マル チボディ ダイナ ミクス の
基 礎 方程式の立て方 3次元運動
Fundamentals
of
Multibody
Dvnannics 田島 洋
東京電機大学出版局
MATLABは
米 国The
MathWor...
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マル チボディ ダイナ ミクス の
基 礎 方程式の立て方 3次元運動
Fundamentals
of
Multibody
Dvnannics 田島 洋
東京電機大学出版局
MATLABは
米 国The
MathWorks,Inc.の
は 登 録 商 標 で す 。 本 文 中 で は,TMお
米 国 な らび に その 他 の 国 にお け る商 標 また
よ び 〓 マ ー ク は 明 記 して い ま せ ん 。
本 書 の 全 部 ま た は一部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す るこ とは,著 作権 法 上で の例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます 。小 局 は,著 者 か ら複 写 に係 る 権 利 の 管 理 につ き委託 を受 けて い ます の で,本 書 か らの複 写 を希 望 され る場 合 は,必 ず 小 局(03-5280-3422)宛 ご連絡 くだ さい。
まえが き マ ル チ ボ デ ィダ イ ナ ミク ス は,力 学 の 一 分 野 と して 認 め られ る まで に成 長 して き た。 ボ デ ィ とは 剛体 や 弾 性 体 な ど質量 の あ る要 素 で,車 両 や ロ ボ ッ トな ど多 く の 機 械 は,そ
の よ うな 要 素 が 複 数 集 ま り,ピ ン ジ ョイ ン トや バ ネ な どの 結 合 要 素
に よ っ て 結 ば れ た マ ル チ ボ デ ィ シス テ ム で あ る 。 マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ ク ス の研 究 は1960年
代 の 後 半 か ら発 達 し始 め た とい わ れ て い る が,研 究 活 動 は今 日 ま す
ます 盛 ん で,実 用 化 も急 速 に進 ん で い る。 これ ま で の研 究 活 動 が 生 み 出 した 大 き な成 果 の 一 つ は,汎 用 性 の高 い マ ルチ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス の 計 算 ソ フ トで,有 限 要 素 法 の 計 算 ソ フ トに 次 い で機 械 のR& Dに 用 い られ る よ う に な っ て き た 。 た だ し,市 販 の 汎 用 ソ フ トを 買 っ て きて 単 純 に 使 うだ け で,機 械 のR&Dが
う ま くゆ くわ け で は な い。 信 号 伝 達 の 仕 組 み
を知 ら な くて も使 え る 電 話 とは 違 っ て,基 礎 に な っ て い る力 学 を 理 解 した 上 で 目 的 に応 じた 技 術 の使 い 分 け が重 要 で あ る 。 一 方,マ
ルチ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス の発 展 と と もに進 歩 し,認 識 が 高 ま っ て きた
力 学 の技 術 は,マ ル チ ボ デ ィダ イナ ミク ス を意 識 しな くて も基 本 的 で あ る。 マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス の 基 礎 は 機 械 力 学 の 基 礎 と重 な っ て い る 。 本 書 の 目的 は, 機 械 力 学 の 最 も基 本 的 とい え る 部 分 を分 か りや す く解 説 す る こ と で あ る。 本 書 に は二 つ の キ ャ ッチ フ レー ズ が あ る。 まず,第 一 は 「は じめ か ら 3次 元 」 で あ る 。 高 度 に技 術 が 発 達 した 今 日,ロ ボ ッ トや 車 両 の 3次 元 運 動 を 表現 し,解 析 で き る こ とは 当然 の こ と と考 え た い 。 コマ の興 味 深 い 現 象 は 2次 元 で は 考 え ら れ な い し,二 輪 車 の 安 定 性 の 問 題 も 2次 元 で は 調 べ る こ とが で き な い。 2次 元 は 3次 元 の 基 礎 と思 い が ち だ が,3 次 元 は 2次 元 の 単 純 な延 長 で は な い 。 そ して , まず 2次 元 か ら と考 え て い て は,3 次 元 を 学 ぶ タ イ ミ ン グ を逃 して し ま う。 逆 に,3 次 元 が 理 解 で き れ ば,2 次 元 は 簡 単 で あ り,2 次 元 だ け の た め に 時 間 を 掛 け る の は もっ た い な い。 第 二 の キ ャ ッチ フ レー ズ は 「さ ま ざ ま な 運 動 方 程 式 の立 て 方 」 で あ る。 運 動 方 程 式 に は様 々 な 立 て 方 と様 々 な形 が あ る。 そ れ ら を学 ぶ こ とは,力 学 の 理 解 を 深
め る こ と に 繋 が り,幅 広 い応 用 力 を習 得 す る こ と に な る。 伝 統 的 な解 析 力 学 は抽 象 的 で 難 解 な 印象 が 強 い が,本 書 の 説 明 は具 体 的 で あ り,十 分 整 理 され て い る。 また,マ
ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス の 発 達 と と も に重 要 視 さ れ る よ う にな っ て きた
ニ ュ ー フ ェー ス 的 な力 学 原 理 も解 説 し,運 動 方 程 式 に関 わ る 高 度 な技 術 の 説 明 も あ る 。 本 書 の 主 要 な 目的 は 運 動 方 程 式 の立 て 方 で あ る。 マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス の 発 達 が もた ら した技 術 に は力 学 の 側 面 と数 値 計 算 技 術 の 側 面 が あ る と考 え られ る が,本
書 は 力 学 の 側 面 を 主 対 象 と した もの で あ
る 。 しか し,運 動 方 程 式 が 立 て られ る よ う に な れ ば,そ
れ を 用 い て 計 算 機 シ ミュ
レー シ ョ ンを 試 した くな る。 そ こ で 本 書 で は,MATLABを
用 いた順動力学 の数
値 シ ミ ュ レー シ ョ ンプ ロ グ ラ ム の事 例 を準 備 した。MATLABは,少
な い プ ログ
ラ ミ ン グ負 荷 で 本 書 の技 術 を試 す こ との で きる便 利 な環 境 を提 供 し てい る。 常微 分 方 程 式 求 解 用 の 組 み 込 み 関 数 を利 用 し,運 動 方 程 式 の情 報 な ど を プ ロ グ ラ ミ ン グす れ ば,容
易 に シ ミュ レー シ ョ ンを 実 行 で き る。 本 書 で 取 り上 げ た事 例 は,順
動 力 学 シ ミュ レー シ ョンの 入 門用 か ら最 近 の 高 度 な技 術 まで 幅 広 い 内容 を含 んで い て,幅 広 い 読 者 に役 立 つ よ う に 配慮 して あ る 。 初 学 者 も 自作 の課 題 を シ ミ ュ レ ー シ ョン で き る よ うに な るの で,本 書 を学 ぶ 楽 しみ は 大 きい はず で あ る 。 筆 者 は,機 械 メ ー カー の 研 究 部 門 で,マ
ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス の 汎 用 プ ロ グ
ラ ム を 開 発 し,社 内 に 普 及 させ た 経 験 が あ る。 ま た,大 学 で 本 書 の 内 容 を 講 義 し,豊 富 な 内 容 の た め 厳 しい授 業 なが ら,分 か りや す さ を追 及 して教 育 効 果 を挙 げ て い る 。研 究 活 動 にお い て も,実 際 問題 に必 要 な 新 しい 技 術 の 開 発 を進 め て い る 。 本 書 は,そ 一 方,本
れ らの 活 動 か ら得 られ た様 々 な技 術 と経 験 を も とに して い る。
書 は 時 代 に即 した 新 しい 力 学 教 育 へ の 改 革 を 目指 した 試 み で もあ る。
マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス は特 殊 な専 門分 野 で は な く,機 械 力 学 の 現 代 版 で あ る と と もに,基 礎 的 な学 術 で あ る。 本 書 の 内 容 は,半 年 2単 位 の 講 義 に は多 す ぎる し,難 易 度 も低 くは な い か も しれ な い。 しか し,筆 者 は,内 容 の 取 捨 選 択 と講 義 の 進 め 方 を 工 夫 しな が ら,本 書 の よ うな 内容 を学 部 の2,3年 が,他
生 か ら教 え る こ と
の 科 目の 学 習 に も よい 影 響 を与 え る と感 じて い る。 内 容 的 に重 複 の あ る他
の 科 目 と の調 整 を行 い,全 体 で 一 年 間,あ
る い は,そ
れ 以 上 の 期 間 に わ た る講 義
体 系 を考 え る こ と も意 義 が 大 きい と思 わ れ る。 2006年
9月 田 島
洋
次
目 ま え が き ⅲ 本 書 の 構 成 と学 び 方 ⅹⅲ 記 号 な ど の ル ー ル ⅹⅹ 独 自色 の 強 い 事 項 に つ い て ⅹⅹⅶ
序 章 マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ ク ス と は
1
第Ⅰ 部 数 学 の 準 備
1章
9
行 列 の 復 習
1.1 行,列,行
11
列 の サ イ ズ(大
1.2 ゼ ロ行 列,正
方 行 列,長
方 行 列,対
ス カ ラ ー 行 列,上(下)三 1.3 ブ ロ ッ ク 行 列,対
き さ),列
行 列,行
行 列
角 行 列,単
11
位 行 列,
角 行 列
角 ブ ロ ッ ク,ブ
12
ロ ッ ク対 角 行 列,ブ
ロ ッ ク上(下)
三 角 行 列
14
1.4 行 列 の 等 値 性,行
列 の 和 と積,ブ
ロ ッ ク行 列 の 和 と積,
行 列 の ス カ ラ ー積 1.5 行 列 式,小
行 列 式,逆
1.6 転 置 行 列,対 1.7 固 有 値,固
15 行 列
称 行 列,交
有 列 行 列,対
代 行 列(歪
18 対 称 行 列)
角 変 換
20 21
1.8 行 列 の トレ ー ス
23
2 章 列 行 列 を 変 数 と す る 関 数 の 微 分
25
2.1 行 列 が ス カ ラ ー t(時 間)の
26
関 数 に な っ て い る場 合
2.2 ス カ ラ ー sが 列 行 列 vの 関 数 に な っ て い る場 合
27
2.3 列 行 列 fが 列 行 列 vの 関 数 に な っ て い る 場 合
28
2.4 2階 時 間微 分
30
2.5 積 分 可 能 条 件
32
2.6 ヤ コ ビ行 列 の 時 間 微 分
34
2.7 ニ ュ ー ト ン ・ラ フ ソ ン法
35
3 章 3次 元 空 間 の 幾 何 ベ ク トル
38
3.1 幾 何 ベ ク トル の 概 念
38
3.2 3次 元 幾 何 ベ ク トル の基 本 的性 質
39
3.3 右 手 直 交 座 標 系
40
第 Ⅱ部 運動力学に関わる物理量の表現方法 と運動学 の基本的関係
43
4章 自 由 な 質 点 の 運 動 方 程 式 と そ の 表 現 方 法
45
4.1 ニ ュー トンの運動 方程 式
45
4.2 位 置 を表 す 変数(幾 何 ベ ク トル表現 と代 数ベ ク トル表現)
46
4.3 運動 学 的物 理量 の オブザ ーバ ー
48
4.4 速度,作 用 力,慣 性力
49
4.5 順動 力学解 析 の事 例:質 点 の放物 運動
51
5章 自 由 な 剛 体 の 運 動 方 程 式 と そ の 表 現 方 法
59
5.1剛
59
体 の運 動 方程 式
5.2 オ イ ラーの 運動 方程式
60
5.3 剛体 の 運動 方程 式 に関連す るその他 の事 項
64
6章 外 積 オ ペ レ ー 夕 ー,座
66
標 変 換 行 列
6.1 外積 オ ペ レー ター
66
6.2 座標 変換 行 列
68
7章 3次 元 剛 体 の 〓 転 姿 勢 と そ の 表 現 方 法
70
7.1 Simple Rotation(単 純 回転)
71
7.2 回転 行列
72
7.3 オ イ ラー角
73
7.4 オイ ラーパ ラメー タ
76
8章 位 置,角
速 度,回
8.1 位 置の 三者 の 関係
転 姿 勢,速
度 の 三 者 の 関 係
79 79
8.2 角 速 度 の 三 者 の 関 係
80
8.3 回転 姿 勢 の 三 者 の 関 係
81
8.4 速 度 の 三 者 の 関 係
82
9章
84
3次 元 回 転 姿 勢 の 時 間 微 分 と 角 速 度 の 関 係
9.1 回 転 行 列 の 時 間 微 分 と角 速 度 の 関 係
85
9.2 オ イ ラ ー 角 の 時 間微 分 と角 速 度 の 関 係
85
9.3 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タの 時 間 微 分 と角 速 度 の 関 係
87
9.4 順 動 力 学 解 析 の 事 例:近 拘 束 さ れ た コ マ(オ
似 ボ ー ル ジ ョイ ン トで 支 点 を近 似 的 に
イ ラ ー 角 の 利 用)
9.5 順 動 力 学 解 析 の 事 例:近 拘 束 さ れ た コマ(オ
似 ボ ー ル ジ ョイ ン トで 支 点 を 近 似 的 に
イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 利 用)
9.6 順 動 力 学 解 析 の事 例:近 拘 束 さ れ た コマ(オ
10章
88
94
似 ボ ー ル ジ ョイ ン トで 支 点 を 近 似 的 に
イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 拘 束 安 定 化 法)
2次 元 の 代 数 ベ ク トル 表 現
97
100
10.1 2次 元 問 題 の 3次 元 表 現 に よ る 取 り扱 い
100
10.2 2次 元 問 題 の 2次 元 表 現 に よ る 取 り扱 い
101
11章
103
運 動 学 の 事 例
11.1 剛 体 振 子 と 3次 元 二 重 剛 体 振 子
103
11.2 ジ ャ イ ロ セ ンサ
108
11.3 3次 元 三 重 剛 体 振 子
109
第 Ⅲ部 動力学の基本事項 12章 力 と トル ク の等 価 換 算,三 質 点 剛体,慣 性 行 列 の性 質, 質 点 系,剛 体 系
115 117
12.1 力 と トル ク の 等 価 換 算
117
12.2 三 質 点 剛 体
118
12.3 慣 性 行 列 の 性 質
123
12.4 質 点 系
124
12.5 剛 体 系
126
13章
自 由 度,一
般 化 座 標 と 一 般 化 速 度,拘
束,拘
束 力
13.1 自 由 度 13.2 ホ ロ ノ ミ ッ ク な系,シ
131 131
ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系
133
13.3 シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 の 事 例
134
13.4 一 般 化 座 標
136
13.5 一 般 化 速 度
137
13.6 拘 束
140
13.7 拘 束 力
147
13.8 拘 束 系 の 運 動 方 程 式
148
14章
運 動 量 と 角 運 動 量,運
動 エ ネ ル ギ ー と 運 動 補 エ ネ ル ギ ー
151
14.1 運 動 量
151
14.2 角 運 動 量
153
14.3 剛 体 系 の 運 動 量 と角 運 動 量
154
14.4 運 動 量 原 理
156
14,5 剛 体 系 の 運 動 量 原 理
158
14.6 運 動 エ ネ ル ギ ー と運 動 補 エ ネ ル ギ ー
161
14.7 剛 体 系 の 運 動 エ ネ ル ギ ー と 運 動 補 エ ネ ル ギ ー
164
第 Ⅳ 部 運 動 方 程 式 の 立 て 方
167
15章
169
拘 束 力 消 去 法
15.1 順 動力 学 解析 の事 例:ボ ール ジ ョイ ン トで支点 を拘 束 され た コマ
169
15.2 質点系 の拘束 力消 去法
176
15.3 剛体系 の拘束 力消 去法
176
15.4 拘 束 力消 去法 の特 徴 な ど
177
16章 ダ ラ ン ベ ー ル の 原 理 を 利 用 す る 方 法
180
16.1 拘 束 質点 系(ホ ロ ノ ミックな系 の場 合)
180
16.2 事 例:剛 体振 子
183
16.3 拘 束 質点 系(シ ンプル ノ ンホ ロノ ミックな系 の場合)
185
16.4 事 例:舵 付 き帆掛 け舟
186
16.5 拘 束 剛体 系
187
16.6 裏 の 表 現
188
16.7 滑 ら か な拘 束
189
16.8 時 間 を止 め る 意 味
190
16.9 事 例:時
191
17章
間 の 関 数 と して 支 点 を動 か す 剛 体 振 子
仮 想 パ ワ ー の 原 理(Jourdainの
原 理)を
利 用 す る 方 法
193
17.1 拘 束 質 点 系
193
17.2 拘 束 剛 体 系
196
17.3 裏 の 表 現,滑
らか な 拘 束,時
間 を 止 め る意 味,特
徴 な ど
197
17.4 ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 に 関 す る 補 足
198
17.5 事 例:ボ
200
18章
ー ル ジ ョイ ン トで 支 点 を拘 束 され た コ マ
ケ イ ン 型 運 動 方 程 式 を 利 用 す る 方 法
202
18.1 質 点 系 の ケ イ ン型 運 動 方 程 式
202
18.2 剛 体 系 の ケ イ ン型 運 動 方 程 式
203
18.3 裏 の 表 現
204
18.4 運 動 方 程 式 の 作 り方
205
18.5 運 動 方 程 式 の 標 準 形
206
18.6 速 度 変 換 法
207
18.7 事 例:転
209
19章
動 球
拘 束 条 件 追 加 法(速
度 変 換 法)
213
19.1 拘 束 条 件 追 加 法 の 導 出
214
19.2 拘 束 条 件 追 加 法 の 適 用 手 順 と特 徴
216
19.3 順 動 力 学 解 析 の 事 例:操
218
縦 安 定 性 の た め の 二 輪 車 モ デ ル
19.4 順 動 力 学 解 析 の 事 例:3 次 元 三 重 剛 体 振 子
224
20章
233
微 分 代 数 型 運 動 方 程 式
20.1 独 立 な拘 束 力 を 未 知 数 に加 え た 連 立 一 次 方 程 式
233
20.2 ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 の 利 用
235
20.3 拘 束 剛 体 系 の 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式
237
20.4 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 の 特 徴 と数 値 解 法 に 関 わ る技 術
239
20.5 順 動力 学解析 の事例:ボ ー ル ジ ョイ ン トで支 点 を拘 束 され た コマ(微 分代 数 型運 動方程 式 を疎行 列用 の数値 解法 で解 く事 例)
243
20.6 順 動力 学解析 の事例:簡 単化 した 2次元 サス ペ ン シ ョンモ デ ル
245
21章 木 構 造 を 対 象 と した 漸 化 式 に よ る 順 動 力 学 の 定 式 化
254
21.1 木構 造
255
21.2 運 動学 の漸 化計 算表 現
259
21.3 剛 体系 の ケ イ ン型 運動方 程式
263
21.4 動力 学 的 に加 速 度 を求 め るための漸 化 的方法
264
21.5 順 動力 学解析 の事例:3 次元 三重 剛体振 子(漸 化 的方 法)
266
22章 ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 を 利 用 す る 方 法
273
22.1 ラグ ラ ンジュ の運動 方程 式
274
22.2 ラ グラ ンジ ュの運動 方程 式 の使 い 方
277
22.3 事例:時 間の 関数 として支点 を動 かす剛 体振 子
279
22.4 循 環座標,変 数変換 によ る不 変性,ラ グ ラ ンジア ンの任 意 性
280
23章 ハ ミ ル トン の 原 理 を 利 用 す る 方 法
285
23.1 ハ ミル トンの原 理
286
23.2 ラグ ラ ンジ ュの運動 方程 式 の導出
289
23.3 事例:舵 付 き帆掛 け舟
293
24章 ハ ミ ル トン の 正 準 運 動 方 程 式
295
24.1 ハ ミル トンの正 準 方程式
295
24.2 修正 され たハ ミル トンの原理
298
24.3 事例:時 聞の 関数 として支点 を動 かす 剛体振 子
299
24.4 ハ ミル トニア ンの任 意性
301
24.5 正準 変換
301
24.6 事 例:1 自由度 バ ネ-マ ス系
306
付 録 A 座 標 軸 を 表 す 幾 何 ベ ク トル と そ の 応 用
308
A1
座標 軸 を表 す幾 何 ベ ク トル
308
A2
座標 軸 を表す 幾何 ベ ク トルの時 間微分
312
付 録 B 3次 元 回 転 姿 勢 と 角 速 度 に 関 す る 補 足
315
B1 Simple Rotationか ら回転 行列 を作 る式
315
B2 ロ ドリゲ スパ ラメー タ
317
B3 2×2複 素行 列 に よる座標 変換
318
B4 オイ ラーパ ラメー タの三 者の 関係
322
B5 ロ ドリゲ スパ ラ メー タの三者 の関係
323
B6 再 び,オ イ ラーパ ラ メー タの三者 の関係 につい て
325
B7 三 度,オ イ ラーパ ラ メー タの三者 の関係 につい て
326
B8 角 速度 の 三者 の 関係
328
B9 オイ ラーパ ラメー タ,ロ ドリゲ スパ ラメ ー タの時 間微 分 と角 速度 の関係
329
B10 再 び,オ イ ラーパ ラメー タの時 間微分 と角速 度の 関係
331
B11 微 小 回転
332
付 録 C オ イ ラ ー パ ラ メ ー 夕 の 拘 束 安 定 化 法
334
付 録 D 動 力 学 的 に 加 速 度 を 求 め る た め の 漸 化 的 方 法
337
D1 動 力学 漸化 式 の作 り方 ― そ の 1
337
D2 動 力学 漸化 式 の作 り方 ― そ の 2
344
D3 漸化 計 算 に関 す る補 足
346
付 録 E 作 用 力 の 事 例
349
E1 重力
350
E2 バ ネ とダ ンパ ーの力
351
E3 力 に よる加振(時 間依 存 力)
352
E4 乗用 車 や オー トバ イな どの タイヤ に働 く力
353
付 録 F 運 動 方 程 式 の 線 形 化
358
F1 線形 化 の ポイ ン ト
358
F2 線形 化 の方 法
360
F3 拘束 条 件追 加法 の利 用
362
F4 線形 化 の事 例
363
F5 一般 化 座標,一 般化 速度 に拘 束が あ る場合
365
F6 順動 力 学 の計 算手順 を利 用す る方 法
367
付 録 G 基 本 事 項 の ま と め 参 考 文 献
379
付 録CD-ROMに あ と が き 索 引
つ い て
383
385 388
付 録CD-ROMの MATLABプ
370
収 録 内容 ログ ラム
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン動 画
Quizの
解 答 は東 京 電 機 大学 出版 局 ホー ム ペ ー ジ
http://www.tdupress.jp/か
ら ダ ウ ン ロ ー ドで き ます 。
本書の構成 と学び方 本 書 の 内 容 は,も あ る が,日
と も と学 部 と大学 院 で 用 い た 半 年 二 単 位 の 講 義 用 テ キ ス トで
本 機 械 学 会 の 講 習 会 「運 動 方 程 式 の 立 て 方 七 変 化 」(2005年)の
テキ
ス ト と し て,2 日間 用 に 圧 縮 し た もの 作 り,そ れ を ベ ー ス に,教 育 上,お
よ び,
技 術 上 の 重 要事 項 な ど を補 充 した 。 そ の よ う な経 緯 を反 映 して,順 動 力 学 を能 率 よ く学 べ る よ う に な って い る 反面,す
べ て を順 序 どお り学 べ ば よ い よ うな教 科 書
的 な構 成 か ら外 れ て い る面 が あ る 。 さ ら に,本 書 は教 科 書 だ け を念 頭 に 置 い た も の で は な く,多 少 高 度 な知 識 と技 術 で も,重 要 と思 わ れ る もの を追 加 し,幅 広 い 研 究 者 や 技 術 者 に も役 立 つ もの を 目指 した。 そ の た め,と
こ ろ ど こ ろ 難 しい 事 柄
が 出 て きて 読 み に く く感 じる こ と もあ る だ ろ う。 そ こ で,少 れ の ニ ー ズ に合 わせ た学 び 方 を 見 つ けや す くす る た め,本
しで も読 者 が そ れ ぞ
書 の 学 び 方 を書 い て み
る こ と に した 。 本 書 は 四 つ の部 か らな る。 そ れ ぞ れ の 主 要 な役 割 は 次 の とお りで あ る。
本書の構成
●
各部の主要 な役割
章番号
第 Ⅰ部
数学の復習
第 1章 ∼ 第 3章
第 Ⅱ部
運動学の基本
第 4章 ∼ 第11章
第 Ⅲ部
動力学の基本
第12章 ∼ 第14章
第 Ⅳ部
運動 方 程式 の 立 て方
第15章 ∼ 第24章
第 Ⅰ部 の 学 び 方
第 Ⅰ部 は数 学 の 復 習 で あ る。 数 学 に 自信 が あ る読 者 は,節 の 項 目を見 て 必 要 な と こ ろ だ け を拾 い 読 み し,3.3節
の右 手座 標 系 あ た りか ら始 め て 第 Ⅱ部 に 進 め ば
よ い。 講 義 で は,受 講 者 の レベ ルや 講 義 時 間 に よ っ て,第
Ⅰ部 を 予 習 事 項 とす る方 法
もあ る。 そ の 場 合 で も,講 義 に 含 め る場 合 で も,第 を最 初 の 学 習(復 習)の ぶ(復
習 す る)こ
範 囲 と し,1.7節
1章 は,1.1節
∼1 .6節 まで
と1 .8節 は,先 へ 進 み な が ら途 中 で 学
と に して も よい 。 あ る い は,必 要 に な っ た と きに戻 っ て くる よ
う な進 め 方 もあ る 。 2.1節 ∼2.3節 は 比 較 的重 要 で あ り,し っか り確 認 した い。2.4節 ∼2.7節 も先 へ 進 み な が ら途 中 で学 ぶ こ と に して も よ く,あ るい は,必 要 に な っ た と き に戻 っ て くる の で も よい 。 3.1節 ∼3.3節 は この 順 に学 べ ば よ い。
●
第 Ⅱ部 の 学 び 方
特 に 3次 元 問題 で は,運 動 学 を基 本 か ら抑 え てお か な い と,後 で 混 乱 が 生 じる 可 能 性 が あ り,第 Ⅱ部 は重 要 で あ る。 3次 元 の 運 動 学 に あ る程 度 の 慣 れ が あ れ ば,本
文 だ け で 十 分 学 べ るが,混
乱 を 起 こ さ な い た め に は付 録 A と と もに 学 ぶ
ほ うが よい 。 第 4章 ∼ 第10章
まで は順 番 に 学 ぶ こ とが 標 準 的 で あ る。 た だ し,4.5節
と9.4
節 ∼9.6節 は,読 者 の 目的 に応 じて取 捨 選 択 して よ い。 これ らは,順 動 力 学 の 事 例 とMATLABプ
ロ グ ラ ム に 関 わ る説 明 に な っ て い る。 特 に4.5節
に は,他 の
事 例 の 計 算 プ ロ グ ラム に 関 わ る基 本 的 な 説 明 が 含 まれ て い る。 しか し,計 算 プ ロ グ ラ ム に 関 心 が な い か,あ
る い は,そ
の あ た りの 技 術 は十 分 持 っ て い る場 合 は ,
読 み飛 ば して もよ く,事 例 の運 動 方 程 式 の 説 明 だ け を読 む こ とに して も よい 。 講 義 で も,プ ロ グ ラ ミ ン グ を 含 め な い こ とが 多 い と思 わ れ る。 そ の よ う な場 合 は, 同 様 に取 捨 選 択 して い た だ きた い 。 第11章
は,Quizを
通 して 運 動 学 を深 め る狙 い を持 っ て い て,11.1節
そ れ 以 前 に学 ん だ 運 動 学 の 復 習 で あ る。 また,こ 元 三 重 剛 体 振 子 は,第
深 い 話 題 で あ る が,読
のQuizで
飛 ば して も一
は 角 速 度 の 性 質 を 考 え る興 味
み 飛 ば して も後 に 大 き な 影 響 が 残 る こ と は な い 。 ま た,
11.3節 の 最 後 のQuizは さ らに,こ
の 章 に 出 て く る剛 体 振 子 ∼3次
Ⅳ部 の 説 明 に も使 わ れ て い るの で,Quizを
通 りは 読 ん で お い た ほ うが 良 い 。 た だ し,11.2節
まで は,
第13章
の 拘 束 を学 ん で か ら考 え る ほ うが 理 解 しや す い 。
説 明 し よ う と して い る 運 動 学 の 方 法 は,微 分 代 数 型 運 動 方
程 式 な どに 関連 して 動 力 学 で 役 立 つ 可 能 性 が あ る とは い え て も,運 動 方 程 式 との 関連 で 見 れ ば 限 定 的 な事 柄 で あ り,必 要 を感 じて か ら戻 っ て くる ほ うが 能 率 的 か も しれ な い 。 そ こ で,運 動 学 へ の 寄 り道 を避 け て先 を急 ぎ た い 場 合 は,11.2節 や113節
のQuizは
飛 ば して も構 わ な い。
付 録 A のA1.1項 A1.3項
とA1.4項
とA1.2項 は,第
とA2.2項
6章 の後,読
は,第
5章 の 後,読
む こ とが で き る。
む こ と が で き る 。A2.1項
とA2.3項
は,
第 9章 の 後 が 適 当 で あ る 。 付 録 B は,総 る。 ま た,第
じて 難 しい こ とが 多 い が,第
8章 の 後 にB8節
度 が 高 い の で,後 の 後,B4節
∼B7節
の 後 に,B11節
●
を読 む こ とが で き
を読 む こ と が で き る。 そ れ 以 外 の 部 分 は,少
し難
で 学 ぶ こ と に して も よい 。 学 ぶ 場 合,B2節
とB3節
は 第 7章
は 第 8章 の後 に 読 む こ とが で き る。B9節
とB10節
は 第 9章
はB9節
付 録 C は,9.6節
7章 の 後 にB1節
の 後 に読 め る。 難 度 の 高 い もの は,急
ぐ必 要 は な い 。
に 関 わ る事 柄 で あ る。
第 Ⅲ部 の学 び方
第12章,第13章
は,動 力 学 の 基 礎 と して 重 要 な こ とが 書 か れ て い る。 順 にす
べ て を 学 べ ば よ い。 第14章
に も力 学 の 重 要 な 物 理 量 で あ る 運 動 量 と運 動 エ ネ ル
ギ ー な どが説 明 さ れ て い るが,こ
れ らは第 Ⅳ 部 を学 ぶ た め に,鍵
に な る もの で は
ない 。 こ こ で 学 ば な くて も,第 Ⅳ 部 は大 体 読 む こ とが で きる 。 講義 な どで も,時 間 の 節 約 の た め に飛 ば し,第 Ⅳ部 の 必 要 な と こ ろ で 簡 単 に 補 足 す る方 法 も あ る 。 また,第14章
の 運 動 量 の 説 明 は,モ
ー メ ン ト中心 に 関 して 厳 密 な扱 い を す る狙
い が あ っ て,複 雑 に な っ て い る うえ,本 書 の他 の 部 分 で 用 い な い 記 号 が 出 て くる た め,少
々面 倒 で あ る 。 運 動 量 原 理 や 運 動 量 保 存 の 法 則 は重 要 で あ る か ら,下 線
の 引 か れ た結 論 だ け学 ぶ の で も よ く,ま た,運 動 エ ネ ル ギ ー な ど につ い て は,記 号 上 の わず らわ し さ な どは な い の で,14.6節
と14.7節
だ け を読 む こ と も可 能 で
あ る 。 図 で 運 動 補 エ ネ ル ギ ー の概 念 を掴 む だ け で も良 い で あ ろ う。
● 第Ⅳ部の学び方 マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス の 実 用 的 な 方 法 を 知 る だ け な ら ば,第19章,第20 章,少
々 難 解 な 第21章
を読 め ば よい 。 た だ し,第21章
の 方 法 は難 度 が 高 い 方法
なの で,基 本 的 な 面 だ け の 説 明 に な っ て い る。 以 上 を 読 ん で 納 得 で きな い こ とが あ っ た り,以 上 の 方 法 が,力 学 原 理 か ら どの よ う に 導 か れ るの か,あ 学 原 理 そ の もの を 理解 し た い な ら ば,第15章 第15章
る い は,力
か ら順 に読 む こ とに な る。
は,最 初 に事 例 が 説 明 さ れ て い る。 一 般 論 よ り,事 例 で納 得 しや す い
と考 え た か らで あ る 。 プ ロ グ ラム に 関 わ る 部 分 は,学 習 の 目的 に応 じて 取 捨 選 択 す れ ば よい が,大 体,順 第16章
は,16.1節
に全 体 を読 め ば よい 。
と16.2節
方 法 が あ る。 飛 ば した16.3節
の 後,16.5節 と16.4節
∼16.9節
は,第17章
を読 ん で,次
の 章 に移 る
の 後 の ほ うが 分 か りや す く,
あ る い は,力 学 の 理解 や 練 習 が 進 ん で 慣 れ て か ら に して も よい 。 第17章
は,順 番 に全 体 を 読 め ば よい が,17.4節
第18章
は,18.5節
ま で,順
に 読 み,18.6節
を後 回 し に して も良 い 。 は,分
か り難 け れ ば 飛 ば して,
18.7節 へ 向 か っ て も よい 。 第19章
は,初 め か ら順 に,19.3節
進 め れ ば よい 。19.4節
の 事 例 は,少
の 事 例,あ
るい は,19.4節
の事 例 まで 読 み
し進 ん だ 運 動 方 程 式 を利 用 し て い る の で 後
回 しに して も よ い 。 第20章
は,初 め か ら順 に,20.5節
の 事 例,あ
るい は,20.6節
の事 例 まで 読 み
進 め れ ば よい 。 第21章
の 方 法 は,か な り難 しい 方 法 で あ る。 特 に,動 力 学 漸 化 式 の 導 出 は難
解 で あ り,そ の 説 明 は付 録 D に 譲 り,本 文 で は 導 出 さ れ た 式 の 利 用 方 法 を説 明 した 。 た だ し,こ の 章 を 学 ぶ こ と 自体 を後 に ま わ して も良 い 。 こ の 章 の 説 明 が 後 に 影 響 す る こ と は な い。 こ の 章 を 学 ぶ 場 合 は,順 番 に 読 ん で ゆ け ば よ い。21.5 節 の 事 例 は,こ
の 難 しい 方 法 を具 体 的 で 分 か りや す く説 明 して い る。 た だ し,こ
の 事 例 を学 ぶ 場 合 は,そ の 前 に19.4節
の 同 じ事 例 の 通 常 の 解 法 を 読 ん で お く と
よい 。 事 例 を 学 ん だ 後 に,付 録 D を読 め ば よい が,こ
の付 録 は し っ か り と時 間
を か け る 必 要 が あ る。 第22章
∼ 第24章
は,古
くか らの 方 法 で あ り,他 の力 学 の 書 籍 で も学 べ る もの
で あ る 。 そ の 意 味 で,割 愛 す る こ と もあ る。 第22章 節 ま でが 最 初 の段 階 で,22.4節
は 少 し高 度 に な るの で 後 ま わ し に して も良 い 。
第23章
は,す べ て を順 番 に 読 め ば よ い。
第24章
は,全 体 に 少 し抽 象 度 が 高 い の で,後
も良 い。 最 初 の24.1節
だ け,あ
る い は,24.3節
け とい う考 え方 もあ る。 全 部 を読 め れ ば,さ れ な い 。 し っ か り した 理 解 を 得 る に は,多
●
を 学 ぶ 場 合 は,ま ず,22.3
で 時 間 を か け て 学 ぶ こ と に して を 読 ん で どん な もの か を知 る だ
らに他 の 書 籍 を読 み た くな る か も し くの 文 献 を読 む こ とが 重 要 で あ る 。
付 録 の 学 び方
付 録A,B,Cに
つ い て は,第
Ⅱ部 の 学 び方 で述 べ た 。 付 録 D は,第
Ⅳ部 の 第
21章 の と こ ろで 触 れ た 。 付 録 E は,第 第19章,あ
Ⅱ部 で 本 書 の 記 号 に慣 れ た 後 な らい つ 読 ん で も よい 。 付 録 F は,
る い は,第20章
の後 に,必 要 に応 じて 読 め ば よい 。
付 録 G は,本 書 全 体 の重 要 事 項 を 復 習 す る 目的 で 用 い る こ とが で き る 。 第 Ⅱ 部 以 降 を学 び な が ら,学 習 事 項 を確 認 す る意 味 で用 い て も よ い 。 ま た,基 本 的 な 記 号 や 関係 式 な ど を 整 理 して 記 憶 し,あ る い は,思
い 出 す た め に有 効 に 生 か せ
る。
●
講 義 などの 組 み立 て方 に関 す る参考
筆 者 は,本 書 の 内 容 を半 年 2単 位 の 講 義 と して,大 学 院,お た経 験 が あ る 。3.3節,4.7節,4.10節 や 細 か い 点 は 省 略 して い る が,そ る。 学 生 に テ キ ス トの 「読 習(独
よ び,学 部 で教 え
は省 略 し,そ れ 以 外 の 部 分 も難 しい事 柄 れ で も,か な り内 容 の 多 い,厳
しい 授 業 で あ
習)」 を求 め,練 習 問 題 な ど を準 備 し,教 え る
側 も教 え られ る側 もか な り頑 張 ら ない と中 途 半 端 に な る恐 れ が あ る。 MATLABに
関 して は,大 学 院 の授 業 で 事 例 の プ ロ グ ラ ム を 配 り,自 主 課 題 の
提 出 を求 め る 程 度 のや りか た を 試 して み た。 丁 寧 に プ ロ グ ラ ミ ン グ を教 え る こ と は せ ず,学 生 同 士 で の 自習 と多 少 の 質 問 に答 え る程 度 で,シ か せ る よ うに な る。 う ま くい け ば,MATLABで
ミュ レー シ ョン を動
動 か した 経 験 と,基 礎 的 な 力 学
の理 解 の両 方 に進 歩 が得 られ るが,ど
ち らか 一 方 の 負 担 を大 き く感 じす ぎて しま
う と 中途 半 端 に な る 。 2 日 間 の 講 習 会 の 場 合 は,さ
ら に 中核 的 な こ と だ け に絞 り,パ ワー ポ イ ン トを
用 い た 進 行 速 度 の速 い 講 義 を行 な っ た 。 経 験 の あ る技 術 者 や研 究 者 と教 育 関 係 者 な ど は,短 時 間 に ま と ま った 知 識 が得 られ る た め 満 足 度 は 高 い よ うだ が,初 学 者 は面 白み を 感 じなが ら も,相 当 の復 習 が 必 要 な 状 態 を残 して しま うの が 実 情 で あ る。 内 容 の 取 捨 選 択,話
し方 に,か
な りの 工 夫 が 必 要 で,復 習 しや す い よ う に,
考 え 方 を しっ か り伝 え る 努 力 が 重 要 で あ る。 時 間 の 少 な い 講 習 会 で運 動 方 程 式 の 立 て 方 を 一 通 り話 す と こ ろ まで を 目指 す 場 合,時
間 の制 約 を予 習 な どの 形 で 補 う
必要 が ある。 一 方,予
備 知 識 と して 必 要 な数 学 は,行 列 と偏 微 分 な どで,1.2節
要 だ が,学
部 2年 後 半 程 度 の 学 生 を 対 象 と し た 講 義 も可 能 で あ る。 本 書 の 内 容
は,機 械 力 学 の 基 礎 と して の 重 要 さ,数 学 や 計 算 機 の活 用 の促 進,他
の 説 明 は必
の教 科 へ の
発 展 性 な ど を 考 え る と,低 学 年 の う ち に 学 ぶ こ と に よ る効 果 は 大 き い と思 わ れ る。 学 生 の 意 欲 が 高 け れ ば,上 記 の 半 年 の コ ー ス も可 能 で あ り,筆 者 も学 部 2年 生 へ の 講 義 を体 験 して い る。 1年 間 4単 位 程 度 の 講 義 を つ くる こ と も意 義 が あ る と思 わ れ る。 大 雑 把 な 時 間 配 分 と して,最 初 の半 年 は 本 書 の 第 Ⅲ部 ま で,後 の 半 年 で 第 Ⅳ部 を学 ぶ 方 法 が 考 え られ る。 前 半 は運 動 学 を中 心 と し,基 礎 を丁 寧 に学 ぶ こ とが で きる。 事 例,練 習 問 題,計 算 機 の 利 用 技 術 な ど,内 容 を拡 充 す る 方 向 は た くさ ん あ る。 ロボ ッ ト 工 学 の 関 連 技 術 な どを含 め る こ と もで き る で あ ろ う。 運 動 学 は設 計 工 学 的 な応 用 を考 えて ゆ け ば,発 展 性 の あ る学 問 で あ る。 最 適 設 計 な どの 方 法 と合 わ せ た 課 題 も興 味 深 い。 後 半 は動 力 学 が 中心 で あ る。 動 力 学 の 基 本 的 側 面 へ の掘 り下 げ,マ ルチ ボ デ ィ ダイ ナ ミ ック ス と して の発 展,制 御 技 術 と の接 点 な ど,こ ち らの 発 展 方 向 も多 様 で あ る。 な お,内 容 を拡 充 す る方 向 は 多 様 だ が,既 存 の別 の 講 義 との 調 整 な どが 重 要 に な っ て くるで あ ろ う。 本 書 の 多 くの 節 にQuizが
あ るが,学
生 の 訓 練 用 に十 分 な量 で は ない か も しれ
な い 。 注 意 を 喚 起 した い事 項,技 術 的 な発 展 事 項,説
明 の 補 足 事 項,教
育 上 の補
足 事 項 な どが 中 心 で あ り,各 章 や 各 節 にバ ラ ンス よ く出題 され て い る わ けで もな い 。 学 生 の 訓 練 用 に は,教 師 の 立 場 に あ る方 々 が 適 切 な補 足 を して い た だ け る こ
と を期 待 し て い る。 本 文 中 に も,ま た,Quiz自 ン トは,十 分,含
体 に も,訓 練 用 の 課 題 を作 る ヒ
まれ て い る 。 自習 さ れ る 方 々 に は,自
ら適 切 な 問題 を選 ん だ り
作 り出 す 努 力 を期 待 した い 。 実 際 にや っ て み る こ と の必 要 性 と効 果 は,本 書 の技 術 に つ い て は特 に大 きい と思 う。
記号 な どの ル ール マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス で は,多 数 の 記 号 が 必 要 で 複 雑 な 上 に,既 刊 の本 や 論 文 な ど に用 い られ て い る 記 号 も著 作 者 に よ っ て か な り異 な っ て い る。 本 書 も独 特 な視 点 か ら書 か れ て い て独 特 な記 号 使 い が 含 ま れ て い る た め,以 下 に,本 書 で 用 い て い る記 号 の 原 則 的 な ル ー ル を説 明 す る。 た だ し,こ の ル ー ル を事 前 に読 ま な くて も,本 文 の 中 に は記 号 の 説 明 が あ り,読 み 進 む に従 っ て 自然 に記 号 の ル ー ル を理 解 で きる よ う に書 か れ て い る。 さ ら に,こ こ に 書 い た ル ー ル は原 則 的 な も の で あ り,例 外 的 な もの に つ い て は本 文 中 の 該 当部 分 で 説 明 して い る。
①
行 列,列
行 列,行 行 列 に は,太 文 字 を用 い る 。 変 数 の持 つ 意 味 に応 じて立
体 の 太 文 字 と斜 体 の 太 文 字 が あ る 。 なお,行
列 と列 行 列 な ど を大 文 字 と小
文 字 で 区 別 す る よ う な こ と は して い ない 。 大 文 字 と小 文 字 の 使 い 分 け は 別 の 目的 に用 い られ て い る。 ②
立 体 の 太 文 字 は,速 度 と角 速 度 を 別 々 の 行 列 と して 扱 っ た 変 数 に用 い る。 斜 体 の 太 文 字 は,速 度 と角 速 度 を 一 つ に ま とめ た行 列 変 数 な ど に用 い る。 この 区 別 に無 関係 な 行 列 変 数 は,立 体 の 太 文 字 を用 い る。
表 1 太文 字 変 数 の立 体 と斜 体
立体 の太文字
速 度 と角 速 度 を別 々 の行 列 と して 扱 っ た式 に現 わ れ る変 数体 系
斜体 の太文字
速 度 と角 速 度 を一 つ に ま とめ た行 列 変 数 の体 系
お よ び,下 記 以 外
③
幾 何 ベ ク トル に は,斜 体 で 標 準 太 さ の 文 字(以 下,太 文 字 に対 して 細 文 字 と書 く)を 用 い,記 号 の 上 に 矢 印 を付 け る 。 な お,幾 何 ベ ク トル を要 素 に 持 つ 行 列 に は,矢 印 は付 けず,行 列 で あ る か ら太 文 字 とす る。
④
ス カ ラ ー 変 数 に は,斜 体 の細 文 字 を 用 い る。
⑤
な お,cosθ1,sinθ1を,c1,s1な
ど と略 記 す る こ とが あ り,こ れ らは ス
カ ラ ー で あ るが,立 体 で 表 現 して い る。 こ の よ う な特 例 に つ い て は,読 め ば 自然 に 理解 で き る よ う に配 慮 され て い る 。 ⑥
剛体 や 点 の 名 前 に は,大 文 字 で細 文 字 立 体 の ア ル フ ァベ ッ ト,数 字,ま
た
は,数 字 を 意 味 す る小 文 字 で 細 文 字斜 体 の ア ル フ ァベ ッ トが 用 い られ る 。 ⑦
二 つ の 変 数 の積 には,積
の 演 算 記 号 が 用 い られ る こ とが あ る。 幾何 ベ ク ト
ル 同 士 の 積 の場 合,内 積 に は ・が,外 積 に は × が 用 い られ る。 こ れ 以 外 の積 に は,原 則 と して,積
の 演 算 記 号 を用 いず に,単
に二 つ の変 数 な ど を
並 べ るだ け で あ る 。
表 2 積の記号 ・幾 何 ベ ク トルの 内積 x
幾 何 ベ ク トルの外 積
記号な し
上 記 以外(実 数 と幾 何 ベ ク トル,実 数 と実 数)
⑧
時 間 変 数 tに よ る常 微 分 の 記 号 に は,d とdtを 分 子 と分 母 に 並 べ た 通 常 の 微 分 記 号 が 用 い られ,こ れ ら に は細 文 字 の斜 体 が 使 わ れ る。 ま た,d の左 肩 に 添 え字 を付 け た 微 分 記 号 が 用 い られ る こ とが あ り,こ れ は,幾 何 ベ ク トル を対 象 と した 時 間 微 分 の 記 号 で,左 肩 の添 え 字 は幾 何 ベ ク トル を時 間 微 分 す る場 合 の オ ブ ザ ー バ ー で あ る(オ
ブザ ーバ ー につ い て は本 文 参 照)。
幾 何 ベ ク トル 以外 の 時 間微 分 の場 合,文 字 の 上 に ドッ ト をつ け て 時 間 微 分 を 表 す こ と が あ り,こ れ はd/dtに
よ る 時 間微 分 と同 じ意 味 だ が,両 者
を混 在 させ て 用 い る こ と も あ る 。 ⑨
∂は 偏 微 分 を 示 す 記 号 と し て用 い られ る 。 こ れ は,斜 体 の 細 文 字 で 表 す。 なお,関
数 xに 変 数 y を右 下 の 添 え 字 の 位 置 に 書 い て,Xyで
xの yに よ
る 偏 微 分 係 数 を表 す こ と もあ る。 こ の と き,x と yが 添 え字 や 上 付 き記 号 や ダ ッ シ ュ を含 ん で い る こ とが あ り,x が 複 雑 な 場 合 に は(X)yと す る こ と もあ る。 また,y が xの す べ て の独 立 変 数 を含 ん で い る 場 合,Xyで,y
で
偏 微 分 した残 りの 項 を示 す 。 ⑩
偏 微 分 を添 え字 を用 い てxyと 表 す 場 合,変
数 yが 列 行 列 の と き は太 文 字
を用 い て 表 す こ とが 自 然 で あ る が,太 文 字 を 用 い な い こ とが あ る。 こ れ は,小
さ な 文 字 を太 文 字 にす る と見 難 くな る た め で あ る。xと
味 で 添 え字 な どの 複 雑 な構 造 を持 っ て い る 場 合,こ
yが 別 の 意
の 見 難 さ の軽 減 は特 に
必 要 に な る 。 しか し,こ の ル ー ル に よ り,x が ス カ ラ ー の場 合,y が列 行 列 で もXyに 現 わ れ る文 字 は す べ て 細 文 字 に な り,Xyが 行 行 列 に な っ て い る こ と を見 逃 して し ま い が ち に な る 。 細 文 字 で も yは 列 行 列 の 可 能 性 が あ る こ と を忘 れ て は な らな い 。 こ の ル ー ル は 第 Ⅲ 部 以 降 に適 用 され て い る が,添
え字 に よ る偏 微 分 の 表 現 は使 い 方 に パ タ ー ンが あ る の で,混 乱 す る
恐 れ は な い と考 え て い る 。 ⑪
δは ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 に お い て仮 想 変 位 を作 る オペ レー タで あ り,ハ ミ ル トンの 原 理 に お い て 変 分 を作 る オペ レー タで あ る 。 Δ は微 小 量 を示 す 。 あ る い は,関 数 の 微 小 量 を変 数 の 微 小 量 で 表 す た め の オ ペ レー タ で も あ る 。 δは斜 体,Δ
は立 体 で,細 文 字 が 使 わ れ る。
表 3 演算記号 時 間微分 A をオ ブザ ー バ ー とす る幾 何 ベ ク トル の 時 間微 分 偏 微 分 に用 い る ダ ラ ンベ ー ル の原 理 の仮 想 変位,ハ
ミル トンの 原 理 の変 分
微少量
⑫
変 数 記 号 は,中 核 と な る 文 字,ダ 右 下 添 え 字,右 号,添
上 添 え字,左
ッ シ ュ(プ
ラ イ ム),文
字 の 上 の 記 号,
上 添 え字 か らな る。 ダ ッ シ ュ,文 字 の 上 の 記
え 字 は,変 数 の持 つ 意 味 に関 わ る た め,す べ て の 変 数 に 共 通 な使 い
方 に な る と は 限 ら な い。 ⑬
中 核 文 字 は,英 語 か ギ リシ ャ語 の ア ル フ ァベ ッ ト一 文 字 を用 い る 。 大 文 字 と小 文 字,立 体 と斜 体,太
⑭
文 字 と細 文 字 が あ る。
文 字 の 上 に 付 け る記 号 と して は,時 ダ,バ
ー,ハ
ッ ト,が
間微 分 の
用 い られ る 。 矢 印
以 外 に,矢 印,テ
ィル
は 幾 何 ベ ク トル で あ る こ
と を示 す 。 テ ィ ル ダ タ,お
よ び,そ
は,3×1列
行 列 か ら3×3交
代 行 列 を作 る オ ペ レー
の 拡 張 機 能 を持 つ オ ペ レー タで あ る。 バ ー,は
二つ の
異 な っ た 意 味 で 用 い られ て い る。 一 つ は,中 核 文 字 の上 に付 け て 拘 束 力 を 示 す た め で あ り,も う一 つ は,偏 微 分 後 の残 りの 項 を示 す 添 え字 に付 け ら れる。ハ ッ ト
は,仮 想 速 度 を表 す 記 号 で あ る 。
表 4 文 字 の上 の 記 号
記号
意味 時間微 分
ドッ ト
幾 何 ベ ク トル
矢印 テ イル ダ
3×3交 代 行 列 を作 るオ ペ レー タ,そ の拡 大 解釈
バー
(1)拘 束 力
ハ ッ ト
仮 想 速 度 を作 るオペ レー タ
⑮
(2)偏 微 分 後 の 残 りの項 の 添 え字
添 え 字 に は,右 下 添 え 字(最 大 3文 字),右
上 添 え 字,左 上 添 え 字 が あ る。
表 5 添 え 字(原 則)
記号
意味
右 下 添 え字
[第 1]運 動 学 的物 理 量 の オ ブザ ー バ ー,代 数 ベ ク トル を作 る座 標系
(最大 3文 字)
[第 2]対 象 の 点 または 剛体,代 数 ベ ク トル を作 る座 標 系 [第 3]座 標 成 分
右上添 え字
行 列 の転 置 T,逆行 列-1,転 置 と逆 行列 を合 わ せ た操 作-T, 加 速 度 レベ ル拘束 で,加 速度 レベ ル の変 数 を含 まな い残 りの項 を示 す R, 運 動 補 エ ネ ルギ ー*,ま た,複 素 数 の共 役 転 置* 拘 束 追加 前 と拘束 追 加 後 を表 す Hとsな ど
左上添 え字
⑯
(1)モ
ダ ッ シ ュ(プ
ー メ ン ト中 心(2)ス
カ ラー行 列 の サ イ ズ
ラ イ ム)に は,単 一 ダ ッ シ ュ,二 重 ダ ッ シュ,た
ダ ッ シ ュ もあ る。 ダ ッ シュ の 重 要 な役 割 と して,そ
ま に,三 重
の 変 数 が ど の座 標 系 で
表 され た もの か を示 して い る こ とが あ る。 右 下 添 え字 中 の 左 か ら一 番 目の もの と 関連 す る座 標 系 で 表 され た変 数 に は ダ ッ シ ュ を付 け ない 。 右 下 添 え 字 中 の 左 か ら二 番 目の もの と 関連 す る座 標 系 で 表 さ れ た 変 数 に は ダ ッ シ ュ
を 付 け る 。 そ の ほ か,単
一 ダ ッ シ ュ,二
重 ダ ッ シ ュ,三
重 ダ ッ シ ュ は,単
に ダ ッシ ュ の 付 い て い な い変 数 と区 別 す る た め な ど に用 い る こ と もあ る。
表 6 単 一 ダ ッ シュ の主 要 な意 味 ダ ッシ ュな し
右 下 添 え 字 の 中の 左 か ら一 番 目の もの と関連 す る座 標 系 で 表 さ れた 変数
ダ ッシ ュあ り
右 下 添 え 字 の 中の左 か ら二 番 目の もの と関 連 す る座 標 系 で 表 され た 変数
⑰
太 文 字 で 斜 体 の 変 数 は,速 度 と角 速 度 を ま とめ た 変 数 な どに 用 い られ る。 こ の と き,速 度 と角 速 度 の 両 方 に ダ ッ シ ュ(プ ラ イ ム)の 付 く変 数 が 用 い ら れ て い る と き,両 者 を ま とめ た斜 体 変 数 に は二 重 ダ ッ シ ュ(ダ ブ ル プ ラ イ ム)を 付 け る 。 角 速 度 だ け に ダ ッ シ ュ が 付 い て い る場 合 は,両 者 を ま とめ た斜 体 変 数 に は 単一 の ダ ッ シ ュ を付 け る。
表 7 斜 体 太 文 字の 単 一 ダ ッ シュ と二 重 ダ ッシ ュ 単 一 ダ ッシ ュ
ダ ッシ ュ の ない 速 度変 数 とダ ッ シュ のあ る角 速 度 変 数 との組 み 合 わせ
二 重 ダ ッシ ュ
ダ ッシ ュ のあ る 速度 変 数 とダ ッ シュの あ る角 速 度 変 数 との組 み 合 わせ
⑱
剛 体 に 関 わ る 変 数 記 号 に は,原 則 と して 大 文 字 を 用 い る。 点 に 関 わ る変 数 記 号 に は 小 文 字 を用 い る 。
表 8 剛 体 に 関 わ る変 数,点 に 関 わ る変 数,そ れ 以外 剛 体 に関 わ る変 数
重 心位 置,重 心 速 度,角 速度,回 転 姿 勢,剛 体 の質 量,慣 性 行列, 重 心 に等 価換 算 して 合 計 した 力 と トル ク
点 に関 わ る変 数
剛 体上 各 点 の位 置 と速 度,各 点 に働 く力 と トル ク, 剛 体上 各 点 の もの と見 な した 角 速度, 質 点 の位 置 と速 度,作 用 力
剛 体 や点 に関 わ らな い量
一 般化 座 標
,一 般 化 速 度,そ の他
⑲
中核 に な る文 字 に は,以 下 の よ う な意 味 が あ る。
表 9 中核文字の意味
(注 1)Sは (注2)θ
⑳
オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ 関 係 と 一 般 化 速 度 の 両 方 に 用 い られ る 。 と ω は,一
軸 ま わ りの(ス
カ ラ ー の)角
度 と角 速 度 を 表 す こ と も あ る 。
筆 者 は,大 学 で の 講 義 用 テ キ ス ト,講 習 会 用 テ キ ス ト,本 書 の 原稿 の 作 成 に は,wordとmathtypeを
用 い た が,数
式 に用 い た 記 号 に 太 文 字 と細 文
字 の 両 方 を使 い 分 け る こ とは 手 間 が か か る た め,行 わ な か っ た 。 そ の た め 本 書 に 用 い た 記 号 は,太 文 字 と細 文 字 の 区 別 を 必 要 と し な い 。 こ の こ と は,黒 板 を用 い た 講 義 で 数 式 な ど を書 く と き に都 合 が よ い 。 さ ら に,本 書 で は ス カ ラ ー を 斜 体 で 表 す な ど,文 字 の 立 体 と斜 体 の 区 別 も行 っ て い る
が,並 進 を表 す 変 数 と回転 を表 す 列 行 列 を ま とめ て表 現 す る よ うな 場 合 を 除 い て,立 体 と斜 体 の 区 別 を行 わ な くて も変 数 が 重 な る こ と は な い 。 ノー トに書 き写 す と きに 楽 な変 数 の体 系 に な っ て い る。
独 自色 の強 い事項 について 筆 者 は,記 号 と用 語 の 使 い方 な どに,独
自 の工 夫 を し て い る 。 以 下 に,筆 者 の
独 自色 の 強 い 事 項 につ い て 説 明す る。 これ は,読 者 が 論 文 発 表 や そ の 他 の プ レゼ ンテ ー シ ョ ン時 な ど に 配 慮 で きる よ う にす る た め で あ る。 な お,ど
こ ま で を独 自
とい うべ きか 区 別 し難 い 事 柄 もあ り,不 完 全 な説 明 に な っ て い る こ と をお 断 りし て お く。 ①
本 書 に は,物 理 量 を表 す 記 号 に二 つ の 添 え 字 を付 け た もの が 出て くる(右
下 添 え 字)。 こ の よ う な 記 号 は,3 次 元 問 題 を考 え る と き に 生 じが ち な誤 解 と混 乱 を 防 ぐため に役 立 ち,実 用 上 お よび教 育 上,大 者 は 長 年 使 い 続 け て い る 。 しか し,多 う少 し簡 略 で,本
きな メ リ ッ トを 持 って い て,筆
くの マ ルチ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス の 書 物 は も
書 の記 号 使 い は少 々独 特 で あ り,わ ず ら わ しい と思 わ れ が ち で
あ る 。 そ れ で も,筆 者 は この 記 号 の使 い 方 を,む
しろ,本 書 の セ ー ルス ポ イ ン ト
と考 え て い る。 ②
二 つ の 添 え字 を持 つ 記 号 に ダ ッ シ ュ(prime)の
あ る もの と な い もの が
あ る。 この よ うな ダ ッシ ュ は,同 様 な意 味 で代 表 的 なマ ル チ ボ デ ィ ダイ ナ ミク ス の書 物 に も使 わ れ て い る。 本 書 で は二 つ の 添 え字 と と も に ダ ッシ ュ を用 い る こ と で,記 号 の 意 味 を 明確 な もの に して い る。 本書 で は さ らに,斜 体 文 字 と組 み 合 わ せ て ダ ブ ル ダ ッ シ ュ な ど を 用 い る こ とが あ る。 この 場 合 の 斜 体 文 字 は 並 進 運 動 と 回 転 運 動 を一 つ に ま と め た もの で,筆 者 の 選 ん だ 記 号 は,他 の 記 号 との 関 連 で分 か りやす い と考 え て い る が,こ の 記 号 の 良 否 を どの よ うに 感 じる か は,個
々人 の
違 い が あ りそ うで あ る 。 い ず れ に して も,マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス は多 数 の記 号 を必 要 とす る た め,著 作 者 に よ って か な り異 な っ た記 号 使 い が 現 れ る 。 今 の と こ ろ,そ れ は や む を得 な い と考 え て い る。 ③
一 部 の 変 数 に 関 し て,大 文 字 を剛 体 に 関 わ る 量,ま
た は,剛 体 を代 表 す る
量 に用 い,小 文 字 を点 に 関 わ る量 に用 い て い る の は 筆 者 独 自 の工 夫 で あ る。 ④
文 字 の 上 の テ ィル ダ を,3×1列
行 列 か ら3x3交
代 行 列 を 作 る オ ペ レー タ
と し て用 い る 方 法 は古 くか ら行 わ れ て い る 方法 で あ る。 この テ ィル ダ を筆 者 は外
積 オ ペ レー タ と呼 ん で い るが,こ 外 積 オ ペ レー タ を3n×1列 ⑤
の 呼 び 名 は筆 者 独 自の もの で あ る。 また ,こ の
行 列 に も適 用 す る拡 大 解 釈 も筆 者 独 自の 工 夫 で あ る。
運 動 補 エ ネ ル ギ ー とい う言 葉 が 用 い られ て い る が,kinetic
co-energyの
訳 と して 用 い た。 ⑥
瞬 間接 触 点 とい う概 念 と呼 び 名 も筆 者 が 考 え た もの で あ る 。
⑦
拘 束 条 件 追 加 法 は,Velocity
Transformationと
呼 ばれ てい る方法 と同 じ
だ と す る 考 え方 が あ る。Velocity Transformationは,筆 思 い つ い た時 期 よ り,早
者が拘 束条 件追 加法 を
くか ら知 られ て い た もの で あ り,「 速 度 変 換 法 」 と い う
呼 び 名 も併 記 す る こ と に した 。 た だ し,拘 束 条 件 追 加 法 の 名 前 に込 め られ た こ の 方 法 の 位 置 付 け と速 度 変 換 法 の 位 置 付 け との 比 較 は,ま だ,筆 者 に とっ て 十 分 明 確 に な っ て い る とは い え な い(18.6節,19.2節
参 照)。
⑧
ケ イ ン型 運 動 方 程 式 は,筆 者 固 有 の 呼 び 名 で あ る(18.4節
⑨
運 動 方 程 式 の 標 準 形 も,筆 者 固 有 の 呼 び 方 で あ る。
⑩
拘 束 力 消 去 法 も,筆 者 固 有 の 呼 び 名 で あ る 。
⑪9・6節,お
参 照)。
よ び,付 録 C に説 明 さ れ て い るオ イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 安 定 化 法
は 筆 者 等 の作 り出 した方 法 で あ るが,こ
れ まで に 同様 な もの が な い か ど う か まだ
不 明 で あ る。 ⑫
筆 者 は 一 般 化 座 標 に大 文 字 の Q を用 い て い る 。 多 くの 力 学 書 で は,伝 統
的 に 小 文 字 の q を 用 い て い て,大
文 字 の Q は 一 般 化 力 を 意 味 す る こ とが 多 い 。
筆 者 は 一 般 化 力 に は特 別 の 記 号 を準 備 せ ず,作
用 力 に ヤ コ ビ行 列 を左 か ら乗 じた
よ う な形 の ま まで 表 して い る。 あ る い は,標 準 型 の 運 動 方 程 式 な どで 用 い るfH の よ うに,力 の 記 号 を そ の ま ま延 長 して 用 い て い る。 ⑬
幾 何 ベ ク トル の 時 間微 分 に必 要 な 時 間 微 分 の オ ブ ザ ー バ ー の 表 記 方 法 も筆
者 独 自か も知 れ ない 。 幾 何 ベ ク トル の 時 間 微 分 に 時 間 微 分 の オ ブ ザ ー バ ー が 必 要 な こ と 自体,明
白 に書 い て あ る 文 献 が 少 ない 。
⑭Simple
Rotationに
対 応 す る 適 当 な 訳 語 が 見 当 た らず,括
「(単純 回 転)」 と は書 い た が,Simple ⑮
「三 者 の 関 係 」 と い う言 葉 で,位 置,回
メ ー タ),速 度,角
弧付 きで
Rotationを そ の ま ま用 い た。 転 姿 勢(回 転 行 列,オ
イラーパ ラ
速 度 の 重 要 な 関 係 を ま とめ た。 「時 間 微 分 の 関 係 」 と と も に,
運 動 学 の基 本 的 関係 を 二 つ の 言 葉 で 整 理 した が,こ
の よ うな 言 葉 遣 い は 筆 者 の 工
夫 で あ る。 ⑯
筆 者 は,位 置 レベ ル拘 束 を Ψ=0,速
くの 文 献 で は,位 置 レベ ル 拘 束 に Φ=0が と し て い る が,シ
度 レベ ル 拘 束 を Φ=0で 用 い られ,速
表 した 。 多
度 レベ ル 拘 束 は,Ф=0
ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック拘 束 を含 む速 度 レベ ル 拘 束 を考 え る場
合 に は,異 な っ た 記 号 を 準 備 して お け ば,拘 束 の 数 の 変 化 に 対 応 しや す い 。 ま た,標 準 的 な 回 転 姿 勢 は,〓 を,Ψ 〓=0や ΨE=0の
や E な ど複 数 あ り,そ れ ら に よ る位 置 レベ ル拘 束
よ うに 区別 す る ほ うが 分 か りや す い こ と が あ るが,速
レベ ル拘 束 で は,角 速 度 Ω'を 標 準 的 と し て よ く,Φ=Φ む 場 合 が 多 い 。 Ψ=0と
Φ=0に
度
Ω'=0に 絞 っ た 説 明 で 済
分 けて お く こ とは,何 か と便 利 で あ る。
マル チ ボ デ ィダ イ ナ ミ クス と は
序章
マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス の応 用 分 野 は 多 岐 に わ た っ て い る。 ロ ボ ッ ト,自 動 車,鉄
道 車 両,建 設 機 械,産
祉 機 械,な
業 機 械,家 電 機 械,宇
宙 機 械,舶
用 機 械,医
療 ・福
どで あ る 。 要 す る に,可 動 部 分 の あ る機 械 は す べ て が 対 象 で あ り,さ
ら に,ス ポ ー ツ工 学 や 医 療 分 野 に お け る 人体 の モ デ ル な ど に も適 用 され て い る。 上 記 の 機 械 は,い ず れ も,剛 体 や 弾 性 体 を ジ ョイ ン トや 力 要 素 で 組 み 立 て た も の と見 な せ る。 ジ ョイ ン トに は,ピ
ン ジ ョイ ン ト,ボ ー ル ジ ョイ ン ト,テ レス コ
ピ ック ジ ョイ ン トな どが あ る。 力 要 素 に は バ ネ や ダ ンパ,電 ア ク チ ュエ ー タ,あ
気 の モ ー タ,油 圧 の
るい は,内 燃 機 関 な どが あ る。 モ デ ル 化 の考 え方 し だ い で,
内 燃 機 関 もマ ルチ ボ デ ィ シス テ ム で あ る。 剛体 や 弾 性 体 の ほ か に,塑 性 変 形 を起 こす 部 品 を含 むモ デ ル や ロー プ や紐 の よ うな 可 撓 性 を示 す もの,あ
るいは流体 や
流 動 性 の あ る も の な どを 含 め た モ デ ル 化 も研 究 対 象 に広 が っ て きて い る 。 以 上 の よ う なマ ル チ ボ デ ィ シ ス テ ム の動 力 学 が マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス で あ る 。 特 に,汎 用 性 の 高 い マ ル チ ボ デ ィ シ ス テ ム の 解 析 ソ フ トがCAE(Computer Aided
Engineering)の
道 具 と して 開発 さ れ,そ の 実 用 性 が 明 らか に な る に つ れ
て,マ
ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス は注 目さ れ る よ う に な っ て きた 。 汎 用 ソ フ トは,
汎 用 的 な モ デ ル の 捉 え方 と,そ れ を計 算 処 理 す る汎 用 的 な仕 組 み に支 え られ て い る 。 ジ ョイ ン トや バ ネ な どの 結 合 要 素 や 力 要 素 を ラ イ ブ ラ リ化 し,機 械 の 多 様 性 に対 処 で き る よ う に な っ て い る。 マ ルチ ボ デ ィ シス テ ム の解 析 と して は,順 動 力 学 解 析,逆 解 析 を代 表 と して,そ
の他,CAEと
動 力 学 解 析,運
動学
して 便 利 な さ ま ざ ま な 方 法 が 含 ま れ る 。
順 動 力 学 解 析 は,力 や トル ク を与 え た と きに どの よ うな 運 動 す る か を 求 め る も の で あ り,生
じた 運 動,ま
た は,生
じ させ た い 運 動 か ら,そ の た め の力 や トル ク
を 求 め る逆 動 力 学 解 析 と対 を なす も の で あ る。 ロ ボ ッ トで 考 え る と分 か りや す い。 関 節 の モ ー タ に トル ク を加 え た と き,ロ ボ ッ トが どの よ う に動 くか が 順 動 力
学 解 析 で あ り,ロ ボ ッ トに特 定 の 動 き を させ た い と き,関 節 の モ ー タ に ど の よ う な トル ク が 必 要 か を考 え る の が 逆 動 力 学 解 析 で あ る。 順 動 力 学 解 析 と逆 動 力 学 解 析 には運動方程式 が必要 である。 運 動 学解 析 は,産 業 用 ロ ボ ッ トの 関節 角 を 定 め た と き,手 先 の位 置 と姿 勢 が ど の よ うに な る か,あ う に な る か,と
る い は,手 先 の 位 置 と姿 勢 を与 え た と き,各 関節 角 が どの よ
い う よ うな解 析 で あ る。 位 置 と回 転 姿 勢,お
よ び,そ れ らの 時 間
微 分 で 表 され る量 を運 動 学 的物 理 量 と呼 び,運 動 学 解 析 は これ ら運 動 学 的 物 理 量 の 間 の 関係 を解 析 す る もの で あ る。 なお,運
動 学 的 物 理 量 お よ び そ れ らの 間 の 基
本 的 関係 は,運 動 方 程 式 を 立 て るた め に も,当 然,必 要 で あ る。 マ ル チ ボ デ ィダ イナ ミク ス は,機 械 の 研 究 開 発 の 道 具 で あ る。 機 械 の 動 か し方 を 決 め た と き,必 要 な モ ー タの 大 き さ を計 算 す る こ とが で き る。 こ れ は 逆 動 力 学 解 析 を設 計 に用 い る事 例 で あ る 。 逆 に,選 択 した モ ー タ な どで 動 か した と き,機 械 が どの よ う に動 くか を調 べ る こ とが で きる 。 これ が,順
動 力 学 解 析 で あ り,性
能 確 認 作 業 で あ る 。 そ の解 析 を 通 して,機 械 を 動 か した と き に各 部 に 生 じ る負 荷 力 を計 算 す る こ と もで きる。 異 常 な 負 荷 力 が 生 じな い か ど うか,異 常 な 挙 動 が 生 じ な い か ど うか,を
予 想 す る こ とが で き る。 これ らは モ デ ル の 範 囲 内 の 計 算 で あ
る か ら,適 切 な モ デ ル と適 切 な シ ミュ レー シ ョ ン条 件,適 す る。 そ の 部 分 に技 術 者 の判 断 力 が 必 要 で あ る が,そ
切 な判 断基 準 を必 要 と
れ で も,試 作 機 を作 らず に
性 能 な どの 評 価 が で き る よ うに な れ ば,あ る い は,試 作 機 の 数 を減 らす こ とが で きれ ば,研 究 開発 費 用 の 削 減 と期 間 の 短 縮 に つ なが る。 あ る い は,商 品 を市 場 に 出 して か ら発 覚 す る不 具 合 を未 然 に 予 防 で きる 。 マ ルチ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス は,制 御 系 設 計 に も役 に立 つ 。 動 的 モ デ ル は 様 々 な 形 で 制 御 系 の 設 計 に用 い られ,正 確 な モ デ ル の 重 要 性 が 増 大 す る傾 向 にあ るが, マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ ク ス の発 展 に よ っ て複 雑 な系 の運 動 方 程 式 が 求 め や す くな っ た 。 ま た,平 衡 状 態 を求 め,線 形 化 して 固有 値 解 析 す る よ う な機 能 は 制 御 系 の 設 計 の 基 本 で あ る。 一 方,運 動 を伴 う系 の 振 動 問 題 や,ロ
ー タ ー ダ イ ナ ミ クス の
問題 な ど も,大 局 的 に はマ ルチ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス の枠 組 み の 中 で調 べ る こ とが で き る。 現 在,マ 体,あ
ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ ク ス の 分 野 で,弾
性体 や その ほか の柔軟
る い は,塑 性 を伴 う 問題 な どの技 術 が 盛 ん に研 究 され て い る。 従 来 の 有 限
要 素 法 に も影 響 を与 え そ う で あ る。 流 体 と の連 立 問 題 な どが 動 力 学 と して の 今 後
の 課 題 で あ ろ う。 図 1は,ブ
ル ドー ザ ー と 呼 ば れ る 建 設 機 械 で あ る 。60ト
ン程 も あ る 大 型 の車
両 が 突起 を乗 り越 え て 落 下 した と き に足 まわ り各 部 に 生 じる負 荷 力 を求 め よ う と した 。 この 図 は,そ の 順 動 力 学 解 析 の 結 果 か ら ア ニ メ ー シ ョ ンを作 っ た と き の一 つ の 場 面 で あ る。 図 2は,パ ワ ー シ ョベ ル と呼 ば れ る建 設 機 械 で あ る。 この 図 は 機 械 を外 か ら見 た だ け の もの で あ る が,計
算 モ デ ル は,エ
ン ジ ンか ら油 圧 ポ ン
プ,油 圧 バ ル ブ,油 圧 シ リ ンダ な ど を含 み,作 業 者 の操 作 パ タ ー ン も入 力 さ れ て い る。 掘 削,旋
回,廃 土 の作 業 を 繰 り返 す と して,そ
の作 業 サ イ ク ル 中 に エ ンジ
ン出 力 が どの よ うに 変 化 す る か,そ の パ ワ ー が 油 圧 ポ ンプ,油 圧 バ ル ブ,油 圧 の 配 管 を通 っ て 油 圧 シ リ ン ダ に どの よ う に伝 わ り,ど こ で どん な パ ワ ー ロ ス を生 じ る か,作
業 機 が 行 う仕 事 に どれ ほ どが 結 びつ くか を解 析 した 。 図 3は,ホ イ ー ル
ロ ー ダ と呼 ば れ る建 設 機 械 で あ る 。 この 計 算 モ デ ル も エ ン ジ ン,油 圧 系,そ 駆 動 系 を含 ん で い て,や へ の 廃 土,後
は り前 進,掘
削,後 退,方
向 を 変 え て 前 進,ダ
して
ンプ カー
退 を繰 り返 す 作 業 サ イ クル につ い て ,パ ワ ー シ ョベ ル と同様 の 解 析
を行 っ た 。 以 上 の 三 つ は筆 者 らが 開 発 した 汎 用 ソ フ トDSSを もの で あ る。 本 書 に 添 付 さ れ たCD-ROMに (DSSは(株)小
利 用 して 計 算 した
計算 結果 の動 画が 収録 されて い る
松 製 作 所 の 社 内 ソ フ ト)。
図 4は,逆 立 ち ゴ マ で あ る 。 こ れ は,運 動 す る 剛 体 は ひ とつ で あ るが,接 触 問 題 の 一 例 と して 解 析 した もの で あ る。 計 算 の 開始 時 は コ マ の 球状 の 部 分 が 水 平 面 と接 触 して い るが,接 触 点 は 次 第 に移 動 し,傾 い て ゆ く。 こ の と き,球 の 中心 か ら少 し外 れ た位 置 に あ る重 心 は,徐
々 に 高 くな る。 そ して,細 い 円 筒 状 の 棒 の端
部 が 水 平 面 と接 触 す る よ うに な っ て,急 に 球 状 の部 分 は水 平 面 か ら離 れ,逆
立ち
す る。 この 接 触 の 状 況 を合 理 的 にモ デ ル化 す る こ とは 案 外 厄 介 な 問 題 で あ る。 図 5は,達 磨 落 しの シ ミュ レー シ ョ ンで,こ
れ も接 触 問題 の 難 し さが あ る。 逆
立 ち ゴ マ の 場 合 は,円 筒 の端 部 と平 面 の接 触 で あ っ た が,達 磨 落 しの 場 合 は,円 筒(図 に は八 角 柱 に描 か れ て い る)の 端 部 同 士 の接 触 で あ り,接 触 状 況 が 多 様 で 一 層 複 雑 で あ る 。 以 上 の 二 つ もDSSを 用 い て 計 算 した 。 こ れ ら もCD-ROMに 動 画 が あ る。 図6∼10は,マ
ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ ク ス の 応 用 研 究 で あ る 。 図 6は,地 雷 除
去 の 機 械 化 を 図 り,国 際 貢 献 を 目指 した壮 大 で 意 義 深 い研 究 の 一 環 で あ る。 図 7
は,自 動 二 輪 車 の 安 定性 を 向上 させ る制 御 技 術 を 目指 した研 究 で あ り,新 しい制 御 技 術 を考 え る 上 で も興 味 深 い テ ー マ で あ る。 図 8は,弾 性 車 両 の モ デ ルで,弾 性 構 造 物 の振 動 制御 技 術 の 適 応 性 を 広 げつ つ あ る一 連 の 研 究 の 一 環 で あ る。 図 9 は,車 両 の運 転 者,お
よ び,乗 客 の 感 性 も含 め て ダ イ ナ ミ クス を考 え,環 境 も含
め て 良 好 な性 能 の 実 現 を 目指 した 一 連 の研 究 に用 い ら れ て い る ドラ イ ビ ン グ シ ミ ュ レー タ で あ る 。 図10は,鉄
道 車 両 の安 全 性 を 一 段 と高 め つ つ あ る輪 荷 重 制 御
の研 究 モ デ ル で あ る 。CD-ROMに,図
7 と異 な っ た モ デ ル 図 を用 い て い る が,
自動 二輪 車 の 動 画 が あ る。 こ れ らは 筆 者 の 周 辺 に あ る もの を列 挙 した だ けで あ る が,マ
ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス の対 象 に な る課 題 は 無 数 に存 在 す る 。
図11∼13は,学
生 の 自 主 課 題 か ら生 まれ た もの で あ る。 図11は
持 つ 車 両,図12は
歩 く自動 販 売 機,図13は
ジ ャイ ロ椅 子 と呼 ば れ る装 置 を体 験
して い る 様 子 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ンで あ る。 こ れ ら は,MATLABを れ た もの で,動
図 1
画 がCD-ROMに
弾性 車体 を
用 いて計算 さ
収 録 さ れ て い る。
大 型 ブ ル ドー ザ ー の 突 起 乗 り越 え 時 に 生 じ る 足 回 り負 荷 力 の 解 析 [提 供:小
図 2
松 製 作 所(小
松 技 法1987④VoL33
No.120)]
中 型 パ ワ ー シ ョベ ル の 作 業 サ イ ク ル シ ミ ュ レ ー シ ョ ン [提供:小
松 製 作 所(小
松 技 法1987④Vol.33
No.120)]
図 3
ホ イ ー ル ロ ー ダ の 作 業 サ イ ク ル シ ミ ュ レー シ ョ ン
[提 供:小
図4
図5
松 製 作 所(小
松 技 法1987④Vo1.33
No.120)]
逆 立 ち ゴマ の シミ ュ レー シ ョン(接 触 問題)
達 磨 落 と しシ ミュ レー シ ョ ン(接 触 問題)
図 6 地 雷 除去 支 援用 多 機 能 ア ー ム[提
図 7
図 8
自動 二 輪 車[提
弾 性 車体 を持 つ 車両[提
供:千 葉 大 学 野波 研 究 室]
供:千 葉大学西村研究室]
供:日 本大学背戸渡辺研究室]
図 9
ユ ニバ ー サ ル ドライ ビ ング シ ミュ レー タ
[提供:東 京大学生産技術研究所須 田研 究室]
(b)
(a)
図10空
気 バ ネ に よる左 右 車 輪 の荷 重 制 御
[提供:東 京大学生産技術研究所須 田研 究室]
(a)
(b)
図11弾
性車両
[学生の 自主課題]
図12歩
く 自動 販 売 機
[学生の 自主課題]
図13ジ
ャ イ ロ椅 子
[学生 の自主課題]
第 I部
数学の準備 本 書 を学 ぶ た め に必 要 と な る 数 学 は 初 歩 的 な もの ば か りで あ る。 行 列,ベ
クト
ル 解 析,微 積 分 学 の基 礎 的 事 項 を 知 っ て い れ ば よ く,い ず れ も大 学 初 年 度 で 学 ぶ 程 度 の も の で あ る。 しか し,複 数 の 多 変 数 関数 を簡 潔 に扱 うた め に行 列 を利 用 す る と便 利 で あ り,列 行 列(注)で列 行 列 を偏 微 分 す る よ う な操 作 が 必 要 に な る。 こ れ ら は工 学 で は よ く用 い ら れ る が,数 学 と して学 ん だ り,練 習 を積 む機 会 は少 な く,こ の よ う な 方 法 に不 慣 れ な読 者 も多 い と思 わ れ る。 3次 元 空 間 に 描 か れ た 矢 印 を本 書 で は 幾 何 ベ ク トル と呼 ぶ 。 ベ ク トル解 析 で は 幾 何 ベ ク トル とい う言 葉 は用 い な い と思 うが,そ
の 内 積 や 外 積 な どが 出 て くる 。
こ れ らの概 念 は力 学 で も重 要 で あ る 。 一 方,数 値 計 算 に持 ち 込 む ため に は 座 標 系 が 必 要 に な る 。 そ の座 標 系 は 3次 元 の 場 合,3 本 の 幾 何 ベ ク トル で で き て い る と 考 え るの が 妥 当 で あ る。 第 I部 の 第 1章 は,行 列 の 復 習 で あ る 。 第 2章 は,列 行 列 に よ る微 分 に つ い て 書 か れ て い るが,本
書 の 内 容 に沿 っ た 形 の 説 明 に な っ て い る。 第 3章 はベ ク トル
解 析 の 初 歩 と座 標 系 につ い て の 説 明 が あ る 。 第 I部 は本 書 で 使 用 す る数 学 を概 説 した もの だ が,第
2章 の最 後 の 節 に は ニ ュー トン ・ラ フ ソ ン法 が 出 て くる 。 これ
は運 動 学 な どで よ く用 い られ る数 値 解 法 で あ り,第
3章 の 座 標 系 と と もに,運 動
力 学 に 直接 関 わ る事 項 で あ る。
(注)n×1行
列 を本 書 で は 列 行 列 と呼 ぶ こ とに す る。 普 通,列 ベ ク トル な ど と呼 ばれ るが,本
書 で はベ ク トル とい う言 葉 を 第 3章,第
4章 な どで 説 明 す る幾 何 ベ ク トル と代 数 ベ ク トル に 限
定 して使用 して い る 。 こ の両 者 の 明確 な認 識 を重 視 して い るた め であ る。
第 1章
行列の復習
実 数,複 素 数,そ の 他 数 学 の対 象 と な る要 素 を長 方 形 状 に並 べ た もの を行 列 と 呼 ぶ 。 行 列 は マ ル チ ボ デ ィ ダ イナ ミク ス を扱 う た め の 重 要 な道 具 で あ り,本 書 を 学 ぶ 上 で 必 須 で あ る。 本 章 は,行 列 の 基 本 的事 項 の 復 習 で あ る。 ほ とん ど,大 学 の初 年 度 に学 ぶ 程 度 の事 柄 で あ り,各 節 の タ イ トル だ け を確 認 す る程 度 の 読 み 方 で十 分 な読 者 も多 い はず で あ る。 しか し,ブ ロ ッ ク行 列 の考 え方 を初 め て 知 る読 者 が い るか も しれ な い。 これ は難 しい こ と で は な い が,当
然 の こ との よ う に使 わ れ る の で 迷 い の ない
よ う に把 握 して お い て 頂 きた い 。 ま た,ス 称 行 列)と
カ ラ ー行 列 や,交 代 行 列(ま
い う言 葉 を初 め て 知 る読 者 もい るか も しれ な い が,そ
み だ け で も よ い で あ ろ う。 固 有 値 解 析,対
角 変 換,ト
たは歪対
の 部 分 の拾 い 読
レー ス に 関 す る説 明 は 必 要
が 生 じた と きに読 む こ と に して も よ い 。 こ の 章 で 扱 う行 列 は原 則 と して 実 数 を要 素 と して い る。 一 方,第
3章 や 付 録 A
に は 幾何 ベ ク トル を要 素 とす る行 列 が 出 て くる。 た だ し,こ れ は,単 に行 列 の 形 式 と演 算 規 則 を利 用 し て い る だ け で あ り,そ の 場 で理 解 で き,使 い なが ら慣 れ て ゆ け る は ず で あ る。 ま た,付 録 B に は 複 素 数 を 要 素 と す る 行 列 が 出 て く るが, これ もそ の 場 の 説 明 だ け で 十分 だ と考 え て い る。
1.1
行,列,行
n×m行
列 の サ イ ズ(大 き さ),列
列 A はn×m個
行 列,行
行列
の 要 素 を 次 の よ う に並 べ た もの で あ る 。
(1.1)
横 の 並 び を行,縦
の 並 び を列 と呼 び,こ
れ て い る。 また,こ
の 行 列 のサ イ ズ,ま
の 行 列 は n個 の 行 と m 個 の 列 で構 成 さ た は,大 き さ をn×mと
表 現 す る。A の
(i,j)要 素 と はaijの こ と で,置 か れ て い る位 置 の 行 と列 の 番 号 が 添 え 字 に な っ て いる。 n×1行 列 は 要 素 が 縦 に 並 ん だ行 列 で,本 書 で は列 行 列 と呼 ぶ こ と にす る。
(1.2)
1×n行 列 は要 素 が横 に並 ん だ行 列 で,行 行 列 で あ る。 C=[C1C2…Cn]
(1.3)
1×1行 列 は単 独 の 要 素 と同 一 で あ る。
1.2
ゼ ロ 行 列,正
方 行 列,長
ス カ ラ ー 行 列,上(下)三
方 行 列,対
角 行 列,単
位 行 列,
角行列
ゼ ロ 行 列 と はす べ て の 要 素 が ゼ ロの 行 列 で あ る。 大 き さ がn×mの
ゼ ロ行 列 を
0n×mと 書 くこ と も あ る が,本 書 で は,単 に 0 と書 い て 大 き さ を 明示 し な い。 式 の 中 や 文 脈 で 判 断 で きる と考 え ての こ とで あ るが,不 慣 れ な うち は 注 意 を要 す る。 行 と列 の 数 が 同 じ行 列 を正 方 行 列 と呼 ぶ 。
(1.4)
な お,一 般 の 行 列,あ
る い は,特 に正 方 行 列 以 外 の 行 列 を 長 方 行 列 と呼 ぶ こ とが
ある。 正 方 行 列 の 左 上 の 角 か ら右 下 の 角 に 向 か う対 角 線 上 の 要 素 を対 角 要 素 と呼 ぶ 。 式(1.4)右 辺 の 中 の 添 え字 がdjjと な る よ う な要 素 の こ と で,n×n行
列 に は n個
の 対 角 要 素 が あ る。 そ して,対 角 要 素 以 外 の 要 素 が す べ て 0の 場 合 ,そ の よ う な 行 列 を対 角 行 列 と呼 ぶ 。 対 角 要 素 がf1,f2,…,fnの
対 角 行 列 F はdiag(f1 ,f2,
…
,fn)と
表 す こ と もあ る。
(1.5)
な お,こ
の 対 角 要 素 の よ う に,添
え字 の付 け 方 は融 通 を きか せ た考 え 方 をす れ ば
よい 。 す べ て の 対 角 要 素 が 1の 対 角 行 列 を単 位 行 列 と呼 ぶ 。 本 書 で は 単 位 行 列 をIn と 表 し,サ イ ズ がn×nで 3×3の
単 位 行 列 で,本
あ る こ と を 明 示 す る こ とが 多 い。 た と え ば,I3は
書 に は頻 繁 に現 れ る。 単 位 行 列 の サ イ ズ を明 示 せ ず に,I
と表 す 場 合 もあ る が,い ず れ に して も,I は 単 位 行 列 を意 味 す る予 約 文 字(専 用 に 約 束 され た 文 字)と I=diag(1,1,・
す る。
(1.6)
・・,1)
I1は ス カ ラ ー の 1と 同 じで あ る が,2×2以
上 の 場 合,本
書 では単位 行 列 を 1
と表 す こ と は な い。 た ま に,単 位 行 列 を 1と表 記 して い る文 献 も あ る が,慣
れな
い う ち は 混 乱 の 原 因 に な るの で記 号 を 区別 す る ほ うが よい と考 え て い る 。 対 角 行 列 の 対 角 要 素 がすべ て等 しい場 合,そ の よ うな行 列 をス カ ラ ー行 列 と呼 ぶ 。
(1.7)
単 位 行 列 は ス カ ラ ー 行 列 で,そ
の ス カ ラ ー の 値 が 1の場 合 で あ る。
正 方 行 列 を対 角 要 素 とそ の 右 上 方 の 要 素,左
下 方 の 要素 の 三 つ に分 け,左 下 方
の 全 要 素 が ゼ ロ の場 合 を上 三 角 行 列 と呼 ぶ。 同 様 に,右 上 方 の 全 要 素 が ゼ ロ の場 合 は下 三 角 行 列 で あ る(ブ な お,上
ロ ッ ク上(下)三
下 の 三 角 行 列 は,LU分
解,QR分
角 行 列 の 式(1.11),(1.12)参 解,コ
照)。
レ ス キ ー 分 解 と呼 ば れ る数 値
計 算 の 方 法 に 出 て くる。 これ ら の 方 法 は運 動 方程 式 や 拘 束 式 の 数 値 解 法 に 密 接 に 関係 し て い るの で,他 に役 立 つ で あ ろ う。
の 文 献 な どで 学 ん で お くと,本 書 の 知 識 を発 展 させ る と き
1.3
ブ ロ ッ ク行 列,対 ブ ロ ック 上(下)三
行 列 を適 当 に 縦,横
角 ブ ロ ッ ク,ブ
ロ ック 対 角 行 列,
角行 列
に 分 割 し,い
くつ か の 小 さ な行 列 が 長 方 形 状 に 並 ん で い る
と考 え る と便 利 な場 合 が あ る。 その よ うな小 さ な行 列 をブ ロ ッ ク と呼 ぶ こ とにす る と,ブ
ロ ック を要 素 と した 行 列 を考 え て い る こ とに な る。
(1.8)
ブ ロ ッ ク を要 素 と した行 と列 の 数 は,当 然,単
独 要 素 レベ ル で 見 た 行 と列 の 数 よ
り小 さ い か 等 しい 。 全 体 の 行 列 は縦 と横 の ま っす ぐな線 で 分 割 す るの で,一 つ の 行 に含 まれ る ブ ロ ッ ク の 行 の 数 は等 し く,一 つ の 列 に含 まれ る ブ ロ ッ クの 列 の 数 も等 しい 。 た だ し,分 割 が 等 分 割 と は 限 らな い の で,ブ
ロ ック の 大 き さ は様 々 に
な る。 この よ うに ブ ロ ック を明 示 した行 列 表 現 をブ ロ ック 表 現,そ
の よ う に把 握
さ れ た 行 列 を ブ ロ ッ ク 行 列 と呼 ぶ 。 ブ ロ ック 行 列 と は 特 定 な行 列 の 名 称 で は な く,行 列 の 捉 え 方 で あ る 。 ま た,p×qブ
ロ ッ ク行 列 とい え ば,ブ
ロ ッ ク単 位 で
数 え た 行 数 が p,列 数 が qと解 釈 す る こ とにす る。 p×pブ
ロ ッ ク 行 列 A は ブ ロ ック 単 位 の 行 数 と列 数 が 等 しい の で,正 方 的 ブ ロ
ッ ク行 列 と呼 ぶ 。 そ して,そ の よ う な場 合,Aiiの
よ う に 二 つ の 添 え字 が 等 し く
な る よ うな 位 置 に あ る ブ ロ ック が 対 角 ブ ロ ッ ク で あ る。 本 書 で は対 角 ブ ロ ックが 正 方 行 列 で な い場 合 も含 め て 考 えて い る。 す な わ ち,行 列 全 体 が 正 方 行 列 で な い 場 合 で も ブ ロ ッ ク 単 位 で は正 方 的 と見 な して 対 角 ブ ロ ッ ク を 考 え る こ とが あ る。 な お,対
角 ブ ロ ッ ク を 正 方 行 列 に 限 定 して い る文 献 もあ る の で 注 意 が 必 要 で あ
る。 対 角 ブ ロ ッ ク以 外 の ブ ロ ック が ゼ ロ行 列 の場 合,そ
の よ う な正 方 的 ブ ロ ック行
列 を ブ ロ ッ ク 対 角 行 列 と呼 ぶ 。対 角 ブ ロ ッ ク がD1,D2,…,Dpの
と き,ブ ロ
ッ ク対 角 行 列 を次 の よ う に 表 す こ とが あ る。 D=diag(D1,D2,…,Dp)
(1.9)
こ れ は 一 般 の 対 角 行 列 と同 じ表現 で あ る の で,区 別 して,次 の よ うに 表 現 す る こ
と もあ る。 D=block
(1.10)
_diag(D1,D2,…,Dp)
前 述 し た こ と だが,こ
の場 合 も本 書 で はDiを
正 方 行 列 に 限 定 して い な い。
正 方 的 ブ ロ ック行 列 も対 角 ブ ロ ッ ク とそ の右 上 方 の ブ ロ ッ ク,左 下 方 の ブ ロ ッ ク に 分 け て 考 え る こ とが で き,左 下 方 の ブ ロ ッ クが すべ て ゼ ロ の場 合 をブ ロ ッ ク 上 三 角 行 列,右
上 方 の ブ ロ ック が す べ て ゼ ロ の 場 合 を ブ ロ ッ ク 下 三 角 行 列 と呼
ぶ。
(1.11)
(1.12)
な お,第21章
1.4
の 漸 化 式 に ブ ロ ック下 三 角 行 列 や ブ ロ ック 対 角 行 列 が 出 て くる。
行列の等値性,行 列の和と積,ブ ロック行列の和と積, 行列のスカラー積
行 列 A と B の サ イ ズ が 等 し く,対 応 す る 位 置 に あ る す べ て の 要 素 が 等 しい と き二 つ の 行 列 は等 しい とい う。 行 列 A と B の和 も,サ
イズ が 等 しい 場 合 に だ け
考 え る こ とが で きる 。 和 も 同 じサ イ ズ の 行 列 に な り,そ れ を C とす る と,C の 各 要 素cijは A と B の 対 応 す る位 置 にあ る 要 素aijとbijの 行 列 A の サ イ ズ をm×k,B
の サ イ ズ をk×nと
和 で あ る。
す る と,二 つ の 行 列 の積AB
を 考 え る こ とが で き る。 そ の 結 果 の行 列 を C とす る と,そ の サ イ ズ はm×nで, (i,j)要 素cijは A の 第 i行 と B の 第 j列 を用 い て 次 の よ う に計 算 さ れ る 。
図1.1行
列 の和 と積
(1.13)
行 列 A と B の 積ABは,A
の 列 の 数 と B の 行 の 数 が 等 しい と き存 在 す る。 積 の
場 合 は順 序 が 重 要 で,ABが
存 在 して もBAが
者 が 存 在 す る 場 合,ABとBAは 限 らず,サ 場 合,行
存 在 す る と は 限 らな い 。 ま た,両
正 方 行 列 に な るが,両 者 の サ イ ズ は 等 しい とは
イ ズ が 等 しい 場 合 も両 者 が 等 しい とは 限 ら な い 。ABとBAが
列 A と B は交 換 可 能,あ
等 しい
る い は,可 換 で あ る とい う。
ブ ロ ッ ク行 列 A と B の 和 は 両 者 の ブ ロ ック行 数 と ブ ロ ッ ク列 数 が 等 し く,対 応 して い るす べ て の ブ ロ ック 同 士 のサ イ ズ が 等 しい 場 合 に 限 っ て考 え る こ とが で き,同 型 の ブ ロ ッ ク 行 列 に な る 。 こ れ を C とす る と,す べ て の ブ ロ ッ ク に つ い て次 の 関係 が 成 立 す る。
(1.14)
Cij=Aij+Bij p×kの
ブ ロ ッ ク 行 列 A とk×qの
と sに 対 し て 積AisBsjが
ブ ロ ッ ク 行 列 B に 関 し て,す
存 在 す る と き に 限 っ て,二
を 考 え る こ と が で き る 。 そ の 結 果 を C と す る と,そ p×qで,(i,j)ブ
ロ ッ クCijは
べ て の iと j
つ の ブ ロ ッ ク 行 列 の 積AB の ブ ロ ック行列 サ イズは
A の i番 目 の ブ ロ ッ ク 行 と B の j番 目 の ブ ロ ッ ク
列 を用 い て 次 の よ うに 計 算 さ れ る 。
(1.15)
ブ ロ ッ ク行 列 の 和 と積 は 形 式 的 に は実 数 要 素 の 行 列 の和 と積 と 同 じで あ るが, 要 素 が 行 列 で あ る か ら,要 素 同士 の和 と積 が 成 立 す る こ と も必 要 条 件 で あ る 。 た とえ ば,次 の 積 が 成 立 す る た め に は ど ん な条 件 が 必 要 だ ろ うか 。
(1.16) まず,全
体 の積 が 成 立 す る よ うな サ イズ に な っ て い な けれ ば な ら な いが,そ
に,積AF,あ
る い は,BGが
の他
成 立 す る こ とが 必 要 で あ る。 あ る い は,全 体 の積
に 関 す る サ イ ズ の整 合 性 を 求 め ず に,AFとBGが
成 立 す る こ とが 必 要 と して も
よい 。 た だ し,ブ ロ ッ ク の考 え 方 自体 は 適 宜 変 更 して 考 え る こ とが で きる の で, 無 意 味 に形 式 に こ だ わ る こ とが 求 め られ て い る わ け で は な く,合 理 的 で矛 盾 の な い ブ ロ ッ ク の 見 方 が 保 た れ て い れ ば よい 。 なお,慣
れ ない うち は,常 時,サ
イズ
に矛 盾 が 生 じて い な い か ど う か を確 認 す る努 力 が 望 ま し く,こ れ は 単 純 ミス の 防 止 に 繋 が る。 行 列 の ス カ ラ ー 積 とは,行 列 の すべ て の 要 素 に そ の ス カ ラ ー を乗 じる こ とで あ る。 式(1.1)の A にス カ ラー sを掛 け る と次 の よ う に な る。
(1.17)
ス カ ラ ー と は,こ
こで は,実 数 の こ とだ が,幾 何 ベ ク トル な どの 単 独 要 素 を掛 け
る場 合 で も同 様 の積 の ル ー ル が 成 立 す る と考 えて よ い 。 実 数 を 要 素 とす る1×1行 nが 2以 上 の 場 合,サ
列 は 実 数 そ の もの と同 等 と見 る こ とが で きる。 m と
イ ズ がm×nの
行 列 と1×1の
行 列 の積 は 通 常 の 行 列 の積
で は 定 義 され て い な い 。 そ の 意 味 で,行 列 の ス カ ラ ー積 は 行 列 の積 に関 す る特 別 な ル ー ル で あ る 。 行 列 の 積 は一 般 に 可 換 で は な い が,行 け る と きは,sAと
書 い て もAsと
列 A に ス カ ラ ー sを掛
書 い て も よい 。 もち ろ ん こ れ は,A の 要 素 と s
が 積 に 関 し て 可 換 で あ る こ と が 前 提 で あ る 。 行 列A,Bの を 掛 け る 場 合 も,sAB,AsB,ABsの た だ し,ス
た は,SBを
考 え,ス
カ ラ ー sが 式(1.2)の
表 さ れ て い る と し よ う 。 こ れ をBs,お
考 え る と,一
b と 式(1.3)の
よ び,SBに
cに よ
代 入 す る ことを
カ ラー 積 が 特 別 ル ー ル で あ る こ と が 原 因 で あ
列 の 積 の 結 合 法 則 と は,一
般 に,次
の 式 が 成 立 す る こ と を い う。
(AB)C=A(BC)
1.5
列 B の スカ
般 に積 の 結 合 法 則 が 成 り立 た な くな る。 通 常 の 行 列 の積 で は こ の よ
う な こ と が 生 じ る こ と は な く,ス る 。 な お,行
ス カラー s
い ず れ で も よ い。
カ ラ ー 積 で は 次 の こ と に 注 意 が 必 要 で あ る 。 い ま,行
ラ ー 積Bs,ま りs=cbと
積ABに
(1.18)
行列式,小 行列式,逆 行列
実 数 を 要 素 とす る正 方 行 列 A に対 して,行 列 式│A│と 呼 ば れ る実 数 を 対 応 さ せ る こ とが で きる 。 行 列 式 は 行 列 の 要素 を用 い て計 算 す る こ とが で き るが,行 列 の サ イ ズが2×2と3×3の
場 合 は 次 の よ う に な る。
(1.19)
(1.20) 大 き さn×nの
行 列 の 行 列 式 に つ い て,こ
こ で は,行 展 開 の 方 法 を 示 して お
く。A の i番 目の 行 に つ い て 展 開 す る と して,次 の 漸 化 的 な 関係 が 成 立 す る。
(1.21) i番 目の 行 と して は どの 行 を 選 ん で も よ い。Mijは (n-1)×(n-1)行
A の 第 i行 と第 j列 を 除 い た
列 の 行 列 式 で,小 行 列 式 と呼 ば れ る 。列 展 開 の 方 法 もあ り,
同 様 で あ る が,い ず れ に し て も n個 の 小 行 列 式 が 決 ま れ ば│A│を 求 め る こ とが で き る。 各 小 行 列 式 の 計 算 も同 様 に,一 回 りサ イ ズ の小 さい 行 列 の 行 列 式 か ら求 め
る こ と に し,こ れ を繰 り返 せ ば,2×2行
列 な どの 行 列 式 計 算 に帰 着 で き る。
次 に,行 列 式 の 性 質 に つ い て 考 え る 。 まず,も
との 行 列 の 二 つ の行(ま
列)が 等 しい と き,行 列 式 は ゼ ロ に な る。 行 列 の 2つ の 行(ま え る と行 列 式 は 符 号 が 反 転 す る。 行 列 の あ る行(ま 列)の
た は列)に
定 数倍 を加 え て も行 列 式 は変 わ らな い 。│AB│,│A│,│B│が
た は列)を
たは 入れ換
別 の 行(ま
たは
存 在 す る と き,
次 の 関 係 が 成 り立 つ 。
│AB│=│A││B│ n×nの
(1.22)
大 き さ の 行 列 A に お い て,あ
倍 に な る 。n×n行
る 行(ま
列 A の ス カ ラ ー 積(a
た は 列)を
倍)を
a倍 す る と 行 列 式 は a
作 っ た と き,そ
の行列式 は次 の
よ うに な る。
│aA│=an│A│
(1.23)
正 方 行 列 A の 行 列 式│A│が ゼ ロ で な い 場 合,A を求 め る こ とが で き,A
とA-1と
の 逆 行 列 と呼 ば れ る 行 列A-1
は次 の よ う な関 係 に な っ て い る 。
AA-1=A-1A=I
(1.24)
右 肩 の-1 が 逆 行 列 を表 す 記 号 で あ り,ま た,A
とA-1は
可 換 で あ る。 次 に,正
方 行 列 A を係 数 行 列 と し,列 行 列 x を 未 知 数 とす る 次 の よ う な 連 立 一 次 方 程 式 を考 え る。 Ax=b こ の 式 の 解 はA-1が
(1.25) 存 在 す る と き,こ
れ を用 い て 次 の よ うに 求 ま る 。
x=A-1b
(1.26)
た だ し,連 立 一 次 方 程 式 の 数 値 解 を求 め る実 際 の計 算 で は,逆 行 列A-1を た 後 に b と の 積 を 作 る よ う な 手 順 は 計 算 時 間 的 に不 利 で あ り,直 接,連 方 程 式 を解 く方 法(ガ
求め 立一次
ウス の消 去 法 な ど)を 用 い る こ とが 多 い 。 そ の 意 味 で は式
(1.26)は 理 論 上 の 式 で あ る 。 逆 行 列 は次 の式 で 求 め る こ とが で き る。
(1.27) adj(A)は (1.21)に
余 因 子 行 列 と 呼 ば れ,そ
の(i,j)要
出 て き た 小 行 列 式 で あ る が,添
が 必 要 で あ る 。2×2行
素 は(-1)i+jMjiで
あ る 。Mjiは
式
え 字 の 順 序 が入 れ 替 わ っ て い る点 に 注 意
列 の 余 因子 行 列 は 次 の よ う に な る。
(1.28) した が っ て,逆 行 列 は 次 の よ う に求 ま る。
(1.29) ABとA-1,B-1が
存 在 す る と き,次
の 関 係 が 成 り立 つ 。
(1.30)
(AB)-1=B-1A-1 a を ゼ ロ で な い ス カ ラ ー と し て,A-1が
存 在 す る と き,次
の式 が成 り立 つ 。
(1.31) A-1が
存 在 す る と き,次
の 関 係 が 成 り立 つ 。
(1.32)
1.6
転置行列,対 称行列,交 代行列(歪 対称行列)
サ イ ズn×mの
行 列 A の(i,j)要
素 をaijと す る。 こ の と き,aijを(j,i)要
素
と し,他 の す べ て の 要 素 につ い て も行 と列 の 番 号 を入 れ 換 え た位 置 に 配 列 しなお した 行 列 を考 え る こ とが で き る。 そ の よ う な行 列 を A の転 置 行 列 と呼 び,ATと 書 く。 右 肩 の Tが 転 置 を 表 す 記 号 で,ATの
サ イ ズ はm×nに
な る。 ま た,列 行
列 の 転 置 は 行 行 列 に な り,行 行 列 の 転 置 は列 行 列 に な る。 ス カ ラ ー,あ
る い は,
1×1行 列 を転 置 して も,転 置 前 の もの と同 一 で あ る。 次 に,ブ
ロ ッ ク行 列 の 転 置 を 考 え る。 た と え ば,
(1.33) こ の 場 合,A
と B を,単
必 要 で あ るが,う
に,縦 に 並 べ 直 す だ け で は な く,A と B 自体 も転 置 が
っか り しやす い の で 注 意 を促 して お く。
正 方 行 列 A の(i,j)要
素 と(j,i)要
素 が す べ て の iと jにつ い て等 しい と き,
これ を対 称 行 列 と呼 ぶ 。 次 の 式 は 対 称 行 列 の 必 要 十 分 条 件 で あ る 。 AT=A
(1.34)
対 称 行 列 は,対 角 要 素 に 関 して 対 称 的 な位 置 にあ る要 素 が 等 しい値 を持 っ て い る。 正 方 行 列 A の す べ て の 対 角 要 素 が ゼ ロ で,こ の 対 角 要 素 に関 して 対 称 な 位 置 に あ る 二 つ の 要 素 の 和(aij+aji)が,す 列 を,交 代 行 列,あ
べ て のi,jに
対 して ゼ ロ の と き,こ の 行
る い は,歪 対 称 行 列 と呼 ぶ 。 次 の 式 は交 代 行 列 の 必 要 十 分 条
件 で あ る。
(1.35)
AT=-A
交 代 行 列 は,対 角 要 素 に 関 して 対 称 的 な位 置 に あ る 要 素 の 絶 対 値 が 等 し く,符 号 が反対 に なっている。 一 般 に,正 方 行 列 は 対 称 行 列 と交 代 行 列 の 和 に分 解 で き る。 こ の こ と は次 の 式 か ら明 らか で あ る。
(1.36) 積ABの
転 置 は,B
の 転 置 と A の転 置 を こ の順 に掛 け た もの に 等 しい。
(1.37) │A│が 存 在 す る と き,こ
の 値 とATの
行 列 式 は等 しい 。
(1.38) A-1が
存 在 す る と き,そ
の 転 置 はATの
逆 行 列 に 等 し い 。 本 書 で は,こ
れ をA-T
と 書 く こ とが あ る 。
(1.39)
1.7固
有 値,固 有 列 行 列,対
実 数 を要 素 とす るn×n正 とが で きる 。 まず,次
角変 換
方 行 列 A に 関 して,固 有 値 と固 有 列 行 列 を考 え る こ
の 式 を A の 特 性 方 程 式 と呼 ぶ 。
(1.40) S は 未 知 の ス カ ラ ー 変 数Inはn×n単 n 次 方 程 式 で,そ
位 行 列 で あ る 。 こ の 方 程 式 は sに 関 す る
の n 個 の 根 λ1,λ2,…,λnが
を 満 た す ゼ ロ で な いn×1列
行 列Viは,λiに
A の 固 有 値 で あ る 。 ま た,次
の式
対 応 す る 固 有列 行 列 で あ る。
(1.41) 固有 列 行 列 は,通 常,固 有 ベ ク トル と呼 ば れ て い るが,本 書 で は,第
I部 の 冒頭
の 脚 注 に 記 した 方 針 に従 っ て この よ う に呼 ぶ こ とに す る。 固有 値,お
よ び,固 有
列 行 列 の 要 素 は 複 素 数 に な る こ とが あ る。 式(1.41)の
意 味 は,固 有 列 行 列Viに
A を左 か ら掛 け て で きる 列 行 列 がViの
λi倍に な る とい う こ とで あ る 。λiとViの 要 素 が 実 数 の場 合 は,Viに
A を左 か ら
掛 け て も n 次 元 空 間 に お け るViの 方 向 が 変 化 し な い こ と に な る。 一 般 に は, n×1列
行 列 に A を 左 か ら掛 け た 結 果 は も と の 列 行 列 の ス カ ラ ー 倍 に は な らず,
n次 元 空 間 に お け る方 向 が 変 化 す る が,こ の こ と と対 比 して 考 え る と固 有 列 行 列 と 固 有値 の イ メ ー ジが は っ き りす る で あ ろ う。 特 に,2 次 元 か 3次 元 で 試 してみ れ ば わ か りや す い 。 viが λiに対 応 す る 固 有 列 行 列 の と き,Viの
定 数 倍 も λiに対 応 す る固 有 列 行 列
で あ る。 す な わ ち,固 有 列 行 列 は常 に定 数 倍 の 自 由 度 が あ る。 ま た,n×n行
列
A の 固 有 値 は重 根 も含 め る と,必 ず,n 個 あ る 。 A の 要 素 が 実 数 の 場 合,複 素 数 の 固有 値 が あ れ ば そ の 共役 複 素 数 も固 有値 に な っ て い て,対 応 す る 固有 列 行 列 も 共 役 の 関 係 に あ る。 す べ て の 固 有 値 が 異 な っ た値 の と き,λiに 対 応 す るviは 定 数 倍 の 自 由度 を除 い て 定 ま る。 そ の と き,i=1∼nのviを
順 に並 べ て,次 の よ う な正 方 行 列 T を
考 え る。
(1.42) こ の と き,T-1は
必 ず 存 在 し,T-1ATはi=1∼nの
λiを 順 に 並 べ た 対 角 行 列 に
なる。
(1.43)
(1.44)
この よ う な A へ の変 換 を対 角 変 換 と呼 び,T
は対 角 変 換 行 列 で あ る 。
式(1.42)の 正 方 行 列 T の 逆 行 列 が 存 在 す る と き,n 個 の 固 有 列 行 列vi(i=1∼ n)は,一
次 独 立 で あ る とい う 。 逆 に,n 個 の 固 有 列 行 列Vi(i=1∼n)が
立 な ら,正 方 行 列 T は逆 行 列 が 存 在 す る 。 なお,任
意 のn×1列
一次独
行 列 は n個 の一
次 独 立 な 固 有 列 行 列Viの 線 形 結 合 で 表 す こ とが で き る。 線 形 結 合 とは,ス
カラ
ー を掛 け て和 を と る操 作 で あ る。 ま た,一 次 独 立 で な い 場 合 は,一 次従 属 で あ る とい う。 実 数 を 要 素 とす る 対 称 行 列 を実 対 称 行 列 と呼 ぶ が,行 列 A が 実 対 称 行 列 の場 合,固
有 値 は 実 数 に な る。 そ して,二
ば,VTiVjは ま た,こ
つ の 固 有 値 λiと λjが異 な る 値 を持 つ な ら
ゼ ロ に な る 。VTiVjを 二 つ の 列 行 列ViとVjの
の 内積 が ゼ ロに な っ て い る こ と をviとVjが
内 積 と呼 ぶ こ とが あ り,
直 交 して い る と表 現 す る こ
とが あ る 。 す な わ ち,実 対 称 行 列 の異 な る 固有 値 に対 応 す る固 有 列 行 列 は 直 交 し て い る。 実 対 称 行 列 A の 固 有 値 に重 根 が 含 ま れ て い る場 合,対 応 す る 固 有 列 行 列 は 定 数 倍 以 外 に も 自 由 な 選 び 方 が で きる が,そ
の 場 合 で も,実 対 称 行 列 A の 固 有 列
行 列 の す べ て を,相 互 に直 交 す る よ う に 選 ぶ こ とが で き る。 ViをVTiViが
1に な る よ う に 選 ぶ こ と を 固有 列 行 列viの 正 規 化 と呼 ぶ 。 実 対 称
行 列 A の 固 有 列 行 列 が 相 互 に 直 交 して い て,か つ,正
規 化 され て い る と き,対
角 変 換 行 列 T は 正 規 直 交 行 列 に な る。 TT=T-1
(1.45)
こ の と き,対 角 変 換 は 次 の よ う に書 く こ とが で き る。 TTAT=A
(1.46)
正 規 直 交 行 列 は,QR分
解 や特 異 値 分 解 と呼 ば れ る数 値 解 法 に 出 て くる 。特 異
値 分 解 も本 書 の 方 法 で 求 め た 関 係 式 を 数 値 的 に解 く場 合 に役 立 つ こ とが あ る 。6. 2節 の座 標 変 換 行 列(7.2節
の 回転 行 列)は
正 規 直 交 行 列 で あ る。 ま た ,12.3節
に 記 した 慣 性 主 軸 を求 め る た め に,慣 性 行 列(実 対 称 行 列)を
固 有値 解 析 し,正
規 直 交 行 列(座 標 変換 行 列)を 作 っ て対 角 変 換 を行 う方 法 が あ る 。
1.8行 n×n正
列 の トレ ー ス 方 行 列 A の トレー ス は,対 角 要 素 の和 で あ る。
(1.47) 転 置 して も トレー ス は変 わ らな い 。
(1.48) ス カ ラ ー sに 対 し て,次
の 式 が 成 り立 つ 。
(1.49) B も 同 じサ イ ズ の 正 方 行 列 と して,次
の式 が 成 り立 つ 。
(1.50) トレー ス は全 固有 値 の和 に 等 しい。
(1.51) 二 つ のn×m行
列 B と C につ い て 次 ぎ の 関係 が 成 立 す る。
(1.52) こ の 式 を,二
つ のn×1列
行 列 b と c に 適 用 す る と,次
の よ う に な る。
(1.53) 最 後 の 式 は,付
録B7.2項
で役 に 立 つ 。
第2章
列行 列を変数 とする関数の微分
本 章 は行 列 の微 分 に 関す る事 柄 の 説 明 で あ る。 そ の 内 容 は多 変 数 の微 分 学 と行 列 の 組 み合 わ せ で あ り,い ず れ も大 学 の 初 年 度 に学 ぶ事 柄 で あ る が,多 変 数 の微 分 学 が 十 分 実 用 的 な レベ ル に達 して い る か否 か とい う不 安 と,行 列 との組 み 合 わ せ に よ る混 乱 の 不 安 が あ る。 そ こで,本 書 を 読 む た め に 必 要 な数 学 的 操作 を ま と め て み た。 数 学 と して この よ うな 内 容 を学 び,練 習 す る機 会 は少 な い と思 われ る の で,時
間 を か け て,曖 昧 さ を取 り除 い て ほ しい 。 式 の 変 形 操 作 の制 限 や ス カ ラ
ー と列 行 列 の 違 い に よ る差 異 を理 解 し,形 式 的 な 類 似 に よ る誤 りに 陥 らな い よ う に注 意 を払 っ て 頂 きた い 。 第 Ⅱ部 以 降 を学 ぶ うち に疑 問 が 湧 い て くる こ と もあ ろ う。 そ の よ うな と きに は 再 度,こ
の 章 を復 習 して,数 学 的 な 操 作 とそ の 意 味 を正
し く把 握 し直 す よ うな 努 力 を期 待 した い 。 行 列 を利 用 した 関 数 操 作 は慣 れ て しま う と便 利 な道 具 で あ り,広 本 章 の 中 で,2.1節
く工 学 一 般 で 役 立 つ もの で あ る 。
∼2.3節 が 基 本 的 な 内容 で あ り,2.4節
∼2.7節 は そ の 応 用
と位 置 づ け る こ と も で きる の で,後 者 は 基 本 事 項 の 練 習 問題 と考 え て も よい 。2. 4節 の 2階 時 間微 分 は,位 置 に対 す る加 速 度 と考 え る こ とが で きる 。2.5節 の 積 分 可 能 条 件 は,第13章
で 学 ぶ ホ ロ ノ ミ ッ ク,ノ
に 関係 して い る。2.6節
ン ホ ロ ノ ミ ッ ク と呼 ば れ る事 柄
の ヤ コ ビ行 列 の 時 間微 分 で は,第22章
の ラ グ ラ ンジ ュ
の 運 動 方 程 式 導 出 過 程 で 必 要 に な る 関 係 式 を求 め て い る 。2.7節 の ニ ュ ー ト ン ・ ラ フ ソ ン法 は 運 動 学 で 必 要 に な る 道 具 で あ り,動 力 学 で も役 立 つ 数 値 解 法 で あ る 。2.4節 以 降 は 必 要 に な っ た と き に読 み 直 す よ う な や り方 で,本 書 を読 み 進 め て も よ い。 本 章 の 中 で は,s と tを ス カ ラ ー,f と v と d を列 行 列,A そ の サ イ ズ は fがN×1,v
がM×1,AがN×M,BがM×Mで
あ る。 列 行 列
dの サ イ ズ は 特 に定 め な い。 ま た,本 章 に 出 て くるs,fな の 関 数 で あ る こ と を 前 提 とす る 。C2級 の 関数 と は,二
と B を 行 列 と し,
どの 各 関 数 は,C2級
回 偏 微 分 可 能 で,そ
の結
果 が 連 続 に な る よ う な 量 で あ り,位 置 や 速 度 な ど本 書 で 扱 う物 理 量 は,通 常, C2級 と して差 し支 え な い 。
2.1行
列 が ス カ ラ ー t(時 間)の
関 数 に な って い る 場 合
ス カ ラ ー tは 時 間 を表 す 変 数 と し,ス カ ラ ー s,列 行 列 v,行 列 A は こ の 時 間 を 変 数 とす る 関 数 とす る 。 s=s(t)
(2.1)
v=v(t)
(2.2)
A=A(t)
(2.3)
列 行 列 と行 列 の場 合,こ
の よ うな 表 現 はそ の行 列 を構 成 して い るす べ て の 要 素 が
時 間 の 関 数 に な っ て い る こ と を 意 味 して い る。
(2.4)
(2.5)
た だ し,時 間 の 関 数 とい っ て も一 般 論 で あ り,定 数 の場 合 も含 ま れ て い る。 さ て,こ れ らの 関 数 を時 間 で 微 分 す る こ と を考 え て み よ う。 記 号 の 上 の ・(ド ッ ト)に よ っ て も時 間微 分 を表 す こ と に して,次 の よ うに 書 くこ とが で きる。
(2.6)
(2.7)
(2.8)
行 列 の 時 間 微 分 は この よ う に行 列 の全 要 素 の 時 間微 分 を意 味 して い る。
2.2ス
カ ラ ー sが 列 行 列 vの 関 数 に な っ て い る 場 合
次 に,ス
カ ラ ー sが 列 行 列 v の 関 数 に な っ て い る と す る 。 v の 関 数 に な っ て い
る とい う こ と は vの 要 素 の 関 数 に な っ て い る とい う こ とで あ る 。
(2.9) こ の と き,s
を v で 偏 微 分 す る と は,s
を v の 要 素 υ1,υ2,…,υMで
偏 微 分 した も
の を順 に横 方 向 に並 べ て行 行 列 を作 る こ と と約 束 す る。
(2.10) Sv(注)でこ の偏 微 分 を 表 して い る が,添
え 字 の vは 要 素 が 縦 に並 ん だ 列 行 列 で あ
り,s をVTで 偏 微 分 して い る わ け で は な い 。 本 書 で は 行 行 列 に よ る 偏 微 分 は 考 え て い な い 。 た だ し,行 行 列 で偏 微 分 す る もの と定 め た り,要 素 で偏 微 分 した も の を縦 に並 べ る よ うに して い る 文 献 もあ り,注 意 を要 す る 。 今 度 は,ス
カ ラ ー sが 列 行 列 v と ス カ ラ ー tの 関 数 で,v
も tの 関 数 に な っ て
い る とす る。
s=s(v(t),t)
(2.11)
こ の と き,s を tの 関 数 と見 な して時 間微 分 す る こ とが で き,次 の よ うに な る。
(2.12)
(注)偏 微 分 を添 え字 を用 い て 表 す場 合,添 え字 に 書 かれ る変 数が 列 行 列 で あ れ ば,そ の添 え字 は 太 文字 で 表す のが 自然 で あ る。 本 章 で は その よ うに して あ るが,第
Ⅲ部 以 降 で は,添 え 字 に
太 文 字 を用 い な い こ と を原 則 とす る。偏 微 分 の 対 象 に な っ て い る 関数 も含 め て,変 数 記 号 自体 が 別 の意 味 の添 え字 を持 つ な ど,複 雑 に な って くる と小 さ い文 字 は見 難 くな っ て くる。 そ の た め の止 む を得 な い処 置 で あ る。
こ の式 の左 辺 と右 辺 第 二 項 は ス カ ラ ー で あ り,右 辺 第一 項 は 二 つ の行 列 の 積 に な っ て い て,そ
の 結 果 が ス カ ラ ー で あ る。 第 一 項 左 側 の 行 列 は サ イ ズ1×Mで
り,右 側 の 行 列 はサ イ ズM×1で
あ
あ る。 行 列 の 式 は常 に和 や積 の 演 算 が 矛 盾 な く
行 わ れ る よ う なサ イズ 構城 に な っ て い る はず で,こ の 性 質 は式 の 変 形 な ど に よ っ て 崩 れ る こ と は な く,崩 れ た と き は何 らか の 誤 りが あ っ た と考 え て よい(た
だ
し,ス カ ラ ー積 は特 別 な演 算 規 則 で あ り,そ の ス カ ラー に行 行 列 と列 行 列 の積 を 代 入 す る と積 の 結合 法 則 が 成 立 しな くな る こ とが あ る 。 この 場 合 は単 な る誤 り と は 区別 して 考 え な け れ ば な らな い)。 さ て,式(2.12)は
次 の よ う に簡 略 に表 す こ と も で きる。
S=SvV+St
(2.13)
左 辺 の s は s を 時 間 だ け の 関 数 と 見 た も の で あ る が,右 と tの 関 数 と 見 た も の で あ る 。 そ し て,svとstも
辺 のsvとstは,s
を v
v と tの 関 数 で あ る か ら,s は
v と v と tの 関 数 に な っ て い る と 見 な す こ と が で き る 。 こ の 式 か ら ,s を v で 偏 微 分 し て,次
の 関係 が 得 られ る 。
(2.14)
2.3列
行 列 fが 列 行 列 vの 関 数 に な っ て い る場 合
列 行 列 fが列 行 列 vの 関 数 に な っ て い る とい う こ と は,f の 要 素 が vの 関 数 に な っ て い る と い う こ とで あ り,さ ら に詳 し くい え ば,f の 要 素 が vの 要 素 の 関 数 に な っ て い る とい う こ と で あ る。
(2.15)
この と き fを vで偏 微 分 す る と次 の よ うに な る。
(2.16)
こ の 場 合 も,式(2.10)の
場 合 と同 様 に,列 行 列 に よ る偏 微 分 を横 方 向 へ 並 べ て,
列 を 増 や す 操 作 と して い る。 列 行 列 に よ る偏 微 分 を以 上 の よ う に定 め る と,そ の 結 果 を行 列 の 範 囲 に収 め る た め に は,ス
カ ラ ー と列 行 列 まで が そ の対 象 で あ り,行 行 列 や 一 般 の 行 列 を列 行
列 で 偏 微 分 す る こ と は で き な い 。 こ れ は行 列 の 範 囲 に 収 め る た め の 制 約 で あ る が,実
用 上 重 要 で あ り,し っ か り認 識 して お く必 要 が あ る 。 な お,fvの
ような
列 行 列 の 列 行 列 に よ る偏 微 分 は,ヤ コ ビ行 列 と呼 ば れ て い る。 正 方 ヤ コ ビ行 列 の 行 列 式 はヤ コ ビ ヤ ン と呼 ば れ て い る が,ヤ い る場 合 も あ り,多 少,言
コ ビ行 列 の こ と を ヤ コ ビヤ ン と呼 ん で
葉 づ か い が 乱 れ て い る よ う な気 が して い る。
次 に,f が vの 関 数 に な っ て い るだ け で な く,そ の v も列 行 列 dの 関 数 に な っ て い る場 合 を 考 え る。
f=f(v(d)) こ の 場 合,f 在 し,そ
(2.17)
は d の 関 数 と見 な す こ と が で き る の で,f
れ はfv とVdの
の d に よ る 偏 微 分fdが
存
積 に な る。
(2.18) こ の積 は,当 然,順
序 を入 れ 換 え られ な い 。
fが v と tの 関 数 で,v
も tの 関 数 に な っ て い る 場 合 を 考 え よ う 。
(2.19)
f=f(v(t),t) こ の 式 を時 間微 分 す る と,式(2.13)と
同 様 の 式 が 得 られ る。
(2.20)
f=fvV+ft fvとftは
v と tの 関 数 で あ る か ら,f は v と v と tの 関 数 で あ る 。 そ こ で,f
v で 偏 微 分 す る こ と が で き,そ
れ はfvに
な る。
を
(2.21) こ の よ う な 関 係 は,2.6節
の 式(2.55)と
共 に,第22章
で ラ グラ ンジュの運動 方
程 式 の導 出 時 に利 用 さ れ る。
以 上 の応 用 と して,次 こ で は,A
の よ うな 式 変 形 が 成 り立 つ こ と を確 認 して お き た い 。 こ
と B は vの 関 数 で は な く,f だ けが vの 関 数 に な っ て い る とす る 。
(2.22) (2.23) (2.24) (2.25) (2.26) 式(2.22)と(2.23)は
基 本 的 で あ る が,行 列 を扱 っ て い る こ とを念 頭 にお い て確 認
さ れ た い 。 式(2.24)∼(2.26)の ま れ て い る 。 そ の場 合,一
左 辺 の カ ッ コ 内 に は v に依 存 す る 因 子 が 二 つ 含
方 を 定 数 と した偏 微 分 と他 方 を定 数 と した 偏 微 分 の和
を作 る必 要 が あ り,ま た,因 子 の積 が ス カ ラー の 場 合,そ
の積全体 の転置が利用
で き る。
Quiz2.1式(2.22)∼
式(2.26)は
納 得 で き る か 。確 認 せ よ。
2.4 2 階 時 間 微 分 式(2.11)の
sに 関 し て,式(2.13)を
も う 一 度 時 間 微 分 す る と,ま
ず,次
の よう
に書 け る。
(2.27) こ の 式 で は二 通 りの 時 間微 分 の 表 し方 を混 在 させ て い る が,両 者 は 同 じ時 間微 分
で あ り,単 に,簡 略 な記 号 だ け で は 生 じる恐 れ の あ る混 乱 を防 ぐた め に,こ の よ うに 表 現 して い る 。 この 式 の右 辺 第 一 項 と第 二 項 は い ず れ も行 行 列 と列 行 列 の積 に な っ て い て,結
果 は ス カ ラ ー で あ る か ら転 置 して 因 子 の 順 序 を入 れ 替 え る こ と
が で き る 。 た と え ば,SvVはVTSTvと
書 い て も よ い 。 と こ ろ で,STvは 列 行 列 で あ
り,ま た,v と tの 関数 で あ る か ら,次 の 式 が 成 立 す る。
(2.28) Stも v と tの 関 数 で あ る が,ス
カ ラ ー で あ る か ら,も
っ と簡 単 で あ る 。
(2.29) こ こ で,v と tに よ る偏 微 分 は順 序 を入 れ 替 え て も変 わ ら な い 性 質 を利 用 して い る。 以 上 か ら式(2.27)は 次 の よ う に書 け る。
(2.30) 式(2.19)の
fに 関 す る 式(2.20)の
時 間 微 分 も,式(2.27)と
同 様 に,次
の ように
書 く こ と が で き る。
(2.31) し か し,今 N×M行
度 は 式(2.28)に
対 応 す る 式 を 作 れ な い 。fvは
列 は v で 偏 微 分 で き な い か ら で あ る 。 そ こ で,次
v と tの 関 数 だ が,
の よ うに す る 。
(2.32) vで 偏 微 分 す る場 合,v は定 数 と考 え れ ば よい の で,偏 微 分 の 対 象 の 中 に含 め る こ とが で き る。 一 方,式(2.29)に
対 応 す る 式 は成 立 す る。
(2.33) 以 上 か ら,式(2.31)は
次 の よ う に な る。
(2.34) Sの場 合 に も こ の 式 と同 じ よ う に書 くこ とは で きる が,式(2.30)の
方が式 の変形
処 理 が 具 体 的 に 進 め られ た もの に な っ て い る。 ス カ ラー 関 数 と列 行 列 関 数 の 差 異 で あ る。
Quiz2.2式(2.30)と
2.5積
式(2.34)の
違 い を納 得 で き る か 。 確 認 せ よ。
分可能条件
一 旦,行
列 か ら離 れ,ス
カ ラ ー 変 数 x と yに よ っ て表 され る ス カ ラー 関 数 zを
考 え る。
z=z(x,y)
(2.35)
x と yが 時 間 tの 関 数 に な っ て い る と す る と,z も 時 間 の 関 数 で,z
は,次
の よ
う に x と yの 線 形 な 関 係 に な る 。
(2.36) こ の式 の 一 例 と して,次
の 具体 例 を考 え て み よ う。
(2.37) こ の 式 は,果
た し て 式(2.35)の 形 の 式 を 時 間微 分 す れ ば 得 ら れ る も の で あ ろ う
か 。 元 の式 は具 体 的 に ど ん な式 で あ ろ うか 。 答 え は次 の式 で あ る。
(2.38) こ の 式 を 時 間 微 分 す る と,確
か に 式(2.37)に
37)は 積 分 す る こ と が で き て,式(2.38)が
な る 。 逆 の 言 い 方 を す れ ば,式(2
得 ら れ る 。 た だ し,積
.
