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理工学講座 改訂
量子物理学入門 物質 工学を学ぶ人のために
青野朋義 尾林見郎 木 下 彬 共 著
東京電機大学出版局
本 書 の 全 部 ま た は一 部 を無 断 で 複 写複 製(コ ピー)す る こ とは,...
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TDU
理工学講座 改訂
量子物理学入門 物質 工学を学ぶ人のために
青野朋義 尾林見郎 木 下 彬 共 著
東京電機大学出版局
本 書 の 全 部 ま た は一 部 を無 断 で 複 写複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作 権 法 上で の例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます 。 小局 は,著 者 か ら複 写 に係 る 権 利 の 管 理 に つ き委 託 を 受 けて い ます ので,本 書 か らの複 写 を希 望 され る場 合 は,必 ず小 局(03-5280-3422)宛 ご連 絡 くだ さ い。
は し が き
こ の本 は,先 に 出版 され た"物 理 学"の 後 を 引 き継 いで,理 工 系 大 学 の 二 年 次 の物 理 の教 科 書 と して編 集 され た もの で あ る.量 子 力 学 の 初 歩 的 な 概 念 と, 応 用 と して,固 体 物性 の概 略 とを 中心 に ま とめ られ て い る. 固 体 物 性 を 理 解 す るに は,量 子 力学 的知 識 の ほ か に,統 計 力学 の 知 識 が 要 求 さ れ る.固 体 の 格 子比 熱 に は フ ォ ノ ンの考 え方 が必 要 で あ るが,こ れ は 格 子 振 動 の量 子 化 で,フ
ォ ノ ンの集 団 的取 扱 い に はBose‐Einstein統
ま た,結 晶 中 の電 子集 団 の取 扱 い に はFermi‐Dirac統
計 が使 わ れ る.
計 が 心 要 で あ る.こ
れ
らの量 子 統 計 の 話 は1つ の章 に ま とめ られ て い る.一 方,こ れ らの量 子統 計 で 古 典 近 似 をす る場 合 が よ く あ るが,古
典 的 なMaxwell‐Boltzmann統
歴 史 的 に は19世 紀後 半 の物 理 的産 物 で,20世
計 は,
紀 に な ってか ら展 開 され る量 子
論 の前 段 階 の もの と考 え,こ の本 で は最 初 の気 体 運 動 論 の 中 で述 べ られ る.ま た,真 空 中 の 電 子 の取 扱 い,例 え ばCompton効
果 の式 で は,Einsteinの
相対
論 的 な式 が で て くるが,こ れ らの理 解 を深 め る意 味 か ら も,相 対 論 の 話 を1つ の章 に ま とめ て,前 に 置 い た.量 子 力 学 と相 対 論 とは現 代 物 理学 の根 底 で も あ る. 量 子 物 理 学 で は,古 典 物 理 と違 って,数 式 的表 現 が 複 雑 とな り,こ れ が 学 生 諸 君 に と って,現 代物 理 学 を理 解 す る うえ で の難 点 に な って い る.し か し,こ の本 に盛 られ て い る程 度 の物 理 表 現 は,エ レ ク トロニ クスや 新 素 材 開 発 の 技 術 者 を 目指 す 学 生 諸 君 に と って,是 非 と も理 解 して欲 しい事 柄 で あ る.著 者 等 の 貧 しい記 述 を,意 欲 的 な学 習 で補 って,量 子 物 理 学 へ の理 解 を 願 う者 で あ る.
平成元年4月
青 野 朋 義
改訂 に あ た って
この本 が上 梓 され て か ら6年 が た った.こ の 間,使
って み て,小 さな誤 謬,
表 現 上 の不 備 が 目につ くよ うにな った の で,こ の 際思 い切 って,改 訂 版 を だ す こと に踏 み切 った. 改 訂 に あ た って,文 章 的 な不 備 を 多少 修 正 した以 外 に,教 科 書 と して使 い や す くす る た め,物 理 定 数,数 学 的補 遺 を付 録 と して つ け加 え た.校 正 も含 め て, これ らの作 業 は青 野 が 行 ったの で,文 章 的 なニ ュ ア ンス が原 著 者 の 意 に そ ぐわ ぬ もの に な った こ とを懼 れ る. 理 工 系 の学 生 に,量 子 力 学 の 基礎 概 念 を如 何 に 平易 に教 え るか は,物 理 教 育 に携 わ る担 当者 の誰 し も悩 む と ころ で あ ろ う.物 語 的 な本 は多 数 存 在 す る が, 教 科 書 と な る と,数 学 的 問 題 が 入 って む ず か しい もの とな って しま う.そ の点, 数 年 間 こ の本 を使 ってみ て,あ
る程 度 成 功 して い るよ うに思 わ れ る.
平成7年1月 青 野 朋 義
目
次
第1章 気 体 の分 子 運 動 論 1・1
理 想 気 体 の 圧 力
1
1・2
理 想 気 体 比 熱
5
1・3
Maxwellの
6
1・4
平 均 自 由 行 程,平
速 度 分 布 則 均 寿 命
14
1・5 拡散
16
1・6
固 体 に お け る分 子 運動
20
1・7
液 体 の 分 子 運 動
23
1・8
エ ン ト ロ ピ ー の 分 子 運 動 論 か ら の 解釈
24
練習
問 題
〔1〕
27
第2章 特殊相対性理論 2・1
Galileiの
相 対 性
2・2
電 磁 気学 とMichelson‐Morleyの
29 実 験
31
2・3 Lorentz変
換
34
2・4 Lorentz変
換 の 意 味
37
2・5
相 対 論 的 力 学
39
2・6
質 量 と エ ネルギ ー の 等 価 性
47
練
習
問 題
〔2〕
48
第3章 電子の粒子性と波動性 3・1
波 の 表 現 と 波 の 強 さ
49
3・2
古 典 的 な 粒 子 と波
52
3・3
ダ ブ ル ス リ ッ トを 通 過 す る 電 子(そ
の1)
56
3・4 練
習
ダ ブ ル ス リ ッ トを 通 過 す る 電 子(そ
第4章
問 題
〔3〕
62 69
量 子 効 果 の 現 れ る実 験 例
4・1
熱 放 射 とPlanckの
4・2
光電 効 果
4・3
Compton効
4・4
電 子 対 生成
練
の2)
習
問 題
仮 説
71 72
果
73 75
〔4〕
76
第5章 不確定性原理 5・1
波 の 回析 と不確 定性 原 理
77
5・2
原 子 の 安 定 性 と不確 定 性 原 理
81
練 習 問 題 〔5〕
第6章
Schrodinger方
86
程式
6・1
基 礎 と な る 事 項
6・2
自 由 電 子 のSchrodinger方
6・3
拘 束 さ れ た 電 子 のSchrodinger方
6・4
定常 状 態 のSchrodinger方程
練
習
問 題
87 程 式
88 程 式
式
〔6〕
89 89 92
第7章 波 動 関 数 ψの 形 7・1
存 在 確 率 と の 関 連 で 決 ま る波 動 関 数 の 特 徴
93
7・2
Schrodinger方
94
7・3
単 純 な ψ の 関 数 形
7・4
波動 関 数 の 接続
練 習
問 題
〔7〕
程 式 の 形 か ら わ か る 波 動 関 数 の 特 徴
98 101 105
第8章 物 理 量 を求 め る方 法 8・1
平 均 値 の 求 め 方
107
8・2
あ ん こ 式(プ
109
8・3
物 理 量 と演算 子
練
習
問 題
第9章
サ イ ・サンド)
112
〔8〕
115
Schrodinger方
程 式 の簡 単 な モ デ ル へ の応 用
9・1
階 段 形 ポ テン シャル
117
9・2
井 戸 形 ポ テン シャル
123
調 和 振動 子
128
9・3 練
習
第10章
問 題
〔9〕
Schrodinger方
136
程 式 の三 次 元 化
10・1
箱 の 中 の 自 由 粒 子
137
10・2
三 次 元 調 和 振 動 子
143
第11章 水 素 原 子 11・1
Bohrの
11・2
水 素 原 子 のSchrodinger方
11・3
Schrodinger方
11・4
水 素 原 子 モ デ ル 程 式
程 式 の 変 数 分離
角 度 方 程 式 の 解
11・5 動径
147
方程 式 の 解
151 153 155 159
11・6
軌 道 角 運動 量
161
11・7
電 子 の ス ピ ン
163
11・8
水 素 原 子 に つ い て の 要 約
166
練
第12章
習
問 題
〔11〕
Pauliの
原理
12・1
Pauliの
排 他 律
170
171
12・2 練 習
第13章
原 子 の電 子 配 置 と元 素 の周 期律 問 題
173
〔12〕
176
原 子 や 電 子 集 団 の 取 扱 い
13・1
電 子 の 集 団 と エ ル ゴ ー ド性
13・2
正準分布
179
13・3
量子統計
186
13・4
Bose‐Einstein統
13・5
Fermi‐Dirac統
練 習
第14章
問 題
計 計
〔13〕
177
187
191
194
量 子 論 の 応 用 例
14・1
Planckの
熱 放射 式
14・2
誘導放射
14・3
固 体 の比 熱
14・4
結 晶中の電子
14・5
周 期 ポテ ンシ ャル 中 の電 子
219
14.6
金属 の電 気伝 導
230
14・7
半導 体
237
14・8
誘電 体
247
14・9
誘 電 体Ⅱ:強
14・10
磁性 体
200 205 212
誘電 体
性 体Ⅱ:原
14・12磁
性 体Ⅲ:Langevinの
練
習
258 263
14・11磁
14・13
195
子磁 気 モ ー メ ン ト 常 磁 性,Weissの
265
強 磁 性 理 論
272
自 由 電 子 模 型 に よ る分 子 の 吸 収 波 長 の 計 算
問 題
練 習 問 題 の解 答
〔14〕
275
280 283
付
録
296
索
引
305
第1章 気 体 の分 子運 動論
19世 紀 初 頭,Dalton等
に よ る物 質 の原 子 論 が確 立 し,熱 的現 象 を分 子 の
力 学 的 性 質 か ら説 明 しよ う とす る動 きが活 発 とな った.19世 Clausius,
Maxwell,
Boltzmann等
紀 半 ばか ら は
に よ って気 体 分 子 運 動 論 の 基 礎 が つ
くられ,温 度,熱 平 衡,内 部 エ ネ ル ギ ー等 の概 念 が 分 子 論 的 に 表 現 さ れ る よ う に な っ た.
1・1 理 想 気 体 の 圧 力
容 器 に入 れ られ た 理 想気 体 が,容 器 壁 に及 ぼす 圧 力 を気 体 分 子 の運 動 か ら考 え よ う.容 器 内 の 空 間 か ら気 体 を な く してみ る と,そ こ は真 空 と い う状 態 に な る.真 空 状 態 を表 現 す るに は,気 体 の圧 力 単 位 を 使 い,気 体 が 存 在 しな い場 合 の圧 力 は ゼ ロで あ る.容 器 に気 体 が 入 る と,気 体 は,そ れ が どん な にわ ず か な 量 で も,そ の容 器 を満 た した形 で存 在 し,一 定 の 圧 力pを 容 器 壁 に与 え る.容 器 体 積 をV〔m3〕,気
体 の量 をν 〔mol〕で 表示 す る と,気
体 密 度 はν/Vに
例 し,圧 力 は こ の気 体 密 度 に比 例 す る.ま た,容 器 内 の 温 度 をT〔K〕 と,圧 力 は こ の気 体 温 度Tに
比
とす る
比 例 す る.容 器 内 の気 体 の状 態方 程 式 は, (1・1)
で,Rは
気 体 定 数 で あ る.
気 体 の分 子 運 動 につ いて,次 の よ うな仮 定 をす る. ① 気 体 分 子 は い ろ い ろな速 度 を各 自 が も って お り,こ の状 態 で容 器 内 の ど こで も一 様 に分 布 して い る.こ れ らの分 子 が 容 器 壁 に衝 突 し,反 発 す る形 で容 器 壁 に 力 を 及 ぼ す.こ れ が容 器 壁 に圧 力 と な って 現 れ る. ② 気 体 分 子 は 小 さ いの で,形 は球 と して よ い.分 子 ど う しの衝 突 は運 動 量
を交 換 し合 う形 で完 全弾 性 的 に行 われ るの で,圧 力 を考 え る と き に は除 外 して よ い.壁 との衝 突 も また完 全 弾 性 的 で あ り,壁 面 と の間 に摩 擦 が な い 滑 らか な衝 突 を す る もの とす る. 容 器 内 に直 角座 標x,y,zを
と り,x方
向 に垂 直 な 容器 内 の壁 で の圧 力 を 計
算 しよ う.圧 力 は この壁 に垂 直 で あ る.気 体 分 子 速 度 の大 き さ,方 向 は ラ ンダ ムで あ るが,x軸
の 負 の 方 向 に対 して θ と θ+dθ
υ +dυ の間 の 分 子 が 壁 の 単位 面 積S=1に
図1・1 気 体 分 子 の 容 器 壁 へ の衝 突
半 径1の
の 間 に あ り,速
さ がυ と
時 間dtの 間 衝突 す る と す る.単
球 の 斜 線 部 分 の 表 面 積 は2πsinθdθ
この部 分 を見 込 む 立 体 角 は〓
位
で,
とな る.
図1・2 立 体 角 の 計 算
体 積 当 た り,速 さがυ とυ+dυ の 間 にあ る分 子 数 を
と す る.θ
と θ+dθ
の 方 向 は 立 体 角 を と り,そ
で あ る.分
子 密 度 は 空 間 的 に 一 様 で あ る の で,単
の 間 に あ っ て,θ
と θ+dθ
で あ る.次
間dtの
に,時
の 立 体 角 は,
位 体 積 当 た り,υ
の 間 を 向 く分 子 数 は,
間 にSに
衝 突 す る 分 子 は,
とυ+dυ
図1・3 υSdtcosθ
図1・4
の空 間
1個 の分 子 の衝 突 に よ る
運 動 量変 化
の空間 に い な けれ ば な らな い.ま た,1個
で あ る.す る と,単 位 時 間(dt=1)の
の分 子 の 衝 突 に よ る運 動 量 変化 は,
間 に単位 面 積 に衝 突 す る分 子 の全 運 動
量 変 化 は,
で あ る.θ
の 範 囲 は0∼
π/2で,υ
の 範 囲 は0∼
∞ で あ る.積
分 した 形 で符
号 を 変 え た も の は 壁 に 対 す る 圧 力 と な っ て,
(1・2)
υ 2の 平 均 を 考 え る と
,
(1・3)
で,[n]は
単 位 体 積 で の 分 子 数 で あ る.こ
れ を 使 う と,
(1・4)
と な る.容
器 内 の 分 子 総 数 をN,体
積 をVで
表 す と,[n]=N/Vで
あ る か ら,
(1・5)
と な る.こ
の 式 を 状 態 方 程 式 と 比 較 す る と,1molを
考 え てN=N0と
し,
(1・6)
kは 気 体 の 性 質 に 依 存 し な い 普 遍 定 数 で,Boltzmann定
数 と 呼 ぶ.
と す る と,
で あ る.式(1・6)は
また
(1・7)
の よ うに書 け る.気 体 分 子 速 度 の 等 方 性 を 考 慮 す る と, (1・8) で,
(1・9)
こ の 式 は,分
子 運 動 の エ ネ ル ギーが,1つ
ら れ る こ と を 意 味 して お り,こ 式(1・6)で,mN0は1molの
の自 由
度 に 対 して〓
で与 え
れ を エ ネ ル ギ ー 等 配 則 と い う. 分 子 量 に な る.こ
れ をMで
表 す と,
(1・10)
で,気 体 の 速 度 の 自乗 平 均 は分 子 量Mに 2〉 を 自乗 平 均根 速 度 とい う .
反比 例 し,温 度Tに
比 例 して い る.√〈υ
1・2 理 想 気 体 比 熱
理 想 気体 で は分子 ど う しの 衝突 は,そ の運動 量 を交 換 す るだ けで,分 子 は個 々 の 形 を 区別 で きな い か ら,分 子 ど う しの衝 突 が 完 全 弾 性 的 に行 わ れ る と,相 互 作 用 に よ る エネ ル ギ ーの 損失 は考 え な くて もよ い.ま た,相 互 の 引 力 も考 え な くて よ いか ら,理 想 気体 の 内部 エ ネ ル ギ ー の うち,温 度依 存性 を もつ 成 分 は各 分 子 の も って い る運 動 エ ネル ギ ー の総 和 に な る.U0を
温 度 に無 関 係 な 内 部 エ
ネ ルギ ー と して, (1・11)
分 子 が球 で あ る と考 え る と,そ の 自由度 は3で,
(1・12)
と な り,N=N0の
場 合 は,N0k=Rで
あ る か ら,1molに
つ い て,
(1・13)
で あ る.U0'は
温 度 に 無 関 係 な 内 部 エ ネ ル ギ ー で あ る.定 容 モ ル 比 熱 は これ か ら,
(1・14)
と な る.定
圧 モ ル 比 熱 は,
(1・15)
した が っ て,
(1・16)
と な る.Heの O2の
γ の 値 は,ほ
ぼ こ の 値 に 一 致 す る.
よ う な 二 原 子 分 子 で は,気
た 形 と 考 え て,そ
体 分 子 は 球 と 考 え ら れ な い.ア
の 二 原 子 を 結 ぶ 方 向 をx方
転 が 自 由 度 と し て 付 け 加 わ る.す か ら,1個
向 と す る と,y,z軸
る と 自 由 度 は5と
な っ て,エ
レ イ形 を し に対 す る回
ネル ギ ー等 配 則
の 分 子 の もつ 平 均 運 動 エ ネ ル ギ ー は,
(1・17)
と な る.1molの
内 部 エ ネ ル ギ ー で,温
度 に 依 存 す る 成 分 は,
(1・18)
した が っ て,定
容 モ ル 比 熱Cυ,定
圧 モ ル 比 熱Cpは,そ
れぞ れ
(1・19)
(1・20)
酸 素 や 窒 素 気 体 は この 二 原 子 分子 モ デル で 表 され,そ のγ は1.4に 近 い値 で あ る.
1・3
Maxwellの
速 度 分 布 則
気 体 の 圧 力 の と こ ろ で 述 べ た 速 さ の 平 均 と い う 概 念 を,こ 返 っ て み よ う.気
体 粒 子 の 総 数 をNと
して,
υ1の 速 さ を も っ た 気 体 粒 子 の 数 をn1(υ1),υ2の をn2(υ2),…
こ で も う一 度 振 り
速 さを も った 気 体 粒 子 の 数
… と す る と,υ の 平 均 は,
(1・21)
積 分 の 形 で 考 え る と,υ の速 さを も った粒 子 の 数 がdnで
(1・22)
式(1・22)の
分 子 の 積 分 を 行 う に は,nがυ
の 関 数 で な け れ ば な ら な い の で, (1・23)
と 置 く と,
(1・24)
式(1・22)と
式(1・24)を比
けれ ば な ら な い.こ zed)さ
較 す る と,式(1・24)の∫g(υ)dυ=1で
の よ う にg(υ)の
な
形 を き め た と き,g(υ)は
規 格 化(normali
れ た と い う.
(1・25)
で,g(υ)dυ
は 粒 子 がυ とυ+dυ
式(1・23)は
全 体 の 粒 子 数Nの
と の 間 に あ る 確 率 を 表 す こ と に な る.ま う ち 速 さ がυ とυ+dυ
た,
の 間 に あ る粒 子 数 を 表
す こ と に な る の で あ る. 圧 力 の 所 で 述 べ た よ う に,〈υ2〉
は 温 度Tに
比 例 し て い る.温
る 気 体 粒 子 の 速 さ の 分 布 は ど の よ う な も の で あ ろ う か? 規 格 化 さ れ たg(υ)の
方 向 で-∞
器 の 体 積V)の
の 方 向 は ラ ン ダ ム で あ る.気 か ら+∞
お け
これ は 式(1・24)の
形 を 求 め る こ と で あ る.
気 体 粒 子 が 存 在 す る 空 間(容 ま た,そ
度Tに
な か で,粒
体 粒 子 の 速 度 を 考 え る と き に は,1つ
ま で の 速 度 を 考 え な け れ ば な ら な い.速
を こ こ で 取 り入 れ る.(υx,υy,υz)で
子 の 速 度 の 大 き さ, の
度 空 間 と い う概 念
表 さ れ る 空 間 で あ る.も
ち ろ ん,
で,空 間 は無 限 に拡 が って い る が,こ の 空 間 に あ る気 体 粒 子 の 数 は容 器 の 中 に あ る気 体 粒 子 の数 でN個
で あ る.こ の速 度 空間 の(υx,υy,υz)の
と ころに あ
図1・5 速 度 空 間
るdυxdυydυzと
い う微 小 空 間 に あ る粒 子 数 をdNと
し,こ
れを
(1・26)
と お い て み る.f1, f2, f3は
規 格 化 さ れ た 分 布 関 数 で あ る.た
dυxは 気 体 粒 子 が 速 度 空 間 でυxとυx+dυxの
間 に い る 確 率 で あ る.
(仮 定1) f1=f2=f3=f
(1・27) υx
, υy, υz方 向 は 我 々 が 任 意 に 定 め た も の で あ る か ら,fの ら な い.こ
れ をfと
υx方 向 で 考 え る と,そ
る と,fの
形 は方 向 に は よ
す る.
(仮 定2) f(υx)=f(-υx)=f(υx2)
気 体 粒 子 が+υxの
と え ば,f1(υx)
の+,-方
(1・28) 向 は我 々 が 任 意 に定 め た も の で あ る か ら,
と こ ろ に い る 確 率 と-υxの
と こ ろ に い る 確 率 は 等 し い.す
形 はυx2の 関 数 と 考 え て よ い.υy, υz方
向 に つ い て も 同 様 で あ る.
(仮 定3) υ2=υx2+υy2+υz2 速 度 空 間 は 等 方 的 で あ る.こ
(1・29) こで ま た (1・30)
と す る.υx, υy, υzの (1・29)で
方 向 は 我 々 が 任 意 に 定 め た も の で,本
表 さ れ るυ で あ る.し
あ る.式(1・26)∼
式(1・30)か
た が っ て,式(1・30)の ら,
質 的 な もの は式
よ う に 置 け る はず で
(1・31)
が で る.式(1・31)の
形 を 満 足 す るfの
形 は,f(υx2)で
い え ば, (1・32)
で あ る. (仮 定4) b<0,そ
速 さ の 大 き な 気 体 粒 子 ほ ど,そ れ で,b=−a,a>0と
の 数 は 少 な い.す
お く.す
な わ ち,
る と, (1・33)
f(υy2),f(υz2)に
つ い て も 同 様 に 書 け る の で,式(1・29)を
使 って (1・34)
この 速 度 分 布 は,粒 子 の種 類 と温 度 に よ り一 義 的 に き ま る と考 え る.ま ず規 格 化 して み よ う.
(1・35) (1・36)
こ の よ う に す る と,
は,1個
の 粒 子 が(υx,υy,υz)と(υx+dυx,υy+dυy,υz+dυz)の
確 率 を 表 して い る こ と に な る.積
分 し た も の が1で
す る と,
で,
f(υy2),f(υz2)に
つ い て も 同 様 で あ る.
こ の 確 率 を 頻 度 と考 え る と,υx2の 平 均 は,
間 に い る
あ る か ら,υx=υy=υzと
(1・37)
す る と,
で,
(1・38)
ゆ え に,
(1・39)
と な り,こ れ は1個 の気 体 粒 子 がυxとυx+dυxの 間 に あ る確 率 を表 して い る. υy方 向,υz方 向 で も同様 な分 布 関 数 と な り,全 体 で は,
(1・40)
式(1・26)の
形 に も ど す と,
(1・41)
で あ る.こ
れ をMaxwellの
図1・6の
よ う に,速
速 度 分 布 則 と い う. 度 空 間 で,原
さ が す べ てυ で あ っ て,こ した が っ て,速
点 か らυ とυ+dυ
の 間 に あ る空 間 は,速
の 空 間 の 体 積 は,dυxdυydυzの4πυ2倍
さ の 分 布 関 数 を 考 え る 場 合 に は,
で あ る.
とす れ ば よ い.速 さがυ とυ+dυ の 間 に あ る粒 子 数 は,
図1・6 等 方 的 速 度 空 間
(1・42)
と書 け る.こ て,頻
の 式 は 規 格 化 さ れ て い る た め,(m/2πkT)3/2が
度 的 に 言 え ば,υ
とυ+dυ
で て き た のであ っ
の 間 に あ る粒 子 数 は,
に 比 例 して い る.
(1・43)
で あ る.υ2の
平 均 値 は,同
様 に,
(1・44)
と な る.式(1・44)は〓
を 意 味 して い る.
(1・45)
式(1・39)で が,こ
は,粒
子 がυxとυx+dυxの
間 に あ る 頻 度 は,e−mυx2/2kTで
あ る
れを (1・46)
と す る と,運
動 量 空 間 に お け る 頻 度 と な る.こ
の 場 合 は,
(1・47)
で,規 格 化 され た運 動 量 空 間 で の 分 布 関 数 は,
(1・48)
の 形 を と る.px2の
平 均 を 考 え る と,
(1・49) で,こ
の 式 は,
(1・50)
を 意 味 す る.さ
ら に,
(1・51)
と す る と,エ
ネ ル ギ ー 空 間 で の 頻 度 と な る.
(1・52)
で,規
格 化 す る と,
(1・53)
の 形 を と る.Exの
平 均 を 考 え る と,
(1・54)
さて,容 器 中 に理 想 気 体 が温 度Tで Maxwellの
存 在 す る と き,気 体 分 子 の 速 度 分 布 は
速 度 分 布 則 に従 って 式(1・41)の
よ う に表 せ る の で あ る が,こ
れ
を逆 に言 う と,次 の よ う に も いえ る. 気 体 が 存 在 しな い場 合,す な わ ち真 空 で の温 度 とい う もの は考 え られ な い. 気 体 が若 干 で も存 在 し,そ の速 度 分 布 がMaxwellの
分 布 則 に な った と き,そ
の 気 体 で は じめて 平 衡 温 度 と い う概 念 が成 立 す るの で あ る.す な わ ち,温 度 と い う概 念 は,そ こ に物 質 が あ って,そ の エ ネ ル ギ ーが存 在 す る段 階 で 生 じて く る もの で あ る.
1・4 平 均 自 由 行 程,平
均寿命
1つ の容 器 中 で 気 体 密 度 の異 な る場 所 が あ っ た と しよ う.こ の 場 合 に は,密 度 の大 きい場 所 で の圧 力 は大 き く,小 さな場 所 で の 圧 力 は小 さい.す
る と,こ
の圧 力 差 に よ って気 体 は動 き,容 器 内 が均 一 な密 度 にな り,し た が って 均 一 な 圧 力 に な って気 体 の動 きは止 ま る.地 上 で風 が 吹 く場 合 が これ に相 当 して い る. ま た,1つ
の容 器 中 で 気 体 の温 度 の異 な る場 所 が あ った場 合 で も同 じで あ る.
温 度 の 高 い と ころ に い る分 子 の平 均 速 度 は大 き く,そ の ため に,気 体 は全 体 が 均 一 な 温度 に な るま で移 動 が起 こ り,や が て平 衡 状 態 に達 す る.こ の よ う に, 密 度 差 に よ る気 体 分 子 の動 き,あ るい は温 度 差 に よ る気 体 分 子 の 動 き の場 合 に は,ミ
ク ロ的 に み て,気 体 分 子 の衝 突 が微 妙 に関 係 す る こ と にな る.
気 体 分 子 が衝 突 か ら,次 の衝 突 ま で動 く距 離 を 自 由行 程 と い い,あ る温 度T の と き,存 在 す る気 体 分 子 の 自由 行程 の平 均 を平 均 自由 行 程 と い う.ま た,平 均 自由 行程 だ け気 体 分 子 の走 る時 間 を,分 子 の平 均 寿 命 と い う. まず,平 均 自由行 程 を次 の よ うに計 算 して み る.分 子 を直 径 σの球 と仮定 し, 1つ の 分子Mが 他 の分 子M1,M2,… る と,図1・7の Mが 距離Lだ
… と次 々 に 衝 突 して い く有 様 を 図 示 す
よ う にな る. け進 ん だ と き,Mの
中 心 を 中 心 と して 半 径 σ,長
を 考 え る と,こ の 円筒 内 に他 の分 子M1,M2… に衝 突 す る.た だ し,こ の場 合,M1,M2… 体 積 は πσ2Lで,分
子 密 度 をnで 表 す と,Mが
さLの
円筒
の 中心 が あ る と,MはM1,M2… は 停 止 し て い る とす る.円
筒の
この 円筒 内 で 衝 突 す る回 数 は,
この 内 で の分 子 数 で あ るか ら, (1・55) とな る.し た が って,1回
目 の衝 突 まで の距 離,す
な わ ち平 均 自 由行 程 は,
図1・7 分 子 ど う しの 衝 突
(1・56)
の よ う に 表 さ れ る.こ て い る と し た が,実
の 式 を 導 い た 仮 定 で は,Mだ
際 に は そ う で は な い.式(1・55)で
け が 動 き,他 の 分 子 が と ま っ の 距 離Lを,
(1・57)
と して み よ う.こ の 式 の 中 のmは,相
対 運 動 の場 合 は換 算 質 量m*と
な る. (1・58)
した が っ て,Lは,
(1・59)
と しな け れ ば な ら な い.す
る と,式(1・56)は,
(1・60)
の よ う に補 正 され る. 理 想 気 体 の特 性 方 程 式 か ら, (1・61)
と し,こ
れ を 式(1・60)に
代 入 す る と,
(1・62)
が 得 られ る.平 均 自由行 程 は温 度 に比 例 し,圧 力 に反 比 例 して い る こ とが わ か る. 酸 素 あ る い は 窒 素 分 子 で は,σ
を 代 入 す る と,l∼6.8×10-8〔m〕 10-3〔Pa〕
∼3.7×10-10〔m〕
と な る.こ
く ら い の 真 空 に な る と,l∼6.8〔m〕
で,
の 値 は 非 常 に 小 さ い が,p∼ に な っ て,通
常 の容 器中 で
は 分 子 間 の 衝 突 は ほ と ん ど 起 こ ら な い こ と が わ か る. 分 子 が 平 均 自 由 行 程lだ
け 走 る 時 間 を 平 均 寿 命 τで 表 す と, (1・63)
の よ う な 関 係 が 得 られ る .
1・5
拡
散
ミク ロ的 分 子 また は微 粒 子 の運 動 か ら,種 々 の物 理 量 の輸 送 現 象 を 説 明 す る こ とが で き る.例 え ば,イ
ン クを水 に滴 した と き,イ ンクを 構 成 して い る ミク ロ
的粒 子 は水 の 中 を拡 散 して 拡 が って い く.こ れ は イ ンクの 微 粒子 の熱 運 動 の結 果 で,粒 子 自身 の輸 送 と考 え る こ とが で きる. x方 向 に垂 直 な単 位 面 積Sを 考 え て,こ
の面 の 両 側 で 濃度nが 異 な っ て い る
図1・8
と き に は,Sを
拡 散
通 して 濃 度 の 大 き い ほ うか ら小 さい ほ うへ と拡 散 が起 こ る.単
位 時 間 に,こ の 単 位 面 積 当 た りを 通 る粒子 の数,す
な わ ち拡 散 量 をdN/dt(=
nυ)で 表 す と,こ れ はSの あ る位 置 で の濃 度 勾 配 に比 例 す る.nは
単 位体 積 中
の粒 子 の数,す な わ ち 濃度 で,υ は粒 子 の温 度 に よ っ て き ま るx方 向 に 向 か う 速 度 で あ る. (1・64)
この比 例 定 数Dを
拡 散 係 数 とい い,温 度 的 に は, (1・65)
と 表 せ る.Eaは
拡 散 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー と い わ れ る.式(1・64)は
あ る い はFickの
第 一 法 則 と 呼 ば れ る.こ
拡 散 の 式,
の式 に連 続 の式
(1・66)
を 適 用 す る と,
(1・67)
が 得 られ る.こ れ を拡 散 方 程 式,あ
る い はFickの 第二 法 則 と い う.
この拡 散 現 象 を 粒 子 の輸 送 と して 考 えて み よ う.x方 に あ る単 位 面 積Sを 考 え,単 位 時 間 にSを
向 に 直 角 でx0の
位置
θ方 向 か ら横 切 る粒 子 の 数 を 計 算 し
図1・9
よ う.こ
粒 子 の い る体 積 の 計 算
図1・10
立 体 角 の計 算
の 粒 子 は, (1・68)
内 に あ っ て,速
度 が θ と θ+dθ
の 方 向 に 向 く粒 子 で あ る.こ
の角 度 を 立 体 的
に 考 え る と,
(1・69)
粒子 密度 分布を (1・70)
と す る.こ れ は密 度 がυ とυ+dυ の間 に あ る粒 子 密 度 を表 して い る. 粒 子 の もつ物 理量 は場 所 に よ って異 な る.し か し,平 均 自 由行 程 を 走 る間 は 他 の粒 子 と衝突 を しな い ので あ るか ら,そ の間 の物 理 量 は一 定 で あ る.Sを か ら右 へ横 切 る1個 の粒 子 の物 理 量 は,図1・11で(x0-lcosθ)の
場所で の
粒 子 の物 理 量 と考 え るか ら,こ れ を (1・71)
と し,逆 向 きに右 か ら左 へ と横 切 る粒 子 の物 理 量 を
左
図1・11
場 所 の 関数 と して の物 理 量
(1・72)
と す る と,1個
の 粒 子 に つ い て,左
と 式(1・72)と
の 差 に な り,
側 か ら右 側 へ 流 れ る 物 理 量 は,式(1・70)
(1・73)
と 書 け る.単 73)の
位 時 間 に 通 過 す る 物 理 量 は,式(1・68),(1・69),(1・70),(1・
積 で 与 え ら れ,
(1・74)
た だ し,
(1・75)
で あ る.式(1・74)を さ て,前
輸 送 の 式 と い う.
に 述 べ た 拡 散 の 場 合 は,粒
子 自 身 の 輸 送 で あ る か ら,式(1・74)で,
で,
(1・76)
こ の 式 とFickの
第 一 法 則 と を 比 較 す る と,
(1・77)
と な る.物
質 に よ っ て,移
Boltzmannの
式 か ら わ か り,Dが
節 の 式(1・56)か
1・6
動 す る 粒 子 の くの は,温
度 が き ま る とMaxwel1-
測 定 さ れ る と1が 求 ま る .1が
わ か る と,前
ら σが 計 算 で き る こ と に な る.
固 体 にお ける 分子 運 動
我 々 が 日常 用 い る銅 や鉄 の針 金,ブ 合 で あ る.一 方,ガ
ロ ッ クな ど は,み ん な微 少 な結 晶体 の集
ラス や プ ラス チ ック ス の よ うな結 晶 質 で な い固 体 もあ るが,
こ こで は,ま ず 金 属 の よ うな結 晶 質 の 固 体 で,し か も全 体 が1っ の大 きな結晶, す な わ ち単 結 晶 に な って い る場 合 か ら考 え よ う.こ の 考 え 方 が 固体 を考 え る場 合 の 基 本 と な るか らで あ る. 単 結 晶 で は,原 子 あ る いは分 子 は空 間 的 に規 則 正 し く並 ん で い る.こ れ を 空 間 格 子 また は結 晶 格 子 と呼 ん で い る.原 子 あ る い は分 子 は結 晶 格 子 点 に 存在 し て,隣 接 す る原 子 群 と引 力 あ るい は斥 力 を及 ぼ しあ い,そ
の合 成 さ れ た 力 の ポ
テ ンシ ャル を極 小 に す る よ うに集 合 して い る.原 子 あ る い は分 子 が結 晶 を形 成 す る力 は電 気 的 な ク ー ロ ン引 力 で あ った り,共 有 結 合 力 で あ った り して,そ の 集 合 した結 晶 の性 格 を特 徴 づ け る. 結 晶 中 で1つ
の格 子 点 に存在 す る1原 子 の挙 動 を考 え よ う.こ の原 子 は力 の
平 衡 点 に い る ため,外 部 か らの エ ネ ル ギ ー の供 給 が な け れ ば,定 常 的 に 安定 で あ る.外 部 か らの エネ ル ギ ー が熱 で あ る とす れ ば,安 定 な位 置 に い る状 態 は, い わ ば温 度 的 にOKで 上 昇 して,こ
あ ると い え る.熱 エ ネル ギ ー が 供 給 さ れ る と,温
度が
の原 子 は平 衡 点 を中 心 に振 動 を は じめ る.平 衡点 に じっと して い
る 状 態 を 力 学 的 に 位 置 エ ネ ル ギ ー が 零 で,運 振 動 し て い る 状 態 で は,位
動 エ ネ ル ギ ー も零 の 状 態 と す る と,
置 エ ネ ル ギ ー と運 動 エ ネ ル ギ ー を 得 た こ と に な る.
原 子 の 平 衡 の 位 置 か ら の ず れ,す
な わ ち 変 位 をrで
に も ど そ う と す る 力Fは,こ
比 例 す る.い
のrに
表 す と,も
わ ゆ るHookeの
との平 衡 位 置 法 則 で あ る. (1・78)
す る と,rと
い う変 位 状 態 で の 位 置 エ ネ ル ギ ー は,
(1・79)
の よ う に 表 さ れ る.原
子1個
の 得 た 力 学 的 エ ネ ル ギ ー は,運
の 質 量 をm,そ
の 速 度 をυ で 表 す と,こ
の原子
動 エ ネ ル ギ ー と 位 置 エ ネ ル ギ ー の 和 で,
(1・80)
結 晶 内 に 直角 座 標 系 を設 定 し,Eを
成 分 で 表 す と,
(1・81)
で,こ
の6個
子 の 数 をN個
の 項 は す べ て 独 立 な 項 と 考 え る こ と が で き る.結 と す る.こ
れ らの 原 子 が す べ て 式(1・81)で
ネ ル ギ ー 状 態 に あ る わ け で は な い.気 ギ ー がMaxwell‐Boltzmann分
して,こ
の構 成 分 子 の運 動 エ ネ ル
体 の 場 合 と は異 な る が,あ
の 原 子 の 振 動 状 態 の 分 布 が,そ
と に な る わ け で あ る.し
表 され る同一 の エ
布 を と っ た よ う に,固 体 の 場 合 で も,そ れ を 構
成 す る 原 子 の エ ネ ル ギ ー 分 布 は,気 る.そ
体 の 場 合 に,そ
晶 を形 成 す る原
か し,こ
度 以 上 で は,Maxwell-Boltzmann分
の 分 布 は,物
の 固 体 の 温 度 を 決 定 して い る こ 質 に よ っ て き ま る あ る一 定 の 温
布 と し て,そ
す る と,そ の平 均 は1つ の 自由度 に対 して,1/2kTだ 付 与 さ れ る こ と に な っ て,N個
の 原 子 で は,熱
る 分 布 を して い
ん な に 大 き な 違 い は な い.
け の 平 均エ ネ ル ギ ー が
に よ る全 エ ネ ル ギ ー は
(1・82)
と表 さ れ る.結
晶 の 内 部 エ ネ ル ギ ー は,こ
の 振 動 の エ ネ ル ギ ー を 使 っ て,温
度
Tで (1・83)
の よ う に 表 さ れ る.Nを
ア ボ ガ ド ロ数N0に
と る と,3N0kT=3RTと
な っ て,
定 容 モ ル 比 熱 は,
(1・84)
表1・1
表1・1に
定 容 モ ル比 熱
示 す よ うな 金 属 また は単 原 子 成 分 か らな る固 体,ま
う に2種 の原 子 か ら成 り立 って は い るが,1個 占 め る よ うな結 晶 で の モ ル比 熱 は,式(1・84)の
た は岩 塩 の よ
の原 子 が 結 晶 の1個 の格 子 点 を 値 に近 い.こ れ をDulong‐Pe
titの 法 則 と い う. 結 晶 の格 子 点 に原 子 群 や分 子 が 存 在 す る場 合 は多 少 複 雑 に な る.分 子 の回転, 分 子 内 で の振 動 の エ ネ ル ギ ー が,そ の 結 晶 の温 度 依 存 性 に現 れ るた め で あ る. 式(1・83)で
は0Kに
な って も内 部 エ ネル ギ ー はU0だ
け残 り,こ れ が 固 体 で
の す べ て の 格 子 点 が静 止 して い る と きの位 置 エ ネ ル ギ ー と考 え られ る. 実 際 に は,完 全 な結 晶 とい う もの は存在 しな い.結 晶欠 陥 や不 純 物 が存 在 し て,こ れ らの存 在 に よ る 内部 エ ネ ルギ ーが つ け加 わ る.多 結 晶,す な わ ち微 結 晶 の集 合 体 の形 に な る と,い わ ゆ る結 晶粒 界 が無 数 に存 在 す る こ とに な り,そ の 影響 が でて くる.こ れ も内 部 エ ネル ギ ー に加 算 さ れ るた め,比 熱 は式(1・84)
で示 され る理 想 的 な値 よ り も大 き くな る.
1・7
液 体 の 分 子運 動
液 体 は,一 般 に,固 体 と気 体 の 中 間 的温 度 で存 在 す る.液 体 の密 度 は気 体 よ り も固 体 に近 い値 で,液 体 中 の分 子 あ る い は原 子 は固体 と同程 度 の 距 離 を 保 っ て い ると 考 え られ る.こ れ は,固 体 か ら液体 に相 変 化 す る と きの融 解 熱 が,液 体 か ら気 体 に相 変 化 す る と きの 気化 熱 に比 べ て小 さい こ とか ら も うなず け る. しか し,液 体 状 態 で は固 体 結 晶 の よ うな 規則 性 はな い.各 分子,原 子 は流 動 的 で 全 体 の形 は器 に よ って,い か よ うに で も変 わ る. 化 合 物 で の安 定 性 を考 えて み よ う.水 や アル コ ール の よ うに,固 相,液 相, ま た気 相 の い ず れ で も,そ の分 子 状 態 を 保 持 で き る もの も あ るが,GaAsの
よ
うに 液相 で,す で に そ の分 子 性 を失 って しま う化 合 物 も多 い.こ の よ うな化 合 物 で は,そ の解 離 温 度 は化 合 物 の融 点 よ り低 い と ころ に あ る.解 離 温 度 が融 点 よ り高 け れ ば,そ の物 質 は化 合 物 の 形 で,液 体 状 態 に な り得 るわ け で,そ の と きに は分 子 状 態 で の規 則 性 は少 な くと も保 たれ て い る と考 え られ る. 液 体,あ
る い は硝子 状 態 の固 体(非 晶 質)を 論 じる場 合 に は,こ の規 則,不
規 則 性 が 問 題 とな る.1つ
の原 子 あ る い は分 子 を 中心 と して,固 体 と同様 な規
則 性 が 空 間 的 に どの 程度 の範 囲 ま で及 ん で い るか が液 体 物 質 で の 規則 性 とい え る.液 晶 と いわ れ る液体 で は,巨 大 分 子 が,液 体 の状 態 で も,分 子 性 を失 わ ず に存 在 して お り,そ れ が外 部 か らの力 で配 向す る性 質 を も って い る. 物 質 の 内 部 エ ネ ルギ ーを
と 書 き,U'(T)が こ のU'(T)を
ば,Cυ
6N0の
温 度 に 対 し て 増 加 関 数 で 表 さ れ る と す れ ば,定 使 っ て ∂U'/∂Tの
形 に な る.U'(T)が
は そ の 温 度 範 囲 で 一 定 の 値 を もつ.固
体 で は,こ
容 比 熱 は,
温度 の一価 関数 で あれ
れがU'(T)=1/2kT・
形 で 表 現 で きた わ け で あ る.液 体 で は固 体 よ り膨 張 が 大 き の で,実
験
的 に 求 め られ る の はCpで 水 を 例 に と っ て,固
体 で のCpは
由度 が,液
体 に お い て も安 定 な 分 子 状 態 を 維 持 す る
体 の 場 合 と 比 較 す る と,
固 体 で,液
あ る が,液
Cp≒35〔J/mol・K〕,
液体
固 体 に 比 較 し て 大 き い.こ
Cp≒76〔J/mol・K〕
れ は 固 体 で の6N0に
体 で は大 き く な っ て い る こ と を 意 味 す る.こ
自 由 エ ネ ル ギ ー か ら考 え て み る と,1つ
はΔ(pV)に
相当す る自
の 増 加 分 は,Gibbsの 使 わ れ る 熱 量 で あ り,
他 は エ ン ト ロ ピ ー の 増 加 に 使 わ れ る 熱 量 と考 え ら れ る.
1・8
エ ン トロ ピ ー の 分 子 運 動 論 か ら の 解 釈
理 想 気 体 の エ ン ト ロ ピー は,ν
〔mol〕,温 度Tの
気 体 で,
(1・85)
と書 け る.S0は
標 準 態 度(V0,T0)で
体 定 数 で あ る.こ
の 値 で あ り,Cυ
は定 容 熱 容 量, Rは
気
の 力 学 的 状 態 を 微 視 的 状 態 と 呼 ぶ.こ
れ
の 式 を 分 子 の 運 動 か ら導 い て み よ う.
分 子 の 運 動 に 関 して,分
子1個1個
に 対 して,圧
積 等 で 表 現 され る気 体 の状 態 を 巨視 的 状 態 と呼 ぶ.
力,温
あ る 時 刻 で1個
度,体
の 分 子 が 位 置(x,y,z)に
も っ て い た と す る と,こ
の6個
子 が と り得 る微 視 的 状 態 の1つ り に,運
あ り,ま
た 速 度(υx,υy,υz)を
の 変 数 で 表 さ れ る1つ
の 力 学 的 状 態 は,そ
の分
で あ る.こ
度(υx,υy,υz)の
か わ
こ で は,速
動 量(mυx,mυy,mυz)⇒(px,py,pz)を
ま ず,位
置 に つ い て の 微 視 的 状 態 を 考 え よ う.温
と る こ と に す る.
V0の 空 間 に あ る 場 合,こ
度Tで1個
の分 子 が 体 積
の 分 子 の と り 得 る位 置(x,y,z)はV0の
中の どこ
で も よ く,そ の 微 視 的 状 態 の 数 は 空 間 的 に 考 え れ ばV0で の ど こ に あ っ て も,巨 `微 視 的 状 態 の 数 はV0と
視 的 な 状 態 は変 化 し な い.1つ
の 巨視 的 状 態 に対 応 す る
い え る.
2個 の 分 子 が 存 在 す る場 合 は ど う で あ ろ うか.1個 対 して,2個
あ る.こ の 分 子 がV0
目 の 分 子 の 存 在 し得 る位 置 は や は りV0の
目の 分 子 の 任 意 の位 置 に 空 間 内 の ど こ で も よ く,
そ の 微 視 的 状 態 の 数 はV0と
し て よ い.す
る と,2個
い る と き の 微 視 的 状 態 の 数 はV0×V0=V02と の 分 子 が 空 間V0を て,等
占 め る と き に は,そ
温 の ま ま 体 積 がV0か
VNと な り,そ
らVに
の 分 子 が 空 間V0の
な る.こ
の よ う に し て,N個
の 微 視 的 状 態 の 数 はV0Nと
変 わ っ た と す る と,そ
中 に
な る.そ
し
の微 視 的 状 態 の数 は
の 比 は,
で あ る.こ の式 の対 数 値 にkを 乗 じた式 を 考 え る と, (1・86)
と な っ て,こ
れ は 式(1・85)の
こ こ ま で 考 え る と,1つ る と,klogwが 次 に,運
で あ る.
の 巨 視 的 状 態 に 対 応 す る 微 視 的 状 態 の 数 をwと
す
エ ン ト ロ ピ ー に 対 応 す る も の で あ る こ と が わ か る だ ろ う. 動 量(px,py,pz)で
温 度 が 問 題 と な る.温 48)の
右 辺 第2項
度 がT0の
表 さ れ る微 視 的 状 態 を 考 え よ う.こ
の場合 は
と き,一
の 式(1・
次 元pxの
分 布 は,1・3節
よ う に, (1・87)
で 表 さ れ る.一
次 元 でPxの
数 は,図1・12か
図1・12
ら わ か る よ う に,こ の 分 布 関 数 の
f(px)=Ae−px2/2mkT
下 の 面 積 で あ っ て,
で あ る.す
る と,3次
元 運 動 量 空 間 で の(px,py,pz)の
体 積 は,
とな り,こ れ が1個 の分 子 に対 す る運 動 量 空 間 で の微 視 的 状 態 数 とな る.N個 の分 子 が あ る と きに は,位 置 的 空 間 の場 合 と 同 じよ う に考 え れ ば, (1・89)
が1つ の 巨視 的状 態 に対 応 す る微 視 的状 態 の数 に な る.温
度 がT0⇒Tへ
の
変 化 した と きの,微 視 的状 態 数 の比 は,
で あ り,こ の式 の対 数 値 にkを 乗 じた式 を考 え る と,
(1・90)
と な っ て,こ
れ は 式(1・85)の
ま と め る と,次 位 置(x,y,z)と
で あ る.
の よ う に な る. 運 動 量(px,py,pz)の6個
微 視 的 状 態 数 は,こ に比 例 し,N個
右 辺 第1項
の6個
の 変 数 で 表 さ れ る1分
子 の
の 変 数 が す べ て 独 立 で あ る と い う 考 え か らV・T3/2
の 分 子 で は,そ
の数 は (1・91)
で あ る.こ
れ に 対 し て,エ
ン トロ ピー変 化 は
(1・92)
と 書 け る.w0はV0,T0で
の 値 で あ る.
練 習 問 題 〔1〕
1. 体 積1m3の
容 器 にN2ガ
ス が入 って い る.内
部 圧 力 は10−2Pa,温
度 は300K
で 熱平 衡 状 態 に あ る. (1) 容 器 中 のN2分
子 数 は い く らか.
(2) こ の気 体 に つ い て,Maxwellの
速 度 分布 則 を グ ラ フに描 け.
(3) 分 子 の 自乗 平 均 根 速 度 はい く らか. (4) 速 さが200m/sと201m/sの
間 に あ る分 子 数 は全 体 に対 して い くらの割合 か.
(5) 分 子 直 径 を3.5Å とす る と,平 均 自由 行程 は い く らか.
2. 〓
3. 1molの
を 求 め よ.
単 原 子 理 想 気 体 が断 熱 自由膨 張 して,体 積 が2倍 にな った.エ ン トロ ピー
変 化 を求 め よ.
第2章 特殊相対性理論
Einsteinの
相 対 性 理 論 は,そ れ まで 信 じ られ て い たNewton力
て 大 き な変 革 を 与 え る もの で あ っ た."動
学 に対 し
く"と い う概 念 は 基 本 的 に は,
"動 か な い絶 対 静 止 系"の 上 に 成立 す る とい うの が
,そ れ ま で の 考 え で あ っ
た.相 対 性 理 論 で は,こ の 絶対 静 止 系 の存 在 を 否 定 す る."動
く"の
的 に い え る こ とで あ って,静 止 系 の 概 念 を 放 棄 した 場 合 に は,こ Newton力
2・1
は相対
れ まで の
学 は,こ の 新 しい考 え の うえか ら書 き換 え られ ね ば な ら な い.
Galileiの
相 対 性
力学 に お け る運 動 方 程 式 の第 二 法 則 は, (2・1)
で,こ
の 式 は 慣 性 系K0に
対 して 成 立 す る.た
だ し,K0に
対 して 加 速 度 運 動
を し て い る 系 に 対 して は,右
辺 の 力 の 項 に 慣 性 力 と い う も の が 現 れ,こ
式 は 成 立 しな い.し
れ を 逆 に い え ば,1つ
ば,こ
か し,こ
の 慣 性 系K0が
れ に 対 して 加 速 度 運 動 して い る系 に 対 し て も,運
入 し た 形 で 書 け る と い う こ と に な る.こ の 存 在 が 証 明 で き れ ば,Newtonの
の方 程
定 義 で きれ
動 方 程 式 が 慣 性 力 を導
の 第 二 法 則 を 完 全 に 満 た す 慣 性 系K0
運 動 方 程 式 の 正 し さ は,は
っ き り す る はず
で あ る. と こ ろ が,慣
性 系K0は
に 対 して,x方
向 に 等 速 度uで
測 る原 点 で,2つ 標 系の間には
一 義 的 に は き ま ら な い.い
ま,座
動 い て い る 系K(x',y',z')を
の 系 の 原 点 は 一 致 して い た と し よ う.す
標 系K0(x,y,z) と り,時 る と,こ
の2つ
間を の座
図2・1 慣 性 系K0に
対 しx方 向 にuの 速 度 で進 む系K
(2・2)
が 成 立 す る.uは
一 定 で あ る か ら,式(2・2)を
時 間tで2階
微 分 し た 式 は,
(2・3)
と な っ て,K系 Kで
で も第 二 法 則 は成 立 す る.た
だ し,こ
れ に は条 件 が つ く.K0,
同 じ よ う に 時 間 が 経 過 す る と い う 条 件 で あ る.Kで
の時間を (2・4)
と お く と,
(2・5)
で,式(2・3)が
成 立 す る た め に は,
(2・6)
の 条 件 が 必 要 で あ る.こ
の 第1式
はdt'/dt=1で
あ る か ら, (2・7)
が で て,時
間 を 測 る 原 点 は 適 当 に と れ る か ら,const.=0に
と れ ば, (2・8)
が 条 件 と な る. 一 般 的 に い う と,慣 こ の2つ
性 系K0に
対 し て 一 定 速 度uで
の 系 の 間 で,r(x,y,z),tお
運 動 して い る 系Kを
よ びr'(x',y',z'),t'を
考 え,
と る と き, (2・9)
な る変 換 を し た 場 合 に は,Kに る.こ
同様 に運 動 の第 二 法 則 が 成 立 す
の 変 換 に 対 して 第 二 法 則 は 形 を 変 え な い.式(2・9)をGalilei変
び,系Kも
2・2
お い て もK0と
換 と呼
ま た 慣 性 系 と い う こ と が で き る.
電 磁 気 学 とMichelson‐Morleyの
Maxwellは,1864年 と を 予 言 した.電
実 験
に 電 磁 場 理 論 を 完 成 し,そ
の 中 で光 が 電 磁 波 で あ る こ
荷 の 振 動 に よ っ て 生 じ た 電 磁 場 の 変 化 は,真
空 中で
(2・10)
の 速 さ で 伝 わ る.ε0,μ0は
真 空 中 の 誘 電 率,透
磁 率 を そ れ ぞ れ 表 す.こ
う に電 磁 波 の 速 さ が 理 論 的 に 正 確 な も の で あ れ ば,任 さ を 正 確 に 測 る こ と に よ っ て,我 系K0)が
意 の座 標 系 で 電 磁 波 の速
々 の 住 む 空 間 の ど こ か に,絶
対 静 止 系(慣
性
存 在 す る こ と が 証 明 で き る は ず で あ る.
我 々 の 住 ん で い る 場 所 をGalileiの Kの 静 止 系K0に
対 す る 速 度 をuと
な る は ず で あ る.uを K0が
のよ
確 認 で き る.uの
知 数 を き め る に は,次
相 対 性 に 現 れ た 慣 性 系Kで す る と,K上
測 定 で き れ ば,光 大 き さ,方
で 測 っ た 光 の 速 度 はc−uと
速 度 がcで
向,向
あ る と しよ う.
あ る 空 間 の 存 在,す
き は わ か ら な い の で,こ
なわ ち
の3個
の未
の よ う に す れ ば よ い.
地 球 上 に 任 意 の 直 角 座 標x,y,zを
と り,±x,±y,±z方
向で光速 度 を測
る.
(2・11) が 測 定 で き れ ば,(ux,uy,uz)が 渉 効 果 を 利 用 して,こ
のuを
わ か る.MichelsonとMorleyは,光 測 定 す る 実 験 を 行 っ た.
の干
図2・2
Michelson-Morleyの
図2・3 M2で
図2・2の
光 源Qか
か れ る.①,② さ れ,Pに り,干
ら出 た光 は,半
は 同 じ距 離lだ
も ど る.①
渉 を 起 こ す.こ
の 光 の 行 路 差 は0で
はPで
干 渉 計
反 射 して も ど る光 の 経 路
透 明 板Pで,透
け 進 ん だ 後,反
反 射 さ れ,②
射 鏡M1,M2で
はPを
それぞ れ反射
透 過 し た 形 で 望 遠 鏡Tに
の 測 定 器 が 静 止 空 間 に 置 か れ て い る な らば,① あ る か ら,Tの
中 で の 干 渉 は 明 る い.実
の 反 射 面 が 光 に 対 して わ ず か の 傾 きが あ り,Tに 射 の 場 所 に よ っ て 光 路 差 が 少 しず れ,全 厚 の 干 渉 縞,Fizeau
過 光 ① と反 射 光 ② に 分
fringe).こ
入
と ② と
際 に はM1,M2
入 る 光 はM1,M2上
で,反
体 と し て は 明 暗 の 干 渉 縞 が 見 え る(等
のMichelson-Morleyの
干 渉 計 が 観 測 系Kに
あ っ て,Kの
速 さ がPM1方
向 にυ で あ る と し よ う.す
る と,光
① がPM1を
往 復 す る 時 間t1は,
(2・12)
ま た,光
② がPM 2を 往 復 す る時 間t2は,
(2・13)
こ の 時 間 差 を 考 え る と,(υ/c)の
三 次 以 上 を 無 視 して,
(2・14)
この 時 間差 に対 応 す る光 路 差 は,
(2・15)
と な り,こ
れ に よ る位 相 差 は,
(2・16)
と な る.λ0は
測 定 に 用 い た 光 の 波 長 で あ る.次
した 状 態 で 同 様 な 実 験 を す れ ば,両
に,こ
の 装 置 全 体 を90°
者 で の 位 相 差 は こ の2倍,す
回転
な わ ち,
(2・17)
だ け 変 化 す る は ず で あ る.そ 転 の 間 に,干
し て,望
渉 縞 の 移 動 す る距 離 は,干
遠 鏡Tを
の ぞ い た と き,こ
の90°
の 回
渉 縞 に して,
(2・18)
個 で あ る.
と し,υ
と し て,地
球 の 公 転 速 度3×104〔m/s〕
を と る と,
(2・19)
と な る.こ
れ は 干 渉 縞 が,縞
とMorleyの
間 隔 の0.37だ
実 験 装 置 は,こ
の 値 の1/100程
ほ ど の 精 度 を も っ て い た け れ ど も,実 終 わ っ た.こ
の 実 験 を 行 っ た 時,ち
の 移 動 は 見 え る は ず で あ る.し
験 で は,こ
度 の移 動 で も測 定 で き る の 移 動 は 観 測 さ れ ず,失
ょ う ど 地 球 が 静 止 空 間K0に
こ の 結 果 は 当 た り ま え で あ る が,こ の 反 対 側 で 同 じ実 験 を 行 え ば,今
け 移 動 す る こ と を 意 味 す る .Michelson
の 実 験 の 半 年 後,す
敗 に
い た と す れ ば,
な わ ち 地球 の公 転 軌 道
度 はυ の 向 き は反 対 側 に な る わ け で,干
か し,こ
に か か らな か っ た.MichelsonとMorleyの
渉縞
の場 合 で も同様 に干 渉 縞 の移 動 は観 測 実 験 以 外 に も,K0を
と す る光 学 的 実 験 が い くつ か 季 節 を 変 え て 行 わ れ た が,い
検 出 しよ う
ず れ もK0の
検 出 は
否 定 的 な 結 果 に 終 わ っ た.
