制 御 工 学(下) 現代制御理論の基礎
監修
深海 登世 司
藤巻 忠雄
東京電機大学出版局
制御工学 監修者
執筆者
深
下
海
登世司
藤 巻
忠 雄
第 1章 大庭 勝 實 第 2章 藤巻 忠雄...
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制 御 工 学(下) 現代制御理論の基礎
監修
深海 登世 司
藤巻 忠雄
東京電機大学出版局
制御工学 監修者
執筆者
深
下
海
登世司
藤 巻
忠 雄
第 1章 大庭 勝 實 第 2章 藤巻 忠雄 第 3章 川 島 忠雄 第 4章 三舩 博 史 第 5章 柿 倉 正義 第 6章 柿 倉 正義 ・藤巻 忠 雄
ま え が
き
この 本 は,筆 者 らの 制 御 工 学 上 巻 の続 編 で あ り,制 御 工 学 を専 門 と しな い学 部 上 級 生 乃 至 は大 学 院 修 士 課 程 の 学 生 の た め の現 代 制御 理 論 の入 門 教 科 書 と して, 演 習 を交 え た 1週 1回 の 講 義 で,1 学 期 間 で 習 得 で き る こ と を念 頭 に ま とめ た も の で あ る。 今 日に お け る コ ン ピ ュー タ の発 達 とあ い ま っ て,制 御 技 術 は ます ます 高 度 化 し て お り,広 範 の 分 野 で デ ィ ジ タ ル 制 御 が 導 入 され て い る。 この よ うな 状 況 下 で, 将 来 の 活 躍 が期 待 され る理 工 系 の 学 生 に は,そ の た め の基 礎 知 識 と して,上 扱 った よ うな フ ィー ドバ ッ ク制 御 理 論 に加 え て,シ
巻で
ステムの入出力特性 の みで な
く内 部 状 態 に着 目す る,い わ ゆ る現 代 制 御 理 論 を教 授 す る こ とは是 非 必 要 で あ る。 しか し なが ら,こ の よ う な新 し い制 御 理 論 は,初 心 者 に は ラ プ ラ ス変 換 に基 づ く フ ィー ドバ ック制 御 理 論 よ り も一 層,数
学 的 に映 り戸 惑 う こ とが あ る。 そ こで ,
この 本 で は,限 られ た 時 間 内 で,そ の 基 本 的 な 考 え方 を十 分 理 解 で き る よ うに と, 説 明 は で き る だ け平 易 にす る よ う努 め た 。 第 1章 で は,古 典 か ら新 しい制 御 理 論 へ の 発 達 の全 貌 に つ い て述 べ,第
2章 で
は,現 代 制 御 理 論 の基 礎 で あ るベ ク トル お よび 行 列 論 に つ い て要 約 した 。 第 3章 で は,状 態 変 数 の 扱 い に つ い て具 体 例 に よっ て 解 説 し,ま た 第 4章 で は,新 概 念 で あ る 可 制 御 性 お よ び 可 観 測 性 に つ い て 述 べ た。 さ ら に,第
しい
5章 で は,こ れ
ら を基 に,オ ブ ザ ー バ,最 適 制 御 の 考 え方 に つ い て解 説 した 。 第 6章 で は,こ の よ う な新 しい 制御 理 論 を コ ン ピ ュ ー タ を用 い た 制 御 シ ス テ ム と して 具 現 化 す るた め に 必 要 な基 本 に つ い て述 べ た 。 な お,第
2章 は,こ の 本 の本 論 で は な く,第
3章 以 下 を理 解 す る た め に必 要 な
数 学 基礎 で あ る か ら,こ の程 度 の 知 識 を もつ 読 者 は,第
2章 を ス キ ップ して,次
章 に入 る こ とを奨 め る。 筆 者 ら は,こ の本 が 初 めて 現 代 制 御 理 論 を学 ぶ 人 へ の 導 き に な れ ば と念 願 し て い る。 読 者 が,こ
の 内容 を理 解 す る こ とが で きれ ば,さ
ら に高 度 の制 御 理 論 な ら
び に 実 際 シ ス テ ム の扱 い に ス ム ー ス に入 っ て行 くこ とが で き る と信 ず る。 この 本 の 出 版 に 当 って は,東 京電 機 大 学 出版 局 編 集 課 長 の 岩 下 行 徳 氏 に は,一 方 な らぬ お世 話 に な った,心
よ り感 謝 して い る。
1996年3月
深海 登世 司 藤巻 忠雄
目 次
第
1章
第 2章
序 論 1・1制
御理論 の歴史
1
1・2計
算 機 の 発 達 とデ ィ ジ タ ル制 御
5
ベ ク トル と行列 2・1ベ
第3章
ク トル
7
2・2 行 列 論
10
寅習 問題 〔2〕
37
シス テムの状 態 方程式 による表現 3・1状
態方程式
38
3・2状
態 方 程 式 の 解(シ
3・3状
態 方 程 式 と伝 達 関 数 の 関 係
53
3・4単
位 イ ンパ ル ス 応 答
55
ス テ ム の 応 答)
演 習 問 題 〔3〕
第4章
50
57
システ ムの可制御性 お よび可観測 性 4・1可
制 御性
59
4・2可
観 測性
64
4・3座
標 変 換 と シス テム の構 造
67
4・4伝
達 関 数 の極 ・零 点 消 去 と可 制 御 性 ・可 観 測 性
76
演 習 問 題 〔4〕
81
第 5章
時間領域における制御系の設計 5・1状 5・2
態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク 制 御 の 概 要 最 適 レ ギ ュ レ ー タ
5・3オ
ブザーバ問題
演 習 問 題 〔5〕
第 6章
83 96 102
108
デ ィジ タル シス テ ムの扱 い 6・1連
続 時 間 シ ス テ ム か ら離散 時 間 シ ス テ ム へ の 変 換
110
6・2離
散 時 間 シ ス テ ム の 状 態 方 程 式 とそ の 解
114
6・3 状 態 方 程 式 とパ ル ス伝 達 関 数 行 列
117
6・4可
制 御 性 お よ び可 観 測 性
120
6・5状
態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク
122
6・6
最 適 レ ギ ュ レ ー タ
125
6・7
オ ブザーバ
127
演 習 問 題 〔6〕
131
演 習問題 の 解 答
132
参 考 文献
142
索 引
145
第 1章
1
・
1
〔1〕
序
諭
制御理論の歴史
制御理論のあけぼの
フ ィー ドバ ッ ク制 御 の原 理 が 制 御 手 法 と して技 術 史上,初
め て 登 場 した の は紀
元 前 3世 紀 ご ろ に ア レ キ サ ン ド リア の ク テ シ ビオ ス(Ktesibios)に た水 時 計 の 注 水 器 に お け る液 面 制 御 で あ る とい わ れ て い るが,制 とい え ば や は りワ ッ ト(J.Watt)が1784年
よ っ て 作 られ 御工学 の幕開 き
に蒸 気 機 関 の調 速 に遠 心 式 調 速 機 を使
用 した と き と い え よ う。 こ れ を 契 機 に調 速 機 の 解 析 を始 め と して調 速 系 が 制 御 工 学 の見 地 か ら研 究 さ れ る よ うに な った 。 そ の 中 で マ クス ウ ェ ル(J.Maxwell)が 1868年 に 調 速 系 の詳 しい 数 学 モ デ ル を示 し,ま た その シ ス テ ム が 安 定 で あ る た め に はす べ て の特 性 根 が 負 の 実 数 部 を持 た ね ば な らな い こ とを 明 ら か に した こ と に よ って 制 御 理 論 の 大 き な一 歩 が 踏 み 出 され た。 そ の 後,線 形 制 御 系 の 数 学 モ デ ル を示 す 高 次 の線 形 微 分 方 程 式 の 係 数 問 の 代 数 的 関 係 か ら シ ス テ ム の 安 定 判 別 を行 う方 法 が1877年 Hurwitz)に
に ラ ウ ス(E.Routh)に
よ り,ま た1895年
よ っ て 発 表 され た 。 さ らに,1892年
(A.Liapunov)が
に フ ル ビ ッ ツ(A.
に は ロ シア の数 学 者 リア プ ノ フ
「運 動 の 安 定 性 」 に 関 す る論 文 で,現 在 も非 線 形 系 の安 定 解 析
に用 い られ て い る リア プ ノ ブ の 安 定 判 別 法 を完 成 し た。 制 御 系 を線 形 微 分 方 程 式 で 表 し,そ れ を解 析 的 に解 く こ とが制 御 理 論 の あ け ぼの 期 で あ る19世 紀,20世 初 頭 の主 な 解析 手 法 で あ った 。
紀
〔2〕 古 典 制 御理 論 の 形 成 微 分 方 程 式 に よ る解 析 で は 系 の 次 数 が 高 くな る と特 性 方 程 式 の 根 を 求 め る こ と が 困 難 で あ り,せ いぜ い三 次 まで が 実 用 範 囲 で あ った 。 この よ う な時 間領 域 で の 理 論 的 な 取 扱 い の 困 難 さ か ら,1940年
代 に入 る とフ ィー ドバ ック制 御 系 の解 析 ・
設 計 は 周 波 数領 域 に お い て 展 開 され る よ う に な っ た 。 折 りし も第 二 次 世 界 大 戦 下 の ア メ リカ で は,周 波 数 応 答 法 が サ ー ボ 機 構 の設 計 法 と して 時 間 領 域 で の 扱 い の 困 難 さ を打 開 す る手 法 と して 大 い に 貢献 し,そ の 形 を整 えつ つ あ っ た 。 一 方,プ ロ セ ス 制 御 の 分 野 で も,1942年
に ジ ー グ ラ(J.Giegler)と
に よ る限 界 感 度 法 の提 案 が な され,周
ニ コ ル ス(N. Nichols)
波 数 領 域 で の設 計 法 が 確 立 され て い っ た 。
これ ら の手 法 の 基礎 は フ ィ ー ドバ ッ ク増 幅 器 の 設 計 に 関 連 して1932年 れ た ナ イ キ ス ト(H.Nyquist)と,そ
れ に続 い た ボ ー ド(H.Bode)の
に発表 さ 理論 に負 う
と こ ろが 大 き い。 周 波 数 応 答 法 に対 して フ ィー ドバ ッ ク系 の 特 性 根 配 置 に注 目す る根 軌 跡 法 が1948年
にエ バ ンス(W.Evans)に
よ っ て 提 案 され,そ
れ を基 礎 と し
て 過 渡 応 答 法 に つ い て も数 多 くの研 究 が な され た 。 か くし て周 波 数応 答 法,過 応 答 法 が確 立 さ れ,線 形 フ ィー ドバ ック制 御 理 論 の体 系,い
渡
わ ゆ る古 典 制 御 理 論
体 系 が 形 成 され た。 この 制 御 理 論 は ラ プ ラ ス 変 換 を 用 い て,シ ス テ ム 要 素 の複 素 数 領 域 に お け る 入 出 力 比 と して伝 達 関 数 を求 め,そ れ らの 結 合 を ブ ロ ック線 図 で 表 して シス テ ム を 表 現 して い る 。 こ の よ うな 制 御 系 を表 す ブ ロ ッ ク線 図 を代 数 的 に ま とめ,周 波 数応 答 を求 め た り,特 性 根 を求 め た りし て設 計 す るの が この 理 論 の 特 徴 で あ る。 しか し なが ら,こ の 場 合,主
に動 作 範 囲 が 狭 く線 形 化 が可 能 で,
単 一 ル ー プ の フ ィー ドバ ック 系 に そ の対 象 が 限 られ て い た。
〔3〕 現 代 制 御理 論 の芽 生 え 1950年 代 に な る と動 作 範 囲 の 拡 大 が 図 られ,こ れ に伴 い非 線 形 性 が 無 視 で き な くな る こ とに よ る非 線 形 制 御 問 題 が,ま
た 制 御 対 象 の 特 性 の 変 化 に対 応 し て制 御
装 置 を それ に適 応 させ るた め の 適 応 制 御 方 式 が研 究 の 対 象 とな っ た。 非線 形 制 御 系 の 解 析 で は位 相 面 解 析 法 と記 述 関 数 法 が 非 線 形 振 動 論 に基 礎 を置 い た 有 効 な解
析 法 と して 注 目 さ れ た 。 位 相 面 解 析 法 は 飽 和,非 線 形 摩 擦 等 の あ る制 御 系 の解 析 に 適 し た方 法 で あ るが,対
象 は二 次 の 系 に限 られ る難 点 が あ る。 しか し,こ の 方
法 は,現 代 制 御 理 論 の シ ス テ ム 記 述 法 で あ る状 態 空 間 法 の基 礎 を与 え る もの で も あ った 。 これ に対 し,記 述 関 数 法 は非 線 形 要 素 の 出 力 信 号 の 高 調 波 成 分 を除 い て その 入 出力 関 係 の周 波 数 応 答 を求 め,ナ り,リ ミ ッ トサ イ クル の振 幅,周
イ キ ス ト線 図 を用 い て 安 定 判 別 を行 っ た
波 数 を求 め る もの で,近 似 的 で は あ るが 高 次 系
に も使 え る非 常 に便 利 な 方 法 で あ る。 状 態 空 間 法 が 用 い られ る よ うに な る と非 線 形 系 の 安 定 判 別 は リア プ ノ フの 直 接 法 が 注 目 さ れ る よ う に な った が,記 述 関 数 法 は手 軽 に解 析 が で き,し か も非 常 に わ か りや す い特 長 を もっ て い る。 一 方,適 応 制 御 系 の研 究 は動 作 範 囲 の拡 大 に よ り生 ず る制 御 対 象 の動 特 性 の 変 化 に適 応 す る 制 御 装 置 を いか に構 成 す る か と い う問題 につ い て 多 くの 研 究 が な さ れ た が,本 質 的 に これ は 非 線 形 時 変 系 で あ るた め,そ の 安 定 性 の 理 論 解 析 は簡 単 に は ゆ かず ア ナ ロ グ シ ミ ュ レ ー シ ョン に頼 ら ざ る を得 な い状 況 で あ った 。 そ の 中 に あ っ て,モ デル 規 範 形 適 応 制 御 と セ ル フチ ュ ー ニ ン グ レ ギ ュ レー タが 有 力 な 適 応 制 御 の設 計 方 式 と して 注 目 され た が,実 同 定 の 問題,制
シ ス テ ム へ の 応 用 で はパ ラ メ ー タの オ ン ラ イ ン で の
御 系 の ロバ ス ト性*あ るい は安 定 性 な どの研 究 を進 め て い くこ と
が 必 要 で,そ の 適 用 例 は少 な く将 来 の研 究 に期 待 す る状 態 で あ っ た。 以 上 の よ う な動 作 範 囲 の 拡 大 に対 応 す るた め の制 御 手 法 に対 して 制 御 系 の 応 答 の 最 適 性 を求 め る手 法 も検 討 され た 。 す な わ ち,制 御 系 の 応 答 特 性 の評 価 関 数 を求 め,こ れ が 最 小 に な る よ う な 最 適 な制 御 方 式 を求 め よ う とす る もの で あ るが,制 御 対 象 の入 出 力 関 係 の み に注 目 し て構 築 され た古 典 制 御 理 論 で は個 々 の 問 題 に対 処 す る の が せ いぜ い で,新
しい 制 御 理 論 の 登 場 が待 た れ た。
〔4〕 現 代 制 御 理 論 の誕 生 1960年 代 に な る と既 に述 べ た 非 線 形 制 御 系 の安 定 解 析 に リア プ ノ フ の 安 定 論
* ロバ ス ト(Robust)は
「 少 々 の こ とで は ぐ らつ か な い」を意 味 し ,ロ バ ス トな制 御 系 とは 制 御 対 象 の動 特 性 が 動 作 中 多少 変 動 して も,また設 計 の際 に用 い た モ デル に多 少 の誤 差 が あ っ て も制御 系 と しての 基本 的 な特性 が それ らの影 響 で あ ま り変 わ らな い系 をい う。
の 適 用 や 最 適 制 御 理 論 な ど制 御 の 質 の 向 上 が 研 究 の 中心 とな った 。 これ に応 え る に は従 来 の 伝 達 関 数 記 述 法 の よ う に制 御 量 だ け に注 目 す る 方 式 で は対 応 で き な く な り,制 御 系 の 内部 状 態 を表 す状 態 ベ ク トル を フ ィー ドバ ッ ク し て,き め 細 か な 制 御 を行 う こ とが必 要 と な っ た 。 こ の た め に微 分 方 程 式 で シス テ ム の動 的 挙 動 を 数 量 的 に 捉 え る シ ス テ ム 記 述 法 が 不 可 欠 と な り,新 た に連 立 一 次 微 分 方 程 式 記 述 の 状 態 空 間 法 が 登 場 し,現 代 制 御 理 論 の 幕 開 き とな った 。 状 態 方 程 式 記 述 に よ る 現 代 制 御 理 論 の成 果 は 線 形 シ ス テ ム 理 論,多 形 制 御 系 の 安 定 問 題,適
変 数 制 御 理 論,最 適 制 御 理 論,非
応 制 御 理 論 な ど広 範 に及 ん で い るが,な
線
か で も線 形 シ ス
テ ム 理 論 の確 立 と最 適 制 御 理 論 が 最 大 の成 果 とい っ て よ いで あ ろ う。 シ ス テ ム へ の 入 力 が そ の す べ て の 内 部 状 態 を 支 配 す る か,あ
るい はシステム出力 にすべ ての
内 部 状 態 が反 映 す る か を明 らか に して い る の が 可 制 御 性 と可 観 測 性 の 概 念 で あ る が,こ れ ら は シ ス テ ム の 状 態 方程 式 記 述 で 初 め て 導 び く こ との で き る もの で あ り, 1960年 に カ ル マ(R.Kalman)に
よ っ て 導 入 され た。 可 制 御 で,か つ 可 観 測 な
制 御 対 象 に対 し,そ の対 象 の 次 数 よ り少 な い 出 力 か らモ デル を使 っ て 制 御 対 象 の 状 態 ベ ク トル を推 定 す る手 法 を1964年 案 し,状 態 観 測 器(オ
ブ ザ ー バ)と
に ル ー エ ンバ ー ガ(D.Luenburger)が
発
した 。 これ を基 礎 と して 確 立 さ れ た 状 態 ベ ク
トル フ ィ ー ドバ ッ ク法 に よ り古 典 的 制 御 手 法 に 比 べ 遥 か に き め細 か な 制 御 が 可 能 とな り,1変 数,多 変 数 制 御 系 の 区別 な く状 態 空 間 法 に よ って 一 般 理 論 の 展 開 が で きる よ う に な った 。 一 方,最 適 制 御 理 論 は シ ス テム の動 的挙 動 に つ い て の評 価 関 数 を 最 小 また は最 大 に す る よ う な極 値 を とる操 作 量 を求 め る問 題 で あ るが,ベ マ ン(R.Bellman)の
動 的 計 画 法,ポ
ン トリア ギ(L.Pontryagin)の
ル
最大原 理
を そ の 基 礎 と して い る。 そ の 基 本 的 考 え方 を線 形 の 制 御 対 象 につ い て 二 次 形 式 の 評 価 関 数 を与 え,そ の 値 が極 小 と な る よ う な状 態 ベ ク トル フ ィー ドバ ッ ク を行 う 線 形 二 次 形 式 最 適 制 御(Linear QuadraticOptimal ュ レ ー タ,あ
Control)を
用 い た 最 適 レギ
るい は それ とカ ル マ ン フ ィル タ(ま た はオ ブ ザ ー バ)を
用 い て正 規
性 白色 雑 音 が 混 入 して い る場 合 の 最 適 制 御 で あ るLQG(LinearQuadraticGaussian)制 御 等,現 代 制 御 理 論 は古 典 制 御 理 論 で は取 り扱 え な か っ た 多 くの 問 題 を解 決 して きた 。 しか しな が ら,こ の よ うな 新 しい 理 論 に も問題 が な い わ け で は な い。
す な わ ち,現 代 制 御 理 論 を設 計 に用 い る場 合,制 御 対 象 の状 態 空 間 モ デル が 実 シ ス テ ム と設 計 と を結 ぶ唯 一 の 絆 で あ る に も拘 わ らず モ デ ル の 不 完 全 さ に対 す る配 慮 を欠 い て い る た め,モ デ ル の 誤 差 が どの よ うな 結 果 を もた ら す か を定 量 的 に 予 測 す る こ とが 難 し い こ とで あ る。 この よ う な こ とか ら 「技 術 か ら遊 離 し て い る 」 とか 「理 論 過 剰 の 閉 じた世 界 で 自家 中 毒 を起 こ して い る」 な ど と久 し くいわ れ て きた が,1980年
ご ろか らい わ ゆ る ロバ ス ト制御,特
を許 容 す る制 御 」 と して 注 目 され,現
にH∞ 制 御 *が 「モ デル の誤 差
代 制 御 理 論 の モ デ ル の 問 題 解 決 に光 明 を 見
い 出 す と こ ろ とな りそ の 実 用 性 を 高 め て い る。
1・2 計 算機 の発達 とデ ィジ タル制御
デ ィ ジ タ ル 計 算 機 が 初 め て 制 御 系 の 中 に と り入 れ ら れ た の は1959年 が,こ
の 時 は ま だ 計 算 機 の 信 頼 性 が 十 分 で な か っ た た め,制
う の で な く,デ
ー タ の 記 録,制
であ った
御 量 の 直 接 制 御 を行
御 系 の 監 視 等 の 範 囲 に 止 ま っ て い た 。 そ の 後,ア
ナ ロ グ 制 御 装 置 の 目 標 値 を デ ィ ジ タ ル 計 算 機 に よ っ て 与 え る,い わ ゆ るsupervisory control方
式 に 移 行 した 。 こ の よ う な 経 過 を た ど っ て 制 御 用 計 算 機 が 直 接,閉
ル ー プ 制 御 系 に 導 入 さ れ,直
接 デ ィ ジ タ ル 制 御(direct
DDC)が
で あ っ た 。1965年
行 わ れ た の は1962年
以 降,制
ー トメ ー シ ョ ン の 構 成 要 素 と し て 一 般 的 と な っ た が 以 上 の プ ロ セ ス に 限 ら れ て い た 。1971年
,そ
digital control略
して
御 用計 算 機 はプ ロ セ ス オ の値 段 が 高 い た め中 規 模
に マ イ ク ロ プ ロ セ ッ サ が 登 場 し,そ れ を
用 い た マ イ ク ロ コ ン ピュ ー タ は シ ス テ ム 制 御 の そ の 後 の 発 展 に大 きな 変 化 を与 え た 。 例 え ば,計
装 制 御 の 分 野 で は 集 中 形 か ら 分 散 形 へ,シ
はPLC(programmablelogic
controller)の
出 現 に よ る ソ フ ト化 の 進 展 に よ っ て,
複 雑 で 大 規 模 な シ ス テ ム へ の 対 応 が 可 能 と な り,制 き る よ う に な っ た 。 さ ら に,工
作 機 械 のNC技
の 変 更 が 可 能 と な るCNC(computerized *H∞
の H は数 学 者Hardyの
頭 文 字 で,H∞
で あ る関 数 の 集 合 を表 す記 号 で あ る。
ー ケ ン ス制 御 の 分 野 で
御 の 柔 軟 さ と多 様 化 に 対 応 で
術 は プ ロ グ ラ ム の 変 更 だ けで 機 能
numericalcontrol)へ
と移 行 し て い っ
は 右 開 半平 面 で解 析 的 か っH∞ ノル ム が 有 限
た。 この よ うに マ イ ク ロ プ ロ セ ッサ の 出現 に よ っ て非 常 に 複 雑 な制 御 動 作 もハ ー ドウ ェア の面 か らの 制 約 を受 け な い で 実 現 で き る よ う に な り,制 御 則 の ソ フ ト化 が 急 速 に 進 行 して い る。 マ イ ク ロ プ ロ セ ッサ を デ ィ ジ タ ル コ ン トロ ー ラ と し て制 御 系 の 中 に 入 れ た と き 動 作 量 が 離 散 化 さ れ て 表 され る。 この離 散 化 は時 間 軸 方 向 と して の サ ン プ リ ン グ と空 間 軸 方 向 と して の 量 子 化 の二 つ に特 徴 づ け られ る。 サ ン プ リン グ に つ い て は 1950年 代 末 に Z 変換 で 理 論 が 集 成 さ れ,そ の 取 扱 いが 確 立 した 。1960年 代 に入 る と現 代 制 御 理 論 の 誕 生 と呼 応 して サ ン プ ル値 制 御 系 も離 散 時 間 形 の 状 態 方 程 式 で 扱 わ れ る こ とが 多 くな っ た 。 現 代 制 御 理 論 は も と も と計 算機 の 使 用 を前 提 に構 築 され た も の で あ り,離 散 時 間 形 のLQ制 が 盛 ん に行 わ れ て い る。 特 に,サ 定 制 御)は
御,オ ブ ザ ー バ 等 の性 質 や 解 法 な どの 研 究
ンプ ル 値 制 御 独 特 の デ ッ ドビー ト制 御(有
速 応 性 に優 れ て い る反 面,ロ
限整
バ ス ト性 に欠 け る欠 点 が あ り,こ れ を克
服 す べ くロバ ス ト性 を も つ デ ッ ド ビー ト制 御 の研 究 も多 くな さ れ て い る。 一 方, A/D,D/A変
換 や 計 算 機 の 有 限 語 長 に よ る量 子 化 の影 響,す な わ ち 量 子 化 誤 差 に
つ い て は信 号 処 理 の分 野,特
に デ ィ ジ タ ル フ ィ ル タ の 分 野 で 詳 し く研 究 され て い
る。 以 上,計 算 機 の 発 達 とデ ィ ジ タ ル 制 御 に つ い て簡 単 に述 べ た が,今
後 はマ イク
ロ プ ロセ ッサ の利 用 を基 調 と し て現 代 制 御 理 論 の 有 用 性 が ます ま す 高 くな っ て行 く と思 わ れ る。
ベ ク トル と行 列
第 2章
上 巻 で 扱 っ た制 御 理 論 で は,シ
ス テ ム の 動 作 を解 析 す る た め,そ
の シス
テ ム の 入 出 力 特 性 を 表 す 伝 達 関 数 を 用 い た 。 下 巻 で 扱 う い わ ゆ る現 代 制 御 理 論 で は,シ
ス テ ム の 内 部 状 態 を表 す い くつ か の 状 態 変 数 を用 い た状 態 方
程 式 を用 い る。 シ ス テ ム の 特 性 を状 態 方 程 式 に よ っ て 論 ず る た め に は行 列 の 知 識 が ど う し て も必 要 と な る。 第 2章 で は,こ
の た め の ベ ク トル と行 列
の 基 礎 に つ い て ま と め て お く。
2・1ベ
ク トル
x1,x2,…,xnを
成 分
とす る ベ ク トル を x で 表 す 。
x1x2…xn
x=
〔
こ の よ う なx(1×n)を
(2・1)
〕
行 ベ ク
ま た,y1,y2,…,ynを
トル(row
vector)と
い う。
成 分 と す る ベ ク トル を y で 表 す 。 y1〕 y2…
(2・2)
y=〔
yn こ の (column
よ う なy(n×1)を vector)と
列 ベ
ク
ト ル
い う。
こ の よ う な ベ ク トル の 集 合 を 一 つ の 空 間 と考 え,こ space)と
れ を ベ ク トル 空 間(vector
呼 ぶ 。 図2・1は,x1,x2,x3が
実 数 で あ る と き の 三 次 元 ベ ク トル 空 間 の
図2・1三
次 元 ベ ク トル 空 間
例 で,こ
の 空 間 内 で 一 つ の ベ ク トル x が 表 現 さ れ て い る 。
零ベ ク トル
〔1〕
す べ て の 成 分 が 零 で あ る ベ ク トル を 零 ベ ク トル(null vector)と
い う。
(2・3)
