2 応用化学 シ リ ー ズ
有機資源化学 多賀谷 英幸 進藤 隆世志 大塚 康夫 玉井 康文 門川 淳一 ……[著]
朝倉書店
応 用化学 シ リーズ代表 佐
々 木 義 典 千葉大学名誉教授
第2巻 執 筆者 多 賀 谷...
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2 応用化学 シ リ ー ズ
有機資源化学 多賀谷 英幸 進藤 隆世志 大塚 康夫 玉井 康文 門川 淳一 ……[著]
朝倉書店
応 用化学 シ リーズ代表 佐
々 木 義 典 千葉大学名誉教授
第2巻 執 筆者 多 賀 谷 英 幸 山形大学工学部物質化学工学科教授 進 藤 隆 世 志 秋田大学工学資源学部環境物質工学科助教授 大
塚
康
夫 東北大学多元物質科学研究所教授
玉
井
康
文 日本大学工学部物質化学工学科教授
門
川
淳
一 鹿児島大学大学院理工学研究科教授
『応 用 化 学 シ リー ズ 』 発刊 にあ たって
こ の 応 用 化 学 シ リー ズ は,大 学 理 工 系 学 部2年
・3年 次 学 生 を対 象 に,
専 門 課 程 の 教 科 書 ・参 考 書 と し て企 画 さ れ た. 教 育 改 革 の 大 綱 化 を 受 け,大 学 の 学 科 再 編 成 が 全 国規 模 で 行 わ れ て い る. 大 学 独 自の 方 針 に よ っ て,応 れ ば,応
用 化 学 科 と,た
用 化 学 科 を そ の ま ま存 続 させ て い る大 学 も あ
とえ ば 応 用 物 理 系 学 科 を合 併 し,新
し く物 質 工 学
科 と し て 発 足 させ た大 学 も あ る.応 用 化 学 と応 用 物 理 を融 合 させ 境 界領 域 を究 明 す る効 果 を ね らっ た もの で,こ の の よ うで もあ る.し
れ か らの 理 工 系 の 流 れ を 象 徴 す る も
か し,応 用 化 学 と い う分 野 は,学 科 の 名 称 が ど の よ
う に 変 わ ろ う と も,そ の 重 要 性 は変 わ ら な い の で あ る.そ し い特 性 を も っ た化 合 物 や 材 料 が 創 製 さ れ,ま
れ ど こ ろか,新
す ます 期 待 され る分 野 に な
りつ つ あ る. 学 生 諸 君 は,そ
れ ぞ れ の 専 攻 す る分 野 を 究 め る ため に,そ
の土 台 であ る
学 問 の 本 質 と,こ れ を 基 盤 に 開 発 され た 技 術 な らび に そ の 背 景 を 理 解 す る こ と が 肝 要 で あ る.目
ま ぐる し く変 遷 す る時 代 で は あ るが,ど
の よ うな 場
合 で も最 善 を つ く し,可 能 な 限 り専 門 を 確 か な もの と し,そ の 上 に 理 工 学 的 セ ン ス を 身 に つ け る こ とが 大 切 で あ る. 本 シ リー ズ は,こ
の よ う な理 念 に 立 脚 し て 編 纂,ま
執 筆 者 は教 育 経 験 が 豊 富 で,か
とめ られ た.各 巻 の
つ 研 究 者 と して 第 一 線 で 活 躍 し て お ら れ る
専 門 家 で あ る.高 度 な 内容 を わ か りや す く解 説 し,系 統 的 に 把 握 で き る よ うに 幾 度 と な く討 論 を重 ね,こ
こ に刊 行 す る に 至 っ た.
本 シ リー ズ が 専 門 課 程 修 得 の役 割 を果 た し,学 生 一 人 ひ と りが 志 を 高 く も っ て 進 まれ る こ と を希 望 す る もの で あ る. 本 シ リー ズ刊 行 に 際 し,朝 倉 書 店 編 集 部 の ご尽 力 に謝 意 を 表 す る次 第 で あ る. 2000年9月
シ リーズ代表 佐 々 木 義 典
序
現 代 社 会 で は,自 動 車 か ら薬 まで 多様 な工 業 製 品 が 製 造 され,快 活 を支 え て い る.一 方,製 品 の製 造 や利 用 に お い て は,エ
適 で 便 利 な生
ネル ギ ー の 使 用 が不 可
欠 で あ る.こ れ ら現 代 社 会 に不 可 欠 な 工 業 製 品 の原 料 や エ ネル ギ ー 資 源 の 大 半 を 供 給 して い るの が,石 油 ・石 炭 ・天 然 ガ ス と い っ た 化 石 資 源 や,木 材 な どの バ イ オ マ ス資 源 で あ り,そ の利 用 を可 能 に して い る の が化 学 工 業 で あ る. 本 書 は,朝 倉 書 店 の 応 用 化 学 シ リー ズ の 一 書 と して,広
く化 学 工 業 に関 連 し,
資 源 お よ び エ ネル ギ ー を キ ー ワ ー ドとす る有 機 資 源 化 学 に関 して,学 生 や 大 学 院 生 の 入 門 書 と して書 か れ て い る. 近 年,化 石 資 源 の利 用 に よ っ て,直 接 的 ・間接 的 に 地 球 規 模 の 環 境 問 題 が 引 き 起 こ され,そ の 対 応 が 重 要 な社 会 問題 に な っ て い る.エ ネル ギ ー利 用 の た め の燃 焼 に よ っ て,二 酸 化 炭 素 や 硫 黄 酸 化物,窒
素 酸 化 物 な どが 排 出 され,こ れ らは地
球 温 暖 化 や 酸 性 雨 の 原 因 と な っ て い る.バ イオ マ ス は再 生 産 可 能 な 資 源 で あ る が, 過 度 の利 用 は再 生 産 に至 らず,砂 漠 化 な ど 土 地 の 荒 廃 に つ な が っ て い る.ま た, 工 業 製 品製 造 時 に,あ
るい は使 用 済 み 後 に排 出 され る廃 棄 物 は,最 終 処 分 場 不 足
や それ に伴 う処 理 費 の 高 騰 な どで,適 正 な処 理 に至 らな い 場 合 が あ る.さ
らに焼
却 処 理 は 施 設 の 能 力 が 不 十 分 な場 合 に は ダ イ オ キ シ ンの 発 生 が 考 え られ る な ど, 健 康 被 害 へ の懸 念 が 指 摘 され て い る.ま た,新 内 分 泌 撹 乱 化 学 物 質(環
た な毒 性 を有 す る化 合 物 と して,
境 ホ ル モ ン)の 健 康 へ の 影 響 が 指 摘 され る よ うに な っ
た. 本 書 で は,化 石 資 源 や バ イ オ マ ス 資 源 につ い て,そ の 存 在 量 や存 在 地 域 につ い て 概 説 す る と と も に,そ れ ぞ れ の 資 源利 用 につ い て 多 様 な面 か ら取 り上 げ た.有 機 炭 素 資 源 の獲 得,変
換,利 用,そ
して 最 終 的 な処 理 まで を範 囲 と し,現 代 生 活
を支 え る有 機 炭 素 資 源 の 流 れ を正 確 に把 握 で き る よ うに 努 め た.そ の 際,環 境 問 題 との 関 わ り につ い て も言 及 す る よ う に心 が け た.本 書 は,ま だ ま だ不 十 分 な と こ ろ もあ り,思 わ ぬ誤 り もあ る可 能 性 が あ る.現 在 は,イ
ン ター ネ ッ トで キ ー ワ
ー ド検 索 も可 能 で あ る.参 考 文 献 や イ ン タ ー ネ ッ ト利 用 な ど に よ って,不 足 の 点
を補 っ て い た だ き た い と思 う. 1章,6章,7章 井 康 文,5章
は 多賀 谷 英 幸,2章
は 進 藤 隆 世 志,3章
は 大 塚 康 夫,4章
は玉
は門 川 淳 一 が担 当 した.
な お,本 書 の 出版 に あ た り,多 大 な ご協 力 をい た だ い た朝 倉 書 店 編 集 部 の 方 々 に 対 し,深 く感 謝 の 意 を表 した い. 2002年3月
著者 を代表 して 多賀 谷 英 幸
目
次
1. 有 機 化 学 工 業
1
1.1 変 わ る生 活 様 式 と化 学 工業
1
1.2 有 機 化 学 工 業
2
1.3 有 機 炭 素 資 源
3
1.4 わ が国 に お け る物 質 の 流 れ
3
1.5 環 境 と化 学
5
1.6 人 口の 増 加
6
2. 石 油 資 源 化 学 2.1 石 油 の ノー ブル ユ ー ス
7 7
2.1.1 石 油 の 埋 蔵 量 と可 採 年 数
7
2.1.2 石 油 の 歴 史 と原 油 生 産 量
8
2.1.3 石 油 の 輸 送 と用 途 別 需 要
10
2.1.4 環 境 へ の 影 響
11
2.1.5 石 油 化 学 工 業
12
2.1.6 ノー ブル ユ ー ス
13
2.2 化学 原 料 と しての 石 油
14
2.2.1 原 油 の 元 素 組 成 と原 油 中の 成 分
14
2.2.2 原 油 の蒸 留 性 状
14
2.2.3 石 油 留 分 中の 炭 化 水 素 組 成
15
2.2.4 石 油 化 学 原 料
17
2.3 オ レ フ ィ ン製 造 プ ロ セ ス
17
2.3.1 炭 化 水 素 の 熱 安 定 性
18
2.3.2 高 温 熱 分 解 反 応
19
2.3.3 熱 分 解 メ カニ ズ ム
20
2.3.4 高 温 熱 分 解 プ ロ セ ス
22
2.3.5 オ レ フ ィ ンの 用途
24
2.4 芳 香族 製 造 プ ロ セ ス
25
2.4.1 接 触 改 質
25
2.4.2 二 元 機 能 触 媒 の触 媒 作 用
26
2.4.3 接 触 改 質 プ ロセ ス
27
2.4.4 芳 香 族 炭 化 水 素 の 分 離 2.4.5 芳 香 族 炭 化 水 素 の 相 互 変 換(脱 アル キル 化,不 均 化,異 2.4.6 芳 香 族 炭 化 水 素 の 用 途
3. 石 炭 資 源 化 学
29 性化)
30 32
33
3.1 石 炭 資源 の特 徴 3.2 石 炭 の性 質 と化 学 構 造
33 35
3.2.1 石 炭 の 組 成 とお もな性状 3.2.2 石 炭 の 分 類
35 36
3.2.3 石 炭 の 化 学 構 造
37
3.3 石 炭 の消 費 量 と用 途
40
3.4 石 炭 の 利 用 と化 学 3.4.1 熱
分
3.4.2 燃 3.4.3 ガ 3.4.4 液
解 焼
ス
41 41
47
化
49
化
54
3.5 石 炭 の 利 用 に伴 う地 球 環 境 問題 とその 対 策
60
3.5.1 二 酸 化 炭 素
60
3.5.2 硫 黄 酸 化 物
62
3.5.3 窒 素 酸 化 物 と亜 酸 化窒 素
64
4. 天 然 ガ ス 資 源化 学
69
4.1 天 然 ガス と は何 か
69
4.1.1 在 来 型 天 然 ガ ス
70
4.1.2 非在 来 型 天 然 ガ ス
72
4.2 天 然 ガス 資 源 の 分 布 と埋 蔵 量 ・生 産 量
74
4.2.1 在 来 型 天 然 ガス 資源 の 埋 蔵 量 ・生 産 量 4.2.2 非 在 来 型 天 然 ガ ス資 源 の 資 源 量
74 76
4.3 天 然 ガ スの 輸 送 法 と貿 易 4.3.1 天 然 ガ スの 輸 送 法
77 77
4.3.2 天 然 ガ ス の 貿 易
78
4.4 天 然 ガ スの エ ネル ギ ー 資源 と して の環 境 調 和 性 と利 用 法 4.4.1 LNG火
力発 電 の 燃 料 と しての 利 用 ・特 徴
4.4.2 都 市 ガ ス 原 料 と しての 利 用
79 81 82
4.4.3 自動 車燃 料 と しての 利 用
83
4.4.4 LNGの
84
もつ 冷 熱 の利 用
4.4.5 燃 料 電 池 用燃 料 と して の 利 用 4.5 天 然 ガス 資 源 の 化 学 的変 換 法 と その特 徴 4.5.1 メ タ ン を原料 に用 い る合 成 ガス製 造 法 4.5.2 合 成 ガ ス か らの化 学 製 品 製 造 法 4.5.3 メ タ ノー ル か らの 化 学 製 品 製造 法
84
85 86 88 88
4.5.4 メ タ ン を原料 とす る直 接 的 化学 製 品 製 造 法
89
4.5.5 今 後実 用 化 が期 待 され る メ タ ンの直 接 活 性 化 法
90
4.5.6 天 然 ガ ス 中 に含 まれ る メ タ ン以 外 の 炭 化 水 素 か らの オ レ フ ィ ン 製造法
5. バ イ オ マ ス 資 源化 学 5.1 バ イ オ マ ス 資 源 の特 徴 5.1.1 バ イ オ マ ス 資源 と は 5.1.2 バ イ オ マ ス資 源 の 特 徴
92
94 94 94 94
5.1.3 バ イ オ マ ス は再 生 可 能 資 源
95
5.1.4 バ イ オ マ ス資 源 の 不 安 要 因
96
5.2 バ イ オ マ ス 資 源 の種 類 と利 用
97
5.2.1 バ イ オ マ ス資 源 の 種 類
97
5.2.2 バ イ オ マ ス資 源 の 利 用 状況
97
5.3 多糖 類 系 バ イ オ マ ス資 源 5.3.1 セル ロ ー ス資 源
99 99
5.3.2 キ チ ン,キ
トサ ン 資 源
104
5.3.3 デ ン プ ン
109
5.4 マ リ ン バ イ オ マ ス 資 源
109
5.4.1 マ リ ンバ イ オ マ ス 資 源 の 種 類 5.4.2
109
ア ル ギ ン酸
110
5.5 そ の 他 の バ イ オ マ ス 資 源
111
5.6 エ ネ ル ギ ー 資 源 と して の バ イ オ マ ス
112
6. 廃 炭 素 資 源 化 学
115
6.1 廃 炭 素 資 源
115
6.2 廃 棄 物 の 現 状
115
6.3 再 生 資 源 の 利 用
117
6.4 家 庭 ご み お よ び 事 業 系 ご み の 組 成
118
6.5 容 器 包 装 リサ イ ク ル 法 お よ び 家 電 リサ イ ク ル 法
119
6.6 古
紙
120
6.6.1 古 紙 の 再 利 用 に お け る 前 処 理
120
6.6.2 紙 の 利 用 形 態
120
6.7 プ ラ ス チ ッ ク の 再 利 用
122
6.7.1 プ ラ ス チ ッ ク リサ イ ク ル の 種 類
6.7.2 プ ラ ス チ ッ ク の サ ー マ ル リサ イ ク ル
122
6.7.3
123
プ ラ ス チ ッ ク の マ テ リア ル リサ イ ク ル
123
6.7.4 プ ラ ス チ ッ ク の ケ ミ カ ル リサ イ ク ル(油
化)
124
6.7.5 プ ラ ス チ ッ ク の ケ ミ カ ル リサ イ ク ル(高
炉 還 元)
125
6.7.6 プ ラ ス チ ッ ク の ケ ミ カ ル リサ イ ク ル(高
温 水 中で の プ ラス チ ック
の 分 解 反 応) 6.8 木
く
ず
127
127
6.8.1 木 く ず の 原 料 化
128
6.8.2 木 く ず の 燃 料 化
128
6.9 汚
泥
6.9.1 汚 泥 の メ タ ン発 酵 6.9.2 汚 泥 の 焼 却
129
129 130
6.9.3 汚 泥 の 肥 料 化
130
6.9.4 汚 泥 の 飼 餌 料 化
130
6.10 繊 維 くず の再 利 用 6.11 廃 タ イヤ,ゴ
130
ム くず の利 用
131
6.12 廃 食 用 油
132
6.13 動 植 物 性残 査
133
6.14 家 畜 ふ ん尿
134
6.15 生 ご みの コ ンポ ス ト化
134
6.16 ご み 発 電
136
7. 資源 とエ ネル ギ ー
138
7.1 一 次 エ ネル ギ ー と は
7.2 一次 エ ネル ギ ーの 需 要 の推 移 と見通 し 7.3 二次 エ ネル ギ ーの 需 要 見 通 し 7.4 資源 の有 限 性
参 考 文献 索
引
139
140 140
7.5 エ ネ ル ギ ー を安 定 的 に獲 得 す るた め の 国家 的計 画 7.6 環境 問題 との 関 係:エ
138
ネル ギ ー利 用 と二酸 化 炭 素 の 放 出 量
142 142
145 147
1 有 機 化
学 工 業
1.1 変 わ る 生 活 様 式 と化 学 工 業 化 学 工 業 は 石 油,天 然 ガ ス,塩,鉱
物 な ど を原 料 と し,そ れ ら を化 学 的 に変 換
して 多 様 な生 活 製 品 を生 産 す る工 業 で あ り,金 属(鉄 鋼)工
業 な ど と と もに基 礎
素 材 型 産 業 に 位 置 づ け られ る.化 学 工 業 は生 産 す る製 品 の種 類 に よ っ て,無 機 化 学 工 業 お よ び 有 機 化 学 工 業 に 分類 す る こ とが で き る.無 機 化 学 工 業 で は,無 機 薬 品 や 無 機 材 料 が製 造 され,有 機 化 学 工 業 で は,図1.1の ム,化 学 繊 維,化
学 肥 料,プ
ラ ス チ ック,医 薬 品,塗
よ うに有 機 薬 品,合 成 ゴ 料 ・印 刷 イ ン キ,化 粧 品,
写 真 用 感 光 剤,油 脂 ・界 面 活 性 剤 な ど が生 産 され て い るが,化 学 工 業 製 品 の な か で は,有 機 化 学 工 業製 品 の 出荷 額 が90%を
超 え て い る.
図1.1 有機 化学 工業の原料お よび製品
戦 後 さ ま ざ ま な産 業 が発 展 して きた が,化 学 工 業 は繊 維 ・食 料 品 工 業 に寄 与 し た ば か りで な く,自 動 車 産 業 や 電 気 ・電 子 産 業 を は じめ さ ま ざ まな 産 業 の 発 展 に 大 き な役 割 を果 た し て きた.21世
紀 に大 き な発 展 が 期 待 され る情 報 産 業 や バ イ
オ産 業,新 素 材 産 業 にお いて も,化 学 工 業 が大 きな役 割 を果 た す と考 え られ る. 1.2 有 機 化 学 工 業 化 学 は,中 世 に 錬 金 術 な ど経 験 的 な 積 み 重 ね を基 本 に発 展 して きた.化 学 産 業 は,都 市 化 が 進 み,生
活 様 式 が変 化 す る産 業 革 命 の 時 代 に,図1.2の
よ う に アル
カ リ化 合 物 や肥 料 な ど無 機 化 合 物 の 製 造 を中 心 に して 誕 生 した.産 業 革 命 に よ る 動 力 の 発 展 は,石 炭 採 掘 量 の 増 大 に寄 与 した が,石 炭 は コ ー ク ス供 給 に よ って 製 鉄 業 の 発 展 に寄 与 した.一 方,コ
ー ク ス を 製 造 す るた め の 石 炭 乾 留 は,大 量 の 副
製 ガ ス を も た ら した が,こ の 石 炭 ガ ス は ガ ス 灯 と して 普 及 した.都 市 部 にお け る 石 炭 乾 留 に よ る ガ ス 製 造 は,大 量 の ター ル 状物 質 の 排 出 を も た ら した.こ れ ら は 化 石 資 源 を源 とす る最初 の 大 量 廃 棄 物 と考 え て も よい.こ の よ うな石 炭 タ ール 状 物 質 の 分 析 に よ る さ ま ざま な 化 合 物 の 発 見 が,有 機 化 学 の 出 発 で あ る.さ
らに,
ター ル 状 物 質 か らの合 成 染 料 の 製 造 法 の発 見 が,現 在 へ と続 く有 機 化 学 工業 の 曙 と位 置 づ け る こ と が で き る. 有 機 化 学 製 品 を生 産 して い る有 機 化 学 工 業 は,石 油 や 石 炭 な どの 有 機 炭 素 資源 を主 原 料 と し,さ らに生 産 に必 要 な エ ネル ギ ー の 多 く も有機 炭 素 資 源 に頼 っ て い る.こ の こ とか ら,有 機 化 学 工 業 は有 機 炭 素 資源 を出発 と し,化 学 変 換 プ ロセ ス を基 本 とす る化 学 工 業 と位 置 づ け られ る.
図1.2 化 学 の 夜 明 け
合成 染料 の発 見! イ ギ リ ス で は,植
民 地 政 策 を 進 め る上 で,マ
要 な 医 薬 で あ っ た.こ C6H5NH2の
ラ リア特効 薬 で あ る キニ ー ネが重
の キ ニ ー ネ の 分 子 式 はC20H24O2N2で
酸 化 に よ り合 成 で き る と考 え ら れ た.化
パ ー キ ン は,こ
あ り,当
初 アニ リン
学者 ホ フマ ンの助 手 で あ った
の 実 験 中 に 偶 然 に赤 紫 色 の 化 合 物 が 生 成 す る こ と を 見 い だ し た.
トル イ ジ ンは ア ニ リ ン含 有 成 分 の 不 純 物 で あ る が,ア で 合 成 され た モ ー ブ は,そ
ニ リ ン や トル イ ジ ンの 反 応
の 後 数 々 の 合 成 染 料 の 発 見 を通 して 有 機 化 学 工 業 の 発
展 に 寄 与 し た.こ の よ う な 有 機 化 学 工 業 の 出 発 が,偶 ー ル の 利 用 か ら始 ま っ た こ と は 興 味 深 い .
