朝倉 国語教育 講座 1 国 語 教 育 入 門
倉澤 栄 吉 監修 野 地潤家
朝倉書 店
監修者 倉 澤 栄 吉 日本国語教育学会会長 野 地 潤 家 広島大学名誉教授/鳴 門教育大学名誉教授
編 集 者...
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朝倉 国語教育 講座 1 国 語 教 育 入 門
倉澤 栄 吉 監修 野 地潤家
朝倉書 店
監修者 倉 澤 栄 吉 日本国語教育学会会長 野 地 潤 家 広島大学名誉教授/鳴 門教育大学名誉教授
編 集 者 ( )は編集担 当巻 白 石 寿 文 佐 賀大 学 名誉 教授 (第 1巻,第
3巻)
小 田 迫 夫 大 阪教 育 大学 名誉 教授 (第 2巻) 浜 本 純 逸 神 戸大 学 名誉 教授/早 稲 田大 学教 授 ( 第 2巻) 松 山 雅 子 大 阪教 育 大学 教授 (第 2巻) 山 元 悦 子 福 岡教 育 大学 教授 (第 3巻) 菅 原 稔 岡 山大学教 授 (第 4巻 ) 中 西 一 弘 大 阪教 育 大学 名誉 教授 (第 4巻) 森 田 信 義 広 島大学教 授 (第 4巻 ) 世 羅 博 昭 鳴 門教育 大学 名誉 教授/四 国大学 教授 (第 5巻 ) 三 浦 和 尚 愛 媛 大学 教授 (第 5巻 ) 大 槻 和 夫 広 島大学 名誉 教授/安 田女子 大学 教授 (第 6巻 ) 吉 田 裕 久 広 島大学 教授 ( 第 6巻 ) 植 山 俊 宏
京都 教 育大学 教授 ( 第 6巻)
刊 行 の言葉
昭 和 二 四 ︵一九 四 九 ︶ 年 四 月 に学 生 を 迎 え 入 れ て 発 足 し た 新 制 大 学 も 、 既 に半 世 紀 を 超 え る 歳 月 を 閲 し た。 そ
の間 、 教 育 ・研 究 両 面 に 実 績 を 挙 げ て き た が、 新 し い世 紀 に 入 って 、 組 織 ・運 営 面 に抜 本 的 改 革 が な さ れ る こ と に な った 。 新 制 大 学 と 歩 みを 共 に し て 来 た者 と し て深 い感 慨 を 覚 え る 。
新 制 大 学 教 育 系 学 部 に は 、 国 語 科 教 育 法 担 当 者 が配 置 さ れ 、 教 職 科 目 単 位 取得 希 望 者 に ﹁国 語 科 教 育 ﹂ 関 係 の
授 業 を 担 当 し た が 、 昭 和 二 八 ︵一九 五 三 ︶ 年 四 月 、 大 学 院 ︵ 当 初 、 修 士 課 程 、 続 い て博 士 課 程 ︶ が 設 置 さ れ て か ら は 、 国 語 科 教 育 専 攻 の院 生 の指 導 も 担 当 す る こ と に な った。
新 制大学 で国語科教 育を担当す る教官方 は、石井庄 司博士 ︵ 東 京 教 育 大 学 教 授 ︶ の ご先 導 ・ご高 配 によ って 、
︵ う ち 、 一回 は 東 京 で ) 学 会 を開 催
昭 和 二 五 (一九 五 〇 ) 年 九 月 、 全 国 大 学 国 語 教 育 学 会 を 創 設 し 、 全 国 を 九 ブ ロ ック ︵ ① 北 海 道 ・② 東 北 ・③ 関 東 ・④ 東 海 ・⑤ 北 陸 ・⑥ 近 畿 ・⑦ 中 国 ・⑧ 四国 ・⑨ 九 州 ︶ に分 け 、 毎 年 二回 す る こ と に な った。 既 に 百 回 を 超 え る 学 会 が 重 ね ら れ て き た。
国 語 科 教 育 実 践 界 で は 、 日本 国 語 教 育 学 会 を 初 め、 校 種 ︵ 小 ・中 ・高 ︶ 別 に 、 さ ら に は 研 究 組 織 ご と に 研 究 会
が 設 立 さ れ、 そ れ ぞ れ 活 発 に 活 動 が 続 け ら れ た 。 ま た、 国 立 国 語 研 究 所 ︵ 初 代 所 長 、 西 尾 実 博 士 ︶、 文 化 庁 国 語
課 、 国 立 教 育 政 策 研 究 所 な ど で 行 な わ れ た 研 究 ・調 査 等 も 、 国 語 科 教 育 の実 践 ・研 究 に 大 き く 寄 与 す るも ので あ
った 。 20世 紀 後 半 に お い て、 わ が 国 の国 語 科 教 育 研 究 の組 織 化 は よ く 整 備 さ れ 、 そ れ ぞ れ 実 績 を 挙 げ て い った と
思 わ れ る。
朝 倉 書 店 は 、 先 般 来 、 ︿朝 倉 国 語 教 育 講 座 ﹀ ︵ 全 六 巻 ︶ 刊 行 の企 画 を 立 て ら れ た。 企 画 に当 た っ て は、 こう し た
企 画 経 験 の豊 富 な 中 西 一弘教 授 に世 話 人 を お 願 いし 、 各 巻 ご と に編 集 担 当 者 を 依 頼 し 、 各 巻 の構 成 、 執 筆 者 への
連 絡 等 を 分 担 し て も ら う こ と にな った。 こ のよ う な 経 緯 か ら 、 日本 国 語 教 育 学 会 西 日 本 集 会 の開 催 ・推 進 に協 力 を いた だ いた 方 々に 編 集 ・執 筆 を お願 いし た。
全 六巻 か ら 成 る 、 本 講 座 の目 指 す と ころ は、 内 容 を 清 新 な も の と し、 記 述 に当 た って は、 正 当 か つ平 易 な も の
たら し め る こ と、 ま た、 そ れ ぞ れ 解 説 ・説 明 に重 点 を 置 い て いく よう に す る こ と であ る。 企 画 側 と し て は、 学
生 ・院 生 の皆 さ ん を 初 め 、 国 語 科 教 育 の実 践 ・研 究 に取 り 組 ん で いる 人 た ち 、 関 連 分 野 の 研 究 者 に も 、 一般 の
人 々 に も 、 手 に 取 って読 ん で いた だけ れ ば と願 って い る。 広 く 開 か れ た ﹁講 座 ﹂ で あ り た いと いう 思 いを こ め て いる。
20 世 紀 にあ って は 、 国 語 教 育 講 座 が 数 社 から 既 に刊 行 さ れ た 。 こ れ ら の講 座 が 国 語 科 教 育 実 践 者 ・研 究 者 に そ
れ ぞ れ 役 に立 つ こと も 多 か った と思 わ れ る 。 講 座 は 刊 行 さ れ た 、 そ の時 期 そ の時 期 か ら の羅 針 盤 に も な り 、 相 談 窓 口 に も な った か と 思 わ れ る 。
単 行 本 の中 か ら 自 分 に と って の﹁一 冊 の本 ﹂ を 見 つけ 、 そ こ か ら 摂 取 し う る も のを 見 い出 し 、 自 己 の実 践 ・研
究 に 十 分 に生 か し て いく こと が 望 ま れ る 。 同 時 に 、 ﹁講 座 ﹂ に接 し て、 そ の質 量 に押 さ れ る こ と な く 、 活 用 し て
いく 方 途 を 自 ら 発 見 し て いく こ と も 望 ま れ る。 ﹁講 座 ﹂ と の 出 会 い に よ って、 国 語 科 教 育 への視 野 が開 け 、 何 を
どう 耕 し 、 深 め て 、 成 果 を ど う 導 き出 し て いく のか に多 く の示 唆 が 得 ら れ る こ と も 夢 で は な い。
国 語 科 教 育 界 では 、 戦 前 ・戦 後 、 著 作 集 ・個 人 全 集 ︵垣 内 松 三 ・西 尾 実 ・大 村 は ま ・倉 澤 栄 吉 ︶ も 刊 行 さ れ 、
近 現 代 国 語 科 教 育 のみ のり の豊 か さ が 見 ら れ る 。 ︿朝 倉 国 語 教 育 講 座 ﹀ 刊 行 に は、 国 語 科 教 育 実 践 ・研 究 の み の
り であ る と 共 に、 さ ら に未 来 に 向 け て、 新 し い成 果 を 生 み出 す 母 胎 とも な り 、 指 針 と も な る、 役 割 を 期 待 す る こ と が でき る。
監修者 倉
地
澤
潤
栄
家
吉
本 講 座 が そ の使 命 ・役 割 を 十 分 に果 たす よう 願 って 、 監 修 者 か ら の言 葉 と し た い。
野
ま え が き
︵ 日 本 語 ︶ の学 習 指 導 か ら 、 言 語 教 育 の意 義 、 目 指 し た い子 ど も 像 、
私 たち 現 場 に 立 つ教 師 は、 国 語 科 の魅 力 あ る 授 業 、 こと ば の力 に培 う 楽 し い国 語 教 室 、 人 間 ら し さ が輝 く 国 語 人 を 目 指 し て 勉 強 し て いま す 。 日 々 の国 語
国 語 教 師 と し て の自 分 の在 り 方 な ど 、 多 様 な 問 題 が提 起 さ れ 、 真 剣 に論 議 を 重 ね て き ま し た。 初 任 者 研修 中 の新
米 教 師 か ら は 素 朴 な 、 あ る いは 深 刻 な 質 問 が出 さ れ 、 先 輩 教 師 か ら 体 験 を 生 か し た親 身 な 助 言 が な さ れ ます 。 逆
に 大 胆 な 授 業 構 想 の アイ デ ア を ベ テ ラ ン教 師 か ら 求 め ら れ、 感 嘆 の声 が 上 が る ほ ど 斬 新 な 着 想 が 若 手 か ら 示 さ
れ、 そ の具 体 化 が熱 っぽ く 語 ら れ る こ とも あ り ま す 。 し か し 、 そう 簡 単 に解 決 を み る よ う な 問 題 は 一つも あ り ま
せ ん 。 結 局 は 、 一人 一人 が 自 律 的 に 自 ら の授 業 を 省 察 評 価 し 、 次 な る 実 践 に 臨 む こ と で 内 質 を 高 め る ほ か あ り ま せん。
本 書 ﹃国 語 教 育 入 門 ﹄ に は、 こ れ か ら 精 一杯 に 授 業 を 実 践 し た いと 情 熱 を 燃 や し て いる 方 々 の ヒ ント に し て い
た だ け る こ と を 願 って、 国 語 科 教 育 の基 礎 基 本 と 国 語 教 師 の自 律 に 培 う 問 いを 選 び 、 七 つの章 と し ま し た。 序 章 は 、 国 語 科 教 育 の 全 体 像 に関 わ る 問 題 で す 。 第 一章 か ら 第 五 章 は、 国 語 科 教 育 の各 領 域 別 に 教 室 を 設 定 し ま し た 。 第 一章 は、 生 き 生 き と 語 り 合 え る 話 し こ と ば の力 を 育 て る 部 屋 です 。
第 二 章 は 、 喜 々と し て 文 章 表 現 に勤 し み、 交 流 し 、 文 章 を 見 る 目 も 育 て る部 屋 です 。
第 三 章 は 、 想 像 の翼 を 広 げ 、 心 の襞 に触 れ 、 文 学 を よ き 友 と す る読 書 生 活 に 培う 部 屋 です 。
第 四 章 は 、 き ち ん と 説 明 し、 堂 々 と主 張 でき る よ う 、 考 え る 力 ・見 抜 く 力 を 鍛 え る 部 屋 で す 。
第 五 章 は 、 言 語 事 項 の学 習 が 、 い か に 楽 し いも のか に気 づ か せ、 意 欲 を 燃 や さ せ る 部 屋 で す 。
な お、 こと ば の 面 か ら の特 別 支 援 授 業 の部 屋 も 必 要 です が 、 残 念 な が ら 今 回 の 入 門 編 で は 保 留 し ま し た 。 結 章 は、 私 た ち 国 語 教 師 の あ る べき 本 来 像 ・求 め る 未 来 像 で す 。
必 ず し も 模 範 解 答 に は な り 得 て いま せ ん が 、 答 え よう と 努 め る こ と で、 自 ら の国 語 教 育 理 念 の構 築 と 授 業 力 鍛 練 の 一歩 が 踏 み出 せ た と 実 感 し て いま す 。
本 書 を お読 みく だ さ る 方 が、 索 引 も 利 用 し 、 答 え の対 案 を 考 え ら れ る こと を 願 って お り ま す 。 さ ら に朝 倉 国 語
石
寿
文
教 育 講 座 第 二 ∼ 六 巻 を 併 せ て 活 用 く だ さ れ ば 、 専 門 的 に 視 野 が 広 が り 、 国 語 教 育 観 が 一層 深 ま る も の と 信 じ ま す。 二〇 〇 四 年 十 二 月
佐賀 県 愉 しく 国 語教育 を語 る 会 代 表 白
目
序
次
1
授 業 は どう 構 想 す れ ば い い です か ?
な ぜ 国 語 の勉 強 を す る の です か ?
7
1
1
2
児童 が 喜 ぶ のは 、 ど のよ う な 授 業 ですか?
章 国 語 教 室 へよう こそ
3
ど のよ う な 国 語 の学 力 を つけ る べ き で す か ?
14
4
第 一章 話 し た がり や ・聞 き た が り や の国 語 教 室
楽 し い授 業 にす る た め に は 、 ど の よう に 進 め れ ば い い です か ?
発音 ・発 声 は ど のよ う に 指 導 し た ら い い の で す か ?
開 発 し た教 材 で 実 践 で き ま す か ?
5 子 ど も に 合 った カ リ キ ュラ ム が で き ま す か ? 6 7 8
10 教 師 と し て何 を ど のよ う に 心 掛 け て お く べき です か ?
多 様 な 意 見 が出 る よ う に 授 業 を どう 工 夫 す れ ば い いです か ?
11 主 体 的 に話 を 聞 く 方 法 は ?
9
19
23
23
30
36
42
53
48
58
第 二 章 書 く 喜 びを 分 か ち 合 う 国 語 教 室 12 目 標 の見 定 め と 授 業 構 想 の立 て方 は ? 13 書 か な い子 ど も は、 ど う 指 導 す べ き です か ? 14 子 ど も た ち への声 か け 、 助 言 の仕 方 は ? 15 書 く 速 さを 身 に つけ さ せ る に は ? 16 文章 の種 類 に 応 じ て指 導 でき ま す か ? 17 な ぜ 読 書 感 想 文 を 書 か せ る の です か ? 18 意 欲 的 にな る 作 文 指 導 が あ り ま す か ?
第 三章 文学 に遊 ぶ国 語教室 19 文学 作 品 が教 材 とな る と 、 お も し ろ く な く な る の はな ぜ ?
24 文学 の授 業 で は 、 評 価 を どう 考 え れ ば い いの で し ょう か ?
23 詩 のよ い指 導 法 は あ り ま せ ん か ?
22 文学 的 文 章 の読 み に書 く ・話 す ・聞 く な ど の 活 動 を 、 ど う 生 か せ ば い い です か ?
21 文学 教 育 と 文学 的 文 章 の指 導 に は、 違 い があ り ま す か ?
109
104
20 文学 の授 業 展 開 に は、 ど のよ う な 工 夫 と 留 意 点 が 必 要 です か ?
63
63
70
76
79
81
87
90
93
93
116
99
123
26 読 解 力 を つけ る 指 導 法 の 工 夫 例 は ?
25 説 明的 文 章 で興 味 を 持 た せ る 学 習 活 動 は ?
第 四章 説 明 ・論 説 に挑 む 国 語 教 室
結
29 読 み聞 か せ で 理 解 力 が育 ち ま す か ?
28 読 解 学 習 か ら 読 書 指 導 への展 開 法 は ?
30 こ と ば の学 習 と し て の書 写 指 導 は、 ど う 展 開 す れ ば ?
37 日本 語 の基 礎 知 識 は ど の程度 必 要 です か ?
36 こ と ば の生 活 者 と し て の モデ ル に な る に は ?
35 児 童 理 解 と授 業 技 術 と を つな ぐ に は ?
34 教 師 と し て ど のよ う な素 養 が あ れ ば ?
章 授業 を愉し める国語教師 に
33 児 童 の語 彙 を豊 か にす る に は ?
32 二年 間 を 視 野 に 入 れ た漢 字 指 導 と は ?
3 1 楽 し い漢 字 ・か な の指 導 は 、 ど の よう に す れ ば ?
第 五 章 こ と ば ・文 字 の魅 力 に満 ち た 国 語 教 室
142
27 同 じ 教 材 で異 な る 指 導 が で き ま す か ?
129
129
140 136
150
156
156
169 163
172
192
186 178
178
198
索
39 国 語 科 に お け る コ ンピ ュー タ 活 用 ︵ 情 報 教 育 ︶ のあ り 方 は ?
38 国 語 科 で視 聴 覚 教 材 を 活 用 す る に は ?
205
215
208
引
し て 、 国 語 の 必 要 性 を 認 識 し て指導 にあ たること は 、と ても 大 事 な 視 点 だと
序 章 国 語 教 室 へよ う こ そ
A 国 語 を教える教師と 言えます 。
子 ど も た ち に 、 ﹁国 語 の勉 強 は、 な ぜ 必 要 か 。﹂ と 問 う と 、 小 学 生 は 、低 学 年 も 高 学 年 も 大 体、 ﹁本 を
読 む こ と が 上 手 に な る た め﹂、 ﹁話 を す る こと が上 手 にな る た め ﹂、 ﹁作 文 を 書 く こと が上 手 にな る た め ﹂
と いう よ う を 答 え が 返 って き ま す 。 そ し て 、 ま れ に ﹁心 を 豊 か にす る た め ﹂ な ど と 言 う 高 学 年 の 子 ど も も い ます 。
私 は年 度 の は じ め の国 語 の授 業 で、 児童 に学 習 の必 要 性 に つい て、 次 のよ う な 話 を し て いま す 。
﹁人 間 と 他 の動 物 と の大 き な 違 い の 一つは 、 人間 は、 こと ば を 持 って いま す が 、 他 の 動 物 は 、 同 様 の
こと ば を 持 って いま せ ん。 他 の動 物 も こ と ば を 持 って いる と 思 う 人 が いる かも し れ ま せ ん が 、 人 間 ほ ど
高 度 に 発 達 し た こ と ば を 持 って いる 動 物 は 他 に は いな い こ と は み ん な も 納 得 で き る と 思 い ま す 。 つま
り 、 私 た ち 人 間 は、 こと ば を う ま く 使 い、 受 け 取 って豊 か に生 活 し て いま す 。 だ か ら 、 人 間 ら し く 生 活
す る た め に は 、 こ と ば の学 習 は、 と ても 重 要 な の です 。﹂
こ のよ う に 、 私 た ち 人 間 が、 高 度 に発 達 し た こ と ば を 使 い、 高 度 で複 雑 な 精 神 活 動 や 社 会 活 動 を 営 ん
で いる 事 実 を 確 認 し 、 こと ば の使 い手 に な る た め の学 習 が必 要 で あ る こ と を 小 学 生 にわ か る 話 と し て伝 え て いま す 。
Q 国 語 科 の学 習 の学 習 対 象 で あ る こ と ば は、 家 庭 や 身 近 な 社 会、 学 校 な ど で常に使う も の であ る の
で 、 自 然 に 獲 得 で き る と 思 います 。 経 験 の機 会 さ え あ れ ば、 特 別 に勉 強す る 対 象 に す る 必 要 は な いと思
人間 は、家庭 や身 の回 り の社会、学 校 でことばを学 んで いきます。 学校 では、す べて の授業 及び
いま す が、 ど う です か 。
A
そ の他 の様 々な 教 科 外 の活 動 を 通 し て、 子 ど も た ち は 、 こ と ば を 学 び獲 得 し て いき ま す 。 だ か ら と い っ
て 、 教 科 の 一つと し て国 語 科 内 で の学 習 が 必 要 な いか と いう と 、 現 場 教 師 は 国 語 科 内 で の学 習 の重 要 性 を 特 に実 感 と し て感 じ る はず です 。
国 語 科 の必 要 性 を 考 え る と き 、 国 語 科 の指 導 の勉 強 を 始 め だ し た頃 に 実 践 し た 、 二 年 生 の教 材 ﹁あ き
あ か ね の 一生 ﹂ と いう 説 明文 の 授 業 を 思 い出 し ま す 。 授 業 後 に あ る子 ど も が発 し た 感 想 が 印 象 に残 って いま す 。 そ れ は 、 次 のよ う な こ と ば です 。
﹁先 生 、 国 語 っ てお も し ろ いね 。 読 め ば 読 む ほ ど いろ いろ な こ と が わ か って く る。﹂
こ の 子 ど も が 、 書 か れ てあ る こと ば の意 味 を 考 え 、 想 像 を し 、 こ と ば の奥 深 さ を そ の 子 な り に感 じ 取
った こ と ば です 。 こ のよ う な こ と ば は 、 教 科 の 一つと し て の学 習 で こ と ば を 意 識 化 し た か ら こそ 発 せ ら
れ る も の です 。
意 識 し な が ら 体 験 し た り 、 ま た は無 意 識 の体 験 で あ って も 、 事 後 に振 り 返 って 意 識 化 さ れ た り す れ
ば 、 そ れ は 、 一つ の学 習 に な り え ま す 。 し かし 、 い つま で も 無 意 識 の経 験 は、 そ れ ほ ど の学 習 に は な ら
な い の で す 。 つま り 、 人間 に と って、 特 に 重 要 な こ と ば も 自 然 発 生 的 に 個 人 の中 から 生 ま れ てく る も の
では あ り ま せ ん。 も う す で に あ る も の です か ら、 自 分 よ り先 に 生 ま れ た 人 間 と交 わ り な が ら 、 獲 得 さ れ
て いく も の です 。 そ の意 味 で 、 こ と ば は 学 習 さ れ る 必 要 が あ る の です 。 こ と ば の学 習 は 、 子 ども と そ れ
を 取 り 巻 く 大 人 と の 関 係 に お い て 成 り 立 って いき ま す 。 基 礎 的 な こ と は 子 ど も の間 に学 ん で いき ま す
が 、 社 会 で豊 か に 生 き 抜 いて いく た め に は 、 文 化遺 産 を 学 び 、 そ れ を 発 展 さ せ る と と も に 、 高 度 の コミ
ュ ニケ ー シ ヨ ン能 力 も 身 に付 け る 必 要 が あ り ま す 。 だ か ら 、 ず う っと学 習 し 続 け な け れ ば な ら な い の で
す 。 そ のた め に は 、 子 ども た ち が 生 活 を 通 じ て無 意 識 に 獲 得 し た言 語 知 識 や 言 語 能 力 だ け で は、 き わ め
て不 十 分 であ る と 言 え ます 。 目 的 意 識 を 持 った 計 画 的 な 言 語 能 力 の育 成 が必 要 な の です 。 そ こ に教 科 で
あ る 国 語 科 教 育 の存 在 意 義 が あ り ま す 。 そ う いう 意 味 で 、国 語 科 教 育 は 、 こ と ば の教 育 の中 心 的 な 役 割 を担う教 科な のです。
Q国 語 科教育 の必 要 性 は わ か り ま し た が、 国 語 科 は 何 を め ざ す も のな の でしょ う か 。 具 体 的 な中 身 を 教 え て く だ さ い。
A子 ど も た ちに﹁ 国 語 の 学習は、 ど ん なこ と を 勉 強 す る 必 要 が あ る か 。﹂と質 問 し て み ま し た。 す
る と 、 ﹁い ろ いろ な こ と ば や 漢 字 を読 ん だ り 書 い た り す る 。﹂ ﹁い ろ い ろ な 楽 し い本 や た め にな る 本 を 読
ん で、 も のし り に な る 。﹂ ﹁自 分 が 想 像 し た こ と や 考 え た こ と を 作 文 す る 。﹂ ﹁自 分 の考 え を 友 達 に話 し た
り 、 友 達 の考 え を 聞 い たり す る 。﹂ な ど と 、 答 え ま す 。 子 ど も た ち な り に こ と ば や も の ご と の知 識 の 獲
得 と 、 こと ば を 使 い こな す 技 能 を 学 ぶ こと だ と いう こ とを 自 覚 し 、 国 語 の学 習 内 容 を 的 確 に とら え て い るよう です。
教 師 に な り た て の頃 も 、 大 体 同 じ よ う な 答 え し か 準 備 で き な いも ので す 。 し ば ら く す る と 、 次 のよ う
な 疑 問 を 持 つこ と が あ り ま す 。 そ れ は 、 あ る物 語 文 や 説 明 文 を 読 ん で 、 そ の内 容 を 把 握 さ せ る こ と に 主
眼 を お く べ き か 、 そ の方 法 と し て の 書 か れ 方 を 教 え る こ と に主 眼 を 置 く か と いう こ と で す 。 こ の こ と
は 、 長 い間 、 論 争 が 続 け ら れ て いま す 。 子 ども に と って教 材 の内 容 は 、 かけ が え のな い情 報 です か ら 、
も ち ろ ん 大 事 に し て いかな け れ ば な ら な いも ので す 。 内 容 を 軽 く 扱 って は、 子 ど も た ち の興 味 関 心 は 低
下 す る で し ょう し 、 文 学 作 品 で行 え る情 操 の教 育 も で き に く く な り ま す 。 し か し 、 教 師 側 から み る と 、
生 き て働 く 力 と し て、 言 語 の使 わ れ方 を 指 導 す る こ と が 大 事 に さ れ な け れ ば な ら な いと いう のが、 現 在 の基 本 的 な 考 え 方 と 言 え ます 。 さ て 、 国 語 科 の具 体 的 な仕 事 の中 身 に つ いて 述 べ て み ま し ょう 。
国 語 科 の仕 事 は 、 大 き く 二 つの仕 事 が あ り ま す 。 一つは 、 ﹁日 本 語 そ の も の に つ い て の教 育 ﹂ であ り 、
も う 一つは 、 ﹁日本 語 を 用 い て行 う 言 語 活 動 の能 力 ・言 語 生 活 を 高 め る教 育 ﹂ です 。
﹁日 本 語 そ のも の に つ い て の教 育 ﹂ は 、 私 た ち が、 様 々な 言 語 活 動 で 用 い て いる 日 本 語 の発 音 や 音 韻 、
文 字 ・表 記 、 語 彙 や 文 法 等 の言 語 要 素 に つ いて の理 解 を 深 め さ せ、 豊 富 な 知 識 を 持 た せ る こ と です 。 こ
の豊 富 な 知 識 と 深 い理 解 は、 そ れ 自 体 こと ばを 認 識 す るう え で役 に 立 ち ま す が 、 二 つ目 の仕 事 の 言 語 活
動 の能 力 や 言 語 生 活 を 高 め る た め の基 礎 的 な も の にも な り え ま す 。
﹁日 本 語 を 用 いて 行 う 言 語 活 動 の能 力 ・言 語 生 活 を 高 め る教 育 ﹂ は 、 大 き く 、 ﹁話 す こ と ﹂ ﹁書 く こと ﹂
の表 現 活 動 の指 導 と ﹁聞 く こ と﹂ ﹁読 む こ と ﹂ の 理 解 活 動 の指 導 に分 け ら れ ま す 。 こ の表 現 活 動 の指 導 と 理 解 活 動 の指 導 は、 表 裏 一体 に結 び 付 いて いま す 。
﹁話 す こ と﹂ ﹁書 く こ と ﹂ の活 動 は 、 表 現 す る 内 容 と方 法 を 持 つ活 動 及 び相 手 に届 け る 活 動 で成 り 立 っ
て いま す 。 そ こ で、 そ の指 導 も 、 理 解 の指 導 と 表 現 の指 導 で成 り 立 って い る の です 。
﹁聞 く こ と﹂ ﹁読 む こ と ﹂ の活 動 に つ いて も 同 じ よ う な こと が言 え ま す 。 内 容 を と ら え る 指 導 だけ で な く 、 そ の表 現 方 法 を 学 ぶ 指 導 も 重 要 にな って き ま す 。
Q現 行 の学 習 指 導 要 領 (一九 九 八 ︹ 平 成 十 年 ︺ 年 版) にお け る 小 学 校 ﹁国 語 ﹂ の目 的 と そ の 理 由 を 教 え て下 さ い。
A教 育 課 程 審 議 会 の答 申 に お け る 国 語 科 の改 善 の基 本 方 針 が、 次 のよ う に 示 さ れ ま し た 。
﹁小 学 校 、 中 学 校 及 び 高 等 学 校 を 通 じ て、 言 語 の教 育 と し て の立 場 を 重 視 し 、 国 語 に 対 す る関 心 を 高
め国 語 を 尊 重 す る態 度 を 育 て る と と も に、 豊 か な 言 語 感 覚 を 養 い、 互 い の 立 場 や 考 え を 尊 重 し て言 葉 で
伝 え 合 う 能 力 を 育 成 す る こと に重 点 を 置 いて 内 容 の改 善 を 図 る 。 特 に 、 文 学 的 な 文 章 の詳 細 な 読 解 に 偏
り が ち であ った 指 導 の在 り 方 を 改 め 、 自 分 の 考 え を も ち、 論 理 的 に意 見 を 述 べ る 能 力 、 目的 や 場 面 な ど
に 応 じ て適 切 に 表 現 す る能 力 、 目 的 に 応 じ て 的 確 に読 み取 る能 力 や 読書 に親 し む 態 度 を 育 て る こ と を 重 視 す る 。﹂
こ れ を 受 け て ま と め ら れ た のが 、 学 習 指 導 要 領 です 。
﹁国 語 を 適 切 に表 現 し 正 確 に 理 解 す る 能 力 を 育 成 し 、 伝 え 合 う 力 を 高 め る と と も に、 思 考 力 や 想 像 力
及 び 言 語 感 覚 を養 い、 国 語 に 対 す る関 心 を 深 め 国 語 を 尊 重 す る態 度 を 育 て る 。﹂
国 語 科 の最 も 基 本 的 な 目 標 であ る国 語 に よ る 表 現 力 と 理 解 力 と を 育 成 す る と とも に 、 互 い の立 場 や 考
え を 尊 重 し な が ら こ と ば で伝 え 合 う 能 力 を 重 視 し て、 新 た に ﹁伝 え 合 う 力 を 高 め る ﹂ こ とを 目 標 に位 置
付 け て います 。 こ の ﹁伝 え 合 う 力 ﹂ と は、 人 間 と 人 間 と の関 係 の中 で、 互 い の立 場 や 考 えを 尊 重 し な が ら、 言 語 を 通 し て 適 切 に表 現 し た り 理 解 し た り す る 力 です 。
こ こ で いう ﹁国 語 を 適 切 に 表 現 す る能 力 ﹂ は 、 ﹁言 語 を 適 切 に 表 現 す る能 力 ﹂ と ﹁言 語 を 使 っ て適 切
浩︺
に内 容 や こと が ら を 表 現 す る能 力 ﹂ の こと です 。 ま た 、 ﹁国 語 を 正 確 に理 解 す る能 力 ﹂ は、 ﹁言 語 を 正 確
︹ 釘本
に理 解 す る 能 力 ﹂ と ﹁言 語 で 表 現 さ れ た 内 容 や こ と が ら を も 正 確 に 理解 す る能 力 ﹂ の こ と です 。
参考 文献 福村 出 版 一九 九九
文部 省 ﹃ 小 学校 学習 指導 要領解 説 国 語編 ﹄ 一九 九九 大槻 和 夫編 ﹃ 国 語教 育学 ﹄ ︵ 教 職科 学講 座 17︶
Q2 授 業 は ど う 構 想 す れ ば い い で す か ?
A一つの教 科書教 材 を も と にし て指遵 方 法 を 考 える場合、 慣 れ な いうちは、どう し て も 教 師 用指 導 書 に頼 り が ち に な ってし ま いま す 。
し か し 、 教 師 用 指 導 書 に書 か れ て いる指 導 方 法 は 、 一般 的 な 方 法 であ って、 そ れ ぞ れ のク ラ ス の実 態
を 考 慮 し た も の で は な く 、 そ のま ま 適 用 し ても 、 必 ず し も 自 分 のク ラ ス の子 ども の力 を 伸 ば す こ と に は つな が り ま せ ん。
そ こ で ぜ ひ 、 教 師 用 指 導 書 か ら 一度 離 れ て 、 自 分 の ク ラ ス の子 ど も た ち だ か ら こ そ 適 用 で き る よ う な 、 オ リ ジ ナ リ テ イ あ ふれ る指 導 方 法 を 作 り 出 し て 欲 し いと思 いま す 。
一つの教 科 書 教 材 を も と に指 導 方 法 を 構 想 し 設 定 す る場 合 、 教 材 は限 定 さ れ て いま す ので 、 次 のよ う な 手 順 で考 え て み る と よ い の で は な い で し ょう か。 ① 教 科 書 教 材 の教 材 分 析 を 行 い、 目 標 と な りう る 目 安 を 立 て る 。 ② 自 分 のク ラ ス の子 ど も の学 力 や 興 味 ・関 心 の実 態 を 調 べ る 。
③ ② を 踏 ま え て 、 ど う いう 目 標 で指 導 し て いけ ば い い の か 、 ① の目 安 を 参 考 に し て 目 標 を 決 定 す る。
④ ① を 参 考 に し て 、 こ の教 科 書 教 材 の特 質 の ど の部 分 を 指 導 に 生 か し て いく のか を 考 え る 。
指 導 方 法 の構 想 設定 ま でを 、 大 き く 二 つ の パ ター ン に分 け て 説 明 し ま す 。
(1) 目 標 ③ が 同 じ であ って も 、 子 ども の実 態 ② によ って 、 指 導 方 法 が い ろ いろ と 変 わ ってく る場 合
(2 ) 目 標 ③ が 異 な り 、 子 ど も の実 態 ② によ って 、 指 導 方 法 がさ ら に いろ いろ と 変 わ って く る場 合 (1 ) 目標 は 同 じ で あ って も 指導 方 法 が 違 う 場 合 ﹁ご ん ぎ つね ﹂ を も と にし た指 導 方 法 の例 を 説 明 し ま す 。 こ の教 材 の特 質 と し て、 次 のよ う な こと があ げ ら れ ま す 。
・登 場 人 物 の心 情 が行 動 や 様 子 を 表 す こ と ば に細 や か に 表 現 さ れ て い る。
( 読 み取 り技 能 ) の実 態 ② と し て 、 こ と ば に着 目 し な がら 読 み 深 め て いく 能 力 が 不 十 分 で
・自 然 描 写 、 比 喩 表 現、 反 復 表 現 な ど 表 現 の仕 方 が 優 れ て いる。 児 童 の学 力
あ る こと が分 か った と し ま す 。
そ のと き、 目 標 ③ と し て考 え ら れ る の は、 ﹁こ と ば に 着 目 し な が ら 、 ご ん と 兵 十 の心 情 の変 化 を 読 み 取 る こ と が で き る ﹂ のよ う な も の でし ょう 。
こ の場 合 、 ク ラ ス の子 ど も の読 み取 り技 能 や 読 み 取 り 方 の経 験 や 興 味 ・関 心 の傾 向 ② に よ り 、 次 のよ う な 指 導 方 法 が考 え ら れ ま す 。 ア 書 き 込 み方 式 イ 音 読方式 ウ 表 現活動方 式
︻ア 書 き 込 み 方 式 の例 ︼
じ っく り と 、 こ と ば と 向 き 合 いな が ら 、 考 え を 深 め て いく こ と が 向 いて い る、 ま た は、 逆 に そ う いう
経 験 が 足 り な い の で 経 験 さ せ て み た い場 合 に 、 こ の指 導 方 法 が考 え ら れ ます 。 手 順 と し て は 、 次 のよ う な こ と があ げ ら れ ます 。
・兵 十 と ご ん の行 動 や 会 話 だけ 抜 き 出 し た ワー ク シ ー ト に書 き 込 み ︵ 行 動 から 分 かる ことを書 き込 む︶を させる。 ・書 き 込 ん だ こ とを 発表 し 話 し 合 わ せ る。
・話 し 合 わ せ る 際 、 本 文 中 の こ と ば に着 目 し な が ら 登 場 人 物 の気 持 ち を 考 え さ せ た り 、 前 の場 面 と 比 較 し な が ら、 心 情 の変 化 を た ど ら せ た り す る 。 ︻イ 音 読 方 式 ︼
音 読 す る こ と が 日常 化 し て い る 子 ど も が多 い ク ラ ス の場 合 に 、 こ の 方 法 が 有 効 で あ る と 考 え ら れ ま す 。 手 順 と し て は 、 次 のよ う な こと があ げ ら れ ます 。
・ご ん や 兵 十 の 思 い の表 れ て いる と こ ろ の音 読 の工 夫 に つ い て、 音 読 し な が ら 考 え さ せ る。
・音 読 の工 夫 を し た と こ ろ と 工 夫 し た 理 由 を 、 本 文 中 のこ と ば に着 目 し な が ら 述 べ さ せ 、 登 場 人 物 の 気 持 ち を 読 み 深 め て いく 。 ︻ウ 表 現 活 動 方 式 ︼
表 現 す る こ と が好 き で抵 抗 が な く 、 活 動 し な がら 考 え る こ と が 向 いて いる 子 ど も が 多 い場 合 に、 こ の
指 導 方 法 が考 え ら れ ます 。 手 順 と し て は 、 次 のよ う な こ と があ げ ら れ ま す 。
・発 表 会 に向 け て、 目標 と 見 通 し を も た せ な が ら 、 子 ど も の意 欲 を 高 め る。
・表 現 活 動 を さ せ、 表 現 し た内 容 に つい て の理 由 や思 いを 発 表 さ せ な が ら 、 登 場 人 物 の心 情 を読 み深 め て いく 。 ・最 後 の発 表 会 で表 現 活 動 を さ せ る。 ︵2 ︶ 目 標 が 異 なリ 、 指 導 方 法 も違 う 場 合
﹁虫 のゆ り か ご ・し ぜ ん の ふし ぎ﹂ を も と に し た 指 導 方 法 の例 を 説 明 し ま す 。 こ の 教 材 の特 質 と し て、 次 のよ う な こと があ げ ら れ ま す 。 ・問 題 提 示︱ 説 明︱ ま と め の段 落 構 成 で内 容 が 読 み取 り や す い。
( 様 子 を わ か り やす く し て い
・数 字 、 色 を表 す こ と ば や た とえ を使 って、 様 子 を 分 か り や す く表 現 し て いる 。 ・話 し かけ る よ う な 親 し みや す い文 章 であ る 。 ・挿 し 絵 を 使 い文 章 理解 を 助 け て いる 。 ・子 ども の興 味 を 引 く 内 容 であ る 。
読 み 取 り 技 能 は 、 あ る 程度 身 に付 い て い る が 、 叙 述 中 の筆 者 の 工夫
例 え ば、 児 童 の実 態 ② と し て、 二 つ の異 な る 実 態 が あ った と し ま す 。 a
読 書 の興 味 の幅 が狭 く 、 自 然 科 学 的 読 み物 の面 白 さ に気 付 い て いな い子 ど も が 多 い。
る表 現 や 話 し か け るよ う な 文 章 ) に気 付 い て いな い。 b
そ れ ぞ れ の実 態 を 踏 ま え た指 導 方 法 の構 想 設 定 ま でを 説 明 し ま す 。
︻aが 児 童 の実 態 であ る 場 合 ︼
筆 者 が読 み 手 に分 か り や す い表 現 の工 夫 を し て い る と ころ に気 付 き な が ら 読 み取 る こと が で
aと いう 実 態 か ら 導 き 出 さ れ る 目 標 と し て は、 次 のよう な も のが 考 え ら れ ま す 。 a︱③ きる。
a︱③ と いう 目 標 で指 導 す る場 合 、 教 材 の特 質 の中 の、 様 子 を 分 か り やす く し て いる 表 現 や 話 し か け る よう な 文 章 が a︱④ と し て指 導 す る 際 に生 か さ れ る と 考 え ま す 。
こ の と き 担 任 し て いた 子 ど も た ち は 、 前 述 の学 力 の 実 態 の他 に、 お と な し く て人 前 で 話 す こ と に 抵 抗
を も って いる と いう 特 徴 が あ り ま し た 。 そ こ で、 でき る だ け 人 前 で話 す 機 会 を 多 く 設 け た いと 考 え て い
た の で、 学 習 計 画 の最 後 に ス ピー チ 活 動 を 位 置 づ け ま し た 。 そ し て、 ス ピ ー チ 原 稿 を 作 って発 表 す る こ と を 目 的 に し な がら 、 筆 者 の表 現 の工 夫 を 読 み取 ら せ る こと にし ま し た 。
書 き 込 み方 式 と 表 現 活 動 方 式 を 組 み合 わ せ た 方 法 で、 次 の手 順 で指 導 し ま し た 。
・﹁虫 のゆ り か ご﹂ を書 き 込 み 方 式 で読 み 取 ら せ、 表 現 の 工夫 に気 付 か せ る 。
・筆 者 の表 現 の工 夫 を 、 自 分 が スピ ー チ す る 際 の原 稿 に 生 か し て原 稿 を 作 ら せ る 。 ・聞 い て いる 人 に 分 か る よ う に伝 え る た め に絵 や 話 し 方 を 工 夫 さ せ る 。 ︻b が児 童 の実 態 で あ る 場 合 ︼
b と いう 実 態 か ら 導 き 出 さ れ る 目 標 と し て は、 次 のよ う な も の が考 え ら れ ま す 。
b︱ ③ いろ いろ な ジ ヤ ン ル の本 に 興 味 の幅 を 広 げ て いく こと が で き る 。
b︱ ③ と いう 目標 で指 導 す る 場 合 、 教 材 の特 質 の中 の、 子 ど も の興 味 を 引 く 内 容 であ る点 が b︱ ④ と
し て 指 導 す る 際 に生 か さ れ る と 考 え ま す 。
こ の と き 担 任 し て いた 子 ども た ち は、 要 点 を 読 み 取 った り 段 落 相 互 の関 係 を 把 握 し た り す る 技 能 が 、
そ れ ま で の学 習 であ る 程 度 身 に つ い て いま し た。 そ こ で、 科 学 的 読 み 物 の面 白 さ に気 付 か せ、 読 書 の範
囲 を 広 げ る こと を 目 標 にし ま し た 。 ま ず 、 子 ども た ち の科 学 的 読 み物 への興 味 の傾 向 を ア ンケー ト によ
っ て把 握 し 、 市 立 図 書 館 か ら本 を 借 り て き た り、 科 学 的 読 み 物 を 題 材 に し た他 の教 科 書 教 材 を 準 備 し た りしま した。
これ も 、 書 き 込 み方 式 と表 現 活 動 方 式 を 組 み合 わ せ た方 法 で指 導 し ま し た が 、 手 順 は a の と き と は 違 い次 の よう にし ま し た。 ・﹁虫 の ゆ り か ご﹂ で読 み取 り方 のお さ ら いを す る 。 ・他 の副 教 材 を 自 力 で読 み 取 り 、 表 現 活 動 に 作 り 替 え て 楽 し む。 ・科 学 的 読 み 物 の紹 介 活 動 を 朝 の会 で 行 う 。
こ こ でも う 一つ提 言 し た い の は、 よ り 個 に 応 じ た丁 寧 な 指 導 方 法 を 志 す の であ れ ば 、 実 態 を ク ラ ス全
体 とし て で はな く 、 一人 一人 と し て と ら え 、 目 標 や指 導 方 法 を 柔 軟 に 設 定 し た 方 が よ り 良 い の では な い か と いう こ と で す 。
b の実 践 の と き は、 細 か く 実 態 を 見 て いく と 、 読 み 取 り 技 能 が 十 分 身 に付 い て いな い子 ど も が 数 名 い
﹁虫 の ゆ り か ご﹂ を 表 現 活 動 に 作 り 替 え て読 み取 る こ と が で き る 。
ま し た 。 そ の 子 ど も た ち のた め に目 標 を も う 一つ別 に 設 定 し ま し た 。 b︱ ③
こ の子 ども た ち は、 中 心 教 材 ﹁虫 のゆ り か ご﹂ に絞 って読 み取 り 方 の学 習 ← 表 現 活 動 と 進 ん で いき ま
し た 。
︹ 最所 美紀 ︺
これ か ら は 、 指 導 方 法 を 考 え て いく と き に、 一つ の単 元 の中 で あ っても 、 指 導 目 標 、 指 導 方 法 が個 々 に 応 じ て違 って いる よ う な 授 業 構 想 も 開 発 さ れ て いく べき で し ょ う 。
参考 文献 ﹁佐 賀県 小学 校教 育 研究会国 語 部会 夏季 研修 会資 料﹂ 二〇 〇二
A (1) 国 語 教 室 が 魅 力 あ る も の に な って いる か
児童 が喜 ぶと いう こと を 、 魅 力 と いう こ と で考 え て み た いと 思 いま す 。 そ の こと に は 、 ﹃教 室 に 魅 力 を ﹄ の中 で 大 村 は ま 氏 が ふれ て いま す 。
﹁( 中 略 ) これ はよ い授 業 だ 、 こ れ は いけ な い ん だ と いう こ と は 、 いえ な いと いう 気 がし ます 。 け れ ど
も 、 魅 力 と いう の は 、 そ う いう 世 界 と 違 う の です 。 い い から でも 、 な ぜ だ か ら でも な い の です 。 な ん だ
か 心 惹 かれ て な ら な い、 そ う いう も の が教 室 にあ った ら いいな と 思 う の です 。 わ た し は 、 そ れ が よ く で
き る 子 ども も 、 あ ま り でき のよ く な い子 ども も 育 て て いく も の に な る と いう 気 が し て 、 魅 力 と いう こ と ば で 考 え て み た い と思 う の です 。
国 語 教 室 の魅 力 と いう のは 、 で き が い いと か 、 悪 いと か の優 劣 の世 界 を 越 え た と いう か、 そ れ と は比
( 喜 び) が あ る こ と では な いか と 思 いま す 。 一人 一人 が自 分 の成 長 を 実感 し な
べ ら れ な い別 の世 界 の と こ ろ に 生 ま れ る の です 。 (中 略 ) そ の魅 力 と いう の は 、 簡 単 に 言 いま す と 、 ど の 子 に も 、 確 か な 成 長感
が ら 、 内 か ら の励 ま し に 力 づ け ら れ な が ら そ れ ぞ れ の学 習 を 営 ん で い る こ と と 思 いま す 。﹂ ( 注 1)
︵2 ︶ 教 え る こ と は学 ぶ こと
子 ど も に 教 え る と いう こ と は 、 一方 的 で は な く 、 子 ど も の学 び 方 に学 ぶ と いう 方 向 も 大 切 に し な く て は な り ま せ ん 。 そ の こと は ﹃新 版 小 学 校 国 語 科 研 究 ﹄ が示 し て いま す 。
﹁教 育 は、 教 師 が自 己 の学 力 を も って 子 ども の学 力 を 育 て て いく 営 み であ る 。 し か し 、 ︵教 授 ← 学 習︶
と いう 一方 向 に作 用 す る営 み で あ る と考 え る べ き で は な い。 教 え な が ら 、 一方 で 教 え る た め の学 力 を付
け る こ と 、 す な わ ち 、 教 え る中 身 に関 す る 学 問 ︵言 語 ・文学 の学 問 ︶ や 教 え 方 に 関 す る勉 強 を 続 け て い
か な く て は な ら な い の はも ち ろ ん であ る が、 さ ら に 、 自 己 の授 業 の中 で実 地 に 学 ん で いく こと が大 切 で
あ る。 学 習 の仕 方 を 教 え な が ら 、 さ せ方 を 学 ん で いく の で あ る 。 そ れ は 、 つき つめ て言 え ば 、 子 ど も に
学 ぶ こ と だ と言 っ てよ い。 子 ど も に学 ん で いく と いう 自 覚 を 持 た な く な った と き 、 自 ら の授 業 力 は育 た
な く な り 、 や が て 、 枯 渇 し て いく 。 教 え る と いう こ と は 、 学 ぶ こ と で あ る と いう 自 覚 と そ の実 行 が 楽 し い魅 力 的 な 授 業 の創 造 の源 と な る。﹂ ︵注 2︶ ︵3 ︶ 魅 力 あ る 国 語 授 業 の た め に
単 に 賑 や か で お も し ろ く 楽 し い国 語 教 室 で は な く 、 わ か る ・で き る 喜 び、 一人 一人 が 自 分 な り の成 長
感 を 味 わ う こ と が でき る国 語 の授 業 の具 体 例 と し て、 二 年 生 ﹁スー ホ の 白 い馬 ﹂ ︵ 光 村 図 書 ︶ の実 践 で
場 面 の移 り 変 わ り の様 子 、 登 場 人 物 の人 柄 、 そ のと き ど き の気 持 ち を 想 像 し な が ら 読
示 す こと に し ま す 。 ・指 導 目 標
物 語 の中 の 人物 め 動 き や 気 持 ち が 表 れ るよ う に 工 夫 し な が ら 紙 人 形 劇 が で き る 。
む こ と が で き る。 ・学 習 の めあ て
・授 業 の位 置
物 語 のク ラ イ マ ック ス の場 面 であ る 。 矢 が何 本 も 刺 さ って も 走 っ て走 って 走 り 続 け
て 、 大 好 き な スー ホ のと こ ろ に 帰 って き た 白 馬 と 、 白 馬 を 介 抱 す る スー ホ の行 動 か ら 心 の結 び つき を 考 え 、 紙 人 形 劇 を 工 夫 す る と ころ 。
こ の物 語 は、 長 い文 章 で す が、 起 伏 があ り 内 容 的 に も 二 年 生 の子 ど も が好 き な 教 材 です 。 紙 人 形 劇 を
工 夫す る と いう 学 習 活 動 も 二 年 生 最 後 の単 元 と し て適 し て いま す 。 紙 人 形 劇 を 工 夫 す る と は、 子 ど も に
と って どう す る こ とな のか 、 し っか り 押 さ え て お かな いと 達 成 感 が 味 わ え な い だけ で な く 、 で き る ・わ か る楽 し さ へと 学 習 が 向 い て いき ま せ ん 。 ︻こ の 授 業 場 面 で のわ か る こ と の中 身 ︼
作 業 的 に で き る 面 と 思考 的 に わ か る 面 があ り ま す が 、 全 てを す べ て の児 童 に求 め る の で は な く 、 そ の
低 学 年 と いう こ とも あ り 、 常 に鍛 え て いく 方 向 で指 導 す る。
子 の実 態 に応 じ て 教 師 が関 わ り 認 め て いく 姿 勢 を も って お か な け れ ば な ら な いと 思 いま す 。 ① 音読
一つでも でき れ ば 認 め て いく 。 ど ん ど ん 書 き 込 ま せ る。
一人 で こ の場 面 を 動 か し き る こ と を さ せ る。 自 分 一人 で でき た と いう 実 感 を 持 た
② 工 夫 の書 き 込 み ③ 工 夫 の試 し
④ で 見 つけ た こ と が ⑤ へ つな が って いく よ う に し ま す 。 こ こ ま で は 、 紙
自 分 の 工夫 を グ ルー プ で紹 介 で き る 。 そ の中 で自 分 と の違 いを 見 つけ て いく 。
せ る。 教 師 が そ の子 な り の 工 夫 を 認 め て いく 方 向 で関 わ る。 ④ グ ル ープ 学 習
⑤ グ ルー プ の磨 き 合 い
人 形 劇 の学 習 活 動 が 一つの型 と し て取 り 込 ま れ て き て いる ので 、 だ ん だ ん と 活 動 に な れ て き ま す 。
一人 学 び が でき て い る 子 に は ど ん ど ん 工 夫 を さ せ ま す 。 学 習 が 遅 れ が ち な 子 に は 、 て いね い に 関
わ り 充 実 感 を 持 た せま す 。
﹁跳 ね 起 き ま し た ﹂ の動 か し 方 が 良 か った で す 。
⑥ 一斉 学 習 で の磨 き あ い ︵ 具体的な やり取 り︶ C
︵ 全 員 ) さ っと 動 か し た か ら で す 。
T ど う し て で す か 。 C
C 白 馬 を 震 え さ せた と ころ が 良 か った です 。 T ど う し て で す か。 C ︵ し ばらく反応 なし︶
体 に矢 が 突 き 刺 さ り 、 走 って 走 って走 り 続 け て き た か ら 、 苦 し い か ら です 。
T ○ さ ん 、 み ん な に 訳 を 話 し て み てく だ さ い。 C
T ど う です か 。 ︵ C と っ て も い い で す 。︶
C ○ さ ん が 矢 を 抜 く と き に自 分 も 歯 を 食 いし ば って い た のが よ か った で す 。
C 白 馬 と ス ー ホ は も っと 離 し て お か な け れ ば い け な い と 思 い ま す 。 そ れ は 、 駆 け て い き ま し た と
︵み が き合 い で の話 し 合 いの略 ︶
﹁今 日 の劇 に つ い て動 か し 方 の 技 を ま と め ま し ょう 。 今 ま で の よ う に こ と ば に つ
書 いて あ る から です 。
⑦ 学 習 のま と め
いて ま と めま し ょ う 。﹂ と 問 いか け 、 学 習 を ま と め る よ う に し ま す 。 ﹁飛 び 出 し た ﹂ ﹁駆 け つけ た﹂
な ど のよ う に 今 ま で のま と め が でき る よ う に指 導 を 積 み重 ね て お き ま す 。 こ こ で は ﹁跳 ね 起 き て ﹂
と いう こ と ば を 問 いか け 、 技 の仲 間 に 入 れ る よ う に し ま す 。 教 師 が 複 合 語 と し て ま と め る 方 向 を
持 っ て お く と さ ら に良 い と思 い ま す 。 児 童 の 側 から 気 づ く よ う に 仕 向 け る 技 と し て は 、⑥ の こ と
を 振 り 返 る こ と で見 つけ 出 し て いき ます 。 距 離 感 に つい て、 演 技 者 の表 情 に つ いて 、 想 像 し た こ
と か ら の動 き な ど 、 今 日 の学 習 の技 と し て た め て いく よ う に し ま す 。 そ れ が次 の学 習 に生 か さ れ、 だ ん だ ん と 量 的 に も 質 的 にも 整 理 さ れ て いき ま す 。
学 習 の めあ て が 具 体 的 で 子 ど も に わ か る よう にす る こと が 、 わ か る 授 業 の前 提 です 。 ま た、 わ か る と
いう こと に は幅 が あ る と いう こ とを 忘 れ て は な ら な いよう です 。 何 が でき て 何 が でき な い の か、 そ し て
何 が も う す ぐ でき る よ う に な る の か 子 ど も が わ か った と き 、 学 習 に 見 通 し が 持 て 、 や る 気 も 出 て き ま す。
学 習 にお い て 、 同 じ スタ ー ト ライ ン で走 ら せ て も 同 じ 速 さ で走 って いく と いう 奇 跡 は な いの に、 説 明
︹永池
守︺
し た ら 当 然 同 じ 程 度 わ か って 、 ま じ め な ら ば 同 じ 歩 調 で 進 む と いう 考 え を 教 師 は 早 く 捨 て る べ き で す 。
注 注 1 大 村 はま ﹃教 室 に魅 力を ﹄ 国 土社 一九八 八 注 2 全 国大 学国 語 教育学 会編 ﹃ 新 版小 学校 国 語科 研究 ﹄学 芸図書 一九 九 一
Q4 ど の よ う な 国 語 の学 力 を つけ る べき で す か ?
A 国 語 科 で つけ る べ き能 力 は 、 日常 生 活 を 営 む 上 で 欠くこと ので き な い、 話す、 聞 く、書く、 読 む
の言 語 の力 です 。 し た が って 、 こ れ ら は 偏 り な く 身 に付 け な け れ ば な り ま せ ん 。
た だ 、 言 語 の機 能 と し て 、 伝 達 、 認 識 、 思 考 、 創 造 の四 つを 考 え た と き 、 これ ま で は と か く、 生 活 に
直 接 必 要 な 伝 達 の機 能 に の み目 が向 け ら れ が ち でし た 。 し かし 、 社 会 の変 化 に対 応 で き る能 力 を 育 成 す
る た め に は、 言 語 を 通 し て の思 考 力、 創 造 力 ︵ 想 像 力 ︶ を 伸 ば す こと を 重 視 し な く て は な り ま せ ん ︵ 注 1︶。
国 語 の力 と は 大 別 す る と 以 下 の三 つ ︵ ① ∼③ ︶ に な り ま す ︵注 2 ︶。
① ﹁学 校 の教 育 課 程 に お け る 意 図 的 、 計 画 的 な 国 語 科 の学 習 ︵指 導 ︶ に よ っ て 児童 ・生 徒 が獲 得 し た 国 語 の力 ﹂ と す る立 場 。 ︵こ れ ま で の通 念 ︶
構 成 因 子 と し て は、 ︵ 知的能力 ︶ ︵ 技能 能力︶ ︵ 態度 能力︶ に分けられ ます。
② ﹁思 考 力 は 関 係 を 把 握 す る 力 で あ り 、 事 項 と 事 項 と の関 係 を 自 ら 把 握 す る こ と に よ って 理 解 が 可 能
に な り 能 力 も 発 達 す る ﹂ と す る 立 場 。 言 語 力 と 思 考 力 を 統 一的 か つ着 実 に 育 成 し な け れ ば な ら な
いと す る 考 え です 。 類 別 す る と ﹁直 感 的 ・経 験 的 思 考 力 ﹂ ﹁抽 象 的 ・言 語 的 思 考 力 ﹂ ﹁創 造 的 思 考
力 ﹂ ﹁論 理 的 思 考 力 ﹂ な ど があ り ま す 。
③ ﹁内 容 的 価 値 の獲 得 に か か わ る 素 地 能 力 の働 き 、 認 識 力 ﹂ と す る 立 場 。 教 材 内 容 や 言 語 行 動 の対 象
を 、 ど う 感 性 的 に認 識 し て 心 情 を 豊 か にし 、 問 題 意 識 を 喚 起 す る か、 ど う 理 性 的 に 認 識 し て 知 見
を 広 め 問 題 意 識 を 持 つか 、 個 々 人 の受 け 止 め 方 や 認 識 す る 力 を 学 力 と す る 考 え です 。
﹁一番 つけ た い国 語 の力 は 何 か ﹂ の 問 いに 対 し て は、 話 す 力 、 聞 く 力 、 書 く 力 、 読 む 力 を 総 合 し て い く 中 で、 究 極 的 に は 思 考 力 を 鍛 え る こ と だ と 考 え ま す 。
具 体 例 を 単 元 ﹁主 題 を 考 え な が ら ﹂ ︵ 光 村 図書 五 年 下 ﹁わ ら ぐ つ の中 の神 様 ﹂︶ を 中 心 に述 べま す 。 指
導 の中 で 、 同 じ 作 家 の作 品 ﹁春 先 の ひ ょう ﹂ も 複 数 教 材 と し て 用 いま す 。
文 章 の主 題 を 考 え な が ら 内 容 を 読 み取 る と いう こと は、 常 に 作 品 の主 題 と 関 連 づ け な が ら 話 の筋 、 人
物 の 描 き 方 、 話 し 方 の 工 夫 、 ク ラ イ マ ツク ス、 題 名 の意 味 を そ れ ぞ れ と ら え る こ と だ と 思 いま す 。 話
す 、 聞 く 、 書 く 、 読 む 活 動 を 総 合 す る こ と によ って 思 考 が鍛 え ら れ 、 教 材 を 総 合 化 す る こ と に よ って主
︵ 主 題 の予 想 ︶、 ク ラ イ マ ック スを と ら え る 力 ︵四 コ マ漫 画 を か こう ︶、 人 物 の描 き 方 を と ら え る 力
題 のと ら え 方 を 容 易 に し 、 筆 者 の表 現 方 法 ま でも 比 べ る こ と が で き ま す 。 学 習 活 動 と し て主 題 を 考 え る 力
︵ク イ ズ コー ナ ー を 書 こう ︶、 物 語 の構 成 を と ら え る 力 ︵ 評 論 家 に な ろ う ︶、 題 名 の意 味 を と ら え る 力
︵ イ ンタ ビ ュー を し よう ︶、 を 設 定 す る 。 活 動 の中 で磨 き 合 う 場 を 設 け 、 児 童 相 互 の 読 み 比 べや 活 動 の
交 流 な ど に よ り 自 己 の読 みを さ ら に 深 めさ せ ま す 。 言 い換 え れ ば 、 直 感 的 思 考 か ら論 理 的 思 考 へと 高 め
て いく こ と で す 。 直 感 的 認 識 のず れ が 、 活 動 を 経 験 す る こ と によ ってさ ら に は っき り し 、 児 童 は そ のず れ が 思 考 の 切 り 口 とな って さ ら に高 い思 考 へと 導 か れ ま す 。
出 て く る と こ ろ の三 つに 分 か れ ま し た 。 こ のず れ を も と に論 点 を は っき り と さ せ て話 し 合 わ せ る と 、 欲
す 。 二 コ マ目 は 、 雪 下 駄 を 欲 し そ う に 眺 め て い る と こ ろ 、 わ ら 靴 を 編 ん で い る と こ ろ 、 店 の 女 将 さ ん が
四 コ マ漫 画 の 一コ マと 四 コ マは 描 いた ワ ー ク シ ー ト を 渡 し 、 二 コ マ目 と 三 コ マ目 を 児 童 に 描 か せ ま
思 考 の深 ま り の例 (四 コ マ漫 画 の指 導 )
す 。 ﹁振 り 返 り の学 習 ﹂ で、 活 動 、 内 容 のそ れ ぞ れ を 振 り 返 り 考 え を 深 め ま す 。
学 習 構 造 図 の中 の ﹁つな ぎ の学 習 ﹂ で自 分 の読 み の姿 を 明 ら か にし 、 次 へと向 か って活 動 を 選 択 し ま
G: グ ルー プ 活 動
し く て た ま ら な い と こ ろ、 し っか り編 ん で いる と こ ろ の二 つに集 約 さ れ 、 そ れ ぞ れ の 立 場 で最 終 的 に 話
し 合 い、 そ れ ぞ れ の論 拠 が 出 さ れ 、 そ れ ぞ れ に 大 事 だ と いう こ と に な って いき ま す 。 し かし 、 自 分 が 予
想 し た 主 題 と 考 え あ わ せ る と いう 視 点 を 与 え る こ と で 、 あ え て自 分 は どう 結 論 を 下す の か の 場 を 持 た せ
ま し た 。 つま り 、 き っか け と し て 雪 下 駄 が な い と話 に な ら な い の で はな いか 。 ま た 、 わ ら靴 を し っか り
編 む こ と が な い と 大 工 さ ん と の出 会 いも な い の で は な いか。 そ れ ぞ れ 筋 の通 った 考 え で はあ り ま す が、
自 分 の予 想 し た主 題 を 支 え る 四 コ マの漫 画 であ る こと から す る と ど う な る の か、 三 コ マ目 を 考 え る こ と
で結 論 付 け さ せま し た ︵ 関 連 的 思 考 力 ︶。 三 コ マ目 は 、 大 工 さ ん が お み つさ ん か ら わ ら 靴 を 買 う と こ ろ
の会 話 に集 中 し ま し た。 理 由 も 予 想 し た主 題 か らす る と、 こ のと こ ろ が 一番 大 事 な 中 心 場 面 だ か ら と ほ と ん ど の児 童 が答 え ま し た。
そ れ ぞ れ の 活 動 の能 力 を 付 け な がら 、 自 己 の学 習 の姿 を 意 識 でき る よ う にす る こ と は 、 相 手 の 認 識 が
でき る と いう こ と にな り ます 。 ま た、 相 手 が 認 識 でき る と いう こ と は 自 分 の 読 みを 認 識 でき る こ と に な
︹ 永池
守︺
り ま す 。 そ う な ってく る と 、 比 較 対 象 を は っき り と 認 識 でき 思 考 力 の深 化 に つな が って いき ます 。
注 1 全国 大学 国語 教 育学会 編著 ﹃ 新 版小 学校 国 語科 教育 ﹄学 芸図書 一九 九 一 注 2 国語 教育 研究 所 編 ﹃ 国 語教 育 研究大 辞典 ﹄ 明治 図書 出版 一九九 一 参 考資 料 文部 科学 省 ホー ムー ペー ジ ﹁これか ら の時 代 に求 めら れ る国語 力 に つ いて﹂
注
第 一章 話 し た が り や ・開 き た が り や の国 語 教 室
Q5 子 ど も に合 った カ リ キ ュラ ムが でき ま す か ?