単位 ベ ク トル
〔2〕
一 つ の 成 分 だ け が 1で (unit vector)と
,他
の 成 分 は す べ て 零 か ら な る ベ ク トル を 単 位 ベ ク トル
い う 。 例 え ば,
(2・4)
ベ ク トル の 演算
〔3〕 い ま,n
次 元 ベ ク トル を
x=
x1x2…xn
〔
〕 ,
y=
〔y1y2…yn
〕
とす る
と,こ の 二 つ の 行 ベ ク トル x,y に 関 す る演 算 を 次 の よ う に 定 め る 。な お,こ
の関
係 は 列 ベ ク トル の 場 合 に も成 立 す る 。 (1)
加算 x+y=
〔x1+y1x2+y2…xn+yn
〕
(2・5)
(2) 減 算 x-y=
x1-y1x2-y2…xn-yn
〔
(2・6)
〕
(3) ス カ ラ 倍 c を ス カ ラ(scalar)と
す る と,c
と ベ ク トル x の 積 は,次
の よ う に な る。 cx=
cx1cx2…cxn
〔
〕
(4) 微 分 ベ ク トルx(t)の
(2・7)
時 間 微 分 は,次
の よ う に な る。 (2・8)
(5)
内 積(ス
カ ラ 積)
一 般 に,x1,x2,…,xnお
よ びy1,y2,…,ynが
複 素 数 で あ る と き,ベ ク トル x の 共 役 ベ ク トル を ベ ク トル y の 共 役 ベ ク トル y=
x1X2…xn
product)と
〕 ,
y=
〕
}
=x1y1+x2y2+…+xnyn
〔
〔
と 表 せ ば,
〔y1y2…yn
(x,y)=x1y1+x2y2+…+xnyn
をx=
〕 で 表 し,
x1x2…xn
x=
〕の 内 積
(2・9)
〔y1y2…yn
ま た は ス カ ラ 積(scalar
い う。
(6) 直 交 性 二 つ の ベ ク トル x,y の 内 積 が 零 の と き,こ れ ら は 互 に 直 交 す る(orthogonal)と
い う。
(7) ノル ム ベ ク トル x 自体 の 内 積 は, (x,x)=x1x1+x2x2+…+xnxn (2・10)
=│x1│2+│x2│2+…+│xn│2〓0
と な る 。(x,x)の
平 方 根 を ‖x‖で 表 し,こ
れ を x の ノ ル ム(norm)と
い う。 (2・11)
(8) 一 次 従 属 と一 次 独 立 n 個 の ベ ク トルx1,x2,…,xnが と ご と く は 零 で な い 数c1,c2,…,cnが
与 え ら れ,こ
あ って
c1x1+c2x2+…+cnxn=0
が 成 立 す る 場 合,こ
(2・12)
の n個 の ベ ク トル は 一 次 従属(linearly
そ れ 以 外 の 場 合 を 一 次 独 立(linearly
independent)と
dependent)と
い う。
い い,
2・2 行 列 論
n×m個 いう
の 文 字 ま た は 数 を 式(2・13)の
よ う に 配 列 し た も の を 行 列(matrix)と
。
列
行
(2・13)
そ の 行 列 を 構 成 し て い る 文 字 ま た は 数 を要 素 と い い,横 縦 の な ら び を 列(column)と
い う 。 ま た,左
素 を 対 角 要 素(diagonal)と
よ う に,横
正 方 行 列(square
上 か ら右 下 に か け て の 対 角 線 上 の 要
い う 。 A は n 行 m 列 か ら な る 行 列 で あ り,n×m次
元 行 列 と い い,A(n×m)の 式(2・14)の
の な ら び を 行(row),
よ うに表 す 。 お よ び 縦 の 数 の 等 し い,す
matrix)と
な わ ちn=mの
行 列 の こ とを
い う。
(2・14)
m=1の たn=1の
場 合 の 行 列 は,次 場 合 はa(1×m)な
の よ う に 表 さ れ,a(n×1)な
る 列 ベ ク トル と な り,ま
る 行 ベ ク トル に な る 。
(2・15)
こ の こ と か ら,ベ
ク トル を 表 す の に 行 列 が 用 い ら れ る こ と が わ か る 。
〔1 〕
行列の形
(1)零
行 列 行 列 の す べ て の 要 素 が 零 で あ る行 列 を 零 行 列(zero
null matrix)と
(2)単
matrix,
い う。
位 行 列 対 角 要 素 が 1で あ り,そ の他 の す べ て の 要 素 が 零 で あ る行
列 を単 位 行 列(unit
matrix)と
い う。 す な わ ち,
これ を簡 略 して
(2・16)
の よ う に 表 す 。 こ こ で,AI=Aで (3)対
あ る。
角 行 列 対 角 要 素 の み か ら な り,そ
列 を 対 角 行 列(diagonal
matrix)と
の 他 の 要 素 が す べ て 零 で あ る行
い う。
(2・17)
(4)転
置 行 列 あ る 行 列 の 行 と 列 を 入 れ 換 え た 行 列 を,そ
(transposed (a)
matrix)と
い い, ATで
表 す 。 例 え ば,
の転 置 行 列
(b)
こ の と き,一
般 に 次 式 が 成 立 す る。 (2・18) (2・19) (2・20) (2・21)
な お,│A│は
A の 行 列 式 を表 す 。 また,行 列 の 演 算 法 に つ い て は,次 の 「〔3〕
行 列 の 演 算 」 で 説 明 す る。 (5)対
称行 列
正 方 行 列 の 要 素aijとajiが
等 し け れ ば,そ
の 行 列 は,対
角
要 素 に 対 し て 対 称 に な っ て い る 。 こ の よ う な 正 方 行 列 を 対 称 行 列(symmetric matrix)と
い う。
対 称 行 列 は,
(2・22)
の よ うに 表 され,次
式 が 成 立 す る。
AT=A
(6)歪
(2・23)
対 称行列
0で あ る と き,す
正 方 行 列 に お い て,そ
の 要 素 がaij=-ajiで,か
つaii=
な わ ち,
(2・24)
の よ う に 表 さ れ る 行 列 を 歪 対 称 行 列(skew-symmetric
matrix)と
い う。 こ の場
合, AT=-A
(2・25)
が成 立 す る。 (7)
余因子行列
正 方 行 列 の 余 因 子 行 列(adjoint matrix)は,行
素 を,そ れ に 対 応 し た 余 因 子 に 置 換 え,こ 例 え ば,A(2×2),す
列 の各要
れ を転 置 と した もの と して 定 め られ る 。
な わ ち,
(2・26)
の 場 合 は,次
の よ う に求 め られ る。
(2・27)
ま た,A(3×3)の
場 合 に は,次
の よ う に な る。
(2・28)
よ り,要
素a11,
a21, a31,…
の 余 因 子 は,そ
れ ぞ れ
の よ う に,Aijは (-1)i+jを
行 列 式│A│のaijを
含 む 行 お よ び 列 を 取 り除 い て で き る 行 列 式 に
乗 じ た も の で 与 え られ る。 こ こ で,│A│は
した が っ て,A
行 列 A の行 列 式 を表 す 。
の余 因 子 行 列 は
(2・29)
とな る。
〔2〕 行 列 式 行 列 式(determinant)は 式 は,次
正 方 行 列 A に つ い て の み 定 義 さ れ,│A│と
表 す。行列
の よ うに行 あ る い は列 につ い て展 開 し計 算 され る。
行展開 の場合 (2・30)
列展 開の場合 (2・31)
こ こ で,│Mij│は
A の 第 i行,第
j列 を 除 い て 作 る{(n-1)×(n-1)}次
元 の小 行
列 式 で あ る 。 例 え ば,
の場合
(a)
(b)
の 場 合 式(2・30)よ
り,
〔3〕 行 列 の演 算 (1)加
算 ・減 算 行 お よ び列 の 数 が それ ぞ れ 等 しい 二 つ の 行 列 A お よ び
B の和(あ
るい は差)は
対 応 す る要 素 の和(あ
るい は差)に
よ り求 め られ る。 例
え ば,
(2・32)
とす れ ば,行 列 A お よ び行 列 B の 和 は,次 の よ う に な る。
(2・33)
す な わ ち,A(n×m)+B(n×m)=C(n×m)で
(2)ス
あ る。
カ ラ倍 行 列 A の ス カ ラ c倍 は,行 列 の各 要 素 の c倍 した もの に
等 し い。 例 え ば,
(2・34)
とす れ ば,
(2・35)
と な る。
(3)乗
算 行 列 A お よび B の 乗 算 に お い て は,行 列 A の 列 の 数 と行 列 B
の行 の 数 が 等 し くな け れ ば な ら な い。 例 え ば, 2列
3列
3行,
と す れ ば,
3行
(2・36)
(2・37)
と な る 。 一 般 に,乗
算 で は,次
の 関 係 が あ る。
①
(2・38)
②
(2・39)
③ (4)
(2・40)
微分
の と き に は,行
行 列A(n×m)の
要 素aij(t)が 微 分 可 能 な ス カ ラ変 数 tの 関 数
列 A の 変 数 tに つ い て の 微 分 は,次
の よ うに な る。
(2・41)
の と き,
(2・42)
と な る 。 な お,こ
の 場 合,次
式 が 成 立 す る。
①
(2・43)
②
(2・44)
(5)
積分
の と き は,行
行 列A(n×m)の
要 素aij(t)が 積 分 可 能 な ス カ ラ 変 数 tの 関 数
列 A の 変 数 tに つ い て の 積 分 は,次
の よ う に な る。
(2・45)
(6)
逆行 列
(inverse
matrix)と
正 方 行 列 に お い て,次 い う 。 こ こ で,I
式 を 満 足 す る行 列A-1を
A の逆行 列
は 単 位 行 列 を表 す。 (2・46)
で あ り,ま
た 余 因 子 行 列 の 性 質 と し て,AadjA=I│A│の
関 係 が あ る か ら, (2・47)
と な る 。 式(2・46)お
よ び 式(2・47)よ
り,逆
行 列A-1は
次 の よ う に求 め られ る。 (2・48)
た だ し,こ な お,A
の 場 合,│A│〓0で の 行 列 式│A│〓0な
な け れ ば 逆 行 列A-1は
定 ま らな い 。
る 行 列 を 正 則 行 列(nonsingular
matrix)と
い う。
逆 行 列 に関 して は,次 式 が成 立 す る 。
①
(2・49)
②
(2・50)
③
(2・51)
④
(2・52)
〔 例 題 〕2・1
行列
の 逆 行 列A-1を
〔 解答 〕
よ り,行 列 式 お よ び余 因 子 行 列 は,次 の よ う に計 算 され る。
求 め よ。
行列 式
余 因子 行列
こ こ に,
し た が っ て,逆
行 列 は次 の よ う に求 ま る。
〔4〕 行 列 の ラ ン ク
行列
(2・53)
の 要 素 か ら,あ
る γ個 の 行 と γ個 の列 に よ っ て 作 っ た γ次 元 の 小 行 列 式 の 中 に
一 つ で も零 で な い もの が あ る と き A=γ
と 表 す 。 こ の と き,γ+1次
な お,行
,A
の ラ ン ク(階
数)は
γ で あ る と い い,rank
元 の 小 行 列 式 はす べ て零 で な け れ ば な らな い 。
列 の ラ ン ク に つ い て は,次
の こ とが 成 立 す る 。
①A(n×m)の
と き,rank
た だ し,min(n,m)は,行 ②rank
A=rank
〔例 題 〕2・2次
A≦min(n,m) 列 A の 行 また は 列 の 数 の うち 小 さ い 数 で あ る。
AT
の 行 列 A の ラ ン ク を求 め よ。
(a)
(b)
〔解 答 〕 (a) この 場 合,3 次 元 の行 列 式 は定 義 で きな い(零 と考 え る)。 二 次 元 の小 行 列 式 は三 つ あ る。 す な わ ち,
し た が っ て,rank (b)
こ の 場 合,三
Aは
2で あ る 。
次 元 の 行 列 式│A│=2と
な る の で, rank
A=3で
あ る。
〔5〕 固有 値 と固 有 ベ ク トル A(n×n)を
次 の よ うな 正 方 行 列,I
を単 位 行 列 と し,
(2・54)
パ ラ メ ー タ s を 用 い て 作 っ た 行 列 よ り(sI-A)を
は,第
3章 で の 理 論 展 開 に 必 要 に な る。
考 え て み よ う。 この 形 の 行 列
(2・55)
(1)特
性 方 程 式 式(2・55)の 行 列 式│sI+A│は,s
次 の 多 項 式 に な り,こ
の 式 を 0 と お い た も の,す
に 関 し て,次 の よ う なn
なわ ち (2・56)
こ れ を 特 性 方 程 式(characteristic で あ り,s
に つ い て 解 け ばn個
(characteristic
root)と
equation)と
い う 。 こ れ は, n次
の 根s=λ1,λ2,…,λ.が
の 根 の こ と を 行 列 A の 固 有 値(eigen
(2)固
有 ベ ク トル (λiI-A)υt=0,
Aυi=λ
value)と
も い う。
υi
こ こ に,υi〓0,
vector)と
え ら れ る。 これ を特 性 根
い う。
ま た,こ
を 満 足 す る(n×1)次
元 ベ ク トルυiの
(2・57)
i=1,2,…,n
こ と をλiに つ い て の 固 有 ベ ク トル(eigen
い う。
0
︺
︹
〔 例 題 〕2・3 1
A= -2
2
の と きの 固 肩 値 お よび 固 有 ベ ク トル を求 め よ。
〔 解答 〕 A の 特 性 方程 式 は,次 の よ う にな る。
す な わ ち,
の代 数 方 程 式
s2-2s+2=(s-1-j)(s-1+j)=0 よ り,固
有 値 は λ1=1+j,λ2=1-j
で あ る 。 し た が っ て,二
つ の 固 有 ベ ク トル が
存 在 す る。
い ま,固
有 ベ ク トル を
と 表 す と,式(2・57)よ
り,
① (λ1I-A)υ1=0
よ り,(1+j)υ11-υ21=0,2υ11+(-1+j)υ21=0と υ21=(1+j)υ11と
な る 。 こ こ で, υ11=1と
な る 。こ の 2 式 は 等 価 で あ る か ら, 選 べ ば,υ21=1+jと
な り,
② 同 様 に し て,(λ2I-A)υ2=0
よ り,(1-j)υ12-υ22=0,2υ12-(1+j)υ22=0と こ れ よ り,υ22=(1-j)υ12と
な り,こ
な る。 こ で υ12=1と
選 べ ば υ22=1-jと
な り,
〔6〕 行 列 の対 角 化 お よび ジ ョル ダ ン形式 (1) 対角化
(2・58)
正 方 行 列 A の 固 有 値 が す べ て 異 な り,λ1,λ2,…,λn(n個)と
し,こ れ に 対 応 す
る 固 有 ベ ク トル を υ1, υ2,…, υnと す る 。 こ れ ら は 一 次 独 立 で あ る。 い ま,行
列T(n×n)を
(2・59)
と お く。 T は 正 則 行 列,す 式(2・58)お
な わ ち,|T| 〓0で
あ る。
よ び(2・59)の 積 は 次 の よ う に 表 さ れ る 。
(2・60)
こ こ で,式(2・57)Aυi=λiυiの
関 係 を 用 い れ ば,す
な わ ち
よ り,
(2・62)
と な る 。 す な わ ち, (2・63)
こ の 式 次 両 辺 に,左
か らT-1を
乗 ず る と,次
の 関係 が え られ る 。
(2・64)
以 上 の よ うな 演 算 に よ り,行 列 A は そ の固 有 値 を対 角 要 素 とす る対 角 行 列 に変 換 され る こ とが わ か る。 この 行 列 T を対 角 変 換 行 列 とい う。 な お,固 有 ベ ク トル は,ス カ ラ係 数 倍 し て も変 わ らな い の で,変 換 行 列 が で き るだ け簡 単 な形 に な る よ うに選 べ ば よ い 。 この よ う な操 作 は,第
3章 以 下 の状 態 方 程 式 の 変 換 に よ く用
い られ る 。
〔 例 題 〕2・4 〔 解答 〕
〔 例 題 〕2・3の 行 列 A を 対 角 化 せ よ 。
〔 例 題 〕2・3の 解 よ り,変
換 行 列 T は,次
の よ うに な る 。
こ こ に,
し た が っ て,
な お,行
列 A が 対 称 行 列(A=AT)の
固 有 値 を λ1,λ2,…,λnと …
, υnと す れ ば,こ
表 し,こ
場 合 に は,重
複 して い る固 有 値 を含 め て
れ に 対 応 す る 固 有 ベ ク トル を そ れ ぞ れ υ1, υ2,
れ ら は 一 次 独 立 で,直
交 す る よ う に,す
な わ ち, (2・65)
こ こ に,i〓j の よ うに 選 べ る。
上 式 を 満 足 す る 固 有 ベ ク トル を求 め,変 換 行 列 を T〔
υ1/r1υ2/γ2…
υn/γn〕
(2・66)
こ こ に,
の よ う に 作 れ ば,次 T-1=TTが
の よ う に 行 列 A を 対 角 化 す る こ と が で き る 。 式(2・66)よ
り,
成 立 し,
(2・67)
と な る 。 こ の 場 合 は,TTを
用 い て 対 角 化 で き る の で,計
算 は簡 単 で あ る 。
〔 例 題 〕2・5
を対 角 化 せ よ。
〔 解 答〕 この行 列 は,対 称 行 列A=ATで
あ る。 特 性 方 程 式 は
と な る。 し た が っ て,
s3-3s+2=(s+2)(s-1)2=0 よ り,固
有 値 は,λ1=-2,λ2=λ3=1で
あ る。
次 に,こ れ らの 固 有 値 に対 す る 固有 ベ ク トル を求 め る。 (ⅰ)
λ1=-2に
つ い て,
よ り,次
式 が成 立 す る。 -2ν
11-ν21+ν31=0…
①
-ν11-2ν21-ν31=0…
②
ν11-ν21-2ν31=0…
ν11=1に =1と
選 べ ば,式
①,②
③
よ り,ν21=-1と
な る 。 式 ③ よ り,ν31(ν11-ν21)/2
な る。
し た が っ て,
(ii)
よ り,次
λ2=1に
つ い て,
式 が 成 立 す る。 ν12-ν22+ν32=0… -ν12+ν22-ν32=0…
ν12-ν22+ν32=0…
ν12=1と
選 べ ば,式
ば,ν22=2と
な る。
(iii)λ3=1に 0も
成 立 す る 。
①
′
②
′
③
′
① ′あ る い は ② ′よ り ν22=ν32+1,し
つ い て は, ν2Tν3=0を
満 足 す る
た が っ て, ν32=1と
す れ
ν3を 求 め る 。 こ の 場 合, ν1Tν3=
す な わ ち, ν13+2ν23+ν33=0
と な る の で,変
こ こ で,
換 行 列 は,式(2・66)よ
こ れ よ り,A
は,次
り次 の よ う に求 め られ る。
の よ うに対 角 化 さ れ る。
A=TTAT
(2)ジ
ョル ダ ン形 式
行 列 で な い(AT〓A)場 は,T-1ATは
行 列 A の 固 有 値 に 重複 した もの が あ り,か つ,対 称
合 に は,対 角 変 換 で き る と は 限 ら な い 。 こ の よ う な 場 合 に
ジ ョル ダ ン 形 式(Jordan's
canonical
form)で
表 され る。
対 角 要 素 が 固 有 値 λiで 構 成 さ れ る 次 の よ う な 正 方 行 列 を ジ ョル ダ ン ブ ロ ッ ク (Jordan block)
と い い,
(2・68)
この よ うな ジ ョル ダ ン ブ ロ ッ クが,対 角 上 に配 列 さ れ た 行 列 をジ ョル ダ ン 形 式 とい う。
(2・69)
例 え ば, (a)
固 有 値:λ1,λ2(2重)の
場合
(b)
固 有 値:λ1,λ2(2重),λ3(3重)の
場 合
次 に,こ の よ う な ジ ョル ダ ン形 式 に変 換 す る た め の,固 有 ベ ク トル お よび 変 換 行 列 T の 計 算 方 法 に つ い て 述 べ る。 い ま,行
列A(n×m)の
相 異 な る 固 有 値 を λ1,λ2,…,λ
〓と し,そ
れぞれの重複
度 をm1,m2,…,m〓 ∼ λ〓の う ち の
,あ
と す る 。 こ こ で, m1+m2+…+m〓=nで
あ る 。 固 有 値 λ1
る 固 有 値 λの 重 複 度 を m と す れ ば,次 の よ う に 順 次 計 算 に よ り
固 有 ベ ク トル が 求 め ら れ る 。
(2・70)
これ よ り,変 換 行 列 の 要 素 は, T(λ)=〔
ν1ν2…
νm〕(n×m)
(2・71)
とな る。
こ の よ う な 手 順 を 固 有 値 λ1∼λ〓に つ い て,繰 と,変
換 行 列 T が,次
返 し行 いT(λ1)∼T(λ
〓)を求 め る
の よ う に定 ま る。
T=〔T(λ1)T(λ2)…T(λ こ れ を 用 い て,式(2・69)の
〓)〕(n×n)
(2・72)
よ う な ジ ョ ル ダ ン 形 式 に 対 角 変 換 で き る 。す な わ ち,
次 の よ うな 形 に な る。 A=T-1AT
〔 例 題 〕2・6
を ジ ョル ダ ン形 式 に 変 換 せ よ。
〔 解答 〕 この 系 の 特 性 方 程 式 は,
と な る 。 し た が っ て,
s3-4s2+5s-2=(s-2)(s-1)2=0 と な り,固
有 値 は,λ1=2の
単 根 と,λ2=λ3=1の
2重 根 と か ら な る 。
次 に,こ れ らの 固 有 値 に対 す る 固有 ベ ク トル を求 め る。 (ⅰ) 固 有 値 λ1=2に
よ り,次
つ い て,
式 が 成 立 す る。 2υ11-υ21-4υ31=0…
①
-2υ11+υ21+4υ31=0…
②
υ11-υ31=0…
υ11=1に
選 べ ば,式
… … … ③
③ よ り υ31=υ11=1,式
し た が っ て,
(ⅱ) 固 有 値 λ2=1に
よ り,次
つ い て,
式 が 成 立 す る。 υ12-υ22-4υ32=0… -2υ12+4υ32=0…
υ12-2υ32=0…
①
′
… ② ′
… … ③ ′
② よ り υ21=2υ11-4υ31=-2と
な る。
式 ③ ′よ り υ32=υ12/2と
な り,υ12=2(任
① ′よ り υ22=υ12-4υ32=-2と
意 で よ い)に
選 べ ば,υ32=1と
な る。 式
な る 。 し た が っ て,
(ⅲ) 固 有 値 λ3=1に つ い て,こ の 場 合,固 有 値 の重 複 度 は 2で あ るか ら,固 有 値 λ3に対 す る固 有 ベ ク トル は,次 式 で 求 め られ る。 (λ2I-A)υ3=-υ2
よ り,次
式 が 成 立 す る。 υ13-υ23-4υ33=-2… -2υ13+4υ33=2.........②
″ ″
υ13-2υ33=-1.........③
式 ③ ″ よ り υ33=(υ13+1)/2と υ23=υ13-433+2=-1と
①
″
な り,υ13=1に
選 べ ば,υ33=1と
な る 。 し た が っ て,
以 上 よ り,変 換 行 列 T は,次 の よ うに 求 め られ る 。
し た が っ て,
な る。式 ① ″よ り
こ れ よ り,
〔7 〕
特性方程式 と行列の関係
(1)
コ ンパ ニ オ ン行 列
特性方程式 (2・73)
|sI-A|=sn+an-1sn-1an-2sn-2+…+a1s+a0=0
の 係 数 の 符 号 を 反 転 し た も の が,第
n 行 の 要 素 に な っ て い る,次
コ ン パ ニ オ ン 行 列(companionmatrix)と
い う 。 こ れ は,同
の よ う な行 列 を
伴 行 列 と も呼 ば れ る 。
(2・74)
これ は,第
4章 で扱 う シ ス テ ム の可 制 御 正 準 シ ス テ ム を検 討 す る と き,有 用 で
あ る。 (2)
ヴ ァ ンデ ル モ ンデ 行 列
特性 方程式
|sI-A|=(s-λ1)(s-λ2)…(s-λn)=0
で,固
有 値 λ1,λ2,…,λnが
す べ て 異 な る と き,こ
の 固 有 値 で 構 成 さ れ る,次
よ う な 行 列 を ヴ ァ ン デ ル モ ン デ 行 列(Vandermonde'smatrix)と
い う。
(2・75)
の
〔8 〕
行列関数
ス カ ラ関 数f(x)の
べ き級 数 展 開
f(x)=k0+k1x+k2x2+…
に お い て,変
(2・76)
数 x を正 方 行 列 A で 置 換 え た もの を行 列 関 数 とい う。
f(A)=k0I+k1A+k2A2+…
(2・77)
こ こ に,
A0=I
具 体 的 に は,
①
(2・78)
②
(2・79)
③
(2・80)
等 で あ る。 行列指数 関
数eAtは,次
の よ う に 定 義 さ れ る 。 こ れ は,次
て い る 。 こ の よ う な 関 数 は,第
3章 以 下 で,シ
の よ うな 性 質 を も っ
ス テ ム の 動 特 性 を扱 うの に必 要 と
な る。
① (eAt)-1=e-At
(2・81)
②
(2・82)
eAt1eAt2=eA(t1+t2)
③ (2・83)
④
(2・84)
こ こに,C
⑤
AB=BAの
は積 分 定 数 行 列 と き,eAeB=e(A+B)
(2・85)
〔 例 題 〕2・7
の と き,eAtを
求 め よ。
〔 解答 〕
こ こ で,
に 注 目す る と各 要 素 は,次
し た が っ て,eAtは
〔9 〕
の よ うに ま とめ る こ とが で きる 。
次 の よ う に な る。
ケ ー リー ・ハ ミ ル トンの 定 理
正方行列Aの
特性 方程式 を (2・86)
とす る と,Aは
特 性 方 程 式 を満 足 し,次 式 が成 立 す る。
(2・87) これ をケ ー リー 式(2・87)よ
・ハ ミ ル
ト ン の 定 理(Cayley-Hamilton'stheorem)と
い う。
り, (2・88)
と表 さ れ,AnはAn-1∼A0=Iの
線 形 結 合 とな る。
例 え ば,
と す れ ば,
し た が っ て,A2+3A+I=0
〔10〕
二次形式
変 数x1,x2,…,xnに
つ い て,
(2・89) を 二 次 形 式(quadraticform)と
例 え ば,i=k=3と
す れ ば,
い う。
+a21x2x1+a22x2x2+a23x2x3 +a31x3x1+a32x3x2+a33x3x3
(2・90)
と な る 。 こ の こ とか ら,A
を対 称 行 列 と す れ ば , 一 般 に
ψ=xTAx
(2・91)
の形 に 表 す こ とが で き る。 この よ うな 二 次 形 式 は, 次 の よ う に定 義 され る。 ①x〓0の
す べ て の x に 対 し て,xTAx>0の
と き 正 定(positive definite)と
い う。 ②x〓0の definite)と ③x〓0の
す べ て の x に 対 し て,xTAx〓0の
と き 準 正 定(semi-positive
い う。 す べ て の x に 対 し て,xTAx<0の
と き 負 定(negative
definite)
とい う。 ④x〓0の definite)と
す べ て の x に 対
し て,xTAx〓0の
と き 準 負 定(semi-negative
い う。
以 上 の よ う な二 次 形 式 は第 5章 の 最 適 レ ギ ュ レー タ の理 論 展 開 の とこ ろ で必 要 とな る。
演 〔問 題 〕1.
