 称 な こ まの 自 由 回転 の―
413
変 分 法 の ― 175, 206 オ イ ラー-ラ グラ ン ジュ 方 程 式 175 応 力,応 力 テ ン ソ ル 76 カ
慣 性 主 軸 116 慣 性 テ ン ソ ル 116 慣 性 の 法 則 20, 535 相 対 論 的 な―
行
566
慣 性 力 109 完 全 解(HJ方
程 式 の) 364
解 曲 線 49
完 全 可 積 分,完 全可 積 分系 400
外 積 74
完 全 形 式 91
回転 運 動 と しての ― 空間の―
265, 418
簡 約(相
空 間の) 351, 517
簡 約(配
位 空 間 の) 128
124, 323, 338
剛体の― 113 ベ ク トル場 の―
幾 何 学 的 対 象 30, 39 90
幾 何 学 的対 称 性 189
回 転 対 象 124 外 微 分 88
幾 何 光 学 370
ガ ウ ス単 位 系 110 ガ ウス の 定 理(発 散 定 理) 97
擬 ス カ ラ ー 79
角 運 動 量 113, 120, 124 ― 保 存 則 124 , 130, 193
基 底 場 47
角 速 度 115, 117, 245
軌 道 面 傾 斜 角 131, 407
拡 大 状 態 空 間 169, 531
軌 道 要 素 の摂 動 方 程 式 458 擬 ベ ク トル 79
拡 大 相 空 間 217, 531
擬 座 標 150, 158 擬 速 度 150, 158 擬 テ ン ソ ル 79
拡 大 配 位 空 間 167, 195 ― 上 の ラ グ ラ ン ジ ア ン 168 ,531
基 本1形 式,基 本2形 式 145, 169, 177, 196
角 変 数 420, 435
基 本 ラ グ ラ ンジ ュ括 弧 301
隠 れ た 対 称 性 189, 192, 334, 336, 439
吸 引 領 域 237
基 本 ポ ア ソ ン括 弧 315
カ シ ミヤ 演 算 子 348
求積 法 399
渦 状 点 233
球 面 振 子 11
渦 心 点 234
強 集 束 250
仮想仕事 6 ― の原理 7
共 変 性 25, 130, 542 ガ リ レ イ― 537
仮 想 変 位 6, 102, 154
ラ グ ラ ンジ ュ 方 程 式 の―
仮 想 ポ テ ン シ ャ ル(拘 束 力 に た い す る) 154, 180
共 変 テ ン ソ ル 28, 71, 548
加 速 度 8, 15, 34
共 変 ベ ク トル 27, 68, 548
括 弧 積 343 可 分 離,可 分 離 系 406 ガ リ レ イ共 変 性 537
共 鳴 476
ガ リ レ イ群 538 固有―
538
斉次― 538 ガ リ レ イ代 数 539 ガ リ レ イの 相 対 性 原理 537
106
共 変 微 分 33
共 約 438 共 役 120 共役 空 間 66 局 所 座 標,局
所 座 標 系 4, 37
極 値 曲線 165 近 日点 引数,近 地 点 引数 135, 194, 408 近 日点 経 度 463
空 間 成 分 548
剛 体 113
く まで 型 分 岐 266 グ リー ンの 定 理 97
―
の 回 転 の 方 程 式 118, 153
―
の 自由 回 転 245
ク ロ ネ ッ カー の デ ル タ 10, 78
交 代 化,交 代 化 作 用 素 73
ク ー ロ ン力 387, 390
交 代 勾 配 シ ン ク ロ トロ ン(AGS) 交 代 積 74
群 50
251
交 代 テ ン ソル 72 KAM定
理 478
剛 体 振 子 180, 417
系 が 許 容 す る写 像 187
勾 配(ス
計量
カラ ー 場 の) 90
―
テ ン ソ ル 29, 85, 215, 549
古 典 力 学 的 因 果 律 105 コベ ク トル 66
―
場 216
固 有 ガ リ レ イ群 538
不定―