一A 年 間 の カ リ キ ュラ ムを 作 成 し ておく 上 で学習 指 導 要 領 に目 を 通 し て おくこと は 当 然 です。年間
の配 当 時 間 ︵ 低 ・中 学 年 で三 十時 間 程 度 、 高 学 年 で二 五 時 間 程 度 ) や各 学 年 の指 導 目 標 や内 容 を も と に
カ リ キ ュラ ムを 作 成 し ま す 。 こ こ で は、 四 年 生 を 例 に、 実 際 に カリ キ ュラ ム を作 成 し て いき な がら 、 留 意点を考 えます。 ︵1 ︶ 子 ど も の実 態 と 目 標
カ リ キ ュラ ム作 成 にお いて、 子 ど も の実 態 を 把 握 す る こ と か ら 始 め ま す 。
ま ず は 子 ど も た ち の ﹁話 す こ と 聞 く こ と ﹂ の学 習 の基 盤 を 成 す 、 子 ど も た ち の人 間 性 や 人 間 関 係 に つ
いて 考 え ます 。 こ の こと を 森 久 保 安 美 氏 は コミ ュ ニケ ー シ ョ ン基 礎 能 力 と 名 付 け 、 質 の高 い コミ ュ ニケ
ー シ ョ ン の学 級 に お け る 生 活 こ そ 、 コミ ュ ニケー シ ョ ン諸 技 能 の根 づく 土 壌 であ る と 述 べ て いま す 。 支
持 的 な 風 土 が あ り 、 互 い に認 め合 い励 ま し 合 う 雰 囲 気 が でき て いる か、 子 ど も た ち の話 し 方 、聞 き 方 、
話 す 内 容 、 聞 く 内 容 な ど か ら 観 察 し ま す 。 ま た 、 ア ン ケー ト を 実施 す る と いう 方 法 も あ り ま す 。 具 体 的
な 観 点 を 持 つこ と で、 子 ど も の実 態 の把 握 が容 易 にな る と と も に、 カ リ キ ュラ ム作 成 の際 の育 て た い子 ども 像 が は っき り し てき ます 。 ︵以 下 、 四 年 生 の観 点 例 ︶
・話 し た いこ と を 聞 いて も ら う こと に満 足感 を 覚 え な が ら 話 す こと が でき る か。
・聞 き 手 に わ か っても ら った こ と に 喜 び を感 じ な が ら 話 す こ と が でき る か 。
・話 の内 容 が わ か る こ と に満 足 感 を 覚 え な が ら 話 を 聞 く こ と が で き る か。
・話 し 手 の気 持 ち に 共感 す る こ と を 楽 し み な が ら 話 を 聞 く こ と が でき る か 。
・互 いの考 え がわ か る 楽 し さ を 感 じ な が ら 、 話 し 合 いを 進 め る こと が で き て いる か 。
・何 か が 決 ま って いく 満 足 感 を 感 じ な が ら 話 し 合 いを 進 め る こと が で き る か 、 な ど 。
こ こ で は、 特 に話 す こと を 楽 し む こ と が で き る 子 ど も が少 な いと いう 実 態 が 明 ら か にな り ま し た。 話
す こと に 抵抗 が あ る 子 ど も た ち の理 由 は、 ﹁恥ず か し い﹂ ﹁間 違 え た ら いや ﹂ な ど で す 。 ま た 、 話 す こ と
が楽 し い理 由 と し て も ﹁ほ め ら れ てう れ し い﹂ な ど が 多 く 、 聞 き 手 と の コミ ュ ニケ ー シ ヨ ン意 識 を 持 っ て 話 し て いる 子 ども は ほ と ん ど いな い こ と が わ か り ま し た。 次 に、 言 語 能 力 の側 面 から 考 え て いき ま す 。
学 習 指 導 要 領 を 具 体 化 す る こと で、 子 ど も の実 態 を つか む手 掛 か り に し ま す 。 特 に現 行 の学 習 指 導 要
領 で は、 二 年 間 通 し て の目 標 ・内 容 にな って いま す の で、 こ こ では 学 習 指 導 要 領 の内 容 と 子 ども の三 年
生 で の学 習 内 容 と を 照 ら し 合 わ せ て考 え て いく 必 要 が あ り ます 。 四 年 生 進 級 時 点 で 、 ど ん な 力 が つ いて
いる の か 、 ま た 必 要 な の か、 三 年 生 ま で の到 達 目 標 と し て、 な る べく 具 体 的 に考 え 、 子 ど も の実 態 を つ か む 手 掛 か り にし ま す 。
︻ 話 す こ と の 三 年 生 ま で の到 達 目 標 ︼ ・聞 き 手 に 対 し て伝 え た い事 柄 を 持 つ こと が で き る 。
・相 手 に よ く わ か る よう に、 初 め 、 な か 、 終 り な ど の構 成 を 考 え て話 す こと が で き る。 ・目 的 や 相 手 に応 じ た 音 量 や 速 さ を 考 え な がら 話 す こと が で き る 。 ︻ 話 す こと の 子 ど も の実 態 と 考 察 ︼
伝 え た いと いう 意 識 を 強 く 持 ち話 し て いる 子 ども は 少 な い。 初 め 、 な か 、 終 り な ど の簡 単 な 組 み立 て
に つ い て は 理 解 し 、 使 え て い る 子 ど も も 数 名 いま す が、 聞 き 手 に わ か る よう に構 成 を 工 夫 し よ う と 考 え
て いる 子 ども は ほ と ん ど いま せ ん。 声 の大 き さ を 考 え て 話 す こ と は 大 体 の子 ど も が で き ま す が 、 速 さ を
考 え て話 し て いる 子 ども は 少 な い の です ︵ 聞 く こ と 及 び 話 し 合 いに つい ても 同 じ ︶。
以 上 、 子 ど も た ち の 人 間 性 や 人間 関 係 と 言 語 能 力 の両 面 か ら 考 え て いく こと で、 子 ど も たち に と って
何 が 足 り な く て、 何 が十 分 であ る か 、 ま ず 何 を 指 導 し て いく とよ いか な ど が 明 ら か に な ってき ま し た 。
こ のよ う な 子 ど も の実 態 を も と に、 一年 後 の到 達 状 況 ︵ 指 導 目 標 ︶ が 明 ら か に な って いき ま す 。 ︻四 年 生 の到 達 目 標 ︼
・自 分 が伝 え た い こ とを 、 聞 き 手 に 伝 わ る よう に組 み 立 て を 考 え な が ら 話 す こ と が で き る。
・聞 き 取 り やす い音 量 や 速 さ を 考 え な が ら 話 す こ と が で き る ︵ 話 す こ と︶。
・話 し 手 の伝 え た い こ と を 自 分 の 考 え と 比 べ な が ら 聞 き、 感 想 に ま と め る こと が で き る 。
・話 の内 容 の中 心 を 聞 き 取 り 、 大 切 な こと ば を メ モ に取 る こと が で き る ( 聞 く こと )。
・互 い の考 え の よ さ を 認 め合 い、 相 違 点 や 共 通 点 を 考 え な が ら 、 進 ん で話 し 合 う こ と が でき る ︵ 話し
合 い︶。
最 後 に地 域 性 や学 校 の特 色 に も 目 を 向 け 、 総 合 的 な 学 習 や学 校 行 事 と の関 わ り も 視 野 に 入 れ て お く と 有 効な時間 活用 が考えられます 。 ︵2 ︶ 年 間 カ リ キ ュラ ム案
年 間 カ リ キ ュラ ム作 成 の際 に は、 子 ど も の実 態 や 到 達 目 標 に照 ら し て、 ス テ ップ を 踏 みな が ら、 ハー
ド ルを 少 し ず つ高 く し 、 段 階 的 に指 導 を 行 う よう 留 意 し ま す 。 そ のた め に、 そ れ ぞ れ の学 期 や単 元 の指
導 の重 点 を は っき り さ せ る こと を 心 が け ま す 。 ま た 、 題 材 に つ いて は 、 子 ど も た ち の意 識 が薄 い、 目 的
意 識 、 相 手 意 識 が し っか り 持 て るよ う な も のを 準 備 し ま す 。 子 ど も た ち が話 し た い、 聞 き た いと 思 え る も のを と 心 が け ま す 。
私 が 作 成 し た 年 間 計 画 案 が以 下 のも の で す 。 ﹁ ﹂ が 単 元 名 、 ︵ ︶ が実 施 月 と 授 業 時 間 数 、・が 主 な 目 標 に な って いま す 。 ︻一学 期 ︼
話 す こ と 聞 く こ と の学 習 の基 盤 を 成 す 子 ど も た ち の人 間 性 や 人 間 関 係 の育 成 に 指 導 の重 点 を 置 き 、 カ リ キ ュラ ムを 準 備 し ま す 。 ﹁み ん な よ ろ し く ﹂ ︵ 四 月 ・二 時 間 ︶
・新 し いク ラ ス の仲 間 に 興 味 を 持 ち 、 楽 し み な が ら 話 し た り 、 聞 いた り す る こ と が で き る。 ・初 め 、 な か、 終 り を 意 識 し て、 自 己 紹 介 を す る こ と が で き る。 ﹁消 防 クイ ズ 大 会 ﹂ ︵ 五 月 ・二 時 間 ︶
・ぺ ア対 抗 で 、 クイ ズ を 出 し た り答 え を 考 え た り す る 活 動 を 通 し て 、 楽 し み な がら 話 し 合 いに参 加 す る こ と が で き る。 ﹁無 人 島 でく ら す と し たら ﹂ ︵ 六 月 ・四 時 間 ︶
・ 一週 間 無 人島 で暮 らす た め に必 要 な も の を グ ルー プ で七 つ話 し 合 って 決 め 、 学 級 に 提 案 す る こと が で き る。
子 ど も た ち に と って 、 全 体 で の話 し 合 い は難 し いも のが あ り ま す 。 こ こ で は、 いき な り 全 体 で は な
く 、 ま ず は、 ペ ア 、 そ し て 次 に四 、 五 人 のグ ルー プ で話 し 合 う 活 動 を 通 し て 、 話 し 合 い の方 法 を 理 解 さ
せ る と と も に、 話 し 合 いに よ って互 い の考 え が わ か る楽 し さ や 何 か が 決 ま る 満 足 感 を 味 わ わ せ る こと に
指 導 の力 点 を 置 き ま す 。 無 人島 で暮 らす と いう 場 面 設 定 は 、 こ の時 期 の子 ど も が 喜 ぶ 題 材 であ る と 考 え
ら れ ま す が、 話 し 合 いに 抵 抗 を 感 じ て い る 子 ど も が多 い実 態 があ り ま す 。 そ こ で事 前 に ペ ア に よ る ク イ
ズ 形 式 の話 し 合 い ﹁消 防 ク イ ズ 大 会 ﹂ を 行 いま す 。 ペ ア か ら グ ループ へと活 動 を 広 げ る こ と で、 子 ど も の話 し 合 い に対 す る抵 抗 が 少 な く な る こ とを ね ら いま す 。 ︻二 学 期 ︼
一学 期 に培 った 人 間 性 や 人 間 関 係 を 基 盤 と し 、 子 ども た ち の言 語 能 力 を 伸 ば す こ と に 重 点 を 置 い て カ リ キ ュラ ムを 準 備 し ま す 。 ﹁電 話 で約 束 ﹂ ︵ 九 月 ・六 時 間 ︶
・目 的 や 内 容 に 即 し て大 切 な こと を 考 え 、 相 手 に わ か り や す く 話 す こと が で き る。 ・大 切 な こ と を メ モ に取 り な がら 、 話 を 聞 く こと が で き る 。
﹁び っく り 発 表 会 を し よ う ﹂ ︵ 十 一月 ・七 時 間 ︶
・自 分 が 伝 え た い こと を 、 聞 き 手 に伝 わ る よ う に組 み立 てを 考 え な が ら 音 声 の み で ス ピ ー チ す る こ と が でき る 。 ・友 だち の ス ピー チ に つ いて、 自 分 な り の感 想 を持 つこ と が で き る。
メ モを 取 る 学 習 は 、 四 年 生 で は 、 力 を 入 れ て指 導 し た い内 容 の 一つです 。 し か し な が ら、 文 字 に頼 る
こ と と 平 行 し て、 音 声 だ け で話 す 準 備 と実 行 、 聞 き 取 った こ と への感 想 ・意 見 の交 流 も 不 可 欠 です 。 こ
こ では 、 文 字 に頼 る 学 習 から 音 声 の み で のや り 取 り の学 習 へと 発 展 さ せ な がら 、 子 ども た ち の力 を 伸 ば
し て い き ま す 。 力 と し て の定 着 を 図 る た め 、 朝 の会 や 帰 り の会 な ど で 継 続 し て指 導 し て いく こ とも 考 え ます。 ︻三 学 期 ︼
三 学 期 は 、 一、 二 学 期 で培 った 力 を 発 揮 し 、 音 声 言 語 活 動 を 存 分 に楽 し ま せ る カ リ キ ュラ ムを 準 備 し ます。 ﹁学 級 さ よ な ら 会 を し よう ﹂ ︵ 二 月 ・四時 間 ︶
・互 い のよ さ や 考 え を 認 め 合 いな が ら 、 進 ん で 話 し 合 いに 参 加 す る こと が で き る 。 ﹁気 持 ち 発表 会 を し よう ﹂ ︵三 月 ・五 時 間 ︶
・友 だ ち の ス ピ ー チ に つ いて 、 話 し 手 が 聞 き 取 っ て ほし い こと を 考 え な が ら聞 き 、 そ のよ さ や 自 分 の 感 想 を 伝 え る こと が でき る 。
・自 分 の考 え が ク ラ ス に伝 わ る よ う に 組 み立 て を 考 えな が ら ス ピー チ を す る こと が で き る 。
こ こ で は 、 今 ま で学 習 し た こと を 生 か し 、 子 ど も た ち に こ と ば を 通 し て の心 の交 流 を 実感 さ せた いと
︹ 副 島伸 一︺
考 え て いま す 。 子 ど も た ち が こと ば を 通 じ て の や り と りを 存 分 に楽 し む こと を ね ら い と し て 、 五 年 生 の 学 習 に つな げ ま す 。 以上 、 ① 人 間 性 や 人 間 関 係 と 言 語 能 力 の 両 面 か ら の子 ど も の実 態 の把 握
② 指 導 の重 点 を は っき り さ せ、 スモ ー ル ステ ップ を 踏 みな が ら の段 階 的 な 指 導 ③ 目 的 意 識 、 相 手 意 識 のは っき り し た 単 元 の設 定 な ど の 留 意 点 を 大 切 にし た カ リ キ ュラ ム作 り を 試 みま し た 。
参考 文献 森久 保安 美 ﹃話 し こと ば教育 の実際 ﹄東 洋館 出 版社 一九九 七
Q6 開 発 した教 材 で実践 できます か?
A教 科 書 教 材 の中に﹁ 話 す こ と ・聞くこ と ﹂ の単 元 は 入 って いる の に、 な ぜ 教 材 を開発 し て ま で行
う の で し ょう 。 そ の中 に、 教 材 開 発 のと き の 留意 点 が見 え て く る はず です 。
四 月 当 初 、 ﹁話 す こと ・聞 く こ と﹂ の領 域 で、 年 間 を 通 し て の指 導 計 画 を 立 て て み ま し ょ う 。 ま ず 、
目 の前 の子 ども た ち の不 足 し て い る力 を つけ て いく 指 導 を 考 え ま す 。 そ し て、 そ の指 導 を 行 って いく 中
で、 つけ さ せ る こ と が 不 十 分 だ った 力 な ど が見 え て き ま す 。 そ のよ う な 部 分 を 、 教 科 書 以 外 の教 材 で 即 時 に補 って いけ ば 、 子 ども た ち の力 も 高 ま り ま す 。 で は、 実 際 の留 意 点 を あ げ ま す 。
① 子 ど も た ち が ド キ ド キす る よ う な 、 発 見 や 驚 き のあ る内 容 を 考 え る 。
② 話 し た り 、 聞 いた りす る や り とり を 、 楽 し いも の に で き る よ う な 場 を 考 え る 。
③ 一時 間 丸 ご と 使 わ ず に十 五 分 ×三 や 十 分 ×四、 程 度 の時 間 を 設 定 す る 。
④ ﹁話 す こ と ・聞 く こ と ﹂ の目 標 を ﹁話 す こと ﹂ ﹁聞 く こ と ﹂ の 二 つに 分 け 、 ﹁話 す こ と ﹂ ﹁聞 く こ と ﹂ を個 別に評価 し、より個 に応じた指導 を行う。
⑤ ク ラ ス の 子 ど も の実 態 を つか み、 そ れ に 応 じ て 三 段 階 ︵A ・B ・C ︶ の 目 標 を 立 て る 。A ・ 習 得
能 力 の高 い子 の目 標 、B・ 通常 の授 業 で設 定 さ れ る 目 標 、C ・ 翌得 能 力 の低 い子 の目 標 、 な ど に 分
け 習 得 状 況 の差 に 対応 し て いく 。
⑥ 少 し ず つ の時 間 で あ って も 、 子 ど も た ち の成 長 を 決 し て見 逃 さ な い。
⑦ 事 前 や事 後 の指 導 に時 間 を 割 き、学 習 の時 間 は、教 師 自身 も 話 し た り聞 い た り す る こ と を 楽 し み た い 。
⑧ 総 合 や生 活 科 、 朝 や 帰 り の時 間 な ど ﹁話 す こ と ・聞 く こ と﹂ の実 の場 を 有 効 に利 用 す る。 具 体 的 な 実 践 を 、 低 学 年 の ス ピー チ に 例 を 取 り 述 べ て いき ま す 。
まず は 、 朝 の時 間 に "お は な し タ イ ム" な ど の時 間 を 設 定 し 、 昨 日 の こ と や 登 校 中 の こと な どを 、 話
し た い子 ども に 毎 日 二 人 程度 話 を さ せ て いき ま す 。 そ の中 で他 の 子 ど も にも 、 話 し 方 や聞 き 方 、 質 問 の
仕 方 な ど を 指 導 し ま す 。 いき な り 、 全 員 の当 番 に す る と 抵 抗 のあ る 子 ど も も いる から で す 。
そ の後 、 慣 れ て いけ ば、 一日 何 人 と 決 め て 全 員 交 替 で ス ピー チ を 行 って いき ま す 。 二 人 ず つで 行 って
も 、 最 初 は 二 十 分 ぐ ら いか か り 、 一時 間 目 に 食 い込 む か も し れ ま せ ん 。 し か し 、 教 師 が く じ け ず に 続 け
て いく と 、 だ ん だ ん時 間 は 短 縮 さ れ ま す 。 で き る だけ 毎 日 行 って いく 方 が い いよ う です 。
こ こ で問 題 に な って く る の が、 話 が 苦 手 な 子 や 、 声 の小 さ い子 に 対 す る 取 り 扱 い方 です 。 こ のよ う な
子 ど も に対 し て は 、 スピ ー チ の前 日 や 直 前 に、 ﹁今 日 は ど ん な 話 を す る の ?﹂ と 聞 い て お き ま す 。 そ こ
で不 十 分 な と ころ を 直 し た り 、 よ いと こ ろを 誉 め た り し て自 信 を つけ さ せ ま す 。 そ れ でも 、 話 が で き な
か った とき は 、 教 師 が横 に つ いて復 唱 し た り 、 教 師 と のイ ン タ ビ ュー 形 式 に し た り 、 テ ー プ レ コー ダ ー
に録 音 し て お いた も のを聞 か せ る こと も い いで し ょう 。 そ れ ぞ れ の子 ども の 実 態 に合 わ せ て、 無 理 な く 少 しず つ進 め て いく こ と が 望 ま し い でし ょう 。
これ がう ま く 進 ん で いく と、 能 力 は高 ま り ま す が 、 マ ンネ リ 化 し て く る 恐 れ が 出 てき ま す 。 そ の雰 囲
気 が 出 て く る 前 に 、 ス ピー チ の項 目 な ど を 変 え て 、 継 続 を 図 って いき ます 。 例 え ば ﹁先 生 に ︵が︶ イ ン
タ ビ ュー ﹂ ﹁ぼ く の ︵わ た し の︶ 宝 物 ﹂ ﹁ぼ く の ︵わ た し の︶ 大 好 物 ﹂ な ど の項 目 を 月 替 わ り にし た り、
そ の 日 そ の 日 に 子 ど も に決 め さ せ た り し ま す 。 そ のと き に、 子 ど も た ち か ら 生 ま れ てき た新 し い話 し方
を ﹁話 型﹂ と し て、 取 り 上 げ て 紹 介 し て いけ ば、 日 々 の 子 ど も た ち の授 業 で の話 し 方 も 高 ま り ま す 。
高 学 年 で は 、 ス ピ ー チ の後 に そ の ス ピ ー チ に つ いて 隣 同 士 や グ ルー プ で 感 想 交 流 を 行 い、 発 表 す る方
法 も あ り ま す 。 ま た 、 ス ピー チ を し て質 問 を 受 け て 一通 り 終 了 し た 後 、 そ れ を 受 け て 、 質 問 さ れ た 内 容
を 入 れ た ス ピー チ を す る 方 法 も あ り ま す 。 ま た、 質 問 と ス ピ ー チ の順 番 を 、 逆 に し た ス ピ ー チ も お も し
ろ い。 こ れ を 行 う と 話 の内 容 が 分 か って いな い の で、 聞 き 手 の子 ど も た ち は 、 質 問 を 出 し やす く な り ま
す 。 ま た話 し 手 の方 も 、 質 問 の内 容 によ って 話 を 付 け 加 え た り、 ふく ら ま せ た りす る こ と が で き ま す 。
こ れ ら の や り 方 は、 十 分 に 普 通 の ス ピー チ に 慣 れ た 後 、 行 いま す 。 逆 に、 高 学 年 で あ っても ス ピー チ に
慣 れ て いな い の であ れ ば 、 低 学 年 のや り 方 で 力 を つけ て いく 必 要 が あ り ま す 。 ︵1︶ ﹁話 す こ と ﹂ の教 材 の ア イ デ ア
低 学 年 で ﹁話 す こ と ﹂ を 指 導 し た いと 思 う と き に は 、 鈴 木 清 隆 氏 の ﹃こ と ば 遊 び、 五 十 の授 業 ﹄ や 波
瀬 満 子 氏 の ﹃は せ み つこ の あ いう え お あ そ び ﹄な ど を 、 ぜ ひ 参 考 に し て 、 の び の び と話 を さ せ た い。 ① ﹁ど ん な 、 あ いう え お ﹂
子 ど も が前 に 出 てき て、 ﹁あ いう え お ﹂を 発 声 し 、 他 の子 ど も は 、 そ れ が ど ん な ﹁あ いう え お﹂ か を あ
て る と いう も の です 。 例 え ば ﹁う れ し い あ いう え お ﹂ ﹁お こ った あ いう え お ﹂ ﹁す っぱ い あ いう え
お ﹂な ど で す 。 発 表 す る 前 に、 教 師 と 発 表 者 が 、 耳 元 で何 を 言う か を 確 認 し て お く と 進 め や す い。 ま た 、
待 って いる 子 ど も た ち の期 待 も 高 ま り ま す 。 一見 ﹁聞 く こと ﹂ の学 習 のよ う で す が、 子 ど も が 言 った の を 聞 き 分 け る こと は難 し く 、 楽 し く 話 す こ と を 中 心 と し て 使 用 し ます 。 ② ﹁も のあ て ゲ ー ム 1 ﹂
こ の活 動 は全 体 だけ で な く 、 グ ループ でも 手 軽 に行 う こと が で き ま す 。 グ ルー プ で 誰 か 一人 が一 つの
も のを 思 い浮 か べま す 。 他 の メ ンバ ー は 、 ① か た ち 、 ② 使 い方 、 ③ 長 さ 、 ④ 色 、 な ど話 型 を 決 め て 質 問
し ま す 。 例 え ば ﹁そ れ は ど ん な か た ち です か ﹂ と 質 問 し 、 ﹁ま る い か た ち で す ﹂ な ど と 答 え て いき ま す 。
慣 れ て く れ ば質 問 の数 を 四 つか ら 三 つ二 つに と 、 ど ん ど ん 減 ら し て い っても か ま いま せ ん 。
︵ 低 学 年 で は、 ア ニメ ﹃に ほ ん 昔 ば な し ﹄ な ど が お す す め です 。 高 学 年 だ
③ ﹁ど ん な セ リ フ だ った ? ﹂ ま ず 、 ビ デ オ を 準 備 し ます
と 、 スト ー リー 性 のあ る も の、 教 育 テ レ ビな ど の歴 史 番 組 な ど が おす す め です )。 一、 二 度 視 聴 し た後 、
ポ イ ント と な る セリ フを 子 ど も たち に ﹁ど ん な 言 い方 だ った かな ﹂ と 聞 い て み ま す 。 そ の場 面 を考 え な
が ら 、 そ の言 い方 に ど ん な思 い が込 め ら れ て いる の か、 振 り 返 り な が ら 発 表 さ せ ま す 。 高 学 年 で は 、 お
話 に出 て く る言 葉 を 押 さ え な が ら 進 め て いく と、 語 彙 の 獲 得 にも な り ま す 。 ︵2 ︶ ﹁聞 く こ と ﹂ の教 材 の アイ デ ア ① ﹁伝 言 ゲー ム﹂
こ の 活 動 は、 学 級 開 き の と き な ど に最 適 です 。 ○ △□ な ど を 使 って、 簡 単 な 絵 を 一つ作 り ま す ︵ 高学
年 で行 う 場 合 でも 、 簡 単 な 絵 で か ま いま せ ん ︶。 そ の絵 を 、 グ ルー プ や 個 人 で 子 ど も に 口頭 で 説 明 さ せ
ま す 。 質 問 を 二 つ三 つ受 け ても い い と思 いま す 。 大 体 の か た ち は でき ます が 、 な か な か ピ ッタ リ と は で
き な いで し ょう 。 こ こ で教 師 が 、 人 に伝 え る こ と の難 し さ や 、 人 の考 え を 聞 き 取 る こ と の難 し さを 、 学 年 に応 じ て 話 を し て いく こ と が 大 切 です 。 ② ﹁も のあ て ゲ ー ム 2﹂ ︵ 低学年︶
これ は、 ﹁も のあ て ゲ ー ム1 ﹂ と違 い、 友 だ ち の発 表 を 、 ﹁聞 く ﹂ こ と の方 に重 点 を 置 いた も の です 。
慣 れ て いく と 、 朝 の時 間 や 、 帰 り の時 間 な ど 、 余 った 時 間 に も さ っと 行 え ま す 。
ま ず 、 一人 の子 ど も が前 に出 ま す 。 最 初 は 、 好 き な も のな ど を あ て る の が よ い で し ょ う 。 ﹁私 の好 き
な も の をあ て てく だ さ い﹂ これ に、 子 ど も た ち は ﹁○ ○ です か ﹂ ﹁○ ○ と 思 いま す ﹂ な ど 思 い つき で ど
ん ど ん 答 え を 出 し て き ま す 。 そ こ で、 質 問 は 五 つま で ︵ も ち ろ ん 、 質 問 の数 は ク ラ ス の 状 況 で変 え て く
だ さ い︶ と 制 限 し ま す 。 そ し て、 ﹁ど ん な いろ です か ﹂ や ﹁ど ん な か た ち です か﹂ な ど の 質 問 を 誉 め て
認 め て いき ま す 。 こう し て いく と 、 同 じ 質 問 を し て も 一回 と カ ウ ント さ れ る の で 、 子 ども た ち は前 の 人
の質 問 も 、 よ く 聞 いて お か な く て は な り ま せ ん 。 ま た 、 慣 れ て いく と、 前 の人 の 質 問 を 受 け た 質 問 も 出 て く る よ う に な り ます 。 お も い っき り 誉 め て あ げ る よ う 心 がけ ま す 。 ③ ﹁誰 の声 でし ょう ﹂
子 ど も た ち 全 員 が顔 を 伏 せま す 。 そ し て教 師 が 一人 の子 の 頭 を そ っと さ わ り ま す 。 そ の 子 は 、 顔 を 上
げ て ﹁あ いう え お ﹂ ︵ 別 に 言葉 は 何 で も い い で す ︶ と 言 いま す 。 他 の子 ど も は 、 だ れ が 言 った のか を あ
て ます 。 ほ と ん ど 、 子 ど も た ち はあ てる こ と が でき ます 。 そ こ で 、 教 師 が ﹁ど う し て ○ ○ く ん だ と わ か
った の﹂ と、 さ ら に聞 いて いく と、 声 を 出 し た 子 ども への思 いを 考 え る こ と にな り ま す 。 他 の子 が 顔 を
伏 せ て い る の で 、 日頃 恥ず か し が って 声 の出 な い子 ど も でも 、 発 表 し や す く な り ま す 。 そ れ で も 声 が 出
な い子 ど も は、 事 前 に テ ー プ で声 を 録 って 流す と いう 方 法 も あ り ま す 。 高 学 年 で は、 前 の授 業 の時 間 に
録 った ク ラ ス の子 ども の音 読 や 発 表 の声 を 、 次 の 授 業 の時 間 に テ ー プ で 流 し ま す 。 ﹁さ あ 、 こ の声 は 誰
で し ょう ﹂ の質 問 に テ ー プ の声 に 耳 を 澄 ま し て集 中 す る はず です 。 これ を ﹁こ の ○ ○ く ん の発 表 は、 ど
ん な 質 問 か ら で て き た 答 え だ った かな 。﹂ な ど と 続 け て問 え ば 、 前 時 の授 業 の振 り 返 り と な り、 よ り 効
果 的 にな り ま す 。 ま た 、 最 初 の 段 階 で は、 同 学 年 の先 生 の声 や 、 子 ども た ち にな じ み のあ る 先 生 の声 で 行う と、楽 しくな ります。
これ ら の学 習 は、 年 間 計 画 を し っか り 立 て た 上 で 、 教 師 が ﹁こ のよ う な 力 を つけ た い﹂ と か ﹁こ の よ
う な 力 が 必要 だ﹂ と いう 思 いを 持 って行 う も の で、 何 も す る こ と が な いか ら と いう 安 易 な 考 え で、 ゲ ー
︹ 古 川 雅︺
ム のよ う に 行 って も 学 習 に は な り ま せ ん 。 ﹁話 す こ と ・聞 く こ と ﹂ の根 源 は ﹁記 憶 力 ﹂ と ﹁思 考 力 ﹂ で あ り 、 普 段 、 言 葉 を ど れ だけ 記 憶 し 、 思 考 さ せ て いく か が重 要 です 。
参考 文献 白 石寿 文 ﹃ 育 つこと ば 育 て る ことば﹄ 東洋 館出 版社 一九 九六
Q7 発 音 ・発 声 は ど のよ う に指 導 し た ら い い の です か ?
A 発 音 ・発 声 に関 す る 指 導上、 基 本 的 に 考 えて お き た いことは、 発 音 ・発 声 の間 違 いを矯正 す る指
導 に し な い と いう こと です 。 乳 歯 や 筋 肉 の 発 達 の問 題 で 、 成 長 に 従 って改 善 さ れ る 場 合 も 多 い か ら で
す 。 ま た 、 音 韻 の種 類 、 ア ク セ ント な ど は 地 域 性 に左 右 さ れ が ち です 。 児童 が 日常 生 活 で使 う 伝 達 の手
段 と し て の言 語 は 、 単 語 そ のも の が 独 立 し て お ら ず 、 文 章 の中 で 理 解 さ れ れ ば い い の です か ら 、 発 音 や
ア ク セ ント が多 少 は っき り し な く と も 、 文 意 は 伝 わ り ま す 。 む し ろ 、 方 言 の方 が、 よ り 気 持 ち が 伝 わ っ
た り 、 個 性 的 と いう 場 合 も あ り ます 。 共 通 語 が す べ て上 品 で 、 分 か り や す い と いう 認 識 に 立 っ て、 発
音 ・発 声 指 導 が 矯 正 指 導 と な り 、 児童 の学 習意 欲 の障 害 にな ら な いよ う に留 意 す る 必 要 があ り ま す 。 た
だ、 低 学 年 の 場 合 、 発 音 ・発 声 の 問 題 が表 記 上 の間 違 い に つな が る 場 合 も あ り ま す の で ︵お ね え さ ん←
オネ イ サ ン/ え ん ぴ つ← イ ン ピ ツ/ か ぜ← カ デ な ど︶、 正 し い表 記 に つな ぐ 配 慮 が いり ま す 。
一 は っきり し た 発 音 の た め の 指 導 ︵1 ︶ リ ラ ック ス でき る環 境 作 り
あ ら た ま って 、 声 を 出 す 指 導 と いう の は児 童 も 教 師 も緊 張 し て し ま いま す 。 ま ず は 自 然 に声 を 出 せ る
環 境 を 作 る 必 要 が あ り ま す 。 聞 き やす い声 は表 情 か ら 生 ま れ る し 、 頬 の筋 肉 が 上 が る と 声 質 も 明 る く な
り ま す 。 声 を 出 す 前 に笑 い話 な ど を し て 、 リ ラ ツク スし た環 境 を 作 る こ と は 大 切 で す 。 ま た 、 広 い場
所 、 騒 が し い場 所 、 大 勢 の人 が いる 場 所 の 方 が 声 はう ま く 出 せ る も の です 。 最 初 は 体 育 館 等 でゲ ー ム な ど を 取 り 入 れ た も の が い いよ う です 。 ︵2︶ 姿 勢 に 注 意 さ せ る指 導
声 を 相 手 に 伝 え よ う と す る 前 に 、 声 を 遠 く に放 り な げ る イ メ ー ジを も た せ ま す 。 部 屋 の後 ろ の壁 に声
を ぶ つけ る感 じ です 。 姿 勢 と し て は 背 筋 を 伸 ば し 、 顔 を 少 し 上 に 向 け ま す 。 肩 幅 に 足 を 開 き 、 肩 ・喉 の
あ た り を リ ラ ツク ス さ せ る た め 、 最 初 に 腕 を 振 った り、 肩 を 上 げ 下 げ 、 首 を 回 す 運 動 を 入 れ た り し ま
す 。 姿 勢 で気 を つけ た い のは 声 帯 に無 理 を さ せ な い こと です 。 長 時 間 、 姿 勢 に意 識 が い かず 、 す ぐ 崩 れ
て し ま う 児 童 の場 合 は、 背 中 に ハンガ ー な ど を 入 れ る と い った指 導 法 も あ り ま す が 、 無 理 強 いし な いこ と が 大 切 です 。 ︵ 3 ︶ 正 し い 呼 吸 法 を 身 に つけ さ せ る 指 導
声 を 出 す こと は 息 を 吐 き 出 す こ と で す 。 一息 で長 く 話 せ る た め に は、 腹 式 呼 吸 が 大 切 です 。 声 を 作 る
た め に は 、 ま ず き ち ん と 息 を 吸 う こと です 。 腹 式 呼 吸 を 意 識 さ せ る に は、 ま ず は仰 向 け に寝 せ て 腹 に手
を あ て 呼 吸 を さ せま す 。 次 に 立 た せ て 、 腰 の 後 ろ に手 を 回 し 横 隔 膜 の動 き を 意 識 さ せ ま す 。 二 人 組 にな り 、 肩 を 手 で押 さ え ても ら って胸 式 呼 吸 を 矯 正 さ せま す 。
① い ろ いろ な 息 の吸 い方 、 吐 き 方 を 目 に 見 え る よう にや ろ う ︵水 泳 の と き 、溺 れ そう な と き、盛 り 蕎 麦 を 食 べる とき 、 ロウ ソ クを 吹 き 消 す と き な ど ︶。 ② 息 止 め ゲ ー ムを し よ う 。
③ 息 吐 き ゲ ー ムを し よ う ︵ 何 秒 息 を 吐 き 続 け ら れ る か確 認す る 作 業 を さ せま す 。 ﹁シー ﹂ と 声 に 出 し
続 け さ せ た り、 紙 の下 端 に吐 く息 を あ て 、紙 を 持 ち 上 げ た り さ せ ま す 。 視 覚 的 に訴 え る 方 法 が 効 果 的 に思 わ れ ます ︶。
④ 声 出 し ゲ ー ムを し よ う ︵ 低 く 太 い声 で ﹁M aー ﹂ と声 を 出 し 続 け さ せ る︶。 ︵4︶ 口形 に 注 意 さ せ る 指 導
母 音 の指 導 か ら 子音 の指 導 に移 る の が 一般 的 です が 、 一つ 一つ の音 を 独 立 し た も のと し て 扱 ってそ れ
を 後 から 接 着 す る と い った 作 業 で は 、 ︵ 言 い換 え る と 子 音 の た び に ぶ つ切 り に し て い た ら ︶ 深 い息 の 流
れ は 生 ま れ よ う が あ り ま せ ん。 発 音 ・発 声 の指 導 で も 、 言 葉 と し て の 指 導 は 必 要 です 。 例 え ば ﹁お ・
は ・よ ・う ﹂ を 母 音 だ け で言 う と 、 ﹁オ ア オ ウ ﹂ と な り ま す 。 息 の 流 れ を 保 った ま ま 舌 の形 を 変 え る こ
と で子 音 を 作 って いく 意 識 を さ せ て み ます 。 母 音 の 口形 を 意 識 さ せ る た め 、 最 初 は オー バ ー な く ら いに
口を 開 いて や ら せ ま す 。 子 音 の発 音 の場 合 は 、 無 声 子 音 か有 声 子 音 か の特 徴 を き ち ん と把 握 し て指 導 す
る必要 があります 。 ︵ 唇 、 舌 の動 き、 軟 口蓋 に ぶ つけ た破 裂 音 、 歯 茎 と 舌 の こす れ 、 な ど ︶ そ のた め に、 教 師 自 身 ボ イ ス ・ト レー ニ ング を し て お く 必 要 が あ る よ う に思 いま す 。
二 適 切な 音 量 、 速 さ で話 す た め の指 導 ︵1 ︶ 聞 き 手 指 導
適 切 な 音 量 と いう と 非 常 に曖 昧 にな って し ま いま す 。 公 的 に 話 す 場 合 、 全 体 に 聞 き 取 れ る 音 量 、 声 量
と でも 言 え る の で し ょう か。 基 本 的 に考 え て お か ね ば な ら な い の は、 無 理 強 いを し た り 、 恥 を か か せ た
り し な い こと です 。 苦 労 せず とも 、 日 頃 か ら 大 き な 声 で話 す 児 童 も いま す し 、 ど ん な に努 力 し て も 、 声
が 出 な い児童 、 話 せ な い児 童 が いる こ とを 十 分 に 理 解 し て お き 、 ど の児 童 も 尊 重 す る 姿 勢 を も って いた
いも の です 。 児 童 の問 題 で ︵ 消 極 的 、 極 端 に体 が小 さ く 声 も 小 さ い、 筋 肉 の発 達 の関 係 で 口を 大 き く 開
け ら れ な い︶ 適 切 な音 量 が 出 せ な い場 合 は 、 聞 き 手 を 育 て る こ と が 必 要 です 。 ﹁聞 こ え ま せ ん。﹂ ﹁も っ
と 大 き な 声 で 言 って く だ さ い。﹂ な ど の 発 言 で な く 、 ど んな に 聞 き 取 り に く い声 で も 、 ﹁今 の よ か った
ね。﹂ ﹁も っと 聞 き た いな 。﹂ と いう 受 け 入 れ る姿 勢 が 周 り に あ れ ば 、 徐 々に そ の児 童 の声 は 大 き く な っ
て いく も ので す 。 大 き な 声 を 出 す のは 、 まず 呼 吸 法 を 正 す こ と か ら 、 が な り た て る の でな く 、 は っき り
︵ 活 舌 ︶ 指導
と し た 明瞭 な 発 音 を 心 掛 け る こ と で、 自 然 と 声 は聞 き 取 り やす く 、 適 切 な 音 量 と な って いき ま す 。 ︵2︶ 滑 舌
舌 がよ く 回 る た め の練 習 文 、 早 口言 葉 な ど は ド リ ルや 音 読 集 でた く さ ん 紹 介 さ れ て いま す 。 注 意 し て
お き た い のは 、 一音 一拍 で音 の長 さ を そ ろ え る こ と で す 。 早 く 発 音 す る こと に注 意 が 行 き 過 ぎ て、 か え
って 聞 き 取 り にく く な ってし ま う 場 合 があ り ま す 。 一音 一拍 は 日 本 語 の 発音 の原 則 で、 母 音 の 一音 一音 を は っき り と 発 音 さ せ る こと が大 切 です 。 ︵3︶ プ 口ミ ネ ン ス 、 間 を 意 識 さ せ る 指 導
適 切 な 速 さ と は、 聞 き 手 を 意 識 し た 速 さ です 。 間 を 取 る の は聞 き 手 に考 え る時 間 を 与 え る こと です 。
息 継 ぎ で意 味 のな い間 を 作 ら ず 、 意 識 的 に 間 を 取 る こ と を 心 掛 け さ せま す 。 特 に話 が 変 わ る 文末 では 、
大 き く と ら せ ま す 。 そ の こと は、 息 の確 保 に も つな が り ま す 。 ま た 、 プ ロミ ネ ン ス を 立 て る た め 、 例 文
を 用意 し 、 強 調 し た い部 分 に 線 を 引 か せ、 そ の部 分 は 声 を 張 って 強 調 し て話 さ せ ます 。 大 き く、 高 く 、
ゆ っく り 、 息 を た く さ ん 吸 って 安 定 し た声 で話 す こと を 意 識 さ せま す 。 強 調 す る 個 所 に よ って意 味 が 違
ってし まう の で、 例 文 な ど で 練 習 さ せ ます 。 三 〇 〇 字 を 一分 程 度 で話 す と 、 聞 き 取 り や す い スピ ー ド で
あ る こ と を 意 識 さ せ 、 例 文 を 用 意 し 、 タ イ ムを は か って誰 が 一番 一分 に 近 いか 競 争 さ せ ま す 。
三 取 り 立 て 指 導 が 必 要 な も の
ガ行 鼻 濁 音 の 発 音 、 ア ク セ ント 、 イ ント ネ ー シ ョ ン、 母 音 の無 声 化 な ど、 地 域 性 に左 右 さ れ が ち な 発
音 ・発 声 の問 題 は 、 教 師 自身 そ の違 いを き ち ん と 理 解 し て お く 必 要 が あ り ま す 。 そ の上 で、 N H K な ど
の ア ナ ウ ン サ ー の話 し言 葉 を 録 音 し て お き 、 自 分 たち の日 常 の話 し 言 葉 と の違 いを 意 識 さ せ る指 導 も 高 学 年 に な れ ば 、 必 要 に な る でし ょう 。 ︻視 覚 的 に訴 え る 指 導 ︼
発 せ ら れ る と 同 時 に消 え てし ま う 音 声 で す か ら 、 教 材 化 す る に は 教 育 機 器 を 活 用 す る こ と が 必 要 で
す 。 自 分 の声 を 録 音 し、 比 較 す る と い った 指 導 は 今 ま でも たく さ ん 行 わ れ て き て いま す 。 最 近 で は、 パ
ソ コ ン に よ る 音 声 処 理 ソ フト 、 音 声 認 識 ソ フト な ど も 発 売 さ れ て いま す 。 た だ 録 音 再 生 さ れ る だ け で な
く 映 像 化 、 数 量 化 さ れ る た め 、 自 分 の音 声 の音 量 、 速 さ な どを 視 覚 的 に と ら え さ せ る こ と が でき ま す 。
録 音 再 生 で は 、 音 量 に つ い ても ボ リ ュー ム の問 題 に な ってし ま いそ う な も の が、 パ ソ コ ン の画 面 で数 値
と し て現 れ る こ と で 、 児 童 に客 観 的 に と ら え さ せ る こ と が で き ま す 。 ア ク セ ント の場 合 は、 ア ク セ ント
辞 典 を 活 用 さ せ 、 高 低 に つ いて は ○ ● で表 し たり し ま す 。 地 域 によ って ア ク セ ント の位 置 が 違 う と いう
のを 知 ら せ て お く 必 要 が あ り ます 。 イ ント ネ ー シ ョ ン に つ いて も〓〓 な ど の記 号 を 使 い、 イ ント ネ ー シ
ヨ ン によ って 、 話 す 内 容 の受 け る イ メ ー ジ が 変 わ る こと を 理解 さ せま す 。 ガ 行 鼻 濁 音 に つ い ては 、 ア ナ
︹ 柴 田誠一︺
ウ ンサ ー の話 を 文 字 化 し た も のを 配 付 し 、 使 わ れ て いる 部 分 を 記 号 化 す る と い った 指 導 も 理 解 指 導 に有 効 と 言 え る で し ょう 。
参考 文献
﹃7 秒 のイ メ ー ジ ・マ ジ ック で あ な た の声 は も っと よ く な る ﹄ 青 春 出 版 社 二 〇 〇 二
竹内 敏 晴 ﹃日本 語 の レ ッスン﹄ ︵ 講 談社 現代 新書 ︶ 講談 社 一九 九八 上 野直樹
小 山 香 織 ﹃キ ャ リ ア ア ップ の ス ピ ー キ ング 術 ﹄ 同 文書 院 一九 九 七
Q8 楽 し い授 業 に す る た め に は 、 ど のよ う に進 め れ ば い い で す か ?
A話 す こと 聞くこ と ﹂ の授 業 が 子 ど も た ち に と って 楽 しくな る の は、 子 ど も た ち の 興 味 や 関 心 が ﹁ あ り 、 楽 し い活 動 があ る授 業 です 。 こ こ では 、 入 門 期 の 一年 生 の事 例 を あ げ て 説 明 し ます 。
一年 生 の 子 ど も たち は、 みん な 話 し た が り や です 。 我 先 に と教 師 に話 を し に来 る で し ょう 。 友 だ ち の
こ と、 家 族 の こと 、 昨 日 見 た テ レビ 番 組 の こと ⋮ 。 子 ど も た ち の話 し た い、 と いう 欲 求 を か な え さ せ る
た め に 、 ﹁お はな し き い て﹂ と いう 単 元 を 組 み ま す 。 友 だ ち の こ と を よ く 知 ら な い子 ど も た ち は 、 あ の
子 が ど んな 話 を す る のか と 、 興 味 津 々 で聞 き ま す 。 み ん な の前 で 発 表 す る と な る と 、 恥 ず か し さ も 加 わ
り 、 思 って いる こ と の半 分 も 話 が で き ま せ ん。 強 制 的 に ﹁も っと あ る で し ょう 。 話 し な さ い。﹂ と 言 っ
て も 言 え る は ず があ り ま せ んし 、 子 ども た ち は 苦 痛 に感 じ ます 。 です か ら 、 発 表 は 、 一文 発 表 でも か ま
いま せ ん。 誰 に で も 発 表 でき る よ う な 話 題 を 決 めま す 。 話 し や す い話 題 と し て 、 子 ど も た ち に は 、 ﹁す き な も の﹂ の発 表 を さ せ て み ま す 。
M 男 は、 ﹁ぼ く の好 き な も の は、 ラ ジ コ ンで す 。﹂ と 発 表 し ま し た。 これ だけ で は 、 聞 い て いる 子 ど も た ち は満 足 し ま せ ん 。 です か ら 、 あ と 一文 付 け 加 え さ せ ます 。 次 に あ げ る の は 、 M 男 の 発表 例 です 。
M ぼく の 好 き な も のは 、 ラ ジ コ ン です 。 何 か聞 き た い こ と は あ り ま せ ん か 。 Q 毎 日 し ま す か 。 M い いえ 。 も って いま せ ん。
Q い つか ら 好 き で す か 。 M 五 歳 く ら いか ら 好 き です 。 Q 誰 が も っ て い ま す か 。
M 近 所 の人 です 。 Q す ぐ 近 く の 人 です か 。 M は い。 団 地 の人 です 。
こ の ﹁何 か 聞 き た い こ と は あ り ま せ ん か 。﹂ の 一
文 を 入 れ る こ と に よ って 、 聞 いて いる 子 は 、 も っと
聞 き た い気 持 ち にな り、 質 問 を し ま す 。 少 な い内 容
の発 表 だ か ら こそ 、 も っと た く さ ん の こ と を 聞 き た
がります。話 す子も、 質問し てもらえ るからたく さ
ん の こ と を 話 す こ と が で き ま す 。 だ か ら、 話 す 側
も 、 聞 く 側 も 満 足 で き ま す 。 ま た 、 M 男 の ﹁も っ て
い ま せ ん 。﹂ に 対 し 、 ﹁誰 が も っ て い ま す か 。﹂ と い
う 質 問 は、 話 す 子 の こと ば を き ち ん と聞 い て いな い
と でき ま せ ん 。 こ の よ う な 発 言 を し た と き に は、 ク
ラ スのみん な で誉 め る よう にし ます。 誉 め る こと
で 、 聞 く 側 の 態 度 も 育 て ら れ ま す 。 そ う す る こ と で 、 M 男 の ﹁近 所 の 人 で す 。﹂ に 対 し て 、 ﹁す ぐ 近 く の
せ よ う と 、 ﹁友 だ ち の こ と を 聞 く の も い い け ど 、 自
ま す 。 そ こ で、 も う 少 し 、 聞 く 側 の発 言 を ふく ら ま
は、 誰 で も 理 由 を 聞 く こ と が でき る よ う にな って き
何 人 か 発 表 を 続 け て い る と 、 好 き な も の に対 し て
人 で す か 。﹂ と い う 質 問 も 、 ご く 自 然 に 出 て き ま す 。
次 に Y 子 の発 表 例 を あ げ ます 。 Y 私 の好 き な も の は、 う さ ぎ の ぬ いぐ る み です 。 聞 き た い こ と はあ り ま せ ん か 。
Q どう し て好 き です か。
Y か わ い い か ら です 。 Q 私 は 、 黄 色 のう さ ぎ の ぬ いぐ る み が 好 き です が 、 Y さ ん は、 何 色 が 好 き で す か 。 Y ピ ンク です 。
Q 私 は 名 前 を つけ て いま せ ん が 、 Y さ ん は 名 前 を つけ て いま す か 。 Y つけ て いま せ ん。
分 の こ と も 言 っ て い い よ 。﹂ と 言 う と 、 ﹁私 は 黄 色 の
う さ ぎ のぬ いぐ る みが 好 き です が、 Y さ ん は、 ⋮ ﹂
と 質 問 の仕 方 も 考 え る よ う にな って き ま す 。 同 じ よ
う に 、 ぬ い ぐ る み を も っ て い る 子 は 、 ﹁私 は 名 前 を
つけ て い ま せ ん が 、 Y さ ん は 、 ⋮ ﹂ と 、 自 分 の こ と
を 言 って か ら 友 だ ち に 質 問 を す る こ と も で き る よ う
に な って き ま す 。 教 師 が 意 識 的 に 話 す 内 容 や 話 し 方
な ど例 を 出 し た り 、 誉 め て や った り す る こ と に よ っ
て 、 子 ど も た ち は 、 喜 ん で発 表 す る よ う にな り ま す 。
こ の よう な 単 元 は 、 帯 単 元 と し て 一年 を 通 し て 子 ど も た ち に さ せ た い活 動 です 。 ﹁日 曜 日 の出 来 事 ﹂
﹁学 校 で 見 つけ た よ ﹂ ﹁夏 の思 い で﹂ な ど 、 子 ど も た ち が 発 表 し た く な る よ う な 話 題 を 見 つけ ま す 。 ま
た 、 朝 の会 や 帰 り の会 の と き に 、 同 じ よ う に 発表 す る機 会 を つく って いけ ば さ ら に楽 し く な る と 思 いま す。
低 学 年 に 限 ら ず 、 子 ども た ち は ゲ ー ム が 大 好 き で す 。 ﹁ゲ ー ム﹂ と聞 く だ け で 子 ども た ち は 大 は し ゃ
ぎ し ま す 。 一年 生 に は、 誰 に でも 簡 単 に で き る ﹁音 当 て ゲ ー ム﹂。 例 え ば、 カ スタ ネ ット を た た い て、
﹁ど ん な音 に聞 こえ ま し た か 。﹂ と 質 問 す る と 、 ﹁カ チ カ チ カ チ と 聞 こえ ま し た 。﹂ と か、 ﹁カ ッカ ッ カ ッ
と き こ え ま し た。﹂ と か、 いろ んな 聞 こ え 方 を 子 ど も た ち は 出 し て き ま す 。 人 に よ って 聞 こえ 方 が 様 々
で 、 そ れ だけ でも 楽 し く 過 ご せ ま す 。 少 し 難 し く す る と 、 子 ど も た ち に は 音 を 出 す も のを 隠 し て お い
て。﹂ と 急 ぎ ま す 。 初 め のう ち は 、 教 師 が 問 題 を 出
た 子 も 、 次 は 頑 張 る ぞ と 、 ﹁早 く 次 の 問 題 を 出 し
缶 で し た。﹂ と 言 え ば当 た った 子 は 大 喜 び、 は ず れ
手 が 挙 が り ま す 。 み ん な 答 え た 後 、 ﹁正 解 は 、 空 き
子 ども た ち は、 自 分 に当 て て ほ し いと た く さ ん の
て 、 音 だ け を 出 し ま す 。 ﹁ど ん な 音 に 聞 こ え ま し た か 。 何 の 音 で す か 。﹂ と 質 問 を 二 つ に し ま す 。 ︻ 音 当 て ゲ ー ム の例 ︼
T 今 か ら 音 を 出 し ま す 。 何 の音 か当 て てく だ さ い。
※音 を 出 す 。 T ど ん な 音 に 聞 こえ ま し た か 。 何 の音 です
し ま す が、 そ のう ち 、 ﹁ぼ く も 出 し た い﹂ と いう 子
が 必 ず 出 て き ま す 。 そ う いう 子 に 問 題 を 出 さ せ ま
す 。 そ の と き に 、 発 表 の仕 方 が う ま く で き な い の
で、 教 え な が ら ゲ ー ムを 進 め ま す 。 学 級 全 体 で な れ
て き た ら 、 四 、 五 人 グ ルー プ で で き ま す 。 初 め か ら
出 す た め に子 ど も た ち は、 ヒ ント か ら 質 問 を 考 え ま す 。
た ち に 当 て さ せ ま す 。 そ の と き に 教 師 は 、 三 つ の ヒ ント を 出 し ま す 。 漠 然 と し た ヒ ン ト な の で 、 答 え を
低 学 年 で は 、 ﹁も の 当 て ゲ ー ム ﹂ も 楽 し い ゲ ー ム の 一 つ で す 。 例 え ば 、 教 室 の 中 に あ る も の を 子 ど も
します 。
グ ルー プ で さ せ て も や り 方 が わ か ら ず う ま く で き な い の で 、 必 ず 、 ク ラ ス 全 体 で ゲ ー ム を 進 め る よ う に
ア ング ル の音 だ と思 いま す 。
C 2 キ ンキ ンキ ンと聞 こえ た の で、 ト ラ イ
の音 だ と 思 いま す 。
C 1 カ ン カ ンカ ン と聞 こえ た の で、 空 き 缶
か。
︻も の 当 て ゲ ー ム の 例 ︼
T 今 か ら 三 つ の ヒ ント を 出 す の で答 え を 考 え てく だ さ い。
T 色 は 五 種 類 です 。 重 さ は 軽 い です 。 大 き さ は 、 小 さ い方 です 。
Q 重 さ は 軽 いと 言 いま し た が、 片 手 でも て ます か 。 T は い、 二本 の指 でも て ま す 。
Q 色 は 五 種 類 と 言 いま し た が 、何 色 です か 。 T 白 と 、 赤 と 、青 と 、 黄 色 と 、 緑 です 。
Q 大 き さ は小 さ い方 だ と言 いま し た が 、 消 し ゴ ムよ り も 少 さ い です か 。
T い いえ 、 あ な た の消 し ゴ ムよ り 少 し 大 き い です 。
質 問 や 返 事 の途 中 か ら で も
﹁あ っ、 わ か っ た 。﹂
と 言 っ て 、 多 く の 子 ど も た ち が 手 を 挙 げ ま す 。 一通
り 指 名 し た 後 、 ﹁答 え は 、 チ ョ ー ク で す 。﹂ と 言 え
ば 、 ﹁や っ た あ ﹂ と 言 う 歓 声 に 変 わ り ま す 。
こ の よ う に 、 ﹁話 す こ と 聞 く こ と ﹂ の 授 業 を 楽 し
く す る た め に は、 ゲ ー ム は欠 か せ ま せ ん。 ほ ん の少
し 言 葉 を 換 え た り 、 や り 方 を 変 え る だ け でも 、 子 ど
も た ち は 大 喜 び で し ま す 。 忘 れ て は いけ な い こ と
は 、 子 ど も た ち は ゲ ー ムを 楽 し ん で いる わ け で す
が 、 教 師 の め あ て と し て は 、 ゲ ー ム中 で の 子 ど も た
ち の こ と ば のや り と り を いか に 鍛 え る か です 。 こ と
ば に 目 を 向 け た 発 言 に は、 ア ン テ ナ を 張 っ て お い
て 、 大 い に 誉 め た い と 思 いま す 。
次 に 物 語 教 材 を 例 に と っ て み ま す 。 ﹁お は な し き い て ﹂ ︵ 東 京 書 籍< 上>︶ と いう 教 材 で す 。 一枚 の絵
を 見 て 、 ﹁相 撲 を 取 って いる ねず みは ど ん な 気 持 ち か な 。﹂ と たず ね て も だ め です 。 ど ん な こ と を 言 って
い い の か わ か ら な い の です 。 そ ん な と き は 、 ね ず み の お 面 を か ぶ ら せ ま す 。 二 人 で、 相 撲 を 取 ら せ ま
す 。 教 師 は イ ンタ ビ ュー 役 を し ま す 。 ﹁相 手 は 強 いで す か。﹂ ﹁勝 て そ う で す か。﹂ ﹁どう し て 相 撲 を 取 っ
て いる の で す か 。﹂ な ど、 子 ど も た ち に 具 体 的 に 質 問 す れ ば 、 す ぐ 答 え ま す 。 お 面 を か ぶ った り、 相 撲
を と る と い った 動 作 化 を さ せ る こ と に よ って 、 子 ど も た ち は、 物 語 の人 物 に な った つも り で 発 言 し ま
す 。 ﹁今 度 は、 ぼ く が ねず み の役 を や り た い。﹂ と 言 う 子 も いれ ば 、 ﹁私 は イ ンタ ビ ュー を し た い﹂ と 言
う 子 も 出 て き ま す 。 ま た 、 ぺー プ サ ー ト や指 人 形 を 使 う 方 法 も あ り ま す 。 自 分 の好 き な 人 物 の ぺー プ サ ー ト や 指 人 形 を 作 り、 動 か し な が ら 会 話 を さ せ ま す 。 ぼ く の ほ う が つよ いぞ 。 ぼ く だ っ て ま け な いそ 。
な げ と ば し て や る から な。
で き ま す 。
︹ 橋本 幸雄 ︺
中 、 高 学 年 に お い て は 、 伝 言 ゲ ー ムや 連 想 ゲ ー ム を グ ルー プ 対 抗 で競 え ば 、 意 欲 的 に取 り 組 む こ と が
な ど と 、 子 ど も た ち は そ の人 物 に な り き って 会 話 を 進 め て いき ま す 。
C C C 1 2 1
Q9 多 様 な 意 見 が 出 る よ う に授 業 を ど う 工夫 す れ ば い い です か ?
A 学 習 の深 ま り 状 況 を、 こ こ で は多 様 な 意 見 の中 か ら自分 の考え を 選 択 で き る こ と だ と考え ます。
自 分 の意 見 だけ で 検 討 す る ので は な く 、 様 々な 角 度 から 検 討 し 、 最 終 的 に自 分 の考 え を 構 築 で き る 児 童
の姿 が 見 ら れ て こ そ 、 深 ま り のあ る 授 業 だ と 考 え ま す 。 そ のた め に は 、 教 材 分 析 、 教 師 の発 問 ・指 示 、 発 言 の場 の保 証 の 三 点 がキ ー ワ ー ド にな り ま す 。 ︵1 ︶ 教 材 分 析
そ の教 材 で何 を 教 え る の か、 教 師 が目 標 を 明確 に す る こと が 大 切な のは 自 明 の こと です 。 そ の目 標 の
た め に、 教 材 を ど のよ う に活 用 す る の か が 教 材 分 析 の観 点 で す 。 児童 の多 様 な 読 みを 保 証 す る た め の教
材 分 析 の観 点 と し て 大 切 な のは 、 価 値〓 藤 の存 在 で す 。 正確 に読 み取 る 場 面 、 読 み取 った こ とを も と に
自 分 な り の考 え を 持 た せ る場 面 な ど を 明 ら か に し 、 ど の場 面 で読 みを 深 め る のか を 検 討 し ま す 。
︻ 教 材 の と ら え 方 の相 違 例 ︼ ︵﹁大 造 じ い さ ん と ガ ン﹂ 東 京 書 籍 五 年 を 例 に ︶
主 題 例 A ⋮ 相 容 れ る こと ので き な い状 況 の中 で 、 互 いを 理 解 す る こ と のす ば ら し さ 主 題 例 B ⋮ 最 後 ま で互 い に 理 解 す る こ と の で き な い難 し さ
教 師 が作 品 を ど のよ う に児 童 に示 し て いき た いか 、 A 、 B そ れ ぞ れ の立 場 に よ って、 学 習 の内 容 が 大
き く 変 わ っ てき ます 。 A の場 合 は 、 叙 述 か ら だけ で な く 作 品 に 対 す る 自 分 な り の読 みを 付 加 し な が ら 理
解 し て いく も の で す 。 B の場 合 は、 叙 述 を 正 確 に 読 ん で いく も の です 。 ど の読 み が 正 し い の か で は な く 、 ど の読 み が 目 の前 の 子 ど も に必 要 な のか を 考 え な け れ ば な り ま せ ん。 ︵2 ︶ 教 師 の発 問 ・指 示
発 言 に 至 るま で の経 緯 を 推 測 す る よ う な 児 童 を 育 て る 発 問 ・指 示を 行 い た いも の です 。 自 分 の意 見 と
違 う 意 見 に 触 れ た 瞬 間 に、 相 手 を 否 定 す る よ う な 態 度 は戒 め な け れ ば な り ま せ ん 。 そ のた め に、 児童 の
意 見 に多 様 性 が 見 ら れ な いと き に、 例 え ば 教 師 が 意 図 的 に 異 な る意 見 を 提 示 す る 、 誤答 と も 思 わ れ る 児
童 に賛 同 す るな ど の手 立 て が 必 要 です 。 そ の意 見 を 教 師 が 論 理 的 に説 明 す る こと で、 意 見 が成 り 立 つ背
景 が存 在 す る こ と に気 づ か せ ま す 。 そ の上 で 問 わ れ た こ と に 対 し 、 適 切 な 回答 にな って い る か どう か を 検 討 さ せ ま す 。 複 数 の意 見 の検 討 とな る 学 習 を 目 指 し ます 。
て 考 え る 話 し 合 いが 成 立 し て いき ま し た。
易 に 否 定 す る 児童 が 少 な く な り 、 相 手 の立 場 に 立 っ
よ う な 話 し 合 いを 繰 り 返 す こと で、 異 な る発 言 を 安
た。 C 3 の意 見 の経 緯 を 皆 が理 解 し た の です 。 こ の
死 に た く な い と いう じ ん ざ の思 い を 導 き 出 し ま し
が仲 良 く な った こと を 思 い出 し 、 男 の子 の た め にも
が 一斉 に 考 え 始 め ま し た。 そ し て、 じ ん ざ と 男 の子
C 3 の意 見 に教 師 が賛 意 を 示 し た こ と で他 の児 童
︻ 多 様 な 意 見 を 認 め さ せ る素 地 を 作 る教 師 の発 問 ・指 示 例 ︼ ︵ ﹁サ ー カ ス のラ イ オ ン﹂ 東 京 書 籍 四 年 ︶ ︿ラ イ オ ン のじ ん ざ が 空高 く かけ あ が って 行
じ ん ざ は 、 こ れ で ア フリ カ の草 原 に帰
く 場 面 の話 し 合 い﹀ C 1
れ る、 と 思 った と思 いま す 。 C 2 も っ と 、 サ ー カ ス で 活 躍 し た か っ た 、 と 思 った と 思 います 。 C 3 じ ん ざ は 、 死 に た く な い 、 と 思 っ て い
る と 思 いま す 。 ︿C 3 の 意 見 に 対 し 、 反 対 意 見 が 出 ま し た 。﹀ ・サ ー カ ス の 生 活 を 続 け た い と は 思 っ て いな い
・い つも 草 原 の こと を 夢 見 て い た ︿こ こ で、 教 師 が C 3 の 児童 の意 見 に 賛 意 を 示 し ま す 。> T 先 生 は C 3 君 の考 え は よ く わ か る よ 。 誰 か 、 C 3 君 が 本 当 に 伝 え た か った こと を 代 わ り に 言 ってく れ る 人 は いな いか な 。 を 行 う こと で、 聞 く 構 え が育 ち ま す 。 ︻児 童 の発 言 を 保 証 す る 学 習 例 ︼ ︿グ ルー プ 学 習 に お け る 児 童 の 発 言 例 ﹀ ま ず 、 自 分 の意 見 を 言 っ て く だ さ い。
︵3 ︶ 発 言 の場 の保 証
児 童 が 発 言 を た め ら う 大 き な 要 因 と な る の が、 他
の児 童 の反 応 です 。 自 分 の発 言 が 間 違 って い る の で
はな いか 、 他 の児 童 と 違 う の では な いか と いう 不 安
が、 児童 の発 言 の大 き な 阻 害 要 因 と な って いま す 。
そ こ で、 他 の児 童 の発 言 に対 し 、 安 易 に笑 った り 、
馬 鹿 に し た り し な い学 級 作 り が大 切 に な り ま す 。 学
級 の雰 囲 気 作 りを 円 滑 に行 う た め に、 少 人 数 グ ルー
プ で の話 し 合 いを 取 り 入 れ る の が有 効 な 手 立 て と な
り ま す 。 グ ルー プ の中 で、 相 手 の 意 見 を 真 剣 に 聞
く 、 相 手 の立 場 に 立 って意 見 を 説 明す る な ど の 活 動
し た。﹂ と ﹁こ んな い い暖 か い手 袋 を く れ た 。﹂ の と こ ろ で そ う 思 いま し た 。
S ぼ く は 、 暖 か そ う な 手 袋 だ ね 、 に し ま し た 。 わ け は 、 ﹁手 袋 の は ま った 両 手 を ぱ ん ぱ ん と や って み せ ま
Y ぼ く も S 君 と 同 じ よ う に 暖 か そ う な 手 袋 だ ね 、 に し ま し た。 そ れ は 、 ﹁ぱ ん ぱ ん と し た ﹂ と こ ろ か ら と
り まし た。
と いう 母 さ ん ぎ つね の 気 持 ち が 表 れ て いる と 思 いま す 。
M 私 は 、 人 間 っ て優 し いん だ 、 だ と 思 い ま す 。 人 間 っ て優 し いん だ は 、 子 ぎ つね の話 を 聞 いて 怖 く な い か ら優 し いのかな ?