2・3
Lorentz変
Michelson‐Morleyの 速 さ が 一 定cで
換
実 験 は,ど
ん な 座 標 系 で 光 の 速 度 を 測 定 し て も,そ
あ る こ と を 示 して い る.い
各 座 標 で の 時 間 はt,t'で 座 標 系 の 原 点OとO'と
あ る と す る.た
ま,2つ だ し,時
は 一 致 して お り,K'はKに
度υ で 運 動 し て い る と す る.時
間 原 点 でO(O'で
の 座 標 系K,K'を
考 え,
間 を 測 る 原 点 で は,2つ 対 し てx方 も あ る)か
の
の
向 に一 定 の速
ら 出 た 光 のt時
間
後 の 波 面 は, (2・20)
で あ る.こ
の 光 をK'で
観 測 した と す る.Galilei変
な わ ち,x'方
向 で の 光 の 速 さ はc−υ
換 に 従 う と す れ ば,波
面
の形 は (2・21) で あ る.す
と して観 測 され る はず で あ る
図2・4
が,Michelson-Morleyの い て も,光
2つ の 慣性 系K,K'で
実 験 は,こ
の 光 の 波面
の よ う な こ と は 否 定 し て お り, K'に
お
の 波 面 の 式 は, (2・22)
で な け れ ば な ら な い.こ そ こ で,Galiley変 を 式(2・20)と
れ が 光 速 度 不 変 の 原 理 で あ る.
換 と は 異 な る(x,y,z,t)と(x',y',z',t')と
式(2・22)が
の変 換
満 足 さ れ る よ う な 形 で 考 え な け れ ば な ら な い.こ
の 場 合 に は,
で あ る か ら,(x,t)と(x',t')と
の 変 換 を 考 え れ ば よ い.変
換 の 条 件 は, (2・23)
で あ る.さ
て,こ
形 で あ る と,い 空 間 は,こ Kに
の(x,t)と(x',t')と
の 関 係 は線 形 で あ る と し よ う.非
ず れ か の 座 標 系 で 空 間 と 時 間 の 一 様 性 が な くな り,そ
線
の よ うな
こ で は 考 え な い こ と と す る.
お け るx軸
の 正 方 向 で,光
の 先 端 の 事 象 は(x,ct)で,こ
れ はK'に
お
け る(x',ct')に
対 応 す る. (2・24)
こ の 事 象 間 の 変 換 は,Aを0で
な い 定 数 と し て, (2・25)
と す れ ば,式(2・24)を Bを
満 足 す る.同
様 に,x軸
の 負 方 向 に 進 む 光 に 対 し て は,
定 数 と し て, (2・26)
と す れ ば よ い.
(2・27)
と お け ば, (2・28) (2・29)
と な る.式(2・28)でK'に み る と,Ect/Dと
お け る原 点O'の
な っ て お り,こ
座 標 はx'=0で,こ
れ はO'のOに
対 す るt秒
れ はKか
ら
後 の距 離 で ある
か ら,
(2・30)
次 に,t=0の
瞬 間 にKか
ら み たK'上
の 単 位 長(x'=1)は,式(2・28)か
ら
(2・31)
に 見 え る.こ
の 逆 に,式(2・28),式(2・29)でtを
消 去 した式
(2・32)
で,t'=0の
瞬 間 に,K'か
ら み たK上
の 単 位 長(x=1)は,
(2・33)
に 見 え る.KとK'と な い.故
の 運 動 は相 対 的 で あ る か ら,Δx=Δx'で
な けれ ば な ら
に,
(2・34)
こ れ を 式(2・30)に
代 入 す る と,
(2・35)
が 得 ら れ る.式(2・34),式(2・35)を
式(2・28),式(2・29)に
代 入
した形
は,
(2・36)
と な り,こ (2・36)の
の 変 換 は 式(2・23)を
満 足 す る.こ
れ をLorentz変
換 と い う.式
逆 変 換 は,
(2・37)
と な る.式(2・36),式(2・37)でυ/c≪1の と な っ て,Galillei変
2・4
場 合 に は,x'=x−υt,t'=t
換 と 一 致 す る.
Lorentz変
前 節 の 式(2・31)に
換 の 意 味
式(2・34)を
代 入 す る と, (2・38)
が 得 ら れ る.こ
のΔxは
の 単 位 長 で あ る か ら,そ
自 分 に 対 して 速 度υ で 動 い て い る も の を 見 た と き れ が 長 さl(自
〓に 見 え る.こ 次 に,時
分 と 同 じ系 で 測 っ て)の
れ がLorentz短
も の で あ れ ば,
縮 で あ る.
間 の 経 過 が 運 動 系 で ど の よ う に な っ て い る か を み よ う.K'で
計 はx'=0の す る と,x=υt,こ
と こ ろ に あ る と し て よ い か ら,式(2・36)の れ を 第2式
に 代 入 す る と,
第1式
でx'=0と
の時
(2・39)
t'=1と Kに
す る と,〓
で,こ
お い て〓
の1秒
は,そ
秒 で あ る こ と を 意 味 す る.す れ に 対 し て 静 止 し て い る 系 か ら 測 る と ,1秒 に な っ て い る.地
命
れ はK'に
τ0を 地 上 で 測 る と,そ
お け る1秒 な わ ち,運
が, 動 系
よ り大 き く〓
上 に 対 し て 速 度υ で 降 っ て く る 宇 宙 線 の 寿
の 測 定 値 は,
(2・40)
に な っ て い る.こ 次 に,質
の 関 係 は,実
点 の 運 動 を 静 止 系Kと
験 的 に 確 認 さ れ て い る. 運 動 系K'と
で 考 え よ う.Kで
の 速 度 成 分 は,
(2・41) で 表 さ れ る.こ
の 質 点 の 運 動 をK'で
み た 場 合 に は,
(2・42)
と な る.前
節 の 式(2・36)の
微 分 を 考 え る と(y,z方
向 の 分 も加 え て),
(2・43)
(2・44)
で あ る か ら,
(2・45a)
(2・45b)
(2・45c)
こ れ は 相 対 論 的 な 速 度 合 成 則 で あ る.質 0の 場 合 は,式(2・45b),式(2・45c)か
点 の 速 度 がux=u,uy=0,uz= ら,uy'=0,uz'=0と
な っ て,
式(2・45a)は,
(2・46)
の よ う に 表 さ れ る.こ
の 後 の 式 は,次
度 を も っ て い るK'上
でu'の
速 度 を もつ 質 点 をKか
の 式 で 表 さ れ る の で あ る.υ,u'≪cの 則 と 同 じ に な る.し
の よ う に 考 え ら れ る.Kに
対 してυ の 速
ら み る と,そ
場 合 に は,Newton力
の速度 が こ
学 で の速 度 合 成
か し,
の場 合 で も,こ の合 成 則 で は,合 成 速 度uは 光 速度cを 超 え な い.光 速 度cは 限 界速 度 で,u'=cの
場 合 に はu=cと
な る.
2・5 相 対 論 的 力学
Lorentz変
換 に 対 して 不 変 な 力 学 の 法 則 を 考 え よ う.相
の 慣 性 系 は,す
べ て
べ て の 物 理 法 則 の 記 述 に 関 して 同 等 の 資 格 を も っ て お り,し
が っ て そ の 物 理 法 則 の 形 はLorentz変 た だ し,速
対 論 で は,す
換 に 関 して,不
変 で な け れ ば な ら な い.
度 が 光 速 度 に 比 較 し て 十 分 に 小 さ い 場 合 は,Lorentz変
llei変 換 に 移 行 す る の で,相
対 論 力 学 はc⇒∞
た
でNewton力
換 はGali 学 と一 致 す る
も の で な け れ ば な ら な い の は 当 然 で あ る.
〔1〕
運 動 量 と質 量
慣 性 系Kで
速 度uで 運 動 して い る質 点 の運 動 量pは, (2・47)
で表 現 され る.Newton力
学 で は,質 量 と速 度 と は無 関 係 な 量 と して 取 り扱
う が,こ
こ で はmはuの
関 数 で あ る と す る. (2・48)
そ し て,Kに
対 し て 速 度 を も つ 他 の 慣 性 系K'に
お い て も,式(2・47)と
同
様 な 関 係, (2・49) で,運
動 量 は 表 現 さ れ な け れ ば な ら な い.こ
よ う に 求 め て み よ う.K空
間 で 全 く 同 じ2個
に 速 度υ を も っ て い る 質 点m(υ)が して,衝 てx方
速 度 に な っ た と す る.こ 観 測 す る と,図2・5の
度υ を も っ て い た 質 点m(υ)はm(o)で (o)は 逆 にm(υ)で
表 さ れ,Kで
表 さ れ る こ と に な る.K'で
(a)
(d) 図2・5
向
衝 突 す る .そ の 現 象 をKに
よ う に な る .Kで
対 し 速
止 ま っ て い た 質 点m
見 た衝 突後 の速度 はそれ ぞ
(b)
(c)
関係 を 次 の
の 質 点 の 直 衝 突 を 考 え る .x方
止 ま っ て い る 質 点m(o)に
突 後 は そ れ ぞ れu1,u2の 向 に 速 度υ を も つ 系K'で
こ で は,式(2・48)の
れu1',u2'と
な って い る と し よ う.m(u1')はK'でu1'の
K'はKに
対 してυ の 速 度 を も っ て い る.す
る と,そ
速 度 を も っ て お り, のKか
らみ た 速 度u1は,
速 度 合 成 則 に よ っ て,
(2・50)
で あ り,同
様 にm(u2')に
つ い て は,
(2・51)
で 表 さ れ る.し KとK'と
か し,衝
突 の 瞬 間 を 考 え る と,u1=u2,u1'=u2'で
あ り,ま
た,
は 相 対 速 度υ で 運 動 し て い る か ら, (2・52)
で あ る.式(2・52)を
式(2・50),式(2・51)に
代 入 す る と,
(2・53)
こ の う ち,複
号 は− を と ら ね ば な ら な い*).式(2・52),式(2・53)か
ら, (2・54)
が で る.さ
て,Kに
お け る 運 動 量 保 存 則 を 考 え る と, (2・55)
次 に,Kに
お け る質 量 保 存 則 を考 え る と, (2・56)
(2・57)
*) +を か がcよ
と った場 合 は,u1υ
あ る い はu2υ がc2よ
り大 き く な って しま うか らで あ る.
り大 き くな って,u1,u2あ
る い はυ の い ず れ
す る と,
(2・58)
こ の 式 に,式(2・53)の
関 係 を 入 れ る と,
(2・59)
が で る.m(o)を
静 止 質 量,あ
るい は固 有 質 量 と呼 ぶ.速 度υ で動 い て い る と
きの相 対 論 的質 量 は,式(2・59)で
表 現 され る.す る と,速 度uで 運動 して い
る質 点 の相 対 論 的運 動 量 は, (2・60)
と 書 け る.u≪cの 動 量 と 一 致 す る.今 一 般 に,u1,u2の
場 合 に は,p=m(o)uと 後m(o)をm0の
な り,こ
れ はNewton力
形 で 表 現 す る こ と に す る.
速 度 で 同 方 向 に 動 い て い る 静 止 質 量m0の2個
心 衝 突 を し,速 度 がu1',u2'に
学 の運
の質 点 が 向
な っ た と す れ ば,相 対 論 に お け る 質 量 保 存 則 は,
(2・61)
の よ うに書 け る.速 度uが 光速cに 比 べ て小 さい場 合 は, (2・62)
の よ う に 展 開 で き る の で,こ
の 第1項
の み を 比 較 す る と, (2・63)
で,こ
れ は 静 止 質 量 の 保 存 を 意 味 し て い る.ま
た,第2項
を 比 較 す る と,
(2・64)
が で るが,こ れ は運動 エ ネ ル ギ ー保 存 則 で あ る. 〔2〕 運 動 方 程 式 と運 動 エ ネ ル ギ ー 相 対 論 的 力 学 で の運 動方 程 式 は,力 をFと
して, (2・65)
で 表 す.相 る.こ
対 論 に お い て も,力
のpは
式(2・60)で
のpで
が 働 か な い 場 合 は,運
動 量pは
保存 され る とす
あ る か ら,
(2・66)
とな って,加 速度du/dtとFと 力Fが
は必 ず しも平 行 で は な い.
単位 時 間 に な す仕 事Wは,F・uで
あ るか ら,こ れ が 質 点 の 運 動 エ ネ
ル ギ ーTの 時 間 変 化 とな り, (2・67)
の よ う に 表 現 さ れ る.こ
こ で も,力
が 働 か な い 場 合 は 運 動 エ ネ ル ギ ーTは,
保 存 さ れ る よ う に き め た わ け で あ る.こ と,
の 式 のFに
式(2・66)の
関係を入れ る
す な わ ち,
(2・68) u
=0の
と き ,T=0で
あ る か ら,こ
の 一 定 値 は −m0c2で
あ る.す
る と,
(2・69)
の よ う に 運 動 エ ネ ル ギ ー が 表 さ れ る.m0は 量 で あ る か ら,m0c2を 度uを
静 止 エ ネ ル ギ ー と 呼 び,運
も っ た と き の エ ネ ル ギ ーmc2と,こ
れ る こ と に な る.mc2を
質 点 が 静 止 の状 態 に あ る と き の 質 動 エ ネ ル ギ ーTは
質点が速
の静止 エ ネル ギー との差 で表現 さ
自 由 質 点 エ ネ ル ギ ー と 呼 ぶ.
〔3〕 運 動 量 とエ ネ ル ギ ー の 関 係 慣 性 系Kと,こ
れ に 対 してx方
自 由 質 点 の 運 動 量,エ
向 にυ の 速 度 で 運 動 し て い る慣 性 系K'と
ネ ル ギ ー の 関 連 を 調 べ よ う.Kで
は,
(2・70)
K'で
は,
(2・71)
と 表 現 す る.uとu'と
の 関 係 は,前
節 の 式(2・45a)で,こ
れ を 書 く と,
(2・72)
で あ る.こ
れ か ら,
(2・73)
が で る.式(2・71)を
式(2・72),式(2・73)を
使 っ て 書 き か え る と,
で,
(2・74)
ま た,式(2・73)を
使 う と,
(2・75)
式(2・74),式(2・75)の
変 換 は,2・3節
で 述 べ た(x,t)と(x',t')と
変 換 と 全 く 同 じ形 を し て い る.(x,y,z,t)と(x',y',z',t')の (ct)2−(x2+y2+z2)が
不 変 量 で,こ
と(px',py',pz',E'/c2)と
の 値 は0で
の 変 換 で は
あ っ た.(px,py,pz,E/c2)
の 変 換 で の 不 変 量 を 求 め る と,
(2・76)
と な る.自
由 質 点 の エ ネ ル ギ ー は,こ
れ か ら, (2・77)
の よ う に 書 け る.ま
た,式(2・70)の
関 係 と式(2・77)か
ら,
(2・78)
が で る.式(2・77)を
微 分 す る と,
(2・79)
と な っ て,uの
成 分(ux,uy,uz)は,(∂E/∂px,∂E/∂py,∂E/∂pz)で
あ
る こ とが わ か る. 〔4〕 運 動 す る質 点 の 固有 時 質 点 が 力 を うけ て運 動 す る と きに は,そ の速 度uは 時 々 刻 々変 化 す る.1つ の 慣 性 系Kで
の時 間tを も って,こ の速 度 を測 り,そ れ がu(t)で
次 の瞬 間 に は,そ の速 度 は別 な慣 性 系 でu'(t')と
あ っ て も,
しな け れ ば な らな い.す
る
と,加 速 度 を も って い る質 点 の運 動 を理 解 す る た め に は,無 限 個 の慣 性 系 を用 意 しな けれ ば な らな い.こ の よ うな不 便 さ を解 消 す るた め に は,そ の質 点 と全 く同 じ運 動 をす る慣 性 系Iを 用 意 す れ ば よ い.こ 2・4節 の式(2・39)の
の慣 性 系Iの 時 間 経 過dτ は
よ うに は 表現 で きず,等 速 慣 性 系Kの
時 間経 過dtに 対
応 して, (2・80)
の よ う に 表 さ な け れ ば な ら な い.u(t)はKで こ の τを 質 点 の 固 有 時 と い う.τ Lorentz変
〔5〕
の 時 刻tに
は も と の 慣 性 系Kの
お け る 速 度 を 表 す.
選 び 方 に は 無 関 係 で,
換 に 対 し て 不 変 量 で あ る.
力の変換則
自 由 質 点 の エ ネ ル ギ ーEは,運
動 エ ネ ル ギ ーTと
静 止 エ ネ ル ギ ー 分m0c2
だ け 違 う が,こ
れ は 時 間 に 対 し て 無 関 係 な 量 で あ る の で,エ
(2・67)をEの
形で
ネル ギー方程 式
(2・81)
と書 く.fは
力 を 表 す.こ れ と運 動 方 程 式 (2・82)
とが,相 対 論 的 力 学 の基 本 的 方 程 式 に な る が,こ 導 入 す る と,
のdtに 対 して 固 有 時dτ を
(2・83)
こ の 後 の 式 で,左
辺 を(E/c2)と
した 意 味 は,既
c2)は,Lorentz変
換 に 対 して(r,t)と
同 じ変 換(共
は 固 有時 で ある の で,〓 す る と,式(2・83)の
に 述 べ た よ う に,(p,E/ 変 性)を
もLorentz変
受 け,ま
たdτ
換 で 共 変 性 をもつ.
右 辺 も 同 じ共 変 性 を 受 け な け れ ば な ら な い.こ
の共変 性
を 受 け る成 分 を 書 く と,
で あ る.す
な わ ち,式(2・83)は
をMinkowski力
す べ て の 慣 性 系 で,全
と い い,Newton力
く平 等 な 表 現 を と る.
学 に お け る よ う に,絶
対 的 な意 味 を もた
な い.
2・6
質 量 と エ ネ ル ギ ー の等 価 性
自 由質 点 エ ネ ルギ ーを (2・84)
の よ う に 表 現 し た 意 味 は,質 れ をEinsteinの
関 係 式 と い う.エ
は 〔kg〕で あ る が,そ 節 の 式(2・69)に
量 と エ ネ ル ギ ー の 等 価 性 を い っ て い る わ け で,こ ネ ル ギ ー の 単 位 は 〔J〕で あ り,質
の 変 換 定 数 がc2に
よ れ ば,
量 の単位
相 当 す る こ と を 意 味 し て い る.2・5
(2・85)
で,第2項
以 下 は 運 動 エ ネ ル ギ ー を 表 す.
練 習 問 題 〔2〕
1. 光速 をcと
して,0.8cの
速 さで 動 いて い る運 動 系K'の
中 で,長
さ1mの
棒を
運 動 方 向 に対 して30° 傾 け た.こ の棒 を静 止 系 か らみ た と き, (1) 棒 の長 さ は い くらに 見 え るか. (2) 棒 の角 度 は い くら に見 え るか.
2. 静 止 系K(x,y)と
こ れ に 対 してx方
向 にυ で 動 く運 動 系K'(x',y')を
考 え
る.
(1) 静 止 質 量m0の
質 点 の 速 度 をKでu,K'で
はu'と
す る と,uとu'と
の関 係
は ど の よ う に 表 さ れ る か. (2)
Kで
の 運 動 量 を〓,K'で
の 運 動 量 を〓 と 表 す と,pとp'と
(3) Kで
の 関 係 は ど うか.
の 運 動 エ ネ ル ギ ー を〓,K'で
エ ネ ル ギ ー を〓と表
の運動 す と,EとE'と
の関係 はど
う か.
(4) p2-(E/c)2は
変 換 に 対 して 不 変 量 と な る が,そ
る か. (5)
Eをp,m0,cで
表 す と,ど
の よ う な 形 に な る か.
の 値 は ど の よ うに 表 さ れ
第3章
電 子 の粒 子 性 と波動 性
この章 で は,電 子 の もつ二 面 性,粒 子 性 と波 動 性 に つ いて,ダ
ブル ス リッ
トを用 い た思 考 実験 を通 して考 え て み る.電 子 の通 過 す る経 路 を 計測 によ っ て識 別 す るか,し な い か が,そ の後 の電 子 の 性 格 に大 き な 差 異 を も た らす こ とが わ か る で あ ろ う.
3・1
波 の表 現 と波 の強 さ
こ れ ま で 古 典 物 理 で 勉 強 し て き た 波 の 数 学 的 表 現 を ま ず お さ ら い を し よ う. 一般 に
,あ
る任 意 点 で の 正 弦 波 的 な 振 動 を 次 の よ う に 表 す. (3・1)
こ こ に,yは
振 動 の 中 心 か ら 測 っ た 振 動 の 変 位,Aは
表 し,振 動 の 周 期Tと
の 間 に は ωT=2π
の と き の 初 期 位 相 で あ る.こ
振 幅,ω
の 関 係 が あ る.tは
の 振 動 が 速 度(位
相 速 度)υ
は角 振 動 数 を
時 間,δ
でx軸
はt=0
方向 に伝播 す
る と き の 波 動 の 変 位y(x,t)は, (3・2) こ こ に,kは
波 数 で,波
υ kな る 関 係 に あ る.こ 式(3・2)で
長 λ と の 間 に はkλ=2π
のυ=ω/kを
の 関 係 が あ る.ま
た,ω=
位 相 速 度 と い う.
表 さ れ る波 は正 弦 波 で あ る の で, (n:整
で 波 動 変 位y=0と
な る.す
数)
(3・3)
る と, (3・4)
で あ る の で,時 の で,+x方
間 経 過(tを
増 加 さ せ る)と
向 に 進 む 進 行 波 で あ る.同
と も にy=0の
様 に,
位 置xが
増 加 す る
(3・5)
は,−x方
向 に 進 む 進 行 波 と 見 る こ と が で き る.
式(3・3),式(3・5)で
表 さ れ る 正 弦 波 は,次
の よ うに複 素 関 数 を 用 い て 表
現 す る こ と も で き る. (3・6) Eulerの
公 式 よ り,式(3・6)は, (3・7)
と な り,式(3・5)を こ れ をRe[Ψ]と
含 ん で い る.第1項
は 実 数 部(real
part)と
呼 ば れ,
書 く と, (3・8)
で あ る.第2項
は 虚 数 部(imaginary
part)と
呼 ば れ,Im[Ψ]と
書 く と, (3・9)
で あ る.式(3・2),式(3・5)の
よ う に正 弦 関 数 で 波 を 表 す と,こ
で 微 分 を す る ご と にsinとcosを お く と,係
書 いて
数 が 異 な る だ け で 何 回 微 分 を し て も同 じ関 数 形 に な る の で 扱 い や す
い 利 点 が あ る.式(3・6)か 所xに
繰 り返 す こ と に な る が,式(3・6)で
れ をxやt
よ る変 化 ∂y/∂xを
ら波 の 変 位yや
そ の 時 間 変 化 ∂y/∂t,お
よび場
知 り た け れ ば, (3・10)
(3・11)
(3・12)
とす れ ば よ い.つ ま り,必 要 に応 じてΨ の 実 数 部 ま た は虚 数 部 を 取 り出 せ ば よ く,数 学 的 に演 算 を す る と きはΨ の形 の ま ま 扱 え ば よ い わ け で あ る.複 関数 Ψ は左 右 の しりに ポ ケ ッ トの つ い た ジ ー ン ズ と思 え ば よ い.ジ * 「共 役 」と い う言 葉 は昔 は 「共軛 」と書 い た.車 す ラテ ン語 か らき た言 葉(con-jugum→conjugate)で 概 念 を形 容 す る の に用 い られ るよ うにな った.例
の 左 右 両 輪 が軛(軸)を
素
ー ンズ を
共 に して い る様 子 を 表
あ る.こ れ か ら互 に相 関 連 す る数 学 上 の え ば,a+ibとa−ibは
互 に共 役 で あ る とい う.
は い て歩 い て(演 算 して),必 要 に 応 じて,左 右 の ポ ケ ッ トか ら取 り 出 す 要 領 で あ る. Ψ の共 役 複 素 関 数 をΨ*と 書 く と, (3・13) (3・14) で あ る.す
る と, (3・15)
で あ る. 波 の強 度 とは,単 位 時 間 に 単 位 面 積 を通 過 す る波 の エ ネ ルギ ーで 定 義 され る が,こ
こで は簡 単 に次 の よ うに考 え て,波
の 強 度 を 求 め て み る.波
の強度 を
単 位 体 積 あ た りの エ ネ ル ギ ー と波 の速 度 の 積 と考 え て み る.単 位 体 積 あ た り の エ ネル ギ ー は運 動 エ ネ ル ギ ー と位 置 エ ネ ル ギ ー の 和 で あ る が,運
動 エネ ル
ギ ー が最 大 の とき は位 置 エ ネ ル ギ ー は0と な って い る ので,単 位 体 積 あ た りの 最 大 運 動 エ ネ ル ギ ー を式(3・11)を
使 って 求 め て み る と,媒
質 の密 度 を ρ と
して,
(3・16)
波 の速 度 をcと す る と,波 の強 さIは (3・17)
と な る. こ れ よ り,波
の 強 度Iは
振 幅Aの2乗
に比 例 す る こ と が わ か る.す
な わ ち, (3・18)
3・2 古 典 的 な粒 子 と波
古典 的 な粒 子 と い う の は,量 子 力学 で扱 う電 子 に 比 べ た らは るか に大 き く, 物 質 の 粒 の意 味 で あ る.ピ
ンポ ン球,バ
レー ボ ー ル は もち ろん,じ ん たん の粒
もさ らに 小 さ な油 滴 も この範 疇 に 入 るだ ろ う.古 典 的 な 波 と は,音 波 とか 水 面 の 波 が よ い例 で あ る. こ こで は,こ れ らの 粒 子 と波 を,ダ
ブル ス リッ ト(接 近 して並 ん で い る2つ
の ス リッ ト)と い う障 害 を通 して そ の反 対 側 へ移 動 させ た と き,そ れ らが どの よ うな 分 布 を と るか につ いて 調 べ る.こ こで得 られ る結 果 を 諸君 はす で に知 っ て い る こ と と思 うが,次 節以 降 で学 ぶ電 子 に つ い て の 同様 な思 考 実 験 の結 果 を 評 価 す る と きの 基 準 とな る. ま ず,粒 子 の 例 か ら述 べ よ う.図3・1に
示 す よ う な実 験 装 置 を 用 い よ う.
この実 験 で は,エ ア ー ゾル で 噴 き出 す ラ ッカ ー の小 さな粒 子 を用 い る.こ の粒 子 の飛 び 出 す前 方 に ダ ブル ス リ ッ トを も ったつ い た て を お き,そ の背 後 に 白紙 を立 て て お く.
図3・1
ダ ブ ル ス リ ッ トを 通 し た ラ ッ カ ー ス プ レ ー 実 験
ス リ ッ トを 通 し て 白 紙 に 噴 き 付 け られ る ラ ッカ ー の 量 のx軸 た と す る.図3・2は,そ の み を 開 きS2を 状 態,S1を
方 向 の 分 布 を測 っ
の 結 果 を 模 式 的 に 表 し て い る.図(a)は,ス
閉 じ た 状 態 で 作 っ た 分 布 で あ る.図(b)は,逆
リ ッ トS1 にS2を
開 い た
閉 じた 状 態 と し て 得 た ラ ッ カ ー 粒 子 の 分 布 で あ る.図(c)は,両
ス
リ ッ トを 共 に 開 い た 状 態 で ラ ッ カ ー を 噴 き付 け た と き の 分 布 で あ る.特
徴的 な
結 果 は,図(a)の で あ る.い ち,ど
分 布 と 図(b)の
ま,図3・2の
分 布 の 和 と 図(c)の
分 布 が 確 率Pで
分 布 が 同 じ形 とな る こ と
表 さ れ て い る も の と し よ う.す
の 分 布 も 分 布 曲 線 と基 準 線 の 間 の 面 積 が1で
な わ
あ る よ う に描 か れ て い る も
の と す る.
(b)
(a) 図3・2
図3・2に
(c)
白紙 上 に ス プ レ ー され た ラ ッ カ ーの 量 の 分 布
示 し た よ う に,S1の
み 開 い て い る と き の 確 率 をP1(x),S2の
い て い る と き の 確 率 をP2(x),S1,S2共
み 開
に 開 い て い る と き の 確 率 をP12(x)と
す る と,
(3・19)
1/2の 係 数 は,P12の 総 和 を1に す る た め につ いて い る.こ して い る こと は,ダ
の実験 結果 が示
ブル ス リ ッ トを 通 して 得 られ る古 典 的 粒子 の付 着 す る確 率
の分 布 曲 線 は,片 一 方 ず つ の ス リ ッ トで 得 た分 布 曲線 を加 え あ わ せ た もの に比 例 す る と い う こと で あ る. 次 に,古 典 的 な波 と して水 面 波 を 取 り上 げ て み よ う.一 定 な 水深 を もつ水 の 表面 で一 定 の周 期Tで
棒 を上 下 に振 動 させ る と,そ
の 振 動 点 を 波 源 と して 同
心 円 状 に水 面 を伝 播 す る水 面 波 が 得 られ る.図3・3の
よ うに,ダ
ブルス リッ
トを もっ た板 を立 て る と,ス リ ッ トを通 過 した 波 は,両 ス リ ッ トのS1,S2を 改 め て波 源 とす るよ うな半 円状 に伝 播 す る波 とな って い る(Huygensの
原理).
両 ス リ ッ トを 出 た これ らの波 は互 に干 渉 しな が ら伝 播 す るが,こ の板 か ら一 定 距離 の と こ ろ に板 に平 行 にx軸 を と り,x軸 上 の各 点 で の水 面 波 の波 動 変 位 の 時 間 変 化 を測 定 す る.
図3・3
ま ず,は
じ め に,ス
ダ ブル ス リッ トを通 った 水 面 の 波 の 実験
リ ッ トS1を 開 きS2を
に お け る 水 面 の 変 位y1は,場
所xに
閉 じ て お く.x軸
上 の任 意 の 位 置
よ る変 化 を 初 期 位 相 の 中 に 含 め た 形 で
(3・20)
こ こ に,ω=2π/Tで と,同
あ る.同
じ位 置 に お け る 変 位y2は,同
様 の こ と を 逆 にS2を
開 き,S1を
閉 じて 行 う
様 に (3・21)
と 書 け る で あ ろ う.両
ス リ ッ ト共 に 開 け た 場 合 の 変 位y12は,y1とy2の
和 と
な り, (3・22)
す な わ ち,水 面 の波 動 変 位 は加 算 的 で あ る(重 ね合 わ せ の原 理). 次 に,波 の 強 度Iを 振 幅 の 自乗 に比 例 す る もの と して調 べ よ う. S1開,S2閉
の場 合, (3・23)
と書 け る の で,強 度 は (3・24) S2開,S1閉
の 場 合, (3・25) (3・26)
S1,S2共
に開 の場 合
(3・27)
こ こ で,δ1−
δ2=Δ
と お き,cosΔ=(eiΔ+e−iΔ)/2を
用 い る と,
(3・28) こ の こ と よ り,I12≠I1+I2で
あ る こ と が わ か る.そ
第3項
に 等 しい.位
相 差Δ(=δ1−
δ2)は
はx軸
上 で 振 動 的 に な る(δ1,δ2の
場 所xの
場所で 極 大 値 (3・29)
Δ
=π(cosΔ=−1)の
場所で
関 数 で あ る の で,第3項
中 に場 所 に よ る変 化 を 含 め て 計 算 した の
で). した が っ て,Δ=0(cos Δ=1)の
の 差 は,式(3・28)の
I12∝(A1−A2)2
極 小 値
こ の 様 子 は,図3・4(c)に I3は,ス
(3・30)
模 式 的 に 示 さ れ て い る.図3・4の
リ ッ トか ら遠 く な る ほ ど 弱 くな っ て い る .こ
の 関 数 で あ り,ス
波 の 強 度I1,I2,
の 理 由 は,A1,A2がx
リ ッ トか ら の 距 離 が 長 く な る ほ ど,こ
れ らは小 さ くな るか ら
で あ る. こ こ で,強
調 した い こ と は,波
と い う こ と で,こ に 述 べ た(ラ
の 点 が,我
ッ カ ー の)粒
わ ゆ る干 渉 と い う効 果 を 生 ず る
々 が 波 と し て 認 識 して い る も の の 特 徴 で あ り,先
子 の 性 質 と異 な る 点 で あ る .
(a)
(b) 図3・4
(c)
ダ ブ ル ス リ ッ ト を通 っ た 水 面 の 波 の 強 度 分 布 S1,S2の
3・3
の 合 成 は,い
ス リ ッ ト幅 は 波 の 波 長 と 比 して 小 さい。
ダ ブ ル ス リ ッ トを 通 過 す る 電 子(そ
の1)
さ て,次 に代 表 的 な ミク ロ粒 子 で あ る電子 の干 渉 に つ い て見 よ う.こ の 実験 で は,電 子 が 量 子 力 学 の法 則 に した が う と した と き何 が起 き るの か を 知 る こ と が重 要 で あ って,な ぜ それ が 起 こ るか と い う こ とよ り,そ れ が 先 に見 た 古典 的
な 現 象 と ど う違 うか を知 る こ とが大 切 で あ る. まず,こ の 実 験 の構 成 を 図3・5を 用 い て説 明 しよ う.左 ネル ギ ー(速 度)を S2)を
の 電 子 銃 は一 定 エ
も った電 子 を放 出 す る.そ の前 面 に は2つ の ス リッ ト(S1,
も った 板 が お いて あ り,板 に あ た った 電 子 は 板 に 吸 収 さ れ て しま い,
ス リ ッ トを 通 り抜 け た電 子 の み が,そ の右 側 の領 域 へ 進 む こと がで き る.右 端 に は電 子 が あ た る と黒 化 す る フ ィル ム が お い て あ り,フ ィル ム を現 像 す る こ と に よ り,ど の 位 置 に どの く らい の量 の電 子 が 到 達 したか を知 る ことが で き る. フ ィル ム の か わ り に微 小 な 電子 の検 出素 子 を一 面 に は りつ け た板 を用 いて,そ の信 号 強度 の 分布 か ら各位 置 に お け る電 子 の数 を知 る ので もよ い.
図3・5
図3・6は,ダ
ダ ブル ス リ ッ トに電 子 を通 す 実 験
ブ ル ス リ ッ トを 通 過 した 電 子 の 強 度 分 布 を3通
験 し た 結 果 で あ る.図3・6(a)は,ス た と き の 電 子 の 強 度 分 布,図(b)は 強 度 分 布 で あ る.図(c)は,S1,S2と で あ る.図(a)の
強 度 分 布 と 図(b)の
ら か に 異 な っ て い る.こ
りの 条 件 で 実
リ ッ トS2を 閉 じ ス リ ッ トS1の そ の 逆 にS1を
閉 じS2の
みを通 し
みを開 い た ときの
も開 い た 状 態 で 実 験 し た 強 度 分 布 の 結 果 強 度 分 布 の 和 と 図(c)の
の 実 験 結 果 は,電
強 度 分 布 は,明
子 ビ ー ム は一 種 の 波 で あ り,両 ス リ ッ
トを 通 っ た 波 が 互 い に 干 渉 した 結 果 生 じ た も の と考 え ら れ る. 次 に,同
様 の 実 験 を 少 し異 な っ た 実 験 条 件 で 行 お う.電
出 能 力 を 弱 く し,一 は じ め に,両
度 に た っ た1個
子 銃 か らの電 子 の放
の 電 子 の み が 放 出 さ れ る よ う に セ ッ トす る.
ス リ ッ トを 開 い た 状 態 で こ の 電 子 を う ち 出 す と,電
子 は ど ち らの
(b)
(a) 図3・6
ダ ブル ス リ ッ トを 通 った電 子 の強 度 分 布
ス リ ッ トを 通 過 した か わ か らな い が,フ す(図3・7(a)).こ と考 え ら れ る.フ
(c)
ィル ム 面 上 に1つ
こ ま で の 実 験 結 果 で は,電
の 痕 跡(黒
点)を
残
子 は粒 子 的 に ふ る ま っ て い る
ィル ム を 新 し い も の に と り か え 再 度 こ の 実 験 を 行 う と,フ
ィ
ル ム面 上 の 別 の 位 置 に 黒 点 が 得 られ る. こ の 実 験 を 例 え ば1万 が1万
枚 得 ら れ る.こ
回 繰 り返 そ う.そ
れ ぞ れ1つ
れ ら の フ ィ ル ム を 重 ね,各
の 黒 点 を も っ た フ ィル ム
回 の 実 験 で 電 子 の 当 た った 痕
跡 の 黒 点 が ど の よ う に 分 布 し た か を 調 べ た も の が 図3・7(b)で 黒 点 は縞 状 に 分 布 し て お り,こ 描 く と,図3・7(b)の
の縞 に垂 直 な線 に そ って の電 子 の数 の 分 布 を
右 側 の よ う に な る.こ
出 し な が ら行 っ た 実 験 結 果(図3・6(c))と
の 図 は先 の 多 数 の 電 子 を 一 度 に 放 同 じ で あ る.多
両 ス リ ッ トを 通 過 す る条 件 で 行 っ た 実 験 で は,そ らが 互 い に 干 渉 す る こ と に よ り,こ 一 度 に1個
数 の電 子 が 同 時 に
れ ら の 電 子 を 波 と 考 え,そ
の よ う な 縞 を 生 じ た と考 え られ た.し
の 電子 の み を用 い る実験 で は
る こ と は で き な い.
あ る.
,少
れ
か し,
な く と も干 渉 と い う現 象 を 想 像 す
(a)
(b)
(c)
(d)
図3・7
電 子 を1個
ず つ ダ ブル ス リ ッ トを通 過 さ せ る実 験
次 に,先
の 実 験 と 同 じ く片 方 の ス リ ッ トを 閉 じ,常 に1つ
トの み を 通 し て,一 3・7(c),(d)に
度 に1個
ず つ の 電 子 を 出 して 実 験 し て み よ う.結
示 す よ う に,多
(図3・6の(a),(b))と
電 子 が2つ
果 は,図
数 の 電 子 を 一 度 に 放 出 し な が ら行 っ た 実 験 結 果
同 様 の 分 布 が 得 ら れ る.そ
(c)の 分 布 と 図(d)の 分 布 の 和 は,図(b)の こ れ ら の2つ
の き め られ た ス リ ッ
れ ゆ え,こ
の 場 合 も再 び 図
分 布 に 等 し く は な らな い.
の 条 件 で 行 っ た 実 験 の 結 果 か ら得 ら れ た 事 実 は,一
度 に 多数 の
の ス リ ッ トを 同 時 に 通 過 す る こ と に よ っ て 生 ず る 干 渉 縞 状 の 電 子 の
個 数 の 分 布 は,そ
れ ら の 電 子 が 同 時 に 両 ス リ ッ トを 通 過 す る と い う こ と が 決 め
手 に な っ て い る と は い い に く い.と
い う の は,時
間 差 を つ け て1つ
ずつの電子
で 行 っ て も 同 じ結 果 が 得 ら れ る か ら で あ る. む し ろ 次 の よ う に 考 え ら れ る.2つ
の ス リ ッ トの う ち,電 子 が ど ち らの ス リッ
トを 通 っ て フ ィ ル ム面 に 達 した か と い う こ と が 明 確 に な っ て い る と き と,そ が 不 明 な と き と で は電 子 の ふ る ま い は 大 変 異 な り,後
者 の場 合 に は干 渉 的 に な
る の で あ る.電
子 銃 か ら 出 る 電 子 数 が 多 い か 少 な い か は,こ
関 係 が な く,極
端 な 場 合,1個
不 明 な と き に は,干
渉 的 な(波
の 電 子 で も,そ 動 的 な)ふ
れ
の干 渉 効 果 に直 接
れ が ど の ス リ ッ トを 通 っ た か が
る ま い を 示 す と 考 え ら れ る.こ
の こ
と を よ り明 確 に す る た め に 次 の よ う な 実 験 を して み る. さ て,次
に,S1,S2の2つ
の ス リ ッ トの う ち ど ち ら側 の ス リ ッ ト を 電 子 が
通 っ て い る か を 実 験 的 に 確 か め る た め に,装 子 を そ れ ぞ れ ス リ ッ トの 後 方 に 図3・8に
置 に微 小 な光 源 とそ の 光 の検 出素
示 す よ う に セ ッ ト し よ う.
両 ス リ ッ トの 中 間 に お か れ た 小 さ な 光 源Lか れ て い る.各 PDBは,ス
ス リ ッ トの 脇 に そ れ ぞ れ1個
ら は,常
ず つ お か れ た 光 検 出 素 子PDAと
リ ッ トを 通 過 す る 電 子 が な い と き は,光
な い よ う に 角 度 を つ け て お か れ て い る が,ス
に光 が 四 方 に 放 出 さ
源 か らの 光 は 直 接 に入 ら
リ ッ トの 位 置 に電 子 が 通 過 す る と,
こ の 電 子 に よ り 散 乱 さ れ た 光 が ど ち ら か の 検 出 素 子 に 入 り,そ
こを電 子 が 通 っ
た こ と が わ か る よ う に な っ て い る. 図3・8 の 装 置 を 用 い て 行 っ た 実 験 結 果 を 図3・9に S1,S2と
示 し た.
も に 開 い た 状 態 で 行 っ た 実 験 結 果(図3・9(a))は,先
の実験 結果
図3・8
ダ ブ ル ス リ ッ トを通 過 す る電 子 を光 で確 か め る実 験
(a)
(b)
(c)
図3・9 光 を 用 い て 電 子 が どち らの ス リッ トを 通 過 した か を確 か め な が ら 実 験 した 結 果
と大 変 異 な って い る.今 度 の実 験 で はS1,S2共
に 開 い て い て も,光
に よ る電
子 位 置 確 認 装 置 の た め,個 々 の電 子 は,ど ち らの ス リッ トを通 過 して電 子 検 出
ア レ イ に 達 し た か が 明 確 に わ か っ て い る. こ の と き は 先 の 実 験 と 違 い,干 る.今
回 の 実 験 で は,ス
渉 縞 状 の電 子 の個 数 分 布 は得 られ な いの で あ
リ ッ トS1とS2を
開 い た 状 態 の 計 測 で,ス
み を 通 過 し た 電 子 の 分 布(図3・9(b))と 布(図3・9(c))を
ス リ ッ トS2の
知 る こ と が で き,こ
の2つ
布 に 等 し く な る の で あ る.図3・9(b),(c)に
の 図3・9に
み を通 過 した電 子 の 分
の 分 布 の 和 が,図3・9(a)の 示 し た 分 布 は,先
トを 閉 じ て 行 っ た 実 験 結 果(図3・6(a),(b)お を し て い る.こ
リ ッ トS1の
に片方 の ス リッ
よ び 図3・7(c),(d))と
示 し た 実 験 結 果 で は,電
分
同 じ形
子 は粒 子 的 で あ る.
今 ま で の 実 験 結 果 を 総 合 す る と,「 電 子 は ど ち ら の ス リ ッ トを 通 っ た か を あ い ま い に して お く と 波 動 的 に ふ る ま う が,電
子 の 通 る ス リ ッ トを 決 め つ け て し
ま う と粒 子 的 に 見 え る 」 と な る.つ
子 と い う ミク ロな粒 子 は大 変 シ ャ
イ(shy)な
の で あ る.し
か し,こ
ま り,電
ん な こ と は本 当 な の だ ろ う か,上
験 で は 何 か を ま ち が え た の で は な い か.次
節 で は,も
の思 考実
う 少 し詳 し く こ の こ と を
考 え よ う.
3・4
ダ ブ ル ス リ ッ ト を 通 過 す る 電 子(そ
我 々 は,前
節 の ダ ブ ル ス リ ッ トを 用 い た 実 験 で,電
通 過 し た か を 知 る た め に 光 を 用 い た.光 (photon)と
呼ばれ,エ
も っ て い る の で(第4章 と,電
の2)
子 が ど ち ら の ス リ ッ トを
の 最 小 単 位 は 光 子 ま た は フ ォ トン
ネ ル ギ ー(E=hν=hc/λ)と運動 参 照),光
量(p=h/λ)を
を電 子 に ぶ つ けて そ の 位 置 を 知 ろ う と す る
子 の エ ネ ル ギ ー と運 動 量 は こ の 光 に よ って 乱 さ れ る こ と に な る.
一 般 に,光
を 用 い て 見 え る 物 体 の サ イ ズ の 限 界 は,そ
程 度 で あ る こ と が 知 ら れ て い る.し
の光 の波 長 の大 き さの
た が って,ど
ち ら の 電 子 が ス リ ッ トを 通 過
した か を 判 別 す る た め に 用 い る 光 の 波 長 λ は,ス
リ ッ ト間 隔 よ り短 い こ と が 必
要 で あ る.と
こ ろ が,波
長 λが 短 い と光 の 運 動 量 と エ ネ ル ギ ー が 大 き く な り,
電 子 は光 に よ り 大 き く乱 さ れ る.逆 を 用 い れ ば よ い が,長
に,乱
れ を 小 さ く した け れ ば,長
波 長 の光
くな り す ぎ る と電 子 は ど ち らの ス リ ッ トを 通 っ た か 判 断
で き な くな る.本
節 で は,こ
の 様 子 を 定 期 的 に 扱 っ て ダ ブ ル ス リ ッ トの 思 考 実
験 を 進 め る. ま ず,こ
の た め の 準 備 と して1つ
間 領 域(箱)を
考 え,こ
の 中 を1つ
tに 箱 の 中 の あ る 場 所(位 をP(r,t)drと density)と
の 概 念 を 導 入 す る.図3・10で
の 電 子 が 運 動 して い る も の と し よ う.時
置 ベ ク トルrとr+drの
間)に
書 く こ と に す る.こ のP(r,t)を い う.こ
電 子 が存 在 す る確 率
の 電 子 が 存 在 す る の だ か ら,
確 率 密 度 を 箱 の 中 の 全 域 に 渡 っ て 加 え 合 わ せ た も の は1に
箱 の 中 の1つ
刻
電 子 の 確 率 密 度(probability
の 箱 の 中 の ど こ か に 必 ず1個
図3・10
示 され る空
等 し い は ず で あ る.
の電子
す な わ ち, (3・31)
あ る場 所rに お け る電 子 の確 率 密 度P(r,t)が
大 きい と い うこ と は,い い か
え る と,電 子 を 波 動 と考 え た と きそ の場 所 で の波 の強 度 が 大 き い と い う こ とで あ る.す で に3・1節 で学 ん だ よ うに,電 子 波 の強 度 は複 素 関 数 Ψ の 絶 対 値 の 2乗 で示 され る.し た が って, (3・32) と 書 く こ と が で き る.こ )と
の 関 係 か ら我 々 はΨ を 確 率 振 幅(probability
amplitude
呼 ぶ.
式(3・32)を
式(3・31)に
代 入 す る と, (3・33)
が 得 られ る.式(3・33)は
波 動 と し て の 電 子 と,空
間 に お け る存 在 とい う概
念 を 結 び つ け る 物 理 的 に 重 要 な 関 係 式 で あ る. 一 般 に Ψ は 式(3・32)を り,式(3・32)を
満 足 し な い が,Ψ
満 足 さ せ る こ と が で き る.こ
と い う.式(3・32)の
Ψ は,す
が 規 格 化 の 条 件 で あ る.も (3・32)の
に適 当 な定 数 を か け る こ と に よ
Ψ を√5で
の 定 数 を か け る操 作 を規 格 化
で に 規 格 化 さ れ て い る と 考 え よ う.式(3・33)
し,式(3・33)の
積 分 が1で
な く5と
割 れ ば 規 格 さ れ た こ と に な る.
前 節 で 用 い た ダ ブ ル ス リ ッ トの 実 験 装 置(図3・8)を 11に 示 す 光 検 出 素 子PDAは,本
図3・11
再 び 用 い よ う.図3・
来 ス リ ッ トS1を 通 過 す る電 子 に よ る 散 乱 光 が
電 子 お よび フ ォ トン(光 子)の
確率 振幅の説明図
入 りや す い 向 き にお いて あ る.し か し,光 源Lか
ら放 出 さ れ る光 の 波 長 が2
つ の ス リッ ト間 隔 よ り長 い と,回 折 効 果 が 重 要 に な る.す な わ ち,ス を 通 る電 子 で散 乱 され た光 も光 検 出素 子PDAに 子PDBは,主
な れ ば,式
リ ッ トS2
入 り う る.ま た,逆 に光 検 出素
と してS2を 通 る電子 で散 乱 され た光 が 入 りや す い向 き に セ ッ ト
して あ るが,長 波 長 光 の場 合 に は,S1を 電 子 検 出 素 子Dに
通 る電 子 の 散 乱 光 も入 り うる.
入 る電 子 の確 率 振 幅 を,次
の よ う に記 す こと にす る.
Ψ1: ス リ ッ トS1を 通 りDに 入 る電 子 の確 率振 幅
Ψ2: ス リ ッ トS2を 通 りDに ま た,2つ
入 る電 子 の確 率 振 幅
の 光 検 出 素 子PDA,PDBに
入 る フ ォ ト ン の 確 率 振 幅 を,先
子 に つ い て 定 義 し た と 同 様 に,φ を 用 い て 表 そ う*).す φ1A:S1を
通 る電 子 で 散 乱 さ れ た フ ォ ト ン がPDAに
φ2A:S2 " φ1B:S1を
入 る確 率 振 幅
通 る 電 子 で 散 乱 さ れ た フ ォ ト ンがPDBに "
で 電 子 が 検 出 さ れ る確 率 をP12と
入 る確 率 振 幅
の 検 出 素 子Dの
し よ う.こ
の 場 合 が 生 ず る 確 率 の 和 で あ る.す
① 電 子 がDに
"
PDB
電 子 検 出 素 子 ア レ イ 上 の あ る1つ
き る2つ
な わ ち,
PDA
φ2B:S2
に電
" み に 着 目 し て,こ
の 確 率P12は,次
の素子
の 明 確 に識 別 で
な わ ち,
入 り,そ
し て フ ォ ト ンがPDAに
入 る 場 合.こ
の 確 率 をP1と
入 り,そ
し て フ ォ ト ン がPDBに
入 る 場 合.こ
の 確 率 をP2と
し よ う. ② 電 子 がDに し よ う. (3・34) ① の 場 合 を ま ず 考 え て み る.こ
れ が 起 こ る道 す じに は 次 の2つ
i) 電 子 は ス リ ッ トS1を 通 っ て,検
出 素 子Dに
子 に よ り散 乱 さ れ た フ ォ ト ン がPDAに ⅱ) 電 子 は ス リ ッ トS2を 通 っ てDに た フ ォ ト ン がPDAに
入 り,そ
あ る.
して,S1を
通 る電
入 る.
入 り,そ
してS2を
通 る電 子 で 散 乱 さ れ
入 る.
前 者 の 確 率 振 幅 は Ψ1φ1A,後
者 の そ れ はΨ2φ2A,ゆ
え に,①
の場合 が起 こ
る 確 率P1は, P1=│Ψ1φ1A+Ψ2φ2A│2 次 に,②
の 場 合 に つ い て,こ
ⅰ ) 電 子 はS1を てPDBに
通 りDに
(3・35)
の と き も2つ
入 り,そ
入 る.
*) φはギ リシ ャ小文字 で,フ ァイと読む.
の 道 す じ が あ り,そ
し て フ ォ ト ン はS1を
れ ぞ れ は,
通 る電 子 で 散 乱 さ れ
ⅱ) 電 子 はS2を てPDBに そ れ ゆ え,②
通 りDに
入 り,そ
して フ ォ ト ン はS2を
通 る電 子 で 散 乱 さ れ
入 る. の 場 合 が お こ る 確率p2は, (3・36)
し た が っ て,こ はPDBで
れ ら を ま とめ る と,電
子 がDで
検 出 さ れ,同
時 にPDAま
た
フ ォ ト ンが 検 出 さ れ る 確 率P12は,
(3・37)
式(3・37)の1/2の の を1に
因 子 は,P12を
す べ て の 電 子 検 出素 子 に つ き加 え た も
す る た め の 規 格 化 因 子 で あ る.
式(3・37)を 場 合 のP12を
用 い て,光
源 の 光 の 波 長 が ス リ ッ ト間 隔 よ り短 い 場 合 と 長 い
評 価 しよ う.
(1) 短 波 長 の 光 源 を 用 い た 場 合 離 よ り十 分 に 短 い と す る.こ
用 い る光 の 波 長 が2つ
の と き はS1とS2と
S1を 通 っ た と き の み フ ォ ト ン はPDAに ン トはPDBに
入 り,S2を
の ス リ ッ ト間 の 距
の 見 分 け が つ く の で,電
子 が
通 っ た電 子 に 対 して は フ ォ
入 ら な い 形 に な り,
(3・38)
ま た,電
子 がS2を
通 っ た と き の み,フ
子 に 対 し て は フ ォ ン トはPDAに
ォ ト ン はPDBに
入 り,S1を
通 った電
入 ら な い.
(3・39)
式(3・38),式(3・39)よ
り,式(3・37)は,次
の よ う に な る.
(3・40)
式(3・40)の
意 味 は,ス
に 電 子 が 入 る 確 率P12は,個
リ ッ トS1,S2を
通 っ て 電 子 検 出 素 子D(図3・11)
々 の ス リ ッ トを 通 っ てDに
入 る確 率 の和 で 示 さ れ
る と い う こ と で,干
渉 効 果 は生 じ な い.す
な わ ち,こ
の 場 合 に は,電
子 は粒 子
的 に ふ る ま っ て い る. (2) 長 波 長 の 光 源 を 用 い た 場 合 十 分 長 い 場 合 に は,S1とS2と
2つ の ス リ ッ ト間 の 距 離 よ り光 の 波 長 が
を 見 分 け る こ と は で き な く な り,S1を
に よ り散 乱 さ れ た フ ォ ト ンがPDAに り散 乱 さ れ た フ ォ ト ンがPDAに
入 る 確 率 振 幅 φ1Aと,S2を
通 る電 子
通 る電 子 に よ
入 る 確 率 振 幅 φ2Aは 同 じ に な る.す
な わ ち, (3・41)
同 様 の 考 え は,PDBに
つ い て も成 り立 ち, (3・42)
ま た,S1を
通 過 す る電 子 数 とS2を
同 じで あ る の で,式(3・41)と 幅 は み な 等 し い.こ
通 過 す る電 子 数 は十 分 長 い時 間 を と れ ば
式(3・42)の
フ ォ ト ン に 対 す る4種
の確率 振
れ を φ と書 く と,式(3・37)は,
(3・43)
P12の 規 格 化 を 考 え る と,│φ│2=1/2と
な る の で,
(3・44)
式(3・44)を
展 開 す る と,Ψ1Ψ2に
比 例 す る項 を生 ず るが,こ
節 の 図3・6で 示 した よ うな干 渉 縞 を 表 して い る.そ れ ゆ え,電
の 項 が3・3 子 は波 動 的 に
ふ る ま って い る こ とが わ か る. 前記 の2つ の 場 合(1),(2)か ら得 られ た 電子 検 出素 子Dで 確 率P12に,電 場 所xに
電子 が検 出 され る
子 の確 率 振 幅 を代 入 して み よ う.
あ る検 出素 子 に時 刻tに 入 射 す る電 子 の 確 率 振 幅 を, Ψ1=A1ei(ωt+δ1)
(S1通
過)
(3・45)
Ψ2=A2ei(ωt+δ2)
(S2通
過)
(3・46)
こ こ に,δ1,δ2は
そ れ ぞ れ ス リ ッ トS1,S2か
らDま
で の 距 離 で 定 ま る波
の 位 相 を 表 す. (3・47)
(3・48)
ゆ え に,ど
ち ら の ス リ ッ トを 通 っ た か を 識 別 で き る(1)の 場 合 は
(3・49)
(2)の 場 合 は,式(3・45),式(3・46)を
式(3・44)に
代 入 す る と,
(3・50)
(3・51)
これ が電 子 が ど ち らの ス リッ トを通 った か識 別 で きな い と き の確 率 密 度 で, ( )内 の第3項 が いわ ゆ る干 渉 項 で,こ の 項 の た め に 式(3・51)は 49)と 異 な る.式(3・51)で
式(3・
電 子 の 確 率 密度 が表 され る状 態 か ら,光
の波長
を順 次 短 く して い くと,だ ん だ ん電 子 の経 路 が は っき り して く る.し か し,同 時 に,フ
ォ トンの運 動 量 とエ ネ ル ギ ー が大 き くな り,電 子 の 進 行 状 況 を 乱 し,
電 子 の運 動 量 お よ び エ ネ ル ギ ー は は じめ の状 態 か ら異 な って くる.こ の ことが, 電 子 が干 渉 す る こ とを妨 げ る原 因 と な る と理 解 され る. 式(3・40)と
式(3・44)で
示 した事 柄 を一 般 化 す る.電 子 源 か ら電 子 検 出
素 子 ま で電 子 が通 れ る経 路 がn個 あ る場 合,ど
の経 路 を 通 って きた か の 識 別 が
可 能 な場 合 に は, (3・52)
識 別 が で きな い場 合 に は,
(3・53)
の よ う に書 け る.す な わ ち,個 々の 過 程 が 識 別 で き る(計 測 に よ り,確 率 を知 る こ とが で き る)と き は,全 過 程 の確 率 は個 々 の 過 程 の確 率 の和 で表 す こ とが で き,個 々の 過 程 を識 別 で きな い と き に は全 過 程 の 起 こ る確 率 は,個 々 の 過程 の確 率 振 幅 の和 の絶 対 値 の2乗
とな るの で あ る.
これ まで の説 明 で,電 子 の経 路 が識 別 で き る と き とで きな い と きで 結 果 は大 違 い で あ った.識 別 が 「で き る」 とか 「で き な い」 と い う こ と は一 体 ど うい う こ とで あ ろ うか.こ の識 別 の た め に これ ま で光 を用 い た.つ ま り,光 を用 いて 電 子 の位 置 の計 測 を行 った わ けで あ る.す な わ ち,識 別 す る と い う こと は計 測 す る とい う こ と と分 けて 議 論 で き な い の で あ る.同 様 の こ と は,図3・11の 電 子 検 出 素子 に よ る電 子 検 出 につ いて も いえ る.こ の素 子 で検 出 して は じめ て 電 子 が こ こ に来 た と い うこ とが 識 別 で き るわ けで あ る.こ の こ とを観 測 に よ る 状 態 の収 縮 また は波 束 の収 縮 と い う.し たが って,ス
リッ トと検 出素 子 の 間 の
空 間 で は,計 測 して い な い わ け で あ るか ら,電 子 の 運 動 の 軌跡 を線 で 描 くと い う こ とは原 理 的 にで きな い の で あ る.こ の点 が量 子 力 学 と古典 力 学 が 本 質 的 に 異 な る点 で あ る.す な わ ち,古 典 力 学 に お け る粒 子 の 軌 道 な る概 念 は導 入 す る こ とが で きず,こ
れ に か わ る もの が確 率 振 幅(こ
れ までΨ,φ
で表 して きた)
で あ る. これ ま で の説 明 は,ミ ク ロ粒 子 の 例 と して電 子 を と りあ げ て きた が,も ち ろ ん 上 記 の議 論 は電 子 の み で な く,光 子 や 中性 子,お よ び原 子 に つ い て も適 用 し う る もの で あ る.
練 習 問 題 〔3〕
1. 図3・7(b)に
示 した干 渉 縞 状 のパ ター ンは なぜ 得 られ るの だ ろ う か.こ
の実験 で
は,電 子 は1個 ず つ 電 子 銃 か ら放 出 さ れ て お り,放 出 の 時 間 間 隔 は十 分 長 くて もよ い.n番
目 に放 出 さ れ た電 子 は,そ れ以 前 に放 出 され た(n−1)個
の電 子が すで
に あ る形 の パ ター ン形 成 して い る こ と を何 らか の方 法 で 知 って い るの だ ろ うか.
2. ① 観 測 に よ る状 態 は収 縮 は なぜ 起 こ る の だ ろ うか,②
また,観 測 ま た は計 測
す る とい う こと は,大 変 人 為 的 な人 間 くさ い こ とで あ るが,こ れ が な ぜ 電 子 の 性 質 と関 係 す る の だ ろ うか.③ 瞬 間 的 に起 こる のか,あ
状 態 収 縮 に は時 間 が か か るの だ ろ うか,ま
るい は観 測 方 法 に よ るの だ ろ うか.
た時 間零 で
第4章
量 子 効 果 の現 れ る実験 例
この 章 で は,従 来 波 動 と して取 り扱 って き た光 やX線
が示す 粒子 性 につ
いて述 べ る.こ れ は エ ネル ギ ー を量 子 化 す る もの で あ って,そ も とに な る新 しい物 理 定 数hが
4・1
1900年
熱 放 射 とPlanckの
代 の 初 め に は,原
数 と呼 ぶ.