550
固 有 時 550
ヤ コ ビ― 201 リー マ ン― 85, 215
固 有 値 問題 331 固 有 ロ ー レ ン ツ群 551 コ リ オ リ力 109
経 路 118 経 路 積 分(フ ァ イ ン マ ンの) 383 ゲ ー ジ 軌 道 525
コ ワ レフ ス カ ヤ の こ ま 409 サ
ゲ ー ジ 固 定 525 ゲ ー ジ 自由 度 522
歳 差 運 動 140
ゲージ変換
最 小 作 用 の 原 理 199
拘 束 系 の―
522
電磁 場 の―
112, 291, 557
ラ グランジアンの ―
作 用 196 112
結 節 点 234 ケ プ ラ ー 運 動,ケ プ ラ ー問 題 133, 193, 408 ―
行
と縮 退 440
作 用 積 分 165 拡大相空 間上の―
276
拡 大配 位 空 間 上 の ―
171
相 空 間 上 の― 273 作 用 ・反 作 用 の 法 則 114, 536, 562
―
とヤ コ ビ の原 理 206
―
の 作 用 変 数 ・角 変 数 440
作 用 変 数 421, 434 3次 元 回 転 群(R(3))
339
―
の 摂 動 方 程 式 457
3次 元 直 交 群(O(3))
339
― ―
の 対 称 性 193, 349 の 調 和 振 動 子 との 関 係 334
3次 元 特 殊 直交 行 列 群(SO(3))
―
の ハ ミル トニ ア ン 440, 441
3次 元 ユ ー ク リ ッ ド群(E(3))
― の ラ グ ラ ン ジ ア ン 193, 334 ケ プ ラ ー の 軌 道 要 素 135, 408, 457
3次 元 並 進 群(T(3))
G-不 変 329, 351
ケ プ ラ ー の 第1法 則 135, 408 ケ プ ラ ー の 第2法 則 133, 206
時 間 成 分 548
ケ プ ラ ー の 第3法 則 136
時 間 に依 存 す る 摂 動 446 自己 共 役 演 算 子 329, 448
ケ プ ラ ー 方 程 式 137
時 間 に依 存 しな い 摂 動 446, 475
減 衰 振 動 239, 292, 396
事 象 534 指 数 型 の 相 互 作 用 410
交 換 子 55, 449 光 線 370
指 数 写 像 61, 308, 320, 342
構 造 安 定 257
実 効 ポ テ ン シ ャル 132
構 造 定 数(リ
実 シ ン プ レク テ ィ ッ ク群 299
ー 代 数 の) 57
拘 束 系 499 ―
の ラ グ ラ ン ジ ュ 方 程 式 155
拘 束 条 件 4, 153, 499 拘 束力 5, 18, 20, 154
339
340
自然 基 底 45, 81
弱 集 束 143 斜 交 積 302, 314 周 期 227, 418, 421, 435 ケ プ ラ ー 運 動 の― 136, 409
340
周期運動
正 準1形 式 215, 217
418
周 期 解 227 重 心 積 分 130, 190
正 準 運 動 量 212
重 心 定 理 130
正 準 座 標 212
修 正 ラ グ ラ ン ジ ア ン 128
正 準 摂 動 法 468 正 準2形 式 218
正 準 化 493
自 由度 5 ―
正 準 不 変 式 300
の削 減 128, 283, 351
自 由粒 子 の ラ グ ラ ン ジ ア ン 203, 367 ―(相 対 論 で の) 565 主 慣 性 モ ー メ ン ト 116 縮 退 438 2次 元 ケ プ ラ ー 運 動 と― 2次 元 調 和 振 動 子 と― 縮 約(テ
440 443
ン ソル の) 548
受 動 的 な変 換 309 シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ーの 量 子 化 381 シ ュ レ ー デ ィ ン ガー 表 示 451 シ ュ レ ー デ ィ ン ガー 方 程 式 381, 452