然 に も廃 棄物 で ある石炭 タ
アニ リン か らの モ ー ブの 合 成
1.3 有 機 炭 素 資 源 有 機 炭 素 資 源 に は,再 生 産 が 可 能 な"バ
イオ マ ス"と 過 去 の バ イ オ マ ス の化 石
で あ り再 生 産 で きな い"有 機 化 石 資 源"が
あ る.近 年,生 産 お よび 製 品 流 通 の最
終 段 階 で 得 られ る廃 有 機 炭 素 資源 も,重 要 な有 機 炭 素 資 源 と して 認 識 され る よ う に な っ た. バ イ オ マ ス資 源 に は,薪 や木 材 な どが 含 まれ,化 石 資 源 に は 石 炭,石 油,天 然 ガ ス,オ み,紙,プ
イル サ ン ド,オ イル シ ェ ー ル が 含 まれ る.ま た廃 炭 素 資 源 と して は生 ご ラ スチ ッ クが 含 まれ る. 1.4 わ が 国 に お け る 物 質 の 流 れ
わ が 国 は 技 術 貿 易 立 国 で あ り,資 源 や 製 品,食 料 品 な ど を輸 入 し,付 加 価 値 の 高 い機 械 類 や 自動 車 な ど を輸 出 して い る(図1.3).物
質 の流 れ を量 で 考 え た場 合,
図1.3 日本 におけ る資源 と製品の輸 出入 の流れ (矢印の大 きさが金額 に比例)
輸 入 量 は6億
トンで あ るが,輸
出 量 は0.8億
弱 は石 油 で あ る こ とか ら,こ れ らの80%以 排 出 され て い る.一 方,工
トンに す ぎ な い.輸 入物 質 量 の 半 分 上 は 燃 焼 に よ って 二 酸 化 炭 素 と して
業 生 産 に お い て は,国 内 資 源 の 供 給 も あ り,毎 年4.5
億 トンに 達 す る廃 棄 物 が 排 出 され て い る. わ が 国 は,資 源 や エ ネル ギ ー と して 産 業 を支 え て い る石 油,石 炭,天 然 ガ ス な どの 有 機 資 源 をほ ぼ100%外 の 製 品 や,食
国 に依 存 して お り,さ らに 衣 料,自 動 車,機 械 な ど
料 品 な ど を輸 入 して い る.付 加 価 値 の高 い機 械 や 自動 車 の 生 産 に お
い て は 高 度 な産 業 技 術 が不 可 欠 で あ り,技 術 貿 易 立 国 で あ るわ が 国 に お い て は , 独 創 的 な技 術 開 発 が 非 常 に 重 要 で あ る こ と を示 して い る. 世 界 の 化 学 企 業 は,世 界 的 な競 争 の な か で 淘 汰,統 合 な ど を繰 り返 し,規 模 が 大 き くな る と と もに 大 き な利 益 を あ げ て い る(表1.1).わ
が 国 の 化 学企 業 は,規
模 な どの 点 で欧 米 諸 国 の 企 業 に比 べ て か な り小 さ く,国 内 で の 過 当競 争 が利 益 幅 を小 さ く して い る.こ の た め,基 礎 研 究 な どへ の 投 資 が小 さ く,将 来 へ の 課 題 が 大 きい. 一 方,輸 入 に頼 り,エ ネ ル ギ ーや 素 材 な ど と して 不 可 欠 な有 機 炭 素 資 源 は 有 限 で あ り,こ の こ と は わ が 国 に お い て 多様 な 資 源利 用 の 技 術 の 開 発 が重 要 で あ る こ と を示 して い る.ま た,物 質 生 産 の 増 大 ・多様 化 と と も に廃 棄 物 の増 加 ・質 の 変 化 が起 こ り,最 終 処 分 場 の不 足 と,有 害 化 学 物 質 の 適 正 処 理 の観 点 か ら,廃 棄 物
表1.1 世 界 の化 学 ・医薬 品 工 業(世
界 国 勢 図 絵,国
勢 社,1999)
排 出 量 を減 らす こ とが,化 学 工 業 に と っ て も重 要 な 課題 の 一 つ とな って き た. 1.5 環 境 と 化 学 多様 な化 学物 質 が 生 活 向 上 に寄 与 して き た が,同 時 に 人 間 の健 康 に影 響 を 与 え る よ うな化 学物 質 の 存 在 が ク ロ ー ズ ア ップ され て きた.発 が ん 性 な ど の一 般 毒性 と して か な り高 い 有 毒 性 を示 す ダ イオ キ シ ンは,農 薬 な どの 副 生成 物 と して 生成 し,さ ら に近 年 わ が 国 に お け る 排 出 の90%以
上 は,廃 炭 素 資 源 の 焼 却 に よ る も
の で あ る.そ の た め,焼 却 温 度 の 制 御 や 排 ガ ス の処 理 な ど,焼 却施 設 の見 直 しが 進 め られ,ダ
イオ キ シ ン生 成 の よ り少 な い焼 却 炉 が使 わ れ る よ う に な っ た.ま
た
ダ イ オ キ シ ン は塩 素 を含 む化 合 物 で,そ の 生 成 に は塩 素 源 が 不 可 欠 で あ る.塩 素 を含 む プ ラス チ ック は,ダ イ オ キ シ ンの 塩 素 源 に な るた め,そ の 生 産 ・利 用 な ど に影 響 が 出 て い る. さ らに,従 来 の 一 般 毒 性 とは 異 な る毒 性 と して,生 殖 毒 性 が知 られ る よ う に な っ た.こ の生 殖 毒性 を有 す る化 合 物 と して,内 分 泌 撹乱 化 学 物 質(環 境 ホル モ ン) の 存 在 が 指 摘 され る よ うに な っ た.生 殖 毒 性 を有 す る こ と が疑 われ て い る化 学 物 質 と して,ダ や,プ
イ オ キ シ ン類 な どの ほ か,身 近 に か つ 大 量 に存 在 す る洗 剤 の 誘 導 体
ラス チ ッ クの 可 塑 剤 や モ ノマ ー が あ る.
1.6 人口 の 増 加 17世 紀 に は4∼5億 一 次 世 界 大 戦 後 に20億 間 に8000万
人 で あ っ た世 界 人 口 は,19世
紀 初 め に10億 人 に 達 し,第
人 ,第 二次 世 界 大 戦 後 に は30億
人 に 至 っ た.近 年 は1年
人 か ら1億 人 もの 割 合 で 増 えて い る.低 位,中
推 定 が な され て い る が,図1.4の
位,高
よ うに 中位 推 定 で も,2050年
え る と予 測 され て い る.こ れ ら人 口増 加 に お い て は,ア
位 の将来人 口
に は90億 人 を超
ジア ・ア フ リカ諸 国 の寄
与 が大 きい. わ れ わ れ の 生 活 を考 え る上 で,有 機 化 学 工 業 の 果 た して い る役 割 は大 きい が, この工 業 を支 えて い る有 機 炭 素 資 源 は 有 限 で あ る.人 口 の 増 加 と そ れ に伴 う有 機 炭 素 資 源 使 用 量 の 増 加,有 害 化 学 物 質 の 排 出 は互 い に 関 連 が あ る.し た が っ て 有 機 化 学 工 業 の み な らず 諸 工 業 に お い て,環 境 を考 慮 ・意 識 した物 づ く りが不 可 欠 で あ る.
図1.4 将 来 推 計 人 口
人間の平均寿命 わ が 国 は世 界 で も長 寿 の 国 と して知 られ,平 均 寿命 は80歳 以 上 に達 して い る. しか し,産 業革 命 が進 行 して いた19世 紀 中頃 におい て は平 均寿 命 はた かだ か45歳 程 度 で あ り,古 代 ・中世 では25歳 で あっ た,環 境 問題 を念 頭 にお き,昔 は よか っ た,と よ くいわ れ る.さ まざ まな物 質 の恩 恵 に よ って得 られ た現 在 の平 均 寿命 を 落 と さず,環 境 だ けを昔 に戻 す こと がで き るの か,と い う疑 問 が あ る.人 口増 加 の 現 状 を考 えて も,社 会 生活 や 資源 の あ り方 な ど,大 きな変 化 を前 提 に した現 実 的な対 応 が望 まれて い る.
2 石 油資源化 学
2.1 石 油 の ノ ー ブ ル ユ ー ス 2.1.1 石 油 の 埋 蔵 量 と可 採年 数 石 油 が 人 類 に とっ て 将 来 に わ た り貴 重 な資 源 で あ る こ とは い うま で もな い.石 油 は世 界 の エ ネ ル ギ ー需 要 の37%(日
本 の エ ネル ギ ーの49%)を
種 類 以 上 の 工 業 製 品 に 不 可 欠 な基 礎 原 料 で あ り,輸 送 用 燃 料,民
供 給 し,6000 生 用 熱 源,発 電
用 燃 料 な ど さ ま ざま な形 で 活 用 され て い る.石 油 資 源 は地 球 上 に どれ だ け存 在 し て い るの だ ろ う か.地 下 資 源 は そ の存 在 が 未 知 で あ る こ とが 多 い.ま
た,資 源 と
して の 評 価 に お い て も不 確 定 要 素 は 多 い.こ の た め,一 般 に 資 源 量 につ いて は簡 単 に答 を出 す こ とは 困 難 と され て い る.埋 蔵 量 の概 念 も多 様 で あ る. 石 油 に つ い て の 一 例 を 図2.1に 示 す.こ
こ で,資
か つ 広 く用 い られ て い る の は確 認 埋 蔵 量 で あ る.油
源 と し て の 量 が 最 も確 か で, 層 内 に 存 在 す る原 油 の 総 量
図2.1 埋蔵量の概念(石 油 資源)
表2.1 石油 の可採 年数の移 り変わ り
(原始 埋 蔵 量)の
う ち,技 術 的 ・経 済 的 に生 産 可 能 な もの を可 採 埋 蔵 量 と い うが,
通 常,原 始 埋 蔵 量 の20∼30%程
度 で あ る.確 認 埋 蔵 量 とは,可 採 埋 蔵 量 の う ち,
最 も生 産 が確 実 視 され る もの を さ して い る.し か し,こ の 確 認 埋 蔵 量 も探 査,採 掘 の 技 術 水準 と原 油 価 格 に よ り変 動 す る.す な わ ち,石 油 探 査 や 掘 削 を は じめ, 回 収 技 術 の 進 歩 に伴 い現 在 の 油 田の 原 油 採 収 率 は 向 上 す る.ま た,価 格 が 上 昇 す れ ば 経 済 的 に採 掘 可 能 な 資源 量 が増 え る だ けで な く,新 規 油 田 の 発 見 な ど に よ り, 結 果 的 に は確 認 埋 蔵 量 か ら推 定 埋 蔵 量 へ,さ
らに 予 想 埋 蔵 量 へ と資 源 量 が 増 大 す
るか らで あ る. あ る年 の 年 末 の 確 認 埋 蔵 量 を そ の年 の 年 間 生 産 量 で 除 した 数 値 が石 油 の 可 採 年 数 で あ る.前 述 の と お り,確 認 埋 蔵 量 は技 術 水 準 と価 格 に よ り変 化 す る もの で あ るか ら,可 採 年 数 は石 油 が 枯 渇 す る ま で の 期 間 を示 して い るわ けで は な い.こ れ は と くに 留 意 す べ き で点 で あ ろ う.1970年
代 に起 こ った 二 度 に わ た る石 油 危 機
の 際 に,当 時 の 可 採 年 数 か ら,「 石 油 は あ と30年 で な くな る」 と ま こ と しや か に 語 られ て い た が,こ れ が誤 りで あ る こ と は表2.1か ら も明 らか で あ る. 2.1.2 石 油 の 歴 史 と原 油 生 産 量 石 油 と人 間 との 関 わ りに つ い て簡 単 に触 れ て お こ う.人 類 は太 古 よ り石 油 を利 用 して き た.旧
約 聖 書 に よ れ ば,「 ノ アの 方 舟 」 は ア ス フ ァル ト(歴 青)で
装 ・防 水 され(前6000年
頃),幼
塗
い モ ー ゼ を 入 れ た 篭 も また 天 然 ア ス フ ァル トで
隙 間 をふ さ ぎ防 水 ・防湿 ・保 温 され て い た.「 バ ベ ル の塔 」 は ア ス フ ァル トで 煉 瓦 を 固 め て つ く られ た(前4000年
頃)と
い う.シ ュ メ ー ル 人,ペ
ル シ ャ 人,エ
ジ プ ト人 らは ア ス フ ァル トを建 造 物 や舗 道 をつ く る際 の 接 着 剤 に,ま た,神 像 や モ ザ イ ク を作 成 す る際 の接 着 剤 や ミイ ラの 防 腐 剤 な ど に用 い た(前3000∼2000 年 頃).
中国,イ
ン ドや イ ン カ帝 国 に お い て も,石 油 は照 明,暖 房,防
の 灯 火 な ど に用 い られ て い た.ま た,ア フ ァル トを カ ヌ ー の 防 水 に,あ
水,薬
用,祭
り
メ リカ先 住 民 族 は,天 然 に産 出 す るア ス
る い は 絵 の 具(出
陣 の ボ デ ィー ペ イ ン テ ィ ング)
や 薬 と して 用 い た.石 油 は武 器 と して も使 用 され て い た.古 代 ギ リシ ャ人 は海 に 注 い だ石 油 に火 を着 けて 敵 艦 隊 を攻 撃 した.ペ ル シ ャ人 の 発 明 し た火 炎 兵 器 「ギ リ シ ャ の火 」(硫 黄 ま た は硝 石,と 油 系 火 器,カ
き に は 樹 脂 を燃 えや す い ナ フサ と混 合 した石
タパ ル トや 大 弩 に よ っ て 発 射)は
発 明 され る14世 紀 ま で の 間,最
越 の 国(現
砲が
も強 力 な武 器 と な っ た.
わ が 国 で は 「燃 ゆ る水 」(石 油)と 位 の 年(668年)に
改 良 され る と(650年),大
「燃 ゆ る土 」(ア ス フ ァル ト)が 天 智 天 皇 即
在 の 新 潟 地 方)か
ら献 上 され(日 本 書 紀),ま
た,
こ の地 方 で 産 出 され た天 然 ガ ス は竹 管 で導 か れ,燈 火 用 や 炊 事 用 に 用 い られ て い た(北 越 雪 譜,1841年). 18世 紀 末,「 石 油 ラ ン プ」 が 発 明 され た.石 油 か らつ く られ た 灯 油 は,そ れ ま で用 い られ て い た 鯨 油,植 物 油,石 炭 油 よ り も安価 で よ く燃 え,臭 い や 煙 の 発 生 が少 な い な ど良 質 で あ っ た の で,石 油 を産 出 しな い 国 の 人 々 に も広 く利 用 され る よ うに な っ た.石 油 の 需 要 は伸 び,各 地 で掘 削 が 行 わ れ た. 1859年,E.L.
Drakeは
ア メ リカ合 衆 国 ペ ン シル バ ニ ア州 タ イ タス ビル に お い
て 石 油 の機 械 掘 に 初 め て成 功 し,深 度21mの れ た.そ
して,こ
れ が 近 代 石 油 産 業 の 幕 開 け と な り,石 油 ラ ッ シ ュ が起 こ っ た.
バ ク ー油 田 の 開 発(1870年 発 見(1880年
代)な
代),オ
ラ ン ダ領 東 イ ン ド諸 島(ス
ど世 界 各 地 に 石 油 開 発 が広 ま る な か,ア
テ キ サ ス州 ス ピ ン ドル トップ に お い てA. 年)な
油 井 か ら日産4.8klの 原 油 が 生 産 さ
マ トラ島)の
油田
メ リカ 合 衆 国 で は
Lucasが 大 噴 出油 井 を 発 見 す る(1901
ど南 部 の油 田 開 発 も進 め られ た.当 時 の 需 要 は 「ニ ュ ー ラ イ ト」 と よば れ
る燈 火 用 の 灯 油 が 中 心 で あ っ た.引 火 点 が低 く,危 険 な ガ ソ リン留 分 は川 へ 捨 て られ,こ の た め,川 下 で は しば しば 火 災 が発 生 した.こ の 危 険 で その 当 時 の 無 用 の 長 物(ガ
ソ リ ン留 分)を 利 用 す るた め に考 案 され た の が 内燃 機 関(ガ
ン ジ ン)で あ る.G. と普 及 に よ り,ガ
Daimler,
H. Fordら に よ るガ ソ リンエ ン ジ ン自動 車 の 開 発
ソ リンの 需 要 は急 速 に 伸 び た.第 一 次 世 界 大 戦 を契 機 に航 空 機
用 の ガ ソ リン な ど新 しい 需 要 が増 えた.さ
ら に,デ
ィー ゼ ル エ ン ジ ンが発 明 され
て,船 舶 や 大 型 車 両 へ の 使 用 が 普 及 し,軽 油 の 需 要 は増 大 し た.ま 工 場,ビ
ソ リ ンエ
ル な どの ボ イ ラー 用 燃 料 と して,重 油 の 需 要 も増 大 した.
た,発 電 所,
原 油 は どの よ うに して で きたの? 原 油 は 数 億 年 前 の 生 物 の 遺 産 で あ る.約35億
年 前 に 生 物 は 地 球 上 に 生 ま れ,は
じめ は酸 素 を必 要 と し な い 海 中 の 下 等 微 生 物,そ
の 後 酸 素 を 必 要 と す る生 物 が 出 現
した.約4億
年 前 に は 植 物 が 地 上 に 現 れ,そ
を は じめ た.そ か ら6400万
れ を 食 べ て 生 活 す る陸 上 の 動 物 が活 動
の 後 動 物 は徐 々 に 大 型 化 し,恐 竜 の 時 代 を 迎 え る が,そ の 恐 竜 も今
年 ほ ど前 に 忽 然 と し て絶 滅 の 運 命 を た ど っ た.原
油 は この 頃 ま で に 地
下 深 くつ く られ て い っ た. 原 油 の も と は,海 て い る.土
や 湖 で 繁 殖 し た藻 類 や プ ラ ン ク トン な ど の 生 物 体 の 遺 骸 と され
砂 と一 緒 に 水 底 に堆 積 した こ れ らの 遺 骸 は 岩 石 と な る間 に,嫌 気 性 バ ク
テ リ ア の 働 き に よ っ て メ タ ン を 発 生 しつ つ 糖 類,ア ど の 単 量 体 に 分 解 さ れ る と と も に,大 (ケ ロ ー ジ ェ ン)に 変 換 され る.原
ミ ノ酸,脂
肪 酸,フ
ェ ノ ール な
部 分 は不 溶性 の 複雑 な高分 子 状の 有機 物 質
油 は,ケ
ロ ー ジ ェ ン を 含 む 岩 石 が 地 下 深 く堆 積
す る と き に,地 熱 と地 圧 の作 用 を 受 け て ケ ロ ー ジ ェ ンが 熱 分 解 して 炭 化 水 素 に変 換 され た もの と考 え られ て い る. この よ うな ケ ロ ー ジ ェ ン根 源 説 と よ ば れ る有 機 成 因 説 は,石 油 形 成 の 最 も有 力 な 説 と な っ て い る.こ 高 温,高
れ と は対 照 的 に,炭 酸 ガ ス,水
な ど が 地 殻 中 の ア ル カ リ金 属 と
圧 下 で 反 応 した り,カ ー バ イ ドと水 と の 反 応 か ら生 成 し た炭 化 水 素 が 地 殻
中 に 貯 え られ て 原 油 に 変 化 した と す る無 機 成 因 説 も提 案 さ れ て い る.
この よ うに して,石 油 の 需 要 が急 速 に 増 す 一 方 で,中 東 をは じめ とす る大 油 田 の 発 見 や 石 油 の 探 査 ・採 収 技 術 の 進 歩 に よ って 原 油 の供 給 は順 調 に 行 わ れ た.ま た,新 規 な石 油 精 製 法 の 開 発 に よ っ て,変 化 す る石 油 の需 要 へ の 対 応 は 柔 軟 に な され て き た.現 在,世
界 の 年 間原 油 生 産 量 は41億kl(2004年)に
また,原 油 の 累 積 生 産 量 は約1510億kl(9500億
達 して い る.
バ レル)を 超 えて い る.
2.1.3 石 油 の 輸 送 と用 途 別 需 要 最 近,一 部 の 石 油 製 品 は輸 入 され て い るが,原 油 の大 部 分 は生 産 地 か ら消 費 地 へ輸 送 され,精 製 され て 石 油 製 品 とな り,用 途 に応 じて使 用 され て い る.わ が 国 の場 合 を例 に して み て み よ う. わ が 国 の年 間 石 油 需 要 は約3億klで
あ るが,国 産 原 油 は80∼90万klに
すぎ
な い.そ の た め,そ の 大 部 分 を海 外 に依 存 して い る.輸 入 量 は1日 あ た り,ほ ぼ 80万klに
も及 ぶ.中 東 か ら輸 入 す る場 合 に は,海 上 輸 送 に 往復 で45日 間 を要 す
る.載 貨 容 積40万klの
超 大 型 タ ン カ ー(ULCC:
ultra large crude oil carrier)
を使 用 した と して も,わ が 国 と中 東 との 間 の 海 上 航 路 に は約90隻 た えず 航 行 して い る こ とに な る.
ものULCCが
表2.2 石 油 製 品 の 用 途 別 需 要(単
出 典:石
油 連 盟 そ の 他(石
位:1000kl)
(平成12年 度)
油 情 報 セ ン タ ー 「石 油 事 情 資料 」 平 成13年11月).
表 中の 用 途 例 は産 業 活 動 と国 民 生 活 の う ち 「身 近 な も の 」 中 の 一 例.
こ う して輸 入 され た原 油 は,い っ た ん 原 油 タ ン クに 蓄 え られ た の ち,精 製 され る(図2.5参
照).ま
ず,原
油 は加 熱 ・蒸 留 され て,沸
点 の 近 い もの が 連 続 的 に
集 め られ る.こ の 留 分 に化 学 変 換 や物 理 操 作 を行 っ て,必 要 な性 状 を付 与 した も の が石 油 製 品 で あ る.石 油 製 品 の 用 途 別 需 要 を表2.2に 示 した.石 油 製 品 の 大 部 分 は燃 料 と して 利 用 され て い る.ま た,わ 油 生 産 量 の 約8%に
が 国 の 石 油 需 要 約3億klは
世界 の原
あ た る.こ の 需 要 量 は わ が 国 で生 産 あ るい は消 費 され る鉱 工
業 製 品 の な か で群 を抜 い て 最 大 で あ る. 2.1.4 環 境 へ の 影 響 石 油 の大 部 分 は燃 料 と して用 い られ て い る.燃 焼 に伴 い 発 生 す る成 分 の環 境 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て は十 分 に考 慮 しな けれ ば な らな い.石 油 を燃 焼 す れ ば 二 酸 化 炭 素 が発 生 す る.ま た,石 油 中 の不 純 成 分 や燃 焼 条 件 な ど に よ り,硫 黄 酸 化物 や
窒 素 酸 化物 が 発 生 す る.わ が国 の 硫 黄 酸 化 物 対 策 は 確 立 され て お り,窒 素 酸 化 物 の 処 理 技 術 も進 歩 して い る.家 庭 用 の 灯油 は 高 品 質 で あ り,室 内 で の 燃 焼 に配 慮 して硫 黄 分 は80ppm以
下 で あ る.軽 油 につ い て も世 界 水 準 の0.005%(50ppm)
の 硫 黄 含 有 率 に制 限 され て い る.今 後,デ
ィー ゼ ル エ ン ジ ンか らの排 出 物 の 抑 制
を考 慮 して さ ら に厳 しい規 制 が 想 定 さ れ る.ま た,ガ 100ppm以 NOxの
下 に 制 限 さ れ て い る.な
お,ガ
ソ リン につ い て も硫 黄 分 は
ソ リ ン につ い て は硫 黄 分 に 加 えて,
発 生 を抑 制 す るた め メ チル-t-ブ チ ル エ ー テ ル(MTBE)の
され(7vol%以 量(1vol%未
下),さ 満)も
らに 発 が ん性 物 質 の低 減 の た め2000年
含 有 率 も規 制 に は ベ ンゼ ン含 有
厳 し く制 限 され て い る.し か し,二 酸 化 炭 素 に つ い て は,
化 学 安 定 性 が高 い 上 に,全 世 界 の 年 間排 出 量 は炭 素 換 算 で66億 場 合 は3.3億 い.ま
トン(わ が 国 の
トン)と 発 生 量 が膨 大 で あ るた め,現 段 階 で は適 切 な 処 理 方 法 は な
た,二 酸 化 炭 素 の 地 球 温 暖 化 寄 与 率 は 比 較 的 高 い こ と が 指 摘 され て お り ,
そ の 対 策 は世 界 共 通 の 課 題 とな っ て い る.二 酸 化 炭 素 の 発生 源 は石 油 に限 っ た こ とで は ない が,そ の低 減 化(排 出 量 の抑 制)に
努 め る こ とが 大 切 で あ ろ う.