仮説
子 物 理 学 の 実 験 が 進 歩 し,古
釈 の で き な い 現 象 が 現 れ て き た.熱 熱 放 射 は,入
導 入 さ れ る.こ れ をPlanck定
の量子 化 の
典物 理学 の理 論 で解
放 射 の 現 象 も そ の1つ
射 電 磁 波 に よ っ て 固 体 内 の 原 子,分
で あ る.固
子 が 励 起 さ れ,そ
体 か らの
の後複雑 な
遷 移 を 繰 り返 え す と き に 外 部 に 放 射 さ れ る光 で あ る. Planckは,黒 は,0か
体 内 の 光 エ ネ ル ギ ー 分 布 を 説 明 す る た め に,「 光 エ ネ ル ギ ー
ら無 限 大 ま で の 連 続 値 を と る の で は な く,あ
数 倍 の 値 しか と ら な い と す る.そ に 比 例 し,ε=hν
ネ ル ギ ー 要 素 ε は 放 射 線 の 振 動 数ν
で あ る.」 と い う仮 説 を 置 い た.こ
を 量 子 化 す る も の で あ っ て,そ 「Planck定数h」
し て,エ
る エ ネル ギ ー要 素 εの整
の 仮 説 は,エ
の量 子 化 の も と に な る新 しい物 理 定 数 と して
が 導 入 さ れ た の で あ る.
あ る 物 理 量 が あ る単 位 の 整 数 倍 と し て 表 さ れ る と き,そ い う.エ
ネ ル ギ ーE=nhν
に 関 して は,hν
る も と の 物 理 定 数 と な っ て い る.エ こ と に よ り,温
ネ ルギ ー
度Tの
黒 体 で,単
る 光 エ ネ ル ギ ー ε(ν)dν
は,光
の単 位 素 量 を 量 子 と
が 量 子 に 相 当 し,hが
ネ ル ギ ー に 対 し て,量
素量 を与 え
子 の 概 念 を導 入 す る
位 体 積 当 た り,振
動 数ν とν+dν
速 をc,Boltzmann定
数 をkと
の間 に あ
す る と,
(4・1)
と な り,実
験 結 果 と一 致 す る(第14章
で 改 め て 取 り扱 う) .
4・2 光 電 効 果(光 電 子 放 出)
金 属 ま た は金 属 酸 化 物 な ど の固 体 表面 に 光 を あ て る と,そ の 表 面 か ら電 子 が 飛 び出 す こと は よ く知 られ て い る.こ れ を光 電 効 果 とい う.こ の電 子(光 電 子 と い う)が 光 電 面 か ら飛 び出 す と きの速 さ(最 大 運 動 エ ネ ル ギ ー)と 照 射 光 の 振 動数 と どん な関 係 にあ るか を調 べ る実 験 が行 わ れ た.図4・1(a)は
その実験
装 置 で あ る.電 子 の 最大 運 動 エ ネ ル ギ ー を測 る た め に は,光 電 面 に正 電 圧 を か け て光 電 流 を 測 定 す る.そ の結 果 は,図4・1(b)の
よ うに,あ
る電 圧 で 光 電 流
が0に な る.そ の電 圧 をVmaxと す る と,
(4・2) で あ る か ら,電
子 の 最 大 運 動 エ ネ ル ギ ー が 求 ま る.
(a)
(b)
(c)(1)(2)(3)は
異 な る
光 電 面
電 子 は カ ソー ドを出 て,グ リ ッ ド電 圧V0で 加 速 され るが ,グ リ ッ ドとア ノー ドとの 電 圧 は−(V0+V)で,ア ノー ドは カ ソー ドに 対 し てV0−(V0+V)=−Vの 電圧 をもつ。−Vを 減 速 電 圧 とい う。
図4・1
光電効果の実験
照 射光 の 振 動 数ν を 変 え て この よ うな 測定 を繰 り返 え す と,図4・1(c)の うに,1つ
よ
の 光 電 面 につ い て は振 動 数 と最 大 運 動 エ ネ ル ギ ー とが比 例 す るが,
あ る振 動 数ν0以 下 の光 で は全 然 光電 子 を 放 射 しな い.こ の 振 動 数ν0を 限 界 振
動 数 と い い,光 電 面 の物 質 に よ って変 わ る.限 界 振 動 数ν0以 上 で の 照 射 光 の 振 動 数ν と光電 子 の 最大 運 動 エ ネ ル ギ ー の比 例 係 数 は,光 電 面 の物 質 に関 係 し な い の で,こ れ をhと お け ば, (4・3)
と 書 く こ と が で き る.こ
こで,hν0=Wと
お け ば,
(4・4)
と な る. Einsteinは,1905年
に こ の 現 象 を つ ぎ の よ う に 説 明 し た.Planckの
ギ ー 量 子 化 の 概 念 を 一 般 化 し,光
エ ネル
は (4・5)
の エ ネ ル ギ ー を も つ 粒 子(こ が 光 電 面 に 入 射 す る と,金 追 い 出 す.し
か し,電
れ を 光 量 子 ま た は 光 子 と い う)と
考 え られ,こ
れ
属 内 に あ る 自 由電 子 に エ ネ ル ギ ー を与 えて 真 空 中 に
子 が 金 属 の 表 面 か ら真 空 に で る に は,表
ネ ル ギ ー 障 壁 を 越 え な け れ ば な ら な い.こ
面 に存 在 す る エ
の エ ネ ル ギ ーWを
その物質 の仕 事
関 数 と い う. こ のEinsteinの れ る の は,ち 動)が
ょ ぅ ど電 荷 量 が 電 子 電 荷eの
の エ ネ ル ギ ー がhν
の和 で与 え ら
和 で 与 え ら れ る の と同 じ く,光(波
粒 子 の 性 質 を も つ と い う概 念 を 導 入 す る も の で あ る.
4・3
光(電
提 唱 し た 光 量 子 説 は,光
Compton効
磁 波)が
る で あ ろ う か.相
果
粒 子 性 を も つ な ら ば,普 対 論 に よ る と,エ
通 の粒 子 の よ うに運 動 量 を も って い
ネ ル ギ ーEと
運 動 量pの
関 係 は, (4・6)
で 与 え ら れ る(第2章
式(2・77)参
光 子 の 静 止 質 量 を0と
お け ば,光
照).こ
こ で,m0は
子 の 運 動 量pは,
光 子 の 静 止 質 量 で,
(4・7)
で あ る と考 え ら れ る.こ
の こ と を み ご と に 実 証 し た の が,1923年Comptonに
よ っ て 行 わ れ たX線(波
長 の 短 か い 電 磁 波)の
こ の 実 験 をCompton効
果 と い う.
図4・2
図4・2の
電 子 に よ る 散 乱 実 験 で あ る.
Compton散
乱
よ うに,入 射 光 子 はx軸 方 向 に進 み,原 点 で 静 止 して い る電 子 に
衝 突 す る とす る.光 子 は,適 当 な エ ネル ギ ー を電 子 に与 え て,運 動 量 とエ ネ ル ギ ーの保 存 則 を 同 時 に満 たす よ うな 方 向 に散 乱 さ れ る.入 射光 子 の振 動数 をν, 散乱 光 子 の 振 動 数 をν',散 乱 電子 の運 動 量 をpと
し,図
の よ う な散 乱 方 向 を
仮定 す れ ば,衝 突 前 後 の運 動 量 保存 則 よ り, (4・8)
(4・9)
が 成 り立 つ.散
乱 電 子 の 全 エ ネ ル ギ ー は,式(4・6)の
と き と同 様 に (4・10)
で あ る か ら,エ
ネ ル ギ ー 保 存 則 よ り, (4・11)
が 成 り立 つ.た
だ し,m0は
式(4・8),式(4・9)か
電 子 の 静 止 質 量 で あ る. ら θを 消 去 す る と,
(4・12) 式(4・12)を
式(4・11)に
代 入 して 整 理 す る と, (4・13)
c=ν
λ の 関 係 を 用 い て,波
長 λ を 用 い て 表 す と,
(4・14)
が 得 ら れ る.す
な わ ち,散
乱 前 後 の 波 長 の 変 化Δ λ=λ'−
の 右 辺 で 与 られ る こ と に な る.λcはCompton波
λ は,式(4・14)
長 と い わ れ,そ
の値 は (4・15)
で あ る.式(4・14)は た が,ほ ton効
広 い入 射 光 の 波長 範 囲 に わ た っ て 実 験 的 に 調 らべ られ
と ん ど の 光 に 対 して λcの 値 は一 致 して い た.こ
果 は 光 の 粒 子 性 を 実 証 した だ け で な く,そ
の こ と か ら,Comp
の 光 子が〓
動 量 を も つ こ と も実 証 し た も の と い う こ と が で き る.ま
た,光
の 大 き さ の運 子 の 静止 質 量 は
0と 考 え ら れ る.
4・4 電 子 対 生 成
光 が原 子 核 に衝 突 した と き,電 子 と陽 電 子(ポ
ジ トロ ン)の 対 が生 れ る.こ
れ を 電 子 対 生 成 と い う.陽 電 子 は電 子 と 同 じ質 量 を も ち,電 荷 が+eで
あ る.
光 子 の エ ネ ル ギ ー をhν とす る と,エ ネ ル ギ ー保 存 則 よ り, (4・16)
こ こ に,
me: 電 子 の相 対 論 的 質 量,mp: M:
陽電子の相対論的質量
原 子 核 の質 量V :反 跳 原 子 核 の速 度
電 子 と陽 電 子 の対 を生 成 す る ため の 最 小 エ ネ ル ギ ー(こ の と き,発 生 した電 子 と陽電 子 は運 動 エ ネ ル ギ ー を持 た ず 静 止 して お り,原 子 核 の反 跳 速 度 も0で
あ る)は,me=mp=m0と
し て2m0c2=1.6×10-13〔J〕
子 対 生 成 過 程 が 成 り立 つ 臨 界 振 動 数νminは,実 〔Hz〕 で あ る.し
た が っ て,プ
で あ る.こ
の電
験 に よ る とνmin ≒2.5×1020
ラ ン ク 定 数 は,
(4・17)
と な る.こ
のhの
値 は,コ
ン プ ト ン効 果 よ り測 定 さ れ る 値 と 一 致 す る.現
プ ラ ン ク定 数 の 確 値 と して6.6261×10-34〔J・s〕
在 は
が 使 わ れ て い る.
練 習 問 題 〔4〕
1. 1eVに
相 当 す る光 の波 長 は何
2. カ リウ ム(K)か 光 で は2.1eV,波
〔nm〕 か.
ら放 出 さ れ る光 電 子 の最 大 エ ネ ル ギ ー は,波 長5×10-7mの
光 で は0.5eVで
長3×10-7mの
あ る.こ の結 果 か ら,プ ラ ン
ク定 数 の値 と カ リ ウム の仕 事 関 係 を求 め よ.
3. 波 長1.0×10-11mの
γ線 の1つ の光 子 が 静 止 して い る1つ の電 子 に 衝 突 し,入
射 方 向 と直 角 の方 向 に散 乱 され た と き,散 乱 光 子 の 波 長 は い く らか.ま た,電 子 は どの 方 向 に は ね と ば さ れ る か.
第5章 不確定性原理
この章 で は,電 子 の よ うな ミク ロな粒 子 の運 動 量 を 正 確 に定 め る と,そ の粒 子 の位 置 は ど こ にあ るか が 不 正 確 に な り,逆 に 粒 子 の 位 置 を 正 確 に決 め た(測 定 した)と
きに は,そ の 運 動量 は不 正 確 に な り,両
定 す る こと は本 質 的 に で きな い こ とを 示 す.こ 示 さ れ,不 確 定 性 原 理(uncertainty 理 は,は
れ は,Heisenbergに
principle)と
じめ は ミク ロ な粒 子 の運 動 量,あ
者 を 同 時 に決 より
呼 ばれ て い る.こ の原
る い は位 置 の観 測(測
定)に
伴
う測 定 誤 差 の問 題 と して調 べ られ た が,本 質 的 に は ミク ロ 粒 子 の もつ1つ の本 質,す な わ ち粒 子 性 と同 時 に波 動 性 を もつ こ と が 原 因 で あ る と 理 解 さ れ る よ う にな っ た.
5・1 波 の 回折 と不確 定 性 原 理
よ く知 ら れ て い る よ う に,平 が 起 こ り,ス
こ の 光 は 単 色 で,そ 1つ の 光 子 はh/λ
面 波)を
の 波 長 を λ と し よ う.し
な る運動 量 を も ち,こ
の 光 子 の 運 動 量 のx方 x<∞
行 光 線(平
向 成 分 は0で
か し,ス
リ ッ トに 至 る 前 の
向 を 向 い て い る .ま
た,こ
リ ッ トの 手 前 の 平 行 光 線 の 幅 を−∞<
の 光 子 の 位 置 は,こ
の範 囲 の中 で どの場
リ ッ トを 通 過 し た 直 後 の 光 は,ス
Δ xの 中 の ど こ か に あ る よ う に 限 定 さ れ る.そ
れ と 同 時 に,光
リ ッ ト幅
は回折 さ れ 広 が
向 の 運 動 量 成 分 を も つ こ と に な る.
回 折 さ れ た 光 の 強 度 分 布 は,図5・1に に な り,そ
そ の様 子 を示 す .
た が っ て,ス
れはy方
あ る .ス
の 範 囲 と す る と,1つ
所 と も 特 定 で き な い.し
る の で,x方
細 い ス リ ッ トを 通 す と 回 折
リ ッ トか ら離 れ る ほ ど 光 は 広 が る.図5・1に
の 山 形 の 強 度 分 布 がx方
示 し た よ う にx方
向 で0に
向 に広 が った山 形
な る 角 度 は 光 の 回 折 理 論 か ら求 め
図5・1 平 行 光 線 の シ ング ル ス リ ッ トに よ る 回析
る こ と が で き る.図5・2で
こ の こ と を 説 明 し よ う.
い ま,y方
向 か ら θ0だ け 回 折 さ れ た 光 の ス ク リー ン 上 で 強 度 が0に
と し よ う.そ
の と き ス リ ッ トの 左 端 と 右 端 を 通 過 し た2つ
の光 の光 路 差 は ス ク
リ ー ン上 の そ の 位 置 で ち ょ う ど波 長 λ に 等 し い は ず で あ る.な き ス リ ッ トの 左 端 か ら右 端 ま で の す べ て の 場 所 を 通 り,θ0方 光 は,ち と0に
ょ う ど一 波 長 の 中 の す べ て の 位 相 を も つ の で,そ な る か ら で あ る.ス
リ ッ ト幅 をΔxと
な った
ぜ な ら,そ
のと
向 に回 折 さ れ る
れ らを加 え合 わ せ る
す ると
(5・1)
と な る.一
方,回
折 光 の 平 均 強 度 に 対 す る 回 折 角 度 を θ1と す る と,θ1は
り小 さ く,し た が っ て,sinθ1の
値 は 式(5・1)の
θ0よ
値 よ り小 さ く,sinθ0>sinθ1
図5・2
シ ン グル ス リッ トに よ り回 析 され た
光 の 強 度 が 零 に な る回 析 角 度 θ0の 説 明 図
で あ る か ら,sinθ1=nsinθ0と
す る と,0<n<1で
(5・2)
(5・3)
次 に,回 折 に よ り光 子 の運 動 量 のx方 向成 分 が どれ ほ ど生 じたか を見積 ろ う. 図5・3に 示 した よ うに,平 均 強度 を与 え る θ1だけx方 向 に 回折 した 光 子 を考 え よ う.こ の 光 子 のx方 向 の運 動 量 をΔpxと す る と,
(5・4)
ス リ ッ トの 左 右 に 回折 さ れ る の で,回 (不 確 定 さ)2Δpxは,−x方
折 光 の 運 動 量 のx方
向成分 の広 が り
向 に 回折 され る光 子 の分 も考 慮 して, (5・5)
式(5・3),(5・5)の
積 を 作 る と,
図5・3
シ ングル ス リッ トに よ る光 の 回 析 で,x方
向 の運 動 量 成 分 の発 生
(5・6)
Planck定 い*).す
な わ ち,光
差)Δpxの Δxを
数 は 約6.6×10-34〔J・s〕
で あ る.こ
子 の 位 置 の 不 確 定 さ(誤
積 はPlanck定 小 さ く し,光
差)Δxと
つ い て も大 差 は な
運 動 量 の 不 確 定 さ(誤
数 程 度 の 大 き さ を もつ.
子 の 位 置 を 正 確 に 決 め よ う と す る と,Δpxが
逆 に 運 動 量 を 正 確 に決 め よ う とす る(Δpxを や けΔxが
れ にnが
小 さ くす る)と,光
大 き くな り, 子 の位 置 の ぼ
大 き く な る と い う こ と で あ る.
よ り こ ま か な こ と ま で 考 え に 入 れ る と,式(5・6)は,
(5・7)**)
と な る.こ
の 関 係 を 不 確 定 性 原 理 と い う.
こ の 例 で は,光
子 に つ い て 考 え た が,光
な 粒 子 に も式(5・7)は
適 用 で き る.先
子 に 限 らず 電 子 を 始 め と す る ミク ロ
に も示 し た よ う に,式(5・7)は
と 見 な さ れ て い た も の に も波 動 性 が あ る こ と に 由 来 す る の で あ る.式(5・7) を グ ラ フ 化 し た も の を 図5・4に
*) **) 〓
正 確 な 計 算 に よ る と,nは0.1程 をDirac定
示 す.
度 の 値 を も つ.
数 と い う.約1.055×10-34J・sの
値 を も つ.
粒 子
図5・4 不 確 定 性 原 理 に よ り決 定 で きな い 領 域(斜 線 部 分)
5・2 原 子 の安 定 性 と不 確 定性 原 理
原 子 は正 電 荷 を もつ 原 子 核 と負 電 荷 を もつ 電子 に よ り構 成 され て い る.し た が って,こ
れ らの電 荷 に働 くク ー ロ ン力 に よ って,原 子 核 と電 子 は一 瞬 の 間 に
引 き合 って合 体 して も当然 で あ る よ うに思 え る.し か し,現 実 はそ う はな らな い.こ の理 由 を不 確 定 の考 え方 を取 り入 れ る こ とで 説 明 しよ う. 核 の ま わ りを半 径rの 円運 動 を して い る電 子(粒 子)と
い う古 典 力 学 的 な 見
方 は,量 子 力学 的 に は,電 子 は距 離r程 度 の ぼや け(不 確 定 さ)を
もつ こ と に
相 当 す る.こ の と きの 運動 量 の ぼ や け は,不 確 定 性 の 関係 を簡 単 にΔx・Δp= hとす る と, (5・8)
この運 動 量 の不 確 定 さΔpは,半
径rが 確 定 した 状 態 で は電子 の運 動 量 そ の
もの で も あ る ので,電 子 の 全 エ ネル ギ ーEは,運 ギ ー の和 と して,
動 エ ネ ル ギ ー と位 置 エ ネ ル
(5・9)
こ れ は,核
の 電 荷 を+eと
式(5・9)を き くな り,エ
し て い る の で,水
図 示 す る と,図5・5の
素 原 子 を 考 え て い る こ と に な る.
よ う に,rを
ネ ル ギ ー 的 に 損 を す る の で,電
零 に 近 づ け る とEは+に
子 が 核 に お ち こ み,原
大
子がつぶれ
て し ま う よ う な こ と は な い こ と が わ か る.
図5・5
原 子 核 の 周 囲 の電 子 の 全 エ ネル ギ ーE
さ ら に 特 徴 的 な こ と は,Eに
最 小 値Emin が 生 じ る こ と で,こ
r0を 保 っ た 形 で 電 子 は 安 定 に 存 在 で き る わ け で あ る.す り 内 側 に ず れ て も,外
側 に ず れ て もr0へ
の ときの半径
な わ ち,電
お し も ど さ れ る.r0の
子 はr0よ
値 はEをrで
微 分 す る こ と に よ り得 られ る.
(5・10)
r=r0で,dE/dr=0で
あ る の で,
(5・11)
r0の
値 を 見 積 っ て み よ う.
を代 入 す る と, (5・12)
式(5・12)で
示 した半 径 は,Bohr半
径 と呼 ば れて い る.
こ の原 子 の大 き さを半 径r0の 球 と し,固 体 状 態 で こ の 球 を入 れ た 一 辺2r0 の箱 が つ み 重 な っ て い る状 態 を考 え る と,固 体 水 素 の 密度 σ は,水 素原 子 の質 量 を1個 の 陽 子 の質 量mpに
等 しい と して, (5・13)
と な る.こ
の σ の 値 を 求 め よ う.
お よ び,式(5・12)を
代 入 し て, (5・14)
こ の 値 は す べ て の 固 体 の 密 度 が 数g/cm3程
度 で あ る と い う事 実 に 定 性 的 に
一 致 して い る*)
.
こ の よ う に 不 確 定 性 原 理 を 適 用 す る こ と で,原
を 見 積 る こ と が で き た.ま
た,こ
の 見 積 り は,我
み 立 っ て い た の で は 不 可 能 で あ る.こ が1つ
の こ と は,こ
子 の 半 径, し た が っ て 密 度 々が 古 典 力学 の枠 組 の 中 に の れ か ら我 々 が 学 ぶ 量 子 力 学
の 正 し い方 向 を 向 い て い る こ と を 示 す も の で あ る.
式(5・12)に
示 し たBohr半
径 を 式(5・9)に
代 入 して,最
小 の エ ネルギ ー
Eminを 求め よ う. (5・15)
*)
固 体 水 素 の 密 度 は,0.763g/cm3(−260℃)で
あ る.
1つ の 電 子 を1Vの
電 位 差 で 加 速 し た と き電 子 の 得 る エ ネ ル ギ ー は, (5・16)
こ れ を エ ネ ル ギ ー の 単 位 と し,〔eV〕(エ
レ ク ト ロ ン ボ ル ト と 呼 ぶ)と
書 く
と,式(5・15)は,
(5・17)
電 子 の エ ネ ル ギ ーを ろ な 大 き さ と な り,便 式(5・17)は,水 比 べ13.6eVだ
〔J〕単 位 で な く 〔eV〕 単 位 で 書 く と,こ
の よ う に手 ご
利 で あ る の で よ く使 わ れ る. 素 の 原 子 核 に つ か ま っ て い る 電 子 は,全
け 低 い エ ネ ル ギ ー を も つ こ と を 示 し て い る.し
原 子 を イ オ ン化 す る に は,こ
く自 由 な 電 子 に た が っ て,水
れ だ け の エ ネ ル ギ ー が 必 要 と い う こ と で,こ
素 の値
は 実 測 値 と一 致 す る. さ て,こ
こ で こ れ ま で の こ と を ふ り か え っ て み る と,我
々 は古 典 的 な粒 子 と
し て の 核 と 電 子 の絵 の 中 に不 確 定 性 原 理 を 持 ち 込 む こ と に よ り,原 子 の サ イ ズ, イ オ ン化 エ ネ ル ギ ー を 定 め る こ と が で き た.こ
の不 確 定 性 を用 いて電 子 の 量 子
力 学 的 イ メ ー ジ を も う少 し お し進 め る こ と が で き る. 図5・6(a)は,古 (b)は,不
典 的 に 原 子 核 と 電 子 を 粒 子 と し て み た も の で あ る.図
確 定 性 の イ メ ー ジ に よ り,半
こ の ほ うが 図(a)よ で あ る.こ
り運 動 量(つ
径 方 向 に ぼ や け を 加 え た も の で あ る.
ま り エ ネ ル ギ ー も)が
の 考 え を さ ら に 発 展 さ せ る と,図(c)の
大 き くな り,エ
は ず で あ る.も が,図5・5に
ら にΔx(電
ネ ル ギ ー 的 に 得 に な る し,図(d)の
殻 に 肉 付 を した 形 で 三 次 元 的 に ぼ や か せ ば,エ ち ろ ん,球
子 の位置 の ぼや よ う に 半 径r0の
球
ネ ル ギ ー的 に は一 番安 定 にな る
殻 の 肉 を 厚 くす る と,電
示 し た よ う に,逆
定)
よ うに円周上 の すべ てに
わ た っ て 電 子 を ち ら ば ら せ て し ま っ た ほ う が,さ け)が
小 さ く て 得(安
子 の 位 置 の 不 確 定 さ は増 す
に 全 エ ネ ル ギ ー は 増 し て し ま う の で,ほ
ど ほ
ど に し な い と い け な い. こ の よ う に,電 粒 子 か ら,量
子 の イ メ ー ジ は,古
典 的 な明 確 な位 置 を定 め る こ とが で き る
子 力学 的 な ぼ や っ と した雲 の よ うに イ メ ー ジチ ェ ンジ され るの で
(a)
(b)
(c)
(d)
図5・6
原 子 核 の 周 囲 の 電子 の ィ メ ー ジ
あ る.し た が って,こ の 立 場 か らみ る と,電 子 の位 置 の不 確 定 さ は,本 来 正 確 な 電 子 の 位 置 が 定 ま って い る の に,何
らか の事 情 で そ れ が正 確 に表 現 で きな い
と い うわ けで はな く,電 子 と い う ミク ロ な粒 子 は本来 雲 の よ うに 明確 に あ る一
定 な位 置 を指 定 で きる もので はな い と い う こ と にな る.こ の電 子 の雲 を定 量 的 に扱 うのが,量 子 力 学 の 方 法 で あ る. な お,図5・6(d)の
よ うに,核 の 周 囲 に一 様 に分 布 す る電 子 をs電 子 と呼
ぶ.
練 習 問 題 〔5〕
1. 不 確 定性 原 理 は,電 子 や光 子 の よ うな ミク ロな 粒 子 につ いて成 り立 つ が,粒 サ イ ズ が大 き くな る と,こ の 原 理 は成 り立 つ で あ ろ うか.マ Newton力
子の
クロな物体 の運 動 は
学 で記 述 で き るが,不 確 定 性 原 理 の 話 な ど一 度 もNewton力
学 に は出
て こ な い の は なぜ だ ろ う.
2. 粒 子 の運 動 量 と位 置 の 不 確定 さ にΔp・Δx=hの
関 係 が あ る よ う に,粒
ネル ギ ー と それ を 観 測 す る時 間 の不 確 定 さ の間 にΔE・Δt=hな
子 のエ
る関 係 が あ る.
これ を求 め な さい.
3. pな る運 動 量 を もつ物 体 は,h/pの
大 きさ の波 長 を もつ物 質 波(De
を伴 う.こ の こと と不 確 定 性 原 理 の 関 連 はあ るの だ ろ うか.
Broglie波)
第6章
Schrodinger方
程 式
量 子 力 学 で は,電 子 の 運 動 は波 動 関 数 Ψ(x,t)で 幅 と も呼 ばれ,│Ψ│2が
表 さ れ,Ψ
は確 率 振
存 在 確 率 に比 例 す る量 で あ った.こ の章 で は,Ψ を
決 め る た めのSchrodinger(シ
ュ レデ ィ ン ガ ー)方 程 式 と呼 ば れ る基 礎 方
程 式 を導 入 す る.こ の 方 程 式 は,古 典 力 学 にお け るNewtonの
方 程 式(運
動 方 程 式)に 相 当 す る と考 え て よ い.
6・1
基 礎 とな る事 項
我 々 は,す
で に 次 の こ と を 知 っ て い る.電
長 λ と運 動 量pの
間 に は,De
Broglie(ド
子 は 波 に 似 た 性 質 を も ち,そ ・ブ ロ ー イ)の
の波
式 が 成 り立 つ. (6・1)
こ の 式 は,波
数k(=2π/λ)を
用 い る と, (6・2)
電 子 の 全 エ ネ ル ギ ーEと
波 の 振 動 数ν
の 間 に は,Planckの
関 係 式 が 成 り立
つ.
(6・3) 角 振 動 数 ω(=2πν)を
用 い る と, (6・4)
電 子 の 全 エ ネ ル ギ ーEは,運 表 さ れ る(古
動 エ ネ ル ギ ー と 位 置 エ ネ ル ギ ーV(x)の
典 力 学 の と き と 同 様)の
和 で
で,
(6・5)
た だ し,mは
電 子 の 質 量 で あ る.
式(6・5)に,式(6・2),(6・4)を
代 入 す る と,
(6・6)
Schrodinger方
程 式 は,式(6・6)を
満 足 し て い な く て は い け な い.式(6・6)
を 分 散 関 係 と い う.
6・2
自 由 電 子 のSchrodinger方
我 々 は,す の で,ま
程 式
で に 自 由 電 子 の 波 動 関 数 が 下 式 の よ う に 書 け る こ と を知 っ て い る
ず は じめ に 自 由 電 子 に 対 してSchrodinger方
程 式 を 調 べ よ う. (6・7)
自 由 電 子 に は 力 は 作 用 し な い の で,位 ∂V/∂x=0
置 エ ネ ル ギ ー は 定 数 と な る(F=−
∴ V=V0=const.).
式(6・7)をxで2回
偏 微 分 す る と,
(6・8)
(6・9)
式(6・7)をtで1回
偏 微 分 す る と,
(6・10)
式(6・9),式(6・10)よ
り,
(6・11)
(6・12)
式(6・11),式(6・12)を
式(6・6)に
代 入 す る と,
(6・13)
こ れ を 整 理 して,
(6・14)
こ れ が 自 由 電 子 に 対 す るSchrodinger方
6・3
拘 束 さ れ た 電 子 のSchrodinger方
電 子 が 拘 束 さ れ て い る と い う こ と は,電 あ る.こ
程 式 と 呼 ば れ る も の で あ る.
の 力(保
存 力)は,位
は も は や 定 数 で は な い.し に はVは だ ろ う.し
子 に 力 が 作 用 して い る と い う こ と で
置 エ ネ ル ギ ー の 傾 き に よ り 生 ず る の で,V(x)
か し,V(x)の
傾 き が ゆ る や か で あ れ ば,局
一 定 と み な せ る の で,式(6・7)で た が っ て,式(6・14)が
ま た,V(x)の
所 的
示 した 平 面 波 の Ψ で 近 似 で き る
使 え る は ず で あ る.
傾 き が 急 な 場 合 に も,同
が 正 し い か ど う か を,何
程式
様 で あ る と 仮 定 し よ う.こ
の仮定
か 別 の 方 法 で 演 繹 的 に 導 く こ と は で き な い.こ
ら得 ら れ る結 果 を 実 験 結 果 と比 較 し て,両
の式か
者 が 非 常 に よ く一 致 す る こ と か ら,
帰 納 的 に そ の 正 しさ が 確 か め ら れ て い る の で あ る.
(6・15)
こ の 式 を 時 間 に 依 存 す るSchrodinger方
6・4
定 常 状 態 のSchrodinger方
程 式 と い う.
程 式
今 ま で 取 り 扱 っ て き た 波 動 関 数 Ψ(x,t)は,位 あ っ た.こ ger方
の2変
程 式 は,偏
置 座 標xと
数 の 関 数 Ψ を 取 り扱 う た め,式(6・15)で 微 分 方 程 式 の 形 と な っ て い る.い
ま,Ψ(x,t)
時 間tの
関数 で
示 し たSchrodin をxの
み の
関 数 ψ(x)と
時 間 の み の 関 数 φ(t)の
積 で 表 さ れ る と し よ う*). (6・16)
式(6・16)を
式(6・15)に
代 入 す る と,
(6・17)
両 辺 を ψ ・φ で 割 る と,
(6・18)
式(6・18)の る.こ
左 辺 はxの
み の 関 数 で あ り,右
の 両 辺 が 等 し い と い う こ と は,各
て は い け な い こ と を 示 して い る.そ (6・18)は
下 に 示 す2つ
辺 はxに
れ ゆ え,こ
辺 はtの
み の関数 とな ってい
もtに
も無 関 係 な 定 数 で な く
の 分 離 定 数 をcと
す る と,式
の 式 に 分 離 さ れ る.
(6・19)
(6・20)
こ の 変 数 分 離 に よ り,1つ
の 偏 微 分 方 程 式(式(6・18))が2つ
程 式 に す る こ と が で き た(式(6・19),(6・20)で
は,そ
の常微 分方
れ ま で の ∂ がdに
わ っ た こ と に 注 意). 式(6・19)は,下
式 の よ う に 書 き な お せ る.
(6・21)
両 辺 を積 分 して, (6・22)
(6・23)
*) ψは ギ リシ ャ小 文 字 で,プ
サ イ と読 む.φ
は ギ リ シ ャ小 文 字 で,フ
ァイ と読 む.
変
(6・24)
こ の φ(t)は,角
周 波 数 ω(=c/h)を
エ ネ ル ギ ーEは,Planckの ギ ーEに
も つ 平 面 波 を 表 し て い る.平
関 係 式 よ りhω
等 しい こ と が わ か る.よ
に 等 し い の で,定
数cは
面波 の
全 エ ネル
っ て,式(6・24)は, (6・25)
こ れ を 導 い た 元 の 式(6・19)は,
(6・26)
式(6・16)で 関 数 φ(t)の
示 し た よ う に,Ψ(x,t)がxの 積 で 書 け る と い う こ と は,Ψ
関 数 的 に 振 動),こ
み の 関 数 ψ(x)とtの
みの
の 時 間 的 な 変 化 は 平 面 波 と な り(sin
の と きΨ は定 常 状 態 を 表 し て い る こ と が わ か る.し
て,式(6・20)は,定
たが っ
常 状 態 に お け る波 動 関 数 の 空 間 分 布 を 表 す も の で あ る
こ と が わ か る.こ
れ にc=Eを
代 入 す る と,
(6・27)
式(6・27)は,時
間 に 依 存 しな いSchrodinger方
と呼 ば れ て い る.量
子 力 学 に お け る 多 く の 作 業 は,こ
程式 また は固有値方 程式 の 方 程 式 を 解 い て ψ とE
を 求 め る こ と に あ る. 式(6・16)に
式(6・25)を
代 入 す る と, (6・28)
φ(0)はt=0で 定 数 φ(0)を1と
の 値 で あ り,時 お くか,ま
間 の経 過 に 関 す る も の で は な い の で,こ
た は ψ(x)の
の
中 に 含 め て し ま う と, (6・29)
式(6・28)を
式(6・29)の
よ う に 書 い て も,Ψ(x,t)の
本 質 を そ こな う
も の で は な い. 電 子 が 位 置xで 29)を
代 入 して,
時時刻tに 見 い だ さ れ る 確 率 密 度 は,式(3・32)に
式(6・
(6・30)
式(6・30)はP(x,t)が
時 間 に 関 係 な く定 め ら れ る こ と を 示 して い る.
練 習 問 題 〔6〕
1. 式(6・15)を (こ こ に,a,bは
満 足 す る2つ 定 数)も
2. 〓がV(x)=0と こ と を 確 か め な さ い.
の 波 動 関 数 Ψ1と 式(6・15)を
Ψ2が
あ る と き,Ψ=aΨ1+bΨ2
満 足 す る こ と を 確 か め て み よ.
し た と き の 式(6・27)を
満足 す る
第7章
第6章
波動 関数 ψの形
で 述 べ た よ うに,波 動 関 数 の正 確 な形 はSchrodinger方
程 式 を解
い て求 め るわ け で あ るが,本 章 で は波 動 関 数 ψの 形 を 定 性 的 に 取 り扱 う. これ を 通 して,ψ の 形 に はど の よ うな制 約 が あ る か,ま に分 離 で き るか,さ
らに 位 置 エ ネ ル ギ ーV,全
た どの よ うな種類
エ ネ ル ギ ーEと
の関係 な ど
に つ い て 定 性 的 な 理 解 を 深 め る.
7・1 存在 確 率 との 関 連 で 決 まる 波 動 関 数 の特 徴
す で に 式(6・30)で
示 し た よ う に,ψ
の 絶 対 値│ψ│の2乗
お け る電 子 の 存 在 確 率 に 比 例 す る 量 で あ る.し て 積 分 した も の は,ど 一次元では
は,そ
た が って,│ψ│2を
こ か に 必 ず 電 子 は 存 在 す る の で,1で
の場 所 に
全 空 間 に渡 っ
な く て は い け な い.
,
(7・1)
(a)
(b) 図7・1 物 理 的 に無 意 味 な ψの 形
(c)
そ れ ゆ え,図7・1(a)の
よ う な ψ は あ り え な い.ま
価 関 数 で あ る と,同
対 して ψ の 値 が 一 義 的 で な い の で 意 味 が な い.同
に,図(c)の
じxに
よ う に,ψ
た,同
が 不 連 続 で あ っ て も い け な い.す
図(b)の
よ うな 多
な わ ち,ψ
様
は有 限 で
1価 の 連 続 関 数 で な くて は い け な い.
7・2
Schrodinger方
も う一 度Schrodinger方
程 式 の形 か らわ か る波 動 関 数 の特 徴
程 式 を 見 よ う.式(6・27)を
書 き な お す と,
(7・2)
ψ は,xに
つ い て 連 続 関 数 で な くて は い け な い の で,も
あ れ ば,式(7・2)に
よ り〓
な くて は い け な い(図7・2).V(x)が
しV(x)が
は連 続 で あ る.し たがって,〓 不 連 続 な 場 合 は,〓は
に よ り不 連 続 で あ るが,こ の場 合 も〓は連続
も連 続 で 式(7・2)
と な らねばな らな い こ と は
証 明 さ れ て い る.
図7・2 ψは 連続であるが,〓が
連 続で
不連続 とな るため,
このよ うな形 は物 理的に無 意味
以 上 ま と め る と,表7・1の
よ う に な る. 表7・1
式(7・2)を
書 き な お す と,
(7・3)
ψ の 形 は,VとEの (1) E>Vの
大 小 関 係 で 全 く異 な る.こ
の こ と を 次 に 調 べ よ う.
場合
(7・4)
こ れ は,次
の2つ
の 場 合 に 分 か れ る.
(イ) ψ >0で
あ り,〓
で あ る.
(ロ) ψ <0で
あ り,〓
で あ る.
図7・3 〓
の と きのψの 特 徴
(イ
ψ の 特 徴 を(イ),(ロ)の 場 合 に つ き 模 式 的 に 図 示 す る と,図7・3の
よ うにな
る. さ ら に,ψ=0の い け な い.す
と き,式(7・2)に
な わ ち,ψ=0で
帰 っ て 考 え る と〓
は 変 曲 点 と な る.こ
の(イ),(ロ) の 波 形 を む す び,こ
で な くて は
の こ と を 利 用 し て 図7・3
れ を 繰 り 返 え す と,図7・4の
よ う に,波
形 の波
動 関 数 が 得 ら れ る.
図7・4 図7・3の
以 上 ま と め る と,全 >V)に (2)
は,波 E<Vの
ψの 形 を 組 合 せ て 作 る こ とが で き る波 動 関 数 ψ
エ ネ ル ギ ーEが
位 置 エ ネ ル ギ ーVよ
動 関 数 ψ は 波 形 と な る.次 場 合
式(7・3)よ
に,他
の1つ
り 大 き い 場 合(E の 場 合 を 調 べ よ う.
り,
(7・5)
こ れ は,下
の(イ),(ロ)の場 合 に 分 け ら れ る.
) ψ >0で
あ り,〓
で あ る.
(ロ) ψ <0で
あ り,〓
で あ る.
(イ),(ロ)を 満 足 す る ψ を 模 式 的 に 示 し た も の が,図7・5で
あ る.
こ の場合
に も,式(7・2)に
帰 っ て 考 え る と ψ=0で〓
と な る が,
(イ)の形 と(ロ)の 形 を 繰 り返 しつ な い で 波 形 を 作 る こ と は で き な い こ と は,図
よ
り 明 ら か で あ る.
図7・5 〓の
ときのψの特徴.こ れ らの波動関数 ψ
は,単独で は物理的に意味を もたな い.
さ ら に,図7・5の│ψ│の 積 分 し た 値(確
率)を
大 き な 領 域 は ± ∞ ま で 広 が る た あ,│ψ│2をxで 有 限 値 に は で き な い.そ
れ ゆ え,図7・5に
い ず れ も物 理 的 な 意 味 を も た な い よ う に 思 え る.事 の 条 件 の 場 合 に は,物
図7・6
実,xの
理 的 意 味 を もつ ψ は 存 在 し な い.し
図7・4に
示 した ψと,図7・5に
示 した ψ は,
全 空 間 で,E<V か し,E<Vの
領域
示 した ψ(イ−1,イ−3)
を組 合 せ て 作 られ る物 理 的 に意 味 を もつ ψの 形 の例
が(1)で 調 べ たE>Vの
領 域 に接 して い る と きに は,│ψ│2の 空 間積 分 値 を 有 限
値 に と ど あ る こ とが で き るの で,意 味 の あ る ψを得 る こ とが で き る.こ の例 を 図7・6に 図 示 す る. 以上 ま と め る と,E>Vの
と き ψは波 形 に な り,一 方,E<Vの
と きψは
減 衰 形 とな り,こ の形 の波 動 関数 の み単 独 に存 在 で き な い が,波 形 の ψに接 続 す る形 で物 理 的 な意 味 を もつ こ とが で き る.
7・3 単 純 な ψの 関 数 形
さ て,次
に,上
記 のE>VとE<Vの2つ
の 場 合 につ き,Schrodinger方
程 式 を 満 足 す る ψ の 簡 単 な 関 数 形 を 調 べ よ う.ま がxに
よ らず 一 定 値 を と る と し よ う.す
右 辺 ψ の 係 数 はxに
ず,始
め に 位 置 エ ネ ル ギ ーV
る と,Schrodinger方
程 式(7・2)の
よ ら な い 一 定 値 と な る.
(7・2)
E>Vの
と き,
と お く と,
(7・6)
式(7・6)は,xを ゆ え,次
時 間tと
お く と,単
の よ う な 関 数 は み な 式(7・6)の
振 動 の 方 程 式 と 同 じ形 で あ る.そ 解 と な る.
れ
(7・7)
E<Vの
と き,〓
とお く と,式(7・2)は, (7・8)
式(7・8)を
満 足 す る ψ の 関 数 形 の 例 と して は,
(7・9)
以 上 よ り,Sin関 のSchrodinger方
数 的 な 振 動,お
と き を 調 べ た が,次
調 べ よ う.図7・7(a)に,xに
にVがxに
よ り変 化 す るVと
れ でx<x0で
は,E>Vで
で,Vはxと
よ り変 化 す る 場 合 を
全 エ ネ ル ギ ーEの
の と き 対 応 す る 波 動 関 数 ψ の 特 徴 を 図7・7(b)
こ の ψ の 特 徴 に つ い て 説 明 す る.図 る.そ
一 定 の とき
程 式 の 解 と な り う る こ と が わ か る.
こ れ ま でV=constの
を 示 し,そ
よ び 指 数 関 数 的 な 増 減 は,Vが
関係の一例
に 示 し た.以
下 に,
と も に ゆ っ く り と増 加 し て い
あ る の で ψ は振 動 的,x>x0で
は,E<V
で あ る の で ψ は 減 衰 的 と な る. さ て,x<x0の
領 域 で,ψ
の 振 動 の 特 徴 は,次
の よ う に書 け る.
① xが 増 す に つ れ て 波 長 が 長 く な る. ② xが 増 す に つ れ て 振 幅 が 大 き くな る. ψ が こ の2つ
の 特 徴 を もつ 理 由 に つ き,以
こ の 領 域 中 の 任 意 のxの ネ ル ギ ーVは
下 に 説 明 し よ う.
値 の ご くせ ま い 部 分 を 考 え よ う.こ
ほ ぼ 定 数 と思 え る.し
た が っ て,波
の部 分 で位 置 エ
動 関 数 ψ は,式(7・7)で
(a)
(b)
図7・7
位 置 エ ネ ル ギ ーVがxに
示 し た 形 で 書 く こ と が で き る.例
一 方,波 数kは2π/λ
よ り変 化 す る場 合 の波 動 関 数 ψ の例
え ば,
で あ る.し たが って,E−Vが
小 さ くな る とkも 小 さ
くな り,逆 に波 長 λは長 くな る.こ の領 域 で は,xが 増 す とE−Vが
小 さ くな
る ので,波 長 が長 くな る(① の理 由). 次 に,E−Vは
運 動 エ ネ ル ギ ー を表 して お り,こ れ が小 さ くな る こ と は電
子 の速 度 が 小 さ くな る こ とで あ る.速 度 が 小 さ くな る ほ ど,そ の 領 域 に電 子 が 滞 在 す る時 間 が 長 くな る ので,そ
の場 所 に お け る電 子 の存 在 確 率 も大 き く な
る. 存 在 確 率 は,す で に学 ん だ よ うに,そ の 場 所 の 波 動 関 数 ψを 用 いて│ψ│2の よ うに表 され るの で,ψ
の値 自身 も大 き くな くて は いけ な い.こ の よ うな わ け
でxが 増 す と ψ の値 も大 き くな る(② の理 由).
さ て,x>x0の 側)に
領 域,す
な わ ち ψが 減 衰 関 数 に な る 領 域(図7・7(b)の
つ い て 考 え よ う.も
式(7・9)で
し,Vが
場 所 に よ らな け れ ば,V−Eは
右
定 数 と な り,
示 した よ う に,
の 形 と な る.図7・7(b)で 大 き く な る.そ
は,xが
れ ゆ え,xが
増 す に し た が いV−Eは
増 す ほ ど,そ
の 前 のxの
的 減 衰 よ り急 に ψ の 値 は小 さ く な る 傾 向 に あ り,全 (こ の 様 子 は,明
増 大 す る た め,aは
値 の所 で決 ま る指 数 関 数 体 で は 急 激 に ψ は減 少 す る
確 に は 図 示 さ れ て い な い が).
7・4 波 動 関数 の接 続
前 節 の 図7・7に
お い て,x<x0に
お け る 振 動 す る ψ とx>x0に
的 な ψ と は な め ら か に 接 続 さ れ て い な くてほ い け な い(こ
お け る減 衰
の場合,ψ,〓
と もに連 続 で な くて は い け ない こ と は7・2節 で学 ん だ).本 節 で は,こ の よ う な 境 界 で の な め ら か な ψ の 接 続 と 電 子 の もつ 全 エ ネ ル ギ ーEと
の関係 に
つ い て 調 べ よ う. 図7・8(a)に
示 す よ う な 位 置 エ ネ ル ギ ー の 場 で,全
を もつ 電 子 の 波 動 関 数 を 考 え よ う.各 示 し た よ う に,そ き た.波
エ ネ ル ギ ーE1ま
た はE2
領 域 に お け る ψ は,図7・8(b),(c)に
れ ぞ れ 振 動 的 ま た は 減 衰 的 な 形 と な る こ と は,す
動 関 数 の 連 続 性 か ら こ れ ら の ψ は,境
界x1お
よ びx2で
で に学 ん で
な め らか に つ
な が って い な くて は い け な い. ま ず,電
子 の 全 エ ネ ル ギ ー がE1の
け る 振 動 的 な ψ3は,x=x1で
場 合 を 考 え る.x1<x<x2の
左 側 に 示 し た 減 衰 的 な ψ1ま た は ψ2に な め
ら か に 接 続 し な い と い け な い し,x=x2で し な くて は い け な い.式(7・7)で
よ う に 書 け る.
ψ4ま た は ψ5に な め ら か に 接 続
示 し た よ う に,ψ3は,A3sink3x,
〓の よ うに書 け るが,さ て 式(7・10)の
領域 にお
らに一般 的 に は,位
相 項 δを 加 え
図7・8 ψ
の な め らか接 続 の 条 件 に よ り,全 エ ネ ル ギ ー が
離 散 的 に な る場 合(E1)と
連 続 に な る場 合(E2)
(7・10)
こ の 式 で,k3す
な わ ち 波 数 の 値 はE1とV1が
ぶ わ け に は い か な い.ま
た,振
幅A3は,電
勝 手 に 選 ぶ わ け に は い か な い.し
か し,δ
用 い て 波 を 横 ず ら しす る こ と で,x=x1で う.し 度 は,こ
か し,こ
の 接 続 を 保 っ た ま ま,x=x2で
決 ま っ て い る の で,自
由 に選
子 の 存 在 確 率 に 影 響 を 与 え る か ら, は 自 由 に 選 ぶ こ とが で き る.こ
れを
の な め らか な 接 続 を作 った と しよ の な め らか な 接 続 を 作 る 自 由
の ま ま で は 残 さ れ て い な い.
し か し,電
子 の 全 エ ネ ル ギ ーE1を
波 動 関 数 ψ3の 波 数,す
上 下 に 変 え る こ と を 想 像 す る と,こ
な わ ち 波 長 を 変 え る こ と に相 当 す る の で,な
れ は
め らか な
接 続 の た め の も う1つ に よ り,あ
の 自 由 度 と な る.し
る 特 定 のE1と
δでx1とx2で
た が っ て,δ
示 した3つ
る の は,あ
値 の 所 の み で あ っ て,E1の
間 の 任 意 のE1で で あ る.ま
た,大
変化 す る こと
な め らか な 接 続 を 作 る こ と が で き る.
す な わ ち,図7・8(b)に る 特 定 のE1の
とE1を
の 領 域 の 波 動 関 数 を な め らか に 接 続 で き 値 をV1か
らV2ま
での
な め らか な 接 続 を 作 る こ と は で き な い と い う こ と が 重 要 な 点 切 な こ と は,な
め ら か な 接 続 が 作 れ な いE1で
域 で な め ら か な ψ は 存 在 で き な い と い う こ と で あ る.中 残 る と い う こ と は な い の で あ る.こ
は,3つ
の領
央 の 振 動 的 な ψ3の み
の こ と は,「 そ の よ う な エ ネ ル ギ ー を も っ
た 電 子 は 存 在 し な い 」 と い っ て も よ い し,「 電 子 は そ の よ う な エ ネ ル ギ ー を も つこ と が で き な い 」 と い っ て も よ い.次
の 第8章
で さ ら に詳 し く学 ぶ が,電
は あ る 特 定 の と び と び の エ ネ ル ギ ー しか 取 る こ と が で き な い の で あ る.こ う な エ ネ ル ギ ーE1に の2つ
子 のよ
対 す る 制 限 は,ポ テ ン シ ャル の 壁 が 存 在 す るx=x1とx2
の 境 界 条 件 か ら 生 じ た も の で あ る こ と に 注 意 す べ き で あ る.
上 記 の な め らか な 接 続 が 作 れ る エ ネ ル ギ ー を エ ネ ル ギ ー 固 有 値 と い い,な ら か に つ な が っ た 波 動 関 数 を 固 有 関 数 と い う.固 る に は,Schrodinger方 さ て,話
め
有 値 と固有 関数 を正 確 に求 め
程 式 を 解 か な くて は い け な い.
を 元 に も ど して,図7・8で
電 子 の 全 エ ネ ル ギ ー がV2<E2<V3
の 場 合 を 考 え よ う. こ の と き の 各 領 域 で の 波 動 関 数 ψ6∼ ψ9は,図7・8(c)に ろ ん,こ
の 場 合 に もx=x1とx2で,こ
示 して あ る.も
ち
れ らはな め らか に接 続 しな くて は い け
な い. 各 領 域 の 波 動 関 数 を 式 で 書 く と,
(7・11)
(7・12)
(7・13)
の よ う に 書 け る. こ れ ま で の 議 論 で 明 ら か な よ う に,x=x2に δ7を 調 整 し て 行 う こ と が で き る.ま
た,今
の δ6を 調 節 して 行 う こ と が で き る.し
お け る接 続 は,式(7・12)の 度 はx=x1で
た が っ て,こ
の 接 続 は,式(7・11)
の 場 合 に は,特
に特定 の
エ ネ ル ギ ー を選 ぶ こ とな しに全 領 域 の波 動 関 数 を な め らか に接 続 す る こ とが で き る.す
な わ ち,V2<E2<V3の
と る こ と が で き る.同 ど の よ う なEの
と き,電
様 の 考 察 か ら,電
子 は連 続 に ど ん な エ ネ ル ギ ー で も
子 の 全 エ ネ ル ギ ー がV3以
上 の と き も,
値 に対 し て も な め らか に 接 続 し た 波 動 関 数 が 存 在 す る こ と が
わ か る.
ま と め と して,な
め ら か に 接 続 し た 波 動 関 数 の 模 式 図 を 図7・8の(b),(c)
に 対 応 さ せ て 図7・9に
図7・9
示 し た.
図7・8(b),(c)の
条 件 に お け る波 動 関 数 の な め らか 接 続
練 習 問 題 〔7〕
1. 図7・8(a)で
示 し た ポ テ ン シ ャ ル は,x=x1とx2で
れ ら の ポ テ ン シ ャ ル が 図7・10の 同 じか,あ
不 連 続 に 変 化 し て い る.こ
よ う に 傾 き を もつ 場 合,7・4節
で の議 論 の本 質 は
る い は 何 か 変 わ る だ ろ う か 考 え て み な さ い.
図7・10
2. 図7・11の
ポ テ ン シ ャ ル 場 で,x1,x2間
が 十 分 に せ ま い と き,全
を も つ 電 子 の 波 動 関 数 の 形 を 定 性 的 に 調 べ な さ い.
図7・11
エ ネ ル ギ ーE
第8章
こ れ ま で,我
物 理 量 を求 あ る方 法
々 は 波 動 関 数 Ψ(x,t)や,特
に ψ(x)の
性 質 につ い て 学 ん
で き た 。 Ψ や ψ を 知 る こ と に ど ん な 意 味 が あ っ た か を 復 習 す る と,時刻t に お い て,場
所xとx+dxの
間 に 電 子 を 見 い 出 す 確 率P(x,t)dxは,P
(x,t)dx=│Ψ(x,t)│2dxで
あ り,定
P(x)dx=│ψ(x)│2dxで 運 動 量,…)を
あ っ た.そ
常 状 態 で は,確 れ で は,他
率 は 時 間 に よ ら ず,
の 物 理 量(エ
求 め る に は ど う す れ ば よ い だ ろ う か.こ
と に つ い て 学 ぶ が,ま
ネ ル ギ ー,
の 章 で は,こ
の こ
ず 直 感 的 に わ か る 簡 単 な 例 か ら 入 ろ う.
8・1 平 均 値 の 求 め方
あ る量 が分 布 して い る(ば
らつ いて い る)と き,そ れ らの 平 均 値 を 求 め る こ
とか ら考 え よ う. 例 と して,あ ば1mmき
る学 校 の 学 生 の 平均 身長 を求 め よ う.こ の た め に身 長 を,例 え
ざ み に分 けた ク ラ スを作 り,各 ク ラ ス に何 人 の 学 生 が 属 す るか を
調 べ る. ク ラ ス番 号
各 ク ラ スの代 表 身 長
1 2
…
l1
n1
l 2…lN
n 2…nN
N
全 学 生 の 身 長 の総 和 は,〓 身 長 をlと
各 ク ラス に属 す る学 生 数
す る と,
で あ り,全 学 生 数 は〓
で あ るの で,平
均
(8・1)
式(8・1)の
形 に は見 お ぼ え が あ る だ ろ う.古 典 力学 で学 ん だ 質 点 系 の 質 量
中心 を求め た と き に用 い た式 と よ く似 て い る(図8・1参
照).
図8・1 質 点 系 の質 量 中心 の 位 置 ベ ク トル
も う1つ の 例 を 出 そ う.x軸
上 を 不規 則 に動 い て い る小 粒 子 の平 均 的 な位 置
(動 きの 中心 座 標)を 求 め よ う.こ の座 標 軸 を 等 間 隔 な 小 さ な領 域 に分 け,各 領 域 に粒 子 が 滞在 す る時 間 を 測 り,そ の 滞在 時間 に比 例 した形 で 各 領 域 に粒 子 が 存 在 す る確 率Pを 求 め た とす る.前 と同様 の 考 え か ら,粒 子 の平 均 位 置x は, (8・2)
こ こ に,Piは
粒 子 がi番
こ か に い る わ け で,ΣPi=1で
目 の 領 域xiに あ る.し
い る 確 率 で あ る.粒
子 はx軸
上 の ど
た が って, (8・3)
こ の 例 で,領
域 の 間 隔 を こ ま か く し て い き,つ
と 考 え る と,Σ
を 積 分 に お き か え た ほ う が よ い.粒
る 確 率 をP(x)dxと
い に連 続 的 に分 布 を計 測 した 子 がxとx+dxの
間 にい
して
(8・4)
こ の 例 で,粒
子 を 電 子 と 考 え る と,す
で に 学 ん だ よ う に, (8・5)
式(8・5)を
式(8・4)に
代 入 す る と,電
子 の 平 均 位 置xは, (8・6)
│ Ψ│2は,Ψ*Ψ
の 意 味 で あ る か ら, (8・7)
の よ うに書 け る が,量 子 力学 で は,こ れ を次 節 の よ うに計 算 す る.
8・2
あ ん こ式(プ
式(8・7)のxの
サ イ ・サ ン ド)
位 置 を2つ
の 波 動 関 数 の 間 に は さ ん で,次
式 の よ うに 書 こ
う. (8・8)
こ の 式 を あ ん こ 式(餡 こ に す る の か,こ
濾 器)ま
た は プ サ イ ・サ ン ドと 呼 ぼ う.な
ぜxを
あん
れ か ら ど の よ う に計 算 す る の か は や が て わ か る.
こ の 方 法 に な ら う と,例
え ば 位 置 エ ネ ル ギ ーV(x)の
平 均 を知 りたい とき
に は, (8・9)
こ の 場 合,V(x)は
時 間 に 依 存 し な い の で, (8・10)
量 子 力 学 で は,こ tion
value)と
の よ う に し て 求 め た 物 理 量 の 平 均 値 を 期 待 値(expecta
呼 ん で い る.我
々 が 計 測 で 求 め る 電 子 に 関 す る 量 は,こ
の よ う
な 期 待 値 で あ る. そ れ で は,次
に 電 子 の 運 動 量 の 期 待 値 を 求 め て み よ う.上
の 例 に な ら う と, (8・11)
この 積 分 を 実 行 す るに は,運 動 量pがxの け な い.量 子 論 的 に は,こ れ までp(x)の
関 数 と して与 え られ て い な い とい 形 は で て き て い な い.古
典 的 には
−ih
(8・12)
な る 関 係 式 が 得 ら れ る.し
か し,式(8・12)は,xが
義 的 に 得 ら れ る の で,第5章
き ま る と 運 動 量pが
一
で 学 ん だ 不 確 定 性 原 理 に 反 す る こ と に な る.し
た
が っ て,式(8・12)のpを
式(8・11)に
か り で な く,式(8・12)以
外 の ど ん な 関 数p(x)も
で あ る.こ
の よ う に,期
代 入 す る こ と は 意 味 が な い.そ
れ ば
入 れ る ことはで きな いの
待 値 を 求 め る あ ん こ 式 の あ ん こ と して 関 数 を 入 れ る こ
と が で き な い の で あ れ ば,一
体 何 を 入 れ る べ き だ ろ う か?
こ の こ と を 調 べ る た め に,力
が 作 用 して い な い,す
なわ ち 自由 な状 態 にあ る
電 子 を 考 え よ う. す で に 学 ん だ よ う に,こ
の 電 子 の 波 動 関 数 は 平 面 波 的 で,次
そ の 運 動 量 は 場 所 に よ らず 一 定 で あ っ た.p=hkを
式 の よ う に書 け,
考 慮 に入 れ て (8・13) (8・14)
式(8・14)をxで
微 分 す る と, (8・15)
上 式 の 両辺 に−ihΨ*を
か け て,電 子 の存 在 す る− ∞か ら∞ のxの 全 領 域 で
積 分 す る と,
(8・16) と な る.
こ の 運 動 量pは,場 pに
等 し い.一
所 に よ らず 一 定 で あ る の で,運
方,式(8・16)の
動 量 の 期 待 値(平
均 値)
左 辺 を 書 き な お す と, (8・17)
式(8・17)は,運
動 量 の 期 待 値 を 求 め る あ ん こ式 で あ り,あ
ん こ と して
d/ dxが 入 って い る.こ れ は,運動 量 の(微 分)演 算 子 と呼 ば れ る もの であ る.
