エ ネルギ ー
変換工学 地球温暖化の終焉へ向けて 柳父 悟 西川尚男
東京電機大学出版局
本書 の全 部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作権 法上 で の例 外 を除 き,禁 じられ...
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エ ネルギ ー
変換工学 地球温暖化の終焉へ向けて 柳父 悟 西川尚男
東京電機大学出版局
本書 の全 部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作権 法上 で の例 外 を除 き,禁 じられ て い ます 。小 局 は,著 者 か ら複 写 に 係 る 権利 の管 理 につ き委託 を受 け て い ます の で,本 書 か らの複 写 を希 望 され る場 合 は,必 ず小 局(03-5280-3422)宛 に ご連 絡 くだ さい。
まえ が き ―地球 温暖化の終焉 へ向 けて ―
近 年,炭
酸 ガ ス を主 体 とす るガ ス 放 出 に よ る地 球 温 度 化,ま
た フ ロ ンガ ス の放
出 に よ る オ ゾ ン層 破 壊 の問 題 が ク ロー ズ ア ップ され て い る。 化 石 燃 料 を主 体 とす る 発 電 で は 必 然 的 に炭 酸 ガ ス を放 出 す る。 また 化 石 燃 料 自体 も確 実 に枯 渇 す る方 向 に向 か っ て い る が,貴 重 な化 石 燃 料 を浪 費 す る こ とな く大 事 に使 い,子 孫 に対 して 資 源 と して 少 しで も多 く残 す こ と も必 要 な こ とで あ る。 一 方,原
子 力 発 電 は炭 酸 ガ ス を放 出 し な い の で,地
球 温 暖 化 現 象 は避 け られ
る。 また 高 速 度 増 殖 炉 で ウ ラ ン燃 料 を燃 や す と,そ れ よ り多 くの プル トニ ウム燃 料 を得 られ る の で,活
用 の 範 囲 も増 え る。 し か し,使 用 済 み燃 料 は保 管 中 の半 減
期 が 長 い こ と,ま た 原 子 力 発 電 の 事 故 は ご く限 られ て い る と はい え,予 知 で きな い う ち に被 爆 し被 害 範 囲 も大 きい とい っ た課 題 が あ り,世 界 的 に は縮 小 化 方 向 に あ る。 わ れ わ れ 人 類 の 生 存 に は,電 気 エ ネル ギ ー が 必 須 で あ る。 この た め に は,時 間 を か け て で も持 続 可 能 な発 電 方 式 に 変 更 しな けれ ば な らな い 。 この よ うな 背 景 か ら火 力 発 電,水
力 発 電 あ る い は原 子 力 発 電 だ けで は な く,現 在 開 発 中 の もの を で
き るだ け多 く取 り入 れ て 教 科 書 を作 成 した 。 しか し,開 発 途 上 の もの を説 明 す る た め に は,そ
こ に至 る様 々 な予 備 知 識 や 技 術 を解 説 す る必 要 が 出 て きた。 そ し て
本 来 意 図 した 原 理 原 則 だ け を教 え る基 本 的 な教 科 書 で は足 りな くな っ た。 こ う し て 本 書 は,"地 球 温 暖 化 の終 焉 へ 向 け て"と
副題 を付 し,最 新 の 発 電 方
式 を で き る だ け多 く取 り入 れ た 。 そ して,従 来 の発 電 方 式 は で き るだ け原 理 原 則 を,ま た 新 発 電 方 式 に は そ れ に加 え,開 発 の 経 緯 もわ か りや す く書 い た 。 よ っ て,こ
の教 科 書 で 学 習 す る に際 して は,理 論 は ま ず で き る だ け簡 単 に学 び,将 来
さ ら に勉 強 した い と き に は理 論 を よ り深 く勉 強 す る こ と と,ま た新 し い発 電 方 式 は そ の 経 緯 に重 点 を お い て学 習 す る こ とを薦 め た い。
この 教 科 書 の 執 筆 は,第
1章 か ら第 3章 ま で を柳 父 が 担 当 し,第
4章 か ら第
10章 まで を西 川 が 担 当 した 。
2004年
2月
著者 ら
目
次
第 1章 水 力 発 電 1.1水
力 発 電 技 術
1
1.2水
力 学
2
1.3流
1.4水
1.5水
1.2.1静
水 力 学
2
1.2.2動
水 力 学
4
量 と 落 差 1.3.1流
量
1.3.2落
差
力 発 電 設 備
9 9 11 14
1.4.1ダ
ム
14
1.4.2水
路
16
1.4.3水
圧 管
16
車 お よ び ポ ン プ
18
1.5.1衝
動 水 車
18
1.5.2反
動水車
20
1.6吸
出 し管
28
1.7比
速度
30
1.8水
車 の 付 属 設 備
34
1.8.1弁
類
34
1.8.2速
度 調 整
34
第 2章 火 力 発 電 2.1火
力発電所
37
2.2熱
力 学
39
2.2.1熱
力 学 の 諸 定 義
39
2.2.2熱
力 学 第 1法 則
41
2.2.3熱
容 量,比
44
2.2.4状
態 方 程 式
45
2.2.5熱
力 学 第 2法 則 と エ ン ト ロ ピ ー
47
2.2.6熱
力 学 第 2法 則
52
2.2.7Carnotサ
熱
2.3蒸
2.4燃
2.5ボ
2.6発
2.7コ
イ クル
52
2.2.8任
意 の サ イ ク ル に 関 す るClausiusの
2.2.9エ
ン ト ロ ピ ー 線 図
55
2.2.10一
般 蒸 気 の 性 質
56
気 機 関 へ の 応 用
不 等 式
53
58
2.3.1ラ
ン キ ン サ イ ク ル
58
2.3.2再
生サ イクル
61
2.3.3再
熱サ イクル
62
2.3.4損
失
63
料
65
2.4.1燃
料 概 観
65
2.4.2燃
焼
67
イ ラ ー,復
水 器,給
水 加 熱 器 な ど
68
2.5.1ボ
イ ラ ー
68
2.5.2復
水器
69
2.5.3給
水加熱器
70
2.5.4環
境対策設備
71
2.5.5蒸
気 タ ー ビ ン
72
電機
75
2.6.1火
力用発 電機
75
2.6.2原
子力用 発電機
77
2.6.3水
車発電機
77
2.6.4可
変 速 揚 水 発 電
78
2.6.5永
久 磁 石 発 電 機
80
ン バ イ ン ド サ イ ク ル 発 電 シ ス テ ム
80
2.7.1ガ
ス タ ー ビ ン発 電(シ ン プ ル サ イ ク ル 発 電)
80
2.7.2コ
ン バ イ ン ドサ イ ク ル 発 電
83
2.8マ
イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン発 電
85
2.9デ
ィ ー ゼ ル 発 電
86
2.10地
熱 発 電
86
2.10.1地
熱 発 電 と は
86
2.10.2地
熱発電 方式
88
第 3章 原 子 力 発 電
91
3.1原
子 力 発 電 の 歴 史
91
3.2核
理 論
92
3.2.1衝
突 お よ び 散 乱
94
3.2.2中
性 子 と核 の 相 互 作 用
95
3.2.3核
分 裂
96
3.3各
種 原 子 炉 の 要 素
98
3.4各
種 原 子 炉
99
3.4.1加
圧 水 形 原 子 炉(PWR)
99
3.4.2沸
騰 水 形 原 子 炉(BWR)
103
3.4.3そ
の他 の原子炉
107
3.5使
用 済 み 燃 料 の 再 処 理 と放 射 性 廃 棄 物 処 理
108
3.6原
子 力 の 安 全 と 電 気 エ ネ ル ギ ー の 問 題
108
第 4章 燃 料 電 池 発 電 4.1燃
4.2燃
料電 池の基本
111 111
4.1.1燃
料電池 の原理
111
4.1.2電
気 エ ネ ル ギ ー へ の 変 換 お よ び 理 論 起 電 力
113
4.1.3電
圧-電 流 特 性
118
料電 池の種類
121
4.2.1固
体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC)
124
4.2.2り
ん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC)
126
4.3燃
4.4燃
4.2.3溶
融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池(MCFC)
128
4.2.4固
体 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC)
130
料 電 池 発 電 シ ス テ ム と 水 素 製 造 4.3.1燃
料 電 池 発 電 シ ス テ ム
132
4.3.2水
素 製 造
134
料 電 池 の 適 用
139
4.4.1固
4.5実
4.6ま
132
体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC)
139
4.4.2り
ん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC)
143
4.4.3溶
融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池(MCFC)
146
4.4.4固
体 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC)
147
用 化 へ の 課 題
149
4.5.1固
体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC)
149
4.5.2り
ん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC)
150
4.5.3溶
融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池(MCFC)
151
4.5.4固
体 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC)
151
と め
152
第 5章 風 力 発 電
153
5.1風
力 発 電 の概 要
153
5.2風
車 の 種 類
154
5.3揚
力形 風力発電
158
5.4抗
5.5風
5.3.1揚
力 形 風 車 の 原 理
158
5.3.2揚
力 形 風 車 が 取 り出 し得 る最 大 エ ネル ギ ー
160
5.3.3風
車 翼(ブ レ ー ド)の 回 転
164
力形風 力発電
168
5.4.1抗
力 形 風 車
168
5.4.2抗
力 形 風 車 の 最 大 取 り出 しエ ネ ル ギ ー
170
車 の性 能 評 価 に必 要 な係 数
170
5.5.1パ
ワー 係 数
171
5.5.2ト
ル ク係 数
175
5.5.3ソ
リ デ ィ テ ィ
176
5.6風
車 と 発 電 機 と を組 み 合 わ せ た 総 合 効 率
179
5.7風
力発 電 シ ス テ ム の 運 転
180
5.8風
力発 電 シ ス テ ム の 最 新 技術
185
5.9今
5.8.1風
車 の大 型 化
185
5.8.2可
変速制御
186
5.8.3オ
フ シ ョ ア 風 力 発 電
188
後 の計画
第 6章 太 陽 エ ネ ル ギ ー 発 電 6.1太
6.2太
陽光 発 電
193 193
6.1.1太
陽電池 の発電原 理
193
6.1.2太
陽電池 用半導体材 料
203
6.1.3太
陽電池 の構造
206
6.1.4太
陽電池 の動作特性
207
6.1.5太
陽電池 の適用
210
6.1.6太
陽 光 発 電 シ ス テ ム の 潜 在 容 量
211
6.1.7今
後 の課 題
212
陽熱発電
212
6.2.1タ
ワ ー集 光 方 式
213
6.2.2曲
面集光 方式
213
第 7章 海 洋 エ ネ ル ギ ー 発 電 7.1波
188
力発 電
215 215
7.1.1波
の エネルギ ー
215
7.1.2波
力発電 方法
218
7.2海
洋温 度 差 発 電
221
7.3潮
汐発 電
225
付 録(7.1)式
の 導 出 に っ い て
229
第 8 章 核 融 合,MHD発 8.1核
電
融合 発電
233 233
8.1.1核
融合反応
233
8.1.2核
融 合 炉 の 実現 条 件
234
8.1.3プ
ラ ズ マ 閉 じ込 め 方 法
236
8.1.4核
融合発電
241
8.1.5将
来の展望
242
電
242
電 の原理
243
8.2MHD発 8.2.1発 8.2.2MHD発 8.2.3発
電 の 出力 電方式
8.2.4MHD発
電 シ ス テ ム と課 題
第 9章 バ イ オ マ ス 発 電
243 245 245
249
9.1バ
イオ マスの分類
249
9.2バ
イ オ マ ス の利 用 方 法
250
9.2.1直
接燃焼
251
9.2.2生
物化 学的変換
253
9.2.3熱
化 学 的 変 換 に よ る 利 用 方 法
258
9.3バ
第10章
イ オ マ ス の利 用 可 能 性
そ の他 の 発 電 方 式
259
263
10.1熱
電 発 電
263
10.2熱
電子発電
265
章 末 問題 解 答
269
索 引
279
第 1 章
水力発電
水 力 発 電 の概 要 日本 で は明 治 時 代 に水 力 発 電 技 術 が 欧 米 か ら導 入 さ れ た 。 この 導 入 は,日 本 に とっ て 電 力 技 術 の発 祥 とい うべ き出 来 事 で あ る。 この章 で は水 力 技 術 の基 礎 で あ る水 力 学 を学 び,合 わ せ て水 力 発 電 技 術 の基 礎 を学 ぶ 。 また 可 変 速 揚 水 技 術 につ い て も学 ぶ 。
1.1
水 力発電技術
水 力 や風 力 は古 代 か ら活 用 さ れ て き た。 水 で 水 車 を回 して 脱 穀 した り,揚 水 し た り した 。 また 風 力 も,オ ラ ン ダ に代 表 さ れ る よ う に風 車windmillと
称 し,脱
穀 や 粉 引 き に使 わ れ て きた 。 風 力 や 水 力 を動 力 源 と した の は,歴 史 をひ も と くと 紀 元 前 か ら記 録 が あ る。 欧 米 で は 水 力 を電 気 に変 え る事 業 は,電 気 エ ネ ル ギ ー の 利 用 を始 め た1880年
頃 に盛 ん に な っ た とい わ れ る 。 わ が 国 にお け る小 水 力 発 電
は,最 初 個 人 事 業 で使 わ れ て い た こ と もあ り,時 期 につ いて は明 らか で な い が, 1887年 の長 崎 県 山 口紡 績 三 吉 工 場 が 最 初 とい わ れ て い る。 しか し,事 業 用 と し て 導 入 され た の は1892年,京 電 所 が始 ま りで あ る。 直 流,単
都 市 の 琵 琶 湖 疎 水 事 業 と して 造 られ た 蹴 上 水 力 発 相,三 相 交 流 な どが 採 用 さ れ て お り,1 発 電 機 の
電 気 は 1事 業 所 に 送 電 され て い た 。 当 時 の 送 電 線 の 写 真 を見 る と多 数 の 線 が 架 線 され て い る。 そ の 後 の 富 国 政 策 と も合 致 し,1951年 開 始 され,水
に は超 高圧 送 電 線275kVが
力 発 電 電 力 が 送 電 さ れ る に 至 っ た 。1961年
に は335MWの
黒部 第
四 発 電 所 の 水 力 発 電 所 が 完 成 し送 電 を 開 始 し た 。 こ の 発 電 所 の ダ ム 高 は186m で,こ
の 頃 に水 力 発 電 の ピー ク を迎 え た 。 そ の 頃 か ら火 力 発 電 が 取 り入 れ られ,
水 主 火 従 か ら火 主 水 従 に な っ て き た。 当 時 の 国 内 の 包 蔵 水 力 は ほ ぼ 開 発 し尽 くさ
れ た とい わ れ た が,最 近 で は水 力 発 電 が 炭 酸 ガ ス を排 出 し な い再 生 可 能 エ ネル ギ ー と して 見 直 さ れ た 。 また,昼 間 の 負 荷 ピー ク時 に は水 力 発 電 と して,夜
は揚 水
ポ ン プ と して 動 く揚 水 発 電 所 が 負荷 平 準 化 の 電 力 貯 蔵 装 置 と して利 用 され る よ う に な り,新 た な期 待 が 寄 せ られ て い る。 また,世 界 で見 れ ば イ ン ド,ミ ャ ンマ, ネパ ー ル,カ
ナ ダ,ブ
ラ ジル な ど未 開 発 の水 力 資 源 が あ り,ま す ます 開発 が 進 め
られ る もの と考 え られ る。 今 後 の ク リー ンエ ネ ル ギ ー 活 用 と合 わ せ て,ど の よ う な 開発 が 進 め られ る か が 今 後 の課 題 で あ る。 また 水 力 発 電 所 は多 くの場 合,地 式 発 電 所 に な り,水 車 や 発 電 機 が直 接 目 に触 れ る こ とは な い が,ダ れ らの機 器 は 図1.1に
下
ム も含 め て こ
示 す よ う地 下 内部 に納 め られ て い る。
図1.1 水 力 発 電所[写 真提供:株 式会社 東芝]
1.2
水 力学
この 節 で は,水 力 発 電 が どの よ う な基 礎 的 な技 術 か ら成 り立 っ て い るか を学 ぶ。
1.2.1
静 水力学
水 の 質 量 をm〔kg〕,体 (density)と
積 をV〔m3〕
と す る と,単
い い ρ で 表 す 。 ま た そ の 逆 数,単
(specific volume)と
い う。
位 体 積 当 た りの 質 量 を 密 度
位 質 量 当 た りの 体 積 を比 体 積
(1.1) また,密 度 に変 わ っ て 比 重 量
(1.2) で表 す。 また 圧 縮 率 は,
(1.3) E は体 積 弾性 係 数 で 単 位 はPaで
表 す が,そ
の 逆 数 を圧 縮 率 とい う。 水 は体 積 変
化 し な い 剛体 と して水 力 学 で は一 般 に 扱 わ れ て い る。 また,流 体 は 固体 表 面 を流 れ る と きせ ん 断 応 力(shear
stress)を 受 け る。 流
線 に 平 行 に と られ た 平 行 2平 面 の 深 さ距 離 をdy〔m〕,速 度 差 をdu〔m/s〕 とす れ ば,両 面 に 平 行 に粘 性 に基 づ くせ ん 断 応 力 τ〔Pa〕が 働 く。 こ の 場 合du/dyに は比 例 して,
(1.4) と な る 。 こ の μ を 流 体 の 粘 度(粘 位 はPa・sで 度90℃
あ り,1atmに
で は0.315×10-3Pa・sで
度 係 数 と も よ ば れ る)(viscosity)と
お け る 温 度20℃
い い,単
の 水 の 粘 度 は1.002×10-3Pa・s,温
あ る 。 温 度 が 高 い ほ ど粘 度 は 低 い 。
こ こで 圧 力 の 単 位 に つ い て説 明 す る。
(1.5)
(1.6)
(1.7)
τ
また,静 止 流 体 の 中 に存 在 す る 固体 に働 く力 は す べ て 同 じで あ る。 人 間 が水 中 に い る とき,体
の深 さ を考 え な い と,す べ て の方 向 か ら同 じ圧 力 を受 け る こ とか
ら判 断 で き る。 ま た静 止 流 体 中 の圧 力 は,流 れ が な い の で 作 用 す る力 は水 の重 力 で あ る。 深 さ方 向 を y とす る と,
(1.8) こ こ でP0は
大 気 圧 で あ り,
(1.9)
P-P0=γy
とな る。 この 圧 力 P をゲ ー ジ 圧 力(gauge γは約9.8×1000N/m3で
pressure)と
い う。 ま た水 の比 重 量
あ る。
した が っ て圧 力 を測 定 す る と きは,絶 対 圧 力 か ゲ ー ジ圧 力 か を 区別 し な けれ ば な らな い 。 例 え ば最 も よ く使 わ れ て い るブ ル ドン圧 力計 は,ゲ ー ジ圧 力 で示 され て い るの で 注 意 が 必 要 で あ る。 また 水 銀 柱 や 水 中 で圧 力 を測 定 す る とき に マ ノ メ ー タ を利 用 す るが ,大 気 圧 力 を加 算 す る こ と を忘 れ て は な らな い 。 また 水 中 に物 体 が 沈 ん で い る と き は 浮 力 が 働 くが,こ
れ は物 体 の 体 積 と γの
か け算 で 決 ま る量 で あ る。 海 水 の比 重 量 は水 よ りや や大 き い の で,よ
く経 験 す る
よ う に川 で 泳 ぐ よ り海 水 の 中 で は 浮 力 が 働 く。 し か し例 え ば油 の 中 で は γが 小 さ く,浮 力 が 大 き く減 少 す るの で 注 意 が 必 要 で あ る。
1.2.2 (1)流
動 水力学 線
緩 や か に流 れ て い る水 に イ ン ク を流 す と,流 れ に沿 っ て 線 が で き る。 これ を流 線 とい う。 流 線 はあ く まで も仮 想 し た線 で あ るが,あ 管 と呼 ぶ。 図1.2に
る流 線 で作 った 管 を流 線 の
示 す が,流 線 で 囲 まれ た 管 の 中 で任 意 の 2つ の 場 所 の流 れ を
示す。 図1.2に
お い て長 さ s,両 端 の 断 面 積 を そ れ ぞ れA1,A2,流
て 流 体 の 密 度 を ρ(㎏/m3)と
す る。 時 間dtの
速 を υ1,υ2と し
間 に 流 入 す る質 量 は ρA1υ1dtで あ
り,流 出 す る質 量 は ρA2υ2dtで あ り,時 間dtに
流 れ る質 量 は
(1.10)
図1.2
流 線 で 囲 まれ た管 の中 で の流 れ
の 関 係 が 成 立 す る 。 Q は 流 量(flow はm3/sで
rateま
あ り,そ
の単位
あ る 。 こ れ は 密 度 ρ の 流 体 で は 非 圧 縮 性 で 一 定 で あ る か ら成 立 し,Q
は 一 定 で あ る 。 こ れ を 連 続 の 式(equation こ こ で 述 べ た 流 れ は 層 流(laminar
of continuity)と
flow)と
し な が ら 流 れ る状 態 を 乱 流(turbulent を 流 し,流
た はdischarge)で
flow)と
よ ば れ る が,流
い う。 れ が 不 規 則 に混 合
い う。 管 の 中 に 染 料 を 混 ぜ た水
速 を 上 げ て い く と 遷 移 領 域(transition
region)を
境 に流 線 に乱 れ が
生 じ て くる。 これ を乱 流 とい う。 損 失 水 頭(h)と
平 均 流 速(v)の
関 係 を 求 め る と,
(1.11) で あ り,管 長(l)と 内 径(d),更 ズ 数Reの
に は 損 失 係 数(λ)で 定 義 さ れ る。 λは レ イ ノ ル
関 数 とな り,層 流 で はReの
増 加 と共 に 減 少 し,乱 流 で は ほ ぼ 一 定 に
な り管 表 面 粗 さ の み に依 存 す る。 この現 象 は流 速 だ けで な く管壁 の 状 態 で も変 わ るの で,レ
イ ノ ル ズ 数(Reynolds
図1.3に
λ と レ イ ノ ル ズ 数Reの
number)Reで
表 す。
関係 を示 す が,通 常 ム ー デ ィ線 図 と よ ば れ て
い る。
(1.12) な お,図 上 ε/dは 管 壁 の 相 対 粗 さで あ る。
図1.3
v=μ/ρ
ム ー デ ィ線 図
を 動 粘 性 係 数 と い う 。 通 常,直
線 状 の 円 管 で はReが2000∼4000で
乱
流 が 生 じ る。 (2)ベ
ル ヌーイの式
粘 性 や 圧 縮 性 が な い 理 想 的 な 流 体 が 流 れ て お り,重 え る 。 図1.4に れ ぞ れP1,P2〔Pa〕
示 す よ う にa,b2点 で,流
力 の みが 作 用 す る流 体 を考
が 基 準 点 か らz1,z2〔m〕,各
速 をv1,v2〔m/s〕
とす る 。m〔kg〕
点 の圧 力 を そ
の流体 が持 ってい る
エ ネ ル ギ ー は 位 置 の エ ネ ル ギ ー(mgz1,mgz2),圧
力 の エ ネ ル ギ ー(mP1/ρ,
mP2/ρ)お
み で あ るの で 次 の 関 係 が 成
よ び 運 動 の エ ネ ル ギ ー(mv21/2,mv22/2)の
立 す る。
(1.13) す な わ ち,
(1.14) に な る。 こ の式 は 火 力 発 電 の と こ ろで 導 い て あ り,こ の 項 で は 同 じ よ うな考 えで 導 入 して あ る。
図1.4 ベ ル ヌ ー イの 式 を表 す水 の流 れ
これ を加 速 度 gで 割 る と,
(1.15) た だ し比 重 量 γ=ρg〔N/m3〕 で あ る。 こ こで gは 重 力 の 加 速 度(9.80m/s2),v は平 均 流 速 〔m/s〕,P は圧 力 〔Pa〕,と な り,そ れ ぞ れ 速 度 水 頭(v2/2g),圧
力水
頭(P/γ)あ る い は位 置 水 頭(z)と よ ば れ,そ れ ぞ れ を水 頭 で 表 す こ とが で き,全 体 を全 水 頭 と よぶ 。 つ ま りこ の式 の 意 味 す る と こ ろ は,水 力 発 電 所 の よ う に上 部 の ダ ム の 位 置 水 頭 をz1と
して,そ
れ が 管 を 下 っ て位 置 が 零 に な っ た 場 合,管
の
中 の損 失 を 無 視 し,圧 力 が 同 じ大 気 圧 とす る と,位 置 の エ ネ ル ギ ー が 速 度 vに 変 換 さ れ,
(1.16) に な る と い う こ と を意 味 す る。 す な わ ち 管 端 で は速 度 v の噴 流 が 大 気 に 放 出 さ れ る こ とに な るが,こ
こで水 力 発 電 用 機 器 に取 り付 け る こ とに よ り,そ の全 水頭
を圧 力 と速 度 に変 換 し て利 用 す るの が 水 力 発 電 の 原 理 で あ る。 管 の 中 で は圧 力 が 変 化 しな が ら低 下 す るわ け で,全 水 頭 を合 わ せ れ ば一 定 に な る こ と,つ ル ギ ー が 保 存 され る こ とを示 して い る。
ま りエ ネ
流 量 の測 定 に は ピ トー管 法 や ベ ンチ ュ リー管 法 な ど多 くの 方 法 が 用 い られ て い る 。 ピ トー 管 法 は管 の壁 面 で 測 定 す る小 管 と流 れ の 中 心 に上 流 方 向 に 開 口 し た小 管 か らな る ピ トー管 の 水 位 の 差 か ら流 速 を知 る こ とが で き る。 前 者 の水 位h1は h1=p/ρg,後
者 はh2=p/ρg+v2/2gで
表 せ る。 この 差 を読 む こ とに よ っ て vが
測 定 で き,流 量 が わ か る 。 実 際 に は ピ トー 管 の 誤 差 補 正 係 数 を用 い る。 次 に 図1.6に をS2と
示 す ベ ンチ ュ リー管 法 で は,パ
し,S2はS1の
② の 圧 力 をP1,P2と
イ プ ① の 断 面 積S1,②
約 半 分 程 度 に す る。 流 速 を そ れ ぞ れv1,v2と
の 断面積 す る。 ① と
しマ ノ メ ー タ で測 定 で き る。 管 は水 平 に 配 置 して あ る の で
位 置 水 頭 は同 じで あ る。 ベ ル ヌ ー イ の式 は次 の よ うに 表 せ る。
(1.17) また連 続 の式 か ら,
(1.18) (1.19)
流量
(1.20) と す る と,
図1.5
ピ トー 管 に よ る 測 定
図1.6
ベ ン チ ュ リー管
流量
(1.21)
とな る。 hを 測 定 で き れ ば流 量 が わ か る。 また,管 長 が 長 くな る と損 失hLが れ,こ
表
れ は後 に述 べ る よ う に損 失 小 頭 とな る。
1.3
流 量 と落 差
雨 や 雪 が 降 る と,一 部 は 地 中 に浸 透 した り,蒸 発 す るが,大 部 分 は地 表 面 に流 れ,河
川 に流 出 す る。 降 水 量(precipitation)は
ま っ た 高 さ で 量 り,㎜
雨 量 計 で測 定 す る が,地 上 に溜
で 表 示 す る 。 時 間 や 日,月
あ る い は年 で 計 測 さ れ,年
降 水 量 の よ う に あ る期 間 の 降 水 量 と して 測 定 さ れ る 。 日本 で は冬 季 に お い て は 日 本 海 側 で 雪 が 多 く,太 平 洋 側 は降 雨 が 少 な い。 また梅 雨 期 に は雨 量 が 多 く,特 に 台 風 に よ る降 雨 が 多 く,晩 秋 か ら初 冬 まで に雨 が 多 い。
1.3.1
流量
1秒 間 に河 川 を流 れ る水 の量 を河 川 流 量 とい い,単 位 はm3/sを
用 い る。 河 川
の 流 量 は上 流 の 流域 も面 積 の 降 雨 量,地 質,地
形,植 物 の 繁 茂 状 態 な ど に関 連 す
る し,季 節 に よ っ て も変 化 す る 。水 力 発 電 を計 画 す るに 当 た っ て は年 を通 じ て の 流 量 を測 定 す る こ とが 必 要 で あ る。 河 川 流 量 と そ の地 域 の 降 水 量 との比 を流 出 係 数(run-off h〔㎜
coefficient)と い う。 あ る河 川 の 流 域 面 積 をA〔km2〕,年
降水 量 を
〕,流 出係 数 を r とす る と,年 平 均 流 量 〔m3/s〕は,
(1.22) で 求 め られ る。 例 え ば 流 域 面 積100km2,1 65%が
年 間 の 降 水 量 を1300㎜,こ
発 電 に利 用 で き る とす る。 発 電 所 の 有 効 落 差 が45mな
生 電 力 量 は い く らかkWhで
の う ち流 出 係 数 ら ば,1 年 間 の 発
示 す 。 な お,水 車 と発 電 機 の年 間平 均 効 率 を72%と
す る。
(1.23) また 1m3/sの 流 量 で発 電 で き る電 力 量 は,
(1.24) 上 記 流 量 に よ る 1時 間 当 た りの発 電 電 力 は,
(1.25) とな る。 流 量 は季 節 や 都 市 に よっ て 変 わ る た め,次
の よ う に 区別 さ れ て い る。
渇 水 量:1 年365日
の 内,355日
これ よ り下 が らな い 流 量
低 水 量:1 年365日
の 内,275日
これ よ り下 が らな い 流量
平 水 量:1 年365日
の 内,185日
これ よ り下 が らな い 流量
豊 水 量:1 年365日
の 内,95日
高 水 量:毎
年1∼2回
洪 水 量:3∼4年 最 渇 水 量,最
これ よ り下 が らな い 流 量
生 ず る 出水 の 流 量
に 1回生 ず る 出水 の 流 量 大 洪 水 量:過
去 の 最 少 水 量 また は最 大 流 量
また 流 況 曲線 は横 軸 に 1年 の 日数 を,縦 軸 に毎 日の 流 量 を と り,そ の 数 値 の大 き い 方 か ら順 次 並 べ た 曲線 で あ る。 河 川 に よ っ て状 況 が 異 な り,発 電 計 画 を考 え
る こ とが で き る。 また 豊 水 期 の 初 め を起 点 と して,時 間(日,月)を
横 軸,流
量 を縦 軸 に と り,
毎 日の 流 量 を加 算 して作 成 し た 曲線 を描 き,こ れ を流 況 曲 線 とい う。 また 豊 水 期 の 初 め を起 点 と して 1年 の 日数 を横 軸 に とっ て記 入 し,毎 した もの を流 量 累 加 曲線(図
日の積 算 流 量 を縦 軸 に
示 して い な い)と い う。 毎 日 の使 用 流 量 が 一 定 な ら
ば 使 用 流 量 累 加 曲線 は直 線 とな る 。 流 量 累 加 曲線 の 勾 配 が 使 用 流 量 累 加 曲線 の 勾 配 よ り大 きい 場 合 は,ダ ム に入 る水 の 量 が 使 用 水 量 よ り も多 い こ と を示 し て い る。
図1.7 流 況 曲線
1.3.2落
差
水 力 発 電 にお い て は,山 岳 地 帯 で 水 の勾 配 が 高 い 所 で は落 差 が 取 りや す く,水 量 は少 な く とも落 差 が大 き く とれ る。 逆 に平 野部 で は勾 配 が 小 さ く,水 量 は多 い が 落 差 が とれ な い と こ ろ も あ る。 水 車 は こ れ らの 特 性 に合 わ せ た も の を使 用 す る。 落 差 に は 2種 類 あ り,一 つ は取 入 れ 口 の 水位 と放 水 後 の水 位 との差 を位 置 水 頭 で 示 す総 落 差(gross
head)で
あ る。 も う一 つ は ダ ム と水 車 入 口管 路 お よ び水
車 出 口 と放 水 口 まで の水 路 に お け る,摩 擦 や 曲 が りや 水 路 断 面 の変 更 な どで 生 ず る損 失 水 頭 を総 落 差 か ら差 し 引 い た 水 車 に有 効 に働 く有 効 落差(effective
head)
が あ る。 最 近 の水 車 は発 電 用 と して使 用 され る場 合 と揚 水 用 と して使 用 され る場 合 が あ る 。 そ の関 係 を 図1.8に
図1.8 総 落 差,水 車(ポ
示 す。
ンプ水 車)の 指 定位 置 お よび 基 準 面 か らの 高 さ[電 気学会 ・電気規格
調査会標 準規格 『 水車 およびポンプ水 車』 より電気学会 の許 諾を得て複製]
発 電 所 の有 効 落 差 は次 式 で示 され る。 高 落 差 の 運 転 で は空 気 の 密 度 や 水 の密 度 の 差 な ど を考 慮 して,ベ ル ヌ ー イ の定 理 か ら,
(1.26) 総 落 差 と発 電 所 の有 効 落 差 は上 式 で 示 され る。
①
(ρは 大 気 圧 下 の 水 の 密 度)
(1.27)
②v3=v4=0
③
(1.28)
が 成 立 す る と して,
(1.29) 発 電 所 の総 落 差 と水 車 の有 効 落 差,あ
る い はポ ン プ の 全 揚 程 との 関 係 は,
(た だ し,+は
水 車 運 転 時,-は
ポ ン プ運
転時)
(1.30)
こ こ に,そ
れ ぞ れ,H:水
車 の有効 落 差 〔 m 〕,Hg:発
=z3-z4:総
落差 〔 m〕 ,z:標
高 〔 m 〕,Hl:損
〔Pa〕,ρ:水 の 密 度 〔 ㎏/m3〕,ρa:空
ン プ 水 車)の
対 気 圧
力 の 加 速 度 〔m/
高 圧 側 指 定 点,添
ン プ水 車)の 低 圧 側 指 定 点,添 字 3:取 水 口水 面,添
添 字3-4:取 水 車)の
失水 頭 〔 m〕,Pabs:絶
気 の 密度 〔 ㎏/m3〕,g:重
s2〕,v:平 均 流 速 〔m/s〕,添 字 1:水 車(ポ 水 車(ポ
電所 の総落 差 〔 m 〕,Zg
字 4:放 水 口水 面,
水 口水 面 と放 水 口水 面 との 間,添 字3-1:取 水 口 水 面 と水 車(ポ
高圧 側 指 定 点 との 間,添
放 水 口水 面 との 間,x:xの
字2-4:水 車(ポ
字 2:
ン プ水 車)の
ンプ
低圧 側指定 点 と
算 術 平 均 で あ る。
こ こで 注 意 す べ き こ とは,ポ
ン プ運 転 時 と水 車 運 転 時 で は有 効 落 差 あ る い は全
揚 程 が異 な る とい う こ とで あ る。 この こ とは,後 で 述 べ る揚 水 式 の 発 電 所 で は運 転 上重 要で ある。 ま た,こ
れ ら の 関 係 を 更 に解 説 す る と,図1.9は
水 車 運 転 時,図1.10は
ポン
プ 運 転 時 を示 す。 式(1.30)の 様 子 が よ くわ か る。 地 下 式 発 電 所 の 多 い ポ ン プ水 車 で は,貯 水 池 と発 電 所 間 の管 路 が 長 大 とな り, 図1.9と
図1.10に
示 す よ うに 水 圧 管 上 部 に サ ー ジ タ ン ク(surge
tank)が
設け
られ て い る。 サ ー ジ タ ン ク は,負 荷 急 変 時 に水 量 が 変 わ る こ と に よ り発 生 す る水 撃 圧 を吸 収 す る た め に設 け られ て い る。 と くに周 波 数 調 整 用 発 電 所 で は負 荷 が 急
図1.9 水 車運 転 時 の水 頭
図1.10 ポ ン プ運転 時 の水 頭
激 に増 減 を繰 り返 す た め,機 械 的 強 度 を上 げ る必 要 が あ る。 水 圧 変 動 は全 負荷 時 に異 常 が あ っ て,ガ
イ ドベ ー ン を急 速 に 閉 じた と きに 発 生 す るが,水 圧 変 動 値 は
運 転 時 の最 大 ま た は最 小 水 圧 と水 車(ポ
1.4 1.4.1ダ
ンプ 水 車)停
止 時 の静 水 圧 の 差 を い う。
水力発電設備 ム
河 川 をせ き止 め,水
を蓄 積 す る装 置 を ダ ム とい い,発 電,治
水,灌 慨 あ る い は
上 下 水 道 に使 わ れ る。 こ こで は発 電 所 用 に使 用 され る ダ ム に つ い て述 べ る。 材 料 で 分 類 す る と,コ ン ク リー トで 構 成 され る と きは コ ン ク リー トダ ム,ま た 大 部 分 が 岩 石 や砂 で で きた もの を フ ィ ル ダ ム と い う。 また構 造 で分 類 す る と き は重 力 ダ ム,ア
ー チ ダ ム,中 空 重 力 式 ダ ム な どに 分類 で き る。
例 え ば地 質 が 良好 で狭 い 谷 で は ア ー チ ダ ム が 適 用 され る。 ア ー チ は ダ ム の 下 流 方 向 に凸 に 湾 曲 さ せ た 断 面形 状 を もち,貯 水 に よ る水 圧 な ど外 力 を岩 盤 に伝 達 す る よ う に な って い る。 谷 幅 が 小 さ い ほ ど強度 的 に有 利 に な り,使 用 す る コ ン ク リ ー トを節 約 で き経 済 的 で あ る。
図1.11 重 力 ダム の 実例(佐 久間 ダム)[『 電気工学 ハ ン ドブ ック』 よ り 電気学会の許諾 を得 て複製]
図1.12
アー チ ダ ムの 実例(黒 部 ダ ム)[『電 気工学ハ ン ドブック』 より 電気学会 の許諾 を得て複 製]
そ れ に対 して 重 力 ダ ム は堤 体 や 基 礎 に 発 生 す る 応 力 に耐 え る構 造 と な っ て お り,設 計 上 大 変 有 利 で あ る 。 断 面 の形 状 は ほ ぼ三 角 形 に な り,設 計 ・施 工 が容 易 な た め現 在 最 も多 く使 わ れ て い る。 ま た,図 か らわ か る よ う に洪 水 に対 し て 強 く,ま た 安 定 感 もあ る。 い ず れ にせ よ地 質 の 調 査 を十 分 に行 い,最 適 な構 造 を選 ぶ。
1.4.2水
路
河 川 水 を導 水 路 に導 くた め に取 水 口 が 設 け て あ る。 また 取 水 口 の入 り口 にゲ ー トが 設 け られ て お り,流 量 の調 整,沈
砂 あ る い は 発 電 機 な どの修 理 時 に使 用 され
る。 取 水 口 は使 用 す る水 を確 実 に取 水 し,損 失 水 頭 を小 さ く し,な お か つ 導 水 路 へ の 土 砂,流 木,ご
み な ど を取 り去 る こ とが 必 要 で あ る。 また 土 砂 に対 して は沈
砂 池 を設 け て 土 砂 を取 り去 る。 これ は洪 水 時 な ど に土 砂 を巻 き込 み水 路 で 沈 殿 し た り,流 積 を狭 め た りす る の を 防 ぐ。 土 砂 は水 圧 鉄 管 や 水 車 を磨 耗 させ る ので 避 け な け れ ば な ら な い。 取 水 口 に近 い と ころ に 沈砂 池 を設 け土 砂 を沈 殿 させ る必 要 が あ る。 また導 水 路 と は取 水 口 か ら水 槽 まで の 水 路 を い う。 導 水 路 は 無 圧 水 路 で は 自 由 な水 面 の あ る開 水 路 と圧 力 が か か る圧 力 水 路 が あ る。 流 れ は普 通2∼3m/ s程 度 で 勾 配 は1/1000∼2000程
度 で あ る。水 路 は地 質 の 悪 い と こ ろ を避 け る,
長 い 水 路 橋 は避 け る,逆 サ イ ホ ン な どは 極 力 避 け る な ど十 分 な検 討 が 必 要 で あ る。 また水 車 の 負 荷 急 変 時 に発 生 す る水 撃圧 を軽 減 吸 収 す る た め サ ー ジ タ ン ク が 設 け られ る。 サ ー ジ タ ン ク に は ダ ム か ら水 が 流 れ 込 む と同 時 に 負 荷 の 急 変 で水 位 も常 に 変化 す る。 これ らを う ま く制 御 す る こ とが 必 要 で あ る。 図1.13に
各 種 サ ー ジ タ ン ク を示 す 。 図 に 示 す よ う に単 動 サ ー ジ タ ン ク,差 動
サ ー ジタ ン ク,水 室 サ ー ジ タ ン ク,制 水 孔 サ ー ジ タ ン ク な どが あ るが,水
車発電
機 の 負荷 遮 断 や 水 位 な ど を考 慮 す る。
1.4.3水
圧管
水 圧 管 路 は上 水 槽 ま た はサ ー ジ タ ン クか ら水 車 に 直 接 水 を 導 くた め に 設 け られ る水 路 で あ る。 水 を流 す た め の水 圧 管 とそ の付 属 設 備 か らな る構 造 物 をい う。 水
(a)単 動 サ ー ジ タ ン ク
(b)差 動 サ ー ジ タ ン ク
(d)制 水 孔 サ ー ジ タ ン ク
(c)水 室 サ ー ジ タ ン ク 図1.13
各 種 サ ー ジタ ンク
図1.14
水 圧 管路
圧 管 は圧 延 鋼 材 が 用 い られ る。 最 近 で は高 落 差 の大 容 量 の揚 水 発 電 所 が建 設 され る よ う に な り,高 張 力 鋼 も用 い られ る よ う に な っ た 。 図1.14に 温 度 で水 圧 管 が伸 縮 す るの を吸 収 す るた め,パ 縮 継 手,修
示 す よ う に周 囲
ッキ ン グ を 介 し て管 路 が す べ る伸
理 時 に管 路 に 水 を入 れ な い た め の制 水 弁,制
水 弁 を急 速 に閉 じ る と管
路 内 が 真 空 状 態 に な るた め管 径 が 変 形 す るが,そ
れ を 防 ぐ空 気 弁 お よび 空 気 管 が
設 け られ て い る。 また水 圧 管 を修 理 す る た め,管
内 に入 るた め の マ ンホ ー ル な ど
が あ る。
1.5
水車およびポンプ
水 車(hydraulic 反 動 水 車(reaction
turbine, turbine)が
water
turbine)に
は 衝 動 水 車(impulse
使 わ れ て い る 。 こ こ で は,こ
turbine)と
れ ら につ い て解 説
す る。
1.5.1衝 図1.15に
動水 車 示 す ペ ル トン水 車 が 多 く用 い られ て い る。 こ の水 車 は 高 落 差 で 用 い
られ て い る。 水 の圧 力 エ ネ ル ギ ー を運 動 エ ネ ル ギ ー に変 えて 大 気 中 で ラ ン ナ に作 用 させ る構 造 で あ る。 鋼 鉄 で作 られ た 主 軸 に ラ ン ナ が 取 り付 け られ ノ ズル か ら水 流 を受 け る構 造 に な っ て い る 。 ノズ ル は分 岐 管 か ら入 り口 曲管 の 先 に取 り付 け られ 噴 流 の 水 を ラ ンナ
図1.15 ペ ル トン水 車 横 軸 二 射 ペ ル トン水 車[電 気学会 ・電気規格 調査会 標準規格 『 水車 お よび ポンプ水車』 よ り電 気学会の許諾 を得 て複製]
に 吹 き つ け る 。 噴 流(ジ
ェ ッ ト)の
量 は ノ ズ ル の 先 端 内 部 に 取 り付 け た ニ ー ドル
を 前 後 に 移 動 さ せ 調 整 す る 。 図 に は 示 し て い な い が,ノ ク タ ー(deflector)が る バ ケ ッ ト(bucket)か
ズ ル 先 端 外 部 に はデ フ レ
設 け ら れ て い る 。 負 荷 が 急 変 し た と き に,ジ
ェ ッ トを受 け
ら ジ ェ ッ ト を そ らせ る た め に 用 い ら れ て い る 。
バ ケ ッ トを 具 体 的 に 示 す と 図1.16に
な る。
(b)
(a)
(c)
図1.16
バ ケ ッ トに 作 用 す る力
ノ ズ ル か ら噴 出 す る ジ ェ ッ トとラ ンナ との 関 係 が こ こで は示 さ れ て い る が,バ ケ ッ トで左 右 に運 動 方 向 を 変 えて 運 動 エ ネ ル ギ ー をバ ケ ッ トに与 え る。 u を バ ケ ッ トの 周 速 度 と し,v1とV2を
バ ケ ッ トの入 口 お よ び 出 口 で の ジ ェ ッ トの絶 対
速 度,w1とw2を
そ れ ぞ れ の バ ケ ッ トに 対 す る相 対 速 度,β2を
と の な す 角 度,Q
u の 逆 方 向 とw2
を毎 秒 バ ケ ッ トに 流 入 す る 水 量 とす る。 バ ケ ッ トに 入 る と き
の 運 動 量 は ρQw1,バ
ケ ッ トか ら 出 る と き の 運 動 量 は-ρQw2
cosβzと
な る。 し
た が っ て バ ケ ッ トに 働 く力 F は,
(1.31) 毎 秒 ジ ェ ッ トが バ ケ ッ トに 与 え る エ ネ ル ギ ー E は,
(1.32) とな る。 水 が バ ケ ッ トで失 う損 失 は 出 口側 速 度 水 頭 に比 例 す る とい う考 え で,損 失 係 数 ξ とす る と作 用 ・反 作 用 の 関 係 か ら,
(1.33) (1.34) (1.35) 流 入 す る 前 の ジ ェ ッ トの 持 つ エ ネ ル ギ ー は ρQv21/2で
あ る か ら,効
率 ηは
(1.36) とな る。 β2=0と の で,数
1.5.2反 (1)フ
す る と,バ
ケ ッ ト流 出 水 が 後 続 バ ケ ッ ト の 背 面 に 当 た り損 失 増 と な る
度 の 値 を 採 用 し,dη/duの
極 値 を と れ ばu/v1=1/2で
効 率 最 大 とな る。
動水車 ラ ンシ ス 水 車(Francis
フ ラ ン シ ス 水 車 は,図1.17に (runner vane)に
水 が 流 れ 込 み,ラ
turbine) 示 す よ うに外 周 半 径 方 向 か ら ラ ンナ ベ ー ン ンナ 内 部 で軸 方 向 に流 れ が 変 わ り,最 終 的 に
は軸 方 向 か ら吸 出 し管 で 横 方 向 に流 れ 出 す 。 流 体 の 持 つ エ ネ ル ギー を羽 根 に働 か せ 回転 力 を機 械 エ ネ ル ギ ー に 変 え る。
図 1.17
フ ラ ン シス水 車 の立 体 図
ケ ー シ ング か ら流 入 した 水 は ガ イ ドベ ー ン(guide
vane)を
通 りラ ン ナベ ー ン
に 流 れ 込 む。 ガ イ ドベ ー ン は負 荷 に応 じて水 車 を調 速 す るた め,油 圧 装 置 を介 し て 開 く角 度 を 決 め る。 反 動 水 車 で は 吸 出 し管 は ラ ン ナ と放 水 面 ま で を い い,水
を
放 水 面 に導 く と と もに,流 出 す る動 圧 を 回転 力 に変 え エ ネ ル ギ ー を 回収 す る機 能 と,後 述 す る キ ャ ビ テ ー シ ョ ン を 防 ぐ作 用 も持 って お り重 要 で あ る。 こ こ で,図1.18に
よ って 運 動 量 理 論 に よ る ラ ンナ ベ ー ン の作 用 を説 明 す る。
ラ ン ナ ベ ー ン を通 して 流 入 す る流 体 の 絶 対 速 度 を νで 表 し,ラ
ンナベ ー ン回
転 方 向 の 成 分 を νθ1,ラ ン ナ ベ ー ン半 径 方 向 の 成 分 を νr1とす る。 ラ ン ナ ベ ー ン の 中 を流 れ る速 度 を相 対 速 度W1と
す る。 ラ ン ナ ベ ー ン の 羽 根 に 流 入 す る 相 対 速
度 の 角 度 は 回転 羽 根 の 入 口 角 β1とほ ぼ 同 じで あ る。 こ こ でu1とu2を 入 口,出
ラ ン ナ ベ ー ン の 入 口 と 出 口 の 周 速 度 〔m/s〕 と し,ν1と
口 の 絶 対 速 度 〔m/s〕 と す る 。 ま たw1とw2を
の 相 対 速 度 〔m/s〕 と し,a1とa2を
ν2を
入 口 と出 口 の 回転 流 れ 場
流 入 角 と 流 出 角 〔rad〕,β1と
β2を ラ ン ナ ベ ー
図 1.18
ガ イ ドベ ー ン と ラ ン ナ ベ ー ン と 流 れ の ベ ク トル
ン の 入 口 と 出 口 の 角 度 〔rad〕,r1とr2を
半径 〔 m 〕,ω を ラ ン ナ ベ ー ン の 角 速 度 と
す る。
(1.37) (1.38) ラ ンナ が 流 体 か ら受 け取 る トル ク は 回転 方 向 の 角 運 動 量 の差 と して 受 け取 られ るか ら,
(1.39) と な る 。 動 力 P はP=ωTで
あ る か ら,
(1.40) (1.41) ラ ン ナ に流 入 す る水 の動 力 は,有 効 落 差 を H とす る と ρgQHで
あ るか ら,効
率が
(1.42) と な る 。 し た が っ て 最 大 効 率 は 右 辺 第 2項 が ゼ ロ に な る 条 件 でa2=90度 さ ら に 図1.18よ
で あ る。
り,
(1.43)
(1.44) (1.45) (1.46) とな る。 (2)斜
流 水 車(diagonal
flow
turbine)
斜 流 水 車 に は ラ ン ナベ ー ンが 固 定 な も の と,可 動 な もの が あ り,後 者 は デ リア 水 車 と も よ ば れ て い る。 負 荷 が 変 動 す る と調 速 装 置 を介 して ガ イ ドベ ー ンの 角 度 を変 え,か つ ラ ンナ ベ ー ン の 角 度 を変 え る構 造 とな って い る。 効 率 や 出 力 は フ ラ ン シ ス 水 車 と後 述 の プ ロ ペ ラ(propeller
turbine)水
車 の中
間 的 な形 状 を して い る。
図 1.19
斜 流 水車[電 気学会 ・電 気規 格調査会標準規格 『 水車お よび ポンプ水車』 よ り 電気学会 の許諾 を得て複 製]
(3)プ
ロ ペ ラ 水 車(propeller
turbine)
プ ロペ ラ水 車 は流 水 が 水 車 軸 の 方 向 に流 れ る構 造 で あ る。 ラ ンナ ベ ー ン は油 圧 装 置 か ら主 軸 内 の ラ ンナ サ ー ボ モ ー タ を介 して そ の角 度 を変 え る構 造 とな っ て い る。 ラ ン ナ ー ベ ー ン は 固 定 式 と可 動 式 が あ る が,ほ 車(Kaplan
turbine)と
も よ ば れ て い る。
とん ど可 動 式 で,カ プ ラ ン水
① カプ ラ ン水車
水 車 の効 率 を最 良 に保 つ た め に可 動 羽 根 と した もの で,
ガ イ ドベ ー ン とラ ンナ ベ ー ン を負荷 の 変化 に よ り自動 的 に変 え る よ う に な っ てい る。
図 1.20
カ プ ラ ン水 車[電 気 学会 ・電 気規格調査会標準規格 『 水車 お よびポ ンプ水車』 よ り 電気 学会の許諾 を得 て複製]
②
バ ル ブ 水 車(bulb
turbine)反
動 水 車 の 中 で も最 も低 い落 差 で 使 用 さ
れ て い る。 これ は横 軸 プ ロペ ラ水 車 と同 じで あ り,円 筒 ケ ー シ ン グ を 用 い る こ と が 多 く,円 筒 水 車 別 名 チ ュー プ ラ水 車(tubular
turbine)と
総 称 して い る。 全 体
を 円筒 ケ ー シ ン グ 内 に収 め て構 造 を簡 単 化 し損 失 も少 な く,低 落 差,大
流量の地
点 に活 用 さ れ るの が バ ル ブ水 車 で あ る。 また ラ ンナ ベ ー ン外 周 に発 電 機 を取 り付 け た一 体 形 水 車(図1.21)も
開 発 され て い る。
プ ロペ ラ水 車 で は ラ ンナ の作 用 に翼 理 論 を適 用 す る 。効 率 は以 下 の よ う に求 め られ る。 流 れ の 中 に置 か れ た 羽 根 を考 え る。 羽 根 入 口角 度 と流 れ の 角 度 の差 を迎 え 角 a とい う。 羽 根 に作 用 さ れ る力 は羽 根 と垂 直 の 揚 力(lift の抗 力(drag
force)D
force)L
と流 れ の 方 向
に分 け られ る。 流 れ の 速 度 ν とす る と,
(1.47) (1.48)
図 1.21
バ ル ブ水 車[電 気学会 ・電気規 格調査会標準規格 『 水車お よび ポンプ水車』 よ り 電気 学会 の許諾 を得て複製]
図 1.22 こ こで S は羽 根 の 面 積 で,CLは が12度
羽根 の抗力 と揚力 揚 力 係 数,CDは
抗 力 係 数 と い う。 迎 え 角 a
を超 え大 き くな る と,羽 根 の面 か ら流 れ が 剥 離 しCLが
羽 根 の 入 口 と出 口 の 相 対 速 度 をw1,w2と
急 速 に減 少 す る。
し,そ れ ら の 平 均 を w と し,絶 対 速
度 をv1,v2,そ を β と し,面
の 平 均 を v とす る。 相 対 速 度 w が ラ ンナ の 回 転 方 向 とな す 角 度 積dSは
羽 根 の 幅dr,羽
根 の 長 さ l と す る とdS=ldrと
な るか
ら,
(1.49) (1.50) 羽 根 の枚 数 を z と し,ラ
ンナ の 受 け る 回転 方 向 の 力dFu,軸
す る。 ラ ンナ の 中 心 か ら半 径 r とr+△rの
方 向 の 力dFzと
部 分 に作 用 す る力 は,
(1.51) 発 生 す る動 力dPは,
(1.52) 他 方 ラ ンナ ベ ー ン を通 過 す る と き の損 失 動 力 は,wdD)と
な る の で効 率 ηは,
(1.53) と な る。 ③
ク ロ ス フ ロ ー 水 車(cross
が 話 題 に な り,小
flow
turbine)最
近,エ
ネル ギ ー の 有 効 利 用
水 力 発 電 シス テ ムが 注 目 され る よ うに な っ て い る 。 ク ロ ス フロ
ー 水 車 は ラ ン ナ を 水 平 配 置 し て,そ
の 上 方 に ガ イ ドベ ー ン を 取 り付 け て あ る 。
水 流 は ラ ン ナ の 中 に一 旦 入 り,羽 根 の外 へ 進 む の で動 力伝 達 が 2回 行 わ れ る。 構 造 が簡 単 で,取
り扱 い も容 易 で あ り,軽 負 荷 で は フラ ン シ ス水 車 よ り も効 率 が
高 い場 合 もあ る の で,小 水 力 に よ く使 わ れ て い る。 ④
ポ ンプ水車
揚 水 発 電 で は ポ ンプ 水 車 が 使 わ れ る。 図1.24に
揚 水発 電
の 方 式 を示 す 。 ポ ンプ と水 車,電
動 機 と発 電 機 の そ れ ぞ れ の組 み 合 わ せ が あ る。 図(a)は ポ ン
プ と電 動 機,水 車 と発 電 機 が 別 置 きに な っ て い る。 図(b)(c)は
発 電 機 と電 動 機
が 一 体 に な り,水 車 とポ ンプ は別 置 き にな っ て い る。 図(d)は 発 電 機 と電 動 機, ポ ン プ と水 車 が そ れ ぞ れ 一 体 化 して い る もので あ る。 最 近 で は ポ ンプ と水 車 が 一 体 に な った ものが 多 く使 わ れ て い る。 ポ ン プ水 車 ラ
図 1.23
(a)別 置 式 G:発 電機
M:電 動 機
(b)タ ンデ ム式 (立軸) T:水 車
図 1.24 ンナ に は フ ラ ン シス 形,斜
ク ロス フ ロー水 車
P:ポ
(c)タ ン デ ム 式 (横 軸) ンプ
G-M:発
(d)ポ ンプ水 車 式
電 電 動機
P-T:ポ
ンプ
揚水発電 の方式
流 形 お よ び プ ロペ ラ形 が あ るが,水
車 専 用 機 とは 異 な
り水 車 とポ ン プ性 能 をバ ラ ン ス させ る よ う に ラ ン ナ形 状 に そ れ ぞれ 工 夫 が凝 ら し て あ る。 揚 水 発 電 で は ポ ンプ 運 転 と水 車 運 転 とを共 に こ な さな けれ ば な らな い 。 しか し有 効 落 差 で 示 した よ う に両 者 で そ れ が 異 な り,し た が っ て効 率 も異 な る。 揚 水 可 変 速 運 転 で は発 電 電 動 機 固 定 子 に 巻 線 形 を使 い,両 者 の 回転 数 を調 整 で き るの で最 高 効 率 点 で 運 転 が 可 能 で あ る。 しか し揚 水 可 変 速 運 転 が で きな い 時 は最
高 効 率 点 と はや や 異 な る運 転 を せ ざ る を得 な い 。 結 果 的 に水 車 運 転 時 に は最 高効 率 点 よ りや や 高 い 回 転 速 度 で,ポ
ン プ運 転 時 は や や 低 い 回 転 速 度 で 運 転 し て い
る。 揚 水 発 電 の 総 合 効 率 は次 の よ う に な る。 電 動 機 と発 電 機 の 効 率 は ほ ぼ 等 し く, ηGと ηMは 等 し く,次 の よ うに な る。
ポ ン プ効 率 は86∼90%程
度 で あ る。
水 車 効 率 は87%∼92%で
あ り,
(1.54) 水 路 効 率 は有 効 落 差 と全 揚 程 の 比 で あ り95∼98%で 時 の 損 失 水 頭,H1pは
あ る。 こ こ でH1Gは
発電
ポ ン プ 運 転 時 の 損 失 水 頭 で あ る。 また 総 落 差100mと
る とH1GとH1pは2m程
す
度 で あ る。
(1.55)
と な る。 実 際 は大 容 量 機 で 最 近 の装 置 で は70か
1.6
吸 出 し 管(draft
ら75%程
度 で あ る。
tube)
水 車 を 出 た水 は吸 出 し管 を通 して,速 度 を減 じつ つ 水 を放 出 す る。 流路 の 断面 積 を徐 々 に増 加 し,運 動 エ ネ ル ギ ー を圧 力 エ ネ ル ギ ー に変 え て い く。 水 車 の入 口 と出 口で ラ ンナ で エ ネ ル ギ ー が 使 わ れ る の でベ ル ヌ ー イ の式 は成 立 しな い 。 吸 出 し管 入 口 と出 口で ベ ル ヌ ー イ の 式 を用 い て解 析 す る。zeとz0は 置 水 頭,peとp0は
入 口 と出 口 の 圧 力,νeと
入 口 と出 口 の 位
ν0は入 口 と 出 口 の速 度,Q
を水 量
とす る。
(1.56)
ze=zoが
ほ ぼ 成 立 す る の で,
(1.57) p0は 大 気 圧 と な る の で,ゲ
ー ジ 圧 と し てp0=0,ま
た 放 水 口 の 流 速 で ν0=0が
成
立 す る。
(1.58) こ の よ う に水 車 出 口 のpeは 負(大 にな る の で,出
気 圧 以 下)で,吸
出 し管 が な け れ ば 大 気 圧
口速 度 水 頭 分 の エ ネ ル ギ ー を ラ ンナ が 有 効 に利 用 で き る。 そ して
そ の 分 は吸 出 し管 が 速 度 を減 じて 圧 力 回復 を図 る こ とで カ バ ー して い る。 あ る温 度 の 流 体 が 圧 力 を減 じ ら れ る と,流 体 が 沸 騰 す る。 例 え ば,水 kPaで
は3.2
沸 騰 す る温 度 は25℃ で あ る。 水 車 内 で 流 体 の 温 度 で 決 ま る飽 和 蒸 気 圧 よ
り低 下 す る と,気 泡 が 発 生 す る。 この現 象 を キ ャ ビテ ー シ ョ ン とい う。 気 泡 が 潰 され る と衝 撃 や マ イ ク ロ ジ ェ ッ トに よ って,固 体 は侵 食 を受 け水 車 の ラ ンナ の 寿 命 を短 縮 させ る。 した が っ て ラ ン ナ 出 口の 吸 出 し管 の 出 口水 面 に対 す る高 さ は, キ ャ ビテ ー シ ョ ンが 起 こ らな い よ うな 限 度 内 に選 ば な くて は な らな い。
図 1.25
吸 出 し高 さの説 明[電 気学会 ・電 気規格調査会標準規格 『 水車 お よびポ ンプ水車』 よ り 電気 学会 の許諾 を得 て複 製]
い ま,図1.25か
ら吸 出 し 高 さ を 求 め る 。
(1.59) こ こ にZs:吸
出 し高 さ 〔 m 〕,zr:水
車(ポ
ン プ 水 車)の
指定位 置 の標 高 〔 m 〕,
z′2:圧 力 測 定 器 指 示 標 高 〔m 〕,p′′2:水圧 測 定 器 の 読 み 〔Pa〕,z′′2:水 圧 測 定 器 の 標 高 〔 m 〕,ρ2:水 の 密 度 〔kg/m3〕,g2:加
吸 出 し高 さ は,反 動 水 車(ポ 車)の
速 度 〔m/s2〕,添 字 2:低 圧 側 指 定 点 で あ る 。
ンプ 水 車)の
指 定 位 置 の標 高 が,水 車(ポ
低 圧 側 指 定 点 に お け る圧 力 器 指 示 標 高(一
高 い場 合 は 正 号(+)を
ン プ水
般 に は放 水 路 水 面 の標 高)よ
と り,低 い場 合 は負 号(-)を
り
とる。 これ らの 関 係 か ら
キ ャ ビ テ ー シ ョン を 防 ぐ圧 力 を求 め る こ とが で き る。 例 え ば,
(1.60) は キ ャ ビテ ー シ ョン係 数 と よ ばれ,水 でZaは
大 気 圧 水 頭,Zν
車 ご と に各 種 デ ー タ が そ ろ っ て い る。 こ こ
は水 の 飽 和 蒸 気 圧 の 水 頭,Zsは
有効 落差 で いずれ も m
で表 す。
1.7
比速度
幾 何 学 的 に ラ ン ナ 形 状 が 相 似 で あ り,か 1.17の
速 度 成 分 が 相 似)で
あ れ ば,そ
つ ラ ン ナ ま わ り の 流 れ が 相 似(図
の 大 小 と は 関 係 な く,特
さ れ る 。 ラ ン ナ の 特 性 を 示 す 指 標 と し て 比 速 度(specific い る。 い ま,幾 Q2〔m3/s〕,絶 u2〔m/s〕,有
何 学 的 に 同 じ 2個 の 水 車 に つ い て,そ 対 流 速 を ν1,ν2〔m/s〕,ラ