分 定 数 は適 当 に
付 け 加 えれ ば よい 。 そ れ で は,式(2.37)の
代 わ りに 次 の 式 で は ど うで あ ろ う か。
(2.39) 今 度 は 式(2.35)の 式(2.37)と
形 の 式 は 得 ら れ な い 。 す な わ ち,式(2.39)は
式(2.39)の
違 い は 何 で あ ろ う か 。 式(2.37)の
積 分 で きな い。
場 合,式(2.36)と
の対
比 で 次 の 関 係 が 得 られ る 。
(2.40) (2.41) 積 分 で きる か ど うか の 判 定 基 準 は次 の式 で あ る。
(2.42) zが 存 在 す る と し て,zxとzyに
相 当 す る 部 分 が こ の 式 を 満 た せ ば,積
分 で き る。
式(2.40)と
式(2.41)が
の 場 合 は 式(2.42)の
こ の 式 を 満 た す こ と は 直 ち に 確 認 で き る 。 一 方,式(2.39) 判 定 基 準 を満 た して い な い 。
3変 数 以 上 の 場 合 や,時
間 tを 陽 に 含 む 場 合 も 同 様 の こ と が 成 り立 つ が,そ
に つ い て,以
下 の よ う に行 列 を用 い た 表 現 で説 明 す る。
式(2.13)か
ら式(2.30)を
求 め る 過 程 で,SvtとStvは
れ
等 しい と した 。
(2.43)
Svt=Stv
こ れ は,v の 要 素 と tに よ る偏 微 分 を順 次 行 う と き,そ の順 序 は 問 わ な い こ と を 意 味 して い る 。 Sは v と tの 関 数 で あ る か ら,v の 要 素viとviに 次 行 う場 合 に つ い て も 同 様 の こ とが 成 立 す る は ず で,そ
よ る偏 微 分 を順
れ は(STv)vが 対 称 行 列 に
な っ て い る こ と と 同 等 で あ る。
(2.44) 以 上 の 二 つ の 式 を ま とめ て,次
の よ う に表 す こ と もで きる。
(2.45) こ の 式 の 左 辺 は,式(2.11)の
Sを v と tで 二 回偏 微 分 した も の で あ る 。 た だ し,
二 回 目の 偏 微 分 は 一 回 目の 結 果 を転 置 して 行 わ れ る 。 こ の二 回 偏 微 分 後 の 行 列 を ス カ ラ ー 関 数 Sの ヘ シ ア ン行 列 と呼 ぶ 。 この 式 はヘ シ ア ン行 列 の 対 称 性 を 表 して い るが,こ
の 対 称 性 が 積 分 可 能 条件 で あ る。
こ こ で,式(2.13)と
同 じ形 の 次 の 式 を 考 え よ う。
s=av+b
(2.46)
a は サ イ ズ1×Mの
行 行 列,b
は ス カ ラ ー で,い
ず れ も v と tの 関 数 と す る 。
a=a(v,t)
(2.47)
b=b(v,t)
(2.48)
仮 に,式(2.11)を 式(2.43),式(2.44)に
時 間 微 分 し て 式(2.46)が
得 ら れ た と す る と,a,bに
つ いて も
対 応 す る 関係 が 成 立 す る こ と にな る。
(2.49)
at=bv
(2.50) 逆 に,こ
の 関 係 が 成 立 し な い と,式(2.46)を
表 現 が 得 ら れ な い 。 式(2.49)と(2.50)は,式(2.46)を め の 必 要 十 分 条 件 で あ る。
時 間 tで 積 分 し て 式(2.11)の
ような
積 分 した 表 現 が 存 在 す るた
以 上 の 応 用 と して,式(2.25)と
式(2.26)の 右 辺 は い ず れ もス カ ラー 関 数 を vで
偏 微 分 し た もの で あ るか ら,こ れ らが 積 分 可 能 条件 を満 た して い る こ とは確 認 で きる はず で あ る。 ま た,た
と え ば,式(2.26)の
右 辺 を少 し変 更 したVT(B+2BT)
が 積 分 不 可 能 な こ と も判 定 で き る は ず で あ る。 式(2.24)の 右 辺 もス カ ラ ー 関 数 を vで偏 微 分 し た もの で あ る が,f が vの 非 線 形 な 関 数 の 場 合 は,こ
の 式 の ま まで
は ヘ シ ア ン行 列 の 計 算 を具 体 的 に 進 め る こ と が で き な い 。 fの 中 味 が 必 要 で あ る。
Quiz2.3式(2.25),式(2.26)の vT(B+2BT)が
2.6ヤ
右 辺 が 積 分 可 能 な こ と を 示 せ 。 ま た,
積 分 で きな い こ と を示 せ 。
コ ビ行 列 の 時 間 微 分
式(2.11)の 関 数 で,転
Sに 関 し て,式(2.14)か
らSvは
Svに 等 し く,ま
置 す る と 列 行 列 に な る 。 こ の こ と か ら,Stvの
た,Svは
v と tの
時 間微 分 は 次 の よ うに
書 け る。
(2.51) 一方
,式(2.13)を
vで偏 微 分 す る と
(2.52) こ の 式 を 転 置 し,式(2.43)と
式(2.44)を
な る こ と が 分 か り,結
の 関 係 が 得 られ る。
局,次
用 い る と,式(2.51)と
右 辺同士が等 しく
(2.53) Sの か わ り に 式(2.19)の
fの 要 素f1を
用 い て も式(2.53)の
関係 は 成 立 す る。
(2.54) S もf1も
ス カ ラ ー 関 数 で あ る 。f2以 下 に つ い て も 同 じ こ と が い え,結
い て,式(2.53)と
類 似 の式 が 成 り立 つ 。
局,f
につ
(2.55) この 式 と式(2.53)は,時
間微 分 と vに よる 偏微 分 の順 序 を入 れ替 え て も よい こ と
を示 して い る。
Quiz2.4式(2.11)の
2.7ニ
とSvは
Sに 関 し て,
等 しい とい え るか 。
ュ ー ト ン ・ラ フ ソ ン 法
ス カ ラーxを
変 数 とす る ス カ ラ ー 関 数z(x)が
与 え られ て い る とす る 。 ニ ュ ー
トン ・ラ フ ソ ン法 は,次 の 方 程 式 を満 たす x を数 値 的 に 求 め る方 法 で あ る 。 z(x)=0
(2.56)
z(x)は 一 般 に 非 線 形 の 関 数 で あ るか ら,解 析 解 が 得 ら れ な い こ とが 多 い が,運 動 学 な どに 出 て くる課 題 の場 合,関
数 は十 分 滑 らか で 解 の 存 在 が 明 らか で あ り,
解 の 近 似 値 を推 定 で きる場 合 が 多 い 。 運 動 学 や 動 力 学 で は ニ ュ ー トン ・ラ フ ソ ン 法 は よ く用 い られ る。 ま ず,解
の 近 似 値 をXEと す る。 この 値 に修 正 量 Δxを 加 え た xが 式(2.56)を
満 た す もの とす る 。
(2.57)
X=XE+ΔX
こ の 式 を 式(2.56)に 代 入 し,Δxが
微 小 量 で あ る と仮 定 し て 線 形 近 似 を行 う と,
次 の よ う にな る。
(2.58) Z'(XE)は,X=XEに
お け る 関 数 の 傾 き で あ る 。 解 が 存 在 す る よ う な 場 合,z'(XE)
は ゼ ロ で な い 適 当 な 値 に な っ て い る の で,こ
の 式 を ΔXに つ い て 解 く こ と が で き
る。
(2.59) この 値 を 式(2.57)に 代 入 して 得 られ るXは,解 て い る 。 これ を新 た なXEと
してZ(XE)が
の 近 似 値XEを
改 善 した値 に な っ
十 分 ゼ ロ に近 づ く ま で 計 算 を繰 り返 せ
ば,式(2.56)が
解 け た こ とに な る。
こ の 方 法 は 計 算 機 の 利 用 が 前 提 で あ る 。 上 記 の プ ロ セ ス を プ ロ グ ラ ミ ングす る か,組
み 込 まれ た プ ロ グ ラ ム を 利 用 す る。 収 束 の 判 定 基 準 が 必 要 で あ り,ま た,
初 回 の解 の推 定値 と,関 数,お な らな い 。 な お,初
よ び,関 数 の 傾 きを 計 算 す る手 順 を 与 え な け れ ば
回の 解 の推 定 値 が 遠 す ぎ る と正 しい 解 に収 束 しな い こ とが あ
る。 次 に 複 数 の 変 数 を持 つ 複 数 の 関 数 の場 合 を考 え る 。 この 場 合 も,関 数 の 一 般 形 は 同 じで あ る。 f(v)=0
(2.60)
v は M 個 の 要 素 を 持 ち,f は N 個 の 要 素 を持 っ て い るが,こ る。 解 の 近 似 値 をVEと
こで はM=Nと
す
し,こ の値 に 修 正 量 Δvを 加 え た vが 式(2.60)を 満 た す
もの とす る。
(2.61)
V=VE+ΔV
こ の 式 を 式(2.60)に 代 入 し,Δvが
微 小 量 で あ る と仮 定 し て線 形 近 似 を 行 う と,
次 の よ う に な る。
(2.62) fv(VE)は,v=VEに f,(VE)の
お け る 正 方 ヤ コ ビ 行 列 で あ る 。 解 が 存 在 す る よ う な 場 合,
行 列 式 は ゼ ロ で な い 適 当 な 値 に な っ て い る の で,こ
の 式 を Δvに つ い て
解 くこ とが で き る 。
(2.63) この 値 を 式(2.61)に 代 入 して 得 られ る vは,解 て い る 。 こ れ を新 た なVEと
の 近 似 値VEを
改 善 した 値 に な っ
して が 十 分 ゼ ロ に 近 づ く ま で 計 算 を繰 り返 せ ば,式
(2.60)が 解 け た こ とに な る。 ニ ュ ー ト ン ・ラ フ ソ ン 法 は 運 動 学 の 数 値 解 を 求 め る 代 表 的 手 段 で あ る。11.3 節 に は そ の よ う な 問 題 が 示 され て い る 。 ま た,20.6節
に は順 動 力 学 解 析 の 初 期
値 を求 め る事 例 が あ る 。 そ れ らを待 た ず に,数 学 的 な事 例 を作 る こ と も簡 単 で あ る 。 式(2.56)の 事 例 と して は,適
当 な xの 関 数 zを定 め,そ
の値 が ゼ ロ に な る x
を 見 つ け る 問 題 を 考 え れ ば よ い。 式(2.60)の 事 例 と して は,二 つ の平 面 曲 線 の交 点 を求 め る 問 題,空
間 曲 面 と空 間 曲 線 の 交 点 を求 め る 問 題 な どが 考 え られ る。 問
題 を 自作 し,MATLABな め に 最 も効 果 的 で あ ろ う。
どで 実 際 に解 い て み る こ と は,理 解 と 自信 を深 め る た
第3章
位 置,速
度,角
3次元空間の幾何ベ ク トル
速 度,力,ト
ル ク な どを 3次 元 空 間 に 描 い た 矢 印 で 表 現 す る こ
とが あ る。 そ の よ う な矢 印 を,本 書 で は,幾 何 ベ ク トル と呼 ん で い る。 こ れ は矢 印 そ の も の で あ っ て,成 分 に分 解 した りはせ ず,ス
カ ラー と同様 に単 独 の 量 と し
て扱 う。 そ し て,そ の よ うな 矢 印 に も和 や積 を考 え る こ とが で き る。 3.2節 の 幾 何 ベ ク トル の 基 本 事 項(Quizの
形 に な っ て い る)は 大 学 初 年 度 で
学 ぶ 内 容 で あ り,自 信 が あ れ ば 読 み 飛 ば し て よい 。 しか し,3.3節 明 は,第
Ⅱ部 以 降 や 付 録 A へ の 布 石 に な っ て い る。
3.1幾
何 ベ ク トル の 概 念
の座標系 の説
空 間 に描 か れ た 矢 印 を幾 何 ベ ク トル と呼 ぶ こ と にす る 。 こ れ は,実 際 に描 か れ た もの で な くて も,頭 の 中 で認 識 され た も の で よい 。 た と え ば,時 計 の 針 を一 つ の 矢 印 と見 た て る こ とが で きる 。 す な わ ち,回 転 軸 の位 置 か ら針 の 先 端 に引 か れ た 矢 印 で あ る。 針 の 先 端 か ら回 転 軸 の 位 置 へ 引 か れ た 矢 印 を 考 え る こ と もで き る 。 ま た,短 針 の 先 端 か ら長針 の 先 端 に 向 け て 矢 印 を想 い 描 い て も よい 。 こ れ ら の 針 が 一 定 の 速 さで 回 転 して い る と して,長 針 の先 端 の 速 度 は 先 端 が 描 く円 の接 線 に 沿 う矢 印 で表 現 す る こ とが で き る。 こ の 場 合,速
さ を矢 印 の 長 さ に換 算 す る
取 り決 め が 必 要 に な る が,そ れ に よ っ て具 体 的 に矢 印 を決 め る こ とが で きる 。 長 針 の 角 速 度 も,長 針 の 回転 面 に垂 直 な 矢 印 で 表 す こ とが で きる 。 も し,長 針 が 滑 らか に一 定 の 角 速 度 で 回転 して い る とす れ ば,そ の 矢 印 は 変 動 しな い 。 右 ネ ジの ル ー ル に よ っ て,こ
の 矢 印 は 回転 面 の 奥 に 向 か う方 向 を持 って い る 。 そ して,そ
の 長 さ は 角 速 度 の 大 き さ に比 例 して い る。 短 針 の 角 速 度 を表 す 矢 印 に 比 べ れ ば, 長 さ は12倍
に な る はず で あ る。
こ の よ う な 矢 印 は ロ ボ ッ トや 車 両 各 部 の 位 置,速
度,角
速 度'力,ト
ルクな ど
図3.1幾
何 ベ ク トル
を 表 現 す る た め の 手 段 と して 利 用 で き る が,こ け を行 わ ず に,単
こ で はそ の よ う な物 理 的 な 意 味 付
に,3 次 元 空 間 に描 か れ た 矢 印 と考 え,幾 何 ベ ク トルa,b,c
な ど と呼 ぶ こ と に す る 。 記 号 の 上 の 矢 印 が 幾 何 ベ ク トル で あ る こ と を示 して い る。 本 書 で は幾 何 ベ ク トル を常 に この よ うに 表 す こ と にす る。 また,矢 が 付 い て い な い 端 点 を 幾 何 ベ ク トル の 始 点,矢
が 付 い て い る端 点 を終 点 と 呼 ぶ こ と に す
る。
3.23次
元幾何ベク トルの基本的性質
以 下,Quiz形 のQuizで
式 で,3 次 元 幾 何 ベ ク トル の 基 本 的 な性 質 を 復 習 す る。 こ れ ら
も,幾 何 ベ ク トル aを,座 標 系 を用 い た 成 分 に 分 解 す る よ うな こ とは
考 え な くて よい 。 矢 印 を説 明 す る場 合 はそ の大 き さや 向 き につ い て の 説 明 が 求 め られ て い る。 答 の 幾 何 ベ ク トル を 問題 に与 え られ た幾 何 ベ ク トル との対 比 で 説 明 す る こ と も あ る だ ろ う。
Quiz3.1幾
何 ベ ク トルaに
負 号 を つ け た 幾 何 ベ ク トル-a
とは どの よう
な ものか。 Quiz3.2二
つ の幾 何 ベ ク トル aと bが 等 しい と は どの よ う な こ とか。
Quiz3.3二
つ の幾 何 ベ ク トル aと bの 和 は どの よ う に 定 義 され る か。
Quiz3.4a+b+c=0と
な る の は ど の よ う な場 合 か 。
Quiz3.5[Quiz3.4]中
に 出 て くる 式 の 右 辺 の 0 は 0 と書 くほ う が 適 当 か
も しれ な い 。 こ れ は ど の よ う な もの か 説 明 せ よ(本 書 で は ス カ ラー の ゼ ロ と幾 何 ベ ク トル の ゼ ロ は 0,行 列 の ゼ ロ は 0 と書 く。 行 列 の 大 き さ も含 め,そ の 意 味 は,式
の 中 に お か れ て い る状 況 や 文 脈 な どか ら判 断 で きる と考 えて い る)。
Quiz3.6幾
何 ベ ク トル の和 は交 換 可 能 か 。
Quiz3.7幾
何 ベ ク トル a とス カ ラー sの 積(saま
た はas)を
説 明 せ よ。
Quiz3.8幾 は,ス
何 ベ ク トル と ス カ ラ ー の 積 は 幾 何 ベ ク トル に な る か,あ
カ ラ ー に な る か,そ
Quiz3.9幾
れ と も,別 の もの に な るか 。
何 ベ ク トル 同 士 の 積 に は 内 積 と外 積 が あ る 。 まず,a
積(a・b)を
るい
と bの 内
説 明 せ よ。
Quiz3.10幾
何 ベ ク トル の 内 積 の結 果 は 幾 何 ベ ク トル に な る か 。 な らな い と
す れ ば何 に な る か 。 Quiz3.11幾
何 ベ ク トル の 内 積 は交 換 可 能 か 。
Quiz3.12幾
何 ベ ク トル a と bの外 積(a×b)を
Quiz3.13幾
何 ベ ク トル の 外 積 の結 果 は幾 何 ベ ク トル に な るか 。 な ら ない と
説 明せ よ。
す れ ば何 に な る か 。 Quiz3.14幾
何 ベ ク トル の 外 積 は 交 換 可 能 か 。
Quiz3.15幾
何 ベ ク トル の ス カ ラ ー 三 重 積a・(b×c)は
幾何 学的 に何 を意味
して い るか 。 Quiz3.16幾
何 ベ ク トルa,b,cの
×a),c・(a×b)の Quiz3.17幾
ス カ ラー 三 重 積 と してa・(b×c),b・(c
三 つ を考 え る 。 これ ら三 つ の 間 に は どの よ う な 関 係 が あ る か。 何 ベ ク トルa,b,cの
ベ ク トル 三 重 積a×(b×c)は
bの ス カ
ラ ー倍 と cの ス カ ラー 倍 の和 で 表 さ れ る 。 そ の 関係 を示 せ 。 Quiz3.18幾
何 ベ ク トルa,b,cの
b×(c×a),c×(a×b)の
ベ ク ト ル 三 重 積 と し てa×(b×c),
三 つ を考 え る。 これ ら三 つ の 間 に は どの よ うな 関 係 が あ
る か。
3.3右
手直交座標系
幾 何 ベ ク トル は,位 置,速 で あ るが,数
度,角 速 度,力,ト
ル ク な ど を表 現 す る た め の 手段
値 計 算 を行 う た め に は,幾 何 ベ ク トル の座 標 系 成 分 を考 え る 必 要 が
あ る。 そ の た め に,座 標 系 が必 要 に な る が,本 書 に 出 て くる 3次 元 座 標 系 は,す べ て,右 手 直 交 座 標 系 で あ る 。 3次 元 の座 標 系 は,三 つ の 座 標 軸 を表 す 単 位 長 さ の 幾 何 ベ ク トル で 定 め る こ と が で きる が,本 書 で は,そ の よ う な幾 何 ベ ク トル を基 底 幾 何 ベ ク トル と呼 ぶ こ と に す る。 座 標 系 O の 場 合,X,Y,Z軸
を 表 す 基 底 幾 何 ベ ク トル は,eox,eoY,
図3.2
eOZで
右 手 直 交座 標 系 とそ の 基底 幾 何 ベ ク トル
あ る 。 こ れ ら は 相 互 に 直 交 し,右
こ こ で,eOX,eOY,eOZを
手 系 を な して い る。
要 素 と す る3×1列
行 列eOを
考 え る。
(3.1)(注)
こ の 列 行 列 を座 標 系 O の基 底 列 行 列 と呼 ぶ こ と にす る。 また,こ
の転置
は次
の よ う に書 け る。
(3.2) eOXな ど の 幾 何 ベ ク トル は ス カ ラー と同 様 な 単独 要 素(1×1行
列 に対応 す る も
の)で あ り,こ れ らに 転 置 記 号 を付 け る必 要 は な い 。 基 底 列 行 列 は,右 手 直 交 座 標 系 を構 成 して い る 三 つ の 幾何 ベ ク トル を単 に3×1列 の で あ り,式 表 現 の 簡 略 化 を狙 っ て い て,慣 標 系 O で あ る が,座
標 系 A はeAで
行 列 に ま と め た だ けの も
れ る と便 利 な 道 具 で あ る 。eOは 座
あ り,そ の 成 分 はeAX,eAY,eAZで
ある。
幾 何 ベ ク トル 同 士 の積 に は 内積 と外 積 が あ り,そ の 区 別 に ・(ド ッ ト)と ×(ク ロ ス)が 用 い られ る 。 普 通,実
数 同 士 の 積,実
数 と幾 何 ベ ク トル の積 には,積
の
記 号 を用 い な い こ と が 多 い。 本 書 で は,こ れ らの積 記 号 の 使 い 方 を厳 密 に守 る こ と に し,・(ド ッ ト)と ×(ク ロ ス)を 幾 何 ベ ク トル 同士 の 積 に 限 定 す る 。幾 何 ベ ク トル 同 士 以 外 の 積 に は 積 の記 号 を用 い ない 。 こ れ に よっ て 不 要 な 混 乱 を避 け る (注)基 底 列 行 列eOの
成 分 が幾 何 ベ ク トル で あ る こ と を明 示 す る た め にeOと
す る ほ うが 分 か
りやす い とい う意 見 もあ る。 しか し,本 書 で は 基底 列 行 列 以 外 に幾何 ベ ク トル を成 分 とす る行 列 は用 い ない 。e と eを基 底 幾何 ベ ク トル,基 底 列行 列 用 の 予約 文 字 と し,基 底 列 行列 をeOな どとす るほ うが 数式 の 中で,簡 明 に なる と考 えて い る。
こ とが で き,式 の 操 作 時 な ど に生 じ る誤 りの発 見 な ど に も役 立 つ 。 eOと 〓 の積 は行 列 の 積 で あ る が,要
素 レベ ル で 考 え る と幾 何 ベ ク トル 同 士 の
積 で あ る か ら 内 積 か 外 積 か を 指 定 す る 必 要 が あ る。 そ こ で,内 eO・〓,外
積 の場合 は
積 の場 合 はeO× 〓 と書 くこ とに す る。 これ ら を要 素 レベ ル ま で 書 くと
次 の よ う に な る。
(3.3)
(3.4) 式(3.3),式(3.4)は
幾 何 ベ ク トル を要 素 に もつ 行 列 の 演 算 で あ る 。 本 書 の付 録
A に は基 底 列 行 列 を用 い た 演 算 操 作 が 現 れ る が,そ
の場 合,幾
何 ベ ク トル と して
の 演 算 ル ー ル と行 列 と して の演 算 ル ー ル の 両 方 を守 りな が ら演 算 を 進 め る こ とが 必 要 で あ る。慣 れ る まで は注 意 深 く進 め な け れ ば な ら な い が慣 れ る と便 利 で あ る。 な お,基 底 幾 何 ベ ク トル の 直 交 性 を用 い る と,式(3.3),式(3.4)は
次 の よ うに
簡 単 に な る。
(3.5)
(3.6)
第 Ⅱ部
運動力学 に関わる物理量の 表現方法 と運動学の基本的関係 位 置,速 度,回 転 姿 勢,角
速 度,お
よび,そ れ らを 時 間 微 分 して 得 られ る量 を
運 動 学 的物 理 量 と 呼 ぶ 。 運 動 学 と は,機 械,あ
る い は,そ の モ デ ル 各 部 の 運 動 学
的 物 理 量 の 関 係 を 扱 う学 問 で あ る 。 一 方,力
や トル ク は 運 動 学 的 物 理 量 で は な
い 。 運 動 方 程 式 は動 力 学 の 基 礎 に な る もの で,機 械 に加 わ る力 や トル ク と機 械 各 部 の運 動 学 的 物 理 量 との 関係 を表 して い る 。 3次 元 の 運 動 方 程 式 を理 解 す る た め に は,3 次 元 の 運 動 学 的 物 理 量 と力 や トル ク を注 意深 く調 べ る 必 要 が あ る 。 第 Ⅱ部 で は,運 動 力 学 に関 わ る物 理 量 の 表現 方 法 と意 味 を説 明 して い る 。 出 て くる物 理 量 は,運 動 学 的 物 理 量 と,力,ト 質 量,慣 性 行 列 で,そ の 中 で,特 関 係 と時 間 微 分 の 関 係,の
ル ク,
に,運 動 学 的 物 理 量 とそ の 基 本 的 関 係,三 者 の
説 明 に 重 点 を置 い て い る。
運 動 学 的物 理 量 の う ち 回転 姿 勢 を除 い た もの に は,幾 何 ベ ク トル に よ る表 現 と 代 数 ベ ク トル に よ る 表 現 が あ り,こ れ らの 明確 な 区 別 と相 互 の 変 換 関 係 は重 要 で あ る。 第 Ⅱ部 で は,最
も基 本 的 な 事 柄 に対 して だ け幾 何 ベ ク トル表 現 を示 し,す
ぐに,言 葉 に よ る説 明 だ け で代 数 ベ ク トル表 現 に 結 び付 け て い る。 簡 潔 に 実用 レ ベ ル へ 向 か うた め で あ り,慣 れ れ ば これ で十 分 で あ るが,数
学的表現 で相互 の変
換 を把 握 す る こ と も重 要 で あ る。 そ の 点 を付 録 A で 補 っ た 。 こ の付 録 は 重 要 で あ る。 3次 元 の 回 転 姿 勢 は,3 次 元 の 複 雑 さ の 元 凶 の 一 つ で あ る。 しか し,こ れ に つ い て は,第
7章 ∼ 第 9章 が し っ か り理 解 で きれ ば,基 礎 力 と して は 十 分 で あ る。
これ らに 関 す る 複 雑 な事 項 は付 録 B に 補 足 さ れ て い る。 3次 元 が 分 か れ ば 2次 元 は容 易 で あ る が,第10章
に記 した 2次 元 用 の 手 法 は
便 利 で あ る 。 こ れ 以 外 は,通 常 の 考 え方 で 2次 元 問 題 を扱 う こ と が で き る。 第
11章 は,第
9章 まで の 基 本 事 項 の 運 動 学 へ の 応 用 で あ る。
本 章 の 主 な 狙 い は運 動 学 で あ る が,ニ
ュ ー トンの 運 動 方程 式 と オ イ ラ ー の 運 動
方 程 式 か ら話 を始 め る 。 そ れ に よ り,本 章 で も順 動 力 学 解 析 の 計 算 プ ロ グ ラム 事 例 を示 す こ とが 可 能 に な っ た 。4.5節 に は質 点 の 放 物 運 動 が あ り,初 心 者 向 け の 入 門用 事 例 に な っ て い る。 また,9.4節
∼9.6節
に は コ マ の事 例 が 示 さ れ て い る。
第 4章
自由な質点 の運動方程式 と その表現方法
こ の 章 で は,自 由 な 質 点 の 運 動 方 程 式 に 出 て くる 物 理 量 の 表 現 方 法 を 説 明 す る。 自由 な 質 点 の運 動 方 程 式 は ニ ュー トンの 運 動 方 程 式 で,こ の 式 に位 置 と速 度 に 関 す る 運 動 学 の 関 係 式 を補 足 す れ ば,質 点 の 放 物 運 動 を計 算 す る こ とが で き る。 こ の 章 の 最 後 の 節 に,MATLABに
よ る質 点 の 放 物 運 動 計 算 プ ロ グ ラム の説
明 が あ る。 こ れ は,順 動 力 学 シ ミ ュ レー シ ョ ン入 門者 の た め の 簡 単 な事 例 で あ る が,そ
の 解 説 は,本 書 に 出 て く る他 の 順 動 力 学 シ ミュ レー シ ョ ンプ ロ グ ラ ム の説
明 の 基 礎 に もな っ て い る。 本 書 で は位 置 や 速 度 を表 す 変 数 に二 つ の 添 え字 が使 わ れ る。 そ の 必 要 性 は本 章 だ け で は明 確 で は な い か も しれ な いが,次
章 ま で 進 む と明 らか に な って くる 。 そ
の 後,本 書 全 体 を読 み 進 む に つ れ て二 つ の 添 え字 の 意 味 と効 果 を理 解 で き る は ず で あ る。
4.1
ニュー トンの運動方程式
3次 元 空 間 を 自由 に 運 動 す る質 点 Pの 運 動 方 程 式 を次 の ように書 くこ とが で きる。
(4.1) こ れ は ニ ュー トン の運 動 方 程 式 で あ る。 この 式 を使 っ て,重 力 に よ る 質 点 の放 物 運 動 を計 算 す る た め に は,次 の 式 も必 要 に な る。
(4.2) ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式 は 慣 性 系 O か ら観 察 し た 場 合 に 成 立 す る式 で あ る。 慣 性 系 と は,太 陽系 とか 銀 河 系,あ
る い は,そ れ 以外 の 宇 宙 全 体 の 星 雲 に対 して
固 定 さ れ た 系 な ど と説 明 さ れ て い る が,ロ
ボ ッ トや 車 両 の 運 動 を解 析 す る場 合,
近 似 的 に地 球 を慣 性 系 と見 な す こ とが 多 い 。 さて,慣 性 系 に は,す で に,右 手 直 交 座 標 系 が 固 定 さ れ て い る と し,そ の 右 手 直 交 座 標 系 とそ の 原 点 も O と 呼 ぶ こ
図4.1
慣 性 空 間 に固 定 した右 手 直 交 座 標 系 O と, 質点 Pの位 置,速 度,P に働 く作 用 力
とに す る。 な お,今
後,剛 体 に も座 標系 を 固定 す るが,本
書 で 扱 う座 標 系 は ,す
べ て,右 手 直 交 座 標 系 で あ る。 ま た ,こ こで は慣 性 系 に座 標 系 を 固定 す る と表 現 した が,両 者 を同 一 視 して,専
ら慣 性 座 標 系 と い う言 葉 を用 い た 説 明 も多 く,一
方,慣
性 空 間 とい う呼 び 名 が 使 わ れ る こ と もあ る。
4.2
位置を表す変数(幾 何ベク トル表現 と代数ベ ク トル表現)
rOPは 慣 性 系 O か ら眺 め た 質 点 P の位 置 を座 標 系 O で 表 し た3×1列
行列で あ
る 。(本 書 で は,n×1の
形 の 行 列 を,列 行 列 と 呼 ん で い る。)こ の 記 号rOPの 説
明 に入 る 前 に,ま ず,位
置 を 表 す 矢 印 を 考 え る 。 す な わ ち,慣 性 系 O か ら眺 め
た 質 点 P の 位 置 を,慣 性 系 O 上 の 点 O か ら点 P に至 る 矢 印 で 表 す こ とに し,こ れ を γOPと 書 く こ と に す る(図4.1)。 (矢 の な い ほ うの 端 点)と 終 点(矢
こ の記 号 の 二 つ の添 え字 は矢 印 の始 点
の あ る ほ うの 端 点)で
あ る。 3次 元 空 間(2 次
元 問 題 の場 合 は 2次 元 空 間)に 描 か れ た,こ の よ うな 矢 印 を幾 何 ベ ク トル と呼 ぶ こ と にす る 。 幾 何 ベ ク トル γOP自体 は点 O と点 P が あ れ ば作 る こ と が で き るの で,座 標 系 O は幾 何 ベ ク トル 作 成 に 必 要 な わ け で は な い 。 ま た,矢
印 の始 点 は座 標 系 O の
原 点 で あ る 必 要 も な く,慣 性 系 O 上 の 別 の 点 S を用 い て γSPと して も,慣 性 系 O か ら眺 め た 質 点 P の 位 置 で あ る 。 た だ し,点 え て い る こ とが,こ
O や 点 S が 慣 性 系 O 上 の 点 と考
れ らの 記 号 を位 置 と して 捉 え る場 合 に 重 要 で あ る。 また ,矢
印 と して 異 な っ て い て も位 置 と して 同 じ もの に な っ て い る こ とに も注 意 さ れ た い 。 な お,幾 何 ベ ク トル とい う言 葉 は,位 置 に 限 らず,速
度,角 速 度,力,ト
ル
ク,な
ど を表 す 矢 印 に も使 われ る。
次 に,座 標 系 O が 出 て くる。 γOPを 座 標 系 O と組 み 合 わ せ て,幾 何 ベ ク トル のXYZ成
分(三
がrOPで
あ る。
つ の ス カ ラ ー)を 作 り,そ れ ら を順 に,縦
に並 べ た3×1列
行列
(4.3)
γOPは 矢 印 で あ っ て,成 分 を考 え る 以 前 の もの で あ り,rOPと
γOPと は 別 物 で あ
る 。rOPの よ う な,幾 何 ベ ク トル と座 標 系 を 組 み 合 わ せ て作 っ た3×1列 代 数 ベ ク トル と呼 ぶ 。 γOPを O 以外 の座 標 系 と組 み 合 わ せ れ ば,rOPと 数 ベ ク トル に な る 。 図4.2は,一
行 列 を, は別の代
つ の 幾 何 ベ ク トル に 別 々の 座 標 系 を組 み 合 わせ
た 結 果 が 別 々 の代 数 ベ ク トル に な る様 子 を 図 式 的 に描 い た もの で あ る 。 なお,こ の 図 に は,座 標 軸 を形 成 して い る 単 位 長 さの 幾 何 ベ ク トル の記 号eOXな
ど も示 さ
れて いる。 ま た,慣 性 系 O か ら眺 め た 質 点 P の 位 置 を,慣 性 系 O 上 の 別 の点 S を用 い て γSPと して も よ い と書 い た が,こ
の γSPを座 標 系 O と組 み 合 わ せ た場 合,代 数 ベ
ク トル はrSPで あ る 。
図4.2
座標 系+幾
何 ベ ク トル b⇒ 代 数 ベ ク トル
4.3
運動学的物理量のオブザーバー
γOPに は添 え 字 が 二 つ あ る。 左 側 の 添 え 字 O は 原 点 O を 表 して い る が,こ
の
点 が 載 っ て い る慣 性 系 O や 座 標 系 O も暗 示 し て い る。 前 節 に 出 て きた γSPの左 側 の 添 え 字 S も こ の 点 が 載 っ て い る慣 性 系 O を 暗示 して い る。 事 前 に 幾 何 ベ ク トル の 始 点 が ど の 物 体 上 の 点 か を定 め て お く必 要 が あ り,こ こ で は S も慣 性 系 上 の 点 と し て あ る。 この 慣 性 系 O,あ る い は,座 標 系 O は,点
P の 位 置 を観 察
す る場 所 で あ り,オ ブ ザ ー バ ー と呼 ば れ る 。位 置 と い う概 念 は常 に オ ブ ザ ー バ ー か ら眺 め た も の で,「 ∼ か ら眺 め た」,ま た は,「 ∼ か ら観 察 した 」 と表 現 で きる 。 あ る い は,こ
の オ ブ ザ ーバ ー は 位 置 を特 定 す る た め の 相 対 的 基 準 物 と考 え る こ と
もで き,「 ∼ に対 す る 」,ま た は,「 ∼ に相 対 的 な」 と表 現 して も よ い。 な お,オ ブザ ーバ ー とい う概 念 は位 置 に 限 らず,速 度,角
速 度,回 転 姿 勢 な ど,運 動 学 的
物 理 量 に は必 ず 付 随 して い る。 オ ブ ザ ー バ ー は座 標 系 で も よい が,成 分 を作 る役 割 を利 用 して い る わ け で は な い。 広 が りの あ る剛 体 的 な もの な ら ば何 で も よ く, 慣 性 系 とい う概 念 もそ の よ う な もの と考 え る。 一 方,添
え字 が 表 して い る 点 そ の
もの は,広 が りが な い の で オ ブ ザ ー バ ー に は な れ な い 。 ま た,こ の オ ブ ザ ー バ ー は 制 御 工 学 の オ ブザ ー バ ー と は無 関 係 で あ る。 さて,こ
の段 落 の 最 後 に も う一 つ
の 添 え字 を説 明 して お く。 γOPの右 側 の 添 え 字 P は,位 置 を 特 定 す る 対 象 の 点 で あ る。 代 数 ベ ク トルrOPの 添 え 字 は幾 何 ベ ク トル γOPの添 え 字 とそ の 意 味 を踏 襲 して い る が,左 側 の添 え字 O に は,さ
ら に,別 の 意 味 が 加 わ っ て い る 。 点 O が 載 っ
て い る慣 性 系 に固 定 し た座 標 系 O で 成 分 を作 る とい う 意 味 で あ る 。 結 局,rOPの 左 側 の添 え字 O は矢 印 の 始 点 で あ る が,そ
の ほ か に,オ
ブ ザ ー バ ー と,成 分 を
計 算 す る 座 標 系 の,二 つ の 意 味 を合 わせ 持 っ て い る こ と に な る。 な お,添
え字 に煩 わ し さ を感 じ る読 者 もい る と思 わ れ るが,こ
の 煩 わ しさ は位
置 を表 す 変 数 が 本 来 持 っ て い る複 雑 さ で あ る 。 この 複 雑 さ を添 え字 な どの 形 で 明 示 す る こ とは,特
に 3次 元 問題 で,大
い に役 立 つ 。 こ れ に よ っ て,意 味 が 明確 に
な り,式 変 形 な どの作 業 が 明快 な も の に な る 。 本 書 の 内容 を習 得 す る につ れ て そ の 効 果 を感 じ る こ とが で きる で あ ろ う。 幾 何 ベ ク トル か ら代 数 ベ ク トル を作 っ た り,代 数 ベ ク トル か ら幾 何 ベ ク トル を
復 元 す る 数 学 的 操 作 に つ い て,付 録 A に解 説 が あ る。 そ の 操 作 に,図4.2に され た 座 標 系 の 単 位 長 さ の 幾 何 ベ ク トルeOXな に 示 した 基 底 列 行 列eOな
どが 利 用 さ れ,3.3節
示
の 式(3.1)
どが 便 利 で あ る。 幾何 ベ ク トル 表 現 は 3次 元 の 運 動 学
的 物 理 量 や 力 や トル ク を把 握 す る た め に役 立 ち,代 数 ベ ク トル 表 現 は運 動 学 と動 力 学 の 数 値 計 算 に 必 要 で あ るが,こ
れ ら を関 係 づ け る 数 学 的 手段 は 式 の 変 形 操 作
な ど を 明 快 な もの に し,曖 昧 さ を 除 去 す る た め に 重 要 で あ る。 な お,こ は,力,ト で,第
ル ク,速 度,角
の付録
速 度,座 標 変 換 行 列 な ど も含 め た説 明 に な って い る の
Ⅱ部 全 体 を 読 ん だ後 に 再 読 す る こ と も効 果 的 で あ ろ う。
Quiz4.1慣 が あ っ て,そ
性 系 O 上 に 原 点 O と は 別 に 固 定 点 S を 考 え る 。 ま た,剛
体 A
の 上 に 固 定 点 O'と P が あ る と す る 。 γOP,γO'P,γSP,γPO,γOSが
そ
れ ぞ れ 位 置 を 表 す と す る と,そ が 任 意 に 運 動 す る と き,こ
れ ら は ど こ か ら見 た ど こ の 位 置 か 。 ま た,剛
れ ら の 幾 何 ベ ク トル の う ち,長
体 A
さ が 変 化 しない もの は
どれ か 。 Quiz4.2剛
体 A 上 に 点 P,剛 体 B 上 に 点 Q が あ る と き,二
トル γPQと γQPの 位 置 と し て の 意 味 と,二
つ の幾 何 ベ ク
つ の 幾 何 ベ ク トル の 関 係 γPQ=-γQPを
確 認せ よ。
4.4
速 度 , 作 用 力,慣
性力
慣 性 系 O か ら見 た 質 点 P の速 度 も矢 印(幾 何 ベ ク トル)で 表 現 す る こ とが で き,そ れ をvOPと
書 く こ と に す る。 添 え 字 の 意 味 は γOPと 同 様 で,左 側 の 点 O
が オ ブ ザ ー バ ー を 暗 示 し,右 側 の 点 P は 速 度 を 特 定 す る 対 象 の 点 で あ る 。 矢 印 の 始 点,終
点 の 意 味 は失 っ て い る。 続 い てvOPを 左 側 の添 え字 に 関係 す る座 標 系
O と組 み 合 わ せ る と,代 数 ベ ク トルVOPを 作 る こ とが で きる が,こ
れ も位 置 の場
合 と同 様 で あ る。
(4.4)
右 辺 列 行 列 成 分 の 三 番 目 の 添 え 字 は成 分 を作 る 座 標 軸 を表 して い て,式(4.3)の 場 合 も同様 で あ っ た。 vOPと γOPの 関係 は 次 の 通 りで あ る。
(4.5) そ して,こ
れ に対 応 す る 代 数 ベ ク トル の 関 係,す
な わ ち,VOPとrOPの
関係 が式
(4.2)で あ る。 こ れ ら は運 動 学 的 物 理 量 の 時 間 微 分 の 関 係 で あ る。 時 間微 分 の 関 係 は他 に,回 転 姿 勢 と角 速 度 の 関 係 な ど に現 れ る。 さ て,式(4.5)左
辺 には幾何
ベ ク トル の 時 間微 分 が 出 て くる が,幾 何 ベ ク トル の 時 間微 分 に は,必
ず,時 間 微
分 の オ ブ ザ ー バ ー を指 定 し な け れ ば な らな い。 左 辺 の 微 分記 号 の 左 肩 に 書 い て あ る O が そ の オ ブ ザ ー バ ー で あ る 。 幾 何 ベ ク トル の 時 間微 分 は矢 印 の 変 化 を 観 察 した 結 果 と して 定 ま る もの な の で,そ る。 さ て,こ の 式 の場 合,微
の矢 印 を観 察 す る 立場 が 必 要 に な るの で あ
分 の 対 象 に な っ て い る γOPの オ ブ ザ ー バ ー と時 間微
分 の オ ブ ザ ー バ ー が 一 致 し て い る が,そ
の よ う な場 合 に,こ の 式 は成 立 す る。 式
(4.2)は 式(4.5)か ら導 く こ とが で き るが,こ
れ につ い て も付 録 A に説 明 が あ る。
式(4.2)右 辺 の 時 間微 分 に は オ ブ ザ ー バ ー の 指 定 は 必 要 な い 。 代 数 ベ ク トル rOPの 成 分 は実 数 で,そ
の 時 間 的 な 変 化 は ど こか ら観 察 して も 同 じで あ る。 そ こ
で,文 字 の 上 に ・(ド ッ ト)を 付 け た 簡 略 な時 間微 分 表 示 を用 い る こ とが で き る。 式(4.1)のVOPはVOPの
時 間 微 分 で,慣 性 系 O か ら見 た 質 点 Pの 加 速 度 を 座 標 系
O で 表 した も の で あ る 。 質 点 P に働 く作 用 力 も幾 何 ベ ク トルで 表 す こ とが で き,そ れ をfPと す る。 力 は運 動 学 的物 理 量 で は な く,オ ブ ザ ー バ ー に よっ て 矢 印 が 変 化 す る こ とは な い 。 す な わ ち,力
に は オ ブ ザ ー バ ー とい う概 念 は な く,そ の た め,添
る。 こ のfPと 座 標 系 O を組 み 合 わせ た 代 数 ベ ク トル を,fOPと
え字 は 一 つ で あ 表 す こ とに す る。
(4.6)
この 場 合 の左 側 の添 え 字 は代 数 ベ ク トル を作 る た め の座 標 系 を意 味 して い る。 右 側 の 添 え 字 は 力 が 作 用 す る 点 で,幾 何 ベ ク トル の 添 え字 を 踏 襲 して い る。 最 後 に,mPは
質 点 P の 質 量 で,こ れ は ス カ ラー(実
数)で あ る。
以 上 の よ う な 記 号 の 約 束 を も と に,式(4.1)と(4.2)の の 式 は,そ い て,コ
れ ぞ れ,ス
関係 が 成 立 す る。 こ れ ら
カ ラ ー レ ベ ル で 三 つ の 式 を 含 ん で お り,代
ンパ ク トな 表 現 に な っ て い る 。 な お,式(4.1)を
数 ベ ク トル を 用
幾 何 ベ ク トル で 表 す と
次 の よ う にな る。
(4.7) 式(4.1),ま
た は,(4.7)の
左 辺 に 負 号 を付 け た もの を慣 性 力 と呼 ぶ 。 自由 な質 点
の 場 合,作 用 力 と慣 性 力 の 和 は 常 にゼ ロ で あ る 。
Quiz4.3 vPO,vOSを
4.3項
の[Quiz4.1]と
同 じ 問 題 設 定 で,今
度 はvOP,vO'P,vSP,
考 え る 。 こ れ ら は そ れ ぞ れ ど こ か ら 見 た ど こ の 速 度 か 。 ま た,こ
ら の 中 に 長 さ ゼ ロ の 幾 何 ベ ク トル が あ る が,ど に 等 し い 幾 何 ベ ク トル の 組 が あ る が,ど Quiz4.4 剛 体 A 上 に 点 P,剛
れ か 。 さ ら に,こ
れ
れ ら の 中 に,常
れ と どれ か 。
体 B 上 に Q が あ る と き,vPQ=-vQPは
常 に
成 立 す る だ ろ うか 。
4.5順
動力学解析の事例:質 点の放物運動
● 順 動 力学 解 析 の 数 値 シ ミ ュ レー シ ョン 運 動 方 程 式 を利 用 した解 析 を二 つ に分 け て 考 え る こ とが で きる 。 順 動 力 学 解 析 と逆 動 力 学 解 析 で あ る。 順 動 力 学 解 析 は作 用 力 や 作 用 トル クが 既 知 の と き,そ れ らに よっ て 生 じる運 動(時
々刻 々の 運 動 学 的 物 理 量)を
求 め る作 業 で あ り,逆 動
力 学 解 析 は 運 動 が 既 知 の と き,そ の 運 動 を 生 じ させ る力 や トル ク を求 め る作 業 で あ る。 ロボ ッ トの モ ー タが トル ク を発 生 した と き ロ ボ ッ トが ど の よ う に動 くか と い う課 題 と,ロ ボ ッ トに生 じ させ た い運 動 を実 現 す る た め に 必 要 な モ ー タ トル ク を求 め る 課 題,と 考 え れ ば分 か りや す い 。順 動 力 学 解 析 は多 くの 場 合,計
算機 を
用 い た 数値 シ ミュ レー シ ョ ンに な るが,具 体 的 な プ ロ グ ラ ミ ン グ の仕 方 を理 解 す る に は,事 例 を見 る こ とが 最 も効 果 的 と思 わ れ る。 一 方,逆
動 力 学 解 析 は計 算 技
術 上 の 難 し さは 少 な く,設 計 問 題 な ど,個 々 の 課 題 ご と に い か に応 用 力 を発 揮 す
る か が 鍵 で あ る。 本 書 で は,い
くつ か の 事 例 に つ い て 運 動 方 程 式 を実 際 に立 て て み る が,さ
らに
そ の 中 の い くつ か に つ い て 順 動 力 学 解 析 の 数 値 シ ミュ レー シ ョ ンプ ロ グ ラム を示 し,読 者 の シ ミュ レー シ ョン技 術 習 得 に役 立 て る よ うに した 。 シ ミュ レー シ ョ ン 環 境 と して は,プ
ロ グ ラ ミ ン グ に 関 わ る負 担 の 少 な いMATLABが
適 当 と考 え,
で き る だ け単 純 な プ ロ グ ラ ミ ン グ技 術 の範 囲 内 で シ ミュ レ ー シ ョ ン を 実 現 して, 本 質 的 な 技 術 を 習 得 し や す い よ う に 配 慮 し た。 計 算 プ ロ グ ラ ム は 付 録 の CD-ROMにMフ
ァ イ ル の形 で 収 録 して あ る。 な お,MATLABに
本 書 で は行 わ ず,読 者 の 自助 努 力 に任 せ る。 ま た,プ
関す る説明は
ロ グ ラ ミ ン グ技 術 に 関 す る
見 本 を提 供 して い る わ け で も な く,他 の プ ロ グ ラ ミ ング言 語 を用 い る場 合 に も共 通 な 基 本 的事 項 を具 体 的 に学 べ る よ う にす る こ とが 狙 い で あ る 。MATLABは
行
列 を用 い た計 算 処 理 に 関 す る便 利 な機 能 が 含 ま れ て い る言 語 で,本 書 に示 した 運 動 方 程 式 表 現 か ら の プ ロ グ ラ ミ ン グ に も適 して い る 。 た だ し,大 規模 な モ デ ル を 扱 う こ と は計 算 時 間 の面 な どか ら,実 用 性 に制 限 が あ る か も しれ ない 。
● 2次元放物運動 本 節 で は,最 初 の 事 例 と して 質 点 の 放 物 運 動 を取 り上 げ る 。 こ の 事 例 の 目的 は,初
心 者 に順 動 力 学 解 析 の 数 値 シ ミュ レー シ ョ ン と は どの よ う な もの か を示 す
こ とで あ り,質 点 に働 く作 用 力 は 重 力 だ け の 単 純 な モ デ ル を用 い る こ とに した 。 こ の モ デ ル は解 析 解 も得 られ る の で,数 値 解 と の比 較 も可 能 で あ る。 運 動 方 程 式 とそ れ に 随 伴 させ る運 動 学 の 関 係 式 に は,式(4.1)と(4.2)が
利 用 で き る。 た だ
し,質 点 の 放 物 運 動 は鉛 直 な 2次 元 平 面 内 の 運 動 と して モ デ ル化 で き るの で,式 (4.1)と(4.2)のrOP,vOP,fOPを
2次 元 の代 数 ベ ク トル と解 釈 す る。 す な わ ち,Z
図4.3質
点 の放 物 運動
成 分 はゼ ロ と して よ い の で,そ の 部分 を省 け ば 2次 元 の式 に な る。 作 用 力fOPは,Y
軸 負 の 方 向 に働 く重 力 だ け を 考 え れ ば よい の で,重 力 の 加 速
度 g を用 い て 次 の よ う に表 され る。
(4.8)
fOP=-dYmPg
こ こで,2 次 元 問題 で 式 を簡 潔 に表 す た め の 記 号dYが
用 い られ て い る 。dxと
と もに便 利 な 道具 で,今 後 も事 例 な どで 頻 繁 に用 い る。
(4.9) 以 上 よ り,シ
ミ ュ レ ー シ ョ ン に 用 い る の は,2 次 元 代 数 ベ ク ト ル を 利 用 し た 次
の 二 つ の 式 で あ る。
vOP=-dYg
(4.10)
rOP=vOP
(4.11)
式(4.10)は
式(4.8)を
る 。 こ の モ デ ル の 場 合,質
式(4.1)に
代 入 し て,共
通 な 因 子mPを
除 いた もので あ
点 の 質量 の 大 小 は 運 動 軌 跡 に は 無 関 係 で あ る 。
● 常微分方程式初期値問題の数値積分 式(4.10)と(4.11)は,rOPとvOPに
含 まれ る四つ の変数 に関す る一 階の連 立常
微 分 方 程 式 に な っ て い て,計 算 機 を用 い た 数 値 解 法 の 適 用 が 可 能 な形 で あ る。 一 般 に 一 階 の 連 立 常 微 分 方 程 式 は,ス 形 に書 け,こ
の形 に対 して,数
図4.4数
カ ラー 変 数 xの 関 数 Y につ い て 次 の よ う な
値 解 法(積
分 法)が
値 積 分 の イ メ ー ジ(式(4.13),Yiは
準 備 さ れ て い る。
Y の 成 分)
(4.12) 右 辺 の fは Y と x の 関 数 で,f と Y は 同 数 の 成 分 を持 つ 列 行 列 で あ る 。 数 値 積 分 法 は,x=x1の
Y の 値Y(x1)を
そ の傾 き は,x=x1+Δxに る 。 こ こで,Δxは
も と に 右 辺 を計 算 し,Y の 傾 き を 求 め る 。
お け る Y の 値Y(x1+Δx)を
推 定 す る た め に用 い られ
積 分 キ ザ ミ と呼 ば れ る微 小 量 で あ る 。Y(x1+Δx)の
推 定値 を
作 る最 も単 純 な 方 法 は 次式 で あ る。
(4.13) Y(x1+Δx)の
推 定 値 が 求 ま っ た ら,同
じ作 業 を繰 り返 せ ば,x=x1か
らx=x2ま
で の Y の値 を計 算 す る こ とが で き る。 以 上 の 説 明 は 単 純 な概 念 を与 え る た め の もの だ が,実
際 に は,Y(x1+Δx)の
推 定 値 を精 度 よ く安 定 に 求 め る た め の細 か い 工 夫 が あ り,様 々 な方 法 が あ る。 そ れ ら の 方 法 は,積 分 ア ル ゴ リ ズ ム と呼 ば れ て い て,一 般 的 に 数 値 計 算 ソ フ トで は,ソ ル バ ー と呼 ば れ る形 で 内蔵 さ れ て い た り,ソ フ トウ ェ ア パ ッケ ー ジ の形 で 供 給 され て い る場 合 が 多 く,そ の部 分 の プ ロ グ ラム を書 かず に利 用 で きる 。 そ の 場 合,ユ
ー ザ ー は,常 微 分 方 程 式(4.12)の 右 辺 の 計 算 手 順,Y(x1)の
て,独 立 変 数 の 両 端 のX1とX2を か,そ
情 報,そ
し
計 算 機 に 与 え れ ば よ い。 他 に,積 分 キ ザ ミ Δx
れ を作 り出 す た め の 情 報 を与 え る場 合 が あ る。 常 微 分 方 程 式 の 右 辺 は,Y
と xか ら Y の 傾 き を 計 算 す る手 順 の 形 で 与 え る 。 順 動 力 学 解 析 の場 合,独 数 x は 時 間 tで あ り,Y 13章 参 照)と
は,通 常,独
呼 ば れ る変 数 で,Y
立変
立 な一 般 化 座 標 と独 立 な 一 般 化 速 度(第
と呼 ぶ こ と に す る。Y(t1)は,状
の 傾 きは Y の 時 間 微:分で あ る。 Y を状 態 変 数 態 変 数 のt=t1の
値 で あ り,初 期 値 と呼 ば れ て
い る 。t1は 0 とす る こ とが 多 い 。
● プログラム構成 式(4.10),(4.11)の
場 合,状
態 変 数 Y はrOPとvOPで
あ る 。
(4.14)
微 分 方 程 式 の右 辺 は,位 置rOP,速 順 で あ る か ら,式(4.10),(4.11)を
度vOP,時
間 tか ら,rOP,vOPを
計 算 す る手
そ の ま ま プ ロ グ ラ ミ ング す れ ば よ い。 こ の 事
例 に は 時 間 tは 必 要 な い。 Y の 初 期 値 は質 点 の 初 期 位 置 と初 期 速 度 で あ る。 この 事 例 に対 す るMATLABの め た(houbutsu
プ ロ グ ラ ム を,関 数 M フ ァ イ ル と呼 ば れ る 形 に ま と
_1.m,付
録 のCD-ROMに
用 す る ほ うが 一 般 的 と思 わ れ るが,関
収 録)。 ス ク リ プ ト M フ ァ イ ル を利 数 M フ ァイ ル は,利 用 す る い くつ か の 関
数 を一 つ の フ ァ イ ル に ま とめ て 書 くこ とが で きる た め,個
々 の事 例 を ひ と ま とめ
にで き,分 か り易 い と考 え た 。 プ ロ グ ラ ム の構 成 は,デ ー タ入 力,前 処 理,積 分 計 算,出 力 処 理 の 四 つ の 段 階 に 分 け て 考 え て い る。 第 一 段 階 の デ ー タ入 力 は,計 算 モ デ ル を構 成 す る 定 数,初 期 値,計
算 と出 力 に
関 わ る時 間 な どの デ ー タ を与 え る段 階 で,こ の 部 分 の 数 値 を変 え る こ とで 計 算 モ デ ル な ど を変 更 で き る。 質 点 の初 期 速 度 の入 力 に は,質 点 を投 げ 上 げ る 角 度 とそ の 方 向 の 速 さ を与 え る よ うに した 。MATLABの
ソ ルバ ー は 自動 キザ ミで ,キ ザ
ミを 制 御 す る 計 算 精 度 に関 す る情 報 に はデ フ ォル ト値 が 準 備 され て い る。 こ こで は,そ の デ フ ォ ル ト値 をそ の ま ま用 い る こ とに し,積 分 キ ザ ミに 関係 す る デ ー タ は入 力 して い ない 。 第 二 段 階 の 前 処 理 は,与 で,初
期 速 度 のXY成
え られ た デ ー タ を加 工 し て積 分 計 算 の 準 備 をす る段 階
分 を計 算 した り,第 三段 階 の 積 分 計 算 に 必 要 な形 で初 期 値
を準 備 し た り して い る 。 一 般 に は,右 辺 の 計 算 に用 い る定 数 を準 備 す る こ と もあ る。 第 三 段 階 の積 分 計 算 は,MATLABが
提 供 す る ソ ルバ ー を 呼 び 出 して積 分 計 算
を実 行 す る段 階 で あ る。 本 書 の 順 動 力 学 シ ミュ レ ー シ ョ ン の 事 例 に はode45と 呼 ば れ る 関 数 を用 い て い るが,こ
れ に は 4 次 の ル ン ゲ ク ッ タ 法 と呼 ば れ る積 分
ア ル ゴ リズ ム が 用 い ら れ て い る。 関 数ode45を (微分 方 程 式 の 右 辺)を
計 算 す る 関 数 名(e_houbutsu_1),初
間 と最 終 の 時 間 の 並 び([t0:dt:tf]),Y ョ ンの 指 定 が な い こ と を示 す[]を の 並 び(こ
呼 び だ す と き,Y の 時 間微 分
の 事 例 の場 合,g(重
期 の 時 間 と出 力 時
の 初 期 値(YINITIAL),特
別 なオ プシ
挟 ん で,右 辺 の 計 算 で 用 い られ る パ ラ メ ー タ
力 加 速 度)一 つ だ け),が
事 例 で 用 い た 関 数e_houbutsu_1は,houbutsu
_1.mの
入 力 さ れ て い る。 こ の
第 四段 階 の後 に記 述 さ れ
て い る の で,読 者 は式(4.10)と(4.11)が
こ の 関 数 の 中 で どの よ う に プ ロ グ ラ ミン
グ さ れ て い る か を確 認 さ れ た い 。 関数e_houbutsu_1の とvOP)の
ほ か に,重 力 の加 速 度 g をパ ラ メ ー タ と して 引 き渡 す よ う に な っ て い
る。 こ の 関 数 の 出 力 は,Y ode45の
入 力 は,t と Y(注)(rOP
出 力 は,全
の 時 間 微 分DY(rOPとvOP)で
出 力 時 間(tt)と
あ る 。 一 方,関
数
そ の 全 時 間 に 対 応 す る 状 態 変 数(YY)で
あ る。ttは,[t0:dt:tf]をMATLABに
従 っ て 展 開,転 置 して,列 行 列 に並 べ
た もの で あ る 。YYは,各
時 間 の Y を 転 置 して 行 行 列 に した もの を 時 間順 に下
方 に積 層 した もの で,ttの
行 とYYの
入 出 力,お
よ び,関
数ode45の
行 が 対 応 し て い る 。 関数e_houbutsu_1の
入 出 力 の 間 に は,い
くつ か,当
あ る 。 状 態 変 数 Y の 中 の 要 素 の 並 び とそ の 時 間微 分DYを の 並 び,ode45とe
_houbutsu_1の
で あ る。 なお,ode45に
然 な対 応 関 係 が
表す変 数の 中の要素
二 つ の 関 数 に 引 き渡 す パ ラ メ ー タ の並 び な ど
関 して,MATLABオ
ン ラ イ ンマ ニ ュ ア ル を 参 照 さ れ た
い 。微 分 方 程 式 の 初 期 値 問 題 に 関す る 数 学 的 説 明 も役 に 立 つ で あ ろ う。 第 四段 階 の 出 力 処 理 は,積 分 計 算 結 果 を処 理 して,グ
ラ フ とア ニ メー シ ョ ンに
よ る結 果 表 示 を行 う段 階 で あ る。 グ ラ フ は時 間 と状 態 変 数 Y の 中 か ら選 択 した 変 数 を グ ラ フ の X 軸 と Y 軸 に 指 定 す る こ とで 描 け る。 グ ラ フ の 描 画 に は様 々 な 機 能 が あ り,結 果 を見 や す くす る様 々 な方 法 が あ る が,こ 動 ス ケ ー ル に任 せ,各
こ で は 最 も単 純 に,自
軸 に割 り当 て た 変 数 の 意 味 だ け を軸 の ラ ベ ル に表 示 した。
ア ニ メー シ ョ ンで は,質 点 を小 さ な 四 角 い マ ー カ ー で 表 し,そ れ が 時 間 と と もに 動 く様 子 を動 画 に した 。 単 純 な放 物 運 動 で あ る か ら,た い して 見 栄 え の す る もの で は ない が,簡
単 な ア ニ メ ー シ ョ ン を実 現 す る 手段 の 一 つ と して,そ
のプ ログラ
ミ ン グが 参 考 に な る こ と も あ る だ ろ う。 時 々刻 々 の マ ー カ ー を残 して表 示 す る方 法 な ど も あ り,そ の よ う な様 々 な 方 法 の 習 得 は 読 者 の 努 力 に 任 せ る。
(注)Y 1.mの
を 太 字 に し て い る の は,本 中 で も,そ
書 で の 記 号 の ル ー ル に 従 っ て い る か ら で あ る が,houbutsu_
の ま ま 変 数 と し て 用 い ら れ て い る(当
数 名 で あ り,[t0:dt:tf]も
然,太
字 で は な い)。DY,YY,ttも
プ ロ グ ラ ム 中 で は 斜 体 は 使 っ て い な い がMATLABの
変
表 現 で あ る。
● 計 算 の 実 行 と出 力,お よ び,放 物 運 動 シ ミ ュ レー シ ョンの 応 用 こ の プ ロ グ ラ ム を 動 か す に は,MATLABを
起 動 し て,カ
レ ン トデ ィ レ ク ト リ
を こ の M フ ァ イ ル の あ る デ ィ レ ク ト リ に 設 定 す る 。 あ る い は,こ の あ る デ ィ レ ク ト リ がMATLABの 後,コ
検 索 パ ス上 に く る よ う に す れ ば よ い。 そ の
マ ン ド ウ ィ ン ド ウ の プ ロ ン プ トにhoubutsu_1;な
キ ー を 押 せ ば,計
の M フ ァイ ル
ど と打 ち 込 ん でEnter
算 して 結 果 が 表 示 され る。
本 書 の 順 動 力 学 シ ミュ レー シ ョ ンプ ログ ラ ム の 出 力 は グ ラ フ とア ニ メ ー シ ョン で あ る 。houbutsu
_1.mの
figure(2)(図4.5)は
出 力 は 表4.1に
自 動 ス ケ ー ル に な っ て い る の で,ほ
線 に な っ て い る が,水
平 軸(X
軸)の
て い る 。 ア ニ メ ー シ ョ ン で は,各 続 い て,そ
ま と め ら れ て い る 。figure(1)と と ん ど 同 じ形 の 放 物
数 値 は そ の 軸 に指 定 した変 数 の もの に な っ
時 間 ご と の 図 を 準 備 し て 取 り込 む 段 階 が あ り,
れ を 連 続 的 に 表 示 す る 段 階 を プ ロ グ ラ ミ ン グ し た 。 そ の た め,二
表4.1houbutsu_1.mの
グ ラ フ と ア ニ メ ー シ ョ ン 出 力
figure(1)(注)
時 間 に対 す る質 点 の高 さの グ ラ フ
figure(2)
質 点の 水平 位 置 に対 す る質 点 の高 さの グ ラ フ
figure(3)
ア ニ メー シ ョン
(注):figure(1)な
ど は,MATLABを
図4.5質
動 か した とき に出 て くる 図の 番号 であ る。
点の 軌 跡
回の
動 画 表 示 が あ る よ う に写 る 。 積 分 計 算 の 終 了 は,指 定 した計 算 時 間 内 で,指 定 した状 態 に な っ た と き とす る こ と も で きる 。 放 物 運 動 の 場 合,投
げ 上 げ た 質 点 が 元 の高 さ に 戻 っ て きた と き を
終 了 とす る よ う な指 定 で あ る。 この た め に は,MATLABのevent関 る もの を利 用 す れ ば よ い が,こ
数 と呼 ば れ
の プ ロ グ ラ ム で は,単 純 に,指 定 した 時 間 で 終 了
す る。 こ こ で は 最 も単 純 な放 物 運 動 を取 り上 げ た が,あ
る高 さ で は 横 風 の影 響 に よ っ
て 適 度 な横 力 が 働 き,X 軸 上 の あ る 範 囲 で は上 昇 気 流 の 影 響 で 上 向 きの 力 が 働 く とす れ ば,質 点 軌 道 の 放 物 線 は崩 れ た 形 に な る 。 3次 元 的 な風 の 影 響 を 含 め た, 3次 元 の シ ミュ レー シ ョ ン も面 白 い だ ろ う。 風 な どの外 乱 が あ る状 況 で,質 点 の 落 下 位 置 を 目標 地 点 に 近 づ け る た め の 初 期 の打 ち 出 し方 向 と速 度 を探 す ゲ ー ム も 考 え られ る 。 そ の よ うな 遊 び心 をプ ロ グ ラ ミ ン グ して 計 算 して み れ ば,シ ー シ ョ ンが 身 近 に な る か も しれ な い 。
ミュ レ
第5章
自由な剛体 の運動方程式 と その表現方法
3次 元 問 題 の 難 し さ は,ま ず,剛 体 の 回 転 姿 勢 に あ り,さ
らに,剛 体 回 転 運 動
の 運 動 方 程 式 に あ る。 本 章 で は 3次 元 剛 体 の並 進 運 動 と 回転 運 動 の運 動 方 程 式 を 示 し,角 速 度,ト
ル ク,慣 性 行 列 な どの 回転 運 動 に 関 わ る物 理 量 と そ の 表 現 につ
い て 説 明 す る 。 第 9章 にで て くる コマ の シ ミュ レー シ ョ ンは,本 章 で 説 明 す る運 動 方 程 式 を用 い る。 た だ し,こ の 運 動 方 程 式 導 出 の 説 明 は,第 れ ば な らな い 。 ま た,剛 体 の 回 転 姿 勢 につ い て は,第
Ⅲ部 まで 待 た な け
7章 ∼ 第 9章 に 説 明 さ れ て
い る。
5.1剛
体 の運 動 方程 式
3次 元 空 間 を 自 由 に運 動 す る 剛体 の運 動 方 程 式 は,重 心 の並 進 運 動 と回 転 運 動 に分 離 して 表 す こ とが で き る。 剛 体 A を考 え,そ の 重 心 と重 心 に 原 点 を一 致 さ せ て 固 定 した 座 標 系 も A と呼 ぶ こ と にす る 。 剛 体 A の 運 動 方 程 式 は 次 の とお り で あ る。
(5.1) (5.2) 運 動 方 程 式 を この よ うに 二 つ に分 離 で き る の は並 進 運 動 を重 心 位 置 で捉 えて い る か らで あ る。 そ れ 以 外 の 点 で 並 進 運 動 を表 す 場 合 は,一 般 に,並 進 と回 転 が 連 立 した 式 に な る(式(12.27))。 慣 性 系 O か ら見 た 重 心 A の 速 度 を表 す 幾 何 ベ ク トル はVOA で あ る。 この 幾 何 ベ ク トル を座 標 系 O と組 み合 わ せ る と代 数 ベ ク トルVOAに
な る。
(5.3)
図5.1剛
体 A の 重 心 速度 と角 速度,A に働 く 等 価換 算 後 の 作 用 力 と作 用 トル ク
こ れ ら は 前 節 のvOP,VOPと
同 じ添 え字 の 使 い 方 で あ る。 大 文 字 と小 文 字 の使 い
分 け は 今 の と こ ろ 強 い 意 味 を持 っ て い る わ け で は な い。 剛体 に関 す る量 に は 大 文 字 を用 い,点 場 合,重
に 関 す る 量 に は小 文 字 を用 い る こ と を原 則 と して い る。 式(5.1)の
心 は 剛 体 の代 表 点 と考 え る の が 妥 当 で,大 文 字 を用 い て い る。 な お,3
次 元 剛 体 系 に 対 して,こ の 大 文 字 と小 文 字 を使 い 分 け る 主 な理 由 は,第17章 式(17.9)と(17.12)な
の
どの 区別 の た め で あ る。
剛 体 上 の 各 点 に は 作 用 力 と作 用 トル ク が 働 くが,そ
れ ら を重 心 点 A に等 価 換
算 し,合 計 す る と,一 組 の作 用 力 と作 用 トル ク に な る 。 そ の 作 用 力 を 幾何 ベ ク ト ル でFAと
書 くこ と に し,そ れ を座 標 系 O で表 した代 数 ベ ク トルがFOAで
これ も,前 節 のfP,fOPと
ある。
同 じ添 え 字 の 使 い 方 で あ る。
(5.4)
な お,力
と トル ク の 等 価 変 換 は,12.1節
明 と し て 必 要 な 最 後 の 記 号 はMAで,こ
5.2オ
に 説 明 さ れ て い る 。 さ て,式(5.1)の
説
れ は 剛 体 A の 質 量 で あ る。
イ ラー の運 動方程 式
式(5.1)は 重 心 位 置 に全 質 量 が 集 ま っ て い る と 考 えれ ば ニ ュ ー トン の 運 動 方 程 式(4.1)と 同 じで あ り,使 わ れ て い る 記 号 も 同様 で あ る。 一 方,回
転運動 の運動
方 程 式(5.2)は オ イ ラ ー の 運 動 方 程 式 で あ る が,こ
こに使 われてい る変数 は新 た
に 説 明 を要 す る。 ま ず,慣 性 系 O か ら見 た 剛体 A の角 速 度 を 表 す 幾 何 ベ ク トル を ΩOAと 書 く こ と に す る。 慣 性 系 O が オ ブ ザ ー バ で あ る。 この 矢 印 の 向 き は, 慣 性 系 O か ら見 た 剛 体 A の 瞬 間 回 転 中 心 軸 と平 行 で あ り,矢 印 の 長 さ は 回 転 の 速 さ を 表 す もの で,回 転 の 向 きは 右 ネ ジ のル ー ル で定 め る 。 さ て,こ る が,こ
の 幾 何 ベ ク トル と座 標 系 O を組 み 合 わ せ た代 数 ベ ク トル が ΩOAで あ
こ で は,剛 体 に 固 定 され た 座 標 系 A を ΩOAと 組 み 合 わ せ て,別
の代 数
ベ ク トル を作 る こ と にす る。 そ の 代 数 ベ ク トル を Ω'OAと表 す 。
(5.5)
ΩOAの 二 つ の 添 え字 の う ち,左 側 の 添 え 字 に 関 係 して い る 座 標 系 と組 み 合 わせ た 場 合 が ΩOAで,右
側 の 添 え字 に関 係 し て い る座 標 系 と組 み 合 わ せ た 場 合 が Ω'OA
で あ る。 す な わ ち,ダ ッ シ ュ は右 側 の 添 え字 に 関係 す る座 標 系 と組 み 合 わ せ た こ と を意 味 し,ダ ッ シ ュが な け れ ば左 側 の 添 え字 に 関 係 す る座 標 系 と組 み 合 わ せ た もの とす る。 こ の ル ー ル はVOA,ROAな
どの 場 合 に も適 用 で き,こ れ ら と座 標 系
A を組 み 合 わせ た代 数 ベ ク トル はV'OA,R'OAで
ある。
Ω'OAは Ω'OAの三 つ の 成 分 か ら作 っ た,次 の よ う な3×3行
列 で あ る。
(5.6)
Ω'OAの上 の ∼(テ
ィル ダ)は3×1列
行 列 に作 用 して,こ
の式 に示 した よ う な成
分 配 置 の3×3行 列 を作 る オ ペ レ ー ター で あ る。 こ の オペ レー タ ー を 外 積 オ ペ レ ー タ ー と 呼 ぶ こ と にす る。 式(5.6)の 成 分 配 置 か ら分 か る よ う に,外 積 オ ペ レー タ ー を作 用 させ て作 っ た3×3行
列 の 転 置 は符 号 が 反 転 す る。
(5.7) こ の よ う な 性 質 を 持 つ 行 列 は,交 な お,Ω'OATは,(Ω'OA)Tを 用 さ せ,そ
代 行 列,ま
た は,歪
対 称 行 列 と呼 ば れ て い る。
意 味 し て い る 。 す な わ ち,Ω'OAに
外 積 オペ レー タ を 作
の 結 果 を 転 置 し た も の で あ る 。 先 に 転 置 す る と,外
用 す る こ と は で き な い の で,括
弧 を は ぶ い て,簡
積 オ ペ レー タ を作
潔 に表 現 す る こ とが で き る。
剛 体 上 の 各 点 に 働 く作 用 力 や 作 用 トル ク を重 心 位 置 に 等 価 換 算 し,合 計 す る と 一 組 の 作 用 力 と作 用 トル ク に な る が ,そ の 作 用 トル ク を幾 何 ベ ク トル でNAと 書 く こ と に す る。 す な わ ち,前 節 の 式(5.4)の が,等
価 換 算 と合 計 の 結 果 で あ る。 このNAを
直 前 で 説 明 したFAと
,こ こ のNA
座 標 系 A と組 み 合 わせ た代 数 ベ ク
トル がN'OAで あ る。
(5.8) N'OAの 右 側 の 添 え字 は トル クが 作 用 す る剛 体(ま
た は点)で
ベ ク トル を作 る た め の座 標 系 を暗 示 して い る 。 一 方,N'OAの 意 味 を持 っ て い な い 。FOAと
あ り,さ ら に,代 数 左側 の添 え字 O は
の 対 比 で 形 式 的 に O を付 け る こ とに して い るが ,
「座 標 系 O で は な く,A で 表 した 」 とい う気 持 ち で捉 え れ ば よ く,O 以 外 の記 号 を用 い て も意 味 は 変 わ らな い 。 式(5.2)に 現 れ て い る変 数 はす べ て ダ ッ シ ュ が 付 い て い て,こ
れ ら は座 標 系 A
で 表 さ れ て い る 。 実 用 上,回 転 運 動 に 関 わ る 量 は ダ ッ シ ュの 付 い た 変 数 を用 い る こ とが 多 い。 た だ し,作 用 トル ク にNOAが
使 わ れ る場 合 が な い わ け で は な く,
ま た,作 用 力 と してF'OAが 使 わ れ る場 合 もあ る 。 J'OAは 慣 性 行 列 と呼 ば れ る3×3対
称 行 列 で あ る。 こ れ は,剛 体 の A 点 ま わ り
の 質 量 分 布 が持 つ 回転 運 動 の 慣 性 特 性 を表 す もの で あ り,慣 性 テ ン ソル と呼 ば れ る 物 理 量 を座 標 系 A に よっ て 表 現 した もの で あ る。
(5.9) 座 標 系 O に よ っ て 表 現 した もの はJOAと 表 記 す る。 ま た,A 点 ま わ りで あ る こ と を 明 示 す る場 合 はAJ'OAと 書 く こ と にす る 。 右 下 添 え字 の 右 側 の A は慣 性 行 列 を表 現 す る た め の 座 標 系 で,左 上 の A は モ ー メ ン ト中 心 で あ る。 両 者 が 一 致 し て,モ
ー メ ン ト中 心 が座 標 系 原 点 と一 致 す る場 合 は ,左 上 の 添 え字 を省 略 す る こ
と に して い る。 J'OAの 三 つ の 対 角 要 素 は,A 座 標 系XYZ軸
ま わ りの 慣 性 モ ー メ ン トで あ り,
非 対 角 項 は慣 性 乗 積 と呼 ば れ て い る。 回転 運動 に 関 わ る量 に ダ ッ シ ュの 付 い た変
数 を 用 い る 理 由 ば,J'OAが
定 数 に な る 点 に あ る 。J'OAが 定 数 な ら,式(5.2)を
た 順 動 力 学 の 数 値 解 を 求 め 易 く,一 お,J'OAも,N'OAの
場 合 と 同 様,左
方,JOAは
回 転 姿 勢 と と も に 変 動 す る。 な
側 の添 え 字 は意 味 を持 っ て い な い 。
ジ ャ イ ロ 効 果 な ど 3次 元 回 転 運 動 の 複 雑 さ は,オ 辺 第 二 項 の 存 在 と,第
イ ラ ー の 運 動 方 程 式(5.2)左
一 項 も含 め た 慣 性 行 列 に 起 因 す る 。 そ の 影 響 は 次 の よ う な
こ と に も 現 れ て く る 。 式(4.1)に vOP=const.と
用い
な る 。 す な わ ち,自
お い て,fOP=0と
す る と,vOP=0が
成 り 立 ち,
由 な 質 点 に 作 用 力 が 働 か な け れ ば,速
度は一
定 に 保 た れ る 。 自 由 な 剛 体 重 心 の 並 進 運 動 に つ い て も 同 様 な こ と が い え る が,剛 体 の 回 転 運 動 に つ い て は 同 様 と は い え な い 。 式(5.2)で,N'OA=0と Ω'OA=const.を
導 く こ と は で き な い 。 逆 に,Ω'OA=const.を
な ト ル ク はN'OA=Ω'OAJ'OAΩ'OAで
あ り,慣
性 乗 積 の 存 在 や,各
し て も,
維持 す るた めに必要 軸 ま わ りの 慣 性 モ
ー メ ン トの 違 い が こ の トル ク を 生 み 出 し て い る こ と が 分 か る 。J'OAが ス カ ラ ー 行 列 の 場 合 の み,こ
の トル ク は ゼ ロ に な る 。 ま た,Ω'OA≠0で
え る と オ イ ラ ー の 運 動 方 程 式(5.2)の こ の 場 合 も Ω'OA〓N'OAに
Quiz5.1
Ω'OA=0の
瞬 間 を考
左 辺 第 一 項 だ け の 影 響 が は っ き りす る が,
な っ て い る わ け で は な く,並
進 運 動 と は異 な っ て い る。
月 は 常 に地 球 に 同 じ面 を 向 け て,地 球 の ま わ りを 回 っ て い る。 月
の 自転 と公 転 の 周 期 は 等 し く,約27.32日
とい わ れ るが,こ
れは恒星系 に対す る
向 き を基 準 と して,一 周 す る 時 間 で あ る。 同 様 の意 味 で,地 球 の 公 転 の 周 期 は約 365日,自
転 の周 期 は約 1 日(も う少 し正 確 に は 1 日弱)で
あ る。 さて,地 球 か
ら見 た 月 の 角 速 度 と は何 か 。 月 や 地 球 の 自転 や 公 転 との 関係 を説 明 せ よ。
図5.2太
陽(S),地
球(E),月(M)
Quiz5.2
剛 体 A か ら見 た 剛 体 B の 角 速 度 ΩABと 剛 体 B か ら見 た 剛 体 A の
角 速 度 ΩBAと は,ど
の よ うな 関 係 か 。
Quiz5.3
剛体 A か ら見 た 剛 体 A の 角 速 度 ΩAAは,ど
Quiz5.4
N'OA,J'OAの
左 側 の 添 え 字 の O は,い
た 。 Ω'OAの 左 側 の 添 え 字 の O は ど う で あ っ た か,再
5.3剛
ん な幾 何 ベ ク トル か。
ず れ の場 合 も無 意 味 で あ っ 確 認 せ よ。
体の運動方程式に関連するその他の事項
順 動 力 学 の 数 値 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 う場 合,式(4.1)に 必 要 だ っ た よ う に,式(5.1)に
随 伴 さ せ て 式(4.2)が
は次 の 式 を随 伴 させ る こ とが 多 い 。
(5.10)
ROA=VOA
しか し,式(5.2)に
随 伴 させ る式 は,ま
だ,示 す こ と は で き な い 。 まず,3 次 元
の 回転 姿 勢 に つ い て 知 る必 要 が あ り,そ れ らに つ い て は 第 7章 ∼ 第 9章 に説 明 が あ る。 な お,式(5.1),(5.2),(5.10)は,そ
れ ぞ れ,ス
カ ラー レベ ル で 三 つ 式 を
含 ん だ コ ンパ ク トな 式 に な っ て い る。 見 か け 上,三 分 の 一 に な っ て い る だ けで あ るが,随 分,見
通 しが よ い。
式(5.1)と(5.10)に しか し,式(5.2)に
対 応 す る幾 何 ベ ク トル 表 現 は式(4.7),(4.5)と
同 様 で あ る。
対 応 す る幾 何 ベ ク トル表 現 は簡 単 で は な い 。 慣 性 テ ン ソル の
表 現 方 法 は馴 染 み が な い か らで あ る。 さ らに,第
7章 以 降 に 述 べ る 3次 元 の 回 転
姿 勢 は行 列 表 現 が 主体 に な る の で,回 転 姿 勢 と角 速 度 の 関係 を表 す 幾 何 ベ ク トル 表 現 は,通 常,用
い られ る こ とは な い。
式(5.1),(5.2)は,三 方 程 式 と して,導
つ の質 点 が 三 角 形 を な して 剛 につ な が っ て い る 系 の 運 動
く こ と が で き,12.2節
に 説 明 が あ る。 そ こ で は,各 質 点 の 質
量 と そ の 点 の 剛 体 上 の 位 置 か ら,剛 体 の慣 性 行 列 が ど の よ う に作 り出 され る か, 明 らか に な る 。 同 じ方 法 で 多 数 の 質 点 が 剛 に つ な が った 系 を 考 え れ ば 質 量 が 連 続 的 に分 布 して い る 剛体 を近 似 して 考 えて い る こ とに な るが,そ の 運 動 方程 式 が 導 か れ る 。12.2節 の 方 法 は 第15章 じ運 動 方 程 式 の 導 出 は 第17章
の 場 合 も同 じ剛 体
の 拘 束 力 消 去 法 で あ るが,同
の 仮 想 パ ワー の 原 理 を利 用 す る方 法 や 第19章
の拘
束 条 件 追 加 法 で も行 え る。 式(5.1)の 左 辺 に負 号 を付 け た もの が(座 標 系 O で 表 さ れ た)慣 性 力 で あ る。 ま
た,式(5.2)の
左 辺 全 体 に負 号 を付 け た もの は(座 標 系 A で 表 され た)慣 性 トル ク
で あ る。 自 由 な 剛体 の 場 合,重
心 に等 価 換 算 し た作 用 力 と慣 性 力 の 和 はゼ ロに な
り,等 価 換 算 した作 用 トル ク と慣 性 トル クの 和 も ゼ ロ で あ る。
第6 章
外 積 オペ レー ター,座 標 変 換 行 列
前 章 まで に,位 置,速 度,角
速 度 と力,ト
ル ク,質 量,慣 性 行 列 を 表 す 記 号 を
学 ん で き た。 ま た,剛 体 の 回転 の 運 動 方 程 式 に は,角 速 度 に外 積 オ ペ レー タ ー を 作 用 させ た交 代 行 列 が 出 て きた 。 代 数 ベ ク トル 表 現 で は,こ れ らの記 号 が 簡 潔 な 運 動 方 程 式 表 現 を 支 えて い る 。 運 動 学 的物 理 量 と して,基 本 的 に重 要 な 量 は 四つ あ る 。 上 記 の位 置,速 速 度 と,も
度,角
う一 つ,回 転 姿 勢 で あ る 。 次 章 か らこ の 回転 姿 勢 の説 明 に 入 る が,そ
の 前 に,本 章 で は外 積 オ ペ レ ー タ ー の 基 本 的 関 係 式 と拡 大 解 釈 につ い て述 べ る。 また,代 数 ベ ク トル は組 み 合 わ せ る座 標 系 に よ っ て 異 な った もの に な り,そ れ ら は 座 標 変 換 と呼 ば れ る変 換 関 係 で結 ば れ るが,本
章 で,そ れ を支 え る座 標 変換 行
列 も説 明 す る 。
6.1外
積 オ ペ レー タ ー
● 外 積 オ ペ レー タ ー の基 本 的 性 質 角 速 度 Ω'OAに外 積 オ ペ レー タ ー を 適 用 し た 交 代 行 列 Ω'OAの 成 分 配 置 は,式 (5.6)に 与 え ら れ て い る 。 同様 な成 分 配 置 に よ っ て,任 意 の3x1列 代 行 列 を作 る こ とが で き る が,そ
行 列 か ら交
れ が 外 積 オ ペ レ ー ター の 役 割 で あ る。a,bを
3×1列 行 列 と して,外 積 オペ レー タ ー の 基 本 的 な性 質 は 次 の と お りで あ る。
(6.1) (6.2) (6.3) (6.4) (6.5)
(6.6) (6.7) 式(6.4)のI3は3×3単
位 行 列 で あ る。
(6.8)
式(6.7)の 両 辺 は 四 つ の 因子 の 積 に な っ て い て,最 後 の 二 つ の 因 子abは
共通で
あ る。 しか し,こ の 共 通 因子 を 落 と した よ う な関 係 が 成 立 す る わ け で は な い 。 こ の よ うな こ と は行 列 の積 で は よ くあ る こ とだ が,注 意 を要 す る。 ま た,こ した 式 は,実 数 以 外 の 要 素 を持 つ3×1列
こ に示
行 列 に も適 用 で き る が,行 列 の 要 素 間
の積 につ い て 積 の交 換 法 則 が 成 り立 って い る こ とが 前 提 で あ る。 外 積 オ ペ レー タ ー は 幾 何 ベ ク トル の 外 積 を代 数 ベ ク トル の 世 界(行 列 の 世 界) で 実 現 す る た め の も の で あ る 。 幾 何 ベ ク トルa,bを せ て 作 っ た 代 数 ベ ク トル をa,bと がabに
な る。 式(6.2),(6.3)が
式(6.1)∼(6.6)は,具
式(6.7)を
同 じ座 標 系 で 表 した もの
外 積 の 性 質 で あ る こ と はす ぐに 分 か るで あ ろ う。
体 的 にa=[aX
(6.7)は,式(6.1)∼(6.6)の
Quiz6.1
す る と,外 積a×bを
特 定 な座 標 系 と組 み 合 わ
aY aZ]Tな ど を代 入 して 確 認 で き る 。 式
い くつ か を利 用 して 示 す こ とが で き る。
導 け。
● 外 積 オ ペ レー タ ーの 拡 大解 釈 こ れ ま で 外 積 オ ペ レ ー タ ー は3×1列 そ の 適 用 対 象 を3n×1列 3×1列
行 列 と し て,そ
行 列 の み に 適 用 で き る と 考 え て き た が,
行 列 に 拡 大 し て お く と 便 利 で あ る 。a1,a2,…,anを れ らを縦 に並 べ た 列 行 列 を zとす る。
(6.9)
こ の と き,こ
の z に 外 積 オ ペ レ ー タ ー を 作 用 さ せ る こ と が で き,次
の ようになる
もの とす る。
(6.10)
こ の 拡 大 解 釈 は,n=1の
6.2座
と き,も
との 解 釈 と一 致 す る。
標変換行列
ΩOAと Ω'OAとは 同 じ幾何 ベ ク トル を別 の 座 標 系 で 表 した 代 数 ベ ク トル で あ り, 次 の よ う な座 標 変 換 の 関 係 が 成 り立 つ 。
(6.11) COAは 座 標 系 A か ら座 標 系 O へ の 座 標 変 換 行 列 で あ る 。 一 般 に,座 標 系 B か ら 座 標 系 Aへ の 座 標 変 換 行 列CABは,3×3の
実 行 列(実
数 を要 素 とす る行 列)で
ある。
(6.12)
iと j をX,Y,Zと eAi,座
し て,座
標 系 A の i軸 に 沿 っ た 単 位 長 さ の 幾 何 ベ ク トル を
標 系 B の j軸 に 沿 っ た 単 位 長 さ の 幾 何 ベ ク トル をeBjと
eAiとeBjの
す る と,CABijは
内積 で あ る 。
(6.13) VOAとV'OA,ROAとR'OAの FOAとF'OAの
間 に も 式(6.11)と
関 係,NOAとN'OAの
i=X,Y,Zに
対 応 し たeAiを
ま と め たeAを
同 様 な 関 係 が 成 り 立 ち,ま
た,
関係 も同様 で あ る。 座 標 系 A の 基 底 と 呼 び,こ
基 底 列 行 列 と 呼 ぶ(3.3節
を 簡 潔 に 定 義 す る こ と が で き,付
れ ら を3×1列
参 照)。 こ れ を 利 用 し て,座
行列 に
標 変換行列
録 A に 説 明 さ れ て い る 。 そ の 方 法 は,次
に示
す 座 標 変 換 行 列 の 基 本 的 な性 質 の説 明 に も役 立 つ 。
CAA=I3
(6.14) (6.15)
CAC=CABCBC
(6.16)
座 標 変 換 行 列 は,式(6.15)の
後 半 の性 質 を持 っ て い る た め,正 規 直 交 行 列 で あ る 。
座 標 系 B で 表 した 交 代 行 列 Ω’ABと,座 標 系 A で 表 した 交 代 行 列 ΩABの 座 標 変 換 の 関 係 は 次 の よ うに な る。
(6.17) こ の 式 も 角 速 度 に 限 ら ず,式(6.11)の 対 し て 成 立 す る 。 同 じ こ と を,b
よ う な 関 係 に あ る す べ て の 代 数 ベ ク トル に を3×1列
行 列 と し て,次
の よ う に書 く こ と も
で きる 。
(6.18) 式(6.17)は,付
録 A の(A1.5),(A1.6),(A1.28)を
な お,式(6.11)な は,慣
ど,運
利 用 して 示 す こ とが で き る。
動 学 関 係 の 各 式 に 出 て く る 添 え 字 O は 慣 性 系,ま
た
性 座 標 系 で な くて も よ い 。 運 動 学 は 慣 性 と い う概 念 と は 無 関 係 で あ る 。 剛
体 O,お
よ び,そ
の 上 に 固 定 し た 座 標 系 O と 解 釈 す れ ば よ く,B
や C な ど別 の
添 え 字 に 置 き換 え る こ と も で き る 。
Quiz6.2
付 録 A の 方 法 に よ り,式(6.14)∼(6.16)を
Quiz6.3
式(6.18)を
Quiz6.4
Ω'AB=-ΩBAが
Quiz6.5
第11章
説 明 せ よ。
説 明 せ よ。
の11.1節
成 立 す る だ ろ うか 。 を 読 み, Quiz11.1に
答 え よ。
第7 章
3次元 剛体の 回転姿勢 と その表現方法
3次 元 空 間 にお け る剛 体 の 回転 姿 勢 は,そ の 剛 体 に 固 定 した 座 標 系 の 回 転 姿 勢 で 表 す もの とす る。 座 標 系 の 回 転 姿 勢 は 平 行 移 動 とは独 立 に考 え る こ とが で きる の で,二 つ の 座 標 系 の 対 応 す る 座 標 軸 が 平 行 に な っ て い る と き,両 者 は 同 じ回転 姿 勢 に な っ て い る と考 え る 。 あ る い は,二 つ の座 標 系 の相 対 的 な 回 転 姿 勢 は 原 点 が 一 致 す る よ う に平 行 移 動 して 考 え て も よい 。 本 章 で は,Simple Rotation(単 純 回 転),回 転 行 列,オ イ ラ ー 角,オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ,の 四 つ の 3次 元 回 転 姿 勢 表 現 を 説 明 す る。XYZの 三 軸 ま わ りの 回転 角 を単 純 に並 べ る だ け で は 回転 姿 勢 に は な らず,こ の 点 は 誤 解 が 多 い の で 注 意 を要 す る。 な お,上 記 の 四 つ 以 外 に ロ ドリゲ スパ ラ メ ー タ が あ るが,そ
の長所
が 生 か され る 場 面 は少 な い と 思 わ れ る の で,付 録 B に説 明 す る に と どめ た。 こ の 付 録 B に は,本 章 と は 異 な る オ イ ラ ー パ ラ メー タの 導 入 法,オ ー タ と ロ ドリゲ ス パ ラ メ ー タ に 関 す る 三 者 の 関 係(第 係(角
速 度 と の 関 係 。 第 9章 参 照),角
速 度 の 三 者 の 関 係(第
な ど も説 明 され て い る 。
図7.1座
標 系 の相 対 的 な配 置 関係 (平行 移動+回 転変 位)
イ ラーパ ラメ
8章 参 照),時
間微 分 の 関
8章 参 照)の 導 出
7.1
Simple
Rotation(単
座 標 系 A に 対 して,あ
純 回 転)
通 る 回 転 軸 λABを 考 え,そ
る 回転 姿 勢 状 態 の 座 標 系 B が あ る。 座 標 系 A の 原 点 を の 軸 ま わ りに 座 標 系 A を角 度 φAB(注)だ け 回転 す る と
座 標 軸 が座 標 系 B と 平 行 に な る とす る(図7.2)。
回 転 の 向 き は 右 ネ ジの ル ー ル
に よ っ て い る。 オ イ ラ ー の 定 理 は,座 標 系 A に対 して 座 標 系 B が ど の よ うな 回 転 姿 勢 で与 え られ て も,こ の よ う な λABと φABの存 在 を保 障 して い る。 そ して, 任 意 の λABと φABは 座 標 系 A に対 す る座 標 系 B の 回 転 姿 勢 を 一 つ 与 え る の で, λABと φABの 組 は 座 標 系 A か ら見 た 座 標 系 B の 回 転 姿 勢 を 表 し て い る 。λABと φABは,座 標 系 B が 現 在 の 回転 姿 勢 に至 っ た経 緯 と は無 関 係 で あ り,現 在 の相 対 的 な 回 転 姿 勢 を仮 想 的 に一 つ の軸 ま わ りの 回 転 だ け で 実 現 す る こ と を考 えて い る。 こ の よ う な 回転 姿 勢 の 表現 方 法 をSimple
Rotation(単
純 回 転)と
呼ぶ。
λABは 座 標 系 A と組 み 合 わ せ て も,座 標 系 B と組 み 合 わせ て も 同 じ代 数 ベ ク トル λABに な る。 こ の λABを λABの 代 わ りに用 い て も よ く,そ の 方 が 他 の 回転 姿 勢 表 現 との 関係 を表 す 上 で 便 利 で あ る。 λABの 三 成 分 を,今 後,次
図7.2
座 標 系 のSimple
Rotation(単
の よ う にlAB,
純 回 転)
(注)特 定 の軸 ま わ りの 回転 角 を表 す 単 位 は,「 度」 か 「 ラ ジ ア ン」 が 使 わ れ る 。度 は数 字 の 右 肩 に ゜を付 け て 表 す 。 ラ ジ ア ン は半 径 と 円周 に沿 っ た長 さ の割 合 で あ るか ら無 名 数 で,通 常, ラ ジア ンを付 け ず に用 い る。 た とえ ば,360゜=2π
とな る(π=3.14…)。
mAB,nABと
表 す こ とが あ る 。
(7.1)
λABは 方 向 を 表 す だ け で あ る か ら単 位 長 さ と して 差 し支 え な く,λABに は 次 の よ う な 条 件 を付 け る こ と にす る 。
(7.2) Simple か し,こ
Rotation(単
純 回 転)は
回転 姿 勢 表 現 の 最 も基 本 的 な 概 念 で あ る。 し
の ま ま で は 二 つ の 回 転 の 合 成 が ど の よ う に な る か,ま
た,λABと
φABの
時 間 微 分 が 角 速 度 Ω'ABと ど の よ う に 関 係 す る か を 簡 潔 に 把 握 す る こ と が で き な い 。 こ の 表 現 方 法 は,別 の 表 現 方 法 の 基 礎 に な っ て い る と 考 え る の が 妥 当 で あ る 。
Quiz と し,次
7.1座 い で,座
標 系 O を そ の Z 軸 ま わ り に90゜ 回 転 し て,座
標系 A にな った
標 系 A を そ の X 軸 ま わ り に90゜ 回 転 し て,座
標系 B にな った
と す る(図7.3)。
座 標 系 O か ら 見 た 座 標 系 B の 回 転 姿 勢 を 考 え,λOBは
う な 回 転 軸 で,回
転 角 φOBは い く つ だ ろ う か 。 さ ら に,座
わ り に90゜ 回 転 し て,座
図7.3
Quiz
7.2
標 系 C に な っ た と す る 。λOCと
Z軸 ま わ り に90゜ 回 転 し,次
7.2[Quiz
い で,X
どの よ
標 系 B を そ の Z軸 ま
φOCは ど う で あ ろ う か 。
7.1]と 同 じ状 況 で,λOBと
軸 ま わ り に90゜ 回 転 し た 座 標 系
λOCは どの よ う に な る だ ろ うか 。
回 転行 列
座 標 変 換 行 列 は 二 つ の 座 標 系 間 の 関係 で あ るか ら,回 転 姿 勢 表現 の 一 つ と考 え る こ とが で き る。 そ こで,CABを
座 標 系 A か ら見 た座 標 系 B の 回転 姿 勢 表 現 と
考 え,回
転 行 列 と 呼 ぶ こ と に す る 。 回 転 行 列 と い う 呼 び 名 を 用 い て も,式(6.14)
∼(6 .16)の 基 本 的 性 質 が 成 り 立 つ こ と に 変 り は な い 。Simple
Rotationの
表現 か
ら 回 転 行 列 を作 る 式 は 次 の 通 り で あ る 。
(7.3)
(7.4)
この 関 係 の 導 出 は付 録B.1節
に あ る。
回 転 行 列 は座 標 変 換 行 列 で も あ り,両 方 の役 割 を持 ち なが ら,様 々 な 関 係 の 表 現 に不 可 欠 で,重
要 な 存 在 で あ る。 運 動 方 程 式 の 導 出 に も頻 繁 に 現 れ る。 しか
し,九 つ の ス カ ラ ー 成 分 は 3 自 由度(自
由 度 につ い て は 第13章
参 照)の
回転姿
勢 を表 現 す る た め に は多 す ぎ る た め,回 転 姿 勢 の 基 本 デ ー タ と して は不 適 当 で あ る 。 む しろ,他 の 回 転 姿 勢 表 現 の 中継 的 な役 割 を 果 た し た り,回 転 姿 勢 が 関 わ る 様 々 な 関係 の表 現 に 用 い られ る。
Quiz 7.3[Quiz
7.3
7.1]と 同 じ状 況 で,COBとCOCは
どの よ う に な る だ ろ うか 。
オ イ ラー角
座 標 系 A を そ の Z 軸 まわ りに θ1回転 して 座 標 系B1に 標 系B1を
そ の X 軸 ま わ り に θ2回転 して 座 標 系B2と
な る とす る 。 次 に,座
し,最 後 に,座 標 系B2を
そ の Z軸 まわ りに θ3回転 して 座 標 系 B に な る とす る 。 この と き,θ1,θ2,θ3は 座 標 系 A か ら見 た座 標 系 B の 回転 姿 勢 を 表 現 す る 変 数 に な っ て い る。 す な わ ち, θ1,θ2,θ3を 任 意 に与 え た と き一 つ の 回転 姿 勢 が 定 ま り,ま た,任 意 の 回転 姿 勢 に対 して θ1,θ2,θ3を 定 め る こ とが で き る。 θ1,θ2,θ3を3×1列
行 列 に ま とめ て 次 の よ うに 表 す こ とにす る 。
(7.5)
こ の 三 つ の 角 を 狭 義 の オ イ ラ ー 角 と 呼 ぶ 。 三 つ の 角 は,順
に,ZXZ軸
の まわ り
に 回 し て い る 。 座 標 系 B を 座 標 系 A の 姿 勢 か ら 順 に ま わ し て 行 く と 考 え れ ば, こ れ ら の 回 転 軸 は 座 標 系Bの 角 をZ'X'Z'軸
座 標 軸 で あ る 。 そ の 意 味 を込 め て 狭 義 の オ イ ラ ー
ま わ りの 回 転 と表 現 し,OZ'X'Z'ABと 表 す こ と に す る 。
座 標 系 A か ら 見 た 座 標 系B1の (0,0,1),φ
回 転 行 列CAB1は,式(7.4)に
を θ1と す れ ば よ く,次
お い て(l,m,n)を
の よ う に な る。
(7.6)
c1,s1はcosθ1,sinθ1を
略 記 し た も の で あ り,以
下 も同 様 の 省 略 形 を用 い る。
ま た,Z
軸 ま わ り の 回 転 に 対 応 し た 回 転 行 列 を 回 転 角 θ1の 関 数 と 見 な し て
CZ(θ1)と
表 す こ と に す る 。 続 い て,座
CB1B2,座
標 系B2か
標 系B1か
ら 見 た 座 標 系B2の
ら見 た 座 標 系 B の 回 転 行 列CB2Bも
回転 行 列
同 様 に 考 え て,次
の よう
に書 くこ とが で きる 。
(7.7)
(7.8)
式(7.7)で 同 様 に,Y
も,X
軸 ま わ り の 回 転 に対 応 し た 回 転 行 列 を θ2の 関 数CX(θ2)と
軸 ま わ り の 回 転 に 対 応 し た 回 転 行 列 を θ の 関 数 と し てCY(θ)と
こ と に し て お く と,こ
こ で は 用 い な い が,便
した 。 表す
利 で あ る。
(7.9)
式(7.6)∼(7.8)か
ら,座
標 系 A か ら 見 た 座 標 系 B の 回 転 行 列CABを
作 る こ とが
で きる 。
(7.10)
これ は,狭 義 の オ イ ラ ー角 か ら回 転 行 列 を作 る式 で あ る。 なお,こ 段 階 で,式(6.16)の
の式の最初 の
関係 が 用 い ら れ て い る。
狭 義 の オ イ ラー 角 の 回 転 軸 はZ'X'Z'軸
だ が,X'Y'Z'軸,あ
る い は,Z'Y'X'軸
な ど と して も回 転 姿 勢 を表 現 で き る。 また,狭 義 の オ イ ラ ー角 で は 回 転 の対 象 と な る座 標 系(OABの 座 標 系(OABの
場 合 は座 標 系 B)の 座 標 軸 を選 択 した が,回 転 の 規 準 とな る
場 合 は 座 標 系 A)の 座 標 軸 を 回 転 軸 と し て,ZXZ軸
な ど とす る
こ と も可 能 で あ る。 こ の よ う に,回 転 の た め の座 標 軸 の 選 択 に は い ろい ろ な 方 法 が あ るが,そ
れ らを ま とめ て 広 義 の オ イ ラ ー 角 と呼 ぶ こ とにす る。 同 じ軸 を続 け
て選 ぶ よ うな 無 意 味 な選 択 は 避 け な け れ ば な らな い が,三 軸 の 選 択 の 仕 方 を明 確 に 定 め れ ば よ く,そ れ に応 じて,回 転 行 列CABも る。 座 標 系 A のXYZ軸
を 回 転 軸 とす る 場 合,こ
式(7.10)と
は異 な った形 に な
の オ イ ラー 角 をO〓
と書 け ば
明確 で あ る 。 オ イ ラ ー 角 は座 標 軸 まわ りの 回転 の 組 み 合 わ せ とい え る が,座 標 軸 の 指 定 と と もに 回転 順 序 の 設 定 が 明確 に な っ て い る こ と を再確 認 して お き たい 。 順 序 の 指 定 が な い 座 標 軸 ま わ りの 回 転 角 は 回 転 姿 勢 表 現 に は な ら な い 。 た と え ば,Z',X' 軸 ま わ りに 順 に90゜ず つ 回転 した 場 合(図7.3)と,X',Z'軸 ず つ 回転 した 場 合(図7.4)と
ま わ りに順 に90゜
で は,結 果 の姿 勢 は 全 く異 な った もの に な る 。
オ イ ラー 角 は,3 次 元 回転 姿 勢 の代 表 的 な 表 現 方 法 で あ り,伝 統 的 に最 も頻 繁 に 用 い られ て きた 。 3自 由 度 の 回 転 姿 勢 は 三 つ の変 数 で 表 す こ とが 望 ま し く,オ イ ラ ー角 は そ う な っ て い る。 しか し,オ イ ラ ー 角 に よ る回 転 行 列 に は,多
くの 三
角 関 数 が 含 まれ て い て 複 雑 で あ り,後 述 す る よ う に,オ イ ラー 角 の 時 間微 分 と角 速 度 と の 関 係 に も複 雑 な係 数 行 列 を必 要 とす る。 さ らに,角 速 度 か らオ イ ラ ー 角 の 時 間微 分 を求 め る 関 係 に,ゼ ロ 割 が 生 じる特 異 姿 勢 が あ り,そ の 近 傍 で も数値 誤 差 が 大 き くな る 。 これ らが オ イ ラー 角 の 弱 点 で あ る 。
図7.4
Quiz
X 軸 ま わ り に90゜ 回 転 し,次
7.4[Quiz
7.1]と
い で,Z
同 じ 状 況 で,狭
軸 ま わ り に90゜ 回 転 した 座 標 系
義 の オ イ ラ ー 角OZ'X'Z'OBとOZ'X'Z'OCは
どの よ うに な る か 。 Quiz
7.5図7.4の
ま た,こ Quiz
状 況 で,狭
義 の オ イ ラ ー 角OZ'X'Z'OBは ど の よ う に な る か 。
の 図 に 沿 っ て 広 義 の オ イ ラ ー 角 の 一 例O〓 7.6式(7.10)は,狭
を説 明せ よ。
義 の オ イ ラ ー 角 か ら回 転 行 列 を求 め る式 で あ る。
逆 に,回 転 行 列 が 与 え ら れ て い る と き,狭 義 の オ イ ラ ー 角 を 求 め る 手 順 を 考 え よ 。 Quiz
7.7式(7.6)∼(7.9)で
与 え ら れ た 関 数CX(θ),CY(θ),CZ(θ)を
θで
微 分 す る と,そ
れ ぞ れ 次 の よ う に な る 。 確 認 せ よ 。 な お,DX,DY,DZは,9.2
節 の 式(9.11)ま
た は,付
録 A の 式(A1.16)∼(A1.18)に
与 え ら れ て い る3×1列
行 列 で あ る。
(7.11) (7.12) (7.13) Quiz 7.8広
義 の オ イ ラ ー 角O〓
に 対 応 す る 回転 行 列COAは
ど の よ うに
なるか。
7.4
オ イ ラー パ ラ メー タ
四 つ の ス カ ラ ー か らな るオ イ ラ ー パ ラ メ ー タ は座 標 系 A か ら見 た 座 標 系 B の 回転 姿 勢 を表 現 す る 方 法 の ひ とつ で あ る 。EABは
オ イ ラ ーパ ラ メ ー タ ε0AB,ε1AB,
ε2AB,ε3ABを
成 分 と す る4×1列
行 列 で, Simple
RotationのlAB,mAB,nABと
φAB
を用 い て次 の よ うに 定 義 す る こ とが で き る。
(7.14)
ε1,ε2,ε3を
ま と め て ε=[ε1ε2ε3]Tと
表 せ ば,次
の簡 潔 な表 現 に な る。
(7.15)
オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ は 四 つ の 実 数 の組 で あ るが,す
べ て が 独 立 で は な く,二 乗 和
が 常 に 1に 等 しい。
(7.16) ま た,EABと-EABは
同 じ回転 姿 勢 を表 して い る 。
次 の 式 は オ イ ラ ー パ ラ メ ー タEABか
ら 回 転 行 列CABを
作 る と きに使 わ れ る。
(7.17)
(7.18)
式(7.17)は,式(7.3)に,三
角 関数 の半 角 の 公 式,オ
イ ラー パ ラ メー タの 定 義 式,
二 乗 和 が 1に な る 関 係 を用 い る と導 く こ とが で き る(読 者 は 自 ら導 い て み よ)。 こ の 式 に は 三 角 関数 は 現 れ て こ な い 。 す べ て の 成 分 は オ イ ラー パ ラ メ ー タの 二 次 式 に な っ て い て,オ
イ ラー 角 の場 合 に比 べ,簡
単で ある。
オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ は,3 自 由 度 の 回 転 姿 勢 に 四つ の ス カ ラー を用 い る 点 が 弱 点 で あ る。 し か し,関 係 式 に は 三 角 関 数 な どが な くて 比 較 的 簡 単 で あ り,さ ら に,特 異 姿 勢 が な い 。 宇 宙 機 械,サ
ッカ ー ボ ー ル,体 操 競 技 者 な どの よ う に,あ
ら ゆ る 回 転 姿 勢 が 現 れ る 可 能 性 が あ る 場 合,あ う に,ど
る い は,汎
用 プ ロ グ ラ ム な どの よ