0 私 は み ん な と 全 然 違 っ て、 ど う し て 坊 や を 捕 ま え な か った の か し ら 、 に 賛 成 です 。 わ け は 、 自 分 の と き
は 追 い ま く ら れ た か ら 、 ど う し て と 不 思 議 に思 って い る か ら 、 こ の意 見 に 賛 成 で す 。
各 自 、 意 見 を 発 表 し た 後 に、 そ れ ぞ れ の 意 見 を 確 認 す る た め に 、 読 み の地 図 を 使 い、 自 分 の 意 見 の位 置 付 け を 行 い、 話 し 合 いを 続 け ま す 。
う し て 坊 や を 捕 ま え な か った の か し ら 、 に 少 し 近 い方 に置 い た 方 が い いと 思 った か ら で す 。 わ け は 、 母
S ぼ く は 、 暖 か そ う な 手 袋 だ ね 、 の 真 ん 中 で は な く て こ っち に 寄 せ て 置 き ま す 。 ど う し て か と いう と 、 ど
いま す 。
さ ん ぎ つ ね が前 に 人 間 に 追 いま く ら れ た こ と が あ る の で、 人 間 っ て 優 し い、 は違 って こ っち に 近 いと 思
Y ぼ く は S 君 み た い に こ の辺 で は な く て 、 少 し 下 の 方 だ と 思 い ま す 。 わ け は う ま く 言 え ま せ ん 。 M Y 君 が こ こ に 置 い た の は 、 も し か し た ら S 君 よ り も ⋮ ︿ 以 下省 略﹀
グ ルー プ で の話 し 合 い の目 的 は、 一つの 考 え に収 束 す る こ と で は な く 、 ど のよ う な 考 え で あ る か を 明
ら か に す る こ と だ と思 いま す 。 視 覚 的 に読 み の地 図 上 に 自 分 の考 え を 位 置 付 け る こ と で、 考 え が 明 ら か
にな り ま す 。 ﹁○ ○ さ ん と同 じ です 。﹂ と いう 児 童 の発 言 が よ く 聞 か れ ま す が 、 本 当 に 同 じ な のか が 問 わ
れ る こと にな り ま す 。 ど こが 同 じ で ど こ が違 う の かを 常 に 考 え 、 相 手 の意 見 を 理 解 し よ う とす る 意 識 が 生 ま れ る でし ょう 。 ︵4 ︶ そ の他 のポ イ ン ト
教 師 が 読 解 の 切 り 口 と し て 用 いる 課 題 解 決 型 の学 習 で は 、 教 師 な り の解 答 を き ち ん と 持 つべ き です 。
︹ 本 村秀 一郎︺
そ れ を 踏 ま え て 、 児 童 の 予想 外 の解 答 が 出 た と き に、 授 業 は 活 性 化 し ま す 。 児 童 に読 み の深 ま り を 期 待
す る ので あ れ ば 、 そ れ を 育 て る 教 師 の 側 も 豊 か な 読 み を持 つこ と が 大 切 です 。
参考 文献 ﹁平 成 八年度 佐賀 市 立本庄 小学 校 研究紀 要﹂ 九 六 頁
A教 師 が 普 段 か ら気 を 付 け て おくこ と と し て、話 す こ と聞くこ と で 次 の三 点 に し ぼ って 説 明し ます。 ① 子 ど も た ち の様 子 を 見 守 る 目 を 持 つ ② 子 どもたちを 取り巻く環境 を考え る目を持 つ ③ 教 師 自 身 が 日 々努 力 す る
日 頃 か ら 子 ど も た ち の言 動 に目 を向 け 、声 に 耳 を 傾 け 、今 考 え て いる こと を 把 握 す る こ と が 大 切 です 。
① は 、 子 ど も た ち が話 を し た い のは 、 い つか に 気 づ く と いう こ と です 。 単 に 話 し 好 き な 子 ども も い る
で し ょ う が、 ﹁み ん な の前 で話 し て ご ら ん ﹂ と い って も な か な か話 せ ま せ ん 。 で す か ら 、 子 ど も た ち が
話 が でき る の は 、 子 ども に ﹁話 が し た い﹂ と いう 話 題 が あ る と き で す 。 一年 間 の中 で は 、 休 み 明 け 。 夏
休 み 、 冬 休 み 、 春 休 みな ど です 。 旅 行 や キ ャ ンプ な ど楽 し い体 験 を す る こ と が 多 いか ら です 。 ま た 、 運
動 会 、 修 学 旅 行 、 遠 足 、 文 化 祭 な ど、 学 校 行 事 で も 楽 し い体 験 が で き ま す 。 こ のよ う に 、 子 ども た ち が
話 が で き る体 験 を い つす る のか 、 ど ん な 体 験 な のか に つ い て年 間 を 通 し て考 え てお き た いと 思 います 。
子 ど も たち の様 子 に目 を 向 け て いな いと 、 子 ど も た ち の困 って いる こと に も 気 づ き ま せ ん 。 子 ども た
ち は困 った こ と が あ る と、 親 や 教 師 、 友 だ ち に 助 け を 求 め る でし ょう 。 子 ども と 教 師 の 一対 一の受 け 答
え でな く 、 子 ども の悩 みを ク ラ ス全 体 に投 げ か け 、 全 員 の悩 みと す る こ と も 一つの 方 法 です 。 ﹁ぼく 知
って る よ ﹂ と いう 声 が 必ず あ が ってき ま す し 、 な か った と し ても 、 家 に 帰 って 親 に聞 いて き て、 次 の 日
答 え を 出 す 子 も いま す 。 一人 の子 の悩 み が ク ラ ス の ﹁話 す こと ﹂ ﹁聞 く こ と ﹂ ﹁話 し 合 う こと ﹂ に も つな
が って き ま す 。 そ う いう 目 で、 子 ども の悩 み に も 対 応 し て いき た いと 思 いま す 。
高 学 年 で は 、 係 活 動 、 委 員 会 、 掃 除 な ど で、 友 だ ち 同 士 の意 見 の対 立 が出 て き ま す 。 子 ども た ち は 、
結 果 と し て悩 みを 解 決 す る わ け です が 、 教 師 は 、 ﹁話 し 合 い﹂ の仕 方 に も 心 を 配 り た いも の です 。 誰 が 、
どう いう 理由 で困 って いる の か。 話 を 聞 く と き に は、 賛 成 か 、 反 対 か 、 よ く わ か らな い の か、 他 の方 法
は な い の か な ど 、 自 分 の考 え や立 場 な どを は っき り さ せ て、 話 し合 い の仕 方 も 身 に付 け さ せ た いも の で
す 。 た だ 自 分 の考 え を 言 う の で は な く 、 人 の意 見 を し っか り 聞 く 心 も 育 て た いも の で す 。
② は子 ど も たち が、 話 を し た い、 聞 き た いと いう 環 境 の中 に いる の か、 と いう こ と です 。 せ っか く 発
表 し ても 、 周 り が わ あ わ あ 騒 いで いる と こ ろ で は話 し た く な いし 、 友 だ ち に 話 を し て い る と き に 、 そ の
友 だ ち が 聞 い て く れ な いと 話 す 意 欲 は な く な っ てし ま います 。 子 ど も た ち が 話 す た め に は、 他 の 子 の
﹁聞 く ﹂ 態度 が と て も 重 要 にな って き ま す 。 一生 懸 命 聞 い てく れ る ク ラ スで は 、 話 す 子 ども も 自 然 と 一
生 懸 命 に な る はず で す 。 常 日頃 か ら﹁一 生 懸 命 聞 く ﹂ 子 ど も を 育 て よ う とす る気 持 ち が な いと﹁一 生 懸
命 話 す ﹂ 子 ど も は 育 ち ま せ ん。 主 体 的 に聞 く 子 を 育 て る た め に は 、 聞 く 場 を 意 図 的 に 持 った り 、 聞 き 手
のめ あ て を は っき り 持 た せ る こと が 大 切 で す 。 話 を 聞 く 場 と は、 朝 の会 、 帰 り の会 な ど で、 友 だ ち の話
を 聞 く 機 会 を 持 つ こと です 。 単 に 聞 く 機 会 だ け で は な く 、 話 の内 容 の良 さ や 、 発 表 の仕 方 の良 さ ︵ 声の
大 き さ、 読 む 速 さ 、 間 の取 り 方 、 態 度 な ど ︶ にも 気 づ か せ、 伝 え 合 う よ う に し た い。 ま た、 相 手 の考 え
な ど を 引 き 出 す イ ンタ ビ ュー と いう 方 法 も 使 い た い。 聞 き 手 を 誉 め る こ と に 重 点 を 置 け ば、 自 然 と 聞 き
手 が 育 って き ま す 。 友 だ ち の ス ピー チ な ど を 聴 い て、 ﹁○ ○ 君 の優 し さ が わ か る 。﹂ と か 、 ﹁○ ○ さ ん が
使 った △ △ の こと ばを 私 も 使 って み た い。﹂ と いう よ う な 、 友 だ ち が 喜 ぶ発 言 の で き る聞 き 手 を 育 て た
いも の です 。 友 だち の話 が 、 た だ聞 き 手 を 通 過 す る の で は な く 、 話 に 出 会 って 生 じ た 一人 ひ とり の思 い
が共 有 さ れ る こと が大 切 で す 。 常 に よ り よ い こと ば に出 会 お う とす る聞 き 手 を育 て る こ と が 先 決 です 。
教 師 も 聞 き 手 の 一人 と し て 、 大 いに 力 を 発 揮 し た いも の です 。 た だ聞 く だけ で な く 、 聞 き 方 が他 の子
ども た ち の模 範 と な り ます 。 う な ず く 、 返 事 を す る 、 相 づ ち を 打 つな ど 、 教 師 が と った 行 動 を 、 い い こ
と だ と 思 って いる 子 ど も た ち は、 必 ず 同 じ 行 動 が で き る よ う に な り ま す 。 ま た 、 話 を す る 子 が 、 ﹁1 番
目 に○ ○ です 。 2 番 目 は ⋮ ﹂ と い った 発 言 を し た り 、 答 え る 子 が 、 ﹁さ っき も 言 った よ う に ⋮ ﹂ と いう
表 現 を 使 う な ど 、 今 後 子 ど も た ち に使 わ せ た い、 気 に か け て 話 さ せ た いと いう こ と ば を 出 し たら 、 す ぐ
短 冊 黒板 な ど に書 き 残 し 、 他 の子 ども た ち の視 覚 に 訴 え ます 。 そ し て大 い に誉 め ま す 。 掲 示 し た り 誉 め
た り す る こと で、 こ の言 葉 は 大 切 な ん だ 、 自 分 も 使 って み よ う と いう 意 識 が 子 ど も た ち の中 に自 然 と生
ま れ て き ま す 。 音 声 言 語 はす ぐ 消 え て し ま う と いう デ メ リ ット が あ る の で 、 教 師 は 、 そ こ を 補 う よ う に
心 がけ ま す 。 話 し 合 い の様 子 を 録 音 テ ー プ にと った り 、 ビ デ オ に 撮 った り し な が ら 子 ども た ち 自 身 が話
を し て いる 様 子 を 振 り 返 れ る よう な 教 育 機 器 を 使 っ て み る方 法 も あ り ま す 。
話 す 場 所 や 人 数 を 考 え る こ と も 必 要 です 。 教 室 、 廊 下 、 体 育 館 、 運 動 場 。 自 ず と話 す 内 容 も 、 話 し 方
も 変 わ って き ま す 。 教 室 の場 合 だ け を 考 え て も 、 二 人 組 、 四 、 五 人 グ ルー プ でも 違 う し 、 机 の配 置 ︵コ
の字 型 、 班机 、 中 央 を 向 く ︶ だけ を と っても 、 子 ども た ち の話 す 雰 囲 気 がぐ ん と 変 わ り ま す 。 ど ん な 話
の と き に、 ど ん な 人数 で、 ど んな 机 の並 び 方 でな ど 、 話 さ せ る内 容 に応 じ て 意 識 し た いも の です 。 ﹁話
す こ と聞 く こ と﹂ の授 業 作 り に あ た って、 野 口 芳 宏 氏 は 、 ﹁音 声 言 語 の改 善 は 少 な く と も 学 級 ぐ る み 、
ク ラ ス 一丸 とな ら な け れ ば 奏 功 し な い﹂ と 述 べ て いま す 。 や は り 、 子 ど も た ち を 取 り 巻 く 環 境 、 そ の中 でも 学 級 経 営 が い か に大 切 か 、 と いう こと です 。
③ は 、 純 粋 な教 師 と し て の研 修 です 。 子 ども た ち の ﹁話 す こ と聞 く こと の ﹂ 最 大 の手 本 は 、 教 師 で あ
る こ と を 意 識 し て お か なけ れ ば な り ま せ ん 。 最 近 の指 導 書 には 、 教 材 の音 読 テ ー プ が付 い て いま す 。 そ
こ で 自 分 で教 材 を 読 ん で み て テ ー プ に 録 音 し ま す 。 そ の読 み方 と、 音 読 テ ー プ の読 み 方 の違 いを 見 つけ
る の も 一つの方 法 です 。 声 の大 き さ、 速 さ 、 間 の取 り 方 、 ア ク セ ント 、 イ ント ネ ー シ ョ ンな ど、 聞 く ポ
イ ント を し ぼ る こ と に よ って 今 ま で気 づ か な か った 自 分 の読 み方 に気 づ く で し ょう 。 そ の こ と が、 子 ど も た ち の話 し 方 にも 直 接 つな が って いき ま す 。
最 近 で は、 朝 の時 間 に ﹁読 書 タ イ ム﹂ の時 間 が 設 定 さ れ て い る学 校 が 多 く 見 ら れ ま す 。 一週 間 に 一度
で も い いか ら 、 教 師 が 絵 本 や 紙 芝 居 、 物 語 や 説 明 文 な ど、 いろ ん な 本 を 読 ん で や っ て は ど う で し ょ う
か。 子 ど も た ち は 、 喜 ん で 教 師 の話 を 聞 く で し ょう し、 子 ど も た ち を 文 学 の 世 界 へと 誘 う こ とも でき ま
す 。 ま た 、 子 ど も 同 士 で の絵 本 の読 み 合 いな ど を さ せ て も 子 ども た ち は 喜 ん で楽 し み ま す 。 こ のよ う な こ と が ﹁聞 く 子 ﹂ を 育 て る 第 一歩 に な る と 考 え ら れ ます 。
全 校 朝 会 で の校 長 先 生 の話 や 授 業 中 の子 ど も た ち の 発 表 を 聞 いて 、 話 の内 容 を 簡 潔 に ま と め て みる こ
とも 必 要 です 。 ﹁校 長 先 生 の話 は、 三 つ の内 容 に 分 け ら れ る ね 。﹂ ﹁A 君 の 発 表 に は、 友 だ ち か ら 聞 い た
こ と が 入 って いた ね。﹂ な ど、 子 ど も た ち に 話 し て や れ ば 、 子 ど も た ち は、 話 を 聞 く こ つが わ か って き
ま す 。 です か ら 教 師 は 、 ﹁聞 く 子 ﹂ を 育 て る た め に、 ﹁聞 く 教 師 ﹂ で あ り た いも の です 。
朝 の会 や帰 り の会 の スピ ー チ で は 、 子 ど も た ち が 発 表 し や す いよ う に、 教 師 があ ら か じ め話 題 を 決 め
て お く こ と が多 いよ う です 。 そ れ だ と 子 ども た ち は、 事 前 に書 いた 作 文 を 発 表 す る こと に な り 、 真 の話
し 手 は 育 ち ま せ ん 。 スピ ー チ と いう 活 動 は同 じ でも 、 書 か せ て発 表 さ せ る の と 、 そ の場 で臨 機 応変 に考
え て 発 表 す る のと で は、 子 ど も たち に つけ た い力 が 全 く 違う こ と を 知 って お か な け れ ば な り ま せ ん 。
今 後 の動 向 と し て、 メ デ ィ ア リ テ ラ シ ー が あ げ ら れ ます 。 子 ども た ち か ら 見 れ ば 、 メ デ ィ ア と 接 す る
の は 日常 的 な こ と です 。 イ ンタ ー ネ ット な ど で学 校 相 互 のネ ット ワ ー ク 会 議 な ど も 行 わ れ て います 。 技
術 進 歩 に よ って 世 界 各 地 で肉 声 で の や り と り が始 ま る で し ょ う 。 か ら だ と こ と ば を 豊 か に す る レ ッ ス ン
や 肉 声 の大 切 さ と いう 音 声 言語 教 育 の原 点 を 押 さ え る こ と を 忘 れ な いよう に 私 た ち は心 が け な け れ ば な り ま せ ん。
教 師 が常 に声 に出 し て読 む、 と いう 行 為 を 大 切 に し た いと 思 いま す 。 そ の た め に は 、 声 に出 し て 読 み
た く な る 本 に 出 会 え る よ う に、 た く さ ん の本 を 読 み た いも の です 。 リ ズ ミ カ ル で 歯 切 れ の よ い文 章 の
﹁スイ ミー ﹂ や 、 読 ん で い て自 然 と 涙 が こぼ れ て き そ う な ﹁ち いち ゃ ん のか げ お く り ﹂ な ど 、 教 師 自 身
︹ 橋本 幸雄 ︺
読 ん で いて楽 し く な る こと ば や 、 子 ど も た ち に聞 か せ た い話 な ど が たく さ ん 見 つ0か る と 思 いま す 。 教 師 の、 こと ば と向 き 合 う 姿 勢 が大 切 で す 。
参考 文献
全国 大学 国語 教育 学 会 ﹃ 国 語 科教育 学 研究 の成 果 と展望 ﹄ 明治 図書 出 版 二〇 〇 二 日本 国語 教育 学会 ﹃月刊国 語教 育 研究﹄ 三 六五 号 二〇 〇 二
A 主 体 的 に聞くこ
が、 自 分 を 自 在 に 表 現 で き る 話 し 手 を 育 てます。 聞 き 手 が す ば ら し い から こそ
話 し 手 が話 せ る と いう こと を 、 常 に意 識 づ け る こ と も 大 切 で す 。 夢 中 に聞 く 場 を ど う 設 定 す る の か、 聞
定 期 的 に)
く こ と の持 続 性 と も あ わ せ て教 師 の役 割 が 最 も 大 き い と いえ ま す 。 ︵1 ︶ 聞 く 場 の設 定 ① 話 を 聞 き 味 わ う 場 ︵週 に 一、 二 回
帰 り の会 に ︶
教 師 の読 み語 り 、 子 ども 同 士 の読 み語 り 、 異学 年 によ る 読 み語 り な ど 様 々 な 人 の声 で 話 を 味 わう 、 聞 き 浸 る こと が楽 し みな 場 を 設 け ま す 。 ② 話 し 手 の良 さ を 見 つけ る 場 ︵ 毎日
スピ ー チ や発 表 会 で の話 し 手 の良 さ に 耳 を 傾 け 、 良 い点 を ほ め る 場 を 設 け ま す 。 声 の大 き さ 、 態 度 、 話 の中 身 、 こ と ば な ど 話 し 手 の状 況 も 踏 ま え て 良 さ を 見 つけ ま す 。 ③ 相 手 か ら 考 え を引 き 出 す 場 ︵随 時 ︶ ま ず 、 必 要 感 のあ る目 的 、 熱 中 で き る 目 的 を 設 け る こと が 大 事 です 。
﹁物 語 や友 達 の 日記 を 読 ん で 思 った こ と を 友 達 と 比 べ る た め ﹂、 ﹁一年 生 が 喜 ぶ こ と を し て あ げ た い の
で そ れ を 調 べ る た め﹂ な ど 、 あ る目 的 の た め に 相 手 に イ ンタ ビ ュー す る場 を 設 け ま す 。
聞 き 手 を ほ め る こ とを 重 視 し ま す 。 特 に② で は 、 聞 き 型 、 聞 き 方 な ど を 取 り 上 げ て ほ め 、 次 の実 践 に つな げ ま す 。 ︵2︶ 聞 き 手 の 目 的 を 明 確 に
︵1 ︶の② の場 合 、 話 し 手 の良 さ の何 を み つけ る か 、 観 点 を 明 確 に し ま す 。 そ れ は 、 話 し 手 の目 的 達 成
︵ 週 に 一回
朝 の会 ︶
度 を 評 価 す る こ と にも つな が り ま す が、 評 価 と いう こ と ば では な く 認 め 合 う と いう 意 識 で取 り 組 ま せ ま す。 ① ス ピー チ
・声 の大 き さ は も ち ろ ん です が、 話 の中 身 や こと ば に 注 目 さ せ ます 。 ﹁○ ○ と いう こ と ば が 良 か った ﹂ ﹁○ ○ か ら □ □ さ ん の優 し さ が 分 か る﹂ ﹁私 も 使 っ て み た い﹂
・五 感 を 働 か せ た こ と ば、 擬 態 語 な ど あ ら か じ め 話 し 手 が 使 う こ と ば を 決 め て お き 、 そ れ を 見 つけ さ せ ます 。
話 し 手 が 一番 工 夫 し た こ と ば を 当 て さ せ る と ゲ ー ム の楽 し さ が 加 わ り ま す 。
ス ピ ー チ の後 、 ス ピー チ を 承 け た 対 話 、 話 し 合 い の場 を 設 定 す る こ と も 聞 く 目 的 と な り ま す 。
こ の場 合 、 教 師 は 、 ほ め 方 を 増 や す 役 割 を 持 ち ま す 。 ︵ 例 ︿後 掲 ﹀ 参 照 ︶ ま ず 話 し 手 が お す す め と 考
え て い た ﹁ぴ った り ﹂ な こ と ば を 当 て た 児童 を ほ め ま す 。 次 に 、 例 の エ、 オ のよ う に、 こ と ば を 取 り出
し た わ け や こと ば のイ メー ジ、 話 し 手 の意 図 ま で考 え て いる 児童 の ほ め方 を ほ め ま す 。
② 発表 会 ︵ チ ー ム四 、 五 人 で 分 担 し て 発 表 ︶
・① に加 え て相 手 に わ か り やす く 見 せ る ︵ 本 や 絵 な ど ︶ 工 夫 が 加 わ り ます 。
・チ ー ム の 一人 一人 が 生 き る 工 夫 、 相 手 の話 を 承 け た り 、 相 手 の表 現 を 助 け た りす る姿 勢 にも 注 目 さ せま す 。
﹁心 か ら 聞 く 耳 ﹂ な ど の目 指 す 姿 を 掲 示 し ま す 。 聞 き方 の観 点 は 、 子 ども か ら 出 た と き に、"○ ○ く ん 式 の聞 き 方" と 掲 示 し て いく と 効 果 的 です 。 例 ︵︵2︶の① スピ ー チ ) K 児 ︵三 年 女 児 ︶ ︿K 児 のお す す め の こ と ば は 、 ﹁ぴ った り ﹂﹀
﹁あ り が と う ﹂ と 言 い ま し
今 日 、O く ん が 掃 除 時 間 に 溝 の と こ ろ の コ ン ク リ ー ト を ぴ った り は め て く れ ま し た 。 わ た し は 、 男 の 子 っ て 力 が 強 い な と 思 い ま し た 。 そ し て 、O く ん に
た 。 そ れ か ら 、 テ ラ スを ほう き では き ま し た。 わ た し は、 テ ラ ス って 、 は だし の人 が た く さ ん 通 る
か ら 、 そ う じ し て も ら う の が 、 一番 う れ し い ん だ な と 思 い ま し た 。 お か げ で テ ラ ス は ぴ か ぴ か に な り ま し た。
K 児 の スピ ー チ に 対 す る おす す め 当 て ゲ ー ム
︵ 注 ︶ ﹁お す す め 当 て﹂ と は 、 友 達 の発 表 の中 で 工 夫 し て いて ほ め てあ げ た いと 思 う こ と ば を 取 り 出
し ︵ほ め ほ め ︶、 友 達 が 一番 のお 勧 め だ と 思 って いる こ と ば と 一致 す る かを 楽 し む も の です 。
ア ぴ っ た り
イ 男 の 子 って ウ ﹁ぴ か ぴ か ﹂ き い た だ け で 、 き れ い に な っ た か ん じ が す る 。
エ ﹁力 が 強 い な ﹂ と いう こ と ば は 、 K さ ん の び っく り し た と こ ろ が よ く わ か り ま す 。
︵︵2 ︶の① スピ ー チ から 対 話 へ︶
わ かります。
オ ﹁ 一番 う れ し い ん だ な ﹂ と いう と こ ろ は 、 テ ラ ス の こ と を 考 え て い る K さ ん の や さ し さ が よ く
例 N児 ︵ 三年 女児︶
日 曜 日 、 科 学 の祭 典 に 行 き ま し た 。 私 が 一番 お も し ろ か っ た の は 、 ﹁燃 え る シ ャ ボ ン 玉 ﹂ と い う
の で す 。 手 に い つも と 違 う 小 さ い シ ャ ボ ン 玉 を つ け て も ら っ て そ れ に 、 ラ イ タ ー で 火 を つ け た ら 、 バ ン と いう 音 が し ま し た 。 私 は と て も び っく り し ま し た 。
他 にも いろ い ろな こと を し て スラ イ ム と か を 作 り ま し た。 私 は 、 簡 単 で 身 近 でも でき る け ど 私 が
思 い つかな いも の ば か り な の で、 と ても よ く 考 え て いる な あ と 思 いま し た 。
私 も 大 き く な っ た ら そ ん な こ と 一個 で も い い か ら 考 え て み た い で す 。
N 児 の ス ピ ー チ を 承 け た F 児 と A 児 の対 話 F A く ん は 、 N 児 の ど こ が い い と 思 い ま し た か 。 A ﹁燃 え る シ ャ ボ ン 玉 ﹂ の と こ ろ で す 。
F ど う し て そ こ が い いん です か 。 A き いた だ け でも 燃 え て る感 じ が す る か ら です 。 F A く ん も 作 っ て み た い で す か 。
A は い。 ふ つう シ ャ ボ ン 玉 を 燃 や し た こ と が な い の で ど う いう ふ う に 燃 え る か 知 り た い で す 。 F 今 度 、 科 学 の祭 典 が あ る と き 、 一番 始 め にす る の は、 A ﹁燃 え る シ ャ ボ ン 玉 ﹂ で す 。
﹁き い た だ け で も ﹂ を 使 っ た と こ ろ 。 ﹁ど う し て そ こ が ﹂ と き い た と こ ろ 。
一回 目 の ス ピ ー チ で 使 っ て い た
二 人 の対 話 に 対 す る 他 の児 童 の ほ め ほ め カ
キ ﹁○ ○ で す 。﹂ で 終 わ ら な い で
ク 最 後 に N 児 の ス ピ ー チ に も ど っ た と こ ろ 。
︹ 権藤 順子 ︺
第 二章 書 く 喜 びを 分 か ち 合う 国 語 教 室
A 子 ども の実 態 を 踏 ま え て目 標 を 見 定 め た 上 で、 そ の目 標 を達成す る の に 適 し た教 材 ︵ 教科書 教材 の 他 に 自 作 教 材 も 含 む) を 選 び 、 授 業 構 想 を 立 て て いく こと にな り ま す 。
し か し 、 授 業 中 の指 導 だ け で、 作 文 能 力 が身 に付 く 訳 で は あ り ま せ ん 。 授 業 中 に目 標 に 応 じ た指 導 を
し た 上 で、 日 常 的 な 指 導 を す る こ と も 大 切 です 。 こ の二 つ の指 導 は、 車 の両 輪 のよ う に 、 ど ち ら も 欠 か す こと の でき な い緊 密 な 関 係 にあ り ま す 。
授 業 中 に習 得 さ れ た作 文 能 力 は、 日 常 的 な 表 現 の中 で 用 いら れ 、 活 用 さ れ る こと に よ って、 初 め て 真 に 児童 自 身 の能 力 とし て身 に付 い て いく の です 。
一 授 業 中 の指導 目 標 を 見 定 め る 際 の出 発 点 と し て 、 次 の 二 つ の ケー ス が 考 え ら れ ま す 。 ① 子 ど も の書 く 能 力 の実 態 から 出 発 す る。
② 年 間 計 画 に位 置 づ け ら れ た単 元 の目 標 か ら 出 発す る。 ︵1︶ 子 ど も の書 く 能 力 の実 態 か ら 出 発 す る ① の取 り 組 みを 紹 介 し ま す 。
学 年 ︵ 三 年 生 ︶ の初 め に 、 子 ども の書 く 能 力 の実 態 を 知 る 上 で 参 考 と な る よ う な 学 習 活 動 を 行 いま し
た。 そ れ は、 一枚 の鳥 の写 真 を 見 せ て 、 そ の動 き や 様 子 を でき る だ け 詳 し く 一つ 一つ の こ と ば に 置 き 換
え て表 現 さ せ る と いう も の でし た。 そ の結 果 、 語 彙 が 少 な く 、 動 き や 様 子 を 詳 し く 表 現 す る能 力 が 不 十 分 だ と いう こ と が 分 か り ま し た 。
そ こ で、 五 月 に 、 語 彙 を 増 や し て 動 き や 様 子 を 豊 か に ふく ら ま せ て 表 現 す る能 力 を 身 に付 け さ せ る こ と を 目 標 にし て 授 業 を 構 想 し ま し た。 教 材 は 、 教 師 の自 作 教 材 と 子 ども の 作 品 を 教 材 化 し て 指 導 し ま し た 。 具 体 的 な 流 れ は 、 次 のよう にな り ます 。 ・五 感 で取 材 す る方 法 を 知 る 。 ・町 を 散 策 し て 、 五 感 を 使 って感 じ 取 った こ と ば を 書 き留 め る。
・み ん な で取 材 し た こ と ば を 、 使 った 感 覚 ご と に 分 類 し て 一覧 表 にす る 。
・教 師 の自 作 教 材 ︵ 登 場 人物 と 起 承 転 結 の筋 だ け 決 め た簡 単 な 創 作 話 ︶ を 使 って 、 登 場 人 物 の行 動 や
様 子 、 周 り の様 子 を 五 感 を 使 って集 め た こ と ば で ふく ら ま せ る方 法 を 教 え る 。
・ 一人 一人 に、 登 場 人 物 と起 承 転 結 の話 の筋 を 決 め さ せ、 学 ん だ方 法 を 使 って 、 話 を ふ く ら ま せ る。
・子 ど も の作 品 の ふく ら ま せ 方 の優 れ た 例 を いく つか 取 り 上 げ 、 教 材 化 し て次 の学 習 に生 か す 。
・グ ルー プ 単 位 で場 面 を 担 当 し、 友 だち の優 れ た表 現 に学 びな が ら ク ラ ス で 一つ の創 作 話 を作 る 。
こ の指 導 で は 、 語 彙 を 増 や す こ と が でき た だ け で な く 、 如 何 に し て動 き や様 子 を 豊 か に ふ く ら ま せ て いく のか 、 そ の方 法 が 分 か った の で は な いか と 思 います 。 ︵2 ︶ 年 間 計 画 に位 置 づ け た 単 元 の 目 標 か ら 出 発 す る
年 間 計 画 の 十 月 の単 元 に 、 想 像 を ふ く ら ま せ て書 く こと を 目 標 に し た ﹁た か ら 物 を さ が し に ﹂ と いう
教 科書 教 材 が あ り ま し た。 児 童 の実 態 と し て は 、 あ る 程 度 ふく ら ま せ て書 く こと は で き る よう に な って
いま し た の で、 こ こ で は そ れ だけ で な く 、 起 承 転 結 以外 の、 次 の 三 つの パ タ ー ン のよ う な 話 の組 み 立 て 方を学 ぶことも目標 にして、学習し ました。 ① 始 ま った 話 が、 最 後 に振 り 出 し に 戻 って し ま う 。 ② 始 ま った 話 が最 後 に 事 件 で 終 わ る 。 ③ 始 ま った 話 が解 決 し な いま ま 、 読 者 に 続 き を 想 像 さ せ て 終 わ る 。
ま た 、 教 材 も 教 科 書 教 材 に 載 って いる 一枚 の絵 を 使 う だ け で は想 像 が 豊 か に ふく ら む と は思 え ま せ ん
でし た の で、 子 ど も が 日頃 か ら 興 味 を 抱 い て いる も のを 調 べ、 で き る だ け 一人 一人 の 興 味 に応 じ た 絵 を
準 備 す る よ う に し ま し た。 選 ぶポ イ ント と し て は 次 のよ う な こ と があ げ ら れ る と 思 います 。 ・人 間 に近 い生 き 物 が描 か れ て いる。
・飛 べ る 物 と飛 べな い物 、 体 の大 き い物 と 小 さ い物 な ど 異 質 な 物 の組 み合 わ せ であ る。 具 体 的 な 指 導 の 流 れ とし て は 、 次 の よ う にな り ま し た。
・ 一枚 の絵 を も と に、 そ こ か ら 感 じ ら れ る こ と ば ︵ 想 像 上 の五 感 を 使 った こ と ば ︶ を 多 く 集 め さ せ
る。
・登 場 人 物 の名 前 と、 話 の組 み立 て の パ タ ー ンを 参 考 にし た話 の筋 を 決 め さ せ る。
・話 の筋 を 、 み んな で集 め た こ と ば を 使 って 、 想 像 豊 か に ふく ら ま せ る。
・子 ど も の作 品 の中 か ら 、 ふく ら ま せ方 の優 れ たも のや 話 の展 開 の仕 方 が ユ ニー ク な も の を 取 り 上 げ て教材化す る。
・ 一人 一人 の興 味 に 合 った絵 を も と にし て 登 場 人 物 名 と話 の筋 を 決 め さ せ る 。
・友 だ ち の作 品 の話 の ふく ら ま せ 方 や 展 開 の仕 方 を 参 考 に さ せ な がら 、 選 ん だ絵 を も と に し て 作 った 話 の筋 を ふく ら ま せ る 。
・作 った話 は 、 お 互 い に読 み 合 い、 コメ ント を 付 箋 に書 いて 友 だ ち に 渡す 。
絵 は、 次 のよ う な 特 徴 を 持 つ八 枚 の中 か ら 、 自 分 の好 き な も のを 選 ば せ ま し た 。
・野 球 を し て いる 少 年 二 人 ︵ピ ッチ ャー と キ ャ ッチ ャー ︶ が 相 談 し て いる 。 ・サ ッカ ー の試 合 で、 二 人 の選 手 が ボ ー ル の取 り 合 いを し て い る。 ・小 さ な 恐 竜 が 大 き な 恐 竜 に 会 って、 驚 いて逃 げ て いる。
・ピー マン が部 屋 に寝 転 が り 、 窓 の外 に 見 え る 三 日月 に向 か って話 し か け て いる 。 ・黒 いネ コが金 魚 鉢 の中 の 赤 い金 魚 に 向 か って話 し か け て い る。
・髪 の大 変 長 い女 の 子 が 川 の中 で髪 を 洗 って いる の で 、魚 が 驚 いて いる 。 ・麦 畑 が 風 に 波 打 って いる様 子 に動 物 た ち が聞 き 入 って いる 。 ・お菓 子 の そ ば に三 人 の 妖 精 が 集 ま って いる。
こ の指 導 で は 、 前 に 学 習 し た、 登 場 人 物 の行 動 や 様 子 を ふ く ら ま せ て書 く こ と を生 かし つ つ、 起 承 転
結 以 外 の話 の展 開 の仕 方 も 学 習 す る こ と が で き ま し た 。 ま た、 子 ど も が 興 味 を も つ分 野 の絵 を 準 備 し た こと で、 想 像 を ふ く ら ま せ や す か ったよ う に 思 いま す 。
二 日 常 の 指 導
日 常 の指 導 で は、 授 業 中 に習 得 し た作 文能 力 を 活 用 し 、 書 き 慣 れ さ せ る こ と に よ って、 真 に児 童 自 身 の能 力 と し て 身 に付 け さ せ る こ と が でき ま す 。
例 え ば、 授 業 中 に身 に付 け た 、 行 動 や 様 子 を ふく ら ま せ て書 く 技 能 を 日 常 の指 導 の中 で 活 用さ せ て い こう と す る と き 、 次 のよ う な 方 法 が 考 え ら れ ま す 。 ︵1︶ ア ング ル 日記 ︵ア︶テー マ に つ いて
ア ング ル日 記 と は、 子 ど も た ち の生 活 の 中 の身 近 な も の に 題 材 を 見 つけ 、 そ れ を あ る角 度 か ら 見 つめ
た り 焦 点 化 し た り 、 あ る い は面 白 い フ ァ イ ンダ ー を 通 し てな が め な が ら書 い て いく 日 記 の こと です 。 ア ング ル日 記 にも 三 つの種 類 が あ り ま す 。 ① 感 性 を 育 て る た め の ア ング ル ② 表 現 力 を つけ る た め の ア ング ル ③ 楽 し く書 く た め のア ング ル
こう いう ア ング ル日記 を 書 か せ る こと で、 子 ども た ち は身 の回 り の小 さ な 出 来 事 の中 に も 、 五 感 を 使
って 題 材 を 見 つけ 、 こと ば を 選 ん だ り 書 き 出 し や 文 末 を 工 夫 し た り でき る よ う に な り ま す 。 ︵イ︶ 題 材 に つ い て 次 のよ う な 題 材 が適 当 と 思 わ れ ま す 。 ・取 り 組 み や す く 、 飽 き の こな い題 材
・五 感 を 使 って 書 く こと や こ と ば に こ だ わ って書 く こと を 求 め ら れ る 題 材 ・自 分 から 見 つけ よ う と す る 題 材 具 体 的 な 例 を 四 年 生 と 六 年 生 であ げ て み ます 。 ︻四 年 生 の場 合 ︼ ・こ ん な ︵ 音 ・色 ・匂 い︶ 見 つけ た よ ・給 食 日 記 ︵五 感 を 働 か せ て ︶ ・勉 強 日 記 ︵ 会 話 ﹁ ﹂ を 使 って︶ ・遊 び 日 記 ・読 書 日 記 ︻六 年 生 の場 合 ︼ ・お 気 に 入 り 日記 ・成 り き り 日記 ・今 日 の出 来 事 ︵ニ ュー ス︶ 日記 ・今 日 の気 分 は ?色 日 記
・新 聞 記 事 を 読 ん で 一言 日 記 ︵2 ︶ リ レ ー作 文 ︵ア︶ テ ー マに つ い て
リ レー 作 文 と は 、 何 人 か で ノ ー ト を リ レー 形 式 で回 し て いき 、 話 を作 って いく 作 文 で す 。 友 だ ち の作 った 話 を 受 け て書 く の で、 伝 え 合 う 力 を高 め る こと も で き ま す 。 ︵ィ︶ 方 法 に つ い て ・決 め ら れ た相 手 と ・書 き 手 が 次 の 人 を 決 め る ・決 ま って いな い第 三 者 と ︵ウ︶ 題 材 に つ いて ・共 通 に 興 味 の あ る 題 材 ・相 手 の考 え を 聞 く 必 要 のあ る 題 材 ・みん な で のお 話 作 り
︹ 最所 美紀 ︺
行 動 や 様 子 を ふく ら ま せ て書 く技 能 を 活 用す る に は 、 共 通 に 興 味 のあ る 題 材 や み ん な で の お 話 作 り が 適 し て い る と 思 いま す 。
参考 文献 全国 大学 国語 教育 学 会編 ﹃ 小学 校国 語科 教育 研 究﹄ 学芸 図書 一九九 九
A ﹁さ あ 、 昨 日 の修 学 旅 行 の作 文 を 書 き ま し ょ う 。﹂
子 ど も た ち のた め息 が聞 こえ て き そ う です 。 そ の 後 、 子 ども た ち は二 つに 分 か れ て いき ま す 。 す ぐ 書 き 始 め る 子 と 鉛 筆 が止 ま ったま ま の子 です 。
楽 し い時 間 を 過 ご し て、 書 く 材 料 が たく さ ん あ る は ず の題 材 で す 。 な か な か書 き 出 そ う と し な い子 ど も が 必 ず 出 て く る のは 、 ど う し て な の で し ょう か。
作 文 で は書 く こと に よ り 、 不 確 か な 意 識 や 思 考 が こ と ば に よ って確 か な も の と し て表 現 さ れ ま す 。 こ
れ は 作 文 のは たら き 、 長 所 とも いえ ま す 。 そ の反 面 、 作 文 を 書 く こと の難 し さ の原 因 と も な って いま す 。
原 稿 用 紙 や ノー ト を 前 に し て 、 な かな か 書 き 始 め な い子 ど も は 大 き く 二 通 り に 分 け ら れ ま す 。 書 く の
が 嫌 いで書 こう と も し な い子 ど も 、 書 こう と は し て い る け れ ど 、 何 を 書 け ば よ い の か わ か ら な い子 ど も
です 。 ど のよ う に す れ ば書 く よ う にな る の か、 手 だ てを 中 心 に 述 べ ます 。
一 書 く のが 嫌 い で 書 か な い 子 ど も
な ぜ書 く の が嫌 いな の で し ょ う か。 理 由 とし て は 、 ① 苦 労 し て作 文 を 書 いた の に、 反 応 が 返 って こな
い、 ② 書 く の が め ん どう く さ い、 ③ 完璧 な 文 章 を も と めす ぎ て いる、 な ど が考 え ら れ ま す 。
こ こ で は、 ① の 理由 に つい て考 え て みま す 。 子 ども は 、 体 験 や 経 験 を も と に し た り 、 そ の と き の感 想
や考 え な ど を も と に し た り し て、 頭 の中 に あ る も のを 、 苦 労 し て こと ば に代 え 、 作 文 に 書 き ます 。 そ の
た め 、 そ れ に見 合 った も の が 返 って こ な い経 験 が続 く と 作 文 嫌 いに な っ て し ま いま す 。 書 いて よ か っ
た、 書 い た か ら 楽 し いと いう 経 験 が 必 要 です 。 教 師 の朱 書 き に よ る 読 ん で み て の感 想 や 意 見 な ど です 。
作 文 嫌 いを 生 ま な い た め に は 、 何 ら か の形 で読 ん だ者 の思 いを 伝 え る こ と が 必 要 です 。
で は 、 も う す で に嫌 いに な ってし ま っ て いる 子 ど も に は ど ん な 手 だ て を と れ ば よ い の でし ょう か 。 実 践 例 を 通 し て説 明 し ま す 。 ︻日 記 の宿 題 も 全 然 し て こな いA 児 の場 合 ︼
わ た し は 、 連 絡 帳 に三 行 日 記 を 書 か せ る こ と に し て いま す 。 目 的 は書 き 慣 れ、 及 び 一人 一人 と心 を 通 い合 わ せ る た め で す 。
A 児 は 連 絡 帳 は 提 出 す るも の の、 一度 も 日記 を書 い てき た こと はあ り ま せ ん で し た。 そ こ で、 何 と か
書 か せ る よう にし た いと 思 い、 ﹁今 日 は だれ と遊 ん だ の。﹂ な ど 、 日記 の返 事 と な る よ う な も のを 先 に こ ち ら から 書 い て、 日記 を 書 か せ る 手 だ てを と る こ と に し ま し た 。
例 え 短 いも の で も 日記 の返 事 と いう の は 子 ど も が 喜 び ます 。 帰 り の会 の と き 、 連 絡 帳 が 返 って く る
と、 み んな が 連 絡 帳 に 目 を や り 、 に こ に こ し な がら 読 ん で いま す 。 そ の は た ら き に着 目 し 、 逆 の発 想 で 取 り 組 ん で み ま し た。
と ころ が結 果 的 に は 期待 す る よ う な 発 展 は な く 、 た だ 質 問 に答 え る の み の も の が続 き ま し た。 理 由 と
し て は、 ま ず わ た し の質 問 の内 容 を 広 げ る こ と が でき な か った から と いう の が あ げ ら れ ま す 。 ま た 、 答
え る内 容 が い か に も 日記 と いう 感 じ だ った から 書 く 意 欲 が 高 ま ら な か った と も 考 え ら れ ま す 。
そ こで 目 先 を変 え な が ら 、 内 容 も 豊 か な も の に でき る こと を 目 指 し て 第 二 の手 だ て を と り まし た 。
﹁先 生 が クイ ズ を 連 絡 帳 に 書 く の で 、 そ れ に 答 え て ね 。﹂ と 言 って お き 、 毎 日連 絡 帳 に ク イ ズ を 書 く。
教 ソ フ ァ の下 にく り が 落 ち て いま し た。 中 は 入 って いた でし ょ う か 、 か ら だ った で し ょう か 。 入 って いた 。
せ る こ と に よ って作 文 が 嫌 い だ と いう 思 いは 消 し て いく こ と が でき そ う です 。
た。 書 く こと が嫌 いだ と 言 う 声 も 聞 か れ な く な り ま し た 。 楽 し み な がら 、 少 し ず つ書 か せ、 書 き 慣 れ さ
や り と り を し て いく う ち に、 双 方 向 で の や り と り が 楽 し いも の にな り 、 書 く 内 容 が ふく ら ん でき ま し
A 昼 休 み にサ ッカ ー を し た こ と 。 二点 も 入 れ た よ 。
教 正 解 。 そ ん な に に こ に こ し て た か な あ 。 じ ゃ あ 、 Aく ん が 昨 日 楽 し か っ た こ と は 何 で し ょ う 。
A 誕 生 日 プ レ ゼ ント を も ら った こ と。 に こ に こ し な がら も ら って いた か ら ね。
教 昨 日、 先 生 がう れ し か った こと は何 。
こ のよ う に 最 初 は 文 を 増 や す 方 法 に 気 づ か せ な が ら 、 少 し ず つ進 めま し た 。
教 そ の と お り 。 じ ゃ 、 次 から は 何 でわ か った の か 、 理 由 も つけ て書 いて ね 。
A ド レミ で、 ソ ファ の下 は ミ で し ょ。
教 正 解 、 何 で わ か った 。
A
ニ 書 こう と す る が 書 け な い 子 ど も
作 文 を 書 く 過 程 は 、 ﹁取 材 ﹂ ﹁構 成 ﹂ ﹁記 述 ﹂ ﹁推 敲 ﹂ の四 段 階 に 分 け る の が 一般 的 です 。 書 け な いと い
う 場 合 は 、 多 く は ﹁取 材 ﹂ の段 階 で の活 動 に 問 題 があ る よ う です 。 こ の段 階 は 非 常 に 大 切 です 。 次 に つ な が る 取 材 を す る た め に は 、 対 象 に気 づ く 力 が 必 要 です 。
見 て い るよ う で見 て いな い、 気 づ い て い る よ う で気 づ い て い な いと いう こ と は多 いも の です 。 取 材 し
た と い っても 落 と し て いる こ と は多 く あ り ます 。 例 え ば 、 バ ラ を 見 た と き に ど れ だ け の こ と に 気 づ け る
でし ょ う か 。 色 、 に お い、 形 、 大 き さ 。 も う 少 し 詳 し く いう と、 花 び ら の重 な り 具 合 、 葉 の つき か た 、 とげ の つき か た な ど、 あ げ れ ば き り が な いぐ ら いあ る も の です 。
こ こ で必 要 にな る のが メ モ です 。 メ モす る こ と に よ って気 づ いて いるも の と そう でな いも のが 明確 に
な り ま す 。 子 ど も が書 いた メ モを 見 る こ と で 、 教 師 も 助 言 を す る こと が見 つけ や す く な り ます 。
日 頃 か ら いろ い ろな も のを 見 つけ る よ う な 経 験 も 必 要 です 。 し か し 、 自 分 たち か ら はな か な か でき な いの で 、 そ う いう 機 会 を つく って や る こ と が 大 切 で す 。
いろ いろ な こと に気 づ く こ と が で き た後 、 そ の中 か ら 自 分 の書 き た い こと や テ ー マ、 伝 え た い相 手 と
照 ら し 合 わ せ て 、 何 が 必 要 で、 ど れ を 選 択 す る の か 、 そ う いう 判 断 力 も 必 要 にな ってき ま す 。
取 材 は 簡 単 そ う です が 、 こ の よう に意 外 に難 し いも の です 。 これ が で き て いな いと 、 多 く の子 ども が 何 を書 け ば い い の だ ろう と 悩 ん で し ま う こ と が 多 い の です 。
で は どう す れ ば よ い の でし ょう か 。 次 に 実 践 の例 と 手 だ て を 説 明 し ま す 。
① メ モ に つ い て ︵B 児 を 例 に と って ︶
取 材 の対 象 が 人 であ ろう と 、 も の で あ ろ う と 、 で き ご と であ ろう と メ モ は 必 要 です 。 そ こで 、 次 の よ う な 形 式 の メ モを 準 備 し ま し た 。
中 心 の だ 円 に は 書 き た い主 題 ま た は 表 題 を 入 れ ま す 。 B児 は ﹁どき ど き 運 動 会 ﹂ と 入 れ ま し た。 運 動
会 で は な く ど き ど き運 動 会 な の で 、 ま わ り に 入 る こ と ば は、 た だ の団 体 競 技 な ど では あ り ま せ ん。
﹁リ レー で抜 か れ そ う ﹂ ﹁タ ワ ー の上 に 立 って ﹂ ︵ 組 体 操 ︶ ﹁ピ スト ル が な る徒 歩 の スタ ー ト ﹂ ﹁優 勝 は
赤 組か﹂ ( 閉 会 式 ) ﹁次 のう ち わ は 何 色 ﹂ ︵ 準 徒 歩 ︶ な ど を 入 れ ま し た 。 こ のよ う な メ モを さ せ て お け ば、
リ レー の こと に つ いて も 自 分 が 走 って いる 様 子 だ け な ど焦 点 を 絞 って 書 か せ る こ と が で き ま す 。
実 際 に ど ん な こ と を 書 こう と し て いる の かも 教 師 が把 握 す る こ と が でき る の で、 他 に 書 け そう な こ と な どを 助 言 し て や る こ とも で き ま す 。
② 気 づ く 経 験 に つ いて ︵日常 的 な 取 り 組 み ︶
日頃 あ ま り 見 て いな いも のも 、 観 点 を 与 え て や る こと で、 見 た り 気 づ い た りす る よ う に な り ま す 。
帰 り の会 で ﹁今 日 は 帰 り に青 いも のを た く さ ん見 つけ ま し ょ う ﹂ と言 っ
て お け ば 、 子 ど も たち は 花 や看 板 、 標 識 、 落 ち て いる 空 き 缶 、 通 り 過 ぎ る
人 の 服 な ど いろ いろ な も のを 見 つけ てき ま す 。 ま た ﹁音 を 出 し て いるも の
を 見 つけ ま し ょ う ﹂ と 言 え ば、 車 や 踏 切、 木 々 の音 な ど に も 気 づく こ と が
で き ま す 。 毎 日 違 う 観 点 を 与 え る こと で、 今 ま で 見 過 ご し て き た いろ いろ
な も の に気 づく 経 験 を さ せ る こと が で き ま す 。 そ の経 験 が、 作 文 の取 材 に 生 き て き ま す 。 ③ 取 捨 選 択 に つ いて
取 捨 選 択 に つ いて は 次 の 段階 の ﹁構 成 ﹂ にも つな が って き ま す 。 取 材 し た メ モを 生 か し て、 ど れ が 必
要 か 必 要 で な いか を 判 断 さ せ ま す 。 こ れ には 目 的 意 識 や 相 手 意 識 が関 係 し てき ま す 。 先 ほ ど の B児 は 運
動 会 の様 子 を 見 に来 ら れ な か った お ばあ ち ゃ ん に 手 紙 と し て 出 す こ と に し ま し た 。 そ こ で 、 活 躍 し た も
のを 中 心 に 選 択 し ま し た。 選 択 し た 後 に 、 そ れ ぞ れ に つ いて 内 容 を く わ し く 書 き ま し た。 そ し て、 構 成 の段 階 へと 進 み ま し た 。
さ て、 取 材 の 段 階 で の活 動 がう ま く で き れ ば多 く の子 ども が書 け る よう にな る の です が 、 も う 一つ、 書 け な い原 因 と な る も の があ り ま す 。 そ れ は ﹁書 き 出 し ﹂ です 。
そ こ で、 例 を い く つか 出 し ま す 。 ﹁﹃優 勝 は 赤 組 で す 。﹄ ま わ り の友 だ ち と 思 わ ず 顔 を 見 合 わ せ ま し
た 。﹂ ﹁雲 が き ら き ら と 光 って いま し た。 ま る で 応 援 し て く れ て い る よ う で し た。﹂ これ を 参 考 に さ せ な
︹ 重松 景 二︺
が ら 、 子 ど も た ち に 書 か せ 、 発 表 を さ せ ます 。 発 表 し た も の は 黒 板 に提 示 し て お き 、 どう し て も 書 き 出 し が 思 い浮 か ば な い子 ど も に は、 そ こ か ら 選 択 し て書 か せま す 。
参 考文献 白 石寿 文 ・桜井 直 男編著 ﹃ 小 学校 作 文 の授 業﹄ 教育 出 版 セ ンタ ー 一九 八六 白 石寿 文 ・桜井 直 男編著 ﹃ 小 学校 作 文 の単 元﹄ 教育 出 版 セ ンタ ー 一九 八九 白 石寿 文 ・桜井 直 男編著 ﹃ 小 学校 作文 の指 導﹄ 銀 の鈴社 二〇 〇 一
A 学 習 指 導 要 領 に よ れ ば 、 低 学 年 の ﹁書くこ と ﹂ の目 標 は、 次 の と お り です。
経 験 し た こ と や 想 像 し た こと な ど に つい て 、 順 序 が 分 か る よ う に 、 語 や 文 の続 き方 に注 意 し て 文 や 文
章 を 書 く こ と が でき る よう にす る と と も に、 楽 し ん で表 現 し よ う と す る態 度 を 育 て る ︵ 注 1 ︶。 ま た 、 指 導 す る 内 容 は 、 次 の点 です 。 ア 相 手 や 目 的 を 考 え な がら 書 く。 イ 書 こう と す る題 材 に 必 要 な 事 柄 を 集 め る 。
ウ 自 分 の 考 え が 明確 に な るよ う に 、 簡 単 な 組 み 立 て を 考 え る 。
エ 事 柄 の 順 序 を 考 え な が ら 、 語 と 語 や 文 と 文 の続 き 方 に注 意 し て書 く 。 オ 文 章 を読 み返 す 習慣 を 付 け る と と も に 、 間 違 いな ど に注 意 す る 。
︵ 注 三 二頁、 引用者要約︶
﹁書 く 内 容 が浮 か ば な い﹂ と いう の は、 ﹁﹃経 験 し た こと や 想 像 し た こ と ﹄ な ど が 浮 か ば な い﹂ と いう
こ と で し ょう 。 ま た、 ﹁文 章 に な ら な い﹂ と いう の は 、 ﹁﹃順 序 が 分 か る よ う に、 語 や 文 の続 き 方 に 注 意 し て 文 や 文 章 を 書 く こ と﹄ が でき な い﹂ と いう こと で し ょう 。
一年 生 の作 文 指 導 であ れ ば 、 ﹁入 門 期 ﹂ と と ら え 、 ま ず は伸 び や か に ︵自 然 習 得 の文 体 で 自 由 奔 放 に ︶
書 か せ た いも の です 。﹁一年 一組 せ ん せ いあ の ね ﹂ な ど は ま さ に 一年 生 な ら で は の作 文 だ と 思 いま す 。
これ が 二年 生 にな り ま す と 、 少 しず つ文 の 組 み立 て や 文 章 の構 成 を 考 えな く て は な ら な く な り ま す 。 そ
う な る と 自 由 奔 放 で は いか な く な り 、 も ど か し さ も 感 じ る こ と で し ょう 。 そ こ か ら ﹁書 き た い内 容 ﹂ も
自 分 な り に 精 選 し 、 う ま く ﹁文 章 にな ら な い﹂ こ と も 生 じ る で し ょう 。 そ こ が 二 年生 の作 文 指 導 の難 し さ であ り、 や り が いで も あ り ま す 。
書 く 内 容 が 浮 か ば な か った り 、 目 的 が は っき り し て いな い子 に は 教 師 が そ ば に い て、 例 え ば ﹁き の
う 、 何 を し た の。 そ のと き あ な た は どう 思 った の。 そ ん な こ と を 先 生 に教 え て ね。 ク ラ ス のお 友 達 に教
え てあ げ よ う よ 。 おう ち の 人 に お 手 紙 を 書 こう か。﹂ な ど の こ と ば か け を し て いき た いも の です 。
ま た、 書 く こ と に 自 信 のな い子 に は ﹁作 文 は こ ん な こ とを 書 い て い いん だ よ ﹂ と いう ヒ ント を あ た え
る な ど の指 導 が必 要 で し ょう 。 文 章 にな ら な い 子 に は 、 教 師 が 実 際 に作 文 を 書 いて 例 示 し た り 、 子 ども が 書 いた作 文 を 再 構 成 し た り す る な ど の 工 夫 が 必 要 です 。
今 後 の作 文 指 導 の始 ま り の 一つと し て、 優 れ た 文 章 に ど ん ど ん ふれ さ せ る こと も 効 果 的 です 。 そ の
際 、 自 分 に も 書 け そう だと いう 手 のと ど く 文 章 を 子 ど も に提 示す る こ と が 大 切 です 。 ま た、 書 き 出 し の
文 だ け を 提 示 し て や り 、 続 き を 子 ど も に書 か せ るな ど と いう 方 法 も あ り ま す 。
いず れ に し ても 、 少 し でも 伸 び た と こ ろ を 見 つけ て 誉 め て や る こと や、 子 ども が 興 味 があ り 、 自 信 を
持 っ て いる こと ( 趣 味 や 特 技 な ど ) を 知 り 、 そ れ を 文 章 に表 す こと が で き る よ う に し む け る こと が 大 切
です 。 そ の意 味 でも ﹁指 導 者 が 子 ど も 一人 一人 を よ く 知 る﹂ こ と か ら 書 く 指 導 が始 ま る と 言 え ま す 。
低 学 年 に お い て は、 発達 段 階 か ら 考 え ても 、 書 く こと は話 す こと と は 切 り 離 せ ま せ ん 。 お 互 いを 有 機
的 に関 連 づ け る 指 導 が求 め ら れ ま す 。 例 え ば、 朝 の会 に﹁一 言 ス ピ ー チ ﹂ の時 間 を と り 、 そ のあ と の 一
時 間 目 の国 語 の 時 間 に ﹁一言 ス ピー チ で は言 え な か った こと を 、 も っと 詳 し く 書 い て教 え よ う ﹂ と いう
よ う な 学 習 な ど も 考 え ら れ ま す 。 そ の際 、 相 手 意 識 を よ り は っき り さ せ る こ と が 大 切 です 。
ま た 、 書 い た こと を 原 稿 と し て読 む よ う な 形 で の書 き こと ば と話 し こと ば の関 係 で は な く 、 む し ろ そ
の反 対 に 話 し こ と ば から 書 き こ とば を と ら え る よ う にす る と 生 き 生 き と し た 文 体 にな り ま す 。 つま り 、
話 す よ う に 書 く ﹁話 文 体 ﹂ です 。 そ の た め に は、﹁一番 話 し た い人 に話 し か け る よ う に 書 いて ご ら ん 。﹂ な ど と いう こ と ば か け が効 果 的 です 。
日記 指 導 の中 で も 、 毎 日 のし た こ と を 綴 る だ け の 日 記 か ら 脱 却 し て、 ﹁先 生 と わ た し の交 換 日記 ﹂ の
よ う な 位 置 づけ を し て、 教 師 が 朱 を 入 れ る ば か り で はな く、 も っと聞 き た い こ と を 書 いて 、 そ れを 読 ん
︹石橋 一徳 ︺
だ 子 ど も が さ ら に 書 き す す め る よ う な ﹁書 き こ と ば のや り と り ﹂ も 継 続 し て 実 施 し て いき た いこ と で す。
文部 科学 省 ﹁小学 校学 習指導 要 領解 説 国 語 編﹂ 一九 九 九
参考文 献 白石寿 文 ・桜 井直 男 編著 ﹃小学 校作 文 の指 導 ﹄銀 の鈴 社 二 〇〇一
注
A 視 写、 聴 写 を さ せ る 目 的 は何 でし ょうか 。 視 写 では、 正確書く、
ま と めな が ら書く、 聴 写 でも
正確 に聞 いて書 く 、 キ ー ワ ー ド 的 に 聞 き 取 り な がら 書 く こと が求 め ら れ ま す 。 機 械 的 に書 き写 す だ け で
な く 、 内 容 の理 解 に 役 立 つも の で な け れ ば な り ま せ ん 。 ま た、 教 師 が何 を 目 的 とし て 視 写 ・聴 写 に取 り
組 ま せ る か も 大 切 で す 。 そ の上 で、 練 習 学 習 と 平 行 し な がら 書 く 速 さ を 身 に つけ さ せ ま す 。 一般 的 に、
一分 間 に 百 字 程 度 が書 く 速 さ の 目安 です 。 六 年 生 で は 八 十 ∼百 字 程 度 を 目 標 と 考 え ま す 。 ︻ 具 体 的 な 手 だ て︼ ︵1 ︶ 書 く速 さ を 身 に つけ さ せ る た め の練 習 学 習
これ は、 特 に書 き 写 す 分 量 に着 目 し 、 そ の量 を 増 や す こ とを 目 的 と し た 練 習 学 習 で す 。
① 教 師 が新 聞 記 事 を 短 く ま と め た も の を 児 童 に 提 示 し 、 児 童 に 一分 間 で視 写 さ せ ま す 。 字 数 が 数 え
やす い用 紙 を 準 備 し 、 毎 日何 文 字 書 き 写 す こ と が で き た か を 記 録 し ま す 。 記 録 し て いく こ と で、 写 す 量 の変 容 を 実 感 さ せ、 速 写 力 の定 着 へ の意 欲 を 高 め ま す 。
② ① と 同 じ 要 領 で、 一分 間 に 書 く 文 字 数 を 決 め て ど れ だけ 丁 寧 に書 き 写 せ る か を 練 習 し ま す 。
① の活 動 は 、 自 分 が 読 む こ とを 目 的 と し た 場 合 、 ② の活 動 は、 他 者 が読 む こ とを 想 定 し た場 合 です 。
速 さ と 正確 さ の両 立 は 難 し いです が 、 目 的 に 応 じ て使 い分 け る こ と が 必 要 です 。