効 落 差 をH1,H2〔m〕
性 が 同 じ とみ な
speed)が
用 い られ て
の 設 計 流 量 を そ れ ぞ れQ1,
ン ナ の 直 径 をD1,D2〔m〕,周
速 度 をu1,
と す る 。 こ れ ら の 諸 量 を 比 較 す る た めk1∼k4
を 定 数 と す る。 絶 対 速 度 は 落 差 H の1/2乗
に 比 例 す る の で,
(1.61) (1.62)
(1.63) (1.64) (1.65) 流 量 は代 表 寸 法 の 2乗 と流 速 の積 に比 例 す るの で,
(1.66) とな る。 そ れ ぞ れ 出 力P1,P2は
水 の 比 重 量 と効 率 は 同 じ とす れ ば,
(1.67) (1.68) (1.69) ま た 水 車 の 回転 速 度 は ラ ンナ の 直 径 に反 比 例 し,周 速 度 に比 例 す る の で,
(1.70) し た が っ て,
(1.71) こ れ を 比 速 度nsと
い い,一
般 式 に 示 す と,
(1.72) に な る。 回転 速 度 は常 に “rpm” で 表 示 す る。 H や P の単 位 の 取 り方 で 表 示 が 異 な るの で,使 用 した 単 位 を(1.72)式 の よ う に必 ず 表 示 す る。 比 速 度nsはH=1mで
出 力P=1kWを
発 生 す る の に は必 要 な 回 転 速 度 n を
意 味 し,こ の値 が ラ ン ナ の 特 性 と密 接 に 関係 す る。 例 え ば 前 述 の フ ラ ン シ ス水 車 は 中 落 差 ・中 流 量 に適 して い る の で,nsが 容 量 に適 し,nsが
大 きい な どnsベ
小 さ く,プ ロペ ラ水 車 は 低 落 差 ・大
ー ス で 機 種 が 選 定 で き る。 ま た,こ
の比速度
は大 き さ に は 関係 な く利 用 で き る こ とが(1.70)式 か ら明 らか で あ る。 す な わ ち,模 型 と実 物 でnsが
同 一 で あ れ ば,同
じ特 性 の ラ ン ナ とな り,模 型
か ら実 物 性 能 を換 算 で き る。 比 速 度 はあ く まで ペ ル トン水 車 で は ノ ズ ル 1個,ラ
図1.26 ペ ル トン水 車 の有 効落 差 と比 速 度[電 気学会 ・電 気規格調 査会標 準規格 『 水車 お よび ポン プ水車』 より電気学会の許諾 を得 て複製]
図1.27
フ ラ ン シス水 車 の 有効 落 差 と比 速 度[電 気学会 ・電気規格 調査 会標準規格 『 水車 お よびポ ンプ水車』 よ り電気学会 の許諾 を得 て複 製]
図1.28 斜 流 水 車 の有 効 落差 と比 速 度[電 気学 会 ・電気規 格調 査会標準 規格 『 水車 お よび ポンプ水 車』 よ り電 気学会の許諾 を得 て複製]
図1.29 プ ロペ ラ水 車 の有 効 落差 と比 速 度[電 気 学会 ・電気規 格調査会 標準規格 『 水 車お よびポ ン プ水車』 よ り電気学会 の許 諾を得て複製]
図1.30
ク ロス フロー 水 車 の有 効 落差 とBg/D1[電 気 学会 ・電気規格 調査会標 準規格 『 水 車お よび ポンプ水車 』 より電気学会の許諾 を得 て複製]
図1.31
フ ラ ン シス形 ポ ンプ水 車 の全 揚 程 と比 速度[電 気学会 ・電気規格調査会標 準規格 『 水 車お よびポ ンプ水車』 よ り電気学会 の許 諾 を得て複製]
ンナ 1個 に つ い て,反 国 内 のJECで
動 水 車 で は ラ ンナ 1個 に つ い て の値 を用 い て表 示 す る。
は これ まで の 多 くの実 績 か らnsベ
して あ り,水 車 ご とに デ ー タが あ る(図1.26∼
ー ス で 機 種 の 適 用 範 囲 を整 理
図1.29)。
ク ロ ス フ ロ ー 水 車 で はnsの 代 わ りにガ イ ドベ ー ン流 路 幅Bg〔m〕 とラ ンナ 外 形 D1と の関 係 を使 用 す る こ とが 多 い(図1.30)。 また ポ ン プ水 車 で は ラ ン ナ の設 計 が ポ ン プ性 能 を重 視 して 行 わ れ る の で,ポ プ分 野 で 慣 用 され て きた ポ ン プ比 速 度nSQ〔m-m3/s基
ン
準〕
(1.73) で 表 示 され る。 水 車 と異 な り揚 水 量 Q を用 い るた め で あ る(図1.31)。
1.8 1.8.1弁
水車の付属設備 類
水 圧 管 の 末 端 で 水 車 ケ ー シ ン グ 入 口 に 入 口 弁(inlet
valve)が
設 け られ て い
る 。 レ ン ズ 形 を し た 弁 が 管 路 の 中 を 回 転 す る も の を ち ょ う 形 弁(butterfly valve),円
筒 形 の 弁 を 管 内 で 回 転 し て,管
じ る構 造 の ロ ー タ リ 弁(rotary
1.8.2
valve)な
路 と円 筒 形 弁 の管 軸 と一 致 した と き閉 どが 用 い られ る 。
速度調 整
速 度 調 整 は調 速 機(speed
governor)で
行 わ れ る。 回 転 速 度 を 自 動 的 に検 出
し,規 定 周 波 数 に一 致 す る よ う にガ イ ドベ ー ン な どで,水 よ う に な っ て い る 。 図1.32に
の流 入 量 を変 え られ る
調 速 機 の 原 理 を示 す。 水 車 が あ る負 荷 を と る と,
平 衡 状 態 に な り,フ ロー テ ィ ン グ レバ ー はP0,R0,C0の
水 平 位 置 を とる。 配 圧
弁 内 の ピ ス トン は所 定 の 位 置 に あ る。 ま た油 圧 装 置 は 動 作 し な い 。仮 に速 度 が上 が る とペ ン ジ ュ ラ ム が 開 きP0がP1に C0はC1に
移 動 す る。R0は 不 動 点 に な っ て い るた め,
移 る。 す る と ピ ス トンが 下 が り圧 油 は サ ー ボ モ ー タ の左 に入 り,サ ー
ボ モ ー タ は右 方 向 に 動 きガ イ ドベ ー ン を閉 じ る。 こ の ま まで は動 作 の 遅 れ か ら閉 じる動 作 が 続 い て し ま う。 そ の 時,復 原 部 に よ っ てR1に
一 旦 戻 し,水 の 量 を増
図1.32 調速 機 の 原 理
や し,流 入 量 が 適 当 に な れ ばC1をC0に 速 度 調 定 率(permanent
戻 し て配 圧 弁 を遮 断 す る。
speed regulation)は
あ る 出 力 で 運 転 中 の 発 電 機 の負
荷 を変 更 した と き,定 常 運 転 時 の 回 転 速 度 の 変 化 分 と発 電 機 負 荷 の 変 化 分 との比 を い う。 R は速 度 調 定 率 〔%〕,n1,n2は P2は 負 荷 〔kW〕 の変 化 で あ る。 またPnは
負 荷 変 化 前 後 の 回 転 速 度(rpm),P1, 基 準 負荷 で 基 準 有 効 落 差 お よ び 定 格 回
転 数 にお いて水行 車が 安 全 に連 続 して 発 生 で き る 出 力 をい う。nnは
定 格 回転 数 と
す る。
(1.74)
を 速 度 調 定 率 と い う 。 ま た 調 速 機 に 調 整 を 加 え ず サ ー ボ モ ー タ を あ る 位 置 か ら別 の 位 置 に 変 え た と き,サ 垂 下 率(permanent
ー ボ モ ー タ の ス トロ ー ク の 変 化 と 速 度 の 変 化 の 比 を 速 度
speed
drop)と
い う。
ま た,過 渡 現 象 と して 負 荷 が 急 激 に な くな る と,調 速 機 に よ っ て水 が 急 速 に減 少 す る。 こ の と き流 れ て い た 流水 が 遮 断 され るた め 水 圧 管 に水 撃 作 用 が 発 生 す る。 この と き発 生 す る最 大 水 圧 また は最 小 水 圧 と,水 車 停 止 時 の 静 水 圧 との 差 と 水 車 停 止 時 の 静 落 差 との 比 を,水 圧 変 動 率(momentary
pressure variation)と
い う。
問題 (1)流
域 面 積100㎞2,年
間 降 水 量1750㎜
の河 川 の年平 均 流量 はい くら
か。 (2)架
線 の 流 量 を求 め る 方 法 を二 つ以 上 説 明 せ よ。
(3)ダ
ム につ い て 説 明 し,ど の よ うな ダ ム が あ るか 解 説 せ よ。
(4)揚
水 式 発 電 所 につ い て その 概 要 を述 べ よ。
(5)サ
ー ジ タ ンク の 機 能 を述 べ,2 例 あ げ て説 明 せ よ。
(6)水
車 の 比 速 度 は どの よ うな 関 係 形 式 で 表 せ るか,ま
た ポ ンプ 水 車 の 比 速
度 は ど う か。 また そ れ ぞ れ の単 位 を 示 せ 。 (7)ペ
ル トン,プ
ロペ ラ お よび フ ラ ン シス水 車 の 比 速 度 の 大 きい順 序 を述 べ
よ。 (8)キ
ャ ビテ ー シ ョン の メ カ ニ ズ ム を説 明 せ よ。 (解答 は巻 末)
第2 章 火 力発電
火 力 発 電 の 概 要 本 章 で は火 力 発 電 の概 要 を理 解 す る と と も に,熱 力 学 の 基 礎 を 理 解 し,こ れ らが どの よ うに実 務 に結 び つ くか を理 解 す る こ とに重 点 をお いた 。 そ れ に続 い て 火 力 発 電 設 備 の構 成 要 素 を理 解 し,電 気 エ ネ ル ギ ー が どの よ うに し て 発 生 す る の か を理 解 す る。 また 最 近 は コ ンバ イ ン ドサ イ クル 発 電 プ ラ ン トな ど 新 しい 発 電 技 術 も現 れ,そ
2.1
れ ら も理 解 す る こ と を 目的 に して い る。
火力発 電所
日本 で は戦 前 戦 後 を通 じ,産 業 振 興 と もに,電 気 エ ネ ル ギ ー の供 給 が 重 要 な課 題 とな った 。 まず,水
力 発 電 を 中 心 に建 設 が 進 め られ て きた 。 昭 和20年
頃 まで
は 水 主 火 従 と言 わ れ た 時 代 が あ った が,経 済 復 興 と と もに 電 気 エ ネ ル ギー が 不 足 し次 々 と火 力 発 電 所 が 建 設 され た 。 そ れ に つ れ て 発 電 機 や ター ビ ンの 容 量 も増 加 して 現 在1000MWク
ラ ス の もの が実 用 化 され る に至 っ て い る。 燃 料 も石 炭 か ら
重 油 や 原 油 に,ま た 最 近 で は天 然 ガ ス やLNG(液
化 天 然 ガ ス)が 用 い られ る よ
う に な って きた 。 電 気 エ ネ ル ギ ー 変 換 の熱 効 率 もそ れ と共 に 向 上 し40%程
度ま
で 上 昇 して きた 。 熱 効 率 は未 だ 向 上 の一 途 をた どっ て い る。 火 力 発 電 所 で は1% の 熱 効 率 の 向 上 で も大 変 な成 果 で あ る。 例 えば1000MWの 効 率 の 向上 で も約10MWに
発 電 所 で は 1%の 熱
相 当 し,こ れ は数 千 の家 庭 の 電 力 エ ネ ル ギ ー 需 要 に
相 当 す る か らで あ る。 最 近 で は コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 発 電 と称 し,ガ ス タ ー ビ ン と蒸 気 タ ー ビ ン をサ イ クル 的 に組 み 合 わ せ て発 電 す る もの で,ガ ス ター ビ ンの 排 ガ ス で 蒸 気 を発 生 さ せ蒸 気 タ ー ビ ン を動 か す。 そ の 実 用 化 に よ り電 気 エ ネ ル ギ ー 変 換 の 熱 効 率 が一 気
に50%近
くに な っ て お り,さ ら に今 後 の技 術 開 発 に よ っ て 向 上 の 見 込 み が 大 き
い 。
また ガ ス タ ー ビ ン はLNG(液
化 天 然 ガ ス)で 運 転 さ れ るた め,CO2の
排 出が
少 な く地 球 温 暖 化 現 象 を 防 ぐこ とが で き るた め世 界 で 注 目 さ れ大 い に活 用 され て い る。 図2.1は
図2.1
東 京 電 力(株)の 火 力 発 電 の 熱効 率 の年 推 移 を示 して い る。
火 力 発 電 所 の 熱 効 率 の 年 推 移[デ
また 図2.2に
ー タ は東 京 電 力(株)ホ ー ム ペ ー ジ(2003)よ
り]
最 新 の 火 力 発 電 所 を示 して あ る。 図 に 示 す よ う に火 力 発 電 所 は大
変 大 きな 設 備 で あ るた め,機 器 搬 入 や 輸 送 の 便 利 さか ら と,燃 料 輸 送 の た め海 岸 の 近 くに あ る。 また海 岸 近 くに設 置 さ れ る理 由 は,後 述 す るが 熱 効 率 を左 右 す る 発 電 所 の 冷 た い冷 却 水 と して海 水 が 容 易 に 得 られ るた め で あ る。 火 力 発 電 所 は広 大 な海 岸 の敷 地 に設 立 され てお り,石 炭,石 油 あ るい は ガ ス の 貯 蔵 所 か ら の供 給 設 備 か ら始 ま り,ボ イ ラー あ る い は排 熱 回 収 ボ イ ラー,タ ン あ る い は ガ ス タ ー ビ ン,発 電 機,冷 変 電 所,巨
却 装 置(複
水 器),給
水 加 熱 器,放
ービ
水 路,
大 な排 煙 装 置 な ど多 くの もの か ら構 成 され て い る。 そ れ ら を全 部 解 説
す る こ とは 困 難 で あ るの で 主 な設 備 の み を解 説 す る。
横 浜 火 力発 電 所(神 奈 川 県) [利用 資 源:重 油,原 油,NGL,LNG]
広野 火 力 発電 所(福 島 県) [利用 資 源:重 油,原 油,天 然 ガ ス,NGL]
豊 津火 力 発 電所(千 葉 県) [利用 資源:LNG]
千葉 火 力 発 電所(千 葉 県) [利用 資源:LNG]
図2.2 東 京 電 力(株)火 力 設 備 の例[写 真提供:東 京電 力株式会社]
2.2熱
力学
火 力 発 電 所 の諸 計 算 は熱 力 学 で表 せ る こ とが 多 い 。 本 章 で は熱 力 学 の 基 礎 を学 び,そ
2.2.1
れ が ど の よ う に火 力 発 電 所 に適 用 され る か を学 ぶ 。
熱力 学の諸定 義
熱 力 学 は空 間 的,時
間 的 な 広 が りを持 つ 巨 視 的 な もの で 多 数 の 分 子,原
子,電
子 か ら な る 自 由度 が 極 め て 大 き い 巨 視 的 な 系 を対 象 とす る。 孤 立 系(isolated system)は
外 界 と は ま っ た く交 渉 を持 た な い 独 立 し た 系,閉
system)は
熱 や 仕 事 の 出 入 りは あ るが,外
開 い た 系(open
system)は
じた 系(closed
界 と の 間 に 物 質 の 出 入 りが な い系,
外 界 との 間 に物 質 の 出入 りが あ る系 を い う。
孤 立 系 の 熱 平 衡 とは 一 つ の孤 立 系 を放 置 す れ ば,最 初 の状 態 に か か わ らず,や が て 終 局 的 な 状 態 に 落 ち 着 く。 こ の様 な 状 態 を 熱 平 衡 状 態(thermal
equilib
rium)と
い う。 実 際 は分 子 な どが 複 雑 な運 動 を し て い る が,巨 視 的 に は少 数 の
変 数,例
え ば温 度 と圧 力 な どに よっ て 決 ま る。 二 つ の 系 が 接 触 す る と き,二 つ の
系 は 熱 平 衡 に達 す る が,熱 平 衡 到達 後 は両 者 間 の接 触 を断 っ て も状 態 変 化 が 起 こ らな い し,ま た 再 び 接 触 し て も平 衡 は 破 れ な い 。 し た が っ て例 え ば,系 B が 熱 平 衡 に あ り,系
A と系
B と系 C が 熱 平 衡 に あ れ ば 系 A と系 C は熱 平 衡 に あ る こ
とに な る。 また 熱 的 接触 を断 つ壁 を断 熱 壁 と定 義 す る。 また 熱 力 学 的 接 触 と は系 が 相 互 に 作 用 す る よ うな状 態 を い う。 例 え ば 1)機 械 的 作 用(mechanical 2)熱 的作 用(thermal 3)質 量 的 作 用(mass
action)は action)は
action)は
電 磁 気 的 な 力 な どで 作 用 し,
熱 伝 導,熱 放 射 な どエ ネ ル ギ ー の移 動 を 伴 い, 物 質 の 交 換 が行 わ れ る こ とを い う。
熱 力 学 で は作 用 を 及 ぼ す 源 と して 外 界 を考 え る と き,こ れ を仕 事 源,熱
源,質
量 源 とい う。 源 は考 え る系 に対 して 十 分 に大 き く,そ れ 自身 が 熱 平 衡 に あ り,系 が どん な に 変 化 し て も,そ れ らが一 定 の 環 境 と して作 用 す る もの で あ る。 熱 力 学 的 に状 態 量(state 度,圧
力,内
quantity)を
部 エ ネ ル ギ ー,エ
考 えて み る。 これ は後 述 す る よ う に温
ンタ ル ピ ー,エ
ン トロ ピー な どで あ る。 熱 平 衡 状
態 に あ る よ うな 物 質 に 仕 切 りを入 れ て も,熱 平 衡 は維 持 され る。 熱平 衡 は 内部 的 な性 状 で 系 全体 の分 量 に関 係 しな い状 態 量 で 表 さ れ,温 度,圧 力 な どで 表 す こ と が で き る。 この よ うな 量 を示 強 性 の量(intensive
state quantity)と
い う。
また 分 割 す る と,分 量 に比 例 して 変 化 す る量 が あ る。 この よ うな量 を示 量 性 の 量(extensive
state quantity)と
い い,エ ネ ル ギ ー,エ
ン トロ ピー な ど で 表 せ
る。 また 熱 力 学 で は 系 が 単 独 あ る い は他 の 系 と接 触 し つ つ,そ
の 変 化 を 取 り扱 う
が,最
初 と最 後 の 状 態 が 熱 力 学 的 平 衡 な 状 態 で あ る こ とが 必 要 で あ る。
サ イ クル と は始 め と終 りで 注 目 す る系 の 状 態 が一 致 す る過 程 を い う。 これ らの 過 程 は 無 限 小 過 程(infinitesimal ess)な
process),準
静 的 過 程(quasi-static
proc
ど に分 類 で き る。 無 限 小 過 程 とは 最 初 と最 後 が微 小 な 変 化 しか しな い 過
程 を い う。 準 静 的 過 程 とは変 化 の 過 程 に お い て,系
も外 界 も常 に熱 平 衡 状 態 を保
つ とみ な せ る理 想 的 変 化 を行 わ せ る過 程 で あ る。 例 えば ピス トン で仕 事 を し て 気 体 を膨 張 あ る い は圧 縮 す る と き,圧 力 をわ ず か に小 さ くあ る い は大 き くし て,結 果 的 に は 可 逆 的 に な る よ う に す る。 準 静 的 等 温 過 程(quasi-static process)は
一 定 温 度 の 外 界 と接 触 させ,系
isothermal
の温 度 を この 温 度 に 保 ち つ つ 行 わ れ
る過 程 で あ る。 準 静 的 断 熱 過 程(quasi-static
adiabatic process)と
は熱 的 に外
界 との 熱 接 触 を 断 ち,外 界 と仕 事 の 授 受 を行 う過 程 で あ る。
2.2.2熱
力 学 第 1 法 則(the
first law
of thermodynamics)
熱 力 学 第 1法 則 は一 般 の エ ネ ル ギ ー 保 存 の 法 則 で あ る。 熱 力 学 第 1法則 は系 が 与 え られ た 最 初 の 状 態 か ら最 後 の状 態 ま で変 化 す る とき,そ の 系 が 外 界 か ら与 え ら れ る 仕 事W(work),熱 action
quantity)の
量Q(heat
quantity),質
量 的 作 用 量Z(mass
総 和 は状 態 1と状 態 2に よ り決 ま り,途 中 の 過 程 に よ ら な
い こ とを い う。 な お,工 業 熱 力 学 で は エ ン タ ル ピー を iで 表 す が,こ
こで は h
を使 っ て い る。
U2-U=W+Q+Z U1とU2が
(2.1)
そ れ ぞ れ 状 態1,2の
内部 エネルギーで ある。
また 運 動 エ ネ ル ギー や位 置 の エ ネ ル ギ ー な ど を内 部 エ ネル ギ ー に加 え た 全 エ ネ ル ギ ー を そ れ ぞ れE1とE2と
す る と,
E2-E1=W+Q+Z
(2.2)
と な る 。 こ の と き(E2-E1)は,内
部 エ ネ ル ギ ー 以 外 の 増 加 とし て 後 に述 べ る 速
度 エ ネ ル ギ ー と 位 置 の エ ネ ル ギ ー(v2/2+gz)が は 基 準 点 か ら の 位 置,g と,
あ る 。 こ こ で v は 流 れ の 速 度,z
は 重 力 加 速 度 で あ る。 も し考 え る 系 が サ イ ク ル を行 う
W+Q+Z=O と な り,-WはQ+Zと
い う代 償 を外 界 か ら支 払 う,あ
る い は外 界 か ら も ら う
こ とに よ っ て外 界 に対 して 仕 事 を す る こ とに な る。 この よ うな 代 償 を払 わ ず(外 部 か ら も らわ ず)に
仕 事 をす る こ とを第 1種 永 久 機 関 とい う。 熱 力 学 第 1法 則 は
この 第 1種 永 久 機 関 が 不 可能 で あ る原 理 と もい わ れ て い る。 な お 通 常 扱 う熱 力 学 で は Z は省 略 す る。 作 動 流 体 を理 想 気 体 と して も う少 し解 説 を加 え る。 理 想 気 体 と は 気 体 の 状 態 が体 積 V,圧 力 P お よ び 温 度 T に よ っ て 決 ま り, 各 々 が 相 関 を持 つ気 体 を い う。一 つ の 系 が あ る平 衡 状 態 か ら別 の平 衡 状 態 に遷 移 す る とき,外 界 か ら仕 事dWが 系 の 内部 エ ネ ル ギ ーdUの
な さ れ,外 界 か ら熱 量dQが
移 動 した とす る と,
変 化 は以 下 の とお り と な る。 まずdVは
系 の体積 が
増 加 す る 方 向 を正 とす る。 圧 力 に 抗 して 気 体 が 外 部 に 仕 事 が な さ れ る が,わ 略 さ れ,そ
れ わ れ の 熱 力 学 で は z は省
の 仕 事 W は, dW=PdV
(2.3)
し た が っ て,
dU=dQ+dW=dQ+PdV
(2.4)
これ が 熱 力 学 の 基 礎 式 で あ る。
d(PV)=PdV+VdP
(2.5)
ゆ え に 符 号 を 考 え,
dQ=d(U+PV)-VdP
(2.6)
こ こで エ ン タ ル ピ ー を定 義 す る。
H=U+PV 単 位 質 量 で は h比 エ ン タ ル ピ ー,U
(2.7) 比 内 部 エ ネ ル ギ ー,υ
比 体 積 とす る。
h=u+Pυ
(2.8)
とな る。 し た が っ て, dq=d(h)-υdP
とな る。 エ ン タル ピー は重 要 な量 で あ り,今 後 順 次 解 説 す る。
(2.9)
図2.3 流 線 に沿 った 解析 図
図2.3に
示 す よ うに連 続 した 流 れ が あ る とす る。 そ の 時,
(2.10) と な る。 以 下,そ
れ を説 明 す る。 まず 時 間 と共 に変 形 しな い 流 線 を考 え る。 流 体
内 の各 点 で 流 速 υ,密 度 ρお よ び圧 力 P を考 え る。 流 体 は 熱 平 衡 に あ る とす る 。 そ し て 理 想 気 体 の 状 態 方 程 式(P=ρRT)に ま る。 流体 は 断面 積S1か
よ る P は 密 度 ρ と温 度 T に よ り決
ら断 面 積S2を
単 位 時 間 に 通 過 す る。連 続 の式 か ら,
流 間 長 さdlと
し て 小 さ く取 る と,
ρ1S1υ1=ρ2S2υ2
と な る 。 断 面 積Sl,S2で
と 書 い て よ い 。 断 面 積S1,S2で
挟 ま れ た 空 間 を 考 え る 。 熱 の 出 入 り は な く,粘
性 な ど の 抵 抗 も な く仕 事 は 断 面 積Sl,S2に
働 く外 圧P1,P2に
単 位 時 間 あ た り流 体 が 受 け 取 る 仕 事 はP1S1υ1-P2S2υ2で て 積 分 し-dl・
よ る も の とす る。
あ り,こ
れ をdlに
∂(PSυ)/∂lと な る 。 ま た 内 部 エ ネ ル ギ ー を u と す る と,熱
つい 平衡 を
仮 定 し て 密 度 ρ と温 度 T か ら 定 ま る 。 断 面 積S1,S2で
挟 ま れ る 流 体 の 部 分 はdt時
間 経 過 す る と,S1,S2か
らdtυ1,
dtυ2だ け ず れ た 断 面 積 に 挟 ま れ た 領 域 に 移 動 す る 。 そ の た め 実 質 部 分 が 持 っ て い
た エ ネ ル ギ ー は,
(2.11) だ け増 す 。 単 位 時 間 あ た りを とる と,
だ け 増 す か ら 熱 力 学 の 第 1法 則 に よ っ て,こ
れ は-dl・
∂(PSυ)/∂lに 等 し い 。
(2.12)
(2.13) 連 続 の 式 か ら ∂(ρSυ)/∂l=0
(2.14) と な りu+P/ρ=u+Pυ
と な る か ら,つ
ま り,
(2.15) に なる 。
こ れ は ベ ル ヌ ー イ(Bernoulli)の
2.2.3熱
容 量,比
あ る 系 にdQの た れ た ま ま,系 (heat
capacity)と
式 とし て知 られ て い る。
熱
熱 量 を 準 静 的 に 加 え,あ の 温 度 がdTだ
る 過 程 に よ っ てCxな
け 上 昇 し た と す る とCxを
る量 が 一 定 に保 こ の過程 の 熱 容量
い う 。 単 位 質 量 に つ い て の 熱 容 量 を 比 熱(specific
heat)と
い う。 ま た 1モ ル 当 た り の 熱 容 量 を モ ル 比 熱 と い う。
(2.16) 圧 力 を 一 定 に し た と き こ の 熱 容 量 を定 圧 熱 容 量CP(heat
capaCity
at
con
stant
pressure)あ
る い は 定 圧 比 熱Cp(specific
積 を 一 定 に し た と き定 積 熱 容 量cv(heat は 定 積 比 熱cv(specific し てC断 熱=0,等
heat
capacity
at constant
温 過 程 に 対 し て C等温=∞
理 想 気 体 で は定 積 モ ル 比 熱cvと
heat
volume)と
at constant
pressure),体 volume)あ
るい
い う。 また 断 熱過 程 に対
と形 式 的 に 定 義 が で き る。
定 圧 モ ル 比 熱cpと
CP=cv+R(Mayerの
at constant
の 間 に,
(2.17)
関 係 式)
これ は以 下 に よ って 証 明 さ れ る。 また 気 体1molに
つ い て準 静 的 過 程 に対 す る第 一 法 則 は,
(2.18)
dq=du+Pdυ
理 想 気 体 の 内部 エ ネ ル ギ ーuは
比 体 積 υ に よ らな い の で(1.32式
以下 で説 明
す る),
(2.19)
dq=cv(T)dT と お き, dq=cv(T)dT+Pdυ
定 積 モ ル 比 熱 はdυ=0と
した と きで あ るか ら,こ の 時dq/dTは
定 積 モ ル比 熱
cvに 他 な ら な い 。
(2.20)
dq=cvdT+d(Pυ)-υdP Pυ=RTを
入 れ れ ば,
(2.21)
dq=(cv+R)dT-υdP
これ よ り定 圧 モ ル比 熱cpは,
(2.22) に な る。
2.2.4状
態 方 程 式(equation
state)
純 粋 気 体 や 液 体 の よ うに流 体 の 熱 平 衡 に 対 して は温 度 T,圧 力 P,体 積 V の 問 にT=f(P,V)の
函 数 関 係 が 存 在 す る。 理 想 気 体(ideal
と して 一 般 的 にPV=g(T)と
gas)の
書 け るが,温 度 は絶 対 温 度 とす る と,
状態 方程 式
(2.23) n は モ ル 数,N
は 分 子 数,R
は 気 体 定 数(gas
constant),k
はBoltzmann定
数 で あ る。
す べ て の気 体 は高 温 また は低 密 度 の 極 限 で,分 子 間 力 が 与 え る影 響 が 無 視 で き る の で,理 想 気 体 と し て近 似 す る こ とが で きる。 また 理 想 気 体 の 内 部 エ ネ ル ギ ー は V に よ らな い(2.32式
以 降 で 証 明 す る)。
(2.24) 普 通 の 温 度 範 囲 にお い て,多
くの純 粋 気 体 で は比 熱 は一 定 とみ な され,
(2.25) こ こ に定 積 モ ル 比 熱cvは,
(単原 子分子気体)
(2.26)
(2原 子 分 子 気 体)
(2.27)
(多原子分子 気体)
(2.28)
混 合 理 想 気 体 に お い て はI種
気 体nimo1(i=1,…,r)か
らな る混 合 理 想 気 体 は
(2.29) さ らに 多 くの 場 合,
(2.30) が 成 立 す る。 u は 温 度 の 関 数 で あ り,体 積 に よ らな い。 しか し一 般 的 に は 比 熱 は必 ず し も一 定 で は な い が,理
想 気 体 と して 比 内部 エ ネ ル ギ ー u は温 度 の 関 数
で 比 体 積 vに よ らな い 。 i成 分 の 分 圧(partial
pressure)Piは
(2.31) とな る。
U が 温 度 の 関 数 で あ る こ とは 以 下 の よ う に説 明 で き る。 熱 力 学 を勉 強 し た後
に この部 分 を読 む とわ か りや す い。 も し状 態 方 程 式 がP=f(V)Tの
形 で表 せ る
と き,内 部 エ ネ ル ギ ー は体 積 V に無 関 係 で あ る。 これ は以 下 に よ っ て 説 明 で き る。 考 え る系 の 内 部 エ ネ ル ギ ー を U,エ ン トロ ピー を S とす る と,
(2.32)
(2.33) (2.34) が 完全微 分 で あ る条
両 式 が 完 全 微 分 で あ る こ と を考 え, 件 をそ れ ぞれ 書 け ば,
(2.35) に よ って 共 通 の項 を消 せ ば,
(2.36) こ の 式 にP=f(V)Tを
代 入 す る と,
(2.37) これ よ り内部 エ ネ ル ギ ー は V と関 係 な い こ とが わ か る。
2.2.5熱
力 学 第 2 法 則(the
secondlaw
of thermodynamics)と
エ ン トロ
ピ ー(entropy)
あ る系 が あ る 状 態 A か ら別 の 状 態 A'に 変 化 し,外 界 が そ れ に 伴 っ て状 態 B か ら状 態 B'に 変 化 す る。 何 らか の 方 法 で 状 態 A'を 最 初 の 状 態 A に戻 し,外 界 も逆 に B'か ら B に変 化 す る こ とが で き る よ う な 過 程 を可 逆 過 程(reversible process)で
あ る とい う。 例 え ば 熱 的 現 象 の準 静 的 過 程 と し て 可 逆 を 考 え る こ と
が で き るが,実
際 は摩 擦 な どが 伴 い 不 可 逆 で あ る。 可 逆 過 程 は理 想 化 した と きに
の み 考 え ら れ る 。 可 逆 過 程 に な ら な い と き を 不 可 逆 過 程 と い う。 過 程 が サ イ ク ル,ま
た 熱 機 関 を 考 え た と き,可
逆 で あ れ ば 可 逆 機 関(reversible
可 逆 で あ れ ば 不 可 逆 機 関(irreversible
engine)で
熱 力 学 第 2法 則 を 考 え る と き,Carnotサ 多 い 。 図2・4の
あ る とい う。
イ ク ル を考 え思 考 実 験 を行 う こ とが
サ イ ク ル を 定 義 し た と き 熱 源R1(T1),熱
吸 収 す る 熱 量 をQl,Q2と
engine),不
源R2(T2)と
等 温過程 で
す れ ば,
(2.38) とな る。 この 過 程 は理 想 気 体 の 状 態 方 程 式 と熱 力 学 第 1法 則 か ら証 明 で き る。
図2・4
以 下 に,こ
Carnotサ
イ ク ル
の準 静 的循 環 過 程 の 図 を考 え る。
理 想 気 体 に準 静 的 過 程 を行 わ せ る。 状 態1∼ 状 態 2へ の 移 行 は 温 度T1等 程 で 膨 張 し,状 態2∼ 状 態 3は 断 熱 膨 張,状
温過
態3∼ 状 態 4等 温 過 程 で 温 度T2の
熱 源 に接 触 して 等 温 圧 縮 で,状 態4∼ 状 態 1は 断 熱 圧 縮 を行 う もの とす る。 等 温 過 程 で は 内部 エ ネル ギ ー の 変 化 が な く,吸 収 され る熱 量 は気 体 が 外 部 に 出 す 仕 事 PdVに
等 し い。 した が っ て,1∼2の
過 程 で はnmolの
気 体 を考 え る と,
(2.39)
同 様 に3∼4の
過 程 で は,
(2.40) 図 の よ う な 場 合V2>V1,お
よ びV3>V4だ
か ら(Q1>0,Q2<0で
一 方 ,断 熱 過 程 で は,dQ=CvdT+PdVに 入 し,断
熱 であ る の で,dQ=0と
あ る。
理 想 状 態 方 定 式PV=nRTを
代
し て,
(2.41) Cp-Cv=nRで
あ る か ら,こ
の 式 を積 分 して
(2.42)
(2.43) と な る 。 こ れ をPossionの
式 と い う 。 断 熱 過 程 に つ い て そ れ ぞ れ 書 く と,
(2.44)
し た が っ て,
とな る。
ま た 以上 か ら各 種 熱 機 関 の効 率 も計 算 で き る の で,そ の 例 を示 す 。 理 想 気体 が,次
の 3種 の準 静 的 循 環 過 程 を行 う。 そ れ ぞ れ の効 率 を求 め る。 た
だ し γ=Cp/CV,Cp,Cvは (1)Ottoサ
c-dで
一 定 とす る。
イ ク ル(図2.5)
気 体 が 外 に な す仕 事 か らa-bで
外 か らな され る 仕 事 を差 し引 い た 正 味
の 仕 事 は,
W=CV{(Tc-Td)-(Tb-Ta)} 気 体 が 受 け 取 る の はb-cの
過 程 で,そ
(2.45) の 熱 量 はQ=Cv(Tc-Tb)で
あ り,断
図2.5
熱 過 程 の 条 件 でTVγ-1=一
Ottoサ
イ クル
定 か ら,
(2.46) (2.47) (2.48) (2)Jouleサ
イ ク ル(図2.6)
断 熱 過 程c-d,a-bで
の 仕 事 の ほ か にb-c,d-aの
仕 事 が あ る か ら,
(2.49) (2.50)
図2.6
Jouleサ
イ クル
と な り,
(2.51) 一 方
,気
体 が 熱 を 受 け取 る の はb-cの
過程 での条件式
過 程 で,Q=CP(Tc-Tb)で
か ら,
あ る。 断 熱
で あ る の で,
(2.52) とな る。 (3)デ
ィ ー ゼ ル サ イ ク ル(図2.7)
(2.53) 他 方,b-cで
吸 収 す る 熱量 は
(2.54) な の で,
(2.55)
(2.56)
図2.7
デ ィー ゼ ル サ イ クル
か ら 得 られ る 。
2.2.6熱
力 学第 2 法則
以 下 に述 べ る こ とは 経 験 的 に述 べ られ て い る こ とで は あ るが,同
じ こ とを言 っ
て い る。 これ ら を熱 力 学 の 第 2法 則 とい う。 (1) Clausiusの
原理
熱 が 高 温 度 の 物 体 か ら低 温 度 の 物 体 へ 移 動 す る と
き,そ れ 以 外 に何 も残 され て い な けれ ば不 可 逆 で あ る。 逆 に低 温 物 体 か ら高 温 物 体 へ,そ れ 以 外 に何 も変 化 を残 さず 移 る こ と はあ り得 な い 。 (2) Thomsonの
原理
仕 事 が 熱 に 変 わ る現 象 は,そ れ 以 外 何 の変 化 も残
らな けれ ば不 可 逆 で あ る。 あ る い は温 度 一 様 な物 体 か ら奪 っ た熱 を全 部 仕 事 に変 え,そ れ 以 外 何 の変 化 も残 さ な い こ とは不 可 能 で あ る。 (3) 第 2種 永 久 機 関 不 可 能 の原 理
一 つ の 熱 源 を冷 や して 仕事 をす る以 外
に,外 界 に何 の 変 化 も残 さず に周 期 的 に働 く機 関(第
2種 永 久 機 関)は 実 現 不 可
能 で あ る。
2.2.7Carnotサ
イ クル
一 般 的 なCarnotサ =Q1+Q2の
イ ク ル で は 熱 源R1
,R2か
ら 熱Q1,Q2を
仕 事 を す る 機 関 を い う 。Q1>0,Q2<0,仕
と り,外
界 にA
事 L は
(2.57) 効 率 は,
(2.58) した が っ て,Carnotサ
イ ク ル は作 業 物 質 に 関 係 な く動 作 させ る こ とが で き る。
また 同 じ熱 源 の 間 に働 く任 意 の 不 可 逆Carnotサ
イ ク ル の 効 率 η'は η よ り小
さ い。 これ は 実 際 に は 損 失 が 存 在 し可 逆 に な らな いた め で あ る。 また 熱 源R1,R2と
絶 対 温 度T1,T2の
クル の効 率 η との 関係,
比 は,こ
の 間 で 働 く可 逆Carnotサ
イ
(2.59) で 定 義 され る。 す な わ ち 理 想 気 体 温 度 系 の 与 え る温 度 は絶 対 温 度 に一 致 す る。
(2.60) と定 め,こ
れ をKelvin温
2.2.8任
度 目盛 と い う。
意 の サ イ ク ル に 関 す るClausiusの
不等 式
注 目す る 系 が 外 界 と作 用 しなが ら,一 つ の サ イ クル を行 う ときTi(i=1,…,n) な る 温 度 の熱 源Riか
ら吸 収 した 熱 量 をQiと
す る と,
(2.61) 積 分 形 に す る と,
(2.62) こ れ は,以
下 に よ って 証 明 さ れ る。
一 つ の 補 助 熱 源R0(温 Carnotサ
度T0)を
イ ク ル を 働 か せ て,Ciに
と り,RiにQiを
考 え る 。R1∼Rnと よ っ てR0か
そ れ ぞ れC1∼Cnな
ら 熱 量Q'i,外
る
界 か ら 仕 事A'iを
与 え る。
(2.63)
そ し て 補 助 サ イ ク ルC1∼Cnを を と り,外
働 か せ た 結 果,熱
源R0か
ら 熱 量(Q'i+…Q'n)
界 に,
(2.64) の 仕 事 を し た こ と な る 。Thomsonの
原 理 に よ り,こ
れ は 負 ま た はゼ ロ で な くて
はな らない。 し た が っ て(2.61)と(2.62)式 ま た,考
が 成 立 す る。
え る 系 の あ る 熱 平 衡 状 態a0を
基 準 と し,任
意 の 熱 平 衡 状 態a1に
お け
る そ の 系 の エ ン ト ロ ピ ーS(a1)を,
(2.65) で 定 義 す る。 系 が温 度 T で 外 界 か ら吸 収 す る微 小 熱 量 がdQで
あ る。
(2.66) とな る。 また 図2.8に る。 まず1∼2へ
示 す よ うに不 可 逆 過 程 を含 む エ ン トロ ピー 関数 につ い て 考 えて み 変 化 す る と き,別 の ル ー トで それ ぞ れ 向 う。 一 つ の過 程 で は 可
逆 的 な ル ー トB で 符 号 を逆 に で き,別 の ル ー ト A は不 可 逆 過 程 の ル ー トを と り 符 号 は逆 に で き な い 。
(2.67) 内部 可 逆 なル ー トは積 分 を逆 に で き るが 不 可 逆 な過 程 は そ れ が で き な い 。 Clausiusの 不 等 式 が 成 立 す るか ら,
(2.68) ま た 可 逆 な ル ー トで は,
(2.69) よ っ て,
図2.8
不 可 逆過 程 の エ ン トロ ピー
(2.70) した が っ て 不 可 逆 過 程 で は,
(2.71) と な る 。 こ れ を エ ン ト ロ ピ ー 増 加 の 原 理 と い う。
2.2.9エ
ン トロ ピー 線 図
エ ン トロ ピ ー は 前 述 の ご と くP,V,Tな
ど と 同 じ く物 質 の 状 態 で 決 め る た
め,線
T,横
図 と し て 用 い られ る。縦 軸 に 絶 対 温 度
っ て,状
態 を 示 す 。 図2.9に
示 す よ う に,TdS=dQな
軸 に に エ ン トロ ピ ー S を と の で 面 積 は 熱 量 を表 す。
TdS=面ABB'A'
図2.9
次 にCarnotサ
イ ク ル をT-s線
(2.72)
一 般 の エ ン トロ ピー図
図 に 書 く と 図2.10に
な る 。AB線
とCD線
は
等 温 変 化 で 水 平 に な る こ とは 明 らか で あ る。 BC線 らTdS=0,し
とAD線
は 断 熱 線 で,こ た が っ てdS=Oで,S
れ ら は 垂 直 に な る 。 何 故 な らdQ=0で
あ るか
は 定 数 とな る。 こ の 意 味 か ら も断 熱 線 を
図2.10
Carnotサ
イ ク ル のT-s図
等 エ ン トロ ピー 変化 と もい う。 面 積ABCDが が 加 え られ た 熱 量,面 積DCB'A'が
サ イ ク ル 中 の仕 事,面
積ABB'A'
低 温 物 質 に放 出 さ れ た 熱 量 を 表 して い る。
この 意 味 は,高 温 側 か ら熱 を も らっ て 仕 事 を す る と き は,必 ず 低 温 側 に熱 を放 出 し な け れ ば な ら な い と い う こ とで あ る。 極 め て 重 要 な 事 項 で あ る。 こ こで はQ2 >0と
し て あ る。
(2.73) とな る。
2.2.10一
般蒸気の性質
1㎏ の 液 体 を シ リン ダ ー に 入 れ,機
密 に し て 自 由 に 動 き う る ピ ス トン を は め
込 み,圧 力 P を加 え て外 か ら熱 す る こ と を考 え る。 外 か ら熱 す る と温 度 は上 昇 し,体 積 も増 し て くる 。 しか し,い つ まで も温 度 は上 昇 せ ず,液 よ っ て 極 限 値 が あ る。 水 の 場 合,水
銀 柱760㎜
の性 質 と外 圧 に
の 圧 力 で 熱 す る と,温 度 は
100°Cまで 上 昇 し,液 体 の状 態 で は存 在 し な い 。 この温 度 を この圧 力 に対 す る飽 和 温 度(saturation の 温 度 に お け る液 体 を飽 和 液(saturated
temperature)と
よ び,こ
liquid)と い う。 飽 和 液 の 温 度 と圧 力
の 間 に は 一 定 の 関 係 が あ る 。 温 度 を 決 め て 圧 力 を 指 定 す れ ば そ の 温 度 に対 す る 圧 力 も 定 ま る 。 こ の 圧 力 を そ の 温 度 に 対 す る 飽 和 圧 力(saturation う 。 飽 和 温 度 に 達 し た 後,さ 現 象 を 蒸 発(vaporization)と ing)に
ら に 温 度 を 上 昇 す る と,体
な り,そ
液 体 の な い 状 態 に な り,乾
い う。 さ ら に 熱 す る と,気
き 飽 和 蒸 気(dry
う 。 両 方 を 総 称 し て 飽 和 蒸 気(saturated
saturated
vapor)と
飽 和 蒸 気 に 至 る ま で の 熱 量 を 蒸 発 の 潜 熱(latent 乾 き飽 和 蒸 気 を 更 に 熱 す る と,再 な る 。 図2.11に
は 乾 き 飽 和 蒸 気 と い い,こ
泡 が 発 生 し沸 騰(boil 度 は一 定 に な る。 液 体
の 体 積 は 著 し く大 き く な る 。 さ ら に 温 度 を 加 え る と vapor)と
に 多 少 と も液 体 を 含 む と き は こ れ を 湿 り飽 和 蒸 気(wet
vapor)に
い
積 が 急 に増 加 す る。 この
至 る 。 さ ら に 熱 を 加 え る と蒸 気 の 発 生 が 増 し,温
は 蒸 気(vapor)に
pressure)と
heat
saturated
い う。 そ の 前 vapor)と
い
い う。 飽 和 液 を熱 して 乾 き of vaporization)と
い う。
び 温 度 が 上 昇 し て 過 熱 蒸 気 密 度(superheated
示 す よ う にP-v線
図 で 曲 線BKは
飽 和 液,曲
線KD
の 曲 線 を飽 和 線 と い う 。 圧 力 を 上 昇 し て い く と A 点
と C 点 が K 点 に達 す る。
図2.11
こ の 点 を 臨 界 点(critical pressure),そ
一 般 蒸 気 のP-v図
point)と
の 温 度 を 臨 界 温 度(critical
称 し,そ
の 点 の 圧 力 を 臨 界 圧 力(critical
temperature)と
い う。 この 点 で は蒸
発 熱 は 存 在 し な い 。 臨 界 点 に 達 し た 水 は 何 ら体 積 変 化 な し に,す 程 を経 ず に蒸 気 に変 わ る こ とに な る。
な わ ち 蒸 発 の過
さ て飽 和 蒸 気 の 中 に は湿 分 を含 ん で い る。 湿 分 を表 す の に乾 き度 湿 り度 が 定 義 され る 。 蒸 気 1㎏ 中 に乾 き蒸 気 x ㎏,湿
り蒸 気(1-x)㎏
が 含 まれ て い る。 こ
の 時 の 湿 り飽 和 蒸 気 の 比 体 積 v,比 内 部 エ ネ ル ギ ー u,比 エ ン タ ル ピ ー hお よ び 比 エ ン トロ ピー sの 関 係 式 を求 め よ う。 た だ し,” は乾 き飽 和 蒸 気 の'は 飽 和 液 の状 態 を示 す 。
2.3 2.3.1ラ
比体積
(2.74)
比 内部 エ ネ ル ギ ー
(2.75)
比 エ ンタ ル ピ ー
(2.76)
比 エ ン トロ ピ ー
(2.77)
蒸気機関への応用 ン キ ンサ イ ク ル
蒸 気 サ イ クル の 中 で も最 も重 要 な もの は,ラ
ン キ ン サ イ クル(Rankine
cycle)
で あ る。 石 油,石 炭 あ る い は天 然 ガ ス で蒸 気 を作 りそ れ を蒸 気 タ ー ビ ン に吹 きつ け る駆 動 力 を得 る もの で あ る。 効 率 向 上 に再 熱,再 生 サ イ クル な どが あ るが 追 っ て 解 説 す る。 図2.12に 示 した 圧 力PA,比
示 す サ イ ク ル で 1㎏ の 水 が 行 う仕 事 を考 え る 。 A 点 で
体 積VAな
る 飽 和 水 を断 熱 的 に圧 縮 して,PAか
め る。 水 は非 圧 縮 性 で あ る の で 変 化ABは
図2.12
らPBま
で高
等 積 変 化 で あ る。 し た が っ てVA=VB
ラ ン キ ン サ イ ク ル のP-v図
で あ る。 B に お け る水 は非 飽 和 で あ る。 これ を圧 力PBの
も とで 加 熱 し飽 和 温 度 とす
る 。 そ の後 加 熱 す る と蒸 発 が 起 こ り飽 和 蒸 気 とな る。 さ らに加 熱 す る と加 熱 蒸 気 とな る。 この 変 化 が 等 圧 変 化BCで
示 さ れ る。PC=PBで
タ ー ビ ン に注 入 し,仕 事 を させPAま
あ る。 C な る状 態 か ら
で 圧 力 を下 げ る。 この 蒸 気 は 復 水 器 で 冷 却
さ れ 元 の A 点 に 戻 る。 最 後 の 変 化 は 等 圧 線 で 示 さ れ る。 こ の と き の 仕 事 は ABCDの
面 積 で表 され る。 仕 事 w とす る と, w=面
積ABCD=面
積B'CDA'-面
(2.78)
積B'BAA'
(2.79) vsは 比 体 積 で 変 化CDに
沿 っ て の 積 分,vwは
ラ ン キ ン サ イ ク ル の 仕 事 はA,B,C,D各 hDと
変 化ABに
沿 った 積 分 で あ る。
点 の エ ン タ ル ピ ー をhA,hB,hC,
す れ ば,
(2.80) dQ=0か
ら 断 熱 変 化CDで
は(hC-hD)あ
る い はABで
は(hB-hA)と
な り,
(2.81) で あ る。 この 関 係 は等 圧 変 化BCの
加 熱 と等 圧 変 化DAの
放 熱 との 差 で あ る。
効 率 は,
(2.82) とな る。hB-hAは
上 述 の よ う に ポ ン プ で 消 費 す る仕 事 で あ り,こ こで 扱 う仕 事
と して は第 1項 と比 べ る と無 視 で き る。 また 別 の例 と して,図2.13にT-s図 T-s線
で ラ ン キ ン サ イ クル を表 して み る。
上 で ラ ン キ ンサ イ ク ル のABB'C'CDは
図2.13に
示 さ れ る。ABは
ポ
ン プ の 中 の 断 熱 変 化 を表 して お り,仕 事 が 小 さ い の で A 点 と B 点 は 一 致 して お り 区別 は な い。 した が っ て 等 圧 線BB'は が,ほ
飽 和 線 上AB'と
とん ど一 致 し て い る。 水 は等 圧 線 上BB'に
る。 そ の後B'C'に
拡 大 し て 示 して あ る
沿 っ て 飽 和 温 度 まで 熱 せ ら れ
沿 っ て 等 温 的 に 蒸 発 が 行 わ れ,C'に
達 す る。 そ の 後 は 加 熱
図2.13
蒸 気 と し てC'Cま DAは
ラ ン キ ンサ イ ク ル のT-s図
で 等 温 的 に 熱 せ られ る。CDは
タ ー ビ ン 中 の 断 熱 膨 張 し,
復 水 器 で凝 縮 され る。 この サ イ クル で加 え られ る熱 量 は,
給水 の加熱
面 積BB'SB'SA
給水 の蒸発
面 積B'C'SC'SB'
蒸気 の加熱
面 積C'CScSc'
し た が っ て,加 Q1=面
え ら れ る 全 熱 量Q1は 積BB'C'CScSA
放 出 さ れ る熱 量Q2は Q2=面
これ ら の 和 で あ っ て,
復 水 器 の冷 却 水 に与 え られ る。
積ADScSA
仕 事 に変 わ っ た 熱 量 A は, A=面 と な り,効
積ABB'C'CD
率 は, η=面 積ABB'C'D/面
積BB'C'CScSA
(2.83)
とな る。 通 常 計 算 に 必 要 な定 数 は数 値 的 に飽 和 ・過 熱 蒸 気 表 で与 え られ て お り,容 易 に 計 算 で き る。 以 下 に つ い て 注 意 を要 す る。
①
断 熱 的 に変 化 した D 点 は水 分 を含 ん だ蒸 気 とな る。 断 熱 的 で あ る の で比
エ ン トロ ピー は C 点 の 値 で あ り,乾 き蒸 気 と湿 り蒸 気 を求 め る こ とが 必 要 で あ る。 この 値 か ら D 点 の 比 エ ン タル ピー が 計 算 で き る。 また 湿 り蒸 気 が 多 い とタ ー ビ ン の羽 根 を 痛 め るの で,乾
き度 の 高 い状 態 の D 点 にす るた め の 工 夫 が 行 な
わ れ る。(2.74)か ら(2.77)の 式 を用 い て これ らの計 算 を行 う。 ②
図 か ら も明 らか な よ うに蒸 気 温 度 が 高 い ほ ど効 率 が 高 い こ とが わ か るが,
同 時 に冷 却 温 度 が 低 い ほ ど効 率 が 上 昇 す る こ とに注 意 す べ きで あ る。
2.3.2
再 生 サ イ ク ル(regenerative
cycle)
ラ ンキ ンサ イ ク ル で は,復 水 器 で 冷 却 水 に与 え る熱 量 が 大 変 多 い。 そ こで 膨 張 の途 中 で 蒸 気 の一 部 を取 り出 し,給 水 の加 熱 に用 い れ ば効 率 を上 昇 で き る こ とに な る。 この よ う な 方 式 を再 生 サ イ ク ル とい い,図2.14に
図2.14
示 す。
再生サイクル
A な る状 態 で ポ ン プ に お い て加 圧 さ れ た 給 水 が B の状 態 で ボ イ ラ ー に送 られ る。 そ こで 加 熱 され C の状 態 に な る 。 そ の 後,加
熱 器 に 入 り D な る状 態 に な
る。 タ ー ビ ン で 断 熱 変 化 す る と き途 中 で G な る点 で 一 部 蒸 気 が 抽 出 さ れ,給 加 熱 器(feed
water
heater)に
水
戻 さ れ る。 抽 出 した 蒸 気 で 水 を過 熱 す る。 抽 気
され な か った 蒸 気 は E まで 断 熱 膨 張 を し て復 水 器 に入 り A に至 る。 A の水 は給 水 加 熱 器 で H に至 る。 い ま,G
でm1な
る蒸 気 が 給 水 加 熱 器 に行 く とす る と,
(2.84) な る関係 が 得 られ る。
(2.85) した が っ て 効 率 は,ポ
ンプ の エ ネ ル ギ ー な ど は少 い と し て,
(2.86) とな る。 乾 き蒸 気 や 湿 り蒸 気 か らそ の 時 の エ ン タル ピー を求 め る こ とは上 記 の通 りで あ る 。
2.3.3
再 熱 サ イ ク ル(reheat
cycle)
ラ ン キ ンサ イ ク ル で は多 くの場 合,加 熱 蒸 気 を使 っ て膨 張 さ せ るが,圧 力 の低 下 と共 に温 度 が 下 が り加 熱 度 が 下 が る。 こ の 加 熱 度 が 下 が っ た 蒸 気 を 再 熱 器 (reheater)に
入 れ て再 び 高 温 に して,再
び タ ー ビ ン に 入 れ て 膨 張 さ せ る と効 率
が 向上 す る だ けで な く蒸 気 中 の水 分 を下 げ る こ とが で き る(図2.15)。
図2.15
CDは
再 熱 サ イ ク ル とT-s線
図
加 熱 器 で の 変 化 で 加 熱 し,タ ー ビ ン 中 でDEな
る変 化 を して 仕 事 を す
る 。飽 和 線 に近 づ い た と き,こ れ を再 熱 器 に入 れ 等 温 過 熱 を して タ ー ビ ンに送 り 返 す 。FGな
る 変 化 の 仕 事 を し,そ の 後GAは
と き再 熱 器 で 加 え る熱 量 を Q'と す る と,
復 水 器 の 過 程 で 冷 却 す る。 こ の
Q'=面
(2.87)
積SDEFSP=hF-hE
Q'だ け 余 分 に熱 を供 給 す る か わ りに,仕 事 も増 加 す る。 この 時 の 増 加 分 の 仕 事 W1は,
(2.88) (2.89) 効 率 は,
(2.90) とな る。
2.3.4損
失
タ ー ビ ンの 効 率 を求 め た が 実 際 は ター ビ ン を流 れ る蒸 気 の損 失 や 熱 伝 達 の損 失 な ど種 々 の 損 失 が あ り,タ ー ビ ン の 内部 効 率 は80%∼90%程 ン プ の 損 失,パ
イ プ の 摩 擦 や 熱 損 失,ボ
度 で あ る。 また ポ
イ ラ ー に お け る熱 損 失 や蒸 気 や 時 の流 れ
に伴 う摩 擦 損 失 な どが あ る。 そ れ ぞ れ の損 失 は見 積 も られ て い る。 以 上 か らタ ー ビ ンの 効 率 を計 算 で き る の で 参 考 に示 して あ る 。
例 題 と して,次
の ペ ー ジ の 表2.1を
参 照 して 以 下 の ター ビ ンの 効 率 を求 め よ。
(1) ボ イ ラ ー で 加 熱 さ れ た3.0MPaの
飽 和 蒸 気 が0.1MPaの
大気圧 におい
て復 水 器 で 冷 却 され た 。 そ の 時 の 効 率 を計 算 せ よ。 〈解 答 〉 効 率23.7%と
な る。 乾 き度x=0.8058
(2) 上 記 に お い て0.01MPaの
大 気 圧 に お い て復 水 器 で冷 却 され た。 そ の 時
の効 率 を計 算 せ よ。 〈解 答 〉 効 率32.32%と
(3) 4.0MPaの
な る。乾 き度x=0.7383
蒸 気 が タ ー ビ ン に入 り,復 水 器 の 圧 力 は0.01MPaで
あ る。
表2.1 水 の過 熱蒸 気,飽 和 蒸 気,飽 和 水 の 関係
そ の 時 の 効 率 を計 算 せ よ 。 〈解 答 〉 効 率33.73%と
(4)3.0MPaの
な る 。 乾 き 度x=0.7227
飽 和 蒸 気 の 後 に,過
し タ ー ビ ン に 入 れ る 。 復 水 器 は0.01MPaで 〈解 答 〉 効 率35.65%と
(5)再
熱 器 を 設 け,500℃,3.OMPaま
あ る。 この時 の効 率 を計 算 せ よ。
な る 。 乾 き 度x=0.8778
燃 サ イ ク ル の タ ー ビ ン 入 り 口 の 温 度 は3MPa,500℃
ー ビ ン で0 .5MPaに タ ー ビ ン で0.01MPaに
で過 熱
な る ま で 膨 張 し,再
熱 器 に 送 ら れ500℃
で あ る。 高 圧 タ に 再 熱 さ れ,低
す る 。 こ の 発 電 機 の 効 率 を 計 算 せ よ 。 ま た 高 圧,低
ー ビ ン の 乾 き度 を 求 め よ 。
圧 圧 タ
〈解 答 〉 高 圧 タ ー ビ ン の 入 り 口 と 出 口 は 等 エ ン ト ロ ピ ー で 加 熱 状 態 。 こ の 値 に 近 い0.5MPaに
近 い 状 態 の 定 数 を 表 か ら 求 め る 。 こ の 状 態 で はP=0.5MPa,
T=240.7℃,h=2941.6〔kJ/㎏
〕,s=7.2345〔kJ/㎏
態 と し て 低 圧 タ ー ビ ン を 考 え る 。 効 率37.642%。 ン),x=0.982(低
(6)再
・K〕 と な る 。 こ れ を 初 期 状 乾 き 度x=1.0(高
圧 タ ー ビ ン)
生 サ イ ク ル で 運 転 さ れ て い る 発 電 プ ラ ン ト で,圧
500℃ の 過 熱 蒸 気 が タ ー ビ ン に 入 り,0.01MPaで 気 さ れ た0.5MPaの 〈解 答 〉
力3MPa,温
度
排 気 さ れ る 。 タ ー ビ ン か ら抽
蒸 気 で 運 転 さ れ る。 この時 の効 率 を計 算 せ よ。
高 圧 部 か ら抽 気 さ れ た 比 エ ン ト ロ ピ ー は 等 エ ン トロ ピ ー で あ り 同 じ で
あ る の で,0.5MPaで ㎏ 〕,υ=0.4656〔m3/㎏
比 エ ン トロ ピ ― に 近 い 値 はT=240・7℃,h=2941.6〔kJ/ 〕で あ る 。 ま た 高 圧 部 蒸 気 ― 抽 気 ― 低 圧 部 蒸 気 の 比 エ ン
ト ロ ピ ー は 同 じ で あ る 。 す る と低 圧 部 蒸 気 の 乾 き 度 は0.8778に 出 力 計 算 の た め 抽 気 の 割 合 を 計 算 す る と0.163に し てm1=0.163㎏
(7)こ
圧 タ ー ビ
な る。 タ ー ビ ン
な る 。 す な わ ち 1㎏ 蒸 気 に 対
と な る 。 効 率37.6%
れ らの 計 算 を通 じタ ー ビ ン の効 率 向 上 の 方 法 を整 理 せ よ。 超 臨 界 で運
転 され る と きそ の制 限 は何 か 。 〈解 答 〉 臨 界 圧 に す る と材 料 が 特 殊 な溶 解 を した り,金 属 が 熱 疲 労 をす る。 こ れ らを防 ぐた め 新 た な 開 発 が 必 要 で あ る。 む や み に温 度 を上 げ る こ と は現 実 的 で な い。
2.4燃 2.4.1
料 燃料概 観
燃 料 と し て は化 石 燃 料,ア
ル コ ー ル 燃 料 あ る い は核 燃 料 が 使 わ れ て い る。 将 来
は近 海 に存 在 す る メ タ ンハ イ ド レー ドな どが あ る 。化 石 燃 料 の う ち石 油,石 炭, LNGな
どが 広 く使 用 され て い る が,近 年 に な り燃 焼 に伴 っ て 出 て くる炭 酸 ガ ス
CO2が
地 球 温 暖 化 の 要 因 で あ る の で,で
き る だ けCO2が
発 生 しな い もの が 選 ば
れ る よ う に な っ て きた 。 しか し化 石 燃 料 で は石 炭 が 一 番 資 源 量 が 大 き く,現 段 階 で は石 炭 を燃 料 に す る火 力 発 電 も運 転 さ れ て い る し,中 国 で は ま だ数 多 く建 設 さ れ て い る。 石 炭 は燃 焼 後SOxが
発 生 す る の で,脱 硫 装 置 を用 い て これ ら の ガ ス
の 排 出 を抑 え る こ と も必 要 で あ る。 日本 で は ほ ぼ 完 全 に この よ う な ガ ス は取 り去 られ て い る が,世 界 的 に見 る と この よ う な設 備 を設 置 す る と建 設 費 が か か り,そ の結 果 電 気 代 が 高 くな る こ とが あ り,設 置 して い な い場 合 が 多 い 。 石 炭(coal)は さ れ た 結 果,炭 (peat coal),亜
太 古 の 時代,樹
木 や シ ダ の 堆積 層 が 地 中 に埋 没 し熱 と圧 力 に 曝
素 と炭 化 水 素 に 転 換 さ れ た もの で あ る。 ピー トモ ス あ る い は泥 炭 炭(lignite
coal),瀝
青 炭(bituminous
coal)あ
る い は高 級 な
無 煙 炭 の順 に良 質 とな る。 現 状 で は石 炭 も経 済 的 な評 価 が 行 わ れ,露 天 掘 の採 炭 で しか 採 算 が 合 わ ず,日 本 で は オ ー ス トラ リ ア か ら輸 入 され て い る。 ま たCO2 が 発 生 した り,燃 焼 後 の 排 出 ガ ス や 灰 の処 理 が 大 変 で あ るの で,国