正 準 変 換 287 ―
で あ る ため の十 分 条 件 296
― ―
で あ る ため の必 要 条 件 293 であ る ため の 必 要 十 分 条 件 298
,302, 315
正 準 変 換 群 299 正 準 変 数 212 正 準 方 程 式 212 ―
の 局 所 座 標 系 に よ らな い 表 現 221, 279
拡大相空間上の― 278, 532 ポ ア ソ ン括 弧 で 書 か れ た―
318
正 準 力 学 215
循 環 座 標 121
正準 力 学 系 225, 255
準 周 期 的,条 件 付 き周 期 的 437 昇 交 点 407
斉 次 ロ ー レ ン ツ群 552 生 成 関 数(ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル場 の)
昇 交 点 経 度 131, 407 状 態 空 間 105
正 則(ラ
焦 点 235
世 界線 554
章 動 140
積 分 曲 線 49
衝 突 径 数 387 ジ ョ ル ダ ン標 準 形,ジ ョル ダ ン ・ブ ロ ッ ク 233
接 空 間 44
自律 系,自
接 触 軌 道 要 素 458
励 系 225
自励 振 動 494
223 グ ラ ン ジ ア ンが) 105, 209, 498
積 分 不 変 式 281, 300
接 続,接
続 係 数 31
真 近 点 離 角 135, 408 シ ン ク ロ トロ ン 141
絶 対 時 空 の 前 提 535 絶 対積 分 不 変 式(ポ ア ン カ レの) 281, 300
振 動 264, 418
摂 動,摂
動 法 446
シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク行 列 295
摂 動 関 数 459
シ ンプ レ ク テ ィ ッ ク形 式 219
接 バ ン ドル 46
シ ンプ レ ク テ ィ ッ ク写 像 294 シ ンプ レ ク テ ィ ッ ク条 件 295
接 ベ ク トル 45 ゼ ー マ ン効 果 480
シ ン プ レ ク テ ィ ッ ク多 様 体 219
遷 移振 幅 382
シ ンプ レ ク テ ィ ッ ク内 積 303, 314
線 運 動 量 120
シ ンプ レ ク テ ィ ッ ク変 数 220
漸 近安 定(力
学 系 の 解 の) 227
線 形 化 方程 式(不 水 星 の 近 日点 移 動 462, 465 ス カ ラー 25, 548
線 形 力学 系 331 全 射 38
ス ク レ ロ ノ ー マ ス 4, 100 ス トー クス の 定 理 96, 97
線 積 分 93
動 点 の まわ りの) 230, 255
全 単 射 38 全 導 関 数 83
正 規 直 交 76
全 ハ ミル トニ ア ン 508, 569, 572
整 合性 の 条 件 502
全 微 分 82
静 止 エ ネ ルギ ー 555
全 変 分 173
斉 次 ガ リ レ イ群 538
―
と 正準 摂 動 法 478
双 曲不 動 点 236
―
と定 数 変化 法 453
相 空 間 214 ― の体 積 要 素 304
―
と ハ ミル トンの 原 理 181
双1次
共 変式 301
ダ ラ ンベ ー ル の原 理 102
相 互 作 用 表 示 452
ダ ル ブ ー の定 理 219, 519
双 線 形 性 56, 316
単 射 38
双 線 形 写 像 70
短 周 期 摂 動 468
相 対 性 原 理 542 ガ リ レ イの ― 特殊―
断熱 減 衰 427 537
断熱 定 理 423
553
断熱 不 変 性 423
相 対 積 分 不 変 式(カ
ル タ ンの) 281, 300
相 対 論 的 運 動 量 562
力 の モ ー メ ン ト 114, 153
相 対 論 的 運 動 方程 式 560, 562 相 対 論 的 な慣 性 の 法 則 566