2.1.5 石 油 化 学 工 業 石 油 を た だ ち に燃 料 と して使 用 す る こ と な く,原 料 と して 活 用 す る こ とが望 ま れ るが,そ
の代 表 的 な もの と して石 油 化 学 工 業 が あ る.石 油 化 学 工 業 は,ア メ リ
カ合 衆 国 に お い て熱 分 解 ガ ソ リ ン製 造 時 に 副 生 す る分 解 ガ ス を合 成 化 学 原 料 と し て利 用 す る こ と か ら始 ま っ た が,世 界 的 に 基幹 産 業 と して発 展 した の は第 二 次 世 界 大 戦 後 の こ とで あ る. わ が 国 で は1958年
か ら1972年
(企業 集 団)が 誕 生 した.ナ 本,広 範 な 専 門 技 術,広
まで の 間 に 合 計15の
石 油 化学 コ ンビナ ー ト
フ サ 分 解 か ら始 ま る石 油 化 学 の 工 業 化 に は 多 額 の 資
大 な工 業 用 地,整 備 され た販 売 網 や調 査 組 織 が 必 要 で あ
り,一 企 業 が 単 独 で実 施 す るの は 困難 で あ る.こ の た め石 油 化 学 コ ン プ レ ック ス (コ ン ビ ナ ー ト)が 形 成 され た.原 油 か ら石 油 化 学 製 品 に 至 る流 れ と そ れ に関 連 す る工 業 を図2.2に 示 した.石 油 化 学 製 品 の需 要 分 野 は合 成 樹 脂,合 料,合 成 洗 剤,界
成 ゴ ム,塗
面 活 性 剤 な ど広 範 囲 に わ た る.そ の 出 荷 額 は全 化 学 工 業 の ほぼ
半 分 を 占 め て お り,石 油 化 学 工 業 は化 学 工 業 の 中心 的存 在 と な って い る.そ して, その 製 品 は情 報,電
気 通 信,包 装,運 送 保 管,自 動 車,食 品 な ど,広 い 分 野 で社
会 の ニ ー ズ に応 えて い る.さ
ら に,原 油 回収,船 舶 塗 料,都 市 ガ ス 配 管,医 療 機
器,電 子 部 品材 料,情 報 技 術 な どの 最 先 端 の分 野 で も,石 油 化 学 製 品 は その 特 性
図2.2 原油 から石油化学製品 まで― その流 れと工業
を発 揮 し,社 会 に貢 献 して い る. 2.1.6 ノー ブル ユ ー ス 石 油 は 藻 類 や プ ラ ン ク トンな どの生 物 が泥 と と も に水 底 に堆 積 して,数 千 万 年 か ら数億 年 の期 間 を経 て 生 成 した とい わ れ て い る.堆 積物 中 に取 り込 まれ た有 機 物 の ほ と ん ど は 固 体 で あ る た め,そ の ま まで は液 体 の原 油 に は な らない.こ
の固
体 有 機 物 は い っ た ん 変 質 し,「 ケ ロ ー ジ ェ ン」 と よ ば れ る有 機 物 の 重 合 体 をつ く る.「 ケ ロ ー ジ ェ ン」 と は岩 石 や 堆 積 物 を有機 溶 媒 で 抽 出 した 際 に 溶 解 しな か っ た成 分 を指 して い る.そ の 分 子 構 造 は複 雑 で 不 明 な 点 が 多 い が,熱 エ ネ ル ギ ー を 受 け る と ケ ロ ー ジ ェ ン中 の弱 い 結 合 が切 断 され,よ
り分 子 量 の 小 さい有 機 物 に分
解 され る.こ れ が 石 油 生 成 の 原 因 と考 え られ て い る.現 代 の 生 活 に 欠 く こ との で き な い石 油 は,実
は過 去 の 生 物 がわ れ われ に残 して くれ た偉 大 な贈 り物 とい え よ
う.人 類 は太 古 よ り石 油 を利 用 して き た が,20世 ど 多 い もの で は な か っ た.と
こ ろ が,図2.3か
紀半 ば までの使 用量 はそれ ほ
ら明 ら か な よ うに,こ
こ20∼30
年 の 間 に驚 くほ ど大 量 の 石 油 が消 費 され て きた の で あ る. 貴 重 な 資 源 で あ る石 油 を,こ れ ほ ど短 期 間 に,こ れ だ け大 量 に消 費 し続 けて よ い も の だ ろ うか.燃 料 と して の 大 量消 費 を早 期 に 見 直 し,よ り賢 明 で,よ 的 な使 い 方 を早 期 に 見 い だ し た い もの で あ る.ま ず,石
り効 果
油 を原 料 と して 使 用 し,
つ い で石 油 化 学 製 品 を可 能 な か ぎ り リサ イ クル し,リ サ イ ク リ ン グ が も はや で き な い最 終 段 階 で,初 え られ るが,そ
め て 燃 料 に す る こ とは 石 油 の 最 も効 果 的 な使 い 方 の 一 つ と考
の た め に は資 源 を循 環 使 用 す るた め の 技 術 開 発 の み な らず 社 会 全
体 の シ ス テ ムづ く りが肝 要 で あ ろ う. い ず れ に して も,限
りあ る石 油 を人 類 共 通 の 貴 重 な 資 源 と して,長 期 間 に わ た
図2.3
世 界 の 原 油 累 積 生 産 量 の 推 移("Twentieth Century
Petroleum
Statistics"に
基 づ い て 作 成)
り賢 明 に活 用 した い もの で あ る. 2.2 化 学 原 料 と して の 石 油 化 学 原 料 と して石 油 を使 用 す る と きに は,そ の 化 学 組 成 ・性 質 な ど 特 性 を把 握 した 上 で 利 用 す る こ とが重 要 で あ ろ う. 2.2.1 原 油 の 元 素 組 成 と原 油 中 の 成 分 原 油 の 元 素 分 析値 の 範 囲 は一 般 に次 の とお りで あ る.炭 素82∼87%(wt%, 以 下 同 じ),水 素11∼14%,硫 1%(最
大3%),金
属(灰
素 との原 子 比 は1:1.5∼2で
黄0.5∼3%(最 分)数
∼ 数 十ppm,ま
大7%),窒
素 ∼1%,酸
素∼
た,主 要 元 素 で あ る炭 素 と水
あ る.
原 油 中の 成 分 は炭 化 水 素 と非 炭 化 水 素 とに大 別 され る.炭 化 水 素 は原 油 の 主 要 成 分 で あ り,パ ラ フ ィ ン,ナ フテ ン(シ ク ロパ ラ フ ィン)お よび 芳 香 族 炭 化 水 素 か らな る.オ レ フ ィ ンは見 い だ され て い な い.非 炭 化 水 素 はい わ ば不 純 成 分 で あ り,硫 黄,酸
素,窒 素 お よ び金 属 を含 む有 機 化 合 物 で あ る.こ れ らの 化 合 物 は装
置 の 腐 食,触
媒 の 被 毒,大 気 汚 染,酸 性 雨 な ど の原 因 と な り,さ ら に石 油 製 品 の
品 質 低 下 を もた らす の で,有 害 成 分 で あ る とい え る. 2.2.2 原 油 の 蒸 留 性 状 原 油 を常 圧 下 で蒸 留 した と き の留 出温 度(沸 点)と 留 出量 との 関 係 を示 した の が 図2.4(蒸
留 曲 線)で
あ る.沸 点 範 囲 が30∼180℃
の 留 分 を ナ フサ(ま
たはガ
図2.4 原 油 の蒸 留 曲線((a) 軽 質 原 油 の例, (b) 重 質 原 油 の 例)
ソ リ ン留 分),180∼250℃
の 留 分 を灯 油 留 分,250∼350℃
350℃ 以 上 の留 分 を常 圧 残 油(潤
滑 油 ・重 油 留 分)と
の 留 分 の 収 率(取 得 率,percentage 下 の 原 油 を軽 質 原 油,そ
の 留 分 を軽 油 留 分,
よ ぶ.蒸 留 性 状 か ら これ ら
yield)が わ か る.重 油 留 分 の収 率 が50%以
の 収 率 が50%以
上 の 原 油 を 重 質 原 油 と して い る.ま れ
な例 と して,そ の ま まガ ソ リン エ ン ジ ン に使 え る よ うな軽 質 原 油 も あ る.そ の 一 方 で,常 温 で は ほ とん ど流 動 性 を もた な い パ ラ フ ィン あ る い は ア ス フ ァル ト状 の 重 質 原 油 も あ る. 石 油 精 製 に お い て は,ま ず 原 油 を常 圧 下 で 蒸 留 して 各 種 留 分 に 分 け る.つ いで 各 留 分 中の 有 害 成 分 を除 去 し,あ るい は 新 た な性 状 を付 与 す る た め の 化 学 変 換 や 物 理 操 作 を行 い,石 油 製 品 とす る.参 考 ま で に その 工 程 を図2.5に 示 した. 2.2.3 石 油 留分 中 の炭 化 水 素 組 成 原 油 を蒸 留 して 留 分 に 分 け,各 留 分 中の 炭 化 水 素 組 成 を示 した の が 図2.6で あ る.こ れ は ア メ リカ 合 衆 国 オ ク ラ ホ マ州 の ポ ン カ原 油 の 例 で あ る が,ナ 50%近
くが パ ラ フ ィ ンで あ り,ナ フ テ ンが40%を
フ サで は
超 え,芳 香 族 炭 化 水 素 は10%
に み た な い.灯 油 留 分,軽 油 留 分,潤 滑 油 ・重 油 留 分 と沸 点 が高 くな る につ れ て パ ラ フ ィ ン含 有 率 は低 下 し,多 環 の ナ フテ ンお よび 芳 香 族 が増 え る.こ の よ うな 炭 化 水 素 組 成 の沸 点 の 特徴 は,そ
の他 の 原 油 につ い て も一 般 的 に観 察 され る傾 向
で あ る. な お,パ
ラ フ ィ ン炭 化水 素 に富 む原 油 をパ ラ フ ィン基 原 油,ま
た ナ フ テ ン炭 化
図2.5 石 油 精 製 工 程 フ ロ ー チ ャー ト
図2.6 石 油留 分 中 の 炭 化 水 素 組 成(オ
ク ラ ホマ 州,ポ
ンカ原 油)
水 素 に富 む 原 油 を ナ フテ ン基原 油 と よ ん で い る.原 油 中の パ ラ フ ィ ン分,と ワ ック ス分 と よ ば れ る炭 素 数21以
くに
上 の直鎖パ ラフ ィンはその もとになった有機
物 の タイ プ を反 映 して い る と考 え られ る.ワ
ッ ク ス分 は陸 上 高 等 植物 の樹 皮 や 葉
に由 来 し,こ の 樹 木 が 繁茂 して い る熱 帯 の ジ ャ ング ル 地 帯 で 堆 積 し,そ れ か ら生 成 した原 油 に多 い.一 方,海 洋 や 湖 の 藻 や プ ラ ン ク トンは そ の生 物 的特 質 上,炭 素 数30程
度 の 物 質 を あ ま りつ く る こ とは な か っ た.そ の た め,こ れ らを起 源 と
す る原 油 に は ワ ック ス分 が少 な い. 2.2.4 石 油 化 学 原 料 石 油 化 学 工 業 の 基 礎 原 料 と して 用 い られ る の は,ナ
フ サ を は じめ 天 然 ガ ス(石
油 を含 む 貯 留 層 か ら産 出 す る随 伴 ガ ス で エ タ ン を8∼20vol%含
有),液
化石 油
ガ ス,灯 軽 油 な どで あ る.ア メ リカ合 衆 国 で は主 と して 天 然 ガ ス とナ フサ が 用 い られ て お り,わ が 国 と ヨー ロ ッパ で は もっ ぱ らナ フサ が使 用 され て い る. ナ フ サ は 主 と して オ レ フ ィ ン と芳 香 族 炭 化 水 素 の 製 造 用 に使 用 され て い る.オ レ フ ィ ン製 造 に はパ ラ フ ィ ン基 原 油 か らの 直 鎖 パ ラ フ ィ ン に富 ん だ軽 質 ナ フ サ (沸 点30∼100℃)が,ま テ ン(お
よ び 芳 香 族)に
た芳 香 族 炭 化 水 素 製 造 に は ナ フテ ン基 原 油 か らの ナ フ 富 ん だ ナ フ サ(沸 点70∼150℃)が,そ
れぞれ原料 と
して 適 して い る. わ が国 で ナ フサ が石 油 化 学原 料 と して 用 い られ て い るの は,石 油 化学 工 業 の 発 足 当 時 に ナ フサ は余 剰 物 で あ り,こ れ を原 料 と して 利 用 す る こ とが 計画 され た た め で あ る.石 油 化 学 工 業 の 発展 に 伴 い,国 産 ナ フサ で は需 要 を賄 い きれ ず,現 在 で は3000万kl以
上 の ナ フサ を輸 入 して い る.石 油 の な か で 最 も使 い や す い 留 分
で あ る ナ フサ を現 在 の と こ ろは ふ ん だ ん に使 用 して い る が,貴 重 な石 油 を有 効 か つ 適 切 に使 うた め に,今 後 は石 油 精 製 プ ロ セ ス を も念 頭 に お い て石 油 化 学 原 料 の 多様 化 に取 り組 ん で い くこ とが 必 要 とな ろ う. 2.3 オ レ フ ィ ン 製 造 プ ロ セ ス こ こで は,ナ
フサ を原 料 と して エ チ レ ンや プ ロ ピ レ ンな どの オ レ フ ィ ン を製 造
す る プ ロ セ ス に つ い て学 習 しよ う.ナ フサ の 主 成 分 は前 節 で 述 べ た とお りパ ラ フ ィ ンで あ る.パ ラ フ ィ ン は その 名 の 由 来 の と お り反 応 性 に乏 しい化 合 物 で あ るが, これ を反 応 性 に富 む オ レ フ ィン に転 化 して 化 学 合 成 原 料 と して 供 給 す る こ と が, この プ ロ セ ス の 役 割 で あ る.
バ レル とは何 の単 位? バ レ ル と は も と も と は 英 語 で 樽 と い う意 味 で あ る.そ な っ た の は な ぜ だ ろ うか.近
代 の 石 油 産 業 は,1859年
の 樽 が石 油 の 数量 単位 と アメ リカのペ ン シルバ ニ ア
州 で ド レ イ ク が 油 田 の 開 発 に 成 功 し た の を き っ か け に 始 ま っ た と さ れ て い る.当 時 の 石 油 の 輸 送 に は シ ェ リ ー酒 の 空 樽 な ど木 製 の 樽(50ガ た.は
じめ の う ち は1樽
に40ガ
えて 樽 の 製 造 が 間 に合 わ ず,粗
ロ ン)が
ロ ン ず つ 入 れ 運 ん で い た.と
利 用 され て い
こ ろ が,生
産 量 が増
悪 な樽 が 多 く用 い られ る よ う に な っ た た め,目
的
地 に 着 い た と き 中 身 の 石 油 は 漏 れ や 蒸 発 に よ っ て 目 減 り し,需 要 家 か ら 多 く の 苦 情 が よ せ ら れ る よ うに な っ た.そ
こ で,石
油 を入 れ る こ と を 申 し合 わ せ,1樽42ガ こ の よ うに,1バ
レル(bblと
油 業 者 た ち は 最 初 か ら5%ず
書 く)は42ガ
ロ ン(約159リ
半 端 な 値 が 定 着 す る こ と に な っ た と い わ れ て い る.以 後,バ 心 に,原 る.わ
油 の 生 産 量,埋
つ余 分 に石
ロ ン と し た. ッ トル)と
い う中途
レル は ア メ リカ を 中
蔵 量 な ど の 単 位 を表 す 用 語 と な っ て 慣 用 的 に 使 わ れ て い
が 国 で は 容 量 を 表 す 単 位 と して キ ロ リ ッ トル が 使 わ れ て い る が,バ
日 ×58=キ
ロ リ ッ トル/年,バ
レ ル/日 ×5=キ
レル/
ロ リ ッ トル/月 と い う換 算 法 を 覚
え て お く と便 利 だ ろ う.
ま た,こ の プ ロ セ ス が化 学 プ ロ セ スの な かで 最 も上 流 側 に位 置 す る もの の 一 つ で あ り,天 然 に産 出 す る混 合 物 で あ るナ フサ か らエ チ レ ン,プ ロ ピ レ ン,ブ テ ン 類,ブ
タ ジエ ンな ど単 一 化 合 物 の 複 数 の 製 品 が製 造 され る こ と も,こ の プ ロセ ス
の 特 徴 で あ る. 2.3.1 炭 化 水 素 の 熱 安 定 性 炭 化 水 素 は あ る一 定 以 上 の 熱 エ ネル ギ ー を与 え られ る と,炭 素-炭 素 結 合 が 開 裂 し,遊 離 基(ラ
ジ カル)が
生 じ る.こ の ラ ジ カル は後 続 の 連 鎖 反 応 を誘 発 し,
結 果 的 に は低 級 炭 化 水 素,重 質 炭 化 水 素 お よび 水 素 な ど が生 成 す る.炭 化 水 素 の 熱 安 定 性 は ど うな っ て い るの だ ろ うか.代 表 的 な炭 化 水 素 につ い て,炭 素 原 子 あ た りの 標 準 生 成 自 由 エ ネ ル ギ ー を示 した の が 図2.7で あ る.生 成 自由 エ ネル ギ ー が 小 さい化 合 物 ほ ど熱 化 学 的 に安 定 で あ る こ と を意 味 す る.こ
こで 注 目す べ き こ
とは,大 部 分 の 炭 化 水 素 の 生 成 自 由 エ ネ ル ギ ー が高 温 ほ ど大 き く,不 安 定 に な る こ とで あ る.ま た,600℃ で あ る こ と も わ か る.図
以 上 の 高 温 で は,炭 化 水 素 よ り水 素 と炭 素 の 方 が安 定 中,ア
セ チ レ ン だ け が 高 温 ほ ど安 定 で あ り,1000℃
超 え る とエ チ レ ンや プ ロ ピ レ ン よ り も安 定 で あ る こ と も注 目 され る.
を
図2.7 代表 的な炭化水素の標準生成 自由エ ネル ギーと温度 との 関係
2.3.2 高 温 熱 分 解 反 応 ナ フ サ か らオ レ フ ィ ンを生 成 す る化 学 反 応 は反 応 温 度750∼850℃,反 0.1∼1秒
で 行 わ れ て い る.こ の よ う な高 温,短
応時間
時 間 の反 応 は な ぜ 必 要 な の だ ろ
うか. ナ フ サ に は ナ フテ ンや 芳 香 族 炭 化 水 素 も含 まれ て い る が,こ こ で は 単 純 化 して ナ フ サ はパ ラ フ ィ ンか ら な る と して 考 え よ う.パ ラ フ ィン か らオ レ フ ィン を生 成 す る反 応 に は2種 類 の経 路 が あ る.す な わ ち, ① パ ラ フ ィン→ Cm+nH2(m+n)+2 ② パ ラ フ ィン→ CmH2m+2
オ レ フ ィ ン+小
さなパ ラフィン(C-C結
CmH2m
CnH2n+2
オ レ フ ィ ン+水 CmH2m
合 の 開 裂)
素
(C-H結
合 の 開 裂)
H2
これ らの 反 応 の 標 準 自由 エ ネル ギ ー変 化 か ら平 衡 定 数 が1に な る温 度 を求 め て み る と,そ れ ぞ れ約300℃,お 以 上 で,反 応 ② は約700℃
よ び 約700℃
とな る.す な わ ち,反 応 ① は約300℃
以 上 で生 成 系 に 有利 で あ る.こ の こ と か ら,熱 分 解 の
反 応 条 件 と して は,お お まか に700℃ 以上 の 高温 が 必 要 で あ る こ と が わ か る. 一 方,あ
ま り高 温 で は 前 述 の よ うに ア セ チ レ ンの 生 成 が有 利 に な る.ア セ チ レ
ンが 分 解 ガ ス 中 に 含 まれ る と,ガ ス を分 離 す る際 の圧 縮 工 程 で(爆 発 性 の 金 属 ア セ チ リ ドが生 成 され る た め)爆 発 の危 険 性 が 増 す の で,ガ ス 中 の ア セチ レ ンを水 素 化 して エ チ レ ンに す る必 要 が あ る.こ の た め,実 際 に は 水 素 化 工 程 が 取 り入 れ られ て い る.し た が って,あ
ま り高 温 で は ア セチ レ ン濃 度 が 高 くな り水 素 化 処 理
に経 費 が か か り,か え って 不 経 済 で あ る.こ の よ うな理 由 か ら,ナ フサ の 高 温 熱 分 解 反 応 は お よ そ750∼850℃
の温 度 で 行 わ れ て い る.
こ こで 生 成 した オ レ フ ィン は さ らに脱 水 素,水
素 化 脱 ア ル キ ル,環 化,芳 香 族
化 な ど,二 次 的 な 反応 を行 う.こ れ らの 反 応 を ま と め て オ レ フ ィ ンの 逐 次 的 消 失 反 応 とみ な し,簡 単 化 して示 す と次 の よ うに な る.
パ ラ フ ィ ン
分解
消失
kd
こ こで,kd,kcは
kc
反 応 速 度 定 数(擬 一 次 反 応 とす る)で あ る.オ
成 率 を 高 め る た め に は(kd/kc)比 と こ ろ で,パ
副反応生成物
オ レ フ ィ ン
が 大 き い条 件 で 反 応 を行 う こ と が重 要 で あ る.
ラ フ ィ ンの分 解 反 応 の活 性 化 エ ネル ギ ー は,オ レ フ ィ ンの消 失 反応
の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー に比 べ て か な り大 きい の で,(kd/kc)比 そ こ で,パ
レフ ィ ンの 生
は高 温 ほ ど大 きい.
ラ フ ィンの 熱 分 解 反 応 は な るべ く高 温 で 行 うが,生 成 オ レ フ ィ ンの消
失 を避 け る た め に,反 応 時 間 は な るべ く短 くす る 必 要 が あ る.通 常,ナ 温 熱 分 解 反 応 は0.1∼1秒 次 に,反
フ サ の高
程 度 の短 時 間 で 行 わ れ て い る.
応 ① お よ び 反 応 ② に 対 す る エ ン タ ル ピ ー 変 化 を 計 算 す る と,
75kJ/molと130kJ/molで
あ って,い ず れ も大 きい吸 熱 反 応 で あ る こ とが わ か る.
2.3.3 熱 分 解 メ カ ニ ズ ム 表2.3に 各 種 炭 化 水 素 の 熱 分 解 反 応 の 生 成 物 分布 を示 す.原 料 の種 類 に よ らず, エ チ レ ンが 主 生 成 物 で あ る こ とが わ か る. 熱 エ ネル ギ ー を与 え られ た炭 化 水 素 が分 解 し,エ チ レ ンの生 成 に い た る機 構 を エ タ ンの 分 解 を例 と して と り あ げ よ う.熱 分 解 メ カ ニ ズ ム は次 の5段 階 か ら な る と考 え られ て い る. 第ⅰ段 階:炭 素-炭 素 結 合 の 開 裂(開 始 反応) 熱 分 解 の 第 一 段 階 は 炭素-炭 素間 の 結 合 開裂 に始 ま る メ チル ラ ジ カル の 生成 で あ る.前 述 の よ うに,結 合 解 離 エ ネル ギ ー の小 さい 炭 素-炭 素 間 の 結 合 は炭 素-水 素 間 の 結 合 に優 先 して 開 裂 す る.初 期 過 程 の生 成 物(メ
チル ラジ カ ル)か
ら結 果
表2.3 種 々の原料 か ら熱 分解に よって得 られ る典型 的な生成物分布
MA/PD:メ
チ ル アセ チ レ ン/プ
ロパ ジ エ ン
的 に得 られ る最 終 生 成 物(エ
チ レ ン)を
この段 階 で 予 想 す るの は比 較 的 難 しい場
合 が 多 い こ と は,こ の 例 か ら も うか が う こ と が で き る. 第ⅱ 段 階:メ
チ ル ラ ジ カル に よ る エ タ ンか らの 水 素 引 き抜 き
第ⅰ段 階 で 生 成 し た メ チ ル ラ ジ カル は エ タ ン か ら水 素 を 引 き抜 き メ タ ン と な り,同 時 に エ チ ル ラジ カル が生 成 す る. 第ⅲ 段 階:エ チ ル ラ ジ カル の β開 裂 エ チ ル ラ ジ カル の メ チ ル基 の炭 素-水 素 結 合 は メ チ レ ン基 の 炭 素-水 素 結 合 や 炭 素-炭 素 間 の 結 合 に比 べ 弱 い の で,容 易 に 開裂 しエ チ レ ン と水 素 原 子 が 生 成 す る. 第ⅳ 段 階:水
素 原 子 に よ るエ タ ンか らの 水 素 引 き抜 き
前 段 で 生 じ た水 素 原 子 は エ タ ンの 水 素 原 子 を 引 き抜 き,自 身 は水 素 分 子 と な り 安 定 化 す るが,エ
タ ンか らは エ チ ル ラ ジ カル が生 じ る.こ の エ チル ラ ジカ ル は前
段 と 同様 に β開 裂 に伴 い 水 素 原 子 を放 出 し,エ チ レ ン が生 成 す る.