の研 究 と して
石 炭 液 化 あ るい は ガ ス化 技術 の 開発 が 行 わ れ て い る。 無 煙 炭 は光 沢 が あ り,黒 い 硬 い 石 炭 で 工 業 用 に使 用 され る。 瀝 青 炭 は揮 発 成 分 も多 く,点 火 が 容 易 で あ る。 亜 炭 は重 要 度 の 低 い燃 料 と して 用 い られ るが,発 石 油(petroleum)は 黄,窒
原 油(crude
oi1)か ら精 製 さ れ た もの で あ る。 原 油 は硫
素,酸 素 あ る い は灰 分 を含 ん だ ガ ス を含 む炭 化 水 素 で あ り,パ ラ フ ィ ン系
(paraffin),ナ
フ テ ン 系(naphthalene)が
る。 原 油 は 分 留 が 行 わ れ,沸 (Diesel ing)な
熱 量 も小 さ く灰 分 が 多 い 。
あ り,産 地 に よ っ て そ の 組 成 が 異 な
点 の 低 い ほ う か ら ガ ソ リ ン(gasoline),軽
oil),灯 油(kerosene),重
油(heavy
油
oil)あ る い は潤 滑 油(lubricat
ど に な る。 わ が 国 で は 石 油 は ほ と ん ど産 出 さ れ ず 海 外 か ら輸 入 す る。 火
力 発 電 に は 重 油 が 用 い られ,石 炭 に 比 べ 完 全 燃 焼 しや す く,点 火,燃 焼 の 制 御 が 易 し く,排 分 の 処 理 量 は 少 な い。 LNG(liquefied
natural gas)は
天 然 ガ ス を-160℃
メ タ ン が 主 成 分 で硫 黄 分 は 含 ま な い。 した が っ てSOxの
で液 化 した も の で あ る。 発 生 が な く,水 素 が 多
い の で 炭 酸 ガ ス の 発 生 量 が 少 な く,よ っ て公 害 が 少 な い 。 また 着 火 温 度 が645℃ と高 く,燃 焼 す る に も空 気 との 混 合 割 合 が 高 い こ とな ど危 険性 が 少 な く有利 で あ
る。 ま た,水 素 は人 が発 生 させ て利 用 で き る こ と も あ り,燃 料 と し て研 究 が す す め られ て い る。
2.4.2燃
焼
火 力 発 電 で は2.4.1で 黄,水
素,メ
タ ン,プ
述 べ た 燃 料 が点 火 され 燃 焼 す る。燃 料 は水 分,炭 ロパ ンそ の 他 飽 和,不
素,硫
飽 和 の炭 化 水 素 で 構 成 され る。 燃 焼
過 程 で 燃 料 は空 気 と混 ぜ られ燃 焼 さ れ るが,こ れ らの過 程 は燃 焼 反 応 と し て表 せ る 。 1㎏ モ ル の 炭 素 と 1㎏ モ ル の 酸 素 が 反 応 して 1㎏ モ ル の 炭 酸 ガ ス が 発 生 す る。 酸 素 は空 気 と して 供 給 され るが,空
気 の 場 合 約21%の
酸 素 と79%の
窒素
で あ る。 した が っ て メ タ ン 1モ ル を燃 焼 す る とき,次 式 で 表 せ る。
(2.91) この よ うに燃 料 を完 全 に 燃焼 させ る最 小 の空 気 量 を理 論燃 焼 空 気 と い う。 実 際 に は 燃 料 が 空 気 と完 全 に混 入 し な い の で 過 剰 に空 気 を混 入 す る。 理 論 空 気 量 に対 して 過 剰 空 気 量 の比 を空 気 比 とい う。 また 蒸 気 反 応 式 を み て も燃 料 に よ っ て 理 論 空 気 量 は異 な る。 反 応 系 の熱 力学 第 1法 則 は次 の よ う に表 せ る。
(2.92) これ らの計 算 で は温 度25℃,圧
力O.1MPaの
す べ て の 元 素 の エ ン タ ル ピー を
基 準 に して い る。 上 記 の 式 の左 辺 の 第 2項 は反 応 物 の エ ンタ ル ピー,右 項 は生 成 物 の エ ン タル ピー で あ る 。 またWcは
辺 の第 2
外 部 に され た 仕 事 で あ る。
メ タ ンの反 応 につ い て 書 く と次 の よ う に な る。Wcの
仕 事 は行 わ れ な い の で
(2.93) メ タ ン の 生 成 の エ ン タ ル ピ ー はnihiで H20は
あ り,符
そ れ ぞ れ 生 成 エ ン タ ル ピ ー の 和 で あ り,そ
ま た25℃,0.1MPaを 態 に す る と き は,理
基 準 と し て い る が,こ
号 は マ イ ナ ス で あ る 。CO2と れ ぞ れ 符 号 は マ イ ナ ス で あ る。
れ を 例 え ば3.5MPa,300℃
想 気 体 と し て 定 圧 比 熱 か ら エ ン タ ル ピ ー を 出 す 方 法,あ
は数 値 表 か ら求 め る方 法 が 用 い られ て い る。
の状 るい
2.5
ボイラー,復 水器,給 水加熱 器な ど
2.5.1
ボイラー
ボ イ ラ ー は燃 料 を炊 き蒸 気 を作 りタ ー ビ ンに 送 り込 む装 置 で あ り,多 数 の水 管 が使 わ れ て い る。 これ は効 率 よ く水 を蒸 気 に変 え るた め で,大 形 ボ イ ラ ー は例 外 な く水 管 ボ イ ラ ー が 採 用 され て い る。 ボ イ ラ ー の 例 を図2.16に
示 す が,上 下 に
汽 水 ドラ ム で 構 成 され,そ れ を水 管 で 導 い て い る。 ボ イ ラ ー は炉(furnace),ボ heater),節
炭 器(fuel
イ ラー 本 体 給 水 ポ ン プ,空 気 予 熱 器(air
economizer),再
熱 器(reheater)な
pre
どで 構 成 され る。 ま
た バ ー ナ ー,フ ァ ン,煙 突,灰 処 理 装 置,石 炭 で は粉 砕 器 や ス トッカー な どが補 助 設 備 と し て あ る。 また,日 本 で は集 塵 器 や 脱 硫 装 置 も例 外 な く設 置 され て い る。 また ボ イ ラ ー に は 自然 循 環 ボ イ ラ ー,強
制 循 環 ボ イ ラ ー と貫 流 ボ イ ラ ー が あ
る。 図2.17に
自然 循 環 ボ イ ラ ー を示 す 。 蒸 発 管 と降 水 管 か ら成 り立 つ が,蒸 発 管
で 降水 管 に お りて きた水 が加 熱 され た蒸 気 に な り汽 水 ドラ ム に 入 る。 温 度 が 上 昇 す る と下 部 の 飽 和 密 度 と汽 水 ドラ ム の 蒸 気 の 密 度 差 が な くな り還 流 し に く くな る。 した が っ て 圧 力 を 高 くで き な い欠 点 が あ る。
図2.16
水 管 ボ イ ラー
(1:給 水 ポ ン プ 7:二 次加 熱 器 図2.17
2:節 炭 器
3:汽 水 ドラ ム
自然循 環 ボイ ラー
図2.18に
4:循 環 ポ ン プ
5:蒸 発 管
6:一 次 加 熱 器
8:再 熱 器) 図2.18
強制 循 環 ボイ ラ ー
図2.19
貫 流 ボ イラ ー
強 制 循 環 ボ イ ラー を 示 す。 自然 循 環 ボ イ ラ ー の 欠 点 を補 う た め 降 管
に循 環 ポ ン プ を設 けて あ り,強 制 的 に ボ イ ラー 水 を循 環 させ る。 水 の 流 れ が 速 く な る の で 薄 肉 の管 が 使 用 で き る。 図2.19に
低 流 ボ イ ラ ー を示 す 。 さ ら に圧 力 が 高 くな り,臨 界 圧 や 超 臨 界 圧 に
な る と,ボ イ ラ ー の 中 で水 は 流 れ,汽 水 ドラム も必 要 な くな る。 さ ら に バ ー ナ ー は 燃 料 に よ っ て 変 わ り,石 炭 燃 焼 ボ イ ラ ー,重 油 燃 焼 ボ イ ラ ー ,石 炭 重 油 混 焼 ボ イ ラー,ガ
ス 燃 焼 ボ イ ラー な ど に分 類 で き,バ ー ナ ー の構 造
もそ れ に よ っ て 異 な る。
2.5.2
復水器
復 水 器 は熱 力 学 的 に火 力 発 電 の シ ス テ ム の低 圧 熱 源 とし て利 用 され る。 シ ス テ ム か ら放 出 さ れ るエ ネ ル ギ ー を吸 収 し,タ ー ビ ンか ら放 出 さ れ る蒸 気 を凝 縮 し, 飽 和 水 と して水 を再 利 用 す る 。 タ ー ビ ンの 出 力 は,低 圧 の凝 縮 水 の飽 和 温 度 に対 応 す る圧 力 が 低 い ほ ど大 き くな り,大 変 重 要 な機 器 で あ る。 各 種 ポ ンプ と冷 却 装 置 で 構 成 され る。 日本 の 例 だ と火 力 発 電 所 は海 岸 に設 置 され る の で,冷 却 水 は海 水 で あ る。 この
図2.20 復 水 器 の例[『電 気工学 ハ ン ドブ ック』 よ り電気学会 の許諾 を得て複製]
海 水 の 温 度 で蒸 気 は冷 却 され る の で,温 度 が 低 い に越 し た こ と は な い。 で き るだ け温 度 の低 い海 水 で 冷 却 され る。 ま た貝 類 の 繁 殖 は冷 却 効 果 を妨 げ る の で定 期 的 に 除 去 しな けれ ば な らな い 。 さ らに蒸 気 が冷 却 さ れ る と飽 和 水 に な るが,そ
の中
に 含 まれ る不 純 物 の 除 去 あ るい は空 気 な どの ガ ス も除 去 し な け れ ばな らな い。 そ れ らの た め に,各 工 夫 が 施 さ れ て い る。 また 海 水 や 河 川 水 が 得 られ な い と き は,ク ー リン グ タ ワー に よ っ て 冷 却 水 を循 環 す る必 要 が あ る。 冷 却 水 が 蒸 気 と直 接 触 れ る 湿 式 と乾 式 が あ る が,湿 式 の 場 合,低
温 時 に可 視 白煙 が 発 生 す る こ とが あ る。
2.5.3
給 水加熱器
タ ー ビ ンか ら抽 気 され た蒸 気 は管 の外 側 で 凝 縮 す る こ とに よ って 給 水 が管 の 中 を流 れ,熱
が 伝 達 され る。 タ ー ビ ンか ら抽 気 され た 蒸 気 が 給 水 加 熱 器 の 給 水 管 の
外 側 で 凝 縮 した 水 を凝 縮 水 とい うが,こ
の水 は 給 水 管 に圧 入 さ れ るか トラ ップ を
通 して 低 圧 の給 水 加 熱 器 に送 られ る。 この 様 子 を図2.21に は多 くの 抽 気 段 が 利 用 され て い る が,タ る。
示 す。 火 力 発 電 所 で
ー ビ ン の効 率 は これ に よ っ て 改 善 され
(a)実
(b)高
物例
圧給 水 加 熱 器 の使 用 例
図2.21 高 圧 給 水加 熱 器[『電気工学 ハ ンドブ ック』 よ り電気 学会の許諾 を得て複製]
2.5.4
環境 対策設備
排 煙 の環 境 対 策 設 備 と して,コ
ロナ 放 電 に よ っ て排 煙 の 固 形 物 に電 荷 を与 え,
電 圧 を 印加 し て 集 塵 す る電 気 集 塵 装 置 が あ る。0.1μm以
下 の 固形 物 が 取 れ る の
で大 変 多 く使 用 さ れ て い る。 また 排 煙 に は硫 黄 分 が 含 まれ る た め,排 煙 脱 硫 装 置 も付 け られ て い る。 湿 式 石 灰 石-石 こ う法 が 用 い られ て い る。 石 灰 石 や 水 酸 化 マ
グ ネ シウ ム の アル カ リ材 で の ス ラ リお よび 水溶 液 で排 煙 中 の硫 黄 成 分 を 除去 し, 石 こ う な ど を作 る。 石 こ う は セ メ ン トや 石 こ う ボ ー ド に利 用 さ れ る。 お お よそ 90∼95%の
硫 黄 分 を 取 り除 くこ とが で き る。
またNOxの
排 出 も問 題 に な っ て い る 。NOxは
高 温 で 燃 焼 す る と発 生 し易 い こ
とな どか ら,燃 焼 を制 御 した り,排 煙 中 のNOxに
ア ンモ ニ ア を作 用 させ る 方 法
な どが 開発 され て い る。 さ らに 石 炭 燃 焼 で は灰 処 理 装 置 が 必 要 で あ り,埋 め立 て 用 土 と し て利 用 され て い る。 火 力 発 電 所 で 高 い構 造 物 は煙 突 で あ る。 排 ガ ス の拡 散 を 目的 に高 い煙 突 が 採 用 され て い る。 また 煙 突 を集 合 形 煙 突 に す るな ど も行 わ れ て い る。
2.5.5
蒸気 ター ビン
イ ギ リ ス に お い て,蒸
気 の 力 で ピ ス ト ン を 往 復 運 動 さ せ る こ と は,1700年
か ら行 わ れ て い た 。19世
紀 後 半 に な る と蒸 気 機 関 の 改 良 が 行 わ れ て,回
頃
転 力 を
利 用 して蒸 気 機 関 が で き る よ う に な っ た。 タ ー ビ ン で は こ の よ う な 構 造 が 多 段 に で き る よ う に な り,大 で き る よ う に な っ た 。 衝 動 タ ー ビ ン(impulse で 蒸 気 の 圧 力 を 下 げ,蒸
turbine)で
出 力 の タ ー ビ ンが
は ノ ズ ル(nozzle)
気 の 流 速 を 加 速 し て バ ケ ッ ト(bucket)に
吹 きつ け る。
蒸 気 の圧 力 の 変 化 は な い 。 反 動 タ ー ビ ン(reaction (stationary 2.22に
vane)を
turbine)は,可
動 羽 根(moving
vane)が
固定 羽根
通 過 す る と き圧 力 は 低 下 す る 。 タ ー ビ ン の 羽 根 の 構 造 を 図
示す。
両 方 を 併 用 す る と混 式 タ ー ビ ン(combination (1)衝
turbine)と
撃 タ ー ビ ン の 蒸 気 の 速 度 と圧 力 の 関 係 を 図2.23に
な る。 示 す。 ノズル の中
で 膨 張 し高 速 で 羽 根 に 吹 き つ け る 。 し た が っ て 一 段 で 羽 根 を 回 す た め,回 く な り小 形 タ ー ビ ン に 向 く。 ま た 複 数 の 段 数 で 速 度 を 下 げ,圧 造 も考 案 さ れ て,カ
転 が速
力 を一 定 に保 つ構
ー チ ス タ ー ビ ン と よ ば れ て い る(図2.24)。
蒸 気 の 入 射 角 が ゼ ロ の 時 が 最 適 で あ る が,図
に 示 す よ う に あ る程 度 の 入 射 角 度
図2.22
ター ビンの 羽根[写 真提供:株 式会社 東 芝]
図2.23 衝 撃 タ ー ビ ンの 圧力 お よび速 度
図2.24
カー チ ス ター ビ ンの例
θ が必 要 で あ り,そ の た め の効 率 の 低 下 はCOS2θ に比 例 す る。 これ に対 し て可 動 羽 根 の仕 事 率 の比 を段 効 率 とよ び,η △Hで 表 す 。 η△H=Wp,/△H=Wp/m△h(m
(2)反
は 段 数)
(2.94)
動 タ ー ビ ン は蒸 気 の膨 張 を回 転 羽 根 の 中 で 行 わせ て,蒸 気 の 反 動 力 を
利 用 し て い る。 図2.25に
は 蒸 気 圧 力 と速 度 の 関 係 を示 し て あ る。 反 動 タ ー ビ ン
で は 固 定 羽 根 と可 動 羽 根 の 効 率 が 全 体 の 効 率 に影 響 す る。 また 蒸 気 タ ー ビ ンの 効 率 は タ ー ビ ン の 出力 をP〔kW〕,使
用 蒸 気 量 をz〔㎏/h〕,
図2.25 反 動 ター ビン の圧 力 と速 度
タ ー ビ ン 入 り 口 の 比 エ ン タ ル ピ ー をh1〔kJ/㎏
〕,タ ー ビ ン 出 口 の エ ン タ ル ピ ー を
h2と す る と効 率 は,
と な り,最 ま たh2の
新 の 大 容 量 機 で は85∼94%,中
容 量 で は70∼80%で
代 わ り に 復 水 の 比 エ ン タ ル ピ ーh3を
ある。
と る と,蒸
気 タ ー ビ ン の熱 効 率
数 の 多 い タ ー ビ ン で は,衝
動 と反 動 と を組 合 わ
とい う。 (3)混
式 タ ー ビ ン と し て,段
せ た も の で大 出 力 ター ビ ンが 実 現 して い る。 蒸 気 タ ー ビ ン は連 結 の 方 式 で分 類 さ れ て い る 。 図2.26に
示 す よ う に軸 を一 直 線 に 配 置 した もの を タ ン デ ム コ ンパ ウ
ン ド タ ー ビ ン(tandem パ ウ ン ドタ ー ビ ン(cross
compound compound
turbine),並 turbine)と
列 に 配 置 した も の を ク ロ ス コ ン い う。
(a)タ ン デ ム 形
(b)ク 図2.26
2.6
ロ ス コ ン パ ウ ン ド形
タ ン デ ム タ ー ビ ン と ク ロ ス コ ンパ ウ ン ドタ ー ビ ン
発 電機
この 節 で は火 力 用発 電 機 の 説 明 を行 う。 各 種 原 動 機 に は,そ れ に 合 っ た発 電機 を接 続 す る の で,こ
2.6.1
こ で ま と めて 解 説 す る。
火力用発電機
こ こで は タ ー ビ ン に直 結 され る交 流 同 期 発 電 機 に つ い て 説 明 す る。 同 期 発 電機 は定 格 回 転 速 度N〔rpm〕,極
数 pお よ び発 生 す る周 波 数f〔Hz〕 との 間 に は,
の 関 係 が あ る 。 し た が っ て60Hzと50Hz,2 rpmの 図2.27に
間 に あ る 。 火 力 で は 2極,原
極 と 4極 が あ る の で1500∼3600
子 力 で は 4極 が 一 般 的 に 用 い ら れ る 。 ま た
ロ ー タ 挿 入 中 の 発 電 機 を 示 す 。 ロ ー タ は 2極 構 造 で 固 定 子 に 挿 入 さ れ
図2.27
ロ ー タ 挿 入 時 の タ ー ビ ン 発 電 機[IEEE“Power
Engineering
Review”,July
2002よ
り許 諾
を得 て 転 写]
て い る。 リア ク タ ン ス は
で あ る。
最 大 の 容 量 は1120∼1300MVAで
あ る。
また 電 機 子 の 耐 熱 ク ラ ス は冷 却 媒 体 で 決 ま る が,最 大 で は155℃ の もの まで あ る。 これ らは水 素 冷 却,水
冷 却 あ る い は 空 気 冷 却 な どに よっ て 決 ま る。 最 近 で は
空 気 冷 却 の 容 量 が 大 き くな り,400MVAの 気 冷 却 ・鉄 心 水 冷 却 で は200MVA/200kV(パ 却 ・電 機 子 水 冷 却 で は1700MVAが
もの まで 空 気 冷 却 で で き る。 また 空 ワ ー ホ ー マ ー 発 電 機),水
素冷
実 現 し て い る。 発 電 機 の容 量 増 は 図2.28に
示 す コ イ ル の冷 却 と絶 縁 物 の 熱伝 達 率 の 向上 が 大 切 で あ る。 この 例 で は 中空 導体 を 用 い て 冷 却 を考 えた 構 造 に な っ て い る。 また 電 機 子 の 耐 電 圧 は定 格 電 圧 〔kV〕 で 決 ま り,2・E+(0.5∼3)kVで
あ る。 ま た 導 体 冷 却 の た め 中 空 導 体 や ダ ク トを
採 用 し コイ ル を直 接 水 素 や水 で冷 却 し て冷 却 性 能 を上 げ た り,導 体 と鉄 心 間 の対 地 絶 縁 物 の 熱 伝 導 を改 善 し冷 却 強 化 す る こ と に よ り,発 電 機 の 小 型 化 や 容 量 増 大 に 役 立 て て い る。
図2.28
2.6.2
コ イル の構 造
原子力用発 電機
原 子 炉 で発 生 す る蒸 気 は火 力 発 電 と比 べ る と比 較 的 低 圧 で あ る こ と,湿 分 が 多 い こ と な ど相 違 点 が あ る。 した が っ て 蒸 気 量 の 多 い こ とが 要 求 され,大 面 積 が 必 要 とさ れ る。 そ の た め低 圧 最 終 段 の 羽 根 は50イ
きな 排 気
ン チ以 上 の大 き な も の
を使 用 す る。 また 湿 分 が 羽 根 を侵 食 す るた め,羽 根 の 回転 の ス ピー ド も落 とす 必 要 が あ る こ とな どで1500か
ら1800rpmに
して,4 極 の 発 電 機 を用 い て い る。 こ
の 発 電機 は火 力 用 と比 べ る と回転 子 径 が 約1.5倍,重
量 が 約 2倍 に な る が,回 転
数 が 低 い の で 回転 子 軸 材 や 楔 あ る い は 絶 縁 物 に か か る応 力 が少 な く,大 容 量 化 が 可 能 で あ る。 世 界 で は3000MVA程
2.6.3
度 の 発 電 機 が 可 能 と言 わ れ て い る 。
水 車発 電 機
水 の 位 置 エ ネ ル ギ ー を電 気 に 変 え る よ う,水 車 に 接 続 さ れ て い る 発 電 機 で あ る。 ダ ム 式 発 電 所 が 一 般 的 で あ るが,小 水 力 発 電 の よ う に極 め て小 さい 発 電 所 も 最 近 は 多 く利 用 さ れ て い る。 また 近 年 で は,原 子 力 発 電 が 出力 一 定 運 転 さ れ るた め,需 要 の 少 な くな る深 夜 電 力 を利 用 して ダ ム に水 を くみ 上 げ,昼 度 利 用 す る揚 水 発 電 が 多 くな っ て き た。 国 内 は昭 和30年 っ た が,エ
に そ の水 を再
代 まで 水 力 発 電 が 多 か
ネ ル ギ ー 需 要 が 増 加 し火 力 ・原 子 力 発 電 が 主 流 に な っ て きた 。 水 車 発
電 機 の 定格 回 転 速 度 は水 車 に よ っ て 決 ま り,1200か
ら60rpm,可
(6か ら100極)と
示 す よ うに,発 電 機 の 径 は
幅 広 く採 用 され て い る。 図2.29に
変速揚 水発電
当 然 大 き くな り,タ ー ビ ン発 電 機 よ り大 きい 。 高 落 差 で はペ ル トン水 車,中 落 差 で は フ ラ ン シ ス水 車,低 落 差 で は カ プ ラ ン水 車 が 使 わ れ るた め で あ る。 発 電 機 は 水 車 とフ ラ ン ジ構 造 で 接 続 され る。 水 車 発 電 機 は,負 荷 が 変 動 す る とき周 波 数 維 持 の た め に大 きな はず み車 効 果 を持 っ て い る こ とが 必 要 で あ る。 また 水 車 が暴 走 す る とき,あ
る程 度 の 加 速 度 に耐 え る構 造 を持 つ こ と,あ る い は水 車 お よ び発 電
機 の 回転 部 重 量 に 耐 え るス ラス ト軸 受 を もっ て い な けれ ば な らな い 。 水 車 発 電 機 は ス ラ ス ト軸 受 け を回 転 子 の下 に配 置 した立 軸 形 が 用 い られ る。 世 界 的 に見 る と 最 大 容 量 は840MVAで
あ る が,極
く小 さ い容 量 か ら500MVA程
度 まで あ り,
回 転 速 度 も ま ち まち で あ る。 固 定 子 は空 気 冷 却 が ほ とん どで あ り,稀 に水 冷 却 方 式 が 採 用 され る。
図2.29 水 車発 電 機 の例[写 真提供:株 式会社 東芝]
2.6.4
可変 速揚水発 電
ポ ン プ水 車 の 揚 程 と損 失 水 頭 の 差 と,水 車 の落 差 の損 失 水 頭 の そ れ ぞれ の和 は す で に述 べ た よ うに な るた め,一 つ の ラ ン ナ ー で 共 に最 適 特 性 を持 た せ る こ とは 困 難 で あ る。 こ の た め可 変 速 にす る必 要 が あ る。 ま た原 子 力 がベ ー ス ロ ー ドに な る と,周 波 数 調 整 を き め細 か くす るた め に,調 整 可 能 に した り,揚 水 発 電 で調 整
可 能 に す る必 要 が 生 じて きた 。 こ の た め に も可 変 速 が 必 要 で あ る。 国 内 で は原 子 力 発 電 が 主 力 に な り,原 子 力 発 電 は 出 力 が 変 更 し に くい た め,昼 間 の 高 負 荷 時 に,瞬 時 変 動 電 力 を可 変 速 揚 水 発 電 に頼 る こ とに な っ て い る。 また 夜 間 の軽 負 荷 時 に は,火 力 発 電 が 夜 間 に は運 転 を取 りや め て 周 波 数 調 整 容 量 が不 足 す るた め, 可 変 速 揚 水 発 電 を用 い る。 この よ うな と きは,誘 導 電 動 機 の 2次 励 磁 に よ る速 度 制 御 と同 じ特 性 を持 たせ る こ とが 必 要 で あ る。 図2.30に
示 す よ う に,発 電 電 動
機 の 回転 子 を突 極 形 か ら円 筒 巻 線 形 に 変 更 し,か つ 高 電 圧 を 印 加 す る よ う に す る。 す な わ ち 回 転 周 波 数 と励 磁 周 波 数 を共 に可 変 とし,そ の和 を電 源 周 波 数 と一 致 さ せ る こ とに よ っ て実 現 で き る。 この 方 法 はGTOな
どの パ ワー エ レ ク トロ ニ
ク ス を利 用 し,可 変 周 波 数 を作 り運 転 を可 能 に して い る。 揚 水 発 電 時 に 周 波 数 調 整 が で き,ポ
ンプ と水 車 の 回転 速 度 が 最適 化 され,同 期
化 力 が 増 し電 力 動 揺 の収 束 が 早 く,始 動 装 置 が 不 要 とな る な ど特 長 の あ る発 電 電 動 機 が 実 現 で き る。 他 方,回 転 子 に高 電 圧 大 電 流 を通 電 す る必 要 が あ る。 現 在 で は 国 内 の 葛 野 川 発 電 所 に500rpm-1±4%発 圧18kVの
電 機475MVA,電
動 機460MW,電
設 備 な どが あ り,今 後 ます ます 活 用 され る と考 え られ る。
図2.30 可 変 速揚 水 発 電 の シ ステ ム 図構 成
2.6.5
永久磁石 発電機
従 来 の サ マ リ ウ ム(Sm)系
に対 して 高 性 能 ・低 価 格 で あ る ネ オ ジ ム(Nd)系
の 磁 石 が 開発 され て きた 。 また耐 熱性 も改 善 さ れ て きた た め,こ れ を発 電 機 の回 転 子 に取 り付 けた 永 久 磁 石 発 電 機 や電 動 機 に利 用 され て い る 。 永 久 磁 石 電 動 機 は 応 用 範 囲 が 広 くよ く知 られ て い るが,ギ ヤ レ ス風 力 発 電 機 や マ イ ク ロ ガ ス ター ビ ン発 電 機 に も利 用 さ れ て い る。 高 速 度 で 運 転 さ れ るマ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ンで は, 100,000rpm-1以
2.7 2.7.1
上 の もの まで あ る。
コンバ イ ン ドサ イク ル発電 システム ガ ス タ ー ビン 発 電(シ
ン プ ル サ イ ク ル 発 電)
蒸 気 ター ビ ン は蒸 気 を 回 転 エ ネ ル ギ ー に変 換 す る装 置 で あ る 。 燃 料 を使 っ て, ガ ス の 熱 エ ネ ル ギ ー を機 械 力 に変 え る装 置 が ガ ス タ ー ビ ン で あ る。 ガ ス タ ー ビ ン の 熱 効 率 は30∼35%と
大 変 低 い に もか か わ らず,建 設 コ ス トが 安 く,起 動 停 止
時 間 が 短 く負 荷 応 答 特 性 が よ い。 また 天 然 ガ ス を燃 料 とす る の でCO2の
発生 が
少 な い こ とな どか ら,急 速 に普 及 しつ つ あ る。 また燃 焼 温 度 を 高 くす る と効 率 が 上 昇 す るの で,羽
根 の耐 熱 材 料 や 冷 却 技術 の 進 歩 と と も に高 効 率 化 と大 容 量 化 が
計 られ て い る。 ガ ス タ ー ビ ン入 口温 度 も1300∼1450℃,容 上 昇 した 。 また 排 ガ ス は500∼600℃
量 で30OMW機
まで
と依 然 と して 上 質 の 熱 源 と し て 利 用 で き る
の で,最 近 は コ ンバ イ ン ドサ イ クル 発 電 と して 活 用 され て い る。 ガ ス タ ー ビ ン サ イ ク ル は 図2.31(a)に
示 す よ う に 空 気 圧 縮 機,燃
タ ー ビ ンか ら な る 。 空 気 圧 縮 機 で で き た圧 縮 ガ ス の約1/3を もに,残
りの2/3の
焼器 とガス
燃 焼 器 に入 れ る と と
圧 縮 空 気 をガ ス タ ー ビ ン に導 き冷 却 に使 用 され る。 燃 焼 器 の
中 で は天 然 ガ ス が 燃 料 と して 約1800℃ で 燃 や され,高 ビ ン に導 くた め に1100∼1450℃
温 ガ ス と な り,ガ ス タ ー
まで 冷 却 し て い る。 図2.31(b)に
ガス ター ビン
の サ イ ク ル 図 を示 す 。 また 図3.32に
ガ ス タ ー ビ ン の例 を 示 す 。 こ れ は 図2.6で
サ イ クル で あ る。
解 い た よ う にJoule
(b)
(a)
図2.31
図2.32
ガ ス タ ー ビ ン サ イ ク ル とPV図
ガ ス タ ー ビ ン の 例[European
Gas
Turbines社
製 の 例]
ガ ス タ ー ビ ン は本 来 航 空 機 用 に広 く開発 され て き た が,地 上 用 に改 良 さ れ普 及 して き た もの で あ る。 蒸 気 タ ー ビ ン の よ う に本 来 密 閉 され た サ イ クル の 中 を循 環 し相 変 化 は し な い が,ガ
ス タ ー ビ ン は ボ イ ラー の よ う に燃 焼 器 で 熱 供 給 を 受 け,
そ れ が タ ー ビ ン に 吹 き つ け られ て動 力 を 得 て い る。 また 排 ガ ス は大 気 に放 出 され る。 ま た大 気 か ら空 気 を 吸 い 込 み,圧 縮 機 で 圧 縮 した ガ ス を燃 焼 器 で 燃 焼 す る。 ガ ス タ ー ビ ン で は約50%が
圧 縮 機 の 駆 動 力 に使 わ れ,約50%が
出 力 と し て発 電
機 や ポ ンプ,圧 縮 機 の駆 動 な ど に利 用 さ れ る。 こ こ で圧 縮 と膨 張 は可 逆 で 断 熱 的,ま 口 で は変 化 せ ず,か
つ損 失 が な い,さ
な い な どの仮 定 を す る。
た 作 動 ガ ス の 運 動 エ ネ ル ギ ー は 出 口 と入 ら に作 動 ガ ス は 同 じ圧 力 比 熱 を持 ち 変化 し
こ の ガ ス タ ー ビ ン サ イ ク ル はJouleサ (2.52)式
イ クル で 表 さ れ る。
か ら
P2/P1=rと
お い て
(2.95) 以 上 か らガ ス ター ビ ンの 出 力 向 上 策 と して, ①
タ ー ビ ンや 圧 縮 機 の 効 率 向 上
②
ガ ス ター ビ ン入 口 温 度T3の
③
圧 力比 rの 向 上
④T4,T1の
温度 の低下
な どが 考 え られ る((2.52)式 そ の他,ガ
上昇
参 照)。
ス ター ビ ンの効 率 向上 に は蒸 気 サ イ クル と同 じ に再 生 サ イ クル,再
熱 サ イ ク ル な どが 考 え られ る。 こ の技 術 を完 成 す る た め に は,大 変 大 き な 開 発 力 が 必 要 で あ る。 例 え ば高 温 の ガ ス を扱 うた め,耐 熱 材 料 を必 要 とす る燃 焼 器 や ター ビ ンの羽 根 に は高 温 耐 熱 材 料 が 貼 っ て あ り,そ れ が 時 間 と共 に劣 化 して し ま い保 守 作 業 をす る必 要 が あ る。 また 構 造 も含 め て 大 変 な技 術 で あ る。 燃 焼 器 や タ ー ビ ンの羽 根 部 分 は,冷 却 の た め 内 部 か ら圧 縮 空 気 を噴 出 し冷 却 す る構 造 に な っ て お り,風 を噴 出 しな が ら回 っ て い る羽 根 車 を連 想 させ る(図2.33)。
(b)タ ー ビ ン の 羽 根
(a)燃焼 部 の 内 部 図2.33
ガ ス ター ビ ンの冷 却
コ ンプ レ ッサ の圧 縮 空 気 を各 所 か ら噴 きつ け部 品 を冷 却 す る。 最 近 の ガ ス タ ー ビ ン で は圧 縮 空 気 の 代 わ りに 加 熱 し た蒸 気 が 採 用 され,よ
り温 度 の 高 い ガ ス タ ー
ビ ン が実 現 で き て い る。
2.7.2
コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 発 電
ガ ス タ ー ビ ンの 排 出 ガ ス を利 用 す るた め,そ の後 に蒸 気 発 生 装 置 を配 置 した も の を コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 発 電 とい う。 ガ ス タ ー ビ ンの 排 ガ ス は温 度 が 高 く蒸 気 発 生 の ボ イ ラ ー に 容 易 に使 用 で き る。 ガ ス タ ー ビ ン発 電 の 特 長 を前 に述 べ た が, 建 設 が容 易 で 安 価 で あ る。 また 炭 酸 ガ ス の 排 出 やSOxやNOxの
発 生 も少 な く,
ま さ に最 近 の 発 電 所 に向 い て い る。 ガ ス タ ー ビ ン発 電 装 置 に従 来 の 蒸 気 発 電 機 を 組 み 合 わ せ る コ ンバ イ ン ドサ イ ク ル 発 電 は,効 率 が50%を 善 の余 地 が あ る。 図2.34に
超 え て お り,ま だ 改
コ ンバ イ ン ドサ イ クル 発 電 の概 念 図 を示 す が,特
に
変 わ った 発 電 装 置 で は な い。 図 に示 す よ う に コ ンバ イ ドサ イ クル 発 電 で はエ ネ ル ギ ー の大 部 分 が 回 収 で き,効 率 が上 昇 す る。 しか し通 常 の火 力 発 電 装 置 は効 率 が 約40%で
あ り,10%の
効 率 改 善 は ま さ に 画 期 的 で あ る。 世 界 で は現 在 こ の 方 式
が採 用 され て い る。 これ まで 理 想 的 な 熱 サ イ クル を考 え て き た の で,図2.35に
(a)コ ン バ イ ン ドサ イ ク ル 発 電 プ ラ ン ト
図2.34
示 すT-s図
が不
(b)新 鋭 大 型 蒸 気 発電 プ ラ ン ト
コ ンバ イ ン ドサ イ クル 発 電 と蒸 気 発電 の効 率 の比 較 図
図2.35 コ ンバ イ ン ドサ イ クル の発 電 の概 念 図 と コ ンバ イ ン ドサ イ クル発 電 シス テ ムのT-s図
図2.36 不 可逆 が 存 在 す る ときのT-s図 理 想的(s)な 変化 が不 可 逆(a)に な る
思 議 に 見 え る 。 こ れ は 変 化 が 可 逆 で あ る と仮 定 し た た め で あ る。 図2.36は 逆 仮 定 を想 定 した と きのT-s図
不可
を 示 し て あ る。 比 エ ン トロ ピー は解 説 した よ う
に 常 に増 大 しお り,実 際 の 断 熱 変 化 で は増 大 す る。 これ は種 々 の損 失 に伴 う変 化 で あ る。 この よ うな 組 み合 わ せ の 発 電 方式 を トッパ ー とよ ん で い る。 通 常 の 発 電 機 関 の 上 に 同 じ よ う な発 電 装 置 を接 続 す る 方 式 で あ る。 同 じ例 でMHD発
電 を蒸 気 火
力 発 電 装 置 の 上 位 に配 置 す る こ と も考 え られ,こ れ も トッパ ー の一 種 で あ る。 コ
ンバ イ ン ドサ イ クル 発 電 シ ス テ ム の 効 率 は1300℃ で50%,1500℃
で53%に
達す
る とい わ れ て お り,今 後 の 主 力 発 電 装 置 の 一 つ で あ る 。 しか し同 時 に 低NOx化 が 要 求 され て お り,ガ ス 温 度 を高 くす る こ と と,燃 焼 温 度 を下 げ低NOx化
を図
る こ と とが 矛 盾 して お り,開 発 が 要 求 され る事 項 で あ る。
2.8
マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン発 電
1990年 代 か ら大 き な話 題 を よん で い る発 電 装 置 が あ る。 タ ー ボ チ ャ ー ジ ャ ー の 技 術 を 利 用 して,65,000か で あ る(図2.37)。 る 。 病 院,ホ
ら120,000rpm-1で
出力 は20∼200kWで
運転 す るガ スター ビン発電 機
あ るが,発 電 効 率 は20∼30%程
度であ
テ ル や コ ン ビニ エ ン ス ス トア で利 用 され る よ うな,小 規 模 な 分 散 発
電 装 置 で あ る。 しか も,市 街 地 で 使 用 され る と廃 熱 利 用 が で き,そ の 結 果,総 熱 効 率 は70%以
合
上 も可 能 で あ る とい わ れ て い る。 適 用 が 容 易 な た め,従 来 の 発
電 シス テ ム と並 存 す る可 能 性 が あ る。 ガ ス タ ー ビ ン は遠 心 圧 縮 機 1段 と遠 心 タ ー ビ ン 1段 燃 焼 器 か ら構 成 さ れ,極 温 度 は800∼900℃
め て コ ンパ ク トで あ る。 圧 力 比 は3∼5,燃
焼
で あ る。 また 高 速 で 運 転 す る た め軸 受 け は 空 気 軸 受 け で あ り,
発 電 機 は発 電 機 の 項 で 説 明 した 永 久 磁 石 タイ プ で あ る。
図2.37 マ イ ク ロガ ス ター ビ ンの例[右 写真 提供:株 式会社 明電舎]
2.9
デ ィーゼル発 電
デ ィー ゼ ル 機 関 は重 油 で 運 転 で き る往 復 運 動 で,ピ
ス トン とシ リ ンダ で 構 成 さ
れ て い る。 空 気 を 吸入 圧 縮 し,圧 縮 の 終 りに重 油 を噴 霧 す る。 熱 効 率 は熱 力 学 で 解 い て あ るが,圧 率 は30∼38%で
縮 圧 力 が 高 い ほ ど熱 効 率 が 高 くな る。 圧 力 は3∼4気 あ る。 図2.38に
示 す よ うに 給 気 工 程,圧
縮 工 程,爆
圧 で熱効
発 工 程,排
気 工 程 か らな る。 船 舶 に使 わ れ るケ ー スが 多 い が 地 上 で も多 用 さ れ る。廃 熱 回 収 を行 う こ とに よ り,総 合 熱 効 率 は70%以
上 に な る。 始 動 停 止 が 容 易,燃
料 が取
り扱 い 易 い,建 設 工 期 が 短 い,熱 効 率 が 高 い な どの 特 長 が あ る。 往 復 運 動 な ので トル ク に脈 動 が あ り,騒 音 が あ るな ど問 題 も多 い 。 電 源 停 止 時 の 非 常 電 源 と して 重 宝 され て い る。
(a)
(b) 図2.38
2.10 2.10.1
(d)
(c)
デ ィーゼ ル 機 関
地 熱発 電 地熱発 電 とは
地 下5∼10㎞
に 存 在 す る,マ グ マ だ ま りの 熱 エ ネ ル ギ ー を利 用 して 発 電 す る
方 式 が 地 熱 発 電(geothermal
power
plant)で
あ る。 深 さ 2㎞
や 蒸 気 とい う形 で 取 り出 し た地 熱 流 体(geothermal
程 度 か ら,熱 水
fluid)で タ ー ビ ン を 回 す 。
マ グ マ だ ま りの 温 度 は1000℃ 程 度 で あ り,雨 水 が 浸 透 して 過 熱 され た 蒸 気 を取 り出 した り,人 工 的 に水 を注 入 し蒸 気 を発 生 させ,そ 想 と し て は,さ
れ を利 用 して い る。 将 来 構
らに 深 くマ グ マ近 くで 岩 石 の 割 れ 目に 水 を注 入 して 蒸 気 を取 り出
す 研 究 も行 わ れ て い る。 以 上 の よ う に,地 熱 発 電 は これ らの 資 源 が 存 在 す る 火 山 国 で しか で き な い こ と に な る。 大 規 模 に行 う国 と して,ア
メ リカ合 衆 国,フ
ィ リピ ン,イ タ リア,メ
シ コお よび 日本 が あ る。 中 で も ア メ リ カ 合 衆 国 は3GWの
キ
総 発電 量 を誇 って い
る。 地 熱 発 電 が 注 目 され て い る の は,地 熱 が 自然 エ ネ ル ギ ーで あ り,発 電 に化 石 燃 料 を 必 要 とせ ず,炭 20%近
酸 ガ ス の放 出 が な い た め で あ る。 国 に よ っ て は総 発 電 量 の
くに達 し て い る と こ ろ もあ り,電 力 供 給 の 要 に な っ て い る 国 もあ る。 わ が
国 に お い て 地 熱 発 電 が行 わ れ て い る場 所 は,東 北 と九 州 に限 られ るが,そ 表2.2 地 熱 発 電 方式
(注)DS:乾 ッ シュ
燥 蒸 気,SF:シ
ン グ ル フ ラ ッ シ ュ,DF:ダ
ブル フラ
の状 況
を表2.2に
示 す。
地 熱 流 体 で は 熱 水 と蒸 気 が 混 在 し,蒸 気 中 に はCO2,H2Sな (non-condensed
gas)が
ど不 縮 性 ガ ス
含 ま れ た り,熱 水 中 に はNa,K,Ca,SO4,Siな
どが
様 々 の濃 度 で 含 まれ て い る。 この よ うに,熱 水 と蒸 気 の 中 に は 多 くの 溶 存 成 分 を 含 む の で,配 管 な どの 腐 食 や 目詰 ま りを起 こす 恐 れが あ る。 そ こが 通 常 の 火 力 発 電 方 式 とは 異 な る。
2.10.2
地熱発 電方式
地 熱 流 体 の 熱 水 と蒸 気 の割 合 は異 な るの で,種
々 の 工 夫 が 行 わ れ る。
過 熱 蒸 気 が 主 体 で 熱 水 が少 な い場 合 は,汽 水 分 離 器 で 蒸 気 の み を取 り出 して タ ー ビ ン を 回 す 。 コ ンデ ン サ を設 け背 圧 を低 くす る復 水 器 方 式 と,大 気 中 に 排 気 す る方 式 とが あ る。 地 熱 流 体 中 の 熱 水 の割 合 が 高 くな る と,汽 水 分 離 の後 に 再 度 蒸 気 を取 り出 し(フ
ラ ッ シ ュ),タ
ー ビ ンの 中段 に入 れ る フ ラ ッ シ ュ発 電 方 式 が あ
る。 1回 行 う場 合(シ ン グ ル フ ラ ッシ ュ)と,2 回行 う場 合(ダ ブ ル フ ラ ッ シ ュ)が あ る。 地 熱 発 電 方 式 を 図2.39に
示 す が,取
図2.39
り出 した 地 熱 流 体 の 熱 水 部 分 は ポ ンプ で
地 熱発 電 シス テム
再 度 地 中 に戻 す の で,2 回 フ ラ ッシ ュ す る と それ だ け圧 力 が 下 が る こ とに な る。 ま た,復 水 器 の 構 造 は国 内 の 火 力 ・原 子 力 発 電 の よ う に海 水 へ 熱 を放 出 す る の で な く,大 き な 冷 却 塔 で 冷 却 す る の が 地 熱 発 電 の 特 徴 で あ る。 熱 水 の 温 度 は 低 いが 大 量 に熱 水 が あ る場 合 は,熱 水 の 熱 エ ネ ル ギ ー で低 沸 点 の 熱 媒 体 を 加 熱 し て,そ
の 蒸 気 で タ ー ビ ン を 回 す バ イ ナ リ ー 方 式 が あ る(図
2.40)。 熱 媒 体 と し て は 従 来 フ ロ ン が 用 い られ て い た が,ブ
タ ンや イ ソペ ンタ ン
な どが 用 い られ る。
図2.40
バ イナ リーサ イ クル 発 電 シス テム
問題 (1) 火 力 発 電 所 の 公 害 対 策 を述 べ よ。 (2) ボ イ ラ を説 明 せ よ。 (3) 蒸 気 タ ー ビ ン の連 結 法 に つ い て 説 明 せ よ。 (4) ガ ス タ ー ビ ン発 電 の 特 長 を述 べ よ。 (5) コ ンバ イ ン ドサ イ クル の好 まれ る点 を書 け。 (6) 再 生 サ イ クル と再 熱 サ イ ク ル を説 明 せ よ。 (7) ラ ン キ ンサ イ クル の 熱 効 率 の 求 め方 を書 け。 (8) 火 力 発 電 所 で は ど の よ うな燃 料 が 使 わ れ るか 。 (9) 衝 動 タ ー ビ ン と反 動 タ ー ビ ン を解 説 せ よ。 (10) デ ィ ー ゼ ル 機 関 を説 明 せ よ。 (11) 原 子 力 発 電 所 と火 力 発 電 所 で は,発 電 機 が 一 般 に 異 な る が そ の 理 由 を説
明 せ よ。 (12)復
水 器 の 役 目 を書 け。
(13)カ
ル ノー サ イ ク ル に つ い て 説 明 せ よ。
(14)熱
機 関 で 位 置,運
(15)地
熱 発 電 は な ぜ利 用 さ れ るか 。
(16)地
熱 発 電 の特 徴 を説 明 せ よ。
動,圧
力 の そ れ ぞ れ の エ ネル ギ ー の 関 係 を説 明 せ よ。
(解答 は巻 末)
第3 章 原子力発電
原 子 力 発 電 の 概 要 原 子 力 発 電 は20世 紀 初 頭 か ら研 究 が 活 発 に な り,夢 の エ ネ ル ギ ー源 と して 開発 され て きた 。 と くに最 近 話 題 に な っ て い る地 球 温 暖 化 現 象 が 炭 酸 ガ ス の放 出 に よ る と言 わ れ て い る 中 で,炭 酸 ガ ス を ほ とん ど出 さな い 発 電 方 式 と して注 目 され て い る。 他 方,欧 州 で は チ ェ リノ ブ イ リ発 電 所 の事 故 以 来,原 子 力 発 電 を取 りや め る国 が あ り,で き る だ け 自然 エ ネ ル ギ ー に頼 ろ う とす る国 も 現 れ て い る 。 エ ネル ギ ー 資 源 の な い わ が 国 で は,選 択 の余 地 が 少 な く,慎 重 な対 応 が 必 要 で あ る。
3.1 Fermiは
原 子 力発電 の歴史 ウ ラ ン塩 に 中性 子 を衝 突 さ せ る こ と に よ り,中 性 子 が ウ ラ ン を分 解
して 多 量 の エ ネ ル ギ ー を発 生 す る こ とを見 い 出 した 。 それ 以 降,多 実 験 を行 い,ウ
ラ ン(U),ト
リウ ム(Th),プ
ル トニ ウ ム(Pu)の
くの科 学 者 が よ う に原 子
量 の 多 い元 素 か ら原 子 エ ネ ル ギ ー を取 り出せ る こ とが わ か っ た 。 そ の 中 で,1942 年 に シ カ ゴ の原 子 炉 に お い てFermiの
指 導 の も とで 行 わ れ た 実 験 で,グ
イ トを中 性 子 エ ネ ル ギ ー を減 速 さ せ る減 速 材(moderator)と
ラファ
し て 用 い,ウ
ラン
か らの 中 性 子 の量 を測 定 す る と中性 子 が 増 加 す る こ とが 観 測 され た 。 そ の 後,カ ドニ ウム の 制 御 棒 を入 れ る と反 応 は停 止 す る こ とが わ か っ た。 これ が 核 分 裂 連 鎖 反 応 の 発 見 で あ る。 ま た第 二 次 世 界 大戦 下 に あ っ た 当 時,原 子 爆 弾 開 発 の 要 求 が 米 国 内 で 高 ま り,マ ンハ ッ タ ン計 画 と して 推 進 さ れ た 。 ネバ タ に お け る実 験 の 成 功 の後,1945年
8月,広
島(U
爆 弾)と 長 崎(Pu爆
た こ と は余 りに も有 名 で あ る。 そ の後,原
弾)に
原 子 爆 弾 が 投 下 され
子 力 エ ネ ル ギ ー に よ る発 電 へ の 応 用 が
米 国 で検 討 され,1954年
に加 圧 水 形 原 子 炉(pressurized
い た 原 子 力 潜 水 艦Nautilusが
reactor)を
用
就 役 した 。 また この 成 功 を も と に陸 上 で も原 子 力
発 電 へ の 応 用 が 行 わ れ,1957年 子 炉 が 主 体 で あ った が,GEが し て,1960年
water
に 商 業 用 原 子 炉 が 稼 働 した 。 米 国 で は加 圧 形 原 沸 騰 水 形 原 子 炉(boiling
water
reactor)を
開発
か ら運 転 に入 った 。
わ が 国 で は,1966年
に原 子 力 発 電(株)が 東 海 村 で ガ ス 冷 却 炉(コ
ー ル 改 良 形 原 子 炉:gas
cool reactor)の
ー ル ダー ホ
運 転 を開 始 し,そ の 後 次 々 と加 圧 水 形
炉 や 沸騰 水 形 炉 が 運 転 を 開始 した 。 以 上 の よ うな 歴 史 を経 て,現 在 の原 子 力 発 電 の 基 礎 が で きた 。 わ が 国 で は50基 以 上 が 建 設 され て お り,ア メ リカ と フ ラ ン ス に次 ぐ世 界 で 3番 目 の 原 子 力 発 電 保 有 国 に な っ て い る。 現 在 で は電 気 の30%強 が 原 子 力 エ ネ ル ギ ー に よ り発 生 し て い る。 ま た 設備 利 用 率 も高 く,80%を
超 える
レベ ル に な っ て い る。 しか し,わ が 国 は不 幸 に も被 爆 国 で あ る こ とか ら,原 子 力 エ ネ ル ギ ー に原 子 爆 弾 と同 じイ メ ー ジ を持 つ 人 が 多 い 。 また,原 子 力 発 電 所 はへ き地 に建 設 さ れ て い る の で,わ れ わ れ が通 常 見 る機 会 は少 な い が,図3.1に
示す
よ う に,日 本 の原 子 力 発 電 所 は全 国 各 地 に あ る。
3.2
核理 論
原 子 核 は 中 性 子(neutron)と
陽 子(proton)か
(atomic
nucleus)の
10-10mで
あ る。 原 子 核 は核 子(nucleon)が
A を 質 量 数(mass
らで きて お り,原 子 は原 子 核
電 子 が ク ー ロ ン力 で 結 合 して い る。 原 子 の大 き さ は直 径 約
number),陽
核 力 で 結 合 し て い る。 核 子 の 総 数
子 の 総 数 Z を 原 子 番 号(atomic
い う。 した が っ て 中性 子 の 総 数 はA-Zと
number)と
な る。 表 示 方 法 はAZXと
等 し く A が 異 な る原 子 核 を同 位 体 あ る い は 同 位 元 素(isotope)と
書 く。 Z が い う。 原 子 核
は不 安 定 で粒 子 を放 出 して 別 の原 子核 に な る もの が あ る。 放 出 す る性 質 を放 射 能 とよ び,こ の 現 象 を放 射 性 崩 壊 とい う。 不 安 定 な原 子核 の 崩 壊 速 度 は,不 安 定 原 子 核 の 数 に比 例 し,時 刻 tに お い て,N 子 核 が 存 在 す る もの とす る。 時 間dtの
個 の不安 定 原
間 に 崩 壊 す る原 子 核 の個 数dNは
次のよ
図3.1 わ が 国の 原 子力 発 電 所(2003年11月
現 在)
う に表 す こ とが で き る。
(3.1) λ は 崩 壊 定 数(decay N0と
constant)で
あ り,原
子 核 固 有 の 定 数 で あ る。 初 期 値 を
す る と,
(3.2) と な る 。 N がN0の
半 分 に な る 時 間 を 半 減 期 と よ びT1/2で
表す。
(3.3) 放 射 性 崩 壊 に は ヘ リウ ム の 原 子核 で あ る α粒 子 を 放 出 す る α崩 壊,電 は陽 電 子 を放 出 す る β-1あ る い は β+1崩 壊,光
子 また
子 す な わ ち γ線 を放 出 す る γ崩
壊 な どが あ る。
3.2.1
衝 突お よび散乱
原 子 核 と原 子 核,あ
る い は 他 の 粒 子 が衝 突 して,も
との粒 子 と異 な っ て い く過
程 を核 反 応 とい う。 こ の よ うな衝 突 が 発 生 す る と き は,原 子 核 あ る い は粒 子 が ク ー ロ ン力 に 打 ち勝 って 近 づ くた め に
,大
きな エ ネ ル ギ ー を必 要 とす る。 中性 子 は
原 子 炉 内 に は十 分 に あ り,か つ ク ー ロ ン力 が働 か ず衝 突 で き る。 以 下,中 性 子 の 衝 突 につ い て 解 説 す る。 中性 子 の放 出 を伴 わ な い 吸 収 反 応 と,中 性 子 が 放 出 さ れ る反 応 が あ る 。 (1)吸
収 反 応(absorption)
中性 子 を吸 収 し,質 量 が 1だ け増 加 して 大 きい 同 位 元 素 に な り,励 起 状 態 か ら γ線 を 出 す 反 応 を(n,γ)反
応 とい う。 例 え ば,
(3.4) そ の 他 ア ル ゴ ン(Ar)や
コ バ ル ト(Co)で
も こ の よ う な 反 応 が 発 生 し,場
合
に よ っ て は反 応 生 成 物 が 放 射 能 を帯 び る こ とが あ る。 この よ う な現 象 は誘 導 放 射 能 と よ ば れ る 。 当 然,238Uが(n,r)反 β 崩 壊 し239Npに 原 子 B が(n,γ)反
な り,最
応 を 起 こ し239Uに
後 は 核 分 裂 性 物 質 で あ る239Puに
応 を 起 こ し リ チ ウ ム(Li)と
な り,半
減 期 を経 て
な る 場 合 や,ホ
ヘ リ ウ ム(He)に
ウ素
な る反 応 な
ど もあ る。 (2)散
乱 反 応(scattering)
弾 性 散 乱(elastic
scattering)と
は,反
応 前 後 の 運 動 エ ネル ギ ー が保 存 さ れ る
反 応 を い う 。 原 子 炉 内 で 中 性 子 を 減 速 さ せ る た め に 軽 い 元 素 を 使 用 す る が,こ
れ
は 軽 い 元 素 は衝 突 後 に 運 動 エ ネ ル ギ ー が 移 行 し 易 い た め で あ る。 非 弾 性 衝 突 (inelastic
scattering)は
反 応 前 後 の 運 動 エ ネ ル ギ ー が 保 存 さ れ な い 反 応 を い い,
一 部 が 励 起 状 態 に な る反 応 を い う。 多 くの 場 合 は γ線 を 出 し て安 定 す る 。 こ の 反 応 は原 子 核 の 質 量 が 大 き い場 合 に起 こ りや す く,ウ ラ ンな ど に 中性 子 が 衝 突 す る と き起 こ る。 また ベ リ リ ウ ム(Be)や
重 水 が γ線 を 吸 収 す る と核 分 裂 生 成 物 が 発 生 し,原
子 炉 を止 め た 後 で も放 射 能 を帯 び る こ とが あ る。
3.2.2
中性子 と核の相互作用
以 上 の よ う な 中性 子 の 核 反 応 の発 生 を定 量 的 に扱 うた め に は,断 面 積 と い う概 念 が 用 い られ る。
図3.2 中 性子 の核 反 応
図3.2に
示 す よ う に,微
小 厚 さdxの
平 板 が あ り,こ
と単 位 面 積 あ た り j個 の 中 性 子 が 同 じ 速 度,同
の平 板 に垂 直 に 単 位 時 間
じ運 動 方 向 に入 射 す る。 平 板 の 原
子 密 度 は 単 位 当 た り N 個 で あ る 。 こ の 平 板 で 単 位 面 積 当 た り,中 の 反 応 の 回 数 が 毎 秒 r で あ る と き,核 性 子 数 jお よ び 平 板 の 熱 さdxに
性 子 と原 子 核
反 応 の 発 生 回 数 r は 原 子 密 度 N,入
比 例 す る 。 断 面 積(cross
section)で
射 中
あ る比 例
定 数 を σ と す る と, r=σNjdx(3.5) す べ て の 断 面 積 を σtで 表 し,吸 cross
section)σaと
い い,散
収 が 起 こ る と き を 吸 収 断 面 積(absorption
乱 の 場 合 は 散 乱 断 面 積(scattering
cross section)
σsで 表 す 。 σt=σa+σs(3.6) 吸 収 断 面 積 σaは 核 分 裂 断 面 積(fission ture
cross
section)σcの
cross
section)σfと
捕 獲 断 面 積(cap
和 で あ る。
σa=σf+σc(3.7) ま た 散 乱 断 面 積 σSは 弾 性 散 乱 断 面 積(elastic 断 面 積(inelastic
cross
section)σiの
cross
section)σeと
非弾性散乱
和 で あ る。
断 面 積 は 原 子 核 と 入 射 す る 中 性 子 の エ ネ ル ギ ー に よ っ て 異 な る 。 熱 中 性 子(エ ネ ル ギ ー 約0.0253eV,速 表3.1に
さ2200m/s)に
対 す る23592U,23994Pu,23392Uの
断面 積 を
示 す。
(3.5)式 の j は 中 性 子 の 密 度 を n,速 度 を v と す れ ば, j=nv(3.8) で あ る。
表3.1
3.2.3
U,Puの
断 面積
核 分裂
質 量 の 大 きな 原 子 核 は高 エ ネル ギ ー 中 性 子 を吸 収 す る と核 分 裂 を起 こす 。 核 分 裂 を起 こす 時 に 発 生 す る 中 性 子 は核 分 裂 中 性 子 と よ ば れ,そ 3.3に 示 す よ うに 0∼ 約10MeVま
で の 広 い範 囲 に分 布 して お り,平 均 は2MeV
で あ る。 核 分 裂 で で きた 原 子 核 は,核 分 裂 生 成 物(fission い る。 核 分 裂 に伴 っ て多 種 の エ ネ ル ギ ー が 放 出 さ れ るが,こ 裂 生 成 物 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,放
product)と
いわれて
の エ ネ ル ギ ー は核 分
出 中 性 子 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,放
エ ネ ル ギ ー,中 性 粒 子 の エ ネ ル ギ ー,お ギ ー な どで あ る。
のエ ネル ギ ーは図
出 さ れ る γ線 の
よ び 核 分 裂 生 成 物 か ら の β線 の エ ネ ル
図3.3 核分 裂 中性 子 のエ ネ ル ギ ー分 布
表3.2 核 分裂 に伴 うエ ネル ギ ー放 出量
Ek:核
分 裂 生 成 物 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,Eγl:核
の 瞬 時 放 出 の γ線 エ ネ ル ギ ー,En:分
分裂
裂 中性 子 の エ
ネ ル ギ ー,Eβ:核 分 裂 生 成 物 か らの β線 エ ネ ル ギ ー ,Eγd:核 分 裂 生 成 物 か ら の γ線 エ ネ ル ギ ー
表3.2に
核 分 裂 に伴 うエ ネ ル ギ ー を
に つ い て そ れ ぞ れ に示
し て あ る が,1 原 子 が 1回 核 分 裂 す る と き,約190MeVの れ る 。1J当
た りの 核 分 裂 数 は3.3×1010個,1MW・
る た め に は23592Uが1.3g必
エネ ルギ ーが放 出 さ 日の エ ネ ル ギ ー が 放 出 さ れ
要 で あ る。 核 分 裂 を す る と,核 分 裂 前 の全 体 の 重 量
が 分 裂 後 に減 少 す る こ とが 知 られ て い る。 この 現 象 を質 量 欠 損(mass
defect)
と よび,等 価 な エ ネ ル ギ ー を 原 子 核 の結 合 エ ネ ル ギ ー とい う。 相 対 性 理 論 に よ る と,質 量 とエ ネ ル ギ ー の 関係 は,質 量m[㎏]の
質 量 欠 損 が 出 る と き に発 生 す る
エ ネ ル ギ ー E を次 式 の よ う に表 す 。
(3.9)
1個 の 中性 子 が 原 子 核 と作 用 す る と核 分 裂 現 象 を起 こす 。 そ の と き発 生 す る 中 性 子 が再 度,核
分 裂 を起 こせ ば 連 続 的 に核 分 裂 が 起 こ る。 この 現 象 を連 鎖 反 応 と
い い,1 個 の 中性 子 が 原 子 核 に吸 収 され た と き発 生 す る中 性 子 の 数 が 多 い ほ ど, 連 鎖 反 応 は大 き くな る。
3.3
各種原 子炉の 要素
原 子 炉 の 中 で は燃 料 が 挿 入 さ れ,核 分 裂 を起 こ した 中 性 子 を,原 子 核 の 熱 運 動 と熱 平 衡 状 態 に達 し た 中 性 子 で あ る熱 中性 子(thermal
neutron)に
まで 減 速 す
る 。 そ のた め に減 速 材 が 使 用 さ れ る。 原 子 燃 料 に は233U,235U,239Pu,241Puな ど低 速 の 中 性 子 を 吸 収 し て 核 分 裂 を起 こ す こ と の で き る核 分 裂 物 質(fissile material)を
使 用 す る。 また 中性 子 を吸 収 して233U,239Puを
は,親 物 質(fertile
material)と
作 る238Uや232Th
よ ば れ る混 合 物 が 使 用 さ れ る。 この 親 物 質 が
核 分 裂 物 質 に変 わ る 過 程 を転 換(conversion)と
い う。 原 子 炉 の 中 で 生 成 さ れ た
核 分 裂 物 質 と,消 費 され た 核 分 裂 物 質 の比 を転 換 率 と称 す るが,転 の 核 分 裂 物 質 が で き る こ と を増 殖(breeding)と の235Uを
含 み,残
りは238Uで
の を濃 縮 ウ ラ ン(enriched
換 に よ り多 く
い う。 天 然 ウ ラ ン に は約0.7%
あ る。235Uの 含 有 率 を天 然 ウ ラ ン よ り高 く した も
uranium)と
い う。 発 電 用 原 子 炉 に は 主 に2∼4%の
低 濃 縮 ウ ラ ンが 用 い られ る。 濃 縮 ウ ラ ン を作 るに は,比 重 の違 った ガ ス を流 す と 速 度 が 異 な る原 理 を利 用 した ガ ス拡 散 法 や,重
い 同 位 体 を遠 心 分 離 機 に 入 れ る と