地 球 の 偏 平 性 460 中心 力 129, 354, 406
双 対 基 底 67
長 周 期 摂 動 468
双 対 空 間 66
長 半 径 135, 408
双 対 内 積 69, 81
調和振動子
相流
50, 226
測 地 球 376 測 地 線 20, 202 ―
の 方 程 式 20, 35, 203
測 地 的 曲率 19 測 地的 距 離,測 地 的 に等 距 離 375 測 地 場 357, 361 速 度 の 合 成 則(ロ
―
固 有 値 問 題 と して の扱 い 332
― ―
と縮 退 443 と リ ュ ウ ヴ ィル の定 理 305 ,323
― の ケ プ ラ ー問 題 と の 関 係 334 ― の 作 用 変 数 ・角変 数 425 ― ―
ー レ ン ツ 変換 に お け る) 547
の 対 称 性 191, 347 の ハ ミル トニ ア ン 127
ゾ ンマ ー フ ェ ル トの 原 子 模 型 575 タ WKB近
行
似 382
,323, 332, 369,
398, 425, 443 ― の ハ ミル トン の主 関数 370 の ラ グ ラ ン ジ ア ン 191
―
等方―
191, 347
直 交 行 列 339
第1基 本 形 式 14
沈 点 236
第1基 本 量 14 球 面 の―
22
強 い 等 式 502
第1積 分 119 第1種
ク リ ス トッ フ ェ ル記 号 9, 15
球 面 の―
第1種 の 拘 束 条 件,第1種 対称 性 123 ケプラー運動の―
δ-変 分 173, 267 T(3) 340
11 の 量 511
349
等 方 調 和振 動 子 の ―
191, 347
T(4) 538 定 数 変 化 法 446 ― の 基 礎 方 程 式 447 デ ィ ラ ッ ク括 弧 514
対 称 テ ン ソル 71
デ ィ ラ ッ クの 予 想 524
― ・カ レ ン ト 192, 334 第2基 本 形 式 17
デ イ ラ ッ クの 量 子 化 329, 381
第2基 本 量 16
停 留 曲 線 165
第2種 ク リス トッ フ ェ ル記 号 10, 15
電 荷 保 存 則 556
球 面 の―
22
第2種 の拘 束 条 件,第2種
デ ィ リ ク レの ひ き出 し論 法 437
電 磁場 テ ン ソル 558 の量 511
楕 円不 動 点 234 多重 周期 運動 430 ダ フ ィ ン振 動 子,ダ フ ィ ン方 程 式 180
電磁 場 の ゲ ー ジ変 換 112, 291, 557 テ ン ソル 28, 71, 78, 548 テ ン ソル 積 70 テ ン ソル 場 84
伝播 関 数 382
ケプ ラー 運 動 の ―
点 変 換 106, 170, 289
減衰振動の―
440, 441
等 エ ネル ギ ー 面 197, 261
剛 体 振 子 の ― 417 こ まの― 409
292, 396
等 価 な ラ グ ラ ン ジ ア ン 112, 186
ダ フ イン振 動 子 の ―
等 時性 423
中 心 力 の も とで の 運 動 の ―
同 相 写 像 38
調和振動子の―
特 異 点(力
425, 443 電磁場中の荷電粒子の―
学 系 の) 227
特 異 ラ グ ラ ン ジ ア ン 498 特 殊 相 対 性 原 理 553
同(相
特 殊 相 対 性 理 論 553
453 403, 406
127, 323, 332, 369, 398,
対 論 的 な)―
127, 291
567
2体 相 互 作 用 の ― 353 ベ ー タ トロ ン振 動 の ― 426
戸 田 格 子 410
マ グ ネ トロ ン内 の 電 子 の―
ド ・ブ ロ イ波 205
442
モ ー ス ・ポ テ ン シ ャ ルの も とで の 運 動 の ナ
行
―
内 積 27, 85, 215 内 部 積 88
ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル場 223, 314
長 岡-ラ ザ フ ォー ド原 子 模 型 479 流 れ 50, 226 2次 拘 束 条 件,2次
427
量子力学の― 449 ハ ミル トニ ア ン ・フ ロ ー 257, 311 ハ ミル トニ ア ン力 学 系 225 ハ ミル トン形 式 の 力 学 215 ハ ミル トンの 原 理 165 ,171
の拘 束 量 506
2ベ ク トル 72 ニ ュー トン力 学 1,534
修 正 され た― 275, 500 ハ ミル トンの 主 関 数 184 ,291, 363 HJ方 程 式 の 完 全 解 との 関 係 367 一 様 な重 力 の も と で の運 動 の― 385
ネ ク タ イ ・ダ イヤ グ ラ ム 253 ネー ター ・カ レ ン ト 188, 192
自由 粒 子 の ―
ネー ター の 定 理 123, 185, 188 相 空 間 に引 き上 げ られ た―
368
調和振動子の― 370 ハ ミル トンの 特 性 関数 199, 363
328
ね む りご ま 140
HJ方 程式 の 完 全 解 との 関 係 378 一様 な重 力 の も と で の運 動 の ― 386
能 動 的 な 変 換 309
幾 何 光 学 にお け る― ハ
372
自由 粒 子 の ― 368, 378 ハ ミル トンーヤ コ ビ方 程 式(HJ方 程 式) 358 一様 な重 力 の も と で の 運 動 の ― 383
行
配 位 空 間 4, 101, 154 ハ イゼ ンベ ル クの 運 動 方 程 式 329, 449
簡 略 化 さ れ た―
ハ イゼ ンベ ル ク表 示 449
362
自 由粒 子 の― 368, 378 ケ プ ラ ー運 動 の― 441
ハ ウ ス ドル フ空 間 38 波 数 ベ ク トル 371
ク ー ロ ン場 中 の荷 電 粒 子 の 運 動 の ―
発 散(ベ
減 衰 運 動 の―
ク トル場 の) 90
397
波 動 関 数 380, 449
中心 力 の も と で の 運動 の―
波 動 方 程 式 370
調 和 振 動 子 の―
波 動 力 学 380 ハ ミル トニ ア ン,ハ ミル トン関 数 125, 211 ― が 不 変 329 一 様 な 重 力 場 中 の 運動 の ―
362
反 変 テ ン ソ ル 28, 71, 548 320
,383
回 転 す る リ ン グ に そ って 動 く質 点 の― 263 極座標表示での―
保 存 系 の― 汎 関 数 165
369
p形 式,p次
290, 406
クー ロ ン場 中 の荷 電 粒 子 の 運 動 の ―
反 変 ベ ク トル 26, 68, 548
388
外 微 分 形 式 86
pベ ク トル 73 PLK法 181, 455
406
388
引 き 戻 し 51
変 分 法 の 基 本 公 式 175, 197, 268
微 細 構 造 577 非 斉 次 ロ ー レ ン ツ変 換 552
相 空 間 に持 ち上 げ ら れ た―
269, 278
変 分 問 題 166
微 積 分 法 の 基 本 定 理 96 非 線 形 格 子 410
ポ ア ソ ン可 換 325
左 移動 57
ポ ア ソ ン括 弧 314
左 不 変 ベ ク トル場 58
運 動 量 成 分 の―
322
微 分 80
拡 大相 空 間 の―
532
微 分 可 能 多 様 体 37 微 分 散 乱 断 面積 390
相対論的― 574 レ ン ツ ・ベ ク トル 成 分 の― 350
微 分 写 像 51
ポ ア ソ ンの 定 理 330
微 分 同 相 写 像 39
ボ ー アーゾ ンマ ー フ ェ ル トの 量 子 条 件 423, 576
非 保 存 系 395 非 ホ ロ ノ ミッ ク な拘 束 157, 161