の よ う な 回 転 姿 勢 で 使 わ れ る か 予 測 で き な い 場 合 に は,特
る 。 ま た,車
に,便
利であ
両 や ロ ボ ッ トの モ デ ル 化 に も 頻 繁 に 用 い ら れ る 。 第 9章 に コ マ の シ
ミ ュ レ ー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム の 説 明 が あ り,そ
こ に は,オ
イ ラ ー角 を用 い る場 合 と
オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ を 用 い る 場 合 の 両 方 が 出 て く る 。 ま た,四 い る 弱 点 に 対 し,そ
つ の ス カ ラ ー を用
れ を カバ ー す る 方 法 の 説 明 もあ る 。
オ イ ラ ーパ ラ メ ー タ の成 分 の 幾 何 学 的 意 味 を考 え る必 要 は な い 。 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ は 抽 象 的 で わ か り に く い が,上
記 の 長 所 が あ る の で よ く使 わ れ る 。 ま ず 使
っ て 慣 れ て み る こ と か ら 始 め る 学 び 方 も 一 つ の 方 法 で あ る 。 な お,付 複 素 数 を 用 い た 回 転 行 列 の 説 明 が あ り,オ
録 B には
イ ラ ーパ ラ メ ー タ と 関 連 して い て興 味
深 い。
Quiz
7.9EABと-EABが
同 じ 回 転 姿 勢 を 表 す 理 由 を 説 明 せ よ 。Simple
Rotationの{λAB,φAB}と{-λAB,-φAB}も
同 じ 回 転 姿 勢 を 表 す が,オ
イ ラ ーパ
ラ メ ー タの 場 合 の 理 由 は 同様 と はい え な い。 Quiz
7.10CABが
Quiz 7.11[Quiz
単 位 行 列 の と き,EABは 7.1]と
同 じ状 況 で,オ
ど う な るか 。 イ ラ ー パ ラ メ ー タEOBとEOCは
ど
うなるか。 uiz 7.12図7.4の Q Quiz 7.13式(7.18)は,オ る 。 逆 に,回 考 え よ。
状 況 で,オ
イ ラ ー パ ラ メ ー タEOBは
どうなるか。
イ ラ ー パ ラ メ ー タ か ら回 転 行 列 を 求 め る式 で あ
転 行 列 が 与 え ら れ て い る と き,オ
イ ラー パ ラ メ ー タ を求 め る手 順 を
第8章
位 置,角 速 度,回 転姿 勢, 速 度 の三 者 の関 係
空 間 中 を 運 動 す る 剛 体A,B,Cを す る 。 ま た,剛 8.1)。
体A,B,C,そ
考 え,そ
こ れ ら を 利 用 し て,本
れ ぞ れ に 座 標 系A,B,Cを
れ ぞ れ の 上 に,点P,Q,Rが 章 で は,位
者 の 関 係 に つ い て 述 べ る 。 こ れ ら は,剛
置,角
速 度,回
固定
あ る と す る(図 転 姿 勢,速
体A,B,C,あ
度 に 関す る三
る い は,点P,Q,R
の三 者 の 間 の 相 対 的 関係 で あ る。 慣 性 空 間 O 上 に 座 標 系 O が 固 定 さ れ て い て,そ の 関 係 はO,A,B,あ た だ し,こ
る い は,S,P,Qの
の 上 の 点 S を 考 え れ ば,三
関 係 と し て 説 明 す る こ と もで き る 。
の 章 に 出 て く る 関 係 も 運 動 学 の 関 係 で あ り,6.2節
が 当 て は ま る 。 こ の 解 説 を 理 解 し て い れ ば,ど
図8.1
者
の末尾三行 の解説
ち らで 説 明 して も 同 じで あ る。
位 置 の 三者 の 関係
8.1 位 置 の 三 者 の 関 係 幾 何 ベ ク トル 表 現 を用 い て,位
置 に関 す る三 者 の 関 係 は次 の よ う に書 く こ とが
で きる 。
(8.1) こ れ は,空 間 に あ る三 つ の 点 を矢 印(幾 何 ベ ク トル)で 結 び,矢 印(幾
何ベ ク ト
ル)の 和 を定 義 す る馴 染 み深 い 関 係 で あ る(図8 点 P と点 Q は そ れ ぞ れ 剛体A,B上 ぞ れ,剛 体 A か ら見 た 点 R の 位 置,同
.1)。
の 点 と した の で,は,そ
れ
じ く剛 体 A か ら見 た 点 Q の位 置 ,剛 体
B か ら見 た 点 R の位 置 で あ る。 こ の 三 者 の 関 係 を 代 数 ベ ク トル で 表 す と次 の よ うになる。
(8.2) ダ ッ シ ュ の 付 か ない 代 数 ベ ク トル を用 い た が,rPRとrPQは お り,rQRは
座 標系 A で表 されて
座 標 系 B で 表 さ れ て い る。 そ の た め座 標 変 換 行 列CABを
用 い て,す
べ て の 項 を座 標 系 A で 表 さ れ た もの に して い る。 ダ ッ シ ュ の付 く代 数 ベ ク トル を用 い る と,上 記 の 三 者 の 関係 は 次 の よ う に な る 。
(8.3) r'PRとr'QRは
座 標 系 C で 表 さ れ て お り,r'PQは
標 変 換 行 列CTBCが 式(8.1)か
座 標 系 B で 表 さ れ て い る の で ,座
用 い られ て い る。
ら(8.2),(8.3)へ
の 変 換,あ
る い は,そ
の 逆 は,付
録 A の方法 によ
っ て 数 学 的 な操 作 と して 行 う こ とが で き る。
8.2 角 速 度 の 三 者 の 関 係 角 速度 の三 者の 関係 を幾何 ベク トルで表現す ると,位置 の場合 と同型 な式 になる。 (8.4) ΩAC,ΩABは 剛 体 A か ら見 た 剛 体C,Bの
角 速 度 で あ り,ΩBCは 剛 体 B か ら見 た
剛 体 C の 角 速 度 で あ る。 位 置 の 場 合 は,図8.1に るが,角
示 された馴染 み深 い関係 であ
速 度 の場 合 は 明 らか とは い え な い 。 この 関係 は,次 節 に述 べ る 回 転 行 列
の 三 者 の 関 係 を時 間微 分 して求 め る こ とが で き る(付 録B8節 式(8.4)を,ダ
参 照)。
ッ シ ュ付 きの代 数 ベ ク トル で 表 現 す る と次 の よ うに な る。
(8.5) Ω'ACと Ω'BCは座 標 系 C で 表 さ れ て お り,ΩABは
座 標 系 B で 表 され て い る。 そ の
た め 座 標 変 換 行 列CTBCが 使 わ れ て い る。 こ れ は,CCBと 添 え 字 をABC順
書 い て も 同 じで あ るが,
の よ う に表 した 。
に並 べ た ほ うが 整 理 さ れ た 表 現 に な っ て い るだ ろ う と考 え て こ
8.3 回転姿勢の三者の関係 まず,回
転 行 列 の 三 者 の 関 係 は 次 の 通 りで あ る 。
(8.6)
CAC=CABCBC
こ れ は,座 標 変 換 行 列 の 基 本 的 な性 質 と して 説 明 した 式(6.16)と 同 じで あ る。 オ イ ラ ー パ ラ メー タの 三 者 の 関係 は次 の よ うに 書 くこ とが で き る。
(8.7)
EAC=ZABEBC ZABはEABの
四 つ の 成 分 か ら作 ら れ る4×4行
列 である。
(8.8)
な お,こ
のZABは,次
の よ う にEABとSABか
ら構 成 さ れ て い る とす る こ と が で
き る。
(8.9) このSABは,次
の よ う な3×4行
列 で あ る が,オ
イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 時 間微 分 と
角 速 度 との 関 係 を記 述 す る と き に 利 用 す る こ とに な る。
(8.10)
式(8.6)は,付
録 A の 式(A1.25)を
導 く の は 簡 単 で は な い 。 付 録B4, る 特 定 な 回 転 で 確 認 し た 後,ま
Quiz 8.1
図7.4の
を 求 め て み よ。
用 い れ ば 簡 単 に 示 せ る 。 式(8.7)の B5, B7節
ず,使
に 説 明 が あ る が,結
関係 を
果 を判定 で き
っ て み る こ と か ら始 め て も よ い 。
状 況 で,EOAとEABを
作 り,三
者 の 関 係 を 利 用 し てEOB
8.4 速度の三者の関係 速 度 の 三 者 の 関係 は,代 数 ベ ク トル表 現 で は 次 の よ う にな る。
(8.11) こ こで は,並 進 運 動 に ダ ッシ ュ の付 か な い代 数 ベ ク トル を用 い て い る。 幾 何 ベ ク トル 表 現 で は 次 の とお りで あ る 。
(8.12) 式(8.11)は 式(8.2)の 時 間微 分 で あ る 。 た だ し,そ の 時 間微 分 を 求 め る た め に は座 標 変 換 行 列 の時 間微 分 が 必 要 で あ り,そ れ は 次 章 で与 え られ る。 式(8.12)も 式(8.1)の 時 間微 分 で あ るが,直 接 時 間微 分 す る こ と を考 え る と,時 間 微 分 の オ ブ ザ ー バ ー が 位 置 の オ ブ ザ ー バ ー と一致 し な い場 合 の 処 置 が 必 要 に な り,本 書 で は 説 明 し て い な い(注)。た だ し,式(8.12)と
式(8.11)は,一
方 か ら他 方 を 説 明 す
る こ と は 難 し くは な く,付 録 A の 方 法 に よ れ ば よ い し,意 味 の 上 か ら も明 らか で ある。 式(8.12)の 速 度 の 三 者 の 関 係 は,式(8.1)の い な い こ と に注 意 を要 す る 。 速 度 の場 合,右
Quiz8.2
剛 体 の重 心(代 表 点)速
位 置 の 三 者 の 関 係 と 同型 に な っ て 辺 第 三項 が 必 要 で あ る。
度 と角 速 度 を ま とめ て 三 者 の 関 係 を書 く
と次 の よ う に な る。
(8.13) この 表 現 で は,重 心(代
表 点)速 度 に ダ ッ シ ュの 付 か ない 記 号 を用 い た が,ダ
ッ
シ ュ の 付 く記 号 を用 い る と,こ の 三 者 の 関 係 は ど の よ う に な る か を考 え る。 ま ず,V'ABと
Ω'ABを縦 に並 べ て 一 つ に ま と め た もの を斜 体 文 字 を用 い てV"ABと 表
す こ と にす る。
(8.14)
(注)逆
に,式(8.1)と
式(8.12)か
ら,時
間微 分 の オ ブザ ーバ ー が 位 置 の オ ブ ザ ーバ ー と一 致 し
ない 場 合 の対 処 方 法 を簡 単 に求 め る こ とが で きる。
並 進 運 動 と 回転 運 動 に 関 わ る 物 理 量 を一 つ の 変 数 に ま とめ る場 合,本 書 で は この V"ABよ う に斜 体 文 字 を用 い て い る。 さて,同
様 にV"ACとV"BCを 作 り,こ れ らの 変
数 で 三 者 の 関 係 を表 す と次 の よ う な形 に な る。
(8.15) こ の よ う な 形 に な る こ と を 示 し,ГBCを と ГACを 作 る と,そ
求 め よ 。 ま た,ГBCと
同 じ構 成 で,ГAB
れ らの 間 に も 次 の 三 者 の 関 係 が 成 立 す る 。
(8.16)
ГAC=ГABГBC
こ の こ と も説 明 せ よ。 な お,式(8.14)のV"ABの
よ う な 変 数 も 3次 元 剛 体 の 運 動 方 程 式 表 現 に 用 い ら れ
る こ と が あ り,式(8.15),(8.16)の る 。 た と え ば,V"OAを
用 い,適
関 係 と と も に動 力 学 解 析 の 便 利 な 道 具 に な 切 に 他 の 変 数 も ま と め る と,式(5.1)と(5.2)を
つ の 式 に す る こ と が で き る(12.2節[Quiz
12 .2]参
照)。
一
第9章
3次 元回転姿勢の時 間微分 と 角速度 の関係
回転 姿 勢 は い くつ か の ス カ ラー の組 で表 され る。 そ れ らの 時 間微 分 は 回転 姿勢 の 時 間 的 な 変 化 で あ るか ら,角 速 度 と密 接 に 関 係 して い る は ず で あ る 。 本 章 で は,回 転 行 列CAB,狭
義 の オ イ ラ ー角 〓,オ
イ ラ ー パ ラ メ ー タEABの
三つ の
回転 姿 勢 表 現 に つ い て,そ の 時 間微 分 と角 速 度 Ω'ABの関 係 を示 す 。 回 転 姿 勢 の 時 間微 分 と角 速 度 の 関 係 の 基 本 は,剛 体 B に 固 定 し た幾 何 ベ ク ト ル 〓 の 時 間 微 分 と角 速 度 〓ABの 関 係 に あ る 。 〓 の 時 間微 分 は,こ
の 場 合,剛 体
A か ら見 た 時 間微 分 で,角 速 度 との 関 係 は 次 の よ う に書 け る。
(9.1) この 式 の 簡 単 な説 明 が 付 録A2節 の 各 座 標 軸 〓(i=X,Y,Z)も 式 が 成 り立 つ の で,そ
図9.1座
に あ る 。 そ して,剛 体 B に 固 定 され た座 標 系 B
剛 体 B に 固定 さ れ た 幾 何 ベ ク トル で あ り,同 様 の
れ を も とに 回 転 姿 勢 の 時 間微 分 を 考 え る こ とが で きる。
標 系(剛 体)A か ら見 た,剛 体 B上 に固定 され た 幾 何ベ ク トル 〓
9.1 回転行列 の時間微分と角速度の関係 回 転 行 列CABの
時 間 微 分 と角 速 度 Ω'ABの関 係 は 次 の 通 りで あ る。
(9.2) こ の 式 の 導 出 は 付 録A2.3項 た Ω'ABを 用 い た が,ダ
に 示 す 。 こ こ で は 実 用 性 を 考 え て ,ダ
ッ シ ュ の 付 か な い ΩABを 用 い る と,次
ッ シュ の 付 い
の よ う な類 似 の 関
係 に な るの で注 意 を 要 す る。
(9.3) 回 転 を表 す 量 は ダ ッ シ ュ の付 く記 号 を用 い る こ とが 多 く,こ の 式 が 必 要 に な る場 合 は 多 くは ない 。 まず は,式(9.2)を
覚 え る ほ うが よい 。
9.2 オイラー角の時間微分と角速度の関係 オ イ ラ ー 角 の 考 え 方 は,座 標 系 A ⇒ 座 標 系B1⇒ 座 標 系B2⇒ 座 標 系 B と,三 つ の 回転 を順 次 行 う とい う も の で あ る 。 角 速 度 も三 つ の角 速 度 の 合 成 と考 え られ る。
(9.4) この 式 を,ダ
ッ シ ュ をつ け た 角 速 度 の 代 数 ベ ク トル表 現 を用 い て 書 き換 え る と次
の ようになる。
(9.5) こ こ まで は広 義 の オ イ ラ ー角 に も適用 で き る 関係 で あ る。 狭 義 の オ イ ラ ー 角 の 場 合,式(9.5)右 軸,Z
軸 ま わ り で,大
辺 の 三 つ の 角 速 度 は,そ
き さ は θ1,θ2,θ3で
あ る か ら,次
れ ぞ れ Z 軸,X
の よ う に書 く こ と が で
きる 。
(9.6)
(9.7)
(9.8)
従 っ て,式(9.5)は(7.7),(7.8)も
用 い て 次 の よ う に 表 現 し,計
算 す る こ とが で
き る。
(9.9)
こ れ は オ イ ラ ー 角 の 時 間 微 分 か ら 角 速 度 を 求 め る 式 で あ る が,逆 ら れ た と き θ1AB,θ2AB,θ3ABを
に,Ω'ABが
与 え
求 め る 式 は 次 の よ うに な る。
(9.10)
θ2が 0 ま た は πの と き,こ の 逆 行 列 は存 在 せ ず,そ
の よ う な 姿 勢 を特 異 姿 勢 と
呼 ぶ。 オ イ ラ ー角 を 用 い る と きは 特 異 姿 勢 に近 づ か な い 範 囲 で 使 用 しな け れ ば な らない。 広 義 の オ イ ラ ー 角 を用 い る と き,式(9.6)∼(9.10)は,選
択 した オ イ ラー 角 に
対 応 して 変 更 しな け れ ば な らな い 。 式(9.10)に 対 応 した 関 係 を作 る と,選 択 した オ イ ラー 角 の 特 異 姿 勢 が わ か る。 広 義 の オ イ ラー 角 で 回転 軸 を選 ぶ と き に は 回転 姿 勢 の 変 動 範 囲 に特 異 姿 勢 が 含 まれ な い よ う な選 択 を す る こ とが 重 要 で あ る。 な お,式(9.6),(9.7)で つ 。 改 め て,ま
与 え たDz,DxはDYと
と もに,表 現 の 簡 単 化 に役 立
とめ て 書 い て お く。
(9.11)
Quiz 9.1
広義 の オ イラー角 〓
は ど の よ う に な る か 。 ま た,Ω'0Aか
の 時 間 微 分 か ら 角 速 度 Ω'OAを 求 め る 式
ら 〓
を 求 め る式 は どの よ う に な るか 。
9.3 オイラーパ ラメータの時間微分と角速度の関係 角 速 度 か ら オ イ ラー パ ラ メ ー タの 時 間微 分 を求 め る 式 は次 の とお りで あ る。
(9.12) SABは
式(8.10)に
与 え ら れ て い る 。 式(9.12)を
成 分 レベ ル ま で 見 え る よ う に書 く
と 次 の と お りで あ る 。
(9.13)
この 式 とは逆 に,オ
イ ラー パ ラ メ ー タの 時 間微 分 か ら角 速 度 を求 め る 式 は次 の と
お りで あ る。
(9.14) 式(9.12),ま
た は,(9.13)と,式(9.14)は,式(9.10)と(9.9)に
行 列 が 簡 単 で あ る 。 さ ら に,式(9.10)に
比 べ て,係
数
あ る よ う な 特 異 姿 勢 も な い 。 し か し,3
自 由 度 の 回 転 姿 勢 を 表 す た め に 四 つ の パ ラ メ ー タ を用 い な け れ ば な ら な い 点 が オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 弱 点 で あ る 。EABも
次 の よ う な 関係 を満 た す 必 要 が あ る。
(9.15) 式(9.15)は (9.14)を B9, B10節
式(7.16)を
導 く の は,多
時 間 微 分 し て 得 ら れ る 。 し か し,式(9.12),ま 少,手
た は,
間 が か か る 。 い く つ か の 説 明 方 法 が あ り,付
が 参 考 に な る で あ ろ う 。 こ れ ら も,結
果 の判定 が で きる特 定 な回転
姿 勢 な ど で 確 認 し,ま
ず 使 っ て み る こ と か ら 始 め て も よ い 。 た だ し,式(9.12)か
ら(9.14)を
の 逆 は,そ
Quiz9.2
導 くか,そ
第11章11.1節
録
れ ほ ど 難 し い こ と で は な い(読 者 は 試 し て み よ)。
を 読 み, Quiz11.2∼11.6に
答 え よ。
9.4 順動力学解析の事例:近 似 ボールジ ョイ ン トで支点を近似的に 拘束されたコマ(オ イラー角の利用) ● 計算モデル 本 書 の 主 目的 で あ る運 動 方 程 式 の 立 て 方 の 鍵 は,系
に含 まれ る拘 束 の処 理 方 法
に あ る 。 ボ ー ル ジ ョイ ン トで 支 点 を 拘 束 され た コマ(自
由 度 3)は,3 次 元 拘 束
剛 体 系 の 運 動 方 程 式 を立 て る 方 法 を説 明 す る た め に便 利 な事 例 で,第
Ⅳ部 に は そ
の 運 動 方 程 式 や シ ミュ レー シ ョ ン プ ロ グ ラ ム の 説 明 が あ る。 こ れ に対 し本 章(本 節 以 降 の 三 節)で は,ほ な わ ち,本
ぼ 同 様 な運 動 を す る コ マ を,自 由 な 剛 体 で 実 現 す る。 す
章 で 述 べ る コマ(剛
自 由度 に つ い て は第13章 図9.2と
図9.3は
体)に
は 拘 束 は な く,自 由 度 は 6で あ る(拘 束,
参 照)。
ボ ー ル ジ ョ イ ン トで 支 点 を拘 束 され た コ マ の 説 明 図 で,コ マ
の 支 点 P は 原 点Oに
一 致 させ て あ る が,本
章 の モ デ ル で は,支 点 P を 原 点O に
拘 束 しな い 。 拘 束 に代 わ っ て 堅 い バ ネが 二 点 間 に働 い て い て,二 点 が 一 致 して い な い と きは 近 づ け る方 向 にバネ力 が 作 用 す る もの とす る。 バ ネ は 十 分 堅 く,ダ ン ピ ング も効 か せ て,振
動 的 に な ら な い よ う にす れ ば,点
P は 原 点O か ら遠 くに
離 れ る こ と は で きず,近 似 的 に ボ ー ル ジ ョイ ン トに な る。 拘 束 を この よ う に近 似 的 に扱 う こ と で,拘 束 を含 む 運 動 方 程 式 を立 て な くて も実 用 的 な 計 算 を行 うこ と は 可 能 で あ り,実 際 問 題 に も適 用 で きる 。 た だ し,計 算 時 間 の 面 で 不 利 に な る場
図9.2
慣 性 座標 系 O の 原点 にボ ー ル ジ ョイ ン トで支 点 を拘 束 され た コマ
図9.3
コマ の座 標 系 か ら見 た 支 点 Pの 位 置
合 があ る。 こ の コ マ A の 運 動 方 程 式 は,自 り,一
般 化 速 度 はVOAと
イ ラ ー 角 〓(以
あ
Ω'OAと す る こ と が で き る 。 一 般 化 座 標 に は,ROAと
下,〓
速 度 に つ い て は 第13章
由 な 剛 体 の 運 動 方 程 式(5.1)と(5.2)で
と 略 記)を 参 照)。
軸 の 順 に 回 転 角 θ1,θ2,θ3を
用 い る こ と に す る(一
こ の オ イ ラ ー 角 は,座
標 系 A の Y 軸,Z
与 え る も の で,式(9.9),(9.10)に
作 り な お す 必 要 が あ る 。 コ マ の 角 速 度 Ω'OAは,〓ABの
般 化 座 標,一
オ 般化 軸,Y
相 当 す る 関係 を
三 成 分 θ1,θ2,θ3に
よっ
て 次 の よ う に表 され る。
(9.16) (9.17)
(9.18) 式(9.16)と
は 逆 に,Ω'OAか
ら 〓OAを
求 め る 計 算 は次 の 式 に よ る。
(9.19) こ の オ イ ラ ー 角 の 場 合,sinθ2=0が 状 態 は,コ
マ の 回 転 軸(コ
特 異 姿 勢 に な る こ と が 分 か る。 眠 り ゴ マ の
マ に 固 定 し た座 標 系 の Y 軸)が
鉛 直 軸(慣
性 座標 系
の Y 軸)と
一 致 して 特 異 姿 勢 に な る た め,こ の オ イ ラ ー 角 を用 い た モ デ ル で は
計 算 で き な い 。 こ こ で は 歳 差 運 動 な ど を考 え て い て,運 動 中,コ マ の 回転 軸 が傾 い て い る状 況 を想 定 して い る。 ROAとVOAの
関係 は,回 転 運 動 の 場 合 に較 べ て 単 純 で あ る。
(9.20) こ の 式 と 式(9.19)の
二 つ が,運
動 方 程 式(5.1)と(5.2)に
の12個
態 変 数 Y は, あ る 。 微 分 方 程 式 の 右 辺 は,こ る 計 算 で あ る が,Ron,〓OAに VOA,Ω'OAに い て,運
随 伴 さ せ る 式 で あ り,状
の ス カラー を縦 に並べ た列 行列 で
の Y と 時 間 tか ら状 態 変 数 の 時 間 微 分 Y を 求 め つ い て は 随 伴 させ る 式 を そ の ま ま用 い れ ば よ い。
つ い て は,FOAとN'OAが
求 ま っ て い れ ば,事
前 に〓
を計 算 して お
動 方 程 式 か ら 求 め る こ と が で き る 。 結 局,FosとN'OAを,ROA,〓OA,
VOA,Ω'OA,t
か ら計 算 す る手 順 が あ れ ば よい こ と に な る。
コ マ の 支 点 に 働 く 力fopは
次 の よ う に計 算 す る。
(9.21) バ ネ 力 と ダ ン ピ ン グ 力 は 異 方 性 を 考 え る 必 要 が な い の で,k1とC1は 十 分 で あ る 。 こ の 式 のropは
ス カラーで
次 の よ う に 求 め れ ば よ い。
(9.22) rAPは 支 点 の 位 置 を コ マ の座 標 系 で 表 し た 定 数 で あ る。 こ の 式 を時 間微 分 す る と,Vopを
求 め る式 に な る 。
(9.23) コマ が 徐 々 に運 動 エ ネ ル ギ ー を失 って 回転 数 を落 と して い く場 合 な ど を模 擬 す る た め に,支 点 P に お い て,角 速 度 に比 例 した 減 衰 力 を 与 え る こ と もで き る。
(9.24) 角 速 度 の 成 分 ご と に 滅 衰 力 を変 え る場 合 は,係 数 のc2を3×3対 対 角 成 分 を異 な っ た もの にす れ ば よ い 。付 録 のCD-ROMに プ ロ グ ラ ム で はc2を 対 角 行 列 と し,Ω'OAの Y 軸 成 分(コ
角 行 列 と して,
収 録 したMATLAB マ の ス ピ ン)に 対 す る
減 衰 とそ れ 以 外 の 成 分 に対 す る減 衰 を別 々 に 与 え られ る よ う に して あ るが,さ
ら
に,各 成 分 に 関 す る 非 線 形 な特 性 を プ ロ グ ラ ム す る こ と も難 しい こ と で は な い 。 た だ し,減 衰 係 数 や 摩 擦 の よ う な特 性 を実 際 に 則 して 的 確 に把 握 す る こ とは,あ ま り容 易 な こ とで は な い。 さて,fopとn'opが
定 ま れ ば,そ
れ を 重 心 位 置 に等 価
換 算 し,重 力 も考 慮 して,重 心 位 置 に働 く力FoAと き る(等 価 換 算 につ い て は 第12章
トル クN'OAに す る こ とが で
参 照)。
(9.25) (9.26) g は 重 力 の 加 速 度 で あ る 。 式(9.22),(9.23),(9.26)に は,オ
イ ラ ー 角 〓OAか
現 れ る 座 標 変 換 行 列COA
ら次 の よ う に作 る こ とが で きる 。
(9.27) こ の 式 の 右 辺 で 用 い た 二 つ の 関 数 は,式(7.6),(7.9)で 式(9.21)∼(9.27)を
与 え た もの で あ る。
整 理 す れ ば,ROA,〓OA,VOA,Ω'OAか
算 す る 手 順 に な る 。 こ の コ マ の 事 例 で は,Y
らFOAとN'OAを
計
の 計 算 手 順 に 時 間 tは 現 れ て こ な い
が,こ
の こ と は モ デ ル の 考 え方 の 中 に 時 間 依 存 性 を持 つ 関係 が 含 ま れ て い な い の
で,始
め か ら わ か っ て い た こ と で あ る 。。
● 計算プログラム 以 上 の 準 備 の 下 にMATLABの m,付
録 のCD-ROMに
(houbutsu_1.m)の
プ ロ グ ラ ム を書 くこ と が で き る(koma_120.
収 録)。 プ ロ グ ラ ム の 全 体 的 な構 成 は 質 点 の 放 物 運 動 場 合 と 同 じで あ る。 第 一段 階 で は,ア
デ ー タ入 力 が 複 雑 で あ るが,ア
ニ メ ー シ ョ ンの た め の
ニ メー シ ョ ン は 計 算 結 果 の 妥 当性 を確 認 した り,
バ グ 取 りな ど に 役 立 つ 。 しか し,そ の プ ロ グ ラ ミ ン グ や デ ー タ入 力 は 面 倒 で あ り,初 学 者 は 計 算 の 仕 方 と グ ラ フ出 力 を 中 心 に シ ミュ レ ー シ ョ ン技 術 を学 ん で, 慣 れ て か ら ア ニ メ ー シ ョ ンの 技 術 を習 得 して も よ い。 第 三 段 階 で 用 い る微 分 方程 式 の右 辺 を計 算 す る 関 数 はe_koma_120で,上 ラ ム さ れ て い る 。 ま た,そ
記 の計 算 手 順 は この 関 数 に プ ロ グ
こ で必 要 に な る い くつ か の 準 備 は 第 二段 階 で 行 わ れ て
い る。 第 四段 階 の グ ラ フ と ア ニ メ ー シ ョン出 力 を 準 備 す る段 階 で は,MATLABの
場
合 の 特 別 な 方 法 を用 い て い る。 グ ラ フ に 状 態 変 数 Y 以 外 の 変 数 を 出 力 し,ま た, ア ニ メ ー シ ョ ンに も Y 以 外 の 変 数 が 必 要 な た め で,そ 出 力 時 間 に 対 し て,再 MATLAB関
度,微
の た め に積 分 計 算 後 の 全
分 方 程 式右 辺 の計 算 を行 っ て い る。 この方 法 は
係 者 も一 つ の 方 法 と して認 め て い る よ うで あ る が,こ
の よ うな 方 法
を講 じな くて も済 む よ う なMATLAB自
体 の 改 善 が 望 ま しい と思 っ て い る。 Y
以 外 の変 数 が 全 出 力 時 間 に対 して 計 算 され た ら,グ ラ フ出 力 を 行 い,次
い で,ア
ニ メの た め の 静 止 画 作 りを行 う。 そ の 静 止 画 を全 時 間 にわ た っ て 連 続 的 に 表 示 し て,動 画 に な る 。 動 画 の 表 示 は計 算 機 の 処 理 速 度 に 依 存 す る た め,動 画 用 に圧 縮 され た フ ォ ー マ ッ トを 作 るMATLAB関
数 も準 備 さ れ て い るが,こ
て い ない 。 そ の た め,ア
ニ メ ー シ ョ ンが ス ムー ズ で な い 場 合 が あ る 。
ア ニ メー シ ョ ンは,秒
間10か
こ で は用 い
ら30コ マ 程 度 の速 さ で 各 時 問 の静 止 画 を連 続 的
に 表 示 して 作 られ る。 座 標 系 O か ら見 た 剛 体 A の 挙 動 の ア ニ メ ー シ ョ ン を作 る 場 合,計
算 結 果 か ら は各 時 間 のCOAとROAが
あ れ ば よい 。 剛体 A の形 状 は,座
標 系 A に 固 定 した 多 角 形 の 面 の 集 ま りで 与 え られ る。 まず,す
べ ての頂 点の位
置 を 与 え,次 に 面 を構 成 して い る 頂 点 の 組 をす べ て の 面 につ い て 与 え れ ば よい 。 座 標 系 A か ら見 た 頂 点 の 位 置 は 時 間 に対 して不 変 で あ るが,COAとROAを
用い
て,各 時 間 ご と に座 標 系 O か ら見 た 頂 点 を 計 算 し,そ の 時 間 の 静 止 画 を作 る。 MATLABに
は こ の 最 後 の段 階 の 静 止 画 を作 る 関 数 が あ り,そ れ を利 用 す る。 ユ
ー ザ ー が 準 備 す る の は,COAとROAの
ほ か,ま ず,座
標 系 A か ら見 た 頂 点 の 位
置 と面 な ど の形 状 情 報 で あ る。 こ れ に色 の 情 報 な どが あ っ て も よ い 。座 標 系 O か ら見 た形 状 情 報 もユ ー ザ ー が計 算 す る。 そ の ほ か に カ メ ラ が 映 像 を捕 ら え る範 囲 と方 向 な どの 情 報 が 必 要 に な る 。 コ マ の 場 合,座
標 系 A か ら見 た 形 状 は Y 軸 周 りの 回 転 体 で あ る か ら,Y 軸 上
の位 置 と そ の位 置 にお け る半 径 の組,そ
して 円周 の 分 割 数 を入 力 と して,座 標系
A 上 の頂 点 と面 の情 報 を作 り出 す よ うに す れ ば,形 状 入 力 が 容 易 に な る。 そ の よ うな 機 能 の 関 数(ANMYrev)を
作 成 し,用 い て い るの で,初 学 者 に は判 読 が 面
倒 な プ ロ グ ラ ム に な っ て い る。 Y 軸 上 の位 置 と半 径 の組,お
よ び,円 周 の分 割 数
は 第 一 段 階 で 与 え,座 標 系 A 上 の 頂 点 と面 の 情 報 は第 二 段 階 で 作 り出 して い る。 第一 段 階 で座 標 系 A 上 の 頂 点 と面 の 情 報 を直 接 与 え る よ うな 単 純 な事 例 は,19. 4節 の 三 重 剛 体 振 子(sanjufuriko _1.m)で あ る。 こ の 場 合 は,剛
体 は三つ で ある
が,形 状 は直 方 体 で 簡 単 で あ る。 ANMYrevの LAB関
ほ か に も,プ ロ グ ラ ム を簡 潔 に す る た め に,い
数 を作 っ て 使 用 し て い る。Cy,Czは
で あ り,TILDEは
式(7.6),(7.9)の
くつ か のMAT計 算 を行 う 関数
外 積 オ ペ レー タ ー を 作 用 させ た交 代 行 列 を出 力 す る 関 数 で あ
表9.1koma_120.mの
グ ラ フと アニ メ ー シ ョン出力
figure(1)∼figure(3)
時 間 に対 す るオ イ ラー 角 の各 成 分
figure(4)
鉛 直 上 方 か ら眺 め た重 心 の軌 跡(Z 成 分 に対 す る X 成 分)
figure(5)∼figure(7)
時 間 に対 す る重 心位 置(座 標 系 O)の 各 成 分
figure(8)
時 間 に対 す る支 点 Pの 原 点 O か らの距 離 の 二乗
figure(9)
アニ メー シ ョン
る。 こ れ らは,す べ て,同
じ M フ ァイ ル に ま とめ て 読 み や す く して あ る。
グ ラ フ 出 力 は 八 つ あ る(表9.1)。
こ の シ ミ ュ レー シ ョ ンで は,支 点 の 近 似 拘
束 に 用 い たバ ネ 定 数 と ダ ン ピ ング 定 数 に よっ て,拘 束 の 状 況(figure(8))が
ど
の よ うに 変 化 す る か に注 意 を払 う必 要 が あ る 。 ま た,堅 す ぎ るバ ネ 定 数 な どが計 算 時 間 に どの よ うに 影 響 す るか も注 目すべ きで あ る。 た だ し,計 算 時 間 を は か る 機 能 は,ま
だ,プ
ロ グ ラ ミ ン グ さ れ て い ない 。
3番 目の オ イ ラ ー角 θ3(figure(3),図9.6(c))は
時 間 と と もに ど ん ど ん 増加
して い る。 も し,長 時 間 の シ ミュ レー シ ョン を行 う よ う な と き には オ ーバ ー フ ロ ー に 注 意 す る必 要 が 出 て くるか も しれ な い 。 た とえ ば ,ハ ー ドウ ェ ア を含 む リ ア ル タイ ム シ ス テ ム で,長
時 間 の試 験 を行 う と して,モ デ ル の 中 の 回 転 体 が オ イ ラ
ー 角 で 表 さ れ て い る よ う な場 合 で あ る。 対 策 方 法 は い くつ か 考 え られ る が,オ ラ ー 角 の 代 わ りに オ イ ラー パ ラ メ ー タ を用 い れ ば この よ う な 心 配 は な くな る。
図9.4コ
マ の アニ メ ー シ ョン
図9.5水
平 面 に投 影 した コマ重 心 の 奇跡
イ
(a)
(b)
(c)
図9.6
オ イ ラ ー角 の 変化
9.5 順動力学解析の事例:近 似 ボールジ ョイン トで支点を近似的に 拘束されたコマ(オ イラーパラメータの利用) 前 節 で は,コ
マ の 回 転 姿 勢 を 表 す 一 般 化 座 標 と して,オ
い た 。 こ の オ イ ラ ー角 で は,眠
イラー角 〓
を用
りゴ マ の 状 態 が 特 異 姿 勢 に な っ て い る た め,そ の
よ う な姿 勢 を含 む シ ミュ レー シ ョ ンに は別 の オ イ ラー 角 を準 備 す る必 要 が あ る 。 さ らに,多 様 な 姿 勢 の 変 化 に対 応 す る た め に は複 数 の オ イ ラ ー 角 を切 り替 え なが ら計 算 す る こ と も考 え られ る が,煩 雑 で あ る。 こ れ に 対 し,オ イ ラ ーパ ラ メ ー タ に は特 異 姿 勢 が ない 。 本 節 で は,コ
マ の 回転
姿 勢 に オ イ ラ ーパ ラ メー タ を使 っ た プ ロ グ ラ ム を示 す 。 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タの 定 義 な どは 分 か る が,ど の よ う に 使 うの か分 か らな い と感 じて い る 読 者 に役 立 つ で
あ ろ う。 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ は 3 自 由 度 の 回 転 姿 勢 を 4つ の パ ラ メ ー タ で 表 現 す る も の で あ る た め,4
つ の パ ラ メ ー タ の 二 乗 和 が 1に な っ て い な け れ ば な らな い と い う
条 件 に 気 を配 る必 要 が あ る 。 オ イ ラ ー パ ラ メー タ関 連 の 関 係 式 は理 論 的 に は この 条 件 を 壊 す も の で は な い が,数 そ の 対 策 に は 触 れ な い が,次
値 計 算 の 誤 差 に対 して は 無 防 備 で あ る 。 本 節 で は 節 で対 策 方 法 につ い て 述べ る。
前 節 の モ デ ル に 対 す る 本 節 の モ デ ル の 違 い は,オ
イ ラー 角 の代 わ りに オ イ ラー
パ ラ メ ー タ を 用 い る 点 だ け で あ る 。 状 態 変 数 Y は,ROA,EOA,VOA,Ω'OAの13 個 の ス カ ラ ー を 縦 に 並 べ た 列 行 列 に な る 。 前 節 で は,運 に,式(9.19)と(9.20)を
動 方 程 式(5.1)と(5.2)
補 っ て 計 算 し た 。 本 節 で は 式(9.19)の
12)の 添 え 字 をABか
らOAに
変 え て 用 い る 。 ま た,座
ラ メ ー タ か ら作 る 必 要 が あ る が,式(9.27)に
代 わ り に,式(9.
標 変換 行 列 を オ イ ラ ー パ
代 わ っ て 式(7.18)の
添 え字 を 同 じよ
う に変 え て用 い れ ば よ い 。 以 上 の よ う に 変 更 し てMATLABの 140.m,付
録 のCD-ROMに
プ ロ グ ラ ム を 書 く こ と が で き る(koma_
収 録)。 第 一 段 階 で は 初 期 の 回 転 姿 勢 を 直 接 オ イ ラ ー
パ ラ メ ー タ で 入 力 す る よ う に し た 。koma い ず れ の 場 合 も,入
_120.mで
は オ イ ラ ー 角 で 入 力 し た が,
力 と計 算 時 の デ ー タ の持 ち 方 を異 な っ た もの にす る プ ロ グ ラ
ミ ン グ も 可 能 で あ る 。 そ の 場 合 は,入
力 デ ー タか らの変 換 は 第 二 段 階 で 行 え ば よ
い 。 第 三 段 階 で 微 分 方 程 式 の 右 辺 を 計 算 す る 関 数 はe_koma_140で オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ か ら 回 転 行 列COAや し,用
式(8.10)のSOAを
あ る 。 ま た,
計算 す る関数 を作成
い て い る(EtoC,EtoS)。
グ ラ フ 出 力 は 十 ほ ど あ る(表9.2)。
表9.2koma_140.mとkoma_145.mの
そ の 中 か ら,時
間に対す る四つ のオ イ ラ
グ ラ フ と ア ニ メ ー シ ョ ン 出 力
figure(1)∼figure(4)
時 間 に対 す る オ イ ラーパ ラメ ー タ の各 成分
figure(5)
鉛 直 上 方 か ら眺 め た重 心 の 軌 跡(Z 成 分 に対 す る X 成 分)
figure(6)∼figure(8)
時 間 に対 す る重 心 位 置(座 標系 O)の 各成 分
figure(9)
時 間 に対 す る支 点 Pの 原点 O か らの 距 離 の二 乗
figure(10)
時 間 に対 す る オ イ ラー パ ラメ ー タの二 乗和 か ら 1を差 し引 い た値
figure(11)
ア ニ メー シ ョ ン
図9.7
図9.8
オ イ ラー パ ラ メー タの変 化
オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ拘 束 の ズ レ
ーパ ラ メ ー タ の グ ラ フ を 図9 .7に 示 す 。 この 図 と 図9.6の
3つ の グ ラ フ を対 比 し
て な が め る と興 味深 い 。 こ れ らは ほ と ん ど同 じよ うな 回 転 姿 勢 の変 動 を異 な っ た 回転 姿 勢 表 現 で 表 した もの で あ る 。 ま た,こ の シ ミュ レー シ ョ ンで は,最 後 の グ ラ フ(figure(10),図9.8)に
特 に興 味 が あ る。 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 二 乗 和 か
ら 1を 差 し引 い た値 は ゼ ロ を維 持 し て い る こ とが 望 ま しい が,ズ
レが あ る場 合,
ど の よ うに 変 化 す る で あ ろ う か。 故 意 に ズ レ を持 たせ る よ う な初 期 値 を与 えた 場 合 どの よ う に な る で あ ろ うか 。 こ の プ ロ グ ラ ム に は ズ レ を修 正 す る機 能 が 含 ま れ て い な い。
9.6
順 動 力 学 解 析 の 事 例:近 拘 束 さ れ た コ マ(オ
本 節 で は,前
似 ボ ー ル ジ ョ イ ン トで 支 点 を 近 似 的 に
イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 拘 束 安 定 化 法)
節 に 引 き続 い て 回 転 姿 勢 に オ イ ラー パ ラ メ ー タ を用 い,さ
らに,
そ の 二 乗 和 を 1に維 持 す るた め の安 定 化 法 を考 え る。 そ の 方 法 の 一 つ は,微 分 方 程 式 の 右 辺 の 計 算 を す る 関数 が,ode45な ラ メ ー タ を受 け 取 っ た 直 後 に,毎 回(ま
ど ソル バ ー か ら状 態 変 数 の オ イ ラー パ た は,何 回 か に 一 回),オ
イ ラー パ ラ メ
ー タの 正 規 化 を行 う方 法 で あ る。 剛 体 A の オ イ ラ ーパ ラ メ ー タの 正 規 化 は 次 の 式 に よれ ば よい 。
図9.9
オ イ ラー パ ラ メー タ拘束 のズ レ
(9.28) 単 純 な 方 法 だが,実 用 性 は 十 分 あ る。 た だ し,こ の正 規 化 さ れ た オ イ ラ ーパ ラ メ ー タは ソル バ ー 側 が 持 っ て い る値 に も反 映 させ る必 要 が あ る。 と こ ろが,MATLABで
は,ode45な
ど ソル バ ー側 が 持 っ て い る 値 を変 更 す る
た め に は 特 殊 な 手段 が 必 要 で あ り,そ の よ う な操 作 は,プ 意 味 で,通 常 は 推 奨 で きな い 。 そ こ で,式(9.28)の 法 を探 す こ と に す る。 第20章
ロ グ ラ ムの 混 乱 を防 ぐ
方 法 を あ き らめ,別
の安 定化
に 出 て くる微 分 代 数 型 の 運 動 方 程 式 で は,Baum
garteの 方 法 と呼 ば れ る拘 束 条 件 の 安 定化 法 が あ り,こ れ も有 効 と思 わ れ る 。 た だ し,コ マ の運 動 方 程 式 を微 分 代 数 型 で 表 し,二 乗 和 が 1に な る拘 束 条 件 の 二 回 時 間微 分 と連 立 させ る よ う な方 法 は,オ
イ ラ ーパ ラメ ー タの拘 束 条 件 安 定化 だ け
の た め に は 重 過 ぎ る 印 象 が あ る。 そ こ で,こ
こ で はBaumgarteの
安 定 化 法 と類
似 の 考 え方 で 開 発 した簡 便 な方 法 を 以 下 に紹 介 す る 。 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タEOAと 合,EOAの
角 速 度 Ω'OAを一 般 化 座 標 と一 般 化 速 度 に用 い る 場
時 間 微 分 と Ω'OAの関 係 と して,普 通,式(9.12)を
考 える。そ れに対
し,こ こで 紹 介 す る方 法 で は,次 の 式 を用 い る。
(9.29) τ は 誤 差 を ゼ ロ に 収 束 さ せ る 時 間 応 答 の 時 定 数 で,適
当 な正 の 値 をユ ー ザ ー が 与
え る。 この 少 し だ け複 雑 な 式 を用 い て 角 速 度 か ら オ イ ラ ー パ ラ メ ー タの 時 間微 分 を 求 め れ ば,オ
イ ラ ー パ ラ メ ー タ拘 束 の 安 定 化 が 図 ら れ る 。
こ の 方 法 を 用 い たMATLABの 収 録)は,koma_140.mと 数 はe_koma_145で
プ ロ グ ラ ムkoma_145.m(付
ほ と ん ど 同 じで あ る 。 微 分 方 程 式 の 右 辺 を 計 算 す る 関 あ る が,そ
の 中 で 使 用 し て い る 関 数,出
も の と 同 じ で あ る 。 異 な る 点 は,第 点,関
数e_koma_145に
こ の 関 数 の 中 で 式(9.12)の koma_140.mの
力 の い づ れ も前 項 の
一 段 階 の 入 力 デ ー タ の 中 に τが 含 ま れ て い る
与 え る パ ラ メ ー タ の 中 に τが 含 ま れ て い る 点,そ 代 わ り に 式(9.29)を
し て,
用 い て い る点 だ け で あ る。 出力 も
場 合 と 同 じ で あ る が(表9.2),そ
(figure(10),図9.9)に
録 のCD-ROMに
の 中 の 最 後 の グ ラ フ出力
特 に興 味 が あ る 。 こ れ は オ イ ラ ー パ ラ メ ー タの 二 乗 和
か ら 1を 差 し引 い た 値 で あ る が,koma_145.mの
場 合 は初 期 に乱 れ が あ っ て もす
ぐに ゼ ロ に収 束 す る。koma
_140.mの
場 合 と比 較 して み る と安 定 化 の 効 果 は明 確
で あ る 。 オ イ ラ ーパ ラ メー タの 時 間 微 分 を計 算 す る式 を入 れ 替 え る だ け で あ る か ら簡 単 で あ り,こ れ に よ っ て特 異 姿 勢 の な い オ イ ラー パ ラ メ ー タ を気 軽 に 使 え る はず である。 な お,式(9.29)の
も と に な っ て い る 考 え 方 につ い て,付
あ る 。 こ の 方 法 に よ る 拘 束 の 安 定 化 はBaumgarteの
録 C に簡単 な説 明が
方 法 よ りか な り容 易 で あ
り,時 定 数 τの 選 択 に も難 しさ は な い 。 しか し,ま だ,筆 者 自身 の 経 験 も十 分 で は な い の で,拘 束 が 維 持 され て い る か 否 か を監 視 しな が ら用 い る ほ うが よい で あ ろ う。 拘 束 が 維 持 さ れ て い る 限 り,式(9.29)は お,オ
式(9.12)と
イ ラ ーパ ラ メ ー タの 安 定 化 と引 き換 え に,少
よ う な 印象 が あ る。
ほ ぼ 同 じで あ る。 な
し数 値 的 な ダ ン ピ ング が働 く
第10章
2次元の代 数ベ ク トル表現
2次 元 は 3次 元 の特 別 な場 合 で あ る か ら,す べ て を 3次 元 で考 え れ ば難 しい こ と は何 もな い 。 しか し,2 次 元 の 並 進 運 動 は 2次 元 の代 数 ベ ク トル を用 い,回 転 姿 勢 は ス カ ラ ー で 考 え れ ば よい と こ ろ をわ ざ わ ざ 3次 元 で 表 現 す る の は 無 駄 が 多 い 。 この よ う に 考 え て ゆ くと,2 次 元 の 座 標 変 換 行 列 の 時 間微 分 に つ い て だ け, 2次 元 独 特 の方 法 を作 り,後 は 普 通 の考 え方 で対 処 す れ ば よ い こ とが わ か る 。 な お,本
章 の 説 明 も ほ とん ど運 動 学 に 関 す る も の で あ るか ら,添 え 字 の O を
慣 性 系 と して の 特 別 な もの と考 え る必 要 は な く,他 の文 字 に置 き換 え る こ とが で きる。
10.1
2 次 元 問 題 の 3次 元 表 現 に よ る取 り扱 い
2次 元 の 運 動 学 で は,2 次 元 平 面 や そ の 平 面 内 を 運 動 す る 剛 体 にX-Y座 を 固 定 す る 。 そ の と き平 面 に 垂 直 な方 向 に Z軸 を 考 え れ ば,平
標系
面 は 3次 元 空 間
の 一 部 で あ り,3 次 元 で 一 般 的 に成 立 す る 関係 式 は す べ て使 え る はず で あ る。 す な わ ち,3次 は 第13章
元 運 動 が2次 元 平 面 に拘 束 さ れ て い る と考 え て い る(拘 束 に つ いて
参 照)。 位 置 や 速 度 を表 す 代 数 ベ ク トル で は そ の Z成 分 が ゼ ロ に な る
と考 えれ ば よ く,角 速 度 の場 合 はX,Y成
分 が ゼ ロで,Z 成 分 だ け を考 えれ ば よ
いo
(10.1)
(10.2)
2次 元 の 回転 姿 勢 は ス カ ラ ー の 回 転 角 θOAで 表 す こ と が で き る が,こ れ を オ イ ラ ー 角 の 一 つ の成 分 と し,他 の 成 分 は ゼ ロ に な っ て い る と考 え る こ と も で き る。 こ れ に対 応 す る 3次 元 の 回転 行 列 は次 の よ う に な る 。
(10.3) 2次 元 の 回転 運 動 は,3 次 元 で 考 え た 場 合,Z 軸 ま わ りの 回 転 運 動 で あ り,角 速 度 と 回転 姿 勢 を 以 上 の よ う に扱 え ば,2 次 元 は 完 全 に 3次 元 の 枠 の 中 に 収 ま る。
10.2
2次 元 問 題 の 2次 元 表 現 に よ る 取 り扱 い
前 節 の よ う に,常
に 3次 元 の 表 現 に依 存 し なが ら考 え て ゆ け ば,2 次 元 を特 別
に 考 え る必 要 は な い。 しか し,常 に 余 計 な情 報 を含 む 3次 元 の 表 現 に比 べ,身 軽 な 2次 元 の 表 現 の 方 が 簡 潔 で あ る 。 2次 元 の 位 置 と 速 度 は2×1行
列 で表 す こ と
が で き る。
(10.4) ま た,回 転 姿 勢 は θOA,角 速 度 は ωOAと,ス
カ ラ ー で 扱 う こ とが で きる 。 2次 元
の 回 転 姿 勢 に は 3次 元 の複 雑 さ は影 を 潜 め,回 転 運 動 に 関 す る変 数 に ダ ッ シ ュ の 付 く変 数 を用 い る必 要 も な い。 座 標 系 O の Z軸 ま わ りか,座 標 系 A の Z 軸 ま わ りか を 区 別 す る 必 要 が な い か らで あ る 。 慣 性 モ ー メ ン トや トル クの 添 え 字 も一 つ で よ く な り,JA,nAと
表 す こ とが で き る。
しか し,位 置 や 速 度 の座 標 変 換 行 列 に は 次 の2×2の
行 列 を用 い,ス
カラー の
回 転 姿 勢 θOAと分 け て 考 え る こ とが 必 要 に な る。
(10.5) な お,こ
こ で は 2次 元 用 のCOAを
3次 元 用 の 記 号 と 区 別 して い な い。 両 者 を 混
在 させ る こ と は ほ と ん どな い の で 差 し支 え な い は ず で あ るが,必
要 に応 じ て,2
次 元 用 に小 文 字 を用 い て 両 者 を 区 別 す る 方 法 も わ か りや す い。 さて,こ
の座 標 変
換 行 列 の 時 間 微 分 を考 え る 。 幾 何 ベ ク トル の外 積 は 3次 元 空 間 の演 算 で あ り,2
次 元 の 世 界 で 外 積 オペ レー ター を用 い る こ と はで きな い 。 そ の た め 座 標 変 換 行 列 の 時 間微 分 に は 2次 元 独 自の 工 夫 が 必 要 に な る。 3次 元 の場 合,回
転 行 列COAの
時 間微 分 はCOAΩ'OAと な る が,2 次 元 で は次 の よ う に考 え る と具 合 が よい 。
(10.6) こ こ で,x
は 次 の よ う な2×2の
定 数 行 列 で あ る。
(10.7) ま た,x に は 次 の よ う な性 質が あ る。
(10.8) (10.9) (10.10) 式(10.6)の
ωOAは
ス カ ラ ー で あ り,他
は 注 意 が 必 要 で あ る 。COArPQの COAxωOArPQをCOAxrPQωOAと 式(10.6)は,2
の 行 列 は2×2で
あ る か ら,式
よ う な 形 が 多 く 現 れ る の で,そ
の と き は
直 してお け ば 余 計 な心 配 を しな くて も よ くな る。
次 元 表 現 の た め の 工 夫 の 中 で 最 も 特 徴 的 で あ る が,ほ
よ う な も の が あ る 。rPQの
の変 形時 に
X 成 分 をrPQX,Y成
分 をrPQYと
し て,rPQを
か に次 の これ らの
成 分 か ら再 構 成 す る 表 現 は 次 の よ う に な る 。
(10.11) ま た,rPQXをrPQか
ら 抽 出 す る 作 業 は,次
の よ う に書 け る。
(10.12) rPQYの
場 合 も 同 様 で あ る 。 こ こ で,dXとdYは,3
(式(9.11))に
相 当 す る も の で,す
で に 式(4.9)に
次 元 の 場 合 のDX,DY,DZ 示 し た が,再
度,記
し て お く。
(10.13)
(10.14) dX,dYと
x と の 関 係 を,次
の よ う に 整 理 し て お く と便 利 で あ る 。
(10.15) (10.16)
運動学の事例
第11章
第 Ⅱ部 で は,自
由 な 質 点 と剛 体 の 運 動 方 程 式 か ら始 め て,力 や トル ク,慣 性 行
列 な ど も説 明 し た が,特
に,運 動 学 的 物 理 量 とそ の 基 本 的 な 関係 に重 点 が あ っ
た 。 運 動 学 的物 理 量 の基 本 的 な 関係 とは 三 者 の 関 係 と時 間微 分 の 関係 で あ る。 こ れ ら運 動 学 の知 識 は,第
Ⅲ部 以 降 の 運動 方 程 式 構 築 に役 立 つ が,当 然,運
動学そ
の も の の基 礎 知 識 で もあ る 。 これ ま で に 学 ん だ知 識 が あ れ ば,運 動 学 は 難 し くは ない。 こ の 章 で は,運 動 学 の 事 例 を示 す 。 そ の 事 例 に は,運 動 学 の 方 法 を学 ぶ た め に,Quizが
出 題 さ れ て い る。 モ デ ル は,剛 体 振 子,3 次 元 二 重 剛 体 振 子,3 次 元
三 重 剛 体 振 子 で あ る。 3次 元 二 重 剛体 振 子 の 下 側 の 剛 体 に は 角 速 度 を検 出 す る ジ ャ イ ロ セ ンサ が 取 り付 け られ て い る。Quizは,3
次元二 重 剛体振 子 に関す る も
の,ジ ャ イ ロセ ンサ に関 す る もの,3 次 元 三 重 剛 体 振 子 に関 す る もの な どが あ る。 本 書 の 主 な狙 い は 運 動 方 程 式 で あ るか ら,本 章 を読 み 飛 ば して も先 に進 む こ と は 可 能 で あ る 。 た だ し,こ
こに 出 て くる剛 体 振 子,3 次 元 二 重 剛 体 振 子 ,3 次 元
三 重 剛 体 振 子 は,動 力 学 の 説 明 に も事 例 と して で て くる の で,そ
の つ も りで 目 を
通 して お くこ と は必 要 で あ る。
11.1
剛 体 振 子 と 3次 元 二 重 剛 体 振 子
Y 軸 が 鉛 直 上 方 を 向 くよ う に,慣 性 空 間 に座 標 系 O を 固 定 す る(図11.1)。
ま
た,細 長 い 角 柱 状 の 剛 体 A 上 に,重 心 に 原 点 を一 致 させ て 座 標 系 A を固 定 す る (図11.2)。
こ の と き,座 標 系 A の Y 軸 が 剛 体 の 長 手 方 向 と一 致 す る よ う に し,
こ の Y 軸 上 に 点 O'と 点 P を 固 定 す る(図11 標 値 は-b
で,角 柱 の 長 さ は お お よそ2bで
.3)。 O'の Y 座 標 値 はb,Pの
Y座
あ る。 座 標 系 O と座 標 系 A の 向 きが
平 行 に な る よ うに 剛 体 A の 向 き を定 め た 状 態 で,O
と O'を 一 致 させ,そ の 点 で
ピ ン ジ ョ イ ン ト A に よ っ て 剛 体 A を 空 間 に 結 合 す る(図11.4)。
ピ ン ジ ョイ ン
トの 向 き は 二 つ の 座 標 系 の Z 軸 に 沿 う 方 向 とす る。 こ の ピ ン ジ ョイ ン トは ピ ン まわ りの 回転 だ け が 許 され,ピ
ン に沿 っ た並 進 運 動 は許 され な い。 本 書 で は そ の
よ う な ジ ョイ ン トを ピ ン ジ ョイ ン トと呼 ぶ こ と にす る° こ の 結 合 に よ り,剛 体 振 子 が で きあ が る。 剛 体 振 子 の 傾 き角 θOAの 符 号 は, Z軸 の方 向 と右 ね じの ル ー ル で 定 め(図11.5),こ 次 に,で
の値 が 決 まれ ば 剛 体 振 子 の位 置 と姿 勢 が 完 全 に 定 ま る。
き あ が っ た 剛 体 振 子 に 新 た な 剛体 を 追 加 す る。 まず,剛
体 A と同 じ
形 状 の 剛 体 B を 準 備 し,座 標 系 B を 同 じ よ う に 固 定 す る。 同 じ よ う に と は,重 心 に 原 点 を 一 致 させ,Y 軸 を 角 柱 の 長 手 方 向 と一 致 させ る こ とで あ る。 O'と P に 相 当す る位 置 に は 点 P'と Q を固 定 し(図11.6),座
標 系 A と B の向 きをそろ
え た 上 で 剛体 A 上 の 点 P と剛 体 B上 の P'を一 致 させ て,そ ト B に よっ て二 つ の 剛 体 を結 合 す る(図11.7)。
の 点 で ピ ン ジ ョイ ン
た だ し,今 度 は ピ ンの 向 き を二
つ の 座 標 系 の X 軸 に沿 う方 向 とす る 。 この モ デ ル は 3 次 元 二 重 剛 体 振 子 で あ る。 二 つ の ピ ンジ ョ イ ン トが 直 交 して い る た め,剛 体 A の 運 動 が座 標 系 O のX-Y平
図11.1
図11.2
空 間 に 固定 した右 手 直交 座標 系 O と重 力 の 向 き
角柱 A とそ れ に固 定 した座 標 系 A
図11.3
角 柱 A の Y 軸 上 の 二 点 O'と P
図11.4
図11.5
Z軸 が紙 面 と垂 直 にな る方 向 か ら見 た,静 止 位 置 の剛 体 振 子
Z軸 が 紙 面 と垂 直 に な る方 向 か ら見 た,傾 い た 状態 の剛 体振 子
面 内 に 限 られ て い る の に対 し,剛 体 B は複 雑 な 3次 元 運 動 に な る(図11.8)。
ピ
ン ジ ョイ ン ト B の 相 対 回 転 角 を θABと し,そ の 符 号 を X 軸 と右 ネ ジの ル ー ル で 定 め る と,θOAと
θABで 二 重 振 子 の 位 置 と姿 勢 が完 全 に定 ま る。
運 動 学 の 課 題 は二 種 類 に 分 け る こ とが で き,筆 者 は タ イ プ A と タ イ プ B と 呼 ん で い る(順 運 動 学,逆
運 動 学 とい う言 葉 が 使 わ れ る こ とが あ るが,動
力 学 を順
動 力 学 と逆 動 力 学 に 分 け て 呼 ぶ 場 合 とは,順 逆 の 意 味 合 い が 異 な っ て い る)。 こ こ で は,ま ず,タ
イ プ A の 課 題 を考 え る。 こ れ は,産 業 用 ロ ボ ッ トの 関節 角 を
与 え て 手 先 の 位 置 や 姿 勢 を求 め る 課 題 と 同 じ もの で あ る 。 タ イ プ A の 課 題 は,
図11.6
図11.7
角 柱 B と Y 軸 上 の 二 点 P'と Q
直 交 す る方 向 に ピ ン結 合 され た 3次 元二 重 剛体 振 子
(剛体 B上 に は角 速 度 を検 出す る ジ ャイ ロセ ンサ が 付 い て い る。)
三 者 の 関係 と時 間微 分 の 関 係 を用 い て 解 くこ とが で き,比 較 的 簡 単 で あ る。 剛 体 と関 節 の 数 が 増 え,関 節 の 種 類 が 別 の も の に な った り,木 構 造 の よ うに 分 岐 が あ る 場 合 に も,同
じ よ うに対 応 で きる は ず で あ る 。
図11.8
Quiz 11.1
3次 元 二 重 剛 体 振 子 の θOA=θAB=90°
の姿 勢
3 次 元 二 重 剛 体 振 子 で,θOA=θAB=90°,関
(=θOA),ωAB(=θAB)の
と き,vOQ,vAQ,ΩOB,ΩABを
表 せ 。eOX,eOY,eOZは
節 の 角 速 度 が ωOA
ωOA,ωAB,eOX,eOY,eOZで
座 標 系 O の 各 座 標 軸 を 表 す 単 位 長 さ の 幾 何 ベ ク トル で あ
る 。 ま た,rOQ,rAQ,r'OQ,r'AQ,vOQ,vAQ,v'OQ,v'AQ,ΩOB,ΩAB,Ω'OB,Ω'ABは の よ う に な る か(こ
のQuizは,第
の よ う な 特 殊 な 姿 勢 の 場 合,第
ど
4 章 ∼ 第 6 章 の 復 習 用 で あ る 。 θOA=θAB=90° 7章 以 降 に 学 ん だ 関 係 式 を 用 い る 必 要 も な く,求
め ら れ て い る 変 数 の 意 味 だ け か ら解 答 が 得 られ る は ず で あ る)。
Quiz 11.2
3 次 元 二 重 剛 体 振 子 の 関 節 角 が θOA,θABの
と き,慣
性 座標 系 O
か ら見 た 角 柱 B の 回転 姿 勢 を 回転 行 列 とオ イ ラー パ ラ メ ー タで 表 現 せ よ。
Quiz 11.3 ωABの
と き,座
Q uiz 11.4 点 Q の 位 置(座
Quiz 11.5 ωABの
と き,角
3 次 元 二 重 剛 体 振 子 の 関 節 角 が θOA,θABで,関
節 角 速 度 が ωOA,
標 系 O か ら見 た 角 柱 B の 角 速 度 は ど の よ う に な る か 。 3 次 元 二 重 剛 体 振 子 の 関 節 角 が θOA,θABの 標 系 O に 対 す る 位 置)は
と き,角
どの よ うに な る か 。
3 次 元 二 重 剛 体 振 子 の 関 節 角 が θOA,θAB,関 柱 B の 下 端 点 Q の 速 度(座
柱 Bの下 端
節 角 速 度 が ωOA,
標 系 O に 対 す る 速 度)は
どの よ う に
なるか。 Quiz 11.6
<斜 め に ピ ン結 合 され た 剛 体 振 子 > 本 章 の 最 初 に 説 明 した 剛 体
振 子 の ピ ン結 合 で は座 標 系 O と A の Z 軸 に沿 う方 向 に ピ ン を 配 置 した 。 こ こ で は ピ ン の 向 き を 図11.9に は 点O,O'を
通 り,二
示 し た 斜 め の 向 き に 配 置 し て,剛 つ の 座 標 系 のX-Y平
体 振 子 を作 る。 ピ ン
面 内 に あ る。 X 軸 か ら Y 軸 に向 か う
方 向 の 角 度 は α と す る 。 こ の ピ ン ま わ り の 回 転 角 を θOAと す る と,COA,EOA,
図11.9
ropは
斜 め に ピ ン結 合 され た 剛体 振 子
θOAに よ っ て ど の よ う に 表 さ れ る か 。 さ ら に,ピ
ωOA(=θOA)と
11.2
す る と,Ω'OA,VOPは,θOA,ωOAに
ン ま わ りの 角 速 度 を
よ っ て どの よ う に表 さ れ る か 。
ジ ャ イ ロ セ ン サ
3 次 元 二 重 剛 体 振 子 の 角 柱 B に ジ ャ イ ロ セ ン サ を 固 定 す る(図11.7中 こ の ジ ャ イ ロ セ ン サ はX,Y,Z軸 力 角 速 度 を ΩGYROX,ΩGYROY,ΩGYROZと Z軸
の 〓)。
ま わ り の 角 速 度 を 計 測 す る た め の も の で ,出 表 す こ と に し,ジ
ャ イ ロ セ ン サ のX,Y,
は 座 標 系 B と 平 行 に な る よ う に 取 りつ け て あ る も の と す る 。 こ の ジ ャ イ ロ
セ ン サ の メ ー カ ー は,さ
ら に,こ
の ジ ャ イ ロ セ ンサ が 回転 姿 勢 も計 測 で きる もの
で あ る と 主 張 し て い る 。 そ の 回 転 姿 勢 はX,Y,Z軸 〓GYROY,〓GYROZで
表 さ れ,こ
ま わ り の 回 転 角 〓GYROX,
れ ら は 出 力 角 速 度 を 時 間 積 分 し た も の だ そ うで あ
る。
(11.1) (11.2) (11.3) 積 分 の 下 端 の 時 間 ゼ ロ は 計 測 を 開始 した 時 間 とす る。
ジ ャ イ ロ の 出 力 角 速 度 は,θOA,θAB,ωOA,ωABに ま た,〓GYROX,〓GYROY,〓GYROZが
よ って定 まるは ず であ る。
回 転 姿 勢 を 表 す 量 な ら ば,こ
に よ っ て 定 ま る は ず で あ る 。 こ れ ら に つ い て,次
Quiz 11.7
のQuizを
れ ら は θOA,θAB
考 え て み よ。
3次 元 二 重 剛 体 振 子 の 角 柱 B 上 に 搭 載 さ れ た ジ ャ イ ロ セ ン サ の 出
力 ΩGYROX,ΩGYROY,ΩGYROZは,θOA,θAB,ωOA,ωABに
よっ て ど の よ う に 表 され
るで あ ろ うか 。
Quiz 11.8 姿 勢 ま で,二
3次 元 二 重 剛 体 振 子 を θOA=θAB=0°
の 姿 勢 か ら θOA=θAB=90°
通 り の 手 順 で 変 化 さ せ る も の と す る 。 手 順 ① は,ま
維 持 し な が ら,θOAを
0°か ら90° ま で 変 化 さ せ,次
の
ず,θAB=0°
い で,θOA=90°
を維 持 し な
が ら,θABを0°
か ら90° ま で 変 化 さ せ る 。 手 順 ② は,ま
が ら,θABを0°
か ら90° ま で 変 化 さ せ,次
を 0°か ら90°
ま で 変 化 さ せ る 。 二 つ の 手 順 の そ れ ぞ れ に つ い て,〓GYROX,
θGYROY,〓GYROZが Quiz 11.9
い で,θAB=90°
ず,θOA=0°
を
を維持 しな
を 維 持 し な が ら,θOA
どの よ うな値 に な る だ ろ うか 。 3 次 元 二 重 剛 体 振 子 の ジ ャ イ ロ セ ン サ に つ い て,〓GYROX,
〓GYROY,〓GYROZは
角 柱 B の 回転 姿 勢 を表 す 量 とい え る だ ろ うか 。
式(5.10)は,ROAの 分 し た も の はROAで
時 間 微 分 がVOAと
い う こ と で あ り,逆
あ る 。 式(9.2),(9.10),(9.12)は,い
時 間 微 分 と 角 速 度 Ω'OAの 関 係 を 示 し て い る が,回 Ω'OAに な っ て い る わ け で は な い 。 逆 に,Ω'OAを 姿 勢 は 得 ら れ な い 。 こ れ は,ダ
に,VOAを
時 間積
ず れ も,回
転姿勢 の
転 姿 勢 の 時 間微 分 が そ の ま ま
そ の ま ま 時 間 積 分 し て も,回
転
ッ シ ュ の 付 か な い ΩOAを 用 い て も 同 様 で あ る 。
こ の こ と を,「 角 速 度 は 積 分 で き な い 」,「角 速 度 は ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク で あ る 」 な ど と表 現 す る こ とが あ る。
11.3
3 次 元 三 重 剛 体 振 子
3次 元 二 重 剛 体 振 子 に,さ
らに も う一 つ の 剛 体 C を追 加 す る 。 この 剛 体 の 形 状
も座 標 系 C の 固 定 の 仕 方 も こ れ ま で と 同 様 で あ る 。 Y 軸 上 の 点 は Q'と R で,剛 体 A 上 の O'と P,ま
た は,剛
体 B 上 の P'と Q と 同 様 で あ る(図11.10)。
座 標
系 B と C を 平 行 に し,点
Q と Q'を 一 致 さ せ て,ピ
ン ジ ョイ ン ト C に よ って 剛
体 B と C を 結 合 す る と 3 次 元 三 重 剛 体 振 子 に な る(図11.11)。 C の 向 き は 二 つ の 座 標 系 の Z 軸 の 向 き と し,相
ピ ン ジ ョイ ン ト
対 回 転 角 を θBCと す る(図11
.
12)。 ピ ン ジ ョ イ ン ト C と ピ ン ジ ョ イ ン ト B は 常 に 直 交 し た 向 き に な っ て い る 。 ま た,θOA,θAB,θBCを
与 え れ ば 三 重 剛 体 振 子 の 位 置 と姿 勢 が 完 全 に 定 ま る。
次 の[Quiz
11.10]と[Quiz
11.12]と[Quiz
11.13]は,タ
11.11]は,タ
イ プ A の 問 題 で あ る が,[Quiz
イ プ B の 問 題 で,[Quiz
11 .10]と[Quiz
の 結 果 を 利 用 し て 解 く こ と に な る 。 タ イ プ B の 問 題 と は,産 先 の 位 置 と 姿 勢 を 与 え た と き,そ
図11.12
業 用 ロ ボ ッ トの 手
の 実現 に必 要 な各 関 節 の 角 度 を求 め る よ うな 問
題 で あ る 。 六 つ の 関 節 を 持 っ た 産 業 用 ロ ボ ッ ト と は 異 な り,こ
図11.10
11.11]
こで は三 つ の 関節
角 柱 C と Y 軸 上 の 二 点 Q'と R
3次元 三 重 剛 体振 子, θOA=θAB=θBC=90°
の 姿 勢
図11.11
3次 元 三 重 剛体 振 子
を 持 っ た 三 重 剛 体 振 子 で あ る か ら,下 11.12]で
は ニ ュ ー ト ン ラ フ ソ ン法 を,[Quiz
解 法 を 用 い,計
11.10
11.13]で
算 機 の 利 用 が 必 要 で あ る 。[Quiz
解 法 と も い え る が,運
Q uiz
端 点 R の 位 置 と 速 度 だ け を 考 え る 。[Quiz は連立 一次 方程式 の数値
11.14]は,[Quiz
11.12]の
別 の
動 学 の 汎 用 的 な解 法 に 近 い もの で あ る。
3 次 元 三 重 剛 体 振 子 の 三 つ の 回 転 角 が θOA,θAB,θBCの
と き,角
柱 C の 下 端 点 R の 位 置 は ど う な る か。 Quiz
11.11
3 次 元 三 重 剛 体 振 子 の 三 つ の 回 転 角 が θOA,θAB,θBC,角
ωOA,ωAB,ωBCの
Quiz
11.12
と き,角
速度 が
柱 C の下 端 点 R の 速 度 は ど う な る か 。
座 標 系 O のX,Y,Z座
標 の値 が い ず れ も3bに
な る空 間 上 の 点
を R'と 呼 ぶ こ と に す る 。 3 次 元 三 重 剛 体 振 子 の 角 柱 C の 下 端 点 R が 点 R'に 一 致 し て い る と き,θOA,θAB,θBCの Quiz 11.13 て,Y
値 を 求 め よ。
3次 元 三 重 剛 体 振 子 の 角 柱 C の 下 端 点 R が 点 R'に 一 致 して い
軸 の 正 方 向 に 単 位 時 間 当 た り2bの
速 度 を 持 っ て い る と き,ωOA,ωAB,
ωBCの 値 を 求 め よ 。 Quiz 11.14
[Quiz
11.12]と
同 じ状 況 の と き,慣
性 空 間 か ら見 た 三 つ の 角 柱 の
重 心 位 置 と回転 姿 勢 を求 め た い 。 回 転 姿 勢 は オ イ ラ ー パ ラ メ ー タで 表 す こ とに す る。 こ の解 は[Quiz
11.12]の 結 果 か ら求 め る こ とが で き る が,こ
こ で は,自 由
な三 つ の 角 柱 が 受 け て い る拘 束 を,三 つ の角 柱 の 重 心 位 置 と 回転 姿 勢 の 関数 で 表 し,そ の解 をニ ュ ー トン ラ フ ソ ン法 で 求 め る こ とを 考 え る。 な お,こ のQuizは 剛 体 に 働 く拘 束 と い う概 念 を 正 面 か ら利 用 す る 。 以 下 が 理 解 し難 い 読 者 は,13.6 節 を 学 ん だ後 に 戻 っ て くる こ と に し よ う。 自由 な三 つ の 角 柱 が 受 け て い る拘 束 は,三 つ の ピ ン ジ ョイ ン トの拘 束 と剛 体 C の最 下 点 R が R'に 一 致 して い る拘 束 で あ る。 これ に,オ 束 を付 け加 えて 考 え る。 拘 束 全 体 をΨ=0と ΨB,ΨC,ΨRの
イ ラ ー パ ラ メ ー タ の拘
表 現 す る こ とに し,こ の Ψ は,ΨA,
四 つ の 成 分 か らな りた っ て い る とす る。
(11.4) ΨA=0は
ピ ン ジ ョ イ ン ト A の 拘 束 とEOAの
ト B の 拘 束 とEOBの る 。 ΨR=0は,点
拘 束,Ψc=0は
拘 束 と す る 。 ΨB=0は
ピ ン ジ ョイ ン
ピ ン ジ ョ イ ン ト C の 拘 束 とEOCの
R が 点 R'に 一 致 し て い る 拘 束 で あ る 。
拘 束で あ
ま ず,ΨA=0は
次 の よ うに 書 け る。
(11.5)
四 つ の成 分 の うち 一 番 上 は,点
O'が 点 O に 一 致 して い る条 件 で あ る。 二 番 目 と
三 番 目は 座 標 系 O の Z 軸 が 座 標 系 A の X 軸 と Y 軸 に直 交 して い る条 件 で あ る 。 こ れ ら三 つ の 成 分 が ピ ン ジ ョイ ン トの 拘 束 で,四
番 目の成分 は角柱 Aの オイ ラ
ー パ ラ メ ー タ の 拘 束 で あ る。 さ て,ΨB,ΨC,ΨRは
どの よ うに な るだ ろ うか。
式(11.5)に 相 当 す る もの を示 せ 。 の 関 数 で あ る 。 式(11.5)のCOAは
は,
EOAの
関 数 と 考 え れ ば よ い 。 Ψ=0は
ス カ ラ ー レ ベ ル で21の
の 総 数 も21で
式 を 含 ん で お り,
あ る か ら,ニ
ュ ー トン ラ フ ソ ン
法 を 用 い れ ば こ れ らの 数 値 解 が 得 ら れ る は ず で あ る。 の 推 定 値 か ら計 算 した Ψ を ΨEと し,ΨEか と,
で あ る 。 こ の と き,修
らの 修 正 量 を ΔΨ と す る
正 量 ΔΨ は 次 の よ う に 表 さ れ る 。
(11.6) を並べ て作 った係 数行 列 と
結 局,
ΨEを 用 い て 連 立 一 次 方 程 式 を 解 け ば, を 求 め る こ と が で き,こ
れ を 修 正 量 と し て,新
たな
の 推 定 値 を定 め る こ とが で きる 。 係 数行列 の一 部
は,
成 さ れ て い る 。 そ の 中 の ΨAをROAで
を
で 偏 微 分 し た も の か ら構
偏 微 分 し た も の は,次
の よ う に な る。
(注)偏 微 分 を添 え字 を用 いて 表 す場 合,添 え字 に書 か れ る変 数 が列 行 列 で あ れ ば,そ の添 え字 は 太 文 字 で表 す の が 自然 で あ る。 本 章 で は そ の よ うに してあ る が,第 Ⅲ部 以 降 で は,添 え字 に 太 文 字 を用 い ない こ とを 原則 とす る。 偏微 分 の対 象 に な って い る 関数 も含 め て,変 数 記 号 自体 が 別 の 意 味 の添 え字 を持 つ な ど,複 雑 にな っ て くる と小 さい 文 字 は見 難 くなっ て くる。 その た め の止 む を得 な い処 置 で あ る。
(11.7)
同 様 に ΨEOAは,ΨA,ΨB,ΨC,ΨRをEOAで て,そ
の 中 の ΨAをEOAで
偏 微 分 した もの か ら構 成 さ れ て い
偏 微 分 し た も の は,次
の よ う に な る。
(11.8)
この 偏 微 分 の 計 算 で は,ΨAをEOAで
偏 微 分 した もの が ΨAをEOAで
偏 微 分 した
も の に 等 し い と い う 性 質 を 用 い て い る 。 さ ら に,ΨAをROB,EOB,ROC,EOCで
偏 微 分 し た も の は,す
べ て ゼ ロ に な る。 さ て,ΨB,ΨC,ΨRの
ROA,EOA,ROB,EOB,ROC,EOCの
そ れ ぞ れ は,
どの 変 数 に 依 存 し て い る か 。 そ の 依 存 し て
い る変 数 で 偏 微 分 した もの は どの よ う に な る か 。 式(11.7)ま た は(11.8)に 相 当 す る もの を示 せ 。 以 上 の準 備 を 元 に,実 際 に プ ロ グ ラ ム を組 ん で ニ ュ ー トン ラ フ ソ ン法 を行 う こ とが で きる。 こ こか ら後 は 読 者 の 努 力 に任 せ る。 順 動 力 学 解 析 の ア ニ メ ー シ ョ ン と同 様 な方 法 で 三 つ の角 柱 を 図示 し,ニ ュ ー トン ラ フ ソ ン法 の 収 束 計 算 の 各 ス テ ップ ご との 姿 勢 を 少 しゆ っ く り表 示 す る よ うにす れ ば,収 束 の 状 況 を観 察 す る こ とが で きる 。 最 下 点 R の 目標 位 置 R'を 図 上 で 入 力 で き る よ う な仕 組 み を 考 え れ ば,対 話 的 に 目標 位 置 を 与 え なが ら,ニ ュ ー トン ラ フ ソ ン法 を 繰 り返 す プ ロ グ ラ ム が作 れ る。 目標 位 置 が 遠 す ぎ る と き,繰
り返 し計算 が 収 束 しな い 様 子 も観 察 で
き る で あ ろ う。 な お,本 書 で は,Ψ=0を
位 置 レベ ル の拘 束 を表 す 一 般 的 な 形 と し て お り,こ
れ を 時 間 微 分 した 速 度 レベ ル の拘 束 は,Φ=0と 照)。 こ のQuizの
後,[Quiz
速 度 を 求 め る と きは,Φ=0を
11.13]の
表 す こ と に し て い る(13.6節
参
よ う な 状 況 設 定 で 各 剛 体 の 重 心 速 度 と角
作 り,連 立 一 次 方 程 式 を解 くこ と に な る。
<テ レス コ コ ピ ッ
11.15
Quiz
ク ジ ョイ ン トを 含 む 機 構>3
次
元 三 重 剛 体 振 子 は 三 つ の 角 柱 と空 間 を三 つ の ピ ン ジ ョイ ン トで 結 合 した もの で あ っ た 。 そ の 三 つ の ピ ンジ ョイ ン トの うち ピ ン ジ ョイ ン トA と ピ ンジ ョイ ン トB はそ の ま ま と し,ピ
ン ジ ョイ ン ト C の
代 わ りに 角 柱 B と 角 柱 C を テ レ ス コ コ ピ ッ ク ジ ョイ ン トで 結 合 し た機 構 を考 え る(図11.13)。 テ レス コ コ ピ ック ジ ョイ ン トは 固定 軸 に沿 っ て 伸 縮 す る ジ ョイ ン トで,こ
こで 考 え て い る 機 構 の 固
定 軸 は座 標 系 B と座 標 系 C の Y 軸 で あ る。 す な わ ち 点 Q'は 座 標 系 B の Y 軸 上 に あ り,点
図11.13テ
レ ス コ ピ ッ ク ジ ョ イ ン トを 含 む 機 構
Q は座
標 系 C の Y 軸 上 に あ る。 Y 軸 ま わ りの 回転 は許 され ず,二
つ の 座 標 系 は常 に平
行 で あ る。 原 点 C も 座 標 系 B の Y 軸 上 に あ る が,そ と 同 じ で,テ
す る 。 こ れ はRBCY
レ ス コ ピ ッ ク ジ ョ イ ン ト の 伸 縮 量 を 表 す 。SBC=0は,二
が 重 な っ た 状 態 で あ り,こ 伸 び に 対 応 し て い て,符 さ て,慣
の Y 座 標 をSBCと
の 変 数 の 場 合,負
つ の 角柱
の 値 が テ レ ス コ ピ ッ ク ジ ョ イ ン トの
号 に 注 意 す る 必 要 が あ る。
性 系 か ら 見 た 点 R の 位 置rORと
速 度vORを
θOA,θAB,SBC,ωOA,ωAB,
SBCで 表 せ 。 な お,こ
の 機 構 で も,[Quiz
11.12],[Quiz
設 定 が 可 能 で あ る 。 ま た,動
力 学 のQuizを
は 角 柱Cが 常 のQuizに
11.13],[Quiz
11.14]の
よ う な問 題
作 る こ と を 考 え る と,上
記 の ま まで
重 力 で 落 下 し 続 け て し ま う 。 そ の よ う なQuizが す る た め に 伸 縮 量SBCに
あ っ て も よ い が,通
応 じて バ ネ力 が 働 く とす る と よい 。
第 Ⅲ部
動力学の基本事項 第 Ⅱ部 の 主 な テ ー マ は運 動 学 の 基 本 で あ っ たが,そ る。 一 方,こ
れ らは動 力 学 の 基 礎 で もあ
れ と は別 に動 力 学 の 基 本 事 項 が あ る 。 第 Ⅳ部 で は 力 学 の 原 理 な ど と
と もに,運 動 方 程 式 を立 て る 方 法 を学 ぶ こ と に な る が,そ
のす べ て の 方 法 に 共 通
な課 題 は拘 束 の処 理 の 仕 方 とい え る。 した が っ て,拘 束 と は何 か を知 ら な け れ ば な らな い し,そ れ に 伴 っ て 出 て く る拘 束 力 の 概 念 も理 解 しな け れ ば な ら な い。 ま た,自
由 度 や 一 般 化 座 標,一
般 化 速 度 も必 要 な知 識 で あ る。 第 Ⅲ部 は,第
入 る た め の 準 備 に位 置 づ けて い る 。
Ⅳ部に
第12章
力 と トル クの等価 換算,三 質点 剛体, 慣性行 列の性質,質 点 系,剛 体系
運 動 方 程 式 は,質 点 や 剛 体 の 運 動 状 態 と力 や トル クの 関 係 を表 し た もの で あ る 。 本 章 で は,ま ず,力
と トル ク の 等 価 換 算 につ い て 説 明 す る 。 次 い で,三 質 点
剛 体 の 運 動 方 程 式 を導 出す る が,そ
こ に,拘 束 と拘 束 力 が 出 て くる。
力 と トル ク は 三種 類 に分 け て 考 え る こ とが で き る。 す で に 第 Ⅱ部 に,作 用 力 と 作 用 トル ク,慣 性 力 と慣 性 トル クが 出 て きた が,残
りが 拘 束 力 と拘 束 トル ク で あ
る。 三 質 点 剛 体 の運 動 方 程 式 導 出 を通 して,改 め て作 用 力 を説 明 し,さ ら に,拘 束 と拘 束 力 の 概 念 を 説 明 す る。 また,こ
こ で 導 か れ る 運 動 方 程 式 が,第
4章 に 出
て き た 剛 体 の 運 動 方 程 式 で あ る。 続 い て,剛 体 の 慣 性 行 列 の 性 質 に つ い て 説 明 し,最 後 に,複 数 の 質 点,複 数 の 剛体 を ま とめ て 扱 う た め の 記 号 を紹 介 す る。
12.1
力と トルクの等価換算
剛 体 A 上 に 点 P が あ り,そ (図12.1)。
の 点 に 力fpと
代 数 ベ ク トル で 表 し て,fOPとn'OPで
ト ル クnPが
作 用 し て い る とす る
あ る 。 トル ク は 回 転 に 関 わ る 量
で あ る か ら ダ ッ シ ュ の 付 い た 変 数 を 用 い る こ と に す る 。 こ の 力 と トル ク を 座 標 系 A の 原 点 に 等 価 換 算 し,そ
の 結 果 をFOA,N'OAと
す る と,そ
れ らは 次 の よ うな 関
係 で 表 され る。
(12.1) (12.2) fOPとn'Opの 組 が 剛 体 A に 与 え る動 力 学 的 な働 き と,FoAとN'OAの
組 が 剛体 A に
与 え る 動 力 学 的 な働 き は 同 じで あ り,そ の よ う な置 き換 え を等 価 換 算 とい う。 動 力 学 的 な働 き と は運 動 に与 え る 影 響 で あ る。 剛 体 A 上 の 別 の 点 に も力 と トル クが 作 用 して い れ ば,そ 等 価 換 算 し,加 え合 わせ た もの をFOA,N'OAと
れ につ い て も同 様 に
す る。 こ の よ う に して,剛 体 上 の
図12.1剛
体 A 上 の 点 P に 働 く力 と トル ク
複 数 の 点 に力 と トル ク が 作 用 す る場 合 も,そ れ ら を一 組 の作 用 力 と作 用 トル ク に 置 き換 えて 考 え る こ とが で き る 。 式(12.2)の 第 二 項 はfPの 点 A ま わ りの モ ー メ ン トで あ る。fPの 作 用 線 が 点 A を通 過 して い れ ば そ の 値 は ゼ ロ に な る。 ま た, 点 P に作 用 す るnpは,剛
体 上 の 別 の 点 に平 行 移 動 して もそ の 動 力 学 的効 果 は変
わ ら な い。 な お,式(12.1),(12.2)は
作 用 力 の 等 価 換 算 だ け で は な く,後 述 す
る拘 束 力 の 等 価 換 算 に も適 用 す る こ とが で き る。 2次元 の場 合,式(12.1),(12.2)に
対 応 す る 関係 は 次 の とお りで あ る 。
(12.3) (12.4) 2次 元 の場 合 は外 積 オ ペ レー ター を 用 い る こ と は で き ず,第10章
の 式(10.7)に
示 した x が 出 て くる 。 こ の 2次 元 等 価 換 算 の 式 も 3次 元 の場 合 と同 様 の 考 え方 で 説 明 で きる の で,読 者 は 自 ら確 認 され た い 。
12.2
三質点剛体
● 拘束と拘束力 三 つ の 質 点 が 剛 につ なが っ て 三 角 形 を な して い る系 を 考 え る(図12.2)。 は1∼3と
番 号 で 呼 び,そ
の 質 量 はm1∼m3で
質点
あ る 。 こ の系 に座 標 系 A を 固 定 す
る 。 言 い 換 え る と,座 標 系 A に 三 つ の 質 点 が 固定 さ れ て い る 。 座 標 系 A 上 で の 各 質 点 の 位 置 はrA1∼rA3で,こ
の代 数 ベ ク トル は定 数 で あ る。
三 質 点 が 自 由 に 運 動 して い る状 態 に 比 べ,三
質 点 の 動 きは 制 限 さ れ て い る。 質
点 1 と質 点 2,質 点 2 と質 点 3,質 点 3 と質 点 1は,そ れ ぞ れ の 距 離 を一 定 に保
図12.2三
つ の 質 点 か らな る系 と各 質点 に働 く力
っ た 状 態 で 運 動 せ ざ る を 得 な い 。 こ の こ と を,た て,次
と え ば 質 点 1 と質 点 2につ い
の 式 で 表 す こ とが で き る。
(12.5) そ して 当然,相
対 的 な距 離 の 変 動 もゼ ロ で あ り,そ の こ と は,こ の 式 を時 間微 分
した 次 の式 で 表 され る。
(12.6) 位 置 や 速 度 に 関 して,何
も制 約 の な い状 態 と対 比 して,式(12.5)や
式(12.6)の よ
う な運 動 学 的 な 量 の 制 約 を拘 束 と呼 ぶ 。 式(12.5)は 位 置 レベ ル の拘 束,式(12.6) は速 度 レベ ル の 拘 束 で,式(12.6)の
時 間微 分 を作 れ ば,加 速 度 レベ ル の 拘 束 に な
る 。 三 質 点 剛 体 に は この よ うな拘 束 が,あ
と二 組,存
在 す る こ とに な る。
各 質 点 に は作 用 力fo1∼fo3が 働 い て い る とす る 。 これ らは 系 の外 か ら働 い て い る の で 外 力 で あ る。 系 内 の 質 点 同士 の 相 互 作 用 は 内 力 と呼 ば れ る。 作 用 力 と は, バ ネ や ダ ンパ ー に よ る力 ,あ る い は,重 力 な どの よ う に,質 点 の 位 置 と速 度 と時 間 に よ っ て 決 ま っ て く る力 で あ る 。 剛 体 も含 め て 考 え れ ば,作 用 力 と は,位 置, 回転 姿 勢,速
度,角
速 度,お
よ び,時 間 の 関 数 と して 表 さ れ る 力 で あ る。 一 定 力
も,そ の よ う な 関 数 の 特 別 な場 合 で あ り,作 用 力 で あ る。 作 用 力 は,一 般 に,外 力 と 内力 に 分 け て 考 え る こ とが で きる が,三 質 点 剛体 の 場 合 は,内 力 の作 用 力 は 働い ていない。 三 質 点 剛 体 は 作 用 力 を受 け て 運 動 す る。 そ の と き,個 々 の 質 点 に 注 目す る と,
そ の 質 点 に働 く作 用 力 と慣 性 力 の和 はゼ ロ に な る と は 限 らな い 。 た とえ ば,三 つ の作 用 力 が 釣 り合 っ て い て 三 角 形 が 動 か な い と き,慣 性 力 は ゼ ロで あ る が,作 用 力 は ゼ ロ で は な い。 一 方,三 は,質
質 点 に は 別 の 力 が働 い て い る と考 え られ る。 そ れ ら
点 1 と質 点 2,質 点 2 と 質 点 3,質 点 3 と質 点 1の 間 に マ ス レ ス リ ン ク
(質量 の な い 連 結 棒)を
想 定 して,そ
の リ ンク を介 して 働 く力 で あ る。 各 リ ン ク
ご と に そ の 両 端 の 質 点 に働 く力 は作 用 反 作 用 の 関 係 に あ る と考 え ら れ る 。 ま た, そ の よ うな力 は 各 二 点 間 が 一 定 距 離 に 拘 束 さ れ て い る こ とに よ って 生 じる と考 え る こ とが で き,あ る い は,一 定 距 離 を 維 持 す る よ う に定 ま る と考 え て も よい 。 こ の よ う に,拘 束 に よ っ て生 じ,拘 束 を維 持 す る よ う に働 く力 を拘 束 力 と呼 ぶ 。 そ して,三
質 点 剛 体 の 運 動 中,各
常 に,ゼ
ロ に な る。 た とえ ば,三
質 点 に働 く作 用 力 と慣 性 力 に 拘 束 力 を加 え る と, 質 点 の 作 用 力 が釣 り合 っ て い て 三 角 形 が 動 か な
い と き,慣 性 力 は ゼ ロで あ る が,質 点 ご との 作 用 力 と拘 束 力 の和 が ゼ ロ に な っ て い る の で,各
質点は動か ないので ある。
質 点 1に は,質 点 2 と質 点 3か ら拘 束 力 が 働 き,そ の 合 計 をfO1と す る。 同様 に,質
点 2,質 点 3に 働 く拘 束 力 の 合 計 を,そ れ ぞ れ,fO2,fO3と
て,ニ
ュ ー トンの 運 動 方 程 式 は 次 の よ うな 形 で 成 立 す る。
す る。 そ し
(12.7) す な わ ち,各 質 点 に は 作 用 力 と拘 束 力 が 働 い て い て,そ の 和 が 加 速 度 を 生 み 出 し て い る。 た だ し,拘 束 力 は,位 置 や 速 度 や 時 間 の 関 数 と して,そ
の大 き さや 方 向
が 決 ま る わ け で は な い 。 拘 束 の 性 質 か ら拘 束 力 の 方 向 な ど は あ る 程 度 分 か る が, そ の 大 き さ は 未 知 数 で あ る 。 加 速 度 な どが 分 か ら な い と求 め る こ とが で きな い 。 結 局,式(12.7)の お,拘
ま まで は,作 用 力 か ら運 動 を解 くこ とは で き な い の で あ る。 な
束 力 に も,一 般 に,外
力 と内 力 が あ る が,三
質点 剛体 の場合 は内力 で あ
り,外 力 の拘 束 力 は存 在 して い な い 。
● 三質点剛体の運動方程式 次 に,拘 束 力 消 去 法(第15章 方 を説 明 す る。 まず,i=1,2,3と
参 照)に
よ る,三 質 点 剛 体 の 運 動 方 程 式 の 作 り
して,次 の 三者 の 関 係 を考 え る 。
(12.8) こ の 式 を 時 間 で 微 分 す る と,VoiをVOAと
Ω'OAで 表 す こ と が で き る 。
(12.9) も う 一 度 時 間 微 分 す れ ば,Voiの
式 に な り,そ
れ を 式(12.7)に
代 入 す る。
(12.10) こ こ で,(i,j,k)=(1,2,3),(2,3,1),(3,1,2)と foiを,質
点 j か ら の 拘 束 力foijと
し て,質 質 点
k か ら の 拘 束 力foikに
点 iに 働 く 拘 束 力 分 け て 考 え る。
(12.11) foijとfoikの
添 え字 の 使 い 方 は,こ の 項 だ け の特 別 な も の で あ る。 質 点 kか ら
質 点 jが 受 け る拘 束 力fojkと 質 点 jか ら質 点 kが 受 け る 拘 束 力fokjは 作 用 反 作 用 の 関 係 に あ る と考 え る こ とが で き(図12.3),そ
の 関 係 は 次 の よ う に 表 され
る。
(12.12) (12.13) 式(12.13)は (12.13)か
A 点 ま わ り の モ ー メ ン ト の 釣 り合 い で あ る 。 さ て,式(12.11)∼ ら次 の 関係 が 得 ら れ る 。
(12.14) (12.15) こ れ ら は,運 動 方 程 式 か ら拘 束 力 を消 去 す る手 が か りに な る。 式(12.10)をi=1,2,3に
つ い て 足 し 合 わ せ,式(12.14)を
用 い る と次 の よ う に
なる。
(12.16) こ こ で,全
質 量 をMAと
し,ま
た,重
心 G の 位 置 をrAGと
す る と,こ
れ らは次
の 式 を 満 た す 必 要 が あ る。
(12.17) (12.18) ま た,各 質 点 に働 く作 用 力 を座 標 系 原 点 A に 等 価 換 算 して お く。
図12.3二
つ の 質 点 の 間 に働 く相 互 作 用 の力
(12.19) (12.20) 以 上 の 四 式 の う ち,最
初 の 三 式 を 用 い る と,式(12.16)は
次 の よ うに な る。
(12.21) 次 に,式(12.10)にrAiC〓
を 左 か ら掛 け て,整
理 す る と次 の 式 が 得 られ る。
(12.22) こ こ で,外
積 オ ペ レ ー タ ー の 性 質,式(6.7)を
用 い て,左
辺 第 三 項 を 次 の よ うに
書 き なお して お く。
(12.23) 式(12.23)をi=1,2,3に
つ い て 足 し 合 わ せ,式(12.15),(12.18),(12.20)を
用 い る と次 の よ う に な る。
(12.24) こ の 式 の 左 辺 括 弧 内 は定 数 で,符 号 を反 転 す る と A 座 標 系 で 表 さ れ た A 点 ま わ りの 慣 性 行 列 と呼 ばれ る量 で あ る。 こ れ をJ'OAと 表 す 。
(12.25) こ れ に よ り,式(12.24)は
次 の よ うに な る。
(12.26) 式(12.21)と(12.26)を
ま とめ る と次 の 三 質 点 剛 体 の 運 動 方 程 式 に な る。
(12.27) こ こ で,重
心 G が 座 標 系 原 点 A に 一 致 し て い る 場 合 を 考 え,rAGを
と 並 進 運 動 と 回 転 運 動 が 分 離 さ れ て,式(5.1)と(5.2)に
ゼ ロ とす る
なる。 【5.1】(注)
【5.2】
(注)【
】 は以 前 に出 て きた式 を,以 前 の 式番 号 の ま ま,再 度 記 して い る こ とを示 す 。
な お,式(12.25)は,各
質 点 の 質 量 が慣 性 モ ー メ ン トや 慣 性 乗 積 に 寄 与 す る様
子 を示 し て い る。 こ れ らの 量 は,3 次 元 の 複 雑 な 回転 運 動 の 原 因 の 一 つ に な っ て い るが,そ
の 性 質 を調 べ る た め に この 式 を利 用 す る こ とが で きる 。
Quiz12.1オ
イ ラ ー の 運 動 方 程 式(5.2)で,Ω'OA=const.を
必 要 な トル ク
が ゼ ロ に な らな い よ うな 簡 単 な事 例 を 2質 点 で
作 っ て み よ 。Ω'OA=const.は,た Quiz12.2式(5.1)と(5.2)は た も の で あ る が,V'OAと か,式(5.1)は
と え ば,Z 軸 ま わ りの 一 定 回 転 と い う こ と で よ い 。 自 由 な 剛 体 の 運 動 方 程 式 をVOAと
Ω'OAで 表 す こ と を 考 え よ う 。式(5.2)は
ど の よ う に な る だ ろ う か 。な お,作 用 力 もF'OAを
ま た,8.4項[Quiz8.2]の し,さ
維 持す る ため に
ら に,M'A,Ω
式(8.14)と ″OA,F″OAを
同 様 にV'0Aと
Ω'OAで 表 し
その ま まで よい
用 い る こ とに す る。
Ω'OAを
ま と め てV″OAと
次 の よ う に定 め る。
(12.28)
(12.29)
(12.30)
(12.31) 式(12.30)だ
け は並 進 運 動 に 関 す る変 数 と回 転 運 動 に 関 す る変 数 を並 べ た も の に
な っ て い ない の で 注 意 を要 す る。 以 上 に よ り,自 由 な 剛 体 の運 動 方 程 式 が 次 の よ う に書 け る こ と を確 認 せ よ。
(12.32) な お,こ
の 式 は19.4節
12.3
慣性行列の性質
慣 性 行 列J'OAとJOAの
の事 例 で用 い られ る。
座 標 変換 の 関 係 は 次 の よ うに な る。
(12.33)
こ の 関 係 は,式(12.25)のrAiをC〓(roi-rOA)で
置 き換 え る こ とで 得 られ る。 座
標 系 O に 対 す る 座 標 系 A の 回 転 姿 勢 が 変 化 す る とCOAも J'OAに
対 し てJOAは
変 化 す る 。 ま た,同
し た 剛 体 A 上 の 二 つ の 座 標 系,A
変 化 す る の で,定
様 の 座 標 変 換 は,原
とA1の
数の
点 を一 致 さ せ て 固 定
間 で も成 立 す る 。
(12.34) A 点 ま わ りの 慣 性 行 列 は座 標 系 を 回転 させ る と行 列 の 成 分 が 変 化 し,特 定 な方 向 で はす べ て の慣 性 乗 積 が ゼ ロ に な っ て,対 角 行 列 に な る。 そ の と き の座 標 軸 の 方 向 が 慣 性 主 軸 で あ る 。 慣 性 行 列 は 一 般 に 実 対 称 行 列 で あ り,固 有 値 解 析 に よっ て,慣 性 主 軸 の 直 交 三 方 向 を求 め る こ とが で きる。 以 上 の 関 係 は モ ー メ ン トの 中 心 点 を 原 点 A と し た もの だ が,モ
ー メ ン トの 中
心 を剛 体 上 の 別 の 点 P に 移 した 場 合 に は 平 行 軸 の 定 理 が 成 立 す る。 通 常,剛 体 に 固 定 す る 座 標 系 は 原 点 を 重 心 に 一 致 させ るが,こ
こ で は,剛 体 A の重 心 G が
原 点 A と 一 致 し て い な い 場 合 を 考 え よ う。 点 A ま わ り の 慣 性 行 列 を J'OA(=AJ'OA),点
G ま わ りの 慣 性 行 列 をGJ'OA,点
P ま わ りの 慣 性 行 列 をpJ'OAと
す る と,そ れ らの 間 に は 次 の よ う な 関係 が あ る。
(12.35) (12.36) 式(12.36)のrGPは
座 標 系 A で 表 さ れ た 代 数 ベ ク トル で あ る 。 す な わ ち,点
剛 体 A 上 の 点 と 考 え て い る 。 点 P も,同 式(12.35)右
辺 第 二 項 の 〓GMArAGは
辺 第 二 項 もrGPの
Quiz12.3オ
代 わ り にrPGを
様 に,こ
〓AMArGAと
G は
こ で は 剛 体 A 上 の 点 で あ る。 書 く こ と が で き,式(12.36)右
用 い て も よ い。
イ ラ ー の 運 動 方 程 式(5.2)に 使 わ れ て い る 記 号 は,す
系 Aで 表 さ れ た もの で,ダ ッ シ ュが つ い て い る。 す な わ ち,オ
べて座標
イラーの運動方程
式 は座 標 系 A で 表 され て い る 。こ の 式 を座 標 系 O で 表 す と どの よ う に な る だ ろ う か 。 座 標 変 換 を用 い て,す べ て の 変 数 を ダ ッ シュ が 付 か な い も の に 変 え て み よ。
12.4
質点系
質 点 系 と は複 数 の 質 点 が 集 ま っ た系 で あ る 。 剛 体 は多 数 の 質 点 が 集 ま っ て構 成
さ れ て い る と見 なす こ とが で き,弾 性 体 も 同様 で あ る。 ロ ボ ッ トも車 両 も質 点 系 で あ る。 本 書 の 対 象 は す べ て質 点 系 とい う こ とに な る。 質 点 系 の 各 質 点 を 1か ら順 に付 け た 番 号 で 呼 ぶ こ とに す る(図12.4)。 の 質 点 の 速 度 はVOi,質
量 はmiで,こ
i番 目
の 質 点 に は 作 用 力foiが 働 く。 ま ず,拘 束
の な い 自 由 な 質 点 系 を 考 え る と,質 点 iの 運 動 方 程 式 は 次 の よ うに 書 け る。
(12.37) この よ う な 式 が す べ て の 質 点 に つ い て 成 り立 つ が,そ
れ ら を次 の よ う に ま と め
て,系 全 体 の 運 動 方 程 式 を作 る こ とが で きる 。
(12.38) た だ し,
(12.39)
(12.40)
(12.41)
(12.42)
図12.4質
点系
m は3×3ス
カ ラ ー 行 列 を 対 角 的 に 並 べ た も の で あ り,v と f は3×1列
行 列 を縦
に 並 べ た もの に な っ て い る 。
自 由 な 質 点 系 を 適 当 に拘 束 して,剛 体 や 弾 性 体 が で き,さ 次 元 二 重 剛 体 振 子,ロ
らに拘 束 を加 え て 3
ボ ッ ト,車 両 を作 る こ とが で き る。 そ れ ら はい ず れ も拘 束
質 点 系 で あ る。 こ の 場 合,質
点 iは拘 束 力foiを 受 け,運 動 方 程 式 は 次 の よ うに
なる。
(12.43) こ れ を も と に,拘 束 質 点 系 全 体 の 運 動 方 程 式 を次 の よ う に書 くこ とが で き る。
(12.44)
(12.45)
なお,拘
束 と拘 束 力 に つ い て は,次 節 で改 め て 説 明 す る。 また,各
質点の位置
を ま と め て,次 の よ う に rを準 備 してお く。
(12.46)
(12.47)
12.5
剛体系
剛 体 系 と は複 数 の 剛 体 が 集 ま っ た 系 で あ る 。 こ れ は 質 点 系 の 特 別 な 場 合 で あ る が,ロ
ボ ッ トや 車 両 な ど多 くの機 械 の モ デ ル 化 に,剛 体 系 が 頻 繁 に用 い られ る 。
剛 体 系 の 各 剛 体 を 1か ら順 に 付 け た 番 号 で 呼 ぶ こ と に す る(図12.5)。 の 剛 体 の 重 心 速 度 はVoi,角
速 度 は Ω'oi,質量 はMi,慣
体 に は 重 心 位 置 に 等 価 換 算 した 作 用 力Foi,作
i番 目
性 行 列 はJ'oiで,こ
の剛
用 トル クN'oiが 働 く。 ま ず,拘 束
の な い 自 由 な 剛 体 系 を考 え る と,剛 体 iの 運 動 方 程 式 は 次 の よ うに書 け る。
(12.48) (12.49) こ の よ う な式 が す べ て の 剛体 に つ い て成 り立 つ の で,そ
れ らを 次 の よ うに ま と め
図12.5剛
体系
て 系 全 体 の 運 動 方 程 式 を作 る こ とが で きる 。
(12.50) (12.51) た だ し,
(12.52)
(12.53)
(12.54)
(12.55)
(12.56)
(12.57)
(12.58)
(12.59)
式(12.57)左
辺 の ∼ は,拡
構 成 要 素 の Ω'oiは3×1列 次,対
大 解 釈 し た 外 積 オ ペ レ ー タ ー で あ る(6.1節)。 行 列 で あ り,こ
Ω'の
れ を 基 に 作 っ た 交 代 行 列 Ω'oiを,順
角 的 に 並 べ た も の が Ω'で あ る 。
自 由 な 剛 体 系 に 拘 束 を 加 え る と,拘 束 剛 体 系 に な る 。 こ の場 合,剛 体 iは 重 心 位 置 に 等 価 換 算 し た 拘 束 力Foiと
拘 束 トル クN'oiを 受 け,運 動 方 程 式 は 次 の よ
う に な る。
(12.60) (12.61) 拘 束 力,拘 束 トル ク の 等 価 換 算 の 考 え 方 は12.1節
に 説 明 した もの と 同 じで あ る 。