︵2 ︶ ま と めな が ら 書 く カ を つけ る た め の練 習学 習
① 板 書 の活 用 ⋮ 板 書 す る 速 さ を 、 児 童 が 視 写 す る 速 さ に応 じ て変 え ま す 。 こ れ に よ り 、 教 師 が意 図 す る分 量 と 正 確 さ を 定 着 さ せ る こ と が で き ま す 。
② 板 書 の活 用 ⋮ 板 書 し た 文 章 の中 か ら 、 キ ー ワ ー ド と な る 言 葉 を 考 え さ せ ま す 。 単 語 単 位 で書 き 写 す こ と が で き る た め の練 習 です 。
③ メ モ の活 用 ⋮ 学 習 中 の、 他 の 児 童 の 発 言 を メ モ さ せ ま す 。 キ ー ワ ー ド 的 に書 く こ と を 目 標 に し ま す が、 自 分 の意 見 と 比 べな が ら メ モ さ せ る こ とも 有 効 です 。
① の活 動 は視 写 の場 合 、 ② の活 動 は 理 解 と の 関 連 、 ③ の活 動 は 聴 写 の場 合 です 。 ① では 、 教 師 が 指 示
を 与 え な が ら 書 く 速 さ の目 安 を 示 す こ と にな り ま す 。 正 確 さ 、 漢 字 の使 用 な ど を 意 図 し た 指 示 が 必 要 で
す 。 ② で は 、 キ ー ワー ド と し て 考 え ら れ る 言 葉 を 児 童 に 考 え さ せ る こと が必 要 です 。 板 書 さ れ た 言 葉 だ
け で な く 、 自 分 が 考 え た 言 葉 でま と め る こと も 大 切 で す 。 ③ の場 合 、 発 言 内 容 を 聞 き 取 る た め に 、 話 型 ・聴 型 の活 用も 効 果 的 です 。
﹁視 写 、 聴 写 す る こと によ り 、 書 き 手 や 発 言 者 の言 葉 遣 いや 効 果 的 な 表 現 、 文 章 の息 づ か いを 追 体 験
︹ 本村 秀 一郎 ︺
す る こ と が でき る ﹂ ︵注 ︶。 理解 、 表 現 と も に役 立 つも の で あ る こ と を 常 に念 頭 に 置 き た いも の です 。
野地 潤家 編 ﹃国語 科重 要 用語三 〇〇 の基 礎知 識﹄ 明治 図書 出 版 一九 八 一
注
A 小 学 校 で学 習す る 文 種 と し て は、 意見文、 感 想文、 記録文、 説明文、 手紙文、日記文、
報告 文な
ど が あ げ ら れ ま す 。 そ こ で、 そ れ ぞ れ に つ い て定 義 や 特 性 、 目 標 、 例 な ど を あ げ な が ら 説 明 し ま す 。 ︵1︶ 意 見文
意 見 文 は 、 いろ いろ な こ とや も の に対 す る 自 分 の 考 え や 主 張 を 、 理 由 や 根 拠 を は っき り さ せ て書 く 文 章 です 。 論 旨 を 一貫 さ せ る た め に筋 道 を 立 て て 書 く こと が大 切 で す 。
書 き 手 の 目 的 は 、 読 み手 が共 感 し た り 、 自 分 の考 え を 変 え た り 、 そ れ に 応 じ て 行 動 を 起 こし たり す る こ と と いえ ま す 。
指 導 す る側 の目 標 は 、身 の回 り の こと に関 心 を 持 た せ る、 問 題 意 識 を 持 た せ る、 論 理 的 な 思 考 力 を つ け さ せ る、 相 手 を 意 識 さ せ る な ど が 考 え ら れ ま す 。
指 導 にあ た って は、 筋 道 を 立 て る の に必 要 な こと ば に 目 を 向 け さ せ る こ と が 大 切 で す 。 そ れ は 、 接 続
詞 、 強 調 語 句 、 文 頭 表 現、 文 末 表 現 な ど です 。 教 科 書 の説 明 的 文 章 な どを 参 考 に さ せ な が ら 、 適 切 に使 わ せ る こと が重 要 です 。 題 材 例 と し て は 次 のも のが あ げ ら れ ま す 。
宿 題 に つい て 、 忘 れ 物 に つ い て、 遅 刻 に つ いて 、 あ だ な に つ いて 、 掃 除 に つ い てな ど 。
こ のよ う に、 学 校 生 活全 般 に つ いて 題 材 が 設 定 で き ま す し 、 も ち ろ ん社 会 生 活 の こ と や 家 庭 生 活 の こ とでも設定 できます。
文章 構 成 の工 夫 も 意 見 文 で は大 切 です 。 例 え ば 、 序 論・ 本 論 ・結 論 の三 段 階 や 起 ・承 ・転 ・結 の四 段
階 、 序 ・提 示 ・論 証 ・反 論 ・結 の五 段 階 な ど が あ り ま す 。 初 め か ら 五 段 階 と な る と小 学 生 に は 難 し い の
で、 三 段 階 か ら は じ め て、 後 は 実 態 に応 じ て 段 階 的 に指 導 し て いく こ と が 必 要 で す 。 ま た、 事 実 と 意
見 、 調 べ た こ と や 他 人 の意 見 と自 分 の意 見 を 区 別 し て 書 く と いう こと も 指 導 す べ き こと です 。 ︻作 品 例 ︼ (一部 ) わ たし は 学 校 週 五 日制 に絶 対 賛 成 です 。
理 由 は 三 つあ り ます 。 ま ず 第 一に家 族 と ふれ あ う 時 間 が で き る と いう こと です 。 ⋮ ︵ 2︶ 感想文
感 想 文 は、 自 分 が感 じ た り 思 った り し た こと を 書 く 文 章 です 。 直 接 体 験 し た こ と や 間 接 的 に 見 た り 聞
いた り 読 ん だ り し た こ と に つ いて書 き ま す 。 学 校 で は 、 読 ん だ本 に つ いて書 く 読 書 感 想 文 が主 に扱 わ れ て いま す 。 そ こ で読 書 感 想 文 に 限 って説 明 し ま す 。
書 き 手 の目 的 は 、 読 ん で感 じ た こと 、 思 った こ と を 記 録 に残 す 読 書 記 録 、 相 手 に本 の良 さ を 紹 介 す る 紹 介 文 、 本 の 世 界 を 広 げ る こと な ど が 考 え ら れ ま す 。
指 導 す る側 の目 標 は 読書 によ って 生 ま れ た 不 確 か な感 想 を こ と ば で書 く こ と によ っ て確 か な も の に さ
せ る 、 感 想 を 明 確 化 す る こと で読 書 のよ さ や お も し ろ さ に気 づ か せ 、 同 じ テ ー マの作 品 や 同 じ 作 者 の作 品 な ど 幅 広 い読 書 に向 か わ せる 、 な ど が 考 え ら れ ま す 。
指 導 に あ た って は、 文 の良 し 悪 し よ り は 、 感 想 を い か にう ま く 表 現 で き た か に 注 目 す る 必 要 があ り ま
す 。 う ま く 表 現 で き な い子 ど も に対 し て は 、 対 話 な どを 通 し て 、 教 師 が 質 問 を し な が らう ま く 引 き 出 し
てや る こ とも 有 効 です 。 ま た 、 初 め の 段 階 で は 口述 筆 記 を し て や る こと も 有 効 で す 。
読 書 感 想 文 は嫌 わ れ て いる よ う です が 、 そ れ は 、 感 想 を こと ば にす る こ と の難 し さ に 起 因 し て いる と
思 いま す 。 例 え ば 、 ぼ ん や り と し た感 想 に対 し 、 形 容 詞 の語 群 の中 か ら こ と ば を 選 ん で あ て は め さ せ る
な ど の方 法 を と り な が ら、そ の部 分 を 解 決 す る こ と で、読 書 感 想 文 を 書 く こと の難 し さ が緩 和 さ れ ま す 。 ︻作 品 例 ︼ ︵一部 ︶
ザ ボ ンじ いさ んよ か った ね 。 種 ま き を し て い る と き は う れ し そう だ った よ 。
ぼ く は こ の本 を 読 ん で さ る か に話 が 思 いう か ん だ よ 。 でも 最 後 が ち が った よ 。 さ る は いじ わ る を し た の で、 か き を ⋮ ︵3︶ 記 録 文
記 録 文 は い つま でも 記 憶 に残 し て お き た い こ とや 忘 れ て は いけ な い こ と な ど に つ いて く わ し く書 く 文
章 で す 。 書 き 残 す と い って も い いで し ょう 。 私 的 な も のと 公 的 な も の があ り ま す 。
記 録 に残 す と いう こと は 、 自 分 は も ち ろ ん 、 そ の こ と に 関 心 を 持 つ他 人 も 読 む こ と に な り ます 。 です
か ら 、 記 録 文 で大 切 な こと は 大 事 な こと を 落 と さ ず に書 く と いう こと です 。 ま た、 で き る だけ 客 観 的 に 書 く と いう こと です 。 さ ら に 事 実 と意 見 は き ち ん と区 別 し て書 き ま す 。
書 き 手 の目 的 は 、 見 た こと 、 聞 いた こ と、 し た こ と を 確 認 す る こと や 忘 れ な い よう に す る こ と 、 後 に 活 用 でき る よう にす る こ と です。
指 導 す る側 の目 標 は 、 情 報 を 取 捨 選 択 す る力 を つけ る、 他 の作 文 で の取 材 活 動 に生 かす こと が で き る 力 を つけ るな ど が あ げ ら れ ます 。
指 導 に あ た って は 、 ま ず メ モを と る こと から 進 め て い き た いと 思 いま す 。 メ モ に つ いて も 、 選 択 式 、
穴 埋 め式 、 記 述 式 と 段 階 的 に練 習 を し な が ら 力 を つけ さ せ た いも の です 。 題 材 例 と し て は 、 次 のも の が あ げ ら れ ま す 。
生 活 記 録 、 日誌 、会 議 録 、 見 学 記 録 、 旅 行 記 録 、 観 察 記 録 、 飼 育 記 録 、 栽 培 記 録 な ど。
私 的 な 記 録 であ れ ば 、 表 現 に つ い て は 自 分 が 分 か るも の で よ い の です が 、 公的 な 記 録 で あ る な ら ば、
他 の 人 が 見 る こ と を前 提 に し て書 き 、 ま ち が った と ら え 方 を さ れ な いか な ど の推 敲 も 大 切 です 。 ︻作 品 例 ︼ ︵一部 ︶
二〇 〇 二 年 七 月 二 十 六 日、 晴 れ 、 午 前 七 時 五 分 、 家 の庭 で朝 顔 を 観 察 し た。 今 日 は赤 い花 が 五 つと 青 い花 が 三 つさ いて い た。 昨 日 咲 いて いた 花 は 、 花 びら が ⋮ 。 ︵4︶ 説 明 文
説 明 文 は、 あ る こ と や も の に つ い てよ く 知 って いる 人 がよ く知 ら な い人 へ分 か り や す く 伝 え る 文 章 で
す 。 読 み手 に 理 解 さ せ る こと が目 的 な の で 、 事 柄 を 整 理 し て、 順 序 立 て て書 く こ と が 大 切 です 。
書 き 手 の目 的 は 、 相 手 に 正 確 に伝 え る こ と 、 分 か り や す く 伝 え る こと な ど です 。
指 導 す る側 の目 標 は、 学 校 生 活 や 社 会 生 活 の中 で必 要 と さ れ る、 相 手 に応 じ て、 的 確 に、 分 か り や す く 説 明 す る と いう 力 を 高 め る こ と で す 。
指 導 に あ た って は 、 伝 え る 相 手 は ど ん な 人 な のか ︵ 年 齢 、 関 心 事 ︶ な ど の相 手 意 識 を持 た せ る こ と 、
自 分 が伝 え よ う と 思 って いる こと が正 確 か を 確 か め さ せ る こと 、 分 か り や す いか 確 か め さ せ る こ とな ど に留 意 す る 必 要 が あ り ま す 。
題 材 例 と し て は 、 学 校 の紹 介 、 自 分 の こと 、 ○ ○ の作 り 方 な ど があ げ ら れ ます 。 ︻ 作 品 例 ︼ ︵一部 ︶
観 葉 植 物 の栽 培 の仕 方 に つ い て、 教 え た いと思 いま す 。 み な さ ん は ど ん な こ と に気 を つけ れ ばよ い か知 っ て いま す か 。 一番 大 事 な こ と は 水 の や り 方 な の です 。 ⋮ ︵5 ︶ 手 紙 文
手 紙 は他 人 に伝 え た い こ とを 書 い て送 る も の です 。 手 紙 文 は 目 的 と相 手 を 明確 に し て書 く 必 要 があ り
ます 。 ま た 、 季 節 の こと ば や 情 景 描 写 を 入 れ る な ど の 一定 の形 式 を 持 って いま す 。 こ の三 つ の特 性 を し っか り 踏 ま え た上 で 指 導 す る こと が 大 切 で す 。
書 き 手 の目 的 は、 伝 え た い こ と を 明 確 に す る 、 自 分 の思 いな ど を 正 確 に 伝 え る な ど が 考 え ら れ ま す 。
指 導 す る側 の目 標 は 、 書 く 目 的 、書 く 相 手 に応 じ て 、 形 式 や内 容 を 変 え た り 、 き ち ん と推 敲 し た り す る力 を 高 め る こと な ど で す 。 礼 儀 な ど を 意 識 さ せ る こ と も 大 切 です 。
指 導 にあ た って は、 目 的 と 相 手 を は っき り意 識 さ せ る こ と が 必 要 です 。 ま た 、 形式 に つ いて も 段 階 的
に少 し ず つ学 習 さ せ ます 。 さ ら に、 推 敲 で は 、 気 持 ち を 正 直 に表 現 し て いる か 、 相 手 に 失 礼 のな いよ う 書 け て い る か な ど にも 意 識 さ せ た いも の です 。 ︻作 品 例 ︼ ︵一部 ︶
こ の ご ろ 、 朝 起 き る と と っ ても 寒 い こと が多 い で す 。 こ の前 な ん か 庭 に し も ば し ら が で き てま し
た。 お ば あ ち ゃ ん お 元 気 です か 。 か ぜ な ど ひ いて いま せ ん か 。
手 紙 は 他 の文 章 に 比 べ て、 返 事 が返 って く る 期待 が 大 き いと いえ ます 。 です か ら 、 子 ど も たち が意 欲 的 に書 く こと の で き る文 章 で あ る とも いえ ま す 。 ︵6 ︶ 日 記 文
日常 生 活 に つ い て継 続 的 に 書 き 記 し た も の で 、 一種 の記 録 文 とも 言 え ま す 。 た だ し、 私 的 な 日 記 は 本
来 他 人 の目 に 触 れ るも ので は な い ので 、 そ の 点 で違 いが あ り ま す 。 日 記 文 は 、 自 分 の生 活 の中 で の事 柄
や で き ご と、 感 想 な ど を書 き ま す 。 形 式 や 相 手 の こ と な ど を 考 え な く て よ い の で、 と て も 書 き や す いと も言 えます。
書 き 手 の 目 的 は、 生 活 の こ と を 記 録 す る こと に よ って振 り返 り 、 自 分 の見 方 、 考 え 方 を 深 め た り 、 反 省 し たり す る こ と に あ り ま す 。
指 導 す る 側 の目 標 は 、 生 活 を よ く 見 つめ 、 記 録 す る 価 値 のあ る も の を 選 ん で書 か せ る こと 、 事 実 に 対 す る 自 分 の意 見 や感 想 を 書 か せ る こ と な ど が 考 え ら れ ま す 。
指 導 に あ た って は 、 でき る だ け 毎 日書 き 続 け さ せ る こ と を 目 指 し た いも の です 。 書 き 続 け る こ と に よ
って、 自 分 の成 長 な ど にも 気 づ か せ る こと が で き る か ら で す 。 ま た 、 日 記 の必 要 感 を 持 た せ る こ と も 重
︹重松 景 二︺
要 です 。 朱 書 き な ど で、 共感 し た り助 言 し た り し て成 長 を 感 じ と ら せ 、 自 分 のた め の記 録 であ る こ と に 気 づ か せ た いと 思 いま す 。
◆ 参 考 文 献 は Q 13 を 参 照 。
A 題 材 ・話 題 を も と に 重 ねたり、 比 べ た り し て自 ら の読 み の 世 界 を 豊 か に し て い義
書灘
にお い
て、 読 書 感 想 文 は 付 き も の のよ う に 見 ら れ て き ま し た。 し か し 、 そ の こ と に よ って学 習者 に、 読書 離 れ
を 引 き 起 こし て い る と いう 現 実 も あ り ま す 。 本 を 読 む こ と によ って感 想 を 持 つ こ と、 ま た そ れ を記 録 し
て おく こと は 児童 に と って 重 要 な こ と です が、 そ れ に よ って読 書 か ら 遠 ざ け る よ う な こと があ って は い けま せん。
読 書 感 想 文 を 書 く 意 義 と し て は、 読 書 指 導 的 意 義 に目 を 向 け が ち で す が、 も う 一つ、 作 文 指 導 的 意義 も 大 き い の です 。 ︵1 ︶ 読 書 指 導 的 意 義
・感 想 を 記 録 す る こ と に よ って、 本 への興 味 関 心 が高 ま り 、 次 の読 書 への意 欲 付 け と な り ま す 。 こ れ が 読書 す る習 慣 へと繋 が り ま す 。
・読 書 感 想 文 を 書 く こ と に よ って、 本 を 読 む と き に自 分 の感 想 を 持 とう と いう 意 識 が よ り 強 く 働 き 、 自 分 の感 想 を ま と め る力 が身 に つき ま す 。 ︵2︶ 作 文 指 導 的 意 義
・生 活 経 験 文 が主 観 的 な 面 に 輝 き を 見 せ る の に対 し 、 引 用 な ど 客 観 的 な 文 章 に 誘う こ と が でき ま す 。
・生 活 経 験 に よ る感 想 文 が 一過 性 で、 掘 り 下 げ る 指 導 が 困 難 で あ る の に 対 し 、 読 書 材 に よ る 感 想 文
は 、 繰 り 返 し 味 わ え る の で、 主 体 的 推 敲 が 他 者 の文 章 を 鏡 と し て着 実 に 行 え ます 。
こ の 二 つ の意 義 のど ち ら に重 点 を 置 いて指 導 す る のか 。 教 師 のね ら いに よ って、 感 想 文 の書 か せ 方 も 違 っ てく る こと と な り ま す 。
こ の意 義 の違 いを 踏 ま え 、 指 導 す る際 は 児 童 の苦 手 意 識 を 取 り 除 く た め の手 だ て を 系 統 的 に 組 む こ と が必要 となります。
読 書 指 導 の た め の手 だ て と し ては 、 読 ん だ 本 の感 想 を 伝 え 合 う 感 想 交 流 、 本 の内 容 に つ い てク イ ズ を
出 し 合 う ア ニ マシ オ ンな ど が 考 え ら れ ま す 。 こ の 二 つ は、 本 を 読 む こ と への 興 味 付 け を 行 う こ と に よ
り 、 書 く こと への抵 抗 を 緩 和 す る も の で す 。 こ れ ら の方 法 を 用 い る こ と に よ って 、 児 童 は 進 ん で読 書 す
る よ う に な り 、 感 想 や 内 容 を書 き 記 し て お こう と いう 意 欲 を 持 つよ う に な る の で す 。
作 文 指 導 の た め の手 だ て と し ても 、 読 書 感 想 文 に いき な り 進 む の で は な く 、 読 書 記 録 、 読 書 日記 と い
った簡 単 に感 想 を 記 し て お く 習 慣 を 身 に つけ る こと か ら 始 め る こ と が 大 切 です 。 読 書 記 録 、 読 書 日記 は
読 書 感 想 文 へと進 む た め に 技能 的 な 一助 と な る も の です。 そ の記 録 ま た は 日記 を も と に 、 文 章 を ま と め
た り、 付 け 加 え た り す る こ と で、 感 想 文 へ展 開 し て いく こと が望 ま れ ま す 。
感 想 文 の書 き 方 と し て は 、 登 場 人 物 と の対 話 的 手 法 、 作者 への 手 紙 的 手 法 、 自 分 の生 活 と の比 較 的 手
法 な ど が 考 え ら れ ま す 。 これ ら を 学 年 に 応 じ て 指 導 し 、 児 童 が感 想 文 を 書 く 際 の選 択 の幅 を 広 げ て お く べ き で し ょう 。
こ のよ う に ど ち ら の意 義 にお いて も 、 段 階 を 追 って指 導 し て いき、 原 稿 用 紙 一枚 か ら 二 枚 、 三枚 へと
書 け る 量 を 増 や し て や る こ と で 、 児 童 に 自 信 を 付 け さ せ る こ と も 重 要 です 。
教 師 自 身 が 、 感 想 を 書 か せ る こと によ り 読 書 指 導 を 行 いた い の か、 作 文 指 導 を 行 い た い のか 、 そ の目
的 を 明 確 に し て お か な いと 、 ﹁感 想 を 書 か な く て よ いな ら 、 本 を 読 む こと は好 き だよ 。﹂ と いう 児 童 を育
て て し ま う こと にも な り か ね ま せ ん 。 感 想 を 記 し て お く こ と が さ ら な る読 書 を 生 む よ う に、 ま た 感 想 文
を 書 く こ と が 、 客 観 的 文 章 力 を 生 む よ う に仕 組 ん で いく こ と が重 要 な の です 。 そ のた め に は 、 ま ず 教 師
自 身 が 、 コ ンク ー ル の た め の読 書 感 想 文 と いう 認 識 を 捨 て、 読 書 感 想 文 を 書 く こ と の本 質 を し っか り 見
つめ直 す こ と か ら 始 め た いも の です 。 コ ンク ー ル は意 欲 付 け にす ぎ ま せ ん。 何 の指 導 も な さ れず 、 夏 休
み、 冬 休 み の宿 題 と し て、 原 稿 用 紙 三 枚 書 く こと を 強 いる 読 書 感 想 文 は 、 逆 に 児 童 の読 書 への意 欲 を 奪 い取 る だ け です 。
何 と い っても 、 教 師 自 身 ︵私 自 身 ︶ も 読 書 感 想 文 を 書 く 習 慣 を 身 に つけ た いも の です 。 ︹米倉 一成 ︺
参 考 文 献 大槻和 夫 編 ﹃ 国 語 科重 要用 語三 〇〇 の基礎 知 識﹄ 明治 図書 出 版 二〇 〇一
府 川 源一 郎 ・高 木 ま さき ・長 編 の会 編 ﹃﹁本 の世 界﹂ を 広 げ よう︱ 文化 を 生 み出 す 国 語 教 室 ﹄東 洋 館 出 版社 一九九 八
A ま ず 日記指導と、 作 文 指 導 は 分 け て考え た いも の です。ここ で は、 作 文 指 導 の出 発 と し て 、 日常
的 に 指 導 可 能 な 日記 指導 に限 って 述 べま す 。 日 記 を 書 き 続 け る こ と で、 児 童 の作 文 に 対 す る 抵 抗 が な く な る こ とを ね ら って いま す 。
一 何 のた め の日 記 指導 か考 え る
日 記 指 導 を 教 育 活 動 の中 で 取 り 入 れ る意 味 は何 か を ま ず 考 え て み た いと 思 いま す 。 ① 教 師 と の対 話 の場 と し て 。 ② 児 童 に自 己 反 省 、 自 己 発 見 の場 を 与 え る た め 。 ︵ 以 上 、 生 活 指 導 上 、 児 童 の生 活 の様 子 ・悩 み な ど を 把 握 す る た め︶ ③ 書 く こ と の習 慣 化 を ね ら って。 ④ 児 童 に題 材 の取 材 能 力 を つけ る た め。 ︵ 以 上 、 表 現 指 導 上 の必 要 性 か ら ︶
仮 に ﹁③ 書 く こ と の 習 慣 化 ﹂ を 教 師 が ね ら って い る と し ま す と、 与 え 方 に よ って は 逆 効 果 に な ってし
ま う 場 合 も あ り ま す 。 日 記 を 書 か せ る こ と で 、 ﹁書 く こ と を 日 常 化 し 、 作 文 へ の抵 抗 感 を 取 り 除 く こ と
が でき る。﹂ と いう 考 え も あ り ま す が 、 児 童 に と って、 日 記 と いう の は 夏 休 み の 絵 日 記 な ど、 学 校 教 育
で 初 め て 経 験 す る表 現 活 動 の場 合 が 多 く 、 そ の た め、 書 き 方 にな れ て お ら ず 、 か え って 戸 惑 う こ と に な
り や す いも の です 。 ま た 、 日記 は 人 に見 せ る も の で な く 、 あ く ま で 自 分 に向 か って書 か れ るも の で す 。
教 師 や 他 の児 童 の目 に ふれ る こ と が 前 提 であ る な ら 、 何 のた め の日 記 な のか 児 童 に よ く 理 解 さ せ て お く こと は不 可 欠 であ る と いえ ま す 。
二 書 く こ と の 習 慣 化 を ね ら う
書 く こ と の習 慣 化 を ね ら った 日 記 指 導 の視 点 とし て、 次 の 二点 が 考 え ら れ ま す 。
① 児童 の興 味 関 心 を 引 く よ う な 題 材 を 示 し 、 書 き 方 の モ デ ルを 与 え て 日 記 を 書 か せま す 。
② 児童 の 日 記 は 評 価 を し ま せ ん。 よ い表 現 に出 会 わ せ る た め 、 児 童 の 日 記 が 最 終 的 に作 品 化 で き る こ と を ねら いま す 。
三 習 慣 化 を ね ら った 指 導 例 ① 生 活 ノ ー ト な ど を 利 用 し た 一行 日 記 ・三 行 日 記 を 書 か せ ま す 。
量 を 追 いま せ ん。 目 で み た こ と 、 耳 で き いた こ と 、 手 足 で し た こと を 一行 で書 か せ ま す 。 5 w を 明 確
に 書 か せ ます 。 枠 を 与 え る 場 合 も あ って よ いと 思 います 。 返 事 は 必 ず 添 え て や り ます が 、 表 記 上 の誤 り な ど は指 摘 し な い こと に し ま す 。
② 児童 の興 味 関 心 を 引 く よ う な 題 材 を 教 師 から 与 え ま す 。 書 き 方 の モデ ル ・作 品 例 も 与 え ま す 。
・変 身 日記 ︵ あ り も し な い 一日を 想 像 し て書 こう 。︶
︵ 身 のま わ り の物 に な り き って書 こう 。 ﹁僕 は け し ゴ ム﹂ ﹁わ た し は ピア ノ ﹂︶
・う そ つき 日記
︵ グ ルー プ で テ ー マを 持 た せ た意 見 交 換 日 記 です 。 記 名 さ せず 誰 の 文章 か 当 て さ せ ま
・観 察 ・飼 育 日 記 ︵ 学 級 で飼 って い る 小 動 物 や植 物 を 観 察 し て書 こう 。︶ ・グ ループ 日記
︵ 言 葉 遊 び を 取 り 入 れ た ゲー ム的 な 日記 ︶
︵ あ る 一定 期 間 継 続 し て書 か せま す 。 児 童 の 文 章 の変 容 を 見 る こ と が で き ま す 。︶
す 。 ﹁わ た し の 一お し ア イ ド ル﹂ ﹁カ レー に の せ る な ら これ だ。﹂︶ ・週 間 日記 ・言 葉 遊 び 日記
③ 日記 の作 品 化 ︵日記 指 導 を 日常 の作 文 指 導 に つな げ る 試 み︶
・俳 句 日記 、 川 柳 日 記 ︵日記 の最 後 を 俳 句 、 川柳 な ど で し め く く ら せ ま す 。
・児 童 の日 記 を 文集 な ど の作 品 にし ます 。 イ ラ スト 、 写 真 な ど を 添 え て 自 己 P R 冊 子 に し ま す 。
・学 級 通 信 に載 せ た り 掲 示 の仕 方 を 工 夫 し て、 よ い表 現 に 触 れ 合 え る 環 境 作 り を し ま す 。
日 記 指 導 は 文 章 表 現 指 導 を 直 接 の目 的 と は し て いま せ ん。 し か し 児 童 の日 記 が 文 章 表 現 指 導 ︵ 書き 出
し の工 夫 な ど 、 技 術 的 指 導 ︶ に よ って さ ら に生 き 生 き と し た も の にな る と し たら 、 年 間 の作 文 指 導 と関
︹ 柴 田誠一︺
連 さ せ て指 導 す る 必 要 が あ る と 思 いま す 。 児 童 の 日 記 を 素 材 に し 作 品 化 さ せ る場 合 は 、 教 師 は は っき り と し た指 導 目 標 を も ってお く 必 要 が あ り ま す 。
参考文 献 亀 村五 郎 ﹃日記 指 導﹄ ︵ 生活 綴り 方教 育叢 書︶ 百合 出 版 一九 七 一
第 三 章 文学 に遊 ぶ国 語 教 室
A 読 書 が 好 き で、 よ く 本 を 読 ん で い る 子 が います。 反面、 な か な か 進 ん で本 を 手 に し な い子 が いま
す 。 ど の 子 に も 本 を 読 む楽 し さ 、 物 語 世 界 の楽 し さ ・お も し ろ さ を 味 わ わ せ た いも の です 。
楽 し ん で読 書 が で き る よ う に、 いろ いろ な 試 み が さ れ て いま す 。 例 え ば 、 読 書 タイ ムを 設 け 、 子 ど も
た ち に読 書 の時 間 を 確 保 す る、 読 み 聞 か せ や 語 り 聞 か せ を す る、 ア ニ マシ オ ンや ブ ック ト ー ク を す る 、 等 々。 直 接 的 に読 書 に 関 わ って いく 活 動 が 子 ど も た ち は 大 好 き で す 。
し か し 、 作 品 を 教 材 と し て読 ん で いく と き は 、 少 し 違 いま す 。 教 科 書 に載 って いる と いう だ け で子 ど
も た ち の中 に 、 学 習 す る も の と いう 身 構 え が あ り ま す 。 教 師 や友 だ ち の話 を よ く 聞 いて し っか り 理 解 し
な け れ ば いけ な い と いう意 識 が働 き ま す 。 も ち ろ ん、 読 解 指 導 は 必 要 です し 、 子 ども た ち が読 み と る 力
を 身 に付 け ら れ る よう な 指 導 が必 要 で す 。 し か し 、 まず は、 授 業 で 教 師 や 友 だ ち と 一緒 に読 む か ら 楽 し
い、 お も し ろ いと 子 ど も た ち が思 え る よ う な指 導 を 心 掛 け た いも の です 。
文 学 作 品を 読 む と き 、 正 解 を 求 め す ぎ な いよ う にす る こと 、 し か し 、 そ の ま ま です べ て が い いと いう
わ け では あ り ま せ ん。 子 ど も 二 人 の意 見 を 足す と ど う な る の か、 読 み の深 ま り 広 がり を でき る だ け 目 に
見 え る よ う な 形 で学 習 し て いき ま す 。 具 体 的 に 次 の三 つ の視 点 か ら 考 え て み ま す 。 ︵1︶ 体 を 使 って読 もう
特 に、 低 学 年 の場 合 、 体 を 使 って 楽 し く 読 む こと が指 導 のポ イ ント です 。 例 え ば 、 ﹁お お き な か ぶ﹂ を 読 む と き に 、 み ん な で劇 に し て みま す 。
T ﹁﹃お お き な か ぶ ﹄ の劇 を み ん な でし ま し ょう 。 ど んな 役 が あ る か な 。﹂ ﹁お 面 も 作 り ま し ょう 。﹂
こ の誘 いで 、 子 ども た ち は、 ﹁ど の役 を し よ う か な 。﹂ ﹁僕 の出 番 は誰 の後 か な 。﹂ な ど と み ん な で作 り
上 げ る劇 を 楽 し み な が ら 、 作 品 の登 場 人 物 、 話 の筋 を 自 然 に つか む こと が で き ま す 。 ま た、 お じ い さ
ん 、 お ば あ さ ん 役 に な った 子 ども た ち は、 ﹁ど ん な 気 持 ち で、 か ぶを 引 っぱ った の でし ょう 。﹂ な ど と 教
師 が 問 わ な く ても 十 分 登 場 人 物 の気 持 ち を 理 解 す る こと が で き ま す 。 劇 を 見 て いる 子 ど も た ち も 、 場 面 の様 子 を 楽 し みな が ら 理 解 す る こ と が でき ま す 。
ま た ﹁く じ ら ぐ も ﹂ に は 、 一年 生 の 子 ど も た ち が く じ ら ぐ も に 呼 び か け る 場 面 が あ り ま す 。 こ こ で
は 、 お 話 の中 の子 ど も た ち と 同 じ よ う に ﹁天 ま で と ど け 、 一、 二 、 三。﹂ と み ん な で 手 を つな ぎ 声 を 合
わ せ て、 ジ ャ ンプ す れ ば 、 ま る で 自 分 たち こそ が主 役 であ る か のよ う に、 物 語 世 界 の中 に 入 って いけ る ので は な いで し ょう か 。 板 書 に つ い ても 、 工 夫 し て み ます 。
﹁天 ま で と ど け 、 一、 二 、 三 。﹂ ﹁も っ と た か く 。 も っと た か く 。﹂ ﹁天 ま で と ど け 、 一、 二 、 三 。﹂
一、 二 、 三 。﹂
﹁も っ と た か く 。 も っ と た か く 。﹂ ﹁天 ま で と ど け 、
と いう よう に、 板 書 で文 字 の大 き さ や 高 さ を 変 え て 示 す と、 子 ど も たち は 、 声 の 大 き さ や 動作 に も 変 化 を つけ て 表 現 し ま す 。
入 門 期 で、 物 語 作 品 を 読 ん で いく と き 、 教 師 や友 だ ち と 一緒 に 読 ん で いく と 楽 し いな 、 お話 が よ く わ
か る な と 子 ど も た ち に思 わ せ る こと が大 事 だ と 思 いま す 。 声 に 出 し たり 、 体 を 使 った り 、 絵 に 書 い た り
し な がら 、 文 字 や 頭 だ け を 使 う の では な く 読 ん で いく と よ いで し ょ う 。 一人 で読 む よ り も 友 だ ち と一 緒
に 劇 を し た り 、 声 を 合 わ せ たり し な が ら 読 む こ と で さ ら に楽 し く 読 む こ と が でき ます 。 物 語 作 品 を 教 材
に し て学 習 す る こ と の意 味 が こ こ にあ る と 考 え ま す 。 体 を 使 って 読 む、 これ が低 学 年 のポ イ ント にな り ます。 ︵2︶ じ っく り 読 も う
﹁スイ ミー ﹂ は 、 一読 し た だ け でも 十 分 楽 し め る作 品 です 。 子 ども たち は 、 スイ ミ ー に寄 り 添 いな が
ら 、 読 ん で いく で し ょ う 。 こ の 作 品 は 、 話 の筋 の お も し ろ さ だけ で は な く 、 は っき り し た わ か り や す い
場 面 構 成 、 ふん だ ん に 用 いら れ て いる 比 喩 表 現 な ど、 読 解 学 習 を し て いく 上 で子 ども た ち に 理解 さ せ た
い内 容 が たく さ ん あ り ます 。 スイ ミー の知 恵 や 勇 気 も 読 み 取 って ほ し い内 容 です 。 ど こ ま で読 み 取 ら せ
た いか 、 は っき り し た めあ て を 持 って 、 じ っく り 読 み 深 め た い作 品 です 。 特 に スイ ミ ー が 、 仲 間 を 失 い
失 意 の最 中 に海 の中 で出 会 う す ば ら し いも の、 お も し ろ いも の は、 感 性 豊 か に 読 ん で いけ たら と思 いま
す 。 子 ど も た ち が 、 す っと 読 み過 ごし て し ま いそ う な と ころ で、 立 ち 止 ま ら せ て 少 し 考 え さ せ た いも の です 。
﹁ごん ぎ つね ﹂ は 、 一読 し て も 話 の筋 は 、 す っと 頭 に 入 っ てき ま す 。 読 み やす い話 です 。 し か し、 こ
の作 品 ほ ど 、 研 究 者 や 教 師 に様 々な 視 点 か ら 読 み 深 め ら れ た 物 語 は 少 な い と思 いま す 。 そ のす べ て を 四
年 生 の子 ど も た ち に理 解 さ せ る の は難 し い と思 いま す 。 こ こ で は、 精 読 し た後 に ﹁ご ん は 、 幸 せ だ った
のか な 。﹂ と 訊 い て み ま す 。 子 ど も た ち は 三 つ の意 見 に 分 かれ ます 。 ﹁ご ん は幸 せ だ った。﹂ ﹁ご ん は幸 せ
で は な か った 。﹂ ﹁ど ち ら と も いえ な い。 わ か ら な い。﹂ の 三 つで す 。 理 由 を 発 表 さ せ る と ど の答 え も
﹁な る ほ ど ﹂ と納 得 が いく も のば かり です 。 子 ど も たち は、 友 だち の意 見 を 聞 き な が ら、 自 分 と は違 う
意 見 だけ れ ど 、 考 え 方 はわ か る 。 そ ん な 考 え 方 も あ る の か、 と 一つ の答 え に た ど り 着 か な い物 語 作 品 の 奥 深 さ を 感 じ るよ う です 。
一人 で は 、 読 み 深 め ら れ な いけ れ ど 、 学 級 で学 習 す る こ と で 、 読 み が 深 ま る こ と の良 さ が こ こ にも あ る と 思 います 。 ︵3︶ 味 わ って 読 も う
低 ・中 学 年 の物 語 作 品 教 材 は 、 比 較 的 楽 し く わ か り や す いも のが 多 いよう です 。 し かし 、 高 学 年 にな
って く る と そ う でも あ り ま せ ん。 宮 沢 賢 治 の ﹁や ま な し ﹂ は、 な か な か難 解 な 作 品 で す 。 情 景 が 幻 想 的
で う ま く 場 面 の様 子 を 想 像 でき な い の です 。 さ ら に ﹁ク ラ ム ボ ン﹂ と いう 作 者 が作 った 意 味 が よ く わ か
ら な い言 葉 ま で出 て き ては 、 一つ 一つ は っき り さ せ な い と理 解 で き な いと いう 子 ども た ち に と っては 、
お 手 上 げ 状 態 です 。 こ のよ う に 物 語 作 品 の 中 に は、 多 く の子 ど も た ち に と って楽 し いと は いえ な い作 品
も 国 語 科 の教 材 と し て 学 習 し ま す 。 少 し 読 ん だ だけ では わ か り に く く 、 し か し 、 繰 り 返 し 読 ん で いく う ち に じ わ あ っと わ か ってく る味 わ い深 い作 品 が あ る の です 。
﹁や ま な し ﹂ で は 、 ま ず 、 場 面 が小 さ な 谷 川 の底 で あ る こと を 確 認 し ま す 。 そ し て 、 話 の語 り 手 が そ
の谷 川 の底 か ら 見 て いる こ と、 つま り 、 視 点 が 谷 川 の底 にあ る こと に気 づ か せま す 。 子 ど も た ち は こ れ
ま で多 く の物 語 教 材 を 読 み、 ほ と ん ど の場 合 主 人 公 に 寄 り 添 って 読 み 深 め て き て い ま す 。 と こ ろ が、
﹁や ま な し ﹂ で は、 主 人 公 さ え は っき り し ま せ ん。 よ く わ か ら な いう ち に 幻 想 的 な物 語 世 界 へ入 って い
く わ け です 。 これ ま で のよ う に 登 場 人 物 の 気 持 を 考 え た り 、 場 面 の移 り 変 わ り を 理解 し た りす る の で は
な い の で、 ど う 読 め ば よ い の か が わ か ら な い の です 。 こ の と き が 、 教 師 の出 番 です 。 作 品 中 の色 彩 語 に
目 を 向 け さ せ た り 、 ﹁五 月 ﹂ と ﹁十 二 月 ﹂ を 対 比 的 に読 ま せ て み た り 、 対 比 的 に 板 書 に 表 し た り す る こ
と で 何 と な く ﹁こ ん な 作 品 も あ る の か 。﹂ と 作 品 を 読 み解 き 、 理 解 す る と いう よ り は 、 読 み 味 わう こ と を 学 習 し て いき ま す 。
こ のよ う に 、 教 師 の問 い かけ に答 え て いるう ち に物 語 世 界 に 引 き 込 ま れ て いく こ と が あ り ま す 。
そ れ と は 反 対 に初 め は お も し ろ か った物 語 が 、 授 業 で学 習 し て いる う ち に 、 お も し ろ く な く な ってく る こと があ り ま す 。 例 え ば 、 次 のよ う な と き です 。
ア 指 導 者 が、 あ ま り に解 説 的 に読 ん で いく と き イ 漢 字 の学 習 や 言 葉 の意 味 理 解 を 中 心 に学 習 を 進 め て いく と き ウ あ ま り に長 い時 間 を 一つ の作 品 に か け た と き
エ 道 徳 的 に読 ん だり 、 登 場 人 物 と読 み 手 を 比 較 し た り し て 読 ん で いく と き
作 品 自 体 の持 つ魅 力 を 損 な わ ず に、 子 ど も た ち に 味 わ わ せ る こ と が 大 事 です 。
︹ 池 田圭 子 ︺
物 語 作 品 を 教 材 と し て学 級 の友 だち や 教 師 と 一緒 に読 ん で いく こ と は 、 と て も 意 味 の あ る こ と です 。 物 語 世 界 を 共 有 し 、 共 に楽 し む こ と が でき る か ら です 。
参 考文献 国 語教 育研 究所 編 ﹃国語 教材 研究 大事典 ﹄ 明治 図書 出 版 一九九 二
A 授 業 の展 開 に つ いて は 、 様 々な考え方 に 基 づき、 いろ いろ な方 法 が提唱 さ れ て います。 ど のよう
な 方 法 で授 業 を 展 開 し て いく か は、 子 ど も た ち の実 態 、 教 師 の ね ら い、 教 材 の特 性 に よ って左 右 さ れ る と 思 いま す 。 ﹁ち いち ゃ ん の か げ お く り ﹂ を 例 に し て み ま す 。
こ こ で の単 元 名 は、 ﹁場 面 の様 子 を 想 像 し な がら 読 も う ﹂ です 。 主 な 学 習 事 項 は、 ﹁場 面 の移 り変 わ り
や 情 景 を 、 叙 述 を も と に想 像 し な が ら 読 む 。﹂ で す 。 子 ど も た ち の実 態 は 、 学 級 によ り 違 いま す 。 こ こ
で は仮 に、 音 読 が 好 き で、 ど の子 も 元気 よ く 音 読 が で き 、 読 解 力 は 、 ば ら つき が あ る が 、 学 習 に 対 す る
意 欲 は あ る 、 と し ま す 。 ﹁ち いち ゃ ん の か げ お く り ﹂ は 、 戦 争 の こ と に つ い て書 か れ て い ま す 。 五 つ の
場 面 か ら 構 成 さ れ 、 会 話 文 の多 い作 品 です 。 以 上 の こ と を 踏 ま え て 、 四 番 目 の場 面 の 授 業 を 考 え ま す 。 こ こ は 、 ち い ち ゃ ん が ひ と り ぼ っち で 、 か げ お く り を す る 場 面 です 。
ち いち ゃ ん が 、 ふら ふら す る 足 を 踏 み し め て か げ おく り を 始 め ます 。 す る と 、 お 父 さ ん 、 お 母 さ ん 、 お 兄 ち ゃん の声 が 重 な って き ま す 。
こ の 場 面 で、 役 割 読 みを さ せ ま す 。 子 ど も た ち は 、 お 父 さ ん 役 、 お 母 さ ん 役 、 お 兄 ち ゃ ん役 、 ち いち
ゃ ん役 、 ナ レー タ ー にな り 、 音 読 を 始 め ま す 。 グ ルー プ で音 読 の練 習 を し て いる 子 ども た ち か ら、 次 の
C 1 ﹁お 父 さ ん は 、 ひ く い 声 ね 。﹂ C 2 ﹁お 母 さ ん は 、 高 い 声 、 お 兄 ち ゃ ん は 、 わ ら いそ う な 声 ね 。﹂ 練 習 す る う ち に、 し ば ら く し て C 3 ﹁お 父 さ ん は 、 ど こ か ら 読 む の か な 。﹂ C 4 ﹁う ん ⋮ ⋮ 。 ﹃い つ の 間 に か ﹄ と い う こ と だ か ら 、 途 中 か ら 読 む の か な 。﹂ C 3 ﹁ふ た あ つ か ら 、 読 も う か 。﹂
よ う な 話 が聞 こえ て き ま す ︵囲 み部 分 参 照 ︶。
音 読 の練 習 を し て いく う ち に、 子 ど も た ち は、 作
品 の細 か な 表 現 に 気 づ い て いき ま す 。 一人 で練 習 し
て い た の では 、 気 づ かな い声 の合 わ せ 方 にも 気 づ い
て いき ま す 。 こ こ で は、 会 話 文 の途 中 か ら 声 を 重 ね
る こ と に 気 づ き 、 場 面 の様 子 を よ り は っき り と 、 想
像 す る こと が で き た よ う です 。
会 話 文 の多 い作 品 で は、 音 読 を さ せ る と効 果 的 で
す 。 中 学 年 の 子 ど も たち は 、 元 気 の い い子 が多 く 音
読 は大 好 き です 。 特 に 役 割 読 み は 人 物 に な り き って 読 む こ と を 楽 し み 、 自 然 に 人 物 の 心情 ま で読 み と れ ます。
ま た、 こ の場 面 は 、 一番 目 の場 面 と 比 較 し て 読 む こと で、 同 じ よ う な 場 面 だ け れ ど生 と 死 と いう 全 く
異 な る背 景 が そ こ に あ り 、 何 と も いえ な い切 な さ が 漂 い ます 。 子 ど も た ち は、 ち いち ゃ ん に寄 り添 いな
が ら 読 み 進 め 、 し か し 、 少 し だ け お 兄 さ ん お姉 さ ん であ り、 平 和 な 世 の中 に暮 ら し て いる 自 分 の 目 で 作
品 世 界 を 見 て いま す 。 そ の 子 ど も た ち の思 いを 大事 にし な が ら 読 み た い作 品 で す 。
こ の作 品 は 、 戦 争 を モチ ー フ にし た作 品 です 。 戦 後 六 十 年 近 く た って し ま った 現 在 で は 、 子 ど も た ち
に当 時 の状 況 を 想 像 す る こ と は 難 し く な ってき て いま す 。 だ か ら と い って、 戦 時 中 の様 子 を 学 習 し た 上
で作 品 を 読 む と いう こと はし な く ても 良 いと 思 いま す 。 こ の作 品 を 読 む こ と で、 背 景 にあ る 戦 争 に つ い
て も 子 ども た ち が 想 像 で き る よ う な 読 み にな れ ば と 思 います 。
﹁白 い ぼ う し ﹂ で は 、 ど う で し ょ う か 。 こ の 単 元 名 は 、 ﹁本 の 世 界 を 広 げ よ う ﹂ で す 。 主 な 学 習 事 項
は 、 ﹁シ リ ー ズ に な っ て い る 作 品 群 を 中 心 に 、 読 み た い 本 を 探 し て 読 む ﹂ で す 。
﹃車 の い ろ は 空 の い ろ ﹄ ( あ ま ん き み こ作 )
こ の作 品 に は 、 初 夏 のさ わ や か さ と 運 転 手 の松 井 さ ん のほ の ぼ のと し た 優 し さ があ ふれ て いま す 。 こ の作 品 を 読 む こ と を き っか け に し て 、 松 井 さ ん が 登 場 す る な ど の シ リ ー ズ に な っ て い る お 話 へと 読 書 を 広 げ ら れ ま す 。 ﹁白 い ぼ う し ﹂ を 楽 し く 読 ん で い き ま す 。
﹁こ れ は 、 レ モ ン の に お い で す か 。﹂ と あ る よ う に 、 色 や に お い に 関 係 の
まず は、 教 材 と し て学 習 す る こ の作 品 は 、 書 き 出 し か ら
あ る 言 葉 が た く さ ん で て き ま す 。 そ し て 、 そ の 言 葉 が 、 作 品 を さ わ や か に し て い ま す 。 題 名 の ﹁白 い ぼ
う し ﹂ も そう です 。 作 品 を 読 む 前 に 、 子 ど も た ち に 題名 か ら 、 ど ん な こ と を 連 想 す る か 訊 いて みま す 。
﹁雲 ﹂ ﹁海 ﹂ ﹁太 陽 ﹂ ﹁女 の 子 ﹂ ﹁夏 ﹂ ﹁り ぼ ん ﹂ な ど 、子 ど も た ち は 、ど ん ど ん イ メ ー ジ を ふ く ら ま せ て い
き ま す 。 そ う し て お い て 、 ﹁で は 、 こ の お 話 は 、 ど ん な お 話 だ ろ う ね 。﹂と 、 お 話 の 中 に 入 っ て い き ま す 。
読 ん で い く と き も 、 ﹁色 に 関 係 の あ る 言 葉 が た く さ ん あ っ た ね 。 ど ん な の が あ っ た か な 。﹂ と 訊 き な が
ら 、 読 ん で い き ま す 。﹁︵信 号 が ) 赤 ﹂ ﹁白 い ワ イ シ ャ ツ ﹂ ﹁緑 ﹂ ﹁白 い ぼ う し ﹂ ﹁も ん し ろ ち ょ う ﹂ ﹁赤 い
し し ゅ う 糸 ﹂ な ど 、 子 ど も た ち は 、 ど ん ど ん 見 つけ て い き ま す 。 も ち ろ ん 、 に お い に 関 係 のあ る 言 葉 も
﹁レ モ ン の に お い ﹂ ﹁こ ん な に に お う ﹂ ﹁す っ ぱ い ﹂ ﹁い い に お い ﹂ ﹁⋮ か す か に 、 夏 み か ん の に お い が ⋮ ﹂ と いう よ う に 、 見 つ け て い き ま す 。
作 品 のイ メ ー ジを つか み な が ら 想 像 豊 か に 読 め る よう に、 読 む と き の 視 点 を 示 す と 子 ども た ち は、 楽
し く 読 ん で いけ る よう です 。 さ ら に直 接 的 に色 や に お いを 表 し て い る こと ば だ け でな く、 そ れ を イ メ ー
ジ で き る も の にも 目 が 向 いて いき ま す 。 例 え ば ﹁レ モ ン﹂ ﹁夏 み か ん ﹂ ﹁も ぎ た て ﹂ な ど で す 。 こ れ は 、
子 ども た ち の中 に 物 語 世 界 が し っか り イ メー ジ でき て いる と いう こ と です 。
作 品 のさ わ や か さ を 読 み と り な が ら 、 松 井 さ ん の優 し さ に も 目 を 向 け て いき ま す 。 ﹁松 井 さ ん は ど ん
な 人 か な 。﹂ と訊 ね る と 、 ﹁優 し い人 。﹂ と いう 答 え が 返 って き ま す 。 ﹁ど ん な と ころ で わ か る か な 。﹂ と
問う と 、 ﹁に こ に こ し て 答 え ま し た。﹂ ﹁車 が ひ いて し まう わ い。﹂ ﹁こ の子 は ど ん な に が っか り す る だ ろ
う 。﹂ ﹁飛 ば な いよ う に 石 で つば を お さ え ま し た 。﹂ な どを 探 し てき ます 。 ﹁ち ょう の変 わ り に夏 み か んを
入 れ てあ げ た か ら 。﹂ と いう 答 え も 返 って き ま す 。 物 語 作 品 を 読 む と き は、 詳 し く 読 み深 め な が ら 、 人
物 の人 柄 を 理 解 し て いく こ とも あ り ま す 。 し かし 、 こ の作 品 のよ う に 一度 読 め ば 、 松 井 さ ん の優 し さ が
よ く わ か る と いう 場 合 は 、 で は 、 ど こ か ら わ か る のか と 問 う こと で、 読 み深 め ら れ る と思 いま す 。 も ち
ろ ん 、 子 ど も たち の最 大 の関 心 事 は、 あ の女 の 子 は 、 も ん し ろ ち ょう だ った のか と いう こ と のよ う で し た が。
こ の後 、 ﹁白 い ぼう し ﹂ の他 に も 、 松 井 さ ん が 出 て く る お 話 が あ る こと を 紹 介 し ま す 。 シ リ ー ズ も の
は、 興 味 がわ き やす く 、 読 み や す いよ う です 。 ﹃車 の い ろ は 空 の いろ ﹄ だ け で は な く 、 作 者 で あ るあ ま
んき み こ の作 品 な ど も 紹 介 で き た らな お 良 いと 思 いま す 。 そ のと き 、 ブ ック ト ー クを し な が ら 紹 介 す れ ば、 子 ど も た ち も 読 み た く な る と 思 いま す 。
こ こ で は、 ﹁白 いぼう し ﹂ を 読 ん で、 そ の後 に、 ﹃車 の いろ は 空 の いろ ﹄ を 紹 介 し て いく と いう 方法 を
示 し ま し た が 、他 の作 品 も 一緒 に 紹介 し て読 ん で いく と いう 方 法 も あ り ま す 。
例 え ば 、 ﹃続 車 の いろ は 空 の い ろ﹄ の中 に ﹁雲 の 花 ﹂ と いう 作 品 が あ り ま す 。 こ の作 品 にも も ち ろ
ん 松 井 さ ん が 空 色 の タ ク シ ー に乗 って 登 場 し ま す 。 ﹁白 い ぼう し ﹂ と ﹁雲 の 花 ﹂ を 読 み比 べ て み ま す 。
こ の 二 つ の作 品 の似 て い る と ころ を 見 つけ さ せ ま す 。 子 ど も た ち は、 ﹁松 井 さ ん﹂ ﹁空 色 の タ ク シー ﹂
﹁女 の子 ﹂ と 答 え る でし ょ う 。 ま た 、 色 彩 語 が 豊 富 に 使 わ れ て いる こと に も 気 が つく で し ょう 。 さ ら
に、 松 井 さ ん の優 し さ が 二 つ の作 品 を 通 し てよ り い っそ う 際 立 って き ま す 。 子 ど も たち は、 作 品 を 読 む 楽 し さ か ら 作 品群 を 読 む 楽 し さ を 知 る こと にな り ま す 。
作 品 を 教 材 と し て 読 む とき は 、 そ の作 品 の特 性 を 十 分 に 知 って お く 必 要 が あ り ま す 。 作 品 分 析 も 大 事
です が 、 そ の作 品 を 子 ども た ち に どう 出 会 わ せ て 、 子 ども た ち に ど ん な 読 み の力 を 付 け さ せ る か が 大 事
です 。 こ こ で は、 音 読 に よ る 読 み 深 め と 色 彩 語 に 目 を 向 け る 読 み の 一例 を あ げ て み ま し た 。
文 学 作 品 を 教 材 と し て学 習 す る 場 合 、 何 を 、 ど う 教 え た い の か を し っか り 考 え て お く こ と が 大 事 で
す 。 文 学 作 品 に は 、 話 の筋 のお も し ろ さ 、 表 現 の巧 み さ、 登 場 人物 の魅 力 、 主 題 、 等 々、 子 ども た ち に
是 非 わ か って ほ し いと 思 う 内 容 が た く さ ん あ り ま す 。 そ のす べ てを 子 ど も た ち に 理 解 さ せ よ う と す る
と、 国 語 の授 業 でお 話 を 読 む の は お も し ろ く な い、 と いう こと に な り か ね ま せ ん。 登 場 人 物 の気 持 を 繰
り 返 し 訊 ね た り 、 道 徳 の教 材 文 の よ う に生 き 方 を 教 え 込 も う と し た り 、 ク イ ズ のよ う に 謎 解 き を し た り
︹ 池 田圭子 ︺
し て 読 ん で いく の で は な く 、 作 品 のお も し ろ さ が し っか り 味 わ え る よ う に 学 習 で き る よ う に し た いも の です 。
◆ 参 考 文 献 はQ 19 を 参 照 。
学 教 育 と 文 学 的 文 章 の指 導 の ど ち ら にあ た る も の で し ょう か。 ︿単 元 目 標 ﹀
○ 叙 述 や こ と ば を 手 掛 か り に、 ご ん と 兵 十 の行 動 や 心 の変 化 を 、 情 景 を 想 像 し な が ら 読 み取 る こと が でき る 。
︿指 導 計 画 ﹀ ( 十 四時間)
一 全 文 を 通 読 し 、 感 想 を ま と め て学 習 の進 め方 を 話 し 合 う 。 ︵ 三 時間︶
二 六 つ の場 面 ご と に、 ご ん と 兵 十 の 行 動 や 思 いが 分 か る表 現 や こ と ば を と ら え 、 一人読 みを し た り 、 み んな と 話 し 合 った り し な が ら 読 み深 め る 。 ︵ 六時間︶
三 物 語 全 体 を読 み返 し 、 文 学 作 品 ﹃ご ん ぎ つね ﹄ や 作 者 新 美 南 吉 に つ いて 話 し 合 い、 自 分 な り の 感 想 を ま と め る。 ︵ 二時間︶
四 新 美 南 吉 の他 の作 品 や 、 比 べ て み た い他 の物 語 を ﹃ご んぎ つね ﹄ と の重 ね 読 み や 比 べ読 み を し て、 読書 の楽 し さ な ど に つ い て話 し 合 う 。 ︵ 三時間︶
こ れ は 文 学 的 文 章 指 導 の 一例 です 。 他 に も 、 目 の前 の児 童 に つけ さ せ た い力 に よ る指 導 目 標 や 児 童 に
気 付 か せ た い作 品 価 値 、 読 書 人 を 育 て る 目 的 な ど に よ って、 単 元 構 成 は 幾 通 り も 考 え ら れ ま す 。
で は、 そ れ ら の指 導 と 文 学 教 育 と は ど のよ う な 違 いが あ る の でし ょう か 。 ﹃国 語 教 育 研 究 大 辞 典 ﹄ ︵明
治 図 書 出 版 一九 八 八 ︶ に は、 こ の 二 つ の事 柄 に つ いて 、 次 の定 義 及 び 説 明 が さ れ て いま す 。
○ 文 学 教 育 と は、 文 学 作 品 を 教 材 と す る 教 育 を 言 いま す 。 説 明 文 ・説 明 的 文 章 に 対 し て 文 学 的 文
章 ・文 芸 文 の こ と を 文 学 作 品 と 呼 び、 小 説 ・物 語 ・詩 歌 ・戯 曲 を 含 ん だ も の の総 称 で、 作 者 の主
観 性 が 強 く 表 れ た 随 筆 ・伝 記 な どを 含 め る 場 合 も あ り ま す 。 戦 前 は ﹁文 学 教 育 ﹂ の手 法 を そ の ま
ま 教 育 の場 に適 用 す る 考 え が 強 か った の です が、 戦 後 は、 文 学 の機 能 を 認 識 し 、 読 み手 主 体 を 重
視 す る こと が ﹁文 学教 育 ﹂ の本 道 であ る と 考 え ら れ る よ う に な り ま し た 。 学 習 指 導 要 領 で は 、 特 に 文 学 教育 と し て 取 り 上 げ る姿 勢 は 示 し て いま せ ん 。
○ 文 学 教 材 は 、 作 者 の人 間 に対 す る 考 え や 社 会 に対 す る 考 え が 、 具 体 的 な 場 面 、 事 件 の展 開 過 程 の
中 に、 登場 人 物 が全 力 を つく し て 何 かを 求 め 、 何 か に た どり つ こう と す る 姿 を通 し て表 現 さ れ て
いま す 。 し た が って、 文 学 教 材 を 理 解 す る には 、 場 面 の展 開 、 人 物 の 心 理 、 行 為 、 人 間 相 互 の関
係 、 事 件 の原 因 と 結 果 な ど 、 具 体 的 な 表 現 の細 部 ま で 、 し っか り と言 葉 を 見 つめ 、 言 葉 の は た ら き に 着 目 し て 考 え て読 む こと が 必 要 です 。
国 語 科 に お いて 、 文 学 教 材 の 取 り 扱 わ れ る意 義 は、 言 語 表 現 の 方 法 や 表 現 構 成 、 言 語 と し て の 芸 術
性 、 感 動 性 が説 明 文 教 材 と は異 な った表 現 機 能 を 持 って いる と こ ろ に あ り ま す 。 ま た、 そ の作 品 の持 つ
価 値 は、 読 み 手 の生 活 経 験 や 心 情 に よ る と ら え 方 に よ って異 な り 、 共 感 し た り 新 し い生 き 方 を 発 見 し た
り 、 時 に は 人 間 形 成 に お い て重 要 な 位 置 づ け を さ れ る 作 品 に も な り え ます 。 作 品 の持 つ ﹁良 さ ﹂ を 吟 味
し 、 子 ど も た ち が作 品 と ﹁良 き 出 会 い﹂ が でき る よう 指 導 計 画 を 工 夫 し て いき た いも の です 。
文 学 作 品 ﹃ご ん ぎ つね ﹄ で し か 学 べ な い作 品 固有 の価 値 追 求 や 心 情 理 解 。 文学 の持 つ奥 の深 さ を 感 じ
な が ら 、 人 間 の真 実 を 追 い求 め る た め の読 みを 試 行 す る の が 文 学 教 育 と 言 え る の でし ょう 。
文学 的 文 章 の指 導 で は、 ﹃ご ん ぎ つね﹄ と いう 作 品 を 通 し て 文 学 作 品 の よ さ に気 付 き 、 も っと 読 ん で
み た いと 思 う 場 面 の様 子 や 登 場 人 物 の 行 動 や 心 情 を 、 こ と ば に こ だ わ り な が ら 読 み進 め る こと で こ と ば
の も つ意 味 の 深 さ を 知 る。 場 面 ご と の物 語 の展 開 や 叙 述 の仕 方 に気 付 く 、 な ど 、 指 導 要 領 の読 み の指 導
事 項 に 掲 げ ら れ て いる 内 容 を 学 びな が ら 身 に つけ 、 読 み の力 とし て蓄 積 し て いき ま す 。 そ し て、 そ の学
び を他 の作 品 の読 解 にも 応 用 でき る よ う にす る こと が文 学 的 文 章 の指 導 と言 わ れ るも の です 。
つま り 単 純 に言 え ば 、 ﹃ご ん ぎ つね ﹄ を 教 え る のが 文 学 教 育 であ り 、 ﹃ご ん ぎ つね﹄ で教 え る の が 文 学 的 文 章 の指 導 だ と 言 え る の で はな いで し ょう か 。