図2.8 エ タ ンの 熱 分 解 の 経 路
第ⅴ 段 階:各 種 ラ ジ カル の 再 結 合,不 均 化 第ⅰ∼ⅳ 段 階 の各 過 程 で 生 じ た ラ ジ カル の 再 結 合 反 応 ま た は 不 均 化 反 応 に よ っ て 各種 の 分 子 が形 成 され る. これ ら を ま と め て 図2.8に エ タ ンの 熱 分 解 の 経 路 を示 した.第ⅲ
お よ びⅳ 段
階 が ス ム ー ズ に進 行 し,ラ ジ カル 連 鎖 が形 成 され る こ と に よ っ て エ チ レ ンの 選択 的 な 生 成 が 起 こ る. プ ロパ ン,ブ タ ン お よび ナ フ サ な ど炭 素 数 の大 き な炭 化 水 素 か ら も最終 的 に は エ チ レ ンが 生 成 す るが,こ れ らの 場 合 に つ い て も基 本 的 に は 同様 の メ カニ ズ ムが 考 え られ る.た だ し,分 子 中 の炭 素 鎖 が 長 い の で,第ⅲ
段 階 の β開 裂 が炭 素-水
素 結 合 で は な く,炭 素-炭 素 結 合 に お い て生 じ る.し た が っ て,エ
タ ン とは 異 な
り,こ の 場 合 は 第ⅲ 段 階 に お い て 少 し小 さな ア ル キ ル ラ ジ カ ル と1-オ レ フ ィン が 生 成 す る.少
し小 さ な ア ル キル ラ ジ カル は,1-オ
ル キ ル ラ ジ カル に 変 換 され る.こ の と き生 じた1-オ
レ フ ィ ン と さ ら に小 さい ア レ フ ィン か らエ チ レ ン あ る
い は プ ロ ピ レン が得 られ る. 2.3.4 高 温 熱 分 解 プ ロセ ス パ ラ フ ィンの 熱 分 解 反応 の 検 討 か ら,ナ フサ 分 解 に よ るオ レ フ ィ ンの生 成 に は, ① 高 温(750∼850℃),② 130kJ/mol)が
短 時 間(0.1∼1秒),③
大 量 の 熱(75お
よび
必 要 で あ る こ とが わ か った.
工 業 装 置 と して 必 要 と され る要 件 は次 の よ うで あ る.す な わ ち,原 料 を反 応 温
度 まで 急 速 に加 熱 し,大 量 の 反 応 熱 を供 給 しな けれ ば な らな い.ま た,反 応 生 成 物 で あ る オ レ フ ィ ンは 高温 度 で は 不 安 定 で あ っ て,二 次 的 な化 学 変 化 を起 こ しや す く,コ ー ク と よ ば れ る炭 素 状 の析 出 物 を生 じや す い の で,こ れ らの反 応 を制 御 す る工 夫,と
くに 急 冷 の 方 法 が重 要 で あ る.
原 料 炭 化 水 素 の 急 速 加 熱,分 え ば 水蒸 気,コ
解 手段 と して は,高 温 に加 熱 され た熱 媒 体(た
と
ー ク粒 子,耐 火 れ ん が な ど)を 用 い る.原 料 の 一 部 を燃 焼 す る こ
と に よ っ て その 発 熱 を利 用 す る方 法 や,火 炎 や ア ー ク な ど の プ ラズ マ に原 料 を吹 き込 む方 法 な ど も開 発 され て い る が,ナ
フサ を原 料 とす る場 合 に は管 式 熱 分 解 炉
に よ る方 式 が 一般 的 で あ る. 原 料 ナ フ サ は 多 量 の 水 蒸 気 に よ って 希 釈 され(ス
チ ー ム/ナ フサ 比0.5),外
部
か ら加 熱 され た 特 殊 鋼 製 の 反応 管 の な かで 分 解 され る.反 応 管 は高 温 に お け る炭 素析 出 が抑 制 され る よ うな耐 浸 炭 性 の す ぐれ た材 質 を 必 要 とす る た め,タ テ ン,モ
リブ デ ン,ニ
(34∼46%)材
オ ブ な ど を添 加 した 高 ク ロ ム(23∼26%),高
ング ス
ニ ッケ ル
を 使 用 して い る.水 蒸 気 を用 い る の で ス チ ー ム ク ラ ッ カ ー と も
よ ば れ るが,水 蒸 気 は熱 媒 体 と して働 き,ま た希 釈 剤 と して も作 用 す るの で二 次 的 な オ レ フ ィ ン消 失 反 応 や コ ー ク の 析 出 を抑 制 す る.分 850℃,反
応 時 間 は0.1∼1秒
解 反 応 温 度 は750∼
で あ り,反 応 物 は 反 応 管 の 内 部 を ほ ぼ音 速 で 移 動
して い る.こ の よ う な分 解 条 件 を実 現 す る た め に ,反 応 管 の 材 料,形
状,寸
法,
配 列,加 熱 炉 の バ ー ナ ー な ど に工 夫 が こ ら され て い る.す な わ ち,加 熱 面 積 比 を 高 め る た め に反 応 管 断 面 を楕 円 形 にす る,高 温 に お け る反 応 管 の た わ み に配 慮 し て 垂 直 に管 を配 置 し縦 型 炉 上 部 で 吊 る,反 応 管 径 を細 く し管 長 も短 くす る こ と に よ って 滞 在 時 間 を短 縮 す る,反 応 管 内 壁 の 切 削 加 工 あ るい は押 出鋼 管 の 開 発 に よ り耐 浸 炭 性 を 向上 させ る,な どで あ る. 表2.4 ナ フ サ 分 解生 成 ガ ス の 代 表 的 な 組 成
図2.9 深 冷 分 離(低
分 解 炉 を 出 た生 成 物 は,ま ず,熱
温 分留)法
の フ ロー シ ー ト
交 換 器 に よ っ て急 冷 され,つ い で,油
さ らに
水 に よ り直 接 冷 却 を受 け熱 回収 され た後,予 備 蒸 留 塔 で液 状 生 成 物 が 除 去 され る. ガ ス状 生 成 物 につ い て は,そ の 組 成 例 を表2.4に 示 した.表
に は参 考 まで に 各成
分 の 沸 点 も併 せ て 記 して あ る.こ の ガ ス状 生 成 物 は図2.9に 示 す よ う に,精 製, 乾 燥 され た後,深
冷 分 離(低 温 分 留)工 程 を経 て,高 純 度 の エ チ レ ンや プ ロ ピ レ
ンが 生 産 され る. 2.3.5 オ レ フ ィ ンの 用 途 エ チ レ ンや プ ロ ピ レ ン な ど の オ レ フ ィ ンは各 種 誘 導 品 の 製 造 原 料 と して広 く利
図2.10
ナ フ サ か らオ レフ ィ ン誘 導 体 まで(1999年
度 実 績)(石
油 化 学 工 業 協 会 資 料 に よ る)
用 さ れ て い る.図2.10に
は ナ フ サ か ら オ レ フ ィ ン誘 導 品 ま で の 流 れ と オ レ フ ィ
ン誘 導 品 の 主 要 用 途 を示 した.
2.4 芳 香 族 製 造 プ ロ セ ス こ こ で は ナ フサ か ら芳 香 族 炭 化 水 素 を製 造 す るプ ロ セ ス に つ い て学 習 しよ う. この プ ロ セ ス は,前 述 の オ レフ ィ ン製 造 プ ロセ スの 場 合 と同 じ く,化 学 プ ロ セ ス の 中で 最 も上 流 側 に位 置 す る もの の 一 つ で あ る.ナ フサ か らベ ンゼ ン,ト ル エ ン, キ シ レ ン な どの 石 油 化 学 基 礎 製 品 で あ る芳 香 族 炭 化 水 素 が製 造 され る.ま
た,芳
香 族 炭 化 水 素 はオ ク タ ン価 が 高 い こ と か ら高 品質 の モ ー タ ー ガ ソ リ ンの基 材 と し て す ぐれ て い るの で,こ の プ ロ セ ス は石 油 精 製 工 業 にお い て 広 く実 施 され て い る. 2.4.1 接 触 改 質 原 料 ナ フサ は100種 類 以 上 の 炭 化 水 素 混 合 物 で あ る.ま た,接 触 改 質 反 応 も数 多 くの 化学 反応 を含 み 複 雑 で あ る が,こ
こで は 簡 単 化 して 示 す こ と に しよ う.
芳 香 族 炭 化 水 素 は 次 の 反 応 過 程 を経 て 生成 され る. シ ク ロ ペ ン タ ン類
パ ラ フ ィ ン類
芳香族炭化水素
シ ク ロ ヘ キ サ ン類 コジ ェネ レーシ ョン システ ム とは 75%以
上 の 高 い エ ネ ル ギ ー利 用 率,30%も
の 低 い 二 酸 化 炭 素 排 出 量.石
油 を燃
料 と し て デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ンや ガ ス タ ー ビ ン に よ り 発 電 を行 う と 同 時 に,エ
ンジ
ン や タ ー ビ ンの 冷 却 水 や 排 熱 を 回 収 して 給 湯 や 冷 暖 房 な ど に も利 用 す る シ ス テ ム で,電
気 と熱 を 同 時 に つ く り,エ
ネル ギ ーの利 用 効率 を向上 をめ ざした シ ス テ ム
で あ る. これ ま で の よ う に,電 効 率(利
気 と 熱 を別 々 に 購 入 して 利 用 す る場合,そ
用 可 能 エ ネ ル ギ ー/投 入 エ ネ ル ギ ー ×100%)は52%程
の エ ネ ル ギー 度 だ が,こ
に 対 して コ ジ ェ ネ レー シ ョ ン シ ス テ ム は 電 気 と熱 を 同 時 に 供 給 す る た め,エ ギ ー 効 率 が75%程
度 と高 く,同 量 の 利 用 可 能 エ ネ ル ギ ー を得 る場 合 に は 約30%も
の 燃 料 を使 わ ず に 済 む の で 使 用 量 を 削 減(省 特 徴 を も っ て い る.こ 排 出 量 を約30%減
れ ネル
の こ と は,地
エ ネ)す
る ことが可 能 で あ る とい う
球 温 暖 化 の 原 因 とい わ れ て い る 二 酸 化 炭 素 の
らす こ と に つ な が る の で,コ
ジ ェ ネ レー シ ョ ン シ ス テ ム は こ れ
か らの 地 球 環 境 に や さ しい シ ス テ ム と し て,普 及 が 期 待 され て い る.
こ こで,① か に,パ
は脱 水 素 環 化 反 応,②
は異 性 化 反 応,③
ラ フ ィ ンの 水 素 化 分 解,シ
は脱 水 素反 応 で あ る.こ の ほ
ク ロパ ラ フ ィンの 水 素 化脱 ア ル キ ル な どの 反
応 も起 こ る. ヘ キ サ ン を モ デ ル 化 合 物 と して 用 い た計 算 に よ る と,接 触 改 質 反応 が 行 わ れ る 500℃ の 温 度 水 準 で,反 応 ③ の 平 衡 定 数 はKp=6.3×105で 系 に有 利 で あ る が,反 8.6×10−2で
あ り,明 らか に 生 成
応 ① お よ び 反 応 ② の 平 衡 定 数 は そ れ ぞ れ1.3×10−1,
あ り,い ず れ も熱 力 学 的 に は生 成 系 に 有利 と は い え な い.し
か し,
反 応 ① と反応 ② の 生 成 物 で あ る シ ク ロヘ キ サ ン類 の 脱 水 素 反 応 ③ が生 成 系 に 大 き く寄 っ て い る こ と か ら,反 応① お よび 反 応 ② の進 行 の 可 能 性,す
な わ ち,パ
ラフ
ィ ン類 と シ ク ロペ ン タ ン類 か らの 芳 香 族 生 成 の 可 能 性 は残 され て い る.た だ し, そ れ を実 現 す る た め に は① か ら③ の 反 応 をす べ て十 分 す み や か に進 行 す る こ との で き る触 媒 の活 用 が 不 可 欠 と な る. 接触 改 質 反 応 用 触 媒 に 関 す る数 多 くの 研 究 に よ り,優 れ た 触 媒 が 開 発 され た. そ れ は脱 水 素-水
素 化 活 性 を お もな機 能 とす る 白金 と,異 性 化 活 性 を お もな機 能
とす る固 体 酸 と を組 み 合 わせ る こ とに よ って,二 つ の機 能 が と も に作 用 し合 っ て (相 乗 効 果)す
ぐ れ た 触 媒 作 用 が 発 揮 され る も の で,二
元機 能 触 媒 と よば れ て い
る.白 金 の 微 粒 子 を アル ミナ に担 持 した触 媒 が 一般 的 で あ る. 2.4.2 二 元 機 能 触 媒 の 触 媒 作 用 白金 触 媒 と固体 酸 触 媒 を機 械 的 に混 合 し メチ ル シ ク ロペ ン タ ンの 改 質 反 応 を行 っ た 結 果 を表2.5に 示 す.こ
の デ ー タか ら,シ ク ロ オ レ フ ィ ンは 白金 の 触 媒 作 用
に よ っ て 生 じる こ と,異 性 化 は酸 性 点 上 で の オ レ フ ィ ンの 反 応 に よ る こ と,ベ ン ゼ ンは 白 金 と酸 性 成 分 との 協 力 的 な働 き に よ り生 成 す る こ とは 明 らか で あ る.代 表 的 な 二 元 機 能 触 媒 で あ る アル ミナ担 持 白金 触 媒 は,ア ル ミナ 上 の 酸 性 点 と担 体
表2.5 メ チ ル シ ク ロ ペ ン タ ンの 改 質 反 応
反 応 条 件:500℃,pH2=0.8,pMCP=0.2atm
(P.B.
Weisz
(1961)に
よ る)
上 の 白金 微 粒 子 とが 近 接 して 存 在 す る た め,こ れ ら2種 類 の活 性 点 間 に お け る分 子 の 拡 散 ・移 動 が比 較 的 容 易 に進 行 す る.そ の ため,固 体 酸 と白金 の異 な る二 つ の 機 能 の 相 乗 効 果 が発 現 され る. 2.4.3 接 触 改 質 プ ロ セ ス 接 触 改 質 の 工 業 装 置 は,触媒
の 再 生 を どの よ うに 行 うか に よ っ て,半 再 生 式,
サ イ ク リ ック再 生 式 お よび 連 続 再 生 式 の3種 類 に分 け られ る.こ
こで は,最
も一
般 的 な半 再 生 式 につ い て述 べ る こ とに し よ う. 半 再 生 式 接 触 改 質 法 の フ ロー シ ー トを図2.11に 示 す.こ の 例 で は3基 の 固 定 床 触 媒 反 応 器 が直 列 に配 置 され て お り,そ れ ぞ れ の 反 応 器 の 大 き さは 異 な る.た と え ば 各 反 応 器 の 触 媒 充 填 量 は,全 15:35:50の
体 を100と
す る と き,第1反
応 器 か ら順 に
よ うに 分 配 され て い る.一 般 的 な 反 応 条 件 は温 度470∼540℃,
圧 力7∼35atm,液
空 間 速 度(通 油 速 度 を,触 媒 体 積 あ た り,1時
給 す る原 料 油 の 体 積 で 表 した値)0.2∼5/h,水
間 あ た りに 供
素 対 ナ フ サ の モ ル比2∼10と
さ
れ て い る. 原 料 ナ フサ は,水 素 化 精 製 に よ って 触 媒 毒 と な る硫 黄,窒 素 な どの有 機 化 合 物 が 除 去 され た後,加 熱 炉 で 所 定 の 温 度(た
と え ば500℃)に
加 熱 され て 第1反 応
器 に入 る. 第1反 応 器 で 行 われ る反 応 は,反 応 ③ が 中心 で あ る.こ の反 応 の 速度 が 最 も大 きい か らで あ る.ま た,反 応 ② の 一 部 と そ れ に続 く反 応 ③ も起 こる.反 応 熱(吸 熱)も
大 き い.そ
の 結 果,第1反
図2.11
応 器 出 口 の 反 応 気 体 の温 度 は 大 き く低 下 す る
半 再 生 式接 触 改 質 プ ロ セ ス フ ロ ー ダ イ ヤ グ ラ ム
(た と え ば400℃)の 第2反
で,中
間加 熱 炉 で 反 応 気 体 を再 加 熱 し,第2反
応 器 で は,反 応 ② と反 応 ① の 一 部,お
第2反 応 器 出 口 の 反 応 気 体 は470℃ 応 器 に送 る.第3反
応 器 へ 送 る.
よび それ ら に続 く反 応 ③ が起 こ る.
く らい に低 下 す るの で,再 加 熱 の う え第3反
応 器 で は,反 応 ① の ほ か に,水 素 化 分 解 反 応(発 熱 反 応)が
行 わ れ るの で,温 度 低 下 は 少 な い. 第3反 応 器 を出 た反 応 気 体 は,熱 交 換 器,高 圧 気 液 分 離 器 お よび ス タ ビ ラ イザ ー を経 て 改 質 油 と な る.改 質 油 の 品 質,性 状 は原 料 ナ フサ の 組 成 や 反 応 条件 に も よ るが,芳 香 族 含有 率 は お よ そ50∼75%で を表2.6に 示 す.芳 香 族 含有 率 は14%か
あ る.原 料 ナ フサ と改 質 油 の 分析 例 ら60%へ
と増 大 して い る.
なお,触 媒 は使 用 時 間 と と も に しだ い に そ の活 性 を失 うが,そ の 原 因 は 触 媒 表 面 へ の 炭 素 質 の 析 出 な どに よ る もの で あ る.半 再 生 式 接 触 改 質 法 で は,触 媒 の 活 性 が 徐 々 に低 下 す る に 従 って 反 応 温 度 を上 げ て い き,触 媒 の 活 性 が限 界 に 達 した と きに(通 常1∼2年)運
転 を 中断 して,触 媒 の 再 生 ま た は交 換 を行 っ て い る.
近 年,ア ル ミナ担 持 白 金 触 媒 よ りす ぐれ た性 能 を もつ,い
わ ゆ るバ イ メ タル 触
媒 が 開 発 され 利 用 され て い る.白 金-レ ニ ウム/ア ル ミナ 触 媒 は そ の代 表 的 な 触 媒 で あ る.金 属 成 分 で あ る レニ ウ ム 自身 は,改 質 反 応 に対 す る活 性 を ほ とん ど示 さ ない が,白 金 と共 存 す る と,と
くに部 分 的 に硫 黄 で硫 化 され た と き に,そ の 能 力
を発 揮 す る.す な わ ち,レ ニ ウ ム と硫 黄 の相 互 作 用 に よっ て 触 媒 表 面 上 へ の 炭 素 質 の析 出 が 効 果 的 に抑 制 され る.レ ニ ウ ム と結 合 した硫 黄 は,白 金 上 に 吸 着 した 炭 化 水 素 の フ ラ グ メ ン トが コ ー ク前 駆 体 へ 再 構 築 され るの を阻 害 す る役 割 をは た 表2.6 原料 ナフサ と接 触改質油 の分析例
す と考 え られ て い る.こ
の た め 炭 素 析 出 に よ る活 性 低 下 が抑 え られ,白 金-レ ニ
ウ ム/ア ル ミナ触 媒 は長 期 間 に わ た っ て 安 定 な 活性 を示 す. 2.4.4 芳 香 族 炭 化 水 素 の分 離 接 触 改 質 油 中 に含 まれ る芳 香 族 炭 化 水 素 を回 収 分 離 す る方 法 は これ まで 種 々考 案 され て い る.蒸 留,吸
着,溶 媒 抽 出,晶 析 な どは 気 体-液 体-固 体 の う ち の2相
間 の 平衡 関 係 に基 づ く代 表 的 な分 離 法 で あ る.こ の うち,溶 媒 抽 出 法 以 外 の分 離 法 は,芳 香 族 成 分 を個 別 の 成 分 に 分 離 す る際 に有 効 で あ る.た
と え ば,精 密 蒸 留
に よ って ベ ン ゼ ン,ト ル エ ン お よ び キ シ レ ン異 性 体 混 合 物 が 分 離 され る.ま
た,
ゼ オ ライ ト系 の 吸 着 剤 を用 い る 液 相 吸 着 分 離 法 や,−70℃
前後の低温 におけ る
結 晶 化(晶
シ レ ン を選 択 的 に 回
析)法
に よ っ て キ シ レ ン異 性 体 混 合 物 か らp-キ
収 す る こ と が で き る.こ れ に対 して,溶 媒 抽 出法 は非 芳 香 族 成 分 と芳 香 族 成 分 と を効 率 よ く分 離 す る こ とに特 徴 が あ る.こ の た め,改 質 油 中の 芳 香 族 炭 化 水 素 の 分 離 の 第 一 段 階 に は,通 常,溶 媒 抽 出 が用 い られ て い る.抽 出溶 媒 と して エ チ レ ン グ リ コ ール,テ
トラ メチ レ ンス ル ホ ン,N-メ
る.エ チ レ ン グ リコ ール に比 べ,テ
チ ル ピ ロ リ ドンな ど が用 い られ
トラメ チ レ ン スル ホ ンお よびN-メ
チル ピロ
リ ドンは芳 香 族 の 溶 解 度,選 択 率 の い ず れ も大 き く,溶 剤 使 用 量 が 少 な い と き に も芳 香 族 回 収 率 は高 く,常 温,常
圧 で 操 作 され るな ど有 利 な点 が 多 い た め,普 及
して い る.芳 香 族 回 収 率 は非 常 に高 く,ベ は そ れ ぞ れ99.9wt%以
上,99.0wt%以
ンゼ ン,ト ル エ ン,C8芳
上 お よび95.0wt%以
香族 の場合
上 で あ る.
芳 香 族 炭 化 水 素 混 合 物 か らの ベ ンゼ ン,ト ル エ ン,混 合 キ シ レ ンの 分 離 は,前 述 の よ う に 蒸 留 に よ っ て 行 わ れ る.製 99.99wt%以
上 で あ る.表2.7に
品 純 度 は 高 く,ベ
ン ゼ ンの 場 合 は
は 芳 香 族 炭 化 水 素 の 沸 点 と キ シ レ ン異 性 体 の融
表2.7 芳香族炭化水素の沸点 とキシレン異性体 の融点
点 を示 した. キ シ レ ン異 性 体 の 分 離 に お い て,o-キ ゼ ンは 超 精 密 蒸 留 に よ り,p-キ
シ レ ンは 精 密 蒸 留 に よ り,エ チ ル ベ ン
シ レ ンは 結 晶 化 あ る い は 液 相 吸 着 に よ り それ ぞ
れ 分 離 され る.改 質 油 か らベ ンゼ ン,ト ル エ ンお よ び キ シ レ ン異 性 体 が分 離 され る プ ロ セ ス を簡 略 化 して 図2.12に 示 した. 2.4.5 芳 香族 炭 化 水 素 の 相 互 変 換(脱
ア ル キ ル化,不
均 化,異 性 化)
こ の よ うに 製 造 され たベ ンゼ ン,ト ル エ ン お よ び キ シ レ ンの 割 合 や キ シ レ ン異 性 体 の比 率 な ど は,必 ず し も需 要 量 や そ の 割 合 と は 一致 しな い.こ の 不 均 衡 を是 正 し解 決 す る手 段 と して,脱
アル キ ル 化,不 均 化,異 性 化 な どの 相 互 変 換 プ ロ セ
ス が あ る.こ れ らの 反応 例 を次 に 示 し,以 下 に これ らの概 要 を述 べ よ う. 脱 アル キ ル化:
トル エ ン+水 素→
ベ ンゼ ン+メ タ ン
不
均
化: 2ト ル エ ン〓
異
性
化: o-キ シ レ ン〓m-キ
a. 脱 ア ル キル 化
ベ ンゼ ン+キ シ レ ン シ レ ン〓p-キ
シレン
トル エ ン の 水 素 化 分 解 に よ るベ ン ゼ ン とメ タ ンへ の 脱 メ
チ ル 反 応 は,発 熱 反 応(ΔH=−12kcal/mol)で
あ る が,反 応 速 度 を考 慮 して
730℃ 程 度 の 高 温 で 行 わ れ る.こ の 反 応 の速 度 の 詳 細 は次 の よ う に 明 らか に され て い る. 反 応 速 度 r=k[C6H5CH3][H2]0.5 [mol/ls] 速 度 定 数 k=1.7×1012exp(−58000/RT) す な わ ち,水
素 分 圧 が 高 い ほ ど,ま
全 圧 が 高 い ほ ど,反
[l0.5/mol0.5s]
た,ト
ル エ ン/水 素 の 割 合 が 一 定 の と き に は
応 速 度 は 大 き い.
