光 フ ァイバ通信概 論
榛葉
實 著
東京電機大学出版局
本 書 の全 部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作 権 法 上 で の例 外 を 除 き,禁 じ られ て い ます。 小 局 は,著 者 か ら複 写 に係 る 権 利 の管 理 につ き委 託 を受 け て い ます の で,本 書 か らの 複写 を希 望 され る場 合 は,必 ず小 局(03-5280-3422)宛 ご連 絡 くだ さい。
ま え が き
光 通 信 は,電 気 に よ る通 信 が 行 わ れ る以 前 に,古
くは狼 煙(の ろ し)に よ る通 信
あ る い は灯 火 を用 い た光 の 点 滅 に よ る モ ー ル ス通 信 な ど い ろ い ろ の形 態 で行 わ れ て き たが,こ れ らは ご く限 られ た範 囲 で の通 信 で あ った.そ の 後,有 線,無 よ る通 信 の 発 展 と と も に光 通 信 はそ の 陰 に埋 もれ て きたが,レ
線に
ー ザ の発 明 と と も
に光 通 信 が再 び盛 ん に な る気 配 が で て き た.し か し,適 当 な伝 送 媒 体 が 無 く当 時 は空 間伝 搬 に よ る通 信 な ど が取 り上 げ られ た.空 間 伝 搬 に よ る通 信 で は,霧 に よ る減 衰 が大 き く公 衆 通 信 網 に使 うた め に は中 継 間 隔 を 数百 m以 下 に しな けれ ば な らな い状 態 で あ り実 用 的で は な か った. そ の後,光
フ ァイバ の低 損 失 化 の め ど が立 ち,光
の基 幹 回 線 と して,ま
たLAN等
フ ァイ バ通 信 は 今 日の 通 信 網
の特 定 範 囲 の 回 線 と して,さ
らに は各 家 庭 ま で
の加 入 者 回 線 に も導 入 され よ う と し,マ ル チ メ デ ィア の時 代 に は無 くて はな らな い通 信 方 式 と な って き た. 本 書 は,こ の よ うな 現状 か ら最 近 の光 フ ァイバ 通 信 の主 要 技 術 につ い て解 説 し た もの で あ る.従 来 か らこの分 野 の 著 書 は多 数 出 て い るが,本 書 の 特 徴 は 内容 を 厳選 し,あ ま りペ ー ジ数 を増 や さず必 要 事項 を記 述 した点 にあ る. 特 に電 気 ・通 信 系 の学 部 学 生 を対 象 に した 授 業 の 教 科 書 と して使 用 す る こ とを 目的 に執 筆 した.全 部 で 8章 か らな り,半 年 の講 義 で終 了 す る こと を前 提 と して い る.内 容 的 に は,電 気 回 路 理 論, 電 磁 気 学,通
信方 式 等 の基 礎 的 な理 解 力 が あ
れ ば技 術 の基 本 か ら解 説 して い る の で本 書 の 内容 は十 分 に理 解 で き,一 般 の 人 々 の知 識 の 整 理 に も役 立 っ も の と考 え て い る. 本 書 が,光
フ ァイバ 通 信 の 教 科 書 と して,ま
入 門書 と して 役 立 っ こ とを願 う もの で あ る.
た光 フ ァイバ 通 信 に関 わ る人 々の
単位 系 は特 に 断 らな い 限 り はSI単 位 系 と し,記 号 等 は電 気 系 で 使 わ れ て い る記 号 を使 用 した.ま た,各 章 の末 に は演 習 問 題 を あ げて お い た の で理 解 を 深 め るた め に も問題 を 解 くこ と を勧 め る. 記 述 に あ た って は,な る べ く平 易 に分 か りやす く記 述 す るよ う努 め た が,著 者 の独 断 や思 い 違 い な ど の た め不 十 分 な点 もあ ると思 わ れ る の で,こ れ らの点 は読 者 の ご意 見 に よ り修 正 して い きた い と考 え て い る. お わ り に,本 書 の執 筆 に あ た り,参 考 に させ て い た だ い た文 献 等 の 著 者 お よ び 東 京 電 機 大 学 出版 局 の方 々 に深 く感 謝 の意 を表 し ます.
1999年
6月
榛葉 實
目 次 1.序 論 1 1.1光 通信 の歴史 2 1.2光
ファイバ通信 の原理 4
1.3光
フ ァイ バ通 信 の特 徴 5
(1)低 損失 5 (2)広 帯 域 6 (3)無 誘 導 6 (4)細 径 6 (5)軽 量 7 1.4電 波 と光 と電磁波 7 2.光 フ ァイバ 9 2.1光
の反射 と屈折 9
2.2光
フ ァイ バ の種 類 と原 理 11 (1)光
フ ァイバ の分 類 11
(2) 開 口数 12 2.3誘 電体 ス ラブ導波路 13 (1) スラブ導 波路の構造 13 (2) マ ク ス ウ ェル 方 程 式 の 解 14
(3) スラブ導波路 の固有値 17 (4) モ ー ドに よ る伝搬 特 性 の差 19 2.4 ス テ ップ イ ンデ ック ス形 フ ァイバ 20 (1)弱 導 波 フ ァイ バ の近 似 解 24
(2) 分散特性 26 2.5 グ レー デ ッ ドイ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ 26
2.6 シ ング ル モ ー ドフ ァイバ 29 2.7光
フ ァイバ の減 衰 特 性 31
(1) 減衰特性 31 (2)接 続 33 2.8光
フ ァイ バ の製 造 法 33 (1)光
フ ァイバ 母 材 の製 法 33
(2)線 引き 36 (3)光
フ ァイ バ ケ ー ブ ル 36
演習問題 37 3.半 導体 レーザ 39 3.1半
導体 レーザの原理 39 (1) 基本原理 39 (2) 誘導放出 41
3.2半
導体 レーザの構造 43 (1) ブ ロ ー ドコ ンタ ク ト形 ホ モ接 合 レー ザ 43 (2) ス トライ プ形 ダ ブ ル ヘ テ ロ レー ザ 44
(3)分 布帰還形 レーザ 44 (4) 複合共振器 レーザ 45 3.3 発 振特 性 46 (1) レー ト方程式 46 (2) 静特性 ' 47 (3) 直接変調 48 (4) 周 波数 安定化 50
演習問題 54 4.光 フ ァイバ増 幅器 55 4.1 原 理 55
4.2特
性 56
4.3 フ ァ イ バ レ ー ザ 57
演習問題 61 5.光
検 波 器 62 5.1 PNフ
ォ トダ イ オ ー ド 62
(1) 動作原理 62 (2)感 度 63 5.2 PINフ
ォ ト ダ イ オ ー ド 64
5.3 ア バ ラ ン シ ェ フ ォ ト ダ イ オ ー ド 66
5.4雑 音 67 演習問題 69 6.光
回 路 素 子 70
6.1相 反性 回路素子 70 (1) レ ンズ 70
(2) 回折格子 71 (3) 偏光子 72 (4) 方向性結合器 73 (5) 位相変調器 75 (6) 強度変調器 77 (7) フ ァ ブ リ ペ ロ エ タ ロ ン 78
6.2非
相反素子 81 (1) ア イ ソ レー タの 原 理 81 (2) ア イ ソ レー タの 構造 81
演習問題 82 7.符 号誤 り率 84 7.1 直接検波方式 84 7.2 符 号 誤 り率 85
演習問題 88
8.光
フ ァイ バ 通信 89
8.1 ア ナ ロ グ通 信 方 式 89
(1) 直接 変調 89 (2) 高周波重畳変調 91 (3) 副搬送波変調 法 92 8.2 デ ィ ジ タル通 信 方 式 93 (1) 直 接 強 度 変調 一 直 接 検 波 方 式(IM-DD)
93
(2) 外部変調法 94 (3) ソ リ トン伝送 方 式 95 8.3 コ ヒー レン ト伝 送 方 式 96
(1) 位相変調 96 (2) 周波数変調 96 (3) ヘ テ ロダ イ ン検 波 97 (4) ホ モ ダ イ ン検 波 100 (5) 偏 波 ダ イバ シ チ 101 8.4 波 長 多 重,周 波数 多重 伝送 方式 101 8.5 実 用 光 フ ァ イバ伝 送 方 式 103
(1) 陸上方式 の例 103 (2) 海底方式 104 演習問題 104 参考文献 106 演習 問題解答 108 付 録 111 索 引 118
1.
序 論
有 線 伝 送 方 式 は裸線 路 を 用 いた モ ール ス符 号 の 伝 送 に始 ま り,ベ ル の電 話 の発 明(1876年)以
後 本格 的 な 発達 を 見 る こ とに な る.伝 送 路 と して は,裸 線 路 か ら
平衡 対 ケ ー ブ ル,同 軸 ケー ブル と進 ん で きた が 大 容 量 化 に と もな い使 用 周 波 数 範 囲 も広 帯 域 に な り,そ れ に つ れ て 中 継 間 隔 も短 縮 され,標 準 同 軸 ケ ー ブ ル を使 用 した60MHzの
ア ナ ロ グ伝 送 方 式(伝 送 最 高 周 波 数60MHz,電
お よ び400Mbit/sの ㎞
話 換 算10,800ch)
デ ィ ジ タル伝 送 方 式(電 話 換 算5,760ch)で
は 中 継 間 隔 が1.5
の短 距 離 に な った.
一 方,無 線 伝 送 の方 はヘ ル ッの電 磁 波 の存 在 を 示 す 実 験(1888年)の ば ら くの 間 実 用 的 な動 き はな か った.そ の後,マ に始 ま り,VHF方 4GHzか GHz帯
ル コ ー ニ の 無 線 電 信(1896年)
式 を経 て マ イ ク ロ波 方 式 の全 盛 期 を迎 え,中
ら 6GHzの 方 式 で は50㎞
後 は,し
と長 か った.そ の 後,さ
継 間 隔 も周 波 数
らに使 用 周 波 数 を20
に まで 伸 ば したが,降 雨 に よ る減 衰 が 大 き く中 継 間 隔 は 6㎞
程 度 しか 得
る こ とが で きな か った. そ の 間,ミ
リ波 円形 導波 管伝 送 等 の研 究 が な され1968年
円形 導 波 管 1本 で双 方 向 に30万chの
頃 に は 内 径51㎜
の
電 話 伝 送 の 可 能 性 が 確 認 され た が,伝 送 路
の 曲 が りに よ る減 衰量 の増 加,導 波 管敷 設 後 の減 衰量 の 変 化 等 解決 しな けれ ば な らな い多 くの 問題 が あ った. ち ょ う どそ の 頃,光
フ ァイ バ に よ る伝 送 の研 究 が 始 ま り,今 まで の どの 伝 送 路
よ り も中継 間 隔 が長 く,伝 送 路 の 曲 が りに よ る減 衰量 増 加 も少 な い こ とが 分 か っ た.
ま た,半 導 体 レー ザ 等 の研 究 も急 速 に進 み 非 常 に魅 力 的 な 方 式 で あ る こ とが次 第 に 明 らか に な り,今 日の光 フ ァイバ 伝 送 の 隆 盛 を 見 るに 至 っ た の で あ る. 1.1
光通信 の歴史
光 を用 い て通 信 を行 な う こ と は い ろ い ろな 形 で 古 くか ら行 わ れ て きた.例 え ば, 狼 煙(の ろ し)を使 って遠 方 へ 信 号 を 伝 達 す る方 法 や,投 光 器 を 使 い光 の点 滅 に よ りモ ー ル ス符 号 を伝 送 す る方 法 な どが あ る時 代 に は広 く行 わ れ て い た.ま た,太 陽光 を レ ンズ で集 光 し振 動 板 に よ り太 陽 光 を 変 調 し,音 声 信 号 を 伝 送 す る実 験 も 行 わ れ た.し か し,こ れ ら は無 線 通 信 の 初 期 の 火 花放 電 に よ る電 波 を利 用 した通 信 と同様,特 定 の周 波 数 を 用 いて 情 報 を 伝送 す る方式 で は な か った. 本 格 的 に光 通 信 が取 り上 げ られ た の は,1960年
代 に半 導 体 レ ー ザ が 発 明 さ れ
て コ ヒー レ ン トな光 が 用 い られ る よ うにな って か らで あ る.ま た,初 期 の光 通 信 で は伝 送 媒 体 と して ま だ低 損 失 の 光 フ ァイバ が で きて お らず,空 間 伝 送,ビ
ーム
ガイ ド伝 送 等 も検 討 され て いた. 空 間伝 送 は地 表 で は,雨 や 霧 の 影 響 が 大 き く安 定 な伝 送 路 を 確 保 す る た め に は 中継 間隔 を数 百 メ ー トル以 下 に しな けれ ば な らず,特 殊 な用 途 以 外 に は用 い る こ とが困 難 で あ った.ま た,ビ ー ム ガ イ ドは焦 点 距 離 の長 い レ ン ズ列 を 用 い そ の周 囲 を遮 蔽 す る こ とに よ り雨 や霧 当 の 影 響 を受 け無 い伝 送 路 を作 る こ とが で きるが, 地 震 等 に よ る レ ンズ の軸 ず れ等 が 起 こ り長 期 的 な安 定 性 に 問題 が あ った. 一 方,光
フ ァイ バ は初 期 に は減 衰 量 が 極 め て 大 き く数 千dB/㎞
で危 ぶ ま れ た が,1970年
代 に 波 長0.63〓
で20dB/㎞
も あ り実 用 面
の光 フ ァイ バ が 実 現 して
か ら急 速 に損 失 低 下 の研 究 が行 わ れ,最 終 的 には現 在 使 わ れ て い る よ う な低 損 失 な光 フ ァイバ が広 く用 い られ る よ う にな った. 半 導 体 レ ー ザ の 発 振 は,1962年 ム砒 素(GaAs)を
にGE,MITお
よ びIBMの
用 い た レ ー ザ で 初 め て 観 測 さ れ た.し
か し,当
ザ は 連 続 発 振 が で きず 極 低 温 で の パ ル ス 発 振 の み で あ っ た.そ 在 の 光 フ ァ イ バ の 最 低 損 失 波 長1.55〓 体 レ ー ザ が 完 成 さ れ,光
で,室
3社 で 同 時 に ガ リ ウ 時 の 半 導 体 レー の 後1971年
に現
温 で の安 定 な連 続 発 振 を す る半 導
フ ァ イ バ の 低 損 失 化 と相 ま っ て 今 日 の 光 フ ァ イ バ 通 信 の
基 盤 を 固 め る に 至 っ た.
最 初 に完 成 した長 距 離 光 フ ァイバ 伝 送 方 式 は,半 導 体 レーザ の 直 接 強 度 変 調, 直接 検 波 方 式 で,中 継 間 隔 も20㎞
程 度 で あ った.そ の後,光
フ ァイバ 増 幅器 が
完成 され,実 用 的 な光 の直 接 増 幅 が で き る よ うに な り中継 間 隔 も80㎞
の方 式 が
完 成 した. 更 に,光 多 重 方 式 も導 入 さ れ,光 表1.1
フ ァイ バ方 式 は陸 上 方 式 のみ な らず 海 底 中継
光通信関連技術 の歴史
方 式 に も幅 広 く導 入 さ れ,国 際 間 の 基 幹 伝 送 路 と して 重 要 な 地 位 を 占 めて い る. 光 通 信 に 関連 した主 な技 術 の歴 史 的 事 項 の概 略 を 表1,1に 示 す.こ
の表 を 参 考
に して 光 通 信 が有 線,無 線 の伝 送 方 式 と と もに どの よ う に進 展 して き たか を見 る の も興 味 あ る こ とで あ る. 1.2
光 フ ァイ バ 通 信 の原 理
細 い ガ ラス棒 や,細 い水 流 中 を光 が 伝 わ る現 象 は古 くか ら観 察 され て い た.こ れ らの 現 象 は,現 在 の光 フ ァイバ を通 して光 が伝 わ るの と原 理 的 に は同様 で あ る. す なわ ち,光 の通 る部 分 の ガ ラスや 水 の 屈 折 率 が 周 囲 の 空 気 の 値 よ り大 き く,ガ ラ ス棒 や 水 中 を光 が 全 反 射 しなが ら伝 搬 して 行 った の で あ る. 光 フ ァイバ に つ い て は第 2章 に述 べ て あ る の で,こ
こで は全 体 を概 観 す る意 味
で光 フ ァイ バ を 通 して 信 号 を伝 送 す る原 理 を図1.1に 簡 単 に示 す.図1.1に
おい
て,電 話 等 の情 報 信 号(電 気 信 号)を 変 調 装 置 に 入 れ,伝 送 す るの に適 した 形 に 変 換 す る.こ の変 調 装 置 の 出力 を半 導 体 レーザ に加 え,そ の 光 出 力 を 光 フ ァイバ を通 して 伝 送 す る.伝 送 され た光 信 号 は,フ ォ トダイ オ ー ド等 の 光 検 出 器 によ り 電 気 信 号 に変 換 され復 調 器 に入 る.復 調 器 で は,フ
ォ トダ イ オ ー ドの 電 気 信 号 か
ら必 要 な情 報 信 号 を取 り出 し もとの 情 報 を再 現 す る.
図1.1
光 ファ イバ 通信 の原 理
次 に一 番 簡 単 な具 体 的 例 と して,図1.2に
半 導 体 レー ザ を 用 いた ア ナ ロ グ変 調
方 式 の 原 理 を示 す.半 導 体 レーザ は,し きい 値電 流Ith以 上 で は 電 流 に比 例 した
光 パ ワ ーが 出 るの で,直 流 バ イ ア ス電 流Ibに 重 畳 して 情 報 信 号(変 調 信 号)を 半 導 体 レーザ に加 え る こ とに よ り,半 導 体 レー ザ の 出力 光 が 信 号 電 流 に比 例 して変 化 す る.そ こで,こ
の変 調 され た光 信 号 を光 フ ァイバ に入 れて 伝 送 し,受 信 側 で
は この光 信 号 を光 検 波 器 で検 波 す る こ とに よ り も との情 報 を得 る こ とが で き る.
図1.2
ア ナ ロ グ変 調 の原 理
現 在 多 くの 基 幹 回 線 に用 い られ て い る デ ィジ タ ル方 式(主 と してPCM)で
は信
号 電 流 を 符 号 化 してか ら半 導 体 レー ザ を変 調 し,受 信 側 で は これ を も との信 号 に 直す こと に よ り情 報 を伝 送 して い る.こ れ らの詳 細 につ いて は,第
8章 を参 照 さ
れ た い. 1.3
光 フ ァイ バ 通 信 の 特 徴
光 フ ァ イ バ は 多 く の 特 徴 を 有 す る が,そ
①
の 主 な も の を 以 下 に 述 べ る.
低損失
現 在 多 く使 わ れ て い る光 フ ァ イ バ の 減 衰 定 数 は,波 dB/㎞
程 度 で あ り,100㎞
伝 送 し て も20dBす
長1.55〓
付 近 で 最 低 の0.2
な わ ち 電 力 が1/100に
な る程 度
で あ る.
中継 間 隔 で言 え ば,従 来 の 同 軸 ケ ー ブル方 式 で は使 用 す る最 高周 波 数 に よ り減
衰量 が 決 ま り,帯 域 を広 く取 れ ば最 高 周 波 数 が上 が り減 衰 量 が 大 き くな る.例 え ば,同 軸 を用 いて 伝 送 す るPCM方
式 で は,400Mbit/sの
場 合 中 継 間 隔 は1.5㎞
とな る.こ の場 合 中 継 器 は マ ンホ ー ル の 中 に入 れ るが,100㎞
の区間 を伝 送 し
よ う とす る と中 継 器 の 個 数 は60個 以 上 に もな り保 守 等 が大 変 で あ る. 一 方,光
フ ァ イ バ の 場 合 は 減 衰 定 数 を0.2dB/㎞
継 間 隔 を と る こ と が で き,100㎞
②
と す れ ば,100㎞
程度 の中
の 区 間 を 伝 送 す る の に は 中 継 器 は不 要 と な る.
広帯域
同 軸 ケ ー ブル を 用 いたPCM伝
送 方 式 の場 合,ベ
ー スバ ン ドパ ル ス を 伝 送 す る
の で ビ ッ ト レー トが 高 くな る と伝送 帯 域 が 広 くな り,高 い周 波 数 まで 用 い る必 要 が あ り,同 軸 ケー ブル の減 衰 量 の 大 き い周 波 数 まで 使 用 しな ければ な らな くな る. こ れ に 対 し,光 で,高
フ ァ イ バ 伝 送 方 式 で は 光 を 搬 送 波 と して 用 い こ れ を 変 調 す る の
い ビ ッ ト レ ー トで 変 調 した 場 合 に 搬 送 波 の 周 囲 に 側 帯 波 が 広 が る が,光
周 波 数 が 数 百THzと ら な い.例
の
高 い の で 比 帯 域 か ら見 て 側 帯 波 の 広 が り は あ ま り 問 題 に な
え ば,1.55〓
の 付 近 で1.5〓
る と こ れ を 周 波 数 に 換 算 す る と12.5THzと
か ら1.6〓 な り,こ
の0.1〓
の波 長 幅 を 考 え
の 範 囲 の 減 衰 量 は 第 2章 の
光 フ ァ イ バ の と こ ろ で 述 べ る よ う に ほ ぼ 平 坦 で あ る.こ
の よ う な,広
帯 域 性 は高
い ビ ッ ト レ ー トの 伝 送 を す る と き に 重 要 な 点 で あ り光 フ ァ イ バ は こ の 点 で も 十 分 満 足 す る 特 性 を も っ て い る.
③
無誘 導
平 衡 対 ケ ー ブル で は,ケ ー ブ ル心 線 間 に あ る微 小 な不 平 衡 に よ り周 波 数 が 高 く な る と漏 話 が 生 ず る.ま た,同 軸 ケ ー ブ ル で も高 い周 波 数 の遮 蔽 は割 合 よ い が 外 部 か らの電 気 的 影 響 を受 け る.こ れ に対 し,光 フ ァイ バ で は電 気 的 な影 響 は 全 く 受 けず,多 対 の光 フ ァイバ ケ ー ブ ル を作 って も漏 話 を考 え る必 要 が 無 い.ま た, 外 界 か らの電 気 的 雑 音 を受 けな いの で 送 電 線 等 に平 行 して敷 設 す る ことが で き る.
④
細径
光 フ ァ イ バ の ガ ラ ス 部 分 の 外 径 は 髪 の 毛 程 度 の 太 さ で あ る の で,こ ラ ス チ ッ ク の 被 覆 で 覆 って もそ の 外 径 は 1㎜
程 度 で あ る.し
の外 側 を プ
た が っ て,1
ケ ー ブ ル に 多 数 の 光 フ ァ イ バ の 心 線 を 入 れ る こ と が で き経 済 的 で あ る.
本 の
⑤
軽量
光 フ ァイバ は細 径 で あ り,か っ それ を構 成 す るガ ラス は平 衡 対 ケ ー ブル や 同 軸 ケー ブル に用 い られ て い る銅 に比 べ て軽 い.ま た,電 気 的誘 導 を受 けな いの で被 覆 を軽 くす る こ とが で きる等 の特 長 を有 す る. 以上 の よ う に光 フ ァイバ は,従 来 の銅 の ケ ー ブル で は実 現 不 可 能 な多 くの利 点 を有 して お り極 め て優 れ た伝 送 媒 体 で あ る と考 え られ る.
1.4
電波 と光 と電磁波
電 波 も光 も電 磁 波 の中 の 波 長,ま
た は周 波 数 の違 い に よ り一 般 に は分 類 され て
い る.現 在 電 波 は国 際 電 気 通 信 条 約 に よ り周 波 数3,000GHz以 られ て お り,こ れ を波 長 で表 せ ば0.1㎜ lOkHzか
ら275GHzの
以 上 の 電 磁 波 に な る.ま
た,こ
の中 で
周波 数帯 は,使 用 目的 別 に細 か く割 り当 て られ て い る.
参 考 の た め図1.3に,周
波 数 帯 別 の 概 要 を記 して お く.所 謂 マ イ ク ロ波 通 信 に
使 わ れ て い る周 波 数 帯 は,4GHzか ら5㎝
下 の 電 磁 波 と決 め
ら 6GHz帯 が主 で あ り波 長 にす る と7.5㎝
か
の範 囲 で あ る.こ の範 囲 の周 波 数 帯 は,雨 や霧 に よ る 減 衰 が 小 さ く通 信
に は最 も使 い や す い領 域 で あ る.そ れか ら周 波 数 が 高 くな り10GHz以
図1.3
電磁 波 の ス ペ ク トル
上 に なる
と雨 に よ る 減 衰 が 大 き く な る.
可 視 光 線 は,波 長 で0.4〓
か ら0.7〓
の範 囲 で 全 体 か ら見 れ ば ご く僅 か の 範
囲 で あ る.最 近 光 通 信 で 使 わ れ て い る波 長 範 囲 は この 可視 光 線 の 波 長 よ り少 し長 い赤 外 線 領域 で,初 期 に は0.85〓
の付 近 の 波 長 が 使 わ れ て い た が,現 在 で は光
フ ァイバ の最 低損 失 の 波 長 で あ る1.55〓 を周 波 数 に直 す と約2×1014Hzす
付 近 の 波長 が使 わ れ て い る.こ の 波 長
な わ ち200THz(テ
ラヘ ル ツ)と な る.一 般 に,
光 の 領域 で は周波 数 で表 現 す る よ り も従 来 の 習慣 か ら波 長 で表 す こ とが 多 いの で 本 書 で はそ の 時 々 で両 者 を使 い分 け る こ とに した. また,電 磁 波 は,波 動 性 と粒 子 性 の両 方 の特 性 を もつ こ とが 知 られ て い るが, 今 まで の電 波 の周 波 数 領 域 で は,粒 子 性 はほ とん ど問 題 に な らず 波 動 性 の み で扱 え ば十 分 で あ った.し か し,光 の領 域 に な る と粒 子 性 も問 題 に な り,こ の領 域 で は波 動 性 と粒 子 性 の両 方 の特 性 を示 す よ うに な る ので 注 意 を 要 す る.更 に,波 長 が短 くな りX線
に な る とX線
写 真 に も使 わ れ て い るよ うに 強 い 透 過 力 を 示 す よ
うに な る. 以 上 の よ うに,同
じ電 磁 波 で も周 波 数(波 長)の 違 い によ りそ の 特 性 が 大 き く異
な る ことが 分 か るで あ ろ う.
2
.
光 フ ァイ バ
光 フ ァ イ バ の 原 理 は古 く か ら 知 られ,日 い た 光 伝 送 路 の 特 許 が 出 さ れ て い る.し く,例
本 に お い て も1936年 か し,一
にガ ラス棒 を用
般 の ガ ラ スの 損失 は非 常 に大 き
え ば 窓 ガ ラ ス で は 光 の 強 さ が 半 分 に な る 厚 さ は 数 セ ンチ メ ー ト ル,光
ラ ス で も数 メ ー トル で,減 ダ で あ る.こ
衰 定 数 に 直 す とそ れ ぞ れ100dB/m,1dB/m程
れ に 対 し現 在 用 い ら れ て い る 光 フ ァ イ バ 損 失 は0.2dB/㎞
め て 低 損 失 で あ り,こ
れ は 東 京 か ら約100㎞
学 ガ
度 の オー 以 下 の極
先 の 富士 山 が よ く見 え る 程 度 の透
明 度 に 相 当 す る.