私 た ち 教 師 は 、 学 習 指 導 要 領 の 目 標 に基 づ き 、 子 ども た ち に こ と ば の力 ・文 章 を 読 み解 く 力 を つけ て
いか な け れ ば な り ま せ ん。 し かし 、 そ れ と 同 時 に文 学 作 品 そ のも の の楽 し さ お も し ろ さ にも 気 付 か せ た
いし 、 一つ の文 学 作 品 を 読 む こ と で 他 の作 品 へ、 読 書 へ、 と 誘 う こと も 大 切 な 指 導 で す 。 そ こ に 、 教 師
の六 年 間 を 見 通 し た目 標 の設 定 と 、子 ど も の実 態 を と ら え た カ リ キ ュラ ム づく り が 必 要 に な ってき ま す 。
白 石 寿 文 氏 は、 文学 作 品 の 教 材 化 の ね ら いに つ いて 、 六 年 生 教 材 ﹁野 の馬 ﹂ ︵ 今 江祥智 作︶を通 し て 三 つの提 言 を し て いま す 。
① 文学 と し て楽 し む 。
文 学 作 品 一つ 一つが 固 有 の生 命 体 であ り 、 唯 一絶 対 の存 在 で あ る。 本 作 品 だ か ら こ そ の 味 わ いを 児童 に楽 し ま せ る こ と が 必 要 。 ② 文学 作 品 の個 性 読 みを 実 践 す る。
五 年 生 ま で に 習得 し た文 学 作 品 の 読 み 方 を 児 童 そ れ ぞ れ に 駆 使 し 、 個 性 読 み を 実 現 す る 。 ︵具 体 例 と し て次 の読 みを 提 示 )
情 景 を 明 瞭 に描 く 読 み/ 場 面 の移 り 変 わ り を 凝 視 す る 読 み/ 人 物 の心 情 と 事 件 の推 移 を 追 求 す る 読
み/ 作 品 の主 題 を 人 物 の言 動 と 情 景 か ら 把 捉 す る 読 み/ 作 品 を ﹁音 声 ・文 章 ・身 体 ・絵 画 ﹂ な ど の表 現
によ って 実 感 す る 読 み/ 課 題 に 答 え る こと で作 品 内 部 へ切 り 込 む読 み / 作 者 の技 法 の抽 出 によ り、 作 品
の優 れ た 点 を 話 し 合 い味 わ う 読 み/ 作 品 の語 彙 、 表 現 、 構 造 な どを 分 析 し 批 評 す る読 み 、 な ど。 ③ 鋭 い見 識 と 洞 察 力 に 培 う 国 語 学 力 を 育 成 す る。
現 実 逃 避 で は な く 、 強 く 生 き 抜 く た め の価 値 観 への見 識 を 鋭 敏 に し 、 自 ら の取 る べ き 行 動 の エネ ルギ
ー を 、 本 作 品 に よ って蓄 え る。 こう し た 読 み 取 り を 展 開 で き る国 語 学 力 に 培う こ と。
白 石 氏 は最 後 に ﹁授 業 展 開 へ の示 唆 ﹂ と し て 、 ﹁毎 時 間 の授 業 終 了 直 前 のま と め で 、 目 標 の結 果 を 、
内容確 認 のみで済ま せるのでなく、 展開上 の方法 ︵ 文 学 の読 み︶ も 必 ず 明 ら か にす る 。 何 の た め に ︵ 目
標 )、 ど のよ う に ︵ 方法︶ 進め、何 が ︵ 内 容 ︶ は っき り し た の か、 こ の三 つを 常 に 示 す 。 そ れ が次 時 へ
の導 入 と も な る 。﹂ と 結 ん で います 。 こ の こと から 単 に 、 ﹁教 科 書 に あ る か ら 教 材 とす る ﹂ の で は な く 、 こう し た 構 え を 持 って授 業 づ く り に 臨 む べき だ と 、 教 え ら れ ま す 。
文学 作 品 の指 導 に つ いて は 、 た く さ ん の事 例 があ り ま す が、 自 分 自 身 が 実 践 し て いく 場 合 、 子 ども た
ち に つけ さ せ た い力 、 作 品 固 有 の価 値 によ る 味 わ わ せ た い おも し ろ さ 、 既 習 の読 解 活 動 と新 た な 経 験 な
ど を 考 慮 し た 単 元 づく り か ら 始 ま る と 言 え る でし ょう 。 前 述 し た 、 六 年 間 を 見 通 し た カ リ キ ュラ ム の 想
定 も 重 要 で す 。 六 年 間 に ど ん な 文学 作 品 に出 会 う の か を 、 教 科 書 を 手 掛 か り に調 べ て おき 、 指 導 の系 統 や 作 品 の種 別 な ど を 把 握 し てお く 必 要 があ り ま す 。
ま た 、 子 ど も た ち は 、 文 学 的 文章 の学 習者 と し て学 習 の めあ て を も ち 、 目 の前 の作 品を 学 習 す る こ と
に 精 一杯 で 、 文 学 学 習 を意 識 す る余 裕 は あ り ま せ ん。 し かし 教 師 は、 学 習 の めあ てを 学 習 の手 段 と し て
位 置 づ け 、 そ の背 景 に は 文 学 教 育 と 国 語 学 力 の 双方 を 指 導 す る も の か 、 ま た は ど ち ら か 一つ に焦 点 を あ
て る も の か を 指 導 者 と し て見 極 め 、 大 き な 目 標 ︵ 指 導 目 標 ︶ を も って 臨 む べき で す 。
では 、 文 学 的 文 章 の指 導 は い つも 同 じ で い いか。 そう で は あ り ま せ ん 。 子 ど も たち が 今 ま で ど のよ う
な 学 習 活 動 を 体 験 し て き た かを 知 り 、 既 知 の学 習方 法 を 生 か し 、 さ ら に 新 し い学 習 体 験 を さ せ て いき 、
し だ い に 自 己 の読 み を 確 立 さ せ て いく 必 要 が あ り ま す 。 小 学 校 最 終 段 階 の六 年 生 で は、 白 石 氏 の実 践 に
あ る よ う に ﹁五 年 生 ま で に習 得 し た 文学 作 品 の読 み 方 を 児 童 そ れ ぞ れ に 駆 使 し 、 個 性 読 み を 実 現 す る ﹂ こと が で き る よ う に し た いも の です 。
詩 の読 み 方 指 導 と教 育 に つ いて は 朝 倉 国 語 教 育 講 座 第 二巻 ﹃読 む こと の教 育 ﹄ を 参 照。 ︹ 樋 口順 子︺
参考 文献 国 語教 育 研究 所編 ﹃ 国 語教 材研 究大 事典 ﹄ 明治 図書 出版 一九 九 二
A 文 学 的 文 章 の読解指 導 の本 来 の目 的は、 文 章 を 読 ん で そ の内 容 を 理 解 す る と とも に 、 こ と ば の持
つ意 味 深 さ や文 章 の読 み方 に つ いて も 学 ば せ 、他 の文 章 を 読 む と き も 、 学 ん だ 方 法 を 生 か し て 一人 で読 み 味 わ う こ と が で き る 読 解 力 を 持 った 読 者 を 育 て る こ と だ と 考 え ま す 。
そ の た め に は ま ず 、 教 材 文 を ﹁素 直 に読 み 解 く ﹂ こ と を 経 験 さ せ な く て は な り ま せ ん。 自 分 一人 で教
材 文 が音 読 ・黙 読 で き、 話 の筋 が わ か る。 そ し て、 友 達 と 読 み 進 め る 中 で、 文 中 の こ と ば の意 味 や 価
値 ・こ と ば に 込 め ら れ た作 者 の思 いな ど に つ い て読 み取 った こ と を 伝 え 合 い ・磨 き合 う 活 動 を 通 し て読 み解 く こ と の 力 を 身 に つけ て い く も の です 。
読 解 の中 に 読 む こ と 以外 の書 いた り 話 し 合 ったり す る 活 動 を 取 り 入 れ る こと は、 読 む だ け で は 届 かな
いと こ ろ に ふ み 込 む た め の手 段 で あ る と 言 え ま す 。 学 習 活 動 の 設 定 に は、 ま ず 学 習者 に と って そ の活 動
が 必 要 か どう か を 見 極 め る こ と か ら 始 ま り ま す 。 関 連 指 導 を 取 り 入 れ る観 点 と し て、 私 は次 の三 項 目 を 考 え て いま す 。
① 書 く 活 動 を 取 り 入 れ る こ と によ って 、 自 分 の考 え を よ り 明 ら か にす る こ と が でき る。
② 読 む 活 動 と 書 く 活 動 を 単 元 の中 で 組 み 合 わ せ る こ と に よ って 、 取 り 立 て 指 導 で は 十 分 でき か ね る 領 域 の表 現 力 も身 に つけ さ せ た い。
③ 書 く こと で思 考 を 促 し 、 考 え る力 とす る こ と が で き る 。
次 に あ げ る 実 践 例 は、 指 導 者 と し て 、 読 解 学 習 単 元 の ﹁こ こ で書 く 活 動 を 取 り 入 れ る こ と に よ って 、
読 み を 深 め る こと が で き る ﹂ と 判 断 し て、 読 み の中 に取 り 入 れ た も の です 。 椋 鳩 十 ﹃大 造 じ いさ ん と ガ ン﹄ ︿単 元 の指 導 目 標 ﹀
○ 登 場 人物 の言 動 や 情 景 描 写 か ら 場 面 の様 子 を 想 像 し 、 読 み取 った 自 分 の思 いを 日 記 や 感 想 文 で表 現 す る こ と が でき る。 ︿関 連 的 指 導 と そ の意 図 ﹀
○ 仲 間 を 助 け る た め に ハヤ ブ サ と 戦 う が ん の頭 領 残 雪 と 、 そ の様 子 を 見 て 自 ら の考 え を 変 え て いく
大造 じ いさ ん の、 行 動 と情 景 描 写 の物 語 る意 味 を 読 み 取 る た め に 、 ﹁読 む 活 動 ﹂ に ﹁書 く 活 動 ﹂ を 、 人物 の内 部 に 踏 み込 ん で 考 え る な ど 有 機 的 に 組 み合 わ せ て いく 。 ︿ 主 な学習活 動﹀ ① 全 文 を 通 読 し 、 初 発 の感 想 を 書 く 。
② 初 発 の感 想 を も と に 、 ﹁読 み の めあ て ﹂ に つ いて 話 し 合 い、 単 元 の学 習 計 画 を 立 て る。 ③ 各 場 面 の登 場 人 物 の行 動 や 様 子 を 、 こ と ば を 手 掛 か り に読 み 取 る。
・自 分 の考 えを 持 つた め に 、 一人 で 読 み 取 った こ と を ワ ー ク シ ー ト に 書 き 込 み を す る 。 ︵や り 方 が 分 か った ら事 前 家 庭 学 習 ︶
・書 き 込 みを も と に 友 達 と意 見 交 換 を す る 。 場 面 状 況 の と ら え 方 、 登 場 人 物 の 思 いを どう 読 み取 っ
た か 、 こと ばを 手 掛 か り に 考 え を 述 べ合 い、 一人 で は気 づ か な か った 豊 か な 読 み へと つな げ る。
・場 面 の中 で読 み 取 った 事 柄 や 読 みを 通 し て芽 生 え た 自 分 の思 いを 文章 にす る こと によ って 、 考 え
を 整 理 し た り 感 動 を 確 かな も の にし た り す る。 ︵日記 ・手 紙 ・感 想 文 な ど ︶ ︿大 造 じ いさ ん の 狩 日 記 T 児 ﹀
お お 、 あ の目 、 残 雪 の目 はあ ん な 目 な ど 見 た こ と な ど な い わ い。 あ れ は 、 ま さ に 仲 間 を 助 け た い と いう 勇 気 が 作 った 目 じ ゃろ う 。
お っ、 残 雪 が や ら れ る ! そ ん な あ っ、 落 ち てく る ! 大 変 じ ゃ、 す ぐ 行 か な く て は 。
お お 、 な ん と いう あ り さ ま じ ゃ 、 残 雪 よ な ぜ こ こ ま で し て ⋮。 よ し 、 助 け て ⋮。 お っこ い つわ し を
に ら ん で お る 。 そ う か 、 お ま え 頭 領 だも ん な 。 さ いご ま で頭 領 と し て の いげ ん を た も ち た い のか 、 そ れ と も ⋮。 ︵ 後 略︶
④ 作 品 全 体 を 読 み 通 し て、 登 場 人 物 や 作 者 に対 し て の 手 紙 、 ま た は 作 品 そ のも の に 対 す る 感 動 を 綴 った感 想 文 を 書 く 。
⑤ 学 習 を 通 し て得 た 、 読 み解 く 力 を 活 用 し て、 他 の作 品 の読 書 へと広 げ る 。
右 の実 践 事 例 は ﹁読 み 取 る た め に書 く 、 学 習 活 動 上 の関 連 ﹂ 単 元 で し た。 で す か ら、 目 標 は読 み 取 る こ と が 中 心 にな り ま す 。
こ の指 導 に つ いて 、 私 た ち教 師 の間 で は 他 に 次 のよ う な 実 践 を し て いま す 。
○ 新 美 南 吉 ﹃ご ん ぎ つね﹄ の学 習 で、 理 解 の た め の 音 読 練 習 を す る。 ﹁な ぜ こう 読 む の か﹂ 話 し 合 いを し て 読 みを 深 め る 。
○ 同 じ く ﹃ごん ぎ つね﹄ の学 習 で 、 各 自 音 読 後 、 俳 句 づ く り を す る 。 兵 十 と ご ん の思 いを 表 し た 俳 句 を
発 表 し 合 い、 両 者 のす れ 違 った思 いや 立 場 を 俳 句 にす る こ と で 読 み深 め る 。
○ 松 谷 み よ 子 ﹃花 い っぱ いにな あ れ ﹄ の学 習 で、 こと ば を も と に 、 コ ンが ど の よ う に行 動 し た かを 動作 と いう 表 現 を 通 し て 具 体 的 に読 み取 る。
○岡 野薫子 ﹃ 桃 花 片 ﹄ の学 習 で 、 心 の目 ・耳 を 働 か せな が ら 、 悩 む楊 の心 を こと ば の挿 絵 と し て出 し 合
う 。 そ の上 で、 そ こ に エピ ソ ー ド を 挿 入 す る ﹁挿 話 活 動 ﹂ を 行 う こと で自 分 な り の作 品 世 界 を 創 り 出 し て いく 。 ︿単 元 の目 標 ﹀
・登 場 人 物 の言 動 や情 景 の表 現 か ら 考 え 方 ・生 き 方 を つか み、 自 分 の思 いを 明 ら か にし よう と す る。
・細 部 の こと ば に こだ わ り を 持 ち 、 そ の こと ばを 核 に 登 場 人物 の言 動 を 心 像 に 描 い て鮮 明 に と ら え、 そ の 上 で ﹁挿 話 ﹂ を 書 く こ と で、 読 み を 深 め て いく こ と が でき る。
・﹁挿 話 ﹂ を 伝 え 合 う こと で、 他 者 の読 み の良 さ を 知 る と と も に 、 自 分 の読 みを 自 覚 す る 。
○ ﹃ 物 語 を 愉 し む﹄ み んな で作 ろ う ジ ャ ン ボ スク リ ー ンげ き ∼﹁ち いち ゃ ん の かげ お く り ﹂ ︵ あま んき み
こ著 ︶ を 演 じ る活 動 ∼文 学 教 材 を 音 読 劇 に シナ リ オ 化 す る 活 動 と 演 じ る 活 動 を 学 習 目 標 に し な が ら 、 文 学 の 世 界 を 味 わ い楽 し む。
︿単 元 の目 標 ﹀
・作 品 を 目 的 に応 じ て シナ リ オ 化 し た り 、 演 じ た り す る活 動 を 通 し 、 場 面 の 移 り 変 わ り を 押 さ え な が
ら 会 話 文 に気 を つけ て読 み 、 情 景 や 人 物 の気 持 ち を 想 像 す る こ と が でき る。 ・作 家 の複 数 の作 品 を 読 書 し よ う とす る 意 欲 を 持 つ こと が で き る。
・自 分 た ち で作 った シナ リ オ や 演 出 に つ い て目 的 に 応 じ て話 し 合 う こと が で き る 。
○ 単 元 の中 で、 杉 み き 子 ﹃わ ら ぐ つの中 の神 様 ﹄ と ﹃春 先 の ひ ょ う ﹄ を 重 ね 、 客 観 的 に高 次 な 理 解 に ふ み 込 む。 主 題 を 予 想 し 、 言 語 活 動 を 通 し て 確 か め る。
︵ 新 聞 づ く り ︶ で、 人 間 の描 き方 を と ら え る 。
・四 コ マ漫 画 で ク ラ イ マ ック スを とら え る 。 ・ク イ ズ コー ナ ー
・評 論 家 にな って 、物 語 の構 成 を と ら え る 。 ・イ ンタ ビ ュー で、 題 名 の意 味 を とら え る 。
関 連 指 導 に は こ の他 に ﹁読 み の学 習 に よ り 理 解 し た 技 能 を 表 現 に生 かす 、 能 力 の関 連 ﹂ が あ り ま す 。
能 力 の関 連 の場 合 、 指 導 目 標 は 理 解 と 表 現 の両 方 から 設 定 し 、 そ の比 重 は 同 じ に し ま す 。 つま り 、 読 み
取 る 力 も つけ さ せ る と 同 時 に、 表 現 力 の向 上 も ね ら う こと にな り ま す 。 単 元 を 通 し て 理 解 力 ・表 現 力 両
方 の力 を つけ る こと を 目 指 す こ と は 可 能 です が、 一時 間 の学 習 の 中 で両 方 を 求 め る こと は尋 常 に は でき
ま せ ん 。 単 元構 成 の中 で ど ち ら を 目 指 す 時 間 にす る の か 、 目 標 の焦 点 化 を 図 る 方 が無 理 な く や れ ま す 。 能 力 の関 連 指 導 に は、 次 のよ う な 活 動 が考 え ら れ ま す 。
・文 学 作 品 の書 き 出 し を集 め、 作 品 の中 の効 果 や 書 き出 し の パ タ ー ンに 気 づ か せ 、作 品 に生 き る 書 き
出 し を 自 己 の作 文 に活 用 す る 。
︵ 例 ︶ 書 き 出 し の パタ ー ンに は 、 ﹁動 作 、 行 動 ﹂ ﹁気 持 ち 、 心 情 ﹂ ﹁音 ﹂ ﹁会 話 ﹂ ﹁考 え ﹂ ﹁情 景 、 様 子 ﹂ ﹁話 題 、 日時 ﹂ な ど が あ る こと を 知 り 、 未 知 の書 き 出 し を 試 みさ せ る 。
・文 学 作 品 の情 景 描 写 を 既 習 教 材 か ら 集 め 、 情 景 描 写 の意 味 や 役 割 に つ いて 話 し 合 い、 自 己 の作 文 に 生 か す 。
︵ 例 ︶ ﹃大 造 じ いさ ん と が ん﹄ の 一節 に 、 ﹁﹃さあ 、 いよ いよ 戦 闘 開 始 だ 。﹄ 東 の空 が 真 っ赤 に 燃 え て、
朝 が来 ま し た。﹂ があ る 。 情 景 描 写 が働 い て、 ﹁戦 闘 ﹂ に 挑 む 大 造 じ い さ ん の心 情 に導 く 。
・既 習 文 学 教 材 の文 章 構 成 を 生 か し て、 自 分 でも フ ァ ンタ ジー や 昔 話 を 作 って み る 。 ・逆 に、 作 文 し て培 った 表 現 能 力 を 生 か し て 作 品 理解 の読 解 に〓 ぐ 。
文 学 的 文 章 は 、 以 前 か ら 表 現 研 究 の方 法 と し て活 用 さ れ て き ま し た 。 伝 承 物 語 ・創 作 童 話 ・伝 記 ・幻
想 物 語 ・詩 な ど の ジ ャ ン ル に分 け た 研 究 、 表 現 分 析 の研 究 、 表 現 開 発 と いう 立 場 か ら の研 究 と いう のも あ ります。
ま た、 文 学 的 文 章 の表 現 研 究 は 、 作 文 教 育 の分 野 で も 行 わ れ ま し た。 さ ら に 音 声 言 語 教 育 の分 野 で
は 、 デ ィ ベー ト に 文 学 教 材 を 使 用 す る 実 践 研 究 も あ り ま す ︵ 朝 倉 国 語 教 育 講 座 第 二 巻 ﹃読 む こ と の教 育 ﹄ 参 照︶。
︹ 樋 口順 子︺
読 み の学 習 教 材 に、 他 の表 現 活 動 を 組 み 入 れ る こと は 、 確 か な 目 的 を 持 って活 動 す る こ と によ って有 効な方法 となります。
参考 文献 ﹁佐 賀大 学教 育学 部附属 小学 校 研究 紀要 ﹂ 一九九 一 ﹁佐 賀市 立本 庄小 学校 研究 紀要﹂ 二〇 〇〇 白 石寿 文 ・桜 井 直 男 編 著﹃ 小 学 校 作 文 の 指 導 ﹄ 銀 の 鈴 社 二 〇 〇 一
全国 大学 国語 教育 学会 ﹃ 国 語科教 育 学 研究 の成果 と 展望﹄ 明治 図書 出 版 二〇 〇 二
Q23 詩 のよ い指 導 法 は あ り ま せ ん か ?
A ま ず、 あ な た は詩 を何篇 ぐ ら い暗 唱 す る こ と が で き ま す か。 ま た 、 詩 を 作 る楽 し みを 知 って いま
す か 。 詩 が好 き な 指 導 者 の い る国 語 教 室 に は 、 詩 が好 き な 学 習 者 が 生 ま れ る こと が多 いよ う です 。
ま た 、 教 科 書 の中 で詩 の単 元 が出 て き た か ら 、 指 導 を 行 う と いう の で は、 な かな か 興 味 を 持 た せ る こ
一人 一人 に詩 を 贈 る 準 備 を 始 め る
と は でき ま せ ん 。 児 童 と 詩 の出 会 いを 大 切 に し ま し ょう 。 こ こ で は 出 会 わ せ 方 を いく つ か紹 介 し ま す 。
一
﹁こ の子 ど も に は 、 ど んな 詩 を 贈 る と 喜 ぶ かな 。﹂ と いう 目 で 児童 と 詩 を 見 つめ て み ま し ょう 。 手 元 に は、 次 のよ う な 本 を 用 意 し て お き た いも のです 。 ① ﹃の は ら う たⅡ ﹄ ︵工藤 直 子 著 童 話 屋 ︶
﹁か ま き り り ゅう じ ﹂ や ﹁み の む し せ つ こ﹂ な ど 、 自 然 の事 象 や 生 物 を 作 者 名 に仕 立 て て あ り ま す 。
作 者 名 を 伏 せ て、 何 の生 き 物 が書 いた 詩 か 、 考 え さ せ な が ら 読 ま せ ま す 。 ② ﹃音 読 集 3 く さ ぶ え ﹄ ︵ ま ど ・み ち お 瀬 川 栄 志 監 修 光 文 書 院 ︶
言 葉 遊 び や 自 然 、 生 き 物 、 生 活 の中 で だ れ に でも 沸 き 起 こり そう な 感 情 を テ ー マに し た作 品 が多 い の で 、 そ の 子 に あ った作 品 を 探 し ま し ょう 。
こ の三 年 生 用 の他 、 一年 生 用 か ら 六 年 生 用 ま で整 理し て ま と め て あ る点 が 便 利 です 。 児 童 全 員 に簡 単 に詩 を プ レゼ ント でき ます 。
③ ﹃マザ ー グ ー ス のう た が き こ え る ﹄ ︵ニ コラ ・べ ー リ ー 絵 由 良 君 美 訳 ほ る ぷ出 版 ︶
読 ん でも 読 ん で も 意 味 不 明 のナ ンセ ン ス詩 、 数 珠 つな ぎ のよ う に 長 く 話 が つな が って いる 詩 が多 い で す 。 こ ん な 詩 を 好 き な 児 童 は た く さ ん いま す 。 ④ ﹃み みを す ま す ﹄ ︵谷 川 俊 太 郎 著 福 音 館 書 店 )
本 の 題 にも な って い る作 品 ﹃み みを す ま す ﹄ は 、 千 百 八 十 九 文 字 、 百 九 十 七 行 、 十 九 連 に も な る長 い 詩 です 。 そ れ ゆ え に 、 全 部 暗 唱 で き た と き の達 成 感 は 大 き いで す 。 ⑤ ﹃俳 句 は いか が﹄ ︵五 味 太 郎 作 ・絵 岩 崎 書 店 )
俳 句 作 り の解 説 書 で す が 、 五 味 さ ん ら し く 堅 苦 し さ が あ り ま せ ん 。 解 説 の部 分 は 、 小 学 生 には や や難
し いと 思 わ れ ま す 。 し か し 、 文 字 数 が 少 な い の で 覚 え や す く、 暗 唱 が 苦 手 な 児 童 に は お 勧 め です 。 ﹁釣
り 鐘 にと ま り て眠 る胡 蝶 か な ﹂ な ど の句 を 授 業 参 観 日 の折 な ど機 会 を と ら え て暗 唱 さ せま し ょ う 。 周 り の大 人 を あ っと 言 わ せ る 快 感 で、 俳 句 に関 心 を 持 つ こと 請 け 合 い です 。 ⑥ ﹃句 集 小 さ な 一茶 た ち ﹄ ︵ 楠 本 憲 吉 ・炎 天 寺 編 グ ラ フ社 ︶
全 国 小 ・中 学 生 俳 句 大 会 の二 十 五 年 間 分 の応 募 作 品 の中 か ら 選 り す ぐ ら れ た も のを 一冊 の本 に ま と め
てあ り ま す 。 小 中 学 生 の俳 句 作 り 運 動 に かけ る 編 者 の意 気 込 み が伝 わ って き ま す 。 季 語 な ど、 表 現 上 の 特 色 を 学 ば せ る のに 適 し て いま す 。
二 詩 に 出 会 わ せ る
作 品 の 内 容 が深 く 理 解 で き れ ば 、 詩 を 口ず さ む こと は も っと 愉 し く な って き ま す 。
で は、 ど う や って 理 解 さ せ れ ば よ い の でし ょう 。 書 き 手 が 伝 え た か った で あ ろ う 内 容 を 、 教 師 で あ る
あ な た が 児 童 に説 明 し ても 、 な か な か そ の 子 な り の感 じ 方 を も って 理 解 さ せ る こ と が で き ま せ ん 。 そ こ
で、 完 成 し た作 品 を 与 え る の で は な く 、 教 師 に よ って意 図 的 に伏 せ ら れ た作 品 中 の言 葉 を 考 え な がら 読 み と って いく と いう 方 法 が あ り ま す 。 ア 教 科書 に載 って いる 児 童 作 品 例 を 使 って イ 教 科 書 外 の詩 作 品 を 使 って ウ 自 分 たち の作 った 詩 作 品 を 使 って
C
ど ん な せ ん た く き です か ?
家 にもあ ります。
﹁目
( 改 行 ) く るく る 回 って いる ﹂ に ぴ った
は 、 ﹁コ ー ヒ ー カ ップ が 一番 合 っ て い る ﹂ と答
えて
り 合 う の は ど ん な こ と ば だ ろ う 、 と いう 問 い か け に
が回 るほど
る ﹂ と いう 点 で ど れ も 良 い の で す が 、 次 の 二 行
ッ プ 、 観 覧 車 の 似 て い る 点 を 話 し 合 い ま し た 。 ﹁回
し た 。 そ の 後 、 洗 濯 機 と 空 中 ブ ラ ン コ、 コ ー ヒ ー カ
児 童 の 多 く が 、 空 中 ブ ラ ン コ が い い、 と 主 張 し ま
で は、 ア の指 導 例 を あ げ て み ま す 。 特 に理 解 さ せ た い内 容 は 、 比 喩 表 現 です 。 ︻実 際 の 指 導 例 ︼ ( 三年生)
T
白 く て ボ タ ン が つ いて いま す 。
T板書 せ ん た く き (改 行 ) いとう み ほ こ
C
改 T板書 せ ん たく き は ( 改 行 )遊園 地 の ︵ 行)○○ ○⋮ みた い
T発問 ○ ○ ○ ⋮ の中 に は、 何 か こ と ば が 入 り ま す よ 。 ﹁せ ん た く き は 、 ○ ○ ○ ⋮ み た い﹂ せ ん た く き は 、 何 に に て いる の で し ょ う ? 空 中 ブ ラ ン コだ と 思 い ま す 。 ぼ く は 、 コー ヒ ー カ ップ だ と 思 い ま す 。
私 は 、 観 覧 車 だ と 思 いま す 。
と 思 いま す か ? 空 中 ブ ラ ン コが い いと思 いま す 。
き ま し た。 こ の後 、 実 際 教 科 書 に 載 って いる こと ば
﹁メリ ー ゴ ー ラ ウ ンド ﹂ を 確 認 し ま す 。 ﹁あ っ、 そ
う か。﹂ と いう 反 応 が 返 って き ま し た 。 正解 不 正 解
を 問 う の で は な く 、 そ の子 な り の発 想 を 認 め な が ら
進 め て いき ま す 。 こ の 後 、 ﹁み た い﹂ と いう こ と ば
は ﹁た とえ ﹂ の表 現 で あ る こ と を ま と め ます 。
た と え の表 現 以 外 で も 、 行 替 え 、 句 読 点 や 助 詞 の
省 略 、 繰 り 返 し な ど、 詩 を 紹 介 す る た び に 少 し ず つ
理 解 さ せ て いく と 良 いで し ょう 。
でき る だけ 、 ウ の ﹁自 分 たち の作 った作 品 を 使 っ
て ﹂ 表 現 技 法 に つ いて 理 解 を 深 め て いく 方 法 を 取 り
入 れ てく だ さ い。 意 欲 が 高 ま って いく の が 分 か る は
イ 群 読 で、 声 を 出 す こと 、 そ ろ え る こ と の爽 快 感 を 楽 し む 。
ア 暗 唱 で 、 覚 え 、 唱 え る こと を 愉 し む 。
作 品 の内 容 を 理 解 し た ら 、 声 に出 し て読 む こと を 楽 し ま せま し ょう 。
三 詩 の音読 を 楽 しま せ る
ず です。
C
T発問 三 つ意 見 が 出 ま し た が 、 ど れ が い い
C
C C
ウ 表 現 を 工夫 し て読 む こ と を 愉 し む 。
﹁み ん な は か え る だよ 。 ど ん ど ん 冬 眠 か ら覚 め てく
﹁ケ ル ル ン ク ック ﹂ に つ い て は、 最 後 の二 行 は 、
ろ か ら 動 作 化 さ せ ても 良 い でし ょう 。
の前 の 文 ﹁か え る は ⋮ 地 上 に で て き ま す 。﹂ の と こ
のし ぐ さ は 、 目 の前 に両 手 を か ざ し た り し ま す 。 そ
授 業 が 活 気 づ き ま す 。 ﹁ま ぶ し いな ﹂ って いう と き
中 学 年 ま で の児 童 には 、 動 作 化 を 取 り 入 れ さ せ る と
う 。﹂ と 声 の質 に こ だ わ ら せ て も 効 果 的 で す 。 特 に
う と き の声 は 、 こ の教 室 で は 誰 の声 が ぴ った り だ ろ
ピ ー ド な ど が 問 題 に で き ま す 。 ﹁う れ し いな っ て い
の言 い方 を 探 って いき ま す 。 声 の大 き さ 、 高 さ 、 ス
こ のよ う に し て、 そ れ ぞ れ の ﹁ほ っ﹂ に ぴ った り
で は 、 ウ の指 導 例 を あ げ ま す 。 特 に 工 夫 さ せ た か った のは 、 繰 り 返 し 出 て く る表 現 を ち ょ っと 感 じ を 変 え て 声 に出 す こと です 。 ︻実 際 の指 導 例 ︼ ( 四年 生) T 草 野 心 平 さ ん の ﹃春 のう た ﹄ を 声 に 出 し て読 ん で みま し ょ う 。 何 度 も 出 てく る こと ば があ り ま す ね 。 C ﹁ほ っ﹂ です 。 C ﹁ ケ ル ル ン ク ッ ク ﹂ も で す 。
T そ う で す 。 そ れ ぞ れ 四 回 出 て き ま す。 ﹁ま ぶ し い な ﹂ っ て いう と き の ﹁ほ っ﹂ を 言 っ て み て く だ さ い。
※五名程度 指名 さ あ 、 だ れ の ﹁ほ っ ﹂ が 一番 ぴ っ た り で し た か。
る よ 。﹂ と 指 示 し て 、 声 を 出 す 児童 の数 が増 え て いく よ う に し ま す 。 自 分 一人 の音 読 で は 味 わ え な い か え る の大 合 唱。 群 読 の愉 し さ に触 れ る こ と が でき る で し ょ う 。
四 詩 作 り ・俳 句 作 り を 楽 し ま せ る
一番 簡 単 な 詩 の作 り 方 は 、 教 師 が 児 童 の生 活 の中 の つぶ や き や発 言 を 採 集 し て詩 の形 にし て や る こ と です 。 他 に も 次 のよう な 方 法 が あ り ま す 。 ア 日 記 か ら詩 を 作 る イ 詩 人 の作 品 の 一部 を 自 分 の表 現 にし て み る ウ 友 だち の作 った 詩 作 品 の 一部 を 自 分 の表 現 にし て み る エ 文 学 作 品 か ら 、 俳 句 を作 って み る
俳 句 作 り は、 早 速 五 七 五 の リ ズ ムで 作 る こ と か ら 始 め ま し ょ う 。 多 少 、 字 余 り や字 足 ら ず があ って も
かま わず ど ん ど ん 作 ら せま し ょ う 。 季 語 な ど の 約 束 事 を 最 初 は 気 に し な いで い い と思 いま す 。 一流俳 人
の作 品 を 読 み味 わう 中 で、 徐 々に 身 に 付 け て いけ ば よ いも の です 。 時 に は、 児童 と外 に出 か け て 見 つけ た も の、 発 見 し た こと を 使 って 俳 句 を 作 ら せ る と い い でし ょ う 。
で は、 エの指 導 例 と し て は、 青 木 幹 勇 氏 の ﹃ご ん ぎ つね﹄ を 使 った 実 践 を 参 照 し て く だ さ い。 秋 を 表
す ﹁彼 岸 花 ﹂ や ﹁月 ﹂、 ﹁す す き ﹂ な ど を季 語 に使 いな が ら 、 作 品 を 生 み 出 し て いき ま す 。
肝 心 な のは 、 自 分 の作 った作 品 を 読 み 味 わ う 場 を 作 って や る こと です 。 次 の よ う な 方 法 が あ り ま す 。 ア 学 級 通 信 に載 せ る イ 一枚 文 集 を 発 行 す る ウ 学 級 文 集 を 作 る
エ 個 人 文 集 を 作 る オ ア ン ソ ロジー を 編 集 す る
一つ 一つ の作 品 で は 表 現 でき な い、 そ の子 独 特 の世 界 を 作 り 上 げ ら れ る の が ア ン ソ ロジ ー です 。 自 分
の書 き た め てき た 作 品 、 お 気 に 入 り の友 達 や 作 家 の作 品 を 自 分 な り の 目 的 に 合 わ せ て 配 列 の仕 方 を 考
え 、 一つ の作 品群 に 仕 上 げ ます 。 ど ん な 作 品 を 選 ぼ う か 、 ど ん な 順 序 で並 べ よう か と、 児 童 はも う 一度 作 品 を 凝 視 し ます 。
︹ 池 田直人 ︺
な お 、 こ こ に あ げ た ア∼ エま で の方 法 は 、 指 導 者 が児 童 の実 態 に 応 じ て順 序 を 工夫 し て く だ さ い。
参考文 献 一九 九 七
白 石寿 文 ﹁詩 から 詩群 へ、そ し て詩 集 へ、 さ ら に詩 人 へ︱詩 に親 し む読 者 育 成︱ ﹂ ﹃ 佐 賀 大 国 文﹄ 二 五号 所 収
A 評 価 に は 三 つの 目 的 が あ り ます。 ① 目 標達 成 の確 認 を す る
指 導 の目 標 と 評 価 は 、 相 関 関 係 に あ り ます 。 一体 化 し て いな け れ ば な り ま せ ん。 ② 指 導 の見 通 し を 持 つ
評 価 意 識 を 教 師 が持 つ こ と に よ って、 目 の前 の 児童 に何 を こそ 指 導 し な け れ ば いけ な い のか 、 は っき り と さ せ る こと が で き ま す 。 ③ 児 童 が自 己評 価 を し て 自 信 を 持 つ
教 師 の評 価 はあ る 問 題 を 克 服 さ せよ う と いう 目 的 で行 わ れ ま す 。 そ れ に対 し て 、 児 童 が 自 分 自 身 で 判
断 し て行 う 評 価 で は 、 自 分 の や り た い こ と に対 し て ﹁も っと こう な り た い。﹂ と いう 希 望 を 持 た せ る た
め に行 わ せ ま す 。 絶 対 評 価 の 考 え 方 と も いえ ます 。 で は、 文 学 を 読 む こと に関 す る評 価 は 、 ど の よう に 考 え て いけ ばよ い の でし ょう 。
︵1 ︶ 文 学 的 文 章 の指 導 に は 目 標 を は っき り と さ せ 、 そ れ に 応 じ た 評 価 の観 点 を ︻文 学 を 大 好 き にさ せ た いと き ︼
評 価 の観 点 に、 児 童 が 文学 を 好 き に な った か ど う かを 入 れ て み る と 、 授 業 は ど の よう に 変 わ る の でし
よう か。
寺 村 輝 夫 の ﹁王 様 シ リ ー ズ ﹂ や ル ー ス ・スタ イ ル ス ・ガ ネ ット の ﹁エ ル マー シ リ ー ズ﹂、 あ る いは 、
あ ま ん き み こ作 ﹃白 い ぼう し ﹄ を 含 む ﹃車 の いろ は 空 の いろ ﹄ な ど、 いく つも の話 を シ リ ー ズ 物 と し て
読 め る作 品 群 の場 合 に は 、 ﹁お 話 の 地 図 作 り ﹂ を さ せ る こ と が でき ま す 。 最 初 は 、 地 図 の中 に建 物 、 人
物 、 道 具 類 を 書 き 加 え た く て 、 そ の た め に児 童 は 作 品 を 読 み重 ね て いき ま す 。 し か し、 次 第 に、 地 図 を 描 く こと よ りも 、 作 品 に読 み 浸 る時 間 が 長 く な って いき ま す 。
﹁お 話 の地 図 ﹂ を 一所 懸 命 描 いて いる 児 童 の姿 を 認 め て いく と 同 時 に 、 徐 々 に 作 品 に 読 み 浸 る 児童 の 姿 を 褒 め、 他 の児 童 を 導 いて いく 声 掛 け を す る こ と が 評 価 の コツ で す 。 ︻ 主 人 公 の気 持 ち を 読 み解 か せ た いと き ︼ ① 誰 し も が 読 み取 る 基 礎 基 本 と し て の読 み解 き
日 常 的 読 書 生 活 で、 作 品 を 次 々に 読 む愉 し みを 味 わう た め に は 、 読 み方 指 導 を し てお く こ と が大 切 で
す 。 ﹁読 む こ と ﹂ の指 導 事 項 は 、 学 習 指 導 要 領 の中 に も 、 学 年 ご と に 示 さ れ て あ り ま す 。 そ れ ら の設 定
さ れ た技 能 目 標 に向 か って、 教 師 が いく つか の ステ ップ を 設定 し 目 標 が達 成 さ れ た か どう か の評 価 を す る必要 があります。 ② そ の子 独特 の読 み解 き
個 性 読 み と言 わ れ ま す 。 ﹃王 様 出 か け ま し ょ う ﹄ を 例 に と って 説 明 し ま す 。
作 品 を 初 め て読 み 終 え た と き 、 ﹁ツ バ メ の巣 ﹂ ﹁ハン モ ック に の った た く さ ん の荷 物 ﹂ な ど の形 あ る素
材 に目 が 向 く 児 童 が いま す 。 そ こ か ら ス タ ー ト し て ﹁ツ バ メ の巣 を 覗 き 込 ん だ ﹂ ﹁ハ ン モ ック の荷 物 が
風 で吹 き 飛 ば さ れ た﹂ な ど の行 動 や 出 来 事 に 、 児 童 は 、 目 を 向 け 始 め ます 。 さ ら に は ﹁王 様 って ど んな
人 な ん だ ろ う ﹂ と興 味 を も ち は じ め ま す 。 実 際 に は、 児 童 一人 一人 が め いめ い自 分 勝 手 に作 品 のあ ら ゆ
る と こ ろ で 興 味 を 感 じ て いま す 。 そ れ を 評 価 し 、 追 求 さ せ て や る こ と が 教 師 の 役 目 です 。 ﹁ツ バ メ の巣 ﹂
が 出 てく る 場 面 に つ い て言 え ば ﹁そ っと のぞ き こ む ﹂ 動 作 を 深 く 理 解 さ せ 、 そ こ に表 れ て いる ﹁王 様 の 人 柄 ﹂ に つ いて多 く を 語 れ る よう に指 導 し ま す 。
そ の際 、 一人 一人 の児 童 が 習 得 し た 文 学 作 品 の読 み方 を 教 師 が 把 握 し 、 いく つ か提 示 し ま す 。 そ の中
か ら 児 童 が 、 そ れ ぞ れ に選 択 し 、 自 分 の読 み の実 現 を 目 指 し ま す 。 目 標 に対 応 し て様 々な 視 点 か ら の読 み取 り 方 が 積 み重 ね ら れ る べ き です 。 ③ 文 学 を 読 む こ と で 知 識 と 感 性 を 育 て上 げ て いき た いと き
優 れ た 内 容 的 価 値 を 持 つ作 品 を 読 む こ とを 通 し て、 ど ん な と き に 人 間 は怒 った り 、 悲 し ん だ りす る の
か と いう こ と を 児童 は 理解 で き ま す 。 作 品 一つ 一つの中 に 素 直 に と け こ ん で いけ る のか ど う か を 評 価 し ます。
﹃ぼく は ね こ の バ ー ニー が大 好 き だ った ﹄ ︵ジ ュデ ィ ス ・ボー スト 作 東 京書 籍 三 年 ︶ を 例 に 説 明 し ま
す 。 主 人 公 のぼ く が、 大 好 き だ った ね こ の バ ー ニー の 死 を ど う 受 け 止 め る のか 、 生 と 死 の意 味 を 描 いた
作 品 です 。 庭 の木 の隅 に う め ら れ た ね こ のバ ー ニー に 死 が 訪 れ た こと の意 味 を 児 童 は 見 出 し 、 人 間 認 識
を 深 め て いき ま す 。 本 作 品 だ か ら こそ の 味 わ いを 児 童 に 味 わ わ せ る の が ね ら い です 。 ﹁こ の物 語 が 大 好
き に な った ﹂ ﹁先 生 が 紹 介 し て く れ た ﹃葉 っぱ の フ レデ ィ ー ﹄ な ども 読 ん で み た く な った ﹂ ﹁読 む って本
当 に 楽 し い こと な ん だ ﹂ な ど の評 価 が得 ら れ れ ば、 ね ら い は達 成 さ れ た こと に な り ま す 。
︵2 ︶
一人 の児 童 が 、 ど う いう 成 長 を 見 せ てく れ て いる か、 そ の変 容 を
三 つ の評 価 に つ いて 述 べま す 。 ︻ 事 前評価 ︼
こ の作 品 を 読 め ば 、 あ の 児 童 は ﹁どう 言 う だ ろ う ﹂ ﹁ど う 書 く だ ろ う ﹂ と 予 測 を 立 て て み る と、 授 業 は ど の よう に変 わ る でし ょう 。
例 え ば 、 紙 芝 居 を 作 る活 動 を 設 定 し た 場 合 で は 、 自 由 に作 ら せ て い い児 童 も いれ ば 、 着 眼 点 を 示 し て あ げ た 方 が 良 い児童 も いま す 。
後 者 の場 合 に は、 そ の児 童 が 興 味 を持 つ だ ろう 場 面 を 一枚 だ け 作 れ ば い いよ う に配 慮 し ま す 。 ま た 、
書 く スピ ー ド が 遅 いと 評 価 し て い る 児童 に は、 ほ と ん ど 教 師 の方 で書 い て お いて 、 児 童 に は 一部 分 だ け を 考 え て 書 け ば い いよ う に作 っ て お き た いも の で す 。 ︻事 中 評 価 ︼
実 際 の指 導 の中 で は 、 絶 対 評 価 を 授 業 の前 半 部 分 に入 れ て お く こ と が 大 切 で す 。 例 え ば ﹁王 様 の人 柄
に つ いて 三 つ以 上 言 う こ と が で き る﹂ と いうB ラ ンク の基 準 を 設 定 し てお き ま す 。 こ の こと に つ いて 、
四 十 五 分 授 業 で は、 二 十 分 に な る く ら いま で に 一度 評 価 し て し ま いま す 。 す で に ク リ ア ー でき て いる 児
童 は、 さ ら に伸 ば し てA ラ ンク に行 け る よ う に 、 基 準 に達 し て いな いC ラ ンク の児 童 は、 授 業 の後 半 に はB ラ ンク に到 達 で き るよ う に 指 導 し ま す 。 ︻事 後 評 価 ︼
特 に 、 今 後 こ の 児 童 を どう 導 く か、 指 導 の 必要 性 を 考 え て いき ま す 。 読 書 生 活 に発 展 さ せ た り 、 もう
一度 フィ ー ド バ ック さ せ て教 材 を 準 備 し て指 導 を 繰 り 返 し た り し ま す 。 ︵ 3 ︶ 評 価 を 活 か す た め に 継続 し て 記 録 を 毎 日 の指 導 に 生 か せ る評 価 の方 法 に つ いて 述 べ た いと思 いま す 。 ︻記 録 の取 り 方 ︼ 一般 的 に、 次 のよ う な 方 法 があ り ま す 。 ① テ ー プ な ど に音 声 を 記 録 す る。
発 音 が明 瞭 で あ る か、 イ ント ネ ー シ ョ ンに変 な 癖 は な い の か、 言 葉 選 び は 適 切 か、 同 じ 発 言 を く ど く
ど と 繰 り 返 し て いな いか な ど 、 話 し こと ば の適 切 さ の面 か ら チ ェ ック し た いも の です 。 ② ビ デ オ で、 映 像 や 音 声 を 記 録 す る。
一人 の児 童 に し ぼ って 撮 影 し 、 ど ん な 発 問 に反 応 し 、 活 動 し て いる か様 子 を 探 り ま す 。 ③ 板 書 計 画 や 発 問計 画 な ど授 業 の構 想 を ノー ト 等 に記 録 す る。
自 分 が授 業 で期 待 し て いる 姿 、 指 導 す べ き 内 容 、 配慮 す べき こ と を 明確 に し て お き ま す 。
④ 実 際 の板 書 、 教 師 の発 問 、 指 示 、 説 明 、 児 童 の発 言 、 様 子 な ど ノ ー ト 等 に記 録 す る。
特 に 成 長 が 見 ら れ た児 童 の反 応 や 次 時 以 降 の授 業 で 取 り 上 げ て いき た い発 言 、 押 さ え の足 り な か った 内 容 な ど、 な る べく 克 明 に メ モし て お き ます 。
こ のよ う な 根 気 強 い記 録 の継 続 に よ って、 指 導 者 と し て の自 分 自 身 の授 業 を 見 つめ ﹁こ こ は、 中 心 発
問 が ず れ て いた な 。﹂ と か ﹁も っと 別 の活 動 が合 っ て い たな 。﹂ と 自 己 評 価 す る こ と が でき ま す 。 さ ら に
何 年 も 記 録 を 積 み重 ね る こと によ って、 自 分 の実 践 を 振 り 返 る こと も 可 能 に な り 、 ﹁今 度 同 じ 教 材 を 使
︹ 池 田直 人︺
う とき に は 、 こ ん な 風 に指 導 し て み よ う 。﹂ と か ﹁二 年 生 の文 学 教 材 だ け れ ど 、 三 年 生 に は こ ん な 使 い
方 で与 え て みよ う 。﹂ と い った 次 の指 導 へ のヒ ント がう ま れ る場 合 が あ り ま す 。
第 四 章 説 明 ・論 説 に挑 む国 語 教 室
A 説 明 的 文 章 の 学習は、 低、中、 高 学 年 によ って 大 きく変 わ り ます。 これは、 子 ども の発達段 階 は
も ち ろ ん の こと 、 教 材 の内 容 が変 わ る こ と も 大 き な 原 因 です 。 教 材 の 系 統 を 見 て み る と、 ① 情 報 を 読 む
︵ 低 学 年 中 心 の読 み︶、 ② 論 理 を 読 む ︵ 中 学 年 中 心 の読 み︶、 ③ 筆 者 を 読 む ︵高 学 年 中 心 の読 み ︶ ︵ 注︶
と 、 内 容 が 変 化 し て いき ま す 。 こ こ で は 、 学 年 に 応 じ た学 習 活 動 が考 え ら れ ま す 。
一 低 学 年 の学 習 活 動
低 学 年 の教 材 の特 徴 と し て、 大 き な 挿 し 絵 、 同 じ 内 容 の 繰 り 返 し な ど が あ げ ら れ ま す 。 そ の特 質 を 生 かし た学 習 活 動 を 考 え て いき ま す 。 ︵l ︶ 教 材 の文 章 を 生 か し て ク イ ズ を 作 る
教 材 の文 章 を そ のま ま 生 か し て、 ク イ ズ にす る 活 動 です 。 ﹁いろ い ろな ふね ﹂ ︵ 東 京 書 籍 一年 ︶ を例 に
と って説 明 し ま す 。 こ の教 材 は 、 客 船 、 フ ェリ ー ボ ー ト 、 漁船 、 消 防 艇 の そ れ ぞ れ の役 割 に つ いて書 か
れ た も ので す 。 客 船 に つ い て の説 明 は ① ﹁き ゃ く せ ん は 、 た く さ ん の人 を は こ ぶ た め の ふ ね です ﹂、 ②
﹁こ の ふ ね の中 に は き ゃく し つや し ょく ど う があ り ま す 。﹂、 ③ ﹁人 は 、 き ゃく し つで休 ん だ り 、 し ょ く
ど う で し ょ く じ を し た り し ま す 。﹂ の 三 つ の段 落 に 分 か れ て いま す 。 こ の ﹁き ゃ く せ ん ﹂ の部 分 を 空 白
にし て 子 ど も た ち に 想 像 さ せ ま す 。 ① の段 落 を 最 初 に 提 示 す る と す ぐ に 答 え が 分 か る の で 、② 、 ③ の段
落 から 先 に提 示 す る こと も 考 え ら れ ます 。 そ う す る こと で、 ① の段 落 で最 初 に 分 か り や す く 説 明し て い
る 筆 者 の工 夫 に気 づ く こと が で き ま す 。 客 船 、 フ ェリ ー ボー ト 、 消 防 艇 を 知 ら な いこ とも 考 え ら れ る の
で、 教 材 文 の学 習 を も と に、 自 分 が知 っ て いる物 に つい て ク イ ズ を 作 ら せ る のも い いで し ょう 。 教 師 が
挿 し 絵 を 準 備 し 、 そ の中 か ら 選 ん で書 く こ と で ク イ ズ を 作 れ な い 子 ど も た ち への支 援 が で き そ う です 。
読 書 指 導 の 一環 と し て 取 り 組 ま れ て いる 、 ア ニ マシ オ ンも 参 考 にな る でし ょう 。 ︵2 ︶ 登 場 人 物 に な り き って 書 く
作 品 に出 てく る 物 にな り き って書 か せ る活 動 で す 。 ﹁じ ど う 車 く ら べ ﹂ ︵ 光 村 図 書 一年 ︶ を 例 に と って
説 明 し ま す 。 こ の 教 材 で は、 バ ス、 ト ラ ック、 ク レー ン車 の特 性 が 述 べら れ て いま す 。 こ の中 か ら 好 き
な 自 動 車 を 一つ選 び 、 そ の 自 動 車 にな り き って 自 慢 を さ せ ま す 。 例 え ば 、 ク レー ン車 の 場 合 は 、 ﹁お も
いも のを も て る﹂ ﹁う で が な が い﹂ ﹁あ し が つ いて いる ﹂ な ど 他 の車 に な い特 性 に気 づく こと が期 待 さ れ
ま す 。 ﹁ト ラ ック のよ う に 荷 物 は 運 べ な いけ れ ど ∼ ﹂ な ど、 他 の車 の特 性 と 比 較 し て自 慢 を す る 文 章 を
教 師 が 提 示 す る のも い いよ う です 。 教 材 に書 か れ て い る内 容 だ け で な く 、 自 分 の知 識 を 生 かし た自 慢 を
書 く こと も でき ま す 。 教 材 の挿 し 絵 に 、 吹 き 出 し を つけ た 形 の ワ ー ク シー ト を 作 成 し て た く さ ん の自 慢 を 書 か せる と、 喜 ん でや って いま し た 。
二 中 学 年 の学 習 活 動
中 学 年 の教 材 の特 質 とし て 、 筆 者 の論 の進 め 方 に従 って 、 段 落 相 互 の関 係 が 明 確 に な る こ と が あ げ ら れ ます 。 そ の特 質 を 生 か し た 学 習 活 動 を 考 え ま す 。 ︵1︶ 四 コ マ漫 画 を 描 く
場 面 ご と の つな がり を意 識 し て、 四 コ マ漫 画 にま と め て いく 活 動 です 。 ﹁ヤ ド カ リ とイ ソ ギ ンチ ャク ﹂
︵ 東 京 書 籍 四 年 ︶ を 例 に し て説 明 し ま す 。 ヤ ド カリ とイ ソギ ンチ ャク の共 生 に つ いて 書 か れ た 教 材 で、
写 真 や 挿 し絵 を ふ ん だ ん に 使 い、 読 み取 り を 容 易 に し て いま す 。 ヤ ド カ リ が イ ソ ギ ンチ ャ クを 自 分 の か
ら に 移 す 様 子 が 四 コ マの 挿 し 絵 で描 か れ て い る の で、 そ の挿 し 絵 に 吹 き 出 し を 入 れ る こ と か ら 始 め ま
す 。 ヤ ド カ リ にな り ﹁引 っぱ る﹂ ﹁は がす ﹂ ﹁か かえ る ﹂ ﹁お し 付 け る ﹂ の動 作 を 表 す 言 葉 を 入 れ な が ら 、
セリ フを 考 え さ せ ま す 。 タ コが イ ソギ ンチ ャク を つけ た ヤド カ リ を と ら え る 様 子 も書 かれ て いる の で、
そ の場 面 を 四 コ マ漫 画 に書 き 表 す こと で、 タ コがイ ソ ギ ンチ ャ ク を 嫌 う 理 由 を 理 解 さ せ る こ と も でき ま
す 。 教 材 の文 章 を セ リ フに 書 き 換 え る こ と で、 内 容 の理 解 が よ り 進 みま す 。 ︵2︶ 登 場 人 物 にな り き って 説 明 文 を 書 く
自分 が登場人物 ︵ 動 物 ︶ にな り き って、 教 材 を 書 き換 え て いく 活 動 です 。 内 容 が 大 き く 変 わ る こ と は
あ り ま せ ん が 、 語 り手 が 登 場 人 物 にな る こ と で教 材 の内 容 を 意 欲 的 に読 む こ と が 可能 にな り ま す 。 ど ん
な 場 面 が 考 え ら れ る で し ょう か 。 ﹁自 然 の か く し 絵 ﹂ ︵ 東 京 書 籍 三 年 ︶ で は 、 ﹁木 の み き に と ま った は ず
の セ ミや 、 草 のし げ み に下 り た は ず の バ ッタ を 、 ふ と 見 失 う こ と が あ り ま す 。﹂ の書 き 出 し で始 ま って
いま す 。 これ を 、 ﹁ふう 、 あ ぶ な か った 。 も う 少 し で鳥 に 見 つ か る と ころ だ った 。﹂ と バ ッタ の立 場 に 立
って 書 く こ と で 、 保 護 色 の意 味 を 実 感 とし て と ら え る こと が で き ま す 。 ﹁ウ ミ ガ メ の は ま を 守 る﹂ ︵ 東京
書 籍 四 年 ︶ で は 、 途 中 で ﹁御 前 崎 小 学 校 で は 、 小 学 生 も 、 ウ ミ ガ メ の保 護 に 取 り 組 ん で いま す 。﹂ と 小
学 生 の取 り 組 み を 紹 介 し て いま す が 、 こ れ を ﹁今 日 は、 ぼ く た ち の ウ ミ ガ メ当 番 の日 だ。﹂ と書 き 換 え
て 、 ウ ミ ガ メ を 育 て る た め に注 意 す る こ と を 子 ども た ち の言 葉 と し て書 か せ る こと で、 理解 を 深 め て い
き ま す 。 全 体 を 書 き 換 え る 場 合 、 部 分 を 書 き 換 え る 場 合 な ど教 材 に応 じ て 考 え ま す 。 ︵3︶ パ ン フ レ ット を 作 る
中 学 年 か ら 高 学 年 への橋 渡 し と し て と ら え ら れ る 学 習 活 動 で す 。 教 材 に書 か れ て いる内 容 を も と に パ
ン フ レ ット を 作 り ま す 。 そ の と き に、 書 か れ て いる 内 容 を す べ て同 じ よ う に取 り 扱 う の では な く 、 軽 重
を つけ て 詳 し く 書 く も の と簡 単 に 書 く も のと を 区 別 し ま す 。 筆 者 が 伝 え よ う と し た こと を 、 自 分 な り に
と ら え 再 構 築 し て い く こと が 目 的 に な り ま す 。 ﹁標 識 と 言 葉 ﹂ ︵ 光 村 図 書 三 年 ︶ で は、 身 の 回 り にあ る
様 々な 標 識 が紹 介 さ れ て いま す 。 写 真 を 使 いな が ら 教 材 に 紹 介 さ れ て い る標 識 だけ で な く 、 自 分 が 探 し
たり 作 った り し た標 識 を パ ン フ レ ット に 載 せ る こと も で き ま す 。 ﹁ツ バ メ がす む 町 ﹂ ︵光 村 図 書 三 年 ︶ で
は ツ バ メ の巣 の数 と 場 所 の調 査 に つ いて 述 べ ら れ て い る の で、 巣 の 数 や 場 所 に つ いてグ ラ フ や表 、 地 図
に書 き表 し て パ ン フ レ ット に ま と め る こと が で き ま す 。 パ ン フ レ ット です の で、 視 覚 的 な 効 果 も 考 え な がら 作 成 す る こ と が 大 切 です 。
三 高学年 の学習活動
高 学 年 の教 材 の特 質 と し て 、 筆 者 の存 在 が 大 き く な る こと 、 教 材 の内 容 だ け に留 ま ら ず 自 分 で 情 報 を
収 集 し て 、 自 分 な り の考 え を 構 築 し て いく こと を 目 的 と し て いる こと が あ げ ら れ ま す 。 そ の特 質 を 生 か した学習 を考えます。 ︵1︶ 新 聞 を作 る
中 学 年 の パ ン フ レ ット 作 り から 発 展 し た学 習 活 動 です 。 教 材 に書 かれ て いる 内 容 の紹 介 だけ で な く 、
自 分 で調 べ た 内 容 や 自 分 が 考 え た こと を 付 け 加 え な が ら、 新 聞 の 形 式 に ま と め るも ので す 。 新 聞 の形 式
は 自 由 です が 、 取 り 上 げ る内 容 を 事 前 に決 め て お く 必 要 が あ り ま す 。 ﹁動 物 の体 ﹂ ︵ 東 京 書 籍 五年 ︶ を 例
に と っ て説 明 し ま す 。 こ の教 材 は、 自 分 が住 む 環 境 に適 応 し な が ら 生 き て いる 動 物 た ち を 紹 介 し た 教 材
です 。 寒 い地 方 に 住 む動 物 、 暑 い地 方 に住 む 動 物 の二 つに 分 け て説 明 がな さ れ て お り、 代 表 的 な 動 物 を
選 び記 事 に書 き や す く な って い ま す 。 ま た 、 ﹁寒 い地 方 に 住 む動 物 は 体 が丸 っこ く 、 体 の外 に 出 っ張 っ
て いる 部 分 が 少 な い﹂ と いう 筆 者 の考 え に対 し 、 そ の 正 当 性 を 自 分 で 調 べ て 記 事 に 書 く こ と が でき ま
す 。 一枚 の新 聞 に 仕 上 げ る以 外 に、 時 間 を 追 って の変 化 を 何 日 分 か の記 事 の 形 にし てま と め る こ と も 考
え ら れ ま す 。 ﹁宇 宙 か ら ツ ルを おう ﹂ ︵東 京 書 籍 六 年 ︶ で は、 ツ ル の 越 冬 地 を 探 す 調 査 の様 子 が時 間 を 追
って書 か れ て いま す 。 そ の移 動 の様 子 を 、 毎 日 の記 事 と し て時 間 に沿 って書 く こと が で き ま す 。 毎 日 の
見 出 し を 工 夫 し た り 、 記 事 ご と に 文 体 を変 え な が ら 書 く こ とも でき ます 。 事 実 を 伝 え る記 事 の形 を 取 り
な が ら も 、 多 様 な 書 き 方 があ る こと に気 づ き 、 そ れ を 生 か し て いく 絶 好 の機 会 に な り ま す 。 ︵2 ︶ 複 数 教 材 の活 用
筆 者 に よ る 論 の進 め 方 の違 いを 学 ぶ た め の学 習 活 動 です 。 同 一学 年 対 象 の教 材 を 二 つ準 備 し て論 の進
め 方 を 比 較 す る や り 方 も あ り ま す が 、 こ こ では 異 学 年 の教 材 を 活 用 す る 場 合 に つ い て説 明 し ま す 。 六 年
生 を 例 に 取 る と 、 ﹁人 間 と ロ ボ ット ﹂ ︵ 東 京 書 籍 六 年 ︶ の作 品 構 成 を 学 習 す る 場 合 、 今 ま で に 学 習 し た
﹁ヤ ド カ リ と イ ソ ギ ンチ ャ ク﹂ や ﹁ウ ミ ガ メ の は ま を 守 る ﹂ ︵四 年 生 の教 材 ︶ の 作 品 構 成 を 参 考 に 読 み
と って いく 学 習 が 考 え ら れ ま す 。 下 学 年 の教 材 な の で、 読 み取 り が 容 易 で あ り 、 比 較 でき る基 準 を 持 っ
て 作 品 構 成 を 検 討 す る こと が で き ま す 。 今 ま で に学 習 し た こ と を 自 分 の 力 と し て 活 用 し て いき ま す 。
四 発 展 的 な 学 習 ︵1 ︶ 社 会 事 象 へ の興 味 の広 が り
説 明的 文 章 を 学 習 し た後 に、 様 々な 社 会 事 象 に興 味 を 持 つ こと が 期待 でき ます 。 そ こ で 、 そ の 興 味 ・
関 心 を 伸 ば す た め にも 日頃 の活 動 が大 切 です 。 説 明 的 文 章 に 慣 れ 親 し む た め に 、 新 聞 や雑 誌 、 本 な ど の
文 字 情 報 だけ で な く 、 テ レビ の ニ ュー スや ビ デ オ、 イ ンタ ー ネ ット な ど の視 覚 的 な 情 報 な ど たく さ ん の
機 会 が あ る と 思 いま す 。 そ の機 会 を と ら え 、 さ ら に 興味 を 持 た せ る た め に、 ス ピ ー チ や 本 の紹 介 の中 に
﹁知 ら せ た い こと ﹂ を テ ー マに発 表 す る機 会 を 持 ち た いも の です 。 掲 示 板 を 活 用 し な が ら 一人 一人 が 調
べた こ と を 紹 介 し 、 一つ のテ ー マ に つ いて みん な で資 料 を 持 ち 寄 り 、 テ ー マの解 決 に 向 かう 活 動 を 設 定 す る こ と で 、 子 ども た ち の興 味 を 伸 ば す こ と が で き ます 。 ︵2 ︶ 書 く 活 動 への 広 が り
筆 者 の論 の進 め方 を 知 る こ と で 、 自 分 の考 え を書 く と き の参 考 にす る こと が で き ま す 。 国 語 科 の学 習
に限 らず 、 総 合 的 な 時 間 の学 習 や 、 社 会 科 、 理 科 の学 習 で調 べ た こ と を 紹 介 す る と き に参 考 にし ま す 。
し か し 、 形 式 だけ を 真 似 て文 章 を 書 く こと は難 し いよ う です 。 教 材 文 を 学 習 す る と き に、 筆 者 が何 を 考
え て論 を 組 み立 て た か を き ち ん と学 ぶ こ と が、 書 く 活 動 へと 広 げ て いく た め の前 提 条 件 に な り そう で す。
以 上 の学 習 活 動 は 学 年 段 階 を 想 定 し て 分 け て いま す が 、 教 材 の内 容 に よ って も 分 け ら れ る と 思 い ま