以 上 期 待 値 を 求 め る と き の あ ん こ と し て 直 接xの い 物 理 量 は,そ
関 数 を入 れ る こ とが で きな
の物 理 量 に対 応 す る演 算 子 の型 を入 れ れ ば よ い と い う こ とが わ
か る. 次 に,電
子 の 全 エ ネ ル ギ ー の 期 待 値 を 求 め て み よ う.
あ る一 定 の 全 エ ネ ル ギ ーEを
も っ た 定 常 状 態 を 考 え よ う.し
の 系 の 全 エ ネ ル ギ ー の 期 待 値EはEに
等 しい.Schrodinger方
た が っ て,こ 程 式 は,
(8・18)
式(8・18)の
両 辺 に 左 側 か ら ψ*を か け る と,
(8・19)
左 辺 の ψ を[]の
右 側 へ く く り 出 し,両
辺 をxの
全 域 に わ た って 積 分 す る
と,
(8・20)
(8・21)
上 式 は,Eを
求 め る あ ん こ 式 で あ り,[]の
求 め る た め の 演 算 子 で あ る.こ operator)と
呼 ば れ,こ
れ をHで
中 は全 エ ネ ル ギ ー の期 待 値 を
の 演 算 子 は,Hamilton演
算 子(Hamiltonian
表 す と,
(8・22)
こ れ を 用 い る と,式(8・21)は, (8・23)
上 式 は,あ
る一 定 の エ ネ ル ギ ーEを
も つ 系 に つ い て 求 め た わ け で あ る が,
一 般 に 上 式 が 成 り 立つ こ と は 証 明 さ れ て い る 式(8・22)に
示 し たHamilton演
で も あ る の で,第1項
.
算 子 の 第2項
は,位
置 エネ ル ギ ー そ の もの
は運 動 エ ネ ル ギ ー に 対 応 す る演 算 子 で あ る こ と が わ か る.
運 動 エ ネル ギ ー を〓(pは
運 動 量)と
して 第1項
を書 きな お す と, (8・24)
式(8・24)の()の あ ん こ)そ
中 は,す
で に 求 め た 運 動 量 演 算 子(式(8・17)中
の
の も の で あ る.
期 待 値 を 求 め る あ ん こ式 の あ ん こ と し て,位 こ に して よ か っ た(式(8・8)参
照).そ
置 座 標xは,xそ
れ はx自
の もの を あ ん
体 が 演 算 子 で もあ る か らで
あ る.
8・3 物 理 量 と演 算 子
量 子 力 学 で は,電 子 の状 態 は波 動 関 数 に よ り記 述 され,そ の状 態 で の エ ネ ル ギ ーや い ろ い ろ の物 理 量 は波 動 関数 か ら求 め られ る.一 般 に,量 子 力 学 で は, 観 測 可 能 な物 理 量 は演 算 子(operator)に
対応 させ,そ の 物 理 量 の 測 定 値 は固
有値 と呼 ばれ る.あ る物 理 量 に対 応 す る演 算 子Fに
対 して, (8・25)
の 関係 式 を 満 たす よ うな関 数 ψお よ び あ る値fが 存 在 す れ ば,fの 固有 値,ψ
こ と をFの
の こ と を固 有 関 数 と い う.こ の方 程 式 を固 有 値 方 程 式 と い う.物 理
的 な い い 方 を す れ ば,式(8・25)を
満 足 す る関 数 ψで 表 され る よ う な運 動 を し
て い る粒 子 が あ っ た と した と き,そ の粒 子 に対 して 物 理 量Fを
測 定 す れ ば,
いつ で もfと い う測 定 値 が 得 られ る とい う こ とで あ る. Fψ は,ψ に演 算 子Fを
作 用 した もので あ る の で,元 の ψ と は異 な る 関 数 に
な る が,こ れ が 元 の 関 数 ψの定 数倍fψ と等 しくな る よ う な,あ る特 別 の 関 数 ψを求 め るの が 固有値 方程 式 で あ る.例 (fx)はFψ=fψ こ こで,次 数C倍
え ば,〓
とす る と,ψ=exp
を満 足 す る ので,固 有 関 数 で あ る. の こ とを確 認 して お く こと は重 要 で あ る.す なわ ち,ψ を あ る定
した関 数 ψ'を考 え る と,ψ'も 同 じ固 有 値 方 程 式 を満 足 す る 固 有 関 数 に
な って い る こ とで あ る.
今 ま で に す で に 学 ん だ 固 有 値 方 程 式 の1つ な わ ち,式(8・18)はHamilton演
はSchrodinger方
算 子 式(8・22)を
程 式 で あ る.す
用 い て 書 く と, (8・26)
古 典 物 理 学 で は,物 理 量 の 積 は も ち ろ ん 因 子 の順 序 に は よ らな い.xpxも pxxも 同 じで あ る.し か し,演 算 子 の 積 は因 子 の 順 序 に よ る こ とが あ る の で, 量 子 力 学 で は物 理 量 の積 は交 換可 能 で な い こ とが あ る.一 例 と して,位 置 座 標 xと運動 量pxに つ いて み る と,〓
を考 慮 して (8・27)
(8・28)
した が って, (8・29)
と な る.yとpy,zとpzの
間 の 関 係 も同 じで,
(8・30)
の 関 係 が 成 り 立 っ て い る.一 と す る と,pi,qjの
般 に,pi,qj(i,j=x,y,z)を
運動 量 と座標
間 に は, (8・31)
の 関 係 が 成 り 立 つ.δijは,i=jの 表 す.piqj−qjpiをpiとqjの く.式(8・31)の
と き に0と
交 換 子(commutator)と
関 係 を 演 算 子pi,qjの
2つ の 演 算 子A,Bが とBの
と き1で,i≠jの
で 表 す.い
呼 び,〔pi,qj〕
と書
間 の 交 換 関 係 と 呼 ぶ.
あ る と き,AB−BAは
交 換 子 と よ び,〔A,B〕
な る関 数 を
一 般 に0で
は な い.こ
れ をA
ま, (8・32)
で あ る と き,A,Bは
互 い に 交 換 可 能 で あ る,ま
よ う な 演 算 子A,Bを
可 換 な 演 算 子 と呼 ぶ.座
た は 可 換 で あ る と い い,こ
標 の 各 成 分x,y,zは,互
の い
に可 換 で あ り,運 動 量 の各 成 分px,py,pzも
互 い に可 換 で あ る.
電 子 の あ る1つ の状 態 を想 像 しよ う.こ の 状 態 を 表 現 す る固 有 関 数 を ψ とす る.こ の状 態 に あ る電 子 の もつ あ る1つ の物 理量(エ 動 量etcの 中 の どれ か1つ)に され る量)をaと
対 応 す る演 算 子 をA,そ
ネル ギ ー,運 動 量,角 運 の 固有 値(実 際 に測 定
す る.固 有 値 方 程 式 は, (8・33)
と書 け る.次 に,こ れ と同 じ固 有 関 数 ψで表 され る この電 子 の他 の物 理 量 に対 応 す る演 算 子Bを
考 え よ う.式(8・33)の
表8・1
両 辺 に左 側 か らBを 作 用 させ る と,
種々の物理量の演算子
演 算 子AとBが け る.ま (8・33)は
可 換 で あ れ ばAB−BA=0.す
た,右
辺 で は,aは
る と,左
固 有 値 で 定 数 で あ る の で,こ
辺 はABψ
れ はaBψ
と書
と な る.式
次 の よ う に な る. (8・34)
見 や す く す る た め に,Bψ Bψ の 固 有 値 もaと 較 す る と,Bψ
を()で
ま と め が,こ
い う こ と で あ る.さ
は ψ を あ る定 数(bと
の 式 の 意 味 は,固
ら に,式(8・33)と
す る)倍
有 関数
式(8・34)を
比
した も の に な って い な くて は い
け な い の で, (8・35)
こ の 式 は,固 の 固 有 値bも
有 関 数 ψ で 表 さ れ る電 子 状 態 の あ る 物 理 量(演
対 応)
定 ま る こ と を 意 味 し て い る.
式(8・33)と
式(8・35)の
が 可 換 で あ れ ば,同 bは,同
算 子Bに
意 味 す る こ と を ま と め る と,も
じ固 有 関 数 ψ で 表 さ れ る 電 子 の2つ
時 に 定 め う る(測
定 可 能)と
上 の こ と は 演 算 子AとBが で な い と,[A,B]≠0で
し演 算 子AとB
の 層 性(固
有 値)aと
い う こ と で あ る.
可 換 と い う こ と が 条 件 で あ っ た.AとBが あ り,aとbは
式(8・31)で,i=j=xと
可 換
同 時 に 定 め る こ と は で き な く な る.
す る と,δij=1で
(8・36)
とな る.Pxとxは
可 換 で はな い.我 々 はす で に第5章
で 不 確 定 性 に 関 して 学
び,運 動 量 と位 置 座 標 を同 時 に確 定 した値 と して得 るこ とが で きな い ことを知 っ て い るが,そ
れ は式(8・36)に
示 さ れ る よ う に,運 動 量 演 算 子pxと 位 置 座 標
の 演 算 子xが 可 換 で な い こと に原 因 す るの で あ る. 表8・1に 種 々 の物 理 量 の演 算 子 を ま とめ て お く.
練 習 問 題 〔8〕
1. 位 置 お よ び運 動 量 の期 待 値<x>
お よ び<px>
それ ぞ れ の時 間 変 化 を 求め よ.
2. 期 待 値 が 実 数 で あ る演 算 子 を エ ル ミー ト(Hermitian)演
算 子 とい う.
こ の と き,演 算 子Aは,
を み たす.(ψ,Aψ)は
ψ とA ψの 内 積 と呼 び,
で あ る.τ は積 分 範 囲 で あ る. 一 次 元 的取 扱い で の運 動 量演 算 子〓 証 明 せ よ.
が エ ル ミー トで あ る こ と を
第9章
Schrodinger方
程式 の
簡 単 な モデ ルへ の応 用
こ の章 で は,階 段 形(〓)や 電 子,お
井 戸 形(〓)の
ポ テ ン シ ャル場 に お け る
よ び調 和 振 動 子(古 典 的 なつ る ま きば ね に重 り を つ け た と き の振
動 に相 当)に つ い て検 討 す る.
9・1
階段 形 ポ テ ン シ ャル
図9・1に 示 す よ うな,階 段 形 の ポテ ン シ ャル場 に あ る電 子 を 考 え よ う.こ の ポテ ン シ ャル は,真 空 中 にお か れ た物 質 の真 空 との界 面 の モ デ ル と考 え る こ とが で き る.す な わ ち,図9・1で,x>0が
物 質 内,x<0が
両 者 の界 面 を 表 す.真 空 の ポ テ ンシ ャル(こ の場 合0に 表 面 の ポ テ ンシ ャ ル−V0と
真 空,x=0が
と って あ る)と,物
質
の差 は,一 般 的 にそ の物 質 の仕 事 関数 と 呼 ば れ,
その 物質 を特 徴 づ け る物 理 量 の1つ で あ る.こ の よ うな場 に お か れ た1つ の電 子 の 全 エ ネル ギ ーEが,0>E>−V0の
図9・1
場 合,電 子 は物 質 に属 して お り,自
階段 ポ テ ンシ ャ ル
由 に 真 空 へ 出 る こ と は で き な い.ま
た,E>0の
し て 動 く こ と が で き る.以
下 に,こ
れ ら の2つ
(1)
場合
真 空 中(x<0),お
0>E>−V0の
に お け る 波 動 関 数 を そ れ ぞ れ ψ1,ψ2と
場 合 に は,電
子 の 界面 を通 過
の 場 合 に 分 け て 考 察 し よ う. よ び 物 質 中(x>0)
す る と,Schrodinger方
程 式 は,そ
れ
ぞ れ 次 の よ う に な る.
(9・1)
(物 質 中)(9・2) こ こ で,Eは
負 で あ る の で ψ1は 減 衰 的 に な り,ま
たE+V0は
正 で あ るの
で ψ2は 振 動 的 に な る. 式(9・1)の
一 般 解 は,
(9・3) と な る が,x=−∞
で は ψ1=0で
な く て は な ら な い の で,B=0で
あ り,式
(9・3)は, (9・4)
と な る.ま
た,式(9・2)の
一 般 解 は,
(9・5)
と 表 す こ と が で き る. 波 動 関 数 ψ1,ψ2はx=0で,な
め ら か 接 続(ψ
れ て い な くて は い け な い の で,ψ1(x=0)=ψ2(x=0)か
お よ びdψ/dxが
連 続)さ
ら (9・6)
ま た, (9・7) 式(9・6),(9・7)よ
り,
(9・8)
式(9・8)が,波 が,0>E>−V0の す れ ば,な
動 関 数 ψの 形 に 対 す る 条 件 で あ り,電 範 囲 で 変 化 し た と き,式(9・8)に
め ら か な 接 続 が で き る.こ
の と き,Eは
子 の 全 エ ネ ル ギ ーE した が って δが 変 化
上 記 の 範 囲 で あ れ ば,ど
(a) 階 段 ポ テ ン シ ャ ル に お け る電 子(0>E>−V0)の 波 動 関 数 ψ と 存 在 確 率p
( b) GaS結
晶 の 表 面 の トン ネ ル顕 微鏡 に よ る図
(S原 子 の規 則 配 列 が み られ る.)(コ ン ピ ュ ー タに よ る補 正) 図9・2
ん
な 値 で も 取 れ る. 波 動 関 数 ψ と存 在 確 率Pを で は,図9・2(a)の
模 式 的 に 図9・2(a)に
真 空 の 領 域(x=0)へ
電 極 を 近 づ け,こ
示 す.ト
しみ 出 して い る ψの 部 分 ま で細 い
の 電 極 で 物 質 の 表 面 上 を 二 次 元 的 に 走 査 して,物
原 子 に 固 有 な ψ の 分 布 を 調 べ る.こ
の 方 法 に よ り,表
E>0の
場合
こ の 場 合 に は,電
面 を 通 過 す る こ と が で き る.真 odinger方
空 中(x<0)と
程 式 は,式(9・1),(9・2)で
質 の表 面 の
面 原 子 の 配列 お よ び原 子
の 種 類 の ち が い を 知 る こ と が で き る.図9・2(b)は,こ (2)
ン ネ ル走 査 顕 微 鏡
の 一 例 で あ る.
子 は 波 動 の 形 で 自 由 にx=0の 物 質 中(x>0)に
表 さ れ,そ
界
お け るSchr
の 一 般 解 は,
(真 空 中)
(9・9)
(物 質 中)
(9・10)
こ こ に,
式(9・9),(9・10)の ψ1(x=0)=ψ2(x=0)か
波 動 関 数 ψが,x=0で
な め らか に 接 合 す るた め に は,
ら (9・11)
(9・12) 式(9・11),(9・12)の
辺 々 を2乗
し,和
を と る と,
(9・13) ki/k0は1よ そ れ ゆ え,真
り 大 き い の で,式(9・13)右 空 中 に お け る ψ1の 振 幅Aは,物
辺 の{}内
は1よ
り も大 き い.
質 中 に お け る ψ2の 振 幅Bよ
り
大 き い こ と が わ か る. 式(9・9),(9・10)の す.物
ψ お よ び そ れ ら の 存 在 確 率Pを
模 式 的 に 図9・3に
質 中 よ り も真 空 中 の ほ うが 電 子 の 存 在 確 率 が 高 い と い う こ と は,次
う に 理 解 し て も よ い.す
な わ ち,古
典 論 的 な 考 え 方 を す る と,真
示 のよ
空 中 で の電 子
図9・3 階 段 ポ テ ンシ ャ ルに お け る電 子(E>0)の A>B,ki>k0に
の 速 度υ0は,式(9・14)と
波 動 関数 ψ と存 在 確 率P.
注意
な り,物
質 中 で の 速 度υiは,式(9・15)と
な る.
(9・14)
(9・15)
上 の2式 よ り明 らか に,υ0<υi,す
な わ ち真 空 中 の電 子 の速 度 は 物 質 中 の
そ れ よ り遅 い.し た が って,真 空 中 に お け る電 子 の滞 在 時 間 の ほ うが,物 質 中 の そ れ に比 べ長 い の で,真 空 中 の存 在 確 率 の ほ うが 物 質 中 の そ れ に比 べ大 き く な る. ま た,図9・3の
存 在 確 率 は場 所 に よ り異 な り,周 期 的 に な って い る.こ
れ
は,波 動 関数 が定 在 波 を形 成 して い る こ と に原 因 す る*).物 質 の内 外 で 定 在 波 が形 成 さ れ て い る とい う こと は,物 質 中 の電 子 が 光 ま た は熱 に よ り十 分 に励 起 さ れ て真 空 中 へ放 射 さ れ,同 時 に外 部 か ら物 質 へ 向 か って 電子 が飛 来 し,こ れ らが定 在 波 を形 成 して平 衡 状 態 と な って い る こと を意 味 して い る.す な わ ち,
*) ψ=Asin(kx+δ)で,δ
が 虚 数 の と き,ψ
は 定 在 波 と な る.
高 温 に加 熱 され た真 空 炉 の 中 にお か れ た物 質 を想 像 す れ ば よ い. 外 部 光 電 効 果 で は,物 質 中 の電 子 は エ ネ ル ギ ー を獲 得 し,物 質 か ら真 空 中 へ 脱 出 す る.し か し,逆 に真 空 中 か ら物 質 へ 入 射 す る電 子 は存 在 しな い.上 記 の よ うな場 合 につ いて,次
に考 え よ う.
式(9・1),(9・2)のSchrodinger方
程 式 の解 と して は,複 素 関 数 形 を 用 い
た ほ うが 便 利 で あ る.真 空 中 で は,物 質 か ら遠 ざ か る 向 き(x軸 き)の 波 の み 存 在 す るの で,−x方
上− ∞ の 向
向 に 向 う平 面 波 は, (9・16)
一 方,物 質 内 で はx=0の
界面 へ 向 う波 と,界 面 で 反 射 して元 へ もど る波 が
考 え られ るの で, (9・17)
式(9・16)と(9・17)の
波 動 関 数 がx=0で
件 は,ψ1(x=0)=ψ2(x=0)か
な め らか に 接 続 す る た め の 条
ら (9・18)
ま た〓か
ら, (9・19)
こ こ で,〓と
お く と,式(9・19)は, (9・20)
式(9・18),(9・20)を
連 立 さ せ,B,CをAに
つ い て 解 く と,
(9・21)
(9・22)
式(9・16),(9・17)の
波 動 関 数 で 表 さ れ る 電 子 の 存 在 確 率Pは, (真 空 中)
(9・23)
(物 質 中) 式(9・24)の
最 大,最
小 値 は,
(9・24)
(9・25) (9・26)
こ れ ら を 式(9・21),(9・22)を
用 いて 書 きか え る と, (9・27)
(9・28)
図9・4は,電
子 の存 在 確 率Pを
模 式 的 に示 した もので あ る.こ
の 場 合,真
空 中 で は,波 動 関 数 は進 行 波 と な って い るの で,存 在 確 率 は場 所 に よ らず 一 定 とな る.ま た,特 徴 的 な こ と は,こ の一 定 確 率 は,物 質 的 の 確 率 の 最 大値 に 等 しい.
図9・4
階 段 ポ テ ン シ ャル に お け る電 子(E>0)の
存 在 確 率P.
真 空 中 の ψが進 行 波 の形 を と る場 合
9・2
井 戸 形 ポ テ ン シ ャル
図9・5に
示 す よ う な ポ テ ン シ ャ ル を 井 戸 形 ポ テ ン シ ャ ル(well
と い う.こ
の ポ テ ン シ ャ ル は,単
純 な モ デ ル で は あ る が,井
る 膜 厚 を もつ 物 質 の 薄 膜 の モ デ ル と して,実 電 子 の 全 エ ネ ル ギ ーEが0<E<V0に
potential)
戸 の 幅aに
際 に 用 い ら れ て い る .す
あ る と き は,膜
相 当す な わ ち,
中 に存 在 す る電 子 の モ
デ ル と し て,ま
たE>V0の
と き は,外部(x=0ま
た はx>a)か
射 し た 電 子(ま
た は 光 子)の
反 射 や 透 過 の モ デ ル と し て 用 い ら れ る.
ら膜 に 入
図9・5
(1)
0<E<V0の
場合
子 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は,と 左 右 の 領 域 で は,井 れ る.具
井 戸 形 ポ テ ン シ ャル
す で に第7章
で 学 ん だ よ う に,井
び と び な 値 しか と れ ず,ψ
戸 か ら離 れ る に つ れ て,ψ
体 的 な ψ の 形 は,第7章7・4節
戸 の 中 の電
は 振 動 的 に な る.ま た,
は 減 衰 し0に
な る こ とが 予 想 さ
よ り, (9・29) (9・30) (9・31)
こ こ で,
(9・32)
(9・33)
式(9・32)の な り,井
α の 値 は,V0,す
な わ ち井 戸 の 深 さ が 大 き くな る ほ ど大 き く
戸 の 左 右 の 領 域 で の 波 動 関 数 ψ の 減 衰 は 顕 著 に な る.極
戸 が 無 限 に 深 い と き に は,ψ
端 な 場 合,井
は井 戸 の 左 右 の領 域 に は全 く しみ 出 す こ とが で き
な い. (2)
井 戸 の 深 さ が 有 限 の 場 合
井 戸 の 両 端(x=0とx=a)で,波
動
関 数 は な め ら か に 接 続 して い な くて は い け な い. 式(9・29)∼(9・31)のxに
よ る1回
微 分 は, (9・34)
(9・35)
(9・36)
な め ら か な 接 続 の 条 件 は,x=0で,ψ1(x=0)=ψ2(x=0)か
ら (9・37)
か ら, (9・38) x=aで,ψ2(x=a)=ψ3(x=a)か
ら (9・39)
(9・40)
式(9・37)∼(9・40)か Eの
関 数 で あ る)が
ら δ お よ びE(式(9・32),(9・33)よ 求 ま る.δ
り α とkは
は 直 接 必 要 と し な い の で,こ
れ を 消 去 す る と,
次 の 式 が 得 られ る.
(9・41)
こ こに,n=1,2,3,……
式(9・41)は,残
念 な が ら解 析 的 に 解 く こ と は で き な い が,そ
の 値 に対 応 して,と
び と び のEの
わ か る.こ
のnを
値(エ
ネ ル ギ ー 固 有 値)が
れ ぞ れ のn
存 在す る ことが
量 子 数 と い う.
そ れ ぞ れ の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 に 属 す る 固 有 関 数 ψ は,式(9・29),(9・30), (9・31)に
固 有 値 を 代 入 す る こ と に よ り得 ら れ る が,そ
徴 を 図9・6に
の うち の い くつ か の特
示 す.
井 戸 が 無 限 に 深 い 場 合 に は,式(9・41)にV0=∞
を 代 入 し て,エ
ネルギー
固 有 値 は,
(9・42)
図9・6
有 限 な 深 さの 井 戸 形 ポテ ン シ ャル 中 の
電子の固有関数
と な り,n=1,2,… らか に,井
に 対 応 し た 無 数 の 離 散 的 な 状 態 を 得 る.こ
戸 の 幅aを
せ ま くす る と,エ
ネ ル ギ ー 固 有 値Enは
の 式 か ら明
大 き く な る.式
(9・42)は,次
の よ う に 考 え て 得 る こ と もで き る.す
い 場 合 に は,井
戸 の 外 側 へ の 波 動 関 数 の し み 出 し は 零 で あ る の で,1/2波
整 数 倍 が 井 戸 の 幅aに と 直 接 式(9・42)に
等 し くな る 条 件,ka=nπ
を,式(9・33)に
戸 が無 限 に深 長 の
代入 す る
な る.
無 限 に 深 い 井 戸 の 場 合,固 よ び δ=0を
な わ ち,井
有 関 数ψnは,式(9・30)にk=nπ/aの
関係 お
代 入 す る こ と に よ り 得 られ る.
(9・43)
図9・7に,い
く つ か の 固 有 関 数 の 特 徴 を 示 す.
図9・7 無 限 に 深 い 井 戸 形 ポ テ ン シ ャル 中 の電 子 の 固 有 関 数
次 に,式(9・43)の
固 有 関数 の規 格 化 を行 い,係 数Anを
決 め よ う. (9・44)
式(9・44)に
式(9・43)を
代 入 し,積 分 範 囲 を0≦x≦aに
お き か え る と,
(9・45)
(9・46)
(9・47)
とな り,振 幅Anはnに
は依 存 せ ず,井 戸 の幅aが 大 き くな る と,逆
に小 さ く
な る.固 有 関数 の形 は (9・48)
と な る.ま た,井 戸 の 中 に電 子 を見 い 出す 確 率Pnは, (9・49)
式(9・49)で
示 さ れ る確 率 の 数 例 を 図9・8に
図9・8
示 す.
無 限 に深 い井 戸 形 ポ テ ン シ ャル 中 の電 子 の存 在確 率
9・3 調 和 振 動 子
直線 上 で 振 動 す る質 量mの
粒 子 に加 わ る力 が,そ
比 例 し,平 衡 位 置 へ 引 き も どす 向 き(F=−kx)で 和 振 動,よ
り正 確 に は,単 調 調 和 振 動(simple
古 典 力 学 の考 え方 をす る と,振 動 子mの
の平 衡 位 置 か らの 変 位 に あ る と き,こ
の振 動 を調
harmonic oscillation)と い う.
運 動 方 程 式 は, (9・50)
で,こ
の 解 は ω2=k/mと
お く と, (9・51)
の よ うに単 振 動 とな る. 振 動 子 に 力−kxが
加 わ る と い う こ と は,振 動 子 が 次 の よ う な 位 置 エ ネ ル
ギ ーVを
もつ 場 に お か れ て い る の と 等 価 で あ る.F=−kx=−mω2xで, 〓 で あ る こ と を 考 慮 す る と,
(9・52)
調 和 振 動 子 を 量 子 力 学 的 に 考 え る に は,式(9・52)の Schrodinger方
程 式 に 代 入 し,こ
位 置 エ ネルギ ー を
れ を 解 け ば よ い.
(9・53)
をか け る と,
両 辺 に〓
(9・54)
こ こ で,
(9・55),(9・56)
な る次 元 が1の 変 数 を導 入 す る と,
〓ま た,
〓と な り,式(9・ 54)は,
(9・57)
(9・58)
式(9・58)の()内
は,固
有 値 ε に 対 応 す る演 算 子 で あ る.こ
れ をHと
く と,
(9・59)
(9・60)
と な る.以
下,式(9・60)を
演 算 子 法 を 用 い て 解 い て み よ う.
お
次 の よ うな2つ
の(一 次 微 分)演 算子 を定 義 す る.
(9・61)
す る と,UDψ
な る 演 算 は 次 の よ う に な る.
(9・62)
同 様 に,DUφ
な る 演 算 は, (9・63)
式(9・62),(9・63)を
演 算 子 の み の 恒 等 式 で 書 く と, (9・64) (9・65)
式(9・64)の
両 辺 に,左
側 か らDを
作 用 さ せ る と, (9・66)
こ の 左 辺 の 一 部DUを
式(9・65)で
お き か え る と,
(9・67) Schrodinger方 式(9・60)の
程 式(9・60)を 両 辺 に 左 か らDを
左 辺 のDHに,式(9・67)の
式(9・67)を
用 い て 書 き か え よ う.す な わ ち,
作 用 さ せ る と,
関 係 を 代 入 す る と,
(9・68) わ か りや す くす る た め に,Dψ
を カ ッ コ で く く る と, (9・69)
式(9・69)は,固
有 値(ε−2)の
式(9・69)に
再 びDを
固 有 関 数 は,Dψ
で あ る こ と を 示 して い る.
作 用 さ せ る と, (9・70)*)
左 辺 のDHに
再 び式(9・67)の
関 係 を代 入 して整 理 す る と, (9・71)
式(9・71)は,固
有 値(ε−4)の
こ の よ う に,演 て,よ
固 有 関 数 はD2ψ
算 子DをSchrodinger方
で あ る こ と を 示 して い る.
程 式 に次 々 に作 用 させ る こ とによ っ
り低 い 固 有 値 に 対 応 す る固 有 関 数 を 求 め る こ と が で き る.一
般 に,次
の
よ う に 書 く こ と が で き る. (9・72)
同 様 に,式(9・65)の
両 辺 に 左 側 か らUを
作 用 さ せ る と, (9・73)
こ の〓
の 部 分 に 式(9・64)を
代 入 し,整
理 す る と, (9・74)
Schrodinger方
程 式(9・60)の
両 辺 にUを
作 用 す る と, (9・75)
こ の〓
の 部 分 に 式(9・74)を
代 入 し て,整
理 す る と, (9・76)
式(9・76)は,固
有 値(ε+2)の
こ れ を 繰 り返 す こ と に よ り,次 る.一
般 に,次
*)DD≡D2と
固 有 関 数 はUφ
々 と高 い 値 の 固 有 値 に 対 応 す る 固 有 関 数 が 求 ま
の よ う に 書 く こ と が で き る.
し た.
で あ る こ と を 示 して い る.
(9・77)
こ の よ うに 演 算 子Dは,1だ る.Downの
け小 さい固 有 値 の 固 有 関 数 を 求 め る演 算 子 で あ
頭 文 字 を と ってDと
した.同 様 に,式(9・61)のUはUpの
頭文
字 で あ り,逆 に1だ け大 き い固 有 値 の 固 有 関数 を求 め る演 算 子 で あ る.U,D をそ れ ぞ れ上リ 演 算 子,下リ
演 算 子 を 呼 ぶ こ とに しよ う.
さて,調和振動子 の 位 置 エ ネル ギ ー〓
よ り小 さ な 固
有 値 を もっ こ と はで きな い ので,こ の 固 有 値 に は最 小 値 が 存 在 す る.こ ε0と し,そ の と きの 固 有 関 数 を φ0と す る と,式(9・60)よ
れを
り,
(9.78) こ の 式 に 下 り演 算 子Dを
作 用 さ せ る と(い
い か え る と,式(9・69)に
ε0,
φ0を 代 入), (9・79)
ε0は 最 も エ ネ ル ギ ー の 低 い 固 有 値 と し た の で,(ε0−2)に 関 数Dφ0は
存 在 し な い.そ
対 応 す る固 有
れ ゆ え, (9・80)
式(9・62)に
φ0を 代 入 す る と, (9・81)
こ の 式 でDψ0=0で
あ る の で,UDφ0=0, (9・82)
式(9・78),(9・82)を 77)でn=0の 一般 に
比 較 す る と,明
と き の ε=ε0=1で
ら か に ε0=1で
あ り,ま
あ る.す
た 固 有 値 は2つ
る と,式(9・
ず つ 増 す の で,
, (9・83)
と書 く こ と が で き る.式(9・56)よ
り,〓
で あ る の で,調
和振動
の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は,
(9・84)
子
で 表 さ れ る.最
低 値(n=0),す
な わ ち 零 点 エ ネ ル ギ ー は, (9・85)
と な る.こ
の と き の 固 有 関 数 ψ0を 求 め よ う.固
こ れ に 式(9・61)の
有 値 方 程 式 は 式(9・80)で,
関 係 を 入 れ る と,
(9・86)
変 数分 離 す る と, (9・87)
(9・88)
た だ し,lnA0は
積 分 定 数 で あ る. (9・89)
これ は一 番 低 い 固 有 値 に対 す る固 有 関数 ψ0であ る.他 の す べ て の 固 有 関 数 は,ψ0に 順 次 上 り演 算 子Uを
作 用 させ る こ とに よ り,求 め る こ とが で き る.
例 え ば,
(9・90)
式(9・89),(9・90)の で き る.す
係 数 は,波
な わ ち,式(9・89)の
動 関 数 の 規 格 化 の 条 件 か ら求 め る こ とが
場 合 は,
(9・91)
こ こで,式(9・55)を
用 い てxをyに
変 換 して,
(9・92)*)
*)
を 用 い た.
(9・93)
(9・94)
式(9・90)の
場 合 に は,〓
の 係 数 をA1と
お き,
(9・95)
(9・96)*)
(9・97)
式(9・94),(9・97)に
対 応 す る 確 率 密 度P0,P1は,
(9・98)
(9・99)
こ れ ら の 結 果 を 図9・9に
*)〓
示 す.
を 用 い た.
図9・9 調和振動子の波動関数 ψと確率密度P
練
習
問
題
〔9〕
1. 両 側 が 無 限 大 の 高 さ の壁 で仕 切 られ た一 次 元 の箱 の 中 に閉 じ込 め られ て い る粒 子 の,2つ
の 異 な るエ ネ ル ギ ー状 態 に対 応 す る固 有 関 数 をψm,ψnと
す る と,n≠m
で あ れ ば,
で あ る こ と を 示 せ.
2. 質 量mの
粒 子 が,次 の一 次 元 ポ テ ン シ ャルV(x)の
この と き,こ の 粒 子 の束 縛 状 態(E<V0の
を満 た す と きの み存 在 す る こ とを 示 せ.
状 態)は,
影 響 下 に あ る もの とす る.
第10章
Schrodinger方
程式 の三 次 元 化
この章 で は,前 章 ま で の一 次 元 の取 り扱 い を一 般 の 三 次 元 の 問 題 に拡 張 し,変 数 分 離 法 に よ って一 次 元 の問 題 に帰 着 で き る こ とを 示 す.
10・1
箱 の 中 の 自由 粒 子
式(6・15)に
示 した 一 次 元 のSchrodinger方
程式
(10・1)
を 三 次 元 に拡 張 す る に は,
(10・2)
と 置 け ば よ い.つ
ま り,Hamilton演
算 子Hを
三 次 元 化 して,
(10・3) と な る か ら,こ
れ よ りHΨ(r,t)=EΨ(r,t)を
つ く る と,
(10・4)
と な る.∇2はnabla2と
読 み,ま
た∇2=Δ
はLaplace演
算 子(Laplacian)と
よ ば れ る.こ
れ が 三 次 元 のSchrodinger方
エ ネ ル ギ ーEが
程 式 で あ る.
与 え ら れ る と,波 動 関 数 は,空 間 部 分 と 時 間 部 分 の 積 と して, (10・5)
と 表 さ れ る.し
た が っ て,式(10・4)のSchrodinger方
程 式 は,
と な り,時 間 項 を 消 した形 は (10・6) と な る.
さ て,こ
こ で,箱
え て み よ う.箱 は カ〓
の3辺
の 中 に と じ こ め ら れ て い る 質 量mの の 長 さ をa,b,cと
は 作 用 し な い.し
す る.自
た が っ て,V=一定
自 由 粒 子 につ い て 考
由 粒 子 で あ る か ら,粒 で あ る が,こ
子 に
こ で はV=
0と す る. す る と,ポ
テ ン シ ャル は
(10・7)
の よ う に 書 け る.こ れ は 第9章9・2節 を 三 次 元 化 し た も の に 相 当 す る.こ
で 学 ん だ無 限 に深 い井 戸 形 ポ テ ンシ ャル の と き箱 の 中 の 粒 子 に 対 す るSchrodinger
方 程 式 はV=0で
(10・8)
で 与 え ら れ る.境
界 条 件 は,式(10・7)よ
り,箱
の 外 で ψ(x,y,z)=0で
あ る
の で,
(10・9)
と な る.次
に,波
動 関 数 ψ(x,y,z)が1つ
の 変 数 だ け を もつ3つ
の独 立 した 波
動 関 数 の稽 (10・10)
で 与 え られ る も の と仮 定 す る.す
る と,
〓同 様 に,
〓と な り,こ
れ を 式(10・8)に
代 入 し て,
(10・11)
が 得 ら れ る.両
辺 をXYZで
割 る と,
(10・12)
と な る.こ
の 式 の 右 辺 は 定 数 で あ り,x,y,zは
左 辺 の 各 項 は 定 数 で な け れ ば な ら な い.し
互 に 独 立 な 変 数 で あ る か ら, た が っ て,
(10・13) と お く こ と が で き る.こ
こ に,kxは
定 数 で あ る.y,zに
対 す る項 に つ い て も
同 様 に,
(10・14)
(10・15)
で,ky,kzは
定 数 で あ る.式(10・12)ま
が,式(10・13)∼
式(10・15)で
な く て は な ら な い.こ
で は偏 微 分 記 号 ∂が用 い られ て い た
は 常 微 分 記 号dに
の よ う に式(10・12)を
を 変 数 分 離 と い う.式(10・13)∼
式(10・15)を
な って い る こ と に注 意 し
そ の 下 の3つ
の式 に分 け る こ と
用 い て 式(10・12)は
,
(10・16)
と な る.式(10・13)∼
式(10・15)の
定 数 を 負 と し た 理 由 は,全
エ ネル ギー
が 正 の 状 態 を 考 察 す る た め で あ る. 式(10・13)は,
(10・17)
と 書 き換 え ら れ,こ
の 解 は, (10・18)
で,Ax,δxは
積 分 定 数 で あ る.同
様 に し て,式(10・14)と
式(10・15)よ
り,
(10・19)
(10・20) が 得 られ る.こ
れ ら の 解 か ら変 数 分 離 の と き に 導 入 さ れ た 定 数kx,ky,kzは
波 数 で あ る こ と が わ か る.波 境 界 条 件 式(10・9)よ X(0)=0よ
数kx,ky,kzお
よ び 初 期 位 相 δx,δy,δzは,
り決 定 さ れ る. り δx=0,Y(0)=0よ
り δy=0,Z(0)=0よ
り δz=0 (10・21)
(10・22)
こ こ に,nx,ny,nz=1,2,3,…
… は 独 立 な 正 の 整 数 で あ る.
こ の よ う に し て,X(x),Y(y),Z(z)が
求 め ら れ た の で,式(10・10)よ
り
求 め る 固 有 関 数 は,
(10・23)
と な る.こ 式(10・16)と
こ で,A=AxAyAzは
規 格 化 定 数 で あ る.
式(10・22)よ
り,エ
ネ ル ギ ー 固 有 値 は,
(10・24)
と な る.式(10・23)と
式(10・24)は,そ
を 三 次 元 化 し た も の で あ る.
れ ぞ れ 式(9・42)と
式(9・43)
Aを
求 め る た め の 式(10・23)の
規 格 化 は,
〓と し て (10・25) に よ っ て な さ れ る.式(9・45)と
同 様 の 方 法 を 用 い る と,規
格 化 定 数Aは,
(10・26)
の よ うに決 め られ る.し た が って,規 格化 さ れ た波 動 関 数 は,
(10・27)
と求 め ら れ る. 基 底 状 態 は,nx=ny=nz=1の 値 は,式(10・4)か
状 態 で あ る か ら,そ
の と き エ ネル ギ ー 固 有
ら
(10・28)*) と な る.こ
れ が 三 次 元 で の 零 点 エ ネ ル ギ ー で あ る.こ
に つ い て 考 え て み よ う.こ
*) 式(10・28)は
で 制 限 され る の で,不
と な る.こ
こ で,a=b=cの
場合
有 関 数 お よ び エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は,
粒 子 の 運 動 が制 限 され た空 間 内 で 行 わ れ て い る こ と に よ る不 確 定 性 原 理 に起 因
して い る と して 理 解 で き る.つ
したが って,最
の 場 合 に は,固
ま り,三 次 元 にお いて 粒 子 は,
確 定 性 原 理 に よ る運 動 量 の 大 き さの 幅 は,
低ェ ネ ル ギ ー は,
れ は 係 数 の一 部 を の ぞ いて 式(10・28)と
同 じで あ る.
(10・29)
(10・30)
と な る.こ の よ う な と き に は,(nx2+ny2+nz2)の nz)の
値 が 同 じ な ら ば,(nx,ny,
異 な る組 合 せ に 対 して 同 じEnx,ny,nzの
値 が 得 られ る.す
な わ ち,物
的 に 異 な る 波 動 関 数 が 全 く等 し い エ ネ ル ギ ー 値 に 対 応 す る こ と に な る.こ う な 場 合,こ
に 縮 退 し て い る.縮
を も つ.つ 退 は,考
の エ ネ ル ギー準
の 例 で あ る).
ネ ル ギ ー 固 有 値Enx,ny,nzがnx,ny,nzの
値 に 対 して
と び と び の 値 を と る こ と を 示 し て い る が,nx2+ny2+nz2の の エ ネ ル ギ ー 幅 は〓
調 べ よ う.そ
で あ って,こ
間 隔 が1の
の 値 は 非 常 に 小 さ い.そ
対 して 連 続 的 に 変 化 す る と して も よ い だ ろ う.こ
ネ ル ギ ー 固 有 値Eを
位 は三重
方 向 は 等 価 で あ る の で 多 く の 対 称 性 が あ る(面
心 立 方 格 子 を もつ 金 属 結 晶 は,こ 式(10・30)は,エ
ま り,こ
え て い る 系 が 何 ら か の 対 称 性 を もつ と き に 存 在 す
方 体 内 の 粒 子 の 場 合,全
はnに
のよ
の エ ネ ル ギ ー は 縮 退 し て い る と い う.例 え ば,ψ211,ψ121,ψ112は
同 一 の エ ネ ル ギ ー〓
る.立
理
考 え,E以
とき
れ で,Enx,ny,nz
の と き,1つ
の エ
下 に い くつ の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 が 存 在 す る か を
れ に は,式(10・30)でE以
下 の 値 と な るnx,ny,nzの
全 部 で い くつ あ る か を 調 べ れ ば よ い.式(10・30)を
組 みが
書 き な お し て, (10・31)
と す る と,
(10・32)
と な る.nx,ny,nzは,そ 間 隔 が1の と,n0も
れ ぞ れ 最 小 値 が1か
ら始 ま る 正 の 整 数,す
と び と び の 値 を と る け れ ど も エ ネ ル ギ ー 固 有 値Eが 十 分 に 大 き な 数 と な る の で,nx,ny,nzを
が で き る.そ
う す る と,式(10・31)は
な わち
十 分 に 大 きい
連 続 変 数 と見 立 て る こ と
直 交 座 標nx,ny,nzの
原 点 に中心 を
もつ 半 径n0の
球 の 方 程 式 と み な す こ と が で き る.し
エ ネ ル ギ ー 固 有 値 がE以 い(nx,ny,nzは
下 の 固 有 値 の 数 は,半
た が っ て,い
径n0の
球 の 体 積 の1/8に
そ れ ぞ れ 正 の 値 の み 取 り得 る の で1/8の
ゆ え に,固
有 値 の 数N(E)は,次
ま求 め たい 等 し
係 数 が つ く).
の よ う に 書 け る.
(10・33)
式(10・32)を
代 入 して,
(10・34)
上 記 のN(E)は,エ
ネ ル ギ ーE以
に エ ネ ル ギ ー がEとE+ΔEの
下 に 存 在 す る 固 有 値 の 総 数 で あ る が,次
幅ΔEの
部 分 に 着 目 し て,こ
ネ ル ギ ー 幅 当 た り の 固 有 値 の 数 を 調 べ よ う.こ をD(E)と れ る.す
す る と,D(E)はN(E)を
の部 分 の 単 位 エ
れ を 固 有 値 密 度 と し,そ
の記 号
エ ネ ルギ ーで微 分 す る こ と に よ り得 ら
な わ ち,
(10・35)
式(10・35)は,固
体 中 の電 子 を 自由電 子 で近 似 を して 電 子 の エ ネ ル ギ ー を
求 め る(第14章14・4節)際
に用 い る重 要 な 概念 の1つ
は エ ネ ル ギ ーE1/2に 比 例 し,Eが
10・2
で あ り,固 有 値 密 度
大 き く な る に従 っ て 大 き く な る.
三 次 元 調 和 振 動 子
式(10・36)で
示 さ れ る ポ テ ン シ ャ ル 場 に お け る 電 子 を 考 え よ う.
(10・36)
こ こ に,kは 表 さ れ る の で,
定 数 で あ る.電
子 に 作 用 す る 力 は,ポ
テ ンシ ャル の 負 の 句 配 で
(10・37)
こ れ ら の 式 に 式(10・36)を
適 用 す る と,x,y,z方
向 の力 は そ れ ぞ れ 次 の
よ う に 表 さ れ る. (10・38)
し た が っ て,式(10・36)は
第9章9・3節
で 示 した 一 次 元 の 調 和 振 動 子 を
三 次 元 化 し た も の に 相 当 す る こ と が わ か る. Schrodinger方
程 式 は,表8・1に
る 演 算 子 を 用 い て,式(10・39)の
示 した三 次 元 の 場 合 の全 エ ネル ギ ー に対 す よ う に 書 け る.
(10・39)
こ こ で,変 ,y,zの
数 分 離 を す る た め に,電
子 の 波 動 関 数 ψ を 式(10・40)の
各 座 標 の み の 関 数X(x),Y(y),Z(z)の
よ う にx
積 の 形 で 書 こ う. (10・40)
す る と,
〓 同 様 に,〓 と な り,こ
れ を 式(10・39)に
代 入 す る と,
(10・41)
両 辺 をXYZで
割 る と,
(10・42)
順 番 を 変 え て書 き な おす と,
(10・43)
上 式 は,xの
み の 関 数 とyの
と を 示 して い る.こ て い る.こ
み の 関 数 とzの
の こ と は,3つ
み の 関 数 の 和 が 定 数Eと
な る こ
の関 数 それ ぞ れ が 定数 で あ る こ と を 意 味 し
れ らの 定 数 を そ れ ぞ れEx,Ey,Ezと
す る と, (10・44)
で,式(10・43)は,次
の よ う に 変 数x,y,zが
分 離 さ れ た3つ
の 式 と な る.
(10・45)
式(10・45)の3つ
の 式 は,力
で 学 ん だ 式(9・53)と る.し
た が っ て,固
の 定 数kをmω2と
同 じ で あ り,三 有 関 数X,Y,Zは
お く こ と に よ り,第9章
次 元 の 問 題 は3つ 第9章
の 一 次 元 の 問 題 とな
の 方 法 で 求 め る こ と が で き る.
そ の 規 格 化 は,
(10・46)
を 用 い て 行 う こ と が で き る.エ
ネ ル ギ ー 固 有 値 は,式(9・84)と
式(10・44)
から (10・47) と な る.こ
こ に,nx,ny,nzは
量 子 数 で,0,1,2,…
な る整 数 を そ れ ぞ れ
独 立 に 取 り得 る.零
点 エ ネ ル ギ ー は,nx=ny=nz=0よ
こ れ は 一 次 元 の 場 合(式(9・84))の3倍
り,3/2hω
の 大 き さ を もつ こ と に な る.
と な る.
第11章
水 素 原 子
水 素 原 子 は,陽 子 とそ の ま わ りを 運 動 す る1つ の電 子 か らで き て お り, 陽 子 質 量 は電 子 質 量 の約1800倍
も あ る こ と か ら,近 似 的 に 原 子 核 は 静 止
して い て,そ の まわ りを 電子 がCoulomb引 て い る と み な す こ と が で き る.こ をSchrodinger方
を受 けて運 動 し
力〓
のCoulomb引
力 に よ る ポ テ ン シ ャ ル〓
程 式 の ポ テ ン シ ャ ル 項V(r)に
入 れ て,水
素 原 子 の定 常 状 態 につ いて 調 べ て み よ う.
11・1
Bohrの
水 素 原子 モ デ ル
水 素 ガ ス を気 体 放 電 管 に入 れ て放 電 さ せ,そ の光 を分 光 器 で調 べ る と,多 数 の ス ペ ク トル線 が観 測 され る.図10・1に,可
視 部 に お け る ス ペ ク トル 線 の1
例 を 示 す.
図11・1
水 素 原 子 の可 視 領 域 の ス ペ ク トル 線(Balmer系
列)
(下 の 数 値 はA単 位 で 表 した波 長 で あ る.)
こ の 図 か ら は,Hα,Hβ,Hγ,Hδ,… ら れ る が,こ
れ をBalmer系
Balmer(1885年)は,こ
と 呼 ば れ る ス ペ ク トル 線 の 系 列 が 見
列 と い う. の 系 列 に 属 す る ス ペ ク トル 線 の 波 長 λが (11・1)
と表 さ れ る こ と を 発 見 した.RはRydberg定
数 と呼 ば れ,そ
の 値 は, (11・2)
で,n'=3,4,5,…
と お い た 項 が そ れ ぞ れHα,Hβ,Hγ
… … に 対 応 す る.Balmer
系 列 と 同 じよ う な ス ペ ク トル 系 列 は 紫 外 部 で も 発 見 さ れ,そ 系 列 と い う.同
様 に,赤
が 観 測 さ れ て い る.こ さ れ る2つ
外 部 に はPaschen系
れ ら の 系 列 は,す
の 項(term)の
列,Brackett系
れ をLyman
列,Pfund系
べ て 統 一 的 にn,n'の2乗
列
の逆 数 で表
差 か ら
(11・3)
と い う形 に 表 さ れ る.こ 3,…
こ で,nは
正 の 整 数,ま
たn'=n+1,n+2,n+
… で あ る.式(11・3)で,n=1,2,3,4,5と
ぞ れLyman系
列,Balmer系
列,Paschen系
お い た 系 列 が,そ 列,Brackett系
れ
列,Pfund系
列
を 表 す. 水 素 原 子 に 限 らず,一 の 数 列T1,T2,T3,…
般 の 原 子 の 場 合 で も,そ
う ち の 適 当 な2項
… が あ り,原
の 原 子 に 固 有 な ス ペ ク トル 項
子 の 出 す ス ペ ク トル 線 の 波 長 λ は,こ
の
の 差 と して,
(11・4)
とい う形 に表 さ れ る こ とが経 験 的 に知 られ て いて,こ
の 経 験 則 をRitzの
結合
則 と呼 ん で い る. Bohr(1913年)は,水 を提 唱 した.Bohrの
素 原 子 の ス ペ ク トル系 列 を 説 明 す るた め の1つ
の理論
理 論 は,次 の3つ の仮 定 に 立 脚 して い る.す な わ ち,
① 水 素 原 子 の原 子 核 の ま わ りを運 動 して い る電 子 は,特 定 の エ ネル ギ ーを もつ定 常 状 態 に のみ 存 在 す る こ とが で き,こ の定 常 状 態 は 「量 子 条 件 」 に よ って 定 ま る もの とす る.半 径r,速
度υ の 円 運 動 を す る質 量m0の
電子
に対 して は,量 子 条 件 は, 円運 動 の角 運 動 量=
(11・5)
で,nは
正 の整 数 値 を表 し,hはPlanck定
② 電 子 が エ ネ ル ギ ーEmの
数 で あ る.
定 常 状 態 か らエ ネ ル ギ ーEnの
定常 状 態へ 移 る
と きの み 光 の放 出 や吸 収 が あ り,放 出 ま た は吸 収 され た 光 の 振動数νmnは, (11・6) の 関 係 で 定 ま る.こ
の 関 係 をBohrの
振 動 数 条 件 と い う.
③ 定 常 状 態 に あ る電 子 は,Newton力
学 に お け る運 動 の 法 則 に した が っ
て 運 動 す る. Bohrの
量 子 条 件 式(11・5)を
値 を 求 め て み る.質
量m0,電
用 いて 水 素原 子 の電 子 の と り う る エ ネ ル ギ ー 荷−e(e>0)の
rの 円 運 動 を し て い る と す る.Newton力
電 子 が 原 子 核 の まわ りを 半 径
学 に よ れ ば,遠
心 力 とCoulomb引
力
はつ り合 わ な け れ ば な ら な い か ら,電 子 の 速 度 をυ と して,
また で な け れ ば な ら な い.こ
れ ら の 式 よ り,半
〓(量子 条 件) 径rを
(11・7)
求 め る と, (11・8)
と な る.
最 小 の 軌 道 半 径 は,こ の式 でn=1と
おき (11・9)
で 与 え ら れ る.こ
れ をBohr半
径 と呼 ぶ.r0は
基 底 状 態 で の 水素 原 子 の半 径 を
表 す 長 さ で, (11・10)
と計 算 さ れ る. 式(11・8)で
与 え ら れ る半 径 の 軌 道 を 運 動 して い る電 子 の 全 エ ネ ル ギ ー は,
運 動 エ ネ ル ギーm0υ2/2と 式(11・7),(11・8)よ
位 置 エ ネ ル ギ ー−e2/(4π り,
ε0r)の
和 に 等 し く,
(11・11)
が 得 られ る.こ
れ が 水 素 原 子 の エ ネ ル ギ ー 準 位 を 表 す.n=1の
ネ ル ギ ー の 状 態 で,こ
の 状 態 を 基 底 状 態 と 呼 ぶ.n=2,3,…
は,い
ず れ も基 底 状 態 よ り 高 い エ ネ ル ギ ー を も ち,こ
る.整
数 値nを
主 量 子 数 と い い,エ
こ の よ う に して,定
状 態 は最 低 エ に 相 当 す る状 態
れ らは励 起 状 態 と呼 ば れ
ネ ル ギ ー の 量 子 化 で の 量 子 数 で あ る.
常 状 態 の エ ネ ル ギ ー が 求 ま っ た か ら,n'→nと
移 に 伴 っ て 放 出 さ れ る光 の 振 動 数ν は,Bohrの
い う遷
振 動 数 条 件 式(11・6)に
よ り,
(11・12)
と表 さ れ る.c=λν 定 数Rに
の 関 係 を 用 い て,式(11・3)が
対 す る 理 論 式 は,Bohr半
導 か れ る.そ の 結 果,Rydberg
径 の 式(11・9)を
考 慮 に 入 れ る と,
(11・13)
で あ る こ とが わ か る.上
式 に 既 知 の 物 理 定 数 を 代 入 す る と,R=1
〔m-1〕 と な り,式(11・2)で る.以
述 べ たRの
上 述 べ た よ う に,Bohrの
.10×107
実 験 値 と よ く一 致 す る 結 果 が 得 ら れ
理 論 は,水
素 原 子 の ス ペ ク トル を 非 常 に う ま
く説 明 す る こ と が で き た. 原 子 核 に 対 して ク ー ロ ン 引 力 の も と で 運 動 す る電 子 は,一 と る.こ
般 に は楕 円軌 道 を
の よ う な 場 合,Wilson(1915年)とSommerfeld(1916年)は,Bohr
の 量 子 条 件 を 一 般 の 周 期 運 動 を 行 う も の に 適 用 で き る よ う に 拡 張 し,次 な 量 子 条 件 を 導 入 した.す
のよ う
な わ ち, (11・14)
qは 粒 子 の座 標 を,pはqに
共 役 な運 動 量 を表 し,積 分 は運 動 の 一 周 期 につ
い て行 う。 周 期運 動 が 円運 動 の場 合 に は,qと 共 役 な運 動 量pφ
を と れ ば,式(11・14)の
して回 転 角φ を,pと 量 子 条 件 は,Bohrの
してφ に 量子 条件 式
(11・5)と
同 じ で あ る こ と が 容 易 に 示 さ れ る.
11・2
Bohrの
水 素 原 子 のSchrodinger方
理 論 は,水
確 に 計 算 で き た.ま
素 原 子 の エ ネル ギ ー準位 お よ び ス ペ ク トル線 の 波 長 を正 た,こ
子 体 系 に も 拡 張 で き た.し
の 理 論 は,He+,Li++の か し,Bohrの
算 す る こ と が で き な か っ た.ま に 対 し て は,定
程 式
た,水
よ う な 電 子1個
理 論 で は,ス 素 以 外 の2つ
性 的 な 議 論 し か で き な か っ た.特
を もつ 原
ペ ク トル 線 の 強 度 を計
以上 の電 子 を含 む 一 般 原 子 に,多
く の 原 子 に しば し ば 見
出 さ れ て い た ス ペ ク トル の 二 重 線 ま た は 三 重 線 の 説 明 は 不 可 能 で あ っ た.こ
れ
ら の 諸 問 題 は 量 子 力 学 に よ っ て 解 決 さ れ る. 水 素 原 子 に お け る電 子 の 位 置 エ ネ ル ギ ー は, (11・15)
で あ る が,ひ
と ま ず こ れ をV(r)と
お い て,定
常 状 態 のSchrodinger方
程 式 を
書 く と, (11・16)
と な る.m0は
電 子 の 質 量 で あ り,∇2は, (11・17)
で 定 義 さ れ るLaplaceの
演 算 子(ラ
プ ラ シ ア ン,Δ
位 置 エ ネ ル ギ ーVがrの
み の 関 数 で あ る か ら,こ
と も書 く)の 記 号 で あ る. の微分 方程 式 は極座 標 で解
くの が 便 利 で あ る. 図11・2の
よ う に 定 義 さ れ た 極 座 標(r,θ,φ)は,直
交 座 標 と次 の 変 換 式
で 結 び つ け ら れ る.
(11・18)
図11.2
ま た,r2=x2+y2+z2で
極 座 標 と直 交 座 標 の 関 係
あ る か ら,∇2を
次 の よ う に 書 き か え て み る.
(11・19) ま た,r2=x2+y2+z2の
関 係 と,式(11・18)よ
り,
(11・20)
の 関 係 が 得 ら れ る.こ
れ よ り,
(11・21)
と な る.式(11・20)の
第1式
よ り,
(11・22)
と い う 関 係 が 成 り 立つ.式(11・21),(11・22)よ
り,
(11・23)
と な る.し
た が っ て,Schrodinger方
程 式 は,
(11・24)
と 書 け る.ψ(r,θ,ψ)は,波
動 関 数 ψ が 極 座 標r,θ,ψ
の関数 で あ る こ
と を 表 して い る.
11・3
Schrodinger方
式(11・24)を ギ ーVがrの
程 式 の 変 数 分 離
解 くた め に,変
数 分 離 の 方 法 を と る.す
み の 関 数 で あ る こ と に 着 目 して,波
み の 関 数R(r)と(θ,φ)と る と 考 え て み る.す
な わ ち,位
置 エ ネル
動 関 数 ψ(r,θ,φ)をrの
い う角 度 部 分 の み の 関 数Y(θ,φ)と
の積 に な
な わ ち, (11・25)
これ を 式(11・24)に
代 入 す れ ば,
書 き直 す と,
両 辺 にr2/(RY)を
か け て,rの
み の 関 数 と(θ,φ)の
みの関数 に分離 す る
と,
(11・26)
式(11・26)に
お い て,左
関 数 で あ る か ら,両 な け れ ば な ら な い.そ
辺 はrの
み の 関 数 で あ り,右
辺 は お の お の がr,θ,φ
辺 は(θ,φ)の
み の
の い ず れ に も関 係 し な い 定 数 で
の 定 数 を λ と お け ば,λ は 無 次 元 の 数 で
(11・27)
(11・28)
と い う2つ
の 微 分 方 程 式 に 分 離 で き る.さ
の み の 関 数Θ(θ)とφ
の み の 関 数Φ(φ)と
ら に,式(11・28)のY(θ,φ)を の 積 に分 離 して 考 え て み る .
θ
(11・29)
と お い て,こ
れ を 式(11・28)に
両 辺 にsin2θ/(Θ
代 入 す る と,
Φ)を 掛 け て,θ
の み の 関 数 とφ の み の 関 数 に 分 離 す る と,
(11・30)
と な る.左
辺 は θの み の 関 数,右
辺 はφ の み の 関 数 に な っ て い る か ら,両
は そ れ ぞ れ あ る定 数 に 等 し い と お け る.そ
の 定 数 をm2と
辺
お く と,
(11・31)
(11・32)
とい う2つ の 微 分 方 程 式 に分 離 で き る.
11・4 角 度 方 程 式 の 解
式(11・32)は,簡
単 に (11・33)
の よ うに解 か れ る.波 動 関数 は1価 連 続 で な けれ ば な らな い と い う物 理 的 要求 が あ る.空 間 的 に角 度φ と(φ+2π)と
は 同 じ角 度 で,こ
の2つ
の 角 でΦ が
異 な る値 を と る こ とは不 合 理 で あ る.し た が って, (11・34)
が 要 求 さ れ る.す
な わ ち,
こ れ が 成 り立つ た め に は,e±i2πm=1で
な け れ ば な ら な い .し
た が っ て, (11・35)
で な け れ ば な らな い.ま た,積 分 定 数Aは
規格化 条件
か ら求 め ら れ る.す
な わ ち,
ゆ え に,波 動 関数Φ(φ)は, (11・36)
と 求 め られ る. 次 に,Θ(θ)を
求 め よ う.式(11・31)の
両 辺 にΘ/sin2θ
を 掛 け る と,
(11・37)
と い う 微 分 方 程 式 を 得 る.こ
こで,cosθ=ζ
と お け ば,
(11・38)
と な る. 最 初 に,m=0の
場 合 に つ い て 考 え て み よ う.こ
の と き 上 の 式 は,
(11・39)
と な る.こ
求 め よ う.