こ の 反 応 機 構 は,次
に 示 す よ う に,原
子 状 水 素 を 連 鎖 担 体(chain
図2.12 芳 香 族 炭 化 水 素 の 分 離 プ ロセ ス の 一 例(改 レ ン異 性 体 の 分離)
carrier)と
質 油 か らベ ンゼ ン,ト ル エ ンお よ び キ シ
す
る遊 離 基 連 鎖 反 応 に よ って 特 徴 づ け られ る.す な わ ち,
(1) (2) (3) (4) (5) これ らの うち 重 要 な の は(3)の 素 過 程 で あ り,水 素 原 子 に よ るメ チ ル 基 の置 換 反 応 で あ る.水 素 原 子 は メ チ ル 基 の 結 合 して い る環 炭 素 を親 電 子 的 に攻 撃 し,形 成 され た 付 加 錯 合 体 か らメ チ ル 基 が 脱 離 す る.こ の 水 素 化 脱 メ チル 基 反 応 は キ シ レ ン,ポ
リメ チ ル ベ ンゼ ン類 お よび メ チ ル ナ フ タ レ ン類 につ い て も進 む こ とが 明 ら
か に され て い る. b. 不 均 化
この 反 応 は2モ ル の トル エ ンか らベ ンゼ ン と キ シ レ ン混 合 物 が
そ れ ぞれ1モ ル 得 られ る の で,ト ル エ ンの有 効 利 用 の 観 点 か ら重 要 で あ る.平 衡 転 化 率 は48%で
あ り,反 応 温 度 に ほ と ん ど依 存 しな い.シ
デ ナ イ ト系 お よ びZSM-5ゼ
リカ-ア ル ミナ,モ ル
オ ライ ト系 の 固 体 酸 触 媒 を用 い て,水 素 共 存 下 に お
い て反 応 は行 わ れ る が,触 媒 の 失 活 に配 慮 して 転 化 率 は40%程
度 に抑 え られ て
い る.ま た,ト ル エ ンの 不 均 化 に加 えて,生 成 物 中 の キ シ レ ン類 と原 料 トル エ ン との 間 に トラ ンス アル キ ル 化 反 応 が 併 発 し,ベ ンゼ ン と トリメ チ ル ベ ン ゼ ン類 が 副 生 す る.こ の た め,ト
リメ チル ベ ン ゼ ン類 を分 離 し,原 料 トル エ ン と と もに再
循 環 す る こ とに よ って キ シ レ ン類 を収 率 よ く得 る な どの 工 夫 が 必 要 と され る.代 表 的 な 不 均 化 プ ロ セ ス で あ る タ トレ イ法 に お い て,原 料 トル エ ン1000原 に対 し,ベ
ンゼ ン414,キ
シ レ ン類561が
料単位
得 られ る.ま た,こ の と きの キ シ レ ン
類 の異 性 体 比 は 次 の よ うで あ る. o-キ
c. 異性 化
シ レ ン/m-キ
シ レ ン/p-キ
シ レ ン:22/55/23
前述 の よ うに,ト ル エ ンの 不 均 化 プ ロ セ ス か ら得 られ るm-キ
シ レ ンの 割 合 は 他 の 異 性 体 に比 べ 高 い に もか かわ らず,合 成 的 用 途 が少 な い の で, これ をo-,p-キ
シ レ ンに変 換 す る異 性 化 は重 要 で あ る.
キ シ レ ンの 異 性 化 に は 酸 性 触 媒 が 用 い られ て い る.シ 用 い る(XIS法)場
合 の 特 徴 は,p-キ
リカ-ア ル ミナ 系 触 媒 を
シ レ ンの深 冷 分 離 とそ の 後 の シ リカ-ア ル
ミナ 触 媒 に よ る異 性 化 を組 み 合 わ せ た 点 に あ る.p-キ
シ レ ンの 収 率,純
れ ぞ れ85%,99.5%で
で あ り,炭 素 質 析 出 に よ
あ る.反 応 温 度 は450∼500℃
度 はそ
る触 媒 活 性 の 低 下 を伴 う.ま た,シ
リカ-ア ル ミナ触 媒 の 特 質 上,エ
ンの キ シ レ ン類 へ の 異 性 化 は 困 難 で あ る.し か し,ZSM-5を
チル ベ ン ゼ
触 媒 と して 用 い る
こ と に よ り,エ チ ル ベ ンゼ ンは 不 均 化 除 去 され ,形 状 選 択 性 に基 づ く異 性 化 が促 進 され る な ど問 題 点 は解 決 されつ つ あ る. 白 金/ア ル ミナ 系 触 媒 を用 い る(Isomar法,Isolane法)場
合,キ
シ レ ン留分
中 の エ チ ル ベ ン ゼ ン を キ シ レ ンに異 性 化 す る能 力 が あ る こ と,ゼ オ ライ ト系 の吸 着 剤 に よ るp-キ
シ レ ンの 選 択 的 液 相 分 離 を用 い る(p-キ
シ レ ン収 率 ∼100%)
の で,深 冷 分 離 の 際 の低 温 を必 要 と しな い な ど の特 徴 を有 す る. HF-BF3を
用 い る方 法(MGC法)はHF-BF3の
す な わ ち,HF-BF3の
特 異 な 性 質 を利 用 して い る.
強 い酸 性 質 を利 用 して 比 較 的低 温 でm-キ
p-キ シ レ ンへ 異 性 化 す る と同 時 に,m-キ 用 して混 合 物 か らm-体
シ レ ン とHF-BF3の
シ レ ンか らo-, 錯 形 成 反 応 を利
を分 離 す る もの で あ る.
2.4.6 芳 香族 炭 化 水 素 の用 途 ベ ン ゼ ン,ト ル エ ン,キ シ レ ン な どの 芳 香 族 炭 化 水 素 は各 種 誘 導 品 の製 造 原料 や 溶 剤 と して広 く使 用 され て い る.わ が 国 の芳 香 族 需 要 を図2.13に 示 した.
図2.13
国 内の 芳 香族 の需 要 とそ の 内 訳 (単位:千
トン,化 学 工 業 年 鑑(1999)な
ど に よ る)
3 石炭資源 化学
3.1 石炭 資源 の 特 徴 石 炭(coal)は,地
球 上 に 繁 茂 した植 物 が 堆 積 し地 殻 に深 く埋 も れ,数 千 万 年
か ら数 億 年 の 長 い 間,熱
や 圧 力 の 影 響 を 受 け て 変 化 し た も の で あ る.つ
「 太 陽 か らの贈 り物 」 とい え る.2億9000万 物 化 石 に は,石 よぶ.欧
年 前 か ら3億6000万
ま り,
年 前の地層の植
炭 が 最 も多 くみ られ る こ と か ら,こ の 年代 を地 質 学 的 に 石 炭 紀 と
米 の 石 炭 が こ の 時 期 に繁 殖 した 巨 大 な シ ダ類 植物 を お もに根 源 と して い
るの に 対 して,わ が 国 の石 炭 の 年 代 は こ れ よ り1桁 若 く,数 千 万 年 前 の 針 葉 樹 や 広 葉 樹 が堆 積 した もの で あ る.図3.1に 事 な 木 質 繊 維 組 織 が 観 察 され,石
石 炭 の 一 部 分 の 顕 微 鏡 写 真 を示 す が,見
炭 が 植 物 由 来 の 化 石 で あ る こ と を証 明 して い
る. 植 物 が 石 炭 に 変 化 す る過 程 で は砂 や泥 に 覆 わ れ るた め,石 炭 中 に は さ ま ざま な
図3.1 石 炭 中 の 木質 繊 維組 織 の顕 微 鏡 写 真(西 太 陽 の化 石"石 炭",ア 1990)
グ ネ叢 書2,ア
岡 邦 彦:
グ ネ技 術 セ ン タ ー,
鉱 物 質(mineral
matter)が
含 まれ る.ま た,石 炭 の 外 観 は,茶 褐 色 の 土 壌 の よ
うな もの か ら,黒 い ダ イ ヤ とい わ れ た時 代 が あ っ た よ う に黒 光 りを す る 大 き な塊 ま で,多 様 で あ る.さ
らに,1粒
の 石 炭 粒 子 の な か で も,図3.1に
示 した木 質 繊
維,種 子 や 花 粉 に由 来 す る部 分,石 英 や黄 鉄 鉱 の よ うな鉱 物 な どが 混 在 して お り, き わ め て 不均 質 で あ る. 図3.2に 石 炭 の 地 域 別 の 確 認 埋 蔵 量(1998年)を
示 す.石 油 が 中東 地 域 に偏 在
して い るの とは対 照 的 に,石 炭 は ア ジ ア ・オ セ アニ ア,北 ヨー ロ ッパ に広 く分 布 して い る.埋 蔵 量 の合 計 は9840億
トンで,そ
ア メ リ カ に存 在 す る.世 界 の 石 炭 生 産 量 は 年 間 約45億 産 量 で割 っ た可 採 年 数,つ
然 ガ ス の 約60年
石 油,石
然 ガ ス は,い ず れ も炭 素(C)と
0.4∼1,3∼4で
炭,天
然 ガ スのH/Cの
あ る.つ
の1/4は
北
に な る.こ れ は
に比 べ て 著 し く長 い. 水 素(H)を
化 水 素 系 資 源 で あ る が,こ れ らの 元 素 の原 子 比(H/C)は る.石 油,石
ソ連 邦,
トンで あ り,埋 蔵 量 を生
ま り石 炭 の 寿 命 は現 時 点 で は 約220年
石 油 の 約40年,天 炭,天
ア メ リカ,旧
範 囲 は,お
ま り,石 炭 はH/Cの
主 成 分 とす る炭
資 源 の 種 類 に よ り異 な
お ま か に は そ れ ぞれ1.5∼1.9, 最 も小 さい 資 源 で あ るが,こ
れ
は 多 量 の 酸 素 が 含 ま れ る こ とに 基 づ く. 以 上 の こ とか ら,石 炭 資 源 は,① 有 機 物 と無機 物 の 混 合 物 か ら成 る不 均 質 な 固 体 で あ り,② 埋 蔵 量 は偏 在 せ ず に 豊 富 で 可 採 年 数 が 長 く,③H/C比
は小 さ く多
くの酸 素 を含 む,と 特 徴 づ け られ る.こ れ らの 点 は,石 炭 の 本 質 を理 解 す る上 で 大 切 で あ り,ま た天 然 ガ ス や 石 油 と比 較 して,石 炭 の 採 掘,輸 送,貯 蔵,利 考 え る と きに も重 要 と な る.
図3.2 石炭 の地域別確 認埋蔵量
用を
3.2 石 炭 の 性 質 と化 学 構 造 3.2.1 石 炭 の 組 成 とお も な性 状 a. 工 業 分 析 値 (moisture),灰
工 業 分 析(proximate
分(ash),揮
発 分(volatile
analysis)で matter),固
に 分 け て,そ れ ぞ れ の割 合 を質 量 百 分 率(mass%)で
は,石
炭 を水 分
定 炭 素(fixed 表 す.こ
carbon)
れ らの値 は石 炭
の 性 状 を比 較 す る上 で大 変 有 用 で あ る.工 業 分析 の 方 法 は 国 に よ っ て 若 干 異 な る が,日 本 工 業 規 格(JIS)で て水 分,灰
分,揮
は,空 気 中室 温 で 乾 燥 した 試 料(気
発 分 を定 量 し,100%よ
乾 試 料)を
用い
り これ らの 合 計 を差 し引 い て 固 定 炭 素
を求 め る. 揮 発 分 は,石 炭 を熱 分 解(3.4.1項 参 照)し た と き に 発 生 す る ガ ス,油 分,タ ール な どの総 称 で ,油 分 や ター ル 中 に は付 加 価 値 の 高 い 芳 香 族 炭 化 水 素 や複 素 環 化 合 物 が含 まれ る.灰 分 は工 業 分 析 で は燃 焼 残 査 と定義 され る が,ガ ス 化 や 液 化 後 の残 査 で もあ り,石 炭 中 に も と も と存 在 す る ケ イ酸 塩,酸
化 物,炭 酸 塩,硫 化
物 な どの 鉱 物 質 に 由 来 す る.灰 分 量 は石 炭 の種 類 に よ り大 き く異 な るが,大 部 分 は5∼30mass%の
範 囲 に あ る.そ の 主 要 元 素 はAlとSiで,こ
K,Ca,Fe,P,Ti,V,Mnを
れ らにNa,Mg,
加 え て,灰 分 の 元 素 組 成 を 求 め る.石 炭 を利 用
し た後 の 灰 の 処 理 や 資 源 化 は,環 境 問 題 と も関連 して大 切 で あ る.固 定 炭 素 は石 炭 の 熱 分 解 後 に生 成 す る炭 素 質 物 質 の 主 成 分 で,そ の利 用 に関 して は3.4節 の コ ー ク ス製 造 ,燃 焼,ガ ス化 の項 を参 照 され た い.固 定 炭 素 と揮 発 分 の比 を燃 料 比 と よび,こ の 値 が石 炭 の 分 類(3.2.2項)に b. 元 素 組 成 (carbon),水
用 い られ る こ と もあ る.
一 般 的 な 元 素 分 析(elemental
素(hydrogen),窒
素(nitrogen),硫
analysis)では,炭 黄(sulfur),酸
の5元 素 を,石 炭 中の 水 分 と灰 分 を除 い た 無 水 無 灰 基 準(dry のmass%で
素
素(oxygen)
ash-free; dafと 略)
表 示 す る.実 際 の 分 析 で は,石 炭 を 高温 で燃 焼 して 酸 素 を除 く4元
素 を定 量 した 後,酸 素 を計 算 で 求 め る方 法 が よ く用 い られ る. 石 炭 中の 主 要 元 素 は 炭 素 で,そ よ そ60∼95mass%(daf)の 水 素 が4∼5mass%(daf)で
の 量 は石 炭 の種 類 に よ っ て 大 き く異 な り,お お
範 囲 に あ る.つ い で酸 素 が5∼30mass%(daf), あ る.H/C比
は燃 料 比 と密 接 に 関係 して お り,
石 炭 の 性 状 や 化 学 構 造 を知 る上 で重 要 で あ る.酸 素 は エ ー テ ル 基,カ ル ボ キ シル 基,水
酸 基,カ
ル ボ ニ ル 基 な どの 含 酸 素 官 能 基 か ら成 り,熱 分 解(3.4.1項)時
の 活 性 サ イ トと な る.窒 素 量 は通 常1∼2mass%で,そ
の ほ と ん ど が有 機 化 合
物 と して 存 在 す る.硫 黄 は 植 物 に 由来 す る有 機 硫 黄(硫 黄 を 含 む有 機 化 合 物)と 黄 鉄 鉱(FeS2)を sulfur)と
主 成 分 とす る 無 機 硫 黄 に 分 類 され,両
者 を 全 硫 黄(total
よ ぶ.そ の 量 は世 界 の主 要 な 石炭 で は0.2∼7mass%で
貿 易 で は1mass%以
内 の低 硫 黄 炭 が お もに取 り引 き され る.窒 素 や硫 黄 は環 境
汚 染 の原 因 と な る た め,さ c. 粘 結 性
あ るが,国 際
ま ざ ま な除 去 対 策 が講 じ られ て い る(3.5節).
粘 結(caking)と
は,石 炭 を加熱 した と きに 軟 化 溶 融 して 粒 子
ど う しが 結 合 す る現 象 を意 味 し,コ ー ク ス(3.4.1項)を
製 造 す る上 で 非 常 に重
要 な 性 質 で あ る.軟 化 溶 融 の 過 程 で は,発 生 し た ガ ス に よ っ て石 炭 が 膨 張 す る. 膨 張 性(swelling
property)と
粘 結 性 は密 接 に 関 連 す るの で,簡 便 に は前 者 を測
定 して 後 者 の指 標 とす る.ど の よ うな 石 炭 で も この よ うな 性 質 を示 す の で は な く, 炭 素 量 が80∼90mass%(daf)の
範 囲 の もの に限 られ,粘 結 炭(caking
coal)
と よば れ る.こ の 種 の 石 炭 を空 気 中 に放 置 して お く と,自 然 酸 化(風 化)に
より
粘 結 性 を失 う. 3.2.2 石 炭 の 分 類 石 炭 の 分 類 法 は国 に よ っ て 異 な り,そ の 基 準 は 揮 発 分,燃 料 比,炭 素 と水 素 の 量 や 比,発 に,わ
熱 量 な ど が,単 独 また は組 み合 わ せ て 使 用 され る.表3.1に
が 国 のJIS規
(subbituminous
格 で は発 熱 量 を 用 い て,褐
coal),歴
青 炭(bituminous
炭(brown
coal),亜
示すよう 歴青炭
coal),無 煙 炭(anthracite)に
分
類 す る.た だ し,分 類 法 の 基 準 が 異 な る た め,わ が 国 の よ び名 が他 の 国 で は 必 ず し も通 用 しな い.表3.1に
は,燃 料 比 や 粘 結 性 も載 せ た が,燃 料 比 は歴 青 炭 と無
煙 炭 を 分 け るの に使 わ れ,粘 結 性 は亜 歴 青 炭 の 一 部 と歴 青 炭 に の み観 察 され る特 異 な現 象 で あ る こ とが理 解 され る.歴 青 炭 の な か で も,強 粘 結 炭 が コー クス 製 造
表3.1
*:無
水無灰基準
わ が国 に お け る石 炭 の 分 類
図3.3 植物 か ら石炭の生成経路
の主 原 料 と な る. わ が 国 で は,炭 素 量 に よ り石 炭 を分 類 す る簡 易 法 が普 及 して い る の で,こ
の点
も表3.1に 示 した.炭 素 量 は褐 炭 か ら無 煙 炭 に い く に従 い増 加 す る が,一 方,酸 素 量 は この 逆 の 傾 向 を示 す.炭 素 量 の こ と を簡 便 に炭 化 度(coal お お まか に は,褐 炭 と亜 歴 青炭 を低 炭 化 度 炭,歴
rank)と
よ び,
青 炭 と無 煙 炭 を高 炭 化 度炭 と称
す る. こ の よ う に分 類 され る石 炭 は,ど の よ うな経 路 をた ど って 生 成 した の で あ ろ う か.こ
れ は,石 炭 中のH/C比
とO/C比
の 関係 を調 べ る とわ か る.図3.3は
コー
ル バ ン ドと よば れ,植 物 で あ る木材 か ら最 も石 炭 化 が 進 ん だ無 煙 炭 ま で の経 路 を 表 す.第
一 段 階 で は お も に脱 水(-H2O)反
応 に よ りH/CとO/Cが
木 材 が泥 炭(褐 炭 よ り,石 炭 化 度 の 低 い もの),褐 脱 炭 酸(-CO2)反
応 が 支 配 的 と な り,O/Cの
が 生 成 し,最 終 段 階 で は脱 メ タ ン(-CH4)反
減 少 し,
炭 に変 化 す る.次 の 過 程 で は
み が 低 下 して 亜 歴 青 炭,歴
青炭
応 が 進 ん で,無 煙 炭 と な る.
3.2.3 石 炭 の化 学 構 造 石 炭 が ど の よ う な化 学 構 造 を とっ て い るか につ い て は,こ れ まで 非 常 に 多 くの 研 究 者 に よ っ て議 論 され,さ
ま ざま な モ デ ル が提 案 され て い る.と
炭 中の 炭 素 の結 合 様 式 が,固 体13C-NMR(核
磁 気 共 鳴)に
くに近 年,石
よ り直 接 分 析 で き る
よ うに な り,さ らに 歴 青 炭 の 大 部 分 を室 温 で 溶 解 で き るマ ジ ッ ク ソル ベ ン ト(溶
図3.4
ドイ ツ 産 褐 炭 の 化 学 構 造 モ デ ル(K.J.
Huttinger
and
A.T.
Michende:
Fuel,
66,
1165,
1987)
媒)が 発 見 され た こ とに よ って,構 造 解 析 の研 究 が急 速 に進 歩 した.ま た,コ
ン
ピ ュ ー ター の 演 算 能 力 の飛 躍 的 な 向上 に伴 い,統 計 的 手 法 や シ ミュ レー シ ョン に 基 づ く研 究 も行 わ れ る よ う に な っ た.し か し,石 炭 の 化 学 構 造 が 十分 解 明 され た わ け で は な い.こ
こで は,石 炭 の 利 用 と化 学(3.4節)を
考 え る上 で 重 要 と思 わ
れ る点 に 着 目 して述 べ る.
図3.5
ア メ リ カ 産 歴 青 炭 の 化 学 構 造 モ デ ル(J.H. Shinn:
Fuel,
63,
1190,
1984)
図3.6 石炭中の水素結合の模式図
図3.4と 図3.5は,そ
れ ぞ れ褐 炭 と歴 青 炭 の 化 学 構 造 モ デ ル と して提 案 され て
い る一 例 を示 す.図3.4は,ド
イ ツ産 の 代 表 的 な褐 炭 で あ る ラ イ ン(Rhein)炭
の モ デル で あ り,元 素 組 成(C270H240N3S1O90),含
酸 素 官 能 基 量,熱 分 解 実 験 結
果 に 基 づ い て作 成 され た.数 個 の ベ ンゼ ン環 に シ ク ロヘ キ サ ン環 や 複 素 環 が縮 合 した 芳 香 族 ク ラ ス タ ー が,メ
チ レ ン基(-CH2-)や
共 有 結 合 で つ な が れ て(架 橋)高
エ ー テ ル 基(-O-)な
どの
分 子 を 形 成 し,芳 香 族 ク ラ ス ター の 側 鎖 に は,
アル キ ル 基 や 含 酸 素 官 能 基 が結 合 して い る.こ の 構 造 モ デル の一 つ の 特 徴 は ,鉱 物 質 中 の アル カ リ金 属(Na,K),ア
ル カ リ土 類 金 属(Mg,Ca),遷
移 金 属(Fe)
の 結 合 形 態 を示 して い る 点 に あ る.い ず れ の金 属 イ オ ン も,COOH基 ー ル 性OH基
の プ ロ トン と イ オ ン 交 換 し
(図 に は 電 荷 を表 示 して い な い)な
や フ ェノ
,COO−Na+,O−K+,(COO)2−Ca2+
どの 形 で 存 在 して い る.後 述 す る よ うに,こ
の よ うな金 属 イ オ ン は石 炭 の ガ ス化 に お い て触 媒 作 用 を示 す. 図3.5は,ア
メ リ カの 代 表 的 な歴 青炭 で あ る イ リ ノ イ(Illinois
デ ル で あ る.元 素 組 成 はC661H561N11S6O74で,酸 らび に脂 肪 族 の構 造 や 量 は,い れ た.図3.4と
素,窒
No.6)炭
のモ
素,硫 黄 を含 む 官 能 基 な
くつ か の 異 な る分 析 法 や 化 学 反 応 を用 い て推 定 さ
同 じ よ うに,メ チ レ ン基 や エ ーテ ル 基 な どが 架 橋 点 とな って 芳 香
族 ク ラス タ ー ど う しが 結 合 して い るが,褐 炭 の モ デ ル に比 べ て ク ラ ス タ ー 中 のベ ンゼ ン環 や 複 素 環 の縮 合 度 は大 きい が,一 方,含 酸 素 官 能 基 の 割 合 は小 さ く,側 鎖 の アル キ ル 基 も短 い.図3.5に
は鉱 物 質 中の 金 属 イ オ ン は 図示 して い な い が,
その 一 部 は イオ ン交 換 状 態 で 存 在 す る もの の,多 れ る.