す 。 ﹁な り き って書 く ﹂ 活 動 は 、 低 学 年 か ら 高 学 年 に わ た って 取 り 組 む こ と が で き る 活 動 です 。 教 材 の
文 章 を そ のま ま 使 う こと から 始 ま り 、 筆 者 の意 図 を 汲 みな が ら 言 葉 を 加 え て いく こと の で き る 子 ども の
育 成 を 目 指 し ま す 。 活 動 の種 類 を でき る だ け 多 く 知 る こと も 大 切 です が 、 教 師 の意 図 に従 っ て適 切 な 活 動 を 選 択 す る こ と が 大 切 です 。
説 明的 文 章 は 、 筆 者 の論 理 を 学 ぶ学 習 で も あ り ます 。 様 々な 事 象 に出 会 った と き に、 自 分 が も った 疑
問 を 解 決 し よ う と いう 意 欲 や 、 解 決 す る た め のプ ロ セ スを 考 え 出 す こ と の でき る 子 ども に育 って ほし い
と 願 いま す 。 表 現 活 動 を 取 り 入 れ た 学 習 は 、 表 現 のお も し ろ さ に ば か り 目 が 行 き が ち です が 、 教 師 は そ
︹ 本 村 秀 一郎 ︺
の中 で 子 ど も が 考 え る 場 を 設 定 す る こ と が 大 切 です 。 読 む こ と 、 書 く こと だけ に 止 ま ら ず に 、 思 考 力 の
育 成 を 目 指 す と いう 将 来 的 な 面 も 視 野 に お い て指 導 に 取 り 組 み た いも の です 。
二 、 三 年 ﹄ 東 洋 館 出 版 社 一九 九 二
長崎伸 仁 ﹃ 新 しく拓 く 説 明的文章 の授業﹄ 明治図 書出 版 一九 九七
参考 文献 石田佐 久 馬 ﹃ 説 明 文教 材 による授 業 の進 め方 ・深 め方一、
注
A 質 問 に回 答 す る 上 で、一つ のキーワー ド が考え ら れ ます。 そ れ は ﹁子 ども の意 欲 ﹂です。読解
力
が つけ ば 、 よ り 読 書 を 楽 し む こ と が で き ま す が、 読 解 力 がな け れ ば 、 読 書 を 楽 し め な いわけ では あ り ま
せ ん。 例 え ば 、 四年 生 の説 明 文 教 材 ﹁ムサ サ ビ のす む 町 ﹂ で は 、 教 師 用 指 導 書 に ﹁段 落 相 互 の関 係 を 考
え て 、 文 章 の中 心 的 な 事 柄 に気 づ く 。﹂ ︵ 理 解 工︶ と いう 読 解 力 の育 成 を めあ て と し て掲 げ て あ り ま す
が、 ﹁ム サ サ ビ のす む 町 ﹂ は 、 段 落 相 互 の関 係 を 考 え て、 文 章 の中 心 的 な 事 柄 に気 づ かず に読 ん でも 、
十 分 に楽 し め る教 材 です 。 読 解 力 育 成 のめ あ て を 掲 げ る こ と で、 学 習 意 欲 の減 退 に つな が る こ と も多 い
の で は な い でし よう か。 子 ど も の意 欲 が 減 退 す れ ば 力 は身 に つく も の で はあ り ま せ ん。 読 解 力 を つけ さ
せ る た め に、 子 ど も に意 欲 を ど う 持 た せ る か が 指 導 の 工夫 のし ど こ ろ と な って き ま す 。
こ こ で は ﹁子 ど も の意 欲 ﹂ を キ ー ワ ー ド に 取 り 組 ん だ実 践 例 を 示 し て み ます 。 ︿単 元 ﹀ ムサ サ ビ し ん いち の話 を 書 こう 。 ﹁ムサ サ ビ のす む 町 ﹂ ︵ 東京書 籍四年 下︶ ︿目 標 ﹀ ︵ 読 解 力 育 成 に関 わ る も の︶
・ま と め の段 落 を 中 心 に 段 落 相 互 の関 係 や 段 落 の役 割 に 気 づ く こ と が で き る 。 ︿指 導 計 画 ﹀ ︵︻ ︼は、 読解 力 育 成 に 関 わ る 目 標 ︶ 第 一次
・全 文 を 通 読 し 、 意 味 段 落 を 考 え な が ら 発 表 会 で の担 当 場 面 を 決 め る 。 ︻ 教 材 文 の大 き な 意 味 のま と ま り に 気 づ く こと が でき る ︼ 第 二次 ・説 明 文 の書 き 換 え の方 法 を 知 る。 ︻ 筆 者 の視 点 に気 づ き 、 視 点 を 変 え て 文 章 を 読 む 方 法 を 知 る ︼ 第三次
・た め し 発 表 会 に向 け て、 自 分 たち の担 当 場 面 を ムサ サ ビ の視 点 か ら 書 き 換 え る。
︻ 教 材 文 を 、 自 分 な り の こ と ば に言 い換 え な が ら 読 み取 る こ と が で き る ︼ 第四次
・た め し 発 表 会 で 自 分 た ち の 担 当 場 面 を 発 表 し 、 全 体 で、 わ か り や す さ や 楽 し さ に つ いて 話 し 合 う。 ︻段 落 相 互 の関 係 や 段 落 の役 割 に 気 づく こと が で き る ︼ 第 五次 ・担 当 場 面 を 合 わ せ て、 一冊 の本 に 仕 上 げ る 。
︻ 教 材 文 の文 章 構 成 を 見 直 し 、 段 落 相 互 の関 係 に 気 づ く こと が で き る ︼ 第 六次
・動 物 が出 て く る 、 いろ いろ な 説 明 文 を 読 む 。 ︻ 読 む 目 的 に応 じ た 説 明 文 の選 択 が でき る︼ ︽子 ど も が書 き換 え た 文章 ︾
生 出 神 社 は な あ 、 車 通 り の ひ ど い国 道 に 面 し た小 さ な 神 社 な ん だ 。 神 社 の両 方 は 人 家 で、 お いら
のえ さ 場 で あ る う ら 山 と の間 に 、 は ば 二 十 メー ト ル の川 が流 れ て いる ん だ ぜ。
夕 方 、 神 社 の大 木 にあ る木 の穴 か ら で た 数 匹 の お いら た ち は 、 特 に 目 立 つ高 い ケ ヤキ の木 の枝 に
登 り 、 次 々 に飛 ん で 川 を 渡 り 、 向 こう 岸 のえ さ場 の森 に出 か け て 行 く ん だ ぜ。 五 十 メー ト ル以 上 を 飛 ぶ見 事 な 飛 行 な ん だ よ 。
朝 に な って お いら がえ さ場 の森 か ら神 社 の森 に も ど る と き に は 、 大 変 な 工夫 が いる ん だ ぜ 。 え さ
場 の森 は 神 社 の森 よ り かな り 低 いと ころ にあ る ん だ 。 そ のた め 、 お いら た ち は 木 の枝 伝 い に山 の上 に で て 、 高 いと ころ の木 の枝 か ら 飛 行す る ん だ ぜ 。
子 ども が書 き換 え た 文 章 は、 指 導 計 画 の第 三 次 で学 習 し た 子 ど も の文 章 です 。 子 ども た ち は ﹁う ろ ﹂
﹁こず え ﹂ ﹁ひ とき わ ﹂ な ど の ﹁ムサ サ ビ のす む 町 ﹂ な ら で は の 語 句 を ﹁木 の穴 ﹂ ﹁木 の枝 ﹂ ﹁特 に目 立
つ﹂ と 自 分 た ち な り の言 い方 に書 き 換 え て い ます 。 ﹁う ろ ﹂ の意 味 が そ のま ま ﹁木 の 穴 ﹂ にあ て は ま る
と は 限 り ま せ ん が 、 子 ども た ち は 自 分 た ち が 獲 得 し て いる こと ば の 中 か ら 、 一番 ぴ った り く るも のを 選
ん で ﹁木 の穴 ﹂ と書 き 換 え て いま す 。 ま た 、 ﹁車 通 り の ひ ど い﹂ と いう こ と ば は、 教 材 文 で は ﹁多 い﹂
と な って いま す 。 ﹁ひ ど い﹂ と ﹁多 い﹂ で は 意 味 が違 いま す が 、 ム サ サ ビ の立 場 で 考 え た と き 、 車 が た
く さ ん 通 る こと は大 変 困 った こ と に 違 いな い と考 え て 、 子 ども た ち は ﹁ひ ど い﹂ に 書 き 換 え た の です 。
書 き 換 え を 行 う こ と で 、 自 分 た ち な り の読 み 取 り が確 か な も のに な って き て い る こと がわ か り ま す 。 読 解 力 が身 に つく 学 習 に な った の で は な いか と 考 え ます 。
教 材 化 を 工 夫 す る 際 に、 教 師 の導 き を 表 面 に出 さず に 子 ど も た ち が各 自 の力 や ペー ス に応 じ て読 み進
め る こ と が でき る よう に留 意 し て みま し た 。 教 材 本 文 が いか に も 自 分 た ち の力 で 読 み取 れ た か のよ う な
満 足 感 を 味 わ わ せ る こと で、 説 明 文 学 習 に 抵 抗 感 を持 た ず に熱 中 さ せ る こ と が で き る の で は な いか と考
え た か ら です 。 こ こで は、 ﹁ム サ サ ビ のす む 町 ﹂ を 、 ムサ サ ビを 話 者 と し た ﹁ム サ サ ビ し ん いち の話 ﹂
に書 き 変 え 、 一冊 の本 に仕 上 げ る と いう 目 標 を 子 ど も に持 た せ ま し た。 一冊 の 本 を 作 る た め に は、 場 面
分 け と し て の意 味 段 落 分 け が必 要 と な っ てき ます し 、 文 章 を 書 き 換 え る た め に は 、 本 文 の 詳 細 な 読 解 が
︹ 副島 伸一︺
必 要 に な ってき ます 。 そ う いう 状 況 の中 で、 子 ど も た ち は主 体 的 に学 習 に取 り 組 む よ う に な り 、 学 習 に 熱 中 し 、 読 解 力 が身 に つ いて いく の で は な い か と 考 え ま す 。
A で き ます。 言 語 作 品 は、 国 語 教 材 と し て の価 値 が一つ だ け だ と は考 えら れ ま せ ん。 同 じ 教 材 で も
学 年 が 異 な れ ば 、 教 材 と し て の意 義 は 異 な る で し ょう 。 同 じ学 年 でも 、 ど んな 単 元 に位 置付 け る か で 言
語 作 品 の働 き が決 ま ってき ま す 。 ど ん な 指 導 目 標 な の か が第 一に重 要 です 。 児 童 に ど の よう な こ と ば の
力 を つけ た いの か を 、 明 確 に 見 定 め る こと か ら始 め ま す 。 教 師 用 指 導 書 の ま ま で は、 目 の前 の児 童 に ぴ
ったり し て いる と は 限 り ま せ ん。よ く 児 童 を 観 察 し 、そ の実 態 と 授 業 時 間 の制 約 と の関 係 で指 導 の内 容 と 方 法 を 決 め ま す 。 教 材 ﹁動 物 の体 ﹂ ︵ 増 井 光 子 著 ︶ に例 を と り ま す 。
① 話 題 内 容 に だ け 興 味 を も って 読 む 傾 向 が 強 い児 童 に は 、 文 章 の組 み立 て 、 段 落 と 段 落 と の関 係 に 注 意 し て内 容 を 読 む こと を 目 指 し ま す 。
前 半 の部 分 で は 、 動 物 の体 形 、 体 格 、 毛 皮 と 環 境 と の関 係 に つ いて 、 寒 い地 方 に住 む 動 物 と 暖 か い地
方 に住 む 動 物 を 取 り 上 げ て説 明 し て いま す 。 後 半 の部 分 で は 、 動 物 の体 内 の仕 組 み と 環 境 と の関 係 に つ
い て、 砂 漠 に住 ん で い る ラ ク ダ を 例 に し て、 いろ いろ な 角 度 か ら 細 か く 説 明 し て います 。
﹁体 形 ﹂、 ﹁体 格 ﹂、 ﹁毛 皮 ︵ 皮 ふ︶﹂ ﹁体 内 の仕 組 み ﹂ な ど のキ ー ワ ー ド に着 眼 し た 読 み で、 文 章 の 組 み
立 て が 見 え て き ま す 。 ま た、 ﹁体 形 ﹂ と ﹁体 格 ﹂ を 比 較 し て読 む こ と で、 内 容 も 読 め る し 、 書 き 手 の こ と ば の使 い分 け に も 気 づ か せ ら れ ま す 。
② 物 語 に は 興 味 を 示 し、 ど ん な 文 章 も 自 分 を 没 入 し が ち な 児 童 に は 、 述 べ方 に 注 意 し 、 事 例 と意 見 を 区 別 し て内 容 を 読 む こと を 目 指 し ま す 。
ど んな 例 で、 ど ん な 述 べ方 を し 、 何 を 言 お う と し て い る の か 。 そ れ は な ぜな のか を 考 え ま す 。
・﹁∼都 合 が よ い こ と な の であ る 。 実 際 に 寒 い地 方 にす む ホ ッキ ョク キ ツネ は ⋮﹂、
・﹁∼暖 か い地 方 にす む も の に く ら べ て 体 格 が 大 き い と いわ れ て いる 。 ニホ ン シ カ を 例 に と って み る と、 北 海 道 の エゾ シ カ ⋮ ﹂、
・﹁寒 い地 方 にす む 動物 だけ で は な い。 先 に あ げ た フ ェネ ック な ど も 、 ⋮ ﹂
③ 文 章 を 段 落 に分 け 、 見 出 し を 付 け る こ と で、 文 章 の要 旨 を つか む 読 み方 を 身 に つけ た 児 童 であ れ
ば 、 語 彙 に注 目 し 、 修 飾 語 や 文 末 の表 現 に 注 意 し 、 主 情 的 な 結 論 で し め く く った 筆 者 は 、 な ぜ こ の文 章 を 書 い た のか を 読 み 取 る よ う 導 き ま す 。 ・﹁︵ 動 物 の体 の形 と気 候 と の間 に は )、 お も し ろ い関 係 があ る 。﹂
・﹁︵∼ず ん ぐ り し て ま る っこ い のは )、 ⋮ た い へん 都 合 が よ い ︵こ と な の であ る ︶。﹂ ・﹁( そ れ は )、 ⋮ 最 高 のけ っさ く であ る ︵と いえ る だ ろう ︶。﹂
こ のよ う に 、 実 態 か ら の指 導 目 標 を 明確 に す る こ と で 、 学 習 指 導 の内 容 と 方 法 を し ぼ る こ と が でき ま
︹ 岩 永 悟 ︺
す 。① ∼③ のす べ て を 授 業 で行 う こと も あ る でし ょう し 、 時 間 に よ って こ の中 か ら ど れ かを 選 択 す る こ と も でき ま す 。
◆参 考文 献 はQ 21を参 照
A一 本 に 出合う 喜 び
本 と の出 合 い は、 児 童 に夢 を 与 え 、 人 格 を 与 え 、 生 き 方 を 与 え ま す 。 出 合 った本 の主 人 公 と と も に、
児 童 は、 悩 み、 喜 び、 同 じ 心 の旅 を 通 し て成 長 す る こと でし ょう 。 読 ん だ 本 の数 だ け 様 々な 人 生 の楽 し
︵ 周 囲 の大 人 ︶ が 意 図 を 持 って、 本 と 出 合 わ せ な い と、 児 童 の 周 囲 に は、 本 の 存 在 が な か っ た
さ を 味 わ い、 本 によ って 、 人 生 が豊 か に な り 、 生 き 方 が 変 わ りま す 。 教師
り 、 偏 った も の にな った り し ま す 。
本 に出 合 わ せる こ と で何 を ね らう の か、 目 指 す 児 童 像 を 明 確 に 持 つべ き で す 。
読 解 学 習 で の目 的 ・読 書 指 導 で の目 的 、 広 げ て いく上 で の効 果 な ど 目 的 に 応 じ て 展 開 の仕 方 は 異 な り ます。
︵1︶ 読 解 し た も のを ヒ ント に 読 書 を 広 げ て 行 く 場 合
︵ 導入型 ︶
︵ 発展型 ︶
こ こ で は 、 三 通 り紹 介 し ま す 。
︵2︶ 読 書 を 導 入 ﹁動 機 付 け ﹂ と し て読 解 に入 る場 合
︵3 ︶ 読 解 す る た め に 、 並 行 し て 読 書 を 行 う 場 合 ︵ 並 行型︶
いず れ に し ても 、 読 書 と 読 解 が 相 乗 効 果 を も たら し、 読 み が深 ま り 、 読 書 の ジ ャ ン ルが 広 が る よ う 留
意 します。
読 解 は 、 文 章 表 現 や 音 声 表 現 と の関 連 、 読 書 は 日 常 の読 書 生 活 へと 発 展 さ せ る こと を 考 慮 に 入 れ ま
す 。 教 師 が 目 標 を 明 確 に 持 つこ と、 児 童 の実 態 を 把 握 す る こと が大 切 です 。 ① 児 童 の読 書 傾 向 の実 態 を 掴 む 。 ② め ざ す 児 童 像 を 設 定 す る。 ③ 教 材 と 関 連 し た書 籍 の調 査 を す る。 ④ 日常 に生 かす 方 法 を 意 図 し て お く 。 ︵1︶ 発 展 型 の例 教 材 文 に 関 連 し た本 を 集 め 、 自 分 の読 書 生 活 の ヒ ント と し ま す 。
・き つね が で てく る話
︵ 同じ作者 ︶
︵ 同じ登 場人物︶
︵ 同 じ テー マ︶
教 材 ﹃ご ん ぎ つね﹄ を 学 ん だあ と 、 三 つ の コー スを 選 び ︵ 複 数 も 可 ︶ 読 書 マ ップ を 作 り ま す 。
・新 美 南 吉 が 書 いた話
・ひ と り ぼ っち の話 、 気 持 ち が な かな か 通 じ な い話
様 々な 本 を 集 め、 読 む こと で ﹃ご んぎ つね ﹄ の登 場 人 物 の心 情 や 置 か れ て い る 状 況 、 内 容 や テ ー マと を 比 べ、 自 身 の思 いや 生 活 にも 重 ね て読 み 味 わ う こ と が でき ま す 。
は じ め、 三 つの コー スは 一応 決 め てお き ま す が、 慣 れ て く れ ば 、 自 分 で新 た な コー スを 作 る のも 可 能
で す 。 ま た 、 マ ップ の位 置 付 け ︵貼 り 型 、 結 び付 け 方 ︶ は 児 童 に 任 せ ます 。 マ ップ を 作 る 際 、 児童 の目 的 意 識 ・相 手 意 識 が大 切 で す 。
自 分 は どう いう 意 図 で 本 を み つけ 、 み つけ た本 を ど う いう 状態 の だ れ に 紹 介 し た い か、 そ の本 と ど の 本 を 関 連 し て読 む と よ り 楽 し い のか な ど の意 識 を 持 って 取 り 組 ま せま す 。
本 の帯 作 り 、 本 の 紹 介 新 聞 な ど へ発 展 し ても 楽 し め ま す 。 本 の帯 は 、 本 のあ ら す じ や心 に 残 った こと を 読 み手 を 惹 き 付 け る キ ャ ッチ コピー で ま と め ます 。
[見 つけ 方 ] 作 者 椋 鳩 十
お 話 の よ さ さ が し の た び①
[ 本 の名 前 ] わ ら いん ぼ き ょう り ゅ う
[ 見 つけ 方 ] 主 人 公 恐 竜
お 話 のよ さ さ が し の た び②
︻マップ の例 ︼
[ 本 の名 前 ] 金 色 の 足 あ と
か ぜ が な お った つぎ の 日 、 は こ の か み を ど ん ど ん
[ひ と こ と コ マー シ ャ ル]
お や ぎ つね と こぎ つ ね が は な れ て て さ い ご に あ っ
め く った ら す こ し ち ゃ いろ の た ま ご が で て き た 。 そ
[ひ と こ と コ マー シ ャ ル]
た と き か ぞ く そ ろ って 帰 る と き の 足 あ と が 金 色 だ っ
れ は 大 き な た ま ご だ った 。 つぎ の 日 、 が ら こ ろ と ん
れ て いた 。
ど う こ ん と 音 が な っ た。 み る と き ょう り ゅう が 生 ま
た。
︵ 2 ︶ 導 入型 の例
物 語 文 、 説 明 文 な ど で内 容 的 に 児 童 の現 在 の生 活 実 態 と か け 離 れ て お り 、 読 解 に 入 る 前 に補 助 的 な 読 み物 が 必 要 な 場 合 に設 定 し ま す 。
「い ち お し の 本 」 か ら始 め る 読 書 マ ッ プ
例 教 材 ﹃ヒ ロ シ マの う た ﹄ ﹃石 う す の う た ﹄ な ど
テ ー マが 戦 争 に関 わ る 場 合
教 材 文 に 入 る前 に戦 争 関 連 の本 を 読 み聞 か せ、 互 い
に調 べ読 み し 、主 人 公 の置 か れ て い る状 態 を 把 握 し ま
す 。 こ の際 、 留 意 す る こと は、 偏 った情 報 で はな く 、
な る べく 多 岐 に わ た る も のを 紹 介 す る こ と です 。 そ の
た め に は 、 導 入 の際 に、 ﹁戦 争 ﹂ に つ いて の知 識 実 態
を こと ば 集 め な ど を 通 し て調 べ、 児 童 の知 識 とし て欠
け て い る と ころ を 重 点 的 に補 充 し ま す 。 教 材 は原 爆 が
素 材 です が 、 特 攻 ﹃す み れ 島 ﹄、 東 京 大 空 襲 ﹃猫 は生 き
て い る﹄、 枯 れ 葉 剤 な ど 戦 争 に よ る害 ﹃べ ト ち ゃ ん ド
ク ち ゃ ん か ら の手 紙 ﹄、中 国 残 留 日本 人 孤 児 、疎 開 、 配
給 な ど児 童 が 未 知 の こと 、 伝 え な け れ ば な ら な い こと
は数 多 く あ り ま す 。ま た 、戦 争 は 過 去 のこ と だ と思 って
いる 児童 も多 い の で、 新 聞 報 道 な ど にも 注 目 さ せ ます 。 ︵3︶ 並 行 型 の例
教 材 を 読 む 際 に並 行 し て関 連 図 書 を 読 ん だ 方 が効 果 的 な とき に 行 いま す 。
説 明 文 に お いて は 、 同 じ 題 材 の本 を 資 料 ︵ 補 助 教 材 ︶ と し て読 み比 べを す る と 、 読 みも 深 ま り 、 筆 者 の思 いに よ る説 明 文 の書 き 方 の 違 い にも 気 づ か せ る こと が で き ま す 。
教 材 ﹃ヤド カ リ のす み か え﹄ は 、 あ か ね 書 房 の ﹃ヤド カ リ ﹄ な ど と 、 教 材 ﹃た ん ぽ ぽ の ち え ﹄ は ﹃た
ん ぽ ぽ ﹄ な ど と読 み 比 べま す 。 物 語 文 に お いて は 、 特 に シ リ ー ズ も の の場 合 は 、 同 じ テー マ、 同 じ 作 者 の本 を 並 行 し て 読 む こ と で、 自 分 な り の迫 り 方 が つか め ます 。
ア ー ノ ル ド ・ロー ベ ル の ﹃お 手 紙 ﹄ ﹃お ち ば ﹄ や ガネ ット の ﹁エ ル マー シ リ ー ズ ﹂ な ど は、 読 み 比 べ る こと で楽 し さ も 倍 増 す る し 、 主 題 に 迫 る こ と が でき ま す 。
二 読 書 生 活 へ の誘 い
先 に 述 べ た 三 つ の展 開 で 読解 と読 書 を つな げ た 後 の活 動 が 大 切 です 。 授 業 で 読 む だ け では な く、 いか
に 自 分 の読 書 生 活 へと 生 かす か が そ の後 の読 書 の在 り 方 を 左 右 し ます 。 五 つ の例 を 紹 介 し ま し ょう 。 1 読 書 マ ップ を 書 き た め て 、 掲 示 す る。 2 本 の コ マー シ ャ ルを 作 り 紹 介 す る 。 3 本 か ら 取 り 出 し た こと ば を こと ば 図 鑑 に ま と め る。 4 異 学 年交 流 で本 の紹 介 を す る 。 5 読 書 祭 り な ど で おす す め の本 紹 介 を す る 。
これ ら は 、 あ く ま で 一つ の例 で あ って、 他 に も 様 々な 表 現 ・紹 介 の方 法 が 考 え ら れ ま す 。 自 分 が 読 ん
で 得 た 喜 び を 友 達 にも 分 け てあ げ る、 ﹁あ の人 に こ の本 を ﹂ と いう 目 的 を 持 って 本 を 探 す 、 と いう 意 識
を 育 て る こ と を ね ら い ます 。 ︻本 の コ マー シ ャ ル の 例 ︼
武宮秀 鵬
[ 本 の名 ] ほ し に な った ふ ね
本 の コ マー シ ャ ル
[ 作 者 ] お す す め コ マー シ ャ ル
[こ の 本 を 選 ん だ わ け ]
ふ ね が いろ いろ な 動 物 な ど を の せ て 大 き な ほ し に な る と いう の が、 す ご いと 思 った から 。
[ 本 を 読 ん で考 え が 変 わ った こ と ]
小 さ な ふ ねも 大 き く な って ほ し に な る こ と が で き る と いう こ と 。
ゆ め が な い と か き ぼう が な い 人 に 読 ん でも ら いた い。
[ 読 ん であげ た い人]
︻こ と ば 図 鑑 の例 ︼
でも
ついらく
[い み ・イ メ ー ジ ]
[み つけ た と ころ ] ﹃ぼ う し ﹄
﹃一人 っき り ﹄
い や い いよ
と ても
[つか い方 ]
き み のお かげ
﹃ぼ う し ﹄
か なし い
おね が い
すば らし い
しん ゆう
あ り がとう 。
き み の お か げ で こけ ず に す ん だ よ 。
[こ と ば ] お か げ
ぴ った り
うれしい
は っけ ん ! す て き な こ と ば
いう わ け さ
お かげ
こ のま ま
な にも かも そ の こと
[み つけ た と こ ろ ] ﹃一人 っき り ﹄
[こ と ば ] 元 気 づ け て あ げ よ う
とも だち
[い み ・イ メ ー ジ ]
は っけ ん ! す て き な こ と ば
し んゆう
﹃一人 っき り ﹄
いや 、 い いよ
か わ いそ う な
﹃ぼ う し ﹄
と って も た のし い 日
て あ げ よ う 。 い つも や さ し い か え る く ん だ か ら 。
か え る く ん が 一人 っき り で か わ い そ う だ か ら 元 気 づ け
[つか い方 ]
一人 っき り で さ び し い人 を 元 気 づ け てあ げ る
くれた
元気 づけ てあげ よう 大 いそ ぎ ひ っぱ り あ げ ま し た
︻異 学 年 交 流 、 読 書 祭 り の例 ︼
同 じ テ ー マ、 違 う テ ー マ の本 を 異 学 年 で読 み 合 い、 本 の 紹 介 を し 合 いま す 。 紹 介 方 法 を本 に合 わ せ て
ぺー プ サ ー ト や 紙 芝 居 、 読 み聞 か せ、 劇 な ど と し 、 読 書 祭 り な ど に も つな げ て 全 校 にも 広 げ る こ と が で
き ま す 。 異 学 年 で 交 流 す る こ と で、 お 互 い の読 書 傾 向 や 感 想 の持 ち 方 ・表 現 の 方 法 な ど を 学 び合 う こと ができます。
三 生 き 方 を 与 え る 本
本 を 手 にし た と き の目 的 は様 々 だ と 思 いま す 。 安 ら ぎ た い、 興 味 が あ る こ と に つ いて 調 べ た い。 暗 唱
し た い。 必 要 に迫 ら れ て読 ま ね ば な ら な い、 な ど 。 読 み方 も た だ黙 っ て読 む、 読 ん で き か せ る、 必要 な こ と を メ モす る 、 コピー し て 参 考 資 料 にす る、 な ど があ り ま す 。
た だ 、 実 践 を 通 し て大 事 な こ と は 、 友 達 と 読 書 体 験 を 分 け 合 う こ と で様 々な ジ ャ ン ル、 多 様 な 読 み
︹ 権 藤 順 子 ︺
方 、 考 え 方 に触 れ 、 自 分 の読 書 傾 向 、 考 え 方 、 表 現 の仕 方 、 そ し て生 き 方 さ え も 変 容 す る 可 能 性 があ る と いう こ と です 。 意 図 を 持 って 本 と出 合 わ せ た いも の です 。
参考 文献 八 一号 所収 二 〇〇 四
白 石寿 文 ﹁子ども の読 書生 活を 広 げ る︱教 師 がどう か かわ るか、 佐賀 県 の例 に学 ぶ︱ ﹂ ﹃月 刊国 語教 育 研究 ﹄ 三
A 絵本の読 み 聞 か せ が お勧 め です。 ︵1 ︶ 急 が ば 回 れ
理 解 力 を 育 て た い と考 え れ ば 、 聞 く こ と に し ても 読 む こと にし て も 、 そ の技 能 を 訓 練 的 に身 に つけ さ
せ る 方 法 は、 数 限 り な く 存 在 す る で し ょう 。 し かし 、 理 解 力 の基 盤 に、 対 象 を 理 解 し た いと いう 欲 望 の
存 在 が欠 か せ ま せ ん。 ジ ム ・ト レリ ー スは 、 従 来 の国 語 教 育 を 次 のよ う に 批 判 し て いま す 。
﹁わ れ わ れ が、 子 供 に読 み書 き を 教 え る た め に ぼう 大 な 費 用 と 時 間 を 注 ぎ 込 ん で い る に も か かわ ら
ず 、 そ の子 供 た ち が 読 ま な い こと を 選 ぶ の だ と し た ら 、 何 か が ま ち が って いる の だ と結 論 す る ほ か
な い であ ろ う 。 わ れ わ れ は 子 供 た ち に 、 いか に 読 む か を 教 え る こ と ば か り に 熱 中 し 、 彼 ら に読 み た いと いう 気 持 ち を 教 え る のを 忘 れ て し ま った ので あ る。﹂ ︵注 1︶
さ ら に 、 ジ ム ・ト レリ ー ス は 、 自 己 の経 験 や様 々な デ ー タ や 実 践 事 例 を 引 き な が ら 、 読 み 聞 か せ の必 要 性 を 訴 え て います 。
﹁あ な た が ク ラ ス の 子供 た ち に本 を 読 む時 間 を さ いた か ら と い って 、 カ リ キ ュラ ムを お ろ そ か に し
た こ と に は な ら な い。 読 む こ と は 、 カ リ キ ュラ ム であ る 。 す べ て の学 習 と 教 授 の第 一要 素 は、 言 語
であ る。 言 語 は 、 授 業 を 伝 達 す る 道 具 で あ る だ け でな く 、 生 徒 が 私 た ち に 返 し てく れ る 成 果 そ のも
の であ る︱ そ の こ と ば が 算 数 の言 語 であ れ 、 理 科 の 言 語 であ れ 、 あ る いは 歴 史 の言 語 であ れ 、 同 じ
であ る。 そ の意 味 で 、 読 み聞 か せ を す る 教 師 は、 子 供 たち が よ り よ い聞 き 手 に な る こと を 通 し て、
よ り 高 い言 語 技 能 を 発 達 さ せ る 手 助 け を し て いる と いえ る。﹂ ︵ 注 2︶
日 本 で も 、 読 み聞 か せ が 様 々 の効 果 を あ げ て いる 実 践 例 は多 く あ り ます 。 私 は 、 子 ど も た ち の理 解 力
を 育 て る た め に、 読 み 聞 か せ の導 入 が欠 か せな いと 考 え て いま す 。 な か でも 、 絵 本 と そ の読 み 聞 か せ の
効 果 を 訴 え ま す 。 ジ ム ・ト レ リ ー ス は 絵 本 の 読 み聞 か せ に つ いて 、 ﹁絵 本 は 小 学 校 か ら 高 校 ま で のす べ て の ク ラ ス の読 み聞 か せ リ ス ト に 加 え る べき で あ る 。﹂ と 述 べ て いま す 。 ︵2 ︶ 絵 本 の ひ み つ ① ま る い大 き な 正 面 顔
絵 本 の主 人 公 は 、 多 く の場 合 、 ま る い大 き な 顔 の持 ち 主 です 。 絵 本 の主 人 公 のま る い大 き な 顔 は、 低
い目 鼻 の位 置 な ど と 合 わ せ て、 ベ ビー シ ェ マと 呼 ば れ 、 見 る者 の心 を 開 き 、 共感 を 覚 え さ せ る機 能 を 持 つと 言 わ れ て いま す ︵ 注 3︶。
子 ど も に と って 絵 本 の主 人 公 の ま る い大 き な 顔 は 、 大 人 ︵ 養 育 す る 立 場 ︶ に 成 長 し よ う と す る本 能 を
刺 激 す る と同 時 に 、 乳 児 期 の顔 を 見 つめ 合 う コミ ュ ニケー シ ョ ンの記 憶 に つな が って いま す 。 人 間 が ま
る い大 き な 正 面 顔 に 注 目 し、 共 感 し て し ま う のは 、 人 間 の生 存 を か け た 習 性 な の です 。
絵 本 の主 人 公 の顔 は、 ﹁か わ い い﹂ と意 識 す る 以上 に深 く 強 く 聞 き 手 ︵読 み手 ︶ の心 を 活 性 化 し ま す 。
赤 ち ゃん と 同 じ く 絵 本 の主 人 公 も 、 こち ら が 見 れ ば 、 じ っと こ ち ら を 見 つめ て いて く れ る の です 。 絵 本
の主 人 公 の 正 面 を 向 いた ま る い大 き な 顔 は、 主 入 公 の心 理 を 理 解 し よ う とす る 力 を 自 然 に引 き出 す 仕 掛
け と 言 え ま す 。 絵 本 の主 人 公 のま る い大 き な 顔 が 、 子 ども の聞 く 力 を 引 き 出 し 、 理 解 力 を 引 き 出 す 仕 掛 け の 一つな のです 。 ② 画面配 置と色彩
︵ 注 4 ︶。 ア ニメ でも 、 映 画 でも 、 テ レ ビ ド ラ マで も 、 主 人 公 は 左 側 に 立 ち 、
映 像 の画 面 の中 で、 左 右 で は 左 が有 利 、 右 が 不 利 に感 じ る傾 向 が あ り 、 上 下 で は 、 上 が有 利 、 下 が不 利 に感 じ る傾 向 が あ り ます
そ の正 面 顔 が ア ップ で映 し 出 さ れ る こと が多 い の です 。
絵 本 でも 、 主 人 公 が左 側 に 描 か れ る 傾 向 が あ り ま す 。 ま た、 ず っと 左 側 に 描 か れ て き た主 人 公 が 画 面
の右 側 に移 れ ば 、 主 人 公 に 何 か不 利 な 状 況 が 起 こ って いる こ と を 示 し て いま す 。 逆 に 、 ず っと 画 面 の下
︵右 ︶ の方 に 描 か れ て いた 主 人 公 が 上 ︵ 左 ︶ の方 に移 れ ば 、 主 人 公 が 有 利 な 立 場 に な った こ と 、 願 いが
叶 った こと な ど が表 さ れ る こ と にな り ま す 。 つま り 、 主 人 公 の 位 置 が、 聞 き 手 か ら 共 感 を 引 き 出 し た
り 、 主 人 公 の状 況 を 把 握 す る 助 け を し た りす る の です 。 つま り 、 絵 本 の主 人 公 の 配 置 は 主 人 公 のま る い
大 き な 正 面 顔 と と も に、 主 人 公 の心 理 に共 感 し 理 解 し よう とす る 力 を 引 き 出 す 仕 掛 け にな って いま す 。
ま た 、 絵 本 では 、 主 人 公 が 赤 い体 だ った り 、 赤 い服 を 着 て いた り 、 赤 い何 かを 持 って い た り と いう よ
う に 、 赤 が 中 心 的 な 存 在 と し て 用 いら れ る こ と が多 く あ り ま す 。 赤 は 一番 目 立 つ色 であ り 、 注 目 し やす
い色 です 。 ま た 赤 は 白 と の コント ラ スト の中 で最 も 目 立 ち ま す 。 絵 本 で は 、 主 人 公 を 赤 、 背 景 を 白 と い う よ う に使 わ れ たり 、 題 名 を 赤 、 背 景 を 白 と いう 具 合 に 使 わ れ ま す 。
赤 ち ゃ ん が 最 初 に知 覚 す る 色 は 赤 だ と 言 わ れ て いま す ︵ 注 5 ︶。 赤 は 人 間 の生 存 に関 わ る 色 な ので す 。
絵 本 に おけ る 赤 の使 用 も 、 子 ども を 主 人 公 に 集 中 さ せ 、 子 ども が主 人 公 の心 理 に 共 感 し 理 解 し よ う とす
る 力 を 引 き 出 す 仕 掛 け に な って い る の です 。 ③ 絵 本 モ ンタ ー ジ ュ
ま る い大 き な 正 面 顔 と主 人 公 の 配 置 と 色 彩 だ け な ら ば 、 一枚 の 絵 画 と 変 わ り があ り ま せ ん。 絵 本 の核
心 は 、 絵 本 を め く る こ と に よ って生 じ る絵 本 モ ンタ ー ジ ュにあ る と 言 って も よ いで し ょう 。 絵 本 モ ンタ
ー ジ ュと は、 一枚 の絵 画 を 見 る だ け で は得 ら れ な い印 象 や 心 理 的 効 果 を 、 複 数 の絵 画 を 組 み合 わ せ る こ と に よ って得 さ せ る仕 掛 け です ︵注 6 ︶。
例 え ば 、 絵 本 ﹃に ゃ ー ご﹄ ︵ 宮 西 達 也 作 鈴 木 出 版 ) で あ れ ば 、 猫 のま る い 大 き な 顔 を 常 に 左 上 に描
︵ 読 者 ︶ が主 人 公 の物 語 を 追 体
く 画 を 組 み 合 わ せ る こ と で、 聞 き 手 ︵ 読 者 ︶ を 猫 に 共感 さ せ、 猫 の〓 藤 を 共 有 さ せ る 仕 掛 け に な って い ま す 。 実 は、 絵 本 と は こ の絵 本 モ ンタ ー ジ ュの仕 掛 け に よ って、 聞 き 手
験 す る こ と で、 主 体 的 真 実 を 見 つけ た り 、 自 己 の真 の欲 求 に至 った り す る 装 置 な の です 。 絵 本 モ ンタ ー
ジ ュこそ 、 子 ど も が主 人 公 の心 理 に共 感 し 理 解 し よ う と す る力 を 引 き 出 す 仕 掛 け の核 心 な の で す 。 ④ 右 脳と左脳
子 ど も が 自 分 で絵 本 を 読 む場 合 、 絵 と文 字 と に同 時 に 注 目 す る こと は 困 難 です 。 松 居 直 が ﹁絵 本 は 、
子 ど も に読 ま せる 本 で は な く、 "大 人 が 子 ど も に読 ん であ げ る本 " で あ る﹂ と 指 摘 す るよ う に 、 絵 本 の
読 み 聞 か せ こそ 、 子 ど も が 絵 本 の絵 と 物 語 と を 全 く 同時 に享 受 す る こ と を 可 能 に す る の です 。
脳 が情 報 を 処 理 す る シ ステ ム と し て、 右 脳 が音 楽 や 映 像 イ メ ー ジ を 処 理 し 、 左 脳 が 言 語 や 数 値 を 処 理
す る と 言 わ れ て いま す 。 絵 本 の読 み聞 か せ と は 、 絵 が 目 を 通 し て 右 脳 を 刺 激 し 、 物 語 が耳 を 通 し て左 脳
を 刺 激 す る シ ステ ムな の です 。 し か も 、 絵 に よ る右 脳刺 激 と、 物 語 によ る 左 脳 刺 激 が 全 く 同 時 に 生 起 す
る のが 、 絵 本 の読 み聞 か せ と いう シ ス テ ム の特 質 です 。 ア ニメ ー シ ョ ンと の相 違 は 、 絵 本 の 場 合 、 絵 が
スト ップ モー シ ョ ンで あ り 、 物 語 か ら そ の前 後 の動 き を イ メ ー ジ し な け れ ば な ら な い点 にあ り ま す 。
絵 本 の読 み 聞 か せを 聞 く こ と は 、 右 脳 と 左 脳 を 同時 に 活 性 化す る こ と を 容 易 に し 、 言 語 情 報 の み か ら
︵ 十 一歳 ま で︶ に、 絵 本 の読 み 聞 か せ と いう 刺 激 を 十 分 に 与 え ら れ る こ
豊 か に登 場 人 物 や 語 り 手 の心 理 を 理 解 し、 具 体 的 イ メ ー ジを 思 い浮 か べ る 基 礎 に な り ます 。 ピ ア ジ ェの言 う 具 体 的 操 作 期
と が 、 そ の後 の形 式 的 操 作 期 への基 礎 と な る で し ょ う 。 小 学 校 高 学 年 以 上 の年 齢 にな って も 、 文 字 の み
の文 章 の理 解 力 が不 足 し て いれ ば 、 や は り 、 絵 本 の読 み聞 か せ か ら 再 スタ ー トす べき です 。 ︵3 ︶ 読 み 聞 か せ の効 果︱ 母 親 語︱ 正 高 信 男 は ﹁母 親 語 ﹂ を 次 のよ う に 紹 介 し て いま す 。
﹁フ ァー ガ ソ ンと いう 人 は 、 六 つ の異 な る 言 語 文 化 圏 で母 親 の 赤 ん 坊 への語 り か け の比 較 検 討 を 行
った 結 果 、 そ れ ぞ れ は お 互 い に ま った く 交 渉 がな いに も か かわ ら ず 、 いず れ に お いて も 母 親 の語 り
か け に は 共通 の特 質 が あ る こ と を 発 見 し て 、 母 親 語 と 命 名 し た の であ った 。 つま り 、 ごく ふ つう に
ほ か の成 人 に 話 を す る と き と は ま っ た く 違 って 、 お と な が 赤 ち ゃ ん に 話 し か け る と き に は 、 ︵ 1︶
こと さ ら に声 の調 子 ︵高 さ ︶ を 高 く す る か 、 ︵2︶ ま た そ れ と 同 時 に声 の抑 揚 を 誇 張 す る 傾 向 が 顕 著 と な る、 と いう の で あ る 。﹂ ︵ 注 7︶
言 語 の違 いを 越 え 、 人 間 に と って ﹁母 親 語 ﹂ が言 語 や 社 会 性 の獲 得 の 原 点 にな って い る こ と は 、 想 像
に難 く あ り ま せ ん 。 日本 語 に お いて も 同 様 の こ と が確 か め ら れ て いま す 。
実 は 、 子 ど も への絵 本 の読 み聞 か せ に お い ても 、 そ の読 み声 に ﹁母 親 語 ﹂ と類 似 の特 質 が 見 出 さ れ る
の です 。 つま り 、 絵 本 の読 み聞 か せ は、 読 み手 か ら ﹁母 親 語 ﹂ を 引 き 出 す の で す 。 絵 本 の 読 み声 が、 高
い声 と 抑 揚 の誇 張 と いう ﹁母 親 語 ﹂ の特 徴 を 有 し て い る こ と は 、 子 ど も の聞 く 力 を 引 き 出 し 、 言 語 発達
や 社 会 性 の獲 得 に 効 果 があ る と 考 え ら れ ま す 。 こと ば と大 人 への信 頼 を 回 復 し 、 刺 激 を 過 激 化 さ せ て い
く テ レ ビや ゲー ムに 負 け な い、 映 像 と こと ば と の理 解 力 を つけ る た め に、 絵 本 の読 み聞 か せ は 必 須 のも の であ る と 考 え ます 。
つに ち が いあ り ま せ ん。
︹ 余郷 裕次 ︺
絵 本 と そ の読 み聞 か せ に よ って、 こと ば と 教 師 に対 す る 興 味 と 信 頼 とを 回 復 し 、 強 化 す る こ と が でき れ ば、 聞 く 力 を は じ め と す る こ と ば の理 解 力 が
︵ 八 七 ∼八 八 頁 ︶
注 1 ジ ム ・ト レ リ ー ス著 ・亀 井 よ し 子 訳 ﹃ 読 み聞 か せ ー こ の素 晴 ら し い世 界 ﹄ 高 文 研 一九 八 七 四 五 頁 注 2 注 1 に同 じ
注 4 藤本 朝巳
﹃ 絵 本 は い か に 描 か れ る か ﹄ 日 本 ェデ ィ タ ー ス ク ー ル出 版 部 一九 九 九
注 3 山 口真美 ﹃ 赤 ち ゃん は顔を よ む 視 覚 と心 の発達 学 ﹄紀伊 國屋 書店 二〇〇 三 注 5 小島 尚美 編著 ﹃ 色 の事 典﹄ 西東 社 二〇 〇 二
九 九三 一〇 二頁
注 6 長 谷 川 集 平 ﹃絵 本 づ く り ト レー ニ ング ﹄ 筑 摩 書 房 一九 八 八
注 7 正高 信 男 ﹃0歳児 がこと ばを獲 得す る とき﹄ 中央 公 論社
注
第 五 章 こ と ば ・文 字 の魅 力 に 満 ち た 国 語 教 室
A一 こ と ばを宝 物 に変え る
自 分 が学 習 で 出 会 った 大 切 に し た い こ と ば ︵ あ る人 にプ レ ゼ ント し た い。 こう いう 場 面 で使 いた いな
ど) を 書 写 と いう 文 字 と 向 き 合 う 場 で表 す こ と で、 こ と ば に 様 々 な角 度 か ら 光 を 当 て 、 こ と ば を 自 分 の
文 字 の字 形 、 配 字 配 列 、 墨 の
み つけ た 宝 物 と し て輝 か せ る こ と がで き ま す 。 こ と ば の学 習 と し て の書 写 指 導 は、 次 のよ う な も の が考 え られます。 ︵1︶ ﹁書 道 ﹂ と いう 日 本 の 伝 統 文 化 を 大 切 に す る姿 勢 を 培 う た め←
筆 の使 い方 に 慣 れ 、 必 要 な と き
濃 淡 も 含 め た 日本 の文 字 の美 し さ、 日 本 語 の良 さ に出 会 い、 一つ 一つの 文 字 や こ と ば を 大 事 に す る態 度 を 育 て ま す 。 ︵2︶ 目 的 に 応 じ て適 切 な こ と ば を 自 在 に 書 け る能 力 に 培 う た め←
一つ の作 品 を 作 り 上 げ る 中 で、 良 い意 味 で の緊 張 感 が
に 適 切 な 筆 記 用 具 で書 け る 力 や 速 書 力 を つけ ます 。 ︵3︶ ﹁書 ﹂ に よ っ て自 分 の 心 も 耕 す た め←
味 わ え 、 情 緒 が落 ち 着 き ます 。
書 写 の時 間 は 、普 段 の学 習 や 生 活 と 違 って 文 字 とゆ っく り 向 き 合 う こ と が で き ま す 。
一つ 一つ の文 字 を て いね い に細 か く 観 察 し 、 文 字 の意 味 や 効 果 を 吟 味 す る こ と が で き ま す 。 お 互 い の
文 字 を 見 合 って 書 体 を 鑑 賞 し 、 書 の楽 し さ を 味 わ う こ と が でき ます 。 そ の人 の書 に 対 す る姿 勢 も 判 断 し やす いでしょう。
二 よ さを 味 わ う
具 体 的 な 方 法 を 紹 介 し ま す 。 これ ら は 、 書 いた 後 、 掲 示 す る の か、 展 覧 会 を す る の か、 相 手 に贈 呈 す
︵5 ︶
︵4 ︶
︵3 ︶
︵2 ︶
︵1 ︶
感 謝状を書く。
キ ャ ッチ フ レ ー ズ や 標 語 を 書 く 。
か る た を 作 る。
好 き な こと ば を 書 く 。
好 きな 詩 を 書 く 。 ( 墨絵付 き)
自 分 の 決意 を 書 く。
る の か、 生 かし 方 を 明 確 に 児童 に示 し て お く こと が 大 切 です 。
︵6 ︶
取 材ノート
﹃発 見 ブ ッ ク ﹄ を 書 く 。
︵7 ︶
こ こ で 、 ︵1 ︶は 学 期 初 め 、 (6 )は 学 期 終 わ り 、 ︵7 ︶は 、 日 々 の 課 題 と い う よ う に 、 年 間 の 位 置 付 け を
明 確 にし て お く こ と が 大 切 です 。
︵1︶ 自 分 の決 意 を ペ ンや 小 筆 で 書 く
自 分 の 決 意 と は 、 学 年 や 学 期 初 め や宿 泊 訓 練 な ど の行 事 に参 加 す る と き の自 分 が頑 張 る め あ て の こ と で す 。 こ れ ら は 、 書 いた 後 、 全 員 が 読 め る 場 所 に掲 示 し ま す 。
① め あ て を 名 前 ペ ン ︵ラ ッシ ョ ンペ ン︶ で 中 心 、 配 字 配 列 に気 を 付 け 、 掲 示 し た と き 見 や す い大 き さ に 書 く 。
② 宿 泊 訓 練 な ど の中 心 と な る めあ て ︵ 達 成 、 挑 戦 な ど ︶ に ア ク ロ ステ ィ ック でよ り 具 体 的 な め あ て を作 る。 ③ 自 己 紹 介 を ア ク ロス テ ィ ック で行 う 。
︵2 ︶ 好 き な 詩 を 書 く
好 き な 詩 の 一文 字 一文 字 を て いね いに 、 小 筆 で 視 写 す る こ と で、 詩 のイ メー ジ ・主 題 に合 った文 字 の
大 き さ 、 形 、 墨 の濃 淡 、 配 字 配 列 な どを 意 識 し て 工 夫 し ま す 。 作 品 は廊 下 や 掲 示 板 な ど に 貼 り 、 展 覧 会 を 行 います 。 ① 好 き な 詩 を 選 ぶ際 、 好 き な 場 面 、 情 景 、 こ と ば を 観 点 と す る。
② 半 紙 一枚 ( 長 い詩 は 二 枚 )にま と め る
よ う に 文 字 の大 き さ ・配 字 に留 意 す る 。
③ 作 品 の 一つ の形 を 学 び、 完 成 の 喜 び
を 味わ う た め、作 者 名、臨 書 者 名 を
入 れ 、 自 分 の名 の 所 に 押 印 さ せ る。
︵図 工 で 自 作 の印 を 作 る の も 良 いし 、
赤 で手 書 き で 書 か せ ても 良 い。︶ 余 白
に 詩 にあ った 墨 絵 を 加 え る 。
④ 好 き な 詩 の 発 展 と し て 自 作 の詩 で も
楽し める。
︵ 3 ︶ 好 き な こと ば を 書 く
自 分 の座 右 の銘 と な る よう な こ とば ︵漢
字 語 句 、 ま た は故 事 成 語 、 こ と わ ざな ど )
を色 紙に書き ます。作 品は全員 で鑑賞しま
す 。 縮 小 コピ ー で全 員 分 を 印 刷 、 配 布 ︵ ま
た は 、 文 集 な ど に載 せ て も 良 い︶ し ま す 。
① 色 紙 の ど の位 置 に好 き な こ と ば を 書
く の か、 文 字 の 大 き さ 、 書 体 、 墨 の
︵4 ︶ か る た を 作 る
濃 淡 な ど と合 わ せ て考 え 、こと ば に対
す る 自 分 の心 情 が よ く 表 れ る よ う 工 夫す る。
② 裏 に、 そ の こ と ば の意 味 や 選 ん だ わ
け 、文 字 に対 す る 自 分 の思 いを 小 筆 で 書 く。
③ こ の場 合 も 、自 分 の名 と押 印 に つ いて
も 位 置 や 大 き さ に留 意 さ せ る。
語 彙 拡 充 で集 め た こ と ば ・読 解 の 学 習 で 取 り 出 し た こ と ば ・使 っ て み た い こ と ば を か る た に 表 し ま
す 。 こ と ば を テー マ に合 った 五 ・七 ・五 に表 現 し 、 文 字 を て いね いに 小 筆 な ど で書 く こ と で、 み つけ た 文 字 が生 か さ れ ます 。 ︵5 ︶ キ ャ ッチ フ レ ー ズ ・標 語 を 作 る
運 動 会 や ○ ○ 祭 り のキ ャ ッチ フ レ ー ズ 、 挨 拶 運 動 や 花 い っぱ い の 標 語 な ど、 全 校 の 人、 地 域 の 人 が 見
た と き の こ とを 考 え 、 ひき つけ る 文 字 に な る よう に工 夫 し て ペ ンや 小 筆 な ど で書 き ま す 。 ︵6 ︶ 感 謝 状 を 書 く
学 期 の終 わ り や、 地 域 の 人 に お 世 話 に な った と き に 、 感 謝 の意 を 相 手 が 喜 ぶ こと ばを 多 く 使 って賞 状 の形 に表 し ま す 。 賞 状 に合 った 言 葉 遣 い にも 留 意 さ せ ま す 。
︵ 7 ︶ 取 材 用 発 見 ブ ックを 書 く
日常 の取 材 活 動 と し て ミ ニス ケ ッチ ブ ック を 持 た せ、 心 に 残 った 物 や こ と ば を コメ ント 付 き スケ ッチ
︹ 権 藤 順子 ︺
に ま と めま す 。 コメ ント は 、 物 の説 明 、 印 象 、 そ れら を 表 す 詩 や物 語 な ど です 。 紙 一枚 一枚 が 作 品 にな る よう に表 し ま す 。
参考 文献 五 味太郎 ﹃ことわざ 絵本 ﹄岩崎 書店 一九 八 六
川嶋 優他 ﹃ 小学 生 ことば の達 人 にな る辞典 ﹄ 三省 堂 一九 九 八 学 研辞典 編 集部 編 ﹃新版 恥 をか かな いため の言葉 の作 法辞典 ﹄ 学習 研究 社 二 〇〇 二
A 表 記 学 習 指 導 上考え てお き た い こ と は 、日常、 児童 が書く文 章 の中 で 段 階 的 に 指 導 が必 要 な も の
で 、 間 違 いを 指 摘 す る ので は な く 、 正 し く使 え て いた ら 大 いに誉 め 、 他 の児 童 に 紹介 し て いく よ う な 教
師 の態 度 が大 切 だ と いう こと で す 。 ま た 、 分 解 的 な 指 導 と な ら ず 、 こ と ば の ま と ま り と し て 指 導 し ま
す 。 画 一的 な 指 導 とな らず 、 楽 し み な が ら学 べ る指 導 法 を こ こ で は いく つか 紹 介 し ま す 。
一 平 仮 名 の指導
平 仮 名 の獲 得 状 況 に つ い て、 早 め に児 童 の実 態 を つか み、 そ れ に応 じ た 目 標 を 設定 し 、 個 に 応 じ た指
︵ 例 あ さ が お ← あ ☆ ☆ お ︶。 上 位 の 児 童 は 同 じ 平 仮 名 が 頭 に つく 言 葉 を 集 め ま す
導 が 必 要 で す 。 下 位 の 児童 は 一つ の平 仮 名 に つ いて字 形 や 発 音 を 知 り 、 習 得 し て いな い平 仮 名 に つい て は記号 で表 します
︵例 あ り ← あ た ま ← あ さ が お ︶。 文 字 が 増 え て いく 階 段 ゲ ー ム な ど 。 平 仮 名 の指 導 で大 切 な のは 、 文
字 指 導 に 入 る前 に 絵 や 図 を 使 って 文 や 単 語 と し て の 文字 の概 念 を 十 分 に与 え る 段 階 を と って、 一音 に 一
文 字 と いう 分 解 的 な 指 導 に な ら ず 、 意 味 の ま と ま り と し て指 導 す る こ と で す 。 ま た 、 表 記 上 の間 違 い が
発 音 ・発 声 の問 題 と 関 連 し て い る 場 合 も 多 い の で、 発 音 ・発 声 と 関 連 し た 指 導 が 必要 と な って き ま す 。
二 漢 字 の指 導 ︵1︶ 漢 字 を 読 む
学 年 配 当 漢 字 だ け で な く 、 六 カ年 で学 習 す る 漢 字 に つ い て は教 室 に掲 示 し た り 、 プ リ ント に し て 児 童
に 配 布 し て お き ま す 。 読書 な ど で 読 め た漢 字 に つ いて は 印 を つけ さ せ、 一週 間 の単 位 で チ ェ ック し て、
読 め る よ う に な った漢 字 を 発 表 さ せ ま す 。 ま た 、 入 門 期 に お いて は 、 絵 と 結 び付 け た 漢 字 カ ルタ 、 漢 字
字典 な ど を 作 成 さ せ て 、 表 意 文 字 であ る こ と を 認 識 さ せ る こ と が 必 要 です 。 ︵2︶ ワ ープ ロを 活 用 す る
パ ソ コ ン によ る作 文 も 一般 化 し つ つあ り ま す 。 書 き 手 は 画 面 表 示 さ れ た 同 音 ・同 訓 の漢 字 群 か ら 選 択
す る だ け で、 筆 順 、 字 形 な ど と い った も の は 意 識 さ れ ず 、 書 き 手 に と って 重 要 な ポ イ ント は 同 音 異 義
語 、 同 訓 異 字 な ど の ﹁識 別 ・選 択 ﹂ の 力 と な って き ま す 。 漢 字 力 の定 着 を ﹁識 別 ・選 択 力 ﹂ に重 点 を 置
い て考 え た 場 合 、 読 め な い漢 字 ・同 音 異義 語 の中 か ら 適 切 な語 句 を 選 ぶ と き 、 文 章 の前 後 や 部 首 な ど に
よ る予 測 を し 、 辞 典 を 使 って確 認 を す る こ と で 、 漢 字 は 使 い こな す も の であ る と いう 自 覚 が 生 ま れ て き
ま す 。 そ の こ と が 、 実 の場 で生 き る漢 字 の力 に つな が り ま す 。 そ の よう な 考 え を 持 つこ と も これ か ら の
漢 字 指 導 で は必 要 で す 。 ワー プ ロの漢 字 変 換 機 能 は 使 用 頻 度 の順 で 選 択 し て いき ま す 。 漢 和 辞 典 ・漢 字
字 典 学 習 の発 展 と し て、 ワー プ ロで は 識 別 し に く い同 音 異 義 語 ︵ 異 常 と 異 状 、 特 徴 と特 長 な ど︶ を 文 脈
の中 で 考 え さ せ ま す 。 ね ら いは 、 漢 字 字 典 ・国 語 辞 典 を さ っと 開 く 態 度 を 育 成 す る た め で す 。 作 文教 材
の年 間 計 画 を 練 り 直 し 、 ワー プ ロ使 用 の作 文単 元 を 設 け ま す 。 未 習 の漢 字 で も 変 換 機 能 を 使 い、 数多 く
取 り 入 れ さ せ ます 。 部 首 を 分 解 し た り 、 文 章 の前 後 の つな が り から そ の漢 字 の意 味 を 予 測す る態 度 を 育
成 し て いき た いも の で す 。 ︵3︶ 国 語 辞 典 ・漢 字 字 典 を 使 う
同 音 異 義 語 な ど を 使 った 言 葉 遊 び 的 な ワ ー ク 集 は数 多 く 出 版 さ れ て いま す 。 国 語 辞 典 や 漢 和 辞 典 ・漢
字 字 典 の使 い方 を 教 科 書 単 元 だけ で取 り 扱 う の でな く 、 ゲ ー ム学 習 を 取 り 入 れ て考 え て みま す 。 国 語 辞
典 の使 用 は 三 年 、 漢 字 字 典 の使 用 は 四 年 の単 元 です が、 二 年 で画 数 、 三 年 で 部 首 に つ いて の指 導 は 行 わ
れ る の で、 学 年 にあ った 教 材 を 用 意 す れ ば 低 学 年 でも 可 能 です 。 い つも 手 元 に 置 か せ て 読 み物 と し て も 楽 し いも のだ と いう 意 識 を 育 てま す 。 ︵4︶ ﹃オ リ ジ ナ ル漢 字 辞 典 ﹄ を 作 る
新 出 漢 字 は 漢 字 カ ー ド に整 理 さ せ ま す 。 書 き 込 む 内 容 は 、 読 み 方 ︵音 ・訓 ︶、 筆 順 、 画 数 、 成 り 立 ち
︵ 字 源 ︶、 使 い方 、 覚 え 方 です 。 スト ック さ せ学 期 ご と に 整 理 し 、 辞 典 化 し て いき ま す 。 字 源 、 使 い方 、
覚 え 方 は でき る だ け 児 童 の創 造 性 を 引 き 出 す よ う に指 導 し ま す 。 文 字 を 新 し く 作 って いく と い った学 習
も 児 童 に と って は 興 味 深 いも の に な り ま す ︵例 木 が 二 つで 林 、 三 つ で森 、 で は 四 つで は ?︶。 ま た 、
字 源 を 知 る こ と で 、 漢 字 の意 味 の 理解 が 定 着 し 、 言 葉 の学 習 の興 味 が 広 が って き ま す 。 教 材 文 の中 で 取
り 立 て て 指 導 し た い語 句 に つ いて 、 ﹁漢 字 な り た ち 辞 典 ﹂ や ﹁漢 字 に 強 く な る 本 ﹂ な ど で 調 べ た 字 源 に
つ いて話 し て や り ま す 。 さ ら に 、 書 字 力 を 高 め る た め に、 オ リ ジナ ル漢 字 辞 典 を 使 って漢 字 ゲ ー ムを 作
ら せ ます 。 ス テ ップ 式 ド リ ル学 習 は確 か に ﹁書 字 力 ﹂ の定 着 のた め に は 有 効 です が、 そ れ だ け で は どう
し ても 無 味 乾 燥 で機 械 的 にな り や す いも の です 。 そ こ で ス テ ップ 学 習 の発 展 と し て、 児 童 が 個 人 で ス ト
ック し て い る 漢 字 カ ー ド を も と に、 字 源 や 部 首 を 利 用 し た 漢 字 ゲ ー ム ︵ 例 ﹁漢 字 の足 し 算 ・引 き 算
へん と つく り の合 体 ゲ ー ム﹂ ﹁色 に関 係 す る 漢 字 を 集 め よ う 色 に 関 係 す る 部 首 探 し を し よ う ﹂ ﹁漢 字 ビ
ン ゴ﹂ ﹁漢 字 宝 箱 を 作 ろう 同 じ 部 首 の漢 字 を 集 め よ う ﹂ な ど ) を 作 ら せ、 児 童 相 互 で解 答 し あ う 場 を 設け ます。 ︵5︶ 書 字 力 の 定着
教 科 書 単 元 にそ った ステ ップ 式 の漢 字 ド リ ル は 数 多 く 出 版 さ れ て い ま す 。 ﹁書 字 力 ﹂ の定 着 の た め に
は 確 か に 有 効 です 。 し か し 教 科 書 の教 材 文 だ け で 配 当 漢 字 を 全 部 網 羅 で き な い た め、 ﹁こ と ば ﹂ と か
﹁漢 字 ﹂ と か いう コラ ム で大 量 に 出 現 し て いる のが 現 状 です 。 これ は 、 学 習 指 導 要 領 自 体 が 量 的 な指 示
に止 ま っ てお り 、 漢 字 に つ いて の体 系 的 な 指 導 に 触 れ て いな い の が 原 因 です 。 平 均 し て 三 〇 % 程 度 の量
であ り、 指 導 時 間 も 短 いの で、 児 童 に と って そ の漢 字 を 覚 え る の は、 か な り 苦 痛 を 伴 いま す 。 ﹁書 く こ
と﹂ の指 導 が 二年 間 に わ た り 、 漸 次 取 り 扱 う こと が前 提 で あ る な ら 、 漢 字 の ﹁書 き ﹂ の指 導 は教 科 書 単
元 か ら 離 れ 、 当 該 学 年 の 配 当 漢 字 の音 読 み、 訓 読 みを 網 羅 し た 独自 のド リ ルを 作 成 す る こ と で、 量 の片
寄 り を 解 消 で き ま す 。 四学 年 を 例 に と るな ら 、 新 出 漢 字 、 読 み替 え 漢 字 、 全 三 四 〇 字 を 一〇 字ず つ34 ス
テ ップ に分 け ま す 。 一月 に 3 ス テ ップ ず つを 目 標 に し、 ど の ステ ップ か ら 取 り 組 ん でも よ い こと にす れ
ば 、 機 械 的 に 覚 え こ ま さ れ る ド リ ル学 習 のイ メー ジ が 幾 分 か で も 取 り 除 か れ る の で はな いで し ょう か 。
ま た 、 ﹁書 き 取 り ﹂ 問 題 だけ でな く そ の ステ ップ に出 て い る 漢 字 を 使 っ て、 ど れ だ け 文 章 が 書 け る か と
い った作 文 問 題 を 作 って おけ ば 、 単 に 暗記 的 な 学 習 と は な らず 、 漢 字 は 使 いこ な す も ので あ る と いう 自 覚 を 児童 に持 た せ る こと が で き ま す 。
︵6︶ 日常 の中 で漢 字 を 使 わ せ る
日 記 指 導 を 漢 字 指 導 と 結 び付 け ま す 。 日 記 の 文章 中 で 、 使 った 漢 字 の 数 に つき 漢 字 ポ イ ント を 設 け ま
す 。 一週 間 の単 位 で 漢 字 ポ イ ント を 累 積 さ せ 表 彰 し ま す 。 ま た、 漢 字 日 め く り カ レ ンダ ー な ど を 作 成