本 章 で は,光 を導 く現 象 の基 礎 か ら始 め各 種 導 波 路,光
フ ァイバ の構 造,製 造
法 ま で を述 べ る. 2.1
光の反射 と屈折
光 は波 長 の短 い電 磁 波 の一 種 で あ るか ら,厳 密 な取 り扱 い は マ クス ウ ェル の 方 程式 を解 い て求 め る必 要 が あ るが,波 長 が 短 い こ とか ら一 般 に は幾 何 光 学 を 用 い て 光線 と して 取 り扱 うの が 便利 で あ る. ま ず,図2.1(a)に
お い て 媒 質 Ⅰと Ⅱ の 屈 折 率 を そ れ ぞ れn1,n2と
の 場 合 を 考 え る.今,光
し, n1
が 左 斜 め 上 か ら境 界 面 に 入 射 す る も の と す る と,媒
質 Ⅱ
へ 透 過 して い く光 線 は 図 の よ う に 屈 折 し そ の 入 射 角 θ1と 屈 折 角 θ2の 間 に は ス ネ ルの 法 則 が 成 り立 ち図 の 記 号 を 用 い る と
(a)n1
(b )n1>n2
図2.1 媒 質 の境 界面 での 光 の反 射 と屈折
(2.1) あ る い は,図
の φを 用 いて 表 す と
(2.2) と な る.次
に 図2.1(b)の 様 に,媒
質 Ⅰの 屈 折 率 が 媒 質 Ⅱ の 屈 折 率 よ り大 き い 場
合 で は,入
射 角 θ1を 大 き く して い く と つ い に θ2が90° に な る 角 度 が あ る.こ
場 合 に は媒 質 Ⅱ に 進 む 光 は な くな り,入
射 光 は全 部 境 界 面 で 反 射 さ れ る.こ
象 を 全 反 射 と 言 い そ の と き の 角 度 θ1=θcは
式(2.1)よ
の の現
り,
(2.3) と な る.こ る.ま
た,二
の θcを 臨 界 角 と 言 い,二
つ の 媒 質 の 屈 折 率 の 比 に よ り決 ま る 値 で あ
つ の 媒 質 の 境 界 面 と の 角 度 φ で 表 せ ば 式(2.2)よ
り,
(2.4) と な る.
光 フ ァイ バ は以上 に述 べ た光 の屈 折 あ るい は全 反 射 を利 用 し,光 を フ ァイ バ 内 に閉 じ込 め 低損 失 で 伝送 す る様 に した もの で あ る.
2.2 光 フ ァイ バ の 種 類 と原 理 (1) 光 フ ァイ バ の 分 類 光 フ ァ イ バ の 内,最
も 原 理 的 な フ ァ イ バ は 図2.2(a)示 す ス テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス
形 の マ ル チ モ ー ドフ ァ イ バ で あ る.こ
の 形 の フ ァ イ バ は,入
(a)ス テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ
(b)グ
(c)シ
レ ー デ ッ ドイ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ
ング ル モ ー ドフ ァイバ
図2.2
光 フ ァ イ バ の 種 類 と構 造
射 した光 が フ ァイ バ
の 中心 に あ る屈 折 率 の高 い 円柱 の部 分(コ ア)と そ の 周 囲 の 屈 折 率 の 低 い 部 分(ク ラ ッ ド)の境 界 面 で 全 反 射 し,フ ァイ バ 内 を伝 搬 す る もの で そ の 伝 搬 の 様 子 を 図 中 に 示 して あ る.こ の形 の フ ァイバ は伝 搬 す る光 の モ ー ドが 多 数 あ る マル チ モ ー ド形 の フ ァイ バ で,モ ー ドに よ り伝 搬 速 度 が 違 うた め 帯 域 を 広 く必 要 とす る幅 の 狭 いパ ル ス信 号 を伝 送 す るに は不 向 きで あ る. 図2.2(b)の
フ ァ イ バ は グ レ ー デ ッ ド形 の フ ァ イ バ で,フ
ァイ バ 内 の 屈 折 率 分
布 が 中 心 部 分 で 高 く 中 心 か ら遠 ざ か る に した が い 低 くな る よ うに 作 製 さ れ て い る.
こ の フ ァイ バ に光 が 入射 す る と,中 心 部 分 の 屈 折 率 が 高 い た め図 に示 す よ うに 斜 め に入 射 した 光 は フ ァ イバ 内 を進 む にっ れて次 第 に方 向 を変 え 中心 の方 向 に戻 っ て くる.し た が って,フ
ァイ バ 内 を 図 の よ う に曲 が りなが ら伝 搬 す る特 性 を も っ
て い る.こ の フ ァイバ の 特 徴 は,中 心 部 分 の 屈 折 率 が 高 い た め中 心 部 分 を進 む 光 の伝 搬 速 度 が 周 囲 の部 分 よ り遅 くな り,中 心 か ら離 れ た部 分 を進 む光 は逆 に屈 折 率 が低 いた め伝 搬 速 度 が 速 くな る.し たが って,ど
の よ うな光 路 を通 る か に あ ま
り関 係 な く光 フ ァイバ の 軸 方 向 の 伝 搬 時 間 は ほ とん ど同 一 で あ る.そ の た め,幅 の狭 い パ ル ス信 号 を 伝 送 して もあ ま りパ ル ス幅 が 広 が る こと が無 い特 徴 を も って い る。 図2.2(c)に
示 し た フ ァ イ バ は シ ン グ ル モ ー ド フ ァ イ バ で,中
直 径 を 小 さ く し,一
心 の コ アの 部 分 の
つ の モ ー ドの み が 伝 搬 で き る よ う に し た 構 造 で あ る.一
つ の
モ ー ドの み を 伝 搬 す る の で 非 常 に 幅 の 狭 い パ ル ス 信 号 で も歪 み 無 く長 距 離 伝 送 で き る特 徴 を も って い る.現
在 広 く用 い られ て い る フ ァ イ バ の ほ と ん ど は こ の シ ン
グ ル モ ー ドフ ァ イ バ で あ る.
②
開 口数
こ れ らの 光 フ ァ イ バ で,フ 図2.3に
お い て,ス
ァ イ バ に 光 が 入 射 す る場 合 の 条 件 を 考 え て み よ う.
テ ップ イ ンデ ック ス光 フ ァイ バ に光 が フ ァイ バ 端 面 の 中 心 軸
と θ0を な す 角 度 で 入 射 す る 場 合 を 考 え る.入
射 した 光 は,角
く な い 範 囲 で は コ ア と ク ラ ッ ドの 境 界 面 で 全 反 射 し,フ が で き る.
度 θ0が あ ま り 大 き
ァイ バ 内 を伝 搬 す る こ と
ス テ ップ イン デ ッ クス フ ァイ バ へ の光 の 入射
図2.3
次 に,入
射 角 を 次 第 に 大 き く した 場 合 を 考 え る と,図
条 件 を 満 た さ な く な り,コ を 伝 搬 で き な く な る.こ る重 要 な 量 で,空
ア か ら ク ラ ッ ド部 分 へ 光 が 透 過 し光 は 最 早 フ ァ イ バ 内
の 伝 搬 で き な く な る 限 界 の 角 度 θmaxは 開 口 数 に 関 連 す
気 中(n0=1)か
の 屈 折 率 をn2と
に 示 した よ う に 全 反 射 の
ら屈 折 n1の
コ ア に 入 射 す る 場 合,ク
ラ ッド
す る と開 口 数NAは,
(2.5) と表 さ れ る.こ
こ で △ は比 屈 折 率 差 と呼 ば れ,
(2.6) で あ る.こ
れ は 中 心 軸 か ら θmax以 内 に あ る 光 線 は,フ
き る こ と を 表 して い る.今,n1を1.5,△ 0.21rad(約12°)と
な る.ま
た,こ
を1%す
ァ イ バ 内 に 入 射 し伝 搬 で
な わ ち0.Olと
の 場 合 の 開 口 数 は 式(2.5)よ
す る と θmaxは
り0.21と
な る.最
大 入 射 角 θmaxで 入 射 し た 光 が コ ア と ク ラ ッ ドの 境 界 に 入 射 す る 角 度 θ1maxは
(2.7)
θ1max=sin-1(1-△)
と表 さ れ る.△=1%の
2.3
①
場 合 に は,上
式 よ り θ1maxは82°
と な る こ と が 分 か る.
誘電体 スラブ導波路 ス ラ ブ導 波 路 の構 造
光 フ ァ イ バ の 特 性 を 理 解 す る た め に 一 番 簡 単 な ス ラ ブ導 波 路 に つ い て そ の 特 性 を 求 め て み る.ス 両 側 を 屈 折 率n2の
ラ ブ 導 波 路 の 構 造 は 図2.4に
示 す よ う に,屈
折 率n1の
ク ラ ッ ドで 覆 っ た サ ン ドイ ッ チ 構 造 で あ る.コ
コアの
ア の 厚 さ は2d
で,y方
向 に は 無 限 に 広 が っ て い る と す る.入
ら コ ア に 入 り,コ
射 光 は 図2.5に
示 す よ う に左 側 か
ア と ク ラ ッ ドの 境 界 面 で 反 射 し な が らz方 向 へ 伝 搬 す る.
図2.4 ス ラ ブ導 波 路 の構 造
図2.5 ス ラ ブ導 波 路 中の 光 の伝 搬
こ の 場 合,前
に 述 べ た よ う に θmaxよ り 大 き い 入 射 角 度 で 入 っ た 光 は コ ア と ク
ラ ッ ドの 境 界 面 を 突 き 抜 け て し ま い フ ァ イ バ 中 を 伝 搬 す る こ と は で き な い.
②
マ ク ス ウ ェル方 程 式 の解
こ こで,導 波 路 内 の電 界 お よ び磁 界 を求 め る た め に マ ク ス ウ ェ ル の方 程 式 を 解 く ことが 必 要 で あ る.マ ク ス ウ ェ ル の方 程式 は下 記 の よ うに表 さ れ る.
(2.8) (2.9)
▽ ・D=ρ
(2.10)
▽ ・B=0
(2.11)
こ こで,E,H,D,Bお
よび ρ は,そ れ ぞ れ電 界 強 度,磁 界 強 度,誘 電 束 密 度,
磁 束 密 度 お よ び電 荷 密 度 で あ る.ま た,媒 質 が等 方 性 で あ れ ば, D=εE,
(2.12)
B=,μH
の 関 係 が あ る.た
だ し,ε,μ
は そ れ ぞ れ 誘 電 率 お よ び 透 磁 率 で あ る.ま
た.J
は導 電 電 流 で,
(2.13)
J=σE の 関 係 が あ る.た こ こ で,電 jwと
だ し,σ は 導 電 率 で あ る.
磁 界 は 正 弦 波 状 に 変 化 す る も の と す れ ば 時 間 に 関 す る 微 分 ∂/∂tは
置 き換 え ら れ,式(2.12),(2.13)の
関 係 を 用 い る と 式(2.8),(2.9)は
次 の様 に
な る. ▽ ×E=-jω
(2.14)
μH
▽ ×H=(σ+jω
(2.15)
ε)E
次 に,式(2.14),(2.15)か (2.14)のrotation(▽
ら電 界 お よ び 磁 界 の み の 式 を 求 め て み よ う.ま
×)を 求 め,そ
の ▽ ×Hに
式(2.15)の
▽ ×Hの
ず,式
値 を代 入 す れ
ば 下 式 を 得 る. ▽ × ▽ ×E=(ω2μ こ こ で,ベ
ε-jω μσ)E
ク ト ル 公 式,
(2.17)
▽ × ▽ ×E=▽(▽=E)-▽2E を 用 い,▽
(2.16)
・E=0を
考 慮 す れ ば 次 式 を 得 る.
(2.18)
▽2E+γ2E=0 こ こ で,γ2は, γ2=ω2μ
で あ る.磁
(2.19)
ε-jω μσ
界 に つ い て も 同 様 に 計 算 で き 以 下 の よ う に な る.
(2.20)
▽2H+r2H=0 こ れ ら の 式(2.18)お め る の に 用 い られ る.
よ び(2.20)は
波 動 方 程 式 と 呼 ば れ,ス
ラ ブ内 の 電 磁 界 を 求
例 え ば,式(2.18)か
ら電 界 の y方 向 成 分Eyの
式 は 以 下 の よ う に な る.
(2.21) こ こ で,ス
ラ ブ 導 波 路 の 座 標 系 を 図2.4に
り z軸 方 向 の 伝 搬 定 数 を β と し,電
示 す よ う に 光 の 進 行 方 向 を z軸 に と
界 が y方 向 成 分 の み の モ ー ドに つ い て 考 え,
ス ラ ブ 導 波 路 の 損 失 が 無 い も の と す る と,式(2.21)は
以 下 の よ うに な る.
(2.22) この方 程 式 の 解 は指 数 関 数 ま た は,正 弦 お よ び余 弦 関 数 で 表 す こ とが で きる. 今,ス
ラ ブ内 の 解 を,
Ey(x)=
Acosχ1x
(│x│〓d)
(2.23)
Ey(x)=
Bsinχ1x
(│x│〓d)
(2.24)
と 置 く.こ
の 解 の 中 の χlは,式(2.23)ま
た は 式(2.24)を
式(2.22)に
代 入 す る こと
に よ り得 ら れ 次 の よ う に な る. ω2με1-β2
χ21=
こ こ で,ε1は
一 方,ス
=k21-β2
(2.25)
コ ア の 部 分 の 誘 電 率 で あ る.
ラ ブ導 波 路 の ク ラ ッ ド部 分 で はxの
±∞ で 電 界 は 零 で な け れ ば な ら
な い か ら これ を満 足 す る関 数 と して 次 の よ うに置 く.
Ey(x)=
Cexp(-a2x)
Ey(x)=
Cexp(a2x)
こ こ で,式(2.23)と
(2.26)
(x〓d)
(2.27)
(x〓-d)
式(2.26)はx=dに
お い て 連 続 で な け れ ば な ら な い か ら次
式 を 得 る.
=Cexp(-a2d)
Acosχ1d
こ れ か ら,定
(2.28)
数 C は 次 の よ う に な る.
C=A
cos χ1d・
こ の 定 数 C を 式(2.26)に
Ey(x)
=A
exp(a2d)
(2.29)
代 入 す れ ば ク ラ ッ ド中 の 電 界Ey(x)が
cosχ1d・exp(
-a 2(x-d))
と な る.係 数 A は境 界 条 件 に よ り決 ま る値 で あ る.
得 られ
(2.30)
こ の 得 ら れ た 式(2.30)の a22=β2-ω2μ
と な る.こ
③
電 界 を 式(2.22)の
方 程 式 に代 入 す る と
(2.31)
ε2=β2-k22
こ で,ε2は
ク ラ ッ ド の 誘 電 率 で あ る.
スラブ導波路 の固有値
次 に ス ラ ブ導 波 路 の 固 有 値 を求 め るた め に,式(2.14)の
マ クス ウ エ ル の 方 程 式
を直 角 座 標 で表 し,ス ラ ブ導 波 路 の条 件 を代 入 す る と下 式 を 得 る. jβEy=-jω 0=-jω
(2.32)
μHx
(2.33)
μHy
(2.34) 磁 界 のHz成
分 は 式(2.34)か
ら求 め る こ と が で き 下 式 の よ う に な る.
(2.35) 次 に 磁 界 の 境 界 条 件,す
な わ ちx=dに
お い て コ ア と ク ラ ッ ド の 部 分 の,磁
界 の 接 線 成 分 が 等 し い こ と か らHz1=Hz2を 計 算 す る に は 式(2.23),(2.26),(2.29)お
用 い て 計 算 す る.磁
よ び(2.35)を
界 の境 界条 件 を
用 い て下 式 の よ う に求 め られ
る.
(2.36) こ の 式 を 整 理 して,
(2.37)
tan χ1d=a2 /χ2
と な る.こ
の 式 は,ス
ラ ブ 導 波 路 の 特 性 を 決 定 す る 重 要 な 式 で あ る.こ
くた め の 準 備 を 以 下 に 行 な う.ま
ず,前
の 式(2.25)お
よ び 式(2.31)よ
の式 を 解
りβを消 去
す る と, a22 =k21-k22-χ21
=k2
0(n21-n22)-χ21
とな る.い ま こ こで 便 宜 上 規 格 化 周 波 数Vと
V=(n2l-n22)1/2kod
(2.38) い う量 を導 入 す る.こ の値 は,
(2.39)
で 定 義 さ れ る.こ
こ でk0は2π/λ
で あ る.ま
た,式(2.38)と(2.39)か
ら Vは次 の
よ う に な る. V2=
(a2d)2+
(2.40)
(χld2
この式 を 変 形 して,
(2.41) を 得 る.次
に,前
述 の 式(2.41)と
式(2.37)を
組 み 合 わ せ て 以 下 の 式 を 得 る.
(2.42) この式 を 解 く こと に よ りマ ク ス ウ エル の 方 程 式 を 満 足 す る χ1を求 め る こ と が で き る.こ れ らの 解 は固 有 値,式(2.42)は
固 有 値 方 程 式 と呼 ば れ る.こ
の固有 値
方 程 式 は解 析 解 を 持 た な い 超越 方 程 式 で あ るの で,こ れ を 解 くに は 図式 解 方 等 を 用 い るか,あ
るい は数 値計 算 に よ り求 め る の が一 般 的 で あ る.
今 ま で の解 は,ス ラ ブ内 の電 磁 界 と して式(2.23)の 余 弦 波 を 用 い たが,も
う一
つ の解 で あ る式(2.24)の 正 弦 波 を 用 いた場 合 も同 様 の 手 順 で 求 め られ 次 式 の 様 に な る.
(2.43)
実 際 の 導 波 路 に つ い て,伝 搬 可 能 な モ ー ドを求 め る に は導 波 路 の寸法,屈 折 率, 波 長 が 分 れ ば今 ま で の結 果 を もと に固 有 値 を計 算 で きる.図2.6に
ス ラ ブ導 波 路
の コ ア の 厚 み 2d=
の と き の計 算
10μm,
n1=1.50,
n2=
1.49,
波 長0.85μm
例 を 示 す.
この 図 か ら,伝 搬 可 能 な モ ー ドの 数 は曲 線 の交 点 で 決 ま り 5個 で あ る.曲 線 の 交 点 は横 軸 の 0か ら規 格化 周 波 数 V ま で の 間 に π/2毎 に あ り,VF以
上 に は存 在
し な い.し
を 求 め,そ
た が っ て,交
点 の 数,即
ち 伝 搬 可 能 な モ ー ドの 数 は2V/π
の小 数 点 以 下 を繰 り上 げて 求 め られ る.こ の例 で は, 伝 搬 モ ー ドの 数 は 5個 と な る.
2V/π=4.069
で あ るので
図2.6 ス ラ ブ導 波路 の固 有値 の図 式 解 法 n1=1.50,n2=1.49,2d=10〓,λ=0.85〓, e1,e2,e3は
偶 関 数 解,o1,o2,は
こ の 5個 の 固 有 値 お よ び位 相 定 数 β を 表2.1に の 値 を 計 算 し た 結 果 で,β
表2.1
④
は 式(2.25)か
V=6.391, 奇 関 数 解
示 す.表
で χ1dは 図2.6の
交点
ら求 め た 値 で あ る.
ス ラブ導波路 の固有値 および位相定数
モ ー ドに よ る伝 搬 特 性 の 差
前 述 の 固 有 値 は そ れ ぞ れ 一 っ の モ ー ドの 伝 搬 特 性 を 決 あ る.す ドは ス ラ ブ導 波 路 内 に お け る電 磁 界 分 布 や 伝 搬 速 度 が 異 な る.こ
な わ ち,各 の よ う に,一
モー つ
の 伝 送 路 内 に 複 数 の モ ー ドが 伝 搬 す る フ ァ イ バ を マ ル チ モ ー ド フ ァ イ バ と言 う. 特 に,各
モ ー ドで の 伝 搬 速 度 の 差 は,伝
送 特 性 に 悪 影 響 を 与 え る.例
え ば,パ
ル
ス伝 送 を す る場 合 に,伝 送 す るパ ル ス の エ ネ ル ギ ーが 多 くの モ ー ドに分 散 して 伝 送 され,各 々 の モ ー ドの 伝 搬 速 度 が 異 な る た め,受 信 地 点 に到 達 す る時 間 が 異 な り,受 信 パ ル スの波 形 を歪 ませ 信 号 の誤 りに な る. 信 号 歪 み の基 に な るモ ー ド分 散 は,信 号 伝 搬 時 間 の 最長 と最 短 の 値 に よ り決 ま り,単 位 長 当 た りの分 散 は下 式 で表 され る.
(2.44) こ こ で,L
は 伝 送 路 長,△ τは 到 達 時 間 差,υgmin,υgmaxは
最 小 群 伝 搬 速 度 お よ び 最 大 群 伝 搬 速 度 で あ る.群 屈 折 率)か ら求 め た 値 と厳 密 に は 異 な る が,通 に は,最
伝 搬 速 度 は,c/n(c:光
常 数%以
速, n:
内 の 誤 差 で あ る .物
理 的
小 の 伝 搬 速 度 を 有 す る モ ー ドは そ の エ ネ ル ギ ー の ほ と ん ど が コ ア 中 を 伝
搬 し,最 大 の 伝 搬 速 度 を 有 す る モ ー ドは,エ
バ ネ セ ン ト波 と し て ク ラ ッ ド中 を 伝
搬 し て い る も の と見 て よ い. し た が っ て,多 速 度,最
そ れ ぞ れ モ ー ド中 の
大 速 度 の 算 出 に お い て,そ
く の モ ー ドが 存 在 す る 場 合,最
れ ぞ れ コ ア,ク
小
ラ ッ ドの 屈 折 率 を 用 い て も大
き な 誤 差 に は な ら な い.
2.4
ス テ ッ プ イ ン デ ック ス形 フ ァイ バ
ス テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ の 構 造 は 図2.7に n1の る.こ
コ ア が あ り,そ
の 外 側 を 屈 折 率n2の
示 す よ う に,中
心 部 に屈 折率
ク ラ ッ ド で 覆 い, n1>n2と
な って い
の フ ァイ バ の 中 を伝 搬 す る光 の様 子 を調 べ るた め に まず マ クス ウ ェ ルの 方
(a)構 造
(b)屈 折 率 分布
図2.7 ステ ッ プイ ン デ ッ クス型 フ ァイ バの 構 造
程 式 を 円 筒 座 標 系 で 解 くこ と にす る. マ ク ス ウ ェ ル の 方 程 式 は,ス ▽ ×E=-jω
▽×H=jω こ こ で,時
ラ ブ 導 波 路 と 同 様 に 以 下 の よ う に 表 さ れ る.
(2.45)
μH
(2.46)
μE
間 お よ び z軸 方 向 の 伝 搬 をexp j(ωt-βz)と
距 離 で の 微 分 は そ れ ぞ れ ∂/∂t=jω,∂/∂z=-jβ
お く と,時
間 およ び
で あ る か ら,式(2.45)お
よ び
(2.46)を 円 筒 座 標 系 で 表 す と 各 座 標 成 分 は 以 下 の よ う に な る.
(2.47) (2.48) (2.49) (2.50) (2.51) (2.52) こ こ で,式(2.48)と(2.50)か き る.以
らH0を
消 去 す れ ばEγ をEzとHzで
下 同 様 に し てEθ, Hγ, Hθ をEzとHzで
表 す に とが で
表 す こ と が で き,下
式 の よ うな
4個 の 方 程 式 が 得 ら れ る.
(2.53) (2.54) (2.55)
(2.56)
こ こ で, χ2=ω2μ
で あ る.こ ま ずEzを
(2.57)
ε-β2=κ2-β2
れ ら の 4個 の 方 程 式 を 解 く た め に はEzとHzを 求 あ る こ と に し よ う.円
柱 座 標 系 のEzの
求 め れ ば よ い.そ
こで
波 動 方 程 式 は,
(2.58) と な る.Hzに
つ い て も 同 様 の 式 が 成 り立 っ.
式(2.58)の
解 は,A
を 定 数, f(r)をrの
み の 関 数,
g(θ)を
θのみ の関数 と
して そ れ ら の 積 で 表 す こ と が で き る.
(2.59)
Ez=Af(r)g(θ)exp{j(ωt-βz)} こ こ で,g(θ)は
νを 整 数 と して2π/ν の 周 期 性 を 持 つ こ とが で き る の で
g(θ)=exp(jν
(2.60)
θ)
と 置 く こ と が で き る.こ
れ ら を 式(2.58)に
代 入 し て,
(2.61) と な る.こ る.境
の 式 は ベ ッ セ ル の 微 分 方 程 式 で あ り,そ
界 条 件 と し て は コ ア の 内 部 す な わ ちr
す な わ ちr>>aで す もの はr<a
0に 近 づ く必 要 が あ る.ベ
の 解 はベ ッセ ル関 数 で 表 され 有 限 の 値 で,ク
ッセ ル関 数 の うち この 条 件 を満 た
で は 第 一 種 ベ ッ セ ル 関 数 Jν(χr)で あ り,r>aで
ベ ッ セ ル 関 数K ν(γr)で あ る.し
た が っ て,コ
ラ ッ ドの 外 側
ア 部 分(r
は第 二 種 の変 形 解 は以 下 の よ う
に な る.
ま た,ク
で あ る.こ
Ez(r,θ)=AJν(χr)exp(jν
θ)
(2.62)
Hz(r,
θ)
(2.63)
θ)=βjν(χr)exp(jν
ラ ッ ド部 分(r>a)で
は,
Ez(r, θ)=CKν(γr)exp(jν
θ)
(2.64)
Hz(r,θ)=DKν(γ
θ)
(2.65)
γ)exp(jν
こ で, χ2=k2/1-β2
(2.66)
(2.67)
γ2=β2-κ2/2 で あ る.
第 一 種 ベ ッ セ ル 関 数 の グ ラ フ を 図2.8に
図2.8Jν(X)の
示 す.Jν(x)=0の
xの 値 は フ ァイバ
グ ラ フ
中 を伝 搬 す るモ ー ドを決 め る重 要 な 量 で あ る. 次 に 同 様 に 第 二 種 変 形 ベ ッ セ ル 関 数 の グ ラ フ を 図2.9に
図29κ
ν(X)のグ ラ フ
示 す.関
数Kν(x)は
す
べ て の x の 値 に つ い て 正 の 値 で, x=0で
無 限 大,
xが増 加 す る と急 激 に 0に 近
づ く 関 数 で あ る. こ こ で,
式(2.66),(2.67)か =k21-k22
x2+r2
こ こで,ス
ら β を 消 去 して 次 式 を 得 る.
(2.68)
ラブ導 波 路 の場 合 と同 様 に規 格 化 周 波 数 V を 次 式 の よ うに 定 義 す
る.
(2.69) 式(2.68)と(2.69)か V2=
ら規 格 化 周 波 数 V は 以 下 の よ う に な る.