く は炭 酸 塩 や硫 酸 塩 と して 含 ま
図3.4と 図3.5に は,大
部 分 が 共 有 結 合 の み か ら な る構 造 モ デ ル を示 した が,
実 際 に は 非 共 有 結 合 も存 在 す る.代 表 的 な例 が 図3.6に 示 した 水 素 結 合 で あ り, 芳 香 族 ク ラス タ ー 中の フ ェ ノ ール 性OH基
やCOOH基
の 間 に形 成 され る.図3.4
と図3.5の 比 較 か ら明 らか な よ うに,石 炭 中の 水 素 結 合 は,酸 素 含有 量 の 多 い褐 炭 や亜 歴 青 炭 で 重 要 で あ る.そ の 他 の 非 共 有 結 合 と して は,ベ π電 子-π 電 子 相 互 作 用,電
ンゼ ン環 ど う しの
子 供 与 基 と電 子 受 容 基 間 の電 荷 移 動,電
気 的 に 中性
な 分 子 間 に働 く フ ァ ン デル ワー ル ス力 が 考 え られ て い る.こ の よ う な結 合 は,そ の 力 が 共有 結 合 よ り は る か に弱 い の で,低
い温 度 で容 易 に 解 放 され る.近 年,非
共 有 結 合 に よ る分 子 間相 互 作 用 に基 づ い て,石 炭 が3次 元 的 な ネ ッ トワ ー ク構 造 を形 成 して い る とい う考 え方 が提 案 され て い る.
3.3 石 炭 の消 費 量 と用途 エ ネル ギ ー 源 は 石 油,石 炭,天
然 ガ ス,原 子 力,水 力 に大 別 され る.図3.7に,
世 界 の 一 次 エ ネル ギ ー消 費 量(1998年)に
お け る こ れ ら の 割 合 を示 す.石
炭,
天 然 ガ ス,原 子 力,水 力 の 消 費 量 は,比 較 を容 易 に す るた め,石 油 に 換 算 して表 示 して あ る.1998年
の エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の 合 計 は石 油 換 算 に して約85億
トンで,
その 序 列 は以 下 の とお りで あ る(括 弧 内 の 単位 は%). 石 油(40)>石 つ ま り,石 油,石
炭(26)>天 炭,天
に対 して,日 本 で は,5億 石 油(51)>石
然 ガ ス(24)>原
子 力(7.4)>水
然 ガ ス の 化 石 エ ネ ル ギ ー が 全 体 の90%を
力(2.7) 占 め る.こ れ
トンの エ ネ ル ギ ー を使 用 し,そ の 中味 は,
炭(18)>原
図3.7 世 界 の 一 次 エ ネル ギ ー の消 費 量
子 力(17)>天
然 ガ ス(13)>水
図3.8 国別の石炭消 費量
力(1.9)
図3.9 世 界 で消 費 され る 石炭 の 用 途
と な り,世 界 に 比 べ て,石 油 と原 子 力 の割 合 が 高 い の が 特 徴 で あ る. 図3.8は,石
油 換 算 で表 示 した石 炭 消 費 量 の 国別 の割 合 を表 す.中
大 の消 費 国 で,ア
メ リカ が これ に つ ぎ,両 者 の 合 計 は世 界 の半 分 に 相 当 す る.わ
が 国 は イ ン ド,ロ シ ア につ い で5番 約45%を
国 が世 界 最
消 費 して い る.ア
を み る と,中 国,イ
目で あ る.地 域 別 で は,ア ジ ア だ けで 世 界 の
ジ ア に つ い て こ こ10年 間(1989∼1998年)の
推移
ン ド,日 本 の 石 炭 消 費量 は それ ぞ れ1.2,1.5,1.2倍
に増加
し,ア ジ ア 全 体 で も1.2倍 とな り,今 後 も この 傾 向 が続 く と予 想 され て い る.対 照 的 に ヨー ロ ッパ 全 体 で は,10年
間 で約70%に
減 少 した.石 炭 を貿 易 の観 点 か
らみ る と,わ が 国 は世 界 最 大 の輸 入 国 で あ り,1998年
に は1億3200万
トンの 石
炭 を輸 入 し,そ の 半 分 以 上 は オ ー ス トラ リア に依 存 して い る.1998年
の わ が国
の 石 炭 生 産 量 は約400万
トン で,こ れ は 輸 入 量 の3%に
す ぎ な い.
図3.9は 石 炭 の 用 途 を示 した もの で,世 界 の消 費量 の約60%が 用 され て い る.鉄 鋼 業 の 約16%,家
庭 用燃 料 の 約5%が
発電 用 燃 料 に使
これ につ い で お り,そ
の他 で は セ メ ン ト工 業 が 大 き な割 合 を 占 め る.鉄 鋼 業 で は製 鉄 用 コ ー クス の 原 料 と して お もに 用 い られ て い る.わ 両 者 の 合 計 は消 費 量 の 約80%に
が 国 で は 発 電 と鉄 鋼 が石 炭 の 二 大 用 途 で あ り,
達 す る.
3.4 石 炭 の 利 用 と化 学 3.4.1 熱
分
解
熱 分 解(pyrolysis)は,石
炭 を利 用 す る大 部 分 の プ ロ セ ス に お い て,そ の 第 一
段 階 と して 必 ず 起 こ る.し た が って,こ の 過 程 を理 解 す る こ とは 大 切 で あ る.熱 分 解 が進 行 す る と き に は,石 炭 中 に含 まれ る揮 発 分 が放 出 され るの で,脱 揮 発 分 過 程(devolatilization)と a. 熱 分 解 反 応
も よば れ る.
表3.2は,石
炭 を加 熱 した と き に起 こ る物 理 化 学 的 変 化 の
表3.2 石 炭 の 熱 分 解 過 程 にお け る物 理 化 学 的 変 化(前
概 略 を表 す.ま
一広:日
ず,物 理 的 に 吸 着 した 水 が 脱 離 し,つ ぎに 水 素 結 合 や フ ァ ンデ ル
ワー ル ス力 な ど に よ る非 共 有 結 合 が200℃
前 後 で 解 放 され る.こ の 温 度 域 で は芳
香 族 ク ラ ス ター の 側 鎖 に結 合 して い るCOOH基 る.引
本 エ ネル ギ ー学 会 誌,75,168,1996)
き続 い て,フ
ェ ノール 性OH基
の 分 解 も始 ま り,CO2が
発生 す
や その 他 の 含 酸 素 官 能 基 が分 解 す る.こ の
よ うな反 応 は,含 酸 素 官 能 基 に 結 合 して い る金 属 イ オ ンに 影 響 され る.ま た,褐 炭 や 亜 歴 青 炭 で は 多 くの 場 合,COOH基 い るの で,こ れ らの 分 解 に伴 い,ク
や フ ェ ノ ール 性OH基
は水 素 結 合 して
ラス タ ー間 に架 橋 が 形 成 され る.そ の様 子 を
模 式 的 に示 したの が 図3.10で あ る.400℃
ぐ らい に な る と,粘 結 炭 で は軟 化 溶 融
に よ り粒 子 ど う しの 合 体 が 始 ま る.こ の温 度 付 近 か ら,芳 香 族 ク ラ ス タ ー の架 橋
図3.10 熱分解に伴 う水素結合間の架橋形 成の模式図
図3.11
共有 結 合 の 解 離 エ ネル ギ ー
点 と な っ て い る共 有 結 合 の切 断 が 進 行 す る.こ の反 応 は 結 合 解 離 エ ネル ギ ー の小 さな 部 分 か ら起 こ る の で,図3.11に レ ン基 のC-C結
示 す よ うに,エ
ー テル 基 のC-O結
合 やメチ
合 が まず 開 裂 して ラ ジ カ ル が 発 生 す る.
(3.1) (3.2) これ らは,ジ
エ チ ル エ ー テル((C2H5)2O)やn-ブ
タ ン(C4H10)と
い っ た 単純
な 化 合 物 か ら得 られ る ラ ジ カル とは異 な り,芳 香 族 ク ラ ス タ ーの 一 部 の結 合 に不 対 電 子 が存 在 して い るの で,熱 分 解 フ ラグ メ ン トと よば れ る.さ
らに高 温 に な る
と,結 合 解 離 エ ネル ギ ー の大 き な共 有 結 合 も切 断 され,多 種 多様 な フ ラ グ メ ン ト が 発 生 す る.ラ
ジ カル は非 常 に反 応 性 に 富 む た め,フ
を 拡 散 す る過 程 で,分 CO,H2な
ラ グ メ ン トは,石 炭 粒 子 内
解,水 素 引 き抜 き,再 結 合 な ど を繰 り返 し,ガ ス(CH4,
ど),油 分(ベ
ン ゼ ン,ト ル エ ン な ど),タ
ー ル とい っ た低 分 子 物 質 と
して 安 定 化 す る一 方,架 橋 形 成 や重 縮 合 反 応 に よ り炭 素 質 物 質 に変 化 す る.炭 素 質 物 質 は コ ー クス(coke)ま
た は チ ャー(char)と
よば れ る が,そ の違 い は 石炭
粒 子 が 軟 化 溶 融 す る か否 か で あ り,前 者 の 場 合 を コ ー クス と称 し,燃 焼 や ガ ス化 で は粘 結 炭 を使 用 し ない の で チ ャ ー と よぶ. この よ うに,石 炭 の 熱 分 解 で は低 分 子 化 と架 橋 形 成 が 同 時 に進 行 す るの で,そ の 生 成 物 分 布 は これ らの 速 度 のバ ラ ンス や 石 炭 の化 学 構 造 に支 配 され る.図3.12 は,褐 炭 と歴 青 炭 の 熱 分 解 で 得 られ た 生 成 物 を比 較 した もの で あ る.褐 炭 で は,
図3.12
褐 炭(左)と Utilization,
歴 青 炭(右)の Coal
Science
熱 分 解 生 成 物 分 布(S.C. and
Technology
Vol. 2,
Tsai:
Elsevier,
Fundamentals Amsterdam,
of Coal
Beneficiation
and
p. 122,1982)
図3.4の 構 造 モ デ ル か ら予 想 さ れ る よ うに,H2O,CO2,COと
い った 酸 素 を含
む 化合 物 が 多 量 に発 生 す る.こ れ に対 して,歴 青 炭 で は この よ うな 生成 物 の 割 合 は少 な く,液 状 炭 化 水 素 や ター ル の 量 が 多 いの が特 徴 で あ る. b. コー ク ス製 造
石 炭 の熱 分 解 が 最 も大 規 模 に利 用 され て い る工 業 プ ロ セ
ス は,製 鉄 用 コ ー ク スの 製 造 で あ る.鉄 鉱 石(Fe2O3が ンの 銑 鉄 を得 る た め に は,約0.4ト
主 成 分)を
還 元 して1ト
ンの コー ク ス が 必 要 と な る.表3.1に
示 した
よ うに,歴 青 炭 の 中 で も と く に強 粘 結 炭 が 良 質 の コ ー クス を与 え る.こ の よ うな 石 炭 は コー ク ス用 原 料 に な る こ と か ら,わ が 国 で は しば しば 原 料 炭 と よば れ,火 力 電 力 な どの 燃 料 用 に使 用 され る石 炭(一 1998年 に1億3200万
般 炭)と
区 別 され る.わ
トンの 石 炭 が輸 入 され た が,そ の うち7200万
が 国 で は,
トンが 原 料 炭
で あ っ た.原 料 炭 は一 般 炭 よ り高 価 で埋 蔵 量 も少 ない の で,粘 結 性 の 乏 しい石 炭 を い か に利 用 す るか が大 切 で あ る.し た が っ て,実 際 に は粘 結 性 と石炭 化 度 を指 標 と して数 十種 の 石 炭 を配 合 して使 用 す る. 図3.13は,コ す.供
ー ク ス の 製 造 を 目的 と して石 炭 を熱 分 解 した と きの 生 成 物 を表
給 石 炭 の60∼70mass%が
して 発 生 す る.ガ
コ ー ク ス に転 化 し,そ の他 は ガ ス や タ ール と
ス 中 の50∼60vol%は
ス な どに使 用 され る.一 方,タ ピ ッチ に分 離 され た後,単
水 素 で あ り,ア ンモ ニ ア合 成 や 燃 料 ガ
ール は,蒸 留 操 作 に よ り数 種 類 の 油 分 と高 沸 点 の
環 お よび 多環 の 芳 香 族 化 合 物 を主 成 分 とす る タ ール 油
図3.13
は,溶 剤,界 面 活 性 剤,染
コ ー ク ス の製 造時 に お け る生 成物
料,医 薬 品,農 薬 な どの原 料 に 利 用 され,タ
ールの半
分 以 上 を 占 め る ピ ッチ は,電 極 用 の バ イ ンダ ー や炭 素 材 な ど に用 い られ る.こ の よ うな ター ル の 化 学 工 業 は,石 炭 か らの フ ァイ ンケ ミカ ル ズ の 製 造 と して 重 要 な 地 位 を 占 め て い る が,わ が 国 で は製 鉄 用 コ ー ク ス の使 用 量 の 減 少 に伴 い,タ ー ル の 生 産 量 も年 々低 下 して い る. 実 際 に コ ー ク ス を 製 造 す る場 合,石 炭 は コ ー クス 炉 壁 か らの 伝 熱 に よ り15∼ 20時 間 か けて1000℃
付 近 まで 加 熱 され る.図3.14は,こ
の 過 程 に お け る物 理 化
学 的変 化 を模 式 的 に 示 す.石 炭 が加 熱 され る と まず 脱 水 が起 こ り,次 に400℃ 付 近 か ら軟 化 溶 融 が始 ま り,石 炭 粒 子 が合 体 して 溶 融 層 を形 成 す る.同 時 に,熱 分 解 に よっ て ガ ス や タ ー ル が 発 生 す る の で,層 が 数 倍 に も膨 張 す る が,炉 壁 に よ っ て 抑 え られ る た め,粒
子 ど う しの 粘 着 は む し ろ促 進 され る.500℃
を超 え る と,
溶 融 層 は 固 体 の セ ミコ ー ク ス に変 化 し,温 度 の 上 昇 と と も に,水 素 を発 生 しな が ら重 縮 合 反 応 が進 行 して,セ
ミコ ー クス 層 は 収 縮 す る.最 終 的 に,十 分 な機 械 的
強度 を も った コ ー ク ス が 得 られ るの で あ る.実 際 の コ ー ク ス 炉 で は その 壁 側 と中 心 部 で は温 度 差 が あ るた め,図3.14に
示 し た よ う な物 理 化 学 的 変 化 が 重 な り合
っ て 進 行 して い る.こ の よ う な 複 雑 な現 象 を解 明 す る た め,医 撮 影 装 置,つ
ま りX線CTス
キ ャナ ー を使 って,コ
学 用 のX線
断層
ー ク ス炉 内 の 直 接 観 察 に成 功
して い る. わ が国 の コ ー ク ス 炉 の 多 くは1970年
代 に建 設 され て お り,2000年
は 更 新 の 時 期 を迎 え る と予 想 され て い る.そ の た め,厳
しい 環 境 規 制 に対 応 で き
資 源 的 な 制 約 も少 な い 革 新 的 な コ ー ク ス製 造 法 が 求 め られ,1994年 プ(SCOPE)21と
代の初頭 に
か らス コ ー
い う国 家 プ ロ ジ ェ ク トが ス ター トして い る.そ の 最 大 の特 徴
は,従 来 の よ うに15∼20時
間 を か け て コ ー ク ス をつ くる の で は な く,石 炭 の 軟
化 溶 融 が始 ま る350∼400℃
まで す み や か に加 熱 す る こ とに あ る.そ の結 果,粘
図3.14
コ ー ク スの 製 造 過 程 に お け る物 理 化 学 的 変 化(西 岡 邦 彦:太
陽 の化 石"石
炭",ア
グ ネ 叢 書2,
ア グ ネ技 術 セ ン タ ー,1990)
結 性 の 小 さな石 炭 の利 用 や生 産 性 の 大 幅 な 向上 が期 待 され る. c. 新 しい 熱 分 解 法
図3.13で 述 べ た よ う に,コ ール ター ル を原 料 と して 付
加 価 値 の 高 い 化 学 物 質 がつ く られ て い る が,タ そ の 収 率 は 石 炭 の3∼5mass%に
す ぎ な い.タ
ール は あ く まで も副 産 物 で あ り, ール 中 に は,原 油 の 蒸 留 成 分 と
は異 な り,多 環 芳 香 族 や 複 素 環 化 合 物 が 多量 に 含 まれ るの で,こ の 点 に着 目 して, 石 炭 か らで き る だ け 多 くの液 状 成 分 を得 よ う とす る熱 分 解 法 が提 案 され て い る. そ れ が急 速(迅
速)熱 分 解 法(フ
ラ ッシ ュ パ イ ロ リシ ス,flash
あ る.コ ー ク ス の 製 造 時 と は異 な り,石 炭 は1秒 高 速 で 加 熱 され る の で,表3.2に
pyrolysis)で
間 に数 千 ∼数 万 ℃ とい う非 常 な
示 した物 理 化 学 的 変 化 が 一 斉 に進 行 し,多 種 多
様 な 熱 分 解 フ ラ グ メ ン トが きわ め て短 時 間 で 発 生 す る.液 状 成 分 の 収 率 向上 に は, 架 橋 形 成 や 重 縮 合 反 応 に よ る炭 素 質 物 質 の 生成 を抑 え な けれ ば な らな い.そ の 方 法 は,① 水 素 の 供 与 と② 石 炭 の 前 処 理 に大 別 され る.① は ラ ジ カ ル安 定 化 剤 と し て す ぐれ て い る水 素 を高 圧 下 で 用 い て,式(3.1),(3.2)な
ど で 生 成 した ラ ジ カ
ル を す み や か に水 素 化 す る方法 で,水 素 化 熱 分 解 と よば れ る.② で は,溶 剤 を用 い て 石 炭 中 の 非 共 有 結 合 を あ らか じめ 解 放 して お き,図3.10に 成 を防 ぎ,そ の 後 に熱 分 解 を行 う.テ 項 参 照)を
み られ る架 橋 形
トラ リ ンの よ う な水 素 供 与 性 溶 剤(3.4.4
使 用 して,水 素 化 を効 果 的 に行 う方 法 もあ る.
3.4.2 燃
焼
前 述 した よ うに,世 界 で 消 費 され る石 炭 の 半 分 以 上 は,現 在 火 力 発電 に 使 用 さ れ て い る.こ
こで 起 こ る反 応 が燃 焼(combustion)で
も に微 粉 炭 燃 焼(pulverized 75μm以
coal combustion)と
あ る.火 力 発 電 で は,お よ ば れ る方 式 が 用 い られ,約
下 に粉 砕 した石 炭 を空 気 で 燃 焼 す る.微 粉 に す るの は,粒 子 が 細 か い ほ
うが 着 火 しやす い か らで あ る.石 炭 粒 子 と空 気 の 混 合 物 をバ ー ナ ー の ノズ ル か ら 連 続 的 に 噴 出 させ た と きの 燃 焼 過 程 を,図3.15に
模 式 的 に 示 す.石
炎 や 炉 壁 か らの 放 射 や 伝 導 の 伝 熱 を受 け,温 度 が 非 常 に 急 速(1秒 に 上 昇 す る.400℃ が 放 出 され,こ
炭 粒 子 は火
間 に 約104℃)
以 上 に な る と石 炭 の 熱 分 解 が起 こ り,ガ スや タ ー ル の 揮 発 分
れ ら に着 火 して 燃 焼 が 始 ま る.ガ
下 の 反 応 に よ り,そ れ ぞ れ280,250kJ/molの
ス がCOやH2の
場 合 に は,以
熱 が 発 生 す る.
(3.3) (3.4) 粒 子 温 度 は この よ うな燃 焼 熱 に よ り さ らに 上 昇 して1500℃ の 段 階 で は 揮 発 分 の 放 出 が完 了 して,チ
以 上 に も達 す る.こ
ャ ー の燃 焼 が 始 ま る.チ ャ ー は可 燃 性 の
有 機 質 と非 燃 焼 性 の 鉱 物 質 か ら成 り,前 者 の 大 部 分 は炭 素(C)で 応 式 は次 式 で表 され,390kJ/molと
あ るの で,反
い う大 きな燃 焼 熱 を与 え る.
(3.5)
図3.15 微粉炭 の燃焼 過程の模式図
式(3.5)の
速 度 は,次 項(図3.18)で
大 き い の で,チ fly ash)と
述 べ る水 蒸 気 ガ ス化 な ど に比 べ て 非 常 に
ャ ー の燃 焼 は数 秒 程 度 で 終 了 し,最 終 的 に灰(フ
な る.実 際 の プ ロセ ス で は,燃
ラ イ ア ッ シ ュ,
え き ら ない 炭 素(未 燃 炭 素)が 灰 中 に
残 留 す るの で,こ の 割 合 を低 くす る こ とが,燃 焼 効 率 の 向 上 や 灰 の 有 効 利 用 の面 か ら必 須 とな る.揮 発 分 や チ ャー 中 に含 まれ る少 量 の 窒 素 や 硫 黄 も ,燃 焼 に よ り 酸 化物 と して 排 出 され る. 石 炭 の 燃 焼 方 式 に は,微 粉 炭 燃 焼 以 外 に,火 格 子(ス combustion)と
流 動 層 燃 焼(fluidized
トー カ)燃 焼(stoker
bed combustion)が
風 可 能 な鋳 鋼 製 の 火 格 子 の 上 に,5∼25mm程
あ る.前 者 で は,通
度 の 石 炭 粒 子 の 層 をつ く り,空
気 を送 り なが ら燃 焼 させ る.層 内の 通 風 を確 保 しな けれ ば な らな い の で 加 熱 時 に 軟 化 溶 融 す る粘 結 炭 は 火 格 子 燃 焼 に は適 さな い.石 炭 は ほ とん ど固 定 して い るの で 固定 層 燃 焼 と も よ ばれ,家 庭 な どの小 規 模 の燃 焼 に使 用 され る. これ に対 して 流 動 層 方 式 で は,石 炭 と非 燃 焼 性 固 体 の 混 合 粒 子 の層 に 空 気 を吹 き込 み,流 動 化(fluidization)状
態 をつ くっ て 燃 焼 させ る.ガ ス は 粒 子 層 の な
か で 気 泡 を形 成 しな が ら上昇 し,こ の 運 動 に よ り両 者 は 激 し く混 合 し,全 体 と し て 沸 騰 状 態 に な る.こ れ が バ ブ リ ン グ型 流 動 層 で あ り,微 粉 炭 燃 焼 よ り も低 い 850℃
前 後 で 運 転 さ れ る.こ
(CaCO3)や
の 方 式 の 特 徴 は,非
ドロ マ イ ト(CaCO3・MgCO3)を
燃 焼 性 固 体 と して 石 灰石
使 用 し,式(3.7)の
よ うに 炉 内
で脱 硫 が で き る 点 で あ る(3.5.2項 も参 照).
