第2版
運動 生理学20講 勝田
大石康晴 秋間
茂 編著
広 宮田浩文
久 野譜 也 征 矢 英 昭 大 森
肇
和 田正 信 金 尾 洋 治 稲 木 光 晴 山 口明 彦 狩 野
豊 酒井俊郎...
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第2版
運動 生理学20講 勝田
大石康晴 秋間
茂 編著
広 宮田浩文
久 野譜 也 征 矢 英 昭 大 森
肇
和 田正 信 金 尾 洋 治 稲 木 光 晴 山 口明 彦 狩 野
豊 酒井俊郎
七五三木 聡 石 原 昭 彦 奥 本 満 園 良 一 田 中
正
守 志 手 典 之
高 橋英 幸 中 村 友 浩 麻 場 一 徳
朝倉書店
■ 編 著 者 ・執 筆分 担 勝田
茂
前 筑波 大 学 体育 科 学 系 ・教授 ・医 学 博士
[1,2,18講]
■ 執 筆 者 ・執 筆 分 担(執 筆順) 大 石 康 晴 熊本大学教育学部 ・助教授 ・博士(医 学)
[1講]
秋
間
宮
田
久 征
広
東京 大 学生 命 環 境科 学 系 ・助 手 ・博 士(体 育 科 学)
[2講]
浩
文
山口 大 学 農学 部 ・助 教 授 ・博士(学 術)
[3講]
野
譜
也
筑 波 大 学先 端 学 際 領域 研 究 セ ン ター ・講 師 ・博 士(医 学)
[4,10,19講]
矢
英
昭
筑波 大 学 体 育科 学 系 ・助 教 授 ・医学 博士
[5,11講]
大 森
肇 筑波大学体育科学系 ・講師 ・医学博士
和
信
田 正
[6,16講]
広 島大 学 総 合科 学 部 ・助教 授 ・博 士(体 育科 学)
金 尾 洋 治 愛知県立看護大学 ・助教授
[7講]
稲 木 光 晴 西南女学院大学保健福祉学 部 ・講師 ・博士(体 育科学)
[8講]
山 口 明 彦 北海道医療大学基礎教育部 ・助教授 狩
野
豊
[9講]
電 気 通信 大 学 量 子 ・物 質 工 学科 ・講 師 ・博 士(体 育 科 学)
酒 井 俊 郎 浜松短期大学幼児教育科 ・教授
[8講]
[9講]
[11,17講]
七 五 三 木 聡 大阪大学健康体育部 ・講師 ・博 士(医学)
[12講]
石 原 昭 彦 京都大学総 合人間学部 ・助教授 ・学術博士
[13講]
奥
本
満
園
田
中
志
手
高
橋
正
東 亜 大 学総 合 人 間 ・文 化学 部 ・講 師 ・博 士(体 育科 学)
[13講]
一
久留 米 大学 保健 体 育 セ ン ター ・教授
[14講]
守
福 岡大 学 ス ポ ー ッ科 学 部 ・教 授
典
之
北 海道 教 育 大学 函 館 校 ・助 教 授 ・博 士(歯 学)
[17講]
英
幸
国 立 ス ポー ツ科学 セ ン ター ・研 究 員 ・博士(医 学)
[18講]
良
[15講]
中 村 友 浩 大阪工業大学工学部 ・助教授
[19講]
麻 場 一 徳 都留文科大学文学部 ・助教授
[20講]
は じ め に
運 動 生 理 学 の最 近 の 進 歩 は め ざ ま しい.編
者 が 学 生 で あ っ た1950年
受 け た 運 動 生 理 学 の 講 義 の 内 容 と現 在 の そ れ とを比 べ る 時,あ
代 の 終 わ り頃,大
学で
ま りの 違 い に 驚 く.も ち ろ ん,
そ の こ ろ の 講義 の レベ ル が 低 か っ た とい う意 味 で は毛 頭 な く,当 時 は 講 義 の 題 目が 運 動 生 理 学 で も,中 身 は 大 半 が 人 体 の 基 礎 生 理 学 で,い
わ ゆ る運 動 生 理 学 プ ロ パ ー の 内 容 が 少 な く,し か
も限 られ て い た と い う こ とで あ る.も と よ り生 理 学 は 「人 間 の正 常 な か らだ の 働 き に 関 す る 学 問」で あ り,運 動 生 理 学 は 生 理 学 を 親 学 問 と して 「運 動 に よ って か ら だ に どの よ う な変 化 が 生 ず る の か,そ
の 現 象 と し くみ を研 究 す る 学 問 」 で あ る.し た が っ て 親 学 問 と して の 人体 生 理 学
の 基 礎 の 上 に 運 動 生 理 学 を学 ぶ の が 常 套 で あ る. 運 動 生 理 学 の 発 展 は社 会 の 変化 と無 縁 で は な い.近 代 化 に伴 う生 活 様 式 の 省 力 化,便 活 は,人
間 か ら身 体 活 動 の機 会 を奪 い,そ
の 結 果,運
利 な生
動 不 足 の状 態 を作 り出 し,健 康 へ の影 響
が 心 配 され る よ うに な っ た.一 方 で は,ス ポ ー ツ が エ リ ー ト選手 の た め ばか りで な く,多 くの 一 般 の 人 た ち の健 康 や 楽 しみ の た め に生 活 の 中 へ 身体 運 動 と して取 り入 れ ら れ る よ う に な って きた.必
要 は発 明 の 母 とい わ れ る よ う に,こ の よ うな 社 会 的 背 景 が 運 動 生 理 学 の 発 展 に寄 与 し
た こ と も見 逃 せ な い. 1960年 代 に 始 まっ た筋 力 や 持 久 力 向 上 の た め の トレー ニ ン グ法 の 運 動 生 理 学 的 解 明 は,や が て 一般 の 人 た ち を対 象 と した 運 動 処 方 の研 究 へ と 大 き く進 展 した.ま
た,1970年
代 に は筋
バ イ オ プ シ ー 法 が ス ポ ー ツ選 手 や 健 康 な 人 た ち に も適 用 され る よ う に な り,こ れ に よっ て 得 ら れ た 成 果 は は か り しれ な い ほ ど大 きい.そ れ は筋 肉 の 研 究 分 野 の み に と ど ま らず,呼
吸や循環
も含 ん だ 多 くの研 究 を進 展 させ る こ と に な っ たか らで あ る. さ ら に1980年 代 後 半 か らは,磁 気 共 鳴 映 像(NMR)法
とい う新 しい 道 具 の 開 発 ・利 用 に よ
っ て,非 観 血 的 に 生 体 内部 の情 報 を形 態 的 の み な らず,代 謝 的 な 面 か ら も得 る こ とが で きる よ う に な っ た.た か,筋
と え ば,筋
肉 中 のATPや
肉 中 の 水 素 イ オ ン濃 度(pH)は
リ ン 酸 が,運
動 に よ っ て ど の よ う に変 わ っ て い くの
ど の よ う に 変 わ る の か,な
ど も刻 々 と知 る こ とが で き
る. 本 書 は,こ
の よ う な 新 し い 内 容 も存 分 に盛 り込 ん だ新 し い運 動 生 理 学 を20講 に ま とめ て み
た つ も りで あ る. 本 書 の 著 者 は,編 者 以 外 は いず れ も30代 の 新 進 気 鋭 の研 究 者 で あ り,編 者 が 筑 波 大 学 へ 赴 任 して 以 来,こ
こ十 数 年 の 間 に大 学 院 生 と して 一 緒 に 実験 や 討 論 を して きた 仲 間 で あ る.柔
か い頭 で 考 え,新
しい もの を吸 収 し,そ
ら
して 創 造 的 な 仕事 を手 が け て い る人 た ち の 息 吹 を感 じ
て い た だ け れ ば 幸 い で あ る. ま た,本 書 は 体 育 を専 攻 す る学 生 諸 君,ス
ポ ー ツの コー チ ン グ に携 わ っ て い る方 々,地 域 や
社 会 体 育 施 設 の 指 導 者 な ど は も と よ り,研 究 者 や学 校 の 現 場 の 先 生 方 に も ご利 用 い た だ け る こ と を願 っ て い る.そ
して,こ
れ らの 方 々 の スポ ー ツ や体 育 の 指 導 に 本 書 が い く らか で もお 役 に
立 つ こ とが で きる な らば 望 外 の喜 び で あ る. 最 後 に,本 書 の 出 版 に際 し,快
くお 引 き受 け下 さ っ た 朝 倉 書 店 に 対 して 心 か ら感 謝 の意 を表
し た い. 1993年3月 勝 田
茂
第2版 に寄 せ て
本 書 を刊 行 して か ら6年 が 過 ぎ,こ の 間 に 幸 い多 くの方 々 に読 んで い た だ き9刷 を 数 え た. 運 動 生 理 学 は 日進 月 歩 の 学 問 で あ る.こ ま え た うえ で,常 ざ し て い る.今
にup-to-dateな
の 「運 動 生 理 学20講 」 は基 本 的 な こ と を し っ か りふ
内容 を盛 り込 み 読 者 の 興 味,要
回 の 改 訂 に あ た っ て 全 体 は20講 で 変 わ ら な い が,各
望 に こ た え られ る もの を め 講 と も全 面 的 な 見 直 しを
行 い,内 容 の 面 か ら も充 実 を 図 っ たつ も りで あ る. 皆 さ まか らの 忌 憚 の な い ご 叱 声 を お 願 い した い. 1999年3月 勝 田
茂
目
次
1. 骨 格 筋 の 構 造 と機 能
1
1.1 骨 格 筋 の 構 造 1
1.5 筋 線 維 タ イ プ と ス ポ ー ツ 4
1.2 興 奮 収 縮 連 関 1
1.6 筋 線 維 組 成 お よ びMHCア
1.3 骨 格 筋 線 維 の タ イ プ 分 類 2 1.4 筋 線 維 タイ プ と ミ オ シ ン重 鎖 成 分 3
イ ソ フ ォー ム の 変 化
6 1.7 筋 線 維 タ イ プ の 推 定 7
2. 筋 力 と筋 パ ワ ー
9
2.1 筋 収 縮 の 様 式 9
2.4 筋 パ ワ ー 12
2.2 筋 力 に影 響 す る 因 子 10
2.5 さ ま ざ ま な トレ ー ニ ン グ に 伴 う 筋 力 の 変 化 12
2.3 固 有 筋 力 11
3. 神 経 系 に よ る運 動 の 調 節
15
3.1 神 経 系 の 構 造 15
3.4 筋 力 調 節 18
3.2 ニ ュ ー ロ ン の 構 造 と 機 能 15
3.5 反 射 運 動 に お け る 神 経 系 の 調 節 19
3.3 運 動 単 位 の 特 性 17
3.6 随 意 運 動 に お け る 神 経 系 の 調 節 19
4. 運 動 と筋ATP代
謝
4.1 ATP 21 4.2 エ ネ ル ギ ー 供 給 系 21
21 4.4 ス プ リ ン ト ト レ ー ニ ン グ と 筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 26
4.3 持 久 的 トレ ー ニ ン グ と筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 24
5. 運 動 時 の ホ ル モ ン分 泌
29
5.1 ホ ル モ ン分 泌 と 視 床 下 部 調 節 29
5.3 運 動 ス ト レス と 脳 33
5.2 運 動 とス ト レス ホ ル モ ン 32
5.4 運 動 適 応 とホ ル モ ン作 用 37
6. 運 動 時 の 糖 質 ・脂 質 ・蛋 白質 代 謝 と ホ ル モ ン作 用
40
6.1 糖 質 代 謝 の 概 要 40
6.4 糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質代 謝 の 相 互 補 完 関 係 41
6.2 脂 質 代 謝 の 概 要 41
6.5 運 動 時 の 代 謝 と ホ ル モ ン作 用 42
6.3 蛋 白 質代 謝 の 概 要 41
7. 筋 の 肥 大 と損 傷 7.1 筋 肥 大 の メ カ ニ ズ ム 48
8.運
48 7.2 筋 損 傷 の メ カ ニ ズ ム 51
動 と呼 吸 ・心 循 環
8.1 肺 換 気 の メ カ ニ ク ス 54
54 8.2 死 腔 と肺 胞 換 気 量 54
8.3 呼 吸 の 調 節 機 構 55
8.8 循 環 す る 血 液 58
8.4 運 動 時 の 肺 換 気 量 と ト レー ニ ン グ 56
8.9 神 経 性 の 心 拍 調 節 機 構 59
8.5 有 酸 素 運 動 パ フ ォ ー マ ン スの 制 限 因 子 と し て
8.10 体 液 性 の 心 拍 調 節 機構 59 8.11 ス ポ ー ツ 心 臓 60
の 換 気 能 力 56 8.6 心 筋 の 特 性 57 8.7 刺 激 伝 達 系(特
8.12 運 動 性 貧 血 61 殊 心 筋) 58
9. 運 動 と末 梢 循 環
63
9.1 運 動 と血 流 配 分 63
9.5 末 梢 循 環 の 構 造 67
9.2 運 動 中 の 血 流 変 化 の 調 節 64
9.6 毛 細 血 管 と ト レー ニ ン グ 68
9.3 血 流 量 に 影 響 を 与 え る 因 子 65
9.7 毛 細 血 管 の 新 生 68
9.4 トレ ー ニ ン グ に よ る 血 流 量 の 変 化 66
9.8 末 梢 で の ガ ス交 換 69
10. 乳 酸 と高 強 度 運 動 時 の エ ネ ル ギ ー 代 謝 10.1 い わ ゆ るATの
71 10.5 イ ン タ ー バ ル 高 強 度 運 動 中 の エ ネ ル ギ ー 代 謝
概 念 71
10.2 Lactate shuttleの 概 念 71
10.3 乳 酸 が 生 成 され る よ う な 高 強 度 運 動 時 の 他
10.6
の 代 謝 産 物 72
74 トレーニ ングお よび加齢 が 高 強度 運動 時 の 代 謝 に 及 ぼ す 影 響 74
10.4 高 強 度 運 動 時 のATP供
10.7 酸 素 利 用 能 力 と基 質 利 用 と の 関 係 75
給 系 72
11. 運 動 と酸 化 ス トレ ス
77
11.1 酸 素 と酸 素 ス ト レス:活 ジ カ ル と は何 か?
性 酸 素,フ
リー ラ
77
11.3 活 性 酸 素 の 消 去 81 11.4 運 動 と活 性 酸 素 83
11.2 生 体 で の 活 性 酸 素 の 生 成 78
12. 運 動 と 骨 代 謝
85 モ デ リ ン グ 87
12.1 骨 量 に及 ぼ す 運 動 の 効 果 85 12.2 組 織 お よ び 細 胞 レ ベ ル か ら み た 運 動 の 効
12.4 運 動 の 効 果 を 媒 介 ・修 飾 す る 要 因 87 12.5 運 動 の 力 学 的 ス ト レス を 介 し た 骨 量 変 化 の メ
果 86
カ ニ ズ ム 88
12.3 運 動 ・不 活 動 ・宇 宙 飛 行 と モ デ リ ン グ ・リ
13. 運 動 と 環 境 13.1
高 地 環
91 境 91
13.2 微 小 重 力 環 境 93
14. 運 動 時 の 水 分 ・栄 養 摂 取
98
14.1 栄 養 の 概 念 と栄 養 素 の働 き 98
14.4 運 動 時 の 糖 補 給 102
14.2 栄 養 と身 体 の 構 成 99
14.5 運 動 時 の 栄 養 補 助 食 品 の 補 給 104
14.3 運 動 時 の 水 分 補 給 101
15. 運
動
処
方
15.1 健 康 と運 動 との 関 係 106
106 15.2
運 動
処 方 108
16.運 動 と 生 活 習 慣 病
115
16.1 肥 満 と 運 動 115
16.3 高 血 圧 と運 動 117
16.2 高 脂 血 症 と 運 動 117
16.4 糖 尿 病 と運 動 118
17.運 動 と発 育 発 達
121
17.1 呼 吸 循 環 系 の 発 達 パ ター ン 121
17.5 筋 系 の発 育 発 達 パ ター ン 123
17.2 成 長 期 に お け る 呼 吸 循 環 系 能 力 の 特 徴 121
17.6 成 長 期 に お け る 筋 力,筋
17.3 成 長 期 に お け る トレ ー ナ ビ リテ ィ 122
17.7 成 長 期 に お け る トレ ー ナ ビ リ テ ィ(筋
17.4 成 長 期 に お け る 身 体 活 動 水 準 と 有 酸 素 的 能
パ ワ ー の 特 徴 124 と神 経
系 に お け る トレ ー ニ ング 効 果) 125
力 の 関 係 123
18.加
齢
と 運 動
128
18.1 加 齢 に 伴 う 呼 吸 循 環 系 機 能 の 変 化 128 18.2 有 酸 素 的 能 力 の 低 下 に 対 す る ト レ ー ニ ン グ の 効 果 129
18.4 神 経 ・筋 の 変 化 に 対 す る ト レ ー ニ ン グ 効 果 131 18.5 加 齢 に よ る 骨 の 変 化 と運 動 の 効 果 132
18.3 加 齢 に よ る 神 経 ・筋 の 変 化 129
19.ト
ッ プ ア ス リ ー トの 特 性
19.1 筋 肉 の 非 侵 襲 的 分 析 法 134 19.2 MRIに
よ る一流 選 手 にお け る筋 の形 態 的特
徴 134 19.3 MRIに
134 19.4 MRSに
よ る 筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 と ト レー ニ ン グ
状 態 の 関 係 136 19.5 呼 吸 循 環 器 系 に お け る 特 性 137
よ る ジュニ ア選 手 に おけ る筋 の形 態
19.6 ス ポ ー ツ パ フ ォー マ ン ス と遺 伝 139
的 特 徴 135
20.オー 20.1
索
バ ー ト レ ー ニ ン グ ト レ ー ニ ン グ 141
20.2
筋
20.3
オ ー バ ー ト レ ー ニ ン グ の 症 状 143
引
疲
労
142
141
20.4 子 ど もの 問 題 146 20.5 女 性 の 問 題 147
151
1 骨格筋の構 造 と機能
一 流 と い わ れ る競 技 者,と
く に 陸 上 競 技 で は,な
ぜ あ の よ う に"速
く"あ る い は"長
く"走
る こ とが で き る の で あ ろ う か.私 た ち が"身 体 を 動 か す"と い う こ と は,運 動 生 理 学 的 に は "筋 肉(骨 格 筋)が 収 縮 す る"こ と を意 味 して お り ,骨 格 筋 の"質(quality)"と"量 (quantity)"が
パ フ ォ ー マ ン ス あ る い は 競 技 成 績 に大 き く影 響 す る.本
を構 成 す る 骨 格 筋 が ど の よ う な 構 造 や 特 性 を も ち,そ か,あ
講 で は,私
た ちの身体
れが 身体運 動 とどの よ うに関連 してい る
る い は トレー ニ ン グ な ど に よ っ て ど の よ う に 変 化,適
応 す る か につ い て 最 新 の 知 見 をふ
ま え て 概 説 す る.
T管 と そ れ に 隣 接 す る 筋 小 胞 体 の 末 端 部 分(終 で は 三 つ 組 み 構 造(triad)を
1.1 骨 格 筋 の 構 造
末 槽)
形 成 し,神 経 か ら の 興 奮
を伝 達 す る 重 要 な働 き を し て い る. 私 た ち の 身 体 は 筋 肉(骨
格 筋)が
収 縮 す るこ とに よ
電 子 顕 微 鏡 に よ り筋 線 維 の 内 部 を観 察 す る と,筋
り,歩 行 や ラ ンニ ン グ あ る い は物 を持 ち 上 げ た りす る
線 維 の 長 軸 方 向 に 沿 っ て 明 る い 帯(I帯)と
こ と が 可 能 に な る.筋
(A帯)が
肉 は,そ
の 形 態 か ら横 紋 構 造 を
交 互 に 繰 り返 す,い
暗い帯
わ ゆ る 横 紋 が み られ る
もつ 横 紋 筋 と,横 紋 構 造 を も た な い 平 滑 筋 と に 大 別 で
(図1.1).I帯
き る.心 臓 の 筋 肉 で あ る 心 筋 や 腕 や 脚 な どの 筋 肉 で あ
よ ば れ る細 く密 度 の 高 い 縞 が み られ,こ
のZ膜
る骨 格 筋 は 横 紋 筋 で あ り,内 臓 や 血 管 を 形 成 す る 内臓
接 す るZ膜
よ び,こ
筋 や 血 管 筋 な ど は 平 滑 筋 で あ る.ま
筋 収 縮 の 基 本 単位 で あ る.筋 節 内 に は,収
た,骨
格 筋 は 自分
の 意 思 に よ り動 か す こ と の で き る 随 意 筋 で あ り,運 動 神 経 に よ っ て 支 配 され て い る.一
方,心
筋や 平滑 筋は
意 思 と は 関 係 な く収 縮 す る 不 随 意 筋 で あ り,自 律 神 経
原
の 中 央 部 に はZ膜(Z-membrane)と
ま で を 筋 節(sarcomere)と
か ら隣 れが
縮蛋 白質の
ミ オ シ ン フ ィ ラ メ ン トと ア クチ ン フ ィ ラ メ ン トや 数 多 くの 調 節 ・構 造 蛋 白 質 が 含 ま れ,安 2.3μmで
静 時 の長 さは 約
あ る.
の 支 配 を 受 け て い る. 私 た ち の 身 体 は,約400個 い る.こ
の 骨 格 筋 は,収
1.2
の 骨 格 筋 か ら構 成 さ れ て
興 奮 収 縮連 関
縮 機 能 を もっ た 細 長 い 多 核 細
胞 で あ る 骨 格 筋 線 維(muscle
骨 格 筋 は運 動 神 経 か らの 刺 激 に よ り収 縮 す る.神
経
も の で あ り,そ の 両 端 は 腱 組 織 と な っ て 骨 や 靭 帯 に 付
か らの 興 奮(イ
れ
着 して い る.骨 格 筋 線 維 は,収 縮 蛋 白 質 で あ る ア クチ
が 筋 線 維 内 部 の 筋 原 線 維 に 到 達 し,ミ
ン フ ィラ メ ン ト(actin ン ト(myosin と,そ
fiber)が
filament)や
filament)を
多 数 集 合 した
ミオ シ ンフィ ラメ
含 む 筋 原 線 維(myofibril)
の ま わ り を取 り囲 む 袋 状 の 筋 小 胞 体(sarco-
plasmic reticulum:SR),筋 行 小 管(transverse
原 線 維 の 内 部 に 達 す る横
tubule;T管),ミ
トコ ン ド リア,
グ リ コ ー ゲ ン顆 粒 な どに よ り構 成 さ れ て い る(図1.1).
ンパ ル ス)が 筋 線 維 に 伝 え られ,そ
オ シ ンフ ィラ メ
ン トと ア ク チ ン フ ィ ラ メ ン トの 相 互作 用 に よ っ て 筋 節 が 短 縮 す る こ と に よ り骨 格 筋 全 体 が 収 縮 す る(図1. 2).こ
の神 経 と筋の 連動 に よる筋収 縮 の一連 の システ
ム を興 奮 収 縮 連 関(excitation-contraction E-C
coupling)と
よぶ.そ
の 経 路 は,ま
coupling: ず 中 枢(脳)
か らの 興 奮 が 脊 髄 に あ る 神 経 を 介 し て電 気 的 イ ンパ ル
図1.1
図1.2
ス と して 伝 え られ る.こ
筋 線 維 が 収 縮 を 起 こす 経 過 の 要 約(Peachey,1974)
の イ ンパ ル ス が 神 経 細 胞 体 か
ら軸 索 を 介 し て 神 経 終 末 へ と伝 播 す る(1).神 合 部(神
経筋接
の 間 隙 に 放 出 さ れ,神 わ る(2).膜
セ チ ル コ リ ン)が こ
経 か らの興奮 が筋 線 維 の膜 に伝
に 伝 わ っ た 興 奮(3)は,横
か ら筋 線 維 内 部 へ と伝 わ り(4),そ 末 槽 に伝 え られ る(5).筋
骨格 筋 線 維 の タイ プ分 類
行 小 管(T管)
骨 格 筋 線 維 は そ の 特 性 に よ り数 種 類 の タ イ プ に 分 類 さ れ る.表1.1に を 示 し た.ヒ
は 比 較 的 よ く用 い ら れ て い る 分 類 法 トの 筋 線 維 は 大 別 し て,速
して筋 小 胞体 の終
twitch fiber;FTま
小 胞 体 は カル シ ウム イ オ ン
twitch fiber;STま
た はType
る4)(図1.3).Type
Ⅱ線 維 は,さ
内 部 に 蓄 え た 袋 状 の 貯 蔵 庫 で あ り,興 奮 が
伝 わ る とCa2+を 細 胞 内 に 放 出 す る(6).遊
離 し たCa2+
が ア ク チ ン に 結 び つ い た トロ ポ ニ ン(正
確 に は トロ ポ
ニ ンC)と
1.3
経 終 板 ま た は エ ン ドプ レ ー ト)に は わ ず か な
隙 間 が あ り,化 学 的 伝 達 物 質(ア
(Ca2-)を
骨 格 筋 の 構 造(Fowcett,1968)
結 合 す る こ と に よ り,ア
クチ ンと ミオ シ ン
の 収 縮 作 用 が 始 ま り筋 が 収 縮 す る(7).そ
し てCa2+が
た はType
筋 線 維(fast-
Ⅱ)と 遅 筋 線 維(slowⅠ)の2種
類 に分類 で き
ら にType
ⅡBの サ ブ タ イ プ に 分 け ら れ る3).こ
ⅡAとType
れ ら の 分 類 は,
ミオ シ ン 分 子 が 有 す るATPase(ATP加
水 分 解 酵 素)
のpHに
対 す る安 定性 に基 づ いた酵 素組 織染 色法
(myosin
ATPase染
色)に
再 び 筋 小 胞 体 内 部 へ 取 り込 ま れ る こ と に よ り筋 は 弛 緩
特 性 を 反 映 し て い る.Type
す る(8).
Type
Ⅰ線 維 が 遅 筋 型,そ
よ り な さ れ,筋
線 維 の収 縮
ⅡB線 維 が 最 も速 筋 型, し てType
ⅡA線 維 が そ の 中
表1.1
表1.2
骨 格筋 線 維 の タ イプ分 類
骨 格 筋線 維 の 特性
が 高 く疲 労 し に く い.一 方,速 は 収 縮 速 度 が 速 くATPase活 い が,酸
ヒ トの 骨 格 筋 線 維横 断 像(青 年 男 子,外 側 広 筋,ニ ー ド ル バ イ オプ シー 法 に よ るmyosin ATPase染 色,×495)
濃 染 して い る 筋 線 維 が 速 筋 線 維(FT,Type 筋 線 維 が 遅 筋 線 維(ST,
Type
Ⅱ),淡
染 して い る
Ⅰ).
Ⅱ)線 維
化 系 酵 素 活 性 は 低 く疲 労 しや す い.Type
線 維 の サ ブ タ イ プ の う ちType 図1.3
筋(FT,Type
性 や解 糖 系酵 素 活 性 は高
系 の 酵 素 活 性 はType 示 し,収
Ⅱ
ⅡA線 維 の 解 糖 系 や 酸 化
Ⅰ線 維 とType
ⅡB線 維 の 中 間 を
縮 特 性 ・酵 素 活 性 と もに 両 者 の 中 間型 の 特 性
を 有 して い る.こ
れ らの 特 性 か ら,遅 筋(ST,Type
Ⅰ)
線 維 は 有 酸 素 状 態 で エ ネ ル ギ ー を効 率 よ く産 生 し長 時 間 型 と し て 位 置 づ け られ る.一
方,ラ
ッ トな どの 齧 歯
類 の 筋 線 維 を 分 類 す る 場 合,収
縮 特性 に加 え て代謝 特
性 を 含 め た 分 類 もな さ れ て お り,そ れ に よ る と 筋 線 維
間 収 縮 す る 能 力 が 高 い こ と,こ Type
れ に 対 し速 筋(FT,
Ⅱ)線 維 は 無 酸 素 状 態 で エ ネ ル ギ ー を 産 生 し爆
発 的 な 収 縮 能 力 が 高 い こ と が わ か る.
は,SO(slow-twitch,oxidative),FOG(fast-twitch, oxidative,glycolytic),FG(fast-twitch,glycolytic)の 3タ イ プ に 分 類 さ れ る16).た だ し,こ
1.4
の 分 類 は ヒ トの 筋 原 線 維 内 の 主 要 な 収 縮 蛋 白 質 で あ る ミ オ シ ン分 子
筋 に は適 さ な い. 近 年,ミ myosin
オ シ ン分 子 の 重 鎖 成 分(ミ
heavy
筋 線維 タ イプ と ミオ シ ン重 鎖 成 分
chain:MHC)に
オ シ ン重 鎖:
対 して 特 異 的 に 反 応 す
は,分
子 量 約20万
の ミ オ シ ン重 鎖(myosin
chain:MHC)成
分2個
るモ ノク ロ ー ナ ル抗 体 を用 い た免 疫組 織 染 色 法
シ ン軽 鎖(myosin
light chain:MLC)成
(immunohistochemistry)や,MHC成
構 成 さ れ る(図1.4).ミ
分 を生 化学 的 に
分 析 す る 電 気 泳 動 法(SDS-PAGE)の 筋 線 維 に 含 ま れ るMHC成 プ 分 類 が な さ れ,Type
改 良 に よ り,
分 に基 づ いた 筋線 維 の タイ Ⅰ,ⅡA,ⅡBに
加 え て数種 類
の ハ イ ブ リ ッ ドフ ァ イバ ー ※が 確 認 さ れ て い る(詳 につ い て は1.4節 表1.2に た.遅 ATPase活
細
で 述 べ る).
は そ れ ぞ れの 筋 線維 タ イプの 特 性 を示 し
筋(ST,Type
Ⅰ)線
維 は収 縮 速 度 が遅 く
性 や ク レ ア チ ン リ ン酸 の 貯 備 量 は 低 い が,
酸 化 系 酵 素 活 性 や ミオ グ ロ ビ ン含 有 量,毛
細血 管 密 度
※ ハ イ ブ リ ッ ドと は混 在 す る とい う意 味 で あ り,1本 イバ ー と よ ん で い る.
と,分 子 量20,000前
heavy 後 の ミオ
分4個 に よ り
オ シ ン重 鎖 ・軽 鎖 と も に,そ
れ ぞ れ 速 筋 型 ・遅 筋 型 の ア イ ソ フ ォー ム が 存 在 し,筋 線 維 タ イ プ ご と に,特
有 の ア イソ フ ォー ム が 含 ま れ
る19.20.22.(表1.3).ヒ
トの 場 合,MHC成
分 に よって
筋 線 維 タ イ プ は 以 下 の よ う に分 け られ る. Type
Ⅰ線 維:MHC
Type
ⅡA線 維:MHC
Ⅱaの み を 含 む.
Type
ⅡB線 維:MHC
Ⅱbの み を 含 む.
さ らに2種 類 のMHC成 イ バ ー と し て,MHC
Ⅰの み を 含 む.
分 を 含 むハ イブ リ ッ ドフ ァ Ⅰ とMHC
Ⅱaを 含 む 筋 線 維 は
の 筋 線 維 内 に 数 種 類 の ミオ シ ン重 鎖 成 分 が 混 在 し た 筋線 維 を ハ イ ブ リ ッ ドフ ァ
い か ら あ る程 度 の 分 類 は 可 能 で あ る22).一 方,ラ
ット
や ラ ビ ッ トな ど の 書 歯 類 の 場 合 は ヒ トと若 干 異 な っ て い る.電 気 泳 動 法 に よ る分 析 の 結 果,ヒ
トで は み られ な
い 速 筋 型 ミオ シ ン重 鎖 ア イ ソ フ ォ ー ムMHC 者 に よ っ て はMHC (図1.4),そ
MHCア
イ ソ フ ォ ー ム は,寒
天 状 の ゲ ル の 上 方 か ら下 方 へ と移
型 のMHC
Ⅰが 移 動 度 が 最 も 大 き い.ラ
Type
C線 維 と よ ば れ て お り,MHC
ま れ る 割 合 に よ っ てType Ⅱa),Type IIAC線
Ⅰ<MHC
れ る こ と も あ る.MHC
Ⅰ ≒MHC
ⅡAB線
ブ リ ッ ドフ ァ イバ ー2.17)は,発
られ,分
と え ばMLC成
1.5
表1.2の
Ⅱbを 含 む ハ イ ブ 維 と よ ば れ る.ハ
イ
育 期や さ まざ まな刺 激
化 が 終 わ っ て い な い 未 分 化 な 状 態,あ
る いは
Ⅱ)線 維 は 無 気 的(無
ョ ン溶 液 のpHの
レイ ンキ ュ ベ ー シ
違 い に 対 す る 筋 線維 の 染 色 濃 度 の 違
,発 揮 す る 張 力 やATPase活
つ と考 え ら れ る.一 方,遅 気 的(有
酸 素 的)エ
ネルギ 性 も高
筋(ST,
性 も高 い こ とか ら有 気 的,持
は,ニ
Type
Ⅰ)線 維 は 有
ネ ル ギ ー 発 揮 能 力 に優 れ,疲
労耐
久 的 な 運 動 に 適 して い る
ー ドル バ イ オ プ シ ー 法(後
成(速
筋 線 維 と遅 筋 線 維 の 比 率)を
健 常 者 で は,速 50%:50%で
述)に
よ
Ⅱb)と 遅 筋 型(MHCI)が あ り,そ れ ぞ れ1f,2f,3f,お
示 した10).一 般 の
筋 線 維 と遅 筋 線 維 の 割 合 は ほ ぼ
あ る が,短
距 離 選 手 で は,一
ヒ ト骨 格 筋 線 維 タ イプ と ミオ シ ン重 鎖 ・軽 鎖 成分
ミオ シ ン重鎖 に は 速 筋 型(MHC Ⅱa,MHC に は速 筋型(MLC f)と 遅 筋 型(MLC s)が ソ フ オ ー ム を もっ て い る.
酸 素 的)エ
り測 定 した 一 流 の 陸上 競 技 選 手 の 外 側 広 筋 の 筋 線 維 組
素組織 染 色法 であ る
表1.3
3f)が 影 響
い こ と か ら,無 気 的 ・瞬 発 的 な 運 動 に 適 した 能 力 を も
図1.5に
の よ う な細 分 化 さ れ た 筋 線 維 の
で 述 べ た よ う に免 疫 組 織 染 色 法 や 電 気
色 に よ っ て も,プ
か で もMLC
筋 線 維 タ イプ とス ポ ー ツ
ー 発揮 能 力 に優 れ
と 考 え ら れ て い る.こ
ATPase染
分(な
分のほか
骨 格 筋 線 維 の 収 縮 ・代 謝 特 性 か ら み て,速
筋(FT,Type
と考 え られ る.
myosin
Ⅱx)>
Ⅰ)の 順 序 で あ
Ⅰ>MHC Ⅱa), Type
筋 線 維 が タ イ プ 変 化 を起 こ して い る途 中 の 段 階 の も の
泳 動 法 に よ り な さ れ る が,酵
Ⅱb)> ⅡX線 維(MHC
Ⅱa)> Ⅰ線 維(MHC
ま
筋 型 ア イソフ ォー ム間 の最大 短 縮 速度 に はか
Ⅱaの 含
る い は取 り除 い た)場 合 に 高 い 割 合 で み
分 類 は,1.3節
縮)速
して い る可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る.
Ⅱa)に 細 分 化 して 分 類 さ ⅡaとMHC
リ ッ ドフ ァ イバ ー はType
を 加 え た(あ
ⅠとMHC
ⅠC線 維(MHC
ⅡC線 維(MHC
維(MHC
度 は,大
に も,た
Ⅱbの 移 動
ッ トと はそ の 位 置 が 異 な る こ とに 注 意.
度
ム を 含 む 各 筋 線 維 タ イ プ の 収 縮(短
な りの オ ー バ ー ラ ッ プ が 認 め ら れ,MHC成
ッ トと ヒ トで はMHC
ア イ ソ フ ォ ー ム の 数 が 異 な り,ま た ヒ トで はMHC 度 が 最 も遅 い た め,ラ
縮)速
イ ソフ ォー
る が,速
トと も に 遅 筋
ⅡA線 維 と
イ ソ フ ォ ー ム は 筋 線 維 の 収 縮(短
ⅡA線 維(MHC
動 し分子 量 の 違 い に よ り分 離 され る.ラ ッ ト,ヒ
ⅡX線 維 はType
た は ⅡD)
に 大 き く影 響 す る19).そ れ ぞ れ のMHCア
か に は ⅡB線 維(MHC
ミオ シ ン分 子 の 構 造 と電 気 泳 動 法 に よ る ミオ シ ン重 鎖 成 分の分離
ⅡX(ま
ⅡB線 維 の 中 間 の 特 性 を有 す る.
MHCア
図1.4
究
Ⅱdと も よ ば れ る)が 認 め られ18.19)
れ を 含 む 筋 線 維 はType
線 維 と よ ば れ る.Type Type
Ⅱx(研
あ る.ミ オ シ ン軽 鎖 よ び1s,2sの アイ
部 を除 い
図1.5 一 流 陸 上 競 技 選 手 ・球 技 選 手 お よび 日本 人一 般 男 子の 筋線 維 組 成(勝 田 と和 田,1986)
表1.4
速 筋 型:速 遅 筋 型:中
筋 線 維 組 成 か らみ た 適 性 ス ポ ー ツ種 目
筋 線 維 の 割 合 が 著 し く高 い.中 庸 速 筋 型:中 間型 で あ る が,や
て 速 筋 線 維 の 割 合 が70%以
上 を 占 め て い る.こ
対 し て,長
に遅 筋 線 維 の 割 合 が65%
距 離 選 手 は,逆
以 上 み ら れ た.中 た が,そ
れ に
距 離 選 手 で は そ の 中 間 の 値 が 得 られ
の 中 で も800mの
間型 で あ るが,や や 速 筋 線 維 の割 合 が 高 い.中
や 遅 筋 線 維 の割 合が 高 い.遅
筋 型:遅
筋 線 維 の 割 合 が 著 し く高 い.*:推
庸
定.
成 を有 す る こ とが 必 要 条件 で は な いか と考 え られ る. 一方 ,一 流 球技 選 手 につ い て も同様 に調べ た とこ ろ, 陸上 競 技選 手 の よ うな極端 な偏 りはみ られず,ど の球
選 手 は や や 速 筋 線 維 の 割合
技選 手 も,速 筋 線維 と遅筋 線維 はほ ぼ同 じ割合 で あっ
が 高 く,1,500mの
選 手 はや や 遅筋 線 維 の割 合 が高 い
た.陸 上競 技 に比べ,技 術 的 要素 の高 い球 技種 目では
傾 向 に あ っ た.こ
の よ う な結 果 か ら,陸 上 競 技 の よ う
持 久 的能 力,瞬 発 的 能 力 と もに必要 で ある こ とか ら,
な エ ネ ル ギ ー 系 へ の 依 存 度 の 高 い 種 目 に お い て 一 流の
む しろ両方 の筋 線維 タ イプが 必要 に なる のか も しれ な
成 績 を お さ め る た め に は,そ
い.
の 種 目 に 適 した 筋 線 維組
こ の よ う な 結 果 を も と に して,あ
らか じめ筋 線維組
少 す る と い う 報 告7)が み られ る.短
時 間 ・瞬 発 的 な ス
成 を 調 べ る こ と に よ り,そ の 人 に 適 し た ス ポ ー ツ種 目
プ リ ン ト ト レ ー ニ ン グ も 同 様 に 筋 線 維 組 成 は 変 化 しな
を 分 類 す る こ と も可 能 に な る10)(表1.4).た
い と い っ た 報 告6)と,MHC
極 端 に 速 筋 線 維 の 多 い 人(速 瞬 発 的 な 運 動 種 目 に,逆
筋 型)で
と え ば,
あれ ば短 時間 の
に 遅 筋 線 維 が 多 い(遅
筋 型)
場 合 に は持 久 的 種 目 にそ れ ぞ れ 適性 が あ る とい え よ う.や
や 速 筋 線 維 が 多 い 場 合(中
や や 遅 筋 線 維 が 多 い 場 合(中
庸 速 筋 型)あ
るい は
Ⅱaア イ ソ フ ォ ー ム の 割 合
が 増 加 す る と い う 報 告1)が み られ る.動 物 実 験 に 比 べ, ヒ トの 場 合 で は 負 荷 す る 刺 激 の 量(ト 間 や 期 間)が
少 な い た め,筋
レー ニ ン グの 時
線 維 組 成 を 変 化 させ る に
は 至 ら な い 可 能 性 が 考 え られ る.さ
ら に,ヒ
ト骨 格 筋
の 筋 線 維 組 成 の 検 討 の 多 くは ニ ー ドル バ イ オ プ シー 法
庸 遅 筋 型)は,表1.4に
示 し た 球 技 種 目 な ど に 適 して い る とい え よ う.
(後述)に
よる微 量 な筋 断 片の 分析 に よ りな され て お
り,骨 格 筋 全 体 の 変 化 を 正 確 に 知 る こ と は 難 し い こ と 1.6
筋 線 維 組 成 お よ びMHCア
イ ソ フ ォー ム
の変 化
か ら,こ
の よ う な 相 反 す る結 果 が 得 られ た の か も し れ
な い.ま
た,速
Type
ⅡB)で
筋 線 維 の サ ブ タ イ プ 間(Type
は トレ ー ニ ン グ に よ る タ イ プ 変 化(Type
一 流 の 陸 上 競 技 選 手 に み ら れ る よ う な極 端 に 偏 っ た
ⅡB線 維 の 減 少 とそ れ に 伴 うType
筋 線 維 組 成 が トレ ー ニ ン グ な ど に よ り後 天 的 に 得 られ
生 じや す い 傾 向 に あ る が,速
た もの か,あ
筋 線 維(Type
る い は も と も と持 っ て 生 まれ た もの か を
ⅡAと
ⅡA線 維 の 増 加)は
筋 線 維(Type
Ⅱ)と
遅
Ⅰ)の 間 の タ イ プ 変 化 は ほ と ん ど生 じ
知 る こ と は非 常 に 興 味 深 い.こ れ ま で の 知 見 で は,一 卵
な い.し
性 双 生 児 間 の 筋 線 維 組 成 が 非 常 に 類 似 して い る こ と11)
手 や 長 距 離 選 手 に み られ る よ う な 非 常 に偏 っ た 筋 線 維
や,数
組 成 は 生 ま れ つ き の 遺 伝 的 要 素 が 高 い と 考 え られ る
多 くの ト レ ー ニ ン グ 実 験 に よ っ て も 筋 線 維 組 成
た が っ て 現 時 点 で は,と
に は 変 化 が 認 め られ な い こ と5)な ど の 理 由 に よ り,ヒ
が,こ
ト骨 格 筋 の 筋 線 維 組 成 に は 遺 伝 的 要 素 が 強 い と 考 え ら
Bouchard21)は,ヒ
れ て き た.し
定 に は 遺 伝 的 要 素 が 約45%の
か し な が ら,1980年
代 の 後半 か らこの
れ に 関 す る 興 味 深 い 報 告 と して,Simoneauと ト骨 格 筋 のType
10年 間 の 間 に 数 多 く の 新 し い 知 見 が 報 告 さ れ て い る.
か に 環 境 因 子 が 約40%,分
オ ー トプ シ ー(剖
的 要 素 が 約15%関
の ヒ トで は,新
検)法
ⅡC線 維 が 高 い 割 合(筋 られ,一
に よ る 分 析 の 結 果22),発 育 期
生 児 の 骨 格 筋 に 未 分 化 な 状 態 のType
方,2∼5歳
線 維 全 体 の10∼17%)で
の 骨 格 筋 で はType
認め
Ⅰ線 維 の 比 率
くに 陸 上 の 短 距 離 選
Ⅰ線 維 の 割 合 の 決
割 合 で 関 与 し,そ
の ほ
析 時 のエ ラー を含 む技 術
与 す る と推 測 して い る.
ラ ッ トや ラ ビ ッ ト な ど の 齧 歯 類 を 用 い た 研 究 で は, 筋 線 維 組 成 やMHCア
イ ソ フ ォー ム の 変 化 に 関 し て 興
味 深 い 知 見 が 得 ら れ て い る.電 気 刺 激13や 協 働 筋 切 除17)
が そ の 前 後 の 年 齢 に比 して 有 意 に 高 い こ と が 報 告 さ れ
な ど に よ り骨 格 筋 の 活 動 水 準 を 増 加 させ る こ と に よ っ
て い る.そ
て,筋
し て5∼20歳
の 間 にType
ん どみ ら れ な くな り,TypeⅠ 半 数 を 占 め る よ う に な る(残
ⅡC線 維 は ほ と
線 維 は筋線 維 全 体 の 約 りの 半 数 がType
Ⅱ 線 維).
老 化 に 伴 う 変 化 と して は 筋 線 維 サ イ ズ の 縮 小(萎
縮)
線 維 タ イ プ あ る い はMHC成
筋 型 へ と 変 化 す る.具
分 は速 筋 型 か ら遅
体 的 に は,遅
維 の 増 加 や 遅 筋 型 のMHC
筋(Type
Ⅰ)線
Iを 含 む ハ イ ブ リ ッ ドフ ァ
イ バ ー の 著 し い 増 加 が 認 め ら れ,筋
線維 の特性 は
と と もに 筋 線 維 総 数 の 顕 著 な 減 少 が あ げ られ る.70∼
Type
80歳 代 の 骨 格 筋 で は,20∼30歳
ⅡA(MHC
Ⅱa)→Type
トす る.逆
に 後 肢 懸 垂15)や ス ペ ー ス フ ラ イ ト26),脊 髄
代 に比 べ 筋線 維 総 数
が 半 数 近 く ま で 減 少 す る と い う 報 告 も み られ る22.ま た,20年
間 の 縦 断 的研 究 に よ り,日 頃 運 動 を 行 っ て い
な い ヒ トの 骨 格 筋 で は 老 化 に よ っ てType
Ⅰ線 維 の 割
Ⅱb)→Type
ト レー ニ ン グ に よ る 筋 線 維 組 成 の 変 化 に つ い て は, 久
的 トレ ー ニ ン グ や 高 強 度 イ ン ター バ ル ト レー ニ ン グ で
ⅡX(MHC
Ⅰ(MHC
Ⅱx)→Type
Ⅰ)の 方 向 へ と シ フ
損 傷24)な ど に よ り骨 格 筋 の 活 動 水 準 が 低 下 し た 場 合, 筋 線 維 タ イ プ ま た はMHC成 の 変 化 が 生 じ,速 筋(Type
合 が 増 加 す る こ と が 報 告 さ れ て い る25).
ヒ トの 場 合 で は 一 致 し た 見 解 は 得 られ て い な い.持
ⅡB(MHC
は 速 筋 型 のMHC
ⅡxやMHC
分 は 遅 筋 型 か ら速 筋 型 へ ⅡA, ⅡX, ⅡB)線
Ⅱbを 含 む ハ イ ブ リ ッ ド
フ ァ イ バ ー が 著 し く 増 加 し,Type Type
ⅡA(MHC
Ⅱa)→Type
維 あ るい
Ⅰ(MHC
ⅡX(MHC
Ⅰ)→
Ⅱx)→Type
は 筋 線 維 組 成 は 変 化 しな い と い っ た 報 告25)と,Type
ⅡB(MHC
ⅡB線 維 あ る い はMHC
物 実 験 で は 骨 格 筋 の 活 動 水 準 を極 端 に 増 加 さ せ た り あ
Ⅱbア イ ソ フ ォー ム の 割 合 が 減
Ⅱb)の 方 向 へ と変 化 す る.こ
の よ う に,動
る い は 減 少 させ る こ と が 可 能 で あ り,そ の 結 果,筋
線
維 の 特 性 は あ る 一 定 の 方 向 へ と 変 化 して い く.
1.7
筋 線 維 タイ プ の推 定
筋線 維 組 成 は私 た ちが スポ ー ツを行 ううえで 重要 な 影 響 を 及 ぼ し て い る.そ の 評 価 や 方 向 づ け,さ
の た め,ス
ら に ス ポ ー ツ タ レ ン トの 発 掘 と
い っ た 意 味 に お い て,個
人の筋 線維 組 成 を知 る ことは
意 義 深 い と 考 え ら れ る.筋 か の 方 法 が あ る.直 て は,1962年
ポ ー ツ種 目の適 性
線 維 組 成 を知 る に は い くつ
図1.6 50m走
接 筋 を取 り出 して 調 べ る 方 法 と し ○:ス
ベ ル グ ス トロ ー ム が 開 発 した ニ ー ドル バ
イ オ プ シ ー(筋
生 検)法
が あ げ ら れ る.こ
れ は,バ
お よ び12分間
走 の 速 度 比 と筋 線
維 組 成 の 関係9) プ リ ン ター,△:長
技 選 手,●:非
イ
距 離 ラ ンナ ー,□:球
運 動 選 手.
オ プ シ ー 用 ニ ー ドル を 筋 内 に 挿 入 し微 量 の 筋 断 片(30 ∼50mgの る)を
重 量 で200∼500本
程 度の 筋線 維が 含 まれ
取 り 出 す 方 法 で あ る.取
り出 し た 筋 断 片 を 組 織
を 提 唱 し て い る.こ
化 学 的 に 染 色 し筋 線 維 組 成 を調 べ る こ とが で き る た め
る こ と を 認 め(図1.6),こ
信 頼 性 は 高 い.し
り,か
か し,こ
小 切 開 が 必 要 で あ り,誰
の 方 法 は 局 所 麻 酔 と皮 膚 の
もが手 軽 に行 える もの では な
れ に よ る と,50m走
の 速 度 を12
分 間 走 の 速 度 で 除 した 値 が 筋 線 維 組 成 と 密 接 に 関 連 す の速度比 を求 める こ とに よ
な り高 い 精 度 で 筋 線 維 組 成 を推 定 で き る と して
い る.こ
の 方 法 は,誰
で も グ ラ ン ド で 手 軽 に 行 え,し
い8).
か も 特 別 な 装 置 も 必 要 と し な い こ と な ど か ら,筋
筋 線 維 タ イ プ を 間 接 的 に推 定 す る方 法 と して い く つ
組 成 の 有 効 な 推 定 手 段 と 考 え ら れ る.
か の 方 法 が 考 え ら れ て い る.そ
の一つ に筋電位 伝 導速
度 に よ る推 定 法 が あ る14).こ れ は,筋 電 極 を 取 りつ け,筋
の表 面 に ア レー
の 収 縮 に よ り記 録 さ れ た筋 電 図 パ
タ ー ン と電 極 間 の 距 離 か ら伝 導 速 度 を 求 め る もの で あ る.こ の 伝 導 速 度 と筋 線 維 組 成 は密 接 に 関 連 して お り, 伝 導 速 度 の 速 い 筋 ほ どType
た が っ て 伝 導 速 度 を 知 る こ とに よ り間 接 的 に筋 線 維 組
気 共 鳴 映 像 法(magnetic
●
わ り 筋 が 収 縮 す る の か,そ
に よ る推 定 法 が あ る12).こ の 方 法 は,MRIの ラ メ ー タで あ る 緩 和 時 間 を 求 め,間
3. 筋 線 維 タ イ プ を 分 類 し そ れ ぞ れ の 筋 線 維 の 特 性 に つ い て 述 べ な さ い. ミ オ シ ン 重 鎖 ア イ ソ フ ォ ー ム と筋 線 維 タ イ プ の 関 連 に つ い て 述 べ な さ い.
独特のパ
接 的 に筋線 維組 成
の経 路 につ い て 述 べ な さ
い.
4.
imaging:MRI)
題
2. 興 奮 収 縮 連 関 に 関 し て 神 経 か ら の 刺 激 が ど の よ う に 伝
の 他 の 方 法 と して,磁
resonance
問
1. 骨 格 筋 は ど の よ う な 構 造 を し て い る か 述 べ な さ い.
Ⅱ 線 維 の 比 率 が 高 く,し
成 を 推 定 す る こ と が で きる.こ
線 維
5. 筋 線 維 組 成 と ス ポ ー ツ 種 目 は ど の よ う に 関 連 し て い る か 述 べ な さ い.
を 推 定 す る も の で あ る.さ
らに 最 近 で は,磁
光 法(magnetic
spectroscopy:MRS)を
resonance
気 共 鳴分
6.
用
い て 速 筋 線 維 と遅 筋 線 維 の 相 対 的 な ク レ ア チ ン リ ン酸 含 有 量 の 違 い を 検 出 す る こ とに よ り,筋 線 維 組 成 の 推
述 べ な さ い. 7. 筋 線 維 組 成 の 推 定 法 を い く つ か あ げ,そ
み も な く非 観 血 的 で あ る が,測
た 簡便 で誰 にで もで きる推 定法 の 開発
●
参 考
が 望 ま れ る.
法 と し て,50m走
文 献
1) Andersen, chain
勝 田 ら9)は,よ
J. L., Klitgaard, H. and Saltin,B.:Myosin
isoforms
in single fibres fron m. vastus
sprinters:Influence
り一 般 的 に 筋 線 維 組 成 を 推 定 す る 方 と12分
所
定の た め に
高 価 な 設 備 や 熟 練 し た 測 定 者 を 必 要 とす る.そ の た め, よ り一 般 的,ま
の 長 所,短
に つ い て 述 べ な さ い.
定 が 可 能 で あ る こ と も 示 さ れ て い る23).こ れ ら の 推 定 方 法 は,痛
ト レ ー ニ ン グ あ る い は 活 動 水 準 の 増 加 ・減 少 に よ り筋 線 維 組 成 や ミオ シ ン重 鎖 成 分 は どの よ う に変 化 す るか
間 走 の 速 度比 に よ る 推 定 法
Scand.,151
heavy
lateralis of
of training intensity. Acta
Physiol.
:135-142,1994.
2) Biral, D., Betto, R., Danieli-Betto.
and Salviati,G.:Myosin
heavy
chain
muscle.
composition
Biochem.
3) Brooke,
M.
of single
H. and
Kaiser,
normal
human
科 学,34:231-238,1985. 15)
K. K.:Three"myosin
triphosphatase"systems:The and
fibres from
J.,250:307-308,1988.
nature
sulfhydryldependence.
adenosine
of their
J. Histochem.
pH
liability
Cytochem.,18: 16)
V.
and
histochemical
study
activity in skeletal 5) Gollnick,
of oxidative
muscle.
W.
enzyme
L. and
activity
muscle.
J. Appl.
6) Harridge,
chain
and
and
R.:The
training.
Dynamic
茂:筋
of training skeletal
Pellegrino,
muscle
M.,
function,
system
Muscular
442-
and
its adaptation
Function
茂,高
薫,田
中
と12分
守,小
育 の 科 学,37:
野 譜 也,田
P. V., Viitasalo,
Sjodin,
B.
and
線 維 組 成 と 運 動 競 技 特 性.デ
muscle
enzyme
of both
sexes.
12) Kuno,
S., Katsuta,
Akisada, muscle
Physiol.
サ ン
S., Inoue,
T.
and
expression isoforms stimulated
Pette,
rabbit
A.,
fibres dizygous
ralaxation
D.:Coordinate subunit
fast-to-slow muscle.
渡 山 亜 兵,勝
functionally
overloaded
and
changes myosin
transition
Eur.
田
K. time
and
Schiaffino,
fibres
V.
of
the
multiple rat
R., Gillespie,
pigs
and
of
three
rabbits.
soleus
C.
fiber
A.
and
types
of
Biochemistry,11:
24)
chain
Muscle
Res.
and
Gorza,
L.,
Lee,
M.,
Ishihara,
MHC
exercised
A.
and
isoforms
rat
Sartore, K.
isoforms Cell
Schiaffino,
plantaris
in
fibers.
J.
in
S.,
and
Saggin,
Lomo,
type
2
L.,
Ausoni.
T.:Three
skeletal
S.,
myosin
muscle
fibres.
J.
Motil.,10:197-205,1989.
S.
and
Reggiani,
skeletal
Schiaffino,
S.
C.:Myosin
muscle.
J.
Appl.
and
the
25)
of low-frequency26)
尺性 収 縮 に お け る 外 力
Physiol.
Simoneau,
J. A.
fiber
proportion
type
isoforms
in
Physiol.,77:493-501,
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muscle
and
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J.
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Kuno,
H.,
and
and
NMR
Talmadge,
S., Katsuta,
Anno,I.
composition
S.,
Itai,
NMR
Shimojo,
H.,
Masuda,
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measurements
K.,
between in
human
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R.
chain
S.
Skeletal
muscle
W.,
20-yr
follow-up
Zhou,
M.
Y.,
R.
and
hybrid
rats.J.
Trappe,
Costill,
Appl. D.
Edgerton, fibers
study. Klitgaard,
Gollnick,
human
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P. after
V.
in
R.:Prominence
soleus
muscle
of
spinal
Physiol.,78:1256-1265,1995.
L., rink,
characteristics
R.and
:
skeletal
development,
Takahashi,
78
Reggiani,
proteins:Gene
of myosin
heavy-chain
側 広 筋 の 筋 電 位 伝 導 速 度 ‐ そ の 筋 線 維 組 成 と の 関 連.体
K.,
of
Gundersen,
cord-transected
in
Fox,
R.:Modulation
S., M.,
heavy
fiber
and
J. Biochem.,213:1039-1046,
茂:等
E.:
of
Physiol.,83:280-290,1997.
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J., Edgerton,
R.J.,
V.
Yoshioka,
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1993. 14) 宮 田 浩 文,佐
23)
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T., Anno, between
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single
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Talmadge,
Delineation,
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M.:Relationship
13) Leeuw,
M.,
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activities in monozygous Acta
R.,
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Karlsson,
R.
Edgerton,
9 22)
トス ポ ー ツ 科 学,7:34-43,1986. 11) Komi,
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間走 の 成績 に よ る 外 側 広 筋 の 筋 線 維
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E. :Metabolic
myofibrillar
育 学 研 究,34:141-149,1989.
茂,和
20)
Karger,1996.
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and
expression
1994.
P. and
21)
松
isoforms
Barnard,
mammalian
During
P., Saltin, B., Komi, Basel,
Roy,
Vianello,
and
Physiol.,84:
バ イ オ プ シ ー に つ い て.体
組 成 の 推 定.体 勝 田
18)
Saltin, B.:
1987.
渕 健 一:50m走
10)
Human
V. eds.),pp.82-94,
830-837, 9) 勝 田
In
contractile
J. B.,
Appl.
J. Appl.
Exercise(Marconnet,
Poortmans, 8) 勝 田
17)
19)
S. D.
Peter,
H. the
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Ⅳ, C. W.,
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P. D. and
in vivo
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chain
Acta
skeletal
:107-111,1973.
in vitro
heavy
heavy
muscle.
phosphorylase
M.,
Yamamoto, induces
myosin
K.
of human
R., Canepari,
A.,
suspension
Stempel,
R. E.:Effect
M., Balsom,
Ishihara,
comparative and
fiber composition
R.,Bottinelli,
training,
enzyme
Shepherd,
and
E. :A
R. B., Saltin, B., Saubert
C.,Esbjornsson,
myosin
G.
Histochemie,2:105-117,1960.
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S. D.
Reggiani, Sprint
A.
P. D., Armstrong,
Sembrowich, on
Pearse,
Y.,
Hindlimb
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Oishi,
W.
J. and
among
J. Appl. H.,
Pearson,
distance
D.
R.:
runners:a
Physiod.,78:823-829,1995.
Saltin,
B.,
Roy,
D.:Myosin
heavy
short-term
spaceflight.
R.
R.,
chain J.
Edgerton,
V.
isoforms
of
Appl.
Physiol.,
2 筋 力 と筋 パ ワ―
ス ポ ー ツ パ フ ォー マ ン ス に 及 ぼ す 筋 力 ・筋 パ ワ ー の 影 響 は 大 きい.競
技 種 目に よ っ て は,筋
力 ・筋 パ ワ ー の 大 小 が パ フ ォ ー マ ンス の大 部 分 を決 め て し ま う もの もあ る.し よ う な 筋 力 ・筋 パ ワー が ど の よ う な 生 理 学 的 要 因 に 影 響 され,ト に 変 化 す る の か に つ い て 検 討 す る こ と は重 要 と思 わ れ る.そ
た が っ て,こ
の
レーニ ングに よって どの よう
こで,本
講 で は 筋 力 ・筋 パ ワー の
大 き さ を 決 め る生 理 学 的 背 景 に つ い て 概 説 す る.
通 常 の 筋 活 動 で み られ る こ と は 少 な い.こ
2.1 筋 収 縮 の 様 式
の収縮 様式
はお もに等速 性 筋力 測定 器 な どを用い て行 われ る こと が 多 い.等
速 性収 縮 で は関節 の角 度 に よって筋力 は一
筋 収 縮 の 様 式 を 二 つ に大 別 す る と,ま ず 関 節 が 動 く
定 の 値 を と らず,時
か 否 か と い う 点 で 静 的 収 縮(static
張 性 収 縮 と等 速 性 収 縮 は 筋 が 短 縮 し な が ら力 を 出 して
び 動 的 収 縮(dynamic
contraction)に
contraction)お
よ
い るの か,あ
分 け られ る.す
々 刻 々 と筋 力 の 値 は 変 化 す る.等
る い は筋 が 伸 張 し な が ら力 を 出 し て い る
な わ ち,前 者 は 関 節 が あ る 一 定 の 角 度 で 固 定 さ れ た 状
の か に よ っ て,短
態 で 筋 力 発 揮 を行 う も の で,後
と 伸 張 性 収 縮(eccentric
者 は関節 の ある可動 域
内 で 筋 収 縮 が 行 わ れ る もの を意 味 して い る.静
は,伸
(isometric contraction)と
図2.1に
揮 さ れ た 張 力 が 一 定 で あ る場 合,関
contraction)に
contraction) 分類するこ
と が で き る.最 大 努 力 で 行 っ た 場 合 に発 揮 され る筋 力
的収 縮
は 筋 の 長 さが 一 定 で あ る と い う こ とか ら,等 尺 性 収 縮 い わ れ る.動
縮 性 収 縮(concentric
的収縮 で は発
節 の運動 の速 度が
張 性 収 縮 > 短 縮 性 収 縮 で あ る.筋
収縮 の様式 を
ま とめ た.
また,最
近 の 超 音 波 法 を 用 い た 研 究 か ら,安 静 時 ば
一 定 で あ る 場 合 を そ れ ぞ れ 等 張 性 収 縮(isotonic
か りで な く収 縮 中 の 筋 束(筋
contraction),等
の 動 態 を リ ア ル タ イ ム に 映 し 出 す こ と が で きる よ う に
よぶ.た
速 性 収 縮(isokinetic
と え ば,5kgの
contraction)と
ダ ンベ ル を 持 っ て,肘
関節 の
線 維 が 集 合 した 筋 の 束)
な っ た.そ れ に よ っ て,等 尺 性 収 縮 時 に お い て も筋 線
伸 展 や 屈 曲 を 行 う よ う な 運 動 は"等 張 性 収 縮"で あ る.
維 が 収 縮 す る よ うす が 確 認 さ れ て い る11).つ ま り,関
つ ま り,5㎏
節 角 度 は 一 定 で も,筋 の 中 で は 筋 線 維 は 収 縮 して い る
る の で,"等
の ダ ンベ ル の 重 さ が 常 に 腕 に か か っ て い 張 性"な
の で あ る.一
方,等
速 性 収縮 は
図2.1
の で あ る.こ れ は お そ ら く筋 以 外 の 腱 の よ う な 弾 性 組
筋 収縮 の 種 類
織 が 伸 ば され た た め 生 じ た こ と に よ る と考 え られ て い る.
2.2 筋 力 に 影 響 す る 因 子
a. 筋 断 面 積 最 大 筋 力 は そ の 筋 の 断 面 積 に ほ ぼ 比 例 す る と考 え る こ と が で きる.し よ り,大
た が っ て,筋
量 の多 い者 は少 ない者
きな 力 を 出 す こ とが で きる と 大 まか に い う こ 図2.2 羽 状 筋 の模 式 図
と が で き る.
θ:羽 状 角,生
筋 の 断 面 積 を 示 す 指 標 は 二 つ あ る.一 つ は生 理 学 的 断 面 積 で,も
う 一 つ は解 剖 学 的 断 面 積 で あ る.こ
の 二 つ の 筋 断 面 積 は 図2.2の が で きる.ま
た,こ
の 総 和(図2.2で
れ ら の 二 つ の 筋 断 面 積 は次 の よ う
の 筋 断 面 積 お よ びC-D間
b.神
経性 の 因子
筋 力 発 揮 に神 経 性 の 因 子 は 重 要 な 役 割 を す る.筋
・解 剖 学 的 断 面 積:筋 はE-F間
の長軸 方 向 に垂直 な筋 断面 積
の 筋 断 面 積)
電
力 発揮 時の 筋 の電気 的
な 活 動 状 態 を記 録 す る こ とが で き る.神
経性 の因子 に
は 大 き く分 け て 二 つ の 因 子 が あ る と 考 え られ て い る. 一 つ は筋収 縮 に参 加す る 運動 単位 の数 で
の 筋 断 面 積 の和)
(図2.2で
筋断面積の 合
筋 断 面積.
図 法 を 用 い る こ と に よ っ て,筋
に 含 まれ る 全 筋 線 維 の 断 面 積
はA-B間
剖 学 的 断 面 積:E-Fの
れら
よ うに模 式的 に表 す こ と
に 定 義 す る こ とが で き る. ・生 理 学 的 断 面 積:筋
計,解
理 学 的 断 面 積:A-BとC-Dの
,も
う一つ は
運 動 単 位 へ の イ ン パ ル ス の 発 射 頻 度 で あ る.ま 力 トレ ー ニ ン グ な ど を 行 う と,筋
た,筋
力発揮 時 に参加 す る
解 剖 学 的 断 面 積 に つ い て は 磁 気 共 鳴 映 像 法(MRI)
運 動 単 位 の 同 期 化 が 生 じ て く る こ と も報 告 さ れ て い
な ど を 用 い て,1枚
る.最
の 横 断 像 を撮 影 す る こ と に よ っ て
近,運
動 後 のMRIか
ら,筋
の動員 能力 を評価 す
ヒ トの 骨 格 筋 で も簡 単 に 測 定 す る こ とが で き る.一 方,
る こ と が 可 能 と な っ て き た.表2.1に
生 理 学 的 断 面 積 につ い て は,ヒ
速 度 に お け る等 速 性 膝 伸 展 力 と膝 伸 筋 群 の 生 理 学 的 断
トの 筋 に お け る す べ て
の 筋 線 維 の 断 面 積 を 測 定 す る こ と は で き な い の で,以
面 積(PCSA)お
下 の よ う な 式 を 用 い て 推 定 す る こ と が で き る.
算 出 した 生 理 学 的 断 面 積(activated
生 理 学 的 断 面 積=(筋
関 係 に つ い て 示 し た.等
筋 束 長 と は 図2.2に を示 して い る.ま 示 し て い る.こ
の 体 積)×(筋 東 長)−1×cosθ
お け る筋 束 の 腱 か ら腱 まで の 距 離 た,θ
れ を羽 状 角 と い う.図2.2を
筋 の 収 縮 方 向 と 筋 束(筋 い る.し
は 筋 束 と腱 膜 と の な す 角 度 を
た が っ て,筋
線 維)の
線 維 の 張 力(F)の
筋 の 収 縮 ベ ク トル(F・cosθ)と
み る と,
収 縮 方 向は異 な って 分 力 の う ち,
同一 の 方 向の 分力 の
み が 筋 の 張 力 発 揮 に 影 響 を与 え る の で,羽
状 角 の余 弦
よ び 筋 の 動 員 能 力 の 影 響 を 考 慮 して
積 との 間 に は 角 速 度0°/秒 め られ て い る が,筋
との 間 に の み 相 関 関係 が 認
つ の 角 速 度 と の 間 に も 相 関 関 係 が 認 め られ,さ
の二
らにす
べ て の 角 速 度 の 相 関 係 数 が 高 値 を 示 して い る.つ ま り, こ れ は 筋 の 動 員 能 力 が 筋 力 に影 響 す る こ と を 示 し て い る. 一 方,伸
張 性 収 縮 時 に は,筋
が も っ て い る 最 大 の張
力 が 発 揮 さ れ て お らず,神
と も報 告 され て い る.Dudleyら7)は 理 学 的 断 面 積 と解
の相 関
の 動 員 能 力 を 考 慮 す る と,他
る. み れ ば わ か る よ う に,生
PCSA)と
速 性 膝 伸 展 力 と生 理 学 的 断 面
成 分 の影 響 を生 理 学 的 断面 積 の計 算 に加 え るの で あ
図2.2を
は さま ざ まな角
経系 の抑 制 が生 じてい るこ 随 意 に よ る筋 力 発
揮 お よ び 電 気 刺 激 に よ っ て 誘 発 さ れ た筋 力 と の短 縮 性
剖 学 的 断 面 積 と で は 生 理 学 的 断 面 積 の ほ う が 大 きい.
収 縮 力/伸 張 性 収 縮 力 比 に つ い て 検 討 した.そ
た と え ば,ヒ
随 意 で 発 揮 され た 場 合 よ り,電 気 刺 激 の 時 の 比 の ほ う
トの 膝 伸 筋 群 で は 生 理 学 的 断 面 積 が 解 剖
学 的 断 面 積 の 約3倍 の 高 値 を 示 す1).図2.2に
示 したの
が 高 値 を 示 した.こ
の 結 果,
れ は 随 意 の 場 合 に は 上 位 中枢 か ら
は 羽 状 筋 の 例 で あ り,上 腕 二 頭 筋 の よ う な紡 錘 状 筋 で
の 抑 制 が か か っ て お り,筋 そ の も の が 本 来 発 揮 で きる
は そ れ ら二 つ の 筋 断 面 積 は 等 し い と考 え る こ と が で き
張 力 を 十 分 に 発 揮 で き て い な い こ と を 示 唆 し て い る.
る.
お そ ら く こ れ は 筋 の 損 傷 や 断 裂 な ど を 回 避 す る神 経 系
表2.1
等 速性 膝伸 展 筋 力 と生 理 学 的断 面 積(PCSA)お
よび
d.そ
の他 の要 因
筋 の動 員 能 力 を 考 慮 した 生 理 学 的 断 面 積(activated PCSA)と
筋 線 維 が 発 揮 し た 張 力 は 腱 に伝 わ り,関
の 関係(秋 間 ら,1998)
節 を 介 して
回 転 運 動 と な り,そ れ を わ れ わ れ は張 力 計 や 等 速 性 筋 力 測 定 装 置 な どで 測 定 して い る.し
た が っ て,筋
線維
が 発 揮 した 張 力 を 筋 力 と し て 測 定 さ れ る ま で に は さ ま ざ ま な もの の 影 響 を受 け る.た
と え ば,筋
力発揮 の仕
方 に よ っ て は 腱 の 弾 性 が 影 響 して くる.ま
た関 節 にお
け る モ ー メ ン トア ー ム(関 た ぐ腱 ま で の 距 離)の *:p<0
表2.2
節 の 回 転 中 心 か ら関 節 を ま
大 き さ に よ っ て も影 響 さ れ る.
.05.
2.3
等 速 性 膝 伸 展 力 と外 側 広 筋 の 筋 線 維 組 成 と の 関 係
固 有 筋
力
(秋 間 ら,1995b)
固 有 筋 力(specific 1cm2当
tension)は
筋 の 生理 学 的 断面積
た り に 発 揮 さ れ た 筋 の 張 力 を 意 味 し て い る.
生 理 学 的 意 味 と し て は 絶 対 筋 力(absolute と 同 じで あ る が,最
う 言 葉 を用 い る 場 合 が 多 い.こ *:p<0
strength)
近 の 論 文 で はspecific tensionと い れ は筋 の張 力発 揮 能力
の 質 的 な 側 面 を 反 映 した 指 標 と い う こ とが で き る.動
.05,**:p<0.01.
物 の 筋 を 実 際 に取 り出 し,固 有 筋 力 を測 定 し て み る と, の 適 応 で あ る と考 え る こ とが で きる.
ほ ぼ 一 定 の 値 が 得 られ る(22N/cm2). と こ ろ が,筋
c. 筋 線 維 組 成
の テ コ 比 を 考 慮 し,腱
等 尺 性 最 大 筋 力 と%FT線
維 との 間 には相 関関 係 が
あ る と す る 報 告 が い くつ か あ る が,有 な い とす る 報 告 も あ る.一 維 あ る い は%area
FT線
方,等
意 な相 関 関係 は
速 性 筋 力 と%FT線
維 との 間 に 有 意 な 相 関 関 係 が
あ る と す る 研 究 は 多 く存 在 す る.表2.2に に お け る%FT線
力 計 な どで 測 定 さ れ た 最 大 筋 力 を 関 節
維 お よ び%area
は 外側 広筋
FT線 維 と い ろ い ろ な
に か か っ て い る 張 力(つ
筋 自 体 が 実 際 に 発 揮 し た 張 力)を
ま り,
推 定 し,こ の 張 力 と
筋 の 生 理 学 的 断 面 積 の 比 を と っ て み る と,11∼72 N/cm2と
非 常 に 広 範 囲 に わ た る(図2.3).こ
の ような
筋 に お け る 固 有 筋 力 の バ ラ ツ キ の 原 因 に は,測
定上 お
よび算 出上 の さ まざ まな誤差 が 含 まれ てい る可 能性 は 十 分 に 考 え られ る が,7倍
の違 いの すべ て をそ れで 説
角 速 度 に お け る 等 速 性 膝 伸 展 力 との 関 係 に つ い て 示 し
明 す る こ と は で き な い.こ
れ に 関 し て は,い
た.%FT線
解 決 の ま まで あ る.
維 と等 速 性 膝 伸 展 力 と の 間 に は 角 速 度
まだ に未
60°/秒 にお い て の み 有 意 な 相 関 関 係 が 認 め ら れ て い る が,%area
FT線
維 との 間 に は す べ て の 角 速 度 に お い
て 有 意 な 相 関 関 係 が 認 め ら れ て い る.ま Thorstenssonら19)の
(角 速 度180°/秒)と%FT線
維 との 間に有 意 な相 関関
係 が 認 め ら れ て い る(r=0.69,p<0.05).等 展 力 と%FT線 違 い は,前
た,
研 究 に お い て も等 速 性 膝 伸 展 力
維 お よび%area
FT線
速 性膝 伸
維 との相 関関係 の
者 は 生 来 的 に ほ ぼ変 わ る こ とが な い パ ラ メ
ー タ で あ る の に 対 して
,後 者 は ト レー ニ ン グ や 環 境 に
よ っ て 十 分 に 変 化 し う る も の で あ る.こ
の よ うな違 い
が 等 速 性 膝 伸 展 力 との 相 関 関 係 の 違 い に 表 れ て き た も の と思 わ れ る.
図2.3
ヒ ト生 体 の 筋 にお け る 固 有 筋 力 の 比較
こ れ ら の研 究 で は,す
べ てMRIを
用 いて筋の生理 学的
断 面 積 が 算 出 さ れ て い る.肩 つ きの 数字 は 文 献.
す.こ 2.4
筋
パ
の ほ とん どは収 縮速 度 の違 い に起 因す るもので
あ る.し
ワ ー
た が っ て,筋
パ ワー の違 い に は筋線 維 タ イプ
の 違 い が 大 き く影 響 して い る と思 わ れ る. 一 般 的 に"あ
の 選 手 は パ ワー が あ る"と
い う こ とを
わ れ わ れ は よ く口 に した り,耳 に した りす る.こ 合 の"パ
ワ ー"と
の場
ワ ー が 大 き い 」 は,あ
る 程 度 ま で は 正 し い か も しれ な い が,正
確 に はパ ワー
と は 以 下 の よ う に 算 出 で き る.
つ ま り,パ
仕事/ =力
×
時間
距離/ =力 ×速 度 時間
パ ワ ー とは 筋 が 発 揮 し
た 力 と筋 の 収 縮 速 度 の 積 で 表 す こ と が で き る.筋 態 的 観 点 か ら い え ば,筋
の形
が発 揮 した力 は筋 断面積 に比
の 収 縮 速 度 は 筋 線 維 の 長 さ に 比 例 す る.し
が っ て,形
a. 筋 力 トレー ニ ン グ 筋 力 ト レー ニ ング の よ う に 筋 に 大 きな 負 荷 をか け る こ と に よ っ て 随 意 最 大 筋 力(maximum
voluntary
contraction:MVC)は
は 筋 力 トレ
ー ニ ン グ に 伴 うMVC
ワ ー は 力 と速 度 の 積 で 表 す こ と が で き る.
筋 の レベ ル で 考 え て み る と,筋
例 し,筋
さ ま ざ ま な トレ ー ニ ン グ に 伴 う 筋 力 の 変 化
は お そ ら く力 の こ と を 意 味 し て い る
場 合 が 多 い.「 力 が 大 き い=パ
パ ワ ー=
2.5
た
態 的 に は 筋 断 面 積 と筋 線 維 長 の 積 は そ の 筋
増 加 す る.図2.5に ,筋 断 面 積,神
レー ニ ングの 初期 に は神経 性 の因
子 の 改 善 に よ り,ト
レ ー ニ ン グ 前 に は 動 員 す る こ とが
で き な か っ た 筋 線 維 が ト レー ニ ン グ に よ り,新
たに筋
力 発 揮 時 に 動 員 さ れ る よ う に な っ た こ とが 起 因 し て い る と考 え ら れ て い る.最
近,こ
の 筋 力 ト レー ニ ン グ初
期 に 生 ず る 新 た な筋 線 維 の 動 員 が,ヒ
が も っ て い る 筋 の パ ワ ー ポ テ ンシ ャ ル を示 して い る こ
際 に 生 じて い る こ とがMRIを
と と な る.し
れ て い る5).図2.6に
か し な が ら,筋 そ の も の の 筋 パ ワ ー を 測
経 性 因子 の 変化
に つ い て 示 し た.ト
トの 骨 格 筋 で 実
用 い た 研 究 か ら確 か め ら
は2週 間 の膝 伸 展 の 筋 力 ト レー ニ
定 す る こ とが 困 難 で あ る の で,慣 性 車 輪 や 等 速 性 マ シ
ン グ が 最 大 努 力 に よ る膝 伸 展 運 動 時 の 筋 の 動 員 様 相 に
ー ンな どを用 い て筋 パ ワーが 計算 され るこ とが ほ とん
及 ぼ す 影 響 につ い て 示 し た.ト
ど で あ る.慣
群 で は トレ ー ニ ン グ 前 と比 較 して,白
約1/3の
性 車 輪 を 用 い た 実 験 か ら は,最
大 筋力 の
負荷 の とこ ろで最 大 のパ ワー が 出現 す る こ と
っ て い る こ とが わ か る.こ
レーニ ング後 の膝伸 筋 い 部 分 が 多 くな
れ は トレ ー ニ ン グ前 に は 動
が 報 告 さ れ て い る12).
員 す る こ と が で き な か っ た 筋 線 維 が,2週
筋 パ ワー は筋 の形 態的 な特性 の他 に筋線 維 タ イプに
ニ ン グ に よ っ て,動
も大 き く影 響 を 受 け る.図2.4に
と考 え られ る.
線 維 お よ びST線 て 示 し た.こ ワ ー はST線
図2.4
は ヒ トの 骨 格 筋 のFT
維 に お け る 力,速
度,パ
ワ ー につ い
れ を み る と わ か る よ う に,FT線 維 の そ れ と比 較 し て,約4倍
ヒ トのFT線
維 お よ びST線
維 の 力,速
維のパ
の 高 値 を示
度,パ
ワー曲 図2.5
線8) 力,速 度,パ ワ ー はFT線
維 の 最 大 値 を1と
間 の ト レー
員 で きる よ うに なっ たた めで ある
して 表 され て い る.
筋 力 トレ ー ニ ング に 伴 う随 意 最 大 筋 力,筋 面 積,神
経 性 因子 の 変化9)
断
表2.3 20週 間 の筋 力 ト レー ニ ン グに よ る外 側 広 筋 の 変 化 (n=5)(Kunoら,1990)
**:p<0
.01vsト
レ ー ニ ン グ 前.
b. ス プ リ ン ト トレ ー ニ ン グ ス プ リ ン ト トレ ー ニ ン グ に よ っ て 筋 力 が ど の よ う に 変 化 す る の か とい う研 究 は 非 常 に 少 な い.Shealyら17) お よ びAkimaら4)は
ス プ リ ン ト ト レー ニ ン グ に よ っ て
膝伸 展 力お よび膝 屈 曲力が 低下 す る こ とを報告 してお り,Thorstenssonら18)は
等 尺性 最大膝 伸展 力 が有意 に
増 加 し た こ と を 報 告 し て い る.こ 図2.6
2週 間 の 筋 力 トレ ー ニ ン グ前 後 の 筋 の 動 員 様 相 の 変 化(Akimaら,1999)
最 大 努 力 の 膝 伸 展 運 動 直 後 に撮 ったMRIを
画像 処 理 し た もの.
の よ う に,ス
プ リン
ト トレ ー ニ ン グ が 筋 力 に 及 ほ す 影 響 に つ い て は 一 致 し た 見解 は得 ら れ て い な い.
さ ら に ト レー ニ ング を続 け る と筋 に 肥 大 が 生 じ,こ
c. 持 久 性 ト レー ニ ン グ が 筋 力 に 及 ぼ す 影 響
の 筋 量 の 増 加 が 筋 力増 加 の 主 要 因 と な る(図2.5).筋
持 久 性 ト レー ニ ン グ が 筋 力 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て は
の 肥 大 はFT線
十 分 に 明 ら か に な っ て い な い.持
維 とST線
維 の 両 方 に 生 じ る が,FT線
久 性 トレ ー ニ ン グ に
維 の 肥 大 率 が 大 き い(表2.3).
よ り最 大 挙 上 重 量 が 増 加 した と す る 研 究,筋
筋 線 維 の 肥 大 と増 殖
響 を 及 ぼ さ な い6),あ る い は マ イ ナ ス の 影 響 を 及 ぼ す3)
筋 力 ト レ ー ニ ン グ に よ っ て 増 加 す る 筋 量 は,筋 の 肥 大 だ け に よ る も の か,新 増 殖 も生 じ る の か は,解
線維
力 には影
と い う研 究 が あ り,一 致 し た 見 解 は 得 られ て い な い.
た に 筋 線 維 が 形 成 され る
決 され て いな い議論 の 一つ で
あ る.実 験 動 物 を 用 い た研 究 で は 筋 線 維 の 増 殖 が み ら
● 問 題 1. 筋 力 発揮 を行 う場 合 の 筋 の収 縮 様 式 を分 類 しな さい.
れ る とす る 研 究 が い くつ か 報 告 さ れ て い る.し
2. 筋 力 発揮 を す る場 合,そ
が ら,ヒ
トの 場 合,方
か しな
法 論 的 な 問 題 か ら実 際 に 筋 線 維
が 増 え た の か 否 か とい う こ と に つ い て 調 べ る こ と は, 非 常 に 困 難 で あ る.MaCallら15)はMRIか 上 腕 二 頭 筋 の 筋 断 面 積 と,筋
ら 得 られ た
生 検 か ら算 出 した 筋 線 維
横 断 面 積 か ら,上 腕 二 頭 筋 の 筋 線 維 数 を 推 定 し て い る. 12週 間 の 筋 力 トレ ー ニ ン グ を 行 っ た 結 果,Type 維 で は27%,Type
Ⅱ線 維 で は40%の
の 有 意 な増 加 が み ら れ たが,推
筋線 維 横 断面積
定 に よる上腕 二頭 筋 の
筋 線 維 数 に は 変 化 が み ら れ な か っ た.ヒ 線 維 数 を調 べ る 場 合 に は,や わ ざ る を え な い た め,こ そ うで あ る.
Ⅰ線
トに お い て 筋
の大 き さ を左 右 す る 生体 の因
子 につ いて 述べ な さい. 3. 固 有 筋 力(specific tension)は,生
体 の筋 機 能 の どの
よ うな 側面 を 反 映 した指 標 で あ る のか,ま た,何 と何 の 比 で算 出 す る こ とが で きる のか を述 べ な さい. 4. 力 学 的 に い う と,パ ワ ー は何 と何 の積 で 求 め る こ とが で きるか 述 べ な さ い. 5. 筋 力 ト レー ニ ン グ の 初期 とそ れ 以 降(約3週
間 以 降)
につ い て,そ れ ぞ れ 筋力 増 加 にお もに貢 献 す る 因子 を あ げ な さい. 6. 筋 力 トレー ニ ング に伴 う筋 線 維 の肥 大 と増 殖 につ いて 述 べ な さい.
は り こ の よ う な 方 法 を使
の論 争 の決着 は まだ先 に な り ● 参 考 文 献 1) 秋 間 広,久 野譜也,福 永哲夫,勝 田
茂:MRIに
よる ヒ
トの膝伸筋 ・膝屈筋 にお ける形態 的特性 および生理学 的断
面 積 当 りの 筋 張 力.体 2) 秋 間
広,久
Edgerton,
力 科 学,44:267-278,1995a.
野 譜 也,高
橋 英 幸,下
條 仁 士,勝
田
茂:異
and
な る 部 位 に お け る 大 腿 四頭 筋 の 各 筋 頭 の 筋 断 面 積 お よび 筋 線 維 組 成 が 等 速 性 膝 伸 展 力 に 及 ぼ す 影 響.体
11)
広,久
田
辺
登,中
強 度(60%Vo2max)の
嶋 英 彦,板
井 悠 二,勝
な う 大 腿 部 の 筋 の 形 態 的 特 性 お よ び 脚 筋 力 の 変 化.体
力 科
4) Akima,
S., Inaki,
cycle training
on
velocity
relationships,
muscles.
Adv.
5) Akima,
and Sports
H., Takahashi,
Shimojo,
H., Anno,
adaptations Med.
Exerc.
6) Dudley,
G.A.
training.
Are
13)
Kawakami,
power
S.:Effects
characteristics, output
of
skeletal
use
and
and
Katsuta,
K., Masuda,
strength
S.:Early
to isokinetic
phase training.
15)
Fleck,
S. J.:Strength exclusive
and
? Sports
endurance
R.T., Duvoisin,
P.:Effect
the
relation
69
:2215-2221,1990.
8) Faulkner,
J.A.,
Human
torque
M.R,
Hather,
versus
B.M.
and
J. Appl.
and
McCulty,
slow
fibers
from
human
Muscle A.J.
Power(Jones, eds.)
K.K.:Power skeletal
N.L., McCartney,
pp.81-94,
Human
muscles.
村 実 晴,矢
部 京 之 助 編),真
力 ト レ ー ニ ン グ(宮
興 交 易 医 書 出 版 部,pp.41-60,
1985. 10) Fukunaga,
T., Roy,
R.R.,
Shellock,
F.G.,
Hodgson,
J.A. and
strength
MaCall,
G.E.,
based
and
vivo.J.
Appl.
on
M.,
training
J. Appl.
Byenes,
S.J.:Muscle density
in
T.,
Nozaki,
tension
D.,
of
magnetic
elbow
resonance
68:139-147,1994. Anno,I.
on
the
relaxation
Eur.
and
Matsumoto,
relationship
time
and
between
muscle
fibre
Physiol.,61:33-36,1990.
W.C.,
Dickinson,
fiber
hypertrophy,
college
men
A.,
Pattany,
P.M.
and
hyperplasia,
after
resistance
and
training.
J.
Physiol.,81:2004-2012,1996.
Narici,
M.V.,
Landoni,
knee
L.
and
extensor
Munetti,
A.E.:Assessment
muscles
cross-sectional
stress area.
Eur.
J.
G.A.
and
of
from
in
vivo
Appl.
Physiol.,
:438-444,1992.
Shealy,
M.J.,
Callister,
Human
torque
velocity
modes
of
Thorstensson, activities
格 筋 と ト レ ー ニ ン グ.体
and
R.,
Dudley,
adaptations training.
to
Am.
J.
sprint,
Sports
Fleck,
S.J.:
endurance,
or
Med.,20:581-
586,1992. 18)
Champaign,1986. 9) 福 永 哲 夫:骨
Y. length
in
Fujimoto,
S., Akisada,
resonance
combined
N. and Kinetics,
Kawakami, fascicle
T.:Specific
Physiol.,
Katsuta,
magnetic
65 17)
D.R.
muscles
J. Appl.
physiological
Physiol.,
flexors
倉 書 店,1988.
K.,
extensor
of
human
artificial activation
to speed.
Claflin,
of fast and
McComas,
of voluntary
of muscle
S.,
Appl.
plantar
muscle
ッ プ の 科 学,朝
Fukunaga,
K.:Effect
capillary
Med.,4:79-
N.,
human
and
Eur.
Kuno,
Ito,
of
Nakazawa,
M. and
Fleck,
16)
on
ワ ー ア
composition.
:588-594,1999.
mutually
G.A., Harris,
Buchanan,
In
14)
Y.,
contracting
Y.,
imaging.
T.,
85,1987. 7) Dudley,
output
flexor
torque-
in human
S., Masuda,
I., Itai, Y.
and
Katsuta,
Physiol.,3:9-15,1997.
Exerc.,31
they
and
H., Kuno,
of muscle
Sci. Sports
M.
architectural
Ichinose,
a
human
:354-358,1997.
金 子 公 宥:パ
Miyashita,
H., Kuno,
sprint
in
12)
学,44:365-374,1995c.
of
Physiol.,80:158-165,1996.
S.:Determination
Physiol.,82
持 久 性 ト レー ニ ン グ に と も
tension
Appl.
T.,
pennation
野 譜 也,渡
茂:中
Fukunaga, Fukashiro,
育 学 研 究,
39:417-427,1995b. 3) 秋 間
V. R.:Specific
dorsiflexors.J.
Acta 19)
A., and
Physiol.
Sjodin,
muscle Scand.,94
Thorstensson,
A.,
velocity
relations
extensor
muscles.J.
B.
strength
and after
Karlsson,J.:Enzyme "sprint
training"
in
man.
:313-318,1975. Grimby, and Appl.
G. fiber
and
Karlsson,
composition
Physiol.,40:12-16,1976.
J.:Forcein
human
knee
3 神経系 による運動 の調節
神 経 系 の 仕 事 は 大 き く分 け て 三 つ あ る.① ② 統 合 系:感
感 覚 系:ま
わ りで 起 こ っ て い る こ と を 検 出 す る.
覚 に よ っ て 得 られ た デ ー タ と 記 憶 と し て 蓄 え られ て い る デ ー タ を 合 わ せ て 処 理
す る.③
運 動 系:筋
ロ ン)が
複 雑 に絡 み 合 っ て 上 述 の 機 能 を円 滑 に 遂 行 し て い る.本
や 腺 に 働 い て 反 応 を 起 こ す.ヒ
る ニ ュ ー ロ ン の 構 造 と 機 能 を説 明 し,次 最 後 に 反 射 運 動,随
トの 場 合,数
百 億 個 の 神 経 細 胞(ニ 講 で は,ま
ュー
ず神 経系 を構 成す
に筋 力 調 節 の 最 小 単 位 で あ る 運 動 単 位 に つ い て 述 べ,
意 運 動 に お け る情 報 の 流 れ を概 説 す る.