(2.70)
(χa)2+(γa)2
ス テ ップ イ ンデ ック ス フ ァイバ の 境 界 条 件 も ス ラ ブ導 波 路 の と き と同様 な取 り 扱 いす な わ ち,コ
ア と ク ラ ッ ドの境 界 面r=aで
電 界 お よ び磁 界 の 接 線成 分 が 等
しい とお いて 与 え られ る.し か し,こ れ か ら固 有 値 を 求 め る こ と は固 有 値 方 程 式 が 複雑 で 解 くこ と が困 難 で あ る.ま た,実 用 上 は これ らの 式 を 解 くこ と はあ ま り 意 味 が な く,必 要 な の は コ ア と ク ラ ッ ドの屈 折 率 差n1-n2が
小 さい弱導 波 の場
合 の み を 考 慮 す れ ば よ い.
①
弱 導 波 フ ァイ バ の近 似 解
実 用 化 さ れ て い る光 フ ァイバ の屈 折 率 の 条 件 は, (n1-n2)/n1 <<1の
範囲 で
あ り,こ の 条 件 を満 足 す る構 造 の 光 フ ァ イバ を 弱 導 波 フ ァイバ と称 して い る.こ の条 件 の もとで は,固 有 値 方 程 式 は以 下 の よ うに 簡 単 にな る.
(2.71) こ こ で,
ν=0の
場 合 は,
J-1(x)=
-J
1(x), K-1(x)
=K1(x)を
用 いて上 式
は簡 略 化 され,上 式 の逆 数 で 表 す と以 下 の よ うに な る.
(2.72)
こ の 方 程 式 を 解 く に は 式(2.70)よ γa=
り,
(2.73)
√V2-(χa)2
と し,γ a を V と χaと で 表 し,ス ま た,ν=1に
ラ ブ 導 波 路 と 同 様 に 図 式 的 に 解 け ば 良 い.
対 し て の 固 有 値 方 程 式 は 以 下 の よ う に な る.
(2.74) 次 に,ν=0お
よ び ν=1の
コ ア の 屈 折 率n1=1.445,ク μm,波 し,図
長 λ=1.55μmと の 下 半 分 が ν=1の
場 合 の 図 式 解 法 の 例 を 図2.1Oに ラ ッ ドの 屈 折 率n2=1.440,ク
し て 計 算 し た.図 式(2.74)に
示 す.こ
ラ ッ ドの 直 径2a=50
の 上 半 分 が ν=0の
相 当 す る計 算 結 果 で,分
の 例 で は,
式(2.72)に
相 当
母 のJ0(χa)が
0と
な る点
図2.10
ス テ ップ イ ンデ ッ クス フ ァ イバ の固 有 値 解 n1=1.445,n2=1.440,a=25μm,λ=1.55μm
で 無 限 大 と な り,正
接 の 曲 線 と 似 た 傾 向 を 示 し て い る.図2.10の
テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ の 固 有 値 で,こ こ と が 分 か る.伝
搬 モ ー ドを 1個,す
交 点 が この ス
の 図 か ら 8個 の モ ー ドが 伝 搬 で き る
な わ ち シ ン グ ル モ ー ドに す る に は 図 の 中 の
交 点 が 1個 に な る よ う に 規 格 化 周 波 数 V を2.4以
下 に す れ ば 良 い.規
格化 周波数
V を 小 さ くす る 方 法 は,式(2.69)よ
り屈 折 率 差 を 小 さ く す る か あ る い は コ ア の 直
径 を 細 くす る か の 方 法 が あ る.表2.2に,図lOに 形 フ ァ イ バ の 固 有 値 お よ び 式(2.57)か
示 した ス テ ッ プ イ ンデ ッ ク ス
ら求 め た 位 相 定 数 の 計 算 結 果 を ま と め て 示
す. 表2.2 ス テ ップ イ ンデ ック ス フ ァイ バ の 固有 値 お よ び位 相 定 数
(2)分 散 特 性 光 フ ァイ バ に は材 料 分 散,構 造 分 散 お よ び モ ー ド分 散 の 3種 類 の分 散 が あ る. ス テ ップ イ ンデ ック ス フ ァ イバ の様 に多 くの モ ー ドが 存 在 し,そ れ ぞ れ 異 な る伝 搬 速 度 で伝 搬 す る場 合 に はモ ー ド分 散 が 支 配 的 に な り,そ の 値 は,
△τ/L=n1-n2
(2.75)
/c
で 近 似 的 に 与 え ら れ る.ス
テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ で は,一
は ほ と ん ど コ ア 内 を 伝 搬 す る の に 対 し,高
番低次 のモー ド
次 の モ ー ドの エ ネ ル ギ ー の 大 部 分 は ク
ラ ッ ドの 中 を 伝 搬 す る こ と を 考 慮 す れ ば 上 式 が 理 解 さ れ よ う .
2.5
グ レ ー デ ッ ドイ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ
グ レ ー デ ッ ドイ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ で は,屈
折率 の分 布 が フ ァイ バ の 中 心 軸 か
ら半 径 方 向 の 距 離 に よ り連 続 的 に 変 化 して い る.実 の 場 合,す
な わ ち △<<1の
用 的 な グ レ ー デ ッ ド フ ァイ バ
場 合 の屈 折 率 分 布 は次 式 で 与 え られ る.
(2.76)
γ 〓a
ま た,上
式 で γ=aに
お け る値 はn2に
な る よ う に 設 計 さ れ て い る.そ
α を 与 え た と き の 屈 折 率 分 布 の 形 状 を 求 あ る と 図2.11の フ ァ イ バ で は 一 般 的 に は モ ー ド分 散 が 最 小 に な る α=2に
様 に な り,グ
れ ゆ え,
レー デ ッ ド
近 い形 状 が 用 い られ
て い る.
図2.11
屈折率分布
グ レー デ ッ ドフ ァイ バ 内 の光 の伝 搬 は非 常 に興 味 あ る問題 で あ る が複 雑 で あ る の で以 下 に定 性 的 に説 明 す る.図2.12に
お い て フ ァ イ バ 内 に 入 射 した 光 は入 射
角 に よ りい ろ い ろ な光 路 を通 る.入 射 角 の小 さな場 合 に は,コ ア 中心 部 の 屈 折 率 の大 きな部 分 を通 りそ の結 果 伝 搬 時 間 が長 くな る.一 方,入 射 角 の大 きな 光 は ク ラ ッ ドに近 い部 分 ま で行 き光 路 が長 くな るが,ク
ラ ッ ドに近 い部 分 の 屈 折 率 は小
さい の で相 対 的 に伝 搬 時 間 は短 くな る.そ の結 果,ど の よ うな 角 度 で 入 射 した光 で も伝 搬 時 間 に 差 はな くな る.す な わ ち,グ
レー デ ッ ドフ ァイ バ は 多 モ ー ドで あ
るが モ ー ド分 散 が極 め て小 さい特 性 を も って い る.光 路 は入 射条 件 に よ り,子 午 光 線,ヘ
リカ ル 光線,斜
め光 線 を生 ず るが 子午 光線 の 場 合 の 解 は次 の よ うにな る.
(2.77)
γ(z)=γmaxcos(gz)
す な わ ち 光 は 周 期L=2π/gで
正 弦 波 状 に z方 向 に 進 行 す る.こ
フ ァ イ バ の モ ー ド分 散 の 最 大 値 は,
の グ レー デ ッ ド
図2.12
グ レ ー デ ッ ドイ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ 内 の 伝 搬 光 路
△ τ /L=n1△2
(2.78)
/8c
で 与 え ら れ,式(2.75)の
ス テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ の 分 散 よ り 3桁 程 度 小 さ
くな る. ま た,グ
レ ー デ ッ ド フ ァ イ バ の 場 合 に は,材
き くな る に と が あ る.こ
の 場 合 の 全 分 散 は,両
料 分 散 の 方 が モ ー ド分 散 よ り も大 者 の 2乗 和 平 方 根 で 表 さ れ る.
この モ ー ド分 散 はパ ル ス伝 送 に際 し,パ ル ス波 形 を歪 ませ 誤 り率 を劣化 す る等, 伝 送 特 性 に害 を 与 え る ので フ ァイ バ の設 計 に際 して は な るべ く小 さ くす る こ とが 必 要 で あ る. 次 に,フ
ァ イ バ 長 と モ ー ド分 散 と の 関 係 を 考 察 す る.単
散 は 式(2.75),(2.78)で ず,図2.l3に
位 長 当 た り の モ ー ド分
求 め られ る が フ ァ イ バ 長 が 長 く な る と 分 散 は 長 さ に 比 例 せ
示 す よ う に 長 さ の 平 方 根 に 比 例 す る よ う に な る.こ
の 原 因 は,フ
イ バ の 僅 か な 不 均 一 に よ る モ ー ド変 換 に 起 因 す る と 考 え られ る.一 フ ァ イ バ 中 を 多 く の モ ー ドが 伝 搬 す る 場 合,フ
ァ イ バ 経 の 不 均 一,フ
ァ
般 に多モー ド ァ イバ の 曲
げ,屈
折 率 の 不 均 一 等 に よ り あ る モ ー ドか ら他 の モ ー ドヘ エ ネ ル ギ ー が 変 換 さ れ
る.し
た が っ て,フ
ァ イ バ 長 が 短 い 場 合 に は 他 の モ ー ドへ の エ ネ ル ギ ー の 変 換 が
少 な い の で モ ー ド分 散 は フ ァ イ バ 長 に 比 例 す る が,フ
ァイ バ 長 が 長 く な る と エ ネ
ル ギ ー の変 換 量 が 多 くな り長 さ の平 方 根 に比 例 す る よ う にな る.そ の境 目は フ ァ イ バ の特 性 に よ り異 な るが 数 百 メ ー トル程 度 で あ る.
図2.13 モ ー ド分散 の 距離 特性
2.6
シ ン グ ル モ ー ドフ ァ イ バ
ス テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ に お い て,規
格 化 周 波 数 V を 小 さ く して 行 く
と 伝 搬 可 能 な モ ー ドの 数 が 次 第 に 減 り,V<2.405に 搬 で き な く な る 事 が 図2.10か
ら も 理 解 で き よ う.こ
(2.69)か ら波 長 一 定 の 場 合 を 考 え る と,屈
な る と 1っ の モ ー ド しか 伝 の V を 小 さ くす る に は式
折 率 差 を小 さ くす る か フ ァ イ バ 経 を細
くす る の 2つ の 方 法 が あ る.実
用 的 に はあ ま り屈折 率 差 を小 さ くす るの は フ ァイ
バ の 製 造 上 困 難 を 伴 う の で ,波
長1.55μm用
の フ ァ イ バ で は コ ア の 直 径 を5μm
程 度 と し て い る. 図2.14に
シ ン グ ル モ ー ド フ ァ イ バ の 構 造 を 示 す.マ
較 して 異 な る 点 は,コ
ル チ モ ー ドフ ァイ バ と比
ア 径 を 小 さ く屈 折 率 差 も小 さ くす る こ と で シ ン グ ル モ ー ド
の 条 件 を 満 足 す る よ う に して い る.
シ ング ル モ ー ドフ ァイバ で は,モ ー ド間 分 散 が 無 いの で他 の分 散 す な わ ち,材 料 分 散 と構 造 分 散 を 考慮 す るの み で 良 い.材 料 分散 は フ ァイ バ に使 用 す る コ ア, ク ラ ッ ドの 屈折 率 が 周波 数 で 異 な る た め に生 ず る分 散 で あ る-参 考 の た あ,図 2.15に 石 英 の屈 折 率 の波 長 特 性 を示 す.こ の図 か ら も分 か る よ う に石 英 で は,波
図2.14シ
ン グ ル モ ー ドフ ァ イ バ の 構 造
図2.15 石 英 の屈 折 率
長 が長 くな る と屈 折 率 が 小 さ くな り,し た が って 伝搬 速 度 が 速 くな る. 導 波 路 分 散 は フ ァイ バ の構 造 に よ り伝 搬 時 間 が波 長 に よ り異 な るた め に生 ず る 現 象 で あ る.し た が って,フ
ァイバ の コ ア径 や屈 折 率 の形 状 等 を変 え る こ とに よ
り分 散 特 性 を制 御 で きる こと に な る.
材 料 分 散 と 構 造 分 散 お よ び全 分 散(材 料 分 散+構 示 す.こ の 図 よ り全 分 散 が 波 長1.3μmの 衰 量 最 低 に な る波長 は1.55μmで
造 分 散)の 概 略 を 図2.16に
付 近 で 0に な る事 が 分 か る.一
方,減
あ る の で,こ の分 散 0の 波 長 を減 衰 量 の最 低 の
波 長 に合 わ せ る こ とが で きれ ば 伝 送特 性 の 上 か ら極 め て 都 合 が よ い.こ れ を実 現 す る た め に零 分 散 波 長 を 最 低 減 衰 量 に合 わ せ た フ ァ イ バ が 分 散 シ フ トフ ァ イバ (dispersion shifted fiber:DSF)で
あ る.分 散 シ フ トフ ァ イ バ の構 造 は ク ラ ッ
ドの形 状 や屈 折 率分 布 を 変 え る こ と によ り実現 す る こ とが で き る.こ の よ うに, 信 号 を伝 送 す る波長 で 分 散 を 零 にす れ ば パ ル ス伝送 の 際 に 波 形 の 歪 みが 少 な く良 好 な伝 送 が で き る.
図2.16
2.7 (1)
材料分散 と構造分散
光 フ ァイ バ の 減 衰 特 性 減衰特性
光 フ ァイ バ通 信方 式 の 中 継 間 隔 を 支 配 す る要 因 は減 衰 と分 散 で あ る.減 衰 は伝 送 信号 の振 幅 を 小 さ く し,分 散 は波 形 歪 み を生 じ させ る.分 散 につ いて は,各 光
フ ァ イ バ の 項 目 で 述 べ た の で こ こ で は 減 衰 量 に 注 目 し述 べ る こ と に す る.
図2.17
光 フ ァイ バ の減 衰 特性
石 英 で 作 られ た 光 フ ァイバ の 減 衰 定 数 の特 性 を 図2.17に 示 す ・ 減 衰 定 数 の 短 波 長 側 で 支配 的 な の は レー レー散 乱 に よ る減 衰 で あ る.溶 融 した ガ ラ スが 冷 え て 固 ま る と き屈 折 率 は場 所 に よ り僅 か な 不 均 一 性 が 存 在 し,こ れ が 光 を 散 乱 させ る 事 に よ り減衰 を 生 ず る.散 乱 は 波長 と屈 折 率 の不 均 一 の 大 き さが 近 い と き に大 き な損 失 を 生 じるの で,短 波 長 側 に大 きな 減 衰 を生 じて い る.こ の レー レー散 乱 に よ る損失 は波 長 の 4乗 に逆 比 例 す る. 一 方,長 波 長 側 の減 衰 は赤 外 吸 収 の影 響 で,こ れ が1.6μm以
上 の波長 の と こ
ろで は支 配 的 で あ る. 光 フ ァイバ 全 体 の減 衰 は これ ら二 つ の 原 因 に よ る減 衰 の 和 で 表 さ れ,図2.17 で も分 か る通 り波 長1.55μm付
近 で最 小 減 衰 定数 とな り,現 在 で は0.2dB/㎞
下 の フ ァイバ が実 現 で きて い る.波 長1.4μm付 水 酸 基(OH)に
以
近 に あ る 減 衰 の 小 さ な ピー ク は
よ る吸 収 で,製 造 工 程 を改 良 す る こ とに よ り現 在 で は ほ と ん ど 観
測 され な い程 度 に な って い る.
②
接続
そ の他 の光 フ ァイバ の減 衰 に関 係 す る もの と して は,ス プ ライ ス と コ ネ ク タが あ る.ス プ ライ ス は現 在 多 くの場 合 融 着 法 に よ り接 続 す る方 法 が行 わ れ て い る. この 方 法 は,電 極 の間 に フ ァイバ を置 き放 電 に よ り フ ァイ バ を融 着 す る もの で 接 続 に よ る減 衰 の増 加 は 1接 続 あ た り0.1dB以 一 方 ,コ り0.2dB以
2.8
下 の値 とな って い る.
ネ ク タ は 光 フ ァ イ バ を 着 脱 す る と こ ろ に 用 い ら れ 現 在 で は 1接 続 あ た 下 の 低 損 失 に な っ て い る.
光 フ ァイ バ の 製 造 法
現 在 の通 信 用 光 フ ァイバ の主 原 料 は石 英 ガ ラス が用 い られ て い る.石 英 ガ ラ ス は融 点 が1700℃ 以 上 で,化 学 的 に安 定 で紫 外 お よ び 可 視 光 領 域 で 透 過 率 が 非 常 に よ い た め光 学 ガ ラス と して よ く用 い られ て い る.屈 折 率 は 約1.46で 波 長 に よ り多 少 異 な る.光 フ ァイバ は こ の石 英 ガ ラス を主 原 料 と し,こ れ に屈 折 率 を 変 え る ドーパ ン トを加 え製 造 す る.ド ーパ ン トと して,屈 折 率 を上 げ る た め に用 い ら れ る もの に二 酸 化 ゲ ル マ ニ ゥム(GeO2),燐
の酸 化 物 等 が あ る.屈 折 率 を 下 げ る
材 料 に は フ ッ素 あ る い は ボ ロ ンの酸 化 物 が あ る.こ れ らの うち屈 折 率 の制 御 性 は GeO2が
①
優 れ て お り約10モ
ル%の 添 加 で屈 折 率 を 1%高 くす る こ とが で き る.
光 フ ァイ バ母 材 の製 法
光 フ ァイバ を製 造 す る に は まず,光
フ ァイ バ と構 造 が同 じで 寸 法 が大 きい母 材
を製 造 し,そ の後 その 母 材 を線 引 き して 所 望 の太 さの光 フ ァイバ を製 造 す る.こ こで は,以 下 に代 表 的 な母 材 の 製 造 法 を 述 べ る.
(chemical
(a) 内付CVD法 内 付cvD法
は,図2.18に
vapor
deposition
:CVD)
示 す よ う に 光 フ ァ イ バ の 原 料 で あ るsiCl4,
GeCl4等
の ガ スを 酸 素 と共 に加 熱 され た 石 英 ガ ラ ス管 の中 に送 り込 み,石 英 管 の 内壁 に ガ ラス層 を 堆 積 させ,コ
アを 作 成 す る方 法 で あ る.外 部 に あ る ガ スバ ー ナ は石 英 管
の軸 方 向 に添 って 移 動 し,石 英 管 は回 転 して い る ので 石 英 ガ ラ スの 内 壁 に は一 様 に ガ ラ ス堆 積 膜 が 形 成 され る.原 料 ガ ス の量 を調 整 す れ ば屈 折 率 分 布 を制 御 で き るの で ス テ ップ イ ンデ ック ス フ ァイバ の み な らず,グ レー デ ッ ドイ ンデ ックス フ ァ
イバ の 母 材 も製 造 す る こ とが で き る.
図 2.18
CVD法
に よ る母 材 製 造
ガ ラス堆 積 膜 が所 定 の厚 さ に な った ら原材 料 を石 英 ガ ラス管 に送 り込 む の を停 止 し,ガ スバ ー ナ の加 熱 温 度 を 石 英 ガ ラ スの軟 化 点 ま で上 げ る と石 英 管 は表 面 張 力 で つ ぶ れ中 心 部 が コ アに な り,石 英管 が ク ラ ッ ドを構 成 す る光 フ ァイバ 母 材 が で き あが る. この製 造 方 法 は,母 材 の製 造 まで す べ て 閉管 系 で行 うた あ不 純物 の 混 入 が 少 な く優 れ た方 法 で あ るが,1 本 の母 材 か ら製 造 で きる光 フ ァイ バ の長 さ は 数 ㎞
程
度 で量 産 性 に欠 け るの が欠 点 で あ る.
(b) 気相軸付法( vapor-phase VAD法
axial
deposition
: VAD)
は図2.19に 示 す よ うに堆 積 す る ガ ラ スを 軸 方 向 に行 う もの で,石
英管
を用 いず 母 材 を軸 方 向 に連 続 製 造 で き る特徴 を持 って い る.原 材料 の 供 給 方 法 は 内 付 けCVD法
と 同 様 でSiCl4,
GeCl4等 の原 材 料 を 気 相 と し,酸 水 素 炎 中 で 酸 化
物 を微 粒 子 と し,軸 棒 に 吹 きつ け る.軸 に は この微 粒 子 が堆 積 し多 孔 質 母 材 が 成 長 す るの で,こ の母 材 を 回 転 しなが ら引 き上 げ て い け ば長 い母 材 が 形 成 され る. この母 材 の 引 き上 げ の途 中 に ヒー タが 設 けて あ り,多 孔 質 母 材 は加 熱 溶 融 さ れて 透 明 な母 材 とな る. この製 造 方 法 は,す べ て の 光 フ ァイバ の製 造 に適 して お り,連 続 的 に透 明 母 材 まで 作 れ るの で効 率 的 で あ り,1 回 の母 材 か ら100㎞ す る こ とが可 能 で あ る.
程 度 の光 フ ァイバ を製造
図2.19 VAD法 に よ る母 材 の製 造
図2.20
フ ァイ バの 線 引 き工 程
(2) 線引 き
光 フ ァイバ 母 材 の直 径 は側 れ の 製 法 で も数 ㎝ で あ るの で,こ れ か ら線 引 きを 行 い細 い フ ァイバ を製 作 す る.こ の工 程 は,図2.20に
概 略 を 示 して あ る よ う に
ま ず,母 材 の先 端 を 加 熱 溶融 し張 力 を加 え て線 引 きす る.そ の際,フ
ァイバ の 直
径 を測 定 しな が ら線 引 きの速 度 を調 整 し所 定 の寸 法 にな る よ う にす る.ま た,線 引 き した フ ァイバ 素 線 は非常 に折 れ や す くそ の ま ま リー ル に巻 き取 る こ と はで き な い の で 図 に示 す よ うに 1次 被 覆 を行 う.1 次 被 覆 を行 う こ と によ り フ ァイ バ 素 線 は 曲 げ に も耐 え られ る よ うに な り ドラム に安 全 に 巻 き取 る こ とが で き る. (3) 光 フ ァ イ バ ケ ー ブ ル 光 フ ァ イ バ の 1次 被 覆 し た 素 線 は 更 に 2次 被 覆 を 行 い 直 径1㎜ ル 素 線 と し,こ
れ を よ り合 わ せ て ケ ー ブ ル を 構 成 す る.図2.21に
程度 のケ ー ブ 光 フ ァイ バ ケ ー
ブ ル の 製 造 工 程 の 概 略 を 示 す.
図2.23
ケ ー ブ ル 構 造 は,陸 置 し,そ
光 フ ァイ バ ケ ー ブル の製 造 工 程
上 ケ ー ブル で は 中心 に張 力 に耐 え るテ ン シ ョンメ ンバ を配
の 周 囲 に 緩 衝 材 料 を 配 置 し,必
要 に よ り給 電 線 を 入 れ た も の が 多 い.陸
上 ケ ー ブ ル の 構 造 例 を 図2.22(a)に 示 す.ま 本 束 ね て 多 対 の ケ ー ブ ル と す る.海 底 ケ ー ブ ル は,光
た,必
要 に よ り この ケ ー ブル を 複 数
底 ケ ー ブ ル の 構 造 例 を 図2.22(b)に
示 す.海
フ ァイ バ に水 圧 が加 わ らな い よ うにす るた め図 に示 した よ うに
フ ァ イ バ を 3つ 割 り し た 鉄 で 保 護 し,そ
の 外 側 に テ ン シ ョ ン メ ンバ と して 鋼 線 を
撚 り そ れ を 銅 管 で お お っ た も の が 多 い.銅 に 外 被 を か ぶ せ て い る.
管 の 外 側 は,ポ
リエ チ レ ン で 被 覆 し更
(a)陸 上 ケ ー ブ ル
(b)深 海 用海 底 ケ ー ブル 図2.22光
そ の 他,フ
ケ/ブ
ァ イ バ を テ ー プ 状 に 並 べ,そ
ル の構 造 例
れ を重 ね て フ ァイ バ リボ ン ケー ブル と
した構 造 な ど種 々 の ケ ー ブル が考 案 さ れ て い る.
演 習 問 題 2.1
真 空 中 で 波長1μmの
光 の周 波 数 は い く らか .
2.2
真 空 中 で 波長1μmの
光 は,屈 折 率 4の媒 質 中 で は波 長 は い く らか.
2.3
周 波 数200THzの
光 の 真 空 中 に お け る波 長 お よ び比 誘 電 率 4の媒 質 中 で の
波 長 は い く らか. 2.4
つ ぎ の ス ラ ブ 導 波 路 の 開 口 数(NA),
最 大 入 射 角2θmax,規
格化周波数 V お
よ び 幾 つ の モ ー ドが 伝 搬 可 能 か を 求 め よ . た だ し,n1=1.50, コ ア の 厚 さ2d=010μm,波
長 λ=0.85μmと
す る.
n2=1.49,
2.5次
の ス ラ ブ 導 波 路 の 固 有 値,位 n2×1.49,コ
2.6波
相 定 数 β を 求 め よ.た
ア の 厚 さ2d=10μm,波
長1.55μm帯
に お い て,波
長 λ=0.85μmと
長 間 隔0.0001μmの
だ し,n1=1.50, す る.
帯 域 は周 波 数 帯 域 に す る
と い く ら に な る か. 2.7ス
テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ に お い て,シ
ングル モ ー ドに す る た め の条
件 は 何 か.
2.8入
射 光 の 強度 が半 分 に な る長 さが10㎞ ㎞
2.9減
の光 フ ァイバ の 減 衰 定 数 は何dB/
か. 衰 定 数0.2dB/㎞
の フ ァ イ バ を100㎞
伝 搬 した 光 の 強 度 は 始 め の 何 分
の 一 に な るか. 2.10次
の ス テ ッ プ イ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ の 固 有 値,位 し,n1=1.445,
n2=1.440,コ
ア の 半 径25μm,波
相 定 数 β を 求 め よ .た 長1.55μmと
2.11ス
ラ ブ 導 波 路 内 の 電 界 を 正 弦 波 と し た と き の 式(2.43)を
2.12入
力 パ ワ ー0.5mWの
光 が 減 衰 定 数0.2dB/㎞
だ
す る.
求 め よ.
の フ ァ イ バ を100㎞
伝 搬 し
た と き の 受 信 端 で の パ ワ ー は い く らか. 2.13長
さ100㎞
を 光 フ ァ イ バ で 伝 送 す る と き と,マ
と き の 伝 搬 時 間 の 差 は い く らか.た る.
だ し,光
イ ク ロ波 で 空 間 伝 搬 す る
フ ァ イ バ の 屈 折 率 を1 .5と す
3. 半 導 体 レー ザ は小 形,軽 量,変
半 導 体 レー ザ
調 が 容 易 で あ る等 優 れ た特 徴 を 持 って お り,今
日で は光 フ ァイバ 通 信 の 主要 な光 源 を 占め て い る.こ の 章 で は半 導 体 レー ザ の 原 理,構 造,特 性 等 を 述 べ る.