外 に 行 く原 理 を使 った 遠 心 分 離 法 が 用 い られ る が,大 規 模 な装 置 が 必 要 で あ る。 原 子 爆 弾 を作 る に は235Uか239Puを
用 い るが,高
濃 縮 ウ ラ ン を使 う の で 設 備
が 大 変 で あ る。 しか し プ ル トニ ウ ム を作 る に は原 子 炉 の 運 転 で比 較 的 簡 単 に実 現 で き る。 原 子 燃 料 は 燃 料 棒 に 成 型 加 工 され るが,ア ジル コニ ウム 合 金,黒
ル ミニ ウム,ス
テ ン レス 鋼,
鉛 な どが 用 い られ る。 軽 水 炉 で は二 酸 化 ウ ラ ン(UO2)の
形 に して 用 い られ る。 また,原
子 炉 で は高 速 中 性 子 を熱 中性 子 に まで 減 速 させ る
た め の減 速 材(moderator)が
使 用 さ れ る。 減 速 材 は 1回 の 散 乱 断 面 積 が 大 き
く,吸 収 断 面 積 が 小 さ く,衝 突 当 た りの 中性 子 の エ ネ ル ギ ー 損 失 の 大 き い 軽 水
(H2O),重
水(D2O),黒
(coolant)と 酸 ガ ス,ヘ
鉛,ベ
リ リ ウ ム な ど が 使 用 さ れ る。 ま た 冷 却 材
は 熱 の 移 動 を助 け る材 料 で 軽 水,重 水,液
体 ナ ト リウ ム,空 気,炭
リウ ム な どが 用 い られ る。 軽 水 や 重 水 を用 い る とき,熱 効 率 を上 げ た
い と き は炉 内 圧 力 を7∼15MPaと
高 くす る が,液 体 ナ トリ ウム は沸 点 が 高 い の
で,高 速 炉 の よ うな 出 力 密 度 の 高 い原 子 炉 に向 い て い る。 ま た原 子 燃 料 の周 囲 に は 中性 子 を炉 心 に 送 り返 す 反 射 体(reflector)が
用 い ら れ,重 水,軽
水,黒 鉛,
ベ リル ウ ム な どが使 用 され る。 高 速 炉 で は炉 心 か ら出 て きた 中性 子 を親 物 質 の ウ ラ ン に 吸収 させ て プ ル トニ ウム を作 る た め に,天 然 ウ ラ ンで で きた 領 域 を炉 心 周 囲 に 設 け,こ れ を ブ ラ ンケ ッ ト(blanket)と
称 す る 。 また 原 子 燃 料 の反 応 を 制
御 す るた め に,中 性 子 と消 滅 を調 整 す るた めの 制 御 材 を用 い る。 した が っ て 中 性 子 吸 収 能 力 の 大 き い カ ド ミ ウ ム(Cd),ホ
ウ 素(B),ハ
フ ニ ウ ム(Hf)な
元 素 が 用 い ら れ る。 実 際 に は ホ ウ素 入 りス テ ン レ ス 鋼,炭 ウ ム-カ ド ミ ウム(Ag―In―Cd)合
3.4
化 ホ ウ素,銀-イ
どの ンジ
金 な どが 用 い られ る。
各種 原子 炉
この 章 で は各 種 原 子 炉 の 説 明 を す る。 世 界 の 商 業 用 原 子 炉 は加 圧 水 形 原 子 炉 (pressurized water 流 で あ る。 そ の他,各
3.4.1
reactor)と
沸 騰 水 形 原 子 炉(boiling
water
reactor)が
主
種 の 原 子 炉 を この 項 で 解 説 す る。
加 圧 水 形 原 子 炉(PWR)
この 原 子 炉 は,米 国 に お い て原 子 力 潜 水 艦 で 使 用 され て い た も の を商 業 用 原 子 炉 に 改 良 した もの で あ る。Westinghouse社
やBabcock
加 した 。 世 界 で最 も多 く使 わ れ,運 転 中 の 原 子 炉 は250基 子 炉 の シス テ ム 図 を図3.4に た 軽 水 を用 い,核 プ(reactor 器(steam
and Wilcox社
な どが 参
を超 え る。 加 圧 水 形 原
示 す。 冷 却 材 と減 速 材 とし て15.5MPaに
加 圧 され
分 裂 に よ っ て ウ ラ ン燃 料 に発 生 した 熱 を吸 収 す る。 冷 却 水 ポ ン
coolant pump)は generator)に
炉 で加 熱 され た 水 を一 次 加 熱 気器 で あ る蒸 気 発 生
送 り,再 び 炉 に 戻 す 。 蒸 気 発 生 器 の 二 次 側 で は圧 力
図3.4 加 圧 水 型原 子 力 発 電所 の シス テム 図
7.6MP291℃
の飽 和 蒸 気 が 発 生 す る。 こ の蒸 気 が タ ー ビ ン に 入 り,復 水 器 に 入
り凝 縮 す る。 加 圧 水 型 原 子 炉 で は,蒸 気 発 生 器 や 冷 却 水 ポ ンプ か ら な る冷 却 材 ル ー プ の数 は 標 準 化 され て お り,500MW,800MWお 3,4ル
よ び1100MVA級
ー プ を採 用 して い る。 最 近 で は 4ル ー プ で1500MWの
て い る。 炉 心(reactor assembly)で
core)は
ものが 開発 され
ほ ぼ 円 筒 状 に 配 列 さ れ た 燃 料 集 合 体(fuel
構 成 され て い る。 燃 料 棒 は ジ ル カ ロ イ ド-4被 覆 管 に 濃 縮 ウ ラ ン ペ
レ ッ トを 挿 入 し,上 部 ば ね を入 れ た も の をヘ リ ウ ム(He)で さ約3.7mで
の 出 力 に対 して2,
封 入 し て あ り,高
あ る。燃 料 集 合 体 は 格 子 配 列 に14×14,15×15,17×17の
が 使 用 され て い る。17×17配 ス タ(control
列 の場 合,24個
3種 類
の ジ ル カ ロ イ ド-4製 の 制 御 棒 ク ラ
rod cluster)案 内 シ ン ブ ル と,一 本 の 炉 内計 測 用 案 内 シ ンブ ル な
どに よ っ て構 成 され,そ れ に264本
の燃 料 棒 を挿 入 した もの で あ る。 制 御 用 ク ラ
ス タ 方 式 で,上 部 の駆 動 軸 との 連 結 機 構 に取 り付 け られ た スパ イ ダ 状 の継 手 に棒 状 の ク ラ ス タ要 素 を取 り付 け た もの で あ る。 燃 料 集 合体 の案 内 シ ン ブル 内 を上 下 し て制 御 す る。 ク ラ ス タ要 素 は ス テ ン レ ス 鋼 の 被 覆 管 内 に,中 性 子 吸 収 材 で あ る銀-イ ン ジ ウ ム-カ ド ミ ウム 合 金 を 入 れ た もの で あ る。 蒸 気 発 生 器 は イ ン コネ ル伝 熱 細 管 を U
図3.5 燃 料集 合 体[『 電気工学ハ ン ドブ ック』 より電 気学会の許諾 を得 て複製]
図3.6 原 子 炉 内部 構 造[『電 気工学ハ ン ドブ ック』よ り電気学会の許諾 を得て複製]
図3.7 蒸 気 発 生器 の構造[『 電気工学ハ ン ドブ ック』 より電気学会の許諾 を得 て複製]
字 管 式 構 造 に して で き て い る。 蒸 気 発 生 器 の 二 次 側 へ の給 水 は伝 熱 管 上 端 か ら行 わ れ,気
水 分 離 器 で 分 離 され て,蒸 気 出 口か ら出 て行 く。 図3.7に,そ
の構 造 を
示す。 加 圧 器 は 図3.8に
示 す よ うに 運 転 中 一 次 側 冷 却 圧 力 を一 定 に保 つ た め の 設 備
で,底 部 に は ヒー タ を,上 部 に は ス プ レー,安
全 弁 お よ び 逃 が し弁 を設 け て あ
る。 運 転 中 は下 半 分 は液 体 で 上 半 分 は気 体 に な っ て お り,ヒ ー タ とス プ レ ー に よ っ て 圧 力 を制 御 して い る。 加 圧 水 形 原 子 炉(PWR)の
保 持 設 備 は,事 故 を軽 減 す るた め の 重 要 な 設 備 が
多 い。
化学体積 制御 系 は原子炉 の冷 却水 の純度 と水量 の維 持,お よび ほう酸 の濃度調 整,予 熱除 去系 は炉 停止 お よび燃 料交換期 間 中にお ける核分裂 生成物 の崩壊熱 の 除去,安 全 注入設備 と原子炉格納 容器ス プ レイ設備 は冷却水喪 失事故時 の場合 の 非 常用炉心 冷却 を行 う,な ど多 くの重要 な装 置が設置 され てい る。
図3.8 加 圧 器 の構 造
3.4.2沸
騰 水 形 原 子 炉(BWR)
沸 騰 水 形 原 子 炉 は,加 圧 形 原 子 炉 と共 に使 わ れ て い る軽 水 を利 用 し た 原 子 炉 で,現 在 約80基
が 運 転 され て い る。 この 原 子 炉 は 米 国 のGE社
れ た もの で,1957年 図3.9か
に初 め て 商 用 化 され た 。
らわ か る よ う に原 子 力 圧 力 容 器 の 中 は燃 料,制
炉 心 シ ュ ラ ウ ド,気 水 分 離 器(moisture (steam
dryer)な
によっ て開発 さ
御 棒,中 性 子 検 出器,
separator),あ
る い は蒸 気 乾 燥 器
どか ら構 成 さ れ て い る。 上 部 で 沸 騰 す るが,湿
り蒸 気 は上 部
の蒸 気 分 離 器 と蒸 気 乾 燥 器 を 出 た 後 タ ー ビ ン に行 く。 通 常 の 水 は再 循 環 ポ ン プ (re-circulated pump)で
ジ ェ ッ トポ ンプ(従
ナ ル ポ ン プ(最 新 形ABWR形)に 出 る蒸 気 は278℃,7.2Mpaで
来 形BWR形)あ
るい はイ ンター
連 動 し,燃 料 部 に循 環 され る。圧 力 容 器 か ら あ り飽 和 状 態 に あ る。 タ ー ビ ン を 経 た 後,給
水は
給 水 加 熱 器 を経 て炉 に戻 る。 炉 心 シ ュ ラ ウ ドは 円筒 状 の ス テ ン レ ス鋼 製 構 造 体 で炉 心 を囲 み,給 水 の 下 降 流 と冷 却 す る上 昇 流 を分 離 す る構 造 とな っ て い る。
図3.9 沸 騰 水形 原 子 力発 電 シス テ ム
図3.10 原 子 炉 内部 構 造(ABWR)[『 電気学会 の許諾を得て複製]
電気 工学ハ ン ドブ ック』 よ り
これ らの 構 造 を図3.10に
示 す が,内 部 構 造 が よ くわ か る。 この 例 は イ ン タ ー
ナ ル ポ ンプ で 構 成 され たABWR形
の 構 造 例 で あ る。
燃 料 集 合 体 の 断 面 図 を図3.11に
示 す。 燃 料 は 低 濃 縮 二 酸 化 ウ ラ ン を 円 筒 状 の
ペ レ ッ トに焼 結 成 形 し,ジ ル カ ロイ 被 覆 管 に し て熱 伝 達 を よ くす るた めヘ リウ ム ガ ス を封 入 し て あ る。 燃 料 集 合 体 は図 に示 す よ う に900本
近 い数 で構 成 さ れ,そ
の周 囲 は制 御 部 で埋 め られ て い る。 制 御 棒 は 反 応 度 制 御 と出力 分 布 調 整 の二 つ の 機 能 を持 つ もの で,ボ
ロ ン カ ーバ
イ ド粉 末 を ス テ ン レス 鋼 管 に充 填 し て,ス テ ン レ ス シー スで 十 字 形 に組 み立 て た もの で あ る 。 制 御 棒 は 4本 の燃 料 集 合 体 の 中 央 に位 置 し,炉 心 全 体 に一 様 に分 布 して い る。 制 御 棒 の 駆 動 は 従 来 水 圧 式 で あ っ た が,ABWRで
は 電 動 で駆 動 す る
こ と に な っ た 。 しか し,ス ク ラ ム とい う炉 の 活 動 を瞬 時 に止 め るた め,制 御 棒 を 挿 入 す る と き は水 圧 駆 動 で あ る。 沸 騰 水 形 で は制 御 装 置 を下 部 か ら挿 入 し て あ り,加 圧 水 形 とは異 な る。 ス ク ラム 時 に駆 動 装 置 が 挿 入 で き な い こ とを考 え て, ホ ウ 酸 水 注 入 系 を設 け,定 格 出 力 か ら完 全 冷 温 停 止 に で き る能 力 を持 って い る。
図3.11 燃 料 集 合体 の断 面 図(1300MWの
図3.12に
例)
示 す よ う に,再 循 環 系 は ジ ェ ッ トポ ン プ を使 っ た も の と,イ ン タ ー
ナ ル ポ ンプ を使 っ た も のが あ る。 ジ ェ ッ トポ ンプ は炉 心 シ ュ ラ ウ ド と圧 力 容 器 の 間 に 間 隔 を お い て20台 設 置 さ れ る。 イ ン ター ナ ル ポ ン プ は 大 き な容 量 で は10台 設 置 され る が,駆 動 の た め の軸 封 部 が な く,保 守 点 検 が 容 易 で あ る。 また 大 口 径
ジ ェ ッ トポ ンプ 方式
イ ンタ ーナル ポ ンプ方 式
図3.12 再循 環 系
再 循 環 配 管 が な くな る の で,そ の 破 断 を心 配 す る必 要 が な くな る 。 原 子 炉 の 出力 は再 循 環 系 の 流 量 を増 し,炉 心 内 の気 泡 量 を減 少 させ 反 応 を増 加 させ る。 しか し 加 圧 水 型 と比 べ る と元 々 の圧 力 が 低 い た め 出 力 密 度 は低 い 。 そ の他,原
子 炉 補 助 系 と して,原 子 炉 内 に濃 縮 さ れ る不純 物 を 除 去 し,復 水 脱
塩 装 置 と と もに冷 却 水 を ろ過 脱 縁 装 置 に入 れ て 浄 化 した 後,復 給 水 系 に戻 す原 子 炉 浄 化 装 置 や,原 子 炉 停 止 時 冷 却 モ ー ド時 に 熱 を 除 去 で き る残 留 熱 除 去 系,ま た,給 水 系 や 復 水 系 が 使 用 で きな い と きに 原 子 炉 水 位 を維持 す る た め,貯 蔵 タ ン ク の水 を使 う原 子 炉 隔 離 時 冷 却 系,そ な ど,多
の他,冷
却 系 や安 全 装 置 あ るい は計 測 装 置
くの 装 置 が つ い て い る。
また,そ の 他 の軽 水 炉 と して 最 近 話 題 に な る のが プ ル サ ー マ ル で あ る。 高 速 増 殖 炉 で製 造 で き る プ ル トニ ウ ム が リサ イ ク ル で き る こ と は知 ら れ て い るが,そ
れ
が 実 用化 され る ま で は,プ ル サ ー マ ル を使 用 し な け れ ば な ら な い 。 回 収 さ れ るプ ル トニ ウム を使 っ て,ウ
ラ ンの 所 要 量 を軽 減 し よ う とす る も の で あ る。 軽 水 炉 で
プ ル トニ ウ ム を再 利 用 す る と い う意 味 で,プ ル サ ー マ ル と い う。UO2+PO2の 形 の燃 料 とな り,MOX(モ
ッ ク ス,Mixed
Oxide
Fuel)と
よ ば れ て い る。
3.4.3そ (1)ガ
の他の原子 炉 ス冷却 形原子炉
ガ ス 冷 却 炉(gas
cool reactor)は
炭 酸 ガ スや ヘ リ ウム な どで 冷 却 す る もの を
い うが,減 速 材 は 黒 鉛 が 用 い られ,燃 料 は 天 然 ウ ラ ン や 濃 縮 ウ ラ ンが 用 い られ る。 冷 却 ガ ス を 熱 交 換 器 に 通 し て蒸 気 と して,タ
ー ビ ン を動 作 させ る。 軽 水 形 と
比 べ 出 力 密 度 が 低 く,水 に比 べ て高 温 で利 用 で き る。 出 力 密 度 が 小 さ く,黒 鉛 の 熱 容 量 が 大 き い の で,異 常 時 に温 度 が急 速 に は上 昇 しな い 。 水 処 理 が な く,そ れ だ け温 排 水 処 理 が 少 な い な どの 特 徴 が あ る。 英 国 で 開発 され た コ ル ダ ー ホ ー ル改 良 形 炉(Colder 冷 却 炉(HTGR)が
Hall Reactor),改
良 形 ガ ス冷 却 炉(AGR),あ
るい は高 温 ガ ス
あ る。 後 者 はヘ リ ウ ム ガ ス を使 っ て750∼950゜Cに で き,熱
サ イ ク ル上 有 利 で あ る。 (2)重
水 減 速 形 原 子 炉(HWR)
カ ナ ダ で 開 発 さ れ て い る原 子 炉 で,減 速 材 とし て重 水 を利 用 して い る。 重 水 は 中 性 子 吸収 断 面 積 が 小 さ く,燃 料 と して天 然 ウ ラ ンが 利 用 で き る 。 また,転 換 率 が 高 い な どの 特 長 が あ る。 減 速 材 と冷 却 材 を分 け て,冷 却 材 に軽 水 や 炭 酸 ガ ス を 使 っ た もの が あ る。 代 表 的 な もの を,CANDU炉(Canadian nium
reactor)と
deuterium
ura-
い う。 国 内 の 「ふ げ ん」 は この 形 で あ るが,燃 料 に天 然 ウ ラ ン
の 他 プ ル トニ ウ ム を使 用 して い る。 (3)高
速 増 殖 炉(Fast
Breeder
Reactor)
核 分 裂 の 結 果,親 物 質 か ら消 費 し た核 燃 料 以 上 の核 分 裂 物 質 を 生 産 す る原 子 炉 で あ る。 こ の原 子 炉 で は,プ ル トニ ウ ム の 親 物 質 で あ る 〓Uか ケ ッ トで取 り囲 ん で あ る。 通 常 の軽 水 炉 で は0.1eV程 るが,高 速 増 殖 炉 で は100ekVの
らで きた ブ ラ ン
度 の 熱 中性 子 で反 応 さ せ
高 速 中性 子 で 反 応 さ せ る 。 し た が っ て 臨 界 量
が 大 き い の で,多 量 の 燃 料 を 装 荷 す るた め,炉 心 を高 出 力 に し,減 速 材 よ り熱 冷 却 を主 体 に ナ ト リ ウ ム や ナ ト リウ ム-カ リウ ム合 金 が使 わ れ る。 た だ し これ らの 冷 却 材 が 水 と反 応 す る と危 険 な の で 注 意 が必 要 で あ る。 表3.3に
各 原 子 炉 の転 換 率 を示 す 。 高 速 増 殖 炉 の 転 換 率 が 高 い こ とが わ か る 。
表3.3 各 原子 炉 の転 換 率
炉形
転換率
軽水炉
0.5∼0.6
新形転換炉(重 水炉)
0.8
高温 ガス炉
0.8∼0.9
高速増殖炉
1.2∼1.5
3.5 使用済み燃料の再処理 と放射性廃棄物処理 核 燃 料 は 原 子 炉 を停 止 して も熱 が発 生 して い る。 使 用 済 み燃 料 は放 射 能 や 崩 壊 熱 を減 衰 す る た め,水 processing)し
て,使
中 に 1年 程 度 貯 蔵 す る。 こ の 燃 料 を再 処 理(fuel
re
用 で き る燃 料 に加 工 す る 。 現 在 は イ ギ リス や フ ラ ン ス に委
託 し て処 理 を行 っ て い る。 また,放 射 性 廃 棄 物 は 低 レベ ル と高 レベ ル廃 棄 物 に分 け られ る。 低 レ ベ ル 廃 棄 物 は原 子 炉 を運 転 中 に発 生 し,ろ 過,蒸
発,焼
ル トな どで 固 化 して ドラ ム 缶 に入 れ,地
中 に保 管 す る。 高 レベ ル 廃 棄 物 は,貯 蔵
に よ っ て放 射 線 を減 少 させ た 後,ガ
却 な ど して,セ
メ ン ト,ア ス フ ァ
ラ ス固 化 す る。 これ を 鉛 な どを入 れ た 二 重 の
金 属 容 器 に入 れ て 深 い岩 盤 中 に埋 め る こ とが 検 討 さ れ て い る。 しか し,1000年 程 度 の長 期 間 にわ た り放 射 線 が 出 るの で,問 題 視 され る こ とが 多 い。 この 問 題 は 未 解 決 で あ る。
3.6
原子 力の安全 と電気 エネル ギーの 問題
原 子 力 発 電 は,ど
う し て も 日本 が 経 験 し た 原 子 力 爆 弾 の イ メ ー ジ を連 想 させ
る。 また ア メ リカ ・ス リー マ イル ア イ ラ ン ド,旧 ソ連 ・チ ェ リノ ブ イ リ原 子 力 発 電 所,国
内 で は関 西 電 力 ・美 浜 発 電 所 2号 機 の 蒸 気 発 生 器 電 熱 管 損 傷,高
型 炉 「もん じ ゅ」 の 二 次 主 冷 却 配 管 か らの ナ ト リウ ム 漏 れ,東 海 村JCOの ン加 工 施 設 に お け る臨 界 事 故 な ど,多
速増殖 ウラ
くの こ と を 学 ん で き た 。 そ の 規 模 の 大 き
さ,失 わ れ た 人 命 あ る い は 目 に見 えな い恐 怖 な ど,多
くの こ とを学 び経 験 し た。
原 子 力 発 電 所 発 電 所 は こ の よ う な こ と を 考 え て,ど
の よ う な事 故 が 発 生 して も
安 全 側 に 向 か う よ う に設 計 さ れ て い る。 こ の よ う な こ と を フ ェ イ ル セ イ フ (fail-safe)あ
る い は フ ー ル プ ル ー フ(fool-proof)と
ま す こ の よ う な 思 想 が 取 り入 れ ら れ,工
よ ん で い る が,今
後 ます
学 的 に誰 で も納 得 で き る よ う な シ ス テ ム
に しな け れ ば な らな い 。
また プ ル トニ ウム は,国 際 問 題 と して 大 き な 政 治 的 課 題 に な っ て い る。 これ は,濃 縮 ウ ラ ンの 製 造 に は 大 き な設 備 が 必 要 で,そ の 規 模 も外 部 か ら容 易 に視 察 で き る の に対 し,プ
リ トニ ウム は核 分 裂 反 応 か ら容 易 に作 られ,そ
の分 離 も化 学
的 に 容 易 に行 わ れ るか らで あ る。 秘 密 裏 に原 子 爆 弾 が 作 製 で き る とい う危 険 が あ る。 そ の た め 国 際 機 関 に よ る査 察 が世 界 規 模 で行 わ れ て い る。 この 問 題 に は国 家 問 の 安 全 保 障 問 題 が 絡 ん で くる。 現 在,日
本 の電 力 エ ネ ル ギ ー は 約1/3が
原 子 力 か ら発 生 して い る。 これ に代 わ
る も の と して は,現 在 の とこ ろ石 油,天 然 ガ ス あ る い は 石 炭 で 電 気 を発 生 で き る が,二 酸 化 炭 素 ガ ス の 地 球 温 暖 化 が 問 題 に な り,む し ろ抑 え る必 要 が あ る。 原 子 力 に頼 らな い とす る と,生 活 ス タ イ ル を 完 全 に変 え な けれ ば な ら な い。 も し く は,さ
ら に 自然 エ ネ ル ギ ー の 開発 を進 め るか で あ る。 日本 が,い や 世 界 が,今 後
どの よ う に して電 気 エ ネ ル ギ ー を確 保 して い くか が,大
き な問 題 に な っ て い る。
問題 (1)PWRとBWRの (2)235Uが
差 を述 べ よ。 1㎏
完全 に質 量 欠 陥 を した。 その ときの エ ネ ル ギ ー は い く ら
か。 (3)プ
ル サ ー マ ル に つ い て 述 べ よ。
(4)減
速 材,反
射 材,冷
却 ガ ス に つ い て,PWR,BWR,重
水 炉,FBR,
ガ ス 冷 却 炉 で どの よ う な もの が 使 わ れ て い るか 述 べ よ。
(5)次
の 言 葉 を説 明 せ よ。 熱 中 性 子,核 分 裂,冷
却 材,半
減 期,α 線,β 線,γ 線 (解 答 は巻 末)
第4 章
燃料電池発電
燃料 電池発電 の概要
燃 料 電 池 は1940年
頃 か ら本 格 的 な研 究 が 始 ま り,1960年
代 に ア ポ ロ宇 宙 船 の電 源 と し て実 用 化 が 開 始 され た 。 そ の 後,産 業 用,民 源 と し て の応 用 開 発 が 進 め られ,今
生用電
日の 定 置 用 燃 料 電 池 お よび 自動 車 用燃 料 電 池
へ と進 展 して きた 。 燃 料 電 池 は高 効 率 電 源 で あ り,環 境 に優 し く,小 型,軽
量で
あ る 等 数 々 の 利 点 を有 す るた め,今 後 広 い分 野 へ の適 用 が 期 待 さ れ る。 す で に りん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC)は ル,病
セ ル 寿 命 4万 時 間 を達 成 し,工 場,ホ
院 の コ ジ ェ ネ機 器 と して活 用 され て い るの み な らず,高
テ
品質 電 源 とし て,
さ ら に最 近 で は生 ゴ ミ,家 畜 糞 尿 等 か ら発 生 す るバ イ オ ガ ス を燃 料 と した 環 境 に 適 した 発 電 機 器 と して利 用 さ れ て い る。 一 方,固
体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC)は
高 出力 密 度 の 向 上 に よ り,従 来 の定
置 用 の 他 に 自動 車 の 駆 動 源 と して の 適 用 が検 討 さ れ,す で に各 所 で 公 道 走 行 試 験 が 開 始 され て い る。 そ の 他 の 高 温 形 燃 料 電 池 で あ る 溶 融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池(MCFC)お 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC)も
よび固体
着 実 に運 転 実 績 を挙 げ,近 い 将 来 で は コ ジ ェ ネ 機
器 と して,長 期 的 に は高 効 率 発 電 機 器 と して 適 用 され る こ とが 期 待 され て い る。 以 下 これ らの燃 料 電 池 の原 理 ・構 成,開
4.1燃
料電池 の基本
4.1.1燃
料電池 の原理
1839年
発 の現 状,適
用 等 を中 心 に紹 介 す る。
に イ ギ リス の グ ロ ー ブ卿 が 発 明 した 燃 料 電 池 を 図4.1に
示 す。希硫 酸
溶 液 の 入 っ た電 槽 中 に 白 金黒 付 白金 電 極 の つ い た 生 成 ガ ス 採 集 用 の容 器 を入 れ,
図4.1 グ ロー ブ卿 の燃 料 電 池
水 の 電 気 分 解 を した 後 そ の 生 成 ガ ス が 電極 に触 れ て い る状 態 で 各 電 槽 の電 極 を直 列 に 結 ぶ こ とに よ り,こ れ に つ な い だ 他 の 電 槽 で 水 の 電 気 分 解 を行 い,公 開 の席 で 初 め て 発 電 し て い る様 子 を 実 験 的 に示 した 。 水 素 を 供 給 す る電 極 を 燃 料 極 (anode),酸
素 を供 給 す る電 極 を空 気 極(cathode)と
よ び,各 極 の 反 応 は(4.1)
か ら(4.3)式 で 示 さ れ る。 燃 料 極 で は,
(4.1) 空 気 極 で は,
(4.2) 全 体 とし て,
(4.3) 酸 素 を供 給 す る電 極 は プ ラ ス,水 素 を供 給 す る電 極 は マ イ ナ ス とな り,外 部 に 電 流 を取 り出 す こ とが で き る。 現 在 使 用 され て い る,り ん 酸 形 燃 料 電 池 あ る い は 固体 高 分 子 形 燃 料 電 池 は図 4.2に 示 す よ うに,燃 料 極,電
解 質,空 気 極 か ら構 成 さ れ,り
ん酸形燃 料電 池 は
電 解 質 に りん酸 が,固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池 は高 分 子 膜 が 使 用 され て い る 。 い ず れ
図4.2 燃 料電 池 の構 成
の 燃 料 電 池 も燃 料 極 で は水 素 分 子 が 2個 の電 子 を放 出 して 2個 の 水 素 イオ ン とな る。 水 素 イ オ ン は電 解 質 内 を移 動 す る。 一 方,空 気 極 で は空 気 中 の 酸 素 分 子 1個 が,電
解 質 を移 動 して きた 4個 の水 素 イ オ ン と外 部 回路 を通 っ て きた 4個 の電 子
と反 応 し て水 を生 成 す る。 以 上 の 反 応 に よ り,外 部 に 電 力 を供 給 す る こ とが で き る。 燃 料 電 池 は 化 学 エ ネ ル ギ ー を燃 焼 す る こ とな く,直 接,電 気 エ ネ ル ギー に変 換 す る発 電 装 置 で あ る 。
4.1.2電
気エ ネルギーへ の変換お よび理論起電 力
供 給 す る ガ ス 量 に対 し,最 大 い くらの 電 力 を発 生 す る こ とが で き るか に つ い て 次 に示 す 。 水 素 と酸 素 か ら電 気 を得 る燃 料 電 池 を水 素-酸 素 燃 料 電 池 とい い,こ の 電 池 へ 供 給 さ れ る ガ ス の 熱 エ ネ ル ギ ー が す べ て電 気 エ ネ ル ギ ー へ 変 換 され るの で は な く,(4.4)式
の よ う に変 換 可 能 な エ ネ ル ギ ー と変 換 不 可 能 な エ ネ ル ギ ー に 分 け ら
れ る。 燃 料 電 池 へ供 給 され る エ ネ ル ギ ー=
電気 へ変換可能 な 変換不 可能 な 十 エネルギー エ ネルギー
(4.4)
こ こ で 燃 料 電 池 へ 供 給 さ れ る エ ネ ル ギ ー は エ ン タ ル ピ ー 変 化(Δ H)(change in
enthalpy)で
示 さ れ,水
素 と 酸 素 が 反 応 す る と水 素 1 モ ル 当 た り,285.8kJ/
molと
な る 。 一 方,電
(ΔG)(change molと
気 へ 変 換 可 能 な エ ネ ル ギー は ギ ブ ス の 自 由 エ ネ ル ギ ー変 化
in Gibbs
free
energy)で
示 さ れ,水
素 1モ ル 当 た り,237.2kJ/
な る 。 残 り は 熱 と し て 放 出 さ れ る 。 こ の 関 係 が(4.5)式
お よ び 図4 .3に 示
され る 。
(4.5) こ こで,ΔH0:燃 ΔG0:燃
料 電 池 反 応 の標 準 生 成 エ ン タ ル ピー 変 化(kJ/mol) 料 電 池 反 応 の 標 準 生 成 ギ ブス エ ネ ル ギ ー 変 化(kJ/mol)
T:絶 対 温 度(K), ΔS0:エ な お,標 し,標
ン ト ロ ピ ー 変 化(J/K・mol)
準 状 態 と は 温 度25℃(298.15K),圧
準 状 態 の ΔH,ΔG,ΔSは
力 1気 圧(101
ΔH0,ΔG0,ΔS0で
,325Pa)を
指
示 さ れ る。
〔 〕は 水 素 と酸 素 の反 応 か ら 水 蒸 気 が生 成 す ると きの 熱 力 学 量 の変 化 を示 す.
図4.3 水 生 成 反応 の仕事 と熱
以 上 か ら供 給 エ ネ ル ギ ー に対 し,電 気 へ変 換 可 能 な エ ネ ル ギ ー,す
な わ ち理 論
効 率 は(4.6)式 で示 され る。
(4.6) 上 記 の 数 値 を代 入 す る と,
(4.7) と な り,理
論 効 率 は83%と
な る。
こ こ で 水 素 と酸 素 の 反 応 に よ り(4.3)式
の よ う に 水 が 生 成 さ れ る が,こ
に よ り 液 体 の 水 が 生 成 さ れ る 場 合 の ΔH0,ΔG0が さ れ る 場 合 の ΔH0,ΔG0が high
heating
value)と
表4.2に
い い,後
表4.1に,ま
た水 蒸気 が生成
示 さ れ る 。 前 者 を 高 位 発 熱 量(HHV:
者 を低 位 発 熱 量(LHV:lower
と い う。 効 率 を 表 示 す る 時,HHVかLHVか 要 で あ る 。 な お,表4.1,4.2に
の反 応
heating
で 値 が 異 な る の で,そ
value)
の表示 が重
示 され る値 は い ず れ も理 論 値 で あ る。
燃 料 電 池 の 標 準 状 態 に お い て 水 素 1モ ル の 分 子 数 は ア ボ ガ ドロ 数Naに
等し
く,水 素 1モ ル か ら n倍 の 電 子 が 外 部 回 路 に 流 れ る とす る と,そ の電 気 量 はn・ Na・eと
な るの で,水 素 1モ ル 当 た り,取
り出 す こ とが で き る 電 流 値 は(4.8)式
で示 される。
(4.8)
I=nF
こ こで
n:反 応 にか か わ る電 子 数(上 F:フ
ァ ラ デ ィ ー 定 数(96,487ク
電 気 へ変 換 可 能 な エ ネ ル ギ ー は-ΔG0で
記 の 水 素 反 応 で はn=2) ー ロ ン/mol)(F=Na・e)
あ るた め,理 論 起 電 力 は(4.9)式 で 示
され る。
(4.9) 数 値 を 代 入 す る と,(4.10)式
と な る。
表4.1 水 素 と酸 素 の 反応 か ら液体 の水 が 生成 され る時 の熱 力 学 量 の変 化,理
論起電力 と理論効率 は液 状 態 を示 す]
(注)理
論 効 率 はHHVを
基準 とした。
(g)は ガ ス 状 態 を,(1)
表4.2 水 素 と酸 素 の反 応 か ら水 蒸 気 が生 成 され る時 の熱 力 学 量 の 変化,理 論
起電力 と理論効率
(注)理
論 効 率 はLHVを
基準 とした。
(4.10) と な り,理
論 起 電 力 は1.23Vと
な る(生
成 物 が 水 蒸 気 の 場 合 は1.18Vと
な
る)。
以 上 は標 準 状 態 の時 の値 で あ る が,温 度 が 変 化 す る とエ ン タル ピー 変 化 お よ び ギ ブ ス の 自由 エ ネ ル ギ ー変 化 も変 化 す る た め,理 論 起 電 力 お よ び理 論 効 率 も変 化 す る。 この た め理 論 起 電 力 お よ び理 論 効 率 は 図4.4に
示 す よ う に,温 度 の 上 昇 と
と も に低 下 す る。 燃 料 電 池 の燃 料 は,水 素 以 外 に最 近 で は携 帯 電 源 用 と して,メ 接 電 気 を取 り出 す 直 接 反 応 形 燃 料 電 池(DMFC:Direct
タ ノ ー ル か ら直
Methanol
Fuel Cell)
の 研 究 が 積 極 的 に行 わ れ て い る。 また ジ メ チ ル エ ー テル か らの 電 気 取 り出 し も検 討 さ れ て い る。 これ らの標 準 状 態 に お け る理 論 起 電 力,理 論 効 率 を表4.3に た 。 メ タ ノ ー ル の 場 合,理 表4.3に
論 起 電 力 は1.21V,理
論 効 率 は約97%に
示し
も達 す る。
は そ の 他 の 燃 料 も併 せ て 示 した 。 白金 を触 媒 とす る現 状 の 技 術 で は,常
温 で十 分 な 電 気 化 学 的 な活 性 を示 す も の は水 素 で あ り,反 応 が 遅 い が メ タ ノ ー
図4.4 燃 料電 池 の理論 起 動 力,理 論 効 率
表4.3 各 種 燃 料 の 反応 ・理論 起 電 力 ・理 論 効 率(25℃)
(注)理
ル,ジ
論 効 率 はHHVを
基 準 とした 。
メ チ ル エ ー テ ル が これ に 続 く。 表4.3に
は1.06V,理
論 効 率 は約92%で
示 す よ う に,メ タ ン も理 論 起 電 力
あ る が,電 気 化 学 的 に十 分 な 活 性 が 得 られ な い
こ とか ら,改 質 器 に よ っ て まず 天 然 ガ ス を水 素 に変 換 し,そ の水 素 を燃 料 と して 活 用 して い る。
4.1.3電
圧-電 流 特 性
実 際 の 燃 料 電 池 は電 流 を取 り出す と図4.5の
よ う に電 圧 が低 下 す る。 電 圧 低 下
の 主 な 要 因 は 次 の 通 りで あ る。 ①
種 々 の抵 抗 に よ る抵 抗 分 極(ohmic
polarization):電
子 の電極 内での伝
導 お よ び イ オ ン の電 解 質 内 で の伝 導 に よ る電 圧 低 下 。 ②
電 極 反 応 に 関 係 し た 活 性 化 分 極(activation
polarization):触
媒 の活性
polarization):反
応物 質 の
に依 存 す る低 下 。
③
ガ ス 拡 散 阻 害 に よ る拡 散 分 極(concentration
電 極 反 応 箇 所 へ の供 給 や 生 成 物 の排 出 の よ うな物 質 移 動 に伴 い,反 応 点 の 分 圧,濃
度 の 異 な る こ と に よ る電 圧 低 下 。
抵 抗 分 極(ηohm)は 電 流 密 度 の増 加 と と も に一 定 の 割 合 で 増 加 す る。 活 性 化 分 極(ηact)は 電 流 密 度 の 低 い 領 域 で 急 に増 え,そ
の 後,電
流 密度 と ともに増加 す
る。 拡 散 分 極(ηconc)は 電 流 密 度 の低 い と こ ろ で は 非 常 に小 さ く,大 き くな る に つ れ徐 々 に増 え,電 流 密 度 が 最 大 近 くで 急 激 に増 大 す る。 以 上 か ら,実
際 の セ ル 電 圧 は(4.11)式
で 示 され る。
図4.5 電 池 の電 流-電 圧特 性
(4.11) こ こ でE0:理 また,図4.5の
論 起 電 力(V) 電 圧-電 流 特 性 を拡 大 して 横 軸 を電 流 密 度 の 対 数 で 表 示 し,図
4.6に 示 す 。 す で に効 率 表 示 に つ い てHHVとLHVの
違 い を説 明 した が,こ
こで は具 体 的
な数 値 の 求 め 方 に つ い て 記 述 す る。 電 池 の 変 換 効 率 は(4.12)式
で 示 され る。
変 換効率=理 論効 率 ×電圧効 率
(4.12)
これ を変 形 す る と
こ こで
ΔH0=-285.8kJ/mol(HHVベ
ー ス)
ΔH0=-241.8kJ/mol(LHVベ n=2,F=96,487ク
ー ス) ー ロ ン/mol
図4.6 セ ル の電 流-電 圧特 性
で あ る た め,電
池 の 変 換 効 率 は そ れ ぞ れ(4.13),(4.14)式
に な る。
(HHVベ
ー ス)
(4.13)
(LHVベ
ー ス)
(4.14)
一 例 と し て セ ル 電 圧 が0 .75Vの
場 合 の 変 換 効 率 は,
HHVベ
ースで
(50.6%)
LHVベ
ー スで
(59.9%)
とな る。
例 題 とし て,100Aの
電 流 を取 り出 す の に必 要 な水 素 お よ び 空 気 流 量 は い く ら
に な る か検 討 し て み る。 た だ し燃 料 利 用 率 を70%,空
気 利 用 率 を40%と
す る。
燃 料 利 用 率 お よ び空 気 利 用 率 の定 義 を それ ぞ れ注 1,注 2に 示 す 。 〈解 答 〉(4.3)式
か ら,水
の 時 外 部 に 電 流2×96,487Aを は 燃 料 利 用 率70%(水
素1molと
酸 素O.5molか
ら 水1molが
得 ら れ,そ
取 り出 す こ とが で き る。 こ れ か ら水 素 の必 要 量
素1molは22.4l)で
空 気 の必 要 量 は空 気 利 用 率40%,酸
あ る た め,
素 の 分 圧 は21%の
ため
注 1)燃 料 利 用 率 の 定義:セ ル ス タ ック内 で発 電 の た め に消 費 す る燃 料 量 を セ ル ス タ ック入 口 の燃 料 量 で 除 した値 。 燃 料利 用 率70%で
は,純 水 素 の 流 入量 が 消 費 量 の1/0.7=1.43倍
とな る。 注 2)空 気 利 用 率 の 定 義:セ ル ス タ ック内 で消 費 す る酸 素 量 をセ ル ス タ ッ ク入 口 の 空気 量 で除 した 値。 空 気利 用 率40%で
は,流 入 量 が セ ル 内酸 素 消 費 量 の(1/0.4)×(1/0.21)=11.9
倍 とな る。 こ こで 空気 中の 酸素 濃 度 を21%と
す る。
同 様 に 電 池 に 反 応 ガ ス を 流 し,電 こ の と き,電
流100Aを
取 り 出 し な が ら 1時 間 運 転 す る 。
池 内 で 生 成 され る水 分 量 は い く らに な る か を検 討 す る。
〈解 答 〉(4.3)式
よ り,水1molを
で あ る 。 水1mol/sは18g/sで
生 成 す る た め に 必 要 な 電 流 は2×96,487A あ る か ら, とな る。
次 に,定 格 運 転 時 の セ ル 電 圧 が0.75Vの
時,家 庭 用 コ ジ ェ ネ の 発 電 端 効 率,
送 電 端 効 率 は い く らか に な るか 検 討 す る。 た だ し燃 料 処 理 装 置 効 率:75%,イ バ ー タ効 率:90%,補
機 動 力 効 率:90%と
ン
す る。 な お,発 電 端 効 率 お よ び送 電 端
効 率 は注 1に定 義 され る。 〈解 答 〉
発 電 端 効 率:0.506×0.75=0.38
38%(HHVベ
ー ス)
送 電 端 効 率:0.506×0.75×0.9×0.9=0.307
30.7%(HHVベ
ー ス)
注 1)発 電端 効 率 お よび 送 電端 効 率:燃 料 電池 発 電設 備 に投 入 され る原燃 料 の もつ発 熱 量 に対 す る,出 力 され る電 気エ ネ ル ギ ー比 で表 し,電 気 エネ ル ギ ー の 出 力 す る位 置 に よ って, 効 率表 示 の 定 義 が 異 な る。 現在,燃 料 電 池 出力 端 で は発 電 端効 率 と よび,発 電 装 置 全 体 の 出力 端 で は送 電端 効 率 と よぶ 。
発電端効 率
送電端効率
原燃 料 燃料処 理装置
燃料電池
イ ンバ ー タ
(改質器,変 成器等)
(セルス タック)
(変換器)
4.2
補機動力 (空 気 ブ ロ ワー,冷
却 水 ポ ン プ等)
燃 料電 池の種 類
燃 料 電 池 は す で に 実 用 化 さ れ て い る り ん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC,Phosphoric Acid
Fuel
Cell)や
現 在 開 発 中 の 固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC,Polymer
trolyte
Fuel
Cell),溶
Cell)お
よ び 固 体 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC,Solid
の 種 類 に よ り,表4.4の
融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池(MCFC,Molten
よ う に分 類 され る。
Oxide
Carbonate Fuel
Cell)等
Elec Fuel 電解質
表4.4 各種 燃 料 電 池 の種類 と特 徴
こ の よ うに燃 料 電 池 は使 用 す る電 解 質 に よっ て 区 別 さ れ,電 解 質 の イ オ ン伝 導 性,耐
久 性 等 に は 最 適 な 使 用 温 度 が 存 在 す る。例 え ばPEFCは60∼80℃,
PAFCは190∼2OO℃,MCFCは600∼700℃,SOFCは800∼1000℃
で あ り,こ
れ ら の温 度 で 作 動 させ る の が 普 通 で あ る。 上 記 の 燃 料 電 池 以 外 に ア ル カ リ 水 溶 液 形 燃 料 電 池(AFC,
Alkaline
Fuel
Cell)が
あ る。 電 解 質 に ア ル カ リ水 溶 液 を使 用 す る た め,二 酸 化 炭 素(CO2)を
吸収 し て炭 素 イ オ ン を生 成 し,そ の 量 が 蓄 積 して増 大 す る と電 圧 特 性 低 下 を もた らす 。 この た めCO2を 宇 宙 用 電 源 等,限
含 む 改 質 ガ ス は使 用 で きず,純 水 素 の 供 給 を 主 体 と した
られ た 分 野 に適 用 され て い る。 な お 酸 化 剤 と して 酸 素 あ るい は
空 気 が 使 用 され る。 家 庭 用 コ ジ ェネ 機 器 と して,あ
るい は 自動 車 の駆 動 源 と して 開発 が 進 め られ て
い る固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC)は,電
解 質 に 固体 高 分 子 膜 が 用 い られ て い
る。 こ の 膜 内 を水 素 イ オ ン が 移 動 す る た め に は,水 分 の 供 給 を 必 要 とす る。 PEFCの
作 動 温 度 は約80℃ の た め,電 極 に は 白金 を主 体 と した 触 媒 が 使 用 さ れ,
改 質 ガ ス 中 に含 ま れ る一 酸 化 炭 素(CO)の す る。 そ の た め,CO濃
濃 度 に よ り,電 圧 特 性 が 著 し く低 下
度 の許 容 値 は10 ppmレ
ベ ル 以 下 と厳 し く管 理 され て い
る。 工 場,ホ
テ ル 等 で 運 転 実績 を有 す る りん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC)は,高
濃 度の
りん 酸 を電 解 質 と し て使 用 し,そ の 動 作 温 度 は約200℃ で あ る。 電 極 反 応 を促 進 す るた め,白 金 を主 体 と した 触 媒 が使 用 され る。 改 質 ガ ス 中 に 含 ま れ るCO濃 に よ り電 圧 特 性 が 低 下 す るが,運
転 温 度 がPEFCと
度
比 べ 高 い こ とか ら,PEFC
の一 酸 化 炭 素 許 容 濃 度 よ り高 く 1%以 下 と され て い る。 炭 酸 イ オ ン(CO2-3)が は,リ
電 解 質 中 を移 動 す る溶 融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池(MCFC)
チ ウ ム とカ リウ ム あ る い は リチ ウム とナ トリ ウム の 混 合 炭 酸 塩 が 電 解 質 に
用 い られ て お り,作 動 温 度 は これ らの 固 体 物 質 が 溶 融 して イ オ ン導 電 体 とな る 600℃ か ら700℃ 程 度 に設 定 さ れ て い る。 電 極 反 応 促 進 の た め の 白金 触 媒 は 高 温 作 動 の た め必 要 とせ ず,ま
た 一 酸 化 炭 素 も燃 料 の一 部 とし て使 用 され る 。
動 作 温 度 の一 番 高 い燃 料 電 池 は 固体 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC)で 質 に ジ ル コニ ア を 用 い,こ
の 電 解 質 内 を酸 素 イ オ ン(O2-)が
あ る。 電 解
移 動 す る。800℃
か ら1000℃ に す る こ と に よ り,酸 素 イオ ンの 導電 性 が 維 持 さ れ る。 以 下,各 種 燃 料 電 池 の 動 作 原 理,反
応,構 成,特
徴 等 を記 述 す る。 な お,ア ル
カ リ水 溶 液 形 燃 料 電 池 は適 用 が 限定 され て い る た め こ こで は省 略 した 。
4.2.1
固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC)
PEFCの
動 作 原 理 を 図4.7に
示 す 。 燃 料 極 と空 気 極 の 間 に水 素 イ オ ン を移 動
させ る 固体 高 分 子 膜 が挟 まれ て,電 解 質 と して 使 用 さ れ る 。燃 料 極 に燃 料(純 素 また は改 質 ガ ス)を,空
水
気 極 に空 気 を供 給 す る と,既 出 の式 の 反 応 に よっ て 電
気 エ ネル ギ ー を外 部 へ取 り出 す こ とが で き る。 PEFCの
単 セ ル は 図4.8に
示 す よ う に,固 体 高 分 子 膜 の 両 面 に 触 媒 層 を形 成
し た 電 極 を そ れ ぞ れ 配 置 し て 膜 電 極 接 合 体(MEA:Membrane Assembly)を
Electrode
つ く り,燃 料 ガ ス の 流 路 と な る燃 料 極 セ パ レ ー タ,空 気 極 の 流 路
とな る空 気 極 セ パ レ ー タ か ら構 成 され,こ 構 成 す る。 ス タ ッ ク構 成 例 を 図4.9に
れ らの単 セ ル が 多 数 積 層 され て電 池 を
示 す 。 セ ル ス タ ッ ク の両 端 に 金 属 の集 電 板
を配 置 し て外 部 電 流 取 り出 し端 子 と し,そ の 外 側 に 絶 縁 板 を介 して締 め 付 け板 を 配 置 して い る。 発 電 に伴 っ て生 成 す る水 が 反 応 ガ ス の 通 路 に沿 っ て上 か ら下 へ移 動 し,セ ル ス タ ッ ク下 部 か ら排 出 しや す くす る た め,電 極 面 を垂 直 に配 置 す る。 また 膜 の 湿 潤 を適 正 に保 つ た め,温 度 制 御 を厳 し く行 う必 要 が あ り,冷 却 板 は単 セ ル ご と に配 置 され て い る。 電 解 質 と し て,イ (perfluorocarbon
オ ン伝 導 の 優 れ た パ ー フ ロ ロ カ ー ボ ン ス ル ホ ン 酸
sulfonic acid;PFS)ポ
4.10に 示 す よ うに疎 水 性 のPTFE(ポ
リマ ー が 使 用 され て い る。 この膜 は図 リテ トラ フル オ ロエ チ レ ン)を 骨 格 と し,
図4.7 PEFCの
動作原理
図4.8 セ ル構 成
図4.9 PEFCの
セ ル ス タ ッ ク構 成[写 真提供:東 芝IFC株 式会社]
図4.10 高 分 子膜 の相 分離 構 造 モ デ ル
イ オ ン の伝 導 機 能 を有 す る側 鎖部 分 よ り構 成 され,プ
ロ トン と水 が移 動 しや す く
な っ て い る。 ま た 負 極 で は水 素 の 酸 化 反 応 を,正 極 で は酸 素 の還 元 反 応 を迅 速 に 進 め るた め,白 金 や 白 金 合 金 か らな る触 媒 層 が 電 解 質 膜 の 両 側 に形 成 され てい る。 PEFCは
常 温 で 作 動 し,電 解 質 に高 分 子 膜 を使 用 して い る た め,① 電 解 質 の
散 逸 の 心 配 は な い,② 常 温 で 起 動 す るた め,起 動 時 間 が 短 い,③ 作 動 温 度 が 低 い た め,電 池 を 構 成 す る材 料 の 制 約 が少 な い,④
高 分 子 膜 の 薄膜 化 に よ る低 抵 抗化
と高 活 性 な電 極 触 媒 に よ る高 出力 密 度 化 が 可 能,と
い う特 長 が あ る。
一 方 固 体 高 分 子 膜 に供 給 され る水 分 量 が 少 な い と内 部 抵 抗 は 増 大 し,供 給 量 が 多 い と電 極 内 の細 孔 が塞 が れ,ガ
ス拡 散 が 阻 害 さ れ る。 この よ うな セ ル 内 の水 管
理 を きめ細 か く行 わ な い と,セ ル 性 能 お よび 寿 命 の 維 持 が 困 難 とな る。 水 の管 理 が 特 に長 寿 命 化 に は欠 か せ な い 。
4.2.2
りん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC)
りん酸 形 燃 料 電 池(PAFC)は,水
素 イ オ ンが シ リ コ ン カ ー バ イ ド(SiC)微
粒 子 と りん酸 電 解 液 等 で 構 成 され た 電 解 質 層 を移 動 す る以 外 はPEFCの
動作 原
理 お よび 反 応 と同 じで あ る。 PAFCの
単 セ ル は 図4.11に
示 す よ うに,一 辺 の 長 さが50か
図4.11
PAFCの
セ ル構 成
ら100㎝
角,厚
みが 数 ㎜
の 大 き さで,電
ッ ク ス)の 両 側 に電 極(燃
解 質 で あ る濃 厚 りん 酸 を保 持 した 電 解 質 層(マ 料 極 お よび 空 気 極)が
密 接 して配 置 され て い る。 電 極
は カ ー ボ ン粉 に 白金 等 の貴 金 属 粒 子 を担 持 した触 媒 と,PTFE(ポ オ ロ エ チ レ ン)か
らな るガ ス 透 過 性 触 媒 層,お
トリ
リテ トラ フル
よび これ を 支 持 す る多 孔 質 カ ー ボ
ン支 持 層 か らな る。 各 セ ル を分 離 す る セ パ レ ー タ はガ ス不 透 過性 で 電 子 伝 導 性 を 有 す るカ ー ボ ン板 が 用 い られ て い る。 また 長 時 間 の 運 転 を維 持 す るた め に,り ん 酸 が 電 解 質 層 の他 に リブ付 き電 極 内 に も含 浸 さ れ て い る。 単 セ ル 当 た りの 出 力 電 圧 は0.6か
ら0.8Vと
低 い の で,高
い電 圧 を得 るた め
に は セ ル を数 百 セ ル 積 層 し て ス タ ック を構 成 す る。 ス タ ッ ク の構 造 を 図4.12に 示 す 。 セ ル 温 度 は平 均200℃ に維 持 され る よ う に数 セ ル ご とに冷 却 板 が挿 入 され て い る。 ス タ ック 全 体 は上 下 に集 電 板,絶
縁 板,締
め 付 け板 が取 り付 け られ,燃
料 お よ び 空 気 を給 排 す る マ ニ ホ ー ル ドが ス タ ック の 周 囲 に配 置 され て い る。 PAFCの
電 解 質 に りん 酸 を使 用 し て い る た め,改
質 ガ ス中 に含 まれ る二酸化
炭 素 に よ る変 質 は な い 。 動 作 温 度 は200℃ 程 度 の た め りん酸 に触 れ る と こ ろ を腐 食 し な い よ う処 置 して お け ば銅,鉄
図4.12
等 の金 属 は使 用 可 能 で あ る。 また 水 冷 却 が 可
PAFCの
セル ス タ ック
能 な た め,小 型 化 並 び に 暖 房 ・給 湯 等 広 い範 囲 の 熱利 用 も可 能 で あ る 。 PAFCは1965年 れ,燃
頃 か ら電 池 並 び に プ ラ ン トと し て の 研 究 が 精 力 的 に 開 始 さ
料 電 池 の セ ル 寿 命 で あ る 4万 時 間 が1990年
の 後 半 に検 証 さ れ た 。 現 在 実
用 化 され て い る 唯 一 の燃 料 電 池 で あ る。
4.2.3
溶 融炭酸 塩形燃料 電池(MCFC)
溶 融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池(MCFC)の
動 作 原 理 を 図4.13に
示す。
電解 質 を挟 ん で 燃 料 極 と空 気 極 を対 向 させ て配 置 す る。 空 気 極 に は 空 気 と二 酸 化 炭 素 の 混 合 ガ ス を供 給 し,燃 料 極 に は水 素 お よび 一 酸 化 炭 素 を供 給 す る。 空 気 極 で は空 気 中 の 酸 素(O2)と り炭 酸 イ オ ン(CO2-3)と
二 酸 化 炭 素(CO2)が,外 な る。CO2-3は
燃 料 と して 供 給 さ れ た 水 素(H2)と
部 回路 か ら電 子 を 受 け取
電 解 質 中 を燃 料 極 へ 移 動 し,燃 料 極 で
反 応 して 二 酸 化 炭 素 と水 蒸 気 を生 成 す る。
同 時 に 電 子 を外 部 回 路 へ 放 出 す る。 以 上 の 反 応 を 下 記 に示 す 。
な お,炭
燃料極
(4.15)
空気極
(4.16)
全 体 の 反 応2H2+O2→2H2O
(4.17)
酸 イ オ ン(CO2-3)はCO=3と
図4.13
も 表 示 で き,イ
MCFCの
動 作原 理
オ ン の 電 荷 数 が 2で あ
る こ と を意 味 す る(2 価 の 陰 イ オ ン を表 す)。 COも
燃 料 と して使 用 で き,そ の 反 応 は下 記 の よ う に な る。
(4.18) またCOがH2Oと
反 応 し て水 素 が 生 成 さ れ,生 成 され た 水 素 と酸 化 さ れ る反
応 も考 え られ る。
(4.19) 基 本 的 に は 水 素 と酸 素 か ら水 を生 成 す る 反 応 で あ る が,PEFCお と大 き く異 な る の は,CO2とCO2-3が
よびPAFC
反 応 に重 要 な役 割 を果 た して い る こ とで あ
る。 単 セ ル の 基 本 構 成 を 図4.14に 含 浸 させ た電 解 質 が,ニ
示 す 。 ア ル ミ ン酸 リチ ウ ム 粒 子 層 中 に炭 酸 塩 を
ッケ ル を主 成 分 と した 両 電 極 間 に挟 まれ た構 成 とな っ て
い る。 電 解 質 層 は 炭 酸 イ オ ンの 移 動 を司 る と と もに,両 極 間 の ク ロ スオ ーバ を抑 制 す る ガ ス 透 過 障 壁 層 の機 能 を果 た し て い る。 セ パ レー タ は セ ル ス タ ッ ク の電 気 的 接 続 を確 保 し,燃 料 ガ ス と酸 化 剤 ガ ス を分 離 す る 障壁 板 の 役割 を して い る。 動 作 温 度 が600℃ か ら700℃ の た め,貴 金 属 触 媒 が な くて も電 気 化 学 反 応 が 活 発 に進 む の み な らず,一
酸 化 炭 素 が あ っ て も,PEFCあ
る い はPAFCの
触 媒 被 毒 の 問 題 が な く,む し ろ燃 料 と し て使 用 で き る こ とか ら,COの
よ うな 比較 的多
い 石 炭 を ガ ス 化 した ガ ス も燃 料 と して使 用 で き る。 また 蒸 気 タ ー ビ ンあ るい はガ
図4.14 MCFCの
基本 構 成
ス タ ー ビ ン と組 み合 わ せ る こ と に よ り,50∼65%の
高 効 率 発 電 も期 待 で き る。 さ
ら に外 部 発 生 源 か ら希 薄 な二 酸 化 炭 素 を カ ソー ドに供 給 す る こ とに よ り,ア ノ ー ド側 に 高濃 縮 され た 二 酸 化 炭 素 が発 生 す るの で,二 酸 化 炭 素 の 回 収 装 置 と して も 利 用 可 能 で あ る。
4.2.4固
体 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC)
固 体 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC)は,電 (YSZ)な
解 質 に イ ッ トリ ア 安 定 化 ジ ル コ ニ ア
どの 酸 化 物 イ オ ン 導 電 性 固 体 電 解 質 を 用 い,そ の 両 面 に多 孔 性 電 極 を
取 り付 け,こ れ を 隔 壁 と して 一 方 の 側 に燃 料 ガ ス(水 素,一 側 に は酸 化 剤(空 理 を図4.15に
気)を
供 給 し,約1000℃
酸 化 炭 素),他
方の
で 動 作 す る燃 料 電 池 で あ る。 動 作 原
示す。
燃 料 に水 素 を 用 い た 場 合,
燃料極:
(4.20)
空 気 極:
(4.21)
全 体:
(4.22)
図4.15
SOFCの
動作原理
燃 料 に 一 酸 化 炭 素 を用 い た 場 合 の 電極 反 応 は,
燃料極:
(4.23)
空 気 極:
(4.24)
全 体:
(4.25)
とな る。 SOFCは
円 筒 形 と平 板 形 が あ る が,こ
こで は 円 筒 形 を例 に説 明 す る。 図4.16
に示 す よ う に空 気 極 を兼 ね た ラ ン タ ンマ ン ガ ナ イ トの 多 孔 質 体 管 の上 に,緻 密 な ジ ル コニ ア 電 解 質 層 を形 成 し,さ
ら に その 上 に 多 孔 質 ニ ッケ ル ・ジ ル コニ ア サ ー
メ ッ トの 燃 料 極 を 形 成 した も の で あ る。 空 気 は 円筒 内 を流 れ,燃 料 は 円 筒 の 外 側 を 流 れ る。 動 作 温 度 が1000℃ 程 度 の た め,電 極 反 応 が 速 や か に進 行 し,MCFCと
同様 白
金 触 媒 を必 要 と し な い。 ガ ス タ ー ビ ン と組 み合 わ せ る こ とに よ り,70%と
い う高
効 率 発 電 シ ス テ ム を構 成 す る こ とが 期 待 さ れ る。 以 上,4 種 類 の燃 料 電 池 につ い て記 述 した が,全 体 を ま とめ 各 種 燃 料 電 池 の反 応 式 を表4.5に,構
成 材 料 を表4.6に
示す。
図4.16 SOFC円
筒 セ ル構 成
表4.5各
表4.6各
部材
PEFC
電解質
種 燃 料電 池 の反 応 式
種 燃 料 電 池 の構 成 材 料
PAFC
パー フロ ロスルホ
MCFC
りん 酸(H3PO4)
ン酸 基
電解
炭 酸 リチ ウム
安 定 化 ジル コニ ア(YSZ)
(Li2CO3) 炭 酸 ナ トリウ ム
質
(Na2CO3) マ トリ
SiC
ア ル ミ ン酸 リチ ウ ム
ッ クス―
(γ-LiAlO2)粉
燃料極
多 孔 質 カ ー ボ ン板
多 孔 質 カ ー ボ ン板
ニ ッ ケ ル,ア
Pt担 持 カ ー ボ ン+
Pt担 持 カ ー ボ ン+
クロ ム
電
PTFE
極
SOFC
空気極
PTFE
多 孔 質 カ ー ボ ン板
多 孔質 カ ー ボ ン板
Pt担 持 カ ー ボ ン+
Pt担 持 カ ー ボ ン+
PTFE
4.3 4.3.1
末― ル ミ ニ ウ ム,
ニ ッ ケ ル,ジ
ル コニ ア サ
ー メ ッ ト
(Ni-A1Cr)
(Ni-YSZサ
ー メ ッ ト)
酸化 ニ ッケ ル(NiO)
Lラ ン タ ン マ ン ガ ナ イ ト
PTFE
燃 料 電 池 発 電 シ ス テ ム と水 素 製 造 燃料 電池発電 システム
燃 料 電 池 発 電 シ ス テ ム は,電 池 本 体 に燃 料(純
水 素 また は改 質 ガ ス)と 空 気 を
導 入 す る こ とに よ り電 気 を発 生 さ せ る発 電 装 置 で,図4.17の
よ うな シ ス テ ム構
図4.17 燃料 電池 発 電 シ ス テム
成 とな っ て い る。 同 図 は,実 用 化 して い る りん 酸 形 燃 料 電 池 発 電 シ ス テ ム の 例 で あ る が,① 天 然 ガ スや プ ロパ ン ガ ス 等 の 燃 料 を,水 素 を多 く含 む 改 質 ガ ス に変 換 す る 改 質 器,②
改 質 ガ ス 中 の 水 素 と空 気 中 の酸 素 とを電 気 化 学 的 に反 応 させ て,
直 流 電 力 を発 生 させ る電 池 本体,③ 換 す る電 力 変 換 装 置(イ
燃 料 電 池 で 発 生 した 直 流 電 力 を交 流 電 力 に変
ンバ ー タ),④