3.1 神 経 系 の 構 造
神 経 系 は 大 き く中 枢 神 経 系 と 末 梢 神 経 系 に分 類 さ れ て い る. 中 枢 神 経 系 は 脳 と脊 髄 を 含 み,脳
は発生 学 的に髄 脳
(myelencephalon),後
脳(metencephalon),中
脳
(mesencephalon),間
脳(diencephalon),終
脳
(telencephalon)に 髄 脳 は 延 髄,後 脚,間
分 類 され る.大 脳 は 橋 と 小 脳,中
脳 は 視 床 と視 床 下 部,終
脳 皮 質 へ とそ れ ぞ れ 発 達 す る.脊 髄,腰
髄,仙
人の 脳 にお いて は 脳 は 四丘 体 と 大 脳
脳 は大 脳 基底 核 と大 髄 は さ らに 頸 髄,胸
髄 の 各 髄 節 に 分 か れ る(図3.1).
末 梢 神 経 系 は,中
枢 神経 か ら身体各 部 に達す る電 気
的 信 号 の 伝 達 経 路 の 総 称 で あ る.機
能的 には運動 や 感
覚 に 関 連 す る 末 梢 神 経 を 体 性 神 経(somatic
nerve),
意 思 と は 無 関 係 に 働 く末 梢 神 経 を 自律 神 経(autono mic nerve)と
い う.さ
ら に,体
性 神 経 は,電
気 的信
図3.1
中 枢 神 経 系 の お も な構 成 部 分(BerneとLevy,19961)を 一 部 改 変)
号 を 中 枢 か ら末 梢 に伝 え る 遠 心 性 神 経(efferent nerve) と そ の 反 対 の 求 心 性 神 経(afferent
nerve)に
分類 され
る.自 律 神 経 は す べ て 遠 心 性 神 経 で あ る が,一 官 に 対 し て2種 類 の 神 経 線 維 を 送 る.胸 か ら発 す る 交 感 神 経(sympathetic
つ の器
3.2 ニ ュ ー ロ ン の 構 造 と機 能
髄 また は腰髄
nerve)と,脳
幹ま
ニ ュ ー ロ ンの 形 態 は,基
た は 仙 髄 か ら発 す る 副 交 感 神 経(parasympathetic
あ る が(図3.2),2種
nerve)で
突 起(dendrites)と
あ る.
で あ る.
本 的 に は 他 の 細 胞 と 同 じで
類 の 突 起 状 構 造,す 軸 索(axon)を
な わ ち樹 状
もつ こ とが特 徴
図3.2
シナ プ スの 形 態 と有 髄 線 維 の 模 式 図(BerneとLevy,19961)を
一 部 改 変)
図3.3 静 止膜電位 におけ る膜の帯電状態(Schmidt,19784)を一部改 変) 膜 を通 り抜 け て い る 矢 印 は,拡
散 に よ っ て 流 出 したKイ
が 細 胞 内 の 蛋 白 陰 イ オ ン(A-)に
図3.4
オン
活 動 電 位 の 各 相(Schmidt,19784)を
一 部 改 変)
オ ンが 細 胞 内 に 流 入 す る.そ
の 結 果,膜
よ っ て引 き寄 せ ら れ て い る状
態 を 示 す.
す るNaイ
位 が プ ラ ス 方 向 に 動 く(脱 ニ ュ ー ロ ン の 最 大 の 機 能 的 特 徴 は,細 ニ ケ ー シ ョ ン(活 あ る.こ
動 電 位 の 伝 達,伝
た 膜 電 位 が 閾 値(約
分 極).プ
−60mV)に
ラ ス方 向 に動 い
達 す る と,今 度 は そ
搬)を
行 うこ とで
の 電 位 変 化 を 感 知 し て 電 位 依 存 性 のNaイ
の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 軸 索,樹
状 突起 お よ
ネ ル が 開 き,さ
び 細 胞 体 の 間 に 形 成 さ れ る 接 合 部(シ て 行 わ れ,そ
の 形 態 は 図3.2の
シ ナ プ ス に は10∼50nmの え る 側(シ
胞 間で コ ミュ
ナ プ ス)を
介 し
よ う に 多 岐 に わ た る.
狭 い 間 隙 が あ り,情 報 を伝
ナ プ ス 前 終 末)に 電 気 的 信 号 が 到 達 す る と,
小 さ な 球 状 物 質(伝 を 受 け る 側(シ
達 物 質)が
ナ プ ス 下 膜)に
放 出 さ れ る.伝 は,伝
に 受 け 取 る レ セ プ タ ー が あ る.こ
達物 質
達 物 質 を特異 的
の 節 で は,ま
ー ロ ンにお け る電気 的信 号 の発 生 につ いて
し,膜
ら に 大 量 のNaイ
電 位 は 急 速 に プ ラ ス に 傾 く.こ
ン ネ ル が 全 開 す る た め に,細
(NaとK)の
に 示 し た よ うな 変 化 を 示 す.こ
に電 気
構 で あ る.活
の 法 則 」(all or none
初 に 発 生 す る の は,軸
が 検 出 さ れ る.こ
れ は細 胞 膜 の 能 動 的 輸 送 お よ び 選 択
ュ ー ロ ンや筋
な わ ち活 動 電 位 発 生 の 機
動 電 位 の 発 生 は,細
胞 外 液 と の 間 に −90mV前
止 膜 電 位)
れ が,ニ
電 位 は 図3.4
胞 内の 電位 変 化が 閾
値 に 達 す る か 否 か に依 存 して お り,こ れ を 「全 か 無 か
ニ ュ ー ロ ンの 中 に ガ ラ ス 微 少 電 極 を 挿 入 す る と,細 後 の 電 位 差(静
オ
オ ンチ ャ
の二つの陽 イオン
反 対 方 向 の 流 れ の 結 果,膜
細 胞 に お け る 電 気 的 信 号,す
,次
の 時,Naイ
胞 内 に高濃 度 で存 在 する
オ ン は 細 胞 外 へ 流 出 す る.こ
ずニュ
的 信 号 の 統 合 方 法 に つ い て 簡 単 な 説 明 を 加 え る.
オ ンチ ャン
オ ンが 細 胞 内 に 流 入
ンチ ャ ン ネ ル に や や 遅 れ て 電 位 依 存 性 のKイ
Kイ
電
(axon hillock)で
law)と
よ ぶ.こ
の活動 電 位が 最
索 の起始 部す な わち軸索 丘
あ る.そ
の 後,活
動 電位 は軸索 に沿
的 透 過 性 の 結 果 生 ず る細 胞 内 外 の 各 種 イ オ ンの 不 均 衡
っ て 伝 搬 し,軸 索 の 終 末 に ま で 減 衰 す る こ と な く伝 わ
な 分 布 に 起 因 す る(図3.3).こ
る.軸
オ ン を 選 択 的 に 通 す 穴(チ が 加 わ る と,穴
の 細 胞 膜 に あ るNaイ
ャ ン ネ ル)に
何 らか の 刺 激
の ふ た が 開 き,細 胞 外 に 高 濃 度 で 存 在
索 に は そ の 周 囲 を シ ュ ワ ン細 胞(schwann
cell)
が 取 り囲 ん で 髄 鞘 を形 成 して い る 有 髄 線 維 と そ うで な い 無 髄 線 維 が あ る(図3.2).有
髄 線 維 の 場 合,軸
索丘
図3.5
ニ ュ ー ロ ンに お け る電 気 的 入 力 の 統 合様 式 例(a)と 伝 達 物 質作 動 性 イ オ ン チ ャ ン ネ ル の モ デ ル(b)(Berneと Levy,19961)を
一部 改 変)
で 発 生 し た 活 動 電 位 は 絶 縁 体 で あ る 髄 鞘 を 飛 び 越 え,
Clイ オ ン が 細 胞 内 に 流 入 し,膜 電 位 は マ イ ナ ス に 傾 く.
軸 索 が む き出 しに な っ て い る 部 分(ラ
こ の 場 合 の 伝 達 物 質 は 抑 制 性 の 伝 達 物 質 で あ り,生
に 存 在 す る 電 位 依 存 性Naイ
ン ビエ ー の 絞 輪)
オ ン チ ャ ン ネ ル を 開 き,
そ の 部 分 で 次 の 活 動 電 位 を 発 生 させ る.こ 髄 線 維 に お け る活 動 電 位 は,連 な く,絞 導),非
の た め,有
続 的 に伝 導す る ので は
輪 か ら絞 輪 へ と跳 ぶ よ う に伝 導 さ れ(跳 躍 伝 常 に速 い 伝 導 速 度 を 示 す.こ
れ に 対 し て,無
た 電 位 を 抑 制 性 の 後 シ ナ プ ス 電 位(IPSP)と IPSPが
生 じた 場 合(ケ
ー ス3),EPSPが
EPSPとIPSPが
複 雑 に 組 み 合 わ さ っ て,ニ
お け る電 気 的 入 力 の 統 合,活 な お,こ
索 の直径 に
時 間的 あ るい
動 電 位 の 発 生 が 抑 え られ る こ と も あ る.こ
な お,有
髄 の 各 線 維 群 の 中 で は,軸
よ ぶ.
は 空 間 的 に加 算 さ れ て も 膜 電 位 が 閾値 に 到 達 せ ず,活
髄 線 維 の 活 動 電 位 は 連 続 的 に 伝 導 し,そ の 速 度 が 遅 い. 髄,無
じ
の よ う に, ュー ロ ンに
動 電 位 の 発 生 が 起 こ る.
れ まで にわか って いる代 表 的 な興奮性 伝達 物
比 例 して 伝 導 速 度 は 速 く な る.
質 に は,ア
図3.5の
な どが あ り,抑 制 性 伝 達 物 質 に は グ リ シ ン,γ ア ミ ノ
入 力1か
ら放 出 さ れ た伝 達 物 質 が ニ ュ ー ロ
ン の シ ナ プ ス 下 膜 に あ る レ セ プ タ ー に 作 用 し,Naイ オ ンチ ャ ンネ ル が 開 い た と し よ う.ニ
ブ チ ル酸(GABA)な
に も との 膜 電 位 へ も ど る(ケ
ー ス1).こ
奮 性 伝 達 物 質 で あ り,生
奮 性 の 後 シ ナ プ ス 電 位(EPSP)と
ル タ ミ ン酸,セ
ロ トニ ン
どが あ る.
ュ ー ロ ンの 膜 電
3.3 運 動 単位 の特 性
位 は わ ず か に 脱 分 極 し,閾 値 に 達 し な い 場 合 に は す ぐ
物 質 は,興
セ チ ル コ リ ン,グ
の場合 の伝 達
じた電位 変化 を興 よ ぶ.次
に,入
力1
神 経 に よ る 骨 格 筋 の 収 縮 調 節 の 最 終 単 位 は,一
か ら 短 い 間 隔 で 断 続 的 に 伝 達 物 質 が 放 出 さ れ る と,
(筋 単 位)か
EPSPが
加 算 され て 膜 電 位 が さ らに 上 昇 し(時
単 位 の 収 縮 お よ び 疲 労 特 性 に 基 づ い て,S(slow-
算),閾
値 に 達 し 活 動 電 位 が 発 生 す る(ケ
た,入
力1に
さ れ,電
加 え て 入 力2か
間的 加
ー ス1).ま
ら同 時 に 伝 達 物 質 が 放 出
位 変 化 が 閾 値 に達 し活 動 電 位 が 発 生 す る 場 合
も あ る(ケ
ー ス2:空
間 的 加 算).一
別 の 種 類 の伝 達 物 質 が 放 出 さ れ,Clイ を 選 択 的 に 開 く.す
方,入
力3か
らは
オ ンチ ャ ンネ ル
る と,細 胞 外 に 高 濃 度 で 存 在 す る
つの
α運 動 ニ ュー ロ ン とそ の神 経 支 配 を 受 け る 筋 線維 群 ら な る 運 動 単 位 で あ る.運
twitch),FR(fast-twitch twitch intermediate)お
動 単 位 は,筋
fatigue resistant),FI よ びFF(fast-twitch
の 四 つ の タ イ プ に 分 類 で き る.そ 含 ま れ る筋 単 位 は,ATPaseのpHに
(fast-
fatiguable)
れ ぞ れの 運動単 位 に 対 す る感受性 の違
い を 利 用 した 標 準 的 な 組 織 化 学 的 染 色 結 果 に 基 づ い て,Sタ
イ プ=タ
イ プ Ⅰ,FRタ
イ プ=ⅡA,FIタ
イ
プ=ⅡX(ⅡDと プ=ⅡBに
称 す る 場 合 も あ る)お
分 類 さ れ る(第1講
よ びFFタ
参 照).
収 縮 速 度 は,FF,FIタ
イ プ が 最 も速 く,FRタ
Sタ イ プ の 順 で 続 く.こ
の 順 番 は,筋
myosin
ATPase活
性 値,お
よ びmyosin
は,収
縮 速 度 と 反 対 の 順 番,す な る.こ
の 結 果 は,筋
筋 小 胞 体 のCaイ
イ プ,
線 維 タ イプ の ATPase活
収 縮 速 度 と の 相 関 関 係 に よ っ て 説 明 さ れ る.疲
FFと
イ
性 と 労耐 性
な わ ちS>FR>FI>
線 維 の 酸 化 酵 素 活 性 値,
オ ン取 込 み 放 出 能 な ど の 要 因 と,神
経 筋 接 合 部 にお け る 疲 労,す
なわ ち伝 達 欠落 が複 合的
に 関 係 す る. 筋 単 位 の 収 縮 力 は,タ
イ プ 間 に 重 複 が み られ る が, 図3.6
平 均 す る と収 縮 速 度 と 同 様 にFF≧FI>FR>Sで る.こ
あ
の 収 縮 力 を規 定 す る 要 因 に は 以 下 の 三 つ が あ げ
ら れ る.①
ネ コ 内 側腓 腹 筋 お よび 横 隔 膜 運 動 単 位 の 動 員 様 式 モ デ ル(SieckとFournier, 19895)を 一 部 改 変)
運 動 単 位 の 神 経 支 配 比(一 つ の 運 動 ニ ュ ー
ロ ン に 支 配 され る 筋 線 維 の 数),②
筋 線 維 の横 断 面 積,
③ 単 位 筋 断 面 積 当 た りの 張 力 で あ る.筋
単位 の収 縮力
の 値 が 高 い と 少 な い 入 力 で 大 き な 電 位 変 化 が 生 じや す い),低
い 基 電 流nA(ニ
ュ ー ロ ン に活 動 電 位 を 発 生 さ
に 対 す る 各 要 因 の 貢 献 度 は,グ
リ コ ー ゲ ン枯 渇 法 に よ
せ る た め に 有 効 な 最 も弱 い 定 常 電 流),遅
っ て 直 接 測 定 さ れ て い る が,結
果 が 一 致 し て い な い.
速 度(m/秒)を
示 し,S筋
た と え ば,ネ コ の 内 側 腓 腹 筋 お よ び 横 隔 膜 に つ い て は,
明 ら か に さ れ て い る.一
方,大
タ イ プ 間 の 収 縮 力 の 違 い は,②
は,低
い 基 電 流,速
の筋 線 維 横 断 面積 と
い 膜 入 力 抵 抗,高
い軸 索伝 導
単 位 を 支 配 して い る こ とが き な α運 動 ニ ュ ー ロ ン
③ の 単 位 断 面 積 当 た りの 張 力 に依 存 して い る こ とが 報
し,F筋
告 さ れ て い る.と
れ らの 電 気 生 理 学 的 特 性 に 依 存 す る な ら ば,Sか
こ ろ が,ネ
イ プ の 神 経 支 配 比 はSタ
コ の 前 脛 骨 筋 で は,Fタ
イ プ の2倍 以 上 あ り,こ れ が
各 筋 単 位 タ イ プ の 収 縮 力 を 決 め て い る ら しい.ま ラ ッ トの ヒ ラ メ筋 で は,神 面 積,単
経 支 配 比,筋
た,
線維 群 の横 断
位 筋 断 面 積 当 た りの 張 力 と も タ イ プ 間 の 差 は
ほ と ん ど な い.筋
単 位 の 収 縮 力 を 決 め る 要 因 は,被 検
動 物 お よ び 筋 の 機 能(屈
筋 ・伸 筋 な ど)に
よ り異 な る
単 位 を 支 配 し て い る.運
い伝 導速 度 を示
の 順 で 起 こ る こ とが 予 想 さ れ る.実
際,ネ
て は,軸
コの 内 側 腓
索伝 導速 度の 速 い運動 ニ ュー ロンは遅 い運 動
ニ ュ ー ロ ン よ り後 に 動 員 さ れ る こ と,す
な わ ちSか
ズ の 原 理 」(小 さ い 運 動 ニ ュ ー ロ ンか ら大 き な 運 動 ニ
す な わ ち,下
確 認 さ れ て い る.こ
肢 筋 に お い て は,起
個 々 の 発 火 頻 度(frequency)の れ る.こ
れ ま で,い
その
調節 に よっ て達 成 さ
くつ か の 反 論 は あ る も の の,運
単 位 の 動 員 は 主 と して 大 き い 筋 力 調 節 に,個
動
々の発 火
の 運 動 単 位 が 選 択 的 に 動 員 さ れ,走
よ う に な る.
動 で はSタ
た,横
運 動 単 位 が 動 員 さ れ,換
る.
段 階 的 に 動 員 され,爆
の 大 き さや 膜 特 性 と の 関 連 か ら検 討 さ れ て い る.こ ま で,小
れ
さ な α運 動 ニ ュ ー ロ ン は 高 い 膜 入 力 抵 抗MΩ
(入力 さ れ た 電 流 と 生 じ た 電 位 変 化 か ら計 算 さ れ,こ
吐)の
時,FFタ
っ イプ
ャ ン プ と運
イプ の動 員が 順
隔 膜 に お い て は,安
イ プ の 運 動 単 位 お よ びFRタ
頻 度 は細 か い調 節 にそ れ ぞ れ 関与 す る と い われ て い
運 動 単 位 の 動 員 様 式 に つ い て は,α 運 動 ニ ュ ー ロ ン
行,ジ
動 強 度 が 高 ま る に つ れFR,FI,FFタ 次 起 こ る.ま
れ
立 や 姿 勢 維 持,ゆ
く り と し た 歩 行 の よ う な 低 い 強 度 の 運 動 で はSタ 筋 力 調 節 は運 動 単 位 の 動 員 数(recruitment)と
ら
Fへ の 動 員 が 明 らか に さ れ て お り,基 本 的 に は 「サ イ
ま で の 実 験 結 果 を ま とめ る と,図3.6の
3.4 筋 力 調 節
らF
腹 筋 お よ び横 隔 膜 を 支 配 す る α運 動 ニ ュ ー ロ ン に お い
ュー ロ ンへ と動 員 が 起 こ る)が
よ う で あ る.
動 単 位 の 動 員 は,こ
静 時 の吸息 運 イ プの 一部 の
気 量 の 増 大 に 伴 いFR,FIと
発 的 な 呼 吸 運 動(く
し ゃ み,嘔
イ プ も動 員 さ れ る こ と が 推 察 さ れ る.
3.5 反 射 運 動 にお け る神 経 系 の 調 節
3.6 随意 運 動 にお け る神 経 系 の調 節
感 覚性 刺 激 に対 す る中枢 神経 系 の一 定 の反応 を反射 と い う.た
と え ば,熱
い も の を つ か ん だ 時,無
う ち に す ば や く手 を 引 く.こ
れ は"熱
い"と
意識 の い う感覚
先 に 述 べ た 伸 張 反 射 は 随 意 運 動 中,す
くい.こ
れは 随意運 動 中 には筋 紡錘 の 感度 が上 位 中枢
入 力 を 脊 髄 中 の 上 腕 屈 筋 支 配 の α運 動 ニ ュ ー ロ ンが 受
か ら調 節 さ れ て い る か らで あ る.こ
け 取 り,す
ぐ に 活 動 電 位 を発 生 し上 腕 屈 筋 群 の 収 縮 を
う の が γ運 動 ニ ュ ー ロ ンで あ る.
起 こ し,危
険 か らす ば や く回 避 し よ う と す る 反 射 で あ
る.
膝 蓋 腱 反 射 に お い て は,筋 射 の ス ター トで あ っ た.こ
こ こ で は,代
表 的 な 伸 張 反 射 で あ る 膝 蓋 腱 反 射(膝
下 を 叩 く と 下 腿 が 跳 ね 上 が る)を
例 に と り,活 動 電 位
の 流 れ を 具 体 的 に 説 明 す る(図3.7).骨 い わ ゆ る 筋 線 維(錘
外 筋 線 維)と
が 混 在 し て い る.突
然,膝
格 筋 の 中に は
筋 紡 錘(錘
内 筋 線 維)
下 を 叩 か れ る こ と に よ り,
な わち大 脳 に
よ っ て 企 画 さ れ て 遂 行 され て い る運 動 中 に は 出 現 し に
る.次
に,図3.8(b)の
紡錘 の 活動 電 位発 生 が反
の 時,筋
心 性 神 経 か ら 図3.8(a)の
の 感度 の調 節 を行
紡 錘 か ら発 す る 求
よ う な活 動 電 位 が 記 録 さ れ よ うに α運 動 ニ ュ ー ロ ンか ら
の 軸 索 を 電 気 刺 激 す る と筋 線 維 が 短 縮 し,筋 紡 錘 は 弛 緩 して し ま う.そ
の 結 果,筋
時 的 に ス トッ プ す る.こ
紡 錘 か らの 活 動 電 位 は一
の 時,図3.8(c)の
よ うに α
大 腿 四頭 筋 の錘 外 お よび錘 内筋 線維 は わず か に伸 ば さ
運 動 ニ ュ ー ロ ンか ら の 軸 索 を 電 気 刺 激 す る と 同 時 に γ
れ る.す
運 動 ニ ュ ー ロ ン も 同 時 に 刺 激 して み る.す
る と,図3.7(b)に
模 式 的に示 され た筋紡 錘
内 に あ る ス ト レ ッ チ 感 受 性 の イ オ ンチ ャ ン ネ ル が 開 く
錘 も た る ま な い た め に,求
こ と を 引 き 金 に して,Naイ
電 位 が 記 録 さ れ る.こ
動 電 位 が 発 生 す る.活 筋)支
オ ン の 流 入,す
なわ ち 活
動 電 位 は 大 腿 伸 筋 群(大
配 の α運 動 ニ ュ ー ロ ン に 伝 わ り,そ
腿 四頭
こで また 活
る と,筋 紡
心 性 神 経 か ら連 続 的 に 活 動
の よ う に,α 運 動 ニ ュ ー ロ ン と
同 時 に γ運 動 ニ ュ ー ロ ン を コ ン トロ ー ル す る こ と に よ っ て,外
見 的 に は 同 じ運 動 で あ っ て も,反
動 電 位 が 発 生 して 大 腿 四頭 筋 が 収 縮 を起 こす.こ の 時,
た り起 こ ら な か っ た りす る.結
筋 紡 錘 か ら伝 わ っ て き た 活 動 電 位 は脊 髄 内 で 枝 分 か れ
ス ム ー ズ に行 う か と い う こ とは,脊
し,介 在 ニ ュ ー ロ ン に 活 動 電 位 を生 じ させ る.こ
の介
ン(α 運 動 ニ ュ ー ロ ン と γ運 動 ニ ュ ー ロ ン)の 活 動 様
配 の α運
式 を い か に う ま く コ ン トロ ー ル で き る か に 依 存 して い
在 ニ ュ ー ロ ン は 大 腿 屈 筋 群(大
腿 二 頭 筋)支
局,随
射が 起 こ っ
意 運 動 をいか に
髄 中の 両ニ ュー ロ
動 ニ ュ ー ロ ン に 抑 制 性 伝 達 物 質 を放 出 し,大 腿 二 頭 筋
る.
は 弛 緩 す る(図3.7).
随 意 運 動 にお け る両 運動 ニ ュ ー ロ ンに対 す る 命令
上 記 の 例 の よ う に,伸 筋 が 収 縮 す る 時,そ の 拮 抗 筋 で
は,大
あ る 屈 筋 は 弛 緩 す る.逆
外 路 を 伝 導 し て く る.こ れ ら の 命 令 の 源 で あ る 大 脳 に
に屈筋 が収 縮 す る時 は伸筋 が
脳 皮 質 運 動 野 に 端 を 発 し,錐 体 路 あ る い は 錐 体
弛 緩 す る.こ の よ う な 関 係 を相 反 神 経 支 配 と よ び,屈 曲
は 機 能 の 局 在 性 が あ り,と
反 射 が 強 く起 き る ほ ど伸 筋 に対 す る 抑 制 も 強 くな る.
含 ま れ る 特 定 の ニ ュ ー ロ ン と は1対1の
図3.7
膝 蓋 腱 反 射 に お け る電 気 的 信 号 の 流 れ(a)と とLevy,19961)を
一 部 改 変)
く に,骨
ス ト レ ッチ 感 受 性 イ オ ン チ ャ ンネ ル の モ デ ル(b)(真
格 筋 と大 脳 皮 質 に 対 応 をす る こ
島,19873);Berne
図3.8
α運 動 ニ ュ ー ロ ン と γ運 動 ニ ュ ー ロ ン の 共 同 活 動(BerneとLevy, 19961)を
図3.9
一 部 改 変)
随 意 運 動 の 発 現 に 関 連 した 脳 内 領 域 と神 経 情 報 の流 れ(久 保 田, 19842)を 一 部 改 変)
と が 確 か め られ て い る.さ
ら に,小
脳 と大 脳 基 底 核 に
あ る ニ ュ ー ロ ンの 活 動 も 随 意 運 動 に 先 行 し て 活 発 に な る.小
● 1.
2.
力 し て い る.こ
方 で は視 床 を 経 由 して 大 脳 皮 質 に 出
の よ う な知 見 か ら,大
脳皮 質 運 動野 に
端 を 発 す る 運 動 命 令 の 発 現 を 制 御 し て い る の は,大 皮 質 よ りむ しろ 小 脳,大
あ る と 考 え られ て い る.と
算 に つ い て 説 明 し な さ い. 動 単 位 の タ イ プ を 分 類
し て,そ
れ ぞ れ の 構 造 的 機 能
的 特 徴 を 説 明 し な さ い. 4.
運 動 強 度 と 運 動 単 位 の 動 員 様 式 に つ い て 説 明 し な さ い.
くに,速 い 運 動 で は小 脳 が,
遅 い 運 動 で は 大 脳 基 底 核 が 重 要 な 役 割 を演 じて い る ら
オ ン とKイ
ニ ュ ー ロ ン に お け る 電 気 信 号 の 時 間 的 加 算 と 空 間 的 加
3.運
脳
脳 基 底 核 な どの 深 部 の 構 造 で
題
静 止 膜 電 位 と 活 動 電 位 の 発 生 機 序 をNaイ オ ン の 動 態 か ら 説 明 し な さ い.
脳 と大 脳 基 底 核 は,大 脳 皮 質 の 広 範 囲 な 部 分 か
ら 入 力 を 受 け,一
問
5.
膝 蓋 腱 反 射 を 例 に と り,伸
長 反 射,相
反 神 経 支 配,介
在 ニ ュ ー ロ ン を 説 明 し な さ い.
し い.こ
れ ら の 結 果 の 多 くは,1960,1970年
代 に行 わ
れ た サ ル を 用 い た 実 験 に よ り も た ら さ れ た.最
近 は,
ヒ トに お い て 大 脳 皮 質 ニ ュ ー ロ ン を ほ と ん ど痛 み を 伴 う こ とな く刺 激 し,誘 発 電 位 を 記 録 す る こ とが で き る よ う に な っ て き た.こ
の よ う な 実 験 装 置 の 開 発 と発 達
●
参
考
1) Berne,
文
献
R.M.
and
Levy,
M.N.
eds.:Principles
of Physiology,
Mosby,1996. 2) 久 保 田 競:随
意 運 動 メ カ ニ ズ ム の 特 集 に あ た っ て.神
経 進
歩,28(1):3-6,1984.
に よ っ て,今
後,ヒ
トの 随 意 運 動 発 現 の 脳 内 機 構 が 飛
躍 的 に 解 明 さ れ る こ とが 期 待 さ れ る.図3.9に
随意 運
動 の 発 現 に 関 連 した 脳 内領 域 と神 経 情 報 の 流 れ を模 式 的 に 示 す.
3) 真 島 英 信:生 4) Schmidt,
理 学,文
R.F.
光 堂,1987.
ed.:Fundamentals
of Neurophysiology,
Springer-Verlag,1978. 5) Sieck,
G.C.
recruitment J.Appl.
and during
Fournier, ventilatory
M.:Diaphragm and
Physiol.,66(6):2539-2545,1989.
nonventilatory
motor
unit
behaviors.
4 運動 と筋ATP代
す べ て の 運 動 は,筋
が 収 縮 す る こ と に よ っ て な され るが,筋
ン三 リ ン 酸(adenosine れ は,自
謝
triphosphate:ATP)の
が 収 縮 す る た め に は,ア
分 解 に よ る 化 学 エ ネ ル ギ ー が 用 い られ る.こ
動 車 が 走 る た め に ガ ソ リ ン を必 要 と し て い る の と 似 て い る.車
図 的 に 補 給 し な い 限 り ガ ス 欠 を起 こ す が,筋 ど同 時 に 再 合 成 を行 っ て い る.し
か も,そ
デノシ
の 場 合 は運 動 時 にATPを
の場 合 はガ ソ リンを意 消 費 す る 一 方,ほ
とん
の 仕 組 み は 複 雑 で あ り,運 動 の 時 間 や 強 度 な ど に よ
り大 き な 影 響 を 受 け る.
し な け れ ば な ら な い.ATPを 4.1
ATP
す な わ ちADPをATPに 1).こ
筋 が 収 縮 す る 場 合,筋
中 に 存 在 す るATPが
に 用 い られ る.ATPは3個
の リ ン酸 が 結 合 して い るが,
第2と 第3の
結 合 は 高 エ ネ ル ギ ー リ ン酸 結 合 で あ り,
第1の 結 合 と は 異 な る.そ と,高
直接 的
の た め にATPが
エ ネ ル ギ ー を 発 生 す る.こ
分解 され る
の と きATPは
水 と
反 応 して お り,こ の 一 連 の 反 応 は加 水 分 解 と よ ば れ る. こ の 反 応 で,リ
ンイ オ ン とア デ ノ シ ン二 リ ン酸(ADP)
に 分 解 され る.こ
れ を 式 で 表 す と 以 下 の よ う に示 さ れ
る.
変 換 す る 主 要 経 路 は,運
強 度 や 時 間 な ど に よ り異 な る が,運 は 三 つ に 分 類 す る こ と が 多 い.そ
動の
動 生理 学の 分野 で
の三 つ のエ ネル ギー
供 給 系 と は,①ATPお
よ び ク レ ア チ ン リ ン酸(PCr)
の 分 解(ATP-PCr系),②
グ リ コ ー ゲ ン,グ
ス な ど の 分 解(解 糖 系),③
脂 肪 酸,グ
ル コー
ル コ ー ス,グ
リ コ ー ゲ ン な ど の 有 酸 素 的 分 解(酸 化 系)で あ る.① のATPお ATP供
よ びPCrの 給 で は,酸
分 解 お よ び,②
の解 糖系 に よる
素 の 介 在 が な く こ れ らの 反 応 が 進
酸 素 的 過 程 と い え る.一
方,③
の過
程 は,文 字 ど う り酸 素 の 介 在 下 で 行 わ れ る.
子当 た りの 加 水 分 解 に よ る 発 生 エ ネ ル ギ ー は
わ ず か で あ り(ATP
1 mol当
エ ネ ル ギ ー が 生 じ る),し ATPの
(1)
変 換 す る こ と で あ る(図4.
のADPをATPに
行 す る の で,無 ATP+H2O→ADP+Pi
ATP1分
再 合 成 す る こ と と は,
量 だ け で は,筋
と さ れ て い る.た
4.2
自由
か も筋 中 に も と も と あ る
収 縮 は わ ず か1秒
と え ば,100m走
1020molのATPが1歩1歩
a. ATPサ
た りお よそ7.3kcalの
も持 続 しな い
では少な くとも
で 使 わ れ て い る計 算 に な る.
エ ネ ル ギ ー供 給 系
イクル
運 動 を 継 続 す る た め に はATPが
必要 であ るこ とを
説 明 し て き た が,も
と も と筋 中 に あ るATPの
量 はわ
ず か で あ る た め,運
動 を 継 続 し な が らATPを
再合成
図4.1 ATP再 安 静 時 のATP/ADP>
合 成 の 基 本 的 な考 え方(久 野) 運 動 時 のATP/ADPの
関係 に あ る.
b. ク レ ア チ ン リ ン酸 に よ るATP再 ATP供 PCrの
もそ の 総 量 は 少 な い.解
合成
給 系 の 中 で 最 も 短 時 間 に 再 合 成 で き る の が,
分 解 に よ る も の で あ る.筋
を 合 わせ て,高
合 成 は,以
中 に あ るATPとPCr 分
下 の反応 に よって行 われ て
い る.
需 要 に 対 し て は,三 速 くATPを
は運動 時 の エ ネ ル ギー
つ のエ ネ ルギー 供給 系 の 中で最 も
供 給 す る こ とが で き る.さ
ら に,単
当 た りの エ ネ ル ギ ー 産 生 量 も最 大 で あ る.し ADP+PCr⇔ATP+Cr
上 式 の 反 応 は,ク kinase:CK)と
(2)
た,よ
式,た
ほ どの 激 しい 運 動 で な い 限 り,
す る.
れは
磁 気 共 鳴)法 と よ ば れ る 方 法 に よ り確 認 さ れ
か し,PCr
た が っ て,こ
の 供給
系 で は 短 時 間 で 高 い パ ワー を発 揮 す る よ う な運 動 様
方 向へ の 反応 が あ る こ とを
量 は 運 動 中 に は 変 化 し な い(図4.2).こ
NMR(核
常
位 時間
強度 運動 時 での エ ネル ギー
供 給 は短 時 間 しか 持 続 し な い.し
よ ば れ る 酵 素 に よ り触 媒 さ れ,通
さす)に あ る.ま
の 含 有 量 が 少 な い た め,高
レ ア チ ン キ ナ ー ゼ(creatine
は 平 衡 状 態(平 衡 と は,両
ATPの
約5倍 以 上 を 示 し て い る.
しか し な が ら,ATP-PCr系
エ ネ ル ギ ー リ ン酸 と も よぶ.PCrの
解 に よ るATP再
ン含 有 量 は,PCrの
糖 系 で 用 い られ る グ リ コ ー ゲ
と え ば ス プ リ ン ト走 な どの 初 期 に お も な 働 き を
一 方,PCrの
分 解 に よ るATP供
給,す
な わ ちCKと
い う酵 素 に よ る こ の 反 応 系(式(2))が,短
時 間で 高強
度 の 運 動 時 の み に 用 い られ て い る と理 解 す る こ と は 誤
て い る13). ヒ トに お け る 安 静 時 の 筋 中 のPCr,ATP,ADPお び グ リ コ ー ゲ ンの 量 を 表4.1に
示 した.筋
と あ るATP量
あ り,PCrと
はPCrの
約1/3で
よ
中 に も とも 合 計 して
りで あ る.こ
の 反 応 系 の 第1の 特 徴 は,短
度 の 運 動 時 にATPの
時 間で 高強
供 給 が 可 能 な こ と で あ る が,最
大
下 の 運 動 強 度(低 強 度)で 持 続 的 な 運 動 時 に お い て も こ の 系 は 重 要 な 働 き を し て い る.そ
の 証 拠 と して は,低
強 度 の 持 続 的 な 運 動 時 に お い て,運 だ ち にPCrの
動 を開始 す る とた
濃 度 は 安 静 時 よ り低 下 し,数 分 後 に は低
下 した ま ま で 定 常 な 状 態 を 保 つ こ と がNMR法 て 示 さ れ て い る13).し た が っ てPCrは,無
に よっ
酸 素 的 な運
動 と 有 酸 素 的 な 運 動 の い ず れ に お い て も重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と に な る. 筋 は,も
う一 つ の 短 時 間 に よ るATP再
て い る.こ
れ は,ア
kinase)と
い う酵 素 に よ り触 媒 さ れ,そ
合 成 系 を もっ
デ ニ レー トキ ナ ー ゼ(adenylate の 反応 式 は以
下 の と お りで あ る. 図4.2
3)PNMPス
ペ ク トル ス コ ピー に よる 安 静 時,運
お よび 回 復 時 の 無 機 リ ン酸(Pi),ク (PCr),ア
デ ノ シ ン三 リ ン酸(ATP)の
変 化13)
運 動 が 開 始 さ れ る とPiの ピ ー ク は 上 昇 し,PCrの 低 下 す る の に 対 し,ATP(β)の 変 化 は 認 め ら れ な い.こ
ピ ー ク は安 静 時 と 運 動 時 で
れ は 運 動(筋 収 縮)に 伴 いATPを
ATPの
変 化 は 認 め られ な い.
注:一
般 にNMRで
は.ATPの
濃 度 は β-ATPの
消
か け上
ピ ー クで 評 価
す る.
(3)
こ の 反 応 で 産 生 さ れ た ア デ ノ シ ンー リ ン酸(AMP) は,解 糖 系 に よ るATPの
ピー ク は
費 して い る が 再 合 成 が 非 常 に 速 く な され る た め,み
2ADP→ATP+AMP
動時
レア チ ン リ ン酸
供給 を調節 してい るホ スホ フ
ル ク トキ ナ ー ゼ(phosphofructokinase:PFK)活 を 高 め る働 き を も っ て い る.ま と のADP量 1),い
もPCrと
た,筋
性
内 にあ る もと も
同 様 に わ ず か で あ る た め(表4.
ず れ に し て も こ れ ら の 系 単 独 で は,運
動 を長 く
持 続 す る こ と は で き な い. 表4.1
ヒ ト骨 格 筋 に お け る 安 静 時 のPCr, ATP,ADP,AMP,グ
リ コー ゲ ン量15)
c. 解 糖 系 に よ るATPの
供給
グ リ コ ー ゲ ン ま た は グ ル コ ー ス が 酸 素 の 介 在 な しで ピ ル ビ ン酸(pyruvic
acid)に
分 解 さ れ,そ
れ て 乳 酸 に な る経 路 を 解 糖 系(glycolysis)と 3).こ 単 位:mmol/kg.
れ が還元 さ い う(図4.
の経 路 は酸 素 を必要 と しない ため無酸 素 的 代謝
と も よ ば れ る が,こ
の 無 酸 素 と い う言 葉 か ら,解
糖系
図4.4 antiportは
ATP-ADPシ
ャ ト ル(Houston,1995)
両 側 通 行,symportは
ATP-ADPシ
片 側 通 行 を 意 味 す る.こ
の
ャ トル の ス ピー ドを高 め る こ とが ト レー ニ ン
グ 効 果 を 得 る こ と に な る.
縮 す る とATPを 図4.3
ATP合
成 過 程 の 概 念 図(NewsholmeとLeech,198315
を 一 部 改 変)
に よ るATPの
消 費 す る が,そ
れ は ミ トコ ン ドリ ア 内
で は な く細 胞 質 で 起 こ り,ATPは
供 給 は,筋 組 織 内 が 無 酸 素 な 状 態 に 陥 っ
て い る と い う 誤 解 を 生 ん で い る こ とが 少 な くな い.酸
た だ ち にADPとPi
に 分 解 さ れ る.し
た が っ て,ATPを
は,ADPとPiは
ミ ト コ ン ドリ ア 内 に,ATPは
再合 成す るため に 逆に ミ
トコ ン ドリ ア か ら細 胞 質 方 向 へ 移 動 し な け れ ば な ら な い(図4.4).
素 が 不 十 分 な 状 態 で あ っ て も,十 分 な 状 態 で あ っ て も,
ミ トコ ン ドリ ア 内 の マ トリ クス と 内 膜 の 関 係 は,前
グ ル コ ー ス は ピ ル ビ ン酸 に 変 換 さ れ る.こ
者 がATPの
ビ ン酸 が 乳 酸 に 変 換 さ れ る(無 ピ ル ビ ン 酸 が ア セ チ ルCoAに 糖),そ
酸 素 的 解 糖)場
ル
合 と,
変 換 さ れ(有 酸 素 的 解
の 後 酸 化 さ れ て 多 くのATPを
あ る(図4.3).し
の 時,ピ
た が っ て,無
産 生 す る場 合 が
酸 素 的 代 謝 と は,グ
リ
コ ー ゲ ン も し くは グ ル コ ー ス か ら ピ ル ビ ン酸 ま で の 変
る.糖
仕 込 み 工 場 で あ り,後 者 が 生 産 工 場 とい え
質 が 解 糖 過 程 を 通 過 す る と ピ ル ビ ン酸 ま で 分 解
さ れ,ミ
トコ ン ドリ ア ・マ ト リ ッ クス 内 に あ る ピ ル ビ
ン 酸 脱 水 素 酵 素 に よ り ア セ チ ルCoAに くマ ト リ ッ ク ス 内 のTCA回 (遊 離 脂 肪 酸,FFA)は
分 解 さ れ,同
路 へ と進 む,一
リ ッ ク ス 内 で β酸 化 され て ア セ チ ルCoAと
っ て,筋
回 路 に進 む.そ
解 糖 系 の 主 要 な 調 節 系 は,律 速 酵 素 で あ るPFK活 で あ る.PFK活 AMP濃
性 は,筋
度 が 高 く な る とそ の 活 性 が 高 ま り,解
を促 進 す る.一 や,脂
方,細
胞 内 のATP濃
性 が 低 下 し,解
CoAは
糖作用
こ のTCA回
給が 十分 な時
糖 系 に よ る 代 謝 を抑 制 す
NADH2と
な り,TCA
れ ぞ れ の 過 程 か ら分 解 さ れ た ア セ チ ル 路 で 分 解 さ れ,そ
酸 化 炭 素 と し て 取 り 除 か れ,水
度 が 十 分 に高 い 時
肪 酸 な ど に よ る 有 酸 素 系 のATP供
に はPFK活
性
収 縮 に 伴 い 細 胞 内 のADPや
の 炭 素部 分 は二 素 部 分 は お も に
して 内 膜 の 電 子 伝 達 系 に 供 給 さ れ る.電
伝 達 系 は,こ
質
同 じ く ミ ト コ ン ド リ ア ・マ ト
換 に お い て 酸 素 を 必 要 と し な い こ と を意 味 す る の で あ 組 織 内 の 酸 素 状 態 を 示 す もの で は な い.
方,脂
じ
子
の 水 素 を水 ま で 酸 化 し,そ の 時 に 発 生 す
る水 素 イ オ ンの 電 気 化 学 ポ テ ンシ ャ ル 差 をATP合 素 に 伝 え て 多 量 のATPを
成酵
合 成 す る こ と に な る(図4.3).
る. e.ADPに d.酸
化 系 に よ るATPの
酸 化 的 リ ン 酸 化(oxidative
供給 phosphorylation)は,ミ
コ ン ド リ ア の 内 膜 で 行 わ れ る.ま
た,解
り酸 素 の 介 在 下 で 行 わ れ る た め,こ ATP再
よる調節
た とえATP消 ト
糖 系 とは 異 な
の よ う な一 連 の
合 成 プ ロ セ ス を有 酸 素 的 過 程 と も よ ぶ.筋
が収
す ぐ にATPに
費 が 高 ま っ て 多 量 のADPが 再 変 換 さ れ れ ば,筋
昇 は 抑 制 さ れ,ミ
内 のADP濃
生 じて も 度の上
ト コ ン ドリ ア の 酸 素 消 費 は 抑 制 さ れ
た ま ま の はず で あ る.し
た が っ て,ミ
トコ ン ドリアの
酸 化 的 リ ン酸 化 能 力 を 向 上 さ せ れ ば 疲 労 に 対 す る 耐 性
4.3
持 久 的 トレ ー ニ ン グ と 筋 エ ネ ル ギ ー代 謝
a. ト レ ー ニ ン グ と筋 線 維 タ イ プ 別 の ミ トコ ン ド リ ア容量 の変化 筋 の 酸 化 能 力 を 向 上 さ せ る に た め に は,持 レー ニ ン グ が 効 果 的 で あ る.図4.6は,ヒ
久的 な ト トに6週 間
の持 久 的 トレ ー ニ ン グ を 実 施 した 前 後 の 筋 線 維 タ イ プ 別 の 相 対 的 ミ トコ ン ド リ ア 容 量 を 示 した も の で あ る. ト レ ー ニ ン グ 前 の デ ー タ が 上 部 に 示 さ れ て い る が, 図4.5
ミ トコ ン ドリ ア容 量 の違 い が ミ トコ ン ドリ ア呼 吸 と 細 胞 内ADP濃
低,普,高
は ミ トコ ン ドリア 容 量 の 程 度 を表 す.ま
場 合 酸 素 消 費量 は 仕 事 量 と考 えて よい.ミ 事 量 にお け る 筋 内のADP濃
た,こ
に比 べ て 同 じ仕
度 の 低 い こ とが わ か る.こ
酸 化 的 リ ン酸 化 能 が 高 い た め,他
の
トコ ン ド リア 容 量
が 高 い(酸 化 的 リ ン酸 化 能 が 高 い)と 普,低
に比 べ てADPか
れ は,
ⅡB<Type
ⅡA<Type
ドリ ア 容 量 が 多 い.ま
Ⅰの 順 で 相 対 的 ミ トコ ン
た,同
一の タイ プ内 での 相対的
ミ トコ ン ド リ ア 容 量 を 比 較 す る と,Type
Ⅰ線 維 が 示
す バ リエ ー シ ョ ンの 広 さ が 特 徴 的 で あ る.持 ー ニ ング後
らATPへ
久 的 トレ
,い ず れ の 筋 線 維 タ イ プ も相 対 的 ミ トコ ン
ドリ ア 容 量 が よ り多 い 方 向 に シ フ トし て い る.な
の 変 換 効 率 が よ り高 い と考 え ら れ る.
は 高 ま り,い
わ ゆ る トレ ー ニ ン グ 効 果 を得 る こ と が で
き る.図4.5は
筋 の ミ トコ ン ドリ ア 容 量 の 違 い が,筋
収 縮 中 のADP濃
Type
度 に 及 ぼ す 影 響7)
かで
度 と ミ トコ ン ドリア の酸 素 消 費 量 と
の 関 係 に どの よ う な 影 響 を 及 ぼ す の か を 示 し た も の で あ る.図
の 最 も左 の プ ロ ッ トは安 静 時 の 状 態 を 示 す と
考 え られ るが,す
で に ミ ト コ ン ドリ ア 容 量 の 違 い に よ
り筋 細 胞 内 のADP濃
度 は 異 な り,低
容 量 の 筋 が 最 も 高 いADP濃 味 深 い の は,酸 は,3群
ミ トコ ン ドリ ア
度 を 示 し て い る.ま
素 消 費 量 が 高 い 地 点(高
間 の 差 が 縮 ま り,ミ
た興
強 度 運 動)で
トコ ン ドリア容 量 の差 の
影 響 を あ ま り受 け な い の に 対 し,中 程 度 の 酸 素 消 費 量 (最 大 下 運 動)で は,最 で あ る.も れ ば,異
も容 量 の 差 の 影 響 を 受 け る こ と
し最 大 下 運 動 に お い て 酸 素 消 費 が 同 量 で あ
な る 群 で あ っ て もATPの
と仮 定 で き る.同
じ量 のATPが
分 解 され る と い う こ と
は,両
群 と も等 モ ル のADPが
る.そ
れ に もか か わ らず,図4.5の
異 な る と い う こ と は,高
消 費量 が 同一 であ る
生 じ る とい う こ と に な よ う にADP濃
度が
ミ トコ ン ド リア 容 量 群 に お い
て 酸 化 的 リ ン酸 化 の 速 度 が よ り速 い こ と を 示 し て い る.こ
れ は,筋
の 最 大 呼 吸 能 力 が 相 対 的 ミ トコ ン ドリ
ア 容 量 と 直 線 関 係 に あ る と い う報 告 か ら も支 持 さ れ て い る11).
図4.6
持 久 的 トレー ニ ン グ に よ る ヒ ト筋 線 維 タイ プ 別 の ミ トコ ン ドリ ア容 量 の変 化(Hoppeler,1986)
A:ト
レー ニ ン グ前,B:6週
間 の持 久 的 ト レー ニ ン グ後.
ト レー ニ ング 前 に お い て 筋 線 維 タ イ プ ご と に ミ トコ ン ドリ ア 容 量 が 異 な り,Type の 順 で あ る.こ
Ⅰ(■)>Type
ⅡA(●)>Type
の と き注 意 を要 す る の は,一
ⅡB(○)
つの筋線維の タ
イ プ の 中 で も ミ トコ ン ドリ ア容 量 に差 が あ る こ とで あ る.持 久 的 トレー ニ ン グ に よ り,い ず れ の筋 線 維 タ イ プ も容 量 が 増 す 方 向 に シフ トして い る.ま
た,そ
れぞれの タイプごとの分
布 は,ト レー ニ ン グ前 に比 べ て広 くな っ て い る.こ れ は ト レ ー ニ ン グ中 に な さ れた 運 動 にお け る 動 員 率 の 差 で あ る か も し れ な い.ま
た,典
型 的 な 速 筋 で あ るType
ⅡBに お い て も,
トレー ニ ン グ効 果 がみ られ る こ とに は 注 意 を要 す る.
も,Type
Ⅰ,Type
ⅡA線 維 の 変 化 が 大 き い.こ
のよ
c.運
動 時 間,強
度 と ミ トコ ン ド リ ア 容 量
う に 筋 線 維 タ イ プ 別 に 変 化 が 異 な る の は,こ
の トレー
持 久 的 トレ ー ニ ン グ の 開 始 に伴 い,ミ
ニ ン グ に 用 い られ た 運 動 様 式 に お い て,Type
Ⅰ,Type
容 量 は 比 較 的 早 く増 大 す る こ とが 知 ら れ て い る.図4.
ⅡA線 維 が お もに 動 員 さ れ た た め で あ る と考 え ら れ る.
8に ト レー ニ ン グ 期 間 と ミ トコ ン ド リ ア 容 量 と の 関 係 を,図4.9に1日
b.酸
化 能 力 の 向 上 に 貢 献 す る他 の 要 因
トコ ン ドリ ア
の トレーニ ング時 間 と運動 強 度が ミ
トコ ン ドリ ア 容 量 に 及 ぼ す 影 響 を 示 した.あ
持 久 的 トレ ー ニ ン グ に よ る 筋 の 酸 化 能 力 の 向 上 は,
る一定 刺
激 に 対 し て の 適 応 が 定 常 に な る た め に は,約4∼5週
ミ ト コ ン ド リ ア 容 量 の 変 化 の み に よ る もの で は な く,
間 必 要 とす る.逆
当 然 他 の 細 胞 内 器 官 な ど の 発 達 と リ ン ク し て い る.表
増 加 し た 容 量 分 の 約1/2が
4.2お
開 し た と し て も も と の レベ ル に 達 す る ま で 数 週 間 を要
よ び 表4.3に
は,エ
ネ ル ギ ー 産 生 系 か らみ た 持
に ト レー ニ ン グ を1週 間 中 止 す る と 失 わ れ,ト
レ ー ニ ン グ を再
久 力 の 制 限 因 子 と持 久 的 ト レ ー ニ ン グ の 効 果 を 規 定 す
して し ま う.一
る 因 子 を 示 した.持
増 加 した ミ ト コ ン ド リ ア 容 量 は トレ ー ニ ン グ前 の レベ
は ほ ぼ2倍
久 的 ト レ ー ニ ン グ に よ り毛 細 血 管
ま で 増 加 す る こ とが 知 ら れ て い る.こ
加 に よ る 生 理 ・生 化 学 的 利 点 は,酸
の増
素 や 栄 養 分 な どの
方,ト
ル に 戻 っ て し ま う.ま させ る た め に は,長
レ ー ニ ン グ 中 止 後 約5週
た,ミ
間 で,
トコ ン ドリ ア 容 量 を増 大
い 時 間 を必 要 とせ ず 短 時 間 で 運 動
毛 細 血 管 か ら筋 線 維 へ の 拡 散 距 離 が 縮 小 す る こ と,お よび毛 細血 管 の総 横 断面積 が 増 すの で毛 細血 管 内の 血 流 速 度 が 遅 くな り,筋 線 維 へ の 基 質 供 給 お よ び筋 線 維 か ら の 代 謝 産 物 の 除 去 が 容 易 と な る こ と で あ る.さ に,持
ら
久 的 ト レー ニ ン グ に よ る ミ トコ ン ド リ アへ の 酸
素 供 給 能 の 向 上 と い う観 点 か らす る と,ト
レー ニ ン グ
後 の 適 応 と して 起 こ る血 流 再 配 分 も重 要 で あ る. 持 久 的 トレーニ ングに よるパ フ ォーマ ンスの向 上 に 貢 献 す る要 因 と し て も う 一 つ 重 要 な の は,ミ トコ ン ド リ ア の 酸 化 的 リ ン酸 化 能 の 向 上 に 伴 う筋 中 の グ リ コ ー
図4.7
12週 間 の 持 久 的 ト レー ニ ン グが 筋 の 脂 質(ト リグ リ セ ラ イ ド)利 用 に及 ぼす 影響(Hurleyら,1986)
ゲ ン分 解 の 抑 制 お よ び脂 質 酸 化 の 割 合 の 増 大 で あ る (図4.7).グ
リ コ ー ゲ ンの 枯 渇 は 筋 活 動 の 限 定 要 因 と な
り う る た め,脂
運 動 は60%Vo2maxで120分
間.持
久 的 ト レー ニ ン グ に よ り運
動 中 の 脂 質 利 用 が 高 まる.
質酸 化 の割 合 の増 大 は疲 労 に達す るの
を 遅 延 さ せ る.持 久 的 トレ ー ニ ン グ に よ り脂 質 酸 化 の た め の 酵 素 活 性 が100%増
表4.2
加 す る こ とが 示 され て い る.
筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 の 観 点 か らみ た 持 久 力 の 制 限 因 子15)
表4.3
持 久 的 トレ ーニ ン グ の 効 果 を 規 定 す る 因子(久 野)
図4.8
ト レー ニ ン グ と脱 ト レー ニ ング に対 す る ミ トコ ン ド リ ア 容 量 の 適 応(Booth,1977)
ミ トコ ン ドリ ア容 量 の 単 位 は任 意.a:脱 b:脱
トレー ニ ング期 間,
トレー ニ ン グ も し くは再 トレー ニ ン グ期 間.
持 久 的 トレー ニ ン グ を開 始 す る と,ミ 較 的早 い段 階 で 増 大 す る.一 方,ト す ぐに低 下 しは じめ る.
トコ ン ドリ ア容 最 は比
レー ニ ン グ を中 止 す る と
4.4
ス プ リ ン ト ト レ ー ニ ン グ と筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝
a.エ
ネ ル ギ ー供 給 系 能 の 向 上
ス プ リ ン ト ト レー ニ ン グ は,短
時 間 しか 持 続 で き な
い 高 強 度 な 運 動 を 負 荷 す る も の で あ る た め,主 ATP供
給 系 はATP-PCr系
要な
お よ び 解 糖 系 で あ る.そ
の
た め ス プ リ ン ト能 力 の 向 上 は こ れ ら の エ ネ ル ギ ー 供 給 系 が 改 善 され る こ と に な る が,と
く に そ の 中 で も解 糖
系 の 能 力 の 発 達 が 重 要 と な る.な
ぜ な ら ば,ト
レーニ
ン グ に よ り激 しい 運 動 中 に 筋 で 再 生 さ れ るATP量 加 が 確 か め られ て い る が,こ 図4.9
ミ トコ ン ドリア 容 量 の ト レー ニ ン グ効 果 に お け る 運
は 解 糖 系 に よ るATP供
動 強 度 と運 動 時 間 の 関 係(Dudleyら,1982)
の増
れ らの 増 加 分 の ほ と ん ど
給 の た め で あ る.
ト レー ニ ン グ強 度:%Vo2max.a:40%,b:50%.c:70
ス プ リ ン ト ト レー ニ ン グ に よ り解 糖 系 の 律 速 酵 素 で
%,d:85%,e:100%.ミ
あ るPFK活
トコ ン ドリア 容 量 を増 大 させ
る ため に は,運 動 強 度 が 高 い ほ うが 効 果 的で あ る.40%Vo2max 程 度 の運 動 強 度 で は,ミ
性 の 増 加 が み られ る が,一
トコ ン ド リア容 量 に お い て トレー ニ
ング 前 と変 化 しな い(図4.11).
ン グ効果 は 認 め られ な い.
強 度 を 高 くす る こ とが 重 要 で あ る.し 度 ・長 時 間 運 動 の ト レー ニ ン グ は,ミ
た が っ て,低
接 に 関 係 し な い 心 臓 循 環 系 機 能,体
強
トコ ン ドリ ア の
酸 化 的 リ ン酸 化 能 の 向 上 に は あ ま り影 響 せ ず,筋 液 バ ラ ンス,代
と直 謝
b.筋
の緩 衝系 の 向上
短 時 間 で の 激 し い 運 動 を 行 う と,筋 内 に はATPの 水 分 解 で 生 じるADP,Piや はATPの
化 さ れ る とIMPお
な お,持
さ ら に,解
久 的 トレ ー ニ ン グ と筋 エ ネ ル ギ ー代 謝 との
関 係 を シ ェ ー マ と し て 図4.10に
示 した.
水 素 イ オ ン(H+),あ
再 合 成 に よ りAMP,そ
産 物 の 処 理 な ど の 他 の 適 応 を生 じ させ る18).
し てAMPが
加 るい
脱 ア ミノ
よ び ア ン モ ニ ア が 蓄 積 さ れ て い く.
糖 系 が 高 進 さ れ る た め 乳 酸 が 産 生 され,そ
の 乳 酸 か ら は 等 モ ル のH+が か か わ らず 筋 のpHは
遊 離 さ れ,緩
衝作用にも
低 下す る.こ のH+は,一
解 糖 系 の 律 速 酵 素 で あ るPFK活
図4.10
方スプリントト
レー ニ ン グ を 実 施 して も 酸 化 系 の 酵 素 活 性 は トレ ー ニ
方では
性 を抑 制す る働 きもも
持 久 的 トレー ニ ン グ に よ り筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 能 の 向 上を示 す シ ェ ー マ(久 野)
図4.11 ス プ リ ン ト トレー ニ ング に よ る解 糖 系 図4.12 ス プ リ ン ト トレ ー ニ ン グ に よ る
酵 素 活 性 と酸 化 系 酵 素 活 性 の 変 化 (Faulknerら,
っ て い る.す はH+が
な わ ち,解
細 胞 内 にH+が
のH+を
蓄 積 され て 筋 のpHが
の 代 謝 性 ア シ ドー シ ス はPFK活
動 を 継 続 し て い く の に必 要 なATPの さ せ る た め 筋 疲 労 を招 く.さ pHの
低 下 は,筋
(Ca2+)の
低
性 を抑 制 し,運
蓄積 に よ る
4. 解 糖 系 の特 徴 を述 べ な さい. 5. 筋 エ ネ ル ギー 代 謝 か らみ た持 久 力 の 制 限 因 子 を 六 つ あ げ な さい. 6. 持 久的 トレー ニ ング に よ る ミ トコ ン ドリア酸 化 能 の適 応 につ い て説 明 しな さい. 7. ス プ リ ン ト トレー ニ ン グ に よる 筋 エ ネ ル ギ ー代 謝 か ら み た 適応 を説 明 しな さ い.
小 胞体 か らのカ ル シウ ム イオ ン
た が っ て,運
の収 縮 力 を低 下 さ
動 継 続 の た め に はH+を
合 成 に お け る ク レ アチ ン リ ン酸 の役 割 を説 明 し
な さ い.
産生 に遅 延 を生 じ
ら に,H+の
放 出 低 下 な ど を 招 き,筋
せ る.し
3. ATP再
緩 衝系 で緩 衝 し
下 し,細 胞 内 は 酸 性 化(代 謝 性 ア シ ドー シ ス)状 態 に な る.こ
衝能
の 向 上(Sharpら,1986)
糖 系 が 亢 進 す る と筋 細 胞 内 に
遊 離 さ れ て く る が,こ
き れ な い と,筋
骨 格 筋 の 水 素 イ オ ン(H-)緩
1982)
8. 短 時 間 の激 しい運 動 時 に筋 内 に蓄 積 さ れ る代 表 的 な代 謝 産物 を複 数 あげ な さ い.
で きる
限 り筋 細 胞 内 に 蓄 積 しな い よ う に す る こ とが 必 要 と な る が,骨
格 筋 は こ のH-を
っ て い る.そ
緩 衝 す る ため の 仕組 み を も
の 緩 衝 系 と は,無 機 リ ン酸,重
ン(HCO3-),カ
ル ノ シ ン,蛋
炭酸 イオ
● 参 考 文 献 1)
白質 な どの物 理 化学 的
な 緩 衝 系 と ク レ ア チ ン リ ン酸 の 分 解,ア
れ らの
緩 衝 系 の 能 力 を 向 上 さ せ な け れ ば な ら な い.こ
れ につ
加 す る こ と が 明 らか に さ れ て い る(図4.12).
ま た,こ
R.K.,
4)
の 緩 衝 に は カ ル ノ シ ン と よ ば れ る物 質 が 関 与 5)
述 べ な さ い. 2. ATPを
再合 成す る供 給 経路 をすべ て 説 明 しな さい.
Gollnick,
Rennie,
fully
rest
Appl.
aerobic
and
M.J.,
exercise.
Winder,
W.W.
phosphorylase
contractile
T.E.J.
and
intracellular
and
activation
activity.
Am.
J.
in
Physiol.,
PO2
Honig, in
a
C.R.:Lactate working
efflux
red
muscle
Physiol.,61:402-408,1986. P.D.
and
Hermansen,
and
Sports
L.:Biochemical
metabolism. Medicine,
adaptations
Perspectives Vol.1,
in
pp.1-42,
Exercise
Benchmark
Indianapolis,1973.
Gollnick,
P.D.:Metabolic,
Infulence
of
protein 556)
during
of
to exercise:Anaerobic
6)
1. 筋 が 収 縮 す る ため に必 要 な化 学 化合 物 は何 で あ るか を
J.A.,
Gayeski, to
J. Appl.
Press,
題
and
J.
:2924-2929,1986.
continued
R.J.,
Sciences
● 問
lactate
:R291-R296,1979.
Connett,
situ.
合 が 高 い 者 ほ ど 量 が 多 い こ と が 示 され て い る.
of
exercise.
under
shuttle
J.O.:Reversal
is unrelated
し て い る 可 能 性 が あ り,こ れ に つ い て も 速 筋 線 維 の 割
points
production lactate
McLane,
despite
237
30%増
A.:End
exhausting
1057-1069,1980.
Proc.,45
Conlee,
muscle
よ び ス プ リ ン ト ト レー ニ ン グ で 緩 衝 能 が 約
G.
after
:the
Holloszy,
筋 線 維 の 割 合 が 高 い 者 ほ ど 筋 の緩 衝 能 が 高
Gaesser,
G.A.:Lactate
Federation 3)
and
:
Brooks, conditions
プ リ ン ト トレー ニ ン グ は,こ
い こ と,お
A.
metabolism
Physiol.,49
ンモ ニ ア の 産
生 な どの 代 謝 的 な 緩 衝 系 で あ る.
い て は,速
G.
glucose
2)
し た が っ て,ス
Brooks,
endurance
concentration. :
53-66,1986.
regulation training Acta
in
as Physiol.
exerted
skeletal by
Scand.,128
muscle:
mitochondrial (Suppl.
in
7)
八 田 秀 雄:乳
酸 の 産 生
と 除 去
のLTと
の
関 係.臨
床
the
ス ポ ー ツ
8)
Hirvonen,
J.,
Rehunen,
Breakdown
of
lactate
S.,
Rusko,
high-energy
accumulation
H.
and
Harkonen,
phosphate
during
short
14)
M.:
compounds
and
supramaximal
Holloszy,
J. O.
endurance
and
in
F.
W.:Biochemical
muscle.
Ann.
Rev.
adaptation
to
J.O. to
endurance
F.:Adaptation
exercise Physiol.,65
Hoppeler,
range
H.:The fibers.
(Pette,
D,
Jacobs,
P.
S.,
W. A.,
human
Appl. and
their
skeletal
B.,
mitochondrial
adaptation
State
of
O., muscle
Muscle
Karlsson,J. after
and 10
18)
30s
of
F.:31P
NMR
Saltin,
study
on
C.,
rat
skeletal
muscle.
Bro-Rasmussen, B.
T.,
and
Saltin,
after
training
in athletes
E.
A.
Science,
and
S. and
synthetase Acta
Eur.
J.
Mygind,
B.:Limb at
E., skeletal
altitude.J.
Appl.
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R.
L.,
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intrained
P.
and
untrained
muscle
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performance.
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M.,
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storage
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Mitsumori,
Juel,
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fibers
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:496-502,1990.
significance
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training
Rasmussen,
Newsholme,
of man.
metabolic
endurance
adaptation
glycogen
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eds.),pp.567-586,
skeletal
M.
and
Bar-Or,
exercise.J. Akisada,
of
of
:197-201,1992.
Dynamic
Gruyter,
in
supramaximal Kuno,
In:The
and
I.,Tesch,
R.:Lactate
13)
Coyle,E.
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muscle
12)
and
M.,
Schibye,
Medical 16)
Holloszy, muscle
11)
15)
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291,1976. 10)
Mizuno,
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Booth,
exercise
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Physiol.,65:197-201,1992.
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to
low
P. blood
and flow
15E-19E,1988.
Ogilvie, in
muscle
R.
5 運動 時のホル モン分泌
運 動 時 に は筋 活 動 に 必 要 な 糖,脂
質 の エ ネ ル ギ ー を 血 中 に 遊 離 させ,そ
れ を利 用 す る.ま た,
酸 素 の 利 用 も高 ま る こ とか ら酸 素 供 給 を 高 め る た め に 血 流 量 を 増 加 させ る.ま
た,持
続的 な運
動 時 の 筋 疲 労 に 対 抗 す る た め に,運 動 野 か ら よ り多 くの イ ンパ ル ス を送 り(中 枢 指 令 の 増 加), 運 動 単 位 の 活 動 を高 め る 必 要 も あ る.こ
の よ う な 運 動 中 の 生 体 応 答 は,意
な 身 体 の 緊 急 応 答 と し て い わ ゆ る ス トレ ス 反 応 系 に よ り調 節 さ れ る.こ と体 液 性 の 二 つ が あ る.前 体‐副 腎 皮 質 軸 で あ る.こ を 変 え る こ と に よ り,さ シ ス テ ム は,い
識 し な く と も 自動 的
の調 節機構 には神経 性
者 は 視 床 下 部 ‐自律 神 経‐副 腎 髄 質 軸 で あ り,後 者 は視 床 下 部 ‐下 垂 れ ら二 つ の シ ス テ ム は,繰
り返 しの 運 動 刺 激 に 対 し て 徐 々 に応 答 性
ま ざ ま な生 体 の 合 目的 な 適 応 を 生 む も の と考 え られ る.ま
た こ れ らの
ず れ も ホ ル モ ン と よ ば れ る微 量 な 化 学 物 質 を 介 して 行 わ れ る.本 講 で は,運
動
時 の ス トレ ス ホ ル モ ン の 分 泌 や 適 応 の 仕 組 み につ い て,視 床下 部 を 中 心 に ど の よ う な 中 枢 機 構 が 介 在 し て い る か に つ い て 述 べ る.
ホ ル モ ン は そ の 化 学 構 造 か ら ス テ ロ イ ドホ ル モ ン,
5.1 ホ ル モ ン分 泌 と視床 下 部調 節
ア ミノ 酸 を も と につ く られ る ペ プ チ ドホ ル モ ン(ア ノ 酸 ど う しの ペ プ チ ド結 合(−C(=0)−NH)が
a.ホ
ルモ ンの特 性
図5.1に
とな る)や
視 床 下 部 を 支 配 中 枢 とす る下 垂 体,な
らび
に 自律 神 経 系(交 感 ・副 交 感 神 経 系)ホ ル モ ンの 由 来 と標 的 器 官 へ の 作 用 に つ い て 示 し た.ホ 語 源 か らい っ て,血
中 に 分 泌 され る.血
中
に 分 泌 され た ホ ル モ ン は そ の ほ と ん ど が 肝 臓 で 分 解 さ れ るの で,.血 中 で の 生 物 活 性 が 維 持 さ れ る時 間 を 表 す
な わ ち 代 謝,循
環の 液性 調節
の シス テム は内分
の 作 用 の 特 徴 と し て は,き
た り10億 ∼1兆 分 の1g)で
し,高 親 和 性 を も つ こ とに 加 え,触 反 応 の 促 進,抑
細 胞 で 合 成 さ れ,血
ルモ ンはその
を担 う メ デ ィ エ ー ター とい え る.こ 泌 系 と よ ば れ,そ
図5.1)の
れ らの ホ
泌 に あ た っ て は 内 分 泌 器 官(表5.1,
液 に分泌 され離 れた 標的 器官 に ま
で 運 ば れ て 作 用 す る,す
量(1ml当
ア ミ ン類 の 三 つ に 分 け られ る.そ
ル モ ンの 合 成.分
ミ
基本
わめ て微
特 異 的 に作 用
媒 作 用 に よ り代 謝
制 を 通 じて 代 謝 の 調 節 を 行 う,な
「生 物 学 的 半 減 期 」 を 考 慮 す る 必 要 が あ る.こ
カ テ コ ラ ミ ン(ノ ル ア ド レナ リ ン,ア ー パ ミ ンの 総 称)で 60分,そ
,ペ
ドレ ナ リ ン,ド
プ チ ドホ ル モ ンは5∼
どが b.ホ
こ と に よ る.最
表5.1,図5.1に
床 下 部 の 神 経 が ペ プ チ ドホ
ル モ ン を分 泌 す る 「神 経 内 分 泌 」 や,標
は数分
し て 甲 状 腺 ホ ル モ ン で は1週 間 と 長 い7.21).
特 徴 と な っ て い る5.11).い ず れ も特 異 的 受 容 体 を もつ 近 で は,視
れはホ
ル モ ンの 種 類 に よ り異 な り,自 律 神 経 ‐副 腎 軸 か ら の
的器官 の細 胞
ル モ ン分 泌 の 視 床 下 部 調 節 お も な 内 分 泌 器 官 と ホ ル モ ン,な
ら び に そ の 標 的 器 官 へ の 作 用 を ま とめ て 示 した.ほ
と
が ホ ル モ ンの 刺 激 を 受 け て さ ら に 独 自 の ホ ル モ ン を 合
ん どの ホ ル モ ン は 視 床 下 部 に よ る 調 節 を 受 け る こ とが
成 し,自
己 な らび に 隣 接 細 胞 に 作 用 す る 際 の 「自 己 分
わ か る7.21).下 垂 体 で は 前 葉 ・中 葉 と後 葉 で 分 泌 の 機
分 泌 」 な ど を 含 め た 情 報 伝 達 も含 め て 内 分 泌 系
構 が 異 な っ て い る.下 垂 体 前 葉 な らび に 下 垂 体 中 葉 か
泌/旁
と 定 義 す る場 合 もあ る7.21).
ら は8種 類 の ホ ル モ ン が 分 泌 され る が,い
ず れ も視 床
図5.1
お も な ホ ル モ ン と生 理 作 用(征
矢)
表5.1
*:エ
お もな 内 分 泌 器 官 と ホ ル モ ン2)
ス トロ ゲ ン に は4種 類 あ る.
下 部 に 支 配 神 経 が 存 在 し,そ の 神 経 で 合 成 さ れ る ペ プ
投 射 す る 自律 神 経 の 末 端 か ら ノ ル ア ド レ ナ リ ン(NA)
チ ドが 下 垂 体 門 脈 に い っ た ん 分 泌 さ れ(神
と し て 血 中 に 分 泌 さ れ る.自
経 内 分 泌),
血 液 を 介 して 前 ・中 葉 に 到 達 す る こ と に よ り生 じる.
わ れ る よ う に,副
た と え ば 卵 巣 か らの エ ス ト ロ ジ ェ ン 分 泌 を 刺 激 す る 黄
ナ リ ン(A)を
体 形 成 ホ ル モ ン(LH)の
NAは
LHRH(性
分 泌 は,視
床下 部 由来 の
腺 刺 激 ホ ル モ ン放 出 因 子)に よ る 分 泌 抑 調 節
を 受 け る.一
方,下
垂 体 後 葉 に はAVP(ア
バ ソ プ レ ッ シ ン)とOT(オ
ルギ ニ ン ・
キ シ トシ ン)が あ る が,こ
律 神 経 ‐副 腎 髄 質 軸 と い
腎 髄 質 は 自律 神 経 支 配 が 強 くア ドレ
分 泌 す る.血
中 で はAは
自 律 神 経 由 来 とみ て よ い.膵
副 腎 髄 質 由 来,
臓 で は,血
分 泌 し血 糖 の 維 持 が 図 ら れ る.こ に よ る 刺 激 を 受 け てIGF-Ⅰ(イ
の ほ か,肝
分 泌 し,骨,筋
軸 索 を 通 して 後 葉 まで 運 ばれ た 結 果貯 蔵 され た も の
を も つ 心 房 性 ナ ト リ ウ ム 利 尿 ホ ル モ ン(ANP)を
で,そ
さ せ る.さ
部 のCRH(コ
律 神 経 は,視 床 下
ル チ コ トロ ピ ン(ACTH)放
に よ り刺 激 を受 け,最
出 因 子)な ど
終 的 に は 胸 髄 か ら全 身 に 向 け て
に 作 用 さ せ る.ま
ら に,最
近,脂
子 と し て 発 見 さ れ た.こ た 後,視
た,心
臓 も降圧 効 果
肪 細 胞 か ら肥 満(ob)遺
れ は,脂
床 下 部(室 傍 核,弓
臓 はGH
ンス リ ン様 成 長 因 子)を
れ は視 床下 部 に あ る神経 の細 胞体 で合 成 され た ものが
こ か ら血 中 に分 泌 さ れ る.自
糖の増
減 を 受 け て α,β 細 胞 か ら グ ル カ ゴ ン や イ ン ス リ ン を
分泌 伝
肪 細 胞 か ら分 泌 さ れ
状 核 な ど)に 作 用 し て 摂 食
図5.2 視 床下 部 の 向下 垂 体 神 経 の 投 射 経 路(征 矢) 下垂 体 前 葉 か らの ホ ル モ ン は,い
ず れ も 視 床 下部 の 正 中 隆 起 部 に投 射 す る神 経 分
泌 細 胞 の 末端 か ら 神経 内 分 泌 に よ り放 出す るペ プ チ ドホ ル モ ンに よ り調 節 され る.
行 動 を 抑 制 し,交 感 神 経 を 介 して 代 謝 を 促 進 す る こ と
じて 初 め て 前 葉 ホ ル モ ンが 合 成 ・分 泌 され る こ と に な
か ら レ プ チ ン(ギ
リ シ ャ語 で や せ る を 意 味 す る)と
る2.7.18.21).
づ け ら れ た5).脳
も含 め こ れ らの 臓 器 も ホ ル モ ン を合
名
成 ・分 泌 す る こ と か ら 内 分 泌 器 官 と み る こ と も で き る.い
わ ゆ る 内 分 泌 器 官(下 垂 体,甲
状 腺,副
5.2
運 動 とス トレスホ ル モ ン
腎,性
腺 な ど)だ け で 定 義 す る の は も は や 難 し くな っ て い る.
a.ス
トレ ス と は?
身 体 運 動 は,そ
の開始 と ともに莫 大 なエ ネ ルギ ー と
c.視 床 下 部‐下 垂 体 前 葉 軸
酸 素 を必 要 とす る の で,糖
運 動 時 に 分 泌 され る ホ ルモ ン は そ の ほ とん どが ス ト
の 代 謝 ・循 環 応 答 を 即 座 に動 員 す る必 要 が あ る.こ
レ ス に 関 連 し た ホ ル モ ンで あ る.い ず れ も下 垂 体 前 葉
を満 た す の は,視
由 来 で あ る こ とか ら,そ
の 視 床 下 部 調 節 の し くみ を も
う少 し詳 し く述 べ る.図5.2は
ラ ッ トの 脳 の 前 額 断 を
示 し,視 床 下 部 を ク ロ ー ズ ア ッ プ して い る.視 は 間 脳 に あ り,さ
身 の 統 合 的 調 節 を 行 う部 位 と して 知 ら れ る.お 徴 は,神
床 下部
ま ざ ま な 神 経 と 連 絡 を も ち な が ら全 もな特
経 が 無 髄 で 信 号 の 伝 達 速 度 が 遅 い か わ りに ペ
新 生 と血 流 増 加 とい う二 つ れ
床 下 部 ‐下 垂 体‐副 腎 軸 な ら び に視 床
下 部 ‐自律 神 経 軸 と い う 全 身 の 二 大 調 節 系 で あ る.医 科 ・生 理 学 領 域 で は,こ
の 二 大 調 節 系 は 「ス トレ ス 反
応 」 を 生 み 出 す 機 構 と し て と ら え ら れ て い る7).こ れ は も と も とW.CannonとH.Selyeの
学 説が もとに なっ
て お り,生 命 維 持 に 赤 信 号 を灯 す 行 動 や 臓 器 の 反 応 を 促 す 物 理 ・化 学 的 刺 激 群 を 意 味 す る もの で,身
体 に溜
プ チ ドホ ル モ ン を 合 成 し,軸 索 輸 送 に よ り正 中 隆 起 や
まっ た りす る も の で は な い.ス
下 垂 体 後 葉 に 運 搬 す る こ とで あ る.表5.1,図5.1で
熱 な どの 身 体 的 な 刺 激 因子 の ほ か に,恐
も示 した よ う に,LHを
の 心 理 的 ・社 会 的 因 子 な ど 多 くの 種 類 が あ る18.20.21).
野,GHを
支 配 す るLHRH神
支 配 す るSRIF神
弓 状 核,そ
し てACTHを
経 は視 索 前
経 は 室 周 核,GRH神 支 配 す るCRHな
経は
ら び にAVP
トレ ス に は 痛 み,空 腹, 怖,不
生 理 学 で は ス ト レス を 科 学 的 に と ら え る た め に,下 体 前 葉 か ら分 泌 され るACTH(副
の 分 泌 を ス トレ ス の メル ク マ ー ル と して い る.
れ も 最 終 共 通 経 路 と な る 正 中 隆起 に そ の 軸 索 を投 射 し
と こ ろ で,ACTHに
て い る.す
ル チ ゾ ー ル(グ ル コ コ ル チ コ イ ドの 一 つ,以
れ らの ペ プ チ ドは 正 中 隆 起 か ら
垂
腎 皮 質 刺 激 ホ ル モ ン)
神 経 は 室 傍 核 に そ れ ぞ れ 細 胞 体 が 局 在 して お り,い ず
な わ ち,そ
安 など
よ り副 腎 皮 質 か ら分 泌 さ れ る コ 後GCと
下 垂 体 門 脈 血 中 に 分 泌 さ れ る こ と に よ り下 垂 体 前 葉 に
よ ぶ)は ア ル ドス テ ロ ンや ミネ ラ ル コ ル チ コ イ ド と い
作 用 で き,独
っ た ス テ ロ イ ドホ ル モ ン な ど共 同 して 生 体 の ホ メ オ ス
自 の 受 容 体 を 介 した 刺 激 ‐分 泌 連 関 を 通
図5.4
筋 収 縮 に よ る 反射 的 ス トレ ス調 節 とそ の 脳 内 情 報 伝 達 機 構 の 想 定 図18)
ン濃 度 やGCの
分 泌 増 加 が み ら れ る の で,運
レ ス と い え る(運 図5.3
負 荷 漸 増 運 動 にお け るLT強
動 ス ト レ ス).こ
ル モ ン は,GH,プ
度の運動 に対す る 血中
ホ ル モ ン分 泌 応 答18.21)
の時 分泌 され る ホ
ロ ラ ク チ ン(PRL),甲
ル モ ン(TSH),AVPな
動 もス ト
状 腺 刺激 ホ
どが あ り,い ず れ もACTH同
様
各 ス テ ー ジ の 最 後 で 採 血 した 場 合 を 想 定 す る.
下 垂 体 か ら分 泌 さ れ,視 テ ー シ ス(恒 常 性)維 持 に働 く と 考 え られ て い る.し し,コ
か
ルチ ゾー ルは慢性 的 に高 濃 度で 作用 す る場 合 は
免 疫 を 抑 制 した り,脳 に 移 行 し て,海
馬 の神経 を脱落
参 照)こ と か ら,ス こ の ほ か に,LTを
床 下 部 調 節 を 受 け る(図5.4
トレ ス 関 連 ホ ル モ ン と い え る6.21). 境 に 分 泌 増 加 す る グ ル カ ゴ ン,唯
一分泌 が低下す るイ ンス リン
,さ
ら に,LT以
40%酸
る7.18.14).海 馬 は 短 期 の 学 習 ・記 憶 を 司 る 機 能 で 知 ら
の ホ ル モ ン分 泌 が 運 動 強 度 に 依 存 して 変 化 す る.図5.
れ る が,最
3に 示 した よ う に,LTはBorg(1973)に
近 で は,視 床 下 部 を 持 続 的 に 抑 制 し,ス
レ ス 反 応 の 正 常 化 す る機 能 を も ち,末
ト
梢 の ス トレス状
素 摂 取 水 準 で 分 泌 が 増 強 す るANPな
下の
させ る な ど の マ イ ナ ス 面 も 生 じ る こ と が 指 摘 さ れ て い
ど,多
く
よる主 観的 運
動 強 度 で み る と や や 苦 し く な る 強 度 で あ り,少
しの
態 を 中 枢 に 反 映 させ る モ デ ュ ー ル の 役 割 を 果 た し て い
「さ らな る 頑 張 り」 を 必 要 とす る 強 度 に 相 当 す る.し
る と 考 え ら れ て い る.ス
た が っ て,LTと
ト レス が 身 体 に 悪 い と は こ の
よ う な 面 を い う.
は,運
動 に よ る 中 枢(視 床 下 部)の 興
奮 の た め の 閾 値 と も い え そ う で あ る18.21).表5.2に
こ
れ ま で 運 動 時 に 血 中 に 分 泌 さ れ る こ とが 報 告 さ れ て い b.運
動 ス ト レス とは?
図5.3は,運
る ホ ル モ ン につ い て ま と め た.し か し先 述 した よ う に,
動 強 度 に 依 存 して 分 泌 が 増 加 す る い く
つ か の ホ ル モ ン の 分 泌 プ ロ フ ィー ル を 示 して い る.生
ス ト レ ス ホ ル モ ン以 外 は 研 究 が 少 な く明 確 に 定 義 で き る 現 象 や 機 構 は きわ め て 少 な い.
体 に と って 運 動 は そ の 条件 に よ り異 な る刺 激 とな る が,強 準,血
度 の 点 か ら み る と お よそ50∼60%酸
5.3
運 動 ス ト レ ス と脳
中 乳 酸 で い わ ゆ る 乳 酸 性 作 業 閾 値(lactate
threshold:LT)付 拍/分
素 摂取 水
近,そ
して,心
拍 数 で は110∼130
を 超 え る 頃 か ら血 中ACTH,β-エ
ン ドル フ ィ
LT強
度 付 近 か ら み ら れ る 運 動 ス ト レ ス に 付 随 して
多 くの ホ ル モ ン分 泌 が 生 じる こ と を 述 べ た が(図5.3),
表5.2 運 動 時 の ホ ル モ ン分 泌
そ れ ら は い ず れ も視 床 下 部 神 経 に よ る 神 経 内 分 泌 調 節
運 動 ス トレ ス は,① 運 動 野 の興 奮 とそ こ か らの 指 令,
に よ る と考 え られ る.こ
こ で は,視
② 情 動(恐 い,気
動 ス ト レ ス の 要 因 と,実
際 の視 床下 部調 節 につ い て述
床 下部 を中心 に運
べ る.
持 ち よ い な ど),③
活 動 筋(脊 髄 の 運
動 神 経 とそ れ に よ り支 配 さ れ る 筋 線 維,運 ぶ)か
らの 求 心 性 神 経 イ ンパ ル ス,④
動単位とよ
運動 中 の低血糖
な ど の 代 謝 変 化(こ れ ら は 長 時 間 の 消 耗 性 運 動 に 限 ら a.運
動 ス トレス の 原 因
れ る)な ど が,い
運 動 に よ る ホ ル モ ン分 泌 機 構 に 関 す る 研 究 は,ま そ の 緒 に つ い た ば か りで あ る.な と して のACTH分
泌 は,ヒ
が な され て い る.こ なLT付
だ
か で もス トレ ス 反 応
トや 動 物 で い くつ か の 試 み
こで は比較 的長 時 間の運 動 が可 能
近 の 適 度 な 運 動 ス トレ ス の 調 節 に つ い て 考 え
て み た い.
CRHやAVP神
ず れ も最 終 的 に 視 床 下 部 に 到 達 し,
経 を 刺 激 し,下
垂 体 か ら のACTH分
泌
応 答 を引 き起 こ す こ と に よ り生 じ る と考 え られ る18.21). そ の 想 定 さ れ る 経 路 は 図5.4に
ま とめ て 示 した.こ
中 で2)の 反 射 調 節 に 関 す る も の は,実 際 に,ヒ
の
トで も ラ
ッ トで も そ れ を 示 唆 す る 証 拠 が 報 告 さ れ て い る. こ の 機 構 は,「 運 動 昇 圧 反 射 」 と し て 知 ら れ る 循 環
の 求 心 性 反 射 調 節 と類 似 し た もの で あ る15.18.21).「運
走 運 動 中 の 視 床 下 部 室 傍 核(PVN)に
動 昇 圧 反 射 」 で は,活
興 奮 を,細
動 筋 内 に あ り代 謝 や 機 械 的 刺 激
局 在す る神経 の
胞 興 奮 の マ ー カ ー と し て 有 用 なc-fos原
遺 伝 子(c-fos
が,ゆ
る18.20).こ れ は, in situハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン法 に
っ く り と し た 伝 達 速 度 で 心 臓 血 管 中 枢(延 髄 に
mRNA)の
癌
を 同 時 に 受 容 ・興 奮 す る ポ リ モ ー ダ ル 受 容 器 の 興 奮
発現 か らとらえた もので あ
あ る)に 伝 え ら れ た 結 果 生 じる こ とが わ か っ て き た.
よ る もの で,さ
こ の 筋 か ら の 求 心 性 神 経 伝 達 は,脳
る際 に一 過性 にこの遺 伝子 が核 内 で転 写 され蛋 白がつ
幹 にお い て以下 の
ま ざ ま な刺 激 に よ り神 経 細 胞 が 興 奮 す
二 つ の 分 枝 か ら ス ト レ ス 反 応 を 担 う全 身 の 二 大 調 節 系
く ら れ る こ とか ら,最 近 神 経 科 学 領 域 で 頻 繁 に 利 用 さ
を 調 節 す る.一
れ て い る9).LT強
つ は,C群
と よ ば れ る ア ド レナ リ ン 作
度 で1時 間 の 走 運 動 を行 わ せ た 際 に,
動 性 神 経 を 介 して 脊 髄 を下 降 し脊 髄 中 間 質 外 側 柱 に あ
PVNで
る 交 感 神 経 節 に 伝 え ら れ,そ
そ の 増 加 はACTHと
こ か ら心 臓 交 感 神 経 を 介
のc-fos mRNAの
発 現(黒 い 濃 染 部 分)が み られ, も相 関 す る(征 矢,1997).ま
し て 心 臓 機 能(陽 性 変 時 ・変 力 作 用)を 反 射 的 に 調 節
同 じ 条 件 で,CRHとAVPの
す る.も
比 較 し て み る と,CRHよ
う 一 つ は 脳 幹 のA1,A2,A6(青
斑 核)神 経 と
よ ば れ る ノ ル ア ド レナ リ ン 作 動 性 神 経 を 中 継 し,脳 前 方 に 向 か い,視
の
床 下 部 の ペ プ チ ド作 動 性 神 経 を 刺 激
す る こ と が 報 告 さ れ て い る.お 視 床 下 部 へ 向 か う信 号 は,視
そ ら く脳 幹 網 様 体 か ら
床 や 大 脳 基 底 核 を介 し て
辺 縁 系(扁 桃 核 や 海 馬)に も伝 達 さ れ,運
動 時の気 分 の
合 成 能 を遺 伝 子 発現 か ら り もAVPが
強 か っ た20).運
動 時 に そ の 興 奮 が 顕 著 な 部 位 はPVN以 海 馬 な ど の 大 脳 辺 縁 系,梨 が み ら れ た(他
た,
外 に は視 床 や
状 皮 質 な ど に もc-fos発 現
の 視 床 下 部 も腹 内 側 核 や 外 側 野 で も発
現 が み られ て い る).こ
れ ら は,走
運 動 ス トレス に特
異 的 な 脳 内 情 報 伝 達 に 関 わ る 部 位 と して 重 要 で あ る6).
変 化 に も影 響 を 与 え る は ず で あ る4.18). c.ス b.運
動 時 の視 床 下部 の興奮
トレ スの 新 概 念 か らみ た運 動 ス トレ スの 特 異性
ス ト レ ス 反 応 の 最 も強 力 な 刺 激 因 子 と し て は 視 床 下
で は 実 際 に運 動 時 に視 床 下 部 は 興 奮 す る の だ ろ う
部CRHが
か.図5.5は
演 ず る.こ
ラ ッ トの 走 運 動 ス トレ ス モ デ ル を用 い て,
図5.5 a:脳
前 額 断 切 片.視
あ げ られ,多
1時 間 の 走運 動 に よ る お もなc-fos
床下 部室 傍 核(PVN)に
お け る発 現(黒
色)の
くの ス ト レス で 主 要 な 役 割 を
の ほ か に,AVPやOTあ
mRNA発
増 加21.b:上
るい は血 中 カテ コ
現部位 が運 動 前,下
が 運動 後 で あ る.
ラ ミ ン な ど もCRHと 起 こ す2.3).最
協 同 し てACTH分
近,ス
泌 反 応 を引 き
トレ ス の 種 類 に応 じた こ れ ら の
ス ト レ ス で も 繰 り返 し 行 う と,CRHに
か わ っ てAVP
の 貢 献 が 強 く な る と い う 「化 学 的 ス イ ッチ ン グ仮 説 」
因 子 の 相 対 的 貢 献 度 が 異 な る こ とか らス ト レス の新 概
が 注 目 され て い る3.16.20).