拘 束 剛 体 系 全 体 の 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に書 け る。
(12.62) (12.63)
(12.64)
(12.65)
剛 体 系 全 体 を ま とめ た 記 号 と して,以 下 の よ うな もの も準 備 して お く。
(12.66)
(12.67)
(12.68)
(12.69)
(12.70)
並 べ 方 は,列 行 列 は縦 に,幅
の あ る もの,す
な わ ち,複 数 列 を持 つ もの は対 角 的
に並 べ て い る。 運 動 方 程 式 は,系 全 体 を ま と め て 添 え 字 の な い 変 数 を用 い た 式 も,個 々 の 剛 体 に 関す る 添 え字 の あ る 式 と 同形 に な っ て い る 。 以 下 の 関係 式 につ い て も同 じ こ とが い え る が,そ
う な る よ う に変 数 を定 め た の で あ る。
(12.71) (12.72) (12.73) (12.74) (12.75) (12.76) 最 後 の 二 式 の偏 微 分 で表 され た ヤ コ ビ行 列 は次 の よ う な構 成 に な っ てい る。
(12.77)
(12.78)
そ して,オ
イ ラ ー 角 と して狭 義 の ものが 使 わ れ て い る とす れ ば,対 角 的 に並 ん で
い る要 素 ブ ロ ック は 次 の よ う に書 け る。
(12.79)
(12.80)
C2,S2,C3,S3はcosθ2,sinθ2,cosθ3,sinθ3を 参 照)。
略 記 し た も の で あ る(7.3節
第13章
自 由 度,一 般 化 座 標 と 一 般 化 速 度 ,拘 束,拘 束 力
本 章 で は,表 題 どお り,自 由 度,一 般 化 座 標 と一 般 化 速 度,拘 束,拘 明 す る 。 こ れ 以 外 に,ホ
束力 を説
ロ ノ ミ ッ ク と シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な系 が 出 て く
る 。 拘 束 系 の 運 動 方 程 式 を 立 て る と きに必 要 に な る重 要 な概 念 ば か りで あ る。 二種 類 の 自由 度 を 説 明 す る 文 献 は 意 外 に少 な い が,ホ ル ノ ン ホ ロ ノ ミッ ク な 系 を考 え る場 合,こ
ロノ ミ ック な 系 と シ ンプ
れ に よ って 随 分 分 か りや す くな る。 本
書 は シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ック な系 まで を扱 っ て い て,拘
束 も ホ ロ ノ ミッ ク な も
の と シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ック な もの の 二 種 類 が あ る。 ホ ロ ノ ミ ック な拘 束 は最 も普 通 の 拘 束 で あ り,ホ ロ ノ ミ ック な系 は最 も普 通 の 系 で あ る。 ホ ロ ノ ミ ック以 外 の もの の 中 で 最 も簡 単 な もの が シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な も の とい え る。 な お,用
13.1
語 か ら受 け る取 っ 付 き難 さを 心 配 す る こ とは な い。
自由度
自 由 度 に は二 種 類 あ る 。 幾 何 学 的 自 由度 と運 動 学 的 自由 度 で あ る。 幾 何 学 的 自 由 度 は,時
間 が 与 え られ て い る状 態 で,系
を構 成 す るす べ て の 質 点
の 位 置 を決 め る た め に 必 要 十 分 な ス カ ラー 変 数 の 数 で あ る。 3次 元 空 間 を 自由 に 運 動 す る質 点 Pの 幾 何 学 的 自 由 度 は 3で あ る。ropの 三 成 分 を指 定 す れ ば位 置 が 完 全 に 決 ま り,二 つ の ス カ ラ ー 変 数 だ け で 完 全 な 位 置 決 め は で き な い か らで あ る。 自 由 な 質 点 が 三 つ あ れ ば幾 何 学 的 自由 度 は 9に な る。 3次 元 空 間 を 自 由 に 運 動 す る剛 体 の 幾 何 学 的 自 由 度 は 6で あ る 。 剛体 は,複 数 あ る い は 多 数 の質 点 で構 成 され て い る と考 え る こ とが で き るが,並 進 の 3自 由 度 と 回転 の 3自 由度 だ け を 持 っ て い る。 支 点 P をボ ー ル ジ ョ イ ン トで 拘 束 さ れ た コ マ A に つ い て 考 え る(図9.2参 照)。 コマ に は重 心 に 原 点 を 一 致 させ て座 標 系 A が 固 定 さ れ て い る。 支 点 P も コ
マ の 上 の 固 定 点 で あ る か ら,座 標 系 A か ら見 た 支 点 Pの 位 置rAPは 定 数 で あ る (図9.3)。
こ の 支 点 P を慣 性 座 標 系 O の 原 点 と,常 時,一
致 させ る。 ボ ー ル ジ
ョイ ン トと は二 点 を 一 致 させ る拘 束 で あ る。 現 実 の ボ ー ル ジ ョイ ン トは 回 転 範 囲 に 制 限 が あ るが,理 想 的 な ボ ー ル ジ ョイ ン トで はそ の よ うな 制 限 を設 け ず,二 点 の 一 致 だ け を 条 件 とす る。 こ の よ うな ボ ー ル ジ ョイ ン トは P 点 の 並 進 の 3自 由 度 を奪 い,P 点 まわ りの 回転 の 自 由 度 だ けが 残 る の で,ボ
ー ル ジ ョイ ン トで支 点
P を拘 束 され た コマ の 幾 何 学 的 自由 度 は 3に な る。 剛体 振 子(11.1節)の
幾 何 学 的 自由 度 は 1で あ る 。 θOAが 定 ま れ ば,剛 体 振 子
を構 成 し て い る す べ て の 点 の 位 置 が 定 ま る。 3次 元 二 重 剛 体 振 子(11.1節),3 次 元 三 重 剛 体 振 子(11.3節)の
幾 何 学 的 自 由 度 は,そ れ ぞ れ,2 と 3で あ る。
θOAと θABは 3次 元 二 重 剛 体 振 子 の 位 置 と姿 勢 を定 め る た め に 必 要 十 分 な変 数 で あ り,3 次 元 三 重 剛体 振 子 の 位 置 と姿 勢 を完 全 に 定 め る た め に θOAと θABと θBC が 必 要 で,ま
た,十 分 で あ る 。
剛 体 振 子 は座 標 系 O のX-Y平
面 内 を運 動 す る の で 2次 元 モ デ ル と考 え る こ と
が で き る 。 3次 元 二 重 剛 体 振 子,3 次 元 三 重 剛体 振 子 も ピ ン ジ ョイ ン ト B が,座 標 系 A お よ び B の X軸 の 方 向 で は な く Z軸 の 方 向 に 沿 っ て い れ ば,こ 次 元 モ デ ル に な り,そ れ ぞ れ,2
れ らは 2
次 元 二 重 剛 体 振 子,2 次 元 三 重 剛 体 振 子 に な
る 。 た だ し,こ の 限 りで は そ れ ぞ れ の 幾 何 学 的 自由 度 に変 化 は な い 。 ピ ン ジ ョイ ン トの 向 きが 斜 め に な っ て もい て も 自 由度 は 同 じで あ る。 剛 体 振 子 を 2次 元 問 題 と考 え,さ
ら に,O'点
を O に 一 致 させ ず に,X 軸 に沿
っ て 動 か す こ と を考 え よ う。 そ の X 座 標 値 は 時 間 の 関 数 と して 与 え る も の とす る 。 そ の よ う な系 の 幾 何 学 的 自 由 度 も 1で あ る。 Y 軸 に 沿 っ て 動 か し て も,XY 平 面 上 を 動 か して も,そ の 動 き を時 間 の 関 数 と して 与 え る 限 り,自 由 度 は 1で あ る。 さ ら に,3 次元 問 題 と して 考 え て も 同様 で,ピ
ンジ ョイ ン トの 位 置 だ け で な
く,空 間 に対 す る ピ ンの 向 き を 時 間 の 関 数 と して 動 か して も幾 何 学 的 自 由 度 は, や は り,1 で あ る。 時 間 に よっ て動 か さ れ る部 分 に 自由 度 は な い。 次 に,2 次 元 の 二 重 剛 体 振 子 で,ピ
ン ジ ョ イ ン ト B の 回 転 角 θABを時 間 の 関 数 と して 与 え る
場 合 を考 え る。 この場 合 も,時 間 に よ っ て 動 か さ れ る部 分 の 自由 度 は な く,幾 何 学 的 自由 度 は 1に な る。 3次 元 モ デ ルで 考 え て も 同様 で あ る。 運動 学 的 自由 度 は,時 間 とす べ て の 点 の 位 置 が与 え ら れ て い る 状 態 で,系
を構
成 す るす べ て の質 点 の 速 度 を 決 め る た め に必 要 十 分 な ス カ ラ ー 変 数 の 数 で あ る。 3次 元 空 間 を 自 由 に 運 動 す る 質 点 P の 運 動 学 的 自 由 度 は 3で あ る。Vopの 三 成 分 を指 定 す れ ば速 度 が完 全 に決 ま り,二 つ の ス カ ラー 変 数 で 速 度 を完 全 に 決 め る こ と は で き な い か らで あ る。 自 由 な 質 点 が 三 つ あ れ ば運 動 学 的 自由 度 は 9に な る。 3次 元 空 間 を 自由 に運 動 す る 剛 体 A の 運 動 学 的 自 由 度 は 6で あ り,支 点 P を ボ ー ル ジ ョイ ン トで拘 束 さ れ た コ マ A の 運 動 学 的 自 由 度 は 3で あ る 。 剛体 振 子 の 運動 学 的 自由 度 は 1で,θOAの 時 間微 分 ωOAが 決 ま れ ば,剛 体 上 の す べ て の 点 の 速 度 が確 定 す る。 3次 元 二 重 剛 体 振 子 の 運 動 学 的 自 由 度 は2,3次
元三重 剛体振
子 の 運 動 学 的 自由 度 は 3で あ る。 剛 体 振 子 の 支 点 位 置 を時 間 の 関 数 と して与 え る モ デ ル も,二 重 剛体 振 子 の θABを 時 間 の 関 数 と して 与 え る モ デ ル も,運 動 学 的 自 由度 は 1で あ る。 時 間 の 関 数 と して 与 え られ る部 分 に は 運 動 学 的 自 由 度 は な い。
13.2
ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系,シ
ン プル ノ ンホ ロノ ミ ックな系
幾 何 学 的 自由 度 と運 動 学 的 自 由度 が 等 しい系 をホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 と呼 ぶ 。 自 由 な 質 点,自
由 な 三 質 点,自
由 な 剛 体,支
点 を ボ ー ル ジ ョイ ン トで 拘 束 した コ マ ,
剛 体 振 子,3 次 元 二 重 剛 体 振 子,3 次 元 三重 剛 体 振 子,支
点 を時 間 の 関 数 で動 か
す 剛 体 振 子,θABを 時 間 の 関 数 と して与 え る 二 重 剛 体 振 子 は いず れ も ホ ロ ノ ミ ッ ク な系 で あ る。 ホ ロ ノ ミ ック な 系 は最 も普 通 な もの で あ り,機 械 の モ デ ル化 で 出 会 う系 の 多 くは ホ ロ ノ ミッ ク で あ る。 ホ ロ ノ ミッ ク以 外 の系 の 中 で,最
も簡 単 な もの は シ ン プル ノン ホ ロ ノ ミ ッ ク な
系 で あ る 。 本 書 で は シ ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な 系 ま で を扱 うが,実 用 上,こ
こ
まで 理 解 して い れ ば十 分 で あ る。 シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な系 は,幾 何 学 的 自 由 度 に比 べ,運
動 学 的 自由 度 が 少 な い 。 そ の よ うな 事 例 に,舵 付 き帆 掛 け 舟 と筆
者 が 呼 ん で い る もの,転 動 球,転 動 円 盤 な どが あ る 。 自動 車 な どで も,タ イ ヤ の 横 滑 りを 許 さ な い モ デ ル や 駆 動 輪 位 置 の 前 進 方 向速 度 を一 定 とす る モ デ ル な ど, シ ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な モ デ ル が使 わ れ る場 合 が あ る。
13.3
シンプル ノンホロノミ ックな系の事例
舵 付 き 帆 掛 け 舟 は,湖
に浮 か ぶ 舟 を 上 空 か ら眺 め た モ デ ル で あ る。 舟 の傾 き角
を無 視 で きる 場 合 を 考 え て い て,そ の 結 果,舟 に な る(図13.1)。
は平 面 上 を 2次 元 運 動 す る剛 体 A
舟 は帆 と水 に潜 っ て い る舟 底 か ら様 々 な 力 を受 け る が,そ れ
らの 力 は作 用 力 と考 え る こ と にす る。 舟 の 後 部 に舵 が 付 い て い て,こ の 部 分 は特 に横 方 向 へ の 動 きに 対 す る抵 抗 が 大 き い 。 そ こ で,舵
の 取 り付 け 点 P で は舵 の
横 方 向 速 度 が 常 に ゼ ロ に な っ て い る と考 え る こ と にす る 。 簡 単 の た め に 舵 は 舵 角 ゼ ロ の 状 態 に 固 定 して あ る も の と し,舟 に 固 定 した 座 標 系 の X 軸 を 前 進 方 向 と す る。 この モ デ ル の 幾 何 学 的 自 由度 は,自
由 な 2次 元 剛 体 と同 じで,3 で あ る。 す な
わ ち,平 面 上 の ど こへ で も移 動 で き,ま た,ど
の 方 向 に 向 く こ と もで き る の で,
位 置 と姿 勢 を表 現 す るた め に 三変 数 が 必 要 で あ る。 一 方,運 動 学 的 自由 度 は 2で あ る。 点 Pで 考 え る と,座 標 系 A の X 軸 方 向 の 速 度 は 自由 に 定 め る こ とが で き, また,P 点 ま わ りの角 速 度 も 自 由 で あ るが,Y 軸 方 向(横 方 向)の ロで あ る 。 他 の 点 で 考 え て も,Y 軸 方 向(横 定 め る こ とが で きず,適
方 向)の
当 な 二 変 数 で す べ て の 点 の 速 度 を表 す こ とが で きる。 な
お,舵 角 を時 間 の 関 数 で変 化 させ る と して も,各 転 動 球 とは,平 のX-Y平
面)に
速 度 は常 に ゼ
速 度 と舟 の 角 速 度 を独 立 に
自由 度 に変 化 は な い 。
面 上 を転 動 す る球 A で あ る 。 球 は 常 に 一 点 で転 動 面(図13.2 接 触 して い る。 さ ら に,そ
の接 触 点 で 滑 ら な い も の とす る。 た
だ し,接 触 点 を 通 る鉛 直 軸 まわ りの 回転 は 許 さ れ る 。 転 動 円盤 も似 て い る。 平 面 上 を 転 が る10円
玉 の イ メ ー ジ で あ る が,厚
図13.1舵
さ は無 視 す る。 そ して,完 全 に倒 れ
付 き帆掛 け舟
図13.2
水 平 面(X-Y平
面)上
を滑 らず に転 が
る球(P は接 触 点,Q は瞬 間接触 点)
図13.3接
触 点 で滑 らな い転 動 円 盤
た 状 態 ま で は含 め ず に,そ れ 以 前 の 運 動 だ け を 考 え る こ と にす る。 円盤 A は 円 周 上 の 一 点 で 転 動 面 と接 し,そ の点 で 滑 らな い もの とす る。 以 上 の 三 つ は いず れ も シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な系 で あ る。 た だ し,い ず れ も上 記 の よ う なモ デ ル の 考 え方 の結 果,シ
ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック に な っ た 。 舵
付 き帆 掛 け舟 で は,舵 の横 方 向 の抵 抗 が 大 き くて も少 しは 動 け る とす れ ば,運 動 学 的 自由 度 も 3の ホ ロ ノ ミ ッ ク な系 に な る。 転 動 球 の 場 合,転
動 面 と一点 で 接 触
す る 条 件 は そ の ま ま で,接 触 点 で の滑 りに対 して 摩 擦 力 が働 くよ う な モ デ ル を考 え る と,挙 動 は 近 似 的 に 類 似 で あ っ て も,自 由 度 5の ホ ロ ノ ミ ッ ク な系 に な る 。
一 点 で接 触 す る 条件 も緩 和 し,硬 い バ ネ とダ ン ピ ン グ要 素 で 置 き換 え れ ば 二 つ の 自 由度 は 6に な る 。 転 動 円 盤 も同 様 で あ る。 転 動 球 や 転 動 円 盤 の よ うに接 触 点 が 剛体 上 を移 動 した り,接 触 した り離 れ た り す る な ど,接 触 状 況 が 変 化 す る場 合,こ と路 面,自 動 車 の タ イ ヤ と路 面,鉄 レー ヤ ー の 足(体)な
れ を接 触 問 題 と呼 ぶ 。 歩 行 ロ ボ ッ トの足
道車 両 の 車 輪 と レー ル,サ
ッ カー ボ ー ル とプ
ど,接 触 問題 は い た る と こ ろ に あ る。 接 触 問 題 は,接 触 部
位 にお け る形 状 が 重 要 に な る こ とが 多 く,そ の モ デ ル 化 の 考 え 方 に よ っ て解 法 が 大 き く変 化 す る。 ま た,高 度 な 手法 を必 要 と した り,解 を得 る こ とが 困 難 にな っ た りす る場 合 が あ る 。 今 後 の技 術 の 発 展 が 望 ま れ る 分 野 で もあ る。
Quiz13.1
一 点 で 接 触 し,滑 ら な い転 動 球 の 幾 何 学 的 自由 度 と運 動 学 的 自 由
度 は そ れ ぞ れ い くつ で あ ろ うか 。ま た 一 点 で接 触 し,滑 らな い転 動 円盤 は ど うか 。 Quiz13.2
2次 元 平 面 内 を運 動 す る 円 盤 が,X 軸 に一 点 で 接 しなが ら滑 らず
に転 動 して い る。 この 系 は ホ ロ ノ ミ ック か,シ
13.4
ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ クか 。
一般化座標
系 を構 成 す る す べ て の 質 点 の 位 置 を 定 め る た め に使 わ れ る変 数 を,一 般 化 座 標 とい う。 自 由 な 質 点 Pの 位 置 を定 め る た め に はropの 三 成 分 が使 われ る こ とが 多 い 。 円 筒 座 標 や 局 座 標 が 使 わ れ る こ と もあ る が,い
ず れ の 場 合 も三 変 数 で あ る。
自由 な剛 体 に 固 定 した 座 標 系 原 点 の 位 置 を表 す 場 合 も 同様 で あ るが,回 表 す 変 数 と して は オ イ ラー 角 〓OAか,オ オ イ ラ ーパ ラ メー タの 場 合,自 な るが,四
イ ラ ー パ ラ メ ー タEOAが
転姿勢 を
用 い られる。
由 度 3の 回転 姿 勢 に対 して 四 変 数 を用 い る こ とに
変 数 の す べ てが 独 立 な わ け で は な く,二 乗 和 が 1に な る拘 束 条 件 を伴
って い て,差
し引 きで 自 由 度 3に対 応 して い る。 二 つ の ピ ン ジ ョイ ン トを直 交 さ
せ た 3次 元 二 重 剛体 振 子 で は な く,二 つ の ピ ン ジ ョイ ン トを平 行 に 取 り付 け て鉛 直 平 面 内 を運 動 す る 2次 元 二 重 剛 体 振 子 を考 え た 場 合,θOAと い て も,あ る い は,θOAと もあ る(図13.4参
θABの二 変 数 を用
θOB(=θOA+θAB)を 用 い て も よい 。 別 の 変 数 の 取 り方
照)。
すべ ての質 点の位置 決め に必要 十分 な一般化座標 の数 は幾何 学的 自由度の数で
あ る。 そ の よ うに 選 ん だ 変 数 を独 立 な一 般 化 座 標 と呼 ぶ 。 単 に 一 般 化 座 標 とい う だ け で独 立 な もの を意 味 す る場 合 もあ り,従 属 な もの を含 む場 合 も あ るが,文 脈 な どか ら判 断 で き る はず で あ る。 一 般 化 座 標 を本 書 で は,Q
と表 す こ とに す る。
(13.1)
多 くの 場 合,Q
は 独 立 な 一 般 化 座 標 で あ る が,と
もあ る 。 な お,力
き に は従 属 な も の を含 む 場 合
学 の 文 献 で は,一 般 化 座 標 に小 文 字 の q を用 い,大
は 一 般 化 力 とす る こ と が 多 い の で,注
文字 の Q
意 さ れ た い。 本 書 で は,一 般 化 力 に Q を
用 い る こ とは な い。 自 由 な 質 点 系 の 場 合,r を独 立 な 一 般 化 座 標 とす る こ とが で きる が,拘 束 質 点 系 の 場 合,r は Q と tの 関 数 で あ る。
r=r(Q,t) R と 〓 は,自 系 の 場 合,R
(13.2)
由 な 剛 体 系 の 独 立 な 一 般 化 座 標 とす る こ と が で き るが,拘
束剛体
と 〓 は Q と tの 関 数 で あ る。
R=R(Q,t)
(13.3)
〓=〓(Q,t)
(13.4)
E と C も,Q
と tで 定 ま る 。
E=E(Q,t)
(13.5)
C=C(Q,t)
(13.6)
す な わ ち,位 置 レベ ル の 変 数 は,す べ て一 般 化 座 標 Q と時 間 tの 関 数 で あ る。
13.5
一般化速度
系 を構 成 す る す べ て の 質 点 の 速 度 を定 め る た め に使 わ れ る変 数 を,一 般 化 速 度 と い う。 自 由 な 質 点 Pの 速 度 を定 め る た め に はVopの 三 成 分 が 使 わ れ る こ とが 多 い。 円筒 座 標 や 局 座 標 の 時 間微 分 が 使 わ れ る こ と もあ る が,い ず れ の 場 合 も三 変 数 で あ る。 自由 な剛 体 の 座 標 原 点 の 並 進 速 度 を 表 す 場 合 も同 様 で あ るが,回 転 姿 勢 の 時 間 変 化 を表 す 変 数 と し て は,角 速 度 Ω'OA,オ イ ラ ー 角 の 時 間 微 分 〓OA, オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 時 間 微 分EOAな
どが 用 い ら れ る。 回 転 姿 勢 の 時 間 的 変 化
図13.4さ
は 自 由 度 3 で あ る が,EOAは
まざ ま な一般 化 座 標,一 般 化 速 度 の候 補
四 変 数 で あ り,E〓AEOA=0な
次 元 二 重 剛 体 振 子 の 場 合,θOAと も,あ
る い は,θOAと
般 化 速 度 に,す な い(図13.4参
θABの 時 間 微 分,ωOAと
θOBの 時 間 微 分,ωOAと
る 拘 束 条 件 を 伴 う 。2 ωABの 二 変 数 を 用 い て
ωOBを 用 い て も よ い 。 そ し て,一
で に 選 択 した 一 般 化 座 標 の 時 間微 分 以 外 の 変 数 を選 ん で もか ま わ 照)。
す べ て の 質 点 の 速 度 を決 め る た め に 必 要 十 分 な 一 般 化 速 度 の 数 は 運 動 学 的 自由 度 の 数 で あ る 。 そ の よ う に 選 ん だ変 数 を独 立 な一 般 化 速 度 と呼 ぶ 。 単 に一 般 化 速 度 とい うだ け で 独 立 な もの を意 味 す る場 合 もあ り,従 属 な もの を含 む 場 合 もあ る が,文 脈 な ど か ら判 断 で き る は ず で あ る。 シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 で は, 独 立 な 一 般 化 速 度 の 数 は独 立 な一 般 化 座 標 の 数 よ り少 な い。 独 立 な 一 般 化 速 度 を,本 書 で は,H で 表 す こ と にす る 。
(13.7)
自由 な質 点系 の 場 合,v を独 立 な 一 般 化 速 度 とす る こ とが で き るが,拘 系 の 場 合,v は H と Q と tの 関 数 に な る。 まず,式(13.2)を 次 の よ う に な る。
束質 点
時 間 で微 分 す る と,
(13.8)(注)
r は Q と tの 関 数 で あ る か ら,v
は Q と Q と tの 関 数 に な り,さ
て 一 次 式 に な っ て い る 。 す な わ ち,rQとrtは
Q と tの 関 数 で,速
ら に,Q に つ い 度 レベ ル の 変
数 に は 依 存 し て い な い 。 こ の よ う に 速 度 レベ ル の 変 数 の 関 係 は 線 形 関 係 に な る が,Q
と H の 関 係 も シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 ま で は 線 形 で あ り,一
般 に,
次 の よ うに表 す こ とが で き る。
(13.9) ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 の 場 合,A(Q,t)は
正 方 行 列 だ が,シ
ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック
な 系 の 場 合,A(Q,t)は
縦 長 の 長 方 行 列 に な る 。 い ず れ に し て も,こ
(13.8)に
は Q と H と tの 関 数 に な り,H
代 入 す る と,v
の 式 を式
の一 次式 になる。そ の
式 は 次 の よ う に表 現 し直 す こ とが で き る。
(13.10) VHとVHは
Q と tの 関 数 で あ る が,H
分 し た も の で あ る が,VHは な い 。VHは
v を H で 偏 微 分 し た も の で は な く,H
v を H で 表 し た 場 合 の,H
自由 な 剛体 系 の 場 合,V 束 剛 体 系 の 場 合 は,質
に は 依 存 し て い な い 。VHは
vを H で偏微 とい う変 数 も
に 無 関 係 な残 りの 項 を意 味 して い る。
と Ω'を 独 立 な 一 般 化 速 度 とす る こ とが で き る が,拘
点 系 の 場 合 と同 様 に,V
と Ω'を H の 線 形 な 式 と して 表
す こ とが で きる。
(13.11) (13.12) こ の 場 合 も,VH,VH,Ω'H,Ω'Hは,い は,そ
れ ぞ れ,V
と Ω'を
ず れ も,Q
と tの 関 数 で あ る 。VH,Ω'H
H で 偏 微 分 し た も の で あ り,VH,Ω'Hは
H に無 関係
な 残 りの項 で あ る。
(注)偏 微 分 を添 え字 を用 いて 表 す 場合,添 え 字 に書 か れ る変 数 が列 行 列 で あ れ ば,そ の添 え字 は 太 文 字 で表 す の が 自然 で あ るが,第
皿部 以 降 で は,原 則 と して添 え字 に 太 文 字 を用 い ない こ
とに して い る。 偏微 分 の対 象 に な っ てい る関 数 も含 め て,変 数記 号 自体 が 別 の 意 味 の添 え字 を 持 つ な ど,複 雑 に な っ て くる と小 さ い文 字 は見 難 くな っ て くる 。 その た め の 止 む を得 な い処 置 で あ る 。読 者 は,添 え字 の場 合 は 細 文 字で も列行 列 の 可 能性 が あ る こ とに注 意 され た い。
Quiz13.3舵
付 き帆 掛 け船,転
動 球,転
動 円盤,2 次 元 二重 剛 体 振 子 で ピ ン
ジ ョイ ン ト B の 角 度 θABを時 間 の 関数 と して与 え る モ デ ル,[Quiz13
.2]の モ デ
ル(X 軸 に 一 点 で 接 しな が ら滑 らず に 転 動 す る 2次 元 円 盤)に つ い て ,独 立 な一 般 化 座 標 と独 立 な 一 般 化 速 度 に どの よ う な 変 数 が 適 当 か,検 討 せ よ。
13.6
拘束
自 由 度 を減 らす 条 件 を拘 束,ま
た は,拘 束 条 件 と呼 ぶ 。 拘 束 に も二 種 類 あ る。
ホ ロ ノ ミ ッ ク拘 束(幾 何 学 的 拘 束)と 拘 束)で
シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ック 拘 束(運 動 学 的
ある。
● ホ ロノ ミ ック 拘束(幾 何 学 的拘 束) ホ ロ ノ ミ ッ ク拘 束(幾 何 学 的 拘 束)は,幾
何 学 的 自由 度 と運動 学 的 自 由度 の 両
方 を,同 数 だ け,減 少 させ る。 コ マ に用 い た ボ ー ル ジ ョイ ン トは二 点 を 一 致 させ る拘 束 で あ る 。 この 拘 束 は, 座 標 系 O か ら見 た 支 点 P の 位 置ropを 用 い て,次 の よ う に表 され る。 roP=0
(13.13)
ス カ ラ ー レベ ル で 考 え る と,こ れ は 位 置 に 関 して 三 つ の 式 を含 ん で い て,こ の 拘 束 に よ り,幾 何 学 的 自由 度 は 3だ け 少 な くな る。 自 由 な 剛 体 の 幾 何 学 的 自由 度 は 6で あ っ た か ら,支 点 を ボ ー ル ジ ョイ ン トで拘 束 さ れ た コ マ の 幾 何 学 的 自由 度 は 3に な る 。 式(13.13)を
時 間 で 微 分 す る と,次
の 式 が 得 られ る 。
VoP=0
(13.14)
こ の式 は速 度 に 関 して 三 つ の 式 を含 ん だ 拘 束 で あ る。 こ の 式 に よ り,運 動 学 的 自 由 度 が 3だ け 減 少 す る。 自由 な 剛 体 の運 動 学 的 自由 度 は 6で あ っ たか ら,支 点 を ボ ー ル ジ ョイ ン トで 拘 束 され た コマ の運 動 学 的 自由 度 は 3に な る。 式(13.14)は
式(13.13)を
時 間 微 分 し て 得 ら れ た 。 逆 に,式(13.14)を
ば 式(13.13)が
得 られ る。 ホ ロ ノ ミ ッ ク とは
ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 の 場 合 は,速 作 る こ とが で きる 。
積分す れ
「積 分 で き る 」 と い う 意 味 で あ り,
度 レベ ル の 拘 束 を 積 分 し て 位 置 レ ベ ル の 拘 束 を
三 者 の 関 係 を 用 い て,式(13.13)は
次 の よ う に表 現 す る こ とが で きる。
(13.15) こ の 式 は,ボ ー ル ジ ョイ ン トの 拘 束 を コマ の 重 心 位 置 と 回転 姿 勢 の 関 係 と して 表 した もの で あ る。 コマ の独 立 な 一 般 化 座 標 と して オ イ ラ ー 角 〓OAを 選 ん だ とす る と,回 転 行 列COAは
〓OAか ら 求 め る こ と が で き,こ の 式 は 〓OAとROAを
独
立 に 定 め られ な い こ とを 示 して い る。 す な わ ち,拘 束 の表 現 は,そ の 拘 束 が な け れ ば独 立 な は ず の 変 数 間 の 関 係 で あ る。 一 方,こ そ れ は 〓OAに よ っ てROAを
の 式 をROAに
つ い て 解 く と,
表 した こ とに な る 。 こ の こ とか ら分 か る よ う に,拘
束 を表 現 す る こ と と,独 立 な 一 般 化 座 標 で 他 の 位 置 レベ ル 変 数 を 表 現 す る こ と は,同
じこ とで あ る 。 また,こ
の式 の よ う に,剛 体 を代 表 す る 重 心 位 置 と回 転 姿
勢 を用 い て拘 束 を表 現 す る と,後 述 す る よ うに拘 束 の 一 般 的 な 取 り扱 い が 可 能 に な っ て,便
利 な こ とが多 い 。
式(13.15)を 時 間 微 分 す る と,式(13.14)に
対 応 した次 の 式 が 得 られ る 。
(13.16) こ の 式 は,ボ ー ル ジ ョイ ン トの速 度 レベ ル の拘 束 を,剛 体 を代 表 す る二 つ の 速 度 レベ ル変 数 で あ る重 心 速 度 と角 速 度 の 関 係 と して 表 した もの で あ る。 そ して,こ の 式 の 場 合 も独 立 な Ω'OAによ っ てVOAを
表 し た と考 え る こ とが で き る。 剛 体 に
か か わ る他 の 種 類 の拘 束 も,剛 体 の 重 心 位 置 と回 転 姿 勢,重
心 速 度 と角 速 度 の 関
係 と して 表 現 で きる 。 剛 体 振 子 に用 い られ た ピ ン ジ ョ イ ン トA の 位 置 レベ ル の拘 束 は,次
の三つ の
式 で 表 現 で き る。
(13.17) (13.18) (13.19) 最 初 の 式 は,点
O と O'が 一 致 し て い る条 件 で あ り,残
りの 二 つ は,座 標 系 A
の X 軸 と Y 軸 が 座 標 系 O の Z軸 と直 交 して い る 条 件 で あ る 。 これ ら を時 間微 分 す る と速 度 レベ ル の 拘 束 条 件 が得 られ る 。
(13.20) (13.21) (13.22)
位 置 レベ ル の場 合 も速 度 レベ ル の場 合 も,最 初 の式 で 3自 由 度,残
りは 1自由 度
ず つ で,合 計 5自 由 度 を拘 束 し て い る。 3次 元 の ピ ン ジ ョイ ン トは 幾 何 学 的 自由 度 と運 動 学 的 自 由 度 を 5だ け 減 少 させ る 。 そ の た め,剛 体 振 子 の 幾 何 学 的 自由 度 と運 動 学 的 自 由 度 は 1に な り,3 次 元 二 重 剛体 振 子 の 幾 何 学 的 自 由度 と運 動 学 的 自由 度 は 2 に な っ た 。 三 質 点 剛 体 で は,各 質 点 間 の 距 離 は一 定 に拘 束 され て い る 。 距 離 一 定 の 拘 束 は 幾 何 学 的 自 由 度 と運 動 学 的 自 由 度 を 1だ け 減 少 させ る ホ ロ ノ ミ ック拘 束 で あ る。 た とえ ば,2 番 目 の 質 点 と 3番 目 の 質 点 の 距 離 が 一 定 に な っ て い る拘 束 は 次 の よ う に表 され る。
(13.23) あ る い は,も
っ と 簡 潔 に,
(13.24) こ の よ うな 拘 束 が 三 つ あ り,そ れ に よ っ て 自由 な 三 質 点 と三 質 点 剛 体 の 自 由度 の 差 が 説 明 で き る。 な お,r23は
座 標 系 A で表 さ れ た 代 数 ベ ク トル で あ る。
2次 元 平 面 を 自由 に運 動 す る剛 体 の 幾 何 学 的 自由 度 と運 動 学 的 自 由 度 は 3で あ る。 これ は 3次 元 の 自 由 な 剛 体 を 2次 元 に拘 束 した結 果 で あ る。 2次 元 平 面 を 自 由 に 運 動 す る 剛 体 を 2次 元 の ピ ン ジ ョイ ン トで拘 束 す る と 自由 度 1の 剛 体 振 子 に な る 。2次 元 の ピ ン ジ ョイ ン トは 2 自由 度 を 拘 束 す る ホ ロ ノ ミ ッ ク拘 束 で あ る。 読 者 は,こ れ らの 拘 束 を 数 式 の 形 で表 現 で き るか ど うか,確
認 され た い 。
ホ ロ ノ ミ ック拘 束 だ け を含 む系 をホ ロ ノ ミ ック な 系 と呼 ぶ 。 有 限 個 の 質 点 か ら な る系 を 考 え,す べ て の 質 点 が 自 由 な場 合 は 幾 何 学 的 自由 度 と運 動 学 的 自由 度 は 同 数 で あ る が,そ
の 系 に ホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 を持 ち込 ん で も幾 何 学 的 自 由度 と運
動 学 的 自 由 度 は 同数 ず つ 減 少 す る の で,両 者 の 数 は等 しい 。 した が って,ホ
ロノ
ミ ッ ク な系 は 幾 何 学 的 自 由度 と運 動 学 的 自 由度 が 等 しい の で あ る。
● シ ン プ ル ノ ン ホ ロノ ミ ック拘 束(運 動 学 的 拘 束) シ ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク拘 束(運
動 学 的 拘 束)は,運
動 学 的 自由 度 だ け を減
少 させ る 。 舵 付 き帆 掛 け 舟 の 舵 の 取 り付 け点 Pで は横 方 向,す 方 向 の 速 度 が 常 に ゼ ロ で あ る が,こ
な わ ち,座 標 系 A の Y 軸
の 拘 束 は 次 の よ う に 表 す こ とが で きる(図
13.1参
照)。
(13.25)
v'OPY=0 vOPは 慣 性 系 O か ら 観 察 し た 点 P の 速 度 で,V'OPはvOPを で あ る 。 そ し て,v'OPYはV'OPの
座 標 系 A で 表 し た もの
Y 成 分 で あ る 。 こ こ で は,す
動 す る 剛 体 と考 え て い る の で,V'OPも
2 次 元 の 代 数 ベ ク トル(2×1列
え て い る 。 こ の 式 は 速 度 に 関 す る 線 形 な 等 式 で あ る が,積 ち,対
で に,舟
が 2次 元 運 行 列)と
考
分で きない。す なわ
応 す る位 置 レベ ル の拘 束 条 件 が 存 在 し ない 。 この よ うな 拘 束 を シ ンプ ル ノ
ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 と呼 ぶ。 この 拘 束 に よ り運 動 学 的 自 由 度 が 1だ け 減 少 す る 。 な お,式(13.25)が (13.25)を,舟
積 分 で きな い こ とは 数 学 的 に説 明 で き る は ず で あ る 。 式
の 重 心 速 度V'OAと
角 速 度 ωOAで 表 す と 次 の よ う に な る 。
(13.26) 重 心 速 度V'OAも
2次 元 の 代 数 ベ ク トル で,こ の 式 は重 心 の A 座 標 系 Y 方 向 の 速
度 成 分 と角 速 度 の 間 の拘 束 を 表 して い る 。 転 動 球 は 二 種 類 の 拘 束 条 件 を 含 ん で い る。 一 つ は 転 動 球 A が転 動 面 と一 点 で 接 して い る ホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 で,位 置 レベ ル,お
よ び,速 度 レベ ル の 式 は次 の
よ うに 書 け る 。
(13.27) (13.28) 重 心 は 球 の 中 心 と一 致 して い て,そ の 点 が 原 点 に な る よ う に 座 標 系 A が 固 定 さ れ て い る。 接 触 点 は P で,こ で あ り,ま た,こ を 作 る た め にDzが
の 点 は球 の 中 心 点 A の真 下 に あ る。 ρは 球 の 半 径
の モ デ ル で は 座 標 系 O の Z軸 が 鉛 直 上 方 で,そ 用 い られ て い る(図13.2参
の方 向の成分
照)。 接 触 点 P の 球 上 の 位 置 は,
次 の 式 で求 め る こ とが で きる 。
(13.29) 一 点 で 接 触 して い る拘 束 は 幾 何 学 的 自由 度 と運 動 学 的 自 由度 を 1ず つ 減 少 させ て い る。 こ こ で,こ
の 瞬 間,接 触 点 P に 一 致 して い て 剛 体 A に 固 定 され て い る点 Q を
考 え る。 そ の 点 の慣 性 系 か ら見 た速 度 は 次 の よ う に 表 され る 。
(13.30) こ の 式 の 中 のrAQは,式(13.29)と
同 じ式(添
え 字 の P を Q に 変 え た 式)で
計算
で き る が,点
Q は 剛体 A 上 の 固 定 点 で あ るか ら,時 間微 分 に対 し て は 定 数 と し
て 扱 わ な け れ ば な ら な い 。 こ の よ うに 考 え た 点 Q を瞬 間 接 触 点 と呼 ぶ こ とに す る 。 転 動 球 が接 触 点 で滑 ら な い 条件 は,こ のVOQを 用 い て 次 の よ う に表 す こ とが で き る。
(13.31) (13.32) こ れ ら が 二 番 目 の 種 類 の 拘 束 で,対
応 す る位 置 レベ ル の 拘 束 が な くシ ンプ ル ノ ン
ホ ロ ノ ミ ッ クで あ る。 こ れ ら に よ っ て 運 動 学 的 自由 度 だ けが 2減 少 して い る。 式(13.28)と(13.31),(13.32)を
ま と め て,次
の よ う に書 くこ とが で き る。
(13.33) こ の 式 は二 種 類 の 拘 束 を含 ん で い る が,こ の ま ま運 動 方 程 式 の作 成 に用 い る こ と が で き る。 ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 以 外 に シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 だ け を含 む 系 を, シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 と呼 ぶ 。 シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 に よ っ て,系
の運 動 学 的 自 由度 は 幾 何 学 的 自由 度 よ り少 な くな っ て い る 。
● 質点系の拘束の一般形 自由 な質 点 系 を対 象 と した ホ ロ ノ ミ ッ ク拘 束 は,一 般 に次 の よ う な形 に 表現 で き る。
(13.34) こ の 式 は rの 自 由度 を限 定 して い る 関係 で あ り,式(13.2)の
独立 な一般化座標 Q
に よ る表 現 を別 の 形 で 表 現 した も の とい え る。 この 式 を時 間微 分 す る と次 の よ う になる。
(13.35) Ψ の 時 間 微 分 を Φ と し た。 Φ は r と v と tの 関 数 で あ る が,v に つ い て は一 次 式 で あ る。 そ こ で 次 の よ うに 書 き直 す こ とが で き る。
(13.36) Φvは Φ を vで 偏 微 分 した もの で あ る。 Φvは Φ を v で 偏 微 分 した も の で は な
く,Φ の 中 で vに無 関係 な残 りの 項 を意 味 して い る。 も と も と,v とい う変 数 も な い 。 Φvと Φvは r と tだ け の 関 数 で,速
度 レベ ル の 変 数 は 含 ま れ て い な い 。
この 式 は vの 自由 度 を 限 定 して い る関 係 で あ り,式(13.10)の 独 立 な 一 般 化 速 度 H に よ る表 現 を 別 の 形 で 表 現 した もの で あ る。な お Φvは 拘 束 の ヤ コ ビ行 列 で あ る。 式(13.34)は
ホ ロ ノ ミ ック な 位 置 レベ ル の拘 束 で あ り,式(13.36)は
微 分 した 速 度 レベ ル の 拘 束 で あ る。 一 方,シ か ら速 度 レベ ル で,式(13.36)の
ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク拘 束 は 初 め
形 に書 け る が,対 応 す る式(13.34)の
レベ ル の 表 現 が な い 。 そ こで,式(13.36)が
そ れを時間
よ う な位 置
す で に シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な
拘 束 を 含 ん で い る と考 え る こ とが で き,そ の 場 合 は位 置 レベ ル の 拘 束 の 数(Ψ の成 分 の 数)よ
り速 度 レベ ル の 拘 束 の 数(Φ
の 成 分 の 数)の
ほ うが 多 くな る 。
● 剛体系の拘束の一般形 自 由 な 剛体 系 を対 象 と した ホ ロ ノ ミ ック拘 束 は,一 般 に 次 の よ う な 形 に表 現 で き る。
(13.37) この 式 は R と 〓 の 自 由 度 を 限 定 して い る 関係 で あ り,式(13.3)と(13.4)の
独立
な 一 般 化 座 標 Q に よ る表 現 を別 の形 で 表 現 した もの で あ る 。 式(13.37)で は 剛 体 の 回 転 姿 勢 に オ イ ラ ー 角 を用 い た が,別
の もの を用 い て も よい 。 た だ し,オ イ ラ
ー パ ラ メ ー タ を用 い る場 合 ,そ れ 自体 に冗 長 性 が あ るの で,そ の こ とに対 す る適 切 な 配 慮 が 必 要 に な る 。 た と え ば,オ め る よ う にす る。 さて,式(13.37)を
イ ラ ーパ ラメ ー タの 拘 束 も この 式 の 中 に含 時 間微 分 す る と次 の よ う に書 け る。
(13.38) こ こ で,〓
は Ω'と 式(12.75)の
R,〓,V,Ω',tの
関 係 が あ り,そ
関 数 に な る 。 そ し て,そ
Ω'に 関 す る 一 次 式 で あ る 。 結 局,こ
れ を こ の 式 に 代 入 す る と,Φ
は,
の 関 係 は 速 度 レベ ル の 変 数 V と
の 速 度 レ ベ ル の 拘 束 条 件 は,次
の ように表
す こ とが で き る。
(13.39) Φvと
ΦΩ'は,そ
れ ぞ れ,Φ
を V と Ω'で 偏 微 分 し た も の で あ る 。
中 で V と Ω'に 無 関 係 な 残 り の 項 を 意 味 し て い る 。 Φvと
ФVΩ'は,Φ の
Ф Ω'とΦVΩ'は,R
と,
〓 な どの 回 転 姿 勢,お
よ び,t の 関 数 で,速 度 レベ ル の 変 数 は 含 まれ て い な い 。
こ の 式 は V と Ω'の 自 由 度 を 限 定 して い る 関 係 で あ り,式(13.11)と(13.12)の 独 立 な一 般 化 速 度 H に よ る 表 現 を別 の 形 で 表 した もの で あ る。 な お,Φvと
ФΩ'
も拘 束 の ヤ コ ビ行 列 で あ る。 式(13.37)は
ホ ロ ノ ミ ック な位 置 レベ ル の 拘 束 で あ り,式(13.39)は
微 分 した 速 度 レベ ル の拘 束 で あ る。 一 方,シ か ら速 度 レベ ル で,式(13.39)の
そ れ を時 間
ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミッ ク拘 束 は 初 め
形 に書 け る が,対 応 す る式(13.37)の よ うな 位 置
レベ ル の 表 現 が な い 。 そ こ で,式(13.39)が
す で に シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ クな
拘 束 を含 ん で い る とす る こ とが で き,そ の 場 合 は 位 置 レベ ル の 拘 束 の 数(Ψ 成 分 の 数,た
だ しオ イ ラ ーパ ラ メ ー タの拘 束 は 除 く)よ り速 度 レベ ルの 拘 束 の 数
(Ф の 成 分 の 数)の
ほ うが 多 くな る 。
式(13.34)や(13.37)は,複 常,こ
の
数 の 拘 束 を 一 つ の 式 に ま と め た 表 現 で あ るが,通
れ ら に含 まれ る拘 束 は相 互 に独 立 な も の とす る。 同 じ拘 束,ま た は,同
働 き を す る二 つ の 拘 束 を含 ん で は い け な い 。 た とえ ば,ド
じ
ア の蝶 番 は上 下 二 箇 所
に つ い て い る こ とが 多 い が,こ れ らを ピ ン ジ ョイ ン トと して モ デ ル 化 す れ ば,二 つ は 同 じ働 きを して い る こ とに な る。(ド ア や壁 は剛 体 と考 えて い る。)ピ ン ジ ョ イ ン トの 代 わ りに 上 下 二 箇 所 に ボ ー ル ジ ョ イ ン トを用 い て も,な お,冗 長 性 が残 っ て い る 。 拘 束 表 現 を利 用 して 運 動 学 解 析 や 動 力 学 解 析 を行 う場 合,こ 独 立 性 は 重 要 で あ る 。 なお,こ る が,そ
の拘 束 の
の よ う な冗 長 性 を計 算 機 に検 出 させ る こ とは で き
れ を適 切 に 除 去 す る作 業 は案 外 難 しい 。 技 術 者 の 判 断 力 が 必 要 で あ る。
Quiz13.4ド
ア の 上 下 二 箇 所 に二 つ の ピ ン ジ ョイ ン トや ボ ー ル ジ ョイ ン トを
用 い る と拘 束 が 冗 長 に な る。 ど ん な 点 が 問 題 か 。ま た,ど の よ う にす れ ば よい か 。 ーQuiz13.5図13・5は
2次 元 四 節 リ ン ク 機 構 で あ る。 こ れ は,2 次 元 三 重 剛
体 振 子 の 下 端 点 R を座 標 系 O の X 軸 上 の 点R'に
一 致 させ て 2次 元 の ピ ン ジ ョ
イ ン トで 拘 束 した もの で あ る が,角 柱A,B,Cの
長 さが 異 な っ た もの に な っ て
い る 。 こ の モ デ ル は,三 つ の 2次 元 剛 体 が 四 つ の 2次 元 ピ ンジ ョイ ン トに よ っ て 拘 束 され た も の と考 え る こ とが で き る。 一 つ の 自 由 な 2次 元 剛 体 は 3自 由度 を持 ち,ひ
と つ の 2次 元 ピ ン ジ ョイ ン トは 2自 由 度 を拘 束 す る。 こ の系 の 幾 何 学 的 自
由度 と運 動 学 的 自 由 度 は,そ れ ぞ れ,い
くつ か 。
図13.5不
等 辺 四節 リ ンク機 構
こ の系 の独 立 な 一 般 化 座 標 と独 立 な 一般 化 速 度 に は どん な変 数 が 適 当 か 。 運 動 の 範 囲 は図 の よ うな 状 態 を含 む 適 当 に 限定 され た範 囲 と して よ い。 続 い て,同
じモ デ ル を三 つ の 3次 元 剛体 と四 つ の 3次 元 ピ ンジ ョイ ン トか ら構
成 さ れ て い る と考 え て み る。 一 つ の 自 由 な 3次 元 剛体 が 6自 由度 を 持 ち,ひ
とつ
の 3次 元 ピ ン ジ ョ イ ン トは 5 自 由 度 を 拘 束 す る 。 自 由 度 を計 算 す る と3×64×5で
負 に な っ て しま う。 この 考 え方 の ど こが お か しい か 。
Quiz13.6斜 振 子,転
め に ピ ン結 合 され た 剛体 振 子,支
点 を時 間 の 関数 で動 か す 剛体
動 円 盤,2 次 元 二 重 剛体 振 子 で ピ ンジ ョイ ン トB の 角 度 θABを時 間 の 関
数 と して 与 え る モ デ ル,[Quiz13.2]の
モ デ ル(X 軸 に 一 点 で 接 し なが ら滑 らず
に転 動 す る 2次 元 円 盤)に つ い て,各
モ デ ル に 含 ま れ る 位 置 レベ ル拘 束 を剛 体 の
重 心 位 置 と回 転 姿 勢 で 表 現 せ よ。 また,速
度 レベ ル拘 束 を重 心 速 度 と角 速 度 で表
現 せ よ。
13.7拘
束力
三 質 点 剛体 の 質 点 間 に は距 離 一 定 の 拘 束 条 件 が 働 い て い る。 そ して,そ の 拘 束 条 件 を維 持 す る た め に,二 点jk間
に 拘 束 力 が 働 い て い る と 考 え た 。 こ の 場 合,
質 点 kか ら質 点 jに 働 く拘 束 力fojkと,質
点 jか ら 質 点 kに 働 く拘 束 力fokjが
あ り,こ れ ら は作 用 反作 用 の 法 則 を満 た す もの と考 え る こ とが で き る の で,一 方 が 求 まれ ば他 方 は定 まる 。 この よ うに,ス
カ ラ ー レベ ル で 一 つ の 拘 束 条 件 に 対 応
して 一 つ の 未 知 で独 立 な拘 束力 が あ る。 こ の よ う な未 知 拘 束 力 は,系 全 体 で は独 立 な 速 度 レベ ル拘 束 の 数 だ け 選 ぶ こ とが で き,そ れ らを独 立 な 拘 束 力 と呼 ぶ 。 残 りの 拘 束 力 は こ の独 立 な拘 束 力 に よ っ て表 現 す る こ とが で き る。 支 点 を ボ ー ル ジ ョイ ン トで 拘 束 され た コマ の 場 合,支 束 力fopを
点 P は 慣 性 系 O か ら拘
受 け る。 この 代 数 ベ ク トル の 三 成 分 は ボ ー ル ジ ョイ ン トに よ って 減 少
させ られ た 自由 度 の 数 3に対 応 した独 立 な 拘 束 力 と考 え る こ とが で き る。 3次 元 の ピ ン ジ ョイ ン トは 自 由 な 3次 元 剛 体 の 自 由度 を 5減 少 させ て,剛 体 振 子 を作 る。 ピ ン ジ ョイ ン トを Z 軸 まわ りの 回 転 だ け を 許 す よ う に 設 置 す る と,並 進 3 方 向 の拘 束 力 と,X 軸,Y 軸 ま わ りの 拘 束 トル ク を独 立 な 拘 束 力 とす る こ とが で きる 。3次 元 二 重 剛 体 振 子 の 二 番 目の ピ ン ジ ョイ ン ト B に 関 して も,同 様 に,五 つ の独 立 な 拘 束 力 を考 え る こ とが で きる 。 剛 体 B 上 の 点P'に
働 く五 つ の 拘 束 力
(内 二 つ は 拘 束 トル ク)を 独 立 に 考 え る と,剛 体 A 上 の 点 P に働 く五 つ の拘 束 力 は作 用 反 作 用 の 関 係 か ら求 ま る 。舵 付 き帆 掛 け 舟 の 場 合,舵
に 垂 直 な 力f'OPYが
独 立 な拘 束 力 で あ る。 転 動 球 に は 二種 類 の 拘 束 が使 わ れ て い た が,拘 束 力 は 速度 レベ ル の 拘 束 に対 応 して 考 え れ ば よ く,そ の 意 味 で 二 種 類 の 拘 束 を 区別 す る 必 要 は な い 。 接 触 点 ま た は 瞬 間接 触 点 の Z方 向,X 方 向,Y 方 向 に 独 立 な拘 束 力 を考 え る こ とが で き る。 以 上 の 説 明 で は,拘 束 力 の 中 か ら独 立 な拘 束 力 を選 び,残
りの拘 束 力 は そ れ ら
に よ っ て 表 す と して きた 。 独 立 な 拘 束 力 の 代 わ り に 同 じ数 の 未 知 数 を準 備 し,そ れ に よ っ て す べ て の 拘 束 力 を 表 す 考 え方 もあ る 。 そ の よ う な 目 的 に ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 が 用 い ら れ る 。 こ の考 え 方 は 第20章
の 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 に 出て
くる。
13.8拘
束系の運動方程式
拘 束 力 を含 ん だ 形 の質 点系 の 運 動 方 程 式 は次 の よ うで あ っ た 。 【12.44】
ま た,拘 束 剛 体 系 の 場 合 は 次 の とお りで あ る。 【12.62】 【12.63】
これ ら に含 ま れ る拘 束 力 は未 知 数 で あ り,消 去 す るか,同
時 に 求 め られ る形 にす
る必 要 が あ る 。 運 動 方 程 式 を 求 め る多 くの 方法 で は,拘 束 力 を含 ま ない,次
のよ
う な形 の 運 動 方 程 式 が 求 ま る。
(13.40) H は独 立 な 一 般 化 速 度 で あ り,mH,fHの こで は 単 に,H
意 味 は18.5節
で 明 らか に な る が,こ
で 運 動 方 程 式 を表 した と きの H の 係 数 と右 辺 と考 え て お け ば よ
い 。 こ の 形 を 運 動 方 程 式 の 標 準 形 と呼 ぶ こ と に す る。 た だ し,mHは
対称行 列で
あ る。 こ の形 と は 別 の も の と して は,微 分 代 数 型 運 動 方 程 式,漸
化 型 の 運 動 方 程 式,
ハ ミ ル トンの 正 準 方 程 式 な どが あ る。こ の 内 ,微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 は,拘 束 力 (ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数)を ュ の 運 動 方程 式 で も拘 束 力(ラ
同 時 に求 め る形 に な っ て い る 。 ま た,ラ
グラ ンジ
グ ラ ンジ ュ の 未 定 乗 数)を 含 め た 形 で,一 般 化 座
標 に 拘 束 が あ る場 合 な ど を扱 い,微 分 代 数 型 に持 ち 込 む こ と もあ る。 運 動 方 程 式 の標 準 形 は,ダ 方 法,ケ
ラ ンベ ー ル の 原 理 を利 用 す る 方 法,仮
想 パ ワ ー の 原 理 を利 用 す る
イ ン型 の運 動 方 程 式 を利 用 す る方 法,拘 束 条件 追 加 法,ラ
運 動 方 程 式 を 利 用 す る方 法,ハ
グ ラ ンジ ュ の
ミル トンの 原理 を利 用 す る方 法 な ど に よ っ て得 ら
れ る。 式(13.40)を
用 い て順 動 力 学 の 数 値 シ ミュ レ ー シ ョ ン を行 う場 合,通
常,次
の
式 を 随伴 させ る。
Q=AH+B
【13・9】
この 関係 は基 本 的 に は 運 動 学 の 関係 で あ る。 第 Ⅳ 部 で 述 べ る多 くの 運 動 方 程 式 導 出 方 法 は式(13.40),ま
た は,そ れ に相 当 す る 式 を導 く方 法 で あ り,式(13.9)に
対 応 す る 式 は,別 途,第 Ⅱ部 で 学 んだ 運 動 学 の 知 識 な ど を用 い て 補 う必 要 が あ る 。 拘 束 系 の 運 動 方 程 式(13.40)が 求 ま る と,式(13.9)と
と も に 順 動 力 学 解 析 を行 う
こ とが で き る。 そ の と き,拘 束 力 を求 め た い 場 合 が あ る。 順 動 力 学 解 析 で は 各 時 点 のv,V,Ω'が
得 ら れ る の で,拘
束 力 の 算 出 に は,式(12.44),(12.62),
(12.63)が 利 用 で き る。 た だ し,剛 体 系 の 場 合,こ 位 置 に 等 価 換 算 さ れ たF,N'で る た め に は,さ
れ らの 式 か ら求 ま る の は 重 心
あ るか ら,個 々 の 拘 束 箇 所 に お け る 拘 束 力 を知
らに,個 別 の 手 続 きが 必 要 で あ る。
Quiz13.73次
元 剛 体 の 運 動 方 程 式 か ら 自由 な 2次 元 剛 体 の 運 動 方 程 式 を導
出 せ よ。 Quiz13.8自
由 な 2次 元 剛体 の 運 動 方 程 式 は,並 進 運 動 を ダ ッシ ュ の つ い た
変 数 で表 す と どの よ うに な る か 。
第14章
運 動 量 と角運 動 量,運 動 エ ネル ギ ー と運 動補 エ ネル ギー
運 動 量,角 運 動 量,運 動 エ ネル ギ ー,運 動補 エ ネ ル ギ ー は 力 学 系 の 重 要 な物 理 量 で あ る 。 ま た,運 動 量,角 め の,古
運 動 量 の 保 存 則 は,系
の動 力 学 的 性 質 を把 握 す る た
典 的 なが ら重 要 な 法則 で あ る。 一 例 で あ るが,コ
は運 動 量 原 理(角
運 動 量 と作 用 トル ク の 関 係)が
運 動 補 エ ネ ル ギ ー は,ラ
マの歳差運 動の説明 に
分 か り易 い。 運 動 エ ネ ル ギ ー,
グ ラ ンジ ュの 運 動 方程 式(第22章),ハ
ミル トンの 原 理
(第23章)で
必 要 な 基 本 的 物 理 量 で あ り,正 準 方 程 式(第24章)に
繋が ってゆ
く。 なお,ニ
ュ ー トン力 学 で は,運 動 エ ネ ル ギ ー と運 動 補 エ ネ ル ギ ー の値 は 同 一
に な る た め,両 者 を 区 別 した説 明 は 少 ない が,本 書 で は,物 理 量 と して の 意 味 を 明確 に扱 うた め に,運
動 補 エ ネ ル ギ ー を説 明 して い る 。
本 章 の 説 明 に は 著 者 が独 自 に工 夫 した 新 た な記 号 が 出 て くる な ど,読 み 難 さ を 感 じ るか も しれ な い 。 角 運 動 量 の モ ー メ ン ト中心 を,で に心 が け た が,こ
き る だ け 厳 密 に扱 う よ う
の こ と も読 み に く さ を増 して い る か も しれ な い 。 運 動 量,角
動 量 の保 存 則 な ど を 明 確 に理 解 す る こ と は重 要 で あ るが,こ も,第 Ⅳ部 の 運 動 方 程 式 の 立 て 方 の 大 半(第21章
運
の 章 を 読 ま な くて
ま で)は 理 解 で き る。 ニ ュ ー
トン力 学 で は 運 動 エ ネ ル ギ ー と運 動 補 エ ネ ル ギ ー が 等 しい 値 を持 つ と考 え れ ば, 14.6節 に 目を 通 して お く程 度 で,第22章
以 降 も大 して 困 難 で は な い 。 マ ル チ ボ
デ ィ ダ イ ナ ミ クス の 実 用 的 な 方 法 な ど を急 い で 学 び た け れ ば,本 章 は 後 回 しに し て も よい 。 逆 に,本 章 を学 ぶ場 合,し
っ か り時 間 をか け て丁 寧 に読 め ば,筆 者 の
記 号 の簡 潔 さ と便 利 さ も理 解 で き る と考 え て い る。 なお,本
14.1
章 の 説 明 は す べ て 3次 元 系 を対 象 と した もの に な っ て い る 。
運動 量
拘 束 力 を含 ん だ 形 で 質 点 系 の 運 動 方 程 式 は,12.4節
に与 え られ た。
【12.44】
と こ ろ で,i番
目の 質 点 の 運 動 量Poiはmivoiで
与 え られ る 。 こ れ を す べ て の 質
点 に つ い て縦 に並 べ た 列 行 列 を p とす る と,質 点 系 全 体 につ い て次 の よ う に書 け る。
(14.1)
p=mv こ れ を 用 い て 運 動 方 程 式(12.44)は
次 の よ うに な る。
(14.2)
p=f+f 次 に,こ
の系 を S と呼 ぶ こ と に し,系 全 体 の 質量 をMsと
す る と,そ れ は次 の
よ う に 与 え られ る 。
(14.3) こ こ で,3MsはMsを
対 角 要 素 と す る3×3ス
カ ラ ー 行 列,η
は3×3単
位 行 列I3
を質 点 の 数 だ け縦 に並 べ た もの で あ る。
(14.4)
こ の η は,式(14.3)で と す る と,慣
は,総
和 を 作 る 役 割 を 担 っ て い る 。 さ て,系
性 系 0 か ら見 た そ の 位 置rOGは
の重心 を G
次 の よ う に書 け る 。
(14.5) roiは,rOGとrGiの
和 で あ る 。roiを
す べ て の 質 点 に つ い て縦 に 並 べ た列 行 列 は r
で あ っ た が,rGiを
す べ て の 質 点 に つ い て 縦 に 並 べ た 列 行 列 をrGと
書 く こ と にす
る(注)。 こ れ ら の 記 号 を 用 い て 次 の 式 が 成 り立 つ 。
(14.6)
r=ηrOG+rG
こ こ で は 系 S に特 定 の 座 標 系 を設 定 で き な い の で,点
G も慣 性 系 O 上 の 点 と考
え て い る。 し たが っ て,こ の 式 のrGの 前 に は座 標 変 換 行 列 は現 れ て こ な い。 ま た,こ
の 式 の η はrOGを 質 点 の 数 だ け 作 り出 して 縦 に 並 べ る 働 き を し て い る 。
さ て,こ
の 式 を式(14.5)に 代 入 す る と,rGを
用 い た 重 心 の 条 件 が 次 の よ う に導
(注)rcの
よ う な添 え字 の 使 い 方 は,こ の 章 だ けの 特 別 な もの で あ る 。rGと 同 じ書 き方 をす れ
ば rはroと な る。 し か し,添 え 字 の な い rは,す で に 本 書 全 体 の 立 場 か ら定 め られ て い る の で,そ の ま ま用 いて い る。
か れ る。
(14.7) 式(14.6),(14.7)を
時 間 微 分 す る と,重
心 速 度 に 関 す る 関係 に な る。
(14.8) (14.9) v は,voiを
縦 に 並 べ た 列 行 列 で あ っ た 。VGはVGiを
次 に,式(14.5)を
縦 に並 べ た 列 行 列 で あ る。
時 間微 分 す る と次 の よ うな る。
(14.10) ηTpは,系
全 体 の 運 動 量 で,そ れ は系 全 体 の質 量 に重 心 速 度 を掛 け た もの に な っ
て い る。
14.2
角 運動 量
モ ー メ ン ト 中 心 を*と
し て,i番
目 の 質 点 の 運 動 量poiの
そ れ は そ の 質 点 の 点*ま
わ りの 角 運 動 量*πoiで
モ ー メ ン ト を 作 る と,
あ る。
(14.11) モ ー メ ン ト 中 心*も
慣 性 系 O に 属 す る 点 と 考 え て い る 。r*iを す べ て の 質 点 に つ
い て 縦 に 並 べ た 列 行 列 をr*と 並 べ た 列 行 列 を*π とす る と,次
書 く こ と に し,*πoiを
す べ て の 質 点 につ い て 縦 に
の よ う に書 く こ とが で きる 。
(14.12) こ の 式 で 用 い られ て い る ∼(テ あ る(6.1節)。
ィ ル ダ)は,拡
大解 釈 さ れ た外 積 オペ レー タ ー で
系全 体 の 角 運 動 量 は,各 質 点 の角 運 動 量 の 和 で,ηT*π で あ る 。
モ ー メ ン ト中 心*か
ら各 質 点 に 向 か う幾 何 ベ ク トル は,モ ー メ ン ト中心*か
ら
重 心 G に向 か う幾 何 ベ ク トル と,重 心 G か ら各 質 点 に 向 か う幾 何 ベ ク トル の 和 で あ る 。 こ れ を代 数 ベ ク トル で 表 す と次 の よ うに な る。
(14.13) こ の 式 に 使 わ れ て い る変 数 は,い ず れ も座 標 系 O で 表 され て い る の で,こ
の式
に は 座 標 変 換 行 列 が 現 れ て こ な い 。 こ の 式 は す べ て の iにつ い て成 立 す る の で, ま と め て 次 の よ う に書 くこ とが で きる 。
(14.14)
この 式 に,拡 大 解 釈 した外 積 オ ペ レー タを作 用 させ る と次 の よ うに な る。
(14.15) こ の 関 係 を 式(14.12)に
代 入 し て,ηTを
左 か ら 掛 け る と 系 全 体 の 角 運 動 量 ηT*π
が 次 の よ う に表 され る。
(14.16) この 式 の右 辺 第 一 項 は 次 の よ う に書 き換 え る こ とが で き る。
(14.17) こ の 項 は,系
全 体 の 運 動 量 を 重 心 の 運 動 量 と 考 え て,点*ま
取 っ た も の で あ る 。 式(14.16)の の 項 は,p
をmvに
わ りの モ ー メ ン トを
右 辺 第 二 項 は重 心 ま わ りの 角 運 動 量 で あ る 。 こ
戻 し,式(14.8)を
用 さ せ た 関 係 を 利 用 す る こ と で,次
代 入 し,式(14.7)に
外 積 オ ペ レ ー タ ー を作
の よ う に 書 き換 え る こ と が で き る 。
(14.18) す な わ ち,重
心 回 りの 角 運 動 量 は重 心 との 相 対 速 度 を用 い て 計 算 す る こ とが で き
る 。 こ の 結 果 と 式(14.17)か
ら,式(14.16)は
次 の ようになる。
(14.19) モ ー メ ン ト中心 が 重 心 の 場 合,系
の 角 運 動 量 は,各 質 点 の重 心 との相 対 速 度 を用
い て運 動 量 を計 算 し,重 心 回 りの モ ー メ ン トを取 っ た もの の 総 和 と して 求 め る こ とが で き る。 モ ー メ ン ト中 心 が 重 心 以 外 の 場 合 は,こ
の値 に 系 全 体 の 運 動 量 の モ
ー メ ン トを加 え た もの に な っ て い る 。
14.3 剛体系の運動量と角運動量 ま ず,j 番 目 の 剛 体 だ け を 考 え る 。 そ の 運 動 量Pojは,式(14.10)よ
り,質
量
と重 心 速 度 の 積 で あ る 。
(14.20)
Poi=MjVoj 次 に,モ
ー メ ン ト中 心 を 点*と
て は め て 考 え れ ば よ い が,こ こ こ で は,R*jPojと
運 動 量*Ⅱojを
な る 。roiは
考 え る 。 式(14.19)に
当
の 式 の 右 辺 第 一 項 は 重 心 の 運 動 量 の モ ー メ ン トで,
な る 。 第 二 項 を 調 べ る た め に,剛
え る 。 質 点 iの 位 置 は,慣 場 合 はrjiと
し て,角
性 系 O か ら 見 た 場 合 はroiと
体 j上 の 質 点 iの 位 置 を 考 な り,剛
座 標 系 O で 表 現 さ れ て お り,rjiは
体 j上 か ら見 た
座 標 系 jで 表 現 さ れ
て い て,座 標 変 換 行 列 を用 い て 次 の よ う に 関係 付 け られ る 。
(14.21) Rojは
重 心 jの 位 置,Cojは
rjiは 定 数 で あ る か ら,次
座 標 変 換 行 列 で あ る 。 こ の 式 を 時 間 で 微 分 す る と, の よ う に な る。
(14.22) 式(14.19)の
右 辺 第 二 項 の 中 のrGは,式(14.21)の
右 辺 第 二 項,Cojrjiを
の ブ ロ ッ ク 要 素 と す る 列 行 列 で あ る 。 式(14.19)の (14.22)の
右 辺 第 二 項,-CojrjiΩ'ojを
右 辺 第 二 項 の 中 のVGは,式
i番 目 の 要 素 とす る 列 行 列 で あ る 。 式(14.
19)は 質 点 系 を 一 般 的 に 扱 っ た も の で,こ め,座
の 質 点 系 の 座 標 系 は定 ま っ て い ない た
標 変 換 行 列 は 現 れ て こ な か っ た が,式(14.21),(14.22)は
式 で,座
i番 目
剛体 に関す る
標 変 換 行 列 が 使 わ れ て い る 。 こ れ が 見 か け 上 の 差 異 に な っ て い る が,結
局,式(14.19)の
右 辺 第 二 項 は,-CojrjimirjiΩ'ojを
わ せ た も の と な り,そ
れ はCoiJ'ojΩ'ojに
す べ て の iに つ い て 加 え 合
な る 。 以 上 か ら,角
運 動 量*Ⅱojは
次 の
よ う に 書 くこ とが で き る。
(14.23) モ ー メ ン ト中 心*が
重 心 jに一 致 して い る場 合,角
運 動 量jⅡojは こ の 式 の 第 二
項 だけ となる。
(14.24) jⅡojの
ように
,モ
ー メ ン ト中 心 を 表 す 左 上 の 添 え 字 と,角
運 動 量 の 対 象 とな っ
て い る 剛 体 を 表 す 右 下 二 番 目 の 添 え 字 が 一 致 し て い る と き は,左 略 で き る こ と に し て い る 。 し た が っ て,jⅡojは
上 の 添 え 字 を省
Ⅱojと 書 い て も よ い 。 Ⅱojは,
幾 何 ベ ク ト ル Ⅱojを 座 標 系 O で 表 し た も の で あ り,Ⅱojを
座 標 系 jで 表 し た も
の は Ⅱ'ojで あ る 。
(14.25) な お,ダ
ッ シ ュ の 付 か な いJojと
す べ て の 剛 体 に つ い て,Pojを か ら,次
Ωojを 用 い る と,Ⅱoj=JojΩojで
あ る。
順 に 縦 に 並 べ た 列 行 列 を P とす る 。 式(14.20)
の 式 が 成 り立 つ 。
(14.26)
P=MV す べ て の 剛 体 に つ い て,*Ⅱojを
順 に 縦 に 並 べ た 列 行 列 を*Ⅱ
を す べ て の 剛 体 に つ い て 縦 に 並 べ た 列 行 列 をR*と
と す る 。 ま た,R*j
書 く こ と に す る 。 式(14.23)
か ら,次
の 式 が 成 り立 つ 。
(14.27) そ し て,剛
体 系 全 体 の 運 動 量 は ηTP,角
場 合 の η は,I3を
14.4
運 動 量 は ηT*Ⅱ で あ る 。 た だ し,こ
の
剛 体 の 数 だ け 縦 に 並 べ た も の に な っ て い る(注)。
運 動量 原 理
式(14.2)に だ けI3を
左 か ら ηTを 掛 け る と 次 の よ う に な る 。 こ の η は,再
び,質
点 の数
並 べ た もの で あ る 。
(14.28) 左 辺 は系 の 運 動 量 の 時 間 微 分 で あ る 。 右 辺 の作 用 力 fと拘 束 力 f を外 力 と内 力 に 分 け,内 力 の合 計 は作 用 反作 用 の仮 定 が 成 立 して ゼ ロ に な る もの とす る。 そ の結 果,こ
の式 は 次 の よ うに な る。
(14.29) fEXとfEXは,作
用 力 と拘 束 力 の 外 力 で あ る。 こ れ ら を,簡 略 に,作 用 外 力 と拘
束 外 力 と呼 ぶ こ とに す る。 式(14.2)は,系
を構 成 す る 各 質 点 の 運 動 方 程 式 の単 純 な 寄 せ 集 め で あ る。 した
が っ て,式(14.29)は
系 全 体 に つ い て 成 立 す る だ け で な く,任 意 の 部 分 系 に 対 し
て も成 立 す る。 この 式 は,部 分 系 の運 動 量 の 時 間 的 変 化(時
間 微 分)は,そ
分 系 に働 く作 用 外 力 と拘 束 外 力 の 合 計 に等 しい と い う こ とで あ るが,特 外 力 が 働 い て い な い 場 合,お 任 意 の 部 分 系 で,拘
の部
に,拘 束
よび,拘 束 外 力 が 働 い て い な い 方 向 が 重 要 で あ る。
束外 力 が 働 い て い な い 方 向 が あ る場 合,そ
の方 向の運動量成
分 の 時 間 的 変 化 は,作 用 外 力 合 計 の そ の方 向 の 成 分 に等 しい。 これ を,次
に述 べ
る角 運動 量 の 場 合 と合 わ せ て,運 動 量 原 理 と呼 ぶ 。 そ して,部 分 系 に作 用 外 力 と 拘 束 外 力 が 働 い て い な い 方 向 が あ る場 合,そ
の方 向 の 運 動 量 成 分 は保 存 さ れ る。
(注)全 質 点 の 数 に対 応 す る η と全 剛体 の数 に対 応 す る η を 区別 した 記 号 を準 備 す れ ば 明確 で あ る が,使 わ れ て い る文 脈 や 式 の 中 で 判 断 す る こ と も容易 で,そ の ほ うが 表 現 が す っ き りす る と考 えて い る。
こ れ が,運
動 量 保 存 の 法 則 で あ る。
式(14.2)に
左 か ら ηTr*を 掛 け る と次 の よ う に な る 。
(14.30) 左 辺 は 次 の よ う に変 形 で き る。
(14.31) モ ー メ ン ト中 心*か
ら質 点 iに 向 か う幾 何 ベ ク トル は,原
う幾 何 ベ ク トル か ら,原 点 O か らモ ー メ ン ト中 心*に し引 い た もの で,次
点 O か ら質 点 iに向 か
向 か う幾 何 ベ ク トル を差
の よ う に書 け る。
(14.32) この 式 をす べ て の iにつ い て ま と め る と次 の よ う に な る 。
(14.33) この 式 に,拡 大 解 釈 した 外 積 オ ペ レー タ ー を作 用 させ る。
(14.34) こ の 式 を 式(14.31)右
辺 第 二 項 に 代 入 し,時
間 微 分 を 行 う と 式(14.31)は
次 の よう
に な る。
(14.35) こ の式 で,vpは
ゼ ロ で あ り,右 辺 第 二 項 の 残 りの項 は 次 の よ う に書 き直 せ る。
(14.36) こ こ で,モ
ー メ ン ト中 心 は 次 の い ず れ か で あ る と す る 。
① 慣性 系 上 の 固 定 点 ② 系 の 重 心 と平 行 な 速 度 を持 つ 点(実 用 的 に は系 の 重 心 点 と考 え れ ば よい) そ の よ う な モ ー メ ン ト中 心 を ・と表 す こ と に す る。 こ の と き,式(14.36)の
右辺
第 二 項 はゼ ロ に な る。
(14.37) 式(14.30)の
モ ー メ ン ト中 心 を ・に 限 定 し て,左
辺 を こ の 式 で 置 き換 え る。 右 辺
は,作 用 力 f と拘 束 力 f を外 力 と内 力 に 分 け,内 力 の モ ー メ ン トの 合 計 は作 用 反 作 用 の 仮 定 が 成 立 して ゼ ロに な る と考 え る。 そ の 結 果,次 式 が 得 られ る。
(14.38) こ の 式 も,任 意 の部 分 系 に対 して 成 立 す る。 こ の 式 は,部 分 系 の 点 ・ま わ りの 角 運 動 量 の 時 間 的 変 化 が,そ
の 部 分 系 に働 く作 用 外 力 と拘 束 外 力 の モ ー メ ン トの
合 計 に 等 しい とい う こ とで あ る が,特 場 合,お
に,拘 束 外 力 の モ ー メ ン トが 働 い て い な い
よ び,拘 束 外 力 の モ ー メ ン トが 働 い て い な い 方 向 が 重 要 で あ る 。 任 意 の
部 分 系 で,拘 束 外 力 の モ ー メ ン トが働 い て い な い 方 向 が あ る 場合,点 角 運 動 量 の,そ
・まわ りの
の方 向 の 成 分 の 時 間 的 変 化 は,作 用 外 力 モ ー メ ン ト合 計 の,そ
の
方 向 の成 分 に 等 しい。 これ も,前 述 し た運 動 量 の 場 合 と合 わ せ て,運 動 量 原 理 で あ る。 あ る い は,角 運 動 量 原 理 と呼 ん で も よい か も知 れ な い 。 そ して,部 作 用 外 力 と拘 束 外 力 が 働 い て い な い 方 向 が あ る 場 合,点
分系 に
・まわ りの 角 運 動 量 の,
そ の 方 向 の 成 分 は保 存 され る。 こ れ が,角 運 動 量 保 存 の 法 則 で あ る。 運 動 量 原 理 とい う言 葉 は,こ
こ で は,角 運 動 量 の 場 合 も含 め て い る。 こ の 原 理
は,作 用 外 力 と拘 束 外 力 だ け を調 べ,部
分 系 内 部 の 力 に は立 ち入 らず に,運 動 方
程 式 を作 り出 そ う と して い る 。 系 全 体 の 運 動 方程 式 を立 て る こ とが 目的 だ が,任 意 の 部 分 系,お
よ び,任 意 の 方 向 に対 して,適 用 可 能 性 を調 べ,そ
系 全 体 を把 握 す る考 え方 で あ る。 こ の 原 理 は,系 の,あ
れ らを も とに
の 運 動 方 程 式 を見 つ け る た め
る い は,系 の 動 力 学 的性 質 を把 握 す る た め の,古 典 的 な,し か し,重 要 な
原 理 で あ るが,適
用 で き る部 分 系 や 方 向 を見 つ け る こ とが 容 易 な わ け で は な い た
め,第
Ⅳ 部 の 系 統 的 な方 法 に は 含 め て い な い 。 あ る い は,拘 束 力 消 去 法(第15
章)の
一 部 と考 え る こ と も で き る。
15.1節
に コマ の 定 常 歳 差 運 動 の 説 明 が あ り,角 運 動 量 原 理 の 利 用 事 例 に な っ
てい る。
14.5 剛体系の運動量原理 質 点 系 を対 象 に した 運 動 量 原 理 は,式(14.29),(14.38)に
与 え られ た 。 こ れ
ら に対 応 す る剛 体 系 の式 は どの よ う に な る で あ ろ うか 。 まず,質 点 系 の 式 を剛 体
jに 適 用 し て み る 。 剛 体 jの 運 動 量,角
運 動 量 は,Poj,〓
Ⅱojで あ る 。
式(14,29)の 右 辺 は,剛 体 上 の 各 点 に働 く作 用 外 力 と拘 束 外 力 の 総 和 で あ る か ら,FojとFojの
和 とす れ ば よい 。
(14.39) こ の拘 束 力Fojは,等 外 力 だ け で,も
価 換 算 の 結 果 で あ る が,そ
の もとにな って いる力 は拘 束
と も と剛 体 内 部 の 拘 束 力 は 考 えて い な い。 作 用 力Fojも,当
然,
作 用 外 力 で あ る。 式(14.38)の
右 辺 は,剛
体 上 の 各 点 に 働 く作 用 外 力 と拘 束 外 力 の モ ー メ ン トの
総 和 に な っ て い る 。 ま ず,剛 の 位 置 は,モ
体 j上 の 着 力 点 の 一 つ,点
ー メ ン ト 中 心 か ら はr.iと
r.iは 座 標 系 O で 表 さ れ て お り,rjiは
な り,剛
iの 位 置 を 考 え る 。 点 i
体 j の 重 心 か ら はrjiと
座 標 系 jで 表 さ れ て い て,座
な る。
標 変換行 列 を
用 い て 次 の 関 係 が 成 り立 つ 。
(14.40) 点 iにf〓
とf〓
が 働 い て い て,こ
r.iの 代 わ り に,R.jを
掛 け た も の とCojrjiC〓jを
こ と が で き る 。 ηTが,さ
ら に,左
を と る 働 き を し て い る 。R.jを とf〓
右 辺 は,重 CoiN'oj,拘
な わ ち,重
掛 け て い る が,こ
の 式 か ら,
掛 け た もの の和 に分 け て 考 え る
か ら か か っ て い る が,こ
掛 け た も の に つ い て は,ηTの
の 総 和 に な る 。CojrjiC〓jを
メ ン ト,す
れ に 左 か らr.iを
掛 け た も の は,f〓,f〓
れ は iに 関 す る 総 和 総 和 は,単
に,f〓
の 重 心 ま わ りの モ ー
心 位 置 に 等 価 換 算 し た トル ク に な る 。 結 局,式(14.38)の
心 に 働 く 作 用 力Foj,拘 束 トル クCojN'ojの
束 力Fojの
モ ー メ ン ト と,作
用
トル ク
和 に な る。
(14.41) 式(14.29),(14.38)は
一 般 的 な 質 点 系 を 対 象 に し て い る の で,各
力 と 拘 束 力 だ け が 働 い て い る が,剛 く モ デ ル も 考 え ら れ る 。 し か し,そ
質 点 に は作 用
体 jの 各 点 に は 作 用 トル ク や 拘 束 トル ク が 働 の 場 合 で も,式(14.41)のN'oj,N'ojに
は,
そ の よ う な 作 用 ト ル ク や 拘 束 力 トル ク が 含 ま れ て い る と 考 え れ ば よ い 。 モ ー メ ン ト中 心 が 剛 体 の 重 心 の 場 合,式(14.41)は る。
次 の よ う に 書 く こ とが で き
(14.42) この 式 は 次 の よ う に な る 。
(14.43) そ し て,式(14.25)を
用 い れ ば オ イ ラー の 運 動 方程 式 に な る。
(14.44) 式(14.39)か
ら,系 を構 成 す る全 剛体 の 運 動 量 に つ い て 次 の よ う に ま とめ た 式
が 成 り立 つ 。
(14.45) 角 運 動 量 に つ い て は,モ て,次
ー メ ン ト中心 を慣 性 系 上 の 固定 点 か 系 全 体 の 重 心 と し
の よ う に な る。
(14.46) 式(14.41)を
導 く と きは,モ
考 えて い た が,モ (14.36)の
ー メ ン ト中 心 を慣 性 系 上 の 固 定 点 か 剛体 jの 重 心 と
ー メ ン ト中心 を系 全 体 の重 心 と考 え る と,各 剛 体 に つ い て は式
右 辺 第 二 項 が 残 り,こ の 式 の 左 辺 第 二 項 に な る 。 な お,こ
は,再 度,I3を
の式 の η
剛 体 の 数 だ け 縦 に並 べ た もの で あ る 。
剛体 系 全 体 の 運 動 量,角
運 動 量 を 考 え る場 合,力
と トル ク を 内力 と外 力 に分 け
て 考 え る。 内 力 と は,系 内 の 剛 体 間 に働 く力 と トル ク で あ り,外 力 とは系 外 か ら 働 く力 と トル クで あ る 。系 全 体 に わ た っ て 総 和 を取 る と き,こ の よ うな 内 力 と内 力 の モ ー メ ン トは 作 用 反 作 用 の 関係 か ら除 外 し て 考 え る こ と が で き る。 式(14 . 45)と(14.46)の
左 か ら ηTを 掛 け て 総 和 を とる と次 の よ う に な る 。
(14.47) (14.48) 式(14.46)の
左 辺 第 二 項 は,こ
の 総 和 で,再
び 消 え て な くな る。
14.6
運 動 エネ ルギ ー と運動 補 エネ ル ギー
質 点 系 の 運 動 方 程 式(14.2)に つ い て考 え る 。
p=f+f
【14.2】
右 辺 の 力 が 働 い て い る と き,各 点 が 変 位 す る と力 は仕 事 をす る こ とに な る。 質 点 は そ の 仕 事 を受 け 取 り,運 動 エ ネ ル ギ ー と して 蓄 え る 。 こ の 式 にdrTを
左か ら
掛 け,積 分 す れ ば,右 辺 は 力 が 質 点 に対 して 行 う仕 事 の 総 和 で あ り,左 辺 は質 点 が 受 け取 っ た運 動 エ ネル ギ ー Tに な る。
(14.49) drはvdtに
置 き換 え る こ と が で き る 。
(14.50) さ ら に,pdtはdpと っ た が,p=0か
書 く こ と が で き る 。 こ れ ま で,積 らp=pま
分 の範 囲 を明 示 して こ な か
で とす れ ば よ い。
(14.51) この 式 が 運 動 エ ネ ル ギ ー の 定 義 で あ る。 vが pの 関 数 と して 与 え られ れ ば,こ
の
式 を積 分 し て運 動 エ ネ ル ギ ー T を求 め る こ とが で きる 。 ニ ュ ー トン力 学 の 速 度 v と運 動 量 pの 関 係 は 式(14.1)に 与 え ら れ て い る の で,質
点系 の運動 エ ネルギ ー
は次の ようになる。
図14.1
質 点 Pの運 動 量 と速 度 の 関係(ニ ュ ー トン力学(左),特
殊 相 対性 理論(右))
(14.52) 特 殊 相 対 性 理 論 で は,速 度 v と運 動 量 pの 関 係 は線 形 で は な く,図14.1に よ うに,も
示す
う少 し複 雑 で あ る。
式(14.51)で
は v を p の 関 数 と し て 表 し,そ
れ を 積 分 す る の だ か ら,運
動 エ ネ
ル ギ ー Tは pの ス カ ラ ー 関 数 とい う こ と に な る 。
T=T(p) そ し て,式(14.51)か
(14.53) ら 分 か る よ う に,こ の T を p で 偏 微 分 す る と vが 得 ら れ る 。
(14.54) こ の v を 用 い る と,式(14.53)の
微 分 を 次 の よ う に書 くこ とが で きる 。
(14.55)
dT=vTdp
vの 成 分 の 数 は pの 成 分 の 数 と同 じで,v は pの 関 数 で あ る 。
(14.56)
v=v(p) こ の 関 係 を逆 に解 い て,p を vの 関 数 とす る こ とが で き る 。
(14.57)
P=P(v) こ の よ う に 解 け る た め の 数 学 的 な 条 件 は,式(14.53)の な い こ とで あ る 。 式(14.57)を
式(14.53)に
ヘ シ ア ン行 列 式 が ゼ ロで
代 入 す れ ば,T
を vの 関 数 と して 表 す
こ と もで き る。
T=T(p(v))
(14.58)
ニ ュー トン力 学 の 場 合 は 次 の よ うに な る。
(14.59) ニ ュ ー ト ン 力 学 で は 運 動 量 p と 速 度 v の 関 係 は,す (14.56)や
式(14.57)の
ル ギ ー T を 式(14.58)の
関 係 を 式(14.54)を
用 い て 求 め よ う と す る 場 合,運
動エ ネ
よ うに vで表 した もの で は役 に立 た な い 。 運 動 エ ネ ル ギ
ー Tは 運 動 量 pの 関 数 と考 え る の が 自然 で あ る こ こ で,次
で に 分 か っ て い る が,式
。
の よ う な新 し い ス カ ラー 関 数 を 考 え る。 T*=vTp-T
こ の 関 数 も,p
の 関 数 と 考 え る こ と が で き る が,式(14.57)を
(14.60) 用 い て vの 関 数 と
す る こ と もで き る。 そ こ で,こ の 関 係 を微 分 で 表 して み る 。
(14.61) こ こ で,式(14.55)を
用 い る と,次
の よ うに な る。
dT*=pTdv
この 式 は,T*を
(14.62)
vの 関 数 と見 な す の が 自然 で あ る こ とを 示 して い る。
T*=T*(v) ま た,p
が,T*の
(14.63)
v に よ る偏 微 分 に よ っ て得 られ る こ と も分 か る。
(14.64) した が っ て,式(14.60)は,式(14.57)を
用 い て,v
の 関 数 に し て お く。
(14.65) v を 変 数 と す る 新 し い 関 数T*か
ら は,式(14.64)を
用 い て,式(14.57)や
式(14.
56)を 復 元 で き る 。 p を 変 数 と す る ス カ ラ ー 関 数 T が 式(14.53)の
よ う に 与 え ら れ,式(14.54)の
偏
微 分 に よ っ て 新 し い 変 数 v が p の 関 数 と し て 得 ら れ る と き,式(14.60)の は,v
を 変 数 と す る 新 し い ス カ ラ ー 関 数 T*(式(14.63))を
変換
作 り 出 し,式(14
.
64)の 偏 微 分 に よ っ て 古 い 変 数 pが v の 関 数 と し て 得 ら れ る こ と に な る 。 こ の 変 換 は ル ジ ャ ン ドル 変 換 と 呼 ば れ て い る 。 新 し い 関 数 T*か ら古 い 関 数 Tへ の 変 換 も ま っ た く 同 様 な,可 ー
,エ
ン タ ル ピ ー,ヘ
逆 的 な 変 換 で あ る 。 な お,熱
力 学 にお け る内 部エ ネル ギ
ル ム ホ ル ツ の 自 由 エ ネ ル ギ ー,ギ
ブ ス の 自由 エ ネ ル ギ ー の
間 の 変 換 関 係 も ル ジ ャ ン ドル 変 換 の 有 名 な 事 例 で あ る 。 ま た,24.1節
で は,ハ
ミル トニ ア ン が ラ グ ラ ン ジ ア ン の ル ジ ャ ン ドル 変 換 と し て 説 明 さ れ て い る 。 T と T*,お
よ び,そ
れ ら とp,vと
を 運 動 補 エ ネ ル ギ ー(kinetic v=0に
の 関 係 は 図14.1か
co-energy)と
な る も の と す る と,式(14.62)か
呼 ぶ 。p,vの ら,運
ら 明 ら か で あ ろ う 。 T* 関 係 がp=0の
と き,
動 補 エ ネ ル ギ ー T*は 次 の よ う に
書 け る。
(14.66) ニ ュ ー ト ン力 学 で は 次 の よ う に な る 。
(14.67)
こ の 式 を vで 偏 微 分 す れ ば,p が vの 関 数 と して 求 ま り,そ の 結 果 は式(14.1)に なる。 ニ ュ ー トン力 学 の 場 合,運
動 エ ネ ル ギ ー と運 動 補 エ ネ ル ギ ー は 同 じ値 を持 っ て
い る 。 そ の た め,こ れ らを 区 別 せ ず に用 い て も,数 値 的 に同 じ結 果 が 得 られ る。
14.7 剛体系の運動エネルギー と運動補 エネルギー 剛 体 A の場 合,運 動 エ ネ ル ギ ー T と運 動 補 エ ネ ル ギ ー T*は,そ れ ぞ れ,並 進 運 動 に よ る も の と回転 運 動 に よ る もの の 和 で あ る。
(14.68)
(14.69) 回転 運 動 に よ る運 動 エ ネ ル ギ ー,運
動 補 エ ネ ル ギ ー は 座 標 系 A に よ る表 現 を用
い て 示 した が,座 標 系 O に よ る 表 現 を用 い て も同 様 で あ る 。 た と え ば,
(14.70) 式(14.69)か POAで
ら,運
あ り,角
動 補 エ ネ ル ギ ー を 重 心 速 度VOAで
偏 微 分 した も の が 運 動 量
速 度 Ω'OAで 偏 微 分 し た も の が 角 運 動 量 Ⅱ'OAに な っ て い る 。
(14.71) (14.72) 剛 体 系 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,運 動 補 エ ネ ル ギ ー は次 の よ う に書 け る 。
(14.73) (14.74) 式(14・73),(14.74)か
ら,次
の 式 が 成
り立 つ 。
(14.75) (14.76) ニ ュ ー ト ン 力 学 で あ る か ら,剛
体 系 の 場 合 も ,当
補 エ ネ ル ギ ー T*は 同 じ 値 を 持 つ 。
然,運
動 エ ネ ル ギ ー T と運 動
第Ⅳ 部
運動方程式の立て方 運 動 方 程 式 の 立 て 方 に は い くつ もの 方 法 が あ り,ま た,運 動 方 程 式 自体 に もい くつ か の 形 が あ る。 本 書 で は,形 の 異 な る運 動 方 程 式 も含 め て,十 通 りの 方 法 を 説 明す る。 た く さ ん の 方 法 を並 べ て い る が,基 本 を 理 解 す る た め の方 法,実 用 性 の 高 い 方 法,今
後 の 発 展 を期 待 した い 方 法 な ど様 々 で あ る。 そ れ らの 方 法 は密 接
に関 連 して い て,そ の 関 連 な ど を理 解 す る こ と で力 学 の 理 解 が 深 ま る 。 第 Ⅳ部 は 十 章(第15章 い る が,初
∼ 第24章)構
つ の 章 が 一 つ の 方 法 に対 応 し て
め て 学 ぶ 場 合 は 読 む順 序 を以 下 の よ う にす る の が よい 。 ま ず ,第15
章 か ら第19章 第22章
成 とな っ て い て,一
まで は順 に読 む ほ うが よい 。 第20章
は,そ れ ぞ れ,第18章
難 度 が 高 い の で,後 が よい 。 第24章
は 第17章
の 後 に,第21章
の 後 に 読 む こ とが で きる 。 た だ し,第21章
ま わ し に して も よ い 。 第22章,第23章,第24章
と は,
は この順
も,初 学 者 に は難 度 が 高 い 。
本 書 の 主 な対 象 は,ロ ボ ッ トや 車 両 な どの集 中 定 数 系 で あ る。 ハ ミル トンの 原 理 を 利 用 し て運 動 方 程 式 を立 て る 方 法(第23章)は,分 法 だ が,集
布 定 数 系 に は重 要 な 方
中 定 数 系 に は不 向 き だ と思 わ れ る。 そ の た め 第23章
は,ハ
ミル トン
の 原 理 の理 解 に 重 点 を置 い て い る 。 ハ ミル ト ンの 正 準 方 程 式(第24章)は,機 械 力 学 一般 にす ぐに 役 立 つ 実 用 技 術 とは 考 え られ て い な い が,物 理 学 が発 展 して きた 重 要 な 方 向 の 一 つ で あ り,ま た,最 近 は,マ
ル チ ボ デ ィ ダイ ナ ミク ス の研 究
や 制 御 技 術 の 方 法 と し て も取 り上 げ られ る よ う に な っ て きた。
拘束力消去法
第15章
第12章
で,三 質 点 剛 体 を用 い て 剛 体 の 運 動 方 程 式 を求 め た 。 そ の と き用 い た
方 法 が 拘 束 力 消 去 法 で あ る。 こ の 章 で は,ま ず,ボ
ー ル ジ ョイ ン トで 支 点 を拘 束
され た コマ の 運 動 方 程 式 を拘 束 力 消 去 法 で 求 め る 。 これ らの事 例 を念 頭 に 置 き な が ら15.2節
∼15.4節 の 一 般 的 な説 明 を読 め ば,こ の 方 法 を理 解 しや す い で あ ろ
う。 こ の方 法 を実 際 問 題 に 適 用 す る こ と は少 な い と思 う。 しか し,こ の 方 法 を通 して,拘
束 力 が 明 確 に な り,力 学 の 理 解 が 容 易 に な る と思 わ れ る 。 ま た,第20
章 の 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 を学 ぶ た め に 役 立 つ 。 15.1節
で は,コ
MATLABプ
マ の 運 動 方 程 式 を 求 め て,そ
の 挙 動 を シ ミ ュ レ ー トす る
ロ グ ラ ム を作 成 した 。 第 9章 の 近 似 ボ ー ル ジ ョイ ン トの 場 合 と対 比
す る こ とで,拘
束 の 意 味 を把 握 しやす く な り,拘 束 と して モ デ ル化 す る か 否 か に
よ る 運 動 方 程 式 の差 異 に つ い て,理 解 が 深 ま る で あ ろ う。
15.1
順 動 力 学 解 析 の 事 例:ボ
ー ル ジ ョ イ ン トで 支 点 を 拘 束 さ れ た
コマ
● コマの運動方程式 図9.2,図9.3(9.4節
参 照)は,支
点 P を ボ ー ル ジ ョ イ ン トで 慣 性 座 標 系 O
の原 点 に拘 束 した コマ の 説 明 図 で あ る。 第 9章 で は拘 束 を伴 わ な い 近似 ボ ー ル ジ ョイ ン トの 方 法 を 説 明 し た が,こ
こで は 拘 束 を伴 う真 の ボ ー ル ジ ョイ ン トを 扱
う。 重 力 は 座 標 系 O の Y 軸 負 の 向 き に 働 き,コ マ に 固 定 し た座 標 系 A の Y 軸 が,コ
マ の 回転 軸 に な っ て い る 。 コマ の支 点 Pの 位 置 は次 の よ う に 書 け る。 rAP=-DYb
bは 点AP間
の 長 さで あ り,rAPは
(15.1) 定 数 で あ る。 こ の 系 の 運 動 方 程 式 を 拘 束 力 消
去 法 に よ っ て 求 め て み よ う。 拘 束 力,拘
束 トル ク を含 む 形 で,コ マ A の 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に書 くこ と
が で き る。
(15.2) (15.3) FOA,N'OAは の 式 は,ま
拘 束 力 や 拘 束 トル ク を重 心 位 置 に 等 価 換 算 した もの で あ る 。 こ れ ら だ,コ
マ の運 動 方 程 式 とい う よ り剛 体 A の 一 般 的 な運 動 方 程 式 で あ
る 。 これ らが コ マ の 運 動 方 程 式 に な る の は この 後 の作 業 に よ る 。 まず,こ
の コマ
に 関 す る 拘 束 は 支 点 Pが 原 点 O に 一 致 し て い る こ と で あ る か ら,拘 束 力 も支 点 P に働 く。 拘 束 力fopと
拘 束 トル クn'opが 考 え られ るが,ボ
ー ル ジ ョイ ン トの機
能 を考 え る と,ど の よ う な拘 束 力 が 働 きそ うか イ メ ー ジで きる で あ ろ う。 拘 束 力 や 拘 束 トル ク は,拘 束 を壊 す 働 き に抵 抗 し,拘 束 を 維 持 す る た め の 力 と トル ク で あ る 。 ボ ー ル ジ ョ イ ン トの拘 束 は 並 進 の三 方 向 を拘 束 して い る の に対 して 回転 は 自由 だ か ら,fopの
三 成 分 は い ず れ もゼ ロ 以 外 の 値 に な る可 能 性 が あ り,n'opは
三 成 分 と も常 に ゼ ロ と考 え る こ とが で き る 。 そ こ で,fopを して,FOAとN'OAを
重心位置 へ等価換算
作 る。
(15.4) (15.5) こ の 二 つ の 式 は,fopに
よ っ てFOAとN'OAを
表 し た も の で あ る 。 な お,fopは
ス
カ ラ ー レ ベ ル で 三 つ の 拘 束 力 を 含 ん で い て,そ
の 数 は ボ ー ル ジ ョ イ ン トの 拘 束 の
数 と 同 じ で あ る 。 式(15.2)と(15.4)か
次 の よ う に書 くこ とが で き る。
らfopを
(15.6) こ の 式 と,式(15.3),(15.5)を
用 い る と,拘
束 力 を消 去 で きる 。
(15.7) この 運 動 方 程 式 は ス カ ラ ー レベ ル で 三 つ の 式 を含 ん で い て,こ の 系 の運 動 学 的 自 由 度 と一 致 して い る。 さ て,支 点 P の 拘 束 は 次 の よ う に書 け る。
(15.8) こ の 式 の 時 間 微 分 か ら,VOAを
Ω'OAで 表 す こ と が で き る 。
(15.9)
こ の 式 を も う一 度 時 間 微 分 す る。
(15.10) こ れ を 式(15.7)に
代 入 し,整
rAPΩ'OArAPΩ'OAを
理 す る 。 そ の 途 中 で,式(6.7)を
Ω'OArAPrAPΩ'OAに
利 用 し て,
置 き 換 え る 操 作 が 必 要 に な る が,結
局,次
の
よ う に 書 くこ とが で き る。
(15.11) 左 辺 二 つ の 括 弧 内 は 同 じ で,支 が で き る(12.3節
点 P ま わ り の 慣 性 行 列 で あ り,PJ'OAと
書 くこ と
平 行 軸 の 定 理)。 右 辺 は 支 点 P ま わ り の ト ル ク で あ り,結
局,
こ の 式 は次 の よ う に な る。
(15.12) PN'OAは
,P 点 ま わ り の ト ル ク を 座 標 系 A で 表 し た 代 数 ベ ク トル で あ る 。
式(15.11),ま
た は,(15.12)が
な 剛 体 の 回 転 の 運 動 方 程 式(5.2)と り の 回 転 運 動 の 式 で あ り,重 式(15.12)は,剛
コ マ の 運 動 方 程 式 で あ る 。 式(15.12)は,自 同 じ形 に な っ て い る 。 式(5.2)は
心 が 並 進 運 動 を し て い て も,そ
重 心 A まわ
の影響 を受け ない。
体 A と慣 性 系 O の 両 方 に 固 定 さ れ た 点 ま わ り の 回 転 運 動 の 式 で
あ る 。 両 者 は 同 じ 形 で あ り,式(15.12)も
●
由
オ イ ラ ー の 運 動 方 程 式 と呼 ば れ る 。
コマ の シ ミ ュ レー シ ョン
コ マ の 順 動 力 学 解 析 を数 値 計 算 で行 う場 合,こ
こで 求 め た運 動 方 程 式 以 外 に,
回転 姿 勢 と角 速 度 の 関 係 が 必 要 に な る 。 回 転 姿 勢 に は オ イ ラー 角 か オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ を 用 い れ ば よ く,オ イ ラ ー 角 〓
の 場 合 は 式(9.19)を,オ
メ ー タ の場 合 は式(9.12)の 添 え字 を変 え た もの,ま
イラーパ ラ
た は,拘 束 安 定 化 機 能 を持 つ
式(9.29)を 用 い る こ と に な る。 オ イ ラ ー 角 〓
を 用 い たMATLABプ
CD-ROMに
詳 し い 解 説 は 不 要 で あ ろ う 。 右 辺 を 計 算 す る 関 数e_koma_
20.mの 9.4節
収 録)の
ロ グ ラ ム(koma_20.m,付
録 の
中 に 上 記 に 求 め た 運 動 方 程 式 に 沿 っ た 計 算 手 順 が 含 ま れ て い る 。 こ れ を, のe_koma_120.mと
の 違 い で あ り,支
対 比 さ れ た い 。 最 大 の 差 異 は 一 般 化 座 標,一
般化速 度
点 P に 働 く力 の 計 算 の 有 無 で あ ろ う 。 グ ラ フ 出 力 は,表15.1
の と お り で あ る 。 な お,figure(12)とfigure(14)∼figure(16)の 動 ス ケ ー ル で は な い 。 下 限 は 計 算 結 果 の 最 小 値 の0.9倍 1倍
と し た 。 運 動 量,角
体,一
運 度 量 の 慣 性 座 標 系 Y 軸 成 分(figure
定 値 で あ る 。 こ れ ら は 理 論 的 に は 一 定 の は ず だ が,数
法 な ど の 影 響 で,多
見 る と,2.6節
の 近 似 ボ ー ル ジ ョ イ ン トの コ マ と 比 べ
動 運 動 が ほ と ん ど減 衰 し て い な い 。 近 似 ボ ー ル ジ ョ イ ン トの ダ ン ピ ン グ が
表15.1koma_20.mの figure
(1)∼figure
(3)
figure (4) figure
値積分
少 の増 加 また は減 少 傾 向 を示 す こ とが あ る。
figure(4)(図15.1)を て,章
限 は 最 大 値 の1.