こ で,
〓の よ うに ベ キ級 数 に展 開 し,上 式 の級 数 解 を
と な って,こ る.そ
れ ら を 用 い る と,式(11・39)の
こ で,ζν≠0で
と な る.こ
あ る の で,そ
左 辺 は ζ の べ キ級 数 の 形 に 書 け
の 係 数 の ほ う を0と
お く こ と が で き,
れ か ら,
(11・40)
を 得 る.こ
の 式 は,Θ(ζ)の
0,2,4,… 5,…
ζ に 関 す る 展 開 係 数aν
と お け ば,a2,a4,a6,… と お け ば,a3,a5,a7,…
a0≠0,a1=0と
がa0に がa1に
す れ ば,偶
を 決 め る 漸 化 式 で,ν=
よ っ て 表 さ れ,ν=1,3,
よ っ て 表 さ れ る.
関数 の解 (11・41)
が 得 られ,a0=0,a1≠0と
す れ ば,奇
関数の解 (11・42)
が 得 ら れ る. も しΘ が ζ に つ い て 無 限 級 数 で あ る と す る と,式(11・40)よ aν+2/aν=1と 42)か
な り,ζ →1(cosθ
ら わ か る よ う に,Θ(ζ)は
め に は,Θ
→1∴
θ→0)の
∞ に な る.し
りν → ∞ で
極 限 で 式(11・41),(11・
た が っ て,Θ
が有 限 で あ るた
が ζ に 関 す る 有 限 項 の 級 数 で な け れ ば な ら な い.lを0,1,2,…
の 整 数 と し て,ν=lの
と こ ろ で 級 数 が き れ る(す
な る)た め に は,式(11・40)の
分 子=0か
な わ ち,ν>lでaν=0と
ら (11・43)
で な け れ ば な ら な い. 次 に,式(11・38)のm≠0の λ=l(l+1)と
場 合 に つ い て 考 え る.式(11・43)で
お い た 微 分 方 程 式 は,Legendreの
も の で あ る.式(11・39)の
各 項 を ζ に 関 してm回
得 られ た
陪微 分方 程式 と呼ば れ る 微 分 し て(1 −
ζ2)m/2を
か
け る と,
を 得 る.た
だ し,こ
の 式 のmは,mが
負 の 場 合 に は│m│を
表 す も の と す る.
こ こ で,
(11・44)
と お く と,上
式 は,
と な り,こ
れ は 式(11・38)のΘ
をPmに
式(11・45)は
式(11・38)の
解 が 式(11・44)で
を 示 して い る.λ=l(l+1)と
お き か え た も の で あ る.す 定 義 さ れ たPm(ζ)で
お け ば,式(11・38)のm≠0の
な わ ち, あ る こと
場 合 の 解 は,
(11・46)
で 表 さ れ る.た
だ し,│m│≦lで
Pl│m│(ζ)はLegendreの
あ る. 陪 関 数 と呼 ば れ て い る.
規 格 化 さ れ た 波 動 関 数Θ(θ)は,
(11・47) と な る.
11・5 動 径 方 程 式 の 解
最 後 に,R(r)に
関 す る 微 分 方 程 式(11・27)が
か ら λ=l(l+1)と
求 ま っ て い る の で,こ
こ ろ に式(11・15)を
残 っ た.λ
は 既 に 式(11・43)
れ を 代 入 し て 整 理 し,V(r)の
と
代 入 す る と,
(11・48)
と な る.こ
の 式 を 解 く た め に,新
た に,
(11・49)
の α,λ'と 変 数 ρ を 導 入 す る と,式(11・48)は,
(11・50) と な る.こ
こ で, (11・51)
の 形 を 仮 定 し て,式(11・50)に
代 入 す る と,
(11・52)
の 微 分 方 程 式 を 得 る.そ
こ で,さ
ら に,
(11・53)
の置 き換 え をす る と,ま ず
(11・54)
と な る.式(11・54)が れ ば な らな い.し
ρ=0で た が っ て,
も 満 足 す る た め に は,第3項
か らs=lで
な け
(11・55)
を満 足 す るベ キ級 数 の 係数aν の漸 化 式 は,角 度 方 程 式 の 場 合 と 同 じよ う に 求 め る こ とが で き, (11・56)
とな る.こ の べ キ 級 数 がν=n'で
切 れ て有 限 とな る ため に は右辺 で (11・57)
で な け れ ば な ら な い.こ
のnを
び の 値 を も ち,式(11・49)よ
用 い る と き,nはn=1,2,3,… り エ ネ ル ギ ーEnの
の とび と
値 は, (11・58)
式(11・57)よ
り, (11・59)
の関 係 が あ る.nを
主 量 子 数 と呼 ぶ.
微 分 方 程 式 はお のお ののlにつ い て 解 いた に もか か わ らず,エ 値 に はlが 含 まれ て い な い.こ の 事実 は,V(r)が1/rに 特 有 な 現 象 で,水
完 全 に 一 致 し て い る.
形 の 微 分 方 程 式 は,Laguerreの
て い る.す な わ ち,2l+1=kと λ'+lと
陪 微 分 方 程 式 の標 準 形 に な っ
お け ば,2(l+1)=k+1と
お く と,λ'−l−1=λ"−kと
Laguerreの
比 例 す るCoulomb力
素 原 子 お よ び 水 素 形 イ オ ン の 特 性 で あ る.式(11・58)は,Bohr
の 理 論 で 求 め た 式(11・11)と 式(11・55)の
ネルギ ー固有
な り,ま た,λ"=
な っ て,式(11・55)は
次 の よ うな
陪 微 分 方 程 式 の 標 準 形 に な る. (11・60)
た だ し,kは
正 の 整 数1,2,…
で あ る.式(11・60)の
正 則 な 解 は,Laguerre関
数Lλ"k(ρ)で
(11・55)と
比 較 す る こ と に よ り,式(11・55)の
式(11・60)を
ρ=0で
発 散 しな い
あ る こ と が 知 ら れ て い る.そ 解 は,
こ で,式
(11・61)
と な る.こ
れ ら の 計 算 式 を 代 入 し て,規
格 化 さ れ たR(r)と
して,
(11・62)
が 求 あ ら れ る.r0は,式(11・9)で
え ら れ たBohr半
径 で あ る.
11・6 軌 道 角 運 動 量
古 典 力 学 で は,粒 子 の 軌 道 角 運 動 量 ベ ク トルLは,位 トル積r×pで
置rと 運 動 量pの
ベク
表 さ れ る.量 子 力 学 で は,運 動 量 ベ ク トルPが,
(11・63)
の よ うに微 分 演 算 子 に置 き換 え られ る か ら,軌 道 角 運 動 量 ベ ク トル のx,y,z 成 分 は,そ れ ぞ れ次 の よ う な演 算 子 に対 応 す る.
(11・64)
こ れ ら の 式 を 式(11・21)を
用 い て 極 座 標 に 変 換 す れ ば,
(11・65)
と 書 け る.し
た が っ て,角
運 動 量 の2乗L2=Lx2+Ly2+Lz2の
演 算 子 は,
(11・66)
と な る.こ
の 式 の{
}内
は 式(11・28)の
う 演 算 子 を 使 っ て 式(11・28)を
左 辺 の{}内
に 等 し い.L2と
書 き 直 せ ば,λ=l(l+1)を
い
用 い て, (11・67)
と書 か れ る.こ の式 は,演 算 子L2の
固 有 値 はl(l+1)h2,固
有 関 数 はYで
あ る よ うな 固 有 値 方 程 式 で あ る.し た が って,角 運 動 量 の絶 対 値│L│の
固有
値 は, (11・68)
と な る.す
な わ ち,角
運 動 量 の 絶 対 値 を 測 定 す れ ば,√l(l+1).hを
得 るは
ず で あ る. φ に 関 す る 波 動 関 数Φ(φ)は,式(11・36)の
よ う に 求 ま って い る が,こ
れ
をφ で 微 分 す る と,
(11・69)
両 辺 に−ih読を か け て式(11・65)の
最 後 の式 と比 較 す れ ば, (11・70)
と な る.こ
れ は,角
有 関 数 がΦ(φ)で
運 動 量 のz成
分 に 対 応 す る 演 算 子Lzの
あ る こ と を 示 す 固 有 値 方 程 式 で あ る.
角 運 動 量 に 関 す る性 質 を ま と め る と,L2の そ のz成
分Lzの
固 有 値 はmhで
あ る.し
√l(l+1)・h で 表 す こ と が で き る.た m≦lで
あ る.こ
Lx,Ly,Lzお
固 有 値 が 椛mhで 固
のlを
た が っ て,角
間 に は,次
あ り,
運 動 量 の 絶 対 値│L│は
だ し,l=0,1,2,…
方 位 量 子 数 と い い,mを
よ びL2の
固 有 値 はl(l+1)h2で
で,−l≦
磁 気 量 子 数 と 呼 ぶ.
の 交 換 関 係 が 成 り立つ.
(11・71)
こ の よ うに,L2とLの 分 の1っ,た
各 成 分 の演 算 子 は交 換 可 能 で あ るか ら,L2とLの
とえ ばLzが 同 時 に確 定値 を と る状 態 が存 在 し,し
たが って これ
ら両 者 を 同時 に正 確 に測 定 す る ことが 可 能 で あ る.し か し,Lx,Ly,Lzは い に交 換 しな い の で,Lの3つ
成
互
の成 分 が同 時 に確 定 値 を もつ状 態 は存 在 しな い.
角 運 動 量 の2つ 以 上 の成 分 が確 定 値 を と る状 態 は角 運 動 量 のす べ て の成 分 が0 で あ る状 態 に 限 られ る. LとLzの
関 係 を 図 示 す る と,図11・3の
の 大 き さ│L│=√l(l+1)・hを
よ うに な る.す
半 径 とす る 球 を書 く.球 の 中心 を通 り空
間 に固 定 したz軸 を と る.角 運 動 量 のz成 分Lzの −l +1)h,…,0…,lhの
固 有 値 はmhで,−lh,(
よ うに,不 連 続 的 な(2l+1)個
とが で き な い.し た が って,角 運 動 量 ベ ク トルLは(2l+1)の
図11・3
あ るが,そ
な わ ち,角 運 動 量
の 値 しか と る こ 円錐 の上 に
角運 動 量の 幾何 学 的表示 (l=2の 場 合)
の上 で の方 向 は不 定 で あ る.こ の よ うに,角 運 動 量 の成 分 の値 が 量
子 化 さ れ る こ とを 方 向量 子 化 とい う.
11・7 電 子 の ス ピ ン
Na原 子 の発 光 ス ペ ク トル の 中 にD線
と呼 ば れ る二 重 線 が見 られ る.こ
のよ
う な 二 重 線 は 水 素 原 子 ス ペ ク トル に も現 れ る.た と え ば,Balmer系 は1.4〔A〕
だ け 隔 た っ た 二 重 線 で あ る.こ
とGoudsmitは,1925年
に,電
列 のHa線
れ を 説 明 す る た め に,Uhlenbeck
子 は 単 な る 点 電 荷 で は な く て,そ
れ 自身 が 固
有 の 角 運 動 量 と 磁 気 モ ー メ ン トを も っ て い る と い う仮 説 を た て た.電 に よ っ て 生 ず る 角 運 動 量 を ス ピ ン(spin)と
呼 び,sで
表 す.ス
に 対 して も 軌 道 角 運 動 量 に 対 す る 交 換 関 係 式(11・71)と 満 た さ れ て い る もの と す る.す
な わ ち,次
子 の 自転
ピ ン角 運 動 量
同 じ形 の 交 換 関 係 が
の 式(11・72),(11・73)が
成 り立
つ.
(11・72)
(11・73)
ス ピ ンs(ベ
ク トル)の 大 き さ は,Lの
大 き さ が√l(l+l)・hで
こ と か ら推 察 し て√s(s+1)・hと sの 値 は1/2で,こ szの 固 有 値 はmshと ちよ う どLzの
れ を ス ピ ン量子
値 を と り,ス
が っ て,szの
数 と呼 ぶ.sの
書 け て,msは1/2とλ"1/2と
え れ ば よ い.msを
を と る と す る.こ
用 い てmhと
固 有 値(1/2)hと(−1/2)hに
た
対 応 して ス ピ ンの 独 立 な 状 態 は
子 の 状 態 を 表 す 波 動 関 数 は,空
の 値 だ け を と る.Szの
を 表 す ス ピ ン 固 有関数
と き1と
値 を と る.し
場 が な け れ ば こ れ らの 状 態 は縮 退 して い る.
と,σは1/2と−1/2の2つ
σ が−1/2の
の こ とは,
した場 合 に 対 応 し て い る と 考
ピ ン状 態 を 表 す 変 数 σ の 関 数 で あ る.ス
が−1/2と
と えば
書 け て,mは−l,−l+1,…
ピ ン の場合はlを1/2に
ス ピ ン の 導 入 に よ り,電
と き1で,σ
成 分 の1つ,た
ス ピ ンの 磁 気量子 数 と呼び,+1/2と−1/2の
2つ 存 在 して い る.磁
か に,ス
な る は ず で あ る.
固 有 値 が 磁 気 量 子 数mを
,0 ,…,lの
与 え られ た
を α,β き0と
で鍬
間 座 標x,y,zの
ほ
ピ ン変 数 σ と し てmsを
とる
固 有 値がh/2,−h/2の
す.す な わ ち,αはス
な る 関 数,β
な る関数 と定義 す る.す
ピ ン 変 数σが1/2の
は ス ピ ン 変 数 σが1/2の な わ ち,
状 態
と き0で,
(11・74)
演 算 の 便 宜 上,ス
ピ ン の 固 有 関 数 α,β を ベ ク トル 的 に,次
の よ う に 書 く.
(11・75)
ス ピ ン角 運 動 量 演 算 子sのz成
分 は α,β を基 底 関 数 とす る行 列 表 現 で は,
次 の よ う に 表 さ れ る.
(11・76)
式(11・75)で
定 義 したSzが
α,β
に 作 用 す る と,
(11・77)
と な り,式(11・76)のSzは
状 態 α,β で 固有値h/2,−h/2を
. こ の よ う に ス ピ ン の 導 入 に よ り,水
もつ こ とが わ かる
素 原 子 の 波 動 関 数 ψ は,
(11・78)
と な る.
11・8 水 素 原 子 に つ い て の 要 約
水 素 原 子 の全 波 動 関 数 ψ(r,θ,φ,σ)は, (11・79)
と求 め ら れ た.4つ
の 量 子 数n,l,m,msは,次
の よ う に 定 義 さ れ た.
(11・80)
エ ネ ル ギ ー 準 位 は,nの
み に依 存 し,
(11・81)
で あ る.式(11・80)よ
り,主
〓 個 の 異 な る状 態 が あ り,こ で あ る.こ
量 子数nの
状 態 に は,
れ ら は す べ て 等 し い エ ネ ル ギ ーEnを
の こ と を エ ネ ル ギ ー 準 位 が2n2重
こ こ で,波
に 縮 退 し て い る と い う.
動 関 数 に つ い て 少 し調 べ て み よ う.角
の 固 有 関 数Yは,式(11・36),(11・47)よ
もって い るの
運 動 量 の2乗
の 演 算 子L2
り,
(11・82)
と な る.こ す.
れ は 球 面 調 和 関 数 と 呼 ば れ る も の で あ る.Ylmを
二,三
具 体 的 に示
(11・83)
次 に,Rnl(r)がrの
関 数 と して ど の よ う に ふ る ま う か,n,lの
小 さい場合
に つ い て 具 体 的 に 示 す.
(11・84)
した が っ て,水
素 原 子 の 波 動 関 数 ψ(r,θ,φ)をn=1,2の
て 求 あ る と,表11・1に
示 す よ う に な る.
表11・1
水 素 原 子 の 波 動 関数
場 合 につ い
方 位 量 子 数lが0で θ,φ
あ る 状 態 の 波 動 関数ψn00は,Y00(θ,φ)=1/√4πが,
に 関 係 し な い 関 数 で あ る か ら,角
あ る.こ
のl=0の
ぞ れp,d,f,…
状 態 をs状
度 依 存 性 の な い空 間 的 に ま る い関 数 で
態 と 呼 ぶ.ま
状 態 と 呼 ぶ.s状
た,l=1,2,3…
態 と ちが って これ らの状 態 の 波動 関数 は空 間
的 に 角 度 依 存 性 を も っ た 関 数 で あ る.2p状 mは1,0,−1の
態 を 例 に と れ ば,l=1で
値 を と る こ と が で き て,三
実 関 数 の 形 に な っ て い る が,ψ211と 数 な の で,ψ211と
あ る か ら,
重 に 縮 退 し て い る.ψ210(r)は
ψ21-1は そ れ ぞ れ θiφとe-iφ を 含 む 複 素 関
ψ21-1を 独 立 な 波 動 関 数 と し て 扱 う 代 わ り に,こ
形 結 合 で 作 っ た(ψ211+ψ21−1)/√2と(ψ211− て 選 ぶ こ と が で き る.こ sinθsinφ
の状態 を それ
ψ21−1)/√2iを
れ ら は 実 関 数 に な っ て い て,そ
に比 例 し て い る.し
た が っ て,p状
態 の3つ
れ ら の線
独立 な関数 と し
れ ぞ れsinθcosφ
と
の 波 動 関数 を次 の 形 に
書 く こ と が で き る.
(11・85) こ こ に,
ψpx,ψpy,ψpzは,そ
れ ぞ れx,y,z方
向 に の び た 波 動 関 数 で,こ
れ らは
互 い に 直 交 して い る. 動 径 方 向 の 波 動 関 数Rnlに で あ る.s状 ψ px,ψpyお を 図11・5に
態 お よ びp状
つ い てR10∼R32を
グ ラ フ に し た も の が 図11・4
態 に つ い て の 実 数 形 の 確 率 分 布 関 数 は 球 対 称 で あ り,
よ び ψpzは 方 向 を の ぞ け ば 同 等 で あ る.そ 示 し て あ る.
の 角 度 に よ る か わ り方
図11・4
水素 原 子 の 動 径 方 向 の 波 動 関数Rnl(r)
図11・5 s状 態,p状
態 の 波動 関 数 の 角 度部 分 の 絶 対 値 の方 向依 存 性
練 習 問 題 〔11〕
1. 水 素 原 子 の 基 底 状 態 につ い て,電 子 が原 子 核 か ら距 離rとr+drと 確 率 をP(r)drと
2. 〓
お くと き,P(r)の
の間 にあ る
式 を求 め,そ れ を 図示 せ よ.
が微 分 方 程 式(11・28)の
を 確 か め,規 格 化 条 件 も満 足 して い る こ とを証 明 せ よ.
3. 角 運 動 量 の 成 分 の 間 の 交 換 関 係式(11・71)を
導 び け.
解 で あるこ と
第12章
Pauliの
Pauliの
原 理
原 理 は,原 子 の構 造 に つ い てPauliが
提 唱 した も の で,こ
よ って元 素 の 周 期 律 表 を 説 明 す る こ と が で き た.電 Pauliの
12・1
原 理 に従 が う粒 子 をFermi粒
Pauliの
れに
子 だ け で な く,こ の
子 と呼 ぶ.
排 他 律
2個 の 電 子 か らな る 原 子(He原
子)に
対 す るHamiltonianは,
(12・1)
r1,r2は,核 r2│)を
を 原 点 に と っ た と き の 電 子 の 座 標 で,r12は
表 す.最
後 の 項 は2個
電 子 間 距 離(│r1−
の電 子 の相 互 的 な ポ テ ン シ ャル エネ ル ギ ー で あ
る. こ のHamiltonianは,2個
の 電 子 の 座 標r1(x1,y1,z1)とr2(x2,y2,z2)
の 入 れ か え に 対 して 不 変 で あ る.こ の で あ る た め で,電 Hamiltonianの
子 の 空 間 座 標rの
の 電 子 が 全 く区 別 で き な い も
み で な く,ス
ピ ン座 標 σ を 含 め て も
不 変 性 は成 り立 っ.
rと σ を 一 緒 に し,一 ψ(q1,q2)は,q1とq2を と ψ(q2,q1)は
の こ と は2個
般 的 座 標 と し てqを
用 い る と,2電
交 換 す る と ψ(q2,q1)と
子原 子 の波動 関数
表 さ れ る が,ψ(q1,q2)
同 一 の 状 態 を 表 す と い う こ と が 量 子 力 学 の 基 本 原 理 で あ る.
古 典 力 学 で は,全 観 測 しつ づ け て,いつ
く等 しい2つ
の 粒 子 が あ っ て も,そ
ま で も そ の2つ
れ ら の 位 置,運
動量 を
の 区 別 をつ け る こ と が で き る と い う立 場
を と るの で,2つ
の粒 子 を 交換 した状 態 は元 の 状 態 と は異 な る もの と考 え る.
しか し,量 子 力学 で は,不 確 定 性 原 理 の ため に,2つ
の粒 子 の 区 別 を しつづ け
るよ うな観 測 は不 可能 で,粒 子 を交 換 した状 態 と元 の 状 態 とを 同 一 の もの とせ ざ るを え な い. n個 の粒 子 か らな る量 子 力 学 的 系 を波 動 関 数 ψ(1,2,…,n)で 簡単 の た め に2つ
の電 子 の よ う に同一 粒 子 が2個 あ り,1つ
他 の 粒子 が β状 態 に あ る とす る.こ れ を ψ(1,2)と 第2の 粒 子 が α状 態 に,第1の
表 す.い
ま,
の粒 子 が α状 態,
す る.粒 子 の 交 換 を して
粒子 が β状 態 に あ る と して,こ れ を ψ(2,1)と
書 くと き,こ の 両状 態 は全 く区別 で きな いか ら,確 率 振 幅 は等 し く (12・2) が 成 り 立つ.し
た が っ て, (12・3a)
あ る い は, (12・3b)
で あ る.す な わ ち,同 一 粒 子 の交 換 に対 して は波 動 関 数 の符 号 を変 え な い対 称 の場 合 と,符 号 を変 え る反 対 称 の場 合 が あ る. 変 数 分 離 の考 え方 を使 って,波 動 関 数 ψ(1,2)が さ れ る とす る.い ま,第1の
粒 子 が α状 態,第2の
ψ(1)と
ψ(2)の
積で表
粒 子 が β状 態 にあ る と して, (12・4)
と な る.粒
子 を 交 換 す る と, (12・5)
一 般 に
,2粒
子 系 は ψIと ψⅡの 一 次 結 合 も ま た 解 と な る か ら,こ
2粒 子 系 の波 動 関 数 と して,つ
の よ うな
ぎの4つ の形 が考 え られ る.
(対 称)
(12・6)
(反対 称) 〓は 規 格 化 の た め の 係 数 で あ る.こ
の う ち,初
め の3つ
粒 子2を 交 換 して も符 号 を変 え な い対 称 な波 動 関 数 で,残 交 換 す る と符 号 が変 わ る反 対 称 な波 動 関数 で あ る.も
(12・7)
は,粒
子1と
りの1つ は,粒 子 を
し,α と βが 同一 状 態 で
あ る とす る と,反 対 称 の 波動 関数 は0と な り,こ の よ うな状 態 は存 在 しな い こ と に な る.反 対 称 の 波 動 関数 が0で な く,存 在 す るた め に は α と β とは異 な る 状 態 で あ れ ば よ い. Pauliの 提 唱 した要 請 に よれ ば,「Fermi粒
子 系 の 波 動 関 数 は,粒
子 の座標
の 入 れ か え に対 して 反対 称 で な けれ ば な らな い」.こ の よ うな 要 請 をPau1iの 原 理 と呼 ん で い る.こ の 原理 に よ り,同 じ1つ の状 態 を2つ の粒 子 が 占め る こ と は許 され な い こ と にな る.別 の表 現 を す れ ば,「 量 子 数(n,l,m,ms)で 指 定 され る1つ の状 態 に は,た だ1つ の粒 子 しか入 れ な い」 とい うことにな る. これ をPauliの
排 他 律 と い う.
Pauliの 原 理 は,位 置 座 標 だ けで な く ス ピ ン座 標 も含 め て考 え た全 波 動 関 数 が 反 対 称 で あ る こ とを 要 求 して い る.ス ピ ン部 分 の 波 動 関 数 を ψs,空 間 部 分 の 波 動 関 数 をψnlmと す る と,全 波 動 関 数 ψは, (12・8) と 表 さ れ る. た と え ば,2つ 子 が 上 向 き,他
の 電 子 か ら な る原 子 の1重
項(S=0)状
の 電 子 が 下 向 き で あ る か ら,ψsは
ψnlmは 対 称 で な け れ ば な らな い.逆
に3重
の ス ピ ン は 同 じ方 向 を 向 い て い る か ら,粒 し た が っ て,ψnlmは
態 で は,1つ
反 対 称 で あ る.し
項(S=1)状
の電
た が って,
態 で は両方 の電 子
子 交 換 に 対 し て ψsは 対 称 で あ る.
反 対 称 と な る.
12・2 原 子 の 電 子 配 置 と元 素 の 周 期律
2個 以 上 の電 子 を もつ 原子 で は,各 電 子 は原 子 核 か らの 引 力 の ほか に,他 の
電 子 か らの 斥 力 を 受 け る の で 事 情 は 複 雑 で あ る.量
子 力 学 で も2個
を もつ 原 子 の 問 題 を 完 全 に 解 く こ と は 極 め て 困 難 で あ る.こ 状 態 は 中 心 力 場 の 近 似 で 求 め ら れ る.こ
の 場 合,各
の 電 子 の 受 け る 力 の う ち,残
い て は,そ
り の(N−1)個
ま り,原
子 内
の 電 子 か ら受 け る 力 に つ
れ ら の 電 子 の 運 動 に つ い て 平 均 した も の で 置 き か え て よ い と考 え る.
そ う す れ ば,(N−1)個
の 電 子 か ら及 ぼ さ れ る 力 も 中 心 力 と考 え ら れ,核
ら の 引 力 も 加 え て 電 子 は結 局1つ 原 子 番 号Zの
中 性 原 子 で は,注
目 す る電 子 が 核 か ら遠 い 距 離 に あ れ ば,こ
程 式 は 水 素 原 子 の 場 合 と 同 じ も の と な る.原
離 に あ る 電 子 に つ い て 考 え る と き に は,平 荷 が 残 っ て い る と 近 似 し,こ 〓と お く.σ
の電
電荷が残 るこ とにな るか
の 電 子 の 受 け る ク ー ロ ン ・ポ テ ン シ ャ ル はV(r)=−e2/(4π
り,Schrodinger方
か
の 中 心 力 の 場 の 中 で 運 動 す る こ と に な る.
子 を 除 い て 原 子 核 に は,+Ze−(Z−1)e=+eの ら,こ
電子 の
の 近 似 で は 他 の 電 子 か ら受 け る ク ー ロ
ン ・ポ テ ン シ ャ ル を 球 対 称 の ポ テ ン シ ャ ル に 置 き か え て 扱 う.つ の1つ
以 上 の電 子
ε0r)と
な
子 核 に近 い 距
均 と し て 原 子 核 に+eの
何倍 か の電
の と き の ク ー ロ ン ・ポ テ ン シ ャ ル を
は 遮 へ い 定 数と 呼ば
れ,こ は 実 験 で 得 られ る エ ネ
ル ギ ー 準 位 の 間 隔 か ら 定 め る こ と が で き る. 一 般 の ポ テ ン シ ャ ルV(r)中 に,そ
の 電 子 に つ い て も,水
の 電 子 の エ ネ ル ギ ー 固 有 状 態 は(n,l,m,ms)で
の ク ー ロ ン ・ポ テ ン シ ャ ル 場 を 仮 定 す る と,最 こ の と きl=0で
あ る か ら1s状
二 重 に 縮 退 し て お り,Pauliの り う る.次 2s状
素 原 子 の場 合 と同 じ よ う
に,n=2の
う る.同
じnを
ns,np,nd,…
状 態 が あ り,六
も つ 状 態 で は,lの
が 大 き い の で,強 が っ て,2p状
の 電 子 が 入 り,2p状
の 状 態 はms=±1/2に
状 態 に は,そ
対 応 して
態 に は2個
態 とl=1の2p状 態 はm=−1,0,+1の
重に 縮 退 し て お り,6個
の電 子 が 入 態 が あ り, 各々
の電 子 が入 り
小 さい状 態 ほ ど電 子 が核 の近 くに く る確 率
い 核 の 引 力 を 受 け る こ と に な り,エ
態 の ほ うが2s状
定
低 エ ネ ル ギ ー 状 態 はn=1で,
原 理 に した が っ て,1s状
状 態 に はl=0の2s状
態 は 二 重 縮 退 で2個
に 対 してms=±1/2の
態 で あ る.こ
指 定 さ れ る.一
ネ ル ギ ー が 下 が る.し
た
態 よ り エ ネ ル ギ ー が 高 い. れ ぞ れ2個,6個,10個,…
の独 立 な状 態
が あ り,エ
ネ ル ギ ー の 低 い状 態 か ら,Pauliの
つめ て ゆ く と,多 のCuの
原 理 に したが っ て順 番 に電 子 を
電 子 原 子 の 基 底 状 態 の 電 子 配 置 が 求 め ら れ る.原
場 合,29個
の 電 子 を も っ て い る が,基
れ ぞ れ2個,2p,3pに
そ れ ぞ れ6個,3dに10個
に 入 れ る こ と に な る.こ
子 番 号29
底 状 態 で は1s,2s,3sに つ め て,最
そ
後 の1個
を4s
れを (12・9)
と 書 く.n,lに (nd)10の は,合
よ っ て 指 定 さ れ た 状 態 を 殻(shell)と
よ う に,1つ
の(nl)状
態 に 最 大 数2(2l+1)個
成 した 軌 道 角 運 動 量 も ス ピ ン角 運 動 量 も0で
ま わ り に 球 対 称 で あ る.こ
呼 び,(ns)2,(np)6, の 電 子 を 入 れ た系
あ り,そ
の よ う な 系 を 閉 殻(closed
の電 荷 分 布 も核 の
shel1)と
い う.
最 も エ ネ ル ギ ー の 高 い 殻 に 含 ま れ て い て,束
縛 さ れ 方 の 最 も少 な い 電 子 を 価
電 子 と い う.元
殻 は 直 接 の 影 響 を 及 ぼ さ ず,そ
素 の 光 学 的,化
学 的 性 質 は,閉
の 外 に あ る 価 電 子 だ け に よ っ て き ま る.こ つH,Li,Na,K,Cs,Frな
ど は,閉
の よ う に 考 え れ ば,(ns)1電
殻 の 外 に1個
の 電 子 を も ち,ア
原 子 と し て 類 似 の 化 学 的 性 質 を もつ こ と が わ か る.ま Xe,Rnな
ど は,閉
殻 を も ち,安
を もつF,Cl,Br,I,Atな る た め に,ハ
ル カ リ
た,He,Ne,Ar,Kr,
定 な 不 活 性 な 稀 ガ ス 原 子 で あ る.(np)5電
ど は,も
う1つ
子
の電 子 を と って 安 定 にな ろ う とす
ロ ゲ ン元 素 と し て 化 学 的 に 活 性 を 示 す.
主 量 子 数nの
値 の 小 さ い 状 態 か ら順 番 に 電 子 がつ ま っ て ゆ く と い う こ と は,
nの 小 さ い 状 態 に 対 し て は よ く成 り立 って い る が,nの 必 ず し も成 り立 た な い 場 合 が あ る.た 非 常 に 接 近 し て い る の で,電 が 空 い た ま ま で,さ
と え ば,3d殻
子 が3d殻
き に4s殻
大 き な 状 態 に 対 して は と4s殻
の一部
に入 った ほ うが エ ネ ル ギ ーが 低 くな る こ と が あ
の よ う な 不 完 全 殻 を も っ て い る元 素 の グ ル ー プ に は,鉄
族,希
土 類 族,白
金 族,ア
のエ ネル ギ ーは
を 完 全 に 満 た す よ り も,3d殻
る.こ
(6d,5f)殻
子 を も
ク チ ニ ウ ム 族 が あ り,こ
が 不 完 全 殻 と な っ て い る.
族,パ
れ ら は3d,4d,4f,5d,
ラ ジウ ム
練 習
問 題
〔12〕
1. 次 の イ オ ン の 基 底 状 態 の 電 子 配 置 を 記 せ.
(i)
2. Scか
O2−,
らCuに
(ⅱ)
Ca2+,
至 る 間 で,3d殻
(i)
Fe3+,
か し,正
の こ と を 考 慮 し て,次 (ⅱ)
Br−
に 電 子 が 入 っ て い くが,中
と が ほ ぼ 同 じ エ ネ ル ギ ー を も っ.し ル ギ ー が 低 い.こ
(ⅲ)
Zn2+
イ オ ン で は3dの
性 の 原 子 で は4sと3d ほ う が4sよ
りエネ
の イ オ ンの 基 底 状 態 の 電 子 配 置 を 記 せ.
第13章
原 子 や 電 子 集 団 の取 扱 い
原 子,分 子 お よび 固 体 の 性 質 を も っ とよ く知 る た め に は,多
く の基 礎 的
な 粒 子 の 集 合 の しか た― 統 計― につ いて,量 子力 学 の結 果 か ら再 検 討 しな けれ ば な らな い.粒 子 の 量 子 状 態 を 波 動 関 数 に よ って記 述 す る と き,2つ 粒 子 の 入 れ 換 え に対 して,対 称 関 数 か 反 対 称 関数 か の2通
の
りの場 合 が あ る.
した が って,波 動 関 数 を基 礎 に して,可 能 な状 態 を数 え ると き,2つ
の違 っ
た 統計 が 存在 す る こ と にな る.
13・1 電 子 の 集 団 と エ ル ゴ ー ド性
1個 の原 子 の 全 体 と して の エ ネ ルギ ー状 態 は,原 子 に属 す る各電 子 を そ れ ぞ れ き ま った エ ネル ギ ー準 位 に配 置 す る こ と に よ って 定 ま る.1つ
の 準 位 は,電
子 の空 間 的 運 動 状 態 を表 す 波 動 関 数 ψ(x,y,z)とspinの
向 きが上 か下 か の指
定 に よ って与 え られ る.原 子 に属 す る電 子 の総 数 をNと
す れ ば,こ
のN個
の準 位 に詰 め た状 態 が原 子 の基 底 状 態 で,そ
れを最 低
の 他 の 配 置 は励 起 状 態 に
相 当す る. 金 属 内 の 電 子 の 場 合 も同 様 に取 り扱 うこ とが で き る.金 属 の 中 で は 原 子 が 規 則 正 し く列 ん で 結 晶 格 子 を 作 って お り,格 子 点 に あ る原 子 核 はそ れ に 強 く束 縛 され て い る電 子 に囲 まれ て 陽 イ オ ンを 作 って い るが,原 子 の最 外殻 の 電 子 は束 縛 を離 れ て 金 属 中 を 動 き まわ る 自由 電 子 と な って い る.こ こで は,こ の よ うな 自 由電 子 だ けを 考 え る こ と にす る. これ らの 自由電 子 に対 す る エ ネ ルギ ー準 位 は,金 属 内 で の 陽 イ オ ンの 規 則 的 な配 置 に よ って 生 じる周 期 的 な位 置 エ ネ ル ギ ーVを 式 を解 いて き ま るの で あ るが,Vを
用 い たSchrodinger方
程
金属 中 で 空 間 的 に な ら した定 数 と考 え るな
らば,エ
ネル ギ ー準 位 は,ポ テ ン シ ャル一 定 の箱 の 中 に閉 じこめ られ た 自由粒
子 の定 常 状 態 と して求 め る こ とが で き る. 熱平 衡 状 態 にお いて,こ れ らの電 子 が 種 々 の エ ネル ギ ー 準 位 に どの よ うに分 布 す るか考 えて み よ う.実 際 に は1cm3の
金 属 片 の 中 に1022個 程 度 の 多 数 の 自
由電 子 が あ り,そ の集 団 を取 り扱 うこ と に な るが,い
ま 仮 り に電 子 数N=12
と して い ろ い ろ の準 位 へ の電 子 の 配 置 を示 した の が 図13・1で,図(a)は 状 態 に,図(b)は1つ
基底
の 励 起 状 態 に相 当 す る.
(b)
(a) 図13・1
電 子 系 の エ ネ ル ギ ー準 位 へ の 配 置 例
あ る時 刻 に電 子 の配 置 が,た と え ば図(b)で あ った と して も,電 子 系 は いつ ま で も この 配 置 に止 ま って い るわ けで は な い.電 子 相 互 の 間 に はCoulombの 斥 力 が働 い て お り,た ま た ま2個 の電 子 が十 分 接 近 す る と衝 突 が起 こ り,そ れ らの電 子 は異 な る準位 に移 動 し,配 置 は別 の配 置 に移 る.こ の場 合,電 子 系 全 体 と して の エ ネ ル ギ ー は一 定 で あ る.電 子 系 外 との 間 に相 互作 用 が あ る場 合 で も,熱 平 衡 状 態 に お いて は,電 子 系 を電 子 ガ ス の よ う に考 え,そ
の 温 度Tに
相 当 す る一 定 の エ ネル ギ ーを保つ と考 え て よ い. 熱 平 衡 状 態 に お いて も電 子系 の配 置(準 位 へ の 分 布)は 時 間 につ れ て 変 化 す る.次 に,そ の変 化 の あ りさ まを 考 え て み よ う.い
ま,全
エ ネ ル ギ ー がEで
あ るよ うな電 子 系 の 各 電 子 の準 位 へ の配 置 が い ろい ろあ る もの と して,そ れ ら をA,B,C,…
で 区 別 す る.す な わ ち,A,B,C,…
は無 数 に存 在 す る エ ネ
ル ギ ー 準 位 の 中 か らN個
の 準 位 を 選 ん で,そ
な る よ う な も の で あ る.電
子 間 の 衝 突 や 外 界 と の 相 互 作 用 で 電 子 系 は1つ
置 か ら他 の 配 置 へ と 移 っ て い く が,系 に 配 置Bに
移 る 確 率 をtPABと
遷 移 確 率 と 呼 ば れ る.逆 が,一
ま た,非
置Bか
置A,B…
あ る と き,短
の配
い 時 間tの
間
時 間 の 逆 数 の 次 元 を もつ 量 で,
ら配 置Aに
関 係 が 成 り立つ.こ
常 に 長 い 時 間tの 間,系
し た と し,配
が 配 置Aに
し よ う.PABは
に,配
般 に,PAB=PBAの
の 準 位 の エ ネ ル ギ ー の 和 がEに
移 る 確 率 はtPBAと
表 され る
れ を 微 視 的 可 逆 性 と い う.
が い ろ い ろ の 配 置 の 上 を 渉 り歩 く の を 観 測
を と る 時 間 を そ れ ぞ れtA,tB,…
と す る.す
な わ ち, (13・1)
で,tが
十 分 長 く,A,B,C,…
対 し て も0で
の 各 配 置 に 対 し,ど
の2つ
の配置間の遷移 に
な い 遷 移 確 率 を もつ よ う に 結 ば れ て い る と す る と, (13・2)
で あ る こ とが 要 求 され る.す な わ ち,ど の 配 置 の 出 現 確 率 も同 じ と考 え る の で あ る.式(13・2)で
示 され る性質 を エ ル ゴー ド性 と い う.こ
の よ うに エ ル ゴ ー
ド性 が 成 り立つ こ とか ら,熱 平 衡 状 態 にお け る系 につ いて の あ る物 理量 の 値 を 求 め るの に は,各 配 置 につ いて の 値 の 単 純 な算 術 平 均 を とれ ば よ い.
13・2 正 準 分 布
図13・2の
よ う に,外
界 か ら孤 立 し て い て,体
エ ネ ル ギ ー(内 部 エ ネ ル ギ ー)Eが 的 状 態(た
と え ば,圧
的 状 態 は 多 数 あ る.こ て も よ い し,一 え る と,微
力 がpで,温
積V,中
に あ る 粒 子 数N,全
一 定 の 系 を 考 え る.こ 度 がTと
の 系 で,一
い う よ う な 状 態)が
れ が 気 体 分 子 で あ れ ば,1個
つ の巨視
出現 す る微視
の 分 子 は体 積Vの
ど こに あ っ
つ の エ ネ ル ギ ー状 態 に ど の分 子 が入 って もよ い とい うよ うに考
視 的 状 態 の 数 は お そ ら く天 文 学 的 な 数 に な る だ ろ う.こ
的 状 態 の 出 現 確 率 は エ ル ゴ ー ド性 の た め,す
べ て 等 しい と考 え る と き,こ
の 微 視 的 状 態 の 集 合 を 小 正 準 集 合(micro-canonical を 小 正 準 分 布(micro‐canonical
れ らの微 視
distribution)と
ensemble)と い う.微
い い,分
れ ら 布
視 的 状 態 の総 数 を
図13・2
W(N,V,E)と
す る と,一
つ の 微 視 的 状 態rの
出 現 確 率 ρ(r)は
(13.3) で あ る か ら,こ
の 確 率 は 次 の よ う に規 格 化 さ れ る.
(13.4) ま た,こ
の 系 に 対 し て,熱
力 学 的 に 定 義 され る ェ ン ト ロ ピーSは,Wを
使 って
(13.5) の よ う に計 算 さ れ る.こ 数 で あ る.さ
ら に,こ
の 式 をBoltzmannの
関 係 式 と い い,κ はBoltzmann定
の 系 は 断 熱 系 で あ る か ら,熱
力 学 の 第 二 法 則 が 成 立 す る.
(13.6) 等 号 は こ の 系 が 温 度Tの
熱 平 衡 に あ る 場 合 で あ る.さ
れ た 粒 子 の 集 合 系 で,次
の よ う に 微 視 的 状 態 数 を 計 算 し て み よ う.体
温 度T,粒
子 数N,ま
た,内
こ の 系 を 形 成 す るN個 で あ ろ う か,エ
部 エ ネ ル ギ ー はE,エ
の 粒 子 は,ど
ネ ル ギ ー を 細 か くdε ご と に 分 け,
れ らの エ ネ ル ギ ー に あ る状 態 数 を それ ぞ れ g1,g2,g3,g4,…
と し,こ
れ らの 状 態 に あ る 粒 子 数 を そ れ ぞ れ n1,n2,n3,n4,…
の断熱壁 に囲 ま
ン トロ ピ ー はSで
積V, あ る,
の よ うな エ ネ ル ギ ー分 布 を して い るの
ε1,ε2,ε3,ε4,…
と し,こ
て,こ
と し,こ
の (13・7)
と い う集 合 で 微 視 的 状 態 を 表 して み る.giの るni個
の 配 分 の 仕 方 は い ろ い ろ あ り,粒
る と,giに だ し,孤
付 属 す るniの
数 は εiの 関 数 で あ り,そ
こに入
子 の 種 類 に よ っ て も 違 っ て く る.す
数 の 違 い に よ っ て,集
合{ni}の
数 は 違 って く る.た
立 系 で あ るか ら (13・8)
で,
(13・9)
は 粒 子 が エ ネ ル ギ ー εiにい る確 率 で あ る, こ こ で は,一
つ の 状 態 に 何 個 で も入 れ る 古 典 的 粒 子 につ い て,{ni}の
的 状 態 数 を 計 算 して み る,一 つ の 微 視 的 状 態giに の 粒 子 の 入 り方 はgi通 の 入 り方 もgi通 な る が,こ て,粒
り,2個
り で,状 態giに
の 粒 子 が い て,1個
目 の 粒 子 の 入 り方 は や は りgi通
目
り,…,ni個
目
場 個 の 粒 子 を 配 置 す る 総 数 はgi・gi・…=giniに
の 一 つ の 配 置 の 中 でni個
の 粒 子 は 同 じ εiの エ ネ ル ギ ー を も っ て い
子 ど う し の 間 で 区 別 が つ か な い の で,こ
同 じ微 視 的 状 態 を と る.し
はni個
微視
た が っ て,一
の 中 でni!の
つ の 状 態 数giの
入 れ 替 え を し て も,
中での微視的配置数 は
gini/ni!と な る,す る と,す べ て のgiを 考 え た 場 合 は,全 微 視 的 状 態 数 は 積 の 形 で (13・10)
Boltzmannは
こ の 微 視 的 状 態 数 に 対 して エ ン トロ ピーSを
対 応 さ せ た, (13・5)
こ の 孤 立 断 熱 系 で,熱
平 衡 の 状 態 を 考 え て み る.こ
て お り,熱
最 大 で あ る,エ
あ り,熱
平 衡 で はSは
な っ
ン トロ ピ ー の 概 念 は 乱 雑 さの 尺 度 で
平 衡 は 乱 雑 の 極 致 と考 え て よ い か ら,こ
に な っ て い る の で あ る.し
の と き,dS=0と
た が っ て,dS=0の
の と き系 の微 視 的状 態 は最 大 代 わ り に,
を 計 算 す る と,
(13・11)
こ の 計 算 中Sterlingの こ の 場 合,孤
式logn!=nlogn−nを
立 系 で あ る か ら,全 粒 子 数N,内
使 って い る, 部 エ ネ ル ギ ーEは
一 定 で あ っ て,
(13・12) の よ う なLagrangeの
末 定 系 数 α,β を 導 入 し て み よ う ,式(13・11),(13・12)
か ら
(13・13) α,β を 求 め て み る,式(13・11)か
ら エ ン ト ロ ピ ー を だ す と, (13・14)
熱 力 学 恒 等 式dE=TdS−pdVでdV=0の
と き はdS/dE=1/Tで
と な っ て,
(13・15)
∂F
Helmholzの 粒 子 数Nが
エ ネ ル ギ ー は,F=E−TSで,孤 一 定 の と き,外
/∂Nを
立 系 で は,体
積V,温
部 か ら の 仕 事 は な い の で,dF=0で
度T,
あ る.
つ く る と,
(13・16)
断 熱 孤 立 系 で は,dF=0で
あ る か ら,α=0で
合 の エ ネ ル ギ ー 分 布 関 数f(ε)は
式(13・13)か
あ る.し
た が っ て,こ
の場
ら
(13・17)
こ の 式 で は,傍 の で,こ
字 の"i"は
消 え て い る が,エ
の 形 は よ り 一 般 的 で あ る,こ
ネル ギ ー の み の 関 数 の 形 で あ る
の分布 関数 を使 う と
(13・18)
ρ(εi)は エ ネ ル ギ ー εiを も つ 微 視 的 状 態 の 出 現 確 率 で あ り, (13・19) と な り,平
均 エ ネル ギ ー は
(13・20) の よ う に 表 さ れ る.こ と い う こ と が あ る.
の 式 の 分 母 を(エ
ネ ル ギ ー)分
配 関 数(partition
function)
図13・3
次 に,こ の粒 子 系 が 透 熱 壁 を 通 して,外 系 と エ ネル ギ ー の や り と りを す る場 合 を 考 え よ う.外 系 は大 きな エ ネル ギ ーを も って い るが,そ の周 囲 は 断熱 壁 で で きて お り,こ の 断 熱壁 の 内部 で は (13・21)
の 変 化 の み が 許 され る. い ま,外 系 の 熱 容 量 は大 き く,温 度 は系 の 温 度Tと
同 じ く一 定 で,そ
の変
化 は等 温可 逆 で あ る とす る と, (13・22)
式(13・21)に
式(13・22)を
代 入 す る と,
(13・23)
の よ う に,我 以 後,系
々 の 目 的 と す る系 の み の 変 数 で,そ
の 変 化 が 表 さ れ る こ と に な る.
の み の 変 化 で 論 じ る こ と が で き る の で,傍
字 の"系"を
省 略 す る と, (13・24)
この式 に熱 力学 の第 一 法 則 (13・25)
を 代 入 す る.E系
の 内 部 エ ネ ル ギ ー,μ は 系 に 入 る 粒 子1個
の エ ネ ル ギ ー を 表 す, (13・26)
こ こで も,簡
単 に す る た め,等
積 でdV=0と
し,温
度Tは
一 定 とす る と, (13・27)
こ の 式 が 我 々 の 必 要 な,こ 由 エ ネ ル ギ ー で あ る,こ 計 的 に 考 え る と き,こ
の 系 の 変 化 の 状 態 で あ っ て,FはHelmholzの
の よ う な 系 の 内 部 で の 粒 子 の 集 合,分
自
布 を 微 視 的,統
の 集 合 を 正 準 集 合(canonical‐ensemble),分
分 布(canonical‐distribution)と
布 を正 準
い う.
μdNは
こ の 系 に 入 っ て く る 粒 子 に よ る 仕 事 で あ り,自
dFは,可
逆 変 化 の と き に の み μdNに
等 し く,一
由 エ ネ ル ギー の 増 加
般 的 に は μdNよ
り 小 さ い,
系 か ら外 系 に 粒 子 が 出 て い く場 合 は (13・28)
で あ る か ら,系
の 自 由 エ ネ ル ギ ー の 減 少 分 は,そ
に は な らず,仕
事 量 は,自
の ま ま 外 系 に 加 え られ る仕 事
由 エ ネ ル ギ ー の 減 少 分 よ り小 さ い,
こ の 正 準 分 布 の 分 布 関 数 を,小
正 準 分 布 と同 じよ うに (13・29)
と し て み よ う,そ
し て 式(13・15)の
よ うに (13・30)
に と っ て み る と,式(13・16)で
計 算 した よ うに (13・31)
と な る が,こ
の 場 合 は0で
は な く,式(13・27)で
可 逆 過 程 を 想 定 して (13・32)
と した式 と比 較 す る と (13.33) が 得 られ る.す
る と,分
布関数 は (13・34)
の 形 に な る. し か し,こ こ と に あ る.こ
の 導 出 の 仮 定 は,正 の β=1/kTはdS=0か
準 集 合 の 場 合 で も β=1/kTと
して し ま っ た
ら導 か れ た も の で,dF=μdNか
ら
導 か れ た も の で は な い,dS=0とdF=μdNと は 熱 平 衡 に あ っ て,dT=0で
を 比 較 して み よ う.系
と外 系
あ るか ら (13・35)
こ の 式 でTdSは μdNはdEの あ る,す
系 と外 系 と の 可 逆 過 程 を 許 し た の で,TdS=dQで
み に 使 わ れ て い る と 考 え れ ば,残 な わ ち,正
り のdS=0に
あ り,
な って い るの で
準 分 布 に お け る系 は 熱 平 衡 に な っ て お り,こ
エ ン ト ロ ピ ー は最 大 で,dS=0と
の系 の 中 で は
考 え て よ い.
13・3 量 子 統 計
これ ま で は古 典 的 な 粒 子 を 考 え て き た が,粒 生 じ て く る と,そ
子 ど う しが 接 近 して 相 互 作 用 が
の 確 率 分 布 はMaxwell‐Boltzmann分
の 理 由 は,「 粒 子 間 距 離 が 十 分 離 れ て い る た め,同 粒 子 で も1つ1つ
布 に従 わ な く な る.そ じエ ネ ル ギ ー を も っ て い る
区 別 で き る.」 と し たMaxwell‐Boltzmann統
り 立 た な く な る か ら で あ る,さ
言 の仮定 が成
らに同 種 の粒 子 が 同 じエ ネル ギ ー準 位 に入 って
く る と お 互 い の 区 別 が で き な く な る こ とが 量 子 統 計 の 仮 定 で あ る. 識 別 不 可 能 な 同 種 の 粒 子 か ら な る 系 の 状 態 を 表 す 波 動 関 数 は,粒
子 の座 標 の
入 れ か え に た い して 対 称 な 関 数 か 反 対 称 な 関 数 か の い ず れ か で あ る.し て,識
別 不 可 能 な 同 種 の 粒 子 の 配 置 の 仕 方 に は,次
の2つ
たが っ
の 場 合 が あ る.
① 全 系 の 波 動 関 数 が 粒 子 の 入 れ か え に 対 し て 対 称 で あ る場 合 ② 全 系 の 波 動 関 数 が 粒 子 の 入 れ か え に 対 し て 反 対 称 で あ る場 合 ① の 場 合 に は,同
じ量 子 状 態 に い く ら で も多 く の 粒 子 が 入 り得 る,こ
う な 配 り方 に よ る分 布 をBose‐Einstein分 計 をBose‐Einstein統 (boson)と
電 子,陽
計 と い う.Bose‐Einstein統
呼 ぶ.光
分 子 の よ う に,複 子,中
布 と い い,こ
子(photon)はBose粒
数 の 電 子,陽
子,中
た,原
子 核,原
子 子,
性 子 か ら成 り立 っ て い る複 合 粒 子 で は,
性 子 の 総 数 が 偶 数 個 の と き に はBose粒
② の 場 合 に は,1つ
の よ う な 条 件下 で の 統
計 に 従 う 粒 子 をBose粒
子 で あ る.ま
の よ
の 量 子 状 態 を2個
子 で あ る.
以 上 の 粒 子 が 占 め る こ と は で き な い.
な ぜ な ら,同
一 量 子 状 態 を 反 対 称 の2個
等 的 に 零 に な る か らで あ る.こ 布 と い い,こ ‐ Dirac統
の よ う な 条 件 下 で の 統 計 をFermi-Dirac統 子(fermion)と
子 で あ る.Bose‐Einstein統
子 統 計 と呼 ん で い る.例
と し て,同
量 子 状 態 に く ば る く ば り 方 の 数,つ
図13・4
13・4
Bose‐Einstein統
ε2,…
呼 ぶ .電
子,陽
子,中
性子
計 を あわせ て量
じ エ ネ ル ギ ー を もっ 同 種 粒 子2個 ま り微 視 状 態 の 数 を 図13・4に
を3個
の
示す.
各 種 統 計 法 の 比較
計
退 状 態)を
た ば ね て1つ
の
を 考 え る.各 細 胞 内 の 量 子 状 態 の エ ネ ル ギ ー を ε1,
と し,各 細 胞 内 に 含 ま れ る量 子 状 態 の 数 をg1 ,g2,…
の 細 胞1,2,…
計 と い う .Fermi
計 とFermi‐Dirac統
エ ネ ル ギ ー の あ ま り違 わ な い 多 く の 量 子 状 態(縮 細 胞 で 表 し,細 胞1,2,…
の 波 動 関 数 は恒
の よ う な 配 り方 に よ る 分 布 をFermi-Dirac分
計 に 従 う粒 子 をFermi粒
はFermi粒
の 粒 子 が 占 め れ ば ,系
に 粒 子 がn1,n2,…
と す る.こ
個 ず つ 分 布 して い る と し,全
全 エ ネ ル ギ ー も一 定 の 条 件 の も と で 考 え る.
れ ら
粒 子 数 一 定,
(13・36) (13・37)
エ ネ ル ギー が εiであ る 細 胞iに 含 ま れ るgi個 複 を 許 して くば る 場 合 の,く の 粒 子 を 一 列 に な らべ,そ で,ま
ず,粒
の 量 子 状 態 にni個
ば り方 の 数 を 求 め る.図13・5(b)の の 間 に(gi−1)個
り あ る.そ
よ う に,ni個
の 仕 切 り を 入 れ て み る,こ
子 も仕 切 り も同 じ よ う に 考 え て,(ni+gi−1)の
え る と,(ni+gi−1)!通
の 粒 子 を重
の う ち,粒
の状態
配 列 の 仕 方 を考
子 ど う し の 区 別 を 考 え な い か ら,
ni! 通 り は 意 味 が な い し,仕 切 り ど う し の 区 別 も 考 え ら れ な い か ら,(gi−1)! 通 り も意 味 が な い.し
た が って,ni個
の 粒 子 をgi個
の 量 子 状 態 に くば る仕 方
の 数 は,
と な る,全 数Wは,各
体 でN個
の 粒 子 を ε1にn1,ε2にn2,…,εiにniと
々 の 積 で あ る か ら,
(a)
( b) Bose‐Einstein統 図13・5
計 の 数 え方
くば る 仕 方 の
(13・38) と な り,ni+gi≫1と
す れ ば,こ
れ は
(13・39) で 近 似 さ れ る,Wは て お り,こ
粒 子 の エ ネル ギ ー分 布 に お け る微 視 的 状 態 の 数 を 意 味 し
の 微 視 的 状 態 の 数 が 最 大 に な っ た と き が 熱 平 衡 で あ り,そ
布 の 実 現 さ れ る 確 率 は エ ル ゴ ー ド性 に よ り,Wに 36),(13・37)の
条 件 の 下 でWmaxと
式(13・39)の
自 然 対 数 を と る と,
比 例 す る.よ
の と き分
っ て,式(13・
な る 平 衡 分 布 を 求 め る,
(13・40)
を 得 る が,ni,giが
そ れ ぞ れ1に
比 べ て は る か に 大 き な 数 で あ る と して,Stirling
の公式 (13・41)
を 用 い る と, (13・42)
と な る.Wmaxの に 対 して は,小
条 件 は(lnW)maxの
条 件 と 同 じ で あ る か ら,そ
さ い δniの 変 化 に 対 して δlnW=0で
た が っ て,式(13・42)よ
の よ うな 分 布
な け れ ば な ら な い.し
り, (13・43)
式(13・36),式(13・37)の
条 件 よ り,
(13・44) (13・45) こ れ ら の3つ い る.す
の 式 を 同 時 に 満 足 さ せ る た め に,Lagrangeの
な わ ち,式(13・44)に−
α,式(13・45)に−
未定 定数 法 を用
β を か け て 式(13・43)に
加 え る と, (13・46)
し た が っ て,
で な けれ ば な らな い. (13・47)
Lagrangeの
未 定 定 数 α,β
は,次
エ ン ト ロ ピ ーSは,lnWのBoltzmann定
の よ う に し て 定 め ら れ る.力
学 に よ る と,
数κ 倍 で あ る か ら,式(13・42)か
(13.45)
(13.49) 熱 力学 的 に はEは
内 部 エ ネ ル ギ ー で あ り,熱
力 学 恒 等 式dE=Tds−pdV
よ り,
(13・50)
と な る か ら,式(13・49)と
式(13・50)と
の 比 較 で,
(13・51)
が 得 ら れ る,次
に,エ
ン ト ロ ピ ーSは,式(13・48)よ
り,
ら,
(13・52) で 与 え られ るか ら,Helmholzの
自 由 エ ネ ル ギ ーF=E−TSは, (13・53)
と な る,
(13・54)
こ れ は,熱
力 学 に お い て 化 学 ポ テ ン シ ャ ル μ を 表 して お り,
(13・55)
で あ る の で,式(13・54)と
式(13・55)の
比 較 か ら,
(13・56)
が 得 ら れ る, εiを ε と 置 き,式(13・51),(13・56)を
式(13・47)に
代 入
して 得
られ る 関 数
(13・57)
をBose‐Einstein分
布 関 数 と 呼 ぶ.f(ε)は
粒 子 が エ ネ ル ギー ε の 状 態 を 占 め
る 確 率 で あ る.
13・5
Fermi粒
Fermi‐Dirac統
計
子 に 適 用 さ れ るFermi‐Dirac統
る こ と が で き る.エ
計 の式 も同 じよ う な 計 算 法 で求 め
ネ ル ギー εiを も っ たni個
の 粒 子 がgi個
の量 子 状 態 に ど の
よ う に分 布 す る か を 考 え る, Fermi粒
子 はPauliの
原 理 に従 うか ら,1つ
の 量 子 状 態 に は1個
以 下 の粒 子
しか 入 れ な い.し
た が っ て,ni<giで
子 状 態 の う ち,niは
あ る.こ
つ ま っ て い て,(gi−ni)個
配 列 す る 仕 方 の 数 はgi!と お り あ る が,粒 態 も 区 別 で き な い.し
の よ う な 場 合 に は,gi個
た が っ て,区
は 空 い て い る.gi個
の量
の状 態 を
子 ど う し は 区 別 で き な い し,空
別 の っ か な いni個
の 粒 子 をgi個
孔状
の量 子状
態 に く ば る 仕 方 の 数 は,
と な る.各
エ ネ ル ギ ー を 含 め た 全 体 に つ い て の くば り 方 の 数,す
なわち微視的
状 態 の 数Wは,
(13・58) で 与 え ら れ,熱 Wの
平 衡 状 態 で は,こ
自 然 対 数 を と り,ni,giは
る と し て,Stirlingの
のWは
最 大 値 を と る こ と に な る.