3.1 半 導 体 レー ザ の 原 理 (1) 基 本 原 理 レ ー ザ(laser)の Radiationの
語 源 は, Light Amplification
頭 文 字 か ら き て い る.基
by Stimulated
本 的 な 原 理 は,光
Emission
of
を 増 幅 す る 部 分 と,そ
の
両 端 で 光 を 反 射 し,光 共 振 器 を 構 成 す る部 分 か ら成 り立 っ て い る. 最 初 の 半 導 体 レ ー ザ の 発 振 は1962年 が 用 い られ 発 振 波 長 は0.85μm付 な る 波 長1.55μm付 の 結 果,通
に 極 低 温 で 確 認 さ れ,当 時 の 材 料 はGaAs
近 で あ っ た.一
方,光
近 で の 発 振 に 成 功 し た の は1971年
フ ァイバ の 損 失 が 最 低 に で,そ
の後 高温 寿命 試験
信 用 光 源 と し て 高 信 頼 度 の 所 謂 長 波 長 帯 半 導 体 レ ー ザ が 開 発 さ れ た.
半 導 体 レ ー ザ に お け る 発 振 原 理 の の 説 明 を 図3.1に
示 す.図
図3.1 半 導 体 レー ザの 発 振 原理
に お い て レー ザ 光
の増 幅作 用 を す る活 性 層 の 減 衰 定 数 を α,利 得 を g,位 相 定 数 を β,活 性 層 両 端 の振 幅 反 射 係 数 を それ ぞれ 符r1,r2,共振 器 長 を L とす る と,振 幅 A の 光 が こ の 共 振 器 内 を一 周 し,も との と こ ろ に戻 って来 た と きの振 幅 E は, E=
2(g-α)L
Ar1r2 exp
と表 さ れ る.こ
exp
j(ωt-
2βL)
(3.1)
こで,端 面 にお け る振 幅反 射 係 数r1,r2は 活 性 層 の屈 折 率 を n と
す る と空 気 と の反 射 を考 え れ ば良 い の で,
(3.2) で あ る.
定 常 状 態 で の発 振 で は,一 周 して もと の と こ ろ に戻 って きた 光 の 振 幅 は,最 初 の値 と同 じで あ る こ とか ら発 振 の振 幅 条 件 は, =1
r1r2exp 2(g-α)L
(3.3)
が 成立 す る.ま た,位 相 条 件 は同 相 にな る必 要 が あ る こ とか ら -j2βL)
exp(
=1
(3.4)
と な る.
最 初 の 式(3.1)か
ら発 振 を 起 こ す 利 得 g は,
(3.5) と な る.こ
こ で,
R1=
r21,
R2=r22 で光 の 強度 に関 す る反 射 係 数 で あ り,g
およ
び α は振 幅 に 関 す る値 で あ るの で 注 意 を 要 す る. 次 に位 相 条 件 か ら発 振 波 長 を求 め よ う.こ の 条 件 は式(3.4)か ら, 2βL =2mπ で,m
(3.6)
は 任 意 の 整 数 で あ る.す λ=
な わ ち,波
長 λ は,
2Ln/m
で 求 め ら れ る.こ
こ で,n
(3.7) は レ ー ザ の 共 振 器 内 物 質 の 屈 折 率 で,
れ,比 誘 電 率 の 平方 根 で 求 め られ る.
で表 さ
式(3.7)か ら レーザ の 共 振 器 長 L が決 ま った場 合,発
振可 能 な波 長 は無数 に あ
る こと に な るが,実 際 は図(3.2)に 示 す よ うに,利 得 が あ る帯 域 内 で 損 失 を 上 回 る場 合 にの み 発 振 で き る ので,発 振 波 長 の数 は限 られ るが そ れ で も図 に示 す よ う に多 くの モ ー ドで 発 振 す る こ とが で き る.こ の よ うな レー ザ を多 モ ー ド レーザ と 呼 ぶ.
図3.2
多 モ ー ド レー ザ の 発 振
多 モ ー ド レ ー ザ の 隣 り合 う発 振 周 波 数 差 △f お よ び 発 振 波 長 差 △λ は 式(3.7)よ り,
(3.8)
(3.9) を 得 る 事 が で き る.
(2) 誘 導放 出 物 質 か ら の 放 射 光 は 自 然 放 出(spontaneous (stimulated
emission)に
出 に よ る光 で,光 に 対 し,レ
よ る 光 が あ る.通
emission)に
よ る 光 と,誘
導 放 出
常 の電 球 や蛍 光 灯 か らの 光 は 自然 放
の 位 相 は ラ ン ダ ム で あ り,お
互 い に 干 渉 す る こ と は な い.こ
ー ザ か ら の 光 は 誘 導 放 出 を 利 用 し た も の で,光
れ
の 位 相 が 揃 っ て お り互
い に干 渉 す る こ と が で き る. 半 導 体 レ ー ザ の 発 振 を 説 明 す る た め に 以 下 に エ ネ ル ギ ー 準 位 に つ い て 述 べ る. 通 常 の 物 質 で は,エ
ネ ル ギ ー 準 位 は 数 多 く存 在 し て お り,各
々 の準 位 に対 す る原
子 の 分 布 す る 数 は ボ ル ツ マ ン の 法 則 に よ り統 計 的 に 記 述 さ れ,エ
ネル ギ ーE の
準 位 に対 す る分布 数 N は, N=A
で 表 され る.こ
exp( -E/kT)
(3.10)
こで,T は絶 対 温度, kは ボ ル ツマ ン定 数 で あ る.こ の 式 か ら分
か る よ うに,熱 平 衡 の状 態 で は,高 い エ ネ ル ギ ー準 位 ほ ど分 布 数 は指 数 関 数 的 に 小 さ くな っ て い る.誘 導 放 出が 起 き るた め に は高 い エ ネ ル ギ ー準 位 の 原 子 の 数 が 多 く な る よ う に せ ね ば な ら な い.こ
れ を 反 転 分 布(population
inversion)と
呼
ぶ が,反 転 分 布 は特 定 の二 つ の エ ネル ギ ー準 位 間 に生 ず る もので,高 いエ ネル ギ ー 準 位 の と こ ろ の原 子 数 が多 くな る こ と は式(3.10)と 矛 盾 す るよ うで あ る が,式
の
中 の温 度 T に負 の温 度 を 定義 す れ ば良 い.こ の 状 態 を 負 温 度 状 態 と も呼 ん で い る. 反 転 分 布 を作 る に は何 らか の 方法 で低 い準 位 に あ る原子 を 高 い準 位 ま で励 起 す る ポ ン ピ ングが 必 要 で あ る.ポ ン ピン グの方 法 に はい くつ か あ り,光 で励 起 す る 方法 や,放 電 に よ る方 法,半 導 体 レー ザ で用 い られ て い る電 流 に よ る方 法 等 が あ る. 図3.3に
3準 位 レ ー ザ の エ ネ ル ギ ー 状 態 の 概 念 図 を 示 す.今,基
底 状 態E1か
ら,
図3.3
3準 位 レー ザ のエ ネ ル ギ ー準 位
ポ ン ピ ン グ に よ り エ ネ ル ギ ー 準 位E3の E2へ
の 非 常 に 速 い遷 移(transition)が
E2とE1と
の 間 に反 転 分 布 が 生 ず る.こ
状 態 に 高 め ら れ る が,準 起 こ りE2か
ら とE1へ
位E3か
ら準 位
の遷 移 が遅 い と き は
の と き, 高 い エ ネ ル ギ ーE2か
ら低 い エ
ネ ル ギ ー状 態E1へ
遷 移 す る と きの放 出 光 の 周 波 数 f は,
(3.11) で 与 え ら れ る.こ
こ で,h
は プ ラ ン ク の 定 数(6.625×10-34Js)で
一 例 と して,エ
ネ ル ギ ー 準 位 差 が1.4eV注)の
波 長 で886nmで
あ る.
あ る.
と き に の 発 振 周 波 数 は339THz,
3.2 半 導 体 レー ザ の 構 造 (1) ブ ロ ー ドコ ン タ ク ト形 ホ モ 接 合 レー ザ 半 導 体 レ ー ザ が 最 初 に 発 振 した の は1962年 時 の レ ー ザ は 図3.4に を 作 り,そ
に 極 低 温 で の 条 件 下 で あ っ た.当
示 す よ う な 構 造 で,n 形 のGaAsに
の 上 下 に 電 極 を 付 け た も の で あ っ た.こ
う に 相 対 す る 面 を へ き 開 し て 反 射 面 と し て い る.こ 効 果 や キ ャ リ ヤ の 閉 じ込 め 効 果 が 弱 い の で,し が 大 き く,発
亜 鉛 を 拡 散 してpn接
の レー ザ の 共 振 器 は,図
き い 値 電 流(threshold
current)
た が っ て,室
(注) leVは,電
子 が1Vの
温での
きい値 電 流 を下 げ放 熱 を良 くす る こ とが 必 要 で
あ る.
図3.4
の よ
の 形 の レー ザ は 光 の 閉 じ込 め
熱 を 伴 い 室 温 で の 連 続 発 振 が で き な か っ た.し
連 続 発 振 を 実 現 す る た め に は,し
合
ホ モ接 合 レーザ
電 位 差 で得 る エ ネ ル ギ ーで,電
圧 と電 子 の電 荷 の積 で与 え られ る.
(2) ス トライ プ 形 ダ ブ ルヘ テ ロ レー ザ ダ ブル ヘ テ ロ レー ザ は 2つ の バ ン ドギ ャ ッ プの 広 い層 の 間 に バ ン ドギ ャ ップ の 狭 い層 が挟 ま れ た構 造 に な って い る.バ
ン ドギ ャ ップ の狭 い層 は周 囲 よ り高 い 屈
折 率 を持 って い るの で ス ラ ブ導 波 路 と同 様 に光 を閉 じ込 め る効 果 が あ る.ス
トラ
イ プ形 ダ ブル ヘ テ ロ レー ザ の 構 造 を図3.5に 示 す.電 流 は ス トラ イ プ 状 の 狭 い部 分 を通 って レー ザ発 振 を起 こす 部 分 に供 給 さ れ る ので,発 振 部 分 の電 流 密 度 が 高 くな り室 温 で の連 続 動 作 が可 能 とな る.
図3.5
ス トラ イ プ 形 ダ ブ ル ヘ テ ロ レ ー ザ
こ れ を さ ら に 改 善 し た の が,埋
め 込 み ヘ テ ロ 構 造 レ ー ザ で,活
屈 折 率 の 材 料 で 囲 ま れ て い る の で 方 形 の 導 波 路 と な り,光 す る の で,ス
性 層 は周 囲 を低
は方 形 の 導 波 路 を伝 搬
ラ ブ 導 波 路 と 比 べ て も光 の 閉 じ込 め 効 果 が 大 き く,し
た が って 効 率
も良 い の が 特 徴 で あ る. (3) 分 布 帰 還 形 レ ー ザ(distributed 多 モ ー ド レ ー ザ で は,発
laser)
振 周 波 数 が 多 く存 在 し特 に 変 調 時 に は こ の 多 モ ー ドの
存 在 が 変 調 特 性 を 劣 化 さ せ る.分 図3.6に
feedback laser:DFB
布 帰 還 形 レ ー ザ は レ ー ザ 内 部 に 活 性 層 に 沿 って
示 す よ う な 周 期 的 な 反 射 構 造 を 有 して い る.こ
の 整 数 倍 に 選 ん で お け ば,活
の周 期 を媒 質 内 の 半 波 長
性 層 の 利 得 の 波 長 特 性 を 考 慮 す る と単 一 の 波 長 で 発
振す る こと が分 か る.普 通 は作 りやす さ の点 等 か ら反 射構 造 の周 期 は半 波 長 の 3 倍程 度 を用 い る ことが 多 い.
図3.6 分布 帰 還 形 レーザ
(4) 複 合 共 振 器 レーザ 発 振 モ ー ドの 間 隔 を 広 げ る た め に 考 案 さ れ た レ ー ザ で,図3.7に 通 の 反 射 鏡 で 結 合 し た,長
さL1,L2の
示 す よ うに 共
2つ の 共 振 器 よ り 構 成 さ れ て お り,2
つ
の 共 振 器 が 同 時 に 共 振 し た と き の み レ ー ザ が 発 振 す る事 を 利 用 し た も の で あ る.
(a)構
造
(b)同 時 共 振 の説 明 図3.7 複 合 共 振器 レーザ
図3.7で
2つ の 共 振 器 が 結 合 して い な い と き に は,共
mc/2L1nお
よ びm'c/2L2nで
あ る. m お よ びm'は
振 周 波数 は それ ぞ れ
任 意 の 整 数, n は 屈 折 率 で あ
る. ま た,こ
の と き の 共 振 波 長 間 隔 は そ れ ぞ れ,λ2/2L1nお
2つ の 共 振 器 が 同 時 に 共 振 す る条 件 を 考 え る と,同
よ び λ2/2L2nで
あ る.
時 共 振 時 の 共 振 波 長 間 隔 △λ
は,
(3.12) と な り,共
振 器 1つ の 場 合 に 比 べ る と非 常 に 大 き く な る こ と が 分 か る.共
間 隔 が 長 く な れ ば,図3.2か
振波長
ら も分 か る よ う に 同 時 に 共 振 で き る モ ー ドの 数 は 少
な くな り 単 一 縦 モ ー ドで の 発 振 も可 能 と な る.
3.3 発 振 特 性 (1) レ ー ト方 程 式 半 導 体 レ ー ザ の 発 振 特 性 を 検 討 す る に は,レ レ ー ト方 程 式 は,電 式(3.13)お
ー ト方 程 式 を 解 析 す る の が 良 い.
子 密 度 N と 光 子 密 度 P の 相 互 の 関 係 を 記 述 し た 方 程 式 で,
よ び 式(3.14)の
2つ の 式 よ り な る.
(3.13)
(3.14) 式(3.13)に お いて 第 1項 は電 流密 度 Jに よ る電 子 密 度 の 増 加 に 伴 う誘 導 放 出 の 項,第
2項 は 自然 放 出 に よ り失 わ れ る電 子 密 度 の減 少,第
3項 は誘 導 放 出 に よ る
電 子密 度 の減 少 を 表 して い る. 次 の 式(3.14)は 光 子 の 時 間微 分 に 関 す る式 で,第
1項 は光子 の発 生,第
2項 は
自然 放 出 に よ る光 子 の一 部 が レー ザ光 に混 入 す る項 で,通 常 は小 さ い の で省 略 さ れ る こ とが 多 い.第
3項 は損 失 に よ り光 子 が失 わ れ る様 子 を表 して い る.こ こで,
τspおよ び τphはそれ ぞれ,自 然 放 出 に よ り電 子 が 励 起 状 態 か ら基 底 状 態 に落 ち る
寿 命 お よ び 光 子 の 寿 命 で あ る. こ の レ ー ト方 程 式 の 定 常 解 はdN/dt=0お
よ びdP/dt=0,N≠0,P≠0の
条 件 の も と に 解 く こ と が で き 以 下 の よ う に な る.
(3.15) この 式(3.15)の
表 し て い る意 味 は,光
子 の 数 す な わ ち 光 強 度 は,し
きい値電 流
(Jth)以 上 で は 注 入 電 流 に 比 例 す る こ と を 表 して い る.
(2)静 特 性 フ ァブ リペ ロ共 振 器 を 用 い た半 導 体 レー ザ の電 流 対 光 出 力 特 性 の 1例 を 図3.8 に示 す.こ の例 で は しき い値 電 流Ith(40mA)以 力 が観 測 され,し
下 で は 自然 放 出 に よ る弱 い光 出
き い値 電 流 以 上 で は電 流 に比 例 した レー ザ発 振 に よ る光 パ ワ ー
が 観 測 され て い る.こ の 出 力 特 性 は温 度 に よ り しき い値 が 変 わ り,温 度 が 高 い ほ ど電 流 を 多 く流 す必 要 が あ りこれ が ま た,温 度 上 昇 の原 因 に な る悪 循 環 が 生 ず る の で実 際 の 使 用 に当 た って は温 度 制 御 が必 要 で あ る.
図3.8 半 導 体 レ ーザ の電 流 対光 出 力特性
次 に,注
入 電 流 に 対 す る フ ァ ブ リペ ロ 共 振 器 を 用 い た 多 モ ー ド レ ー ザ の 発 振 波
長 特 性 の 1例 を 図3.9に
示 す.こ
の レ ー ザ の 例 で は,発
振 縦 モ ー ドが 多 モ ー ド の
た め 注 入 電 流 を 増 加 す る と モ ー ドジ ャ ン プ が 起 こ り隣 の 発 振 モ ー ドに 移 る た め, 図 に 示 す よ う な 階 段 状 の 特 性 を 示 して い る の で 使 用 に 当 た っ て は 注 意 を 要 す る. こ の 例 で は,1 つ の 発 振 モ ー ド内 で の 電 流1mA当 に 換 算 して-5GHz程
た りの 発 振 波 長 変 化 は 周 波 数
度 で あ る.
図3.9 電流 対発 振 波 長 特性 例
(3)直 接 変 調 半 導 体 レーザ の 注 入電 流対 発 振 光 出 力 の特 性 は図3.8に 示 した よ う に 電 流 に 比 例 す る の で,図3.10に
示 す よ う に しきい 値 電 流 以 上 の あ る値 の バ イ ア ス電 流 を
流 して お き,こ れ に 重畳 して信 号 電 流 を流 せ ば光 出力 は信 号 電 流 に比 例 して変 化 す る.そ
こで,こ の光 を伝 送 し受 信 側 に お い て光 検 波 器 で検 波 す れ ば,光 検 波 器
の特 性 が受 信 光 強度 にに比 例 す る 出力 電 流 を得 られ るの で,検 波 信 号 は送 信 信 号 に比 例 した値 が 得 られ る.こ れ が光 ア ナ ロ グ通 信 の原 理 で あ る. 光 ア ナ ロ グ通 信 で は,半 導 体 レー ザ の電 流 対 出力 光 強 度 特 性 が 直線 で な い と変 調 に と もな い高 調 波 歪 み を発 生 す るの で注 意 が必 要 で あ る.
図3.10
光 アナ ログ変 調
半 導 体 レー ザ の 直接 変 調 を行 な う際 の も う一 つ の基 本 的 な特 性 と して,図3.11 に示 す よ う な ス テ ップ状 の電 流 を流 した と き の,レ ー ザ発 振 を 開始 す るま で の時 間 遅 れ(τd)があ る.こ の時 間 遅 れ は活 性 層 内 の少 数 キ ャ リア濃 度 が発 振 開始 の値 に達 す る まで に必 要 と す る時 間 で あ る.こ の時 間 遅 れ τdは,
(3.16) で 表 さ れ る.こ
こ で,I1は
の 値 で あ る.発
振 遅 れ を 小 さ く す る に は あ らか じ め 大 き な 電 流 を 流 し て お け ば よ
い が,そ が あ る.
し き い値 電 流 以 下 の バ イ ア ス電 流,I2は
の 代 わ り変 調 信 号 が 無 い と き で も 発 振 して お り,消
ス テ ップ 電 流
光 比 が悪 くな る欠 点
(a)電 流波 形
(b)光 出 力波 形 図3.11 変 調 信 号 に 対 す る発 振遅 れ
(4)外 部 変 調 半 導 体 レー ザ の 直接 変 調 は簡 便 で あ るが,高 度 な光 通 信 を行 な うた め に は変 調 に伴 うス ペ ク トル線 幅 や発 振 周 波 数 の安 定 性 に 関 す る悪 影 響 を避 け る た め,ま た 直接 変 調 で は実 現 困 難 な位 相 変 調 な ど を行 な うた め に外 部 変 調 が 行 わ れ る. 外 部 変 調 器 と して一 般 的 な もの は,光 集 積 化 さ れ た素 子 を用 い導波 路 を構 成 し, そ の位 相 特 性 を変 化 させ 位 相 変 調 を行 な う もの お よ び位 相 変 調 器 を組 み合 わ せ て 振 幅(強 度)変 調 を行 な う もの が あ る.位 相 変 調 器 お よ び振 幅 変 調 器 に関 して は 算 6章 の 光 回 路 素 子 を参 照 され た い. (5) 周 波 数 安 定化 半 導 体 レー ザ の発 振 周 波 数 は,周 囲 温 度 や電 流 の僅 か な変 化 に よ り大 き く変 化 す る.変 化 量 は,レ ー ザ に よ り異 な るが例 え ば,温 度 に対 して は-30GHz/℃, 電 流 に対 して は-5GHz/mA程
度 で あ る.し た が って,実
際 に 半 導 体 レー ザ を
使 用 す る と き は,温 度 制 御 を行 い周 波 数 の安 定 化 を して い る.そ れ で も,今 後 の 高 度 な光 通 信 を行 な うた め に は周 波 数 の安 定 化 を行 な う必 要 が あ る.そ の場 合 に は,図3.12に
示 す よ う な安 定 化 回 路 を用 い,周 波 数 基 準 の周 波 数 に半 導 体 レー
ザ の発 振 周 波数 を安 定 化 す る.こ の 回路 の動 作 は以 下 の よ うで あ る.
図3.12 周 波 数 安定 化 回路
半 導 体 レー ザ に は,あ
らか じあ数kHz程
度 の周 波 数 の 微 小 な 交 流 電 流 を 直 流
電 流 に重 畳 して加 え て浅 く周 波 数 変 調 を行 い,こ の光 出 力 を周 波 数 基 準 例 え ば ル ビジ ュ ウ ムセ ルや フ ァブ リペ ロ エ タ ロ ン等 を 透過 させ る と,そ の 出 力光 は図3.13 (a)のよ う にな る.す な わ ち,こ の光 出 力 に は微 小 な 周 波 数変 調 が 加 え られ て い るか ら,光 の 周波 数 が 周波 数 基 準 よ り低 い場 合 に は,光 検 波器 出 力 は変 調 信 号 と 同 位 相 の 信 号 が 表 れ,ま た 周波 数 基 準 よ り高 い場 合 に は逆 位相 の信 号 が 表 れ,周 波 数 基 準 と一 致 して い る と き に は同 一周 波 数 成 分 が 無 く 2倍 の周 波 数 成 分 が 出 て くる. そ こで,こ
の検 波 信 号 を,変 調 信 号 を 基 準 と して 同 期 検 波 を 行 な え ば その 平 均
出力 は図3.13(b)の 様 に,透 過 出 力 の 微 分 信 号 が 得 られ る.そ こ で,こ
の微 分信
号 す な わ ち誤 差 信 号 を半 導 体 レー ザ に帰 還 す る こ とに よ り,半 導 体 レー ザ の発 振 周 波 数 を周 波 数 基 準f0に 合 わ せ る こ とが で き る.こ を10-10程 度 に す る こ とが可 能 で あ る.
の 方 法 で,周
波数 安 定度
(a)透 過 特性
(b)微 分 特性 図3.13 周波 数 安 定化 信 号
一 例 と し て,半
導 体 レ ー ザ を フ リー ラ ン ニ ン グ さ せ た と き の 周 波 数 変 動 と安 定
化 し た と き の 周 波 数 変 動 の 状 態 を 図3.14に 時 の 周 波 数 の 変 動 で50MHzp-p以
示 す.図3.14(a)は
フ リー ラ ンニ ン グ
上 の 大 き な 変 動 が 見 られ る.図3.14(b)は,こ
の 状 態 で 安 定 化 した と き の 周 波 数 の 変 動 で 数 百kHz以
下 の 変 動 に な っ て お り,
周 波 数 安 定 化 同 路 の 有 効 性 が よ ぐ分 か る
図3.12の 安 定 化 回 路 に示 した方 法 で は,半 導 体 レ ー ザ に 直 接 微 小 信 号 を 加 え て周 波 数 変 調 を 行 な って い る ので,半 導体 レー ザ の発 振 周 波 数 は ご くわず か で あ るが変 調 信 号 に よ り変 化 して 周 波 数 が 揺 ら いで い る.こ の欠 点 を避 け るた め には, 外 部 変 調 器 を使 用 して半 導体 レーザ に は何 ら変 化 を与 え ず発 振 周 波数 を 安 定 化 す る方 法 もあ る.
(a)フ
リー ラ ン ニ ン グ 状 態
(b)安 定 化 した 状態 図3.14 周波 数 安 定 化 の有 無 に よ る発 振 周波 数 の変 動
周 波数 変 動 の値 を表 現 す る の に いろ いろ の方 法 が あ るが,良
く用 い られ て い る
の に ア ラ ン分 散 が あ る.こ れ は,時 間 tに対 す る周 波 数 をy(t)と
した と き,
(3.17) で 表 す.こ
こ で,
(3.18) で あ る.ア ラ ン分 散 の 測 定 値 の 一 例 を 図3.15に 示 す . A の 測 定 値 は,安
定化を
行 な った と きの値,B の 測 定 値 は安 定 化 無 しの フ リー ラ ンニ ン グ時 の 値 で あ る. 両者 を比 較 す る と安 定 化 を行 な う こ とに よ り周 波 数 変 動 が 小 さ くな る こ とが 良 く 理解 さ れ よ う.
図3.15
ア ラ ン分散 の例 A:安 B:フ
定化時 リー ラ ンニ ング時
演 習 問題 3.1
半 導 体 レ ー ザ に お い て,エ 幾 ら か.ま
3.2
た,こ
共 振 器 長 が500μmの
ネ ル ギ ー 準 位 差 が1.4eVの
の と き の 波 長 は い く ら か. 半 導 体 レー ザ の 損 失 α は500Nep/mで
ザ が 発 振 す る た あ の 最 小 利 得 は い く ら か.屈 3.3
共 振 器 長500μmの は約0.85μmで μmで
3.4
折 率 を3.7と
レ ー ザ の 損 失 α は500Nep/m,屈 あ る.利
あ る.こ
の レー
して 求 め よ .
折 率3.7で
発 振 波長
得 が 全 損 失 よ り 大 き く な る 波 長 は0 .8μmか
ら0.9
あ る 、 こ の レ ー ザ の 発 振 可 能 な 縦 モ ー ドの 数 は い く らか.
複 合 共 振 器 形 レ ー ザ で,一
方 の 共 振 器 長 は260μm,他
こ の レ ー ザ の 共 振 波 長 間 隔 は い く らか.た は3.7と
と きの 発 振 周 波 数 は
だ し,波
す る.
3.5
分布 帰 還 形 半 導 体 レーザ の 構造,特
3.6
ス ト ラ イ プ 形 ヘ テ ロ レ ー ザ の 構 造,特
徴 を 述 べ よ. 徴 を述 べ よ .
方 は240μmで 長1.55μm帯,屈
あ る. 折 率
4.