エ ネ ル ギ ー の 数 値 計 算 結 果(figure(16))は,ほ
定 値 に 維 持 さ れ て い る 。 ま た,角
(12))も,大
と し,上
運 動 量 は 慣 性 座 標 系 の 成 分 が 示 され て い る 。 角 速 度 に 比
例 す る 減 衰 を ゼ ロ と す る と,全 ぼ,一
Y 軸 は単 純 な 自
(5)∼figure
出力
時間に対する重心位置 鉛 直 上 方 か ら眺 め た重 心 の軌 跡(Z 成 分 に対 す る X 成 分)
(7)
時 間 に対す る オイ ラー 角
figure (8)∼figure (10)
時 間に 対す る運動 量(座 標 系 O)
figure
時 間 に対 す る角運 動 量(座 標 系 O)
(11)∼figure
(13)
figure (14)
時 間に対 す る運動 エ ネル ギ ー
figure (15)
時 間 に対 す るポ テ ンシ ャルエ ネル ギ ー
figure (16)
時 間 に対 す る運動 エ ネル ギ ー とポ テ ンシ ャル エ ネ ルギ ー の和
figure
アニ メ ー シ ョン
(17)
図15.1
鉛 直 上 方 か ら見 た コマ の 重 心 の 軌跡(歳 差 と章 動 の様 子)
表15.2koma_45.m,koma_1045.m(20.5節)の figure
出 力
時 間 に対 す る重 心 位 置
(1)∼figure (3)
鉛 直 上方 か ら眺 めた 重心 の 軌 跡(Z 成 分 に対 す る X 成分)
figure
(4)
figure
(5)∼figure
figure
(9)∼figure
figure
(12)∼figure
(8) (11) (14)
時 間 に対 す る オ イ ラーパ ラメ ー タ
時 間 に対 す る 運動 量(座 標 系 O) 時 間 に対 す る角 運 動量(座 標 系 O)
figure (15)
時 間 に対 す る運 動 エ ネ ルギ ー
figure(16)
時 間 に対 す る ポ テ ン シャル エ ネ ルギ ー
figure (17)
時 間 に対 す る運 動 エ ネ ルギ ー とポ テ ン シ ャルエ ネル ギ ーの和
figure(18)
時 間 に対 す る オ イ ラー パ ラメ ー タの 二 乗和 か ら 1を差 し引 い た値
figure (19)
ア ニ メー シ ョ ン
章動 運 動 を 減 衰 させ て い た と推 定 さ れ る が,実 際 の コマ で も章 動 運 動 は減 衰 しや す く,何 らか の ダ ン ピ ング が 働 い て い る と思 わ れ る。 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ を 用 い たMATLABプ CD-ROMに
ロ グ ラ ム(koma_45.m)も
載 せ て お こ う。 グ ラ フ 出 力 は,表15.2の
パ ラ メ ー タの 拘 束 は,koma
_145.mの
「
とお りで あ る。 オ イ ラ ー
場 合 ほ ど き れ い にゼ ロ に収 束 せ ず,僅
かに
乱 れ を残 して い る。 た だ し,僅 か で あ る か ら拘 束 は十 分 維 持 され て い る。 ボ ー ル ジ ョイ ン ト拘 束 は,近 似 ボ ー ル ジ ョイ ン トの バ ネ 定 数 と ダ ン ピ ング係 数 が 無 限 に 大 き くな っ た 状 態 と考 え る こ とが で き るが,運 異 な っ た もの に な る 。 近 似 ボ ー ル ジ ョイ ン トに は,現
動方程 式の形 はまった く
実 に 存 在 す る よ うな柔 らか
さを 含 ん で い る印 象 が あ る が,計 算 時 間 的 に は 不 利 で あ る。
● コマの定常歳差運動の初期値 コマ の 運 動 は 歳 差 運 動 と章 動 が 特 徴 的 で あ る。 こ こ で は 章 動 が な く,歳 差 運 動 だ け が 現 れ る よ うな 初 期 条 件 の 与 え方 を 考 え て み よ う。 こ の よ う な運 動 を定 常歳 差 運 動 と 呼 ぶ こ と に す る。 コマ は 重 心 に 固 定 し た 座 標 系 A の Y 軸 が 回 転 軸 で, 完 全 な 軸 対 称 性 が あ る と し,し た が っ て X 軸 と Z 軸 ま わ りの 慣 性 モ ー メ ン トは 同 じ値 に な っ て い る とす る。 慣 性 乗 積 は ゼ ロで あ る 。 ま た,座 標 系 O の Y 軸 が 鉛 直 上 方 を 向 い て い る と して い る。
オイ ラー角 〓
で 回 転 姿 勢 を考 え る と,定 常 歳 差 運 動 の 場 合,θ2は
回 転 軸 の傾 き角 で一 定 で あ る 。 コマ の 回 転 軸eAYと 鉛 直 軸eoYを
コマ の
含 む平 面 S を考
え る と,こ の 平 面 は 鉛 直 軸 ま わ りに θ1の一 定 速 さ で 回 転 して い る と考 え る こ と が で き,こ の 回 転 が 歳 差 運 動 で あ る 。 平 面 S に対 して コマ の 回 転 軸 は 動 か ず, こ の平 面 に対 して コマ は ス ピ ン角 速 度 と呼 ぶ 一 定 速 さ θ3で回 っ て い る 。 コマ の 角 速 度 は,歳 差 角 速 度 とス ピ ン角 速 度 の和 と して,幾 何 ベ ク トル表 現 で 次 の よ う に 書 け る。
(15.13) こ の 幾 何 ベ ク トル は 平 面 S 内 に あ り,θ1も θ3も定 数 で あ る か ら,平 面 内 で は長 さ も向 き も変 化 しな い。 代 数 ベ ク トル表 現 で は次 の よ うに 書 け る。
(15.14) こ の 式 を,以 下 に示 す 方 法 と 同 じ よ う に 定常 歳 差 運 動 に 限 定 し なが ら運 動 方 程 式 (5.12)に 代 入 して も同 じ結 論 に到 達 で きる が,こ
こ で は,コ マ の角 運 動 量 に注 目
し,運 動 量 原 理 か ら定 常 歳 差 運動 を考 え て み よ う。 運 動 方 程 式 が,ま て い な い状 況 で の 考 え 方 で あ り,ま た,コ マ の 定 常 歳 差 運 動 は,角
だ,得
られ
運動 量 や 運 動
量 原 理 を 理 解 す る よ い事 例 で あ る。 P点 まわ りの 角 運 動 量PIIOAは,コ
マ の 慣 性 主 軸 の 方 向 に分 け て,次
の ように
書 け る。
(15.15) P J'OAXXとPJ'OAZZが
等 し い こ と を 利 用 す る と,こ
の 式 は 次 の よ う に 書 き換 え る こ と
が で きる 。
(15.16) Ω'OAは平 面 S に 固 定 され た 幾 何 ベ ク トル で あ り,Ω'OAYも 定 数 で あ る の で,こ 式 か ら,角 運 動 量 を 表 す 幾 何 ベ ク トルPIIOAも
の
平 面 S 内 に あ り,平 面 に対 して 長
さ も 向 き も変 化 しな い こ とが わ か る 。 代 数 ベ ク トル 表 現 で は,P 点 ま わ りの 角 運 動 量 は 式(15.14)を 用 い て,次
の式
で 計 算 で き る。
(15.17) COAとPJ'OAは
次 の よ う に書 け る。
(15.18)
(15.19) こ れ ら を 代 入 し,整
理 す る と,PIIOAは
次 の よ うに な る。
(15.20) θ2,θ1,θ3は
定 数 で あ る か ら,PIIOAの
時 間 変 化 は θ1の 時 間 変 化 に よ る も の だ け
で ある。
(15.21) こ の 時 間 変 化 は,平
面 S 内 で 一 定 のPIIOAが
に 対 応 し て い る 。PIIOAは,角
平 面 S と と も に 回 転 して い る こ と
運 動 量 原 理(14.4節)に
よ り,重
力 に よ る P点 ま
わ りの トル ク に等 しい 。
(15.22) す な わ ち定 常 歳 差 運 動 は,一 定 の 長 さで 一 定 の傾 き を持 つ 角 運 動 量PIIOAが 軸 まわ りを 回転 して い る現 象 で,そ
鉛直
の 回 転 を重 力 に よる トル クが 実 現 して い る と
いえる。 式(15.21)と(15.22)か
ら,次
の 式 が得 られ る。
(15.23) この 式 を 満 た す よ う に,傾
き角 θ2,ス ピ ン角 速 度 θ3,歳 差 角 速 度 θ1を決 め て
初 期 値 を作 れ ば,定 常 歳 差 運 動 が 実 現 で きる 。 なお,こ
の 式 を θ1につ い て解 く
と二 つ の解 が得 られ る。 速 い 歳 差 と遅 い 歳 差 で あ る が,通 常 の コ マ で 体 験 す るの は 遅 い 歳 差 で あ る。 運 動 量 原 理 は,特
に,拘 束 力 や 拘 束 トル クが 働 か な い 部 分 系 や 方 向 に適 用 され
る 。 式(15.22)は,P
点 ま わ りの拘 束 トル ク が 働 い て い な い か ら成 立 す る の で あ
る 。 運 動 量 や角 運 動 量 の保 存 則 を適 用 す る場 合 も,当 然,拘 束 力 や 拘 束 トル ク は 働 い て い な い 。拘 束 力 や 拘 束 トル ク を意 識 して,そ れ らが 働 か な い 部 分 系 や 方 向 を見 つ け る こ とは,拘 束 力 消 去 法 の 考 え方 の一 部 と考 え る こ と もで き る。
Quiz15.1
式(15.12)と 式(9.19)を 用 い て順 動 力 学 解 析 を 行 な い なが ら,支
点 P に働 く拘 束 力 を求 め た い 。 どの よ う に した ら よ い だ うか 。
15.2 質点系の拘束力消去法 拘 束 質 点 系 の 運 動 方程 式 は,各 質 点 に 働 く拘 束 力 を含 ん だ 形 で 次 の よ うに 与 え られた。 【12.44】
こ の 運 動 方 程 式 の 数 は vに含 まれ る変 数 の 数 だ け あ る が,v はす べ て が 独 立 で は な い 。 vの拘 束 は 次 の よ う に与 え られ て い る 。 【13.36】
Φ は独 立 な拘 束 だ け を含 ん で い る とす る。 式(12 .44)に は vの 数 だ け拘 束 力 が 含 まれ て い る が,そ
の 中 で 独 立 な拘 束 力 は Φ の 数 だ け で あ る。 まず,f
の中か ら
独 立 な拘 束 力 を選 択 し,他 の 拘 束 力 を こ の独 立 な拘 束 力 で 表 す 必 要 が あ る。 そ れ が 得 ら れ れ ば,式(12.44)を
用 い て す べ て の拘 束 力 を消 去 した 運 動 方 程 式 を 作 る
こ と が で き る 。 そ の 式 の 数 は vの 数 か ら Φ の 数 を 引 い た 数 に な る は ず で あ る。 た だ し,こ の段 階 の 運 動 方 程 式 は加 速 度 レベ ル の 変 数 が v に な っ て い る。 運 動 方 程 式 の 数,す 数 で,そ
な わ ち,v の 数 か ら Φ の 数 を 引 い た 数 は,独 立 な 一 般 化 速 度Hの
の独 立 な一 般 化 速 度 H を選 定 す る 。 そ して,式(13.36)を
利用す るな ど
して,v を H で 表す 。 【13.10】
こ の 関 係 を 時 間 微 分 す れ ば vが H で 表 され ,先 ほ ど求 ま っ た 運 動 方 程 式 に代 入 す れ ば,加 速 度 レベ ル の 変 数 が H に な っ た 運 動 方 程 式 を得 る こ とが で き る。
15.3 剛体系の拘束力消去法 同 様 な 説 明 は 拘 束 剛 体 系 に 限 定 して も成 り立 つ 。 拘 束 剛 体 系 の 運 動 方 程 式 は, 重 心 位 置 に等 価 換 算 した拘 束 力 と拘 束 トル ク を含 ん だ形 で 次 の とお りで あ った 。 【12.62】 【12.63】
こ の 運 動 方 程 式 の 数 は,V
とΩ'に 含 ま れ る 変 数 の 数 だ け あ る が ,V
とΩ'の す
べ て が 独 立 で は な い 。 速 度 レベ ル の 拘 束 は 次 の よ う に与 え られ る。 【13.39】
Φ は独 立 な拘 束 だ け を含 ん で い る も の とす る。 式(12.62)と(12.63)に Ω'の 数 だ け 拘 束 力 が 含 ま れ て い るが,そ る。 まず,式(12.62)と(12.63)の
は,V
と
の 中 で独 立 な拘 束 力 は Φ の 数 だ け で あ
F と N'の 中 か ら独 立 な 拘 束 力 を 選 択 し,他 の
拘 束 力 を この 独 立 な拘 束 力 で 表 す 必 要 が あ る。 そ れ が 得 られ れ ば,式(12.62)と (12(63)を 用 い てす べ て の拘 束 力 を 消 去 した 運 動 方 程 式 が 得 られ る。 そ の 式 の 数 は,V
と Ω'の 数 か ら Φ の 数 を 引 い た 数 に な っ て い る はず で あ る 。 た だ し,こ
の 段 階 の 運 動 方 程 式 は加 速 度 レベ ル の 変 数 が V と Ω'に な っ て い る。 運 動 方 程 式 の 数,す
な わ ち,V
と Ω'の 数 か ら Φ の 数 を 引 い た 数 は,独 立 な 一 般 化 速 度
H の 数 で,そ の 独 立 な一 般 化 速 度 H を 選 定 す る 。 そ して,式(13.39)を 方 法 な ど に よ り,V
利用す る
とΩ'を H で 表 す 。
V=VHH+VH
【13.11】
Ω'=Ω'HH+Ω'H
【13.12】
この 関係 を時 間微 分 す れ ば V と Ω'が H で表 され,先 ほ ど求 ま っ た運 動 方 程 式 に 代 入 す れ ば,加 速 度 レベ ル の変 数 が H に な っ た運 動 方 程 式 を得 る こ とが で きる。
15.4 拘束力消去法の特徴など 連 続 的 に 質 量 が 分 布 した剛 体 な ど を含 む系 で は,系
を構 成 す るす べ て の 質 点 に
つ い て 式(12.44)を 作 る こ とは 不 可 能 で,近 似 的 に 考 え て も実 用 的 で は な い 場 合 が 多 い 。 また,連 続 的 に質 量 が 分 布 し た 剛体 な ど を 考 え る 場 合,そ 力 は 不 明確 で あ る。 した が っ て,多
の内部の拘束
くの 実 際 問 題 で は拘 束 剛 体 系 に対 す る方 法 を
用 い る こ とに な る。しか し,質 点 系 で 考 えて お くと本 質 的 な考 え方 を理 解 しや す い。 本 章 の 方 法 は,一
旦,拘
束 力 を考 慮 し,そ の 後,そ
れ ら を消 去 す る 方 法 で あ
る。 そ こ で,拘 束 力 消 去 法 と呼 ぶ こ と に す る。 も と に な る式 が,式(12.44),ま た は,式(12.62)と(12.63)で
あ り,そ れ らは ニ ュー トン とオ イ ラ ー の運 動 方 程 式
と呼 ん で 差 し支 え な い の で,こ の 方 法 をニ ュ ー トン ・オ イ ラ)の 運 動 方 程 式 を 利 用 す る 方 法 と呼 ぶ こ と もで き そ う で あ る。 拘 束 力 消 去 法 で は,拘 束 に 関 わ る二 つ の 側 面 を判 断 し,処 理 しな け れ ば な らな い 。 一 つ は拘 束 力 に 関 す る側 面 で あ り,も う一 つ は 拘 束 の 運 動 学 的 側 面 で あ る 。 拘 束 力 に 関す る側 面 で は,独 立 な拘 束 力 を選 択 し,そ れ に よ って 他 の拘 束 力 を表
す こ とが 必 要 で あ っ た。 こ の と き,個 々 の 拘 束 ご とに拘 束 力 を 分 析 しな け れ ば な ら な い。 そ して,独 立 な拘 束 力 を決 め る 判 断 は,独 立 な 一 般 化 速 度 を決 め る判 断 と類 似 で,今
の と こ ろ 人 の 判 断 力 に頼 っ た技 術 で あ る。 運 動 学 的 側 面 で は,独 立
な一 般 化 速 度 を選 択 し,そ れ に よ っ て 質 点 速 度 や 剛 体 重 心 速 度 と剛 体 角 速 度 を 表 す こ とが必 要 で あ る。 拘 束 は 本 来,運 動 学 的 な 量 の 間 の 関 係 式 と して 把 握 さ れ る の で,こ
ち らの 側 面 は比 較 的 容 易 に処 理 で きる 。 い ず れ に して も,拘 束 に 関す る
二 つ の 側 面 を考 慮 しな けれ ば な ら な い点 は,こ の 方 法 の 弱 点 で あ る。 式(12.44),ま
た は,式(12.62),(12.63)か
ら拘 束 力 を 消 去 す る と こ ろ が,こ
の 方 法 の鍵 で あ る。 独 立 な拘 束 力 を選 び,他 の拘 束 力 を独 立 な もの で 表 す 方 法 は 一 般 的 な定 型 化 が 難 しい 。 一 方,拘 束 力 を 除 外 す る別 の 方 法 が,運
動量原理 であ
る 。 こ の方 法 で は拘 束 力 の 影 響 を除 け る よ うな 部 分 系 と方 向 を見 つ け る こ とが 必 要 に な るが,こ
ち ら も一 般 的 な 定 型 化 は難 しい 。 拘 束 系 の取 り扱 い は 拘 束 力 を い
か に処 理 す る か が 鍵 で あ る。 第16章 程 式 を 除 い て,す
べ て,新
以後 の 方 法 は,第20章
の微分代 数型運動方
た な 力 学 原 理 を用 い て拘 束 力 を 考 え な い 方 法 で あ る 。
別 の い い 方 を す る と,物 理 学 の 立場 で は拘 束 力 の 本 質 は不 明 で あ り,次 章 以 降 に 説 明 す る新 しい 力 学 原 理 が 必 要 だ っ た の で あ る。 一 方,第20章
の微 分 代 数 型 運
動 方程 式 は,本 節 の 方 法 の 弱 点 に対 す る解 決 策 と考 え る こ と もで きる 。
Quiz15.2)
新 し く学 ん だ 方 法 を しっ か り理 解 す るた め の 一 つ の手 段 は,で き
る だ け 簡 単 な事 例 で 確 か め て み る こ とで あ る。 ①:質
点 P が 原 点 O か ら一 定 の 長 さ bの紐 で ぶ ら下 が っ て い る単 振 子 の 運 動
方 程 式 を,拘 束 力 消 去 法 で 求 め よ。 この 問 題 は 2次 元 問 題 で,座 標 系 O の Y 軸 は鉛 直 上 方 に 向 い て お り,X 軸 は水 平 で あ る。 質 点 の 質 量 はmP,重
力 の加 速 度
は g とす る 。 ②:次
に,紐
の 一 端 O'を 座 標 原 点 に 固定 す るの で は な く,X-Y平
面 上 を動 か
す こ と にす る。 す な わ ち,roo'は 時 間 の 関 数 と して 与 え られ る 。 点 O'の 動 か し 方 はあ ま り急 激 で は な く,PO'間
の 長 さ は い つ も一 定 値 bに保 た れ て い て,紐 が
た る む よ うな こ とは な い とす る 。 こ の系 の 運 動 方 程 式 を拘 束 力 消 去 法 で 求 め よ。 ③:一
方,原
点 O に小 さ な 穴 が あ っ て,紐
は そ の 穴 を 通 して 長 さが 調 整 され
て い る とす る 。 す な わ ち,紐 の 長 さ bが 時 間 の 関 数 で 変化 す る もの とす る 。 この
図15.2
単振 子,端 点 が 時 間の 関 数で 動 か され る単振 子,紐 の 長 さが 変 動 す る単 振 子
系 の 運 動 方程 式 を拘 束 力 消 去 法 で 求 め よ。 な お,以
上 の 簡 単 な事 例 は,次 章 以 降 で新 しい 方 法 を学 ん だ と き に も,確 認 の
た め に利 用 す る と よ い 。
第
16
章
ダ ラ ンベ ール の 原 理 を 利 用 す る方 法
ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 は力 学 の 歴 史 上,理
論 上,そ
して,実 用 上 に お い て重 要 な
原 理 で あ る。 拘 束 力 学 系 の 運 動 方 程 式 の 導 出 は,こ の 原 理 を用 い て 説 明 され る こ とが 最 も多 い 。 さ ら に こ の 原 理 か ら ラ グ ラ ンジ ュ の 運 動 方 程 式,ハ
ミル トンの 原
理 へ と発 展 で き る。 しか し,こ の 原 理 を利 用 して 3次 元 剛体 系 や シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ック な 系 の 運 動 方程 式 を立 て よ う とす る と,実 用 上 の 弱 点 にぶ つ か る。 そ の 弱 点 を 回 避 して 本 章 の 事 例 は 2次 元 の もの だ け を扱 っ た が,3 次 元 問題 や シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な 問 題 が 扱 え な い わ け で は な い。 この 弱 点 につ い て,次 節 の 仮 想 パ ワー の原 理 と対 比 しな が ら読 む と分 か りや す い で あ ろ う。16.3節
と16.
4節 の事 例 を読 み に く く感 じる読 者 は,次 節 を 読 ん で か ら再 読 され た い 。
16.1
拘 束 質 点 系(ホ
ロ ノ ミ ッ ク な 系 の 場 合)
質 点 系 を対 象 と した ダ ラ ン ベ ー ル の 原 理 は次 の よ う な式 で表 され る。
(16.1) fは 各 質 点 に 働 く作 用 力 で あ り,mvに
負 号 を 付 け た もの は慣 性 力 と呼 ば れ る 。
す な わ ち 括 弧 内 は作 用 力 と慣 性 力 の 和 で あ る。 δrは 仮 想 変 位(図16.1参
照)と
呼 ば れ,次 の よ う な列 行 列 で あ る 。
(16.2)
δrの 成 分 は 系 を構 成 す る す べ て の 質 点 の 仮 想 変 位 で あ り,各 質 点 の 仮 想 変 位 δrojは座 標 系 O で 表 され たXYZの
三 成 分 か らな っ て い る。 剛 体 振 子 は 多 数 の 質
点 か らで きて い る と考 え る こ とが で き る が,そ
の全 質点 の仮想 変位 を考 えてい
る。 た だ し,こ れ は 次 の 三 つ の 事 柄 を 満 た す 必 要 が あ る。
①
運 動 の各 瞬 間,時 た後,そ
間 を止 め て系 を構 成 す る全 質 点 の 位 置 と速 度 を凍 結 し
の位 置 に与 え る無 限小 の 変 位 で あ る。
②
拘 束 条 件 を満 た す 範 囲 で 与 え られ る変 位 で あ る 。
③
許 され る範 囲 で,任
意 の,あ
る い は,可 能 なす べ て の 変 位 を考 え,そ の
す べ て に対 して 式(16.1)が 成 立 す る 。 剛体 振 子 の場 合,各 質 点 に 与 え る仮 想 変 位 は剛 体 を維 持 す る よ うに 与 え な け れ ば い け な い。 また,ピ い。 結 局,許
ン ジ ョ イ ン トの 拘 束 も維 持 す る よ う に 与 え な け れ ば な ら な
さ れ る 範 囲 の 可 能 な変 位 とは ,振 子 の 角 度 θOAの 仮 想 変 位 δθOAだ
け で あ り,そ れ に よ っ てす べ て の 質 点 の仮 想 変 位 δrが決 まっ て くる。 式(16.1)の 左 辺 は,仮 想 変 位 が 作 用 力 と慣 性 力 の 和 に よ っ て 生 み 出 す 仕 事(注) を系 全 体 につ い て加 え 合 わせ た もの で あ り,仮 想 仕 事 と呼 ば れ て い る 。 ダ ラ ンベ ール の原理 とは
,系 全 体 に わ た っ て 加 え合 わせ た こ の よ うな 仮 想 仕 事 は 常 に ゼ ロ
に な る,と い う も の で あ る。 剛 体 振 子 の場 合,作
用 力 は重 力 だ け で あ り,慣 性 力
も重 心 に 働 く と考 え れ ば よい の で,こ れ ら と重 心 の 仮 想 変 位 δROAか ら並 進 運 動 に 関 す る仮 想 仕 事 が 求 ま る。 ま た,慣 性 トル ク と仮 想 の 回転 変 位 δθOAか ら回 転 運 動 に 関す る仮 想 仕 事 を作 る こ とが で き る ので,両
者 を合 計 して系 全 体 の仮 想 仕
事 とす れ ば よ い(次 節 参 照)。 作 用 力 が 重 心 以 外 に 働 く場 合 も,重 心 位 置 に等 価 換 算 した 力 と トル ク を用 い て 求 め る こ とが で き る。 あ る い は,重 心 に 等 価 換 算 せ ず に,作 用 力 が 働 く点 の 仮 想 変 位 を用 い て 仮 想 仕 事 を計 算 す る こ とが で き る。
図16.1実
変 位driと
仮 想 変 位 δri
riは rの i番 目 の ス カ ラ ー 成 分
(注)力 の 作用 点 が微 小 変 位 す る と微 小 仕 事 に な り,そ の積 分 値 が仕 事 で あ る。 これ は エ ネ ルギ ー と 同 じ単位 で表 され る。
時 間 を止 め て 仮 想 変 位 を考 え る とい う こ とは,時 い とい う こ とで,数
間 に 依 存 す る 変位 は 考 慮 しな
学 的 に は,時 間 を定 数 と して 扱 う こ と に な る 。 実 際 に は,時
間依 存 の拘 束 が あ る 場 合 に,時 間 を止 め る 意 味 が 明 確 に な る。 仮 想 変 位 は 拘 束 条件 を満 た さな け れ ば な らな い が,ホ
ロ ノ ミ ッ クな 位 置 レベ ル
の 拘 束 は 一 般 に非 線 形 で あ る か ら,無 限 小 の 変 位 を 考 え る こ と に な る。 式(13. 34)か ら,δrが 受 け る拘 束 は次 の よ うに 表 さ れ る 。
(16.3) こ の 式 は 式(13.34)の
r にr+δrを
で あ る 。 一 方,式(13.2)か
代 入 し,δrを
ら 仮 想 変 位 δrは,独
微 少 量 と して 一 次 近 似 し た もの 立 な 仮 想 変 位 δQに
よって次 の
よ う に表 され る。
(16.4) こ の 式 は 式(13.2)の
Q にQ+δQ,r
にr+δrを
代 入 し て,δQと
δrを 微 少 量 と
して 一 次 近 似 した もの で あ る。 これ ら の操 作 は時 間 を固 定 して 行 わ れ て い る。 式 (16.4)は
δrの 拘 束 を 式(16.3)と
5)のR,〓,Eも
式(16.4)と
列 で は な い の で,そ
は 別 の 形 で 表 し た も の で あ る 。 式(13.3)∼(13. 同 様 に 表 す こ と が で き る 。 式(13.6)の
の ま ま Q で 偏 微 分 す る こ と は で き な い が,多
の よ う な Q に 無 関 係 な 列 行 列 と の 積 に な っ て い て,Cr0を な ど,工
C は列 行 く の 場 合 はr0
まとめて偏微 分す る
夫 で き る は ず で あ る 。 δR∼ δCは 剛 体 系 の 場 合 に 必 要 に な っ て く る 。
式(16.4)を
式(16.1)に
代 入 す る と 次 の 式 が 得 られ る。
(16.5) 許 さ れ る 範 囲 で任 意 の,ま た は,す べ て の 仮 想 変 位 を考 え る とい う こ とは,独 立 な 仮 想 変 位 を任 意 に 取 る とい う こ と で あ る。 ホ ロ ノ ミ ッ ク な系 で Q が 独 立 な 場 合,δQに
任 意 な値 を与 え て も この 式 が 成 立 す る こ とか ら,次 の 式 が 得 られ る。
(16.6) 速 度 vを 独 立 な 一 般 化 速 度 H で 表 し,そ の 時 間 微 分 を こ の 式 に代 入 す れ ば,v の 代 わ り に H を 用 い た表 現 が 得 られ る 。 そ れ が 求 め る運 動 方 程 式 で あ る 。
質 点 系 を中 心 に 説 明 して きた が,剛 体 系 で も考 え 方 は 同 じで あ る。 剛 体 系 の 場 合 は,仮 想 の 並 進 変 位 が 作 用 力 と慣 性 力 の和 に よ っ て 作 り出 す 仮 想 仕 事 に加 え て,仮 想 の 回 転 変 位 が 作 用 トル ク と慣 性 トル ク の和 に よ って 作 り出 す 仮 想 仕 事 も 考 え,そ れ ら の和 が 常 に ゼ ロ に な る と考 え る。 そ の よ う な 仮 想 仕 事 の 表 現 を作 り,仮 想 並 進 変 位 と仮 想 回 転 変 位 を独 立 な 一 般 化 座 標 の 仮 想 変 位 で 表 せ ば,後
は
質 点 系 の場 合 と 同 じ方 法 で 運 動 方程 式 を求 め る こ と が で き る。
16.2事
例:剛
体振 子
11.1節 に 説 明 した 剛 体 振 子 の運 動 方 程 式 を求 め て み よ う。 剛 体 振 子 は 鉛 直 な 2 次 元 平 面 内 を 運 動 す る の で,は
じめ か ら 2次 元 問 題 と して扱 う こ と にす る。 2次
元 平 面 を運 動 す る 自 由 な 剛体 の 自 由 度 は 3で あ る が,ピ
ンジ ョイ ン トの拘 束 が あ
り,2 次 元 の ピ ン ジ ョイ ン トは 2自 由度 を拘 束 す る。 そ の 結 果,剛 体 振 子 は 自 由 度 1の ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 に な る。 独 立 な一 般 化 座 標 を振 子 の傾 き角 θOAと す る 。 こ れ は,座 標 系 A の 座 標 系 O に対 す る 回 転 角 で あ る 。 独 立 な 一 般 化 速 度 に は θOAの 時 間微 分 ωOAを 用 い る こ と に す る 。 剛 体 系 の 仮 想 仕 事 は 並 進 運 動 に よ る もの と 回転 運 動 に よ る もの の 和 と して捉 え る こ とが で き,2 次 元 剛 体 A を対 象 と し た ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 は 次 の よ う に 表 現 で き る。
(16.7) δROAは 重 心 の 仮 想 の 並 進 変 位 で あ り,δ θOAは 仮 想 の 回 転 変 位 で あ る。FOAと nAは 重 心 位 置 へ 等 価 換 算 した 作 用 力 と作 用 トル ク,JAは メ ン トで,-MAVOAと
重 心 ま わ りの慣 性 モ ー
両JAωOAは 慣 性 力 と慣 性 トル ク で あ る。 2次 元 剛 体 を対
象 と して い る の で 慣 性 トル ク の 表 現 に 3次 元 の よ う な複 雑 さ は な い 。 ま た,nA とJAも 一 つ の 添 え 字 で 十 分 で あ り,2 次 元 剛 体 の 回転 運 動 を 表 す 量 に ダ ッ シ ュ を付 け た 記 号 を用 い る こ と も な い。 剛 体 振 子 の場 合,δ θOAは独 立 な 一 般 化 座 標 の 仮 想 変 位 で あ る か らそ の ま ま で よい が,δROAは す る。
δθOAで 表 す 必 要 が あ る 。 そ の た め に,ま ず,ROAを
θOAで 表 現
(16.8) こ の 関 係 は,剛
体 振 子 の 図 を 描 く と 直 ち に 得 ら れ る が(図11.5),剛
体 A上の点
O'が O に 一 致 し て い る 拘 束 か ら 数 式 操 作 で 求 め る こ と も で き る(た (16.31)でrOO'(t)=0と 固 定 し,仮 ROA+δROAに
とえ ば
す れ ば よ い)。 仮 想 変 位 の 関 係 を 求 め る に は,ま
式
ず時間 を
想 的 に θOAを θOA+δ θOAに 変 え た と 考 え る 。 そ れ に 伴 い,ROAは な る が,こ
れ ら を 式(16.8)に
代 入 し,仮
想 変 位 が い ず れ も無 限 小
量 で あ る こ と を利 用 して 線 形 近 似 す れ ば 次 の式 が得 ら れ る 。
(16.9) こ の 式 を 求 め る 場 合,時 (16.31)の
よ う に,時
に な る 。 さ て,こ
間 を 固 定 す る 意 味 は 陽 に は 現 れ て い な い 。16.9節
間 tが 式 の 中 に 入 っ て い る 場 合,時
の 式 を 式(16.7)に
の式
間固定 の意味 が明 らか
代 入 す る と次 の よ うに な る。
(16.10) こ の式 で δθOAは 無 限 小 量 で あ る が 任 意 の値 を取 る こ とが で き,そ の す べ て の値 に対 して この 等 式 が 成 立 す る 。 そ の た め に は,次 式 の 成 立 が 必 要 で あ る。
(16.11) こ れ で,仮 想 変 位 を取 り除 くこ とが で きた 。 作 用 力 と して は 重 力 だ け が 働 い て い る とす る と,nAは
ゼ ロ で あ り,FOAは
次
の よ う に書 け る 。
(16.12) g は 重 力 の 加 速 度 で あ る 。 式(16.8)を
二 回 時 間 微 分 す る と,VOAを
求 め る こ とが
で きる 。
(16.13) こ れ ら を式(16.11)に 代 入 し,整 理 す れ ば 運 動 方 程 式 が で きあ が る。
(16.14) 左 辺 カ ッ コ 内 は O'点(O
点)ま
わ りの慣 性 モ ー メ ン トで あ る 。 右 辺 は 重 力 に よ
る O 点 ま わ りの トル ク で あ り,こ の 式 は,O 点 ま わ りの 慣 性 トル ク と作 用 トル ク の和 が ゼ ロ に な っ て い る こ と を示 して い る 。 拘 束 トル クが 働 い て い ない た め,O 点 まわ りの 回 転 運 動 につ い て 運 動 量 原 理 を適 用 す れ ば直 ち に求 まる 関 係 で あ る 。 式(16.8)のROAは,2
次 元 の 座 標 変 換 行 列COAを
とが で き る。 ま た,rAO'はdYbで こ の よ う な記 号 と10.2節 き,式(16.14)よ
あ り,式(16.12)の
用 い て-COArAO'と 重 力 は-dYMAgと
の 方 法 を用 い れ ば,δROA,VOAな
書 くこ 書 け る。
どを簡潔 に表 現 で
り前 に は三 角 関 数 が 表 面 に現 れ る こ と もな い 。 そ し て最 後 に式
(16.14)に 到 達 で き る。 これ か ら 出 て く る 2次 元 の事 例 で は,こ 用 す る の で,読 者 は 本 節 の 事 例 で,δROA,VOAが
れ ら の記 号 を活
どの よ うに な る か,式(16.14)
に到 達 で き る か な ど,簡 潔 な表 現 方 法 を練 習 して お くと よい 。 こ こ で は,始 め か ら 2次 元 問 題 と して 剛 体 振 子 の 運 動 方 程 式 を導 い た 。 3次 元 の 剛 体 を 3次 元 の ピ ン ジ ョイ ン トを用 い て 空 間 に 結 合 した と考 え て も同 じ 1自 由 度 の 剛 体 振 子 を作 る こ とが で きる。 しか し,2 次 元 問 題 で 解 決 で き る 問題 は 2次 元 で扱 う ほ うが 簡 単 で あ り,さ ら に,ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 に は16.5節
に説 明 す
る弱 点 が あ る 。 3次 元 問 題 と して 扱 う方 法 を検 討 して み る こ と は 理解 を深 め る た め に役 立 つ が,ま
16.3拘
ず,次
束 質 点 系(シ
章 まで 学 び,そ の 後 は読 者 の 努 力 に 委 ね る こ とに す る。
ン プル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 の 場 合)
シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 が あ る場 合,仮 想 変 位 は そ の 拘 束 を満 た す こ と も求 め られ て い る 。 した が っ て,ホ
ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 も含 め て 次 の 式 を満 た す
必 要が ある。 Φvδr=0
(16.15)
独 立 な 仮 想 変 位 の 数 は 独 立 な一 般 化 速 度 の 数 と同 じで あ り,独 立 な 一 般 化 座 標 Q の数 よ り少 な い 。す な わ ち,Q は 独 立 で も δQは す べ て が 独 立 で は な く,そ の 代 わ りに,独 立 な 一 般 化 速 度 の仮 想 の変 化 分 H に仮 想 の無 限 小 時 間 δtを掛 け た よ う な量Hδtを
独 立 な仮 想 変 位 と考 え る こ とが で き る。 な お,こ
こ で,一 般 化
速 度 の 仮 想 変 化 分 H が 出 て きた 。 以 下 に は 速 度 の 仮 想 変 化 分 vが 出 て くる。 こ れ らは仮 想 速 度 と呼 ば れ る量 で,次 章 に説 明 が あ る。 本 節 と次 節 の事 例 は,次 章 を学 ん だ 後 に再 読 す る ほ うが 理 解 し易 い と思 わ れ るの で後 まわ しに して も よ い 。
式(13.10)で,独
立 な 一 般 化 速 度 H の 仮 想 の 変 化 分 H に 対 す る vの 仮 想 の変
化 分 vを求 め る と,時 間 を 固 定 し て考 え,次 の よ うに な る(第17章
参 照)。
v=vHH
(16.16)
こ の 式 に時 間 の 単 位 を持 つ 仮 想 の 無 限 少 量 δtを掛 け れ ば 仮 想 変 位 δrと して 扱 え る。
(16.17)
δr=vδt=vHHδt
式(13.11)か
ら も類 似 な 表 現 の δRを
作 る こ と が で き る 。 式(13.12)の
や δRに 相 当 す る 項 に は 擬 座 標 と 呼 ば れ る も の が 必 要 に な る が,そ ず に,Ω'δtを
そ の ま ま 仮 想 変 位 と し て 扱 う こ と が で き る(16.5節
式(16.17)を
式(16.1)に
場 合,δr
の 表 現 は用 い 参 照)。
代 入 す る と次 の 式 が 得 られ る。
(16.18) こ の式 で,Hδtは
独 立 で任 意 な値 を与 え て も等 式 が 成 立 す る こ とか ら,次 の 運 動
方 程 式 が 成 立 す る こ と に な る。
(16.19) こ の 式 は 第18章
に 出 て くる ケ イ ン型 の 運 動 方 程 式 で あ る が,こ
こ で は仮 想 変 位
の 考 え 方 とそ こか ら運 動 方 程 式 を 導 く手 順 を理 解 す れ ば よい 。 最 後 に,速 度 vを 独 立 な一 般 化 速 度 H で 表 し,そ の 時 間 微 分 を代 入 す れ ば,v の 代 わ りに H を用 い た 表 現 に な り,運 動 方程 式 が 得 られ る。
16.4事 13.3節
例:舵
付 き帆掛 け舟
に 舵 付 き 帆 掛 け 舟 の 説 明 が あ り,13.6節
の 式(13.26)が
舵 の拘 束 で あ
る 。 こ の式 は 次 の よ うに書 き直 せ る 。
(16.20)
V'OAY=-rAPXωOA
舵 付 き帆 掛 け 舟 は 2次 元 モ デ ル で,幾 何 学 的 自由 度 は 3で あ る が 運 動 学 的 自 由度 は 2で あ る。 独 立 な 一 般 化 速 度 に は,V'OAXと を 用 い てVOAを
ωOAを 用 い る こ と にす る。 こ の 式
独 立 な一 般 化 速 度 で 表 す と次 の よ う に な る 。
(16.21) 2 次 元 剛 体 A の 座 標 変 換 行 列COAは
式(10.5)で
与 え ら れ て い る 。 さ て,こ
の式
のV'OAXにV'OAX+V'OAXを,ωOAに と の 式 を 差 し引 け ば,次
ωOA+ωOAを,VOAにVOA+VOAを
代 入 し,も
の 仮 想 速 度 の 関 係 が 得 ら れ る(第17章
参 照)。
(16.22) こ の 式 に δtを掛 け て,仮 想 変 位 と結 び つ け る こ とが で きる。
(16.23) こ の 式 変 形 の 最 初 の 段 階 で,δROAをVOAδtと δθOAと し た 。 そ し て,V'OAXδtと
後 の 段 階 で,ωOAδtを
δθOAを 独 立 な 仮 想 変 位 と す る こ と が で き る 。
舵 付 き帆 掛 け 舟 は 2 次 元 モ デ ル で あ る か ら,ダ 場 合 と 共 通 で,式(16.7)を
し,最
ラ ンベ ー ル の 原 理 は 剛 体 振 子 の
用 い れ ば よい 。 【16.7】
こ の 式 に 式(16.23)を ら,次
代 入 し,V'OAXδtと
δθOAが 独 立 に 任 意 の 値 を 取 れ る こ と か
の 二 つ の 式 が 得 られ る。
(16.24) (16.25) 式(16.21)か
らVOAを
求 め る と次 の よ う に な る 。
(16.26) こ れ を代 入 して整 理 す れ ば,次 の 運 動 方 程 式 に な る。
(16.27) (16.28) 舵 付 き帆 掛 け舟 の場 合,風 方 程 式 は役 立 つ が,こ
の運 動
れ らの 作 用 力 や作 用 トル ク を求 め る こ とが 簡 単 で は な い 。
な お,V'OAXδtは,V'OAXが め,こ
や 水 か ら受 け る力 を 具 体 的 に把 握 で きれ ば,こ
ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク(積 分 で き な い)変
数 で あ るた
の ま まの 形 で 扱 っ た 。 こ れ を δ〓 な ど と置 い て も よ く,そ の と き,〓 は 擬
座 標 と呼 ば れ る 。
16.5拘
束 剛体系
式(16.1)は す べ て の 質 点 につ い て 仮 想 仕 事 を計 算 す る 形 に な っ て い る が,実 際
に は作 用 力 と作 用 トル ク,慣 性 力 と慣 性 トル ク が働 く点 だ け を考 えれ ば よ い。 剛 体 系 の 場 合,慣
性 力 や 慣 性 トル ク は 重 心 加 速 度 と角 加 速 度 な どで 求 ま り,ま た,
作 用 力 と作 用 トル ク が働 く点 は有 限個 に 限 定 で きる こ とが 多 い の で,そ れ らの 点 の 仮 想 仕 事 を計 算 して,合 計 す れ ば系 全 体 の 仮 想 仕 事 に な る。 特 に,す べ て の作 用 力 と作 用 トル ク を重 心 位 置 へ 等 価 換 算 して 取 り扱 う と,そ れ らの 数 は 剛 体 の 数 と 同 数 に な る。 そ の 場 合 は,16.2節,16.4節
の事 例 で示 した よ う に,重 心 位 置
で 考 え た並 進 運 動 と 回転 運動 だ け を考 え れ ば よ く,わ か り易 い。 た だ し,3 次 元 剛 体 系 の 場 合,一 般 の 回転 運 動 に対 応 した慣 性 トル ク が 生 み 出 す 仮 想 仕 事 を直 接 計 算 す る た め に は,仮 想 変 位 に擬 座 標 が 必 要 に な る 。 こ れ は, 3次 元 の 角 速 度 を,そ
の ま ま積 分 した 回 転 姿 勢 が 存 在 しな い た め で あ る が,分 か
り難 い 。 そ の代 わ り と し て,16.3節 る。 一 方,次
で 触 れ た よ う に,Ω'δtを 用 い る 方 法 が あ
章 に述 べ る仮 想 パ ワ ー の 原 理 で は この 擬 座 標 の概 念 を必 要 と しな い
の で 分 か り易 い 。 ま た,オ イ ラ ー角 な ど を用 い れ ば,ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 で も 3
次 元 剛 体 系 を擬 座 標 な しで 扱 う こ とが で き る。 こ れ につ い て は 次 章 で 説 明す る 。
16.6裏
の表 現
式(16.1)は
次 の よ うに 書 い て も よ い。
(16.29)
8rTmv=δrTf
一 方 ,拘 束 力 を含 ん だ形 の 質 点系 の 運 動 方 程 式 は次 の 通 りで あ っ た 。 mv=f+f こ の 式 に 左 か ら δrTを 掛 け,式(16
【12.44】
.29)と 対 比 す る と 次 の 式 が 得 ら れ る 。
(16.30)
δrTf=0
こ の 式 は ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 の,裏 の 表 現 で あ る。 こ れ に 対 し,式(16 は,(16.29)を
.1),ま
た
表 の 表 現 と呼 ぶ 。 裏 の 表 現 は,仮 想 変 位 と拘 束 力 に よ っ て生 み 出
さ れ る系 全 体 の 仮 想 仕 事 が,常
に,ゼ
ロ に な っ て い る こ と を 意 味 して い る。 「拘
束 力 は 仕 事 を し な い 」 とい う表 現 が あ るが,そ
れ は こ の式 の こ とで あ る 。
上 記 の 説 明 で は,表 の 表 現 を原 理 と認 め る立 場 か ら,裏 の 表 現 を説 明 した 。 逆 に,裏 の 表 現 を 原 理 と認 め れ ば,表 の 表 現 が 導 か れ る。 両 者 は そ の よ うな 関 係 に あ る。 一 方,静
力 学 に は 仮 想 仕 事 の原 理 が あ り,ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 は,そ の 動
力 学 版 で あ る。 慣 性 力 とい う概 念 を作 り,時 間 を止 め て,静 力 学 の 仮 想 仕 事 の 原 理 を適 用 した もの とい うこ とが で き る。 そ して,静
力 学 の仮 想 仕 事 の 原 理 に も表
の 表 現 と裏 の 表 現 が あ り,裏 の 表 現 は,静 力 学 も動 力 学 も 共 通 で あ る 。 そ の た め,裏
の 表 現 が 原 理 と呼 ば れ る もの に ふ さ わ しい とす る考 え 方 が あ る。 一 方,拘
束 力 と呼 ばれ る力 の 実 態 は 物 理 学 で 追 求 し難 い もの で あ る た め,拘 束 力 を 考 え な い 表 の 表 現 こ そ が 原 理 だ とす る考 え方 もあ る。 ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 が 日常 の 経 験 に 照 ら して 妥 当 な もの で あ る こ とを納 得 した い と考 え る の は,当 然 の こ とで あ る。 そ の た め に は,個
々 の 拘 束 ご とに裏 の 表 現
が 成 立 し て い るか 否 か を 考 察 し て み る の が よ い 。 個 々 の拘 束 ご と に見 る と拘 束 力 が 仮 想 変 位 に よ って 仕 事 を生 み 出 して い な い こ と に気 づ くは ず で あ る 。 コマ の ボ ー ル ジ ョイ ン トに働 く拘 束 力 ,剛 体 振 子 や 二 重 剛 体 振 子 の ピ ン ジ ョイ ン トに働 く 拘 束 力,舵
付 き帆 掛 け 舟 の 舵 に働 く拘 束 力 の い ず れ も仮 想 変 位 に対 して仕 事 を し
て い な い 。 拘 束 ご とに 考 えて 仮 想 仕 事 が ゼ ロ で あ れ ば,当 然,系 全 体 の仮 想 仕 事 は ゼ ロで あ る 。 た だ し,こ の こ とが 成 立 す る の は次 に述 べ る滑 らか な拘 束 の 範 囲 で ある。
16.7滑
らか な拘束
三 質 点 剛 体 A の 各 質 点 間 の拘 束 力 は作 用 反 作 用 の 関 係 に あ っ た 。 三 質 点 剛 体 の 仮 想 変 位 は,座 標 系 A の 原 点 の無 限小 変 位 と無 限 小 回転 で 表 され る が,そ
の
仮 想 変 位 に よ っ て作 用 反 作 用 の 関係 に あ る拘 束 力 の組 は 仕 事 を しな い 。 した が っ て,三
つ の 拘 束 力 の 組 を 合 計 して も,当 然,拘
束 力 は仕 事 を しな い 。 3次 元 二 重
剛 体 振 子 に は 二 つ の ピ ン ジ ョイ ン トが 使 わ れ て い る。 慣 性 空 間 O と剛 体 A の 間 の ピ ン ジ ョイ ン ト部 は 拘 束 力 の働 く方 向 に仮 想 変 位 が 生 じる こ とは ない 。 唯 一 の 変 位 は ピ ン ま わ りの 回 転 だが,こ
の 回転 方 向 に は拘 束 トル ク は働 い て い な い 。 ま
た,剛 体 A と剛 体 B との 間 の ピ ン ジ ョイ ン トに 働 く拘 束 力 はす べ て 作 用 反 作 用 の 関 係 に あ る 五 組 の 力 ま た は トル ク で あ る 。 仮 想 変 位 の 方 向 は,剛 体 A 側 も B 側 も 同 じ変 位 に な る た め,仮 想 仕 事 は相 殺 しあ っ て い ず れ の 方 向 に も生 じ な い 。 こ の よ う に,多
くの 拘 束 で は,拘 束 力 が 仮 想 変 位 に よ っ て 仕 事 を す る こ と は な
く,系 全 体 の 仮 想 仕 事 は ゼ ロ に な る。 逆 に,仮 想 仕 事 を しな い 拘 束 を滑 ら か な 拘
図16.2上
束 とい い,ダ
下 動 す る水 平面 上 に支点 P を拘 束 され た コマ A
ラ ンベ ー ル の 原 理 は滑 らか な拘 束 に対 して成 り立 つ の で あ る。
コマ A の 支 点 P が,上 下 動 す る 水 平 面 上 に拘 束 さ れ て い て,そ 下 動 は 時 間 の 関 数 と して与 え られ て い る とす る(図16
の水 平 面 の 上
.2)。 こ の コマ の場 合,支
点 P は水 平 面 上 を 自 由 に移 動 で きる 。 滑 らか な拘 束 の 場 合,支
点 P に働 く拘 束
力 は水 平 面 に 垂 直 で,仮 想 変 位 は水 平 で あ るか ら仮 想 仕 事 は生 じ ない 。 こ れ に対 し て,水 平 面 に沿 っ て 摩 擦 力 が働 くと し,そ の 摩 擦 力 が 垂 直 方 向 の拘 束 力 に摩 擦 係 数 を掛 け た もの と考 え る と,そ の よ う な摩 擦 力 は,水
平 面 に沿 っ た 仮 想 変 位 に
よ っ て仮 想 仕 事 を生 み 出 して し まい,拘 束 力 が 仮 想 仕 事 を生 み 出す こ と に な る 。 こ の場 合 は滑 らか で な い拘 束 とい う こ と に な り,ダ な い。 なお,拘
ラ ンベ ー ル の 原 理 は 適 用 で き
束 力 に依 存 しな い摩 擦 力 な らば作 用 力 と して扱 う こ とが で き,ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 に反 す る こ と は な い。 剛 体 振 子 の ピ ン ジ ョイ ン トに摩 擦 トル ク が 働 く場 合 に も,同 様 な配 慮 が 必 要 で あ る 。
16.8時
間 を止 め る意 味
引 き続 き,上 下 動 す る水 平 面 上 に支 点 P が 拘 束 さ れ て い る コマ を考 え る。 そ して,こ
こ で は,拘 束 力 に依 存 す る摩 擦 力 は働 か ず,拘
束 は 滑 らか で あ る とす
る。 点 P の 仮 想 変 位 は こ の水 平 面 か ら外 れ る こ と は で き な い 。 仮 想 変 位 を 考 え る と き,時
間 を 止 め た が,そ
れ に よ り,水 平 面 の 上 下 動 は な くな り,点
Pの仮
想 変 位 の方 向 は 完 全 に水 平 方 向 とい う こ と に な る。 点 P に働 く拘 束 力 は 面 に 垂
直 で あ る か ら,点
P は 仮 想 仕 事 を 生 み 出 さ な い 。 も し,時 間 を止 め な い と,時
間 関 数 で 与 え られ た 水 平 面 の上 下 動 が 生 じ る の で,点
P の 仮 想 変 位 も上 下 方 向
の成 分 の持 っ て しま い,仮 想 仕 事 が ゼ ロ以 外 の値 に な っ て しま う。 これ が,時
間
を止 め る意 味 で あ る 。
16.9
事例:時 間の関数と して支点を動かす剛体振子
13.2節 の 2次 元 剛 体 振 子 で は 0'の 0 に一 致 させ た が,本
説 で は 点 0'を 時 間
の 関 数 と して 平 面 内 を動 か す モ デ ル の 考 え る。 こ の モ デ ル も 自 由度 1の ホ ロ ノ ミ ッ ク な系 で あ り,独 立 な 一 般 化 座 標 を θOA,独 立 な 一 般 化 速 度 を ωOAと す る 。 な お,θOAは
座 標 系 A の 座 標 系 0 か ら見 た 回 転 角 で,0'か
ら A に 向 か う幾 何 ベ ク
トル の鉛 直 下 方 か ら の傾 き角 で あ る 。 まず,位
置 の 三 者 の 関 係 と して,次 の 式 が 成 立 す る。
(16.31) こ の 式 のCOAは ず れ も2×1の
式(10.5)の
2 次 元 の 座 標 変 換 行 列 で あ り,そ
列 行 列 で あ る 。 こ の 式 か ら,式(16.7)の
れ以外 の記号 はい
δROAとVOAを
次の よ う
に求 め る こ とが で き る。
(16.32)
図 16.3
支 点 0'を時 間 の 関数 で動 かす 剛 体 振 子
(16.33) 式(16.32)を
求 め る と き に 時 間 を 固 定 し た の で,こ
て い な い 。 式(16.33)は
も う 一 度 時 間 微 分 し てVOAを
の 式 に はroo′ α(t)の 項 が 含 ま れ 求 め て お く。
(16.34) ま ず,式(16.7)に
式(16.32)を
代入す る。
(16.35) δθOAの 任 意 な値 に対 して こ の 式 が 常 に 成 立 す る こ とか ら次 の 式 が 成 立 す る。
(16.36) この 式 に式(16.34)を 代 入 して整 理 す る と,求 め る運 動 方 程 式 で あ る。
(16.37) 作 用 力 は 重 力 だ け と す る と, rAO'=dYbと ば,運
動 方 程 式(16.37)は
uiz16.1
を代 入 す れ ば よ い 。 また,
す る こ と が で き る 。 さ ら に,roo'(t)=0と
式(16.31)か
式(16.14)に
して 0 ′ を 0 に 固定 す れ
一 致 す る。
ら 式(16.32)を
求 め る 過 程 を 明 確 に確 認 せ よ 。
第
17
章
仮 想 パ ワ ー の 原 理(Jourdainの
原理)を 利用 する方法
仮 想 パ ワー の原 理 は,ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 と よ く似 て い る が,ダ
ラ ンベ ー ル の
原 理 の よ うな 実 用 上 の 弱 点 が な い 。 3次 元 問 題 や シ ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な系 に も一 様
に適 用 で きて わ か りや す い た め,マ ル チ ボ デ ィ ダイ ナ ミク ス の 理 解 が 進
む に つ れ て 注 目 され る よ うに な っ て きた 。 この 原 理 か ら,次 章 に述 べ る ケ イ ン型 の運 動 方 程 式 も直 ち に 求 ま る 。 本 章 で は,こ の 原 理 を利 用 して,再
び,ボ
ョイ ン トで 支 点 を拘 束 され た コマ の運 動 方 程 式 を立 て る。 第15章
の拘 束力消去
法 の場 合 と対 比 して 見 る こ とで,ダ
ールジ
ラ ンベ ー ル の 原 理 や 仮 想 パ ワ ー の 原 理 を理 解
しや す い と考 え て い る。 ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 や 仮 想 パ ワー の原 理 は,力 学 原 理 と呼 ばれ て い る。 こ れ ら を用 い る と拘 束 力 を媒 介 とせ ず に運 動 方程 式 を導 くこ とが で き るが,前
章 に も説
明 した よ う に,こ れ ら を納 得 す るた め に は 裏 か ら眺 め る と よい 。 裏 か ら眺 め る と は,拘 束 力 を考 え る こ と で あ る。 本 章 は,前 章 の 説 明 と対 比 しな が ら読 む こ とが 重 要 で,そ れ に よ り,ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 と仮 想 パ ワー の 原 理 の 類 似 性 と差 異 が 理 解 で きる はず で あ る。 本 章 の 事 例 は一 つ だ けで あ るが,す
で に前 章 ま で に 様 々 な タ イ プ の事 例 やQuizが
あっ
た。 仮 想 パ ワ ー の 原 理 は,シ
ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な系 まで の 範 囲 で,ど
んな
事 例 に も一 様 な考 え 方 で 対 応 で き る。 読 者 が 自 ら事 例 を 選 び,あ
る い は,事 例 を
作 っ て 試 して み る こ とで 十 分 理 解 で きる は ず で あ る。
17 .1
拘束質点系
質 点系 を対 象 と した 仮 想 パ ワ ー の 原 理 は 次 の よ うに書 く こ とが で き る。
(17.1) あ る い は,
(17.2) fと-mvに
つ い て は,ダ
と呼 ば れ,次
ラ ンベ ー ル の 原 理 の場 合 と同 じで あ る 。vは 仮 想 速 度
の よ うな 列 行 列 で あ る 。
(17.3) こ れ は,次 ①
の 三 つ の事 項 を満 たす 量 で あ る。
運 動 の 各 瞬 間,時 た 後,そ
間 を止 め て系 の構 成 す る全 質 点 の 位 置 と速 度 を 凍 結 し
の速 度 に与 え る変 化 分 で あ る。
②
拘 束 条 件 を満 た す 範 囲 で与 え られ る速 度 変 化 分 で あ る。
③
許 さ れ る 範 囲 で,任
意 の,あ
る い は,可
え,そ の す べ て に 対 して式(17.1),ま
能 なすべ て の速度 変化 分 を考
た は,(17.2)が
成 り立 つ 。
式(17.1)の 左 辺 は,仮 想 速 度 が 作 用 力 と慣 性 力 の和 に よ っ て 生 み 出す 仕 事 率(パ ワ ー)(注)を系 全 体 につ い て 加 え 合 わ せ た もの で あ り,仮 想 パ ワ ー と呼 ば れ て い る。 仮 想 パ ワ ー の 原 理 とは,系 全 体 に わ た っ て加 え 合 わせ た この よ う な仮 想 パ ワ ー は常 にゼ ロ に な る
,と い う も の で あ る 。
こ こ ま で の 説 明 は,前 章 と同 様 に,剛 体 振 子 の 事 例 を念 頭 に置 きなが ら読 め ば 理 解 しや す い と思 わ れ る が,同 様 の 説 明 に な る の で 省 略 す る 。 ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 と仮 想 パ ワ ー の 原 理 は ほ とん ど 同 じ よ う に見 え る 。 異 な っ て い る点 は,ダ
ラン
ベ ー ル の 原 理 で は 仮 想 的 に 位 置 を動 か した が ,仮 想 パ ワ ー の 原 理 で は,位 置 は 動 か さず に,速 度 を動 か して い る こ とで あ る。 時 間 の止 め て 仮 想 速 度 を 考 え る と い う こ と は,時 間 に依 存 す る速 度 変 化 分 は 考 慮 しな い と い う こ とで,数 は,時
学 的 に は,時 間 を定 数 と して 扱 う こ と に な る。 実 際 に
間 依 存 の 拘 束 が あ る場 合 に,時 間 を止 め る 意 味 が 出 て くる。
仮 想 速 度 は 速 度 レベ ル の拘 束 条 件 を満 た さ な け れ ば な らな い が,ホ
ロノ ミック
な 速 度 レベ ル の 拘 束 も シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ック な拘 束 も速 度 に 関 して線 形 で あ
(注)仕 事 率(パ ワ ー)は,微
小 仕 事 を その 仕 事が な され た微 小 時 間で 割 っ た もの で あ り,力 ×
速 度 であ る。 これ は,エ ネ ル ギー を時 間で 割 っ た単 位 で 表 され る。
る た め,仮
想 速 度 は 無 限 小 で な くて も よ い 。 式(13.36)の
v にv+vを
代 入 し,も
と の 式 の 差 し引 く こ と に よ り,v が 受 け る 拘 束 は 次 の よ う に 表 さ れ る 。
(17.4)
ΦvV=0
独 立 な 仮 想 速 度 の 数 は独 立 な一般 化 速 度 の 数 と 同 じで あ る。 す な わ ち,独 立 な 一 般 化 速 度 H の 仮 想 変 化 分 H が独 立 な仮 想 速 度 で あ り ,そ の 他 の 仮 想 速 度 は独 立 な 仮 想 速 度 に よ っ て 表 され る。 仮 想 パ ワ ー の 原 理 で は,ホ
ロ ノ ミ ック系 と シ ン
プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク系 を分 け て 考 え る 必 要 が な い 。 そ して,式(13 H+H,vをv+vと
.10)の H の
し,も との式 を差 し引 くこ とで,仮 想 速 度 vと独 立 な一 般 化
速 度 の 仮 想 速 度 H との 関係 が 次 の よ うに 求 ま る(第18章
参 照)。
v=vHH
(17.5)
こ れ ら の 操 作 も 時 間 を 固 定 し て 行 わ れ る 。 時 間 と位 置 レ ベ ル の 変 数 が 変 化 し な け れ ば,式(13.36)や 拘 束 を 式(17.4)と 式(17.5)を
式(13.10)の
係 数 や 残 りの 項 は 不 変 で あ る 。 式(17.5)は,vの
は 別 の 形 で 表 した も の で あ る。
式(17.1)に
代 入 す る と,次
の 式 が 得 られ る 。
(17.6) 許 され る 範 囲 で 任 意 の,ま た は,す べ て の仮 想 速 度 を考 え る と い う こ とは,独 立 な仮 想 速 度 の任 意 に取 る とい う こ とで あ る。 H が 独 立 な 一 般 化 速 度 の 場 合,H に任 意 独 立 な 値 を与 え て も この 式 が 成 立 す る こ とか ら,次 の 式 が 得 られ る 。
(17.7) こ の 式 は 第18章
に 出 て く るケ イ ン型 の 運 動 方 程 式 で あ るが ,こ こ で は 仮 想 速 度
の 考 え 方 とそ こか ら運 動 方 程 式 を導 く手順 を理 解 す れ ば よ い。 最 後 に,速 度 v を 独 立 な一 般 化 速 度 H で 表 し,そ の 時 間 微 分 を代 入 す れ ば,v の代 わ りに H を用 い た 表 現 に な り,運 動 方 程 式 が 得 られ る。 式(17.4)あ
た りか ら後 の 説 明 は,16.3節
の 説 明 とか な り似 て い る。 こ れ は ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 と仮 想 パ ワ ー の 原 理 が ほ とん ど 同 じ もの で あ る こ と を示 して い る 。 しか し,ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 は,16.1節 た。 ま た,ダ
と16 .3節 に分 け た 説 明 に な っ て い
ラ ンベ ー ル の 原 理 で は擬 座 標 を必 要 とす る 場合 が 現 れ る が,仮 想 パ
ワ ー の 原 理 で はそ の必 要 が な い。 こ れ ら に両 者 の 差 異 が 見 られ る。
拘束剛体系
17.2
式(17.1)は す べ て の 質 点 につ い て仮 想 パ ワ ー を計 算 す る形 に な っ て い る が,実 際 に は作 用 力 と慣 性 力 が 働 く点 だ け を考 え れ ば よい 。 拘 束 剛体 系 の 場 合,慣 性 力 や慣 性 トル ク は 重 心 加 速 度 と角 加 速 度 な どで 求 ま り,ま た,作 用 力 が 働 く点 は有 限個 に限 定 で き る こ とが 多 い 。 そ れ らの 点 の仮 想 パ ワー を計 算 して,合 計 す れ ば 系 全 体 の 仮 想 パ ワー に な る。 3次 元拘 束 剛体 系 の 場 合,仮
想 パ ワ ー の 原 理 は次 の よ う に書 くこ とが で き る。
(17.8) あ る い は,
(17.9) 式(17.8)の 左 辺 第 一 項 は,重 心 の 仮 想 速 度 が 慣 性 力 と重 心 に等 価 換 算 した作 用 力 の和 に よ っ て 生 み 出 す 仮 想 パ ワ ー で あ る。 第 二 項 は,仮 想 角 速 度 が 慣 性 トル ク と 重 心 に 等 価 換 算 した 作 用 トル ク の和 に よっ て 生 み 出 す 仮 想 パ ワ ー で あ る。 式(17. 8)は,系
全 体 に わ た っ て この よ うな仮 想 パ ワ ー の足 し合 わせ た もの が,独 立 な仮
想 速 度 の 任 意 な値 に対 して 常 にゼ ロ に な る こ と を示 して い る。 仮 想 重 心 速 度 V と 仮 想 角 速 度 Ω′を 独 立 な 仮 想 速 度 H で 表 す と,式(13.11)と (13.12)か
ら,次
の ようになる。
(17.10)
V=VHH Ω′=Ω ′HH
(17.11)
ま た,重 心 速 度 V と角 速 度 Ω′を独 立 な 一 般 化 速 度 H で 表 して 時 間 微 分 を作 れ ば,V
と Ω′を H で 表 す こ と が で き る。 こ れ ら を 用 い,仮 想 速 度 H の 任 意 独 立
性 の利 用 す る と,運 動 方 程 式 の得 る こ とが で き る。 式(17.9)の 右 辺 で は,重 心 に等 価 換 算 した 作 用 力 と作 用 トル ク を用 い て仮 想 パ ワー の計 算 を行 っ て い る。 しか し,仮 想 パ ワー の計 算 は,等 価 換 算 す る前 の作 用 力 や 作 用 トル ク を用 い て行 う こ と もで き る。 系 全 体 を構 成 して い るす べ て の 点 を 考 え る と して,そ 度 を,そ
れ らの 点 の 速 度 を ま とめ た もの が vで あ る。 また,各 点 の角 速
の 点 が 属 す る 剛 体 の 角 速 度 と考 え る こ と に し,そ れ ら を順 番 に 並 べ て
ω′と書 く こ と に す る 。 各 点 に働 く作 用 力 を順 に 並 べ た もの は f,作 用 トル ク を 順 に 並 べ た も の は n′とす る。 こ れ らの 記 号 を用 い て,式(17.9)は
次 式 の よ うに
書 ける。
(17.12) v,ω
′,f,n′
は 系 に 含 ま れ る す べ て の 点 を対 象 とす る よ う に 説 明 した が
,実
際
に は 作 用 力 や 作 用 トル ク が 働 い て い る 点 だ け を 考 え れ ば よ い 。 v と f,ω ′とn′ に 含 ま れ て い る 点 が,そ (17.9)と(17.12)に,本
れ ぞ れ,対
f,n′
,式
書 の 大 文 字 と 小 文 字 の 使 い 分 け が 現 れ て い る 。v,ω
は 点 に 関 す る 量 を 表 し,V,Ω
ω ′,n′ の ダ ッ シ ュ の 意 味 は,Ω
また,式(17.9)右
応 す る もの にな って いれ ば よい。な お
′ ,F,N′
′ ,
は 剛 体 に 関 す る 量 で あ る 。 な お,
′,N′ の 場 合 と 同 じで あ る 。
辺 の最 後 の 項 は,ダ
して も よ い 。 式(17・12)の 場 合 は,ωTnで
ッ シ ュ の付 か な い 記 号 を用 い て ΩTNと あ る。 こ れ らは パ ワ ー で あ るか ら剛 体
座 標 系 で 表 さ れ た 記 号 を用 い て も慣 性 座 標 系 で表 され た記 号 を用 い て も同 じ値 に な る。 2次 元 剛 体 系 の 仮 想 パ ワー の原 理 の 表 現 は,3 次 元 剛 体 系 の もの を単 純 に簡 単 に す れ ば よ く,も は や,説
明 の 必 要 もな い で あ ろ う(よ い 練 習 問題 に な りそ うな
読 者 は や っ て み よ)。
17.3
裏の表現,滑 らかな拘束,時 間を止める意味,特 徴など
仮 想 パ ワー の 原 理 に も,ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 と 同様 に,裏 の 表 現 が あ る 。 拘 束 質 点 系 の場 合 は次 の よ うに 書 け る。 vTf=0
(17.13)
また,3 次 元 拘 束 剛 体 系 の 場 合 は 次 の よ う に な る 。 VTF+Ω
′TN′=0
こ れ ら に 対 し,式(17・1),(17
(17.14) .8)な ど が 表 の 表 現 で あ る 。 裏 の 表 現 は,仮
が 拘 束 力 に よ っ て 生 み 出 す 系 全 体 の 仮 想 パ ワ ー が,常
に,ゼ
想速度
ロになってい るこ と
を 意 味 し て い て,「 拘 束 力 は パ ワ ー を 生 み 出 さ な い 」 と い え る 。
仮 想 パ ワー の 原 理 の 妥 当性 を納 得 す る た め に裏 の 表 現 が 役 立 つ こ とや,こ
の原
理 が 適 用 で き るの は 滑 ら か な拘 束 の範 囲 で あ る こ と,ま た,仮 想 速 度 は時 間 を止 め て 考 え な け れ ば な ら な い こ と,な 仮 想 パ ワ ー の 原 理 は,ホ
どは ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 と同様 で あ る。
ロ ノ ミ ッ ク な系 も シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な系 も,
区 別 せ ず に扱 う こ とが で き る 。独 立 な仮 想 速 度 と独 立 な一 般 化 速 度 が,直 接,対 応 して い るか らで あ る。 ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 の 場 合,シ
ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック
な系 で は独 立 な仮 想 変 位 の数 が独 立 な一 般 化 座 標 の数 よ り小 さ くな る 。 ま た,独 立 な 仮 想 変 位 と独 立 な 一 般 化 速 度 を,直 接,対 応 させ られ な い 場 合 もあ る。 3次 元 の 角 速 度 を独 立 な 一 般 化 速 度 と した と き,対 応 す る 仮 想 変 位 の 考 え 方 に つ い て,次 節 に擬 座 標 を用 い な い 別 の方 法 が 補 足 さ れ て い る。 ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 は,静 力 学 の仮 想 仕 事 の原 理 に 対 す る動 力 学 版 で あ る。 あ る い は,ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 は,静 力 学 の仮 想 仕 事 の 原 理 を含 ん で い る 。 一 方,
仮 想 パ ワー の 原 理 は,動 力 学 版 だ け で,対 応 す る静 力 学 版 が あ る わ け で は な い。 な お,仮 想 パ ワ ー の 原 理 は,Jourdainの
原 理 と も 呼 ば れ て い る 。 ま た,仮 想
変 位 か ら仮 想 速 度 の 考 え た こ とを延 長 して,仮 想 加 速 度 を用 い る 方 法 な ど もあ る が,本 書 で は説 明 しな い 。 本 節 の 最 後 で あ る が,次
の事 柄 は 重 要 で あ る。 ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 か らハ ミル
トンの 原 理 を説 明す る こ と は で き るが,仮 想 パ ワ ー の 原理 か ら説 明す る こ とは 困 難 で あ る。 こ れ は,ハ
ミル トンの 原 理 の 変 分 の 考 え方 に,仮 想 パ ワ ー の 原 理 は適
合 し難 い た め で あ る 。 そ れ ゆ え,ダ
17 .4
ラ ンベ ー ル の原 理 の 重 要 性 は揺 らが な い。
ダランベールの原理に関する補足
ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 につ い て,式(17.8)に
対 応 した もの を書 こ う とす る と,少
し,複 雑 な こ と に な る。 この 式 に δtを掛 け,Vδtを
δRに 置 き換 え れ ば 第 一 項
は 仮 想 仕 事 に な る。 しか し,Ω ′δtを直 接 置 き換 え て δΞ′と書 くこ とは で き るが, この
Ξ ′は 擬 座 標 と呼 ば れ る もの で,分
か り難 い 。 この
Ξ ′は 考 え て い る 瞬 間 の
回 転 姿 勢 を基 準 と した 回 転 姿 勢 と考 え る こ と が で き,微 小 な仮 想 変 位 δΞ′と し て は 意 味 を持 つ が,有
限 の 大 き さ を持 つ 回 転 姿 勢 と して は 存 在 し な い 量 で あ る 。
こ れ は 角 速 度 Ω′が 積 分 で き ない(ホ
ロ ノ ミ ック で な い)こ
とに対 応 して い る 。
回転 姿 勢 と して オ イ ラ ー 角 Θ を 用 い る こ と に す れ ば,Ω ′δtを 次 の よ う に置 き 換 え る こ とが で きる 。
(17.15)
右 辺 の 偏 微 分 で 表 され た 係 数 は,式(12.78)に
示 さ れ た ブ ロ ッ ク対 角 行 列 で あ
る。
【12.78】
オ イ ラ ー 角 を 狭 義 の も の と し た 場 合,こ
の 式 の 各 対 角 ブ ロ ッ ク は 式(12.80)に
与
え られ て い る。
【12.80】
式(17.15)に
よ り,ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 は 次 の よ う に 書 け る 。
(17.16) δRと δΘ を独 立 な仮 想 変 位 で 表 す こ とが で き れ ば,こ
の式 か ら運 動 方 程 式 を導
くこ とが で き る。 回転 姿 勢 に オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ を用 い る場 合 も同 様 に考 え る こ とが で き,次 の 式 が ダ ラ ンベ ー ル の原 理 で あ る 。
(17.17) S は 式(12.70)に
与 え ら れ て お り,そ
の 要 素Soiは
式(8.10)に
準 じれ ば よい 。
【12.70】
(17.18) 式(17.17)を 用 い る場 合,δRと ことになる。
δEを 独 立 な仮 想 変 位 で 表 し,運 動 方 程 式 を導 く
17.5
事例:ボ ールジ ョイン トで支点を拘束されたコマ
15.1節 で 求 め た も の と 同 じ運 動 方 程 式 の,仮 想 パ ワー の 原 理 を 利 用 す る方 法 で 求 め て み よ う。 ま ず,剛 体 A を対 象 と し た仮 想 パ ワ ー の 原 理 は 次 の よ う に書 け る。
(17.19) こ こ で,支
点 P の 拘 束 か ら 求 め た 式(15.9)を
用 い る。 【15.9】
時 間 を止 め て,独 立 な一 般 化 速 度 Ω′OAを仮 想 速 度 分 増 加 させ,そ なVOAも
の 結 果,従 属
仮 想 速 度 分 が 増 加 した と考 え る 。
(17.20) (17.21) これ ら を式(15.9)に 代 入 し,元 の 式 を差 し引 け ば,次 の 関係 が 得 られ る。
(17.22) こ れ は 従 属 な仮 想 速 度 を独 立 な 仮 想 速 度 で 表 し た 関 係 で あ る。 こ れ を式(17.19) に代 入 す る と,次 の 式 が 得 られ る。
(17.23) さ て,Ω
′OAは独 立 で,任
意 の 値 を 取 れ る 。 す な わ ち,仮
立 な 仮 想 速 度 Ω′OAが ど の よ う な 値 を と っ て も 式(17.23)が あ る 。 し た が っ て,こ
想 速 度 の 原 理 と は,独 成 立 す る とい う こ とで
の式 か ら次 の 式 が 得 られ る。
(17.24) こ れ は 式(15.7)と
同 じで あ り,こ
運 動 方 程 式(15.11),ま
の 後,式(15.9)か
た は,(15.12)に
らVOAを
至 る 手 続 き は15・1節
求 め て 代 入 整 理 し, と同様 で あ る。
拘 束 力 消 去 法 で は,拘 束 関係 以 外 に拘 束 力 の 具 体 的 な形 を把 握 し,そ の性 質 を 利 用 して 拘 束 力 を消 去 す る こ とが 必 要 で あ っ た 。仮 想 パ ワ ー の 原 理 で は,拘 束 力 に は ま っ た く触 れ ず に,拘 束 関係 だ け を用 い て い る 。
Quiz17.1
仮 想 パ ワ ー の原 理 を利 用 して,三 質 点 剛 体 の 運 動 方 程 式 を導 い て
み よ。 Quiz17.2
仮 想 パ ワ ー の 原 理 を利 用 し て,11.1節[Quiz11.6]の
斜めにピ
ン結 合 され た 剛体 振 子 の 運 動 方 程 式 を求 め よ。 Quiz17.3
仮 想 パ ワ ー の 原 理 を利 用 して,3 次 元 二 重 剛 体 振 子 の 運 動 方 程 式
を 求 め よ。 Quiz17.4
13.6節[Quiz13.5]の
ク 長 と点OR間
の 長 さ が す べ て2bと
2次 元 四 節 リ ン ク機 構 に お い て,各
リン
す る と,四 節 リ ン ク機 構 は正 方 形 を含 む ひ
し形 に な る。 各 リ ンク の 重 心 は リ ン ク長 の 中央 に あ る と して,こ の 系 の 運 動 方 程 式 を 求 め よ。
ケイ ン型運動方程式 を
第18章
利用す る方法
本 章 で説 明 す る 方 法 は,Kaneの
著 書 な ど に見 られ るケ イ ンの 方 法 とは 異 な っ
た 印 象 を与 え るか も しれ な い が,本 質 的 に は 同 じで あ る。 ケ イ ンの方 法 は,ダ ンベ ー ル の 原 理 に よる 方 法 と同 じ もの か,新 論 争 が あ っ た とい わ れ て い る 。 第15章 で 並 べ,そ
し く価 値 の あ る方 法 か で,か
か ら第19章
ラ
な りの
ま で の 方 法 を 運動 方 程 式 の形
の 方 法 と特 徴 を よ く考 察 して み る と,ケ イ ンの 方 法 の位 置 付 けが 見 え
て きて 興 味 深 い(付
録GⅣ-2の
表 参 照)。
本 章 で は,事 例 と して転 動 球 の 運 動 方 程 式 を考 え る 。 この 事 例 で は 接 触 点 に お け る滑 り を扱 う手 段 と して 瞬 間 接 触 点 と呼 ぶ 方 法 を利 用 す る。 瞬 間接 触 点 は車 輪 な ど の滑 りを扱 う場 合 に役 立 つ 考 え 方 だ が,ケ
イ ンの 方 法 と関係 が あ る わ け で は
な い。 読 者 は,コ マ や 振 子 な ど の単 純 な 事 例 で,本
章 の 方 法 を確 認 して み る こ と
を考 慮 され た い 。 ま た,本 章 の 転 動 球 に 対 して シ ミ ュ レー シ ョ ン プ ロ グ ラム は 準 備 して い な い 。 シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な事 例 の シ ミュ レー シ ョ ンプ ログ ラム と して は 次 章 の操 縦 安 定 性 の た め の 二 輪 車 モ デ ル が 参 考 に な るで あ ろ う。 な お,第21章
と付 録 D で,木 構 造 を対 象 と した 漸 化 式 に よる 順 動 力 学 の 定 式
化 を説 明 す る た め に,本 章 で 説 明 す る ケ イ ン型 運 動 方 程 式 を用 い た。 また,第 22章 で ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 を 導 く と き も,ケ イ ン型 運 動 方 程 式 か ら始 め て い る。
18.1 質点系 のケイン型運動方程式 拘 束 質 点 系 の全 質 点 の 速 度 vは,独 立 な 一 般 化 速 度 H に よ っ て 次 の よ う に 表 す こ とが で き た(13.5節
参 照)。
v=vHH+vH
こ の系 の 時 間 を 止 め て,独
【13.10】
立 な一 般 化 速 度 H をH+Hに
変 更す る。そ れに伴 っ
て v はv+vに
変 更 さ れ る。 これ らの 変 更 は,拘 束 条件 を満 た す 範 囲 で 行 わ れ る
た め,変 更 後 も式(13.10)の 関 係 を満 た さ な け れ ば な ら な い 。
v+v=VH(H+H)+VH(18.1) VHとVHは
Q と tの 関 数 で あ る が,時
関 係 で 不 変 で あ る 。 式(18.1)と
間 を 止 め た 段 階 で 凍 結 し て あ り,H
式(13.10)の
とは 無
差 を と る と,式(16.16),第17章
で
用 い た 次 の 関 係 が 得 られ る 。
V=VHH【17.5】 こ れ は,独 立 な 一 般 化 速 度 の 仮 想 速 度 に よ っ て,全 質 点 の 仮 想 速 度 を表 した もの であ る。 質 点 系 を対 象 と した仮 想 パ ワ ー の 原 理 は次 の よ う に書 くこ とが で きた。 【17.1】
こ の 式 に 式(17.5)を
代 入 す る。 (18.2)(注)
H は独 立 な仮 想 速 度 で あ るか ら任 意 の値 を取 る こ とが で き,次 の 式 が 成 立 す る。
(18.3) あ る い は,
(18.4) こ の 式 を,質 点 系 を対 象 と した ケ イ ン型 運 動 方 程 式 と呼 ぶ こ と にす る。 また,VH を ケ イ ン の 部 分 速 度(partial
velocity)と 呼 ぶ 。 部 分 速 度 と は,そ の 点 の 速 度 を
一 般 化 速 度 H で 偏 微 分 した も の で ,一 般 化 速 度 の 変 化 が そ の 点 の 速 度 に及 ぼ す 感 度 の よ う な もの で あ る 。
18.2 剛体系のケイン型運動方程式 3次 元 剛 体 系 に つ い て も 同様 の 関 係 を 導 くこ とが で き る。 まず,V に よ っ て 次 の よ う に表 され た(13.5節
(注)式(18.2)の
と Ω'は H
参 照)。
右 辺 は 0で右 辺 も ス カ ラー で あ る こ とが わ か る。 式(18.3)の 右 辺 は 0で左 辺
も行 列 で あ る。0か 0に も関連 してい る式 の形 態 を示 す 情 報 が 含 まれ て い て,そ の式 の意 味 な どに つ なが って い る。
【13.11】 【13.12】
これ らか ら,次 の 仮 想 速 度 の 関係 が 求 ま る。 【17.10】 【17.11】
3次 元 剛 体 系 の仮 想 パ ワ ー の 原 理 は次 の 式 で 表 され た。 【17.8】
こ の 式 に 式(17.10)と(17.11)を
代 入 し,H
の 独 立 性 を 利 用 す る と,次
の式が成
立 す る。
(18.5) あ る い は,
(18.6) こ れ ら を,3 次 元 剛 体 系 を対 象 と し た ケ イ ン 型 運 動 方 程 式 と呼 ぶ こ と に す る 。 ま た,VHは ity)で
ケ イ ン の 部 分 速 度,Ω'Hは
angular
veloc
あ る。
式(18.6)の 17.2節
ケ イ ン の 部 分 角 速 度(partial
左 辺 に は 重 心 位 置 に 等 価 換 算 さ れ た F と N'が 使 わ れ て い る が,
の 式(17.12)と
同 様 に,等
価 換 算 前 のf,n'を
用 い る こ と が で き,3 次 元
剛 体 系 の ケ イ ン型 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に書 くこ と も で きる 。
(18.7) v,ω'の
意 味 も,17.2節
と同 じで あ る。 また,VHは
該 当す る点 の 速 度 vを H で
偏 微 分 した 部分 速 度 で あ り,ω'Hは該 当 す る 点 が 属 して い る 剛 体 の 部 分 角 速 度 で, そ れ ぞ れ,f,n'と
対 応 が 取 られ て い る 。
2次 元 剛 体 系 の ケ イ ン型 運 動 方 程 式 は,3 次 元 剛 体 系 の もの を 単 純 に 簡 単 化 す れ ば よ く,も は や,説 明 の 必 要 もな い で あ ろ う。
18.3
裏 の表現
ケ イ ン型 運 動 方程 式 に も裏 の 表 現 が あ る。 質 点 系 の場 合 は次 の よ う に な る 。
(18.8) こ の 式 は,ケ
イ ンの 部 分 速 度 と拘 束 力 の 直 交 性 を意 味 して い る。 た だ し,ケ イ ン
の 部 分 速 度 は 各 一 般 化 速 度 に対 応 して そ の 数 だ け あ り(VHの
各 列),そ
れ ら のす
べ て が 拘 束力 に直 交 して い る。 剛 体 系 の場 合 は次 の とお りで あ る。
(18.9) この 式 は 次 の よ うに 書 き換 え る こ とが で き る。
(18.10) こ れ も,拘 束 力 と部 分 速 度 の 直 交 性 を 示 して い る 。
18.4 運動方程式 の作 り方 ケ イ ン型 運 動 方 程 式 を 利 用 す る 方 法 は 次 の と お り で あ る 。 ま ず,独 速 度 H を 選 択 す る 。 質 点 系 の 場 合 は,す (13.10)を
(13.10)を
べ て の 質 点 の 速 度 v を H で 表 し,式
作 る 。 こ の 作 業 は r を Q と tで 表 し て 式(13.2)を
て,式(13.9)を
立 な一 般 化
作 り,時
間微 分 し
用 い る 方 法 が わ か り や す い 。 し か し慣 れ て く る と,い
き な り式
書 き 下 す こ と も で き る よ う に な る 。 次 に,式(13.10)か
を 取 り 出 す 。 ま た,式(13.10)を ン型 運 動 方 程 式(18.3),ま
時 間 微 分 し て v を H で 表 し,VHと
た は,(18.4)に
ら 部 分 速 度VH と もにケ イ
代 入 して 整 理 す れ ば 目指 す 運 動 方 程 式
が 得 られ る。 連 続 的 に 質 量 が 分 布 し て い る 剛 体 系 の 場 合,質 る の は 楽 で は な い 。 3 次 元 剛 体 系 の 場 合 は,V (13.12)を り,時
作 る 。 こ の 作 業 は,R
間 微 分 し て,式(13.9)を
な り 式(13.11),(13.12)を 11),(13.12)か
H で 表 し,式(13.11),
や C を Q と tで 表 し て 式(13.3)や(13.6)を 用 い る 方 法 が わ か りや す い 。 慣 れ て く る と,い
ら 部 分 速 度VH,Ω'Hを
た は,(18.6)に
と Ω'を
作 き
書 き 下 す こ と も で き る よ う に も な る 。 次 に,式(13.
時 間 微 分 し て V と Ω'を 5),ま
点 系 の 考 え 方 をそ の ま ま適 用 す
取 り 出 す 。 ま た,式(13.11),(13.12)を
H で 表 し,VH,Ω'Hと
と も に ケ イ ン 型 運 動 方 程 式(18.
代 入 し て 整 理 す れ ば 目 指 す 運 動 方 程 式 が 得 ら れ る 。 2次 元
剛 体 系 の 場合 の 手 順 も同 様 で あ る。 ケ イ ン 型 運 動 方 程 式 を 利 用 す る 方 法 は,ケ
イ ンの 著 書 な どに よ る彼 の 説 明 と異
な っ た 印 象 が あ る と思 わ れ る。 ケ イ ン は,個 々 の 一 般 化 速 度Hiご Kiと 一 般 化 慣 性 力Ki*を
と に一 般 化 力
作 り,両 者 の 和 を ゼ ロ と した もの が,Hiに
対 応 す る運
動 方 程 式 に な る と した 。
(18.11) KiやKi*は,個
々 の作 用 力 や慣 性 力 な ど に,そ の 着 力 点 のHiに
対 応 した 部 分 速
度 な ど を掛 け,系 全 体 に つ い て足 し合 わ せ て作 る もの と した 。 ケ イ ンは,部 分 速 度 な ど に幾 何 ベ ク トル 表 現 を用 い,手 続 き的 な 手 順 で,運 動 方 程 式 の作 成 を説 明 して い る。 KiやKi*は,式(18.7)の
記 号 を用 い る と 次 の よ う に書 け る。
(18.12) (18.13) ケ イ ン 型 運 動 方 程 式 は,行
列 表 現 を 用 い て ケ イ ン の 方 法 を ま と め た も の で あ り,
ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 と 同 様 に,式
の 中 に運 動 方 程 式構 築 の手 順 が 表 現 され
て い る と 見 る こ と が で き る 。 ケ イ ン は,式(18.11)をKane's Kane's
Dynamical
Equationと
Equation,ま
呼 ん だ 。 本 書 で は,式(18.3)∼(18.7)を
運 動 方 程 式 と 呼 び,式(18.11)と
た は, ケ イ ン型
微 妙 に 区 別 し た 名 称 を 付 け て い る 。 ケ イ ン は,
代 数 ベ ク トル を 用 い て 系 全 体 を ま と め たvHの
よ う な 表 現 を利 用 して い ない 。
18.5 運動方程式の標準形 ま ず,質
点 系 を 考 え る 。 式(13.10)を
時 間 微 分 す る と,次
の よ う に な る。
(18.14) こ の 式 を 式(18.4)に
代 入 し,整
理 す る と次 の よ う に書 け る。
(18.15) こ れ は,13.8節
に 述 べ た,運
動 方程 式 の標 準 形 に な っ て い る。 【13.40】
mHとfHは
次 の と お りで あ る 。
(18.16)
(18.17)
剛 体 系 の 式 か ら も 標 準 形 を 作 る こ と が で き る 。 た と え ば,式(18.6)の を,式(13.11),(13.12)の
時 間 微 分 を 用 い て,H
果 を 整 理 す る と 式(13.40)の
V と Ω'
で 表 す こ とが で き る 。 そ の 結
形 に な る 。 こ の と き,mHとfHは
次 の と お りで あ
る。
(18.18)
(18.19) な お,式(18.16),(18.18)の
18.6
い ず れ の 場 合 も,mHは
対 称 行 列 で あ る。
速度 変 換法
本 節 で は,広
い 意 味 で 前 節 の 方 法 と類 似 な が ら,別
対 比 を 考 え る 。 難 し く感 じ る 読 者 は,第19章
途,発
や 第20章
展 して きた 方 法 との
を読 ん だ 後 な ど に戻 っ て
き て も よい 。 Shabana(参
考 文 献 4)は,適
切 な 座 標 分 割(Coordinate
し て 拘 束 条 件 の ヤ コ ビ 行 列 か ら 速 度 変 換 行 列(Velocity を 求 め,そ
Transformation
対 応 Matrix)
れ を利 用 して ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 か ら本 章 の 標 準 形 運 動 方 程 式 を求 め
る 方 法 を,Embedding 質 点 系 の 場 合,仮 (16.15)で
Partitioning)に
Techniqueと
題 して 説 明 して い る 。
想 変 位 δrの 拘 束 は 拘 束 条 件 の ヤ コ ビ 行 列 〓 を 用 い て,式
表 され る。 【16.15】
仮 想 変 位 δrを 独 立 な も の δrIと 従 属 な も の δrDに 分 割 し,こ ビ行 列 も 〓
と 〓
に わ け る と,δrDは
れに対応 してヤ コ
δrIに よ っ て 次 の よ う に 表 さ れ る 。
(18.20) し た が っ て,δrを
δrI,δrDの
順 に 並 べ 替 え た と し て,こ
れ を δrIに よ っ て 次 の
よ う に 表 現 で きる 。
(18.21) この 係 数 行 列BIが 行 列 で あ る が,独
速 度 変 換 行 列 で あ る。 速 度 変 換 行 列BIは
δrIか ら δrを 作 る
立 な一 般 化 速 度VIか ら Vを作 る 行 列 とい う こ と もで きる 。
V=BIVI(18.22) 速 度 レベ ル の 拘 東 条 件 式(13.36)も 同様 な 座標 分 割 に よ り,次 の よ う に書 け る 。
(18.23) こ の 式 か らVDをVIで
表 す こ と が で き,そ
の 結 果,δrと
同 じ並 べ 替 え を 行 な っ た
vは次 の よ う に な る。
(18.24) Embedding
Techniqueは,式(18.21)と(18.24)を
ダ ラ ン ベ ー ル の 原 理(18 .1)に
代 入 し て δrIの 独 立 性 を 利 用 す る 手 続 き で あ り,整
理 す る と次 の よ う な運 動 方程
式 が 得 られ る。
(18.25) この 式 は 式(18.15)と
同 じ形 を して い る。 また,質
点 系 だ け で な く剛 体 系 で も同
様 の 表 現 を 得 る こ とが で きる 。 Shabanaの
説 明 は,数 値 計 算 に よ る 順 動 力 学 解 析 を実 現 す る汎 用 的 な 解 法 を
念 頭 に お い た も の の よ う で,Embedding
Techniqueは
数 値 計 算 上,不
利で ある
と し て い る 。 そ の 理 由 は,拘 束 条 件 ヤ コ ビ行 列 の 正 則 部 分 〓 Dの 逆 行 列 計 算 な どで あ ろ う。Shabanaの 説 明 は,さ ら に,拘 束 条 件 の ヤ コ ビ行 列 を 利 用 して 独 立 な 一 般 化 速 度 を選 択 した り,正 規 直 交 性 を持 つ 速 度 変 換 行 列 とそ れ に 対 応 す る 独 立 な 一 般 化 速 度 を 数 値 的 に作 り出 す 方 法 な どに 言 及 して い る。 さ て,本
章 で 説 明 して い る ケ イ ンの 部 分 速 度 は,速 度 変 換 行 列 を包 含 して い
る。 こ の こ とは 式(18.22)と 式(17.5)を 見 比 べ れ ば 明 らか で あ る 。 V=VHH【17
式(18.22)で
は独 立 なVIをVの
.5】
中 か ら選 択 して い る が,VIをVの
れ る独 立 な もの に ま で 拡 張 す れ ば,シ
線 形 結 合 で作 ら
ンプル ノ ンホ ロノ ミ ックな系 の範 囲で は
H と 同 じ と考 え る こ とが で き る。 剛 体 系 の 場 合 は,部 分 速 度 と部 分 角 速 度 を 組 み 合 わせ て,速
度 変 換 行 列 に な る。
(18.26) この 場 合,質
点系 の 式(18.16),(18.17)に
あ るが,式(18.16),(18.17)と
対 応 す る 式 は,式(18.18),(18.19)で
同 じ形 に 書 き換 え る こ と は容 易 で あ り,そ の 差 異
は 問 題 に は な ら な い。 部 分 速 度 は,拘 束 条 件 の ヤ コ ビ行 列 か ら作 られ る とは 限 ら な い が,理
論 上 の 位 置 付 け と して は,速 度 変 換 行 列 と 同 じ もの とい え る 。拘 束 条
件 の ヤ コ ビ行 列 か ら数 値 的 に作 る の で な け れ ば,逆 行 列 を 必 要 とす る とは 限 ら な い 。 な お,Shabanaの
著 書 に,速 度 変 換 行 列 に 関 す る 論 文 が 引 用 さ れ て い る 。
本 書 の 参 考 文 献 リ ス トに も代 表 的 な もの を挙 げ て お い た。 次 章 で は,標 準 型 の運 動 方 程 式 を作 る18.5節 追 加 法 に つ い て 述 べ る が,そ
の 方 法 を一 歩 進 め た,拘 束 条 件
の方 法 で用 い る式 も,式(18.16),(18.17)と
同型の
もの で あ る。 拘 束 条 件 追 加 法 は,標 準 型 の 運 動 方 程 式 を作 る 方 法 を包 含 して い る だ け で な く,さ ら に適 用 性 が 広 く,ま た,か え て い る(19.2節
な り異 な っ た視 点 に立 っ た 方 法 と考
参 照)。
そ れ に もか か わ らず,上 記 の 速 度 変 換 行 列 を用 い る 方 法 は,広 標 準 型 の 運 動 方 程 式 を 求 め る方 法,あ
く解 釈 す る と,
るい は,拘 束 条 件 追加 法 と同 じ もの とす る
見 方 が あ る。 上 記 の引 用 文 献 な どか らは,位 置 づ け,利 用 方 法,適 用 性 な どの 観 点 で か な り異 な っ た 印象 も残 り,ま た,ケ
イ ンの 部 分 速 度 との 関連 な ど,調 べ る
べ き課 題 を残 して い る が,速 度 変 換 行 列 は筆 者 の拘 束 条 件 追 加 法 よ りか な り早 い 時 期 か ら利 用 さ れ て き た もの で あ り,「速 度 変 換 」(Velocity tion)と
Transforma
い う言 葉 は 広 ま りつ つ あ る と感 じ られ る。 こ の よ うな 状 況 を考 え,次
章 の 拘 束 条 件 追加 法 に は,「 速 度 変 換 法 」 とい う呼 び 名 を付 記 し,表 題 を,「 拘 束 条 件 追 加 法(速
18.7
度 変 換 法)」 と した 。
事 例:転
図13.2(13.3節)の
動球 転 動 球 は水 平 面(X-Y平
面)と
一 点 で接 触 し,そ の 点 で
滑 ら な い モ デ ル で あ る 。 こ れ ら の 拘 束 は,速
度 レベ ル で,13.6節
の 式(13.33)の
よ うに 表 され た。 【13.33】
点 Q は瞬 間接 触 点 で,そ
の 位 置rAQは
次 の とお りで あ る 。
(18.27) 瞬 間 接 触 点 は 接 触 点 と重 な っ て い る の で,こ の 式 の 右 辺 は 式(13.29)と る。 た だ し,瞬 間 接 触 点 は転 動 球 に 固 定 され て い る の で,時
同 じで あ
間微 分 に対 して は,
rAQを 定 数 と して 扱 う必 要 が あ る。
(18.28) 式(13.33)も,rAQを え,時
定 数 と 考 え て 導 か れ た 。 式(13.33)の
間 微 分 後 に 式(18.27)を
時 間 微 分 で も同 様 に考
代 入 し て 整 理 す る 。 そ の 結 果,次
の 式 が 得 られ る 。
(18.29) こ の 系 の 運 動 学 的 自 由 度 は 3で あ り,Ω'OAを い 。 式(13.33)か
ら,重
心 の 部 分 速 度(VOA)Hが
独 立 な一 般 化 速 度 H とす れ ば よ 次 の よ う に得 られ る。
(18.30) こ の 式 に も 式(18.27)を
代 入 し,整
理 す る と次 の よ うに な る。
(18.31) 一方
,部
分 角 速 度(Ω'OA)Hは
簡 単 で あ る。
(18.32) 剛体 A を対 象 に した ケ イ ン型 の 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に書 け る 。
(18.33) こ の 式 に,式(18.29),(18.31),(18.32)を
代 入 し て 整 理 す れ ば,運
動方 程式が
得 られ る 。
(18.34) 転 動 球 の 幾何 学 的 自由 度 は 5で あ り,一 般 化 座 標 は,回 転 姿 勢 を表 す オ イ ラ ー パ ラ メ ー タEOAと,重
心 の 水 平 面 上 の位 置,ROAXとROAY,と
す る の が 適 当で あ
る。 した が っ て,順
動 力 学 解 析 に は次 の式 を付 随 させ る こ と に な る 。
(18.35) こ の 式 の 二 行 目 と三 行 目は ,式(13.33)にDTXとDTYを 入 した も の で あ る 。 こ の 式 の 数 は,オ
左 か ら掛 け,(18.27)を
代
イ ラ ーパ ラ メ ー タの 拘 束 を差 し引 くと,幾
何 学 的 自由 度 に等 しい 。 一 方,式(18.34)の
運 動 方 程 式 の 数 は 運 動 学 的 自由 度 と
同 じで あ る。 転 動 球 の 運 動 方 程 式 を立 て る場 合,瞬
間 接 触 点 の 考 え 方 が 役 立 っ た。 瞬 間 接 触
点 は タイ ヤ の 滑 りを 計 算 す る と き な どに も役 立 つ 便 利 な概 念 で あ る 。 しか し,こ の 転 動 球 の 動 的 シ ミュ レ ー シ ョン は あ ま り興 味 深 い もの で は な い。 た だ,水
平面
を転 が っ て い る だ け の ア ニ メ ー シ ョ ンを作 って も面 白 み が 少 な い と思 う。 ボ ー リ ン グ競 技 の球 の 挙 動 解 析 まで 踏 み 込 め ば面 白 くな るが ,滑
り易 さ が レー ン上 で変
化 す る こ とな ど を考 慮 す る必 要 が あ り,こ こで 取 り上 げ る に は 複 雑 過 ぎ る。 そ の よ う な理 由 か らMATLABの
プ ロ グ ラ ム は 作 ら な か っ た が,次
の[Quiz
18 .1]
に示 す よ う な転 動 球 な ら ば シ ミュ レー シ ョン を試 して み た くな る か も知 れ な い 。 こ の 課 題 は独 立 な 一 般 化 座 標 に どの よ う な変 数 を採 用 す る か とい う点 に 面 白み が ある。
Quiz 18.1
<球 面 に 内 接 す る 転 動 球>慣
性 空 間 に 座 標 系 O を 固 定 し,Z
軸 の 負 の 向 きに 重 力 が 作 用 し て い る もの とす る。 原 点 O を 中 心 と した 半 径bBIG の 大 き な球 面 B が 固 定 さ れ て い て,そ
の 球 面 の 内側 に一 点 で 接 して 滑 らず に 転
動 す る 半 径bSMALLの 小 さ な球 S を 考 え る(図18.1)。 接 触 点 P が 大 球Bの
この 小 球 S の 運 動 範 囲 は,
下 半 分 よ り十 分 低 い位 置 に あ る範 囲 とす る 。 ま た,小 球 S
の 重 心 は球 の 中心 に あ り,さ
らに,そ の 点 に 原 点 が 一 致 す る よ う に座 標 系 が 固 定
され て い る。 この 座 標 系 と原 点 も S と呼 ぶ 。 小 球 の 重 心 に加 わ る作 用 力FOSは 重 力 だ け で,重 力 の 加 速 度 は gで あ り,作 用 トル クN'OSは ゼ ロ とす る。 小 球 の 質 量 をMs,重
心 ま わ りの 慣 性 行 列 をJ'OSと して,小 球 の 運 動 方 程 式 を示 せ 。
こ の 課 題 は一 般 化 座 標 の 選 び方 に面 白 み が あ る 。 小 球 S の 運 動 範 囲 を大 球 の 上 半 分 に も拡 大 す る と,一 般 化 座 標 に は ど ん な変 数 を用 い れ ば よい だ ろ うか 。 上
図18.1球
面 に内 接 す る滑 らな い転 動 球
半 分 に あ る と き も一 点 で 大 球 に接 触 して い る もの と し,重 力 に よ って 真 下 に 落 ち る よ う な こ と は な い もの とす る 。 い くつ か の 方 法 を 考 え,そ れ ぞ れ の 長 所 や 短 所 を検 討 して み よ。
拘束条件追加法(速 度変換法)
第19章
仮 想 パ ワー の 原 理 や ケ イ ン型 の 運 動 方 程 式 を利 用 す る 方 法 で は,ホ ロ ノ ミ ック な系 と シ ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な系 を 区別 す る必 要 が な く,わ か りや す い 。 し か し,質 点系 と して 扱 う か 剛 体 系 と し て扱 うか,あ
る い は,3 次 元 剛 体 系 か 2次
元 剛 体 系 か に よ っ て,出 発 点 の 原 理 の 表 現 や運 動 方 程 式 の形 を選 別 す る 必 要 が あ る。 そ の 点,本
章 の 方 法 は か な り異 な っ て い る。 本 章 の 方 法 は既 知 の運 動 方 程 式
を も と に 求 め た い 系 の式 を導 く方 法 で,そ しか も,最 終 的 な もの まで,複
の 手 順 に は 上 記 の よ うな 区 別 は な い 。
数 回 に分 け て適 用 す る こ とが 可 能 で あ り,既 知 の
運 動 方 程 式 が す で に途 中 ま で組 み あ が っ た もの で も,モ ー ド座 標 の よ う な抽 象 性 の 高 い変 数 に よっ て 表 現 さ れ た もの で も よい 。 本 章 の 方 法 を筆 者 は,こ れ ま で 「拘 束 条 件 追 加 法 」 と呼 ん で い た が,「 速 度 変 換 法 」 とい う 呼 び 名 を付 記 す る こ と に した 。 こ の 方 法 は,Velocity
Transforma
tionと し て知 られ て い る 方 法 を広 く解 釈 す れ ば 同 じ とす る 見 方 が あ る た め で あ る (18.6節 参 照)。 本 章 に は二 つ の 事 例 が あ る。 最 初 の 事 例 に は,乗 用 車 の操 縦 安 定 性 に 関 す る最 も簡 単 な モ デ ル 「二 輪 車 モ デ ル 」 を取 り上 げ る 。 こ のモ デ ル は シ ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な系 で,シ
ミ ュ レー シ ョ ンプ ロ グ ラム も準 備 され て い る。 2次 元 モ デ ル
で あ る が,車 体 に 固 定 した座 標 系 で 表 した 変 数(ダ
ッ シ ュ の付 く変 数)を
並進運
動 に用 い て い る。 実 際 問題 に 近 く,比 較 的 簡 単 な事 例 と して取 り上 げ た が,本 章 の 方 法 に 対 す る最 初 の復 習 に は も っ と簡 単 な モ デ ル に よ る確 認 が 先 か も しれ な い 。 読 者 の 努 力 で カバ ー す る こ と を期 待 して い る。 も う 一 つ の 事 例 は 3次 元 三 重 剛体 振 子 で あ る。 こ の事 例 で は,重 心 速 度 と角 速 度 を ま とめ た 変 数 を用 い,3 次 元 剛 体 の 並 進 運 動 と回 転 運 動 を一 つ に ま と め た 運 動 方 程 式 を も と に,拘 束 条 件 追 加 法 を適 用 す る 。 こ こ で も並 進 運 動 の 表 現 に ダ ッ シ ュ の 付 く変 数 を用 い た。 並 進 運 動 と 回転 運 動 を ま とめ た 変 数 や 運 動 方 程 式 は,
8.4節[Quiz
8.2]と12.2節[Quiz
12.2]に 出 て き た もの で あ る。 こ の事 例 で
は,3 次 元 三 重 剛 体 振 子 の運 動 方 程 式 を 陽 に は求 め て い な い 。 拘 束 条 件 追 加 法 の 仕 組 み を順 動 力 学 解 析 の 数 値 計 算 手 順 に 利 用 して い る。
19.1
拘束条件追加法の導出
系 の 全 質 点 の 速 度 を 一 般 化 速 度 H で 表 した 式 は 次 の と お りで あ る(13.5節
参
照)。 【13.10】
こ の 式 と,質 点 系 の ケ イ ン型 運 動 方 程 式 を用 い て,標 準 形 の 運 動 方 程 式 を作 る と,次 の よ うに な っ た(18.5節
参 照)。 【13.40】 【18.16】
【18.17】
式(18.16)か
ら分 か る よ う にmHは
H の場 合 で あ るが,一
対 称 行 列 で あ る。 これ らの 式 は 一 般 化 速 度 が
般 化 速 度 が Sの 場 合 も書 い て お く。
(19.1) (19.2) (19.3) (19.4) こ れ らは,単
に H を S に 置 き換 え た だ け で あ る。
こ こ で,一 般 化 速 度 S の系 の 運 動 方 程 式 を作 る こ と を 目指 して い る と す る。 そ して,そ
の 系 か らい くつ か の 拘 束 を外 す こ と を考 え,拘 束 を外 した系 に つ い て
は 運 動 方 程 式 が 既 知 に な る よ う に,上 手 く拘 束 を外 す も の とす る。 そ の結 果,一 般 化 座 標 H の系 が 得 られ た と し よ う。 す な わ ち,mHとfHは て,一
既知 であ る。そ し
般 化 座 標 H の 系 か ら見 れ ば,一 般 化 座 標 S の 系 は 拘 束 を追 加 して作 る こ
と に な る 。 そ こで,一
般 化 座 標 H の系 を拘 束 追 加 前 の 系 と 呼 び,一 般 化 座 標 S
の 系 を拘 束 追 加 後 の 系 と呼 ぶ こ とに す る 。
拘 束 追 加 後 を考 え る 。 運 動 方 程 式(13.40)は,も
は や 成 り立 た ず,拘
束追加 に
伴 う拘 束 力 が 加 わ る。
(19.5) 拘 束 追 加 前 の 一 般 化 速 度 H は拘 束 追 加 後 の 一 般 化 速 度 S に よ っ て 表 さ れ る はず で,シ
ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック まで の 範 囲 で そ の 関 係 は Sの 一 次 式 で あ る。
(19.6) こ の 式 を 時 間 微 分 し て,式(19.5)に
代 入 し,左
か らHTSを
掛 け て 整 理 す る と ,次
の式 が得 られる。
(19.7) こ の 式 で,mH,fH,Hsと,Hs,Hsの
時 間 微 分 は 既 知 で あ る。 拘 束 力 を 除 け
ば,こ
れ ら を 用 い て,S
は,次
に 示 す よ う に,式(19.7)のfHを
ち,HTSfHは
で 書 か れ た 運 動 方 程 式 が 求 ま っ た こ と に な る。 実 際 に 除 い た 運 動 方 程 式 が 成 立 す る。 す な わ
ゼ ロ に な る。
式(19.6)を
式(13.10)に
代 入 す る。
(19.8) こ の 式 と式(19.1)と を対 比 す る と次 の 関 係 が 得 られ る。
(19.9) (19.10) こ の 関 係 を 用 い,式(19.3),(19
考 え る 。 式(19.4)に (19.10)の
はVS,VSの
.4)の
を
で表す こ とを
時 間 微 分 も含 ま れ て い る の で,ま
ず,式(19.9),
時 間 微 分 を 作 っ て お く。
(19.11) (19.12) さ て,式(19.9),(19.11),(19.12)を
式(19.3),(19.4)に
代 入 す る 。
(19.13)
(19.14) こ こ で,式(18.16),(18.17)を
用 い て,式(19.13),(19.14)か
ら m と fを消 去
す る こ と を め ざ す 。 そ の 見 通 し を よ くす る た め に,式(18.17)の
H に 式(19.6)を
代 入 し て お く。
(19.15) こ の 式 と 式(18.16)を
用 い る と,式(19.13),(19.14)は
次 の ようになる。
(19.16) (19.17) こ のmsとfsを (19.17)を
用 い て,運
動 方 程 式 は 式(19.2)で
代 入 し た も の と式(19.7)を
あ る 。 式(19.2)に(19.16)と
対 比 す る と,次
の 関 係 が 得 られ る 。
(19.18) 拘 束 追 加 に と もな っ て 生 じた 拘 束 力 は,拘 束 前 後 の 独 立 な 一 般 化 速 度 の ヤ コ ビ行 列 と直 交 して い る。
19.2 ま ず,運
拘束条件追加法の適用手順と特徴 動 方 程 式 を 求 め た い 系 か ら適 当 に 拘 束 を は ず し,運
系 を 作 る 。 そ の 系 の 一 般 化 速 度 H を 把 握 し,運 と め て,mHとfHを
求 め て お く。 な お,運
に 作 っ て お く。 次 に,拘
動 方 程 式 が既 知 の
動 方 程 式 を 式(13.40)の
動 方 程 式 はmHが
対 称行列 になる よう
束 追 加 後 の 一 般 化 速 度 S を 選 択 し,式(19.6)の
H を S で 表 す 。 そ の 関 係 か ら,HsとHsが る 。 以 上 を 用 い て,式(19.16),(19.17)に
得 ら れ る が,そ よ りms,fsを
形 に ま
よ うに
れ ら の 時 間微 分 を作 計 算 す れ ば,式(19.2)
が 求 め る運 動 方程 式 で あ る。 こ こ で,式(13.10),(13.40),(18.16),(18.17)と,式(19.6),(19.2),(19. 16),(19.17)が
同 型 に な っ て い る こ と を 指 摘 し て お く。 最 後 の 四 つ の 式 は,H
の 系 に 拘 束 を 加 え て S の 系 を 作 る 方 法 で あ る が,最
初 の 四 つ の 式 は,v
の系 に拘
束 を加 え て H の系 を作 る 方 法 で あ る。 これ らをH⇒Sの ぶ こ と に し よ う。v⇒Hの
方 法,v⇒Hの
方 法 は 質 点 系 を対 象 と して い る が,剛
体 系 を対 象 と し
た 式 もあ る。 式(13.11),(13.12),(13.40),(18.18),(18.19)の り,こ れ は,V,Ω'⇒Hの
方 法 と呼
五 つの式 であ
方 法 と呼 ぶ こ とが で きる 。
ケ イ ンの 方 法 は,v⇒Hの
方 法 とV,Ω'⇒Hの
や 部 分 角 速 度 は,vやVや
Ω'の よ う な 実 速 度 や 実 角 速 度 を H で 偏 微 分 し た ヤ
コ ビ行 列 で あ る。 一 方,H⇒Sの 必 要 な い。HがvやVや
方 法 で あ る。 ケ イ ン の 部 分 速 度
方 法 で は,も は や,質 点 系 とか 剛 体 系 の 区別 は
Ω'の 場 合 は ケ イ ン の 方 法 と 同 じで あ る が,そ
れ以外
の H で 表 さ れ た 系 を も と に運 動 方 程 式 を構 築 で きる 。 H は デ カ ル ト座 標 で 表 さ れ た 速 度 と は 限 らず,モ
ー ド速 度(モ
ー ド座 標 の 時 間 微 分)の
よ うな 抽 象 的 な 速
度変数で もよい。 H⇒Sの
方 法 は 何 度 も繰 り返 し て用 い る こ とが で き る。 ロ ボ ッ トや 車 両 の モ デ
ル は,自 由 な質 点 系 に拘 束 を加 え て作 る こ とが で き るが,拘
束 を加 え る順 序 も 自
由 で あ る。 任 意 な順 序 で何 度 で も拘 束 の 追 加 を繰 り返 し,最 終 モ デ ル に 到 達 す る こ とが で き る。 異 な る拘 束 の 追 加 手順 を と っ て も,最 終 的 な 運 動 方 程 式 は 変 わ ら ない。 18.6節 H⇒Sの
に 記 し た 速 度 変 換 法 に 関 す る 文 献 な どの 説 明 に は,v⇒Hの
方法 と
方 法 を 区 別 して捉 え て い る様 子 は 見 られ な い 。 速 度 変 換 法 は,デ
カル ト
座 標 を用 い た微 分 代 数 型(第20章
参 照)の
運 動 方 程 式 を独 立 な 一 般 化 速 度 で 表
現 し直 す 方 法 と も説 明 さ れ て い て,質 点 系 の vや 剛体 系 の V と Ω'な ど を 従 属 な も の を含 む一 般 化 座 標 と して い る。 従 っ て,速 度 変 換 法 はv⇒Hの そ う だ が,一 方,独
立 な一 般 化 速 度 で 表せ ば,必 ず,拘
方 法 とい え
束 力 は 消 え る とい う事 実
を ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 か ら の 当 然 の 帰 結 と して い て,式(19.18)は,こ
こで説明
す る ま で も な く当 然 の こ と と考 え て い る よ う で もあ る。 そ れ ゆ え,v⇒Hの とH⇒Sの
方 法 の 区 別 も現 わ れ な い の か も しれ な い が,ケ
方法
イ ンの 方 法 との対 比 で
考 え た り,我 々 が 通 常 持 っ て い る認 識 を考 え る と,こ の 区 別 の 意 味 は大 きい よ う に 思 え る 。 む しろ,式(19.18)の
よ うな 性 質 が 得 られ て,ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 は
次 の よ う な一 般 的 な形 で 成 立 す る と考 え る ほ うが,素 直 な捉 え方 で あ ろ う。
(19.19) 拘 束 条 件 追 加 法 は,筆 者 の 体 験 で は,多
くの 事 例 で 快 適 で あ る 。mH,fH,Hs,
Hsを 把 握 す れ ば,後
は 機 械 的 な作 業 で あ る 。 質 点 系 や 剛 体 系,あ
る い は,3 次
元 や 2次 元 を 区 別 し て考 え る 必 要 が な い 。 手 順 が 明快 で,見 通 しが よい 。 ケ イ ン の 方 法 や 仮 想 パ ワー の 原 理 を利 用 す る方 法 と 同様,シ 系 ま で,ホ
ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な
ロ ノ ミ ッ クか 否 か を 区 別 す る こ と な く適 用 で き る。 ま た,運 動 方 程 式
を立 て る 手 順 を そ の ま ま順 動 力 学 の 数 値 計 算 の 手 順 とす る こ とが で きる 。 そ の ほ か,運
動 方 程 式 の さ ま ざ ま な応 用 に お い て,こ の 手 順 を活 用 で き る。 た と え ば,
運 動 方 程 式 を線 形 化 して,固 有 値 解 析 す る よ う な場 合,拘
束 条 件 追加 法 の 考 え方
を利 用 して 線 形 化 の 手 順 を分 解 し,操 作 しや す い もの に で き る(付 録 E参 照)。
19.3
順動力学解析の事例:操 縦安定性のための二輪車モデル
乗 用 車 の 操 縦 安 定 性 を 調 べ る た め の 最 も単 純 な モ デ ル は 二 輪 車 モ デ ル で あ る (図19.1)。
こ の モ デ ル は水 平 面 を 走 る乗 用 車 を上 空 か ら眺 め た 2次 元 モ デ ル で,
車 両 の ピ ッチ ン グ や ロ ー リ ン グ運 動 を無 視 し,左 右 輪 の輪 荷 重 の 変 化 も考 慮 しな い もの で あ る 。 そ の た め,左 右 輪 を 中 央 に ま とめ て,前 後 に 二 輪 だ け を持 つ と考 え,二 輪 車 モ デ ル と呼 ぶ 。 こ の モ デ ル で は,普 通,車 輪 の 質 量 や 慣 性 モ ー メ ン トは 無 視 す る か,あ
るい
は,車 体 の 中 に 含 ま れ て い る と考 え る 。 こ こ で は 後 輪 駆 動 前 輪 操 舵 車 を考 え る こ と に す る。 一 般 に,走 行 中 の 車 輪 に は横 滑 りが あ り,ま た,駆 動 輪 に は転 動 方 向 に も滑 りが あ るが,こ
れ らの滑 りを 許 して モ デ ル化 す るか 否 か で 運 動 学 的 自由 度
が 異 な っ た モ デ ル に な る。 こ こで は,前 後 輪 と もに横 滑 り し,そ れ に よ りコ ー ナ リ ング 力 が 発 生 す るモ デ ル を考 え る。 これ に よ る 自由 度 の 減 少 は な い 。 一 方,駆
図19.1操
縦 安 定性 の ため の 二輪 車 モ デ ル
動 輪(後
輪)の
転 動 に よ る 前 進 方 向速 度 は,走 行 負 荷 な どに よ る変 動 を許 さず,
常 に 一 定 値v0と す る。 こ の 条 件 は シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 で あ り,運 動 学 的 自由 度 を ひ とつ 減 少 させ る。 結 局,モ
デ ル の 運 動 学 的 自 由 度 は 2,幾 何 学
的 自 由度 は 3と な る。 前 輪 の 操 舵 は,実 舵 角 を 時 間 につ い て の折 れ 線 関 数 で 与 え る こ と に し,そ の 与 え方 で,車 線 乗 り移 りや 円旋 回 を実 現 で き るモ デ ル とす る。 な お,後 輪 駆 動 車 で は な く前 輪 駆 動 車 を考 え,前 輪 の転 動 方 向 速 度 を一 定 とす る場 合,あ
る い は,後 輪 も操 舵 す る場 合 を考 え る と,一 定 車 速 の 方 向 が 車 体 に対
して も変 動 し,シ
ンプ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ック な拘 束 が 時 間 の 関 数 と し て変 動 す るモ
デ ル とな る 。 ま た,操 舵 す る車 輪 を剛 体 と考 え て 慣 性 モ ー メ ン トを考 慮 し,操 舵 角 を時 間 の 関 数 と して 与 え る こ とに す る と,前 進 方 向 の すべ りを許 す モ デ ル に し た場 合 も,ホ ロ ノ ミ ック な 時 間依 存 拘 束 を含 む モ デ ル とな る 。 図19.1は,こ
こで 扱 う二 輪 車 モ デ ル の 説 明 図 で あ る。 2次 元 剛 体 A は車 体 で,
そ こ に 固 定 した 座 標 系 の X 軸 が 前 進 方 向 で あ る。 こ の X 軸 上 に 二 点 F と R が あ る。 F は 前 輪 の 位 置 を示 し,R は後 輪 で あ る。F,R二
点 間 の距 離 は ホ イ ー ルベ
ー ス と呼 ば れ るが ,こ れ を wとす る 。
(19.20) 前 輪 が 操 舵 輪 で,そ の 実 舵 角 を βFと す る。 こ の モ デ ル で は 後 輪 は 固 定 され て い る。 この 車 は 車 速 一 定 とす る が,駆 が 一 定 とな る 。 した が っ て,重
動 輪 は 後 輪 で あ る か ら,点
心 A の X 方 向 速 度 も,点
Rの X方 向速 度
Fの X方向速 度 も同 じ
一 定 値 に な る 。 そ の 値 をv0と す る と次 の よ う に書 け る。
(19.21) こ の モ デ ル の 運 動 方 程 式 を拘 束 条 件 追 加 法 で 求 め る こ と に し,拘 束 追 加 前 を 自 由 な 2次 元 剛 体 A とす る 。 2次 元 運 動 す る 自 由 な剛 体 A の 運 動 方 程 式 は,次 の よ う な形 が 普 通 で あ ろ う。
(19.22) (19.23) 並 進 運 動 は 慣 性 座 標 系 O で 表 現 さ れ た 2次 元 の代 数 ベ ク トルVOA,FoAな
どで
表 現 され て お り,回 転 運 動 は 運 動 す る 2次 元 平 面 に垂 直 な 軸 まわ りの 回転 に 限 ら れ て い る た め,ス 質 量,JAは
カ ラ ー 変 数 ωOA,nAな
ど を用 い て 表 さ れ て い る。MAは
車体 の
重 心 を通 る 回転 軸 ま わ りの慣 性 モ ー メ ン トで あ る。 2次 元 代 数 ベ ク ト
ル は 3次 元 の 場 合 と 同 じ記 号 を用 い て い るが,2 次 元 問 題 を 考 え て い る の で ,2 ×1列 行 列 に な っ て い る と解 釈 す る。 ま ず,並 進 運 動 の 運 動 方 程 式 を,V'OAとF'OAを
用 い た 表 現 に書 き直 して お く。
こ れ らは,座 標 系 A で 表 現 され た 代 数 ベ ク トル で あ る。
(19.24) (19.25) COAは
2 次 元 の 座 標 変 換 行 列(2×2行
で あ る 。 こ れ ら を 式(19.22)に
列)で,式(10.5)に
代 入 す れ ば よ い が,そ
与 え られ て い る もの
の た め に,ま
ず,式(19
.24)
を 時 間 微 分 す る。
(19.26) 代 入 の 結 果 を整 理 す る と,並 進 運 動 に ダ ッ シ ュ の付 く変 数 を用 い た運 動 方 程式 が 次 の よ う に求 まる 。
(19.27) (19.28) 回 転 運 動 に 関 す る 式 は変 わ らな い 。 こ の よ う な変 数 の 表 現 に変 更 す る理 由 は,車 体 の 速 度 を 車 体 の 前 進 方 向 速 度 と横 方 向速 度 に分 解 して 考 え る ほ うが 自然 だか ら で あ る。 これ に よ っ て,車 体 が 東 に 向か っ て 走 っ て い る 場 合 で も南 西 に 向 か っ て 走 って い る場 合 で も,運 動 方程 式 の 表 現 は変 わ ら な い。 さて,拘 束 条 件 追 加 法 を 用 い る と して,拘 束 追 加 前 のH,mH,fHは
次 の よ う に書 け る 。
(19.29)
(19.30)
(19.31) 拘 束 追加 後 の 独 立 な一 般 化 速 度 S は 別 の 選 択 肢 もあ る が,こ
こ で は 点F,Rの
位 置 の 横 方 向 速 度 とす る。
(19.32) こ の S で H を表 す た め に,前 輪 位 置 に 関す る 次 の 三 者 の 関 係 か ら始 め る。
(19.33) 時 間微 分 して,
(19.34) こ れ を,ダ
ッ シ ュ の 付 く記 号 で 書 き 直 す と,次
の よ う に な る。
(19.35) 同様 に,後 輪 位 置 に 関 して,次 の 式 が 成 り立 つ 。
(19.36) 最 後 の 二 式 をV'OAと 式(19.21)を
ωOAに つ い て 解 き,V'OFとV'ORを
用 い る と,H
X 成 分 と Y 成 分 に分 け て
と S の 関係 が 次 の よ う に得 られ る 。
(19.37)
(19.38)
し た が っ て,
(19.39)
(19.40)
(19.41) (19.42) こ れ ら を 用 い て,拘
束 追 加 後 のmsとfsを
求 め る こ とが で き る。
(19.43)
(19.44)
結 局,拘 束 追 加 後 の 運 動 方 程 式 は次 の よ う に な る。
(19.45)
一 般 化 座 標 と一 般 化 速 度 の 関係 は
,式(19.38)を
利 用 し て,次
の ようになる。
(19.46)
次 に,コ ー ナ リ ン グ力 を 求 め る。 まず 前 輪 の 実 舵 角 は 時 間 の 関 数 で あ る 。
(19.47) こ れ を用 い て,次
の座 標 変 換 行 列 を準 備 して お く。
(19.48) 前 輪 に 固定 し た座 標 系 B を 考 え,実 舵 角 が ゼ ロ の 場 合 は 車 体 に 固 定 した 座 標 系 A と平 行 に な っ て い て,実 舵 角 と と もに 回 転 す る もの とす る。CABは
座標系 Bか
ら座 標 系 Aへ の 座 標 変 換 行 列 で あ る 。 座 標 系 B の 原 点 は 点 F に重 な っ て い る と
考 え て い る 。 点 F の 速 度 を 座 標 系 B で 表 してV'OBと
書 くこ と にす る 。
(19.49) さて,前 後 輪 そ れ ぞ れ に働 くコ ー ナ リ ン グ力 を 次 の よ う に モ デ ル 化 す る 。
(19.50) (19.51) f'OBは座 標 系 B で,f'ORは 座 標 系 A で 表 現 さ れ て い る。 右 辺 括 弧 内 は 近 似 的 に横 滑 り角 と呼 ば れ る量 で,CPFとCPRは
コ ー ナ リ ン グパ ワ ー と呼 ば れ て い る 。 コ ー
ナ リ ングパ ワ ー は,実 際 に は,横 滑 り角 や 輪 荷 重 に依 存 す る が,こ
こで は横 滑 り
角 が 小 さ い範 囲 に 限 定 し て,定 数 とす る。 最 後 に,求 ま っ た コ ー ナ リ ン グ力 を等 価 換 算 し,合 計 す る 。
(19.52) (19.53) (19.54) 他 に作 用 力 は 働 い て い な い 。
表19.1nirinsha_1,mの
グ ラ フ と ア ニ メ ー シ ョ ン 出 力
figure(1),figure(2)
時間に対する重心位置
figure(3)
時間に対する車体角度
figure(4)
時間に対する前輪位置横方向速度
figure(5)
時間に対する後輪位置横方向速度
figure(6)
時間に対する車体角速度
figure(7)
時間に対する操舵角
figure(8)
時間に対する操舵角補助状態量
figure(9)
時 間 に対 す る前輪 コー ナ リ ン グ力
figure(10)
時間に対す る前輪位置横 方向力
figure(11)
時 間 に対 す る後輪 コー ナ リン グ力
figure(12)
時間に対す る前輪位置横加速度
figure(13)
時間に対す る後輪位置横 加速度
figure(14)
重心の軌跡
図19.2
車線 乗 り移 り時 の二 輪 車 モ デル 重心 の軌 跡
以 上 の 準 備 の 下 に,MATLABの CD-ROMに sha_1で
収 録)を
プ ロ グ ラ ム(nirinsha_1.m,付
作 成 し た 。 微 分 方 程 式 の 右 辺 の 計 算 を 行 う 関 数 はe_nirin
あ る 。 こ の 関 数 と の パ ラ メ ー タ の 引 渡 し に はglobal変
る 。 実 舵 角 は,時
間 に 対 す る 折 れ 線 関 数 と し て,変
数 を利 用 して い
数Beftableに
く は プ ロ グ ラ ム 中 の コ メ ン ト参 照 の こ と)。Hs,Hs,mH,msは
与 え る(詳
操 舵 角 補 助 状 態 量 と は,時
間 帯 に 位 置 し て い る か を 示 す 指 標 で,Beftableが
し
定 数 で あ り,積
分 計 算 に 入 る 前 の 第 二 段 階 で 準 備 し て い る 。 グ ラ フ 出 力 は,表19.1の あ る 。figure(8)の
録 の
間 tがBeftable中
と お りで の 何 行 目の 時
表 す 折 れ線 の 数 が 数 百 な どの 大
き さ に な っ て も計 算 時 間 の 大 幅 な増 加 が 生 じ な い よ う に す る工 夫 に用 い て い る 。 ア ニ メ ー シ ョ ン は,ま
だ,準
備 さ れ て い な い。
19.4 順動力学解析の事例:3 次元三重剛体振子 11章
に 3 次 元 三 重 剛 体 振 子 の 説 明 が あ っ た が,そ
ン を 考 え て み よ う 。 ま ず,3
の 順 動 力 学 シ ミ ュ レー シ ョ
次 元 三 重 剛 体 振 子 の ピ ン ジ ョ イ ン トを は ず し,三
つ
の 自 由 な 剛 体 を 拘 束 追 加 前 の 系 と 考 え る 。 自 由 な 剛 体 の 運 動 方 程 式 と し て,12.2 項[Quiz fHは
12.2]の
式(12.32)を
次 の よ うに な る。
用 い る こ と に す る と,拘
束 追 加 前 の 系 のH,
mH,
(19.55)
(19.56)
(19.57)
斜 体 文 字 を 用 い たV"OA, い て,こ
M'A,
れ ら は,6×1,ま
Ω"OA, F"OAは,式(12.28)∼(12.31)に
た は,6×6の
与 え られて
大 き さ を 持 っ て い る 。 剛 体B,Cに
関
す る 同 様 な 量 も 同 様 な 形 で 定 義 さ れ て い る とす る 。 拘 束 追 加 後 の独 立 な一 般 化 座 標 Q と一 般 化 速 度 S は 次 の とお りで あ る。
(19.58)
(19.59)
三 つ の ピ ン ジ ョ イ ン トの 向 き は,Z λAB軸,λBC軸
と す る 。 す な わ ち,斜
λAB,λBCを,そ x 軸,Z Q,Sを
軸,
れ ぞ れDz,
Dx,
X 軸,
Z 軸 で あ る が,こ
め の ピ ン ジ ョ イ ン ト も 可 能 で あ る 。 λOA,
Dzと
し た 場 合,ピ
ン ジ ョ イ ン トの 向 き は Z 軸,
軸 と い う こ と に な る 。 微 分 方 程 式 の 右 辺 の 計 算 は,一 求 め る も の で あ り,こ
こ で は λOA軸,
般 に,Q,
S,
tか ら
の 事 例 で は,Q は S に 等 し い の で,S の 計 算 手 順 が
は っ き りす れ ば よ い 。 ま ず,Q
か ら,COA,
CAB,
CBCが
次 の よ う に計 算 で き る。
(19.60) (19.61) (19.62) こ れ を 用 い て,CAC,
COB,
Cocも
容 易 に 求 ま る 。 続 い て, ROA,
RAB,
Rocは
次
の よ うに な る。
(19.63)
(19.64) (19.65) こ の 結 果 か ら,RAC,
ROB,
ROCも
容 易 に 求 ま り,以
ГAB, ГBC, ГACを 準 備 で き る([Quiz
8.2]の
上 を 用 い て,次
の よ うな
解 答 参 照)。
(19.66)
(19.67)
(19.68) ГAB,
ГBC, ГACは,式(8.15)の
た,こ
よ う な 三 者 の 関 係 を利 用 す る と き に役 立 つ 。 ま
れ ら の 時 間 微 分 は 次 の よ うに 書 け る。
(19.69)
(19.70)
(19.71) た だ し,ГAB, で あ り,計 Ω'OA,
ГBC,
ГACの
計 算 に は,Ω'AB,
Ω'BC,
Ω'AC,
VAB,
V'BC,
V'ACが
必 要
算 手 順 は 少 し後 ま わ し に な る 。 Ω'AB,
Ω'BCは, Sか
ら次 の 式 で 求 め る こ とが で きる 。
(19.72) (19.73) (19.74) ま た,V'OA,
V'AB,
(19.72)∼(19.74)か
V'BCを
求 め る 次 の 式 は,式(19.63)∼(19.65)の
時 間 微 分 と式
ら容 易 に求 ま る 。
(19.75) (19.76)
(19.77) と
を ま と め れ ば,
で あ
り,
は次の ようになる。
(19.78)
(19.79)
(19.80) こ れ ら は い ず れ も定 数 で あ る か らそ の 時 間微 分 は ゼ ロ で あ る。
(19.81) (19.82)
(19.83) 3次 元 三 重 剛 体 振 子 の 場 合,
とそ の時 間微 分 は存 在
しな い。 さ て,
と ГAB,ГBC,ГACを
用 い て,三
者 の 関 係 に よ り,
を求 め る こ とが で き る。
(19.84) (19.85) (19.86) V"ACが 求 ま っ た と い う こ と は,V'ACと の 段 階 で 式(19.69)∼(19.71)の
Ω'ACが 得 られ た と い う こ と で あ る か ら,こ
ГAB,ГBC,ГACを
は そ れ ぞ れ ωOA,ωAB,ωBCに の 依 存 関 係 は な い 。 し た が っ て,式(19.84)∼(19.86)か V"OBは
か ら,
ωOA,ωABに,V"OCは
ωOA,ωAB,ωBCに
求 め る こ とが で き る。 依 存 し て い る だ け で,そ ら,V"ACは
れ 以外
ωAB,ωBCに,
依 存 して い る こ とが 分 か る。 以 上
を Sで 偏 微 分 した ヤ コ ビ行 列 が 次 の よ う に求 まる 。
(19.87)
(19.88) (19.89) 結 局,拘 束 条 件 追 加 法 で 用 い るHsは
次 の よ うに書 け る。
(19.90)
は 定 数 で あ る か ら,Hsの
時 間微 分 は 次 の とお りで
あ る。
(19.91)
こ の 式 に 式(19.68)∼(19.70)で
求 め た ГAB,ГBC,ГACが
利 用 さ れ て い る 。 ま た,
3次 元 三 重 剛 体 振 子 の 場 合,Hsと
そ の 時 間微 分 は ゼ ロで あ る。
式(19.57)のfHの
剛 体 に 働 く作 用 力 と作 用 ト ル ク が 必 要 に な る
が,こ F"OAは
計 算 に は,各
の モ デ ル で は 重 力 が 働 い て い る だ け で あ る か ら 簡 単 で あ る 。 た と え ば, 次 の よ うに な る。
(19.92) F"OB,
F"OCも
同 様 で あ る 。 ま た, fHの
が 式(19.85)のV"OBな mHとfH,
Hsと
計 算 に は,Ω'OB,
V'OBな
どが 必 要 に な る
ど か ら取 り出 せ ば よ い 。 そ の 時 間 微 分 か ら,式(19.16)と(19.17)を
を 求 め る こ と が で き る 。 こ の 系 で はHsと あ る 。 こ れ ら が 求 ま れ ば,S
用 い て,msとfs
そ の 時 間 微 分 が ゼ ロ で あ る か ら簡 単 で
は連 立 一 次 方 程 式 の解 と して簡 単 に求 め る こ とが で
きる 。 以 上 の 準 備 の 下 に,MATLABの
プ ロ グ ラ ム(sanjufuriko_1.m)を
微 分 方 程 式 の 右 辺 の 計 算 を 行 う 関 数 はe_sanjufuriko_1で ラ メ ー タ の 引 渡 し はglobal変 り で あ る 。 点P, が,こ
Q,
Rの
作 成 した。
あ る 。 こ の 関 数 との パ
数 を 利 用 し て い る 。 グ ラ フ 出 力 は,表19.2の
位 置 と,運
れ ら は 座 標 系 O で 表 し たXYZ成
動 量,角
とお
運動 量 は三つず つ組 に なってい る
分 で あ る 。 ま た,点P,
Q,
Rの
位 置 は
表19.2sanjufuriko_1.m,
sanjufuriko
_30.