念 が 生 ま れ,研
で は 運 動 ス トレ ス の 質 は 他 の ス ト レ ス と異 な る の だ
え ばACTH応
究 に お け る 実 用 性 を増 し て い る.た
答 は 定 型 的 に み ら れ て も,そ
と
の調 節 機 構
ろ うか?ラ
ッ トや ウ マ の 走 運 動 モ デ ル を 用 い て ス トレ
が 異 な れ ば ス トレ ス の 質 は 異 な る とい う もの だ2.8).
ス 反 応 にお け るCRHやAVPの
CRHは
ラ ッ トで はAVPの
も と も とACTH分
泌 促 進 因 子 と して 最 も 強
力 な ペ プ チ ド と して 同 定 さ れ,視
床下 部室 傍核 に局 在
す る 小 細 胞 系 神 経 で 合 成 さ れ る.一
方AVPは
下垂 体 後
葉 と前 葉 に 別 々 に 投 射 す る 神 経 が 同 定 さ れ て い る.後 葉 に 投 射 す る 神 経 は,室
傍核 の外 側 にあ る大細 胞神 経
関 与 がCRHよ
唆 さ れ て い る.ウ よ り もAVPが
関 与 が 検 討 さ れ て い る1.21). り も大 き い こ とが 示
マ で は 運 動 中 の ス ト レ ス 反 応 にCRH
よ く平 行 す る こ とか ら,後 者 の 関 与 を示
唆 し て い る.ヒ
トで もCRHを
あ ら か じ め 大 量 に投 与
し て お き,下 垂 体 か らのACTH応
答が 起 こ らない よ う
で 合 成 さ れ る の に 対 し,下 垂 体 門 脈 に つ な が る 正 中 隆
に して 運 動 させ,そ
起 へ 投 射 す る 神 経 は 同 じ室 傍 核 の 小 細 胞 系 に 局 在 す
を 検 討 して い る17).そ の 結 果,ス
る.ほ
こ と は な く,CRH以
と ん ど の 神 経 がCRHと
共 存 す る が,CRH/AVP
の 際 の ス ト レス 反 応 へ の 修 飾 効 果
の分 泌比 率 は ス トレスの条 件 で異 な るこ と もわか っ て
い 結 論 を 導 き出 した.こ
い る.い
CRHの
ず れ に して も,ス
小 細 胞 系 か らのCRH/AVPが 系AVPも
トレス反応 の形 成 には この 重 要 で あ る2.3.18).大 細 胞
軸 索 の 途 中 か ら正 中 隆 起,あ
前 葉 と い う ル ー トを 経 てACTH分 唆 さ れ て い る(図5.6).動
る い は後 葉 か ら
泌 を 促 す 可 能 性 も示
物 実 験 で は,拘
束 ス トレス
トレ ス 反 応 は 下 が る
外の 因子 の関与 を考 えざ るを えな の よ う に,走
運 動 ス ト レ スが
関 与 が 大 き い エ ー テ ル ス ト レス や 拘 束 ス トレ ス
と は 異 な る 機 序 で 発 現 す る こ とが,種 れ る よ う だ1.3.16).も
を越 え て 認 め ら
ち ろ ん 運 動 も 高 強 度 に な れ ば,
ホ ル モ ンの 調 節 機 構 も変 わ る可 能 性 が あ る.ス が 強 く な る とCRHの
関 与 は 高 く な る は ず で あ る.LT
や エ ー テ ル ス トレ ス な ど多 くの 強 い 身 体 的 ス ト レ ス で
以 上 の 強 度 で4週 間 ト レー ニ ン グ す る と,GCの
はCRH神
な 増 加 に加 えCRH遺
べ てCRHで
経 の 興 奮 が 優 位 と さ れ て い る18).し か し,す 説 明 で き る わ け で は な い.高
調 食塩 水 負
荷 に よ る 浸 透 圧 ス トレ ス や 侵 害 ス トレ ス な ど を繰 り返 す 際 に はAVPの
関 与 が 強 くな る1.6.18.22).ま た,拘
トレ ス
顕著
伝 子 の安 静 レベ ルで の 発 現 が増
加 す る と す る 知 見(川
島,1997)も
あ り,今 後 の 詳 細
な 検 討 が 望 まれ る.
束 d.運
動 ス トレ ス の 生 理 的 意 義:仮
説
運 動 に伴 う ス ト レ ス 反 応 が 運 動 時 の 緊 急 な 代 謝,循 環 の要 求 を満 たす ため に必 要で あ る こ とはい うまで も な い.そ
れ 以 上 に運 動 ス トレ ス が 他 の ス ト レ ス と 質 的
に異 な る こ と が い っ た い ど ん な 生 理 的 意 義 を もつ の で あ ろ う か.AVPが
脳 内 で はCRHと
(Plotsly,1984),さ
ら にAVPの
拮 抗 的 に働 く こ と
脳 内 作 用 は 学 習,記
憶
の 保 持 に 必 須 な役 割 を もつ こ とが 報 告 さ れ て い る7.18). LT強
度 付 近 の 適 当 な 運 動 ス トレ ス が 脳 内AVPを
増加
させ る こ と に よ り,認 知 機 能 を 高 め る 効 果 が 期 待 で き る か も し れ な い.そ
こ で,あ
増 加 し た 脳 内CRHを,適 のAVPを
ら か じめ 他 の ス トレ ス で
度 な運 動 ス トレス は脳 内 へ
介 して 軽 減 す る 可 能 性 が 考 え られ る.実 際 に
ラ ッ トで は 運 動 ト レー ニ ン グ が 新 奇 ス トレ ス の 反 応 を 減 弱 さ せ る,い
わ ゆ る 交 叉 適 応 の 可 能 性 を示 唆 す る 報
告 もあ り23),関 連 性 が 示 唆 さ れ る.
図5.6
ス トレス 時 の 神 経 内分 泌 機 構 の模 式 図(征 矢)
知 ら れ て い る10).エ ネ ル ギ ー 代 謝 に お い て も,ア
ス 合 成(ア 運 動 適 応 に お け る ホ ル モ ン の 貢 献,あ
ラニ
ンな どの 分 岐 鎖 ア ミ ノ 酸 の 分 解 とそ れ に よ る グ ル コ ー
5.4 運 動 適 応 とホ ル モ ン 作 用
る い は ト レー
ラ ニ ン 回路)の 効 率 が 増 加 す る(Viru,1994)
と い う こ と もあ る.
ニ ン グ に よ る ホ ル モ ン分 泌 の 適 応 な ど つ い て も 研 究 は ま だ 十 分 と は い え な い.こ
こ で は,運
動 適 応 にお いて
共 通 した 重 要 な 現 象 に つ い て 述 べ る.
b.オ
ー バ ー トレ ー ニ ン グ
オ ー バ ー ト レー ニ ン グ(ス
テ イ ル ネ ス と も い う)な
ど,長 期 的 な 運 動 の や りす ぎ に よ る抑 う つ 傾 向 の 増 加, a.運
動 適 応 と ス トレ ス
高 強 度 の 運 動 を 行 う とGCの 週 間 で ピ ー ク に 達 し,そ
血 中 レ ベ ル は お よ そ4
の 後 漸 減 し,6週
うつ 病 へ の 罹 患,慢
性 疲 労 の 進 行,あ
る いは 月経異常
な どが 報 告 さ れ,こ
れ らが 運 動 ス トレ ス に 対 す る 視 床
間 後 を経 て
下 部 ‐下 垂 体‐ 副 腎 軸 の 不 適 応 に よ る と す る 見 方 が あ
も と に戻 る こ とが ヒ トで も ラ ッ トで も 報 告 さ れ て い る
る4.13.14.18.21).うつ 病 は 世 界 的 マ ラ ソ ン ラ ン ナ ー の サ
(図5.7)22).し
ラ ザ ー ル 選 手 の 例(Wischina,B,1994)に
た が っ て,短 期(お
よ そ1か
月)の
ー ニ ン グ 効 果 を 考 え る 場 合 は と く に こ のGCに 特 異 的 影 響 を 考 慮 す る 必 要 が あ る21)Lugerら ーニ ング効 果 を検 討 し
トレ
よる非 は13)ト レ
,適 度 に 行 う群 とハ ー ドに 行 う
群 と で 外 因 性 に 投 与 し たCRHに 泌 応 答 を 比 較 し て い る.血
対 す る 血 中ACTH分
中GCレ
時 間 激 し い 運 動 を 行 う ア ス リ ー トに 多
い4.13.18.21).適 応 性 うつ 病 で は,ス 伴 い,脳
幹 の ノ ル ア ドレ ナ リ ン や セ ロ トニ ンな ど,ア
泌
の低 下,自
律 神 経 や 内 分 泌 失 調 な どが 発 現 し,い わ ゆ
(北 山 ら,1994).こ
が わ か っ た.で
慢 性 的 な 増 加 に 加 え,脳
フ のCRH感
受 性(受
垂 体 の コ ル チ コ トロ ー
容 体 の 数 や 親 和 性 の 低 下 に よ る)
が 低 下 し た結 果 で あ ろ う か.そ
れ と も 増 加 したGCに
よ る フ ィ ー ドバ ッ ク に よ る も の だ ろ うか.い る か は い まだ に決 着 を み な い が,わ
ずれによ
れわ れ の知 見で は
動性
る 「適 応 性 う つ 病 」 に な る こ と が 報 告 さ れ て い る18)
応 答 は ハ ー ド ト レ ー ニ ン グ群 の ほ う が 有 意 に 低 い こ と は い っ た い,下
トレスの慢 性 化 に
ミ ン作 動 性 神 経 が 疲 弊 し,情 動 ・意 欲 の 障 害,活
ベ ル は有 意 にハー
ド ト レ ー ニ ン グ 群 で 高 い 値 を 示 し,CRH-ACTH分
う に,長
み られ るよ
さ れ て い る.脳
の 原 因 と し て,血
内CRHが
内CRHの
中GCレ
ベ ルの
慢 性 的増 加 が示 唆
過 剰 に な る とLHRH神
経が
抑 制 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る7.18.21).実 際 に 激 しい ト レー ニ ン グ を 行 い 無 月 経 に あ る女 性 に お い て,黄 体 形 成 ホ ル モ ン(LH)の
分泌 頻 度 の低 下 と分泌 総量 の 低
後 者 を支 持 す る 結 果 が 得 られ て い る18.21).
下 が 報 告 され て い る.こ
と こ ろ で,GCは
性 で も起 こ り,精 子 の 合 成 能 の 低 下 な ど に よ る 不 妊 症
先 述 し た よ う に 適 量 な ら生 理 機 能
に 必 須 な 役 割 を も つ.副
腎 の 萎 縮 が 認 め られ る 人 に 突
の よ う なLH分
泌 の 抑 制 は男
も懸 念 され る.
然 死 が 起 こ りや す い と す る 臨 床 報 告 が あ る11).副 腎 摘 出 動 物 の ラ ッ トは 運 動 の パ フ ォ ー マ ンス が 低 い こ と も
c.GHと GH分
ア ナ ボ リ ッ ク効 果 泌 は ヒ トで は お も に 入 眠 時 に 増 加 す る.ラ
ッ
トで は お よ そ3時 間 ご と に 分 泌 が 増 加 す る 超 日 リズ ム を 示 す.い
ず れ も 睡 眠 と深 い 関 係 を もつ.こ
脈 動 的 な 分 泌 は促 進 性 のGRH,抑
の よ うな
制 性 のSRIF(ソ
マ
トス タチ ン)の 相 反 す る 作 用 を もつ ペ プ チ ドに よ る 二 重 調 節 を 受 け る.ヒ 加 が み られ る が,情
トで はLT付
近 か らGH分
泌 の増
緒 的 な ス トレ ス で も 分 泌 が 増 加 す
る こ とが 知 られ て い る. 運 動 時 に 増 加 す るGH分
泌 の生 理 的意 義 は不 明 であ
る.脂 肪 分 解 作 用 は 長 時 間 を要 す る こ と か ら,お く,ト 図5.7
ヒ トの ト レー ニ ング の 経 過 に伴 う安 静 時 血 清 コ ルチ ゾ ー ル濃 度 の 変化22)
そら
レー ニ ン グ に よ っ て 血 中 の 安 静 レベ ル が 慢 性 的
に 増 加 した 時 に の み 脂 肪 分 解 作 用 が 期 待 で き る21).実 際 にLT以
上 の 強 度 で 走 ト レ ー ニ ン グ を 行 う と,ヒ
ト
よ り刺 激 さ れ たIGF-Ⅰ と の 協 同 効 果 が 期 待 で き る の は そ の た め で あ る(図5.8)19).
● 問 題 1. ホ ル モ ンを 三つ あげ,そ の 作 用 と分泌 調節 につ い て 述 べ な さい. 2. 神経 内分 泌 につ い て 説 明 しな さい. 3. 下 垂 体前 葉.中 葉,後 葉 か ら分 泌 され る ホ ルモ ン を 一 つ ず つ あ げ.そ の分 泌 機 構 と標 的 器官,な
らび に生 理
作 用 につ い て述 べ な さい. 4. ス トレス と は何 か 説 明 し,そ の 調 節 機構 につ いて 書 き な さ い. 5. 運動 ス トレスの 視床 下 部 調節 機 構 につ いて述 べ な さい. 6. 運 動 ス トレスの 生 理 的 意 義 に関 す る仮 説 を一 つ 述べ な さい. 7. オ ー バ ー ト レー ニ ン グ に よ る グル コ コルチ コ イ ドの増 加が もた らす 弊 害 につ いて 述べ な さい. 8. 成長 ホ ルモ ン分 泌 機構 と作 用 につ いて 述べ な さい.
図5.8
血 中GH,
● 参 考 文 献
IGF-Ⅰ お よ び コ ル チ ゾ ー ル 濃 度 の 日内 変
1)
Alexander,
S.
L.,
Irvine,
C.
H.
on
the
G.
and
Donald,
R.
A.:The
動 に対 す る運 動 の 修 飾 効 果 の 想 定 図 effect
of
acute
exercise
secretion
of
corticotropin-
矢 印 は運 動 に よる ホル モ ン分泌 促 進 または抑 制 効 果 を示 す.?は
releasing
確 か な デ ー タが な い こ とを 示 す.
factor,
otropin
as
arginine
measured
Endocrinology,128
で も ラ ッ トで もGH分
泌 総 量(振
2)
幅 の 増 加 に よ る)の
Antoni,
F.
トレー ニ ング
に よ る 身 体 の 適 応 に どの よ う に 作 用 す る の だ ろ う か. 一 般 に ,GHに
よ る 骨,筋
ッ ク)作 用 は,肝
へ の 蛋 白 の 同 化(ア
ナボリ
臓 で 合 成 ・分 泌 さ れ るIGF-Ⅰ
を介 し
CRF. 3)
長 促 進 のIGF-Ⅰ
る 直 接 的 作 用(成 長 促 進 のGH仮
仮 説)とGHに
よ
の貢献 機
序 な ら び に 貢 献 度 は 今 で も議 論 の 段 階 で あ る が,最 ・筋 は 他 の 臓 器 よ り もGHの
や す い と す る 報 告 が 目立 つ.と 増 加 す るGHは,運 中GCレ
直接 作 用 を受 け 7)
動 時 の 交 感 神 経 活 動 が 残 存 し,血
ベ ル も高 い の で,ど
ち らか と い う と 異 化 的 な
A.
中GCレ
骨 ・筋 の 修 復 は 行 わ れ,そ 効 果(肥
大 な ど)も
horse.
of
the
discovery
adrenocorticotropin of
41-residue
pituitary
in
ACTH
secretion
during
Neuroendocrinology(15),pp.
Dishman,
R.
depression.
K.:Exercise
Exercise
and
Sports
Sciences
the
Reveiws,
:41-98,1991. J. M.
body
and
weight
in
Galbo,
H.:Exercise
Science
Review,1
Ganong,
W.
Halaas,
K.
mammals.
L.:Leptin
and
the
regulation
Nature,395:763-770,1997.
physiology :humoral
function.
Sports
:65-93,1992. F.:Review
of
Medical
Physiology,18th
ed.,
p.
383,Appleton&Lange,1997. 8)
ベ ル が 低 下 した 夜 間 に
の 際 に蛋 白 のア ナ ボ リ ック
and of
Gibbs,
D.
secretion
作 用 が 優 先 さ れ る.血
of
Frontiers
L.
Friedman, of
近
こ ろ で 日中 の 運 動 時 に
the
:351-378,1986.
G.:Regulation stress.
Dunn,
19 5)
6)
で は,骨
control science
Rev.,7
nuerobiology
説)の い ず れ か に よ る
と考 え ら れ て き た.成 長 促 進 へ のGH/IGF-Ⅰ
from
321-350,1994. 4)
て の 間 接 的 作 用(成
Endocrine
chronic
adrenocortic-
blood
:65-72,1991.
:Advances
Aguilera,
and
venous
A.:Hypothalamic
secretion
増 加 が 報 告 さ れ て い る19.21).このGHは
vasopressin,
in pituitary
M.:Dissociation during
of
different
oxytocin
types
of
and
corticotropin
Life
Science,35 :
stress.
487-491,1984. 9)
高 ま る もの と 考 え られ る.GHは
肝 臓 だ け で な く骨 ・筋 な ど の 組 織 で のIGF-Ⅰ の 合 成,
Imaki,
T.,
Shibasaki,
expression
in
molecular
pathways
T.
the
and
Demura,
central of
H.:Regulation
nervous
stress
system
response.
of by
Endocrine
gene
stress : J.,42 :
121-130,1995.
分 泌 を 促 す が そ の タ イ ミ ン グ は12時 い わ れ る.力 ば,就
間 以上 か か る と
10)
士 の よ う に午 前 に 筋 ト レー ニ ン グ を 行 え
寝 後 に は 睡 眠 に よ る 大 量 のGHと
John-Alder, Reduced
昼 間の運 動 に
rats. 11)
川 原
H. running
Am.
B.,
McAllister,
J. Physiol.,251 貴:運
R.
endurance
動
に よ
in
M.
and
Terjung,
R.
L.:
gluconeogenesis-inhibited
R137-R142,1986. る 内 分 泌
学
的 検
討.ホ
ル モ
ン と 臨 床,
40 12)
:707-713,
Loucks,
1992.
A.
B.,
Alterations
exercise-induced
Mortola,
in
the
J.
F.,
Girton,
13)
Endocrinol.
Luger,
A.,
of
in
C.:
athletic
C.,
P.
A.,
Gold,
P.
Kyle, W.,
exercise.
N.
S.
B.,
Loriaux,
the
women.
Galluucci, D.
J.
J.
W.
L. and
T.,
Chrousos,
responses
Engl.
to
the
stress
Med.,316:1309-1315,
15)
16)
B.
S.:Protective
mediators.
N.
Engl.
Mitchell,
J.
H.:Neural
exercise.
Med.
Smoak,
release
in humans.
J.
:302-306,1991.
動 に よ る メ ン タ ル ヘ ル ス 改 善 の 生 理 学 的 基 礎,
健 康 ス ポ ー ツ の 心 理 学(竹
中 晃 二 編),pp.52-64,大
修 館,
19) 征 矢 英 昭:成 軸 の 適 応.体
長 ホ ル モ ン と 運 動‐
視 床 下 部 ‐成 長 ホ ル モ ン
育 の 科 学,44:607‐613,1994.
20) 征 矢 英 昭,酒
巻 哲 夫,吉
里 秀 雄,冨
樫 健 二,中
瀬 真 治,浜
動 ス ト レ ス は 他 の ス ト レ ス と 質 的 に 異 な る か?
I.,Soya,
mRNA depression B.,
effects
of
stress
Deuster,
in rats.
the
circulation
Hamanaka,
of
K.
P.,
Rabin,
hormone
and
Nomura, arginine
nucleus
Science,63
of
stress-
:23-31,1998. D.
is not
and sole
22) Tabata,
動 と ホ ル モ ン,新
I., Atomi,
of serum
magnocellular
paraventricular Life
during
:141-154,1990.
H.,
21) 征 矢 英 昭:運
興 交 易 医 書 出 版 部,pp
.
297-321,1996.
of
Exerc.,22
expression
Corticotropin-releasing
damaging
control Sports
S., Kitayama,
vasopressin
17)
and
J. Med.,338:171-179,1998.
Sci.
J.:Increased
induced
Metab.,73
運 動 生 化 学,6:17-29,1994.
McEwen,
Nakase,
18) 征 矢 英 昭:運
中 健 二:運
1987. 14)
adrenocorticotropin
Clin. Endocrinol.
1998.
hypothalamic-pituitary
treadmill
S.S.
Metab.,68:402-411,1989.
L.
G.P.:Acute
Yen,
and
axes
Deuster,
Montgomery,
and
hypothalamic-pituitary-ovarian
hypothalamic-pituiary-adrenal Clin.
L.
Chrousos, factor
intensity
G.:
physical
Miyashita,
concentration training
M.:Bi-phasic in the
morning
Horm.
Metab.
in man.
changes duringRes.,21:
218-219,1989. 23) Watanabe, and
mediating
Y. and
cortisol
responses Appl.
T., Morimoto,
Murakami,
in rats
Physiol.,73
A., Sakata,
N.:Running to swimming :2452-2456,1992.
Y., Tan,
training and
N., Morimoto,
attenates
cage-switch
K.
the ACTH stress. J.
6 運 動 時 の糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質代 謝 とホル モ ン作 用
生 物 は 体 外 か ら摂 取 した 栄 養 素 を 素 材 に し て体 成 分 を 合 成 し,そ れ を 分 解 す る こ とで 生 命 活 動 の た め の エ ネ ル ギ ー を 得 て い る.前 代 謝(metabolism)と
は,そ
者 を 同 化(anabolism),後
者 を異 化(catabolism)と
よ ぶ.
れ ら の 過 程 で 起 こ る す べ て の 化 学 変 化 とエ ネ ル ギ ー 変 換 を 意 味 し
て い る. 筋 運 動 はATPが
加 水 分 解 さ れ る 際 に 生 じる エ ネ ル ギ ー を 必 要 と す る が , 筋 内 のATPは
に 限 りが あ る.し
た が っ て,実
際 に 運 動 が 行 わ れ る た め に は,ATPが
量的
消 費 され る一方 で産 生
も同 時 に な さ れ な け れ ば な ら な い.そ れ で は,貯 蔵 エ ネ ル ギ ー 源 で あ る糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質 は, ATPを
産 生 す る た め に どの よ う な 過 程 を た ど る の で あ ろ うか?
本 講 で は 運 動 時 の エ ネ ルギ ー 供 給 と い う視 点 か ら糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質 を と らえ,そ
れ らの 調
節 系 と して の ホ ル モ ン の 生 理 作 用 に つ い て 述 べ る こ と に す る.
ルCoAに
6.1 糖 質 代 謝 の 概 要
な りTCA回
る過 程 でNADH2な
路 に 入 っ て い く.こ
の 回路 を回
どの 補 酵 素 が 生 じ,そ
れ らが 電 子
伝 達 系 に 渡 さ れ て 酸 化 さ れ,H2Oが 糖 質 代 謝(carbohydrate に 示 す.糖
metabolism)の
概 要 を 図6.1
ATPが
産 生 され る.こ
生 じる と同 時 に
れ を 酸 化 的 リ ン酸 化 と よぶ.
質 は お も に で ん ぷ ん(多 糖 類 の 一 種)の 形
で 摂 取 され,消
化 に よ り グ ル コ ー ス,フ
ル ク トー ス な
ど の 単 糖 類 に分 解 さ れ た 後,吸
収 され る.こ
臓 で グ ル コ ー ス に 変 換 され,一
部 は多糖 類 であ る グ リ
コ ー ゲ ン と して 貯 蔵 さ れ る.ま
た 他 の 一 部 は,そ
ま血 液 に 入 る.こ
れ ら は肝
のま
の 血 中 グ ル コー ス を血 糖 と よ ぶ.糖
質 の も う一 つ の 貯 蔵 形 態 で あ る 筋 グ リ コ ‐ ゲ ン は,血 糖 が 筋 肉 に取 り込 ま れ 合 成 さ れ た もの で あ る. 糖 質 代 謝 に お い てATPを
産 生 す る 過 程 は,概
に は 二 つ に 分 け て 考 え る こ と が で きる.一 程 で あ る.グ
つ は解 糖過
ル コ ー ス あ る い は グ リ コ ーゲ ンが い くつ
もの 段 階 を経 て,ピ さす.こ
念的
ル ビ ン酸 に ま で 分 解 さ れ る 過 程 を
の 過 程 の 生 理 的 意 義 の 一 つ は,無
下 で も 糖 質 の 分 解 が 起 こ りATPを
酸 素 的条件
産 生 で き る こ とで
あ る.二
つ 目 の 過 程 はTCA回
あ る.グ
ル コー ス や グ リ コ ‐ ゲ ン が 有 酸 素 的 条 件 下 で
解 糖 され る時,ピ
路 お よび電 子伝 達系 で
ル ビ ン酸 が さ ら に 酸 化 され て ア セ チ
図6.1 糖 質 代 謝 と蛋 白 質代 謝 の概 要(大 森)
れ,血
6.2 脂 質 代 謝 の概 要
中 に 放 出 さ れ る.ま
の 一 部 は血 中 でFFAに
た カ イ ロ ミ ク ロ ン 中 のTG
分 解 さ れ る.そ
骨 格 筋 な ど に 取 り込 ま れ て 再 びTGの 脂 質 代 謝(lipid metabolism)の
概 要 を 図6.2に
示 す.
摂 取 さ れ た ト リ グ リセ リ ド(triglyceride:TG)は さ れ,大
消化
部 分 が モ ノ グ リ セ リ ドと 遊 離 脂 肪 酸(free
fatty acid:FFA)と
に 分 解 され る.そ
細 胞 内 で 再 びTGに た め,表
の 後,小
合 成 さ れ る.TGは
腸 上皮
り,エ
れ ら のFFAは 形 で貯 蔵 され た
ネ ル ギ ー 源 と して 利 用 さ れ た りす る.利
る 場 合 は,FFAは る 過 程 と,さ
用 され
β 酸 化 を受 け て ア セ チ ルCoAを
ら にTCA回
生 じ
路 を回 る 過程 にお い て電 子
伝 達 系 に よ り完 全 酸 化 されATPが
生 じ る.
水 に不溶 で あ る
6.3 蛋 白 質代 謝 の概 要
面 を蛋 白質 で 覆わ れた 親水性 の カ イロ ミク ロ
ン に 含 ま れ る形 で 血 行 内 に 入 っ て い く. リ ポ 蛋 白 質(lipoprotein)は あ る.脂
質 と し てTGや
ど を 含 み,そ る.比
蛋 白 質 と脂 質 の 複 合 体 で
コ レ ス テ ロ ー ル,リ
ン脂 質 な
れ らの 輸 送 体 と し て の 役 割 を 果 た して い
重 に よ り カ イ ロ ミ ク ロ ン,VLDL(very
density
lipoprotein),LDL(low
HDL(high 肝 臓,心
density 筋,骨
density lipoprotein),
lipoprotein)な
格 筋 な ど で はTGが
ど に分 類 さ れ る. リポ 蛋 白質 の形 を
と っ て い る の で 貯 蔵 量 に 限 界 が あ る.そ 織 はTGを
low
の 点,脂
肪組
そ の 形 の ま ま で 蓄 え る こ と が で き る た め,
蛋 白 質代 謝(protein す.食
metabolism)の
概 要 を 図6.1に 示
物 と して 摂 取 され た 蛋 白 質 は 消 化 さ れ,ア
酸 に 分 解 さ れ た 後,小
腸 よ り吸 収 さ れ る.ア
ミノ
ミ ノ酸 の
大 部 分 は 各 組 織 に お い て 再 び 蛋 白 質 に 合 成 さ れ る が, 一 部 は 遊 離 した 状 態 で 存 在 す る ル と よ ぶ.ア
.こ れ を ア ミ ノ酸 プ ー
ミ ノ 酸 プ ー ル は 約80%が
は 血 液 お よ び 肝 臓 に 存 在 す る.筋 40%を
占 め る た め,蛋
骨 格 筋,残
り
肉 は 体 重 の35∼
白 質 の 貯 蔵 庫 と して も 大 き く貢
献 して い る.
量 的 に み て も主 要 な 貯 蔵 庫 とな っ て い る.
20種 類 の ア ミノ 酸 の 中 で,ロ
脂 質 代 謝 に お い て,直
バ リ ン は炭 素 鎖 が 分 岐 して い る た め 分 岐 鎖 ア ミ ノ 酸 と
接 的 なエ ネル ギー源 と して骨
格 筋 な ど で 酸 化 さ れ る の は お も にFFAで 形 態 と して はTGの 織,骨
格 筋,血
あ る.貯
蔵の
よ ば れ て お り,筋 肉 に 取 り込 ま れ て エ ネ ル ギ ー 源 と し
形 を と り,そ の プ ー ル は,脂
肪組
て 利 用 され る 点 で 重 要 で あ る.ま
液 な ど に あ る.図6.2に
脂 肪 組 織 のTGは
イ シ ン,イ ソ ロ イ シ ン,
示 す よ う に,
代 謝 的 需 要 に 応 じ てFFAに
分解 さ
た,ア
ラ ニ ンは 後 述
す る よ う に 糖 新 生(gluconeogenesis)の
基 質 と し て重
要 な役 割 を 担 っ て い る.
6.4
糖 質 ・脂 質
・蛋 白 質 代 謝 の 相 互 補 完 関 係
糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質 代 謝 は,そ 作 用 して い る わ け で は な い.こ (homeostasis)の
れ ぞ れ 全 く独 立 し て
こ で は,生
体 の恒 常性
維 持 とい う視 点 で 三 者 の 相 互 補 完 関
係 を述 べ る こ と に す る.生
命 の 中 枢 で あ る 脳 は 通 常,
血 糖 の み を エ ネ ル ギ ー 源 と し て い る.し 糖 値 を 正 常 範 囲 に維 持 す る こ と は,生
た が っ て,血
体 に と っ て きわ
め て 重 要 な 仕 事 で あ る. 血 糖 値 は 早 朝 空 腹 時 で80∼100mg/dl程 が,糖
度である
質 の 豊 富 な 食 事 の 後 な ど で は130∼140mg/dl
程 度 に 上 昇 す る.増 加 し た 血 糖 は 骨 格 筋 な どの 組 織 に 取 り込 ま れ,エ
ネ ル ギ ー 源 と し て 利 用 さ れ た り,グ
コ ‐ ゲ ン と して 蓄 え られ た りす る.そ も と の 値 に 戻 る.も
し こ の 時,肝
の 結 果,血
リ
糖は
臓 や 骨 格 筋 な どで の
利 用 や 貯 蔵 の 限 界 を 超 え て 糖 質 が 過 剰 に 摂 取 され た 場 図6.2 脂 質 代 謝 の 概 要(大 森)
合 は,余
分 の糖 質 は 中 性 脂 肪(お も にTG)に
変 換 され,
脂 肪 組 織 に 貯 蔵 さ れ る こ とに な る.
し な が ら 脂 質 を 筋 内TGと
逆 に,絶
る と,中
食 時 な ど で は 血 糖 値 は60mg/dl以
で 低 下 す る こ とが あ る.こ
下にま
の よ う な 状 態 が 進 む と,肝
グ リ コ ー ゲ ン の 分 解 に よ る 血 糖 の 補 充 と,さ
らにそれ
血 中FFAと
程 度 の 強 度 で 筋 内TGへ
な っ た.近
年,持
に分 けて観 察す
の 依存 度 が最 も高 く
久 性 トレ ー ニ ン グ に よ り もた ら され
た 脂 質 代 謝 亢 進 の 中 身 が,脂
肪 細 胞TG由
を補 う た め に糖 新 生 が 起 こ る.糖 新 生 系 の 一 つ と して,
は な く筋 内TG由
ある こ とが明 らか になっ
グ ル コ ー ス ‐ア ラ ニ ン 回 路(図6.1)が
て き て い る こ と11)と も 考 え 合 わ せ る と,従 来 以 上 に 筋
あ る.骨
格 筋蛋
来 のFFAで
来 のFFAで
白 質 由 来 の ア ミ ノ酸(分 岐 鎖 ア ミ ノ酸 な ど)が 分 解 さ
内TGの
れ,そ
酸 素 の需 給 バ ラ ンスが 定常 状態 に あ る中強 度以 下の
の 際 生 じ る ア ミ ノ 基(NH4-)と
解糖 系 の 代 謝産
重 要 性 を 再 認 識 す る必 要 が あ ろ う.
物 で あ る ピル ビ ン酸 と が結 合 して ア ラニ ンを形 成 す
有 酸 素 的 運 動 中 で あ っ て も,時
る.ア
れ る エ ネ ル ギ ー 源 は 異 な っ て くる.図6.4はFelig4)が
ラ ニ ン は 血 液 を 介 して 肝 臓 に 取 り込 ま れ,そ
こ
で 脱 ア ミ ノ(ア ミ ノ基 が 離 れ る こ と)さ れ て ピ ル ビ ン酸
示 し た 模 式 図 で あ る.最
に な りグ ル コ ー ス に ま で 合 成 さ れ,血
た,骨
初 の10分
間 ぐらい を ピー ク
液 を 介 して 再 び
に筋 グ リ コ ー ゲ ン 分 解 の 寄 与 率 が 非 常 に 大 き くな っ て
れ を グ ル コ ー ス ‐ア ラ
い く.こ れ は 定 常 状 態 の 成 立 す る 運 動 で も,そ の 初 期
格 筋 な ど で 解 糖 に よ り生 じ
には骨格 筋 な どで の酸 素需 要 に呼 吸循 環系 の適 応が 間
骨 格 筋 に取 り込 ま れ て い く.こ ニ ン同 路 と よぶ.ま
間的 局面 に よって 使わ
た 乳 酸 が 血 液 を経 て 肝 臓 に取 り込 ま れ,解
糖 過 程 を逆
に合 わ な い た め で あ る.そ
の た め,ま
ず筋 グリ コーゲ
行 して グ ル コ ー ス に ま で 再 合 成 され る の も糖 新 生 経 路
ン の 無 酸 素 的 分 解 が 先 行 す る と解 釈 で き よ う.こ の 局
の 一つ(コ
面 を 過 ぎ る と,急 速 に筋 グ リ コ ー ゲ ン の 寄 与 率 が 低 下
リ 回 路)で あ る.
さ ら に,脂
質代 謝 にお いて もこの ような補 完 シ ステ
ム が 存 在 す る.絶 血 中FFAが
食 時 に は 脂 肪 分 解 が よ り促 進 され,
上 昇 す る.こ
過 程 に お い て,あ す)と し て,肝
のFFAを
れ に 代 わ り,血 中FFAと
血糖 の骨 格筋へ
動 が1∼2時
間 を超 え
前 駆 体(一 連 の 代 謝
る物 質 よ り前 の 段 階 に あ る 物 質 を さ
臓 で ケ ト ン体(脂 質 の 一 種)が 産 生 さ れ
る(図6.2).絶
食 が 長 期(1日
以 上)に わ た り,血 糖 の
供 給 が 不 足 して く る状 況 で は,ケ ま れ,代
して く る.そ
の 取 り込 み が 上 昇 し て くる.運
ト ン体 が 脳 に 取 り込
替 的 に非 常 時 の エ ネ ル ギ ー 源 と し て 利 用 さ れ
る よ う に な る.
6.5
a.運
運 動 時 の 代 謝 とホル モ ン作 用
動時 の代 謝
運 動 を生 理 学 的 に と ら え る 時,強 度,形
態(走 る,泳
度,持
続 時 間,頻
ぐ,自 転 車 を こ ぐ な ど)な ど を考
慮 す る 必 要 が あ る.こ
こで は,運
図6.3 運 動 強 度 とエ ネル ギ ー 供 給 源13)
動 の 強 度 ・時 間 と代
謝 との 関 係 に つ い て 述 べ る. 強 度 に は 絶 対 的 運 動 強 度 と相 対 的 運 動 強 度 とが あ る.前
者 はた とえば物理 的 な 身体移 動 速度 や挙 上 重量
な ど を さす.後
者 はそ れ らを各 自の体 力や 体格 で 補正
し た も の で あ り,い わ ば 各 自 に と っ て の 生 体 負 担 度 を 表 して い る.全
身 運 動 の 相 対 的 強 度 の 一 つ と して 用 い
られ て い る%Vo2maxと エ ネ ル ギ ー 供 給 源 との 関 係 を 図6. 3に 示 し た,脂
質 と糖 質 に 大 別 して み る と,運
動 強度
が 低 い 場 合 は 脂 質 へ の 依 存 度 が 高 く,運 動 強 度 が 高 い 場 合 に は糖 質 へ よ り依 存 し て い る こ とが わ か る.し
か
図6.4 運 動 時 間 の 経 過 に伴 う エ ネ ル ギ ー 源 の 推 移4)
る と,血 糖 へ の 依 存 度 が 低 下 す る一 方 でFFAへ 度 が 上 昇 し て くる.こ
れ は,血
の依 存
糖 の供給 源 であ る肝 グ
リ コ ー ゲ ン が 枯 渇 して くる た め で あ る1).こ の よ う な 運 動 時 間 の 延 長 に 伴 い,肝
臓 で の 糖 新 生 も亢 進 して い
く3).貯 蔵 量 的 に 限 界 が あ る糖 質 に比 べ て 脂 質 の 貯 蔵 量 は は る か に 多 い.運
動 の 後 半 に な っ てFFAの
が 増 大 して くる 理 由 は こ こ に あ る.ま
貢 献率
た,FFAを
前駆
体 とす る ケ ト ン体 も長 時 間 運 動 で は 血 中 濃 度 を 上 昇 さ せ12),エ ネ ル ギ ー 源 と して 使 わ れ る よ う に な る.絶 時 な ど で は,糖
食
質 ・脂 質 ・蛋 白 質 代 謝 が 相 互 補 完 的 に
作 用 す る こ と は す で に 述 べ た が,運
動 が長 時 間 にわた
る よ う な 時 に も同 様 な 機 構 が 働 く もの と考 え ら れ る. 運 動 の初 期以 外 は筋 グ リコー ゲ ンの量 的関与 は大 き く な い が,運
動 持 続 中 は 少 量 の 筋 グ リ コ ー ゲ ンが 利 用 さ
れ 続 け る.こ
の 筋 グ リ コ ー ゲ ン の 枯 渇 が 疲 労 困憊 を も
た らす と さ れ て い る4).
b.ホ
ル モ ン作 用
生 体 は,体
内や 体外 の環 境 変化 や刺 激 に対 して諸器
官 組 織 が 互 い に 情 報 を 交 換 し調 整 し合 う こ と で,常
に
内 部 の 機 能 を 正 常 な状 態 に 維 持 す る機 構 を 備 え て い る.こ
の 調 節 機構 は 自律 神 経 系(autonomic
system)に
図6.5
nervous
肝 グ リ コー ゲ ン分 解 にお け る ア ド レナ リン の 作 用 メ カ ニ ズ ム(大 森)
よ る 神 経 性 協 関 と ホ ル モ ンに よ る 液 性 協 関
の 二 つ に 大 別 さ れ る が,両 い る わ け で は な く,そ
者 は 全 く独 立 して 機 能 して
の 間 に は 緊 密 な連 絡 関 係 が 存 在
生 じ,最 終 的 に グ ル コ ー ス が 血 中 に 放 出 さ れ る こ とに な る.
す る. ホ ル モ ン の 定 義 や 分 泌 メ カ ニ ズ ム につ い て は 第5講
c.運 動 時 の ホ ル モ ン 分 泌 と生 理 作 用
に 委 ね る こ と に して,こ
こ こ で は 運 動 時 の エ ネ ル ギ ー 供 給 を主 眼 に お い て,
こで は生理 的需 要 に呼応 して
分 泌 さ れ た ホ ル モ ンが,特
有 の 標 的 細 胞 に到 達 して か
そ れ に 関 与 す る ホ ル モ ン を取 り上 げ,そ
ら生 理 作 用 を発 現 す る ま で の メ カ ニ ズ ム に つ い て 概 説
作 用 に つ い て 述 べ る.
す る(図6.5).
1)カ
た と え ば,運
動 時 の エ ネ ル ギ ー 基 質 と して 血 糖 の 上
昇 が 必 要 と され る時,副 泌 さ れ る.ア
腎 髄 質 か ら ア ド レナ リ ン が 分
ドレ ナ リ ン は血 液 を 介 し て 肝 臓 に 到 達 し,
の分 泌 と生理
テ コ ールア ミン
カ テ コ ー ル 核 を も つ 生 体 ア ミ ン,す リ ン(エ ピ ネ フ リ ン),ノ フ リ ン),ド
なわ ちア ドレナ
ル ア ド レ ナ リ ン(ノ ル エ ピ ネ
ー パ ミンを 総称 して カ テ コー ルア ミ ンと
細 胞 膜上 の ア ドレナ リ ンに特 異 的 な受 容 体 に結 合 す
よ ぶ.ア
る.ア
ド レ ナ リ ン と 受 容 体 の 複 合 体 はG蛋
副 腎 髄 質 か ら循 環 血 中 に 分 泌 さ れ る ホ ル モ ンで あ る.
し,さ
ら にG蛋
白 質 と結 合
白 質 の 作 用 を介 し て ア デ ニ ル 酸 シ ク ラ
ー ゼ が 活 性 化 さ れ る .そ の こ と に よ ってATPか
らサ イ
ク リ ッ クAMP(cAMP)が
合 成 さ れ,プ
ー ゼAが
き続 い て ホ ス ホ リ ラー ゼ キ
活 性 化 さ れ る .引
ナ ー ゼa,さ
ロテ イ ンキナ
ら に ホ ス ホ リ ラ ー ゼaが 生 じ る.ホ
スホ
ドレ ナ リ ン は 交 感 神 経 系 の 支 配 を 受 け て い る
ノ ル ア ド レナ リ ン は 心 臓,肝
臓,膵
臓 な ど 多 くの 効 果
器 を 支 配 す る 交 感 神 経 の 終 末 か ら分 泌 され る 神 経 伝 達 物 質 で あ り,一 部,循
環 血 中 に 放 出 さ れ る ホ ル モ ンで
もあ る. 運 動 の 開 始 に よ り視 床 下 部 が 刺 激 さ れ 交 感 神 経 系 の
リ ラー ゼaの 作 用 に よ っ て グ リ コ ー ゲ ンが グ ル コ ー ス
活 動 が 亢 進 す る.そ
1-リ ン酸 に 分 解 さ れ,さ
さ れ た ア ド レ ナ リ ン は肝 グ リ コ ー ゲ ン分 解 を 促 し,血
ら に グ ル コ ー ス6-リ
ン酸 を
の 作 用 を 受 け て 副 腎 髄 質 か ら分 泌
図6.6 走 行 運 動 の 強 度(%Vo2max)と
糖 の 上 昇 を は か る.骨 解 糖 が 促 進 さ れ,同
血 中 カ テ コ ー ル ア ミ ン濃 度5
格 筋 で は 筋 グ リ コ ーゲ ン分 解 と
時 に 肝 臓 に お け る糖 新 生 系 が 亢 進
す る.脂
肪 組 織 に お い て も ま た 脂 肪 分 解 を 亢 進 させ る
結 果,血
中FFAが
上 昇 す る.い ず れ に せ よ,運 動 を 遂
行 す る た め に 必 然 的 に 高 ま る エ ネ ル ギ ー 需 要 に 対 して 代 謝 を亢 進 させ る こ とが ア ドレナ リ ンの 生 理 的 意 義 の 一つ で あ る . 血 中 カ テ コ ー ル ア ミ ン 濃 度 は,運 も に 上 昇 す る(図6.6).高 ル ア ミ ン の 上 昇 は,筋
動 強 度の増 加 とと
強 度 運 動 時 の 血 中 カテ コー グ リコー ゲ ン分解 な らびに解 糖
の 促 進 に 関 与 す る も の と 思 わ れ る.一 (た と え ば60%Vo2max)で
方,一
定の 強度
運 動 を続 け た 場 合,運
動 時間
の 経 過 と と も に 血 中 エ ネ ル ギ ー 源 の 中 に 占 め るFFAの 寄 与 率 は 増 大 す る(図6.4)が,こ
う した局面 にお いて
は カ テ コ ー ル ア ミ ン が 脂 肪 分 解 促 進 に 大 き く関 与 して い る の で あ ろ う. と こ ろ で トレ ー ニ ン グ を積 む と,絶 対 的 運 動 強 度 が 同 一 の 場 合,血
中 カ テ コ ー ル ア ミ ンの 上 昇 は 小 さ く な 図6.7
る.こ
れ は 一 つ に は,ト
強 度(%Vo2max)が
レ ー ニ ン グ に よ り相 対 的 運 動
低 下 し た た め と 考 え られ る.さ
長 時 間 運 動 中 の 血 中 グ ル コー ス,グ ゴ ン,イ ン ス リ ン の変 動5)
ルカ
ら
に%Vo2maxを 同 一 に した 場 合 で も,鍛 練 者 の 方 が 血 中 カ
ー ル ア ミ ン ,ソ マ トス タ チ ン(中 枢 神 経 系,消
テ コ ー ル ア ミ ン 濃 度 上 昇 は 小 さ い と い わ れ て い る16).
膵 臓 な ど か ら分 泌 され る ホ ル モ ン)な どが あ る.
トレー ニ ン グ に よ り運 動 時 の 血 中 カ テ コ ー ル ア ミ ン の
図6.4に
上 昇 度 は 抑 制 さ れ る に もか か わ らず,代
謝 は よ り亢 進
す る16). 2)イ
み ら れ る よ う に,運 動 時 に は 骨 格 筋 へ の血
糖 の 取 り込 み が 増 大 し,エ ネ ル ギ ー 源 と し て の 利 用 が 高 ま る.こ
の 時,血
糖 取 り込 み 作 用 を もつ イ ンス リ ン
の 血 中濃 度 が 高 くな っ て も よ さ そ う な も の で あ る.し
ンス リン
イ ンス リ ン は 膵 臓 か ら分 泌 さ れ る ポ リペ プ チ ドホ ル モ ンで あ る.分
化 器 系,
泌 を 促 進 す る 刺 激 と し て は,食 事 な ど
に よ る 血 糖 の 上 昇 が 代 表 的 な もの で あ る.分 イ ン ス リ ン は 骨 格 筋,心 取 り込 み を 促 進 し,そ
筋,脂
泌 され た
肪 組 織 な どへ の 血 糖 の
の 結 果,血
糖 が 低 下 す る.血 糖
の低 下 が さ らに 進 む と イ ン ス リ ン分 泌 は 抑 制 さ れ る.
か し な が ら,運 動 時 の 血 中 イ ンス リ ン レベ ル は 低 下 す る(図6.7).低
下 す る の は,運 動 に よ っ て 増 加 した カ
テ コ ー ル ア ミ ンが イ ンス リ ン 分 泌 を 抑 制 して い る か ら で あ る.運
動 時 に 血 中 イ ンス リ ン レベ ル が 低 下 す る に
も か か わ らず 血 糖 の 取 り 込 み が 増 加 す る 理 由 と し て, 骨 格 筋 に お け る イ ン ス リ ン感 受 性 が 増 加 す る(イ
そ の ほ か に イ ン ス リ ン分 泌 を 促 進 す る 因 子 と し て は,
リ ン の 効 きが 良 くな る)こ
FFA,ケ
が イ ンス リ ン と は 無 関 係 に 血 糖 の 取 り込 み を 亢 進 させ
一方
,イ
ト ン体,ピ
ル ビ ン酸,グ
ル カ ゴ ン な ど が あ る.
ン ス リ ン分 泌 を 抑 制 す る 因 子 と し て は カ テ コ
と や,骨
ンス
る こ と な どが 明 らか に な っ て い る7).
格 筋 収 縮 そ の もの
図6.8 糖 輸 送 体(GLUT4)に
と こ ろ で,グ
よる 糖 取 り込 み メ カ ニ ズ ム(樋 口 ら,19967)を
ル コー スは親水 性 であ る ため脂 質 二重
膜 で あ る 細 胞 膜 を そ の ま ま で は 通 過 で き な い.グ
ルコ
す で に 述 べ た が,運
改 変)
動 時 の イ ンス リ ン低 下(す な わ ち
脂 肪 分 解 抑 制 が 緩 和 さ れ る)は そ う い っ た カ テ コ ー ル
ー ス は グ ル コー ス トラ ン ス ポ ー タ ー と よ ば れ る 輸 送 体
ア ミ ンの 作 用 と 協 同 す る も の と思 わ れ る.ト
を 介 し て,促
グ に よ っ て 運 動 時 の イ ン ス リ ン分 泌 低 下 の 度 合 い は 減
る.複
進 拡 散 的 に 細 胞 内 に 取 り込 ま れ る の で あ
数 の サ ブ タ イ プ の う ち,骨
格 筋や 脂肪 組 織 に存
在 す る の が グ ル コ ー ス トラ ン ス ポ ー タ ー4(GLUT で あ る.図6.8に
4)
血 糖 取 り込 み の メ カ ニ ズ ム を示 した.
ま ず イ ン ス リ ンが 細 胞 膜 上 の 受 容 体 に 結 合 し,細 胞 内 に あ るGLUT4の
プ ー ル にそ の シ グ ナ ル が 伝 達 さ れ る.
次 に そ れ を 感 知 し たGLUT4が
細 胞 膜 へ と 移 動(ト
ン ス ロ ケ ー シ ョ ン)し て くる.GLUT4は し融 合 さ れ,こ
ラ
細 胞 膜 と結 合
の状 態 に な っ て は じ め て グ ル コ ー ス が
輸 送 さ れ る.GLUT4は
その 後再 び細 胞 内 プ ー ルへ と
弱 し,逆 3)グ
レーニ ン
に 分 泌 上 昇 を 示 す こ と す ら あ る16). ル カゴ ン
グ ル カ ゴ ン は 膵 臓 か ら分 泌 さ れ る ポ リペ プ チ ドホ ル モ ンで あ る.主
要 な 分 泌 刺 激 は 低 血 糖,カ
ミ ン な どで あ る.グ
ル カ ゴ ン は,肝
テ コー ル ア
臓 で の グ リコー ゲ
ン の 分 解 や 糖 新 生 を 亢 進 さ せ る こ と に よ り血 糖 を 上 昇 させ る作 用 を も つ.ま
た,脂
肪組 織 で の脂肪 分解 や肝
臓 で の ケ ト ン体 産 生 も グ ル カ ゴ ンの 生 理 作 用 で あ る. 逆 に 血 中 の グ ル コ ー ス,FFA,ケ
ト ン体 な どの 濃 度 が
移 動 し,一 連 の 流 れ が 完 結 す る7).持 久 的 な ト レ ー ニ
高 い と グ ル カ ゴ ン の 分 泌 は 低 下 す る.
ン グ を す る と,そ
運 動 時 間 が 長 時 間 に 及 ぶ と血 糖 値 が 徐 々 に 低 下 して
み でGLUT4含
の トレ ー ニ ン グ に 関与 す る骨 格 筋 の
量 が 増 加 す る.こ
グ に よ るGLUT4含
の こ と は トレ ー ニ ン
量 の増 加 が筋 活 動 の刺 激 に よる も
の で あ る こ と を 示 し て い る8).ま
た,こ
の トレ ー ニ ン
く る.一
方,血
(図6.7).こ
中 グル カ ゴ ン レベ ル は 上 昇 をみ せ る
の よ う な 時,体
内 に ブ ドウ 糖 を 注 入 す る
と血 糖 値 は 上 昇 す る 反 面,血
中 グ ル カ ゴ ン レベ ル は低
グ 効 果 に は イ ン ス リ ン の 働 き は必 須 で は な い こ と9)も
下 す る16).し た が っ て,長
わ か っ て い る.
ゴ ン の 生 理 的 意 義 の 一 つ は,筋
時間 運動 時 に お け るグ ル カ 収 縮 のエ ネルギ ー源 と
イ ン ス リ ン は 血 糖 取 り込 み 作 用 の ほ か に 脂 肪 組 織 に
して 利 用 さ れ た た め に 低 下 した 血 糖 レベ ル を,肝
お け る 脂 肪 分 解 抑 制 作 用 を も っ て い る.運
動 時 にカ テ
の グ リ コ ー ゲ ン分 解 な ら び に糖 新 生 を 促 す こ と で 補 お
臓で
コ ー ル ア ミ ンの 作 用 に よ り脂 肪 分 解 が 亢 進 す る こ と は
う とす る と こ ろ に あ ろ う.持 続 的 ト レー ニ ン グ を 積 む
と 同 じ 強 度 の 運 動 を 負 荷 さ れ た 時 の グ ル カ ゴ ン分 泌 が
FFA,コ
減 弱 す る と い う点 で,カ
下 す る.エ
テ コー ル ア ミ ンや イ ンス リ ン
ル チ ゾ ー ル,GHの
増 加 な ど に よ り分 泌 が 低
ネ ル ギ ー 供 給 面 か らみ た 生 理 作 用 は,脂
肪
の 場 合 と 同 様 で あ る.
分 解 亢 進,骨
4)グ
下 や グ ル コ ー ス 酸 化 の 抑 制 に よ る 血 糖 上 昇 作 用,肝 臓
ル ココル チ コイ ド
グ ル コ コ ル チ コ イ ドは 副 腎 皮 質 か ら分 泌 さ れ る ス テ ロ イ ドホ ル モ ンの 中 で,糖 ド(コ ル チ ゾ ー ル,コ ど)な
質代 謝 に関係 す る ステ ロ イ
ル チ コ ス テ ロ ン,コ
ど の 総 称 で あ る.体
(寒 冷,疲
労,精
ルチ ゾ ンな
内 外 か らの ス トレ ッサ ー
神 的 負 荷,運
動 な ど さ ま ざ ま な も の)
格 筋 な ど にお け る イ ン ス リ ン感 受性 の低
で の ケ トン体 産 生 促 進 な ど で あ る. 血 中GHは50%Vo2max以
上 の 強 度 で 上 昇 す る とい う報
告 が あ り15),そ の 上 昇 度 は 強 度 依 存 性 で あ る16).マ ラ ソ ン の よ う な 長 時 間 運 動 で は,一
度 上 昇 し た 血 中GH
が し だ い に 低 下 し,安 静 時 レベ ル 程 度 に 回 復 す る と も
が 視 床 下 部 を刺 激 し,視 床 下 部 か ら副 腎 皮 質 刺 激 ホ ル
い わ れ て い る16).他 の ホ ル モ ン と 同 様 に,ト
モ ン 放 出 ホ ル モ ン(corticotropin-releasing
グ 後 で は 運 動 時 のGH応
CRH)が
下 垂 体 門 脈 中 に 放 出 され,次
hormon:
い で,下
垂体 前
レー ニ ン
答 は 減 弱 す る6).GHの
用 と して 脂 肪 分 解 の 促 進 を 先 に あ げ た が,そ
生理作 の作用 発
葉 か ら血 中 に 副 腎 皮 質 刺 激 ホ ル モ ン(adrenocortico-
現 が ピー クに達 す る まで には長 い 時 間が かか る といわ
tropic hormone:ACTH)が
れ て い る.ヒ
放 出 さ れ る.こ
のACTH
トにGHを
投 与 し た 実 験 で は 約4時
の 刺 激 に よ り副 腎 皮 質 か ら グ ル コ コ ル チ コ イ ドが 分 泌
い う 報 告 が あ る10)こ と を 考 え る と,運
さ れ る.グ
ル コ コ ル チ コ イ ドは そ の 分 泌 量 を 調 節 す る
員 にGHが
た め に,視
床 下 部 や 下 垂 体 に 働 きか け てACTH分
も 後 半 か らで あ ろ う10).ま た 一 方 で,そ
泌 を
寄 与 す る の は か な り の 長 時 間 運 動 の,し
低 下 させ る と い う負 の フ ィ ー ドバ ッ ク機 構 を も っ て い
間 の 長 さ ゆ え,運
る.エ
で は な い3.14)と も考 え られ て い る.
ネ ル ギ ー 供 給 に 関 係 す る 生 理 作 用 と し て,肝
臓
間と
動 時 のFFA動
動 時 のGH上
か
の作 用発 現 時
昇 は脂肪 分解 には重要
に お け る 糖 新 生 の 亢 進 と骨 格 筋 な ど で の 血 糖 取 り込 み 抑 制 と に よ る 血 糖 上 昇 作 用,糖 質 の 分 解 促 進,肝 る.ま
た,カ
新 生 に関係 した筋蛋 白
グ リ コ ー ゲ ン の 増 加 な ど が あ げ られ
テ コ ー ル ア ミ ン や グ ル カ ゴ ン と 同 様 に,
を 決 定 す る の は,分
ルチ ゾー ルの血 中濃 度
泌 さ れ た 量 と組 織 へ の 取 り込 み な
ど に よ り消 失 した 量 と の バ ラ ン ス で あ る.運
動 時 の血
中 コ ル チ ゾ ー ル の 変 動 に 関 し て,50%Vo2max以
下の運
動 で は 時 間 と と も に 低 下 す る 一 方,60∼90%Vo2maxの 運 動 で は 上 昇 す る と い う報 告 が あ る16).50%Vo2maxの 動 で あ っ て も,長 mg/dl程
題
の調 節 シス テム につ い て 述 べ な さい. 2. 運 動 の エ ネ ルギ ー 源 とな る もの を あ げ,運 動 の 種 類や
脂 肪 分 解 促 進 作 用 もあ わ せ も っ て い る. 他 の ホ ル モ ンや 基 質 同 様,コ
● 問
1. 生 体 に と って 血 糖 の 恒常 性 を維 持 す る こ との 意 義 とそ
局面 との 関係 で利 用の され 方 の 違 い を 述 べ な さ い. 3. 運 動 時 の カテ コー ル ア ミ ンの動 態 とその 生 理 的 意 義 を ま とめ な さ い. 4. 血 糖 の 筋 細 胞へ の取 り込 み メ カニ ズ ム につ い て 説 明 し な さい. 5. 運 動 時 の ホ ルモ ン応 答 が トレー ニ ング に よ って どの よ
運
う に変 化す るか につ い て 述 べ な さい.
時 間 継 続 す る こ と で 血 糖 値 が60
度 を 下 回 る と,急 激 に 血 中 コ ル チ ゾ ー ル 濃 度
が 上 昇 し た と い う 報 告3)も あ る.こ
の 報 告 か ら,長
時
● 参 考 文 献 1) Ahlborg,
間 運 動 に 伴 う低 血 糖 に 対 す る 補 償 と い う 役 割 が 推 測 さ
Wahren,
れ る.し
man.
か し な が ら,グ
ル コ コ ル チ コ イ ドの も つ 運 動
G.,
Felig,
Splanchnic
5)成
長 ホル モ ン
2) 跡 見 順 子:運 Sci.,3
成 長 ホ ル モ ン(growth 葉 か ら分 泌 さ れ る.視
hormone:GH)は
下 垂体 前
床 下 部 由 来 の 成 長 ホ ル モ ン放 出
turnover
and
acids, and amino
時 の 生 理 的 意 義 に 関 し て は い まだ 不 明 な 点 が 多 い.
P., Hagenfeldt,
J.:Substrate
leg
L., Hendler,
during
metabolism
prolonged
R.
of glucose,
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exercise free
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fatty
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動 と 糖 代 謝 に 関 す る ホ ル モ ン.Jpn.J.
Sports
:426-435,1984.
3) 跡 見 順 子,田
畑
泉:血
糖
・運 動
み た 運 動 時 の ホ ル モ ン 分 泌 動 態.ホ
トレ ー ニ ン グ と の 関 係 で ル モ ン と 臨 床,32:
521-526,1984.
ホ ル モ ン(growth GRH)の
刺 激 に よ り分 泌 さ れ,ソ
抑 制 さ れ る.絶 運 動,睡
hormone-releasing
食,低
血 糖,蛋
hormone:
マ トス タ チ ンに よ り 白 質 摂 食,ス
眠 な ど で 分 泌 が 増 加 し,血
ト レ ス,
中 の グ ル コ ー ス,
4) Felig,
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utilization, Frontiers and
White,
of exercise
insulin of Exercise T.
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Holloszy,
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Wahren,
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and
満,川
New
中 健 太 郎,田
畑
Adaptation
口
満,大
田
茂:筋
活 動 に よ
本 運 動 生 理 学 雑 誌,3:67-
森
肇,勝
田
茂:筋
お よ び 種 類 に よ る 糖 輸 送 体 濃 度 の 変 化.体 269-276,
0.and GLUT4 Metab.
protein
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力 科 学,43:
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Endocrinol.
by
training
oxidation
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Japan,37
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見 順 子,富
and and
ル モ ン と 運 動.運 野 士 良,原
動 生 理 生 化 学(山
出 邦 彦,岩
田 耕 造),pp.204-238,培
垣 丞 垣,渡 風 館,1990.
田
茂,跡
辺 雅 之,堤
7 筋の肥大 と損傷
多 くの 競 技 ス ポ ー ツ に お い て,ウ
ェ イ ト ト レー ニ ン グ は競 技 成 績 を 向 上 させ る う え で,不
可
欠 な も の に な っ て き て い る.そ
の よ う な トレ ー ニ ン グ を 継 続 し て 行 っ て きた 者 の 骨 格 筋 が き わ
め て よ く発 達 して い る の は,強
度 の 高 い 収 縮 を 繰 り返 し行 う こ と に よ り,筋 が 肥 大 す る か ら で
あ る.し
か し なが ら,ト
レー ニ ン グ さ え 行 え ば,誰
で もが よ く発 達 した 筋 を持 ち う る か とい う
とそ うで は な く,肥 大 の 程 度 は 人 に よ っ て 異 な る 場 合 が 多 い.そ らの 刺 激(ト
レ ー ニ ン グ あ る い は 過 負 荷 な ど)の
み な らず,遺
れ は 筋 肥 大 に 対 して,外
伝 的 因 子,神
経 支 配,ホ
部か
ルモ ン
な ど 生 体 内 部 の 要 因 も 調 節 因 子 と して 作 用 し て い る た め で あ る. 競 技 ス ポ ー ツの よ う な ど ち ら か と い う と特 殊 な 例 に 対 し て,日 常 生 活 と骨 格 筋 の 関 係 か ら は, 慣 れ な い 運 動 を行 っ た り した 時 に 起 こ る 筋 痛 が 連 想 され る.筋
痛 が 生 ず る 事 実 は,収
こ と に よ り,既 存 の 組 織 に 何 ら か の 損 傷 が 起 こ る こ と を 意 味 す る.筋 大 の 場 合 と 同 様,複
数 の 要 因 が 関 与 して い る.本
講 で は,筋
縮 を行 う
が 損 傷 す る 過 程 も筋 の 肥
の 肥 大 お よ び損 傷 の メ カ ニ ズ ム に
つ い て 概 観 して み た い.
因 子 の 存 在 に 左 右 さ れ,こ 7.1
筋肥 大 の メ カ ニズ ム
筋 の 形 成 は 起 こ る こ と は な い.筋 た 体 節 は,脊
柱,肋
a.成
長 に 伴 う筋 の 分 化 お よ び 肥 大
に な る(図7.1).筋
1)筋
細胞 の分 化
が 起 こ る.こ
哺 乳 類 で は,筋
の 分 化 は胎 生 期 に起 こ り,体 節 → 筋
芽 細 胞 → 筋 管 → 筋 線 維 の 順 で 進 行 す る.各 特 徴 を 表7.1に
示 した.こ
々の 細 胞 の
の 筋形 成の 過程 にお いて 重
要 な 役 割 を 担 う蛋 白 が 存 在 し,こ れ ら は2種 類 に 大 別 す る こ とが で き る.一
つ は,筋
genic regulatory factor)と け る も の で あ り,ミ Myf-5,
Myf-6の
長 因 子(growth
分 化 制 御 因 子(myo
よば れ,筋
オD(Myo
D),ミ
四 つ が 含 ま れ る.も
factor)と よ ば れ,細
の分 化 を決定づ オ ジ ェ ニ ン, う 一 つ は,成
胞 の増 殖や発 育 を
促 進 す る も の で あ り,ト
ラ ンス フ ォー ミ ン グ成 長 因 子
β (transforming
factor-β:TGF-β),線
growth
芽 細 胞 増 殖 因 子(fibroblast ク チ ビ ン,イ growth
growth
維
factor:FGF),ア
ン ス リ ン様 成 長 因 子-1(insulin-like
factor-1:IGF-1)な
どの 種 類 が 存 在 す る9).
体 節 が 筋 芽 細 胞 へ の 途 を歩 む か 否 か は,筋
の蛋 白が不在 の環 境下 で は
分化 制御
FGFお
芽 細胞 にな らなか っ
骨 あ る い は 真 皮 へ と分 化 す る こ と 芽細 胞 の段 階 におい て細 胞の 増殖
こ で は 成 長 因 子 が 作 用 し,ア
よ びTGF-β
に よ っ て 増 殖 が 促 進 さ れ,細
数 は 飛 躍 的 に 増 加 す る.成 表7.1
ク チ ビ ン,
熟 した 個 体 で は,解
発 生 段 階 に お け る細 胞 の特 徴
胞の
剖 学的
図7.2 発 育 に 伴 う筋 線 維 横 断 面 積 の 変 化1
図7.1 筋 線 維 形 成 の過 程
に 同 一 の 筋 で あ っ て も そ こ に 含 まれ る 筋 線 維 の 数 の 個 体 差 は 大 き く,こ の こ と が 筋 の 大 き さが 人 に よ っ て 異 な る 要 因 の 一 つ と な る.筋
線 維 の数 の差異 を生 む理 由
は 明 確 に は な っ て い な い が,筋
芽 細胞 の増 殖 の程 度 の
差 異 に起 因 し て い る の か も しれ な い. 増 殖 の 過程 におい て筋 分化 制御 因子 の濃 度 が高 まる と,筋
芽 細 胞 の 増 殖 は 停 止 す る9).こ の 段 階 で の 細 胞
の 横 断 面 積 は 約50μm2ほ
ど で あ る.こ
う して で き た
筋 芽 細 胞 は 融 合 し,複 数 の 核 を もつ 筋 管 を 形 成 し,細 胞 は 約80μm2(横
断 面 積)に まで 成 長 す る.ま
れ と同 時 に収 縮 ・調 節 タ ンパ ク(ミ トロ ポ ニ ン な ど)の
た,そ
オ シ ン,ア ク チ ン,
筋 細 胞 を特 徴 づ け る物 質 が 活 発 に
合 成 さ れ る よ う に な る. 2)筋
図7.3
発 育 に伴 う筋 原 線 維 数 お よ び筋 原線 維 直 径 の 変 化5)
線 維 の肥 大
筋 の 大 き さ は,「 筋 線 維 の 横 断 面 積 × 筋 線 維 の 長
上 に も な る(図7.3).一
さ ×筋 線 維 の 数 」 で ほ ぼ 決 定 され る.し
場 合 と は 異 な り複 雑 な 変 化 を 示 す.す
肥 大 に 関 して は,こ
た が っ て,筋
の三 つの 要素 の変 化が 話題 の 中心
と な る.
原 線 維 の 太 さ は,数 な わ ち,直
ま で 増 加 す る と突 然 減 少 し始 め,少
の
径が した つ
と ま た 増 加 す る と い う 変 化 を繰 り返 す の で あ る(図7.
哺 乳 類 で は,誕 て い る が,そ
約1μmに
方,筋
生 時 には筋線 維 の分化 はほ ぼ終 了 し
の 横 断 面 積 は 成 人 の1/5以
下 で あ る.発
3).こ
れ は,筋
が 形 成 さ れ,個
原 線 維 の表 層 部 に 新 た な フ ィ ラ メ ン ト 々 の 筋 原 線 維 は 肥 大 す る が,あ
る一 定
育 に 伴 い 筋 線 維 横 断 面 積 は ほ ぼ直 線 的 に増 加 す るが
の 太 さ に な る と分 裂 が 起 こ る た め で あ る と 考 え られ て
(図7.2),こ
い る.
の太 さの増加 は筋 原線維 の肥大 と分 裂 に
よ っ て 起 こ る.1本 は,誕
の 筋 線 維 に 含 まれ る 筋 原 線 維 の 数
生 時 で は 約75本
ほ どで あ る が,分
裂 を 繰 り返
し筋 線 維 横 断 面 積 の 増 大 と と も に 増 加 し,1,200本
以
筋 線 維 の 長 さ の 増 加 は,筋 る.マ
節 の 数 が 増 す た め に起 こ
ウ ス の ヒ ラ メ筋 の 例 で は,1本
れ る 筋 節 の 数 は,誕
生 時 約700で
の筋 線 維 に含 ま
あ っ た も の が,成
長
に 伴 い 約2,100に
ま で 増 加 す る.新
た な 筋 節 の 形 成 は,
は ク レ ア チ ンキ ナ ー ゼ や ミ オ シ ンの 合 成 を 亢 進 す る作
筋 腱 接 合 部 に お い て 生 ず る.
用 を も っ て お り,ト
3)筋
の 増 加 に対 し て も 促 進 的 に 働 きか け て い る と 考 え られ
線 維数 の変 化
こ こ ま で 述 べ て き た よ うに,成 増 加 に は,筋
長 に伴 う筋 の容 量 の
線 維 の横 断面 積 と長 さの 二つ の要 素 が 関
与 し て い る.そ
れ で は,も
う 一 つ の要素 で あ る筋線 維
の 数 は 生 後 変 化 す る の で あ ろ う か.ヒ
トの 上 腕 二 頭 筋
を 構 成 す る 筋 線 維 の 数 は 平 均 で は 約210,000本 が,個
体 差 が 大 き く,少
い 者 で は290,000本
である
な い 者 で は 約110,000本,多
て い る. 2)筋
線維 数の 変化
筋 線 維 の 数 は 遺 伝 的 要 因 に 大 き く左 右 さ れ て い る こ とは す で に 述 べ た とお り で あ る が,こ
と え ば,ラ
状 に 切 り刻 み,も
ッ トの 下 肢 筋 を 取 り出 し,ミ
ンチ
とあ っ た場 所 に 刻 ん だ 筋 を も ど して
在 の と こ ろ,筋 線 維 の 数 は 生 後 大 き く変 化 す る こ と は
皮 膚 を 縫 合 し 生 育 を 続 け る と,約60日
な い と考 え られ て お り,し た が っ て,筋
ぼ 再 生 す る こ と,ま
線維 数 に み ら
の こ とか ら筋が
増 殖 ・再 生 能 力 を も っ て い な い と 結 論 す る こ と は で き な い.た
と じつ に3倍 近 い 違 い が あ る.現
レー ニ ン グ に よ る 筋 原 線 維 の 容 量
後 には 筋 はほ
た そ の 過 程 に お い て,筋
形 成 の一
れ る 個 体 差 は 遺 伝 的 な要 因 に 主 と して 支 配 さ れ て い る
時 期 に特 有 に み ら れ る蛋 白(幼 若 型 ミ オ シ ン重 鎖 な ど)
と い え る.
が 出 現 す る こ と が 確 か め ら れ て い る8).こ れ ら の 事 実 は,発
育 が 終 了 し た 筋 で あ っ て も,成
b.ト レ ー ニ ン グ に よ る 肥 大
化 の 過 程 を た ど り,新
1)筋
っ て い る こ と を 意 味 す る.
線維 の肥 大
長 で み られ た 分
た な筋 線 維 を 形 成 す る 能 力 を も
適 切 な ト レー ニ ン グ を継 続 して 行 う と筋 肥 大 が 起 こ
新 た な筋線 維 が形 成 され る詳細 な過 程 につい て は不
る が,そ
明 な 点 が 多 い が,筋
の 変 化 の 様 相 は 成 長 に 伴 う も の と 類 似 して お
り,第1は
個 々 の 筋 線 維 の 肥 大 に よ る と こ ろが 大 き い.
図7.4は20週
間 ウ ェ イ ト トレ ー ニ ング を 行 っ た 大 学 生
の 筋 線 維 横 断 面 積 の 変 化 を 示 して い る.ト
レー ニ ング
線 維 の基 底膜 と形 質膜 の間 に存 在
す る 衛 星 細 胞 が 関 与 し て い る と 考 え られ て い る(図7. 5).筋
線 維 を傷 つ け た りFGFで
る と,衛
人 工 的 に 処 理 した りす
星 細 胞 は 増 殖 を 開 始 し,そ
後 で はFTb線
維 の 数 が 極 端 に 少 な くな り評 価 で きな く
管 を形 成 す る.こ
な る た め,こ
の 線 維 の 結 果 に つ い て は,FTa線
した 筋 芽 細 胞 で あ る可 能 性 が 高 く,新
FTb線
維 の 中 間 の 性 質 を もつFTab線
し て あ る.ト
維 と
維 とあ わ せ て記
レー ニ ン グ に よ っ て す べ て の 線 維 に 肥 大
が 起 こ っ た が,そ る の に対 して,FT線 よ う な現 象 をFT線
の 肥 大 率 はST線 維 で は35%を
維 が20%以
下であ
超 え て い る.こ
維 の 選 択 的 肥 大 と い う.こ
の
の トレ
の こ と か ら,衛
の 子 孫 は 融 合 し筋
星細 胞 は分 化 が休止 たな筋 線維 の形
成 は,衛 星 細 胞 が 眠 りか ら さ め た 結 果 起 こ っ た と思 わ れ る. ト レー ニ ン グ に よ る 筋 肥 大 の 過 程 に お い て,衛
星細
胞 の 働 き に よ る で あ ろ う筋 線 維 数 の 増 殖 が 生 じ て い る の で あ ろ うか.図7.6は
ネ コの右 前肢 の筋 にウ ェ イ ト
ー ニ ン グ に よ る 筋 線 維 の 肥 大 は ,成 長 の場 合 と 同 様 に
トレ ー ニ ン グ を 負 荷 し,ト
レ ー ニ ン グ を行 わ な か っ た
筋 原 線 維 が 肥 大 と分 裂 を 繰 り返 し,筋 原 線 維 の 容 量 が
左 前 肢 の 同 一 の 筋 とで,含
ま れ る 筋 線 維 数 を比 較 し た
増 す こ とが 主 た る 成 因 で あ る7).肥 大 が 生 じ て い る 筋
結 果 で あ る.6匹
で は,FGFの
図7.4
す べ て の ネ コ で,右
前 肢 の筋 にお い
濃 度 が 高 ま る こ とが 知 ら れ て い る.FGF
ウ ェ イ ト トレー ニ ン グ に よ る筋 線 維 横 断面 積 の 変 化10)
図7.5 筋 線 維 の 発 生 と衛 星 細 胞(Albertsら,19832)を
改 変)
図7.6
ウ ェ イ ト トレー ニ ン グに よ る 筋線 維 数 の 変化5
て 筋 線 維 数 が 多 く,ト
図7.7 運 動 に よ る 筋 小 胞 体 のCa2+取 り込 み 速 度 の 変 化3)
レー ニ ン グ に よ っ て 筋 線 維 の 増
殖 が 起 こ っ た と結 論 さ れ る.こ
の こ と は,肥
大 の途 に
と,SRのCa2-チ
ャ ネ ル が 開 口 しCa2+が 放 出 さ れ,筋
形 質 のCa2-の
濃 度 は1∼10μMに
上 昇 す る.Ca2+の
濃
あ る 筋 で は 筋 芽 細 胞 の 増 殖 を 促 進 す るFGFやIGF-1
度 の 上 昇 に よ っ て 筋 原 線 維 の 収 縮 が 起 こ る一 方 で,弛
が 発 現 す る 事 実 か ら も 裏 づ け ら れ る.し
緩 に はSRがCa2+を
そ の 増 加 率 は た か だ か 数%で
あ る こ と,ま
か し な が ら, た筋線 維 の
び 低 下 さ せ る 必 要 が あ る.こ
増 殖 は 既 存 の 線 維 の 損 傷 に 対 し て 代 償 的 に生 ず る 場 合
SRの
が 多 い こ と な どか ら は,ト
ATPase)に
レー ニ ン グ は 筋 線 維 数 の 増
殖 を 招 来 す る で あ ろ う が,遺
伝 的 に決定 された筋 線維
の 総 数 を大 き く変 化 さ せ る こ と は な い と考 え られ る.
取 り込 み 筋 形 質 のCa2+の
膜 上 に 存 在 す るCa2+依
a.運
筋 損 傷 の メ カニ ズ ム
分 解 に よ っ てCa2-2分 図7.7は,ラ
子 がSR内
筋 線 維 増 殖 の き っ か け と な る 筋 の 損 傷 は,ど に し て 起 こ る の で あ ろ う か.疲 を 行 っ た 筋 で は,A帯
やZ線
の 乱 れ あ る い は ミ トコ ン
ド リ ア や 筋 小 胞 体 の 膨 張 な ど,筋 る 変 化 が,運
のよう
労 困憊 に 至 る ま で 運 動
損 傷の 兆候 とみ られ
動 終 了 直 後 に 早 く も観 察 さ れ る.運
に み られ る こ の よ う な 変 化 は,実 カ ル シ ウ ム(Ca2+)を
度が
損 傷 を招 くお も な 要 因 で あ る と考 え
ら れ て い る.
b.筋
小胞体 の機 能 の変化
(sarcoplasmic る.通
reticulum:SR)に
常,Ca2+はSRの
筋 形 質 の 遊 離Ca2+の い る.神
強 度 で ラ ンニ ン
肢 筋 に お け るSRのCa2+取 動 開 始20分
まで
は 大 き な 変 化 は み ら れ な い が,45分
後 に は初 期 値 の 約
60%に,疲
は50%以
労 困 憊 時(140分
低 下 す る こ と が わ か る.こ み 能 力 の 低 減 は,長
後)に
下 に まで
の よ う なSRのCa2+取
時 間 運 動 だ け で は な く,高
短 時 間 運 動 に よ っ て も 起 こ る.運 Ca2+濃 度 が 高 ま る の は,こ
り込 強度 ・
動 に よ り筋 形 質 中 の
こ で 示 さ れ る よ う なSRの
機 能 の 不 全 が 生 じ る た め で あ る.
c.筋 小 胞 体 のCa2+取 SRに
よ るCa2-取
状 膜 構 造 を なす 筋 小 胞 体 よって調節 されて い
内 腔 に 蓄 え ら れ て い る た め, 濃 度 は0.1μM以
下 に 抑 え られ て
経 か らの イ ンパ ル ス が 筋 線 維 の 内 部 に 達 す る
り込 み 能 力 低 下 の 要 因
り込 み 能 力 の 低 下 に は,以
下 に述
べ る多 くの 要 因 が 関 与 して い る. 1)水
筋 形 質 のCa2+の 濃 度 は,袋
子 の加水
験 的 に筋 を高濃 度 の
含 む 溶 液 に 浸 漬 して も同 様 に 生
ず る こ とか ら,運 動 に よ り筋 形 質 中 の 遊 離Ca2+濃 高 ま る こ とが,筋
動後
Ca2+-
腔 へ と輸 送 さ れ る.
ッ トに 約75%VO2maxの
り込 み 速 度 の 変 化 を 示 して い る.運
動 後 に み られ る 筋 線 維 の 構 造 的 変 化
取 り 込 み は,
存 性ATPase(SR
よ っ て 能 動 的 に 行 わ れ,ATP1分
グ 運 動 を 行 わ せ た 時 の,後 7.2
のCa2-の
濃 度 を再
素イオン
安 静 時 に は細 胞 内 のpHは7.0∼7.1で
あ る が,強
の 高 い 運 動 を 行 う と 水 素 イ オ ン(H+)の
発 生 に よ り,
pHは6.2あ
た り に ま で 低 下 す る こ とが あ る.pHの
下 がSRのCa2+取 つ あ る.一
H+がSRの
低
り込 み 能 力 を 減 少 させ る ル ー トは 二
つ は,H+がSRCa2+-ATPaseのCa2+結
位 に お い てCa2+と
度
競 合 す る こ とで あ り,他
膜 のCa2+に
合部 の 一 つ は,
対 す る 透 過 性 を高 め る 作 用 を も
つ た め,SR内
腔 へ 取 り込 ま れ たCa2+が
筋 形 質 へ と漏
出 す る こ と で あ る. 2)活
る 酵 素 で あ り,通 常 の 反 応 で は活 性 酸 素 は 発 生 し な い. と こ ろ が,筋
性 酸 素
形 質 のCa2+濃
度 が 上 昇 す る とXDHは,
キ サ ンチ ン酸 化 酵 素(xanthine
活 性 酸 素 と は,通
常 の 酸 素 よ り反 応 性 の 高 い 酸 素 化
さ れ る(図7.8).XODは
oxidase:XOD)に
変換
触 媒 反 応 に 「酸 素 → ス ー パ ー
合 物 の 総 称 で あ る が,生
体 との 関連 か らはス ーパ ー オ
オ キ シ ド」 の 反 応 を 伴 うた め,筋
キ シ ド,過 酸 化 水 素,ヒ
ドロ キ シ ル ラ ジ カ ル お よ び 一
濃 度 は さ ら に 高 ま る こ と に な る.活 性 酸 素 は 酵 素 の 活
重 項 酸 素 の4種
を さ して い る.ミ
化 的 リ ン酸 化 の 過 程 で,安
キ シ ドが 産 生 さ れ て い る.そ 形 質 へ と漏 出 し,鉄
トコ ン ド リ ア で は 酸
静 時 に お い て もス ー パ ー オ れ らの う ち1∼4%が
あ る い は 銅 と 反 応 し,前
筋
述 の4種
形 質 中の活 性酸 素 の
性 を 失 活 させ る だ け で な く,不 飽 和 脂 肪 酸 に 過 酸 化 反 応 を引 き起 こ し,生 体 膜 を破 壊 す る 作 用 も もつ. Ca2+の 濃 度 の 上 昇 に よ っ て,い 素(プ
ロ テ ア ー ゼ)が
くつ か の 蛋 白 分 解 酵
活 性 化 さ れ る.Ca2+依
存 性 中性
の 中 で は 最 も反 応 性 の 高 い ヒ ドロ キ シ ル ラ ジ カ ル と な
プ ロ テ ア ー ゼ で あ る カ ル パ イ ン は,Z膜
る.運 動 中 で は ミ トコ ン ド リ ア の 代 謝 は10倍 以 上 に 亢進 す る た め ,そ れ に伴 い 筋 形 質 中 の 活 性 酸 素 の 濃 度
れ を 分 解 す る.ま
も 高 ま る こ と に な る.活
チ ン フ ィ ラ メ ン トを切 断 す る こ とが 知 られ て い る(図
酸 化 す る と,SR
生 じ, SR Ca2+-ATPase活 3)グ
性 酸 素 がSRの
Ca2+-ATPase蛋
チ オ ー ル基 を
白 に構造 的 な変化 が
た,筋
を標 的 と し こ
形 質 の 硬 度 を 調 節 す る タ ンパ
ク で あ る ゲ ル ゾ リ ン は,Ca2+の
濃 度が 上昇 す る とア ク
7.8).
性 が 低 下 す る4).
リコー ゲ ン
SRの
膜 に は解 糖 系 酵 素 お よび ク レア チ ンキナ ー ゼ
が 結 合 し て お り,Ca2+の
取 り込 み に必 要 なATPは,そ
れ ら の 働 き に よ り局 所 的 に 産 生 さ れ て い る と 考 え ら れ て い る.解 渇 は,SR
糖 系 の お も な 基 質 で あ る グ リ コー ゲ ンの 枯 Ca2-ATPaseへ
のATP供
給 の低 減 を誘 因す
る. 4)一
酸 化窒 素
骨 格 筋 内 に 存 在 す る 一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素 は,L-ア ラ ギ ニ ン を基 質 と し て 一 酸 化 窒 素(nitric oxide:NO) を 産 生 す る.筋 NOの
活 動 を行 う と こ の 酵 素 が 活 性 化 さ れ,
濃 度 が 数 倍 に 高 ま る.NOの
た 電 気 的 に 中 性 で あ る た め,細
分 子 は 小 さ く,ま 胞 内 で す ば や く拡 散 し
種 々 の 器 官 と 反 応 す る.NOはSR
Ca2+-ATPase蛋
に は 直 接 影 響 を 及 ぼ さ な い が,SRの
白
膜 に 結 合 して い
る ク レア チ ン キ ナ ー ゼ お よ び グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド3-
図7.8 筋 損 傷 の メカ ニ ズ ム
リ ン酸 脱 水 素 酵 素(解 糖 系 の 酵 素 の 一 つ)の 活 性 を抑 制 す る作 用 を もつ11).し た が っ て,グ の 場 合 と 同 様 に,SR
リコー ゲ ンの枯 渇
Ca2+-ATPaseへ
のATPの
供給を
低 減 させ る結 果 と な る.
リ ン脂 質 加 水 分 解 酵 素 の 一 つ で あ る ホ ス ホ リパ ー ゼ A2が,Ca2+の
濃 度 の 上 昇 に よ っ て 活 性 化 さ れ る と,
生 体 膜 リ ン脂 質 の 分 解 が 起 こ り,活 性 酸 素 の 作 用 とあ わ せ 生 体 膜 の 破 壊 が 亢 進 さ れ る.ホ
d.Ca2+濃
の 影 響 は,こ
度 の上 昇 がも た らす変化
活 性 酸 素 が 筋 形 質 のCa2+の
濃 度 の 上 昇 を もた らす 要
因 の 一 つ で あ る こ と は 前 述 し た が,Ca2+濃
度 の上 昇 は
活 性 酸 素 の 発 生 を さ らに 助 長 す る こ と に な る.筋 に 存 在 す る キ サ ンチ ン脱 水 素 酵 素(xanthine genase:XDH)は,AMPか
形質
dehydro
ら尿 酸 へ の 反 応 を 触 媒 す
ス ホ リ パ ー ゼA2
れ だ け に と ど ま ら な い.リ
ン脂 質 分 解 の
結 果 産 生 さ れ る プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ンに は,白
血球 やマ
ク ロ フ ァ ー ジ を凝 集 す る 働 きが あ り,組 織 に 炎 症 反応 を も た らす こ とに な る.図7.8に,筋 ま で の 変 化 の 概 要 を ま とめ た.
活 動 か ら筋 損 傷
muscle
● 問 題 1. 未 分 化 な細 胞 が 筋 線 維 に 分化 す る まで の 過 程 を 説 明 し 5)
な さい.
Goldspink, fibre
2. 筋 肥 大 に伴 って,筋 原線 維 が どの よ う に変 化 す る の か 6)
説 明 し な さい.
sarcoplasmic
G.:The
growth.J.
Gonyea,
J.
3. 筋 肥 大 に 伴 って,筋 線維 の数 が 変 化 す るか 否 か 論 じな
Sci.,6
L., Sale,
induced
Appl. 7)
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W.
Exercise
さい.
reticulum.
Appl.
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F.
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Mikesky,
fiber
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MacDougall,
J.
D.:Morphological
changes
in
human
4. 筋 小 胞体 の 機 能 お よび運 動 に よ るそ の 変 化 に つ い て述 skeletal
べ な さ い.
Human 8)
Aherne,
W.,
Ayyar,
Muscle
fiber
size
J.Neurol.
Sci.,14
Alberts,
B.,
New
D. in
R.,
Clarke,
normal
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C.
infants,
A.
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Walton,
children
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9) adolescents.
D.,
Lewis,
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S.
K.,
varying
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J.,
Biology
Raff, of
M.,
the
Roberts,
Cell,
Garl
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Staron,
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Leonaddi,
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8 運 動 と呼 吸 ・心循 環
呼 吸 と 循 環 の 目 的 は,生 体 の 各 組 織 に供 給 し,代 る.O2の
供 給 とCO2の
ガ ス の 運 搬(循
環)お
命 維 持 の た め に絶 え ず 酸 素(O2)と
謝 の 結 果 生 じた 二 酸 化 炭 素(CO2)と
排 泄 は,肺
と血 液 との ガ ス 交 換(肺
よ び 血 液 と 組 織 との ガ ス 交 換(組
栄 養(エ
ネ ル ギ ー 基 質)を
身
老 廃 物 を 除 去 し続 け る こ と で あ 呼 吸 あ る い は 外 呼 吸),血
織 呼 吸 あ る い は 内 呼 吸)に
液による よって行 わ
れ る. 運 動 は 活 動 筋 に お い てO2消
費 とCO2生
要 の 増 大 に す ば や く応 答 す る.す の 増 加 を通 して,運
成 を 増 加 させ る.呼
な わ ち,呼
吸 ・循 環 系 は こ の よ う な 代 謝 需
吸 系 は換 気 量 の 増 加 を通 し て,循
環 系 は 心 拍 出量
動 に よ っ て 増 大 し た 代 謝 需 要 を満 た す.
本 講 に お い て は,前
半 で お もに 運 動 時 の 呼 吸(肺
換 気)に
つ い て,後
半 で は 主 と して 心 臓 の
働 きに 焦 点 を あ て て 述 べ る.
8.1肺
換 気 の メ カニ ク ス
肺 へ の 空 気 の 出 入 りは,呼 は換 気(ventilation)と 安 静 時 に お い て,吸 始 ま る.こ 大 し,肺
8.2死
吸(breathing)あ
るい
定 義 さ れ て い る.
大 気 と 身 体 と の 間 の ガ ス 交 換(外
息 は 横 隔 膜 と外 肋 間 筋 の 収 縮 で
の 結 果,大
気と
で,上
部 の 呼 吸 経 路(気
部 分 は 解 剖 学 的 死 腔(D)と 150∼200ml(安
に 行 わ れ る.吸
は,Dの
隔 膜 と外 肋 間筋 の
た め に 肺 換 気 量(VE)よ
は1回 換 気 量(VT),D,呼 うに 表 され る.
る.
よ ば れ,そ
の容 量 は約 あ る.
ガ ス 交 換 に 有 効 な 換 気 量 す な わ ち 肺 胞 換 気 量(VA)
上 昇 す る た め に,肺
中 の 空 気 は 大 気 中 へ と呼 出 さ れ
の よ うな 呼 吸 経 路 の
静 時 換 気 量 の約30%)で
弛 緩 に よ っ て 胸 郭 容 積 が 減 少 し,肺 内 圧 が 大 気 圧 よ り
り少 な く な る.VA
吸 数(f)を
用 いて 次 の よ
VA=(VT−D)×f
運 動 時 に お い て は,吸
息 に 胸 鎖 乳 突 筋,斜
び 僧 帽 筋 も関 与 す る.一
方,呼
収 縮 に よ っ て,積
角筋およ
れ らの
補 助 呼 吸 筋 の す ば や く力 強 い 収 縮 に よ っ て,肺
換気量
増 加 す る.