そ れ ぞ れ1に
比 べ て は る か に大 き な 数 で あ
公 式 を 用 い る と, (13・59)
と な る,niの も の を0と
変 化 に 対 す るlnWの
極 大 値 を 探 す た め,右
辺 を δni変 化 さ せ た
お く. (13・60)
この式 と,粒 子 保 存 お よ び エ ネ ル ギ ー保 存 の条 件 (13・61) (13・62)
を 考 慮 し て,Lagrangeの
未 定 定 数 法 を 用 い る と, (13・63)
が 得 られ る.し
と な り,こ
た が っ て,
れ よ り,
(13・64)
〓を用 いて
を 得 る.
(13.65) と な る,こ
のf(ε)をFermi‐Dirac分
Bose‐Einstein分 て み る.こ
布 関 数 と 呼 ぶ.
布 お よ びFermi‐Dirac分
布 に お い て,T→
の と き β は 小 さ な 値 と な る か ら,基
と る と,こ の 場 合 の分 配 関 数〓 和 で あ っ て,こ
の 和 は β →0で
数 お よ びF‐D分
底 状 態 の エ ネ ル ギ ー ε0を 零 に
はεi の 値 が1/β の程 度 ま で のgiの は∞
に な る,し
略 し た 形 か ら,〓 と な り,〓
∞ の極 限 を考 え
た が っ て,式(13・48)で1を
省
とし た と き,〓 が成 り立 つ.こ
の こ と よ り,T→
布 関 数 は,Boltzmann分
図13・6
∞ に お い て, B‐E分
布 関 数 と 同 じ形 に な る.
Fermi‐Dirac分
布
布 関
練 習 問 題
1. Fermi分
布 関 数 をf(E),理
で あ る こ と を 証 明 せ よ,た
を 意 味 し,低 温kT≪
想 気 体 の 状 態 密 度 をZ(E)と
す る と,
だ し,〓
μ を仮 定 せ よ.
2. 前 問 の 結 果 を 利 用 して,理 想Fermi気 Eに つ いて,次
〔13〕
体 の 化 学 ポ テ ンシ ャル μ,内 部 エ ネル ギ ー
の展 開 式 が 成 り立 つ こ と を証 明せ よ,
第14章
M.Planckが
熱 輻 射 の 理 論 的 研 究 に,量
で あ っ た.20世 Planckが
量 子 論 の応 用 例
紀 の 物 理 学 は,こ
の 量 子 仮 説 か ら は じ ま っ た と い え る.
ノ ー ベ ル 賞 を 受 け た の は1918年
の 動 き を 追 っ て み る と 興 味 深 い.1921年 年 に はN.Bohrの 果 が,量
原 子 構 造,1927年
で あ る が,そ
の後 の ノーベ ル賞
はA.Einsteinの に はA.H.Comptonの
光 電 効 果,1922 コ ンプ トン効
子 効 果 の も と で 説 明 さ れ た,
量 子 力 学 の 完 成 は,1929年 のW.Heisenbergの .M.Diracの
子 仮 説 を 導 入 し た の は1900年
のL.V.de
Broglieの
マ ト リ ッ ク ス 力 学,1933年
量 子 力 学 へ と 急 で あ る.量
電 子 の 波 動 性,1932年 のE.Schrbdinger,P.A
子 力 学 的 考 え は,こ
物 理 的 現 象 に 適 用 さ れ る よ う に な り,1956年W.Shockley等 タ の 研 究 に つ な がっ て い く.固
体 物 理 学 は20世
の 後,あ
らゆる
の トラ ン ジ ス
紀 の 量 子 力 学 を基 礎 と した
物 性 論 で あ る.
14・1
Planckの
熱 放 射 式
固 体 か らの 熱 放 射 は,入 射 電 磁 波 に よ って 固体 内 の原 子,分 子 が 励 起 され, そ の 後 複 雑 な遷 移 を 繰 り返 す と き に外部 に 放 射 され る光 で あ る ので,あ
らゆ る
振 動 数 を含 ん で い る と考 え る こ とが で き る.固 体 内 で は原 子,分 子 ど う しの相 互 作 用 が あ る た め,事 実 上,連 続 的 な エ ネル ギ ー 準 位 が あ る と考 え る こ と が で き る か らで あ る,こ の よ うな 場 合 の 放 射 スペ ク トル を統 計 的 に取 り扱 って み よ う.す べ て の波 長 の光 を 完 全 に吸 収 す る物 体 を 黒 体 と呼 ぶ が,熱 平 衡 状 態 で は 吸 収 した光 は必 ず 放 射 す るか ら,黒 体 と は あ らゆ る波 長 の光 を最 も効 率 よ く放 射 す る物 体 と もい え る,現 実 に は理 想 的 な黒 体 は存 在 しな い が,十 分 厚 い壁 に
か こま れ た高 温 炉 の 一 部 に小 さ な孔 を あ けて そ こか ら漏 れ る光 を観 察 す れ ば, 黒 体 か らの熱 放 射 と考 え る ことが で き る.こ の よ う な炉 を空 洞 と呼 ぶ.空 洞 の 内 で は い ろ い ろ の振 動 数 を もっ た光 子 が 気 体 の よ う に充 満 して お り,壁 の物 質 と衝 突 して平 衡 状 態 に な って い る とす る. 位 相 空 間(位 置 と運 動 量 か らな る六 次 元 の 空 間)に お いて,運 動 量 がpとp +dpの
間 に あ る光 子 の状 態 数 をg(P)dpと
す る と, (14・1)
式(14・1)に
お け る 因 子h3は,位
相 空 間 に お い て,dx,dy,dz,dpx,dpy,dpz
が 囲 む 体 積dτ=dxdydzdpxdpydpz≧h3と を 意 味 す る.こ ま た,因
な り,位
れ は 量 子 論 か ら の 要 請 で あ り,不
子2は,同
相空 間の体積 の最 小単位
確 定 性 原 理 に 基 づ い て い る.
じ運 動 量 を も つ 光 子 に は 右 円 偏 光 と 左 円 偏 光 の2つ
状態が
あ る か らで あ る. 空 洞 の 体 積 をVと
す れ ば,
(14・2)
で あ る.運 動 量 がpとp+dpの
間 にあ る体 積 は,pを
半 径 とす る球 と(p+dp)
を 半 径 とす る球 と に は さ ま れ た球 殻 の 体積 で あ るか ら, (14・3)
で あ る.し
た が っ て,
(14・4)
と な る.光
子の運動
量pはp=〓
で あ る か ら,dp=h/cdν
と な り,こ
の 関 係 を 上 の 式 に 代 入 す る と,
れ ら
(14・5)
が 得 られ る.こ れ が 振 動 数 で 表 した 光子 の状 態数 で あ る.
光 子 は,Bose粒
子 で あ る か ら,Bose‐Einstein統
意 す べ き こ と は,Bose‐Einstein統
計 の 式 に お い て,定
定 で あ る こ と か ら 出 て き た Σδni=0の る が,こ
の 場 合,光
で あ り,し
な り,ε=hν
こで 注
数 α は粒 子 の 総 数 が 一
式 に か け たLagrangeの
子 の 総 数 は 保 存 さ れ な い.光
た が っ て μ=0と
計 に し た が う.こ
未定 定数 で あ
子 の 場 合 に は α=0と
す べき
を 考 慮 し て,
(14・6)
こ の 式 は,式(14・5)で
表 さ れ る 各ν の 状 態 に 光 子 が 存 在 す る 確 率 を 表 し
て お り,式(14・5),(14・6)か 光 子 の 数,す
ら,単
位 体 積 あ た りν とν+dν
の間 にあ る
な わ ち 光 子 密 度 は,
(14・7)
と 表 さ れ る.振 る の で,空
動 数 がν とν+dν
の 間 の 光 子 は,す
洞 内 で の 単 位 体 積 あ た り の 光(電
磁 波)の
べ て エ ネ ル ギ ー がhν で あ エ ネ ル ギ ー は,
(14・8)
と な る.こ
の 式 はPlanckの
式 と して 有 名 で あ る,空
も っ 光 子 を 加 算 した 電 磁 波 の エ ネ ル ギ ー は,単
洞内で すべ ての振 動数 を
位体積 あた り
(14・9)
とな る.次 に,こ の よ うな電 磁 波 エ ネル ギ ーが 空 洞 の 外 に放 射 され る場 合 を考 え て み よ う.単 位 体 積 あ た り式(14・9)で
表 さ れ る エ ネ ル ギ ー を もっ 光 子 群
が 黒 体 の単 位 表 面 積 か ら単 位 時 間 あ た り出 る放 射 量 は,簡 単 な計 算 か ら
(14・10)
と な る.こ
れ はStefan‐Boltzmannの
に 発 見 し,後
にBoltzmannが
法 則 と 呼 ば れ て お り,Stefanが
熱 力 学 的 に証 明 した も の で あ る,
式(14・8)を,c=ν
λ(λ は 波 長 を 表 す)の
す る式 に し,そ
を と る と,波
のc/4倍
実 験 的
関 係 を 用 い て,波
長 を変 数 と
長 で 表 した 放 射 強 度 の 式 が 出 る.
(14・11)
波 長 の単 位 を 長 で,波
〔μm〕 で 表 す と,Rλ
長 幅1μmあ
の単 位 は
〔W/m2・
μm〕
と な り,各
波
た り に 含 ま れ る放 射 エ ネ ル ギ ー を 表 し て い る こ と に な る.
Rλ を λ に 対 し て プ ロッ ト し た 曲 線(温
度Tを
パ ラ メ ー タ と して)は
例 え ば 太 陽 の 光 放 射 の 実 測 値 と よ く合 う.こ 波 長 λmaxと そ の と き の 温 度Tの
の 関 係 が 成 立 す る が,こ
黒 体 放 射,
の曲線上で放射強度が最大にな る
間 で,
れ はWienの
体 の 電 磁 波 放 射 に 関 し て,Planckよ
変 位 則 と し て 知 ら れ て い る,Wienは り さ き に,黒
黒
体 の エ ネ ル ギ ー密 度 を
(14・12)
の よ う に,実 式 はPlanckの
験 的 に 求 め た が,こ 式(14・8)の
分 母 の−1を
ら放 射 強 度 を 計 算 し た 式 は,黒 で は,Planckの
が あ り,こ
単 な る 実 験 係 数 で あ っ た.こ
省 略 す る こ と か ら で る,こ
体 放 射 の 短 波 長 側 で よ う 合 う.別
式 でehν/kT≒1+hν/kTと
論 的 に 式(14・8)を
数 と 呼 ば れ る の は,hν 導 い たPlanckの
に,長
近 似 し たRaylei‐Jeansの
の 式 か ら計 算 し た 放 射 式 で は 黒 体 放 射 の 高 温,長
と よ く合 う.ん がPlanck定 与 え,理
の 式 で のhは
の
の式 か 波長 側 式
波 長領 域 で 実 験値
にエネルギー量子 の概 念 を
功 績 を 記 念 して で あ る.
式(14・8)は,単
位 体 積 あ た りの 電 磁 波 エ ネ ル ギ ー を 表 し て い る が,古
理 論 で の 式 を 対 比 の た め に 示 し て み よ う,電 り の 電 磁 波 エ ネ ル ギ ー は,振
の よ う に計 算 で き る.Tは
場E,磁
場H中
典
の単位体 積 あ た
動 数ν の 光 に つ い て,
周 期,ε=ε0εrは
c/υ は 媒 質 の 屈 折 率 を 表 す,ポ
誘 電 率,μ=μ0μrは
イ ン チ ン グ ・ベ ク トル は,こ
ギ ー に 光 速 度υ を 掛 け た も の で あ る か ら,
図14・1
Planckの
幅 射 式
透 磁 率,n=
の単 位 体 積 エ ネ ル
と な り,物
質 に 対 し て 光 の 入 射 強 度 がI(ν
〔J/m2・s〕 が 測 定 で き る と,I(ν)
を 上 の 式 で 割 っ た 値 は,単 位 面 積 あ た り 物 質 に 入 射 す る フ ォ ン ト数 に な る.
図14・2
太 陽 光 の ス ベ ク トル 分 布
14・2 誘 導 放 射
い ま 空 洞 の 壁 あ る い は 内 部 に 同 一 種 類 の 原 子 が 多 数 あ る も の と し,そ 1つ の 原 子 が 励 起 状 態iに 状 態jに
遷 移 し て,そ
が で き る,こ
あ る と す る.こ
の エ ネ ル ギ ー 差(εi−
の 原 子 は,自
れ を 自 然 放 射 と い い,単
く.Ai→jをEinsteinの
εj)を
発 的 にiよ
の中の
り低 い定 常
光 子 と して 放 出 す る こ と
位 時 間 当 た り の 遷 移 の 確 率 をAi→jと
自然 放 射 係 数 と呼 ぶ.状
態iに
あ る 原 子 の 数 をniと
書 す
る と,
(14・13)
と 書 く こ と が で き る.Σ い て の 和 を 表 す.こ
は,状
態iよ
こ で,ΣAi→jの
り 低 い エ ネ ル ギ ー を もつ 状 態 す べ て に つ 逆 数 を τiと お く と,式(14・13)の
解 は,
図14・3
(14・14)
と な る.n0は
積 分 定 数 でt=0で
のniの
値 で あ る,τiはniが1/eに
な るまで
の 時 間 を 表 し,励 起 状 態 の 平 均 寿 命 と 呼 ば れ る, さ て,原 態iに
子 の 状 態 の 変 化 は,そ
こ に存 在 す る輻 射 場 の 影 響 を 受 け る.定
常状
あ る 原 子 は,
図14・4 (14・15)
を 満 足 す る振 動 数νikの光 子 を 吸収 して,よ き る.さ
り高 い励 起 状 態kに
らに,振 動 数νikを もつ光 子 は,状 態kに
な る ことがで
あ る原 子 に作 用 して 状態
iに 遷 移 させ る,前 者 を(誘 導)吸 収 とい い,後 者 を誘 導 放 射 と い う.振 動 数 νikの輻 射場 の光 子 密 度 を ρ(νik)dνとす る と,単 位 時 間 に 吸収 の起 こ る回 数はni お よ び ρ(νik)dνに比 例 す る,し た が って,単 位 時 間 で の 光 子 の 吸 収 量ΔPi→k は, (14・16)
と な る.Bi→kは
吸 収 過 程 の 比 例 係 数 で あ る.誘 導 放 射 過 程 に つ い て も,同
う に 考 え て,誘
導 放 射 量 をBk→inkρ(νik)dν
と お い て,εk>
じよ
εiの と き のBk→i
を 定 義 す る.Bi→k,Bk→iを,そ
れ ぞ れEinsteinの
吸 収 係 数,誘
導放 射 係数 と呼
意 の 状 態(i,k)の
組 に つ い て 遷 移i→kと
ぶ, 熱 平 衡 状 態 に お い て は,任
k→iの 量 は 等 し く な け れ ば な ら な い ,し
遷移
た が っ て, (14・17)
と な る.一
方,熱
平 衡 状 態 に お い て は,
(14・18)
で あ る か ら,式(14・17)(14・18)よ
り,
(14・19)
と な る.式(14・19)が
式(14・7)と
同 一 で あ る た め に は,3つ
のEinstein
係 数 の間 の関 係 式 が
(14・20)
と な る,
熱 平 衡 状 態 で,自 然 放 射 と誘 導 放 射 の 割 合 を 比 べ て み る と,
(14・21)
で あ る.し
た が っ て,室
hν≫kTで あ る か ら,誘
温 で 可 視 部 や 近 赤 外 部 の 光 の 放 射 を 考 え る と き は, 導 放 射 は ほ と ん ど 無 視 で き る.し
放 射 を 問 題 に す る 場 合 に は,hν≪kTで で き て,誘
あ る か ら,自
か し,マ
イ ク ロ波 の
然 放 射 が ほ と ん ど無 視
導 放 射 と 吸 収 と で ほ ぼ 均 衡 が 保 た れ る.
遷 移 の 確 率 を 与 え る 式 は,素
過 程 の 確 率 を 表 す も の で あ る か ら,nと
ν)に つ い て 熱 平 衡 が 成 り立 っ て い な い 場 合 で も 広 く成 り 立 つ.Einsteinの に 成 り 立 っ 関 係 式 に つ い て も 同 様 で あ る.い
ま,εk−
ρ( 係数間
εi=hν の 関 係 を み た す
強 い電 磁 波 を原 子 にあ て る と,吸 収 に よ ってniが 減 りnkが 増 え る,し か し, nkが 増 す と 自然放 射 だ け で な く誘 導放 射 が増 加 す る.電
磁 波 が 十 分 強 くな れ
ば,自 然 放 射Ak→iは 誘 導 放 射Bk→iρ(ν)dν に比 べ て無 視 で き るよ うに な り, (14・22) と な る.式(14・20)よ
り,Bi→k=Bk→iで
あ る か ら,式(14・22)は, (14・23)
とな り,電 磁 波 を い く ら強 く して も吸 収 に よ って 上 の準 位 の原 子 数 を下 の 準 位 の原 子 数 よ り多 くす る こ と はで きな い.す なわ ち,吸 収 に飽 和現 象 が み られ る. 誘 導 放 射 で は発 生 す る光 子 は誘 起 す る光 子 と同 じ周 波 数,伝 搬 方 向,位 相 を 持 って い る,そ こで,こ の 誘 導 放 射 を 利 用 して単 色 の電 磁 波 を増 幅 あ る い は発 振 させ る装 置 が 作 られ て い る.マ イ ク ロ波 領 域 で使 う場 合 に はメ ー ザ ー(MASER) ,光 の領 域 で使 う場 合 に は レー ザ ー(LASER)と
呼 ば れ て い る.
一 様 な 厚 さlの 物 質 に 振 動 数ν の 単 色 光 が 入 射 す る場 合,入 (ν)と す れ ば,透 過 光 の 強度Ⅰ(ν)は,Lambertの
射 光 の 強 度 をI0
法 則 よ り, (14・24)
で 与 え られ る,α(ν)は,振
動 数ν の 光 に対 す る 吸 収 係 数 で あ る.い
質 を 構 成 す る原 子 に つ い て,そ 問 題 と す る,E1<E2と 用 を 考 え る.こ 起 こ す.こ
の と り う る エ ネ ル ギ ー 準 位El,E2間
し,(E2−E1)/hに
の 光 に よ り,原
ま,物 の遷 移 を
等 し い 振 動 数ν の 光 と の 相 互 作
子 はE1→E2の
吸 収 とE2→E1の
の 両 者 の 差 し引 き の 遷 移 数N(1→2)は,単
誘 導 放射 を
位 体 積,単
位 時間 あ
た り
(14・25)
と な る.一 り,こ
方 ・ 光子密 度 ρ(ν)を入射
れ をhν で 割 る と単 位 面 積,単
光 の 強 さに直 す とc/4hνρ(ν)dν
とな
位 時 間 あ た り の 入 射 光 子 数 が 得 ら れ る.
こ れ に α(ν)を 掛 け た も の が 単 位 時 間,単
位 体 積 あ た り の 遷 移 数N(1→2)で
あ
る.し
た が っ て,
(14・26)
と な る.通 常 の 熱 平 衡 状 態 で は,E1<E2で (ν)は
あ れ ば 必 ずNl>N2と
な り,α
正 と な る.
(b)
(a) 図14・5
しか し,も
熱 平 衡 状 態(a)と 負 温 度 状 態(b)
し何 らか の 方 法 で,(図14・5)の(b)の
が 作 られ た と す る と,式(14・26)に 負 と な る.負
お い て,{}内
の 吸 収 係 数 と い う こ と は,光
幅 が 起 こ っ て い る こ と に な る.こ
よ う に,N1<N2の が 負 と な り,α(ν)は
子 の 数 が 増 加 す る こ と を 意 味 し,増
の よ う に,E1<E2に
る よ う な 系 を 反 転 分 布 の 系 と呼 び,も
状態
対 し てN1<N2で
あ
し熱 平 衡 状 態 に あ る 系 と 同 じ よ う に,
(14・27)
の式 で 有効 温 度Teが 定 義 で き る とす れ ば,Teは
負 の 値 を と る.こ の こ とか ら
反 転 分 布 の 状 態 を 負 温 度 状 態 と も呼 ぶ. い ま 物 質 中 を 光 が 進 む と き,E1〓E2遷 とす る と,x方
移 に 関 係 の な い損 失 の 係 数 を α0
向 に進 む光 の強 さの 増 加 は, (14・28)
で あ るか ら,入 射 光 の 強 さをI0と し,距 離xだ
け進 ん だ光 の強 さ をIと す れ ば, (14・29)
と な る. (14・30)
の 条 件 が溝 た さ れ れ ば,Iはx方
向 に進 む につ れ て増 大 し,光 の増 幅 が 起 こる.
α0+α <0の 条 件 を満 た す長 さLの 物 質 を,光 を よ く反 射 す る互 い に 平 行 な 2枚 の反 射 鏡 の間 に入 れ た 場 合,鏡 の 強 さ はR倍
の反 射 率 をRと
に な り,物 質 中 を 進 む 距 離Lの
す る と,1回
の反 射 で光
間 で 光 の 強 度 はe−(α0+α)L倍 にな
るの で, (14・31)
で あ れ ば,光
が 鏡 の 間 を 往 復 す る う ち に ど ん ど ん 強 さ が 増 す.こ
振 器 と 考 え る こ と が で き る.こ (14 .・25),(14・26)か
れ は,光
の 発 振 器 を レ ー ザ ー 発 振 器 と 呼 ぶ.α
ら分 か る よ う に,(N1−N2)に
14・3
は,式
比 例 す る か ら,N2を
増 大 す る こ と に よ っ て 発 振 条 件 を 満 た す こ と が 可 能 に な る.こ ポ ン ピ ン グ(pumping)と
の発
の よ う な操 作 を
呼 ぶ.
固体 の比 熱
比 熱 に関 与 す る固 体 内部 エ ネル ギ ーの 変 化 と して は,次 の よ うな ものが あ る. ① 格 子 点 に存 在 す る原 子,あ
るい は分 子 の 振 動 エ ネル ギ ー
② 伝 導 電 子 の 熱速 度 に よ る運 動 エ ネル ギ ー ③ 価 電子,あ
るい は殻 電 子 の励 起 エ ネル ギ ー
④ 常 磁 性 結 晶 の ス ピ ン配 向,強 磁 性 結 晶 にみ られ る ス ピ ン配 向 消 滅 に伴 う エネルギー ⑤ 結 晶 の相 変 化 に伴 うエ ネ ル ギ ー こ こで は,①
の格 子 振 動 エ ネ ル ギ ー の 温度 変 化 に対 す る比 熱 を考 え る.
固 体 の モ ル比 熱 の温 度 変 化 を測 定 す る と図14・6の 上 で,定 容 モ ル比 熱 は ほ ぼ一 定 の値 ∼25J/mol・Kを
よ うにな る,あ る温 度 以 示 す.こ
れ はDulong‐
Petit(デ ュ ロ ン‐ プ テ ィ ー)の 典 理 論 で 説 明 で き た.し
法 則 で,Maxwell‐Boltzmann統
か し,図
で み る よ う に,Cυ
激 に 小 さ く な る 領 域 が あ り,数Kの る,ま
た,0K付
計 を使 っ た 古
は 温 度 の低 下 と と もに 急
温 度 領 域 で はCυ は 温 度Tの3乗
近 で は 温 度Tに
比 例 し,0Kで
に比 例 す
はCυ は 零 に な っ て し ま う.
こ の よ う な 低 温 で の 比 熱 変 化 は古 典 理 論 で は 説 明 で き な い.
図14・6
結 晶 固 体 の 格 子 比 熱 は,構
モ ル 比 熱 の 温度 依 存性
成 原 子 の 振 動 エ ネ ル ギ ー の 増 加 に よ る.N個
子 か ら構 成 さ れ て い る結 晶 の 振 動 エ ネ ル ギ ー は,三 次 元 を 考 え て,3/N個 振 動 子 か らな る 系 の エ ネ ル ギ ー と同 じで あ る と す る.1個 エ ネ ル ギ ー は,古
典 理 論 で は,運
k Tで 表 さ れ た.kはBoltzmann定
の原 の調 和
の調 和 振 動 子 の 平 均
動 エ ネル ギ ー と位 置 エ ネ ル ギ ーを 加 え た 形 で 数 で あ る.す
る と,そ の 内 部 エ ネ ル ギ ーUは, (14・32)
と な る.N0はAvogadro数,ν
は モ ル 数,Rは
気 体 定 数 を 表 す.こ
の 式 か ら,
定 容 モ ル 比 熱 は, (14・33)
と な る.U0は1モ
ル で の 内 部 エ ネ ル ギ ー を 表 す.こ
れ が 古 典 理 論 で あ る.
〔1〕Einsteinの
理論
比 熱 曲 線 の 統 一 的 説 明 を す る た め に,Einsteinは,調 ギ ー を 求 め る 方 法 と して,Bose‐Einstein(ボ
和振動子の平均エネル
ー ズ‐ ア イ ン シ ュ タ イ ン)統
計 を
用 い た, 固 体 を 伝 わ る 音 速υ は,Young率Eと
密 度 ρ と で 定 ま る.
(14・34)
ここに ν: 振 動 数,λ:波
長
λ は 固 体 形 状 で 定 ま る 原 振 動,倍 一定 であ ると と,倍
振 動 で は3ν,…
固 体 が 熱 的 励 起 を 受 け て,格
… の よ う に 振 動 数 が 変 わ る.結
数 で あ る.hν
… と な る.こ
晶
の 振 動 を 量 子 化 す る と, れ を フ ォ ノ ン(音 子)と
が 熱 的 に 励 起 さ れ る 確 率 はe-hν/kTで あ り,
nhνが 熱 的 に 励 起 さ れ る 確 率 はe-nhν/KTで nhν ,n=1,2,…
が
振 動 で の 振 動 数 をν と す る
… の 振 動 が 生 じて い る と し て よ い だ ろ う.こ
はPlanck定
… で 変 わ る の で,υ
子 原 子 が 振 動 す る 場 合 も こ れ と 同 じ で,ν,2ν,
そ の エ ネ ル ギ ー はhν,2hν,3hν,… い い,ん
振 動,…
,ν は λ の 変 化 に 反 比 例 して 変 る.原
振 動 で は2ν,3倍
3ν,…
振 動,3倍
あ る.フ
ォ ノ ン ・エ ネ ル ギ ーE=
… の 分 布 が あ る 場 合 の 平 均 の エ ネ ル ギ ー<E>は,
(14・35)
と な る.<E>は,1個 る.N個
の格 子 原 子 の一 方 向 の振 動 エ ネルギ ーの平 均 を表 して い
の 原 子 か ら な る結 晶 固 体 で は,内
部 エ ネ ル ギ ー は こ の3N倍
に な って,
(14・36)
1モ ル で はN→N0(Avogadro数),N0k(k:Boltzmann定 定 数)で,定
容 モ ル 比 熱 は,
数)=R(気
体
(14・37)
この 式 を み る と,温 と な って い る.熱
度 が 一 定 の 場 合,Cυ
的 な 原 振 動 数ν は,や
数 とな る こ と か ら,物
は 物 質 に 生 じ る 原 振 動 数ν の 関 数
は り そ の 物 質 のYoung率
や密度 の関
質 に よ ってCυ が 異 な る 値 を と る こ と が 理 解 で き る. (14・38)
と し た 温 度ΘEをEinstein温
度 と い う.こ
れ を 使 う と,式(14・37)は
(14・39)
で,fE(ΘE/T)をEinstein関 E/T≪1と と,Cυ
数
な り,分 ≒3Rと
と い う こ と が あ る.高
母 でeΘE/T≒1+ΘE/7,分
子 でeΘ
な っ て 古 典 理 論 と 一 致 す る.低
温 で は,T>ΘEでΘ ε/T≒1と
温 で は,eΘE/T≫1と
近 似 す る し て,
(14・40)
と な り,T→0に
従 っ てCυ は 指 数 関 数 的 に0に
て こ のEinsteinの
理 論 は,大
近 づ く.比
き な 前 進 と 考 え ら れ る が,ま
熱 曲線 の説 明 と し だ 多 少 の 実 験 との
不 一 致 は残 っ た.
〔2〕Debyeの
Einsteinの
理論
理 論 の 欠 点 は,結
をν,2ν,3ν,… に 生 じ る 波 は,縦 義 的 に 式(14・34)の
晶 固 体 を 連 続 固 体 と 考 え て,マ
… の よ う に き め て し ま っ た こ と に あ る.実 波 も横 波 も 分 散 性 の 波 で あ っ て,こ よ う に は き ま ら な い.分
う し の 相 互 作 用 で あ る.2個
に な っ て 定 常 化 す る.こ
のN個
の 場 合 の 波 の 速 度 は,一 子 原子 ど
互 に振動 エネルギ ーが往
の 単振 子 の振 動 数 は わ ず か に違 った値
れ と 同 じ よ う に,N個
は す べ てν で あ っ た と して も,こ う 場 に い た 場 合 に は,N個
の2個
際の結 晶 固体
散 が 生 じ る原 因 は,格
の 全 く同 じ単 振 子 を,相
き 来 で き る よ う に 結 合 す る と,こ
ク ロ的 に振 動 数
の格 子 原 子 の 固有 振 動 数 が最 初
の原 子 す べ て が 相 互 作 用 を 及 ぼ し合
の 異 な る 振 動 数,す
な わ ち各 原 子 が少 しず つ 違 った
nx /υ
振 動 数 を も った状 態 で定 常 に な る.こ の よ うな形 で の波 の速 度 は群 速度(エ ル ギ ー の 伝 播 速 度)と
ネ
な っ て,
(14・41)
こ こ に, ω:角
周 波 数,k:波
数
で 表 さ れ る. こ の よ う に 固 体 結 晶 が 熱 励 起 さ れ た と き,生 の 形 で は な く,わ
ず か ず つ 違 っ た 振 動 数 を も っ た 振 動 の 集 合 で あ る.す
振 動 数 の う え か ら は,連 さ て,三
じ る振 動 数 はν,2ν,3ν,… る と,
続 し た 振 動 集 合 体 と み て い い だ ろ う.
次 元 媒 質 で の 波 動 の 方 程 式 は,波
動 変 位 をuと
す る と,
(14・42)
と書 け る.媒
質 を 一 辺 がLの
立 方 体 と し て,式(14・42)の
定常波解 を
(14・43)
こ こ に,nx,ny,nz=1,2,3,… と す る.式(14・43)が を 式(14・42)に
式(14・42)の 代 入
… 解 と な る た め の 条 件 は,式(14・43)
し て,
(14・44)
,ny,nzは
正 の 整 数 で,(nx,ny,nz)で
表 さ れ るn空
間 を 考 え る と,
波 が 存 在 す る空 間 は,
(14・45)
の 空 間 で あ って,原 2L
点nx=ny=nz=0か
ら,式(14・45)で
νに あ る点 の 振 動 数 は す べ てν で あ る,こ
表 さ れ る距 離
の 波 が 存 在 す るn空
間 は,nx,
図14・7 n空
ny,nz が す べ て 正 で,全
空 間 の1/8,すな
間 の表 現
わ ち1/8・4/3πn3で
あ る か ら,振
動 数 に す る と, (14・46)
で あ る.こ の 式 で は,n→ す る こ と に な る が,実 す る と し,式(14・46)の
∞ で あ る か ら,ν → ∞ と な っ て,無
際 に は そ う な ら な い.ν 微 分 を 考 え る と,ν
限 の振 動 数 が 存 在
の 変 化 は 微 少 で,連 とν+dν
続 的 に変 化
の 間 の 振 動 様 式 の 数 は, (14・47)
と な る.こ
の 式 か ら,Z(ν)がν2に
さ て,三
次 元 固 体 で は,任
が あ っ て,そ
比 例 し て 増 加 し て い る こ と が わ か る.
意 の方 向 に伝 播 す る波 は1個
れ ぞ れ の 速 さ をυl,υtと
す る と,こ
の3個
の 縦 波 と2個
の横 波
の波 につ いて振 動様
式 の 数 は,
(14.48) と しな け れ ば な らな い.結 晶 固 体 が熱 励 起 さ れ る と き,生 じる振 動 様 式 の 総 数 は,こ のZ(ν)dν
の積 分 で与 え られ るが,そ の上 限 は無 限 大 で は な い.Debye
は,こ
れを
(14・49)
の 形 に 限 定 し た,Nは (14・48)を
原 子 総 数 で,νDはDebye振
代 入 す る と,νDの
動 数 と 呼 ば れ る,こ
れ に式
値 が 計 算 で き る.
(14・50)
こ れ か ら結 晶 の 内 部 エ ネ ル ギ ー は,次 +dν
の 間 の 振 動 子 の 数 がZ(ν)dν
35)で
の よ う に 求 め ら れ る.振
で あ り,こ
動 数 がν とν
の 間 の 平 均 エ ネ ル ギ ー が式(14・
与 え ら れ る の で,
(14・51) こ こ で, (14・52)
の よ う にDebye温
度ΘDを
定 義 す る と,
(14・53)
定 容 モ ル 比 熱 は,こ
の 式 で,N=N0(Avogadro数),N0k=Rと
し て,
(14・54)
FD(T/ΘD)はDebye関 の 積 分 の 上 限ΘD/Tは は古 典 理 論 で の 値3Rと
数 と 呼 ば れ る.高 小 さ く,ex≒1+xと 一 致 す る,低
温 でT≫ΘDの お く と,FD≒1と
場 合 は,式(14・54)
温 で はΘD/T→
な り,Cυ
の値
∞ に近 似 す る と,積
分 の
値 は4π4/15と
な り,
(14・55)
が 得 ら れ る.こ
の 式 で は,Cυ
の 値 が 低 温 でT3に
と 一 致 す る.つ
け 加 え る と,極
比 例 し た 形 を と り,実
低 温 でCυ がTに
比 例 す る 原 因 は,自
験結 果
由電 子 比
熱 と 考 え ら れ て い る. こ の よ う に,Debyeの
理 論 は 固 体 比 熱 曲 線 を ほ ぼ 完 全 に 説 明 し得 た.こ
固 体 物 性 研 究 で の 最 初 の 大 き な 成 果 と な り,こ
れは
の 後 固 体 物 性 の研 究 が大 い に進
展 し た嚆 矢 と な っ た の で あ る. Debyeの 式(14・54)で
式(14・54)を
み る と,ど
表 さ れ る1つ
実 測 値 か らDebye温 き め れ ば よ い.一
き め る に は,そ
か らΘDが
動 数νDは
計 算 で き る の で,νDが
わ か る こ と に な る.比
高 く,従
単 位 体 積 の 原 子 数,す
こ の 原 子 密 度 に 比 例 し て い る.さ
率 を 測 定 す れ ば,υt,υl,が
き め て や る と, 熱 の
の 実 測 値 が この 曲 線 に乗 るよ うに
い 物 質 ほ どDebye振
温 度 も高 い,式(14・50)で,N/Vは を 表 し て お り,νDは
のΘDを
の 曲 線 の 上 に 比 熱 変 化 が の る こ と に な る.比
度ΘDを 般 に,硬
ん な 物 質 で も,そ
熱 実 験 か ら得 たΘDと,弾
なわ ち原 子密度
ら に,こ
わ か る.す
っ てDebye
の物 質 の 弾 性
る と,式(14・52)
性 率 か ら得 たΘDと
は よ く一 致 す る.
14・4 結 晶 中 の 電 子
金 属 結 晶 を考 え よ う.我 々 の身 の ま わ りに 存 在 す る銅 線 や,鉄 棒 あ るい はア ル ミ容 器 な ど は,す べ て金 属 で,微 細 な金 属 結 晶 の 集 合 体 で あ る.電 磁 気 学 で 使 う金 属 とい う概 念 は,電 気 の導 体 とい う こ とで あ って,抵 抗 率 が零 の 場 合 に は,金 属 の 中 に は電 場 は な く,す べ て の点 で 等 電 位 で あ る.一 般 に は,小 さな 抵 抗 率 が存 在 し,Ohmの
法則 が成 立 す る.金 属 が こ の よ う に 電 気 の 良 導 体 で
あ る原 因 は,そ の 中 に電 気 を運 ぶ キ ャ リアが 多数存 在 す るか らで あ り,そ の キ ャ リア は金 属 の場 合 自由電 子 で あ る.
自 由電 子 が金 属 中 に多 数 存 在 す る理 由 は,金 属 結 晶 の性 質 か ら理 解 で き る. 1個1個
の金 属 原 子 がバ ラバ ラに,相 互 干 渉 の全 くな い気 体 原 子 の よ うに 自由
空 間 に あ る場 合 に は,各 原 子 は価 電 子 を含 め た形 で 中性 で あ る.原 子 が凝 縮 し て結 晶 を形 成 して い く過 程 で,価 電 子 は1個 よ りは2個,2個
よ りは3個
とい
うよ うに多 くの原 子 に共 有 さ れ た形 に な り,原 子 集 団 の中 で価 電 子 の位 置 エ ネ ル ギ ー は小 さ くな って い く.原 子 集 団 の全 位 置 エ ネ ル ギ ーが最 小 に な った と こ ろ で,金 属 結 晶 が形 成 さ れ,そ の と きの価 電 子 は結 晶 全体 の原 子 に共 有 され た 形 で 自由電 子 とな る,価 電 子 を失 った殻 イ オ ンは,整 然 と結 晶格 子 を形 成 して い るが,自 由電 子 の集 団 は,こ の格 子 を平 等 に包 ん だ形 で,電 気 的 中性 条 件 を 維 持 し,こ れ が金 属 結 晶 を安 定 させ る因 とな っ て い る, 〔1〕Sommerfeldの
自由 電 子 模 型
こ の よ う な 金 属 結 晶 を,そ う.電
の 中 に 存 在 す る1個
の 自 由 電 子 の 立 場 か ら眺 め よ
子 は 結 晶 中 の す べ て の 原 子 に 共 有 さ れ て い る か ら,結
自 由 に 行 け る.す し か し,結
な わ ち,金
属 の 中 で は ど こ で も ポ テ ン シ ャ ル は 一 定 で あ る.
晶 の 表 面 か ら外 界(真
空)に
出 よ う と す る 場 合 に は,大
シ ャ ル の 山 を 越 え な け れ ば な ら な い.こ → ∞ に と っ て み る と,こ
晶 中 の ど こに で も
れ が 仕 事 関 数 で あ る.仕
の 自 由 電 子 の 考 え 方 は,10・1節
自 由 粒 子 」 の 場 合 と一 致 す る.長
さ がaの
きな ポ テ ン
事 関 数 の値 を
で学 ん だ
「箱 の 中 の
一 次 元 金 属結 晶 中 の 自由電 子 の波 動
関 数 お よ び エ ネ ル ギ ー 個 有 値 は,式(9・48),式(9・42)の
よ う に, (14・56)
(14・57)
とな る,nは1,2,3,…
crete value)を な い,一
片 がaの
の 量 子 数 で,波 2π/λnは 数kn=
と り,し
た が っ て,エ
と び と び の 値(dis
ネ ル ギ ー個 有 値 も と び とび の値 しか とれ
三 次 元 結 晶 の 場 合 は,式(10・34),式(10・35)の
よ う に, (14・58)
〓は 格 子 点 に い る イ オ ン 殻 を, 影部 分 は自由電 子 を表す 。 図14・8
金 属結 晶 の概 念 図
(14・59)
(14・60)
と な る.こ
の2つ
れ た 場 合,す シ ャ ルV=0と こ こ で,金
の 場 合 の 定 常 解 は,い
ず れ も 無 限 に 深 い 井 戸 に1電
な わ ち 金 属 で の 表 面 仕 事 関 数 を → ∞ と し,ま
た,金
子がおか
属 中 の ポテ ン
し た 場 合 の 解 で あ る. 属 中 で の 電 子 の 時 間 に 依 存 しな いSchrodinger方
程 式(振
幅方程
式)
(一次 元) をψ(0)=ψ(a)の う.解
条 件 か ら解 く こ と も で き る.こ
(14・61)
れを周 期的境 界条 件 とい
は,
(14・62)
(14・63)
で あ る.式(14・56)と 0,aの い.波
比 較 し て み る.式(14・62)で
値 が 有 限 で あ る が,式(14・56)で 数kの
式(14・56)の1/2倍
今 後 は 式(14・62)の
は,x= 存 在 しな
に な っ て い る,波
でa/nの
晶 は 周 期 的 な 構 造 を も ち,aを
張 す る.ま
は,x=0,aで,ψ0,aは
値 は 式(14・62)で,式(14・56)の2倍
は 式(14・62)で に,結
式(14・62)を
値 を と る.後
長 λ
節 で述 べ る よ う
そ の 周 期 因 子 と す る と 都 合 が よ い の で,
形 で 波 数 を 書 く こ と に す る,式(14・62)を
三 次 元 に拡
ず 冬 件 は, (14・64)
こ こに,n=0,±1,±2…
で,定
常 解 は,
(14・65)
(14・66)
(14・67)
と な る.nと 正,負
して ± を 考 え,kと
し て ± を と る意 味 は,定
在波 の進行 方 向を
の 両 方 を と っ た と い う こ と で あ る.
(14・68)
と す る と,式(14・65)は,
(14・69)
の よ う に 書 け る.
〔2〕
状 態 密 度 とFermiエ
さ て,第10章
ネルギー
で は さ ら に,1つ
の エ ネ ル ギ ー 個 有 値 に は 多 く の 固 有 関 数,
す な わ ち電 子 の 存 在 で き る定 常 状 態 が対 応 して お り(縮 退),エ で み た状 態 の数,す
な わ ち 単 位 体積 当 た りEとE+dEの
密度 と呼 ぶ こ とを 学 ん だ,こ るの で,ス
ネル ギー尺度
間 の状 態 の数 を 状 態
こで は,結 晶 中で 電 子 の居 られ る状 態 を考 え て い
ピ ンまで考 慮 して,式(10・35)の2倍
を状 態 密 度 と しよ う・
(14・70)
N(E)は お り,Vは
エ ネ ル ギ ー が0か
で の 間 に存 在 す る固 有 関 数 の 数 を 表 して
こ の 場 合 結 晶 の 体 積 で あ る.式(14・68)のn2=nx2+ny2+nz2
で 表 さ れ るn空 ny,nz)と
らEま
間 を 考 え た と き,こ
い う量 子 数 状 態 で,同
の 式 の 意 味 す る 球 上 の 点 は,す
べ てn(nx,
一 エ ネ ル ギ ー値 を と る,
(14・71)
(14・72)
で,状 態 密 度 は
(14・73)
で あ る.こ
れ を 式(14・67)のk2=kx2+ky2+kz2の
波 数 空 間 に な お す と,
(14・74)
(14・75)
(14・76)
こ れ か ら,k空
間 で の1つ
あ る こ と が わ か る.運
の 量 子 的 状 態 の 体 積 は,単
位 体 積 あ た り(2π)3で
動 量 空 間 で 考 え る と, (14・77)
で あ るか ら,1個
の 量 子 的 状 態 はk空 間 の そ れ よ り もh3倍 大 きい.
(14・78) で, (14・79)
と な る.p空
間 で の1つ
最 後 に,エ
の量 子 的 状 態 の 体 積 は,単
ネ ル ギ ー 的 空 間 な る も の を 考 え る.Eは
位 体 積 あ た りh3で
あ る.
ス カ ラ ー 量 で あ る が,前
と
同 じ よ う に 考 え る と,
(14・80) と な り, (14・81)
こ のZ(E)を
状 態 密 度 関 数 と い う.つ
い で に,式(14・57)で
表 さ れ る一 次
元結晶で は (14・82)
と な る.三
次 元 結 晶 で は エ ネ ル ギ ー増 加 と と も に 状 態 の 数 は 増 え て い く が,一
次 元 結 晶 で は 逆 に 減 っ て い く.一 く い が,近
似 的 に は1つ
次 元,あ
る い は二 次 元 結 晶 と い う の は考 え に
の 大 き な 結 晶 の 中 で,導
電 に 寄 与 す る 部 分 を 一 次 元,
あ る い は 二 次 元 に す る と い う こ と は 可 能 で あ っ て,そ 密 度 は式(14・82)で
のn個
の 原 子 を も っ 一 価 金 属 結 晶 で は,nは
の 自 由 電 子 は エ ネ ル ギ ー の 低 い 状 態 か ら1つ
ま っ て い く.0Kで,最 ミ 準 位 と い う.金 き な 値 で あ る.
次 元 で の状 態
表 さ れ る の で あ る.
単 位 体 積 当 た りn個 る.こ
の 場 合,一
自由 電 子 密 度 と な の 状 態 に1個
後 の 電 子 が 収 ま る状 態 の エ ネ ル ギ ー を0Kで
属 で は,こ
の フ ェ ル ミ準 位EF0の
値 は ∼5eVで,相
ず つ収
の フ ェル 当に大
図14・9 n空
間 の表 現
図14・10
等 方 的k空
間
図14・11
等 方 的p空
間
14・5 周 期 ポ テ ン シ ャ ル 中 の 電 子
前 節 で は,金 実 際 に は,価
属 結 晶 中 の 自 由 電 子 の ポ テ ン シ ャ ル は一 定 で,こ
れ を 零 と し た.
電 子 を 自 由 電 子 と して 放 出 した 残 り の 殻 イ オ ン が,結
に あ って 整 然 と 並 ん で お り,こ シ ャ ル を 形 成 し,そ
晶 の格 子 点
れ が 格 子 定 数 を 空 間 的 な 周 期 とす る周 期 ポ テ ン
の 中 を 自由 電 子 が 動 いて い くとい う ほ うが正 確 な考 え で あ
ろ う.
〔1〕
結晶格子
三 次 元 的 な 結 晶 格 子 を 考 え,結 a1 ,a2,a3を
と る と,結
い る形 に な る,結
晶 軸 方 向 に 格 子 定 数 に 相 当 す る単 位 ベ ク トル
晶 はa1×a2×a3の
晶 の 性 質 は,こ
の 電 子 の 波 動 関 数 も,こ
単 位 格 子 の積 み重 ね か らで き て
の 単 位 格 子 の 対 称 性 に よ っ て き ま る.結
晶中
の 対 称 性 か ら, (14・83)
こ こ に,a1,a2,a3は0,1,2,……
の よ うな整 数 値
の 並 進 操 作 で 変 わ らな い も の と す る.a1,a2,a3を ,a2,a3の もあ る,例
取 り方 は,格 え ば,金
子 定 数aを
基 本 並 進 ベ ク トル と い う.a1
規 定 す る結 晶軸 方 向 に は と らな い場 合
属 結 晶 の ほ と ん ど は 面 心 立 方 格 子 を 形 成 す る が,こ
に は,
図14・12
面心 立 方 格子 に お け る並 進 ベ ク トル の取 り方
の場 合
と す る. 結 晶 中 の1電
子 を 考 え る と,こ
の 電 子 は す べ て の 殻 イ オ ン,他
る 平 均 的 な 静 電 ポ テ ン シ ャ ル(有
効 ポ テ ン シ ャル)の
ポ テ ン シ ャ ル は(a1,a2,a3)の
周 期 性 を も っ て い る が,そ
性 に よ っ て ま ち ま ち に な る.適 方 程 式 を 解 き,得
の電子のつ く
中 を 運 動 して い る.有
の 形 は結 晶 の 対 称
当 な 有 効 ポ テ ン シ ャル を 仮 定 し,1電
ら れ た ψ(r)か
ら,ポ
子 の波 動
テ ン シ ャ ル を 逆 に 求 め,こ
た ポ テ ン シ ャ ル と の 平 均 ポ テ ン シ ャル を つ く り,再
効
れ と仮 定 し
び 波 動 方 程 式 を 解 く.こ
の
操 作 を 繰 り 返 え し,自
己 無 憧 着(self‐consistent)に
な る ま で 続 け る,こ
のよ
う に す る と,一
子 に 対 す る 合 理 的 な 有 効 ポ テ ン シ ャル が 得 られ,こ
のポ
応1電
テ ン シ ャ ル は,そ だ ろ う.こ
の 結 晶 中 を 運 動 す る電 子 の 周 期 的 ポ テ ン シ ャル と考 え て よ い
の 方 法 を1電
(ハ ー ト リー)近
子 近 似(one
electron
approximation)ま
た はHartree
似 と い う.
〔2〕Bloch関
数
こ こ で は,簡
単 に 一 次 元 周 期 ポ テ ン シ ャ ル 中 を 運 動 す る電 子 の 波 動 関 数 が ど
の よ う な も の で あ る か を 述 べ る.一
次 元Schrodinger振
幅 方 程 式 は, (14・84)
で,V(x)は
周 期 ポ テ ン シ ャ ル で あ る.R(α1a1,α2a2,α3a3)の
Vは 変 わ ら な い か ら,V(r)=V(r+R)で,一
並 進 操 作 で
次 元 で は, (14・85)
で あ る.こ
の 条 件 を 式(14・84)に
る な ら ば,ψ(x+a)も dxと
な る か ら で あ る.す
適 用 す る と,ψ(x)が
式(14・84)の
式(14・84)の
解 で あ る.X=x+aと
解 で あ
お け ば,dX=
る と, (14・86)
と お い た と き,C(a)は
ど の よ う な 形 に な る で あ ろ う か,結
とす る と,周 期 的境 界 条 件 か ら,
晶 の 長 さ をL=Na
(14・87)
(14・88) こ こ に,n=0,
が で る.Cを
1, 2,……(N−1)
虚 数 と す る理 由 は,ψ(x)を
周 期 関 数 と考 え るか ら で あ る.ψ の 形 を
(14・89)
と す る.あ
と の 式 はV(x)=V(x−a)に
考 え て い る.C1,C2はaの
対 応 す る 式 で,−a方
向 に進 む 波 を
関 数 で,
(14・90)
(14・91)
と す る と, (14・92)
と な る.波
動 関 数 は 式(14・92)の
よ う な 性 質 を も っ て い る の で,こ
れを (14・93)
と して も よ い. と な っ て,式(14・93)の 式(14・93)の
形 は 式(14・92)を
み た す こ と が 証 明 で き る.
一 般 形 は, (14・94)
で あ る.周
期 ポ テ ン シ ャ ル 中 で の 電 子 の 波 動 関 数 は,式(14・94)の
を と る.こ
れ をBloch(プ
ロ ッ ホ)関 数 と 呼 ん で い る,e± ikrは平 面 波 を 表 し,
そ れ が 結 晶 格 子 と 同 じ周 期 を もつuk(r)で
〔3〕
よ うな形
変 調 さ れ た 形 と な っ て い る.
エネルギー帯の形成
e±ikrを 平 面 波 と し た と き,kは
結 晶 中 を 伝 わ る 波 の 波 数 で あ っ て,逆
格 子
〓の各 軸 方 向で,
空間
(14・95)
こ こ に, n1,
n2,n3=0,1,2,…
…,N1−1ま
た はN2−1ま
た はN3−1 (14.96)
と 表 さ れ,逆
格 子 ベ ク ト ル の 単 位 を もつ,波
長 λ と す る と,
(14・97)
と な り,λ はaの
整 数 倍 の 値 しか と れ な い こ と が わ か る.n1=N1が
最 短 波 長 で, (14・98)
で あ る. さ て,kが
こ の よ う に 逆 格 子 定 数2π/aの
周 期 で 変 わ る と す る と,前
明 し た エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は ど うな る で あ ろ う か.
図14・13
Eの
周 期 性
節 で説
(14・99)
の 関 係 はE−k空 式(14・99)の
間 で 放 物 線 と な る.そ
して,kの
〓… …
関 係 は 原 点 をk=0,
す べ て 同 じに な らな け れ ば な ら な い.こ 数 で あ れ ば,Eも
の 様 子 を 図14・13に
周 期 関 数 と な ら な け れ ば な ら な い.こ
ル ギ ー は 滑 か に 連 続 で な け れ ば な ら な い.す
る と,そ
と変 え た と き,
示 す.kが
周期 関
れ ら の 多 くの 放 物 線 は,
〓… … の と こ ろ で 交 差 す る が,交
kが
な る.こ
〓の周 期 で変 わ るので,
値 は
差 点で運 動 エ ネ
こで は 図 の破 線 の よ うに
れ は 結 晶 中 で の 周 期 ポ テ ン シ ャ ル が 連 続 と な る こ と に 起 因 す る.エ
ル ギーEが
こ の よ う にkの
周 期 関 数 と な っ た 後 は,Eに
ネ
は エ ネ ル ギ ー許 容 帯 と,
禁 制 帯 が 生 じ る こ と に な る,
〔4〕
エ ネ ル ギ ー 帯 のBragg反
射 か ら の 考 え,Brillouin領
禁 制 帯 が 生 じ る 理 由 をBragg(ブ
ラ ッ グ)反
図14・14
Bragg反
域
射 か ら 考 え て み る.Braggの
回
射
折 条 件 は, (14・100) こ
で あ る.dは
こ に,n=1,2,…
格 子 の 面 間 隔,λ
…
はX線
の波 長 を表 す.dを
格 子 定数aと す る と,
変 形 し て, (14・101)
こ こ で,2π/λ→│k│,2π/an→│G│と
ク トル を 表 す.す
す る.κは波数
べル,Gは
逆格 子 ベ
る と,式(14・101)は (14・102)
こ の 関 係 を 図14・15に示
す.〓
図14・15
と な り,−2kcosφ=Gの る か ら,ベ
を 導 入す る と,sinθ=−cosφ
2│k│sinθ=│G│の
両 辺 にGを
関係
掛 け た 形 は,−2kGcosφ=G2で
あ
ク トル 的 に 表 す と, (14・103)
と な る.こ
れ がBragg反
射 の ベ ク トル 的 表 現 で あ る が,こ
数kの 波 は 反 射 し て し ま い,結
の式 を満足 す る波
晶 中 に は存 在 し な い こ と が わ か る.
(14・104)
で あ る か ら,一
次 元a1方
向 をa方
向 と す る と,G=2π/anで,式(14・103)は
(14・105)
と な り,こ
こ こ に,n=1,2,…
こ でBragg反
射 が 起 き る こ と に な る. k空 間 で,−π/a∼π/aを
第1
Brillouin領
呼 ぶ.こ
域
の 領 域 の 境 界 面 で は 電 子 波 は反 射 し,禁
(14・99)で ず,運
〓の 間 を 第2Brillouin領
表 さ れ る エ ネ ル ギ ーEは,kの
域)の
繰 り返 しで あ る の で,通
…
と
制 帯 が 現 れ る の で あ る.式
増 大 と と も に無 限 に大 き く は な ら
動 量 が 保 存 さ れ る 形 で 反 射 し,結
Eの 周 期 性 を 示 した 図14・9で,エ
域,…
晶 中 で 定 在 波 と な っ て い る,
ネ ル ギ ー は 第1Brillouin領
常 は第1Brillouin領
域(還
元 領
域 の み で 論 じ る.
〔5〕 外 力 に よ る結 晶 中 の 電子 の運 動,有 効 質 量 結 晶 中 に で き る電 子 波 は ψn(x)がBloch関 角 周 波 数 も変 わ り,一
数 で 表 さ れ る の で,knに
応 じて
次 元 で は, (14・106)
と表 さ れ る.す
な わ ち,多
の 波 と な って い る.す
くのkn,ωnの
る と,波
異 な る 波 が 存 在 し,い
動 エ ネ ル ギ ー,す
わ ゆ る分 散 性
な わ ち 電 子 の 速 度 は群 速 度 で
与 え られ る.
(14・107)
E(k)=hν=hω
で あ る か ら,
が で て,こ
の 式 は,
(14・108)
と な る.こ
の 式 は 電 子 の 速 度 がE-k空
間 の 形 に依 存 す る こ と を 表 し て い る.
自由電 子 で は 〓で 古 典 力 学 と一 致 す る.外 変化 は
力Fが
加 わ っ た と き に は,単
位 時 間 で の エ ネ ルギ ー
(
(P=hkと で あ る か ら,式(14・108)を
お け ば よ い)
(14・109)
時 間 で 微 分 し た 式 に 式(14・109)の
関 係 を代 入
す る と,
(14・110)
a) 自由電子 の場合 図14・16kに
(b) 結 晶 内電 子 の 場合 依 存 す るE,υ,m*
(14・111)
と な る.式(14・111)はE-k空 (effective
mass)と
間 で 表 し た 質 量 で あ っ て,m*を
呼 ぶ.三
有効 質量
次 元 的 に は, (14・112)
こ こ に,i,j,k=x,y,z
と表 せ よ う, E-k空 υ ,有
間 の 形 か ら導 か れ た 自 由 電 子 と 周 期 ポ テ ン シ ャ ル 中 の 電 子 と の 速 度
効 質 量m*の
は,E-k曲
形 は 図14・16の
よ う に な る.周
線 の 曲 率 が 変 わ る と こ ろ で,質
受 け て も 加 速 度 を 生 ぜ ず,そ 質 量 は 負 の 値 と な る.こ k =±π/aの
量m*は
無 限 大 に な る.こ
れ は力 を
の 点 で 等 速 度 運 動 を す る こ と を 意 味 す る.次
に は,
れ は 力 と逆 向 き の 加 速 度 を 生 じて い る こ と を意 味 す る.
と こ ろ で 速 度 は0に
電 子 は−π/aの
期 ポ テ ン シ ャル 中 の 電 子 で
な り ,Bragg反
と こ ろ に 現 れ る.速
射 を 受 け,π/aの
とこうにいた
度 は 質 量 が 負 の 間 は 減 り続 け,E-k空
間
の 曲 率 が 変 わ る と ころ か ら は,質 量 が 正 とな り,力 に対 して正 の加 速 度 を再 び 受 け,速 度 は増 す. 〔6〕 正 孔 の 概念 E-k空
間 で,曲
率 が 変 わ り,有
の 実 生 活 の 感 覚 で は,な 考 え る.図14・17で 曲 率 が 正,す
効 質 量m*な が 正 か ら負 の値 に な る こ と は,我
か な か 理 解 し難 い こ と で あ る の で,こ
① の 空 間 で は,電
子 は 力Fを
は 高 く な り,E-k論
曲 線 を 上 方 に 向 か っ て 進 む.加
囲 で はmをm*に
し た 自 由 電 子 近 似 が 成 立 す る.電
m* <0と
な る.す
落 ち る.E-k曲
れを次のよ うに
電 場 の 向 き を 左 方 に と る と,力F=−qEは
な わ ちm*>0の
る と,力Fに
線 上 に は,多
右 向 き と な る. 受 け,エ
ネル ギ ー
速 度 は 当 然 正 で あ る,こ
の範
子 が ② の 空 間 に 入 る と,
対 し て 加 速 度 は 逆 向 き に な り,速 く の 準 位 が あ り,こ
々
さは次 第 に
の準位 が電 子 で満 た され て
(a)
(b) 図14・17
い る 場 合 に は 電 子 の 動 き は な い が,そ あ る と,そ
の 準 位 に,下
正孔の概念
の 準 位 中,電
か らm*<0の
電 子 が 入 り,下
さ ら に 下 の エ ネ ル ギ ー 準 位 に い たm*<0の い な い 準 位 の 動 き を 考 え る と,電 さ ら に,こ
場 所 で は,多
れ を 正 孔(positive
こ の よ う に,周
電 子 が 入 る.そ
い う,E-k曲
こ に,
の電子 の して よ い.
の電 荷 を もつ と し 線 が 図(b)の
よ うな
ネ ル ギ ー の 上 端 付 近 に 集 ま る.後
で述
の 正 孔 が 電 気 伝 導 に 寄 与 す る こ と に な る.