m(19.5節)の
グ ラ フ と ア ニ メ ー シ ョ ン 出 力
figure
(1)∼figure
(3)
時 間 に対 す る振 子 の 関節 角
figure
(4)∼figure
(6)
時間に対す る振子の関節角速度
figure
(7)∼figure
(9)
時 間 に対 す る点 Pの位 置
figure
(10)∼figure
(12)
時 間 に対 す る点 Q の位 置
figure
(13)∼figure
(15)
時 間 に対 す る点 R の位 置
figure
(16)∼figure
(18)
時間に対する系全体 の運動量
figure
(19)∼figure
(21)
時 間 に対 す る系 全体 の O 点 ま わ りの角 運 動 量
figure (22)
時 間 に対 す る系 全体 の運動 エ ネル ギ ー
figure (23)
時 間 に対 す る系全 体 のポ テ ンシ ャル エ ネ ルギ ー
figure (24)
時 間 に対 す る系全 体 の 運動,ポ テ ンシ ャル エ ネ ル ギー の和
figure (25)
アニ メ ー シ ョン
図19.3
3次元 三重 剛 体 振子 の ア ニ メー シ ョ ン
座 標 系 O か ら見 た 位 置 で あ る。 結 果 を見 る と,figure(24)の ポ テ ンシ ャル エ ネ ル ギ ー の和 が,ほ
ぼ 一 定 で,こ
運動 エ ネルギー と
の系 で は 全 エ ネ ル ギ ーが 保 存 さ
れ て い る こ とが 確 認 で き る。 わ ず か に変 動 が あ るの は数 値 計 算 の 誤 差 で あ る 。 こ の グ ラ フ は,単 純 な 自動 ス ケ ー ル と は異 な る ス ケ ー ル設 定 を行 っ て い る。 振 子 の ア ニ メ ー シ ョ ン(figure(25))も
出力 さ れ る 。 こ の ア ニ メ ー シ ョ ン に
用 い られ た形 状 は角 柱 で 単 純 な た め,コ マ に比 べ て,ア を理 解 しや す い 。
ニ メ ー シ ョ ンの 作 成 方 法
Q uiz19.1
3次 元 三 重 剛 体 振 子 の モ デ ル を少 し変 更 す る と,ジ ャ イ ロ 効 果 体
験 の興 味 深 い モ デ ル に な る 。 そ の装 置 は ジ ャ イ ロ椅 子 な ど と名 付 け られ て い る も の で,鉛 直 軸 ま わ りに 自由 に 回 転 す る椅 子(あ 転 す る 回転 台)と,回
るい は,鉛 直 軸 ま わ りに 自 由 に 回
転 円 盤 か ら な っ て い る(図19.4)。
「科 学 館 」 な ど と呼 ば
れ る 施 設 で,体 験 で きる所 もあ る。 回 転 円盤 に は 回転 軸 が あ り,円 盤 は 軸 ま わ り に 自 由 に 回 転 で き る よ う に な っ て い て,あ
らか じめ 適 当 に速 い 回 転 を 与 え て お
く。 体 験 者 は椅 子 の 上 に座 り(回 転 台 の場 合 は,そ
の上 に立 つ),回
転 円盤の軸
を両 手 で 持 つ 。 両 腕 は前 方水 平 に伸 ば し回転 円 盤 の 軸 が水 平 に な る よ う に保 持 す る 。 さ て,そ の よ う な初 期 状 態 か ら,円 盤 を 回 転 させ た ま ま,円 盤 の 回 転 軸 を傾 け る よ う に腕 を動 か す 。左 右 の 腕 の 片 方 を上 げ,片 方 を 下 げ る動 作 で あ る。 そ の よ う に して,回 転 して い る 円 盤 の 回 転 軸 を傾 け る と,椅 子 ご と体 が 回 転 し始 め る 。 こ れが ジ ャ イ ロ効 果 の 体 験 で あ る。 なぜ,体
図19.4
が 椅 子 ご と 回 る の で あ ろ うか 。
ジ ャイ ロ効 果 体験 装置
こ の 体 験 の 順 動 力 学 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 考 え る と,3 次 元 三 重 剛 体 振 子 の モ デ ル を 流 用 で き る こ と が 分 か る 。 図19.5は,こ こ の モ デ ル は 三 つ の 剛 体A, 両 腕
B,
Cか
の 装 置+体
ら な る 。Aは
験 者 の モ デ ル で あ る。
椅 子 と体 験 者,B
C は 回 転 円 盤 で あ る 。 慣 性 座 標 系 と そ の 原 点 を O と し,剛
O'と P,剛
体 B 上 に は 点 P'と Q,剛
円 盤 C の 中 心(重 致 さ せ て,慣
心)と
ピ ン ジ ョ イ ン トの 向 き は,図
B,
体 A 上 には点
体 C 上 に は 点 Q'を 考 え る 。 た だ し,Q'は
一 致 し て い る 。 次 に,0
性 空 間 0 と 剛 体A,
は体 験 者 の
Cを
と 0',P
と P',Q
順 に ピ ン ジ ョ イ ン トA,
か ら推 定 で き る よ う に,ピ
B,
と Q'を 一 Cで
結 ぶ。
ン ジ ョ イ ン ト A が 鉛 直,
図19.5ジ
ャイ ロ効 果 を体 験 で き る装置 と体験 者 のモ デ ル
ピ ン ジ ョイ ン トB が水 平,ピ
ン ジ ョ イ ン トC も水 平 で ,三 つ の 軸 は初 期 に は相
互 に 直 交 して い る。 この 図 に は各 剛体 に固 定 した 座 標 系 は 描 か れ て い な い が,初 期 に は す べ て,慣 性 座 標 系 と 同 じ向 き を 向 い て い る もの と し,ピ ン ジ ョイ ン ト B は X 軸 方 向,ピ
ン ジ ョイ ン トA は Y 軸 方 向,ピ
い て い る。 各 座 標 系 の 原 点(重 心)は 点,線 分PQの
中 間 点,円
ン ジ ョイ ン ト C は Z軸 方 向 を向
,A,B,Cの
順 に,eOYと
直 線PQの
交
盤 の 中 心 Q と しよ う。
回 転 円 盤 の 軸 を傾 け る 方 法 は 二 通 り あ る 。 第 一 の 方 法 は ジ ョイ ン ト B の 回 転 軸 に沿 っ て 剛 体 B に トル ク を加 え る もの で あ る。 剛 体 A に は反 作 用 の トル ク を 加 え る。 第 二 の方 法 は 回転 角 θABを時 間 の 関数 で 与 え る 方 法 で あ る 。 第 一 の 方 法 で は 3次 元 三 重 剛 体 振 子 と同 じモ デ ル に ジ ョ イ ン ト B に 沿 っ た トル ク を加 え れ ば計 算 で きる 。 た だ し,適 当 な傾 き角 を実 現 す るた め に どの 程 度 の トル ク を加 え るべ きか を適 切 に決 め る 必 要 が あ る。 第 二 の方 法 で は新 た な拘 束 が 加 わ っ た の で 運 動 方 程 式 を作 り直 す 必 要 が あ る。 こ の 方 法 で は 傾 き角 は 時 間 に関 す る滑 らか な 関 数 とす る必 要 が あ る が,そ の 大 きさ な ど は決 め や す い。 また,傾 間 微 分(角
速 度)と 二 回 時 間 微 分(角 加 速 度)も
う に与 え な け れ ば な らな い 。 なお,決
き角 の 一 回 時
時 間 の 関 数 と して 矛 盾 が な い よ
め た 傾 き角 の 関 数 に対 して,そ
れを実現す
る た め に 必 要 な トル ク を 求 め る場 合,拘 束 トル ク の 計 算 が 必 要 に な る。 3次 元 三 重 剛 体 振 子 の プ ロ グ ラム を改 造 し て,第 一 の 方 法 のMATLABプ ラ ム を作 成 した(gyro
_chair_1.m,付
ン ジ ョイ ン トA,Bの
回 転 速 度 ωOA,ωABは
録 のCD_ROMに
ログ
収 録)。 運 動 の 初 期 の ピ
ゼ ロ と して あ る。 使 用 した デ ー タ
は,適 当 に定 め た もの で あ る が,こ の プ ロ グ ラ ム を動 か す と,ど の よ う な現 象 か
を理 解 しや す い で あ ろ う。 さ て,Quizで
あ る が,な
ぜ,体
な お,体 が 椅 子 ご と回 る理 由 は,シ
が 椅 子 ご と 回 る の か 力 学 的 な 説 明 を 求 め る。 ミュ レー シ ョ ンの 結 果 か ら得 られ る わ け で は
な く,シ ミュ レー シ ョン を しな くて も,あ る い は,運 動 方 程 式 を立 て な くて も説 明 で き る はず で あ る。
微分代数型運動方程式
第20章
前 章 ま で の 方 法 で は,い ず れ も,標 準 型 の 運 動 方 程 式 が 得 られ た 。 本 節 で は, 微 分 方 程 式 と代 数 方 程 式 を連 立 させ た形 の微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 を 説 明 す る。 こ の 方 程 式 は,系
を構 成 す る 剛 体 の 位 置 と回転 姿 勢 を独 立 な 一 般 化 座 標 に よ っ て表
現 す る こ と が 困 難 な 場 合 に役 立 つ もの で あ る。 複 雑 な リ ンク 機 構 は,し
ば しば,
独 立 な一 般 化 座 標 に よ る表 現 が 難 しい 事 例 で あ る。 微 分 代 数 型 運 動 方程 式 は,独 立 な 一 般 化 座 標 や 独 立 な 一 般 化 速 度 を用 い な い た め,そ
れ ら を選 択 す る 必 要 が な
く,汎 用 ソ フ トも作 りや す い。 こ の性 質 が マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス の発 展 につ な が って きた 。 最 近 は 次 節 に説 明 す る よ う な新 しい技 術 が 実 用 化 さ れ,そ の 汎 用 ソ フ トも 出 回 る よ う に な って きた が,今 で も,微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 を基 礎 に し た汎 用 ソ フ トが 強 い 商 品 力 を維 持 して い る。
20.1独
立な拘束力を未知数 に加 えた連立一次方程式
拘 束 質 点系 の 質 点 速 度 vが 受 け て い る拘 束 は,13.6節
に与 え られ た。 【13.36】
この 拘 束 は,す べ て独 立 な もの だ け で 構 成 され て い る とす る。 仮 想 速 度 と拘 束 力 の 直 交 性 は,質 点 系 に 関 して,17
.3節 に示 され た 。 【17.13】
式(13.36)か
ら,仮
想 速 度 vの 拘 束 条 件 は 次 の よ う に な る 。
(20.1) こ の拘 束 条 件 が な け れ ば,自
由 な 質 点 系 に な る 。 そ の と き,v に含 まれ る 変 数 は
自 由 な 値 を取 れ る こ と に な り,式(17.13)か
ら,拘 束 力 は ゼ ロ に な る が,自
由な
質 点 系 だ か ら当 然 で あ る。 式(20・1)の 拘 束 が あ る場 合 は,v を独 立 な 変 数 と従 属 な 変 数 に 分 け て 考 え る。 vお よ び v を並 べ 替 え て,独
立 な 変 数VIお
よ びVIと ,
従 属 な 変 数VDお
よ びVDに
分 け た と し よ う 。 そ の と き,式(20.1)は
次 の よ う に書
ける。
(20.2) 独 立 な 変 数VIの 数 は,V に含 ま れ る 変 数 の 数 か ら Φ の 数 を 引 い た 値 に な り,従 属 な 変 数VDの
数 は Φ の数 で あ る。 式(20.2)か
ら,従 属 な 変 数VDは 独 立 な 変 数
VIに よ っ て 次 の よ う に 表 され る。
(20.3) Φ が 独 立 な拘 束 だ け で構 成 され て い る と き,適 切 に 独 立 な 変 数 と従 属 な 変 数 を 選 択 す れ ば,ΦVDは 式(17.13)の 結 果,こ
正 則 に な る。
V も 同 じ並 べ 替 え を 行 い,そ
れ に対 応 して f も並 べ 替 え る。 そ の
の 式 は 次 の よ う に書 け る。
(20.4) こ の 式 に 式(20.3)を
代 入 す る と次 の よ うに な る。
(20.5) 独 立 な 変 数VIは 任 意 な値 を取 れ る の で,こ
の 式 か ら次 の 関 係 が 得 られ る 。
(20.6) fDは,Φ
の 数 と同 数 で,独
立 な拘 束 力 とす る こ とが で き,fIは,fDに
さ れ る 従 属 な拘 束 力 で あ る。 拘 束 力 の 場 合,独
よ っ て表
立 な もの と従 属 な もの の 添 え字 が
逆 に な って い る 点 に 注 意 が 必 要 で あ る。 拘 束 質 点 系 の運 動 方 程 式 は拘 束 力 を含 ん だ 形 で12.4節
に与 え られ た。 【12.44】
こ の 式 も V や f の 並 べ 替 え と 同 じ 並 べ 替 え を 行 う。 f は,fIとfDに mIとmDの
二 つ の 対 角 ブ ロ ッ ク に 分 け る こ と が で き る 。 な お,こ
質 点 単 位 の 並 べ 替 え で は な く,一 そ れ で も,mIとmDは で き る が,fIは
な り,m
は
の並べ 替 えは
つ の 質 点 の 成 分 が 二 つ に分 か れ る こ と もあ る。
対 角 行 列 で あ る 。 運 動 方 程 式 は 二 つ に 分 け て 書 く こ とが
式(20.6)を
用 い てfDで
表 し てお く。
(20.7) (20.8) 式(13.36)の
V も 同 じ並 べ 替 え を 行 う 。
(20.9)
こ の 式 を時 間微 分 す る と次 の よ う に な る。
(20.10) こ の 式 の 左 辺 の 第 3項 ∼ 第 5項 は加 速 度 レベ ル の変 数 を含 んで い な い 。 こ の 三 つ の項 を ま とめ て ΦRと 書 くこ とに す る。
(20.11) (20.12) 式(20.11)は,Φvnの
正 則 性 を 利 用 し て 次 の よ う に 書 き な お し て お く。
(20.13) 以 上 で 微 分 代 数 方 程 式 を 作 る 準 備 が で き た 。 式(20.7),(20.8),(20.13)を さ せ る と,VI,vD,fDを
連立
未 知 数 とす る連 立 一 次 方 程 式 が 得 られ る。
(20.14)
式(20.7),(20.8)は
微 分 方 程 式 で あ る が,式(20.13)は,代
回 時 間 微 分 し て,変
形 し た だ け で あ る 。 式(20.14)は
微 分 代 数 方 程 式(DAE)と 略 で あ る 。 な お,標
数 方 程 式(20.9)を
両 者 を 連 立 さ せ た 方 程 式 で,
呼 ば れ る 。DAEはDierential
準 型 運 動 方 程 式 はODE(Ordinary
二
Algebraic Dierential
Equationの Equation)で
ある。
この 式 の弱 点 は,ΦvDの
正 則 性 で あ る 。 正 則 性 は運 動 の 経 過 と と も に変 化 す る
こ とが 考 え られ るの で,正 則 性 が 妥 当 な 範 囲 に収 まっ て い る か ど うか を確 認 す る こ とが 必 要 に な る 。 ま た,こ
の 式 を用 い て 数 値 計 算 で 〓
を 計 算 す る よ うな 方
法 は計 算 時 間 面 で 不 利 で あ る。 こ の 章 は,次 章 の 方 法 を説 明す るた め の布 石 で あ る 。 こ れ以 外 の 微 分 代 数 方 程 式 の特 徴 につ い て は 後 で 述 べ る。
20.2ラ
グ ラ ン ジ ュの 未 定 乗 数 の 利 用
拘 束 力 の 中 か ら独 立 な も の を 選 択 して残 りを独 立 な もの で 表 す 代 わ りに,独 立
な もの と 同 数 の,す なわ ち,拘 束 Φ の数 と 同 数 の 未 定 乗 数 を 用 い て,す べ て の 拘 束 力 を表 す 方 法 が あ る。 こ の 方 法 は ラ グ ラ ン ジ ュの 未 定乗 数 法 と呼 ば れ て い る。 まず,拘
束 Φ の 数 と 同 数 の 未 定 乗 数 を成 分 とす る列 行 列 Λ を 準 備 し,そ の 転
置 を式(20.1)に 左 か ら掛 け る。
(20.15) こ の 式 は ス カ ラ ー で あ り,式(17.13)と 式(20.15)を
転 置 し た 形 に し て お き,VTで
の 和 を 作 る こ と が で き る 。 和 を と る と き, 括 り出 す 。
(20.16) こ こ で,前
項 と 同 様 に,v
をVIとVD,fをfIとfDに
分 離 し て,こ
の式 を書 き
な お す と次 の よ う に な る 。
(20.17) 前 項 と同 じよ う に,〓
は正 則 だ と しよ う。 そ の と き,ま ず,こ
の式の左辺第二
項 の 括 弧 内 が ゼ ロ に な る よ うに Λ を選 ぶ も の とす る。
(20.18) 〓
が 正 則 な の で,こ
立 す る と式(20.17)左
の 式 を Λ につ い て解 く こ とが で き る 。 さ て,こ の 式 が 成 辺 の 第 二 項 は消 え,第 一 項 だ け に な る。 そ して,vIは 独 立
で あ る た め,第 一 項 の 括 弧 内 もゼ ロ と な る。
(20.19) 結 局,式(20.18)と(20.19)の
両 方 が 成 立 す る こ と に な る が,こ
れ は,式(20.16)
の vが独 立 で あ る と した 結 果 と 同 じで あ る。
(20.20) こ の 方 法 で は,f
の 中 の 独 立 な拘 束 力 を独 立 な 未 知 数 とす る代 わ りに,Λ を独
立 な 未 知 数 と して,f わ ず,未
の す べ て を Λ で 表 した 。 独 立 と従 属 な 拘 束 力 の 選 択 を 行
知 数 を外 か ら導 入 す る こ と に よ っ て す べ て の 拘 束 力 を対 等 に扱 う手 法 で
あ る。 独 立 な拘 束 力 を選 択 す る方 法 で は正 則 性 の 変 化 に対 応 す る策 を必 要 とす る が,未
定 乗 数 を 用 い れ ば,Φ
の独 立 性 が 保 た れ て い る 限 り,特 別 な こ と を考 え
な くて も よ い 。Λ は独 立 で あ る か ら,任 意 の 値 を取 る 可 能 性 が あ り,式(20.20) は,拘 束 力 が 〓Tvの列 の線 形 結 合 で表 され る こ と を 示 して い る 。 式(20.20)と
式(12.44)か
ら,運 動 方 程 式 は 次 の よ うに な る。
(20.21)
式(13・36)を
時 間微 分 す る と次 の よ うに な る 。
(20.22) こ の 式 の左 辺 第 二 項 と第 三 項 に は加 速 度 レベ ル の 変 数 は含 まれ て い な い 。 この 二 つ の 項 を ま とめ て ΦRと 書 くこ とにす る。
(20.23) (20.24) 式(20.21)と(20.23)を
合 わせ る と拘 束 質 点 系 の 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 が 次 の よ う
に得 ら れ る 。
(20.25)
20.3拘
束剛体系の微分代数型運動方程式
剛 体 系 の 場 合 も考 え 方 は 同 じで あ る。 剛 体 系 の 速 度 レベ ル の 拘 束 条 件 は13.6 節 に与 え られ て い る。 【13.39】
ま た,仮
想 パ ワ ー の 原 理 の 裏 の 表 現 が17.3節
に あ る。 【17.14】
式(13.39)か
ら仮 想 速 度 V と仮 想 角 速 度 Ω'が 受 け る拘 束 は次 の よ う に書 け る。
(20.26) この 式 と式(17.14)か
ら,拘 束 Φ の数 に等 しい ラ グ ラ ンジ ュの 未 定 乗 数 を成 分 に
持 つ 列 行 列 Λ を用 い て,前 節 と 同 様 な 方 法 に よ っ て 拘 束 力 F と拘 束 トル ク N' は次 の よ う に表 され る。
(20.27) (20.28) 拘 束 剛 体 系 の 運 動 方 程 式 は,重 心 位 置 に 等 価 換 算 し た拘 束力 と拘 束 トル ク を含 ん だ形 で,12.5節 MV=F+F
に与 え られ て い る 。 【12.62】
【12.63】
こ れ ら に,上 で 求 ま っ た拘 束 力,拘 束 トル ク を代 入 す る と次 の よ う に な る。
(20.29) (20.30) 式(13.39)を
時 間微 分 す る と次 の 式 を 得 る。
(20.31) こ の 式 の 左 辺 第 3項 ∼ 第 5項 は加 速 度 レベ ル の変 数 を含 ん で い な い。 これ ら を ま とめ て ΦRと 書 く こ と にす る。
(20.32) (20.33) 式(20.29),(20.30),(20.32)を
連 立 させ る と次 の 式 が 得 られ る 。
(20.34) こ れ が,3 次 元 剛 体 系 の微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 で あ る。 数値 解 を求 め る段 階 で は,こ の 式 を そ の ま ま解 く とは 限 らな い 。 式 の変 形 を進 め て,Λ を 先 に 求 め る 方 法 が あ る 。 式(20 .34)を 元 の 三 つ の 式 に 戻 し,そ の最 初 の 二 つ(式(20.29),(20.30))か
ら次 の式 が得 られ る。
(20.35) (20.36) M と J'は定 数 で あ り,積 分 計 算 に入 る 前 に そ の 逆 数(逆 行 列)を 作 っ て お くこ とが で き る。 積 分 計 算 で は微 分 方 程 式 の 右 辺 の計 算 が 繰 り返 し行 わ れ る の で ,そ の 中 で の 逆 行 列 や 連 立 一 次 方 程 式 を解 く作 業 は 最 小 限 に抑 え る こ とが 望 ま し く, 事 前 計 算 で 逆 行 列 を作 っ て お け ば,積 分 計 算 の 段 階 で は 掛 け 算 で 済 ます こ とが で き る。 さて,こ
れ ら二 式 を 三 番 目の 式(20.32)に 代 入 して,Λ
に関す る連立一 次
方 程 式 を作 る こ とが で き る。
(20.37)
こ れ を解 い て,そ は,式(20.34)に
の 結 果 を 上 記 二 式 に代 入 す れ ば,V
と Ω'が 求 ま る。 こ の 式
比 べ て 小 さ な 連 立 一 次 方 程 式 で あ る か ら,計 算 時 間 の 面 で有 利
で あ る。 この 方 法 は,拘 束 の 数 が 運 動 学 的 自 由 度(独 立 な一 般 化 速 度 の 数)よ 小 さい 場 合 に は 標 準 型 の 運 動 方 程 式 に比 べ て も有 利 と い え るが,多
り
くの場 合 は,
逆 で あ ろ う。 も う一 つ 別 の解 法 に つ い て 触 れ て お こ う。 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式(20.34)の 係 数行 列 は,ゼ
ロ要 素 を 多 く含 む疎 行 列 で あ る。 特 に,モ
そ の 傾 向 が 強 ま る。 一 方,式(20.37)の わ れ て しま う。 そ こ で,式(20.34)を V,Ω',Λ
デ ル規 模 が 大 き くな る と
よ う に変 形 して し ま う と,こ の 性 質 は 失 こ の ま ま,疎 行 列 用 の 数 値 解 法 を用 い て,
につ い て 解 く こ とが 考 え られ る。 こ の方 法 も有 力 で あ る。 な お,疎 行
列 の デ ー タ構 造,お
よ び,疎 行 列 用 の 数値 解 法 な どに つ い て は,他 の 文 献 を参 照
され た い 。 本 書 で は20.5節 載 せ て お くが,コ
に コマ を対 象 と したMATLABの
プ ロ グ ラ ム事 例 を
マ の モ デ ル は規 模 が小 さ く,実 際 的 な効 果 を示 し て い る事 例 で
はない。
20.4微
分代数型運動方程式の特徴 と数値解法 に関わる技術
● 微分代数方程式の特徴 剛体 系 の微 分 代 数 型 運 動 方 程 式(20.34)は,マ
ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ クス の 汎 用
計 算 シ ス テ ム の 作 成 に役 立 つ。 標 準 形 の 運 動 方 程 式 の 場 合 は独 立 な 一 般 化 速 度 H を選 択 す る必 要 が あ るが,そ
の た め の 一 般 的 な方 法 は な く,一 般 化 速 度 の 選
択 は,技 術 者 の 判 断 を 必 要 とす る事 柄 で あ る。 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 を作 る 場 合 は,独 立 な 一 般 化 速 度 H を必 要 と しな い 。 汎 用 計 算 シ ス テ ム の 入 力 は,モ に必 要 な 剛 体 と,そ の 上 の 結 合 点,そ
デル
して,結 合 点 を結 ぶ ジ ョイ ン トや 力 要 素 な
どで あ る。 ジ ョイ ン トや 力 要 素 に 関 わ る情 報 は,計 算 機 の 中 に ラ イ ブ ラ リー の 形 で事 前 に登 録 して お く。 式(20.34)の
v と Ω'は,ユ
ー ザ ー が 入 力 した 剛 体 情 報
か ら 自動 的 に 決 め る こ とが で き る。 Φv,Φ Ω',ΦRは,ユ イ ン トや 駆 動 拘 束 に 対 応 して,ラ や N'も,ユ
ー ザー が指 定 した ジ ョ
イ ブ ラ リー情 報 か ら作 り出す こ とが で き る。 F
ー ザ ー 指 定 の 力 要 素 に対 応 す る ラ イ ブ ラ リー 情 報 を用 い,剛 体 上 の
図20.1不
等 辺 四 節 リン ク機 構
各 点 に働 く力 と トル ク を計 算 して 等 価 換 算 す れ ば得 られ る。 一 般 の 機械 で使 わ れ る ジ ョイ ン トや 力 要 素 の 種 類 は 案 外 限 られ てお り,ま た,ラ
イ ブ ラ リー の 不 足 を
補 うユ ー ザ ー に よ る追 加 機 能 を持 たせ る こ と も で きる 。 この よ うな 計算 シス テ ム の 高 い実 用 性 が 明 らか に な る に つ れ て,マ
ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミ ク ス は 注 目 され,
発 展 して き た。 一 方,不 等 辺 の 四 節 リ ン ク機 構(図20.1)の 運 動 方 程 式 を作 る場 合,独 立 な 一 般 化 座 標 に よ っ て 各構 成 リ ン クの 重 心 位 置 や 回転 姿 勢 を 表 そ う とす る とか な り 面 倒 な こ と に な る。 3次 元 の 複 雑 な リ ンク機 構 で は な お さ らで あ る 。 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 は,こ の よ う な場 合 に も便 利 で あ り,一 般 に,運 動 方 程 式 の構 築 が 容 易 で 汎 用 性 に優 れ た方 法 とい え る 。拘 束 を 数式 で 表 現 し,そ の 数 式 を操 作 す る方 法 に慣 れ れ ば,微 分 代 数型 の 運 動 方程 式 は容 易 に作 る こ とが で き る。
● 微分代数方程式の数値解法に関わる技術 標 準 形 の 運 動 方 程 式 を 用 い て順 動 力 学 の 数 値 シ ミュ レー シ ョ ン を行 う場 合,H を 未 知 数 と し,mHを が,全
係 数 行 列 とす る 連 立 一 次 方 程 式 の 求 解 に 要 す る 計 算 時 間
計 算 時 間 に対 して 支 配 的 に な る。 そ の 計 算 時 間 は H の 数 の 三 乗 に 比 例 す
る。 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 を そ の ま ま解 くとす る と,同 じモ デ ル で も未 知 数 の数 は H の 数 と Φ の 数 の 二 倍 の 和 に な る た め,大 (20.37)を 用 い て,ラ
幅 な 計 算 時 間 の 増 加 に な る。 式
グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 を先 に 求 め る場 合 は,未 知 数 Λ の数
は 速 度 レベ ル拘 束 Φ の 数 で あ る。 そ の ま ま解 く場 合 に比 べ て か な りの 改 善 に な るが,独
立 な 一 般 化 速 度 H の 数 に 比 べ て Φ の 数 が か な り大 き くな る場 合 も多
い 。 疎 行 列 用 の数 値 解 法 の 場 合,計
算 時 間 は係 数 行 列 の 中 の ゼ ロ で な い 要 素 の 数
に関 わ っ て くる た め,単 純 な比 較 は難 しい 。 た だ し,モ デ ル の 規 模 が 大 き くな る と疎 行 列 性 が 高 ま る傾 向 が あ り,有 効 性 も大 き くな る と思 わ れ る。 な お,モ デ ル規 模 の 三 乗 に比 例 す る通 常 の 方 法 に対 して,モ デ ル規 模 の 一 乗 に 比 例 す る 画 期 的 な定 式 化 方 法 が あ り,そ れ が 次 章 に述 べ る 漸 化 式 に よる 方 法 で あ る 。 た だ し,こ の 方 法 に も 限 界 や 弱 点 が あ る の で 目的 に 応 じた 選 択 が 必 要 に な る。 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 で は,加 速 度 レベ ル の 拘 束 条 件 を運 動 方 程 式 と連 立 させ た 。 そ の た め,数 値 積 分 の 誤 差 が 累 積 して,速 度 レベ ル や位 置 レベ ル の拘 束 条 件 が 満 た さ れ な くな る可 能性 が あ る 。 この 問 題 へ の 対 処 は拘 束 安 定 化 と呼 ば れ,そ の た め の 様 々 な方 法 が 開発 さ れ て き た。 そ の 中 の 一 つ にBaumgarteの 定 化 法 が あ る 。式(20.34)の る が,こ
拘 束安
中 で 用 い られ て い る 拘 束 は 加 速 度 レベ ル の もの で あ
れ に 係 数 を掛 け た 速 度 レベ ル と位 置 レベ ル の 拘 束 を加 え て 次 の よ う な式
を作 り,こ れ を式(20.32)の 代 わ りに用 い る。
(20.38) こ の 式 は,形 式 的 に は 2次 系 の 形 を 持 っ て い て,そ
の 応 答 が 適 切 に な る よ うに,
α と β を 選 ぶ とい う発 想 と考 え ら れ る 。 α と β は,通 常,ス
カ ラ ー で あ る が,拘
束 別 に異 な っ た 数 値 を 用 い る こ と も考 え られ る。 Φ と Ψ の 数 が 合 わ な い 場 合 は,Ψ
の 数 を 増 し,シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 に 対 応 す る 部 分 を ゼ ロ と
して お け ば よ い。 式(20.34)は 次 の よ う に な る 。
(20.39)
た だ し,こ の 方 法 は 安 定 性 が 保 障 され て い る わ け で は な く,ま た,係
数 α とβ
の 選 択 方 法 は 明確 とは い え な い 。 拘 束 が 満 た さ れ て い る か ど うか を監 視 しな が ら 用 い る 必 要 が あ る。 一 方,疎 行 列 用 の解 法 な ど を用 い て 式(20.34)をV,Ω'に 中 の 独 立 な 変 数 だ け を 時 間 積 分 して,得
つ い て 解 き,そ の
られ た 独 立 な速 度 を も とに拘 束 条 件 を満
た す よ うに 従 属 な速 度 を計 算 す る方 法 が あ る。 速 度 レベ ル 変 数 を時 間積 分 して 位 置 レベ ル 変 数 を求 め る場 合 も,独 立 な もの に つ い て だ け行 い,そ
れを もとにニュ
ー トン ラ フ ソ ン法 な どを 用 い て 従 属 な変 数 を求 め る
。 こ の方 法 に よれ ば,拘 束 の
安 定 化 は 不 要 で あ る。 た だ し,こ の と き,独 立 な変 数 を探 し出 す 方 法 が 必 要 で あ る。 多 くの 個 別 の モ デ ル で は 事 前 に独 立 な 変 数 を選 定 す る こ とが で きる が,時
に
難 しい場 合 や 迷 い の 出 る こ と もあ る。 さ らに,独 立 性 が 変 化 す る場 合 が あ り,汎 用 プ ロ グ ラム の よ う な場 合 と共 に,何 式(20.34)の
剛 体 系 の 場 合,重
らか の対 応 手 段 が 必 要 に な る 。
心 速 度 V と剛 体 角 速 度 Ω'の 中 か ら独 立 な 一 般
化 速 度 を選 択 す る と して,拘 束 条件 の ヤ コ ビ行 列 を利 用 す る方 法 が あ る 。 重 心 速 度 V と 剛 体 角 速 度 Ω'の 拘 束 は 式(13.39)に [ΦvΦ
与 え ら れ て い て,ヤ
コ ビ行 列 は
Ω']であ る。 こ の ヤ コ ビ行 列 に,列 の 選 択 を 含 む ピボ ッ ト選 択(完 全 ピボ
ッ ト選 択 な ど)を 用 い た ガ ウス の 消 去 法 を適 用 す る と,V
と Ω'の 中 の独 立 な 一
般 化 速 度 を求 め る こ とが で き る。 選 択 した ピ ボ ッ トに対 応 す る変 数 が 従 属 で,そ れ 以外 が 独 立 な一 般 化 速 度 で あ る。 同様 な 方 法 で独 立 な 一般 化 座 標 の 選 択 も可 能 で あ る。 拘 束 Ψ の ヤ コ ビ行 列 を用 い,R
と,E
また は 〓 の 中 か ら選 択 す る こ と
が で きる 。 V,Ω'以
外 の 速 度 レベ ル の 変 数 S も含 め た 上 で,こ
れ らの 中 か ら独 立 な一 般
化 速 度 を選 択 す る方 法 も あ る 。 拘 束 条 件 Φ はV,Ω',Sの
間 の独 立 な す べ て の
拘 束 を含 む よ うに し,ラ グ ラ ンジ ュの 未 定 乗 数 Λ は,新 た な Φ の 数 だ け の 未 知 数 を含 む もの とす る。こ の と き,次 の よ う な微 分 代 数 型 の 運 動 方 程 式 が 成 立 す る 。
(20.40)
こ の 式 を解 い て 独 立 な もの につ い て積 分 す る 方 法 は,独 の に す る便 利 な方 法 で あ る(Shabana(参
立変数の選択 を自由なも
考 文 献 4))。
時 間 の 経 過 に よ る系 の 状 態 変 化 に伴 い,独 立 な 一 般 化 速 度 が 変 化 す る 可 能性 が あ る 。 再 選 択 な ど に対 す る考 え 方 が 必 要 で あ る 。 ま た,ヤ
コ ビ行 列 をQR分
解す
る方 法 な ど に も興 味 深 い もの が あ る が,そ れ らに つ い て は他 の 文 献 を参 照 され た い 。 本 書 の 参 考 文 献 リス トの 中 に,微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 の 数値 解 法 に 関 わ る 論 文 を い くつ か 載 せ て お い た 。
20.5
順動力学解析の事例:ボ ール ジ ョイ ン トで支点が拘束された コマ(微 分代数型運動方程式 を疎行列用の数値解法で解 く事 例)
これ ま で,拘 束 力 消 去 法 と仮 想 パ ワー の原 理 を利 用 す る 方 法 で,ボ
ー ル ジ ョイ
ン トで 支 点 が 拘 束 され た コマ の運 動 方 程 式 を求 め た 。 ケ イ ン型 の 運 動 方 程 式 を用 い て も,拘 束 条 件 追 加 法 を用 い て も同 じ運 動 方 程 式 に到 達 す る。 そ れ に対 し,微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 の場 合 は 運 動 方 程 式 の 形 そ の もの が 異 な っ て い る。 剛体 A を対 象 と した微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 は 次 の よ う な 形 で あ る。
(20.41)
これ を コ マ の 式 に す る た め に,ま ず,支
点 P の ボ ー ル ジ ョイ ン ト拘 束 を具 体 的
に 表 現 す る こ とか ら始 め る。
(20.42)
Ψ=ROA+COArAP=0
こ の 式 は式(15.8)と 同 じで あ り,位 置 レベ ル の拘 束 で あ る 。 こ の式 を 時 間微 分 す る と,速 度 レベ ル の 拘 束 が 得 られ る 。
(20.43) こ の 式 か ら,式(20.41)左
辺 の 係 数 行 列 に 現 れ る Φv
oAと
ΦΩ'OAを次 の よ う に 求 め
る こ とが で きる 。
(20.44)
ΦVOA=I3
(20.45) ま た,式(20.41)右 作 り,そ
辺 に 現 れ る ΦR は,式(20.43)を
の 中 か らVOAと
も う一 度 時 間微 分 して Φ を
Ω'OAの 項 を 除 い た 残 りで あ る 。
(20.46) 式(20.44)∼(20.46)を
代 入 す る と,(20.41)は
次 の よ う に な る。
(20.47)
こ の式 の左 辺 の係 数 行 列 は,比 較 的 ゼ ロ 要 素 が 多 く,こ れ を疎 行 列 と して,疎 行 列 用 の 数 値 解 法 を適 用 して み よ う。 モ デ ル 規 模 が 小 さい た め,疎 行 列 の 密 度 は 十 分 低 い と は い え ず,単
に そ の よ うな解 法 を適 用 して み るだ け で あ るが,大 規 模
な モ デ ル へ の適 用 時 に参 考 に な る で あ ろ う。 MATLABで
は,連 立 一 次 方 程 式 の 係 数 行 列 と右 辺 の デ ー タ構 造 を疎 行 列 用 の
もの に変 換 す れ ば,こ れ,解
の 式 の 解 を 求 め る と き,自 動 的 に 疎 行 列 用 の 解 法 が適 用 さ
も疎 行 列 の デ ー タ構 造 に な る(詳 細 はMATLABの
オ ン ラ イ ンマ ニ ュ ア
ル な どを参 照 の こ と)。 連 立 一 次 方 程 式 を解 くと,VOA,Ω'OA,Λ
が 求 ま る が,こ
の な か の Ω'OAだ け を時 間 積 分 し て,Ω'OAを 作 る。 す な わ ち,独
立 な一般化 速度
を Ω'OAと して い る。 独 立 な 一 般 化 座 標 は オ イ ラ ー パ ラ メ ー タEOAと
し,そ の 時
間微 分 は Ω'OAか ら次 の 式 で 計 算 で き る。
(20.48) こ の 式 は,9.6節
に 出 て き た 式(9.29)で
あ り,オ
機 能 が 含 ま れ て い る 。 従 属 なVOAとROAは,次
イ ラー パ ラ メ ー タ の拘 束 安 定 化 の 式 で 計 算 され る。
(20.49) (20.50)
ROA=-COArAp こ れ ら も,式(15.9),(15.8)と
同 じで あ る。 こ れ らの 式 の 中 のCOAは,EOAか
ら求 め る。 コマ の場 合 は,独
立 な 一 般 化 座 標 と独 立 な一 般 化 速 度 が 始 め か ら明 らか で,従
属 な変 数 の 計 算 も単 純 で あ る 。 しか し,一 般 に は 独 立 性 の 変 化 を考 慮 す る必 要 が あ っ た り,ま た,従
属 な変 数 の 計 算 に連 立 一 次 方 程 式 の 求解 と ニ ュ ー トン ラ フ ソ
ン法 の 活 用 な ど を考 え な け れ ば な ら な い場 合 が あ る。 また,コ の運 動 方 程 式 が 容 易 に得 られ るの で,通 常,微 本 節 の 方 法 に対 応 す るMATLABプ ROMに
収 録)で
照)。
分 代 数 型 を用 い る 必 要 は な い 。
ロ グ ラ ム は,koma_1045.m(付
あ る。 出 力 はkoma_45.mの
を省 略 す る(15.1節,表15.2参
マ の場 合,標 準 型
録 のCD
場 合 と ま っ た く同 じで あ り,説 明
20.6
順動力学解析の事例:簡 単化 した 2次元サスペンション モデル
● モデルの説明 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 が 用 い られ る理 由 は 次 の 二 つ で あ る 。 一 つ は,マ
ルチ ボ
デ ィシ ス テ ム を扱 う汎 用 的 な ソ フ トウ ェ アの 場 合 で,独 立 な 一 般 化 座 標 の 選 択 が 不 要 だ か らで あ る。 も う一 つ は,リ
ンク 機構 な どの場 合 で,独
立 な一 般 化 座 標 で
構 成 要 素 の 位 置 や 回 転 姿 勢 を表 現 し難 い た め で あ る。 ル ー プ を含 む リ ン ク機 構 の 簡 単 な もの は,平 面 運 動 をす る 四節 リ ン ク機 構 で あ る が,そ
の う ち平 行 四 辺 形 を 形 成 して い る もの は ,標 準 型 の 運 動 方 程 式 を容 易 に
作 る こ とが で き る。 適 当 に選 ん だ 一 般 化 座 標 で,す べ て の リ ン ク の 位 置 と姿 勢 を 簡 単 に 表 現 で き るか らで あ る。 しか し,不 等 辺 の 四 節 リ ン ク機 構 の場 合 は 複 雑 な 三角 関 数 の 関 係 を解 く必 要 が あ り,か な り面 倒 で あ る 。 ま して や ,3 次 元 的 に運 動 す る複 雑 な リ ン ク機 構 の 場 合 は,微 分 代 数 型 に頼 る ほ うが 実 用 的 で あ る 。 そ の よ う な リ ン ク機 構 の 身 近 な 例 と して乗 用 車 の サ ス ペ ン シ ョ ン機 構 が あ る 。本 章 で は,車 の サ ス ペ ン シ ョ ン を模 倣 した 2次 元 の 簡 単 な モ デ ル の 運 動 方 程 式 を微 分代 数 型 で 作 っ て み よ う。 3次 元 の 複 雑 な場 合 で も,同 様 の モ デ ル化 が 可 能 で あ る。
図20.2
簡 単 化 した 2次 元 の サ スペ ン シ ョンモ デ ル(車 体 A は上 下運 動 の み)
図20.2は,簡
単 化 し た 2次 元 の サ ス ペ ン シ ョ ンモ デ ル で あ る。 車 両 を前 方,
ま た は,後 方 か ら見 た 状 態 で,一 つ の車 輪 の サ ス ペ ン シ ョン機 構 だ け に 注 目 して い る 。 座 標 系 O は慣 性 座 標 系 で,Y 軸 の 負 の 向 きに 重 力 が 働 く もの とす る。 系 は 二 つ の 剛 体,A
と D か ら な り,A の 上 に は 固 定 点1,2,3が
は 固 定 点4,5,6,7が
あ り,D の 上 に
あ る 。 剛 体 A は 車 体 で,こ の モ デ ル で は 上 下 運 動 だ け を
す る。 剛体 D は車 輪 の 回 転 軸 で,ア
ク ス ル と呼 ぶ こ と に す る。 た だ し,こ の モ
デ ル で は 車 輪 や タ イ ヤ も含 め て 考 え て い る 。 点 1 と4,2と ス リ ン ク に よっ て 一 定 距 離,b1Oとb2O,に
5は そ れ ぞ れ マ ス レ
保 た れ て い る 。 これ らの リ ン ク は ウ ィ
ッ シ ュ ボ ー ン と呼 ばれ るサ ス ペ ンシ ョ ン機 構 の要 素 を前 後 方 向か ら眺 め た もの で あ る。 点 3と 6は,サ
スペ ン シ ョ ン の バ ネ と ダ ンパ ー に よ っ て 結 合 され て い る。
サ ス ペ ン シ ョ ンバ ネ の 自然 長 はb3Oと し,伸 び 量 をb3Eと い う変 数 で 表 す こ とに す る。 ま た,点
7 と路 面 の 間 に は タ イ ヤ を想 定 した バ ネ を考 え る が,簡
め,上 下 方 向 の み に働 く線 形 バ ネ で,タ
単の た
イヤ が 路 面 か ら浮 く よ うな こ とや,タ
イ
ヤ が 路 面 か ら受 け る横 方 向 の 抵 抗 力 は 考 え て い な い 。 この モ デ ル は 簡 単 な 閉 ル ー プ の リ ン ク機 構 で,不
等 辺 の 四 辺 形 に な っ て い る。
した が っ て,車 体 に対 す る ア ク ス ル の 上 下 動 に よっ て ア ク ス ル の 傾 き角 も変 化 す る 。 こ の 上 下 動 と傾 き角 の 関 係,あ
るい は,傾
量 の 関 係 な ど を把 握 で きる と よ い の だ が,そ
き角 とサ スペ ン シ ョンバ ネ の伸 び
れ は 意 外 と面 倒 で あ る。 こ の よ う な
場 合 に,微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 が 役 に立 つ 。
● 運動方程式と解法などの準備 こ の系 の 微 分 代 数型 運 動 方 程 式 は 次 の よ うな 形 に書 け る。
(20.51)
こ の 式 で,車
体 は す で に上 下 方 向 の運 動 だ け を考 えて い る の で,VOAXや
ωOAは
除 い て あ る。 こ の式 の ほ か に,次 の 運 動 学 的 関 係 も用 い て順 動 力 学 シ ミ ュ レ ー シ ョン を 行 う。
ROAY=VOAY
(20.52)
ROD=VOD
(20.53)
θOD=ωOD
(20.54)
こ の 系 に 働 く作 用 力 は,重
力,サ
作 用 す る 力fO6,そ
し て,点
7 に 作 用 す る タ イ ヤ(バ
も 反 作 用 の-fO6が
働 く。 こ れ ら を 求 め,等
用 力,作
ス ペ ン シ ョ ンバ ネ と ダ ン パ ー に よ っ て 点 6 に ネ)力fO7で
価 換 算 す れ ば,式(20
あ る。 点 3に .51)右 辺 の 作
用 トル ク に な る 。
(20.55) (20.56) (20.57) (20.58) (20.59) た だ し,ksとcsは
サ ス ペ ン シ ョ ン の バ ネ 定 数 と ダ ン ピ ン グ 係 数,kTとCTは
イ ヤ の バ ネ 定 数 と ダ ン ピ ン グ 係 数 で,r36,rO7,vO7,b3E,b3Eは
タ
次 の と お りで あ る 。
(20.60) (20.61) (20.62) (20.63) (20.64) 式(20.60)の る が,こ
左 辺 は 座 標 系 A で 表 さ れ て お り,右 辺 は座 標 系 O で 表 され て い
の モ デ ル で はCOA=I3で
あ る。
式(20.51)を 完 成 させ るた め に,さ
ら に,拘 束 を具 体 的 に 表 現 す る必 要 が あ る。
車 体 の 運 動 はす で に 上 下 方 向 だ け に な っ て い る の で,拘 束 は二 本 の マ ス レス リ ン ク だ け を考 慮 す れ ば よい 。 位 置 レベ ル 拘 束 は,次
の よ う に書 け る。
(20.65) (20.66) (20.67)
(20.68) ROAXは 定 数 で あ る 。 以 上 を 時 間微 分 す れ ば,速 度 レベ ル 拘 束 が得 られ る。
(20.69) (20.70) (20.71) (20.72)
VOA=dYVOAY
も う一 度 時 間微 分 す る と加 速 度 レベ ル の 拘 束 に な る。
(20.73) (20.74) (20.75) (20.76)
VOA=dYVOAY は 次 の よ う に求 ま る 。
以 上 か ら,
(20.77)
(20.78)
(20.79)
(20.80) 式(20.51)に
は,Baumgarteの
拘 束 安 定 化 法 が 組 み 込 まれ て い る 。 二 次 系 の応
答 を 考 え て 適 当 な α と β を 設 定 す れ ば,数 と が で き る 。 式(20.51)の VOAY,VOD,ωODを が で き,次
値 積分 による誤差 の累積 を避 けるこ
数 値 解 法 と し て,ま
ず Λ を 計 算 し,そ
求 め る こ と に す る 。 そ の 計 算 式 は,式(20.51)か
の 結 果 を用 い て ら作 る こ と
の よ う に な る。
(20.81)
(20.82) (20.83) (20.84) Λ の 要 素 数 は 2で,連
立 一 次 方 程 式(20.81)の 解 と して 求 ま る。 ま た,こ れ ら の
式 の 中 に あ る質 量 と慣 性 モ ー メ ン トの 逆 数 は,こ 般 に は,逆 行 列 に な るが,定
こ で は 単 な る割 り算 で よ い。 一
数 で あ るか ら積 分 計 算 前 の 準 備 段 階 で 計 算 して お く
こ とが で き る。 式(20.82)∼(20.84)の
計 算 は,単 純 な 四 則 演 算 で あ る 。
● 計算プログラムの簡単な説明 以 上 の 準 備 を も と にMATLABの
プ ロ グ ラ ム を 作 成 し た(suspension
表20.1suspension_10.mの
グ ラ フ 出 力
figure(1)
時間に対す る慣性座標系か ら見た車体の重心高さ
figure(2)∼figure(3)
時 間 に対 す る慣 性 座 標 系 か ら見 た アク ス ルの重 心 位 置
figure(4)
時 間 に対 す る慣 性 座 標系 か ら見 た ア ク ス ルの傾 き角
figure(5)
時間に対す る慣性座標系 か ら見た車体 の上下動速 さ
figure(6)∼figure(7)
時 間 に対 す る慣 性 座 標系 か ら見 た ア クス ルの重 心 速 度
figure(8)
時 間 に対 す る慣 性 座 標系 か ら見 た ア クス ルの角 速 度
figure(9)
時 間 に対 す る タ イヤ 力
figure(10)
時 間 に対 す る サス ペ ン シ ョ ンの バ ネ と ダ ンパ ー の力
figure(11)
時 間 に対 す る位 置 レベ ル拘 束 の 二 乗和
図20.3簡
_10.m,
易 サ ス ペ ン シ ョ ン モ デ ル に お け る サ ス ペ ン シ ョ ンバ ネ+ダ
ンパ ー の 力
付 録 のCD-ROMに
収 録)。 デ ー タ な ど は,適 当 に 定 め た 値 で あ り,実 際 の サ ス
ペ ン シ ョ ンの挙 動 とは 異 な っ て い る 。 最 初 の デ ー タ を与 え る段 階 で,車 体 に対 す る ア クス ル の重 心 位 置 や 傾 き角 の 概 略 値 を指 定 し,サ ス ペ ン シ ョ ンバ ネ の 伸 び と伸 び の 速 さ の初 期 値 を指 定 す る よ う に した。 こ れ らの 値 を 基 に,プ ロ グ ラ ム の 第 二段 階 で,ア き角,お
クス ル の重 心 位 置 と傾
よび,重 心 速 度 と角 速 度 の 初 期 値 を正 確 に計 算 す る よ うに した 。 重 心 位
置 と傾 き角 の 計 算 に は ニ ュ ー トン ラ フ ソ ン法 を用 い た 関 数 を作 成 し,使 用 して い る(suspension_10_NewtonRaphson)。
重 心 速 度 と角 速 度 は 連 立 一 次 方 程 式 を解
い て求 め る 。 これ ら に よ り,位 置 レベ ル と速 度 レベ ル の拘 束 条 件 を 満 足 す る初 期 値 か ら積 分 計 算 を 始 め る こ とが で きる。 状 態 変 数 の 時 間微 分 を求 め る"右 辺"の 計 算 は,関 数e_suspension_10で
行 うが そ の 関 数 との パ ラメ ー ター の 受 渡 しに は
global変 数 を 用 い た 。 出 力 は グ ラ フ(表20.1)だ
け で,ア
ニ メ ー シ ョ ン は今 の
と こ ろ準 備 で きて い な い。
● 初 期値 を作 る た めの ニ ュー トンラ フ ソ ン法 以 下,こ
の プ ロ グ ラ ム で 用 い ら れ た ニ ュ ー トン ラ フ ソ ン法 につ い て 説 明 す る。
式(20.65),お
よ び,(20.66)∼(20.68)に
さ れ て い る が,こ
れ は,変
この 系 の マ ス レス リ ン ク の 拘 束 が 表 現
数ROAY,ROD,θODの
間 の 拘 束 で あ る 。 ス カ ラ ー レベ
ル で 四 つ の 変 数 の 間 に 二 つ の 拘 束 が あ り,差 て い る 。 し か し,こ る か ら,RAD,θADの
し引 き 2自 由 度 が 系 の 自由 度 に な っ
の拘 束 は 本 質 的 に は 車 体 A に対 す る ア ク ス ル D の 拘 束 で あ 間 の 拘 束 と し て 書 く こ と も で き る 。 こ の 場 合,ROAYは
と 無 関 係 な 一 般 化 座 標 と 考 え れ ば よ く,系
拘束
の 自由 度 の考 え 方 に矛 盾 を生 じる こ と
は な い。 さ て,上 Ψ+を
記 の 拘 束 に 加 え て,サ
ス ペ ン シ ョ ンバ ネ の 長 さ に 関 す る 拘 束 を含 む
考 え る。
(20.85)
(20.86) (20.87)
(20.88) 式(20.86)と(20.87)は
式(20.66)と(20.67)をRADと
も の で あ る 。 ま た,式(20.88)は,サ 新 た に 追 加 し た 拘 束 は,サ で あ る 。 Ψ+に
θADを 用 い て 書 き 直 し た
ス ペ ン シ ョ ンバ ネ 両 端 点 の 相 対 的 な 位 置 で,
ス ペ ン シ ョンバ ネ の 長 さが 二 点 間 の 距 離 に 等 し い 関係
出 て く る 一 般 化 座 標 はRAD,θAD,b3Eで
れ らの 変 数 間 の 拘 束 で,ス
あ る か ら,こ
の拘 束 は こ
カ ラ ー レベ ル で 四 つ の 変 数 に 対 し て 三 つ の 拘 束 に な っ
て い る。 さ て,こ
の 拘 束 でb3Eの
係 の 式 か ら,ス
初 期 値 が 与 え ら れ た と す る 。 そ の と き,三
カ ラ ー レ ベ ル で 三 つ の 変 数RADと
位 置 レ ベ ル の 拘 束 関 係 の 式 は 非 線 形 で あ り,ニ こ と に な る 。 ま ず,RADと 85)∼(20.88)のRADと
と θADe+Δ θADを 代 入 し,修
定 ま る は ず で あ る。
ュ ー トン ラ フ ソ ン法 で 解 を 求 め る
θADの 推 定 値, RADeと θADは,推
θAD,が
つの拘束 関
θADeが あ る と す る 。 式(20.
定 値 と修 正 値 の 和 に 等 し い の で,RADe+ΔRAD
正 値 に つ い て 線 形 近 似 す る 。 そ の 結 果,式(20.85)
は次 の よ う な形 に 書 け る 。
(20.89)
(20.90)
(20.91)
(20.92)
し た が っ て,ΔRADと
ΔθADを 求 め る た め の 連 立 一 次 方 程 式 は 次 の よ う に な る 。
(20.93) こ れ を 解 い て,RADe+ΔRADと
θADe+Δ θADを 新 た な 推 定 値 と し,Ψ+eの
二 乗 和 が 十 分 小 さ く な る ま で 繰 り返 す 。
要 素 の
こ の 収 束 計 算 は 初 期 の 推 定 値 と収 束 の 判 定 基 準 を 与 え て 行 う が,初 が 求 め る 解 か ら 遠 す ぎ る と,う 上 限 を 設 け,収 suspension_10
ま く収 束 し な い こ と が あ る の で,繰
期 の推 定 値 り返 し 回 数 に
束 し な か っ た と き に は 収 束 計 算 の 履 歴 が 見 え る よ う に す る な ど, _NewtonRaphsonに
●Embedding
は プ ロ グ ラ ミ ング上 の 工 夫 が 施 して あ る。
Technique
こ の 事 例 で,独
立 な 一 般 化 速 度 を 選 択 す る こ と を 考 え て み る 。 式(20.51)で
一 般 化 速 度 にVOAY
,VOD,ωODが
択 す る と す れ ば,拘
使 わ れ て い る 。 こ れ ら の 中 か ら独 立 な も の を 選
束 の ヤ コ ビ 行 列 に 完 全 ピ ボ ッ ト選 択 に よ る ガ ウ ス の 消 去 法 を
適 用 し て み る ま で も な く,系
の 構 成 か ら判 断 し て,VOAYとVODYが
と は 判 断 で き る で あ ろ う。 ま た,こ に す れ ば,合
は,
こ に 使 わ れ て い な い 変 数 も含 め て 考 え る こ と
理 的 な 選 択 肢 は 多 く な る 。 た と え ば,VOAYと
然 長 か ら の 伸 び 量 の 時 間 微 分b3Eも,サ あ ろ う 。 こ こ で は,VOAYとb3Eを
よ さそ う な こ
サ ス ペ ン シ ョ ンの 自
ス ペ ンシ ョ ン の機 構 か ら考 え て 合 理 的 で
用 い て,数
値 的 に標 準 型 の 運 動 方 程 式 に す る 方
法 を 考 え よ う。 式(20.65)の
拘 束 Ψ=0は,ROAY,ROD,θODの
の 間 の 拘 束 と 見 る こ と も で き た 。 逆 に 式(20.85)の b3Eの 間 の 拘 束 で あ る が,ROAY,ROD,θOD,b3Eの こ れ は,独
間 の 拘 束 で あ る が,RAD,θAD 拘 束 Ψ+=0は,RAD,θAD, 間 の 拘 束 と考 え る こ とに す る。
立 な 三 つ の 拘 束 か ら な っ て い る。 こ れ を 時 間 微 分 した 速 度 レベ ル の 拘
束 は,Φ+=0で,こ
れ は 次 の よ うに 書 け る。
(20.94) VOAYとb3Eを る が,ま
ず,こ
独 立 に 選 べ る の で,こ
の 式 か らVOD,ωODに
つ い て 解 く こ とが で き
の 式 を 次 の よ う に 書 き換 え る 。
(20.95) こ の 式 か ら,
(20.96) こ の B'を 用 い て,式(20.51)を 書 く こ とが で きる 。
標 準 型 に変 換 す る速 度 変 換 行 列B1は
次の ように
(20.97)
(20.98)
な お,こ
の サ ス ペ ン シ ョ ン の 事 例 で はBIは
求 ま っ たBIを が,そ
用 い て,標
の た め に はBIが
こ で,式(20.95)の
ゼ ロで あ る 。
準 型 運 動 方 程 式 が 式(18.25)の
必 要 に な り,式(20.96)な
よ う に 求 ま る はず だ
ど を見 る と 困 難 を 感 じ る。 そ
時 間微 分 を作 る。
(20.99) こ の 式 と 式(20.96)か
ら,
(20.100) これ を用 い る と
(20.101)
この 式 と式(20.98)を 用 い れ ば,式(20.51)を
標 準 型 に 直 す こ とが で き,微 分 代 数
型 運 動 方 程 式 の 求解 の 方 法 に悩 ま さ れ る こ と は な くな る。 式(20.98)か
ら仮 想 速
度 の 関係 を作 り,拘 束 力 の消 去 に利 用 す る。 な お,こ の よ うな方 法 を採 用 す る場 合 に も,式(20.96)と(20.100)に
含 ま れ る逆 行 列 の 計 算 に は連 立 一 次 方 程 式 の 解
法 を利 用 し,ま とめ て 行 うな どの 工 夫 を考 え る こ とが,規 模 の 大 き な 問 題 で は重 要 で あ る。
木構造 を対象 と した漸化式 による
第21章
順動力学の定式化
標 準 形 の運 動 方 程 式 を 用 い て順 動 力 学 の 数 値 シ ミ ュ レー シ ョ ン を行 う場 合,計 算 時 間 は H を未 知 数 と した連 立 一 次 方 程 式 の 求 解 に 要 す る 時 間 が 支 配 的 で あ り, 基 本 的 に は,H
の 要 素 数 の 三 乗 に比 例 した 時 間 が か か る。 三 乗 に比 例 した 計 算
時 間 が か か る とい う こ とは,モ デ ル規 模 が 二 倍 に な る と,計 算 時 間 は 八 倍 と い う こ と で あ る。 こ こで モ デ ル 規模 と は,大 雑 把 に 剛 体 の 数 と考 え て お い て よい 。 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 の よ うに係 数 行 列 が 疎 行 列 の 場 合 は,疎 行 列 用 の ア ル ゴ リズ ム を用 い て か な り改 善 で きる が,そ れ は微 分 代 数 方 程 式 の 他 の解 法 との対 比 な ど で あ り,本 章 で 説 明 す る方 法 ほ どの 画 期 的 な効 果 を期 待 す る こ とは で きな い 。 拘 束 剛 体 系 の モ デ ル は,複 数 の 剛 体 が ジ ョイ ン トな どに よ っ て結 合 さ れ た もの で あ る。 結 合 は,剛 体 と剛 体 の場 合 や,剛 体 と慣 性 空 間 の場 合 が あ る。 ジ ョイ ン トと は,一 般 に拘 束 を伴 う も の で あ り,ま た,駆 動 拘 束 の よ う に時 間 に依 存 す る 拘 束 もあ る が,そ
れ ら を ま と め て拘 束結 合 と呼 ぶ こ と にす る 。 そ の 拘 束 結 合 に注
目 した と き,系 の 中 に拘 束 結 合 のル-プ
が構 成 され て い る場 合 と ルー プ を含 まな
い 場 合 と に分 け て 考 え る こ とが で き,ル ー プ を含 まな い 構 造 は木 構 造 と呼 ば れ て い る(図21.1)。 木 構 造 に 限定 し た と き,モ デ ル規 模 に比 例 し た計 算 時 間で 順 動 力 学 を解 く方 法 が あ り,そ れ が 本 章 の 主 題 で あ る 。 そ の 方 法 は,系 の 一 般 化 速 度 の 時 間 微 分 H を求 め る とい う意 味 で は標 準 形 の 運 動 方 程 式 と同 じで あ るが,モ
デ ル 規模 に比 例
した 計 算 時 間 を実 現 す る定 式化 は,極 め て変 わ った 形 で あ る。 こ の 方 法 は,運 動 方 程 式 とい う よ り,H
を 求 め る た め の解 法 と い う ほ うが 近 い か も しれ な い 。 し
か し,汎 用 的 な形 の 定 式 化 が得 られ,そ
の形 に従 っ て特 定 なモ デ ル の 定 式 化 も可
能 で あ るか ら,運 動 方 程 式 の一 形態 と もい え る で あ ろ う。 モ デ ル 規 模 に 比 例 し た 計 算 時 間 を 実 現 し て い る の で,こ Order-N-Algorithmと
呼 ぶ。Order-N3で
の解 法 を
は な い と い う こ とで あ る 。 ま た,
図21.1
こ の 方 法 の 定 式 化,ま mulationと
木 構 造(左 側)と ルー プ を含 む系(中 央,右 側)
た は,こ の 方 法 を 定 式 化 し た も の は,Order-N-For
呼 ば れ る。 さ ら に,こ
Recursive-Algorithm,ま
の 方 法 は 漸 化 的 な 計 算 に よ る もの な の で,
た は,Recursive-Formulationと
呼ばれ るこ
と も あ る 。 マ ル チ ボデ ィ ダ イ ナ ミ クス の市 販 ソ フ トウ ェ ア の 中 で,こ の 方 法 を基 本 に した もの は比 較 的 新 しい もの で あ る が,す
で に,か
な り強 い 商 品 力 を持 っ た
もの が 出 現 して い る。 こ の 方 法 は,基 本 的 に は,木 構 造 を対 象 と した もの だ が,ル
ー プ が あ る場 合 に
拡 張 す る い くつ か の方 法 が 提 案 され,実 用 化 さ れ て い る。 しか し,こ の方 法 は か な り分 か りに くい 方 法 で あ り,本 書 で は 基 本 の 理解 だ け を狙 い,木 構 造 に 限 定 し て 説 明 す る。 また,動
力 学 的 に加 速 度 を求 め る 漸 化 式 の 導 出 はか な り面 倒 な もの
で あ るた め,付 録 D に まわ した。 な お,第22章
以 降 の 本 書 の残 りの 方 法 へ 関 連
す る こ と は な い の で本 章 を後 回 しに して も差 し支 え な い 。
21.1
木構造
木 構 造 は,拘 束 結 合 に よっ て慣 性 空 間 と結 合 さ れ て い る場 合 と,慣 性 空 間 との 拘 束 結 合 が な い場 合 と に分 け られ る。 ま た,相 互 に拘 束 結 合 の な い 複 数 の木 構 造 の 集 合 に な っ て い る 場 合 もあ る。 そ の よ う な場 合,拘 少 させ な い)拘
束 を含 まな い(自
由度 を減
束 結 合 を 適 当 に追 加 す れ ば,慣 性 空 間 も含 め た 一 つ の 木 構 造 と見
な す こ とが で きる 。 以 下 で は,そ の よ うに 見 な した 系 を対 象 とす る。 慣 性 空 間 は 木 構 造 の ル ー ト(根)で
あ る(図21.2)。
剛体 は ル ー トか ら順 に結
図21.2
合 され,途
木 構 造 の 方 向性
図21.3
木 構 造 の 親子 関係
中分 岐 し なが ら,末 端 の 剛体 に 至 る。 末 端 の 剛 体 を リー フ(葉)と
ぶ 。 ル ー トは 一 つ で あ るが,リ て,直 接,結
ー フ は 分 岐 の 数+1
だ け あ る。 拘 束 結 合 を 介 し
合 され て い る剛 体 同 士 は,親 子 関 係 に あ る(図21.3)。
い側 が 親 で,リ
呼
ル ー トに近
ー フ に近 い側 が 子 で あ る。 木構 造 を構 成 して い る 剛体 に 番 号 を付
け る が,ま ず,ル
ー トを 0 とす る 。 剛 体 に は 1か ら順 に番 号 を付 け る こ とに し,
親 子 の 間 で は必 ず 親 の 番 号 が 子 の 番 号 よ り小 さ く な る よ う にす る。 い くつ か の 剛 体 は慣 性 空 間 を親 と して い る 。 そ して,リ ー フ に は子 が な い 。 拘 束 結 合 に は 二 種 類 あ る(図21.4)。
親 の 数 は 必 ず 一 つ だ が,子
の数 が,一 つ
の 場 合 と複 数 の 場 合 の 二 種 類 で あ る。 子 の 数 が 一 つ の 場 合 を通 常 拘 束 結 合 と呼 び,子 の 数 が 複 数 の場 合 を特 殊 拘 束 結 合 と呼 ぶ こ と にす る。 ボ ー ル ジ ョイ ン トや ピ ンジ ョイ ン トな ど,通 常,ジ
ョイ ン トと呼 ば れ る も の や,普
子 の 数 が 一 つ の 通 常 拘 束 結 合 で 実 現 で きる。 特 殊 拘 束 結 合 は,モ よ っ て複 数 の 剛 体 の位 置 や 回転 姿 勢 を,ま
ー ド情 報 な ど に
とめ て 定 め る よ うな 場 合 に現 れ る。
本 書 の 説 明 は通 常 拘 束 結 合 だ け の 場 合 を基 本 とす るが,そ る こ とで,特
通 の駆 動 拘 束 は,
の 結 果 を少 し修 正 す
殊 拘 束 結 合 を含 む モ デ ル につ い て も考 え る こ とが で きる。 通 常 拘 束
結 合 だ け の系 で は,拘 束 結 合 の 数 は 剛 体 の 数 と同 数 で あ る。 そ して,す べ て の 拘 束 結 合 は子 剛体 と一 対 一 に対 応 して お り,子 剛 体 と同 じ番 号 を割 り振 っ て お くこ と にす る(図21.5)。
以 下,通
常 拘 束 結 合 を単 に拘 束 結 合 と 呼 ぶ 。
各 拘 束 結 合 は,一 組 の 一 般 化 座 標 と一 組 の一 般 化 速 度 を持 っ て い て系 全 体 の 一
図21.4
図21.5
通 常拘 束 結 合 と特 殊拘 束 結 合
木構 造 の 番号 付 け(親 の番 号<子 の 番 号)
般 化 座 標 と一 般 化 速 度 は 各 拘 束結 合 の も の を寄 せ 集 め た もの とす る こ とが で きる。
(21.1)(注)
(21.2)(注)
(注)こ
れ ら の 式 は 式(13.1),(13.7)と
同 じ型 で あ る が,こ
こ で は ブ ロ ッ ク列 行 列 に な っ て い る 。
Qjは 拘 束 結 合 jの 一 般 化 座 標 で,ジ
ョイ ン トの 場 合 は ジ ョイ ン ト変 数
は,関 節 座 標 な ど と呼 ば れ る 。Hjは 拘 束 結 合 jの 一 般 化 速 度 で,ジ 場 合 は ジ ョイ ン ト速 度,あ
あ るい
ョイ ン トの
る い は,関 節 速 度 な ど と呼 ば れ る。 な お,拘 束 結 合 が
駆 動 機 能 とジ ョイ ン ト機 能 を合 わせ た よ う な役 割 を 持 つ 場 合 が あ り,そ の よ うな 駆 動 拘 束 も一 般 化 座 標 や 一 般 化 速 度 を 持 つ こ と に な る。QjとHjは,そ れ ぞ れ, 一 般 に複 数 の ス カ ラー 変 数 か ら な る が ,そ の 数 は,通 常 拘 束 結 合 の 場 合,0 か ら 6 まで で あ る。 ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 の 場 合,Qjの ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 結 合 で は,Qjの こ こ で,各
数 とHjの 数 は 等 し く,シ ンプ
数 はHjの
剛 体 の 回転 姿 勢 と し て オ イ ラー 角OOjを
て 重 心 位 置ROjと
回 転 姿 勢OOjを
数 よ り多 くな る 。 使 う こ と に し よ う。 そ し
縦 に ま と め た 列 行 列 を 斜 体 のROjと
書 くこ と
に す る。
(21.3) 回 転 姿 勢 と し て は オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ な ど で も よ い 。ROjは,こ 列 行 列 で,こ
れ を 位 置 レ ベ ル 変 数 と 呼 ぶ こ と に す る 。 次 に,重
速 度 Ω'Ojを 縦 に ま と め た 列 行 列 を 斜 体 のV'Ojと
の 場 合,6×1 心 速 度VOjと
角
す る。
(21.4) V'Ojは,6×1列
行 列 で,こ れ を速 度 レベ ル 変 数 と呼 ぶ こ とに す る 。
位 置 レベ ル 変 数 と速 度 レベ ル 変 数 を系 全 体 に わ た って ま と め,次 の よ うに 添 え 字 の な い斜 体 の 変 数 を準 備 して お く。
(21.5)
(21.6)
R は,式(12.66)と(12.67)で た だ し,各 あ る 。V'も
定 義 した R とO を 一 つ に ま と め た 列 行 列 で あ る。
剛 体 に対 応 す る R とOの 要 素 ブ ロ ッ ク を 隣接 す る よ う に 並 べ 直 して 同 様 で,式(12.55)と(12.56)で
定 義 し た V と Ω'を 並 べ 直 し て 一 つ
に ま とめ た 列 行 列 で あ る。
21.2
運 動学 の漸 化 計 算表 現
● 位 置 と速 度 の漸 化 計 算 まず,剛 体 1に つ い て 考 え る。 そ の 位 置 レベ ル 変 数RO1はQ1と ず で あ る 。 ま た,速 度 レ ベ ル 変 数V'O1はH1と Q1とH1も
tで決 ま る は
tで 決 ま る は ず で あ る。 さ ら に,
特 定 な 関 係 に あ る。 以 上 を ま と め て書 くと次 の よ う に な る。
(21.7) (21.8) (21.9) 位 置 レ ベ ル の 関 係 は 非 線 形 で あ る が,速
度 レベ ル の 関 係 は 速 度 レ ベ ル の 変 数 に つ
い て 線 形 に な っ て い る 。 す な わ ちD1,U1,A1,B1は 数,ま
た は,Q1と
tの 関 数 で,速
同 様 な 式 が,慣 #(H1)と
い ず れ も,RO1と
tの 関
度 レベ ル の 変 数 を含 ん で い な い 。 こ の 三 式 と
性 系 を 親 と し て い る 他 の 剛 体 に つ い て も 成 り 立 つ 。H1の
書 く こ と に す る と,D1は6×#(H1)の
個 数 を
大 き さ に な る 。U1は6×1列
行
列 である。 次 に,そ
れ 以 外 の 剛 体 に つ い て 考 え る 。 剛 体 jの 親 を 剛 体 iと し,剛
い て は,す
で に,ROi,V'Oiが
ROiとQjと る 。QjとHjの
分 か っ て い る と す る 。 そ の と き,剛
tの 関 数 で あ る 。 ま た,V'Ojは,V'OiとHjの 関 係 も含 め て,次
体 iに つ
体 jのROjは,
線 型 な関係 式 で 表 され
の よ うに書 くこ とが で き る。
(21.10) (21.11) (21.12) 式(21.10)は,親
の 重 心 位 置 と 回 転 姿 勢 が 決 ま っ て い る と き,拘
座 標 を 用 い て,子
束結 合 の一般 化
の 重 心 位 置 と 回 転 姿 勢 を 決 め る 関 係 で あ る 。 式(21.11)は,親
の 重 心 速 度 と角 速 度 が 決 ま っ て い る と き,拘
束 結 合 の 一 般 化 速 度 を 用 い て,子
の
重 心 速 度 と角 速 度 を 決 め る 関 係 に な っ て い る 。Lj,Dj,Uj,Aj,Bjは,ROjと tの 関 数,ま
た は,ROiとQjと
tの 関 数 で あ る 。Ljは6×6行
列,Hjの
個 数 を
#(Hj)と
書 く こ と に す る と,Djは6×#(Hj)の
大 き さ に な る 。Ujは6×1列
行
列 であ る。 ●
簡 単 な 事 例
こ こ で,簡 と し,点
単 な 事 例 を 示 そ う 。 剛 体 i上 の 固 定 点 を P,剛 体 j上 の 固 定 点 を Q
P と Q が ボ ー ル ジ ョ イ ン トで 結 ば れ て い る と す る 。 ボ ー ル ジ ョ イ ン ト
の モ デ ル は,rOPとrOQが
一 致 して い る と い う もの で あ る。 こ の 関係 は 次 の よ う
に書 け る。
(21.13) riPとrjQは
定 数 で あ る。 こ の 式 は 次 の よ う に書 き直 せ る。
(21.14) COiはOOiの
関 数 と 考 え る こ と が で き る 。CijもOijの
結 合 の 一 般 化 座 標Qjと 一 般 化 座 標Qjの
関 数 で,Oijを
す れ ば,ROjはROiとOOiとQjの
この拘束
関 数 に な る 。 な お,
数 は ボ ー ル ジ ョイ ン トに よ っ て 残 され た幾 何 学 的 自由 度 3 と同
じで あ る。 回 転 行 列 に つ い て は次 の 関係 が 成 り立 つ 。
(21.15) 右 辺 は,OOiとQjの な い が,そ
関 数 で あ る 。COjか
らOOjを
作 る方 法 は 本 書 で は示 し て い
の 方 法 を 用 い れ ば,OOjは,OOiとQjで
局,ROjはROiとQjの 式(21.14)を
表 さ れ た こ と に な る(注)。結
関 数 と して表 す こ とが で きた 。 時 間 微 分 し,整
理 す る と次 の式 が 得 られ る 。
(21.16) こ の 式 は 速 度 に 関 す る 一 次 式 に な っ て い る 。Ω'ijを こ の 拘 束 結 合 の 一 般 化 速 度 Hjと
す れ ば,VOjは,VOiと
Ω'OiとHjで
表 さ れ た こ と に な り,ま
は 速 度 レ ベ ル の 変 数 に つ い て 線 形 で あ る 。 な お,一
般 化 速 度Hjの
た,そ
の 関係
数 はボー ルジ
ョ イ ン ト に よ っ て 残 さ れ た 運 動 学 的 自 由 度 3 と 同 じ で あ る 。 角 速 度 Ω'Ojに つ い て は 次 の よ う に書 け る。
(21.17)
(注)COjか COjが
ら狭 義 の オ イ ラ ー 角 を 作 る方 法 に つ い て は,7.3節
分 か っ て い れ ばOOjは
不 要 な 場 合 が 多 く,概
念 的 にOOjが
に[Quiz
7.6]が
あ る。 た だ し,
得 られ る と考 えて お け ば よい 。
Ω'ojも Ω'oiとHjの 線 形 な 関 係 で 表 さ れ た。 結 局,V'ojは,V'oiとHjで こ と に な る。 ボ ー ル ジ ョイ ン トの 場 合 は,時 以 上 が,ボ
表 された
間 tは 陽 に は 現 れ て こ な い 。
ー ル ジ ョイ ン トの 場 合 の 漸化 的 表 現 で あ る。 読 者 は,他 の ジ ョ イ ン
トや 駆 動 拘 束 の 漸 化 的 表 現 を作 る こ とが で き る で あ ろ うか 。 ● 系 全体 を一 つ に ま とめ た表 現 式(21.10),(21.11)は
漸 化 式 で あ る。 また,式(21.7),(21.8)は,式(21.10),
(21.11)の 特 別 な形 で あ る。 拘 束 結 合 の 一 般 化 座 標 と一 般 化 速 度 を適 切 に選 べ ば, す べ て の 剛体 の位 置 と回 転 姿 勢,速
度 と角 速 度 を,こ の よ う な漸 化 的 な 方 法 で求
め る こ とが で き る。 逆 に,拘 束 結 合 の 一 般 化 座 標 と一 般 化 速 度 の適 切 な 選 び方 と は,子
の 剛体 の 位 置 と回 転 姿 勢,速
度 と角 速 度 を,漸 化 的 な方 法 で定 め られ る よ
う に す る こ とで あ り,拘 束 結 合 の種 類 ご とに 一 般 化 座 標 と一 般 化 速 度 を 定 め る こ とが で き る。 なお,同
一機 能 の 拘 束 結 合 で も一 般 化 座 標 と一 般 化 速 度 の 選 び 方 は
一 通 りと は 限 ら な い。 式(21.11)の
よ う な速 度 レベ ル の 漸 化 式 はす べ て の拘 束 結 合 につ い て 作 る こ と
が で き,そ れ ら を ま とめ て系 全 体 の漸 化 式 を次 の よ う に作 る こ とが で きる。
(21.18)
V'=LV'+DH+U V'は,式(21.6)に る 。 H は,系
与 え ら れ て い る と お り,V'ojを
番 号 順 に縦 に並 べ た 列 行 列 で あ
全 体 の 一 般 化 速 度 で あ る が,式(21.2)に
の 一 般 化 速 度Hjを
あ る よ う に,各
拘 束結合
集 め た も の で あ る 。 D と U は 次 の とお りで あ る 。
(21.19)
(21.20)
Djは 一 般 に縦 長 の 行 列 で あ り,D 番 号 で 見 れ ば,Djは
対 角 線 上 の ブ ロ ッ ク で あ り,D
正 方 的 ブ ロ ッ ク行 列 参 照)。Ujは L は6×6の
も縦 長 に な る が,ブ
ロ ック行 とブ ロ ック 列 の は 正 方 的 で あ る(1.3節
列 行 列 で あ るか ら,U
の
も列 行 列 に な る。
大 き さ の ブ ロ ッ ク を正 方 的 に 並 べ た 正 方 行 列 で あ る。 親 子 の 番 号
で 決 ま る 位 置 の ブ ロ ッ ク に,対
応 す るLjを
な らべ る。
(21.21)
慣 性 空 間 に,直 接,つ れ 以 外 の 場 合,Ljは
なが っ て い る 剛 体 に対 応 す る 番 号 のLjは jブ ロ ッ ク行 に配 置 さ れ,ブ
存 在 しな い 。 そ
ロ ッ ク 列 の 番 号 は 親 剛 体 の番
号 で あ る。 そ の ブ ロ ッ ク行 の 他 の ブ ロ ッ ク はす べ て ゼ ロで あ る 。 す な わ ち,一 つ の ブ ロ ッ ク行 に 並 ぶLjの
数 は最 大 一 つ で あ る。 式(21.11)の
ブ ロ ッ クLjはjiブ
ロ ッ ク に配 置 され る こ と に な る。 L の対 角 ブ ロ ック と上 三 角 に位 置 す る ブ ロ ッ ク は い ず れ もゼ ロ で あ る 。 こ の よ う な L の構 造(ゼ
ロ で ない ブ ロ ック の 位 置)は,
番 号付 け さ れ た 木 構 造 に 対 応 して い て,こ の L が 漸 化 計 算 を支 配 して い る 。 ● 漸 化 計 算 の 順 方 向 と 逆 方 向,加 速 度 の 漸 化 式,ケ イ ン の 部 分 速 度 の 漸 化 式 位 置 レベ ル 変 数 R と速 度 レベ ル変 数 V'を 漸化 的 に 求 め る計 算 は,木 構 造 の ル ー トか ら リー フ の方 向 へ ,番 号 の小 さ な剛 体 か ら大 き な 剛体 に 向 か っ て,行 わ れ る 。 こ の よ う な方 向 を順 方 向 と呼 ぶ こ と にす る。 式(21.18)を
時 間微 分 す る と,
加 速 度 に 関 す る順 方 向 の 漸 化 計 算 式 が 得 られ る。
(21.22) これ は 運 動 学 的 に 加 速 度 を 求 め る漸 化 式 で,一 般 化 速 度 の 時 間 微 分 H を必 要 と す る。 一 方,順
動 力 学 計 算 の た め に は,動 力 学 的 に H や V'を 求 め る 漸 化 計 算 方
法 が 必 要 で あ る。 次 節 にそ の方 法 を述 べ るが,そ だ け で な く,リ ー フ か らル ー トへ,番
の 計 算 に は,順 方 向 の漸 化 計 算
号 の 大 き な剛 体 か ら小 さ な 剛 体 に 向 か う,
逆 方 向 の 漸 化 計 算 も必 要 に な る 。 式(21.22)は,右
辺 の 括 弧 内 を Σ とお い て,次
の よ う に書 き直 して お く。
(21.23) (21.24) L,D,Uは
位 置 レ ベ ル の変 数 と時 間 の 関 数 で あ る か ら,そ の 時 間微 分 は 速 度 レ
ベ ル で あ る。 した が っ て,Σ な い 。 Σ は,R
も速 度 レベ ル で,加 速 度 レベ ル の 変 数 は含 まれ て い
と V'が求 まっ た 後 に計 算 す る こ とが で き る。
速 度 レベ ル の 変 数 V'を 一 般 化 速 度 H で 偏 微 分 したV'Hは ケ イ ン の 部 分 速 度 で あ る 。 式(21.18)か
ら,そ の漸 化 式 が 次 の よ うに 求 ま る。
(21.25)
V'H=LV'H+D た だ し,V'Hは
列 行 列 で は な く,剛
体 の 数 の 二 乗 に 比 例 した 情 報 を含 ん で い る。
し た が っ て,Order-N-Algorithmで,こ
の 式 を直 接 計 算 す る こ と は な い 。 こ の
式 は,付
録 Dで動 力学 的な漸化式の導 出に利用 される。
21.3
剛体 系 の ケ イ ン型運 動方 程 式
式(21.4)で
は,剛 体 jの 重 心 速 度 と角 速 度 を ま と め た 斜 体 の 変 数V'ojを 準 備 し
た 。 こ こで は,さ
ら に,次 の よ うな斜 体 の 変 数 を作 っ て お く。
(21.26)(注)
(21.27) 3Mjは
,Mjを
対 角 要 素 と す る3×3ス
並 べ て 添 え 字 の な いV'を F'を
カ ラ ー 行 列 で あ る 。 式(21.6)で
準 備 し た 。 同 様 に,M'j,F'ojか
は,V'ojを
ら 添 え 字 の な いM'
作 っ て お く。
(21.28)
(21.29)
以 上 の 記 号 を用 い て,剛 体 系 の ケ イ ン型 運 動 方 程 式 は次 の よ う に 書 け る。
(注)MjとM'jは,記 が必 要 で あ る。
号 と し て は 似 て い る が,意
味 してい る もの は だ い ぶ 異 な っ て い る。 注 意
(21.30) この 式 も,動 力 学 的 な漸 化 式 の 導 出 に用 い られ る(付 録 D 参 照)。 12.2節[Quiz12.2]の
式(12.32)は,重
心 速 度 も剛 体 に 固 定 した座 標 系 で 表 し
た 剛 体 A の 運 動 方 程 式 で あ る 。 そ こ に 出 て くる 各 変 数 は式(12.28)∼(12.31)の とお りで あ る が,こ
の 式 を用 い て,一
般 化 速 度 H の ケ イ ン型 運 動 方 程 式 を作 る
と次 の よ うに な る。
(21.31) V ″と F ″は 次 の と お りで あ る 。
(21.32)
(21.33)
V″に つ い て も 式(21.18)と
同 型 の 漸 化 式 を 作 る こ と が で き,式(21.23)∼(21.25)
と 同 型 の 式 も成 立 す る 。
(21.34) (21.35) (21.36) (21.37) 動 力 学 的 に H や V″を求 め る 漸 化 計 算 の 説 明 も,V'を 用 い る場 合 と全 く 同 じで あ る 。 次 節 と付 録 D は V'を 用 い る場 合 に つ い て 説 明 さ れ て い る が,21.5節
の
事 例 は V″を用 い た 説 明 に な って い る 。
21.4
動力 学 的 に加速 度 を求 め る ため の漸 化的 方法
動 力 学 的 に H と V'を求 め る方 法 の導 出 は か な り難 解 で あ る。 そ の 説 明 は付 録 D で 行 う こ と に し,こ こ で は 結 論 の 式 の 説 明 を行 う。 前 項 で 説 明 した 式 を用 い, ま ず 順 方 向(j=1→n)の
漸 化 計 算 でR,V'を
計 算 し,Σ を求 め て お く。 R に つ
い て は系 全 体 を ま とめ た 漸 化 式 の 表 現 は な い が,式(21.10),(21.7)が
拘束 結合
の 番 号 順 に 用 い られ る 。 V'と Σに つ い て は,式(21.18)と(21.24)で 計 算 は漸 化 計 算 で は な い が,R,V',Σ
を ま と め て,一 回 の順 方 向 漸 化 計 算 の 中
で 求 め る こ とが で き る。 こ れ らの 計 算 は す べ て 剛 体 単 位(あ 位)で
あ る。 Σ の
る い は拘 束 結 合 単
行 う。 式(21.24)の 計 算 で も系 全 体 を ま とめ た行 列 の 和 と積 を求 め て は い
けない。 そ の 後,以 下 の 式 が 用 い られ る。
(21.38) (21.39) (21.40) (21.41) W は,剛 体 の 数 だ け の6×6対
称 行 列Wjが
行 列 で あ る 。 Z は,剛 体 の 数 だ け の6×1列
対 角 ブ ロ ック に並 ん だ ブ ロ ッ ク 対 角 行 列Zjを
縦 に 並 べ た 列 行 列 で あ る。
これ ら四 つ の 式 の う ち,最 初 の 二 つ は,逆 方 向 の 漸 化 計 算 で M'と F'か ら W と Z を 求 め る 式 で あ り,残 りの 二 つ は,求
ま っ た W と Z を 利 用 して,順
方 向の漸
化 計 算 で H と V'を求 め る式 で あ る。 式(21.38),(21.39)の め,次
実 際 の 計 算 で は,木 構 造 の分 岐 をス ム ー ズ に処 理 す る た
の 四 つ の ス テ ップ に置 き換 え て 計算 す る。
(21.42) (21.43)
(21.44)
(21.45) 式(21.42),(21.43)は,W
と Z に 漸 化 計 算 の 出 発 値 を与 え て い る 。 こ の 代 入 計
算 も 各 剛 体 ご と に 行 う。 式(21.44),(21.45)は,逆 る 。 各 剛 体 のWjとZjの を 親 剛 体 のWiとZjに
計算 を進め
値 を も と に 各 式 右 辺 の 第 2 項 の 計 算 を 行 い,そ
の結 果
足 し込 む 。 こ の 二 つ は一 回 の 逆 方 向 漸 化 計 算 の 中 で ま と
め て 行 う こ と が で き る 。 ま た,(DTjWjDj)-1な 中 結 果 は,Ziの
方 向(j=n→1)に
ど,Wiの
計 算 過 程 で 得 られ た 途
計 算 で 再 利 用 す る。
式(21.40)と(21.41)は,二
つ を 組 み 合 わ せ て,HjとV'jを
交 互 に,順
方 向
(j=1→nの
順)に
求 め る。 こ の 計 算 で も,(DTjWjDj)-1はWiの
計算 過 程 で得
られ た途 中 結 果 を再 利 用 す べ きで あ る。 以 上 で,順
方 向 の R と V',逆 方 向 の W と Z,順 方 向 の H と V'の漸 化 計 算 を
行 っ て,Q
と H か ら H を 求 め る こ とが で きた が,拘
束 力 を 計 算 す る場 合 は,も
う一 度,逆
方 向 の 漸 化 計 算 が 必 要 で あ る。 各 剛 体 の 重 心 位 置 に等 価 換 算 した 拘 束
力 は次 の 式 で 計 算 で き る。
(21.46)
F'=M'V'-F'
F'は,各
剛 体 の重 心 に等 価 換 算 され た拘 束力F'ojを 縦 に 並 べ た列 行 列 で あ る。
(21.47)
(21.48) こ の 計 算 は各 剛 体 ご とに行 う こ とが で きる 。 た だ し,求 め た い拘 束 力 は 重 心 に等 価 換 算 さ れ た値 で は な く,各 拘 束 結 合 部 の 値 で あ る。 一 つ の 剛 体 に は子 側 と親側 の 拘 束 結 合 が あ るが,親 側 の 拘 束 結 合 は 一 つ で あ るか ら,す べ て の 子 側 拘 束 結 合 の 拘 束 力 が 計 算 され て い れ ば,F'ojを 用 い て 親 側 拘 束 結 合 部 の拘 束力 を求 め る こ と は 容 易 で あ る。 した が っ て,リ
ー フ を子 とす る拘 束 結 合 か ら始 め る逆 方 向 の 漸
化 計 算 を行 い,各 拘 束 結 合 の 拘 束 力 を子 側 の 剛体 か ら求 め,そ
の反 作 用 を親 側 の
剛 体 の 拘 束 力 か ら差 し引 くよ う にす れ ば,す べ て の 拘 束 結 合 部 に生 じる拘 束 力 を 求 め る こ とが で きる 。
21.5
順 動 力 学 解 析 の 事 例:3
次 元 三 重 剛 体 振 子(漸
化 的 方 法)
● 漸化計算の手順 19.4節
に 3次 元 三 重 振 子 の 事 例(sanjufuriko_1)を
示 し た が,同
じモ デ ル を
漸 化 的 方 法 で プ ロ グ ラ ミ ン グ して み よ う。 この モ デ ル は11.3節(図11.11)に 説 明 さ れ て い る。 以 下 の 計 算 手 順 の 説 明 で は,前 半,19.4節 て い る。 こ の 部 分 で は19.4節
の 式 を多 数 利 用 し
と の 差 異 に 注 意 し な け れ ば な ら な いが,後
半 は大
き く異 な って い て,こ の 方 法 の ユ ニ ー ク さ が 現 われ る。 以 下 の 説 明 は 三 つ の 剛 体 に 関す る もの で あ るが,読 者 は,四 重 振 子,五
重 振 子 と剛 体 の 数 が 増 え て も,各
ス テ ップ の 計 算 量 が 剛 体 の 数 に比 例 す る だ け で 済 む こ と を確 認 しなが ら読 んで い た だ きた い 。 三 つ の ピ ン ジ ョイ ン トの 回転 角 と 回転 角 速 度 を 独 立 な 一 般 化 座 標 Q,一 般 化 速 度 H とす る。
【19.58】
(21.49)
こ の H は,sanjufuriko
_1の
場 合 は 式(19.59)の
よ う に S で あ っ た が,こ
こで は
前 項 ま で の 説 明 に用 い た記 号 に合 わせ て H とす る 。 ま ず,Q
の 三 つ の 値 か ら,COA,CAB,CBCが
次 の よ う に計 算 で きる 。 【19.60 】【19.61 】【19.62】
COBとCOCは
次 の よ う に求 め る 。
(21.50) (21.51) COAは
式(19.60)だ
必 要 で あ り,COCも と,や
け で 求 ま っ て い る が,COBは(19.61)と(21.50)の
同 様 で あ る。 剛 体 C の 下 に剛 体 D を追 加 し た 場 合 を 考 え る
は り,CCDとCODを
列 の 計 算 は,大
二つ の式 が
局 的 に(剛
剛 体 C の 場 合 と 同 じ よ う に 計 算 す れ ば よ く,回 体 の 数 が 大 き け れ ば),剛
転 行
体 の 数 に比 例 して い る とい
え る。 回 転 行 列 を 用 い て,ROA,RAB,RBCは
次 の よ うに 求 ま る。 【19.63 】【19.64 】【19.65】
ROBとROCは
次 の よ う に な る。
(21.52) (21.53) 式(19.63)の
右 辺 に は+roo'を
も ち ろ ん,こ
の 場 合,roo'は
る 必 要 は な い 。Order-Nの
補 え ば,計
算 量 は,そ
ゼ ロ で あ る 。 た だ し,こ 意 味 は,大
の 下 の 二 式 と 同 じに な る。 の よ う な細 か い 点 を気 に す
局 的 に 剛 体 の 数,ま
数 に 計 算 時 間 が 比 例 す る と い う こ と で,ジ
た は,ジ
ョ イ ン トの
ョ イ ン トの 種 類 な ど に よ っ て 計 算 量 に
あ る程 度 の 差 異 が 出 る こ と は当 然 で あ る 。 次 に,V'OAと
Ω'OAを 縦 に 並 べ た6×1列
も 考 え る と,こ
行 列 をV″OAと
し,同
様 にV″AB,V″BC
れ ら は H の 三 つ の値 か ら次 の よ うに 計 算 で き る。
(21.54) (21.55) (21.56) 係数 行列
は,式(19.72)∼(19.77)か
ら次 の よ う に
得 られ て い る。
【19.78】
【19.79】
【19.80】
V″OBとV″OCは 次 の 式 で 求 め る こ と が で き る 。 【19.85 】(21.57)
な お,V″OCを
求 め る 式 は(19.86)と
は 異 な っ て い る 。 ΓABと
ΓBCは,次
の とお り
で あ る。
【19.66】
【19.67】
式(19.85),(21.57)に,(21.55),(21.56)を
代 入 す る と,次
の 式 が 得 られ る 。
(21.58) (21.59) こ こ で,V″OA,V″OB,V″OCを
縦 に 並 べ て 一 つ に ま と め た も の が V″で あ る 。
(21.60)
H か ら V″ を 求 め る 漸 化 式 は,式(21.18)と
同 じ形 で,次
の と お りで あ る 。
(21.61) 式(21.34)で
は,L,D,Uに
で は,L,D,Uを
ダ ッ シ ュ を付 け て,式(21.18)と
区 別 し た が,こ
こ
そ の ま ま 用 い て 説 明 す る 。 式(21.54),(21.58),(21.59)が,
こ の 漸 化 式 を 構 成 し て い て,L,D,Uは
次 の とお りで あ る。
(21.62)
(21.63)
(21.64)
式(21.61)の
時 間 微 分 は,式(21.23),(21.24)と
同 じ形 で,次
の よ う に書 け る。
(21.65) (21.66) ま だ,H
が 未 知 で あ る か ら,式(21.65)は
き る 。 式(21.64)か
計 算 で き な い が,式(21.66)は
ら U は ゼ ロ で あ る 。L,Dは
時 間微 分
の時 間 微 分 が わ か れ
し た も の で あ る か ら, ば よ い 。 ま ず,ΓAB,ΓBCは
式(21.62),(21.63)を
計算 で
次 の とお りで あ る。
【19.69】
【19.70】
こ れ ら を用 い て L は 次 の とお りで あ る。
(21.67) 一 方
は,す べ て 定 数 で あ る か ら,こ れ ら の 時 間微
,
分 は い ず れ も ゼ ロ で あ る 。 し た が っ て,D
は ゼ ロ で あ り,式(21.66)は
次 の よう
に 簡 単 に な る。 Σ=LV″
(21.68)
Σ は,各 剛 体 に 対 応 す る6×1列 三 つ は ΣOA,ΣOB,ΣOCと
行 列 を 三 つ 縦 に並 べ た 列 行 列 で あ る。 こ れ らの
書 くこ とが で き,こ の 式 で 計 算 す る 。 こ の 式 は漸 化 式
で は な い が,漸 化 式(21.61)の 場 合 と同 様 に,各 剛 体 単 位 の式 に 直 して 計 算 す る。 そ の よ う に 直 す と,剛 体 数 に比 例 し た 計 算 量 に な る。 な お,ΣOAは か ら計 算 量 は さ らに 少 な くな る が,す
ゼ ロで ある
で に 説 明 した よ うに 大 局 的 に 考 え て 剛体 数
に比 例 して い る とい え る 。 以 下 に 出 て くる漸 化 式 も,こ の 式 や 漸 化 式(21.61)の よ うに,三 つ の 剛体 分 を ま とめ た 式 に な っ て い て,実 分 け て 計 算 す る こ とで,Order-nの 次 は,W
際 の 計 算 で は,三 つ の式 に
計 算 時 間が 実 現 で き る。
と Z の漸 化 計 算 で あ るが,ま
ず,式(21.42)と(21.43)の
よ うに W と
Z に 漸 化 計 算 の 出発 値 を与 え る。
M',F″
W〓M'
(21.69)
Z〓F″
(21.70)
は 次 の とお りで あ る。
(21.71)
(21.72)
M'A,Ω
″OA,F″OAは,式(12.29)∼(12.31)に
与 え ら れ て い る 。 剛 体B,Cの
同様 な
量 も 同 じ形 で 与 え ら れ て い る と す る 。 こ の 漸 化 計 算 の 出 発 値 入 力 も,三
つ に分 け
て 剛 体 の 数 分 だ け 行 う 。 す な わ ち,W ZOCに
と Z の 成 分,WA,WB,WCとZOA,ZOB,
出発 値 を与 え る 。
W と Z の 漸 化 計 算 は,式(21.44),(21.45)に 剛 体C,B,Aの
順 に,計
算 を 進 め る が,WCとZOCは
よる 逆 方 向 の 漸 化 計 算 で あ る 。 出発 値 の ま ま で あ る。
(21.73) (21.74) (21.75) (21.76) 計 算 の 順 序 は,WB,WA,ZOB,ZOAで
も,WB,ZOB,WA,ZOAで
も よ い が,共
通 因子 を生 か して 計 算 時 間 の 節 約 を 図 る こ と は当 然 行 な うべ き で あ る 。 順 動 力 学 が 目指 し て い る の は H で あ る が,H 組 み 合 わ せ て,V
″ と 共 に,順
の 漸 化 計 算 で は次 の 二 つ の 式 を
方 向 に解 く。
(21.77) (21.78) こ れ ら は 式(21.40)(21.41)と て い る も の を 用 い,A,B,Cの
同 じ 形 で あ る 。 H の 各 要 素 に 式(21.49)に
与 え られ
順 に漸 化 計 算 を具 体 化 す る と次 の よ う に な る 。
(21.79) (21.80) (21.81) (21.82) (21.83) (21.84) 以 上 で,ωOA,ωAB,ωBCが
求 ま っ た 。
● 3次 元 三 重 剛 体 振 子 の漸 化 計 算 の プ ログ ラ ム 本 節 の 方 法 で,3 次 元 三 重 剛 体 振 子 を計 算 す る プ ロ グ ラ ム は,sanjufuriko_30 で あ る 。 特 に,こ jufuriko_30で
の ア ル ゴ リズ ム に よ る微 分 方 程 式 右 辺 の 計 算 は,関
行 わ れ る。 こ の 関 数 以 外 の 部 分 は,sanjufuriko_1と
が な い 。 出 力 の 内 容 も19.4節 表19.2参
数e _san
ほ とん ど差 異
と 同 じで あ り,そ ち ら を参 照 され た い(19.4節,
照)。 二 つ の プ ロ グ ラ ム を比 較 す る こ とで,難 解 な本 節 の 方 法 も理 解 し
や す い は ず で あ る。 Order-Nア
ル ゴ リ ズ ム は モ デ ル規 模 に 比 例 し た計 算 時 間 で 解 が 得 られ る。 三
重 剛体 振 子 に くらべ,六 重 剛体 振 子 は倍 の 計 算 時 間 で 計 算 で き る。 十 二 重 剛 体 振 子 は そ の 倍 の計 算 時 間が あ れ ば よい 。 しか し,こ の こ とは ア ル ゴ リズ ム に 含 まれ る和 と積 な どの 演 算 総 数 が 倍 に な っ て い る とい う こ とで あ る 。MATLABは
行列
演 算 処 理 が 高 速 で 行 わ れ る よ うな 工 夫 を含 ん で お り,和 と積 の 演 算 総 数 以 外 の 要 因 が 働 くの で,計
算 時 間の 比 較 に は 注 意 を 払 わ な け れ ば な ら ない 。
ラグランジュの運 動方程 式を
第22章
利用す る方法
第19章
の拘 束 条 件 追 加 法 を 除 い て,こ
体 重 心 の 並 進 速 度,あ
れ ま で 示 して き た 方 法 で は,質 点 や 剛
る い は,剛 体 の 角 速 度 が 基 本 的 な物 理 量 で あ っ た。 ラ グ ラ
ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 で は,こ れ らの量 は,目 立 つ 存 在 で は な い 。 作 用 力 が ポ テ ン シ ャ ル 関 数 か ら作 ら れ る場 合 に限 る と,運 動 方 程 式 は,運 動 エ ネ ル ギ ー とポ テ ン シ ャ ル 関 数 の 差,お
よ び 一 般 化 座 標 で 表 され る。 直 交 座 標 系 な ど,特 定 な座 標 系
で 表 さ れ る 量 に依 存 せ ず に,一 つ のス カ ラー 関数 と一 般 化 座 標 で 表 現 さ れ て い る 点 は,力
学 の 歴 史 上,お
よび,理 論 上,重
要 な意 味 を持 っ て い る。
ラ グ ラ ン ジ ュ の 方 法 は,機 械 工 学 に お い て も拘 束 力 学 系 の 運 動 方 程 式 作 成 手段 と し て,伝 統 的 に教 え られ て きた し,用 い られ て きた 。 こ の 方 法 の 一 つ の特 徴 は V や Ω'の よ うな 並 進 加 速 度 や角 加 速 度 を 経 由 し ない こ と に あ り,便 利 な運 動 方 程 式 作 成 手 段 と され て きた 。 そ の後,Kaneに
よ る 問 題 提 起 が 刺 激 を与 え,マ ル
チ ボ デ ィダ イナ ミ クス の発 展 に伴 っ て運 動 方 程 式 の 立 て 方 に 関 す る新 しい見 方 が 生 み 出 さ れ て き た 。 拘 束 条件 追 加 法(速
度 変 換 法)も
た優 れ た 方 法 で あ る。 しか し,現 時 点 で も,最
そ の よ う な経 緯 か ら生 まれ
も よ く知 られ た 方 法 は,や は りラ
グ ラ ン ジ ュ の 方 法 で あ ろ う。 読 者 は,こ の伝 統 的 な 方 法 と,比 較 的 新 しい方 法 を どの よ うに 受 け止 め る で あ ろ うか 。 本 章 で は ケ イ ン型 の 運 動 方 程 式 か ら ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 を導 く。 た だ し,ラ グ ラ ン ジ ュ の 方 法 で は,一 般 化 速 度 H を一 般 化 座 標 Q の 時 間微 分 に 限 定 して い るの で,H
の 代 わ りに Q を 用 い る 。 ま た,ニ
ュ ー トン の運 動 方 程 式 に は
運 動 量 pで 表 現 した もの を 用 い る 。 こ れ は,運 動 量,角 量 で あ り,ハ
運 動量 が力 学 の重要 な
ミル トンの 理 論 な ど に出 て くる 一 般 化 に 向 け た 配慮 で あ る。
22.1
ラ グ ラ ン ジ ュの 運 動 方 程 式
● 運 動 量 を 用 い た ケ イ ン型 の運 動 方 程 式 ラ グ ラ ンジ ュの 運 動 方 程 式 の 導 出 で は,ま ず,ホ
ロ ノ ミ ッ ク な系 に 限 定 し,さ
ら に,独 立 な一 般 化 速 度 H が 独 立 な 一 般 化 座 標 の 時 間微 分 Q に 等 し い場 合 に 限 定 す る。
(22.1)
Q=H Q が 独 立 で な い場 合,お
よび,シ
ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 を持 つ 場 合 に
つ い て は,次 章 に説 明 が あ る 。 質 点 系 を対 象 と した ケ イ ン型 運 動 方 程 式 は18.1節
に 与 え られ た 。 【18.3】
こ こ で,各 縦 に,順
質 点 iの 運 動 量poiはmivoiと
等 し い が,こ
れ ら を 全 質 点 に つ い て,
に並 べ た 変 数 を p とす る 。
(22.2)
p=mv こ の 運 動 量 を 用 い,式(22.1)を と,次
考 慮 し て ケ イ ン 型 運 動 方 程 式(18.3)を
書 き直 す
の よ う に な る。
(22.3) こ の 式 の左 辺 の括 弧 を はず す し,移 項 す れ ば次 の よ うに 書 くこ と もで き る 。
(22.4) ● 準備 こ こで,式
の 変 形 に 必 要 な 二 つ の 関 係 を 準 備 す る た め に,2.3節,2.6節
様 の 説 明 を繰 り返 す 。 まず,13.4項
と同
に,質 点 の 位 置 rが 一 般 化 座 標 Q と tの 関
数 と して 与 え られ て い る。
r=r(Q,t)
【13.2】
さ ら に,こ の 式 の 時 間微 分 も作 られ て い る。
v=rQQ+rt rQとrtは,Q て い る が,速
と tの 関 数 で あ る 。 し た が っ て,v
【13.8】
は,Q
と Q と tの 関 数 に な っ
度 レ ベ ル の 変 数 に つ い て は 線 形 で あ る 。 し た が っ て,次
の関係が
得 られ る 。
(22.5)
vQ=rQ
こ れ が,準
備 を 目指 し た 最 初 の 式 で あ る 。
v と r は 質 点 総 数 の 3倍 の 成 分 を 持 っ て い る が,そ と に す る と,式(22.5)は
の i番 目 を υi,γiと 書 く こ
す べ て の iに つ い て 次 の 式 が 成 立 す る こ と と 同 じで あ る 。
(22.6) υiと γiがス カ ラー で あ る こ と に注 意 して,こ の 式 の 両 辺 の 時 間微 分 を 作 る 。 そ し て,時 間 微 分 の 対 象 が Q と tの 関 数 で あ る こ と を利 用 し て 次 の よ う な 変 形 を 行 う。
(22.7)
(22.8) 一方
,式(13.8)か
ら υiと γiだ け 取 り出 し た も の は 次 の よ う に 書 け る 。
(22.9) この 式 を Q で偏 微 分 す る と次 の よ う に な る。
(22.10) γiはC2-級
の 関 数 と仮 定 し て 差 し支 え な く,そ
る こ と が で き る た め,式(22.8)と
式(22.10)は
うす れ ば偏 微 分 の 順 序 を 入 れ 替 え 同 一 に な る 。 す な わ ち,次
の 関係
が得 られ る。
(22.11) こ の 式 はす べ て の iに つ い て 成 り立 つ の で,結 局,添
え 字 の iを取 り去 っ た 関係
が 成 立 し,次 の よ う に書 け る。
(22.12) これ が,も
う一 つ の 準 備 を 目指 した 関 係 で あ る。
●
ラ グ ラ ン ジ ュの運 動 方 程 式 の 導 出
さ て,準 備 が で きた の で まず,式(22.4)の
左 辺 に部 分 微 分 の 関 係 を 適用 す る。
(22.13) 式(22.12)の
関 係 を 用 い る と,こ
の式 は 次 の よ うに 書 け る。
(22.14) 運 動 量 pは,運 動 補 エ ネ ル ギ ー T*を 速 度 vで 偏 微 分 した もの で あ る 。 【14.64】
こ の 関 係 は,14.6節
に 与 え ら れ て い る 。 運 動 補 エ ネ ル ギ ー は,運
動 エ ネル ギー
か ら ル ジ ャ ン ドル 変 換 に よ っ て 作 ら れ る ス カ ラ ー 関 数 で あ る 。 T*=vTp-T
【14.60】
た だ し,ニ
ュ ー トン 力 学 で は,運
つ の で,運
動 補 エ ネ ル ギ ー の 代 わ りに 運 動 エ ネ ル ギ ー を用 い て も差 し支 え な い 。
さ て,式(14.64)を
動 エ ネ ル ギ ー と 運 動 補 エ ネ ル ギ ー は 同 じ値 を 持
用 い る と,式(22.14)は
次の ようになる。
(22.15) 結 局,式(22.4)は
次の ようになる。
(22.16) 右 辺 は,式(22.5)の
関 係 を利 用 して,書
き換 え た もの を用 い て も よ く,こ こ で は
両 方 を併 記 して お い た 。 こ の 式 の 右 辺 の 作 用 力 fをfUとfUの
二 つ に 分 け て 考 え る 。fUは,ポ
テ ンシャ
ル 関 数 U か ら,次 の よ う に作 り出 す こ との で き る力 で あ る。
(22.17) ポ テ ン シ ャ ル 関 数 は,こ
U=U(r,t)
こ で は r と tに 依 存 す る ス カ ラ ー 関 数 と す る 。
(22.18)
こ の 関 数 が 時 間 に 依 存 しな い と き,fUは
保 存 力 と呼 ば れ て い る。 また,電
磁気
学 で は 電 荷 粒 子 の 速 度 に依 存 す る 速 度 ポ テ ン シ ャル を考 え る こ とが あ る 。 この 速 度 依 存 性 を考 慮 して 理 論 を拡 張 す る こ と もで きる が,こ に 限 定 して お く。 この と き,式(22.16)は
こで は,式(22.18)の
形
次 の よ う に 変形 で き る。
(22.19) L は ラ グ ラ ン ジ ア ン と呼 ば れ,運 動 補 エ ネ ル ギ ー か らポ テ ン シ ャ ル 関 数 を 引 い た ス カラー関数 である。 L=T*-U 式(22.16)と
(22.20)
式(22.19)を
ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 と 呼 ぶ 。 式(22.16)に
び 名 を つ け て い る 文 献 も あ る が,本 (22.16),式(22.19)の
右 辺 は,作
書 で は 同 じ名 前 で 呼 ぶ こ と に す る 。 ま た,式 用 力 f にrTQ,ま
が 使 わ れ て い る 。 ど ち ら で も 同 じ で あ る が,こ 運 動 補 エ ネ ル ギ ーT*は,式(14.63)の か ら わ か る よ う に,Q
別 の呼
た は,VTQを
左 か ら掛 け た もの
れ を一 般 化 力 と呼 ん で い る。
よ う に v の 関 数 で あ る が,v
と Q と tの 関 数 で あ る 。 結 局,T*も
は 式(13.8)
Q と Q と tの 関 数
とい う こ とに な る。
T*=T*(Q,Q,t)
(22.21)
ポ テ ン シ ャ ル 関 数 U は,式(22.18)の 2)の よ う に Q と tの 関 数 で あ る か ら,U
よ う に r と tの 関 数 で あ る が,r
も Q と tの 関 数 と い う こ と に な る 。
U=U(Q,t) し た が っ て,ラ
(22.22)
グ ラ ン ジ ア ン L も,Q
と Q と tの 関 数 で あ る 。
L=L(Q,Q,t) Quiz22.1
(22.23)
ボ ー ル ジ ョイ ン トで 支 点 を 拘 束 さ れ た コマ の ラ グ ラ ン ジ ア ン は ど
の よ うに な るか 。 独 立 な 一 般 化 座 標 を
22.2ラ
とす る 。
グランジュの運動方程式の使い方
ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 と し て,式(22.16)と た が,ロ
は 式(13.