上 記 の 式 か ら明 らか な よ う に,Dに
対 す るfの 影 響 は
息 は内 肋間 筋や 腹筋 の
極 的 で 力 強 い 活 動 と な る.こ
(VE)は
胞と
管 や 気 管 支 な ど)に あ る 空 気
は ガ ス 交 換 に 全 く関 与 し な い.こ
肺 と の 間 で 圧 力 勾 配 が 生 じ,空 気 は 肺 へ と流 入 す る. 一方 ,呼 息 は 横 隔 膜 と外 肋 間 筋 の 弛 緩 と と も に 受 動 的 息 の 時 と は逆 に,横
呼 吸)は,肺
そ れ を 取 り巻 く肺 毛 細 血 管 と の 間 で の み 行 わ れ る の
れ らの 筋 の 収 縮 に よ っ て,胸 郭 の 容 積 は 増
内 圧 が 一 時 的 に減 少 す る.そ
腔 と肺 胞 換 気 量
表8.1 安静時の肺 胞換気量に対す るあえ ぎ呼吸の影響 (Brooksら,19963)よ り作成)
図8.1
大 き く,速
く て 浅 い呼 吸(あ
安 静 時 お よび 運 動 時 の 換 気 調 節(Brooksら,19963よ
え ぎ 呼 吸)は,VAの
な 減 少 を も た らす(表8.1).こ
れ は,VEが
り作 図)
大き た とえ 同
じ で も,呼 吸 の 仕 方 に よ っ て ガ ス 交 換 の 効 率 が 大 き く 異 な る こ と を 意 味 して い る.
8.3
呼 吸 の 調 節機 構 図8.2
a.呼
吸 中 枢
ス テ ップ 負 荷 運 動 時 の 換 気 応 答 (Wassermanら,198624)よ
吸 息 と呼 息 を 交 互 に繰 り返 す 呼 吸 の リ ズ ム は,脳
り作 図)
の
延 髄 と 橋 に あ る 呼 吸 中 枢 に よ っ て つ く り出 さ れ る.呼
的 に は神 経 性 と体 液 性 の 多 重 制 御 で 説 明 され る15).
吸 中 枢 は,延
神 経 性 の調 節 に は,高
髄 に あ る 吸 息 中 枢 と 呼 息 中 枢,橋
にあ る
持 続 性 吸 息 中 枢 と呼 吸 調 節 中 枢 の 四 つ の 領 域 に 分 け ら
中 枢 へ の 興 奮 性 入 力(セ
れ る.こ
関 節,腱
質)や
れ ら の 呼 吸 中 枢 は,高
位 中 枢(大
脳 の運動 皮
末 梢 か ら多 くの 神 経 性 お よ び 体 液 性 の 入 力 を 受
け 取 り(図8.1),こ
れ ら を統 合 し て適 切 な 換 気 応 答 を
位 中 枢(運
動 皮 質)か
ら呼 吸
ン ト ラ ル コ マ ン ド)4)と 筋,
に存 在 す る 末 梢 の 固 有 受 容 器 か ら呼 吸 中 枢 へ
の 求 心 性 入 力 が あ る(フ
ィー ド フ ォ ワ ー ド機 構).こ
れ ら の 調 節 は す ば や く働 き,ス
テ ップ負荷運 動 時 の開
も た らす.
始 直 後 と終 了 直 後 に み ら れ る よ う な 急 速 な 換 気 応 答
b.運
体 液 性 の 調 節 と は,末
(phase 動 時の 呼吸調 節
運 動 時 の 換 気 亢 進 は,単 く,い
一の 要 因に よる もので はな
くつ か の 要 因 が 重 な り合 っ た 結 果 で あ り,基 本
Ⅰ)に 関 与 して い る(図8.2). 梢(頸
よ び 中 枢 の 化 学 受 容 器(延 PCO2お よ びpHを
感 知 し,そ
動 脈 体,大
髄 腹 側 表 層)が
動 脈 体)お 体 液 のPO2,
れ ら を 一 定 レベ ル に 維 持
図8.3
運 動 時 の 毎 分 換 気量(VE)と
代 謝 率(Vo2)と
の 関 係(Brooksら,19963よ
り作 図)
す る よ う に 換 気 量 を微 調 節 す る フ ィ ー ドバ ッ ク機 構 で
練 者 の よ り高 いVEmaxはMVVとVEmaxと
あ り,呼 吸 の 化 学 調 節 と よ ば れ て い る.こ
換 気予 備 能 力 を よ り多 く動 員 し た 結 果 で あ る25).
は 比 較 的 ゆ っ く り と 働 き,ス
れ らの調節
テ ップ負荷運 動時 の
phase Ⅰ 後 に み られ る ゆ っ く り と した 指 数 関 数 的 な 換 気 応 答(phase Ⅱ
8.4
∼Ⅲ)に
8.5
関与 して い る(図8.2).
有 酸 素 運 動 パ フ ォ ー マ ン ス の 制 限 因 子 と しての 換 気 能 力
運 動 時 の 肺 換 気 量 と トレ ー ニ ン グ
一 般 に,定
期 的 な 持 久 性 ト レー ニ ン グ を 行 っ て い な
い 健 康 な 人 に お い て,換 運 動 時 の 毎 分 換 気 量(VE)は,仕 グ状 態(鍛
練 度)な
事 率 や トレ ー ニ ン
ど の 多 くの 要 因 に よ っ て 左 右 され
る.
気能 力 は有酸 素 運動 パ フ ォー
マ ン ス の 制 限 因 子 と は な ら な い と い わ れ て き た.そ
れ
は 以 下 に 示 す よ う な い くつ か の 理 由 に よ る も の で あ る.
図8.3は
持 久 性 鍛 練 者 と非 鍛 練 者 の 漸 増 運 動 中 のVE
の 典 型 的 な 変 化 を 示 し て い る.VEとVO2と が 崩 れ,VEが
の直 線 関係
急 激 に 増 加 し は じ め る 点(換
ventilatory threshold:VT)は,非
気 性 閾 値,
鍛 練 者 よ り鍛 練 者
に お い て 高 いVO2レ ベ ル で 生 じ る. 最 大 下 強 度 で は,あ
① 肺 換 気 を 増 大 させ る 能 力 は,心
安 静 時 の 毎 分 換 気 量(VE)は が,最
お よ そ6l/分
大 運 動 時 に お い て は,お 静 時 の20倍
以 上 も の 値 に 達 す る.
しか し な が ら,心 拍 出 量 は 運 動 強 度 の 増 大 に 伴 い 増 加 す る もの の(一
い て 高 く,最 大 強 度 で は 逆 に 非 鍛 練 者 よ り鍛 練 者 に お
運 動 時;20l/分),そ
い て 高 い.運 動 中 に 得 られ る 毎 分 換 気 量 の 最 大 値 は,最
増 加 と比 較 して 非 常 に 小 さ い.し
大 毎 分 換 気 量(maximum
気 量 と心 拍 出 量 の 比(換
pulmonary
ventilation:VEmax)
い な い 一 般 男 子 で は120∼1401で
あ る.一
方,持
久性
トレ ー ニ ン グ を 行 っ て い る鍛 練 者 に お い て は,VEmaxが 越 え る場 合 もあ る.し
ス パ イ ロ メー タ ー を通 して,意
か し なが ら,安 静 状 態 で 図 的に深 く速 い呼吸 を
し た と き に 測 定 さ れ る 分 時 最 大 換 気 量(maximum voluntary ventilation:MVV)はVEmaxよ 者 と非 鍛 練 者 とで は 差 が な い.こ に お い て,最
しい 運 動 中
大 に換 気 を 行 っ て い る 時 で さ え も,な
お
換 気 能 力 に 余 力 を 残 して い る こ と を 意 味 し て お り,鍛
般 人 で,安
静 時;約5l/分,最
の 程 度(4倍
大
の 増 加)はVEの た が っ て,毎
分換
気/還 流 比,VE/Q)は,最
大 運 動 時 に は 安 静 時 の5∼6倍
に 増 加 す る.
② 最 大 運 動 時 で さ え も,換 気 能 力 に は 予 備 力 が 残 っ て い る. 前 に も述 べ た が,運 (VEmax)は,意 MVVよ
り 高 く,鍛 練 れ は,激
である
よそ120∼140l/分
般 に 鍛 練 者 よ り非 鍛 練 者 に お
と よ ば れ て お り,定 期 的 な 身 体 ト レー ニ ン グ を 行 っ て
拍 出量 を増加 さ
せ る能 力 よ り非 常 に 大 きい.
ま で 増 加 し,安
る 一定 の絶対 強 度お よび相対 強
度 に お け る換 気 量 は,一
200lを
の 差 で 表 され る
図 的 に深 く速 い 呼 吸 を した 場合 の
り少 な く,一
の 約60∼70%で
動 中 に 観 察 さ れ る 最 大 のVE
般 成 人 男 子 で はVEmaxはMVV
あ る.
③ 動 脈 血 の 酸 素 分 圧(PAO2)は
運 動 中 に維 持 さ れ
て い る. PAO2は 運 動 中 に 維 持 さ れ て い る が,こ
れ は換 気 の
増 大 に 伴 っ て 肺 胞 酸 素 分 圧(PAO2)が す る こ と(肺
わず か に増 加
胞 ― 動 脈 圧 勾 配 の 増 大),肺
胞 か ら肺
毛 細 血 管 を 通 過 し て い る 赤 血 球 ま で のO2の 離 が 非 常 に 短 い こ と,赤
血球 の肺 毛細 血管 通 過時 間
(運 動 中 お よ そ0.4∼0.5秒)がO2の あ る こ と,ガ く(50m2,シ に 相 当),肺
拡散距
こ と,さ
らに乳酸 性作 業 閾値 強 度で の 自転車 運 動 の持
久 力 が 高 ま っ た こ と が 示 さ れ て い る.こ ら,呼 吸 ト レー ニ ン グ に よ っ て,一
れ らの 結 果 か
定 強 度 にお け る呼
吸 筋 そ れ 自体 の 仕 事 量 を減 少 させ,そ
の 結果 呼吸 筋 の
平 衡 に 十分 で
酸 素 消 費 量 を抑 え る こ とが で き,運 動 に 正 味 使 う こ と
ス交 換 のた め の肺胞 表面積 が 非常 に広
の で き るエ ネ ル ギ ー を 増 加 させ る こ と が で き る よ う に
ン グ ル ス テ ニ ス コー トの 半 面 の 広 さ
な る と 考 え られ る.
胞 表 面 積 と肺 毛 細 血 管 血 液 量 と の 比 が
非 常 に 大 き い こ と(大
き な 拡 散 面 積)に
よ る もの で
8.6
心筋 の特 性
あ る. し か し な が ら,最 近 に な っ て,健 持 久 性 鍛 練 者 に お い て,換
常 な座 業従 事 者 や
気 システ ムが有 酸素 運動 パ
心 筋 は,収
縮 す る こ と で 働 く 固 有 心 筋(ordinary
cardiac muscle)と,興
フ ォーマ ンスの 制 限 因子 とな りうる可 能性 の あ るこ と
殊 心 筋(specialized
が 報 告 さ れ て き て い る1,2).持 久 性 鍛 練 者 を 対 象 と し た
れ る.固
報 告 で は,呼
吸 ト レー ニ ン グ に よ っ て 呼 吸 の 持 久 性 が
高 ま っ た こ と,自
転 車 運 動 時 の 毎 分 換 気 量 が 低 下 した
図8.4 心 臓 の 横 断 面,刺
奮 の 発 生 と伝 導 を 受 け 持 つ 特 cardiac muscle)の
有 心 筋 は 横 紋 筋 で あ る が,筋
二 つ に分 け ら 細 胞 の 端 は二 つ
に 分 岐 し,隣 接 す る 筋 細 胞 端 と次 々 に結 合 し て 網 目構 造 をつ くっ て い る 点 で(図8.4右
激 伝 達 系 お よび 心 臓 の 活 動(左)と
心 臓 細 胞 の拡 大 模 式 図(右
上)骨
上)23)
格 筋 と は構 造
上 の 差 異 が あ る.こ
の 構 造 ゆ え に,刺 激 が 隣 の 筋 細 胞
に は,他
の 部 位 の 放 電 レ ー トで 最 も速 い もの が,新
た
へ 順 々 に 伝 わ り,心 臓 の 調 和 の と れ た 収 縮 が 可 能 と な
な ペ ー ス メ ー カ ー と して 置 き換 え ら れ る.心
る の だ が,構
を 停 止 しな い よ うに 何 重 に も補 償 機 構 が 働 い て い るの
成す るすべ ての細 胞 が毎 回の 収縮 に参加
し な け れ ば な ら な い こ と に も な る.つ
ま り心 筋 で は,
筋 の収縮
で あ る.
筋 力 の 調 節 を 骨 格 筋 の よ う に動 員 す る 筋 線 維 の 数 を 変
心 房 筋 と心 室 筋 の 間 に は 前 記 した 筋 細 胞 ど う しの 接
え る こ と に よ っ て 行 うの で は な く,心 筋 自 体 に 備 わ っ
合 が な く,収 縮 の 刺 激 は特 殊 伝 導 系 を 通 じて の み 伝 わ
た 内 因 性 機 構(収 縮 に 先 立 つ 伸 展 に よ っ て 張 力 を 増 す)
る.洞
と,外
始 め,特
因 性 機 構(Ca2-濃
度 の 増 加,自
律神 経系 もし く
房 結 節 で 起 こ っ た 刺 激 に 対 し て 心 房 筋 は収 縮 し 殊 伝 導 系 を 通 っ て きた 刺 激 に 対 して 心 室 筋 が
は カ テ コ ー ル ア ミ ンの 影 響)に よ っ て 行 うの で あ る22).
反 応 し心 臓 下 部 か ら収 縮 し始 め る 頃 に は,心
固 有 心 筋 の 他 の 興 味 深 い 特 徴 を 簡 略 化 し て ま とめ れ
縮 は 完 了 し て拡 張 期 に入 っ て い る こ と に な る(図8.4).
ば次 の よ う に な る
房 室 結 節 の 伝 導 速 度 は 遅 い た め に,心
① 赤 筋 に 近 い 性 質 を も っ て い る5).実 際 に 心 筋 の 収 縮 蛋 白 系 は,骨 ATPase活
格 筋 の 遅 筋 線 維 に 類 似 し て お り,
性 も 比 較 的 低 い.ま
含 有 量 が 豊 富 で,動
た ミ ト コ ン ドリ ア の
開 始 時 間 に0.12∼0.18秒
房 筋 の収
房 と心 室 の 収 縮
の ず れ が あ る の で,そ
の 間に
心 房 か ら心 室 へ の 血 液 の 移 動 が 円 滑 に行 わ れ る の で あ る.
脈 血 か ら酸 素 を 取 り込 み 利 用 す 8.8
る能 力 が す べ て の 臓 器 の 中 で 飛 び 抜 け て 高 い.
循環 す る血 液
② 心 臓 が 増 大 す る の は 筋 線 維 の 増 殖 で は な く,1 本1本
の 肥 大 に よ る も の で あ る と考 え ら れ て い る.
血 液 は 心 臓 か ら の 拍 出 に よ っ て,血
管 系 で 閉 鎖 した
しか し小 児 と成 人 と の 間 で の 心 筋 細 胞 の 長 さ や 幅 を
連 続 回路 を 一 巡 して 戻 っ て く る(図8.5).成
比 較 し た り,重 量 の 違 う心 臓 の 細 胞 の 太 さ を 調 べ た
量 は 体 重1kg当
報 告 で もそ の 差 は 明 確 で な く26),は っ き り と は わ か
で あ る.体
っ て い な い.
と計 算 され る.安 静 時 に は そ の う ち の0.8lの
③ 心 筋 は 単 収 縮 しか し な い.つ な 強 縮 が 起 こ らな い の で,心
ま り骨 格 筋 の よ う
臓 全 体 と し て 収 縮 と弛
緩 が 毎 回 必 ず 交 互 に 生 じ る こ とが 保 証 さ れ て い る.
人の 血液
た り男 性 で お よ そ75ml,女
重65kgの
男 性 で は,約5lの
循 環 系 に存 在 し て い る.右 る1回 拍 出 量70ml,1分 肺 循 環 は 約10秒,全
性 で65ml 血液 量 であ る
・左 の 各 心 室 か ら 拍 出 され 間 の 心 拍 数 を70回
細 胞 の 結 合 と い う点 で 筋 細
す る こ と に な る.ち
胞 の 分 化 を 考 え れ ば,最
も 原 始 的 な 筋 細 胞 と して 平
環 に か か る 時 間 は6∼8秒
で あ り,1分
間 に200∼250
滑 筋 細 胞 を 想 定 し,心 筋 細 胞 と い う 中 間 段 階 を 経 て 最 も 高 度 な 分 化 が 骨 格 筋 細 胞 に み られ る と い う 考 え
運 動 時 に は 血 流 配 分 も変 わ る が(図8.5右
8.7
く は 第9講 参 照),1回
刺 激 伝 達 系(特
殊 心 筋)
枝,プ
房 結 節,房
室 結 節,His束,左
ル キ ン エ 線 維 網 と い う,特
(図8.4左)心
殊心筋細胞があ り
臓 の 収 縮 を ま と め て い る.特
殊心筋細
し
拍 出 量 と心 拍 数 の 両 方 を増 加 さ
動 で の1回 拍 出 量 を130ml,最
・右 脚
上,詳
位 時 間 当 た りの 拍 出 量 を増 加 させ る.激
て 計 算 し て み る と,1分 心 臓 に は,洞
で 一巡
なみ に心 筋へ 血 液 を供給 す る冠循
mlも の 量 の血 液 が 心 筋 へ 流 れ て い る.
せ,単
とす れ ば,
身 循 環 は 平 均 す れ ば50秒
④ 収 縮 蛋 白 の 量 や,筋
が 成 り 立 つ26.
血液 が肺
し い運
高 心 拍 数 を190回
間 当 た り25lの
とし
血 液 が 右・ 左
の 心 室 か ら そ れ ぞ れ 駆 出 され る こ と に な る.そ の 場 合, 肺 循 環 に か か る時 間 は4秒(運
動 時 に 肺 循 環 に存 在 す
る血 液 量 が 多 少 増 加 した と し て),全
身 循 環 の 時 間 は8
胞 は 固 有 心 筋 と は異 な り,そ れ ぞ れ 自動 的 に 活 動 電 位
秒 とい う計 算 に な り,血 流 速 度 が か な り速 く な る こ と
を 生 じ る 能 力 を も っ て い る.な
が わ か る.一
レー トが 最 も速 い の で,通
か で も洞 房 結 節 の 放 電
常で は それが 心臓 拍 動の ペ
ー ス メ ー カ ー と な っ て い る.洞
房 結 節 は,右
壁 の 大 静 脈 との 境 界 部 に あ る2×0.2cmほ わ ず か1,000∼2,000個
心 房 の後 どの部位 の
の 細 胞 か ら構 成 され て い る.も
し洞 房 結 節 に ダ メ ー ジ が 生 じ,こ
の能力 が 失 われ た時
方,心
臓 へ の 血 流 量 は 安 静 時 の5倍
で 増 加 し て(1.2l/分)心 あ る.
にま
筋 の活 動 を支 え て いる ので
図8.5 循 環 回路 を模 式 的 に 表 した もの(a)と 各 器 官 へ の 血 管 が 並 列 に つ な が っ た もの と し て示 す.数
循 環 器 系(b)7)
字 は安 静 時 お よ び 運 動 時 の 心 拍 出量 と分 配 率 を 示 す.
8.9 神 経 性 の 心 拍 調 節 機 構
8.10 体 液 性 の 心 拍 調 節 機 構
心 臓 は 自律 神 経系 に よって密接 です ばや い調 節 を受
交感 神経 系 の刺激 に よって,副 腎髄 質 か らア ドレナ
けて い る(図8.6).心
臓 交 感神 経か らの 刺激 で心拍 数
リ ンが 血液 中 に放 出 され て心臓 に達 し,洞 房結 節 の β
は増 加す る.こ れ は心 臓 交 感神経 末 端 か ら遊 離 され る
受 容体 に作 用 して心 拍 数 を増加 させ る.ま た心 筋 だけ
ノル ア ドレナ リ ンが 洞房 結節細 胞 の β受 容 に作 用 して
で はな く全 身 に分布 してい る交 感 神経 終末 か らもノル
自発 興 奮 頻度 を増 加 させ る ため であ る.逆 に副 交感 神
ア ドレナ リ ンが分 泌 され,一 部 は血 中 に流 れ出 して心
経(迷 走神 経)末 端 か らの アセ チル コリ ンが 分泌 され
臓 に まで達 して,ア
る こ とに よ って,洞 房 結節細 胞 の 興奮 頻 度 は低下 し心
作 用 を もた らす.時 間的 にす ばや い 自律 神経 系 の調節
拍 数 が 減少 す る.こ の 二つ の拮 抗 す る神経 の 作用 がせ
機 構 とは異 な り,体 液 性 の調 節機 構 は持 続 的な局 面で
め ぎ合 って心 拍 数 が調 節 され る こ と にな る19,20).この
の心拍 の変 動 を調 節す る作 用 が あ るの では ない か と考
ドレナ リ ンと同様 に心拍 数増 大 の
よう に心 拍 数 は,自 律神 経系 に密接 に直接 影響 を受 け
え られ てい る20).
て い る こ とか ら,逆 に 自律 神 経 活動 を心拍 数 の1拍 ご
体 液 性 の 心拍 調節 機 構 の み が 関与 して い る例 とし
との 間 隔の 変化 か ら(心 拍 変 動 か ら)評 価 しよ うとい
て,心 臓 移 植患 者 のケ ース が あ げ られ る.こ の場合 の
う試 み もみ られ る6,17).
心臓 は神経系 の心 拍 調節 機構 を受 け てい ない ため運 動
また心 拍 の頻 度だ けで な く,心 筋 の収 縮 の強 さも こ
が 始 ま る前 に興 奮 した と して も心 拍 数 は変 化 しな い.
の 神経 系 に よっ て影響 を受 け る.す なわ ち交 感神 経 か
さ らに運 動が 始 ま ってか らの心 拍 数の 上昇 は健 常者 と
ら出 て くる ノル ア ドレナ リンに は心房,心 室 筋 の収 縮
比 較 して遅延 す る し,さ らに運 動終 了 後の 安静 時の レ
の 強 さ を増 す作 用 が あ り,ア セチ ル コ リ ンには心 房筋
ベ ルに まで心拍 数 が戻 るの に時 間 がか か る ことが認 め
の収 縮 力 を弱 め る作用 があ る.
られ る.
図8.7
各種 ス ポ ー ツ 選 手 の 心 臓 容 積 お よ び体 重 当 た りの心 臓 容 積(飯
る.1回
田 ・山 口,19979);Kuelら,198210)よ
り作 図)
拍 出 量 が 増 大 した た め に そ の 帰 結 と し て 徐 脈
が 生 じ た の か,そ
の 逆 な の か よ く わ か っ て い な い が,
こ れ ま で に 最 も低 い 値 で1分 間 に21拍 さ れ て い る21).ま た,血
とい うのが報 告
液 の循 環量 が増 す ような ラ ン
ニ ン グ な どの 競 技 で は,心
筋 の 肥 厚 で は な く心 室 自体
の 容 積 が 増 す よ う に肥 大 し,ウ エ イ トリ フ テ ィ ン グの 図8.6 (a)心
臓 の 自律 神 経 支 配7
(b)交
感神 経(ノ 作 動 性)刺
よ う な 収 縮 期,拡
ル ア ド レナ リ ン作 動 性)と
迷 走 神 経(コ
リン
は,壁
張 期 の 血 圧 を増 大 す る よ う な 競 技 で
の 肥 厚 が 生 じ て い る と考 え ら れ て い る.し
後 者 に 関 して は,そ
激 の 洞 房 結 節 の 膜 電 位 に 対 す る 効 果5)
か し
の よ うな短 時間 の刺激 で 心筋 肥大
の 刺 激 と な り う る の か,ま
た,骨
格 筋 肥 大 を 生 じや す
い競技 を選ぶ 選 手の場 合 には心 筋 は もと もと肥大 して 8.11ス
い る の で は な い か,と
ポ ー ツ心 臓
い う疑 問 も示 さ れ て い る.ま
ス ポ ー ツ 心 臓 の 肥 大 につ い て も,組 ト レ ー ニ ン グ を積 ん だ ス ポ ー ツ マ ン に は,安 徐 脈,心
臓 容 積 拡 大(図8.7),心
静時の
電 図異常 な どが高 頻
た
織学 的 に細胞 の数
の 増 加 か 大 き さ の 変 化 な の か い ま だ 明 確 な解 答 は な さ れ て い な い.
度 で み ら れ て き た8,12,14).単純 に トレ ー ニ ン グ効 果 と さ
最 初 に 考 え られ る 重 要 な こ と は,心 筋 の 肥 大 に 見 合
れ る骨 格 筋 の 肥 大 の 場 合 と は 異 な り,ス ポ ー ツ心 臓 は
っ た 冠 循 環 の 発 達 が あ る の か ど う か と い う 点 で あ る.
病 的 な 心 臓 と所 見 が 類 似 し て い る 点 で,注
心 筋 症 の 場 合,心
意 すべ き危
筋 肥 大 に見合 うだけ の毛細 血管 や収
険 な 兆 候 か ど う か 論 争 さ れ 続 け て い る11,13).と く に
縮 蛋 白 の 増 加 が み られ な い,あ
1998年 の フ ロ ー レ ン ス・ ジ ョ イ ナ ー の 心 臓 発 作 に よ る
オ シ ン の 方 向 性 が 正 常 な もの ほ ど は 認 め られ な い こ と
急 死 と い う シ ョ ッキ ン グ な 事 実 が 生 じた よ う な場 合 に
が 問 題 視 さ れ て い る.現
は,論
そ の よ う な 欠 点 は 指 摘 さ れ て い な い.さ
争 が 再 燃 す る.
る い は,ア
クチ ン と ミ
在 の と こ ろ ス ポ ー ツ心 臓 で は らに は,ス
ポ
ス ポ ー ツ心 臓 の 安 静 時 の 徐 脈 は,副 交 感 神 経 の 亢 進
ー ツ 心 臓 は 可 逆 的 な 適 応 で あ る と 考 え ら れ て お り,徐
に よっ て もた ら され て い る こ とは 明 らか に な って い
脈 と 同 様 に 心 筋 肥 大 も ト レ ー ニ ン グ 休 止 と同 様 に も と
の 状 態 へ 戻 る と さ れ て い る.し 弁(僧
帽 弁)の
か し な が ら,変 化 し た
大 きさ まで も とに戻 るの か どうか に 関
● 問
題
1. 浅 くて速 い 呼 吸 が ガ ス交 換 の 効 率 を低 下 させ る の は な ぜ か.そ の 理 由 を述 べ な さい.
して は 現 在 ま だ わ か っ て い な い21).
2. 運 動 時 の 呼 吸(換 気)調 節 の メカ ニ ズ ム につ い て述 べ 8.12
な さい. 運 動 性 貧 血
3. 漸 増 運 動 中 の換 気 応 答 に対 す る持 久 性 トレー ニ ン グの 影 響 につ い て述 べ な さい.
長 距 離 ラ ンナ ー な ど に は 貧 血 の 状 態(ヘ
モ グ ロビ ン
濃 度 が 男 性14g/dl,女
な り,パ
性12g/dl以
下)に
ォ ー マ ン ス が 低 下 す る こ と が よ くみ ら れ る.こ しい トレ ー ニ ン グ に 伴 い,赤
フ
れは 激
血球 が物 理 的 衝撃 あ るい
4. 心 筋 に は 固 有心 筋 と特 殊 心 筋 が あ るが,そ れ ぞ れ の 特 徴 につ いて述 べ な さい. 5. 心 拍 の 調 節機 構 につ い て述べ な さい. 6. ス ポ ー ツ 心 臓 と病 的 心 臓 との 違 い に つ い て 述 べ な さ い.
は 乳 酸 な どの 影 響 に よ っ て 壊 れ や す く な っ て い る た め だ と考 え られ て い る.一 低 い の は,血
方 で は,ヘ
モ グ ロ ビ ン濃 度 が
漿 量 を増 加 させ 血 液 粘 性 を 下 げ て 流 れ や
● 参 考 文献 1) Boutellier,
す くす る 適 応 で も あ る と い わ れ る が18),そ の 場 合 に は
exercise
安 静 時 に お い て で さ え,長
Appl.
般 人 よ り1lも
距 離 ラ ンナー の血液 量 は一
多 い 計 算 に な る.ま
た エ リス ロポエ チ
ンや 自 己 血 液 の 再 注 入 な ど に よ っ て ヘ モ グ ロ ビ ン濃 度 を 上 昇 さ せ,パ グ が,マ
フ ォー マ ン ス を 上 げ る 目 的 の ドー ピ ン
ラ ソ ン,自 転 車 競 技,ス
キ ー 距 離 競 技 にお い
て 行 わ れ て い る の で は な い か と疑 わ れ る こ と も 多 い.
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図8.8
ま た,長
赤 血 球 膜 浸透 圧 抵 抗 曲 線(CPC法
に よ る測 定)
距 離 ラ ン ナ ー の 赤 血 球 の 寿 命 は,一
わ れ て い る 寿 命(120日)よ
般にい
り も 短 く な っ て い る と容
8) 家 光 素 行,宮
難 し い が,食
血 球 の 寿 命 を 簡 単 に測 定 す る の は
塩 水 の 濃 度 勾 配 を 利 用 し赤 血 球 膜 の 浸 透
圧 抵 抗 を 測 定 す る こ と に よ っ て,赤
血 球の 脆弱 性 をみ
る こ とが で き る.こ
planet centrifuge)
法 と よ ば れ,螺
れ はCPC(coil
旋 状 に巻 いた コ イルの 中 に濃度 勾配 を
つ け た 食 塩 水 と血 液 を 封 入 し て,二 を か け て,ど
重 回転 の遠 心分 離
れ く らい の 浸 透 圧 ま で 赤 血 球 膜 が 壊 れ な
い で 耐 え る こ と が で き る か を 測 定 す る もの で あ る(図
地 元 彦:安
の グ ラフの 曲線 の面積 を検討 す る ことで運動
性 貧血 にお け る赤 血球 の強 さご との状態 を詳細 にみ る こ とが で き る.
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9 運動 と末梢循環
末梢 循環 にお け る血 流 は酸素 や栄 養物 な ど組織 が必要 とす る物 質 を供給 す る とと もに,二 酸 化 炭素 や代謝 産物 な どの老 廃物 を洗 い 出す重 要 な役 割 を果 た してい る.本 講で は,運 動 に よっ て生 じる末梢 循環 の 血流 の変化 とそ の調節,な らびに トレー ニ ングの結 果 生 じる末梢 循環 の適 応 につ い て機 能的 ・構 造的側 面 か ら論 じる.
した もの で あ る.安 9.1運
動 と血 流 配 分
大 し,激 a.運
動 強 度 と血 流 変 化
量 は22lと
運 動 強 度 の 高 ま りと と もに 心 拍 出 量(cardiac が 増 加 す る こ とか ら わ か る よ う に,全
静 時 に1.2l,割
で あ っ た 筋 血 流 量 は,運
output)
身 の 血 流 量 も運
合 に し て 約20%
動 強 度 が 強 くな る と と も に 増
しい 運 動 時 に は 心 拍 出 量 が25lに な り,割
合 に し て88%に
こ の よ う な筋 血 流 量 の 変 化 に 対 し,激
対 し筋 血 流
ま で 増 加 す る. しい 運 動 時 の 内
臓 や 腎 臓 の 血 流 量 は 安 静 時 と比 べ て 逆 に 低 下 す る.つ
動 強 度 と と も に 増 加 す る.一 般 に 成 人 にお け る 安 静 時
ま り運 動 に伴 う心 拍 出量 の 増 加 は,暑
の 心 拍 数(heart
て 皮 膚 血 流 量 が 大 き く増 加 す る場 合 を 除 い て,そ
出 量(stroke
volume:SV)は60∼70mlで
拍 出 量 は 約5lで 拍 数,1回 150ml以
rate:HR)は50∼70拍/分,1回
あ る と さ れ て い る.運
拍 出 量 は増 加 し,そ
は 約4∼6倍
あ り,心 動 に よっ て心
れ ぞ れ 最 高180拍/分,
上 に も達 す る こ とが あ る.し
出 量 も最 高20∼40lに
拍
た が っ て,心
拍
に ま で 増 加 す る.図9.1は
安 静 時 に約5l
の 心 拍 出 量 を もつ 人 の 運 動 に よ る血 流 配 分 の 変 化 を示
のほ
と ん どが 筋 血 流 量 の 増 加 と考 え る こ とが で き る.な お, 脳 や 心 臓 は 激 しい 運 動 時 に お い て も安 静 時 の 血 流 量 は 維 持 され る.静
も な り,運 動 に よ っ て 血 流 量
熱 環境 下 におい
的 運 動 時 に は 強 度 が 高 くな る と筋 収 縮
に伴 う筋 内 圧 の 上 昇 に よ っ て 血 流 は 阻 害 され,血 下 が み ら れ る もの の,一
般 に,動
流低
的 運 動 時 に は筋 血 流
量 は 最 大 運 動 に 至 る ま で 運 動 強 度 に 依 存 して 増 加 す る.ヘ
モ グ ロ ビ ン濃 度 が 低 下 し た り,低 酸 素 環 境 下 に
図9.1 運 動 強 度 の 増 加 に伴 う 各組 織 で の 血 流 量 の 変 化(Andersen.19682)を
改 変)
図9.2
トレ ッ ド ミル で の ラ ンニ ン グ ス ピー ドと筋 血流 量 の 関 係13)
GR,GM,GWは,そ
れ ぞ れ 腓 腹 筋 深 層部,中
部 を示 す.P,S,TAは,そ
れ ぞ れ 足 底 筋,ヒ
間 層 部,表 ラ メ 筋,前
層 脛
骨 筋 を示 す.
お い て 酸 素 運 搬 能 力 が 低 下 し た場 合 で は 血 流 量 が 増 加 す る こ と で 酸 素 運 搬 は一 定 に 保 た れ,逆
にヘ モグ ロ ビ 図9.3
ン濃 度 が 上 昇 した 場 合 に は血 流 量 が 減 少 す る.こ う に,運
動 中 の 筋 血 流 量 は筋 の 酸 素 消 費 量(VO2)に
接 に 関 係 し て 変 化 す る.筋
のよ
安 静 時 か ら受 動 的 運 動 時,お 30W,50W,お 動)ま
密
よび70Wで
で の 時 間経 過 に お け る 大 腿 動 脈 の 血 流 変 化19)
自発 的 運 動 の 開 始 時 を0秒 と した.
血 流 量 と い っ て も活 動 筋,
非 活 動 筋 に よ っ て 筋 血 流 量 の 増 加 に 違 い が あ り,活 動
数 秒 以 内 に10倍
筋 に 特 異 的 に増 加 す る.非
活動 筋で は時 間経過 に よっ
筋 血 流 量 は 比 較 的 安 定 し,高
て 逆 に 血 管 収 縮 が 生 じ,血
流 が 減 少 す る こ とが あ る.
上 昇 し 続 け る も の の,軽
活 動 筋 で あ っ て も筋 線 維 タ イ プ に よ っ て 筋 血 流 量 の 変 化 に 違 い が あ る.図9.2は
の 後 約30∼90秒
で
強度 の運 動で はそ の後 も
い運 動 で は定 常 状 態 に なる
(図9.3).
9.2
運 動 中 の 血 流 変化 の調 節
ほ と ん どType Ⅰ 線 維 か ら な る筋 で
あ り,腓 腹 筋 表 層 部(GW)は ら な る 筋,そ
に も増 加 す る.そ
ネ ズ ミ を 使 っ た ラ ンニ ン グ
中 の 下 肢 筋 群 の 筋 血 流 量 を調 べ た も の で あ る13).図 中 の ヒ ラ メ 筋(S)は
よび 自 発的 運 動(10W,
の 片 足 に よ る動 的膝 伸 展 運
す べ てType ⅡB線
の 他 の 筋 はType Ⅰ, ⅡA, ⅡB線
在 した 筋 で あ る.ラ
維か 維 が混
ンニ ン グ ス ピー ドが0m/分
つ ま り立 位 安 静 時 の 血 流 量 は お も にType Ⅰ な る ヒ ラ メ筋 の 血 流 量 が 多 く,そ
の 時,
運 動 時 の 血 流 は どの よ う に し て 調 節 され て い る の だ ろ う か.血
流 量(F)は
圧:Pa-Pv)と
末 梢 血 管 抵 抗(R)に
線維 か ら
の 後 し だ い に ラ ンニ
還 流 圧 差(動
脈 血 圧-静
脈血
よ っ て 決 ま り,
F=(Pa-Pv)/R で 表 さ れ る.こ
れ は ポ ワ ズ イ ユ の 法 則(Poiseuille's
ン グ ス ピ ー ドが 増 す につ れ 混 在 型 の 筋 の 血 流 量 が 増 加
law)と
す る.一
加 す る の は 動 脈 血 圧 が 高 く な る こ と,静 脈 血 圧 が 低 下
方,Type ⅡB線
維 よ りなる腓 腹 筋表 層部 の血
流 量 の 増 加 は ス ピ ー ドが60m/分 て 顕 著 に な る.ヒ
以 上 に な っ て は じめ
トで は 技 術 的 問 題 か ら こ の よ う な 関
係 は 調 べ られ て い な い が,運
動 中 の 血 流 量 は,低
の 運 動 で は 優 先 的 にTypeⅠ
線 維 に 血 液 が 供 給 さ れ,
運 動 が 激 し く な る に つ れ てType ⅡA線 に な り,さ
強度
維 の血 流が 顕著
ら に 高 強 度 の 運 動 に な る とType ⅡB線
維の
よ ば れ る.つ
す る こ と,さ
ら に 末 梢 血 管 抵 抗 が 低 下 す る こ との 三 つ
が 相 互 作 用 した 結 果 で あ る.運
動 によ って生 じるこれ
ら変 化 の 主 要 な 影 響 因 子 と して,動
脈 血 圧 は運 動 強 度
に 比 例 し た 心 拍 出 量 の 増 加(第8講
参 照)が,静
圧 は 運 動 中 の 筋 収 縮 に よ る 筋 ポ ン プ作 用,さ 血 管 抵 抗 に つ い て は 交 感 神 経 系(ア
脈血
らに末梢
ド レナ リ ン作 動 性
ニ ュ ー ロ ン)の 作 用 や ホ ル モ ン(ア ン ギ オ テ ン シ ンⅡ,
血 流 量 が 増 加 す る と考 え られ る.
バ ソ プ レ ッ シ ン)な b.時
ま り,運 動 に よ っ て 血 流 量 が 増
(ア デ ノ シ ン な ど)な
間 経 過 に伴 う血 流 量 の 変 化
どに よる血管 収縮 作 用 と代謝 産物 どの血 管 拡 張 因子 の相 対 的 な変
運 動 の 開 始 と と も に急 激 な 筋 血 流 量 の 増 加 が 観 察 さ
化 が あ げ られ る.一
れ,安
血 流 量 の 増 加 の し くみ は 交 感 神 経 と代 謝 産 物 の 相 対 的
静 時0.3l/分
で あ っ た 筋 血 流 量 は,運
動 開始 後
般 的 に は,運
動 に よる 局所的 な筋
らの 因 子 は 血 管 拡 張 作 用 を もち,運
動 中の筋 血流 量 増
加 と 関 係 す る こ と が 指 摘 され て い る(表9.1).と
くに
ア デ ノ シ ン は そ の 阻 害 剤 を運 動 中 投 与 す る と筋 血 流 量 の 低 下 が 観 察 さ れ る21)こ とか ら,運 動 中 の 筋 血 流 量 を 増 加 させ る 主 要 な 因 子 と し て 考 え ら れ て い る.ア シ ン はATPを
分 解 し た 時 の 産 物 で あ るAMPを
デノ
基質 と
して 細 胞 膜 の 外 膜 に 局 在 す る5'-ヌ ク レ オ チ ダ ー ゼ と い う分解 酵素 に よって生 成 され るの で代 謝状 態 や筋収 縮 と 強 く関 連 し,筋 図9.4
て 増 加 す る.
機 能 的交 感 神 経 遮 断 の概 念 図21)
ノ ル ア ドレ ナ リ ン(NA)は 放 出 され るが,そ
血 流 量 と同 様 に 運 動 強 度 に 依 存 し
交 感 神 経 活 動 の 増加 に 関連 して
の 効 果 は骨 格 筋 の収 縮 に 関係 した 合 成物 質
に よ って 完 全 また は 部 分 的 に抑 制 さ れ る.そ
c.交
のため筋への血
感神 経 活動
運 動 中 の 筋 血 流 量 の 増 加 は 活 動 筋 に 特 異 的 で あ り,
液 や 酸 素 供 給 が 十 分 に 確 保 され る.
非 活 動 筋 で は 一 般 に 運 動 中 血 流 量 は 増 加 し な い か,あ
な力 関係 で 説 明 され,図9.4の
に ように表 され る.体
循 環(毛 細 血 管 を除 く)の すべ て の血 管 は交 感 神 経
る い は 時 間 の 経 過 と と もに 低 下 す る.非
活 動 筋 で は血
流 の 増 加 を起 こ す 筋 ポ ン プ作 用 の 働 きは 少 な く,代
(交感 神経 ア ドレナ リ ン作 動性 ニ ュー ロン)の 支配 を
産 物 もあ ま り生 成 さ れ な い 一 方 で,交
謝
感神 経 活動 が亢
受 けて い る.通 常,交 感神 経 は持 続的 に イ ンパ ルス を
進 す る こ とで 血 流 量 が 減 少 す る と考 え ら れ て い る.
血 管 に送 って いて,そ の 末端 は血 管壁 の外 膜 まで延 び
活動 筋 の血 流量 とは逆 に 内臓 や腎臓 の血 流 量 は運動
てお り,神 経伝 達物 質 と して ノルエ ピ ネフ リ ンを放 出
強 度 に 比 例 して 減 少 す る.運
す る.こ れ は血 管 平滑 筋 を収 縮 させ,適 度 な血 管 緊張
の血流 量 の低 下 の主 要 な因子 は交 感 神経活 動 の増 加 と
を起 こす こ とで さ まざ まな組織 の 血流 や血 圧維 持 に重
考 え られ て い る.実 際,腎 臓 の 交 感 神 経 活 動 の 増 加 は 運
要 な役割 を果 た して い る.運 動 に よって活 動筋 にアデ
動 強 度 に 依 存 して 増 加 す る こ とが 報 告 さ れ て い る17).
動 中に生 じる内 臓 や腎臓
ノシ ンな どの 代 謝 産物 が 蓄積 す る と,こ れ が交 感神 経 の血 管収 縮作 用 に拮 抗 的 に働 き,血 管 を拡 張 させ,筋
d.ア
の血流 量 を増 大 させ る.
運 動 中 血 管 を収 縮 させ,血 して,血
ン ギ オ テ ン シ ンⅡ,バ
ソ プ レッシ ン 流減 少 に影響 す る 因子 と
圧調 節 に関 係す るホル モ ンであ る ア ンギ オテ
ン シ ン Ⅱ や バ ソ プ レ ッ シ ン の 関 与 が 指 摘 さ れ て い る.
9.3 血 流 量 に 影 響 を 与 え る 因 子
ア ン ギ オ テ ン シ ンⅡ は 運 動 中 腎 交 感 神 経 活 動 の 増 加 に
a.筋 ポ ンプ作 用
よ る 血 中 レ ニ ン の 上 昇 に起 因 して そ の 合 成 が 高 ま る.
運 動 中,筋 血 流量 は筋収 縮 と同期 して変 化 す る.こ
バ ソ プ レ シ ン は運 動 中 の 体 温 や 血 漿 量 の 変 化 に 関 係 し
れ は筋収 縮 時 に筋 内圧 が高 ま り,細 静 脈が 押 しつぶ さ
て 下 垂 体 後 葉 か らの 分 泌 が 亢 進 す る.ア
ンギ オ テ ン シ
れ,血 管 内 の血 液 が心 臓側 へ押 し出 され る(静 脈弁 の
ンⅡ や バ ソ プ レ ッ シ ン は 運 動 強 度 に 依 存 し て 増 加 す
働 きで 末梢 側 へ は逆 流 しな い).こ の細 静 脈 の 内圧 の
る.ア
低 下 は動 脈血 圧 と静 脈 血圧 の 血圧 差 を増大 させ,血 液
投 与 す る と 運 動 中 の 内 臓 の 血 流 低 下 が 軽 減 さ れ る22,23)
を よ り流 れ やす く させ る.こ の よ うな筋ポ ンプ作用 は
こ と か ら,ア
と くに,運 動 開始直 後 の筋 血 流量 の増 加の 主要 な 原因
動 中 の内臓 血 流量 の 低下 の重 要 な因 子 と考 え られて い
と考 え られて い る19).
る.
b.代 謝産 物 な ど(ア デ ノ シ ン,乳 酸 な ど) 運 動 中 に活 動 筋 で は乳 酸 の生 成 が 高 ま り,pHの
e.血
低
ン ギ オ テ ン シ ン Ⅱや バ ソ プ レ ッ シ ンの 拮 抗 剤 を
ン ギ オ テ ン シ ンⅡ や バ ソ プ レ ッ シ ン は 運
管 内皮 細胞 由来 弛緩 因子 の一酸化 窒 素
一 酸 化 窒 素(nitric
oxide
下やPCO2の 上 昇 が 起 こ る.ま た,筋 収 縮 に伴 い筋温 も
解 明 に よ る1998年
上 昇 し,ア デ ノ シ ンな どの代 謝産 物 も増加 す る.こ れ
表 さ れ る よ う に,NOは
: NO)の
生理 的 な役 割 の
ノ ー ベ ル 生 理 学 ・医 学 賞 受 賞 に 代 今 日非常 に注 目され て い る物
質 で あ る.血
管 内 皮 細 胞 由 来 のNOは
的 な 刺 激(ず
り応 力)や
セ チ ル コ リ ン),ハ
血流 に よる機 械
コ リ ン作 動 性 ニ ュ ー ロ ン(ア
イポキ シア な どに よる 刺激 に よっ
て 増 加 す る こ とが 知 られ て お り,内 皮 細 胞 のNO合 酵 素 の 働 き に よ っ てL-ア NOは
成
ル ギ ニ ン か ら生 成 さ れ る.
動 脈 壁 に あ る 血 管 平 滑 筋 の グ ア ニ レー トシ ク ラ
ー ゼ の 活 性 化 と そ の 後 のcGMPの 張 を 引 き 起 こす.NOの
働 きに よって血 管拡
役 割 と しては安 静 時 の血 管 緊
そ の 産 生 が 増 大 す る こ とが 報 告 さ れ14),そ の 役 割 が 注 目 さ れ て い る.エ
ン ドセ リ ン-1は
作 用 を も つ ほ か,ノ
直 接 的 な血 管収 縮
ル エ ピ ネ フ リ ンの 血 管 収 縮 作 用 を
増 大 さ せ る 作 用 を も っ て い る.こ て エ ン ドセ リ ン-1が
の よ う な 働 き に よっ
運 動 中 の 血 流 再 配 分 に 貢 献 して
い る 可 能 性 が あ る.そ
の ほ か に,神
経伝 達物 質で あ る
ドー パ ミ ンや ニ ュ ー ロ ペ プ チ ドYが 運 動 中 増 加 し,腎 臓 の 血 管 収 縮 に影 響 を 及 ぼ す こ と を 示 唆 した 報 告24)が
張 の 維 持 に と っ て 重 要 で あ る こ と が 知 ら れ て い る が,
あ る.し
運 動 時 の 筋 血 流 量 の 増 加 に対 す る 役 割 につ い て は あ ま
子 に つ い て 運 動 との 関 わ りは現 在 の と こ ろ明 確 で な
り明 確 で な い と こ ろ が あ る.NO合
い.
成酵 素 の 阻害 剤 を
か し な が ら,こ れ らの 因 子 を 含 め,多
くの因
投 与 す る と運 動 時 の 血 流 量 が 低 下 した と す る報 告6)が あ る 一 方 で,そ
の よ うな阻害 剤 を投与 して も運動 時 に
9.4 ト レ ー ニ ン グ に よ る 血 流 量 の 変 化
血 流 低 下 が み ら れ な か っ た り25),あ る い は 安 静 時 の 血 流 低 下 と 同 程 度 で あ っ た7)と す る 報 告 もあ る.そ か で,最
近,Hicknerら8)は
のな
今 までの 技術 的 な問題 を
考慮 した うえ で いろ い ろな強 度で の持 久的 な運 動 中の NOの
影 響 を 調 べ,筋
血 流 量 の 増 加 にNOが
す る こ と を 報 告 し て お り,NOが
運 動 中 の 血 流 量 に 及 ぼ す ト レー ニ ン グ の 効 果 に つ い て は,安
静 時,最
大下 の 運 動,最
大運 動 に分 け て論 じ
て い く こ とに す る.
強 く関与
運動 中 の筋 血 流量 の
増 加 に 関 与 す る 可 能 性 を指 摘 して い る.
a.安
静
時
安 静 時 に お い て は トレ ー ニ ン グ に よ っ て 筋 の 交 感 神 経 活 動 に 変 化 が み ら れ な い.ま
た,心
拍 出 量 も ト レー
f.そ の 他 の 因 子
ニ ン グ 前 と比 較 して 違 い が み られ な い .こ の よ う な 現
上 記 以 外 に も 数 多 くの 因 子 が 血 流 調 節 に 関 係 し て い
象 と 関 連 して,安
る こ と が 知 ら れ て い る(表9.1).そ
響 を 受 け な い と考 え られ て い る.
れ らの 因 子 の 中 で,
静 時 の 筋 血 流 量 は ト レー ニ ン グ の 影
内 皮 細 胞 由 来 の 血 管 収 縮 因 子 で あ る エ ン ドセ リ ン-1 を 運 動 中 に投 与 す る と 内臓 の 血 流 量 が 低 下 す る こ と1),
b.最
ま た 運 動 中 血 流 量 が 増 加 す る 活 動 筋 に お い て エ ン ドセ
持 久 性 トレ ー ニ ン グ 後,ト
リ ン-1の
運 動 を 行 っ た 場合,酸
産 生 が 変 化 し な い の に 対 し,非
活動筋では
大 下 の運動
表9.1 細 動 脈 を収 縮 ま た は 拡 張 させ る要 因(熊 田,199412を
レー ニ ン グ 前 と 同 負 荷 の
素 摂 取 量 や 心 拍 出 量 は トレ ー ニ
改 変)
ン グ前 と 変 わ ら な い こ と が 知 ら れ て い る.血 い て 観 察 す る と,筋
流量 につ
血 流 量 は 変 化 し な い か,あ
少 な い 値 を示 す 一 方,内
臓 な ど の 非 筋 肉組 織 につ い て
は ト レー ニ ン グ前 よ り血 流 量 は 増 加 す る.ト グ 前 と 同 等 か,そ
るい は
レーニ ン
れ 以 下 の 筋 血 流 量 で ト レー ニ ン グ 後
に 運 動 す る と い う こ と は,ト
c.最
大 運 動
持 久 性 ト レー ニ ン グ 後,最
大 心 拍 出 量 は 増 加 す る.
各 組 織 の血 流 量 に つ い て み る と最 大 運 動 中 の筋 血 流 量 は 増 加 す る 一 方,非
筋 肉組 織 や非 活動 筋 の血流 量 は ト
レ ー ニ ン グ前 と変 わ ら な い.最
大 運動 中の筋血 流量 の
レ ー ニ ン グ前 と 運 動 中 の
増 加 は 活 動 筋 の 血 流 の 増 加 に起 因 し,そ の 増 加 の 程 度
酸 素 消 費 量 が 等 し い こ と か ら,筋 の 酸 素 吸 収 率 が 高 ま
も ほ ぼ 心 拍 出 量 の 増 加 に等 しい こ と か ら も,最 大 運 動
っ た こ と が 推 察 さ れ る.ArmstrongとLaughlin4)は
中 の 筋 血 流 量 の 増 加 は 心 拍 出量 の 増 加 が そ の 主 要 な 原
持
久 性 トレ ー ニ ン グ を ラ ッ トに 行 わ せ トレ ー ニ ン グ 群 と 非 ト レー ニ ン グ群 を比 較 した と こ ろ,ト
レー ニ ン グ群
で は 運 動 中 活 発 に 動 員 され る 活 動 筋 内 のType ⅡA線 か ら な る 部 位 に,よ と を み つ け た.こ
因 と考 え られ て い る.
維
9.5
末 梢 循 環 の 構造
り 多 くの 血 液 が 供 給 さ れ て い た こ
の よ う な 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ る
筋 の 酸 素 吸 収 率 の 増 大 は,運 動 中 の 筋 肉 内,お
よび 筋
血 管 は血 液 を 全 身 に 循 環 させ る パ イ プ と して の 役 割 を もつ ほか に,運
動 時 の 血 流 再 配 分 や 血 圧 調 節 な どの
肉 間 の 血 流 分 布 が 変 化 し,活 発 に動 員 さ れ て い る 筋 線
血 流 制 御 に 深 く関 わ っ て い る.そ
の た め,こ
維 に よ り多 くの 酸 素 を 供 給 した た め に 生 じた と 考 え ら
べ て き た機 能 面 と 関 連 づ け て,そ
の構 造 を理解 す る こ
れ る.ま と,ト
た,最
大 運動 で あ ろ うと最大 下運 動 であ ろ う
レ ー ニ ン グ 効 果 が あ ら わ れ る の は トレ ー ニ ン グ
に よ っ て 活 発 に 動 員 さ れ た 部 位 に特 異 的 で あ る.最 下 の 運 動 中,ト
大
レ ー ニ ン グ に よ っ て 活 動 筋 に よ り多 く
とが 大 切 で あ る.動
れ まで述
脈 は 心 臓 か ら末 梢 へ い くに 従 っ て
分 岐 し,そ の 径 は しだ い に 細 く な っ て い く.血 管 の 直 径 が1mm∼100μmま
で の 動 脈 を 小 動 脈 とい い,さ
ら に細 くな り直 径 が 約40μm(100∼20μm)と
なっ
の 血 流 量 が 供 給 さ れ る よ うな 血 流 の 再 配 分 が 生 じた し
た と こ ろ を 細 動 脈 とい う.血 管 の 内 層 は 内 皮 細 胞 に よ
くみ と し て は,ト
っ て す べ て 覆 わ れ て い て,そ
レーニ ングに よる筋 線維 の動 員 の変
の ま わ り を平 滑 筋 細 胞 や
化 とそ れ に 付 随 した 血 管 拡 張 因 子 で あ る代 謝 産 物 や ア
弾 性 線 維 が 囲 っ て い る(図9.5).平
滑 筋 細 胞 に は血 管
シ ドー シ ス の 局 所 的 な 増 加 と筋 ポ ン プ 作 用 の 効 率 化 な
を 収 縮 ・弛 緩 させ る 働 きが あ る.小
ど の 血 流 増 加 要 因 の 関 与 と,筋 の 交 感 神 経 活 動 の 低下
の 平 滑 筋 細 胞 が 発 達 し て い て,血
動 脈や 細動 脈 は こ
管 内 径 を 変 化 させ る
や そ れ に対 す る 血 管 の 感 受 性 の 低 下 と い っ た 血 管 収 縮
こ と に よ っ て 末 梢 抵 抗 をつ く り 出 し,血 圧 や 毛 細 血 管
活 動 の 低 下 が 関 与 し て い る も の と考 え ら れ る.ト
へ の 血 流 量 を 調 節 し た りす る.
レー
ニ ング後 に内臓 な どの非筋 肉組 織 の血 流量 の低 下 が軽
毛 細 血 管 は 血 液 と細 胞 間 の 物 質 交 換 が 行 わ れ る 主 要
減 され るが,そ
の 理 由 と して は 交 感 神 経 活 動 や 血 漿 ア
な 場 所 で あ る.毛 細 血 管 の 構 造 は物 質 の 出 入 り に適 し
ン ギ オ テ ン シ ンⅡ お よ びバ ソ プ レ ッ シ ン濃 度 が 低 下 し
て お り,非 常 に 薄 く,内 皮 細 胞 と周 皮 細 胞 か ら構 成 さ
た こ とが 関 係 し て い る と考 え ら れ て い る.
れ て い る(図9.5).毛
図9.5 末梢循環 と毛細血管 の模式図20)
細 血 管 自体 は 平 滑 筋 を も た な い
こ と か ら,毛 細 血 管 へ の 血 流 量 の 調 節 は 小 動 脈 や 細 動
む よ う に 配 列 さ れ て い る.筋
脈 の 収 縮 ・拡 張 に依 存 し て い る こ と に な る.毛
毛 細 血 管 に よ っ て 囲 ま れ て い る が,筋
の 全 周 は,2∼3個
そ の 直 径 は 部 位 に よ っ て 異 な る が,ほ ∼10μmの
細 血管
の 内 皮 細 胞 に よ っ て 囲 ま れ て い て,
範 囲 に あ る .赤
μmで あ る た め,毛
と ん ど が 直 径4
血 球 の 大 き さ は 直 径 約8
細 血 管径 は赤 血 球が 一 時的 に 変形
線 維 の 多 く は3∼6本
線 維 タイ プに よ
っ て そ の 毛 細 血 管 数 は 異 な り,Type ⅡB線 Ⅰ 線 維 やType ⅡA線
の
維 は,Type
維 と比 較 して そ の 数 は 少 な い.そ
の 一 方,毛 細 血 管 の トレー ニ ン グ に対 す る 適 応 能 力 は, 筋 線 維 タ イ プ 問 で ほ と ん ど違 い は み ら れ ず,運
動 に動
し て 管 内 を通 過 す る こ と が で き る 大 き さ で し か な い.
員 され,毛
赤 血 球 は そ の よ う な 狭 い と こ ろ を ゆ っ く り と流 れ,効
管 数 は増 加 す る.つ
率 よ く物 質 交 換 を行 っ て い る.毛
員 さ れ る よ う な ト レー ニ ン グ で は どの タ イ プ の 筋 線 維
胞 の 役 割 に つ い て は,現
細 血管 を囲む 周皮 細
在 で も不 明 の 点 が 多 い.
毛 細 血管 と トレーニ ング
格 筋 の毛 細 血管 は筋 線維 の走 行 に沿 って 伸
び て い る が,そ れ は 直 線 的 で な く大 き く蛇 行 して い る. そ の 結 果,毛
満 園 ら16)が5000m∼20kmま
ま り,す べ て の 筋 線 維 タ イ プ が 動
も毛 細 血 管 数 の 増 加 が み られ る. ま た,骨
9.6
細 血 管血 流 量が 増大 す る筋 にお い て毛細 血
で の ラ ンニ ン グ パ フ
細 血 管 長 は 直 線 的 で あ る よ り もず っ と 延
長 す る こ と に な り,筋 線 維 と の接 触 面 積 を広 く保 つ こ
ォ ー マ ン ス と毛 細 血 管 密 度 との 間 に 有 意 な 相 関 関 係 を
とが で き る.こ
み つ け て い る よ う に,毛
効 率 よ く 行 う こ と に 貢 献 して い る.そ し て,ヒ ラ メ筋 な
細血 管 の発 達度 は持 久性 パ フ
ォー マ ン ス に 影 響 を 与 え る 重 要 な 因 子 で あ る.持
久性
トレ ー ニ ン グ は毛 細 血 管 の 形 態 を 発 達 させ る が,そ 変 化 は 最 大 酸 素 摂 取 量 の 変 化 に 先 行 す る か,も ほ ぼ 平 行 す る と考 え られ て い る.図9.6に 取 量,筋
の 酸 化 系 酵 素 活 性,毛
の
し くは
最 大酸 素摂
ど のType Ⅰ 線 維 が 多 い 筋 で は,Type Ⅱ
線 維 の多 い筋
よ り も蛇 行 の 程 度 が 大 き い こ と が わ か っ て い る.し か し な が ら,持
久 性 ト レ ー ニ ン グ は 蛇 行 の 程 度 に対 し て
は ほ とん ど影 響 し な い こ とが 報 告 され て い る18).ま た,
よ
トレ ー ニ ン グ は 毛 細 血 管 内 腔 の 大 き さ に も 影 響 す る.
び 筋 線 維 横 断 面 積 の 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ る 変 化 を
高 強 度 の 持 久 性 トレ ー ニ ン グ で は 毛 細 血 管 数 の 増 加 と
模 式 的 に 示 し た.8週
と も に 内 腔 面 積 の 拡 大 が 起 こ り,そ の 結 果 と し て 毛 細
間 の 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ っ
て 最 大 酸 素 摂 取 量 は 約15%の も 約20%程
細 血 管 数 と密 度,お
の こ と は 血 液 と筋 線 維 間 の 物 質 交 換 を
増 加 を,毛
度 の 増 加 を 示 して い る.ま
細 血 管密 度
た,脱
ニ ン グ に よ っ て も これ ら の 指 標 は 比 較 的 ゆ る や か な 低 下 を示 す.こ ー ニ ン グ後
血 管 表 面 積 の 増 加 を生 じる こ とが 観 察 さ れ て い る10).
トレー 9.7
毛 細 血 管 の 新 生
れ に 対 し酸 化 系 酵 素 活 性 は8週 間 の ト レ ,約40%の
増 加 を 示 す 一 方 で,脱
トレー
持 久 性 トレ ー ニ ン グ を行 う と動 員 さ れ た 筋 線 維 で は
ニ ン グ に よ っ て す み や か に ト レー ニ ン グ 効 果 が 失 わ れ
酸 素 や 栄 養 素 な ど の 需 要 が 高 ま り,よ
る.
給 を必 要 とす る よ う に な る.こ
図9.7に
図9.6
示 した よ う に,毛
り多 くの 血 液 供
の 際,血
液 供給 が十 分
細 血 管 は筋 線 維 を 取 り 囲
トレ ーニ ングお よ び脱 ト レー ニ ン グに よ る最 大 酸 素 摂 取 量 お よ び 筋 の 適 応 の 模 式 図(Andersenと Henriksson,19773);Klausenら,198111)よ
り作 図)
図9.7
ラ ッ ト足 底 筋 の横 断像9)
毛細 血管 が拡 張 した状 態 にあ る顕 微 鏡 写 真.バ
ー は30μm.
で な け れ ば,筋
細 胞 は必 要量 の酸 素 や栄 養素 を摂取 す
る こ とが で きな い.こ の よ う な 状 態 に 対 処 す る た め に, 生 体 は既 存 の 毛 細 血 管 か ら枝 を伸 ば す(発 う に 新 し い パ イ プ をつ くる.こ 生 と よ ん で い る.毛
細 血 管 は血管 内 皮細 胞 によ って構
成 され て い る た め,血 味 して い る.血
芽 す る)よ
の よ う な現 象 を 血 管 新
管 新生 とは内皮 細 胞の増 殖 を意
管 新 生 の 結 果,毛
細血 管 の容積 が増 大
し,細 胞 へ 十 分 な 血 液 を供 給 す る こ とが 可 能 に な る. 近 年,内
皮 細 胞 の 増 殖 メ カ ニ ズ ム の 解 明 は 分 子 レベ
ル で 急 速 に 進 ん で い る.運
動 時 には毛 細血 管へ の血 流
量 が 急 激 に 高 ま り,こ れ に 伴 っ て 毛 細 血 管 壁(血 皮 細 胞)に
は,ず
り応 力 が 加 わ る.ず
管内
り応 力 の 増 大 は
血 管 内 皮細 胞 の 増 殖 活 性 を示 す 線維 芽 細 胞 増 殖 因 子 (fibroblast growth ま た,運
factor:FGF)な
細 胞 増 殖 因 子(vascular VEGF)を
ど の 産 生 を 高 め る.
動 中 に 生 じ る よ う な低 酸 素 状 態 は,血 endthelial
growth
管 内皮
factor:
発 現 さ せ る こ と が 報 告 さ れ て い る5).こ れ
面 積 の 拡 張 は ガ ス交 換 の 行 わ れ る 毛 細 血 管 表 面 積 を増 加 さ せ る た め,ガ
ス の 移 動 効 率 を 高 め る.ま
と 細 胞 内 の ガ ス 分 圧 差 を つ く り 出 し,毛
た,血
液
細 血 管 か ら筋
細 胞 ま で の 酸 素 輸 送 に 重 要 な 役 割 を 果 た して い る の が ミ オ グ ロ ビ ン で あ る.ミ
オ グ ロビ ンは赤 血球 中 のヘ モ
グ ロ ビ ン と 同 様 に 鉄 を 含 ん だ 蛋 白 質 で あ り,筋 多 量 に 含 ま れ て い る.ミ
細 胞 に
オ グ ロビ ンの機 能 には筋 細胞
内 に 酸 素 を 貯 蔵 す る こ と,運
動 時の細 胞 内の 酸素 分圧
を 非 常 に 低 く(1∼3torr)保
つ こ と,細
胞 内で の酸素
濃 度 を ほ ぼ 均 一 に す る こ と な ど が あ る.と
くに 筋 細 胞
内 に お け る 低 い 酸 素 分 圧 は 毛 細 血 管 との 間 に 大 き な分 圧 差 を 生 じ さ せ,効
率 の よ い 酸 素 輸 送 を可 能 に して い
る 点 で 重 要 で あ る. ミ オ グ ロ ビ ン の 濃 度 は 筋 の 種 類 に よっ て 異 な っ て い る.一
般 的 に 心 筋,横
隔 膜,ヒ
ラ メ筋 な どの 酸 化 能 力
の す ぐ れ て い る 筋 で は 濃 度 が 高 い.小
動 物 に 持 久性
ト
レ ー ニ ン グ を 行 う と ミ オ グ ロ ビ ン 濃 度 は 増 加 す る が,
ら の 血 管 新 生 因 子 は 細 胞 の 増 殖 と形 態 形 成 を調 節 して
ヒ トの 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ っ て ミオ グ ロ ビ ン濃 度
い る.運
が 増 加 し た と い う 研 究 結 果 は 示 さ れ て い な い15).
せ,毛
動 は これ らの血 管新 生 因子 の発現 量 を増加 さ
細 血 管 の 形 態 を 発 達 さ せ る と考 え ら れ て い る.
し か し な が ら,血
管 新 生 の 機 序 に つ い て は 不 明 な点 が
多 く残 され て お り,現 在 の と こ ろ,運 や 筋 収 縮 に よ る 機 械 的 な刺 激,さ
動 時の血 流変 化
●
問
題
1. 一 般 の 健 康 な 人 の 安 静 時 に お け る 心 拍 数,1回
拍 出 量,
お よび 心拍 出量 は そ れぞ れ どの く らい で あ るか 答 え な
らに筋細 胞 の低酸 素
さ い.
状 態 な どの さ ま ざ ま な 要 因 が 相 互 に 働 い て 血 管 新 生 を 導 くの で は な い か と考 え られ て い る.
2. ポ ワ ズ イ ユ の 法 則 を 説 明 し な さ い. 3. 筋 ポ ン プ 作 用 を 説 明 し な さ い. 4. 血 流 調 節 に お け る 交 感 神 経 活 動 と 代 謝 産 物 の 関 わ り を
9.8
説 明 し な さ い.
末 梢 で の ガ ス 交換
5. 細 動 脈 と 毛 細 血 管 の 構 造 や 機 能 的 な 違 い に つ い て 述 べ
血 液 が動 脈か ら筋組 織 の毛細 血 管 を経 由 して静脈 に
な さ い. 6. 持 久 性 ト レ ー ニ ン グ に 対 す る 毛 細 血 管 の 適 応 に つ い て
流 れ た 際 に 生 じ る 酸 素 量 の 差 を動 静 脈 酸 素 較 差 と い う.安 静 時 の 動 静 脈 酸 素 較 差 は 血 液100mlに ∼6ml程 mlに 度,体
度 に す ぎないが
達 す る.運
,高
対 し て4
強 度 運 動 時 に は15∼16
動 中 に は 二 酸 化 炭 素,水
果)こ
とが 知 られ て い る.こ
れ は末
梢 組 織 に お い て ヘ モ グ ロ ビ ン か ら酸 素 の 解 離 が 促 進 さ れ,運
さ い.
素 イ オ ン濃
温 の上 昇 な どに よって酸 素解 離 曲線 が右 方へ 移
動 す る(Bohr効
述 べ な さ い. 7. 酸 素 運 搬 に お け る ミ オ グ ロ ビ ン の 役 割 に つ い て 述 べ な
動 中 に 酸 素 が 効 率 よ く筋 組 織 へ 取 り込 ま れ る こ
と を 意 味 して い る.
●
参 考
文
vascular moderately
ガ ス 交 換 は 毛 細 血 管 と 筋 細 胞 膜 を 介 した 拡 散 に よ っ て
In:Exercise Press, New 3) Andersen,
行 わ れ る.ガ 積)な る.ト
ス の 移 動 率 は 拡 散 面 積(毛
細 血管 の表 面
らび に 血 液 と細 胞 内 の ガ ス 分 圧 差 に 比 例 し て い レー ニ ン グ が も た らす 毛 細 血 管 数 の 増 加 や 内 腔
effects
E. and Lundberg,
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heavy prolonged
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endothelia-1
and
during
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Role
of
K.,
C., P.
Wagner,
H.,
Tseng,
bout
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muscle
to
a
H.-M.,
growth
single
muscles
factor
15)
exercise.
J.
:355-361,1996. Proctor,
nitric
rhythmic
E.
Wagner,
responses
Appl. 6)
C.,
D.
oxide
in
16)
N.,
Dietz,
exercise
handgripping
in
N.
M.
and
hyperaemia
Joyner,
humans. J.
M.
during
J.:
M.,
A.,Casino,
Panza,
P.
R.
J. A.,
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vasodilation. R. of
C.,
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oxide
dynamic
M.,
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J. S., in
oxide
to
Ehsani,
skeletal
exercise
A.
Kano,
exercise-induced
Kano,
Shimegi,
S.,
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Kohrt,
blood
humans.
W.
flow
Am.
Masuda,
K.,
J.
at
M.:
rest
and
on
plantaris
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Klausen,
of
muscle.
H.
and
capillary
Eur.
Katsuta,
network
J. Appl.
20) in
113
Physiol.,75:
of
different in
L.
B.
skeletal
Maeda,
J.
Sakato,
H.,
intensity rat
Ohmori,
H.
endurance
skeletal
and
D.
C.,
ビ ン の 特 性
場
一
徳,金
尾
ン ス に 貢 献 す
L.
B.,
と 運 動
洋 治,勝
る 生 理 的 要
Mittelstadt,
exercise
S. W.
on
rabbits.J.
renal
Appl.
へ の
関 わ
田
茂:
因
に つ い
and
Clifford,
sympathetic
P.
nerve
Physiol.,74:2099-2104,
Mathieu-Costello,O.
in
rat
Am.
soleus
and
muscle
is
not
West,
J.B.:Capillary
affected
by
endurance
J. Physiol.,256:H1110-H1116,1989. G.
and
Saltin,
exercise
Rhodin,
and
Int.
Pelle, I.:Adaptive
muscle
and
Acta
and
in
B.:Muscle
humans.
blood
Am.
J.
flow
at
onset
of
Physiol.,274:H314-
22)
の 調 節 機
序.医
科
23)
Scand.,
生 理 学 展 望(市
岡 正
道
and
patterns
Armstrong, as
Miyauchi,
T.,
Saltin,
B.,
R.
B.:Muscle of
running
blood speed
ほ
24)
flow in
M.,
Saito,
M.,
Maki,
rats.
S., Goto,
G.,
the
C.
the
and
flow
Symons,
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wall.
M. in
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Stebbins,
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C.:
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:421-436,1998. D.:Vasopressin
response
L.
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contributes
dynamic
exercise.
Am.
J.
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angiotensin Ⅱ
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Bell,
dynamic
conscious
Raedgran,
Appl. 環
M.
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Poole,
to
training
衛:循
Laughlin,
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American
:9-16,1981.
Am. 14)
K.,
network
か 共 訳),p.586,丸 13)
Masuda,
Andersen,
capacity, during
田
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ツ 科 学,16:7-17,1998.
文,麻
フ ォ ー マ
P., of
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:93-96,1997. K.,
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levels
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Microcirc.,17
熊
K.
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21) Shimegi,
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the
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O'Hagan,
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Ohmori,
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12)
留
オ グ ロ
・ ス ポ ー
田 浩
in
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茂:ミ
走 パ
flow
1993. 18)
97-101,1997.
in
良 一,宮
participate
blood
H322,1998.
Y.,
hypertrophied
11)
田
・長 距 離
of
Appl.
ら き 健 康
tortuosity
A.
muscle
in
S.:Morphological
10)
園
activity
of
H405-H410,1997. 9)
満
ば
て.久
:259-265,
:2853-2858,1994.
Fisher,
nitric
during
C. A.
nitric Circulation,90
Hickner, Role
Kilcoyne,
Quyyumi,
endothelium-derived
8)
田 和 実,勝
中
prolonged
Physiol.,488
増
endothelin-1
changes
S.:Effect
Gilligan, D.
M.:Does
in humans?J.
り.い
1995. 7)
Matsuda,
exercise-induced
Hjemdahl,
in
humans.
Wilson,
J.
derived
relaxing
humans.J.
P.,
neurohumoral
R.
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Theodorsson, and
J. Appl. Kapoor, factor
vascular
and
Nussberger, to
dynamic
Physiol.,70:2279-2286,1991. S.:Contribution
to
E.
responses
exercise-induced
Appl.Physiol.,75:2740-2744,1993.
of
endothelium vasodilation
in
10 乳酸 と高強度運動 時のエネルギー代謝
100m走
な ど の 短 距 離 走 を 行 っ た 直 後 の 脚 の 筋 肉 に は,安
胞 内 に 蓄 積 す る.こ
ー プ が 「AT」(anaerobic
threshold:無
た,1970年
酸 素 性 作 業 閾 値)と
な 論 争 が 行 わ れ て き た10).改 訂 前 の 「 運 動 生 埋 学20講 の 概 念 お よ び論 争 点 に つ い て の 解 説 を 行 っ て き た.し
い る.し
近 くの 乳 酸 が 筋 細
の よ う な こ と か ら,乳 酸 は疲 労 物 質 の 代 表 と して 古 くか ら注 目 さ れ,ス
ー ツ 生 理 学 に お い て も多 く の 研 究 が な さ れ て き た .ま
終 わ りが み ら れ,現
静 時 の5∼7倍
代 に はWassermanら
ポ
のグル
い う概 念 を 提 唱 し,最 近 まで 活 発
」 に お い て もATに一
つ の 章 を さ き,そ
か し なが ら,近 年 お お よ そ こ の 論 争 に も
在で は無 酸素性 作 業閾 値 とい う初期の 概念 は ほぼ崩 れ去 った と考 え られて
か し,こ の 論 争 に よ っ て 多 くの 研 究 が な さ れ た こ とか ら,乳 酸 そ の もの お よ び 乳 酸 生
成 の お お も と で あ る解 糖 系 を 含 め て,運 トが 生 じ た.本
講 で は,乳
動 中 の筋 エ ネ ルギ ー 代 謝 の 理 解 が 進 ん だ と い う メ リ ッ
酸 が 生 成 さ れ る よ う な 短 時 間 ・高 強 度 運 動 時 の エ ネ ル ギ ー 代 謝 に つ
い て 概 説 す る.
は乳 酸 性 作 業 閾 値(lactate 10.1
い わ ゆ るATの
概 念
る こ とが 一 般 的 に な りつ つ あ る.し もATと
Wassermanら
は,漸
く よ う な 運 動 で,換
threshold:LT)と
増 的 に 運 動 負 荷 が 上 昇 して い
VTお
た が っ て,本
い う 表 記 は 基 本 的 に は 用 い ず,内
よ びLTと
表記 す 講で
容 に応 じて
い う表 現 を 用 い る.
気量 あ るい は二酸化 炭 素排 出量 が
非 直 線 的 に 増 加 す る 地 点 をATと
名 づ け た10).ま
10.2
た,
Lactate
shuttleの
概 念
血 中 乳 酸 の 上 昇 ポ イ ン トも ほ ぼ 同 地 点 を 示 す こ とが 多 く観 察 さ れ た.そ
れ ら の 結 果 か ら 彼 ら は,運
動 強 度が
近 年,運
動 中 の 乳 酸 の 役 割 に つ い て,Lactate
高 ま る と筋 組 織 内 が 低 酸 素 に 陥 り,無 酸 素 的 エ ネ ル ギ ー 代 謝 に よ る エ ネ ル ギ ー 供 給(解 糖 系)が 開 始 され る
shuttleと い う概 念 が 提 示 さ れ て い る(図10.1)1).従
地 点 がATで
さ れ て い た が,じ
あ る と い う解 釈 を行 っ て き た.
来,乳
酸 は"疲
労 物 質"あ
る い は"最
終 産 物"と
つ は 運 動 中 に お け るATP生
規定
成のた
こ こ で 問 題 とな る の は,組 織 内 が 低 酸 素 状 態 に 陥 っ
め の 重 要 な 酸 化 基 質 で あ る こ とが 証 明 さ れ た.ま
て か ら解 糖 系 が 動 員 され る と い う概 念 で あ る.こ
乳 酸 が 生 成 さ れ るの は お も に 速 筋 線 維 で あ る が,こ
関 して は こ の 後 で 詳 述 す る が,解 ギ ー 需 要(運
動 強 度)に
れに
糖 系 の動 員は エ ネル
依 存 して い る の で あ っ て,筋
た, の
生 成 され た 乳 酸 を基 質 と して 利 用 す る の は お も に遅 筋 線 維 で あ る と 考 え ら れ て い る.こ
の よ うな乳酸 の振 る
組 織 内 が 低 酸 素 に な っ た た め な さ れ る の で は な い.し
舞 い をLactate shuttleと 定 義 づ け て い る.ヒ
か しな が ら,非
た と え ば 脚 な どの 筋 は 速 筋 と 遅 筋 の ミ ッ ク ス で構 成 さ
直 線 的 に換 気 量,二
酸化 炭素 排 出量お
よ び 乳 酸 が 上 昇 す る と い う 現 象 は,か 際 に 確 認 さ れ る現 象 で あ る.し
な りの 頻 度 で 実
た が っ て,現
在 で は換
れ て い る が,こ
れ はLactate
トの 場 合,
shuttleが 効 率 よ く機 能 す
るた め に は 都 合 が よ い こ と に な る.
気 量 を 指 標 に し た 場 合 に は 換 気 性 作 業 閾 値(ventila
パ フ ォ ー マ ンス 向 上 の 立 場 か ら考 え る と,筋
tory threshold:VT),血
ー ゲ ンや 血 中 グ ル コ ー ス が 解 糖 系 のATP生
中 乳 酸 を指 標 に し た 場 合 に
グ リコ
成 の基 質
疲 労 を 引 き 起 こ す こ と は よ く知 ら れ て い る 事 実 で あ る.し
た が っ て,ATPの
る こ と は,筋
消 費 と再 合 成 の 収 支 を測 定 す
運動 の仕 組 み を理解 す る うえで は重 要 と
考 え られ る.し
か しな が ら,筋
のATP濃
度 を測定 す る
こ と は 非 常 に 難 しい の が 現 状 で あ る.な ぜ な ら ば,消 費 と 同 時 に 再 合 成 が な さ れ る の で,み
か け上 の変化 は
非 常 に小 さ い た め で あ る.
10.4
ATP再
高 強 度 運 動 時 のATP供
合 成 の た め の 運 動 中 の エ ネ ル ギ ー 利 用 は,運
動 強 度,運
動 時 間,ト
レ ー ニ ン グ状 態 お よ び 基 質 の 利
用 能 力 に 依 存 し て い る.た よ う な運 動 強 度 の 時,解 心 と な る.さ
と え ば50%VO2maxを
糖 に よるエ ネル ギー供 給が 中
以 内 の全 力 運 動 の 場 合,PCrと が 等 量 を 示 す.運 Lactate
shuttle1)
超 える
ら に 短 時 間 ・高 強 度 な 運 動 に な る とPCr
が 重 要 な 役 割 を 果 た す.表10.1に
図10.1
給 系
示 した よ う に10秒 解 糖 に よ るATP供
給量
動 時 間 が さ らに 短 くな れ ば,PCrに
よ る 供 給 の 割 合 が よ り高 くな る と考 え ら れ る.一
方,
運 動 時 間 が 長 くな る と解 糖 系 に よ る 貢 献 の 割 合 が 増 す と して 用 い られ て 乳 酸 が 生 成 さ れ る が,そ
の乳 酸 をい
か に 基 質 と し て 利 用 で き る か が キ ー と な る.こ 乳 酸 を筋 中 に た め な い よ う に,い で き る か の"洗
い 流 し能"に
れ まで
か に 早 く血 中 に 除 去
注 目 が 集 ま っ て い た が,
基 質 と して 利 用 し た 方 が 効 率 は よ い こ と に な る.し が っ て,ミ
た
トコ ン ドリ ア の 酸 化 能 力 を 高 め る こ とが 重
要 と な る.
10.3
こ と に な る.た
と え ば,運
動 時 間 が30秒
糖 に よ る 供 給 量 はPCrの2倍
以 上 に な る.
こ こ で 注 意 し た い の は,Margariaら5)以 動 生 理 学 の 教 科 書 に,「10秒 PCrに
よ るATP供
性 さ れ て,グ
に な る と解
来 多 く の運
以 内 の 激 し い 運 動 の 時,
給 が 枯 渇 す る こ と に よ り解 糖 系 が 活
リ コ ー ゲ ン分 解 に よ るATP供
給が 開始 さ
れ る 」 と 記 述 さ れ て い る こ と で あ る.し
か し な が ら,
10秒 以 内 の 全 力 運 動 で 解 糖 に よ るATP供
給 量 がPCr
乳 酸 が 生成 さ れ るよ うな 高 強度 運 動 時
分 解 に よ る供 給 量 と ほ ぼ 同 量 で あ る と い う こ と は,こ
の 他 の 代 謝産 物
れ ま で の 定 説 と の 矛 盾 を 示 す も の で あ る(表10.1).さ ら に,運
動 開 始 と同 時 に 解 糖 系 が 動 員 さ れ て い る こ と
乳 酸が 生成 され る ような非常 に高 強度 な活 動 が行 わ
を示 唆す る多 くの結 果 が こ れ まで に報 告 され て い る
れ る と,多 量 のATPが
(表10.2).
消 費 さ れ 細 胞 内 で は乳 酸 の 蓄 積
と と も に 相 対 的 にADP濃 謝 調 節 は基 本 的 に はATPの
度 が 高 ま っ て い く.筋
の代
に す る よ う働 く.消 費 が 再 合 成 を 上 回 る状 態 が 持 続 さ れ る と,筋 疲 労 に 達 す る こ と に な る.た が 上 回 り細 胞 内 にADP濃 ADP濃 るATP合 AMPを
と え ば,消
費
度 が 上 昇 し て い く と,筋
は
度 を 一 定 レベ ル に維 持 す る た め にAK活 成 を 促 進 す る.し 生 成 す る.AMPは
て い るH+と
結 合 し,IMPと
(脱 ア ミ ノ 化).細
短 時 間 高 強 度 の 運 動 はPCr分
解 と解 糖 系 に よ るATP
消 費 と再 合 成 の 収 支 を 同 じ
か しな が ら,こ
表10.1 運 動 時 間(高 強 度 運 動)とPCr,解
糖 系 か ら のATP供
給
の 関係(久 野,1996)
性 によ
の合 成系 は
細 胞 内 に多 量 に 蓄 積 し始 め ア ンモ ニ アに変 換 され る
胞 内 にお ける ア ンモニ アの 蓄積 が 筋
単位 はnmolATP/㎏
・dm/秒.*:30秒
中へ 出 た乳 酸 が 総 乳 酸 の25%あ
間 の運 動 で 筋 中 か ら血
る と仮 定 して 計 算 した 場 合 の 値.
表10.2
短 時 間 ・高 強 度 運 動 開 始 時 にお け る解 糖 系 に よ るATP供
供 給 の 合 算 が 中 心 に な さ れ る わ け だ が,aerobicに
よ
給 を示 す デ ー タ9)
表10.3 運 動 中 のATP再
合 成 に 占 め る 有 酸 素 的 代 謝 経 路,無
素 的 代 謝 経 路 の 割 合(%)(久
るATP供
酸
野,1996)
給 は な さ れ て い な い の で あ ろ う か.100m全
力 疾 走 中 のATP供
給 系 の 割 合 に つ い て 検 討 した 研 究 に
よ る と,酸 化 系 に よ るATP供
給 は 約17%に
こ と が 報 告 さ れ て い る.表10.3に つ か の 報 告 か ら,運 動 中 のATP供 とanaerobic系
もの ぼ る
は これ まで の い く 給 に 占 め るaerobic
の 割 合 を筆 者 が ま と め た もの を 示 した.
運動 はそれぞれの時期 にお いて疲労 困憊に達する ような強度 と 仮定 した場 合.
そ れ に よ る とaerobicの 20%,60∼90秒 で70%で
貢 献 度 は0∼30秒
の運 動 で
の 運 動 で55%,120∼180秒
の 運動
50%で
あ っ た の に対 し,3回
て い る.し
た が っ て,間
ン ス の 向 上 をATP供
あ っ た.
目 に は 約20%ま
で低 下 し
欠 的 高 強 度 運 動 の パ フ ォー マ
給 系 の 観 点 か ら考 え る と,2回
目
以 降 の 運 動 時 に お い て 解 糖 系 に よ る 供 給 率 を 低 下 させ 10.5
イ ンタ ー バ ル 高強 度 運 動 中 の エ ネル ギ
な い こ とが 重 要 に な る.
ー 代 謝 10.6 図10.2に
は,3回
の 間 欠 的 な30秒
お け る 総 仕 事 量(=ATP消 す る 三 つ(aerobic,解
間の全 力運動 時 に
費 量)とATP消 糖 お よびPCrの
費量 に対
分 解)の
の 占 め る 割 合 が 示 さ れ て い る.1回 仕 事 量 で 約40%の
目 と3回
供 給系 目で は 総
減 少 が み られ た が,ATP供
観 点 か ら み る とPCr分
トレ ー ニ ン グ お よ び 加 齢 が 高 強 度 運 動 時 の代 謝 に及 ぼ す影 響
解 とaerobicに
給系の
よる貢 献度 には
変 化 が み られ な い.そ れ に 対 し,解 糖(グ に よ る 割 合 が 著 し く低 下 し て い る.こ
リ コ ー ゲ ン)
の こ とか ら,疲
ト レ ー ニ ン グ が リ ン化 合 物 あ る い はanaerobicな ATP供
給 系 能 に 効 果 を 及 ぼ す の か ど う か に つ い て は,
い ま だ に 明 らか に さ れ て い な い,MacDougallら4)は, 長 期 に わ た る ウ ェ イ ト ト レー ニ ン グ に よ り安 静 時 の 筋 内 のPCr(+5%),ATP(+18%)お ゲ ン(+32%)含
よび グ リコー
量 が有 意 に増 加す る こ と を報告 し
労 に 伴 うパ フ ォ ー マ ン ス の 低 下 は,解 糖 系 に よ るATP
て い る.こ
の 報 告 を も と に し て,こ
供 給 能 の 低 下 に よ り導 き 出 さ れ て い る こ と が 理 解 で き
anaerobic系
の ト レー ニ ン グ に よ り筋 内 の リ ン化 合 物
る.NMRを
含 量 が 増 加 す る と考 え ら れ て き た.し
用 い た 研 究 か ら,PCrは
運 動 中 止後 の 比
較 的 早 い 段 階 で 安 静 レベ ル ま で 回 復 す る こ とが 知 られ
コ ー ゲ ン量 を 除 い て,anaerobicト
て い る(こ
PCrお
の 運 動 で も2分 間 の 休 息 の う ち に 安 静 レベ
ル ま で 回 復 した と考 え ら れ る).一 の 回 復 は2分
3回 目の 運 動 時 のATP供 く減 少 して い る.3回 え る と,1回
方,グ
リ コー ゲ ン
間 の 休 息 で は ほ と ん ど 回 復 し な い た め, 給 にお け る 解 糖 の 割 合 が 著 し の運 動 を それ ぞれ 単独 と して考
目の運 動 に おけ る解 糖 の 占め る割 合が 約
よ びATP量
か しなが ら グリ
レー ニ ングに よ り
につ いて はそ の効果 が み られ ない と
す る報 告 が あ る(表10.4).一 て,長
れ ま で は,
方,ラ
ッ ト骨 格 筋 に お い
期 に わ た る持 久 的 トレ ー ニ ン グ が 安 静 時 のPCr
量 を 減 少 させ る こ と が 示 さ れ て い る3).こ の 実 験 で は 加 齢 に よ る 変 化 は 否 定 さ れ て い る の で,持 ニ ン グ に よ る 影 響 と考 え られ る.し
久的 トレー
か しな が ら,ヒ
ト
に お い て こ の 結 果 が 適 用 で き る か ど うか は 明 ら か で は な い.anaerobicなATP供
給 系能 にお け る トレーニ ン
グ の 効 果 に つ い て も,否 (表10.4).し
定 的 な結 果 が 出 され て い る
た が っ て,こ
れ ら の ト レー ニ ン グ 効 果 に
つ い て 現 時 点 で 結 論 を 出 す に は あ ま り に も報 告 が 少 な く,今 後 の 研 究 が 待 た れ る. 加 齢 に よ る リン化合物 の変 化 につ い て簡 単 にふ れて お き た い.図10.3は
ラ ッ ト骨 格 筋 に お け る 加 齢 に よ
る 総 ク レ ア チ ン含 量 とPCr含 あ る.総 図10.2
間 欠 的 な30秒
間 全 力 運 動 時 に お け るATP消
(=仕 事 量)と3種 有 酸素 系)のATP供 運 動 間 の 休 息 に は2分 100%と
して2回
類(グ リ コ ー ゲ ン分 解,PCr分
解,
給 系 の 貢 献 度8
が あ て られ た.1回
減 少 を 示 して い る.一
給 率 は3回 の 運 動 で変 化 し ない.こ
酸 れ は,
も し運 動 中 に こ れ ら の エ ネ ル ギ ー 源 が 安 静 時 よ り減 少 し て も,2分
方,遅
齢 の 影 響 を 受 け 著 しい 筋 線維 につ いて は減 少傾
向 に は あ る もの の 大 き な 変 化 は み られ な い.加
齢によ
り速 筋 線 維 は 選 択 的 に 萎 縮 す る こ と が 知 ら れ て い る が,速
筋 線 維 に お け るPCr量
の 低 下 も ま たanaerobic
間 の 休 息 期 に 安静 レベ ル ま で 回 復 して い る こ と を 示
して い る.一 きず,結
イ プ と も ほ と ん ど 加 齢 に よ る影 響 を 受 け て い な い.そ れ に 対 し速 筋 線 維 のPCrは,加
目の仕 事 量 を
目以 降 を 相 対 的 に 表 し て い る.PCr,有
素 系 に よ るATP供
費量
量 の変 化 を示 した もので
ク レ ア チ ン含 量 に つ い て は い ず れ の 筋 線 維 タ
方,グ
リ コー ゲ ン は こ の 間 に 回復 す る こ と は で
果 的 に 総 仕 事 量 の 減 少 が 生 じる.