問 題
(ⅱ)
次 の行 列 の逆行 列 を求 め よ。
(ⅰ)
(ⅱ)
次 の 行 列 の ラ ン ク を 求 め よ。
〔問 題 〕3.
(ⅰ)
〔問 題 〕4.
〔問 題 〕5.
〔2 〕
次 の行列 式 を計算 せ よ。
(ⅰ)
〔問 題 〕2.
習
式(2・67)を
(ⅱ)
導 け。
の と き,eAtを
求 め よ。
第 3章
シス テ ム の状 態 方 程 式 に よ る表 現
上 巻 で 解 説 した フ ィ ー ドバ ッ ク 制 御 理 論 で は,専
ら伝 達 関 数 を用 い て シ
ス テ ム の 特 性 な ら び に設 計 問 題 を 扱 っ た 。 伝 達 関 数 は,シ
ス テムの 入出 力
特 性 の み に注 目 し た も の で あ り,通 常 の フ ィ ー ドバ ッ ク制 御 で は,簡
便で
有 用 な 方 法 で は あ る が,高 度 の 制 御 を 目 ざ す た め に は難 点 が あ る 。そ こ で, 考 え 出 さ れ た の が,ベ
ク トル 的 な 考 え を基 礎 と し た 状 態 方 程 式 に よ り シ ス
テ ム を 表 す 方 法 で あ る。 これ に よ れ ば,初
期 値 問 題 は,も
ち ろん システ ム
の 入 出 力 特 性 の み で な く,そ の 内 部 状 態 を詳 し く扱 う こ とが で き,例 え ば, 制 御 が 可 能 か ど うか,不
安 定 系 を安 定 に す る に は ど う す れ ば よ い か 等 を 極
め て 整 然 と論 ず る こ とが で き る 。
3
・
1
〔1〕
状態方程式
状態方程式
図3・1(a),(b)に
示 し た,ば
学 シ ス テ ム と コ イ ル,抵
抗,コ
ね,ダ
ン パ ー,お
も りで構 成 さ れ る 1自 由度 の 力
ン デ ン サ か らな る電 気 回路 の 数 式 モ デ ル に つ い て
考 え よ う。
図(a)の 力 学 シ ス テ ム で は,力f(t)を この 現 象 は力(原
因)と 変 位(結
果)の
加 え る と,お も りが ξ(t)だ け変 位 す る。 因 果 関 係 に 注 目 して (3・1)
の よ う に 表 し,ま
た 図(b)の
回 路 に 電 流i(t)が
流 れ,コ
合 の 現 象 は,
電 気 シ ス テ ム で は,電 ン デ ン サ に は 電 荷q(t)(結
圧e(t)(原 果)が
因)を
加 え れ ば,
蓄 え られ る。 この 場
(a)力
(b)電
学 シス テ ム 図3・1シ
気 シ ステ ム
ス テム の例
(3・2)
の よ う に表 され る。
u(t)を 入 力(原 因),y(t)を
出 力(結 果)と す る と,こ の二 つ の微 分 方 程 式 は,
共 に 同 じ形 の 微 分 方 程 式 (3・3)
に書 き 換 え る こ と が で き る 。こ の 2 階 の 微 分 方 程 式 が 図3・1(a),(b)の
システム
の 数 式 モ デ ル で あ る。 こ こ で,あ
る 時 刻 に お け る シ ス テ ム の 出 力 が,そ
の 時 刻 の 入 力 と,そ
れ以 前 の
入 力 と に 依 存 す る 場 合 に つ い て 考 え よ う。 こ の よ う な シ ス テ ム は 過 去 の 入 力 を 記 憶 す る 機 能 を も つ 。図3・1(a)に お い て,力f(t)を て,そ
示 し た 力 学 シ ス テ ム を 例 に と ろ う 。あ る 時 刻t0に
お も り に 加 え た 場 合,お
の 後 の 時 刻t1に
も り の 速 度 ξ(t0)と 変 位 ξ(t0)に よ っ
お け る 速 度 ξ(t1)と 変 位 ξ(t1)と が 定 ま る 。 こ こ で,お
の 速 度 ξ(t0)と 変 位 ξ(t0)は,時
刻t0以
前 に,こ
も り
の シ ス テ ム に加 え られ た 力 が な し
た仕 事 の 結 果 で あ り,言 い換 え る と,お も りの運 動 エ ネ ル ギ つ位 置 エ ネル ギ
と して 蓄 積(記 憶)さ
の 力 学 シ ス テ ム で は,お
も りの 速 度 と 変 位 を シ ス テ ム 内 部 の 有 様 や,そ
と ばね の も
れ た 結 果 で あ る 。 し た が っ て,こ の履歴 を
示 す 代 表 量 と す る こ と が で き る 。 こ の よ う な 量 を 状 態 変 数(state variable)と
呼
ぶ こ と にす る 。
こ こで,式(3・3)に 戻 り,入 力-出 力 の 因 果 関 係 を表 す数 式 モ デル を,状 態 とい う概 念 を加 え た入 力 ・出 力-状 態 モ デル に 書 き換 え て み よ う。 こ こで,変
数の上 に
付 け た ・は時 間 に 関 す る 1階 の微 分,・・は 2階 の 微 分 を表 す 。 ま ず,y(t)=x1(t)と
し,x1(t)=x2(t)と
x2(t)+2ζ
お
く と,式(3・3)は,
ωnx2(t)+ωn2x1(t)=Kωn2u(t)
と表 され る。 した が っ て,2 階 の微 分 方 程 式 で 表 さ れ た シ ス テ ム は,次 に示 す よ う な連 立 1階 微 分 方 程 式
x1(t)=x2(t)
(3・4)
x2(t)=-ωn2x1(t)-2ζ
ωnx2(t)+Kωn2u(t)
(3・5)
お よび
y(t)=x1(t)
(3・6)
に 書 き 換 え る こ と が で き る 。 さ ら に,式(3・4)∼(3・6)を
行 列 で 表 せ ば,そ
れ ぞれ
次 の よ う に 表 さ れ る。
(3・7)
(3・8)
い ま,式(3・7)が
力 学 シ ス テ ム を 表 す も の と す れ ば,X1(t)お
れ 変 位 お よ び 速 度,す は,式(3・7)お
ぶ 。 こ こ に 示 し た よ う に,状 た,入
と こ ろ で,過
述 し た 状 態 変 数 で あ り,式(3・4)∼(3・6)あ
状 態 方 程 式,式(3・6)を
れ ぞ れ 入 力 変 数(input
あ り,ま
それ ぞ るい
よ び(3・8)は 状 態 を 表 す 式 で あ る 。 こ れ が 入 力 ・出 力-状 態 モ デ ル で
あ る 。式(3・4),(3・5)を を,そ
な わ ち,上
よ びx2(t)は
variable)お
出 力 方 程 式,ま た,u(t)お よ び 出 力 変 数(output
よ びy(t)
variable)と
呼
態 変 数 は シ ス テ ム 内 部 の動 的 な 状 態 を定 め る変 数 で
力 変 数 と出 力 変 数 を媒 介 す る 内部 変 数 で あ る。 去 の 入 力 を 記 憶 す る 機 能 を も つ シ ス テ ム の 構 成 要 素 に は,記
素 が あ る 。 時 間 連 続 シ ス テ ム の 場 合,記
憶 要 素 は 積 分 器 で あ り,積
憶 要
分器 の出力 が
シ ス テ ム の 入 力 に 関 す る 記 憶 状 態 を 定 め る。 例 え ば,式(3・4)∼(3・6)で
表 され る
シ ス テ ム に つ い て 考 え て み よ う。 図3・2は,こ を 示 す 線 図 で,こ
の シス テ ム の 各 状 態 変 数 間 の 関係
の シ ス テ ム は 二 つ の 積 分 器 を も つ こ とが わ か る 。 こ の よ う な 図
を状 態 変 数 線 図 と 呼 ぶ 。 な お,図3・3は,こ
の シ ス テ ム の ブ ロ ック線 図 で あ る。
図3・2 状態 変 数 線 図
図3・3ブ
図3・4に
示 す よ う に,滑
ね 定 数k1,k2の
ば ね と,抵
ロ ッ ク線 図
ら か な 水 平 面 上 に 置 か れ た 二 つ の 質 点m1,m2を,ば 抗 係 数 λ1,λ2の 吸 振 器(ダ
度 シ ス テ ム が あ る 。 そ れ ぞ れ の 質 点 に 力f1(t),f2(t)を
ンパ ー)で
連 結 し た2自
由
入 力 と して 作 用 させ た と き
の,
2質 点 の そ れ ぞ れ の 変 位 ξ1(t),ξ2(t)を
図3・4
出 力 とす る。
2自由 度の シ ステ ム
この シ ス テ ム の 数 式 モ デ ル は,次 の 連 立 2階微 分 方 程 式 で 表 され る 。
(3・9)
(3・10)
これ を入 力 ・出 力 − 状 態 モ デル に書 き換 え て み よ う。 入 力 をui(t)
(i=1,2)
u1(t)=f1(t) ま た,
と す る と,
u2(t)=f2(t)
(3・11)
二 つ の質 点 の 速 度 と変 位 を そ れ ぞ れ
(3・12)
と お く と,
(3・13)
で あ り,式(3・11),式(3・12)お
よ び 式(3・13)を
式(3・9),式(3・10)に
代 入 す る と
(3・14)
(3・15)
を得 る。 式(3・14)お
よ び 式(3・15)を
び 第 4式 を 用 い れ ば,次
次 の よ う に 書 き 換 え,さ
ら に,式(3・13)の
第 2お よ
の よ う な 1階 の 連 立 常 微 分 方 程 式
(3・16)
(3・17)
(3・18)
(3・19)
を 得 る 。 ま た,出
力 をyi(t)(i=1,2)
と す る と, (3・20) (3・21)
で あ る 。 こ れ が 入 力 ・出 力 −状 態 モ デ ル で あ る 。 こ こ で,二 を 表 すx1(t),x2(t),x3(t),x4(t)が
状 態 変 数,u1(t),u2(t)が
y2(t)が 出 力 変 数 で あ る 。 ま た,式(3・16)∼ 21)が 出 力 方 程 式 で あ る 。
式(3・19)が
つ の 質 点 の 速 度 と変 位 入 力 変 数,y1(t),
状 態 方 程 式,式(3・20),(3・
行 列 を 使 っ て,状
態 方 程 式 式(3・16)∼
式(3・17)を 表 現 す る と,
(3・22)
と な り,ま
た,出
力 方 程 式,す
な わ ち,式(3・20),(3・21)は,
(3・23)
と な る 。 こ こ で,
(3・24)
(3・25)
と お け ば,式(3・22)お
よ び 式(3・23)は, (3・26) (3・27)
の よ う に 表 す こ と が で き る 。 こ こ で,x(t),u(t)お ベ ク トル,入
よ びy(t)を
力 変 数 ベ ク トル お よ び 出 力 変 数 ベ ク トル と呼 ぶ 。
そ れ ぞ れ状 態 変 数
〔2〕 状 態 方程 式 の一 般 形 数 式 モ デ ル が n 階 常 微 分 方 程 式 で 記 述 され て い る シ ス テ ム の 状 態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 を考 え て み よ う。先 の 例 か ら明 らか な よ うに,n 階 常 微 分 方 程 式 は n 個 の 1階 常 微 分 方程 式 に 書 き換 え られ る。 い ま,図3・5に
示 す よ う に,こ
の シス
図3・5 n階の 常微 分 方 式 で 表 され る シス テム テ ム は p個 の入 力 変 yq(t)を
も つ と し,ま
数u1(t),u2(t),…,up(t),q た,n
個 の 出 力 変 数y1(t),y2(t),…,
個 の 状 態 変 数 をx1(t),x2(t),…,xn(t)と
ス テ ム の 状 態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 は,そ
す る と,シ
れ ぞれ
(3・28)
お よび
(3・29)
と 表 さ れ る 。 n 個 の 状 態 変 数 を も つ シ ス テ ム を n 次 元 の シ ス テ ム と い う。 上 述 し た,図3・4の
ば ね-質 量 シ ス テ ム で は,状
態 変 数 の 数 は 4 で あ り,こ
4次 元 の シ ス テ ム で あ る 。 さ て,式(3・28)お
よ び 式(3・29)を
行 列 を使 っ て,一
般 に
の シス テ ム は
(3・30) (3・31)
の よ う に表 す 。 こ こ で,行 列 A,B,C
お よび D は,そ の成 分 が 時 間 的 に 不 変 な
定 数 行 列 で,そ れ ぞ れ
(3・32)
で あ る 。 ま た,入 ク トルx(t)は,そ
力 変 数 ベ ク トルu(t),出
力 変 数 ベ ク トルy(t)お
よ び状 態 変 数 ベ
れ ぞれ
(3・33)
(q×1)行
列
(3・34)
(n×1)行
列
(3・35)
で あ る。
式(3・30)お よ び 式(3・31)が 行 列 で 表 した n次 元 シ ス テ ム の 状 態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 で あ る。 これ を状 態 変 数 線 図 で表 せ ば,図3・6の
よ う に な る 。 しか し
な が ら,実 際 の 制 御 系 で は,出 力 方 程 式,式(3・31)の 伝 達 行 列 D は零 に な る こ と が多い。
図3・6 状 態変 数 線 図
と こ ろ で,式(3・30)お
よ び 式(3・31)の
中 の A,B,C
り 方 に 依 存 す る 。 例 え ば,式(3・4),式(3・5)で お よ び 式(3・6)の
与 え られ る シ ス テ ム の 状 態 方 程 式
出 力 方 程 式 は,K=1,x1(0)=0,x2(0)=0と
〔1〕で 述 べ た よ う に,次
お よ び D は状 態 変 数 の と
す れ ば,す
で に本 章
の よ うに な る。
(3・36)
(3・37)
と な る 。 い ま,図3・7(a)中
の
χ1(t)と
χ2(t)を
同 図(b)の
よ う に (3・38)
と お き 換 え,す
な わ ち,
(3・39)
な る変 換 を す る と,
(3・41)
と表 す こ と が で き る 。 す な わ ち,状
態 変 数 の と り方 で,一
図3・7 状 態 変数 の と り方
般 に A,B,C
は異 な
っ て くる。 しか し,こ れ ら は シ ス テ ムの 基 本 的 特 性 を表 す もの で あ る か ら,い ず れ の表 現 も等 価 で あ る 。
3・2 状態 方程 式 の解(シ ステ ムの応答)
シ ス テ ム の 初 期 状 態 がt=toでx(to)で テ ム の 応 答,す
あ り,u(t)が
与 え ら れ た 場 合,線 形 シ ス
なわ ち
x(t)=Ax(t)+Bu(t)
(3・42)
y(t)=Cx(t)+Du(t)
(3・43)
の 解x(t),y(t)を
求 め よ う。y(t)はx(t)が
定 ま れ ば 求 ま る の で,ま
ず,x(t)を
求 め る。
〔1〕 定 数 変 化 法 式(3・42)の
状 態 方 程 式 で,u(t)=0と
した 同 次 方 程 式
x(t)=Ax(t) の 解 は,初
(3・44)
期 条 件 〔t=toでx(to)〕
が 与 え ら れ る と 唯 一 に 定 ま り,
x(t)=eA(t-to)x(to) で あ る 。 こ こ で,eAtは
行 列 関 数 の 一 つ で(第
(3・45)
2章2・2節
〔8〕参 照) (3・46)
で あ る。 次 に,こ
の解
x(t)=eA(t-to)x(to) が 式(3・44),す
(3・47)
な わ ち,
x(t)=Ax(t) を 満 た す か ど う か を 確 か め よ う 。 式(3・47)を
(3・48)
tで 微 分 す る と
x(t)=AeA(t-to)x(to)=Ax(t) と な り,式(3・44)を
満 た す 。 ま た,t=toで,式(3・47)は
(3・49)
x(t0)=eA(t0-t0)x(t0)=Ix(t0)=x(t0) と な り,初
期 条 件 を も満 た す 。 よ っ て,式(3・47)は
こ の 解 の 式 を 見 る と,eA(t-t0)は わ か る 。 す な わ ち,時 x(t)に
刻t0に
(3・50)
式(3・44)の
解 で あ る。
シ ス テ ム の 状 態 を 変 え る働 き を し て い る こ とが
お け る状 態x(t0)に
移 す 。 こ の こ と か ら,eA(t-t0)を
作 用 し て,時
刻tに
お け る状 態
状 態 推 移 行 列(state transition matrix)
と 呼 ん で い る。
次 いで,状 態 方 程 式
x(t)=Ax(t)+Bu(t)
(3・51)
の解 を 求 め よ う。 自 由解(入 力 が 零 の と き)が 得 られ た の で,定
数 ベ ク トルx(t0)
を υ(tと お き換 え,上 式 の 解 を x(t)=eA(t-t0)υ(t)
とす る 。 こ の 式 をtで
(3・52)
微 分 す る と,
x(t)=AeA(t-t0)υ(t)+eA(t-t0)υ(t) =Ax(t)+eA(t-t0)
と な り,こ
れ を 式(3・51)の
υ(t)
(3・53)
左 辺 に 代 入 す る と,
eA(t-t0)υ(t)=Bu(t)
こ れ よ り, υ(t)=e-A(t-t0)Bu(t)
と な る 。 さ ら に,こ
(3・54)
の 式 を 時 間 積 分 し,t=t0の
υ(t)を υ(t0)と す れ ば, (3・55)
を 得 る 。 と こ ろ で,式(3・52)よ
り (3・56)
で あ る か ら,式(3・55)は
次 式 の よ う に表 され る。 (3・57)
した が っ て,解
は,上
式 を 式(3・52)に
代 入 し, (3・58)
と な り,出
力y(t)は,次
の よ う に求 め られ る。 (3・59)
な お,t0=0な
ら ば, (3・60)
よ り (3・61)
で あ る。
〔2〕 ラ プ ラス変 換 に よ る方法 前 節 で は,状 態 推 移 行 列 を用 い て
x(t)=Ax(t)+Bu(t)
(3・62)
y(t)=Cx(t)+Du(t)
(3・63)
の 解 析 解 を得 た。 この 節 で は,ラ
プ ラ ス変 換 を用 い て,そ
の解 を求 め て み よ う。
こ こで,行 列 や 行 列 関 数 の ラプ ラ ス変 換 は各 要 素 の ラ プ ラ ス 変 換 で あ るか ら, 状 態 変 数 ベ ク トルx(t)の
ラ プ ラス 変 換 をX(s)と
す る と,
(3・64)
で あ り,x(t)の
ラ プ ラ ス 変 換 は, 〓 〔x(t)〕=sX(s)-x(0)で
あ る か ら,
(3・65)
と な る 。 こ こ で,x(0)は
初 期 値 で あ る。
式(3・62),(3・63)を
ラプラス変換す る と
sx(s)-x(0)=AX(s)+BU(s)
(3・66)
Y(s)=CX(s)+DU(s) を得 る 。 こ こ で,U(s)=〓u(t),
(3・67)
Y(s)=〓y(t)で
あ る 。 し た が っ て,
X(s)=(sI-A)-1x(0)+(sI-A)-1BU(s)
(3・68)
Y(s)=C(sI-A)-1x(0)+C(sI-A)-1BU(s)+DU(s) =C(sI-A)-1x(0)+{C(sI-A)-1B+D}U(s)
(3・69)
で あ り,ラ プ ラ ス 逆 変 換 す れ ば, x(t)=〓-1X(s) =〓-l〔(sI-A)-1〕x(0)+〓-1
〔(sI-A)-1BU(s)〕
(3・70)
y(t)=〓-1Y(s) =〓-1〔C(sI-A)-1〕x(0)
+〓-1〔{C(sI-A)-1B+D}U(s)〕
(3・71)
が 得 られ る 。
3・3 状 態方程 式 と伝達 関数の 関係
1入 力 1出 力 の シ ス テ ム の 場 合,伝 達 関 数G(s)は の 入 力u(t)と
出 力y(t)の
様 に,式(3・69)に
す べ て の 初 期 値 を 0 と した 時
ラ プ ラ ス 変 換 の 比Y(s)/U(s)で
お い て,x(0)=0と
あ る と定 義 し た 。 同
す る と,
Y(s)={C(sI-A)-1B+D}U(s) =G(s)U(s)
(3・72)
を 得 る。 こ こ で,
(3・73)
は(q×p)行 式(3・73)に
列 で あ り,伝
達 関 数 行 列(transfer
お い て,C(SI-A)-1Bの
function matrix)と
す べ て の 要 素 は,行
呼 ぶ。
列 式|(sI一A)|
がn次
の 多項 式,余 因 子 行 列adj(sI-A)の
要 素 が(n-1)次
以 下 の 多 項 式 で あ るか ら,
分 母 が 分 子 よ り 1次 以 上 高 いsの 有 理 関 数 で あ る。 G(s)はG(∞)が
零 で な い 定 数 行 列 の 時,す な わ ち,伝 達 関 数 の 分 母 と 分 子 の 次
数 が 等 し い 時,プ
ロパ ー で あ る と い い,G(∞)=0の
が 分 子 よ り 1次 以 上 高 い 時,厳 G(s)が
時,す
な わ ち伝 達 関 数 の 分 母
密 に プ ロ パ ー で あ る と い う 。 式(3・73)に
プ ロ パ ー な ら ば,D≠0で
あ り,ま
た,厳
お い て,
密 に プ ロ パ ー な ら ば, D=0で
あ る。
状 態 方 程 式 か ら伝 達 関 数 を求 め る こ と は,状 態 変 数 を消 去 す る こ とで あ る。 式 (3・7)お よび 式(3・8)で 表 さ れ る シ ス テ ム は,1 入 力 1出 力 の 厳 密 に プ ロ パ ー な シ ス テ ム で あ る。この シ ス テ ム の 伝 達 関数G(s)を
求 め て み よ う。状 態 方 程 式 お よ び
出力 方 程 式 は
x(t)=Ax(t)+bu(t)
(3・74)
y(t)=cx(t)
(3・75)
で あ る 。 な お,1
入 力 1出 力 系 で は,B→b,
C→cの
よ うに小 文 字 で表 す 。
こ こ に, A=
[
0 1
-ωn2-2ζ
ω n
〕
0 b=
〔Kωn2
C=
〕,
10
〔
〕
で あ る。 式(3・74),式(3・75)を
ラ プ ラス 変 換 す る と
sX(s)-x(0)=AX(s)+bU(s)
(3・76)
Y(s)=cX(s)
(3・77)
を 得 る 。 し た が っ て,
X(s)=(sI-A)-1x(0)+(sI-A)-lbU(s)
(3・78)
Y(s)=c(sI-A)-1x(0)+c(sI-A)-1bU(s) で あ る 。 こ こ で,す
べ て の 初 期 値 を 0,す な わ ち,x(0)=0と
Y(s)=c(sI-A)-1bU(s)
(3・79)
す る と (3・80)
と な る 。 よ っ て,伝
達 関 数G(s)は,
(3・81)
で あ る。 よ っ て,こ
の シ ス テ ム の 伝 達 関 数G(s)は
よ り,
(3・82)
とな る。
3
・
4
単位 インパルス応答 (3・83) (3・84)
で表 され る シ ス テ ム の単 位 イ ンパ ル ス応 答 を求 め よ う。 式(3・61)よ
り,
(3・85)
と な り,初
期 値x(0)=0な
らば (3・86)
と な る 。 す な わ ち,eAtを こ こ で,状
求 め れ ば よ い。
態 推 移 行 列eAtを
求 め る 方 法 につ い て述 べ る。
(a) eAtの