各 種 装 置 を適 正 に動 作 させ る た め の 制 御
装 置,⑤
燃 料 電 池 を冷 却 す る冷 却 装 置(冷 却 モ ジ ュー ル 水 処 理 装 置,水
蒸気分離
器 等)並
び に 電 池 本 体 や 改 質 器 か ら出 る排 熱 を回 収 す る熱 交 換 器 等 か ら構 成 さ れ
る。 都 市 ガ ス あ るい は プ ロパ ンガ ス 中 に は硫 黄 が 多 く含 まれ て い る の で,脱 硫 器 で 除 去 した 後,改
質 器 に水 蒸 気 と と もに 導 入 され る。 改 質 器 で は,バ ー ナ ー で 加 熱
さ れ た ニ ッケ ル を主 体 と した触 媒 の 入 った 改 質 管 を通 過 す る こ とに よ り,水 素 を 多 く含 む ガ ス に改 質 さ れ る 。 こ の ガ ス 中 に は多 量 の 一 酸 化 炭 素 が 含 まれ て い るの で,CO変
成 器 で 一 酸 化 炭 素 を二 酸 化 炭 素 へ 変 換 し,電 池 本 体 に影 響 を与 え な い
濃 度(約1%)ま
で 一 酸 化 炭 素 の 濃 度 を低 減 して 電 池 本 体 に 導 か れ る。
電 池 本 体 の 燃 料 極 に は改 質 器 か ら の改 質 ガ ス が,空
気 極 に は外 部 に設 置 した空
気 ブ ロ ワ ー か ら空 気 が 供 給 され る。 電 池 本 体 で は 改 質 ガ ス 中 の 水 素 の 約80%が 電 気 に変 換 され,残
りの水 素 は改 質 器 のバ ー ナ ー に 導 か れ,改 質 器 の 改 質 管 を加
熱 す るバ ー ナ ー の燃 料 と して利 用 され る。 一 方,空 気 極 で は導 入 され た 空 気 中 の 酸 素 の 約60%が
電 気 に変 換 さ れ,残
交 換 器 で 熱 が 回 収 され た 後,排
りの 空 気 は改 質 器 の 燃 焼 排 ガ ス と と も に熱
出 され る。
電 池 本 体 で 発 電 した 直 流 電 力 はイ ンバ ー タ(電 力 変 換 器)で 交 流 に 変換 され, シ ス テ ム に供 給 さ れ る。 燃 料 電 池 の 本 体 は,発 電 す る と温 度 が 上 昇 す るの で 水 で 冷 却 され る 。 電 池 を冷 却 し た冷 却水 中 に は水 蒸 気 が 含 まれ る の で,水 蒸 気 分 離 器 で 水 蒸 気 と水 に分 離 され,得 る と と もに,残
られ た 水 蒸 気 は一 部 が 改 質 器 の 改 質 反 応 に利 用 され
りの 水 蒸 気 は外 部 へ 取 り出す こ とが で き る。 水 蒸 気 分 離器 で 回 収
さ れ た 水 は 熱 交 換 器 を通 った あ と電 池 本 体 に戻 され,再 度 冷 却 水 と して利 用 され る。 電 池 冷 却 シ ス テ ム で は,水 蒸 気 が 改 質 用 と外 部 取 り出 し水 蒸 気 に利 用 され る た め,冷 却 水 は減 少 す る。 しか し電 池 本 体 の空 気 排 ガ ス 中 に は電 池 で発 生 した 生 成 水 が 含 ま れ て い る の で,そ れ を 回収 し,水 処 理 装 置 で純 水 に した あ と,こ れ ま で の 冷 却 水 に加 算 され る シ ス テ ム と な っ て い る。 こ の よ う な シ ス テ ム構 成 に よ り,外 部 か ら水 を補 給 す る こ とな くプ ラ ン ト内 で 水 自立 運 転 が 可 能 とな る。 現 状 の り ん酸 形 燃 料 電 池 は発 電効 率 が40%,熱 は81%と
効 率 が41%の
た め,総 合 効 率
な る。
4.3.2
水 素製造
水 素 社 会 が 実 現 し,水 素 が ど こで も手 に 入 る 社 会 イ ン フ ラ が 構 築 さ れ て い れ ば,図4.17中
の 改 質 器 は不 要 と な る。 しか し現 実 の 社 会 で は 水 素 イ ン フ ラ が 整
備 され て い な い た め,都 市 ガ ス あ る い は プ ロパ ンガ ス か ら水 素 を製 造 し,燃 料 電 池 へ 供 給 し て発 電 す る シス テ ム が 採 用 さ れ て い る。 以 下 で は 都 市 ガ ス か ら水 素 を どの よ うに して 製 造 す る か,ま た 現 在 開発 が進 め られ て い る燃 料 電 池 自動 車 の メ タ ノ ー ル,あ 改 質 反 応 に つ い て 記 述 す る。
る い は ガ ソ リ ンか ら水 素 を製 造 す る
(a)燃 料 処理 シ ステ ム
(b)改 質 器 の構 造 図4.18 燃 料 処理 装 置 の シス テ ム構 成
(1)都
市 ガ ス か らの 水 素 製 造
燃 料 電 池 発 電 シ ス テ ム で 使 わ れ て い る都 市
ガ ス か ら水 素 を製 造 す る シ ス テ ム構 成 例 を,図4.18に 都 市 ガ ス は,ガ
示す。
ス漏 れ の 早 期 発 見 を 目的 と して 硫 黄 化 合 物 で 付 臭 さ れ て い る。
こ の硫 黄 化 合 物 は燃 料 電 池 に とっ て有 害 で あ るた め,硫 黄 を取 り除 く脱 硫 器 が 設 置 さ れ て い る。 活 性 炭 や ゼ オ ラ イ ト等 の 吸 着 剤 を 用 い て 除 去 す る 吸 着 脱 硫 方 式 と,水 素 と反 応 させ 除去 す る水 添 脱 硫 方 式 が あ る。 脱 硫 器 の 後 段 の 改 質 器 で は,都 市 ガ ス の 主 成 分 で あ る メ タ ン(CH4)等 水 素 原 燃 料 と,発 電 シ ス テ ム 内 で 得 られ た 水 蒸 気 を混 合 し て,700℃
の炭化
前 後 に加 熱
され た改 質 管 内 に 導 くこ とに よ り改 質 ガ ス が 得 られ る。 こ の方 法 を水 蒸 気 改 質 方 式 とい い,水 素 製 造 効 率 の高 い 製 造 方 式 で あ る。 改 質 ガ ス 中 に は水 素 の他 に 一酸 化 炭 素(CO)お
よ び二 酸 化 炭 素(CO2)が
含 ま れ,特
に 一 酸 化 炭 素 は りん 酸 形
燃 料 電 池 お よび 固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池 の電 極 に使 用 さ れ て い る触 媒 を被 毒 させ, セ ル 電 圧 を大 き く低 減 さ せ る。 こ の た め,り 濃 度 を約1%ま
ん酸 燃 料 電 池 で はCO変
で 低 減 し,固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池 で は,さ
よ っ て,10ppm以
ら にCO選
成 器 でCO 択 酸化器 に
下 まで低 減 さ れ る。
改 質 器 の 内部 構 造 例 を 図18(b)に
示 す 。 改 質 管 が バ ー ナ ー で 加 熱 さ れ,改
質
管 に燃 料 と水 蒸 気 の混 合 ガ ス を通 す こ とに よ り改 質 ガ ス が 得 られ る。 水 素 は下 記 の 反 応 に よ っ て製 造 され る。 改 質 器 の 反 応:CH4+H2O→3H2+CO
反 応 温 度 約700℃
(4.26) CO変
成 器:CO+H20→H2+CO2反
応 温 度350か
ら400℃
(4.27) (4.28)
全 体 で CH4+2H2O→4H2+CO2 改 質 器 と変 成 器 で の 反 応 を合 わ せ て メ タ ン1molと
水 蒸 気2molか
水 素 を取 り出 す こ とが で き る。 で き た 改 質 ガ ス の 主 成 分 は,概 酸 化 炭 素20%と な お,CO選
ら4molの
ね 水 素80%と
二
な る。 択 酸 化 器 で はCO変
成 器 で 低 減 され たCO濃
酸 素 に よ り一 酸 化 炭 素 を選 択 的 に反 応 させ て,さ CO選
度 約1%を,空
らに10ppm以
気 中の
下 に低 減 す る。
(4.29)
択 酸 化 器:
溶 融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池 や 固 体 酸 化 物 形 燃 料 電 池 で は高 温 作 動 の た めCOを と して使 用 で き,こ の た めCO変
成 器 やCO選
燃料
択 酸 化 器 は不 要 と な る。 よ っ て 改
質 器 の 直 後 に燃 料 電 池 ス タ ック を配 す る構 成 と な っ て い る。 さ ら に高 温 作 動 の た め,燃 料 電 池 内 で 天 然 ガ ス を直 接 改 質 す る こ と も可 能 で あ る。 この よ うな 方 式 を 内部 改 質 方 式 とい い,独 立 した改 質 器 は不 要 と な る た め,シ 能 と な る。
ス テ ム の簡 略化 が 可
(2) メ タ ノ ー ル 改 質
メ タ ノ ー ル は 液体 で 取 り扱 い や す い た め,特 に 自動
車 用 の燃 料 と し て適 用 が 検 討 され て い る。 改 質 の 方 法 は大 き く 「水 蒸 気 改 質 」, 「部 分 酸 化 改 質 」,「併 用 改 質 」 の 三 つ に分 け られ る。 ① 水 蒸 気 改 質 メ タ ノ ー ル と水 蒸 気 が 反 応 し て(4.30)式 の 水 素 を 生 成 す る。
(4.30) メ タ ノ ー ル1molと
水1molか
ら水 素3molとCO2
1molが
この た め(4.30)式 か ら改 質 ガ ス の 組 成 は概 ね 水 素75%,二
生 成 され る。 酸 化 炭 素25%と
な
り,都 市 ガ ス か ら得 られ る水 素 濃 度 よ り低 くな る。 ② 部 分 酸 化 改 質 空 気 を添 加 して メ タ ノ ー ル を一 部 燃 焼 させ な が ら改 質 す る方 法 で あ る。 反 応 式 を下 記 に示 す 。
(4.31) メ タ ノー ル1molと
酸 素1/2molか
ら水 素2molを
生 成 す る。
部 分 酸 化 改 質 は発 熱 反 応 の た め,外 か ら熱 を与 え る必 要 が な く,ま た 始 動 が 早 く,改 質 量 を 短 時 間 で増 大 させ る こ とが 可 能 で あ る。 しか し水 蒸 気 改 質 と比 べ, 水 素 発 生 量 は2molで,水
蒸 気 改 質 の3molと
比 べ て1mol少
な い。 この た め水
素 製 造効 率 は低 く,ま た 添 加 した 空 気 の 残 り窒 素 が 含 まれ るた め,水 素 濃 度 も低 下 す る。 ③ 併用改 質 自動 車 用 は 水 蒸 気 改 質 と部 分 酸 化 改 質 を組 み 合 わ せ た 併 用 改 質 が 多 く用 い られ て い る。 こ れ をオ ー トサ ー マ ル とい い,(4.32)式
で 示 さ れ る。
(4.32) 発 熱 と吸 熱 が バ ラ ン ス して い るの で,始 動 性 が 早 く負 荷 追 従 性 も優 れ て い る。 併 用 改 質 は部 分 酸 化 改 質 よ り水 素 発 生 量 も多 く,水 素 濃 度 も高 い が,水 蒸 気 改 質 には及 ばない。
表4.7 メ タ ノール 改 質 方法 の比 較
以 上 を ま とめ て表4.7に
示 す。
(3) ガ ソ リ ン改 質
ガ ソ リン改 質 が 可 能 に なれ ば現 在 の イ ン フ ラが そ の ま
ま利 用 で き る の で,燃 料 電 池 自動 車 に とっ て は望 ま しい燃 料 で あ る。 しか し い く つ か の課 題 が あ る。 石 油 か ら精 製 した ガ ソ リン に は 多 くの硫 黄 が 含 まれ て い て,こ
の 除去 が 困 難 で
あ る。 また ベ ン ゼ ン環 か ら な る炭 化 水 素 を効 率 よ く改 質 で き る触 媒 が まだ 開 発 さ れ て い な い 。 こ のた め,現 在,硫
黄 を含 まな い 合 成 ガ ソ リ ンの 開 発 お よび 高 性 能
触 媒 の 開発 が 進 め られ て い る。 ガ ソ リ ン改 質 は,改 質 温 度 を800℃ と高 く しな けれ ば な らな い 。 改 質 温 度 が 低 い と改 質 触 媒 の 表 面 に炭 素 が 付 着 し,改 質 で き な い 。 ま た 改 質 ガ ス 中 に は10% 以 上 の一 酸 化 炭 素 が 含 ま れ,こ
の低 減 の た め に 一 酸 化 炭 素 と水 蒸 気 を反 応 させ
て,水 成 シ フ ト反 応(一 酸 化 炭 素 と水 蒸 気 を反 応 させ て 水 素 と二 酸 化 炭 素 に 変換 させ る反 応)に
よ り初 段 で 数%,さ
ら に 2段 目 で10ppm以
下 に 低 減 して い る。
この よ う に800℃ とい う高 温 で 動 作 させ る た め,材 料 の 制 約 や 気 密 性 等 の 解 決 を 必 要 とす る。 また併 用 改 質 を採 用 す るた め,CO濃
度 低 減 の た め 空 気 を 注 入 し,
そ の 結 果 多 量 の 窒 素 が残 り,改 質 後 の 水 素 濃 度 は30数%の
値 とな る等,実
用化
レベ ル に は まだ 多 くの 課 題 の解 決 が 必 要 で あ る。 (4) その 他 の 方 法
以 上 は現 在 適 用 あ る い は 開発 され て い る水 素 製 造 方法
で あ るが,上 記 の他 に 水 素 を製 造 す る 方法 と し て,① 水 を電 気 分 解 す る方 法,② 食 塩 電 解 工 場 の副 生 物 と し て,あ
る い は 製 鉄 工 場 の コー ク ス炉 か ら生 成 す る方
法,③ バ イ オ マ ス を ガ ス 化 し た り発 酵 した りす る方 法 等 が あ る。
4.4
燃 料電池 の適用
各 種 燃 料 電 池 が どの よ うに 適 用 さ れ て い るか,ま
た適 用 され よ う とし て い るか
に つ い て 以 下 に記 述 す る。
4.4.1
固体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC)
(1)家
庭用燃料 電池
固体 高 分 子 形 燃 料 電 池 は小 型 ・コ ンパ ク トで高 効 率
発 電 が 可 能 な こ とか ら,家 庭 に適 用 し,電 気 と同時 に熱 を供 給 す る家 庭 用 燃 料 電 池 発 電 シ ス テ ム を提 供 で き る。 シ ス テ ム の一 例 を 図4.19に
示 す。都市 ガ スな ど
の化 石 燃 料 か ら水 素 を 多 く含 む 改 質 ガ ス を作 り,そ れ を 用 い て 発 電 す る と と も に,発 電 時 に発 生 す る熱 や 燃 料 処 理 装 置 の 排 熱 か らお湯 を取 り出 し,貯 湯 槽 にた くわ えて 必 要 時 に使 用 す る シ ス テ ム で あ る。 こ の燃 料 電 池 発 電 シ ス テ ム を 導 入 し た 時 の 経 済 性 お よ び環 境 性 に つ い て,お 湯 を余 らせ な い 運転 をべ ー ス に,電 力 の 不 足 分 は商 用 電 力 で 賄 う との 前 提 で 導 入 効 果 が 試 算 され た 。 そ の 結 果 が 図4.20 に示 され る。 従 来 の シ ス テ ム と比 べ,一 素 排 出 量 が24%,年 済 性,環
間 光 熱 費 が19%そ
次 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 が20%,二
酸化 炭
れ ぞ れ 削 減 で き る との 結 果 が 得 ら れ,経
境 性 の面 で優 れ て い る こ とが 示 され た 。 現 在,電
図4.19 家庭 用 燃料 電 池 シス テ ム
気 メ ー カ ー,住 宅 メー
従 来 シス テ ムの 場合 (給湯 器-火 力 発電 所)
家庭用燃料電池の場合
● 一 次 エ ネル ギ ー消 費 量20%削 出 量24%削
減,NOx排
● 年 間 光 熱 費19%削
減,CO2排
出量56%削
減
減
図4.20 経 済性 ・環境 性 評 価
カ ー,石 油 会 社,ガ
ス 会 社 等 が 積 極 的 に商 品化 に 向 け た研 究 開 発 を進 め て お り,
国 も参 画 して 安 全 性 に か か わ る規 格,適
用 基 準 作 成 の デ ー タ 取 得 等 の た め の評 価
試 験 が 行 わ れ て い る。 そ の一 例 を 図4.21に
示 す。 これ はメー カーで開発 された
家 庭 用 燃 料 電 池 の デ ー タ を取 得 す る た め の試 験 実 施 状 況 で あ る。 効 率,耐 安 全 性 等 の検 証 後2005年 (2)燃
料 電 池 自動 車
久性,
頃 の商 用 化 を 目 指 し開 発 が進 め られ て い る。 自動 車 の 排 ガ ス は都 市 の 空 気 汚 染 の 主 原 因 と もい わ
れ,環
境 に優 しい 自動 車 の 開 発 が 望 ま れ る 。 す で に ガ ソ リ ン エ ン ジ ン の 直 噴 方
式,小
型 車 用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン化,ガ
せ たハ イ ブ リ ッ ド車,バ
ソ リ ンエ ン ジ ン とバ ッ テ リ とを組 み合 わ
ッテ リー 搭 載 の 電 気 自動 車 等 の 開発 が 手 が け られ,燃 料
電 池 自動 車 の 開 発 もそ の 候 補 の 一 つ と して 進 め られ て い る。 図4.22に にPEFCの
示す よ う
出 力 密 度 が 年 々 増 大 し,燃 料 電 池 の コ ンパ ク ト化 が 進 め ら れ た 結 果
と して 自動 車 の 床 下 に搭 載 で き るサ イ ズ に ま で燃 料 電 池 用 駆 動 シ ス テ ムが 小 型 化 され,燃
料 電 池 自動 車 の 実現 性 が 急 速 に 高 ま っ て きた 。 現 在,燃
料 電 池 の燃 料 と
し て高 圧 タ ンク か ら圧 縮 水 素 を燃 料 電 池 へ供 給 し発 電 す る と と も に,ブ レ ー キ 回 生 に よ るエ ネ ル ギ ー 回収 の た め,二 次 電 池 あ る い は電 気 二 重 層 キ ャパ シ タ を搭 載 し,起 動 時 に も使 用 す る燃 料 電 池 自動 車 が 主 に製 作 され,公 道 試験 用 に使 用 さ れ て い る。
図4.21 各種 の評 価状 況[写 真提供:社 団法人 日本ガス協会]
図4.22 燃 料 電池 の 出力 増大
(a)水 素 を燃 料 とす る場 合
(b)炭 化 水 素 を燃 料 とす る場 合 図4.23燃
料 電 池 自動 車 の 構成
燃 料 電 池 自 動 車 の 構 成 は,図4.23に
示 す よ う に上 記 の 純 水 素 を直 接 燃 料 電 池
へ 供 給 す る もの と,炭 化 水 素 を燃 料 と して 改 質 器 で水 素 を多 く含 む改 質 ガ ス に変 換 した あ と,電 池 へ供 給 す る シ ス テ ム とに 区 分 され る。 自動 車 に燃 料 電 池 シ ス テ ム を搭 載 す る と き,ス ペ ー ス と重 量 を極 力 小 さ くす る 必 要 が あ る 。 炭 化 水 素 系 を燃 料 とす る メ タ ノ ー ル お よび ガ ソ リ ン は,搭 載 重 量 と 体 積 は 小 さ い が 改 質 器 を必 要 とす る。 特 に ガ ソ リン改 質 は開 発 に 時 間 を要 して い る。 純 水 素 の使 用 は改 質 の 必 要 が な い が,貯 蔵 タ ン ク の体 積 が 大 き くな り走 行 距 離 に制 約 を受 け る。 しか し近 年,圧 られ,こ
れ が 実 現 す れ ば500㎞
この 他,燃
力70MPaの
水 素 貯 蔵 用 タ ン クの 開 発 が進 め
程 度 の 走 行 距 離 が 確 保 さ れ る と言 わ れ て い る。
料 の選 定 に 当 た っ て は環 境 性,イ
ン フラ 整 備,コ
ス ト等 総 合 的 に判 断
し決 め る必 要 が あ る。 燃 料 電 池 自動 車 の 商 用 化 に当 た っ て は,① 小 型 ・コ ンパ ク ト化 ・凍 結 対 応,起 動 時 間 の短 縮 と早 い 応 答 性,② 全 性,環
燃 料 の選 定 とそ の供 給 方 法,③
境 性 に 向 けた さ らな る研 究 開 発 を必 要 とす る。
コ ス ト低 減,④
安
図4.24燃
料 電 池 自動車 と水 素 ス テー シ ョ ン
[写真 提供:(独)新 エネルギー産業技術 総合開発機構]
す で に ア メ リカ,ヨ ー ロ ッパ,日 本 で燃 料 電 池 自動 車 の 公 道 試 験 が 開始 され て い る。 また 試 験 に当 た っ て は,水 素 を供 給 す る水 素 ス テ ー シ ョン も設 置 され,イ フ ラ整 備 も逐 次 行 わ れ て い る。 そ の 一 例 を図4.24に
ン
示 す。 こ の よ う に燃 料 電 池
自動 車 の 実 用 化 に 向 け た研 究 開 発 が,官 民 一 体 と な っ て 着 々 と進 め られ て い る。
4.4.2
りん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC)
りん 酸 形 燃 料 電 池 は 燃 料 電 池 の 目標 寿 命 時 間 で あ る 4万 時 間 を達 成 し,プ ラ ン ト と し て も連 続 運 転9500時
間 とい う実 績 を 有 し,工 場,ホ
テ ル,病 院 等 で 使 用
され て い る唯 一 の 実 用 化 され た燃 料 電 池 で あ る。 現 在 コ ジ ェ ネ機 器 とし て,バ イ オ ガ ス 等 を利 用 す る環 境 機 器 と して,ま た 非 常 用 の 電 源 とし て幅 広 く適 用 が 進 め られ て い る。 その 状 況 を説 明 す る。 (1) コ ジ ェネ 機 器 と して の利 用 は,100kWと200kWが 41%,総
合 効 率81%で
あ り200kWの
稼 動 して い る りん 酸 形 燃 料 電 池 プ ラ ン ト 場 合 の 電 気 効 率 は40%,熱
効 率
電 気 と熱 を 同 時 に供 給 す る コ ジ ェ ネ 機 器 と して 適 用 さ れ
て い る。 プ ラ ン トか ら供 給 され る電 圧 は400V∼440Vで,熱
は 蒸 気 お よ び温 水
と して 取 り出 す こ とが で き る 。 プ ラ ン ト内 シ ス テ ム 構 成 とそ の概 観 の 一 例 を 図 4.25に 示 す 。
図4.25
(2)バ
シス テ ム構 成 とプ ラ ン ト概 観[写 真提供:東 芝IFC株 式 会社]
イオガスの利 用
食 品 排 水,生
ゴ ミ,下 水 汚 泥 等 の 有 機 性 廃 棄 物 か
ら嫌 気 性 処 理 に よ り発 生 す るバ イ オ ガ ス(主 成 分 に メ タ ン)は,従
来 は低 カ ロ リ
ー の た め ボ イ ラ ー で 燃 焼 させ て い た 。 しか し,燃 料 処 理 装 置 で水 素 を 多 く含 む 改 質 ガ ス に変 換 して燃 料 電 池 へ 供 給 す る シ ス テ ム が 開発 され た こ と に よ り,高 効 率 の発 電 シス テ ム を構 成 で き る こ とか ら,省 エ ネ ル ギ ー 並 び に環 境 機 器 と して利 用 す る こ とが 可 能 とな っ た 。 例 え ば ビ ー ル 工 場 に200kWプ 合,ビ
ラ ン トを 適 用 し た 場
ー ル 工 場 の廃 液 か らバ イ オ ガ ス を発 生 させ て発 電 す る こ とが で き,一 カ 月
に120か
ら130MWhの
電 力 を回 収 し,発 生 した 熱 は ビー ル 製 造 工 程 で 利 用 され
て い る。 ま た 生 ゴ ミの嫌 気 性 処 理 で は,1 トン の生 ゴ ミか ら580kWhの
発電 が
可 能 とな る。 この よ う にバ イ オ ガ ス を利 用 した 燃 料 電 池 発 電 シ ス テ ム は,今 後 広 く適 用 され て い く もの と期 待 され る。 燃 料 電 池 の適 用 お よび 試 験 実施 状 況 例 を図 4.26と4.27に
示す。
この 他,下 水 汚 泥 か らの 消 化 ガ ス(主 成 分 は メ タ ン),半 導 体 工 場 の 洗 浄 工 程 で 使 用 した メ タ ノ ー ル,ご
み焼 却 の 溶 融 炉 ガ ス の利 用 等,多 様 な燃 料 を利 用 した
燃 料 電 池 の 適 用 が 各 所 で 行 わ れ て い る。 一 例 と し て,各 種 の 燃 料 を適 用 した 時 の 200kWプ
ラ ン トの 発 電 に必 要 な ガ ス量 を表4.8に
示 した 。
図4.26
ビー ル 工 場 に適 用 した例 [写真提供:東 芝IFC株 式会社] 図4.27 生 ゴ ミ発 電 へ の適 用 [写真提供:鹿 島建設株式会社]
表4.8 多様 な燃料 利 用
燃料 の種類 都市ガス LPG(プ
ロパ ン)
200kW発
電 時 の必 要量 43Nm3/h
適用分野 病 院,ホ
40kg/h
テ ル,工
場
病 院,ホ テ ル,工 場 都 市 ガ ス の な い地 域
バイオガス
77Nm3/h
ビール工 場,ス ーパ ー等 の 生 ゴ ミ処 理,家 畜 糞尿
消化ガス
90Nm3/h
下水処理場
90kg/h
半導体工場
溶融炉ガス
380Nm3/h
ゴ ミ処 理場
副生水素
150Nm3/h
化学工場
メ タノ ール
(3) 高 品 質 電 源 と して の 利 用
高 品 質 電 源 と は,系 統 で 停 電 が発 生 し て も
継 続 して 電 力 が 供 給 で き る シ ス テ ム を い う。 燃 料 電 池 の 適 用 の 一 例 を 図4.28に 示 す。 燃 料 電 池 で 発 電 した 直 流 電 力 は イ ンバ ー タ で 交 流 に変 換 後,重 られ る。 余 っ た直 流 電 力 は,も る。 図4.28の
要 負 荷 に送
う一 方 の イ ンバ ー タ で 交 流 に変 換 後 系 統 に送 られ
シ ス テ ム で は,落 雷 等 で 系 統 の 電 力 が 遮 断 さ れ た 場 合 で も無 停 電
で 重 要 負 荷 に電 力 を供 給 継 続 で き,ま た 燃 料 電 池 が 停 止 した 時 は サ イ リス タ ス イ ッチ に よ り,電 力 が 無 瞬 断 で 系 統 か ら重 要 負 荷 へ供 給 さ れ る シス テ ム の た め,重 要 な 負荷 に対 し安 定 した 電 力 供 給 が 可 能 とな る。
図4.28 高 品質 電 源 シス テム の例
4.4.3
溶 融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池(MCFC)
溶 融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池 は発 電 効 率 が 高 く,高 温 排 熱 が 得 られ る こ とか ら,分 散 電 源 と して また 集 中大 容 量 発 電 シ ス テ ム と して 利 用 さ れ る こ とが 期 待 され る。 ア メ リカ で オ ン サ イ ト電 源 と して 開 発 さ れ た,250kW常 料 電 池 プ ラ ン トを図4.29に
圧 内 部 改 質 方 式 の燃
示 す 。 りん酸 形 燃 料 電 池 と同 様 の利 用 が 可 能 で あ る。
一 方,大 容 量 高 効 率 発 電 の 実 現 に 向 けた 開発 が 進 め られ て い る。 国 内 の プ ロ ジ ェ ク トの 例 で あ るが,MCFCの
図4.29 250kW常
空 気 極 の排 ガ ス に よ って1Mpa級
圧 内部 改 質MCFC[写
真提供:丸 紅株式会社]
のガ スター ビ
(a) モ ジ ュ ー ル
(b) 発 電 プ ラ ン ト 図4.30
ン を駆 動 し,大 容 量MCFC発
モ ジ ュ ー ル 及 び プ ラ ン ト例
電 とガ ス タ ー ビ ン発 電 機 と の組 み 合 わ せ に よ り,
高 効 率 発 電 シ ス テ ム を実 現 す る もの で,モ の イ メ ー ジ 図 を図4.30に
ジ ュ ー ル お よ び組 み合 わ せ た プ ラ ン ト
示 す 。 運 転 圧 力1.2MPaで
送 電 端 効 率50%(HHV)
以 上 の見 通 し を得 て い る。 燃 料 ガ ス と し て一 酸 化 炭 素 が 使 用 可 能 なた め,石 炭 ガ ス 化 ガ ス を 用 い た 大 容 量 発 電 プ ラ ン トの 実 現 も期 待 され る。
4.4.4
固 体 酸 化 物 形 燃 料 電 池(SOFC)
常 圧 形 と加 圧 形 が 検 討 され て い る。 常 圧 形100kWコ を 図4.31に
ジ ェネ レ ー シ ョン の 一 例
示 す 。 りん酸 形 お よ び溶 融 炭 酸 塩 形 と同 様,コ
れ て い る。 発 電 効 率 は46%(LHV)と
ンパ ク トに ま とめ ら
高 く,ヨ ー ロ ッパ で 実 証 試 験 が行 わ れ て
い る。 加 圧 形 は マ イ ク ロガ ス タ ー ビ ン と組 み 合 わ せ た もの で,ガ で 加 圧 さ れ た 空 気 をSOFCモ
ジ ュ ー ル に 供 給 し,ま たSOFCの
ス タ ー ビ ンの圧 縮 機 高温排 ガ ス をガ
ス タ ー ビ ン の燃 焼 器 へ 供 給 して ガ ス タ ー ビ ン の シ ャ フ トを回 転 させ る。 この よ う な 組 み 合 わ せ の シ ス テ ム に よ り,送 電 端 効 率57%(LHV)を kWSOFCシ
ス テ ム の例 を図4.32に
示 す。
達 成 で き る。220
図4.31常
圧100kWSOFCコ (C
図4.32マ
SOFCの
Siemens
ジ ェ ネ シ ス テ ム Westing
house
power
Corporationよ
り許 諾 を 得 て 転 載)
イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ン との 組 み 合 わ せ に よ る220kWSOFC発
排 ガ ス を ガ ス タ ー ビ ン に,さ
電 シス テム
ら に そ の 排 ガ ス で 蒸 気 タ ー ビ ン を運 転
す れ ば 発 電 効 率 は 上 昇 す る。 そ の 一 例 を図4.33に に つ い て検 討 さ れ た 結 果,送 電 端 効 率64.3%(HHV)が
示 す。 プ ラ ン ト容 量700MW 得 られ た 。SOFCは
効 率 発 電 シ ス テ ム と し て極 め て有 望 で あ り,今 後 の 開 発 が 期 待 さ れ る。
高
図4.33
SOFCと
ガ ス タ ー ビ ン,蒸
気 タ ー ビ ン と の 組 み 合 わ せ に よ る発 電 シ ス テ ム
改 質 に必 要 な 熱 を燃 料 電 池 反 応 に 起 因 す る排 熱 で賄 う こ とが で き,ま た 天 然 ガ ス か ら電 力 へ の 変 換 効 率 も極 め て 高 い 。 あ わ せ て 改 質 器 を必 要 と しな い の で,コ ンパ ク ト化 が 可 能 で あ る。 この よ う な特 長 を有 す る こ とか ら,自 動 車 用補 助 電 源 に また 家 庭 用 コ ジ ェ ネ機 器 に適 用 す る開 発 も行 わ れ て い る。
4.5
実 用 化 へ の 課題
4.5.1
固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池(PEFC)
PEFCの
実 用 化 に 向 け て,い
くつ か の課 題 解 決 を必 要 とす る。 一 つ は耐 久 性
の確 立 で あ る。 電 池 寿命 と し て 自動 車 用 は5000時
間,家 庭 用 は40,000時
間を目
標 と し て い る。 自動 車 の 場 合,起 動 停 止 と負 荷 変 動 が 多 く,改 質 器 を搭 載 した 燃 料 電 池 自動 車 で は,過 渡 期 にCO濃
度 の 高 い ガ ス が 供 給 さ れ た り,電 池 温 度 が 変
動 した りす る。 一 方,家 庭 用 は電 力 需 要 の 多 い昼 間 に運 転 し,電 力 供 給 を必 要 と しな い夜 間 は 停 止 す る とい っ た 運 用 や,ま
た40,000∼60,000hの
要 求 さ れ る。 現 状 検 証 され て い るPEFCの
電 池 寿 命 は 単 セ ル あ る い は数10セ
を積 層 した 電 池 で10,000h程
長時 間運 転 が ル
度 運 転 した 例 が あ る だ け で あ り,シ ス テ ム と して
の 長 時 間 検 証 は今 後 の課 題 で あ る。 この た め 触 媒 や高 分 子 膜 の耐 久 性 向 上,特
に
低 加 湿 条 件 下 で も長 時 間安 定 して 運 転 で き る電 池 の 開発 を必 要 とす る。 二 つ め は コ ス トの 低 減 で あ る。 燃 料 電 池 自動 車 の価 格 は ざ っ と 1億 円 台,家 庭 用 燃 料 電 池 は ざ っ と 1千 万 円 台 程 度 と言 わ れ て い るo一 般 に普 及 す る に は,自 動 車 は 従 来 車 と同 等,家
庭 用 は約50万
円程 度 と され て い る。 この た め の コス ト低
減 は 量 産 化 だ けで は不 可 能 で あ り,触 媒 量 の低 減 技 術,低
コ ス トな 高 分 子 膜 の開
発 とい っ た数 々 の 技 術 的 な課 題 解 決 を必 要 とす る。 地 球 温 暖 化 等 の 環 境 問 題 解 決 の切 り札 と して,自 動 車 用 お よ び家 庭 用 に適 用 で き るPEFCへ
の 期 待 が 高 まっ て き て い る。 国 も2010年
定 置 用 で210万kW,2020年
に は 自動 車500万
に は 自動 車 で 約 5万 台,
台,定 置 用1000万kWの
目標 を
掲 げ て積 極 的 に 支 援 して い る。 多 くの 技 術 課 題 は あ る もの の,PEFCの
開 発 は順 調 に 進 め られ,そ
の成果 と
し て 自動 車 分 野 で は公 道 走 行 試 験 が 行 わ れ て い る。 また 家 庭 用 で は ガ ス会 社 を中 心 に実 証 試 験 が 行 わ れ,燃 料 電 池 の安 全 性,信 立,必
頼 性 に関 す る 試験 ・評 価 手 法 の確
要 な 規 制 の 見 直 し,規 格 の 確 立 等 実 用 化 ・普 及 に 向 け た制 度 面 お よび技 術
面 の 整 備 ・検 討 に 関 す る プ ログ ラム が,着
4.5.2
りん 酸 形 燃 料 電 池(PAFC)
り ん 酸 形 燃 料 電 池 は1960年
代 か ら12.5kW,40kW,200kWオ
ラ ン ト と して 各 種 の 実 証 試 験 が,ま が1970年
実 に進 め られ て い る。
ン サ イ トプ
た 電 力 用 発 電 プ ラ ン トが 開発 され,実 証 試 験
代 か ら進 め られ て きた 。 しか し,ガ ス タ ー ビ ン と蒸 気 タ ー ビ ン と を組
み 合 わ せ た コ ンバ イ ン ド発 電 の効 率 が 上 昇 した こ とか ら,電 力 用 の りん 酸 形 燃 料 電 池 の 開発 は 中 断 され,現 る。 この 間,電
在 は オ ン サ イ ト用 電 源 の み が 利 用 され る に 至 っ て い
池 の 目標 寿 命 時 間 で あ る40,000hは
達 成 さ れ,オ
ン サ イ ト電 源
と して幅 広 く利 用 され て きた 。 現 在 適 用 さ れ た プ ラ ン トは全 世 界 で 数100台
の オ ー ダ ー で あ り,設 置 台 数 の 伸
び が 行 き悩 ん で い る。 この 原 因 は コ ス ト高 で,普 及 台 数 が 少 な く,量 産 効 果 が 現 れ て い な い こ とに もよ る。 PEFCの
研 究 開 発 が,家 庭 用 電 源 と して,ま
た 自動車 用駆 動 源 として活発 に
進 め られ て い るが,本 格 的 な導 入 は2010年 PAFCは
以 降 と予 想 され る 。
実 用 化 レベ ル に 達 し て い る 唯 一 の 燃 料 電 池 で あ る。 国 の 支 援 を得 な
が ら利 用 範 囲 を拡 大 し,量 産 化 効 果 に よ りコ ス ト低 減 を進 め,燃 料 電 池 の普 及 を 図 っ て い く こ とが 期 待 され る。
4.5.3
溶 融炭酸塩 形燃料電池(MCFC)
MCFCの
実 用 化 に向 けて の課 題 は長 寿 命 化,高
効 率 化,低
コ ス ト化 で あ る。
電 池 の劣 化 現 象 で あ るニ ッケ ル カ ソー ドの 溶 解 とニ ッケ ル 析 出 に よ るマ ト リ ック ス の 内部 短 絡,ス
テ ン レ ス セパ レー タ の金 属 腐 食,蒸
発 に よ る電 解 質 損 失 等,現
在 直 面 して い る課 題 の 一 つ一 つ を解 決 して い くこ とが 重 要 で あ る。 特 に高 効 率 化 に 向 け て は1MPa級
で 動 作 す る ガ ス タ ー ビ ン との組 み合 わ せ が で きれ ば,60%
程 度 の発 電 効 率 達 成 が 可 能 とな る こ とか ら,MCFCの
高 圧 化 運 転 が 望 ま れ る。
コ ス ト面 で は 大 容 量 化 をた だ ち に手 が け る の で は な く,オ ンサ イ ト形 で ,モ ジ ュ ー ル 化 を進 め なが ら運 転 実 績 を挙 げ ,ま た 量 の拡 大 を進 め な が らそ の技 術 を大 容 量 発 電 シ ス テ ム へ 適 用 して い く こ とが 望 まれ る。
4.5.4
固体酸化物 形燃料電池(SOFC)
固体酸 化物形燃 料電池 は二つの方向 の開発が行 われて いる。 一 つ は オ ン サ イ トコ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン で 低 温 動 作 を 指 向 す る こ と に よ り, SOFCの
長 寿 命 化,金
属 等 の安 価 な 材 料 の使 用 に よ る低 コ ス ト化 が 図 られ る。
この た め に低 温 で も酸 素 イ オ ン導 電 率 が 高 い 電 解 質 材 料 の開 発,ま
た 電 解 質 の薄
膜 化 の 開 発 が 必 要 とな る。 も う一 つ は 従 来 の 路 線 上 の 火 力 代 替 用 で あ る。SOFCの
高 温 排 熱 を利 用 し た
ガ ス タ ー ビ ン と蒸 気 タ ー ビ ン との組 み 合 わ せ に よ り高 効 率 発 電 シ ス テ ム を確 立 す る もの で,耐 久 性,信 の 開 発,ま 要 で あ る。
頼 性,低
コ ス ト化 等 が 実 現 で き るSOFC電
池 モジ ュール
た そ の ス ケ ー ル ア ップ とシ ス テ ム開 発 を継 続 的 に進 め て い くこ とが 必
4.6ま
とめ
環 境 問 題 解 決 に向 けて,ゼ
ロ エ ミッ シ ョン を 目指 した 燃 料 電 池 自動 車,ま
た電
気 と熱 を活 用 して 総 合 効 率 を高 め た 分 散 電 源 と して の 家 庭 用,業 務 用燃 料 電 池, そ して,ガ
ス タ ー ビ ン,蒸 気 タ ー ビ ン と組 み合 わ せ,排
率 発 電 を 目指 す 高 温 型 燃 料 電 池,こ
ガ ス を有 効 活 用 して 高 効
れ ら は,わ れ わ れ が 直 面 す る環 境 問 題 解 決 の
切 り札 と して,徐 々 に 適 用 拡 大 され て い く もの と予 想 さ れ る。 長 期 的 に は化 石 燃 料 の 枯 渇 は避 け られ な い 。 そ の 時 に は再 生 エ ネ ル ギー か ら水 素 を製 造 ・輸 送 ・貯 蔵 し,そ れ をエ ネル ギ ー 源 と して 活 用 し,自 動車 等 の駆 動 源 とし て,あ
る い は発
電 シ ス テ ム と し て の燃 料 電 池 を 幅 広 く利 用 す る社 会 の到 来 が 期 待 され る。
問題 (1)燃 料 電 池 の種 類 と,そ れ ぞ れ の特 徴 を 述 べ よ。 (2)固 体 高 分 子 形 燃 料 電 池 が 自動 車 用 に 開 発 さ れ て い る が,そ
の理 由 を述 べ
よ。 (3)り ん 酸 形 燃 料 電 池 は 実 用 化 さ れ て い る唯 一 の燃 料 電 池 で あ るが,そ
の応 用
分 野 を述 べ よ。 (4)高 効 率 発 電 シ ス テ ム を 目指 し て い る燃 料 電 池 の種 類 と,ど の よ うに して効 率 向 上 を 図 るか を述 べ よ。 (5)な ぜ 燃 料 電 池 が 期 待 され て い るか,理 (6)出 力60kWの
由 を述 べ よ。
燃 料 電 池 が あ る。 常 圧 運 転 で セ ル 電 圧0.75V,100Aの
ル を使 用 す る と何 セ ル必 要 か 。燃 料 利 用 率70%,空 と きの,必
気 利 用 率40%と
セ する
要 水 素 量 お よ び空 気 量 を求 め よ 。
(7)定 格100Aの
セ ル が あ る。 こ の セ ル を10時
間 運 転 した ら,発 生 す る水 分
はい く らか 。 (解答 は巻 末)
第5 章 風 力発電
風 力 発 電 は 空 気 の運 動 エ ネ ル ギ ー を電 気 エ ネ ル ギ ー に変 換 す る発 電 方 式 で,近 年 設 置 台 数 が 急 激 に増 加 し て い る。 こ こで は風 力 発 電 の原 理,効
率,運 転 方 法,
最 新 技術 に つ い て 述 べ る。
5.1
風 力発 電の概 要
風 は 空 気 の循 環 に よ っ て 発 生 す る。 太 陽 光 に よ り地 球 が 熱 せ られ る と,赤 道 近 傍 の温 度 は上 昇 す るが,極
地 は上 昇 しな い 。 この た め 赤 道 付 近 で は暖 か い 空 気 が
上 昇 し,こ れ が 上 空 を極 地 へ 向 か い,一 方 極 地 の冷 え た 重 い空 気 が 地 表 に 沿 っ て 赤 道 に 向 か っ て流 れ る。 これ に地 球 の 自転 が 加 わ り地 球 の マ ク ロ的 な風 の 流 れ が 形 成 さ れ る。 図5.1に
示 す よ う な,い わ ゆ る偏 西 風,貿
易 風 とい った 地 球 規 模 の
風 が 発 生 す る。 また 陸 地 と海 洋 で は熱 容 量 が 異 な る た め,昼 間 陸 地 の 温 度 が 上 昇 す る と 「海 か ら陸 へ 」,夜 間 の海 は冷 え に く く陸 地 は海 よ り早 く冷 え る た め,「 陸 か ら海 へ 」 と 風 の 流 れ が 生 ず る。 海 風,陸 林,田
風 の 発 生 要 因 で あ る。 同 じ陸 で も河 川,湖
沼,森
畑 等 変 化 に富 ん で い るた め,風 の流 れ に対 す る抵 抗 も異 な り,熱 を貯 え る
容 量 も異 な るの で,風
の 方 向 も強 さ も変 化 す る。 この よ う に地 球 上 は太 陽 の影 響
で風 が 絶 え ず 発 生 し,風 向,風 速 も変 化 して い る。 特 に 日本 は海 に囲 ま れ て い る こ とか ら,海 陸 の 温 度 差 に よ る海 陸 風 が 発 生 す る地 域 が 多 い 。 この風 の 力 を電 力 に変 換 し,自 然 エ ネ ル ギ ー を利 用 す る のが 風 力 発 電 シ ス テ ム で あ る。 風 力 発 電 シ ス テ ム は空 気 の運 動 エ ネ ル ギ ー を利 用 し て電 気 エ ネ ル ギ ー を得 る発 電 方 式 で あ る が,水
の 力 を利 用 す る水 力 発 電 シス テ ム と異 な り,エ ネ ル ギ ー密 度
図5.1 世 界規 模 の風 の 流 れ
が 小 さ く,風 向 ・風 速 が 時 々 刻 々 変 化 す る た め,発 電 規 模 も比 較 的 小 さ く,制 御 し に くい 。 しか し近 年,航
空 技 術 を応 用 し,風 力 発 電 に使 用 す る高 性 能 の ロ ー タ
ー が 製 作 で き,1 基 の 発 電 容 量 が1500kWに
達 す る も の が 開 発 さ れ,現 在 各 所
に設 置 さ れ て い る。 今 後,化
石 燃 料 の枯 渇 あ る い はCO2に
よ る温 暖 化 の 抑 制 が,エ
ネ ル ギ ー 問題
を考 え る上 で 極 め て重 要 とな る。 風 力 発 電 は現 在 急 速 に設 置 台 数 が 伸 び て お り, 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 有 力 な柱 と な り得 る発 電 シ ス テ ム で あ る。
5.2
風車 の種類
風 車 は ヨー ロ ッパ で 古 くか ら揚 水,製 粉,排 年 代 か ら発 電 用 と して 使 わ れ 始 め た 。
水 用 等 に利 用 さ れ て きた が,1890
(a) 水 平軸 形
(b) 垂 直 軸 形
図5.2 水 平 軸 形風 車 と垂 直軸 形 風車
図5.3 風 車 の種 類
風 車 は 図5.2の
よ うに,地 面 に対 して 回転 軸 が 水 平 に あ る水 平 軸 形 と,垂 直 で
あ る垂 直軸 形 に 分 け られ る。 垂 直 軸 形 は水 平 軸 形 の よ う に風 向 制 御 を必 要 と しな い 特 長 が あ る。 また 風 車 は動 作 原 理 か ら,風 車 の ブ レー ドに生 ず る揚 力(持 げ る力)を 利 用 す る揚 力 形 と,抗 力(押 風 車 の 種 類 を 図5.3に
ち上
す 力)を 利 用 す る抗 力 形 に分 け られ る。
示 す。
また 風 車 の種 類 と特 徴 を表5.1に,水 形 風 車 の代 表 例 を図5.5に
示す。
平 軸 形 風 車 の 代 表 例 を 図5.4に,垂
直軸
① プ ロペ ラ 形 風車[写 真 提供:三 菱重工業株式会 社]
③
オ ラ ンダ風 車
④
ア メ リカ 多翼 風 車
[パワー社 『 小型風車ハ ン ドブ ック』よ り許諾 を得 て転 載] ② セ イ ル ウ ィ ン グ形 風 車[パ ワー社 『 小 型風 車 ハ ンドブ ック』 よ り許諾 を得て転 載]
図5.4 水 平 軸形 風 車 表5.1 風 の 車の 種類 と特 徴
⑥ サ ボニ ウ ス形 風 車 [写真提供:松 本文雄 氏]
⑤ ダ リ ウス形 風 車[パ ワー社 『 小型風車 ハ ン ドブ ック』 よ り許諾 を得 て転載]
⑦
ク ロス フ ロー 形 風車
[写真提供:松 本文雄氏]
⑧ S字 バ トル 形 [写真提供:松 本文雄氏]
図5.5 垂 直 軸 形風 車
そ れ ぞ れ の風 車 は以 下 の よ うな 特 徴 を有 し て い る。 ①
プ ロペ ラ形 は発 電 用 に最 も多 く用 い られ,2∼3枚
の飛行機 のプ ロペ ラ に
似 た ブ レ ー ドを もち高 速 回 転 す る風 車 で あ る。 ②
セ イ ル ウ ィ ン グ形 は古 くか ら製 粉,排
水 用 に 用 い られ,三 角 形 の6∼12枚
の布 製 羽 根 を用 い 低 速 回転 す る風 車 で あ る。 ③ オ ラ ン ダ形 は 製 粉 や 揚 水 に 用 い られ,翼 し,低 速 回転 す る風 車 で歴 史 も古 い。
の枠 の 上 に布 を 張 っ た もの を使 用
④
多 翼 形 は多 くの 金 属 製 の羽 根 を持 っ た もの で,ア
メ リカ の農 場 や牧 場 で 揚
水 用 に 多 く用 い られ て い る。 低 速 で 回転 し,大 き な トル クが 出 る風 車 で あ る。 ⑤ ダ リウ ス 形 は 円弧 形 状 の 羽 根 を有 し,風 向 きに 無 関 係 に 回転 し,風 速 以 上 の 高 い周 速 度 が 得 られ る こ とか ら発 電 用 に利 用 され る。 ⑥ サ ボニ ウ ス 形 は半 円筒 状 羽 根 2枚 で構 成 され,バ
ケ ッ トの 凹 面 と凸 面 の抗
力 差 で 作 動 し,起 動 トル クが 大 き く,回 転 数 は低 い 。 ポ ンプ 用 に用 い られ る。 ⑦
ク ロス フ ロ ー 形 は多 くの 翼 が 立 っ て い て,水 平 軸 の 多 翼 形 風 車 に類 似 して い る。 起 動 トル クが 大 きい が,周 速 度 は低 く,静 粛 で あ る。 発 電 お よ び駆 動 用 に 用 い られ る。
⑧
パ ドル 形 は S字 形 の 板 で 構 成 さ れ,抗 力 形 で ゆ っ く り回 転 し,ポ ン プ 用 に用 い られ る。
5.3
揚 力形風 力発 電
風 力 発 電 シ ス テ ム で は,主
に揚 力 形 の プ ロペ ラ形 が使 用 さ れ て い る の で,プ ロ
ペ ラ形 を 中 心 に以 下 記 述 す る。
5.3.1
揚力形 風車の原 理
現 在 の 主 流 で あ るプ ロペ ラ形 風 力 発 電 シ ス テ ム の 設 置 例 を図5.6に が1000kWク
示 す。 1基
ラ ス の もの で る。
風 力 発 電 シス テ ム の概 念 図 を 図5.7に 回転 力 を発 電 機 に伝 え る ロ ー タ軸,回 な い もの が あ る),発 電 機,発
示 す。 風 力 発 電 機 は 回転 す るブ レー ド,
転 速 度 を増 す 増 速 器(増
電 機 等 を収 め て い る容 器(ナ
速 器 の あ る もの と
セ ル),お
よび それ ら
を支 え て い る タ ワー か ら構 成 さ れ る。 風 力 発 電 の 原 理 を 図5.8に
示 す 。 質 量 m の 物 体 が 速 度 v で移 動 す る と,そ の
物 体 の運 動 エ ネ ル ギ ー は(5.1)式 で 与 え られ る。
図5.6 プ ロペ ラ形風 力 発電 シ ステ ム の
図5.7 プ ロペ ラ形 風 力 発電
設 置例[写 真提 供:三 菱重工 業株 式会 社]
シス テ ム の概 念 図
図5.8 風 力 発電 の原 理
(5.1) こ こで
m:質
量 〔 ㎏ 〕,v:速
度 〔m/s〕
い ま ロ ー タ ー の 回 転 す る 面 積 を A と し,風
の 速 度 を v,空 気 の 密 度 を ρ と す
る と,ロ
ー タ ー 面 積 を 通 過 す る 単 位 時 間 当 た り の 空 気 量 はA・vで,そ
ρ・A・vと
の質量 は
な る 。 こ の た め ロ ー タ ー を 通 過 す る 空 気 の 運 動 エ ネ ル ギ ー は(5.2)式
で
与 え られ る。
(5.2) こ こで
R:ロ
ーターの半径 〔 m 〕,ρ:空
気 の 密 度 〔㎏/m3〕
(5.2)式 か ら風 車 の ロ ー タ ー 面 積 を 通 過 す る 運 動 エ ネ ル ギ ー は 風 速 の 3乗,ロ ー タ ー 半 径 の 2乗 に 比 例 す る
。 風 車 は こ の 通 過 エ ネ ル ギ ー か ら 出 力 を 取 り出 し て
い る。
例 題 と し て,直
径60mの
風 車 に 対 し,風
速 が10m/sの
時,風
車 を通過 す る
風 の運 動 エ ネ ル ギ ー は い くらか に つ い て 検 討 す る。 〈解 答 〉 風 の 運 動 エ ネ ル ギ ー は(5.2)式 こ こ で 空 気 密 度:1.225㎏/m3,ロ 速:10m/sで
5.3.2
ー タ ー 面 積:3.14×(60/2)2=2826㎡,風
あ る か ら,
な お,(5.2)式 =J/sよ
で 与 え られ る。
の単 位 は
り運 動 エ ネ ル ギ ー の 単 位 は W
とな る。
揚 力 形 風 車 が 取 り出 し得 る 最 大 エ ネ ル ギ ー
風 車 は風 速 を利 用 して 回転 エ ネ ル ギ ー を得 るが,そ
の 大 き さ に つ い て 次 に検 討
す る。(5.2)式 を風 車 を通 過 す る運 動 エ ネ ル ギ ー と した が,風 車 の 後 方 の 流 れ が 完 全 に静 止 す る こ と は あ りえ な い の で,こ こ とは で き な い 。 イ ギ リス のF.W.ラ
の 運 動 エ ネ ル ギ ー を す べ て風 車 が得 る
ン チ ェス タ ー と ドイ ツ のA.ベ
ッツ が 風 車
後 方 の流 れ を考 慮 し,風 車 が 取 り出 し得 る最 大 エ ネ ル ギ ー 量 に つ い て検 討 した 。
そ の 概 要 を紹 介 す る。 風 車 の 近 傍 の 風 の 流 れ を 図5.9に tube)を
示 す 。 実 線 で 示 す 空 気 流 の 流 管(stream
想 定 す る と,流 管 内 を流 れ る空 気 流 量 は ど こで も等 し く,下 流 に行 くに
つ れ 流 管 の大 き さ は増 大 し,そ れ に伴 い 流 速 は低 下 す る。 い ま 図5.10の (actuator
disk)を
よ う に,風
車 ロ ー タ ー の 翼 板 数 を無 限 と し た 作 動 円 板
考 え る。 そ の 上 流 の 風 速,断 面 積 を そ れ ぞ れv0,A0と
円 板 を横 切 る風 速,断
面 積 をv,A,下
流 の風 速,断
面 積 をv1,A1と
し,
し て風 車
近 傍 を流 れ る空 気 流 か ら風 車 が 取 り出 し得 る最 大 エ ネル ギ ー に つ い て検 討 す る。 連 続 の式 よ り, ρv0A0=ρvA=ρv1A1
ρ は 変 化 し な い とす る と,
図5.9 風車 近 傍 の風 の流 れ
図5.10 風 車 前後 の風 の流 れ
(5.3) 円板 を 通 過 す る こ とに よ り失 わ れ る運 動 量 を M(運
動 量 の 変 化)と
す る と,
運 動 量保 存 の 法 則 よ り, (5.4) (5.3)式
よ り,
(5.5) ベ ル ヌ ー イ の 定 理 は(5.6)式
で 与 え られ る 。
(5.6) す な わ ち 運動 エ ネ ル ギ ー,静 圧 エ ネ ル ギ ー お よび 位 置 エ ネ ル ギ ー の合 計 は場 所 に よ らず 一 定 で あ り,今 回対 象 と して い る 高 さ は 等 しい の で ρghの 項 は省 略 で き, 上 流 側 と下 流 側 で は(5.7),(5.8)式
が成 立す る。
(5.7) (5.8) こ れ か ら,
(5.9) ま た運 動 量 の 変 化 を もた らす 力 は 円板 間 の圧 力 差 と面 積 との 積 で表 示 で き るた め,
(5.10) (5.9)と(5.10)式
か ら,
(5.11) (5.5)と(5.11)式
よ り,
(5.12) (5.3)式
よ り,
(5.13) こ こで 主 流 υ0と円板 を通 過 す る速 度 υ との 差 と,主 流 υ0との 比 を速 度 減 速 率 a と定 義 す る と,
し た が っ て,
(5.14) (5.13)と(5.14)式
よ り,
(5.15) 空 気 流 の失 う運 動 量 が す べ て 円板 の 出 力 P に変 換 さ れ る とす る と,
(5.16) (5.14),(5.15),(5.16)式
か
ら,
(5.17) 面 積 A を 通 過 す る空 気 流 の運 動 エ ネ ル ギ ー に 対 す る 出力 エ ネ ル ギ ー の 割 合 を パ ワー 係
数Cpで 定 義 す る と,
(5.18)
Cpが
最 大 と な る 条 件 はCpを
a で 微 分 し,(5.19)式
を零 とす る こ と に よ り求
ま る。
(5.19) a=1/3の
時,Cpは
最 大 と な る。
(5.20) し た が っ て取 り出 し得 る最 大 エ ネル ギ ー は,
(5.21)
す な わ ち風 車 が 取 り出 す こ とが で き る最 大 エ ネ ル ギ ー P は,風 車 を通 過 す る 運 動 エ ネ ル ギ ー の 約60%で
あ る こ とが わ か る。 この0.593を
「ベ ッ ツ係 数 」 と
い う。 これ は 抗 力 の な い,無 限 数 の ブ レ ー ドを有 す る理 想 的 な風 車 の 場 合 に成 立 す る値 で あ る 。
5.3.3
風 車 翼(ブ
レー ド)の 回 転
こ こで は,揚 力 形 風 車 が なぜ 回転 す るか を記 述 す る。 い ま図5.11の
よ う に角 速 度 ω で 回転 して い る シ リ ン ダ ー に 均 一 な 速 度 vの 空
気 流 が 通 過 す る場 合 を想 定 す る。 これ は ボー ル に 回転 を与 えて 投 げ る現 象 と類 似 し て い る。 シ リ ン ダー 周 りの 空 気 は粘 性 に よ り右 回 りに 回転 す る。 この 流体 の, シ リ ン ダ ー の ご く近 傍 の 回 転 速 度 をu0と ダ ー半 径,ω:シ 下 部 はv-u0と ((5.6)式)に
リ ン ダ ー の 角 速 度)で
す る と,そ れ はu0=ωR(R:シ
与 え られ,シ
リン
リ ン ダ ー の 上 部 はv+u0,
な り,上 部 の 速 度 が 下 部 の 速 度 を上 回 る 。 ベ ル ヌ ー イ の 定 理 よ っ て,高 速 側 の 圧 力 は低 く,低 速 側 の 圧 力 は 高 い こ とか ら,シ
ン ダー に は,上
向 きの 力 が 働 く。
図5.11
次 に 図5.12の
リ
回転 して い る シ リンダ ーの 挙 動
よ うな 回 転 し て い な い風 車 の翼 断 面 を考 え る。 空 気 流 れ に対 し
迎 え角 αだ け傾 い て い る もの とす る。 粘 性 が な い 流 れ で は(a)の よ う に,翼 の 上 下 の 流 れ の差 は な い 。 しか し実 際 の 流 れ で は粘 性 が あ り,(b)の り を循 環 す る 流 れ が 生 じ,循 環 流 の 速 度 をu0と +u0,下
面 の速 度 はv-u0と
な り,図5.11の
す る と,翼
よ う に翼 の周
の 上 面 の 速 度 はv
シ リ ン ダ ー の場 合 と同 様 に 下 側 が
(b)
(a)
図5.12
(c)
ブ レ ー ドの 翼 に働 く力
高 圧 側 に,上 側 は低 圧 側 に な って,翼
を持 ち 上 げ る揚 力 が 働 く。
代 表 的 な 翼 断 面 に つ い て 圧 力 分 布 を計 算 した 例 が 図5.13に
示 さ れ る。 翼 断 面
の各 部 の 流 速 分 布 か ら翼 面 に垂 直 に作 用 す る圧 力 が 求 め られ,圧 力 を す べ て 加 え て 流 れ に 垂 直 な成 分 と流 れ 方 向 の 成 分 に分 け,流 れ に垂 直 な成 分 を揚 力,流
れ方
向成 分 に 翼 表 面 の摩 擦 力 を加 えた 合 計 を抗 力 とい い,揚 力 が抗 力 を上 回 る と全 体 で 上 向 きの 力 が 働 き,回 転 の 駆 動 力 とな る。
図5.13 ブ レー ドの翼 に働 く圧 力 分 布
揚 力 L と抗 力 D は翼 断 面 積 S と動 圧(1/2)× ρv2の積 に比 例 す る。
(5.22) (5.23) こ こでCL,CDは
比 例 定 数 で,揚 力 係 数,抗
力 係 数 と よ ば れ る。 これ ら の 値
は迎 え 角 αに よ っ て 決 ま る重 要 な 因 子 で あ る。 風 車 の 出 力 を増 す た め に は,で
き る 限 り抗 力 を 小 さ く,揚
力 を 大 き くす る こ と が 望 ま れ る 。 す な わ ち(5.24)式
を
大 き くす る こ と で あ る 。
(5.24) 風 洞 実 験 等 で 求 め ら れ たCL,CDと
迎 え 角 αの 関 係 が 図5.14,5.15に
る。 迎 え角 と し て12度 程 度 まで は概 ね比 例 的 にCLが しそ れ よ り大 き い迎 え角 に な る とCLは て い る。 こ の よ うにCLが
大 き くな っ て い る。 しか
急 に 小 さ くな り,逆 にCDが
小 さ くな る現 象 を失 速(stall)と
が 生 ず る角 度 を失 速 角 とい う。 失 速 は 図5.16に
示 され
い い,こ
大 き くな っ の失速現 象
示 す よ う に,翼 の 上 側 で 流 れ の
剥 離 が 生 じ,下 流 で 渦 が 発 生 して,循 環 流 が 減 少 し,揚 力 は低 下 し,抗 力 が増 大
図5.14 揚 力 と迎 え角 の関 係
図5.15 抗 力 と迎 え角 の 関係
す る。CL/CDと
αの 関 係 が 図5.17に
示 さ れ る。 失 速 が 生 じ な い 迎 え 角 度 で 運 転
す る こ とが 必 要 で あ る。 以 上 は翼 が 静 止 し た状 態 の 揚 力,抗
力 の 関 係 で あ るが,プ
ロ ペ ラ形 風 車 の よ う
に ブ レ ー ドが 回 転 して い る場 合 は,揚 力 と抗 力 に つ い て 次 の よ う に考 え る。 図 5.18に 示 す よ う に,風
に よ っ て 回 転 し て い る風 車 の 翼 は,正 面 か ら受 け た 風 速
と回転 して い る速 さ を合 計 した 相 対 的 な風 速(風 速 と翼 の 動 き の速 さ とのベ ク ト ル 和)を
受 け る こ と に よ り,相 対 的 な風 速 に 垂 直 な成 分 の 揚 力 と,流 れ 方 向 の抗
力 が 発 生 す る。 揚 力 に比 べ る と,抗 力 は50か
ら100分
の 1 と小 さ い の で 回 転 す
る。 な お,一 定 速 度 で 回 転 して い る時 は,揚 力 の 翼 の 動 き方 向 の成 分 と,抗 力 の 翼 の 動 き の逆 方 向 成 分 とが つ り合 っ て い る 。
図5.16 失 速 現 象 の発 生
図5.17
CL/CDと
迎 え角 との関 係
図5.18 回転 して い る翼 の揚 力 お よび抗 力
5.4 5.4.1
抗 力形風 力発電 抗 力形風車
抗 力 形 風 車 は 図5.19に
示 す ロ ビ ン ソ ン風 速 計 が も っ と も典 型 的 な例 で あ る。
風 の 押 す 力 で,風 車 が 回転 して い る。 押 す 力,す 状 に よ っ て大 き く異 な る。 表5.2の
よ う に,カ