ポ ア ン カ レ群 552
標 準 座 標 系 219
ポ ア ン カ レ写 像 243
秤 動 264
ポ ア ン カ レ断 面 243 ポ ア ン カ レ の 再帰 定 理 262
フ ァラ デ ー 形 式 559
ポ ア ン カ レ の補 題 92, 99
フ ァ ン ・デ ル ・ポ ル 方程 式 494
ポ ア ン カ レ ・プ ロ ッ ト 243 ポ ア ン カ レ変 換 545
フ ェ ル マ ー の 原 理 205, 373 フ ォ ン ・ツ ァ イペ ル の摂 動 法 469, 482 フ ッ ク型 ポ テ ン シ ャ ル 134, 349, 397
相空間上 の― 573 ポ ア ン カ レ方 程 式 151
不 定 計 量 550
ホ イヘ ン ス の原 理 373
不 動 点 227 部 分 群 50
力 学 にお け る― 377 法 曲 率,法 曲率 半 径 19
不 変(ハ
ミル トニ ア ンが) 329
包 合 325
不 変(ラ
グ ラ ン ジ ア ン が) 123
方 向 微 分 41
不 変 集 合 227, 261, 351, 401 不 変 トー ラ ス 430 フ ロ ー 50, 226, 257
方 向 微 分 作 用 素 42 母 関 数(正 準 変 換 の) 289 ガ リ レ イ変 換 の― 290
分 岐 237
極 座 標 へ の 変換 の―
分 離 枝 265, 418
恒 等 変 換 の―
平均 運 動 136, 409
点変換の― 289 ポ ア ン カ レ変 換 の―
平 均 近 点 離 角 136 閉 形 式 91 平 行 移 動(曲
面 上の ベ ク トル の) 31
平 行 移 動(空
間 と時 間 の) 124, 190
573
保 存 系 125, 195 ― ―
で の ワ イ ス の 原理 199, 363 の ハ ミル トン-ヤ コ ビ方 程 式 362
保 存 則 119
平 衡 解 227
保 存 場 92
― の 安 定 ・不 安 定 233 ベ ク トル3 重 積 79
ホ ッ プ分 岐 238, 495
ベ ク トル積 79
289
289
ポ テンシャル 一般化― 110
ベ ク トル 場 47
井 戸 型 ―
ベ ー タ トロ ン 141
遠心力― 263, 355, 397 ク ロ ー ン ・― 387
ベ ー タ トロ ン振 動 143, 248, 426 ベ ル トラ ン の定 理 134 ,440
425
拘 束 力 に た い す る 仮 想―
154, 180
変換 群 307, 328
実効―
変 分 165
水 星 に働 く木 星 の 重 力 の― ダ フ ィン振 動子 の― 455
変 分 原 理 166
132 463
地球の重力場の― 中心力―
460
ヤ コ ビ の 原理 200 ヤ コ ビ の恒 等 式 56, 316
110, 129, 403
電 磁 場 中 の 荷 電 粒 子 の―
111
電 磁場の― 556 ニ ュ ー トン ・― 134 ,408 フ ッ ク型 ― モー ス ・ ― 4元 ―
134, 349, 397
ヤ コ ビ の定 理 365, 394 湧 点 236 ユ ニ タ リー変 換 329, 450
427 556
4次 元 座 標 544
掘 ・デ プ リ ・カ ー メ ル の摂 動 法 486 ホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 4, 153, 178 マ
行
4次 元 並 進 群 538 余 接 空 間 79 余 接 バ ン ドル 81, 213
マ グ ネ トロ ン 442
弱 い等 式 502 4元 運 動 量 555
マ シュ ー 方 程 式 480
4元 速 度 554
マ ッ クス ウ ェ ル形 式 559
4元 電 流 密 度 556
マ ッ ク ス ウ ェ ル の方 程 式 558
4元 ポテ ン シ ャ ル 556 ラ
ミ ン コ フス キ ー空 間 550
行