期 ポ テ ン シ ャ ル の 影 響 をE-k空
有 効 質 量 を き め て しま う と,結
こ で,こ
向 き と 同 方 向 で,正
hole)と
くの 電 子 の 中 の 正 孔 は,エ
べ る 半 導 体 の 価 電 子 帯 で は,こ
の 準 位 が あ き,そ
子 の 動 き と 逆 で あ る か らm*>0と
の 準 位 の 動 く向 き は電 場Eの
て よ い だ ろ う.こ
子 の満 た され て な い準 位 が
局 は,有
間 の 中 に 取 り 入 れ,そ
こで
効 質 量 の 中 に 周 期 ポテ ンシ ャル を入 れ
て し ま っ た こ と に な る か ら,式(14・84)で
表 さ れ るSchrodinger方
程 式 は,
(14・113)
と 表 さ れ る.こ る に す ぎ な い.こ
の 式 は,前
節 の 式(14・61)と
れ を 有 効 質 量 近 似 と い う.エ
同 じ で,m→m*と
変 わ って い
ネ ル ギ ー は,
(14・114)
で 表 さ れ る.
図14・18に
二 次 元 で のBrillouin領
域 を 示 す.図14・19は
領 域 中 の 等 エ ネ ル ギ ー線 を 示 す.波 的 なkを
考 え る こ と が で き,等
に 近 づ くに つ れ て,等 ky =π/a)の
数kの
二 次 元 の第1Brillouin
小 さ い 中 心 部 付 近 で は,等
エ ネ ル ギ ー 面 は 球 と し て よ い が,kの
方
値 が π/a
エ ネ ル ギ ー 面 は 球 の 形 か ら くず れ て く る.(kx=π/a,
隅 の と こ ろ で は 複 雑 な 形 を と る だ ろ う.エ
図14・18
図14・19
二 次 元Brillouin領
第1Brillouin領
ネ ル ギ ー の 増 加 も1
域
域 で の等 エ ネ ル ギ ー線
つ の 方 向 で π/aま
で はk2に
比 例 す る と して よ い が ,隅
の と こ ろ で はk2則
か
らず れ て く る.
[問] 有 効 質 量 を 実験 的 に 測定 す る方 法 と して サ イ ク ロ トロ ン共 鳴 が あ る,調 よ,そ の場 合,正
べ てみ
孔質 量 も調 べ られ る理 由 も考 え て み よ.
14・6 金 属 の 電 気 伝 導
前 節 で 述 べ たN個
の 原 子 か らな る一 次 元 結 晶 の,第1Brillouin領
域 で許 さ
れ る波 動 関 数 の 数 を計 算 す る と,式(14・91)で
(14・115)
と な る.第2,第3,…
…Brillouin領
域 も 同 様 にNと
な るNを
エネ ルギ ー
準 位 の 数 と し て も よ い, 三 次 元 結 晶 で も 同 様 にN個
の 原 子 か ら で き て い る と し た 場 合 に は,そ
ネ ル ギ ー 準 位 の 数 はNで,電
子 が 存 在 で き る状 態 は2/Nと
電 子 と い う の は 最 外 殻 に い るs,p軌 は6重
に 縮 退 して い る.凝
成 す る.こ
集 して 結 晶 に な る と,縮
の 様 子 を 図14・20に
く る 帯 の 中 ば ま で つ ま り,上 子 が,正
の 有 効 質 量m*を
道 の 電 子 で あ る.s軌
示 す.1価
道 は2重
て,価
に,p軌
道
退 が とけ エ ネル ギ ー帯 を形
金 属 で はN個
の ほ う に 空 席 が で き る.こ
も っ て い る と き に は,自
な ろ う ,さ
のエ
の 電 子 がs1軌
道 のつ
の 中 に い る す べ て の電
由電 子 近 似 が で き る.
(14・116)
で,こ の よ う な帯 を伝 導 帯 と い う, 〔1〕k空
間での電気伝導の考え方
電 場 が−a方
向 にあ る と,電 子 に対 す る 力 は+a方
向 に 加 え られ た こ と に
図14・20
な り,k>0の
範 囲 で は,電
価 電 子軌 道 の っ くる帯 の概 念 図
子 は 電 場 よ り力 を 受 け て,よ
りkの
す な わ ち 準 位 で は上 の エ ネ ル ギ ー 準 位 へ と励 起 さ れ る.k<0の
範 囲 で は逆 で,
す で に 持 っ て い る運 動 エ ネ ル ギ ー は 電 場 に よ り弱 め られ,下 へ 落 ち 込 む .k空
2価 金 属 で の 導 電 はs1の のp1帯
と の 間 に 禁 制 帯 を も っ.s1帯
電 子 と は な れ な い.0Kで の 場 合 に はs2帯
ば な ら な い.こ の 特 徴 で,s,p軌
の 電 子 はs1帯
の 頂 上 か らp1帯 子 はp1帯
れ が 上 のp1帯
の下 端 まで 電 子
縁 体 と な って
と重 な って い る と しな け れ
の エ ネ ル ギ ー 的 に 重 な っ た複 合 帯 が,2価,あ 道 の 複 合 帯 の 状 態 数 は 全 部 で8Nと
を充
にあが れ なけれ ば 自由
は 充 満 帯 の 電 子 は 身 動 き が で き ず,絶 を 考 え,こ
向 に
向 に 電 流 が 生 じ る,
み で は 説 明 が つ か な い.2N個
が 励 起 さ れ る 確 率 はexp(−Eg/kT)で,電
い る.こ
の エ ネル ギ ー 準 位
間 で の 電 子 の エ ネ ル ギ ー 状 態 は 非 対 称 に な っ て,+a方
向 う電 子 数 の ほ う が 多 くな り,−a方
た し,上
大 き い ほ う,
る い は3価
な り,2N個,3N個
金属 の
価 電 子 は,こ
の 複 合 帯 を 半 ば 充 し た 形 で 自 由 電 子 と な っ て い る の で あ る.
実 際 例 と し てCuを 3d,4s,4pの て い る.こ
調 べ て み よ う.Cuは1価
金 属 で あ るが,3d10
っ く る 帯 は 重 な っ て 状 態 密 度 の 大 き な1つ の 帯 の 中 に3dの10N個
か らつ ま り,上
の 電 子 と,4sのN個
4s1 4p0で
の複合 帯 を形成 し の価 電 子 が 下 の ほ う
の ほ う の 準 位 が 空 い た 伝 導 帯 と な っ て い る.し
か し,こ
体 の 下 の ほ う に い る 電 子 は 相 当 大 き な エ ネ ル ギ ー を 得 な け れ ば,上 れ ず,電
気 伝 導 に は 寄 与 で き な い.
s,p軌
道 に そ れ ぞ れ2個
相 互 作 用 が 強 く,合
計8N個
下 の エ ネ ル ギ ー 帯 は4N個 帯 と な る.こ 席 で,価
の 価 電 子 を もっ4価 の 状 態 が2つ
る.価
に 分 裂 し,上
の 状 態 を も ち,こ
の 帯 を 価 電 子 帯 と も い う.上
電 子 帯 上 部 に は 空 孔,す
下2つ
の 帯 を 形 成 す る.
こに す べ て の価 電 子 が入 って充 満
禁 制 帯 を も っ.価
はす べ て 空
電 子 帯 か ら この の 帯 は伝 導 帯 とな
な わ ち 自 由 正 孔 が で き て,こ
れ も電 気 伝 導 に寄
由 電 子,自
さ て,力
を 加 え られ た 電 子 のkが
由 正 孔 を 導 電 キ ャ リ ア と い う. 変 わ り,運
動 エ ネ ルギ ーが カ の方 向 で 増 す
と い う こ と だ け で は 電 気 抵 抗 の 生 じ る原 因 を 説 明 で き な い.kが
で あ っ て,波
道 の
こ で は 自 由 電 子 近 似 が で き,こ
与 す る.自
動 の 形 が 変 わ り,そ
部 には出 ら
道 とp軌
の エ ネ ル ギ ー 帯 は0Kで
電 子 帯 と の 間 に エ ネ ル ギ ー 幅Egの
帯 に 電 子 が 励 起 さ れ る と,そ
半 導 体 で は,s軌
の伝 導
変 わ る と,波
れ に つ れ て 速 度 も 変 わ る と い う の が 式(14・116)の
を 散 乱 さ せ,電
意味
流 を 制 限 す る抵 抗 の原 因 は別 な と ころ に求 め な け
れ ば な らな い.
〔2〕 キ ャ リ ア 密 度,キ
ャ リアの 運 動 エ ネ ル ギ ー
結 晶 中 の 自 由 電 子 の エ ネ ル ギ ー 分 布,い Fermi‐Diracの Fermi分
分 布 則 に 従 っ て い る.金
い か え る と,そ
の運 動 の速 度 分 布 は
属 中 の 自 由 電 子 密 度 は 状 態 密 度 と,
布 関 数 の 積 と し て,
(14・117)
で 与 え ら れ る.温
度T=0〔K〕
で は,E≦EF0ま
でf(E)=1で
あ る の で,
を 代 入 す る と,
(14・118)
と な る.nと
し て1価
金 属 の 価 電 子 密 度 ∼5×1028〔1/m3〕
5〔eV〕
に な る.常
温 の 場 合 のEFは,こ
のEF0に
と る.電
子 の 平 均 運 動 エ ネ ル ギ ー は,kT(∼0.026eV)≪EFの
と す る と,EF0∼
対 して わ ず か に小 さ な値 を 常 温 で, (14・119)
と 表 さ れ る.
3/5EF0 は0Kで
ら わ か る よ う に,常 つこ と に な る.し 布 は な く,フ
の 電 子 の 平 均 運 動 エ ネ ル ギ ー で,式(14・119)か
温 で は,こ た が っ て,金
れ よ りわ ず か に大 きな平 均 運 動 エ ネ ル ギ ー を も 属 中 の 電 子 は,気
体 分 子 の よ うな 大 きな速 度 分
ェ ル ミ ・エ ネ ル ギ ー 付 近 の ま と ま っ た エ ネ ル ギ ー 分 布 を も ち,こ
の エ ネ ル ギ ー に 対 応 す る ほ ぼ 一 定 の 速 度 を も っ て い る と し て 差 支 え な い.フ ル ミ・エ ネ ル ギ ー よ り,ず
っ と下 の エ ネ ル ギ ー を も っ 電 子 は,ほ
ェ
と ん ど動 き の
と れ な い 状 態 に あ る.
〔3〕Drudeの
さ て,金
自由 電 子 に よる 電 気 伝導 論
属 が 一 定 温 度Tに
あ っ て,自
由電 子 も この温 度 に よ る一 定 速 度
υthを も っ て い る と し よ う.υthを 熱 速 度(thermal
velocity)と
い う.υthの
方 向,
向 きは ラ ン ダ ムで (14・120)
で あ る.抵 抗 が 存 在 す る原 因 と して,電 子 の衝 突 中心 を 考 え る.仮 に,こ れ を 格 子(位
置 に い る イ オ ン)と す る.電 子 が 格子 と衝 突 す る と,い った ん は格 子
の 中 に取 り込 まれ,格 子 と熱 平 衡 の 状 態 にな った後,再
び は き出 され,格 子 間
をυthの 速 度 で走 る.こ の よ うな形 で は,格 子 温 度TLと 電 子 温 度 はTeは 等 し く,温 度Tの
状 態 に あ る と考 え て よ い.衝
突 か ら衝 突 ま で の 時 間 を2τ と す
る.多 くの 電 子 の こ の衝 突 時 間 の平 均 は τで あ る.τ を 衝 突 に関 す る平 均 寿 命
(mean る と,電
life time)と
い う.こ
子 に は−qE/mの
の よ う な 状 態 で 結 晶 が 電 場Eの 外 力 に よ る加 速 度 が 加 わ る.Eの
と す る と,電
子 は−x方
突 直 後 のx方
向 の 速 度 は(υth)xで
中 に置 か れ た とす 向 き を+x方
向
向 に外 力 に よ っ て 次 第 に流 さ れ て い く こ と に な る.衝
(υth)x+(-qE/m・2τ)で
あ り,次
あ る か ら,平
に 衝 突 す る 直 前 のx方
向の速 度 は
均 と して の ド リ フ ト速度υxは (14・121)
と な る.電
流密 度 は (14・122)
で,式(14・120)の
関 係 を 入 れ る と, (14・123)
が で る.こ
れ はOhmの
式(14・121)か
法 則 で あ る.
ら,ド
リ フ ト速 度 の 平 均 は,
(14・124) と な り,
(14・125)
と し た と き の μ を 移 動 度 と い う.±
はつ け な い.ま
た, (14・126)
を 電 子 の 平 均 自 由 行 程(mean ら定 義 さ れ る こ と は 重 要 で,よ
free path)と
い う.こ
く覚 え て お こ う.導
れ が 熱 速 度 と平 均 寿 命 か 電 率 は, (14・127)
の よ う に書 け る. 格子 位 置 に い る殻 イ オ ンの質 量 は,電 子 の質 量 に比 べ て は るか に大 きいか ら, 衝 突 か ら衝 突 ま で の 間 に電 子 が電 場 か ら受 け た エ ネ ル ギ ー増 加 分 は,衝 よ って す べ て格 子 に吸 収 さ れ て しま う,Ohmの
突に
法 則 が 成 立 す る電 場 の 強 さ の
範 囲 で は,電
子 温 度 と格 子 温 度 と は 等 し く熱 平 衡 に あ る と 考 え て よ い.し か し,
電 場 が 強 く な る と,電 れ な く な り,電
場 か ら与 え ら れ た エ ネ ル ギ ー を す べ て 格 子 に は き 出 し き
子 温 度 は あ が り,熱
平 衡 が 破 れ る.そ
の と き に はOhmの
法 則
は 成 立 し な い. 式(14・121)は,平
均 の 考 え 方 を 使 う と,
(14・128)
〓で,こ の加 速 度 を打 ち消
の形 に書 け る.電 子 が 電 場 か ら受 け る加 速度 は
〓の,速 度〈υx〉に比例 した逆 向 きの加 速 度 が で き,電
す よ うに
に 対 し て 一 定 の 速 度υxで
電 子 が ド リ フ トす る こ と を こ の 式 は 意 味 し て い る.
こ の 形 で の τ を 緩 和 時 間(relaxation
〔4〕
場E
time)と
電 子 の 散 乱,Boltzmannの
い う.
輸送 方程 式
格 子 位 置 に い る 殻 イ オ ン の 存 在 そ の も の は抵 抗 の 原 因 に は な り得 な い.電 の 運 動 を 周 期 的 ポ テ ン シ ャ ル の 場 の 中 に お い て,こ れ て し ま っ た か ら で あ る.し
か し,常
衡 位 置 に 対 して ぼ や け て く る.こ
物 や,多
結 晶 の 場 合 の 結 晶 粒 界,結
抗 の 原 因 と な る.平 原 因 に よ っ て,そ は,例
均 寿 命,あ
れ を 有 効 質 量 の 中 に 取 り入
温 で は格 子 原 子 は 振 動 し,そ
の位 置 は平
の 熱 的 な ぼ や け は 電 子 に 対 す る 衝 突,別
葉 で い う と 散 乱 の 中 心 に な り得 る.ま
た,完
子
な言
全 な 結 晶 と い う も の は な く,不
純
晶 の ひ ず み 等 は す べ て 散 乱 中 心 に な り,抵
る い は 緩 和 時 間 と 呼 ん だ τ は,こ
れ ぞ れ 多 少 異 っ た 性 質 を もつ こ と に な る.τ
え ば 移 動 度 μ の 温 度 依 存 性 に 現 れ る.μ
の様 々 な 抵抗 の 性格 の 区 分 け
の 温 度 依 存 性 を 調 べ る と,逆
に,
ど の よ う な 散 乱 機 構 が 抵 抗 の 原 因 と な っ て い る か が わ か っ て く る の で あ る. 緩 和 時 間 の 考 え 方 を 次 の よ う に 拡 張 す る.結 fに 従 っ て 分 布 す る.fは 温 度 が 異 な る 場 合 に は,温 ,υz,x,y,z)を
エ ネ ル ギ ーEと
晶 中 の 電 子 は フ ェ ミル 分 布 関 数
温 度7の
関 数 で あ る.場
所 に よ って
度 を 介 して 場 所 の 関 数 と も な り う る,位 相 空 間(υx,υy
考 え て,xとx+dx,yとy+dy,zとz+dz,ま
たυx
とυx+dυx,υyとυy+dυy,υzとυz+dυzの
範 囲 に い る電 子 数 を (14・129)
f(υx,υy,υz,x,y,z,t)dυxdυydυzdxdydz と す る.fは
ろ う.外
フ ェ ル ミの 分 布 関 数 で あ る が,外
力 をx方
向 の み に 加 え,Xで
υx →υx+X/mdt,x→x+υxdtと な っ て,一
力 が 働 く と,そ
表 す と,dt秒
の形 を変 え るだ
後 には
次 元 を 考 え た 分 布 関 数 の 形 は,
(14・130)
と な る.最
初 f(υx,x,t)dυxdxに
あ った 電 子 はdt秒
〓dυxdx の 範 囲 に く る.電 両 者 を 等 し い と お け ば,ド
後には
子 数 は こ の 間 で 同 じ で あ る か ら,こ
リ フ トに よ るfの
の
変 化 が で る.
(14・131)
同 じ よ う に,衝
突 に よ るfの
変化 を
〓とお けば,全
体 と して 分 布 関
数 の変 化 は, (14・132)
の 形 に 書 け る.こ
れ をBoltzmannの
輪 送 方 程 式 と い う.緩
和 時 間 は,こ
の衝
突 に 関 して (14・133)
と置 い た と きの τを意 味 す る,f0は
外 力 が働 か な い と きの熱 平 衡 分 布 関 数 で あ
る.式(14・133)を (14・134)
と 置 く と, (14・135)
と な っ て,外
力 が 取 り除 か れ た と き,fがf0に
も ど る 時 定 数 が τで あ る こ と が
わ か る.
[問] 平 均 自由 行 程 を 実 験 的 に測 定 す る に は,ど の よ うな 実験 が考 え られ る か,例
え
ば,電 子 に よ る熱 伝 導 率 の 測 定 で は ど うか.
14・7 半 導 体
半 導 体 結 晶(誘 電 体 も)と 金 属 結 晶 との 違 い は,そ の凝 集 機 構 に あ る.半 導 体 原 子 の 結 合 は電 子 共 有 結 合 で あ って,価 電 子 は 隣接 原 子 と だ け の共 有 結 合 に 使 わ れ,各 原子 の す ぐ傍 に局 在 して い る.す る と,金 属 結 晶 に お け る よ うな 自 由電 子 は な い が,局 在 価 電 子 は,各 原 子 に と って は や は り最 外殻 の電 子 で あ る か ら,結 晶 を形 成 した後 は,価 電 子 ど う しの相 互 作 用 が あ り,わ ず か ずつ エ ネ ル ギ ー が異 な り,エ ネ ル ギ ー帯 を形 成 す る.共 有 結 合 の特 徴 は,隣 り合 う原 子 ど う しが互 に1個 ず つ の価 電 子 を 出 し合 い,こ れが 同 じエ ネル ギ ー準 位 の 中 に あ る こと で あ っ て,帯 を形 成 す る各 準 位 はす べ て2個 の電 子 で 占め られ て い る. す る と,価 電 子 の形成 す る価 電 子 帯 の 状 態 は電 子 で満 席 で あ る.す べ て の状 態 が こ の よ うに電子 で満 た され て い る価 電 子帯 で は電 子 は動 く こ とは で きず,価 電 子 帯 で の電 気 伝 導 は な い. 〔1〕 禁制 帯 の形 成 1つ の帯 で の電 子 の状 態 を考 え よ う.状 態 密 度 は有 効 質 量 近 似 で はm→m* とな り,
(14・136)
で 表 さ れ,電
子 密 度 は,f(E)を
フ ェ ル ミ分 布 関 数 と す る と,
(14・137)
で 表 さ れ る.14・5節
で 述 べ た よ う に,Brillouin領
ル ギ ー 面 は 複 雑 な 形 と な り,図14・21の
領 域 のk=π/an付
近 でE1/2則
領 域 を と る と考 え る と,こ
よ う に,Z(E)の
か ら ず れ た 形 と な る,価
形 は,Brillouin
電 子 帯 が 第1Brillouin
の 領 域 は 電 子 で 満 た さ れ て い る,第2Brillouin領
域 は 価 電 子 の 励 起 帯 と な る が,そ
こ で は 電 子 は 全 く存 在 し な い.第1Brillouin
領 域 と の 間 に は禁 制 帯 が 存 在 し,後 に 存 在 す る.こ
域 の隅 の と ころで は等 エ ネ
れ に 対 し て,金
に わ か る よ う に,フ
ェ ル ミ準 位 は 禁 制 帯 中
属 中 の 電 子 は 第1Brillouin領
図14・21
Brillouin領
図14・22
域 の形
金属 の帯 構造
域 の状 態密度
図14・23
を 半 分 し か 満 た さ な い.さ 第2Brillouin領
ら に ま た,kの
域 と は 重 な る.す
して 励 起 さ れ る こ と が 可 能 で,こ
あ る 方 向 で,第1Brillouin領
る と,電
域 と
子 は エ ネ ル ギ ー の 高 い準 位 へ 連 続
れ は 運 動 エ ネ ル ギ ー の 増 加 で あ る か ら,電
気
伝 導 が 起 こ る と 考 え られ る.
〔2〕Si,Geの
帯 構 造
IV族 元 素 半 導 体Siあ 3s23p2の4個
る い はGeを
例 に と っ て,帯
構 造 を 説 明 し よ う.Siで
が 価 電 子 で あ る.原 子 が 凝 集 し て 結 晶 を つ く る と,こ
子 の 軌 道 は 全 く 同 じ性 質 を も っ た も の に な る の で あ る.原 相 互 作 用 に よ る摂 動 を 受 け,s,p軌 原 子 間 距 離 がAに 交 差 す る.6重
な る と,sか
縮 退 のp準
道 の 皿 に あ っ た1個 Ⅳ,pのⅡ
道 は 縮 退 が と け,分
ら生 じた 摂 動 準 位 とpか
位 の う ち3個
皿 軌 道 は 空 状 態 で,こ
の 励 起 状 態 と考 え られ,こ の 中 心 か ら み る と,空 を 出 して お り,各
れ を 伝 導 帯 と い う.価
間 的 に も全 く 同 等 で,テ
腕(bond)の
ら生 じた 摂 動 準 位 と が 裂 し たs軌
れ をsp3と
のsp3軌
い い,価
電子
道 は下 の 価 電 子 帯
電 子 帯 のsp3軌
道 は殻 イ オ ン
ト ラ ・ポ ッ ト状 に4個
の結合腕
方 向 で 隣 接 原 子 と電 子 共 有 結 合 を し て い る .こ
の 結 合 に よ る結 晶 構 造 は,ダ
形 を 図14・25に
裂 す る.図14・24で,
子 定 数 ま で 近 づ い た 場 合 は,sの
の 軌 道 は 電 子 で 完 全 に埋 ま っ た 状 態 で,こ
帯 を 形 成 す る.pのⅠ,sの
の電
子 ど う しが 近 づ く と,
はⅡ の 軌 道 に 従 う の で,分
の 電 子 はⅡ に 落 ち る.格
の4個
は
示 す.(0,0,0)と
イ ヤ モ ン ド構 造 と呼 ば れ る.こ
(1/4,1/4,1/4)を
の構 造 の単 位 胞 の
それぞ れ 原 点 とす
図14・24 Ⅳ
族元素半導体の帯構造
A,B原 子 は それ ぞれ面心 立方 格子 を形 成 す る。 この 図で はA原 子 の形成 す る単 位 胞 中のB原 子 を 黑丸で示 して ある。Bの 位 置は(〓) 図14・25
ダイ ヤ モ ン ド構 造 の単 位胞
る2つ の 面 心 立 方 格 子 か ら形 成 さ れ,単 位 格 子 は8個 の 原 子 か らな っ て い る. 図14・25で
黒 丸 で 描 い た原 子 位 置 は,単 位 胞 の 中 に あ って,こ
の4個
の原子
図14・26
(a) Siの(100)面
面 心 立 方 格 子 の 第1Brillouin帯
の ラ ウエ写 真
域
(b) Siの(111)面
(正 方 形 の パ タ ー ンが 見 え る)
の ラ ウ エ写 真
(三 角 形 の パ タ ー ンが 見 え る) 図14・27
か ら の び るbondを A,黒
図 の 中 に 描 き 入 れ て あ る.図
丸 原 子 位 置 をBと
い る こ と に な る.A位
す る と,B位
置 原 子 は や は り面 心 立 方 格 子 を 形 成 し て
置 に 入 る 原 子 とB位
体,例
え ばGaAs,ZnSに
い,こ
れ も半 導 体 に な る.こ
置 に 入 る原 子 が 異 な る よ う な 半 導
み ら れ る 結 晶 構 造 を 閃 亜 鉛 鉱(ZnS)形 の 場 合 に は,A,Bい
る ダ イ ヤ モ ン ド形 構 造 と 比 較 して,空 図14・26に
面 に つ い て い るΓ,X等
結 晶構 造 と い
ず れ も同種 原 子 で 形 成 さ れ
間 対 称 性 は 減 少 し て い る.
面 心 立 方 格 子 の 第1Brillouin領
称 性 を 示 す 点 で,波
の座 標 原 点 に あ る原 子 位 置 を
の 記 号 は,結
域 を 示 す が,こ
晶 の 対 称 性,従
の 領 域 内 ま た表
っ てBrillouin領
域 の対
動 関 数 は こ れ ら の 点 群 に対 して 対 称 と な り,ま た エ ネ ル ギ ー
も こ れ ら の 点 群 に 対 して 対 称 で あ る. k空 間 で のGe,Siの 等 の 点 は,上
エ ネ ル ギ ー 帯 構 造 を 図14・28に
のBrillouin領
電 子 帯 の 頂 点 は,最 (〈111〉
も 対 称 度 が 高 いΓ 点 に あ る.伝
方 向),Siで
の よ う に,Geお
域 に 示 した 点 で あ る.エ
はΓ 点 か らX点
よ びSiで
導 体 と い う.GaAsの
体 を 直 接 遷 移 形(direct
導 帯 の 下 端 はGeで
へ の 途 中(〈100〉
方 向)に
transition)半
はL点 あ る.こ
電子 帯 の エ
の 種 の 半 導 体 を 間 接 遷 移 形(indirect
よ う な 半 導 体 で は,こ
値 は い ず れ もΓ 点 に あ っ て,k=(000)で
の 中 のΓ,X
ネ ル ギ ー 的 に み る と,価
は 伝 導 帯 の エ ネ ル ギ ー最 低 の 位 置 と,価
ネ ル ギ ー 最 高 の 位 置 と が 一 致 し な い.こ transition)半
示 す.図
の2つ
の エ ネ ルギ ー
遷 移 が 起 こ る. こ の よ う な 半 導 導 体 と い う.
〔3〕 半 導 体 に お け る両 極 性 伝 導 図14・29で,価
電 子 帯 の電 子 が伝 導 帯 へ励 起 さ れ る と,価 電 子 帯 に は電 子
の い な い準 位(正 孔)が で き,正 孔 は価 電子 帯 の 中 で電 気 伝導 に寄 与 す る.伝 導 帯 へ あが った 電 子 は伝 導 帯 の中 で 電 気 伝 導 に寄 与 す る.不 純 物 を 含 ま な い純 粋 な 半導 体 結 晶 で,電 気 伝 導 が 起 こる理 由 は,こ の価 電子 帯 か ら伝 導 帯 へ の電 子 の 励起 に よ る.こ の と きで き る伝 導 電 子,正 孔 の 濃 度 を それ ぞ れn,pと る と,n=p=niで
あ って導 電 率 は, (14・138)
す
(a) Ge
(b) Si
図14・28
と 表 さ れ る.μn,μpは,そ 孔 対 の 発 生 は,最
Geお
よ びSiの ェネ ル ギ ー 帯 構 造
れ ぞ れ 電 子,正
低 で も禁 制 帯 幅Egの
古 典 統 計 で い う と,e-Eg/kTに
エ ネ ル ギ ー が 必 要 で,そ
比 例 す る.こ
に 小 さ く な る(300KでkT≒0.026eVで
孔 の 移 動 度 で あ る.こ
の 確 率 はEgが あ る).す
絶 縁 体 と い え る. ダ イ ヤ モ ン ドで はEg∼6〔eV〕 孔(こ
れ を 自 由 キ ャ リ ア ま た は 伝 導 キ ャ リ ア と い う)は
はEg∼0.6〔eV〕
で あ る か ら,確
率 は ∼10-11と
の発生確 率 は
大 き い と き は,非
る と,Egの
で,伝
の 電 子 ・正
常
大 き な物 質 は
導 に 寄 与 す る 電 子,正 ほ と ん ど な い.Geで
な り,価
電 子 密 度 を ∼1025
図14・29
励 起 に ょ る電 子 正 孔 対 の 生 成
図14・30
〔1/m3〕
と す る と,∼1014〔1/m3〕
帯 図
の キ ャ リ ア が 存 在 す る こ と に な り,∼10-6
〔Ω ・m〕 の 導 電 率 を 示 す よ う に な る.
〔4〕
キ ャ リア 統 計
半 導 体 に お け る導 電 キ ャ リア は,こ
の よ う に電 子 と正 孔 と が あ る が,フ
ミ統 計 を 用 い て,キ
ャ リア 濃 度n,pを
は,式(14・136)の
状 態 密 度 を 伝 導 帯 の 下 端Ecよ
ェル
出 して み よ う. 電 子 濃 度 を 出 す 場 合 に り上 に と り
(14・139)
とす る.mn*は
電 子 有 効質 量 を 表 す.フ
ェル ミ分 布 関 数 は,古 典 近 似 と して, (14・140)
の よ う に し,nをEcか
ら上 で 計 算 す る.
(14・141)
この結 果 を み る と,指 数 項 は電 子 が エ ネル ギ ーEcに 表 して お り,そ こで の 状 態 密 度 がNcで の 電 子 は,す べ て エ ネル ギ ーEcに 率 がexp{-(Ec-EF)/kT}で 式 に現 れ て い るmn*を
い る古 典 近 似 の 確 率 を
あ る と考 え て よ い.す な わ ち,伝
あ る状 態 密 度 の 中 に あ って,そ
表 され る.Ncを
導帯
こ に上 る確
電 子 の 有 効 状 態 密 度,こ
の
電 子 の 有 効 状 態 密 度 質 量 と呼 ぶ.
正 孔 で は,状 態 密 度 は価 電 子 帯 上 端Evよ
り下 に あ って, (14・142)
で 表 され る.mp*は
正 孔 の 有 効 質 量 で あ る.フ ェル ミ分 布 関数 は電 子 の い な い
確 率 で あ るか ら,こ れ も古 典 近 似 をす る と, (14・143)
と な り,Ev以
下 で 積 分 す る と,次 の よ う に な る.
(14・144)
Nvを
正 孔 の 有 効 状 態 密 度 と い う.式(14・141),(14・144)で
形 で,(2πm*kT)3/2は 述 べ た よ う に,単 子 的 な1つ
古 典 分 布 関 数(Maxwell-Boltzmann分
現 れ たNc,Nvの 布 関 数)の
位 体 積 あ た り の 三 次 元 運 動 量 空 間 の 体 積 で あ る.こ
の 準 位 は 運 動 量 空間 の 体 積 でh3で
ところで の と き量
表 さ れ る の で,(2πm*kT/h2)3/2
は 運 動 量 空 間 で 表 した 準 位 密 度 と な っ て い る の で あ る.係 に 入 れ る 電 子 の 数 が2個 式(14・141)と
あ る と い うPauliの
式(14・144)か
数 の2は1つ
の準 位
排 他 率 か ら で た 値 で あ る.
ら, (14・145)
が 得 られ る.Egは
禁 制 帯 幅 で あ る.Egは
種 の 半 導 体 で は,不
純 物 の 如 何 に か か わ ら ず,ni2=npは
ま る 定 数 と な っ て い る.こ n=pの
半 導 体 の 種 類 に よ っ て 異 な る が,同
れ をnp積
温度 の み に よ って き
一 定 の 法 則 と い う.
真 性 半 導 体 で は, (14・146)
と な る.ま
た,式(14・141)と
式(14・144)を
等 し く と る と フ ェ ル ミ準 位 が
で る.
(14・147)
mp*=mn*で
あ れ ば,EFはEcとEvの
禁 制 帯 幅 が1eV程
度 の 半 導 体 で は,電
に 比 較 して は る か に 大 き い(kTは300Kの (14・140)で,1を SiやGeのⅣ
子 が 伝 導 帯 中 に あ れ ば,e(E-EF)/kTは1 常 温 で,ほ
のP,Sbを
を ドー プ す る と,正 孔 濃 度 が 大 き なp形
も,n,pの
値 は 式(14・141),(14・144)で
ェ ル ミ準 位EFはn形
表 さ れ る.た
だ し,こ
の場 合 に
では禁制帯 の中央
れ を 縮 退 と い い,こ
[問] 半 導 体 の キ ャ リア濃度 が 分 って い る と,Seebeck効 果 を調 べ よ.
族
半 導 体 と な る.こ の 場 合 に
る い は 価 電 子 帯 の 様 子 は 金 属 的 に な っ て,古
算 で き る.Seebeck効
半 導 体 と な る.Ⅲ
量 の 不 純 物 ドー ピ ン グ を す る と,EFは
る い は 価 電 子 帯 の 中 に 入 っ て し ま う.こ
伝 導 帯,あ
あ る). 式
わ ず か に 入 れ る(ド ー ピ ン
で は 禁 制 帯 の 中 央 よ り上,p形
よ り下 に 位 置 す る よ う に な る.多 帯,あ
ぼ0.026eVで
子 濃 度 が 正 孔 濃 度 よ り 大 き く な り,n形
のB,Ga等
は,フ
な わ ち 禁 制 帯 の 真 中 に く る.
省 略 し て 古 典 近 似 と して よ か っ た 意 味 は こ こ に あ る. 族 半 導 体 に 対 して,V族
グ と い う)と,電
中 央,す
伝導
の 場 合 に は,
典 近 似 は 使 え な い.
果 の 実験 か ら有 効 質 量 が 計
14・8
誘
電
体
平 行 平 板 コ ンデ ンサ に比 誘 電 率 εrの誘 電 体 を入 れ た場 合 を考 え よ う.コ デ ンサの 極 板 に は単 位 面 積 当 た り σの電 荷 が存 在 し,Gaussの の σに対 応 す る電 場 をE0と
す る と,σ=ε0E0で,E0は
ン
式 か ら考 え た こ
誘 電 体 が 存 在 しな い
と した と きの コ ンデ ンサ 内部 の電 場 の 強 さで あ る.誘 電 体 が入 る と,誘 電 体 の 表 面 に単 位 面 積 当 た りσpの電 荷 が 現 れ る.こ れ を誘 電 分 極 とい う.等 方 性 の
(a)
(b) 図14・31
誘電分極
誘 電 体 で は σpの現 れ る方 向 は誘電 体 の 内部 の電 極Eの に平 行 で あ る.誘 電体 内 部 に電 場 方 向 の長 さL,そ
方 向 で あ って,EはE0
れ と直 角方 向 に面 積Sの
小
さな 体積 を想 定 す る と,こ の体 積 で の電 気 双 極 子 モ ー メ ン トはσpSLと な る. SLは 体 積 で あ るか ら,σpは 単位 体 積 で の 双極 子 モ ー メ ン トと理 解 で き る.誘 電 分 極pは
ベ ク トル で,電 磁 気 学 的 に は, (14・148)
と 書 け る が,そ
の 大 き さ は│p│=σpで
応 して い る が,式(14・148)で よ う に,Gaussの
あ る.σ p=χeEの
表 さ れ る 電 場EはE0で
形 は σ=ε0E0に は な く,図
対
か らわ か る
式 か ら考 え て σ-σpに よ る 電 場 で あ る.σ-σp=ε0Eで,こ
れ に 上 の 関 係 を 代 入 す る と, (14・149)
が で る.巨 視 的 に誘 電 体 が感 じて い る電場 はEで
あ っ て,Xeを
比 電気 感受 率
と い う.微 視 的 に み た場 合 に は また少 し異 な る. 誘 電 分 極 が生 じ る原 因 は,分 子 また は原 子 の双 極 子 モ ー メ ン トで あ ろ う.分 極 の単 位 を分 子,原 子 の桁 ま で小 さ く して い った と きの,誘 導 双 極 子 モ ー メ ン トを μ で表 す と, (14・150)
の よ うに書 け る.Nは
単 位 体 積 当 た りの双 極 子 モ ー メ ン トの数 で あ って,分 極
濃 度 とい う こ とが あ る.誘 電 体 中 の1原 子 に働 く内 部電 場 はEで は な く,そ れ よ り も強 い と考 え られ る.Lorentzは,こ 図14・32の
よ う に,誘 電 体 内部 に球 状 の小 さな 空 洞 を 考 え る と,空 洞 の 左 壁
図14・32
に は+の
の 内部 電 場 を 次 の よ う に計 算 した.
空洞電場
電 荷,右 壁 に は − の電 荷 が現 れ る.こ の電 荷 に よ る空 洞 中心 で の 電
場 を計 算 す る と, (14・151)
とな る.こ れ をLorentzの
空 洞 電 場 とい う.さ
分 極 へ 寄 与 をElと す る.Elは,原
らに,空 洞 内 の 原 子配 列 によ る
子 の 配 列 が 立 方 対 称 を も つ 場 合 は零 に な る
が,そ れ 以 外 の場 合 は複 雑 で あ る. 内 部 電 場 は,こ の3つ の和 で (14・152)
と表 され る.
〔1〕 誘 導 双 極 子 モ ー メ ン ト この 内部 電 場 に よ って 引 き起 こさ れ る誘 導 双 極 子 モ ー メ ン トの種 類 は,大 き く分 け る と, (a) 電 子 分 極 (b) イ オ ン分 極 (c) 配 向分 極 の3つ で あ る. (a) 電 子 分 極 外 部 電 場 の な い状 態 で,誘 電 体 結 晶 を形 成 して い る個 々 の 原 子 の電 気 的状 態 を考 え る と,正 電 荷 を もつ 核 の中 心 と,負 の電 荷 を もつ外 殻 電 子 の電 子 雲 の 中心 とは一 致 して い る. 電 場Eが
か か る と,こ の2つ の中 心 は電 場 方 向 に相 対 的 にxだ
図14・33
け変 位 す る.
電 子 分極
1個 の 原 子 で の 誘 導 双 極 子 モ ー メ ン トは,μe=Qxで
あ っ て,変
位xは
電 場E
に 比 例 す る. (14・153)
と お い た と き αeを 電 子 分 極 率 と い う. 分 極 濃 度 がNの (electronic
と き,電
子 分 極
polarizatien)は, (14・154)
と な る.電
子 分 極 は 元 素 に よ り 異 な り,原
た 温 度 依 存 性 は な い.式(14・154)のEに
子 半 径 が 大 き な も の ほ ど 大 き く,ま 式(14・152)でElを
省 略 し たEi
を 入 れ,式(14・148)を
使 う と,
(14・155)
が で る.こ
の 式 をClausius‐Mosottiの
極 率 αeで き ま る.Nと
式 と い う.比
し てAvogadro数N0を
誘 電 率 は 分 極 濃 度Nと
と り,分
子 量 をM,密
分
度 を ρ
で 表 す と,
(14・156)
を モ ル 分 極 と い う こ と が あ る.大 で,気
体 で は こ れ が10-3∼10-4程
い る.光
周 波 数 範 囲 で は,屈
部 分 の 固 体 元 素 で は,ε rは1∼10の 度 で あ る.こ
折 率n=√εrで
程 度
の理 由 は濃 度 の違 いか ら きて
あ る の で,
(14・157)
こ の 式 をLorentz-Lorenzの
式 と い い,Rmを
モ ル 屈 折(molecular
reflaction)
と い う こ と が あ る.
[問] Siは
原 子 量28.1,比
重2.42,比
誘 電率11.6で
あ る. 原 子 濃 度 お よ び 電 子 分 極
率 は い く ら に な る か.
(b) イ オ ン 分 極 イ オ ン分 極(ionizational 生 じ る.電
場Eが
向 き に変 位 し,そ
か か る と,正 の 結 果,電
polarization)は,イ
イ オ ン は 電 場 の 向 き に,負
場 方 向 に 分 極 が 生 じ る.
図14・34
イ オ ン分 極
オ ン結 晶 で
イ オ ンは 電 場 と逆
(14・158)
と した と き,αiは イ オ ン分 極 率,Nは
イ オ ン分 極 濃度 を表 す.
(c) 配 向 分 極 多 原 子 分 子 で は,そ の構 造 か ら電 場 が か か らな い場 合 で も, 永 久 的 な 双 極 子 モ ー メ ン トを も って い る分 子 が あ る.最
も簡 単 な 例 がH2O分
子 で あ る. 電 場 が な い場 合 の 液体 状 態 で は,こ の永 久 双 極 子 モ ー メ ン トは ラ ン ダ ム に分 布 して マ ク ロに は分極 は現 れ な い.電 場 が か か る と,永 久 双 極 子 モ ー
図14・35
メ ン ト は,電
場 方 向 に 配 向 し,分
polarization)と
永久双極子 モーメ ント
極 を 示 す.こ
れ を 配 向 分 極(orientational
い う. 双 極 子 モ ー メ ン ト μ0が 電 場Eの
中 に あ る と き の位 置
エ ネ ル ギ ー は, (14・159)
で 与 え ら れ る. θ は μ0とEと θ と θ+dθ
の な す 角 で あ る.し
の 間 を 向 く確 率 は,θ
た が っ て,μ0がEに
対 して
と して 立 体 的 な 角 を と っ て, (14・160)
で あ る.電
場 方 向 の 成 分 μ0cosθ
の 平 均 は,
(14・161)
図14・36
と な る.配
向 分 極p0は,こ
立 体 角 と して の θ の計 算
れ か ら,分 極 濃 度 をNと
し て, (14・162)
と 表 さ れ る.L(a)はLangevin関
数 と 呼 ば れ,E→
に 収歛 す る. 実 用 上 は ,a≪1で,こ
大,a→
の と きL(a)=1/3aと
大 で,L(a)→1
な る.す
る と,
(14・163)
とな り,配 向 分 極 は永 久 双 極 子 モ ー メ ン トの2乗
に比 例 し,温 度 に反 比 例 す
る.
こ こで,3個
の分 極 を ま と め る意 味 で,イ
オ ン性 もあ る よ うな 多 原 子 気 体 の
全 分 極 を 考 え て み る と,
(14・164)
と な り,式(14・148)と
と な る.ε0(εr-1)を1/Tで N(αe+αi)を
比 較 す る と,
プ ロ ッ トす る実 験 で は,1/T→0で
与 え る. μ0の 実 測 値 は,デ
バ イ(debye)単
の外 挿 値 が
位=3.33×10-30
図14・37
ε0(εr-1)の
温 度 依 存
〔C・m〕 で 測 られ,H2Oで1.84,CH3Clで1.15,NO2で 固 体 で は 永 久 双 極 子 は凍 結 さ れ て い る た め,P0=0と 体 へ の 相 転 位 の と き,永 可 能 に な る た め,εrが
は0.4程
度 で あ る.
し て よ い.固
久 双 極 子 モ ー メ ン トを も つ 物 質 で は,双
体 か ら液
極 子 の回 転 が
急 激 に 増 す.
〔2〕 誘 電 率 の 分 散 電 子 分極 や イ オ ン分 極 を示 す物 質 が 電 場 中 にお か れ た場 合 は,電 荷 を も った 粒 子,す
なわ ち電 子 雲,核,あ
る い は イ オ ンの 平 衡 位 置 か らのず れ が起 こ り,
これ が 巨視 的 に は分 極 を形 成 す る とい う こ とは既 に述 べ た.誘 電 体 で この ず れ が 生 じた と き,逆 に そ の大 き さに比 例 して,核,あ
るい は イ オ ンを平 衡 位 置 に
も どそ う とす る復 元 力 は必 ず生 じ る.す る と,ミ ク ロ的 な1個 の分 極 は調 和 振 動 子 的 に な って,復 元 力 の 強 さ と振 動 子 質 量mと
に 関 連 した固 有 角 振 動 数 ω0
を もっ こ と に な る. 一 次 元 で,こ
の調 和 振 動 子 の運 動 を表 す と, (14・165)
で あ る.電 と な っ て,制
磁 波 の よ う な 振 動 電 場E*=E0eiωt中 動 項 ま で 含 め て,一
般 に,
にお か れ た場 合 に は 強 制 振 動
(14・166)
と書 け る.電 子 分 極 の場 合 で は,電 子 雲 の速 度 が 変 化 し,放 射 を生 じ,こ れ が 制 動 の役 目 を果 す.qは
電 荷,mは
振 動 子 質 量 を示 す.定 常 解 は, (14・167)
と な る が,x(t)は qx(t)で
平 衡 位 置 か ら の ず れ で あ る か ら,誘
表 さ れ,分 極 はNqx(t)で
導 双 極 子 モ ー メ ン トは
あ る.複 素 比 誘 電 率 εr*を 次 の 式 で 定 義 す る. (14・168)
す る と,
(14・169)
い ま, (14・170)
と お く と,ε’,ε"と
も角 周 波 数 ω の 関 数 と な っ て,
(14・171)
(14・172)
静 電 場 で は ω=0で,式(14・171),(14・172)か
ら,逆
に静 誘 電 率 が で て
(14・173)
こ の 場 合,分 (14・169)か
極 率 を α と す る と,P=NαE=e0(ε'-1)Eで
あ る か ら,式
ら,
(14・174)
と な る . 電 子分極
c/ν0∼300〔nm〕
で は αe∼10-40〔F・m2〕
と な り,固
で ,〓
有 振 動 数 は 光 の 領 域 で 紫 外 部 に な る .イ
で は 質 量 が 大 き い た め,ν0∼1013〔Hz〕,λ0∼30〔 る.ε'-1は,図14・38の 異 常 分 散(anormalous
, λ0=
よ う に,ω dispersion)と
∼ ω0の
と な っ て 赤 外 部 に く
近 傍 で 大 き く 変 化 す る .こ
い う.ε"は
は 電 磁 波 の 吸 収 で 共 鳴 吸 収(resonance
図14・38
μm〕
オ ン分 極
absorption)と
ω ∼ ω0で
れ を
極 大 を 示 す.こ
れ
呼 ば れ る.
誘電率の分散
比 較 的 動 き や す い永 久双 極 子 を も った 物質 で は,配 向分 極 の 時 間 的 変 化 を次 の よ うに考 え る.ま ず,電 場 が な くな る と と もに配 向分 極 は指 数 関 数 的 に減 少 す る と して, (14・175) こ こで,τ
は,分極
が 定 常 値P0(∞)の〓
に 減 小 す る 時 間 で,緩
和 時 間(rel-
図14・39
axation
time)と
い う.逆
に,零
配 向 分 極 の時 間 依 存
の 状 態 か ら電 場 が 加 わ っ て 定 常 値P0(∞)に
な る ま で の 変 化 は, (14・176)
と 表 さ れ る.こ
の 式 を 微 分 し た 形 は,
(14・177)
こ の 式 に,
(14・178)
の よ う に,εd,εd*を
き め て,代
入 す る と,
(14・179) こ こ で, (14・180) と お く と,
(14・181)
式(14・181)を
図 に 表 す と,図14・40の
図14・40
よ う に な る.εd'は,ω≪1/τ
誘 電 緩 和 と共 鳴 吸 収
,一 定 の値εdで 外部 電 場 に追 従 す るが ,ω=1/τ で は1に
な り,分
に近 づ くに つ れ減 小 し,ω≫1/τ
極 を 示 さ な くな る.εd〝はω=1/τ
れ は エ ネル ギ ー吸 収 で あ る.多
で は
の 近 傍 で 極 大 値 を 示 し,こ
くの永 久 双 極 子 を も った 物 質 で の,こ
の分 散 は
マ イ ク ロ波 の 領域 とな る. 電 子 分 極,イ オ ン分 極,配 向 分 極 の す べ を も った 物 質 の 全 分 極 は, (14・182)
の よ う に書 け るが,pの
電 磁 波 に対 す る分 散 は,図14・41の
以 上 の 振 動 電場 中 で の 比 誘 電 率 εrの分 散 の議 論 は,正
よ う に な ろ う.
確 に は誘 電 体 内 部 電
図14・41
分極の周波数 依存
場 で 記 述 し な け れ ば な ら な い. しか し,内
部 電 場 に し た 場 合 に は,固
ω0が 多 少 ず れ た と い う形 で 還 元 で き る の で,基 さ ら に,ε",εd"の は,電
変 化 が,電
有 振 動数
本 的 に は 同 じで あ る.
磁 波 エ ネ ル ギ ー の 吸 収 に 対応 す ると い う理 由
磁 気 学 の 誘 電 損 の と こ ろ を 参 照 して 理 解 す る ほ う が よ い が,こ
こ で は割
愛 す る. 結 果 の み を 述 べ る と,1/2ω ε0ε"E02は 誘 電 体 の 単 位 体 積 が 単 位時 間 に 吸 収 す る エ ネ ル ギ ー で あ っ て,こ
14・9 誘 電 体Ⅱ:強
れ は ε"に 比 例 す る.
誘 電体
前 節 で は,誘 電分 極pは 電 場 の強 さEに 比 例 す る と した. (14・183)
で あ る.と はEに
こ ろ が,あ
る種 の 誘 電 体 で は,こ
対 し て ヒ ス テ リ シ ス現 象 を 示 す も の が あ る.図14・42で,p=0の
女 試 料 に 電 場 を 加 え て い く と,ま ろ で,は
の 比 例 関 係 が 成 立 せ ず,さ
じ め てp∝Eの
な らず,Eが
零 で もprの
零 に す る に は,逆
ず0→bの
関 係 が 成 立 す る.電 残 留 分 極(permanent
向 にEcの
抗 電 場(coercive
よ う に 変 化 し,a点
処 を越 え た と こ
場 の 強 さ を 減 ら す と,p→0と polarization)が field)を
ら にp
残 る.こ
は れを
か け な け れ ば な ら な い.
図14・42
結 局,p
とEの
変 化 は,図
強誘 電 体 の ヒス テ リ シス
の よ う に,ヒ
ス テ リ シ ス 曲 線 を 描 く こ と に な り,過
去 に ど の よ う な 電 場 に 置 か れ た か で,現
在 の 誘 電 分 極 が き ま る こ と に な る.強
誘 電 体 の 誘 電 率 は,式(14・183)の
形 で は 定 義 で き ず,
(14・184)
の形 で 微分 的 に 定義 しな け れ ば な らな い. 〔1 〕 自 発分 極 強 誘 電 体 の こ の よ う な ヒ ス テ リ シ ス 現 象 は,そ ま ず 分 域 構 造(domain
structure)と
い う,あ
る こ と か ら説 明 さ れ る.図14・42で,pとEが す る と,Psは
値 をpsと
と 呼 ば れ る.強
誘 電 体 結 晶 の 内 部 に は,様
自 発 分 極(spontaneous 々 な 方 向 に,こ
女 試 料 で は,各
を 向 い て 分 布 して い る た め,全
る程 度 ミ ク ロ 的 な 領 域 が 存 在 す 比 例 す るb→a部
に 外 挿 したpの
多 数 の 細 か い 分 域 が あ り,処
の 結 晶 構 造 に基 因 す る もの で,
分 をE=0 polarization)
の 自発 分 極 を も っ た
分 域 で 自発 分 極 が ラ ン ダ ム な 方 向
体 と し て は分 極 は な い.電
場 を か け て い く と,
各 分 域 で の 自発 分 極 の向 きが 揃 い,遂 Psが 現 れ る.こ れ が 図14・42のa点
に は1つ の 大 きな 分域 とな って 自発 分 極 で あ る.分 域 境 界(domain
boundary)は,
この よ うに外 部 電 場 の下 で 移 動 す る.こ の 移動 の エ ネル ギ ー が0→aの
間 の電
場 に よ って与 え られ たの で あ る.電 場 を零 に した と き,残 留 分 極 が残 るの は, 結 晶 内部 に分 域 境 界 の移 動 エ ネル ギ ー の蓄 積 分 が あ る程 度残 るた め で あ る. 内部 電 場 を (14・185)
と し よ う.γ は 減 分 極 因 子(depolarization は1/3で
あ っ た.分
極 はp=NαEiで,こ
factor)でLorentz空 の 式 に 式(14・185)を
洞 電 場 の場 合 代 入 す る と,
(14・186)
が で る.E→0で の 可 能 性 は,α
も,Nα
γ/ε0→1の
が 大 き い 場 合,ま
p=ε0(εr-1)Eで
場 合 に は,Pの
解 は 存 在 す る.自
発 分極
た は γが 大 き い こ と が 条 件 と な る.
あ る か ら,こ
の 式 と 上 の 式 か ら は,
(14・187)
が で る.こ
の 式 をNに
つ い て 解 き,εrを
温 度 の 関 数 と考 え る と,
(14・188)
左 辺 の〓
と お く と,λ
は 体 膨 張 係 数 で あ る.εr≫1で
近似 す
る と,
(14・189)
(14・190)
こ の 式 は,T→Tcで
εr →∞ で あ る こ と を 示 し て い る.式(14・190)は
体 に お け るCurie-Weiss(キ と い う.強
ュ リ ー ・ワ イ ス)の
誘 電 体 の 温 度 を あ げ て い く と,Tc付
方 則 と い い,Tc
誘 電
をCurie温
度
近 で 自 発 分 極 は 消 え る.自
発
分 極 の 消 え る 温 度 を 熱 力 学 転 位 温 度 と い う こ と が あ る. 自 発 分 極 の 原 因 は,結 BaTiO3の
晶 構 造 に あ る と 先 に 述 べ た が,代
例 を あ げ て 説 明 しよ う.図14・43にBaTiO3の
図14・43
位 胞 の 中 で6個 酸 素8面
に 存 在 す るTi4+イ
1.32A,Ti4+の
の8面
酸 素8面
な わ ち 分 域 が 多 くあ り,こ
値 を と っ て い る の で あ る.
力 学 的 に み て,こ
の単
体 の 内 部 で 同 方 向 に変
の 分 域 が ラ ンダ ムに分 布 した
部 エ ネ ル ギ ー が 小 さ くな る の で あ る.こ 以 下 で は,結
半 径 は
の 空 間 の 中 で あ る程 度 自 由 に動
れ が 自 発 分 極 の 原 因 と な っ て い る.熱
位 した 小 さ な 集 合,す
れを
体 で 囲 まれ る内部
オ ンの 直 径 よ り も ず っ と 大 き い(O2-の
位 胞 の 多 数 の 集 合 か ら な る 結 晶 で は,Ti4+が
由 で,Curie点
結 晶 構 造
オ ン の 半 径 は 大 き く,こ
半 径 は0.64A).Ti4+は,こ
く こ と が で き,こ
ほ う が,内
結 晶 構 造 を 示 す.単
の 面 心 位 置 に い る 酸 素 イ オ ン は 八 面 体 を 形 成 して い る.こ
体 と い うが,O2-イ
空 間 は,中
BaTiO3の
表 的 な強誘 電 体
れ が 分 域 構 造 を 形 成 す る理
晶 全 体 の 位 置 エ ネ ル ギ ー が,こ
の よ うな 形 で 極 小
〔2〕
電 わ い,圧
電
結 晶 に 誘 電 分 極 が 生 じ る と,当 (electro striction)と
い う.逆
限 ら な い.図14・44(a)の
然 機 械 的 な ひ ず み を 生 じ る.こ
に,機 械 的 な ひ ず み は 誘 電 分 極 を 生 じさ せ る と は
よ う な 二 次 元 正 方 格 子 で,xま
を 生 じた と して も分 極 は起 こ らな い.こ の〓
れ は 中 心 の〓
た はy方
(a)
よ うな イオ ン配
対称性
向 に は 対 称 性 が な く,x,y方
向 の ひず み で分 極 が
起 こ る.構
械 的 な ひ ず み か ら分 極 が 生 じ る 効 果 を 圧 電 効 果(piezo
と い う.強
誘 電 体 で は,電
が あ る.こ
electricity)
場 を 一 度 か け た 後 に は 残 留 分 極 が で き て お り,こ
は 結 晶 の 対 称 性 が 失 わ れ た 形 で,圧 る係 数 と し て,電
近 接
(b) 図14・44
た はy方
向 にひず み
イ オ ン に 対 し て,最
イ オ ンが 対 称 性 を も って い る か らで あ る.図14・44(b)の
置 が あ る と,x,ま
れを電 わ い
電 効 果 が 大 き い.圧
気 ・機 械 結 合 係 数(electro-mechanical
れ
電 材 料 の良 否 を決 定 す coupling
coefficient)
れ は,
k=
√機 械 的 な形 で結 晶 中 に保 存 され る エ ネ ルギ ー/
電気的 な総入力 (14・191)
で 表 さ れ る.右
1/
2Yem2で
辺 の 平 方 根 中 の 分 子 は ひ ず み をem,ヤ
あ り, 分 母 は 加 え た電場
の 強 さ をEと
ン グ 率 をYと
す る と,1/2ε0εrE2で
す る と,
あ る.
14・10
磁
性
体
磁 性 体 に お い て,誘 Mで
あ る.磁
電 体 の 誘 電 分 極 に 相 当 す る も の は 磁 化(magnetization)
気 双 極 子 モ ー メ ン トをμmで
表 す と,磁
化 は単 位 体 積 当 た りの 磁
気 モ ー メ ン トに な る. (14・192)
μmの 単 位 は 〔A・m2〕 で あ る か ら,Mの 磁 場 の 強 さHの
単 位 と 同 じ に な り,磁
単 位 は 〔A/m〕
と な る.こ
の 単 位 は,
性 体 中 の 磁 束 密 度B〔Wb/m2≡T〕
は,
(14・193)
と 表 せ る.こ
の 式 を 磁 化Mの
定 義 と して も よ い. (14・194)
と お い た 場 合,χmを 〔1〕
で あ る.こ
磁 化 率(magnetic
れ を 式(14・193)に
susceptibility)と
い う.こ
の 単 位 は
代 入 す る と, (14・195)
た だ し,μrは
比 透 磁 率 で あ る.
磁 性 体 と し て,物
質 の 分 類 をχmを 使 っ て,次
の よ う に す る.
反 磁 性(diamagnetism)χm<0,│xm│:10-5
常 磁 性(paramagnetism) 準 強 磁 性(metamagnetism)
}
強 磁 性(ferromagnetism):ヒ
ス テ リ シ ス 現 象 を 示 し,χmは
強 磁 性 体 の 磁 化 曲 線 を 図14・45に μ0Msに (coercive
等 し い.Ms force)と
χm:10-3∼10-5
示 す.Bsを
大
飽 和 磁 束 密 度 と い い,こ
は 飽 和 磁 化 で あ る.Br を 残 留 磁 束 密 度,Hcを
い う.こ
れ は
保 磁 力
の よ う な ヒ ス テ リ シ ス現 象 を 示 す 強 磁 性 体 で は,
比 透 磁 率μrは,
(14・196)
か ら きめ られ な けれ ば な らな い の は,強 誘 電 体 の場 合 と同 じで あ る.こ の磁 化
図14・45
曲 線 で,原
点(消
磁 状 態)か
強 磁 性 体 の ヒス テ リシ ス
らBs=μ0Msま
で 磁 化 す る仕 事 は,
(14・197)
と な り,こ
れ は 磁 性 体 の 単 位 体 積 当 た り の 磁 化 エ ネ ル ギ ー で あ る.ヒ
ス 曲 線 で 囲 ま れ面
積 は,∮HdBで
表 さ れるが,
ネ ル ギ ー と し て 失 わ れ て し ま う量 に な る.こ loss)と
軟(soft)に
が 大 き く,ヒ
ー マ ロ イ,フ
い られ る.硬 る.KS鋼,MnBi等 B-H曲
こ れは 磁 化 エ ネ ル ギーが 熱 エ
れ を ヒ ス テ リ シ ス 損(Hysteresis
い う.
磁 性 体 を 硬(hard)と
鋼,パ
ス テ リシ
わ け る.軟
と は 最 大 透 磁 率〓
ス テ リ シ ス 損 が 小 さ い 材 料 で あ り,純
ェ ラ イ ト等 が こ れ に 該 当 し,変 圧 器,モ
は残 留 磁 束 密 度,保
磁 力 が 大 き く,永
鉄,け
い素
ー タの コア等 に 用
久磁 石 材 料 と して 用 い られ
が あ る.