なATP供 る.さ
給 能 を著 し く低 下 させ る こ と を 示 唆 し て い ら に 安 静 時 のATP含
量 に お い て も,加 齢 に よ り
表10.4 安 静 時のPCr,ATP,グ
リコ ー ゲ ン含量 お よ び 短 時 間 ・高 強 度運 動 中 のATP供
給 系 能 と トレー ニ ン
グ と の 関 係12)
空 欄:測
図10.3
定 な し,-:変
化 な し,*:p<0.05.
安 静 時 ラ ッ ト骨 格 筋 に お け る総 ク レ ア チ ニ ン 含量 (Cr)とPCr含
量 の 加 齢 に よ る 変 化(Erminiと
Verzar,1968) ○:速
筋,●:遅
筋.PCr+Pi(無
で き る の で,加
齢 に 伴 うPCrの
こ とが き る.ま
た,ラ
機 リ ン酸)=一
ッ ト骨 格 筋 に お い てPCr/Piの
筋 > 遅 筋 で あ る こ と が 確 認 さ れ て い る の で,30か 果 は加 齢 に 伴 い,速
定 と仮 定
図10.4 安 静 時 ラ ッ ト骨 格 筋ATP,ADP,AMP含
減 少 はPiの 増 加 と と ら え る 比 は速 月齢 の 結
筋 が 遅 筋 化 して い る と推 定 で き る.
低 下 す る こ とが 示 され て い る(図10.4).こ
A:若
年 者 群,B:高
ADP+AMP量
齢 者 群.加
は変 化 し な い.し
齢 に伴 いATP含
の 際,興
量 と加 齢
と の 関 係(Ermini,1970)
量 が 低 下 し,ADP含
齢 に 伴 い 骨 格 筋 のATP+ か し な が ら,そ の 内 訳 は 加 量 が増 加 して い る.
が必 要で あ る.
味 深 い こ と に リ ン酸 化 合 物 の 総 量 に は 変 化 が 認 め ら れ ず,ATP量
が 減 少 しADP量
が 増 加 し て い る.こ
ATP合
成 能 の 低 下 を 示 唆 す る もの で あ る.し
ら,ど
う し て こ の よ う な現 象 が 起 こ る の か,あ
れは
10.7 酸 素 利 用 能 力 と基 質 利 用 と の 関 係
か しなが るい は
運動 強 度が高 まってい くと筋 の基 質利 用 は,① 脂 質
ヒ トに お い て も同 様 な 傾 向 が み ら れ る の か に つ い て は
酸 化,②
全 くブ ラ ッ クボ ッ ク ス で あ り,今 後 さ ら に多 くの 研 究
ゲ ンの酸 化,の 順 で な されて い く.酸 化 の ための 酸素
血 中 グル コー スの 酸 化,そ して ③ グ リ コー
表10.5
異 な るATP供
● 参 考文 献
給 系 にお け る酸 素 需 要 度9)
1)
Brooks,
G.
A.:Mammalian
exercise.
Comp.
fuel
Biochem.
utilization
Physiol.,
during
Part
sustained
B,120:89-107,
1998. 2)
Connett,
R.
efflux
is
muscle 3)
in
Kuno,S., the
利 用 の 効 率 と い う 点 か らみ る と,こ (表10.5).Sahlinら6)は,運 NADH量
の 順番 は逆 にな る
動 直 後 の ヒ ト骨 格 筋 の
4)
を 低 強 度 と 高 強 度 の 運 動 時 に 測 定 し て い る. 安 静 時 に比 べ て 低 下 す る の
に対 し,高 強 度 の 時 に は 逆 に 上 昇 す る こ とが 示 さ れ た. NADHの
増 加 は,筋
ミ トコ ン ドリ ア のNADの
お お よ そ 反 映 さ れ て い る の で,高
Akisada,
M.
低下に
糖 系 の 動 員 が 高 ま り筋 内 の 乳 酸 濃 度 が 非 常 に 高 く な っ
さい. 4. イ ン ター バ ル 運 動 中 のエ ネ ルギ ー 代 謝 の 特徴 を述 べ な さい. 5. 高 強 度 運 動 時 の エ ネ ル ギ ー代 謝 に及 ぼ す トレー ニ ン グ の 影響 を述 べ な さい.
Mitsumori,
Ward,
training
Margaria,
G.
C. in
R.:Lactate
a
F.:31P
in
R.,
of
and
R., of
rat
working
NMR
skeletal
Sale,
human
red
study
muscle.
D. G.
and
skeletal
immobilization.
8)
9)
Cerretelli,
in man. J.
on
Eur.
Sutton,
muscle
J. Appl.
Katz,
lactate
accumulation
A.
J.
J. R.: to
heavy
Physiol.,43:
L.
energy
release
L.
exercise.
J.:Redox
human
skeletal
state muscle
and
during
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glucose
L.,
Soderlund,
metabolism
K.
in skeletal
Appl.
Spriet,
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during
exercise.
: 185-189,1990.
Spriet,
men.J.
E.:Balance during
Henriksson,
Biochem.
K.:Muscle Med.,22
Mangili, release
Physiol.,19:623-628,1964.
and in
exercise.
and
energy Appl.
K.,
Sahlin,
P.
anaerobic
Sahlin,
Ann.
2. Lactate shuttleの概 念 につ いて 説明 しな さい. 3. 高 強 度 運 動 開 始 時 の エ ネ ルギ ー 代 謝 につ い て 説 明 しな
Honig, PO2
197-201,1992.
adaptation
in
● 問 題 1. ATと い う概 念の 問題 点 を説 明 し な さい.
: J. D.,
dynamic 7)
とす る 報 告 も み られ る2).こ の 論 争 に つ い て は 依 然 決 着 が つ い て い な い.
and
training
Biochemical
exercise
方,解
細 胞 内 の 酸 素 濃 度 の 低 下 が 認 め られ な か っ た
and
MacDougall,
kinetics
6)
た 時,筋
J.
Physiol.,61:402-408,1986.
of endurance
Physiol.,65
E.
intracellular
700-703,1977. 5)
強度 運動 で は酸 素利
用 能 力 が 低 下 し て い る こ と を示 唆 し て い る.一
T. to
Appl.
resistance
低 強 度 の 運 動 で はNADHが
Gayeski,
situ.J.
effects
Appl.
J.,
unrelated
and
Bergstrom,
muscle
during
M.:Anaerobic electrical
stimulation
Physiol.,62:611-615,1987.
L.:Anaerobic
metabolism
In:Exercise
during
high-intensity
Metabolism(Hargreaves,
M.
ed.),
pp.1-39,1995. 10)
Wasserman,
K.,
Anaerobic
threshold
Whipp,
exercise.J.
Appl.
B. and
Physiol.,35
J., Koyal,
S.
respiratory :236-243,1973.
N. gas
and
Beaver,
exchange
W.L.: during
11 運 動 と酸化 ス トレス
ス ト レス と い う言 葉 は,元 現 在 で は,W.Cannonが
来,工
学 系 で 用 い ら れ,刺
提 唱 して 以 来,生
激 に 対 す る 物 理 的 な 歪 み を 意 味 す る.
体 の 緊 急 反 応 系 と して,自
糖 な どの 自動 調 節 機 能 を さ す 言 葉 と な っ て い る.こ れ はCannonの Wiener(1984)に
よ りサ イバ ネ テ ィ ク ス と い う 自動 制 御 理 論 に発 展 し て い る.わ
体 も,閉 鎖 環 境 をつ くっ て は い る が,常 れ て い る.皮 な ど,さ
律 神 経 系 に よ る体 温 や 血
研 究 室 に い た こ との あ るN.
膚 の 知 覚 系,動
れわ れの 身
に外 界 の 要 因 に 影 響 を受 け る 開 放 系 と して 位 置 づ け ら
脈 系 の圧 受 容 器,脳
の 浸 透 圧 受 容 器,あ
る い は,運
動 の γ調 節 系
ま ざ ま な フ ィー ドバ ッ ク 系 が 脳 に情 報 を 送 り,生 体 が あ る 方 向 で 合 目 的 的 に機 能 で き
る よ う に し く ま れ て い る.ス
ト レス と は,そ
の よ うな 生 体 の 調 節 の バ ラ ン ス を 崩 す 外 乱 と して
と ら え る こ とが で き る.外 乱 は 一 時 的 に は 身 体 に悪 い が,そ れ に 対 抗 す る シ ス テ ム が あ る 限 り, 生 体 は う ま く適 応 し,外 乱 に よ り強 い 身 体 の し くみ が で き あ が る(適 病 気 に な る(不
適 応).運
応).そ
うで な い 場 合 は,
動 もそ の 強 度 や 種 類 な ど,条 件 に よ っ て は ス ト レス ホ ル モ ンが 分 泌
さ れ ス トレ ス と な り う る こ と は 第5講 で 述 べ た.最
近 で は,そ
う した ス ト レ ス ホ ル モ ン以 外 に
も普 遍 的 に わ れ わ れ の 身 体 や 細 胞 に 影 響 を 与 え る 因 子 が ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ て い る.そ 素 に よ る 過 酸 化 プ ロ セ ス で あ り,そ れ に よ る細 胞 の 障 害,免 ト レス と し て と ら え られ,酸
疫 系 の 抑 制,老
れが酸
化 の 促 進 な どが ス
化 ス トレ ス と も い わ れ る よ う に な っ て い る.酸 素 な しで は生 き ら
れ な い わ れ わ れ の 生 命 機 構 か らす れ ば,宿
命 的 な ス ト レス と も考 え られ よ う.既 存 の ス トレ ス
の 生 理 学 的 概 念 と 交 錯 し て 混 乱 を招 きや す い が,最 影 響 を及 ぼ す 因 子 で もあ る.こ
終 的 に は血 中 の ス ト レ ス ホ ルモ ン な ど に も
こで は 運 動 に 付 随 した 酸 化 ス トレ ス の 影 響 に 関 して 述 べ る.
な ど,酸 素 ス ト レ ス と し て 作 用 す る こ と が あ る. 11.1
酸 素 と 酸 素 ス ト レ ス:活
性 酸 素,フ
リ
ー ラ ジ カ ル と は 何 か?
大 気 中 の 酸 素 は 安 定 な状 態 で 存 在 して お り,基 底 状 態 の 酸 素 分 子,三
重 項 酸 素(3O2)と
分 子 と の 反 応 性 は 低 い.酸 ヒ トを は じめ 地 球 上 の 好 気 性 生 物 は,大 20.95%含 る.こ
気 中 に
ま れ る 酸 素 を 用 い て そ の 生 命 を 維 持 して い
の 酸 素 は エ ネ ル ギ ー 源 で あ るATPを
た め に 利 用 され て い る が,非
生成す る
常 に 短 命 な が ら殺 菌 や 物
さ れ た ス ー パ ー オ キ シ ド(O'2-),2電
カ ル(HO'),お
の3O2が1電
子還元
子 還 元 され た 過
子 還 元 さ れ た ヒ ドロ キ シ ラ ジ
よ び 励 起*分 子 種 の 一 重 項 酸 素(1O2)
質 の 代 謝 な ど さ ま ざ ま な 生 体 内 酸 化 反 応 に 関 与 す る酸
の4酸 素 種,さ
ら に そ の 関 連 化 合 物 の 総 称 で あ る.
素 種 が あ る.こ
O'2-やHO'に
つ い て い る(')は
(reactive oxygen
れ ら を 総 称 し て 活 性 酸 素(種),ROS species)と
体 内 で 産 生 され,体
い う.こ の 活 性 酸 素 は 生
内 の 異 物 処 理 も行 っ て い る が,そ
の 強 力 な 酸 化 力 で 生 体 分 子 を 攻 撃 し種 々 の 毒 性 を 示 す
体
素 障害 の原 因 となる不安 定
で 反 応 性 が 高 い 活 性 酸 素 と は,こ
酸 化 水 素(H2O2),3電
も よ ば れ,生
ラ ジ カ ル を 意 味 し,
酸 化 還 元 反 応 で 物 質 間 の 電 子 の や り取 りの た め,最
外
殻 の 軌 道 の 電 子 が 対 を な さな い 「 不 対 電 子 」 を 生 じた 時 の 記 号 で あ る.こ
の 分 子 ま た は 原 子 に,不 対 電 子 を
表11.2
図11.1
フ リ ー ラ ジカ ルに よ る生 体 分 子 の 酸 化 変 性10)
フ リー ラ ジ カ ル は,近
くの 分 子 か ら電 子 を奪 っ て(還 元 され)
安 定 し た非 ラ ジ カ ル に な る.一 方,電 子 を奪 わ れ(酸 化 され) た分 子 は フ リー ラ ジ カ ル に よ り酸 化 変 性 を起 こす.た
活 性 酸 素,フ
リー ラ ジ カ ル に よ る生 体 内 標 的 分 子11)
性 質 を も っ て い る の で あ る. 生 理 的 な状 態 で は,生
体 分子 は酸 化 防御 機構 によ り
活 性 酸 素 や フ リー ラ ジ カ ル か ら守 られ,酸 に曝 さ れ る こ と は ほ と ん どな い.つ
脂 質過 酸 化 を引 き起 こ した り,酵 素 蛋 白の 失 活 を招 く.
用 で 生 成 す る活 性 酸 素 は,そ 表11.1
生 体 に 関 わ りの 深 い 活 性 酸 素,フ
素 ス ト レス
とえば
リーラジカル
ま り正 常 の 生 理 作
の 生 成 の 場,量
や タイミ
ン グ と も う ま く コ ン トロ ー ル さ れ て お り,合
目的 的 に
利 用 さ れ 消 去 され て い る.し
か し,コ
ン トロ ー ル され
て い る場 か ら漏 れ 出 た り,過 剰 な 生 成,さ
らには体 外
か ら直 接 取 り込 む こ と な どに よ り,消 去 能 力 を 超 え る と生 体 に と っ て 酸 素 ス ト レス と な る.す れ 単 独 で,あ
なわ ちそ れぞ
る い は 共 同 お よ び 相 互 反 応 に よ り,生 体
の 構 成 成 分 で あ る蛋 白 質 や 核 酸,脂
質や 糖 質 な どを標
的 分 子 と して 反 応 し,酸 化 に よ りこ れ らの 物 質 を壊 し た り反 応 性 に富 ん だ 物 質 に 変 え る な ど,種 示 す の で あ る(表11.2).そ もつ 不 安 定 な 化 合 物 を 総 称 し て フ リー ラ ジ カ ル(通 常
疾 病,発
フ リー ラ ジ カ ル と ラ ジ カ ル は 同 意)と
よぶ.通
悪 玉 性 の 作 用 を 及 ぼ す.
定 な 化 合 物 で は 電 子2個 ず つ が 対(ペ
ア)に
気 モ ー メ ン トを 消 して い る が,不 せ ず,一
常の 安
癌,老
々 の毒 性 を
し て細 胞 に 障 害 を 与 え,
化 な どと関わ る とい った生 体 に とって
な っ て磁 11.2
対 電 子 で は 対 を形 成
生体 で の活 性 酸 素 の生 成
つ の 電 子 軌 道 また は 分 子 軌 道 を1電 子 だ け で
占 有 し て い る.不
対 電 子 は 不 安 定 な 場 合 が 多 く,図
生 体 内 の 活 性 酸 素,ラ
11.1の
くの 分 子 か ら電 子 を奪 っ て 対 に な ろ
や 金 属 の 反 応 に よ り産 生 さ れ る の に 加 え,虚
よ う に,近
う と す る た め 反 応 性 に富 み 活 性 が 高 い.
レ ス な ど病 的 状 態,紫
表11.1は,生
て 生 じる もの が あ る.さ
体 に関 わ りの深 い 活性 酸 素 とフ リー
ラ ジ カ ル を ま と め た も の で,活
性 酸 素 に は ラ ジ カ ル,
ジ カ ル は生 理 的 に 起 こ る酵 素 血やス ト
外 線 や 放 射 線 な どの 照 射 に よ っ ら に 現 代 は 図11.2の
よ う に,
細 菌 や ウ イ ル ス とい っ た 病 原 体 の 侵 入 に 加 え,オ
ゾン
非 ラ ジ カ ル の も の が あ る の が わ か る.
層 の 破 壊 に よ る 紫 外 線 の 増 加 や 大 気 汚 染,化
一 般 に 活 性 酸 素 や フ リ ー ラ ジ カ ル は不 安 定 で 反 応 性
よ る 環 境 や 食 品 な ど の 汚 染 な ど に よ り活 性 酸 素 や ラ ジ
に富 み,生
カ ル,そ
が,基
体 分 子 を 攻 撃 す る悪 玉 と し て の 側 面 も あ る
質 の 酸 化 反 応 や 酸 素 添 加 反 応 に 利 用 さ れ た り,
の 前 駆 物 質 を 体 外 か ら直 接 取 り込 ん だ り,体
内 で 過 剰 に 生 成 さ れ る 要 因 が 増 加 し て い る.以
食 細 胞 が貪 食 し た ウ イ ル ス や 細 菌 な ど の 侵 入 異 物 を 融
代 表 的 な 生 体 内 で の 活 性 酸 素 産 生 機 序,お
解 さ せ,生 体 を 防 御 す る 役 割 も 果 た して い る.つ
生 成 さ れ る場 合 に つ い て 述 べ る.
生 体 に とっ て 悪 玉,善 *1 励 起 状 態:基
ま り,
学物質に
下 に,
よび過剰 に
玉 の 作 用 を 及 ぼす 両 刃 の 剣 的 な
底 状 態 よ り大 きな エ ネル ギ ー を もつ 状 態 .基 底 状 態 の酸 素 に お け る電 子 配 置 は,反
じ方 向 で 入 って い る が,一
結 合軌 道 に 電子 ス ピ ンの 方 向 が 同
重 項 酸 素 で は 逆 方 向 に な って お り,反 応性 が 高 い 励 起 状 態 に な っ て い る.
図11.2 生 体 に 関 わ る 活 性 酸 素,フ カ ル(二 木 ・野 口,19927)に 光 増 感 作 用:光,紫
リー ラ ジ 筆 者 加 筆)
外 線 な ど の 照 射 に よ り,
光 吸 収 物 質 が 励 起 状 態 に な る.
a.虚
血-再 還 流
血 液 が 組 織 に 十 分 供 給 され な い場 合,そ 終 的 に 細 胞 死 に 至 る.し 素 が 供 給 さ れ る と,さ さ れ る.す
の組 織 は最
か し虚 血 状 態 の 後 で 急 激 に 酸
ら に 重 篤 な組 織 障 害 が 引 き起 こ
な わ ち 虚 血 部 位 で は,ATPか
らの分 解物 ヒ
ポ キ サ ンチ ンが 蓄 積 し,同 時 に 正 常 組 織 中 に 存 在 して い る 酵 素,キ
サ ン チ ン デ ヒ ドロ ゲ ナ ー ゼ(XDH)が
O'2-を 生 成 す る キ サ ン チ ン オ キ シ ダ ー ゼ(XOD)に 換 す る.血
流 が 再 開 さ れ,O2が
キ サ ン チ ン,XOD,O2の 多 量 のO'2-やHO'を
変
供 給 さ れ る と基 質 ヒポ
三 者 が 共 存 す る こ と に な り, 生 じ,組 織 に 酸 素 障 害 を 及 ぼ す.
ま た,虚 血‐再 還 流 時 に は 好 中 球 浸 潤 が 著 明 で あ る場 合 が 多 く,好
中 球 か ら産 生 さ れ る 活 性 酸 素 の 関 与 が 考 え
ら れ て い る(図11.3)11). 運 動 時 に は血 流 は主 と して筋 組 織 に供 給 され る た め,他
の 臓 器,と
下 す る.運
く に 肝 臓 や 腎 臓,腸
管 で の血流 は低 図11.3
動 後 に は 血 流 が 改 善 さ れ 虚 血‐再 還 流 状 態
が 引 き 起 こ さ れ る と 考 え ら れ る.さ
虚 血‐再 還 流 障 害 に お け る 活性 酸 素 の 関 与11)
らに運動 直後 の 筋
組 織 に は好 中 球 を 中 心 と し た 炎 症 細 胞 浸 潤 が 生 じ,そ
す る 酵 素 で あ り,NADPH結
れ が 筋 損 傷 の 成 因 に な る4).
(細 胞 質 側)に
b.NADPHオ
NADPHオ
合 部 位 は細 胞 膜 の 内側
局 在 し て い る と 考 え ら れ る11).食 細 胞
の 表 面 が 細 菌 や 抗 原‐抗 体 複 合 体 な ど で 刺 激 さ れ る と
NADPHオ
キ シダ ーゼ キ シ ダ ー ゼ は,好
中 球 とマ ク ロ フ ァー ジ,
単 球 や 好 酸 球 な ど食 細 胞 全 般 に存 在 し,細 胞 膜 に 局 在
H+が のO2を
キ シ ダ ー ゼ がO'2-を 生 成 す る.こ
あ る と,2分 生 じ る.ま
子 のO'2-か
のO'2-は
ら1分 子 のH2O2と1分
た 少 量 の 遷 移 金 属 が あ る とHO'に
子
変 換 さ れ る.そ (MPO)の やClO-に る.一
してH2O2は
ミエ ロペ ル オ キ シ ダ ー ゼ
触 媒 の も と にClO-を
つ く る.こ
よ り細 菌 な ど の 侵 入 異 物 を 殺 す こ と が で き
方,こ
の 酵 素 は 細 胞 膜 上 に 存 在 す る た め,一
のO'2-は 細 胞 外 に も 放 出 さ れ る が,細
部
胞 内 か ら放 出 さ
れ たO'2-は 酵 素 的 消 去 を 受 け 難 い た め,よ す る.と
れ らH2O2
り長 く残 存
くに炎症 部 で は好 中球や マ クロフ ァー ジで 産
生 さ れ るO'2-が 細 胞 外 に 放 出 さ れ る た め,周
辺組織の
d.ミ
ク ロ ソ ー ム で のO'2-の 生 成
ミ ク ロ ソ ー ム(粗
面 小 胞 体)は,プ
ラ ズ マ 膜,小
胞
体 お よ び 核 膜 の 切 断 さ れ た顆 粒 で あ る.NADPH-チ ト ク ロ ー ムP450還 毒 作 用)に
元 酵 素 系 が,種
々 の 薬 物 代 謝(解
お い て 重 要 な 機 能 を 果 た し て い る が,そ
際 にO'2-が 発 生 し,ミ
の
ク ロ ソ ー ム を構 成 す る リ ン脂 質
に 含 ま れ る 多 価 不 飽 和 脂 肪 酸 を 過 酸 化 す る こ とが 知 ら れ て い る.
障 害 の 原 因 と な っ て い る. e.過 c.ミ
細 胞 膜 の 成 分 で あ る 脂 質 は 活 性 酸 素 と最 も反 応 しや
トコ ン ド リ ア で のO'2-の 生 成
ミ トコ ン ド リ ア は,NADHま
た は コハ ク酸 か らの 電
子 を 内 膜 に 存 在 す る 電 子 伝 達 系 に 次 々 と 渡 し,最 後 に O2に 渡 し てH2Oを ATPを
生 じ る 過 程 で,エ
ネルギ ー源 であ る
効 率 よ く 産 生 す る.図11.4の
子 伝 達 系 中 のNADHとNADHデ
よ う に,こ
の電
ヒ ドロ ナ ー ゼ の 部 分,
フ ラ ビ ン タ ンパ ク とユ ビ キ ノ ン(CoQ)の 所 で,そ
酸化脂 質 の生成
部 分 の2か
れ ぞ れ1電 子 還 元 に よ りO'2-お よ びH2O2が
じる5).こ の ミ トコ ン ドリ ア で 生 成 され るH2O2の
生 ほ と
す く,ま た そ の 生 成 部 位 に位 置 し て い る.活 障 害 を招 く時,直
と過 酸 化 脂 質 生 成 を 介 して い る 場 合 が あ る. 脂 質 と活 性 酸 素 と の 反 応 に よ り多 様 な 生 体 作 用 を有 す る 過 酸 化 脂 質 が 生 成 す る.HO'やHOO',鉄‐ 錯 体 は 不 飽 和 脂 肪 酸 の 自 動 酸 化(ラ 後 述,図11.5)の
開 始 因 子 と し て 作 用 す る.ペ
シ ラ ジ カ ル(LOO')は
運 動 時 に は 全 身 の 酸 素 消 費 量 は 運 動 の種 類 に も よ る
反 応 性 の 高 い ア ル コ キ シ ラ ジ カ ル(LO')な
が 安 静 時 の10∼20倍,活
源 と し て 存 在 す る.1O2は
す る(第4講
参 照)た
め に,活 性 酸 素 生 成 も増 加 し て
い る こ とが 予 想 さ れ る.
ル オキ
連 鎖 担 体 と し て 機 能 し,生 成
物 で あ る 過 酸 化 脂 質(脂
に増加
酸素
ジ カ ル 連 鎖 反 応,
ん ど はO'2-の 不 均 化 反 応 に よっ て 生 じ る.
動 筋 で は 約10∼40倍
性酸 素が
接 核酸 や蛋 白質 に損 傷 を与 える場合
質 ペ ル オ キ シ ド:LOOH)は どの発生
不飽 和 脂 肪 酸 と高 い 反応性
を もつ が 連 鎖 は 起 こ らず,生
成 す るLOOHの
異 性体組
成 も異 な る. 生 体 内 で 直 接 活 性 酸 素 を測 定 す る こ と は 困 難 で あ る が,生
図11.4
成 さ れ た 脂 質 の 過 酸 化 反 応 物 質 は 安 定 性 を もつ
ミ トコ ン ド リア電 子 伝 達 系 か らのO2の 生 成5)
た め,チ
オ バ ル ビ ツ ー ル(TBA)法
ト グ ラ フ ィ(HPLC)を
や 高 速液 体 ク ロマ
用 い た過 酸化 脂 質測 定 法 が確
立 され て い る.
a.酵
素的 防御 系
ス ー パ ー オ キ シ ドデ ィ ス ム ター ゼ(SOD)は,反
応性
は 弱 い が 他 の 活 性 酸 素 の 前 駆 体 と して 特 に重 要 なO'2の 消 去 を行 う酵 素 で あ る.SODで 11.3
活性 酸 素 の 消 去
属(銅 や マ ン ガ ン)が,そ
は 活 性 中心 に あ る 金
の 酸 化‐還 元 サ イ ク ル に よ り
O'2-を 不 均 化 し 過 酸 化 水 素 と 酸 素 に 分 解 す る.SODは 生 体 内 に お い て 活 性 酸 素 や フ リー ラ ジ カ ル は,前
述
の よ う に 細 胞 内 外 の い た る と こ ろ で 生 成 さ れ て い る. こ れ らが 制 御 不 能 な 状 態 で 存 在 す れ ば,生
体 は酸 化 ス
トレ ス に よ り致 命 的 障 害 を 受 け て 生 存 で き な い.そ た め 好 気 性 生 物 は,進
の
化 の過 程 で酸化 的 ス トレスに耐
O'2-が 生 成 され る 場 所 や 細 胞 小 器 官 に 多 い.こ
れは
O'2-の 寿 命 が 短 く拡 散 距 離 も 短 い こ と,生 体 膜 を 通 過 で き な い た め,O'2-が
生 成 さ れ る 場 にSODが
存在 す る
必 要 が あ る こ と な ど を反 映 して い る もの と考 え られ て い る11).
える ため の抗 酸化 機構 や酸 化 障害 修復 機構 を獲得 して
SODのO'2-消
き た.す
ジ カル の生成 を抑制
は そ れ自 身 が 酸 素 毒 性 を 有 し,生 体 膜 を 容 易 に通 過 で
生 成 し た 活 性 酸 素,
き,HO'の
な わ ち,①
す る 機 構(予
活 性 酸 素,ラ
防 的 抗 酸 化 物),②
ラ ジ カ ル を す み や か に 消 去 す る 機 構(ラ 抗 酸 化 物),③ を 修 復.再
障 害 を受 け たDNA,脂
生 す る 機 構(修
ジカル捕捉 型 質,タ
復 再 生 機 構)と
ンパ ク質 い う3段 階
の 精 巧 な 防 御 機 構 に よ っ て 自 ら を守 っ て い る. 酸 素 障 害 は 活 性 酸 素 や フ リー ラ ジ カ ル が,そ 内 に 防 御 機 構 に よ り消 去 され ず,標
の 寿命
的分子 と反応 す る
こ と に よ っ て 生 じる.活
性 酸 素 や フ リー ラ ジ カ ル は 反
応 性 に 富 み,表11.3に
示 さ れ る よ う に 寿 命 が 短 く,
生 成 源 に な り う る の で,SODが
能 す る た め に は,次
に 述 べ るH2O2の
効 果 的に機
消 去 系 の 存 在が
不 可 欠 で あ る. カ タ ラ ー ゼ(CAT)は
細 胞 内穎 粒 のペ ル オキ シ ソー
ム に 局 在 し,赤 血 球,肝
臓,腎
多 様 で あ る.表11.4中
臓 に 多 く,そ の 分 布 は
の 不 均 化 反 応*2を
触 媒 し,
H2O2を 水 に 分 解 す る. 表11.3
連 鎖 的 な 反 応 を 引 き起 こす.そ
去 反 応 は 過 酸 化 水 素 生 成 を 伴 う.H2O2
フ リ ー ラ ジ カ ル の 寿 命(Yu,199412を
一 部 改 変)
のた め発 生 した場 所 で
す み や か に 消 去 す る こ とが 重 要 で あ り,酸 化 防 御 系 を 担 う抗 酸 化 物 質 は 細 胞 内 外 に 存 在 し て い る.こ 酸 化 物 質 は,酵
れ ら抗
素 的防 御系 と非酵 素 的防 御系 に大 別 で
き る(表11.4,11.5参
照). 一重 項 酸素 と酸 素 分 子 は比 較 の 意 味 で 加 え られ て い る .
表11.4
*2 不 均 化 反 応:酸
細 胞 内 抗 酸 化 物 質 と そ の特 徴(鈴
木,19989) に筆 者 加 筆)
化 と還 元 が 同 時 に起 こ る こ とに よ り ,一 つ の 物 質 が 二 つ 以 上 の 異 な る 物 質 に 変 化 す る こ と.
表11.5
細 胞 外 の 抗 酸 化 物 質 とそ の 特 徴(鈴
木,19989)に
筆 者 加 筆)
グ ル タ チ オ ンペ ル オ キ シ ダ ー ゼ(GSH-Px)は,細 胞 内 でSODに
よ る 不 均 化 に よ っ て 生 じ るH2O2を
還 元 して 消 去 す る役 割 と,膜
離 脂 肪 酸 の 脂 質 ペ ル オ キ シ ド(LOOH)を 応 す る ア ル コ ー ル(LOH)に
水 に
脂質構 成脂 肪酸 お よび遊 還 元 し,対
変 換 す る こ と に よ り,細
胞 内 構 成 成 分 を酸 化 的 変性 か ら守 る 役割 を担 っ てい る.
b.非
酵素 的防御 系
1)非
酵素 蛋白系
図11.5 細 胞膜 の 脂 質 過 酸 化 にお け る ビ タ ミ ンCと ビ タ ミ ン
セ ル ロ プ ラ ス ミ ン(CP)は
子 当 た り1分 子 のO'2-を 非 酵 素 的,化 す る.こ
の 銅 結 合 蛋 白 質 は,脂
Eの 相 乗 的抗 酸 化 作 用7
細 胞 外 液 に 存 在 し,1分 学量 論 的 に消 去
質 の ラ ジ カ ル連 鎖 反 応
の 開 始 に 関 与 す る2価 鉄 イ オ ン を 酸 化 し,3価
鉄 イオ
ン に す る こ と に よ り,生 体 膜 の 脂 質 過 酸 化,お
よび細
LH:脂
質,L':脂
質 ラ ジ カ ル,LO'2(LO'):ペ
シ ラ ジ カ ル,LOOH:脂 C':モ
ルオキ
質 ペ ル オ キ シ ド(過
ノ デ ヒ ドロ ア ス コ ル ビ ン酸,E':α
酸 化 脂 質).
トコ フ ェ ロ キ シ
ラ ジ カ ル.
胞 障 害 を 防 い で い る.ト
ラ ン ス フ ェ リ ンや ラ ク トフ ェ
は 細 胞 質 や 細 胞 外 に 存 在 し,膜 の 外 で 活 性 酸 素 や ラ ジ
リ ンはCPと
鉄 の 生 成 を 間 接 的 に 阻 害 して
カ ル を 消 去 して い る.
共 存 し,2価
い る. 2)低
運 動 負 荷 に よ る 脂 質 過 酸 化 反 応 が ビ タ ミ ンE摂 取 に よ り抑 制 さ れ る と い う 報 告 も あ り,不 飽 和 脂 肪 酸 の ラ
分 子化合 物
寿 命 の 短 い 活 性 酸 素 や ラ ジ カ ル は,低 よ っ て 消 去 され る.1O2,HO'の 命 が 短 い 場 合,タ
分子 化合 物 に
よ う に 反 応性 が 高 く寿
ン パ ク 質 やDNAの
場 合 にみ られ る
よ う に,生 成 し た 近 く の 位 置 の 残 基 を攻 撃 し,部 位 特 異 的(site-specific)な
損 傷 を 与 え る.し
に 結 合 して い る 脂 質 酸 化 物,お
たが って膜
ジ カ ル 連 鎖 反 応 に 対 して,ビ
タ ミ ンEとCは
抗酸 化剤
と して お 互 い に 協 力 しあ っ て 効 率 よ く働 い て い る(図 11.5).細
胞 膜 は脂 質 が 二 重 層 を な して 規 則 正 し く配
列 して い る.HO'やHOO',鉄-酸
素 錯 体 な どが ラ ジ
カ ル連 鎖 反 応 の 開 始 因 子 と し て 作 用 し,膜
を構 成す る
よび寿命 の短 い活 性 酸
脂 質 の 電 子 が 引 き抜 か れ る と,規 則 正 し く並 ん で い る
素の 消去 は蛋 白質の ような高 分子 で は事 実上 不 可能 で
細 胞 膜 に 脂 質 ラ ジ カ ル が 生 じ,細 胞 膜 内 で ラ ジ カ ル の
あ り,低 分 子 化 合 物 が 担 っ て い る2).脂 溶 性 の ビ タ ミ
連 続 反 応 が 起 こ り,細
ンEは お も に膜 中 に 存 在 し,生 体 膜 の 中 で 発 生 した 活
切 な 機 能 を 失 っ て 破 壊 され て し ま う.ビ
性 酸 素 や ラ ジ カ ル の 消 去 に 働 き,水
胞 膜 の 中 に 生 じた 脂 質 ラ ジ カ ル を受 け 取 り,ビ
溶 性 の ビ タ ミ ンC
胞 膜 は 過 酸 化 脂 質 に 変 性 し,大 タ ミ ンEは 細 タ ミン
Eラ ジ カ ル(E')に
な り,ラ ジ カ ル連 鎖 反 応 を 止 め る.
そ して 細 胞 膜 の 外 側 に 待 ち 受 け て い る ビ タ ミ ンCに
ラ
ジ カ ル(')を
う
移 し て も と の ビ タ ミ ンEに 戻 る.そ
して 生 成 さ れ た ビ タ ミ ンCラ
ジ カ ル(C')は
ドロ ア ス コ ル ビ ン 酸 還 元 酵 素 に よ り,あ
モ ノデ ヒ
る い は 自発 的
不 均 化 反 応 に よ り ビ タ ミ ンCと デ ヒ ドロ ア ス コ ル ビ ン 酸 に 変 わ る.そ
の た め,食
物 か ら 十 分 な ビ タ ミ ンCを
摂 取 す れ ば ビ タ ミ ンEの 抗 酸 化 効 率 を あ げ る こ とが 可 能 で あ り,運 動 選 手 に は 所 要 量 以 上 の 摂 取 が 勧 め られ て い る.
11.4
図11.6 運動強度 と血清過酸化脂質の変動率 との関係1
運動 と活 性 酸素
運 動 時 の 活 性 酸 素 生 成 機 構 に は,酸
素 摂取 量 の増 大
に 伴 う電 子 伝 達 系 か ら のO'2-生 成 の 増 加,虚 に よ るO'2-生 成,機 の も の,運 入,運
血-再 還 流
械 的 な骨 格筋 損傷 時 の好 中球 由 来
動 時 の過 換 気 に伴 う大気 汚染 物 質の直 接 吸
動 に よ り分 泌 亢 進 す る カ テ コ ー ル ア ミ ン 酸 化 時
い る も の と思 わ れ る1). トレ ー ニ ン グ に 伴 う抗 酸 化 防 御 機 構 の 適 応 に つ い て の 研 究 で は,ト に,ビ
レ ー ニ ン グ を 積 ん だ ヒ トや 動 物 の 血 中
タ ミンE(ト
コ フ ェ ロ ー ル)や
酸化 防 御酵 素 が
顕 著 に 増 大 し て お り3),最 大 運 動 終 了 後 の 血 中TBARS
に お け る 活 性 酸 素 発 生 な どが あ げ られ る10).こ の よ う
の 増 加 を抑 制 し て い る1)と い う報 告 が あ る.
に 運 動 に よ り,生 体 内 に お い て 活 性 酸 素 生 成 亢 進 が 予
酸 素 ス トレ ス が 適 応 可 能 範 囲 内 な ら ば,ス
トレ ス に
想 さ れ る.し
適 応 す る た め に 蛋 白 質 が 誘 導 合 成 さ れ る.こ
れ に は消
か し,そ
の障 害 は活性 酸素 生 成が抗 酸 化
防 御 機 構 を 上 回 っ た 時 に生 じ る と考 え られ る. 一 過 性 の 最 大 運 動 に よ り,ヒ 格 筋,心
筋,肝
こ と が,マ
去 酵 素,お
トや 動 物 の 血 液 中,骨
臓 な どで脂 質過 酸化 反応 が生 じてい る
ロ ン ジ ア ル デ ヒ ド(MDA)や
ツ ー ル 酸 反 応 物 質(TBARS),脂
チ オバ ル ビ
質過酸 化 物 中の 供 役
よ び 低 分 子 化 合 物 合 成 の み な らず,さ
る 活 性 酸 素 抑 制 の た め,標
的 分 子 の 修 復 やde
らな
novo合
成*3の た め の 蛋 白 質 が 誘 導 合 成 さ れ る と 考 え ら れ る. 熱 ス ト レ ス と酸 素 ス ト レス に よ っ て 共 通 の 蛋 白 質 が 誘 導 合 成 さ れ る こ と な ど が 示 さ れ,こ
れ らス トレ ス 間 の
ジ エ ン な どの 増 加 か ら 明 ら か で あ る3).
相 互 関 係,酸
ま た 最 大 下 運 動 で は,運 動 の 種 類 や 様 式 な ど の 違 い
て 蛋 白 質 合 成 を 誘 導 す る か の 分 子 生 物 学 的 機 構 は,こ
に よ り結 果 は 異 な る も の の,20∼30分
れ か ら の 興 味 あ る課 題 で あ る2).
動 負 荷 に お い て,生
程 度 の急 性 運
素 ス トレ ス が どの よ う な シ グ ナ ル を介 し
体 内の 脂質 過酸化 反 応 に影響 を及
ぼ さ な い の は 最 大 酸 素 摂 取 量 の80%程
度の 負 荷 強 度
ま で で あ り,そ れ 以 上 の 負 荷 強 度 で は 急 激 に 脂 質 過 酸
● 問 題 1. ス トレ スの語 源 は何 か.
化 反 応 が 生 じ る1)と 報 告 さ れ て い る(図11.6).白
2. 活 性 酸 素 の 「両 刃 の剣 」 的 な性 質 とは何 を 意 味 す る の
血
球 を指 標 と し た場 合 で も,運 動 負 荷 が 激 し くな る ほ ど 持 久 性 運 動 に 伴 う好 中 球 の 活 性 酸 素 産 生 能 も 上 昇 す る 現 象 が 認 め ら れ て お り,LTレ 間 が1時
か. 3. 活 性 酸 素 が 体 内 で 過剰 に生 成 され る 要 因 を あ げ な さ い.
ベ ルの 負荷 で も継 続 時
間 を 超 え る あ た りか ら好 中 球 の 選 択 的 動 員 が
4. 血 流 が 途絶 え て い た 後,再 び 流 れ 始 め た 時(虚 還 流 時 に),組
顕 在 化 さ れ る8)よ うで あ る.
明 しな さい.
O'2-の 発 生 に よ り誘 導 さ れ る酵 素SOD,H2O2や 化 脂 質 の 消 去 酵 素 カ タ ラ ー ゼ,GSH-Pxな
過酸
連 動 し た 変 化 を示 し,こ れ らの 過 度 な 生 成 を 抑 制 し て 成:構
5. 好 気 性 生 物 は酸 化 的 ス ト レス に耐 え る た め,ど の よ う な抗 酸 化 防御 機構 を もっ て い るの か説 明 しな さ い.
ど酸 化 防 御
酵 素 系 は,急 性 運 動 負 荷 時 の 活 性 酸 素 や 過 酸 化 脂 質 に
*3 de novo合
血-再
織 障 害 が 引 き起 こ され る の は なぜ か説
6.抗
酸 化 生 物 と して の ビ タ ミ ンEとCの
作用についてそ
れ ぞ れ 述べ な さい.
成 要 素 か ら新 た に物 質 を再 合 成す る こ と.物 質 の 粗 分解 産物 よ り再 合 成 す る サ ル ベ ー ジ合 成 と区 別 す る 用 語 .
7.
運 動 時 の 活 性 酸 素 生 成 機 構 に は ど ん な も の が あ る か 説
8.
covery?Eur.
J. Appl.
5) 長 野 哲 雄,桜
明 し な さ い. 活 性 酸 素 や フ リ ー ラ ジ カ ル に よ っ て 生 体 内 に 障 害 が 引
廣 川 書 店,
6) 二 木 鋭 雄:ア 素, ●
参
考
文
1) 荒 尾
献
孝:運
酵 素 活 性.運 2) 浅 田 浩 二:活 33
動 生 化 学,3(4),76-83,1992. 性 酸 素 の 生 成 ・消 去
白 質 核 酸 酵 素,
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enzymes
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Med.,
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4) Duarte, Appell, decrease stress
H.-J.:Do
in glutathione in exercised
F., Bastos,
invading
M.
L., Soares,
leucocytes
concentrations
muscle,
or are they
J. M.
contribute
8) 鈴 木 克 彦,長
学,佐
る血 中 白血 球 の 数 的
9) 鈴 木 敬一
郎:抗
11) 吉 川 敏 一:フ
for its re
酵
体 内 に 生 じ る フ リ ー ラ ジ カ ル.フ 藤 元 治 編),
月 充 邦,白 藤 光 毅:異
石 正 彦,中
路 重 之,菅
な る持 久 性 運 動 条 件 に よ
・構 成 的 変 動 パ タ ー ン の 比 較.日
本衛
生 学 雑 誌,50:631-636,1995.
10) 吉 川 敏
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編),pp.
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内 動 態 と 生 体 障 害 機 序(近
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indicating
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跡 見 順 子,伏
J. A., Carvalho,
川 清 見,桜
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リ ー ラ ジ カ ル-体
原 和 夫,戸
3) Dekkers,
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7) 二 木 鋭 雄,野 動 負 荷 と 生 体 内 過 酸 化 脂 質 及 び 活 性 酸 素 消 去
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弘:活
フ リ ー ラ ジ カ ル と く す り(菊 19-37,
き 起 こ さ れ る の は ど ん な 場 合 か.
井
12) Yu,
酸 化 物 質 と は.活 木
一:フ
リ ー ラ ジ カ ル の 医 学,診
species.
defences
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野 秀 樹,
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亨 編),pp.8-21,杏
against
断 と 治 療 社,1997. 談 社,1997. damage
:139-162,1994.
from
reactive
12 運動 と骨代謝
骨 の 生 理 的 機 能 と して,カ
ル シ ウ ム(Ca2-)や
リ ン(P)な
ど の 生 体 内 濃 度 を 調 節 す る 機 能,
身 体 の 内 外 か ら生 じる 力 に 抗 す る た め の 支 持 組 織 と し て の 機 能,そ が あ げ ら れ る.一
過 性 の 運 動 は 血 清Ca2-濃
して骨 髄 にお ける造 血機能
度 や骨 代謝 調節 ホ ル モ ン濃 度 の変 動お よび骨 へ の
力 学 的 負 荷 増 大 を 招 き,こ れ に よ り骨 の 生 理 的 機 能 は賦 活 さ れ る.そ と,骨
組 織 は 合 理 的 か つ 効 率 的 に 機 能 を遂 行 で き る よ う に量 的,質
(適 応)を
生 じる.本
講 で は,運
して,運
動が慢 性 化す る
的 に ダ イナ ミック な変化
動 に 対 す る骨 組 織 の 変 化 を お も に 量 的 お よ び 形 態 的 側 面 か ら
概 観 し,適 応 の 基 本 的 な ル ー ル と そ れ を 可 能 に す る 細 胞 生 物 学 的 機 序 に つ い て 述 べ る.
12.1
a.運
骨 量 に及 ぼ す運 動 の 効 果
動 条 件
運 動 の 効 果 は 運 動 条 件(様 ど)に
式,強
強 く依 存 す る.図12.1は,若
(17∼38歳)の
度,時
間,期
間な
年女性競技者
腰 椎骨 塩密 度 につ いて運 動種 目間で比
較 し た 結 果 を 示 し て い る9∼11,17).持久 的 な 運 動 種 目 よ り も瞬 発 的 な 動 作 を要 求 す る運 動 種 目,あ
るい は大 き
図12.1
な 筋 力 発 揮 を しい ら れ る運 動 種 目 で 顕 著 な 骨 量 増 加 が み られ る.持
正 常 月 経 を 有 す る 若 年 の 女 性 運 動 競 技 者(17∼38 歳)の
腰 椎 骨 塩 密 度(a:Jacobsonら,198411);
b:Heinrichら,199010);c:Risserら,
久性 競技 者 で高 い骨量 が み られ ない こと
199017;d:Heinonenら,19939))
か ら,運 動 時 間 の 長 短 や 最 大 酸 素 摂 取 量 の 高 低 は 直 接 骨 量 と関 係 しな い こ とが わ か る22,26).一方,ど
の よう
な 運 動 が 骨 量 減 少 を生 じる の か に つ い て は 今 の と こ ろ
縦 軸 は,各 て あ る.S:競 ー
,BB:ボ
研 究 の コ ン トロ ー ル 群 の 値 に 対 す る 相 対 値 で 表 し 泳 選 手,T:テ
ス ケ ッ ト ボ ー ル 選 手,O:オ
明 らか で な い.一
般 的 に,極 端 に 生 理 的 負 担 度 の 高 い
ト レー ニ ング は,Ca2+の ホ ル モ ン(性
恒常 性 維持 機構 の 障害 や同化
ホ ル モ ン な ど)の 産 生 低 下,あ
ニ ス プ レ イ ヤ ー,R:ラ
デ ィ ビ ル ダ ー,V:バ
ンナ
レ ー ボ ー ル 選 手,B:バ
リ エ ン テ ー リ ン グ 選 手,CCS:
ク ロ ス カ ン ト リ ー ス キ ー ヤ ー,Cyc:サ
イ ク リ ス ト,WL:ウ
エ イ ト リ フ タ ー.
る い は異
化 ホ ル モ ン(グ ル コ コ ルチ コ イ ドな ど)の 過 剰 産 生 を
b.運 動の 部位 依存 的効 果 ・全 身性 効 果
招 くの で,そ
運動 に よる骨 量増 加効 果 は部位 依存 的 に現 れ る こ と
の結 果 として骨損 失が 起 こる可 能性 が指
摘 され て い る.一
方,水
つ の 解 釈 と して,水
泳 競技 者 にお ける低 骨量 の一
が多 い21).テ ニス プ レーヤ ー の よ うに片側 の対肢 の み
に よる浮力 の ため に体重 負荷 が骨
を重 点的 に使用 す る スポー ツ選手 の骨 量 を比 べ た報告
へ 加 わ らな い状 態 が 持 続 した た め と考 え られ て い る
に よる と,利 き腕の 骨量 は非 利 き腕 に比べ て有 意 に高
が,そ
い.逆 に,局 所 的 なギ ブス 固定 は,不 使用 に なった骨
の 結 論 は得 ら れ て い な い.
のみ に骨損 失(廃 用 性骨 萎縮)が 起 こ る.こ れは,運
動 あ る い は 不 活 動 に よ る骨 量 増 減 に 局 所 性 骨 代 謝 調 節 因 子(力
学 的 要 因)が
て い る.こ
強 く 関 与 して い る こ と を示 唆 し
れ に 対 し て,運
動 時,非
加 重 であ っ た骨 に
お い て も骨 量 増 加 が 観 察 され る 場 合 が あ る.運
動 によ
り小 腸 にお け るCa2+吸 収 効 率 が 亢 進 す る こ とが 報 告 さ れ て お り,こ の よ う な 骨 代 謝 調 節 系 の 機 能 亢 進 が 全 身 的 な 影 響 に 関 与 す る と考 え ら れ て い る.
c.加 齢 と運 動 の 効 果 運 動 の 骨 量 増 加 効 果 は 加 齢 に 影 響 さ れ る.骨
代謝回
転 が 盛 ん な 成 長 期 ほ ど 運 動 の 効 果 は 顕 著 に 現 れ,加
齢
に よ り代 謝 回 転 が 低 下 す る と効 果 も減 少 す る24).運 動 の 効 果 は 生 理 的 な骨 代 謝 回 転 に 関 わ る細 胞 群 の 機 能 的 変 化 を 介 して 発 揮 され る.そ
の た め,ベ
ース となる代
謝 回 転 あ る い は 細 胞 群 の 分 化 ・増 殖 能 の 高 低 に よ り, 運 動 の 効 果 は 左 右 さ れ る.し ち,老
人 性(退
縮 性)の
か し,骨 の 老 化,す
なわ
骨量 減 少 がす で に進行 中 の人
図12.2
骨 表 面 に お け る モ デ リ ン グ と リモ デ リ ン グ(七
で も,運 動 負 荷 に よ る骨 量 減 少 の 抑 制 や 骨 量 増 加 が 多
五 三 木)
数 報 告 され て い る.運 動 に対 す る 骨 の 反 応 性 は 加 齢 と と も に 減 少 す る が,老
齢 期 の 骨 で も適 応 能 力 は 維 持 さ
れ て い る と考 え られ る23).
骨 形 態 を 維 持 した ま ま で の 急 速 な ス ケ ー ル ア ッ プが 行 わ れ る.ま
た,骨
に 対 す る 直 接 的 な 力 学 的 負 荷 で もモ
デ リ ン グ が 生 じ る こ とが 知 ら れ て い る. d.運
動 の効 果の可 塑性
運 動 に よ る 骨 量 変 化 は 可 逆 的 で あ る4,28).ト レー ニ
b.骨
ン グ に よ り変 化 した 骨 量 は,そ
骨 組 織 中 に は モ デ リ ン グ ・リモ デ リ ン グ に 関 与 す る
り も との レベ ル へ と戻 る.こ
れ を中断 す る こ とに よ の よ う に,骨
な 環 境 変 化 に 応 じた つ く りか え(新
は常 に新 た
陳 代 謝)を
行 って
い る.
の 細 胞
特 殊 化 さ れ た 細 胞 群 が 存 在 し て お り,運 動 は こ れ らの 細 胞 の 働 き を 介 し て 骨 量 変 化 を 引 き起 こす.骨 担 当 す る 細 胞 は破 骨 細 胞 で あ り,リ
に よ りコ ラ ー ゲ ン な ど の 有 機 成 分 を,ま 12.2組
織 お よ び 細 胞 レ ベ ル か らみ た 運 動 の 効 果
吸収 を
ソゾー ム系 の酵 素 た,酸
により
ハ イ ドロ キ シ ア パ タ イ トな ど の 無 機 成 分 を 溶 解 す る. 骨 形 成 を担 当 す る 細 胞 は,骨
芽 細 胞 で あ り,コ ラ ー ゲ
ン を主 体 とす る 骨 基 質 の 有 機 性 成 分 を 合 成,分 泌 す る. a.モ
デ リン グ ・リ モ デ リ ン グ
骨 形 成 が 終 了 す る と,細
胞 は偏 平化 して休止 期骨 芽細
骨 の 新 陳 代 謝 は リ モ デ リ ン グ と よ ば れ て い る(図
胞 と な り骨 表 面 の 大 部 分 を 敷 石 上 に 覆 う.一 方,骨
12.2).ま
細 胞 が,骨
ず 既 存 の 古 い 骨 が 吸 収 さ れ,そ
位 に新 た な 骨 が 形 成 さ れ る.通
常,骨
の 後 同一部
吸収 と骨形 成 の
動 的 バ ラ ンス は 保 た れ て お り,リ モ デ リ ン グ の 前 後 で 骨 量 は 変 化 し な い.し
か し,何
らか の理 由で 骨形 成量
が 相 対 的 に 骨 吸 収 量 を下 回 る と骨 量 は 減 少 し,ま 逆 の 場 合 で は 骨 量 増 加 が 起 こ る.一 進 行 中 の 成 長 期 で は,特 さ れ 類 骨 形 成(骨
方,骨
た,
長 軸伸 長が
定 の 休止骨 表 面が 直接 活性 化
形 成)が
始 ま る(図12.2).こ
う な 骨 形 成 をモ デ リ ン グ と よ び,こ
のよ
れ に よ り基 本 的 な
れ る と 骨 細 胞 に な る.骨 26,000個
芽
形 成 中 に 自 ら分 泌 した 骨 基 質 中 に埋 め 込 ま 細 胞 は1mm3の
骨 質 中に
も存 在 し て お り,骨 小 管 中 に た く さ ん の 細 胞
質 突 起 を伸 ば し,こ
れ に よ り骨 細 胞 ど う し あ る い は 骨
表 面 上 の 骨 芽 細 胞 と ギ ャ ッ プ 結 合 に よ り連 結 し合 い, 細 胞 性 の ネ ッ トワ ー ク を つ く っ て い る.骨 と し て骨 吸 収 作 用(骨 た が,近
年,骨
細 胞 性 骨 溶 解)が
細 胞の 機能
指 摘 され て い
の 力 学 的 ス トレ ス 検 出 機 構 の役 割 が 注
目を 集 め て い る.
12.3
運 動
・不 活 動
・宇 宙 飛 行 と モ デ リ ン
12.4
運 動 の 効 果 を媒 介
・修 飾 す る 要 因
グ ・リ モ デ リ ン グ a.力 骨 代 謝 に 対 す る 運 動 の 主 た る 効 果 は,モ (骨 形 成)の 12.3).運
デリング
亢 進 と リモ デ リ ン グ の 抑 制 で あ る12,22(図
動 した 動 物 の 四 肢 の 長 管 骨 骨 幹 部(皮
で は,骨 の 外 周(骨
質骨)
膜 面)で 活 発 な モ デ リ ン グ が 生 じ,
こ れ に よ り骨 膜 周 径 の 増 大 に よ る 皮 質 骨 量 の 増 加 が 起 こ る.こ
の よ う な 現 象 は,成
長 期 の ヒ トや 動 物 あ る い
は 老 齢 期 の ヒ トで も観 察 さ れ て い る.一 は,海
方,運
動負 荷
綿 骨 骨 梁 表 面 の 骨 形 成 亢 進 と骨 吸 収 減 少 を引 き
起 こ す.こ
れ に よ り,骨 梁 数 の 増 加 で は な く,個
々の
学 的要 因
運 動 の 条 件 依 存 的 お よ び 部 位 依 存 的 効 果 は,力
骨 内部 に はそ れ に抗 す る よ うに等 しい大 き さ の 内力 (力 学 的 ス ト レ ス)が
き る.重
(B)な
工衛 星 に よる宇
バ レ ー ボ ー ル(V),バ
どの 運 動 は,weight-bearing
わ る.ま
と して 特 徴 づ け ら れ る(図12.3).人
結果 も
力 に抗 して す ば や く体 重 の 移 動 や 支 持 を 行 う
テ ニ ス(T)や
不 活 動(不
デ リ ン グ の 抑 制 と リモ デ リ ン グ の 亢 進
量 は この 力学 的 ス
トレ ス の 大 き さ と比 例 関 係 に あ る.図12.1の
持 運 動)と
骨 量 減 少 は,モ
発 生 す る.骨
運 動 種 目 に 起 因 した 力 学 的 ス トレ ス の 違 い か ら説 明 で
骨 梁 幅 の増 大 に起 因 し た海 綿 骨 骨 量 の 増 加 が 起 こ る. 動 化)1)あ る い は 宇 宙 飛 行27)な ど に よ る
学的
側 面 か ら考 え る と理 解 しや す い.外 力 が 骨 に加 わ る と,
よ ば れ,運 た,ボ
よ ば れ,筋
exercise(体
重支
動 時 に は骨へ 強 い地 面反 力が 加
デ ィ ビ ル デ ィ ン グ(BB)や
リ フテ ィ ン グ(WL)は,resistance 動)と
ス ケ ッ トボ ー ル
ウエ イ ト
exercise(抵
活 動 中 に 外 部 負 荷(重
量 物)や
抗運 抵抗
宙 飛 行 や 尾 部 懸 垂 に よ り後 肢 へ の 体 重 荷 重 を 減 少 さ せ
物 に 抗 す る た め の 筋 発 揮 張 力 に よ り骨 へ 大 き な 力 学 的
る 無 重 力 の モ デ ル を 若 齢 ラ ッ トに 体 験 させ る と,成
ス トレ ス が 生 じ る.こ
長
の よ う に骨 へ の 力 学 的 負 荷 が 大
期 の 骨 表 面 で 観 察 され る べ き活 発 な モ デ リ ン グ が 完 全
き い 運 動 種 目 で は い ず れ も 高 い 骨 塩 密 度 が 観 察 され て
に 停 止 す る.ま
い る.こ
た,海
綿 骨 で は,ま
ず骨 吸収 が一 過性
に 亢 進 し,骨 量 は 急 速 に 減 少 す る.こ 骨 形 成 の 低 下 が 起 こ り,こ 成 人 の 場 合 で も,宇
著 な骨量 増加 が 観察 され なか
っ た 持 久 的 運 動 種 目は,生
理 的負 担 度が 相 当高 い場 合
た,
で も骨 へ の 力 学 的 ス ト レス は そ れ ほ ど高 くな ら な い.
宙 飛 行 あ る い は ベ ッ ド レ ス トに よ
運 動 の 部 位 依 存 的 効 果 も,運 動 時 に骨 に 生 じた 力 学 的
る 早 期 の 急 激 な 骨 量 減 少 と尿 中Ca排 察 さ れ,こ
れに やや遅 れ て
れ は 持 続 的 に 続 く.ま
れ に対 し て,顕
れ は骨 吸 収(リ
出量 の増 加 が観
モ デ リ ン グ)の 亢 進 を 示 唆
し て い る.
ス トレス の 大 き さの違 い を反 映 して い る と考 え られ る. 骨 へ の 力 学 的 負 荷 の 重 要 な 決 定 因 子 は 体 重 で あ る. 日常 生 活 や 運 動 の 場 面 に お い て,同
一 の動 作 時 で も体
重 が 重 い ほ ど体 重 支 持 骨 が 受 け る 力 は 大 き くな る.そ の た め,運
動 競 技 者 の み な ら ず 非 競 技 者 に お い て も体
重 と骨 量 と の 間 に は 強 い 正 の 相 関 関 係 が み い だ され て い る.
b.内 1)エ
分 泌的 要因 ス トロ ゲ ン
卵 胞 ホ ル モ ン(エ ス トロ ゲ ン)は,副 ン(PTH)な
甲状腺 ホル モ
どの骨 吸収促 進 因子 に対 す る骨組 織 の 反
応 性 を 下 げ る 働 き(骨 へ の 直 接 作 用)や,カ 調 節 ホ ル モ ン を 介 し てCa出
ル シ ウム
納 を プ ラス に傾 け る 間接
作 用 に よ り,骨 量 を維 持 さ せ る よ う に 働 く と考 え ら れ て い る.ま 図12.3
皮 質骨 に及 ぼす運動 お よび不動 化 の 効 果(七
五 三 木)
た,力
学 的 ス ト レス に対 す る 骨 の 反 応 性 を
高 め る 作 用 も報 告 さ れ て い る.卵 巣 か ら の エ ス ト ロ ゲ ン分 泌 は,下
垂 体 性 ゴ ナ ド トロ ピ ン に よ り直 接 調 節 さ
12.5
運 動 の力 学 的 ス トレス を介 した骨 量 変 化 の メ カニ ズ ム
a.運
動 とス トレ イ ン
骨 組 織 が 新 た な 力 学 的 環 境 に 慢 性 的 に お か れ る と, そ の環 境 条 件 に適 す る よ う な構造 的 お よ び 量 的 変 化 を 生 じ る.現
在,力
学 的 環 境 の変 化 は骨 の微 小 な変 形
(ス ト レ イ ン)と し て 認 識 さ れ る と考 え られ て い る13,14,18). 骨 に生 じた ス ト レ イ ン と骨 量 変 化 の 関 係 は,次 図12.4
無 月経 お よ び 正 常 月 経 を 有 す る女 子 長 距 離 ラ ンナ ー お よ び無 月経 の 非 ス ポ ー ツ選 手 の 腰 椎 骨 塩 密 度3)
縦 軸 は,各 研 究 の 正 常 月経 を有 す る コ ン トロー ル群 の値 に 対 す る相 対 値 で 表 して あ る.
の よう
に 理 解 さ れ て い る. ① 骨 に 生 じ た 最 大 ス トレ イ ン と骨 量 変 化 は 比 例 関 係 に あ る. ② 同 一 の 最 大 ス トレ イ ン を 生 じ る場 合,単
位時間
当 た りの ス ト レ イ ン の 変 化 量 が 大 き い ほ ど,骨 量 れ て い る.運 は,視
動 に よ る 過 度 の 心 理 的 ・身 体 的 ス ト レ ス
床 下 部 レベ ル に お け る ゴナ ド トロ ピ ン放 出 ホ ル
モ ンの 分 泌 抑 制,あ
る い は ゴ ナ ド トロ ピ ン分 泌 抑 制 作
用 を も つ 脳 内 の 内 因 性 オ ピ オ イ ド(β-エ
ン ドル フ ィ
変 化 も大 き い. ③ 外 力 の 負 荷 回 数 と骨 量 変 化 は 比 例 関 係 に は な い.あ
る 閾 値 回 数 以 上 で な い と,ス
トレ イ ンに 見
合 う骨 量 増 加 効 果 が 生 じ な い が,閾
値 以 上 であれ
ン に 代 表 さ れ る よ う な 生 体 内 で 産 生 さ れ る鎮 痛 作 用 を
ば 負 荷 回 数 を さ ら に 増 や して もそ れ 以 上 の 骨 量 増
有 す る物 質)の
加 は生 じ な い.以上
増 加 を 引 き起 こ す こ と で ゴ ナ ド トロ ピ
ン分 泌 を低 下 さ せ,こ
れ に よ り 月経 異 常 お よ び 血 清 エ
ス トロ ゲ ン濃 度 の低 下 が も た ら さ れ る と考 え ら れ て い る.ハ
ー ド な ト レー ニ ン グ を 行 う女 子 マ ラ ソ ン ラ ンナ
化 の 関 係 は,運
の よ うな ス ト レ イ ン と骨 量 変
動 に よる骨 量 変化 を説 明 す るの に
非 常 に都 合 が よ い. ① は,ス
ト レイ ン を 十 分 生 じる よ う な 力 学 的 負 荷 が
ー の 中 に は ,月 経 周 期 異 常 お よ び 低 い 血 清 エ ス トロ ゲ
骨 量 増 加 に 必 要 で あ る こ と を意 味 す る.運
ン濃 度 を 有 す る 者 が 多 く,ま た,そ
加 わ る 力 学 的 負 荷 が 大 きい ほ ど骨 の 変 形 量 が 大 き く,
れ らの 骨 量 は 正 常
月 経 の 女 性 よ り も 少 な い3,5)(図12.4).持
久 性 ラ ンナ
動 時 に骨 へ
こ れ に 比 例 し て 骨 量 増 加 も大 き く な る と 考 え られ る.
ー は一般 女 性 に比べ て体重 が軽 い傾 向 にあ り ,低 体 重
運 動 の 部 位 依 存 的 な 骨 量 増 加 効 果,あ
るい は 運動種 目
に よ る力 学 的 ス トレ ス 水 準 の 低 下 と,エ ス トロ ゲ ン欠
に よ る 骨 量 増 加 の 程 度 の 違 い は,運
乏 に よ る 骨 の 力 学 的 ス ト レ ス に 対 す る応 答 性 の 低 下 の
ス トレ イ ンの 大 き さ に よ っ て 説 明 で き る.②
相 乗 効 果 が 低 骨 量 と 関 連 す る と考 え られ て い る16).
に 力 が 大 き くな る よ う な 負 荷 よ り も短 時 間 で イ ンパ ク
2)グ
トと して 加 わ る 力 の ほ うが 骨 量 増 加 に は 効 果 的 で あ る
ル ココル チ コイ ド
動 時 に 骨 で 生 じた は,徐
々
運 動 強 度 や 運 動 時 間 が 増 加 す る と,副 腎 に 由 来 す る
こ と を 意 味 す る.こ
血 中 グ ル コ コ ル チ コ イ ド(GC)濃
種 目で 顕 著 な骨 量 増 加 が み られ る こ と と関 係 す る.③
GC過 進(骨
度 の 増 加 が 起 こ る.
剰 が 慢 性 化 す る と,骨 形 成 の 抑 制 や 骨 吸 収 の亢 へ の 直 接 作 用),ま
腸 管 か ら のCa吸
収 抑 制(骨
た,性
ホ ルモ ン産生 減 少 や
へ の 間 接 作 用)な
どによ
り骨 損 失 を 引 き起 こす こ と が 知 られ て い る.そ の た め, 運 動 に よ るGC過 指 摘 され て い る.
は,同
れ は 瞬 発 的 な 動 作 を 要 求 す る運 動
じ運 動 を何 度 繰 り返 して も,あ
るい は 長時 間持
続 し て も,そ
れ に比 例 し た骨 量 変 化 が 起 こ ら な い こ と
を 意 味 し,持
久性 競技 者で 高い骨 塩 量 が得 られ ない結
果 と一 致 す る8).
剰 も 同 様 な 効 果 を も た らす 可 能 性 が b.Mechanostate理 Frostは,力
論 に基 づ く運動 の効 果
学 的 ス トレ ス に よ り生 じ た 骨 組 織 の 歪
み と骨 代 謝 調 節 と の 関 係 をmechanostate理 モ デ ル 化 し た6,7,8)(図12.5).そ
論 と して
の 基 本 的 な 考 え 方 は,
れ る 変 化 を よ く 説 明 し て い る.た bearing
exerciseやresistance
MESmを
と え ば,weight
exerciseは,骨
組織 内 に
超 え る ス ト レ イ ン を生 じさ せ る よ う な外 力 を
もた ら し,こ
れ に よ りモ デ リ ン グ が 活 性 化 さ れ 骨 量 が
増 加 す る と考 え られ る.一
方,マ
ラ ソンラ ンナー な ど
の 走 運 動 競 技 者 や 水 泳 競 技 者 で は,ス MESmに
トレ イ ンが
至 ら な い た め に 顕 著 な骨 量 増 加 が み られ な い
と解 釈 され る だ ろ う.ま 骨 量 減 少 は,外 MESrを
た,不
使用 や 宇宙 飛行 による
力 の 極 端 な 減 少 に伴 っ て ス ト レイ ンが
下 回 った た め に生 じた リモ デ リ ングの活 性 化
に よ っ て 説 明 され る. ま た,閾
値 は ホ ル モ ン な どの 液 性 因 子 に よ り変 化 す
る と され て い る.た
と え ば,エ
モ ン はMESmとMESrを く.そ 図12.5
Mechanostate理
論か らみた力学 的環境変 化に対す
る モ デ リ ン グお よ び リモ デ リ ン グの 活 性 化 水 準 の 変 化(a)と
縦 軸 は,モ
化 水 準 を,bの
縦 軸 は骨 量 変 化 を そ れ ぞ れ示 して い る.力
に シ フ ト)し てMESr以下
にな る と.リ
が 起 こ り,骨 量 は 減 少 す る.逆 が 右 側 に シ フ ト)す
上昇をも
た,力
学 的 環 境 が 変 化 しな くて も リ モ デ リ ン
グ が 生 じ や す い 状 態 に な る.エ
ス トロ ゲ ンが 減 少 す る
デ リ ン グ お よ び リ モ デ リ ン グ の 活性
的 負 荷 の大 き さ や そ れ を 受 け る 時 間 な どが 低 下(横
MESm以
れ らの 濃 度 低 下 はMESの
た ら し,力 学 的 負 荷 が 増 し て もモ デ リ ン グ は起 こ り に く く,ま
そ れ に よ る 骨 量 変 化(b)6,7)
横 軸 は力 学 的 負 荷 に よ り生 じ る骨 の 歪 み と時 間 の 関 数 を 表 し て い る.aの
の た め,そ
ス ト ロ ゲ ンや 成 長 ホ ル
低 め に セ ッ トす る よ う に 働
に,力
る と,リ
学
軸 が左 側
モ デ リ ン グ の活 性 化
学 的 負 荷 が 増 加(横
と,同
じ運 動 を し て も骨 量 増 加 効 果 が 弱 か っ た り,生
活 ス タ イ ル が 変 化 し な く て も骨 が 失 わ れ る 現 象 は こ れ に よ り説 明 で き る.
軸
モ デ リ ン グ は 制 御 さ れ,
上 に な る と モ デ リ ン グ の 活 性 化 が 起 こ り,骨 量 は
増 加 す る.
c.力 学 的 ス トレ ス の 検 出機 構 骨 に 生 じ た 局 所 的 な ス トレ イ ン は 骨 の 細 胞 群 の 機 能 的 変 化 へ と変 換 さ れ る.そ
モ デ リ ング と リモ デ リ ン グ の 程 度 が 骨 に生 じる ス トレ イ ン に 依 存 して 変 化 す る とい う も の で あ る.モ
デリン
グ と リモ デ リ ン グ の 活 性 化 が 起 こ る た め に は,ス イ ンが 設 定 さ れ た 閾 値(setpoint)を
トレ
超 え る こ とが 必
て,電
の変換 過 程 を担 う要 因 と し
気 的 要 因 と 生 化 学 的 要 因 が 考 え られ て い る.古
くか ら骨 組 織 に は 圧 電 気 現 象 あ る い は 流 動 電 位 な ど の 電 気 現 象2)が 知 られ て お り,骨 へ の 力 学 的 刺 激 は 電 気 的 信 号(strain
related potentials)へ
と 変 換 さ れ て,こ
要 で あ り,こ の 閾 値 を 最 小 有 効 ス トレ イ ン(minimum
れ に よ り細 胞 機 能 が 変 化 す る と い う よ う な ス キ ー ム が
effective strain:MES)と
考 え ら れ て きた が,そ
はMESm(モ
よ ぶ.モ
デ リン グの活性 化
デ リ ン グ の最 小 有 効 ス トレ イ ン)を 超 え
る ス ト レ イ ン に よ り引 き起 こ さ れ る.一 ン グ はMESr(リ
方,リ
モ デ リ ン グ の 最 小 有 効 ス ト レ イ ン)
以 上 の 負 荷 状 態 に な る と 抑 制 さ れ,ス MESrを
モデリ
下 回 る と活 性 化 さ れ る.正
加 わ っ て い る場 合,リ
ト レ イ ンが
現 在 で は,骨 の 流 れ(fluid
の 真 偽 は 明 らか で は な い.ま た,
組 織 中 の 細 胞 そ れ 自体 の 変 形 や,組 flow)に
よ る ず り(shear)ス
織液
トレスが
力 学 的 ス ト レス 情 報 と して 骨 細 胞 や 骨 芽 細 胞 に 受 容 さ れ,そ
れ ら の 細 胞 群 が ケ ミ カ ル メ デ ィエ ー タ ー
常 な ス トレイ ンが
(IGF-Ⅰ15),プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン,一 酸 化 窒 素25),プ リ
モ デ リ ン グ に よ る骨 吸 収 量 と 骨
ン作 動 性 ア ゴ ニ ス ト19,20))を産 生 す る こ と に よ り骨 芽
形 成 量 は 等 し い の で 骨 量 変 化 は 生 じ な い(conserva
細 胞 あ る い は 破 骨 細 胞 の 分 化・ 増 殖 機 能 が 調 節 され る
tion mode).一
可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る.
方,MESr以
下 の ス トレ イ ン水 準 で は,
骨 吸 収 量 に 見 合 う 骨 形 成 が 起 こ ら な いdisuse
modeに
な る こ とが 仮 定 さ れ て お り,リ モ デ リ ン グ の 亢 進 は 骨 量 減 少 を導 くこ と に な る.こ
の 理 論 は,運
動 を含 め た
種 々の 力学 的環 境下 におか れ た骨組 織 で実 際 に観 察 さ
● 問 題 1. 運 動 に よ る骨 量 変 化 には どの よ うな 要 因 が 関与 して い る のか 述べ な さい.
2.
運 動 の 骨 量 増 加 効 果 に 部 位 依 存 性 が み ら れ る こ と の 理
13)
3. 4.
Lanyon,
L.
E.:Functional
remodeling.
由 を 述 べ な さ い. 14)
モ デ リ ン グ と リ モ デ リ ン グ の 違 い を 述 べ な さ い. 運 動 お よ び 不 動 化 に よ る モ デ リ ン グ
Lanyon,
L.
bone
・ リモ デ リ ン グ 水
Calcif.
loss
E.,
Rubin,
during
loading.
strain
Tissice C.
T.
calcium
Calcif.
Tissue
as
a
Int.,36:
determinant
and
Baust,
bone
G.:Modulation
insufficiency
Int.,38
for
S56-S61,1984.
by
of
controlled
dynamic
:209-216,1986.
準 変 化 の 特 徴 を 述 べ な さ い. 15)
5.
骨 代 謝 に 果 た す エ ス
Lean,
J.
M.,
Jagger,
C.
J., Chambers,
T.
J. and
Chow,
J.W.:
トロ ゲ ン の 生 理 的 役 割 を 述 べ な さ Increased
insulin-like
growth
factor
I mRNA
expression
in
い. rat
6.
osteocytes
response
to
mechanical
M.,
Blue,P.
stimulation.
Am.
J.
女 子 マ ラ ソ ン ラ ン ナ ー の 骨 塩 量 が 低 い 傾 向 に あ る 理 山 Physiol.,
を 述 べ な さ い. 7.
in
16)
ど の よ う な 運 動 が 骨 量 増 加 に 効 果 的 で あ る か 理 由 を つ
268:E318-E327,1995.
Linnell,
S.
L.,
Stager,
Robertshaw,
け て 述 べ な さ い.
J.
D.:Bone
regularity
in
female
L.,
Jee,
W.,
mineral runners.
Oyster,
content
Meal.
N.
and
Sci.
and
menstrual
Sports
Exerc.,16:
343-348,1984.
●
考
文
献
1) Bagi,
参
C.
M.,
17)
Mecham,
Comparative following
M.,
Weiss,
morphometric ovariectomy
J. and
changes and/or
Miller,
S. C.:
in rat cortical
immobilization.
bone
Bone,14:
18)
137
L. and
by
bone
Becker,
of exercise
of estrogen
of electric stress. Science,
and
calcium.
on
bone:permissive
Med.
Sci. Sports
Lee,
K. S., Ehsani,
C. and
S. J.Jr.:Weight-bearing
training
and
women.
Ann.
Birge,
lumbar
bone
S. and
A. A.,S1atopolsky,
content
K., Chesnut,
20)
E.,
exercise
proposal. 7) Frost,
and
M.
D., Bremner,
B.:Bone
eumenorrheic
W. 22)
mineral
athletes. N. Engl. J.
structural
23)
M.:Bone"mass"and Anat.
H.
the"mechanostate":A
Rec.,219
:1-9,1987.
biomechanics:General
adaptation
to mechanical
concepts
usage.
weight
do
lifters?A
marathon
runners
for
Calcif.Tissue
vital-biomechanical
have view
Int.,
less bone
and
and
A., Oja,
P., Kannus,
Vuori, I.:Bone
different
T. W.
cyclically trained
Talmage, and
and
24)
than
explanation.
menstruating
female
R. V.:Bone
W., density
older athletic women.
12) 勝 田
茂,七
7 :61-68,
五 三 木 聡:筋 1993.
athletes
A. in
resistance Exerc.,22 Grubb,
Perry,
mineral and
of
and
M.
H.
female
of bone
Miner.
formation
Res.,66-A:397-
act
as
a
mitogen
for
Tissue
Int.,58:
N.
action
of
on
osteoblast-
adenosine
Calcif.
Tissue
Okano,
H.,
Int.,62:418-425,
Shimegi,
S.,
Yanagita,
M.,
Y.,
Y.
Ibuki,
increases
bone
mineral
Endocrine
J.,41
:49-56,1994.
七
五 三 木 聡,勝
動
が 引
き 起
田
and
Kojirna,
density
in
茂,天
貝
Yamada,
均,.大
野 敦
力
A.,
Ayalon,
Leichter, I.:Increased
density
due
J. to
and
H.,
exercise women.
也:成
長 期
の 運
科 学,39:181-188,1990.
bone-loading
osteoporotic
Fukui,
postmenopausal
こ す 骨 肥 大.体
Simkin,
M.,
I.:Physical
women.
trabecular
exercises Calcif.
Tissue
in
postmeno-
Int.,40:59-63,
Steinberg,
M.
E.
and
and
Trueta,
J.:Effects
development
in
the
of
rat.
activity
Clin.
on
Orthop.
bone
Rel.
Res.,
:52-60,1981.
Turner,
C.
oxide
inhibitor
H.,Takano,
bone
formation
Y.,
Owan,I.
L-NAME in
and
Murrell,
suppresses
rats.
Am.
J.
G.
A.:Nitric
mechanically
induced
Physiol.,270:E634-E639,
Umemura,
Y.,
Mashiko,
S.:Five force
Ishiko,
T.,
jumps in
rats.
Yamauchi, per
J.
Bone.
day
T.,
Kurono,
increase
Miner.
M.
bone
Res.,12
mass
and and
:1480-1485,
1997. 27)
and
T.
J.
bone
and
Morey,
E.
formation
in
R.:Effect rats.
Am.
of J.
spaceflight
on
Physiol.,244:R
305-309,1983. 28)
Bone,
Wronski, periosteal
athletes
Res.,2:328-332,1984.
肉 と 骨 組 織 と の 関 係.The
J.
:570-574,1990.
adenosine
MC3T3-E1.
breaking
endurance
:558-563,1989.
in women:College
J.Orthop.
C. D.,
content
S. A., Taft, T.
Bone
Risser,
1996. 26)
R. W.,
T. G.:Bone
Sci. Sports
P. C., Beaver,
H., Mattari,
of female
Exerc.,22
E.:Regulation J.
S.:Mitogenic
cells,
156 25)
:1-14,1993.
S. B., Pamenter,
Lohman,
athletes. Med.
11) Jacobson,
density
Miner.,23
C. H., Going,
Boyden,
P., Sievanen,
mineral
sports. Bone
10) Heinrich,
loads.
P. J.,
eumenorrheic
1987.
Bone,20:183-189,1997. 9) Heinonen,
B, in
cells(MC3T3-E1).Cadcif.
Shimegi,
growth
H. M.:Why
Sports L.
S.:ATP
pausal
M.:Vital
Sci.
dynamic
Shimegi,
bone
:145-156,1988.
8) Frost,
Lanyon,
and
Fukumura,
:277-281,1984. H.
Med.
C.T.
A.,
density
1998. 21)
in postmenopausal
C. H.
Southworth,
of amenorrheic
Med.,311
mineral
B. L., Nilson,
J.,Shainholtz,
6) Frost,
athletes.
Rubin,
applied
Leblanc,
109-113,1996.
Exerc.,
Int. Med.,108:824-828,1988.
5) Drinkwater,
content
college
like
G. P., Stocke,
W.
J.,
402,1984. 19)
:281-285,1990.
4) Dalsky,
42
O.:Generation
to mechanical
E.
V.:Bone
osteoblast-like
3) Dalsky,G.P.:Effect
22
R.
in response
: 1063-1064,1962.
influence
Schneider,
by
C. A.
potentials
W.
and
877-883,1993. 2) Bassett,
Risser,
Yeh,
J.
K.
resorption Metabolism,39
and
Aloia, and
J.
F.:Deconditioning
decreases :659-663,1990.
bone
increases formation
in
bone the
rat.
13 運 動 と 環 境
生 体 は 環 境 の 変 化 に 適 応 し て,機 能,形 抜4,000m以
態 お よ び代 謝 特 性 を 変 化 さ せ て い く.本 講 で は,海
上 の 高 地 に 生 活 す る 住 人 の 生 理 機 能,高 地 に 移 動 す る こ とに よ り生 ず る 高 地 順 応,
ま た 高 地 あ る い は低 酸 素 状 態 で の トレ ー ニ ン グ効 果 に つ い て 解 説 す る.さ
らに,地
上 とは異 な
る 微 小 重 量 環 境 と な る 宇 宙 空 間 で の 生 理 機 能 の 変 化 に つ い て 解 説 す る.
す る 報 告 や,高 13.1高
地 環
境
地 住 民 で はType Ⅰ 線 維 の 割 合 が 多 い
とす る 報 告 が あ る.筋
の酵素 活性 や毛細 血 管密 度 につ
い て も違 い が 認 め られ な い とす る報 告 と,高 地 住 民 で a.高
地 環境 と生理機 能
リ ン ゴ酸 脱 水 素 酵 素(MDH)活
気 圧 お よ び 酸 素 分 圧 は 海 抜 高 度 の 上 昇 に よ り低 下 す る.海
抜5,500mで
り,エ
ベ レ ス ト山 頂 で は 約1/3に
気 圧 お よ び 酸 素 分 圧 は 約1/2と な る.気
も 高 度 の 上 昇 と と も に 低 下 す る(100mの 0.65℃ の 低 下).ア 5,500mに
上昇で約
ン デ ス 地 方 に は 高 度4,000mか
定 住 して い る 部 族 が い る.こ
低 地 住 民 と 比 べ て 体 重,身
ら
の 高地 住民 は
長 が 小 さ く,そ れ は 低 酸 素
や 低 温 が 原 因 に よ る も の と 考 え られ て い る.低 環 境 に お い て は,少
な
温 につ いて
性 の低 下 お よ び乳酸
性 や毛 細 血管 密 度 の 増 大 が認
め ら れ る と し た 報 告 な ど が あ る.実 験 動 物 に お い て も 高 地 に 生 息 す る 動 物 の 筋 線 維 組 成 比,酵
素 活 性,毛
細
血 管 密 度 は低 地 に 生 息 す る 動 物 と変 化 が み ら れ な い と す る 報 告 と み ら れ る とす る 報 告 に 分 か れ る.こ 相 違 は,居
住 し て い る 高 度,種
れ らの
の違 いや筋 の種 類 に よ
り生 じ て い る も の と考 え られ る9).
酸素 の
な い 酸 素 を効 率 よ く組 織 に運 搬 す
る 能 力 が 重 要 に な る.そ
脱 水 素 酵 素(LDH)活
の ため に高地 住民 は換気 量 を
増 大 さ せ て 低 酸 素 血 症 に な る の を 防 い で い る.ま
た,
b.高
地 環境 への 順応
低 地 で 生 活 し て い る 住 人 が 高 地 に 登 る と生 体 は 新 し い環 境 の 中 で 十 分 に機 能 が 発揮 で きる よ う に適 応 す
高 地住民 の右 心 室壁 や肺動 脈 壁 の肥大 が報告 されてお
る.こ
り,こ れ は 肺 動 脈 圧 の 上 昇 に よ る もの と考 え られ て い
本 エ ベ レ ス ト登 山 隊20名
る.高
静 時 に 測 定 し た 平 均 心 拍 数 と 赤 血 球 数 の 変 化 を示 し て
地 住 民 の 全 血 液 量,肺
血 液 量,肺
血 液 量/全 血
液 量 は 低 地 住 民 に 比 較 し て 著 し く大 き く,こ れ は 高 地 住 民 の 肺 血 液 量 が きわ め て 多 い こ と を 意 味 し て い る. 一般 に高地 住 民 で は
,赤
ヘ マ トク リ ッ ト(Hct)な
血 球,ヘ
モ グ ロ ビ ン(Hb),
れ が 高 地 順 応 で あ る.図13.1は,1973年
い る16.カ
の登 山行 程 に お け る早 朝安
トマ ンズ か ら シ ャ ン ボ チ ェ ま で の15日
間で
は 心 拍 数 に 大 き な 変 化 は み ら れ な い が,海 抜3,800m 以 上 に な る と高 度 の 上 昇 に 伴 い心 拍 数 が 増 大 し,同
ど が 増 加 して お り,酸 素 を
有 効 に 摂 取 で き る よ う な メ カ ニ ズ ム が 働 い て い る.
じ
場 所 に滞 在 す る と心 拍 数 は 減 少 す る.赤 血 球 数 は 少 し ず つ 増 加 し,測
定 中 の 最 高 値 は 正 常 値 の2倍
高 地 住 民 と低 地 住 民 か ら 得 ら れ た バ イ オ プ シ ー サ ン
8,110,000個/mm3を
プ ル か ら骨 格 筋 の 特 性 が 比 較 ・検 討 さ れ て い る.現
在
か ら4,000mに
の と こ ろ 筋 線 維 組 成 や 各 種 酵 素 活 性 に つ い て は,一
致
吸 数,心
した 見 解 が 得 ら れ て い な い.た
の 日
示 して い る.一
か け て は 換 気 量,血
で ある
般 に 海 抜3,500m 流 量 が 増 大 し,呼
拍 数 お よ び 赤 血 球 数 が 増 加 す る.そ
の 後,高
とえ ば,外 側 広 筋 の 筋
地 順 応 が 進 む と ミ トコ ン ド リア,Hbの
増 加 が 生 じ る.
線 維 組 成 は 高 地 住 民 と低 地 住 民 で違 い が み られ な い と
し か し な が ら,個 人 差 は あ るが,ヒ
トが 機 能 低 下 を
図13.1
日本 エ ベ レス ト登 山隊 の平 均 心 拍 数 と赤 血 数 球 の 変 化(Ⅰ
図13.2
低 圧 チ ャ ンバ ー を 用 い て 種 々の 高 度(Okm,4km, 6km)の
か らⅣ は 高地 順 応 期 間 を示 す)16)
疑 似 環 境 に 急 性 に暴 露 し た 際 の 安 静 時
(R)と
起 こ さ ず に 高 地 順 応 で き る の は5,300mま
で と され て
運 動 時(E)の
デ ー タ は ヒマ ラ ヤ 登 山 隊15名
い る.
換 気 量(VE),酸
(VO2),呼 吸 商(RQ)の る.急
の 平 均 ±標 準 偏 差 で 示 して あ
性 暴 露 は上 昇速 度400m/分
mで90分,6,000mで40分.運
c.高
地 あ る い は 低 酸 素 状 態 で の 運 動 や トレ ー ニ ン グ
高 地 適 性 の 判 定,高
地 順 応 の 促 進,ま
よ り600kpm/分
素消 費量
変 化11,13 で 行 い,滞
留 期 間 は4,000
動 は 自転 車 エ ル ゴ メ ー タ に
で6分 間.
たは持 久運 動
の 成 績 の 向 上 の た め に 低 圧 性 の 低 酸 素 に 暴 露 させ る 方 法 が あ る.こ
の 方 法 で は 低 圧 チ ャ ンバ ー を 用 い て 短 期
間 の 急 性 低 圧 暴 露 を 行 っ た り,長 期 間 に わ た っ て 繰 り 返 し暴 露 を 行 う.さ
ら に,低
圧 チ ャ ンバ ー 内 で 運 動 を
行 う こ と に よ り低 圧 暴 露 と運 動 の 相 乗 効 果 を 得 る こ と を ね ら い と し た 研 究 が あ る. 図13.2は,ヒ
マ ラ ヤ 登 山 隊15名
内 で 海 抜Om,4,000m,6,000mの
に低 圧 チ ャ ン バ ー 疑 似 環境 に急性 暴
露 した 場 合 の 安 静 時 と運 動 時 の 換 気 量(VE),酸 費 量(V、2),呼 図13.3は,同 量(LA)を
吸 商(RQ)を
素 消
示 して い る11,13).ま た,
じ条 件 下 で の 心 拍 数,Hb量,血
中乳 酸
示 し て い る11,13).安静 時 に つ い て み る と 高
度 の 上 昇 に 伴 い 換 気 量 が 増 大 し,心 拍 数,呼 く な っ て い る が,酸
素 消 費 量 は 変 化 し て い な い.こ
方,運
低 圧 チ ャ ンバ ー を 用 い て種 々の 高 度(Okm,4㎞, 6km)の
吸商 が 高
(R)と (Hb),血
れ
らの変 化 は酸 素 欠乏 に対 す る適 応 で あ る と考 え られ る.一
図13.3
疑 似 環 境 に 急 性 に 暴 露 した 際 の 安 静 時 運 動 時(E)の
デ ー タは ヒ マ ラヤ 登 山 隊15名 る.測
心 拍 数,ヘ
中乳 酸 量(LA)の
定 条 件 は 図13.2と
モ グロ ビ ン量
変 化11,13
の 平 均 ±標 準 偏 差 で 示 し て あ
同 じ.
動 を負 荷 す る とエ ネ ル ギ ー 消 費 が 増 大 し
て,さ
ら に低 酸 素 状 態 と相 乗 的 に 生 体 の 負 担 を増 大 さ
VEmax,HbやHctの
せ,換
気 量 と心 拍 数 の 増 大 が 顕 著 に な る.血
中乳 酸 量
パ フ ォー マ ン ス に は 向 上 が み られ た 報 告 と み ら れ な か
は 安 静 時 に は 低 圧 暴 露 に よ り増 大 し,運 動 の 負 荷 に よ
っ た 報 告 に 二 分 さ れ る.競 技 選 手 に ト レ ー ニ ン グ を行
り さ ら に 顕 著 に な る.こ
わ せ た研 究 で もVO2max,VEmaxの増 大 が 報 告 され て い る が,
れ は 代 謝 が 低 圧 暴 露 に よ り無
増 大 が 認 め ら れ て い る が,平
地 での
酸 素 過 程 に 移 行 す る こ と に 起 因 して い る.