ミ ン コ フ ス キ ー方 程 式 562
ラ イ プ ニ ッツ の 規 則 42, 90, 316
向 きづ け が 可 能 95
ラ ウ シ ア ン 128, 196 ラ グ ラ ン ジ ア ン,ラ グラ ン ジュ 関 数 104 ― が 不変 123
無 限 小 回 転 341 無 限 小 ガ リ レ イ ・ブ ー ス ト 189 無 限 小 ガ リ レ イ変 換 539
― の ゲ ー ジ変 換 112 鉛 直面 内 の 振 り子 の― 509
無 限 小 正 準 変 換 311
回 転 す る リ ング にそ って 動 く質点 の―
無 限 小 平 行 移 動 190, 343
拡 大 配位 空 間 上 の ― 168, 531 仮 想 ポ テ ン シ ャル を含 め た ― 155
無 限 小 ポ ア ン カ レ変 換 552 無 限 小 ロー レン ツ ・ブ ー ス ト 545 無 限 小 ロー レ ン ツ変 換 551
極 座 標 で 表 した―
無 限 に 多 価 な第1積 分 284, 333, 437
ケプラー運動の―
無 視 し う る座 標 128
減 衰 振 動 の―
面 積 速 度 133
108
ク ロ ー ン力 の も とで の 荷 電 粒 子 の ―
剛体 の 回転 の―
262
387
193, 334
292, 396 117
固定 円 筒状 をす べ らず に転 が る円 筒 の ― 159
面 積 分 93
自 由粒 子 の ― モ ー ス ・ポ テ ン シ ャ ル 427 モ ー ペ ルチ ュ イの 原 理 199 モ ー メ ン ト関 数 123, 145, 313 ア フ ィ ン変 換 の ―
―
346
回転の― 124, 347 拡 大配位空間の―
ヤ コ ビ計 量 201 ヤ コ ビ積 分 126 ヤ コ ビの 完 全 積 分 364
571
ダ フ ィ ン振 動 子 の―
180
デ カ ル ト座 標 で 表 した ― 185
平 行 移 動 の ― 124, 347 ポ ア ン カ レ変 換 の― 573 モ ー メ ン ト写 像 123, 347 ヤ
203, 367
自 由粒 子 の(相 対 論 的)― 565 ス カ ラ ー場 と相 互 作 用 す る 粒 子 の(相 対 論 的)
行
107
中 心 力 に よ り相 互 作 用 す る2物 体 系 の ―
129 調 和 振 動子 の―
126, 191
電磁場 中の荷電粒子の―
111, 129, 291
電 磁 場 中 の 荷 電 粒 子 の(相 対 論 的)― 等 価 な― 111, 186, 357, 361 平 面 上 を転 が る コ イ ンの ― 161 ラ グ ラ ン ジ ュの こ まの ― ラ グ ラ ンジ ュ括 弧 301
138
566
ラ グ ラ ン ジュ 形 式 の 力 学 106
リ ー 変 換 322
ラ グ ラ ン ジュ の こ ま 138, 409
―
に よ る 摂 動 法 492
ラ グ ラ ン ジュ の 摂 動 方 程 式 456
リ ー マ ン 空 間,リ
ラ グ ラ ン ジ ュの 未 定 乗 数,ラ グラ ンジ ュの 未 定乗
リ ー マ ン 計 量 85, 215
数法
180, 500
リ ー マ ン 接 続 33
ラ グ ラ ン ジュ 方 程 式 101, 104 ―
ー マ ン 多 様 体 85
リ ミ ッ ト ・サ イ ク ル 229, 495
の 共 変 性 106
リ ャ プ ノ フ 関 数 239, 248
― の 局 所 座 標 系 に よ らな い 表 現 146, 177 拡 大 配位 空 間 で 表 さ れ た― 177 幾 何 学 的 に 表 され た―
リ ュ ウ ヴ ィ ル の 公 式 259 リ ュ ウ ヴ ィ ル の 定 理(可
積 分 形 に 関 す る) 352,
400
146, 177
拘束 系の― 155 ラザ フ ォー ド散 乱 387
リ ュ ウ ヴ ィ ル の 定 理(相 空 間 の 体 積 に 関 す る)