線 の 飽 和 磁 化 は,誘 magnetization)と
電 体 の 場 合 と 同 じ よ う に,自
考 え る こ と が で き る.自
発 磁 化Ms(spon-taneous
発 磁 化 の 本 質 は,磁
性 体
を構 成 す る原 子 の 磁 気 モ ー メ ン トの 結 晶 構造 に よ る配 列 に起 因 す る.自 発 磁 化 を もっ強 磁 性 体 は完 全 な る消 磁 の 状 態 で も,そ の 自発 磁 化 を も った 小 さな範 囲 の小 磁石(分 域)の ラ ンダ ム な集 合 体 と考 え られ る.こ の小 磁 石 を磁 区(magn-etic domain)と
呼 ぶ.ま
た,そ の境 界 を磁 壁(domain
wall)と
い う.強 磁 性
体 の 表面 を十 分 に鏡 面 研 摩 し,そ の上 に コ ロイ ド状 の酸 化 鉄 粉 を ふ りか け,顕 微 鏡 で観 察 す る と,こ の 磁 区 が 観 察 で き る.同 一 磁 区 内 で の 自発磁 化 の方 向 は 同 じで あ るが,そ の 磁 区 構 造 は結 晶 の 性 質 によ って異 な る.体 心 立 方 の α鉄 を 例 に と る.α-Feは910℃
まで 安 定 なbcc構 造 を もっ が,磁 場 を 〈100〉
に か けた 場 合 に は容 易 に磁 化 し,〈111〉 も って い る.こ れ を 磁 気 異 方 性(magnetic
方 向 で は磁 化 は起 こ りに くい 性質 を anisotropy)と
向 に磁 化 す る場 合 に は磁 壁 の並 行 な移 動 が 起 こ り,Mの 全 体 が1つ の 磁 区 に な る.〈111〉
方向
い う.〈100〉
方
増大 と ともにや がて
方 向 で 磁 化 す る場 合 に は,磁
区 内の磁 極
の 回 転 が つ け加 わ り,余 分 の エ ネ ル ギ ーが 必 要 とな る.こ れ はFeの
結 晶異 方
性 の た め で あ る. 磁 性 体 を 磁 化 す る と き に 現 れ る機 械 的 な 変 形 を 磁 気 ひ ず み(magneto-striction )と い う.磁 化方 向 に 長 さが伸 び る.こ の こ とか ら磁 区 は 互 に 弾 性 的 な力 を 及 ぼ し合 って い る と考 え られ る.こ の 弾 性 エ ネル ギ ー も磁 区 の 形 を 左 右 す る一 因 で あ る.
14・11 磁 性 体Ⅱ:原
子磁気 モーメン ト
磁 性 体 にお け る反 磁 性,常 磁 性,強 磁 性 の区 別 は何 に起 因 す るの であ ろ うか. 前 節 で は,同 一 磁 区 の 中 で の原 子 の磁 気 モ ー メ ン トは同 一 方 向 に平 行 に並 ん で い る と した が,こ
の原 子 磁 気 モ ー メ ン トを分 析 して み る と,次 の よ うな要 因 が
考 え られ る. ① 原 子 核 の まわ りの電 子 の軌 道 運 動 に よ る磁 気 モ ー メ ン ト ② 電 子 の ス ピ ン(自 転)に
よ る磁 気 モ ー メ ン ト
③ 陽 子,中 性 子 の核 磁 気 モ ー メ ン ト 等
で あ る . 金 属 内 自 由 電 子 に よ る反 磁 性,常 (a) 軌 道 磁 気 モ ー メ ン ト(orbital 模 型 で は,正
磁 性 の 問 題 は別 に 論 じ る.
magnetic
dipole
moment)
Bohrの
電 荷 を も っ た 核 の ま わ り を 負 電 荷 の 電 子 が 回 転 し て い る.電
原子
図14・46
子 の
軌 道 磁 気 モ ー メ ン ト
角 速 度 を ω とす る と,1秒 間 に電 子 はω/2π 回 転 して い る. 電 流 は単 位 時 間 に, そ の断 面 を通 過 す る電 気量 で 表 され るの で,こ の-qの
電 荷 を も った電 子 の 回
転 を電 流 で表 現 す る と,-q・ω/2πであ る.電 子 軌 道 を 円 と し,そ の 半 径Rで 表 す と,こ の電 流 に よ る磁 気 モ ー メ ン トは,
(14・198) で あ る.一 方,電 子 質 量 をmと
す る と,そ の 角 運 動 量Lcは,式(11・68)の
よ う に,
(14・199)
υ は 電 子 の 速 度 を 表 して お り,lはLcを 主 量 子 数 で あ る.式(14・199)を
量 子 化 し た と き の 方 位 量 子 数,nは
式(14・198)に
入 れ る と,
(14・200) が で る.μBをBohr磁 さ て,原
子 と い う.
子 内 の 電 子 軌 道 の 状 態 は,次
主 量 子 数n:1,2,3,…
… ,n
の3個
の 量 子 数 で 表 さ れ る.
方 位 量 子 数 l:0,1,2,…
… ,n−1
磁 気 量 子 数 ml:l,l−1,…
…0,−1,−2,…
nは
主 エ ネ ル ギ ー 準 位 を き め,lは
… , −l
軌 道 角 運 動 量 の 大 き さ,mlは
外 部 磁 界 に 対 す る 方 向 成 分 を き め る量 子 数 で あ る.水 l =0,ml=0で,こ
素 は 基 底 状 態 でn=1,
の 電 子 は 角 運 動 量 を も た ず ,軌
道 磁 気 モ ー メ ン トも な い.
図14・47
の 場 合 は,l=1に
対 し て,角
す る こ と が で き,そ
の3個
で あ る.こ
運 動 量 の 方 向 成 分 がh,0,−hの3つ
の3個
道 磁 気 モ ー メ ン トが 存 在 す る の は,mlの 素 の 核 外 電 子 配 置 表 を み る と,最
道 の 価 電 子 を 除 い た 内 殻 で,mlが
欠 け た 状 態 に あ る の は,ま
か ら は じ ま る 鉄 グ ル ー プ で あ る.n=3,l=2の3d軌 0,+1,+2の5個
の 角 運 動 量 成 分 が あ っ て,10個 で は6個,ニ
の 不 足 が あ る.し
あ っ て,固
ッ ケ ル で は8個
か し,こ
とん ど 零 で あ る.こ
に配 向
の 状 態 が す べ て 電 子 で 満 た さ れ て い る 状 態 で は,合
の 一 部 が 欠 け て い る場 合 の み に な る.元
は1個,鉄
磁気量子数
こ で の 軌 道 磁 気 モ ー メ ン トの 成 分 は,
磁 気 モ ー メ ン トは 零 に な る.軌
のs,p軌
角運動量 の
成
状態 外殻 ずSc
道 に はml=−2,−1, の 電 子 が 入 れ る が,Scで
の 電 子 しか な く,そ
れ ぞ れ9,4,2個
れ ら の 元 素 で 軌 道 磁 気 モ ー メ ン トを 測 定 す る と,ほ
の 原 因 は,3d軌
体 結 晶 と な っ た と き に,隣
道 が 価 電 子 軌 道(4s,4p)の
す ぐ内 側 に
接 原 子 と の 相 互 作 用 を 受 け や す く,磁
モ ー メ ン トが 外 部 磁 場 方 向 に 配 向 し難 い か らで あ る.こ
気
れ は誘 電 体 に お け る 永
久 電 気 双 極 子 が 固 体 で は 凍 結 さ れ て し ま う性 質 に 似 て い る.Ce58∼Tm69で
の
4f軌
道(n=4,l=3)で
て い る の で,軌
の 電 子 不 足 は 価 電 子 軌 道6s よ り大 分 内 側 に 位 置 し
道 磁 気 モ ー メ ン トが 観 測 さ れ る.
(b) 電 子 の ス ピ ン 磁 気 モ ー メ ン ト(spin
magnetic
で 核 を 中 心 と して 回 転 して い る と と も に,電 ス ピ ン 角 運 動 量 を も っ て い る.こ
moment)電
子 は原 子 内
子 自身 の 回 転 が あ り,こ
れ による
の ス ピ ン角 運 動 量 は 量 子 論 か ら,
または
ス ピ ン量 子 数
(14・201)
で 表 さ れ る.Zeeman効
果 か ら ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン トを 計 算 す る と,
また は と な り,こ
の μsは 式(14・200)の2倍
図14・48
の 形 に な っ て い る が,外
子 の 数 は2の
例 え ば,Na原
あ る .こ
倍 数 で あ る た め,合
子 は1個
部 磁 場 の方 向
ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン ト
の 磁 気 モ ー メ ン トの 成 分 は-μBか+μBで は,電
(14・202)
の場 合 も閉 じ ら れ た 殻 で
成 ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン トは 零 に な る.
の 価 電 子 に よ る ス ピ ン 磁 気 モ ー メ ン ト を も つ が,Na+
イ オ ンで は 合 成 ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン トは 零 で あ る.鉄 れ て い な い3d殻(n=3,l=2)の
グ ル ー プ は完 全 に 満 た さ
電 子 ス ピ ン配 置 に よ り,合
成磁 気 モー メ
ン トを も つ こ と に な る. し か し,こ 用 で き な い.鉄
れ らの 元 素 が 固 相 の 金 属 結 晶 状 態 に な っ た 場 合 は,表14・1は で は1原
と は 違 っ て い る.こ
子 当 た りのBohr磁
子 の 平 均 値 は2.2μBで,表
の 原 因 は 結 晶 構 造 に あ り,遷
適 の4μB
移 金 属 の 帯 構 造 か ら説 明 さ れ
表14・1
鉄 グル ー プの3d状 (Ca,Cuは
態 と合 成 ス ピ ン
比 較 の た め)
る。 磁 場 中 で の 角 運 動 量 ベ ク トル の 回 転 を 考 え よ う.図14・49で
(a)
(b)
図14・49
磁 場Bに
よ っ て 角 運 動 量Lに
直 で あ る.こ
の た あLは
紙 面 に垂直 な
角 運 動 量 ベ ク トル の 回 転
働 く トル ク は μ ×Bで,こ
回 転 し,そ
れ は,磁
の 角 速 度 を ω と す る と,t秒
場 とLに
垂
間 で の角運 動
量変化 は
(14・203) 電 子 の 軌 道 運 動 の 場 合 に は,μ 入 す る と,
→ μc,L→Lcで
式(14・200)の
関 係 を代
(14・204)
電 子 の ス ピ ン角 運 動 量 の 場 合 で は,μ → μs,L→Lsで,式(14・201),(14・ 202)の
関 係 を 代 入 す る と,
(14・205)
が で る.ωc,ωsは
それ ぞれ 軌道 角運 動 量,ス
ピ ン角運 動 量 の 回 転 の 固 有 角 周
波 数 で あ る と考 え られ,外 部 か ら加 え られ た電 磁波 に対 して,こ の角 周 波 数 で 共 鳴吸 収 が 起 き る. そ の共 鳴角周 波 数がqB/2mの1倍
で あ るか2倍
で あ るか に
よ って,磁 気 モ ー メ ン トの原 因 が軌 道 角 運 動 量 に よ る もの か, また は ス ピ ン角 運 動 量 に よ る もの か が 判 別 で き る こ とに な る. ス ピ ン量 子 数 をs=±1/2で
表 す と, 式(14・200)と
式(14・202)は,
(14・206)
の よ う に な る.gをGyro磁 (g-factor)と
気 係 数(Gyro
い う.Ni,Co,パ
magnetic
ー マ ロ イ 等 はgの
ratio),ま
た はg因
値 が2∼2.2で,強
子
磁性 の
原 因 が ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン トで あ る こ とが わ か る. (c) 陽 子,中
性 子 の 磁 気 モ ー メ ン ト 陽 子,中
倍 程 度 で あ る.Bohr磁 大 き さ はBohr磁
子 と 同 じ よ う に,こ
子 の10-3以
下 に な っ て,磁
性 子 の 質 量 は 電 子 質 量 の1840
れ ら の 核 磁 子 を 計 算 す る と,そ
の
性 に 入 って く る要 因 と して は あ
ま り に 小 さ い. (d) 自 由 電 子 に よ る 磁 性 金 属,半 殻 で は 永 久 磁 気 モ ー メ ン トは な い が,自 磁 性 は,次
導 体 等 で 価 電 子(自
由 電 子)を
由 電 子 あ る い は 伝 導 電 子(正
除 い た閉 孔)で
の
の よ う に 考 え られ る.
① 個 々 の 自 由 電 子 が ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン トを も ち,そ で 配 向 す る こ と に よ って で き る ス ピ ン常 磁 性(Pauliの
れ らが外 部 磁 場 の下 常 磁 性)
② 自 由電 子 が軌 道 運 動 をす る こ とに よ って で きる反 磁 性(Landau反
磁性)
③ さ らに,閉 殻 中で 核 の まわ りの軌 道 運 動 の変 動 が 起 こる こと に よ る反 磁 性(Larmorの が あ る.③
反 磁 性)
は軌 道 角 運 動 量 ベ ク トル の歳 差 運 動 に よ る もので,こ れ か ら計 算 し
た 反 磁 性 の 磁 化 率 は10-5程 度 とな り,実 測 値 と ほぼ一 致 す る.例 え ば,Cuの χmは-0.9×10-5で
あ る.物 質 の 電 子 構 造 が 温 度 に よ って 変 わ らな い とす れ
ば,こ のχmも 温 度 依 存 性 が な い.χm=μr-1で μr≒1と
あ るか ら,反 磁 性 物 質 で は
して 差 支 え な い.
以 上 述 べ た原 子 磁 気 モ ー メ ン トの理 論 か ら磁 性体 の分 類 を して み よ う.原 子 が 永 久 磁 気 モ ー メ ン トを も って い な い と きに は 反 磁 性 体 に な る(Pauliの
常磁
性 か らの寄 与 は僅 か に あ る). 永 久磁 気 モ ー メ ン トを もって い る物 質 で は,原 子 ど う しの相 互 作 用 が な い場 合 は常 磁 性 と な るが,相 互 作 用 が強 く働 いて モ ー
図14・50
各 種 磁 性 の 磁 気 モ ー メ ン トの配 向
メ ン トの向 きが 揃 い,磁 区 を 形 成 す る場 合 は強 磁 性 に な る と考 え られ る.強 磁 性 の 場 合 に は大 き な残 留 磁 化 が 生 じる.磁 性 体 に は ま た,反 romagnetism),あ
る い は フ ェ リ磁性(ferrimagnetism)と
強 磁 性(antifer‐
呼 ばれ る ものが あ る.
反 強 磁性 体 で は隣 接 す る永 久磁 気 モ ー メ ン トが 相 互 作 用 に よ り互 に反 平 行 に整 列 した場 合 で,フ
ェ リ磁性 で は この反 強 磁性 の2つ の 副 格 子 の 大 き さが 違 って
い る.フ
ェ リ磁 性 で は そ の た め か な り の 大 き さ の 磁 化 が 生 じ る こ と に な る.
14・12
磁 性 体Ⅲ
:Langevinの
常 磁 性,Weissの
強 磁 性 理 論
ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン ト μBを もつ 原 子 の 集 合 体 を 考 え る.原 /m3〕
と す る.外
部 磁 場 が か か ら な い と き に は,磁
場 の 向 きに ス ピ ンを もっ 原
子 と 磁 場 と逆 向 き に ス ピ ンを も つ 原 子 の 数 は 等 し く,磁 束 密 度Bの
磁 場 が あ る と き の 磁 化 をMで
を もつ 原 子 数 をNp〔1/m3〕,反
表 す.こ
子 密 度 をN〔1
化 は な い.温
度Tで
磁
の と き磁 場 と 平 行 な ス ピ ン
平 行 な ス ピ ン を も つ 原 子 数 をNa〔1/m3〕
とす
る と, (14・207)
外 部 磁 場 に平 行,反 平 行 の ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン トの エ ネ ル ギ ー を そ れ ぞ れ
図14・51
Wp,Waと
ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン トの配 向 に よ る エ ネ ル ギ ー状 態
す る と,Wa>Wpで
そ の 差 は, (14・208)
した が っ て,こ
の 原 子 の 集 合 がBoltzmann統
計 に 従 う と す る と,
(14・209)
式(14・209)の 207)に
関 係 とNa+NP=Nの
関 係 か らNa,Npを
出 し て,式(14・
代 入 す る と,
(14・210)
が 得 ら れ る.こ
の 式 は,ス
ピ ン磁 気 モ ー メ ン トの み が 磁 化 に 寄 与 す る と し た と
図14・52
き のLangevinの
常 磁 性 を 表 す.低
Langevin関
温,強
数
磁 場 で はtanh(
)→1で,す
の 磁 気 モ ー メ ン トが 磁 場 に 平 行 に 整 列 す る こ と に な る.磁 tanh(
)≒(
べて
場 が 弱 い と き に は,
)で
(14・211)
と な る.実
際 の 常 磁 性 体 で は,こ
き μBB∼10-23〔J〕
で,一
ら,μBB/kTは10-2の
方,室
の 式(14・211)が
適 用 で き る.Bが1Tの
温(300K)でkT∼4×10-21〔J〕
と であ るか
桁 に な っ て い る.
磁 化 率χmは
(14・212)
と 表 せ る.こ
の 式 は,常
る.N∼5×1028〔1/m3〕
磁 性 体 のCurieの
法 則,CはCurie定
に と っ てχmを
計 算 す る と,室
数 といわれ て い 温 で10-3と
な り,通
常 の 常 磁 性 体 で の 測 定 値 と一 致 す る(反 磁 性 のχm∼10-5も
含 ま れ る が,).こ
こ で も,比
磁 性体 は断熱 消磁
に よ っ て,極 Langevinの
透 磁 率 は 近 似 的 に μr∼1と 低 温(<1K)を
得 る の に 用 い ら れ る.
常 磁 性 で の 理 論 で は,各
が な い と し た.強
し て 差 支 え な い.常
原 子 の 磁 気 モ ー メ ン トは 全 く相 互 作 用
磁 性 体 で 飽 和 磁 化 が106A/m程
度 にな るパ ー マ ロ イで の 磁
束 密度 を 常温 で 計 算 して み る と,
と い う大 きな 値 に な って しま う.実 際 に は,こ の10-6程
度 の 磁 場 で十 分 で あ
る.強 磁 性 体 が 容 易 に磁 化 す る の は磁 区 が 向 きを 揃 え るか らで あ り,こ れが 自 発 磁 化 で あ る.Weissは,こ
の 自発 磁 化 の原 因 を 各 原 子 の 磁 気 モ ー メ ン トの 相
互 作 用 で あ る と考 え,任 意 の原 子 に働 く内 部 磁 場 は外 部磁 場 に加 え て,そ の原 子 の磁 気 モ ー メ ン トを 平 行 に しよ うとす る隣 接 原 子 の 磁 気 モ ー メ ン トか らの寄 与 が あ る と した. (14・213)
γを 内 部 磁 場 定 数 あ る い はWeiss定 子 で あ る.こ
の 式 を 式(14・210)に
数 と い い,相
互 作 用 の 強 さ を き め る因
代 入 す る と,
(14・214)
と な る.高
温 領 域 で はtanh{}≒{}と
な り, Mに
つ い て 解 く と,
(14・215)
と な り,磁
化 率χmはM/Hで
あ る か ら,
(14・216)
と な る.こ
の 式 をCurie-Weissの
と い う.θ(実
式 と い い,θ
は 強 磁 性 体 に お け るCurie温
際 に は こ れ よ り若 干 小 さ い 温 度)以
上 で,強
磁性 体 は常 磁 性 体 に
転 位 す る. 上 の 式 を 常 温 で の 強 磁 性 体 に 適 用 す る と,γ の 値 は103以 強 磁 性 体 内 の 相 互 作 用 は 極 め て 大 き い こ と が わ か る.強 tz空 洞 電 場 で は γ は1/3に 論 で は 到 底 説 明 で き な い.強
す ぎ な か っ た.こ
度
上 に な り,
誘 電 体 に お け るLoren-
の 強 い相 互 作 用 の 原 因 は 古 典 理
磁 性 体 内 部 に 生 じ る こ の 強 いWeiss磁
力 学 的 に は 隣 接 し た 電 子 ス ピ ン 間 の 交 換 相 互 作 用(exchange
場 は,量
interaction)と
子 し
て 説 明 さ れ た.ス
ピ ンSiを
もつ 原 子 と ス ピ ンSjを
もつ 原 子 と の 間 の ポ テ ン シ ャ
ル ・エ ネ ル ギ ー は, (14・217)
の 形 で 表 現 さ れ, Jが
+ の 場 合,Si〃Sjで,Wijは
Jが−
場 合,SiとSjは
と す る.Jは
極 小 に な り,安
反 平 行 で,Wijは
交 換 積 分(exchange
integral)と
定
極 小 に な り,安
電 的 な 相 互 作 用 に 基 い て 生 じ る エ ネ ル ギ ー で あ る.Pauliの 異 種 ス ピ ン ど う し は 近 づ け る が,同 力 的 に い え ば,ス あ り,ス
ピ ンを 平 行,あ
は,J>0で,そ
る い は 反 平 行 に した 形 で,こ
の 交 換 力 ポ テ ン シ ャル を
か し,量 子 論 的 にJの
符 号 お よ び大 き さを 任 意 素 で はJ<0で
あ り,Fe
の 値 は 大 き い.
自由 電 子 模 型 に よ る分 子 の 吸収 波 長 の計 算
エ チ レ ン(H2C=CH2)の れ ぞ れ の 炭 素 原 子 に1つ 素 原 子 に2つ
禁 制 率 に よ れ ば,
種 ス ピ ン ど う し は 近 づ け な い.Coulomb
の 物 質 で 計 算 し得 る と い う ま で に は 至 っ て い な い.水
14・13
子 間 の静
ピ ン 間 に 働 く力 は 同 種 ス ピ ン間 と 異 種 ス ピ ン間 で 異 な る の で
極 小 に して い る わ け で あ る.し
やNiで
定
呼 ば れ る 積 分 量 で,電
共 鳴 構 造 式(14・218)に
よ れ ば,π
電子 が そ
ず つ 属 し て い る よ う な 構 造 式 も 書 け る が,片
と も属 す る よ う な 構 造 式 も ま た 可 能 で あ る.こ
ン の 原 子 軌 道 模 型 に お い て,重
な り を も つ 2 つ の2pz軌
電 子 を 配 置 で き る こ と か ら も 明 ら か で あ る.
図14・53
エ チ レンの 原 子 軌 道 模 型
方 の炭
の こ と は,エ
道 の1つ
に2個
チ レ の π
(14・218)
一 般 に,図14・54の
よ う な 鎖 状 共 役 ポ リエ ン系 で は,π 電 子 が2N個
の2pz
軌 道 の 重 な り の 間 を 自 由 に 行 き 来 し て い る モ デ ル を 考 え る こ と が で き る.こ よ う な 自 由 電 子 模 型 に つ い て,こ
れ を 数 学 的 に 取 り扱 う際 に,次
の3つ
の
の
を お く.
図14・54
鎖 状 共 役 ポ リエ ン系 の構 造 式
① σ電 子 と π電 子 は 相 互 作 用 し な い. ② 共 役 ポ リエ ン系 の π電 子 は 完 全 に 自 由 で は な く,鎖
をつ くって い る炭 素
原 子 の 引 力 に 基 づ く ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー 場 の 中 を 運 動 し て い る が, こ れ を 箱 型 の 一 定 ポ テ ン シ ャ ル で 近 似 す る. ③ と り あ え ず π 電 子 が1つ を 計 算 す る. す る と,水 ま る か ら,複
しか な い と仮 定 し て,い 素 原 子 の 場 合 の よ う に,い
数 個 の 電 子 は,Pauliの
わ ゆ る1電
子波動関数
くつ か の 波 動 関 数 が 求
原 理 に 従 って,こ
れ ら の 軌 道 に順 次
配 置 で き る も の と す る. 以 上 の 仮 定 の も と に,こ
の モ デ ル で は 分 子 の 炭 素 鎖 に そ っ た 一 次 元 のSchro-dinger
方 程 式 を 解 け ば よ い.ま
た,求
め た い の は エ ネ ル ギ ー 差 で あ る か ら,
② の 仮 定 か ら ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー は 零 と 考 え て よ い.し
た が っ て,Schr-odinger
方 程 式 は,
(14・219)
と な る. 境 界 条 件 と して,実 解 は,
効 炭 素 鎖 の 長 さ をLと
お け ば,式(14・219)の
(14・220)
と な る. こ の よ う に し て 得 られ た エ ネ ル ギ ー 準 位 に2pz道 エ ネ ル ギ ー の 低 い ほ うか らPauliの
の 数 に 相 当 す る 電 子 を,
原 理 に 従 っ て,1つ
の 原 子 軌 道 に2個
ず つ
入 れ て 行 く. π電 子 数 が2N個(n=2N)の ブ タ ジ エ ン で はN=2で
場 合 の 軌 道 エ ネ ル ギ ー を 図14・55に あ る か ら,こ
の 分 子 の 基 底 状 態 は,図(a)
示 す.
に 相 当 す る.
電 子 の 入 って い る軌 道 の な か で最 もエ ネ ル ギ ー の 高 い もの を 最 高 被 占 軌 道 (HOMO:highest
occupied
図14・55
molecular
orbital), 電 子 が 入 っ て い な い 軌 道 の
分 子 軌 道(ψ1∼ψn)へ
の2N個
の電 子 配 置
な か で 最 も エ ネ ル ギ ー の 低 い も の を 最 低 空 軌 道(LUMO:lowest molecular
orbita1)と
道 に あ る電 子 の1つ
呼 ぶ.共 がψN+1以
役 ポ リ エ ンが 光 を 吸 収 す る と,ψ1∼φNの 上 の い ず れ か の 軌 道 に 遷 移 す る.こ
最 も エ ネ ル ギ ー 差 の 小 さ な も の は,HOMOか の と き の エ ネ ル ギ ー 差 をΔEと
unoccupied
らLUMOへ
す れ ば,式(14・220)よ
の な か で,
の 遷 移 で あ る.こ り,
軌
(14・221)
Eと
λ と の 間 に〓の
関 係 が あ る か ら,
(14・222)
h,cお
よ びmに
既 知 の 値 を 代 入 して,
(14・223)
と な る. 以 上 の こ とか ら,吸
収 極 大 波 長 λmaxを 計 算 す る に は,実
か れ ば よ い.通
常Lは,図14・56の
部 分 の 長 さpに
分 け て 考 え る.共
0.14nmで
あ る.r=0.14cos30°
図14・56
よ う に,共
効 共 役 鎖 長Lが
役 鎖 の 平 均 長rと,分
子 末端
役 ポ リ エ ンの 炭 素 −炭 素 結 合 の 長 さ は,平 と し,pはrに
ブ タ ジ エ ンに お け るLの
わ
等 しい と仮 定 す る と,ブ
均 タジ
長 さ,N=2
エ ン のLは, (14・224)
と な る.こ 値 は207nmで
れ を 式(14・223)に あ る.
代 入 す れ ば,λmax=242〔nm〕
と な る. 実 測
こ の 方 法 で は,Lの
大 き さ を 変 え れ ば λ も変 わ る.共
共 役 系 の 一 端 か ら他 端 ま で 動 き ま わ る こ と が で き る.し 属 中 の 電 子 の よ う に 自 由 で は な い.ブ の 炭 素 間 の 結 合(r1)と,2番 ほ う がr2よ
alternation)と
呼 ぶ.つ
合r1に
電 子 を 見 出 す 確 率 よ り も大 き い.こ 自 由 に 動 き う る と い う仮 定 は,共
の 動 き は,金
目 の 炭 素 と2番
目 の 炭 素 間 の 結 合(r2)は
り も二 重 結 合 性 が 大 き い.こ
ま り,結
か し,こ
タ ジ エ ン の 場 合,1番
目 の 炭 素 と3番
で は な く,r1の
役 ポ リ エ ンの π電 子 は,
れ を 結 合 交 替(bond
π電 子 を 見 出 す 確 率 は,結
の こ と よ り,電
目
同等
子 がLの
合r2に
π
長 さ にわ た って
役 ポ リエ ン系 で は 極 端 す ぎ る 仮 定 で あ る こ と
が わ か る. 1,3-ペ
ン タ ジ エ ン の メ チ ル 基 か らH-1を
除 去 し た 構 造 を 考 え て み る.ブ
タ ジ エ ン と類 似 の 共 鳴 構 造 式 が 書 け る が,こ
ん ど の場 合 は両 者 と もエ ネ ル ギ ー
的 に 等 価 で あ る か ら,r1,r2,r3,r4は,い
ず れ も単 結 合 と 二 重 結 合 の 中 間
の 性 質 を 示 す と予 想 さ れ る.し
の よ う な 構 造 の 分 子 で は,結
た が っ て,こ
替 は ほ と ん ど な い と 考 え て よ い か ら,ブ
合交
タ ジ エ ン と比 べ る と,π
電 子 がず っ と
こ の よ う な性 質 を も っ 一 連 の ポ リ エ ニ ル カ チ オ ン(図14・57)の
吸 収 スペ
自 由 に 動 き ま わ れ る 系 で あ る.
ク トル の 実 測 値 か ら 最 小 二 乗 法 に よ っ て,r,pを
求 め る と,こ
の 系 列 に対 し
て 最 も適 当 な値 を 定 め る こ と が で き る. 計 算 で 求 め た 値 は,r=0.113〔nm〕,p=0.158〔nm〕 妥 当 な 値 で あ る.こ 表14・2に
示 す.mの
の よ う に,結 る.
の 値 を 式(14・224)に
と な り,物
理的 に も
代 入 して 求 め た 計 算 値 と実 測 値 を
広 い 範 囲 に わ た っ て 実 測 値 と か な り良 い 一 致 を 示 す.こ
合 交 替 の 少 な い 系 で は,自
由 電 子 模 型 に よ る 取 り扱 い が 可 能 で あ
図14・57
表14・2
ポ リエ ニ ル カ チ オ ンの 構 造 式
ポ リ エ ニ ル カ チ オ ン(図14・52)の (T.S.Sorensenに
よ る)と
吸 収 ス ペ ク トル の 実 測 値
計 算 値
練 習 問 題
1. 空 洞 放 射 に 関 す るPlanckの
式,ま
たDebyeの
〔14〕
比熱 の 式 に 現 れ る
を 自分 で や って み よ.
2. 長 さaの 一 次元 金 属 中 の電 子 に,時 間 に 依 存 し な いSchrddingerの 用 して,定 常 解 を得 ると き,内 部 で の ポ テ ンシ ャル を0と
方 程式 を適
し,波 動 関数 に ψ(0)=
ψ(a)の 周 期 的境 界 を適 用 す る と,ど の よ うな解 が得 られ る か.
3. 半 導 体 で の電 子 濃度 は,
とな るが,こ の 積 分 を 自分 で や って み よ.
4. 誘 電 体 の内 部 電 場 と して,Lorentzの
空 洞 電 場 の計 算 が あ る.
で あ る. この計 算 方 法 を調 べ よ.
5. 誘 電 体 に お け るClausius-Mosottiの
式
を 導 け.
6. Langevin関
を,縦
係
軸 にL(a),横
軸 にaを
勾 配[L(a)/a]a=0は1/3に
と っ て グ ラ フ に 描 け.こ な っ ているこ
の グ ラ フ で,原
点 にお け る
とを確 か め よ.
7. 強誘 電 性 を示 す物 質 を調 べ,そ れ らの物 質 で の 強 誘電 性 が,ど の よ う な結 晶 構 造 か ら生 じて い るか を考 え よ.
8. Larmorの て み よ.
軌 道電 子 運動 の 歳 差 運 動 に よ る反 磁 性 理 論 を調べ,そ の大 きさ を見 積 っ
練習問題 の解答
第1章 気体の分子運動論
1.
(1) pV=νRTで,p=10-2〔Pa〕,V=1〔m3〕,R=8.3144〔J/mol・K〕,
T=300〔K〕
で,1molの
分 子 数 は6.023×10231/molで
あ る か
ら,
〔個 〕
(2) 一 次 元 で は,
で あ る が,N2分
子 の 質 量mは,モ
T=300〔K〕
で は,
ゆ え に,
(3)
ル 分 子 量28×10-3kgか
ら,
(4) 速 さ がυ とυ+dυ
の 間 に い る分 子 数 の割 合 は,
で あ る か ら,
(5)
で あ る か ら,
2.
の積 分 は
(n=2rの
と き)
(n=2r+1の
3. 断 熱 自 由 膨 張 で は,内 等 温 の ま ま 体 積 がVか
部 エ ネ ル ギ ー の 変 化 は な く,等 ら2Vに
変 わ っ た の で,1molの
と き)
温 と 考 え る こ と が で き る. エ ン ト ロ ピ ー 変 化ΔSは,
第2章 特殊相対性理論 1. Lorentz短
縮 の 式〓
を 使 う.
解 図1
(1)
(2)
2.
K(x,y,t),K'(x',y',t)で
のLorentz変
で あ る か ら, (1) u(ux,uy),u’(ux',uy')と
の 変 換 は,
換 は,
(2) 式(2・74)か
ら,p(px,py),p'(px’,py')で,
で あ る.
こ こ で,〓 (3) 式(2・75)か
ら,
(4) 式(2・76)か
ら,
(5) 式(2・77)か
ら,
第4章 量 子 効 果 の現 れ る実 験 例
1.
1239.81(nm)
2. h=6.4×10-34〔J・s〕,hν0=W=1.9〔eV〕
3. 1.24×10-11(m),tanθ=0.806
第8章 物 理 量 を求 め る方 法
1.
にSchrodinger方
程式
を 適 用 して 計算 す る と,
を 得 る.ゆ
え に,
2.
第9章
1. 箱 の 幅 をaと
Schrodinger方
す る と,式(9・43)よ
程 式 の簡 単 な モ デ ルへ の応 用
り,
2. た だ し,〓
x=aで,ψ
お よび
〓が 連 続 で あ るか ら,
た だ し,〓
ゆ え に, kcotha=−K
第11章 水 素 原 子
1. 基底 状 態 の 波動 関数
核 か らの距 離 がrとr+drと
〓よ りcを
2. 省 略 3. 省 略
の 間 に 見 出 され る確 率 は,
き め て,
第12章 原 子 の電 子 配 置 と元 素 の周 期 律
1.
(ⅰ)
(1s)2(2s)2(2p)6
(ⅱ)
(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6
(ⅲ)
2. (ⅰ) (ⅱ)
(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6(3d)10(4s)2(4p)6
(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6(3d)5 (1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6(3d)10
第13章 原 子 や 電 子 集 団 の取 扱 い
1. 〓
はE=μ
G(E)=∫EZ(E)dEでG(E)を
で 鋭 い ピ ー ク を も ち,両
側 で は 急 速 に0と
定 義 す る .G(0)=0と
な る.
す る.
(1)
(2) ま た,
(3)
(4) (5)
た だ し,式(4)の
ζ(2n)は
リー マ ンの ζ関数
(6)
2. (1)
た だ し,〓
0〔K〕 の 場 合 (2)
(3) 前 問 を用 い て,
(4)
を代 入 して,第2近
式(4)に,〓
似 まで 求 め る と,
(5)
内 部 エ ネ ル ギ ーEに
つ い て は,
(6)
式(6)に
式(5)を
代 入 して,
第14章 量 子 論 の 応 用例
1.
2. 〓
一 般 解 の形 を〓
の周 期 的 境 界 条 件 か ら解 く. とす る.
ゆ え に,〓で〓 ゆ え に,
と な る.
係 数Cは,〓から,
3.
で,〓
積 分 範囲 は 同 じで,
4. 解 図2に 示 す空 洞 で,dS上
dSを2πr2sinθdBに
に あ る電 荷 は,
す る と,
こ のdσ に よ って 生 じる θ方 向 の電 場 は,こ の 表 面 電 荷 が 中 心 に お い た単 位 電 荷 に及 ぼ す 力 で,
解図2
この電 場 の外 部 電 場 方 向 の成 分 は,こ のcosθ 倍 で,球 面 全 体 で 積 分 す る と,
5.
で,p=ε0(εr-1)Eで
あ る か ら,
6.
cosh〓sinh〓で,aが小さ
の で,
い
こ れ ら の 第2項
ゆ え に,aが
7. Rochelle塩
8. 磁 場Hが
ま で と る と,
小 さい
ろ で は,〓
と な り ,〓
グ ル ー プ,KDP(KH2PO4)グ
と な る.
ル ー プ な ど が あ る.
変 動 して,電 子 の軌 道 面 を横 ぎ る磁 束 が 変 わ る と,軌 道 電 子 はLenzの
法 則 に よ り,自 己 の磁 界 が外 部 磁 界 変 化 を 打 ち消 す よ う に変 化 す る.こ の た め 運 動 が 変 わ る.解 図3で,ト
ルク
解図3 は,角 運 動 量 ベ ク トルpの 先 端 を磁 界Hの
解図4
方 向 を 中心 軸 と して 回転 させ る.こ れ が
Larmorの
歳 差 運 動 で,
軌 道 運 動 で は,〓
で,
こ の ωL乙に よ る 磁 気 モ ー メ ン トは,電
磁 化 は,原 子 濃 度 をn,Zを1原
M=χH=μ0χHで
流 を〓
と す る と,
子 当 た りの 電 子 数 とす る と,
あ る か ら,
反 磁 性 体 の 比 磁 化 率 は,い
ず れ も こ の 程 度 で あ る.物
グ ラ フ ァ イ ト,Cu,Au,Ge,Si,Se,A1203等
質 と し て は ダ イ ヤ モ ン ド,
が あ る.
付
録
■ 付 録1 元 素 の 記 号 と原 子 量
z 元
素
英
語
記 号 原 子 量 H 1.00794
z 元
素
英
語
38 ス ト ロ ン チ ウ ム Strontium
記 号 原 子 量
1 水 素
Hydrogen
2 ヘ リ ウ ム
Helium
He 4.00260
39 イ ッ ト リ ウ ム
Yttrium
Sr 87.62 Y 88.9059
3 リ チ ウ ム
Lithium
Li 6.941
40 ジ ル コ ニ ウ ム
Zirconium
Zr 91.224
4 ベ リ リ ウ ム
Beryllium
Be 9.01218
41 ニ オ ブ
Niobium
Nb 92.9064
5 ホ ウ 素
Boron
B 10.811
42 モ リ ブ デ ン
Morybdenum
Mo 95.94
6 炭 素
Carbon
C 12.011
43 テ ク ネ チ ウ ム
Technetium
Tc (98)
7 窒 素
Nitrogen
N 14.007
44 ル テ ニ ウ ム
Ruthenium
Ru
101.07
8 酸 素
Oxygen
O 15.9994
45 ロ ジ ウ ム
Rodium
Rh
102.906
9 フ ッ素
F1uorine
F 18.9984
46 パ ラ ジ ウ ム
Palladium
Pd 106.42
10 ネ オ ン
Neon
Ne 20.179
47 銀
Silver
Ag
107.868
11 ナ ト リ ウ ム
Sodium
Na 22.9898
48 カ ド ミ ウ ム
Cadmium
Cd
112.411
12 マ グ ネ シ ウ ム
Magnesium
49 イ ン ジ ウ ム
Indium
In 114.82
Mg
24.3050
13 ア ル ミ ニ ウ ム
Aluminium
AI26.9815
50 ス ズ
Tin
Sn 118.710
14 ケ イ 素
Silicon
Si 28.0855
51 ア ン チ モ ン
Antimony
Sb 121.75
15 リ ン
Phosphorus
P 30.9737
52 テ ル ル
Tellurium
Te 127.60
16 硫 黄
Sulfur
S 32.066
53 ヨ ウ 素
Iodine I
17 塩 素
Chlorine
CI 35.4527
54 キ セ ノ ン
Xenon
Xe 131.29
18 ア ル ゴ ン
Argon
Ar 39.948
55 セ シ ウ ム
Cesium
Cs 132.905
19 カ リ ウ ム
Potassium
56 バ リ ウ ム
Barium
Ba 137.327
20 カ ル シ ウ ム
Calcium
Ca 40.078
57 ラ ン タ ン
Lanthanum
La 138.906
21 ス カ ン ジ ウ ム
Scandium
Sc 44.9559
58 セ リ ウ ム
Cerium
Ce 140.115
22 チ タ ン
Titanium
Ti 47.88
59 プ ラ セ オ ジ ム
Praseodymium
Pr 140.908
23 バ ナ ジ ウ ム
Vanadium
V
60 ネ オ ジ ム
Neodymium
Nd
144.24
24 ク ロ ム
Chromium
Cr 51.9961
61 プ ロ メ チ ウ ム
Promethium
Pm
(145)
25 マ ン ガ ン
Manganese
Mn 54.9381
62 サ マ リ ウ ム
Samarium
Sm
150.36
26 鉄
Iron
Fe 55.847
63 ユ ウ ロ ピ ウ ム
Europium
Eu 151.965
27 コバル
ト
K 39.0983
50.9415
126.904
Cobalt
Co 589332
64 ガ ド リ ニ ウ ム Gadolinium
Gd
157.25
28 ニ ッ ケ ル
Nickel
Ni 58.69
65 テ ル ビ ウ ム
Tb
158.925
29 銅
CoPPer
Cu 63.546
66 ジ ス プ ロ シ ウ ム Dysprosium
Dy
162.50
30 亜 鉛
Zinc
Zn 65.39
67 ホ ル ミ ウ ム
Holmium
Ho
164.930
31 ガ リ ウ ム
Gallium
Ga 69.723
68 エ ル ビ ウ ム
Erbium
Er 167.26
32 ゲ ル マ ニ ウ ム
Germanium
Ge 72.61
69 ツ リ ウ ム
Thu1ium
33 ヒ 素
Arsenic
As 72.9216
70 イ ッ テ ル ビ ウ ム Ytterbium
34 セ レ ン
Selenium
Se 78.96
71 ル テ チ ウ ム
Lutetium
Lu 174.967
35 臭 素
Bromine
Br 79.904
72 ハ フ ニ ウ ム
Hafnium
Hf 178.49
36 ク リ プ ト ン
Krypton
Kr 83.80
73 タ ン タ ル
Tantalum
Ta 180.948
37 ル ビ ジ ウ ム
Rubidium
Rb 85.4678
74 タ ン グ ス テ ン
Tungsten
W
Terbium
Tm
168.934
Yb 173.04
183.85
z 元
素
英
語
記 号 原 子 量
z 元
素
英
語
Rhenium
Re 186.207
90 ト リ ウ ム
76 オ ス ミ ウ ム
Osmium
Os 190.2
91 プ ロ トア クチニ ウム Protactinium
77 イ リ ジ ウ ム
Iridium
Ir 192.22
92 ウ ラ ン
Uranium
78 白 金
Platinum
Pt 195.08
93 ネ プ ツ ニ ウ ム
Neptunium
79 金
Gold
Au 196.967
94 プ ル ト ニ ウ ム
Plutonium
Pu (244)
80 水 銀
Mercury
Hg 200.59
95 ア メ リ シ ウ ム
Americium
Am
(243)
81 タ リ ウ ム
Thallium
TI 204.383
96 キ ュ リ ウ ム
Curium
Cm
(247)
82 鉛
Lead
Pb 207.2
97 バ ー ク リ ウ ム
Berkelium
Bk (247)
83 ビ ス マ ス
Bismuth
Bi 208.980
98 カ リ ホ ル ニ ウ ム Californium
Cf
84 ポ ロ ニ ウ ム
Polonium
Po (209)
99 アイ ン スタイ ニウム Einsteinium
Es (252)
85 ア ス タ チ ン
Astatine
At
(210)
100 フ ェ ル ミ ウ ム
Fm
(257)
86 ラ ド ン
Radon
Rn
(222)
101 メ ン デ レ ビ ウ ム Mendelevium
Md
(258)
87 フ ラ ン シ ウ ム
Francium
Fr (223)
102 ノ ー ベ リ ウ ム
No
(259)
88 ラ ジ ウ ム
Radium
Ra
103 ロ ー レ ン シ ウ ム Lawrencium
Lr (260)
89 ア ク チ ニ ウ ム
Actinium
Ac (227)
104 クル チ ャ コ ビ ウ ム Kurtschakovium
Ku
(226)
Thorium
記 号 原 子 量
75 レ ニ ウ ム
Fermium
Nobelium
Th 232.038 Pa 231.036 U 238.029 Np (237)
(251)
(261)
■ 付 録2
原 子 の 核 外 電 子 配 置 表 z:元素番号[]:
希ガス構造
n:主
量 子 数,s:l=0,p:l=1,d:l=2,f:l=3
〓k
■ 付 録3 よ く使 う数 学 公式
(a) Stirlingの
公 式
(b) ベ ク トル 解 折
grad
,
div
φ :ス カ ラ ー 量
〓 V (a,b,c):ベ
ク
トル 量
div・grad〓
rot〓
Greenの ク トル をnと
定 理 :閉 曲 面Sで
囲 まれ た 立体 領 域 をV,Sの
す る とdS=ndSで,Vを
外 側 に 向 か う単 位 法線 ベ
含 む領 域 で定 義 さ れ た ス カ ラー量divF,
ま た φ につ い て,
Stokesの
定 理 :有 向 曲 面 をS,そ
nと す る とdS=ndSで,Sを
の 境界 の 閉 曲線 をC,Sの
含 む領 域 で定 義 さ れ た ベ ク トル量F,ま
いて,(dr=idx+jdy+kdz)
(c) 級 数 展 開 Taylor展
Maclaurin展
開 :f(x)に
単 位 法 線 ベ ク トル を
対 しx=aを
開 :Taylor展
中 心 と す る展 開
開 でx=0と
す る級 数
た∇ φ に つ
(d) 定 積 分 (n:正
の 整数)
(n:正
の整 数)
(n:正
の整 数)
(n:整
数)
((a-b)
(n:正
の 整 数)
:奇 数),=0((a-b):
(e) Hermiteの
偶 数)
多項式
〓のn次 式 を い う.nが
偶 数 の と き はk=n/2,nが
の多項
奇 数 の と き はk=(n-1)/2と
す る.
微分方程式
を満足 し,〓
は(-∞,∞)の
数 に対 す る完 全 正 規 直 交 系 を つ くる.フ
範 囲 で2乗
ー リエ 変 換 に 対 して 不 変 で あ り,演
〓の固有関数 に な って いる. 固 有 値 は2n+1で (f) Legendreの Legendre関
を い う.sに
あ る.
多項式 数 の 一 種Pnで,nが
つ い て の 和 は,nが
ま で と る.Legendreの
Legendreの
が 積 分 可能旨な 関
陪(同
陪微 分 方程 式 は
正 の整 数 の と き
偶 数 の と き はn/2ま 伴)多
項 式 は,こ
のPnを
で,奇
数 の と き は(n-1)/2
使 って
算子
で,m=0と
お け ばLegendreの
微 分 方 程 式 に な る.Pnm(x)は,区
間[-1,1]
で 正 規 直 交 系 を つ く る.
(g) Laguerreの
多項式
を い う.Laguerreの
Laguerreの
陪 多 項 式 は,こ
陪 微 分 方 程 式 は,
で,m=0と
お け ばLaguerreの
[0,∞]で
れ を 使 って
微 分 方 程 式 が 得 ら れ る.e-x/2・Ln(x)は,区
間
自 乗 が 積 分 可 能 な 完 全 正 規 直 交 関 数 系 を つ く る.
(h) 球面 調 和 関 数 Laplaceの zのn次
方 程 式∇2φ(x,y,z)=0を
み た す 調和 関 数 で,直 交 座 標 系x,y,
同 次 関 数 を 体 球 関 数 と い い,角 度 部 分 をn次
の 球面 調 和 関 数 と い う.微 分
方程 式
は,す
べ て の 中 心 力 場 に 共 通.0≦
θ ≦ π,0≦
φ ≦2π
の 空 間 で,一
価 関数 と
し て の 解 は λ=l(l+1),l=0,1,2,…
の と き だ け 存 在 し,各lに
対 し
て,
で 定 義 さ れ る2l+1個 で あ る.
の 球 面 調 和 関 数 が 解 に な る.Pe│m│はLegerldreの
陪多 項式
索 あ行
―の 関 係 式
外 部 光 電効 果
121
化 学 ポ テ ン シ ャ ル
191
拡 散
16
208
拡 散 係 数
17
47
拡 散 の 式
17
Einstein ―関 数
引
―の 吸 収 係 数
202
拡 散 方 程 式
17
―の 自 然 放 射 係 数
200
確 率 振 幅
63
29
確 率 密 度
―の 相 対 性 理 論
1電 子 近 似 異 常 分 散 位 相 空 間
55
22020
活 性 化 エ ネ ル ギ ー
17
255
価 電 子 帯
232
換 算 質 量
15
49
慣 性 系
29
234
慣 性 力
29
196,235
位 相 速 度 移 動 度
63,91
重 ね 合 わ せ の 原 理
間接 遷 移 形(indirect 運 動 量 空 間
transition) 半 導 体
12,26
緩 和 時 間 np積
一 定 の 法 則
n形 半 導 体
エ ネ ル ギ ー 等 配 則 エ ル ゴ ー ド性
103,125 4,6
Curie-Weiss ―の式
274
―の法 則
261
Curie温 度
177,179
エ ン ト ロ ピ ー
24
規格 化
液 晶
23
気 体 分 子運 動 論
演 算 子
235,255
246 246
エ ネ ル ギ ー 固 有 値
240
110,112
274 7,64,127,133 1
基 底 状 態
150
軌 道 角 運動 量
161
軌 道 磁 気 モ ー メ ン ト
266
基 本 並 進 ベ ク トル
219
か 行
Galilei変
換
31,34
逆 格 子 空 間
220
固 有 時
46
吸 収 極 大 波 長
278
固 荷 質 量
42
球 面 調 和 関 数
166
固 有 値 112
共 鳴 吸 収
255
固 有 値 方 程 式
巨視 的 状 態
24
禁制 帯幅
Clausius-Mosottiの 空 間 格 子
さ行 244
式
250 20
空 洞 196
結 合 交 替
279
結 晶格 子
20
限界 振 動 数
91,112
72
最 高 被 占軌 道
277
最 低 空軌 道
277
残 留 磁束 密 度
263
残 留 分極
258
Dulong-Petit(デ
ュ ロ ンープ テ ィー) の法 則
Schrodinger方
程 式
87,89,91
原 子 磁 気 モ ー メ ン ト
265
Gyro磁
減 分 極 因子
260
g因 子
270
σ電 子
276
Compton
気 係 数
22,205
270
磁化
263
―効 果
73
磁 化 率
263
―波 長
75
磁 気 異 方 性
265
交 換 関 係
113
磁 気 量 子 数
162,164
交 換 子
113
仕 事 関 数
交 換 積 分
275
自乗 平 均 根 速 度
交 換 相 互 作 用
274
自然 放 射
200
62,73
自発 分 極
259
光 子
73,117 4
光 速 度 不 変 の 原 理
35
磁 壁
265
光 電 効 果
72
周 期 的 境 界 条 件
214
自由 キ ャ リア
243
抗 電 場
258
光 量 子
73
黒 体 固 有 関 数
71,195 103,112
自由 行 程
14
自由 質 点 エ ネル ギ ー
44
自由 電 子
143,213
縮 退
166,244
主 量 子 数
150,160
断 熱 消磁
小 正 準 集 合
179
力 の変 換 則
小 正 準 分 布
179
調 和振 動 子
状 態 の 収 縮
69
状 態 密 度
273
46 128
直接 遷 移 形(direct
transition) 半 導 体
216,232
状 態 密 度 関 数
217
真 性 半 導 体
246
242
Debye ―温 度
211
182
―関 数
211
198
―振 動 数
211
ス ピ ン
164
定 圧 モ ル比 熱
5
ス ピ ン磁 気 モ ー メ ン ト
268
定 常 状 態
ス ピ ン常 磁 性
270
定 容 モ ル比 熱
ス ピ ン量 子 数
164
定 容 比 熱
Stirlingの
公 式
Stefan-Boltzmannの
法 則
29 5 23
電 気 ・機 械 結 合 係 数 正 孔
228
電 子 対 生 成
262 75
静 止 エ ネ ル ギ ー
44
電 子 配 置
173
静 止 質 量
42
電 子 分 極 率
249
正 準 集 合
183
電 子 有 効 質 量
245
正 準 分 布
183
伝 導 キ ャ りア
零 点 エ ネ ル ギ ー
145
伝 導 帯
閃 亜 鉛 鉱(ZnS)形
結 晶 構 造
242
de Broglie(ド 速 度 合 成 則
39
速 度 空間
243 230,239
7
・ブ ロー イ)
87
ドー ピ ング
246
ドリフ ト速度
234
導 電 キ ャ リア
232
た行
特 殊 相 対 性 理 論 ダ イ ヤ モ ン ド構 造
239
第1Brillouin領
域
224
第2Brillouin領
域
225
29 な行
内 部 磁 場 定 数
274
Fermi
熱 速 度
233
熱 放 射
71
熱 力 学 転 位 温度
261
―分 布 関 数
232
―粒 子 Bragg(ブ
171,187
ラ ッ グ)反
射
223
Planck
は行 ― 定 数
Pauliの
原 理
―の排 他 律 Hartree(ハ
ー ト リー)近
Hamilton演
算 子
173 171,173 似
220
111,137
71
―の 熱 放 射 式 Bloch(ブ
195,197
ロ ッ ホ)関
数
221
フ ェ ル ミ準 位
217,238
フ ェ ル ミ分 布 関 数
236,237,245
π電 子
275
フ ォ ト ン
62
配 向分 極
251
フ ォ ノ ン
207
波 束 の収 縮
69
負 温 度 状 態
波 動 性
49
不 確 定 性 原 理
半 導 体
237
p形 半 導 体
246
ヒ ス テ リシ ス損
204 77,80
分 域 境 界
260
分 域 構 造
259
分 散 関 係
88
264
分 配 関 数
183
微 視 的 状 態
24
分 布 関 数
非 晶質
23
比 電 気 感 受 率
246
閉 殻
微 分 演 算 子
161
平 均 寿 命
8,12
175 14,16,201,233
平 均 自 由 行 程
Fick ―の 第 一 法 則
17
―の第 二 法 則
17
Fermi-Dirac ―統 計
187,191
―の 分 布 則
232
―分 布
187
― 分 布 関数 193
14,16,234
変 数 分 離
139
Bohr
147 ―磁 子
266
―の 振 動 数 条 件
149
―半 径 Bose-Einstein(ボ タ イ ン)
83,149 ー ズ-ア
インシュ
― 統計
187,197,207
―分 布
186
―分 布 関 数 191 Bose粒
子
誘 電 分 極
247
輸 送 現 象
16
輸 送 の 式
19
186,197 ら行
Boltzmann ―定 数
4,180
―の 諭 送 方 程 式
Lagrange
236
―の 未 定 定 数 法
189
ポ ン ピ ン グ
205
―関 数
160
方 位 量 子 数
162
―の 陪 微 分 方 程 式
160
方 向 量 子 化
163
Larmorの
飽 和 磁 束 密 度
263
Langevin関
保 磁 力
263
Landau反
反 磁 性
271
数
252
磁 性
271
ま行 Ritzの Michelson-Morleyの
実 験
Maxwell-Boltzmann統 Maxwellの
計
速 度 分 布 則
31
Rydberg定
148
数
148
186,206
粒 子 性
49
6,10,13
量 子
71
量 子 効 果
71
Minkowski力
47
メ ー ザ ー
結 合 則
量 子 数
125
量 子 統 計
184
203 Legendre
モ ル 屈 折
250
―の 陪 関 数
158
―の 陪 微 分 方 程 式
157
や 行
有 効 質 量
227
Rayleigh-Jeansの
有 効 質 量 近 似
228
レ ー ザ ー
有 効 状 態 密 度
245
励 起 状 態
245
Lorentz-Lorenzの
有 効 状 態 密 度 質 量 誘 導 放 射 誘 導 放 射 係 数
200,201 202
放 射 式
198 203 150
式
250
Lorentz ―の 空 洞 電 場
248
―変換
34,37,47
わ行 Weiss ―定 数
274
改訂 量子物理 学入 門 物質工学 を学ぶ人のために 1990年4月10日 第1版1刷 1994年3月20日 第1版4刷 1995年3月20日 第2版1刷 2007年3月20日 第2版6刷
発行 発行 発行 発行
著 者 青 野 朋 義 尾 林 見 郎 木 下 彬
学校法人 東京電機 大学
発行所 東 京電 機大 学出版 局 代表者 加藤康太郎 〒101-8457
東 京 都 千代 田 区神 田錦 町2-2 振 替 口座 00160-5-71715
印刷 三美印刷㈱ 製本 渡辺製本㈱ 装丁 高橋壮一
〓 Aono
電 話 (03)5280-3433(営
業)
(03)5280-3422(編
集)
Tomoyoshi
Obayashi Tikao Kinoshita Akira Printed in Japan *無 断 で転 載 す る こ とを禁 じ ます。 *落 丁 ・乱 丁 本 はお取 替 えい た します 。 ISBN978-4-501-61400-3
C3042
1990,1995
理工学講座 電磁気学
基礎 電 気 ・電子 工 学 宮 入 庄 太/ 磯 部 直 吉 監 修 2色 刷
東 京 電 機 大 学 編 A5判 266頁
電 気の基礎/電気 回路/ 半導体デバ イス/電 子 回路/エネル ギー変換機 器 とその応用/電 子機 器 とその応用
電磁気 学のベク トル解析/真空 中の静電界/ 誘電体 中の電界/電 流/真空 中の磁気現象/ 磁性体 中の磁気現象/電磁誘導/電磁界
照 明工学講義 新訂版
制御工学
A5判
312頁
関 重 広 著 A5判 200 頁
深 海 登 世 司/ 藤 巻 忠 雄 監 修
総 論/電球/螢光灯/放電灯/照明計算/昼 光 照明/照明の生理 と心 理/色彩 と照 明/照 明 器具/屋 内照 明/屋外照 明/測光/放射
序論/制御 系の構成 とブロ ック線図/制御系 の特性/ フィー ドバ ック制御系の安定判別/
シ ステム工 学入門
BASICシ
A5判
186頁
ス テ ム工 学 松 永 省 吾 著 A5判
2色 刷
本 書 を学 ぶ に あ た っ て/ シス テ ム工 学 概 論/ プ ロゼ ク トの た め の 最 適 化 計 画 法/ プ ロゼ ク トにお け る諸 問題 の 考察
2色 刷
設計/ サンプル値制御/ シーケ ンス制御
松 永 省吾 著 A5判
270頁
250頁
「システム工学入門」の姉妹編 線形計 画法/動 的計画法/PERT計 画法/最 適配 置問題/待 ち行列
電気通信概論
電子工学概論 倉 石 源 三 郎/ 丹 野 頼 元 監 修 A5判 260頁 電子 回路 の基礎/構成部品/ダイオー ドと ト ラ ンジスタ/集積回路/基本電子回路/電子 計算機/ 電気通信/電子計測器/応用分野
荒 谷 孝 夫 著 A5判 154頁 2色 刷 通信 システムの概要/伝送媒体/信号の処 理 /信 号の伝送/信号の交換/環境別各種伝送 方式/情報別各種通 信方式
半導体工学
例 題演習
マ イ ク ロ波 回 路
基 礎 か らデ バ イス まで 倉 石 源 三 郎 著 A5判
310頁
伝 送 線 路/ 電 磁波/ 導 波 管/ 共 振 回 路 とフ ィ ル タ/MICと ス ト リ ップ 線 路/ フ ェ ライ トと マイ ク ロ波/ マ イ ク ロ波 電 子 回 路
* 定 価,図
青 野 朋 義/ 本 間 和 明 他 著 A5判 352頁 2色 刷 基礎的性 質/ダイオー ドとバ イポーラ トラ ン ジスタ/電 界効果 トラ ンジス タ/集積 回路/ 光電 素子/他の半導体デバイス/製造技術
書 目録 の お 問 い 合 わ せ ・ご要 望 は 出 版 局 まで お 願 い致 しま す.
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