し 、 そ の 日 の 日記 に 必 ず 使 用 す る 漢 字 を 決 め て お き ます 。 意 識 し て そ の漢 字 を 熟 語 と し て使 う 場 を 設 定 す る こ と で、 表 意 文字 と し て の 漢 字 が よ り 強 く 意 識 さ れ ま す 。 ︵7 ︶ 部 首 の指 導 で 片 仮 名 指 導
漢 字 の へん や つく り に関 し て は 三 学 年 で の取 り 扱 い です が 、 ゲ ー ム的 な 学 習 で 部 首 に つ いて の初 歩 的
な 理 解 を さ せ て お く こと は可 能 で す 。 片 仮 名 と そ れ の字 源 と な った 漢 字 と を カ ー ド カ ル タ に し 、 そ れ を
あ わ せ て いく こ と で 漢 字 の訓 読 み から 片 仮 名 の定 着 を 図 るも の です 。 朝 の時 間 な ど を 利 用 し 、 一回 五 文 字程度指 導します。
三 ロ ー マ字 指 導 ︵1 ︶ こ の字 は 何 と 読 む ︵母音 +子 音 ︶
平 仮 名 と は違 い、 一音 一文字 に はな ら な いた め 、 読 み に つ い ても な か な か定 着 し な いも の です 。 規 則
性 を 理解 さ せ る た め に は ゲー ム学 習 を 利 用 し ま す ︵例 母 音 + 子 音 のカ ー ド 合 わ せ h + a= ? k +
y + o= ?︶。 大 切 な の は意 味 の ま と ま り と し て文 字 指 導 を す る こ と で、 これ は 平 仮 名 指 導 と 同 じ です 。
教 室 内 に あ る物 を ロー マ字 表 記 し て掲 示 し たり 、 絵 ・ロー マ字 カ ー ド 合 わ せ ゲ ー ムな ど、 指 導 を 工夫 す る こ と で 、 単 調 で 分解 的 な も のに な ら な いよ う に留 意 し ま す 。
︵2 ︶ ワ ープ ロ で書 く こと の指 導
あ る 程 度 ﹁読 む こ と ﹂ の定 着 が 図 れ た ら 、 ﹁書 く こと ﹂ の指 導 は ワ ー プ ロを 利 用 し ま す 。 表 記 に つ い
て の修 正 を 教 師 が す る の でな く 、 機 械 が し ま す 。 ワ ー プ ロを ロー マ字 入 力 に し て お け ば、 正 し い ロー マ
字 表 記 が でき た 場 合 、 き ち ん と 平 仮 名 に変 換 で き ま す 。 問 題 のプ リ ント を 用意 し て お き 、 個 人 の ペー ス
に従 っ て や ら せ ま す 。 表 記 に つ いて の 一覧 表 は 配 布 し て お き 、 どう し ても う ま く いか な い児 童 に 対 し て
︹ 柴 田誠 一︺
のみ 、 教 師 は 支 援 し ま す 。 た だし 、 ヘボ ン式 と 日本 式 の二 通 り の表 記 が あ る 文 字 ︵Sh i と si / t s
uと t uな ど ︶ も あ り ま す の で、 そ の場 合 は 教 師 によ る 指 導 が 必要 にな って き ま す 。
参考 文献
大内 良彦 他 ﹃ワープ ロ時代 に対 応 でき る漢字 力 の育成 ﹄ 明治図 書出 版 一九九 四
山 田 一 ・法 則化 む べ の会 ﹃ す ぐ使 え る国語 辞典 の使 い方 指導 ﹄ 明治 図書 出版 一九九 二
深谷 圭助 ﹃小学校 1年 で国 語辞 典を 使 え るよう にす る 30の方法 ﹄ 明治 図書 出版 一九九 八 大槻 和夫 編 ﹃ 国語 科重 要 用語三 〇〇 の基礎 知識 ﹄ 明治図書 出 版 二〇 〇 一
A 漢 字 は、 児 童 に と って 、 読 み方 が 分 か ら な い、覚 遠 さ れ が ち な 学 習 です 。
ら れ な い、 書くの が 面 倒 だ な ど の理 由 か ら 敬
そ こ で、 様 々な 場 で楽 し く 学 べ る よ う な 手 だ てが 必 要 と な り ま す 。 ま ず 、 読 む こ と に 関 心 を 持 た せ 、
漢 字 への興 味 付 け を 継 続 し ま す 。 そ の上 で 正 し く 書 く 習 慣 へと つな げ た いと 考 え ま す 。 ︵1 ︶ 書 く こ と よ り 読 む こ と
一つ の案 を 示 し ま す 。 二 年 分 の漢 字 を 教 室 に 常 掲 し 、 同 じ も の が書 か れ た カ ー ドを 児童 に も 持 た せ ま
す 。 国 語 以 外 の教 科 や 日常 会 話 でも 、 読 み が出 てき た と き は 、 漢 字 に 印 を 付 け て いき ま す 。 漢 字 のそ ば
に スペ ー スを 作 って熟 語 や 使 い方 な ど が書 き 込 め る よ う に し て おき ま す 。 児童 の方 は 、 カ ー ド で は な く
漢 字 図 鑑 にし て も 良 い です 。 ま た 、 毎 時 間 チ ェック す る の が 大 変 な 場 合 は、 曜 日 を 決 め て チ ェ ック す る よう にします。 ︵2 ︶ 楽 し く 学 ぶ 工夫
・二 年 分 の漢 字 を 使 って 日 め く り漢 字 カ レ ンダ ー を 作 り 、 日 記 や 連 絡 帳 な ど に今 日 の漢 字 コー ナ ー を 設 け ま す 。 漢 字 を 使 った ミ ニ コメ ント を 書 か せま す 。
・漢 字 か る た コー ナ ー を 教室 に設 置 し 、 新 出 漢 字 ご と に か る たを 増 や し て いき ます 。
・広 告 や 新 聞 か ら 、 習 った漢 字 、 読 め る 漢 字 を 取 り 出 す ゲ ー ムを し ま す 。 ︵3 ︶ 正 し く 書 く 工夫
・書 き 方 の時 間 も 活 用 し て 筆 順 、 筆 遣 いな ど を 確 認 し ます 。 一、 二 の図 鑑 、 か る た、 カ レ ンダ ー な ど
の漢 字 を 書 く 際 は 、 筆 で書 き ま す ︵ 低 学 年 は 、 マジ ック や ク レ パ ス で画 ご と に違 う 色 にす る と 効 果 的 です ︶。
・接 筆 や 画 数 は 数 え 棒 で 、 折 れ ・は ね な ど は 粘 土 な ど で漢 字 模 型 を 作 ら せ て 確 か め さ せ ま す 。
・二 人 組 や チ ー ム で じ ゃ ん け ん筆 順 ゲー ムを し た り、 チ ー ム ご と に漢 字 福 笑 い ︵ 偏 と旁 を ば ら ば ら に
し て組 み 合 わ せ る ︶ を 作 り 、 交 換 し あ って 遊 ん だ り す る こ と も でき ます 。 ︵4︶ 漢 字 を 生 か す 工夫
・日 記 や作 文 を 書 く 際 に 、 ﹁○ ○ の漢 字 を 使 っ て書 く ﹂ と いう 条 件 で 三 、 四 個 の漢 字 を 示 し て書 か せ
ま す 。 漢 字 は 、 関 連 のあ る も の でも 全 く な いも ので も 良 いで す が、 漢 字 の意 味 を 生 か す よ う に指 導 し ておきます。
・自 分 の好 き な 詩 や こと ば ︵故 事 成 語 、 こと わ ざ な ど ︶ を 色 紙 に 書 いて 飾 った り 、 贈 った り し ま す 。 色 紙 に書 く こ と で 文 字 の美 し さ を 味 わ う 心 も 培 いた い と願 いま す 。
︹ 権藤 順 子︺
・字 源 作 り で自 分 な り に、 そ の漢 字 が ど う し て で き た かを 考 え て 偏 や 勇 に関 心 を 持 た せ ます 。
・︵2 ︶ の 発 展 や 積 み重 ね と し て、 漢 字 物 語 な ど を 作 る こと も で き ま す 。
参考文 献 五味太 郎 ﹃漢 字 の絵 本﹄ 岩崎 書店 一九 八○
大 村 はま ﹃や さし い漢字 教室 ﹄毎 日新 聞社 一九 六九
尾 上兼 英 監修 ﹃小学 生 の ため の漢 字 をお ぼえ る辞典 ﹄ ︵ 第三 版︶ 旺文 社 二 〇〇 一
A一 語 句 指 導 と 語 彙 指 導 の違 い
読 む学 習 で は新 出 漢 字 や難 語 句 な ど読 み方 や意 味 が 分 か ら な い と 正 確 に読 み 取 る こ と が でき ま せ ん 。
そ の場 そ の場 で 分 か ら な い語 句 に つ いて そ の意 味 用 法 を 的 確 に つか む 指 導 が な さ れ ます 。 これ が語 句 指
導 です 。 日 々の授 業 で取 り上 げ る こ と ば の指 導 は 、 語 句 指 導 であ る こと が多 い の で は な い でし ょう か 。
そ れ に対 し て語 彙 指 導 の ﹁語 彙 ﹂ と いう の は 、 何 ら か の見 方 で集 め ら れ た語 句 の集 合 、 一つ の体 系 と
し て の語 句 の集 ま り を 意 味 し ま す 。 語句 指 導 に よ って学 習 者 は 語 句 の見 方 を身 に つけ 語 彙 量 を 増 や し て
いく の です が、 関 連 性 や系 統 性 のな い語 句 学 習 で は応 用 の利 く 語 句 の見 方 、 学 び方 を身 に つけ る こと は
で き ま せ ん。 そ こ で、 一つ 一つ の語 句 を 単 独 で学 習 さ せ る の で は な く 、 そ れ ら の語 句 を 通 じ て み ら れ る 一般 性 を 分 か ら せ よ う とす る の が語 彙 指 導 で す 。
二 語 彙 指 導 の目 的
語 彙 指 導 に よ っ て語 彙 を豊 か にす る と いう こと は どう いう こ と な の でし ょう か。 甲 斐 睦 朗 氏 は 、 ① こ
と ば を 正 確 に、 そ し て、 イ メ ー ジ豊 か に理 解 でき る こ と、 ② こ と ば を 的 確 に 、 そ し て 効 果 的 に使 用 でき
る こと 、 ③ 様 々な 関 連 語 句 を 導 き 出 せ る こ と 、④ こ と ば に つ いて の様 々な 面 で の 興 味 、 関 心 を 抱 い て い
る こ と、 と 説 明 し て いま す 。
ま た、 語 彙 を 豊 か にす る と いう こ と は 、 こ と ば を 通 し て ﹁見 た り ﹂ ﹁認 識 し た り ﹂ す る能 力 も 育 て て いく と いう こ と で も あ り ます 。
例 え ば 、 ﹁弟 ﹂ と いう こと ば を 例 に考 え て み ま し ょう 。 弟 と いう の は 兄 や 姉 が い て、 初 め て弟 た りう
る ので あ り 、 ﹁弟 ﹂ は ﹁兄 弟 ﹂ と いう 上 位 概 念 の語 句 と の関 係 や 、 ﹁兄 ﹂ ﹁姉 ﹂ ﹁妹 ﹂ と い った 類 義 語 と の
関 係 な ど、 構 造 的 な 理解 が な さ れ な け れ ば 概 念 を 規 定 す る こ と が で き ま せ ん。 ま た、 ﹁弟 ﹂ と いう 語 句
か ら 、 ﹁け ん か﹂ ﹁幼 い﹂ ﹁か わ い い﹂ ﹁わ が ま ま ﹂ な ど の語 句 を 豊 か にイ メ ー ジ で き な け れ ば ﹁弟 ﹂ と い
う 語 句 が持 つ意 味 の内 実 に 迫 る こと は で き ま せ ん。 す な わ ち 、 ﹁弟 ﹂ に 関 わ る語 彙 と し て ﹁兄 弟 ﹂ ﹁兄 ﹂
な ど と い った 構 造 的 な 語 彙 や ﹁け ん か ﹂ ﹁か わ い い﹂ な ど イ メ ー ジ に 関 わ る 語 彙 を 経 験 と結 び つけ て想
起 し た り、 新 た に獲 得 し た り 、 これ ま で持 って いた 語 句 を 関 連 付 け た り す る こ と で 、 ﹁弟 ﹂ に関 す る見 方 が広 が ったり 、 深 ま った り 、 あ る 場 合 に は 変 わ った り す る ので す 。
こ の よ う に、 語 彙 指 導 で は語 句 の量 と と も に、 質 が 問 題 と な り ま す 。 語 彙 指 導 は 、 語 句 のネ ット ワ ー
ク を 密 に し 、 あ る事 象 に つ いて の認 識 を 新 た に し た り 、 深 め た り す る こと で、 自 ら 思 考 し 、 判 断 し 、 表 現 す る こと の で き る 児 童 を 育 む こ と に も つな が る の です 。
三 具 体 的 な 語 彙 指 導 の 方 法
語彙 指 導 に は 、 特 定 の内 容 を 単 独 に取 り上 げ て行 う ﹁取 り 立 て指 導 ﹂ と 、 作 品 の語 彙 構 造 に着 目 し た
﹁読 解 に お け る 指 導 ﹂、 辞 書 の活 用 や 読 書 な ど ﹁日常 的 な 指 導 ﹂ が あ り ま す 。 以 下 、 そ れ ぞ れ の指 導 の
特 色 、 具 体 的 な 方 法 、 留 意 点 に つ いて 述 べ ます 。 ︵1︶ 語 彙 の取 り 立 て指 導
取 り 立 て指 導 で は 、 一つ 一つば ら ば ら な 語 句 の指 導 で は 見 え て こ な い類 義 語 ・対 義 語 な ど の系 列 、 専
門 語 ・俗 語 な ど の位 相 、 和 語 ・漢 語 な ど の語 種 、 複 合 ・派 生 ・転 成 な ど の語 構 成 、 慣 用句 、 品 詞 、 意 味
な ど語 彙 の構 造 や 特 質 に つ いて 身 に つけ さ せ る こと で、 学 習 者 の言 語 体 系 を 整 理 し 、 併 せ て 語 彙 習得 の
方 法 を 自 覚 さ せ る こと で、 日本 語 への興 味 ・関 心 を 高 め よう と す る と ころ に特 色 があ り ま す 。
具 体 的 に は、 語 彙 論 に基 づ いて 作 成 さ れ たプ リ ント を 用 いて 練 習 学 習 を し た り 、 こ と ば 遊 びな ど ゲ ー
ム的 要 素 を 取 り 入 れ た り 、 視 聴 覚 教 材 を 利 用 し た り し な が ら 学 習 を 進 め る こ と が 多 いよう で す 。 ︻例 ︼ ① 次 の ︵ ︶ の中 に適 当 な こと ば を 入 れ な さ い。
② 次 の こ とば を 意 味 の広 い順 に 並 べ な さ い。 ・食 べ 物 、 バ ナ ナ 、 く だ も の ・漢 字 、 勉 強 、 国 語
③ ﹁先 生 ← 生 物 ← 物 体 ﹂ の よ う に 漢 字 の し り と り を し ま し ょ う 。 ︵ 漢 字 し り と り︶
④ 秋 か ら 思 い つく こ と ば を 集 め て ビ ン ゴ ゲ ー ム を し ま し ょ う 。 ︵こ と ば の ビ ン ゴ ゲ ー ム ︶
⑤ 運 動 会 の ビ デ オ を 見 て、 一番 ぴ った り く る こと ば を 考 え ま し ょ う 。 そ し て、 そ の こと ば を 使 って 作 文 を 書 いて みま し ょう 。
語 彙 の取 り 立 て指 導 にお いて は 、 以 下 の点 に留 意 す る 必 要 が あ り ま す 。 ま ず 、 年 間 指 導 計 画 の中 に き
ち ん と位 置 づけ 系 統 的 に指 導 す る と いう こと です 。 次 に 、 語 彙 論 にも と づ い て体 系 的 な 日本 語 の理 解 に
重 点 を 置 く 語 彙 指 導 で は どう し ても 教 師 主 導 に な り が ち です 。 そ こ で 、 これ ま で 学 習 し て き た 語 句 を 整
理 す る時 間 と位 置 づ け 、 学 習 者 が 語 句 の整 理 の方 法 を 模 索 し な が ら 語 彙 体 系 を 理 解 し て いく よ う な 児童 主 体 の 語 彙 指 導 の 在 り 方 を 探 っ て いく と いう こ と で す 。
ま た 、 ﹁こ と ば 遊 び﹂ に つ い て、 大 村 は ま 氏 は こ と ば 遊 び が 児 童 の こと ば への 興 味 を 高 め、 感 覚 を 磨
き 、 語 句 を 豊 か にす る と いう 利 点 は 十 分 認 め つ つも 、 遊 ぶ と いう こ と や 楽 し ま せ る と いう こと だけ に 重
点 が か か り す ぎ て いる と いう 現 状 を 批 判 し 、 こ と ば 遊 び を ﹁す る ﹂ よ り も ﹁作 る ﹂ 方 に力 点 を 置 いた 実 践 を 提 唱 し て います 。 ︵ 2 ︶ 読 解 にお け る 指 導
読 解 にお け る指 導 で は、 作 品 中 の 語句 と 語 句 の関 係 に着 目 し 、 語 彙 と し て扱 う こ と で作 品 全 体 の読解 に つな が る よう に指 導 す る と ころ に特 色 があ り ま す 。
物 語 文 学 習 の 場 合 を ﹁大 造 じ い さ ん と ガ ン﹂ を 例 に考 え て みま す 。 語 彙 の観 点 から ﹁大 造 じ いさ ん と
ガ ン﹂ を 見 て み る と 、 ﹁し め た ぞ。﹂ ﹁う う む 。﹂ ﹁う う ん 。﹂ な ど の心 内 語 彙 、 ﹁真 っ赤 に燃 え て ﹂ ﹁く れ な
い﹂ な ど の色 彩 語 彙 、 ﹁パー ン と 一け り ﹂ ﹁は ら は ら ﹂ な ど の擬 声 ・擬 態 語 彙 、 ﹁り こう な や つ﹂ ﹁た か が
鳥 ﹂ ﹁英 ゆう ﹂ ﹁え ら ぶ つ﹂ な ど の呼 び か け 語 彙 な ど 工 夫 さ れ た 表 現 が 見 ら れ ま す 。 そ の中 で例 え ば、 呼
び かけ 語 彙 に着 目 し 、 大 造 じ いさ ん が いま いま し く 思 いな が ら も 最 初 は 余 裕 を も って ﹁り こう な や つ﹂
﹁た か が鳥 ﹂ と残 雪 の こと を 呼 ん で いた の が、 度 重 な る 失 敗 で ﹁あ の 残 雪 め﹂ と 変 わ り、 自 分 の命 も 省
みず 仲 間 を 助 け る姿 と 、 頭 領 ら し い威 厳 に感 動 し て ﹁英 ゆう ﹂ ﹁え ら ぶ つ﹂ へと 呼 び方 が 変 わ って いき
ま す 。 こ のよ う に 、 ﹁呼 び か け 語 彙 ﹂ に着 目 さ せ る こ と で大 造 じ いさ ん の心 情 の変 化 と そ れ に 関 わ る 残 雪 の行 動 と の関 係 を 読 み解 く こと が で き ま す 。
説 明 文 学 習 の場 合 も 語 彙 に 着 目 し た 授 業 構 想 が 可 能 です 。 具 体 的 指 導 例 を 白 石 壽 文 氏 は 六 年 生 教 材
﹁波 に た わ む れ る 貝 ﹂ を 例 に 以 下 の よう に 示 し て いま す 。 ﹁序 で ﹃た わ む れ て で も いる か のよ う に ﹄ と
比 喩 表 現 し 、 波 を 利 用 し た 貝 の移 動 を 描 写 し て ﹃たく み な 動 き ﹄ と感 動 を 込 め て言 い、 ﹃た わ む れ る 貝﹄
と ま と め る。 本 論 に入 り 、 ま ず ﹃貝 の動 き ﹄ と 抽 象 的 に 呼 び 、 満 ち 潮 時 の 貝 の様 子を 細 か く 把 握 し て、
﹃こう し た行 動 ﹄ と 漢 語 化 す る 。 続 い て引 き 潮 時 の ﹃ 行 動 ﹄ を 実 験 も 混 じ え て 観 察 し 、 満 ち 潮 時 のそ れ
と いか に異 な る か を 説 明 し て、 ﹃た い へん こう み ょう な 行 動 ﹄ と強 調 評 価 修 飾 を 加 え る。 どう し て ﹃う
ま く 行 動 が変 わ る ﹄ か の疑 問 を 投 げ か け 、 時 と 共 に 貝 の行 動 に変 化 を 見 出 し ﹃完 全 に 行 動 の仕 方 を 変 え
た﹄ こ とを 確 認 し て、﹃複 雑 、 び み ょう で 正 確 な 、 転 か ん ﹄と 総 括 す る 。 結 で は、 満 ち 潮 の行 動 か ら 転 換
し て 引 き 潮 の行 動 へと 潮 の間 隔 、 時 刻 の変 化 に 合 わ せ る 貝 の反 復 行 動 を ﹃活 動 ﹄ と 呼 び 、 ﹃潮 汐 周 期 活
動 ﹄ と いう 術 語 ︵ 専 門 語 ︶ の提 示 に 至 る。 そ の上 で な お 謎 を 残 し た ま ま に ﹃たわ む れ て いる﹄ と いう 和
語 で フ ジ ノ ハナ ガ イ を 認 識 す る の であ る 。﹂ こ の よう に ﹁貝 の 動 作 、 状 態 ﹂ を 示 す 用 言 語 彙 に 着 目 し 、
筆 者 が そ れ を ど のよ う な 意 図 で使 用 し て いる か 整 理 し て いく 学 習 を す る こと で、 単 な る辞 書 的 な 意 味 の 理 解 に と ど ま る こ とな く 、 説 明 さ れ て いる内 質 に迫 る こと が で き ま す 。
︵3︶ 日常 的 な 指 導
日 常 的 な 指 導 と し て 、 語 句 の数 を 増 やす の は読 書 が 最 も 有 効 だ と 言 わ れ て い ます 。 や さし い、 読 み や
す いも の を ど ん ど ん読 ま せる こ と で、 語 句 の数 を 増 や す と とも に 、 語 彙 を 豊 か にす る基盤 を 養 いま す 。
ま た 、 意 図 的 に身 に つけ さ せ た い語 彙 が出 てく る 図書 を 与 え る こと も 考 え ら れ ま す 。
読 む こと に対 し て 、 話 し た り 、 書 いた り す る こ と も 語 彙 を豊 か に し ま す 。 身 に つけ さ せ た い語 彙 を 意
図 的 に話 や 文 章 の中 に 盛 り 込 ま せ る わ け です が、 でき る だけ 相 手 意 識 や 目 的 意 識 を 明確 に も た せ た生 活 場 面 を 設 定 す る こ と が ポ イ ント と な り ま す 。
教 師 の日 々 の話 に お いても 語 彙 的 な 工 夫 を す る こと で、 い い例 を 示 す こ と が でき ます 。
ま た 辞 書 活 用 の習 慣 化 を 定 着 さ せ た いも の です 。 目 的 と す る 語 が多 義 語 であ る 場 合 、 ど れ が該 当 す る
︹ 井 上俊 明 ︺
意 味 な のか 吟 味 す る こ と で語 彙 力 が養 わ れ る な ど 、 辞 書 を 引 く こ と は こ と ば を 考 え る き っか け と な り ま す。
参考 文 献 白 石寿 文 ﹃育 つことば 育 てる こと ば﹄東 洋館 出 版社 一九 九 六 国 語教育 研究所 編 ﹃国語 教育 研究 大辞 典﹄ 明治 図書 出 版 一九九 一 塚田泰彦 ・池上 幸治 ﹃ 語 彙指 導 の革新 と実 践的 課 題﹄ 明治 図書出 版 一九 九 八
結 章 授 業 を 愉 し め る国 語 教 師 に
A︵1 ︶ 親 し き 仲 に も 礼 儀 あ り
﹁馴 れ 馴 れ て、 いか に親 し き 仲 と て も 礼 儀 作 法 は あ り て美 し ﹂ ﹁言 葉 は 人 な り ﹂ と いう 諺 があ り ま す 。
こ の こ と を ﹃月 刊 国 語 教 育 ﹄ の中 で、 以 下 のよ う に書 き ま と め て いる も のが あ り ます 。
﹁親 し く な れ る のも こ と ば、 縁 が遠 く な る の も こ と ば です 。 し か し 、 車 に 適 切 な 車 間 距 離 が あ る よ う
に 、 こ と ば も 適 切 な 言 間 距 離 を 保 た な け れ ば な ら な いと 言 わ れ ます 。 こ の こと は学 校 の教 育 活 動 に お い て も 同 じ こと です 。
言 間 距離 を 保 つに は 、 常 に適 当 な 緊 張 関 係 が必 要 です 。 ﹁親 し き 仲 は遠 く な る ﹂ と いう 戒 め の 言 葉 も
あ り ま す 。 言 間 距 離 は 、 人 間 関 係 に培 う 言 語 間 隔 であ り 、 言 語 間 隔 は 、 き わ め て 大 切 な 言 語 感 覚 であ り ま す 。﹂
つ い、 子 ど も の レベ ル に合 わ せ てし ま う 、 つ い仲 間 内 の言 葉 に な って し ま う な ど と いう こ と に な り が
ち です が、 教 師 が 子 ど も に と って の 一番 の 手 本 であ る と いう 考 え か ら す る と 、 時 と場 所 に応 じ て 使 い分
け た いも ので す 。 教 師 側 に 、 使 い分 け よ う と す る 意 識 が あ る の と な い の で は 子 ど も の こと ば 学 び の場 の
想 定 に違 いが 出 てく る よう に思 いま す 。 教 師 自 身 が意 識 し て いれ ば 、 自 ず と 学 習 の場 が 子 ども の学 習 生 活 に応 じ て 想 定 でき る と 思 いま す 。 ︵2︶ 硬 直 化 を 排 除 し て
河 合 隼 雄 氏 が ﹃子 ど も と 悪 ﹄ ︵ 岩 波 書 店 一九 九 七 ︶ の中 で 、 以 下 のよ う に述 べ て います 。
﹁子 ど も に対 す る し つけ は 大 切 であ る。 これ は 間 違 いな い。 ど の よう な 正 し い こ と で も ス ロー ガ ン に
な る と硬 直 化 す る。 硬 直 化 し た思 考 は 二者 択 一的 に な る 。 厳 し く す る か 、 や さ し く す る か。 前 者 を 取 る
と 後 者 を 否 定 す る こ と だ と 考 え る 。 こ れ は 機 械 がす る こと で、 人 間 がす る こと で は な い。 人間 が 機 械 で
は な く 、 生 き て いる と いう こ と は 、 対 立 す る か のよ う に 見 え る厳 し さ と や さ し さ を 、 い か に し て自 分 と いう 存 在 の中 で両 立 さ せ て いく か と いう 努 力 を 続 け る こと であ る 。﹂
教 育 と は 、 教 師 と いう 人 間 と 子 ど も と いう 人 間 の関 わ り あ いで す 。 教 育 活 動 や 学 習 活 動 に お い ても 一
つの方 法 に 硬 直 化 す る こと は、 画 一的 、 機 械 的 にな り、 言 語 獲 得 の方 法 の幅 も 狭 め る こと に も つな が り ま す 。 だ か ら と い って 、 曖 昧 に し な さ いと いう の で は あ り ま せ ん 。
大 村 は ま 氏 は、 一つ の教 材 を 使 う と、 そ れ を 二度 と 使 わ な いと いう 覚 悟 のよ う な も の が必 要 だ とも 言 って いま す 。 ︵3 ︶ ﹁葉 隠 聞 書 ﹂ の中 の こ と ば 学 び
佐 賀 の 葉 隠 聞 書 の中 に ﹁∼ 口 上 の稽 古 は 宿 も と の物 言 いに て 直 す な り 。 文 段 の修 行 は 一行 の手 紙 も 案
文 す る ま でな り 。 右 いず れ も 閑 か に 強 みあ る が よ き な り 。 手 紙 は 向 こう 様 に て 掛 け 物 に な る と 思 え 。﹂
とあります。
も の の言 い方 は 自 宅 で〓 古 し て お き な さ い。 文 章 の修 行 も 一行 の手 紙 で も 自 分 であ れ これ と 工 夫 し な
さ い。 送 った 手 紙 が先 方 で掛 け 軸 に な る と 思 って懸 命 に 書 き な さ い、 と い って います 。
佐 賀 の葉 隠 と いえ ば 、 昔 の武 士 道 の精 神 と し て有 名 で す が、 現代 の私 た ち がな く し て い る心 掛 け が多
く あ り ま す 。 公 的 な 場 に お い て の話 し こ と ば 、 書 き こ と ば の訓 練 を 日頃 か ら 鍛 え て お き な さ い。 そ う で な い と、 ﹁垢 が 見 え る が如 し ﹂ と 一言 で 言 い切 って いま す 。
一言 一言 の こ と ば 選 び 、 発 声 の仕 方 な ど 、 教 師 の修 業 と し て の心 得 の 一つにし た いも の です 。 ︵4 ︶ 心 の目︱ 栗 山 繁 治 氏 ﹃心 の小 径 ﹄ よ リ
県 立 盲 学 校 を 参 観 し た と き の こ と 、 国 語 ︵文 字 の学 習 ︶ と し て、 点 字 の指 導 が 行 わ れ て いた そ う で
す 。 し か し 、 担 任 が 、 これ か ら の社 会 に生 き て いく た め に は、 点 字 のみ で は いけ な い、 仮 名 や 漢 字 も あ
る程 度 身 に つけ て お く べき と いう 発 案 を し て、 5 セ ンチ 正 方 形 ぐ ら い の大 き さ に 漢 字 一字 ず つ段 ボー ル
紙 に 凹 凸 を つけ て 、 手 で 一画 一画 触 れ な が ら 読 み 、 覚 え て いく こと を 試 さ れ た そ う です 。 教 師 は 、 一字
一字 丁寧 にそ の形 、 読 み、 意 味 に つ いて 指 導 さ れ た そ う です 。 そ の指 導 の最 中 に 、 あ る 一人 の女 の 子 が
﹁あ っ、 私 の字 、 う れ し い。﹂ と呟 いて 何 度 も 何 度 も 一枚 の カ ー ド を 指 で 撫 で た そ う で す 。 そ し て、 し
ばら くす る と、 そ の見 え な い目 か ら 涙 が 頬 を 伝 わ って い った そ う です 。 あ ま り に 急 な 出 来 事 だ った の で
参 観 者 も し ば し 呆 然 と し て、 や が て、 そ の こ と の持 つ意 味 の重 さ に気 づ い た と き 熱 いも のが こ み上 げ て
き た そう です 。 そ の子 が胸 に 抱 く よ う にし て指 で 触 れ て いた カ ー ド に は ﹁美 ﹂ と いう 文 字 が 刻 ま れ て い
た そう です 。 ﹁美 ﹂ は そ の子 の名 前 の 一文 字 だ った の で す 。 彼 女 は 小 学 校 低 学 年 の頃 ま で 健 常 だ った 視
力 が 急 に衰 え 、 今 で は全 盲 に 近 い状 態 にな って いる と の こ と 。
た った 一つ の文 字 に出 会 って、 こ のよ う な と き め き に 心 震 え る経 験 を し た こと は な く 、 当 たり 前 の こ
と だ と し て、 当 た り 前 に な ってし ま って いる 鈍 感 な 自 分 の目 に は見 え な い、 生 き る こ と 、 感 動 す る こと のす ば ら し さ を 彼 女 は心 の目 で見 て いる の だ と 感 じ た そう です 。
こ のよ う な 心 洗 わ れ る こと に出 会 う と 、 教 師 と し て の エネ ルギ ー が ふ つふ つと 沸 き 立 ち 、 同 時 に 一人 一人 の子 ど も を 見 つめ る 目 が 澄 み 切 って いく よ う に思 いま す 。 ︵5︶ 話 し 手 の思 い
N H K ア ナ ウ ンサ ー 山 根 基 世 氏 の話 の中 に 、 ﹁百 人 近 く の方 か ら 話 を う か が って いる と、 話 の残 り 方
に 二 種 類 あ る 事 に気 づ く 。 そ の と き は と て も 楽 し く おも し ろ く 聞 い て いる のだ が、 頭 の中 を スー ッと 通
り 過 ぎ て い って後 で心 の中 に 何 も 残 し て いか な い話 。 そ れ ほ ど お話 がう ま いと いう わ け でも なく 、 訥 々
と話 し て お ら れ る の に な ぜ か 心 に 沁 み て、 後 で心 の中 に 小 さ な 言 葉 の芽 を残 す 。 そ し て 、 そ の芽 が 、 日
が 経 つに つれ て心 の中 で 大 き く 育 って いく よ う な 話 。 こ の違 いは い った いど こ か ら来 る の だ ろう 。 人 の
心 を 通 り 過 ぎ て いく 話 と 人 の心 の中 に何 か を 植 え て いく 話 と 。 よ く よ く 考 え た 結 論 は 、 月 並 み だ が 、 や
は り 話 し 手 の思 い の深 さ と 関 わ って い る と いう こ と だ。 話 す 人 が、 ど れ だ け そ の こ と を 本 気 で思 って い
る のか 、 ど れ だ け 深 い思 いを 込 め て 話 し て いる か が、 人 の心 へ の届 き 方 を 決 め る の では な いだ ろ う か 。
話 し 手 の思 い の深 さ と聞 き 手 の心 への届 き 方 の深 さ は比 例 す る のか も し れ な い。﹂ とあ る。
こ と ば を こ と ば で 受 け 止 め 、 こ と ば で 応 じ て いき、 こ と ば と心 を 結 び 合 い、 人 と 人 が 通 じ 合 う こ と
が、 人 間 と し て ど れ ほ ど 大 切 な こ と な の か。 上 手 に話 す 技 術 も 大 切 、 そ れ と 同 じ く ら い に話 し 手 の人 間
と し て の深 い思 いも 大 切 にし た い と思 いま す 。 ︵6 ︶ 国 語 に関 心 を 向 け る姿
現 代 の映 像 文 化 を 謳 歌 し て いる 子 ど も た ち は 、 こと ば や 文 字 に心 を 動 か さ れ る 経 験 が 少 な く な って き
て いま す 。 私 た ち は どう で し ょう 。 子 ど も と 同 じ よ う な 状 況 にな って いな いで し ょう か 。
私 た ち 教 師 が 、 物 事 の 具 体 を こ と ば によ って き ち ん と抽 象 化 す る 作 業 を し な いこ と に は 、 こ の現 状 を
打開 す る こ と は でき な いよう に思 いま す 。 あ ふれ る情 報 の中 で ﹁これ を こ そ ﹂ と いう 話 し こ と ば 、 書 き
こ と ば を 聞 き 逃 さ な い、 見 逃 さ な いよ う に教 師 と し て 心 が け た いも の です 。 子 ども の無 意 識 のう ち に行
わ れ る 日常 の状 況 を 、 ど のよ う に し て学 習 と いう 意 識 の世 界 に 誘う か の方 法 も 教 師 と し て意 識 し て おき
た いと こ ろ です 。 言 い換 え れ ば、 日 頃 の 子 ど も の こと ば 学 び の現 状 を 記 録 し て いく こと や、 教 師 が 日常
の生 活 の中 で出 会 う 光 る こ と ば を ど う 受 け 止 め記 憶 し て いく か だ と 思 いま す 。
し か し、 日常 の中 に埋 没 し て いる 日 々に お いて は 、 常 に関 心 を 向 け る こ と は 容 易 な こ と で は あ り ま せ
︵ 協 働 性 ︶ の 三 点 を 決 め て み る のも 良
ん 。 四 月 に 担 任 す る 子 ど も と 出 会 った と き に 、 こ と ば に つ い て、 こ れ だ け は 続 け よ う ︵継 続 性 ︶、 こ れ だ け は関 わ って い こう ︵ 関 与 性 ︶、 こ れ だ け は 一緒 に し て い こう
い方 法 だ と 思 います 。 教 師 側 の こ と ば意 識 の視 点 が あ って 一年 間 を 過 ごす の で あ れ ば、 き っと 大 き な 違 い が出 て く る と思 いま す 。 ︵ 7 ︶ ﹁余 白 の書 ﹂ と ﹁学 習 と生 活 ﹂
佐 賀 北 高 等 学 校 芸 術 科 書 道 コー ス の卒 業 記 念 展 覧 会 を 見 て の こ と で す 。 指 導 者 は、 私 と 一緒 に佐 賀 大
学 学 生 書 道 研究 会 で土 肥 禎 利 ︵ 春 嶽 ︶ 教 授 に 学 ん だ仲 間 で す 。 今 は 、 指 導 者 と し て全 国 に 名 が知 ら れ る
よ う に な って います 。 全 国 高 校 書 道 展 覧 会 に お いて 九 年 連 続 日 本 一に 輝 き 続 け て いま す 。 恩 師 土 肥 春 嶽
先 生 が い つも 言 わ れ て いた ﹁古 典 に 学 び、 己 の 俗 気 を 払 い 品 を 高 め な さ い。﹂ を 生 徒 にも 厳 し く 指 導 し
て いる と の こ と で し た 。 そ の甲 斐 あ っ てか 、 書 道 コー ス の 生 徒 は み な 線 が強 く 、 生 き 生 き と し た作 品 に
仕 上 が って います 。 そ こ で の彼 の話 に ﹁余 白 の書 ﹂ と いう のが あ り ま し た。 墨 で書 か れ た 文 字 だ け が 書
で は な く 、 何 も 書 か れ て いな い白 い部 分 、 つま り 余 白 の書 も ま た書 であ る と いう こ と な の です 。 これ を
聞 いて 、 天才 バ イ オリ ニ スト と 言 わ れ る 五 嶋 み ど り 氏 も 同 じ よ う な こと を 言 っ て いる こと を 思 い出 し ま
す 。 ﹁音 楽 でも ず っと 音 がな って いる わ け で は な い。 例 え ば 、 曲 の真 ん中 の間 、 曲 が 終 わ って 拍 手 が は じ ま る ま で の時 間 、 こ れ も 単 な る休 み で は な く 音 楽 の 一部 な の だ。﹂ と 。
学 習 も 、 教 材 を 学 ぶ こと だ け が学 習 で は な く 、 子 ども の 日 々 の遊 び か 何 か わ か ら な いよ う な も のも 学
習 で す 。 学 習 時 間 と次 の学 習 時 間 を つな ぐ 時 間 も ま た学 習 と 見 る こと が で き ま す 。
特 に学 校 生 活 で は話 し た り 聞 いた り は、 子 ど も 自 身 あ ま り 意 識 し な い ので 、 いか に し て学 習 と し て意
識 さ せ る か、 ま た 、 学 習 と 生 活 を いか に結 ん で いく か を 見 据 え て い かな け れ ば な ら な いよ う です 。 ︵8︶ 自 分 の文 章 や 話 し 言 葉 の演 練
教 師 自 身 が 、 実 際 に 書 いた り 話 し た り す る 訓 練 を し て 、 内 容 や技 術 を 身 に つけ る こと によ って 、 め ざ
す 児 童 の 文章 力 や 話 し 言 葉 に培 いた いも の です 。 自 ら に 何 を ど のよ う に書 こう か 、 何 を ど の よう に話 そ
う か を 課 し 、自 分 自 身 が 経 験 し 演 じ る こ と で 、具 体 的 な 方 法 が 見 え て く る こ と は 少 な く な いと 思 いま す 。
職 員 間 で の、 朝 の三 分 間 ス ピー チ や 四 〇 〇 字 エ ッセ イ な ど具 体 化 さ れ た 実 践 も 多 いよ う です 。 ま た、
読 み聞 か せ 、 語 り 、 落 語 な ど 言 語 音 声 芸 術 への接 近 は、 こ と ば学 び の豊 か な 広 が り も 期 待 で き ま す 。
︵9︶ 子 ど も の話 し こ とば の把 握
話 し こ と ば に関 し て 、 白 石 寿 文 氏 は 全 国 大 学 国 語 教 育 学 会 編 ﹃新 版 小 学 校 国 語 科 教 育 研 究 ﹄ ︵一九 九 一
学 芸 図 書 ) にお いて、 話 し こ と ば の把 握 に お いて は 、 ま ず 、 教 師 の耳 が 温 か く 鋭 い こと であ る と 指 摘 し
て いま す 。 つま り 、 子 ど も の不 十 分 な 話 し こ と ば表 現 を 、 十 分 に 聞 き 取 って や れ る 温 か さ と 、 一人 一人
の言 語 音 声 を 聞 き 分 け ︵ 鋭 さ の視 点 と し て 三 つを あ げ ら れ て いる︱ 話 し こ と ば表 現 で の音 声 音 調 の明 確
性 ・こ と ば 選 び の 的 確 性 ・こ と ば づ か い の 正 確 性 ︶、 音 声 言 語 の個 性 的 特 長 を 耳 ざ と く 把 握 す る 鋭 さ を
兼 ね 備 え た教 師 に は 、 子 ども が 心 を 開 い てく れ る 。 子 ども は 教 師 に話 し て よ か った と満 足 し 、 ぜ ひ ま た
話 し て み た いと 切 望 す る。 そ の子 ら し い話 し 方 のプ ラ ス面 を 適 切 に他 の 子 に 指 摘 し て み せ 、 本 人 の自 信 を 強 化 し 他 の 児童 の耳 を 育 て る と 述 べ て います 。
つま り 、 話 し こと ば の良 い点 は、 児 童 本 人 の声 で、 不 十 分 な 点 は 教 師 の音 声 で気 づ か せ る 学 習 活 動 の
場 の設 定 に つな が る 日頃 の教 師 の 耳 ︵ア ンテ ナ ︶ が必 要 に な ってく る と思 いま す 。 ︵ 10 ︶ ﹁ 書 く こと ﹂ の 一つ の意 味
五 七 歳 で ア ル ツ ハイ マー の母 を お く った 国 兼 由 美 子 氏 の痴 呆 介 護 体 験 詩集 の中 の二 篇 の詩 が 心 に残 っ た の で紹 介 し ま す 。 ﹁殺 意 ﹂
母 に 殺 意 を 抱 い て か ら/ 巨 大 な 岩 の 夢 ば か り 見 る よ う に な った / 中 天 に 浮 い て い る/ 巨 大 な 岩 が/ 少 し ず つ
崩 れ て いき / た く さ ん の 小 さ な 岩 に な っ て/ 眠 っ て い る わ た し の 胸 の う え を こ ろ が る
﹁あ の 一瞬 ﹂
母 の た め 、 い いえ 、 私 の た め に/ 早 く お 迎 え が 来 て ほ し い と/ 祈 った 瞬 間 が あ った / 母 が 死 ん だ 日 / 祈 り が
神 に 届 い て し ま った こ と を 悔 や ん だ / 火 葬 炉 か ら 出 て き た ば か り の/ 母 の骨 を 抱 き し め た と き / こ ら え 続 け た 涙 が体中 か らあ ふれ/ 私 の 心はひ から びた
介 護 は 、 一日を 我 慢 し て、 二 日 目 は 目 を つむ って 、 三 日目 を 歯 を 食 いし ば って 我 慢 し て 、 一週 間 、 十
日と 泣 き な がら で き た ら 、 や が て 一年 、 二 年 と 経 って いく 。 い つま で続 く か わ か ら な い不 安 が続 いた と
筆 者 は言 う 。 ﹁退 行 、 殺 意 、 不 安 、 そ し て 死 。 介 護 の 難 し さ つら さ を 日 記 に 書 く こ と で、 心 を 落 ち 着 か
せ た﹂ と も 言 う 。 体 が 死 ぬ前 に 、 自 己 を 失 う こ と が 、 い か に 家 族 に と って む ご い こ と な のか 行 間 か ら 伝 わ って き ま す 。
こ れ を 読 ん だ と き に 、 書 く と いう 作 業 は 、 今 の自 分 を 見 つめ 、 振 り 返 る こ と に つな が り 、 自 己 を 確 認
す る こと が で き る 手 段 であ る と 思 いま し た 。 さ ら に、 殺 意 を 書 く こ と によ って 、 殺 す と いう 非 人 間 性 を 打 ち 消 す こ と にも な って いる と 気 づ か さ れ ま す 。
子 ど も の学 校 生 活 の中 と か け 離 れ て いる よ う です が、 書 く と いう こと は、 人 間 とし て の大 切 な 作 業 に
思 え ます 。 心 の中 で、 こ と ば を 整 理し 、 こ と ば を つな げ て いく こと で 、 誰 か に 読 ん でも ら え る、 誰 か と
︹ 永池
守︺
通 じ 合 え る と いう 小 さ な 自 己 確 認 が 始 ま り ま す 。 書 く こ と の 日常 化 へと、 教 師 であ る わ れ わ れ は 工 夫 ︵ 内 容 も 方 法 も ︶ を 重 ね て いけ た ら と 思 いま す 。
A一 こ と ば の 面 か ら の 児 童 理 解 一般 的 な 今 の児 童 の マイ ナ ス の 実 態 とし て 、
・少 子 化 、 核 家 族 化 によ る コミ ュ ニケー シ ョ ン の不 足 によ って 、 相 手 や 場 に応 じ た こ と ば 選 び を 学 ぶ 場 が 少 な い。
・人 間 関 係 を つな ぐ 架 け 橋 と し て の こと ば の役 割 に対 す る意 識 が 希 薄 で、 相 手 への配 慮 が な い。
・流 行 語 に飛 び つ い たり 、 こと ば を 短 縮 し て 言う 簡 略 化 が 進 ん だ り し て いて、 一人 一人 の独 自 性 や 個 性 が 見 ら れな い。 な どがあげら れます。
し か し 、 自 分 が 受 け 持 つ児童 の実 態 は ど う な の でし ょう か 。 そ れ を つか む た め に、 まず 日 常 生 活 に お
け る 児童 の こ と ば の生 活 を 覗 い て み る こと か ら は じ め て み ては どう でし ょう か 。 子 ど も た ち が お し ゃ べ
り し て い る のに 耳 を す ま し て み た り 、 休 み時 間 や 給 食 時 間 に子 ども た ち と お し ゃ べ り し た り し ま す 。 子
ども た ち が ど ん な こ と ば を 使 って いる の か、 ど のよ う な 話 し 方 を し て いる のか 、 ま た 最 近 ど ん な 本 を 読
ん だ のか 、 ど ん な テ レビ を 見 て いる の かな ど 様 々な 面 か ら こ と ば の生 活 を 知 る こ と が でき ま す 。
ま た、 十 年 前 と 現 在 の児 童 の作 文 を 比 較 し た 結 果 、 ﹁敬 語 が使 え な い﹂ ﹁情 景 描 写 が でき な い﹂ ﹁複 合
語 が 使 え な い﹂ ﹁心 情 語 が使 え な い﹂ ﹁修 飾 語 がな い﹂ ﹁文 章 構 成 に 工 夫 が な い﹂ な ど が 明ら か に な った
と 佐 賀 大 学 附 属 小 学 校 の権 藤 順 子 氏 は問 題 を 指 摘 し て いま す 。 要 す る に、 児 童 の作 文 力 と いう 言 語 能 力 が 落 ち て き て い る と いう の です 。
国 語 科 教 育 は 、 児 童 に言 語 能 力 を 養 う こと を 目 標 と し て いま す 。 言 語能 力 と は 、 聞 いた り 、 読 ん だ り
し た 内 容 を 理 解 でき る 力 であ り 、 話 し た り 、 書 いた り し て内 容 を 表 現 でき る力 です 。 児 童 の話 す 力 、 聞 く 力 、 書 く 力 、 読 む 力 の面 か ら と ら え る こと も 肝 要 と な り ま す 。
話 す ・聞 く 力 に つ い て は、 活 動 の観 察 の他 、 録 音 や ビ デ オ 映 像 な ど が 資 料 と な り ます 。 これ ら に よ っ
て、 相 手 や 目 的 、 意 図 に応 じ て 適 切 に話 す 力 が ど の程 度 身 に 付 い て い る の か、 相 手 の話 の中 心 や意 図 が 正 確 に聞 き 取 れ て いる かを 把 握 し ま す 。
書 く 力 に つ いて は 、 観 察 記 録 、 取 材 メ モ、 構 想 メ モ、 作 文 な ど が 資 料 と な り ま す 。 これ ら に よ って、
取 材 、 構 想 、 叙 述 、 推 敲 な ど 、 文 章 作 成 過 程 に即 し な が ら 、 相 手 や 目 的 に応 じ て適 切 に 書 く 力 を 把 握 し ます。
読 む 力 に つ いて は 、 観 察 や 学 習 記 録 、 ノー ト 、 テ スト な ど が資 料 と な り ま す 。 こ れ ら に よ って 読 解 の
力 を把 握 す る だ け でな く 、 読 書 記 録 や 図 書 力 ー ド によ って 読 書 傾 向 を 把 握 し ま す 。 詩 を 音 読 さ せ る こ と に よ っ て音 読 の力 を 把 握 し ま す 。
白 石 壽 文 氏 は 、 児 童 の実 態 把 握 の 視 点 と し て、 ﹁聞 き 取 る べき 時 に、 聞 き 取 る べ き こ と を 、 聞 き 取 れ
る か ﹂ ﹁言 う べき 時 に 、 言 う べ き 言 い方 で 言 う べ き こと が、 言 え る か ﹂ ﹁読 みと る べき 時 に、 読 みと る べ
き こと を 、 読 み と れ て いる か ﹂ ﹁書 く べき 時 に、 書 く べ き 書 き 方 で書 く べ き こ と が書 け る か ﹂ と いう こ
と を 示 し て いま す 。
﹁べ き ﹂ の基 準 は 、 低 学 年、 中 学 年 、 高 学 年 そ れ ぞ れ に応 じ て違 い が あ る の は当 然 です 。 児 童 の こ れ
ま で の こと ば の学 習 が 、 そ こに 反 映 し て い ま す 。 ま た、 ﹁言 い た い﹂ ﹁読 み た い﹂ で はな く 、 ﹁べき ﹂ と
いう こ と ば の中 に は 、 ﹁聞 いて や る と いう 思 い上 が り で も な く 、 何 でも す べ て 落 ち な く 均 等 に聞 き と る
テ ー プ レ コー ダ ー性 でも な く 、 聞 き た い こと に の み反 応 す る 自 己 本 位 でも な い。 聞 き と り つ つも 批 判 ・
同 調 等 判 断 を 加 え、 自 ら "言 う べき 時 、 言 う べ き こと が、 言 え る " と 一体 化 さ せ て いく ﹂ と いう 、 本 人
の興 味 重 視 でも な く 、 こ と ば の伝 達 と いう 用 具意 識 でも な い、 こ と ば によ る 人 間 成 形 と いう 視 点 か ら 児 童 の こ と ば の実 態 を つ か む 大 切 さ を 示〓 し て いま す 。
二 国 語 教 師 が 修 練 す べ き 授 業 技 術
教 師 は よ り よ い授 業 を 目 指 し て 日 々努 力 し て いま す 。 授 業 を 考 え る 際 に は 、 目 標 ・内 容 ・方 法 ・評 価 な ど多 角 的 な観 点 か ら 検 討 を 加 え な け れ ばな り ま せ ん。
目 標 に つ いて は 先 述 の児童 の実 態 把 握 と指 導 目 標 に つ い て の体 系 的 視 野 、 教 材 が持 つ表 現 的 価 値 と 内
容 的 価 値 の 分析 な ど 、 児童 の側 面 、 教 師 の側 面 、 教 材 の 側 面 から 明 確 で具 体 的 な 目 標 を 設 定 で き な け れ
ば な り ま せ ん。 す な わ ち 、 児 童 の実 態 を つか む 力 に加 え 、 国 語 科 の学 習 が ど のよ う な 系 統 性 を 持 ち 、 ど
のよう な 内 容 を 持 つの か と いう 知 識 、 さ ら に は こ の教 材 だ か ら こ そ と いう 価 値 を 見 出 す 教 材 分 析 力 な ど を磨 かなけ ればなり ません。
内 容 に つ いて は、 教 材 ・資 料 が 授 業 の ね ら い に即 し て いる か、 教 材 ・資 料 の 程度 が 学 習 者 の実 態 に合
って いる か 、 教 材 ・資 料 の内 容 が 学 習 者 の興 味 ・関 心 を 引 く も の にな って いる か 検 討 し 、 授 業 計 画 す る 力 を 磨 か な け れ ば な り ま せ ん。
方 法 に つ いて は 、 児 童 の 興 味 ・関 心 に 支 え ら れ つ つ、 思 考 を 深 め て いく よ う な 導 入 ・展 開 ・終 末 の指
導 過 程 を 工 夫 す る 力 が求 め ら れ ま す 。 ま た、 一斉 学 習 ・小 集 団 学 習 ・個 人 学 習 と い った 学 習 形 態 を ど の
場 面 で ど う 組 み 合 わ せ る のか 適 切 に 工 夫 し た り 、 紙 芝 居 を 作 ら せ る の か、 シ ナ リ オ を書 か せ て朗 読 劇 に
す る の か、 登 場 人 物 に な り き った 日 記 を 書 か せる の か、 効 果 的 な 学 習 活 動 を 考 え た り す る 力 が な く て は
な り ま せ ん 。 テ ィー ム テ ィ ー チ ング や 視 聴 覚 機 器 の活 用 な ど 、 創 造 的 に方 法 を 模 索 し て いく こ と も 大 切 です。
評 価 は、 学 習 者 が ど の程 度 学 習 内 容 を 理 解 し た か を 指 導 者 が 総 括 的 に 判 定 す る た め だけ にあ る の で は
あ り ま せ ん 。 評 価 の基 本 は、 ﹁全 体 的 ・継 続 的 ・診 断 的 であ って、 学 習 者 のす ぐ れ た 面 を い っそう 伸 ば
し 、 遅 れ て い る点 を 明 ら か に し て こ れ を 補 う こ と に よ り 、 成 長 の発 達 に資 す る ﹂ た め にあ る の です 。 さ
ら に、 教 師 本 人 が授 業 を 自 省 す る こ と も 評 価 の重 要 な 意 義 で す 。 です か ら 、 読 解 力 や 言 語 の知 識 量 を 見
る ペー パー テ スト だ け でな く、 話 す ・聞 く 能 力 や 関 心 ・意 欲 な ど 情 意 面 も 評 価 で き る よう な 多 様 な 評 価
方 法 の工 夫 、 そ れ に客 観 的 な 評 価 規 準 の作 成 、 個 人 評 価 の蓄 積 の仕 方 な ど が求 め ら れ ます 。
さ ら に、 一単 位 時 間 の学 習 を 質 の高 いも のと な す た め に は 、 例 え ば 教 育 話 法 、 ワー ク シ ー ト の作 成 、 机 間指 導 な ど、 様 々な 授 業 技 術 を 磨 か な け れ ば な り ま せ ん 。
教育 話 法 と は 教 師 の話 し 方 です 。 教 師 の こと ば が伝 わ ら な け れ ば 、 基 本 的 に授 業 は 成 立 し ま せ ん 。 そ
れ だ け でな く 、 教 師 の話 し 方 で授 業 を 活 性 化 さ せ た り、 話 し こ と ば の モ デ ルを 示 し た り す る こ と が でき
ます。
ワー ク シー ト は、 学 級 や 個 々 の児 童 の実 態 に応 じ て作 成 さ れ る こ と が 肝 要 で、 そ う す る こと によ り 学
習 の個 別 化 を 図 る こと が で き ま す 。 作 成 能 力 向 上 の際 のポ イ ント は、 作 った ワ ー ク シー ト に 実 際 に 自 分
で書 き 込 みを し て み る こ と です 。 頭 の中 で 考 え る のと 、 実 際 に や って み る の で は 全 く 違 いま す 。 実 際 に
自 分 で や って み る こと で自 分 自 身 でも 悩 む よ う な想 像 以 上 に 難 し い ワ ー ク シー ト にな って いる こ と に 気
づ い た り 、 枠 が小 さす ぎ て書 け な いこ と に 気 づ いた り す る こ と が でき ま す 。 ま た 、 児 童 の つま ず き を 予
測 す る こ と が でき ます 。 そ れ に よ って、 ヒ ント を 入 れ た り 、 難 易 度 や 分 量 を 調 節 し た り、 児 童 が自 分 の
理 解 度 に 応 じ て選 択 で き るよ う な 数 種類 の ワー ク シ ー ト を 用意 し た り す る こ と が でき ま す 。
机 間 指 導 は 、 学 習者 の学 習 状 況 の把 握 、 適 切 な指 導 助 言 、 今 後 の指 導 方 向 の判 断 の た め に 行 う も の で
す 。 し か し 、 や や も す ると 無 目 的 に 回 り が ち です 。 です か ら 、 机 間 指 導 力 向 上 の手 が かり と し て、 座 席
表 を も ち 目 的 に応 じ て 記 録 を 残 し て いく よ う に心 が け ま す 。 学 習 状 況 の把 握 であ れ ば 、 自 分 が 設 定 し た
評 価 基 準 に 基 づ いて A B C な ど簡 単 な 記 号 を 記 入 し て いき ま す 。 簡 単 な 記 号 で と いう の は、 評 価 よ り指
導 助 言 を優 先 し た いか ら です 。 座 席 表 への記 入 は授 業 後 でも 構 いま せ ん 。 も し 、 何 も 記 入 で き な い児 童
が い た ら、 次 の時 間 は 重 点 的 に そ の児 童 を 見 る よう に し ま す 。 最 初 は 、 児 童 の全 体 的 な 学 習 状 況 の把 握
か ら 始 め、 慣 れ てき た ら 達 成 度 別 に児 童 を 選 択 し て 回 り 効 果 的 に 学 習 状 況 を 把 握 し た り 、 新 し い発 想 を
持 って いる 児 童 の発 見 な ど 指 導 方 向 の判 断 に生 か せ る よ う な 机 間 指 導 の 技 を 磨 いて いき ま す 。
教 師 の授 業 構 想 力 や 授 業 技 術 の向 上 は、 授 業 の質 的 レ ベ ル ア ップ に不 可 欠 です 。 これ ら の力 が指 導 者
に な け れ ば 、 学 習 者 に 確 実 な 学 力 を 身 に つけ さ せ る こと は で き ま せ ん。 ま た 、 不 十 分 であ る場 合 に は や
や も す れ ば 、 自 分 の教 材 解 釈 を 学 習 者 に 押 し つけ た り 、 せ っか く 作 った の だ か ら と 学 習 者 の実 態 と乖 離
し た ワ ー ク シー ト を さ せ た り と いう こと にな り か ね ま せ ん。 指 導 者 が 十 分 な 力 量 を も つこ と で、 押 し つ
け で は な く 、 ゆ と り を も って 学 習 者 を 見 つめ、 導 き 、 学 習 者 を 生 き 生 き 活 動 さ せ つ つ目 指 す べ き学 力 を 身 に つけ さ せ る こと が で き ま す 。
さ ら に、 教 師 の授 業 構 想 力 、 技 術 力 は 、 い つ、 誰 が、 ど こ で、 何 を 教 え て も 一定 水 準 の成 果 が求 め ら
れ る 一方 で、 こ の児 童 だ か ら こそ 、 こ の自 分 が 教 師 だ か ら こそ 成 立す る授 業 を 目 指 し た いと 思 いま す 。
そ のた め に は 、 教 師 自 身 が 、 いか な る 聞 く生 活 、 話 す 生 活 、 書 く 生 活 、 読 む 生 活 を 営 ん で いる か 、 絶 え
︹ 井 上俊明 ︺
ず 見 直 し 、 自 覚 あ る こ と ば 学 習 者 の姿 を 、 自 ら に見 出 し つ つ修 練 を 重 ね る こと が何 よ り 大 切 な こと だ と 思 われます 。
参考 文献 白 石寿文 ﹃ 育 つこと ば 育 て るこ とば﹄ 東洋 館出 版社 一九九 六 日本 国語 教育 学会 編 ﹃国語教 育 辞典 ﹄朝 倉書 店 二 〇〇 一
国 語 教育 研究 所編 ﹃国 語教育 研 究大 辞典 ﹄ 明治 図書出 版 一九 九 一
A つき つめ て いえば、 国 語 教 師 のす べ て の話 しこ と ば ・書 き こと ば が 子 ど も に と って は モデ ル で、
そ れ 自 体 が 教 材 で はな い で し ょう か 。 こ と ば の生 活 を 、 聞 く ・話 す 、 書 く 、 読 む、 みる ︵ 評 価 す る ︶、 ︵文 化 に︶ ふ れ る ・創 る 、 に分 け て そ れ ぞ れ の側 面 か ら 見 つめ て みま す 。
一 聞 く ・話 す
国 語 科 の授 業 は も ち ろ ん の こ と 、 朝 の会 の ﹁先 生 の話 ﹂ か ら帰 り の会 のそ れ に いた るま で、 す べ て の
指 導 の大 半 を 占 め て いる の が教 師 の話 し こ と ば によ る も の です 。 ま た、 子 ど も の 訴 え の大 半 であ る話 し
こと ば を 私 た ち は 日 々聞 い て いる の です 。 つま り、 私 た ち に と って聞 く こと 話 す こと はさ け て 通 れ ま せ ん。
そ こ で、 ﹁何 を こそ 話 す か﹂ ﹁いか に話 す か ﹂ と、 ﹁何 を こそ 聞 く か ﹂ ﹁いか に聞 く か ﹂ に つ い て考 え て みます。 ︵1︶ 何 を こそ 話 す か
話 の内 容 と し て は、 子 ど も に 注意 ・指 導 す る こ と は多 いけ れ ど 、 心 に響 く よ う な こと はな か な か話 し
て いな い のが 現 状 です。 日 々 の生 活 の注 意 事 項 を 話 す こと よ りも 、 子 ど も の心 に響 か せ る感 動 的 な 話 を
と心 が け た いも の です 。 ︵ 2 ︶ い か に話 す か
私 た ち は話 す 内 容 、 つま り 何 を 言 う か に つ い て は多 く の心 を 割 き ま す が 、 話 す こ と の方 法 や 技 能 、 つ
ま り ﹁いか に話 す か﹂ に つ い て の意 識 を 十 分 に はも って いな いと いう 現 実 が あ る よ う です 。 話 し こ と ば そ のも のを 鍛 え る必 要 が あ り ま す 。
教 師 の音 声 は 、 子 ど も たち の 耳 に いろ いろ と豊 か な 日本 語 音 声 の現 実 を 届 け て く れ るも の です 。 私 た
ち の話 し こと ば は 子 ど も たち の 話 し こ と ば そ のも のを 育 て る こと にな り ま す 。 話 す 速 度 や音 量 、 間 のと
り 方 な ど 具 体 的 な 要 素 があ り ま す 。 大 切 な こ と は 、 そ れ ら が 画 一的 に な る の で は な く 、 常 に 内 容 と 相 ま って適 切 な 速 度 や音 量 、 間 が あ る こ と を 理 解 し て お き た いも の です 。 ︵3 ︶ 何 を こ そ聞 く か
聞 く こと に つ いて 、 子 ども 一人 一人 の声 、 心 の こと ば に 真 摯 に 耳 と 心 を 傾 け て いる で し ょう か。 あ る
いは 子 ど も た ち の悲 し み や不 安 ・疑 問 ・悩 み に至 るま で の声 な き 声 に ま で 心 を 配 って いる でし ょう か。
子 ど も の話 を聞 く こ と は 、 単 に話 を 聞 く に と ど ま ら ず 、 子 ど も 把 握 と 理解 に つな が る こと です 。 ︵ 4︶ いかに聞く か
私 た ち は話 を 確 か に聞 き 取 って い る で し ょ う か。 聞 き 取 る だけ の技 を 身 に つけ て いる でし ょう か 。 曖