光 フ ァイ バ 増 幅 器
光 の 信 号 を中 継 す る際,電 気 信 号 に変 換 しな い で そ の ま ま増 幅 す る こ と は非 常 に魅 力 的 な こ とで あ る.光 増 幅 の 具 体 的 方法 は二 つ に 大別 され 誘 導 放 出 を利 用 す る方 法 と,非 線 形 光 学 効 果 を利 用 す る方 法 とが あ る. 誘 導 放 出 を 利 用 す る光 増 幅 器 は,半 導 体 レー ザ増 幅器 と光 フ ァイバ増 幅器 の二 つ に分 類 で き る.半 導 体 レー ザ増 幅 器 は,当 初 は短 波 長 帯 の フ ァブ リペ ロ共 振 器 形 半 導体 レー ザ増 幅 器 が 研 究 され,そ の後 広 帯 域 特 性 を有 す る進 行 波 形 の半 導 体 レーザ増 幅 器 に移 行 した. 一 方,光
フ ァ イ バ 増 幅 器 は,ネ
オ ジ ウ ム(Nd)や
プ し た 光 フ ァ イ バ を 用 い る の もが 主 で あ り,現 の も の で あ る.し
た が っ て,こ
エ ル ビ ウ ム(Er)の 希 土 類 を ドー
在 光 増 幅器 は ほ とん どが この形 式
こ で は光 増 幅 器 と し て 光 フ ァ イ バ 増 幅 器 の み を を
取 り 上 げ る こ と に す る.
4.1
原理
誘 導放 出 を 利 用 す る光 増 幅 器 の うち,半 導 体 レー ザ増 幅 器 は電 流 を注 入 す る方 法 に よ り励 起 し反 転 分 布 を 形 成 す るが,光 る方 法 を 用 いて い る.図4.1に
フ ァイ バ増 幅器 で は光 に よ って励 起 す
光 フ ァイ バ増 幅 器 の構 成 と原 理 を示 す.増
幅する
必要 の あ る信 号 光 と,光 フ ァイバ増 幅器 内 で反 転 分 布 を生 じ させ て信 号 光 を増 幅 す るエ ネ ル ギ ーを 与 え る励起 光 は,結 合 器 を通 して希土 類 イ オ ンを添 加 した光 フ ァ イバ に入 射 され る.そ
して,励 起 光 で励 起 さ れ た希 土 類 イ オ ンに信 号 光 を作 用 さ
せ て誘 導 放 出 に よ り信 号光 を増 幅 す る構 成 で あ る.増 幅 用 光 フ ァイ バ の長 さ は用
途 によ り数 m か ら数 十 m で あ る.こ の 光 フ ァイバ増 幅器 は,励 起 光 の 入 射 方 向 に は無 関係 に ど ち らの方 向 に も増 幅 で きる の で,図 に示 す よ う に ア イ ソ レー タを 挿 入 す る こ とが 必 要 で あ る.こ れ は,増 幅 され た信 号 光 が 反 射 して 再 び フ ァイバ 増 幅 器 に入 り反 対 方 向 に増 幅 され,ま
た反 射 して発 振 な どを起 こす 悪 影 響 を避 け
るた め に必 要 で あ る.
図4.1
光 フ ァ イバ 増幅 器 の 構成
希 土 類 を ドー プ し た 光 フ ァ イ バ 増 幅 器 は,使 ほ ぼ 決 ま り,光 の 他,1.33μm帯
4.2
用 材 料 に よ り増 幅 可 能 な 波 長 帯 が
フ ァ イ バ 通 信 に 使 用 さ れ る1.55μm帯 に 対 して はNdが
で はErが
用 い ら れ る .そ
用 い られ て い る.
特性
現 在 光 フ ァ イ バ 通 信 に は 波 長1.55μm帯 す る 光 フ ァ イ バ 増 幅 器 に は,Erを fiber amplifier
:EDFA)が
が 使 用 さ れ て お り,こ
の波 長 帯 に適 合
ドー プ し た 光 フ ァ イ バ 増 幅 器(erbium-doped
用 い られ て い る . EDFAは,光
フ ァ イバ の 最 低 損 失
の波 長 と増 幅 器 の増 幅 帯 域 の波 長 が 一 致 して お り,伝 送 用光 フ ァイ バ との 接 続 損 失 も少 な く非 常 に実 用 的 で あ る. 励 起 用 半 導 体 レ ー ザ の 波 長 と し て は,励 起 準 位 吸 収 の 少 な い0.98μmお 1.48μmが
よび
よ く用 い られ て い る.
増 幅可 能 な帯 域 幅 は,フ
ァイバ の 組 成 に もよ るが,数THzの
広 帯域 にお よ び,
超 広 帯 域 伝 送 や周 波数 多 重 伝 送,超 短 パ ル ス伝 送 へ の応 用 も考 え られ る.
ま た,変
換 効 率 は 励 起 光 に 対 して50%に
も お よ び,最 大 出 力 パ ワ ー も100mW
以 上も 可 能 で あ る.
以 上 の よ うに多 くの利 点 を有 す るEDFAの
利 用 形 態 は数 多 く考 え ら れ る が い
くつ か の例 を図4.2に 示 す.
(a)ビ
ッ トレ ー トに 無 関 係
(b)変 調形 式 に無 関係
(c)光 多周 波増 幅(WDM) 図4.2光
図4.2(a)は
フ ァ イバ 増幅 器 の 利 用形 態
ビ ッ ト レ ー トに 対 す る 柔 軟 性 を 示 す 例 で,EDFAは
に よ ら な い た め,伝
送 路 中 に あ るEDFAに
ビ ッ ト レー ト
は 無 関 係 に 入 力 の ビ ッ ト レ ー トを 変
え る こ と に よ り 異 な る ビ ッ ト レ ー トの 伝 送 路 を 容 易 に 構 成 で き る.こ の 再 生 中 継 器 で は ビ ッ ト レ ー トが 固 定 さ れ て い た の に対 し,極 使 い 方 が で ぎ る こ と を 意 味 して い る.
れ は,従
来
め て柔 軟 性 が あ る
(b)は 光 の 変 調 形 式 に 対 す る 柔 軟 性 でIM,FSK,PSK等 し た い と き,伝
異 な る変調 信号 を伝 送
送 路 の 入 力 信 号 を 変 え る だ け で ど の 変 調 信 号 で も増 幅 す る こ と が
で き る 特 徴 を 有 し て い る. (c)は 広 帯 域 特 性 を 利 用 し て,光 WDM)な
波 長 多 重(wave
length division multiplex:
ど の 光 の 多 重 信 号 を 同 時 に増 幅 して 利 用 す る こ と も で き る 例 を 示 し て
い る. EDFAの
利 得 特 性 の 例 を 図4.3に
イ バ の 長 さ は50m,入
示 す.入
力 信 号 の 波 長 は1.55μm,増
力 信 号 レ ベ ル は-43dBmで
あ る.増
す れ ば 利 得 も あ る程 度 大 き く す る こ と が 可 能 で あ る.ま
幅 用 フ ァイ バ を長 く
た,励
く す れ ば 利 得 も大 き く な る が あ る程 度 で 飽 和 す る特 性 を 示 す.出 光 パ ワ ー に よ り増 大 し数 百mWの
幅用 フ ァ
起 光 パ ワ ー を大 き 力 パ ワ ー は励 起
出 力 パ ワ ー を 得 た 例 も あ る.
図4.3 光 フ ァイ バ増 幅器 の利 得 特性
また,増 幅 可能 な帯 域 幅 も広 く,1.55μm帯
で0.03μm以
れ て い る.こ れ を,周 波数 帯 域 に換 算 す る と約3.7THzに
上 の増 幅 帯 域 が 得 ら も な りEDFAが
如何
に広 帯 域 で あ るか が 分 か る で あ ろ う. さ らにEDFAは
入 射 光 の偏 波面 に依 存 しな い な ど の多 くの 利 点 を 有 し,こ
れ
か ら更 に発 展 す る可 能 性 を 秘 め た技 術 で あ る と と もに 既 に多 くの実 用 方 式 に お い
て も広 く用 い られ て い る. EDFAの
応 用 例 と して は,ソ
トン伝 送 を 実 現 す る ため に は,フ され る こ とが 必 要 で あ り,フ
リ トン伝 送 お よ び フ ァ イバ レー ザ が あ る.ソ
リ
ァイ バ 内 で光 パ ワ ー密 度 が あ る程 度 大 き く維 持
ァイ バ で の損 失 を補 償 す る光 増 幅 器 が必 要 で あ る.
この増 幅 器 に は,超 短 パ ル ス を増 幅 す るた め に,広 帯 域,高 速 応 答 が で き,十 分 な利 得 と高 出力 が 必 要 で あ る.EDFAは,前
述 の条 件 を す べ て 満 た す 増 幅 器 で,
この増 幅 器 を 伝送 路 にあ る間 隔 ご とに挿 入 して,フ
ァイバ の 損 失 を補 償 す る こ と
で,長 距 離 ソ リ トン伝 送 が 可 能 と な った. 4.3
フ ァ イ バ レー ザ
フ ァイ バ に希 土 類 イ オ ンを ドー プす る こ と に よ り増 幅 用 の フ ァイバ を作 る こ と が で き る こ とを述 べ た が,こ れ に適 当 な帰 還 回 路 を 組 み 込 め ば レーザ を構 成 す る こ とが で き る.具 体 的 に は,半 導 体 レーザ と同 様 に 利 得媒 質 の 両 端 に高 反 射 率 の ミラー を 置 く こ とに よ り発 振器 を 構 成 で き る.半 導体 レー ザ で は,反 転 分 布 を起 こ しレー ザ発 振 を す る た め の励 起 エ ネル ギ ー を電 流 よ り得 た が,フ
ァイバ レー ザ
で は励 起 光 を外 部 よ り注 入 す る こ とに よ り行 わ れ る.こ の た め,ミ
ラ ー は励 起 光
を低 損 失 で透 過 し,一 方 発 振 波 長 の 光 に対 して は十 分 大 きな反 射 率 を 有 す る こ と が望 ま しい. 図4.4に フ ァイバ レー ザ に お け る各 種 の反 射 鏡 の構 成 例 を示 す.図4.4(a)は ラー を フ ァイバ の両 端 に置 い た最 も基 本 的 な構 成 例 で あ る.ミ
ミ
ラー は で き るだ け
フ ァイバ の端 に近 づ け る ほ うが良 い の で,ド ー プ した フ ァイバ の端 面 に 直 接 誘 電 体 ミラー を蒸 着 す る こと が行 わ れ て い る.(b)は ブ ラ ッ グ回折 格 子 を 直 接 フ ァ イ バ に組 み 込 ん だ構 成 で ,ポ
ンプ光 に対 して は低 損 失 で 透 過 し,発 振 波 長 に対 して
は高 反 射 率 を示 す もの で あ る.(c)は フ ァイバ ル ー プ ミラー を 用 い た 例 で,ポ
ン
プ光 を低 損 失 で 透 過 し,発 振 波 長 に対 して は高 い反 射 率 を もつ よ うに設 計 して あ る.
(a)フ ァ ブ リペ ロ形
(b)ブ ラ ッグ 回折 格 子 形
(c)フ ァ イバ ル ー プ ミ ラ ー 形
図4.4 フ ァ イバ レーザ の 各種 反 射 鏡 の 構 成例 そ の 他 に,リ
ン グ 共 振 器 を 用 い た フ ァ イ バ レ ー ザ の 構 成 も 考 え ら れ る.こ
振 器 の 構 成 は 図4.5に
示 す よ う に,結
の発
合 器 の 端 子 に そ れ ぞ れ ドー プ フ ァ イ バ,ア
イ ソ レ ー タ お よ び 偏 光 制 御 器 を 挿 入 し た も の で あ る.こ
こに 用 い た ア イ ソ レー タ
図4.5 リン グ共 振器 を用 い た フ ァ イバ レー ザ
は 1方 向 に発 振 させ る た め の もので,偏 光 制 御 器 は偏 光 面 を保 持 す るた め の装 置 で あ る.こ
こで励 起 光 を結 合器 を通 して ドー プ フ ァイ バ に 入 れ る と,ル
ープの 1
周期 が 波 長 の整 数 倍 に な る波長 で発 振 す る. フ ァイ バ レー ザ の発 振波 長 は,反 射 鏡 に ブ ラ ッ グ回折 格 子 の よ う な鋭 い波 長選 択 特 性 を有 す る素 子 を 用 い た もの以 外 は,一 般 に 多 モ ー ド発振 で あ るの で 注 意 を 要す る.ま た,外 部 か ら微 弱 な発 振 波 長 の光 を入 れ て発 振 を制 御 す る注 入 同 期 法 な ど で発 振 特 性 を 改善 す る方法 もあ る.
演
習
問
題
4.1
光 フ ァ イ バ 増 幅 器 の 構 成 法,お
よ び 特 徴 を 述 べ よ.
4.2
フ ァ イ バ レ ー ザ の 構 成 法,お
4.3
波 長1.55μm帯
ら に な る か.
4.4
光 フ ァ イ バ 増 幅 器 で ア イ ソ レ ー タ が 必 要 な 理 由 を 述 べ よ.
よ び 特 徴 を 述 べ よ.
の 増 幅 帯 域 が2THzあ
る と き,こ
れ を波 長 幅 に す る と い く
5.
光検波器
光 検 波 器 は,伝 送 され て き た微 弱 な光 信 号 を そ れ に対 応 す る電 気 信 号 に 変 換 す る素 子 で あ る.現 在,広
く使 わ れ て い る光 検 波 器 に は フ ォ トダ イ オ ー ドと,ア バ
ラ ンシ ェ フ ォ トダ イ オ ー ドが あ る.前 者 は 入射 した光 強 度 に比 例 した電 子 を 発 生 し,後 者 は さ らに そ の電 子 を増 幅 す る機 能 を も って い る.い ず れ の場 合 で も,入 射 光 強 度 に比 例 し,感 度 が良 く,波 形 歪 み の少 な い検 波 器 が 必 要 で あ る. 使 用 材 料 は,短 InGaAsな 5.1
波 長 帯 で はSi,1.3μm帯
や1.5μm帯
の 長 波 長 帯 で はGeや
どの 化 合 物 半 導 体 が 用 い られ る こと が多 い.
PNフ
ォ トダ イ オ ー
ド
(1)動 作 原理 熱 平 衡状 態 に あ る受 光 素 子 のpn接
合 の 近 くに,バ ン ドギ ャ ップ 以 上 の 光 子 エ
ネ ル ギ ー を有 す る光 が 入 射 す る と,電 子-正 入 射 した 光 は p形 領 域 で電 子-正
孔 対 が 発 生 す る.今,図5.1(a)で
孔 対 を 発 生 す るが,発 生 し た電 子 の 多 く は正
孔 と再 結 合 して 消 滅 す るが,い くつ か の電 子 は薄 い空 乏 層 を通 り n形 領 域 に到 達 す る.一 方,n 形 の領 域 にお いて も発 生 した正 孔 の 一 部 は空 乏層 を通 りp 形 領 域 に到 達 す る.そ の 結 果,図5.1(a)に
示 す よ う に n形 領 域 か らp形 領域 に向 か う逆
方 向 電 流 が 流 れ る こ と にな る.し たが って,図5.1(b)に
示 す よ うに外 部 に 接 続 し
た負 荷 抵 抗 R の両 端 に は電 圧 V が 発 生 し,こ の 電 圧 は ダ イ オ ー ドに 順 方 向電 流 Ifを 流 す こ とに な る.結 局,負 とな る.
荷 抵 抗 R に 流 れ る電 流 は 両 者 の 差 でI=Iph-If
(a)受 光 回 路
(b)等 価 回路
図5.1 入 射 光 に よ る外 部 電流 (2) 感 度 今,入
射 光 パ ワ ーPi の光 は,周
入 射 し た こ と と 等 価 で あ る.こ
波 数 を f と す る と,1 秒 当 りPi/hf個
こ で,h
子 に よ り 励 起 さ れ る 電 子 の 効 率,量
は プ ラ ン ク の 定 数 で あ る.し
の光 子 が た が って 光
子 効 率 を η と す る と 発 生 す る 光 電 流Iphは,
(5.1) と な る.こ
こ で , q は電 子 の 電 荷 で あ る.
フ ォ トダイ オ ー ドの受 光 感 度 S は,入 射 光 パ ワ ー 当 りの 光 出 力 電 流 で 定 義 さ れ る ので,
(5.2) で 表 さ れ る.ま
た,上
式 は 波 長 λ を μmの
単 位 で 表 す と 以 下 の よ う に な る.
(5.3) 量 子 効 率 は,光 検 波 器 の使 用 材 料 に よ りそ の波 長 特 性 は大 き く異 な り,代 表 的 な 例 を 図5.2に 示 す.Siは
波長0.8μm付
で は著 しく感 度 が低 下 す る.波 長1μm以 ギ ャ ップ の狭 い材 料 が用 い られ る.
近 で 高 感 度 を 有 して い るが,長 上 で はGeや
InGaAsの
波 長帯
よ うな バ ン ド
図5.2 量 子 効 率の 波 長 特性
5.2
PNフ
PINフ
ド
ォ ト ダ イ オ ー ドを 改 良 し た 光 検 波 器 にPINフ
の 構 造 は,p-n接 設 け,動
ォ トダ イ オ ー
合 の 間 に n形 又 は p 形 の 高 抵 抗 層 のI層(intrinsic
作 時 に は外 部 か らp-n接
あ る.図5.3に
ォ トダ イ オ ー ドが あ る.そ
合 に逆 バ イ ア スを 加 え て 空 乏 層 を作 る もの で
逆 バ イ ア ス を 加 え た と き の 様 子 を 示 す.(a)は
層 を 表 して い る.(b)は
ドー ピ ン グ レ ベ ル を 示 し て お り,ド
タ の ドー ピ ン グ レ ベ ルNDお
よ びNAは
性 領 域(I 層)で
電荷分布 で中央 が 1 ナー お よび ア クセプ
各 領 域 で 一 定 に な っ て お り,中
で は小 さ な 値 に な っ て い る.(c)は 各 領 域 の 電 界 分 布 で,逆 る の で,真
layer)を
央 の I層
バ イ ア ス を加 え て あ
は ドー ピ ン グ レベ ル と 真 性 領 域 の 幅 を 適 当 に す る こ
と に よ り真 性 領 域 を 空 乏 領 域 と し,n 形 の 領 域 か ら p 形 の 領 域 に 向 か う 強 い 電 界 を 生 じ て い る.
こ こで,図5.3(a)で
左 側 か らの 入 射 光 は薄 い n層 を通 過 し空 乏 層 で 吸 収 さ れ,
電 子-正 孔 対 が 生 じ,電 子 と正 孔 は電 界 の 影 響 を受 けそ れ ぞ れ反 対 方 向 に加 速 さ れ,外 部 回路 に電 流 と して検 知 さ れ る.PINフ
ォ トダ イ オ ー ドは,逆 バ イ アス を
加 え る こ とに よ り空 乏 層 の容 量 を減 少 させ,ま
た キ ャ リアが 空 乏 層 を ド リフ トす
る際 の走 行 時 間 を短 縮 す る の で応 答 速 度 が 速 くな る特 徴 を も って い る.PINフ トダ イ オ ー ドは構 造 が簡 単 で あ り,逆 バ イ ア ス電 圧 も20V程
ォ
度 で 良 いた め光通
(a)電 荷 分布
(b)
ドー ピ ン グ レ ベ ル
(c)電 界 分 布 図5.3
逆 バ イ ア ス 状 態 のPINフ
ォ トダ イ オ ー ド
信 用 検 波 器 と して 広 く用 い ら れ て い る. PINフ
オ ト ダ イ オ ー ドの 使 用 回 路 例 を 図5.4に
圧,γ は 保 護 抵 抗,C
は バ イ パ ス コ ンデ ンサ,R
図5.4
PINフ
ォ トダ イ オ-ド
示 す.こ
こで E は逆 バ イ ア ス電
は増 幅 器 の 入 力 抵 抗 を 表 して い る .
の 使用 例
5.3
ア バ ラ ン シ ェ フ ォ トダ イ オ ー ド(APD)
光 通 信 の受 信 電 力 は通 常 非 常 に低 く数 μW程
度 で あ り,直 接 検 波 し た だ け で
は非 常 に小 さ い電 流 しか得 られ な い の で,光 検 波 器 の後 に増 幅器 を用 い て信 号 を 大 き くす る の が一 般 的 で あ る. しか し,こ の ほ か に電 子 雪 崩 現 象 を利 用 して,フ
ォ トダイ オ ー ドの 内部 で増 幅
す る アバ ラ ンシ ェフ ォ トダ イ オ ー ド(avalanche photo diode:APD)が い られ て い る.ア バ ラ ンシ ェ フ ォ トダ イ オ ー ドの構 造 はPINフ
よ く用
ォ トダ イ オ ー ド
の構 造 と ほぼ 同 様 で あ るが,そ の 真 性 領 域 の 端 に高 い電 界 が 加 え られ て い る雪 崩 領域 が あ る点 が 異 な る.図5.5に
アバ ラ ンシ ェ フ ォ トダ イ オ ー ドの電 流 増 倍 作 用
の説 明 図 を 示 す.図 で は入 射光 によ り発 生 した 1個 の電 子 は 内部 の電 界 に よ って 加 速 され結 晶 格 子 に衝 突 し,束 縛 電 子 を 自由 に した結 果 2個 の電 子 に な る.さ
ら
に この電 子 が 加速 され 4個 の電 子 を 発 生 す る様 子 を示 して い る.す なわ ち,こ の 場 合 の電 流 増 倍 率 は 4と な る.図 で は,雪 崩 現 象 を生 ず る キ ャ リア を電 子 の み と した が,実 際 に は その 他 に正 孔 に よ って も雪 崩 現 象 が 生 ず る.電 流 増 倍 率 M は, アバ ラ ン シ ェ フ ォ トダイ ォー ドの光 電 流 と増 倍 作 用 の な い と きの光 電 流 との比 で 表 され る の で下 式 の よ うに定 義 され る.
図5.5 雪崩 電 流 増倍 作 用 の 説 明 図
M=IAPD/IPh
(5.4)
ま た,そ の 電 流 増 倍 率 M は 印加 直流 電 圧 に よ り大 き く変 わ り,下 式 の よ う に
表 さ れ る.
(5.5) こ こ で,VBは
ブ レ ー ク ダ ウ ン電 圧, n はパ ラ メ ー タ で3∼6程
印 加 電 圧 を 変 化 さ せ た と き の 電 流 増 倍 率 特 性 を 図5.6に 利 得 は無 限 大 と な り,ブ
レ ー ク ダ ウ ンが お き る.ま
た,図
度 の 値 で あ る.
示 す.VB=Vと
な ると
よ り分 か る よ う に あ ま
り増 倍 率 を 大 き くす る と 僅 か な 電 圧 の 変 化 で 増 倍 率 が 大 き く変 わ る の で,動 圧 は ブ レ ー ク ダ ウ ン電 圧 に 対 して,低 で は,こ
の ブ レ ー ク ダ ウ ン電 圧 は150∼200Vの
図5.6
5.4
い 電 圧 で 使 用 す る 必 要 が あ る.実
APDの
作電
際の素子
も の が 市 販 さ れ て い る.
増 倍率 特 性
雑音
光 検 波 電 流 は,入 射 光 に よ り電 子正 孔 対 が発 生 しそ れ が 外部 回 路 に流 れ る こ と に よ り電 流 に な るた め,あ
る平 均値 の周 りに 変 動 す る性 質 を も って い る.こ
た め に生 ず る変 動 が シ ョ ッ ト雑 音 で あ る.こ (A2/Hz)は
の
の シ ョ ッ ト雑 音 の ス ペ ク トル 密 度
下 式 で 与 え られ る.
(5.6) こ こ で,q
は 電 子 の 電 荷,Iph は 式(5.1)で 与 え ら れ る 光 電 流, Idは 暗 電 流 で あ る.
し た が っ て,Iph>Idの 音 比(S/N)は
場 合 の シ ョ ッ ト雑 音 の み を 考 慮 し た 光 検 波 器 の 信 号 対 雑
B を 帯域 幅 とす る と
(5.7) で 与 え られ る.こ こで,η は フ ォ トダイ オ ー ドの量 子 効 率,f は光 の 周 波 数 で あ る.こ の 式 か ら分 か る よ うに,S/Nは
入 射 光 強 度Piに 比 例 し,帯 域 幅 B に 反 比
例 す る.こ の 式 は,回 路 雑 音 を 無 視 した,シ
ョ ッ ト雑 音 の み のS/Nで
あ る の で,
シ ョ ッ ト雑 音 限 界 の S/N と呼 ばれ るが 実 際 の回 路 で は熱 雑 音 等 が 加 わ る た め こ の値 よ りS/Nが
劣化 す る.
次 に光 検 波 器 の あ と に増 幅 器 を 接 続 す る よ う な,実 際 の検 波 回 路 のS/Nに いて 考 察 す る.こ の 場 合 の 等価 回 路 を図5.7に 示 す.こ
こ で,<i2α>は
つ
増 幅器
の入 力端 換算 の電 流 雑 音 源, <υ2α>は 増 幅 器 の入 力 端 換 算 の 電 圧 雑 音 源 を示 す.抵 抗 R は,負 荷 抵 抗 お よ び増 幅 器 の入 力 抵 抗 の 並 列 接 続 値,C
は全入 力容
量 を 表 して い る.こ の抵 抗 R か ら発 生 す る熱 雑 音 電 流 の スペ ク トル密 度 は,
図5.7 光 検 波器 と増 幅器 の雑 音 に対 す る等価 回路
(5.8) で あ る.し
た が っ て,入
力 端 換 算 の 全 雑 音 電 圧 の ス ペ ク トル 密 度 は 入 力 イ ン ピ ー
ダ ン ス を 考 慮 す る と次 式 の よ う に な る.
(5.9) そ こ で,周 波 数 0か らB まで の全 雑 音電 圧 の 2乗 平 均 値 は上 式 を周 波 数 0か ら B まで 積 分 して,
(5.10) と な る.し
た が っ て,強
度 変 調 さ れ た 信 号 に 対 す るS/Nは,
(5.11) で 表 さ れ る.こ Vs=Ip
で あ る.た
こ でVnは
式(5.10)で
与 え ら れ,Vsは,
(5.12)
h Rmf(t)
だ し,m
は 変 調 度,f(t)は
信 号 波 で あ る.
演 習 問題 5.1 入 力 光 パ ワ ー10μw,波 波 電 流 は い く ら か.ま 5.2
PINフ
長0.85μm,能 た,こ
率80%の
の 光 検 波 器 の 感 度(A/W)は
ォ ト ダ イ オ ー ド の 原 理,特
ト雑 音 に よ るS/NVは 5.5 入 力 光 パ ワ ー10μW,波
長1.55μm,能 何dBか.た
20℃ と す る.(増
原 理,特 率70%の
だ し,帯
長155μm,能
100Ω で 終 端 し た と き のS/Nは
い く ら か.
徴 を 述 べ よ.
5.3 ア バ ラ ン シ ェ フ ォ ト ダ イ オ ー ド(APD)の 5.4 入 力 光 パ ワ ー10μw,波
フ ォ トダ イ オ ー ドの光 検
幅 器 の 雑 音 は 考 え な い.)
フ ォ ト ダ イ オ ー ドの シ ョ ッ
域 幅 を100MHzと
率70%の
何dBか.た
徴 を 述 べ よ.
す る.
フ ォ トダイ オ ー ドを抵 抗
だ し,帯
域 幅100MHz,温
度
6.