直接 計 算 (3・87)
この 式 を直 接 計 算 して 求 め る の で,計 算 はか な り面 倒 で あ る。 この 方 法 は,コ ン ピ ュー タ で近 似 計 算 をす る場 合 に用 い る 。 (b)eAt=〓-1〔(sI-A)-1〕
3・2節
の 式(3・60)お
に よ る方 法
よ び 式(3・70)の
結 果,す
なわ ち (3・88)
(3・89)
両 式 の 右 辺 第 1項 を等 置 す れ ば,次 式 が え られ る。 eAt=〓-1〔(sI-A)-1〕
(c)行
(3・90)
列 A が対角行 列 に変換 で きる場合
(3・91)
を 用 い て 求 め る 。第 2章 の2・2節 λ2,…,λnは
〔6〕で 説 明 した よ う に,T
正 方行 列 A の相 異 な る 固 有 値 で あ る。
は 対 角 変 換 行 列,λ1,
演
習
問 題
〔3〕
〔 問 題 〕1. 図3・8に 示 す よ う に,両 端 を ば ね で 支 持 し た物 体 が あ り,静 止 の位 置 で 水 平 に 保 た れ て い る。物 体 の 運 動 は上 下 鉛 直 方 向 と重 心 G を通 る紙 面 に垂 直 な 水 平 軸 g ま わ りの 回転 運 動 の み 可 能 で あ り,他 の 運 動 は 拘 束 さ れ て い る とす る 。 物 体 の 質 量 を M,軸 ね 定 数 をk1,k2と
g まわ りの 慣 性 モ ー メ ン トを J,両 端 に つ け た ば ね の ば
し,物 体 の 左 端 に 鉛 直 下 向 き 力f(t)が
械 系 の 状 態 方 程 式,出
作 用 す る と き,こ の機
力 方 程 式 を 求 め よ。
図3・8
〔 問 題 〕2. 図3・9に 示 す 回 路 に つ い て,電 間 電 圧 υo(t)を 出 力 と して,状
源 電 圧 υi(t)を入 力,コ
態 方 程 式,出
ン デ ンサC2の
端子
力 方 程 式 を 求 め よ。
図3・9
〔問 題 〕3. 行 列 A が(ⅰ)∼(ⅲ)で
あ る と き,eAt=〓-1{(sI-A)-1}に
め よ。 0 1 (ⅰ)
A=
〔
-2
-3
〕
よ っ て,eAtを
求
(ⅱ)
(ⅲ)
〔問 題 〕4.〔 問 題 〕3.の 行 列 A に つ い て,eAt=T〔gii〕T-1に で,T
は 対 角 変 換 行 列,ま
λi(i=1,2,…,n)は
〔 問 題 〕5.次
た,〔gii〕 は 対 角 行 列 で,そ
よ っ てeAtを
求 め よ。ここ
の 対 角 要 素 はgii=exp(λit),
A の固有 値 であ る。
の 状 態 方 程 式 と 出 力 方 程 式 で 与 え ら れ た 1入 力 1出 力 の シ ス テ ム が あ
る。 入 力u(t)が (ⅰ)単
位 イ ンパ ル ス 関 数
(ⅱ)単
位 ス テ ップ関数
で あ る と き,出 力y(t)を
求 め よ。
〔 問 題 〕6. 微 分 方 程 式
で 表 さ れ る 1入 力 1出 力 シ ス テ ム が あ る。 こ こ で,u(t)は
入 力, y(t)は 出 力 で
あ る。 (ⅰ) この シ ス テ ム を 状 態 方 程 式,出
力 方程式 で表 せ。
(ⅱ) 入 力 が, (a)単
位 イ ンパ ル ス 関 数
(b)単
位 ス テ ップ 関 数
で あ る と き,出
力y(t)を
求 め よ 。 た だ し,
とす る。
第 4章
システムの可制御性 お よび可観測性
シ ス テ ム の 可 制 御(controllable)お
よ び 可 観 測(observable)と
念 は,第 1章 で 述 べ た よ う に,1960年R.E.Kalmanに
い う概
よ っ て 示 さ れ た もの
で あ り,そ れ 以 前 の フ ィー ドバ ッ ク制 御 理 論 で は 見 ら れ な か っ た 新 し い 考 え方 で あ る。 これ に よ っ て,複
雑 な システ ムの設 計上 の見 通 しが大変 よ く
な った。
(a)可 制 御性
(b)可 観 測性
図4・1 可 制御 と可観 測 の概 念
4
・
1
可制御性
任 意 の初 期状 態 に あ る シ ス テ ム の状 態 を有 限 な時 間 で,希 望 す る状 態 へ 移 す こ とが で き る制 御 入 力u(t)が あ る と い う。
存 在 す る と き,シ ス テ ム は可 制 御(controllable)で
〔1 〕
1入 力 1出 力 シス テ ム の 可制 御 条 件
1入 力 1出 力 シ ス テ ム
x=Ax(t)+bu(t)
(4・1)
y=cx(t)
(4・2)
が 可 制 御 で あ る た め に は,可
制 御 性 行 列(controllability
matrix)
Γ=〔bAbA2b…An-1b〕 が 正 則,す
な わ ち,そ │bAb
こ こ で,b
(4・3)
の行 列 式 が 0で な い こ とで あ る。 (4・4)
A2b…An-1b│≠0
は n 次 元 の 列 ベ ク トル, A は(n×n)行
列 で,し
た が っ て,Γ
は正 方
行 列 に な る。
図4・2 1入力 1出 力 シス テム の状 態変 数 線 図
可 制 御 の 条 件,式(4・3)が
必 要 条件 で あ る こ と を示 そ う。
状 態 方程 式 の解 は 式(3・60)で 与 え られ る。 す なわ ち, (4・5)
こ の 式 に お い て,t=tfと
す れ ば, (4・6)
よ り,
(4・7)
とな る。 これ を満 足 す る制 御 入 力u(t)が
特性 方程式 を
存 在 す れ ば よ い。
│sI-A│=sn+an-lsn-1+…+als+a0=0
とす れ ば,ケ
(4・8)
ー リ ー ・ハ ミル ト ン の 定 理(第
2章 の2・2節
〔9〕)よ
An+an-1An-1+…+a1A+a0I=0
り, (4・9)
が 成 り立 つ 。 し た が っ て, An=-an-1An-1-…-a1A-a0I
とな り,AnはAn-1ま
(4・10)
で の低 次 の 多 項 式 で表 す こ とが で き る。
そ れ ゆ え, (4・11)
の 無 限 級 数 はAn-1ま
で を 含 む 級 数 で 表 す こ と が で き る 。 す な わ ち, (4・12)
こ れ よ り,
(4・13)
以 上 の 関 係 を 用 い る と,式(4・7)は
次 の よ うに表 され る。
(4・14)
した が っ て,こ の 式 よ り,満 足 す べ き入 力u(t)が 行列
存 在 す る た め に は,可 制 御 性
Γ=
〔bAbA2b…An-1b
(4・15)
〕
の逆 行 列 が存 在 しな けれ ば な らな い。そ の た め に は Γ が 正 則 で あ る こ と,す な わ ち│Γ│〓0で あ る。 さ ら に,式(4・3)が
十 分 条 件 で あ る こ と を 示 そ う 。指 定 さ れ た 目 標xfに
対 し て,
入 力u(t)を u(t)=bTe-ATtKtf-1〔-x0+e-Atfxf〕
0〓t〓tf
(4・16)
た だ し, (4・17)
と す る と,
と選 ぶ 。
とな り,Γ
が 正 則 な ら正 則 なKtfが
こ れ を 式(4・6)に
得 られ る。
代 入 す る と,
(4・18) と な り,t→tfの
〔 例 題 〕4・1
の と き,
(ⅰ)b=
と きx0=x(0)→xfに
す る こ とが で き る 。
シ ス テム の状 態 方 程 式 が
001
〔
を調 べ よ 。
〔 解 答 〕 (ⅰ)の 場 合
〕T,
(ⅱ)b
=〔
010
の 場 合 に つ い て,可 制 御 性
〕T
よ り,可 制 御 性 行 列 Γ は
と な り,│Γ│=-1で
あ る 。 し た が っ て,こ
テ ム の 状 態 変 数 線 図 は 図4・3(a)の
の シ ス テ ム は可 制 御 で あ る。 この シ ス
よ う で あ る。
(a)
(b)
図4・3 状 態変 数 線 図
(ⅱ)の 場 合
よ り,可 制 御 性 行 列 Γ は
と な り,│Γ│=0で
あ る 。 し た が っ て,こ
テ ム の 状 態 変 数 線 図 は 図4・3(b)の
〔 2〕
の シ ス テ ム は可 制 御 で は な い 。 この シ ス
よ うで あ る。
多 入 力 多 出力 シス テ ム の 可制 御 条 件
1入 力 1出 力 の シ ス テ ム の 理 論 を拡 張 す れ ば,一 般 に 多 入 力 多 出 力 シ ス テ ム
x(t)=Ax(t)+Bu(t)
(4.19)
y(t)=Cx(t)
(4・20)
の 場 合 に は,可 制 御 性 行 列 は Γ=
〔
BABA2B…An-1B
と な り,rankΓ=nな
(4・21)
ら ば,シ
〕 ス テ ム は 可 制 御 で あ る 。 こ の こ と は,Γ
の 中 に独
立 な n 本 の 列 ベ ク トル が あ る こ と を 意 味 す る 。
4
・
2
可観測性
あ る 時 点t=0か に よ っ て,t=0の
ら有 限 な 時 間t0で 状 態 変 数x(0)を
観 測(observable)で
〔1 〕
の 入 力u(t)と
出 力y(t)を
観 測 す る こと
一 意 に 求 め る こ と が で き る と き,シ ス テ ム は 可
あ る とい う。
1入 力 1出力 シ ス テ ム の可 観 測 条 件
1入 力 1出 力 シ ス テ ム
が,可
x(t)=Ax(t)+bu(t)
(4・22)
y(t)=cx(t)
(4・23)
観 測 で あ る た め に は,可
観 測 性 行 列(observability
matrix)
(4・24)
が 正 則 で あ る こ と,す
な わ ち,│Ⅱ│〓0で
あ る 。 し た が っ て,
(4・25)
こ こで,c
は n 次 元 の 行 ベ ク トル,A
は(n×n)行
列 で,し
た が っ て,Ⅱ
は正
方行列 になる。
可 観 測 の条 件,式(4・25)が 出 力y(t)は,式(3・61)よ
必 要 条 件 で あ る こ と を示 そ う。 り,
(4・26)
で あ る。 この 式 の 右 辺 第 2項 は,y(t)と
同様,各
時 点 で 既 知 で あ る か ら,こ
こで
は,こ れ を除 いた 次 式 を考 えれ ば よ い。
y(t)=ceAtx0 結 局,可
(4・27)
観 測 性 の 問 題 は,0〓t〓t0に
よ り初 期 状 態x(0)=x0が 式(4・12)の
与 え ら れ た と き,上
一 意 に 決 ま る か と い う こ と に な る 。│
関 係 を 用 い て 式(4・27)を
y(t)=c〔
お け る 出 力y(t)が
表 す と,次
の よ う に な る。
α0(t)I+α1(t)A+…+αn-1(t)An-1〕x0
=α0(t)cIx0+α1(t)cAx0+…+a
n-1(t)cAn-1x0
式
(4・28)
し た が っ て,こ の 式 よ り,出 力y(t)の る た め に は,可
測 定 か ら,初 期 状 態x0=x(0)が
求 め られ
観測性 行列
(4・29)
が 正 則 で あ る こ と,す
な わ ち,│Π│〓0で
さ ら に,式(4・29)が
十 分 条 件 で あ る こ と を示 そ う。
式(4・27)の
両 辺 にeATcTを
乗 じ,積
あ る。
分 す る と, (4・30) (4・31)
こ こ に,
(4・32)
とな る。 い ま,Kt0がt0>0で
正 則 で あ れ ば,初
期 状 態x(0)は, (4・33)
か ら 一 意 に 決 ま る 。 こ こ で,kt0の 様 で あ る。
正 則 性 の 証 明 に つ い て は,式(4・17)の
場 合 と同
〔2 〕
多入 力 多 出 力 シ ス テ ムの 可 観 測 条 件
1入 力 1出 力 シ ス テ ム の理 論 を拡 張 す れ ば,一 般 に 多 入 力 多 出 力 シス テ ム
x(t)=Ax(t)+Bu(t)
(4・34)
y(t)=Cx(t)
(4・35)
の 場 合 に は,可 観 測 性 行 列 は
(4・36)
と な り,rankΠ=nな
4・3
ら ば,シ
ス テ ム は可 観 測 で あ る。
座標変換 とシステムの構造
一 般 に,与
え られ る シ ス テ ム の 状 態 方程 式 は,そ の ま ま の形 で は解 析 す るの に
必 ず し も便 利 で は な い 。 そ こで,状 態 方程 式 に適 当 な 変 換 を施 し,シ ス テ ム の 特 性 を調 べ た り,設 計 をす る の に都 合 の よ い形 にす る こ とが よ く行 わ れ る。 システム
に お い て,行
x(t)=Ax(t)+Bu(t)
(4・37)
y(t)=Cx(t)
(4・38)
列A(n×n)を
正 則 行 列T(n×n)を
用 い てA=T-1ATの
換 し て み よ う 。 こ れ を 相 似 変 換 と い う。 状 態 方 程 式,式(4・37)に
よ う に変 左 か らT-1を
か
けて 整 理 す る と T-1x(t)=T−1ATT-1x(t)+T-1Bu(t)
(4・39)
y(t)=CTT-1x(t)
(4・40)
と な る 。 こ こ で,x=T-1x,A=T-1AT,B=T-1Bお
x(t)=Ax(t)+Bu(t)
よ びC=CTと
お け ば, (4・41)
(a)式(4・37),(4・38)の
シ ス テ ム
(b)式(4・41),(4・42)の
シ ス テ ム
図4・4 状 態 変数 線 図
y(t)=Cx(t)
(4・42)
の よ うに シス テ ム は表 す こ とが で き る。 この よ うな変 換 を して も,両 者 に は次 の 関 係 が あ る。 ①
両 者 の 特 性 方 程 式 は変 わ ら な い。 した が っ て,そ れ ぞ れ の 固有 値 は等 し い。 sI-A=T-1sIT-T-1AT
=T-1(sI-A)T こ こ で, T-1IT=I よ り,
│sI−A│=│sI−A│=0
②
伝 達 関 数 行 列 は 変 わ らな い 。
G(S)=C(sI-A)-1B =CT-1(sI-TAT-1)-1TB =C{T-1(sI-TAT-1)T}-1B
=C(sI-A)-1B ③
可 制 御 性 は変 わ ら な い。 す なわ ち,原
シ ス テ ム が 可 制 御 な ら変 換 後 の シ ス
テ ム も可 制 御 で あ り,不 可 制 御 な ら不 可 制 御 で あ る。 す な わ ち, rank
BABA2B…An-1B
〔
=rank
〕
こ れ は, BAB
〔
A2B…An-1B)
〕
BABA2B…An-1B
〔
〕
〔
=
=T-1
T-1B
T-1ATT-1B(T-1AT)2T-1B…(T-1AT)n-1T-1B
BABA2B…An-1B
〔
と な り, T が 正 則,す
④
〕
〕
な わ ち│T│〓0な
こ と よ り明 ら か で あ る 。
可 観 測 性 は 変 わ ら な い。 す な わ ち,
こ れ は,
よ り明 らか で あ る。
〔1 〕
対 角正 準 形式 とジ ョル ダ ン正準 形 式
以 下 で は,理 解 を容 易 に す るた め,次
の よ う な 1入 力 1出 力 シス テ ム に つ い て
考 え る。
(a)A た よ う に,行 Unと
x(t)=Ax(t)+bu(t)
(4・43)
y(t)=cx(t)
(4・44)
の 固 有 値 が 互 い に 異 な る 場 合 第 2章2・2節 列 A の 固 有 値 λ1,λ2,…,λnに
す る と き,こ
〔6〕(1)対 角 化 で 述 べ
対 応 す る 固 有 ベ ク トル を ν1,υ2,…,
れ を 並 べ て 作 っ た 変 換 行 列 T=
64)の よ うに 対 角 行 列 に変 換 さ れ る。 す な わ ち,
υ1 υ2 … υn
〔
〕に よ り,式(2・
(4・45)
よ り,シ ス テ ム は,次
の よ う な新 しい 状 態 方 程 式 お よ び 出力 方 程 式 で 表 され る。
(4・46)
y(t)=cx(t)
(4・47)
こ こ で,b=〔b1b2…bn〕T,
び 式(4・47)は,各
c=〔c1c2…cn]と
お
け ば,式(4・46)お
よ
々 以 下 の よ う に な る。
(4・48)
y(t)=c1x1(t)+c2x2(t)+…+cnxn(t)
この 関 係 は,図4・5(3
(4・49)
次 対 角 正 準 シ ス テ ム の場 合)の よ うな 状 態 変 数 線 図 で 表
され る。 状 態 変 数 は 互 に干 渉 し な い形 に な っ て い る。 した が っ て,可 制 御 の 条 件 は, す べ て のbiが 零 で な い こ とに相 当 す る。 また,可 制 御 性 行 列 の行 列 式 を求 め る と,
図4・5
1入力 1出力 3次 対角 正 準 シス テ ムの 状態 変数 線 図
(4・50)
と な る。 式(4・50)の の で,零 次 に,伝
右 辺 の 行 列 式│V│は
に は な ら な い(第
λi-λj(i〓j)因
2章 〔7〕参 照)。
達 関 数 行 列 は,第
した が っ て,bi〓0が
3章 の 式(3・81)よ
G(s)=c(sI-A)-1b
子 の すべ ての積 に な る 成 立 す る。
り求 め ら れ る 。 (4・51)
(4・52) こ こ で,bi,ciは
ベ ク トル
b,c
の 要 素 で あ る。
(b) A の 固 有 値 に 重 根 が あ る 場 合 q,…,w
重 根 の 場 合 に は,第
固 有 値 λp,λq,…,λ
2章 で 述 べ た よ う に,ジ
ω が,そ
れ ぞ れ p,
ョル ダ ンブ ロ ック とい わ れ
る 部 分 が 変 換 し た 行 列 の 対 角 部 に 表 れ る 。 す な わ ち,
(4・53)
で,Jp,Jq,…,Jω
が ジ ョ ル ダ ン ブ ロ ッ ク で,例
え ば,Jpは
(4・54)
の よ う な形 に な る。
〔2〕
可制御正準形式
可 制 御 で あ る,次 の よ う な 1入 力 1出力 シス テム に つ い て 考 え よ う。
x(t)=Ax(t)+bu(t)
(4・55)
y(t)=cx(t)
(4・56)
この シ ス テ ム の 特 性 方程 式 │sI-A│=sn+an-1sn-1+…+a1s+a0=0
の 係数 で 作 られ る(n×n)次
の正 方 行 U
(4・57)
と可制 御 性 行 列 Γ=〔bAb
A2b
…An-1b
〕との 積 か らな る行 列 を変 換 行 列 T と し よ う。 す な わ ち,
(4・58)
明 ら か に│U│〓0,ま 正 則 行 列,す
た 可 制 御 性 の 条 件 よ り│Γ│〓0で
な わ ち│T│〓0で
あ る か ら,変
換行 列 T は
あ る。
こ の よ う な 変 換 行 列 T を 用 い て 式(4・55),(4・56)の
シ ス テ ム を 変 換 す る と,以
下 の よ う に表 され る。
x(t)=Tx(t)
(4・59)
と お く と,
(4・60)
(4・61)
と な る 。 こ れ は コ ン パ ニ オ ン 行 列 の 形 と な り,式(4・60)お 標 準 形(controllable よ う に な る。
canonical
form)と
よ び 式(4・61)を
可制御
い う。 三 次 系 の 場 合 を 示 せ ば,図4・6の
1入 力 1出 力 3次 可制 御 正準 シ ステ ム の 状 態 変数 線 図
図 4・6
また,こ
の シ ス テ ム の 伝 達 関 数 は,次 の よ う に な る。 伝 達 関 数 は,上 述 の よ う
な相 似 変 換 に よ っ て も変 わ らな い か ら,容 易 に求 め られ る。 す な わ ち,
G(s)=c(sI-A)-1b=c(sI-A)-1b (4・62)
〔3 〕
可観測正準形式
可 観 測 で あ る,次 の よ う な 1入 力 1出 力 シ ス テ ム に つ い て 考 え よ う。
x(t)=Ax(t)+bu(t)
(4・63)
y(t)=cx(t)
(4・64)
この シ ス テ ム の 特 性 方 程 式 │sI-A│=sn+an-1sn-1+…+a1s+a0=0
の係 数 で 作 られ る(n×n)次 換 行 列 T と し よ う。
(4・65)
の正 方 行 列 U と可観 測 性 行 列 Ⅱ か ら な る行 列 を 変
(4・66)
明 ら か に│U│〓0,ま 正 則 行 列,す
た 可 観 測 性 の 条 件 よ り│Ⅱ│〓0で
な わ ち│T│〓0で
換行 列 T は
あ る。
こ の よ う な 変 換 行 列 T を 用 い て 式(4・63)お る と,以
あ る か ら,変
よ び 式(4・64)の
シ ス テ ム を変 換 す
下 の よ う に表 され る。
x(t)=T-1x(t) と お く と,
x(t)=TAT-1x(t)+Tbu(t)
=Ax(t)+bu(t)
(4・67)
y(t)=cT-1x(t)
(4・68)
式(4・67)お
よ び 式(4・68)を
可 観 測 正 準 形 式(observablecanonical
う 。 三 次 系 の 場 合 を 示 せ ば,図4・7の
form)と
い
よ うになる。
図4・7 1出力 1入力 3次可 観 測正 準 シス テム の 状 態変 数 線 図
こ の 場 合 の 伝 達 関 数 は,式(4・62)と
4
・
4
同 様 で あ る。
伝 達 関数の極 ・零 点消去 と可制御性 ・可観 測性
こ こで は,伝 達 関 数 に お け る極 ・零 点 消 去 が 可 制 御 性 お よ び 可 観 測 性 の観 点 か ら どの よ うな 意 味 を もつ か,図4・8の
〔1〕 図4・8に
伝 達 関数 に お け る極 ・零 点消 去 お い て,シ
注 則 す れ ば,S1の s=1が
消 去 さ れ,一
な わ ち,伝
よ うな シ ス テ ム を例 に あ げ 説 明 す る。
ステムの入出力 に
零 点s=1と,S2の
極
次 遅 れ 系 に な る。す
達 関 数G(s)は,
図4・8
シ ステ ムの ブ ロ ッ ク線 図
(4・69) とな る。
〔2 〕 図4・8の
状 態 方程 式 に よ る扱 い シ ス テ ム を,そ
の ま ま状 態 変 数 線 図 で 表 す と,図4・9の
図4・9
図4・9の
図4・8の
よ う に,状 態 変 数x1(t),
よ び 出 力 方 程 式 は,そ
よ う に な る。
シ ステ ムの 状 態 変数 線 図
x2(t)を
と れ ば,こ
の シス テ ム の 状 態 方 程 式 お
れ ぞ れ 次 の よ う に な る。
(4・70)
(4・71)
次 に,こ の シ ス テ ム の可 制 御 性 お よび 可 観 測 性 に つ い て調 べ て み よ う。 (a)可
制御性 につい て
よ り,式(4・3)の
可制 御 性 行 列 は
(4・72)
と な り,そ
の 行 列 式 は,次
の よ う に な る。
(4・73)
し た が っ て,こ
の シス テ ム は不 可制 御 で あ る。
(b) 可 観 測 性 に つ い て
よ り,式(4・24)の
と な り,そ
可 観 測 性 行 列 は,
の 行 列 式 は,次
の よ う に な る。 (4・75)