HbやHctに
酸 素 運 搬 能 力 を 向 上 させ る こ と を 目 的 と し て 高 地 あ
ま た,平
る い は 低 酸 素 状 態 で ト レー ニ ン グ が 負 荷 さ れ て い る1).
者 の結 果 と同様 に向上 が み られた報 告 とみ られ なか っ
非 鍛 練 者 を 海 抜1,500mか
た 報 告 に 二 分 さ れ,パ
ら4,000mの
疑 似 環境 に暴
露 し て ト レ ー ニ ン グ を 行 わ せ た 研 究 で は,VO2max,
は 変 化 が な か っ た とす る 報 告 が 多 い. 地 で の パ フ ォ ー マ ンス に つ い て は,非
鍛練
フ ォー マ ン ス に 対 す る 効 果 に は
個 人差 が あ る こ と も 強 調 され て い る.い ず れ に して も,
図13.4 1Gセ
微 小 重 力 に 対 す る生 理 学 的 適 応 パ タ ー ン12)
ッ トポ イ ン トは 地 球上 で の 生 理 状 態 を示 す.0Gセ
ッ トポ イ ン トは宇 宙 で生 まれ て ヒ トだ
け に起 こ る状 態 で あ り,微 小 重 力 環 境 に 完 全 に適 応 した レベ ル を 示 す.適 宙 空 間 に 出,そ の 環 境 に対 応 す るの に必 要 な期 間 の こ と で,約6週
応 時 点 と は,ヒ
トが宇
間 で あ る.
平 地 で の パ フ ォー マ ンス に 高 地 ト レ ー ニ ン グ が 効 果 的 に 作 用 す る か ど うか は,ト 滞 在 日 数,大
レ ー ニ ン グ の 高 度 や 内 容,
会 ま で の 期 間,摂
取 栄 養分の 内容 な ど多
く の 要 因 に 影 響 を 受 け る.
13.2
微 小 重 力 環 境
宇 宙 空 間 の 特 徴 と して,た の 軌 道 で あ る 高 度300kmで
とえ ば ス ペ ー ス シ ャ トル は,重
力 は100万
分 の1G
と ほ と ん ど物 の 重 さ が な くな る 微 小 重 力 環 境 で あ る. ま た そ こ は10億
分 の1気 圧 く らい の 真 空 度,-100℃ 図13.5
前 後 の 極 低 温,強
宇 宙 飛 行,ベ
い太 陽エ ネ ルギ ーや 高エ ネ ルギ ーの
ッ ドレ ス トに よ る 下 肢 骨 格 筋 の横 断
面 積 の経 時 的 変 化(Ferretti,19976)を
改 変)
放 射 線 が 降 り注 ぎ,地 球 上 の 生 物 に と っ て は 過 酷 な 環 境 で も あ る.本
節 で は,微
小 重 力環境 が 生 体の 調節 系
13.4).こ
こ で は,と
くに 運 動 能 力 に 関 連 す る 筋 肉 ・
に どの ような影響 を与 え るのか につ い て述べ る と とも
骨 格 系 と循 環 器 系 の 慢 性 的 な 変 化 を 中 心 に 述 べ る.
に,わ
1)骨
れ わ れ の 身 体 が い か に う ま く地 球 の 重 力 に 適 応
格筋 の変 化
し て い る か を 考 え て み た い.
微 小 重 力 環 境 で は 自 分 の 身 体 を 支 え る 必 要 が な くな
a.微
活 動 量 が 減 少 し,ま た 大 き な 力 を発 揮 す る 必 要 が な く
り,ま た,物 小 重 力 環 境 で 生 じ る生 理 的 変 化
の 重 さ も ほ と ん どな く な る の で,筋
生体 の適応 能力 は地球 上 の さま ざ まな環境 に適応 す
な る.そ
る だ け で な く,微 小 重 力 環 境 に お い て も,そ の 環 境 に
た と え ば,8日
適 応 す る た め に神 経 系,循
環 器 系,内
分 泌 系,骨
肉 系 な どに お い て さ ま ざ ま な 変 化 が 生 じる.こ
・筋 のよう
は6.3%,大
の 結 果,筋
肉 は 急 速 に 萎 縮 す る こ と に な る.
間 の 宇 宙 飛 行 に よ っ て,下
腿 四 頭 筋 量 は6%減
腿 三頭 筋 量
少 す る10).長 期 間 の 宇
宙滞 在 に よる筋萎 縮 に 関す る デー タは まだ報告 されて
な 変 化 の 中 に は,宇 宙 酔 い や 上 半 身 へ の 体 液 の 移 動 と
い な い.し
い っ た 急 性 な 変 化 もあ れ ば,骨
す る ベ ッ ド レス トの 実 験 に よ る と,そ
か ら の ミネ ラ ル 流 出 や
肉は
か し,微 小 重 力 環 境 を 地 上 で シ ミ ュ レ ー ト
除 脂 肪 組 織 量 の 減 少 と い っ た 宇 宙 に滞 在 し て い る 限 り
る に つ れ て,筋
変 化 が 進 行 し て い く よ う な慢 性 的 な 変 化 も あ る(図
れ て い る(図13.5)6).
の 期 間 が 長 くな
断 面 積 は 徐 々 に 小 さ くな る こ とが 示 さ
図13.6
さ らに,宇
短期 間(左 図)と 長 期 間(右 *:p<0.05vs.飛 行 前.
オ プ シ ー を 行 い,筋
の 萎 縮 を筋 線 維 レベ ル で 検 討 した あ る い は11日
宇 宙 飛 行 に お い て も,速 筋,遅
い る.ま
宇 宙 飛 行 前 後 に よる 足 関 節 背 屈 筋,底
宙 飛行 前後 で飛行 士 の外 側広 筋 か らバ イ
研 究5)に よ る と,5日
め ら れ,そ
図)の
とい った短 期 間の
大発 揮 筋力 も
短 期 間 と長 期 間 の 宇 宙 飛 行 前 後
の 足 関 節 背 屈 筋,底
屈 筋 の トル ク-速 度 関 係 の 変 化 を
在 の と ころ まだ明 らか にな って は
ラ メ筋 の筋 線 維 数 の 減 少 は 認 め られ て い
な い17).し か し,よ
微 小 重 力 環 境 で は 筋 の 萎 縮 に 伴 い,最 減 少 す る8).図13.6は
験動 物 を用 い た地上 シ ミュ レー シ ョン実験
に よ る と,ヒ
い る.
あ る と報 告 さ れ て
た 筋 萎 縮 の も う一 つ の 因 子 で あ る 筋 線 維 数 の
い な い.実
フ ォー ム の 発 現 に は 重 力 の 影 響 が 大 きい こ と を 示 して
筋 線 維 と も に萎 縮 が 認
の 萎 縮 率 は15∼22%で
減 少 に つ い て は,現
屈 筋 の トル ク-速 度 関 係 の 変化8)
り長 期 間 の 宇 宙 飛 行 に よ っ て 筋 線
維 数 が 減 少 す る 可 能 性 も考 え られ る.こ
の よ う な微 小
示 して い る.足
関 節 の 背 屈 筋 で は 短 期 間,長
宙 飛 行 後,す べ て の 角 速 度 で 筋 力 低 下 が 生 じて い る. 一方 ,足 関 節 底 屈 筋 力 は 短 期 間 の 飛 行 で は 変 化 し な い が,長
期 間 に な る と減 少 す る.ま
は 神 経 系 の 変 化 や,萎
で は な く,下 肢 の 筋(下
2)骨
う な 抗 重 力 筋 で 生 じ,上 肢 の 筋(三
角 筋)や
よ
背 中 の筋
力 の減 少率 は
縮 に よる筋 線維 の羽状 角 度 の変
化 も関 与 して い る と考 え られ る.
腿 四頭 筋)の
た,筋
筋 断 面 積 の 減 少 率 よ り大 きい こ と か ら,筋 力 の 低 下 に
重 力 が 引 き起 こ す 筋 萎 縮 は す べ て の 筋 肉 で 生 じ る わ け 腿 三 頭 筋,大
期 間 の宇
量,骨
密 度の 変化
生 体 に お け る 骨 の 生 理 的 役 割 は さ ま ざ まで あ る が,
肉 で は ほ と ん ど生 じ な い 生4,10).
と く にCa代
微 小 重 力 環 境 下 の 筋 肉 で は,筋
と,身 体 を 支 持 す る た め の 骨 強 度 の 維 持 は 骨 の 重 要 な
変 化 だ け で な く,ミ
萎 縮 といっ た量 的 な
オ シ ン重 鎖(MHC)の
アイソフ
謝 の 調 節 の た め にCaを
機 能 で あ る.骨
出 し入 れ す る 機 構
に か か る 力 学 的 ス ト レス は こ れ ら の 機
ォ ー ム の 割 合 の 変 化 と い っ た 質 的 な 変 化 も 生 じ る.こ
能 を調 節 す る 因 子 の 一 つ で あ る.微
れ ま で,実
力 学 的 ス ト レ ス が 減 少 す る た め に,骨
験 動 物 を 用 い て 宇 宙 飛 行 後,%MHCIの
減 少 に 伴 い,速
ト
た と え ば,3か
骨 密 度 は 変 化 し な い が,体
ら か に な っ た18).こ の 変 化 は,当
約4%減
りも 早 く,5∼11日
初 考 え られて きた よ
間の 短期 間 の宇 宙飛 行 に よっ て生
上 の 結 果 は,遅
筋 タ イ プ のMHCア
流
月 の 宇 宙 飛 行 に よ り,橈 骨 や 尺 骨 の
にお い て も 同 様 な変 化 が 生 じ る こ とが 近 年 に な っ て 明
じ て い た.以
か ら のCaの
出 や 骨 量 の 減 少 が 生 じる.
筋 タ イ プ のMHC(Ⅱa,Ⅱx,Ⅱb)の
割 合 が 増 加 す る と い う報 告 は 認 め られ て い た が,ヒ
小 重 力 環 境 で は,
イソ
行 に お い て,踵 4.5%減
重 を 支 え る踵 骨 の 骨 密 度 は
少 す る14).ま た 骨 量 に お い て も,6か
月 の飛
骨 と 頸 骨 の 骨 量 が そ れ ぞ れ13.2%,
少 す る2).し た が っ て,骨 密 度 や 骨 量 の 変 化 は,
お もに 地 上 に お い て 体 重 を 支 え,常
に 力 学 的 ス ト レス
が か か っ て い る 骨 に お い て 生 じ る こ と が わ か る.微
小
と も示 さ れ て お り,酸 素 運 搬 能 力 だ け で な く,組 織 で の 酸 素 拡 散 お よ び 酸 素 利 用 能 も 低 下 す る5).最 大 酸 素
重 力 環 境 で 生 じ る 骨 の 変 化 は 宇 宙 に 滞 在 して い る限 り
摂 取 量 の 低 下 の 制 限 因 子 を 検 討 し た研 究 に よ る と,6
進 行 し,ま
週 間 の ベ ッ ド レス ト後,最
た 地 上 へ の 帰 還 後6か
月 た っ て も,骨
量,
骨 密 度 の 減 少 が 完 全 に 回 復 し な い こ と も示 さ れ て い
した が,そ
る.
っ て 説 明 で き,残
3)心
臓 血管 系の 変化
大 酸 素 摂 取 量 は16.6%低
の 低 下 の75%は りの25%は
酸素 運 搬 能 力 の低 下 に よ 末梢 で の酸素 拡散 お よび
酸 素 利 用 能 の 低 下 に よる と して い る7).
微 小 重 力 環 境 で 最 初 に 生 じる 循 環 系 の 変 化 は 体 液,
微 小 重 力 環 境 で 生 じる 血 漿 量 の 減 少 は,宇
血 漿 量 の低 下 で あ る.地
し て い る 限 り生 じて い る.こ
上 で は,静
水圧 の ため血 液 は
下 肢 に 貯 留 し て お り,そ の 量 は お よ そ600mlに て い る(全
血 液 量 の10%).宇
も達 し
宙 で は静 水圧 の影 響 が
な くな り,下 半 身 の 血 液 貯 留 量 が 減 少 し,よ 血 液 が 上 半 身 へ 移 動 す る.こ
り 多 くの
の た め静脈 還流 量が 増加
し,一
時 的 に1回 拍 出 量 が 増 加 す る.こ
を,心
房 に あ る低 圧 系 受 容 器 が 体 液 量 が 増 加 し た も の
と 感 知 し,体 な わ ち,腎
の よ うな変 化
液 量 を 減 少 させ る よ う に 調 節 を 行 う.す
臓 の 交 感 神 経 系 活 動 の 低 下,レ
ギ オ テ ン シ ン-ア ル ドス テ ロ ン系 の 抑 制,抗
ニ ン-ア ン 利尿ホル
モ ンの 低 下,心 房 性 ナ トリ ウ ム 利 尿 因子 の 増 加 が 生 じ, そ の 結 果,腎
臓 か ら の 尿 の 排 泄 が 高 ま り,体 液,血
量 の 減 少 が 生 じ る.そ よ り約300mlに
下
の 減 少 量 は28日
達 す る.宇
が,こ
力 に対 す る優 れ た身体 の調 節系 の表 れ で ある
の 現 象 は 地 球 へ の 帰 還 後 重 大 な 問 題 と な る.地
球 へ 帰 還 す る と 静 水 圧 が 再 び 生 じ,血 液 が 下 肢 へ 貯 留 す る.そ
して,血
漿 量 が 低 下 し て い た 場 合,脳
給 さ れ る 血 液 量 が 減 少 す る た め に,宇 し ば 帰 還 直 後,起
宙飛 行 士 は しば
立 性 の 貧 」nLを 起 こ す.こ
ペ ー ス シ ャ トル の 宇 宙 飛 行 士 は 帰 還48時 塩 水 を2∼3l補
へ の供
の た め,ス 間前 か ら食
給 し,体 液 量 を 増 加 さ せ る と と も に,
下 半 身 陰 圧 装 置 に 入 り,下 肢 へ の 血 液 貯 留 を 増 加 させ る 処 置 を 行 い,帰
還 直 後 の 貧 血 を 防 い で い る.
漿
の宇 宙 飛 行 に
b.防
までに血漿 量
21世 紀 初 頭 に完 成 予 定 の 宇 宙 ス テ ー シ ョ ンの 運 用 が
で定 常状 態 に達す る
開 始 され る と,人 類 が 宇 宙 へ 行 く機 会 が ま す ます 増 加
宙 滞 在 後4日
は 急 激 に 低 下 し た 後,30∼60日
構 は,重
宙 に滞 在
の ような体 液量 の 調節 機
止
策
(図13.7)3).
し,ま た そ の 滞 在 期 間 も 長 期 化 す る こ と が 予 想 さ れ る.
宇 宙 環 境 で は 最 大 酸 素 摂 取 量 は 減 少 す る が,そ
こ れ まで に 示 し た よ う に,微
の減
小重 力環 境 で生 じる変化
少 の 程 度 は 血 漿 量 の 低 下 の 程 度 と よ く一致 してい る
は そ の 環 境 に 適 応 し た 状 態 で あ る が,緊
(図13.8)3).こ
船 外 活 動,そ
低 下 が1回
れ は 血 漿 量 の 減 少 に よ る静 脈 還 流 量 の
拍 出 量(心
拍 出量)の
低 下 を 引 き 起 こ し,
循 環 血 液 量 が 低 下 す る た め と 考 え ら れ る.ま
して 宇 宙 か ら の 帰 還 後,1G環
球 で 生 活 を行 う に は 不 都 合 な 変 化 が 多 い.と
境 下 の地 く に,筋
格
肉 ・骨 格 系 の 変 化 は 宇 宙 空 間 に 滞 在 して い る 限 り変 化
筋 の ミ トコ ン ドリ ア容 量 の 低 下 や 酸 化 系 酵 素 活 性 の 低
が 進 行 し て い く こ と か ら,宇 宙 で の 変 化 を 最 小 限 に す
下,筋
る 防 止 策 の 開 発 が こ れ ま で 以 上 に重 要 な 課 題 と な っ て
線維1本
図13.7
た,骨
急 時 の行動 や
当 た りの 毛 細 血 管 数 の 減 少 も生 じ る こ
宇 宙 飛 行,ベ
ッ ドレ ス ト期 間 中 の血 漿量
の経 時 的 変 化3) 宇 宙 飛 行 の デ ー タ は期 間 に よ っ て 被 検 者 が 異 な る.
図13.8
ベ ッ ド レ ス ト後 の 血 漿 量 の 変 化 と最 大 酸 素 摂 取 量(VO2max)の
変 化 との 関 係3)
く る.そ
フ
の 防 止 策 と して 最 も効 果 が 期 待 さ れ て い る も
の は,運
動 ・ ト レー ニ ン グ で あ る.
こ れ ま で,宇
7.
宇
●
参
か
ら 説
う
ト レ ー ニ
で 行
明
し な
さ
い.
ン グ
を 考
案
し な
さ い.
宙 船 内 の トレ ー ニ ン グ と して ロ ー プ や
バ ネ を引 っ 張 る 装 置,等
速性 の筋力 が発 揮 で きる装 置
1)
や,さ
ト の 点 宙
考
浅
文
献
野 勝 己:低
圧
シ ュ
ミ レ ー
タ ー に
よ る 高 所
ト レ ー ニ
ン グ の
ら に は 自 転 車 エ ル ゴ メ ー タや トレ ッ ド ミル を 用 意 義
い た 運 動 が 行 わ れ て きた.1日60分 ー タ に よ る ト レー ニ ン グ で は 力 は 低 下 す る.し
か し,1日
の 自転 車 エ ル ゴ メ
,飛 行 後,有
2)
酸素 運動 能
当 た り1.5∼2.5時
持 久 ト レ ー ニ ン グ を行 う こ と に よ っ て,飛
D.,
宙
J.Sports
L.,
bone
and
on
mass
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た が っ て,宇
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レー ニ ン グ を 行 う と,最 大 酸 素 摂 取 量 は 維 持 され る か, あ る い は 増 加 す る こ とが 示 さ れ た.し
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小 重力 環境 で は筋や骨 にか
Claassen,
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deltoideus
muscle
Scand.,162 5)
:
Edgerton,
ジス タ ン ス ・ ト レー ニ ン グが 最 も有 効 で あ る と 考 え ら
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や 骨 に対 して よ り負 荷 が か か る
M.
K.
Appl. 6)
伸 張 性 の 収 縮 を 含 む トレ ー ニ ン グ を 行 う こ とが 重 要 で
が,レ
ら に,ま
だ 動 物 実 験 の段 階 で あ る
7)
Ferretti,
た が,両
で き た と し て い る.こ
長 ホ ル モ ン(イ
ジ
Ferretti,
ンス
8)
Y.,
on
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Klitgaard,
Gollnick,
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石
原
of
bed
and
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man
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after
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rest
on
maximal
determinants.
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Hoppeler,
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Minetti,
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limiting
prolonged
and
and of
of
maximal
bed
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昭 彦,大
O2
J.
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Space
万 木
良 平:低
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題
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11)
and 11
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Grigoryeva,
筋 10)
fiber
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21
の よ う な 動 物 実 験 で 認 め られ た
5
and
and
properties
際 の ヒ トに お い て も 同 様 に 認 め ら れ る か ど
M.:Human
power
Antonutto, M.
weightlessness
の萎縮 は完全 に抑 制
うか は ま だ わ か っ て い な い.
● 問
Acta
S287-S289,1997.
G.,
501:
9)
効 果 が,実
B.,
effect muscle
Med.,18:
central
与 の み で は 萎 縮 は抑 制 で き な か っ
方 を組 み 合 わ せ る と,筋
Ohira,
Saltin,
after
G.:The
comsumption
か を 検 討 して い る 研 究 が あ る15).そ の 研 究 で は,レ
リ ン様 成 長 因 子)投
M.-Y.,
Greenisen,
properties
A.,Narici,
萎 縮 を防止 で きるか どう
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ジ ス タ ン ス ・ トレ ー ニ ン グ と ホ ル モ ン投 与 を 組
み 合 わ せ る こ と に よ っ て,筋
and
B.,
and
instantaneous
あ る と思 わ れ る.さ
morphology
Zhou,
Harris,
enzymatic
れ ま で 行 わ れ て きた 等 尺 性 や 短 縮 性 の ト
レー ニ ン グ に加 え,筋
G.:Effects
止 策 と して レ Day,
れ て い る.こ
Ferretii,
135-140,1998.
V.
B.,Bell,G.,
か る 力 学 的 負 荷 が 減 少 し て い る の で,防
and
C.
L.
and
and
Poll,
S.
response
to
space
Medicine(Nicogossian,
L.
eds.),2nd
A.
ed.,
pp.139-153,
Le a&Febiger,1989.
3. 高 地 トレーニ ン グの効 果 につ い て説 明 しな さい. 13)
小
原 甲 一 郎:高
所 環 境 へ
の 適 応 順 化 機 序
と高
所 適 性 の 評 価.
4. 微 小 重 力 環 境 で 生 じる骨 格 筋 の 変化 を量 的,質 的,機 防 衛 衛
能 的 な面 か ら説 明 しな さい.
14)
5. 微 小 重 力 環 境 で 最 大 酸 素 摂 取量 が減 少 す る理 由 を説 明
Rambaut,
P.
C.
weightlessness
しな さい. 6. 宇 宙 飛 行士 が 地 球 へ帰 還 後,す
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Johnston,
calcium
loss
R. in
man.
S.: Acta
Prolonged Astronaut,6:
1113-1122,1979.
ぐに 立つ こ とがで きず,
起 立 性 の 貧 血 を起 こす こ とが あ る.そ の理 由 を体 液 シ
15)
Roy,
R.
Grindeland,
R.,
Tri, R.
E.,
C., Mukku,
Grossman, V.
E. R.
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J.,
Edgerton,
Talmadge, V.
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J.,
Growth
hormone,
bearing
soleus
81
and/or
exercise
effects
of hypophysectomized
on
non-weight-
rats. J. Appl.
soleus
18)
:302-311,1996.
16) 出 中 壮佶:高
所 順 応 と急 性 高 山 病.
Jpn.
J:Sports
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Zhou,
muscle
G. H., Sweeney,
Dudenhoeffer,
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in fiber composition
M. of
during :
M.-Y., V. after
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rat
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Physiol.,
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H.,
Saltin,
heavy spaceflight.
B.,
chain
Roy,
isoforms J.
Appl.
R. of
R.
and
human
Physiol.,78:
14 運動 時 の水 分 ・栄 養 摂 取
食 生 活 を 基 本 に した 栄 養 摂 取 は,水 必 要 不 可 欠 の 前 提 条 件 に な る.そ
分 摂 取 と と も に 運 動(あ
る い は ト レ ー ニ ン グ)実 施 上 の
こ で 本 講 で は,栄 養 素 に 加 え て,身
分 や 栄 養 の 概 略 につ い て ま とめ た.そ
し て,運
体 の 構 成 成 分 か らみ た 水
動 時 に お け る 身 体 の 応 答 に 伴 っ た 水 分,糖
や栄
養 補 助 食 品 の 補 給 な ど に つ い て 述 べ る.
ど の よ う な ホ ル モ ン と,さ 14.1
栄 養 の概 念 と栄 養 素 の働 き
的 に,エ
ま ざ ま な特 性 を も つ.一 般
ネ ル ギ ー 源 と し て の 蛋 白 質 の 関 与 は 小 さ い.
し か し な が ら,筋 蛋 白 に 多 い イ ソ ロ イ シ ン,ロ イ シ ン, ヒ トは 誕 生 以 来,成
長 し活 動 す る た め に,体
適 当 な物 質 を摂 取 し て い る.摂
外から
取 さ れ た 物 質 は 消 化,
吸 収 を経 て,身
体 の 組 織 づ く り,エ ネ ル ギ ー 源 な ど に
利 用 され る.利
用 後 の 物 質 は,お
程 を栄 養 とい い,体
の 条件下 で運動 す る場 合や 長時 間運 動時 のエ ネルギ ー 源 と し て 利 用 され る(約4kcal/g).
れ ら一 連 の
外 か ら飲 食 物 と して 取 り
b.脂
質
脂 質 は,グ
リセ ロ ー ル に 三 つ の 脂 肪 酸 が 結 合 した ト
込 ん だ 成 分 を栄 養 素 とい う.栄 養 素 は,蛋 白 質,脂 質,
リ グ リ セ リ ド(中 性 脂 肪),一
糖 質,ビ
変 わ っ た リ ン脂 質,そ
タ ミ ン,ミ
呼 称 され る.各 る が,こ
ネ ラ ル に 分 類 さ れ,五
大栄 養素 と
栄 養 素 の 働 き な どは 以 下 の とお りで あ
れ ら に 食 物 繊 維,水
な ど も加 え る 場 合 も あ
る.食
つ の 脂 肪 酸 が リ ン酸 に
して コ レ ス テ ロ ー ル に 大 別 さ れ
物 や 体 内 に 存 在 す る脂 質 の 大 部 分 は トリ グ リ セ
リ ドで あ り,体 内 で は疎 水 性 の た め に 最 も効 率 が よ い エ ネ ル ギ ー 源 の 貯 蔵 体 に な る(約9kcal/g).た
る.
脂 肪 は,カ a.蛋
白
類 の ア ミ ノ酸 か ら な り,そ の ア ミ
ノ 酸 は8種 類 の 必 須 ア ミ ノ酸(ヒ 9種 類)と
スチ ジ ンを含 め る と
非 必 須 ア ミ ノ 酸 に 分 け ら れ る.こ
ミ ノ酸 は,イ ニ ン,フ
だ し,
ル ニ チ ンの 存 在 下 で 有 酸 素 的 過 程 に よっ て
の み しか エ ネ ル ギ ー 源 と し て 利 用 さ れ な い.皮
質
蛋 白 質 は 約20種
ン,バ
ない筋 グ リコー ゲ ン
も に 代 謝 に よ り生 じ
た 不 要 な 成 分 と して 体 外 へ 排 出 さ れ る.こ 現 象,過
バ リ ン な ど分 岐 鎖 ア ミノ 酸 は,少
ソ ロ イ シ ン,ロ
イ シ ン,リ
ェ ニ ル ア ラ ニ ン,ス
の必 須 ア
ジ ン,メ チ オ
レ オ ニ ン,ト
リ プ トフ ァ
リ ンで あ り,体 内 で合 成 さ れ な い か,不
体 内 の 合 成 量 で しか な い.そ
十分 な
臓 の 周 囲 に 蓄 え ら れ た 脂 肪 組 織 は,貯 時 に衝 撃 に 対 す る 緩 衝 体 と,熱
の不 良導体 で ある こと
か ら体 温 保 持 の 断 熱 体 と し て 機 能 し て い る.ま ン脂 質 と コ レ ス テ ロ ー ル は,細 と な る.脂
質 に つ い て も,リ
下や 内
蔵体 で ある と同
た,リ
胞 膜 やホ ルモ ンの原料 ノ ー ル 酸 と リ ノ レ ン酸 は
必 須 脂 肪 と し て 食 物 か ら摂 取 し な け れ ば な ら な い.
の た め に,食 物 か らの 摂
取 が 必 須 と な る.蛋 白 質 の 最 も重 要 な 役 割 は,骨,筋,
c.糖
結 合 組 織 な どの 支 持 物 質 とな り,身 体 を 構 成 す る 原 材
糖 質 は,炭 素(C),水
料 に な る こ とで あ る.ま
合 物 で,そ
た,機
能 的 役 割 は,生 体 触 媒
質 素(H),酸
と して 酵 素,ヘ モ グ ロ ビ ンな どの よ う な物 質 運 搬 蛋 白,
単 糖 で あ る.こ
免 疫 グ ロ プ リ ン の よ うな 生 体 防 御 蛋 白,イ
の 炭 素 数 に よ り細 分 され る が,天
ンス リ ン な
素(O)か
らなる化
の 基 本 単 位 が これ 以 上 加 水 分 解 を受 け な い の 単 糖 は 三 炭 糖 か ら七 炭 糖 まで 構 成 上 然 に は 五 炭 糖,六
炭
表14.1
糖 が 大 部 分 を 占 め る.ま ル コー ス(ブ
た,食
ドウ 糖),フ
トー ス で あ り,さ
物 中 に 多 い 単 糖 は,グ
ル ク トー ス(果
糖),ガ
ラク
らに食物 中で それ ぞれが 結 合 して よ
り大 き な 化 合 物 に な る.た ク トー ス が1分
各 種 ビ タ ミンの 生理 作 用(管 理 栄 養 士 教 育 研 究 会,1990)
と え ば,グ
脂 肪 へ 蓄 積 され る こ と か ら,過 剰 症 を引
き起 こす.ビ
タ ミ ン の 生 理 作 用 は,過 剰 症 お よ び 欠 乏
症 と と も に 表14.1に
示 した.
ルコー ス と フル
子 づ つ 結 合 した 砂 糖(二
型 的 な多 糖 類 の 澱 粉 で あ る.食
りす ぎ は,体
糖 類)や,典
物 か ら摂 取 した 糖 類 の
e.ミ
ネ ラ ル
ミ ネ ラ ル は,有
機 質 中 の 酸 素,炭
素,窒
素 を除 い た
大 部 分 は エ ネ ル ギ ー 源 と し て 利 用 さ れ(約4kcal/g),
無 機 成 分 で 体 内 の4∼6%の
残 りが 脂 肪 や 蛋 白 質 に 二 次 的 に変 換 さ れ る.体
内 にお
で カ ル シ ウ ム,リ
ン,マ
グ ネ シ ウ ム な ど は,骨
け る糖 の貯 蔵 体 は グ リ コ ー ゲ ン(多 糖 類)で あ り,筋 と
構 成 して い る.ま
た,カ
リ ウ ム,ナ
肝 臓 に の み 蓄 え ら れ た 量 が 体 重 の 約1%未
ど は,細
い.ま
た,血
液 中 の 糖,血
満 で しか な
糖 は脳 の活 動 を維持 す るた
構 成 比 率 で あ る.こ
トリ ウ ム,塩
胞 内 外 の 浸 透 圧 や 電 位 差 を,カ
グ ネ シ ウ ム,鉄,銅,マ
臓 の グリ コー ゲ ンに
代 謝 の 調 節 素 と して 作 用 して い る.お
よ っ て 調 節 さ れ て い る.一
中 の グ リ コ ー ゲ ンは
生 理 作 用 と代 謝 は,表14.2に
方,筋
14.2
タ ミ ン
ビ タ ミ ン は,体 脂 質,糖
質)の
ヒ トの 身 体 は,さ 内 に お け る 円 滑 な 有 機 質(蛋
代 謝,お
内 で 合 成 さ れ な い た め,
食 物 か ら摂 取 し な け れ ば な らず,溶 二 分 され る.水
白 質,
よ び正 常 な 生 理 機 能 の 維 持 に
欠 か せ な い 栄 養 素 に な る.体
解 性 に よ り大 き く
溶 性 ビ タ ミ ン の 過 剰 摂 取 は,尿
泄 さ れ る こ とか ら 問 題 が 少 な い.脂
もな ミネ ラルの
示 した.
の 活動 時の エ ネル
ギ ー源 と して の み 利 用 され る.
d.ビ
素な
ル シ ウ ム,マ
ン ガ ン,亜 鉛 な ど さ ま ざ ま な
め の エ ネ ル ギ ー 源 で もあ る が,肝
血 糖 濃渡 の 調 節 に は 利 用 さ れ ず,筋
の中 ・歯 を
中へ排
溶性 ビ タ ミンの と
栄 養 と身体 の 構成
ま ざ ま な元 素 や 分 子,あ
胞 や 組 織 な ど に よ っ て 構 成 さ れ て い る.そ 成 成 分 が ど れ く らい 存 在 す る か,す
構 成 比 率 が 約61%と 約10%の
の 身体 の構
なわ ち身体 組 成 を
5段 階 の レベ ル で 表 した もの が 図14.1で 構 成 す る お も な 元 素 は,約15種
るい は細
あ る.身
体 を
類 と さ れ る.酸
素の
最 も 高 く,次 い で 約23%の
水 素 と な り,こ
炭 素,
れ ら3元 素 の み で 約94%に
表14.2
も な る.そ
して,約3%の
量 で しか な い.元 と,水
身 体 は,蛋
窒 素 と 続 き,他
の元 素 は微
素 レベ ル か ら分 子 レ ベ ル に 目 を移 す
分 が 約60%で
質 の15%と,こ
お も な ミネ ラ ル の 生理 作 用 と代 謝(管 理 栄 養 士 教 育 研 究 会,1990)
最 も 多 く,脂 質 の 約19%,蛋
れ ら三 つ で 約94%を
占 め る.ヒ
白 トの
白 質 を は じめ 各 種 の 栄 養 素 か ら構 成 さ れ て
な が る だ ろ う. 一 方,現
在 の ス ポ ー ツ 科 学 ・医 学 で 用 い られ る 身 体
の構 成―
身体 組 成―
レベ ル で 評 価 さ れ る こ と が 多 い.し 身 体 組 成 は,筋,骨,あ
お り,こ の 摂 取 し た 栄 養 素 に よ り常 時 置 き換 え ら れ る
(lean body
こ と に な る.ヒ
と に大 別 さ れ,こ
トの 身体 の構 成 成 分 は,食
共 通 す る こ とが 多 い こ と も意 味 す る.つ で バ ラ ンス の 悪 い 食 生 活 は,栄
物 の成分 と
ま り,不 規 則
養素 摂取 の 過不 足 とイ
ンバ ラ ンス を もた ら し,身 体 の 構 成 成 分 の 変 化 へ もつ
は,筋,骨,脂
る.と
mass:LBM)と
くに,体
率(%fat)と
肪 な どの組織 た が っ て,ヒ
トの
る いは水 分 を含 む除 脂肪 重量 体 脂 肪 重 量(fat
mass)
れ ら構 成 組 織 の 合 計 重 量 が 体 重 と な
重 に 占 め る体 脂 肪 量 の 比 率 は,体
脂肪
し て 表 現 し,肥 満 度 の 尺 度 と し て 広 く
認 め られ て い る.
図14.1
ヒ トの 身 体 組 織 に お け る五 つ の レベ ル4
水 分 の 回 収 に な る.さ 14.3
運 動 時 の水 分 補 給
水 分 調 節 系(つ る.こ
a.水
ら に,腎
ま り細 胞 外 液 量 の 維 持)に
毎 日 ヒ トが 摂 取 す る 水 分 量 と排 出 す る水 分 量 は 平 衡 状 態 に あ り,一 定 の 体 水 分 量 を保 っ て い る.こ
展 低 下 と し て 感 知 さ れ,レ
と し て,細
血 漿 お よ び リ ンパ 液),細 し,生
の体水
胞 を 浸 し た 間 質 液,
胞 内 液 として そ れ ぞれ 分布
命 活 動 の 代 謝 の 場 に な っ て い る.ま
た,非
電解
ニ ン の 分 泌 増 大,ひ
い ては
ア ン ジ オ テ ン シ ン Ⅰお よ び Ⅱの 増 大 に 及 ぶ.そ
れ 自体
で 血 管 収 縮 作 用 を も つ ア ン ジ オ テ ン シ ン Ⅱが,副
と-の
荷 電 に よ り陽 イ オ ン と 陰 イ オ ン と に 分 け ら れ
の 遠 位 尿 細 管 に 作 用 し,Naの
る.細
胞 外 液 の お も な 電 解 質 はNa+,Cl-で
量 の 増 大 に結 び つ く.以 上,体
あ るの に
胞 内 液 の お も な 電 解 質 がK+,HPO4-と
偏
在 して い る. 解 質 お よ び 蛋 白 な ど非 電 解 質 の よ う な 溶 質
と生 体 内 の さ ま ざ ま な 半 透 過 膜 が,そ
の 半 透 過 膜 を境
に した 水 の 吸 引 力 に よ る 浸 透 圧 を 生 む.浸
透 圧 は,濃
腎皮
質 の 球 状 層 に 作 用 し,ア ル ドス テ ロ ン 分 泌 を 促 進 さ せ る.鉱
一 方,電
ニ
水 分量 の損 失 は腎臓 の 傍 糸球体 装 置 の伸
質 と と も に 体 水 分 を 溶 媒 と し た 溶 質 の 電 解 質 は,+
対 し て,細
連 動 してい
の 中 に 腎 臓 と 神 経 ・内 分 泌 の 協 力 機 構 が,レ
る.ま ず,体
胞 外 液(主
節 は,
ン ・ア ン ジ オ テ ン シ ン ・ア ル ド ス テ ロ ン 系 と し て あ
分 代 謝 とホル モ ン
分 量 は,細
臓 に お け るNa調
質 ホ ル モ ンで あ る ア ル ドス テ ロ ン分 泌 は,腎 再 吸 収 を 促 し,体
臓
水分
水分 の抗 利尿 作 用 を有
す る ホ ル モ ン な ど に 対 し て,心
臓 か ら分 泌 され る 心 房
性Na利
利 尿作 用 のホ ル モ ン と
尿 ペ プ チ ド(ANP)が
して 知 ら れ て い る.ANPは こ のANPの
血 管 拡 張 作 用 も 有 す る が,
大 量 投 与 に よ っ て 尿 量 やNaの
排 泄量 は増
大 す る.
度 の 異 な る 溶 質 が 拡 散 とい う物 理 化 学 的 性 質 に よ り一 定 の 濃 度 へ 至 ろ う とす る 静 水 圧 の 差 を 意 味 し て い る.
b.体
ま た,細
体 温 調 節 は,そ
胞 外 液 の浸透 圧 維持 は細 胞 内液 の浸 透圧 維持
に 連 な り,こ
の 調 節 機 構 と して 腎 臓 の 役 割 が 大 き い.
体 水 分 量 の 損 失 は 体 液 の浸 透 圧(お を 増 大 さ せ,下 diuretic
も に,血 漿 浸 透 圧)
垂 体 後 葉 か ら抗 利 尿 ホ ル モ ン(anti
hormone:ADH)分
泌 を 促 す.こ
のADHは
体 水 分 量 の 平 衡 を 司 る 重 要 な ホ ル モ ン で,腎 尿 細 管 と 集 合 管 に 作 用 す る.結
果 的 に,尿
水 分 を 再 吸 収 す る こ と に な り,尿
臓 の遠位
細 管腔 か ら
として排 泄 され る体
温 調 節 と水 分 補 給 の 調 節 中 枢 に よ る 設 定 温 度(セ
ポ イ ン ト)に 対 し一 致 す る よ う な 熱 産 生,熱
ット
放 散,お
よび 外 部 環境 か らの熱 吸 収 な どの 制 御 に基 づ い て い る.こ
の 体 温 は,運
動 に よって 高 ま った代 謝亢 進 とと
も に 上 昇 す る が,同
時 に セ ッ トポ イ ン トも 高 温 域 に 移
る.し
放散 の ため の血 管拡 張 や発 汗 開始
た が っ て,熱
温 も安 静 時 よ り高 ま り,運 動 時 に お け る 高 い 体 温 の 維 持 を 意 味 す る.運
動 時 の 体 温 調 節 は,組
織 間 の熱伝 導
率 が 高 い 血 液 の 循 環 に 大 き く依 存 し,発 汗 に よ る 湿 性
c.ウ
熱 放 散 も加 わ る.言
ウ ォー ター ・ロ ー デ ィ ン グ は,体
内 に十分 な水 を常
に 供 給 す る こ とで あ る.つ
内 にお け る 水 の 貯
い換 え る と,血
に よ る 体 温 調 節 は,体 分 量)の
液循 環 や発 汗 な ど
内 に 存 在 す る 水 分(つ
ま り体 水
重 要 性 を ぬ き に は考 え られ な い.
一 方,平
ま り,体
蔵 量 を増 や す こ と で は な く,体
衡 状 態 に あ る 体 内 の 水 分 量 は,運
汗 に よ っ て 損 失 を伴 う.こ
ォ ー タ ー ・ロ ー デ ィ ン グ
動 時 の発
の 損 失 量 が 少 な く,損 失 量
内 か ら出 て い く水 に 対
して 新 鮮 な 水 の 継 続 的 補 給 を意 図 し て い る.言 る と,体
い換 え
内 に 蓄 え られ る 水 を常 時 満 杯 にす る た め,一
に 見 合 う水 分 が す み や か に補 給 され る な ら ば 日常 生 活
定 量 の 水 分 摂 取 を習 慣 づ け る こ と で あ る.そ
の 水 分 出 納 と変 わ ら な い.し
ォ ー タ ー ・ロ ー デ ィ ン グ と し て 積 極 的 に 適 量 の 水 を 補
か し な が ら,発 汗 な ど に
して,ウ
よ る 体 水 分 量 の 損 失 が 大 き く,水 分 の 補 給 が 不 十 分 な
給 す る こ とは,安
場 合,脱
分 下 に お け る 代 謝 活 動 全 般 の 円 滑 化 に 結 び つ く と考 え
水 ひ い て は 熱 障 害 に 至 る.高
温 多湿 環 境下 や
定 し た 体 温 調 節 機 能 と と も に,体
長 時 間 運 動 に な る と体 水 分 の 損 失 量 が 体 重 の10%前
ら れ る.こ
後 に ま で 及 び,著
競 技 成 績 を 直 接 左 右 す る と い う よ り も,よ
し く大 き い.ま
た,体
水分 量 の損 失
の こ と は,豊
水
富 な体 水分 とい う内部 環境 が り良 い トレ
は循 環 血 流 量 の減 少 と血 液 粘 性 の 上 昇 な ど につ なが
ー ニ ン グ や 競 技 の 前 提 と し て 最 良 の 体 調 を 作 り出 す 方
り,心 臓 へ の 負 担 増 を は じ め と した 循 環 障 害 を も引 き
法 と 考 え られ る.
起 こ す 可 能 性 が 高 い.こ
れ らの こ と は,日
場 面 で 起 こ り う る う え に,ス ォ ー マ ン ス)の マ ラ ソ ン,ト
常 的 な運 動
ポ ー ツ の 競 技 成 績(パ
低 下 に つ な が る 要 因 で もあ る.ま
14.4
フ
運 動 時 の糖 補 給
た,
ラ イ ア ス ロ ン な ど長 時 間 運 動 に 典 型 的 な
現 象 で は な く,間 欠 的 な 休 息 を は さ む ス ポ ー ツ,運
動
運 動 が 長 時 間 に 及 ぶ と,運
動 時 のエ ネル ギー 供給 は
有 酸 素 的 過 程 に大 き く依 存 す る.こ
の こ と は,お
もに
で あ っ て も,そ の ト レー ニ ン グ 時 も含 め て あ て は ま る.
エ ネ ル ギ ー 源 と して 糖 お よ び 脂 肪 を 利 用 す る こ と を意
し た が っ て,運
動 時 の 水 分 補 給 は,運
味 して い る.エ
昇 を軽 減 し,熱
中 症 な ど熱 障 害 の予 防 や 競 技 成 績 の 維
持,改
善 に な る.加
え て,運
動(あ
動 に よ る体 温 上
る い は トレ ー ニ ン
グ)環 境 を 整 え る こ と につ な が る. 分が い か に速 く
生 体 内 へ 吸 収 さ れ るか と い う こ と で あ る.つ 分 を 胃 か ら小 腸 へ 送 り 出 す 速 度(gastric rate:GER)に
よ る.こ
(150∼250ml/回)の
補 給 が 高 いGERに
GERに
な る.溶
回の水
つ な が る.水
ル コ ー ス な ど糖 を 含 む
の糖 濃 度 が高 くな る と と もに低 い
質 と して の 糖 が 浸 透 圧 を生 む な ど,糖
濃 度 の 程 度 がGERに
影 響 す る.同
時 に,高
ゲ ン枯 渇 が,低
い ては 長時 間運 動 時の パ フ ォ に,体
sparing)は,そ
内 の グ リコー の 枯 渇 を防 ぐ
観 点 か ら,長 時 間 運 動 に お け る パ フ ォ ー マ ンス の 維 持, 改 善 に つ な が る と 考 え ら れ る.一 ー ゲ ン節 約 は
般 的 な体 内の グ リコ
,運 動 時 の 脂 肪 補 給 で も もた ら さ れ る が,
運 動 前 お よ び 運 動 中 の 糖 補 給 と い う外 因性 の 糖 利 用 に よ っ て な さ れ る.
濃 度 の溶
質 は 胃 部 不 快 感 を訴 え る こ と も あ り,高 温 環 境 下 で の
a.運
食 後2時
に,失
血 糖,ひ
ー マ ン ス低 下 の 一 要 因 と な る .逆
糖 補 給 は 二 次 的 な も の に な る か も し れ な い. 多 量 の 発 汗 は,体
内 の 糖 貯 蔵 庫 に な る 肝 臓 や 筋 の グ リ コー
ゲ ン の 節 約(glycogen
emptying
の こ と は,低 温 で,瀕
分 の 補 給 に 限 定 さ れ る場 合,グ 水 分 の 摂 取 は,そ
ま り,水
時
内に
お け る 糖 の 貯 蔵 量 が 脂 肪 に 比 較 し て 著 し く 少 な い.し た が っ て,体
水 分 補 給 に と っ て 重 要 な こ と は,水
ネ ル ギ ー 源 と して の 糖 の 利 用 は,即
的 で よ り大 き なエ ネ ル ギ ー 発揮 を伴 う もの の,体
水 分 に加 え て 電 解 質 も 失 う.お
わ れ る 電 解 質 は 細 胞 外 液 のNa+やCl-で
も
あ り,
動前 の糖補 給 間 前 後 ま で の 血 糖 は,食
事 由来 の糖 を表す
こ とが 多 く,そ の ま ま エ ネ ル ギ ー 源 と して 利 用 さ れ る. しか し な が ら,運
動 開 始30∼40分
前 にお け る高濃 度
一 般 的 に 電 解 質 の 損 失 率 よ り も体 水 分 量 の 損 失 率 が 大
の グ ル コ ー ス 摂 取 は,血
きい.こ
り,運 動 開 始 後 の 低 血 糖 を 生 じ さ せ る.同
時 に,筋
質 濃 度 を 意 味 し,発 汗 に よ る 影 響 の 軽 減 は 水 分 補 給 が
グ リ コ ー ゲ ン の 利 用 も 促 進 させ る た め,体
内 の グ リコ
重 要 と な る.ま
ー ゲ ン 枯 渇 が 早 ま る .結 果 的 に,運
の こ と は,運 動 時 の 体 液 環 境 と して 高 い 電 解
(∼0.9%)の
た,損
失 分 の 電 解 質 補 給 は,低
濃度
食 塩 水 な ど水 分 が 体 内 に 保 た れ る よ う な
補 給 を 考 慮 し た ほ う が よ い.
中 イ ンス リ ンの 上 昇 に つ な が 中
動 前 の糖 補給が パ
フ ォー マ ン ス の 低 下 を招 く こ と に な りや す い.糖
の中
で も,こ の グ ル コ ー ス 摂 取 に対 し フ ル ク トー ス の 摂 取
低 血 糖,あ
る い は 血 中 の イ ンス リ ン 濃 度 の 急 激 な 変 化
と い っ た 応 答 は み ら れ ず,筋 に もつ なが っ て い る.現
グ リ コ ー ゲ ンの 節 約 効 果
実 的 に,運 動 中 の 糖 補 給 は 水
分 補 給 と の 兼 ね 合 い で 行 わ れ る こ とが 多 い(表14.3). した が っ て,糖
補 給 の 多 寡,あ
か の 糖 溶 液 の 選 択 は,温
るい は低濃 度 か高 濃 度
度 お よ び 湿 度 な どの 気 候 条 件
と運 動 実 施 者 の 身 体 状 況 を 考 慮 した うえ で 決 め る こ と が 求 め られ る. ま た,運
動(あ
る い は トレ ー ニ ン グ)終
了 後,次
段 階 の 運 動 や 競 技 状 態 を 考 慮 す る な らば,体
の
内の グ リ
コ ー ゲ ンが 枯 渇 し た 状 態 を い か にす み や か に 回 復 さ せ 図14.2
そ れ ぞ れ75gの
グ ル コ ー ス,フ
セ ボ摂 取 後 の 安 静 時 お よ び2時
ル ク トー ス,プ
ラ
る か が 重 要 と な る.こ
の グ リ コ ー ゲ ン の 回 復 速 度 は,
間の長時 間運動 中
運 動 後 に す み や か に 糖 補 給 を 行 っ た ほ う が,時
の 血 漿 グ ル コー ス の 水 準3)
間 をお
い た 糖 補 給 よ り も効 果 的 で あ る こ と も確 か め られ て い は,高
濃 度 で あ っ て も血 糖 お よ び 血 中 イ ン ス リ ン濃 度
が 一定 に保 た れ,筋
る.
グ リ コ ー ゲ ンの 節 約 効 果 も大 き い
考 え ら れ る(図14.2).こ
の こ と は,持
久 的 な トレ ー
c.カ
ー ボ ・ロ ー デ ィ ン グ
ニ ン グ 状 態 が 進 ん だ 競 技 者 に も あ て は ま り,同 様 の 傾
カ ー ボ ・ロ ー デ ィ ン グ(グ
向 に あ る.ま た,運
グ)と
動 前 に グ ル コ ー ス を 補 給 す る場 合,
低 濃 度 に す る こ と や 運 動 前2時
間前 後 までの補 給 に限
は,外
リ コ ー ゲ ン ・ロ ー デ ィ ン
因性 の 糖利 用 に対 して内 因性の 糖利 用 を
高 め る た め に,筋
や 肝 臓 の グ リ コー ゲ ン 量 を 増 大 させ
る こ と な ど を 考 慮 しな け れ ば な ら な い.
る こ とで あ る.具
体 的 に は,マ
b.運
っ て,体
日 に 向 け た1週 動 中,運
動後 の糖摂 取
長 時 間 運 動 中 の 糖 補 給 は,筋 防 ぎ,パ
フ ォ ー マ ン ス の 維 持,改
グ リコー ゲ ンの低 下 を 善 に 欠 か せ な い.し
か し な が ら,糖 量 が 少 な い 場 合(あ 溶 液)は,補 10%),エ
給 し た 糖 の 大 部 分 が 酸 化 さ れ ず(< ネ ル ギ ー 源 と して の 利 用 度 は 低 い.反
グ ル コ ー ス,フ
ル ク トー ス な ど多 量 の 糖(あ
濃 度 の 糖 溶 液)補 れ,エ
るい は低濃 度 の糖
給 は,そ
の 大部 分が 運動 中 に酸化 さ
ネ ル ギ ー 源 と し て 有 効 に 作 用 す る.こ
表14.3
GERは
るい は高
の と き,
30∼60,100g/時
一般 に1時 間 当 た り100∼1200mlを
間 ほ ど の 食事(と
ト レー ニ ン グ)に
方 法 に な る.競
技 日 の1週
間 ほ ど前 か ら の2,3日
限 さ れ た 糖 質 の 代 わ り は,高 い で,競
切 り替 え,体
技 日 ま で の2,3日
脂 肪,高
の
蛋 白食 に
間 は高 糖 質 食 に
内 に グ リコー ゲ ンをた め こむ と小 さい貯
蔵 庫 な が ら も1.5∼2倍
前 後 に ま で な る.こ
筋 や 肝臓 の グ リ コ ー ゲ ン 量 減 少(あ
の糖 質 を補 給 す る ため の溶 液 量/時 間6)
超 え る こ と は な い.
間,
レー ニ ン グ に よ っ
て 体 内 の グ リ コ ー ゲ ン を 消 失 させ る よ う に す る.こ
な る.次
よ
内 の グ リ コ ー ゲ ン貯 蔵 量 を 増 大 させ る とい う
糖 質 を 極 度 に 制 限 す る と と も に,ト
間,制
面,
ラ ソ ン な ど実 際 の 競 技
の 原 理 は,
る い は 枯 渇)が
グ
リ コ ー ゲ ン 合 成 酵 素 の 活 性 を 高 め る た め と考 え ら れ て
給 と,特
い る.し
に ふ れ る.
か し な が ら,グ
リ コ ー ゲ ン蓄 積 に は 水 分 を 伴
殊 な補助 食品 として ク レアチ ンにつ い て以 下
う な ど 身 体 へ の 負 担 や 個 人 差 が 大 き く体 調 を 崩 し や す い た め,目
標 と す る 競 技 日 と は 別 に,事
う 必 要 が あ る.ま
た,競
前 の試 行 を行
技 日 に 向 け た2,3日
間 のみ
a.運
動 時 の 蛋 白補 給
運 動 中 に は 筋 を は じ め と した 体 蛋 白 の 分 解 が 亢 進 し
高 糖 質 食 を採 用 す る な ど個 人 に 合 う方 法 を 試 行 し た ほ
て お り,運 動 後 適 切 な 蛋 白 質 の 補 給 を 必 要 と す る.こ
うが 現 実 的 で あ る.
の こ と は,競
14.5
運 動 時 の栄 養 補 助 食 品 の補 給
技 の ト レ ー ニ ン グ 水 準 が 高 くな る ほ ど,
ま たLBM,と
くに 筋量 の 増大 が 求 め られ る ほ ど顕著
に な る.わ
が 国 の 栄 養 所 要 量 に 基 づ い た 一 般 成 人 で1
日1.08g/体
重1kgの
蛋 白 所 要 量 は,運
水 分 や 糖 な ど の 補 給 を 目的 と した ス ポ ー ツ ドリ ン ク
ウ ェ イ ト ト レー ニ ング)の
と と も に,栄
多 く な る.し
養 補 助 食 品 の 存 在 が,運
レ ー ニ ン グ)や
動(あ
るい は ト
競 技 の 場 面 で も普 及 しつ つ あ る.栄
補 助 食 品 の 目的 は,通
常 の 食 生 活 に よ っ て賄 う べ き栄
養 を 補 う も の で し か な い.し だ け で は 運 動(あ
養
た が っ て,通 常 の 食 生 活
る い は トレ ー ニ ン グ)に 必 要 な 栄 養
量 的,質
く に,
的 な増 大 と と も に
か し な が ら,蛋 白 質 の 単 な る 量 的 増 大 は
筋 な どの 体 蛋 白 合 成 に つ な が らず,酸 た 無 駄 に 陥 りや す い.ど い う こ と に 加 え,ど と な る.つ
動(と
化 の 亢 進 とい っ
れ く ら い の 量 を補 給 す る か と
の タイ ミングで補 給す るか が重要
ま り,運 動(あ
る い は ト レー ニ ング)終
了
が 不 足 す る と い う 状 態 を 補 う 食 品 と い う こ と に な る.
後 早 期 に お け る蛋 白 補 給 が,所
ま た,量
量 的条 件 とと もに筋 の修 復 や肥大 に きわめて 有効 で あ
的 不 足 の 補 給 に 限 らず,補
給す る タイ ミ ング
を も考 慮 し た 摂 取 しや す さ も特 徴 に な りつ つ あ る.こ
る(図14.3).ま
の 栄 養 補 助 食 品 は 蛋 白 補 給(プ
内 臓 に お け る 蛋 白 分 解 の抑 制 に つ な が りや す い とい う
タ ブ レ ッ トな ど),エ
ロ テ イ ンの パ ウ ダ ー や
ネ ル ギ ー 源 補 給(カ
ーボパウダ
た,運
要 量 よ り も多 い とい う
報 告 もみ られ る.さ
動 中 の 蛋 白 補 給 は,腸
ら に,栄
管な ど
養 補 助 食 品 と して の 蛋 白
ー や エ ナ ジ ー ゼ リ ー な ど) ,水 溶 性 ビ タ ミ ン を は じめ
は,大
と した ビ タ ミ ン剤 な ど 食 品 に 近 い も の か ら,ミ ネ ラ ル,
体 の ア ミノ 酸 を整 え て あ り,そ
特 殊 な ア ミノ 酸 や ク レ ア チ ン と多 岐 に わ た る.こ
を 高 め る た め に糖 質 を 添 加 して い る も の が 多 い.
れら
豆 や 牛 乳 な ど か ら蛋 白 質 の み 分 離 し た も の に全 の摂取 効率 や 利用 効率
の 中 で,輸 入 品 に つ い て は 成 分 な ど で 注 意 を要 す る が, 依 存 症 を 防 ぎ な が ら効 果 や 安 全 を確 認 す る た め に,期
b.運
間 を 限 定 し た 計 画 的 な 利 用 が 望 ま し い.こ
平 均 的 に100g以
上 を保 有 す る ヒ トの 総 ク レ ア チ ン
量 は,そ
骨 格 筋 に 存 在 し て い る.ま
こ で は,プ
ロ テ イ ンの パ ウ ダ ー や タ ブ レ ッ トに 代 表 さ れ る 蛋 白 補
図14.3
動時 の ク レアチ ン補給
の95%が
た,骨
運 動 直 後 あ る い は 運 動2時 間 後 か ら ア ミノ酸 ・グ リコ ー ス 混 合 液 を投 与 した 際 の イ ヌ 後 肢 で の フェ ニ ル ア ラニ ン(Phe) の バ ラ ンス 変 動(左 図)とPheの
動 脈 血 中濃 度 の 変 動(右 図)8)
骨 格筋 の 蛋 白質 に お け る 代 謝 回 転 は イ ヌ 後肢 で の フェ ニ ルア ラ ニ ン(Phe)の バ ラ ンス と,[2H5]Pheの 定 して あ る.Pheそ
の も の が骨 格 筋 内 で 代 謝 され な い た め,後
の 放 出 は 分 解 をそ れ ぞ れ示 す.
肢 か らのPheの
希 釈 法 との 組 み 合 わ せ で 測
取 り込 み は 正 味 の骨 格 筋 蛋 白 に お け る 合 成 を,Phe
格 筋 に お け る ク レ ア チ ン の2/3は し て 貯 蔵 さ れ,ATPを
ク レ ア チ ン リ ン酸 と
enhance
再 合 成 させ る エ ネ ル ギ ー 供 給 物 2)
質 と な る.し
た が っ て,運
動 時 の ク レ ア チ ン補 給 は,
い は ス ポ ー ツ競 技)の る.ま
た,食
も 指 摘 さ れ て い る.し
増 大 に寄 与 す る こ と
代 初 頭 か ら で あ り,
必 ず し も一 定 の 効 果 を あ げ て い る と は 言 い 難 い.た
J. L., Katz,
A.
L., Cutler,
C.
glycogen
of
に4∼6日
Koivisto,
ingestion.
V.
A.,
Harkonen,
Elovainio,
R.,
6)
Glycogen
depletion
小 宮
M.,
7)
R.
,L.
Coyle, of
.,64:1480-
S-L.,
Groop,
and
prolonged
placebo.
J.
の 判 定―
P . H.,
Defronzo,
R.
A.:
exercise;influence
Appl.
of
Physiol.,58
肥 満 の 指
J.:Creatine Int.
:731-737,
標
と 身 体 組 成.診
heat.
8)
1g当 た り何kcalの エ ネ ルギ ー を有 す るか 述 べ な さい.
断
と 治
M.:Fluid
Mitsuzono,
R.,
lipid
Okamura,
K.,
Effect
さい.
replacement
Okamura,
K., of
metabolism Appl.
during
T.,
of
exercise
in
acid
K.
and
carbohydrate
exercise
in
distance
125-131,1995.
Hamada,
K., Y.,
Sakurai,
Shimizu,
and
glucose
on
protein
recovery
Iwanaga, on
prolonged
Yoshioka,
amino
K.,
ingestion
Sci.,14
Doi,
postexercise
during
Igaki,
fructose
Human
K.,
exercise
:223-233,1992.
M.:Effects
runneres.
and
Nutr.,5:94-101,1995.
Sports Med.,13
K.,Imaizumi,
2. カ ー ボ ・ロー デ ィ ン グの具 体 的 な方 法 に つ い て 述 べ な
supplementation
J. Sports
Millard-Stafford,
Sakurai,
M.,
S.
and
Matsumoto M.:
administration kinetics
,
Suzuki,
during
in
dogs.
Am.J.
Physiol.,272:E1023-E1030,1997.
の 関 係 につ 9)
い て述 べ な さい.
or
満
Maughan,
and
3. 運動 時 に お け る 体温 調節 と体 水 分(量)と
and
Physiol
Karonen,
Sacca
during
fluctose,
秀 一:肥
the
とい う多量 の補給 の呈 示例 もあ る
白質 は,エ ネ ル ギ ー源 と して そ れ ぞ れ
M.
exercise:effect
J. Appl.
Ferrannin,E.,
performance.
後 検 討 の 余 地 も多 い.
● 問 題 1. 糖 質,脂 質,蛋
W.
after
療,84:967-972,1996.
と
体 的 に ロ ー デ ィ ン グ期 で20
Med.,25:
1985. 4)
内 の ク レ ア チ ン量 が 多 い と補 給 に 見 合 う蓄 積
に 至 ら な い 傾 向 に あ る.具
Sports
L., Sherman,
synthesis
carbohydrate
glucose,
5)
が,今
exercise.
1485,1988. 3)
か し な が ら,栄 養 補 助 食 品 と し
て の ク レ ア チ ン の 利 用 は1990年
g/日,週
during
事 な ど 十 分 な 蛋 白 質 の 供 給 下 で あ れ ば,
ク レ ア チ ン補 給 が 筋 な どLBMの
え ば,体
Ivy,
time
る
パ フ ォーマ ンスの改 善 につ なが
utilization
E.F.:Muscle
エ ネ ル ギ ー 供 給 物 質 を増 大 させ る こ とを 意 図 して お り,短 時 間 で 大 き な エ ネ ル ギ ー 発 揮 を 伴 う 運 動(あ
fat
241-257,1998.
Padilla, acid
S.
for
M.
I.:Creatine
sports
supplementation
performance
in
as
highly
an
trained
ergogenic
athletes:a
4. ウ ェ イ ト トレー ニ ングの 実 施 時 に,留 意す べ き栄 養 上 のポ イ ン トを述 べ な さい. 10)
5. 体 水 分 量 維 持 に 関連 した ホル モ ンを三 つ あ げ,そ の作
Na,体
during
K.
18 12)
and
exercise.
mentation. 13)
and
carbohydrate Sports
replace
Med.,
25:157-
Zorbas,
Y.
in
human
with
Sports
Med.,
G.,
Federenko, in
exercise-induced J.
Kidney
Y. trained of
Biol. C.,
muscle of
glycogen
carbohydrate
supple
Med.,25:7-23,1998.
restriction
Putterman,
C.:Human
exercise-Effect
changes
hyperhydration.
Am.
B.:Creatine supplementation.
Williams,
Sports
during
14)
Ekblom, crreatine
during
electrolyte
よ び組 織 レベ ル で,そ れ ぞれ 述 べ な さい.
and to
K.
9. 栄 養 補 助 食 品 の 使 用 に あ た っ て留 意 す べ き点 を 述べ な
● 参 考 文 献 1) Hawley, J.A., Brouns, F. and Jeukendrup, A.:Strategies to
Med.,18:491-496,1997.
V.:Fluid
:268-280,1994.
Tsintzas, metabolism
10. 身体 の構 成 成 分 に つ い て,原 子 レベ ル,分 子 レベ ル お
B.
reference
8. 運 動 時 の水 分 補 給 につ いて要 点 を述べ な さい.
さい.
Sports C.
intermittent
Soderlund, special
リ コー ゲ ン)を 節 約 す る た め の
方 法 につ い て述 べ な さ い.
Int. J.
Gisolfi,
172,1998. 11)
水 分 調 節 に つ いて 述べ な さい.
7. 運 動 時 に 体 内 の 糖(グ
review. and
X.
ment
用 につ い て述 べ な さい. 6. レニ ン ・ア ン ジ オテ ン シ ン ・ア ル ドス テ ロ ン系 に よ る
critical Shi,
water
and
muscular
Trace
Levy,
F.
Naexu
subjects
Elem.
L.
and
activity
, K. water
A.:Fluid loading
and
and
chronic
Res.,54:251-271 Rubinger,
intoxication
Dis.,21:206-209,1993.
after
,1996. D.:Transient
and
rhabdomyolysis
.
15 運
運 動 処 方(exercise
prescription)に
ポ ー ツ 選 手 か に よ っ て,す 法 は異 な っ て くる.疾 常 者(healthy
動
処
方
つ い て 論 ず る 場 合,対
象 が疾 患者 や 半 健康 人 か競技 ス
な わ ち 目 的 が 健 康 づ く りか ス ポ ー ツの 競 技 力 向 上 か に よ っ て そ の 方
患 者 の 運 動 療 法 は 第16講
に ゆ だ ね る こ と に して,本
講 で はい わ ゆ る健
adults)と よ ば れ る 人 た ち の 健 康 づ く りを 目的 と し た 運 動 処 方 に つ い て 概 説 す る.
健 常 者 と は,一 の 進 む 現 在,ま
般 的 に は 「日常 生 活 を 送 る の に 支 障 の な い 健 康 な 人」 の こ と をい う.高 齢 化
す ます 増 え る 中 高 年 者 層 の 健 常 者 と よば れ る 人 た ち の 中 で 健 や か に 生 き,老
る 者 は じつ は多 く は な い.す
が き わ め て 多 い の が 現 状 で,今 さ れ て い る.そ
や そ の 年 齢 層 が 若 者 に まで 至 っ て お り,健 康 に 対 して 大 変 危 惧
の 原 因 に は 日常 生 活 で の 身 体 活 動 量 の 低 下,栄
が あ げ られ て い る.こ
い
な わ ち 日常 生 活 に 支 障 は な い もの の,半 健 康 人 と よ ば れ る 人 た ち
の よ うな 社 会 背 景 の 中,す
づ く りの た め の 運 動 所 要 量 」 が1989年
養 の 過 剰 摂 取,そ
して 過 剰 労 働
で に 示 さ れ て い る栄 養 所 要 量 に 加 え,「 健 康
に厚 生 省 よ り発 表 さ れ た.本
講 で は,こ
の よ うな多 く
の 半 健 康 人 を含 む健 常 者 を 対 象 に した 運 動 処 方 に つ い て 運 動 所 要 量 を 中 心 に 学 習 す る.
情 勢 の 変 化 の 中 で,「 完 全 に 良 好 な 状 態 」 に つ い て じ 15.1健
つ に さ ま ざ ま な 見 解 が 述 べ ら れ て い る.緒
康 と運 動 との関 係
「疾(体
の 不 調)憂(心
の 不 調)の
状 態 に 対 し,康
健 康 と運 動 との 関 係 に つ い て 問 題 視 さ れ 始 め た の
(体 の 好 調)寧(心
は,日
分 で こ な し う る状 態 」 と述 べ て い る.ま
常 で の 運 動 不 足 が さ ま ざ ま な疾 患 の 引 き金 に な
っ て い る こ とが 報 告 さ れ て か ら で あ る.現 に よ っ て 疾 病 の 危 険 因 子(risk 健 康 の 回 復 あ る い は維 持,増
factor)が
在 で は運動 低 減 さ れ,
進 に も 運 動 が 大 き く寄 与
の 好 調)の
「環 境 に 適 応 し,か
状 態 で あ り,自 分 を 自
の オ タ ワ憲章
康 を 「 生 き る 目 的 で は な く,毎
源 で あ る 」 と明 言 し,「Health
す る こ とが か な り解 明 され て き て い る.
た池 上晴 夫は
つ そ の 人 の 能 力 が 十 分 に発 揮 で き
る よ う な 状 態 」 と述 べ て い る.1986年 で は,健
方道 彦 は
日の 生 活 の 資
for All」 達 成 の た め に
個 人 自 らが 健 康 を コ ン トロ ー ル し,改 善 す る こ とが で a.健
き る よ う世 界 的 に 働 きか け て い くヘ ル ス プ ロ モ ー シ ョ
康 と は
健 康 の と らえ方 は歴 史 と と もに変 遷 して きて い る
ン*1を ス タ ー ト さ せ た.健
が,1946年WHO(世
性,境
界 保 健機 構)で
集 約 さ れ,現
在
遇 に よ っ て異 な り,常
も 受 け 継 が れ て い る 健 康 の 定 義 「た だ 単 に疾 病 や 病 弱
正 八 郎)で
で な い だ け で は な く,肉 体 的,精
り と も ち,よ
に 良 好 な 状 態 」 が あ る.そ
神 的,社
の 後,半
*1 ヘ ル ス プ ロモ ー シ ョン(health
世 紀 を超 え る 社 会
promotion):心
バ ー ヘ ル ス プ ラ ン を推 進 し て き た が,1990年 plan(THP)を
実 施 して い る.
会的 に完全
あ る が,個
康 の と ら え 方 は 「年 齢, に 流 動 的 な もの 」(大 塚
人 が 健康 に 対 す る認 識 を し っか
り望 ま しい 健 康 を獲 得 す る努 力 を惜 しま
な い こ と が 大 切 と い え る.
と身 体 の 健 康 づ く り推 進 事 業 の こ と を い う .わ が 国 で は1979年 よ り労 働 安 全 衛 生 の 一 部 改 正 に 伴 い,全
か ら労 働 省 で シル
労 働 者 を対 象 に したtotal health promotion
b.健
康 と運動 不足 との関係
地 に根 を は や す 植 物 に 対 し,体 の 姿 で あ る が,高
る こ と を 報 告 し て い る. を動 か すの が動 物本 来
等 動 物 で あ る 人 間 は 知 的 側 面 を生 か
し労 働 の 省 力 化,生
産 性 の 向上 な ど を 求 め て さ ま ざ ま
な 機 械 を 開 発 した た め,日 さ れ る 結 果 に な っ た.人
常生 活 で の 身体活 動が 節約 間 の 体 は 使 わ な い と 退 化 し,
適 度 に使 う こ とで そ の 機 能 を維 持,増 で き る.し
た が っ て,日
進 さ せ る こ とが
常 生 活 で の 身 体 活 動 量 の低 下
は 身 体 の 各 種 機 能 の 低 下 を招 来 し,ひ
い て は さまざ ま
こ の よ う に,日
常 生 活 での 身体活 動 量 の不足 は健 康
を 阻 害 す る 方 向 で 進 み,心
臓 や 循 環 系 の 疾 患,腰
や 骨 粗 鬆 症 な ど の 筋 骨 格 系 の 疾 患,不
経 失 調 症 な どの 精 神 医 学 的 疾 患 な ど 多 岐 に わ た っ た障 害 を もた ら して い る.一
方,進
お,従
来の 成人
よ り生 活 習 慣 病 に 改 名 さ れ,子
ど もか ら
高 齢 者 の 全 世 代 に わ た り,健
に つ い て,座
休 養 の 各 要 素 の 過 不 足,偏
Morrisら5)の
報 告 は 有 名 で,英
国2階 建 て バ ス の 運 転
手 と車 掌,ま
た 郵 便 局 の 内 勤 と外 勤 の 人 を比 べ,運
転
称
し,「 日 常 生 活 に 支 障 の な い 人」 た ち に そ の 有 所 見 者
病 は1997年
高 い と報 告 し て い る.
syndrome)と
が か な り多 い こ と を危 惧 し て い る.な
Hedlley2)は 身 体 活 動 量 が 大 き く異 な る 職 種 の 人 た ち 位姿 勢従 業 者が 冠状 動 脈性 心疾 患 で亡 く
藤 は運動 不足 病 につ な
が る症 状 を 運 動 欠 乏 症(hypokinetic
な 疾 患 を 引 き起 こ す こ とに つ な が る.
な る 率 は 重 労 働 者 に 比 べ1.3倍
痛症
定 愁 訴 や自 律 神
康 に 必 要 な 運 動,栄
養,
りを 原 因 とす る ま さ に 生 活
習 慣 が も た ら した 疾 患 の 総 称 に な っ た.
c.体
力 と は
手 や 内 勤 の 人 の ほ う が 冠 状 動 脈 性 心 疾 患 で 発 作 後3か
人 間の 身体 活動 や 生命 活動 の 基礎 となる身 体的 能力
月 以 内 に 亡 くな る 率 が 各 々2.3倍,2倍
を 一 般 に体 力 と よん で い る.一
高い こ とを報告
方,猪
飼 は広 義の 体力
の 後 の 数 多 くの 研 究 か ら,身 体 活 動 量 の
と して 精 神 的 能 力 を含 め て い る が,本
講 で い う体 力 は
少 ない職 種 の人 た ちに共 通 した 一 連 の 疾 患 が 認 め られ
狭 義 で の 身 体 的 能 力 と し て と ら え,池
上 の分類 を もと
る よ う に な り,1961年KrausとRaab3)に
に 表15.1の
し て い る.そ
よ って運動 不
足 病(hypokinetic
disease)と
そ の 後Saltinら9)は
身体 活 動 量 の少 ない長 期 ベ ッ ドレ
ス トの 研 究 を 行 い,心
よ う に示 し た.
い う 言 葉 が 生 ま れ た.
容 積 の 減 少,1回
拍 出量 や 最 大
d.健
康 に関 連性 の高 い体 力構成 要素 とその評価
WHOの
定 義 に 基 づ き 肉 体 的,精
神 的,社
会的 に ど
酸 素 摂 取 量 の 減 少 な ど循 環 器 系 能 力 の 低 下 を 詳 細 に 報
の程 度健 康 なの か を判 断す る尺 度 は現在 の ところ存 在
告 し て い る.ま
し な い.こ
たRambautら7)は
体 重 を 支 え た り,重
の た め,臨
床 検 査 な ど に よ る疾 病 や 異 常 の
量物 を持 ち上 げ る こと さえ必 要 ない無 重 力状態 の宇宙
有 無 と程 度 を 判 定 し健 康 度 を 評 価 し て い るの が 現 状 で
か ら帰 還 した 飛 行 士 た ち に 筋 萎 縮 や 骨 の 脱 灰 な どの あ
あ る.一
表15.1
体 力 の 分 類(池 上,1990を
方,1980年 改 変)
以 降 健 康 に 関 連 す る 体 力(health
表15.2 最 大 酸 素 摂 取 量 の 維 持 目標 値11 (単 位:ml/kg/分)
藤 ら13は 最 大 酸 素 摂 取 量 と高 血 圧 症 罹 患 度 と の 関 係 に つ い て 調 べ,年
齢,体
脂 肪 率.血
漿 脂 質 の 影 響 を取 り
除 い て も,最 大 酸 素 摂 取 量 の 低 い 者 ほ ど高 血 圧 症 罹 患 度 の 高 い こ と を 報 告 し て い る(図15.1).さ
らに 田 中
ら14は 正 常 血 圧 に あ る 一 般 サ ラ リー マ ン3,500名 象 に5年
間 追 跡 調 査 を した と こ ろ,5年
を対
後の 血圧 上 昇
量 は 最 大 酸 素 摂 取 量 の 低 い 者 ほ ど高 い こ と も報 告 して い る.ま
た 本 山 ら6)は 安 静 時 ま た は 運 動 負 荷 時 に何 ら
か の 心 電 図 異 常(軽 も,最
度 異 常+異
常)を
示 す者 の 出現率
大 酸 素 摂 取 量 の 低 い 者 ほ ど高 い こ と を 報 告 し て
い る.肥
満 度 や 血 中 脂 質 な ど につ い て も 同 様 の 傾 向 で
あ る こ と か ら,進 藤 ら10)は こ れ ら冠 状 動 脈 硬 化 危 険 因 子 の 各 種 パ ラ メ ー タ と最 大 酸 素 摂 取 量 と の 回 帰 式 を導 き,異 常 値 に 対 応 す る最 大 酸 素 摂 取 量 を 算 出 し,男 性 で37ml/kg/分 図15.1 と高 血圧 症 罹 患 度 との 関 係13) の 上 位 の 者 か ら 全 被 検 者 数 の20%ず つ5組 に 分 け て最 上 階 級 群 の 罹 患 率 を1に
以 上,女
性 で31ml/kg/分
以上 の 最大
酸 素 摂 取 量 で あ れ ば 身 体 的 健 康 は確 保 さ れ る と報 告 し て い る.健
した 時 の 他 の 階 級 群 で の 罹
康 の 程 度 を体 力 的 に 評 価 す る 場 合,従
測 定 平 均 値 か らの3∼5段
患 倍数. *:p<0.01,**:p<0.025.***:p<0.05.
り,こ
来の
階 に よ る評価 は不 適切 で あ
の よ うな臨床 検 査 な どに よる疾病 や 異常 の有 無
や 程 度 との 関 連 か ら の 評 価 の 方 が 適 切 と い え る.な お, related physical fitness)の 視 点 か ら の 見 解 が 出 され る
運 動 所 要 量 で は 最 大 酸 素 摂 取 量 が 加 齢10歳
よ う に な り,体 力 要 素 の 中 で 体 格 の 中 の 身 体 組 成,筋
ml/kg/分
力 ・筋 持 久 力,全
身 持 久 力,柔
げ て い る1).近 年,李
軟 性 の4要 素 を取 り上
な健 康 維 持 目標 値 を示 し て い る が,ア
素 の 総 合 評 価 を 試 み,
医 学 会(ACSM)1)の1990年
ら8)は4要
そ の 評 価 に よ る 体 力 年 齢 と臨 床 検 査 値 や 各 種 体 力 測 定
で も加 齢10歳
値 か ら算 出 した 田 中 ら15)の提 唱 す る 活 力 年 齢 との 間 に
す る こ と を 報 告 し て い る.
0.91の 高 い 相 関 関 係 が み られ た こ とか ら,こ
よう
メ リカス ポー ツ
の 見 解 で は,活
ご と に5%(約2ml/kg/分)ず
動 的 な者 つ低 下
の評価 法 15.2運
の 有 用 性 を指 摘 して い る. 他 方,運
ご と に約1
ず つ 低 下 す る こ と を 考 慮 し て 表15.2の
動 処
方
動 欠 乏 症 の 大 半 を 占 め る もの が 心 臓 や 血 管
な ど の 疾 患 に 関 わ る もの で あ る こ と,ま 的 調 査*2や 臨 床 的 研 究 か ら も,行
た最 近 の疫学
運 動 処 方 と は 個 人 の 目的 お よ び 能 力 に 応 じた 運 動 プ ロ グ ラ ム を 作 成 し,提 供 す る こ とで あ る.
動体 力 の 中の全 身持
久 力 が 健 康 と の 関 連 性 の き わ め て 高 い こ とが わ か っ て きて い る.全
身持 久 力の 評価 には最 大酸 素摂 取量 が 用
a.運
動 処方 に必 要 な条件
い ら れ る こ と が 多 く,体 内 の エ ネ ル ギ ー 消 費 能 力 を 的
健 康 づ く りを 目 的 と し た 運 動 は安 全 で あ る こ と,効
確 に把 握 で き る 点 で 適 切 で あ る.な
果 の あ る こ と,そ
量 の 測 定,評
価 につ い て は 第8講
*2 疫 学 的 調 査(epidemiological
お,最
大 酸素 摂取
を参 照 され た い.進
research):疾
病
,事 故,健
動 で あ る こ と が 基 本 的 条 件 と して あ げ られ る.こ
康 状 態 につ い て,地
生条 件 を統 計 的 に明 らか に す る 調 査 研 究 法 で あ る(広 辞 苑 よ り).
し て 楽 し む こ と が で き継 続 で き る 運
域,職
れま
域 な ど の 多 数 集 団 を 対 象 と し,そ の 原 因や 発
で 健 康 づ く りの 運 動 は 奨 励 す る も の の,皆
が楽 しめ る
こ と を 主 目的 に した レ ク リエ ー シ ョン 的 ス ポ ー ツ に と ど ま っ て い た こ と が 多 く,身 体 的 効 果 を期 待 し な が ら 達 成 さ れ て い な い ケ ー スが 多 い.逆
に効果 が あ る とわ
か っ て い て も三 日坊 主 で 終 わ る よ う な トレ ー ニ ン グ で は 意 味 が な い.ま
た,健
康 を つ くる た め の 運 動 は 偶 発
的 な事 故 を 除 い て は常 に安 全 で な け れ ば な ら な い.こ の よ う な 意 味 で 前 述 の3条 件 は す べ て 満 た さ れ て い る 図15.2
こ とが 前 提 と な る.
b.運
動処 方 の原 則
意 味 して お り,昔
身 体 諸 器 官 の 機 能 を 改 善 させ,向 成 さ れ る運 動 処 方 箋 に は,以
上 させ る た め に 作
下 の 原 則 が 盛 り込 ま れ て
い な い と い け な い. 1)過
負荷 の 原則
4)個
運 動 処 方 の 範 囲(池 上,1990)
と っ た き ね づ か は 長 持 ち し な い.
別性 の原則
運 動 の 初 心 者 とマ ラ ソ ン選 手 で は 体 力 差 が 大 き く, 一 緒 に ジ ョギ ン グ し て も運 動 中 の 身 体 へ の 負 担 度 は 全 く異 な り,同 様 の トレ ー ニ ン グ を 続 け て も マ ラ ソ ン選
日常 生 活 で 用 い る 負 荷 と 同 等 レベ ル の 負 荷 で は 諸 器
手 に 身 体 的 効 果 は 得 ら れ な い.同
官 の 改 善,向
の 諸 反 応 は 個 人 に よ っ て 異 な る.運
上 は 望 め な い.た
とえば呼 吸循 環 系能 力
の 向 上 で は 最 大 酸 素 摂 取 量 の40%以 筋 力 の 向 上 に は 最 大 筋 力 の1/3以 必 要 で あ り,さ 回 数,セ
上 の 負 荷 強 度 が,
上の 負荷 強 度が 最低
ら に そ の 負 荷 持 続 時 間(あ
ッ ト数)や
負 荷 頻 度(回/週)な
て 機 能 改 善 や 向 上 が 望 め る.こ
動 処 方 箋 は1人1
人 に つ い て 作 成 さ れ るべ き もの で あ っ て,こ
れ が個 別
性 の 原 則 で あ る.
るい は反復 どが 加 わ っ
れが過 負荷 の 原則 で あ
る. 2)漸
程 度 の 体 力 で も体 内
c.運 動 処 方 の 自 由 度 健 常 者 は体 力 水 準 が 広 範 囲 に わ た っ て い る た め,健 康 ・体 力 水 準 に 応 じた 運 動 処 方 が 必 要 と な る.と
進 性 の原則
りわ
け 運 動 不 足 病 予 備 群 あ る い は 体 力 水 準 の 低 い 人 は,も
ふ だ ん 歩 い て い る量 が 少 な い 人 は ま ず 散 歩(で
きれ
っ ぱ ら健 康 づ く り を 目的 と し た 運 動 が な さ れ る べ き
ば 速 歩)か
れ て
で,そ
ら,ま
た 毎 日10分
程 度 か ら始 め,慣
の 水 準 が 高 くな る ほ ど 運 動 処 方 の 自 由 度,た
き た 頃 か ら 徐 々 に ト レ ー ニ ン グ量 を増 や して い く こ と
えば 運 動 強 度,持 続 時 間,頻 度,種
が 必 要 で あ る.ト
期 待 され る 効 果 も大 き い(図15.2).
レ ー ニ ン グ を積 み 重 ね た 結 果,身
が 適 応 現 象 を起 こ し,ト
体
目 な ど は 多 様 化 し,
レ ー ニ ン グ効 果 が 現 れ て く る
と,し
ば ら く して 同 一 の負 荷 量 で は 効 果 が 進 ま な く な
d.運
る.す
な わ ち,ト
日 頃 か ら運 動 を 続 け て い る 人 も,こ
レ ー ニ ン グ 初 期 と同 じ速 度 で 歩 い て
も身 体 へ の 負 担 は 軽 く な っ て(ト り,相
と
レー ニ ン グ効 果)お
対 強 度 が 低 く な っ た 結 果 で あ る.し
た が っ て,
動処 方 の流 れ
りの 運 動 を 始 め る 人 も図15.3に
れ か ら健康 づ く
示 す運 動 処 方 の 流 れ れ は,個
人の 健康
さ らに健 康水 準 を高め た い人 は運動 強 度 を上 げた り ト
状 態 や 体 力 水 準 を 事 前 に把 握 した う え で,科
学 的 に裏
レー ニ ン グ量 を 増 や して 続 け て い く必 要 が あ る.こ
づ け さ れ た 最 適 な 運 動 処 方 を安 全 に,効
れ
に 沿 っ て 進 め る こ と が 望 ま しい.こ
が 漸 進 性 の 原 則 で あ る.
た め の もの で あ る.
3)反
1)健
復 性,継
続 性 の原則
一 時 的 に 行 っ た 運 動,三 果 は 期 待 で き な い.週
康 チ ェック
日坊 主 で は トレ ー ニ ン グ 効
肥 満 は健 康 と の 関 係 が 深 く,今 や 生 活 習 慣 病 の 一 つ
に 何 日 とい う よ う に 定 期 的 に 反
に な っ て い る ほ ど で あ る.肥 満 と は 脂 肪 が 過 剰 に 蓄 積
復 し て 行 う こ と で 効 果 が 期 待 で き る.こ 原 則 で あ る.ま
果 的 に進 め る
た 効 果 が 現 れ,体
れ が反復 性 の
さ れ た 状 態 を い う の で,身
長 と体 重 か ら肥 満 度 を 判 定
力 が 向 上 した か ら と
す る の は危 険 性 が 高 く,肩 甲 骨 下部 と 上 腕 背 側 部 の 皮
い っ て 運 動 を 止 め て し ま う とす ぐ に 体 力 は 低 下 して し
下 脂 肪 厚 か ら 体 脂 肪 率 を算 出 し評 価 す る 方 法 が 一 般 的
ま う.健 康 維 持 の た め の 運 動 所 要 量 は 運 動 の 継 続 性 を
で あ る.ち
な み に,体
脂 肪 率 が 男 性20%,女
性30%
図15.3
運 動 処 方 の 流 れ(田
を超 え る と 肥 満 と判 定 さ れ る. 医 学 的 検 査 の 目的 は,現
2)体
在 の疾患 の 有無 や 健康状 態
な ど に つ い て 確 認 す る こ と で あ り,も
し運 動 が 禁 忌 で
あ れ ば 医 療 機 関 で の 精 密 検 査 が 必 要 と な る.運 検 査 の 目 的 は,安
動 負荷
静 時 検 査 で は 発 見 で き な い潜 在 的 疾
患 を 身 体 活 動 中 に 発 見 す る こ と で あ る.検 車 エ ル ゴ メ ー タ や トレ ッ ド ミ ル,踏
力 測 定
体 力 測 定 は,体 力 の 各 要 素 に つ い て 測 定 す る もの で, 近 年 で は 健 康 チ ェ ッ ク で の 肥 満 度 と全 身 持 久 力 以 外 の 健 康 関 連 体 力 で あ る筋 力 ・筋 持 久 力(上 か)と
査 に は 自転
み 台 な ど を 用 い,
中)
柔 軟 性(長
中心 とした測 定が多
く行 わ れ て い る よ う で あ る が,そ
れ ぞ れ最 大の 能力 を
測 定 す る の で 危 険 性 を 伴 う もの もあ り,必 要 に 応 じて
低 い 強 度 の 負 荷 か ら 一 定 時 間 ご とに 負 荷 強 度 を 上 げ て
実 施 す る 程 度 で よ い.
い く漸 増 負 荷 法 が 一 般 的 で あ る.現
3)運
齢,性,体
格,お
在 で は実 施者 の年
よ び 運 動 中 の 生 体 反 応 か ら,3∼4
体 起 こ し,ほ
座 位 体 前 屈)を
動処 方箋 作成
各 種 検 査,測
定 結 果 に基 づ き,個
人 ご とに運 動処 方
段 階 の 負 荷 強 度 が 自動 的 に 設 定 さ れ た 運 動 負 荷 テ ス ト
箋 を 作 成 す る.詳 細 に つ い て は 次 項 で 説 明 す る.
プ ロ グ ラ ム 内 蔵 の 自 転 車 エ ル ゴ メ ー タが 多 く 開 発 さ
4)運
れ,こ
運 動 処 方 箋 に基 づ き運 動 を 実 践 し て い く.総
れ を 用 い て 各 負 荷 ご とに 血 圧,心
拍 数,心
電 図,
動 の 実 践(ト
レー ニ ン グ) トレ ー
ニ ン グ 量 に も よ る が,20∼30回
の ト レー ニ ン グ 後 に
量 を も 推 定 して い く方 法 が 広 く用 い ら れ て い る12).な
は 効 果 が 現 れ て く る の で,1か
月 を 目安 に 定 期 的 に体
お,こ
力 水 準 を チ ェ ッ ク し,必 要 に 応 じて 運 動 強 度 を 上 げ る
自覚 症 状,他
覚 症 状 な どを チ ェ ッ ク し,最 大 酸 素 摂 取
の 検 査 は 安 全 性 を 十 分 に 考 慮 し,医 師 の 立 合 い
の も と で 最 大 下 運 動*3に よ っ て 実 施 す る こ と が 望 ま し
と よ い.さ
い.も
を実 施 す る こ とが 望 ま しい.
し テ ス ト中 に 異 常 が 認 め られ た 時 に は す ぐ に検
査 を 中 止 し,医
ら に毎 年 運 動 処 方 の 流 れ に 沿 っ て 定 期 検 査
師の指 示 の うえ で医療 機 関で の精 密検
査 が 必 要 に な る.ま
た,β
ブ ロ ッカ ー な ど の 脈 拍 を抑
え る 薬 物 を 服 用 して い る 者 は,負
荷 強 度 と生 体 反 応 と
e.運
動処 方箋
運 動 処 方 は,そ
の 自 由 度 に 示 した よ う に,体
力水準
の 関 係 が 不 適 切 に な る た め 運 動 負 荷 テ ス トを 実 施 す べ
の 高 い 人 ほ ど い ろ い ろ な 目的 に 応 じた 運 動 処 方 を可 能
き で な い.
に し,運 動 欠 乏 症 の 有 所 見 者 や 低 体 力 者 は も っ ぱ ら健 康 づ く り を 目的 と した も の に な る.な
*3 最 大 下 運 動(submaximal す る 運動 強 度 の こ とで,こ とい う.
exercise):最
大 運 動 に 至 ら な い 強 度 で の 運 動 を い う.こ
れ 以 下 の 強 度 で の 運 動 を 最 大 下 運 動,こ
お 厚 生 省 よ り出
こで い う最 大 運 動 とは 最 大 酸 素 摂 取 量 が 出 現
れ 以 上 の 強 度 で の 運 動 を超 最 大 運 動(supramaximal
exercise)
表15.3
年 齢 別 運 動 中 の 脈 拍 数 と心 と 身体 の 反 応 の 関 係(進
さ れ た 「健 康 づ く りの た め の 運 動 所 要 量 」 は,運 乏 症 や 運 動 不 足 病 を 発 症 さ せ な い た め,ま
動欠
表15.4
藤 と 田 中,1987)
主 観 的 運 動 強 度(小
野 寺 ら,1976)
た健 康 を 維
持 す る た め に最 低 限 必 要 な 運 動 量 に つ い て 定 め た も の で あ り,こ れ まで 述 べ て き た 全 身 持 久 力 の 向上 を 主 目 的 と して い る こ と を 付 記 し て お く.運 動 処 方 箋 の 内 容 は 運 動 の 種 類,強 1)運
度,持
続 時 間,頻
度 で構 成 され る.