光 回路素子
光 フ ァイ バ通 信 を 行 な うた め に は今 まで に述 べ て きた光 フ ァイバ,半 導 体 レー ザ,光 増 幅 器 お よ び 光 検 波 器 の他 に も多 くの光 回路 素 子 が必 要 で あ る.す べ て の 光 回路 素 子 を こ こに あ げ る こ と はで きな い の で,主 な素 子 を 選 ん で 記 述 す る. 光 回 路 素 子 は大 き く分 けて,ど
ち らの方 向 に も伝 送 で きる一 般 的 な 相 反 性 回 路
素 子 と,数 は少 な い が ア イ ソ レー タの よ うに一 方 向 に しか伝 送 で きな い 非 相 反 性 回路 素 子 とが あ る.ま ず,最 初 に相 反 性 回路 素 子 の い くつ か を述 べ,次
に非 相 反
性 回路 素 子 を述 べ る こ と にす る.
6.1 相 反 性 回 路 素 子 (1) レ ン ズ
レ ン ズは半 導 体 レー ザ等 の 発 光素 子 あ るい は光 検 波 器 な ど の受 光素 子 と光 フ ァ イ バ を結 合 す る入 出力 回路 等 に広 く用 い られ て い る.レ
ンズ の うち,最
も良 く知
られ て い るの は 図6.1に 示 す よ うな球 面 レンズ で あ る.こ の レ ン ズ に お い て 2つ
図6.1 薄肉 の レンズ 系 の光 線
の球 面 の 曲率 半 径 が等 しい厚 さの 薄 い レ ンズを 考 え る と式(6.1)が 成 り立 つ こ と が よ く知 られて い る.
(6.1) ここで,a は レ ンズか ら物 体 ま で の距 離,b は レ ンズか ら像 を 結 ぶ 位 置 まで の 距 離,f は焦 点 距 離 で あ る.入 射 光 線 が 平 行 光 線 の 場 合 は aを無 限 大 と して b=f と な る.図6.1の
よ うな 厚 さの 薄 い レ ンズ の場 合 は光 線① お よ び③ で 示 した レ ン
ズ の軸 と平 行 な 入 射 光 線 お よ び平 行 な 出射 光 線 は焦 点 fを とお り,光 線 ② は レ ン ズ の中 心 を 通 る と して 近 似 的 に表 せ る.し か し,光 通 信 の回 路 で 良 く用 い られ る 肉 の厚 い レ ンズの 場 合 に は,光 線 ① お よ び③ は そ の ま まで 良 いが 光 線 ② は レ ンズ の厚 さ を考 慮 して 補 正 す る必 要 が あ る. (2) 回折 格 子 回 折 格 子 は従 来 か ら分 光 機 器 等 に良 く用 い られて き た.そ の 断 面構 造 は,図6.2 に示 す よ うに基 板 表 面 に鋸 歯 状 断 面 の 溝 を 多数 刻 ん だ もので あ る.こ
こ に,波 長
λの光 が入 射 した と き,隣 り合 う溝 で 回折 した光 の光 路 差 が 波 長 の整 数 倍 で あ れ ば 強 め 合 い そ の方 向 に光 は進 む.い
ま,回 折 格 子 の 入射 光 お よ び 回 折 光 を 図6.2
の よ うに と る と式(6.2)が 導 か れ る.
図6.2 回 折 格 子 に よ る光 の 回折 L(sinα+sinβ)=m
こ こ で,α
は 入 射 角,β
λ
は 回 折 角 で あ り,回
(6.2) 折 格 子 の法 線 に対 しα お よ び β が
同 じ方 向 な らば両 方 と も正,反 間隔,m
対側 に あ れ ば 片方 を負 とす る.こ こ で,L は溝 の
は回 折 次 数 と呼 ば れ る整数 で あ る.い ま,極 端 な例 と して α=β=π/2
とす る とL=mλ/2と
な り,溝 の間 隔 を 半 波 長 の 整 数 倍 に す る と入 射 光 の 方 向
に反 射 光 が 戻 る こ とに な る. 回 折 格 子 は,波 長 計 や 半 導 体 レーザ の 周波 数選 択素 子 と して 用 い られ て い る. (3)偏 光 子 偏 光 子 は,任 意 の偏 光方 向 の 光 か らあ る特 定 方 向 の 偏光 面 の光 を取 り出 す素 子 で あ る.可 視 光 領 域 で は,ポ
リ ビニ ー ル ア ル コー ル の 薄膜 を一 方 向 に 引 き伸 ば し
て鎖 状 高 分子 の 配 列方 向 を 整列 させ た,い わ ゆ る ポ ラ ロイ ドが あ る が光 通 信 で用 い られ る波長 帯 で はあ ま り特 性 が良 くな い. 光 学 素 子 と して 用 い られ る偏 光 子 は,方 解 石 や水 晶 等 の複 屈 折 を利 用 した もの が あ る.こ れ らの非 等 方 結 晶 の 中で 光 は偏 光 面 が 直交 す る 2つ の 直線 偏 光 に分 か れ て伝 搬 す る複 屈 折 性 を示 す.し たが って,任 意 の偏 光 状 態 の光 を 複 屈 折 物 質 中 に伝 搬 さ せ る こ とに よ り,直 交 す る 2つ の 直線 偏 光 を得 る こ とが で きる.複 屈 折
図6.3 異 な る媒質 の 境界 面 での 光 の 反射 お よび屈 折
を 利 用 し た 偏 光 子 は,広
帯 域 で 消 光 比 の 良 い特 性 を 有 す る.
そ の 他 の 偏 光 素 子 と し て は,ブ 光 子 が あ る.一
リ ュー ス タ 角(brewster
angle)を
利 用 した偏
般 に 光 が 異 な る 屈 折 率 を 有 す る 物 質 に 入 射 す る と き は,一
部 が反
射 し残 り は 透 過 す る. い ま 図6.3に
示 す よ う に,入
射 光 が 直 線 偏 光 で そ の 偏 光 面 が 入 射 面 に 平 行 な,
い わ ゆ る P 偏 光 注1)では 入 射 角 θ と屈 折 角 ψ の 和 が π/2で あ る と き,入 部 透 過 し反 射 光 が 無 く な る こ と が 知 ら れ て い る.こ
射 光 は全
の入 射 角 θの こと を ブ リュ ー
ス タ 角 と 言 う. 偏 光 ビ ー ム ス プ リ ッ タ は,こ くす る た め に 図6.4に
の ブ リュ ー ス タ角 を 利 用 し た 偏 光 子 で,特
示 す よ う に,低
屈 折 率 の層 と高 屈 折 率 の層 を 交 互 に積 層 し
た 多 層 膜 を 二 つ の プ リ ズ ム で 挟 ん だ 構 造 で あ る.こ 偏 光 を 図6.4の
性 を良
よ う に 入 射 さ せ る と,反
の偏 光 ビー ム ス プ リ ッ タに P
射光 は無 くす べ て透 過 させ る こ と が で き
る.
図6.4
偏 光 ビ ーム ス プ リッタ
一 方,S 偏光 注2)を 入 射 させ る と,多 層 膜 の各 層 で の 反 射 成 分 が同 相 で 加 わ り, ほぼ完 全 に反 射 させ る こ とが で きる. (4) 方 向 性 結 合 器 方 向性 結 合 器 は,入 射光 を分 配 した りあ る い は逆 に混 合 した りす るの に広 く用
(注 1)P 偏 光:入
射 光 の 偏 波 面(電 界)が 入 射面 に 平 行 に な って い る偏 光 .parallel
(注 2)S 偏 光:入
射 光 の 偏波 面 が 入射 面 に垂 直 に な って い る偏 光. senkrecht
い られ て い る.
空 間 伝 搬 の場 合 は,図6.5(a)の
様 にハ ー フ ミラー を用 いて 端 子 ① か ら入 射 した
光 は,端 子 ② お よ び 端子 ③ へ 分 配 され る.ま た,端 子 ④ か ら別 の光 を入 射 させ れ ば端子 ② お よ び③ に二 っ の光 を 混 合 して 出す ことが 可 能 で あ る. 特 別 な 場 合 と して,ハ
ー フ ミ ラー の代 わ り に 図6.5(b)の よ う に偏 光 ビー ム ス
プ リ ッタを 用 い,端 子① か らP偏 光 を 入 射 し,端 子 ④ か ら S偏 光 を 入 射 さ せ れ ば 前 項 で 述 べ た よ うに p偏 光 は偏 光 ビー ム ス プ リ ッタを透 過 し,S 偏 光 は偏 光 ビー ムス プ リッ タで反 射 し,直 角 に 曲 げ られ るの で 端子 ③ に そ れ ぞ れ損 失 な く伝 送 す る こ とが で き る.
(a)ハ
ー フ ミ ラ ー
(b)偏 光 ビ ー ム ス プ リ ッ タ
図6.5
ミ ラ ー に よ る結 合
光 フ ァ イ バ を 用 い た 方 向 性 結 合 器 の 構 造 は,図6.6(a)に ク ラ ッ ドを 剥 ぎ,二
つ の コ ア を 接 近 さ せ て 配 置 す る こ とに よ り フ ァ イ バ ① か ら フ ァ
イ バ ② へ エ ネ ル ギ ー が 結 合 す る.い と す る と,長
示 す よ うに フ ァ イバ の
ま,フ
ァイ バ の単 位 長 あ た り の結 合 係 数 を k
さ 方 向 に 沿 って の エ ネ ル ギ ー の 移 行 状 態 は 式(6 .3)に 示 す よ う に な
る. p1=p0cos2κL
(6.3)
P2=p0sin2κL
こ こ でP0は 即 ち,結
入 射 光 の パ ワ ー で あ る.こ
れ を 図 に 示 せ ば 図6.6(b)の
よ う に な る.
合 長 L を 調 節 す る こ と に よ り 入 力 端 子 か ら入 っ た 光 の パ ワ ー を 2本 の
フ ァイ バへ 任 意 の割 合 で分 配 す る こ とが で き る.特 に 2等 分 して伝 送 す る よ うな 方 向 性 結 合 器 を3dB結
合 器(ハ イ ブ リ ッ ド結 合 器)と い う.ま
た,結
合長 を更 に
長 くす る と全 エ ネ ル ギ ー を フ ァイ バ② へ結 合 す る こ と も可 能 で あ る.
(b)結 合 長 とエ ネ ルギ ー分布
(a)構 造
図6.6 フ ァ イバ 形方 向 性 結 合器
(5) 位 相 変 調 器 光 フ ァイ バ通 信 の光 源 に用 い られ る半 導 体 レーザ は,数Gbit/sの
ビ ッ ト レー
トま で 直接 強度 変 調 が可 能 で あ るが,そ れ 以 上 にな る と外 部 変調 器 が必要 にな る. ま た,位 相 変 調 等 の変 調 方 式 で は直接 変 調 が 困 難 で あ るの で 外 部 変 調 器 が用 い られ て い る. 良 く用 い られ る位 相 変 調 器 と して は,電 気 光 学 効 果 を 利 用 し,印 加 電 界 に よ る 屈 折率 の 変 化 で 変 調 を行 な って い る.図6.7に ち,ニ オ ブ酸 リチ ゥム(LiNbO3)な
位 相 変 調 器 の構 成 を 示 す.す
なわ
ど電 気 光 学 効 果 を 生 ず る結 晶 基 盤 上 に 一 本 の
導 波 路 を構 成 し,こ れ を挟 ん で電 界 を 加 え る電 極 を 作 成 す る.こ の 電 極 に変 調 電 圧 を加 え る と電 気 光 学 効 果 に よ り導波 路 の 屈 折 率 が 変 化 し,導 波 路 を 伝 搬 す る光 の位 相 が変 化 す る.こ の方 式 で は,変 調 器 か ら見 た 負 荷 が 容 量 性 で イ ン ピー ダ ン ス が高 く電 力 は あ ま り要 らな い が 周波 数特 性 が 高 周 波 域 で 悪 くな る欠 点 が あ る.
図6.7 集 中定 数 形位 相 変 調 器
こ の欠 点 を 改良 した の が 進 行 波 形 の変 調 器 で,そ の 構 造 は図6.8に 示 す よ う に 変 調電 極 を 変 調 信 号 の伝 送 線 路 と して も利用 し,伝 送 線 路 の イ ン ピー ダ ンス で 終 端 した もの で あ る.こ の 変調 器 で は,導 波 路 を進 む光 と変 調 信 号 の伝 搬 速 度 が 同 じで あ れ ば 光 の走 行 時 間 の影 響 も無 く,し た が って変 調 周 波 数 特 性 は広 帯 域 で 良 好 で あ るが,終 端 抵 抗 で の電 力 消 費 を 考慮 す る必 要 が あ る.
図6.8 進 行 波 形位 相 変 調器
位 相 変 調 器 の 変 調 感 度 特 性 を表 す の に,変 調 に よ り出 力 光 の位 相 を π変化 す る の に必 要 な 電 圧Vπ と変 調 素子 の 長 さ L の積VπLを 用 い る こ とが あ る.例 VπL=25V・mmの
素 子 で あれ ば,位 相 を π変 化 させ る の に5Vの
え ば,
印加 電圧 で あ
れ ば素 子 の 長 さが5mm必
要 で あ る こ とが 分 か る.
(6) 強 度 変 調 器 強 度 変 調 器 は,一 般 に位 相 変 調 器 と 2つ の伝 送 線 路 を組 み合 わ せ て 構 成 した も のが 多 い. 図6.9に 分 布結 合 形 強 度 変 調 器 の構 成 を示 す.動 作 原 理 は,変 調 電 圧 に よ り方 向性 結 合 器 の屈 折 率 が 変 化 し,そ の結 果 結 合 度 が 変 化 す るの で 出 力 端 子 へ の 光 電 力 が 変 化 し強度 変 調 が 行 わ れ る.
図6.9 分 布結 合 形 強 度変 調 器
次 に,図6.10に
マ ッハ ツ ェ ン ダ形 強度 変 調 器 の 構 成 を 示 す.左
か らの 入 射 光
は Y分 岐 で 2等 分 さ れ位 相 変 調 器 に入 り,変 調 電 界 に よ りそ れ ぞ れ △φ と-△ φ の位 相 変 化 を受 け,出 力 側 Y分 岐 で 合成 され る.し た が って,変
調 電 界 が無 い
と きは同 相 で 合 成 され るが,変 調 電 圧 に よ る 位 相 差 が π の と き は 出 力 は無 くな り強 度 変 調 が行 わ れ る.
図6.10
マ ッ ハ ツ エ ン ダ形 強 度 変 調 器
図6.11に ハ イ ブ リッ ド結 合 形 強度 変 調 器 の構 成 を 示 す.こ の両 側 に二 つ の3dB方
れ は,位
相 変 調器
向 性 結 合 器(ハ イ ブ リッ ド結 合 器)を 接 続 し た もの で,入
射 光 の振 幅 と位 相 を うま く利 用 して強 度 変 調 を行 な う もの で あ る.こ の強 度 変 調 器 の 動 作 は次 の よ うで あ る. い ま,位 相 変 調 器 に電 界 が印 加 さ れ な い場 合 の例 を 考 え る.端 子 ① か らの入 射 光 は3dB結
合 器 で 2分 され 端 子 ② お よ び④ に出 る.こ
の と き,端 子 ④ の 光 の 位
相 は端 子 ② よ り π/2遅 れ て い る.こ れ らの光 が 位 相 変 調 器 1お よび 2で は変 化 な く通 過 し,次 の3dB方
向性 結 合 器 2に入 りこ こで も方 向 性 結 合 器 1と同 様 の 位
相 と振 幅 の変 化 を 受 け るの で,結 局 端 子 ⑧ に全 入 射 光 が 出 力 され端 子 ⑥ へ の 出力 はな い.
図6.11 ハ イ ブ リ ッ ド結 合 形 強度 変 調器
次 に,変 調 電 圧 が 印 加 され た と きを考 え る.こ の と き,位 相 変調 器 で の端 子 ② か ら端子 ⑤ へ の位 相 が,端 子④ か ら端子 ⑦ へ の 位 相 に対 し π だ け遅 れ る とす る と,先 の議 論 と同 様 に して全 入 力 は端 子 ⑥ へ 出 て くる.し た が って,変 調 電 圧 に よ り出力 光 は 強度 変調 を受 け た こ とに な る. (7) フ ァブ リペ ロ エ タ ロ ン フ ァ ブ リペ ロエ タ ロ ン略 して エ タ ロ ンは大 き く分 け て 反 射面 間 が気 体 の もの と 固体 の物 の 2種 類 が あ る.前 者 は エ ア ス ペ ー ス形,後 者 は ソ リ ッ ド形 等 と も呼 ば れ て い る.そ の 構 造 の 概 略 を 図6.12に 示 す.図6.12(a)は
エ ア ス ペ ー ス形 で 反 射
膜 の 間 の空 間 が 共 振器 を構 成 して い る.一 般 に入 出 力 側 の 面 に は反 射 防 止 膜 を設 け反 射 に よ る損 失 を防 いで い る.(b)は ソ リ ッ ド形 で,極
め て平 行 度 の 良 い 石 英
等 の両 面 に反 射 膜 を蒸 着 した構 造 で,反 射 膜 の反 射 率 は80∼99%(電 の もの が 良 く用 い られ て い る.
力 比)程 度
(a)エ ア ス ペ ー ス 形 図6.12
(b)ソ
リ ツ ド形
エ ア ス ペ ー ス 形 と ソ リ ッ ド形 エ タ ロ ン の 形 状
この エ タ ロ ンの透 過 特 性 につ い て以 下 に検 討 す る.エ タ ロ ンへ の 入 射 光 の 経 路 を図6.13に 示 す.屈 折 率 n,厚 さ d の エ タ ロ ンに a点 で 入 射 角 θで入 る光 線 は透 過 率t1,屈
折 角 ψで エ タ ロ ンに入 り,図 に 示 す よ う に進 み 反 対 側 か ら b点 で透
過 率t2,角
度 θで 出 て い く.こ の光 線 を① とす る.b 点 で 反 射 した光 は図 の よ う
に進 み,c 点 で 反 射 しd点 に来 て 透 過 率t2で 光 線 ② の方 向 に進 む.こ
こで,光 線
① と光 線 ② が平 行 で この方 向 に光 が進 行 す る た め の条 件 を求 め よ う.こ の 二 つ の 波 の位 相 差 δは次 式 で 表 され る.
図6.13
エ タ ロ ンの透 過光
(6.4) 次 に エ タ ロ ンの 中 を 多 重 反 射 して 進 む 波 は,エ エ タ ロ ン か ら 出 る と き の 透 過 率 をt2と
し,反
タ ロ ンへ の 入 射 時 の 透 過 率 をt1,
射 率 を γと す る と次 の 無 限 級 数 で
表 さ れ る.
(6.5)
At=Ai(t1t2+t1t2γ2e-jδ+t1t2γ4e-j2δ+…)
こ こで,Atは
透 過 波 の 振 幅, Aiは
入 射 波 の 振 幅 で あ る.そ
こ で,式(6.5)は,
(6.6) と 表 さ れ る.こ で あ る.し
こ で,R=γ2(反
た が っ て,エ
射 膜 の 電 力 反 射 係 数),
T=t1t2,
γ2+t1t2=1
タ ロ ン の 透 過 電 力 は,
(6.7) と な る.同
様 に し て エ タ ロ ン の 反 射 電 力 は下 式 で 表 さ れ る.
(6.8) 上 式 を 用 い て,具
体 的 な 例 と して エ タ ロ ン の 屈 折 率n=1.5,厚
特 性 の 計 算 値 を 図6.14に
さ5mm,の
透過
示 す.反 射 係 数 R に よ り透 過 特 性 が 大 き く異 な る こ と が
図6.14
フ ァ ブ リペ ロ エ タ ロ ン の 透 過 特 性
良 く分 か る で あ ろ う.図 お よ びFWHM(full
中 の,FSR(free
spectral range,自
width at half maximum,半
表 す と き に 良 く用 い ら れ る.ま
た,フ
由 ス ペ ク トル 領 域)
値 全 幅)は エ タ ロ ン の 特 性 を
ィ ネ ス(FSR/FWHM)も
同 様 に 良 く用 い
られ る.
6.2
非 相 反 素 子
光 フ ァ イ バ 通 信 シ ス テ ム の 光 源 と して 使 わ れ て い る半 導 体 レ ー ザ は,光 バ の 接 続 点 や 各 種 光 部 品 か らの 反 射 光 が 活 性 層 に 入 る と,半 ワ ー や,発
振 周 波 数 が 変 動 し た り,出
フ ァイ
導 体 レー ザ の 出 力 パ
力 光 の 雑 音 が 増 加 した り す る.ま
た,光
ファ
イバ 増 幅 器 は双 方 向 に増 幅 す る た め反 射 向 が光 フ ァイ バ増 幅器 に入 る と発 振 を起 こす な ど 大 き な 問 題 が あ る. こ れ を 防 ぐ た め に は,反
射 光 が 半 導 体 レ ー ザ や 光 フ ァ イ バ 増 幅 器 に 戻 らな い よ
う に 一 方 向 に の み 光 を 伝 送 す る 素 子 が 必 要 で あ る.ア 射 光 を 遮 る 作 用 を し,通
イ ソ レー タは この よ うな 反
信 系 を 安 定 に 動 作 さ せ る た め に 用 い る.
(1) ア イ ソ レ ー タ の 原 理 光 ア イ ソ レー タ もマ イ ク ロ波 領 域 で用 い られ て い るア イ ソ レー タ と同様 に 磁 性 体 の フ ァ ラ デ ー 効 果 の 非 相 反 性 を 利 用 し て い る.フ 光 が 伝 搬 す る と き,そ 象 で あ る.偏
ァ ラ デ ー 効 果 は,磁
性体 中を
の 伝 搬 軸 に 平 行 に 磁 界 を 加 え て お く と偏 光 面 が 回 転 す る 現
光 面 の 回 転 方 向 は 磁 界 の 方 向 に の み 関 係 し,光
の伝 搬 方 向 に は無 関
係 で あ る の で ア イ ソ レ ー タ を 構 成 す る こ と が で き る. (2) ア イ ソ レ ー タ の 構 造 図6.15に 通 り,偏
フ ァ ラ デ ー 回 転 形 光 ア イ ソ レ ー タ の 構 成 を 示 す.入
光 子 の 方 向 の 光 の み 通 過 す る.こ
の 光 は,磁
射 光 は偏 光 子 を
界 の加 わ った フ ァ ラデ ー素
子 を 通 過 す る と き そ の 偏 光 方 向 が 右 回 り に 回 転 し フ ァ ラ デ ー 素 子 の 終 端 で45° 偏 光 面 が回 転 す るよ うに磁 界 の強 さ と フ ァ ラデ ー素 子 の長 さが作 られ て い る. フ ァ ラ デ ー 素 子 を 通 過 し た 光 は,入
射 光 の 偏 光 面 と45° 傾 い て い る の で そ の 出 口 に は
45°傾 け た 検 光 子 が 置 い て あ る.一 を 偏 光 子,出
般 に,偏
力 側 を 検 光 子 と称 し て い る.し
光 子 と検 光 子 は 同 じ も の で,入
射 側
た が っ て,45° 偏 光 面 が 回 転 し た 出
力 光 は,検 光 子 を通 過 し出 て い く.
図6.15 フ ァ ラデ ー 回転 形 光 ア イ ソ レー タの 構成 と偏 光 面 の 回転
い ま,こ こ で反 射 が あ る と検 光子 と偏 光 面 が一 致 した成 分 の 反射 波 は検 光 子 を 通 り,フ ァラ デ ー素 子 に入 る.フ ァ ラデ ー素 子 に入 った反 射 波 は入 射 光 と同 じ方 向 に回 転 す る た め左 側 の 出 口で は偏 光 子 と直 角 の偏 光 を もつ光 とな るた め偏 光 子 を通 過 で き な いで 減 衰 す る. フ ァ ラデ ー素 子 と して1.1μm以 上 の長 波 長 帯 で用 い られ る強 磁 性 体 に は,YIG (Y3Fe5O12)が あ り,こ の帯 域 で透 明 で減 衰 が少 な く偏 光 面 を45° 回転 させ る の に 必 要 な長 さ も数 ㎜
で,小 形 の ア イ ソ レー タが で き る.
短 波 長 帯 で は,長 波 長 帯 で 用 いたYIGの の大 きい材 料 が な く,YIGに
よ うな減 衰 が 少 な く フ ァ ラ デ ー効 果
比 べ て フ ァ ラ デ ー 効 果 の 小 さ い 希 土 類 イ オ ンを 含
ん だ ガ ラスが 用 い られ て い る・
演 習 問 題 6.1あ
る 方 向 性 結 合 器 の 結 合 係 数 は κ=5×102で
あ る.結
す れ ば 結 合 器 の 2つ の 端 子 の 出 力 を 等 し く す る(3dB結
合長 L を い くらに 合 器)こ
とがで きる
か. 6・2二
つ の3dB結
合 器 を 図 の よ う に 縦 続 に 接 続 し 端 子 ① にP0の
パ ワ ー を入 力
した と き,端
子 ③,④,⑤
お よ び ⑥ の パ ワ ー は そ れ ぞ れ い く ら か.
方向性結合器の継続接続 6.3位
相 変 調 器 の 変 調 感 度 特 性Vπ ・Lが20V・
㎜
で あ る と き,5Vの
電 圧 で の
位 相 変 化 は い く ら か. 6・4 厚 さ3㎜,屈
折 率1.5の
透 明 物 質 の 両 側 に95%(電
力 反 射 係 数)の 反 射 膜
を つ け た フ ァ ブ リペ ロ エ タ ロ ン の 自 由 ス ペ ク トル 領 域(FSR),半 WHM)お
よ び フ ィ ネ ス を 求 め よ.
6.5光
ア イ ソ レ ー タ は ど の よ う な 所 に な ぜ 用 い ら れ る の か.
6.6電
気 光 学 効 果 を 用 い る と光 の 偏 光 面 を 回 転 で き る が,ア え な い.そ
値 全 幅(F
イ ソ レ ー タ に は使
の 理 由 は 何 か.
6.7 フ ァ ブ リ ペ ロ エ タ ロ ン の 透 過 お よ び 反 射 の 式 を 導 出 せ よ.
7.
符号誤 り率
現 在 広 く実 用 に な っ て い る デ ィ ジ タ ル 光 通 信 方 式 は,PCMを 直 接 検 波 方 式 で あ る.マ 直 交 振 幅 変 調(quadrature
イ ク ロ 波 方 式 で は,位 amplitude
用 いた直接変 調 ・
相 変 調(phase modulation:PM),
modulation:QAM)等,位
幅 を 利 用 した 変 調 方 式 が 用 い ら れ て い る が,光 直 接 検 波 方 式 が 主 と し て 用 い ら れ て い る の で,こ
相 や多 値 の振
通 信 方 式 で は,2 値 の 強 度 変 調の方 式 につ い て の符 号 誤 り率 に
つ い て述 べ る.
7.1 直 接 検 波 方 式 直 接 検 波 デ ィ ジ タル受 信 器 の 概 念 を 図7.1に 示 す.光 受 信 信 号 は,フ
ォ トダ イ
オー ドで 検 波 し電 気 信 号 に変 換 した後,等 化 回 路 で波 形 整形 増 幅 し,識 別 再 生 回 路 で入 力信 号 が 1か 0か の判 定 を行 な う.D/A変
換 器 で は,デ
ィ ジ タル 信 号 を
アナ ロ グ信 号 に 変換 し音 声,映 像 等 の信 号 を復 元 す る.