(3.6) (3.7) も う一 つ の 特 徴 は,低 温 燃 焼 の た め,空 気 中のN2に こ とで あ る.バ ブ リン グ型 流 動 層 燃 焼 で は,激
由 来 す るNOxが
発 生 しな い
しい 混 合 の た め に微 粉 化 した石 炭
や 脱 硫 剤 の 粒 子 が燃 焼 炉 を飛 び 出 し,燃 焼 や脱 硫 の 効 率 が低 下 す る.こ の よ うな 問 題 に対 処 す る た め,循 環 流 動 層 が開 発 され た.燃 焼 炉 か ら飛 散 した 粒 子 を捕 集 して 循 環 させ る こ とに よ り,ガ ス と流 動 粒 子 との接 触 効 率 を高 め ,石 炭 粒 子 の 滞 在 時 間 を長 くで き る の で,燃 焼 や 脱 硫 の 効 率 向 上 が 図 ら れ る.バ ブ リン グ型 は火 力 発 電 にす で に使 用 され て い るが,循 環 型 は 開 発段 階 に あ る. 火 力 発 電 で は,石 炭 の燃 焼 熱 を利 用 して 水 蒸 気 を 発 生 させ,蒸 り発 電 して い るが,タ て,CO2排
気 ター ビ ン に よ
ー ビ ンの 温 度 が 高 い ほ ど発 電 効 率 が大 き くな り,結 果 と し
出 量 の 削 減 が 可 能 とな る.CO2に
限 らず,燃
焼 時 に排 出 され る硫 黄 や
窒 素 の 酸 化 物 は 地 球 環 境 問 題 に 深 く か か わ る の で,こ
れ ら の 点 を3.5節
で詳 しく
述 べ る. 3.4.3 ガ
ス
化
ガ ス 化(gasification)は
石 炭 を ガ ス に 変 換 して 利 用 す る 方 法 で あ る.石
加 熱 す る と熱 分 解 が 起 こ り,ガ ー)が
残 る .こ
ス や タ ー ル の 揮 発 分 が 発 生 し,炭
の チ ャ ー と 気 体(ガ
ス 化 剤)の
a. ガ ス 化 の 基 本 的 反 応 と 熱 力 学
表3.3に
に,燃
表 示 し た.燃
代 表 的 な ガ ス 化 反 応 を示 す.チ
焼 は ガ ス 化 反 応 の 一 種 で あ る が,前
ャ ー を 炭 素100%
項 で す で に述 べ た よ う
焼 熱 の 利 用 が 目 的 で あ る の で こ こ で は 参 照 す る 程 度 に と ど め,生
製 造 を 主 目 的 と し た 式(3.8)∼(3.11)の 基 本 と な る 水 蒸 気 ガ ス 化(ま を 中 心 に 述 べ る.こ (synthesis
gasま
然 ガ ス(主
で あ り,ま
た,式(3.13)の
ガ ス か らのCH4製 れ の 場 合 もH2を ス 化 炉 で は,石 表3.3の
ま ざ ま な 化 学 製 品 の 合 成 原 料 と な る. 式(3.12),
成 物 と 水 蒸 気 と の 二 次 的 反 応 も 気 相 で 進 行 す る.式 成 分 はCH4)の
合 成 ガ ス へ の 転 換 プ ロ セ ス(4章
逆 反 応 は メ タ ン 化(methanation)と
与 え る の で,工
業 的 な 水 素 製 造 法 と して 重 要 で あ る.実
炭 の 熱 分 解 と と も に 表3.3の 準 状 態)か
成
はいず 際の ガ
ほ と ん ど が 並 列 的 に 起 こ る.
ら わ か る よ う に,式(3.5)が
様 に(3.8),(3.11),(3.12)の3式
参 照)
よ ば れ,合
造 法 と し て 利 用 さ れ る.(3.9),(3.12),(3.13)の3式
反 応 熱(標
熱 を 与 え,同
の なか で も
混 合 ガ ス を合 成 ガ ス
い ず れ も 固 体 と 気 体 の 反 応 で あ る が,表3.3の
示 す よ う に,生
(3.13)は,天
よ び,さ
成 ガ スの
gas reaction))式(3.9)
の 反 応 で 生 成 し たCOとH2の
式(3.8)∼(3.11)は (3.13)に
反 応 を 本 項 の 対 象 と す る.そ
た は 水 性 ガ ス 反 応(water
たsyngas)と
ャ
反 応 が ガ ス 化 で あ る.
ャ ー 中 の ガ ス 化 可 能 な 有 機 質 の 大 部 分 は 炭 素 か ら成 る の で,チ (C)で
炭 を
素 質 物 質(チ
非 常 に大 き な燃 焼
も 発 熱 反 応 で あ る が,一
表3.3 石炭 のガス化 に関与す る反応 と反応熱
方,式
図3.16 ガス化 に関与 する反応 の平衡 定数の温 度変化
(3.9),(3.10),(3.13)で
は い ず れ も大 き な吸 熱 と な る.こ の よ う な違 い を知 る
こ と は,温 度 の 制 御,熱 の 供 給,灰 の 溶 融 な ど,ガ ス化 炉 の 運 転 面 で も大 切 で あ る. 目的 と して い る反 応 が あ る温 度 で起 こ るか ど うか は,そ の 自 由 エ ネ ル ギ ー変 化 (−ΔG)を
計 算 す れ ば わ か る.−ΔGと
反 応 の 平 衡 定 数(K)の
間 に は,Rと
Tを それ ぞれ 気 体 定 数 と絶 対 温 度 にす れ ば, −ΔG=RTlnK
が 成 り立 ち,−ΔG>0で の 右 辺)に
あ れ ばK>1と
有 利 と な る.図3.16は
す.式(3.8)は
室 温 か ら1100℃
て,式(3.11),(3.12)は
が そ れ ぞ れCOやCH4と
る.こ
以 上 の 広 い温 度 範 囲 で 容 易 に 進 行 す る の に 対 し 方,式(3.9),(3.10),(3.13)
ス 組 成 の 予 測 が 可 能 と な る.式(3.10),(3.11) 類 の ガ ス を 与 え る の に 対 して,式(3.9)の
を 用 い た と き の 計 算 結 果 を 図3.17に
力 一 定(7.0MPa)に 割 合 が 多 く,一
れ に 対 して,図3.17右
示 し,COとH2の
反応式
平 衡 定 数 の 温 度 変 化 を表
成 ガ ス の 二 次 的 ・三 次 的 反 応 が 起 こ る の で,複
成 と な る.(3.9)∼(3.12)の4式
CH4とCO2の
式(3.8)∼(3.13)の
い っ た1種
水 蒸 気 ガ ス 化 で は,生
応 は 生 成 系(表3.3の
.14)
以 上 に な ら な い と 進 行 し な い.
反 応 の 平 衡 定 数 を 用 い る と,ガ
は,圧
な り,反
低 温 ほ ど 起 こ りや す く,一
は い ず れ も650∼700℃
3.17左
(3
雑 な ガス 組 示 す.図
お け る ガ ス 組 成 の 温 度 変 化 で あ り,低 方,高
温 で はCOとH2が
は 温 度 一 定(1100K)時
濃 度 は 低 圧 ほ ど 高 い.し
た が っ て,合
温 で は
生 成 ガ スの 大 部 分 を 占め の ガ ス組 成 の圧 力 変 化 を 成 ガ スの 製 造 が 目的 の
図3.17
水 蒸 気 ガ ス 化 の 平 衡 組 成 の温 度 変 化(左)圧 炭 と重 質 油―そ の 化 学 と応 用―,講
力 変 化(右)(神
谷佳 男 ・真 田 雄 三 ・富 田
彰:石
談 社 サ イエ ンテ ィ フ ィ ク,p.198,1979)
場 合 に は,反 応 条 件 を高 温 低 圧 にす れ ば よい.し
か し,実 際 に は 高 温 高 圧 で操 業
され て い る が,圧 力 が 高 い ほ ど ガ ス 化 装 置 が 小 型 化 され,石 炭 処 理 量 が 増 え る た め で あ る.さ
らに,得
られ た合 成 ガ ス を高 圧 で 液 体 燃 料 に転 換 す る場 合 に は,生
成 ガス を再 度 圧 縮 す る必 要 が な い とい う利 点 もあ る. 図3.17に み られ る よ う に,圧 力7.0MPa,温 に 近 い の で,式(3.9)が きな 吸 熱 反 応(表3.2)で
はH2/CO比
は ほ ぼ1
全 体 の 反 応 を ほ ぼ 表 して い る こ とに な る.こ の 式 は大 あ る の で,こ
で はO2を 添 加 して式(3.8)の
の熱 を供 給 す るた め に,実 際 の ガ ス化 炉
部 分 酸 化 を行 う.
b. ガ ス 化 反 応 速 度 と支 配 因 子 的平 衡(図3.16)は,無
度1400Kで
チ ャー とH2O,CO2,H2と
の反応の熱力学
限 に 長 い 時 間 を か け た と きの 結 果 で あ り,ガ ス 化 速 度 に
関 す る情 報 を得 る こ と は で き な い.そ
こ で,一 例 と して,図3.18に
異 な るガス
化 剤 を用 い た と きの 速 度 と絶 対 温 度 の 逆 数 との 関係 を表 す.石 炭 の 種 類 や チ ャ ー の 調 製 条件 が異 な るた め,デ ー タ に幅 がみ られ る.図 に は燃 焼 の 結 果 も載 せ た が, 速 度 は ガ ス 化剤 の種 類 に依 存 し,そ の 平 均 的 な序 列 は
で あ り,燃 焼 速 度 は 水 蒸 気 ガ ス化 の104∼105倍
に な る.図3.18か
ら指 摘 で き る
も う一 つ の 点 は,燃 焼 で 顕 著 に み られ る よ うに,温 度 が 高 く な る と速 度 上 昇 の 程 度 が ゆ る や か に な る こ とで あ る.こ の 点 を次 に 考 えて み よ う. 反 応 の 速 度 定 数(k)の
温 度 変 化 は ア レニ ウス(Arrhenius)の k=Aexp(−Ea/RT)
式 で 示 され, (3.15)
図3.18
ガ ス化 反 応 速 度 の温 度 変 化
図3.19
反 応 速 度 定 数 の温 度 変 化(ア
レニ ウ ス
プ ロ ッ ト)
で あ る.AとEaは,そ
れ ぞれ,頻 度 因子(frequency
エ ネル ギ ー(activation
energy)を
factor)と み か けの 活 性 化
意 味 し,速 度 定 数 の 対 数 と絶 対 温 度 の 逆 数 と
の 関 係 図 を ア レニ ウ ス プ ロ ッ トと よ ぶ.図3.18の
縦 軸 は 速 度 その もの で あ るが,
ア レ ニ ウ ス プ ロ ッ トと近似 で き るの で,曲 線 の 傾 きよ りEaが 計 算 で き る.ガ ス 化 反 応 で は,燃 焼 に 限 らず,Eaは と図3.19に
な る.チ
温 度 に よ っ て 変 化 す る.こ れ を模 式 的 に 表 す
ャ ー の ガ ス化 反 応 は,ミ
い る ガ ス化 剤 の チ ャ ー粒 子 近 傍 へ の拡 散,②
ク ロ的 に み る と,① 気 相 を流 れ て 粒 子 の細 孔 内 に お け る ガ ス化 剤 の 拡
散,③ 粒 子 表 面 で の 炭 素 と ガ ス化 剤 との 反 応,の
三つ の 過 程 に大 別 され,最
度 の 小 さい 過 程 が 観 測 され る反 応 速 度 を 決 定 す る の で,こ determining
step)と
よぶ.し
れ を律 速 段 階(rate
た が っ て,温 度 に 伴 うEaの 変 化 は,律 速 段 階 が
異 な る こ と を意 味 す る.図3.19に 段 階 は化 学 反 応(③),細
も速
み られ る よ うに,温
孔 内 拡 散(②),ガ
ス境 膜 内 拡 散(①;粒
され る ガ ス の 薄 い 層 を ガ ス境 膜 とい う)に 移 り,Eaは 化 学 反応>細 孔 内 拡 散>ガ
度 の 上 昇 と と もに,律 速 子 近 傍 に形 成
次 の よ うな序 列 に な る.
ス境 膜 内 拡 散 ≧0
(3.16)
律 速 段 階 が異 な れ ば,反 応 速 度 を支 配 して い る フ ァ ク ター も違 って くる.① や② で は,そ れ ぞ れ ガ ス化 剤 の 流 速 や チ ャー の 粒 子 径 と い っ た物 理 的 要 因 が速 度 を決 定 し,一 方,③
で は チ ャ ー に含 まれ る鉱 物 質 や炭 素構 造 が 重 要 と な る.
図3.20は,石
炭 中 の炭 素 含有 量(C%(daf))と
表 す.約100種 C%が
水 蒸 気 ガ ス化 速 度 との 関 係 を
類 の チ ャー を用 い た 日本 人 研 究 者 らに よ る結 果 を ま とめ た もの で,
小 さ く な る に従 い,速
度 は 大 き く な る 傾 向 を 示 し た.特 徴 的 な こ と は,
図3.20
石 炭 中 の 炭 素 含 有 量 と 水 蒸 気 ガ ス 化 速 度 と の 関 係(K. K. Hashimoto
80%(daf)以
and
P.L.
Silveston:
Fuel,
Miura,
68,1465,1989)
下 で の 速 度 が,石 炭 の 種 類 に よ り大 き く異 な る点 で あ る.そ
こで,
石 炭 中の 鉱 物 質 を あ らか じめ除 去 した と こ ろ,速 度 は著 し く低 下 して,炭 種 間 に 大 き な差 は認 め られ な くな っ た.つ る.図3.4に
ま り,鉱 物 質 が ガ ス化 反 応 を促 進 した の で あ
み られ る よ うに,褐 炭 や 亜 歴 青 炭 に はNa+,K+,Ca2+,Fe3+が
存在
し,こ れ らの 金 属 イオ ンは ガ ス化 過 程 で 液 体 状 態 や 微 細 な固 体 粒 子 に変 化 して 大 きな 触 媒 効 果 を発 揮 す る.図3.20で
観 測 され た 速 度 の 差 異 は,触 媒 機 能 を もつ
金 属 イオ ンの 量 や種 類 に 起 因 して い る. 触 媒(ま
た は接 触)ガ
ス化(catalytic
石 炭 に添 加 し て反 応 を行 う.H2OやCO2を アル カ リ土 類,遷
gasification)で
は,こ の よ う な成 分 を
用 い た 場 合,上
に 述 べ た ア ル カ リ,
移 金 属 の 元 素 が高 い触 媒 活 性 を示 す.触 媒 ガ ス化 で は,反 応 速
度 が 増 加 す る た め低 い 温 度 で 運 転 が で き,触 媒 が 式(3.12),(3.13)の に も影 響 を与 え るの で,ガ ガ ス 化 炉 で は,1日
気相 反応
ス組 成 を変 え る こ と も可 能 とな る.一 方,商 業 規 模 の
数 千 トンの 石 炭 が消 費 され るの で,1mass%の
を添 加 した と して も,そ の 量 は膨 大 に の ぼ る.さ
少量の触 媒
らに,触 媒 成 分 が 石 炭 中 の鉱 物
質 や 発 生 す る硫 黄 化 合物 と反 応 して 活 性 を失 う ケ ー ス も あ る.し た が っ て,触 媒 の 価 格 や 回 収 ・再 利 用 の 問題 が,実 用 化 に向 け た大 きな 障 害 と な って い る. 図3.20に
お い て,C%が80以
に無 関係 で,炭 素 の 反応 性,す
上 の 高 炭 化 度 炭 の ガ ス化 速 度 は,鉱 物 質 の 有 無 なわ ち そ の構 造 に密 接 に 関 連 す る.チ ャ ー 中 の炭
素 は,グ
ラ フ ァイ トに み られ る規 則 的 な結 晶 構造(巨
三 次 元 的 に 積 み 重 な っ た 構 造)と
大 な縮 合 多環 芳 香 族 分 子 が
は異 な り,不 規 則 で 芳 香 環 の 縮 合 数 も小 さ く均
質 で は な い.こ の よ う な乱 れ た 構 造 の な か に は,反 応 性 の 高 い サ イ トが 存 在 し, 優 先 的 に ガ ス 化 され る.そ の量 は 活 性 表 面 積(active
surface area)と
酸 素 の 化 学 吸 着 に よ り求 め る.活 性 表 面 積 は,N2やCO2で
よ ばれ,
測 定 され る物 理 的 表
面 積 とは 本 質 的 に異 な る概 念 で あ り,チ ャ ー の ガ ス 化 速 度 と よ く対 応 す る こ とか ら,反 応 性 を評 価 す る指 標 と して 重 要 視 され て い る. c. ガ ス化 技 術 bed),流
ガ ス 化 炉 は,移 動(ま
動 層(fluidized
bed),気
流(ま
た は 固 定)層(movingま
た は噴 流)層(entrained
た はfixed bed)に
大別
され る.前 二 者 の 基 本 的原 理 は,火 格 子 や流 動 層 の 燃 焼 方 式 と 同様 で あ る.現 在, 工業 的 に 運 転 中の ガ ス化 炉 で は,水 蒸 気 や酸 素 に よ り合 成 ガ ス が お もに製 造 され, ア ンモ ニ ア合 成 用 水 素,メ
タ ノ ール や酢 酸 な どの 原 料,燃 料 ガ ス な どに 利 用 され
て い る. 移 動 層 は,火 格 子 上 に充〓 され た塊 状 の 石 炭 を1000℃ で,商
用 と して は ル ル ギ(Lurgi)炉
以 下 で ガ ス化 す る方 式
が 稼 働 し て お り,合
成 ガス は間 接液 化
(3.4.4項)の 原 料 に 用 い られ て い る.一 方,流 動 層 で は石 炭 粒 子 を流 動 化 し なが らガ ス 化 す るの で,移 動 層 に比 べ て炉 内 の温 度 は 均 一 で 石 炭 処 理 量 も多 い.反 応 温 度 は 移 動 層 と同 程 度 で,ド
イ ツで 工 業 化 され た ウ ィ ン ク ラ ー(Winkler)炉
知 られ て い る.こ れ らの 方 式 と比 較 して,気 流 層 は1500℃
が
前 後の高温 で運転 さ
れ,バ ーナ よ り噴 出 した 微 粉 炭 が高 圧 下 で き わ め て短 時 間 で ガ ス化 され る.現 在, い くつ か の 気 流 層 ガ ス 化 炉 が開 発 な らび に稼 働 中 で あ るが,そ (Texaco)炉
の な か で テ キサ コ
は,高 濃 度 の 石 炭 を水 中 に分 散 させ た ス ラ リー を使 用 し,重 質 油 の
熱 分 解 残 査(石 油 コ ー ク ス)の
ガ ス化 も可 能 で あ る.
現 在 の ガ ス化 技 術 の 主 流 は高 温 高 圧 の気 流 層 方 式 で あ り,反 応 速 度 が 非 常 に大 きい た め,ガ
ス組 成 は ほ ぼ 平 衡 に 達 してH2とCOか
ら成 り,チ ャ ー の ガ ス化 率
も高 い.し か し,解 決 され るべ き課 題 も少 な くな く,と 溶 融 ス ラ グ(石 炭 中 の 鉱 物 質 の 溶 融 物)に ア メ リカ,EU,日
くに ガ ス 化 時 に生 成 す る
関 す る トラ ブル の 対 策 が 重 要 で あ る.
本 で は,気 流 層 ガ ス と発 電 を組 み 合 わ せ た 新 し い発 電 プ ロ ジ
ェ ク トが 進 め られ て い るが,こ れ につ い て は3.5節 で述 べ る. 3.4.4 液
化
世 界 の 一 次 エ ネ ル ギ ー消 費 量 の な か で,石 油 の 占 め る割 合 は40%と
最 も大 き
い.日 本 の 石 油 依 存 度 は さ らに 高 く,50%を
超 え る.し か し,そ の 可 採 年 数 は
40年 と石 炭 や 天 然 ガ ス に比 べ て 短 く,将 来 に お い て 石 油 の 安 定 な供 給 を期 待 す る こ とは 難 しい.そ
こ で,1973年
の 第 一 次 石 油 危 機 を 契 機 に,埋 蔵 量 の 豊 富 な
石 炭 を原 料 とす る燃 料 油 の 製 造,す
なわ ち液 化(liquefaction)の
行 わ れ て き た.こ
炭 を そ の ま ま 用 い る 直 接 液 化(direct
liquefaction)と,ガ liquefaction)に a. 直 接 液 化
の 方 法 は,石
研 究 が盛 ん に
ス 化 で 得 られ た 合 成 ガ ス を原 料 とす る 間 接 液 化(indirect
大 別 され る. 石 炭 は,石 油 に 比 べ て 水 素 が不 足 して い る の で,液 化 す る に
は 水 素 の 添 加 が不 可 欠 で あ る.こ の 水素 をい か に効 率 よ く利 用 す るか が,直 接液 化 の キ ー ポ イ ン トで あ り,こ の 目的 の た め に石 炭 と水 素 の他 に 溶 剤 と触 媒 を使 用 す る.図3.21の 混 合 物(ス
ラ リー)は,高
操 作 に よ り,ガ 残 査(未
基 本 的 な フ ロ ー シ ー トに示 され る よ う に,石 炭,触
媒,溶
剤の
圧 の 液 化 反 応 器 内 で 水 素 処 理 され た 後,分 離 器 や 蒸 留
ス,液 化 油(沸
反 応 物,触 媒,灰)に
点 範 囲 の 異 な る軽 質,中
質,重
質 成 分),溶
剤,
分 別 され,溶 剤 は循 環 ・再 利 用 され る.
液 化 反 応 は,通 常,430∼470℃,10∼30MPaの
条 件 下 で 行 わ れ,お
おまか
に は次 の 二 つ の 過 程 を経 て 進 行 す る. ① 石 炭 の 熱 分 解 に よ る さ ま ざ まな フ ラグ メ ン トの 生 成 ② 水 素 との 反 応 に よ る フ ラグ メ ン トの 安 定 化 第 一 段 階 で は,3.4.1項 で 述 べ た よ うに,熱 分 解 反 応 が進 行 す る.450℃ 液 化 温 度 で は,結 合 解 離 エ ネ ル ギ ーの 小 さな エ ー テ ル 基 のC-O結
図3.21
直接液化の フローシー ト
前後の
合 や メチ レ ン
図3.22
基 のC-C結
石 炭 中 の 水 素 移 動(シ
ャ トリン グ)の 模 式 図
合 の 切 断 が お もに起 こ り,熱 分 解 フ ラグ メ ン トが 生成 す る.し か し,
水 素 が 十 分 に与 え られ な い状 況 で は,フ
ラグ メ ン トど う しが結 合 して炭 素 質 物 質
に変 化 した り,ラ ジ カル の再 分 解 が起 こ っ て ガ ス 状 の 低 分 子 物 に転 化 す る.液 化 反 応 を効 率 よ く行 い,油 分(n-ヘ
キ サ ンに 可 溶 な 成 分)の
収率 を高め るため に
は,こ れ らの 反 応 を最 小 限 に抑 え な け れ ば な ら な い. した が って,第 二 段 階 の 水 素 の 役 割 が きわ め て 重 要 と な る.そ の供 給 源 は,① 溶 剤,②
気 相,③ 石 炭 の3種 類 が あ り,反 応 に対 す る これ らの 寄 与 の程 度 は 液 化
条 件 に よ って 変 化 す る.① で は,水 素 を供 与 しや す くか つ 受 容 しやす い性 質 を も つ ヒ ドロ芳 香 族 化 合 物(ベ
ンゼ ン環 と シ ク ロヘ キ サ ン環 の 縮 合 化 合 物)が
溶剤 と
して使 用 され,代 表 的 な化 合 物 が テ トラ リ ンで あ る.下 に示 す よ うに,テ
トラ リ
ン は フ ラグ メ ン トに水 素 を 与 えて ナ フ タ レ ン とな り,ナ フ タ レ ンは触 媒 の 作 用 に よ り気 相 中 の 水 素 を受 け取 っ て テ トラ リ ン に戻 る.
+フ ラ グ メ ン ト=
+生 成 物
(3.17)
(3.18)
この よ う な ヒ ドロ芳 香 族 化 合 物 は熱 分 解 ター ル や 液 化 油 中 に含 まれ る の で,実 際 の プ ロ セ ス で は,こ
れ らの 一 部 が 循 環 され 溶 剤 と して使 用 され る(図3.21).