した が っ て,こ の シ ス テ ム は可 観 測 で あ る。 以 上 の よ うに して,理 論 的 に は可 制 御 性 お よ び 可 観 測 性 は容 易 に求 ま るが,図 4・9の 状 態 変 数 線 図 を見 た だ け で は,シ ス テ ム が 可 制 御 で あ る か,あ る い は 可 観 測 で あ るか は明 らか で は な い。 そ こ で,状 態 方 程 式 を対 角化 して み よ う。 (c)対
角化
この シ ス テ ム の 固 有 値 は,特 性 方程 式 (4・76)
し た が っ て,
よ り,固 は,以 ①
有 値 は λ1=1,λ2=-3と
な る 。 こ れ ら の 固 有 値 に つ い て の 固 有 ベ ク トル
下 の よ うに して 求 め られ る。 λ1=1に
つ い て の 固 有 ベ ク トル
第 2章 の 式(2・57)よ
り, (4・77)
よ り,υ11=1と
選 べ ば,4υ21=0よ
り υ21=0,し
た が っ て,
(4・78)
②
λ2=-3に
つ い て の 固 有 ベ ク トル
① と同 様 に し て, (4・79)
よ り,υ12=1と
選 べ ば,υ22=-υ12=-1,し
た が っ て,
(4・80)
以 上 の結 果,変 換 行 列 T は,次 の よ う にな る。 (4・81)
し た が っ て,
この 変 換 行 列 T に よ っ て,シ
ス テ ム の行 列 A は対 角 化 さ れ る。
(4・82)
(4・83)
(4・84)
よ り,対 角 化 され た状 態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 は,次 の よ う に な る。 (4・85)
(4・86)
こ の 式 を,状
態 変 数 線 図 に 表 せ ば,図4・10の
図4・10
図4・10に
図4・9を
対 角化 した シス テム の状 態 変数 線 図
お い て,上 方 の ブ ロ ッ ク 線 図 で は,入 力u(t)か
路 が 断 ち 切 れ て お り,x1は
入 力u(t)に
で あ る こ と が わ か る 。一 方,下 る 。 す な わ ち,可 変 数x1お
よ うに な る。
よ びx2か
よ っ て 制 御 で き な い 。す な わ ち,不
方 の ブ ロ ッ ク 線 図 で は,x2は
制 御 で あ る 。 ま た,上 ら 出 力y(t)に
ら状 態 変 数x1へ
入 力u(t)で
の経 可制御
制御 で き
方 お よ び 下 方 の ブ ロ ッ ク 線 図 と も,状
至 る 経 路 は 存 在 し て い る の で,両
態
者 と も可 観
測 で あ る こ とが わ か る。
この よ うに,シ
ス テ ム を対 角 化 す る こ とに よ り,現 代 制 御 理 論 で 提 起 さ れ た 可
制 御 性 お よび 可 観 測 性 の概 念 が 一 層 明 確 に な る。
演 習 問 題 〔4〕 〔問 題 〕1. シ ス テ ムx(t)=Ax(t)+bu(t)に
お い て,
の と き,次 の よ う な 3通 りの b に つ い て,シ ス テ ム が 可 制 御 か 否 か を 判 定 せ よ 。
(ⅰ)
〔問 題 〕2.シ
(ⅱ)
(ⅲ)
ス テム
に お い て,
の と き,次 の 3通 り の cに つ い て,シ (ⅰ)c=〔100〕
〔 問 題 〕3.図4・11(a),(b)の
ステ ムが可 観測 か否 か を判定 せ よ。
(ⅱ)c=〔010〕
(ⅲ)c=〔001〕
よ うなタ ンク シス テムが あ る。 この システ ムの可制 御
性 に つ い て 検 討 せ よ。 こ こ で は,液 面 の 変 動 は 平 衡 状 態 近 傍 で 僅 か と し,タ ク か らの 流 出 量 q と液 位 x との 間 に は線 形 性(q=x/R)が な お,R
お よ びR12は
管路 抵抗 で ある。
ン
成 立 つ もの とす る。
(a)
(b) 図4・11タ
〔問 題 〕4.シ
ス テ ムx(t)=Ax(t)+Bu(t)に
ン クシス テム
お い て,
の と き,行 列 A を 対 角 化 せ よ 。な お,そ の 変 換 行 列 T,お よ び 逆 行 列T-1の
一
例 を示 せ。
〔 問 題 〕5.状
態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 が,そ れ ぞ れ 次 式 で 表 され る シ ス テ ム が あ る。
この シ ス テ ム の 可 制 御 正 準 系 を 求 め よ。 ま た,そ
の 状 態 変 数 線 図 を描 け。
第 5章 時間領域 にお け る制御 系 の設計
制 御 し よ う とす る対 象 に ど の よ う な 制 御 を加 え た ら望 み の 振 る 舞 い を制 御 対 象 に さ せ る こ とが で き る か,す
な わ ち,制
御 対 象 を 希 望 ど お りに 制 御
す る に は ど の よ う な制 御 系 を構 成 す れ ば よ い か と い う問 題 に対 して,そ
れ
を周 波 数 領 域 の 問 題 と し て 解 決 す る 手 法 を上 巻 で 示 した 。 こ れ に対 して, 本 章 で は,こ
の 問 題 を 時 間 領 域 で 直 接 的 に解 決 す る手 法 の 概 要 に つ い て 述
べ る。
自動 制御 系 の設計 の 目的 は,実 際 に使 用 で きる機械部 品 要素 あ るい は電 気 ・電 子部 品要 素 を どの よ うに組 み合 わ せ て望 ま しい振 る舞 い をす るシス テム を構 築 す るかで あ る。望 ま しい振 る舞 いは時 間領域 にお ける評価 基準 に よって容 易 に述 べ るこ とが で き る。例 えば,ス テ ップ入力 に対 す る最大 行 き過 ぎ量 や立上 り時 間 な どは時 間領域 にお け る有効 な評 価 基準 で あ る。
5・1 状 態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク 制 御 の 概 要
上 巻 の 第 3章 で も述 べ られ て い る よ う に,制 御 系 の性 能 は偏 差 や 制 御 量 な ど, 何 らか の 量 の積 分 値 で評 価 され る こ とが 多 い。この た め制 御 系 の 設 計 も,2乗 偏 差 の 積 分 値 の よ うな 評 価 関 数 を最 小 に す る とい う方 針 に基 づ い て設 計 され る こ とが 多 い。 評 価 関 数 の 最 小 値 を与 え る よ うな 制 御 系 は,一 般 的 に最 適 制 御 系 と呼 ば れ る。 特 に,制 御 対 象 が 線 形 で,評 価 関 数 が 2乗 偏 差 積 分 の よ う な,状 態 変 数 や 制 御 量 の 二 次 形 式 の,あ
る時 間 区 間 にわ た る積 分 で与 え ら れ る と して,そ
れ を最 小
に す る よ うに 制 御 信 号 を定 め る とい う最 適 制 御 問 題 は,最 適 レギ ュ レー タ 問題 と 呼 ば れ て い る。 これ は,ま たLQ問 と もあ る。
題(linear quadratic problem)と
呼 ばれ るこ
こ の節 で は,シ ス テ ム が 第 3章 で 述 べ た 状 態 変 数 に よ っ て 記 述 され て い る場 合 の 最 適 制 御 系 の設 計 に つ い て,そ の 基 本 的 な 考 え方 お よび 手 法 の概 要 を 説 明 す る。
〔1〕 状 態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク ま ず初 め に,系 の 状 態 変 数 が 測 定 で き る もの と し,そ れ を 用 い て 系 の 評 価 関 数 が 最 適 に な る よ うな 制 御 信 号u(t)を
つ くる こ と を考 え る。制 御 系 の 性 能 評 価 の た
め の評 価 関 数 J を状 態 変 数 を用 い て表 現 す れ ば,一 般 的 に は, (5・1)
の よ う に 表 さ れ る 。 こ こ で,t
は 時 間,x
は 状 態 ベ ク トル で あ り,u
は制 御 ベ ク ト
ル で あ る。
通 常,制 御 系 に対 す る一 般 的 な 要 求 と して,シ ス テ ム の偏 差 を最 小 に す る こ と を求 め るの で,望
ま しい 状 態 ベ ク トル がxd=0で
あ る とす れ ば,シ ス テ ム の 偏 差
は恒 等 的 に シ ス テ ム の 状 態 ベ ク トル に等 しい と考 え る こ とが で き る。 す な わ ち, シ ス テ ム を平 衡 点x=xd=0に
お くこ とで あ り,こ の 平 衡 点 か らの い か な る ず れ
も偏 差 と考 え る こ とが で き る。 した が っ て,こ
こで は,状 態 変 数 フ ィー ドバ ッ ク
と偏 差 の 2乗 評 価 関 数 を 用 い る最 適 制 御 系 の設 計 問題 を考 え る こ と にす る。 対 象 とす る制 御 系 は,図5・1の
よ うで あ り,そ の状 態 方 程 式 は,
図5・1 状 態 変数 x と制御 信 号 uを用 いて 表現 した制 御 系
x(t)=Ax(t)+Bu(t) で表 され る もの とす る。 こ こ で,フ され た状 態 変 数 の あ る 関 数 と して,
(5・2)
ィー ドバ ッ ク制 御 装 置 か ら の制 御 信 号 は 測 定
u(t)=h(x)
(5・3)
と表 さ れ る も の と す る 。 例 え ば,制
御 ベ ク トル を
(5・4)
あ る い は,
(5・5)
等 と選 ぶ こ とで あ る。制 御 信 号 を どの よ う に 選 ぶ か に は,あ る程 度 任 意 性 が あ り, 実 際 に シ ス テ ム に 要求 され る性 能 や,許 容 され る フ ィー ドバ ッ ク構 造 の 複 雑 さ の 程 度 な ど に依 存 す る。 状 態 変 数 フ ィー ドバ ッ ク に使 用 で き る状 態 変 数 は,当 然 の こ とな が ら測 定 で き る もの で な け れ ば な らず,し
た が って,そ
の 数 は 自 ず か ら制
限 を受 け る。 こ こ で,フ
ィ ー ドバ ッ ク 信 号 を 生 成 す る た め の 関 数 を(こ
関 数 と い う),u=Hxな
れ を フ ィ ー ドバ ッ ク
る 線 形 関 数 に 限 定 し よ う。 こ こ で,H
は(m×n)次
元 の
行 列 で あ る 。 す な わ ち,
(5・6)
で あ る 。 こ の 式(5・6)を
式(5・2)に 代 入 す る と,
x(t)=Ax(t)+BHx(t) =Dx(t)
(5・7)
図5・2式(5・7)の 変 数線 図
と な る 。 こ こ で,D=A+BHで(n×n)
シス テ ム の状 態
次 元 の行 列 で あ る。
〔2 〕
積分形式の評価関数
こ こで,上
巻 第 3章 で述 べ た,シ
ス テ ム の 速 応 性 と密 接 に 関 連 した制 御 特 性 を
評 価 す る た め の 2乗 偏 差 評 価 関 数 を考 え る。 状 態 変 数 が 一 つ の 場 合 で,そ れ を偏 差 と考 え る と, (5・8)
で あ る。 も し,状 態 変 数 が 二 つ の 場 合 は, (5・9)
で あ る。 した が っ て,こ れ を一 般 化 し,状 態 変 数 の 2乗 和 の 積 分 で 評 価 関数 を表 す た め に行 列 演 算
(5・10)
を用 い る。 これ よ り,状 態 変 数 ベ ク トル を用 い た評 価 関 数 の 一 般 的 な 形 は,次 の よ うに 表 す こ とが で き る。 (5・11)
こ の式(5・11)に お い て,便 宜 上,終 端 時 間tfを 無 限 大 と し よ う。J の 最 小 値 を求 め る た め に,次 の 完 全 微 分 の 存 在 を仮 定 す る。 (5・12)
こ こ で,P
は こ れ か ら決 定 さ れ る も の で あ る 。 計 算 を 簡 単 に す る た め に,一
性 を 失 う こ と な く,P 式(5・12)の
を 対 称 行 列,す
な わ ち, PT=Pと
左 辺 の 微 分 を 行 う こ と に よ り,
す る。
般
と な る 。 こ れ に 式(5・7)を 代 入 す る こ と に よ り,
(5・13)
こ こ で,(DTP+PD)=-I
と置 け ば,式(5・13)は, (5・14)
と な り,こ
れ が 求 め て い た 完 全 微 分 で あ る 。 式(5・14)を 式(5・11)に
代 入す る こ と
に よ り,
(5・15)
を 得 る 。こ こ で は,t→ ∞ の 極 限 と し て,シ ス テ ム は 安 定 で あ り,し た が っ て,x(∞) =0を
仮 定 し て い る。
以 上 に よ り,評 価 関 数 J を最 小 化 す る た め に,次 の 二 つ の 方 程 式 を考 え る。 (5・16)
DTP+PD=-I
(5・17)
設 計 の手 順 は,次 の よ う に な る。 ①
D は既 知 で あ る と して,式(5・17)を
②
式(5・16)の
〔 例 題 〕5・1
満 足 す る行 列 P を決 定 す る。
最 小 値 を 決 定 す る こ と に よ り,J
図5・3に
を最 小 化 す る。
示 され て い る
位 置 制 御 系 を 考 え る 。 状 態 変 数 はx1と x2で あ り,x1は
位 置 を表 す 変 数 とす る。
こ の シ ス テ ム は,図 に,制
か らす ぐわ か る よ う
動 項 の な い 二 次 系 と な る。 こ の シ
図5・3 〔例 題 〕5・1の 状 態 変 数 線 図
ス テ ム の 状 態 方程 式 は,
x(t)=Ax(t)+bu(t) す な わ ち,
(5・18)
と な る。
い ま,フ
ィー ドバ ッ ク制 御 系 と して,次 式 で 示 され る 二 つ の 状 態 変 数 の 線 形 結
合 か らな る制 御 信 号 を採 用 す る こ とに す る。
u(t)=-k1x1-k2x2 こ の 式 の 右 辺 の-記 18)は,次
(5・19)
号 は 負 フ ィ ー ドバ ッ ク を 意 味 し て い る 。状 態 方 程 式,式(5・
の よ う に表 され る。
(5・20)
す な わ ち,
x(t)=Dx(t) (5・21)
とな る。
こ の 位 置 制 御 系 の 伝 達 関 数 はG(s)=1/s2で,摩
擦 項 は 無 視 し て い る 。 こ こ で,
計 算 を 簡 単 に す る た め にk1=1と
し て,評 価 関 数 が 最 小 と な るk2の
こ と に す る 。 そ こ で,式(5・17)を
用 い る と,
値 を決 定 す る
DTP+PD=-I
(5・22)
とな る。 こ の行 列 演 算 を行 え ば,
(5・23)
が 得 ら れ る 。 さ ら に,こ
の 連 立 方 程 式 を 解 く と,
と な る。 評 価 関 数 は,
J=xT(0)Px(0) で あ るが,こ
(5・24)
こで各 状 態 変 数 は初 期 状 態 に お い て 平 衡 点 よ り 1単 位 だ け ず れ て い
る と す る 。 す な わ ち ,xT(0)=〔11〕
で あ る 。 し た が っ て,式(5・24)は,
(5・25)
とな る。 この式 にす で に 求 め た P の 要 素 の 値 を代 入 す る と,
(5・26)
を得 る。 こ のk2の
関 数 の 最 小 値 を 求 め る た め に,k2で
微 分 して零 とお く と, (5・27)
と な る 。 し た が っ て,J
を最 小 に す るk2は,k22=4よ
値 は,式(5・26)にk2=2を
り, k2=2と
な る。Jの 最 小
代 入 す る こ と に よ り,
Jmin=3 と な る 。 ま た,こ
の 結 果,フ
ィ ー ドバ ッ ク 補 償 さ れ た 系 の シ ス テ ム 行 列 D は,
(5・28)
とな り,そ の 特 性 方 程 式 は, (5・29)
とな る。
この 系 は 二 次 系 で あ り,そ の特 性 方 程 式 の標 準 形 は(s2+2ζ ωns+ω2n)で 表 さ れ るの で,補 償 され た 系 の 減 衰 係 数 は ζ=1.0で あ る。 こ の補 償 さ れ た 系 は,評 価 関 数 の 最 小 値 を与 え る とい う意 味 に お い て,最 適 な シ ス テム で あ る と い え る。 も ち ろん,こ
の シ ス テ ム は,い
ま,こ こで い くつ か 仮 定 した 特 定 の 条件 に対 して だ け
最 適 な の で あ っ て,条 件 が 変 わ れ ば最 適 で な くな るの は い う まで も な い。 補 償 さ れ た 系 の 構 成 図 を図5・4に 示 す 。
図5・4 〔例 題 〕5・1に お け る フ ィ-ド
ま た,k2の
関 数 と して の評 価 関 数 を図5・5に 示 す 。 この 図 か ら も明 らか な よ う
に,こ の 系 の特 性(評 価 関 数)はk2の わ ち,k2が つ 。
バ ッ ク補 償
変 化 に対 して そ れ ほ ど敏 感 で は な い。 す な
あ る程 度 大 き く変 化 して も評 価 関 数 の値 はそ の 最 低 値 の 近 傍 の値 を持
図 5・5
〔 例 題 〕5・2
パ ラメー タk2の 値 に対 す る評価 関 数Jの 値
こ こ で は,〔 例 題 〕5・1で の フ ィ ー ドバ ッ ク ゲ イ ンk1お
よ びk2が
定 さ れ て い な い 場 合 に つ い て 考 察 し て み よ う 。 計 算 を簡 単 に す る た め に,問 本 質 を 失 う こ と な くk1=k2=kと
し よ う。 し た が っ て,前
指 題の
例 の 式(5・20)は,
(5・30)
と な る 。 P 行 列 を 決 定 す る た め に 式(5・17),す
な わ ち, (5・31)
を 用 い,式(5・22)お
よ び 式(5・23)と
方 程 式 を 解 く こ と に よ り,
が 得 られ る。
同 様 に し て,こ
の 式(5・31)よ
り得 ら れ る 連 立
こ こで,シ ス テ ム の初 期 状 態 と して,位 置 状 態 変 数 x の み が 1単 位 だ け平 衡 状 態 か らず れ て い る場 合 を考 え て み よ う。 す な わ ち, xT(0)=
10
〔
で あ る。 こ
〕
の と き評 価 関 数 式(5・16)は, (5・32)
と な り,し
た が っ て,最
小 化 す べ き評 価 関 数 は, (5・33)
と な る 。明 らか に,J の 最 小 値 は kが 無 限 大 に近 づ く とき に 得 られ,Jmin=1で
あ
る。kの 値 に対 す る J の値 を図5・6に 示 す 。 この 図 は,k の値 が 無 限 大 に 近 づ くに 従 っ て評 価 関 数 の値 が 漸 近 的 に最 小 値 に近 づ くこ とを示 して い る。
図 5・6
〔例 題 〕5・2に
お け る フ ィ ー ドバ ッ ク ゲ イ ン kの
値 に 対 す る 評 価 関 数 Jの 値
こ こ で,次
の こ と に 注 意 し よ う 。 も し,フ
く す る こ と が で き れ ば,フ
ィ ー ドバ ッ ク 信 号
ィ ー ドバ ッ ク ゲ イ ン k を 非 常 に 大 き
u(t)=-k{x1(t)+x2(t)} も非 常 に 大 き くす る こ とが で き る。 しか し,実 際 に は 実 現 で き る制御 信 号u(t)の 大 き さ は制 限 され る。し た が って,こ の 制 御 信 号u(t)に せ るた め に,ゲ
対 す る拘 束 条 件 を満 足 さ
イ ン を非 常 に大 き くす る こ とは で きず,あ
な けれ ば な らな い。 例 え ば,制 御 信 号u(t)に
る程 度 の大 き さ に抑 え
対 す る拘 束 条 件 を
│u(t)│〓50 とす る と,ゲ
(5・34)
イ ン k に 対 し て 許 容 で き る 大 き さ は, (5・35)
と な る 。 こ の と き,J
の 最 小 値 は,
(5・36)
と な り,J の 絶 対 的 な 最 小 値 に十 分 近 い値 とな っ て い る。
〔3 〕
制御量の評価
式(5・11)で 示 され た 評 価 関 数 の 考 察 で は,制 御 信 号 の 大 き さ は考 慮 され て い な い 。それ は評 価 関 数 を表 す 式 に制 御 信 号u(t)が
現 れ て い な い こ とか ら も明 らか で
あ る。 しか しな が ら,実 際 に は制 御 信 号 に よ る エ ネ ル ギ ー の 消 費 量 が 問題 とな る 場 合 も多 く存 在 す る。 例 え ば,宇 宙 船 にお け る 姿 勢 の 制 御 系 に お い て は,[u(t)]2 は ジ ェ ッ ト燃 料 に よ るエ ネ ル ギ ー の 消 費 を表 し,長 期 間 に わ た る飛 行 中 の燃 料 を 確 保 す る た め に節 約 され な け れ ば な らな い 。 こ こで,制 御 信 号 に よ る エ ネ ル ギ ー の 消 費 を考 察 の対 象 と して取 り入 れ る た め に,次 の評 価 関 数 (5・37)
を導 入 す る。 こ こで,λ は ス カ ラ の重 み 係 数 で あ る。 この λの値 は,状 態 変 数 に よ っ て 決 ま る評 価(式(5・37)右
辺 第 1項 に相 当)に 対 す る,エ ネ ル ギ ー の消 費 に よ
る評 価 の相 対 的 な 重要 度 に よ っ て 決 定 さ れ る。 こ こで も,前 よ る フ ィー ドバ ッ ク を行 列 方程 式
と同様 に状 態 変 数 に
(5・38)
で 表 す と し,こ
れ に よ り状 態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク は,
(5・39)
と な る 。 こ こ で,式(5・38)を
式(5・37)に
代 入 す る と,次
式 を 得 る。
(5・40)
こ こ で,Q=(I+λHTH)は(n×n)次 へ 議 論 を 展 開 し た よ う に,こ
元 の 行 列 で あ る 。 式(5・11)か こ で も,次
ら 式(5・15)
の完全微分
(5・41)
の 存 在 を仮 定 す る。 この場 合 に は, (5・42)
が 満 た す べ き 条 件 と な り,し
た が っ て,式(5・15)と
同様 に し て (5・43)
を 得 る。 こ れ に よ り 設 計 手 順 は,式(5・42)の 述 の 式(5・16)か
〔 例 題 〕5・3
ら 式(5・17)と
図5・2の
右 辺 が-Iで
は な く-Qで
あ る以 外 は,前
全 く同 じ で あ る。
例 題 と 同 じ シ ス テ ム を 考 え る 。 こ の シ ス テ ム で,次
の よ