図7.1直
接 検 波 デ ィ ジ タ ル 受 信 器(D/A:デ
ィ ジ タ ル ーア ナ ロ グ 変 換 器)
こ の 識 別 再 生 回 路 で は,図7.2に い値 υt hを 定 め,こ と判 定 す る.識 が,雑
示 す よ うに入 力 パ ル ス の 0と A の 中 間 に しき
の し き い 値 よ りパ ル ス の 振 幅 が 小 さ け れ ば 0,大
きけれ ば 1
別 器 へ の 入 力 パ ル ス電 圧 に 雑 音 が な け れ ば 符 号 の 誤 り は生 じ な い
音 が あ り 入 力 0の と き雑 音 に よ り そ の 値 が し き い 値 を 超 え れ ば 識 別 器 は 1
と判 定 し符 号 誤 り と な る. パ ル ス 1の と き も 同 様 で,雑
音 に よ り信 号 電 圧 が し き い 値 よ り小 さ く な れ ば 0
と判 定 し誤 り と な る.図7.2の
パ ル ス はNRZ(non
を 示 して い る が,RZ(return
to zero)符 号(符
return to zero)符 号 が1-1と
号 の状態
連 続 す る 場 合 に も必
ず 一 度 0を 通 る符 号)の 場 合 も同 様 で あ る.
図7.2 パ ル ス振 幅 の 識別
7.2
符 号 誤 り率
光 受 信 回路 か ら発 生 す る雑 音 は熱 雑 音 と シ ョ ッ ト雑 音 が主 で あ り,熱 雑 音 は ガ ウ ス分布,シ
ョ ッ ト雑 音 は ポ ア ソ ン分 布 で表 す の が一 般 的 で あ るが,シ
ョ ッ ト雑
音 も平 均 受 信 光 子 数 が 多 い と きに は近 似 的 に ガ ウス形 の確 率 分 布 で 表 す こ とが で き る.そ こで,雑 音 を 含 む 信 号 の 確 率密 度 関数 を次 の よ うに表 す.
(7.1) こ こ で,A
は信 号
υの平 均 値,σ2は
分 散 で あ る.
い ま,ON-OFF2値
の デ ィ ジ タ ル 信 号 を 考 え る と,そ
の よ う に 表 さ れ る.す
な わ ち,符
と き の 確 率 密 度 関 数 をf1(υ)と
す る.こ
送 っ た の を 1 と誤 る 部 分 は,f0(υ)で 符 号 誤 り率 はf0(υ)を
こ で,し
号 1の
き い 値 を υthとす る と 符 号 0 を
し き い 値 υthよ り 大 き い 部 分 で あ る の で,
し き い 値 υthから 無 限 大 ま で 積 分 し た 値 で あ る.ま
号 1を 0 と 誤 る部 分 は,f1(υ)で り率 はf1(υ)で
の 確 率 密 度 関 数 は 図7.3
号 0の と き の 確 率 密 度 関 数 をf0(υ) ,符
た,符
し き い 値 υthよ り小 さ い 部 分 で あ る の で そ の 誤
負 の 無 限 大 か ら し き い 値 υth ま で 積 分 した 値 で あ る.
図7.3
し た が っ て,全
ON-OFF2値
デ ィジ タル 信号 の確 率 密 度 関数
体 の 符 号 誤 り率(bit error rate:BER)は,符
号 の 0の 生 じる
確 率 と 1の 生 ず る確 率 が 等 し い と す る と,
(7.2) と な る.こ
こ で,最
小 の 誤 り率 を 与 え る し き い 値 は,f0(υ)の
標 準 偏 差 を σ0,
f1(υ)の 標 準 偏 差 を σ1と す る と,
(7.3) と な る.今
簡 単 の た め,σ0=σ1と
す る と 最 適 の し き い 値 はA/2と
合 の 誤 り率 の 式 は 上 記 の 条 件 を 入 れ て 次 の よ う に な る.
な る .こ
の場
(7.4) こ こで,こ
の 式 を 解 く た め,
(7.5) と 変 数 を 変 換 す る と 式(7.4)は 下 式 の よ う に な る.
(7.6 )
こ こ で,
(7.7) で あ る.erfc(χ)は 数 で あ る.信
補 誤 差 関 数(complementary
error function)と
言 わ れ る関
号 振 幅 A と σの比 を横 軸 に と りデ シ ベ ル単 位 で 表 し た と き の 誤 り
率 を 計 算 した 結 果 を 図7.4に
示 す.図7.4よ
り誤 り率 が 小 さ い領 域 で は雑 音 の ご
くわ ず か な 変 化 で も誤 り 率 が 大 き く変 わ る こ と が 分 か る.
図7.4
A/σ と 誤 り率 の 関 係
演 習 問 題 7.1
平 均 値 0,分 散 σ2の ガ ウ ス 分 布 を す る雑 音 電 圧 の 実 効 値 は い く らか.
7.2
式(7.6)を 導 け.
8.
音 声,デ
光 フ ァイ バ 通 信
ー タ,画 像 等 の情 報 を伝 送 す るに は伝 送 距 離 が ご く短 い場 合 に は,電
気 信 号 に変 換 され た情 報 信 号 を そ の ま ま ペ アケ ーブル や同軸 ケ ー ブル を用 いて ベー ス バ ン ドで 伝 送 す る こ と もで き るが,距 離 が あ る程 度 長 くな る と情 報 信 号 で搬 送 波 を変 調 して 伝 送 す る こ とが 一 般 的 で あ る. 例 え ば,中 波 の放 送 で は搬 送 周 波 数 と して530kHzか 局 に割 当 て,こ
ら1600kHzの
電波 を各
の搬 送 波 を情 報 の信 号 で変 調 して い る.光 フ ァイバ 通 信 で は,搬
送 波 と して レー ザ等 の光 源 を用 い これ を搬 送 波 と し,搬 送 波 を変 調 して伝 送 す る 方 式 で あ る. 変 調 方 式 と して は,情 報 信 号 の振 幅 に比 例 して光 の強 度 を変 え る ア ナ ロ グ通 信 方 式,情 報 信 号 をPCM信 方 式,更
号等 の デ ィ ジ タ ル信 号 に 変 え変 調 す る デ ィ ジ タ ル 通 信
に光 の 波 と して の特 性 を利 用 した将 来 用 い られ るで あ ろ う コ ヒー レ ン ト
通 信 方 式 等 が 考 え られ る.
8.1 ア ナ ロ グ通 信 方 式 (1) 直 接 変 調 一 般 の ア ナ ロ グ 変 調 方 式 の う ち,無 tude modulation:AM)で 変 化 し,変
は,搬
線 通 信 で 用 い ら れ て い る 振 幅 変 調(ampli
送 波 と して の 高 周 波 の 振 幅 を 情 報 信 号 に よ り
調 信 号 出 力 の 振 幅 A は 下 記 の よ う に 表 さ れ る.
A=Ac(1+mcos
こ こで,Acは
ωst)cosωct
搬 送 波 の振 幅, m は 変 調 度 で 信 号 波 の 振 幅Asと
(8.1) 搬 送波 の振 幅
Acと
の 比(As/Ac)で,0〓m〓1で
あ る.ま
た,ωsは
信 号 波 の 角 周 波 数,ωcは
搬 送 波 の 角 周 波 数 で あ る.
図8.1 光 アナ ロ グ伝送 の原 理
光 ア ナ ロ グ 伝 送 の 原 理 図 を 図8.1に に 重 畳 し て 信 号 電 流 を 加 え,そ ト ダ イ オ ー ド(PD)で
示 す.半
導 体 レ ー ザ(LD)に
流 す直流 電 流
の 光 出 力 を フ ァイ バ を 通 し て伝 送 し,受 信 側 で フ ォ
検 波 す れ ば も と の 信 号 を 得 る こ と が で き る.半
導 体 レー ザ
ま た は 発 光 ダ イ オ ー ドは 電 流 に 比 例 し た 光 出 力 を 得 る こ と が き で る の で 強 度 変 調 (intensity modulation
: IM)を
行 な う こ と が で き る.
次 に も う少 し具 体 的 に 強 度 変 調 の 方 法 を 述 べ よ う.図8.2(a)に 電 流 対 光 出 力 特 性 を 示 す.こ て 信 号 電 流 を 流 す と,光
こ で,バ
イ ア ス 電 流Ibを
半 導 体 レー ザ の
流 して お き こ れ に重 畳 し
出 力 は 信 号 電 流 に 比 例 す る こ と が 分 か る.受
8.2(b)に 示 す よ う に こ の 光 信 号 を フ ォ トダ イ オ ー ドで 検 波 す る と,フ ドは 入 射 光 パ ワ ー に 比 例 し た 電 流 を 生 ず る の で,も
(a)半 導 体 レーザ の強 度 変 調
信 側 で は図 ォ トダ イ オ ー
と の 信 号 を 歪 み な く再 現 す る
(b)フ
ォ トダ イ オ ー ドに よ る 検 波
図8.2 光 強度 変 調 お よ び検 波
ことが で き る.こ の よ うに,光 の変 調 は光 の強 度 を変 え る こ とに よ り行 わ れ るの で強 度 変 調 と言 わ れ,一 般 の無 線 等 で用 い られ て い る振 幅変 調 と は異 な って い る の で注 意 を要 す る. 以 上 述 べ た よ うに 強度 変調 は原 理 的 に は振 幅 変 調 と似 て い るが 重 要 な 相 違 点 は 信 号 電 流 に よ り搬 送 波 の 振 幅 が変 化 す る の で は な く,光 電 力 が 信 号 電 流 に比 例 し て い る点 で あ る.こ れ を 式 に 表 せ ば次 の よ うに な る. P0=P
(8.2)
c(1+mcosωst)
一 方,光 電 力P0は 光 の振 幅E0の2乗
に比 例 す る の で 強度 変 調 を 受 け た 光 の 振
幅 は,次 の よ うに な る. E0=Ec(1+mcsωst)1/2
(8.3) したが って,変 調 さ れ た光 の信 号 を歪 み無 く伝 送 す る た め に は無 限 の 帯 域 幅 を 必 要 とす る こ と に な る.し か し,実 際 に は高 次 の項 の振 幅 は小 さ くな るの で必 要 とす る帯 域 幅 は振 幅 変 調 よ り多少 広 が る程 度 で あ り,光 フ ァイ バ の伝 送 帯 域 か ら 見 れ ば 問 題 に な る量 で は な い. (2) 高 周 波 重 畳 変 調 半 導 体 レ ー ザ を 用 い た ア ナ ロ グ 変 調 はCATV等
の 近 距 離 伝 送 に 有 効 で あ る が,
レ ー ザ へ の 反 射 光 が あ っ た り,多
モ ー ドフ ァイ バ を用 い る と きに は スペ ックル雑
音 に よ り 伝 送 品 質 が 劣 化 す る.半
導 体 レ ー ザ へ の 反 射 光 は,半
導 体 レー ザ と レ ン
ズ や フ ァ イ バ 端 面 か ら の 反 射 に よ り生 ず る の で こ れ を 避 け る た め に,無 テ ィ ン グ に し た り,フ
反 射 コー
ァイ バ端 面 を斜 め に切 断 した り して反 射 へ の対 策 が取 られ
て い る. こ れ に 対 し ス ペ ッ ク ル 雑 音 あ る い は モ ー ダ ル 雑 音 は,半
導 体 レー ザ の コ ヒー レ
ン シ や グ レ ー デ ッ ド形 多 モ ー ド フ ァ イ バ を 使 用 し た 場 合 の モ ー ド分 散 に 起 因 し て 起 こ る.そ
の 原 因 は,僅
か な温 度 変 化 や電 流 変 化 に よ る半 導 体 レー ザ の発 振 波 長
の変 化,光
フ ァイバ の 温 度 等 の 変 化 に よ る伝 送 特 性 の変 化 に よ り受 信 側 に到 達 す
る各 モ ー ドの 伝搬 時 間 が 僅 か に変 化 す る た め モ ー ド間 の干 渉 が変 化 しス ペ ック ル 雑音 を生 ず る.し たが って,単 一 モ ー ドフ ァイ バ で は この よ うな ス ペ ッ クル 雑 音 は生 じな い. この ス ペ ック ル雑 音 を軽 減 す る方 法 と して は,半 導 体 レー ザ の コ ヒ ー レ ンス時 間 を 小 さ くす れ ば 良 く,こ れ に有 効 な方 法 と して 高周 波 重 畳 法 が あ る.高 周 波 重 畳 法 は,図8.3に
示 す よ うに情 報 信 号 に数 百MHzの
パ ル ス ま た は正 弦 波 を重 畳
す る方 法 で,高 周 波 信 号 で 変 調 を行 な う こ と によ り縦 モ ー ド数 を増 加 させ コ ヒー レ ンス を低 下 させ る方 法 で あ る.受 信 側 で は,単 に フ ォ トダイ オ ー ドで 検 波 し, 低 域 フ ィル タを通 す こ とに よ り高 周 波 重 畳 信 号 は容 易 に除去 で き る.
図8.3 高 周 波 重畳 法
(3) 副 搬 送 波 変 調 法 副 搬 送 波 変 調 方 式 は,図8.4に 3波 の例 を示 す よ うに あ らか じめ伝 送 しよ う と す る信 号 で 副搬 送波 f1,f2,f3をそ れ ぞ れ変 調 し(変 調 方 式 は何 で も良 い),こ
れら
の変 調 信 号 を合 波 装 置 で合 わ せ て半 導 体 レー ザを 変 調 す る方式 で あ る.具 体 的 な この 方 式 の 例 で は テ レ ビの 信 号(VHF,UHF)で
半 導 体 レー ザ を 変 調 して 伝 送
す る方 式 が難 視 聴 地 域 で用 い られ て い る ほか,短 距 離 で 用 い る多 重 伝 送 方 式 の例 が あ る.こ の方 式 は,簡 便 で あ るが,多
くの 搬 送 波 に よ る混 変 調 歪 み を避 け る た
め半 導 体 レー ザ の 直線 性 が厳 しく要 求 され て い る. さ らに この方 式 を発 展 させ た 光 フ ァ イバ に よ る無 線 周 波 数 伝 送 が あ る.例 え ば PHSに
お い て は約1.9GHzの
無 線 の周 波 数 帯 を 用 い て い る が,中
継 局 で は半 径
数百 メー トル の無 線 ゾー ンを使 用 して い る の で,非 常 に多 くの 無 線 中 継 局 が必 要
図8.4
副搬送波変調方式
で あ る.こ の 中 継局 を 図8.5の よ うに の光 フ ァイ バ で結 び,光
ファイバ には無線
周 波数 で変 調 した信 号 を伝 送 す れ ば,中 継 局 で は この光 信号 を検 波 す る こ とに よ り容 易 に無 線 周 波 数 を取 り出 す こ とが で き る.
図8.5
8.2
①
光無線伝送方式
デ ィジ タ ル 通 信 方 式 直 接 強 度 変 調 一 直 接検 波 方 式(IM-DD)
強度 変調 − 直接 検波方 式
(intensity
modulation-direct
detection
:IM-DD)
は光通 信 で 最 も よ く用 い られ て い る方 式 で あ る.こ の変 調 方 法 は,図8.6に
示す
よ うに半 導 体 レー ザ の し きい値 付 近 にバ イ ア ス電 流 を設 定 しそれ にパ ル ス信 号 を 重 畳 して変 調 す る もの で,図 で は入 力 信 号 パ ル ス の1011に 対 応 し光 出 力 パ ル ス
も1011と な り,こ れ を 光 フ ァイバ を通 して 伝 送 す る.受 信 側 で は,ア
ナ ロ グ方
式 と同 様 に フ ォ トダイ オ ー ドで 検 波 す る こ と に よ り送 信 側 と同 様 のパ ル ス信 号 を 得 る こ とが で き る.パ ル ス変 調 は,バ イ ア ス電 流 を 0に して も可 能 で あ る が,0 か ら立 ち上 が り レー ザ が 発 振 す る まで に時 間 が か か るの で 一 般 に は,し
きい値 付
近 に バ イ ア ス電 流 を 設定 す る.ま た,バ イ ア ス電 流 が しき い値 電 流 を超 え る と入 力 パ ル ス が な い と きで も僅 か に発 振 して 光 が 出 て い るの で 消 光 比 が 悪 くな る欠 点 が あ る.
図8.6 半 導体 レーザ の パル ス変 調
半 導 体 レー ザ を直 接 変 調 す る この方 式 の変 調 の限 界 は,半 導 体 レ ー ザの 特 性 に も よ るが 数Gbit/sま
で で,実 用 方 式 で は2Gbit/sの
方 式 の 例 が あ る.こ
れより
高 速度 の 変 調 で は外 部 変 調 器 を用 い て変 調 を行 な って い る. (2) 外 部 変 調 法 半導 体 レーザ を直 接 強 度 変 調 す る方 法 は簡 便 で広 く用 い られ て い るが,変 調 速 度 が数Gbit/sよ
り速 くな る と次 第 に変 調 す る のが 困 難 に な る.こ
の よ うな 高 速
の 強度 変調 を 行 な うに は外 部 変 調 が必 要 で あ る.外 部 変 調 の利 点 は,半 導 体 レー ザ を 直接 変 調 す る と き に生 ず る レー ザ の ス ペ ク トル線 幅 や 発 振 周 波 数 お よび 出 力 の 不 安 定 性 の 問 題 を解 決 で き る こ とで あ る.外 部 変 調 を行 な うに は 図8.7に 示 す よ うに半 導 体 レーザ は一 定 の 発 振 を させ てお き,そ の 出 力 を 外 部 変 調 器 に導 き変 調 を 行 な う.外 部 変 調 に用 い る強 度 変 調 器 と して は,図8.8に
示す 方 向性結 合 器
形 強度 変 調 器 が あ る.こ の変 調 器 は,印 加 電圧 に よ り基 盤 の 屈 折 率 が 変 化 す る材 料例 え ば,LiNbO3を
用 い て方 向性 結 合 器 を構 成 して お け ば,印 加 電 圧 に よ り結
合係 数 が変 化 す るの で導 波 路 間 で エ ネ ル ギ ーが 変 換 され,強 度 変 調 が 行 わ れ る. 他 の形 の変 調 器 につ い て は第 6章 の光 回路 素 子 の と ころ を参 照 さ れ た い.
図8.7 外 部変 調 法
図8.8 方 向 性結 合 器 形強 度 変調 器
(3) ソ リ トン伝 送 方 式 現在 の光 フ ァイ バ伝 送 は,光 フ ァイバ の 群速 度 分 散 が零 に な る波長 を 用 い て い るが,そ の分 散 を逆 に積 極 的 に利 用 して 安 定 な超 短 光 パ ル ス を伝 送 に利 用 しよ う とす るの が光 ソ リ トン伝 送 で あ る.光
ソ リ トン は,光 フ ァイ バ の群 速 度 分 散 と 自
己位相 変 調 効 果 と呼 ば れ る非 線 形 光 学 効 果 を釣 り合 わ せ て安 定 な光 パ ル ス を伝 送 す る もの で あ る.光 ソ リ ト ンは,光 フ ァイバ の 損失 が最 小 とな る波 長1.55μmの と こ ろで,狭 い パ ル スを 波形 歪 み な く長 距 離伝 送 で き る可 能 性 を秘 め て お り将 来 の有望 な伝 送 方 式 の一 つ で あ る. 光 ソ リ トンを伝 送 す るた め に は,フ
ァイバ の非 線 形 効 果 を利 用 して い る た め,
フ ァ イ バ 内 の ソ リ ト ンパ ワ ー が あ る程 度 大 き く な い と光 ソ リ ト ンの 性 質 を 失 っ て し ま う.し
か し,最
近 で は光 フ ァ イ バ 増 幅 器 が 実 用 に な り 容 易 に 光 の 増 幅 が で き
る よ う に な っ た の で 現 実 味 を 帯 び て き た.実 り10Gbit/sの
8.3
験 的 に も1,200kmの
長距 離 にわ た
パ ル ス を 伝 送 した 例 が あ る.
コ ヒ ー レ ン ト伝 送 方 式
今 まで の 各 方 式 と も光 の波 と して の性 質 は使 用 せ ず,た だ光 の エ ネ ル ギ ー に情 報 を乗 せ て 伝 送 して いた.従 来 の 強度 変 調 一 直接 検 波 方 式 で も,ビ ッ トレー トが 数Gbit/s以
上 で は光 フ ァイ バ 中 で の パ ル ス波 形 の劣 化 を 防 ぐた め,分
布帰還 形
レー ザ等 の コ ヒー レン シの良 い光 源 を用 い て い るが,こ れ は コ ヒー レ ン ト伝 送 に は含 め な い.コ
ヒー レン ト伝 送 方 式 で は光 の波 と して の特 性 に注 目 し光 の 位 相,
周 波 数 を利 用 して 情 報 を伝 送 し,ま た ヘ テ ロ ダイ ン検 波,ホ
モ ダイ ン検 波 等 の コ
ヒー レ ン ト検 波 を用 い る伝 送 方 式 で あ る. (1)位 相 変 調 光 の位 相 変 調 は,第 6章 で 述 べ た位 相変 調器 を 用 い る こ とで 行 え るが,こ の 場 合 問 題 とな るの は半 導 体 レー ザ の位 相 の安 定 度 で あ る.位 相 の安 定 度 は,発 振 ス ペ ク トラム の 幅 で表 され るが,現 在 の と ころ一 般 の半 導 体 レー ザ の発 振 ス ペ ク ト ラム の半 値 幅 は数MHzあ 合 に はlkHzの
り,外 部 共 振 器 を用 い て特 別 に狭 ス ペ ク トル 化 した 場
ものが 得 られ て い る.
(2) 周 波 数 変 調 半 導 体 レー ザ は第 3章 に述 べ た よ うに,そ の 注入 電 流 を変 え る こ とで1mA当 た り数GHz発
振 周 波 数 が 変 化 す るの で,バ イ ア ス電 流 に重 畳 して 変 調 信 号 を 加
え れ ば周 波 数 変 調 が容 易 にで きる.し か し この 場 合,発 振 出力 に大 きな変 動 が 生 じ,ま た半 導 体 レー ザ の種 類 に よ って は モ ー ドジ ャ ンプが 起 こり発振 周波 数 が 大 き く変 化 す るな どの現 象 が あ る の で半 導 体 レー ザを 選 ぶ な ど の注 意 が必 要 で あ る. 周 波 数 変 調 を外 部 変 調 器 を用 い て行 うに は,位 相 変 調 器 を利 用 して行 う こ とが 考 え られ る. 周 波 数 変 調 に お い て,搬 送 角 周 波 数 を ωc,振 幅 をEc,位
相 を φ とす れ ば 瞬 時
電 圧e(t)は
下 記 の よ う に 表 さ れ る.
e(t)=Ec
COS(ωct十
(8.4)
ψ)
ここで,周 波 数 偏 移 を △ω,変 調 信 号 をf(t) とす る と瞬 時角 周 波 数 ω(t)は, ω(t)=ωc十
と 表 さ れ る.こ
れ を 時 間 で 積 分 す る と,
∫ ω(t)dt=ωct+△ と な る.こ
(8.5)
△ ωf(t)
(8.6)
ω ∫f(t)dt
の 式 か ら式(8.4)は 以 下 の よ う に な る.
e(t)=Ec
cos(ωct+△
(8.7)
ω ∫f(t)dt+ψ)
す な わ ち,情 報 信 号 を 積 分 して 位 相 変 調 器 に加 え る こ と に よ り周 波 数 変 調 が行 わ れ る こ とが分 か る.し たが って,図8.9に
示 す よ う に構 成 す れ ば 位 相 変 調 器 を 用
い て周 波 数 変 調 を行 な う こ とが で き る.
図8.9 位 相変 調 器 に よ る周 波 数変 調
(3)ヘ テ ロダ イ ン検 波 一 般 に 無 線 通 信 で は受 信 器 に ヘ テ ロ ダ イ ン検 波 を用 い る こと が多 い.こ れ は, 受 信 した 高 い 周 波 数 を 低 い中 間 周 波 数 に変 換 す る こ と に よ り周 波数 選択 度 の向上, 増 幅 の容 易 さ等 か ら広 く用 い られ て い る. い ま,受 信 信 号es(t)お
よ び ロ ー カル 発 振信 号eι(t)を そ れ ぞ れ 下 記 の よ う に
表 す. es(t)=Es eι(t)=Eι
(8.8)
sin(2πfst+ψs) sin(2πfιt+ψ
ι)
こ こ で,ES, Eι は そ れ ぞ れ 受 信 信 号 波 の 振 幅,ロ
(8.9) ー カ ル 発 振 波 の 振 幅, fS, fι
お よ び ψs,
ψlはそ れ ぞ れ の 周 波 数 お よ び位 相 で あ る.
こ れ ら の 信 号 を,
図8.10
に示 す よ うに受 信 器 の ミキ サ 回路 に 入 れ て そ の 2乗 特 性 を利 用 す れ ば下 式 の よ う な 出力 信 号e0(t)が 得 られ る.
(8.10) 上 式 で,第
1項 お よ び第 2項 か らは受 信 信 号 お よ び ロ ー カ ル信 号 の 2倍 の 周 波 数
成 分 が で る.第
3項 を展 開 す る と,
(8.11) 上 式 の第 1項 か ら は,受 信信 号 と ロ ー カ ル信 号 の差,第
2項 か らは和 の周 波 数
が 出 て くる の で,帯 域 フ ィル タを通 して 差周 波数(中 間 周 波 数)を 取 り出 せ ば,高 い受 信 周 波 数 を増 幅 等 に容 易 な 中 間周 波 数 に 変換 す る こ とが で きる.ま た,こ
の
中 間 周 波 数 の 振 幅 は式(8.11)か ら も分 か る よ うに ロ ー カル 発 振 周 波 数 の 振 幅 に 比 例 して い るの で,ロ ー カ ル発 振 器 の 出 力 を 大 き くす る こ とに よ り利 得 を 得 る こ と が で き る. 光 通 信 の 場 合,フ
ォ ト ダ イ オ ー ドの 検 波 電 流 は,式(5.1)に
示 す よ うに入射 光
電 力 に 比 例 す る の で こ れ を 下 式 の よ う に 表 す.