ラザ フ ォー ドの 公 式 390
量 子 化 329, 449
260, 303
ラ ック ス 表 示 410 ラ プ ラ スの 定 理(太
シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー の―
陽 系 の 安 定 に つ い て の)
デ ィ ラ ッ ク の ― フ ァ イ ンマ ンの ―
460
381
329, 449 364
ボ ー ア ーゾ ン マ ー フ ェ ル トの ―
ラ ーモ ア の 角 速 度 113, 443 ラ ーモ ア の 定 理 113
量 子 力 学 的 ポ テ ン シ ャ ル 381
リー 括 弧 55
ル ジ ャ ン ド ル 変 換 271
576
力 学 行 列 230 レ オ ノ ー マ ス 4, 101
力 学 系 225 リー 群 57 ―
レ ビ ーチ ビ タ 接 続 33 レ ビーチ ビ タ 変 換 335
の次 元 57
離 心 近 点 離 角 137
連 続 の 方 程 式 260,
離 心 率 135, 408 リー 代 数 56 ― の 構 造 定 数 57
レ ン ツ ・ベ ク トル 193, 335, 349
―
ロ ー レ ン ツ 群 551
の 次 元 56
E(3)に
付 随 す る―
371, 382, 556
344, 350
固 有 ―
551
斉 次 ―
552
非 斉 次 ―
552
SO(3)に 付 随 す る― 344, 348 SO(3)×SO(3)に 付 随 す る― 350
ロ ー レ ン ツ ・ゲ ー ジ 557
SO(4)に
ロ ー レ ン ツ 収 縮 546
付 随 す る―
350
ロ ー レ ン ツ 条 件 557
運 動 量 成 分 の作 る― 322 ガ リ レ イ群 に付 随 す る― 539 固 有 ポ ア ン カ レ群 に 付 随 す る― 固 有 ポ ア ン カ レ変 換 の 生 成 関 数 の―
ロ ー レ ン ツ ・ブ ー ス ト 545 ロ ー レ ン ツ 変 換 545, 547
553 574
ロ ー レ ン ツ カ 110, 559
固 有 ロー レン ツ 群 に 付 随 す る― 350, 553 斉 次 ガ リ レ イ 変換 の 生 成 関 数 の ― 541 第1積 分 の作 る― 336 ハ ミル トニ ア ン ・ベ ク トル場 の作 る― リー 群 に付 随 す る― リー 群 の ―
59
リー微 分 53, 57, 318
60, 343
338
ワ
行
ワ イ ス の 原 理 183, 279, 363 ― 保 存 系 で の 199 歪 対 称 性 56, 316 ワ イ ヤ ー シ ュ トラ ス の 過 剰 関 数 359 ワ イ ヤ ー シ ュ トラ ス の 十 分 条 件 359
著者略歴 山 本 義
隆
中 村 孔
1941年 大阪 府 に生 まれ る 1971年 東 京大学大 学院 理学 系研 究科 博士課程 中退 現 在 駿台 予備学 校 専任 講師
一
1938年 東京都 に生 まれる 1968年 東 京大学 大学 院 理 学 系研 究科博 士課程修 了 現 在 明 治大学 法学 部教授 理 学博 士
朝倉物理学大系1 解
析
力 学
1998年9月25日 2008年2月20日
Ⅰ
定価 はカバ ーに表示
初 版 第1刷
第7刷
著 者 山
本
義
隆
中
村
孔
一
倉
邦
造
発行者 朝 発行所 会 株社 朝 式
倉
書
店
東 京 都 新 宿 区 新 小 川 町6-29 郵 便 番 号 電 FAX
〈検 印 省 略 〉 C1998〈 ISBN
03(3260)0180
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無 断 複 写 ・転 載 を 禁 ず 〉 978-4-254-13671-5
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