な わ ち抗 力 は風 の 当た る物 の 形 ップ 型 の 凹面 の 抗 力 は凸 面 の 抗 力
に対 し て約 4倍 大 き い。 よ って 矢 印 方 向 に 回転 す る。 垂 直 軸 形 風 車 の サ ボ ニ ウ ス 形 風 車 も,抗 力 形 風 車 で あ る。 風 車 の 形 状 を 図 5.20に 示 す 。 この 風 車 は二 つ の 半 円 筒 の 受 風 バ ケ ッ トを 向 か い合 わ せ,偏 せ て 取 り付 け て あ る。 ロ ビ ン ソ ン風 速 計 と同 様 に図5.20の
② 面の抗 力 は凹面 の
た め 大 き く,① 面 の抗 力 は凸 面 の た め 小 さ い 。 よ っ て矢 印 方 向 に 回転 す る。
図5.19
ロ ビ ンソ ン風 速計
心さ
表5.2 代表 的 な物 体 の形 状 にお け る抗 力係 数
図5.20 サ ボニ ウス形 風 車
5.4.2
抗 力 形 風 車 の 最 大 取 り出 しエ ネ ル ギ ー
抗 力 形 風 車 の 最 大 取 り出 しエ ネ ル ギ ー を求 め る た め,抗 力 形風 車 の モ デ ル を図 5.21に 示 す 。
図5.21 抗 力 形風 車 のモ デル 風 速v0を
受 け て 後 方 に 速 度 v で 押 さ れ る 場 合,相
風 車 が 受 け る 抗 力 は(5.23)式
に 示 さ れ,風
対 速 度 はvr=v0-vと
な り,
車 が 受 け る パ ワ ー は(5.25)式
とな る。
(5.25) こ こ に,A:風
車 の 受 風 面 積,CD:抗
物 体 の 抗 力 係 数CDの ー 係 数 は(5 .25)式 =1/3v0の
5.5
力係 数
代 表 的 な 数 値 を 表5.2に
を 速 度 v で 微 分 し,そ
時 に最 大 とな る
示 した 。 抗 力 形 風 車 の 最 大 パ ワ
の 値 を 零 と置 く こ と に よ り求 め ら れ,v
。 最 大 パ ワ ー 係 数 はCpmax=(4/27)・CDmaxと
風 車 の 性 能 評 価 に必 要 な 係 数
風 車 の性 能 を評 価 す る場 合,無
次 元 の 特 性 係 数 を利 用 す る と便 利 で あ る。 以
下,代 表 的 な係 数 で あ るパ ワー 係 数,ト
ル ク係 数,ソ
リデ ィ テ ィに つ い て 説 明 す
る。 これ らの 係 数 は周 速 比 に 大 き く依 存 し,周 速 比(先 speed
な る。
端 速 度 比 と も い う:tip
ratio)λ は(5.26)式 の よ う に風 車 の ブ レ ー ドの 先 端 速 度 と風 速 との比 で定
義 さ れ る。
(5.26) こ こ で n:風 車 の 回 転 数 〔rps〕,R:風 〔rad/s〕,v:風
5.5.1パ
車 の 半 径 〔m 〕,ω:ロ
ー ター の角 速度
速 〔m/s〕
ワー係数
風 車 が 風 か ら エ ネ ル ギ ー を 得 る 割 合 を 示 す 指 標 と し て パ ワ ー 係 数(Power coefficient)CPが
あ る 。 こ れ は 風 車 を 通 過 す る 全 エ ネ ル ギ ー に 対 す る,風
風 か ら 得 る エ ネ ル ギ ー の 比 で,(5.27)式
車 が
で 定 義 づ け られ る。
(5.27)
こ こ で,P:風
車 が 風 か ら 得 る パ ワ ー 〔Nm/s〕,ρ:空
ロー タ ー 面 積 〔 ㎡ 〕,v:風 (5.20)式
で 示 し た よ う に,パ
ワ ー 係 数 の 最 大 は0.593で
各 種 風 車 の パ ワ ー 係 数 例 を 図5.22に つ い て,ブ お,こ
気密 度 〔 ㎏/m3〕,A:
速 〔m/s〕
レ ー ド数 に よ っ て パ ワ ー 係
あ る。
示 す 。 大 型 風 車 の 代 表 的 な プ ロペ ラ 形 に 数CPが
変 化 す る様 子 を 以 下 に 示 す 。 な
れ ら の 値 は 数 値 解 析 に よ り求 め ら れ た 値 で あ る 。
図5.22 各 種 風 車 のパ ワ ー係 数
・ブ レ ー ド数 が 1枚 の 場 合,周
速 比 λに対 し,CPは
比 較 的 平 らな 特 性 を 示 し
て い る が,λ が 大 き い領 域 で 生 ず る抗 力 の増 大 に よ っ て,CPは
小 さ くな る。
・5枚 ブ レ ー ドの 場 合,λ の狭 い範 囲 で 最 大 値 を示 し,3 枚 ブ レー ド と比 べ, CPの 最 大 値 も若 干 小 さ い。 これ は λの 小 さ い 領 域 で 生 ず る 失 速 ロ ス に よ る。 ・プ ロ ペ ラ形 の 最 適 値 は 3枚 ブ レー ドで あ る。 λ=7の に達 す る。 この値 はベ ッツ 限 界値0.593と
時,CPは
最 大 値0.47
比 べ小 さい。
この 差 は プ ロペ ラ 形 の 損 失 で あ る抗 力 と先 端 ロ ス の 他 に,λ が 小 さ い領 域 で 生 ず る失 速 ロ ス に よっ て もた らさ れ る。 ア メ リカ 多 翼 形 は 回転 数 が 低 い の で,周 速 比 が 小 さ く,し た が っ てCPも
小 さ い。 抗 力 形 の サ ボ ニ ウ ス形 のCPの
最大 値 は
λが 1以 下 で 発 生 して い る。 以 下 で は,プ
ロペ ラ形 は λの 大 き い領 域 で,CPが
最 大 と な る こ と,ま た 抗 力
形 は λが 1以 下 で 最 大 とな る こ とを示 す。 図5.23は,ブ
レ ー ドが(b)に 示 す よ う に 回 転 面 を下 側 か ら吹 く風 に よ っ て 矢
印 方 向 に 回転 し て い るモ デ ル で あ る。(a)は ブ レー ドの翼 断 面 を見 た もの で この 断 面 が 左 側 に周 速 度 u で 回転 し て い る 図 で あ る。 い ま,風
の方 向が翼 型 の動 く
平 面 に垂 直 な 方 向 に対 し角 度 δで 流 入 す る とす る。 ブ レ ー ドの 周 速 度 を u とす る とブ レ ー ドに 向 か う相 対 風 速 は w で 表 示 され る。
(b)
(a)
図5.23
対 象 モ デ ル(モ
デ ル は 図5.18と
同 じ で 風 の 吹 く 方 向 が 異 な る)
翼 型 に よ り風 か ら取 り出 す パ ワ ー は,回 転 方 向 の 力FUに
周 速 度 u を乗 じ た
もの となる。
(5.28)
P=FUu こ こ で,Fu:u こ の 力 は,揚
方 向 の 力,u:ブ
レー ドの 周 速 度 で あ る。
力 L と抗 力 D に よ り(5.29)式
で 示 され る。
(5.29) こ こ で,揚
力 L と 抗 力 D は,
(5.30) (5.31) ま た,c
は 翼 の 弦 長,b
は 翼 の 長 さ で 図5.24に
図5.24
示 され る 。
ブ レ ー ドの 弦 長 と翼 の 長 さ
相 対 速 度 w は u と v との間 に 次 の 関 係 が 成 立 す る。 φ と δの 関 係 は,
(5.32) こ れ か ら,
(5.33) 周 速 比 λ=u/vの の 式 を 使 っ て,次
た め,取
り 出 す パ ワ ー の(5.28)式
の よ う に な る。
は,(5.29)か
ら(5.33)ま
で
(5.34) (1)揚 (5.34)式
力形 風 車
揚 力 形 で は,P
を 最 大 に す る に は δ=0で,そ
の とき
は,
(5.35) こ こ で,(1+λ2)1/2は
ほ ぼ λ に 等 し い の で(λ
が 5 よ り大 き い 時 2%の 誤 差 で 成
立),
(5.36) こ れ か ら P の 最 大 は λが(5.37)式
の時 に成 立 す る。
P の最大値 は こ の 時 の P の 最 大 値 は(5.38)式
(5.37) で 示 され る。
(5.38) と な る。
(5.36)∼(5.38)式
か ら風 車 出 力 は揚 力 係 数CL,抗
っ て 定 ま り,プ ロ ペ ラ 形 は 揚 力 係 数CLが わ ちCL/CDは
大 き い の で,(5.37)式
力 係 数CD,周
大 き く,抗 力 係 数CDが
速 比 λに よ 小 さい。す な
よ り周 速 比 の大 き い と こ ろ で 風 車 出 力 の 最
大 が発 生 し,そ の 出 力 値 も大 き い。 一 方,ア
メ リカ 多 翼 形 は翼 枚 数 が 多 く,ゆ っ
く り回転 し て い る の で 比 較 的 抗 力 係 数CDが
大 き く,こ の た めCL/CDが
小 さ く,
周 速 比 の小 さ い と こ ろで 風 車 出 力 の最 大 が 発 生 し,そ の 出 力 値 も小 さ い。 (2)抗
力形 風 車
ち δ=90度
と な り,取
抗 力 形 風 車 で は,翼 型 の揚 力 係 数(CL)が
零,す
なわ
り出 すパ ワー P は(5.34)式 か ら,
(5.39) P を λ で 微 分 し,零
と お く こ と に よ り,λ=1/3の
時 に 最 大 と な り,
(5.40) す な わ ち抗 力 形 で は 抗 力 係 数CD,お ど,取
よ び ブ レー ドの受 風 面 積(cb)が
り出 す パ ワー は増 大 す る。 これ は5.4.2に
5.5.2ト
大 きいほ
示 した 結 果 と同 じで あ る。
ルク係 数
トル ク 係 数(torque
coefficient)CQは
下 記 の よ う にな る。 揚 力 形 風 車 の 場 合,
ブ レー ドの 回 転 面 で 発 生 す る 揚 力 成 分 に軸 か らの 距 離 を,ま た 抗 力 形 風 車 の場 合,抗
力 成 分 に軸 か らの 距 離 を乗 じた もの を トル ク とい う。 トル ク係 数 は(5.41)
式 で 示 され る。 また 代 表 的 な トル ク係 数 を 図5.25に
示す。
(5.41)
こ こ で,Qe:実 〔 m 〕,S:ブ (5.41)式
際 に 得 ら れ る ト ル ク 〔Nm〕,v:風
レ ー ド投 影 面 積(弦
車 半 径
長 × 長 さ)〔㎡ 〕
の トル ク 係 数 は,(5.27)式
の 出 力 係 数CPを
っ て 求 め られ る 。 (5.27)式
速 〔m/s〕,R:風
を λで 割 る と,
図5.25 代 表 的 な トル ク係 数
周 速 比 λで 割 る こ とに よ
(5.42) λ は(5.26)式
一 方
,出
よ り,λ=2πRn/vで
あ る か ら,(5.42)式
力 P と トル ク T と の 間 に(5.43)式
は,
が 成 立 す る。
(5.43) した が っ て トル ク係 数CQは,
(5.44) とな る。 た だ し(5.41)式 は ブ レー ド 1枚 当 りの,(5.44)式
は風 車 全 体 の トル ク係
数 を示す。 (5.43)式 に示 す よ う に,回 転 数 と トル ク の積 が 出 力 に な る こ とか ら,出 力 を一 定 とす る と,回 転 数 が 高 い風 車 は トル クが 小 さ く,低 い風 車 は トル ク が大 き い こ とを意 味 す る。 以 上 か ら プ ロ ペ ラ形 で は 回転 数 が 高 い た め,ト ル ク係 数 は小 さ くブ レー ド数 が 増 す ほ ど回 転 数 が 低 下 し(周 速 値 が低 下 し),ト ル ク が 大 き くな る。 一 方,水 ン プ 用 に使 用 され て い る ア メ リカ 多 翼 形 は,ブ
ポ
レ ー ド数 が 多 い た め 回 転 数 が 低
く,し た が っ て トル クが 大 きい 。
5.5.3ソ
リデ ィテ ィ
風 車 の性 能 を示 す 指標 と して,ソ
リデ ィ テ ィ σ(Solidity)が
あ る 。 こ れ は風
車 の 掃 過 面 積 に対 す る ロー タ ・ブ レ ー ドの 全 投 影 面積 の 比 で 定 義 づ け られ る。 水 平 軸 風 車(例
え ば 2枚 ブ レ ー ドの プ ロペ ラ形,翼 枚 数 の 多 い ア メ リカ多 翼 形)お
よ び垂 直 軸 風 車(例
え ば サ ボ ニ ウス 形 と ダ リ ウ ス 形)の
に 示 す 。 ソ リデ ィ テ ィ σは 図5.26の
ソ リ デ ィ テ ィ を 図5.26
黒 く塗 っ た 部 分 の 面 積 を,風 車 の 掃 過 面 積
で 除 した 値 で あ る。 こ れ か ら ブ レ ー ド 2枚 の プ ロ ペ ラ形 よ り翼 枚 数 の 多 い ア メ リ カ 多 翼 形 の ソ リデ ィ テ ィ は大 き く,ま た 垂 直 軸 形 で は ダ リウ ス 形 よ りサ ボ ニ ウ ス 形 の 方 が 大 きい 。風 車 ソ リデ ィ テ ィ と周 速 比 の 関 係 を図5.27に 図5.27は
ソ リデ ィテ ィ σが 小 さい と高 速 回転 し,大
示 す。
きい と低 速 回 転 す る こ と
を 示 して い る。 そ の 理 由 を以 下 に 示 す 。 ロ ー タ面 積 を A とす る と 出力 最 大 の 式
2枚 プ ロペ ラ形
サ ボニ ウス形
多翼形 図5.26風
図5.27
車 の ソ リデ ィ テ ィ
ソ リ デ ィ テ ィ と周 速 比 の 関 係
ダ リウス形
(5.38)は
次 の よ うに変 形 され る。
(5.45) こ こ で(1/2)× ρAv3は 風 車 を通 過 す る風 の エ ネ ル ギ ー で あ り,上 記 の 風 車 の 投 影 面 積 は,迎
え角 が 5度 ∼10度 で は近 似 的 にcbに
等 しい の で,ソ
リデ ィテ ィ
σは,
(5.46) (5.38),(5.45),(5.46)式
か ら,
(5.47) こ れ よ りパ ワ ー 係 数CPは,
(5.48) こ れ か ら ソ リ デ ィ テ ィ σは,
(5.49) す な わ ち ソ リデ ィテ ィ σは 周 速 比 の 逆 数 の 2乗 に 比 例 す る。 これ か ら回 転 数 の 高 い 風 車 ほ ど ソ リデ ィテ ィ は小 さ く,低 い 風 車 ほ どソ リデ ィ テ ィが大 きい 。 な お,こ
れ まで 風 車 出力 お よ び ソ リデ ィ テ ィ に つ い て 1枚 の ブ レ ー ドを対 象 に
説 明 して き た が,ブ
レ ー ド数 が B 枚 の 時 は B 倍 す る必 要 が あ る。
プ ロペ ラ形 風 車 や ダ リウ ス形 風 車 は トル ク係 数 が 小 さ い が,パ い た め発 電 用 に 適 し て い る。一 方,サ は小 さ い が,ト
ボ ニ ウ ス形 風 車 や 多 翼 形 風 車 のパ ワー係 数
ル ク係 数 が 大 き いた め,ポ
例 題 と し て,あ
ン プ 等 の 駆 動 源 に適 して い る。
る プ ロペ ラ形 風 車 が風 速12m/sの
を得 る設 計 を して い る場 合 を考 え る。 最 大 何kWの
時,風
.4と す る。
速 比 λ=6で 最 大 出 力
出 力 を 得 る こ とが で き るか,
ま た そ の 時 の 回 転 数 は い くらか を検 討 す る。 な お,ロ ー 係 数CP=0
ワ ー係 数 が 大 き
ー タ ー 直 径 は30m,パ
ワ
〈解 答 〉
最 大 出 力 の 式 は(5.27)式
(㎡),v=12(m/s),CP=0.4,こ
v=12m/s,λ=6よ
で,ρ=1.225(㎏/m3),A=π
×152=706.5
れ ら か ら,
り,
λ=rω/v=u/v よ っ て,
u=Rω=λv=6×12=72m/s R=15m
回 転 数 は,
5.6風
車と発電機とを組み合わせた総合効率
風 車 と発 電 機 と を組 み 合 わ せ た と き の,風 5.28と(5.50)式
力 発電 シス テム の 総合 効 率 は図
で示 され る。
図5.28 風 力発 電 シス テ ム の効 率
シス テ ム の総 合 効 率
こ こ で,Pw:風
車 を 通 過 す る 風 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,PEX:風
ギ ア ボ ッ ク ス を 経 た 後 の 出 力,Pe:発 の 効 率,Cg=Pg/PEX:ギ
(5.50)
車 の 出 力,Pg:
電 機 の 出 力,Cp=Pex/Pw:風
ア ボ ッ ク ス の 効 率,Ce=Pe/Pg:発
力 ター ビン
電 機 の効 率
表5.3 実 用 機 の効 率 風 力 タ ー ビ ンの効 率
40-50% 20-40%
ギ アボ ック スの効 率
80-95% 70-80% 80-95%
発電機 の効率
60-80%
実 用 機 の 効 率 は 表5.3の こ の た め,シ
大型風車 小型風車 大型風車 小型風車
よ う に な る。
ス テ ム の 全 効 率 は 大 型 風 車 発 電 シ ス テ ム で25-45%,小
ス テ ム で10-25%と
例 題 と し て,定
大型風車 小型風車
型発電 シ
な る。
格 出 力2MWの
風 力 発 電 装 置 を 考 え る 。 各 段 階 の 効 率 はCP=
0.32,Cg=0.94,Ce=0.96で
あ る 。 こ の 風 車 の 掃 過 面 積 は い く ら か を 検 討 す る 。ま
た 水 平 軸 プ ロ ペ ラ 形 の 時,ロ
ー タ 直 径 は い く ら か 。た だ し 風 速 は13m/sと
〈解 答 〉
総 合 効 率 η=0.32×0,94×0.96=0.29
電 気 出 力Peは
5.7風
す る。
風 車 を 通 過 す る エ ネ ル ギ ーPwと
次 の よ う な 関 係 に あ る。
力発電 シ ステムの運転
水 力 発 電 シ ス テ ム で は,水 量 の調 節 が容 易 な こ とか ら,電 気 負 荷 の 変 化 に合 わ せ て水 量 を調 整 し,一 定 の 回 転 速 度 で水 車 を運 転 し発 電 して い る。 一 方,風 力 発
電 シ ス テ ム で は,風 速 が時 々 刻 々 変 化 す るた め,電 機 の 出力 を調 整 す る こ と は困 難 で あ り,風
気 負 荷 の 変 化 に合 わ せ て発 電
とい う自 然 エ ネ ル ギ ー か らい か に 最 大
の エ ネ ル ギ ー を得 て 発 電 す るか が 制 御 の 中 心 とな る。 大 型 の 風 力 発 電 シ ス テ ム に使 用 され て い る発 電 機 に は,同 期 発 電 機 と誘 導 発 電 機 が あ る。 以 下,大
型 風 力 発 電 シ ス テ ム の 主 流 で あ る同 期 発 電 機 を 中心 に記 述 す
る。 同 期 発 電 機 シス テ ム は誘 導 発 電 機 シ ス テ ム の よ う な増 速 ギ ア を用 い ず,発 電 機 か ら発 生 した 交 流 出力 を直 流 に変 換 し,再 び交 流 に変 換 して 系 統 に接 続 す る方 式 を採 用 し て い る。 こ うす る こ とに よ り,系 統 の周 波 数 に 同期 させ て風 車 の 発 電 機 を回 転 させ る 必 要 が な く,回 転 速 度 を風 速 に合 わ せ て制 御 し,最 大 エ ネ ル ギ ー を 得 る シス テ ム を提 供 で き る。 この た め に まず,風 例 を 図5.29に
速 を風 速 計 で検 知 し,ブ
レー ドの ピ ッチ 角 を制 御 す る。 一
示 す 。 風 速 が 小 さ い 時 は ピ ッ チ 角 を小 さ く し,風 速 の 増 大 と と も
に ピ ッチ 角 を増 して い き,風 車 の 出 力 増 大 を図 っ て い る。 風 速 に対 し最 適 な ピ ッ チ角 で 運 転 して い る 。
図5.29
ピ ッ チ 角,風
速 と出 力
同 期 発 電 機 シ ス テ ム は,多 極 同 期 発 電 機 を採 用 し,増 速 ギ ア が な く,AC-DCAC変
換 装 置 で 構 成 され,そ
の 特 長 を要 約 す る と次 の よ うに な る。
①
ギ ア が な く,低 速 回 転 のた め機 械 的 磨 耗 が 少 な く,騒 音 も少 な い 。
②
イ ンバ ー タ を採 用 して い る た め,系 統 へ の 並 入 時 の 突 入 電 流 が 少 な い。
③
力 率 は 1で 運 転 で き る。 した が っ て無 効 電 力 補 償 の 機 器 は不 要 で あ る。
④
可 変 速 制 御(variable
control)に
よ り,風 速 に応 じ て効 率 的 に運 転 が 可
能 で あ る。 等 で あ る。
風 速 と発 電 機 出 力 の 関 係 を図5.30に
示す。
図5.30 風 速 と発 電 機 出力
発 電 を開 始 す る 時 の 風 速 を 「カ ッ トイ ン 風 速 」 と い い,普 通3∼5m/sで る。 一 方,風 速 が 増 大 した 場 合,風
あ
車 の安 全 を確 保 す るた め に発 電 機 を停 止 す る
風 速 を 「カ ッ トア ウ ト風 速 」 とい い,普 通20∼25m/s位 た 定 格 出力 が得 られ る風 速 を 「定 格 風 速 」 とい い,年
に設 定 さ れ て い る。 ま 間 を通 じ て風 力 エ ネ ル ギ ー
を 最 も多 く引 き 出 す こ とが で き る風 速 で,通 常12∼14m/sに
設 定 さ れ て い る。
定 格 風 速 以 上 で は,風 速 が 速 くな る と何 ら か の 方 法 で 少 しず つ 風 の 力 を受 け流 し,一 定 の 風 車 出 力 に な る よ う に調 整 し て い る。 大 型 風 車 で は,ピ
ッチ 制 御 に よ
り翼 と風 の 角 度 との なす 角度 を調 整 して 出 力 一 定 を保 持 して い る。 電 力 の 取 得 総 量 を 計 る 目 安 と し て,設 備 利 用 率(capacity
factor)が(5.51)
式 で定 義 され る。 年 間 の発 電 量 〔kWh〕/ 定 格 出 力 〔kW× 年 間 暦 時 間8760〔 h〕
設備利用 率= 普 通 設 備 利 用 率 は20%以
上 が 望 まれ る。
(5.51)
例 題 と し て,定
格 風 速10m/s,ロ
ー タ 直 径10mの
出 力 は い く ら か を 検 討 す る 。 た だ し,タ 効 率Cg=0.9,発
電 機 効 Ce=0.8,設
風 車 の 定 格 出 力 と年 間 平 均
ー ビ ン 効 率CP=0.35,ギ 備 利 用 率=20%と
ア ボ ック ス の
す る。
〈解 答 〉 定 格 出 力Peは
年 間平均 出力=定 格 出力 ×設備利 用率 よ り
定 格 出 力=12.1kW,平
均 出 力=2.4kW
同 期 発 電 機 の 改 良 型 と して,励 磁 シ ス テ ム の な い,よ
り単 純 な構 造 の永 久 磁 石
式 同 期 発 電 機 が 開発 され て い る。 従 来 の フ ェ ライ トよ り強 力 な磁 力 を有 す る,ネ オ ジ ス ト磁 石 を採 用 す る こ とに よ り可 能 とな った 。
図5.31誘
導発 電 機 の 「 す べ り」 を考慮 した 発 電機 出力
一 方,誘
導 発 電 機 シ ス テ ム で は,増 速 ギ ア付 きで,系 統 に 直 結 し,系 統 の 周 波
数 に依 存 して 一 定 の 回転 速 度 で 運 転 し て い る。 この た め定 格 風 速 以 上 の風 が きた 場 合 は,ピ
ッ チ制 御 に よ り風 を逃 が し て運 転 す るが,風 速 の 変 化 に ピ ッチ 制 御 が
追 従 で きな い 時 は風 車 の 回 転 数 は変 化 す る。 この 対 策 と して 発 電 機 に 「す べ り」 を もた せ,ロ
ー タ と発 電 機 の 双 方 に お よ そ10%程
度 の 回 転 数 の 変 動 を 許 容 し,
急 激 な風 速 変 動 が あ っ て も出 力 は 一 定 に な る よ う に工 夫 が施 され て い る 。 風 速 変 化 に対 す る 発 電 機 出 力 の 一 例 を図5.31に
示 し た。 発 電 機 の 出 力 は 一 定
に維 持 され て い る。 同 期 発 電 機 シ ス テ ム と誘 導 発 電 機 シ ス テ ム の比 較 を図5.32に
示す。系統 へ与
え る影 響 につ い て は 同 期 発 電 機 シス テ ムが 優 れ,発 電 シス テ ム の簡 略 さで は誘 導 発 電 機 シス テ ムが 優 れ て い る。
図5.32 同期発 電 機 シス テ ム と誘 導発 電 機 シス テム の 比較
5.8 風力発電システムの最新技術 5.8.1
風 車の大型化
風 力 発 電 シ ス テ ム は,大
型 化 が 進 む こ と に よ り急 速 に 普 及 し て き た 。 デ ン マ ー
ク 「ベ ス タ 」 社 の 大 型 機 の 推 移 を 図5.33に m,発
電 容 量55kWの
m,出
力500∼750kW,最
示 す 。1984年
も の が 開 発 さ れ,1990年
代 に 入 っ て ロ ー タ 直 径45∼50
近 で は 直 径60∼80m,出
も の が 開 発 さ れ て い る 。 世 界 最 大 級 は,直
力1000∼2500kWク
径 が114mで
の が,2001年
ド イ ツ の エ ネ ル コ ン 社 で 開 発 さ れ,北
級2500kWの
風 力 発 電 シ ス テ ム を 図5.34に
Fiber
Reinforced
示 す よ う に,ガ Plastic)を
ラスの
出 力 容 量4000kWの
も
海 沿 岸 に 建 設 さ れ た 。80m
示 す。
風 車 の 大 型 化 は 風 車 に 使 用 す る ブ レ ー ドの 材 料 開 発,お は 主 に 図5.35に
に ロ ー タ 直 径 が15∼16
よ び形 状 に よ る。 現 在
ラ ス 繊 維 強 化 プ ラ ス チ ッ ク(GFRP:Glass
用 い,強
ン グ で 作 ら れ た ス パ ー を 前 縁 部 と し,後
図5.33風
度 を高 め る た め フ ィ ラ メ ン トワ イ ン デ ィ 縁 部 はGFRP製
車 の 推移
外 皮 と した 構 造 を採 用
図5.34
80m級2500kW風
図5.35
車 発 電 シス テム
ブ レー ドの構 成 と使 用 材 料
し て い る。 この よ うな 大 型 化 の 主 流 は水 平 軸 形 の プ ロペ ラ形 で あ る が,図5.36に
示すよ
う に新 し い タ イ プの 風 車 が 開 発 され て い る。 これ は H-ロ ー タ ー 風 車 と い い,垂 直 軸 形 で,揚 力 形 の ダ リウ ス 形 の 変 形 で あ り,風 向 に左 右 さ れ る こ と な く出力 を 取 り出 せ る特 長 を有 し て い る。
5.8.2
可 変速制御
従 来 は誘 導 発 電 機 を電 力 系 統 に直 結 し,発 電 機 の周 波 数 は系 統 の 周 波 数 に支 配 さ れ て,ロ
ー タ ー は定 速 回転 して い た 。 しか し,最 近 の風 力 発 電 シス テ ム は電 力
系 統 と発 電 機 の 周 波 数 を イ ンバ ー タ を 介 し て分 離 し,ロ ー タ ー は 風 速 変 化 に対 し,最 大 エ ネ ル ギ ー を得 る よ うに 可 変 速 運 転 を行 っ て い る。 この結 果,風 速 の広 範 囲 にわ た って 高 効 率 運 転 が 可 能 とな り,エ ネ ル ギ ー取 得 量 も増 大 す る。
(a)
(b) 図5.36
垂 直 軸 形,揚 [Eurowind
力 形 の H-ロ ー タ ー 風 車 Developmentsよ
り許 諾 を得 て転 写 。 参 照:www.eurowind.co.uk]
5.8.3
オ フ シ ョア 風 力 発 電
オ フ シ ョア(沿 岸 部 あ るい は沖 合 部:offshore)は
風 況 に恵 まれ た 広 大 な土 地
の確 保 が 容 易 な た め,大 規 模 な風 力 発 電 に適 し て い る。1990年 代 に入 り,デ ン マ ー ク,ス れ,現
ウ エ ー デ ン,オ ラ ン ダ に お い て オ フ シ ョア 風 力 発 電 の 実 証 試 験 が行 わ
在 に 至 っ て い る。 デ ンマ ー ク の 設 置 例 を 図5.37に
の沖 合 い 水 深3∼5mの
と こ ろ に,2000kW級20機
示 す 。 コペ ンハ ー ゲ ン
が 設 置 さ れ て い る。
この よ う に デ ン マ ー ク で は積 極 的 に 風 力 発 電 に 力 を そ そ ぎ,2030年 4000MWの
まで に
オ フ シ ョ ア風 力 発 電 を計 画 して い る。 また オ ラ ン ダ で も2020年
で に1500MWを
ま
計 画 し て い る。
一 方,日 本 で もオ フ シ ョア 風 力 発 電 が検 討 され て い るが,ヨ 遠 浅 の 地 点 が 少 な く,ま た 漁 業 権 と の関 係 も あ り,2010年
ー ロ ッパ の よ うな
の 風 力 導 入 目標 の 中
に は含 まれ て い な い 。
図5.37
5.9
デ ン マ ー ク 洋 上 風 力 発 電[写 真 提供:ヴ ェス テ ックジ ャパ ン株式 会社]
今後 の 計画
これ まで 設 置 され た世 界 の 風 力 発 電 設 備 の 容 量 を 図5.38に 積 発 電 設 備 容 量 は25GWで
あ り,設 備 利 用 率 を20%と
示 す 。2001年 の 累
す る と,世 界 の 年 間 風 力
発 電 量 は 約43.8×103GWhに 14,403TWhで
達 す る 。1998年
あ る の で,世
に世 界 で 使 用 され た 電 力 量 が
界 の 電 力 使 用 量 に 対 す る 割 合 は0.3%と
な る。
長 期 的 展 望 で は ヨ ー ロ ッパ が この分 野 で は極 め て 積 極 的 で あ る。 特 に デ ンマ ー ク で は す で に 電 力 需 要 の10%以
上 を 風 力 発 電 で ま か な っ て お り,2005年
12%に
引 き 上 げ る 計 画 で あ る 。EU全
2030年
の 間 で,1.5∼3.0×102GWを
ア メ リ カ で は2010年 は2002年
に10GW,2020年
に5MW,2010年
量 は53,000TWh/年
に3GWを
体 で は,2010年
ま で に60GW,2020∼
設 定 して い る。 に は80GWを
計 画 して い る。 日本 で
計 画 して い る。 世 界 の風 力 発 電 の 潜 在 容
と言 わ れ て い る 。 そ の 内 訳 を 図5.39に
ロ ッ パ お よ び 旧 ソ 連,ア
に は
フ リカ が 大 き な割 合 を 占 め て い る。
図5.38 世 界 の風 力 発 電 設 備 の容 量
図5.39 世界 の風 力 発 電 の潜 在 容量
示 す 。 北 米,東
ヨー
図5.40 わが 国 の風 力 発 電設 備 容 量
一 方,国
内 の 風 力 発 電 シ ス テ ム の 導 入 設 備 容 量 は図5.40の
よ う に増 加 傾 向 に
あ る。 わ が 国 は落 雷 が 多 い た め,直 撃 雷 に よ る翼 破 損 や 誘 導 雷 の サ ー ジ電 流 に よ る電 装 品 の焼 損 事 故 が 発 生 し て い る。 早 急 に雷 対 策 を施 し,わ が 国 に適 した 風 力 発 電 シ ス テ ム の 開発 が 望 まれ る。 図5.39に
示 した よ う に 世 界 の 風 力 発 電 シ ス テ ム の 潜 在 容 量 は極 め て大 き く,
今 後 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の大 き な一 翼 を担 う もの と期 待 され る。
問題 (1)風 車 の種 類 と,そ れ ぞ れ の 特 徴 を述 べ よ。 (2)揚 力 形 風 車 と抗 力 形 風 車 の相 違 を述 べ よ。 (3)発 電 用 に プ ロペ ラ形 風 車 が 多 く利 用 され て い る が,そ
の理 由 を述 べ よ。
(4)プ
ロペ ラ形 風 車 とア メ リカ 多 翼 形 風 車 の 特 徴 を述 べ よ。
(5)パ
ワ ー係 数,ト
ル ク 係 数 お よび ソ リデ ィテ ィ に つ い て それ ぞ れ 説 明 せ よ。
(6)揚 力 形 風 車 の 回転 力 を上 げ る 要 因 を説 明 せ よ。 (7)平 均 風 速 が10m/sの
地 点 に,電 気 出 力1500kWの
プ ロ ペ ラ形 風 力 発 電
設備 を設 置 した い。 風 車 の直 径 は い く らに す れ ば よ い か 。 (8)ブ
レ ー ドの 直 径 が80mの
風 車 が,平 均 風 速10m/sの
地 点 に設 置 され て
い る。 風 車 を 通 過 す る運 動 エ ネ ル ギ ー と風 車 の 電 気 出力 を求 め よ。 また ブ
レ ー ド先 端 の 速 度 お よ び風 車 の 回転 数 は い く らか 。 (9)定 格 風 速12m/s,ロ
ー ター 直 径60mの
風 車 の電 気 出 力 と年 間 の 発 電 量 は
い くら か。 (10)平 均 風 速 が12m/sで,風
車 を通 過 す る運 動 エ ネ ル ギ ー が2000kWの
時,
この風 車 の ブ レ ー ドの 直 径 は い くらか 。 また 電 気 出 力 及 び 年 間 の発 電 量 は い くらか 。 (11)プ ロ ペ ラ形 風 車(3 枚 ブ レ ー ド)の 直 径 が80mで,風 時,平
車 出 力3000kWの
均 風 速 は い くらか 。 また ロ ー ター の 回転 数 は い くらか 。 た だ しパ ワ
ー 係 数 を0 .45と す る。 (解 答 は巻 末)
第6 章 太 陽エネルギー発電
太 陽 エ ネ ル ギ ー 発 電 の 概 要 地 球 が 太 陽 か ら受 け る エ ネ ル ギ ー は5.5×1018MJ/ 年 と極 め て大 きい 。 この 太 陽 エ ネ ル ギ ー の 発 電 分 野 へ の利 用 は間 接 的 に は水 力 発 電,風 力 発 電,バ 電)が
イ オ マ ス発 電,海
洋 発 電(波
力 発 電,海
洋 温 度 差 発 電,潮
汐発
あ り,直 接 的 に は太 陽 光 発 電 お よび 太 陽 熱 発 電 が あ る。 こ こで は直 接 利 用
の 太 陽光 発 電 と太 陽 熱 発 電 に つ い て記 述 す る。
6.1
太 陽光発電
太 陽 光 発 電(photovoltaic
power
generation)は
シ リ コ ン等 の半 導 体 を使 用
す る 。 こ の材 料 に 光 を 当 て る と,半 導体 内 部 に電 荷 が 発 生 し,外 部 回路 に抵 抗 を 接 続 す る と電 気 を取 り出 す こ とが で き る。 太 陽電 池 を使 っ た発 電 シ ス テ ム は年 々 増 加 の 傾 向 に あ り,世 界 の 累 積 設 備 量 は2000年
6.1.1
末 に710MWに
も達 し て い る。
太 陽電池の 発電原理
太 陽 光 発 電 シス テ ム は太 陽 光 を当 て る こ と に よ り電 気 を取 り出 す シ ス テ ム をい う。CO2の
排 出 が な い の で 環 境 に優 し く,可 動 部 が な い の で 静 か で あ り,寿 命
が 長 く手 軽 に電 気 を取 り出 す こ とが で き る。 (1)太
陽光
太 陽 の 放 出 エ ネ ル ギ ー は約4×1023kWの
た め,地 球 に 注 が
れ る太 陽 か らの 入 射 エ ネ ル ギ ー密 度 は太 陽 と地 球 の 間 の 距 離 か ら,1.37kW/㎡ と な り,こ れ に地 球 の 断 面 積 をか け れ ば 地 球 に入 射 す る太 陽 エ ネ ル ギ ー の 総 量 が 求 め られ る。
(6.1)
エ ネ ル ギ ー 密 度 は 太 陽 と の 距 離 の 2乗 に 逆 比 例 す る か ら,金 m2と
地 球 よ り大 き く,火
星 は0.59kW/m2と
太 陽 光 の ス ペ ク トル と強 度 は,そ ま,図6.1に 0(Air
示 す よ う に,大
Mass:AM0)と
星 で は2.61kW/
小 さ い。
の 光 を地 球 の ど こで 測 定 す る か で異 な る。 い
気 圏 外 で 測 定 す る 場 合 の ス ペ ク トル を エ ア マ ス
よ ん で い る。 人 工 衛 星 等 宇 宙 で 利 用 され る太 陽 電 池 を
測 定 す る 時 に 標 準 光 源 の ス ペ ク トル と し て 使 用 さ れ る 。 地 上 で 測 定 す る場 合,赤 道 の 真 上 で 測 定 す る 場 合 を エ ア マ ス1(AM1),太 測 定 す る 場 合 を エ ア マ ス1.5(AM1.5)と 陽 光 の 大 気 を 通 過 す る 距 離 が1.5倍 陽 光 の ス ペ ク トル(spectrum)を 囲 に あ り,主
成 分 は0.2か
陽 が 天 頂 角48.2度 い い,AM1.5はAM1と
の位置 で 比 べ,太
長 い こ と を 意 味 す る 。AM0とAM1.5の 図6.2に
ら2.4μmで
示 す 。 波 長 は0.17か
あ る 。 波 長 が0.17か
図6.1 太 陽光 の測 定位 置 とエ ア マ ス との 関係
図6.2 太 陽 放 射 エ ネ ルギ ー の スペ ク トル分 布
ら24μmの
ら0.35μmを
太 範 紫外
線 領 域,0.35か
ら0.75μmを
可 視 光 線 領 域,0.75μm以
う。 大 気 を 通 過 す る こ と に よ り,放
射 強 度(radiation
上 を赤 外 線 領 域 とい intensity)は
大 き く低 減
し て い る こ と が わ か る 。 光 エ ネ ル ギ ー か ら電 気 エ ネ ル ギ ー へ の 変 換 の 割 合 を 変 換 効 率(conversion
factor)と
よ ぶ が,太
陽 電 池 の光 源 の 標 準 と し て世 界 的 に 図
6.2の
cの ス ペ ク ト ル(AM1.5)を
使 用 し,光
の 強 度 と し て 1㎝2当
た り100
mWを
採 用 し て い る 。 日 本 の 年 間 の 太 陽 か ら 受 け る エ ネ ル ギ ー 量 の 分 布 を 図6.3
に示 す 。 西 側 の 方 が 東 側 よ りエ ネ ル ギ ー 量 が 多 い 。
例 題 と して,次 5.5×1018MJ/年
の事 を考 え る。 地 球 が 太 陽 か ら受 け る年 間 の総 エ ネル ギ ー 量 は と言 わ れ て い る。 地 球 に 注 が れ る太 陽 か らの エ ネ ル ギ ー 密 度
1.37kW/m2か
ら,上 記 の 数 値 を 導 く。
〈解 答 〉 地 球 の 半 径 は6.4×106mで
あ る か ら,地 球 に 入 射 す る太 陽 エ ネ ル ギ
ー の 総 量 は,
W(ワ
ッ ト)と
J(ジ ュ ー ル)の
関 係 はW=J/sで
あ り,今
回 は 1年 間 の 総 エ ネ
図6.3 わ が 国 に お け る年間 太 陽 光 エ ネル ギ ー量(Wh/㎝2年)
ル ギ ー 量 で 表 示 す るた め,総 エ ネ ル ギ ー 量 P は,
とな る 。
また,年
平 均 の 日射 量 を80mW/㎝2と
し,1 年 間 の 日射 時 間 を1800時
間 と
す る と,年 間 の 1m2当 た りの太 陽 か ら受 け る エ ネ ル ギ ー は い く らか を検 討 す る。 〈解 答 〉
(2)太
陽電 池 の動作原 理
太 陽 電 池(solar
コ ン等 の半 導 体 で あ る。 半 導 体 は図6.4の 伝 導 帯(conduction
band)か
cell)に 使 用 す る材 料 は シ リ
よ うに,価 電 子 帯(valence
band)と
ら成 り立 っ て い る。 こ こで 価 電 子 帯 で は電 子 が 占
有 し,伝 導 帯 で は電 子 が ほ ぼ 空 の 状 態 で あ る。 この価 電 子 帯 と伝 導 帯 の 間 の エ ネ ル ギ ー 差 は 1か ら2eVと
小 さ く,室 温 程 度 で も少 量 の 電 子 が 熱 励 起 され て伝 導
帯 の な か に 入 り,若 干 の伝 導 性 を示 して い る。 この エ ネル ギ ー 差 をバ ン ドギ ャ ッ プ とい う。 い ま,バ
ン ドギ ャ ッ プ よ り大 きい エ ネ ル ギ ー を持 った 光 が この半 導体
に 照 射 さ れ た とす る。 す る と価 電 子 帯 内 の電 子 が 伝 導 帯 へ 移 行 す る。 この状 態 を 励 起 状 態 とい い,励 起 状 態 の 電 子 を外 部 へ電 気 エ ネ ル ギ ー と して 取 り出 す こ とが で き る。 な お,光
の エ ネ ル ギ ー は(6.2)式 で 定 義 さ れ,波 長 が 短 い ほ どエ ネ ル ギ
ー は大 き い 。
図6.4
半 導 体 の エ ネル ギ ーバ ン ド
(6.2) こ こ で E:光
の エ ネ ル ギ ー 〔eV〕,λ:光
光 の 振 動 数 〔1/s〕,h:プ
の 速 度 〔m/s〕,v:
ラ ン ク 定 数 〔J・s〕
太 陽 電 池 へ 光 を 当 て る と,半 子 が 励 起 状 態E2に
の 波 長 〔m 〕,c:光
導 体 内 で は 光 を 吸 収 し て 基 底 状 態E1で
移 行 す る 。 す な わ ちhy=E2-E1の
を 照 射 す る こ と に よ り,励
例 題 と して,波 長 が 1〓
あった電
光 エ ネ ル ギ ー を持 っ た 光
起 状 態 の 電 子 を 取 り出 す こ と が で き る 。
の光 の エ ネ ル ギ ー は い くらか に つ い て検 討 す る。
<解 答 > h(プ ラ ン ク定 数) c(光 の 速 度) の た め,光
一 方
の エ ネ ル ギ ー E は(6.2)式
,1eV=1.6×10-19〔J〕
次 にpn接
よ り,
の た め,
合 半 導 体 の 動 作 原 理 を 示 す 。pn型
太 陽 電 池 の構 成 例 を 図6.5に
示
す 。 電 池 は 表 面 電 極 ― 反 射 防止 膜 ― n型 半 導 体 ― p型 半 導 体 ― 裏 面 電 極 ― 基 板 よ
図6.5 pn型 太 陽 電 池 の構 成
り構 成 さ れ,薄
い n型 半 導 体 が p型 半 導 体 の 上 部 に 接 合 さ れ,そ
側 に光 が 照 射 さ れ,光
がpn接
合 の 境 界 まで 透 過 す る もの とす る。 νの 振 動 数 を
も った 光 が 照 射 され る と,図6.6に
示 す よ う に,半 導 体 の価 電 子 帯 に あ る電 子 に
バ ン ドギ ャ ッ プ よ り大 きい 照 射 エ ネ ル ギ ー が 吸 収 さ れ,そ 起 され る。 そ し て 電 子-正
の n型 半 導 体
孔(ホ
ー ル)対(erectron-hole
の電 子 は伝 導帯 域 に励 pair)を 作 る。 励 起
さ れ た 電 子 と正 孔 が 拡 散 し て n型 と p型 の 境 界 領 域 に 達 す る と,そ の 領 域 に 生 じて い る内 部 電 場 に よ り,電 子 は n型 半 導 体 へ,正
孔 は p型 半 導 体 へ 移 動 し,n
型 半 導 体 に は電 子 が p型 半 導 体 に は正 孔 が 蓄 積 し,n 型 は マ イ ナ ス に,p 型 は プ ラ ス とな りこ の両 端 に電 圧 が発 生 す る。 この状 態 で 外 部 回 路 を短 絡 させ る と電 流 が 流 れ,そ circuit
current)と
の電 流 を 短 絡 電 流(short
い う。 また 回路 を開 放 した 時 に発 生 す る 電 圧 を 開 放 起 電 力
(open circuit voltage)と
い う。 外 部 回路 に 抵 抗 を接 続 す る と,電 流 お よ び電 圧
と も これ らの 値 よ り小 さ くな る。
図6.6 太 陽電 池 の発 電 原 理
(3)太
陽電 池の 理論 変換 効 率
silicon solar cell)に
こ こ で は 結 晶 シ リ コ ン 太 陽 電 池(crystal
つ い て の 理 論 変 換 効 率(theoretical
conversion
efficiency)
に つ い て述 べ る。 ま ず 短 絡 電 流(ISC)に ち,バ
つ い て 検 討 す る 。 太 陽 光 ス ペ ク トル に 含 ま れ る 光 の う
ン ドギ ャ ッ プ よ り も大 き い エ ネ ル ギ ー を100%吸
収 し,そ
れ が す べ て電 流
へ 変 換 さ れ た と し た 時 の 電 流 が 短 絡 電 流 の 最 大 値 で あ る 。100mW/㎝2の
光 が
入 射 す る と,シ
リ コ ン太 陽 電 池 の 短 絡 電 流 は45.3mA/㎝2と
使 用 材 料 に よ っ て異 な り,そ の様 子 を表6.2に
な る。 短 絡 電 流 は
示す。
光 照 射 時 の 電 流 ― 電 圧 特 性 は(6.3)式 で 示 され る。
(6.3) こ こ でISC:短
絡 電流 〔 A 〕,I0:飽
絶対温度 〔 K 〕,q:素
和電流 〔 A 〕,k:ボ
電荷 〔 C〕,V:電
開 放 起 電 力(VOC)は(6.3)式
ル ツ マ ン 定 数 〔J/K〕,T:
池電圧 〔 V〕
で 電 流 I を 0 と お く こ と に よ り求 め ら れ る 。
(6.4) 結 晶 シ リ コ ン 太 陽 電 池 の 飽 和 電 流 は 約10-13A/㎝2で 開 放 起 電 力 は0.7Vと
あ る た め(6.4)式
よ り,
な る。
理 論 変 換 効 率 は 入 射 光 エ ネ ル ギ ー を Φ0と す る と,
(6.5) 太 陽 電 池 の発 生 電 力 の 最 大 は短 絡 電 流 に 開 放 起 電 力 をか け,さ
ら にFFを
か
け た もの とお け る。 こ こでFFは
フ ィル フ ァ ク タ ー(fill factor)と
よ ばれ,経 験 的 に(6.6)式 の よ
うに 開放 起 電 力 の 関 数 で 表 示 され る。
(6.6) こ こ で,
(6.7)
例 え ばVOC=700〔mV〕
と す る と,FFは0.846と
な り,
(6.8) と な る 。 同 様 に 他 の 材 料 の フ ィ ル フ ァ ク タ ー(FF)に 果 を 表6.2に
示す。
つ い て 求 め ら れ,そ
の結
例 題 と し て,短
絡 電 流 が30mA/㎝2で,飽
和 電 流 が10-13A/㎝2と
す る と,
開 放 起 電 力 は い くらか に つ い て 検 討 す る。 〈解 答>+k(ボ
ル ツ マ ン 定 数)=1.38×10-23〔J/K〕
q(素 電 荷)=1.602×10-19〔C〕 T(温
度)=300K
よ り,
し た が っ て(6.4)式
単 位
よ り,
V は,J=W・S,C/S=Aよ
り,
とな る。
結 晶 シ リコ ン太 陽 電 池 の 理 論 変 換 効 率 は 最 大 約27%で
あ り,そ れ は下 記 の 理
由 に よ る。 ①
長 波 長 光 の透 過 に よ る損 失
バ ン ドギ ャ ップ 以 下 の エ ネ ル ギ ー の 光 は吸 収 で きず,通 過 して い く。 この 損 失 が 約44%で ②
あ る。
光 吸 収 時 の損 失
吸収 され た エ ネ ル ギ ー の一 部 は熱 に な り電 気 エ ネ ル ギ ー と して取 り出す こ とが で きな い。 これ が約11%で ③
あ る。
電圧因子損失
バ ン ドギ ャ ップ相 当 の エ ネ ル ギ ー を吸 収 す るが,発 最 大 で,こ
生 す る電 圧 は開 放 起 電 力 が
の バ ン ドギ ャ ッ プ と開 放 起 電 力 と の 差 が 損 失 と な る。 これ が 約18%
で あ る。 以 上 の 要 因 を図6.7に
示す。
図6.7 理 論変 換 効率 の損 失要 因
(4)実
際の変換 効率
以 上 の よ うに 理 論 変 換 効 率 は使 用 す る材 料 に よ って
定 ま る値 で あ る。 各 種 の 材 料 を用 い て太 陽 電 池 を製 作 す る時,電 極 を つ け た り, 材 料 の厚 さ方 向 に制 約 を受 け た りす る た め,理 論 変 換 効 率 よ り実 際使 用 の太 陽 電 池 の効 率 は さ ら に低 下 す る。 その 要 因 は以 下 の 通 りで あ る。 ①
反射損 失
太 陽光 が 太 陽 電 池 へ 照 射 さ れ る と,そ の 一部 が 反 射 さ れ て エ ネ ル ギ ー 変 換 に寄 与 し な くな る。 こ れ を 反 射 損 失(reflection
loss)と い う。 こ の 抑 制 の た め 図
6.8に 示 す よ うに 微 細 構 造 を半 導 体 の 表 面 に 作 り(テ ク ス チ ャ構 造 と い う),乱 反 射 を起 こ して,あ
る面 で 反 射 した 光 を他 の 面 か ら入 射 さ せ る こ と に よ り全 体 と
して 反 射 を低 減 し て い る。 また 適 当 な屈 折 率 を も った 反 射 防 止 膜(SiO2,TiO2, Si3N4等 の 材 料 か ら構 成)を
使 用 し,こ の 微 細 加 工 とあ わ せ て 反 射 損 失 を 4%程
度 に まで低 減 して い る。
図6.8 微 細構 造 を施 した 表 面
②
光吸収 の不足
半 導 体 が 光 を吸 収 す るた め に は,あ
る厚 さ が必 要 で あ り,そ れ が 不 足 す るた め
損 失 と な る。 ③
バ ル ク で の キ ャ リア再 結 合 損 失
発 生 した キ ャ リア は す べ て 有 効 に取 り出 さ れ るわ け で な く,電 流 と して取 り出 す 前 に再 結 合(recombination)し ④
て 消 滅 して し ま う。
表 面 再 結 合 に よ る損 失
半 導 体 表 面 の 露 出 した 部 分 や 半 導 体 と電 極 と の界 面 で キ ャ リヤ の再 結 合 が 生 じ,損 失 とな る。 ⑤
表 面 電 極 に よ る入 射 光 の 制 限
電 流 を取 り出 す た め,半 導体 の 表 面 に 電 極 を取 り付 け る が,こ れ が 太 陽 光 の 入 射 を減 少 させ る。 こ のた め電 極 表 面 を極 力 小 さ くし,入 射 光 を増 す 構 造 が 使 用 さ れ て い るが,フ を使 用)が
ィ ン ガ ー(太 陽 電 池 の電 極 で,入 射 光 を極 力増 す た め,細 い金 属
細 す ぎ る と電 極 の抵 抗 が 大 き くな り,フ ィ ン ガ ー の 間 隔 を広 く しす ぎ
る と電 極 ま で到 達 す る た め の 半 導 体 内 の キ ャ リア の 移 動 抵 抗 が 増 大 す る の で,バ ラ ン ス の 取 れ た構 造 が 要 求 され る。 フ ィ ンガ ー電 極 の 一 例 を 図6.9に
図6.9
⑥
フ ィ ンガ ー電 極
直列抵抗損 失
表 面 抵 抗 の抵 抗 やpn接
合 自体 の 面 抵 抗 等 に よ る損 失 をい う。
以 上 の 損 失 要 因 を表 示 す る と図6.10の
よ う にな る。
示す。
図6.10 実使 用 電 池 の損 失 原 因(理 論 変換 効 率 の損 失 要 因以 外 の もの)
表6.1 太 陽電 池 用 半 導体 材料 単 結晶 シ リコ ン (1) シ リコ ン系 太 陽電 池
多 結晶 シ リコ ン ア モル フ ァス シ リコン
Ⅲ-Ⅴ 族 化合 物 半 導体 (2) 化 合物 半 導体 太 陽 電 池
Ⅱ-Ⅵ 族 化 合物 半 導体 Ⅰ-Ⅲ-Ⅵ
6.1.2太
陽電池用半導体 材料
使 用材 料 の 面 か ら大 き く,(1)シ 電 池(compound 表6.1に
族 化 合物 半 導 体
semiconductor
リコ ン系 太 陽 電 池 と,(2)化
合物 半導体太陽
solar cell)に 分 け られ る。 これ らを ま と め て,
示す。
(1)シ (非 結 晶)系
リコ ン 系 太 陽 電 池 に 分 け られ,更
ぞ れ の結 晶構 造 を 図6.11に
シ リコ ン 系 太 陽 電 池 は 結 晶 系 とア モ ル フ ァス
に結 晶 系 は 単 結 晶 系 と多 結 晶 系 に 区分 さ れ る。 そ れ 示す。
シ リコ ン は ケ イ素 と よ ばれ,地 球 上 に は酸 素 に次 い で 多 い 元 素 で あ る。 自然 界 に は単 体 で は存 在 せ ず,酸
化 物 と して 岩 石 や砂 等 の ケ イ石 と して 存 在 して い る。
この 酸 化 物 を還 元 して酸 素 を取 り除 く とシ リ コ ンが 得 られ る。 単 結 晶 シ リ コ ン(single
crystal silicon)は,約1500℃
ぼ 内 の 溶 か した シ リコ ン液 に,種
に加 熱 され た 石 英 る つ
とな る小 さな 結 晶 を付 着 させ,冷 却 さ せ なが ら
ゆ っ く り引 き上 げ る。 す る と結 晶 の 成 長 が 始 ま り,大 き な単 結 晶 の塊(イ
ンゴ ッ
(a)単 結 晶 シ リ コ ン
(b)多 結 晶 シ リ コ ン
(c)ア モ ル フ ァ ス シ リ コ ン
図6.11 シ リ コン系 半 導体 の結 晶構 造
ト とよ ぶ)が 得 られ,こ ハ と よ び,こ
れ を約300ミ
ク ロ ン の厚 さ に薄 く切 り出 す。 これ を ウエ
の ウ エ ハ に拡 散 法 に よ っ て 不 純 物 を添 加 し,pn型
半 導 体 を製 造 す
る。 多 結 晶 シ リ コ ン(poly
crystal silicon)は
コス ト低 減 を 目指 して 開 発 され た も
の で あ る。 溶 か し た シ リコ ン を黒 鉛 で で きた 鋳 型 に流 し込 み 温 度 を コ ン トロー ル し なが ら固 め る と,多 結 晶 の 塊 が 得 られ る。 これ を薄 く切 り出 し単 結 晶 シ リコ ン と 同様 に不 純 物 を添 加 して 製 造 さ れ る。 多 結 晶 シ リコ ン は単 結 晶 と単 結 晶 の 境 界 が 多 く含 ま れ,単 結 晶 の 中 に も不 完 全 な 結 晶 の状 態 が 含 まれ る た め,太 陽 電 池 と し て の性 能 は単 結 晶 シ リコ ン よ り低 下 す る。 アモ ル フ ァ ス シ リ コ ン(amorphous
silicon)は 不 規 則 な 原 子 配 列 を も った 非
結 晶 シ リコ ンで あ る 。 単 結 晶 シ リコ ン と アモ ル フ ァ ス シ リコ ン の 原子 配 列 の比 較 を図6.12に
示 す 。 単 結 晶 シ リ コ ンは シ リ コ ン 原 子 が 規 則 正 し く配 列 され,シ
図6.12
単結 晶 シ リ コン とア モル フ ァス シ リコ ンの 原子 配 列 比 較
リ
コ ン原 子 は 4本 の結 合 で き る手 を も っ て い て そ れ ぞ れ 隣 の 原 子 と結 合 して い る の に対 し,ア モ ル フ ァ ス シ リ コ ンの 場 合 は原 子 の並 び 方 が 不 規 則 で完 全 に結 合 で き な い 原 子 も存 在 す る。 ア モ ル フ ァス シ リコ ン の製 造 方 法 は真 空 中 で シ リ コ ン と水 素 の化 合 物 の シ ラ ン (SiH4)ガ
ス を流 し,高 周 波 放 電 させ,ガ
ラス基板 あ るい はステ ンレス基板 に堆
積 させ る。 この よ う に して製 造 した 膜 は 電 気 的 に 中性 で i型 と呼 ば れ る。 一 方, シ ラ ン ガ ス と同 時 に ホ ウ素 と水 素 の 化 合 物 で あ る ジ ボ ラ ン(B2H6)ガ し て 堆 積 させ る と p型 の ア モ ル フ ァス シ リ コ ンが,リ フ ォ ス フ ィ ン(PH3)ガ
ス を混 合
ン と水 素 の 化 合 物 で あ る
ス を混 合 して 堆 積 させ る と n型 ア モ ル フ ァ ス シ リ コ ンが
得 られ る。 ア モ ル フ ァス 太 陽 電 池 は p型,i 型,n 型 の膜 を順 次 上 記 の 方 法 で 堆 積 し,製 造 され る。 ア モ ル フ ァス 太 陽 電 池 の 特 長 は温 度300℃ 以 下 で 製 造 で き,膜 形 成 も比 較 的 容 易 で あ り,光 の 吸 収 係 数 も結 晶 系 よ り大 き い た め,1 ミク ロ ン以 下 の 厚 み で よ い 。 波 長 感 度 領 域 が 蛍光 灯 下 で 使 用 す る電 卓 用 の 電 源 に適 して い るが,電 適 用 した 場 合,約 (2)化
合 物半導体太 陽電池
化 合 物(GaAs:ヒ CdS:テ
1年 間 で10-20%性
化 ガ リウ ム),Ⅱ
能 が 低 下 し,変 換 効 率 も3-6%と
力用 に
低 い。
化 合 物 半 導 体 は Ⅲ族 元 素 とⅤ族 元 素 か らな る 族 元 素 とⅥ 族 元 素 か らな る化 合 物(CdTe-
ル ル 化 カ ドニ ウ ム ー 硫 化 カ ドニ ウ ム),Ⅰ-Ⅲ-Ⅵ
族 か らな る化 合 物 に分
け られ る。 Ⅲ-Ⅴ 族 の代 表 は ガ リウ ム とヒ素 の 化 合 物 で あ る ヒ化 ガ リウ ム で あ る。 特 長 は 光 の 吸 収 係 数 が 大 きい た め薄 くで き,放 射 線 に よ る 劣 化 が 少 な い こ とか ら宇 宙 用 に適 して い る。 た だ し資 源 量 が 少 な いた め,大 量 生 産 は困 難 で あ る。 Ⅱ-Ⅵ 族 の代 表 は カ ドニ ウ ム とテ ル ル ま た は硫 黄 との化 合 物 で あ る,テ ル ル 化 カ ドニ ウム また は硫 化 カ ドニ ウ ム で あ る 。 これ は 多 結 晶 の薄 型 構 造 が 可 能 で,低 コ ス ト化 が 図 られ る。 Ⅰ-Ⅲ-Ⅵ 族 の代 表 が セ レ ン化 銅 イ ン ジ ウム で あ る。 光 吸 収 係 数 が 大 き く,薄 膜 化 に よ る低 コ ス ト化 が 可 能 で あ る。 半 導 体 材 料 の性 能 比 較 を表6.2に
示 す。
表6.2 半 導体 材 料 の性 能 比較
6.1.3太
陽電 池の構造
以 下 に代 表 的 な太 陽 電 池 の構 造 を示 す。 (1)単
結晶系
p型 シ リ コ ン の 基 板 上 に n型 シ リ コ ン を 熱 拡 散 し て 図
6.13(a)の
よ う に構 成 し,そ の両 端 に銀 電 極 を取 り付 け て 電 流 を取 り出 す。 光 を
照 射 す る面 は 太 陽 光 の 入 射 が 減 少 し な い よ う に くし形 電 極 を採 用 し て い る。 (2)ア
モ ル フ ァ ス シ リ コ ン系
ガ ラ ス 基 板 タ イ プ は 図6.13(b)の
よ うに
ガ ラ ス基 板 に 透 明 な 電 導 膜 を形 成 し,p 型,i 型,n 型 の シ リ コ ン を形 成 し,ア ル ミ電極 を取 り付 け て 電 流 を取 り出 す 。
(a)単 結 晶 シ リ コ ン
(b)ア モ ル フ ァ ス シ リ コ ン (ガ ラ ス 基 板 タ イ プ)
(c)ア モ ル フ ァ ス シ リ コ ン (ス テ ン レ ス 基 板 タ イ プ)
図6.13 各 種 太 陽 電池 の構成
ま た,ス 型,n
テ ン レ ス 基 板 タ イ プ は 図6.13(c)の
型 の シ リ コ ン を 形 成 し,透
よ う に ス テ ン レ ス 基 板 に p型,i
明 電 導 膜 を 形 成 し,そ
の 上 に 銀 電 極 を 取 り付 け
て 電 流 を 取 り出 す 。 太 陽 電 池 の 最 小 単 位 を セ ル(cell)と
い い,そ
の 一 例 を 図6.14に
示す。 セル 1
図6.14 太 陽 電池 セル の例
図6.15 太 陽電 池 モ ジュ ール の例
[写真提供:京 セラ株 式会社]
[写真提供:京 セ ラ株式会社]
個 か ら取 り出 せ る電 圧 は0.5Vと
小 さい の で 実 際 に使 用 す る 時 は複 数 個 の セ ル
を直 列 に接 続 し て パ ッ ケ ー ジ に入 れ て 使 用 し て い る。 そ の代 表 例 を 図6.15に す 。 これ をモ ジ ュー ル(module)と 現 在,主
示
い う。
に使 用 さ れ て い る太 陽光 電 池 は単 結 晶 お よ び 多 結 晶 の結 晶 系 シ リコ ン
太 陽 電 池,ア
モ ル フ ァス シ リ コ ン太 陽 電 池 お よび テル ル化 カ ドニ ウ ム 太 陽 電 池 で
あ る 。 代 表 例 を表6.3に
示 す 。 電 力 用 と し て は 結 晶 系 シ リコ ン太 陽 電 池 が,ま
た
電 卓 等 屋 内用 と して ア モ ル フ ァス シ リコ ン太 陽 電 池 あ るい は テ ル ル 化 カ ドニ ウ ム 太 陽 電 池 が 使 用 さ れ て い る。
表6.3 太 陽電 池 の 素 子効 率,モ ジ ュ ール 効 率
6.1.4太
陽電池の 動作特性
太 陽 電 池 を電 源 と して 用 い る場 合 の動 作 特 性 に つ い て 述 べ る。 太 陽 電 池 の 等 価 回 路 を図6.16に
示 す 。 光 に よ っ て 発 生 す る 電 流 源 に並 列 に ダ
イ オ ー ド機 能 お よび 漏 れ 電 流 要 素 が 追 加 され,直 列 抵 抗 を 介 し て外 部 へ 電 流 が 供
図6.16 太 陽 電池 の 等価 回路
給 され る。 した が っ て 出 力 され る電 流 は,
(6.9) ダ イ オ ー ド電 流 は,
(6.10) こ こ でIph:入 流 〔 A 〕,I0:飽 T:絶
射 光 に比 例 した 電 流 〔 A 〕,Id:ダ 和 電流 〔 A 〕,n:ダ
対温 度〔 K 〕,q:素
ま る,n
イ オ ー ド電 流 〔 A 〕,ISh:濡
イ オ ー ド性 能 指 数,k:ボ
電荷 〔 C〕,Vj:接
は 材 料 や 温 度 に 依 存 し,1∼2の
Ishは 動 作 電 圧 に 比 例 す る た め,漏
れ電
ル ツ マ ン 定 数 〔J/K〕,
合 電 圧 〔V 〕,I0は 電 池 の 種 類 に よ り決 値 を とる。
抵 抗 をRshと
す る と,
(6.11) 直 列 抵 抗Rsは
透 明膜 抵 抗,接