(8.12) こ こ で,S0は 直 せ ば,
検 波 器 感 度, Piは 入 射 光 パ ワ ー で あ る.こ れ を,光
の電 界 で 書 き
(8.13)
Iph=S0<e2i>
と な る.い
ま,図8.11に
示 す よ うに信 号 光 と ロー カ ル発 振 光 を重 ね合 わ せ て フ ォ
トダ イ オ ー ドに 入 射 し た 場 合 の 中 間 周 波 出 力eifは 式(8.8)∼
式(8.11)よ
り下 式 と
な る. eif=EsEl[cos{2π(fs‐fl)t+ψs‐
図8.11
ψl}]
(8.14)
光 ヘ テ ロ ダ イ ン検 波
す な わ ち,こ こで フ ィル タ に よ り差 周 波 数 を取 り出せ ば,無 線 通 信 の場 合 と 同様 に信 号光 と ロ ー カ ル発 振 光 の 差 周 波 数 の 信 号 を中 間 周 波 数 と して取 り出 す こ とが で き る.こ こで,注 意 しな けれ ば な らな い こ と は,中 間 周 波 数 に変 換 され た信 号 は信 号光 の電 界 の 振 幅 に比例 した値 で あ る い うこ とで あ る.す な わ ち,歪 み な く 復調 す るた め に は,受 信 光 信 号 の変 調 が 強 度 変 調 で は な く振 幅 変調 で あ る こ とが 必 要 で あ る.も
し,強 度 変 調 した信 号 を ヘ テ ロ ダ イ ン検 波 す れ ば 歪 み を 生 ず る こ
とに な る. 以 上 の考 察 は,光 アナ ロ グ変 調 の場 合 に 考 慮 しな けれ ば な らな い こ とで あ り, デ ィジ タ ル信 号,特
に 2値 伝 送(ON−OFF)の
場 合 に はパ ル スの有 無 を 識 別 で きれ
ば よ い の で歪 み を あ ま り考 慮 す る必 要 は な い. こ こで,中 間周 波数 は,光 の周 波 数 が 高 い こ とお よ び受 信信 号 の帯 域 幅(伝 送 速 度)を 考 慮 して 数GHzか
ら数 十GHz程
度 にす る こ とが 多 い.ま た,そ の帯 域
幅 は デ ィ ジ タル伝 送 の場 合,伝 送 速 度 の 2倍 以 上 必 要 で あ り,ヘ テ ロ ダ イ ン検 波 は直接 検 波 や ホ モ ダイ ン検 波 に比 べ約 2倍 の広 帯 域 を必 要 とす る.し か し,中 間 周 波 出力 は ロー カ ル発 振 器 出力 に比 例 す るの で,直 接 検 波 に比 べ利 得 が得 られ雑 音 の問 題 か ら も受 信 感 度 の 向上 に有 効 な手 段 で あ る.
e
ロー カ ル発 振 器 出力 は通 常mWの る とAM雑
ものが 多 く用 い られ る が,出
力 が 大 き くな
音 が 無 視 で きな くな る.こ れ を解 決 す る に は 図8.12に 示 す 平 衡 受 信
回 路 が よ く用 い られ る.こ
こで,信 号 光 と局 部 発 振 光 は3dB方
して二 つ の受 光 素 子 に入 りそ の 出 力 は合 成 さ れ,ロ
向 性 結 合 器 を通
ー カ ル発 振 光 のAM雑
音は
キ ャ ンセ ル され,信 号 は和 とな り効 率 よ く取 り出 され る.ま た,中 間周 波 数 を安 定 にす る ため,ロ
ー カ ル発 振 用 半 導 体 レーザ に は中 間 周 波 数 の 誤 差 を帰 還 して周
波 数 制 御 を行 な って い る.
図8.12 平衡 形 ヘ テ ロ ダ イ ン受信 器
(4) ホ モ ダ イ ン検 波
ホ モ ダ イ ン検 波 は,先 の ヘ テ ロ ダ イ ン検 波 の ロ ー カル 発 振周 波 数 を信 号 光 の周 波 数 と等 し く して 合 成 す る方 法 で あ る.ホ モ ダ イ ン検 波 で は,式(8.11)で
受 信信
号 周 波 数fsと ロー カル 信号 周 波 数fιを等 しい と置 け ば下 式 を得 る. if=ESEl{cos(ψs‐
ψl)‐cos(4πfst十
ψs十 ψl}
(8.15)
す なわ ち,復 調 され たベ ー スバ ン ド信 号 と信 号 周波 数 の 2倍 の周 波 数 が 得 られ る ので 低 域 フ ィル タで ベ ー スバ ン ド信 号 を取 り出 せ ば求 め る信 号 が 直接得 られ る. 帯 域 幅 は,ヘ テ ロ ダ イ ン検 波 方 式 の半 分 で よ いの で光 検 波 器 や 増 幅 回 路 に は ヘ テ ロダ イ ン検 波 ほ どの 広 帯 域 特 性 は要 求 さ れな いが,式(8.15)よ
り分 か る と お り ホ
モ ダ イ ン検波 出力 は,信 号 光 と局 部 発 振 光 との位 相 差 が零 で あ る こ とが 検 波 出力 を大 き くす るた め に必 要 で あ る.極 端 な 例 と して 両者 の位 相 差 が90゜ で あ る と信
号 出力 は零 とな るの で ロ ー カ ル信 号 光 の位 相 を制 御 す る必 要 が あ り実 用 に は多 く の困 難 を伴 う. (5)偏 波 ダ イバ シチ 光 フ ァイバ を 通 して 信 号 を 伝 送 した場 合,フ
ォ トダ イ オー ドで 直 接 検 波 す る場
合 は偏 波 の 向 き,す なわ ち光 の電 界 の方 向 は検 波 感 度 に無 関 係 で あ る が,ヘ テ ロ ダイ ン検 波 の と き は信 号 光 の 電 界 の方 向 と ロー カ ル光 の電 界 の 向 きが 一 致 して い な い と感 度 が低 下 す る.検 波 感 度 は,双 方 の電 界 の なす 角 度 のCOSに 比 例 す る の で両 者 の 角 度 が π/2に な る と感 度 は零 に な る. 光 フ ァイバ を 通 して 伝 送 され て きた光 の偏 波 面 の 方 向 は通常 の 光 フ ァイバ で は 不 確 定 で あ るの で,こ れ を 救 う た め に偏 波 ダ イバ シチ が考 え られ た.偏 波 ダ イバ シチ の原 理 は図8.13に 示 す よ うに,受 信信 号 光 と 2つ の 直 交 す る ロ ー カ ル 信 号 光 とで ヘ テ ロ ダ イ ン検 波 し,そ の 出力 を合 成 す る方 法 で あ る.こ の よ うにす れ ば, 入 射 信 号 光 の偏 波 面 が どの よ う に傾 い て も合 成 出 力 は良 好 な レベ ル に保 た れ る.
図8.13 偏 波 ダイ バ シ チの 原理
8.4 波 長 多 重,周 波 数 多 重 伝 送 方 式 光 フ ァイ バ の減 衰 特 性 は第 2章 に述 べ た よ う に波 長1.55μmで 最 低 の 値 を示 し, そ の前 後 の 波長 で は実 用 的 に十 分 低 い減 衰 定 数 で あ る.そ こで,こ
こに い くつ か
の波 長 を変 え た 光 を 伝 送 す る波 長 多 重 伝 送 方 式 が 考 え られ た.こ の 方 式 は図8.14 に示 す よ うに,い
くつ か の 波長 の 光 を そ れ ぞ れ の情 報 で変 調 した後 合 波 して,一
本 の フ ァイバ で伝 送 す る方 式 で,フ
ァイバ の 利 用効 率 を数 倍 上 げ よ う とす る もの
で あ る.し か し,フ ァイ バ の利 用効 率 か ら言 え ば ま だ十 分 で は な く,そ こで 次 に
述 べ る周 波 数 分 割 多 重 伝 送 方 式 が 考 え られ た.
図8.14 波長 多 重 伝 送方 式
周 波 数 多 重 伝 送 方 式 は波長 多重 伝 送 方 式 と似 て い る点 もあ るが,波 長 多 重 伝 送 方 式 で は波 長 間 隔 が 広 く,そ の 間 が大 き く開 い て い る使 い方 で あ る.こ れ に対 し, 周 波 数 多 重 伝 送 方式 で は無 線 通 信 で使 わ れ て い るよ うに,搬 送 波 の間 隔 を で き る だ け詰 め多 くの情 報 を伝 送 しよ う とす る方 式 で あ る. 波 長1.55μmの μmと
付 近 で 利 用 で き る波 長 帯 域 を例 え ば1.5μmか
して も,こ れ を 周波 数 に換 算 す る と12.5THzと
ら1.6μmの0.1
な る.そ こで,無 線 通 信 で
行 われ て い る と同様 に この周 波 数 帯 域 に光 の 搬 送 周 波 数 を 例 え ば100GHz間 で 並 べ れ ば125チ
ャネ ル の 搬 送 波 を並 べ る こ とが で き る.一
Gbit/sの 情 報 を 乗 せ た と して も,全 体 で は1.25Tbit/sの
隔
つ の搬 送 波 に10
膨 大 な情 報 量 に な る.
この周 波数 多 重 伝 送 シ ステ ム の場 合,周 波 数 間 隔 が接 近 して い るた め複 数 の半 導 体 レー ザ を あ る一 定周 波 数 間 隔 で安 定 化 す る必 要 が あ る.安 定 化 の基 準 と して は,例 え ば章6.1(7)に 述 べ た フ ァ ブ リペ ロエ タ ロ ンを 用 いれ ば,そ の厚 さを加 減 す る こ とに よ り共 振周 波 数 間 隔 即 ち安 定 化 周 波 数 間 隔 を数 十GHzか まで 容 易 に設 定 で き る.そ こ で,図8.15に
ら数 百GHz
示 す よ うな 回 路 を用 い て 安 定 化 を 行
なえ ば,複 数 の半 導 体 レー ザの 周 波 数 を 一 個 の 周 波 数 基 準 で 周 波数 間 隔 を等 間 隔 に安 定 化 す る こ とが で き る.
図8.15 周 波数 多 重伝 送 方 式 の例
8.5
実 用 光 フ ァイ バ 伝 送 方 式
以 上 述 べ て きた よ うに光 フ ァイ バ通 信 方 式 は,今 まで の ケ ー ブ ル伝 送 方 式 や, 無 線 伝 送 方 式 と は異 な った多 くの利 点 が あ り,世 界 中 で 既 に多 くの実 用 方 式 が 運 用 中で あ る.こ の 中 か らい くつ か の例 を陸 上 方 式 と海 底 方 式 につ いて 述 べ,如 何 に光 フ ァイ バ通 信 方 式 が 有効 な伝 送 方 式 で あ るか を示 す. ①
陸上 方 式 の 例
国 内 の主 要 な都 市 間 を結 ぶ 陸上 方 式 の例 と して 現 在 用 い られて い る方 式 の うち, 伝 送 容 量 の一 番 大 きい10Gbit/sの
方 式 の例 を表8.1に 示 す.こ
フ ァイ バ の最 低 損 失 に な る波 長1.55μmの (EDFA)を
用 い,中 継 間 隔80kmを
光 を 搬 送 波 と し,光
達 成 して い る.な
お,再
の 方 式 で は,光 フ ァイバ増幅 器
生 中 継 器 は320km
間 隔 毎 に 入 れ 歪 み の 相 加 を 防 止 して い る.な 器 の 挿 入 間 隔 は640kmで
お,2.4Gbit/sの
方 式 で は再 生 中 継
あ る. 表8.1陸
上10Gbit/s伝
送方式
(2)海 底 方 式 海 底 光 フ ァイ バ伝 送 方 式 は国 内 で も用 い られ て い るが,国 際 間 の海 底 光 フ ァイ バ伝 送 方 式 と して は1983年 ブル方 式(TPC-3)が
に波 長1 .3μm帯 で280Mbit/sの
太平洋横断海底 ケー
建 設 され た.そ の 後,1.55μm帯,560Mbit/sの
1996年 か らは エル ビウ ム光 フ ァ イバ増 幅 器 を 用 い た5Gbit/s,全 方 式(TPC-5CN)が
方 式 を経 て 長24,600kmの
運 用 され て い る.
近 い将 来 に は波 長 多 重 技 術 に よ る大 容 量 の方 式 の建 設 も予 定 され て お り,今 後 ます ま す発 展 す る分 野 で あ る. 海 底 光 フ ァイ バ伝 送 方 式 は,陸 上 方 式 と異 な り深 海 で の 水 圧 に ケ ー ブ ル や中 継 器 を入 れ る筐 体 が耐 え な けれ ば な らず,ま
た故 障 して も簡 単 に修 理 す る こ とが 困
難 な の で信 頼 度 も要 求 され るの で 総 合 的 な技 術 が 必 要 で あ る.
演 習 問題 8.1半
導 体 レ ー ザ の 光 出 力4mW,半
導 体 レー ザ か ら フ ァイ バ へ の 結 合 損 失3dB,
接 続 部 を 含 む フ ァイ バ の 減 衰 定 数0.3dB/km,フ
ァ イ バ か ら受 信 器 へ の 結
合 損 失2dBの
と き,フ
ァ イ バ 長 を80kmと
8.2 直 接 強 度 変 調 ・直 接 検 波 方 式(IM-DD)の
す る と 受 信 器 入 力 は 何dBmか. 原 理,特
徴 を 述 べ よ.
8.3 ヘ テ ロ ダ イ ンお よ び ホ モ ダ イ ン検 波 方 式 の 原 理 と 特 徴 を 述 べ よ. 8.4 波 長 多 重 伝 送 方 式 と は ど の よ うな 通 信 方 式 か.そ 8.5 波 長1.55μm付
近 で,波
長 幅0.001μmの
の 構 成,特
範 囲 に10GHz間
伝 送 す る と き に は い くつ の 波 を 伝 送 す る こ と が で き る か.
徴 を 述 べ よ. 隔 で周 波数 多重
参考文献
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演習 問題解 答
第 2章 2.1
300THz
(f=c/λ)
2.2
0.25μm
(屈 折 率 nの媒 質 中 の波 長 は真 空 中 の1/nに
2.3
1.5μm,
2.4
0.75μm
NA=0.173,
屈 折 率 は比 誘 電 率 の 平方 根 で あ る.)
(λ=c/f,
V=6.39,
2θmax=0.348rad(19.9°), V は 式(2.39),
伝 搬 モ ー ド 5個
伝 搬 モ ー ドの 数 は2V/π.)
(NAと
θmaxは
2.5
表2.1参
照
2.6
12.5GHz
2.7
伝 搬 モ ー ドを一 つ にす る に は規 格 化 周 波 数 V を V〓2.4に
2.8
0.3dB/㎞
2.9
減 衰 量 は100㎞
2.10表2.2参
2.11電
式(2.5),
な る.)
-△f/fよ
(△λ/λ=
(10㎞
り求 め る
.) す れ ば 良 い.
で 強 度 半 分 即 ち 3dBゆ え, 0.3dB/㎞)
で20dBす
な わ ち,
パ ワ ー は1/100に
な る.
照
界 分 布 が 余 弦 波 の と き と 同 様 に して 求 め る.
2.12
5μW
2.13
167μs
(減 衰 最 は20dB, (屈 折 率1.5の
入 力 パ ワ ー の1/100に
な る.)
媒 質 中 で は 伝 搬 速 度 は 真 空 中 の1/1.5に
第 3章 3.1
338THz
3.2
1609Nep/m
3.3
512本
3.4
0.0162μm
3.5
章3.2参
照
3.6
章3.2参
照
(式(3.11)よ
りf=
1.4×1.60×10-19/6.626×10-34)
(式(3.5))
(式(3.9)で
△λ を 求 め,帯
(式(3.12)で
求 め る.)
城 幅0.1μmを
△λ で 割 る.)
な る.)
第 4章 4.1章4.1,4.2参
照
4.2章4.3参.照 4.3
0.0160μm
4.4
章4.1参
(△ λ=△fλ2/c) 照
第 5章 5.15.47μA,0.547A/W 5.2
章5.2参
5.3章5.3参
(式(5.1),(5.2)で
求 め る.)
照 照
5.454.4dB
(式(5.7)でS/Nを
5・536.7dB
(lpn=式(5.1), S/N=
求 め,10log(S/N)と
す る ・)
Ith2=式(5・8),Ish2=式(5.6),
Iph2/(Ith2+Ish2)
第 6章 6.11.57㎜
(κL=π/4を
満 足 す る L を 求 め る.)
6.2③P0/2,④P0/2,⑤0,⑥P0(図6.11ハ
イ ブ リ ッ ド結 合 形 強 度 変 調 器 の
説明後照) 6.3π/4
(20Vで
6.4FSR=33.3
π の 位 相 変 化 す る の で,5Vで GHz,
FWHM=544MHz,
は 式(6.7)の 値 が0.5に ら れ る.ま 6.5章4.1参
6.6偏 6.7
た,近
の 値 を 比 例 で 求 め る.)
F=61.2
(FSR=c/2n1,
な る 周 波 数 全 幅 を 求 め る.F=FSR/FWHMで
似的 に
で あ る.)
照
光 面 の 回 転 方 向 が 光 の進 行 方 向 に対 しい つ も同 じた め 使 え な い. (7)フ
ァ ブ リ ペ ロ エ タ ロ ン参 照
第 7章 7.1 σ (ガ ウ ス 分 布 の 2次 モ ー メ ン トを 求 め そ の 平 方 根 で あ る.)
FWHM
求 め
7.2
章7.2参
照
第 8章 8.1
-23dBm
8.2
章8.2参
照
8.3
章8.3参
照
8.4
章8.4参
照
8.5
12波
(4mWは+6dBmで,
(帯 域 幅 は125GHzで
損 失 は29dBで
あ り,
こ れ を10GHzで
あ る.)
割 り12波)
付
1.デ
録
1
シ ベ ル(deci-bel:dB)
実 用 的 な 測定 量 と して一 般 的 に 用 い られ て お り,図 付 1の 回路 にお い て 入 力 電 力 をP1,出
力 電 力 をP2と した と き,
デ シベ ルの 定 義
y=10logp1/p2 で 与 え ら れ る.ま
た,入
出 力 の イ ン ピ ー ダ ン ス が 同 じ な ら電 圧 で 表 現 す る と き は,
y=20logV1/V2 で 定 義 す る こ と も あ る.例
え ば,入
れ ば こ の 回 路 の 減 衰 量 は40dBと 増 幅 器 の 例 で は,V1よ とV2を
りV2が
力 電 圧V1が1V,主
力 電 圧V2が0.01
Vで あ
な る. 大 き くな る の で 増 幅 度 を 正 の 値 に す る た め, V1
入 れ 替 え て, y=20logV2/V1
と表 す. 2.ネ
ー パ(Neper:Nep)
主 と して理 論 式 で 用 い られ て お り,図 付 2の 回 路 の記 号 を用 い て下 式 の よ うに 表 さ れ る.
ネ ーパ の定 義
こ こ で,α
は 減 衰 量,β
は 位 相 量 で あ る.α の 単 位 は ネ ー パ(Neper:Nep),β
の 単 位 は ラ ジ ア ン(radian:rad)で
あ る.
3.ネ ー パ と デ シ ベ ル の 関 係
同 じ伝 送 量 に対 す る ネ ーパ とデ シベ ル の比 R を 求 め れ ば よ く下 式 の よ う に な る.
す な わ ち,1
ネ ー パ は8.686デ
シ ベ ル と な る,
4.dBm
伝 送 系 に お い て よ く用 い ら れ,lmWを 1mW=
0dBm
で あ る.す
な わ ちx[W]は,
で あ る.例
え ば,
に 示 す.
基 準 と し た 値 で,
1W
は30dBm,
1μW
は -30dBmで
あ る
.
この関 係 を図付 3
電 力 とdBmの 関 係
付
録
2
物理定数表 c=2.998×108
光速
=3×108
m/s
m/s
ε0=8.854×10‐12
F/m
真 空の誘電 率 真空の透磁率
μ0=4π
プ ラ ンクの 定数
h =6.626×10‐34
J・s
ボ ル ツ マ ン定 数
k=1.381×10‐23
J/K
×10‐7
電子 の電荷
q=1.602×10‐19C
電 子の質量
m=9.110×10‐31
固 有 イ ンピ ー ダ ンス
H/m
kg
付
録
3
三 角 関 数 ・双 曲 線 関 数 sin(α
± β) =sin
cos(α
± β) =cos
ejθ=
cos θ+j
a
cosβ
a
cosβ
cosh x+
sinh(jx) sinh(x±y) cosh(x±y)
〓 sin a sinβ
sin θ
(cos θ+ jsin θ)k =cos
ex=
± cos a sinβ
sinh
=jsin =sinh =cosh
x
kθ+j sin kθ
x
, x x
cosh(jx)
=cosx
cosh y±
cosh
cosh y±
sinh
x
sinh y
x sinh
y
付
録
4
単位 の名称
名称
読み エ ク サ ペ タ テ ラ
ギガ
キ ロ ミ リ
E
peta
P
1015
tera
T
1012
G
109
mega
M
106
kilo
k
103
milli
m
10-3
マ イ ク ロ
micro
ナ ノ
nano
ピ コ
pico
フ ェ ム
ア ト
ト
倍数
exa
gaga
メガ
記 号
femto atto
u
1018
10-6 10-9
p
10-12
f
10-15
a
10-18
Ξ
付
録
5
ギ リシ ャ文字
読 み
小文字 大文字
日本 語 読 み
α
A
alpha
ア ル フ ァ
β
B
beta
ベ ー タ
γ
Γ
gamma
ガ ン マ
δ
Δ
delta
デ ル タ
ε
ζ
E
epsilon
Z
イ プ シ ロ ン
zeta
ツ ェ ー タ
eta
イ ー タ
η
H
θ
Θ
theta
シ ー タ
ι
I
iota
イ オ タ
κ
K
λ
〓
μ
M
ν
kappa lambda
N
mu
ξ ο
O
ラムダ ミ ュ
nu xi
ク シ ー,グ
Π pi
ュ
ー
ニ
omicron
π
カ ッ パ
ー
オ ミ ク ロ ン
パ イ
ρ
P
rho
σ
Σ
sigma
τ
T
tau
υ
Υ
upsilon
ウ プ シ ロ ン
φ,ψ
Φ
phi
フ ァ イ
χ
X
chi
カ イ
ψ ω
Ψ
Ω
psi
omega
ザ イ
ロ ー
シ グ マ タ ウ
プ サ イ,プ
オ メ ガ
シ ー
索
英
引
位相条件
40
位相変調
96
位相変調器
75
エ タロ ン
78
字
AM
89
APD
66
CVD
33
EDFA
56
FSR
81
か 行 FWHM
81
開 口数
IM
90
回折格子
71
IM-DD
93
海 底 ケ ー ブル
36
PIN
64
外部変調
64
可視光線
62
活性層
44,49
規格化周波数
17,24
PINフ PNフ
ォ ト ダ イ オ ー ド ォ ト ダ イ オ ー ド
S/N
68
VAD
34
12,13
50,94
8
基底状態
46
あ 行 強度変調 アイ ソ レー タ
81
ア バ ラ ン シ ェ フ ォ トダ イ オ ー ド
66
ア ラ ン分 散
53
強度変調器
空間電送 空之層
84,90,91,93
77
2 64
屈折
9
屈折角
9
屈折率
33
弱導 波 フ ァイ バ
24
周波数安定度
51
周波数基準
51
クラッ ド
20
周波数多重1
02
グ レ ー テ ッ ドイ ン デ ッ ク ス フ ァ イ バ
…26
周波数変調
96
グ レ ー テ ッ ドフ ァ イ バ
27
シ ョ ッ ト雑 音
67
シ ン グ ル モ ー ド
検光子
81
減衰
31
減衰定数
32
12,25
シ ン グ ル モ ー ドフ ァ イ バ
29
信号対雑音比
68
真性領域
64
振 幅条件
40
振幅変 調
89
コ ア
20
光子密度
46
高周波重畳法
92
ス テ ップ イ ンデ ッ クス フ ァイ バ
コ ヒ ー レ ン ト伝 送
96
スプライス
33
固有値
17
スペ ック ル雑 音
91
ス ラ ブ導 波 路
13
…20
さ 行 材料分散
28
遷移
42
3dB結
75
線 引 き
36
32
全分散
28
85
相反性 回路素子
70
ソ リ トン伝送
93
合器
散乱
しきい 値 しきい 値 電流
識別器 自然 放 出
43,47
85 41,47
ハ イ ブ リ ッ ド結 合 形 強 度 変 調 器
77
た 行 波長多重
102
帯域 幅
99
発 振 縦 モ ー ド
48
第一 種 ベ ッセ ル関 数
22
発振波長
40
第二 種 の変 形 ベ ッセ ル関 数
22
波動方程式
15
ダ ブル ヘ テ ロ レー ザ
44
反射
多 モ ー ドレー ザ
41
反射係数
40
反転分布
42
半 導 体 レーザ
39
中 間周 波 数
100
直接検波
9
84 ビー ム ガ イ ド
2
電気光学効果
75
光 ア ナ ロ グ通 信
48
電子密度
46
光 ア ナ ロ グ伝 送
90
電流増倍作用
66
光検波器
62
電流増倍率
66
光 フ ァイバ
ドー パ ン ト
33
9
光 フ ァイバ 増 幅 器
55
比屈折率差
13
非相反性回路 素子
70
な 行 非相反素子 入射角
81
9
熱雑音
68
フ ァ イ バ ル ー プ ミ ラ ー
59
フ ァ イバ レー ザ
59
フ ァ ブ リペ ロ エ タ ン
78
フ ァ ラデ ー素 子
81
は 行
ハ ー フ ラ ミ ー
74
フ ィネ ス
81
ハ イ ブ リ ッ ド結 合 器
75
負温度状 態
42
複合共振器45
ポ ンプ光
59
副搬送波変調方式
92
符号誤 り率
86
ブ ラ ッ ク回 折 格 子
59
マ クス ウ ェル の 方 程 式
14
ブ リ ュ ー ス タ角
73
マ ッハ ツ ェ ンダ形 強 度 変 調 器
77
分 散 シ フ トフ ァ イ バ
31
マ ル チ モ ー ド
12
マ ル チ モ ー ドフ ァ イ バ
19
モ ー ダ ル雑 音
91
分布 帰 還 レー ザ
分布結合形強度変調器
44
ま 行
77
平衡受信回路
100
ベ ッセ ル関 数
22
ベ ッセ ル の微 分 方 程 式
22
ヘ テ ロ ダイ ン
74
ヘ テ ロ ダイ ン検 波
97
モ ー ド分 散
20,27
や 行 誘 導 放 出
41
ら
偏光 子 偏波 ダイ バ シチ
方向性結合器 母材 ホモ接 合 レー ザ ホ モ ダ イ ン検 波 ポ ン ピ ング
行
72,81 101
73 33 43 100 42
陸 上 ケ ー ブル
36
励起状態
46
励起光
55
レー ト方 程 式
46
レ ンズ
70
〈著者 紹 介 〉
榛 葉 学
實 歴
早稲 田大 学理 工 学部 電 気 通 信 科卒 業(1955) 工学 博 士(1971)
職 歴
日本電信電話公社入社 新潟大学工学部電気工学科教授 東京電機大学工学部情報通信工学科教授
理工学講座
光 フ ァイバ通信 概論 1999年
7月30日
2007年
4 月10日 第 1版 3刷 発 行
第 1版 1刷 発 行
著 者
榛 葉 實
学校法人 東京電機大学
発行所
東京 電機 大学 出版 局 代表者 加藤康太郎 〒101-8457 東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町2-2 振 替 口 座 00160-5-71715
印刷 三美印刷㈱ 製本 渡辺製本㈱ 装丁 三立工芸㈱
C Shinba
Printed
電 話 (03)5280-3433(営
業)
(03)5280-3422(編
集)
Minoru
in Japan
*無 断 で転載 す る こ とを禁 じ ます。 *落 丁 ・乱 丁本 はお取 替 えい た します 。 ISBN978-4-501-32010-2
C3055
1999