動 の 種 類(variety)
健 康 づ く りに は 最 大 酸 素 摂 取 量 を 向 上 さ せ る 運 動 が 必 要 で あ る こ とか ら,有 酸 素 運 動 い わ ゆ る エ ア ロ ビ ッ クエ ク サ サ イ ズ が 適 し た 運 動 と し て あ げ られ る.こ
れ
は 呼 吸 に よ っ て常 に た く さ ん の 酸 素 を 取 り込 み な が ら 行 う 持 続 的 運 動 で,た も大 筋 群(と て い る.こ
くさんの 酸素 を消費 す るた め に
くに 脚 筋 な ど)を
使 った 全身 運動 が 適 し
の よ う な 持 久 的 運 動 と して ウ ォ ー キ ン グ,
ジ ョギ ン グ,水 泳,サ
イ ク リ ン グ,ダ
ン ス な どが あ げ
られ る. 2)運
比 較 的 低 強 度 の ウ ォ ー キ ン グ で も呼 吸 循 環 系 の 改 善 を 認 め た 報 告 が 多 く,と
動 の 強 度(intensity)
1990年ACSMが
提 示 した健 常 者 にお け る運 動 処 方
の 最 新 の 指 針1)に よ る と,全
身 持 久 力 を 高 め た り維 持
くに 高 齢 者 ほ ど多 い と述 べ て い
る.「 健 康 づ く りの た め の 運 動 所 要 量 」 で も,と 安 全 性 を 考 慮 し て50%Vo2maxの
くに
運 動 強 度 を推 奨 し て お
す る の に 必 要 な 運 動 強 度 は 最 大 酸 素 摂 取 量 の50∼
り,こ の 提 案 者 の 進 藤 と 田 中 は,こ
85%(最
中 高 年 者 に 至 る ま で の ど の 年 齢 層 で も運 動 中 は 比 較 的
高 心 拍 数 の60∼90%)で
あ るが,と
くに運
動 を し て い な い 人 た ち へ の 安 全 性 を 考 慮 す る と,
余 裕 を持 ち,楽
Pollockら
で あ る と して,こ
の 分 類 した50∼74%Vo2maxの
な るべ く低 強 度 を 強 調 して い る.ま ル も重 要 な ポ イ ン トで あ り,こ
適 度 な 運 動 で, た体 力 の初 期 レベ
れ を考慮 す る と と くに
低 体 力 者 は 速 歩 に 相 当 す る40∼50%Vo2maxの
強 度で も
なお,運
し く ニ コ ニ コ し な が らで きる 運 動 強 度 れ を 「ニ コ ニ コ ペ ー ス 」 と命 名 した.
動 強 度 の 目安 に は 以 下 の 方 法 を 活 用 す る と よ
い. ① 心 拍 数 の 場 合:運
動 中 の 強 度 の 目安 に は心 拍 数
効 果 の あ る こ とが 示 さ れ て お り,わ れ わ れ も同 様 の 知
が 一般 的 で あ る.表15.3中
見 を得 て い る.さ
る 脈 拍 数110∼125拍/分
らに 久 埜 ら4)は,近
年 中高 年者 層 で
盛 ん に な っ て きて い る ウ ォー キ ン グ に つ い て,運 度 は 対 象 に よ っ て 広 範(20∼75%Vo2max)に
動強
な る が,
の 強度 は若 者 か ら
る.ま
た,138-年
(=220-年
齢)+安
の50%Vo2maxに
相 当す
が ニ コ ニ コペ ー ス で あ 齢/2あ
る い は{最
静 時 心 拍 数}÷2で
高心拍数 求 める こ と
表15.5
METSで
注) こ こ に掲 げ た数 字 は 平 均 的 な もの で,実
表15.6
表 した お も な運 動 の 強 さ11)
際 に は 上 下 に10%程
度 の 幅 が あ る.
健 康 づ く りの た め の 運 動 所 要 量11)
注) 目標心拍数 は,安静時心拍数がおおむね70拍/分 である平均 的な人が 50%に 相 当す る強度 の運動 を した場合 の心 拍数 を示す. ③ METSの
場 合:安
ml/kg/分
静 座 位 で の 酸 素 消 費 量3.5
を1METと
して 表 現 す る 方 法 で,各
動 作 や 運 動 が 何METSに 表15.5で
あ る.た
ml/kg/分
相 当 す るか を表 した の が
と え ば,最
の 人 は10METSが
50%Vo2maxに
種
大 酸 素 摂 取 量 が35
最 大 能 力 で あ る か ら,
相 当 す る5METSの
身 体 活 動 か ら選
べ ば よ い. 3)運
動 の 持 続 時 間(duration)
有 酸 素 運 動 と し て 定 常 に な る の は3分 前 後 とい わ れ て い る が,運
図15.4
動 量 を あ る 程 度 確 保 す る う え で も1回 の
運 動 の 持 続 時 間 は10分
以 上,1日
持久 走 トレー ニ ングに必 要 な強度
は 実 施 し て ほ し い.な
お,体
(生 理 的 お よび 主 観 的)と
運 動 強 度 と 持 続 時 間 を 組 み 合 わ せ,図15.4の
時間の組
少 な く と も20分 以 上
育科 学 セ ン ター方式 で は よ うに
み 合 せ(加 賀 谷 ら,1986)
示 して い る. も で き る.運
動 中 の 心 拍 数 の 確 認 に は,一
の 運 動 を3∼4分
以 上 続 け た 直 後,立
秒 間 の 脈 拍 数 を 数 え4倍
して10拍
定 強度
ち 止 ま り15
を加 え る 方 法 で
4)運
動 の 頻 度(frequency)
週 休1日
を 除 い て 毎 日 実 施 す る こ と が 望 ま しい が,
週3日 以 上 は 必 要 で あ る.ACSMに
以内
で はVo2maxの 向 上 は ほ と ん ど な い とい う.
簡 単 に 測 定 で き る. ② 主 観 的 尺 度 の 場 合:ボ
ル グ が 考 案 した 運 動 の き
運 動 所 要 量 で 提 示 して い る 運 動 量 は 週 当 た りの 総 運
つ さ を 主 観 的 に 数 値 で 評 価 す る も の で,表15.4
動 時 間 と し て 表 し,表15.6の
に示 す よ う に6∼20の
こ の 意 味 す る と こ ろ は,あ
範 囲で 設定 された 主観 的尺
度(rating
of perceived
行 う.こ
exertion:RPE)を
の 数 値 を10倍
につ く られ た も の で,自 当 す る 脈 拍 数 を10で
よ る と週2日
用 いて
す る と心 拍 数 に な る よ う 分 の ニ コニ コペ ース に相
よ う に 設 定 し て い る. くまで もニ コニ コペー スの
運 動 を週 に こ れ だ け の 時 間 実 施 す る こ と に よ っ て,各 年 齢 別 に 設 定 さ れ た 最 大 酸 素 摂 取 量 の 健 康 維 持 目標 値 を保 つ こ とが で き る こ と に あ る.し
た が っ て,こ
れ以
除 した値 に相 当 す る数 値 が
上 の 向 上 を 望 む 場 合,図15,5の
よ う に 週 当 た りの 運
目安 で 「楽 で あ る」 か ら 「や や き つ い」 範 囲 に な
動 時 間 を 多 くす る か,図15.4の
よ うに運 動 強 度 を若
る.な
干 上 げ る こ とが 必 要 と な る.
お,脈
拍 を低 く抑 え る薬 物 を 服 用 して い る
人 に は こ の 方 法 が 適 して い る.
表15.7
図15.5
運 動 を行 う うえ で の 配 慮 事 項
Vo2maxと週 当 た りの ト レー ニ ン グ時 間 と の 関係10)
5)筋
に 配 慮 して 実 施 す る こ とが 大 切 で あ る.
力 づ く りの た め の 運 動 処 方
ウ ォ ー キ ン グ や ジ ョ ギ ン グ な どの 脚 中心 の ト レー ニ ン グで は 腕 や 肩,上
体 の 筋 は トレー ニ ン グ さ れ ず,む
し ろ 全 身 の 筋 肉 量 の 低 下 が 危 惧 され る.ま
た,筋
力低
下 は 膝 や 腰,肩
な どの 関 節 障 害 の 原 因 の 一 つ に も な っ
て お り,ACSMで
は指針 の 中 に レジス タ ンス ・トレー
ニ ン グ の 名 称 で 新 た に 筋 力 づ く り も 入 れ た.と 研 究 報 告 の 多 い 腰 痛 症 と 膝 関 節 障 害 で は,そ
りわ け の 予 防,
改 善 の た め に 前 者 に は 背 筋 力 の み な らず 腹 筋 力 の 強 化 が,後
● 問 題 1. 運 動 欠乏 症,運 動 不足 病,生 活 習慣 病 に つ い て 説 明 し な さい. 2. 健 康 関 連体 力 につ いて 説 明 しな さい. 3. 運 動 処 方 に必 要 な条 件 を あげ,説 明 し な さい. 4. 一 般 中 高年 者 の 運動 処 方箋 を作 成 しな さい. 5. 運 動 強 度 を知 る 目安 にな る もの を あげ,説 明 しな さい. 6. エ ア ロ ビ ックエ クサ サ イ ズ につ い て説 明 しな さ い.
者 に は体重 を支 える大 腿 四頭筋 の 強化 が必 要 と
い わ れ る.
● 参 考 文 献
筋 力 向 上 の た め の 運 動 処 方 箋 と し て,ACSMで な く と も,8∼12回 80%の
負 荷 で,筋
の 運 動 を1セ
で 疲 労 す る(最
大 筋 力 の75∼
肥 大 を主 効 果 とす る)よ
ッ ト と し た,大
は少
うな強 度で
筋 群 を 含 む8∼12種
類の
1) American
College
quantity
and
力 トレ ー ニ ング は大 き な 血 圧 上 昇 を 引 き起
こ す の で,血 圧 の 高 い 者 は 実 施 す べ きで な い.
adults. Med.
Sci. Sports Exerc.,22
2) Hedlley,O.
F.:Analysis
coronary Public
3) Kraus,
H.
訳),ベ
Health
and
康 づ く りの た め の 運 動 を行 う う え
で 安 全 性 は 前 提 条 件 と な る.し
work.
流 れ に沿 っ た 手順 を踏 む こ とは きわめ て 肝 要 とい え
6) 本 山
動 中 に まれ に起 こ る 突 然 死 は,健
怠 っ た 場 合 に 多 い.話
康 チ ェ ック を
題 の 活 性 酸 素 は,運
動強 度が 強
い と 多 く発 生 す る こ と が 知 ら れ て い る.「 健 康 づ く り の た め の 運 動 所 要 量 」 で 奨 励 して い る ニ コ ニ コ ペ ー ス は 軽 強 度 で あ り,活 性 酸 素 の 産 生 量 も 少 な くて す む.
元
の 強 度 は 心 臓 や 骨 格 筋,関
節 な どに大 きな負
担 をか け ず 安 全 性 が 高 い. そ し て,運
動 を 行 う 際,表15.7に
and
fitness in healthy
:265-272,1990. deaths
reported
as
due
to
U.
S.
: 972,1939. 動 不 足 病(広
田 公 一,石
ォ ー キ ン グ の 特 性.Jpn.
川
旦
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of 5116
occlusion
4) 久 埜 真 由 美,宮下
f.運
Medicine:The exercise
cardiorespiratory
Weekly
な お,筋
of
maintaining
acute
運 動 を 週2回 実 施 す る こ と を勧 め て い る.
of Sports
quality
美 淑,田
檜 山 輝 男:健
中 喜 代 次,中
塘 二 三 生,渡
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生 省
「健 康 づ く りの た め の 運 動 所 要 量 」 に つ
身 か ら錆 を 出 さ な い 出 させ な い」 暮 ら しの 原 理 の 提
本 ル ミ:高
和 代,松
木 美 栄 子,小
貫 秀 和,湊
本
勲:健
康 の た あ の 運 動 所 要 量Q&A,新
12) 進 藤 宗 洋,小 山 内 美 代 子:エ
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笠 原 正 志,西
内 久 人,田
中 宏 暁.田
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南
摂 取 量 水 準 値 と 加 齢 の 相 互 関 係 に つ い て.循
10) 進 藤 宗 洋:厚
案.保
皆 吉 正 博,本
村 栄 太 郎:主
成 分
育 学 研 究,35:
16 運動 と生活習慣病
"生 活 習 慣 病"と 年12月
い う名 称 は,1950年
代 後 半 か ら使 わ れ て きた"成
人 病"に
の 公 衆 衛 生 審 議 会 答 申 の 中 で 提 唱 され た の が 始 ま りで あ る.も
40歳 頃 よ り増 加 す る が ん,脳
卒 中,心
臓 病,糖
尿 病,高
と も と"成
の 発 症 に は 食 生 活,喫
煙,飲
人病"と
は,
血 圧 な ど を 包 括 し た 行 政 用 語 で あ り,
当 初 よ り早 期 発 見 ・治 療 を コ ンセ プ トに 成 人 病 対 策 が と られ て き た.し 研 究 が 進 む に つ れ て,そ
か わ っ て,1996
酒,運
わ っ て い る こ とが し だ い に 明 らか に な っ て き た こ とか ら,こ
動,休
か し な が ら,そ の 後 の
養 な ど の 生 活 習 慣 が 深 く関
れ ら の 病 気 の 発 症 を 防 ぐ方 向 へ と
政 策 が 転 換 し,名 称 が 変 更 され る に 至 っ た2). 本 講 で は 生 活 習 慣 病 の 中 か らい くつ か の 疾 患 を と りあ げ,急 性 お よ び 慢 性 運 動 の 効 果 や そ れ が もた ら され る メ カ ニ ズ ム に つ い て 述 べ る こ と にす る.な 理,原
則,方
お,運
動 を処 方 す る際 の 基 本 的 な 原
法 な ど に つ い て は 健 常 者 を 対 象 と す る 場 合 と オ ー バ ー ラ ップ す る の で,第15講
を参 照 さ れ た い.
て きた が,そ の 背 景 に あ る メ カ ニ ズ ム は 単純 で は な い. 16.1肥
満 と運 動
た と え ば 同 じ よ う に 食 べ て も,太 な い 人 もい る.同
肥 満(obesity)と (体 脂 肪 率)が
は,体
重 に占 め る体 脂 肪 の割 合
正 常 域 を 超 え て,あ
な っ た 状 態 を さす.こ る 過 体 重(over
る一 定水 準 以 上 に
れ は 身 長 と体 重 か ら割 り出 され
weight)と
は 別 の 概 念 で あ り,筋 力
じ よ う に 運 動 し て も,痩 せ る 人 もい
れ ば そ う で な い 人 も い る.す 環 境 因 子 以 外 に,体
る 人 もい れ ば そ うで
な わち食事 や運 動 とい う
質 と い っ た 遺 伝 因 子 も絡 ん で くる
の で あ る. 肥 満 や 摂 食 に 関 す る 研 究 は,1990年
代 の 半 ば 以 降,
ト レー ニ ン グ を積 ん で い る 競 技 者 な どで は,過
体重 で
分 子 生 物 学 的 ア プ ロー チ に よ っ て画 期 的 な 進 展 を み せ
あ りな が ら肥 満 で は な い ケ ー ス が ま まあ る.逆
に,一
た.そ
の 先 駆 け と な っ た の が,1994年
末 にFriedman
見 ス リ ム で あ っ て も じつ は 肥 満 で あ る 場 合 が 少 な く な
ら の グ ル ー プ に よ っ て 発 見 され た 肥 満 遺 伝 子(ob遺
い.肥
伝 子;obese
満 の 判 定 基 準 に つ い て は必 ず し も コ ン セ ン サ ス
が 得 られ て い る と い う わ け で は な い が,体 人 男 性 で20%,成
人 女 性 で30%を
脂肪 率 が成
gene)17)で あ り,翌1995年
肥 満 遺 伝 子 産 物 レ プ チ ンで あ る.レ
に報 告 さ れ た
プ チ ン は摂 食 や そ
超 える場 合 に肥 満
れ に伴 う脂肪 蓄積 が刺 激 とな って お もに脂肪細 胞か ら
と判 定 す る の が 一 つ の 例 で あ る.肥 満 は単 純 性 肥 満 と
分 泌 さ れ る ホ ル モ ンで あ り,視 床 下 部 に あ る レ プ チ ン
症 候 性 肥 満(内
受 容 体 に 作 用 す る.レ
分 泌 疾 患,遺
疾 患 に 由 来 す る も の)と
伝 子 病,薬
に 大 別 で き る が,大
者 で あ る.肥 満 が 問 題 視 され る の は,高 硬 化,高
血 圧,糖
剤 性 な ど基 礎 部 分 は前
脂 血 症,動
脈
尿 病 な ど,生 活 習 慣 病 の 発 症 ・増 悪
プ チ ン の お もな 生 理 作 用 は,①
視 床 下 部 腹 内 側 核 に あ る 満 腹 中 枢 を 介 し た 摂 食 抑 制, ② 交 感 神 経 系 か ら褐 色 脂 肪 組 織 を 介 し た 熱 産 生 増 大 (エ ネ ル ギ ー 消 費 増 大),③
自発 運 動 量 の 増 加 に よ る
因 子 と な る か らで あ る.
エ ネ ル ギ ー 消 費 増 大 で あ り,そ
の 結 果 と し て 生 じる
単 純 性 肥 満 は 従 来 か ら,基 本 的 に は 摂 取 エ ネ ル ギ ー
④ 体 重 減 少(体 脂 肪 量 の 減 少)で あ る7,11)(図16.1).
の 過 多 と消 費 エ ネ ル ギ ー の 不 足 と い う 図 式 で 説 明 さ れ
す な わ ち,体
脂 肪 が 蓄 積 し体 重 が 増 加 す る と,そ
の信
図16.2
レ キ シ ン(摂 図16.1
レ プチ ンの 生 理 的作 用(蒲 原,19987を
減 量 に 及 ぼ す 食 事 療 法 と運 動 療 法 の 効 果18)
食中 枢 であ る視 床下 部外 側野 で み いだ さ
改 変)
れ た 神 経 ペ プ チ ド)12)が 大 き な注 目 を 集 め て い る. 単 純 性 肥 満 治 療 の 原 則 は エ ネ ル ギ ー の 摂 取 量 と消 費 号 を 受 け た 脳 が 代 謝 や 食 欲 を 調 節 す る こ とで 遺 伝 的 に
量 との バ ラ ン ス を 是 正 す る こ と で あ り,前 者 に つ い て
決 定 さ れ て い る範 囲 に 体 重 を 自 動 的 に コ ン トロ ー ル す
は食 事 療 法 が,後 者 に つ い て は 運 動 療 法 が 用 い ら れ る.
る と い う わ け で あ る.ヒ
食 事 療 法,運
は レ プ チ ン抵 抗 性(レ 全)が
トの 肥 満 の 場 合,そ
の95%
動 療 法,両
プチ ンは分泌 され るが作 用 は不
図16.2に
示 し た,対
原 因 とみ られ て お り,結 果 的 に 肥 満 者 の 血 中 レ
間 は16週
間 で あ っ た,体
プ チ ン レ ベ ル は 健 常 者 よ り も高 くな っ て い る7).運 動
は な か っ た が,脂
が 血 中 レ プ チ ン レベ ル に 及 ぼ す 影 響 に つ い て の 研 究
大 きか っ た.さ
は,最
LBW)が
近 に な っ て み ら れ 始 め た.一
例 をあ げ れ ば,肥
満 男 性 に お け る持 久 性 トレ ー ニ ン グ の 結 果,体
脂肪 率
者の 併用 療法 の効 果 の比較 を
象 は25∼42歳
の 肥 満 女 性 で,期
重 減 少 に 関 して は3群 間 に 差
肪 量 の 減 少 は運 動 療 法 群 と併 用 群 で ら に 除 脂 肪 体 重(lean
body
weight:
食 事 療 法 群 で減 少 し た の に 比 べ て,他
で は 増 加 し た.こ
のZutiとGolding18)の
の2群
結 果 か ら示 唆
の 変 化 と は独 立 して 血 中 レ プ チ ン レベ ル が 低 下 し た こ
さ れ る よ う に,肥 満 治 療 に お け る 運 動 療 法 お よ び 併 用
とが 報 告 さ れ て い る10).現 在 の と こ ろ,急
療 法 の 意 義 は 大 きい.
性 的 ト レー ニ ン グの 効 果,ま
性 運 動 や慢
たそ れ らに関 す る性差 な
運 動 療 法 の 内 容 と し て は 歩 行,ジ
ど に つ い て 統 一 的 見 解 が 得 られ て い る とい う わ け で は
自転 車 な ど,大
な い が,多
の 強 度 で20∼60分
くの 新 知 見 が 集 積 され つ つ あ る.
と こ ろ で,Friedmanら
の 考 え 方 に 従 え ば,体
重は
ョギ ン グ,水
間,週3回
以 上 実 施す る こ とはア
メ リ カ ス ポ ー ツ医 学 会 に よ り推 奨 され て い る14).こ れ
結 局 の と こ ろ 視 床 下 部 機 能 に よ り 自動 的 に 調 節 さ れ る
は,低
と い う の で あ る か ら,食 事 療 法 や 運 動 療 法 は 長 期 的 に
よ り脂 肪 組 織 や 骨 格 筋 で の 脂 肪 分 解 が 促 進 さ れ,そ
は あ ま り意 味 を な さ な い と い う こ と に な る.し
結 果 生 じたFFAが
が ら ヒ トに お け る 摂 食 行 動 で は,前 加 え て,大
か しな
述 の代 謝調 節系 に
脳 皮 質や 辺縁系 といっ た上位 中枢 か らの入
泳,
筋 群 を 使 用 す る動 的 運 動 を60%Vo2max
∼ 中 強 度 の 有 酸 素 的 運 動 を 長 時 間 続 け る こ とに
骨 格 筋 な ど で 効 率 よ く燃 焼 され る と
い う運 動 生 理 学 的 デ ー タ に 基 づ い た も の で あ る.水 や 自転 車 は,膝
の
泳
・足 関 節 に 過 剰 な 負 担 が か か ら な い た
力(認 知 調 節 系)が 非 常 に 大 き い こ と が 考 え られ る.
め 肥 満 者 に 適 した 運 動 で あ る と い え よ う.な お,運
す な わ ち ヒ トの 摂 食 行 動 は 精 神 的,社
会的 な要 因 に大
療 法 と食 事 療 法 が 有 効 な の は 単 純 性 肥 満 に 限 定 さ れ,
れ に よ る認 知 調 節 系 の 歪 み が 過 食 と
症候 性肥 満 で は基礎 疾 患 に応 じた療法 が必 要 となって
き く影 響 さ れ,そ
肥 満 を もた らす と考 え る こ と も で き る.ち れ ら の 代 謝 調 節 系,認
な み に,こ
知 調 節 系 を 統 合 し,摂
制 御 す る 因 子 と して,櫻
食行動 を
井 ら に よ り最 近 発 見 さ れ た オ
くる.
動
血 症)が 16.2
HDLコ
glyceride:TG),リ
リ グ リ セ リ ド(tri
ン脂 質,FFAの4種
3者 は リ ポ 蛋 白 質(第6講
参 照)と
に トレ ー ニ ン グ に よ りLPL活
が 高 ま る と 血 中TGは
高 脂 血 症 と運 動
血 漿 脂 質 に は コ レ ス テ ロ ー ル,ト
出 現 す る.逆
類 が あ り,前
し て 存 在 して い る.
低 下 す る.ま
た,LPL活
性 と
レス テ ロー ル の 間 に も正 の 相 関 関 係 が 認 め ら れ
て い る5). 実 用 的 な 運 動 処 方 と し て 佐 々木13)は,約50%Vo2max とい う低 ・中 強 度 負 荷 の 自 転 車 エ ル ゴ メ ー タ運 動 を1
高脂 血症 とは 血漿 脂 質 の うち一つ 以上 が正 常域 を超 え
回60分
て い る状 態 を さす.高
脂 血症 に は原 因のみ あ た らない
ロ ー ル の 増 加 が 得 られ る と して い る.い
一 次 性 と原 因 疾 患(糖
尿病
二 次 性 高 脂 血 症 や そ の 他 の 合 併 症 の あ る場 合 は,運
患 な ど)の
存 在 す る二 次 性 とが あ る.高
硬 化(atherosclerosis)の と は,血
,甲 状 腺 機 能 低 下 症,肝
疾
脂 血 症 は動 脈
危 険 因 子 で あ る.動
間,週3回,10週
厚 す る 病 変 で あ る.こ
血 管 内 腔 は 狭 く な り,血 流 が 障 害 さ れ,血 す く な る.動
脈 硬 化 は 狭 心 症,心
16.3
れにより
梗塞など
高 血 圧 症(hypertention)と
は,安
が 正 常 値 よ り高 い 状 態 を さす.世 の 基 準 で は 最 高 血 圧160mmHg以上,ま
と こ ろ で,LDL(低 比 重 リ ポ 蛋 白 質)は コ レ ス テ ロ ー ル を血 管 に 沈 着 させ 動 脈 硬 化 を促 進 させ る が ,HDL
95mmHg以
(高 比 重 リ ポ 蛋 白 質)は
mmHg以
逆 に コ レ ス テ ロ ー ル を血 管 壁
上 の 場 合,高
常 血 圧 は,最
よ り除 去 す る こ と に よ り抗 動 脈 硬 化 作 用 を も っ て い
圧 症 と よ ぶ.高 と原 因(腎
症 や 低HDLコ
レス
テ ロ ー ル 血 症 が 認 め られ る.有 酸 素 的 運 動 の 実 施 に よ り血 漿 中 のTG,VLDL(超
低 比 重 リポ 蛋 白 質)の
レ ス テ ロ ー ル 値 は 増 加 す る13).ま た,
運 動 量 とHDLコ
レ ス テ ロ ー ル との 間 に は 正 の 相 関 が
認 め られ て い る(図16.3).リ
ポ 蛋 白 リ パ ー ゼ(lipo
protein lipase:LPL)はTGの
分解 に関わ る酵 素 であ
性 が 低 い とVLDLに
さ れ て く るTGの
図16.3
HDLコ
た は最低 血圧
高 血 圧140mmHg以
なみ に正
下 か つ 最 低 血 圧90 者 の 中 間 型 を境 界 域 高 血
血 圧 症 には原 因不 明 な本態 性 高血 圧症
臓 病,内
分 泌 疾 患 な ど)の
高 血 圧 症 とが あ る が,前
者 が70∼90%を
明 らか な 二 次 性 占 め る.高
値 は
低 下 し,HDLコ
る が,LPL活
静 時 の動 脈 血圧
界 保 健 機 関(WHO)
血 圧 症 と よ ぶ.ち
下 の 場 合 で あ る.両
る.肥
ば し ば 高TG血
よ っ て 肝 臓 か ら運 搬
分 解 が 抑 制 さ れ,高
動
高 血 圧 と運 動
の 重 大 な 疾 病 の 原 因 と な る.
満 の 場 合,し
レステ
ず れ に せ よ,
脈硬 化
栓 が 生 じや
筋 梗 塞,脳
間 行 う こ と でHDLコ
療 法 適 応 に 慎 重 で な け れ ば な ら ない.
漿 コ レ ス テ ロ ー ル の 増 加 な どが 引 き 金 と な っ
て 血 管 内 膜 が 増 殖,肥
性
脂 血 症(高TG
レ ス テ ロー ル と運 動 量 との 関 係8)
対 象 は エ ア ロ ビ ッ ク ダ ン ス の 女 子 イ ンス トラ ク タ ー お よ び 一般 成 人 女 子で あ る.
図16.4
さ ま ざ ま な動 的 お よ び 静 的 運 動 負 荷 中 の 動 脈 内 血 圧 の変 動3)
血 圧 症 が 長 期 に わ た っ た 場 合 の 主 要 な 合 併 症 と して 脳 卒 中 が あ げ られ る.
る こ とが あ る.し か し な が ら 多 くの 場 合,症 自覚 症 状 が な い 場 合 もあ る.こ
運 動 療 法 の 効 果 に 関 し て は,1980年
代 以 降の系 統 的
つ は 恐 ろ しい.無
状 は 軽 く,
の 無 自覚 と い う の が じ
自 覚 で あ っ て も各 組 織 は 高 血 糖 に さ
な 研 究 に よ りそ の 有 効 性 が 実 証 さ れ る よ う に な っ て き
ら さ れ て い る こ と に な る.こ
の こ とが 各 組 織 の 蛋 白 質
た.一
の 不 可 逆 的 な 変 性 を 促 し,長
い間 治療 せず に放置 して
過 性 の 運 動 は 血 圧 を上 昇 さ せ る.と
くに 重 量 挙
げ の よ うな 静 的 局面 を含 む 高 強 度 の 運動 で は最 高血
い る と 網 膜 症(失
圧,最
ポ テ ン ツ な ど),動
低 血 圧 が と も に上 昇 す る.そ
の 点,歩
行 や 走行
の よ う な 動 的 な 低 ・中 強 度 の 運 動 で は 最 低 血 圧 は む し ろ 低下 す る(図16.4).血
圧 は 心 拍 出 量 と全 末 梢 血 管
抵 抗 と の 積 で 決 定 さ れ る の で,血
圧の低 下 は一 方 もし
明 な ど),腎
不 全,神
脈 硬 化 症,糖
経 障 害(イ
併 症 を併 発 す る と考 え ら れ て い る.合
併 症 を 防 ぐ意 味
に お い て,血
糖 値 を コ ン トロ ー ルす る こ と は 非 常 に 重
要 で あ る.血
糖 コ ン トロ ー ル の 手 段 と し て イ ン ス リ ン
く は 両 方 の 低 下 に よ る も の で あ る.長 期 運 動 トレ ー ニ
療 法(体
外 か ら イ ン ス リ ン を注 射),食
ン グ が 安 静 時 血 圧 の 低 下 を も た らす メ カ ニ ズ ム と し
療 法,経
口血 糖 降 下 剤 の 服 用 な どが あ る.
て,50%Vo
糖 尿 病 の 病 型 を 分 類 す る と,お
2max程度 の 運 動 で は 心 拍 出 量 の 低 下 傾 向 な
どが そ の 原 因 と な る とい う報 告,ま
た60%Vo2max以
上
ン
尿 病性 壊 疽 な どの合
型 糖 尿 病(insulin
dependent
事 療 法,運
動
も に イ ン ス リ ン依 存 diabetes
mellitus:
の 運 動 で は 全 末 梢 血 管 抵 抗 の 減 少 が 主 要 因 で あ る とい
IDDM)と
う報 告 が み られ る1).し た が っ て,運
dependent
diabetes mellitus:NIDDM)の
降 圧 の メ カ ニ ズ ム は 異 な る の か も し れ な い.
さ れ る.す
な わ ち,IDDMは
運 動 トレ ー ニ ン グ に よ る 心 拍 出 量 と全 末 梢 血 管 抵 抗
低 下 して お り,生 存 す る た め に は イ ンス リ ン療 法 が 必
の 低 下 の,さ
要 と さ れ る.典 型 的 に は 若 年(25歳
動 強 度 に よ って
ら に背 景 に あ る メ カ ニ ズ ム に 関 し て も い
くつ か 考 え られ て い る5).ト
レ ー ニ ン グ す る と安 静 時
イ ン ス リ ン非 依 存 型 糖 尿 病(non
症 す る.NIDDMは
insulin 二 つ に大 別
イ ン ス リ ン分 泌 が 極 度 に
以 下)で
急 激 に発
症 状 と し て は よ りマ イ ル ドで,典
の 交 感 神 経 系 の 緊 張 低 下 や 血 漿 カ テ コー ル ア ミ ン濃 度 の 低 下 が も た ら さ れ る.こ
のた め末梢 血管 抵 抗 が減 少
し,心 拍 数 や 心 筋 収 縮 性 も低 下 す る た め,心 減 少 す る.ま 増 加 し,そ
拍 出量 も
た ト レー ニ ン グ す る と大 動 脈 の 伸 展 性 が
の 結 果,と
く に最 高 血 圧 が 低 下 す る こ と も
報 告 さ れ て い る5) 高 血 圧 患 者 に対 す る運 動 療 法 の 効 果 に 関 す る 過 去 の さ ま ざ ま な 知 見 か ら,石
河 と杉 浦5)は50∼70%Vo2max
の 動 的 運 動 を1回30∼60分
間,週3回
とい うのが 標準
的 な 処 方 で あ る と して い る. 図16.5
健 常 者お よび糖尿 病患 者 の運動 時 に お け る 血 糖 の 変 動16)
16.4
糖 尿 病(diabetes
糖 尿 病 と運 動
mellitus)は
膵臓 か らの イ ンス リ
ン分 泌 が 不 全 で あ っ た り,末 梢 組 織 で の イ ン ス リ ン作 用 が 不 足 した りす る 疾 病 で あ る.イ
ンス リ ンは末梢 神
経 に お け る血 糖 の 取 り込 み を促 進 させ る ホ ル モ ン で あ る た め,糖
尿 病 に な る と高 血 糖 が 持 続 した り,耐 糖 能
(ブ ドウ 糖 の 投 与 に よ る 血 糖 の 上 昇 に 対 し て,イ
ンス
リ ンの 働 き に よ り血 糖 を も と の レベ ル に 下 げ る 能 力) が 低 下 し た りす る.重 症 の糖 尿 病 の 場 合,激 多 食,多
尿,急
激 な 体 重 減 少,意
し い 口 渇,
識 障害 を起 こす こ と
が あ り,適 切 な 治 療 を施 さ な い と昏 睡 に 陥 っ て 死 亡 す
図16.6
健 常 者 お よ び糖 尿 病 患 者 の 運 動 中 お よび 運 動 後 に お け る血 中 総 ケ トン体 の 変動15)
図16.7
図16.8 常 者,肥
入 院 中 の 血糖 日内 変 動 の 推 移4
イ ン ス リ ン感 受 性 に 及 ぼす 運 動療 法 の効 果15
(a)鍛
練 者,健
満 糖 尿 病 患 者,単
(b)肥
満 糖尿 病患 者 と単 純 肥 満 者 の運 動 療 法前 後 に お け る イ ンス リ ン感 受 性 の変 化.
純 肥 満 者 に お け る イ ンス リ ン感 受 性 の違 い.
グル コー ス代 謝量 は イ ン ス リ ン感 受性 を 表 して い る.
型 的 に は 中 年 以 降 に肥 満 を 伴 っ て 徐 々 に発 症 す る.両
血糖 コ ン トロ ー ル不 良 のIDDMお
型 と も遺 伝 的 な影 響 と環 境 的 な 影 響 が 発 症 に 関 与 し て
は,運
い る.わ
い て し ま う.運 動 療 法 が 適 応 さ れ る か 否 か の 基 準 と し
NIDDMで NIDDM発
が 国 の 糖 尿 病 患 者 の90∼95%を
占め るのが
て,血
あ る. 症 の 環 境 因 子 は,過
食や 運 動不 足 な どの
非 健 康 的 な 生 活 習 慣 で あ る と い わ れ て い る.し てNIDDMの
治 療 法 と して,食
常 に 重 要 視 さ れ て い る.糖
尿 病 患 者 に 対 す る一 過 性 の
運 動 効 果 を 図16.5,16.6に ト ン体 血 症:飢
たがっ
事 療 法 と運 動 療 法 は 非
示 す.ケ
トー シ ス(高
ケ
餓 や 糖 尿 病 な どで は イ ン ス リ ン分 泌 低
下 が 起 こ る た め,骨
格 筋 な どの末梢 組織 に血糖 が取 り
動 に よ りか え っ て 高 血 糖,高
よ びNIDDM患
ケ ト ン体 血 症 を 招
糖 の コ ン トロ ー ル 状 態 が 用 い られ る ゆ え ん で あ
る. 入 院中 の糖尿 病患 者 が 運動療 法 と食事療 法 を持続 し た 結 果,血
糖 レ ベ ル が 低 下 した 例 を 示 す(図16.7).
また 長 期 的 な運 動 療 法 の 効 果 と して,末 イ ン ス リ ン感 受 性 の 向 上(イ
ン ス リ ンの 効 きが 良 く な
れ る よ う に,肥
示さ
満 糖 尿 病 患 者 と単 純 肥 満 者 の イ ンス リ
ン感 受 性 は 低 い.そ
れ を 補 う た め の メ カニ ズ ム の 一 つ と し て 肝 臓 で ケ トン
食 事 療 法 を 行 う こ とで,イ
体 が 生 成 さ れ,血
め ら れ る と報 告 さ れ て い る(図16.8).一
うした状
梢組 織 に よる
る こ と)が 上 げ られ て い る(図16.8).図16.8に
込 ま れ に く くな り,細 胞 内 糖 質不 足 の 状 態 に 陥 る.そ
中 ケ ト ン体 が 上 昇 す る.こ
れ らの人 々が 長期 間 の運動 療 法 と ン ス リ ン感 受 性 の 向 上 が 認
血 糖 状 態(食
伴 わ ず,血
前 述 の ご と く運 動 療 法 は 適 応 さ れ な い が,そ
者 で は,
後 血 糖250mg/dl以
上)の
般 的 に は高
況 は 代 謝 状 態 の 歪 み を 反 映 し て い る と 考 え ら れ る)を 糖 コ ン トロ ー ル 良 好 なNIDDM患
者で
患 者 の 場 合, の よ うな
運 動 に よ り骨 格 筋 で の ブ ドウ 糖 利 用 が 促 進 さ れ る た め
状 態 で も長 期 間 ト レー ニ ン グ す る こ とに よ り運 動 時 の
血 糖 レ ベ ル は 低 下 して い く.血 中 ケ ト ン体 の 上 昇 も さ
ケ トー シ ス の 度 合 い が 低 下 す る ば か りで な く,安
ほ ど大 き い も の で は な い.一
の 血 中 ケ トン体 レベ ル も低 下 す る と い う こ とが 動 物 実
方,ケ
トー シ ス を 伴 い,
静時
8) 本 山
験 で 示 され て い る9). 運 動 療 法 の 具 体 例 と して は,①
歩 行,ジ
ョ ギ ン グ,
貢,角
日 高 和 子,半 川 規 矩 男,進
縄 跳 び な ど の 動 的 有 酸 素 的 運 動,②
ス トレ ッチ 体 操 や
エ キ ス パ ン ダ ー な ど の 静 的 運 動,③
ラ ジ オ体 操,の3
種 類 を組 み 合 わ せ る 方 法 が あ る.40∼60%Vo2max程 を 朝 夕10分
間 ず つ く らい,毎
日行 う こ と を 目標 に す
る こ とが 勧 め ら れ て い る14).
9) Ohmori,
diabetic
脂 血症,動
い.
Am.
もの で あ る か,理
切 な運 動 とは どの よ うな
A.C., Carr,
由 と と も に 述 べ な さ い.
7. 糖 尿 病 に と っ て,運
動 が どの よ う な効 果 を もつ か述 べ
M. on
S. and
Saris. W.
H.
leptin levels in obese
J., Baker,
Collins,
weight
M.
B., Hecht,
F.:Effects
regulation
R.,
of the obese in ob/ob
mice.
A., Ishii, M., Matsuzaki,
S., Arch,J.R.S.,
S.A., Annan,
Elshourbagy,
N.
receptors
D. J. and
receptors:
neuropeptides that regulate
R.E., Haynes,
D.E., Liu, W., Terrett,
A., Bergsma, orexin
and
feeding
R.
J.A., Kozlowski,
Buckingham,
R. S., McNulty,
and
I., Chemelli,
S.C., Richardson,
G
behavior.
Yanagisawa, A
family
of
protein-coupled Cell,92:573-585,
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献 血 圧 の 運 動 療 法.運
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動 療 法 の 実 際(荒
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14) 佐 藤 祐 造,大
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動 療 法 ガ イ ド-正
しい 運 動 処 方 を求
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本醫事新
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gene
5) 池 上 晴 夫:ス
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6) 石河 利 寛,杉
浦 正 輝:運
動 と健 康.運
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動 生 理 学(石
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田 芳 治:糖
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下 充 正,武
満.運
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下 充 正,武
(荒 川 規 矩 男,河
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合 忠 一
野 秀 樹:肥
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・高 脂 血 症 に 対 す る 運 動 療 法.運
処 方 を 求 め て(宮
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2) 朝 日新 聞 社 年 鑑 事 典 編 集 部 編:朝
3) Hollmann,
満
川 規 矩 男,河
1991.
1) 荒 川 規 矩 男:高
め て(宮
body
M.:Orexins
実 際(荒
矩 男,河
M.
and
H., Williams,
13) 佐 々 木 淳:肥
参
training.
1998.
な さ い.
●
T.
Amemiya,
hypothalamic
デ メ リ ッ トが あ る か 述 べ な さ い.
it of prolonged
training
A., Cullen,
on
Wilson,
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体 に と って どの よ うな
in streptozotocin
on
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M.,Tanaka,
6. 長 期 間 高 血 糖 状 態 で い る と,生
effects
exercise
M,
product
G.P.,
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動 が どの よ う な効 果 を も
つ か 説 明 し な さ い.
血 清 脂 質
:417-427,1989.
D., Boone,
Science,
Yamashita,
J., Westerterp-Plantenga,
12) Sakurai,T.,
5. 高 血 圧 の 運 動 療 法 と し て,適
the
effect of
Winters, gene
4. 肥 満 や 高 脂 血 症 に と っ て,運
崎 比 呂 真, 中 宏 暁,荒
instructorの
hyperketonemia
Japon,36 W.
males.
脈硬化 の関係 につ いて述べ な さ
dance
K. and
and
11) Pellymounter,
につ い て述 べ なさ い.
田 光 子,山 々 木 淳,田
床 ス ポ ー ツ 医 学,9:442-447,1992.
rats
M.:The
3. 肥 満,高
尚,石 彰,佐
藤 宗 洋:Aerobic
of exercise-induced
10) Pasman,
2. 動 物 が 本 来 もっ て い る,体 重 維 持 の 自動 調 節 シス テ ム
永
H., Kawai,
Endocrinol.
● 問 題 1. 肥満 と過体 重 の 違 い を述べ な さい.
江
田 耕一,松
お よ び ア ポ リ ポ 蛋 白濃 度 と有 酸 素 的 作 業 能 との 関 連性 と経 時 的 変 化.臨
度
南 幸 良,入
Y.,
Proenca,
Friedman, and
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17 運動と発育発達
ヒ トは,受
胎 の 瞬 間 か ら 時 間 の 経 過 と と も に絶 え ず 変 化 し続 け る.こ
態 的 ・機 能 的 変 化 の 中 で,胎 と い う観 点 か らみ る と,こ
の 時 間 経 過 に応 じた 形
児 か ら成 人 に 至 る ま で の 加 齢 変 化 を 発 育 発 達 と よ ん で い る.体
の 時 期 は 向上 か ら充 実 の 過 程 へ の 移 行 期 で あ る.ま
子 ど もた ち の 体 力 特 性 は 大 人 の 体 力 特 性 と は 大 き く異 な る と と も に,ト
た,思
力
春 期前 の
レ ー ニ ン グ に対 す る 反
応 も異 な る こ と を 認 識 して お きた い.
お い て は,13∼15歳 17.1
呼 吸循 環 系 の発 達 パ ター ン
に か け て 急 激 な 増 加 が 認 め ら れ,
こ れ は 第2次 性 徴 の ス パ ー トと 一 致 して い る.そ 対 して 女 子 で は,13歳
呼 吸 循 環 系 の 機 能 は,体
力 の 個 人 差 に 大 き く影 響 を
及 ぼす 要 因 の 一 つ で あ る と と もに,長
時間 にわ たる運
以 降,顕
め ら れ な い. 次 に,体
重 当 た りのVo2maxの 変 化 に つ い て み て み る
動 に対 す る 限界 を 決 定 す る 重 要 な 要 因 で あ る.呼 吸 循
と,男
環 系 の 能 力 を 評 価 す る 際,一
か な 増 加 傾 向 が 認 め られ る.第2次
般 に 広 く用 い られ て い る
の が 最 大 酸 素 摂 取 量(Vo2max)で
あ る.図17.1は,幼
子 で は10歳
頃 まで,女
児 期 か ら児 童 期,青
年 期 に か け て のVo2maxの 変 化 を 示
徴 期 以 降,男
子 で は15歳
した も の で あ る.絶
対 値 は 男 女 と も4∼13歳
加 を 示 し,そ
の 後20歳
ほ ぼ 直 線 的 に 増 加 し,単 調 な 発 達 傾 向 を示 す.男
子 で は9歳 頃 ま で 緩 や 性 徴 期 を迎 え る と,
男 女 と も発 達 が 停 滞 す る傾 向 が 認 め ら れ る.第2次
頃 まで 子に
れに
著 なVo 2maxの増 加 は 認
れ な い.そ
性
ま で 体 重 当 た りのVo2maxは 増 頃 まで は顕 著 な変 化 は認 め ら
れ に 対 し,女 子 で は 第2次 性 徴 期 以 降,体
重 当 た り のVo2maxは 減 少 傾 向 を 示 し,13歳 発 達 量 は マ イ ナ ス と な る.第2次
頃か らその
性 徴 期 以 降,女
子に
お い て は 女 性 ホ ル モ ンの 働 きが 活 発 化 し,身 体 に 占 め る脂 肪 量 の 著 しい 増加 が そ の 原 因 で あ る と考 え られ る.
17.2
成 長 期 に お け る呼 吸循 環 系 能 力 の特 徴
Vo2maxお よ び 無 酸 素 性 作 業 閾 値(AT)か
ら成 長 期 に
お け る 有 酸 素 的 能 力 の 特 徴 を み て み る と,体 のVo
2maxにお い て は,4歳
準 値(男
頃 には ほ ぼ成 人 にお け る標
子:約50ml/kg/分,女
の レベ ル に まで 達 して い る.こ 図17.1
幼 児 期,児
童 期,青
年期 にか けての 最
大 酸 素 摂 取 最 の 変 化19) ●:男 子,○:女
子.
重 当た り
子:約40ml/㎏/分) の こ と は,子
どもの呼
吸 循 環 系 の 能 力 は 成 人 と ほ ぼ 同 程 度 で あ る と考 え ら れ,幼
児 期 か ら あ る程 度 の 持 久 的 運 動 が 可 能 で あ る こ
と を 示 唆 す る も の で あ る.AT(表17.1)に
関 してみ
表17.1 子 ど も お よ び 成 人 の 無 酸 素性 作 業 閾値,血 の 比 較(泉
・石 河,19849);吉
中乳 酸 濃 度
沢 ・吉 沢,198919を
改
変)
示 唆 さ れ る.つ
ま り,こ の 時 期 に お い て は,有
能 力 の 優 劣 が,さ
酸素的
ま ざ ま な 運 動 の パ フ ォ ー マ ン ス を左
右 す る 要 因 に な る と考 え られ る.
17.3成
長 期 にお ける トレーナ ビ リテ ィ
前 述 の よ う に,体
重 当 た りのVo2maxは4歳
の レベ ル に 達 して い る もの の,呼 平 均 値 ± 標 準 偏 差.
て み る と,子 ATが
頃 に は成人
吸 循 環 系 能 力 に及 ぼ
す 持 久 性 トレ ー ニ ン グ の 効 果 は発 達 段 階 に よ っ て 異 な っ て い る.思
ど も は 成 人 に 対 し顕 著 に 高 い%Vo2maxで
出 現 し て い る と と も に,血
値 が 顕 著 に 低 い レ ベ ル に あ る.子 い てErikssonら5)は,解
た,思
久 性 ト レー ニ ン
中乳 酸濃 度の ピー ク
グ が 呼 吸 循 環 系 能 力 に 及 ぼ す 効 果 は低 く,思 春 期 あ る
ど もの筋 の特性 につ
い は 思 春 期 以 降 に 持 久 性 ト レー ニ ング の 有 効 性 が 認 め
糖 系 酵 素(PFK)活
こ と を 報 告 し て い る.ま
春 期 前 の 子 ど もで は,持
性 が低 い
春 期 前 の 子 ど も で は,
ら れ て い る.図17.3は,身 る 時 期(peak
長 の 増 加 量 が ピ ー ク とな
height growth
velocity:PHV)を
基準
無 酸 素 パ ワ ー の 発 揮 能 力 とVo2maxの 間 に 高 い 相 関 関 係
に 発 育 お よ び ト レー ニ ン グ に よ るVo2maxの 変 化 を 示 し
が み ら れ る1).図17.2は
た もの で あ る.PHV前
け る50m走
小学校 高学 年 の男女 児童 にお
速 度 と1200m走
で あ る が,5年
速 度 の 関 係 を示 し た も の
生 男 女 お よ び6年 生 の 男 子 で は,短
距
に お い て は,ト
るVo2maxの 増 加 は 顕 著 で は な い が,PHV以
レーニ ングに よ 降 に ト レー
ニ ン グ に よ る 著 し いVo
離 走 能 力 の 高 い 児 童 ほ ど長 距 離 走 能 力 も高 い こ とが わ
2maxの増 加 が 認 め ら れ,ト レー ニ ン グ 効 果 が 顕 著 に な る.こ の こ とは,思 春 期 前 後 に
か る.
お け る ト レー ナ ビ リ テ ィ の 相 違 を 示 唆 す る も の で あ
以 上 の こ とか ら,思
春 期 前 の 子 ど も は,激
しい運 動
を して も乳 酸 が 蓄 積 し に く く,運 動 中 の エ ネ ル ギ ー 供
る.図17.4に
は,第2次
性 徴 期 以 降 に お け る ト レー ナ
ビ リ テ ィ増 大 の メ カ ニ ズ ム を 模 式 的 に 表 した.
給 は 有 酸 素 的 過 程 に そ の 大 部 分 を 依 存 して い る こ とが
図17.2
小 学 校 高学 年 児童 に お け る短 距 離 走 速 度 と長 距 離 走速 度 の 関 係(志 手 ら,199518の
基礎 デ ー タか ら筆 者 作 成)
図17.5
体 重 当たり の 最 大 酸 素 摂 取 量 と身 体 活 動 時 間の 関 係16)
Vo2max以上 の 運 動 強 度 で の 活 動 時 間 が 長 い ほ ど有 酸 素 的 能 力 が 増 大 す る傾 向 に あ る.ま
た,児
童 の有 酸 素的能
力 に お け る 季 節 的 変 化 を 縦 断 的 に 調 査 した 志 手 ら17)の 報 告 で は,冬
季 にお いて 有酸 素 的能 力が 低下 す る こと
が 示 され て お り,冬 季 に お け る 身 体 活 動 水 準 の 減 少 が 有 酸 素 的 能 力 低 下 の 要 因 の 一つ で あ る こ とが 示 唆 され 図17.3
PHVお
よ び 身 体 トレ ー ニ ン グ の 関 係 か ら み た 最 大
酸 素摂 取 量 の 発 達 曲 線12)
て い る.思 て,思
春 期 前 の トレ ー ナ ビ リテ ィの 低 さ か ら 考 え
春 期 以 前 の 子 ど も に お い て は,専
門 的 な トレー
ニ ン グ よ り も,日 常 生 活 に お け る 活 動 的 な 時 間 の 確 保 が,有
酸 素 的 能 力 の 増 大 に対 し重 要 で あ る と考 え られ
る.
17.5
a.発
筋 系 の 発 育発 達 パ タ ー ン
育 に伴 う筋の 変化
成 長 期 に お い て,筋
は骨 の 伸 びや体 重 の増 加 に よる
受 動 的 過 負 荷 の 増 大 に 適 応 し,長 加 さ せ る.哺 殖)は
さ や 太 さ,重 量 を 増
乳 動 物 の骨 格 筋 で は 筋 線 維 数 の増 加(増
胎 児 期 に終 わ り,生 後 の 筋 線 維 数 は 成 人 に 至 る
ま で 変 わ ら な い と され て い る.こ さ の 増 加 は,増
の 発 育 に 伴 う筋 の 太
殖 で は な く筋 を 構 成 す る1本1本
の筋
線 維 の 肥 大 に よ る もの で あ る.そ し て 筋 線 維 の 肥 大 は, 図17.4
第2次 性 徴 に 伴 う有 酸 素 的 能 力 の トレ ー ナ ビ リ テ
筋 線 維 の 構 成 要 素 で あ る 筋 原 線 維 の 太 さ の 増 大 と筋 原
ィ増 大 の メ カ ニ ズ ム
線 維 数 の 増 加 に よ り起 こ る(第7講 の 長 さ は,筋
17.4 成 長 期 に お け る 身 体 活 動 水 準 と 有 酸 素
節(サ
ル コ メ ア)数
る こ と が 明 らか に さ れ て い る.と 移 行 部 で あ る 筋 線 維 末 端 で,筋
的 能力 の 関 係
参 照).一
方,筋
の 増 加 に よ り長 くな くに,筋
か ら腱へ の
節 数 の 増 加 が 起 こ る.
ヒ ト骨 格 筋 の 線 維 径 は 凍 結 切 片 で み る と生 下 時 は約
成長 期 の子 ど もにお ける 日常 的 な 身体 の活動 レベ ル と有酸 素的 能力 の関係(図17.5)を
み てみ る と,活 発
10μm内
外 で,4∼5歳
で30μm,成
人 で は60∼70
μmに ピ ー ク を もつ 正 規 分 布 を な す(図17.6)3).筋
に 活動 を実 施 して い る時 間 と体 重 当 た りのVo 2maxとの 間 に有 意 な相関 関係 がみ られ る.宮 下 ら14)の9∼10歳
横 断 面 積 を指 標 と し た 筋 量 に つ い て み る と,図17.7
の 男 子 を対 象 と した 報 告 に み られ る よ う に,60%
す る 傾 向 が み ら れ る.13∼17歳
の よ う に 男 女 と も17歳
の
まで は 年 齢 が増 す につ れ 増加 にか け て女 子 で は増
図17.8
胎児 および新生 児 におけ るタイプ別 にみた骨格筋 線 維 の 分 布 の変 化4
図17.6
小 児 発 達 期 の 筋 線 維 径(Brookeと Engel,19693を
一 部 改 変)
b.神
経-筋 機 能,筋
線 維組 成
胎 児 期 の 筋 線 維 は,は 重 神 経 支 配)さ
じめ 複 数 の 神 経 か ら支 配(多
れ て い る が,発
達 に伴 い 単一 の神経 か
ら 支 配 を 受 け る よ う に な り,単
一神 経 支 配 が 確 立 す
る. 筋 線 維 組 成 は 基 本 的 に は 遺 伝 に よ り決 定 さ れ る.し か し,神 経 が 未 発 達 の 胎 児 の 筋 線 維 は,機
能 的 に も代
謝 的 に も未 分 化 の ま ま で あ る.発
達 に伴 い多重 神経 支
配 か ら単 一 神 経 支 配 に な る と,遅
筋 線 維,速
筋線維 へ
の 分 化 が 段 階 的 に み ら れ る よ う に な る8)(図17.8).そ して 筋 線 維 に組 織 化 学 的 な 分 化 が み られ,運
動 ニュー
ロ ン と筋 単 位 は 固 有 の 特 性 を 有 す る よ う に な る.さ に,運
動 ニ ュ ー ロ ン と筋 線 維 は,筋
き に対 応 で き る よ う,そ
ら
が 必 要 と さ れ る動
の 特 性 を 変 化 させ て い く.
筋 の 種 類 や 部 位 に よ っ て も分 化 時 期 に 違 い が み ら れ,基 本 的 な 動 作 や 機 能 に 関 与 す る筋 で は 分 化 が 早 い. そ し て 組 織 化 学 的 に 分 化 し た 筋 線 維 は,そ 的 特 性 に 対 応 す る よ う に,筋
の筋 の機能
線 維 タイプの 移行 を起 こ
す7)の で あ る.
17.6
成 長 期 に お け る 筋 力,筋
筋 力 は,筋 男 女 と も17歳 図17.7 年 齢 に よ る 筋 断 面 積 の変 化10) *:同 年 代 の 男 女 間 にお け る 有 意 差(p<0.05).
パ ワ ーの 特徴
の生 理 的 断 面 積 に 比 例 す る.筋
断面積 は
ま で は 年 齢 が 増 す に つ れ 増 加 す る た め,
筋 力 も年 齢 と と も に 増 加 す る.性
差 に つ い て み る と,
13歳 以 降 は と く に顕 著 で あ る.こ
れは男 子 にお ける筋
加 程 度が 小 さ くな るの に対 し,男 子 で は急 激 な増加 が
断 面 積 の 急 激 な 増 加 を 反 映 した もの で あ り,単 位 断 面
み られ る.こ の 原因 と して,男 子 では 筋形 成 に関連 す
積 当 た りの 筋 力(絶
る蛋 白同化作 用 を もつ男 性 ホ ルモ ンの 分泌 が急 速 に増
性 お よ び 年 齢 に よ る差 は み られ な い(図17.9).
え るため で ある と考 え られ る.
金 子 ら11)は肘 関 節 屈 筋 を 被 検 筋 と し,5∼17歳 の 全 年 齢(男
女)の
対 筋 力:kg/cm2)で
被 検 者 を 用 い,筋
比 較 す る と,
まで
パ ワー発達 に関
連 す る 要 因 に つ い て 詳 細 な 検 討 を行 っ て い る.図17.
図17.10 肘 屈 曲 筋 に お け る 最 大 パ ワ ー,最
大 筋 力,最
大 速 度,
反 応 時 間 の発 達 経 過11
図17.9
肘 屈 筋 の 最 大 筋 力,筋
断 面 積,絶
ら び に 活 動 し て い る 個 々 の 運 動 単 位 の 同 期 化 な どが 考
対
筋 力 の 年 齢 に よ る 変化6)
え られ る.発
育 期 と 同 様 に ト レー ニ ン グ に よ り筋 線 維
の 肥 大 は 認 め られ る が,筋 10は,17歳 ワ ー,最
値(成
人 値)を100と
大 筋 力,最
大 速 度,反
した もの で あ る.最
した%値
で,最
応 時 間 の 発 達 経 過 を示
大 筋 力 と最 大 パ ワ ー は 幼 少 年 期 に
低 く,思 春 期 以 降 に 急 増 す る こ とが わ か る.ま ワ ー=力
大パ
た,パ
×速 度 の 関 係 に あ り,発 育 に 伴 う筋 パ ワ ー は
い.筋
線維 数が増 減 す る こ とはな
力 は 筋 断 面 積 に 比 例 す る た め に,ト
レー ニ ン グ
に よ る 筋 量 の 増 大 は 結 果 と して 筋 力 の 増 大 を も た ら す.し
か し な が ら トレ ー ニ ン グ 初 期 に は,筋
量 の増 大
を伴 わ な い 筋 力 の 向 上 が 認 め られ る 場 合 が あ る.こ
れ
に つ い て は ト レー ニ ン グ に よ る 神 経 系 の ト レー ニ ング
筋 力 の 発 達 と 高 い 相 関 を 示 す こ とが 明 らか で あ る.さ
効 果 と し て 考 え られ て い る(第2講
ら に,筋 パ ワ ー の 増 加 に は 発 育 に 伴 う筋 力 の 関 与 の み
一 般 的 に,筋 力 ト レー ニ ン グ効 果 が 顕 在 化 す る の は,
な らず,単
蛋 白 質 同 化 ホ ル モ ン な どの 分 泌 が 活 発 に な る 思 春 期 以
位 筋 力 当 た りの パ ワ ー 発 生 能 の 発 達 が 関 与
す る こ と,発 長)の
育 に 伴 う最 大 速 度 の 発 達 は,筋
増 加 と と も に,筋
あ る11)と 結 論 づ け て い る.ま 線 維 の 発 達13)(占 有 率,面
長(前
腕
の短 縮速 度 が速 くなる ため で た,成
長期 にお け る速筋
積 比 の 増 加),骨
格 の成 長 に
参 照).
降 で あ る と され て お り,思 春 期 前 の 子 ど も に お け る効 果 に 関 して は,運 で あ る た め,筋 れ て い た.し
動 器 官 で あ る骨 や 関 節,筋
量,筋
も未 成 熟
力面 での効 果 は得 られ ない と さ
か し近 年 の 多 くの 研 究 に よ り,思 春 期 前
伴 う筋 長 の 増 加 や 支 配 神 経 の 効 率 改 善 な どが 生 じ る可
の 子 ど も に お い て も筋 力 ト レー ニ ン グが 筋 力 改 善 に 有
能 性 も 示 唆 さ れ て お り,筋 パ ワ ー の 発 達 に は 複 数 の 因
効 で あ る こ と が 明 らか に さ れ て い る2).Ramsayら15)は,
子 の 影 響 が 考 え られ る.
9∼11歳
一 方,発
イ ト トレ ー ニ ン グ を 行 っ た.そ
育 に 伴 う筋 機 能 の 性 差 は,12歳
で あ り,17歳
時 点 で の性 差
〔(男-女)/男
最 大 パ ワ ー で 最 も 大 き く55%,最 大 速 度 が20%と
以 降 に顕 著 ×100〕 は
大 筋 力 が45%,最
の13人
の 少 年 に つ い て サ ー キ ッ ト形 式 の ウ ェ
成 長 期 に お け る ト レ ー ナ ビ リ テ ィ(筋
と
神 経 系 に お け る ト レ ー ニ ン グ 効 果)
範 囲 で効 果 が現 れ た こ
と を報 告 し,運 動 に 参 加 し て い る 運 動 単 位 の 活 性,筋 収 縮 に お け る 興 奮-収
17.7
断面積 へ の
トレ ー ニ ン グ効 果 は 認 め ら れ な か っ た もの の,1RMや 等 速 性 最 大 筋 力 は21∼37%の
最 も少 な い11)こ とが 報 告 さ れ て い る.
の 結 果,筋
縮 連 関 の 改 善 な ど,筋
力 トレ ー
ニ ン グ に よ る 神 経 系 の 改 善 を 示 唆 し て い る(図17. 11). 成 長 期 の子 ど もにお け る筋 力 トレー ニ ン グの 効果
筋 力 トレ ー ニ ン グ に よ り筋 力 が 増 大 す る メ カ ニ ズ ム
は,期
と して は,筋
の 問 題 に よ り結 果 は 異 な る もの の,筋
線 維 の 肥 大 と活 動 運 動 単 位 数 の 増 加,な
間 や 頻 度,強
度 お よ び 筋 収 縮 様 式 な ど,方
法上
力 ト レー ニ ン グ
図17.11
思 春 期 前 の 少 年(9∼11歳)に
対 す る20週 間 の 筋 力 トレー ニ ン グ の 効 果(Ramsayら,199015)を
トレ ー ニ ン グ効 果 の 有 意 水準*:p<0.05,**:p<0.01.運 増 加 か ら 推 定,誘
を 行 え ば,成
動 単 位 活 性 度:電
発 短 縮 トル ク:電 気 刺 激 に よ り誘 発.
人 と 同 様 の 筋 力 向 上 が 期 待 で き る.ト
ー ニ ン グ に よ る筋 力 増 大 の メ カ ニ ズ ム に つ い て は 齢 に よ る違 い は み られ な い が,そ
レ
,年
の ト レー ニ ン グ 効 果
に つ い て は 発 育 時 期 に よ り異 な る こ と を 考 慮 し な け れ ば な ら な い.
●
参
考
文
問
題
明 し な さい. 2. 成 長 期 にお け る 呼吸 循 環 系 能 力 の 特徴 に つ いて 説 明 し な さい. 3. 思 春 期 以 降 にお け る呼 吸 循 環 系 の トレー ナ ビ リテ ィ増 大 の 要 因 につ い て説 明 しな さい. 4. 発 育 に伴 う筋 線 維 の 数 と太 さの 変化 を説 明 しな さい. 5. 発 育 発 達 に伴 う筋 線 維 タ イプ の 分 化 につ い て説 明 しな さい. 6. 成 長 期 にお け る筋 パ ワー の発 達 に は ど ん な要 因 が 関 係 して い る か説 明 しな さい. 7. 成 長期 にお け る筋 力 トレーニ ン グの効 果 を説明 しな さい.
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18 加 齢 と運 動
ヒ トの 身 体 の形 態 お よ び機 能 は 成 人 に 至 る ま で 発 達 す る が,20∼30歳 後 は,い
や お う な く低 下 の 一 途 を た ど る.こ
よ び,加 齢 に伴 う形 態 的 ・機 能 的 変 化 を老 化 と称 す る.と に は,加 齢 と と も に,活 に な る.し
代 に ピー ク を迎 え た
の 成 人 以 降 の 年 齢 変 化 を 一 般 に加 齢(aging)と
動 量 の 減 少 の 影 響 も加 わ り,そ
く に,高 齢 期 に お け る 身 体 機 能 低 下
れ まで 以 上 の 機 能 低 下 を もた らす こ と
か し,運 動 トレ ー ニ ン グ に よ り機 能 低 下 を か な り抑 制,遅
延 さ せ る こ とが 可 能 で あ
り,こ の トレ ー ナ ビ リ テ ィ は 高 齢 期 に お い て も 相 当 程 度 維 持 さ れ て い る.本 う運 動 系 の 形 態,機
200拍/分 18.1加
講 で は,加
齢 に伴
能 の 変 化 とそ の 変 化 に対 す る ト レー ニ ン グ の 効 果 に つ い て 概 説 す る.
齢 に伴 う呼 吸 循環 系機 能 の変 化
で ピ ー ク を 迎 え,そ
間 に4∼7拍/分
の 後 加 齢 と と も に10年
の 割 合 で 減 少 す る.一
方,SVの
変化
におい ては研 究 に よって異 な った結 果が 得 られて いる 呼 吸 機 能 の 主 要 な 指 標 で あ る最 大 換 気 量 は加 齢 に 伴
が,概
っ て 直 線 的 に 減 少 す る.こ
態 的要
に伴 い 減 少 す る 傾 向 が み られ る.さ ら に,定 期 的 に 高 強
態 的要 因
度 の ト レ ー ニ ン グ を継 続 し て い る 競 技 者 で み られ る
の 原 因 と して は,形
因 と機 能 的 要 因 の 二 つ が 考 え ら れ て い る.形 と して は,加
齢 に 伴 う肺 胞 の 表 面 積 の 減 少(20歳
代:70∼80m2,80歳
代:60∼70m2),お
の 管 壁 の コ ンプ ラ イ ア ン ス(い が あ げ られ る.機
わ ゆ る 柔 軟 性)の
能 的 要 因 と し て は,呼
の 低 下 が 考 え ら れ,呼
よび気管 支 低下
し て,最
大SVお
よ びVo2max発 現 時 のSVは
Vo2maxの 低 下 に は,60歳
く らい まで はHRmaxの
加齢
低下 の
み が 関 係 し,そ れ 以 降 の 減 少 に は 心 筋 収 縮 機 能 の 低 下 に よ るSVの
低 下 が 関 係 して く る と考 え られ て い る17).
吸運動 の効 率
吸 筋 機 能 の 著 しい 低 下,そ
して
胸 郭 を構 成 す る肋 軟骨 の柔 軟 性 の 低 下 が 関係 してい る. 呼 吸 循 環 系 機 能 を評 価 す る 際 の 有 酸 素 的 能 力 の 指 標 と し て 広 く用 い ら れ る の が 最 大 酸 素 摂 取 量(Vo2max) で あ る.一
般 的 に 男 女 と も,Vo2maxは20歳
値 を 示 し た 後,20歳 15%の
か ら75歳
まで に最 大
の 間 に10年
間 に5∼
割 合 で 低 下 す る(図18.1,18.2)1,17).さ
らに,
高 い レベ ル の トレ ー ニ ン グ を 継 続 し て い た 競 技 者 が ト レ ー ニ ング を 中 止 す る と,こ れ 以 上 の 割 合 で 低 下 す る こ と も示 さ れ て い る.酸 素 摂 取 量 は心 拍 出 量 と動 静 脈 血 酸 素 較 差 の 積 で 表 さ れ る.最 大 心 拍 出 量 は加 齢 に よ っ て 減 少 し,こ 回 拍 出 量(SV)の
の 減 少 に は 最 高 心 拍 数(HRmax)と1 低 下 が 関 係 す る が,と
の 低 下 の 影 響 が 大 き い.HRmaxは20歳
図18.1
10お よ び20年
間,高
た は 低 強 度(○)の
強 度(△),中
強 度(□),ま
トレ ー ニ ン グ を 継 続 し て きた
高齢 持 久 的競 技 者 の 最 大 酸 素 摂 取 量17)
くにHRmax
競 技 者(▲)と
代 に180∼
デ ー タか ら作 成 した.
非 鍛 練 者(●)の
曲 線 はHeathら(1981)の
し た 報 告 で は,開
始 時 期 が 早 い ほ う がVo 2maxの低 下 が
小 さ い こ と も示 さ れ て い る(図18.2)1).
18.3
加 齢 に よ る 神 経 ・筋 の 変 化
筋 力 は20∼30歳
代 で ピ ー ク を迎 え た 後,加
も に 徐 々 に 低 下 し始 め,80歳 55∼65%に 図18.2
トレー ニ ン グ 開 始時 期 と最 大 酸 素 摂 取 量 の 関 係1)
T26,T45,T56は,そ
れ ぞ れ26歳,45歳,56歳
か ら ト レー ニ
ン グ を開 始 した グ ル ー プ を 示 す.
代 まで に ピー ク時 の 約
ま で 低 下 す る こ とが 知 られ て い る.こ
筋 力 低 下 の 一 つ の 主 要 な 原 因 は 筋 量 の 減 少,い 筋 萎 縮 で あ る(図18.3).一
般 的 に は,こ
よ び 筋 量 の 低 下 の 割 合 は50歳
Vo2m axを決 定 す る も う 一 つ の 要 因 で あ る 動 静 脈 血 酸 素 較 管 か ら の 筋 に お け る 酸 素 取 り込 み 能 力 と酸
素 利 用 能 力 が 反 映 さ れ る.高
齢 者 で み られ る 若 齢 者 よ
わ ゆる
れ ら筋 力 お
た,筋
萎縮
の 程 度 は 筋 に よ り異 な り,大 腿 部 の 筋 を 比 較 し た 場 合, 膝 屈 筋 群 よ り も膝 伸 筋 群 の ほ う が 加 齢 に よ る 萎 縮 率 が 大 き い(図18.3).組
織 レ ベ ル で は,外 腿 直 筋,前
側 広 筋,上
腕
を 参 照)
二 頭 筋,上
腕 三 頭 筋,大
り低 い 動 静 脈 血 酸 素 較 差 を 導 き 出 す と と も に,
筋 で は,筋
線 維 萎 縮 は遅 筋 線 維 よ り速 筋 線 維 の ほ う が
り低 い 酸 化 系 酵 素 活 性 や 毛 細 血 管 密 度(18.3節 が,よ
の
く ら い ま で は 小 さ く,
50歳 を超 え る と そ の 割 合 が 大 き くな る.ま
差 に は,血
齢 とと
脛 骨 筋 な ど 多 くの
加 齢 に よ る 筋 量 の 低 下 もVo2maxの 低 下 に 関 係 す る と考
顕 著 で あ る(図18.4)14).し
え られ る4).
間 筋 な ど で は 遅 筋 線 維 の 萎 縮 が 優 位 で あ り,さ
18.2有
酸 素 的 能 力 の 低 下 に 対 す る トレ ー ニ ン グの 効 果
か し な が ら,横
隔 膜,肋 ら に,
三 角 筋,腓
腹 筋 で は 老 化 に伴 い(代
よ っ て)新
た に 太 い 遅 筋 線 維 が 認 め られ る20).ま た,
高 齢 者 の 筋 で は,同
償性 の肥 大効 果 に
じタイプの 筋線維 が 群 を形成 して
分 布 す る タ イ プ グ ル ー ピ ン グ も 多 く観 察 され る.筋 有 酸 素 的 能 力 の トレ ー ナ ビ リテ ィ は,高
齢 になっ て
維 数 は25歳
以 降 か ら減 少 し 始 め,そ
線
の減 少 率 は 高齢
も 維 持 さ れ る こ と が い くつ か の 報 告 に お い て 実 証 さ れ
者 に な る ほ ど大 き く な る(図18.4)14).以
て い る.平
の 高 齢 者 に 対 し て,80%
速 筋 線 維 の よ り大 き な 萎 縮 と筋 線 維 数 の 減 少 に よ り,
月 の 持 久 的 トレ ー ニ ン グ を
筋 に お け る速 筋 線 維 の 占 め る 面 積 の 割 合 が 減 少 す る こ
HRmaxの
均 年 齢64歳 強 度 で9∼12か
行 わ せ た 研 究 で は,Vo2maxが 約23%上
昇 し,こ
れ はお
と に な る(図18.5)13).こ
れ は,ミ
も に 最 大 心 拍 出 量 の 増 加 に よ っ て も た ら さ れ た こ とが
調 べ た 研 究 で も 観 察 さ れ,高
報 告 さ れ て い る3).さ
よ り もslowタ
らに,こ
のVo2maxの 増 加 に は 後 述
上 の よ うな
オ シ ン重 鎖 組 成 を
齢 者の 筋の ほ うが若 年 者
イ プ の ミオ シ ン重 鎖 の 割 合 が 多 い こ と が
す る 末 梢 系 の 適 応 も 関 係 し て い る. 長 期 間 の 継 続 的 な 運 動 ト レー ニ ン グ の 効 果 の 観 点 か ら み る と,日 常 的 に運 動 を 実 施 して い る 人 に お い て も, 一 般 人 と 同 様 に加 齢 に 伴 うVo2maxの 低 下 が 認 め られ る . 先 行 研 究 で は,加
齢 に 伴 うVo2maxの 低 下 率 は 両 者 で 差
が な い とす る報 告 も あ れ ば,運
動 を行 っ て い る 人 の ほ
う が 低 下 率 を抑 制 で き る と の 報 告 も あ り,一 致 した 見 解 は 得 ら れ て い な い.し い る 人 のVo
2maxが,同
か し なが ら,運 動 を 実 施 して
年 代 の 一 般 人 と比 較 して 高 値 を
示 す こ と は 明 ら か で あ る.ま た,Vo2maxを よ り高 い レベ ル に維 持 す る た め に は 運 動 の 強 度 も問 題 と な り,あ る 程 度 以 上 の 高 い 強 度 の 運 動 を 行 う必 要 が あ る(図18.1)17). ト レ ー ニ ン グ の 開 始 時 期 がVo2maxに 及 ぼ す 影 響 を 検 討
図18.3
加 齢 に 伴 う膝 伸 筋 群 お よ び 屈 筋 群 の 筋 横 断 面 積 の 変 化(久
野,1998)
図18.4
年 齢 と外 側 広 筋 の Ⅰ型(遅 筋)線 維 お よ び Ⅱ型(速 筋)線 維 の 平 均 横 断 面 積(左).そ 数(右)と
図18.5
して 全 筋 線 維
の 間の 関 係14)
年 齢 と 外側 広 筋 の Ⅰ型(遅 筋)線 維 の割 合(左).お
よ び Ⅱ型(速 筋)線 維 の 占 め る面 積 の 割 合(右)と の 関 係13)
示 さ れ て い る11,12).こ の よ う な 速 筋 線 維 の 選 択 的 な 減 少 を も た らす 要 因 と して は,支
配運動 ニュ ー ロ ンの変
性 に よ る 二 次 的 な 筋 線 維 数 の 減 少,運 筋 線 維 を つ な ぐ運 動 終 板 の 変 性,遺 え られ て い る.さ
ら に,速
動 ニ ュー ロ ンと
伝 的 因 子 な どが 考
筋 線 維 か ら遅 筋 線 維 へ の タ
イ プ 移 行 の 可 能 性 もあ り,こ
れに は速筋 線維 支 配 か ら
遅 筋 線 維 支 配 へ の 運 動 ニ ュ ー ロ ンの 特 性 の 変 化,速
筋
線 維 の 代 謝 特 性 の 変 化 な どが 関 係 して い る. 老 化 に 伴 う こ れ らの 筋 組 成 の 変 化 に 伴 い,機 の 変 化 も引 き起 こ さ れ る.ヒ 性 を 調 べ た 研 究 で は,老
能面 で
トの 筋 の 単 一 筋 線 維 の 特
化 に よ り筋 線 維 のATPase活
性 が 低 下 す る と と も に,最 大 短 縮 速 度 お よ び 筋 線 維 横 図18.6
3歳 か ら96歳
ま で の94人
の被検者にお ける短指伸
筋 の 運 動 単 位 の 数2) 図 中 の プ ロ ッ ト ど う し を結 ん だ縦 線 は 同 一被 検 者 の 左 右 の 下 肢 を示 し て い る.■:10人 値.Aは3∼58歳
の 片 側 下 体 麻痺 患 者 の 健 側 脚 の
の 健 常 一 般 人 の 平 均 の 運 動 単 位 数 を示 し,
Bは 同 じ被 検 者 の最 低値 を示 して い る.
断 面 積 当 た りの 張 力(specific
tension)も
とが 報 告 さ れ て い る12).さ ら に,筋
低下するこ
の 酸 化 的 能 力,酸
素 利 用 能 力 に 関 係 す る酸 化 系 酵 素 活 性 や 毛 細 血 管 密 度 は,若
年 者 と比 較 し60歳 代 の 高 齢 者 で は20∼40%低
値 を 示 す7).一 方,解
糖 系 酵 素 活 性 な どは 若 年 者 と 高
齢 者 で ほ とん ど差 は み られ な い.
し て,以
前 は 筋 肥 大 よ り も神 経 系 の 改 善 が 大 き な 役 割
老 化 に よ る 運 動 ニ ュ ー ロ ンの 変 化 に 関 して は,上 述
を果 た す と 考 え ら れ て い た15).し か し最 近 で は,ト
し た よ う な 運 動 終 板 の 変 性 に 加 え,と
ー ニ ン グ 強 度 が 十 分 に 高 け れ ば ,神 経 系 の 改 善 と と も
くに 老 化 後 期 で
は 運 動 ニ ュ ー ロ ン 自 身 の 数 も減 少 し,筋 線 維 数 の 減 少
に 大 き な 筋 肥 大 が も た ら され,そ
れ が筋 力増 加 に大 き
と 運 動 ニ ュ ー ロ ンの 減 少 と の 間 に は対 応 関 係 の あ る こ
く貢 献 す る と考 え ら れ て い る5).
と が 示 さ れ て い る8).こ れ に 伴 い 運 動 単 位 の 数 も 変 化
一 方,持
し,ヒ
半 ま で は 用 い ら れ た 運 動 強 度 が 低 か っ た た め,高
トに お い て60歳
く らい まで は運 動 単 位 の 数 は
比 較 的 一 定 の 値 を維 持 し て い るが,60歳 激 に 減 少 し始 め る(図18.6)2).こ
を過 ぎ る と急
の 際 に減 少 す る運
久 的 ト レー ニ ン グ に 関 して は,1980年
い た.し
か しな が ら,そ
維 の 選 択 的 な 萎 縮,減
化 系 酵 素 活 性 を有 意 に 増 加 させ(図18.8)3),さ
分 な 期 間 ト レー ニ ン グ を 行 え ば,筋
若 年 者 で 観 察 さ れ る よ う なType 神 経
・筋 の 変 化 に 対 す る ト レ ー ニ ン グ
効 果
齢者
の 後 の 研 究 に よ り,十 分 に高
い 強 度 で,十
18.4
代前
の 筋 の 酸 化 的 能 力 を改 善 す る こ と は で き な い と さ れ て
動 単 位 は 速 筋 線 維 を支 配 す る 運 動 単 位 で あ り,速 筋 線 少 と一 致 し て い る.
レ
Type
ⅡA線 維 の 増 加,毛
の酸 らに,
ⅡB線 維 の 減 少 と
細 血 管 密 度 の 増 加,そ
して,
筋 線 維 の 肥 大 を 高 齢 者 の 筋 で も引 き起 こ す こ とが 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ て い る.
老 化 に よ る筋力 お よび筋 横 断面 積の低 下 を抑 制 す る
よ り長 期 間 の 運 動 ト レー ニ ン グ が 筋 特 性 に 及 ぼ す 影
た め に は,筋 力 トレ ー ニ ン グが 有 用 で あ る.た
響 に 関 し て も,明
平 均 年 齢68歳
の 高 齢 者 に2日/週
と え ば,
らか な ト レ ー ニ ン グ 効 果 を 生 み 出 す
の 頻 度 で12週
間 の上
た め に は,ト
腕 の 高 強 度 筋 力 ト レー ニ ン グ を 行 っ た 場 合,最
大筋 力
い は 世 界 の トッ プ の 競 技 成 績 を お さ め て い る80歳
が23∼48%増
加 す る と と も に,筋
横 断 面 積 も14%増
加 す る こ とが 示 さ れ て い る(図18.7)18).さ 線 維 タ イ プ ご と の 変 化 で も,Type がType た.こ
Ⅰ線 維(+24%)よ
ら に,筋
Ⅱ線 維(+37%)
りも大 きな 肥大 率 を示 し
の よ う な研 究 を は じめ と し て,高
齢 者 も若 年 者
と 同 様 な ト レ ー ナ ビ リ テ ィ を 有 し て い る こ とが 実 証 さ れ て い る.高
図18.7
レー ニ ン グ 強 度 が 問 題 と な る.国
内ある
上 の 高 高 齢 エ リー トア ス リー ト(図18.9)9),そ
以
して,
10年 以 上 の ト レー ニ ン グ を 継 続 して い る 高 齢 の 水 泳 選 手,陸
上 長 距 離 選 手 な どの 筋 横 断 面 積 で さ え,高
齢 一
般 人 と差 が み られ な い11).し か し,十 分 に 強 度 の 高 い 筋 力 ト レー ニ ン グ を継 続 的 に 実 施 し て い る 高 齢 者 は, 若 齢 一 般 人 と 同 様 な 筋 力,筋
横 断面 積 を有 す る と とも
齢 者 に お け る筋 力 増 加 の メ カ ニ ズ ム に 関
5人 の 高 齢 者 に お け る12週 間 の 高 強 度 筋 力 トレ ー ニ ン グ前 後 に 磁 気 共 鳴 映 像 法(MRI)を 用 い て撮 影
図18.8
9∼12か
月 の 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ る 腓 腹 筋 外
さ れ た 連 続 横 断 像 か ら計 算 さ れ た肘 屈 筋(上 腕 三 頭
側 頭 の 酵 素 活 性 の変 化 率(Cogganら,19923)よ
筋+上
作 成)
腕 筋)の 横 断 面 積(Romanら,199318)を
曲線 の 下 部 が 筋 容 積 を表 す.
改 変)
*:p<0.05.**:p<0.001
り
図18.9 磁 気 共 鳴 映 像 法(MRI)を 高 齢 者 に お い て,ア
に,高
用 い て 撮 影 さ れ た若 年・ 高 齢 の 一 般 人お よび エ リー トア ス リ ー トの 大 腿 部 の 横 断 像9)
ス リ ー トは 一般 人 よ り も必 ず し も大 き な筋 容 積 を 有 して い る わ け で は な い.し
か し,筋 内 脂 肪 は 少 な い.
齢 一 般 人 よ り も 多 くのfastタ イ プ ミ オ シ ン重 鎖
お よ び 軽 鎖 を も っ て お り,速 筋 線 維 の 選 択 的 萎 縮 が 抑 制 さ れ る11).こ れ らの こ と は,長
期 間 の トレ ー ニ ン グ
を 行 う 際 も,加 齢 に よ る 筋 力 お よ び 筋 量 の 低 下 の 抑 制 を お も な 目的 とす る の で あ れ ば,比
較 的高 強 度 の負荷
の 運 動 を 行 う必 要 性 の あ る こ と を示 唆 して い る. 運 動 ニ ュ ー ロ ン に対 す る 運 動 の 効 果 に 関 して は,現 在 の と こ ろ 明 ら か に な っ て い な い の が 実 状 で あ る.持 久 的 トレ ー ニ ン グ に よ り運 動 ニ ュ ー ロ ンの 酸 化 系 酵 素 活 性 が 増 加 す る 可 能 性 が 示 さ れ て い る が16),そ の 変 化 は 筋 自 体 の 変 化 と 比 較 し て か な り小 さ い.加 変 化 に対 す る効 果 も含 め て,さ
図18.10 骨 の 成 長 加 齢 と骨粗 鬆 症(藤
齢 に よる
ら な る研 究 が 期 待 さ れ
男 性 の ほ うが 女 性 よ りや や 骨 量 が 多 い.女
性 で は50
歳 代 の 閉 経 を境 に骨 の 減 少 が 加 速 す る.
る.
田,19876)を
改 変)
18.5加
齢 に よ る骨 の 変化 と運 動 の効 果
る. 骨粗 鬆症 を防止 す る とい う点 か らも,最 大 骨量 を増
骨 量 は 成 長 に伴 い 増 加 し,30歳 っ た 後,加
齢 と と も に0.3∼0.5%/年
る(図18,10)6).さ
前後 で最 大 骨量 に な
加 させ る,あ るい は加 齢 に よ る骨 量低 下 を抑 制 す るこ
の割 合 で減 少す
とが重 要 となる.近 年,骨 量 に対 す る運動 の効 果 に関
ら に 女 性 の 場 合,50歳
前後 の 閉経
して 数多 くの研 究 が 行わ れ て いるが,そ の結 果 に 関 し
期 の 頃 か ら よ り大 き な割 合 で 骨 量 の 低 下 が 引 き起 こ さ
て は一 致 した 見解 が 得 られ て いな い.し か しな が ら,
れ る.骨
量 が 骨 折 危 険 閾 値 以 下 に な り,非 常 に 脆 く な
運 動習 慣 を有 す る女性 と運動 習慣 を もたな い女性 の骨
っ た 状 態 が 社 会 的 問 題 の 一 つ とな っ て い る 骨 粗 鬆 症 で
塩 密 度 を比 較 した 多 くの 横 断的研 究 で は,前 者 の ほ う
あ り,そ の 結 果,骨
が後者 よ りも,高 い骨 塩 密度 を有 す る こ とが 示 され て
折 や脊椎 変形 が 多発 す る こ とに な
い る19).さ ら に 動 物 を 用 い た 実 験 で は,適
度 な強 度の
運 動 を 負 荷 す る こ と に よ り,骨 重 量 お よ び 骨 塩 密 度 が
7) Holloszy,
Oxford
増 加 す る こ と も報 告 さ れ て い る10).こ れ ら の 結 果 は,
J. O. and
of Physiology, University
8) Ishihara,
histochemical
有 用 性 を示 唆 し て お り,運 動 に よ っ て 生 ず る 骨 へ の 力
the rat extensor 45
を 示 唆 し て い る.一
方,過
度 に高 い 強 度 の 運 動 で はマ
イ ナ ス 効 果 を 示 す 場 合 もあ り,負 荷 す る運 動 強 度 は適
● 問 題 1. 加 齢 に 伴 う呼 吸循 環 機 能 の 変 化 につ い て 説 明 しな さ い.
に つ いて 説 明 しな さい. の 効果 につ い て,ト
レーニ ング強 度 と開 始 時期 の観 点
か ら説 明 しな さ い.
10) 勝 田
5. 老 化 に伴 う運 動 ニ ュ ー ロ ン数 の 変 化 につ い て説 明 しな
五 三 木 聡,池
6. 高 齢 者 の筋 に お け る筋 力 トレー ニ ン グお よび持 久 性 ト
H., Mantoni,
L.,Laurent-Winter,
田
Mech.
賢,天
M.,
in
Ageing
Dev.,
力 科 学,48(1),
貝
Schiaffino,
C., Schnohr,
morphology
and
different
protein
training
12) Larsson,
均,大
野 敦 也:
育 学 研 究,36,
S., Ausoni,
P. and
backgrounds.
S., Gorza,
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expression
of ageing
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shortening
velocity
skeletal
of elderly
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W.
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men
with
Scand.,140:
skeletal
レー ニ ン グの効 果 につ い て 説 明 しな さ い.
Frontera,
and
myosin
muscle
isoform
cells. Am.
of aging
composition
on
in single
J. Physiol.,272:C638-
C649,1997. J. and
on type2
Dawnham,
muscle
of the ageing different
7. 加 齢 に伴 う骨 量 の 変化 と運 動 の効 果 につ い て説 明 しな
from
is the effect of ageing
Neurol.
C. C. and
Sci.,107
Sjostrom,
atrophy?Total
fiber types
15-to
D.Y.:What
fibres?J.
number,
studied
83-year-old
is the cause
size and
in whole
men.J.
:250-251,1992.
M.:What
vastus
Neurol.
proportion
of
lateralis muscle
Sci.,84:275-294,
1988.
さい.
15) Moritani,
T. and
hypertrophy
● 参 考 文 献 1) Aoyagi,
Y. of
Katsuta,
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and
physical
between
fitness
in
old
the
age.
Can.
Oxidative
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innervating
Sport
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Campbell,
chronic
M.
Physiological
Coggan,
J.,
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R.,
M.,Nemeth, to
A.
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J.
and
muscles.
Petito.
F.:
R.J.,
M.
and
King,
Appl. and
S.,
Holloszy,
Rogers,
M.
A.,
J.O.:Skeletal
training
in
60-to
Brown, muscle
70-yr-old
E.
G.:Role
reduction
in
of
muscle
Vo2max.J.Appl.
loss
in
the
Physiol.,65:
R.,
Evans,
skeletal
track athletes. J. Appl.
W.
muscle
Physiol.,64
Meredith,
C.
N.,
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O'reilly,
K.
P.,
conditioning and
improved
in
の 成 長
と 老 化.The
older
function.
: 1038-1044,1988. 男:骨
Knuttgen,
H. men:
J.
Appl.
Peshock,
elbow
flexors
R. and of
and
muscle
S.:
in motoneurons
fast-twitch
muscles
after
:149-154,1997. J. E., Lowenthal,
power
and
D.
J. H.:Twenty
body
composition
of
Physiol.,82:1508-1516,1997. Stray-Gundersen,
Gonyea,
elderly
Katsuta,
size
C. and Wilmore,
of aerobic
training. J. Appl.
J., Always,
W.J.:Adaptations
males
after
in the
heavy-resistance
Physiol.,74:750-754,1993. 田 昌 彦,岡
野 浩 哉,山
田 め ぐみ,福
井 裕 子,
動 が 閉 経 後 の 女 性 の 骨 量 に 及 ぼ す 影 響.体
力
研 究,80:60-70,1992. 20) 東 儀 英 夫,清
水 輝 夫,井
上 聖 啓,亀
山 正 邦,朝
の 年 齢 変 化 に 関 す る 組 織 化 学 的 定 量 的 研 究,筋 ス ト グ ラ ム.臨
Bone,1:43-47,1987.
and
J., Fleckenstein.J.,
S.E.,
S.
soma
L. J., Graves,
C., Foster,
follow-up
福 村 幸 仁:運 W.
G.and
M.
19) 七 五 三 木 聡,柳
1147-1151,1988. Frontera,
L., Mengelkoch,
older
W.
Sasaki, and
Res. Bull.,43
year
18) Roman,
men
Physiol.,72:1780-1786,1992.
Lakatta,
age-associated
D.