ボ ッ トや 車 両 な ど,機
式(22.19)の
二 つ の形 が 示 され
械 工 学 の 多 くの 事 例 で は,式(22.16)で
十 分 な場
合 が 多 い 。 重 力 や バ ネ力 の 位 置 エ ネ ル ギ ー を 考 え て,Q 作 業 と,直 接,重
に 関 す る 偏 微 分 を取 る
力 や バ ネ力 を用 い て 一 般 化 力 を表 現 す る作 業 と に,大
は な い 。 ま れ に,式(22.19)が とん ど の場 合,慣
き な差 異
簡 潔 な解 を与 え て くれ る特 殊 な事 例 も あ る が,ほ
れ と好 み の 問題 で あ ろ う。 多 くの 機 械 工 学 の 問 題 で は ダ ン ピ ン
グ 力 な ど ポ テ ン シ ャ ル 関 数 で 表 せ な い作 用 力 が あ り,所 詮,式(22.19)の
右辺を
な くす こ と は で き ない 。 作 用 力 fをfUとfUに
分 け て 式(22.19)を
用 い る 場 合,fUに
含 め る こ とが で き
る す べ て の 力 を そ の よ う に し な け れ ば な らな い わ け で は な い 。 た と え ば,fUの な か に 保 存 力 が 含 まれ て い て も よ い。 逆 に,ポ は,fUか
テ ンシ ャ ル 関 数 U で 考 慮 した 力
らは 除 か な け れ ば な らな い 。
ニ ュ ー トン力 学 で は 運 動 補 エ ネ ル ギ ーT*も
運 動 エ ネ ル ギ ー T も同 じ値 に な る
の で,ど ち らを用 い て も同 じ運 動 方 程 式 が得 られ る。 質 点 系 の運 動補 エ ネ ル ギ ー は 次 の よ う に書 け る。
(22.24) 3次 元 剛体 系 で は 次 の よ うに 書 け る。
(22.25) 3次 元 剛 体 系 の 運 動 補 エ ネ ル ギ ー 表 現 の 中 に,式(22.25)に ま れ て い る 場 合,ラ
あ る よ うに Ω'が 含
グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 を 適 用 す る と Ω'Qが出 て くる。 こ の
と き,次 の式 が 役 に立 つ 。
(22.26) 剛 体 A の 角 速 度 につ い て 書 くと,次 の とお りで あ る 。
(22.27) た だ し,こ の 式 の 証 明 は,少 々 面 倒 で あ る。 まず,一 のQuizを
Quiz22.2
般 化 座 標 Q を 限 定 した 次
考 え て み よ。
一 般 化 座 標 Q が 狭 義 の オ イ ラ ー 角 Θ〓
の 場 合 に つ い て ,式
(22.27)が
22.3
成 立 す る こ と を確 認 せ よ。
事 例:時
間 の 関 数 と して 支 点 を 動 か す 剛 体 振 子
2次 元 剛 体 振 子 でO'をOに
一 致 さ せ ず に,時
モ デ ル を考 え る(16.9節,図16.3)。
間 の 関 数 と して平 面 内 を動 か す
この モ デ ル の 運 動 補 エ ネ ルギ ー は 次 の よ う
に 書 く こ とが で き る。
(22.28) 位 置 の 三 者 の 関係 と して,次
の 式 が 成 立 す る。
(22.29) こ の 式 を 時 間 微 分 して,重 心 速 度VOAを
次 の よ うに 求 め る こ とが で き る。
(22.30) こ れ を 式(22.28)に
代 入 して
(22.31) こ こ で,独 立 な 一 般 化 座 標 は θOAで,ωOAは
そ の 時 間微 分 で あ る。
作 用 力 は 重 力 だ け で あ る か ら,ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に 書 け る。
(22.32) 式(22.30)か
ら,
は 次 の よ う に得 られ る。
(22.33) 式(22.32)の
左 辺 の二 項 は い ず れ もス カ ラ ー で あ る か ら転 置 記 号 を は ず す こ とが
で き,式(22.31)を
代 入 し て,次
の よ う に な る。
(22.34)
(22.35) 式(22.32)の
右 辺 は,式(22.33)を
代 入 して 次 の よ う に な る。
(22.36) 以 上 を代 入 し整 理 して,結 局,運
動方程式 は次の ようになる。
(22.37) こ の 結果 は,16.9節
の 結 果 と 同 じで あ る 。
重 力 を ポ テ ン シ ャ ル 関 数 で表 す と次 の よ うに書 け る。
(22.38) 式(22.29)を
用 い る と次 の よ う に な る。
(22.39) こ の 式 と 式(22.31)と
か ら式(22.20)の
の 運 動 方 程 式 を 利 用 し て も,同
ラ グ ラ ン ジ ア ン を 作 り,次
のラグ ランジュ
じ結 果 が 得 ら れ る は ず で あ る 。
(22.40) こ の 式 も転 置 記 号 は不 要 で あ る。
22.4
循 環 座 標,変
数 変 換 に よ る 不 変 性,ラ
グラ ン ジア ンの任 意性
● 循環 座 標 ラグ ラ ン ジ ア ンの 中 に,特 定 な一 般 化 座 標 の時 間微 分 は含 まれ て い るが,そ 一 般 化 座 標 自体 が 含 ま れ て い な い場 合 を 考 え る。 す な わ ち,Q をQ1とQ2に 割 した と き,ラ グ ラ ン ジ ア ンがQ1を
の 分
含 ん で い な い とす る 。
(22.41) さ らに,こ
こ で は,作 用 力fUが 働 い て い な い 状 況 を 考 え る。 こ の と き,ラ グ ラ
ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 は次 の 二 つ の式 に な る。
(22.42)
(22.43) 式(22.42)は
直 ち に積 分 で き る。
(22.44) す な わ ち,こ の 式 の左 辺 は保 存 量 で あ る。 こ のQ1の
よ う に,一 般 化 座 標 の 中 で,ラ
グ ラ ン ジ ア ン に そ の 時 間微 分 だ け が
含 まれ て い る もの を循 環 座 標 と呼 ぶ 。 ラ グ ラ ン ジ ア ンを 一 般 化 座 標 の 時 間微 分 で 偏 微 分 した もの は一 般 化 運 動 量 と呼 ば れ る が,ポ テ ン シ ャル 関 数 で 考 慮 さ れ な い 作 用力
〓が 存 在 し な い 場 合,循
環 座 標 に 対 応 す る 一 般 化 運 動 量 は 定 数 と な る。
こ れ は,運 動 量 保 存 の 法 則 を 一般 化 した もの で あ り,保 存 量 の 発 見 は,運 動 を解 明す る た め の 有 用 な 手段 で あ る 。
Quiz22.3
[Quiz 22.1]の ラ グ ラ ン ジ ア ンに は循 環 座 標 が 含 ま れ て い る。 対
応 す る保 存 量 は 何 か 。 ● 変 数 変換 に よ る 不 変性 自 由 な 3次 元 質 点 の ニ ュー トンの 運 動 方 程 式 は,デ 局 座 標 で 表 した場 合 とで,そ 数 変 換 に よ っ て,そ
の形 が 変 わ る が,ラ
カ ル ト座 標 で 表 した場 合 と
グ ラ ンジ ュの 運 動 方 程 式 は,変
の形 が 変 わ ら ない 。 こ れ は,ラ
グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 の特
徴の一 つであ る。 一 般 化 座 標 Q を用 い て 表 さ れ た ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 を,別 の 一 般 化 座 標 Q'で 書 き 直 す こ と を考 え る。 まず,Q'に
よって Q は次の ように表 され る と
す る。 Q=Q(Q',t)(22.45) こ の よ う に,座 標 変 換 に 時 間依 存 性 を持 た せ て も よい 。 さ て,22.1節 と こ ろ で 式(13.2)か り,式(22.45)か
ら式(22.5)と(22.12)を
導 い た が,ま
の準 備 の
っ た く同 様 の 方 法 に よ
ら次 の 関係 を 導 くこ とが で き る。
(22.46)
(22.47) 式(22.23)の
ラ グ ラ ン ジ ア ン に 式(22.45)の
Q とそ の 時 間微 分 を代 入 す る と次
の よ うに な る。
(22.48) 右 辺 は Q',Q',t
の 関 数 に な る が,そ
の 新 し い 関 数 形 を L'と 書 く こ と に す る 。
(22.49) こ の と き,L'と
Q'で 作 られ る ラ グ ラ ン ジ ュ の運 動 方 程 式 の左 辺 は 次 の よ う に 変
形 で き る。
(22.50) 右 辺 第 一 項 の 時 間 微 分 は,因 子 ご との 時 間 微 分 に 直 して 次 の よ う に書 け る 。
(22.51) こ こ で,式(22.46),(22.47)を
用 い る と,こ
の 式 は次 の よ う に な る。
(22.52) 式(22.50)の
右 辺 第 二 項 は,次
の よ う に書 け る 。
(22.53) 式(22.52)と(22.53)か
ら,式(22.50)は
次 の よ う に な る。
(22.54) こ の 式 の 右 辺 は,式(22.19)を
用 い る と,次
の よ う に書 け る。
(22.55) 結 局,新
しい ラ グ ラ ンジ ュ の 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に な る 。
(22.56)
右 辺 の 二 つ の 表 現 方 法 は どち ら で も同 じで あ る。 こ の 結 果 を式(22.19)と 対 比 す る と,一 般化 座 標 が 変 わ って もラ グ ラ ンジ ュ の 運動 方 程 式 は形 を 変 え な い こ とが 分 か る。 変 数 変 換 に よっ て 運 動 方 程 式 の 形 が 変 わ ら な け れ ば,変 数 変 換 は 容 易 で あ る。 う ま く変 数 変 換 す る こ と に よ っ て循 環 座 標 が見 つ か れ ば保 存 量 が 見 つ か る な どの 利 点 が あ る。 な お,こ
こ で述 べ た座 標 変 換 は,Q
の 数 に比 べ て Q'の 数 が 多 い 場
合 で も成 立 す る。 た だ し,数 が 増 え て もそ れ らの 運 動 方 程 式 の す べ て が 独 立 なわ け で は な い。
● ラグランジアンの任意性 ラ グ ラ ンジ ア ン は,運 動 補 エ ネ ル ギ ー か らポ テ ン シ ャ ル 関数 を 差 し引 い た ス カ ラー 関 数 と して 定 義 さ れ た 。 そ して,ラ
グ ラ ンジ ュ の 運 動 方 程 式 は,特 定 な ラ グ
ラ ン ジ ア ンに 対応 して 特 定 な 系 の 運 動 方 程 式 を作 り出 す 。 しか し,特 定 な 運 動 方 程 式 を作 り出 す ラ グ ラ ンジ ア ンが 一 つ に決 ま っ て い るわ けで は な い 。 こ こ で は 異 な る ラ グ ラ ン ジア ンか ら同 じ運 動 方 程 式 が 導 か れ る こ と を示 す 。 そ の 新 しい ラ グ ラ ン ジ ア ンは,運 動 補 エ ネ ル ギ ー か らポ テ ンシ ャ ル 関 数 を差 し引 い た 量 と一 致 し な くて も構 わ な い 。 ラ グ ラ ン ジ ア ンL(Q,Q,t)に を,新
ス カ ラ ー 関 数W(Q,t)の
た な ラ グラ ン ジ ア ンL'(Q,Q,t)と
時 間微 分 を加 え た もの
す る。
(22.57) この 式 は次 の よ う に書 き直 す こ とが で き る。
(22.58) こ の L'を ラ グ ラ ン ジュ の運 動 方 程 式 の左 辺 に代 入 す る と,次 の よ う に な る 。
(22.59) こ の 式 の,右 辺 第 一 項 の 中 の W に 関 わ る項 は,次 の よ う に 書 き換 え る こ と が で
き る。
(22.60) こ の 式 と 式(22.59)の す れ ば,W
右 辺 第 二 項 を 見 比 べ る と,W
を Q と tのC2-級
の 関数 と
に 関 わ る 項 は 同 じ で あ る こ と が 分 か る 。 そ の 結 果,式(22.59)は
次の
よ うに な る 。
(22.61) す な わ ち,式(22.57)の
形 の ラ グ ラ ン ジ ア ンの 場 合,W(Q,t)は,運
動 方程式 に
影 響 を及ぼ さない。 式(22.57)以 外 の形 で も 同一 の運 動 方 程 式 を導 くラ グ ラ ン ジ ア ン の事 例 は あ る 。 しか し,ラ グ ラ ン ジ ュ の運 動 方 程 式 の左 辺 の 形 を ま っ た く同 じに す る 二 つ の ラ グ ラ ン ジ ア ン は,式(22.57)の
関係 にある。
ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 が 変 数 変 換 に よ っ て 形 を変 え な い 性 質 と,式(22. 57)の ラ グ ラ ンジ ア ンの 任 意 性 は,ハ
ミル トンの 正 準 運 動 方 程 式 で ,さ
らに発 展
す る 。 ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 は,一 般 化 座 標 Q に よ る二 階 の 微 分 方 程 式 で あ る が,ハ
ミル トンの 正 準 運 動 方 程 式 は,一 般 化 座 標 Q と一 般 化 運 動 量 Ⅱ に よ
る 一 階 の 微 分 方 程 式 で あ る 。 そ の よ う な運 動 方 程 式 で は,Q 数 変 換 が 可 能 に な る。 そ して,ハ な 変 数 変 換 が,正
とⅡ を まとめた変
ミル トンの 正 準 運 動 方 程 式 が 形 を変 え な いよ う
準 変 換 と呼 ば れ る もの で あ る。
ハ ミル トンの原理を利 用する方法
第23章
ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 に お け る仮 想 変 位 δrは,時
間 を止 め て,そ
の瞬 間にお け
る仮 想 の 変 位 を考 え て い る だ け で あ り,時 間 の経 過 と は 関係 付 け て い な い 。 ハ ミ ル トン の 原 理 にお け る δrは 時 間 の 関 数 で あ り,r(t)の
変 分 と呼 ば れ る も の で あ
る。 ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 で は仮 想 的 に位 置 を変 化 させ る と考 えた が,ハ の 原 理 で は仮 想 的 に 軌 跡(時
間 に対 す る位 置)を
ミル トン
変 化 させ る と考 え る。 δr(t)の
与 え方 はす べ て の 拘 束 条 件 を満 た す 範 囲 で あ り,ま た,考
え て い る時 間 の 両 端 で
は 変 化 量 を ゼ ロ とす る 。 そ の よ う な変 分 は,そ の 各 瞬 間 を考 えれ ば ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 を満 た す もの で あ り,ハ
ミル トンの 原 理 は ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 を時 間積 分
し た形 に な っ て い る。 この 原 理 は,積 分 原 理 とか,変 分 原 理 と呼 ばれ る こ と も あ る(一 方,ダ
ラ ンベ ー ル の 原 理 は微 分 原 理 と呼 ば れ る こ とが あ る)。
ハ ミ ル トンの 原 理 を利 用 して 運 動 方 程 式 を構 築 す る方 法 は,連 続 体 を対 象 とす る 分 野 で は,よ
く用 い られ る 。 集 中 定 数 系 で は,有 限 個 の一 般化 座 標 を選 ぶ こ と
図23.1
ri(t)(r(t)の
i番 目 の 成 分)の
変 分 δri(t)
この 図 は,変 分 の概 念 の説 明用 で,実 際 に は δri(t)は微 少 量 で あ る。
か ら始 め る の に対 し,連 続 体 は 無 限 の 自由 度 を も っ て い て,取
り扱 い 方 が か な り
異 な る。 本 書 は,有 限 個 の 独 立 な一 般 化 座 標 を 持 つ 系 を 主対 象 に 考 え て い て,そ の 場 合,ハ
ミル トンの 原 理 を利 用 す る 方 法 は,か
え っ て 手 間 が 掛 か る。 しか し,
ハ ミル トン の 原 理 は ,電 気 系 や 流 体 系 な ど も含 め た 統 一 的 な扱 い が で き る な ど, す ぐれ た面 を 持 っ て い る。 さ らに,量 子 力 学 へ の 発 展 な ど基 本 的 な重 要 さ はい う まで も な い 。
23.1
ハ ミ ル トン の 原 理
● ハミル トンの原理の導出 ハ ミル トン の 原 理 は形 の 上 で は ダ ラ ンベ ー ルの 原 理 を時 間積 分 した形 か ら導 か れ る。
(23.1) こ の式 の左 辺 は 次 の よ う に変 形 で き る。
(23.2)
(23.3) (23.4) 式(23.3)に は,δrが
移 る と き,δrの
時 間 微 分 を δvと し た 。 δrと 共 に δvを 考 え ら れ る の
時 間 の 関 数 で あ る か ら で,こ
な い 考 え 方 で あ る 。 数 学 的 に は,変 と 考 え る こ と も で き る 。 式(23.4)へ 14.6節
の 式(14.63)の
こ こ で,積
れ は ダ ラ ンベ ー ル の 原 理 の 仮 想 変 位 に は
分 の 操 作 と時 間微 分 の順 序 を入 れ 替 えて い る の 移 行 で は,δvTpを
変 分 を と り,式(14.64)を
し た 。 こ れ は,
利 用 す れ ば得 られ る 関 係 で あ る。
分 時 間 の 両 端 で の 変 分 は ゼ ロ と 定 め,式(23.4)の
る 。 そ の 結 果,ハ
δT*と
第 二 項 を ゼ ロ とす
ミ ル トン の 原 理 に 到 達 す る 。
(23.5)
図23.2
分 布 定 数系 の例(自 由端 に集 中慣 性体 を持 つ 片持 ち梁 の 横振 動 モ デ ル)
こ の 式 で は,式(22.16)の
場 合 と 同様 に,ポ テ ン シ ャル 関 数 か ら求 ま る 力 もす べ
て作 用 力 と して 扱 っ て い る。 そ して,ハ
ミル トンの 原 理 の 場 合 も ラ グ ラ ンジ ア ン
L を 用 い た一 般 的 な 形 を作 る こ とが で きる 。
(23.6) 作 用 力 fはfUとfUに さ れ る 。fu,U
分 け ら れ,fUは
な ど は,22.1項
同 じ で あ る 。 作 用 力 に はfUだ ル ギ ー T*か
ポ テ ン シ ャル 関 数 U と して L の 中 に 考 慮
の 式(22.17),(22.18)に
説 明 さ れ て い る もの と
け が 残 さ れ る 。 ラ グ ラ ン ジ ア ン L は,運
動補 エ ネ
らポ テ ン シ ャル 関 数 U を差 し引 い た もの で あ る。
L=T*-U
【22.20】
ハ ミル トンの 原 理 は 次 の とお りで あ る。 拘 束 条 件 を満 たす 範 囲 の 任 意 の 変 分 に対 して,式(23.5),あ
る い は(23.6)の 左 辺 の 積 分 は常 に ゼ ロ に な る。
ハ ミル ト ンの 原 理 は 分 布 定 数系 の 運 動 方 程 式 を 立 て る場 合 に は役 に 立 つ が,集 中定 数系 の 場 合 は 他 の 方 法 を用 い る ほ うが 簡 単 で あ る。 分 布 定 数 系 の簡 単 な事 例 と して は,図23.2に
示 す よ う な片 持 ち 梁 が あ るが,本
書 で は,そ の 具 体 的 な解
説 は省 略 す る。 た だ し,こ の 図 を見 て 想 像 で きる よ う に,分 布 定数 系 の 場 合 は 運 動 補 エ ネ ル ギ ー と共 に ポ テ ン シ ャル 関 数 も連 続 的 に分 布 して い る こ とが 多 く,式 (23.5)よ り,式(23.6)の 式(23.6)は,さ
形 が よ く用 い られ る。
らに 次 の よ う に書 き直 す こ とが で きる 。
(23.7) 第二 項 は ラ グ ラ ン ジ ア ンの 時 間 積 分 の変 分 で あ るが,ラ
グ ラ ンジ ア ン の時 間積 分
A は,作
用(action),ま
た は,作
用 積 分(action
integral)と
呼 ば れ て い る。
(23.8) こ れ を 用 い る と,ハ
ミル トンの 原 理 は 次 の よ うに書 け る。
(23.9) 作 用 力fUが
な い 場 合 は,「 作 用 積 分 の 変 分 が ゼ ロ に な る よ う に 運 動 す る」 とい
う,極 め て簡 単 な 表 現 の力 学 原 理 に な る。
● ハミル トンの原理を利用 して運動方程式を作る方法 ハ ミル トンの 原 理 を利 用 して 運 動 方 程 式 を作 る場 合,ま ネ ル ギ ー とポ テ ン シ ャ ル 関 数 を,適 当 な 座 標 変 数(従 標)を
ず,最
初 に,運 動補 エ
属 な も の を含 む 一 般 化 座
用 い て 表 し,そ の差 を ラ グ ラ ン ジア ン とす る 。 次 に,式(23.6)の
括 弧内の
変 分 を計 算 し,独 立 な一 般 化 座 標 の 変 分 で 表 す 。 そ の と き,ラ グ ラ ン ジ ア ンは独 立 な 一 般 化 座 標 の 時 間微 分 Q を含 ん で い る の で,δQが
出て くる 。 そ こ で,部 分
積 分 の 公 式 を 用 い て δQの 関係 に書 き換 え る。 δrも δQで 表 す こ とが で き,積 分 の 内 部 は δQで 括 り出 す こ とが で き る。 こ こで,δQが
積 分 時 間 の 両 端 で ゼ ロに
な る仮 定 を用 い る と と も に,積 分 時 間 内 で は δQの 任 意性 を利 用 して 運 動 方程 式 を 求 め る こ とが で き る。 この 過 程 で,部 分 積 分 の公 式 を 用 い て δQを δQと す る と こ ろ と,δQが 時 間 の 両 端 で ゼ ロ と仮 定 す る と こ ろ な どは,ダ
積分
ラ ンベ ー ルの 原 理 の 積 分 形 か らハ
ミル トン の原 理 を求 め る過 程 を逆 に戻 って い る よ う な も ので あ る 。 た だ し,運 動 方 程 式 を取 り出 す た め に,独 立 な一 般 化 座 標 で 表現 す る よ う に し,そ の変 分 の 任 意 性 を利 用 す る 。 次 節 で は,ハ
ミ ル トンの 原 理 を用 い て ラ グ ラ ン ジ ュの 運 動 方 程 式 を導 く。 この
過 程 は特 定 モ デ ル の 運 動 方 程 式 を作 る 過 程 と同 じで あ り,上 記 の 説 明 の事 例 に な っ て い る。
23.2 ラグランジュの運動方程式の導出 ● 一般化座標 Qが独立な場合 ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 は ハ ミ ル ト ン の 原 理 か ら導 く こ と も で き る 。 ま ず, ラ グ ラ ン ジ ア ン L は,22.1節
に,一
般 化 座 標 Q,そ
の 時 間 微 分 Q,時
間 tの 関
数 と して与 え られ て い る 。
L=L(Q,Q,t)
(22.23)
この 変 分 は 次 の よ う に書 け る。
(23.10) この 時 間積 分 は,部 分 積 分 の 公 式 を用 い て,次 の よ う に な る 。
(23.11) 積 分 時 間 の両 端 で δQは ゼ ロで あ る 。 した が っ て,こ の 式 は次 の よ う に書 け る。
(23.12) 質 点 系 の 位 置 rは,Q
と tの 関 数 と し て13.4節
に 与 え られ て い る。
r=r(Q,t)
【13.2】
こ の 式 の 変 分 の 関係 か ら,作 用 力 の項 は次 の よ うに な る。
(23.13) 結 局,ハ
ミ ル ト ン の 原 理(23.6)は
次 の よ う に書 く こ とが で きる 。
(23.14) δQは 積 分 時 間 の 範 囲 内 で 任 意 な 時 間 関 数 で あ り,δQを
どの よ う に変 え て も こ
の積 分 が ゼ ロ に な る こ と か ら,ラ グ ラ ン ジ ュ の運 動 方 程 式 が 成 立 す る。
【22.19】
● 一 般 化 座 標 Q にホ ロ ノミ ック な拘 束 が あ る場 合 一 般 化 座 標 Q の 間 に ホ ロ ノ ミ ック な拘 束 が あ る場 合 を 考 え る
。
Ψ(Q,t)=0
(23.15)
こ の 式 の 変 分 は次 の よ う に な る。
(23.16)
δΨ=ΨQδQ=0 す べ て が 独 立 で な い Q を 用 い て ラ グ ラ ン ジ ア ン(22.23)が る 。 そ の 変 分 は 式(23.10)で が,積
分 時 間 の 両 端 で,δQは
は 成 立 す る 。 式(13.2)も
独 立 では ない
す べ て ゼ ロ と し て よ い 。 し た が っ て,式(23.12)
Q が 独 立 で な くて も差 し支 え な い。 そ の 変 分 の 関係 に
も変 更 の 必 要 は な く,式(23.13)も る 。 し か し,δQは
書 か れ て い る とす
あ る 。 そ の 中 に 出 て く る δQ,δQも
そ の ま ま 成 立 す る 。 結 局,式(23.14)が
独 立 で は な い の で,こ
の ま ま で は,式(23.14)か
成 立す ら運動方程
式 を抽 出 す る と こ ろ が う ま くゆか な い 。 そ こ で,拘 と し,そ
束 Ψ の 数 と同 数 の ラ グ ラ ン ジ ュ 未 定 乗 数 を縦 に並 べ た 列 行 列 を Λ
の 転 置 を 式(23.16)の
中 央 の 表 現 に 左 か ら掛 け て,式(23.10)の
え る 。 ゼ ロ を 加 え た だ け で あ る か ら,左
右 辺 に加
辺 は δLの ま ま で あ る 。
(23.17) 以 下,Q
が 独 立 だ っ た 場 合 と同 じよ う に進 め る と,式(23.14)に
対 応 す る式 は次
の よ うに な る。
(23.18) こ こ で,一 般 化 座 標 Q を独 立 な 一 般 化 座 標QIと と,こ の 式 は 次 の よ う に な る 。
従 属 な一 般 化 座 標QDに
分 ける
(23.19) QDの
数 は Ψ の 数 と同 じで あ る。 そ して,QIとQDの
Ψ が す べ て 独 立 だ とす る と,ΨQDは の 括 弧 内 が ゼ ロ に な る よ う に,ラ 〓,は
選 択 が 適 切 な ら,そ
正 則 に な る。 そ こ で,こ
して,
の 式 の左 辺 第 二 項
グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 を 決 め る こ と に す る。
正 則 で あ るか ら,そ の よ う な 計 算 は 可 能 で あ る。 そ の 結 果,式(23.19)の
左 辺 は 第 一 項 だ け と な り,δQIの 任 意 性 に よ り,括 弧 内 をゼ ロ とす る こ と が で き る 。 こ の 結 果 は,式(23.18)で
δQの す べ て を任 意 と した 場 合 と同 じ結 論 で あ る。
運 動 方 程 式 は次 の よ う に な る。
(23.20) こ の 式 の 未 知 数 は Q と Λ で,式
の 数 よ り多 い 。 式(23.15)の
拘 束 条 件 と共 に解
く こ とが 必 要 で あ り,微 分 代 数 型 の 問題 と な る。 す な わ ち,3.7節 代 数 型 の 運 動 方 程 式 と 同様 な 扱 い 方 を す る と,式(23.15)を
で述 べ た微 分
二 回 時 間微 分 して加
速 度 レベ ル の 拘 束 条 件 と し,運 動 方 程 式(23.20)と 連 立 させ る こ と に な る。 以 上 は ラ グ ラ ンジ ュの 未 定 乗 数 法 で あ るが,式(23.15)に 乗 数 の 転 置 を左 か ら掛 け,式(22.23)に す れ ば,δQを
ラ グ ラ ンジ ュ の 未 定
加 え た もの を新 た な ラ グ ラ ン ジア ン L'と
独 立 と して扱 う こ と が で き る。
L'=L(Q,Q,t)+ΛTΨ(Q,t)
(23.21)
た だ し,こ の 式 を用 い る こ とが で き る の は拘 束 条 件 が ホ ロ ノ ミ ッ ク な場 合 で あ る。
● 一 般 化 座 標 Q にシ ン プル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な 拘束 が あ る場 合 式(23.15)の
ホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 を時 間微 分 す る と次 の よ うに な る。
Ψ=Φ=ΨQQ+Ψt=0
13.6節
(23.22)
で も そ う した よ う に,速 度 レベ ル の 拘 束 条 件 を Φ と表 し て い る。 こ の 式
は Q の 一 次 式 で あ るか ら,次 の 関 係 が あ る。
(23.23)
ΨQ=ΦQ そ し て,式(23.22)を Φ=ΦQQ+Φ
ΦQは,Φ
次 の よ う に 書 き直 して も よ い。 百=0
を Q で 偏 微 分 した 残 りの 項 を意 味 して い る。
(23.24)
式(23.23)を
用 い る と,ホ
動 方 程 式(23.20)は
ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 を 受 け る場 合 の ラ グ ラ ン ジ ュ の 運
次 の よ うに 書 くこ と もで きる 。
(23.25) 独 立 だ っ た 一 般 化 速 度Qが
Ψ=0の
拘 束 を受 け た 場 合 に生 じ る拘 束 力 は,〓
Λ
で あ り,こ れ はΨ の 時 間微 分 Φ を用 い て Φ〓Λ と書 く こ と もで きる 。 式(23.25) 右 辺 の 第 二 項 は,こ
の拘 束 力 で あ る 。 この 拘 束 力 は,変 分 δQと 直 交 す る 。
(23.26)
ΛTФQδQ=0
Q が Ψ=0の
拘 束 を 受 け る 場 合,変
分 δQの 拘 束 は ΨQδQ=0と
な り,ま
た,次
の よ う に書 く こ と もで き る。
(23.27)
ΦQδQ=0 式(23.26)は,こ
の 式 に Λ の 転 置 を左 か ら 掛 け た も の と 説 明 す る こ と も で き る 。
シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 条 件 は,始 表 さ れ る 。 そ し て,そ る 。 そ こ で,こ
め か ら,式(23.24)の
よ う な形 に
れ を 積 分 した位 置 レベ ル の 拘 束 表 現 を持 た な い もの で あ
の 式(23.24)が
シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 を既 に 含 ん で い
る も の と す る 。 Φ の 数 は Ψ の 数 よ り多 く な っ て い る 。 そ の よ う な 場 合 で も,拘 力 が Φ〓Λ の 形 に 表 さ れ,変
分 δQと 直 交 す る 。 す な わ ち 式(23.26)は,シ
ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 場 合 に も 成 立 す る 。 変 分 の 拘 束 も,式(23.27)の
束 ンプ
形 で成 立
す る 。 こ の よ う に シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 ま で 適 用 性 を 拡 大 し て,式 (23.26)を
式(23.10)の
右 辺 に 加 え る 。 ゼ ロ を 加 え た だ け で あ る か ら,左
辺 は δL
の ま ま で あ る。
(23.28) 以 下,ホ
ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 の 場 合 と 同 じ よ う に 進 め る と,式(23.25)と
到 達 す る 。 す な わ ち,式(23.25)は
同 じ形 に
シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な拘 束 も含 む 速 度
レベ ル の 拘 束 を 考 慮 し た ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 で あ る 。 式(23.25)の だ け あ る が,Φ
未 知 数 は,Q
と Λ で,式
の 数 よ り多 い 。 Λ は 式(23.24)の
Φ の数
に は ホ ロ ノ ミ ック な もの と シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な もの が
混 在 し て い る 。 ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 に つ い て は 式(23.15)の ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 に つ い て は 式(23.24)の
す べ て,シ
ンプルノ
中 の 該 当 す る も の が 必 要 で,そ
れ
ら を連 立 させ て 解 くこ とに な る。
23.3
事 例:舵
付 き帆 掛 け舟
シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 を 持 つ 舵 付 き 帆 掛 け 舟(13.3節,13.6節 照)の
運 動 方 程 式 を,ラ
ま ず,運
グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式(23.25)を
参
用 い て 求 め て み よ う。
動 補 エ ネ ル ギ ー は次 の よ う に書 け る。
(23.29) 従 属 な もの を含 ん だ 一 般 化 座 標 を Q と書 くと,運 動 方 程 式 は 次 の よ うに 書 け る。
(23.30) Φ は 舵 の 拘 束 で あ り,F'OAとnAは
重 心 に 等 価 換 算 さ れ た 作 用 力,作
用 トル ク と
す る。 こ こ で,Q
をROAと
θOAと す る 。ROAは
舟 が 浮 か ん で い る湖 に 固 定 し た座 標
系 O か ら 見 た 舟 の 重 心 A の 位 置 で あ り,θOAは
舟 に 固 定 した 座 標 系 A の 座 標 系
O に 対 す る 回 転 角 で あ る 。 こ れ ら の 時 間 微 分 Q はVOAと (23.30)の
Q と Q をRoA,VOAと
し て,次
ωOAで
あ る 。 ま ず,式
の式 が得 られ る。
(23.31) 次 に,Q
と Q を θOA,ωOAと
す る 。
(23.32) 舵 の 拘 束 は 次 の よ う に 書 け る(13.6節)。
(23.33) し た が っ て, (23.34)(注)
(23.35) ま た,速
度VOAは
ダ ッ シ ュ の 付 くV'OAに
(注)こ の式 の 左 辺 は Φ をVOAで
変 え て お く。
偏 微 分 した もの で あ る。 添 え 字が 細 文 字 に な って い て 偏 微 分
結 果 もス カ ラー に な る と誤解 が生 じそ うだが,行 行 列 で あ る。13章 の式(13.8)の 脚 注 参 照。
(23.36) (23.37) こ れ ら に よ っ て,式(23.31),(23.32)は
次 の よ うに な る。
(23.38) (23.39) 以 上 で,未 定 乗 数 を含 ん だ形 の 運 動 方 程 式 が 求 ま っ た 。 こ れ ら か ら Λ を 消 去 す れ ば よ い 。 ま ず,式(23.38)に
〓 を 左 か ら掛 け る と,
こ の 式 か ら 孟 を消 去 で き る。
(23.40) ま た,〓
を左 か ら掛 け る と,Λ を取 り出 す こ とが で きる。
(23.41) こ れ ら 二 式 に,式(23.33)を
用 い て,次
の よ う にV'OAYを
消 去 す る。
(23.42) (23.43) こ の Λ を 式(23.39)に
代入す る。
(23.44) 結 局,式(23.42)と(23.44)が,五
を 消 去 し,独
表 さ れ た 運 動 方 程 式 で あ る 。 こ れ ら は,16.4節 (16.28)と
同 じで あ る。
立 な 一 般 化 座 標 のV'OAXと
ωOAで
で 求 ま っ た 運 動 方 程 式(16.27),
ハ ミル トンの正準運動方程 式
第24章
ラ グ ラ ンジ ュ の 運 動 方 程 式 は 一 般 化 座 標 の 取 り方 に よ らず 同 じ形 に な る。 ま た,ラ
グ ラ ン ジ ア ン は運 動 補 エ ネ ル ギ ー か らポ テ ン シ ャ ル 関 数 を 引 い た形 で作 ら
れ る が,こ
の ラ グ ラ ン ジ ア ン以 外 に も,同
じ運 動 方程 式 を生 み 出 す 別 の ラ グ ラ ン
ジ ア ンが 存 在 す る。 この よ うな 興 味 深 い 性 質 は,ハ に 出 て くる ハ ミル トニ ア ン の場 合 に,さ 今 後,い
ミ ル トンの正 準 方 程 式 や そ こ
らに,顕 著 で あ る。 この よ う な性 質 が ,
か に機 械 工 学 に浸 透 して ゆ くか は 明 確 で は な い が,物 理 学 の 世 界 で発 展
して きた 成 果 を知 る だ け で も楽 しい こ とで あ る。 最 近 は,マ
ルチボデ ィダイナ ミ
ク ス の 研 究 に もハ ミル トンの 正 準 方 程 式 を利 用 した もの が登 場 して い る。 また, 新 しい非 線 系 制 御 の 方法 へ の 発 展 に も大 きな 楽 しみ が あ る 。 本 章 の説 明 に はマ ル チ ボ デ ィダ イナ ミク ス を 思 わ せ る もの は含 ま れ て い な い が,新
しい もの を創 出 す
る た め の素 材 の 一 つ と考 えて よ い 。
24.1
ハ ミル トン の 正 準 方 程 式
ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 と ラ グ ラ ン ジ ア ン は,22.1節
に 与 え られ た 。
【22.19】
L=T*-U
【22.20】
ラ グ ラ ン ジ ア ンは 一 般化 座 標 Q,そ の 時 間微 分 Q,時 間 tの 関 数 で あ る 。
L=L(Q,Q,t) 式(22.20)の
【22.23】
ラ グ ラ ンジ ア ン を 質 点 の 速 度 vで 偏 微 分 す る と,ポ テ ン シ ャル 関 数
は 速 度 レベ ル の 変 数 を含 ん で い な い の で,運
動 補 エ ネ ル ギ ー T*を vで 偏 微 分 す
る こ と に な り,質 点 の 運 動 量 p が 求 ま る。 これ に 対 し,ラ 化 速 度 Q で偏 微 分 した もの が 一 般 化 運 動 量 Ⅱ で あ る。
グラ ンジア ンを一般
(24.1) 一 般 化 運 動 量:に は斜 体 の Ⅱ を用 い て 別 して い る。 一 般 化 運 動 量 は,Q
,14.3節
に出て きた剛体 の角運 動 Ⅱ と区
の 要 素 の 数 だ け 求 ま り,そ れ を縦 に 並 べ た 列
行 列 が Ⅱ で あ る。 ポ テ ン シ ャ ル 関 数 が v,あ る い は Q に依 存 しな い 場 合,こ の Ⅱ は,運
動 補 エ ネ ル ギ ー T*の 一 般 化 速 度 Q に よ る偏 微 分 で も あ り,さ ら に,
次 の よ うに 書け る 。
(24.2) た だ し,式(24.1)の
一 般 化 運 動 量 の 定 義 は,式(22.20)の
さ れ て は い な い 。22.4節 り,そ
に 説 明 が あ る が,式(22.20)以
の と き は こ の 式(24.2)が
さ て,式(24.1)で
ラ グ ラ ン ジ ア ンに 限 定 外 の ラ グ ラ ンジ ア ンが あ
成 立 す る と は 限 ら な い。
定 義 さ れ た Ⅱ は,Q,Q,tの
関 数 で あ る。
(24.3)
Ⅱ=Ⅱ(Q,Q,t) こ こ で,式(22.23)で れ ば,式(24.3)を
表 さ れ たLの
Q に 関 す る ヘ シ ア ン行 列 が ゼ ロ で な い と す
Q につ い て解 くこ とが で きる 。
(24.4)
Q=Q(Q,Ⅱ,t) こ の 式 を 式(22.23)に
代 入 す れ ば,ラ
グ ラ ン ジ ア ン をQ,Ⅱ,tの
関 数 とす る こ と
が で きる。
(24.5)
L=L(Q,Q(Q,Ⅱ,t),t) た だ し,一
旦 こ の よ う に 表 し て し ま う と,こ
の L か ら Q と Ⅱ の 関 係 を,直
接,
求 め る こ とは で きな くな る。 式(24.1)を
用 い る と,式(22.23)の
微 分 を次 の よ う に書 くこ とが で き る。
(24.6) こ こ で,次
の よ うな 新 しい ス カ ラー 関 数 を考 え る。
(24.7)
H=ⅡTQ-L こ の 斜 体 文 字 を 用 い た H は,一
般 化 速 度 H と は ま っ た く別 の 量 で あ る 。 新 しい
ス カ ラ ー 関 数 H は,式(24.3)を
用 い れ ば,Q,Q,tの
用 い れ ば,Q,Ⅱ,tの
関 数 で あ る 。 そ こ で,こ
関 数 に な り,式(24.4)を
の 式 の微 分 を作 っ て み る。
(24.8) こ の 式 に 式(24.6)を
代 入 す る と次 の よ う に な る。
(24.9) こ れ は,H
をQ,Ⅱ,tの
関 数 と見 な す の が 自 然 で あ る こ と を 示 して い る 。
(24.10)
H=H(Q,Ⅱ,t) 式(24.7)は,式(24.4)を
代 入 して,次
の よ う に 表 し て お く。
(24.11) ま た,式(24.9)か
ら,Q
が,H
を Ⅱ で 偏 微 分 す る こ と に よ っ て 求 ま る こ と も分
か る。
(24.12) さ ら に,H
のQ,tに
よ る 偏 微 分 と,L
のQ,tに
よ る 偏 微 分 と の 関 係 も得 ら れ
る。
(24.13) (24.14) Q,Q,tを (24.1)の
変 数 と す る ス カ ラ ー 関 数 L が 式(22.23)の 偏 微 分 に よ っ て 新 し い 変 数 Ⅱ がQ,Q,tの
式(24.7)の
変 換 は,Q,Ⅱ,
を 作 り 出 し,式(24.12)の
関 数 と し て 得 ら れ た と き,
tを 変 数 と す る 新 し い ス カ ラ ー 関 数 H(式(24.10)) 偏 微 分 に よ っ て 古 い 変 数 Q がQ,Ⅱ,tの
得 ら れ る こ と に な る 。 こ の 変 換 は ル ジ ャ ン ドル 変 換 で,H っ た く 同 様 な,可 能 動(active)変 (passive)変
よ う に 与 え ら れ,式
関 数 と して
か ら Lへ の 変 換 も ま
逆 的 な 変 換 で あ る 。 Q や Ⅱ は 変 換 の 対 象 と な っ て い る 変 数 で, 数 と 呼 ば れ る 。 Q や tは 変 換 の 対 象 に は な っ て い な い 受 動
数 で あ る。
ス カ ラ ー 関 数 Ⅱ は ハ ミ ル トニ ア ン と 呼 ば れ る 。 ラ グ ラ ン ジ ア ン を,Q 共 役 変 数 Ⅱ を 能 動 変 数 と し て ル ジ ャ ン ドル 変 換 し た も の が,ハ い う こ と に な る 。 式(22.20)の
ラ グ ラ ン ジ ア ン の 場 合,式(24.2)に
お よ び,14.6項
用 い る と,質
の 式(14.60)を
とそ の
ミ ル トニ ア ン と 示 さ れ た 関 係,
点 系 の 速 度 v と 運 動 量 p を用 い て ハ
ミ ル トニ ア ン は 次 の よ う に 書 け る 。
(24.15) 時 間 依 存 拘 束 な ど に 現 れ る 項VQを
含 ま な い 場 合,ハ
ミル トニ ア ンは 運 動 エ ネ ル
ギ ー と ポ テ ン シ ャ ル 関 数 の 和 に な る 。 U に 時 間 依 存 性 が な け れ ば,こ
れ は全 エ
ネルギーで ある。 ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式(22.19)に,式(24.1)と(24.13)を
代 入 す る と,次
の
式 が 得 られ る 。
(24.16) こ の 式 と 式(24.12)を
ま と め る と,運 動 方 程 式 の 新 しい 表 現 形 式 に な っ て い る。
こ れ を ハ ミル トン の 正 準 運 動 方 程 式 と呼 ぶ 。 ま た,Ⅱ
と Q を正準 変数 と呼ぶ。
ハ ミル トンの 正 準 運 動 方 程 式 は,正 準 変 数 に 関 す る一 階 の 微 分 方 程 式 で あ る 。 変 数 の 数 が 増 え た こ と に よ り時 間 微 分 を含 ま な い変 数変 換 の 可 能 性 が 増 大 した 。 さ らに,正 準 変 数 Ⅱ と Q の 間 の 対 称 性 が 変 数 変 換 の見 通 しを よい もの に し,解 の 安 定性 も高 め る効 果 が 期 待 で き る。
24.2
修 正 さ れ た ハ ミ ル トン の 原 理
ハ ミ ル ト ン の 原 理 は,23.1節
に与 え られ て い る。 【23.6】
式(23.13)を
代 入 し て,こ
の 原 理 を 次 の よ う に書 い て も よ い 。
(24.17) ハ ミル トニ ア ン Ⅱ が,一
般 化 速 度 Q と一 般 化 運 動 量 Ⅱ と時 間 tの 関 数 と して 与
え られ て い る とす る。 式(24.7)か
らラ グ ラ ン ジ ア ン L は次 の よ う に与 え られ る。
(24.18)
L=ⅡTQ-H H をQ,Ⅱ,tの
関 数 の ま ま,こ
の 式 を,式(24.17)に
代 入 す る。
(24.19)
こ の式 は 次 の よ う に変 形 で き る。
(24.20) さ らに,ⅡTδQの
項 に部 分 積 分 の 公 式 を 適用 す る と次 の よ う に な る。
(24.21) こ こで,積
分 時 間 の 両 端 で δQが ゼ ロ に な る こ と を利 用 す る と と もに,Q,Ⅱ
独 立 な 変 数 と見 な して,積
を
分 時 間 の 内 部 で δQと δⅡ を 任 意 に 取 る 。 そ の結 果,
正 準 方 程 式(24,12)と(24.16)が
導 か れ る。 【24.12】
【24.16】
Q,Ⅱ
を独 立 な 変 数 と見 な して,式(24.19)は,修
と呼 ば れ る 。 こ れ は,ハ
正 さ れ た ハ ミル トン の 原 理
ミル トニ ア ンか ら,正 準 方 程 式 を作 り出 す た め の もの で
あ る。
24.3 事例:時 間の関数 として支点を動かす剛体振子 時 間 の 関 数 と して 支 点 を動 か す 剛体 振 子 は22.3節
で も扱 っ た が,同
じモ デ ル
を正 準 方 程 式 で 表 す こ と を考 え る。 この モ デ ル の 運 動 補 エ ネ ルギ ー は 次 の とお り である。 【22.28】
こ の モ デ ル は 自 由 度 1で,独 役 な 運 動 量 を π と す る と,そ
立 な 一 般 化 座 標 は θOAで あ る 。 し た が っ て,正 れ は T*を,θOAの
時 間 微 分,ωOAで
準 共
偏 微分 した も
の で あ る。
(24.22)
VOAも,22.3節
に与 え られ て い る。 【22.30】
こ れ を 用 い る と π は,次
の よ う に な る。
(24.23) し た が っ て,θOA(=ωOA)を
π と tの 関 数 と す る と,そ
れ は 次 の とお りで あ る。
(24.24) 運 動 補 エ ネ ル ギ ー T*を ラ グ ラ ン ジ ア ン L と し,ハ
ミ ル トニ ア ン Ⅱ を作 る と次
の ようになる。
(24.25) 式(24.16)を
利 用 す る と次 の 式 が 得 られ る。
(24.26) こ の 式 と式(24.24)が 正 準 運 動 方 程 式 で あ る 。 こ の式 の 一 般 化 力 は次 の よ うに 書 け る。
(24.27) こ れ を代 入 す る と次 の よ うに な る。
(24.28) 式(24.24),(24.28)が,時 で あ るが,こ
間 の 関 数 と して 支 点 を動 か す 剛 体 振 子 の 運 動 方 程 式
れ らか ら π を消 去 す れ ば,式(22.37)な
ど と 同 じ もの で あ る こ とが
確 認 で き る。 しか し,こ の 事 例 で わ か る よ う に,単 純 に正 準 運 動 方 程 式 の 形 にす る だ け で は,か
え っ て 面 倒 な こ とに な る だ け で あ る。 正 準 運 動 方 程 式 の 長 所 を生
か す た め に,こ
の運 動 方程 式 の 先 に あ る考 え 方 を学 び,ま た,機 械 工 学 へ の 適 用
方 法 を調 べ て,新
た な工 夫 が 必 要 で あ る。
24.4ハ
ミ ル トニ ア ン の 任 意 性
こ れ ま で,運 ン と し,そ
動 補 エ ネ ル ギ ー か ら ポ テ ン シ ャル 関 数 を差 し引 い て ラ グ ラ ンジ ア
の ル ジ ャ ン ド ル 変 換 と して ハ ミ ル トニ ア ン を 作 っ て き た 。 す で に,ラ
グ ラ ン ジ ア ン の 任 意 性 に つ い て は触 れ た が,当
然,同
ミ ル トニ ア ン も 一 つ で は な い は ず で あ る 。 実 際,次 (24.12)と(24.16)の
じ運 動 方 程 式 を 生 み 出 す ハ の ハ ミ ル トニ ア ン H ′は,式
正 準 運 動 方 程 式 を作 り出 す 。
(24.29) こ の H ′を修 正 され たハ ミル トンの 原 理 に代 入 した場 合,こ
の W ′の 項 の 影 響 は,
次 の積 分 を調 べ る こ とで 明 らか に な る。
(24.30) 22.2節
の ラ グ ラ ン ジ ア ンの 任 意 性 を示 した と こ ろ で は 丁 寧 な 説 明 を 行 っ た が,
一般 的 に
,時 間微 分 と変 分 の 操 作 は 交 換 で き る の で,こ
この 積 分 は,結 局,次
こ で は,そ
れを用 いた。
の ようになる。
(24.31) 積 分 時 間 の両 端 で δQは ゼ ロ とい う 条 件 で,右 辺 第 一 項 は ゼ ロ に な る。 こ こ で, 新 た に,積 分 時 間 の 両 端 で δⅡ もゼ ロ に な る と条 件 を 設 け る こ とに す る。 こ うす る こ と に よ り,式(24.29)の
W'の 項 は,正 準 運 動 方 程 式 に影 響 を し な い こ と に
な る。 こ の 新 た な 条 件 は,Q
と Ⅱ の独 立 性 と共 役 性 を きれ い に整 え る だ け で は
な く,ハ ミル トニ ア ン の任 意 性 を広 げ る働 きを して い る。
24.5正 22.4節
準変 換 で,変 数 変 換 に よ る ラ グ ラ ン ジ ュの 運 動 方 程 式 の 形 の 不 変 性 が 示 され
た 。 そ の変 数 変 換 は一 般 化 座 標 の変 換 で あ っ た。 Q=Q(Q′,t)
【22.45】
ま た,こ の 変 換 に よ っ て ラ グ ラ ン ジ ア ンの 関 数 形 は 変 化 す る が,関 数 の 値 は変 化 し な い。 【22.49】
こ の 変 換 は 本 章 で 説 明 す る正 準 変換 に含 ま れ る もの で ,点 変 換 と呼 ば れ て い る。 正 準 変 換 は,ハ
ミル トンの正 準 運 動 方 程 式 の 形 が 変 化 しな い 変 数 変 換 の こ とで
あ る 。 ハ ミ ル トンの 正 準 運 動 方 程 式 で は,一 般 化 座 標 Q と一 般 化 運 動 量 Ⅱ が独 立 な 変 数 と して 使 わ れ て い て,変 数 の 変 換 は 次 の よ う な形 が 考 え られ る。
(24.32) (24.33) この 変 換 で ハ ミ ル トニ ア ン は H ′に な る とす る。 こ の 変 換 は ,一 般 化 座 標 Q と一 般 化 運 動 量 Ⅱ を ひ と ま と め に した 広 い 範 囲 の 変 換 を考 え て い る こ と に な る が , こ の 形 の 変 換 が 正 準 変 換 に な る た め に は,修 正 され た ハ ミル トン の 原 理 に お い て,変 分 を 積 分 した もの が等 し く保 た れ る必 要 が あ る 。 そ の た め に は,次 の 関 係 が 成 り立 て ば よ い。
(24.34) こ の 式 を 満 た す Q と Ⅱ の 変 換 が 正 準 変 換 で あ る 。 た だ し ,W"の Q's, ⅡSは,Q,Ⅱ,Q 32),(24.33)の 変 数 は,こ
変 数Qs,Ⅱs,
′,Ⅱ ′の 中 か ら適 当 に 選 択 し た も の で あ る 。 ま た,式(24.
変 換 を 考 え て い る の で あ る か ら,Q,Ⅱ,Q
′,Ⅱ ′の 中 で 独 立 な
の 中 の 半 分 だ け で あ る。
式(24.34)の
W"は,修
正 さ れ た ハ ミル トンの 原 理 にお け るハ ミ ル トニ ア ン の
任 意 性 に基 づ く もの で あ る が,変 数 の 選 択 の 仕 方 で正 準 変 換 の 内 容 を決 め る働 き を す る の で,母
関数 と呼 ば れ る 。 た と え ば,W"を
次 の よ う に して み る。
(24.35) こ の W"に
よ り,式(24.34)は
次 の よ う に な る。
(24.36) Q,Ⅱ ′の 係 数 と残 りの 項 を そ れ ぞ れ 比 較 して,次 の 変 換 が 得 られ る 。 Ⅱ ′=Ⅱ
(24.37)
Q'=Q
(24.38) (24.39)
す な わ ち,式(24.35)を 今 度 は,W"を
母 関 数 とす る こ の 変 換 は恒 等 変 換 で あ る 。
次 の よ うに して み る。
W"=QTQ' 式(24.34)は
(24.40)
次 の よ う に な る。
(24.41) Q,Q'の
係 数 と残 りの 項 をそ れ ぞ れ比 較 して,次 の 変 換 が 得 られ る。 Q'=Ⅱ
(24.42)
Ⅱ ′=-Q
(24.43) (24.44)
新 しい 変 数 の 一 般 化 座 標 は古 い変 数 の 一 般 化 運 動 量 に 等 し く,新 しい 変 数 の 一 般 化 運 動 量 は古 い 変 数 の 一 般 化 座 標 の 符 号 を 反転 し た もの に 等 しい。 変換 自体 は簡 単 で あ る が,点 変 換 に は含 ま れ な い 変 換 で あ る 。 も う 一 つ,ε
を 無 限 小 の パ ラ メ ー タ と し,次
の 母 関 数 を考 え る 。
(24.45) 式(24.34)は
次 の ようになる。
(24.46) まず,Q
の 係 数 を比 較 す る。
(24.47) Ⅱ と Ⅱ ′の 差 は 一 次 の 無 限 小 で あ る 。 式(24.46)右
辺 の 最 後 の 括 弧 内 のGⅡ Ⅱ は
GⅡⅡ ′と考 え て も,差 異 は二 次 以 上 の 無 限小 で あ る 。 した が っ て,一
次 の 無 限小
ま で を考 え て い る の で,次 の よう に して 差 し支 え な い 。
(24.48) ハ ミ ル トニ ア ン の 値 に 差 異 は な い 。
(24.49) 式(24.47),(24.48)の
変 換 で,新
しい 変 数 と古 い 変 数 の差 異 は一 次 の 無 限 小 で あ
り,無 限 小 変 換 と呼 ば れ る。 そ の 具体 的 内容 は 関 数G(Q,Ⅱ)に 以 上 は 基 礎 的 な事 例 で あ る。 さて,式(24.34)の
よ っ て定 ま る。
W"に は,変 数 の 選 択 の 仕 方
に 四 つ の 基 本 的 なパ ター ンが あ るの で,以 下 に そ れ を示 す 。
① 式(24.32)は
の 場 合: 次 の よ うに な る。
(24.50) この 式 が 恒 等 式 に な る た め に は 次 の 関 係 が 必 要 に な る。
(24.51) (24.52) (24.53) 式(24.51),(24.52)か た,式(24.53)か
ら,式(24.32),(24.33)の ら,新
し い ハ ミ ル トニ ア ン が 定 ま る 。 ② ∼ ④ で も 同 様 に 考 え る 。
② 式(24.32)は
変 換 を定 め る こ とが で き る。 ま
の 場 合: 次 の よ うに な る。
(24.54) この 式 が 恒 等 式 に な る た め に は 次 の 関係 が 必 要 に な る。
(24.55) (24.56) (24.57) ,の 場 合:
③ 式(24.32)は
次 の よ うに な る。
(24.58) こ の式 が 恒 等 式 に な る ため に は 次 の 関 係 が 必 要 に な る。
(24.59) (24.60) (24.61)
④
の 場 合:
式(24.32)は
次 の よ う に な る。
(24.62) この 式 が恒 等 式 に な る た め に は 次 の 関係 が 必 要 に な る。
(24.63) (24.64) (24.65) 以上 ① ∼④ の
も母
関数 と呼 ば れ る。 これ らの 具 体 的 な形 で,変 換 の 内容 や 新 しいハ ミル トニ ア ンが 決 ま っ て く る。 な お,こ
こ に示 した形 は基 本 パ タ ー ンで あ り,こ れ らの混 合 に な
っ て い る正 準 変 換 もあ る。 正 準 変 換 は,点 変 換 に較 べ,は に,時
る か に広 い 変 換 の可 能 性 を提 供 して い る 。 さ ら
間 tを Q や Ⅱ と同 じ独 立 な 変 数 と して 扱 う よ う な考 え方 もあ る 。 そ して,
こ の 理 論 は,さ
らに,ハ
ミル トン-ヤ コ ビの 理 論 な どへ と発 展 して ゆ く。
24.6事
例:1
自 由 度 バ ネ-マ
ス系
線 形 な 1自 由度 バ ネ-マ ス 系 の 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に書 け る 。
(24.66)
mx+kx=0 こ こ で は,m
は 質 量,k
は バ ネ 定 数,x
は 変 位 を 表 す ス カ ラー で あ る。 こ の 系 の
ラ グ ラ ン ジ ア ン L は 次 の よ うに 書 け る。
(24.67) こ の系 の 一 般 化 座 標 Q は xで,一
般 化 運 動 量 Ⅱ は次 の よ うに 求 ま る。
(24.68) ハ ミ ル ト ニ ア ン H は,次
の よ う に求 ま る 。
(24.69) 正 準 運 動 方 程 式 は,次
の ようになる。
(24.70) (24.71) こ こ で,式(24.34)の
W"を 次 の よ う に し て,正
準 変 換 を 考 え る。
(24.72) この 式 の 時 間 微 分 は 次 の よ う に な る。
(24.73) 式(24,34)か
ら,次
の 三 式 を得 る。
(24.74) (24.75) (24.76)
最 初 の 二式 を整 理 す る と,次 の よ う な正 準 変 換 が 得 られ る 。
(24.77) (24.78) こ れ ら を 式(24.69)に
代 入 す る と,変
換 後 の ハ ミ ル トニ ア ンH′(Q' ,Ⅱ',t)が 得 ら
れ る。
(24.79) 正 準 運 動 方 程 式 は,次
の よ う に な る。
(24.80) (24.81) 新 しい 変 数 の 場 合 は簡 単 に積 分 で き て,次 の よ う に な る。
(24.82) (24.83)
Ⅱ′=C2
c1,C2は
積 分 定 数 で あ る 。 式(24.79)の
い 。 す な わ ち,Q'は
循 環 座 標 で あ り,共
ハ ミ ル ト ニ ア ン に は Q′が 含 ま れ て い な 役 の Ⅱ ′は,式(24
.83)の
よ うに定数 で
あ る。 Q'と Ⅱ ′が 求 ま っ た の で,式(24.77)と(24.78)を
用 い て 元 の 変 数 に戻 す こ とが
で きる 。
(24.84)
(24.85) これ は確 か に 1自 由 度 バ ネ-マ ス 系(24.66)の
運 動 で あ る 。 式(24.77),(24
の 変 換 は ポ ア ン カ レ変 換 と呼 ば れ る。 そ して,こ
.78)
の よ うな 便 利 な変 換 を見 つ け る
手段 が ハ ミル トン-ヤ コ ビの 方 法 で あ る が,そ の 方 法 に つ い て は他 の 文 献 を 参 照 され た い 。
付録 A
座標軸 を表 す幾何 ベ ク トル と その応用
運 動 力 学 の 基 本 的 な 量 を認 識 し,理 解 す る た め に,幾 何 ベ ク トル表 現 は便 利 で 重 要 な手 段 で あ る。 一 方,計 算 機 を利 用 した 数 値 計 算 に は,代 数 ベ ク トル 表 現 が 必 要 で あ る 。 こ の 付 録 で は 両 者 の 橋 渡 し をす る 数 学 的 手 段 とそ の応 用 を説 明 す る。 こ の 数 学 的 手 段 に は,座 標 系 の座 標 軸 を 表 す 基 底 幾 何 ベ ク トル を用 い る。 本 書 で は こ れ を3×1列
行 列 に並 べ て 基 底 列 行 列 に ま とめ,コ
ンパ ク トな 道 具 に し
た。 これ は 幾 何 ベ ク トル と代 数 ベ ク トル の 橋 渡 し以 外 に,関 係 式 の 導 出 な ど に も 用 い られ る 。 こ こ に 説 明 す る 内容 は,本 文 の 感 覚 的 な説 明 や 結 果 だ け の解 説 を数 学 的 に裏 打 ち す る もの で あ り,明 確 な理 解 を得 る た め に,こ の付 録 は 重 要 で あ る 。
A1座 A1.1座
標軸を表す幾何ベク トル 標 系 の基 底 列 行 列
座 標 系 O のX,Y,Z軸
を 表 す 単 位 長 さ の 幾 何 ベ ク トル
幾 何 ベ ク トル と呼 び,次 の よ うに3×1列
行 列 に ま とめ て,eoと
を基 底 す る(3.3節)。
(A1.1)
eoを,基
底 列 行 列 と呼 ぶ こ とに す るが,こ れ は,概 念 的 に は 座 標 系 0 そ の もの で
あ る。eoの 添 え 字 を変 え てeAと す れ ば,座 標 系 A で あ る 。 こ れ ら を,座 標 変 換 行 列 の定 義 や 幾 何 ベ ク トル と代 数 ベ ク トル の 変 換,関 係 式 の 導 出 な ど に利 用 す る。 eは,座 標 系 の 基 底 幾 何 ベ ク トル とそ の 列 行 列 を表 す た め の 専 用 の記 号 とす る。 こ の基 底 列 行 列 に も外 積 オペ レー タ ー を作 用 させ る こ とが で きる 。
(A1.2) 基 底 列 行 列 は,様
々 な 関 係 を簡 潔 に表 現 す るた め に便 利 で あ るが,そ
の演算操作
に あ た っ て は 幾 何 ベ ク トル の 演 算 操作 規 則 と行 列 の演 算 操 作 規 則 の 両 方 を満 た す 必要 が ある。
A1.2幾
何 ベ ク トル表 現 と代 数 ベ ク トル 表 現 の変 換
基 底 列 行 列 を用 い て,幾 何 ベ ク トル か ら代 数 ベ ク トル を作 る 操 作 は次 の よ う に 表 現 で き る。
(A1.3) (A1.4) (A1.5) (A1.6) (A1.7) (A1.8) (A1.9) (A1.10) (A1.11) 代 数 ベ ク トル に は 二 つ の添 え 字 を並 べ て い るが,そ
の 中 の左 側 の 添 え字 に 関 係 す
る 座 標 系 が 用 い られ て い る場 合 は ダ ッ シュ を付 け ず,右 側 の 添 え字 に 関係 す る座 標 系 が 用 い ら れ て い る場 合 は,ダ
ッ シ ュ を付 け る こ と に し て い る 。 した が っ て,
点 P が 剛 体 A 上 の 点 で,剛 体 A に座 標 系 A が 固定 され て い れ ば,次 の よ う な 代 数 ベ ク トル も考 え られ る。
(A1.12) (A1.13) (A1.14) 式(A1.9),(A1.11),(A1.14)を
見 る と,F′OA,N′OA,f′Opの
味 な こ と が 分 か る 。 こ れ ら は,「 座 標 系 0 で は な く,座
左 側 の 添 え 字 は無 意
標 系 A で 表 され た …」 と
読 め ば よ く,ま た,0
以 外 の 記 号 を用 い て も よ い 。 た だ し,慣 性 座 標 系 0 が 用
い られ る か,剛 体 座 標 系 が 用 い られ る か の どち らか とい う考 え 方 が,実 用 上,重 要で ある。 代 数 ベ ク トル か ら幾 何 ベ ク トル を復 元 す る操 作 は,角 速 度 を例 に とっ て,次 の よ う に 書 くこ とが で きる 。
(A1.15) 式(A1.3)∼(A1.14)の ッ ト)を
右 辺 は 幾 何 ベ ク トル の 内 積 で あ る か ら,積
用 い て い る 。 一 方,式(A1.15)に
の 記 号 に ・(ド
出 て く る 積 は 幾 何 ベ ク トル と 実 数 の 積
で あ り,記
号 の な い 積 に な っ て い る 。 本 書 で は,・(ド
積,×(ク
ロ ス)は
ッ ト)は
幾 何 ベ ク トル の 外 積 の み に 用 い,幾
幾 何 ベ ク トル の 内
何 ベ ク トル と 実 数 , 実 数
と実 数 の 積 に は積 の 記 号 を用 い な い も の と して い る。
Ω′OAは三 つ の成 分 を 持 っ た3×1列 す た め に,次
の よ う な3×1列
行 列 で あ る 。 この 行 列 か ら各 成 分 を取 り出
行 列が便利 である。
(A1.16)
(A1.17)
(A1.18)
た と え ば,X 成 分 を取 り出 す 操 作 は 次 の よ う に書 け る。
(A1.19) Y 成 分,Z 成 分 も同 様 で あ る 。 逆 に,成 分 か ら代 数 ベ ク トル を構 成 す る場 合 に も 利 用 で き る。
(A1.20) な お,幾 何 ベ ク トル と代 数 ベ ク トル の考 え方 を 混 同 し,時 折,eoxとDXを
同一
視 す る 誤 りが 見 受 け られ る の で,注 意 を喚 起 して お く。 この よ うな 誤 りに気 づ く た め に,た
とえ ば,次 の 式 を確 認 す る こ とが役 立 つ か も しれ な い 。
(A1.21) (A1.22) (A1.23)
A1.3
座 標 変 換 行 列 の定 義
基 底 列 行 列 を 用 い て 座 標 変換 行 列 の定 義 は 次 の よ う に書 け る 。
(A1.24) eA,eBの
要 素 は 幾 何 ベ ク トル で あ る か ら,こ の 式 の右 辺 は幾 何 ベ ク トル の 内 積
で あ り,・(ド ッ ト)が 用 い られ て い る。 座 標 変 換 行 列 の 定 義 と して,次 の 表 現 が 便 利 な場 合 もあ る。
(A1.25)
eA=CABeB (A1.25)か
ら(A1.24)を
導 く こ と は 容 易 で あ る 。 し か し,逆
知 識 が 必 要 で あ り,簡 が,(A1.25)を
単 で は な い 。(A1.24)の
は,テ
ン ソル な ど の
ほ うが 定 義 に 似 つ か わ し い 形 だ
基 礎 に置 くほ うが よ さ そ うで あ る。
A1.4 座 標 系 基 底 列 行 列 の 性質 基 底 列 行 列eAに
は次 の よ う な性 質 が あ る。
(A1.26) (A1.27) 式(A1.26)は,3.3節
の 式(3.5)と
同 じ で あ る 。 式(A1.27)は
式(3.6)と(A1.2)か
ら得 られ る。 次 に,(A1.25)と(A1.27)を
用 い る次 の 関係 が 得 られ る。
(A1.28) こ の 式 を用 い る と,式(6.17)を
A1.5
導 くこ とが で きる 。
幾何 ベ ク トル 表現 と代 数 ベ ク トル表 現 の変 換 事 例
幾 何 ベ ク トル 表 現 と代 数 ベ ク トル表 現 の 変 換 事 例 と して,8.1節
の 式(8.1)と
(8.2)の 変 換 を 考 え て み る 。 【8.1】 【8.2】 ま ず,式(8.1)か
ら(8.2)を
作 る に は,式(8.1)の
左 か らeA・(注 )を 掛 け る 。
(A1.29) 右 辺 第 二 項 のeAに
は,式(A1.25)を
代入す る。
(A1.30) こ の 式 の 各 項 は 直 ち に,式(8.2)の 式(8.2)か
ら(8.1)を
対 応 す る項 に な る。
作 る に は,式(8.2)の
左 か ら 〓 を掛 け る 。
(A1.31) こ こ で も 式(A1.25)を
代 入 す る と,右
辺第二項 は次の ようになる。
(A1.32) こ の 式 か ら 直 ち に 式(8.1)が
得 られ る。
A2 座標軸を表 す幾何ベ ク トルの時間微分 A2.1 基 底 列 行 列 の時 間 微 分 剛 体 B に 固 定 さ れ た 幾 何 ベ ク トル b を 剛 体 A か ら観 察 し た 時 間 微 分 に つ い て,第
9章 に 次 の 基 本 的 な式 が 示 され て い る 。 【9.1】
こ の 式 の 成 立 は,ま ず,矢
印 b の 始 点(矢
の つ い て い な い 端 点)が,剛
体 Aか
ら観 察 した 剛 体 B の 瞬 間 回 転 中 心 軸 上 に あ る場 合 に つ い て 確 認 す る こ とが で き る。 そ の 場 合,こ
の 式 の 左 辺 と右 辺 は い ず れ も,剛 体 A か ら見 た矢 印 b の 終 点
(矢 の つ い て い る端 点)の
速 度 で あ り,等 号 が 成 り立 つ 。 b の 始 点 が 回 転 軸 上 に
な い 場 合 は,回 転 軸 上 の 適 当 な 点 か ら b の 始 点 と終 点 に 向 か う二 つ の 幾 何 ベ ク
(注)eAの 場 合 はeA×
後 ・は 意 味 が あ る 。 左 か ら 内 積 と し て 掛 け る と い う 意 味 で あ る 。 外 積 と し て 掛 け る と な る 。 ま た 右 側 か ら掛 け る 場 合 は,・eA,×eAと
する。
トル を考 え,そ
の 二 つ の 幾 何 ベ ク トル に 関 す る同 形 の式 の 差 を取 る こ とで 説 明 で
き る。 さ て,剛 体 B に固 定 され た 座 標 系 B の 各 座 標 軸
は,剛 体 B に
固 定 さ れ た 幾 何 ベ ク トル で あ る 。 したが っ て,こ れ ら に つ い て も,同 じ関 係 が 成 り立 ち,三 つ の 座 標 軸 を ま とめ て,基 底 列 行列 に関 す る 次 の 式 が 得 られ る。
(A2.1) こ の 式 の 右 辺 は ΩAB×eBと 書 い て も よ い 。 しか し,eBは3×1,ΩABは
単独 要素
で あ るか ら,行 列 の 普 通 の積 の 形 に して お い た ほ うが 代 入 操 作 に対 して 安 全 で あ る。 積 の 順 序 の 入 れ 替 え は,幾 何 ベ ク トル の外 積 の 場 合 は符 号 の 反 転 を伴 う の で,負 号 が つ い て い る。(A2.1)の
特 殊 な場 合 と して,次
の 式 が 成 立 す る。
(A2.2) 剛 体 に 固 定 した 幾 何 ベ ク トル をそ の 剛 体 上 か ら観 察 して も変 化 しな い の で,時
間
微 分 が ゼ ロ に な る の は 当 然 で あ る。
A2.2 幾 何 ベ ク トル 表 現 か ら代 数 ベ ク トル 表 現 を 求 め る事 例 位 置 の 時 間 微 分 と速 度 の 関係 は,幾 何 ベ ク トル表 現 と代 数 ベ ク トル 表 現 で,式 (4.5)と(4.2)に 与 え られ て い る 。 【4.5】
【4.2】
幾 何 ベ ク ト ル 表 現(4.5)か (4.5)に
と
ら 代 数 ベ ク ト ル 表 現(4.2)を
求 め て み よ う 。 ま ず,式
を 代 入 す る 。 そ し て,左
辺 を次 の ように変形
す る。
(A2.3) 最 初 に 変 形 は,式(A2.2)に よ る。 次 の 変 更 は 代 数 ベ ク トル の 時 間微 分 が オ ブ ザ ー バ ー に よ らな い こ と に よ る 。 この 変 形 の 後,右 辺 と左 辺 にeo・ を左 か ら掛 け て
式(A1.26)を
用 い れ ば,各
座 標 軸 の 成 分 だ け が 取 り 出 さ れ,式(4.2)に
な る。
A2.3 座 標変 換 行 列(回 転 行 列)の 時 間微 分 式(A1.24)の で,時
時 間微 分 を作 る場 合,右
辺 は 幾 何 ベ ク トル の 時 間微 分 に な る の
間微 分 の オ ブ ザ ー バ ーが 必 要 で あ る 。 この よ うな 場 合,オ
意 に 一 つ 定 め れ ば よ い の で,剛 体 A とす る 。 そ の 結 果,eAは
ブザ ー バ ー は任 定 数 に な る の で,
時 間微 分 は次 の よ うに な る。
(A2.4) こ の よ う な式 の 変 形 時 に も 内積 を示 す ・(ド ッ ト)を 保 持 し続 け る こ と を忘 れ て は な ら な い。 右 辺 の カ ッコ 内 は,式(A2.1)を
変 形 して,次
の よ うに 書 け る。
(A2.5) 最 初 の変 形 は式(A1.15)の
最 後 の 表 現 を利 用 し,幾 何 ベ ク トル を代 数 ベ ク トル 表
現 に 直 して い る。 2番 目は(A1.27)を で あ る。 最 後 の 結 果 を(A2.4)に
用 い,最 後 の変 形 は外 積 の 順 序 の 入 れ 替 え
代 入 して,さ
らに 変 形 す る 。
(A2.6) こ こ で の 変 形 は,ま 代 入 し て,次
ず 転 置 を は ず し,式(5.7)を
利 用 し た 。 最 後 に 式(A1.24)を
の重 要 な 関 係 が 得 られ る。
(A2.7) ダ ッシ ュ の 付 か な い ΩABを 用 い た 関係 も 同様 に して 導 くこ とが で き る。
3次 元 回転姿勢 と角速度 に
付録B
関す る補足
3次 元 の 回転 姿 勢 は特 別 に複 雑 で あ る。 第 7章 ∼ 第 9章 に は 回 転 姿 勢 を表 す 基 本 的 な 方 法 と,そ れ に関 わ る 関 係 式 を 説 明 した 。 しか し,関 係 式 の 中 に は そ の 導 出 が 複 雑 過 ぎる な どの 理 由 で,本 文 中 に含 め な い ほ うが よい と思 わ れ る も の が あ っ た 。 そ の よ うな 関 係 式 の 導 出 を こ の付 録 で 補 足 す る 。 また,3 次 元 の 回転 姿 勢 を表 す 方 法 で,本 文 に は 説 明 の な か っ た ロ ドリ ゲ ス パ ラ メ ー タ を 追加 す る。 こ の付 録 に は,オ て 複 数 の方 法 で 説 明 さ れ て い るが,そ と便 利 な もの が あ る。 また,2×2複
イ ラ ーパ ラ メー タ に 関 わ る 関 係 式 につ い
の 中 に,ロ
ドリゲ スパ ラ メ ー タ を利 用 す る
素 行 列 で 回 転 姿 勢 を表 す 方 法 な ど も 出 て く
るが,回 転 姿 勢 表 現 に 関 わ る多 様 性 は興 味 深 い 。 角 速 度 の 三 者 の 関 係 に 関 す る説 明 も含 まれ て い る。
B1
Simple
Rotationか
こ の 節 で は,Simple
ら回転行 列 を作 る式
Rotation(λAB,φAB)か
ら 回 転 行 列CABを
作 る 式(7.3)の
導 き方 を示 す 。 図B1.1は,eAXを
λABま わ り に φAB回 転 さ せ た と き にeBXに
一致 す る様子 を
描 い た も の で あ る 。 こ の 図 を 見 な が ら 次 式 の 右 辺 の 各 項 が 表 す 幾 何 ベ ク トル を 注 意 深 く調 べ そ れ ら の 和 を 取 る と,左
辺 の 幾 何 ベ ク トル に 一 致 す る こ と が 分 か る 。
(B1.1) 同 様 の 式 がeAY,eAZに
つ い て も 成 立 す る の で,結
局,三
つ を ま とめ た 次 の 式 が
成 立 す る。
(B1.2)
eAXを
図B1.1
λABま わ り に φABま わ す とeBX
にな る 関係
λABは 基 底 列 行 列eBと
代 数 ベ ク トル λABを 用 い て 次 の よ う に 表 す こ とが で き
る。
(B1.3) こ れ を 式(B1.2)に
代 入 し て,次
の よ う に な る。
(B1.4) 基 底 列 行 列eBと
そ の転 置 〓 の 内 積 と外 積 は,次
の 置 き換 え を行 う。
(B1.5) (B1.6) こ れ に よ り,式(B1.4)は
次 の よ う に な る。
(B1.7) こ の 式 は,さ
ら に,次
の よ うに 変 形 で きる 。
(B1.8) こ の 式 の 両 辺 に,右
側か ら ・ 〓 を掛 け る と次 の よ うに な る。
(B1.9) 式(A1.24)と(B1.5)を
用 い る と,λABと
φABに よ る 回 転 行 列 の 式 に 到 達 す る 。
(B1.10)
B2
ロ ド リゲ ス パ ラ メ ー タ
ロ ドリゲ ス パ ラ メ ー タ は 3 自由 度 の 回転 姿 勢 を三 つ の ス カ ラ ー 変 数 で 表 現 す る もの で あ り,特 異 性 は避 け られ な い が,オ の 関 係,三
イ ラー 角 に比 べ て 関係 式(回
者 の 関 係,角 速 度 との 関 係)が,オ
転行列 と
イ ラ ー パ ラ メ ー タ と同 程 度 に簡 単
で あ る。 座 標 系 A か ら 見 た 座 標 系 B の 回 転 姿 勢 を表 す ロ ドリ ゲ ス パ ラ メ ー タ ρABは,Simple
Rotationの
λABと φABを 用 い て 次 の よ う に定 義 され る。
(B2.1)
あ る い は,
(B2.2) オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ と は次 の よ う に密 接 に 関 係 して い る。
(B2.3) ま た,オ
イ ラ ー パ ラ メ ー タ と 同 様 で,-ρABも
ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ か ら,回
ρABと 同 じ 回 転 を 表 し て い る 。 ロ
転 行 列 を 作 る 式 は 次 の と お りで あ る 。
(B2.4)
(B2.5)
こ の 式 は 式(7.17)と
式(B2.3)を
用 い て 導 くこ とが で き る 。
ロ ドリ ゲ ス パ ラ メ ー タの 三 者 の 関係 は 次 の とお りで あ る。
(B2.6) この 関 係 の 導 出 もか な り面 倒 で あ るが,B5節
に説 明 が あ る 。
角 速 度 か ら ロ ドリゲ ス パ ラ メ ー タの 時 間微 分 を 求 め る に は 次 の 関係 を用 い れ ば よい 。
(B2.7) 逆 に,ロ
ド リゲ ス パ ラ メ ー タ の 時 間微 分 か ら角 速 度 を求 め る 場 合 は 次 の 式 に よ
る。
(B2.8) ロ ドリゲ ス パ ラメ ー タ と角 速 度 の 関係 はB9節
に説 明 され て い る。
ロ ドリゲ スパ ラ メー タは オ イ ラ ー角 よ り特 異 性 の制 約 が 大 きい が,回 転 行列 や 角 速 度 の 関 係 は オ イ ラ ーパ ラ メ ー タ と同 程 度 に簡 単 で あ り,三 つ の 変 数 で 回転 姿 勢 を表現 で き る 点 が 長 所 で あ る。
B3 2×2複 素行列 による座標変換 こ の 節 で は,ま
ず,位
置,速
分 に よ っ て作 ら れ る2×2エ
度,角 速 度 な ど の3×1代
数 ベ ク トル を,そ の成
ル ミ ー ト行 列 に 表 現 し直 す 。 同 一 の 幾 何 ベ ク トル か
ら作 られ た 二 つ の代 数 ベ ク トル 間 に は座 標 変 換 行 列 に よ る 変 換 関係 が あ るが,対 応 す る2×2エ
ル ミー ト行 列 間 の座 標 変 換 は2×2ユ
され る。 そ して,そ
ニ タ リー 行 列 に よ る こ とが 示
の ユ ニ タ リー 行 列 は 四つ の パ ラ メ ー タで 特 徴 付 け られ,そ
の
四 つ の パ ラ メ ー タが オ イ ラ ーパ ラ メー タ で あ る 。
B3.1
3×1代
数 ベ ク トル の2×2エ
ル ミ ー ト行 列 表 現
剛 体 A か ら見 た 剛体 B の角 速 度 の代 数 ベ ク トル は,座 標 系 A と座 標 系 B で 作 る と,ΩABと
Ω'ABにな る 。 座 標 系 B に よ る 表 現 か ら座 標 系 A に よ る表 現 へ の 座
標 変換 は座 標 変 換 行 列CABに
よる。
(B3.1) こ こ で,ΩABの
三 成 分 を 用 い て,次
の よ う な2×2複
素 行 列PABを
考 え る。
(B3.2) こ こ で は,P
は 運 動 量 と は 無 関 係 で あ る 。 σ1,σ2,σ3はPauliの
呼 ば れ る も の で,ⅰ を 虚 数 単 位 と し て,次
ス ピン行列 と
の と お りで あ る 。
(B3.3)
(B3.4)
(B3.5) これ らの 共 役 転 置 は も との 行 列 と同 じ に な る の で,こ れ らは エ ル ミー ト行 列 で あ る。 した が っ て,PABも
エ ル ミー ト行 列 に な る。 な お,複 素 行 列 の 中 の エ ル ミー
ト行 列 は,実 行 列 の 中 の 対 称 行 列 に 対 応 す る もの で あ る。 ス ピ ン行 列 の 行 列 式 はい ず れ も-1 で あ る。
(B3.6) ま た,二 つ を 選 ん で積 を作 る と次 の よ う に な る 。
(B3.7) (B3.8) (B3.9) た だ し,式(B3.8)と(B3.9)の 2)の
い ず れ か で あ る(こ
添 え 字 の(i,j,k)は,(1,2,3),(2,3,1),(3,1, こ で は,虚
数 単 位 のⅰ と 添 え 字 の iを 区 別 す る た め,虚
数 単 位 は 立 体 文 字 に し て い る)。 PABの
行 列 式 は,次
の よ う に,ΩABの
長 さ の二 乗 に負 号 を付 け た も の に な っ て
い る。
(B3.10) こ の こ と は,式(B3.2)の
行 列 式 を実 際 に計 算 して み れ ば 容 易 に確 認 で きる。
Ω'ABに つ い て も 同 様 な エ ル ミ ー ト行 列P'ABを
対 応 させ る こ とが で きる。
(B3.11) (B3.12)
│PAB│と│P'AB│は,同 ら,等
じ 幾 何 ベ ク トル の 長 さ の 二 乗 に 負 号 を つ け た も の で あ る か
し い 。 そ し て,PABやP'ABは,ΩABや
Ω'ABの 代 わ り に 角 速 度 を 表 す 表 現
方 法 の 一 つ に な っ て い る。 こ こ ま で は 角 速 度 を 用 い て 説 明 し て き た が,以 は,任
意 の3×1代
上 の エ ル ミ ー ト行 列 に よ る 表 現
数 ベ ク トル に 適用 す る こ とが で き る。
B3.2 2×2エ ル ミー ト行 列 の座 標 変 換 Ω'ABか ら ΩABへ そ れ は,2×2複
の 変 換(B3.1)に
素 行 列QABに
対 応 し て,P'ABか
らPABへ
の 変 換 を考 え る。
よ る 次 の よ うな 変換 とす る。
(B3.13) こ こ で,Q*ABの
右 肩 の*は
共 役 転 置 を 意 味 し て い て,こ
の式 に よ る変 換 は 共 役 変
換 と呼 ば れ て い る。 さ て,式(B3.10)と(B3.12)か
ら,PABとP'ABの
換 の 条 件 と し て 必 要 で あ る 。 そ の た め に はQABが
行 列 式 の不 変 性 が この 座 標 変 次 の 条 件 を満 たせ ば よ い。
(B3.14) こ の 式 を 満 た す 複 素 行 列QABは ニ タ リ ー 行 列 は,実
ユ ニ タ リ ー 行 列 と呼 ば れ る 。 複 素 行 列 の 中 の ユ
行 列 の 中 の 正 規 直 交 行 列 に 対 応 す る も の で あ る 。QABが
タ リ ー 行 列 の と き,式(B3.13)は
ユ ニ タ リ ー 変 換 と 呼 ば れ る 。 す な わ ち,ユ
リ ー 行 列 に よ る 共 役 変 換 が ユ ニ タ リ ー 変 換 で あ り,こ
ユニ ニ タ
れ は実 行 列 の 正 規 直 交 変 換
に対 応 す る。 ユ ニ タ リ ー 行 列QABの
行 列 式 は+1
を 付 け 加 え る 。 そ の よ う な2×2ユ 実 数 ε0AB,ε1AB,ε2AB,ε3ABに
か-1
に な る が,+1
ニ タ リ ー 行 列 は,二
に なる よ うに条件
乗 和 が+1
にな る四つの
よっ て 次 の よ う な形 で 表 す こ とが で きる 。
(B3.15) (B3.16) QABの
行 列 式 が+1
で き る 。 ま た,QABの
に な る こ と は,PABの
場 合 と 同 様 に,容
易 に確 か め る こ とが
共 役 転 置 行 列 は 次 の よ うに な る。
(B3.17) QABの
ユ ニ タ リ ー 性 の 検 証 も容 易 で あ る 。
結 局,二
乗 和 が 1の 四 つ の 実 数 ε0AB,ε1AB,ε2AB,ε3ABが2×2ユ
を 定 め て い る 。 そ し て,こ
の ユ ニ タ リ ー 変 換 は,正
対 応 す る も の で あ る か ら,座
標 変 換 行 列CABも
ニ タ リー 変 換
規 直 交 行 列 に よ る座 標 変換 に
四つの実 数 に よって定 まってい
るはず である。 ま た,座
標 変 換 行 列CABが
座 標 系 A か ら見 た 座 標 系 B の 回転 姿 勢 表 現 の 一 つ
で あ る こ と と 同 じ 意 味 で,QABも
同 じ 回 転 姿 勢 表 現 の 一 つ と い え る 。QABを
タ リ ー 回 転 行 列 と 呼 ん で も よ い で あ ろ う 。 そ し て,四
ユニ
つ の 実 数 ε0AB,ε1AB,ε2AB,
ε3ABも 同 じ 回 転 姿 勢 の 表 現 形 態 の 一 つ と い え る 。
B3.3
2×2ユ ニ タ リー変 換 を 定 め て い る 四 つ の実 数 と
座標変換行列の関係 式(B3.13)に
よ る 座 標 変 換 を 調 べ る た め に,ま
ず,Pauliの
を,式(B3.7)∼(B3・9)を
ス ピ ン行 列 の 変 換 利 用 し て,計
算 す
る と次 の よ う な結 果 が得 られ る。
(B3.18)
(B3.19)
(B3.20) な お,こ
れ ら の 式 の 右 辺 で は 四 つ の 実 数 の,共
通 の添 え字 を括 弧 の外 に 括 り出 し
て 示 して あ る。 さ て,式(B3.3)に し て,σ 1,σ2,σ3の
式(B3.2)と(B3.11)を
代 入 し,式(B3.18)∼(B3.20)を
利用
係 数 を 比 較 す る こ と に よ り次 の 関 係 が 得 ら れ る 。
(B3.21) こ の 結 果 と 式(B3.1)を
対 比 す る と,QABに
よ る 式(B3・13)の
座標 変換が 回転行列
CABに
よ る座 標 変 換 と 同 じ働 き に な っ て い て,QABを
特 徴 付 け て い る 四つ の 実 数
が,座 標 変 換 の 働 き を定 め て い る こ とが わか る 。座 標 変 換 と 回転 姿 勢 は 表 裏 一 体 で あ るか ら,四 つ の 実 数 は 回転 姿 勢 表 現 に な っ て い る と もい え る。 こ こ で 得 られ たCABと
四 つ の実 数 の 関係 は,7.4節
に示 され て い る オ イ ラ ー パ ラ メ ー タか ら回
転 行 列 を作 る式 と同 じで あ り,オ イ ラ ーパ ラ メ ー タは,QABを
特 徴 付 け て い る四
つ の 実 数 で あ る。
B4 オイラーパ ラメータの三者 の関係 前 節 に 説 明 した ユ ニ タ リー 回 転 行 列 の三 者 の 関 係 は容 易 に求 ま る。 こ れ を利 用 す る と オ イ ラー パ ラ メ ー タの 三 者 の 関 係 が 得 られ る。
B4.1 2×2ユ ニ タ リー 回 転行 列 の 三 者 の 関係 剛 体 A か ら見 た 剛 体 B の 角 速 度 の代 数 ベ ク トル を座 標 系 C で 作 り,〓Bと す こ とに す る。 こ の 記 号 は,前 項 の 延 長 と して 説 明 す る た め に,こ
表
こだ けで 用 い
る もの で あ る。 さ て,座 標 系 C の 表 現 か ら座 標 系 B の 表 現 へ の 座 標 変 換 は 正 規 直 交 座 標 変換 行 列CBCに
よ る。
(B4.1) ま た,座 標 系 C の 表 現 か ら座 標 系 A の 表 現 へ の 座 標 変 換 は 正 規 直 交 座 標 変 換 行 列CACに
よ っ て い る。
(B4.2) これ ら の 式 と式(B3.1)か
ら正 規 直 交 座 標 変 換 行 列,あ
る い は,正 規 直 交 回 転 行
列 の 三 者 の 関 係 が 得 られ る 。
(B4.3)
CAC=CABCBC 一方
,Ω
〓Bに 対 応 し て Ω〓Bの 成 分 か らP〓Bを
作 る こ とが で きる。
(B4.4) こ こ で,P〓Bか QBCとQACに
らP'ABへ
の 座 標 変 換 とP〓Bか
らPABへ
の 座 標 変 換 はそ れ ぞ れ
よる 。
(B4.5)
(B4.6) 正 規 直 交 回 転 行 列 の 場 合 と同様 に,こ
の二 つ の 式 と式(B3.13)か
ら次 の 関 係 が 得
られ る。
(B4.7) こ れ は,ユ
ニ タ リ ー 座 標 変 換 行 列,あ
る い は,ユ
ニ タ リー 回 転 行 列 の 三 者 の 関係
で あ る。
B4.2 オ イ ラー パ ラメ ー タ の三 者 の 関 係 QBCとQACは
式(B3.15)と
同様 に 次 の よ うに 書 け る 。
(B4.8) (B4.9) 式(B3.15)と(B4.8)を I2,iσ1,iσ2,iσ3の
用 い て 式(B4.7)の
右 辺 を 計 算 し,式(B4・9)と
対 比 し て,
係 数 を等 置 す る と次 の 結 果 が 得 られ る 。
(B4.10)
こ の 結 果 が 式(8.7)で
あ る。
B5 ロ ドリゲスパラメータの三者の関係 こ の 節 で は ロ ドリ ゲ ス パ ラ メ ー タの 三 者 の 関係 を導 く。 こ の 結 果 は,次 節 で, 再 び オ イ ラー パ ラ メ ー タの 三 者 の 関係 を 導 くた め に 利 用 され る。
B5.1
準備
座 標 系 A に 対 す る座 標 系 B の 単 純 回 転 を 考 え る と き,そ の 回 転 軸 を表 す 代 数 ベ ク トル λABと 各 座 標 系 の 基 底 列 行 列eA,eBと
の 間 に は次 の よ う な 関係 が あ る 。
(B5.1)
こ の 式 と オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ,ロ
ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ の 定 義 か ら,次
の 関係 も明
らか で あ る。
(B5.2) (B5.3) 式(B5.2)は,ロ 式(B5.3)と
ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ の 三 者 の 関 係 を 求 め る た め に は 必 要 な い が, 本 質 的 に 同 じ 関 係 で あ り,書
い て お い た。
ロ ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ と 回 転 行 列 の 関 係 はB2節
に与 え られ て い る 。 【B2.4】
こ の式 を利 用 す る と次 の 関係 を確 認 す る こ とが で き る。
(B5.4) こ の 関係 か ら,次 の 式 も容 易 に 得 られ る。
(B5.5) こ の 式 は次 の よ うに 変 形 で きる 。
(B5.6)
B5.2 三 者 の 関 係 の 導 出 以 上 の 準 備 の も と に ロ ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ の 三 者 の 関 係 を 導 く が,ま 系 B と 座 標 系 C の 間 に も 式(B5.3),(B5.6)と
ず,座
標
同様 の 関 係 が あ る。
(B5.7)
(B5.8) さ て,座 6)と(B5.8)の
標 系 A と 座 標 系 C の 間 に あ る 同 様 の 関 係 を 作 れ ば よ い の で,式(B5. 和 を作 る 。
(B5.9) 右 辺 のeBの 項 を取 り除 きた い の で,式(B5.6)と(B5.8)の
左 辺 か ら同 じ項 を作 る
こ とを 考 え る。 そ の た め に,両 式 の そ れ ぞ れ に外 積 オ ペ レー タ を作 用 させ,変 形 して 次 式 を作 る。
(B5.10) (B5.11)
式(B5.10)に
右 か ら ρBCを 掛 け,式(B5.11)に
の 入 れ 換 え,両
式 の 引 き 算 を 行 え ば 目 指 すeBの
右 辺 第 一 項 のeBは
右 か ら ρABを 掛 け て,外
項 を作 る こ とが で き る。 両 式 の
こ の 操 作 で 消 去 で き る 。 右 辺 第 二 項 のeBは
ら 掛 け る の で,式(B5.3)と(B5.7)を 以 上 の 操 作 か ら,目
指 すeBの
積 の順序
利 用 し てecとeAに
ρBCと ρABを 右 か
変 え る こ と が で き る。
項 は次 の よ う に求 ま る。
(B5.12) こ の 結 果 を 式(B5.9)に
代 入 し,整
理 す る と,次
の 関 係 が得 られ る。
(B5.13) 式(B5.13)は,式(B5.6),ま 系 C の 関 係 で あ る か ら,右
た は,(B5.8)と
同 じ 形 で あ り,座
標 系 A と座 標
辺 の 分 数 に な っ て い る 部 分 は ρACに 等 し い 。
(B5.14) そ して,こ れ は式(B2.6)の
両 辺 に 外積 オ ペ レー タ を作 用 させ た 形 に な っ て い る。 【B2.6】
B6 再 び,オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 三 者 の 関 係 に つ い て 式(B2.6)か ま ず,ロ
ら,オ
イ ラ ー パ ラ メ ー タ ー の 三 者 の 関係 を 求 め る こ と もで き る。
ドリゲ ス パ ラ メ ー タ とオ イ ラー パ ラ メ ー タの 間 に は 次 の 関 係 が あ る。
【B2.3】
こ の 関 係,お
よ び,ρACと
ρBCに 関 す る 同 様 の 関 係 を 式(B2.6)に
代 入 し て,整
理
す る と次 の よ うに な る。
(B6.1) こ の式 の 転 置 を作 り,左 辺 と右 辺 別 々 に 元 の 式 の左 か ら掛 け て,右 辺 は 次 の よ う に整 理 す る。
(B6.2) 左 辺 の 分 子 の ε〓CεACを1-ε
〓ACに 置 き 換 え 分 母 を 払 う と,次
の 関 係 が 得 られ る。
(B6.3) こ の 式 か ら ε0ACを 定 め る こ と が で き る 。 こ の と き,(ε0AC,εAC)も(-ε0AC, -εAC)も
同 じ 回転 姿 勢 を表 す こ とか ら
,次
の よ う に符 号 を 選 ん で よ い 。
(B6.4) こ の 結 果 と式(B6.1)か
ら,εACを
求 め る 式 も得 ら れ る 。
(B6.5) こ れ ら二 つ の 式 を ま とめ る と次 の よ う に書 け る 。
(B6.6) こ の 結 果 は 式(B4.10)と
同 じ で あ り,ま
た,式(8.10)のSABを
利 用 して 次 の よ う
に表 現 す る こ と もで きる。
(B6.7)
B7 三 度,オ
イ ラー パ ラメ ー タの三 者 の関 係 につ いて
オ イ ラ ー パ ラ メ ー タの 三 者 の 関 係 を,複 素 数 を利 用 した 共 役 変 換 を用 い た り, ロ ドリゲ スパ ラ メ ー タ を経 由 した り して 導 い て きた 。 こ こ で は,第
7章 に与 えた
オ イ ラー パ ラ メ ー タ の定 義 とそ の 性 質 を も と に,直 接,三 者 の 関 係 を説 明 す る。
B7.1
塗備
式(8・10)にSABが
与 え られ て い る。 【8.10】
こ こ で は さ ら に,類
似 の 形 のGABを
準備す る。
(B7.1) これ ら を用 い る と,回 転 行 列 は 次 の よ うに 表 さ れ る 。
(B7.2)
GAB,SABに
つ い て 次 の よ う な 関 係 が 成 立 す る。
(B7.3) (B7.4) (B7.5) ま た,次 の 関係 が役 立 つ こ と もあ る。 GABECD=-GCDEAB
(B7.6)
SABECD=-SCDEAB
(B7.7)
以 上 の 関 係 式 は,式(8.10),(B7.1)な
どを 直接 代 入 して確 認 す る こ とが で き る 。
B7.2 三 者 の関 係 こ こ で示 した い 三 者 の 関 係 は 次 の 式 で あ る。
(B7.8) ZABの 逆 行 列 がZ〓Bに な る こ と は容 易 に 確 認 で き る の で ,こ の 式 を 次 の よ う に書 き換 え る こ とが で き る。
(B7.9) そ こ で,次 の 式 が 示 せ れ ば よい 。 (B7.10)
(B7.11) ま ず,CBCを
ε0BCと εBCで 表 し,ト
レ ー ス を 計 算 す る と,次
の よ う に4ε 〓BC-1と
な る こ とが 示 せ る。
(B7.12) こ の
ト レ ー ス の 計 算 に は,1.8節
C〓BCACと
し て,そ
の
表 す 。 次 い で,式(1.53)を trace(CBS)の
の 式(1
.53)が
用 い ら れ て い る 。 続 い て,CBCを
ト レ ー ス を 計 算 す る 。 ま ず,そ 用 い,CABを
計 算 を 進 め る 。 そ の 結 果,ト
ε0ABと
εABで
の 中 のCACを 表
し て,整
レ ー ス の 値 は4(ε
ε0ACと 理
εACで
し な が
〓BεAC+ε0ABε0Ac)2-1
ら,
に な る が,こ
れ は4(E〓BEAC)2-1に
等 しい 。
(B7.13) 以 上 か ら,ε0BCの
符 号 は ど ち ら を 選 ん で も よ い の で,式(B7.10)が
続 い て,CBCεBC=εBCと
同 じ 関 係 が,ABEACに
が で き る 。 そ れ に は,式(B7.2)∼(B7.7)を
示 された。
つ い て 成 立 す る こ と を示 す こ と 利 用 し て,次
の よ う に 式 の変 形 を進
め れば よい。
(B7.14) の 関 係 がE〓BEACとSABEACに
最 後 に, (B7.10),(B7.11)の
つ い て 成 立 す れ ば,式
確 認 は十 分 で あ る 。
(B7.15)
B8 角速度の三者の関係 回 転 行 列 の 三 者 の 関 係 は 式(8.6)に 時 間 微 分 す る と,次
与 え ら れ て い る 。 こ れ を,式(9.2)を
用いて
の よ うに な る。
(B8.1) こ の 式 に,C〓Bを
左 か ら掛 け る と次 の よ う に な る 。
(B8.2) 式(6.18)を
用 い,外
積 オ ペ レ ー タ を 外 す と,代
数 ベ ク トル で 表 し た 三 者 の 関 係 に
なる。
(B8.3) こ の 式 にe〓 を左 か ら掛 け る 。
(B8.4) 右 辺 第 一 項 のe〓C〓Bは,式(A1.25)を に よ り,幾
用 い てe〓 に 置 き 換 え る こ と が で き,こ
れ
何 ベ ク トル 表 現 に よ る 三 者 の 関 係 が 得 ら れ る 。
(B8.5)
B9 オイラーパラメータ,ロ ドリゲスパラメータの時間微分と 角速度の関係 B9.1 微 小 回 転 によ る一 次 近 似 回転 行 列 の 三 者 の 関係 は 次 の よ う に書 け る。
(B9.1)
CAC=CABCBC CBCは,Simple
Rotationを
用 い る と,次
の と お りで あ る 。
(B9.2) こ こ で,座
標 系 B か ら 座 標 系 C へ の 回 転 が 微 少 な も の と す る 。 こ れ は φBCが 微
少 と い う こ と で あ る 。 λBCはSimple
Rotationの
軸 を 表 す 単 位 長 さ の も の で,微
少 回 転 の 問 に 大 き く変 わ る こ と は な い 。 φBCが 微 少 で あ る こ と を 明 示 す る た め に ΔφBCと 書 く こ と に し て,そ
の 一 次 の オ ー ダ ー ま で の 近 似 を 取 る と式(B9.2)は
次
の よ う に な る。
(B9.3) こ こ で,オ (λBC,△ φBC)に
イ ラ ー パ ラ メ ー タ,ロ
ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ に つ い て の,微
少 回転
対 応 す る 一 次 近 似 は 次 の よ う に な る。
(B9.4)
(B9.5)
こ れ ら は オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ,ロ の で あ り,ま
た,εBCと
ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ の 定 義 か ら一 次 近 似 し た も
ρBCは 同 じ に な る 。
B9.2 回転 行 列 の 時 間微 分 と角 速度 の関 係 さ て,座 標 系 A か ら見 た 座 標 系 B の 角 速 度 〓ABを 考 え る 。 こ れ は,そ
の とき
の 座 標 系 B が 微 少 時 間 Δtの 間 に微 少 角 ΔφBCだ け 回 転 して 座 標 系 C に な ろ う と す る 動 き と考 え る こ とが で き,こ の 間,λBCは ほ ぼ 一 定 に な っ て い る。 こ の λBC は 瞬 間 回転 中心 軸 μABと し て よ く,一 次 近 似 で 次 の 関係 が 成 立 す る(λBCと
μCAB
の 添 え字 に注 意)。
(B9.6) この 式 を,代 数 ベ ク トル で 次 の よ うに 書 きか え る こ とが で きる 。
(B9.7) こ れ を 式(B9.3)に
代 入 す る。
(B9.8) CABの 時 間 微 分 は 次 の よ うに 書 け る。
(B9.9) 式(B9.8)を
式(B9.1)に
代 入 し,そ
れ を 式(B9.9)に
代 入 し て 整 理 す る と,結
局,
次の ようになる。
(B9.10) この 関 係 はA2.3項
で 導 か れ た 関係 と一 致 して い る 。
B9.3 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ と ロ ドリゲ スパ ラメ ー タ の 時 間微 分 と
角速度の関係 次 に,式(B9.7)を
式(B9.4)に
代 入 す る と次 の よ うに な る。
(B9.11)
EABの
時 間微 分 は 次 の よ うに 書 け る。
(B9.12) 式(B9.11)を
式(B6.7)に
代 入 し,そ
れ を 式(B9.12)に
代 入 し て 整 理 す る と,次
の
関 係 が 得 られ る。
(B9.13) εOABと εABの 時 間 微 分 に わ け て 次 の よ う に 書 く こ と も で き る 。
(B9.14) (B9.15) 式(B2.3)を
時 間 微 分 し,式(B9.14),(B9=15)を
代 入 し て 整 理 す る と,次
の 関
係 が 得 られ る。
(B9.16) 式(8.10)か
らSABに
関 す る 次 の 関 係 を示 す こ とが で きる 。
(B9.17) こ の 式 と 式(B9.13)を
用 い る と,オ
イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 時 間 微 分 か ら角 速 度 を 作
る 式 が 得 られ る。
(B9.18) ま た,式(B9.16)の
両 辺 に 左 か ら(I3-ρAB)を
掛 け て 変 形 し て ゆ く と,ロ
ドリ ゲ
ス パ ラ メ ー タ の 時 間 微 分 か ら角 速 度 を 求 め る 式 が 得 られ る 。
(B9.19)
B10
再 び,オ イラーパラメータの時間微分 と角速度の関係
B7.1にSABと
類 似 なGABを
与 え た 。 こ こ で は,さ
与 え,そ
ら に,GABとSABが
れ ら の 基 本 的 な 関 係 式(B7.2)∼(B7.7)を 関 わ る 基 本 的 な 関 係 式 で,式(B7.2)
∼(B7 .7)を 時 間微 分 す れ ば 簡 単 に 得 られ る もの 以外 を追 加 して お く。
(B10.1) (B10.2) (B10.3) (B10.4) こ れ ら の 確 認 も,式(B7.2)∼(B7.7)の
場 合 と 同 様 に,式(8.10),(B7.1)の
時 間
微 分 な ど を直 接 代 入 して 得 られ る。 さ て,式(9.2)か
ら,次
の 式 が 得 られ る 。
(B10.5) こ の 式 に 式(B7.2)を
代 入 し,上 記 の 基 礎 的 関 係 式 を用 い る と次 の よ う に変 形 で
き る。
(B10.6) こ の結 果 か ら,外 積 オ ペ レー タを は ず して,次 の 関 係 を得 る。
(B10.7) この 式 か ら次 の 式 を得 る の は容 易 で あ ろ う。
(B10.8) 式(B10.1)を
利 用 す る と 式(B10.7)を
時 間 微 分 し て,次
の 式 が 得 られ る。
(B10.9) し か し,式(B10.8)の
B11
時 間 微 分 は,少
し複 雑 に な っ て し ま う。
微小回転
B9で,λBC軸 ラ メ ー タ,ロ
ま わ り に 微 小 角 △φBCだ け 回 転 し た 場 合 の 回 転 行 列,オ ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ が,微
5)に な る こ と を 説 明 し た 。 も し,座 す る と,同
イ ラー パ
小 角 の 一 次 近 似 の 範 囲 で(B9.3)∼(B9.
標 系 A か ら座 標 系 B の 回 転 も 微 小 回 転 だ と
様 に 次 の よ う に 書 け る。
(B11.1)
(B11.2)
(B11.3) 合 成 の た め の 三 者 の 関 係(8.6),(8.7),(B2.6)に,(B9.3)∼(B9.5)と(B11. 1)∼(B11.3)を
代 入 し,二
つ の 回 転 を 合 成 し たCAC,EAC,ρACも
微小 角の一 次近
似 で 表 す と次 の よ う に な る。
(B11.4) (B11.5)
(B11.6) い ず れ の 回 転 表 現 を用 い て も,二 つ の 微 小 回 転 の 和 は3×1列
行 列(あ
る い は,
そ れ に外 積 オ ペ レー タ を働 か せ た 交 代 行 列)の 和 で 定 まる 量 に な っ て い る。 す な わ ち,そ れ ぞ れ の 微 小 回 転 は3×1列
行 列 λAB△φAB,ま た は,λBC△ φBCで 表 す こ
とが で き,二 つ の 回転 の 合 成 は そ れ らの 単純 な和 で 作 る こ とが で きる 。 回 転 の順 序 も無 関係 で あ る。 3次 元 の 回 転 姿 勢,お
よび,そ
の合 成 の複 雑 さ に対 して,微 小 回 転 の 場 合 は 単
純 で あ る。 角 速 度 は単 位 時 間 当 た りの 回転 変 化 で あ るが,微 小 時 間 当 た りの 回転 変 化 は微 小 回転 で あ る か ら,微 小 回 転 と角 速 度 は 同 じ よ うな性 質 を 持 つ 。 微 小 回 転 は,角 速 度 と同 様 に幾 何 ベ ク トル λAB△φABで 表 現 す る こ とが で き る。
付録 C
オ イ ラー パ ラメ ー タの 拘 束 安 定化 法
こ の 付 録 で は,数 値 積 分 時 に,オ イ ラー パ ラ メ ー タの 二乗 和 を 1に維 持 す る た め の拘 束 安 定 化 方 法 に つ い て 説 明す る 。 この 方 法 は9.6節
で 用 い た もの で あ る 。
オ イ ラー パ ラメ ー タ の拘 束 条 件 は式(7.16)に 与 え られ て い る。
(C.1) こ れ を時 間微 分 し て得 られ た 速 度 レベ ル の 拘 束 条 件 は式(9.15)で あ る。
(C.2) 本 書 で は,Ψ=0を
位 置 レ ベ ル の 拘 束 を 表 す 一 般 的 な 形 と し て お り,こ
微 分 し た 速 度 レ ベ ル の 拘 束 は,Φ=0と だ し,こ
表 す こ と に し て い る(13.6項
こ で は 拘 束 の 数 が 一 つ で あ る か ら,Ψ=0,Φ=0と
2)のEOAは,角
れ を時 間 参 照)。 た
な っ て い る 。 式(C.