触 抵 抗 の 合 計 と し て表 示 で き,出 力 電 圧 V は,
(6.12) と な る 。 こ れ よ り,出
力 さ れ る 電 流 は,
(6.13) これ が 太 陽 電 池 の電 流 の 一 般 式 で あ る。 太 陽 電 池 の 出 力 特 性 例 を 図6.17に imum
output
operaion
current)IPmと
示 す 。 最 大 出 力 は 最 大 出 力 動 作 電 流(max 最 大 出 力 動 作 電 圧(maximum
output
図6.17 太 陽電 池 の 出力 特 性
図6.18
operaion
モ ジ ュー ル特 性 例
voltage)Vpmの
図6.19 太 陽 電池 の動 作 点
積 で 表 示 され る。
太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル の 出 力 特 性 例 を図6.18に
示 す。最大 出力 動作 電流 は光の
強 さ に比 例 し て増 大 す る が,最 大 出力 動 作 電 圧 は ほ ぼ 一 定 で あ る。 次 に太 陽電 池 の動 作 点 に つ い て述 べ る。 太 陽 電 池 に 負 荷 を 接 続 し た 時 の 動 作 点 を図6.19に
示 す 。 負 荷 の 持 つI-V特
性 と太 陽 電 池 のI-V特
性 の 交 点 が 動 作 点 で,動 作 電 圧 お よ び 動 作 電 流 と い う。
こ の 点 は 必 ず し も太 陽 電 池 出 力 が 最 大 とな る 最 適 動 作 電 圧,電 operation
voltage,current)と
流(coptimum
一 致 し な い。 効 率 よ く運 転 させ る た め に は動 作 点
が 最 適 動 作 点 付 近 に来 る よ う に 負荷 イ ン ピー ダ ン ス を調 整 す る必 要 が あ る。
6.1.5太
陽 電池 の 適 用
(1) 家 庭 用 太 陽 電 池
太 陽 電 池 を一 般 住 宅 に適 用 した例 を図6.20に
家 庭 の 屋 根 に 太 陽 電 池 を設 置 し,家 庭 の電 力 を まか な い,余
示す。
った 電 気 を電 力 会 社
に販 売 す る シス テ ムで あ る。 昼 間 一 般 家 庭 で は電 力 が 余 るの で 電 力 会 社 へ 電 力 を 送 り(売 電),昼 (買 電)す
間 の 電 力 負 荷 ピ ー ク に 役 立 て,夜
は 電 力 会 社 か ら電 力 を購 入
る。
個 人 が 発 電 して 電 力 会 社 へ販 売 す る電 気 料 金 は電 力 会 社 か ら購 入 す る電 気 料 金 と同 じた め,使 用 方 法 に よ って は電 気代 を大 幅 に削 減 で き る。
図6.20家
庭 用 太 陽電 池 発 電 シス テ ムの イ メー ジ図
(2)学
校 ・工 場 用 太 陽 電 池
は工 場 に 適 用 す る場 合100か
普 通 家 庭 用 は 数kWで
ら200kWク
あ る が,学 校 あ る い
ラ ス とな る。 電 力 会 社 との連 繋 を 可 能
とし,停 電 時 に は継 続 し て電 力 を供 給 で き る よ うに蓄 電 池 との組 み 合 わせ を行 っ て い る。 世 界 全 体 お よ び 日本 に お け る太 陽 光 発 電 累 積 設 備 量 の 年 推 移 を図6.21に 2000年 末 の 日本 の 設 備 量 は317MWで,世 45%を
界 全 体 の設 備 量711MWに
示 す。
対 し,約
占 め て お り,そ の伸 び 率 も著 しい 。
図6.21 太陽 光 発 電 累積 設 備 量 の年 推 移
6.1.6
太陽光発 電シス テムの潜在 容量
わ が 国 の 太 陽 電 池 設 置 可 能 な 容 量 を把 握 す る た め,考 定 し容 量 を算 定 し た結 果 を表6.4に 宅 の60%に4kWの
示 す 。 仮 定 と して,例
道 で は 駅 舎,操
ス テム 作 場 の用
設 置 す る等 の仮 定 を お い て 算 定 した 。
総 計 は173.1GWと GWの
え ば家 庭 用 で は一 戸 住
太 陽 電 池 を設 置 す る。 共 同 住 宅 で は25%に30kWシ
を設 置 す る。 産 業 基 盤 施 設 で は高 速 道 路 の50%に,鉄 地 の50%に
え得 る場 所 を い ろい ろ想
な った 。 これ は1998年
た め,総 設 備 容 量 の 約78%に
の わ が 国 の 発 電 設 備 容 量 が221.94
相 当 す る。
表6.4 わ が国 の 太 陽電 池 潜 在容 量
仮定設置場所等 住宅
●一 戸 建 住宅(約2,500万
79.2GW
●共 同 住 宅(約256万 〔 新 築住 宅(約70万
公 共建 築 物
戸)の60%に4kWシ
棟)の25%に30kWシ 戸/年)の50%に
ス テ ムの 導入 が 可 能 と仮 定 。 ス テム の 導入 が 可 能 と仮 定 。
導入 した とす る と,43年 間 か か る〕
● 学 校(総 建 築 面 積 約200㎞2)の25%,公 共建 築 物(約25万 カ所)の50%に 30kWシ ス テ ムの 導入 可 能 と仮定 。(壁 建材 一 体 型 太 陽 電 池 に よ り設 置面 積
17.5GW
が 2倍 に な る と仮 定)。 ● 全 国 の 工 場 の 建 築 面 積 約400㎞2の50%,そ
産業
25%,業
47.9GW
務 用 ビル(約17万
の 他 の 土 地 約1100km2の
カ 所)の25%
産 業基 盤 施 設 ● 道路(8.7GW) 28.5GW
高速 道 路(約110㎞2)の50%,遮 柵(60㎞2)の50%に
音 壁,(2 ㎞2)及
び主 要 一般 道 路 の 防護
導 入 可能 と仮 定 。
● 鉄道(6.3GW) 駅 舎,操 車場 等 停車 場 用 地(約126㎞2)の50%に
導入 可 能 と仮 定 。
● 河川(3.9GW) 堤 防 敷(約70㎞2)の50%,河
川敷(約100km2)の50%に
導入 可 能 と仮 定 。
● そ の他(9.6GW) 海 岸,農 耕 地,貯 水 池 等 の 1%に 導 入 可 能 と仮 定 。 総 計 173.1GW 平 成 8年 6月 総合 エネ ル ギ ー調 査会 基本 政 策 小委 員 会 資 料 よ り 〈通商 産 業 省試 算 〉
6.1.7
今後 の課題
太 陽 電 池 が 今 後 多 量 に普 及 す るた め に は コス ト低 減 が 欠 か せ な い 。 この た め大 規 模 生 産 に 向 い て い る多 結 晶 シ リ コ ン太 陽 電 池 の 高 効 率 を維 持 しな が ら,シ リコ ン の使 用 量 低 減 の た め 薄膜 化 す る こ とが 必 要 で あ る。 一 方,ア
モ ル フ ァス シ リコ ン太 陽 電 池 は,セ ル 効 率 が低 い た め単 位 出 力 当 りの
構 造材 が多 く
6.2
り,こ の た め 効 率 向 上 が 必 要 とな る。
太 陽 熱 発 電
太 陽 熱 エ ネ ル ギ ー を 効 率 よ く集 め て,そ 換 す る 発 電 方 式 を太 陽 熱 発 電(solar
の 熱 エ ネ ル ギ ー を 電 気 エ ネ ル ギ ー に変
thermal
power
generation)と
い う。 こ こ
図6.22 タ ワー 集光 方 式 発 電 の原 理
で は二 つ の シ ス テ ム を紹 介 す る 。
6.2.1
タワー集光方式
タ ワー 集 光 方 式 の概 念 図 を 図6.22に
示 す。円状 に配置 された平 面鏡 で光 を集
め,タ
ワー の先 端 に取 り付 け られ た 集 熱 器 を加 熱 す る こ とに よ り,蒸 気 を発 生 さ
せ,そ
の 蒸 気 で タ ー ビ ン を駆 動 し発 電 す る シ ス テ ム で あ る。 太 陽光 線 を効 率 的 に
集 光 す るた め,コ MWの
ン ピ ュ ー タ ー に よ る 平 面 鏡 の 方 向 制 御 が 行 わ れ て い る。10
タ ワ ー 集 光 方 式 が ア メ リ カ の カ リフ ォ ル ニ ア州 バ ー ス トー に 設 置 さ れ,
1982年 か ら実 証 試 験 が行 わ れ て い る 。
6.2.2
曲面集光方 式
曲 面 集 光 方 式 の 原 理 を 図6.23(a)に
示 す 。 多 数 の 平 面 鏡 か らの 反 射 光 を 曲 面
鏡 に 集 め,曲 面 鏡 の 中央 に取 り付 け られ た 集 熱 管 を加 熱 し,蒸 気 を発 生 させ タ ー ビ ン を駆 動 し発 電 す る。 図6.23(b)の
よ う に 曲 面 鏡 を 多 数 設 置 し,各 曲 面 鏡 で
得 られ た熱 を蓄 熱 装 置 に 回 収 し,そ こで 発 生 した 蒸 気 で タ ー ビ ン を駆 動 し発 電 す
図6.23 曲面 集光 方式 の 原理
る シス テ ム で あ る 。
問題 (1)東 京 ドー ム に全 面 太 陽 電 池 を設 置 した 時,ど か 。 た だ し ドー ム の 面 積 は32,000㎡
れ く らい の 電 力 が 得 られ る
とす る。
(2)太 陽 電 池 の 理 論 変 換 効 率 につ い て単 結 晶 シ リ コ ン を例 に説 明 せ よ。 (3)太 陽 電 池 の種 類 を述 べ よ。 (4)太 陽 電 池 の適 用 例 を述 べ よ。 (5)太 陽 熱 発 電 方 式 に つ い て説 明 せ よ。 (解答 は巻 末)
第7 章 海洋エネルギー発電
海 洋 発 電 の 概 要 海 洋 は 地 球 表 面 積 の 約70%を
占 め て い る た め,太
陽 か ら受 け
る エ ネ ル ギ ー は極 め て 大 き い。 この よ うな海 洋 をエ ネ ル ギ ー 源 と して利 用 す る こ と は 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 確 保 の 上 か ら重 要 で あ る 。 現 在 海 洋 を 利 用 し た 発 電 方 法 は 波 力 発 電(wave energy
activated
conversion),潮
power
汐 発 電(tidal
generation),海 power
洋 温 度 差 発 電(thermal
generation)等
が あ る。 これ らの
概 要 を記 述 す る。
7.1 7.1.1
波力発 電 波のエ ネルギー
波 力 発 電 方 式 に は,波 colum type)等 energy)は
type)や
の 上 下 運 動 を 利 用 す る 振 動 水 柱 形(oscillating
water
波 に よ る 物 体 の 運 動 を 利 用 す る 可 動 物 体 形(movable
body
が あ る 。 振 動 水 柱 型 波 力 発 電 の 入 力 と な る 波 エ ネ ル ギ ー(wave 次 の よ う に 算 定 さ れ る。 い ま,図7.1の
か ら 山 ま で の 振 幅(amplitude,)を
h と し,波
波 を考 え る。 波 の零 ラ イ ン
の 波 長(wave
length)を
(b)
(a)
図7.1 波 の エ ネ ル ギー 流束 モ デル
λ,波
の周 期(wave
period)を
T(波 の 山 が 来 て か ら次 の 山 が 到 着 す る ま で の 時 間)
とす る。 この 波 が(b)に 示 す よ う に x軸 の 正 の 方 向 に 進 行 す る場 合 を 考 え る。 こ こで Z 方 向 に対 して は波 面 の 山 と谷 が 並 行 して い る とす る。 この よ う な波 の Z 方 向 に対 す る単 位 長 さ当 りの 波 の エ ネ ル ギ ー は,波 の 振 幅 と周 期 を も とに(7.1)式 で 表 示 され る。
(7.1) ρ:海 水 の 密 度 〔 ㎏/m3〕,g:重 〔 m 〕,T:周
力 加 速 度 〔m/s2〕,H:波
期 〔s〕,H お よ び T と し て 有 義 波 高 値H1/3,有
用 す る 。 こ こ で 有 義 波 高 値(significant (significant
wave
観 測 し た と き,波 で100個
の 山 か ら谷 ま で の 振 幅
period)は
wave
height
義 波 周 期T1/3を
valve)お
採
よ び有 義 波 周期
次 の よ う に定 義 さ れ る。 あ る地 点 で 連 続 す る 波 を
高 の 高 い ほ う か ら 順 に 全 体 の1/3の
の 波 が 観 測 さ れ れ ば,大
き い 方 の33個
個 数 の 波(例
の 波)を
選 び,こ
え ば20分
間
れ らの 波 高 お
よ び周 期 を平 均 した もの を有 義 波 高 値 お よ び有 義 波 周 期 とい う。 (7.1)式 N(ニ
の 単 位 は ㎏/m3・
ュ ー ト ン),N・m=J(ジ
〔W/m〕
㎡/s4・ ㎡ ・s=㎏
・m/s2・m/s・1/mと
ュ ー ル),J/s=W(ワ
な り ㎏ ・m/s2=
ッ ト)で あ る か ら,最
と な る 。 す な わ ち 波 の エ ネ ル ギ ー は 単 位 長 さ 当 り の W,し
〔W/m〕 で 表 示 さ れ る 。 な お,(7.1)式
終 的 に
た が っ て
の 導 出 は 章 末 の 付 録 を参 照 さ れ た い 。
あ る 日本 海 域 の 沖 合 い と防 波 堤 前 で 観 測 さ れ た 有 義 波 高 値 と 有 義 波 周 期 の 出 現 頻 度 を 図7.2に 前 で0.5m
示 す 。 有 義 波 高 値 に つ い て は 沖 合 い で 1m 近 傍 が 多 く,防
近 傍 が 多 い 。 ま た 有 義 波 周 期 は 沖 合 い,お
よ び 防 波 堤 前 と も7.5s近
傍 が 多 か っ た 。 こ の よ う に し て 別 の 海 域 で 調 査 さ れ(7.1)式 波 エ ネ ル ギ ー 流 束 の 季 節 的 変 化 を 図7.3に
7kW/mで,日
MWと
な る。
で あ る た め,日
季 が 小 さ い。
示 す。 日本 周 辺 の 平 均 値 は約
本 を 取 り巻 く海 岸 線 の 総 延 長 約34,000㎞
適 す る 距 離 は5200㎞
を も と に算 定 され た
示 す 。 冬 期 が 大 き く,夏
日 本 沿 岸 の 年 間 平 均 の 波 エ ネ ル ギ ー 分 布 を 図7.4に
波堤
の う ち,波
力発 電 に
本 周 辺 の 波 エ ネ ル ギ ー の 総 量 は3.6×104
例 題 と して,有
義 波 高 値 が2m,有
義 波 周 期 が8sの
時の波 のエ ネル ギー流束
は い く らか につ い て検 討 す る。 〈解 答 〉
を 用 い,(7.1)式
よ り
(a)有 義 波 高 値 出現 頻 度
(b)有 義波 周 期 出現 頻 度
図7.2 有 義 波 高値 お よび有 義 波周 期 出 現頻 度
図7.3波
エ ネル ギー の流 速季 節 変 化
図7.4
7.1.2
日 本 沿 岸 の 波 エ ネ ル ギ ー 分 布[高
橋 “港 湾 技 術 研 究 資 料 ”No.654]
波力発電方法
波 力 発 電 方法 につ い て述 べ る。 図7.5の
よ うに下 部 が 開 放 され た 容 器 を海 中 に
浮 か す と波 の上 下 運 動 に よ り容 器 内 の 水 面 が 上 下 に振 動 し,水 面 が 上 昇 した 時, 容 器 内 の 空 気 は圧 縮 され,空 ー ビ ン(air
turbine)を
気 流 が 送 気 管 を通 して 上 部 に取 り付 け られ た 空 気 タ
駆 動 し発 電 す る。 一 方,水
面 が 下 降 す る時 は容 器 の 側 面
図7.5 振 動 水柱 型 波 力 発 電
に 取 り付 け られ た 吸 気 弁 か ら空 気 が 流 入 し送 気 管 は閉 鎖 さ れ るの で 空 気 タ ー ビ ン へ の 空 気 流 はな く発 電 に 寄 与 しな い 。 波 の上 下 運 動 に よ り空 気 室 の空 気 は圧 縮 さ れ た り減 圧 さ れ た り し て,そ の た び に 空 気 流 れ が正 方 向 に な った り負 方 向 に な っ た りす る。 こ の よ うな 場 合 で も空 気 タ ー ビ ンが 一 定 方 向 に 回転 で き る工 夫 が な さ れ れ ば効 率 よ く運 転 で き る。 そ の 一 つ が 図7.6に
示 す 方 法 で あ る。 波 が 上 昇 す る時,空
気 室A,Bの
空気
は圧 縮 され る の で A 室 の 弁 は 閉 じ,B 室 の弁 が 開 い て,A 室 の 空 気 は ノ ズ ル を 通 って 空 気 タ ー ビ ン を駆 動 し,B 室 の 弁 を通 っ て排 出 され る。 次 に波 が 下 降 した 時,両
空 気 室 の 圧 力 は 低 下 す る の で,A
の た め A 室 の 弁 を 通 っ てA,B両
室 の 弁 は 開 き,B 室 の 弁 は閉 じ る。 こ
室 に空 気 が 流 入 す る。 この 時 B 室 に 流 入 す る
空 気 で 空 気 タ ー ビ ン を駆 動 す る。 この よ う にA,Bの
二 つ の 空 気 室 を設 け る こ
とに よ り,連 続 して 空 気 タ ー ビ ン を駆 動 す る こ とが で き る。 別 の例 を図7.7に
示 す 。 波 が 上 昇 す る と空 気 室 の圧 縮 空 気 は正 圧 水 弁 室 を通 っ
て正 圧 タ ン ク室 に貯 え られ,タ ー ビ ンNo.1を
駆 動 し大 気 へ 放 出 さ れ る。 な お,
こ の と き負 圧 水 弁 室 で は加 圧 され た空 気 流 は水 面 を加 圧 す るが,水
弁 室 に設 け ら
れ た配 管 内 の 水 の水 位 が 上 昇 し,小 さ い面 積 と水 圧 の た め 配 管 を通 した 空 気 流 は 阻 止 され る。 一 方,波
が 下 降 す る と大 気 か ら空 気 が 負 圧 タ ン ク室 に侵 入 し負 圧 水
弁 室 を通 っ て 空 気 室 を満 た す 。 こ の空 気 流 に よ りター ビ ンNo.2は
駆 動 され る。
こ の と き,波 の 上 昇 時 と同 じ原 理 で 正 圧 水 弁 室 は空 気 流 を 阻 止 す る働 き を す る。 こ の よ うな水 弁 室 の設 置 に よ り波 の上 昇 と下 降 の 両 期 間 と も発 電 で き る シ ス テ ム
図7.6 二 つの 空 気室 を設 け た波 力発 電
図7.7 水 弁 室 を設 置 した 波 力発 電
を提 供 で き る。 可 動 物 体 型 の例 を図7.8に
示 す 。 浮 体 と釣 合 錘 を連 結 した ワ イ ヤ を プ ー リに巻
き つ け,波 の 上 下 運 動 に よ っ て 浮 体 が 上 下 に 運 動 す る と,そ れ に よ り プ ー リは 正,逆
方 向 に 回転 を繰 り返 す。 一 対 の 一 方 向 ク ラ ッチ を用 い る こ とに よ り,プ ー
図7.8
可 動 物 体 型 波 力 発 電[羽
田 野,櫨
田 “海 洋 開 発 ニ ュー ス ”(2001-7)]
リが 正 方 向 に 回 転 す る時(波 に 回 転 す る時(波
の 上 昇 時),A
の 下 降 時),B
は矢 印 方 向 に,ま た プ ー リが 逆 方 向
は 矢 印 方 向 に 回転 し,こ の よ うなA,B逆
向き
の 回 転 を ギ ヤ を介 し て一 つ の 方 向 の 回転 運 動 に変 換 して 発 電 機 を駆 動 す る方 式 の 波 力 発 電 シ ス テ ム で あ る。 現 在 開 発 段 階 に あ り,研 究 が 進 め られ て い る。
7.2
海洋温度差発電
海 洋 温 度 差 発 電 は太 陽 熱利 用 の発 電 の 一 つ で,太 陽 で 熱 せ られ た 海 洋 の表 層 を 高 熱 源(20∼30℃)と
し,深 層 の低 熱 源(5∼10℃)と
の 間 の温 度 差 を利 用 し て
発 電 す る方 法 で あ る。 海 洋 の 深 さ方 向 の温 度 分 布 例 を図7.9に 層 と深 層 の 温 度 差 が真 夏 で 約20゜C,真
示 す 。 メ キ シ コ湾 の 場 合 で あ るが,表
冬 で 約10゜Cで あ る こ とが観 測 され る。
海 洋 温 度 差 発 電 シ ス テ ム構 成 と原 理 を図7.10に ク ル 式 海 洋 温 度 差 発 電(closed が,蒸
発 器,タ
cycle thermal
ー ビ ン,発 電 機,凝
縮 器,作
水 ポ ン プか ら構 成 され る。 低 沸 点 媒 体(フ 表 層 の 温 海 水 で蒸 発 させ,蒸
示 す 。 これ は ク ロー ズ ドサ イ
energy
conversion)の
例で あ る
動 流 体 ポ ンプ,温 海 水 ポ ン プ,冷 海 ロ ンや ア ンモ ニ ア)を 蒸 発 器 で 海 洋 の
発 した 媒 体 を タ ー ビ ンへ 導 き タ ー ビ ン を駆 動 し,駆
動 に使 用 さ れ た 媒体 を凝 縮 器 で 深 層 の 冷 海 水 で液 化 させ,再 度 蒸 発 器 へ と送 り込
図7.9
海 洋 の 表 層 と深 層 の 温度 分 布(メ キ シ コ湾)
図7.10
み,こ
海 洋 温度 差 発電 シ ステ ム と原理 図
の よ う な作 用 を繰 り返 しタ ー ビ ン を 回転 させ る 。
フ ロ ン はオ ゾ ン破 壊 の 問 題 が あ る の で,ア 器,凝 縮 器 の 動 作 温 度 の 一 例 を 図7.11に
図7.11
ン モ ニ ア が 主 に使 用 され る。 蒸 発
示 す 。 ア ン モ ニ ア は表 層 の 温 海 水 に よ
蒸発 器,凝 縮 器 の 動 作 温度
図7.12
浮 上 形 ス ー パ ー 海 洋 温 度 差 発 電 所 の 概 念 図[R.H.Douglass]
り蒸 発 器 内 で 加 熱 さ れ て22.6℃ の 蒸 気 と な り,タ ー ビ ン へ 送 られ る。 タ ー ビ ン か ら出 た ア ンモ ニ ア は深 層 の冷 海 水 に よ り凝 縮 器 で 冷 却 され,12.1゜Cの 液 体 とな っ て 再 度 蒸 発 器 へ 戻 され る。 浮 上 形 の ス ー パ ー海 洋 温 度 差 発 電 所 の 概 念 図 を 図7.12に 中 に は,タ
ー ビ ン ・発 電 装 置,蒸
発 器,凝
縮 器,温
示 す。 海 洋 構 造 物 の
海 水 ・冷 海 水 取 入 口,温 海
図7.13
オ ー プ ンサ イ クル海 洋 温度 差 発 電 シス テム
水 ・冷 海 水 ポ ン プ 等 が 設 置 され て い る。 この よ う な海 洋 構 造 物 は,陸 地 に隣 接 して設 置 す る場 合 と船 舶 上 に 設 置 す る場 合 が あ る。 発 生 した 電 力 は 陸上 へ 送 電 さ れ る が,送 電 で きな い場 合 は構 造 物 上 で 発 電 した電 力 で 例 え ば電 気 分 解 に よ り水 素 を製 造 し,液 体 水 素 ま た は水 素 か らメ タ ノ ー ル を 製 造 し,液 体 燃 料 と して 海 上 輸 送 し使 用 さ れ る。 海 洋 温 度 差 発 電 シス テ ム の別 の 方 法 が オ ー プ ンサ イ クル 式(open る。 これ は 図7.13に 発 器,タ
cycle)で
あ
示 す よ うに,低 沸 点 媒 体 を使 用 しな い 方 法 で あ る。 まず 蒸
ー ビ ン,凝 縮 器 の 系 内 を 真 空 ポ ン プ で 低 圧 に し,約28℃
水 を蒸 発 器 の 中 に 入 れ る(25゜Cの 水 蒸 気 圧 は 約3000pa)。
図7.14
オ ー プ ンサ イ クル 方式 の出 力特 性
の表 層 の温海
す る と温 海 水 の 一 部
は蒸 発 し水 蒸 気 とな り,大 部 分 は海 水 に戻 さ れ る。 水 蒸 気 は ター ビ ンへ送 られ, タ ー ビ ン を 回転 させ,出
て きた水 蒸 気 は凝 縮 器 に戻 され,深
層 の 冷 海 水 に よ り冷
却 さ れ る。 冷 却 さ れ た 水 の 温 度 を13℃ とす る と,蒸 気 圧 は 約1500paと タ ー ビ ン は差 圧1500paで
な り,
回 転 す る こ と にな る。 オ ー プ ン サ イ クル 海 洋 温 度 差 発
電 シス テ ム で 発 電 した 電 気 出 力 の 一 例 を 図7.14に
示 す 。 冷 海 水 温 度 に大 き く影
響 さ れ,温 度 が 高 くな る と出力 は低 下 して い る。 この よ うに作 動 流 体 で あ る水 が 蒸 発 器 に戻 さ れ ず に 系 外 に取 り出 され るの で オ ー プ ンサ イ ク ル とよ ば れ る。 この 方 式 は 空 気 の混 入 に よ り発 電 機 の 出 力 が 変 動 す る こ と,お よ び小 さ な蒸 気 圧 差 で 運 転 せ ざ る を得 な い とい う課 題 が あ る。
例 題 と して,オ
ー プ ン サ イ ク ル 方 式 で 温 海 水 で 得 られ る 水 蒸 気 の 飽 和 温 度 が
27℃ で,冷 海 水 に よ り冷 却 され,15゜Cの 凝 縮 水 が 得 られ る時,タ
ー ビ ンを 回転 さ
せ る た め の 水 蒸 気 の差 圧 は い く らか につ いて 検 討 す る。 <解 答>27℃
お よ び15℃ の 飽 和 水 蒸 気 圧 は,そ れ ぞ れ3569paお
で あ る か ら,差 圧 △P は △P=3569-1707=1862paと
7.3
よび1707pa
な る。
潮汐発電
海 水 の 干 満 時 の 海 水 位 の 差 を利 用 して 発 電 す る 方 式 で あ る 。 設 置 場 所 は な るべ く潮 の干 満 差 の大 きい と こ ろが 望 ま しい 。 日本 の潮 位 差 の大 きい 地 域 は有 明海 の 4.9mが
最 大 で,潮 汐 発 電 に適 した と こ ろ は ほ とん ど な い。 世 界 的 に は表7.1に
示 す よ う に 最 大16mに (tidal power)の
も達 す る と こ ろ が あ り,世 界 全 体 の 潮 汐 エ ネ ル ギ ー
大 き さ は 約3×109kW,利
用 可 能 量 は そ の 1か ら 2%と 言 わ れ
て い る。 潮 汐 発 電 に適 す る地 域 の 特 徴 は図7.15に 口 の よ う に,湾 の 入 口 が100km以 の 場 合 で,湾
の入 口の 潮 位 が4-5mで
示 す イ ギ リス 西 岸 セ バ ー ン河
上 と広 く,湾 の奥 に行 くほ ど狭 め られ た地 形 も奥 で は10-16mに
まで 増 幅 され る。
潮 汐 発 電 は潮 の 満 ち て きた 時 に海 水 を海 岸 近 くに建 設 され た貯 水 池 に導 き,潮 が 引 い た 時 に貯 水 池 か ら海 水 を海 へ 導 き発 電 す る方 式 で,そ
の 概 念 図 を図7.16
表7.1
図7.15
世界各地の最大潮位差
イ ギ リス西岸 セバ ー ン河 口の 潮位 増 幅 現象
図7.16
潮汐発電の概念図
に示 す。 満 潮(high
tide)時 に貯 え られ た 海 水 の位 置 エ ネ ル ギ ー に よ っ て 発 電 す
る もの で低 落 差,大
流 量 の 水 車 発 電 機 を必 要 とす る。
潮 汐 発 電 の 発 電 方 式 は下 記 の よ う に分 類 され る。 (1)片
方 向発 電 方 式
満 潮 時 に水 門 を 開 い て 貯 水 し,水 位 の 最 大 にな る時
間 で 水 門 を閉 じ て,干 潮(low range)に
tide)が 始 まっ た あ と発 電 可 能 な潮 位 差(tidal
な っ た 時 か ら発 電 を 開 始 す る。 そ の 様 子 を 図7.17に
示す。水 車 は一
方 向 の 回転 で よ く,貯 水 池 の構 造 も簡 単 で あ る が発 電 時 間 が 短 い とい う欠 点 が あ る。 (2)両
方 向発 電 方 式
満 潮 時 と干 潮 時 の両 方 で 発 電 す る 発 電 方 式 で あ る。
満 潮 時 に,貯 水 池 の干 潮 時 の 水 位 と上 昇 す る海 面 水 位 との落 差 で 発 電 す る。 干 潮 時 に は そ の逆 で発 電 す る。 こ の た め 両 方 向 の水 の流 れ に対 し,回 転 で き る水 車 の 設 置 が 必 要 で あ るが,長 (3)二
時 間 運 転 で き る とい う利 点 が あ る。
貯 水池 形発電 方式
図7.18の
よ う に二 つ の 貯 水 池 を設 け,満 潮 時
に 高 水 位 貯 水 池 を海 水 で 満 た し,干 潮 時 に低 水 位 貯 水 池 の海 水 を放 出 し,両 貯 水 池 の 落 差 を利 用 し て発 電 す る方 式 で あ る。 水 車 は二 つ の 貯 水 池 間 に設 置 し,そ の
(a)
水位の変化
(b)
発電電力 図7.17
片方向発電方式
図7.18
二貯水池形両方向発電方式
(a)
水位の変化
(b) 図7.19
間 の 落 差 で 常 時 発 電 す る。 そ の様 子 を図7.19に る反 面,貯
発電電力
二貯 水地形両 方向発 電方式 の 水位 と発電状況
示 す 。 連 続 運 転 す る こ とが で き
水 池 を二 つ 必 要 と し建 設 コ ス トも高 くな る。
潮 汐 発 電 所 の代 表 例 が フ ラ ン スの ラ ンス 潮 汐 発 電 所 で あ る。 英 仏 海 峡 へ 注 ぐラ ン ス 河 の 河 口 に位 置 し,潮 位 差 が 最 大13.5m,平
均8.5mで
あ り,1966年
に運
転 開始 した 。 海 岸 近 くに貯 水 池 を作 り,一 日 に 2回 あ る満 ち潮 と引 き潮 を利 用 し て,こ
の 貯 水 池 と海 水 との 間 に 落 差 を生 じ させ,こ
の落 差 を利 用 して 一 日 4回発
電 す る。 貯 水 池 か ら海 に流 れ る時 の 年 間 の 発 電 量 は5.4×105MWh,海 池 に 流 れ る時 に0.7×105MWh,し
た が っ て 年 間6.1×105MWhの
か ら貯 水 電力 を発電
し て い る。 た だ し貯 水 池 の充 水 時 に ポ ンプ 揚 水 を行 って い る の で,そ の 分 を差 し 引 く と年 間 の 発 電 電 力 量 は5.4×105MWhと 24台 設 置 さ れ て い る。
な る。 発 電 機 の 出 力 は10MWで
問題 (1)波 力 発 電 に つ い て記 述 せ よ。 (2)海 洋 温 度 差 発 電 に つ い て 記 述 せ よ。 (3)潮
汐 発 電 に つ い て記 述 せ よ。 (解 答 は巻 末)
付録
(7.1)式 の 導 出 に つ い て
波 長 の半 分 の 領 域 の零 ラ イ ン よ り上 の 単 位 長 さ当 りの 水 の質 量 M は, M=ρhλ/π(注
1)
で あ り,そ の 重 心 の 高 さ は
(1)
(注2)で あ る
だ け上 下 に 変 化 す る の で,波
。 一周 期 T の間 に重 心 が
の ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー の 時 間
的 変 化 は, (2)
重 力 波 の 周 期 T と波 長 λの 関 係 は, (注 3) (3)
また h と H の 関 係 は, h=H/2
(4)
で あ る か ら, (5)
と な る 。 こ こ で,ρ:海
水 の 密 度 〔kg/m3〕,g:重
か ら谷 まで の 振 幅 〔 m 〕,T:周 義 波 周 期T1/3を
採 用 す る と,
期 〔 s〕,H
力 加 速 度 〔m/s2〕,H:波
の 山
お よ び T と し て 有 義 波 高 値H1/3,有
(注 4) (6)
とな る。
注 1)波
長 の 半 分 の 領 域 の 面 積 を S と す る と,図7.A1よ
り,
単 位 長 さ 当 りの水 の質 量 は,
図7.A1
注 2)y の 方向 の 重 心 の高 さ は次式 で 定 義 され る。
図7.A2
注 3)微
小 振 幅 波(small る と,波
amplitude
waves)の
長 入 は(7)式 で 表 示 さ れ る 。
理 論 に よ れ ば,水
深 d と周 期 T が 与 え られ
(7)
い ま,d/λ 〓1/2と
す る と,す
を 深 海 波(deep-water
な わ ち 水 深 が 波 長 の1/2よ
waves)あ
る い は 沖 波 と い い,tan
り深 い 場 合 を 考 え る と,こ h(2πdλ)〓1と
の波
な り,(7)式
は(8)式 で 示 さ れ る 。 (8)
注 4)波 の エ ネル ギー は個 々 の波 の時 間 的平 均 値 で あ るか ら,(5)式 は(9)式とな る。 (9) こ こ でN0は
総 波 数 で あ る。
エ ネ ル ギ ー レベ ル の 高 い 大 波高 の 範 囲 で は,波 高 と周 期 の 間 の 相 関 は ほ とん どな い の で,周 期 はす べ てT1/3に 等 しい とす る。 そ の結 果 有 義波 高 値 の定 義 か ら波 高値 の 2乗 の 平均 は(10)式 とな る。
(10) 故 にH2=0.5H1/32と
な る。
8章
第
核 融 合,MHD発
核 融 合,MHD発
電の概要
新 エ ネ ル ギ ー 発 電 分 野 で は 風 力 発 電,太
バ イ オ マ ス 発 電 等 が 着 実 に 伸 び て お り,特 融 合 発 電 は1950年
電
陽 光 発 電,
に 風 力 発 電 の 伸 び が 著 し い 。 一 方,核
代 か ら研 究 が 本 格 化 し て い る が,ま
だ 発 電 で き る レベ ル に は
至 っ て い な い 。 し か し核 融 合 反 応 の 燃 料 は 無 尽 蔵 で あ る こ と か ら,将
来の基幹 エ
ネ ル ギ ー 源 の一 つ と して 多 くの期 待 を担 っ て い る。 以 下 で は 高 温 プ ラズ マ を利 用 し た 核 融 合 発 電(nuclear drodynamic
8.1 8.1.1
power
fusion
generation),お
generation)に
よ びMHD発
電(magnetohy-
つ い て概 要 を記 述 す る。
核融合発電 核融合反応
原 子 核 は正 の電 荷 を持 っ て お り,原 子 核 が 近 づ く と反 発 す る。 この 反発 力 に打 ち勝 つ だ けの 運 動 エ ネ ル ギ ー を外 部 か ら与 え る と二 つ の原 子 が 衝 突 して一 つ の 原 子核 に な る。 この 反 応 を核 融 合 反 応(nuclear
fusion reaction)と
い う。 核 融 合
反 応 に よ っ て 反 応 前 後 の結 合 エ ネ ル ギ ー の 差 に 相 当 す るエ ネ ル ギ ー が 放 出 され る 。 こ の エ ネ ル ギ ー を核 融合 エ ネ ル ギ ー(nuclear
fusion energy)と
い い,下 記
に 示 す よ う に極 め て 大 きい 。 こ の核 融 合 反 応 時 に発 生 す る エ ネ ル ギ ー を利 用 し て 発 電 す る方 法 を核 融 合 発 電 とい う。 核 融 合 反 応 で 実 現 の 可 能 性 の あ る の が 重 水 素 と三 重 水 素(ト T反 応 と,重 水 素 同 士 のD-D反
リチ ウム)のD-
応 で あ る。
そ れ ぞれ の 反 応 は下 記 の よ う に な る。 D-T反
応
(8.1)
D-D反
(8.2)
応
(8.3) こ こ で2D:重 D-D反
水 素,3T:三
重 水 素(ト
リチ ウ ム),1p:プ
応 は 二 つ の 反 応 が ほ ぼ 同 じ 確 率 で 起 こ る の で,核
は3.65〔MeV〕
8. 1. 2
ロ ト ン,1n:中
性 子
融合 エ ネル ギ ーの平 均
と な る。
核 融合炉の実現 条件
核 融 合 反 応 を実 現 さ せ る た め に は 外 部 か らエ ネ ル ギ ー を 与 え る 必 要 が あ る 。 そ の 一 つ が 熱 運 動 に よ り 原 子 核 ど う し を 衝 突 さ せ る 方 法 で,熱 (thermonuclear
fusion
reaction)と
重 水 素 と三 重 水 素 の 気 体 を105K以
い う。
上 の 高 温 に す る と,そ の原 子 は イ オ ン と電
子 に 完 全 に分 離 す る。 この 状 態 を プ ラ ズ マ(plasma)と 1∼2×108Kに
核 融 合 反 応
い う。 プ ラ ズ マ 温 度 を
まで 高 め る と プ ラ ズ マ 中 の イ オ ンや 電 子 が 激 し く運 動 し,イ オ ン
ど う しが 衝 突 し核 融 合 を起 こす 可 能 性 が 高 くな る。 一 方,温 度 を 高 め る とプ ラズ マ は膨 張 し飛 散 す るの で,核 融 合 反 応 に必 要 な時 間 プ ラ ズ マ を閉 じ込 め て お く必 要 が あ る。 この よ う に核 融 合 反 応 が 生 じ るた め に は プ ラズ マ 温 度,密
度 そ して 閉
じ込 め 時 間 が あ る値 以 上 で あ る こ とを必 要 とす る。 い ま,プ ラ ズ マ の 温 度 を T,イ オ ン の粒 子 密 度 を n,閉 じ込 め 時 間 を τ とす る と,核 融 合 炉 の成 立 す る条 件 は下 記 の よ う に な る。 D-T反
応 で は
D-D反
応 では
核 融 合 発 電 に必 要 な プ ラズ マ の 特 性 を 図8.1に
示す。
① の U 字 形 カー ブ の上 が 核 融 合 発 電 炉 に必 要 な 領 域 で ロー ソ ン(Lawson)の 条 件(核
融 合 発 電 が 継 続 して 行 わ れ る条 件)と
ズ マ を加 熱 す るパ ワー とD-T核 な わ ち臨 界 プ ラズ マ(critical
よぶ。② の U 字形 カ ー ブは プラ
融 合 反 応 で 出 て く る出 力 が 等 し くな る条 件,す plasma)条
件 で あ る。 世 界 の 核 融 合 実 験 炉 で は着
図 8.1
核 融 合反 応 に必 要 な プ ラズ マ特 性
図 8.2
実 にイ オ ン温 度 お よ び(閉
核融 合 炉 の エ ネル ギ ーバ ラ ンス
じ込 め 時 間 ×中心 密度)が
上 昇 し,核 融 合 炉 条 件 に近
づ い て い る。 な お,上 記 の ロー ソ ン条 件 と は図8.2の
よ う に,核 融 合 炉 か ら取 り出 せ る電 気
エ ネ ル ギー が プ ラ ズ マ の 生 成 加 熱 に 必 要 な電 気 エ ネル ギ ー よ り大 き くな け れ ば な
ら な い こ とを意 味 す る。 す な わ ちWLは
単 位 体 積 あた りの プ ラズ マ の生 成 加 熱 と
高 温 維 持 の た め の 炉 へ 注 入 され るエ ネ ル ギ ー の合 計,WFは 融 合 炉 の 熱 出 力,ηcは
単 位 体 積 あ た りの核
熱 エ ネ ル ギ ー か ら電 気 エ ネ ル ギ ー へ の 変 換 効 率,ηIは 炉
内 ヘ エ ネ ル ギ ー を注 入 す る時 の効 率 とす る と,核 融 合 炉 の運 転 が成 立 す るた め に は(8.4)式 で あ る こ と を必 要 とす る 。
(8.4) (8.4)式 の 両 辺 が 等 し くな る条 件 を 0出力 条 件 とい う。
8. 1. 3
プラズマ 閉 じ込め方法
核 融 合 反 応 を 実 現 さ せ る た め に は 高 温 プ ラ ズ マ を作 り,高
温 プ ラ ズ マ を 閉 じ込
め ロ ー ソ ン の条 件 を満 た す必 要 が あ る。 この 高 温 プ ラズ マ を 閉 じ込 め る方 法 に磁 場 閉 じ込 め 方 法(magnetic tial confinement
confinement
method)が
method)と
慣 性 閉 じ込 め 方 法(iner
あ る。
磁 場 閉 じ 込 め 方 法 は 強 磁 界 発 生 装 置 の 磁 気 圧 に よ っ て,加
熱 プ ラ ズ マ を 閉 じ込
め る 方 法 で あ る 。 磁 場 閉 じ込 め 装 置 と し て トカ マ ク(tokamak),ス (steraleter),ミ
ラ ー(mirror)が
あ り,ト
す 。 装 置 の 中 央 に ソ レ ノ イ ド コ イ ル(solenoid
図 8.3
テラ レータ
カ マ ク 装 置 の 代 表 例 を 図8.3に coil)が
トカ マ ク装 置
配 置 さ れ,こ
示
の コイルは
トラ ン ス の一 次側 に相 当 し,一 次 側 に 電 流 を流 す と二 次 側 に電 流 が 流 れ る。 そ の 様 子 を図8.3右
の 概 略 図 に 示 す 。 この 円周 方 向 に流 れ る電 流 に よ っ て プ ラズ マ の
オ ー ム加 熱 が 行 わ れ る。 一 方,ト
ロイ ダル コイ ル(toroidal
coil)は プ ラ ズ マ を
取 り囲 む よ う に多 数 配 置 され て お り,ソ レ ノ イ ドコ イル に よ り作 られ る プ ラ ズ マ 電 流 と,ト ロイ ダル コ イ ル で 作 られ る磁 場 の合 成 で プ ラ ズ マ が 閉 じ込 め られ る。 な お,ト
ロ イ ダル コ イ ル の 外 周 を環 状 に取 り囲 む よ う に ポ ロイ ダル コ イ ル が 設 置
され て い るが,こ
れ は プ ラズ マ の位 置 を制 御 す る と と もに,プ
ラズ マ 断 面 形 状 が
効 率 よ く閉 じ込 め られ る よ う に制 御 す る た め に用 い られ る。 トカ マ ク装 置 の真 空 容 器 内 で は プ ラ ズ マ 電 流 のオ ー ム加 熱 に よ っ て,プ は2×107K程
ラズマ
度 まで 加 熱 さ れ る。 しか し核 融 合 を 実 現 させ る た め に は,さ
高 温 が必 要 で あ り,こ の た め高 速 の 原 子(中 させ る。 その 様 子 を 図8.4に
性 粒 子)ビ
らに
ー ム を プ ラ ズ マ 内 に入 射
示 す 。 イ オ ン を電 極 に よっ て 加 速 させ,薄
いガス中
を通 して 中 性 粒 子 の ビー ム に変 換 し て プ ラ ズ マ 内 へ 入 射 す る。 プ ラ ズ マ 温 度 が1 ×108Kで
は 重 水 素 の イ オ ン速 度 が1000㎞/s,三
度 は60000㎞m/sと ㎞/sで
重 水 素 が800㎞/s,電
子速
な る。 現 在 開 発 さ れ て い るイ オ ン ビ ー ム の 出 力 は4000-7000
あ り,こ の ビ ー ム をプ ラ ズ マ 内 に注 入 す る こ とに よ り高 温 プ ラ ズ マ が 得
られ る。 国 内 で 開 発 され た 核 融 合 実 験 炉 のJT-60で の もの を用 い て イ オ ン温 度5×108Kを
図 8.4
は,ビ ー ム 出 力7000㎞/s
達 成 して い る。
プ ラズ マ加 熱 用 中性 子 入 射
磁 場 閉 じ込 め の 別 な 方 法 とし て ス テ ラ レー タ ー型 が あ る。 日本 で はヘ リカル 型 (helical type)と
よ ば れ る こ とが 多 い。 トカ マ ク型 の 場 合 に は 真 空 容 器 の 中心 に
電 流 を 流 す こ と に よ り,円 周 方 向 に磁 場 を発 生 さ せ る。 この磁 場 は内 側 が 強 く外 側 は弱 い 。 この た め容 器 内 に 発 生 した プ ラ ズ マ は外 側 に広 が ろ う とす る。 これ を 抑 制 す る た め に は磁 場 に ひ ね り をつ け る こ とで 解 決 で き る。 ひ ね りをつ け る こ と に よ りイ オ ンや 電 子 は閉 じた磁 力 線 に そ っ て一 周 す る うち に も とに戻 リプ ラズ マ の 広 が りが 抑 制 され る。 ひ ね り をつ け る方 法 の 一 つ が トカ マ ク型 で は プ ラズ マ 中 に電 流 を流 し,図8.5の
よ うに電 流 の 流 れ に よ って 副 磁 場 を作 り これ と主磁 場 の
合 成 で 磁 力 線 を ひ ね る もの で あ る。 そ の様 子 を 図8.6に
示 す 。 ひ ね りの加 わ った
磁 力 線 で で きた 磁 気 面 が 何 層 に も重 な っ て プ ラ ズ マ粒 子 を 閉 じ込 め る。 も う一 つ が ヘ リカ ル型 で 真 空 容 器 の 外部 に螺 旋 状 の コ イ ル を巻 き,コ イ ル に交 互 に電 流 を流 し磁 力 線 を ひ ね る方 法 で あ る。 ヘ リカ ル 型 コ イ ル の 様 子 を 図8.7に
図 8.5
図 8.6
トカマ ク型 磁 場
トカ マ ク型 の ひね られ た磁 場 の様 子
図 8.7
ヘ リカ ル型 コ イル の配 置
(a)
図
8.8
(c)
(b)
ヘ リカル 型 コ イル に よ りで きた 磁 気面 の場 所 的変 化
示 す 。 この ヘ リカ ル 型 コイ ル と トロ イ ダ ル コ イ ル で 作 られ た 磁 気 面 の 一 例 を 図 8.8に 示 す。 ヘ リカ ル型 コ イル は真 空 容 器 の 外 部 に 螺 旋 状 に巻 か れ て い る た め, 真 空 容 器 の 円 周 方 向 に対 し,磁 気 面 の型 が(a)∼(c)の
よ うに変 化 し,磁 場 に ひ
ね りが 加 え ら れ て い る。 ス テ ラ レー タ ー型(ヘ
リカ ル型)は
トカ マ ク型 の よ う な プ ラズ マ 電 流 を 流 し て
ひ ね り を作 る必 要 が な い の で,定 常 状 態 で 運 転 す る こ とが で き る。 ス テ ラ レー タ ー 型 の 現 状 は イ オ ン温 度 が2∼3×107K た り3×1013個,閉
,電 子 温 度 が1×108K,密
じ込 め 時 間 は0.1s(nτ=3×1012s・
個/㎝3)で
度1㎝3当 あ り,ロ ー ソ
ンの 条 件 を満 た す に は まだ研 究 課 題 が 多 い 。 しか し トカ マ ク 型 は プ ラ ズ マ 電 流 を 間歌 的 に流 し な が ら運 転 せ ざ る を得 な い(非 定 常 運 転)の
に対 し,ス テ ラ レー タ
型 は定 常 運 転 が で き る た め,定 常 核 融 合 炉 へ の発 展 性 が 秘 め られ て い る。
別 の閉 じ込 め 方法 と して ミ ラー 型 が あ る。 これ は直 円筒 の周 り に両 端 が 密 に な る よ う に コイ ル を巻 き,電 流 を流 す こ とに よ り図8.9の
よ う な磁 場 が 得 られ る。
中 央 部 が 弱 く,両 端 部 で 強 い磁 場 が 形 成 され,こ の よ うな 磁 場 を ミラー 磁 場 とい う。 磁 力 線 に絡 み つ い て 運 動 す る イオ ン や電 子 は磁 力 の 強 い 部 分 で 反 射 さ れ て磁 場 の 弱 い と こ ろへ 戻 され,プ
ラズ マ の 閉 じ込 め が 行 わ れ る。
ミラー 型 は構 造 的 に両 端 か らの粒 子 の漏 れ が 多 い た め,定 常 的 に 熱 い プ ラ ズ マ 粒 子 を供 給 し補 う必 要 が あ る 。
図 8.9
ミラー磁 場
次 に慣 性 閉 じ込 め 方 法 を述 べ る。 これ は真 空 容 器 の 中 で 重 水 素-三 重 水 素 の 小 さ い 固体 ペ レ ッ ト(pellet)(例
え ば極 低 温 で 固 体 に した も の)を 落 下 さ せ,周
囲 か ら レー ザ ー光 線 を短 時 間 照 射 させ ペ レ ッ ト表 面 を加 熱 させ る。 加 熱 され る と 超 高 温 プ ラズ マ が 発 生 し,外 部 へ 蒸 発 す る。 この反 作 用 で 内側 へ 同 時 に広 が り, 中 に 向 い た 熱 い ガ ス は 内部 の 水 素 を圧 縮 す る 。 この 現 象 を爆 縮(implosion)と
(b)外 側へ の噴 出 と反 作 用 に よ る爆縮
(a)レ ー ザ ー に よ る 照 射
図 8.10
爆縮 の様子
い い,そ
の 様 子 を 図8.10に
示 す。 中 心 の粒 子 密 度 は圧 縮 され,超
高 温 プ ラズ マ
が 発 生 す る。 こ の プ ラズ マ は急 速 に拡 大 す る が,拡 大 す る前 に ロ ー ソ ンの 条 件 を 満 足 させ て核 融 合 反 応 を起 こさ せ る方 式 で あ る。 い ま,ペ
レ ッ トの 半 径 を 2㎜(水
あ り,半 径 2㎜ を1×108Kま
素 原 子 の 1㎝3当
の 体 積 は33.5㎜3で
た りの 密 度 は4×1022で
水 素 原 子 の 数 は1.34×1021)と
で 加 熱 す る た め の レ ー ザ ー 光 出 力 は6.4MJと
し,こ れ
な り,核 融 合 炉 と
し て 成 立 す るた め に は爆 縮 を 1秒 間 に数 回 か ら10回 程 度 繰 り返 す 必 要 が あ る。 今 後 の課 題 は高 出 力 レー ザ ー の開 発,多 装 置 の 開 発,繰
数 回 短 時 間 に高 出 力 を発 生 す る レー ザ ー
り返 し入 射 さ れ る小 さな 標 的 球 に 多 数 の レー ザ ー光 を精 度 よ く照
射 す る 技 術 確 立 等 解 決 す べ き課 題 も多 い 。
8.1.4核
融合発 電
磁 場 閉 じ込 め型 の発 電 方 法 の 原 理 を図8.11に
示 す。 炉 心 で 発 生 した エ ネ ル ギ
ー の ほ とん どは 中 性 子 に 与 え られ る。 した が っ て 実 用 化 に 当 た っ て は この 中 性 子 の エ ネ ル ギ ー を ど う取 り出 す か が 重 要 で あ る。 炉 心 プ ラ ズ マ を取 り囲 む よ う にブ ラ ン ケ ッ ト(blanket)が
配 置 され て い る。 核 融 合 反 応 時 に発 生 し た 中 性 子 は ブ
ラ ン ケ ッ ト内 の液 体 リチ ウム に吸 収 さ れ,熱
図8.11核
エ ネ ル ギ ー を 生 じ る。 この 熱 を熱 交
融 合発 電 プラ ン ト
換 器 に よ って 水 蒸 気 を発 生 させ,蒸
気 タ ー ビ ン を 回転 させ,発
エ ネル ギ ー の 一 部 を使 って 加 熱 装 置 を働 かせ,炉
電 す る。 こ の電 気
心 プ ラ ズ マ の エ ネル ギ ー 損 失 を
補 っ て 高 温 に保 持 す る。 一 方,慣 性 閉 じ込 め 方 式 の 発 電 炉 の概 念 図 を図8 .12に 示 す 。 ペ レ ッ トを上 部 か ら落 下 させ,容
器 の周 り に多 数 設 置 さ れ た レ ー ザ ー 装 置
か ら レー ザ ー光 をペ レ ッ トに向 け て照 射 し,核 融 合 反 応 を起 こさ せ,炉
内で発生
した 中 性 子 に よ りブ ラ ン ケ ッ ト内 の リチ ウム を加 熱 し,蒸 気 を発 生 させ る 。 そ の 他 の発 電 プ ロ セ ス は磁 場 閉 じ込 め方 法 と同 じで あ る。
図8.12慣
8.1.5将
性 閉 じ込 め型 の 発 電 プ ラ ン ト
来の展望
現 在,図8.1に
示 した よ う に トカ マ ク型 が核 融 合 炉 成 立 条 件 に着 実 に 近 づ い て
い る。核 融 合 炉 の建 設 は膨 大 な資 金 を必 要 とす る た め,各 国 が 協 力 して研 究 開 発 を推 進 す る必 要 が あ る。 そ の 一 つ が 国 際 熱 核 融 合 実 験 炉(ITER:International Thermonuclear Experimental 核 融 合 炉 の 条 件(こ
Reactor)の
計 画 で あ る。 この実 験 が 実 現 す れ ば
こで は プ ラ ズ マ の加 熱 に必 要 なパ ワー の10倍
の 核 融 合 出力
を得 る)が 実 験 的 に確 認 で き る。
8.2MHD発 MHD発
電 電 は,電 磁流体 力学発電 の略で,高 温 流体 の熱エ ネル ギーか ら直 接電
気 を取 り出 す 発 電 シ ス テ ム で あ る。
8.2.1 図8.13の
発電 の原理 よ う に 導 電 性 の 高 い ガ ス を磁 界 に垂 直 方 向 に流 す と,磁 界 とガ ス流
の両 方 向 に対 し,垂 直 方 向 に起 電 力 が 発 生 す る。 発 電 機 の よ う な 回 転 部 分 が な く,直 接 ガ ス か ら電 気 を取 り出 す こ とが で き る。 ガ ス 流体 に は高 温 ガ ス(high め る た め10,000K以
temperature
gas)を 使 用 す る。ガ ス の電 導性 を高
上 の 高 温 度 に よ り十 分 熱 電 離 す る こ とが 望 ま れ る が,ガ
流 体 の 通 路 の 材 料 等 の 制 約 を受 け,3000K以
上 は困 難 で あ る。 こ の た め 電 離 し
や す い カ リウム,セ シ ウ ム 等 の アル カ リ金 属(alkaline 加 し 導電 性 を高 め た り,ヘ リ ウム,ア
MHD発
metal)を
燃 焼 ガ ス 中 に添
ル ゴ ン等 の希 ガ ス が 使 用 され る。
図8.13 MHD発
8.2.2
ス
電 の原 理
電 の出 力
発 電 部 の モ デ ル と等 価 回 路 を図8.14に
示 す。 磁 束 密 度 B の一 様 な磁 界 中 を導
電 性 の流 体 が 速 度 u で 流 れ て い る 時,起 電 力V0が
発 生 し,外 部 回 路 に電 流 Iが
流 れ る場 合 を想 定 す る。 こ こで起 電 力 は電 極 間 距 離 を d とす る と(以 下 フ ァ ラ デ ー 形 を想 定 す る), V0=uBd
(8.4)
(a)モ デ ル
(b)等 価 回路
図8.14 MHD発
こ こで u:流 Vo:起
電 の モ デ ル と等 価 回路
体 の 速 度 〔m/s〕,B:磁
電力 〔 V 〕,電 気 的 出 力P〔W〕
界 の 強 さ 〔Wb/m2〕,d:電
は 電 流 をI〔A〕,外
部 抵 抗 を γ〔 Ω 〕,負 荷 抵 抗 の 両 端 の 電 圧 をV〔V〕
極 間距 離 〔 m 〕,
部 の 負 荷 抵 抗 をR〔 Ω〕,内
と す る と,
P=VI(8.5) 負 荷 率 η=R/(γ+R)と
す る と 電 圧 V は,
V=ηVo(8.6) ま た 電 流 密 度j〔A/m2〕
は 電 極 面 積 をS〔m2〕
と す る と,
j=I/S(8.7) 以 上 か ら 電 流 密 度 j は 次 式 で 表 示 さ れ る 。 こ こ で 流 体 の 導 電 率 を σo〔s/m〕 と す る。
(8.8) した が っ て 出力 P は,
(8.9) 単位 体 積 あ た りの 出 力 す なわ ち 出 力 密 度Pdは
次 式 で表 示 され る。
(8.10) これ か ら出 力 密 度 は流 体 の 導 電 率 σoに比 例 し,流 体 速 度 u と磁 界 の 強 さ B の 2乗 に比 例 す る こ とが わ か る。
8.2.3発
電方式
ガ ス 流 体 が 流 れ る通 路 を 発 電 通 路 と よ び,電 極 は この通 路 に設 け られ,電 極 の 構 成 に よ っ て 発 電 方 式 が 異 な る。 発 電 方 式 を 図8.15に 極 構 成 で フ ァ ラ デ ー 形(Faraday
type)と
示 す 。(a)は 一 般 的 な電
よ ば れ る。 発 電 ダ ク トの 電 極 対 間 に
発 生 す る フ ァ ラデ ー 電 圧 を 利 用 す る方 式 で あ る。 分 割 電 極 ご と に異 な る直 流 電 圧 が 発 生 す る の で,出 力 を外 部 へ 取 り出 す た め に,個 々 に イ ンバ ー タ を 接続 す る必 要 が あ る。 一 方(b)は ホ ー ル 形(hall
type)と
よ ば れ る もの で,「 口」 状 の 電 極
を 流 入 端 と流 出端 まで 絶 縁 物 を挟 み な が ら設 置 し,両 端 か ら出 力 を取 り出 す もの で あ る。 フ ァラ デ ー 電 圧 に よ っ て電 流 が 流 れ る と,こ の電 流 と磁 界 に 直 角 な方 向 に 電 界 が 生 じ,起 電 力 が 発 生 す る。 この 起 電 力 を ホー ル 電 圧 とい い,こ の 電 圧 を 外 部 へ 取 り出 す 。 ホー ル形 は フ ァラ デ ー 形 と比 べ て 出力 電 圧 が 高 く,一 組 の イ ン バ ー タで よ い が発 電効 率 は 低 い た め,フ
ァラ デ ー 形 の方 が 多 く研 究 さ れ て い る。
(a)フ ァ ラ デ ー 形
(b)ホ ー ル 形 図8.15発
8.2.4MHD発 MHD発
電 方式
電 システム と課題 電 に は二 つ の タ イ プ が あ る。 発 電 シ ス テ ム 例 を図8.16に
示 す。一 つ
は 発 電 通 路 に 流 し た 燃 焼 物 質 を 回 収 し な い 方 法 で あ る。 オ ー プ ン サ イ ク ル (open cycle)と 体 を 発 生 させ,導
よぶ 。 燃 焼 器 で は石 炭 や 石 油 を燃 焼 し,約2700Kの 電 率10Sm-1以
高温ガ ス流
上 を得 る た め に,燃 焼 ガ ス 中 に カ リ ウ ム あ る
い は セ シ ウ ム等 の シー ド物 質 を入 れ る。MHD発
電 機 か ら出 て きた 排 ガ ス は高 温
の た め,熱 交 換 器 で蒸 気 を作 り,そ の 蒸 気 で蒸 気 ター ビ ンを駆 動 す る 。 また 燃 焼
(a)オ ー プ ン サ イ ク ル
(b)ク ロ ー ズ ドサ イ ク ル
図8.16MHD発
電 の二 つ の タ イ プ
用 に用 い る空 気 も この熱 交 換 器 で 加 熱 され,燃 焼 室 へ 供 給 され る。 も う一 つ は ク ロー ズ ドサ イ ク ル(closed
cycle)と
い う。 ガ ス流 体 と して 微 量 の シ ー ド物 質 を
混 入 した ヘ リウ ム や ア ル ゴ ン等 の 希 ガ ス が 用 い られ る タ イ プ で,燃 焼 ガ ス に よっ て 約2000K以
上 に加 熱 され 使 用 され る。 この ガ ス は 回 収 され て繰 り返 し使 用 さ
れ る。 オ ー プ ン サ イ ク ル で 使 用 さ れ る燃 焼 ガ ス に シ ー ド物 質 を入 れ た 高 温 流 体 と,ク ロ ー ズ ドサ イ クル に使 用 され る微 量 の シー ド物 質 を混 入 した 希 ガ ス の導 電 率 と温 度 の 関 係 を 図8.17に
示 す 。 同 一 の 導 電 率 を 得 る た め に は,希 ガ ス を高 温
流 体 に用 い る方 式 の 方 が,燃 焼 ガ ス に シ ー ド物 質 を入 れ る方 式 よ りガ ス 流 体 温 度 を約500Kほ
ど低 減 す る こ とが で き る。
上 記 の よ う に発 電 チ ャ ン ネ ル は3000K近
くの 高 温 度 に さ らさ れ る。 この よ う
な高 温 下 で 電 流 を取 り出 す 時,電 極 は腐 食 す る。 高 温 で耐 食 性 の優 れ た 電極 材料 開 発 が 要 求 され る。 またMHD発
電 機 の効 率 は十 数%程 度 で あ り,発 電 所 の トッパ ー にMHD発
電 機 を設 置 し,高 温 ガ ス タ ー ビ ン,蒸 気 タ ー ビ ン と組 み合 わ せ る と全 体 の発 電効 率 は50-60%と
高 め られ る。 一 方,高
温 型 燃 料 電 池 の 開 発 も別 途 進 め られ て お
り,こ の 燃 料 電 池 と高 温 ガ ス ター ビ ン及 び 蒸 気 タ ー ビ ン と を組 み 合 わ せ る こ とに よ り発 電 効 率60-65%が
期 待 で き る と言 わ れ て い る。 この た めMHD発
電 の実用
図8.17ガ
ス流体 温度 と導 電率 の関 係
化 に あ た っ て は,こ れ らの 高 効 率 発 電 シ ス テ ム と競 合 す る た め,一 層 の 高 効 率 化,信 頼 性,経
済 性 の 向上 に向 け た研 究 開 発 を進 め る必 要 が あ る。
問題 (1)核 融 合 炉 の 原 理 を記 述 せ よ。 (2)ロ ー ソ ン条 件 に つ い て 記 述 せ よ 。 (3)プ
ラズ マ の 閉 じ込 め 方 法 と加 熱 方 法 に つ い て 記 述 せ よ。
(4)慣 性 閉 じ込 め 方 法 に つ い て 記 述 せ よ。 (5)核
融 合 炉 か ら電 力 を取 り出 す 方 法 を述 べ よ。
(6)MHD発
電 の原 理 を記 述 せ よ。
(7)MHD発
電 の 出 力 増 大 を 図 る方 法 を記 述 せ よ。
(8)MHD発
電 に フ ァ ラ デ ィ発 電 と ホ ー ル 発 電 方 法 が あ る。 そ れ ら を説 明 せ
よ。 (解答 は巻 末)
第9 章 バイオマス発電
バ イオマ ス発電の概 要
バ イ オ マ ス は大 昔 か ら人 類 が 燃 料 と して使 用 して きた 。
この バ イ オ マ ス は再 生 可 能 な エ ネ ル ギ ー で あ り,地 球 温 暖 化 の抑 制 に な くて は な らな い 優 れ た エ ネ ル ギ ー 源 の 一 つ で あ る。 現 在,直 らず,メ
接 燃 料 と して使 用 す る の み な
タ ン発 酵 に よ りメ タ ン を多 く含 ん だバ イ オ ガ ス を発 生 さ せ 発 電 等 に利 用
し て い る。 この よ うな バ イ オ マ ス 発 電(biomass
power
generation)に
つい て
述 べ る。
9.1バ
イオ マスの 分類
バ イ オ マ ス は エ ネ ル ギ ー 資 源 と して利 用 され る生 物 有 機 体 を意 味 し,資 源 と し て は表9.1に
示 す よ うに 大 き く廃 棄 物 系 と栽 培 作 物 系 の二 つ に分 け られ る。
バ イ オ マ ス は,植 林 す れ ば化 石 燃 料 の よ う に枯 渇 す る こ と は な い の で再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー と定 義 され る。 また エ ネ ル ギ ー と して利 用 す る 時燃 焼 時 に炭 酸 ガ ス を