K.,
activity
the rat slow-twitch
T.Limacher,
for gross
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Masuda,
enzyme
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17) Pollock,
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endurance
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Spina, P.
adaptations
Fleg,J.
McComas,
changes
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starting
DeVries,
in older
16) Nakano,
and
training
Sci.,15
田 拓
and
1991.
14) Lexell, J., Taylor,
さい.
藤
muscle.
齢 者 の 筋 ト レ ー ナ ビ リ テ ィ.体
茂,七
13) Lexell,
しな さい.
6)
longus
the number
and motoneurons
1999.
human
4. 老 化 に よる骨 格 筋 萎 縮 とそ れ に伴 う変 化 に つ い て説 明
5)
digitorum
on
fibers
41-54,1990.
3. 加 齢 に伴 う有酸 素 的能 力 の 低 下 に対 す る トレー ニ ン グ
4)
of age
of muscle
muscle:across-sectional
2. 中 ・高齢 者 にお け る有 酸 素 的 能 力 の トレー ナ ビリテ ィ
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properties
茂:高
9-13,
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3)
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In:Handbook
J. ed.),pp.633-666,
:213-221,1988.
9) 勝 田
11) Klitgaard,
2)
M.:Exercise.
運 動 強 度 の 違 い が 骨 成 長 に 及 ぼ す 影 響.体
切 な もの に す る必 要 が あ る.
age
W.
Press,
A. and Araki,
加 齢 に よ る 骨 量 の 低 下 に 対 す る抑 制 策 と して の 運 動 の
学 的 負 荷 が 骨 量 の 増 加 あ る い は維 持 に 貢 献 す る 可 能 性
Kohrt,
Ageing(Masoro,E.
床 神 経,15:791-797.1975.
長 正 徳:筋 線 維 直 径 の ヒ
19 トップ ア ス リー トの 特 性
オ リ ン ピ ッ ク な ど 世 界 的 な 大 会 で 活 躍 す る よ う な 選 手 の 筋 肉 あ る い は 呼 吸 循 環 能 力 は,ど く らい 優 れ て い る の で あ ろ う か?ま
の
た,運 動 能 力 は 遺 伝 的 に ど れ く らい 規 定 さ れ て い る の か.
測 定 技 術 の 飛 躍 的 進 歩 に よ りそ れ らの こ とが か な り解 明 さ れ て きて い る.
MRI法 19.1
筋 肉 の非 侵 襲 的 分 析 法
に よ っ て,日
本 の 各種 目の トップ アス リー ト
の大 腿 部 の 横 断 像 が撮 像 され,筋
組 成 が 明 らか に さ れ
つ つ あ る14).男 子 の 一 流 ア ス リー トに み ら れ る 特 徴 は, す べ て の 運 動 は,骨 さ れ る.し る が,筋
格筋 が 収縮す る こ とに よってな
た が っ て,筋
肉 を 評 価 す る こ と は重 要 で あ
肉 そ の もの は 表 在 し て い な い た め,筋
価 な ど 間接 的 な もの が 主 流 で あ っ た.筋 よ り,ヒ
こ と で あ る(図19.1a∼c).さ
,屈 筋 群 の 筋 量 が 多 い ら に,一
般 人 あ るい
は そ の 種 目の 一 流 選 手 以 外 と比 較 して,大
腿 部 にお け
生検 の導 入に
る上 部 の 屈 筋 群 の 発 達 が 顕 著 で あ る.一
方,皮
トに つ い て も細 胞 レベ ル の 情 報 が 得 られ る よ
量 は 一 般 人 に 比 べ て 圧 倒 的 に 少 な く,と
くに陸上競 技
う に な っ た が,切
開 を 伴 うた め,一 流 選 手 の 情 報 は 少
な い の が 現 状 で あ る.ま
し て,1シ
化 を と ら え る こ とは,事 ろ が,こ
力 の評
一 般 人 に 比 べ て 明 らか に伸 筋 群
ー ズ ンにお け る変
実 上 不 可 能 に 近 か っ た.と
こ
れ まで分 析化学 の分野 で利 用 されて いた核磁
気 共 鳴(Nuclear
Magnetic
Resonance:NMR)法
が,
の 走 選 手 の 例 は典 型 的 で あ る(図19.1a).こ
下 脂肪
の傾 向
は,体 重 が 重 い 柔 道 の 選 手 にお い て も認 め ら れ て い る. し か し な が ら,女 子 の 場 合 に は 男 子 選 手 と は 異 な り, 世 界 レベ ル の 水 泳 の 選 手 で あ っ て も,一 般 人(図19. 1f)に
近 い 脂 肪 量 を示 し て い る(図19.ld).こ
の傾
1980年 代 に 入 り ヒ トに つ い て も 実 用 化 が 可 能 と な っ
向 は,体
た.こ
人 は全
られ る 陸 上 ・中 距 離 の 選 手 で も 認 め られ て お り,ま た
体内 部の画
絶 対 的 な 筋 量 で は 男 子 の ほ うが 明 ら か に大 き く,性 差
れ は,磁
気 を 生 体 に照 射 す る だ け で,本
く痛 み も な に も感 じず,筋
肉 の 形 態 的(生
像 が 得 ら れ,一
般 にMRI法
よ び生 化
が 認 め られ て い る.
学 的 な情 報(筋
肉 のエ ネ ルギー代 謝 に関す る情報 が得
勝 田 ら5)は,MRIの
られ,一
般 にMRS法
あ る.そ
の た め,一
と よ ば れ る)お
重 が 軽 く,脂 肪 の 占 め る 割 合 が 小 さ い と考 え
と呼 ば れ る)が
得 られ る方 法 で
流 選 手 か ら の 情 報 も得 や す く,ト
ップ ア ス リ ー トの 特 徴 が 明 ら か に され つ つ あ る.
リー トに お け る筋 の 横 断 面 積 を計 算 し,大 腿 部 全 体 の 筋 の 形 態 的 特 徴 を 明 ら か に し た(図19.2).一 比 べ て,男
MRIに
よ る一 流 選 手 に お け る筋 の 形態
的特 徴
MRIは,軟
部(筋
著 し い.さ
くに 大 腿 上 部 の ハ ム ス トリ ング の発 達 が
らに,種
目 に よ り大 腿 部 の 筋 の 形 状 が 異 な
る こ とが 示 さ れ て い る.た
肉 も そ の 一 つ)の
描 写 につ いて
般人に
女 とも大腿 部の全 体 にわ た って筋横 断面 積
が 大 き く,と 19.2
横 断 像 よ り各 種 目 の ト ップ ア ス
と え ば,陸
上競技 の ス プ リ
ン タ ー と サ ッ カー の 選 手 を比 較 す る と,大
腿上部 の筋
量 は 両 群 で ほ ぼ 同 様 な大 き さ を示 す が,大
腿下部 で は
は 現 在 使 用 さ れ て い る 映 像 法 で あ る 超 音 波 法 やX線
ス プ リ ン ター は 明 らか に サ ッ カ ー 選 手 よ り小 さ な 横 断
CT法
面 積 を 示 し て い る(図19.2).こ
な ど の 中 で,最
も優 れ て い る と さ れ て い る.
の ような差 異が み ら
図19.1
MRIに
よ る男 女 一 流 選 手 の 大 腿
部 横 断 像9 a:陸
上 競 技
b:バ
レ ー ボ ー ル(男,全
・棒 高 跳 び(男,歴
ナ オ リ ン ピ ッ ク 出 場),c:柔 セ ン 世 界 選 手 権78kg級1位,バ
代2位).
日 本,バ
ルセ ロ
道(男,エ
ッ
ル セ ロ ナ
オ リ ン ピ ッ ク3位),d:水 泳(女,中 国), '91世 界 選 手 権 ,バ ル セ ロ ナ オ リ ン ピ ッ ク1 位),e:一
れ る理 由 の 一 つ と して,種
般 人(男),f:一
般 人(女).
目 に よ り身 体 活 動 様 式 や 活
動 部 位 が 大 き く異 な る た め,専
門 的 な トレ ー ニ ン グ を
長 期 に わ た っ て 続 け る こ と に よ り,そ
19.3 MRIに
の 種 目 に 適 した
よ るジ ュニ ア選 手 に お け る筋 の
形態的特徴
筋 の 形 態 が 形 成 さ れ て い る 可 能 性 が 考 え ら れ て い る. ジ ュ ニ ア 期 の 子 ど も は 成 人 の ミニ チ ュ ア で あ る の か,そ
れ と も子 ど も独 特 の 特 徴 を 有 して い る の か,と
は 必 ず し もス プ リ ン タ ー の 筋 量 が 突 出 して い る わ け で は な く,ジ
19.4
ュ ニ ア 期 の 特 徴 か も しれ な い.
MRSに
よ る筋 エ ネル ギ ー代 謝 と トレー
ニ ン グ状 態 の 関 係
こ れ まで ト ップ ア ス リー トに 対 し て,あ 間 を 有 す る試 合 期 の 前 後 に お い て,運
る一 定 の期
動 中の筋 エ ネル
ギ ー 代 謝 を検 討 し た 報 告 は ほ と ん どみ ら れ な い.そ 理 由 は,前
述 した よ う に,こ
の
れ まで筋 エ ネルギ ー代 謝
を検 討 す る た め に は 侵 襲 的 な 筋 生 検 が 必 要 で あ っ た こ と が あ げ られ る.そ
れ に 対 し,31PMRSを
カ ー ワ ー ル ド カ ッ プ予 選(約2か
月)の
用 い てサ ッ 前 後 に,日
本
代表 選手 を用 いて運 動 中の 筋エ ネルギ ー代 謝 を非侵 襲 的 に 検 討 した 報 告 が あ る9).MRS測
定 の ための 運動 中
の 仕 事 量 は,予 選 前 後 に お い て 同 じで あ っ た に も か か わ らず,予
選 後 の 運 動 中 の 筋pHは,予
選 前 に比 べ 明
らか に ア シ ドー シ ス な 値 を示 し た(図19.4).筋pHの 低 下 は 筋 細 胞 内 に 乳 酸 の 蓄 積 を 招 き,さ
ら に低 下 が 続
け ば結 果 的 に筋 疲 労 に 導 か れ る. さ ら に,ミ
トコ ン ド リア の 酸 化 能 力 あ る い は 筋 力 に
つ い て も低 下 す る こ と が 示 され て い る.こ 力 の 低 下 の 原 因 と して,①2か 終 え た 疲 労,② 図19.2 各 種 目男 女 一流 選 手 に お け る 大 腿 部 の 筋 横 断面 積5) 一 つ の カ ラ ム(〓)の 長 さは 面 積 の 大 き さ(絶 対 値)を 示 す .
そ の 期 間 の トレ ー ニ ン グ 内 容 の 問 題 の
二 つ が あ げ られ る.こ
の 選 手 の 場 合,予
回 の 筋 力 ト レ ー ニ ング を 含 め,短 を 継 続 的 に実 施 し て い た が,予
くに ジ ュ ニ ア 期 に そ の 年 代 で 一 流 の 子 ど もの 特 徴 に つ い て は,ほ
と ん ど知 られ て い な い の が 現 状 で あ っ た.
そ れ に 対 し,平 成4年
か ら4年 間 に わ た っ て 日本 体 育
の よ うな能
月 間 に わ た る試 合 期 を
選 前 に は 週3
時 間で高 強度 の練 習
選 中 にはチ ー ムの方針
で 一 度 も そ の よ う な トレ ー ニ ン グ を 実 施 し て い な い. し た が っ て,こ
れ らの 事 実 は,予
代 謝 能 の 低 下 が,予
選 後 の筋 エ ネル ギー
選 中 の 疲 労 の み で は な く試 合 期 中
協 会 の プ ロ ジ ェ ク ト研 究 と して 「ジ ュ ニ ア 期 の 体 力 ト
の トレ ー ニ ン グ 内 容,す
レ ー ニ ン グ に 関 す る研 究 」 が 実 施 さ れ,い
ー ニ ン グ の 不 足 が 影 響 した 可 能 性 を示 して い る .
くつ か の こ
とが 明 らか に さ れ た. 図19.3に
は,男
な わ ち 短 時 間 で 高 強 度 の トレ
トレ ー ニ ン グ 内 容 が 筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 に 影 響 を 及 ぼ
子 の ス プ リ ン タ ー,テ
ニ ス,ス
ケ
す よ い 例 が,図19.5に
示 され て い る9).こ れ は,サ
ッ
ー ト選 手 お よ び コ ン トロ ー ル群 の 大 腿 部 の 筋 断 面 積 に
カ ー プ ロ 選 手 の 筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 を オ フ シ ー ズ ン(5
つ い て,ジ
月)鍛
ュ ニ ア(13歳
時)と
成 人 の 比 較 を 示 した.
まず ジ ュ ニ ア の 中 で 比 較 し て み る と,い
ずれ の種 目に
練 期(7月),リ
ー グ 戦 の 開 始 直 前(9月),リ
ー グ 戦 中(12月)の4回
にわ た っ て検 討 した と ころ,
お い て も コ ン トロ ー ル 群 よ り大 腿 部 全 体 の 筋 量 の 多 い
同 一 の 負 荷 強 度 に もか か わ らず ト レ ー ニ ン グ状 態 に よ
こ と が 示 さ れ て い る.こ
っ て 筋 の 緩 衝 系 の 能 力,す
の 被 検 者 た ち は い ず れ も13
な わ ち乳 酸 除 去 能(こ
歳 で あ り,系 統 だ っ た 筋 力 トレー ニ ン グ は ほ と ん ど 実
合 の 除 去 とは,産
施 し て い な か っ た.さ
中 へ の 洗 い 流 し能 の 合 算 で あ る)が,非
ら に,ジ
だ け で 比 較 し て み る と,ス
ュ ニ ア ア ス リー トの 中
プ リ ンターの全 体 の筋 量 お
よ び 大 腿 上 部 の 筋 量 が 多 い の が 特 徴 的 で あ る.成
人で
の場
生 の 抑 制 と重 炭 酸 と の 緩 衝 お よ び 血 常 に異 な る こ
と を 示 して い る.こ の よ う に,筋 の エ ネ ル ギ ー 代 謝 は, ト レー ニ ング 状 態 と密 接 な 関 係 に あ る.と
くに,ト
ッ
図19.3
プ ア ス リ ー トの 場 合,試 が,成
各 種 目 にお け る ジ ュ ニ ア選 手 の大 腿 部 の 筋 横 断 面 積
合 時 におけ る この能 力 の違 い
績 を左 右 す る 可 能 性 は 十 分 に あ る こ と が 考 え ら
れ る.そ
の 反 面,こ
ト レー ニ ン グ を 考 案 す る に あ た っ て の 運 動 生 理 学 的 検 討 は ほ とん どな され て お らず,今 い る.
19.5 呼 吸 循 環 器 系 に お け る 特 性
の よう な長期 に わた る試 合期 中 の
後の研 究 が待 た れ て
多 くの トップア ス リー トに とって 持久 的能 力 は重 要 で あ るが,競 技 成績 に寄 与 す る相対 的貢献 度 に よ って そ の度 合 い は大 き く異 なる.そ のた め,全 身 持久 力 の
図19.4 2か 月 に わ た る試 合 期 前 後 に お け る筋pHの
図19.5
同 一 選 手(サ け る筋pHの
ッ カー プ ロ選 手)の1シ
変化9)
ー ズンにお
変 化10
図19.6
こ れ ま で 報 告 さ れ て い る男 子 に お け る ス ポ ー ツ種 〓別 の 最 大 酸 素 摂 取 量 の比 較18
指 標 で あ る最 大 酸 素 摂 取 量 に は,明
確 な 種 目特 性 が み
られ る.
る.こ
れ は,ボ
ー ト種 目 にみ られ る 運 動 様 式 か ら,競
技 成 績 が 主 と し て 最 大 酸 素 摂 取 量 の 相 対 値 よ り も絶 対
図19.6は,こ
れ まで 報 告 され て い る 最 大 酸 素 摂 取
値 に 依 存 す る た め と 思 わ れ る.
量 を ス ポ ー ツ種 目 別 に ま とめ,比 較 し た も の で あ る18).
そ れ で は こ の よ う な 最 大 酸 素 摂 取 量 の 種 目特 性 は,
これ を み る と,競 技 成 績 に 対 して 持 久 性 貢 献 度 が 高 い
お も に ど の よ う な 生 理 的 機 能 の 差 を反 映 して い る の だ
種 目 ほ ど優 れ た 値 を 有 し て お り,距 離 ス キ ー や マ ラ ソ
ろ うか,肺
ン選 手 の 場 合 は 平 均80ml/kg/分
て 飛 躍 的 に 向 上 し,そ の 結 果 と して,肺
て い る.近
年,日
本 の マ ラ ソ ン 選 手 の 活 躍 は 目 を見 張
る も の が あ る が,著 山 竹 通,瀬 ml/kg/分 る.一
名 なマ ラソ ンラ ンナー で あっ た中
古 利 彦,宗
茂,宗
猛 選 手 ら は78∼82
の 高 い 値 を示 した こ と が 明 ら か に さ れ て い
方,レ
ml/kg/分
を超 え る高値 を示 し
ス リ ン グ や 体 操,ダ
ン ス の 選 手 は,60
以 下 の 比 較 的 低 い 値 を示 し て い る.こ
う な 種 目 で は,卓
の よ
越 した持 久的 能力 よ りも瞬発 的パ ワ
す る.一
で の ガ ス 交 換 は 持 久 的 ト レー ニ ン グ に 伴 っ
流 の ク ロ ス カ ン トリ ー 選 手 や オ リ ン ピ ック 自
転 車 競 技 選 手 の 中 に は,200l/分 と い わ れ,過
を超 え る選 手 が い る
去 の 測 定 記 録 で は,ド
技 者 の288l/分 た,山
換 気量 が 増大
地 ら17)は,一
拡 散 能 力 が,最
イ ツの一流 陸 上競
の 値 が 最 高 で は な い か と思 わ れ る.ま 般 人 と比 較 して 中 長 距 離 選 手 の 肺
大 運 動 時 ば か りで な く,最 大 下 に お い
て も 優 れ て い る こ と を 示 した.こ
の こ とは持久 的種 目
ー や 運 動 技 術 が 競 技 成 績 を左 右 して い るの で あ ろ う .
に 参 加 し て い る トッ プ ア ス リ ー トが,大
しか し な が ら,こ
を 獲 得 し て い る ば か りで な く,肺 拡 散 量 の よ うな 呼 吸
れ らは 体 重 当 た りの 相 対 値 で 比 較
した も の で あ り,絶 対 値 で 比 較 した 場 合,必 れ と 同 じ種 目 差 を 呈 さ な い,た ml/kg/分
と え ば,相
ず しもこ 対 値 で66.6
と 中 程 度 の 平 均 値 を もつ ボ ー ト選 手 は,絶
対 値 で は6.16l/分
を 示 し,相 対 値 で は 高 い 値 を もつ 距
離 ス キ ー 選 手 の 絶 対 値5.56l/分
を大 幅 に上 回 っ てい
き な肺 換 気 量
効 率 に お い て も優 れ て い る こ と を 意 味 し て い る.さ に,持
久 的 な種 目に 参 加 して い る選 手 は,心
室 の 顕 著 な 肥 大 が 認 め ら れ,循 し て い る.
ら
臓 の左 心
環 機 能 も飛 躍 的 に 向 上
べ 非 常 に 小 さ い こ と を 観 察 し,広 義 の 遺 伝 率 と し て男 19.6
子,女
スポ ー ツパ フ ォー マ ンス と遺伝
子 と も に90%以
こ の 報 告 は,筋 「あ の 選 手 は 非 常 に 素 質 が あ り ま す ね 」 と か 「あ の 運 動 セ ンス は 父 親 ゆ ず りで す か ね 」 と い っ た ス ポ ー ツ
上 で あ る こ と を 報 告 して い る.
線 維 タ イ プ 構 成 比 率 の 変 化 が ト レー ニ
ン グ に よ っ て 生 じに くい とい う多 く の 研 究 成 果 を 支 持 して い る.し か しSimoneau15,16は,ヒ
トに高 強 度 の 間
解 説 者 の コ メ ン ト を,私
た ち は さ ま ざ まな マ ス メ デ ィ
欠 的 ト レ ー ニ ン グ を 行 わ せ る と外 側 広 筋 のType
ア を通 して 耳 に す る.運
動 能 力 は トレ ー ニ ン グ や 栄 養
維 が 有 意 に 増 加 す る と い う 報 告 を して,実
Ⅰ線
際 に遺伝 的
な ど に よ っ て 獲 得 され る 後 天 的 な もの だ け で な く,選
に 説 明 で き る 割 合 は,全
手 が 元 来 有 し て い る 先 天 的 な もの に よ っ て 左 右 さ れ
あ る と 主 張 し て い る14).非 常 に 高 強 度 の ト レー ニ ン グ
体 の ば らつ き の45%程
る.と
くに ト ップ ア ス リー トは 人 間 の 能 力 を 最 大 に 高
を長 期 間 行 う こ と で,筋
め,限
界 に 近 い 状 態 で プ レ ー す る た め,そ
変 化 す る の か も しれ な い.
の 選手 が 有
す る 先 天 的 素 質 が 好 成 績 を生 む 重 要 な ポ イ ン トに な る 場 合 が 多 い.
線 維 タ イ プ構 成 比 率 は大 き く
こ の よ う な 集 団 遺 伝 学 的 な研 究 に加 え,最
動 能力 に関す る形 質 は連続 的 で量 的 な
究 が 進 ん で きた.Riveraら12)は,骨
形 質 で あ る.こ
の よ う な形 質 は 単
キ ナ ー ゼ 遺 伝 子 の 非 翻 訳 領 域 のNcoI,TaqI制
れ る も の で は な く,さ
て は,遺
近 で は特
定 の 遺 伝 子 の 多 型 性 と運 動 能 力 と の 関 係 に つ い て も研
一般 的 に,運
て い る.量
度で
一 の 遺伝 子 で決 定 さ
まざ まな遺伝 子 が複 雑 に関与 し
的形 質 の先 天的 要 因 を定量 化す る手段 とし
伝 率 とい う指 標 を 用 い て お り,厳 密 に は 広 義
と 狭 義 の 遺 伝 率 が あ る.広 団 の 個 人 差 の 何%が い う意 味 で,狭
義 の 遺 伝 率 の 考 え 方 は,集
遺伝 子 の個 人差 で説 明 で きるか と
義 の 遺 伝 率 は 集 団 の 個 人 差 の何%が
親
か ら受 け 継 が れ る 遺 伝 子 の 個 人 差 で 説 明 で き る か と い う 意 味 で あ る.ど
ち ら の 遺 伝 率 も,特 定 の 形 質 の 何%
が遺 伝 で決 定 されて い る とい うこ とを示す もので は な い の で 注 意 が 必 要 で あ る.ヒ
トを用 い た 研 究 で は,実
処 理 に よ る 遺 伝 子 の 多 型 性 が,最
格 筋 の ク レアチ ン 限酵 素
大 酸 素 摂 取 量 の トレ
ー ナ ビ リ テ ィ と 関 係 が あ る こ と を 報 告 し た .さ Rodasら13)は (HLA)のA,B,C遺
伝 子 座 と最 大 酸 素 摂 取 量 と の 関
係 を 調 べ,A2とA11の は,保
らに
高 度 の 多 型 性 を 示 す ヒ ト白 血 球 抗 原
対立 遺伝 子 の保 有者 グル ープ
有 し な い グ ル ー プ と比 較 し,有 意 に 高 い 最 大 酸
素 摂 取 量 を 有 す る こ と を 報 告 し て い る.ま 素 摂 取 量 と の 関 係 は 不 明 だ が,ア
た,最
大酸
ン ギ オ テ ン シ ン変 換
酵 素 遺 伝 子 が 持 久 的 な 能 力 に 関 与 し,そ
の遺 伝子 型 の
Ⅰ型 が 持 久 的 な 能 力 の 獲 得 に有 利 で あ る とい う知 見 も
験 上 の 困 難 さ か ら 広 義 の 遺 伝 率 を算 出 して い る 報 告 が
明 ら か に さ れ て い る11).遺 伝 子 の 多 型 性 が そ の 遺 伝 子
多 い.
の 機 能 に どの よ う に 関 係 す る か は 不 明 な 点 が 多 い が,
全 身持 久力 を表 す指 標 と して最大 酸素 摂取 量 は重 要
運 動 能 力 に 対 す る遺 伝 的 な 関 与 は,さ
で あ る が,Klissourasの
が 同 じ よ う な貢 献 度 で 行 っ て い る わ け で は な く,強
古 典 的 な報 告 か ら最 大 酸 素 摂
まざ まな遺伝 子 く
取量 の 広義 の遺伝 率 は 非常 に高 い もの と考 え られて い
関 与 す る 遺 伝 子 や 弱 く関 与 す る 遺 伝 子 が 存 在 す る こ と
た6).し
を 明 確 に 示 し て い る.運
か し,そ
の 後,被
検 者 の 人 数 や 年 齢,性
を補
動能 力 に関 与す る遺 伝子 の貢
正 す る と低 い 値 を 示 す こ と が 明 ら か に な りつ つ あ る.
献 度 を 明 確 にす る こ とが 今 後 の 課 題 に な る だ ろ う.
Bouchardら
トッ プ ア ス リ ー トに は,優
は,日
頃 運 動 を し て い な い16∼65歳
の健
れ た先 天的 資 質が必 要 で
康 人 を 対 象 に最 大 酸 素 摂 取 量 の 広 義 の 遺 伝 率 を 算 出 す
あ る が,そ
る と50%程
も低 い こ とが 明 らか に な りつ つ あ る.し
度 で あ る こ と を 明 らか に した1).お
い こ と にBouchadら
て 説 明 で き る 割 合 は30%に
達 す る こ と が 明 ら か で,
母 性 遺 伝 す る ミ トコ ン ド リ アDNAと さ れ て い る2).父
も しろ
の デ ー タ1)か ら,母 性 効 果 に よ っ
の 関 わ りが 注 目
の関与 の 度合 い は従来 考 え られ てい た よ り たが っ て高 い
ス ポ ー ツ パ フ ォ ー マ ン ス を 得 る た め に は,優 は も ち ろ ん の こ と,こ
れ た資 質
の資 質 を生 かす よう な適切 な ト
レー ニ ン グ メニ ュ ー も必 要 で あ る.
親 よ り も母 親 の も つ 全 身 持 久 性 が,
そ の 子 ど も に 強 く影 響 を 与 え る の か も しれ な い. ま た,筋
の 収 縮 ス ピ ー ドを 決 定 づ け る 筋 線 維 組 成 の
遺 伝 的 関 与 に つ い て は,Komi8)が
筋線 維組 成の 一卵性
双 生 児 の ペ ア 内 分 散 が 二 卵 性 双 生 児 の ペ ア 内分 散 と比
● 問 題 1. こ れ ま で一 流 選 手 の筋 細 胞 レベ ルの 情 報 が 少 なか っ た 理 由 につ いて 述べ な さい. 2. 一 流 選 手 に 共 通 して い る大 腿 部 の 筋 肉 お よび 皮 下脂 肪
muscle
の 特 徴 を 述 べ な さ い. 3.
enzyme
dizygous
大 腿 部 横 断 像 か ら み た 一 流 選 手 の 性 差 に つ い て 述 べ な
462
activities
twins
of
and
both
fibre
sexes.
types
Acta
in
monozygous
Physiol.
and
Scand.
Suppl.,
:1-28,1979.
さ い. 9)
4.
試 合 期 中 の
久 野 譜 也:筋
生 理
・生 化 学
か
ら み
た
ト ッ プ ア
ス リ ー
ト と 競
ト レ ー ニ ン グ 内 容 と 筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 能 と 技 力.体
育 の 科 学,41:255-261,1990.
の 関 係 を 述 べ な さ い. 10)
5.
トッ プ ア ス リ ー
目 特 性 が み ら れ る か 記 述 し な さ い. 6.
7.
11)
筋 線 維 組 成 の 広 義 の 遺 伝 率 は90%以 る.こ
上 で あ る と い わ れ
の 意 味 に つ い て 説 明 し な さ い.
S.
NMR.
Ann.
and
Itai,
Y.:Muscle
度 で あ る と い
Pysiol.
Montgomery,
H.
S.,Clarkson,
P.,
Jubb,
最 大 酸 素 摂 取 量 の 広 義 の 遺 伝 率 は50%程 わ れ る.こ
Kuno,
energetics
参
考
M.,
M.,
and
E.,
Marshall,
Dollery,
World,
Barnard,
の 意 味 に つ い て 説 明 し な さ い.
文
12)
献
1) Bouchard,
C., Daw,
Province,
M.
E. W.,
A.,Leon,
Wilmore,J.
H.:Familial
state:the
HERITAGE
30
A.
Rice, T., Perusse,
M.,
Bell,
R.,
C.,
J. D.,
E.
L.,
Prasad,
S.
Hemingway,
Hayward,
Thomas,
Humphries,
S., Rao,
D.
resemblance family
C., Skinner,
J. S. and
for Vo2max in the sedentary
study.
Med.
L.,Thibault,
M.
Sci. Sports
Skinner,
J. S. and
sequence
polymorphism,Vo2max,
training. Med.
and
13years
S. M.
independent Cell,68 5) 勝 田
Gollnick, enzyme
old. Acta
4) Hughes,
Bouchard,
2報-,
D.
R.,
13)
response
K.,
Blau,
成2年
:177-185,1991. and
Saltin,
Chagnon,
Y.,
A.
Rayson,
D.
E.,
M.,
E.,
Saeed,
N.,
Talmud, for
Simoneau,
Gagnon,
Wilmore,
J.
specific
creatine
kinase
gene
H.
M.:Muscle
in boys
fiber
in postnatal
rodent
11-
pattern
15)
development.
H.
J.A.,
J., Leon,
P.
J.
physical
and
Med.
G.,
Javierre,
Perusse,
A.
Sci.
L.,
S., Rao,
Bouchard,
D.
C.,
in
the
C.:Muscle
polymorphism
study.
enzyme
sexes. Acta
of adaptive
and Vo2max
Sports
Exerc.,29:1311-
variation.
Ventura,
J.
locus
C.,
Garrido,
L.:Could
E.,
the
correlate
with
Calvo,
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maximal
aerobic
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Lortie,
Thibault,
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fiber
alteration
type
C.
and
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Boulay,
Bouchard, with
M.
R.,
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Marcotte,
M.,
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high-intensity
muscle
intermittent
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Simoneau,
J. M.
A.,
Lortie,
C.
muscle
and and
G.,
Boulay,
Bouchard, anaerobic
intermittent
M.
R.,
Marcotte,
C.:Inheritance capacity
training.
Int.
of
adaptation
J.
Sports
to
M., human high
Med.,7:167-
171,1986. Simoneau, fiber
J. Appl.
J. A.
type
and
proportion
Bouchard, in
C.:Genetic
human
skeletal
酸
素 作 業 能
determinism muscle.
FASEB
of J.,9,
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J. H., Havu, J.:Skeletal
activities in monozygous Physiol.
Karlsson,
and antigen
intensity
16)
Karlsson,
of both
Ercilla,
R.
skeletal
よ る ス ポ ー ツ タ レ ン ト発 掘 に
: 338-344,1971.
muscle
G.,
Eur.J.Appl.
is
ス ポ ー ツ タ レ ン ト の 発 掘 に 関 す る 研 究-第
P. V., Viitasalo,
Rodas,
power?Clin. 14)
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度 日 本 体 育 協 会 ス ポ ー ツ 医 ・科 学 研
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Brynes,
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M.,
E.:Human
Skinner,
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B.
A., M.,
Segura,
Physiol. Scand.,87:485-497,1973. and
6) Klissouras,
8) Komi,
M.
DNA
activities after training
野 譜 也:NMRに
究 報 告 書No.Ⅵ
Sjodin,
C., Boulay,
:659-671,1992.
関 す る 研 究.平
7) Komi,
and
P.
of cell lineage
茂,久
M.
HERITAGE
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C.:Mitochondrial
Sci. Sports Exerc.,23
B.O.,
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by
1317,1997.
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Rivera, Chagnon,
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:252-258,1998.
2) Dionne,
exercise
Anthrop.,11:313-318,1992.
performance[letter].Nature,393
●
during
トの 最 大 酸 素 摂 取 量 に は ど の よ う な 種
M.,
Thorstensson, muscle and
A.,
fibres dizygous
and twins
performance,
18)
山 地 啓 司,猪
飼 道 夫:有
散 能.体
研 究,17:7-16,1972.
skeletal
育 学
山 地 啓 司:一 ニ
Scand.,100:385-392,1977. J.:Physical
17)
ン グ(宮
出 版,1986.
流 選手 村 実 晴,矢
の エ
ア ロ ビ
部 京 之 助
の 一 因 子
ッ ク ス パ
と し て
ワ ー.体
編),pp.304-318,真
力
の 肺 拡
ト レ ー 興 交 易
20 オ ー バ ー ト レー ニ ン グ
人 間 の 身体 の 諸 器 官 は そ れ ぞ れ 生 物 学 的 な 強 度 を も っ て い る.日 常 生 活 で は,私 学 的 強 度 の範 囲 内 で 活 動 を行 っ て い る た め に 安 全 が 保 た れ て い る が,ス 範 囲 を 超 え て 身体 を 使 っ た 場 合 に は,さ
た ちは生物
ポー ツ活動 などでそ の
ま ざ ま な 問 題 が 生 じて く る.
と くに 日常 的 に トレ ー ニ ン グ を 行 っ て い る ス ポ ー ツ選 手 の 場 合,ト
レ ー ニ ン グ の 負 荷 と回 復
の 過 程 が ア ンバ ラ ンス に な る こ と な ど に よ っ て 運 動 能 力 や 競 技 成 績 が 低 下 し て 容 易 に も と に戻 ら な い状 態 と な る.こ
の よ う な 状 態 を オ ー バ ー トレー ニ ン グ と い い,さ
まざま な身体症状 や精
神 症 状 が 現 れ る.
程 と トレ ー ニ ン グ効 果 との 関 係 を 示 した.負 20.1
トレー ニ ン グ
の バ ラ ン ス が とれ,超
荷 と回復
回復が 消失 しない うち にまた次
の 負 荷 が 与 え られ る と い うサ イ ク ル で トレ ー ニ ン グが ル ー の 法 則 に よ る と,私 け れ ば 機 能 低 下 し,使
た ち 人 間 の 身 体 は,使
わな
い 過 ぎ れ ば 機 能 障 害 を 起 こ し,
適 度 に 使 え ば 発 達 す る.す
な わ ち,適
度 に使い発 達 さ
せ る こ とが トレー ニ ン グ に お い て の 課 題 と な る.
行 わ れ る と 漸 進 的 な 能 力 向 上 が 期 待 で き る.し
か し,
超 回 復 が 消 失 して し ま う ほ ど負 荷 と負 荷 の 間 を長 く と っ た り,ま だ 回 復 が 不 十 分 な う ち に 次 の 負 荷 を与 え た りす る と,ト
レー ニ ン グ 効 果 が 期 待 で き な い.そ
れど
トレ ー ニ ン グ に よ っ て 諸 器 官 が 発 達 して い く こ と を 適 応 と い い,そ
れ に よ っ て も た ら され た 諸 器 官 の 状 態
を トレ ー ニ ン グ効 果 と い う.こ 効 果 を得 る た め に は,ト
の よ う な ト レー ニ ン グ
レー ニ ン グ に お い て あ る 一 定
以 上 の 負 荷 が 与 え られ な け れ ば な らな い.す
な わ ち,
私 た ち が 現 在 も っ て い る 能 力 を刺 激 す る に 十分 な負 荷 が 必 要 と な る の で あ る.こ (overload)の
原 則(過
れ を 「オ ー バ ー ロ ー ド
重 負 荷 の 原 則)」 と よ ん で い
る. ト レー ニ ン グ と は,た
だ運 動 に よっ て負荷 を与 え る
こ と だ け を さす の で は な く,負 荷 に よ っ て 疲 労 状 態 が 生 じ,休 養 を とる こ と に よ っ て 回 復 過 程 と な り,さ
ら
に そ の 回復 過 程 に お い て 適 切 な 栄 養 補 給 を す る こ と に よ っ て ト レー ニ ン グ前 よ り も発 達 し た 状 態(超 を 導 きだ す 過 程 の こ と を さす.し 荷),休
養,栄
養 の3要
た が っ て,運
回 復) 動(負
素 をバ ラ ンス よ くとる こ とが
大 切 な の で あ る. 図20.1に
は,ト
図20.1
トレ ー ニ ン グ 負 荷 と 回 復 の バ ラ ンス と ト レー ニ ン グ効 果 と の 関係(川
Ⅰは トレー ニ ング 効 果(超
が 望 め ない.Ⅱ
り筆 者 加 筆)
消 失 して しま っ て か ら次
の トレー ニ ン グ 負荷 が か か っ て い るの で,漸
進 的 な 能力 向上
は疲 労 の 回 復 が 不 完 全 な状 態 で次 の トレー ニ
ン グ負 荷 が か か っ て い る の で,疲 ニ ン グ)状 態 が 進 ん で い く.Ⅲ
レー ニ ン グに よ る負荷 と回復 の過
原 ら,19897)よ
回 復)が
バ ラ ン スが う ま くと れ,漸
労 の 蓄 積(オ
ー バ ー ト レー
は トレ ー ニ ング 負荷 と 回復 の
進 的 な能 力 向 上 が 認 め ら れ る.
表20.1
現 在,イ
動 的筋 力 ト レーニ ング 手段 の つ く り方-ウ
ン ター バ ル ・ウ ェ イ ト トレー ニ ン グ と よば れ てい る トレ ー ニ ン グ法 もあ る.
[ウ ェ イ ト トレー ニ ン グの 運 動(休
こ ろ か,と
息 な し)有 気 的 運 動](短
く に後 者 の パ タ ー ンが 継 続 す る と,慢 性 的
疲 労 状 態,す
ェ イ ト トレ ー ニ ン グの 基 本 運 動 に よる14)
な わ ち オ ー バ ー トレ ー ニ ン グ の 状 態 と な
り,能 力 の 停 滞 や 低 下 が 生 じ る.
い休 息)×?セ
ット
生 命 を維 持 す る た め の 警 告 信 号 で あ り,生 体 の 内 部 環 境(恒
常 性)を
一 定 に保 つ 自 動 調 節 の 役 割 を 果 た し,
後 者 は そ の 疲 れ 具 合 を 手 が か り に して ト レー ニ ン グの
トレ ー ニ ン グ 効 果 を 得 るべ く よ り適 切 な トレ ー ニ ン
質 と 量 を 決 め る こ と に 使 わ れ て い る 」 と も述 べ て い
グ 計 画 を 立 案 す る た め に は,「 強 度 」,「時 間(回
る.
数)」,
「頻 度 」,「期 間 」 と い っ た ト レ ー ニ ン グ の 条 件 や
「意
識 性 」,「 全 面 性 」,「 個 別 性 」,「 漸 進 性 」,「 継 続 性 」
筋 疲 労 の メ カニ ズ ム につ い て は,解
明 され て いない
点 が 多 く残 され て い る の が 現 状 で あ る が,現 時 点 で は,
「反 復 性 」 とい っ た トレ ー ニ ン グ の 原 則 を よ く吟 味 し
次 の 三 つ が そ の 原 因 と して 考 え ら れ て い る.
な け れ ば な ら な い.
① エ ネ ル ギ ー 源 の 枯 渇 力 トレ ー ニ ン グ 手 段 を つ く る 際 の
② 疲 労 物 質 の 蓄 積
強 度,回
数 な ど の 条 件 設 定 の しか た に 関 す る 一 例 を 示
③ 内 部 環 境 の 失 調
し た.表
に あ る よ う な 点 に 留 意 して 適 切 な ト レー ニ ン
① の エ ネ ル ギ ー 源 の 枯 渇 に よ る 疲 労 とは,そ
表20.1に
は,筋
グ計 画 を 立 案 す る こ と が 重 要 で あ る.
ATP(ア 20.2筋
疲
の分解
過 程 に お い て 筋 活 動 を も た らす エ ネ ル ギ ー を 産 生 す る
労
デ ノ シ ン三 リ ン酸)や,ATPの
な エ ネ ル ギ ー を供 給 す るCP(ク
再 合 成 に必要
レ ア チ ン リ ン酸),グ
リ コ ー ゲ ン な どが 不 足 す る こ と に よ り,筋 収 縮 を 継 続 トレ ー ニ ン グ な ど に よ っ て 筋 肉 に 負 荷 を か け る と必
で き な い 状 態 が 生 じ る こ とで あ る.し
ず 疲 労 状 態 が 生 じ る.逆
して は,人
に い う と,疲 労 状 態 が 生 じ な
い 限 り,超 回 復 す な わ ち トレ ー ニ ン グ効 果 を期 待 す る
筋 肉 内 のATPの
こ とは で き な い.
な く,こ
矢 部16)に よ る と,疲 労 の 特 徴 は,ス
ポ ー ツや作業 の
結 果 と して 現 れ る生 理 的 現 象 で あ っ て,精
神 的 ・身 体
的 な 活 動 を 中 止 す れ ば も と の 状 態 に 戻 る こ とで あ る. ま た,矢
部16)は,「 疲 労 に は 二 つ の 働 き が あ り,一 つ
は 健 康 を 維 持 す る た め の 防 衛 機 構 で あ り,も 体 力 ア ッ プ に 関 わ りを もつ.す
な わ ち,前
う一 つ は
者 の疲 労 は
か し,ATPに
関
に随意 運動 を疲労 困憊 状態 まで行 わせ て も 濃 度 は20∼25%以
上 減少 す る こ とは
の 程 度 の 減 少 で は筋 肉 の 収 縮 活 動 に 支 障 を き
た す もの で は な い6),と
もい わ れ て い る.
こ の よ う な 疲 労 を 予 防 あ る い は 遅 延 させ る た め に は,ト
レ ー ニ ン グ に よ っ て筋 肉量 を増 や す こ と,栄 養
補 給 の 量,質,タ ATP,CP,グ
イ ミ ン グ を う ま く と る こ と な ど,
リコーゲ ンとい ったエ ネルギ ー物 質 を よ
り多 く筋 肉 内 に 蓄 積 させ る 条 件 を 整 え る こ とが 大 切 で
図20.2
図20.3 持 久性 運 動 後 の 筋 グ リ コー ゲ ンの 補 充 速 度 に対 す
疲 労 困 憊 に 至 る 運 動 後 の 回 復 中 に血 液 か ら の 乳 酸 の 除 去 は,安
る食 事 の 効 果1)
静 に して い る よ り軽 い 運 動 を 行 っ た
ほ うが 速 くで き る.乳 され た乳 酸 の1/2を
あ る.た
と え ば,図20.2に
あ る よ う に,運
は 栄 養 補 給 の しか た に よ っ て,筋
動直後で
所 要 時 間 は,動
酸 除 去 の 速 度 を示 す.蓄
積
静 的休息 中に除去 す るための
的 回 復 時 の2倍 で あ る2)
肉 内 グ リ コー ゲ ンの
回 復 に 大 き な 違 い が 生じ る こ と が わ か っ て い る.
運 動 を行 う と,私
② の 疲 労 物 質 の 蓄 積 に よ る 疲 労 と は,筋
反 応 が 起 こ る.そ
肉活 動 に よ
たち の身体 には体 温 の上 昇 とい う
の 一方 で,体
温上 昇 を抑 えるた め に
っ て 産 出 さ れ た 疲 労 物 質 が 蓄 積 す る こ と に よ り,筋 収
発 汗 が 行 わ れ る.発
縮 を 継 続 で き な い 状 態 が 生 じ る こ とで あ る.そ
身 体 中 の 水 分 の 減 少 に つ な が る.身
の疲 労
物 質 の 代 表 が 乳 酸 で あ る.
汗 に よ り体 温 は 下 が る が,今
す る と 血 液 が 濃 縮 され,血
度は
体 中 の水 分が 減少
液 が 濃 縮 さ れ る と血 流 が 悪
乳 酸 は,無 気 的 解 糖 系 に よ るエ ネ ル ギ ー 供 給 の 際 に,
くな り,酸 素 や 老 廃 物 の 運 搬 に 支 障 を き た す こ と に な
そ の 代 謝 産 物 と し て 生 成 さ れ る も の で あ る.筋
る.ま
肉 内は
構 造 物 以 外 の と こ ろ は液 体 で 満 た さ れ て お り,こ 位 を 筋 形 質 と い う が,乳
酸 は 筋 形 質 中 のpHを
の部
低下 さ
分 の 消 失 は,血
液 中 の電解 質の バ ラ ンス
を 崩 す こ と に もつ な が り,よ
た,水
りい っ そ う疲 労 を 増 長 さ
せ る こ と と な る.
せ る 働 き を す る.人
の 骨 格 筋 の 筋 形 質 中 のpHは,安
こ れ ら の 説 に 加 え て,脳
静 時 で は7.0∼7.1で
あ るが,強
信 号 発 信 頻 度 を 抑 え て し ま い,そ
憊 ま で 行 う と,6.4近 の よ う な 筋 肉 内,あ
度 の 高 い 運 動 を疲 労 困
く ま で 低 下 す る こ とが あ る6).こ る い は 血 液 内 のpHの
低 下 が,筋
く とい う,中 枢 疲 労 仮 説 も提 唱 さ れ て い る.
ソ ロ イ シ ン と い っ た 分 岐 鎖 ア ミ ノ酸
こ の 種 の 疲 労 に 対 処 す る に は,一 つ に は,多
少 乳酸
(BCAA)が
が 蓄 積 し た 状 態 で も 運 動 を継 続 で き る 能 力,す
なわ ち
濃 度 が 上 昇 し,こ
耐 乳 酸 能 力 を 高 め る こ と,そ
し て も う 一 つ に は,乳
酸
の 除 去 速 度 を 高 め る こ と が 大 切 に な っ て く る.図20.3 に は,疲
労 困 憊 後 に安 静(消
合 と 軽 い 運 動(積
極 的 休 息)に
極 的 休 息)を
して いた場
して い た 場 合 の 血 中 乳
酸 の 除 去 時 間 の 違 い が 示 さ れ て い る.こ
の こ と は,乳
れ が筋 疲労 に結 びつ
こ れ は,「 運 動 す る こ と に よ っ て 血 液 中 の バ リ ン, ロ イ シ ン,イ
収 縮 力 の 低 下 に つ な が る の で あ る.
が 疲 労 して 筋 収 縮 の た め の
減 少 し,逆
に 血 液 中 の遊 離 ト リプ トフ ァ ン
の こ と が 引 き 金 と な っ て脳 内 の 遊 離
ト リ プ トフ ァ ン 濃 度 が 上 昇 し,脳 内 の 神 経 伝 達 物 質 の 脳 内 含 有 量 が 変 化 し て筋 疲 労 が も た ら さ れ る8,9)」とい う も の で あ る. こ の 仮 説 は こ れ ま で の 疲 労 に 関 す る い くつ か の 研 究 結 果 を神 経 的 側 面 か ら解 説 で き る も の と し て 信 じ られ
酸 の 蓄 積 に よ る 疲 労 か ら よ り早 く 回 復 す る た め に は,
て い るが,い
安 静 に して い る よ り も,軽 い 運 動 や 入 浴,マ
験 な どで の 実 証 が 待 た れ る と こ ろ で あ る.
ッサ ー ジ
ま だ 仮 説 の 域 を 出 て い な い の で,今
後実
な ど に よ っ て 血 液 の 循 環 を よ く して や る こ とが 効 果 的 で あ る こ と を 示 して い る. ③ の 内 部 環 境 の 失 調 に よ る疲 労 とは,生 性(ホ
メ オ ス タ シ ス)が
る.と
くに 運 動 に よ る 脱 水 と 関係 が 深 い.
20.3
オ ー バ ー トレ ー ニ ン グ の 症 状
体 内の恒 常
崩 れ た た め に生 じる 疲 労 で あ
疲 労 は 病 気 で は な い の で,休
養 と 栄 養 を と る こ とに
よ っ て 早 く,簡 単 に 回 復 で き る.し
か し,休 養 や 栄 養
表20.2
を 軽 視 し,十 くと,オ
オ ーバ ー トレー ニ ン グの 徴 候 と症 状7
分 な 回 復 を み な い う ち に疲 労 を重 ね て い
ー バ ー トレ ー ニ ン グ の状 態 と な り,さ
な 身 体 症 状 や 精 神 症 状 を も た ら す.表20.2に
ー バ ー ト レ ー ニ ン グ に 陥 らな い よ う に ト
まざ ま
レー ニ ン グ を 進 め て い く こ と が,非
は,オ
な っ て い る.オ
ー バ ー トレ ー ニ ン グ の 徴 候 と 症 状 が 示 さ れ て い る が , こ れ に よ る と,オ
世 界 で は,オ
ー バ ー トレ ー ニ ン グ は 交 感 神 経 を 刺
は,ま
ず,オ
常 に 重 要 な課 題 と
ー バ ー ト レー ニ ン グ を 予 防 す る た め に
ー バ ー トレ ー ニ ン グ に 関 す る知 識 と理 解
を 深 め る こ とが 大 切 で あ る.そ
の う え で,選
手 と指 導
激 して 起 こ る バ セ ドー病 的 オ ー バ ー ト レ ー ニ ン グ と副
者 と が 一 体 とな っ て,常
交 感 神 経 を 刺 激 して 起 こ る ア ジ ソ ン病 的 オ ー バ ー ト レ
ョ ン を 把 握 して い くこ と が 重 要 と な っ て くる.
ー ニ ング とに分 け られる.
身 体 的 ・精 神 的 コ ンデ ィ シ ョ ン を把 握 す る 方 法 と し
バ セ ドー 病 的 オ ー バ ー トレ ー ニ ン グ は,興
奮性 の 反
応 や 刺 激 の 働 きが 大 きい こ と で 特 徴 づ け られ る.そ て,選
手 本 人 が 症 状 を 感 じや す い の で,診
い の も特 徴 で あ る.バ グ は,適
ー ニ ング は
断 が しや す
セ ドー 病 的 オ ー バ ー ト レー ニ ン
切 な 処 置 の も とで は1∼2週
す る こ と が で き る.一
し
方,ア
,機 能 の 低 下,身
ど で 特 徴 づ け ら れ る.選
間 で完 全 に 除去
て は,POMSな た,ト
に 身 体 的 ・精 神 的 コ ン デ ィ シ
どの 心 理 テ ス トを 活 用 す る と よ い.ま
レ ー ニ ン グ 日誌 の 中 に 主 観 的 な 疲 労 度 や 調 子 な
ど を 記 入 す る 欄 を 設 け,ト
レー ニ ング の進 行具合 とと
も に 身 体 的 ・精 神 的 コ ン デ ィ シ ョ ン を 把 握 し て い く指 標 と す る こ と も効 果 的 で あ る.
ジ ソ ン病 的 オ ー バ ー ト レ
図20.4に
体 の 虚 弱,気
後 に 迫 っ た 大 阪 国 際 女 子 マ ラ ソ ン に 向 け て,走
力 の減 退 な
手 は スポ ー ツ活動 に必要 なエ
ネ ル ギ ー を 働 か せ る 力 を失 っ て し ま う.し
か し,通 常
は,あ
る 大 学 女 子 マ ラ ソ ン 選 手 が 約1か 月
を経 て コ ン デ ィ シ ョニ ン グ を 行 っ て い る 際 の,ト ニ ン グ記 録 の 実 例 を示 し た.ト
の 生 活 を して い る場 面 で は,た い て い 何 ら問 題 も な く,
に,起 床 時 心 拍 数,基 礎 体 温,主
し ば し ば そ の 識 別 が 難 し い.ア
体 重,睡
レ ー ニ ン グ は,そ
ジ ソ ン病 的 オ ー バ ー ト
れ を取 り除 く ま で に 数 週 間 か ら数 か
月 と い う 長 い 時 間 を要 す る こ と も大 き な特 徴 で あ る. トレ ー ニ ン グ の 質 や 量 が 人 間 の 生 理 的 限 界 に どん ど ん近 づ い て いっ てい る現在 の チ ャ ンピオ ンスポー ツの
り込 み レー
レーニ ング内容 の ほか
眠 時 間 を 毎 日測 定 し,ト
観 的 な 調 子 や 疲 労 度, レー ニ ン グ の 進 行 状
況 の 把 握 と オ ー バ ー トレ ー ニ ン グ の 予 防 に 努 め て い る 一例 で ある .
図20.4
あ る大 学 女 子 マ ラ ソ ン選 手の トレ ー ニ ング 記 録
と を,指 20.4
導 者 は し っか りと 自覚 す べ きで あ る.
図20.5に
子 ど もの 問題
は,発
育 期 に あ る子 ど もの運 動 能力 や 体
力 が い つ,ど の よ う に 発 達 して い くか が 示 さ れ て い る. 発 育 期 に あ る子 ど もが ス ポ ー ツ活 動 を 行 う時,身
体
運 動 能 力 や 体 力 の 発 達 を 目的 と した ト レ ー ニ ン グ を 行
の 成 長 と と も に 運 動 能 力 や 体 力 も著 し く仲 び て い く反
う場 合 に は,伸
面,行
レ ー ニ ン グ の 合 理 性 や 効 果 性 を 求 め る う え で 非 常 に重
い 方 を 誤 る と 取 り返 しの つ か な い こ と に な る場
合 が あ る の で,十
要 で あ る.こ
分 な注 意 が 必 要 で あ る.
子 ど も が ス ポ ー ツ 活 動 を行 う う え で 最 も注 意 し な け れ ば な らな い こ と は,骨 で あ る.骨
は,大
骨 の 場 合,そ 骨 幹 端,骨
が成 長 途 中 にあ る とい うこ と
腿 骨,脛
骨,上
骨 な どの 長
の 端 か ら中 央 に か け て,骨
幹 部 に 分 け られ,こ
行 わ れ る.骨
腕 骨,尺
端,骨
の中 の骨 端線 で成 長 が
端 線 は軟 骨 細 胞 で あ る の で,こ
体 も成 人 に 比 べ る と 柔 らか い の で,ス
本 体 育 協 会 で は,『 ジ ュ ニ ア 期 の 体 力 トレ ー ニ
ン グ 』 とい う ガ イ ドブ ッ ク を発 行 して,啓
た,骨
自
ーバ ーユ ー
の 中 で,運
蒙 活 動 を行
動 能 力 か らみ た 発 育 期 に お け の二つ の こ とが掲 げ
られ て い る15). ① 専 門 的 な 体 力 よ り も 一 般 的 な 体 力 をバ ラ ンス よ く発 達 さ せ な け れ ば な ら な い こ と
激 に大 きな力が か か
る こ とで 起 こ る 外 傷 と小 さ な 力 の 積 み 重 ね に よ っ て 起 こ る 障 害 と に 分 け ら れ る が,と
て,日
る ト レ ー ニ ン グ 目標 に つ い て,次
は 十 分 注 意 しな け れ ば な らな い.
ス ポ ー ツ活 動 に よ る け が は,急
害 の予 防 に も つ な げ る こ と が で き る. こ の よ う な 特 徴 を も つ 発 育 期 の トレ ー ニ ン グ に 関 し
っ て い る.そ
ポー ツ活動 に よ
る 激 し い プ レー や 特 定 部 位 の 使 い す ぎ(オ
の よ う な 発 達 の 特 性 を 知 っ て お け ば,ト
レ ー ニ ン グ を よ り効 果 的 な も の に で き る と 同 時 に,障
の部 位 に
大 き な 力 が 加 わ る と 障 害 を起 こ しや す い.ま
ス)に
端 線,
び る 時 に伸 び る こ と を 行 う こ と が,ト
く に 障 害 は,発
育期に
② 神 経 系 が 著 し く発 達 す る の で,調 パ ワ ー(瞬
発 力)を
整力 や 無気 的
発 達 させ な けれ ば な らな い こ
と
あ る子 ど も の 身 体 的 特 性 を よ く知 っ て い れ ば 未 然 に 防
つ ま り,発 育 期 の ト レー ニ ン グ に お い て は,目
げ る場 合 が 多 い.疲
す るス ポー ツ種 目の専 門的 な技 術や 体力 の 養成 に終始
ャ ン パ ー 膝,腰
労 骨 折,野
球 肘,ラ
ン ナ ー 膝,ジ
痛 な どが 発 育 期 に 多 い 障 害 で あ る.こ
の よ う な 障 害 が 起 き た 場 合 に は,な 科 を受 診 させ る と同 時 に,休
る べ く早 く整 形 外
養 を 十 分 と らせ る な ど の
処 置 を し な け れ ば な らな い.発
育 期 の障 害 はそ の子 ど
せ ず,さ
的 と
ま ざ ま な 運 動 能 力 や 体 力 を バ ラ ン ス よ く発 達
さ せ る こ と に もっ と力 点 を お くべ き だ と さ れ て い る. そ し て,そ
の こ と が,将
来 にお い て高 い競技 力 を獲得
す る た め に 重 要 と な っ た り,オ ー バ ー ユ ー ス に よ る 障
もの 将 来 の 芽 を 摘 む こ と に つ な が りか ね な い と い う こ
図20.5 運 動 能 力 や 体 力 はい つ 発 達 す る か13) ・動 作 の習 得 とい うの は ,こ こ で は,音 が した らす ば や くボ タ ン を押 す と い う 動作 の 反 応 時 間で 代 表 さ せ た.身 の 上 手 ・下 手 は,こ
けで い え る もの で は な い が,こ な要 因で あ る. ・ね ば り強 さ は ,1分
の こな し
う した 神 経 系 の 反 応 の早 さ(敏 捷 性)だ れ も,上 手 に な る た め の 大 切
間 に 身体 の 中 に 酸 素 を と り込 む 能 力,
最 大 酸 素 摂 取 量 で み た. ・力 強 さ は筋 肉 の 代 表 と して 握 力 の 発 達 を み た .
図20.6
発 育 に対 応 し た トレ ー ニ ン グ ・練 習 内 容 と開 始 時 期 の 模 式 図3)
害 や バ ー ンア ウ ト(精 神 的 焼 き切 れ 現 象)を
防 ぐこ と
者 の 初 経 年 齢 は13.3歳
と 遅 延 して い る が,初
経発 来後
に も つ な が る15)と 述 べ ら れ て い る.
に トレ ー ニ ン グ を 開始 した 者 で は,11.9歳
と逆 に 早 く
ま た,日
初 経 が 発 来 し て い る.B群
れ ぞ れ12.9
本 陸 上 競 技 連 盟 で も,連 盟 の 発 行 す る 『陸
に お い て は,そ
上 競 技指 導 教 本』 の 中で 早期 専 門化 に よる問題 点 を指
歳 と12.3歳
とほぼ 同様の 傾向 を示 してい る もの の明 ら
摘 し,発 育 期 の ト レー ニ ン グ につ い て の 指 針(図20.6)
か な 差 は 認 め ら れ て い な い11).初 経 発 来 前 の 早 い 時 期
を 示 し て い る3).
か らの激 しいス ポー ツ活動 が初 経発 来 遅延 の 原 因 とな
ス ポ ー ツ 活 動 に 限 らず,発
育期 にあ る子 ど もをいか
っ て い る こ とが 示 さ れ て い る.ま
に 育 て る か と い う こ と は,将
来の社 会 の活性 化 に つ な
上 の 間 周 期 的 に 発 来 しな い続 発 性 無 月 経 も,激
が る 大 き な 問 題 で あ る.伸 と い う の で は な く,子
び る か ら伸 び る だ け 伸 ば す
ど も の 将 来 を み す え た う え で,
適 切 な指 導 を して や る こ とが 大 切 で あ る.そ
れが大 人
の 責 任 と い え よ う.
ポ ー ツ 活 動 と 深 い 関 係 が あ り,長 (22.7%)は
非 鍛 練 者(2.5%)の
以
しい ス
距 離 ラ ンナー
約9倍
月 経 異 常 を も た らす 要 因 と して は,精
女性 の問 題
経 が90日
の割 合 で続 発
性 無 月経 が 発 生 して い る と い う報 告4)も あ る.
ス ト レ ス,体 重(体 20.5
た,月
脂 肪)の
神 的 ・身 体 的
減 少,ホ
ル モ ン環 境 の 変
化 な ど が 考 え ら れ て い る.図20.8は,ス
ポ ー ツ選 手
の体脂 肪率 と月経異 常 率 との関 係 を示 した もので あ る 女 性 に は 月 経 と い う特 殊 な現 象 が あ り,ス 動 を 行 う う え で 大 き な 影 響 を 及 ぼ す.女 ポ ー ツ活 動 を 行 っ た 場 合,月 る.月
経 異 常 に は,初
続 日 数 の 異 常,経
ポー ツ活
性 が 激 しい ス
経 異 常 が 発 生 しや す くな
経 の 異 常,月
経 周 期 の 異 常,持
血 量 の 異 常 な どが あ る が,ス
発 来 遅 延(初
経 の 異 常)お
期 の 異 常)で
あ る.
図20.7は,激
よ び 続 発 性 無 月 経(月
常 は,シ
ー ズ ン オ フや 引 退 後 な ど,活 動 の 中 止 や 活 動
経
経周
続 発 性 無 月 経 が 長 期 間続 く と,回 復 が 難 し く な る ば か りで な く,卵
巣 か ら の 卵 胞 ホ ル モ ン(エ
の 分 泌 が 抑 え ら れ,そ れ に よ り骨 塩 量 の 減 少 を き た し,
よ
の ト レー ニ ン
れ ば な ら な い. ま た,月
経 とい う定 期 的 な 出血 の あ る 女 性 が ス ポ ー
グ 開 始 時 期 と初 経 発 来 年 齢 と の 関 係 を調 べ た も の で あ
ツ 活 動 をす る場 合,貧
る.A群
必 要 が あ る.
で は,初
ス トロ ゲ ン)
骨 粗 鬆 症 や 疲 労 骨 折 を招 く原 因 と な る の で 注 意 し な け
し い ス ポ ー ツ を行 っ て い るA群,お
び 比 較 的 軽 い ス ポ ー ツ を行 っ て い るB群
脂 肪 率 が 低 い ほ ど 月経 異 常 率 が 高 く,体 脂 肪 の
増 加 に 伴 い 月 経 異 常 が 減 少 す る 傾 向 に あ る11).月 経 異
量 の 減 少 に よ っ て 機 能 が 回 復 す る場 合 が 多 い.し か し,
ポーツ
活 動 と の 関 わ り に お い て と くに 問 題 と な る の は,初
が,体
経 発 来 前 に ト レー ニ ン グ を 開 始 し た
血 液 は,赤
血 球,白
血 に も大 き な 関 心 を も っ て お く
血 球,血
小 板 な どの 有 形 成 分 と
血 漿 と よ ば れ る液 体 成 分 か ら な り,体 重 の お よ そ1/13 を 占 め て い る.な
か で も赤 血 球 は,そ
の 蛋 白成 分 の
97%を
占 め るヘ モ グ ロ ビ ンが 酸 素 運 搬 の 役 割 を す る の
で,ス
ポ ー ツ活 動 と非 常 に 関 わ りが 深 い.貧
血 は,こ
の 赤 血 球 の 数 が 減 っ た り,ヘ モ グ ロ ビ ンの 濃 度 が 低 下
図20.7
ト レー ニ ン グ 開 始 時 期 と 初 経 発 来 年 齢11)
A群:激
し い ス ポ ー ツ 実 施 群,B群:軽
ポ ー ツ実 施 群.
いス 図20.8
体 脂 肪 率 と 月経 異 常 率 と の 関 係11)
表20.3
表20.4
貧 血 の 成 因10
貧血 に よ る 循 環 器 系 の 変 化10
図20.9 鉄 欠 乏 性 貧 血 の 進 行10
した 状 態 を い う.し
た が っ て,貧
血 時 に は体 内へ の酸
素 供 給 量 が 不 足 し,運 動 が 制 限 され る こ とに な る. 貧 血 は そ の 成 因 か ら 表20.3に され るが,一
鉄 欠 乏 性 貧 血 は 図20.9に
示 され る よ うに分 類
般 的 に 鉄 欠 乏 性 に よ る 貧 血 が 多 い.ス
夫 も,貧 血 を 予 防 す る う え で 大 切 な こ とで あ る.
ポ
て 表 面 化 す る.こ
示 され る よ うな経 過 を経
の こ とか ら,ヘ
モ グ ロ ビ ン濃 度 が 低
下 し て い な くて も,血 清 フ ェ リ チ ン値 の 低 い潜 在 性 鉄
ー ツ 選 手 の 貧 血 も鉄 欠 乏 性 貧 血 が ほ と ん ど で あ る.ま
欠 乏 状 態 に あ る こ と も 考 え ら れ る の で,と
た,わ
ス ポ ー ツ選 手 は,常
が 国 の ト ッ プ ア ス リ ー ト400名 の メ デ ィ カ ル チ
ェ ッ ク の 結 果 に よ る と,貧 つ 者 は,男
血 あ るい は 貧 血 の 既 往 を も
子 選 手 で6.5%,女
子 選 手 で25.8%で
成 人 の 鉄 欠 乏 性 貧 血 の 頻 度(男 ∼10%)と
子:約3%,女
収不
全,損
失 量 の 増 加 な どが 原 因 と な る.そ
の 症 状 と して
は,疲
労 感,倦
切 れ,心
進 な ど が あ り,循 化 が 現 れ る.し
痛,息
環 器 系 に は 表20.4に
た が っ て,ス
悸亢
あ る よ うな変
ポ ー ツ活動 そ の ものが 苦
痛 と な り,運 動 能 力 も大 き く制 限 され る.
● 問
題
1. オ ー バ ー トレー ニ ン グの状 態 が も た ら さ れ る原 因 を運
び 組 織 の 鉄 欠 乏 性 状 態 の 補 正 を 行 う.鉄 間 程 度 で 赤 血 球 の 増 加 が み られ,2か
労,回
復,超
回 復 の 過 程 か ら説 明 しな さ
い. 2. よ り効 果的 な トレー ニ ング を実 現 す る ため に考 慮 しな け れ ば な らない トレー ニ ング の条 件 と 原則 をあ げ,そ れ ぞれ につ いて 説 明 しな さい. 3. 筋 疲 労 の 原 因 と して 考 え られ て い る 三 つ の 要 因 を あ げ,そ れ ぞ れ につ いて 説 明 しな さい. 4. オ ー バ ー トレー ニ ン グの二 つ の症 状 につ い て,そ れ ぞ
鉄 欠 乏 性 貧 血 の 治 療 と して は,鉄 剤 に よ る 血 液 お よ 剤 投 与 後1週
月程 度 で貧 血 の
改 善 が み られ る.食 生 活 の 面 に お い て も,偏 食 を避 け, 鉄 や 蛋 白 質,ビ
く必 要 が あ る.
動 負 荷,疲
ま い,頭
意 して お
子:5
現 状 が う か が え る.
怠 感,め
くに 女 性 の
あ り,
比 較 す る と ,ス ポ ー ツ 選 手 に 貧 血 が 多 い10)
鉄 欠 乏 性 貧 血 は,慢 性 的 な 鉄 の 摂 取 量 不 足,吸
に 貧 血 に 関 心 を もち,注
タ ミ ン類 が 不 足 す る こ と の な い よ う に
れ の特 徴 を説 明 しな さい. 5. オ ー バ ー トレー ニ ン グに 陥 らな い ため に留 意 し なけ れ ば な ら ない点 につ い て説 明 しな さい. 6. 発 育期 にあ る子 ど もに とっ て,な ぜ ト レー ニ ン グの し す ぎが よ くない の か,説 明 しな さい. 7. 女性 が ス ポー ツ活 動 を行 う場 合 に,月 経 異 常 や 鉄 欠 乏
心 が け る こ と が 重 要 で あ る.ま た,靴 底 に 衝 撃 吸 収 材 を
性 貧血 に と くに留 意 しな け れ ば な ら な い理 由 を説 明 し
入 れ る な ど,機
な さい.
械 的 溶 血 を極 力 防 ぐ よ う な 用 具 類 の 工
● 参 考 文 献 1) Fox, E. L.:筋
6-11,
グ リ コ ー ゲ ン貯 蔵 の 回 復.ス
(朝比 奈 一 男 監 訳,渡
ポー ツ生理学
部 和 彦 訳),pp.70-77,大
修 館 書 店,
2) Fox, E. L.:筋
と血 液 か ら の 乳 酸 の 除 去.ス
(朝比 奈 一 男 監 訳,渡
ポー ツ生理学
部 和 彦 訳),pp.77-83,大
野
因 協 力):運
動 に よ
ー チ ン グ ・ ク リ ニ ッ ク,
上 競 技 の発 育 ・発 達.陸
上 競 技 指 導 教 本-基
本 陸 上 競 技 連 盟 編),pp.55-72,大
修
学 女 子 長 距 離 ラ ンナ ー と月 経 異 常-'89全
大 学 女 子 駅 伝 出 場 の 日本 選 手 を 中 心 と して-.陸 究, 5 :32-37, 5) 梶 原 洋 子:女
140,大
修 館 書 店,1992. 茂 編 著,和田
年 女 性 と ス ポ ー ツ.女
学,pp.75-107,金 登:ス
13) 宮 下 充 正:年
14) 高 松
永
智:筋
疲 労 の 要 因.入
門
8) コ ーチ ン グ ・ク リニ ック編 集 部(河
・免 疫,ス
ポ
性 の た め の ス ポ ー ツ 医
・外 傷.女
性 の た め の ス ポ ー ツ 医
原 出 版,1992. 齢 に 応 じ た 体 力 づ く り.子
薫:パ
ど も の か ら だ,Ⅱ
京 大 学 出 版 会,1980.
ワー ア ップ 型 と バ ル ク ア ップ 型 の 筋 力 トレ ー 床 ス ポ ー ツ 医 学,8:753-760,1991.
薫:発
ニ ア 期 の 体 カ
育 期 に お け る運 動 能 力 の ト レ ー ニ ン グ((財)日
ト レ ー ニ ン グ.ジ
ュ
本 体 育 協 会 編),pp.
47-55,1996.
林 書 院,1997.
嶋 寛 之 編),pp.264-268,金
液
田 善 雄 編),pp.149-
原 出 版,1992. ポ ー ツ 障 害
学,pp.153-158,金
15) 高 松
ー バ ー トレー ニ ン グ.ス
ン グ に よ る疲 労 と感 染 症.コ
新 ス ポ ー ツ 医 学(黒
光 堂,1990. 登:若
ニ ン グ.臨
本 陸 上 競 技 連 盟 編),pp.127-
正信,松
運 動 生 理 学,pp.77-83,杏
.最
教 育 と か ら だ,pp.159-164,東
1991.
礎 理 論 編-((財)日
(黒 田 善 雄,中
日本
上競技研
性 の 性 機 能 と ト レー ニ ン グ.陸 上 競 技 指 導 教
本-基
貴:オ
11) 目 崎
12) 目 崎
館 書 店,1992. 4) 梶 原 洋 子:大
臓 諸 器 官 の ス ポ ー ツ 医 学.血
ー ツ と赤 血 球 152,文
宏:陸
礎 理 論 編-((財)日
7) 川 原
10) 河 野 一 郎:内
修館 書 店,
1982.
6) 勝 出
る 脳 の 疲 労 と ス ポ ー ツ 栄 養.コ 100:12-14,1997.
1982.
3) 伊 藤
1997.
9) コ ー チ ン グ ・ ク リ ニ ッ ク 編 集 部(川
ポ ー ツ医 学Q&AⅡ 原 出 版,1989.
野 一 郎 協 力):ト
レー ニ
ーチ ン グ ・ク リニ ッ ク,100:
16) 矢 部 京 之 助:ス ー チ 教 本 1994.
ポ ー ツ 活 動 に 伴 う 疲 労 と そ の 回 復.B級
〔前 期 用 〕((財)日
本 体 育 協 会 編)
,pp.114-122,
コ
索
あ
行
ア ク チ ン フ ィ ラ メ ン ト 1
引
運 動 不 足 病 107
加 齢 128
運 動 野 19,34
換 気性 作 業 閾値 71
運 動 療 法 116
冠循 環 58 緩 衝系 27
エ ァ ロ ビ ッ ク エ ク サ サ イ ズ 111
肝臓 37
衛 星 細 胞 51
γ運 動 ニ ュー ロ ン 19
ア ジ ソ ン 病 的 オ ー バ ー トレ ー ニ ン グ 144 ア セ チ ルCoA
40
ア セ チ ル コ リ ン 65
栄 養 補 助 食 品 104
ア デ ニ ル 酸 シ ク ラ ー ゼ 43
エ ス トロ ゲ ン 87
ア デ ニ レ ー ト キ ナ ー ゼ 22
エ ー テ ル ス ト レ ス 35,36
キ サ ンチ ンオ キ シ ダー ゼ 52,79 キ サ ンチ ンデ ヒ ドロゲ ナ ーゼ 79
ア デ ノ シ ン 一 リ ン酸 22
エ ネ ル ギ ー 源 142
樹状 突 起 15
ア デ ノ シ ン二 リ ン酸 21
エ ピ ネ フ リ ン 43
拮抗 筋 19
ア デ ノ シ ン三 リ ン酸 21,142
遠 心 性 神 経 15 エ ン ドセ リ ン-1
ア ド レ ナ リ ン 31,43
求心 性 神 経 15 求心 性 神 経 イ ンパ ル ス 34
66
ア ミ ノ酸 プ ー ル 41 ア ミ ン 作 動 性 神 経 37
黄 体 形 成 ホ ル モ ン 31,37
境 界域 高 血圧 117 狭心 症 117
ア ミ ン類 29
横 紋筋 1
虚血-再 還流 79
ア ラ ニ ン 41
オ キ シ トシ ン 31
起 立性 の 貧血 95
ア ラ ニ ン 回 路 37
オ ー バ ー ト レ ー ニ ン グ 141
ア ル ギ ニ ン ・バ ソ プ レ ッ シ ン 31
オ ー バ ー ユ ー ス 146
筋萎 縮 93,129 筋 エ ネ ルギ ー代 謝 136
ア ル ドス テ ロ ン 32
オ ー バ ー ロ ー ドの 原 則 141
α 運 動 ニ ュ ー ロ ン 17
オ レ キ シ ン 116
ア ン ギ オ テ ン シ ン Ⅱ 66 か
筋横 断 面 積 131 筋芽 細 胞 48 筋管 49 筋 グ リ コー ゲ ン 103
行
異 化 40
解 糖 40
筋血 流 量 63
閾 値 16 一重 項 酸 素 77
解 糖 系 21,71 解糖 系 酵 素 活性 3
筋小 胞 体 51 筋生 検 7
1回 換 気 量 54
海 馬 33
筋節(サ ル コ メア) 1
1回 拍 出 量 58,63,128 一 酸 化 窒 索 52 ,65
解 剖 学 的 断 面 積 10
筋節 数 123
カ イ ロ ミ ク ロ ン 41
遺 伝 子 の 多 型 性 139
拡 散 面 積 69
筋線 維 数 123 筋線 維 組 成 4,11,139
遺 伝 率 139
学 習 ・記 憶 33,36
イ ン ス リ ン 31,44
過 酸 化 脂 質 80
筋線 維 タ イプ 3 ― の推 定 7
イ ン ス リ ン 依 存 型 糖 尿 病 118
過 酸 化 水 素 77
筋線 維 の増 殖 13
イ ン ス リ ン 感 受 性 45
過 重 負 荷 の 原 則 141
イ ン ス リ ン 非 依 存 型 糖 尿 病 118
下 垂 体 前 葉 29
筋線 維 の 肥大 13,123 筋単 位 17
イ ン ス リ ン 様 成 長 因 子 31
下 垂 体 中 葉 29
筋断 面 積 124
イ ンパ ル ス 10
下 垂 体 門 脈 31 過 体 重 115
筋電 図 法 10 筋 の肥 大 13
運 動 昇 圧 反 射 34
カ タ ラ ー ゼ 81
筋パ ワー 9,124
運 動 処 方 106,108
褐 色 脂 肪 組 織 115
運 動 所 要 量 106,110
活 性 酸 素 52,77
筋分 化 制 御 因子 48 筋紡 錘 19
運 動 ス ト レ ス 33,36
活 動 電 位 の 伝 達,伝
運 動 性 貧 血 61
合 併 症 118 カ テ コ ラ ミ ン 29,35
運 動 単 位 10,17,125,131 ― の 同 期 化 10
搬 16
筋 ポ ンプ作 用 65 筋力 低 下 94 筋力 トレー ニ ン グ 12,125,131
過 負 荷 109
運 動 適 応 36
カ ー ボ ・ロ ー デ ィ ン グ 103
空 間的 加 算 17
運 動 ニ ュ ー ロ ン 130
カ ル パ イ ン 52
屈 曲反 射 19
屈筋 群 134 グ リコ-ゲ ン 22,40 グル カ ゴ ン 31,45
コル チ コ ステ ロ ン 46
触 媒作 用 29
コル チ コ トロ ピ ン放 出 因子 31 コル チ ゾ ー ル 32,46
初 経発 達 遅 延 147 除 脂肪 重 量 100
グ ル コ コ ルチ コイ ド 32,46,88
コ レス テ ロー ル 117
除 脂肪 体 重 116
グル コー ス 40 グ ル コー ス-ア ラニ ン回路 42 グ ル コー ス1-リ
ン酸 43
グル コー ス6-リ ン酸 43 グル コー ス トラ ンスポ ー ター 45 グ ル タチ オ ンペ ル オキ シダ ーゼ 81 ク レアチ ン 104 ク レアチ ンキ ナ ー ゼ 22 ク レアチ ン リ ン酸 21,142 血管 拡 張 因子 64 血管 新 生 69 血管 内皮 細 胞増 殖 因子 69 血管 平 滑 筋 65 月経 異 常 147 血漿 量 の 低 下 95
さ
自律 神 経 15 自律 神 経 系 43
行
サ イ ク リ ッ クAMP
43
最 高血 圧 117 最 高心 拍 数 128 サ イ ズの 原 理 18
侵 害 ス トレス 35 新 奇 ス トレス 36 心 筋 57 心筋 梗 塞 117
最大 下運 動 110 最大 換 気 量 128
神経 系 の 抑制 10 神経 細 胞 15
最大 骨 量 132 最大 酸 素 摂取 量 68,95,121,128,
神経 支 配 比 18 神経 性 29
137,139 最大 毎 分 換 気 量 56 最低 血 圧 117 細動 脈 67 サ ル コ メ ア 1
―
の 因子 10
―
の 調節 55
神経 伝 達 物 質 43 神経 内分 泌 29
酸化 系 酵 素 活性 3
心 臓 血 管 中枢 34 心臓 交 感 神経 59
酸化 的 リ ン酸 化 23,40
伸張 性 収 縮 9,96
血流 配分 63
酸化 防御 系 81 酸素 解 離 曲線 69
浸透 圧 ス トレス 35 心拍 出量 63,118,128
ケ トー シス 119
酸素 ス トレス 78
心 拍数 63 心 房性 ナ トリウム 利 尿 ホ ルモ ン 31
血 中GCレ 血糖 40
ベ ル 37,38
ケ トン体 42,119 ゲ ル ゾ リ ン 52
時 間 的加 算 17
健康 関連 体 力 110
磁 気共 鳴 映 像 法 7,10
随意 運 動 15
健康 づ く り 108
磁 気共 鳴 分 光 法 7 持 久性 トレー ニ ング 13,24,66
随 意最 大 筋力 12 ス テ ロ イ ドホ ルモ ン 29
交感 神 経 15,43
軸索 15 軸索 丘 16
ス ト レス 32 ス トレス 関連 ホ ルモ ン 33
軸索 伝 導 速 度 18
ス ーパ ー オ キ シ ド 77
交感 神 経 系 64 交感 神 経 節 34 高血 圧 117 高脂 血 症 117 甲状 腺 刺 激 ホ ルモ ン 33 拘 束 ス トレス 35,36 酵 素 組 織 染 色法 2 高地 順 応 91 好 中球 79 興 奮 収 縮 連 関 1 興 奮 性 伝 達物 質 17 抗 利 尿 ホ ル モ ン 101 呼吸 筋 57 呼吸 数 54 呼吸 中枢 55 呼 吸 の 化 学調 節 56 骨格筋 1 骨格筋線維 1 骨 芽 細 胞 86 骨 細 胞 86 骨 折 危 険 閾値 132 骨 粗 鬆症 132
刺激 伝 達 系 58 自己 分泌〓 旁 分泌 29 脂 質 23 脂質 代 謝 41 脂 質ペ ル オキ シ ド 80
ス ー パ ー オ キ シ ドデ ィ ス ム ター ゼ 81 ス プ リン ト トレー ニ ング 13,26 ス ポー ツ心臓 60 ず り応 力 65
視床 35 視床 下 部 31,46 視床下 部 外側 野 116
生活 習 慣 病 107,115 静 止膜 電 位 16
視 床 下 部-下 垂 体-副 腎皮 質 軸 29
成 人病 115
視床 下 部-自 律 神 経-副 腎 髄 質軸 29
性 腺 刺 激 ホ ルモ ン放 出 因子 31 成長 促 進 のGH仮 説 37
視床 下 部 腹 内側 核 115
成 長促 進 のIGF-Ⅰ 仮 説 37
膝蓋 腱 反 射 19 室 周 核 32
成長 ホ ルモ ン 46,96 成長 ホ ルモ ン放 出 ホ ル モ ン 46
室傍 核 35 シナ プス 16
静 的収 縮 9 青斑 核 35
脂 肪 分 解 作 用 37,44
生物 学 的 半減 期 29
周 皮 細 胞 67 修 復 再 生 機構 81
生理 学 的 断面 積 10 赤 血球 68
主観 的 尺 度 112
―
の 脆弱 性 61
骨 密 度 94 骨 量 94
受 容 体 43 情 動 37
赤血 球 膜 の浸 透 圧 抵抗 61 摂 食 中枢 116
固有 筋 力 11
小 動 脈 66
固有 心 筋 57 コ リ回路 42
小脳 20 食事 療 法 116
絶対 筋 力 11 セ ル ロ プ ラス ミン 82 セ ロ トニ ン 37
線 維 芽 細胞 増 殖 因子 69
動 的収 縮 9
全 か無 か の法 則 16
糖 尿 病 118
ピル ビ ン酸 22,42
潜 在性 鉄 欠乏 状 態 148 全 身循 環 58
洞 房 結 節 58
全 末 梢 血管 抵 抗 118
特 異 的 受 容 体 29
不 均 化 反 応 81 副 交 感 神経 15
特 殊 心 筋 57
副 甲状 腺 ホ ルモ ン 87
疲 労 物 質 142
動 脈 硬 化 117
早 期 専 門化 147
ト ッ プ ア ス リー ト 134
増 殖 123
ドー パ ミ ン 66
相 反 神 経支 配 19 続 発性 無 月経 147
ト リ グ リ セ リ ド 41
速 筋線 維 2 ソマ トス タチ ン 37,44
ト レー ニ ン グ の 原 則 142
粗 面 小胞 体 80 た
行
体 液性 29 ― の調 節 55
副 腎 髄 質 43 副 腎 皮 質刺 激 ホ ル モ ン 32,46 副 腎 皮 質 刺激 ホ ルモ ン放 出 ホ ルモ ン
ト レー ニ ン グ 効 果 36
46 不 対 電子 77 不 妊 症 37
ト レー ニ ン グ の 条 件 142 な
不 飽和 脂 肪 酸 80 フ リー ラ ジ カル 77 プル キ ンエ 線維 網 58
行
内 皮 細 胞 66
フル ク トー ス 102
内 分 泌 系 29
プ ロテ イ ンキ ナ ーゼA 43
胎 児期 122
ニ ー ド ル バ イ オ プ シ ー(筋
体 脂肪 率 100,115 代 謝性 ア シ ドー シス 27
7
プ ロ ラ クチ ン 33 分 岐鎖 ア ミノ酸 41
乳 酸 65,143
分 時 最大 換 気量 56
代 謝調 節 系 115
乳 酸 性 作 業 閾 値 33,71 ニ ュ ー ロ ン 15
体 水 分 量 101 体 性 神 経 15 耐 糖 能 118 大 脳 基 底核 20,35
生 検)法
認 知 調 節 系 116
平滑 筋 1 閉経 132
タイ プ グル ー ピ ング 129
熱 障 害 102
β-エ ン ドル フ ィ ン 33 ペ プチ ドホ ルモ ン 29 ペ ル オキ シラ ジ カル 80
多重 神 経 支配 124
熱 放 散 101
辺 縁 系 35
脳 幹 35
房 室 結 節 58
脳 幹 網 様 体 35
補助 呼 吸 筋 54 ホ スホ リパ ーゼA2 52
熱 産 生 101
脱 分 極 16 単 一 神 経支 配 124 短 縮 性 収縮 9 蛋 白質 代謝 41
脳 梗 塞 117 脳 内CRH
37
遅 筋 線維 2 中 枢 神経 系 15
ノ ル ア ド レナ リ ン 31,37,43
中 枢疲 労 143
ノ ル エ ピ ネ フ リ ン 43,65
超 音 波法 9 超 回 復 141
ノ ル ア ド レナ リ ン作 動 性 神 経 35
は
ホス ホ リラ ーゼa 43 ポ リモ ー ダ ル受 容器 34 ホ ルモ ン 29,43 ポ ワ ズイユ の 法 則 64 本 態性 高血 圧 117
行
ま
行
超 日 リズ ム 37
%areaFT線
跳躍 伝 導 17
%FT線
低酸 素 71,91
肺 循 環 系 58 ハ イ ブ リ ッ ドフ ァ イ バ ー 3
低 酸素 血 症 91
肺 胞 換 気 量 54
低 分子 化 合 物 82 適応 性 うつ病 37 鉄 欠乏 性 貧 血 148
破 骨 細 胞 86 バ セ ドー 病 的 オ ー バ ー ト レ ー ニ ン グ
満 腹 中枢 115
144
電解 質 101
バ ソ プ レ シ ッ ン 66
ミオ グ ロ ビ ン 69 ミオ シ ン重鎖 3
電気 泳 動 法 3 伝 達 物 質 16
発 火 頻 度 18 バ リ ン 40
ミオ シ ン フ ィラ メ ン ト 1 ミク ロ ソー ム 80
維
11
維 11
毎 分換 気 量 56 膜 入力 抵 抗 18 末 梢血 管 抵 抗 64 末 梢神 経 系 15
バ ー ン ア ウ ト 147
ミ トコ ン ドリア 23,80
反 射 運 動 15
ミ トコ ン ドリアDNA
糖 質代 謝 40 等 尺性 最大 筋 力 11
非 酵 素 的 防 御 系 82
ミネ ラ ル 99 ミネ ラ ル コルチ コ イ ド 32
等 尺 性 収縮 9
微 小 重 力 環 境 93
動 静 脈 血酸 素 較 差 69,128 糖 新 生 41
ビ タ ミ ン 99
無 月経 37
ヒ ド ロ キ シ ラ ジ カ ル 77
等 速性 収縮 9 等 張性 収縮 9
肥 満 115
無 酸 素性 作業 閾 値 121 無 髄 線 維 16
同化 40
肥 満 遺 伝 子 31,115
139
免 疫組 織 染 色 法 3 毛 細 血管 25,67
リ モ デ リ ン グ 86
抑 制性 伝 達物 質 17
リ ン 脂 質 117
予 防 的抗 酸化 物 81
毛 細 血管 密 度 68 モ デ リン グ 86
ら
モ ー メ ン トア ー ム 11 や
陽性 変時 ・変 力作 用 34
励 起 状 態 78
行
レ プ チ ン 31,115
ラ ジカ ル 78
行
ロ イ シ ン 41
力学 的 ス トレス 94
有 酸 素運 動 111 有 髄線 維 16
欧 46
文 索
引
GH分
泌 37
NADH
GRH
37,46
NADPHオ
キ シ ダー ゼ 79
21
GRH神
経 32
NIDDM
118
31,101
GSH-Px
ADH
101
ADP ANP AT
老 化 128
リポ蛋 白質 41 リポ蛋 白 リパ ーゼ 117
遊 離脂 肪 酸 41
ACTH
レ プ チ ン 抵 抗 性 114
ラジ カ ル連鎖 反応 82
81
NMR
71
ATP
21,71,142
ATPase
2
ATP-PCr系 AVP
21
31,34,35,36
AVP神
134
NO
65
HDL
41
His束
58
ob遺
伝子
HO'
77
OT
31,35
homeostasis HRmax
経 32
75
41
128
PCr
21,72
PFK活 Bohr効
果 69
Ca2+-ATPase CAT
51
c-fos原
癌 遺 伝 子(mRNA) contraction
35 9
82,142
CRH
118
PHV
IGF-I
31,37
PRL
イ ブ リ ダ イ セ ー シ ョ ン法
35
concentric CP
IDDM in situハ
81
31,34,35,36,46
CRH-ACTH分
IPSP
性 23 122 33
PTH
87
PVN
35
17
isokinetic contraction
9
resistance
isometric
9
ROS
77
RPE
112
contraction
isotonic contraction
9
受 性 37
LBM
100
S 17
CRH神
経 32,35
LBW
116
SOD
81
SRIF
37
de novo合
成 83
dynamaic
contraction
9
eccentric
contraction
9
LDL
41
LH
31,37
LHRH
17
LOO'
ST線
維 12
経 32,37
SV
128
17
80
41
FGF
69
mechanostate理
FI 17
METS
FR
17
MHC
FT線
維 12
MRI
7,10,134
MRS
7,134
G蛋
白 質 43
GER GH
TCA回
117
112 3
MVC NA
TSH
41
論 88
33
VEGF
69
VLDL
41
VT
71
weight-bearing
12
102 33,37,46
路 23,40
TG
LT 33,71
FFA
9
80
LOOH LPL
static contraction
31
LHRH神
FF
exercise 87
泌 応 答 37
CRH感
EPSP
115
31
XDH
79
XOD
79
exercise
87
編著者略歴 勝 田 茂 1936年 千葉県 に生 まれ る 1959年 東京教育大学体 育学部健康学科卒業 現 在 筑波大学体育科学系 教授 ・医学博士 主な著書 登 山生理学(逍 遙書 院) 最新スポー ツ医学(共 著 ・文光 堂) 入門運動生理学(編 著,杏 林書 院)
運 動 生理 学20講 第2版 1993年4月10日 1999年4月10日 2008年3月20日
初
定価 は カバー に表示
版 第1刷
第2版 第1刷
第9刷
編著者 勝
田
発行者 朝
倉
発行所 会 株社 式朝
茂 邦 倉
造
書
店
東 京 都 新 宿 区 新 小 川 町6-29 郵
便
電 FAX
〈 検 印省略 〉
978-4-254-69032-3
号
162-8707
03(3260)0180
http://www.asakura.co.jp
C1999〈 無 断 複写 ・転 載 を禁 ず 〉 ISBN
番
話03(3260)0141
教 文 堂 ・渡 辺 製 本 C3075
Printed
in Japan