速 度 Ω'OAか ら 次 式 に よ っ て 計 算 さ れ る(式(9.12))。
(C.3) SOAは,式(8.10)に
よ っ て 作 られ る。
(C.4)
EOAか
らSOAを
こ の 式 に よ っ て 作 る 場 合,EOAが
た さ な い 場 合 も,SOAは
誤 差 を 含 ん で い て 式(C.1)を
満
次 の 式 を満 た して い る 。
(C.5) し た が っ て,EOAが(C.3)か に 成 立 す る 。 結 局,EOAの
ら作 ら れ る 場 合 は,速 誤 差 はEOAの
度 レ ベ ル の 拘 束 式(C.2)は
数 値 積 分 時 に 生 じ,誤
常
差 の 累 積 が 式(C.
1)を 満 た さ な くす る こ と だ け が 問 題 と な る 。 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ の 安 定 化 を 考 え る 場 合,Baumgarteの
方法 は妥当 だろ う
か 。 オ イ ラー パ ラ メ ー タの 安 定 化 の た め に微 分 代 数 型 の 式 を作 っ た り,解 い た り す る の は 重 過 ぎる の で は な い だ ろ うか 。 位 置 レベ ル の拘 束 誤 差 だ けが 問 題 で あ る 場 合,加
速 度 レベ ル の 拘 束 と連 立 させ る 方 法 で は な く,速 度 レベ ル ま で の 関係 で
安 定 化 を計 る ほ うが 合 理 的 で あ る 。 そ こ で,Baumgarteの
方 法 と類 似 の 考 え 方
で 式(C.3)と 拘 束 の 安 定 化 を組 み 合 わせ,次 の 形 の 微 分 代 数 方 程 式 を 考 え て み る。
(C.6)
τ は,拘
束 条 件 の 安 定 化 の 時 定 数 と 考 え れ ば よ い 。 式(C.1),(C.2)を
用 い る と,
こ の式 は 次 の よ うに な る。
(C.7)
こ の式 は次 の二 つ の 式 に分 け られ る。
(C.8) (C.9) 式(C.8)を(C.9)に
代 入 し,式(C.5)を
用 い て 整 理 す る と,〓
を次 の よ う に求 め る
こ とが で き る。
(C.10) 〓 は,式(C.1)が に,1
満 た さ れ て い る 場 合 は ゼ ロ に な り,二
よ り 小 さ い と 負 の 値 に な る 。 〓 は 式(C.1)の
8)は,〓
が ゼ ロ な ら,式(C.3)と
合 でEOAの
値 が 小 さ め(EOAの
の と き はEOAの 式(C.10)を
値 が 大 き め(EOAの 式(C.8)に
同 じで あ り,〓
乗 和 が 1 よ り大 き い と 正
満 足 度 の 指 標 で あ る 。 式(C. が 正 の と き はEOAに
増 加 を 抑 え る 方 向)に
な る よ う に 働 き,〓
増 加 を 促 進 す る 方 向)に
代 入 す る と,次
比 例 した 割 が 負
な る よ う に 働 く。
の 式 が 得 られ る。
(C.11)
こ の 式 が,拘 時 間微 分EOAを
束 の 安 定 化 を図 りな が ら,角 速 度 Ω'OAか らオ イ ラー パ ラ メ ー タの 求 め る式 で あ る。 τに適 当 な値 を 選 ん で,式(C.3)の
代 わ りに こ
の 式 を用 い れ ば よい た め,利 便 性 に飛 ん で い る。 安 定 性 も容 易 に得 られ る こ とが 期 待 で き,実 際,こ
れ ま で の筆 者 の 経 験 で は 上 手 く働 い て い る。 た だ し,ま だ 十
分 な経 験 を積 ん だ 方 法 とは い え な い の で,式(C.1)が
維 持 さ れ て い るか ど うか を
監 視 し な が ら用 い る こ とが 望 ま しい 。 ま た,高 い 精 度 を 必 要 とす る計 算 の場 合 は,数 値 的 な減 衰作 用 な どに も注 意 す べ きで あ ろ う。
動力学的 に加速度 を求め るための
付録 D
漸化的方法
こ の 付 録 は 第21章 学 漸 化 式)を
の補 足 で,動
力 学 的 に加 速 度 を 求 め る た め の 漸 化 式(動 力
導 く。 二 つ の 方 法 を説 明 して い る が,一 番 目 の 方 法 は,説 明 も長
く,細 々 して い て 面 倒 で あ る。 二 番 目の 方 法 は,一 番 目の 方 法 に比 べ る と簡 潔 だ が,一
つ 一 つ の 式 変 形 の 意 味 や ね らい が見 えず 難 解 で あ る。
な お,こ
の付 録 で は,V'oj,F'ojをV'j,F'jと
他 の 記 号 は第21章
D1
D1.1
書 い て 簡 略 に 表 現 して い る。 そ の
の もの を 引 き継 い で い る。
動力学漸化式の作 り方 ― その 1 k部分 ブ ロ ック行 列
系 を構 成 して い る剛 体 の 総 数 を n とす る 。
は,n
個の ブ ロ
ッ クか らな る列 行 列 で あ り,個 々の ブ ロ ッ ク は各 剛体 に対 応 して い て,剛 体 の番 号 順 に並 ん で い る。 こ こで,そ らな る列 行 列 を作 り,
れ ぞ れ に つ い て,最
初 の k個 の ブ ロ ッ ク だ け か
とす る 。
(D1.1)
(D1.2)
(D1.3)
(D1.4)
(D1.5)
M',D,Lは,n×nブ
ロ ッ ク 行 列 で,ブ
ロ ッ ク行 の 番 号 も ブ ロ ッ ク列 の 番 号
も剛 体 の 番 号 に対 応 し て い る。 そ れ ぞ れ に つ い て,最 初 の k個 の ブ ロ ッ ク行 と 最 初 の k個 の ブ ロ ッ ク 列 が 交 差 す る 部 分 か らな る,k×kブ
ロ ッ ク行 列 を作 り,
とす る 。
(D1.6)
(D1.7)
(D1.8)
〓
と〓
は ブ ロ ック 対 角 行 列 で あ る。 〓
の対角 ブ ロ ック と上三角 部分 の ブ
ロ ッ ク は す べ て ゼ ロで あ る。 k以 下 の番 号 を 持 つ 剛 体 に 対 応 す るLjが
j番 目 の
ブ ロ ッ ク行 に配 置 さ れ て い る。 た だ し,慣 性 空 間 を親 とす る 剛 体 に対 応 す るL1 な どは存 在 しな い。 を k部 分 ブ ロ ック 行 列 と呼 ぶ こ は,
と に す る 。 こ の 記 号 を 用 い る と,
と 同 じで あ る か ら,加 速 度 漸 化 式(21. 23),部
分 速 度 漸 化 式(21.25),運
動 方 程 式(21.30)は
次 の よ う に書 け る。
(D1.9) (D1.10) (D1.11)
D1.2
加速度漸化式,部 分速度漸化式,運 動方程式の分割 は,k 個 の ブ ロ ッ ク 行 列 か ら な っ て い る が,こ
を最 初 のk-1個
の ブ ロ ック 行 列 と k番 目の ブ ロ ック に分 け て 表 示 す る こ と を考
え る 。 た と え ば,
と
は,
はk×kの
初 のk-1個
れ
〓を 縦 に 並 べ た も の と 同 じ で あ る 。
ブ ロ ッ ク 行 列 で あ る が,そ
と k番 目 に分 け て,大
す る。 そ の 場 合
〓と 〓
の ブ ロ ッ ク行 と ブ ロ ック 列 を 最
き く四つ の ブ ロ ッ ク に分 け て 表 示 す る こ と に
は 単純 で あ るが,〓
は 次 の よ うに 表 す こ と にす る。
(D1.12) 四 つ の 大 き な ブ ロ ッ ク の う ち,左 ロ ッ ク行 列 〓 て い て,右
上 の(k-1)×(k-1)ブ
で あ る 。 右 上 の(k-1)×1ブ
下 の1×1ブ
左 下 の1×(k-1)ブ
ロ ッ ク は(k-1)部
ロ ッ ク は上 三 角 ブ ロ ッ ク に含 まれ
ロ ッ ク は 対 角 ブ ロ ッ ク 上 に あ り,こ ロ ッ ク に はLkが
存 在 す れ ば,そ
外 は ゼ ロ で あ る 。 こ の 左 下 部 分 をL-k-と 以 上 の 表 現 方 法 を 用 い て,ま
ず,加
分 ブ
れ らは ゼ ロ に な る。
れ が 含 ま れ て い て,そ
れ以
書 くこ とに し た。 速 度 漸 化 式(D1.9)を
分 割 表 示 す る と次 の
よ う に な る。
(D1.13) 次 に,部 分 速 度 漸 化 式(D1.10)の を〓
分 割 表 示 を 考 え る 。 こ の 場 合,部
で 偏 微 分 し た もの で あ る か ら,両 方 の分 割 を考 慮 して,次
分速 度 は 〓 の よ う に な る。
(D1.14) V'nはHnに
依 存 し て い る が,〓
速 度 の う ち,〓 は次 の よ うに な る。
をHnで
はHnに
依 存 して い な い の で,四
つ ある部分
偏 微 分 し た も の は ゼ ロ に な る 。 した が っ て,こ の 式
(D1.15) 同 様 に,〓 式(D1.11)は
をHnで
偏 微 分 した もの が ゼ ロ に な る こ と を 考 慮 して,運 動 方 程
次 の よ うに 分 割 表 示 され る。
(D1.16) 加 速 度 漸 化 式(D1.13)は,次
の 二 つ の 式 に 分 け られ る 。
(D1.17) (D1.18) 部 分 速 度 漸 化 式(D1.15)か
らは,次
の三 つ の 関係 が得 られ る。
(D1.19) (D1.20) (D1.21) 運 動 方 程 式(D1.16)は,次
の 二 つ の式 に な る。
(D1.22) (D1.23) 式(D1.17)と(D1.19)は,式(D1.9)と(D1.10)の
添 え 字 n を,す
べ て,n-1に
置
き換 え た も の に な っ て い る 。
D1.3
漸化計算の第一段階
式(D1.20),(D1.21)を た 運 動 方 程 式 は,そ
式(D1.22),(D1.23)に れ ぞ れ,次
代 入 す る と,二
つ に 分 割 され
の よ う に な る。
(D1.24) (D1.25) 式(D1.18)を
運 動 方 程 式(D1.25)に
代 入 し て 整 理 す る と,次
の 式 が 得 られ る。
(D1.26) は 正 則 と し て よ い の で,こ
の 式 はHnに
つ い て解 く こ とが で き る。
(D1.27) こ れ を 式(D1.18)に
代 入 し て 整 理 す る と,次
の よ う に な る。
(D1.28) I│n│はM′
と 同 じ 大 き さ の 単 位 行 列 と す る 。I│n│を こ の よ う に 定 め た が ,特
結 合 を 含 ま な い 系 の 場 合 は,6×6の
単 位 行 列I6で
さ て,こ の 式 を運 動 方 程 式(D1.24)に
殊拘 束
あ る。
代 入 し,整 理 す る と次 の 式 が 得 られ る。
(D1.29) こ こ で,次
の 置 き換 え を行 う。
(D1.30)
(D1.31) そ の 結 果,式(D1.29)の
運 動 方 程 式 は 次 の よ う に書 け る 。 (D1.32)
式(D1.30)のW{n-1}はM′{n-1}と
同 じ大 き さ で,対
添 え 字 n の 各 量 か ら 計 算 さ れ,LT-n-とL-n-の
称 な ブ ロ ッ ク対 角 行 列 で あ る。 働 き に よ っ て,M′{n-1}の
中 の,
剛 体 n の 親 剛 体 の 番 号 に 対 応 す る 対 角 ブ ロ ッ ク に 計 算 結 果 が 足 し 込 ま れ,W{n-1} と な っ て い る 。 式(D1.31)のZ{n-1}はF′{n-1}と の 各 量 か ら 計 算 さ れ,LT-n-の
同 じ 大 き さ の 列 行 列 で,添
働 き に よ っ て,F′{n-1}の
号 に 対 応 す る ブ ロ ッ ク に 計 算 結 果 が 足 し こ ま れ,Z{n-1}と
D1.4
え字 n
中 の 剛体 n の 親 剛体 の 番 な って い る 。
第一段階の仕上げ
こ こ ま で の 結 果 は,サ
イ ズ nの 系 か らサ イ ズn-1の
とで あ る。 サ イ ズ n の 系 は,全
系 へ の 縮 小 が 得 られ た こ
n個 の 拘 束 結 合 に 対 応 す る 一 般 化 速 度H{n}と,
全 n個 の 剛 体 の 重 心 速 度 と角 速 度 の含 ん だ 速 度 レベ ル 変 数V′{n}が関 わ る運 動 方
程 式(D1.11),そ (D1.9)で
れ ら の 変 数 に よ る 部 分 速 度 の 漸 化 式(D1.10),加
代 表 さ れ る 。 サ イ ズn-1の
る 一 般 化 速 度 H{n-1}と,n-1番
系 は,n-1番
速 度 の 漸 化 式(D1.17)で
れ らの 変 数 に よ る部 分 速 度 の
代 表 され る。
加 速 度 の 漸 化 式 と部 分 速 度 の漸 化 式 は,与 n の系 か らサ イ ズn-1の
目 まで の拘 束 結 合 に対 応 す
目 まで の 剛 体 の 重 心 速 度 と角 速 度 を含 ん だ 速 度
レ ベ ル 変 数V′{n- 1}が 関 わ る 運 動 方 程 式(D1.32),そ 漸 化 式(D1.19),加
速 度 の漸 化 式
え られ た L と D を用 い て,サ
系 へ の 縮 小 が 成 立 し て い るが,運
必 要 で あ る 。 そ の 工 夫 と は,事 前 にW{n}とZ{n}を
イズ
動方程 式 には工夫が
次 の よ う に 作 っ て お く こ とで
ある。
(D1.33) (D1.34) 〓 は右 辺 を左 辺 に代 入 す る こ と を示 す 。 こ れ に よ り,サ イ ズ nの系 の 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に書 け る。
(D1.35) この 式 と式(D1.32)を
対 比 す れ ば,サ
イ ズ nの 系 か らサ イ ズn-1の
系へ の縮小
は,運 動 方 程 式 で も成 立 して い る こ とが 分 か る。 こ の 縮 小 を 実 現 し て い る 漸 化 計 算 の 第 一 段 階 は,式(D1.30),(D1.31)で が,式(D1.33),(D1.34)の
置 き換 え に 対 応 し て,次
ある
の よ う な計 算 に な る。
(D1.36)
(D1.37) ま た,式(D1.27)も,次
の よ う に な る。
(D1.38) こ の 式 は,式(D1.18)と
共 に,V′{n-1}が わ か っ た 段 階 で,HnとV′nを
計 算す るた
め に使 わ れ る 。
D1.5
漸化計算の第二段階以降
サ イ ズ k の 系 の 加 速 度 漸 化 式,部
分 速 度 漸 化 式,運
動 方 程 式 が,次
の よ うに
与 え ら れ て い る とす る 。
(D1.39) (D1.40) (D1.41) サ イ ズ kの 系 は,k 番 目 まで の拘 束 結 合 に対 応 す る一 般 化 速 度H{k}と,k
番 目ま
で の 剛 体 の 重 心 速 度 と角 速 度 を 含 ん だ 速 度 レベ ル変 数V′{k}が関 わ る系 で あ る。 こ の系 か ら,サ イ ズ nの 系 か らサ イ ズn-1の k-1の
系 へ の 縮 小 と同 じ手 順 で,サ
イズ
系 を作 る こ とが で き る。
ま ず,WkとW{k-1}か
ら,新
た なW{k-1}を
計 算 す る手 順 が 次 の とお り求 ま る。
(D1.42) 同 様 に,ZkとZ{k-1}か
ら,新
た なZ{k-1}を
計 算 す る手 順 は 次 の と お りで あ る。
(D1.43) ま た,V′{k-1}か
ら,HkとV′kを
求 め る 式 は次 の よ う に な る 。
(D1.44) (D1.45) そ して,サ
イ ズk-1の
系 の 加 速 度 漸 化 式,部 分 速 度 漸 化 式,運 動 方 程 式 は 次 の
よ うになる。
(D1.46) (D1.47) (D1.48) I│k│はM′kやWkと
同 じ大 き さ の 単 位 行 列 と す るが,特
殊 拘 束 剛 体 を含 ま な い 系
で はI6で あ る 。
D1 .6
漸化計算の全貌
第 二 段 階 以 降 も得 られ た の で,漸 化 計 算 全 体 を ま と め て 把 握 す る こ とが で き る。 速 度 レベ ル まで の順 方 向 の 漸 化 計 算 で,式(21.18)のV′ で を 求 め た あ と,WkとZkを
求 め る こ と に な る が,そ
と式(21.24)の Σ ま
の 事 前 準 備 と して 次 の 代
入 を行 う。
(D1.49) (D1.50) そ の 後,次 式 に よ る逆 方 向 の 漸 化 計 算 に よ り,す べ て のWkとZkを
求 め る。
(D1.51)
(D1.52) こ の 式 の 添 え字 は,剛 体 jの 親 が 剛 体 iで あ る と して い る。 順 動 力 学 計 算 が 目指 して い る の はHkで
あ る が,こ
れ を求め るた め に次 の二 つ の漸化 式 を組 み合 わ
せ,V′kと 共 に,順 方 向 に解 く。
(D1.53) (D1.54) 以 上 で す べ て のHkが
求 ま る の で積 分 計 算 の 時 間 を 進 め る こ とが で き るが,そ
の
前 に拘 束 力 を求 め る必 要 が あ れ ば,逆 方 向 の 漸 化 計 算 を追 加 す る こ とに な る 。 式(D1.49)∼(D1.52)は,〓 現 に な っ て い る が,こ
を 用 い た 代 入 計 算 の 形 で,事 れ ら は,次
前 準 備 と分 離 した表
の漸 化 式 の 計 算 手 順 で あ る。
(D1.55) (D1.56) この 式 の漸 化 計 算 を 分 離 して 事 前 準 備 を先 に 行 う こ とに よ り,分 岐 の あ る木 構 造 の 計 算 を 画 一 的 に 行 う こ とが で き る。 こ こ で はOrder-N計
算 を 実 現 す る漸 化 計 算 の 構 造 を示 して い る が,細
算 時 間 の 節 約 方 法 に は 触 れ て い な い。 実 際 の 計 算 で は,た 計 算 の 中 で(DTkWkDk)-1が 52),(D1.53)で
かい計
と え ば,式(D1.51)の
求 ま っ た あ と,そ の 結 果 を保 存 して お い て,式(D1.
は そ れ を利 用 す るべ き で あ る。 個 々 の 式 の 中 で 行 う計 算 の 順 序
な ど も工 夫 で きる 部 分 が あ る はず で あ る。
D2
動力学漸化式の作 り方 ― その 2
前 項 で,動 力 学 的 に加 速 度 を求 め る た め の 漸 化 式 が得 られ た が,別
の方法で同
じ漸 化 式 を 導 い て み よ う。 速 度 レベ ル変 数 の 漸 化 式,そ
の 時 間微 分,ケ
イ ン型 の
運 動 方 程 式 は次 の よ うに 与 え られ て い る。 【21.18】 【21.23】 【21.30】
式(21.18)は 漸 化 計 算 の た め の表 現 だ が,こ
の式 は次 の よ う に変 形 で きる 。
(D2.1) こ の 式 の H の 係 数 はケ イ ンの 部 分 速 度 で あ る 。
(D2.2) した が っ て,運 動 方 程 式 は 次 の よ う に書 け る 。
(D2.3) 第 二 因 子 右 肩 の-Tは,逆
行 列 の 転 置,あ
る い は,転 置 の 逆 行 列 を意 味 す る。 こ
の運 動 方 程 式 の 第二 因 子 と第 三 因 子 の 積 を Q とお く。
(D2.4) こ こ で は,Q
は 一 般 化 座 標 と は無 関係 で あ る。 運 動 方 程 式 は 次 の よ う に な る。
(D2.5) 式(D2.4)は
次 の よ う に 書 き換 え られ る 。
(D2.6) こ こ で,新
た な 行 列 変 数 W と Z を 準 備 す る 。 W は,M
な ブ ロ ッ ク 対 角 行 列 で あ る 。 M ′の 各 ブ ロ ッ クMkは,特 は 一 つ の 剛 体 に 対 応 し て い て,式(21.26)に て い る 。3Mkは3×3ス
カ ラ ー 行 列,J′okは3×3対
大 き さ はM′kと
と Z に よ っ て,Q
同 じ で,対
つ の3×3の
ッ ク か ら な る ブ ロ ッ ク 対 角 行 列 に な っ て い る わ け で も な い 。6×6の
W
ら構 成 さ れ
称 行 列 で あ り,Mkは6×6の
部 の 構 造 ま で 一 致 して い る わ け で は な く,二
を 持 つ こ と に な る 。 Z は,F′
称
殊拘 束結合 が ない場合
あ る よ う に3MkとJ′okか
大 き さ に な る 。 W の k番 目 の 対 角 ブ ロ ッ クWkの 行 列 で あ る が,内
′と 同 じ よ う な,対
称 ブロ
全 要素 が値
と 同 じ ブ ロ ッ ク 構 造 の 列 行 列 で あ る 。 さ て,こ
の
が 次 の よ う に 表 さ れ る と仮 定 す る 。
(D2.7) こ の 式 に,式(21.23)を
代 入 す る。
(D2.8)
さ ら に,こ
れ を 式(D2.5)に
代 入 す る。
(D2.9) D と W は ブ ロ ッ ク 対 角 行 列 で あ る た め,左 ロ ッ ク 対 角 行 列 に な る 。Hkの #(Hk)×#(Hk)の
数 を#(Hk)と
大 き さ の 対 称 行 列 で,逆
も の と す る 。 式(D2.9)か
ら,次
辺 第 三 項 の H の 係 数DTWDも,ブ 書 く こ と に す る と,DTRWkDkは 行 列 が 存 在 し,Hkに
つ いて解 け る
の 式 が 得 られ る 。
(D2.10) こ れ を 式(D2.8)に
代 入 す る。
(D2.11) さ ら に,こ
の 式 を 式(D2.6)に
代 入 し,整
理 す る と,次
の ようになる。
(D2.12) こ の 式 と式(D2.7)を
対 比 し,V′ の係 数 と残 りの項 を等 置 す る と,次 の 関 係 が 得
られ る 。
(D2.13) (D2.14) こ の 二 式 は,式(D1.55),(D1.56)と
同 じで あ る 。 途 中 の 式(D2.10)は,式(D1.
53)と 一 致 し て い る 。 式(D2.13)は
W の 対 称 性 や ブ ロ ッ ク 対 角 行 列 の 構 造 を 変 化 さ せ な い 。W,D,
M′ が ブ ロ ッ ク 対 角 に な っ て い る こ と,そ 式(D1.51)に
D3 D3.1
し て,L
の 構 造 を 考 え る と,こ
の式が
表 した よ うな 漸 化 構 造 を持 っ て い る こ とが わ か る 。
漸化計算に関する補足 特殊拘束結合を含む系
特 殊拘 束 結 合 を含 む 場 合 も,こ れ ま で に 導 い た漸 化 計 算 の 形 態 は そ の ま ま適 用 で き る。 た だ,ブ 結 合 の 場 合,親
ロ ック の 考 え 方 を修 正 す る必 要 が あ る。 拘 束 結 合 jが 特 殊 拘 束
剛 体 iは ひ とつ だ が,子
剛 体 jは 複 数 で,j は 子 剛 体 の グ ル ー プ
で あ る。 そ の 剛 体 の 個 数 をnjと す る と,V′jは6nj×1の
列 行 列 とい う こ と に な
る 。 ま た,Ljは6nj×6,Djは6nj×#(Hj),M′ の 部 分 に 関 す る 計 算 で は,グ う こ と に な り,そ
の 分,計
剛 体 の 数 に 上 限 を 考 え,そ ー プ レベ ル で 考 え て
,系
とWjは6nj×6njで
あ る。 こ
ル ー プ の 中の 剛 体 の 数 に 対 応 した 大 き さ の行 列 を扱 算 時 間 に も 影 響 が 出 る 。 し か し,グ
ルー プ に含 まれ る
の 上 限 が 系 全 体 の 剛 体 の 数 よ り十 分 小 さ け れ ば,グ 全 体 と し てOrder-Nの
ル
性 質 を 維 持 して い る と見 な す こ
とが 可 能 で あ る 。
子 剛体 jは複 数 あ る の で,剛 体 ご と に 番 号 付 け る とす る と,j1,j2,… こ と に な る。 そ の 中 の 一 つ,た の kが 剛 体 一 個 とす る と,Lkは
と えば,j1が
親 とな っ て,子
形 式 的 に は6×6njの
とい う
k を持 つ とす る 。 こ
大 き さ に な る。 す な わ ち,
剛 体 kの 親 は 剛 体j1で あ っ て も,形 式 的 に は 剛 体 グ ル ー プ jを 親 とす る。 そ の よ う に考 え る と,拘 束 結 合 は 剛体 グル ー プ 間 の結 合 と考 え る こ とが で き,剛 体 グ ル ー プが 木 構 造 を形 成 して い て,こ れ まで 述 べ て きた 漸 化 計 算 は 剛 体 グ ル ー プ 単 位 で 考 え直 せ ば よい こ と に な る。 そ して,特 定 な 剛体 グル ー プ が 剛 体 一 個 の こ と もあ り,複 数 の こ と もあ る。 各 剛 体 グ ル ー プ 中 の剛 体 の 数 に対 応 し て各 行 列 の ブ ロ ッ クの 大 き さ は,画 一 的 で は な くな る。
D3.2 21.3節
漸化計算用の速度レベル変数と一般化速度について に 述 べ た よ う に,V′ojの
か わ り にV′o′jを用 い て も,漸
化 的 方 法 の 定 式化
は 同 型 に な る。
(D3.1) (D3.2) (D3.3) (D3.4) 21.2節
に ボ ー ル ジ ョ イ ン トの 事 例 を 説 明 し,重
(21.16),(21.17)に
心 速 度 と角 速 度 の 関 係 を 式
示 した 。 この 二 つ の式 を ま とめ る と次 の よ うに な る。
(D3.5) 同 じ 関 係 を,重 の よ う に な る。
心 速 度 も 剛 体 固 定 の 座 標 系 で 表 し たV′ojと,Ω
′ojを 用 い る と,次
(D3.6) L′jもD′jも,剛
体 jと剛 体 iの 相 対 的 な位 置 関 係 で 決 まる 量 だ け で 表 さ れ て い
る。 V′ojとV′′ojの い ず れ を 用 い る 場 合 で も,独 を 考 え る こ と が 多 い 。 漸 化 的 方 法 を,相 ど,相
は相 対 的 な量
対 速 度 に よ る 方 法 と呼 ぶ こ とが あ る ほ
対 的 な 量 で 表 す こ と が 当 た り前 だ と 思 わ れ て い る 。 ボ ー ル ジ ョ イ ン トの 事
例 で 上 記 の 二 つ の 式 で は,Ω 場 合,一
立 な 一 般 化 速 度Hjに
′ijをHjと
し た 。 し か し,同
じ ボ ー ル ジ ョ イ ン トの
般 化 速 度 に Ω′ojを用 い る こ と も で き る 。 次 式 は そ の 場 合 のLjとDjを
示 して い る。
(D3.7) こ の よ う なHj,Lj,Djを
用 い て も,計 算 上 で 不 都 合 な こ とが 起 き る こ と は な
く,相 対 座 標 が 絶 対 に必 要 とい うわ け で は な い 。
付録
E
作用力の事例
剛 体 上 の各 点 に は作 用 力 や 作 用 トル クが 働 く。 これ らを等 価 換 算 して合 計 す る と重 心 に働 く作 用 力 と作 用 トル ク に 置 き換 え る こ とが で きる 。 第 Ⅳ部 で は 運 動 方 程 式 を立 て る た め の各 種 の 方 法 が 説 明 され て い て,そ の 中 に作 用 力 と作 用 トル ク が 出 て くる 。 等 価 換 算 さ れ た もの を 用 い る説 明 が 多 い が,そ
うで な い もの もあ
る 。 しか し,い ず れ に して も作 用 力 と作 用 トル クの 具 体 的 な 内 容 は,実 動 方 程 式 の 立 て 方 とは 無 関 係 で あ る。 唯 一,ラ
際 上,運
グラ ンジア ンを用 い る方法 だ け
は,作 用 力 が保 存 力 か 否 か に よ っ て 異 な っ た扱 い 方 をす る。 そ れ で も,実 際 の 機 械 を 扱 う ほ とん どの 場 合,ラ
グ ラ ン ジア ン は,単 に,運 動 補 エ ネ ル ギ ー だ け で 十
分 で あ る。 バ ネ力 の よ うな 保 存 力 も ダ ンパ ー な どの 他 の 非 保 存 力 と共 に単 な る作 用 力 と して扱 え ば よ く,ラ グ ラ ン ジ ア ン に組 み 込 む 利 点 は,あ
ま り見 当 た ら ない
(分 布 定 数 系 を対 象 と して ハ ミル トン の 原 理 な ど を用 い る場 合 は別 で あ る)。 作 用 力 と作 用 トル ク の 具体 的 な 内 容 は,運 動 方 程 式 を 立 て る前 に 関係 式 に含 め て も よ く,あ る い は,後 で 補 う こ と も可 能 で あ る。 本 書 の 主 な狙 い は 運 動 方 程 式 を立 て る方 法 で あ る か ら,作 用 力 や作 用 トル クの 多 様 な側 面 を広 く見 渡 した り深 く掘 り 下 げ る こ とは して い な い。 しか し,実 際 問 題 で は作 用 力 や 作 用 トル ク の適 切 に表 現 で きな け れ ば運 動 方 程 式 は 完 成 しな い 。 実 際 に順 動 力 学 の 数値 シ ミュ レー シ ョ ンを 行 な う と き,案 外 面 倒 な の が 作 用 力 で あ る。 そ こで,こ か の 事 例 を取 り上 げ て,特
の付 録 で は,い
くつ
に,3 次 元 問 題 で 生 じる 戸 惑 い な ど を軽 減 し,応 用 力
を高 め るた め の助 け と した い 。 作 用 力,作 用 トル ク と は,位 置 レベ ル 変 数,速
度 レベ ル変 数,時
間の 関 数 と し
て 表 され る も の で あ る 。 一 定 力 も そ の特 殊 な場 合 で作 用 力 で あ る 。 位 置 レベ ル 変 数 とは,作 用 点 の位 置,あ
る い は,剛 体 の 代 表 点(た
勢 で あ り,速 度 レベ ル 変 数 とは,作 用 点 の 速 度,あ
と え ば重 心)位
置 と回 転 姿
る い は,剛 体 の代 表 点(た
と
え ば重 心)速 度 と角 速 度 で あ る。 す な わ ち,質 点 系 で は次 の よ うな 一 般 的 な 表 現
が 可 能 で あ る。
f=f(r,v,t)
(E.1)
ま た,剛 体 系 で は 回転 姿 勢 を C で代 表 させ て,次 の よ うに 書 くこ とが で き る。
(E.2) (E.3) C は 実 際 に は Θ か E に な る で あ ろ う。 また,位 置 や 速 度 な どは 一 般 化 座 標 Q や 一 般化 速度 H の 関数で あるか ら ,F や N′も Q と H と tの 関数 と も い え る。 い ず れ に して も重 要 な こ と は,作 用 力 や 作 用 トル クが,加
速 度 や 角 加 速 度 に は依 存
して い な い こ とで あ る 。 バ ネ力 はバ ネの 両 端 点 の 位 置 に よっ て決 ま る。 ダ ン ピ ン グ力 は ダ ンパ ー の 両 端 点 の 位 置 と速 度 で 定 ま る。 時 間 の 関 数 と して作 用 力 を変 化 させ る よ う な モ デ ル を 考 え る こ と もで き る。 ま た,摩 擦 力 は相 対 的 な滑 り速 度 に よ る と考 え る こ とが で きる 。 重 力,電 磁 気 力 も位 置 と速 度 と時 間 以外 に は依 存 し な い。 流 体 か ら受 け る力 に は様 々 なモ デ ル が 用 い られ るが,位
置 と速 度 と時 間 に
依 存 す る性 質 は変 わ ら な い 。
E1
重力
13.3項 の 図13.3は
接 触 点 で 滑 ら な い 転 動 円 盤 で あ る。 こ の 円 盤 に は空 気 力 の
よ うな もの は働 い て い な い と し,接 触 点 に お い て も,回 転 運 動 に伴 う抵 抗 力 な ど の考 え な い も の とす る 。 そ の と き接 触 点 に拘 束 力 は 働 くが,作 用 力 は働 か な い 。 円 盤 に働 く唯 一 の作 用 力 は重 力 だ け に な る。 重 力 の 加 速 度 を g とす る と,重 力 は,座 標 系 0 で 表 して-DzMAgと な る。 こ の モ デ ル で は Z 軸 が 鉛 直 上 方 を 向 い て い る の で ,Dzの 用 い,負 号 を つ け て あ る。MAは
円 盤 の 質 量 で,こ
の 重力 は 重 心 に作 用 す る。
接 触 点 で 滑 る こ とな どが 許 さ れ,す べ りに伴 う抵 抗 が 働 く とす る と,そ れ も作 用 力 に な る。 複 数 の 作 用 力 は共 に運 動 に 影 響 す る。 そ れ ぞ れ の 作 用 力 を重 心 位 置 へ 等 価 換 算 し,そ れ らの和 を取 る こ とは,作 用 力 を 一 つ に ま とめ る方 法 で あ る 。
E2
バ ネ と ダ ンパ ー の力
3次 元 空 間 に 剛 体A,Bが
あ り,A 上 の 点 P と B 上 の 点 Q の 間 に線 形 バ ネ が
作 用 して い る とす る。 バ ネ の 自然 長 は b,バ ネ定 数 は kで あ る 。 バ ネ 力 の 大 き さ は 二 点 間 の 長 さで 決 ま り,方 向 は点P,Qを
結 ぶ 線 上 で あ る。 バ ネが 自然 長 に 比
べ て 伸 び て い れ ば 二 点 を近 づ け る方 向 の 力 に な り,縮 ん で い れ ば二 点 を遠 ざけ る 方 向 の 力 に な る とす る 。 二 点 が 一 致 す る ほ どバ ネ が 縮 む こ とは な い と して,点 P,Qに
働 く力 は 次 の よ う に表 す こ とが で きる 。
(E.4)
(E.5) は 二 点 間 の 長 さ で,rPQは 数 ベ ク ト ル で あ り,COAはrPQを
P か ら Q に 向 か う 矢 印 を座 標 系 A で 表 した代 座 標 系 O に座 標 変換 して い る。 二 点 が 一 致 す る
ほ どバ ネ が 縮 む こ と は な い とす れ ば に な る こ とは な い。 な お,こ て い る が,rPQはrOP,rOQ,COAか
は 常 に 正 の 値 で あ り,分 母 が ゼ ロ
れ らの 式 はrPQが 求 ま っ て い る こ と を前 提 に 作 られ ら容 易 に作 る こ とが で き る 。 また,こ
の式 は
1次 元 の バ ネの 式 に 比 べ る と複 雑 に な っ て い る 。 多 くの場 合,機 械 に組 み 込 ま れ て い るバ ネ の作 用 方 向 は 定 ま っ て い る の で,バ の 式 は,点P,Qが
ネ の 式 は もっ と簡 単 に な る が,上
3次 元 空 間 の任 意 の 方 向 に動 く よ う な場 合 に も適 用 で きる も
の で あ る 。 3次 元 問 題 を考 え る こ と は不 慣 れ な う ち は 面 倒 で は あ る が,上 記 の 式 の よ う に,力 の 作 用 の 仕組 み を適 確 に 把 握 した 上 で,そ
れ を 素 直 に表 現 す れ ば 済
む 話 で あ る(読 者 は上 記 の 点 P に 働 く力 を,独 力 で この 式 を見 ず に作 り出す こ とが で きる で あ ろ うか)。 順動 力 学 解 析 で は位 置 と速 度 と時 間 が 定 まっ て い る状 態 で,力
を計 算 す る よ う
な 計 算 手 順 が 必 要 に な る。 そ の よ うな 場 合,バ
一つの式 に まと
ネ力fOPやfOQを
め る必 要 は な く,そ の 計 算 手 順 が示 され て い れ ば よ い。 た と え ば,次 の よ う な説 明 は,上
記 の バ ネ の 計 算 手 順 で あ る。 まず,バ
ネ の長 さ
が 計 算 さ れ,
自然 長 を引 い て バ ネ 定 数 を掛 け る とバ ネ 力 が 求 ま る。 一 方,COArPQに の 逆 数 を掛 け れ ば,バ
ネ力 の 方 向 が 正 規 化 され た形 で 定 ま る。 そ の 方 向 にバ ネ 力
を働 か せ れ ばfOPに
な る。fOQはfOPの
符 号 を 反 転 し て 求 め る こ とが で き る。 こ
の よ うな 計 算 手 順 は,上 記 のfOPとfOQの
式 をい くつ か の 式 に分 割 して 順 次 計 算
す る こ と と同 じで あ る 。 同 じ二 点P,Q間
に線 形 の ダ ンパ ー も働 い て い る と し よ う。 ダ ン ピ ング係 数 を
cとす る 。 ダ ンパ ー に よ る力 の 方 向 もバ ネ 力 の働 く方 向 と同 じ とす る と,バ ネ 力 も含 め た力 は 次 の よ う に な る。
(E.6)
(E.7) 二 点P,Qの
位 置 か ら ダ ン ピ ング力 の 作 用 方 向 が 定 ま り,相 対 速 度 の作 用 方 向成
分 が ダ ン ピ ン グ力 の 大 き さ と正 負 を 決 め て い る。 力 を 定 め る ル ー ル が 明 確 な ら, そ れ を 数 式 や計 算 手 順 で表 現 す る こ とは 難 しい こ と で は ない 。
E3
力による加振(時 間依存力)
バ ネ や ダ ンパ ー は 機 械 を構 成 す る要 素 の代 表 的 な もの とい え る が,こ れ らは剛 体 間 を結 合 す る要 素 で あ る 。 バ ネや ダ ンパ ー 自体 の 質 量 を無 視 して扱 う こ とが 多 く,そ の よ う な場 合,こ
れ らの 要 素 は力 要 素 と呼 ばれ る 。 力 要 素 と して の バ ネや
ダ ンパ ー の モ デ ル は,取
りつ け 点 の 位 置 や 速 度 と取 り付 け 点 に作 用 す る 力 の 関 係
で あ る。 別 の 力 要 素 と して,時 の が 考 え られ る。 た と え ば,点
間 に依 存 した力 を特 定 な 点 に 作 用 させ る よ う な も P に そ の よ う な力 が 作 用 す る と し,そ の 方 向 は
座 標 系 O の Y 軸 の 方 向 とす る。 力 が 時 間 と共 に 正 弦 波 状 に 変 動 す る場 合,そ
の
モ デ ル は次 の よ う に 表 す こ とが で き る。
(E.8) a0,ω0,φ0は
ス カ ラ ー 定 数 と考 え て い る。 な お,こ
の 加 振 は力 の 加 振 で あ り,
した が っ て力 要 素 で あ る。 正 弦 波 状 に 点 の 位 置 を動 か す 場 合 は,そ 加 えて い る こ と に な り,全 く別 の扱 い に な る。 ま た,fOPの で系 全 体 の モ デ ル の な か に は現 れ な い が,こ
の点 に拘 束 を
反 力 は 空 間 に働 くの
の よ うな 場 合 も含 め て一 般 に,作 用
力 に は必 ず 反 作 用 が あ る。
E4
乗用 車 や オ ー トバ イ な ど の タイ ヤ に働 く力
乗 用 車 や 自動 二 輪 車 の タ イ ヤ と路 面 の 相 互 作 用 を 考 え る。 た だ し,こ こ で は, 路 面 は平 面 に 限 定 し,車 輪 と タイ ヤ を一 体 で考 え て 厚 さ の な い 円 盤 とす る。 乗 用 車 や 自動 二 輪 車 の運 動 方 程 式 は 剛体 振 子 や コマ な ど に比 べ れ ば複 雑 だ が, タ イ ヤ と路 面 の 相 互 作 用 を 除 け ば,複 数 の 剛体 が 数種 類 の ジ ョイ ン トや 力 要 素 で 結 合 さ れ て い る と考 え られ る場 合 が 多 く,そ の 限 りで は モ デ ル 規 模 が 大 き い だ け で あ る。 しか し,タ イ ヤ と路 面 の相 互 作 用 は少 し異 質 で あ る 。 物 の 接 触 を扱 う 問 題 を接 触 問題 と呼 ぶ が,タ
イ ヤ と路 面 の 相 互 作 用 は接 触 問題 で あ る。 接 触 問 題 で
は,接 触 部 分 の 形 状 が 複 雑 に な る と簡 単 で は な くな る。 そ こ で,こ の 複 雑 さを 避 け て,平
面 と厚 さの な い 円 盤 に 限 定 す る。 そ れ で も,接 触 問 題 は複
雑 で あ る。 路 面 の 凹 凸 を考 え た り,タ イ ヤ の形 状(断 は,さ
こ で は,形 状
面 形 状 な ど)を 考 え る こ と
らに応 用 力 を 必 要 とす る 課 題 で あ る。
平 面 と転 動 円 盤 の接 触 モ デ ル に は い くつ か の異 な る考 え方 が あ る。 そ れ は接 触 モ デ ル の 中 に拘 束 を 考 え る か否 か,ま た,ど
の 方 向 の 拘 束 を 考 え るか とい う こ と
で あ る。 そ の 方 向 とは 路 面 に垂 直 な 方 向,円 盤 の 転 動 方 向,円 盤 の 横 すべ り方 向 の 三 つ で あ る。 拘 束 が あ る場 合,そ
の 方 向 の接 触 力 は 拘 束 力 に な る。 拘 束 が な け
れ ば作 用 力 で あ る。 こ こで はす べ て の 方 向 に拘 束 の な いモ デ ル を考 え る が,方 別 に拘 束 が あ る 場 合 に も参 考 に な る はず で あ る。 な お,タ
向
イ ヤ と路 面 の相 互 作 用
で は,上 記 の並 進 三 方 向 以 外 の 回転 運 動 に 関す る拘 束 は,通 常,な
い と して 差 し
支 え な い。 座 標 系 O の Z 軸 が 鉛 直 上 方 を 向 い て い て,転 動 す る路 面 をX-Y平 こ の と き,路 面 に 垂 直 な方 向 はeozで 現 で は 式(9.11)に
出 て くるDzと
面 とす る 。
あ り,座 標 系 O で 表 した 代 数 ベ ク トル 表
な る。 転 動 円 盤 を A と し,座 標 系 A は Y 軸 が
円 盤 面 に垂 直 に な る よ うに 円 の 中心 に固 定 さ れ て い る とす る。 円 盤 の転 動 方 向 は 路 面 と円 盤 面 の 交 線 に沿 う方 向 で,座 標 系 A の Y 軸 が 左 に向 く よ うな 向 き とす る 。 こ の 方 向 を 座 標 系 O で 表 し てDoxxと
書 く こ と にす る。 こ の 方 向 はeayと
eozと の 外 積 か ら 求 め る こ と が で き る 。 こ の 外 積 は 座 標 系 O で 表 す と
-DzCOADYと Doxxと
なるが
,こ
れ は 長 さ が 単 位 長 さ に な っ て い な い の で,正
規 化 して
す る。
(E.9) 転 動 円盤 が 完 全 に倒 れ て 円 盤 面 が路 面 と平 行 に な ら な い 限 り,こ の 式 の分 母 は ゼ ロ に な る こ と は な い。 次 に 円 盤 の横 す べ りの 方 向 を座 標 系 O で 表 してDOYYと す こ とに す る。 こ れ は 鉛 直 方 向DzとDoxxと
表
の外 積 で あ る。
(E.10) DoxxとDzは
す で に直 交 して い る の で 正 規 化 の 手 続 きは 必 要 な い。
次 に,円 盤 A の 最 下 点 を P と し,P か ら A に 向 か う単 位 長 さ の 幾 何 ベ ク トル を座 標 系 O で 表 して Dozzzと す る 。
(E.11) こ れ は,円
盤 の 面 内 で 最 もeozに
現 し た も の で あ る 。Doxxと
近 い 単 位 長 さ の 幾 何 ベ ク トル を 座 標 系 O で 表
は 直 交 し て い る が,DOYYと
は 直 交 し て い な い の で,
こ れ ら と は 添 え 字 の 付 け 方 を 変 え て あ る 。 円 盤 上 の 点 P の 位 置rApは,円 径 を b と し て,次
盤 の半
の よ うに 求 ま る。
(E.12) 座 標 系 O か ら 見 た 点 P の 位 置rOPは,こ
こ で 求 ま っ たrAPと
円 盤 の 中 心 点ROA
か ら次 の よ う に計 算 で きる 。
(E.13) 点 P は最 下 点 で あ る か ら,円 盤 の 回 転 運 動 に伴 っ て 円 盤 上 を 動 く こ と に な る。 以 上 の 二 式 を 時 間微 分 す る こ と でVAPやVOPを
求 め る こ と も で き る が,こ
れら
は,最 下 点 の 円盤 上 で の 速 度 と,路 面 上 で の 速 度 で あ る 。 こ れ ら の 時 間微 分 に は,式(E.9)の
時 間 微 分 が 関 係 して くる の で 多 少 面倒 で あ る が,こ
必 要 は な い。 さて,点 こ の と き,点 合,最
P が 常 にX-Y平
こ で は求 め る
面 上 に あ る とす る と,こ れ は拘 束 で あ る。
P は 円 盤 と路 面 の 接 触 点 に な っ て い る。 こ の よ う な拘 束 が な い 場
下 点 P は路 面 と の接 触 の 判 定 に 利 用 す る こ とが で きる 。rOPの Z 成 分rOPZ
が 負 の 値 を持 っ て い る と,点
P は 路 面 に 潜 り込 ん で い る こ と に な り,こ の 成 分
が 正 の と き は,円 盤 は空 中 に 浮 い て い る こ と に な る 。 次 に,接
触 点 P に対 し て,瞬 間 接 触 点 と呼 ぶ 別 の 点 Q を考 え よ う。 この 点 は
考 え て い る 瞬 間,点
P に 一 致 し て い る が,円
あ る 。 し た が っ て,rAQの ゼ ロ で あ る 。rOQも
値 はrAPに
式(13.61)と
盤上 に固定 されてい る仮想 の点 で
等 し い が,rAQは
定 数 と し て 扱 わ れ,VAQは
同 様 に 作 る こ と が で き る が,当
然,rOPと
同 じ値
で あ る。
(E.14) こ の 式 を 時 間微 分 して 点 Q の速 度 を調 べ る と,rAQが
定 数 で あ る た め,rOPの
時
間微 分 と は異 な っ た もの に な る 。
(E.15) 点 Q は 円 盤 上 の 固 定 点 で あ る か ら,こ の 点 がX-Y平 VOQのX-Y平
面 に 接 触 し て い る 場 合,
面 に沿 う成 分 は 円 盤 と路 面 が 滑 っ て い る 速 度 に な る。 接 触 点 が 潜
って い る 場 合 は滑 りの 意 味 が あ い まい に な る が,少
な く と も潜 りが 浅 い場 合 は近
似 的 に滑 り速 度 とす る こ とが で き る。 ま た,最 下 点 が 潜 っ て い る と き,瞬 間 接 触 点 を最 下 点 よ り少 し上 方 に 取 る よ う な考 え 方 もで き る。 た とえ ば,最 下 点 と 円盤 中 心 を結 ぶ 線 がX-Y平 さ て,い
面 と交 わ る点 で も よい 。
よい よ作 用 力 を考 え よ う。 ま ず,接
触 点 が 潜 っ て い る と き,│rOPZ│に
適 当 な 大 き さの バ ネ定 数 k を掛 け た鉛 直 上 向 き の力 を点 P ま た は 点 Q に働 か せ る と,円 盤 が 路 面 に深 く潜 り込 ま な い よ う に で きる 。 バ ネ だ け で は 円盤 の挙 動 が 振 動 的 に な る 場 合,VOPZに
適 当 な大 き さの ダ ン ピ ン グ係 数 cを掛 け た ダ ン ピ ン グ
力 を加 え る こ とは 実 際 的 な 処 置 と して よ く行 わ れ る 。 こ の よ うな 線 形 的 なバ ネ と ダ ン ピ ング が 車 の タ イ ヤ の特 性 と して不 充 分 な場 合 は,非 線 型 特 性 も考 慮 した 適 切 な モ デ ル化 を 目指 す べ きだ が,線 形 モ デ ル で も原 始 的 な タ イ ヤ の 支 持 力 は 実 現 で き る。 な お,rOPZが
正 の 場 合 は タ イ ヤ 支 持 力 を ゼ ロ とす る ほ うが 実 際 的 で あ
る。 バ ネ とダ ン ピ ン グの 特 性 は これ だ け で も非 線 型 で あ るが,こ っ て,タ
うす る こ と に よ
イ ヤ が路 面 か ら浮 き上 が れ る た め,四 輪 車 の転 倒 な どを扱 う こ とが で き
る よ うに な る 。 以 上 を 考 慮 す る と,点
Q に加 わ る 鉛 直 方 向 の 力 は 次 の よ う に 書
くこ とが で きる。
(E.16) 右 辺 の 最 初 の 因 子 は│rOQZ│が 正 の と き は ゼ ロ に な り,負 の と き に-1
に な る もの
で,signは
限の 速度 で
符 号 を拾 い 出 す 働 きで あ る 。 な お,こ
円 盤 が 落 下 して きて接 触 状 態 に 入 った と き,ダ
の モ デ ル で は,有
ンピ ング 力 が ゼ ロ か ら有 限 の 値 に
急 変 す る。 この よ うな こ とが 数 値 計 算 上 の 不 具 合 につ な が る恐 れが あ る 場 合 は適 切 な 処 置 が 必 要 で あ る 。 た と え ば,ダ
ン ピ ング 力 を深 さに も依 存 させ る よ う にす
る方 法 な ど が あ る。 滑 りに よ る作 用 力 を考 え よ う。 滑 りの 方 向 は 転 動 方 向 と横 滑 りの 方 向 とが あ る。 も し,滑
ら な い よ う な拘 束 を設 け れ ば作 用 力 の 代 わ り に拘 束 力 が 働 く こ と に
な り,し か も,こ の拘 束 は方 向別 に選 択 す る こ とが 可 能 で あ る。 た だ し,こ こで は拘 束 は 考 え ず に,滑 合,転
りに 伴 う摩 擦 力 の 表 現 を 求 め る こ と に す る。 タ イ ヤ の場
動 方 向 と横 滑 り方 向 とで 特 性 を 別 々 に捕 ら え る こ と も多 く,そ の場 合 には
DoxxとDOYYを
活 用 す る こ と に な る。 しか し,こ こで は簡 単 に,滑
り と反対 方 向
に ク ー ロ ン摩 擦 的 な力 が働 く と し,方 向 に よ る 特 性 の 違 い は な い もの とす る 。 ク ー ロ ン摩 擦 的 な 力 とは 面 に 垂 直 な力 に 一 定 の 摩 擦 係 数 μ を掛 け た もの で,垂 直 な力 は す で に計 算 し たfOQZで あ る 。 た だ し,そ の ま ま で は滑 りが ゼ ロ の 状 態 は 不 安 定 に な る 。 静 止 状 態 を含 む車 両 の モ デ ル で は この 不 安 定性 は望 ま し くな い の で,滑
りが ゼ ロ の 付 近 で は 滑 り に比 例 した 抵 抗 力 を持 つ と し,そ の 比 例 定 数c0
を大 きな 値 に す る こ とで クー ロ ン摩 擦 に 近 い特 性 を実 現 す る。 なお,こ 目 的 のc0は,大
きす ぎ る と数 値 計 算 上,不
の よ うな
安 定 に な っ た り,計 算 時 間 の 悪 化 に
繋 が る 。 計 算 時 間 と望 ま しい 特 性 との トレ ー ドオ フ関 係 を 注 意 深 く扱 わ な け れ ば な ら な い 。 さ て,VOQのX-Y平 値
でvOQX,VOQYを
割
れ
で あ る。 こ の
面 内成 分 の 大 きさ は ば,滑
り 方
向tSLIP,mSLIPを
求
め
が ゼ ロ で 割 り算 が 成 立 し な い と き はlSLIP,msLIPを
る
こ と が
で
き る。
ゼ ロ と し て お く。
以 上 の準 備 を も と に,摩 擦 力 は次 の よ うに 計 算 され る。 ただ し
の と き,
(E.17) た だ し,
の と き,
(E.18) (E.19) この 摩 擦 力 は転 動 方 向 と横 滑 り方 向 を 区 別 せ ず に,滑
り方 向 と反 対 向 き に摩 擦 的
な 力 が 働 く と して い る。 この よ う な単 純 な モ デ ル を用 い て も,通 常 の走 行挙 動 は
実 現 で き る。 な お,方
向 を 限 定 し て拘 束 す る場 合 は 残 りの方 向 の 摩擦 力 だ け を考
え れ ば よい 。 こ こ ま で 摩 擦 力 に よ る モ デ ル化 を考 え て きた が,操
縦 安 定 性 な どの 検 討 に は,
タ イ ヤ の横 力 を横 滑 り角 との 関 係 で 把 握 す る コ ー ナ リ ン グ特 性 が 用 い られ る こ と が 一 般 的 で あ る。 乗 用 車 な どの 通 常 走 行 で は,横 滑 り角 に コ ー ナ リ ン グパ ワ ー を 乗 じ て コ ー ナ リ ング力 とす る。 また,自 動 二 輪 車 な どで は,横 滑 り角 と と も に タ イ ヤ の 傾 き角 に も依 存 す る コ ー ナ リ ン グ力 を 考 え る。 これ らの 特 性 は タイ ヤ 試 験 機 を用 い て 計 測 す る こ とが で きる。 一 方,駆
動 力 や ブ レー キ 力 は転 動 方 向 の 摩 擦
力 の よ う な 形 で 考 え る こ と も多 い。 横 力 と転 動 方 向 力 は い ず れ も タ イ ヤ と路 面 の接 触 に よ っ て 生 じる もの で あ るか ら,両 者 を ま とめ る考 え 方 に も合 理 性 が あ る。 さ ま ざ ま な タイ ヤ と タ イ ヤ 力 の モ デ ル が 検 討 さ れ て い る。 実 際 の タ イ ヤ は ゴ ム の変 形 を伴 っ て い て,接 触 部 も点 で は な く面 に な っ て い る。 そ の 面 を代 表 す る意 味 で 点 を考 え る場 合 で も,そ の位 置 は 多 少 転 動 方 向 に 寄 っ て い る な ど,ゴ ム の 変 形 状 況 は 複 雑 で あ る 。 詳 細 は専 門 の 文献 を参照 されたい。 実 際 の タ イ ヤ に は 横 幅 が あ り,こ の 横 幅 を含 め て モ デ ル化 す る こ とが 必 要 な場 合 も あ る 。 平 面 を走 行 して い る と きで も,自 動 二 輪 車 の よ う に傾 き角 が 大 き くな る場 合,横
力 特 性 へ の 影 響 だ け で は な く,接 触 点 や 瞬 間接 触 点 の決 め 方 に も横 幅
を考 慮 す る 必 要 性 が 高 ま る。 た とえ ば,タ
イ ヤ を ドー ナ ツ状 の 形 と考 え,ド ー ナ
ツ の 断 面 を 円 と仮 定 す れ ば,実 際 に 近 い 接 触 点 や 瞬 間接 触 点 を考 え る こ とが で き る よ う に な る 。 乗 用 車 で も,た
とえ ば石 畳 の 路 面 を走 る場 合 に路 面 か ら受 け る さ
ま ざ ま な力 を検 討 す る た め に,横 幅 や タ イヤ 形 状 が 重 要 に な っ て くる。
付録 F
運動方程式の線形化
順 動 力 学 の 数 値 シ ミュ レー シ ョ ン には,普 通,運
動 方 程 式 と,随 伴 させ る運 動
学 関係 式 が 必 要 で あ る 。 随 伴 させ る 運 動 学 関係 式 と は,一 般 化 座 標 の 時 間微 分 と 一 般 化 速 度 の 関 係 式 で あ る。 こ の両 者 が 揃 っ て,系 の 動 的 な 特 性 が 定 ま る。 これ ら は,一 般 化 座 標 と一 般 化 速 度 に 関 す る非 線 形 な微 分 方 程 式 を 構 成 して い る が, これ らを線 形 化 して,固 有 値 解 析 な ど を行 う場 合 も,両 者 が 揃 っ て い る こ とが 必 要 で あ る。 線 形 化 は,振 動 問題 や 制 御 問 題 に 結 び 付 け て ゆ くた め の 重 要 な手 段 で あ る。 こ の 付 録 で は,標 準 型 の 運 動 方 程 式 と随 伴 させ る 運 動 学 関係 式 を対 象 に, 線 形 化 の 方 法 を説 明 す る。 一 般 化 座 標 Q や 一 般 化 速 度 S に 拘 束 が あ る 場 合 につ い て も,簡 単 な補 足 が あ る 。
線形化ポイン ト
F1
まず,標 準 型 の 運 動 方 程 式 に 限 定 して 考 え る。
(F.1) 随 伴 させ る運 動 学 関係 式 は次 の よ う な形 で あ る とす る。
(F.2) msと
A と B は,一 般 に,Q
と tの 関 数,fsは
Q と S と tの 関 数 に な っ て い る
はず で あ る 。 しか し,対 象 に な っ て い る系 が 制 御 対 象 の 場 合,制 u は 未 定 の ま ま に な っ て い る場 合 が あ る の で,そ
れ ら は u の ま ま 扱 え ば よ い。
入 力 u に 対 して,u や u が 含 ま れ る こ と もあ る が,こ 簡 単 な場 合 に 限 定 し,fSが
御 系 か らの入 力
こで は uだけ が含 まれる
Q と S と u と tの 関 数 に な っ て い る とす る。 固 有値
解 析 の場 合 は uを定 数 と して お け ば よい 。
(F.3) (F.4)
線 形 化 は,線 形 化 ポ イ ン トの ま わ りの微 小 変 化 に 注 目 して行 わ れ る。 線 形 化 ポ イ ン トは,多
くの 場 合,平
衡 点(平 衡 状 態)で
あ る 。 あ る い は,定 常 状 態 と呼 ば
れ る 状 態 か ら の微 小 変 化 を 考 え る こ と もあ る 。 しか し,も っ と一 般 に は,運 動 方 程 式 と補 足 さ れ た 運 動 学 関係 式 を満 たす 一 般 化 座 標 Q,一 般 化 速 度 S,一 般 化 座 標 の 時 間微 分 Q,一 般 化 速 度 の 時 間 微 分 S,入 力 u の 組 を 線 形 化 ポ イ ン トとす る こ とが で き る。 線 形 化 ポ イ ン トを 平 衡 状 態 と定 常 状 態 で は,通 常,S0は そ してQ0も
と表 す こ とにす る。
ゼ ロ で あ る 。 さ ら に平 衡 状 態 で はS0も,
ゼ ロ で あ る。 定 常 状 態 で は,S0とQ0の
一 部 の 値 が ゼ ロ以 外 の 値 を
持 つ と考 え られ る。 線 形 化 ポ イ ン トは,線
形 化 の 目 的 に 応 じ て 決 め れ ば よ い が,式(F.3),(F.4)
を満 た す も の で な け れ ば な ら な い。
(F.5) (F.6) た と え ば,B=0の Q0,S0を
系 を 考 え,線
形 化 ポ イ ン ト と して 定 常 状 態 を 選 ん で,S0, を満 た す こ とが 必 要
ゼ ロ と す る 。 そ の 場 合,
で あ る 。 なお,時
間 tは,線 形 化 を考 え て い る時 点 の 時 間 を そ の ま ま用 い て,定
数 と して扱 え ば よい 。
を簡 略 に と 表 す こ と に す る と,(F.5),(F.6)は
次 の よ う に書 け る。
(F.7) (F.8) こ れ ら は,(F.1),(F.2)に
線 形 化 ポ イ ン ト を 示 す 添 え 字 。を 付 け 加 え た 形 に な
っ て い る。
線 形 化 ポ イ ン ト を 求 め る た め に は,線
形 化 の 目 的 に 応 じ て,
の 中 の 一 定 数 の もの を最 初 に定 め る。 残 りは 上 記 の 式 を 満 足 す る よ う に 定 め る こ と に な る 。 こ の残 りの 変 数 は,式(F.7)と(F.8)の れ 以 外 の変 数 を最 初 に 定 め て お く。 式(F.7)と(F.8)を
式 の 総 数 で あ り,そ 満 た す 解 は,手 計 算 で 求
め られ る場 合 が 多 い 。 手 計 算 で 求 め られ な い よ う な場 合 は,ニ 法 や,そ
ュー トンラ フ ソ ン
れ 以 外 の 手 段 が必 要 に な り,目 的 に 応 じて 工 夫 が 必 要 で あ る。
F2
線形化の方法
次 に,線 な お,系
形 化 ポ イ ン ト ま わ り の 微 小 な 変 動 ΔQ,ΔS,ΔQ,ΔS,Δuを
考 え る。
へ の 微 小 入 力 に 対 す る 応 答 を 考 え る 場 合 は Δuを 用 い る が,固
有 値 解析
で は Δuは ゼ ロ と し て お け ば よ い 。 こ の 変 動 の 結 果,Q,S,Q,S,uは
次の よ
うになる。
(F.9) (F.10) (F.11) (F.12) (F.13) こ れ ら も,式(F.3),(F.4)を
満 た さ な け れ ば な ら な い の で,次
の 式 が 成 り立 つ 。
(F.14) (F.15) こ の 二 式 を,Δ の 付 く量 が 微 小 量 で あ る こ と を利 用 して 一 次 近 似 す る と,定 数 項 と微 小 項 に分 け る こ とが で きる 。
(F.16)
(F.17) こ こ で Δ は,式(F.9)∼(F.13)の は,対
微 小 量 以 外 に も用 い ら れ て い る 。 そ の 場 合 の Δ
象 と な る 関 数 の 微 小 変 化 量 を 表 し て い る 。 式(F.9)∼(F.13)に
も の も 含 め た Δ の 意 味 は,Q,S,Q,S,uの
用 い られ た
関 数 F に作 用 す る 次 の よ うな オ
ペ レ ー タ と解 釈 す る こ と が で き る 。
(F.18) 式(F.16),(F.17)か
ら,そ
れ ぞ れ 式(F.5),(F.6)を
差 し 引 く と,次
の ように
微 小 量 だ け の 式 が 得 られ る。
(F.19) (F.20)
こ れ らは,次
の よ う に簡 略 に書 くこ とが で き る。
(F.21) (F.22) こ れ ら は,式(F.1),(F.2)か (F.2)の
ら 機 械 的 に 作 る こ と が で き る 。 ま ず,(F.1),
各 項 に Δ を働 か せ る 。
(F.23) (F.24) そ し て,複 数 の 因子 か らな っ て い る項 は,そ の 数 だ け の 項 に わ か れ,そ の 各 項 に は 一 つ の 因 子 だ け が微 小 量 に な る よ う に して残 りの 因子 は 線 形 化 ポ イ ン トの添 え 字 。を付 け て 定 数 因 子 とす る。 た だ し,微 小 量 の 因 子 の 右 側 に あ る 定 数 因 子 は微 小 量 因子 と ま とめ て,そ の 積 全 体 の 微 小 量 に な る よ う に して お く。微 小 量 の 因子 の左 側 に あ る 定 数 因子 は微 小 量 の 外 に 出 して 単 な る係 数 と し てお け ば よい 。 こ の 説 明 は,(F.23),(F.24)と(F.21),(F.22)を
見 比 べ れ ば分 か る はず で あ る。
さ て,式(F.21),(F.22)に
A と B は Q だ け に 依 存 し て い て,
fsは
戻 ろ う 。msと
Q と S と u に 依 存 し て い る 。各こ の こ と か ら,Δ(msSo),Δfs,Δ(ASo),
ΔB は,次
の よ う に ΔQ,Δ S,Δ u で 表 す こ と が で き る 。
(F.25)
(F.26)
(F.27)
(F.28) 式(F.25)と(F.27)で
偏 微 分 の 対 象 にSoとSoが
含 ま れ て い る が,こ
れ らは偏微
分 の 対 象 を列 行 列 に す る た め に必 要 で あ る。 こ の こ と は 明 確 に理 解 して お き た い 。
線 形 化 の 目 的 が 制 御 系 の 状 態 方 程 式 の 作 成 で あ れ ば,式(F.21),(F.22)と (F.25)∼(F.28)を
用 い て 次 の よ う に な る。
(F.29)
系 の 固 有 値 だ け が 必 要 な場 合 は Δu の 項 は無 視 す れ ば よ い。 た と え ば,fSが そ の 場 合,も
複 雑 で,そ
し,fSが
の ま ま偏 微 分 す る こ とが 容 易 で な い場 合 を 考 え る。
複 雑 な 構 造 を 持 っ て い て 分 解 可 能 な と き は,偏 微 分 を行
な う前 に こ れ まで と 同様 の 手 法 で 分 解 し た ほ うが よ い 。 た と え ば B の よ う に, し ば しば ゼ ロ の もの が あ る が,そ の 場 合 は 偏 微 分 す る ま で もな くそ の 項 の 計 算 を 省 く こ とが で き る。fSの 分 解 を進 め る と,簡 単 に 除 去 で き る 項 が 増 え て,結 果 的 に作 業 が 楽 に な る場 合 が 多 い 。 最 後 に残 った もの だ け を偏 微 分 す る こ とに な る が,多
くの 場 合,そ
れ は単 に係 数 を取 り出 す だ け の 簡 単 な作 業 に な る 。 最 後 の偏
微 分 処 理 が 複 雑 に な る もの が あ る とす れ ば,そ ろ う。mS,fSが
れは計算過程が複雑 な作用力 であ
拘 束 条 件 追 加 法 で作 られ る場 合,そ
れ を利 用 した分 解 が 可 能 で
あ り,次 項 に説 明 す る 。 一 方,数
式 処 理 を用 い る と,上 記 の 分 解 や 偏 微 分 操 作 な ど の 中 間処 理 を計 算 機
に 任 せ る こ とが で き,作 業 が 簡 単 に な る可 能 性 が あ る 。
F3
拘束条件追加法の利用
多 く の 場 合,ms(Q,t)とfs(Q,S,u,t)は
複 雑 で,式(F.25)ま
体 化 す る 作 業 は 意 外 と 面 倒 な こ と が あ る 。 そ の よ う な 場 合,拘 立 つ こ と が あ る 。 拘 束 条 件 追 加 法 で はmSとfSは
た は(F.26)を
具
束 条件 追 加 法 が役
次 の よ う に計 算 され る。
(F.30) (F.31) こ こ で,右
辺 のmHは
Q と tの 関 数 に な っ て い る と 考 え て よ い 。拘 束 追 加 前 の
一 般 化 座 標 で 表 され て い た と して も,そ れ ら を Q で 表 し直 す こ と は 可 能 な はず で あ る。 同様 に,fHは
Q と S と u と tの 関数,HsとHsは
Q と tの 関 数 に な っ
て い る とす る。 当 然,線 形 化 ポ イ ン トの値 は満 足 して い な け れ ば な らな い 。
(F.32) (F.33) 式(F.30)と(F.31)を
用 い て,式(F.21)の
左 辺 第二 項 と右 辺 を作 り直 す と次 の よ
うに な る。
(F.34)
(F.35) Hsの
時 間 微 分,Hs,H〓,mHに
は,右 側 か ら添 え 字 。の付 い た 定 数 列 行 列 が 掛
か っ て い て 列 行 列 に な っ て い る。 そ して,こ の 式 に含 ま れ る す べ て の列 行 列 の偏 微 分 が 得 ら れ れ ば よ い こ と に な る。 偏 微 分 は Δ の 付 く項 ご と に 個 別 に 計 算 す る こ とが で き る。 そ の 計 算 は,式(F.25)∼(F.28)の に定 数 列 行 列 を計 算 して,そ く。 また,さ
要 領 で 行 な え ば よ い。 そ の 前
の 中 の ゼ ロ要 素 に対 応 す る 計算 不 要 な もの を取 り除
らに 分 解 で き る もの は 分 解 を進 め る こ とで,項
の数 は増 加 す る が,
個 々 の偏 微 分 はか な り簡 単 に な る はず で あ る。
F4
線形化の事例
剛 体 振 子 の 平 衡 点 を 線 形 化 ポ イ ン ト と し て,線 で は,Q
は θOA,Sは
Qo=θOAo=0,So=ωOAo=0で
ωOAで,線
形 化 を 考 え て み よ う。 こ の 事 例
形 化 ポ イ ン トは,Qo=θOAo=0,So=ωOAo=0, あ る 。 簡 単 な モ デ ル で あ る か ら,16.2節
で 得 られ
た 運 動 方 程 式(16.14)を
直 接 用 い れ ば 十 分 だ が,こ
こ で は,運 動 方 程 式 を 拘 束 条
件 追 加 法 で作 る もの と し,線 形 化 もそ の手 順 を利 用 した 形 で進 め て,複 雑 な系 の 場 合 に備 え る こ と にす る。 拘 束 前 のH,mH,fHは
次 の よ う に書 け る。
(F.36)
(F.37)
(F.38) ωOAとVOAと
の 関 係 は16.2節
節 の 式(16.33)でroo'(t)を
の 式(16.8)を
一 回 時 間 微 分 す れ ば 求 ま る が,16.9
ゼ ロ と した 式 が 簡 潔 で あ る 。
(F.39) こ れ に よ り,Hsは
次 の よ う に求 ま る 。
(F.40) こ の 時 間微 分 は 次 の よ う に な る 。
(F.41) Hsと
そ の 時 間微 分 は ゼ ロで あ る。
さ て,線
形 化 さ れ た 関 係 は 式(F.21)と(F.22)で
So=0,So=0,A=1,B=0で
あ る か ら,次
あ る が,剛
体 振 子 の場 合 は
の よ うに な る 。
(F.42) (F.43) m〓 は 式(F.32)で
求 め れ ば よ い 。 式(F.37)のmHは
m〓 で あ る 。 式(F.40)のHsでCOAをI3と に 等 し い こ と を 利 用 す れ ば,さ
定 数 で あ る か ら,そ
し た も の が,Hsoで
の まま
あ る 。rAO'がdYb
ら に簡 単 に な る。
(F.44) Δfsは,式(F.35)か Hsの
ら 求 め る こ と に な る 。mH,fHが
定 数 で あ る こ と,So=0,
時 間 微 分 が ゼ ロ で あ る こ と を 利 用 す る と,式(F.35)は
次の ようになる。
(F.45) 式(F.41)か 式(F.45)の
ら,線
り,こ
形 化 ポ イ ン ト に お け るHsの
時 間 微 分 の 値 は ゼ ロ に な る の で,
右 辺 第 二 項 は ゼ ロ に な る 。 式(F.38)は,常
れ と式(F.40)を
用 い る と,ΔfSは
に 定 数 で あ る か らfHOと な
次 の よ う に な る。
(F.46) 右 辺 のC〓A以
外 は 定 数 で,C〓Aだ
け が θOAの 関 数 で あ る 。 こ の 右 辺 は 次 の よ う
に なる。
(F.47)
(F.48) こ の 場 合 は Q が ス カ ラ ー で あ る か ら,式(F.47)の 微 分 す る こ と も で き る が,Q C〓AdYMAgを
中 ほ ど の 形 か らC〓Aだ
が 列 行 列 の 場 合 は,こ
偏 微 分 す る 形 が 必 要 で あ る(MAgは
し て も よ い)。 そ し て,こ
の 場 合,偏
け を偏
こ に 示 し た よ う に
ス カ ラ ー で あ る か ら,外
に出
微 分 の 変 数 と 関 数 を と も に 時 間 微 分 して か
ら 偏 微 分 操 作 を す る こ と が で き る 。 な お,(F.48)の
最 後 に,rAO'=dYbを
用 い
た。
平 衡 点 で は,C〓Aは
単位 行 列 に な る。 結 局,線 形 化 さ れ た 運 動 方 程 式 は次 の よ
うに な る 。
(F.49) こ の 式 と 式(F.43)(θOA=ωOA)と
F5
合 わ せ て,固
有 値 を 求 め る こ とは簡 単 で あ る。
一 般化 座 標 ,一 般 化 速 度 に拘 束 が あ る場 合
一 般 化 座 標,一
般 化 速 度 に拘 束 が あ る場 合,運
動 方 程 式 に は拘 束 力(ラ
グラ ン
ジ ュ の 未 定 乗 数)が 加 わ り,拘 束 条 件 も連 立 させ て 解 を 求 め る形 に な る 。 拘 束 が ホ ロ ノ ミ ック な も の だ け の 場 合 は次 の よ う に書 け る。
(F.50)
(F.51) (F.52) Ψ=0は
位 置 レ ベ ル の 拘 束 式 で,Ψ は Q と tの 関 数 で あ る 。 位 置 レベ ル の 拘 束
条 件(F.52)を
二 回 時 間微 分 して 速 度 レベ ル と加 速 度 レベ ル の 拘 束 条 件 を求 め て
お く。
(F.53) (F.54) こ こ で,式(F.53),(F.54)に,シ い る も の と し て,以
ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な 拘 束 も追 加 さ れ て
下 の 議 論 が シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ッ ク な系 に も適 用 で き る よ
う に 考 え て お く 。 す な わ ち,Φ
の 数 は,Ψ
よ り シ ン プ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック な拘
束 の 数 だ け 多 い 。 Φsは Φ の S に よ る 偏 微 分 係 数,ΦRは 除 く 残 り の 項 で あ る 。 Φsと る 。 ま た,式(F.50)の
Φsは
Q と tの 関 数,ΦRは
Φ のなか で Sの項 を Q と S と tの 関 数 で あ
Λ は Φ の 数 だ け の 成 分 を持 つ ラ グ ラ ンジ ュの 未 定 乗 数 で
あ る。
まず,線
形 化 ポ イ ン トは,以 上 の 式 を満 た す よ うに 定 め な け れ ば な らな い 。
(F.55) (F.56) (F.57) (F.58) (F.59) 系 の 幾 何 学 的 自 由 度 と 運 動 学 的 自 由 度 の 和 をDDoFと ら の 式 の 数 は,Qo,So,Qo,So,Aoの (F.50)∼(F.54)に
総 数 よ り,DDoFだ
書 く こ と に す る と,こ
れ
け 少 な い 。 次 に,式
Δ を 作 用 させ る 。
(F.60) (F.61) (F.62) (F.63) (F.64) こ の 場 合 の Δ は,式(F.18)の 素 と考 え て い る。
F が Λ に も依 存 し て い る と し て,次
の よ うな作 用
(F.65) こ の 偏 微 分 に よ っ て,式(F.60)∼(F.64)は
ΔQ,ΔS,ΔQ,ΔS,Δu,Δ
す る 線 形 の 関 係 式 に な る 。 自 由 な 変 数 の 数 はDDoFで
Λ に関
あ る。
以 上 の 線 形 化 され た 関係 が 得 られ れ ば,線 形 応 答 特 性 や 固有 値 を調 べ る こ とが で きる 。 系 へ の 微 小 入 力 に対 す る応 答 を 考 え る場 合 は,出 力 変 数 を 定 め て Δuに 対 す る 関係 に書 き換 え れ ば よい 。 固有 値 を求 め る場 合 は,Δ Q と ΔSの な か の独 立 な △QIと ΔSIと,ΔQ,ΔSの
な か の 対 応 す る ΔQI,ΔSIを
選 ん で,そ
れ らの
間 の 関 係 に書 き換 え,固 有 値 計 算 をす る。
F6
順動力学の計算手順を利用する方法
線 形 化 は,Q,Sな
ど に よる 偏 微 分 を 求 め て 計 算 す る た め,モ デ ル の規 模 が 大
き くな る と,意 外 な ほ ど大 きな 作 業 が 必 要 に な る。 これ まで に述 べ た 方 法 は,系 全 体 の 立 場 か ら トッ プ ダ ウ ン的 に作 業 を進 め る た め,全 体 の 計 算 構 造 を分 解 す る 作 業 が 先 行 す る。 そ の た め,係 数 行 列 に 直接 関 わ る 部 分 の偏 微 分 作 業 の見 通 しを 得 難 く,少 め,順
し規 模 が 大 き く な る と,案 外,困
難 に 陥 り易 い。 そ の 点 を改 善 す る た
動 力 学 の計 算 手 順 を利 用 して,偏 微 分 の 作 業 を能 率 よ く進 め る別 の 方 法 を
考 え る 。 なお,こ
こで は,標 準 型 の 運動 方 程 式 に つ い て 説 明 す る。
順 動 力 学 の 計 算 手 順 は,Q,S,tか
ら,Q,Sを
求 め る もの で あ る。 制 御 入 力
u は,t の 関 数 と考 え て お け ば よい 。 途 中,多 数 の 中 間 変 数 が 使 わ れ る。 そ れ ら を,y,xな
ど とす る 。 制 御 出 力 は 中 間 変 数 と は 限 ら な い が,同
じ位 置 付 け に 考
え て お け ば よい 。 線 形 化 さ れ た 系 を,同
じ構 造 に 当 て はめ て考 え る こ とが で き る 。 す な わ ち,線
形 化 さ れ た系 は,ΔQ,ΔSか
ら,ΔQ,ΔSを
求 め る計 算 手 順 に な っ て い て,Δ u
を 制 御 入 力 と し,制 御 出 力 を含 む 中 間 変 数 に Δy,Δxな
どが あ る。 tは線 形 化 を
考 え て い る 瞬 間 の 時 間 で,定 数 と考 え れ ば よ く,Δ の つ く量 は,Qo,So,Qo, So,uo,yo,xoな うな,線
どで 表 さ れ る線 形 化 ポ イ ン ト まわ りの 微 少 量 で あ る 。 そ の よ
形 化 され た 系 の順 動 力 学 計 算 手 順 が 得 られ れ ば,次
に説 明 す る よ う に,
線 形特 性 の 把 握 が 可 能 に な る 。 線 形 化 され た順 動 力 学 計 算 手 順 は,ΔQ,ΔS,Δuを
入 力 と し,ΔQ,ΔS,Δy,
Δxな どが 出 力 で あ る。 線 形 化 さ れ た 制 御 対 象 の 状 態 方 程 式 は,ΔQ,ΔSか ΔQ,ΔSを
計 算 す る係 数 行 列 と,Δ uか ら ΔQ,ΔSを
凝 縮 さ れ て い る。 ΔQ,ΔSか
ら ΔQ,ΔSを
ら
計 算 す る係 数 行 列 に 特 性 が
計 算 す る 係 数 行 列 が 求 ま れ ば,固 有
値 解 析 が で き る 。 同 様 に,Δ u か ら Δy,Δxな
ど を 計 算 す る係 数 行 列 が 求 ま れ
ば,線 形 化 され た 制 御 対 象 の入 出 力 関 係 を調 べ る こ とが で きる 。 線 形 化 され た 順 動 力 学 計 算 手 順 か ら,係 数 行 列 を 取 り出す 手 段 は,分 か りや す い 。 ΔQ,ΔSか
ら ΔQ,ΔSを
計 算 す る係 数 行 列 の 場 合 を例 に と っ て,次 の よ う
に な る 。 ΔQ と ΔS の全 要 素 を順 に並 べ,そ
の i番 目の も の を 1 と して残 りを ゼ
ロ とす る。 こ の 入 力 に 対 す る 計 算 出 力 ΔQ と ΔS を求 め れ ば,そ 第 i列 で あ る。 iを 1か ら n(独 立 変 数 の 数)ま
れが 係 数 行 列 の
で 順 に 計 算 す れ ば,係 数 行 列 全
体 が 得 られ る。 た だ し,そ の 作 業 の 前 に,線 形 化 ポ イ ン トを求 め,そ の ポ イ ン ト に お け るす べ て の 中 間 変 数 の 値 を求 め て お く必 要 が あ る 。 線 形 化 ポ イ ン トの決 め 方 は,こ れ ま で の 方 法 と 同 じ で あ る。 中 間 変 数 の 線 形 化 ポ イ ン トに対 応 す る値 yo,Xoな
どの 計 算 は,順 動 力 学 の 計 算 手 順 を利 用 して 求 め る 。
さて,線 形 化 さ れ た 順 動 力 学 計 算 手 順 の 作 成 が,こ
の項の最 後の課 題 である。
そ の 方 法 の 考 え方 は 単 純 で,線 形 化 前 の順 動 力 学 の計 算 手 順 に従 い,す べ ての 中 間 変 数 の,Q,S,u,お 間変 数 yがQ,S,uに
よ び,中
間変 数 に よ る 偏 微 分 係 数 を 求 め れ ば よい 。 中
依 存 して い る と して,Δyは
次 の よ う に書 け る 。
(F.66) こ の 式 の係 数 行 列 を計 算 し,そ れ を用 い て Δyを 求 め る よ う に す る。 実 際 に は, y が,Q,S,uの
一 部 分 だ け に依 存 して い る こ とが 多 い が,関
わ っ て い る変 数
に 対 応 す る偏 微 分 係 数 だ け で よ い 。 残 りは計 算 す る まで もな くゼ ロで あ る 。 中 間 変 数 y が 列 行 列 の 場 合 は,こ
の ま ま で よ い が,幅
の あ る 行 列 の 場 合 は,
列 行 列 に よ る偏 微 分 が 行 え ない 。 そ の よ う な場 合 は,順 動 力 学 の 計 算 手 順 を う ま く整 理 しな おす こ と で解 決 で き る場 合 も多 い 。 特 に,そ の 計 算 部 分 の 前 後 の 計 算 だ け を変 更 す る こ と で解 決 で き れ ば 簡 単 で あ る。 しか し,そ の よ う な計 算 手順 の 変 更 が 容 易 で な い場 合 は,偏 微 分 す る列 行 列 を,ス カ ラー レベ ル に 分 解 す る 方 法
が あ る 。 ス カ ラー 変 数 に よ る偏 微 分 な ら,偏 微 分 され る行 列 に幅 が あ っ て も実 行 可 能 で あ る。 多 くの 中 間 変 数 は,そ れ 以 前 に 出 て くる 中 間 変 数 の 関 数 に な っ て い る こ とが 多 い 。 そ の よ う な場 合 は,以 前 に 求 め て あ る 中 間 変 数 の 値 を利 用 す れ ば よい 。 中 間 変 数 xが,Q,S,u以
外 に,y に も依 存 して い る とす る と,Δ x は次 の よ う に な
る。
(F.67) Δyは,既
に 求 ま っ て い るの で,x の,Q,S,u,yに
よ る偏 微 分 を求 め,Δ x を
計 算 で き る。 前 の 計 算 結 果 を利 用 す る の で,順 動 力 学 計 算 の 各 ス テ ッ プの 線 形 化 作 業 は,各 ス テ ップ の 複 雑 さ だ け を反 映 した もの に な る 。 多 くの 中 間 変 数 は そ れ 以 前 の 中 間変 数 だ け に 依 存 して い る こ とが 多 く,順 動 力 学 の 計 算 ス テ ップが 細 か く分 解 さ れ て い れ ば,線 形 化 は 容 易 に な る 。 以 上 の よ う な作 業 を順 動 力 学 の 計 算 手 順 に 沿 って 行 う こ と は,比 較 的,見 通 し の よい もの に な る 。 本 質 的 な偏 微 分 の操 作 を減 らす もの で は な い が,見 通 しの悪 さか ら来 る不 安,混
乱,無
駄 を省 け る はず で あ る。
基本事項の まとめ
付録 G
こ の 付 録 に は,第
Ⅱ部,第
Ⅲ部,第
Ⅳ 部 にで て くる 基 本 項 目を並 べ た 。 各 項 目
に は,表 が 付 い て い る もの と,単 に,項
目だ け の もの が あ る。 こ の付 録 の ね らい
は 知 識 の 整 理 で あ る。 こ こ に で て くる項 目 と,表 中 の 記 号 や 関係 式 を 見 て,そ
の
内 容 を初 学 者 や 友 人 に説 明 で き る よ うに な って い た だ きた い 。 各 項 目 に は,お お よそ 対 応 す る英 語 を付 け て お い た 。 言 葉 は使 わ れ る 状 況 に応 じた 変 化 が 必 要 な こ と も多 く,ま た,類 似 の 概 念 を表 す 表 現 は複 数 あ る 。 初 学 者 が 英 語 に悩 む気 持 ち は 良 く分 か るが,筆
者 の 英 語 力 も中 途 半 端 で あ り,あ
くまで
参 考 程 度 と考 え て い た だ き た い 。
図G.1
位 置,速 Lposition,
度,角
速 度,力
velocity,
angular
を 表 す 幾 何 ベ ク ト ル(P,Q,Rは,剛 velocity,
force]
体A,B,C上
の 点)
Ⅱ-1
運 動 学[kinematics]
Ⅱ-2
運動学的物理量
Ⅱ-3
点
広 が りの あ る物 体
位 置 レベ ル 変 数
位置
回転姿勢
速 度 レベ ル 変 数
速度
角速度
オ ブザ ー バ ー(運 動 学 的 物 理 量 は 必 ず オ ブ ザー バ ー を伴 う) [observer]
Ⅱ-4
幾 何 ベ ク トル 表 現(矢 (行 列 表 現)[geometric
印 に よ る 表 現)と vector,
algebraic
位 置,角 速度,速 度 の代 数 ベ ク トル 表現 の 例:
便 利 な 定 数DX,DY,DZの
使 用 例:
代 数 ベ ク トル 表 現 vector]
Ⅱ-5
ダ ッ シ ュ が 付 く 代 数 ベ ク トル と ダ ッ シ ュ が 付 か な い 代 数 ベ ク トル (位 置,角
速 度,速
度)[primed
algebraic
vector,
unprimed
algeb-
raic vector]
(点P,Qは,そ
Ⅱ-6
れ ぞ れ 剛 体A,B上
3 次 元 回 転 姿 勢 の 表 現 方 法[spatia.
の 点)
orientation,
three
orientation]
dimensional
(注 1)Simple
Rotationか
ら回 転 行 列:
各 軸 ま わ り の 回 転 に 対 応 す る 回 転 行 列 関 数:Cx(θ),
CY(θ),
Cz(θ)
狭 義 の オ イ ラ ー 角 か ら 回 転 行 列:CAB=Cz(θ1)Cx(θ2)Cz(θ3) オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ か ら 回 転 行 列:
Ⅱ-7
三 者 の 関 係(注2)[relation
between
three(筆
(注 2)剛 体 の 重心(代 表 点)速 度 と角速 度 を ま とめ た三 者 の 関係:
者 の 造 語)]
並進 運 動 も ダ ッシ ュの付 いた 変 数 を用 い た場 合,
(この関 係 を
Ⅱ-8
と表す 。)
時 間 微 分 の 関 係[differentiation
with
respect
to
differentiation]
(注 3)幾 何 ベ ク トル の 時 間微 分 に は,時 間 微 分 の オ ブ ザ ー バ ー を必 要 とす る。 (注 4)ダ ッ シ ュ の 付 か な い ΩABを 用 い る と,CAB=ΩABCAB 2次 元 代 数 ベ ク トル 表 現 の 回転 行 列(座
標 変 換 行 列)の
合 は,
(注 5)ダ
ッ シ ュ が 付 くr'PQ,v'PQを
用 い る と,r'PQ=V'PQ+r'PQΩ'AB
場
time,
time
Ⅲ-1
動 力 学[dynamics]
Ⅲ-2
ダ ッ シ ュ が 付 く代 数 ベ ク トル と ダ ッ シ ュ が付 か な い 代 数 ベ ク トル (力,ト ル ク)
(点 Q は剛 体 B 上 の点)
Ⅲ-3
力 と トル ク の 等 価 換 算[equipollent
force
and
torque]
(点 P は剛体 A 上 の点)
Ⅲ-4
自 由 な 質 点 と,自 [point mass(ま
由 な 剛体 の運 動 方 程 式 た は,mass
particle),rigid
body]
(注 6)剛 体 の 運 動 方 程 式 は,三 質 点 剛体 の運 動 方程 式 と して 求 め る こ と が で きる。 (注 7)三 質点 剛 体 の慣 性 行 列: 慣 性 行 列 の座標 変 換: 平 行軸 の定 理(点
G を重心 とす る)
(注 8)並 進 運 動 も ダ ッ シ ュの 付 い た 変 数 を用 い る と,運 動 方 程 式 は 次 の よ うに な る。
(この 関 係 を
と 表 す 。)
(注 9)2次 元 剛体 の ダ ッシ ュの付 く変 数 に よる 表現:
図G.2
Ⅲ-5
幾 何 学 的 自 由 度,運 kinematic
Ⅲ-6
degree
一 般 化 座 標(独 [generalized
Ⅲ-7
三 つ の 質 点 か ら な る系 に働 く力
動 学 的 自 由 度[geometric of freedom(筆
立 な 一 般 化 座 標) coordinate,
ホ ロ ノ ミ ッ ク 拘 束(幾 束(運
constraint]
of freedom,
者 の 造 話)]
,一 般 化 速 度(独
generalized
何 学 的 拘 束),シ
動 学 的 拘 束)[holonomic
degree
立 な 一 般 化 速 度)
velocity]
ン プル ノ ン ホ ロ ノ ミ ック 拘
constraint,
simple
nonholonomic
Ⅲ-8
位 置 レ ベ ル 拘 束(ホ ッ ク 拘 束+シ [position
ロ ノ ミ ッ ク 拘 束)と
速 度 レベ ル 拘 束(ホ
ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク 拘 束)の
level constraint,
velocity
ロノミ
標 準 形(注11)
level constraint]
(注10)剛
体 系 は質 点 系 の特 別 な 場合 であ る。
(注11)質
点 と剛 体 に関 す る添 え 字 の な い 変 数 は,複 数 の 質 点 ま た は 剛 体 に番 号 を付 け,そ の順 に対 応 す る変 数 を並 べ た もので あ る。 列 行 列 の 変 数 は縦 に,横 幅 の あ る 変 数 は対 角 的 に,並 べ る もの とす る。(12.3節,12.4節
Ⅲ-9
拘 束 力[constraint
参 照)
force]
独 立 な拘束力
Ⅲ-10
ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系,シ [holonomic
Ⅲ-11
system,
ン プル ノン ホ ロ ノ ミ ッ クな 系 simple
拘 束 質 点 系 と 拘 束 剛 体 系 の,拘 [constrained system]
point
mass
nonholonomic
system]
束 力 を 含 む 運 動 方 程 式(注11) system,
constrained
rigid
body
Ⅲ-12
運 動 量,角
運 動 量[momentum,
angular
momentum]
運 動 量 保 存 の 法 則,角
運 動 量 保 存 の 法 則[conservation
運 動 量 原 理[momentum
principle]
Ⅲ-13
運 動 補 エ ネ ル ギ ーTi,運 [kinetic
co-energy,
動 エ ネ ル ギ ー T,ポ kinetic
energy,
potential
law of momentum],
テ ン シ ャ ル 関 数U function]
Ⅳ-1
運 動 方 程 式[equation
Ⅳ-2
運 動 方 程 式 の 作 り 方(注11)
こ の 表 の(注)は
Ⅲ-8 項 の(注)と
of motion]
共通 で あ る 。
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,”ASME Vol.108,
pp.183-188.
● その他,力 学関連 21.Crandall, S.H.,Karnopp, D.C .and Pridmore-Brown, D.C.,(1968),Dynamics of Mechanical and Electromechanical Systems, McGraw-Hill .
22.Kane,
T.R.,
and
Levinson,
D.A.,(1985),Dynamics:Theory
and
Applications,
McGraw-Hill. 23.Kane,
T.R.,
Likins,
P.W.
and
Levinson,
D.A.,(1983),
Spacecraft
Dynamics,
McGraw-Hill. 24.Lanczos,
C.,(1970),
University 25.高
橋 康 原 理,日
of Toronto 監 訳,一
Publishing
学(上),吉
Co.
野 忠,江
Mechanics,4th
edition,
訳,(1992),Cornelius
Lanczos,解
析 力 学
と変 分
Classical
Mechanics,2nd
Edition,
Addison-Wesley
沢 康 生
訳,(1983),ゴ
ー ル ド ス タ イ ン:新
版
古 典 力
沢 康 生
訳,(1983),ゴ
ー ル ド ス タ イ ン:新
版
古 典 力
岡 書 店. 野 忠,江 岡 書 店.
29.山
内 恭 彦,(1959),一
30.原
島 鮮,(1985),力
31.大
貫 義 郎,(1987),解
32.高
橋 康,(2000),量 社.
of
Inc.
川 富 士,矢 学(下),吉
Principles
Press.
柳 正 和
H.,(1980),
川 富 士,矢
28.瀬
Variational
刊 工 業 新 聞 社.
26.Goldstein,
27.瀬
The
般 力 学,岩 学,三
訂 版,裳
析 力 学,岩
波 書 店. 華 房 ・ 波 書 店.
子 力 学 を 学 ぶ た め の 解 析 力 学 入 門,増
補 第 二 版,講
談
付 録CD-ROMに
●
収録 内容
付 録CD-ROMに ①
は,次 の 2種 類 が 収 録 さ れ て い る。
シ ミュ レー シ ョン動 画(序
②MATLABの
●
ついて
章 で 紹 介 した もの)
プログラム
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 動 画(序
動 画 は全 部 で 以 下 の11個
章 で 紹 介 し た も の)
ある。 動画一覧
項目
フ ァイ ル名
①
ブ ル ドー ザ ー
bulldozer
②
パ ワ ー シ ョベ ル
power_shovel
③
ホ イ ー ルロ ー ダー
wheel_loader
④
逆 立 ち ゴマ
sakadachi_koma
⑤
達 磨 落 し(失 敗)
daruma_otoshi_1
⑥
達 磨 落 し(成 功)
daruma_otoshi_2
⑦
自動二輪車
jidounirin
⑧
弾 性 車両 1
dansha_1
⑨
弾 性 車両 2
dansha_2
⑩
歩 く自動 販 売機
walking_vending_machine
⑪
ジ ャイ ロ椅 子 の体 験
gyro_chair
●MATLABの
プ ロ グ ラ ム
収 録 さ れ て い るMATLABの
M フ ァ イ ル は,全
部 で12個
あ り,そ
れ ぞ れ独
立 の 順 動 力 学 シ ミ ュ レー シ ョン プ ロ グ ラ ム で あ る。 こ れ ら の プ ロ グ ラ ム は,MATLABのVersion6.5.1とVersion7.0.1で
動作確認
済み である。 プ ログ ラ ム一 覧 フ ァイル名
① houbutsu_1.m
フ ァ イル 名
② koma_120.m
③
koma_140.m
④ koma_145.m
⑤
koma_20.m
⑥ koma_45.m
⑦
nirinsha_1.m
⑧ sanjufuriko _1.m
⑨
gyro_chair_1.m
⑩
⑪
suspension_10.m
⑫
koma_1045.m sanjufuriko _30.m
● 著作権 本CD-ROMに
収 録 さ れ て い る動 画 ・プ ロ グ ラム は,筆 者 に よる 著 作 物 か,許
諾 を 得 て 転 載 して い る もの で あ る。 個 人 的 な使 用 目的 で の 改 変 は 認 め ます が,オ リジ ナ ル フ ァ イ ル お よ び改 変 され た フ ァイ ル の 再 配 布 は 禁 止 致 し ます 。
●
使 用上 の注 意
本CD-ROMの 負 い ませ ん。
利 用 に よ る い か な る損 害 に対 して も作 者 お よ び 出版 社 は 責 任 を
あ とが き 日本 機 械 学 会 の研 究 会 活 動 の 中 で,日 本 の マ ル チ ボ デ ィ ダ イナ ミク ス の 状 況 か ら教 育 問 題 が 重 要 だ と感 じ始 め た の は,1995年
頃 だ っ た と思 う。 筆 者 自身,今
よ りは る か に知 識 が お ぼ ろ げ だ っ た 時 代 で あ る。 そ の後,知
識 を整 理 し,不 足 を
補 う機 会 が 続 い た 。 2000年
度 に,日 本 大 学 大 学 院理 工 学 研 究 科 で 機 械 力 学 特 別 講 義 Ⅱ を始 め た こ
とが,次
の 大 き な前 進 で あ る。 「は じめ か ら 3次 元 」,「さ ま ざ ま な 運 動 方 程 式 の
作 り方 」 を 意 識 し て,講 義 内容 を 決 め,50ペ 位 認 定 を伴 う大 学(大 以 来,日
ー ジ 程 の テ キ ス トを作 成 して,単
学 院)で の 初 め て の 講 義 をず い ぶ ん 緊 張 しな が ら始 め た 。
本 大 学 で の 講 義 は ず っ と続 い て お り,5 年 ぐ らい の 間 に テ キ ス トは400
ペ ー ジ 以 上 に膨 らん だ 。 こ の講 義 が 本 書 の最 大 の 母 体 で あ る。 こ の講 義 は 背 戸 一 登 先 生 の ご尽 力 で 実 現 した。 2001年
度 か らは,千 葉 大 学 工 学 部 で 解 析 力 学 Ⅱを 学 部 の 2年 生(後 期)に
す 機 会 を頂 い た。 筆 者 が 組 み 立 て た 内 容 は,学 部 の2,3年 い と感 じ始 め て い た の で,内 容 の多 さ と戦 い な が ら,そ
話
生 か ら教 え た ら面 白
して,半
年 で は 少 し無 理
が あ る と思 い な が ら,ず い ぶ ん頑 張 った 。 日本 大 学 とほ ぼ 共 通 の テ キ ス トを用 い た が,テ
キ ス トの 充 実 に は,こ
こで の 経 験 も大 き い。 こ の 講 義 は 野 波 健 蔵 先 生 の
ご尽 力 で 実 現 した 。 この 間,野 波 研 究 室 で 4 日 間連 続 の 集 中講 義 を させ て い た だ い た こ と も忘 れ 得 な い 。 山 梨 大 学 で も 2 日間 の 集 中講 義 の 機 会 を,数 年 に わ た って 沢 登 健 先 生 か ら頂 い た 。 以 上 の 講 義 経 験 は 筆 者 に とっ て す ば ら しい 体 験 で あ り,最 も学 ん だ の は学 生 よ り筆 者 で あ っ た と思 う。 そ の 後,2003年11月
に,運 動 と振 動 の 制 御 シ ンポ ジ ウ ム(MOVIC2003)の
チ ュ ー ト リア ル 講 師 の 機 会 を頂 き,2005年
3月 に 日本 機 械 学 会 の 講 習 会 「運 動
方 程 式 の立 て 方 七 変 化 」 が 実 現 した 。 こ れ ら は,千 葉 大 学 西 村 秀 和 先 生 の ご尽 力 に よ る。 また,日
本 大 学 渡 辺 亨 先 生 に も,ご 支 援 い た だ い た。 筆 者 が 気 に入 っ た
こ の 講 習 会 の タイ トル も渡 辺 先 生 の ア イ デ ィ ア で,2006年1月
に も同 じタイ ト
ル の 講 習 会 を 開 い た 。 機 械 学 会 の 講 習 会 は,2 日間 を頂 く こ とが で き たが,そ
れ
で も内 容 を絞 り込 ま な け れ ば な らな い 。 テ キ ス トも,学 生 向 け の も の を流 用 す る の で は 量 が 多 す ぎ る。 思 い 切 っ て,2 日間 用 と して 話 しや す い 形 に構 成 し直 し, 新 た な も の を作 成 し た 。 練 習 問 題 な ど は,ほ
と ん ど割 愛 し,新 た にMATLAB
の プ ロ グ ラ ム で 順 動 力 学 の 事 例 を作 っ て 添 付 す る よ うに した。 本 書 は,こ の 機 械 学 会 講 習 会 用 テ キ ス トをベ ー ス に,技 術 上,お 重 要 と考 え ら れ る こ と を,補
よ び,教 育 上
充 した も の で あ る 。 教 科 書 と して の 側 面 も意 識 し
て,練 習 問 題 的 な もの もあ る程 度 挿 入 し,一 方 で,実 用 的 な技 術 の 習 得 に も役 立 つ よ う に,か な りレベ ル の 高 い こ と も重 要 と感 じた こ と は取 り上 げ た 。 か な り充 実 した 内 容 に な っ た と い う思 い と,少 な く と も部 分 的 に は う ま く説 明 で き て い る とい う思 い は あ る が,と
こ ろ ど こ ろ 難解 な 説 明 に な っ て い た り,整 理 が 不 十 分 に
な っ て し ま っ た 部 分 が あ る の は 筆 者 の力 不足 で あ る。 もっ と時 間 を掛 けれ ば,ま だ まだ 改 善 で きそ うで あ る が,今
は,む
しろ 読 者 か らの ご批 判 を浴 び なが ら,先
を考 え て ゆ くこ とが 重 要 だ と考 え る よ うに な った 。 こ の拙 い 記 述 に よ って 読 者 の 方 々 に どの 程 度 の 事 柄 をお 伝 え で き る の か,こ れ ま で の 講 義 な どの経 験 と は違 っ た 形 で あ るだ け に,新
た な 緊 張 を感 じて い る 。
上 記 の 先 生 方 に は,心
よ りお 礼 申 し上 げ ます 。 序 章 に用 い た千 葉 大 学 と 日本 大
学 で の研 究 事 例 の 図 も快 く提 供 して い た だ い た 。 上 記 以 外 に,東 京 大 学 の 須 田義 大 先 生 か ら も,興 味 深 い 研 究事 例 の 図 を提 供 頂 い た。 東 京 大 学 の 杉 山博 之 特 認 助 手 に は,速 度 変 換 法 や 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 の 解 法 な どに 関連 して ア ドバ イス を頂 い た(本 書 の 表 現 はす べ て 筆 者 の 責 任 で 書 い て い る)。 杉 山博 之 氏 は,本 格 的 な マ ル チ ボ デ ィ ダ イ ナ ミク ス を 学 ん だ 貴 重 な 人材 で あ り,彼 と交 流 で きた の は筆 者 に と って 幸 運 で あ った 。 い くつ か の 図 を小 松 技 法vol.33 た,添 付 のCD-ROMに
no.120の
筆 者 等 に よ る記 事 か ら引 用 し た。 ま
収 録 さ れ て い る建 設 機 械 の ア ニ メ ー シ ョ ン も,上 記 の 記
事 の 著 者 等 に よ っ て 実 用 化 したDSSと
い う汎 用 ソ フ トを 用 い て 作 成 した もの で
あ る。 パ ワ ー シ ョベ ル の シ ミュ レー シ ョ ンを 実施 し,そ の ア ニ メ ー シ ョン を作 っ た の は金 山登 氏,ホ 術 大 学)で
イ ー ル ロ ー ダの 仕 事 を した の は 宮 田圭 介 氏(現,静
岡文化芸
あ る 。 小 松 製 作 所 の 関係 者 に は掲 載 を快 諾 い た だ い た こ と も含 め,お
礼 申 し上 げ ます 。
弾 性 車 両,歩 学 生(相
く 自動 販 売 機,ジ
根 隆 人 君,足
ャ イ ロ椅 子 の 図 とア ニ メー シ ョ ン は 日本 大 学 の
立 和 仁 君,田
中喬 君,山
崎 雅 典 君)の 作 品 で あ る。 自動 二
輪 車 の 動 画 は,千 葉 大 学 の学 生(朱 紹 鵬 さん,岩 松 俊 介 君)に
よ る。 講 義 と研 究
活 動 で 出 会 った 他 の 学 生 諸 君 か ら も,い ろ い ろ な ヒ ン トを頂 い た 。 サ イ バ ネ ッ トシ ス テ ム株 式 会 社 の 剣 持 智 之 氏,長 MATLAB関
田 瑶 子 氏,福
井 仁 氏 か らは
係 の 技 術 に 関 して ア ドバ イ ス を 頂 き,ま た,便 宜 を 図 って い た だ い
た。 東 京 電 機 大 学 出 版 局 の 植 村 八 潮 氏,吉
田 拓 歩 氏 に は,様
々な形 で応援 い ただ
き,ま た,ご 苦 労 頂 い た 。 筆 者 は,初 め て の 出版 とい う体 験 を,気 持 ち よ く,張 り切 っ て,進
め る こ とが で き た。
以 上 の 方 々,お
よ び,こ
こ に書 き きれ なか っ た 関係 者 に,心 か ら御 礼 申 し上 げ
ます 。 2006年11月
田島
洋
索 引 一 般 化 速 度 115 数 字
,131,137
一 般 化 力 277
2 次 元 三 重 剛 体 振 子 132 2 次 元 二 重 剛 体 振 子 132
上 三 角 行 列 13
3 次 元 剛 体 系 の 微 分 代 数 型 運 動 方 程 式 238
右 辺 54
3 次 元 三 重 剛 体 振 子 110
裏 の 表 現 188,197
3 次 元 二 重 剛 体 振 子 104
運 動 エ ネ ル ギ ー 161 運 動 学 43
欧 文 Baumgarteの DAE
235 Technique
Jourdainの LU分
207
原 理 198
運 動 力 学 43
235
運 動 量 152
0rder-N-Algorithm
254
0rder-N-Formulation Pauliの
運 動 方 程 式 の 標 準 形 149 運 動 補 エ ネ ル ギ ー 163
解 13
ODE
運 動 学 的 物 理 量 43 運 動 方 程 式 43
Embedding
QR分
運 動 学 的 自 由 度 131 拘 束 安 定 化 法 241
運 動 量 原 理 156,158
255
運 動 量 保 存 の 法 則 157
ス ピ ン 行 列 319 エ ル ミ ー ト行 列 318 ,319
解 13,23
Recursive-Algorithm
255
Recursive-Formulation Simple Velocity
255
Rotation(単
純 回 転) 70,71
Transformation
209
オ イ ラ ー 角 70 オ イ ラ ー の 運 動 方 程 式 61,171 オ イ ラ ー の 定 理 71 オ イ ラ ー パ ラ メ ー タ 70,76
あ 位 置 46 一 次 従 属 23
大 き さ 12 オ ブ ザ ー バ ー 48 表 の 表 現 188,197
一 次 独 立 22 か
位 置 レベ ル の 拘 束 119 位 置 レベ ル 変 数 258
外 積 オ ペ レ ー タ ー 61
一 般 化 運 動 量 281
回 転 運 動 59
一 般 化 座 標 115
,131,136
回 転 行 列 70,73
外 力 119
行展 開 18
可換 16
共役 変 換 320
角運 動 量 153
共役 変 数 297
角 運動 量 保存 の法 則 158
行 列 11
角 速度 61
行 列式 18
拡 大解 釈 した外 積 オペ レー ター 128 舵付 き帆 掛 け舟 134
系 全体 の運 動量 153
仮想 仕 事 181
系 全体 の角 運動 量 153
仮 想速 度 194
系 全体 の質 量 152
仮 想パ ワー 194
ケイ ン型 運 動 方程 式 203,204
仮想 パ ワー の原 理 193
ケ イ ンの部 分 角 速度 204
仮想 変 位 180
ケイ ンの部 分 速 度 203,204
加 速度 50
ケイ ンの方 法 202
加 速度 レベ ル の拘 束 119 傾 き(Y の) 54
交 換 可能 16
慣性 行 列 43,62
広 義 の オ イ ラー角 75
慣性 系 45
拘 束 115,117,119,131,140
慣 性 主軸 124
拘 束安 定 化 241
慣性 乗 積 62
拘 束外 力 156
慣 性 テ ン ソル 62
拘 束 質 点系 の微 分代 数 型 運 動 方程 式 237
慣性 トル ク 65
拘 束 条件 140
慣 性 モー メ ン ト 62
拘 束 トル ク 117
慣性 力 51,64
拘 束 の独 立 性 146 拘 束 の ヤ コ ビ行列 145,146
幾何 学 的 自由度 131
拘 束 力 115,117,120,131
幾何 ベ ク トル 9,38,46
拘 束 力消 去 法 177
木構 造 254
交 代 行列 21,61
擬 座標 186,187
剛 体振 子 104
基底 幾 何 ベ ク トル 40,308
恒 等 変換 303
基底 列 行 列 41,308
固有値 21
逆 行列 19
固有 列行 列 21
逆 動力 学 解析 51
コ レス キー 分 解 13
逆 方 向(漸 化 計 算 の) 262 さ
球 面 に内 接す る転 動 球 211 行 12
歳 差 運動 90
狭 義 の オイ ラ ー角 74
歳 差 運 動(コ マ の) 173
行行 列 12
サ イズ 12
ス カ ラー積 17
座 標 分 割 207 座 標 変 換 行 列 68 作 用(action)
288
正 規 化 23 正 規 直 交行 列 23,69
作 用 外 力 156 作 用 積 分(action
integral)
288
正 準 運 動方 程 式 298
作 用 トル ク 62
正 準 変換 302
作 用 力 50,60,119
正 準 変 数 298
三 者 の 関 係 43,79
正 方 行列 12 正 方 的 ブ ロ ッ ク行 列 14
時 間 微 分 の オ ブ ザ ー バ ー 50
積(行 列 の) 15
時 間 微 分 の 関 係 43,50
積(ブ ロ ッ ク行 列 の) 16
仕 事 181
積 の結 合 法 則 18
下 三 角 行 列 13
積分 ア ル ゴ リズ ム 54
実 対 称 行 列 23
積分 キザ ミ 54
質 量 43,50
積分 原 理 285
始 点(幾
接 触 点 354
何 ベ ク トル の) 39
重 心 152
接 触 問 題 136,353
修 正 さ れ た ハ ミ ル ト ン の 原 理 299
ゼ ロ行 列 12
終 点(幾
何 ベ ク トル の) 39
受 動(passive)変
漸化 計 算 の 出発 値 265 線 形 結 合 22
自 由 度 115,131 数 297
瞬 間 回 転 中 心 軸 61,312
疎 行 列 239
循 環 座 標 281
疎 行 列用 の数 値 解法 239
瞬 間 接 触 点 144,202,354
速 度 49
順 動 力 学 解 析 51
速 度 変換 209
順 方 向(漸
速 度 変換 行 列 207
化 計 算 の) 262
小 行 列 式 18
速 度変 換 法 209,213
状 態 変 数 54
速 度 レベ ルの拘 束 119
章 動(コ
速 度 レベ ル変 数 258
マ の) 173
章 動 運 動 172
た
初 期 値 54 シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク 131
対 角行 列 12
シ ンプ ル ノ ンホ ロ ノ ミ ック拘束
対 角 ブ ロ ック 14
(運 動 学 的 拘 束) 140 シ ン プ ル ノ ン ホ ロ ノ ミ ッ ク な 系 133,144
対 角変 換 22 対 角 変 換 行列 22 対 角 要 素 12
ス カ ラ ー 行 列 13
対 称 行 列 20
代 数 ベ ク トル 47
な
ダ ッシ ュ 61 ダラ ンベ ー ル の原 理 180
内積 23
単位 行 列 13
内 力 119
単独 の要 素 12
斜 め に ピ ン結合 され た 剛体 振 子 107
単独 の量 38
滑 らか で ない拘 束 190 滑 らか な拘 束 189
力 43 力 と トル クの 等価 換 算 117 長 方 行列 12
ニ ュー トン ・オ イ ラー の 運 動方 程 式 を利 用 す る 方 法 177
直 交 23
ニ ュー トンの 運動 方 程 式 45
通 常 拘 束結 合 256
二 輪 車 モ デ ル 213
定常 歳 差運 動(コ マ の) 173
眠 りゴマ 89
ニ ュー トン ・ラフ ソ ン法 9
テ レス ココ ピ ック ジ ョイ ン ト 114 テ レス コ コピ ック
能動(active)変
数 297
ジ ョイ ン トを含 む機 構 114
は
転 置 行 列 20 転動 円盤 134
ハ ミル トニ ア ン 297
転動 球 134
ハ ミル トン-ヤ コ ビの方 法 307
点変 換 302
ハ ミル トン-ヤ コ ビの理 論 305 ハ ミル トンの 原理 286
等価 換 算 60 等価 換 算 117
歪 対 称行 列 21,61
動 力 学 43
等 しい(行 列 が) 15
特 異 姿勢 75,86
微 分 原理 285
特 異 値 分解 23
微 分 代 数方 程 式 235
特 殊 拘 束結 合 256
ピ ンジ ョイ ン ト 104
特 性 方 程式 21 独 立 な一般 化 座標 137
ブ ロ ッ ク 14
独 立 な一般 化 速 度 138
ブ ロ ッ ク上 三角 行 列 15
独 立 な拘束 力 148
ブ ロ ッ ク行列 14
トル ク 43
ブ ロ ッ ク下 三角 行 列 15
トレー ス 23
ブ ロ ック対 角行 列 14 ブ ロ ック表 現 14
平 行 軸 の 定 理 124
ユ ニ タ リー 行 列 318,320
並 進 運 動 59
ユ ニ タ リー 変 換 320
ヘ シ ア ン行 列 33 変 分 原 理 285
余 因 子 行 列 19 ら
ポ ア ン カ レ変 換 307 ボ ー ル ジ ョイ ン ト 131
ラ グ ラ ン ジ ア ン 277
母 関数 302,305
ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方 程 式 277
保 存 量 281
ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 148
保存 力 277
ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法 236
ポ テ ンシ ャル 関 数 276 ホ ロ ノ ミッ ク 131
リ ー フ(葉)
256
ル ー ト(根)
255
ホ ロ ノ ミッ ク拘 束(幾 何 学 的拘 束) 140 ホ ロ ノ ミッ ク な系 133,142
ル ー プ 254
ま 右 手直 交 座 標系 40,45
ル ジ ャ ン ドル 変 換 163,297 ル ン ゲ ク ッ タ 法(4
次 の) 55
右 ね じの ルー ル 104 右 ネ ジ の ルー ル 61
列 12 列 行 列 9,12,46
無 限小 変 換 303
列 展 開 18
や
ロ ド リ ゲ ス パ ラ メ ー タ 70,315,317
ヤ コ ビ行 列 29 わ
ヤ コ ビ ヤ ン 29
ユ ニ タ リー回 転 行列 321
和(行
列 の) 15
和(ブ
ロ ッ ク 行 列 の) 16
著者略歴 田 島 洋 学 歴 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻修士課程修了(1970年) 職 歴 株式会社小松製作所 現 在 東京大学生産技術研究所研究員 日本大学大学院理工学研究科非常勤講師 名古屋大学大学院工学研究科非常勤講 師 日本機械学会技術相談委員会技術ア ドバ イザー 博士(工 学)
マル チボ ディ ダイ ナ ミクス の基 礎 2006年11月20日
第 1版 1刷 発 行
3次元運動 方程式 の立 て方 著 者
田島 洋 学校法人 東 京電機大学
発行所
東京 電機大 学 出版局 代表者
加藤康太郎
〒101-8457 東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町2-2 振 替 口 座00160-5-71715 電 話(03)5280-3433(営 (03)5280-3422(編
印刷 製本 装丁
三 美 印刷(株) 渡 辺製 本(株) 鎌 田正 志
C Hiroshi
Tajima
2006
Printed in Japan *無 断 で転 載す る こ とを禁 じ ます 。 *落 丁 ・乱 丁本 はお 取替 えい た します 。 ISBN4-501-41620-3
C3053
業) 集)