う な 状 態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク を 行 う と す る 。
(5・44)
し た が っ て,行
列 Q は
Q=(I+λHTH) =(I+λk2I) =(1+λk2)I
(5・45)
で あ る 。 〔例 題 〕5・2の よ う に,J=p11と 式(5・42)か
らp11を
す る た め にxT(0)=
10
〔
〕
とす る。
求 め る と,
DTP+PD=-Q =−(1+λk2)I
(5・46)
よ り,
(5・47)
が 得 ら れ る 。 J の 最 小 値 は,dJ/dk=0と
お く こ と に よ り,す
な わ ち, (5・48)
を 満 た すk=kminか
ら得 ら れ る 。す な わ ち,評 価 関 数 の 最 小 値 はk=kminで
図 5・7
〔例 題 〕5・3に お け る フ ィー ドバ ッ ク ゲ ィ ン kの 値 に 対 す る 評 価 関 数 Jの 値
得 られ
る 。 式(5・48)の
解 は ニ ュ ー ト ン ・ラ フ ソ ン 法 や カ ル ダ ノ の 解 法 に よ っ て 求 め る こ
とが で き る。 こ こ で,制 λ=1で
御 の エ ネ ル ギ ー と状 態 変 数 の 2乗 が 同 等 に 重 要 で あ る,す
あ る 場 合 を 考 え よ う 。 こ の 場 合,式(5・48)は4k3+k2-1=0と
ー トン ・ラ フ ソ ン 法 に よ り
,kmin〓0.6と
J の 値 は 約2.5と
な る。 kminに
な わ ち, な り,ニ
ュ
よ っ て 与 え られ る評 価 関 数
な り,前 の 例 題 の 場 合 よ りか な り大 き い 。 こ れ は エ ネ ル ギ ー の 消
費 を偏 差 と同 程 度 に重 要 視 して い る か らで あ る。 この場 合 の k に対 す る J の値 を 図5・7に
示 す 。ま た,比 較 の た め に 〔 例 題 〕5・2に お け る k に 対 す る J の 値 も 同 時 に
示 す。
以 上 の論 議 か ら,評 価 関 数 J を最 小 に す る こ と は,制 御 系 の過 性 特 性 を よ く し, か つ,制 御 の た め の エ ネ ル ギ ー消 費 を少 な くす る とい う制 御 上 か らは , 相 反 す る 要 求 に な る。 この 〔 例 題 〕5・3および 〔 例 題 〕5・2より,実 際 に得 られ る J の 最 小 値 は,初 期 条 件,評
価 関 数 の 定 義,重
み 係 数 λ等 に依 存 す る こ とが わ か る。
パ ラ メー タ が さ らに 多 い 場 合 や,よ
り高 次 の シ ス テ ム に 対 して も基 本 的 に は同
様 な 手 法 で設 計 を行 う こ とが で き る。
5 ・2
最 適 レギ ュ レー タ
前 節 で は,状 態 変 数 フ ィー ドバ ッ ク を用 い て評 価 関 数 を最 小 にす る 最 適 制 御 問 題 の概 要 を,例 題 を 中 心 に して,厳 密 性 を追 究 す る こ とな く紹 介 した。本 節 で は, この 問題 を最 適 レギ ュ レー タ問 題 と して 取 り上 げ,厳 密 に記 述 す る こ とを試 み る。
〔1〕
最 適 フ ィ − ドバ ッ ク 則
制 御 系 が 線 形 で あ り,そ の 振 る舞 い を記 述 す る状 態 方 程 式 が 次 式 で 与 え られ る もの とす る。
x(t)=A(t)x(t)+B(t)u(t) 初 期 時 刻t=t0に
(5・49)
お け る 状 態 変 数X(t0)と,区
単 に 入 力 と 呼 ぶ こ と が あ る)u(t)が
間[t0,t1]に
わ た る 制 御 入 力(以 下,
与 え ら れ る と,式(5・49)の
解 は一 意 的 に 定 ま
る 。 い ま,与
え ら れ たx(t0),u(t)と,そ
れ ら に 対 応 し て 定 ま る 解x(t)に
対 し て定
義 され る量
を 最 小 に す る よ う にu(t)を
定 め る 問 題 を 考 え る 。 こ こ に,J
ム の 評 価 関 数 と呼 ば れ る 。 F,Q(t),R(t)は,前
は 式(5・49)の
システ
節 で も 若 干 述 べ た よ う に,シ
ステ
ム の実 際 的 な性 能 評 価 か ら適 切 に設 定 され る対 称 で 非 負 定 値 の行 列 で あ る。 た だ し,R(t)は
す べ て の tに 対 し て 正 則,│R(t)│〓0で
小 に す る と き の 入 力u(t)は こ こ で,以
を最
最 適 制 御 入 力 と呼 ば れ る 。
下 の よ うな こ とを考 え る。
あ る(n×n)次 も の と し,次
あ る と仮 定 す る 。 ま た,J
元 の 行 列P(t)は
対 称 で,区
間[t0,t1]に
お い てP(t)が
の 恒 等 式 を考 え る。
ま た,式(5・49)と
第
あ る 。 こ こ で,式(5・51)を
この 式 中 のx(t)お
2 章 の 式(2・19)よ
り,xT(t)=xT(t)AT(t)+uT(t)BT(t)で
次 の よ う に 書 き換 え る。
よ びxT(t)に
上 式 を代 入 す れ ば
項 の 順 序 を入 れ 換 え る と,次 式 に な る。
存在 す る
+uT(t)BT(t)P(t)x(t)+xT(t)P(t)B(t)u(t)}dt=0
(5・53)
こ の結 果 を利 用 す る と,上 記 の 問題 に対 す る解 は容 易 に得 られ る。
定理 5 ・1
(n×n)の
行 列P(t)に
関 す る リ カ ッ チ の 微 分 方 程 式(Riccati
differentialequation)
P(t)=-AT(t)P(t)-P(t)A(t)+P(t)B(t)R-1(t)BT(t)P(t)-Q(t)
}
P(t1)=F (5・54)
の 解 が 区 間[t0,t1]で
存 在 す る も の と す る 。そ の 時,与 え ら れ たx(t0)=x0に
評 価 関 数 式(5・50)を
最 小 に す る 最 適 制 御 入 力u(t)は,
u(t)=-R-1(t)BT(t)P(t)x(t) と 定 め られ る 。 た だ し,P(t)は な お,評
式(5・54)の
対 して
(5・55)
リカ ッ チ の微 分 方 程 式 の 解 で あ る。
価 関数 Jの最小値 は
Jmin=xT(t0)P(t0)x(t0)
(5・56)
とな る。
〔 証 明 〕 式(5・52)か 利 用 す る と,次
ら恒 等 式(5・53)を
の よ う に な る。
引 き,P(t)が
式(5・54)の
解 で ある ことを
こ こで,上 式 の積 分 項[]内
を次 の よ う に変 形 す る。
xT(t)P(t)B(t)R-1(t)BT(t)P(t)x(t)+uT(t)BT(t)P(t)x(t) +xT(t)P(t)B(t)u(t)+uT(t)R(t)u(t) =uT(t)R(t)u(t)+xT(t)P(t)B(t)u(t)+uT(t)BT(t)P(t)x(t) +xT(t)P(t)B(t)R-1(t)BT(t)P(t)x(t) こ こ で,P
は 対 称 行 列,す
な わ ち,PT(t)=P(t)お
よ びI=R(t)R-1(t)を
して
=uT(t)R(t)u(t)+xT(t)PT(t)B(t)u(t) +uT(t)R(t)R-1(t)BT(t)P(t)x(t) +xT(t)PT(t)B(t)R-1(t)BT(t)P(t)x(t) =[uT(t)R(t)+xT(t)PT(t)B(t)]u(t) +[uT(t)R(t)+xT(t)PT(t)B(t)]R-1(t)BT(t)P(t)x(t) =[uT(t)R(t)+xT(t)PT(t)B(t)][u(t)+R-1(t)BT(t)P(t)x(t)] =[uT(t)R(t)+xT(t)PT(t)B(t)R-1(t)R(t)][u(t) +R-1(t)BT(t)P(t)x(t)] =[uT(t)+xT(t)PT(t)B(t)R-1(t)]R(t)[u(t) +R-1(t)BT(t)P(t)x(t)] こ こ で,R(t)は
対 称 行 列,す
な わ ちRT(t)=R(t)を
用 い る と,
=[uT(t)+xT(t)PT(t)B(t)(R-1(t))T]R(t)[u(t)
利 用
+R-1(t)BT(t)P(t)x(t)] さ ら に,こ
こ で 転 置 行 列 に 関 す る 一 般 的 な 公 式(ABCD)T=DTCTBTATお
び(A+B)T=AT+BTを
よ
利 用 す る と,
=[u(t)+R-1(t)BT(t)P(t)x(t)]TR(t)[u(t)+R-1(t)BT(t)P(t)x(t)] と な る の で,結
局 J の 式 は,
(5・57) とな る。
R(t)は
正 定 値 だ か ら,式(5・57)よ
小 に な り,そ
り,J は 明 ら か に 式(5・55)が
成 立 す る と き最
の 値 は 式(5・56)で 与 え ら れ る 。
式(5・55)は,時
刻 tに お け る 最 適 制 御 入 力 が そ の 時 点 の 状 態 変 数 か ら 直 接 的 に
求 め ら れ る こ と,す
な わ ち,最
適 制 御 が 状 態 変 数 の フ ィ ー ドバ ッ ク に よ っ て 実 現
で き る こ と を 示 し て い る 。 こ の 事 実 は,最
適 フ ィ ー ドバ ッ ク 則,あ
るい は閉 ル ー
プ 最 適 フ ィ ー ドバ ッ ク 則 と呼 ば れ て い る 。 こ の 最 適 フ ィ ー ドバ ッ ク則 の 概 念 を 図 で 示 す と,図5・8の
よ う に 示 す こ と が で き る。
図5・8 状 態 変 数 を 用 い る 最 適 フ ィー ドバ ッ ク の 概念図
〔2 〕
レギ ュ レー タ問 題
定 理5・1に
よ っ て,最 適 制 御 入 力 を求 め る た め に は リカ ッ チ の微 分 方程 式(5・
54)を 解 け ば よ い こ と が わ か っ た 。
シス テム の振 る舞 い を表 す 方 程 式 が (5・58)
と表 され る 。 す な わ ち,内 部 状 態 を表 す状 態 変 数 を直 接 観 測 す る こ とは で きず, 出 力 変 数y(t)を
とお し て の み観 れ る もの とす る。 また,評 価 関 数 は (5・59)
で 与 え られ る もの とす る と,そ の 最 小 値 を与 え る最 適 制 御 は,前 節 と同様 に し て, リカ ッチ の 微 分 方 程 式
(5・60)
を 満 た すP(t)を
求 め る こ と に よ り, (5・61)
で 与 え ら れ る 。 こ こ で,行 係 数 で,tf→
は 変 係 数 行 列 で あ っ て も よ い が,定
∞ の 場 合 が 最 も よ く 用 い ら れ る 。 問 題 の 時 間 区 間[t,tf]に
→ ∞ と し た と き,リ し,最
列 A,B,C,Q,R
カ ッ チ の 行 列 微 分 方 程 式(5・60)の
適 フ ィ ー ドバ ッ ク 則 も時 間 不 変 と な り,工
る 。 そ し て,こ 題 は,最
の よ う な 定 係 数 行 列 の 場 合 に,最
適 レ ギ ュ レ ー タ 問 題,あ
い ま,シ
解P(t)は
学 的 に も,よ
お い てtf
定数 行列 に集束 り実 現 が 容 易 に な
適 フ ィ ー ドバ ッ ク 則 を 求 め る 問
る い は単 に レギ ュ レー タ問 題 と呼 ば れ る。
ス テ ム(5・58)に 対 し て 評 価 関 数 が (5・62)
で 与 え ら れ る と す る 。 こ こ で R,Q は そ れ ぞ れ(γ × γ),(m×m)の 列 と す る 。 こ の と き,次
正 定値 定数行
の 定 理 が 成 立 す る。
定 理5・2 シ ス テ ム(5・58)は,可
制 御 か つ 可 観 測(第
4章 参 照)と
す る。 こ
の と き評 価 関数 J を最 小 に す る最 適 制 御 入 力 は 一 意 的 に存 在 し,そ の 最 適 フ ィ ー ドバ ツ ク則 は u(t)=-R-1BTPχ(t)
で 与 え られ る。 こ こで,P
(5・63)
は リカ ッチ の 定 常 行 列 方程 式
ATP+PA-PBR-1BTP=-CTQC
(5・64)
の 解 で あ り,次 の 条 件 を満 足 す る。 ①
P は正 定 値 で あ る。
②
行 列(A-BR-1BTP)は
安 定 で あ る。す な わ ち,す べ て の 固 有 値 は 負 の 実 部
を持 つ 。
5・3 オ ブ ザ ー バ 問 題
式(5・61)あ
る い は 式(5・63)か
ら わ か る よ う に,最
態 変 数 χ(t)が 必 要 で あ る が,式(5・58)に る の はy(t)の
適 制 御 を実 行 す るた め に は状
お い て は,出
み で あ る 。 し た が っ て,χ(t)の
力 と して用 い る こ との で き
推 定 値 χ(t)を 何 ら か の 方 法 に よ り
作 り 出 さ な け れ ば な ら な い 。 こ の よ う な 問 題 は オ ブ ザ ー バ 問 題 と 呼 ば れ,〔C,A〕 が 可 観 測 で あ れ ば χ(t)を 発 生 す る オ ブ ザ ー バ の 構 成 が 可 能 で あ り,こ ー バ の 出 力 χ(t)を 用 い る と
,最
適 制 御 はu(t)=-R-1BTPχ(t)で
のオ ブザ
実現 で き る。
〔1〕 状 態 推定 最 適 レ ギ ュ レ ー タ の 制 御 法 則,式(5・63)は,シ ー ドバ ッ ク の 形 に な っ て い る -R-1BTPと 現 す る に は,す
ス テ ム の状 態 変 数 を用 い た フ ィ
。 す な わ ち,フ
す る フ ィ ー ドバ ッ ク 制 御 で あ る
ィ ー ドバ ッ ク の ゲ イ ン K を
。 し か し な が ら,こ
れ を具 体 的 に 実
べ て の 状 態 変 数 が 測 定 で き る こ と が 必 要 で あ る こ と と,フ
ィー ド
バ ッ ク ゲ イ ンが 何 らか の 方 法 で 決 ま る こ とが 必 要 で あ る。
式(5・62)の よ うな 二 次 形 式 の評 価 関 数 に対 して は 重 み行 列Q,Rが
与 え ら れ,
制 御 対 象 の 動 特 性 A,B が 正 確 にわ かれ ば フ ィ ー ドバ ッ ク ゲ イ ンK=-R-1BTP は リカ ッチ 方 程 式 の解 と して 一 意 に計 算 で き る。 しか しな が ら,こ れ は純 粋 に理
論 上 の 話 で あ り,現 実 に は フ ィー ドバ ッ ク に必 要 な状 態 変 数 の す べ て を直 接 的 に 計 測 す る こ と は一 般 的 に は不 可 能 で あ る。 す なわ ち,ご
く限 られ た 出 力 の みが 測
定 可 能 で あ っ た り,あ る い は雑 音 に乱 さ れ た 不 正 確 な情 報 で あ る場 合 が 多 い。 さ ら に,制 御 対 象 の 動 特 性 も周 囲 の 環 境 に よ っ て時 々 刻 々 と変 化 す る こ と を考 え る と,A,B が 一 定 値 とみ な さ れ る場 合 は む し ろ ま れ で あ っ た り,あ る い は,A, B が 未 知 で あ った りす る。 この よ う な場 合 に,測 定 可 能 な入 力 お よ び 出力 情 報 か ら状 態 変 数 を推 定 して フ ィー ドバ ッ ク を 行 う こ とが 考 え られ る。 す な わ ち,オ ブ ザ ー バ(observer)と
呼
ばれ る装 置 を構 築 し,こ れ に よ り推 定 され た 状 態 変 数 を用 い て フ ィー ドバ ック を 施 し,レ ギ ュ レー タ を構 成 す る とい う方 法 で あ る。 い ま,制 御 対 象 が 可 観 測 で あ る と して,次 式 で表 され る 多 入 力 多 出 力 シ ス テ ム を考 え る。 χ(t)=Aχ(t)+Bu(t)
(5・65)
y(t)=Cχ(t)
(5・66)
上 式 に お い て,状
態 変 数 χ(t)が 測 定 で き な い と き,入
力u(t),出
力y(t)お
よ
び こ れ らの 微 分 と の 線 形 結 合 で χ(t)を 生 成 す る こ と を 考 え る 。 式(5・66)を 微 分 し て,こ
れ に 式(5・65)を
代 入 す る と,
y(t)-CBu(t)=CAχ(t) 式(5・67)を
(5・67)
さ ら に 微 分 し て 式(5・65)を
代 入 す る と,
y(t)-CBu(t)-CABu(t)=CA2χ(t)
とな り,こ れ を続 け る と次 式 の関 係 が 得 られ る。
(5・68)
上 式 の 右 辺 は測 定 可 能 な入 力,出
力 お よ び これ らの微 分 項 との線 形 結 合 で 表 さ
れ て お り,す べ て既 知 で あ る。 と こ ろで,こ
こで は制 御 対 象,式(5・65),(5・66)
は可 観 測 で あ る と仮 定 して い る が,こ の こ とは 可 観 測 性 行 列
の ラ ン ク が n で あ る と い う こ と で あ り,こ
の 行 列 が 正 則 で あ る こ と,す
な わ ち,
逆 行 列 が 存 在 す る こ と を 意 味 す る 。 こ の こ と か ら状 態 ベ ク トル χ(t)は,
(5・69)
と求 ま る。 上 の 関 係 か ら明 らか な よ う に,入 出 力 信 号 に雑 音 が 存 在 しな い と仮 定 す れ ば,入
出力 お よ び こ れ らの 高 次 階微 分 を 実行 す る こ とに よっ て 状 態 推 定 が 可
能 で あ る。 しか しな が ら,実 際 の 制 御 対 象 で は入 力 や 出 力 に雑 音 が 含 まれ る の が 普 通 で あ り,こ れ ら の微 分 信 号 を用 い て χ(t)を 推 定 した の で は か な りの 誤 差 を 含 む こ と と な り,実 用 に は な らな い。 状 態 推 定 器 と して 有 名 な カ ル マ ン フ ィル タ(Kalmanfilter)は,雑
音 を伴 う制
御 対 象 の状 態 量 を雑 音 を含 む観 測 デ ー タ か ら推 定 す る もの で あ り,こ の 状 態 推 定 量 を フ ィー ドバ ック信 号 に用 い て 閉 ル ー プ制 御 シ ス テ ム を構 成 す る 。 通 常 の カル マ ン フ ィル タの 設 計 に は 考 慮 した雑 音 の 平 均 値 とか 共 分 散 とか の統 計 的 性 質 が 既 知 で あ る こ とが 必 要 で あ る。 こ の こ と は制 御 系 を設 計 す る前 に,予
め制 御 対 象 に
加 わ る雑 音 の種 類 や 統 計 的性 質 を精 度 よ く把 握 して お か な け れ ば な らな い が,こ の こ と も実 際 問題 と して は極 め て 困難 な 場 合 が 多 い 。 さ ら に,何
らか の 検 出器 を用 い て,す べ て の状 態 変 数 が 測 定 され る場 合 で も制
御 対 象 の 動 特 性 が正 確 に わ か ら な い と き に は未 知 パ ラ メー タ を推 定 す る パ ラ メ ー タ 同定 機 構 が 必 要 に な り,こ の 場 合 に はパ ラ メ ー タ同 定 問 題 と し て定 式 化 さ れ る。
もち ろ ん,制 御 対 象 の 動 特 性 が不 確 か で,し
か も状 態 変 数 の一 部 しか 出力 と し て
観 測 で き な い よ うな場 合 も,実 際 問題 と して し ば しば 生 ず る。 例 えば,人 工 衛 星 を打 ち 上 げ る ロ ケ ッ トな どの よ うな場 合 で は,高 度,速 度,燃 料 消 費 に伴 う質 量 , 大 気 の圧 力 な ど は,時 々 刻 々 大 幅 に変 化 し,ま た,位 置 や 速 度 の情 報 を得 る た め に ジ ャ イ ロや 加 速 度 計 を検 出 器 と して使 用 す れ ば,必
ず何 らか の観 測 雑 音 を含 む
こ とに な る。 こ の よ う に入 出 力 情 報 の み を用 い て未 知 パ ラ メ ー タ を 同定 し なが ら測 定 で き な い状 態 変 数 を同 時 に推 定 す る 方 式 は,一 般 に 適 応 オ ブ ザ ー バ の 設 計 問 題 と呼 ば れ て い る。
〔2〕 オ ブザ ーバ に よ る状 態 変 数 の 推 定 前 項 で 概 要 を述 べ た よ う に,検 出可 能 な入 力 と出 力 とか ら未 知 の状 態 変 数 を推 定 し,こ の 推 定 され た状 態 変 数 を用 い て フ ィ ー ドバ ッ ク制 御 を実 現 し よ う とい う 考 え 方 が あ る。 制 御 対 象 の 動 特 性 が 正 確 に わ か っ て い る と き,入 出 力 信 号 を 用 い て観 測 で き な い状 態 変 数 を推 定 す る問 題 は オ ブ ザ ー バ の 設 計 問 題 と呼 ばれ て い る。 これ は オ ブ ザ ー バ へ の 入 力 と して は制 御 対 象 へ の 測 定 可能 な入 力u(t)お
よび 出 力y(t)の
み
を用 い,真 の 状 態 χ(t)の オ ンラ イ ン推 定 値 χ(t)が オ ブ ザ ー バ か らの 出 力 に な る よ うな 装 置 を構 成 す る こ とで あ る。 こ こ で,制
御 対 象 と し て は, χ(t)=aχ(t)+Bu(t)+v(t) (5・70)
y(t)=Cχ(t)
で 表 せ る 可 制 御,か 能 な 入 力,v(t)が
つ可 観 測 の 制 御 対 象 を 考 え る。u(t)は 操 作 量 の よ う な測 定 可
外 乱 の よ う な測 定 で きな い入 力 で あ る。y(t)の 次 元 が 制 御 対 象
の 次 数 よ り低 い と き に は,C は矩 形 行 列 にな る の で,そ の 逆 行 列 を用 い てy(t)の 実 測値 か ら χ(t)を 求 め る こ とが で きな い 。そ こで,制 御 対 象 の モ デ ル を 用 い,こ の モ デ ル の 状 態 変 数 χ(t)を も っ て χ(t)の 推 定 値 とす る こ と を考 え る。 まず,制 御 対 象 と同 一 の モ デ ル を電 子 計 算 機 あ る い は電 子 回 路 な どで構 成 し,
図5・9 制 御 対 象 とモ デ ルの並 置 図5・9の
よ う に 置 い て み る 。 た だ し,制 御 対 象 の A,B, C は 正 確 に わ か っ て い る
もの とす る。
こ こで,モ
デル の状 態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 は
(5・71)
で あ る 。 も し,モ Cと
デ ル が 実 シ ス テ ム と 全 く等 し い,す
な わ ち,A=A,B=B,