昧 な 聞 き 方 ・身 勝 手 な聞 き 方 が多 い の で は な い の で し ょ う か。 白 石 壽 文 氏 の考 え を 紹 介 し て、 考 え て み
ま す 。 白 石 氏 は ﹁聞 く 心 ・技 ・体 ﹂ と いう 考 え を 提 唱 し て いま す 。 こ れ は、 ﹁体 で 聞 き 取 る﹂、 ﹁こ と ば ︵技 ︶ で聞 き 分 け る ﹂、 ﹁こ ころ で 聞 き 容 れ る ﹂ か ら な り ま す 。
﹁体 で聞 き 取 る﹂ と は 、 話 し 手 か ら 見 え る 位 置 に い る と か、 話 し 手 を き ち ん と 見 る と か、 一定 時 間 聞
いて いら れ る と か 、 ま た はう な ず いた り 、 思 わ ず 身 を 乗 り 出 し た り す る と か 、 聞 き 手 の体 を 通 し て聞 い
て いる と いう サ イ ンを 話 し 手 に送 り 、 な お か つ聞 き 手 自 身 も 確 認 し つ つ聞 く 聞 き 方 で す 。
﹁こ と ば ︵ 技 ︶ で聞 き 分 け る ﹂ と は 、 特 に 対 話 の中 で 発 揮 で き る こ と で す が 、 聞 き 手 も 話 し 手 の話 に こ と ば を 適 切 に は さ ん で聞 く 聞 き 方 です 。
氏 は ﹁聴 型 ﹂ を 位 置 付 け て います 。 具 体 的 に は ﹁四 つ の聞 き 分 け の こ と ば ﹂ ︵ ﹁あ いづ ち こ と ば ﹂、 ﹁く
り か え し こ と ば ﹂、 ﹁問 いか け こ と ば ﹂、 ﹁ま と め こと ば ﹂︶ です 。 話 し 手 の 話 を 遮 ら な いよ う に し て こ れ
ら の こ と ば を 有 効 に使 って 聞 く こと によ り 、 よ り 確 か に よ り 主 体 的 に聞 く こ と が でき る の です 。 聞 き分 け る 力 を つけ る 入 門 と し て は非 常 に 効 果 的 です 。
し か し 一方 、 これ ら は あ く ま で も 型 です 。 型 は破 ら れ な く て は な り ま せ ん 。 日 本 の武 道 ・伝 統 芸 で よ
く 言 わ れ る ﹁守 ・破 ・離 ﹂ の考 え と 同 じ で す 。 書 き こと ば に ﹁文 型 ﹂ や ﹁文 体 ﹂ が あ るよ う に 聞 き 方 に
お い ても ﹁型 ﹂ と ﹁体 ﹂ を 認 め、 ﹁聴 型 ﹂ から 離 れ 、 いず れ は ﹁聴 体 ﹂ へと高 め て いき た いも の で す 。
さ ら に高 ま った も の と し て ﹁こ ころ で聞 き 容 れ る ﹂ を 忘 れ て は な り ま せ ん 。 た と え た ど た ど し い話 し
手 であ って も 、 い や、 た ど た ど し い話 し 手 で あ る か ら こ そ 私 た ち は 心 か ら 話 し 手 を 受 け 容 れ 、 話 し 手
く
が 、 話 し て よ か った と 実 感 でき る よ う な 聞 き 手 であ り た いも ので す 。
二 書
教 師 と し て 書 く 力 を 大 い に鍛 え た い と思 いま す 。 日 々 の学 級 通 信 を 例 にし て み ま す 。 学 級 通 信 はも ち
ろ ん 学 級 で 起 こ った いろ いろ な こと 、 学 校 ・学 級 か ら の連 絡 を す る も の で す 。 です が 、 教 師 に よ って い
ろ いろ 個 性 が あ って然 る べき だ と 思 い ます 。 単 な る連 絡 物 と いう よ り は 、 書 き 手 の顔 が見 え る よ う な あ た た か いも の であ り た いと 願 いま す 。
学 級 の 子 ど も の名 前 を 必 ず 入 れ る、 子 ど も の 発 言 を 必 ず 入 れ る な ど す れ ば 、 読 み手 であ る 保 護 者 に と
って は ぐ っと 身 近 な も の に な っ てき ます 。 ま た 、 自 分 自 身 のテ ー マを 持 って書 く こ と、 例 え ば 曜 日 ご と に話 題 を 決 め て書 く こ と で、 書 く 視 点 が 広 が って き ま す 。
他 に も 、 国 語 教 師 な ら で は の こ と ば 遊 び も あ り ま す 。 文章 の ど こ か に必 ず あ る こ と ば を 使 う な ど 、 書
む
き 手 だ け が知 る密 か な 挑 戦 は書 き 手 の技 を 磨 く こと にも な り ま す 。
三 読
教 師 、 中 で も 国 語 教 師 の読 む力 は 常 に磨 き 続 け な いと ひ と り よ が り に 陥 る 危 険 が あ り ま す 。 古 典 か ら
近 世 ・近 代 ・現 代 に至 る ま で いわ ゆ る 必 読 図 書 と 呼 ば れ る も のは 一冊 で も 多 く 読 ん で お き た いも の で
す 。 国 語 教 師 と し て は こ の他 に も 論 評 ・評 論 な ど に も 読 む べ き本 は たく さ ん あ り ま す 。
読 む べ き 本 があ りす ぎ る 、 と も 言 え ます 。 確 か に そ の通 り です 。 物 理 的 にも 限 度 があ り ま す 。 し か し
な が ら 、 読 む べき 本 が い った い何 な の か、 ど こ に行 け ば そ の本 が 手 に 入 る の か、 ど う いう 方 法 で そ れ を
探 す の か 、 な ど の ア ンテ ナ を 常 に 張 って お く の は 私 た ち の大 切 な 責 務 で す 。 ま た 、 す ぐ に そ れ が探 し 求
め ら れ る こと は大 切 な 力 です 。 そ し て、 そ の力 は 自 分 自 身 のた め は も ち ろ ん です が、 目 の前 に いる 子 ど
も た ち が そ のよ う な 情 報 を 求 め て き た と き に瞬 時 に 与 え ら れ る こ と が 大 切 です 。 情 報 にあ ふ れ た時 代 だ
︵ 評 価 す る︶
か ら こ そ の 力 で す 。 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー と し て の 読 み の 力 が 重 要 な 意 味 を 持 ち ま す 。
四 み る
私 た ち はな ぜ 評 価 を す る の でし ょう か。 教 育 活 動 が目 標 行 為 であ る 以 上 、 そ の目 標 に 照 ら し て 達 成 で
き た か と いう 到達 状 況 を 知 る 必 要 が あ り ま す 。 子 ども た ち の学 習 の評 価 は 、 実 は教 師 自 身 の指 導 の評 価
です 。 し た が って 達 成 で き な か った と いう 学 習 の評 価 は 次 への指 導 の目 標 に な る の です 。 だ か ら こそ 子
ど も た ち の 言 語 活 動 、 子 ど も によ る 話 し こ と ば ・書 き こと ば の言 語 作 品 を 評 価 す る こと 、 そ し て そ の力 を つけ る こ と が 大 切 です 。
教 師 の 言 語 状 況 は、 子 ど も た ち の言 語 目 標 にな り 言 語 活 動 に な り ま す 。 だ か ら こそ 私 たち は 自 ら の 言
︵ 文 化 に ︶ ふ れ る ・創 る
語 力 を 鍛 え る 必 要 があ り ま す 。 何 よ り ま ず 自 ら の言 語 状 況 を 見 つめ 評 価 自 省 す る こと こ そ急 務 と 考 え ま す。
五
一社 会 人 と し て、 一教 師 と し て さ ま ざ ま な 言 語 文化 に ふ れ る こと は た い へん に 好 ま し いこ と です 。 ま た 、 教 師 は 創 作 活 動 ・演 劇 活 動 な ど にも 大 い に励 み た いも の です 。
いろ いろ な 言 語 文 化 創 作 活 動 が考 え ら れ ま す 。 書 道 に 親 し む 、 小 説 ・随 筆 を 書 く 、 短 歌 ・俳 句 を 創 る 、 児 童 劇 ・ 一般 劇 を 演 出 す る、 自 ら が出 演 す る、 な ど 。
ユ ニー ク な と ころ で は こ んな 教 師 も いま す 。 彼 は学 生 時 代 に 落 語 研究 会 に所 属 し て いて、 高 座 に上 が
り 、 お客 様 の前 で落 語 を 語 って いま し た。 教 師 にな った 今 でも 時 に は お 客 さ んを 前 に演 じ る こと があ る
と 言 いま す 。 受 け 持 って い る学 級 の子 ども た ち にも も ち ろ ん 披 露 す る そ う です 。 例 え ば 長 い名 前 を 持 つ
子 ども のお 咄 で ﹁じ ゅげ む じ ゅ げ む ⋮ ⋮ ﹂ と 楽 し そう に演 じ ま す 。 子 ど も はも ち ろ ん大 喜 び 。 長 い名 前
を 覚 え た い から 教 え て ほし い、 と せ が む 子 ども も 現 れ る と か 。 う ら や ま し いか ぎ り です 。 教 師 の話 法 と いう 点 で も 大 いに 貢 献 し て いま す 。
いろ いろ な 文化 的 素 養 が 子 ど も た ち に様 々に 伝 わ って いき ま す 。 子 ど も の前 に立 つ私 た ち が何 か 一つ
︹石橋 一徳 ︺
でも 得 意 分 野 が持 てる と いう こと はす ば ら し い こと です 。 私 た ち は 大 い に言 語 文 化 に 触 れ 、 し か も そ れ を 楽 し みな が ら体 現 し て いき た いも の です 。
参 考文 献 白 石寿 文 ﹃育 つことば 育 てる こと ば﹄東 洋館 出 版社 一九 九 六
声
A こ とば に関 す る 基 礎 知 識 を 音 声 ・音 韻 ・話 法 ・文 字 ・語 彙 ・文 法 、 そ れ ぞ れ の側 面 か ら見 つめ て みま す 。
一 音 ︵1︶ 発 声 ・発 音
﹁発 音 発 声 ﹂ と ま と め て言 う こ と が多 い の で す が、 実 際 に は 、 声 帯 を 振 動 さ せ て 生 理 的 ・物 理 的 に声
を 発 す る ﹁発 声 ﹂ と 、 そ れ を ﹁調 整 ﹂ し て こ と ば にす る ﹁発 音 ﹂ と は は っき り 区 別 し て 考 え る べき で
す 。 ﹃N H K ア ナ ウ ン ス読 本 ﹄ ︵日 本 放 送 出 版 協 会 一九 七 〇︶ によ り ま す と、
発 声 と は 、 肺 か ら 気 管 を 通 し て空 気 を 吐 き 出 す と き に声 帯 を 振 動 さ せ て音 を 作 り 出 す こと を い い
ます。 ︵ 中 略 ︶ 発 音 は、 声 そ の も の で はあ り ま せ ん 。 声 帯 の 振 動 に よ って 作 ら れ た 声 は、 さ ら に い
ろ いろ な 調 音 器 官 の働 き に よ って、 ひび き や音 色 を 与 え ら れ 、 こ と ば とし て の音 声 と な り ま す が 、
こ のひ と つひ と つ の音 を 作 り 出 す 調 音 器 官 の協 調 運 動 を 発 音 と い いま す 。 ︵二 〇 頁 ︶ と 、 両 者 の違 いが説 明 さ れ て いま す 。
︵ 2︶ 呼
吸
私 た ち の呼 吸 法 に は大 き く 三 つ の種 類 があ り ま す 。 激 し く 運 動 し た 直 後 の肩 で の呼 吸
︵ 肩 式 呼 吸 ・鎖
骨 呼 吸 ︶、 息 苦 し いほ ど 精 神 的 に 緊 張 し て い る と き の肋 骨 の 上 下 に よ る 胸 で の呼 吸 ︵ 胸 式 呼 吸 ・肋 骨 呼
吸︶、 日常 的 に体 が 楽 にな って い る と き 、 静 か に 横 隔 膜 を 上 下 さ せ て いる 呼 吸 ︵ 腹式 呼吸︶ な どがあり
ま す 。 発 声 上 望 ま し い の は腹 式 呼 吸 です 。 の ど に無 理 な 緊 張 を 与 え ず 、 多 く の空 気 を 楽 に 出 し 入 れ で
き、 呼 気 を 穏 や か に て いね い に 吐 く こ と が で き 、 自 然 な 発 声 が保 て る か ら です 。 ︵3︶ 器 官 の訓 練
教 師 な ど ﹁声 の労 働 ﹂ に従 事 す る 者 は 、 声 帯 を 強 靱 に す る 合 理 的 な 訓 練 を す る 必 要 が あ り ま す 。 当
然 、 声 だ け の訓 練 で は 不 十 分 で、 体 全 体 の調 和 的 鍛 錬 を 心 がけ な け れ ば な り ま せ ん 。 具 体 的 な 発 声 法 を 試 み て み ます 。
肩 の力 を 抜 き 、 背 筋 を 伸 ば し、 両 足 を 少 し 開 いた楽 な 姿 勢 で ま っす ぐ 立 ち ま す 。 両 足 の つま 先 に少 し
力 を 入 れ 、 上 体 を 動 か さ な い で、 腰 を ひ き し め ま す 。 首 と あ ご の角 度 を 直 角 に し て 真 っ直 ぐ 前 を 向 い て、 腹 式 呼 吸 で発 声 し ま す 。
声 量 は 、 声 の大 き さ 、 あ る い は 強 さ の こ と を い いま す 。 私 た ち は 、 あ る 一定 の声 量 が 求 め ら れ ま す
し 、 当 然 声 量 は大 き い に越 し た こ と は あ り ま せ ん。 横 隔 膜 の上 下 運 動 と そ れ を 支 配 す る腹 筋 の運 動 を 訓
練 す る こと で、 声 量 を 上 げ る こと が で き ま す 。 や は り 、 腹 式 呼 吸 と 肉 体 全 体 の鍛 錬 が必 要 で す 。
二 音
韻
︵1 ︶ 母 音 の 三角 形
日本 語 共 通 語 で は 母 音 は ア イ ウ エオ の五 つで す 。 上 代 に は 八 つあ った と いわ れ 、 方 言 の中 に は 今 で も
五 つ以 上 の 母音 を 持 つも のも あ り ます 。 母 音 の三 角 形 と は 、 最 も 大 き く 口を 開 く ア を 下 の頂 点 に 、 口 が
九 一七 〇 ︶ によ り ま す と、
横 へと 開 く エか ら イ へ、 口を つぼ め る オ か ら ウ へと 続 く 二 つの辺 か ら な る逆 三 角 形 で表 し ま す 。 ︵ 2︶ 拍 ﹃N H K ア ナ ウ ン ス読 本 ﹄ ︵日本 放 送 出 版 協 会
た と え ば 私 た ち が ﹁コト バ﹂ と いう こと ば を で き る だ け 区 切 って 発 音 す る と き に は 、 ﹁コ、 ト 、
バ﹂ と いう ふう に ふ つう 同 じ 間 ︵ ま ︶ で 発 音 し ま す が 、 こ のよ う な 、 私 た ち の ふだ ん の言 語 生 活 で
最 も 小 さ な 音 の単 位 と し て 用 いら れ る そ の 一つひ と つを ﹁拍 ﹂ と い いま す 。 ︵二八 頁︶ とあります。 ︵3︶ 音 の変 化 ︵ ガ行鼻音 化︶
共 通 語 で は 、 濁 音 のガ ギ グ ゲ ゴ が 第 二拍 以 後 で、 原 則 と し て鼻 音 化 し 、 鼻 濁 音 と 呼 ば れ ま す 。 ま た、
格 助 詞 の ﹁が ﹂ も 鼻 音 化 し ま す 。 鼻 音 化 す る と 、 鼻 腔 の共 鳴 に よ り 響 き が や わ ら ぎ ま す 。 聞 き 手 の耳 に
心 地 い いと の理 由 で ア ナ ウ ンサ ー は 鼻 音 化 が 必 須 の条 件 と いわ れ て いま す 。 し か し も と も と鼻 音 化 がな
い生 活 こ と ば ︵ 方 言 ︶ で 育 った 人 が、 数 字 、 例 え ば十 五 を ジ ュウ コと鼻 音 化 し た り 、 擬 音 語 、 例 え ば ガ
リ カ リ と鼻 音 化 す る な ど 必 要 以 上 の鼻 音 化 に な って し ま う よ う な 指 導 は 誤 り です 。 小 学 生 に は 、 鼻 音 化
の存 在 を 知 ら せ る こ と は 必 要 で も 、 そ れ を 発 音 せ よ と 強 制 す べ き で は な い でし ょう 。
三 話
法
野 地 潤 家 氏 は 、 教 職 専 門 家 と し て熟 達 し て お かな け れ ば な ら な い教 師 の教 育 話 法 と し て、 ﹃話 し こ と
ば学 習論﹄ ︵ 共 文 社 一九 七 四 ︶ に お い て、 発 問 法 、 助 言 法 、 説 明 法 、 司 会 法 、 賞 讃 法 、 ユー モ ア 法 の
六 点 、 そ の後 、 ﹃ 国 語科授業 論﹄ ︵ 共 文 社 一九 七 六 ︶ に お いて朗 読 法 と 治 療 法 を 追 加 し て 八 点 を あ げ て
いま す 。 同書 所 収 の ﹁教 師 の話 し 方 を 求 め て﹂ で は 、 ﹁ど の 一つも 、 ふ だ ん か ら の修 練 を つづ け て い な
け れ ば 、 確 か な 習 得 を し て いく こ と は む ず か し い。 国 語 科 のす ぐ れ た 感 銘 の 深 い授 業 は 、 多 く のば あ
い、 右 の多 く の話 法 ・話 し か た に よ って 支 え ら れ て いる 。 授 業者 と し て は 、 話 し か た ・話 法 の専 門 的 な
修 練 を 必 要 と す る ので あ る。﹂ と 述 べ、 教 師 が 日 々 の 授 業 の 中 であ る いは 授 業 外 に お いて も 、 自 ら の 教
育 話 法 に つ い て研鑽 し 、 磨 き を か け て いく こ と の重 要 性 と必 要 性 を 説 い て いま す 。 私 た ち は 、 自 分 自 身
の話 法 に つい て論 理 的 に分 析 し 、 技 能 を磨 いて いく こと が 日 々求 め ら れ ま す 。 教 育 話 法 に つ い て、 自 分
自 身 が た ど ってき た 教 育 実 践 を 振 り 返 り 、 そ の成 果 や 課 題 を 明 ら か に す る こ と は 教 師 自身 が 自 ら の教 育
話 法 を 磨 い て いく た め に と ても 大 切 な こと で、 教 師 自 身 の話 し こと ば 力 量 形 成 に 大 き な意 味 を も つ こと
字
にな り ま す 。
四 文
文 字 に よ り こ と ば を 書 き 表 す こ とを 文 字 表 記 と い い、 日本 語 の文 字 表 記 に よ る 文 章 を 、 漢 字 仮 名 交 じ り 文 と い いま す 。
漢 字 仮 名 交 じ り 文 の基 礎 的 ・基 本 的 な能 力 は 、義 務 教 育 で あ る 小 学 校 段 階 、 中 学 校 段 階 を 通 し て 培 わ
れ ま す 。 特 に小 学 校 段 階 で は、 日常 の生 活 で 一般 的 に表 さ れ る漢 字 仮 名 交 じ り 文 を 書 き 表 す こ と が でき る よう に な る た め の基 礎 的 ・基 本 的 な能 力 を 養 いま す 。
漢 字 仮 名 交 じ り 文 に 用 いら れ る 文 字 に は 、 ﹁漢 字 ﹂ ﹁平 仮 名 ﹂ ﹁片 仮 名 ﹂ ﹁ロー マ字 ﹂ ﹁算 用 数 字 ﹂ な ど
が あ り ま す 。 漢 字 は 実 質 的 な 意 味 を 表 す 部 分 に 用 い、 平 仮 名 は用 言 の語 形 変 化 を 表 す 部 分 や助 詞 ・助 動 詞 の類 を 表 し ます 。 片 仮 名 は 擬 音 語 や 外 来 語 を 表 す のが 一般 的 で す 。
漢 字 は 、 使 用 の目 安 と いう 趣 旨 で 一九 四 五 字 から な る 常 用 漢 字 表 ︵一九 八 一年 ︶ が 選 定 さ れ ま し た。
彙
小 学 校 段 階 で は 別 表 ︵教 育 漢 字 ︶ 一〇 〇 六 字 を 学 習 す る こ と に な り ま す 。
五 語
﹁語彙 語 句 ﹂ と 一く く り に 言 う こ と があ り ま す が、 ﹁語 句 ﹂ と ﹁語 彙 ﹂ は 次 のよ う に分 け て 考 え る べ き
です 。 ﹁語 句 ﹂ と は 一般 に 個 々 の 語 句 を 個 別 的 に と ら え 表 す 意 味 で 使 わ れ ま す 。 一方 ﹁語 彙 ﹂ は 単 に 語
句 の集 ま り の意 味 で は な く 、 ﹁あ る 基 準 によ って関 連 す る 語 句 の集 ま り、 す な わ ち 語 句 の集 合 ﹂ ︵﹃ 中学
校 学 習 指 導 要 領 解 説 国 語 編 ﹄︶ を 意 味 し ま す 。 そ のま と ま り は 分 類 ・体 系 化 と 関 係 し て いま す 。
理 解 のた め の語 彙 を 理 解 語 彙 、 話 し た り 書 いた り す る た め の語 彙 を 使 用 語 彙 あ る いは表 現 語 彙 と い い
ま す 。 時 代 を 限 って 上 代 語 彙 、 作 品 を 限 って万 葉集 語 彙 、 作 者 個 人 を 限 って 漱 石 語 彙 な ど と い った り し
ま す 。 ま た、 小 学 校 一年 生 で は こ の程 度 の語 を 身 に つけ る こと が好 ま し いと 考 え ら れ る 語 の総 体 を 小 学
校 一年 生 の学 習語 彙 と 呼 ぶ こと も で き ま す 。 つま り 、 語 彙 と は ど ん な 範 囲 に 限 定 す る か によ って さ ま ざ
まな ま と ま り に な り ま す 。 そ し て そ の量 を 語 彙 量 と 呼 ぶ こと が で き ま す 。
いず れ に し て も 指 導 の際 に は単 に 語 句 の寄 せ集 め的 な 学 習 に 終 始 す る の では な く 、常 に仲 間意 識 を 持
法
って、 こ と ば 、 つま り 語 彙 を 増 や す よ う にす べき です 。 そ れ が 、 こと ば に よ る 対 象 認 識 ・対 象 理 解 にな ります。
六 文
文 法 と は 、 文 の構 成 に関 す る 法 則 を い い、 いろ いろ な 学 説 が あ り ま す 。 いわ ゆ る 学 校 文法 は 橋 本 進 吉
の文 法 論 が そ の基 本 にな って いま す 。 共 通 語 だ け でな く 各 地 の方 言 、 これ を 生 活 語 あ る いは 生 活 こ と ば
と よ ぶ 研 究 者 も いま す が、 そ れ ら に も 独 特 の 文法 が 存 在 し ま す 。 いず れ に し て も 日本 語 ら し い、 日本 語
の特 質 を よ く と ら え た文 の法 則 が考 え ら れ て いま す 。 私 た ち は 日 本 語 の特 質 を よ く と ら え 、 そ れ ぞ れ の
文 法 を 効 果 的 に 活 用 し て 文章 を 見 つめ る こ と が 大 切 です 。 体 系 的 な 知 識 の注 入 や 暗 記 学 習 にな り が ち で
す が、 表 現 例 の中 か ら ﹁文法 則 ﹂ を 見 つけ 出 さ せ る文 法 学 習 によ って 学 習 す る 指 導 が生 ま れ て き ま す 。
七 結 び にかえ て
最 近 で は、 各 種 ホー ムペ ー ジ で様 々な 専 門 的 知 識 が 検 索 でき る よう にな っ て い ま す 。 指 導 者 は す べ て
が そ の道 の 専 門 家 で はあ り ま せ ん。 し かし な が ら 詳 し い知 識 を 調 べる た め の調 べ方 は ぜ ひ知 って お く 必
︹ 石橋 一徳 ︺
要 が あ り ま す 。 わ れ わ れ 教 師 は 専 門 家 と いう よ り 専 門 的 分 野 の窓 口 ・道 先 案 内 人 と いう つも り で子 ども に 接 し た いも の です 。
参考 文献
白石 寿 文 ﹁発 声 ・発 音 ・漢 字 ・語 句 ・語 彙 の学 習指 導︿言語 事 項 1﹀﹂ ﹃中 学 校 国 語 科 教育 実 践 講 座﹄第 九 巻 ︵ 株 ︶ニチブ ン 一九 九七 日本放 送協 会編 ﹃NH Kアナ ウ ンス読 本﹄ 日本 放 送出 版協会 一九 七〇 野地潤 家 ﹃話 し ことば学 習論 ﹄共 文社 一九 七四 野地潤 家 ﹃国語 科授 業論 ﹄ 共文社 一九 七六 野地潤 家 ﹃教育 話法 入門 ﹄ 明治図 書出 版 一九 九 六
小林 一仁 ﹁文字 ・表 記﹂ ﹃ 小学 校国 語 科教 育実 践講 座﹄ 第十 二巻 ︵ 株 ︶ニチ ブ ン 二○○ ○ 大槻和 夫 編 ﹃ 国 語科 重要 用語 三 〇〇 の基礎 知 識﹄ 明治 図書 出版 二 〇〇 一
A まず、 視聴覚 教材は、 そ の利 用方 法 に よ っ て功罪 両面が あること を理解 し て おき ま し ょう。 こと
ば を 媒 介 にし た 理 解 を 図 る こと が国 語 科 の 一つ の使 命 であ る と 言 え ま す 。 事 象 を 直 接 体 験 と し て 理解 す
る ので はな く、 そ の事 象 を 説 明 す る こと ば を 通 し て、 事象 に 接 し た筆 者 の思 想 を 理 解 す る の です 。 こ の
こ と を 踏 ま え た 上 で、 設 問 のよ う に 、 正 確 な 理 解 に つな が る 教 材 の提 示 、 豊 か な 想 像 力 に培 う 教 材 の提 示 に つ いて 考 え ま す 。
︻正 確 な 理 解 に つな が る視 聴 覚 教 材 の提 示 例︱ 主 に説 明 的 文 章 を 中 心 に︱ ︼
﹁雪 のあ るく ら し ﹂ ︵ 東 京 書 籍 四 年 ︶ の学 習 を 、 以 下 の① ∼③ の手 順 で取 り 組 み ま す 。 ① 文中 の言 葉 か ら 、 対 象 と な る 事 象 に 関 す る表 現 を 抽 出 し ま す 。 [例 ] 様 子 を 表 す こ とば ⋮大 き さ 、 形 、 色 、 な ど
雪 囲 いに つい て⋮ 十 メ ー ト ルも あ る 長 いす ぎ 丸 太 を 数 メ ー ト ルお き に 立 て る 横 木 を 何 だ ん にも わ た す す だ れ の よう な も の を し っか り と 結 び 付 け る ② ビデ オを 視 聴 し 、 事前 に 抽 出 し た 表 現 と 比 較 さ せ ま す 。 雪 囲 いを 作 って いる 人 と、 雪 囲 い の 大 き さ の比 較 な ど
③ 自 分 のイ メ ー ジ と違 って いた点 に つ いて話 し 合 いま す 。
実 際 に ビ デ オ を 視 聴 し た 児童 は 、 予 想 し た よ り も は る か に 大 き い雪 囲 い に驚 い て いまし た 。 横 木 に 人
が乗 っ て作 業 を し て い る様 子 を 見 て、 そ の頑 丈 さ に も 驚 いて いま し た 。 実 際 に 見 たも のと 、 こ と ば で 表
さ れ た も の とを 比 較 す る こ と で 、 書 か れ て いる 内 容 を 実 感 と し て理 解 す る こ と が でき た よう です 。
︻豊 か な想 像 力 に つな が る視 聴 覚 教 材 の 提 示 例︱ 主 に 物 語 文 を 中 心 に︱ ︼
物 語 の学 習 で は 、 具 体 的 な 映 像 が作 品 世 界 を 構 築 す る上 で 大 き な 影 響 を 与 え ま す 。 そ こ で、 学 習前 、 学 習中 に取 り扱 う こと を 考 え ま す 。 ① 学 習 前 の扱 い方
・作 品 の ビ デ オ を 使 用し ます 。 ビ デ オ を 途 中 で止 め な が ら 、 そ の後 の ス ト ー リ ー を 想 像 さ せま す 。 作
品 に対 す る 事前 の知 識 を でき る だ け 与 え ず に 、 作 品 世 界 に没 頭 さ せ る こ と が 大 切 です 。 次 が どう な
る か を 想 像 す る 楽 し み を尊 重 し 、 実 際 に作 品 を 読 む と き に自 分 が 考 え た 世 界 と比 較 す る こ と で 、 よ り 豊 か な 世 界 を 構 築 す る こ と が でき ま す 。 ② 学 習 中 の扱 い方
・作 品 の読 解 に 入 る 前 に、 パ ソ コ ンを 使 って 物 語 の挿 し絵 を 作 成 し ま す 。 教 科 書 の挿 し 絵 と 同 じ に す
る の で はな く 、 登 場 人物 の心 情 を 考 え な が ら そ れ を 表 現 す る よ う な 挿 し絵 の背 景 を 考 え さ せ ます 。
な ぜそ の挿 し 絵 の背 景 に し た の か を 、 文 中 の こと ば に戻 り な が ら 説 明 し ま す 。 自 分 の作 品 世 界 を 目
に 見 え る 形 で 表 現 し 、 友 だ ち と 比 較 す る こ と で、 豊 か な 想 像 力 を 育 成 す る こと が で き ま す 。
・そ の他 、 視 覚 的 な 教 材 だ け でな く 、 音 声 教 材 を ぜ ひ活 用 し た いも の です 。 こと ば を 手 が か り に作 品
世 界 を 広 げ て いく の に有 効 で す 。 連 続 ラ ジ オド ラ マ のよ う な わ く わ く す る 世 界 を 子 ども に も 味 わ わ せ る こと が でき る な ら 、 ど ん な に い いで し ょう 。 ③ 学 習 後 の扱 い方
子 ど も た ち が、 家 庭 で いか に テ レ ビを 視 聴 し て いる か、 そ こか ら 魅 力 的 な 話 題 を 引 き 出 し た り 、 音 声
面 、 映 像 面 のす ば ら し さ を 教 室 に再 導 入 し て 文学 的 感 想 に つな ぐ 日常 化 を 図 り た いも のです 。
︹ 本村 秀 一郎︺
A ﹁ス タ ン ド ・アロー
ン ﹂ と﹁ネ
ットワーク
﹂︱
( 他 の コ ン ピ ュー タ と つ な が っ て お り 、 情
︵ 他 の コ ン ピ ュー タ と つ な が れ て い
コ ン ピ ュー夕 の 活 用 方 法 と し て は 、 そ の 形 態 に
﹁ネ ッ ト ワ ー ク
よ っ て 大 き く 二 つ に 分 け る こ と が で き ま す 。 ﹁ス タ ン ド ・ア ロ ー ン な い、 コ ン ピ ュー タ 単 体 と し て の 活 用 )﹂ と
報 の交 流 が 可 能 で あ る 状 態 で の 活 用 )﹂ の 二 つ で す 。
一 ス タ ン ド ・ア ロ ー ン と し て の 使 用
﹁スタ ンド ・ア ロー ン﹂ 形 態 で の コ ンピ ュー タ活 用 は 、 大 き く ﹁学 習 ソ フト の 活 用 ﹂ ﹁情 報 収 集 のた め
の ツー ルと し て の活 用 ﹂ ﹁情 報 蓄 積 ・情 報 印 字 ツー ルと し て の 活 用 ﹂ の 三 つに分 け る こ と が で き ま す 。 ︵ 1 ︶ ﹁学 習 ソ フト ﹂ の活 用
いわ ゆ る ﹁学 習 ソ フト ﹂ を 活 用 し て 、 子 ど も た ち 自 身 が コ ンピ ュー タ を 操作 し な が ら 、 学 習 を 行 いま
す 。 国 語 科 の場 合 、 ﹁漢 字 ド リ ル﹂ ﹁慣 用 句 ド リ ル﹂ ﹁文 法 問 題 ﹂ ﹁百 人 一首 暗 唱 ﹂ な ど、 お も に ﹁言 語 事 項 ﹂ に 関 す る ﹁学 習 ソ フト ﹂ が 中 心 に な り ま す 。
︻意 義 ︼ ﹁繰 り 返 し ﹂ が も のを いう 面 に お い て は、 コ ン ピ ュー タ を 生 か し や す いと いえ る で し ょう 。
コ ン ピ ュー タ 画 面 に 読 解 に 関 す る 問 いが 表 示 さ れ て、 そ れ に答 え て いく ﹁読 解 力 鍛 錬 ソ フ ト ﹂、 書 き
た い内 容 を コン ピ ュー タ の問 いに 従 って打 ち 込 む こ と に よ り 文 章 が でき あ が る ﹁文 章 作 成 援 助 ソ フト ﹂ などもあ ります。
︻留 意 点 ︼ ﹁読 む こ と ﹂ ﹁書 く こ と﹂ は 、 本 来 個 性 的 な も ので あ る た め 、 ﹁読 む こ と ﹂ ﹁書 く こ と﹂ の面
に コ ンピ ュー タ を 活 用 す る の は 、 今 のと ころ 、 初 歩 段 階 で の使 用 ま た は 補 足 的 な 活 用 に と ど め て お く べ き でしょう。 ︵ 2 ︶ 情 報 収 集 のた め の ツ ー ル と し て の活 用
教 科 書 は 紙幅 が 限 ら れ て い る た め 、 情 報 が コン パ ク ト に ま と め ら れ て いま す 。 教 科書 本 文 だ け を し っ
一方 、 二 十 一世 紀 を 迎 え た今 、 教 科 書 に書 か れ て いる こと を 、 さ ら に 深 く 理 解 す る た め に、
か り 読 む と いう こと も も ち ろ ん重 要 です 。 ︻ 意義 ︼
よ り 多 く の情 報 を 活 用す ると いう こ とも 求 め ら れ て いま す 。 いわ ゆ る、 ﹁情 報 活 用 能 力 ﹂ です 。 ﹁情 報 収
集 ﹂ に つ い て の詳 細 は 、 ﹁イ ンタ ー ネ ット 活 用 ﹂ に つ いて の項 目 を 参 照 し て 下 さ い。
も ち ろ ん、CD︲ROM やDVDと い った媒 体 に よ る ﹁百 科 事 典 ﹂ ﹁国 語 辞 典 ﹂ な ど を 、 コ ン ピ ュー タ に
お いて使 う の であ れ ば 、 ﹁スタ ンド ・ア ロー ン﹂ 形 態 で も 十 分 に 活 用 可 能 で す 。
︻留 意 点 ︼ 辞 書 ・事 典 は や は り ﹁書 物 ﹂ の 形 で 、 手 作 業 に よ って 引 い て いく 、 調 べ て いく こ と が 、 ま ず は重 視 さ れ る べ き でし ょう 。 ︵ 3 ︶ 情 報 蓄 積 ・情 報 印 字 ツ ー ル と し て の活 用
﹁ス タ ンド ・ア ロー ン﹂ 形 態 で も 、 ﹁情 報 の蓄 積 ﹂ は で き ま す 。 ﹁ク ラ ス掲 示 板 ﹂ ﹁﹃ご ん ぎ つね﹄ に つ
いて の疑 問 一覧 ﹂ な どを 必 要 な と き に閲 覧 で き る よ う に し て おき 、 そ こ に意 見 を 書 き 加 え て いか せ る と
いう よ う な 工 夫 が 可 能 です 。 ︻ 意 義 ︼ ク ラ ス内 の ﹁伝 え 合 い﹂ の場 と な る と いう 意 義 を も ち ま す 。
コン ピ ュー タ に はプ リ ンタ ー が つ いて い ま す 。 子 ど も た ち の作 文 な ど を 印 字 し た り、 ﹁ぼ く ら の学 級
新 聞 ﹂ を 作 った り し て 、 そ れ を 印 字 し て学 習 成 果 を 分 か ち 合 う こと が 可能 です 。 スキ ャナ ー ︵画 像 読 み
取 り 装 置) を 使 って、 写 真 や イ ラ スト を 活 用 す る こ とも でき ます 。 も ち ろ ん 、 デ ジ タ ルカ メ ラ を 使 って 撮 影 し た 映 像 の活 用 も でき ま す 。
︻ 留 意 点 ︼ ク ラ ス内 だ け の ﹁伝 え 合 い﹂ では あ り ます が 、 書 き 込 む内 容 に つ いて 、 人 権 的 な 面 で の配 慮 が必 要 と な り ま す 。
二 ネ ット ワ ー ク と し て の 使 用 ︵1︶ イ ン タ ー ネ ット 活 用 の意 義
小 学 校 に お い ても 、 コン ピ ュー タ を ﹁ネ ット ワー ク ﹂ に つな げ た 状 態 で の使 用 が 可 能 にな っ てき ま し
た 。 いわ ゆ る ﹁イ ンタ ー ネ ット ﹂ 活 用 が で き る よう にな った の です 。 ﹁イ ンタ ー ネ ット ﹂ と よ ば れ る も
のは 、 そう いう ネ ット ワ ー ク 会 社 が あ る の では な く 、 大 小 さ ま ざ ま な ネ ット ワー ク 同 士 が結 び つ い たも の の総 体 を ﹁イ ンタ ー ネ ット ﹂ と よ ん で いま す 。
︻ 意 義 ︼ さ ま ざ ま な ネ ット ワ ー ク が結 び つ い た ﹁イ ンタ ー ネ ット ﹂ を 活 用 す る こと によ り 、 教 室 に い
な が ら に し て 、 多 種 多 様 な 情 報 を 入 手 し た り 、 電 子 メー ルな ど に よ って他 者 と 交 信 し た り す る こと が可 能 とな ります。
︵2 ︶ ﹁情 報 活 用 能 力 ﹂ の育 成
﹁情 報 活 用能 力 ﹂ は、 も は や ﹁イ ン タ ー ネ ット ﹂ 活 用 抜 き に は語 れ な い時 代 と な って き ま し た 。 国 語
科 に お い ても 、 情 報 を 入手 す る ツ ー ル と し て、 ﹁イ ンタ ー ネ ット ﹂ を 活 用 す る 場 面 が 増 え てく る に違 い あ り ま せ ん。
例 え ば 、 ﹁森 林 の お く り も の﹂ ︵ 富 山 和 子 著 東 京 書 籍 五 年 ︶ に 次 の よ う な 記 述 が あ り ま す 。 ﹁日 本 に
は いた る 所 、 す ぐ れ た木 材 が あ り ま し た。 日 本 人 は、 そ の森 林 の め ぐ み を精 い っぱ い利 用 し て ﹃木 のく
ら し ﹄ を 築 い てき ま し た 。﹂ こ の ﹁木 の利 用 ﹂ に つ い て の 具体 例 も いく つか 示 さ れ て います 。
︻ 意 義 ︼ 学 習 者 は、 教 科 書 に 示 さ れ た以 外 の利 用 方法 に つ いて も 知 り た く な る に違 いあ り ま せ ん。
﹁検 索 エ ンジ ン﹂ と よ ば れ る も のを 活 用 し て 、 容 易 に情 報 検 索 が でき ま す 。 例 え ば、 ﹁森 ﹂ と いう 語 を
用 いて 検 索 し て み る と、 ﹁森 の窓 ︵http://www.plaza.acros︶s ﹂. とoい rう .サ jイ p/ ト h ︵ ﹁イ sg ンwtks/
タ ー ネ ット ﹂ 情 報 があ る 場 所 の こ と ︶ が あ る こと が わ か り ま す 。 ﹁森 の窓 は 、 森 林 ・林 業 ・木 材 ・森 づ
く り ・ボ ラ ン テ ィ ア ・家 づ く り の リ ンク 集 です 。 森 や 木 に関 す る サ イ ト を 目 的 別 に 探 す こ と が でき ま
︵httw pw :w /. /geocities.co.jp/Na ︶﹂ tu とr いe うLサaイ nト d/ に2834/
す 。﹂ と、 ﹁リ ンク 集 ︵サイ ト を 集 め た も の)﹂ があ り、 いろ いろ な サ イ ト と つな が って いま す 。 例 え ば、 ﹁森 の窓 ﹂ か ら ﹁森 の 大 百 科 事 典
入 る こと が で き ま す 。﹁森 の大 百 科 事 典 は、森 林 ・林 業 に関 す る イ ンタ ー ネ ット 版 百 科 事 典 で す 。森 林 ・
林 業 に関 す る 情 報 を 50音 順 に整 理 し て いま す 。﹂ と 、 よ り 具 体 的 な 情 報 に近 づ いて き ま し た 。
︻ 留 意 点 ︼ ﹁検 索 の方 法 に よ り 、 得 る こ と の で き る 情 報 の質 が 異 な って く る と いう こ と ﹂ を 子 ど も に
自 覚 さ せ る こと も 、 ﹁情 報 活 用能 力 ﹂ の重 要 な 要 素 であ る と いう こ と を 忘 れな いよ う に し た いも の で す 。
︵ 3 ︶ 電 子 メ ー ル によ る他 者 と の ﹁伝 え 合 い﹂
電 子 メー ルを 活 用 す る こと によ り 、 さ ま ざ ま な 他 者 と ﹁伝 え 合 う ﹂ こ と が でき ま す 。
︻意 義 ︼ こ れ ま で は学 級 内 他 者 同 士 の ﹁伝 え 合 い﹂ だけ であ った国 語 科 学 習 の中 に 、 ﹁学 級 外 ・学 校 外 ﹂ 他 者 と の ﹁伝 え 合 い﹂ を 取 り 入 れ る こ と が 可 能 と な り ま す 。
例 え ば 、 ﹁イ ンタ ー ネ ット を 活 用 し た ︿異 校 種 異 学 年 伝 え 合 い﹀︱ 愛 媛 の 小 学 生 と大 阪 の高 校 生 と の
︿読 み ﹀ の ︿伝 え 合 い﹀ 学 習 活 動︱ ﹂ と いう 実 践 が あ り ま す ︵注 ︶。 副 題 の と お り 、 愛 媛 県 の小 学 校 と
大 阪 府 の高 校 生 と が、 電 子 メ ー ルを 通 し て、 ﹁伝 え 合 い﹂ を 繰 り 返 し て 、 お 互 い の ︿読 み﹀ を 高 め て い く と いう 実 践 です 。
︻留 意 点 ︼ あ く ま で ﹁教 育 ﹂ の 一環 であ る の で、 子 ども 同 士 の電 子 メー ル交 流 を 行 わ せ る 前 に 、 交 流 の相 手 と 丹 念 に ﹁打 ち 合 わ せ ﹂ を 行 って お く 必 要 があ り ま す 。
さ ま ざ ま な メ デ ィ ア が 発 達 し 、 ﹁情 報 化 社 会 ﹂ と 言 わ れ る 状 況 が 生 ま れ て き ま し た 。 子 ど も
三 メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ︻意 義 ︼
﹁リ テ ラ シ ー ﹂ は よ く
﹁読 み 書 き 能 力 ﹂ と 訳 さ れ ま す の で 、 ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ﹂ を
た ち に ﹁自 分 に 合 った メ デ ィ ア の 活 用 の 仕 方 ﹂ を 身 に つけ さ せ る の が 、 ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ﹂ で す 。 ︻留 意 点 ︼
﹁メ デ ィ ア の 使 い方 ﹂ の 学 習 と 勘 違 い し て い る 人 も 少 な く な い よ う で す 。 こ の ﹁リ テ ラ シ ー ﹂ は ﹁活 用
﹁イ ン タ ー ネ ット ﹂
﹁情 報 媒 体 ﹂ を 利 用 す る た め の ﹁リ テ
能 力 ﹂ と 幅 広 く と ら え た いも の で す 。 ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ﹂ と い う と 、 い わ ゆ る 活 用 に 関 す る も の に 目 が 向 き が ち で す が 、 ﹁メ デ ィ ア ﹂、 す な わ ち
ラ シー
ど の ﹁メ デ ィ ア ﹂ を 使 う か に よ っ て 、 情 報 の 質 が 異 な っ て く る と い う こ と 、 つ ま り
﹁情 報
︵活 用 能 力 )﹂ と 考 え る と 、 新 聞 、 ラ ジ オ 、 テ レ ビ な ど の ﹁情 報 媒 体 ﹂ も 含 め る 必 要 が あ り ま す 。
︻留 意 点 ︼
の 収 集 に つ い て の 留 意 点 ﹂ を 子 ど も に 自 覚 さ せ る こ と こ そ が 、 ﹁情 報 活 用 能 力 ﹂ の 育 成 で あ る と い う こ
一番 身 近 な
﹁メ デ ィ ア ﹂︱ テ レ ビ︱
と を 忘 れ な いよ う に し た いも の で す 。 ︵1 ︶
﹁イ ン タ ー ネ ット ﹂ 活 用 に つ い て は 別 項 に お い て 述 べ ま し た の で 、 こ こ で は そ れ 以 外 の ﹁メ デ ィ ア ﹂
﹁メ デ ィ ア ﹂ は テ レ ビ で し ょ う 。 最 近 の 教 科 書 に お い て は 、 例 え
に お け る リ テ ラ シ ー に つ いて 考 察 す る こと に し ま す 。 子 ど も た ち に と っ て 、 一番 身 近 な
ば 、 ﹁テ レ ビ の ニ ュ ー ス ・キ ャ ス タ ー に な っ て 、 調 べ た こ と を 報 告 し て み ま し ょ う ﹂ と い う よ う な 学 習
﹁伝 え 合 い ﹂ を 行 っ た り
活 動 例 が 手 引 き に 示 さ れ て い ま す 。 ﹁ニ ュー ス ・キ ャ ス タ ー ﹂ は 、 た だ 放 送 原 稿 を 読 み 上 げ る だ け で な
く 、 視 覚 的 資 料 を 活 用 し て わ か り や す く 説 明 し たり 、 複 数 のキ ャ スタ ー 同 士 が
そ う し た ﹁複 合 的 な 言 語 活 動 ﹂ を 生 き た 場 に お い て 行 わ せ る と い う 意 義 が あ り ま す 。 も ち ろ
し て いき ます 。 ︻ 意義 ︼
﹁メ デ ィ ア ﹂ 情 報 が 作 成 さ れ る と いう
﹁ニ ュー ス ﹂ 作 り に は 、 キ ャ ス タ ー だ け で な く 、 記 者 、 プ ロ デ ュ ー サ ー な ど の 役 目 を す る
ん 、 ﹁生 き た 言 葉 の 力 ﹂ を 身 に つけ さ せ る た め で す 。 ︻ 留意 点︼
他 者 と の 共 同 作 業 が 必 要 にな り ま す 。 そう し た共 同作 業 によ って こ と を 知 る こ と 自 体 が 、 ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ﹂ な の で す 。
︵2 ︶ 新 聞 を 活 用 し た ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シー ﹂ の 授 業 を︱
﹁ 新 聞 を 教 育 に﹂ 運 動︱
in ︶﹂ Ed とu よcばaれ tる iも on の です 。
新 聞 も ま た多 く の家 庭 に お い て活 用 さ れ て いる メ デ ィ ア です 。 そ う し た新 聞 を 教 育 に活 用 し よ う と い う 運 動 が あ り ます 。 ﹁新 聞 を 教 育 に ︵NIE=Newspaper 例 え ば 、 次 のよ う な 新 聞 を 使 った 授 業 の 工 夫 が 可 能 です 。
① ﹁お 誕 生 日 新 聞 ﹂ ⋮ 子 ど も た ち の誕 生 日 を 知 ら せ れ ば 、 ﹁お 誕生 日新 聞 ﹂ と し て、 そ の 日 の 第 一面
︵さ ら に テ レ ビ欄 が添 え ら れ る 場 合 も ) の コピ ー が届 け ら れ る と いう サ ー ビ スを 行 って いる 新 聞 社
が あ り ま す 。 う ま く 活 用 す れ ば 、 個 に 応 じ た ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ﹂ 学 習 の展 開 が 可 能 と な り ます 。
② 新 聞 記 者 を ゲ スト ・ス ピー カ ー に ⋮ 新 聞 社 な ど に申 請 す れ ば、 現 役 の新 聞 記 者 を ゲ ス ト ・スピ ー
カ ー と し て教 室 に 招 く こと が可 能 で す 。 生 々し い取 材 の様 子 な ど を 語 って も ら え ま す の で、 ﹁メ デ ィ ア ・リ テ ラ シ ー ﹂ の授 業 が盛 り 上 が る に違 いあ り ま せ ん 。
︹ 堀 江祐 爾︺
︻ 意 義 ︼ ﹁テ レ ビ ﹂ に 関 す る 学 習 は、 ﹁話 す こ と ・聞 く こ と ﹂ に関 す る 学 習 活 動 で あ り、 ﹁新 聞 ﹂ に関
す る学 習 は 、 ﹁書 く こ と ﹂ ﹁読 む こ と﹂ に関 す る学 習 活 動 と いう こと に な り ま す 。
﹁国 語教 育 の実践 と研 究を つな ぐ会 ﹂編 ﹃ 実 践国 語 研究﹄ 別冊 二 三八号 二〇 〇 二
注
「春 先 の ひ ょ う」 20,113
「虫 の ゆ りか ご 」 10
「春 の うた 」 120
「ヤ ドカ リ」 146
「標 識 と言葉 」 132
「ヤ ドカ リ とイ ソ ギ ンチ ャ ク」
「ヒ ロ シマ の うた 」 145 「べ トち ゃ ん ドクち ゃん か ら の 手 紙 」 145 「ぼ くは ね こ の バ ー ニ ー が 大 好 きだ っ た」 125 「ほ しに な っ たふ ね 」 147
131
117 『国 語 科 授 業 論 』 201
「ヤ ドカ リの す み か え 」 146 「や ま な し」 96
『 新 版 小 学校 国 語 科 教 育 研 究 』 184
「雪 の あ る く ら し」 205
『子 ど も と悪 』 179
「わ ら ぐつ の 中 の神 様 」 20,
『中 学校 学 習 指 導 要 領 解 説 国
113
語 編 』202
「マ ザ ー グー ス の うた が き こ
『 葉 隠 聞 書 』 179
え る 」 117
書
名
「み み をす ま す」 117 「ム サ サ ビの す む町 」 136
198 『句 集 小 さ な一 茶 た ち』
『葉っ ぱ の フ レデ ィー 』 125 『話 し こ とば 学 習 論 』 201
『NHKア
ナ ウ ン ス読 本 』
索 読 み 聞 か せ 150
ジ ム ・ トレ リー ス 150
「お お き な か ぶ」 94
読 み 比 べ 103,146
ジ ュ デ ィス ・ボ ー ス ト 125
「お ちば 」 146
四 コマ 漫 画 21,113,131
白石 寿文 106,176,184,187,
「お 手 紙 」 146
193
ラ 行 落 語 197
リレ ー 作 文 69
「お は な しき い て」 46
杉 み き子113
「音 読 集 3 くさぶ え」 116
鈴 木 清 隆 32
「金 色 の 足 あ と」 144
武 宮秀〓 147
「くじ ら ぐも」 94
谷 川〓 太 郎 117
「雲 の 花 」 103
寺 村 輝 夫 124
「車 の い ろ は 空の い ろ」 101,
土 肥 禎 利 ( 春 嶽 ) 182
臨 書 159
練 習学 習 79 ロー マ 字 指 導 167
124
富 山和 子 211
「こ とば 遊 び、 五 十 の 授 業 」
新 美 南 吉 104,ll2,143 ニ コ ラ ・べ ー リー 117
「ごん ぎつ ね 」 8,96,104,
野 口芳 宏 56
32
121,143,210,112
野 地 潤 家 201
「サ ー カ スの ラ イオ ン」 49
波 瀬 満 子 32
「段 意 」 184
ピ ア ジ ェ 154
「自然 の か くし絵 」 131
わ か る授 業 17
正 高 信 男 154
「じ ど う車 くらべ 」 130
話 型 32
増 井 光 子 140
「白 い ぼ う し」 101,124
話 文 体 78
松 井 直 153
「森林 の お く り もの 」 211
松 谷 み よ子 112
「ス イ ミー 」 57,95
ま ど ・み ちお 116
「スー ホ の 白い 馬 」 15
宮 沢 賢 治 96
「す み れ 島 」 145
青 木 幹 勇 121
宮 西 達 也 153
「大 造 じい さん とガ ン」 48,
ア ー ノ ル ド ・ロ ーべ ル 146
椋
あ ま ん き み こ 101,112,124
森 久 保 安 美 23
「た ん ぽ ぽ 」 146
今 江 祥 智 106
山 根 基 世 181
「た んぽ ぽ の ち え」 146
炎 天 寺 117
由 良 君 美 ll7
「ち い ち ゃ ん の か げ お く り」
大 村 は ま 175,179
ル ー ス ・ス タ イル ス ・ガ ネ ッ
ワ 行
人 名
岡 野 薫 子 112
鳩 十110,144
ト 124,146
甲 斐 睦 朗 172
110,175
57,99,112 「ツバ メ が す む 町」 132 「桃 花 片 」 112
河合 隼 雄 179
教 材作 品 名
草 野 心 平 120
「動 物 の 体 」 133,140 「波 に た わ む れ る 貝」 176
楠 本 憲 吉 117
「あ き あか ね の 一 生 」 2
「に ほ ん昔 ば な し」 33
工 藤 直 子 116
「あ の一 瞬 」 185
「に ゃー ご」 153
国 兼 由 美 子 184
「石 うす の うた 」 145
「人 間 と ロ ボ ッ ト」 134
栗 山 繁 治 180
「い ろ い ろ なふ ね 」 129
「猫 は 生 き て い る」 145
桑 原 隆 178
「宇 宙 か ら ツ ル を お う」 133
「野 の 馬」 106
五 嶋 み ど り 183
「ウ ミガ メの は ま を守 る」
「の は ら うたⅡ 」 116
五 味 太 郎 117 権 藤順 子 187 佐 賀 北 高 等 学 校 182 佐 賀 大 学 附 属 小 学 校 187
132 「エ ル マ ー シ リー ズ」 124, 146 「王 様 シ リー ズ」 124
「俳 句 は いか が」 117 「はせ み つ こ の あ い うえ お あ そ び 」32 「花 い っ ぱ い に な あれ 」 112
引
自作 教 材 64
中 心 発 問 127
比 較 的 手 法 88
指 示 49
聴 型 194
筆 者 の 論 理 135
視 写 79
聴 写 79
評 価 123,189,196
辞 書 活 用 177
聴 体 194
表 記 学 習 指 導 163 表現活動 9
姿 勢 37 事 前 評 価 l26
デ ィべ ー ト 114
事 中 評 価 126
手 紙 的 手 法 88
表 現 技 法 119
視 聴 覚 教 材 205
手 紙 文 85
腹 式 呼 吸 199
詩 作 り 121
点 字 180
複 数 教 材 20,133
視 点 97,101
電 子 メー ル 212
部 首 167 プ ロ ミネ ン ス 39
児 童 像 142 指 導 目標 108,140
到 達 目標 25
文 学 教 育 105
児 童 理解
読 書 感 想 文 83,87
文 学 教 材 105
自分 の 読 み 125
読 書 生 活 124,143,146
文 学 的 感 想 207
朱 書 き 71
読 書 マ ップ 143
文 学 的 文 章 105,109
授 業 技 術 188
読 解 学 習 142
文 学 の 授 業 123
授 業 計 画 189
読 解 指 導 93,109
文 法 則 203
授 業 展 開 99
取 り立 て 指 導 40,174
( 子 ど も把 握 ) 186
「 べ き 」188
取 材 73
ナ 行
取 材 ノー ト 157
ぺ ー プ サ ー
情 報 活 用 能 力 211 情 報 教 育 208
ベ ビ ー シ ェ マ 151 ト 47
日記 指 導 67,78,90
情 報 の 蓄 積 210
日記 文 86
母 音 200
常 用 漢 字 表 202
入 門 期 42,76,95
本 の帯 144
書 写 指 導 156
人 間 認 識 125
マ 行
書 字 力 165 ネ ッ トワー ク 208
書 道 156
年 間 カ リキ ュ ラ ム 26
間 39
ス タ ン ド ・ア ロ ー ン 208
ハ 行
ス ピ ー チ 11,31,59 墨 絵 159
メ デ ィ ア ・ リ テ ラ シ ー 196, 212
俳 句 作 り 112,117,121 絶 対 評 価 123
配 字 配 列 158
説 明 的 文 章 129
拍 200
説 明文 84
発 音 ・発 声 36,198
説 明文 学 習 176
発 問 49
メ モ 74,80
目標 分 析 106 物 語 文 学 習 175
ヤ 行
発 問 計 画 127 挿 話 活 動 112
話 し手 の 思 い 181 話 の 内 容 192
タ 行 対話 61 対話的手法 88
役割読 み 99
母 親 語 154 板 書 94,127 パ ン フ レ ッ ト 132
指 人形 47
余 白 の書 182
索
ア 行
漢 字 字 典 164
言 語 文 化 創 作 活 動 196
漢 字 指 導 164,169
検 索 エ ン ジ ン 211
感 想 文 82 ア ク ロ ス テ ィ ッ ク 158
関 与 性 182
語 彙 202
ア ニ マ シ オ ン 88
関 連 語 句 172
語 彙 指 導 172
ア ン グル 日記 67
関 連 指 導 109,163
口形 38
暗 唱 116
関 連 図書 145
呼 吸 199
ア ン ソ ロ ジー 122
呼 吸 法 37 記 憶 力 35
語 句 202
意 見 文 81 一 行 日記 91
机 間指 導 190
国 語 学 力 19,107
聞 く教 師 57
国語科の仕事 4
イ メー ジ 101
聞 く子 56
語 句 指 導 172
聞 く心 ・技 ・体 193
個 性 読 み 107,124
NIE
214
こ とば 遊 び 175
聞 く場 58 198
こ とば 選 びの 的 確 性 184
絵 本 150
基 礎 知 識(こ とば の)
絵 本 モ ン ター ジ ュ 153
教 育 課 程 審 議 会 の 答 申 5
こ とば づ か い の 正 確 性 184
教 育 漢 字 202
こ とば の 意 識 化 2
押 印 160
教 育 機 器 55
こ とば の 生 活 192
音 声 音 調 の 明確 性 184
教 育 話 法 189,201
子 ど もの 意 欲 136
音 声 処 理 ソ フ ト 40
教 材 化 139
個 に 応 じ た指 導 163
音 声 認 識 ソ フ ト 40
教 材 開 発 30
音 読 9,99,119
教 材 の 系 統 129
音 読 劇 112
教 材 分 析 48
コ ミュ ニ ケ ー シ ョン基 礎 能 力 23 コ ン ピ ュー タの 活 用 208
教 師 の音 声 193
カ 行
サ 行
教 師 の 役 割 58 教 師 用 指 導 書 7,136,140
書 き込 み 9
協 働 性 182
座 右 の 銘 160
ガ 行 鼻 音 化 200
記 録 文 83
三 行 日記 71,91
学 習 指 導 要 領 5,24,124
キー ワー ド 80 詩 116,159
学 習 ソ フ ト 208 学 級 通 信 194
群 読 119
滑 舌 39
自覚 あ る こ とば 学 習 者 191 色 彩 語 97
紙 人 形 劇 15
継 続 性 182
カ リ キ ュ ラ ム 23,106
言 間 距離 178
漢 字 仮 名 交 じ り文 201
言 語 能 力 187
思 考 力 19,35,135 自己 の 学 習 の 姿 22 事 後 評 価 126
引
執筆者
( 執筆順)
*白 石 寿 文 佐 賀大 学名誉 教 授 釘 本
浩
佐賀 県教 育 セ ン ター教 育 課程 支援 担 当係 長
最 所 美 紀
佐 賀県神 埼郡 神 埼町 立仁 比 山小 学校 教 諭
永 池 守 佐賀県鹿島市立能古見小学校教頭 副 島 伸 一
古川
雅
佐 賀県 小城郡 小 城町 立桜 岡小 学校教 諭
柴 田 誠 一
佐賀県唐津市立西唐津小学校教諭 佐 賀県 佐賀 郡諸 富町 立諸 富北 小学校 教 諭
橋 本 幸 雄 佐賀大学文化教育学部附属小学校教諭 本村秀一郎
佐 賀県教 育 セ ン ター 研修 員
権 藤 順 子 佐賀大学文化教育学部附属小学校教頭 重 松 景 二 佐賀大学文化教育学部附属小学校教諭 石 橋 一 徳 佐 賀 県佐賀 郡 富士町 立 富士小 学校 教諭 米 倉 一 成
佐 賀 県佐賀 市 立本庄 小 学校教 諭
池 田 圭 子 佐 賀 県鹿 島市 立鹿 島小 学校教 諭 〓口 順 子
佐 賀 県佐賀 郡 富士町 立 北 山小 学校 教諭
池 田 直 人 佐賀県藤津郡嬉野町立嬉野小学校教諭 岩 永 悟
佐賀県武雄市立東川登小学校教諭
余 郷 裕 次 鳴門教育大学学校教育学部助教授 井上〓
明
佐 賀 県藤津 郡嬉 野 町立 嬉野小 学校 教 諭
堀 江 祐 爾 兵庫教育大学学校教育学部教授 (*編者 )
朝倉 国語教 育講座1
国語教育入門 2005年
1 月20日
定価は カバー に表示
初 版 第 1刷
2006年12月25日
第 2刷
監修者 倉
澤
栄
吉
野
地
潤
家
発行者 朝
倉
邦
造
株式 朝 発行 所 会社
倉
書
店
東 京 都 新 宿 区 新 小 川 町6‐29 郵
便 番
号 162‐8707
電 話 03(3260)0141 FAX
〈検 印 省 略 〉 〓2005〈 無 断 複 写 ・転 載 を禁 ず 〉
ISBN
4‐254‐51541‐3
03(3260)0180
http://www.asakura.co.jp
C3381
シナ ノ ・渡辺製 本
Printed in Japan
◆ 国 語 教 育実 践 ・研 究 の ため の 羅針 盤 ◆
《朝 倉 国語 教 育講 座 》 全 6巻
倉澤 栄 吉 ・野 地 潤 家 監修
第 1巻 国語教 育入門 白石 寿文 編集 国語教室へ よ うこそ/話 したが りや ・聞 きたが りやの国語教室/ 書 く喜 び を分か ち合 う国語教室/文学 に遊ぶ国語教 室/説明 ・論 説に挑 む国語教 室/ こ とば ・文字の魅 力に満 ちた国語教室/授業 を愉 しめ る 国語教師 に
第 2巻 読 む こ との教 育 小 田迪 夫 ・浜 本 純 逸 ・松 山 雅 子 編集 200頁 本体3500円 読 むこ との原理 と教 育,そ の歴史的展望/読 むこ との指導体系/読 むこ との指導の内容 と方法/ これか らの読む こ との学習指導
第 3巻 話 し言葉 の教 育 白 石 寿 文 ・山 元 悦 子 編 集 216頁 本体3200円 話 し言葉学習 の特質 /話 し言葉教育 の戦後60年 史/話 し言葉学 習の機会 と場/話 し言葉学 習の内容・ 方 法 ・評価/話 し言葉 教育 を支 える教師 の話 し言葉
第 4巻 書 くこ との教 育 菅 原 稔 ・中 西 一 弘 ・森 田 信 義 編集 224頁 本体3500円 書 く と い う こ と/ 書 く こ と の 歴 史 的 展 望 / 書 くこ との 能 力 とそ の 発 達 / 書 くこ との 学 習 指 導 と そ の 体 系 / 書 く こ との 生 活 化 と習 慣 化 / 書 くこ との 学 習 指 導 とそ の 方 法 / 書 くこ との 学 習 指 導 に お け る評 価 / 書 くこ との 学 習 指 導 とそ の 発 展
第 5巻 授 業 と学 力評価 世 羅 博 昭 ・三 浦 和 尚 編集 224頁 本体3200円 国語科授 業構築 ・研究 の基本課題/国語科授業研究 の成果 と試行/国語科授 業構築 の原理 と方法/国語 科授業 の構 築 と展開/ 国語科授業の構築 ・研究の集積 と深化 /評価研究 の意義 と方法/学習者把握 をめ ざす評価 の開発/望 ま しい評価方法の開発 と試行/学 力 ・指 導力の評価 と授 業力の向上
第 6巻 国語教 育研 究 大 槻 和 夫 ・吉 田 裕 久 ・植 山 俊 宏 編集 276頁 本体4200円 国語教育 学総論/国語教育 課程お よび方法の研究/話 すこ と ・聞 くことの指 導研究/ 書 くことの指導研 究/読 むこ との指導研 究/ 読書指導の研究/言語事項指導 の研 究/ メデ ィア ・リテラ シー教育の研究/ 国語教育 史の研究/比較 国語教育研究/国語教育研 究 と隣接 諸科学 上 記価 格
( 税 別) は2006年11月
現在