表9.1バ
廃棄物系 バイオマス
栽培作物系
イ オ マ スの 分類
農産廃棄物 畜産廃棄物 林業廃棄物 産業 系
麦わら 牛,豚
の 糞尿
間伐材 下 水 汚 泥,
生活ゴ ミ
生 ゴ ミ,し
木本性植物 草本性植物 水生植物 海藻 微細藻類
樹 木(ユ
尿
ー カ リ,ポ
サ ト ウ キ ビ,ネ ホ テ イ ア オ イ,ウ
プ ラ)
ピア グ ラ ス キクサ
マ コ ン ブ,ジ
ャ イア ン トケル プ
ク ロ レ ラ,ド
ナ リエ ラ
放 出 す るが,森 林 が 持 続 的 に成 長 す る 限 り大 気 中 の 炭 酸 ガ ス を光 合 成 に よ り固 定 化 す るの で,大 気 中 の 炭 酸 ガ ス の正 味 の 濃 度 変 化 はな い とみ な し,カ ー ボ ンニ ュ ー トラル とい わ れ る。 世 界 の 年 間 に生 成 さ れ るバ イ オ マ ス 量 はエ ネ ル ギ ー に換 算 す る と約3×1015 MJと
い わ れ る。 これ は地 球 に 降 り注 ぐ太 陽 エ ネ ル ギ ー の 約0.1%に
界 で 消 費 され る全 エ ネ ル ギ ー(3.8×1014MJ/年)の
約10倍
相 当 し,世
にな る。バ イオマ ス
量 の 中 に は海 洋 等 の プ ラ ン ク トンや藻 類 等 を含 む た め分 布 が希 薄 で あ り,量 は膨 大 で あ るが 利 用 す る面 で 難 点 が あ る。 た だ 太 陽,風 力,波 力 等 の 再 生 可 能 エ ネル ギ ー と異 な り,有 機 炭 素 資 源 と して貯 蔵 で き,液 体 燃 料 や 気 体 燃 料 と し て利 用 す る こ と も可 能 で あ る。
9.2バ
イ オマス の利用方 法
こ れ らバ イ オ マ ス の利 用 方 法 は表9.2の
よ う に三 つ に分 類 さ れ る 。
燃 料 と して 直 接 燃 焼 させ,発 生 した 熱 で蒸 気 タ ー ビ ン を回転 させ て 電 気 を得 る 方 法 や,嫌 気 性 発 酵(酸
素 の な い 条 件 下 で,微 生 物 等 の働 き に よ り発 酵)に 表9.2バ
より
イオ マ ス の利 用 方法
バ イ オマ ス の
直接燃焼
燃焼
利 用方法
生 物化 学 的変 換 に よる方 法
メタ ノ ー ル発 酵 に よ るバ イ オ ガ ス発 生 エタ ノ ー ル発 酵 に よ るエ タ ノ ール 製 造
熱化学的変換 による方法
ガ ス 化 に よ る 合 成 ガ ス 発 生.そ メ タ ノ ー ル,ジ
れ を 利 用 し,
メ チ ル エ ー テ ル,ガ
ソ リンの
製造
熱 分 解 に よ る可 燃性 油 の 製 造 油化 に よる可 燃 性油 の製 造
表9.3世
界 全 体 の バ イオ マ ス量 と生 産状 況(1994年)
単 位:t
年間の生産状況 世 界 全体 のバ イオ マ ス量
草本性植物(農 作物)
木本性植物(木 材)
1.05∼2.07×1012 5.1×109
(世 界 に存 在 す るバ イ オ マ ス 量 の90%が
森 材)
4.2×109
得 られ た バ イ オ ガ ス を 前 処 理 後,燃 料 電 池 等 に供 給 し て発 電 す る方 法 。 また エ タ ノ ー ル発 酵 で得 られ た エ タ ノー ル の 自動 車 燃 料 へ の適 用 の よ う に,生 物 化 学 的 変 換 に よ る方 法 や,ガ
ス化 で 得 られ た合 成 ガ ス を メ タ ノー ル,ジ
メ チ ル エ ー テ ル,
ガ ソ リ ン に変 換 して 液 体 燃 料 と して利 用 す る方 法 。 また 熱 分 解 あ る い は油 化 等 に よ る熱 化 学 的 変 換 に よ る方 法 に分 類 され る。 以 下 代 表 的 な 方 法 につ い て い くつ か 紹 介 す る。
9.2.1
直接 燃焼
木 材 や樹 皮 等 の原 料 を乾 燥 ・粉 砕 して燃 焼 す る発 電 シス テ ム で あ る。 燃 料 とな る木 材 の植 林 の規 模 と そ こか ら得 られ るバ イ オ マ ス を利 用 して 発 電 す る発 電 容 量 との 関 係 に つ い て述 べ る。 い ま,2×105ha(40㎞
×50㎞
の面 積)の
植 林 面 積 を想 定 す る。 ユ ー カ リ,
ポ プ ラ等 の成 長 の早 い 木 を植 林 す る と 6年 で 成 長 し,伐 採 可 能 と な る。 この た め 毎 年 伐 採 す る 植 林 面 積 は 6分 の 1 とな り,得 られ る木 材 量 は 年 間2×106tと る。 ㎏ 当 た りの 発 熱 量 を4500kcalと
す る と,年 間9.0×109Mcalと
れ を発 電 に使 用 し,送 電 端 効 率 を22%,発 発 電 量 は約2.3×106MWh,こ
電 所 の 稼 働 率 を60%と
れ は437.5MWの
日2000tの
木 材 で 約50MWの
な る。 こ す る と,年 間
発 電 プ ラ ン トに相 当 す る。
バ イ オ マ ス を利 用 した 蒸 気 タ ー ビ ン発 電 シ ス テ ム を 図9.1に 例 で あ るが,一
な
示 す 。 ア メ リカ の
電 力 を発 電 す る こ とが試 算 さ れ て
い る。 この よ う に木 材 を た だ 単 に燃 焼 し て発 電 す るだ けで な く,後 述 す る よ うにバ イ オ マ ス をい っ た んガ ス 化 させ て そ の ガ ス を利 用 して ガ ス タ ー ビ ン を回 転 さ せ発 電
図9.1 バ イ オマ ス を利 用 した発 電 シス テ ム
図9.2
し,さ
バ イ オ マ ス を 利 用 し た コ ン バ イ ン ド発 電 シ ス テ ム
らに その 熱 を利 用 して 水 蒸 気 を発 生 さ せ,蒸 気 タ ー ビ ンで 発 電 す る コ ンバ
イ ン ド発 電 シ ス テ ム も検 討 さ れ て い る。 シ ス テ ム 例 を図9.2に
示 す 。 年 間2×
104tの チ ッ プ で,ガ ス 化 は空 気 燃 焼 で 行 い,操 作 圧 力 は2×106Pa,操 1000℃ とす る と6MWの
例 題 と して,次
作温 度 は
発 電 プ ラ ン トに な る と試 算 され て い る。
の こ とを検 討 す る。9×105haの
ポ プ ラ 等 を植 林 し,毎 年 植 林 面 積 の1/6を
植 林 面 積 が あ り,成 長 の 早 い
伐 採 し,得
られ た 木 材 で 発 電 プ ラ ン ト
を運 転 す る。 年 間 の発 電 量 は い くらか 。 また い く らの容 量 の 発 電 プ ラ ン トを建 設 す れ ば よ い か 。 た だ し発 電 プ ラ ン トの 送 電 端 効 率 は25%,発 率 は55%と
電 プ ラ ン トの 稼 働
す る。
〈解 答 〉 ユ ー カ リあ る い は ポ プ ラ の成 長 速 度 は10t(乾 量 は4500kcal/㎏(乾 1・5×105haで
燥 重 量)で
燥 重 量)/ha/年,発
あ る。 伐 採 年 数 が 6年 の た め,伐
熱
採面積 は
あ り,植 林 か ら 6年 間 が 経 過 し て い る の で,毎 年 得 ら れ る木 材 量
は乾 燥 重 量 表 示 で,
木 材 の 発 熱 量 は乾 燥 重 量1㎏
当 た り4500kcalの
発 熱量 と発 電 量 の 関 係 は 1cal当 た り4.19Jの 換 さ れ る とす る と,1 時 間 当た りの 発 電 量 は,
た め,年 間 の 発 熱 量 は,
た め,こ の 熱 が す べ て 電 力 に 変
い ま,プ
ラ ン ト の 送 電 端 効 率 が25%の
4.19/(60×60)〔Wh/cal〕 以 上 よ り,発
た り0.25×
電 プ ラ ン トか ら外 部 へ 供 給 で き る 電 力 量 は,
なる。
発 電 プ ラ ン ト の 容 量 は 稼 働 率 が55%の
す な わ ち2450〔MW〕
(1)メ
電 量 は1cal当
とな る。
す な わ ち 年 間1.18×107MWhと
9.2.2
た め,発
た め,
とな る。
生物化 学的変換 タ ン発 酵
メ タ ン発 酵 技 術 を使 った 発 電 シス テム が各 所 で 積 極 的 に
採 用 され て い る。 以 下 そ の状 況 を説 明 す る。 わ が 国 の 生 物 系 廃 棄 物 の 年 間 排 出 量 は,生 9.4×107t,下
水 汚 泥 約8.5×107t,食
2.81×108tと
な り,廃 棄 物 総 量 の57%を
図9.3
ゴ ミ約1.8×107t,家
畜糞 尿約
品 産 業 汚 泥 約1.5×107tで,年
間総 量 は
占 め る。 これ らの 廃 棄 物 を 有 効 に活 用
メ タ ン発酵 のプ ロセ ス
す る こ とは 重 要 で あ る。 メ タ ン発 酵 は図9.3に
示 した よ うに,家 畜 糞 尿,下
水 汚 泥,食
品産業汚泥 等 を
回 収 し,有 機 物 を低 分 子 脂 肪 酸 や ア ル コー ル 等 に 分解 した 後,メ
タ ン生 成 菌 に よ
っ て メ タ ン発 酵 を行 い,バ イ オ ガ ス を発 生 させ 発 電 等 に利 用 す る。 同 時 に,残 っ た 液 を 酸 化 処 理 し,河 川 等 に放 流 す る シ ス テ ム で あ る。 な お,固 形 物 は コ ン ポ ス ト化 し,肥 料 等 に使 用 さ れ る。 メ タ ン発 酵 の適 用 例 の 一 つ に生 ゴ ミ発 電 が あ る。 これ は生 ゴ ミか らバ イ オ ガ ス を発 生 させ て 発 電 に利 用 す る シ ス テ ム で そ の様 子 を 図9.4に ス,メ
タ ン発 酵 プ ロ セ ス,バ
示 す 。 前 処 理 プ ロセ
イ オ ガ ス 利 用 プ ロセ ス,二 次 処 理 プ ロ セ ス か ら構 成
さ れ て い る 。 こ こで,① 前 処 理 とは生 ゴ ミ と有 機 物 以 外 の 異物 を分 別 除 去 し,生 ゴ ミ を粉 砕 機 で 1ミ リ以 下 に微 粉 砕 し,ス ラ リー 状 に す る。 ② メ タ ン発 酵 で は生 ゴ ミス ラ リー を メ タ ン発 酵 槽 の 上 部 か ら供 給 し,メ タ ン生 成 菌 に よ っ てバ イ オ ガ ス を 発 生 させ る。 ③ バ イ オ ガ ス利 用 で はバ イオ ガ ス 中 に メ タ ン,二 酸 化 炭 素 の他 に硫 化 水 素,ア
ンモ ニ ア等 の 不純 物 が 微 量 含 ま れ て い る の で,酸 化 鉄 や 活 性 炭 等
で 脱 硫 精 製 した 後 に,燃 料 電 池 や ガ ス エ ン ジ ン,ボ
図9.4
イ ラ ー 等 に供 給 して 利 用 す
バ イ オ ガ ス発 生 プ ロセ ス
(a)生
ご みガ ス化 シス テ ム
(b)燃
料電 池 発 電 シス テ ム
図9.5 生 ゴ ミ発 電 シス テ ム例[写 真提供:鹿 島建設株 式会社]
る。 ④ 二 次 処 理 で は メ タ ン発 酵 槽 で 発 酵 した 液 は高 濃 度 の 有 機 物 を含 ん で い るた め,最 終 的 に好 気 的 に処 理(空 気 中で 酸 化)し て 浄 化 した後,河 川 な ど に放 流 す る。 生 ゴ ミか ら発 生 す るバ イオ ガ ス を利 用 した 燃 料 電 池 発 電 シ ス テ ム例 を図9.5に 示 す 。 これ は試 作 段 階 の もの で あ るが,(a)が る シ ス テ ム を,(b)が 生 ゴ ミ1tか
バ イ オ ガ ス を利 用 して 発 電 す る燃 料 電 池 プ ラ ン トを示 す。
らバ イ オ ガ ス が 約240Nm3発
に よ り520kWhの
生 ゴ ミか らバ イ オ ガ ス を発 生 さ せ
生 し,そ れ を燃 料 電 池 へ 供 給 す る こ と
電 力 が 得 ら れ る。 日本 全 体 の 生 ゴ ミ総 量 は 年 間1.8×107tの
た め,こ れ を す べ て電 力 に変 換 す る と,得 られ る 電 力 量 は9.4×106MWh,発 所 の 発 電 容 量 に換 算 す る と約1000MWに
電
相 当 す る。
メ タ ン発 酵 でバ イ オ ガ ス を発 生 させ そ れ を利 用 し発 電 す る例 は上 記 の 生 ゴ ミ発 電 の 他 に,ビ
ール 工 場 の 廃 液,家
オ ガ ス を発 生 させ,発
畜 の 糞 尿,下
水 処 理 場 の 汚 泥 等 を処 理 して バ イ
電 に利 用 す る シ ス テ ム が あ り,各 所 で 運 転 実 績 が 得 られ て
い る。
例 題 と して,次
の こ と を検 討 す る。 生 ゴ ミが 1日 当 た り2000㎏
発 生 し,こ れ
を利 用 して燃 料 電 池 で 発 電 す る と年 間 い くらの 電 力 量 を得 る こ とが で き るか 。 ま た,こ
の 電 力 量 を得 る た め に必 要 な 発 電 プ ラ ン トの容 量 はい く らか 。 た だ し発 電
プ ラ ン トの稼 働 率 を90%と
す る。
〈解 答 〉 現 在 実 用 化 され て い る100kWか 池 を使 用 す る と,生 ゴ ミ1tか
ら200kWク
ラ ス の りん 酸 形 燃 料 電
らバ イ オ ガ ス は 約240Nm3発
燃 料 電 池 へ 供 給 す る と520kWhの
生 す るの で,こ れ を
電 力 を得 る こ とが で き る。 この た め年 間 の 発
電 量 は,
燃 料 電 池 の 稼 働 率 を90%と
す るた め,
と な る。
(2)エ
タノール発酵
エ タ ノ ー ル は主 に 自動 車 の燃 料 に利 用 さ れ るの で,
これ ま で述 べ て き た バ イオ マ ス発 電 か ら はず れ るが,ク
リー ン なエ ネ ル ギ ー源 と
い う こ とで こ こ で触 れ て お く。 輸 送 燃 料 用 エ タ ノ ー ル は ブ ラ ジル お よび ア メ リカ で サ トウ キ ブや トウ モ ロ コ シ を原 料 と して 製 造 さ れ て い る。 製 造 プ ロ セ ス を 図9.6に
示 す 。 サ トウ キ ビ等 の糖 質,ト
ウ モ ロ コ シ等 の デ ンプ
ン質 資 源,農 林 産 系 廃 棄 物 や 有 機 物 系 都 市 ゴ ミ等 の セ ル ロ ー ス 系 資 源 を原 料 と し て,発
酵 法 に よ りエ タ ノ ー ル を製 造 す る。
前 処 理 は粉 砕,蒸
煮,爆 砕 等 の 物 理 的 な処 理 と酸,ア
が あ る 。 そ の後,酸
加 水 分解 法(主
図9・6
ル カ リ等 の 化 学 的 な処 理
に硫 酸 が使 用 さ れ る)ま た は 酸 素 分 解 法 に よ
エ タ ノー ル発 酵 プ ロ セ ス フ ロー
り糖 化 され る 。 この よ う に して 製 造 さ れ た 糖 類 は微 生物 に よ り発 酵 され る。 微 生 物 に は 酵 母 や 細 菌 が 用 い られ,嫌 気 的 な発 酵 に よ りエ タ ノ ール に変 換 され る。 ①
糖 質 原料
主 に ブ ラ ジ ル で 行 わ れ て い る もの で,サ
トウ キ ビ を原 料 と
し,酵 母 で発 酵 させ る。 ②
デ ン プ ン質 系 原 料
中国 で は カ ン シ ョを,ア
メ リカ で は トウモ ロ コ シ を
使 用 して い る。 いず れ も微 生 物 は酵 母 で あ る。 ③
セ ル ロー ス 系 原 料
に,前 処 理,糖
稲 わ らや バ カ ス(サ
トウ キ ビの しぼ りか す)を
化 工 程 で 得 られ た グ ル コー ス等 は 図9.7に
路 に よ って ピル ビ ン酸 に 変 換 され,嫌
原料
示 す 微 生 物 内 の解 糖 経
気 的 条 件 の も とで エ タ ノ ー ル が 生 成 され
る。
図9.7 糖 類 の微 生物 内で の反 応 経 路
この よ う に して製 造 され た エ タ ノー ル は 自動 車 の燃 料 と して利 用 され て い る。 例 え ば ブ ラ ジ ル で はサ トウ キ ビか らエ タ ノ ー ル を製 造 し,エ タ ノ ー ル専 用 車 に利 用 さ れ て い る他,無
水 エ タ ノー ル とガ ソ リ ン を24:76の
割 合 で混 合 させ て ガ ソ
リ ン車 に使 用 して い る。 ブ ラ ジ ル で はエ タ ノー ル 専 用 車 が 約3×106台,エ ー ル が含 まれ る ガ ソ リン を利 用 した ガ ソ リン車 が7×106台 一 方,ア 10:90の
タノ
利 用 され て い る。
メ リカ で は トウ モ ロ コ シか ら製 造 し,エ タ ノー ル とガ ソ リ ン の混 合 比 混 合 燃 料 を ガ ソ リ ン車 に利 用 す る他,濃
度 の高 いエ タ ノール をエ タ ノ
ー ル 専 用 車 に利 用 し て い る。 特 に後 者 は従 来 の ガ ソ リン車 に 自動 車 の空 気 混 合比 等 の 若 干 の 変 更 を加 え た 改 良 車 で よ い こ とか ら,CO2低 与 す る 自動 車 と して 税 制 上 の優 遇 措 置 が 施 こ さ れ,2000年 され て い る。
減,化
石燃料 低減 に寄
に は7.5×105台
使用
9.2.3 (1)ガ
熱 化 学 的 変 換 に よ る利 用 方 法 ス化
木 材 等 の 原 料 を 空 気,酸 素,水 蒸 気 等 の ガ ス 化 剤 で ガ ス化 す
る 製造 プ ロ セ ス を い う。 木 材 を加 熱 す る と250℃ 前 後 か ら熱 分 解 が 始 ま りガ ス, タ ー ル,固 体 可 燃 物(チ
ャー)が 生 成 され る。 温 度 を 高 め る とガ ス 発 生 量 が増 大
す る。 ガ ス 化 剤 に 空 気 を 用 い る と窒 素 が 残 り低 カ ロ リー(700∼1800kcal)の が,酸
素 を 用 い る と 中 カ ロ リー(2500∼4500kcal)の
ガス
ガ ス が 生 成 さ れ る。 こ の
よ うに して 得 られ た ガ ス を ガ ス ター ビ ンの燃 料 に使 用 す れ ば 前 述 の 高効 率 コ ンバ イ ン ド発 電 シ ス テ ム を確 立 す る こ とが で きる 。 次 に メ タ ノー ル の 製 造 に つ い て 述 べ る。 メ タ ノー ル は燃 料 電 池 自動 車 の 燃 料 と し て,あ る い は水 蒸 気 改 質 を す る こ とに よ り,水 素 製 造 が 可 能 な た め その 原 料 と し て注 目 さ れ て い る 。 現 在 この メ タ ノー ル は天 然 ガ ス を水 蒸 気 改 質 して 合 成 ガ ス を作 り製 造 して い る。 今 後,カ
ー ボ ンニ ュー トラ ル な バ イ オ ガ ス で メ タ ノー ル が
製 造 で きれ ば環 境 に優 しい エ ネ ル ギ ー 源 とな り得 る。 製 造 プ ロセ ス を 図9.8に す 。 バ イ オ マ ス は(C6H12O6)nで 600℃ を越 す とCO2とCH4が す る。 操 作 温 度1000℃,操
表 現 で き,ガ
徐 々 に減 少 し,高 温 に す る とCOとH2濃 作 圧 力2.4×106Paの
が31%,COが20%,CO2が36%の ノ ー ル(CH3OH)は
ス化 す る温 度 に よ っ て,例
1モ ル のCOと
示
えば
度 が増 加
酸 素 加 圧 条 件 の も とで,水
素
バ イ オ ガ ス を製 造 す る こ とが で き る。 メ タ 2モ ル のH2か
ら製 造 で き る の で,メ
タノ
ー ル の製 造 に比 較 的 適 した ガ ス 組 成 が得 られ る
。
将 来 の計 画 と して,植 物 が 成 長 し や す い場 所 で 成 長 の 早 い ユ ー カ リ等 の木 を植
図9.8 バ イオ マ ス ガ ス化 に よ る液体 燃 料 製 造 の プ ロセ ス
林 し,そ の木 材 を伐 採 しな が ら その 土 地 で ガ ス 化 し,メ タ ノー ル を製 造 す る とい う構 想 が あ る。 メ タ ノー ル は 常 温 で 液 体 で あ るか ら取 り扱 い が 容 易 で あ り,長 距 離 輸 送 に適 して い るた め製 造 した メ タ ノ ー ル を輸 送 して,使 用 す る 土 地 で 改 質 し て水 素 を発 生 させ,定
置 用 燃 料 電 池 あ る い は燃 料 電 池 自動 車 に適 用 す れ ば,将 来
の水 素 社 会 実 現 に大 き く貢 献 で き る。 資 源 枯 渇 並 び に環 境 改 善 に 向 けた 長 期 的 な 計 画 実 現 が今 後 必 要 に な る。 メ タ ノ ー ル と同様 にDME(ジ
メ チル エ ー テ ル)や
製 造 す る こ とが で き る。DMEは
デ ィー ゼ ル 発 電 の燃 料 と し て利 用 す る他,メ
ノ ー ル あ るい はLPGの また ガ ソ リ ン は鉄,コ 反 応 温 度200∼300℃
ガ ソ リ ン もバ イ オ マ ス か ら
代 替 が 可 能 で あ り,等 モ ル のH2とCOか
タ
ら合 成 で き る。
バ ル ト,ル テ ニ ウ ム 等 の触 媒 を用 い圧 力1∼50×105Pa, で 製 造 で き る 。 資 源 枯 渇 後 の 貴 重 な 資 源 と し て今 後 脚 光 を
浴 び る で あ ろ う。 (2)熱 等)雰
分解
木 材 等 を乾 燥 ・粉 砕 した あ と,常 圧 の 不 活 性 ガ ス(窒 素 ガ ス
囲 気 下 で 加 熱 す る こ と に よ り,可 燃 成 分 を含 む 気 体 や 油(含
30%,高 が,600℃
位 発 熱 量4000∼4500kcal/㎏)を
水 率:15∼
得 る こ と が で き る。500℃ 以 下 で 油
以 上 で は可 燃 性 気 体 が 生 成 され る。 また,で
き た 気 体 を冷 却 す る こ と
に よ り油 を 得 る こ とが で き る。 生 成 した油 は ボイ ラ ー燃 料 や デ ィー ゼ ル 発 電 の燃 料 に使 用 す る こ とが で き る。 (3)油
化
有 機 汚 泥 や 下 水 汚 泥 の よ う に,脱 水 し て も含 水 率 が70∼85%
もあ る場 合 に は この 油 化 方 法 が 適 し て い る。 バ イ オ マ ス を高 温 ・高 圧 の条 件 に保 持 す る こ と に よ り油 を得 る こ とが で き る。 一 例 と し て,反 応 温 度 は250∼350℃, 操 作 圧 力 は5∼15×106Paと
す る。 こ の油 化 方 法 は熱 分 解 法 と比 べ,高 圧 操 作 で
あ る こ とが 大 き く異 な る。 生 成 さ れ た 油 は 熱 量 が9000kcal/㎏
の た め,石 油 と
比 べ カ ロ リー が や や 低 くボ イ ラー の燃 料 と して 使 用 さ れ る。
9.3
バ イオ マスの利 用可能性
世 界 全 体 の バ イ オ マ ス 量 は1.05∼2.07×1012tと
い わ れ,そ
の う ち の90%を
表9.4 世 界 の廃 棄物 系バ イオ マ スの 総 エ ネル ギ ー
注 1)単 位:EJ(エ
ク サ ジ ュ ー ル=1018J)/年
2)*中 国 を 除 くア ジ ア 諸 国 3)**オ
ー ス トラ リ ア と ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドを 除 くオ セ ア ニ ア 諸 国
表9.5 わが 国 の バ イオ マ ス エ ネル ギ ー の導 入 量 の推 定
注 1)単 位:PJ(1015J) 2)石 油 1Klを38.3×106KJと 3)導 入 量 の 少 な い ケ ー ス を 採 用
して換 算
森 林 バ イ オ マ ス が 占 め て い る 。 現 在 生 産 さ れ て い る 農 作 物 お よ び 木 材 は,表9.3 に 示 す よ う に 乾 燥 重 量 換 算 で 年 間 農 作 物 が5.1×109t,木 9.3×109tで
あ り,こ
れ を 熱 量 に 換 算 す る と,1.75×1014MJに
1㎏ の 熱 量 を4500kcal/㎏
材 が4.2×109tで
合計
相 当 す る(木
材
と し た)。
次 に 廃 棄 物 系 の エ ネ ル ギ ー 総 量 に つ い て 述 べ る 。 廃 棄 物 系 バ イ オ マ ス と は トウ モ ロ コ シ,小
麦,米,サ
トウ キ ビ,家
畜 糞 尿,木
材 等 の 廃 棄 物 を い い,表9.4に
示 す よ う に 先 進 工 業 国 の 廃 棄 物 系 バ イ オ マ ス の 総 量 は42.2×1012MJ(42.2 EJ)で,開
発 途 上 国 の そ れ は69.2×1012MJ(69.2EJ),総
MJ(111.4EJ)で 9.9に
あ る。 世 界 で 使 用 さ れ て い る バ イ オ マ ス エ ネ ル ギ ー 量 は 図
示 す よ う に 廃 棄 物 系,栽
培 作 物 系 合 わ せ て46.2×1012MJ(46.2EJ)で
界 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 供 給 の12%を
図9.9
占 め て い る。
世 界 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 供 給(1990年)
日 本 に お け る バ イ オ マ ス の 供 給 可 能 量 は2010年 推 定 さ れ,こ 1.5%に
れ は1996年
度 見 込 み で 約3.5×1011MJと
の わ が 国 の 1次 エ ネ ル ギ ー の 総 量2.31×1013MJの
相 当 す る。
問題 (1)バ イ オ マ ス の定 義 お よ び種 類 を述 べ よ。 (2)バ
計 は111.4×1012
イ オ マ ス の利 用 方 法 を記 述 せ よ。
世
(3)メ
タ ン発 酵 に つ い て 利 用 方法 も含 め記 述 せ よ。
(4)エ
タ ノ ー ル 発 酵 に つ い て 利 用 方 法 も含 め,記 述 せ よ。
(5)バ
イ オ マ ス と メ タ ノ ー ル の 関 係,ま
た なぜ メタ ノールが 必要 か を記述 せ
よ。
(6)化 石 燃 料 の 枯 渇 後 自動 車 の燃 料 は ど うな るか 記 述 せ よ。 (解答 は巻 末)
第10章 その他 の発 電方式
概 要 特 殊 な 用 途 と し て 熱 電 発 電(thermoelectric 子 発 電(thermio-electric
10.1
power
generation)が
power
generation)と
熱電
あ る。 それ らを説 明 す る 。
熱電 発電
2種 の 異 な っ た金 属 で 閉 回 路 を作 り,そ の接 合 部 を 異 な っ た 温 度 に す る と,こ の 回 路 に起 電 力 が 発 生 す る。 こ の現 象 を ゼ ー ベ ッ ク効 果 とい い,こ
の効 果 を利 用
した 発 電 方 式 を熱 電 発 電 とい う。 い ま,高 温 接 合 部 の 温 度 をTh,低
温 接 合 部 の 温 度 を 笠 とす る と,起 電 力 V
は,
V=a(Th-Tc)
(10.1)
こ こで aは ゼ ー ベ ッ ク係 数(V/K)と 熱 電 発 電 で は 図10.1の
い う。
よ う に,p 形 半 導 体 と n形 半 導 体 を 接 合 し,一 方 の 接
合 部 を高 温 度 に,他 方 の 接 合 部 を低 温 度 にす る と,ゼ ー ベ ック効 果 に よ り低 温 部 の 両 端 の 電 極 部 に起 電 力 が 発 生 し,負 荷 を接 続 す る と電 流 が流 れ る。 こ こでQH:高 QL:低
温 接 合 部 へ の熱 入 力 〔 W〕 温部へ の熱入力 〔 W〕
a:ゼ ー ベ ック 係 数(V/K) T:温 度(高 Ri:内
温 部:Th,低
温 部:Tc)〔 K 〕
部 抵抗 〔 Ω〕,I:負 荷 電 流 〔 A〕,Rt:負
荷抵抗 〔 Ω〕
とす る と温 度,負 荷 電 流 お よ び 熱 入 力 の 関 係 が(10.2)式 で 示 さ れ る。
(10.2)
図10.1 熱 電 発電 方 式
Qjを 内 部 抵 抗 で 消費 され る ジ ュ ー ル 熱,P
を 出力 とす る と,
(10.3) こ れ よ り,
(10.4) 電 圧 V と出 力 P との 関 係 は,
(10.5) (10.6) 起 電 力 は数10か
ら数100mVと
低 い た め,図10.2の
よ うに 素子 を多 数 配 列 し
て使 用 す る。 人 工 衛 星 の電 源 で 太 陽 光 の使 用 が 困 難 な 場 合,ラ し,半 導 体 にSi-Ge(シ る。
リコ ン-ゲ ル マ ニ ウ ム)熱
ジ オ ア イ ソ トー プ を 熱 源 と 電 子 素 子 が使 用 され た例 が あ
図10.2 多数 配 列 した素 子
10.2
熱 電子発 電
高 温 金 属 表 面 か ら放 出 され る 熱 電 子 を利 用 す る発 電 を熱 電 子 発 電 とい う。 図 10.3に 示 す よ う に,陰 極 を加 熱 す る と熱 電 子 が 放 出 さ れ,こ
の 電 子 は陽 極 に 到
達 し,外 部 に負 荷 を接 続 す る と一 部 は熱 とな るが残 りは電 流 と して 取 り出 す こ と が で き る。 加 熱 に よ り放 出 され る 電 子 の 電 流 密 度 は リチ ャー ド ソ ン-ダ ッ シ ュマ ン(Richardson-Dushman)の
式 よ り(10.7)式 で 与 え られ る。
(10.7) こ こ で e:電 子 の 電 荷 量 〔C〕,k:ボ 定 数[A/㎝2K2],Φ:陰
ル ツ マ ン 定 数 〔J/K〕,A:ダ 極 の 仕 事 関 数 〔eV〕,TE:陰
図10.3 熱 電 子 発 電 の原 理
ッシュ マ ン 極温度 〔 K〕
陰 極 か ら 陽 極 へ 電 子 が 移 動 す る と,陰
極 と 陽 極 間 に 空 間 電 荷(space
が 形 成 さ れ る 。 こ の 空 間 電 荷 に よ る ポ テ ン シ ャ ル の 障 壁 を Φa,Φbと 陰 極 と 陽 極 の 仕 事 関 数(work 極 へ 移 動 す る た め に は 図10.4に
function)を
そ れ ぞ れ Φe,Φcと
示 す よ う に Φe+Φaの
charge) す る。 また
す る。 電 子 が 陽
ポ テ ン シ ャル の 障 壁 を乗
り越 え る 必 要 が あ る 。
図10.4 熱 電子 発 電 の電 子 の移 動
こ の 空 間 電 荷 に よ る ポ テ ン シ ャ ル の 障 壁 が で き る た め,取 (10.8)式
り出 せ る 電 流 密 度 は
の よ う に 修 正 さ れ る。 こ の 時 の 出 力 電 圧 お よ び 出 力 密 度 は そ れ ぞ れ
(10.9),(10.10)式
とな る 。
(10.8) (10.9) (10.10) こ こで J:電 流 密 度 〔A/㎝2〕,V:出
力 電 圧 〔V〕,P:出 力 密 度 〔W/㎝2〕
な お,電 流 密 度 を大 き くす る た め に は陰 極 の仕 事 関 数 を小 さ くす る 必 要 が あ る が,出
力 電 圧 は 仕 事 関 数 の 大 き い方 が よ く,陰 極 材 料 の 仕 事 関 数 の最 適 値 の 選 定
が 重 要 と な る。 熱 電 子 発 電 は 大 き く真 空 形 とプ ラ ズ マ 形 に分 け られ る。 真 空 形 は両 電 極 間 が 真 空 の た め,空 間 電 荷 が 発 生 し,熱 電 子 の 放 出 は(10.8)式
の よ う にな る。 高 温 作 動 の た め,両 電 極 に は高 融 点 金 属 で あ る タ ン グ ス テ ンが 用 い られ る。 一 例 と して 陰極 表 面 積 が2.5㎝2,両 1150℃,陽 率:5∼10%の 一 方,プ
極 温 度:625℃,出
極 間距 離0.01㎜,陰
力 電 力2∼8W,出
力 電 圧0.5∼0.8V,変
極 温 度: 換効
もの が 開 発 さ れ て い る。 ラ ズ マ 形 は 図10.5に
示 す よ う に両 電 極 間 に セ シ ウ ム ガ ス が 封 入 され
て い る。 こ の ガ ス は電 離 電 圧 が 低 く陽 イ オ ン を発 生 しや す い た め,高 温 に加 熱 さ れ た 陰極 か ら放 出 さ れ た 電 子 と この正 イ オ ン とで プ ラ ズ マ を形 成 し,電 子 の 空 間 電 荷 障 壁 を消 失 させ る。 こ の結 果,(10.8)式
の空 間 電 荷 に よ る ポ テ ン シ ャル の 障
壁 が 低 減 し,電 流 密 度 の 増 大 を 図 る こ とが で き る。 一 例 と して 陰 極 にTh-W(ト リウ ム-タ ン グ ス テ ン)を 被 覆 し た グ ラ フ ァ イ ト,陽 極 に酸 化 タ ン グ ス テ ン を用 い,電
極 間 距 離 が2.54㎜,重
量=636㎏,出
力=27kW,変
換 効 率=約10%
の 太 陽 を熱 源 とした 人 工 衛 星 用 電 源 が 開 発 さ れ て い る。
図10.5 セ シ ウム封 入 形 熱電 子 発 電
問題 (1)熱 電 発 電 の 原 理 を述 べ よ。 (2)熱 電 発 電 の 電 圧,電
流 を入 力 され る熱 量,そ
の 時 の温 度 との 関 係 で 求 め
よ。 (3)熱 電 子 発 電 の 原 理 を述 べ よ。 (解答 は巻 末)
章
末 問題の 解
答
第 1章 水力発電 (1)1.3.1参
照 。100×106×1750×10-3=175×106m3
(1)1.2.2参
照 。 ピ トー管 や ベ ン チ ュ リー 管 で 計 る。 また 河 川 に 浮 き を 流 し て そ の 速
度 か ら計 る 方 法 な どが あ る。 (3)1.4.1参
照 。 重 力 ダ ム,ア
ー チ ダ ム,中
空重 力式 ダ ム な どが あ る。河 川 の状況 や
地 質 か ら選 ぶ 。 (4)1.5.2(3)-(d)参
照 。 原 子 力 発 電 が 増 え る と出 力 の 変 化 は 難 し く一 日 中 運 転 す
る。 夜 間 に エ ネ ル ギ ー が 余 り,そ れ を 水 車 ポ ン プ で くみ上 げ て お く。 昼 間 は 電 力 が不 足 す るた め貯 めた 水で発 電 す る方式 をい う。 (5)1.4.2参
照 。 負 荷 急 変 時 に発 生 す る水 撃 圧 を 軽 減 吸 収 す る た め,サ
設 け られ る 。 単 動 サ ー ジ タ ン ク,差 動 サ ー ジ タ ン ク,水
ー ジタ ンクが
室 サ ー ジ タ ン ク,制 水 孔
サ ー ジ タ ン ク な どが あ る。 (6)1.7参 rpmで
照 。 水 車 の 比 速 度ns=n(P)1/2(H)-5/4で
あ る。 ポ ン プ の 比 速 度 はnsQ=n(Q)1/2(H)-3/4で
速 度 はrpmで (7)1.5.2参 (8)1.6参
表 せ る。 単 位 はkW,mで 表 せ,単
速度 は
位 はm3/s,mで
あ る。
照 。 ペ ル ト ン>フ
ラ ン シ ス>プ
ロペ ラで あ る。
照 。 水 車 内 で 流 体 の 温 度 で 決 ま る飽 和 蒸 気 圧 よ り圧 力 が 低 下 す る と,気 泡
が 発 生 す る 。 こ の 現 象 を 言 う 。 この 現 象 が 発 生 す る と ラ ン ナ が 浸 食 を受 け る。
第 2章 火 力 発 電 (1)2.5.4参
照 。 排 煙 装 置 に 電 気 集 塵 装 置 や 排 煙 脱 硫 装 置 な ど を 設 置 し,粉 塵 や 硫 黄
分 を 取 っ て い る 。 また ア ン モ ニ ア を作 用 さ せNOxを
除 去 す る 方 法 も実 用 化 さ れ
て い る。 石 炭 を 燃 料 に す る と き は 埋 め 立 て 地 に 灰 分 を利 用 して い る 。 ま た 煙 突 を 高 くし て 排 ガ ス の拡 散 を 図 っ て い る 。 (2)2.5.1参
照 。 ボ イ ラ ー は炉,ボ
イ ラ ー 本 体,給
水 ポ ン プ,汽
水 ドラ ム,空
気余 熱
器,節
炭 器,再
熱 器 な ど で 構 成 され る。 ボ イ ラー に は 自然 循 環 ボ イ ラ ー,強
制循
環 ボ イ ラ ー あ る い は 貫 流 ボ イ ラ ー が あ り,蒸 気 の 流 れ や す さが 変 え られ る 。 貫 流 ボ イ ラ ー で は汽 水 ドラ ム が 省 略 され る。 (3)2.6参
照 。 一 直 線 上 に配 置 した タ ン デ ム タ ー ビ ン と並 列 配 置 の ク ロ ス コ ンパ ウ ン
ド方 式 が あ る。 (4)2.7.1参
照 。 空 気 圧 縮 機,燃
焼 器 と ガ ス タ ー ビ ン か ら な り,空 気 を 圧 縮 し て 天 然
ガ ス と混 合 し て燃 焼 させ,そ
れ で ガ ス ター ビ ン を 回 す 。 また 圧 縮 ガ ス は ガ ス タ ー
ビ ン の 部 品 の 冷 却 に も利 用 さ れ る 。 温 度 が 高 い の で 部 品 材 料 に 特 殊 な 金 属 物 が 使 用 さ れ て い る。Jouleサ 下,ガ (5)2.7.2参
イ ク ル と定 義 さ れ 圧 縮 比 の 向 上,排
ガ ス と入 口 温 度 の 低
ス タ ー ビ ンへ の 入 口 温 度 の 上 昇 な ど が 効 率 向 上 と な る。 照 。 ガ ス タ ー ビ ン の 排 ガ ス は温 度 が 高 く,そ れ を 再 度 利 用 し て ボ イ ラ ー
を通 し,水 蒸 気 を利 用 し て 蒸 気 タ ー ビ ン を 回 す 。 こ の 方 式 を ト ッパ ー とよ ん で い る。 こ の 方 法 だ とガ ス タ ー ビ ン と蒸 気 タ ー ビ ン が 共 に動 作 す る の で50%以 効 率 が 得 られ る 。 また,天
上の
然 ガ ス を使 う の で 炭 酸 ガ ス の 放 出 が 少 な く,環 境 適 応
性 が 高 い。 最 近 は マ イ ク ロ ガ ス タ ー ビ ンが 開 発 され て い る。 住 宅 地 に 設 置 で き る の で,効 率 は低 い が 熱 を 利 用 で き る の で 注 目 さ れ て い る。 熱 を 利 用 で き れ ば 効 率 は70% 以 上 に なる。 (6)2.3.2参
照 。 再 生 サ イ ク ル は タ ー ビ ン の 途 中 で 抽 気 さ れ もの と,タ ー ビ ン の 最 終
段 まで 行 き復 水 器 を通 っ た 飽 和 水 と を共 に給 水 加 熱 器 を通 し,ボ
イ ラ ー に戻 され
る 。 熱 効 率 を 上 げ る一 手 段 で あ る。 再 熱 サ イ ク ル は 高 圧 タ ー ビ ン を通 っ た 蒸 気 を ボ イ ラ ー に戻 し,そ れ で 低 圧 タ ー ビ ン を駆 動 す る。 や は り熱 効 率 を上 げ る 手 段 で あ る。 (7)例
題 で 示 し て あ る の で 参 照 の こ と。
(8)第
2章 参 照 。 石 炭,重
(9)2.5参
油,原
油,天
然 ガ ス,LNG,な
ど。
照 。 衝 動 タ ー ビ ン は ノ ズ ル で 圧 力 を 下 げ 蒸 気 の 流 速 を加 速 し て バ ケ ッ トを
吹 き付 け る 方 式 で あ る。 蒸 気 圧 力 の 変 化 は な い 。 また 反 動 タ ー ビ ン で は,可
動羽
根 と固 定 羽 根 を蒸 気 が 通 過 す る と き圧 力 が 低 下 す る 。 蒸 気 の膨 張 を 起 こ さ せ,反 動 力 を利 用 し て い る。 (10)シ
リ ン ダ と ピ ス トン で 構 成 さ れ 吸 気 行 程,圧
縮 行 程,爆
発 行 程 お よ び排 気 行 程 か
ら な っ て い る。 燃 料 は重 油 で あ り経 済 的 に 運 転 で き る。 廃 熱 を 利 用 す る こ とが で き,廃 熱 の利 用 を考 え る と効 率 は70%に (11)2.6.2参
な る。
照 。 原 子 力 発 電 で は 蒸 気 圧 も温 度 も低 く湿 分 も多 い 。 し た が っ て 湿 分 か
ら羽 根 を守 るた め低 速 で 運 転 す る。 また 蒸 気 圧 と温 度 が 低 い た め,大 容 量 化 す る た め に は 蒸 気 量 が 多 くな る。 そ れ に と も な い 発 電 機 も タ ー ビ ン も大 き く な り,回 転 数 も火 力 発 電 機 の 半 分 に な る。 (12)2.5.2参
照 。 発 電 シ ス テ ム の 低 圧 熱 源 と し て 利 用 さ れ る 。 タ ー ビ ンか ら放 出 す る
蒸 気 を冷 却 して 飽 和 水 とす る 。 日本 で は 火 力 発 電 は海 岸 に 設 置 さ れ る た め 海 水 で 冷 却 さ れ る 。 冷 や す 温 度 が 低 い ほ ど効 率 は上 昇 す る。 内 陸 部 で は海 水 が な い の で ク ー リ ン グ タ ワ ー が 利 用 さ れ る。 (13)2.2.7と2.2.8参
照 。 高 温 で 熱 を 吸 収 し低 温 で 熱 を放 出 す る熱 機 関 で あ る。 こ の
サ イ ク ル で は 作 業 物 質 に 関 係 な く動 作 さ せ る こ と が で き る。 効 率 η は η=1 -T2/T1=1-Q2/Q1で
表 せ る 。 こ の 時 の 温 度 は 絶 対 温 度 で あ る。 効 率 は 吸 収 す
る温 度 が 高 い ほ ど,ま た 放 出 す る温 度 が 低 い ほ ど上 昇 す る 。T-s図
で カル ノー
サ イ ク ル を書 く と四 辺 形 で 表 す こ とが で き,面 積 が 仕 事 量 に な る。 (14)2.2.2参
照 。 熱 機 関 で はh+v2s/2+gzが
u+Pvで
一 定 とい う 原 理 で 動 作 す る。 た だ しh=
あ る 。 蒸 気 タ ー ビ ン や ガ ス タ ー ビ ン,あ
るい は水車 ター ビ ン もす べ て
こ の 原 理 で 動 作 して い る。 (15)地
熱 発 電 は炭 酸 ガ ス が 発 生 し な い 自然 エ ネ ル ギ ー で あ る。 ア メ リ カ合 衆 国,フ リ ピ ン,ア
(16)比
イ ス ラ ン ド,日 本 な どで 活 用 さ れ て い る。
較 的 温 度 が 低 い た め 水 蒸 気 を 取 る こ とが 必 要 で あ る。Na,K,Ca,Siな CO2やH2Sガ
どが
ス と共 に混 ざ っ て い る 。 腐 食 に留 意 が 必 要 で あ る。
第 3章 (1)3.4参
ィ
原 子力発電
照 。 加 圧 水 型 と沸 騰 水 型 と を比 べ る と前 者 は圧 力 が 高 く,温 度 は ほ ぼ 同 じ
で あ る。 前 者 は 原 子 力 潜 水 艦 に 使 用 す る 。 また 前 者 は蒸 気 発 生 器 と加 圧 器 で 蒸 気 を タ ー ビ ン に送 る が,後
者 は蒸 気 が 直 接 タ ー ビ ン へ 行 く。 前 者 は 制 御 棒 が 上 か ら
挿 入 され るが 後 者 は下 か ら挿 入 さ れ る。 (2)3.2.3参
照 。8.99×1010〔MJ〕
(3)軽
水 炉 で は運 転 中 プ ル トニ ウ ム が 発 生 す る 。 そ れ を 回 収 し て ウ ラ ン燃 料 と混 ぜ て 使 用 す る 。MOX(Mixed
(4)3.3お
よ び3.4.3参
Oxide
Fuel)と
よ ん で い る。
照。
減 速 材:軽
水,重
水,炭
酸 ガ ス,黒
反 射 材:軽
水,重
水,黒
鉛,ベ
水,重
水,炭
酸 ガ ス,ヘ
鉛,ベ
リ リ ウ ム 。 高 速 増 殖 炉 で はNaK,Na
リ リ ウ ム 。 高 速 増 殖 炉 で は ブ ラ ン ケ ッ トと し て 天
然 ウ ラン 冷 却 材:軽 (5)熱
中 性 子3.2.3お 中 性 子 で0.1eV以
よ び3.4.3参
リ ウム 。 高 速 増 殖 炉 で はNaK,Na
照 。 熱 的 に 周 囲 原 子 と熱 平 衡 に あ る温 度 が 低 い
下 程 度 で あ る 。 ち な み に 高 速 増 殖 炉 で は100ekVで
エ ネ ルギ
ーが大 きい。 核 分 裂3.2.3参
照 。 質 量 の 大 き な 原 子 核 は 高 エ ネ ル ギ ー 中 性 子 を 吸 収 す る と核
分 裂 を起 こす 。 核 分 裂 を起 こ した 原 子 核 は核 分 裂 生 成 物 と呼 ば れ 多 種 の エ ネ ル ギ ー が 放 出 さ れ る。 燃 料 な どの 運 動 エ ネ ル ギ ー,放
出 中 性 子 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,γ
線 の エ ネ ル ギ ー,β 線 の エ ネ ル ギ ー な ど で あ る 。 半 減 期3.2参
照 。 不 安 定 な 原 子 核 は 放 射 能 を 放 出 し崩 壊 し て い く。 い ま,N
個 の 不 安 定 原 子 が あ り,時 間dtの
間 に 崩 壊 す る 原 子 核 の 個 数 をdNと
す る とN
=No e-λtと な り λ を崩 壊 定 数 と い う。 N が 初 期 値 の N の 半 分 に な る時 間 を 半 減 期 と い う。 α線3.2参
照 。 原 子 核 の 崩 壊 に対 し て 放 出 さ れ る陽 子 2個 と中 性 子 2個 の 複 合
粒 子 を い う。 β 線3.2参
照 。 原 子 核 の 崩 壊 に 対 し て 放 出 され る電 子 線 を い う。
γ線3.2参
照 。 原 子 核 の 崩 壊 に 対 し て 放 出 され る電 磁 波(光
子)を
い う。
第 4章 燃 料 電 池 発 電 (1) 4.2「 燃 料 電 池 の種 類 」 参 照 (2) 4.4.1(2)「 (3) 4.4.2「
燃料 電池 自動車 」参 照
リン 酸 形 燃 料 電 池 」 参 照
(4) 4.4.3「 溶 融 炭 酸 塩 形 燃 料 電 池 」 お よび4.4.4「 (5) 4.6参 照
固体酸 化物 形燃料 電池 」参 照
(6)1
セ ル 当 た り の 出 力 は0.75〔V〕
×100〔A〕=75〔W〕
ス タ ッ ク の 全 容 量 は60×103〔W〕
水 素 の 必 要 量 は2×96500A当
1ス タ ッ ク は800セ
の た め,
た り22.4lの
た め,1 セ ル 当 た り100Aで
は,
ル か ら構 成 さ れ て い る た め,
空 気 量 は,
800セ
ル で は,
となる。
(7)電
流2×96500A当
た り水 は18g生
成 され るた め,1 セ ル 当 た り電 流100Aで10
時 間 運 転 す る と,
第 5章 風 力発電 (1)5.2「
風 車 の種類 」参 照
(2)5.3「
揚 力 形 風 力 発 電 」 お よ び5.4「 抗 力 形 風 力 発 電 」 参 照
(3)5.3「
揚 力 形 風 力 発 電 」 お よ び5.5「 風 車 の 性 能 評 価 に 必 要 な 係 数 」 参 照
(4)5.5「
風 車 の 性 能 評 価 に必 要 な 係 数 」 参 照
(5)5.5「
風 車 の 性 能 評 価 に必 要 な 係 数 」 参 照
(6)5.5「
風 車 の 性 能 評 価 に必 要 な 係 数 」 参 照
(7)風
力 発 電 シ ス テ ム の総 合 効 率 を30%と
で あ る か ら,
す る と,
(8)総
合 効 率 を30%と
総 合 効 率30%と
す る 。 ま た 風 速 比 を 6 とす る 。
す る と,
ブ レ ー ドの 先 端 速 度 〔 u〕は,
回 転 数 は,
(9)総
合 効 率 を30%と
す る。 また 設 備 利 用 率 を20%と
電 気 出 力Pe=2991000〔W〕
×0.3=897.3〔kW〕
年間 の電 力 量 は
(10)総
合 効 率30%,設
備 利 用 率20%と
v=12m/s,Pw=2000〔kW〕
す る。
す る。
(11)風
速 比 λ=6と
す る。
第 6章 (1)変
換 効 率 が12%と
太陽 エネルギ ー発 電
す る。 東 京 地 区 の 年 間 太 陽 光 エ ネ ル ギ ー 量 は120Wh/㎝2年
で あ る 。 単 結 晶 シ リ コ ン 太 陽 電 池 の モ ジ ュ ー ル 効 率 は12%の る電 力 は
た め,取
り 出 し得
(2) 6.1.1(3)「
太 陽電 池 の理論 変換効 率」 参照
(3) 6.1.2「 太 陽 電 池 用 半 導 体 材 料 」 参 照 (4) 6.1.5「 太 陽 電 池 の 適 用 」 参 照 (5) 6.2「 太 陽 熱 発 電 」 参 照
第 7章 海洋 エネルギ ー発 電 (1) 7.1「 波 力 発 電 」 参 照 (2) 7.2「 海 洋 温 度 差 発 電 」 参 照 (3) 7.3「 潮 汐 発 電 」 参 照
第 8章 核 融 合,MHD発
電
(1) 8.1.2「 核 融 合 炉 の 実 現 条 件 」 参 照 (2) 8.1.2「 核 融 合 炉 の 実 現 条 件 」 参 照 (3) 8.1.3「 プ ラ ズ マ 閉 じ込 め 方 法 」 参 照 (4) 8.1.3「 プ ラ ズ マ 閉 じ込 め 方 法 」 参 照 (5) 8.1.4「 核 融 合 発 電 」 参 照 (6) 8.2.1「 発 電 の 原 理 」 参 照 (7) 8.2.2「MHD発
電 の 出力」 参照
(8) 8.2.3「 発 電 方 式 」 参 照
第 9章 バイオマス発電 (1) 9.1「 バ イ オ マ ス の 分 類 」 参 照 (2) 9.2「 バ イ オ マ ス の 利 用 方 法 」 参 照 (3) 9.2.2(1)「
メ タン発酵 」参 照
(4) 9.2.2(2)「
エ タノー ル発酵 」参 照
(5) 9.2.3「 熱 化 学 的 変 換 に よ る 利 用 方 法(1)ガ ス 化 」 参 照
(6)同
上
参照
第10章 その他 の発電方 式 (1)10.1「
熱電 発電 」参 照
(2)10.1「
熱電 発電 」参 照
(3)10.2「
熱電 子発 電」 参照
索
エ アマ ス
194
エ タ ノー ル発 酵
256
44
エ ン タル ピー変 化
113
46
煙突
【A-Z】 Bernoulliの
式
Boltumann定
数
CANDU炉
Carnotサ
107
イ クル
Clausiusの Jouleサ
原理
52 50
度 目盛
53
LNG Mayerの
関係式
MHD発
68,72
エ ン トロ ピー増 加 の原 理
電
オ ープ ンサ イ クル(MHD発
245
オー プ ン サ イ クル 式(海 洋 温度 差 発 電) 224
66
オ フ シ ョア
45
親 物 質
イ クル 式
Thomsonの
188 98 【カ 】
106
Possionの
電 シ ステ ム)
233
MOX Ottoサ
55
48,52
イ クル
Kelvin温
引
原理
49
カー チ ス ター ビ ン
49
加 圧 水形 原 子炉
52
ガ イ ドベ ー ン
【ア 】
72 92,99 21
開 放起 電 力
198
海 洋 温度 差 発 電
215
アー チ ダ ム
14
改 良形 ガ ス 冷却 炉
107
亜炭
66
化 学体 積 制 御 系
圧 縮 工程
86
可 逆(-過 程,-機 関)
圧縮率 圧 力 水頭
3
拡 散分 極
7
核 子
102
118 92
アモ ル フ ァ ス シ リ コ ン
204
ア ル カ リ金 属
243
核 分裂(-生 成 物,-断 -物質)
安 全 注入 設 備
102
核 融合(-エ
面積,-中 性 子,
入 口弁 イ ンタ ーナ ル ポ ンプ
7 34 103,105
91
233
203,205
ガ ス燃 焼 ボ イ ラー
69
ガ ス冷 却 形原 子 炉
107
河川 流 量 ガ ソリ ン
ウ ラ ン
96-98
ネ ルギ ー,-発 電,-反 応)
化合 物 半 導体 太 陽 電 池 位 置水 頭
47,48
活性 化分 極
9 66 118
価 電 子帯
196
可 動 羽根
72
可 動物 体 形
215
過 熱蒸 気 密 度
57
カ プ ラ ン水 車
23,24
ゲ ー ト
16
結 晶 シ リコ ン太 陽電 池
92
原 子 番号
92
原 子 炉格 納 容器 ス プ レイ設 備
102 106
可 変 速制 御
182
原 子 炉 隔離 時 冷却 系
ガ ラス繊 維 強 化 プ ラス チ ック
185
原 子 炉浄 化 装 置
乾 き飽 和 蒸 気
57
慣 性 閉 じ込 め方法
236
貫 流 ボ イ ラー
198
原 子核
106
減速材
91,98
原油
66
68
機 械 的作 用
40
気 水 分離 器
103
高 温 ガ ス ― 冷却 炉
243 107
降水 量
9
気 体 定数
46
高 速 増 殖炉
107
給 気 工程
86
国際 熱核 融 合 実 験炉
242
吸 収 断面 積
95
固体 高 分子 形 燃 料電 池
給 水 加熱 器
61,70
凝 縮 水
70
強 制 循環 ボ イ ラー
68
111,121,124,139,149 固体 酸 化物 形 燃 料電 池 111,121,130,147,151 固定 羽 根
空 間 電荷
266
72
孤立系
40
コルダ ー ホ ール 改 良形 炉
107
空 気 管
18
空 気 極
112
混 合 理 想 気体
46
空 気 ター ビン
218
混 式 ター ビン
72
空 気 比
67
空 気 弁
18
空 気 予 熱器
68
ク ロー ズ ドサイ クル(MHD発
電 シ ステ ム)
【サ 】 サ ー ジ タ ンク
13,16
サ イ クル
246 ク ロー ズ ドサイ クル式(海 洋 温 度 差 発電) 221
41
再結合
202
再循環系
105
再 循 環 ポ ンプ
103 108
ク ロ ス コ ンパ ウ ン ドター ビ ン
74
再処理
ク ロ ス フロ ー水 車
26
再 生サ イ クル 最大 出 力 動作(-電 圧,-電
61 流)
208
系
40
最適 動 作(-電 圧,-電 流)
軽油
66
再 熱器
68
再 熱サ イ クル
62
ゲ ー ジ圧 力
4
210
作 動 円板
161
散 乱 断面積
95
残 留 熱除 去 系
106
ジ ェ ッ トポ ンプ
103,105
示 強性 の量
40
仕 事 関数
266
仕 事 源
衝 動水 車
18
衝 動 タ ー ビ ン
72
蒸 発
57
示 量性 の量
40
伸 縮 継手
17
振 動 水柱 形
215
振 幅
215
40
比 重 量
水 圧 変動 値
14
自然 循環 ボイ ラ ー
68
3
水 圧 変 動率
36
湿 式 石灰 石-石 こう法
71
水 管 ボイ ラ ー
68
水 車
18
失 速
166
質 量 欠損
97
吸 出 し管
28
質 量 源
40
垂 直 軸 形
155
質 量 数
92
水頭
質 量 的作 用
40
水平 軸 形
磁 場 閉 じ込 め方 法
236
湿 り飽和 蒸 気
水量
57
ス テ ラ レー タ
7 155 10 236
23
ス トッカ ー
68
自 由 エネ ル ギー 変化
114
ス ペ ク トル
194
周 期
216
ス ラス ト軸 受
斜 流 水 車
集 塵 器
68
重 水 減 速形 原 子 炉
107
制 御材
周 速 比
170
制 御棒 ク ラス タ
重 油 ― 燃焼 ボイ ラー
66 69
重 力 ダム
14
取 水 口
16
潤 滑油 準静 的(-断 熱,-等 蒸 気 ―乾 燥器
78
温)過 程
制 水弁
17
石 炭 ―重 油 混焼 ボ イ ラー
66 69
―燃 焼 ボ イ ラ ー
69
66
石 油
41
節 炭器
57 103
99 100
66 68
設 備利 用 率
182
セル
206
― ター ビン
72
遷 移領 域
5
―発 生器
99
全 水頭
7
使 用 済 み燃料
108
状 態 方程 式
45
状 態 量
40
せ ん断応 力 潜 熱
3 57
増殖
98
定 圧(-熱
総落差
11
デ ィー ゼ ルサ イ クル
層流
5
速度垂下率
35
速度水頭
7
速度調定率
35
容 量,-比
熱)
44,45 51
抵 抗分 極 定 積(-熱
118
容 量,-比
熱,-モ
ル 比 熱)…45,46
泥 炭
66
デ フ レク ター
19
ソ リデ ィテ ィ
176
デ リア水 車
23
ソ レ ノイ ドコイル
236
転換
98
電 気集 塵 装 置
【タ 】 体 積 弾性 係 数
電 子-正
3
孔(ホ
71 ー ル)対
伝 導帯
198 196
天 然 ガ ス
66
212
同 位元 素
92
204
同位 体
92
太陽光発電
193
太陽電池
196
太陽熱発電 多 結 晶 シ リコ ン 脱 硫 装置
68
等 エ ン トロ ピー変 化
56
ダ ム
14
導水 路
16
炭 化 水素
66
動粘 性 係 数
単 結 晶 シ リコ ン
203
6
灯 油
66
段効 率
73
トカ マ ク
弾 性 散乱 断面 積
96
閉 じた 系
40
タ ンデ ム コ ンパ ウ ン ドター ビン
74
ト ッパ ー
84
断面積
95
トリウム
短 絡 電流
198
236
91
トル ク 係 数
175
トロ イ ダ ル コ イ ル
237
地 熱 発電
87
地 熱 流体
87
中 空重 力 式 ダム
14
ナ フテ ン系
中性 子
92
波 エ ネル ギ ー
215
チ ュ ー ブ ラ水 車
24 熱核融合反応
234
潮 位 差(干 潮 ・満 潮) ち ょ う形 弁
227 34
【ナ 】
熱源
40 98
潮 汐 エ ネル ギ ー
225
熱 中性 子
潮 汐発 電
215
熱 的 作 用
調速機 直 接 反 応 形 燃 料電 池 沈砂池
34 116 16
66
熱 電 子 発 電 熱電発電 熱 平 衡状 態
40 263,265 263 40
熱容 量
44
比熱
44
熱力 学 第 1法則
41
開 いた 系
40
熱力 学 第 2法則
52
粘度(係 数)
3
燃料極
112
燃料集合体
100,105
燃 料 電 池 自動車
140
フ ァ ラ デ ー 形(MHD発
電 方 式)
245
フ ァ ン
68
フ ィル フ ァクタ ー
199
フー ル プル ー フ
109
フ ェイル セ イフ
109
濃 縮 ウ ラ ン
98
不 可 逆機 関
48
ノ ズ ル
72
復 水器
69
不 縮性 ガ ス
88
【ハ 】 バ ー ナー パ ー フ ロロ カー ボ ン スル ホ ン酸 排 煙 脱 硫装 置 バ イ オ マ ス発 電
沸騰
68 125 71 249
57
沸騰 水 形 原 子炉
92,99,103
プ ラ ズマ
234
フ ラ ッ シ ュ発 電 方 式
88
ブ ラ ン ケ ッ ト
99,241
排 気 工程
86
フラ ン シス水 車
灰 処 理装 置
68
プ ルサ ー マ ル
106
240
プ ル トニ ウ ム
91
爆縮 爆 発工 程
86
バ ケ ッ ト
19,72
波長 パ ラ フ ィ ン系 波力 発 電
215
215 24
パ ワ ー係 数
171
半減 期
反射体 反動水車 反 動 ター ビン
ブ ル ド ン圧 力 計 プ ロ ペ ラ(水
23
粉砕器
68
93 201
ヘ リカル型
238
ベ ル ヌ ー イの 式
6,44
ペ レ ッ ト
240
弁
34
変 換効 率
195
99 18,20 72
ボイ ラ ー本 体給 水 ポ ンプ
93
放射 強 度
195
ピー トモ ス
66
放射 性 崩 壊
30
放射 能
2
68
崩 壊定 数
比 速度 比 体積
4
車)
66
バル ブ水 車
反射損失
20
飽 和(-圧
92 92
力,-液,-温
非 弾性 散 乱 断 面積
96
ホ ー ル 形(MHD発
非 弾性 衝 突
94
捕獲 断 面積
度,-蒸 電 方 式)
気)
56,57 245 96
ポ ンプ水 車
26 【ラ 】 【マ 】
膜電極接合体
124
マ ノ メー タ
4
マ ンハ ッ タ ン計 画
91
マ ンホー ル
18
密度
2
落差
11
ラ ンキ ンサ イ クル
58
ラ ンナ ベ ー ン
20
乱流
5
理 想 気体
45
流 況 曲線
11
流 出係 数
10
ミラ ー
236
無煙炭
66
流量
無 限小 過 程
41
流 量 塁 加 曲線
11
理 論 変 換効 率
198
メ タ ン発 酵
253
理 論 燃焼 空気
67
モ ジ ュー ル
207
流線
臨 界(-圧 力,-温
4 5
度,-点)
臨 界 プ ラズ マ りん酸 形燃 料 電 池
57 234
111,121,126,143,150
【ヤ 】 有義波高値 有義波周期
216
冷 却 水 ポ ンプ
216
レ イ ノル ズ数
99 5
有効落差
11
瀝青炭
66
誘 導放 射 能
94
連鎖反応
98
連続の式 陽子 溶 融 炭 酸 塩 形燃 料 電 池
炉
111,121,128,146,151 予熱除去系
5
92
102
ロ ー ソ ン(Lawson)の ロ ータ リ弁
68 条件
234 34
炉心
100
炉 心 シ ュラ ウ ド
103
〈 著者紹介〉 柳 父 悟 学 歴 東 京 大 学工 学 部 電 気工 学 科 卒 業(1964) 工 学 博 士(1990),Ph.D.(1971) 職 歴 株 式 会社 東 芝 入 社(1964) 現 在 東 京 電機 大 学 工 学 部教 授 西 川 尚 男 学 歴 北 海 道 大学 工 学 部 電気 工 学 科 修 士修 了(1965) 工 学 博 士(1979) 職 歴 株 式 会社 東 芝 入社(1965) 現 在 東 京 電機 大 学 工 学部 教 授
エネルギー変換 工学 地 球 温 暖化 の終 焉 へ 向 けて 2004年
3月30日
著 者
第 1版 1刷 発 行
柳父 悟 西川 尚男
発行者 学校法人 東 京 電 機 大 学 代 表 者 丸 山 孝 一 郎 発行所 東 京 電 機 大 学 出 版 局 〒101-8457
東 京都 千 代 田 区神 田錦 町2-2 振 替 口 座 00160-5-71715
印刷 三美印刷㈱ 製本 渡辺製本㈱ 装丁 鎌田正志
ゥYanabu
電 話 (03)5280-3433(営
業)
(03)5280-3422(編
集)
Satoru,Nishikawa
Printed in Japan
*無 断 で転 載 す る こ とを禁 じ ます。 *落 丁 ・乱 丁 本 はお取 替 えい た します 。 ISBN4-501-11220-4
C3054
Hisao 2004