す る と,両 シ ス テ ム と も 入 力 が 等 し い の で,モ デ ル の 初 期 値x(0)と
の 初 期 値x(0)が
等 し け れ ばt>0で
し か し な が ら,一 般 にx(0)は
もx=x(t)と
未 知 で,x(0)を
の で,x(0)〓x(0)で
あ り,実
に は,x(t)〓x(t)で
あ り,y(t)〓y(t)と
y(t)の
C= 制御 対象
なる。 観 測 の 度 に 設 定 し直 す の も難 し い
際 に は, A〓A, B〓B, C〓Cで な る の で,図5・10の
も あ る 。 この とき よ う に, y(t)と
差 を ゲ イ ン ベ ク トル K を 介 し て モ デ ル に フ ィ ー ドバ ッ ク し,モ
正 す る こ と が 考 え ら れ る 。 こ の 場 合 の モ デ ル の 式 は,式(5・71)を
デ ル を修
修 正 し て,
(5・72)
図5・10
と な る 。 こ こ で,f(t)は 差[y(t)-y(t)]に ち,K
モデ ル の修 正 と オプザ ー バ
モ デ ル の 状 態 が 制 御 対 象 の 状 態 へ 収 束 す る よ う に,出
力
よ っ て モ デ ル を 駆 動 す る た め の フ ィ ー ドバ ッ ク で あ る 。す な わ
を ゲ イ ン 行 列 と し て,
f(t)=K{y(t)-y(t)} =KCx(t)-KCx(t)
(5・73)
と 表 さ れ る 。理 想 条 件 と し てA=A,B=B,C=C,す
な わ ち,モ
と全 く一 致 し,か
し よ う。 こ の と き 状 態 変 数
つ 計 測 で き な い 外 乱 入 力 ν(t)が0と
デ ル が制 御 対 象
の 推 定 偏 差e(t)を
e(t)=x(t)-x(t) と す れ ば,式(5・70)か 注 意 す る と,次
ら 式(5・72)を
(5・74)
引 き,式(5・73)がf(t)=KCe(t)に
な る こ とに
式 が 得 られ る。
e(t)=(A-KC)e(t)
(5・75)
t=0に
お け る 制 御 対 象 の 初 期 状 態X0は
き な い 。 そ こ で,モ
x が 測 定 で き な い の で 知 る こ とが で
デ ル は 初 期 状 態 を 0に と っ て ス タ ー トす る 。 す な わ ち,式(5・
75)の 初 期 値 は,制 御 対 象 の 初 期 値e(0)=X0で
あ る 。し た が っ て,式(5・75)の
解 は,
e(t)=e(A-KC)te(0) (5・76) =e(A-KC)tx0
と な る。 それ ゆ え,K
を適 切 に選 ん で(A-KC)が
漸 近 的 に安 定 で,し か も収 束
の 速 い 固 有 応 答 を もつ よ うに K を設 計 す る と,任 意 の 初 期 誤 差e(0)に に 応 じ てx(t)→x(t)に
演
対 して
よ り状 態 変 数 の 推 定 が で き る 。
習
問 題
〔5 〕
〔問題 〕1.制 御 対 象 が
で 表 さ れ る と き,
評価関数 を最小 にす る最適 制御 則u=Hxを
〔 問題 〕2. 制御 対 象が 1次 元 の微 分 方程式 x=-ax+u で 表 さ れ る と き,
評価関数 を最小 にす る最 適制 御則 を求 めよ。
〔 問 題 〕3.制 御 対 象 が x=Ax+bu y=cx
た だ し,ρ>0
リカ ッチの 方程式 を直 接解 いて求 め よ。
で 記 述 さ れ て い る。 また,目
標 値 は大 き さrの
ス テ ッ プ関 数 とす る。 この と き
制 御則 を u=-KTx+u0 と お き,定 常 偏 差 が 零 とな る よ う に す るた め のu0を
求めよ
。
第 6章
デ ィ ジタル シス テ ム の扱 い
デ ィ ジ タ ル シ ス テ ム,す な わ ち離 散 時 間 シ ス テ ム の 取 り扱 い に つ い て は, 上 巻 第 5章 で サ ン プ ル 値 制 御 系 と し て 述 べ ら れ て い る が,こ ナ ロ グ シ ス テ ム,す
の 章 で は,ア
な わ ち連 続 時 間 シ ス テ ム が 与 え られ た と き,そ れ を 離
散 時 間 シ ス テ ム で 扱 う に は,ど の よ う に変 換,処 理 す れ ば よ い か に つ い て, よ り詳 し く述 べ る 。 さ ら に,連 続 時 間 シ ス テ ム に 関 して,前
章 ま で に現 代
制 御 理 論 の 立 場 か ら検 討 した 基 本 的 な 問 題 に つ い て,離
散 時 間 システ ムで
は どの よ う に な る か を ま とめ た 。 こ れ ら は,実
ス テム を コン ピュ
際 に,シ
ー タ に よ っ て 制 御 す る と き必 要 と な る。
図6・1デ
6
・
1
ィジ タル 制御 シ ステ ム
連 続時 間 システ ムか ら離 散時 間 システ ムへの変換
一 般 に,連 続 時 間 シス テム の動 作 は,す で に 第 3章 に述 べ た よ う に,微 分 方程 式 に よ っ て記 述 され る。 こ こで は,連 続 時 間 シ ス テム か ら離 散 時 間 シ ス テ ム へ 変 換 す るの に は,ど い ま,入
の よ う な変 換 を 行 え ば よ い か に つ い て具 体 的 に検 討 しよ う。
力u(t),出
力y(t)と
し,次
の よ うな 線 形 シ ス テ ム に 注 目 す る。 (6・1)
y(t)=cx(t)
(6・2)
(b)離 散時 間 シス テム
(a)連 続 時 間 シ ス テ ム 図6・2一
次 元 シ ステム の状 態 変数 線図
〔1〕 離 散 化 の 方 法(I) まず,離 散 時 間 シ ス テ ム に お け る微 分 の 扱 い につ い て考 え る。 時 間 変 数 tに つ い て の微 分 は,一 般 に 次 の よ うに 定 義 され る。
(6・3)
この よ うな 時 間 微 分 を離 散 時 間 シ ス テ ム で 扱 う とす る と き,
の操 作が で き
な い。 これ は ⊿tの 最 小 値 は,信 号 の サ ン プ リン グ 間 隔 の 最 小 値 T 以 下 に す る こ とが で きな い か らで あ る。 した が って,離 散 時 間 シ ス テ ム で は,微 分 を次 の よ う な差 分 で 近似 す る こ とに な る。 (6・4)
こ こ で,T : サ ンプ リン グ周 期 こ の 式 を 式(6・1)の 左 辺 に 適 用 す れ ば,
(6・5)
と な る。 時 間 tは,離 2,…)と
散 的 に 進 行 す る こ とか ら,現 在 の 時 刻 t をt=kT(k=0,1,
表 せ ば,式(6・5)は,次
の よ うに表 され る。
し た が っ て,
x{(k+1)T}=(1+aT)x(kT)+bTu(kT) こ こ で,便 式(6・7)と
宜 上,x(kT)→x(k),x{(k+1)T}→x(k+1)と
(6・6) 書 け ば,式(6・6)は
な る。
x(k+1)=ax(k)+bu(k)
(6・7)
同 様 に し て,
y(k)=cx(k)
(6・8)
こ こ で,a=1+aT,b=bT,c=c の よ う に表 さ れ る。
以 上 は,オ イ ラー 近 似 を用 い た離 散 時 間 シ ス テ ム で あ り,こ の よ う な離 散 化 は 簡 単 な た め よ く用 い られ る。 しか しな が ら,こ の シ ス テ ム は,サ
ンプ リン グ周 期
T が 大 き くな る と,そ の 振 舞 は,式(6・1)の 原 シ ス テ ム の それ と大 き くか け は な れ た り,極 端 な場 合 は不 安 定 に な る こ とが あ る 。
〔2〕
離 散 化 の方 法(Ⅱ)
次 に,さ
ら に厳 密 な 離 散 化 の 方 法 につ い て 述 べ る。 これ は連 続 時 間 シ ス テ ム の
微 分 方 程 式 を 解 い てx(t)を
求 め た 後,近
似 値 を 用 い てx(k)を
求 め る方 法 で あ
る。 式(6・1)の 微 分 方 程 式 の 一 般 解 は,次
式 で 与 え ら れ る(第
3章 式(3・60)参
照)。
(6・9)
し た が っ て,t=kT,t=(k+1)Tに
お け るx(t)は,そ
図 6・3
シ ステ ム の離 散 化
れぞれ
(6・10)
(6・11)
と な る 。 式(6・10)を
変 形 し て,式(6・11)に
ドに よ っ て,t=kTとt=(k+1)Tの
代 入 し,か
つ,入
力u(t)が
間 で は 一 定 値u(kT)で
0次 ホ ー ル
あ る こ と を考 慮 す
る と,
(6・12)
こ こ で,(k+1)T=τ=σ
な る 変 数 変 換 を 行 え ば,式(6・12)の
図
6・4
0次 ホー ル ドお よび信 号 波 形
右 辺 第 2項 は,
と な る 。 し た が っ て,式(6・12)は
次 の よ うに 表 さ れ る。 (6・13)
同様 に して,
y(kT)=cx(kT)
(6・14)
と な る 。こ こ で,簡 単 の た め,x(kT)→x(k),x{(k+1)T}→x(k+1),y(kT)→y(k) と 表 せ ば,式(6・13)お
よ び 式(6・14)は,そ
れ ぞ れ 次 の よ う に な る。
x(k+1)=ax(k)+bu(k)
(6・15)
y(k)=cx(k)
(6・16)
こ こ で,
6
・
2
離散時間システムの状態方程式 とその解
前 節 で は,1 変 数 の 連 続 時 間 シ ス テ ム か ら離 散 時 間 シ ス テ ム へ の 変 換 方 法 に つ い て検 討 した。 次 に,そ の 結 果 を線 形 多 変 数 シス テ ム の状 態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 の 離 散 化 に 適 用 しよ う。
連続 時間 シス テム の状 態方程式 お よび出力 方程 式
の 解 は,第
x(t)=Acx(t)+Bcu(t)
(6・17)
y(t)=Ccx(t)
(6・18)
3章 式(3・60)よ
り次 式 で 与 え られ る。 こ こ で,「 下 ツ キ 」の c は 連 続 時
間 シス テム の意 味 で 用 い て い る。 (6・19)
こ れ を 前 節 〔2〕と同 様 に 離 散 化 す る 。 す な わ ち,x(t)→x(t),y(t)→y(t)そ し てa→A,b→B,c→Cと の よ う に求 め られ る。
お け ば,離
散 時 間 シ ス テ ム の 状 態 方 程 式 は,次
x(k+1)=Ax(k)+Bu(k)
(6・20)
y(k)=Cx(k)
(6・21)
こ こ で,A=eAcT
C=Cc
T:サ 式(6・20)で
ンプ リン グ周 期
与 え ら れ る 離 散 時 間 シ ス テ ム の 状 態 方 程 式 は,ど
の ようなホール ド
方 式 を 用 い る か に よ り異 な る 。 こ こ で は,0 次 ホ ー ル ド と し て い る 。
図6・5 離散 時 間 シ ステ ムの 状 態 変数 線 図
次 に,式(6・20)に
注 目 す る 。 初 期 ベ ク トルx(0)お
0)が 与 え ら れ れ ば,次
よ び 入 力 ベ ク トルu(k)(k〓
の よ う な 漸 化 式 で 状 態 方 程 式,式(6・20)の
解 は 求 め ら れ る。
k=0:x(1)=Ax(0)+Bu(0) k=1:x(2)=Ax(1)+Bu(1) =A2x(0)十ABu(0)+Bu(1)
k=2:x(3)=Ax(2)+Bu(2) =A3x(0)+A2Bu(0)+ABu(1)+Bu(2)
(6.22) (6.23) この よ う に して 求 め られ る状 態 変 数 の 値 は,あ け る値 で あ る こ と に注 意 を要 す る。
くま で もサ ン プ リン グ時 点 にお
以 上 よ り出力 方程 式 は,次 の よ う にな る。
(6・24)
次 に,こ の よ うに 連続 時 間 シ ス テ ム か ら離 散 時 間 シス テ ム に変 換 さ れ た シ ス テ ム の安 定 性 につ い て 調 べ よ う。 い ま,TcをAcの 成 立 す る(第
2章,式(2・64)参
対 角 変 換 行 列 とす れ ば,次 式 が
照)。
(6・25)
さ ら に,Acの
固 有 値 を λ1,λ2,…,λnと す れ ば,上
式 は 式(6・26)の
よ う に表 され
る。
(6・26)
A の 固 有 値 は,│zI-A│=0の
根 で あ る 。 式(6・26)の
に な る。
│zI-A│=│zI-Tc-1eAcTTc│
関 係 を 用 い れ ば,次
の よ う
(6・27) こ れ よ り A の 固 有 値zi(i=1,2,…,
n)は,
zi=eλiT
(6・28)
で 与 え られ る 。Re{λi}<0(固
有 値 が 根 平 面 の 左 半 面 に あ る こ とを 意 味 す る)と
│zi│<1(固 有 値 が 単 位 円 内 に あ る こ とを 意 味 す る)と は等 価 で あ る。 した が っ て, 漸 近 安 定 な 連 続 時 間 シ ス テ ム を離 散 化 して も,そ の シ ス テ ム は漸 近 安 定 で あ る。
6
・
3
状態方程式 とパルス伝達関数行列
離 散 時 間 シ ス テ ム の 状 態 方程 式 とパ ル ス伝 達 関 数 行 列 との 関係 に つ い て,解 説 す る。
〔1 〕
Z変換 とZ演算子の意味
この本 の 上 巻,第
5章 サ ン プ リン グ制 御 で は,サ
ン プ ル値 化 した離 散 時 間 信 号
の 扱 い 方 と し て Z 変 換 を用 い た 。 時 間 信 号x(t)を
周 期 T で サ ン プ リ ン グ し た 信 号x*(t)は,式(6・29)の
パ ル ス 列 の 和 と し て 表 さ れ る(上 巻 第 5章 〔2〕参 照)
。 こ こ で,n<0で,信
ような 号 は 0
と す れ ば,
(6・29)
T:サ と な り,こ
ンプ リン グ周 期
の ラ プ ラ ス 変 換 は,次
の よ う に な る。
(6・30)
と な り,こ
こ でesT=zと
お け ば, x(t)のZ変
換 と な る 。 す な わ ち,
(6・31)
Z 変 換 は,サ ン プ リ ン グ時 点 に お け る値 の み に 注 目 し て い るの で,離 散 時 間 信 号 を表 す た め に 用 い る こ とが で き る。z=eSTの
物 理 的 意 味 は,あ る サ ン プ リ ン グ
時 刻 を基 準 に して,そ れ よ り 1サ ン プ リン グ前 の時 刻 は Z を掛 け,1 サ ン プ リ ン グ 後 の 時 刻 はz-1を 掛 けれ ば よ い こ と を示 して い る。す な わ ち,あ るサ ンプ リ ング 信 号 を 1サ ン プ リ ン グ周 期 進 ま せ る に は z を掛 け,逆 に,遅 らせ る に はz-1を 掛 けれ ば よい 。 (1)
離 散 信 号x(k+1)の
Z 変換
(b)
(a)
図6・6 zの 意 味
x(k)の
Z 変 換 をX(z)で
表 せ ば,式(6・31),す
な わ ち,
X(z)=〓x(k) =x(0)+x(1)z-1+x(2)z-2+…
の 両 辺 に z を 乗 ず る と,次
(6・32)
の よ うに な る。 (6・33)
式(6・33)の 右 辺 第 2項 以 降 は,図6・6(a)を 〓{x(k+1)}=zX(z)-zx(0)
表 し て い る 。 し た が っ て, (6・34)
(b)
(a)
図6・7
(2)
離 散 信 号x(k-1)
X(z)にz-1を
z-1の 意 味
の Z 変換
乗 ず る と, z-1X(z)=z-1{x(0)+x(1)z-1+x(2)z-2+…} =x(0)z-1+x(1)z-2+x(2)z-3+…
と な り,式(6・35)の
右 辺 は,図6・7(b)を
(6・35)
表 し て い る 。 し た が っ て,
〓{x(k-1)}=z-1X(z)
〔2 〕
(6・36)
パルス伝達関数行列
離散 時間 システムの状態方程 式
x(k+1)=Ax(k)+Bu(k) を Z 変 換 す る 。 上 式 に 式(6・34)を
(6・37)
適 用 す る と,次
の よ う に な る。
zX(z)-zx(0)=AX(z)+BU(z) す な わ ち,
X(z)=(zI-A)-1zx(0)+(zI-A)-1BU(z)
(6・38)
した が っ て,出 力 方 程 式 の Z 変 換 は
Y(z)=CX(z) =C(zI-A)-1zx(0)
+C(zI-A)-1BU(z) (6・39)
図6・8伝
達 関数 行 列
と な る 。 これ よ りパ ル ス 伝 達 関 数 行 列 は,式(6・39)で き,次
初 期 ベ ク トルx(0)=0と
お
の よ う に求 め られ る。 (6・40)
(6・41)
した が っ て,1入 力 1出 力 シ ス テ ム の パ ル ス伝 達 関 数 は,次 の よ う に与 え られ る。 (6・42)
(6・43)
6
・
4
可制御性 および可観測性
こ こで は,第
4章 で 述 べ た連 続 時 間 シ ス テ ム に対 応 す る離 散 時 間 シ ス テ ム の可
制 御 性 な らび に可 観 測 性 に つ い て 解 説 す る。
〔1 〕
可制御性
す で に述 べ た よ うに,離 散 時 間 シ ス テ ム の状 態 方 程 式 の 解 は,式(6・23)で
与え
られ る。 す な わ ち, (6・44) k=nの
と き は,
(6・45)
と な る 。 し た が っ て,次
式 が成 立 す る。
(6.46)
初 期 ベ ク トルx(0)=0な ≠0な
ら ば 存 在 し,次
の で,任
意 のxfに
対 しx(n)→xfを
満 す 入 力 は,│Γ│
の よ う に計 算 で き る。
(6・47)
こ れ よ り 可 制 御 の 必 要 十 分 条 件 は,rankΓ=n,す こ と は,初
期 ベ ク トルx(0)か
ら 有 限 の サ ン プ ル でxfへ
な わ ち│Γ│≠0で
あ る。 こ の
遷 移 させ る入 力 列 が 存 在
す る こ とを意 味 して い る。
〔2〕 可 観 測性 離 散時間 システム の状態 方程式 お よび出力 方程 式
x(k+1)=Ax(k)+Bu(k)
(6・48)
y(k)=CX(k)
(6・49)
に注 目 し,こ れ を漸 化 式 に展 開 して み よ う。
k=0:y(0)=Cx(0)
k=1:y(1)=Cx(1) =C{Ax(0)+Bu(0)} =CAx(0)+CBu(0) k=2:y(2)=Cx(2) =C{Ax(1)+Bu(1)}
=C{A(Ax(0)+Bu(0))+Bu(1)} =CA2x(0)+CABu(0))+CBu(1)
し た が っ て,
(6・50)
こ れ よ り,次
式 が 成 立 す る。
(6・51)
こ れ よ り可 観 測 の 必 要 十 分 条 件 は,rankⅡ=n,す
6
・
5
な わ ち│Ⅱ│〓0で
あ る。
状 態変数 フ ィー ドバ ック
状 態 方 程 式 な ら び に 出 力 方 程 式 が,
x(k+1)=Ax(k)+Bu(k) y(k)=Cx(k)
(6・52)
(6・53)
で 与 え られ る シス テ ム が,漸 近 安 定,す な わ ちlimx(k)=0.あ
る いは不安 定 な
場 合,u(k)=-Hx(k)な
る フ ィ ー ドバ
ッ ク を 行 う こ と に よ り,こ
の閉ル ープ系
が 漸 近 安 定 で,か
つ,そ
の 応 答 の減 衰 を
で き る だ け 速 か に す る こ と を 考 え る。
図6・9 離 散 時間 シ ステ ムの 応 答
任 意 の 初 期 ベ ク トルx(0)の 有 限 整 定(dead
beat)と
と き,有
限 の サ ン プ ルpで,x(k)→0と
な る とき
い う。 これ は連 続 時 間 シ ス テ ム で は見 られ な い 離 散 時 間
シ ス テ ム 特 有 の性 質 で あ る。
図6・10状
態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク シ ス テ ム
図6・10よ り状 態 変 数 フ ィー ドバ ッ ク を施 した 閉 ル ー プ 系 の 状 態 方 程 式 は,
x(k+1)=(A-BH)x(k) と な り,こ
の 解 は,次
(6・54)
式 の よ うに 与 え られ る。
x(k)=(A-BH)kx(0) (A-BH)の
(6・55)
固 有 値 が 単 位 円 内 に あ り,し か も,で き る だ け 原 点 に近 か け れ ば,
応 答 の 減 衰 は速 くな る。 この た め に は(A-BH)の 変 え られ る条 件 が 必 要 で あ る。 これ は,(A,B)が
固有値 が H に よっ て 自由に 可 制 御 で あ る こ とで あ る。
以 上 の こ と を,1入 力 1出力 の 可制 御 正 準 シス テ ム につ い て 具 体 的 に検 討 し よ う。
x(k+1)=(A-bh)x(k)
(6・56)
y(k)=cx(k)
(6・57)
こ こ で,特
性 方 程 式│zI-A│=zn+an-1zn-1+…+alz+a0=0
〕T
b=
0
〔
0
…
1
,
h=
h 0
〔
h1
…hn-1
〕
図6・11状
図6・11の
シ ス テ ム の 固 有 値 は,次
態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク
の よ う に な る。
(6・58)
一 方
,指
程 式 は,次
定 す る 閉 ル ー プ 系 の 固 有 値(特
性 根)を
λ1,λ2,…,λnと す れ ば,特
性方
の よ うに な る。 (z-λ1)(z-λ2)…(z-λn)=zn+αn-lzn-1+…+α1z+α0=0
式(6・58)お
よ び 式(6・59)よ
(6・59)
り,
an-1+hn-1=αn-1} an-2+hn-2=αn-2…
(6・60)
a0+k0=α0
と な り,状
態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク h が 求 め ら れ る 。 h=
h0 〔
h1
α0-a0
=〔
…
hn-1
α1-al
〕 …
αn-1 ̄an-1
特 に,指 定 す る 固 有 値(特 性 根)λ1,λ2,…,λnを
〕
(6・61)
す べ て 0 と す れ ば,式(6・59)は,
(6・62)
(z-λ1)(z-λ2)…(z-λn)=zn
と な り,状
態 変 数 フ ィ ー ドバ ッ ク h は,次 h=
-a0-a1…-a
〔
式 の よ う に与 え られ る。 (6・63)
〕
n-1
し た が っ て,(A-bh)は,
(6・64)
と な り,こ
れ よ り(A-bh)n=0で
あ る 。 し た が っ て, (6・65)
x(k)=(A-bh)kx(0)→0 この よ う に,シ
6
・
6
ス テ ム は kサ ンプ ル で 有 限 整 定 す る。
最適 レギ ュ レー タ
前 節 で述 べ た よ うに,状 態 変 数 フ ィー ドバ ッ ク に よ っ て,不 安 定 シ ス テ ム を安 定 化 した り,シ ス テ ム の 応 答 速 度 を改 善 す る こ とが で き るが,な
お,次
の ような
課 題 が あ る。
① シ ス テ ム が 可 制 御
な らば,状 態 変 数 フ ィー ドバ ッ ク に よ っ て,任 意 の 固 有
値(特 性 根)を 持 た せ る こ とが で き るが,実 際 どの よ う に指 定 す るか 。 離 散 時 間 シ ス テ ム で は,固
有 値 は 速 応 性 の 観 点 か ら は 0に近 い こ とが望 ま しい 。
② 多 入 出 力 シ ス テ ム で は,状
態 変 数 フ ィー ドバ ック H が 唯 一 に決 ま ら な い。
す な わ ち,同 一 の 固 有 値 で も,H
に 自由 度 が あ り,制 御 特 性 の観 点 か ら,こ
れ を ど の よ う に選 ぶ か 。 そ の た め,第
5章 の 連 続 時 間 シ ス テ ム で述 べ た よ う に,評 価 関 数 が 最 小 に な る
よ うな入 力 に よ り制 御 す る こ とが 考 え られ る。 これ が 最適 制 御 の 考 え 方 で あ る 。 こ こで は,第
5章 の 式(5・62)と 同 様 な 意 味 で,離 散 時 間 シ ス テ ム の 評 価 関 数 J
を,次 の よ う に定 義 し よ う。
(6・66)
こ こ で,Q〓0準 R>0正 Q=CTCで
あ り,(C,A)が
の と き,式(6・66)で
正 定(xTQx〓0
∀x=0)
定 (xTRx>0
∀x〓0)
可 観 測 な ら 安 定 な 最 適 レ ギ ュ レ ー タ が 得 られ る 。こ
与 え られ る J は 最 小 とな る。
最 適 レ ギ ュ レー タ の制 御 入 力 は,
u(k)=-Hx(k) =-(R+BTPB)-1BTPAx(k) と な り,こ
(6・67)
の シ ス テ ム は 漸 近 安 定 で あ る こ とが わ か っ て い る 。式(6・67)の
P は,
次 の よ うな 離 散 形 リカ ッチ 方 程 式 の 解 と して 求 め られ る。
P=Q+ATPA-ATPB(R+BTPB)-1BTPA 評 価 関 数 Jが 最 小 に な るた め に は,k→
∞ の と き,x(k)→0で
(6・68)
な け れ ば な らな
い 。 何 故 な ら ば,そ れ 以 外 で は J が 無 限 大 に な る か らで あ る。 正 方 行 列P(n×n)に
対 し て,
(6・69)
す な わ ち,
k=0:xT(0)Px(0)-xT(1)Px(1) k=1:xT(1)Px(1)-xT(2)Px(2) k=2:xT(2)Px(2)-xT(3)Px(3)
が 成 立 す る か ら,評 価 関数 J は,次 の よ う に表 され る。
(6・70)
(6・71)
こ こ で,P=-P+Q+ATPPA-ATPB(R+BTPB)-1BTPA (6・72)
式(6・71)でP=0と
な る よ う に P を 決 め れ ば,式(6・67)の
H よ り評 価 関 数 J は 最 小 に な る 。 す な わ ち,こ
状 態 フ ィ ー ドバ ッ ク
の 最 小 値 は 次 式 で 与 え られ る。
Jmin=xT(0)Px(0)
(6・73)
以 上 述 べ た 最 適 レ ギ ュ レ ー タ は,重 与 え ら れ れ ば,リ ら,Q
み 行 列(weighting
カ ッ チ の 方 程 式 の 解 と し て,制
お よ び R を ど の よ う に 選 定 す る か は,な
式(6・68)の
リ カ ッ チ 方 程 式 を 解 く に は,非
matrix)Q
および R が
御 則 が 求 め られ る。 しか しな が お残 る課 題 で あ る。
定 常 リ カ ッ チ 方 程 式,す
な わ ち,
P(k+1)=Q+ATP(k)A-ATP(k)B(R+BTP(k)B)-1BTP(k)A (6・74)
に 注 目 し,P(0)=0と 列 の 一 般 固 有 値,固
お き,繰
返 し計 算 に よ っ て P が 求 め ら れ る 。 こ の ほ か,行
有 ベ ク トル か ら計 算 す る 方 法,ポ
ッ タ ー(Potter)の
方法が あ
る。
6
・
7
オ ブザーバ
第 5章 で 述 べ た よ う に,状 態 変 数 フ ィー ドバ ック を 行 う場 合,実 の状 態 変 数 が 観 測 で き る とは 限 ら な い し,ま た,仮
りに 観 測 で き る と して も,数
多 くの セ ンサ ー を必 要 とす る等 の 問 題 が あ る。 この よ うな 場 合,入 いて 観 測 で き な い状 態 変 数 を推 定 す る の が,オ
際 に はす べ て
出力 信 号 を用
ブザ ー バ で あ る 。 こ の推 定値 を用
い て,シ ス テ ム に状 態 フ ィー ドバ ック を行 う こ とが で き る。
〔1〕
同一 次 元 オ ブ ザ ー バ
シス テ ム の状 態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 を
x(k+1)=Ax(k)+Bu(k)
(6・75)
y(k)=Cx(k)
(6・76)
と す れ ば,図6・12よ
り,次
式 が 成 立 す る。
図6・12
同一 次 元 オ ブザ ー バ
x(k+1)=Ax(k)+Bu(k)+K{y(k)-y(k)} =(A-KC)x(k)+Bu(k)+Ky(k) こ こ で,x(k)-x(k)=e(k)と
(6・77)
お く と,
e(k+1)=x(k+1)-x(k+1) =(A-KC)x(k)+Bu(k)+Ky(k)-{Ax(k)+Bu(k)}
(6・78)
=(A-KC){x(k)-x(k)} =(A-KC)e(k)
(6・79)
と表 さ れ る。 し た が っ て,
e(k)=(A-KC)ke(0) こ れ よ り,K と き,e(k)→0と
に よ っ て(A-KC)が
(6・80)
安 定 行 列 と す る こ と が で き れ ば, k → ∞ の
な り,し た が っ て,x(k)→x(k)と
推 定 で き る 。 こ の よ う な オ ブ ザ ー バ を,同
な る の で,状
態 変 数x(k)が
一 次 元 オ ブ ザ ー バ(identity observer)
と い う 。 そ の 推 定 速 度 は K に よ っ て 変 わ る 。 特 に,有
限 の サ ン プル で 推 定 で き る
と き,こ れ を有 限 整 定 オ ブ ザ ー バ と い う。
〔2 〕
最 小 次 元 オ ブ ザ ー バ とゴ ピナ スの 設 計 法
同 一 次 元 オ ブ ザ ー バ は,推 定 の 対 象 と す る シ ス テ ム と 同 一 の 次 数 を必 要 と す る 。 も し,出 力y(k)を
直 接 利 用 す れ ば オ ブ ザ ー バ の 次 数 を 下 げ る こ と が で き,推 定 に
要 す る計 算 時 間 の 短 縮 が期 待 で き る。 こ の よ うな オ ブ ザ ー バ を最 小 次 元 オ ブ ザ ー バ(minimal
order
observer)と
い う。
図6・13最
この オ ブ ザ ー バ の 推 定 原 理 は,す で,こ
小 次 元 オ ブザ ーバ
で に説 明 し た 同一 次 元 オ ブザ ー バ と同 一 な の
こ で は 詳 しい 理 論 は省 略 し,ゴ
ピナ ス(Gopinath)の
設 計 方 法 と関 連 して
述 ベ る。 シ ス テ ム の 状 態 方 程 式 お よ び 出力 方程 式 は, (6・81) (6・82)
と す る 。 い ま,〓 個 の 出 力 が 測 定 で き る と し,適 変 換 行 列 T に つ い て,
当 な(n-〓)×n行
列
V を選 ん で
(6・83)
が 正 則,す
な わ ち│T-1│〓0と
式(6・81)お
よ び 式(6・82)は,次
す る 。 これ を 用 い てx(k)=Tz(k)の
変 換 を 行 え ば,
の よ う に表 され る。
よ り (6・84) (6・85)
さ ら に,
(6・86)
とお け ば,状 態 方 程 式 お よ び 出 力 方 程 式 は,次 の よ う に な る。 (6・87) (6・88)
次 に,行 し て,A
列A=A22-LA12が
安 定 と な る よ う に(n-〓)×
〓行 列 L を 定 め る。 そ
の 固 有 値 を λ1,λ2,…,λn-〓に 設 定 す る 。 こ の と き,次
式 が 成 立 す る。 (6・89) (6・90)
こ こ で,
(6・91)
とす れ ば,x(k)→x(k)と
な り推 定 で き る 。 図6・13は,最
小次元 オブザーバ の
状 態 変 数 線 図 で あ る。
演 〔問 題 〕1.
習
問 題
〔6 〕
伝 達 関数 が,
で 与 え ら れ る連 続 時 間 シ ス テ ム が あ る 。 この シ ス テ ム を オ イ ラ ー 近 似 に よ り離 散 化 し,状 〔問 題 〕2.
態 方 程 式 を 求 め よ。
あ る連続 時 間 シス テムの状 態方 程式 が,次 式 で与 え られ る。
(ⅰ)
(ⅱ)
の 場 合 に つ い て,こ
のシステ
ム を離散 化 した ときの可 制御 性 を検 討 せ よ。
〔問 題 〕3.
式(6・71)を
導 け。
〔問 題 〕4.
状態 方程 式 お よび出力 方程 式が,次 式 で与 え られ るシス テムが あ る。
こ の 場 合 の 最 小 次 元 オ ブ ザ ー バ の パ ラ メ ー タ を ゴ ピ ナ ス の 方 法 に よ り求 め よ 。
演習問題 の解答
第 2章
ベ ク トル と 行 列
演 習 問題 〔2〕(p.37)
〔問 題 〕1.(ⅰ)−18,(ⅱ)7
〔問 題 〕2.
(ⅰ)
〔問 題 〕3.
(ⅰ)
〔問 題 〕4.
省略
(ⅱ)
ラ ン ク 2,(ⅱ)ラ
ンク 2
〔問 題 〕5.
第3章 〔問 題 〕1.
シ ス テ ム の 状 態 方 程 式 に よ る 表 現 … … 演 習問題 〔3〕(p.57) 解 図 1に 示 す よ う に,物 体 が 釣 り合 い の 状 態 に あ る と き の 重 心 G の 位 置 を
座 標 の 原 点 に と り,鉛
直 下 向 き に x 軸 を と る 。物 体 が 下 方 に 変 化 し な が ら θ だ
け 回 転 し た と す る 。 入 力 を 力f(t),状 =x3(t)
,x2(t)=x4(t)と
す る と,状
態 変 数 をx(t)=x1(t),θ(t)=x2(t), 態 方 程 式 は,
解図
1
x1(t)
出 力 をX(t),
〔問 題 〕2.
θ(t)と
コ ン デ ン サC1,C2に
プ 電 流i1(t),i2(t)を
出力 方程 式
〔問 題 〕3.
力方程 式 は
蓄 え ら れ る 電 荷 を,そ
状 態 変 数 と す る と,す
Q1(t)=x1(t),Q2(t)=x2(t),
状態方程式
す る と.出
れ ぞ れQ1(t),Q2(t),2っ
な わ ち,
x1(t)=x3(t),x=(t)=x4(t)
の ル ー
こ こ で,
(ⅲ)
〔問 題 〕4.
(ⅰ)
固 有 値 λ1=-1,λ2=-2
変換行列 解 は 〔問 題 〕3.(ⅰ)と 同 じ (ⅱ)
固有値
変換行列
解 は〔 問 題 〕3.(ⅱ)と 同 じ (ⅲ)
固 有 値 λ1=-σ+jω,λ2=-σ-jω
変換行列 解 は[問 題 〕3.(ⅲ)と 同 じ 〔問 題 〕5.
(i)
〈解 法 1>
〈解 法 2>
(ⅱ)
u(t)が 単 位 イ ン パ ル ス の と き,
U(s)=1で
〈解 法 1〉
あ る か ら,ラ
プ ラ ス変 換 よ り,
u(t)が 単 位 ス テ ップ の と き,
<解 法 2>U(s)=1/sで
〔問 題 〕6.
(ⅰ)状
あ るか ら,ラ
プ ラス変換 よ り
態 変 数 をx1(t)=y(t),x2(t)=x1(t)と
す る と,
状態方程式
出力 方程 式 (ⅱ)(a)u(t)が
単 位 イ ン パ ル ス の と き,x(0)=0と
(別解)
(b)u(t)が
(別解)
単 位 ス テ ッ プ の と き,x(0)=0と
して
し て,
第 4章
シ ス テ ム の 可 制 御 性 お よ び 可 観 測 性 … 演習 問題 〔4〕(p.81)
〔問 題 〕1. (ⅰ)可
制 御性 行列
│Γ│=-1,し
(ⅱ)
│Γ│=0,し
た が っ て,不
(ⅲ)
│Γ│=12,し
た が っ て,可
〔問 題 〕2. (ⅰ) 可 観 測 性 行 列
(ⅱ)
=
て, 〔問 題 〕3.図
と き(ⅰ)に
γ,
制 御
β
(ⅲ)
対 し て,γ=0の
制 御
可制 御
│Ⅱ│=1-α
│Ⅱ│
し た が っ て,α β=1の
た が っ て,可
│Ⅱ│=γ2
と き(ⅱ)お
よ び(ⅲ)に
対 し
シ ス テ ム は 不 可 観 測 で あ る。 4・11(a)の
シ ス テ ム に お い て,タ
ン ク の 液 面x1,x2を
状 態 変 数 とす る と
状態方程式
可制御性行列
図 4・11(b)の
シ ス テ ム に お い て,タ
し た が っ て,可 制 御
ン ク の 液 面x1,x2を
状 態 変数 とす る と
状態方程式
可制御性行列
し た が っ て,不
〔問 題 〕4.
〔問 題 〕5.
可制御性行列
特性方程式
S3-(α+β+γ)S2+(α
変換行列
β+α γ+β γ)S-α βγ=0
可制 御
解図 2
第 5章 〔問 題 〕1.
時 間 領 域 に お け る制 御 系 の設 計 式(5・64)よ
り,リ
… … 演習 問題 〔5〕(p.108)
カ ッ チ の 方 程 式 は,
と な る 。 こ れ よ り,
とな る 。 した が っ て,最 適 制 御 則 の た め の フ ィー ドバ ッ ク ゲ イ ン H は,式(5・ 63)よ り,
とな る 。 〔問 題 〕2.
u=υ=x1,x=x2と
と表 さ れ,こ
お け ば,
の と きの 評 価 関 数 は,次 の よ う に 書 け る。
リ カ ッチ 方 程 式 は,
とな る か ら,そ
の解 は
と な る 。 た だ し,
こ れ よ り,
と な り,最 適 制 御 則 は,こ れ を積 分 し て 求
め られ る 。
〔問 題 〕3.
閉 ル ー プ 系 は,
x=(A-bKT)x+bu0 y=cx
と な る 。 定 常 状 態xsで
はxs=0で
あ る か ら,定 常 状 態 で の 出 力ysは,
ys=cxs=-c(A-bKT)-1bu0 とな る 。 一 方,閉
ル ー プ 系 の 伝 達 関 数 は,
ω(s)=c(sI-A+bKT)-1b で あ る 。 こ こ で,S=0と
お き,
ω(0)=c(-A+bKT)-1b=-c(A-bKT)-1b と な る 。 し た が っ て,ys=ω(0)u0と
書 け る か ら,定
常 状 態 で,ys=γ
とな る た
め に は, u0=ω-1(0)
と選 べ ば よ い 。
第 6章 〔問 題 〕1.
デ ィジ タル シ ス テ ム の 扱 い
こ の シ ス テ ム の 動 作 を表 す 微 分 方 程 式 は,伝 達 関 数G(s)よ
と な る 。 こ こ で,x=x1,x=x2と ラ ー 近 似 す る と,次
〔問 題 〕2.
演 習 問題 〔6〕(p.131)
お き,サ
り
ン プ リ ン グ周 期 を T と して オ イ
の よ う に な る。
サ ン プ リ ン グ 周 期 を T とす る と,
(ⅰ)
の場 合
よ り可制 御性 行 列 Γ=
〔BABA2B
│Γ│=-(1-cos
sin T,し
1,2,…)を (ⅱ)
T)2T
除 い て 可 制 御 で あ る。
の場 合
〕が 求 め た が っ て,サ
られ る 。 こ れ よ り,
ン プ リ ン グ 周 期T=nT(n=
(ⅰ)の 場 合 と 同 様 に して Γ を 求 め る。 これ よ り, │Γ│=0,し 〔 問 題 〕3.連
た が っ て,不 可 制 御 で あ る。
続 時 間 シ ス テ ム に つ い て の 定 理5・1と
〔問 題 〕4.V=〔11〕
・す れ ば
式(6・83),式(6・86)お
同様 に して求 め られ る。 よ び 式(6・91)よ
り,次
うに求 め られ る。
,し
た が っ て,
と な る 。 こ れ よ り オ ブ ザ ー バ の パ ラ メ ー タ が 計 算 で き る 。a=a22-〓a12=1-〓
の よ
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索 あ 行 ア ナ ロ グ シ ス テム
引 行 列 の ラ ン ク
19
極 ・零 点 消 去
76
111 ケ ー リー ・ハ ミル トンの定 理34
一 次従 属
9
一 次独 立
9
減 算(行 列 の) 減 算(ベ
15
ク トル の)
現 代 制 御理 論
9 2
ヴ ァン デル モ ンデ 行列
32
LQ問
83
コ ンパ ニ オ ン行 列
10
古 典 制 御理 論
46
固 有 値
20,21
固 有 ベ ク トル
20,21
ゴ ピナ ス 題
n×n次
行 列
n次 元 の シス テ ム オ ブザ ー バ
103,127
129 2
さ 行
オ ブザ ー バ 問題
102
オ ブザ ー バ の設 計 問 題
105
最 小 次元 オ ブザ ー バ
重 み行 列
127
最 適制 御 系 最適 制 御 入 力
か 行 カル マ ン フ ィル タ
最適 フィー ドバ ック則 104
可 観 測
59,64,120
可 観 測性
64,78,120
32
最適 レギ ュ レー タ 最適 レギ ュ レー タ 問題
129 83 97 96,100 96 83,101
可 観 測 正 準形 式
74
シス テ ムの 応 答
50
加 算(行 列 の)
15
ジ ョル ダ ン形 式
27,28
加 算(ベ ク トルの) 可 制 御 可 制 御性
8 59 59,77,120
ジ ョル ダ ン正準 形 式
69
ジ ョル ダ ンブ ロ ック
28
出力 変 数
40 45
可 制 御性 行 列
60
出力 変 数 ベ ク トル
可 制御 正 準 形 式
72
準 正 定
36
可 制御 標 準 形
73
準負定
36
乗 算(行 列 の)
16
逆行 列
18
状 態 推 移行 列
51
行(行 列 の)
10
状 態 推 定
102
状態変数
39
行 ベ ク トル
7
行列 関 数
33
状 態 変 数線 図
行列 式
14
状 態 変 数 フ ィー ドバ ック
行 列 論
10
状 態変 数 フ ィー ドバ ック制御83
行 列 の演 算
15
状 態変 数 ベ ク トル
41 84,122 45
状 態方 程 式
38,114
状 態 方 程 式 の解
50,114
状 態 方 程 式 の一 般 形
46
ス カ ラ積
9
ス カ ラ倍
9,16
制御理論
な
行
内積(ス カ ラ積)
9
二 次 形式(行 列 の)
35
入 力 変数
40
入 力 変数 ベ ク トル
45
1
制 御 量 の評 価
93
正 則行 列
18
正 定
36
正 方行 列
10
積 分(行 列 の)
17
積 分形 式 の 評価 関数
85
歪 対 称 行列
12
零 行列
11
微 分(行 列 の)
17
零 ベ ク トル
8
線形 結 合
35
相似 変 換
67
た 対 角 化(行
行
列 の)
ノル ム
9
は 行 パ ル ス伝 達 関数 行 列
徴 分(ベ
119
ク トル の)
9
評 価 関 数
97
プ ロパ ー
54
負定
36
22,78
対角行列
11
ベ ク トル
7
対 角 正 準形 式
69
ベ ク トル空 間
7
対 角 変換 行 列
24
ベ ク トルの 演 算
対角要素
10
閉 ル ー プ 最 適 フ ィ ー ドバ ッ ク 則
対 称 行列
12
単 位 行列
11
単 位 イ ンパ ル ス応 答
55
8
や
100
行
有 限整 定
123
単 位 ベ ク トル
8
有 限整 定 オ ブ ザー バ
129
直 交性(ベ
9
余因 子 行列
13
要素(行 列 の)
10
ク トル の)
デ ィジ タル シス テム
定 数変 化 法 適応 オ ブザ ーバ の設 計 問題
110
ら 行
50 105
リカ ッチ の方 程 式
伝達 関 数行 列
53
離 散 時 間 シス テ ム
110
転置行列
11 レ ギ ュ レー タ 問 題
100 ,101
同一 次 元 オ ブザ ー バ
128
列(行 列 の)
特性根
21
列 ベ ク トル
特 性 方程 式
21
連続 時 間 シス テ ム
98,126
10 7 110
理工学講座
制 御工 学 下
− 現代 制 御 理 論 の基 礎 − 1996年3月20日
第 1版 1刷 発 行
2006年11月20日
第 1版 3刷 発 行
著 者〓大庭勝實 柿倉正義 川島忠雄 深海登世司 藤巻忠雄 三舩博史 学校法人 東京電機大学
発行所
東京電機大学出版局 代表者 加藤康太郎 〒101-8457
東 京都 千 代 田 区神 田 錦 町2-2 振 替 口 座00160-5- 電 話 (03)5280-3433(営
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in Japan
*無 断 で転 載 す る こ とを禁 じ ます。 *落 丁 ・乱 丁 本 はお取 替 え いた し ます。 ISBN4-501-10660-3
C3054
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ウ ェ ー ブ レ ッ ト入 門 チャ ール ズ K.チ ュ ウイ著
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中村 尚五 著
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A5判200頁
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デジタル フィル タの原 理 を理解 し,読 者が必要 に応 じて開発 できるこ とを 目標 に した。 具体的なシ ステ ムを応用例 にあげ,ソ フ トウェア とハー ドウェアを
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ディジタル信号処理
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含め解説 した。
江原義郎 著
イブ ・トー マ ス/中 村 尚五 著
AB判208頁 これ か らデ ィジタル信号処理 を学ぼ うとす る者,あ るいは現在,特 に この分 野の知 識な しに信号 の処理 を行 ってい る信号処理 システ ムのユーザーや エンジ ニアを対象 とした入門書 である。
A5判216頁
基本 となっている例題 を繰 り返 し演習す ることによ り,効 率よくデジタル信号処理 を学べ るよ うに編集。 大学 の演習 のみ な らず,関 係技術 に携わ るエ ンジニ アや 基礎知識 のある人向 けの入 門書で ある。
*定 価,図 書 目録のお問 い合わせ ・ご要望は出版局 までお願 い致 します.
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