② の 気 相 中の 水 素 は,式(3.18)で
示 した よ う に,触 媒 の存 在 下 で 溶 剤(た
ば ナ フ タ レ ン)と 反 応 し,生 成 し た水 素 供 与 性 溶 剤(テ
とえ
トラ リ ン)が フ ラグ メ ン
トを安 定 化 す る.こ の よ うな 間 接 的 な方 法 で は な く,気 相 中の 水 素 が溶 剤 中 に溶 解 して直 接 フ ラ グ メ ン トと反 応 す る場 合 もあ る.③ で は,溶 剤 を媒 体 と して,石 炭 中 の 水 素 自身 が そ の 構 造 の な か を移 動 す る.図3.22は
この 過 程 を 模 式 的 に 表
して い る.フ ラ グ メ ン ト中 に ヒ ドロ芳 香 族 構 造 が 存 在 す る と,そ の な か の 水 素 が
い っ た ん溶 剤 に 移 り,溶 剤 中 の水 素 が 次 に ラ ジ カ ル と反応 す る.こ の よ うな フ ラ グ メ ン ト内 で の水 素 の移 動 を シ ャ トリ ング と よび,溶 剤 は単 な る媒 体 で あ る の で, その 水 素 は ま っ た く消 費 され ない. 液 化 触 媒 の 役 割 と して は,式(3.18)で まれ る重 質 成 分(ア
表 され る溶 剤 の 水 素 化,生
ス フ ァル テ ン)の 水 素 化 分 解,な
成物 中に含
らび に硫 黄 や 窒 素 の 除 去 が
あ げ られ る.触 媒 の 性 能 は,石 炭 中 の 鉱 物 質 や 反 応 時 に生 成 す る炭 素 質 物 質 の付 着 に よ り低 下 す るた め,使
い 捨 て 可 能 な安 価 な 鉄 触 媒 が 中 心 に研 究 され て き た.
この 触 媒 は硫 黄 ま た はH2Sの 定 比 化 合 物(Fe1−xS)が
存 在 下 で有 効 に作 用 し,両 者 の 反 応 で 生 成 す る 不
活 性 種 と考 え られ て い る.鉱 物 質 中 の 黄 鉄 鉱(FeS2)
も この 化 学 種 に転 化 す るの で 触 媒 効 果 を示 す こ と が あ る.一 般 に,鉄 触 媒 は溶 剤 の 水 素 化 に は有 効 で あ るが,ア
ス フ ァル テ ンの 水 素 化 分 解 能 は小 さい.一 方,重
質 油 の 水 素 化 精 製 に 用 い られ るCo-MoやNi-Moの
触 媒 は高 い水 素 化 分 解 活 性
を示 し,ヘ テ ロ元 素 の除 去 能 も有 す るが,高 価 な た め,触 媒 の 回 収 ・再 利 用 が 必 要 とな る. 石 炭 の 液 化 は,ガ
ソ リ ン,デ
ィー ゼル,発
替 を 目的 と して 研 究 され て きた が,こ 量 の 水 素 を 必 要 とす る.さ
電 な ど に使 用 され る石 油 系 燃 料 の 代
の よ う な用 途 に適 した液 化 油 の 製 造 に は大
らに,液 化 反 応 器 で は,石 炭 ・触 媒,溶
剤 ・生 成 油,
水 素 ・生 成 ガ ス と い っ た 固 体,液 体,気 体 の 三 相 が 複 雑 に関 与 して い るた め,反 応 器 や 周 辺 装 置 の 設 計 や操 作 が 難 しい.こ れ まで,さ
ま ざま な液 化 プ ロ セ ス が 開
発 され て きた が,こ の よ うな理 由 の た め,実 用 化 に は ま だ至 って い な い.石 油 の ほ とん ど を海 外 に依 存 す る わ が 国 で は,褐 炭 の 液 化 プ ロ ジ ェ ク トが1981年 約10年
間 に わ た り推 進 され,さ
の 歴 青 炭 液 化 プ ラ ン トが1991年
ら に1日 の石 炭 処 理 量 が150ト か ら5年 間 運 転 され,実
から
ンに の ぼ る大 型
用 化 に向 け て 貴 重 な成
果 が得 られ て い る. b. 間 接 液 化
間接 液 化 は,石 炭 の ガ ス化 で得 られ る合成 ガ ス を原 料 とす る
液 体 燃 料 製 造 技 術 で あ り,そ の 代 表 的 な プ ロ セ ス が フ ィ ッシ ャ ー-ト ロプ シ ュ (Fischer-Tropsch:
FTと
略 す)合 成 で あ る.FTプ
ば か ら第 二 次 大 戦 前 まで ドイ ツ で 工 業 化 され,さ る まで 南 ア フ リ カ共 和 国 で 操 業 され て い る.ま 石 油 代 替 燃 料 の製 造 法 と して 再 び 注 目 され,多 FT合 成 は,工 業 的 に は,鉄
ロ セ ス は,1930年
ら に,1955年 た,1973年
代 の半
頃 か ら現 在 に至
の 石 油 危 機 後 に は,
くの 研 究 が 行 わ れ た.
また は コバ ル トを主 成 分 とす る触 媒 を用 い て,220
∼330℃
,20∼30MPaの
条 件 下 で 行 わ れ,パ
式 は そ れ ぞ れ 式(3.19),(3.20)と
ラ フ ィ ン とオ レ フ ィ ン を得 る反応
し て 表 さ れ,nは1∼100の
値 を と る.
(3.19) (3.20) FT合 成 は,炭 素 原 子 数1のCOを
出 発 原 料 と して,炭
素-炭 素 結 合 つ ま り炭 素
鎖 が 触 媒 の表 面 で 逐 次 的 に成 長 す る重 合 反 応 で あ るた め,単 一 の炭 化 水 素 を選 択 的 に製 造 す る こ と は で きな い.そ の 分布 は炭 素 鎖 成 長確 率(α)に 素 数nの
炭 化 水 素 の 質 量 分 率Wnは,一
般 に以 下 に示 され る ア ン ダ ー ソ ン-シ ュ
ル ツ-フ ロ リー(Anderson-Schluz-Flory)分 Wn=nαn−1(1−
支 配 され,炭
布 則 に 従 う. α)2
(3.21)
図3.23は
こ の 式 を図 示 した もの で あ り,目 的 と す る成 分 の 最 高 選 択 率 が 予 測 で
き る.た
と え ば,C5∼C11の
mass%)と
な り,C12∼C20の
ガ ソ リ ン留 分 の 選 択 率 は α値0.76で
軽 油 留 分 は α値0.88で 最 高 選 択 率(32mass%)
を 与 え る.α は 反 応 条 件(合 成 ガ ス組 成,温 す るの で,目
最 大(49
度,圧
力)や 触 媒 の 種 類 に よ り変 化
的生 成 物 の 最 適 条 件 を選 択 す る こ と が可 能 と な る.
この よ う な炭 素 鎖 成 長 反 応 につ い て,こ れ まで 多 くの研 究 者 に よ り さま ざま な メ カ ニ ズ ム が提 案 され て い るが,メ チ レ ン(CH2)を で あ る.図3.24に よ びH2が,そ
中間 体 とす る説 が 最 も有 力
み られ る よ う に,第 一 段 階 で は,金 属 表 面 に 吸 着 したCOお
れ ぞ れ,C原
が水 素 化 され てCH2やCH3が
図3.23
子 とO原
子 お よ びH原
形 成 され,さ
子 に解 離 す る.次 に,C原
子
らに,こ れ らの 化 学 種 の反 応 に よ り
炭 化 水 素 生成 物 と炭 素 鎖 成 長 確 率(α)と
の 関係
図3.24 炭 素 鎖 成 長 反 応 の メ カニ ズ ム
生 成 したC-C結
合 にCH2が
挿 入 され て,炭 素 鎖 が成 長 す る.最 終 的 に は,パ ラ
フ ィン ま た は オ レ フ ィン が生 成 して,重 合 反 応 は停 止 す る. 図3.24か
ら指 摘 され る よ う に,触 媒 の 役 割 は,COやH2を
さ らに,表 面 炭 素 種(C,CH2な 属 が 広 く研 究 され,Feま Fe触 媒 は つ ね に 少 量 のKの
吸 着 して 解 離 し,
ど)を 水 素 化 す る こ とで あ る.周 期 表 のⅧ 族 金
た はCoを
ベ ー ス と した 触 媒 が 工 業 用 に使 用 され る.
共 存 下 で作 用 し,COが
解 離 しや す くな る一 方,H2
が 吸 着 しに く く な る た め,触 媒 の 水 素 化 能 が低 下 す る.そ の 結 果,生 成 炭 化 水 素 の 分 子 量 が大 き くな り,オ Feよ
レ フ ィ ンの割 合 が増 え る.こ れ に対 して,Co触
り水 素 化 能 が 高 い た め,パ
式(3.19)か
ラフ ィ ンの生 成 を促 進 す る.
ら計 算 で き る よ うに,た
発 熱 量 は1560kJと
な り,FT合
媒は
と えば1モ ル のC10H22が
生 成 す る と きの
成 は非 常 に大 きな 発 熱 反 応 で あ る.工 業 プ ロ セ
ス で は,こ の よ うな熱 を除 去 す る た め の反 応 器 の 形 式 や,温 度 を一 定 に制 御 す る 方 法 な どに お い て,多
くの 工 夫 がみ られ る.触 媒 を流 動 化 させ て 反 応 熱 をす み や
か に分 散 した り,触 媒 と溶 媒 の ス ラ リー を用 い て 反 応 熱 を効 果 的 に除 去 して い る. 後 者 の ス ラ リー床 反 応 器 で は,触 媒 上 に生 成 す る高 融 点 の ワ ック ス が溶 媒 に溶 け る た め,触 媒 表 面 が つ ね に フ レ ッシ ュ な状 態 に 保 たれ,高
い 性 能 を維 持 す る こ と
が 可 能 とな る. FT合 成 で 製 造 され る液 状 生 成 物 は,原 油 由来 の ガ ソ リ ンや 軽 油 に 比 べ て,硫
黄 分,窒 素 分,芳 香 族 化 合 物 を ほ とん ど含 まな い こ と か ら,環 境 に 優 しい 燃 料 と して 注 目 され て い る.し か し,石 炭 の ガ ス化 で 得 られ る合 成 ガ ス を原 料 とす る場 合 に は,石 油 製 品 との価 格 競 争 に は な か な か勝 て ない.そ か ら製 造 され る合 成 ガ ス を利 用 したFT合
こ で,最 近,天 然 ガ ス
成 の 商 業 プ ロセ スが 開 発 され,新
たな
展 開 が 図 られ よ う と して い る.
3.5 石 炭 の利 用 に伴 う地球 環 境 問 題 とそ の対 策 世 界 で消 費 され る石 炭 の約60%は 硫 黄 酸 化物(SOx),窒
発 電 用 と して 燃 や され,二 酸 化 炭 素(CO2),
素 酸 化 物(NOx)を
排 出 して い る.石 炭 の 使 用 量 は発 展 途
上 国 を 中心 に増 加 して い る こ とか ら,こ の よ う な ガ ス排 出 量 の 増 大 は,深 刻 な環 境 破 壊 を引 き起 こす 心 配 が あ る.石 炭 の 利 用 に伴 う煤 塵 や灰 の 問題 も見 逃 せ ない が,こ
こで は,地 球 規 模 の 環 境 問題 の観 点 か ら,CO2,SOx,NOxに
焦 点 を しぼ
り,そ の対 策 の 現 状 と課 題 につ い て考 えて み た い. 3.5.1 二酸 化 炭 素 石 炭 に限 らず 石 油 や 天 然 ガ ス は 燃 焼 に よ りCO2を
排 出 し,そ の 増 大 が地 球 温
暖 化 に 関 係 が あ る と考 え られ て い る.一 方,図3.7で
示 した よ う に,地 球 上 に住
む わ れ わ れ は エ ネ ル ギ ー の90%を 天 然 ガ ス が な け れ ば,わ
これ らの 資 源 に依 存 して お り,石 油,石
炭,
れ わ れ の 生 活 は成 り立 た な い.し た が っ て,環 境 を壊 さ
な い よ うに エ ネル ギ ー をい か に上 手 に使 うか が 大 切 で あ る. まず,こ
れ らの 資 源 を 発 電 用 燃 料 と して利 用 した 場 合,ど
れ だ けのCO2が
排
出 され る か をみ て み よ う.結 果 を図3.25に 示 す.燃 焼 だ けで は な く,採 掘 や わ が 国 へ の 輸 送 の 際 に も,エ
ネル ギ ー を消 費(つ
ま りCO2が
発 生)す
の 点 も考 慮 して い る.図 か ら わ か る よ うに,単 位 熱 量 あ た りのCO2量 れ の 段 階 で も,H/C原
は,い ず
子 比 が 最 も小 さ い 固体 燃 料 で あ る石 炭 で 最 も多 い.そ
合 計 は,石 炭 を1に す る と,石 油 や 天 然 ガ ス で は そ れ ぞ れ0.8と0.6と 炭 が 最 も多 くのCO2を それ で は,CO2発
るの で,こ
の
な り,石
排 出 して い る. 生 量 を減 らす た め に,ど の よ うな方 策 が考 え られ て い るで あ
ろ うか.火 力 発 電 や 工 業 用 ボ イ ラ ー な ど の 排 ガ ス か らのCO2回 ノ ロ ジー や触 媒 化 学 を利 用 し たCO2の の 隔 離 ・貯 留 な ど,多
再 資 源 化,さ
らに はCO2の
くの 方 法 が検 討 され て い る が,最
の 利 用 効 率 を高 め る こ とで あ る.燃 焼 の 項(3.4.2)で
収,バ
イオテ ク
地 中や 海 洋 へ
も現 実 的 な対 策 は,石 炭
述 べ た よ う に,主 要 先 進 国
図3.25
発 電 用 燃 料 か らのCO2排
出量 の比 較
図3.26
発 電 効 率 とCO2排
出量 と の 関係
の 石 炭 火 力 で は,微 粉 炭 燃 焼 を用 い る蒸 気 タ ー ビ ン シ ス テ ム が 中心 で,発 電 効 率 は38∼39%で
あ る.こ の値 は蒸 気 条 件 を厳 し くす る と さ らに数%は
増加す る も
の の,理 論 的 限 界 に ほぼ 近 い.し た が って,発 電 効 率 の 大 幅 な 向 上 を 目指 す た め に は,ま っ た く新 しい シ ス テ ム が 必 要 と な る.そ の 切 り札 の一 つ が,石 炭 ガ ス化 複 合 発 電(IGCC:
integrated gasification combined
で は,ガ ス 化 で 生 成 した 合 成 ガ ス を1300∼1500℃ 電 を行 い,さ
で 燃 焼 させ て ガ ス タ ー ビ ン発
上 が る.
の よ う な効 率 向 上 が,ど の 程 度 のCO2量
発 電 効 率 が現 行 の 石 炭 火 力 の38%か を13%削
らIGCCの44%に
を削 減 で き るか を表 す. 増 加 す る と,CO2排
減 した こ と に な る.地 球 温 暖 化 防 止 会 議(1997年)で
国 の 削 減 目標 が6%で き る.IGCCの
あ る.こ の 方 式
ら に高 温 の 排 熱 を利 用 して 水 蒸 気 を発 生 させ 蒸 気 タ ー ビ ン発 電 を運
転 す る.そ の結 果,発 電 効 率 は44∼48%に 図3.26は,こ
cycle)で
あ る こ と を 考 え る と,13%と
設 定 され た わ が
い う数 字 の 重 要 性 が 理 解 で
開 発 につ い て は,石 炭 処 理 量 が2000∼2500ト
プ ロ ジ ェ ク トが,EUや
出量
ン/日 の商 業 規 模 の
ア メ リカ を 中心 に推 進 され て お り,わ が 国 で も,パ イ ロ
ッ トプ ラ ン トの 運 転 研 究 が1991年
度 か ら5年 間 実 施 され,さ
らに,実 用 化 に 向
け た検 討 が進 め られ て い る.し か し,高 温 高 圧 の気 流 層 ガ ス 化 技 術 の確 立,生 ガ ス の 高温 ク リー ン ア ップ 法 の 開 発,ガ れ た課 題 も多 い.
成
ス ター ビ ンの 高温 ・高 性 能 化 な ど,残 さ
水 蒸 気 や ガ スの ター ビ ンで は,熱 エ ネル ギ ー が電 気 に変 換 され るの に 対 して, 燃 料 電 池(fuel
cell)で は化 学 反 応 を利 用 して 直 接 発 電 が 可 能 で あ る.水
分 解 す る と,H2とO2が
発 生 す るが,こ れ と は逆 にH2とO2を
を電 気
異 な る電 極 上 で 反
応 させ る と,電 気 を取 り出 す こ とが で き る.燃 料電 池 は この 原 理 を利 用 して お り, 電 解 質 と して 溶 融 炭 酸 塩 を用 い る と,ガ ス化 で 生成 した合 成 ガ ス を燃 料 と して 使 用 で き るの で,IGCCと れ て い る.図3.26に 減 率 は30%に
溶 融 炭 酸 塩 型 燃 料 電 池 を組 み 合 わ せ た発 電 方 式 が提 案 さ み られ る よ うに,そ の 効 率 は53%以
達 す る.ま
上 と期 待 され,CO2削
さに夢 の 発電 方 式 とい え よ う.
話 を現 実 に戻 す と,現 在,発
展 途 上 国 の 発 電 効 率 は低 く30%以
下 で あ る.図
3.26の 結 果 は,先 進 国 の 微 粉 炭 火 力 の 技 術 を発 展 途 上 国 へ 移 転 す る こ と に よ り, CO2の
効 果 的 な削 減 が 可 能 で あ る こ と を物 語 っ て い る.し た が っ て,CO2に
ず,以
下 に述 べ るSOxやNOxの
限ら
除 去 に 関 して も,国 際 的 協 力 が不 可 欠 で あ る.
3.5.2 硫 黄 酸 化 物 石 炭 中 の 硫 黄 分 の90%以 はSO2か
上 は燃 焼 過 程 でSOxと
ら成 り,一 部 がSO3で
あ る.SOxは
して 排 出 され る.そ の 大 部 分
土 壌や湖沼 の酸性 化や森林 の破壊
な ど を引 き起 こす 酸 性 雨 の 一 因 と な る.窒 素 酸 化 物 とは 異 な り,SOx量 程 で 抑 制 す る こ と は 困 難 な た め,排 て い る.こ れ が排 煙 脱 硫(flue
ガ ス か らのSOx除
去 法 が 最 も多 く用 い られ
gas desulfurization)技
式 法,乾 式 法 に大 別 され る.そ の な か で は,湿 式 法(wet お り,世 界 中 に設 置 され て い る排 煙 脱 硫 設 備 の 約90%を 湿 式 法 の な か で は,石 灰 石(ま
た は石 灰)/石
を燃 焼 過
術 で あ り,湿 式 法,半 乾 scrubber)が
普 及 して
占め る.
膏 法 が 多 くの 微 粉 炭 火 力 で 採 用
され て い る.そ の理 由 は,石 灰 石(CaCO3)は
地 球 上 の ど こで も比 較 的 容 易 に 入
手 可 能 で,副 産 物 の 石 膏(CaSO4・2H2O)が
ボ ー ド,セ メ ン ト,土 壌 改 良 材 な
ど に利 用 で き,脱 硫 性 能 が す ぐれ て い る か らで あ る.図3.27に
この プ ロ セ ス の
基 本 的 な フ ロ ー シ ー トを示 す.吸 収 塔 内 の 反 応 は 以 下 の 式 で 表 され る.
(3.22) (3.23) (3.24) ま ず,排
ガ ス 中 のSO2は
状 のCaCO3と 2H2Oに
水 に 溶 解 し てH2SO3と
反 応 し てCaSO3を
変 化 す る.こ
与 え,最
な り,次 後 に,CaSO3は
に,H2SO3は
ス ラ リー
酸 化 さ れ てCaSO4
の 脱 硫 法 は 信 頼 性 が 高 く 確 立 し た 技 術 で は あ る が,大
量 の
図3.27
排 煙 脱 硫 プ ロ セ ス(石 Control
Systems,
灰/石 膏 法)の
IEACR/83,
IEA
Coal
フ ロ ー シ ー ト(H. Research,
水 と高 度 の 廃 水 処 理 が 必要 と な る た め,水
Soud:
UK,
Suppliers
of FGD
and
NOx
1995)
を使 わ な い方 式 と して,活 性 炭 や 石 炭
灰 な ど を用 い る乾 式 法 が 開発 され て い る. 排 煙 脱 硫 は 排 ガ ス 中 のSOxを
除 去 す る技 術 で あ るが,流
石 灰 石 を同 時 に流 動 化 す るの で,炉 内 脱 硫(in-bed る(3.4.2項 参 照).式(3.6),(3.7)よ
動層燃 焼で は石炭 と
desulfurization)が
可 能 とな
り,オ ーバ ーオ ール の 反 応 式 は,
(3.25) と表 され るの で,CaCO3とSO2の に な る.し か し,90%以 CaCO3の
Ca/S比
子 比 は1で よ い こ と
す ぎ な い.こ
は2∼4で
あ り,
の よ うに 炉 内 脱 硫 で は,排 煙 脱 硫
必 要 と な り,灰 処 理 量 の コ ス ト増 大 に もつ な が るの で,
を化 学 量 論 値 に 近 づ け る こ と が大 切 な 課 題 と な って い る.
わ が 国 のSOx排 黄 量 が0.5mass%程 50ppm以
ま り,Ca/S原
上 の脱 硫 率 を達 成 す る た め のCa/S比
利 用 率 は25∼50%に
に比 べ て 多量 のCaCO3が
モル 比,つ
出規 制 は世 界 で も例 を み な い ほ ど厳 し く,石 炭 火 力 で は全 硫 度 の 石 炭 を用 い,90%以
上 の 脱 硫 率 に よ り,SOx量
下 に抑 えて い る.世 界 的 に み て も,SOx排
はほぼ
出 基 準 は厳 し く な って お り,
国 際 貿 易 で は全 硫 黄 量 が1mass%以 下 の低 硫 黄 炭 が お も に取 り引 き され て い る. 一方 ,発 展 途 上 国 で は,自 国 に産 出 す る安 価 な 高硫 黄 炭 を使 用 せ ざ る を え ない 現 実 が あ り,そ の 結 果,発 悪 影 響 を及 ぼ す.し
生 す る多 量 のSOxは,そ
の 国 の み な らず 近 隣 諸 国 に も
か し,経 済成 長 に重 点 をお く発 展 途 上 国 に対 して,高 価 な脱
硫 技 術 の移 転 は容 易 で は な い.し
たが って,そ の 国 の状 況 に適 した脱 硫 法 の 開発
が 進 め られ て い る. 先 に 述 べ た よ う に,硫 黄 の 形 態 は 有 機 型 と無 機 型 に 大 別 され る.物 理 的 洗 炭 (physical coal cleaning)は,石
炭 中の 有 機 質 と無 機 の 鉱 物 質 間 に お け る比 重 や
水 へ の 親 和 性 の 違 い に着 目 して,石 炭 を利 用 す る前 に,無 機 硫 黄 中の 黄 鉄 鉱 を除 去 す る技 術 で あ る.こ の方 法 は,元 来,石 炭 中 の 鉱 物 質 量 を減 らす た め に鉱 山 で 広 く行 わ れ て き た が,近 年,無 機 硫 黄 の 除 去 率 の 向 上 を 目的 と して さま ざま な改 良 が 加 え られ て い る.こ れ に対 して,化 学 反応 や 微 生 物 を 用 い る方 法 は,無 機 硫 黄 だ け で な く有 機 硫 黄 の 除 去 に も有 効 で あ る が,い
ま だ 開発 段 階 に あ る.こ の よ
うな コ ール ク リー ニ ン グ法 は,発 展 途 上 国 に お け る事 前 脱 硫 法 の 一 つ と して 期 待 され て い る. 3.5.3 窒 素 酸 化 物 と亜酸 化 窒 素 a. 窒 素 酸 化 物 (fuel)型 NO2の
微 粉 炭 燃 焼 時 に 発 生 す る窒 素 酸 化 物(NOx)は,フ
と サ ー マ ル(thermal)型
総 称 で,高
温 で はNOが
に 大 別 され る.こ お もに 存 在 す る.フ
で あ る石 炭 中の 有 機 窒 素 化 合物(フ ルNOxは,下
ュエ ル 窒 素)に
こ で,NOxと
ュ エ ルNOxは
ュエ ル はNOと 燃 料(fuel)
由 来 す るの に対 して,サ ー マ
記 の よ う に,空 気 中 のN2の 酸 化 に よ る もの で,高 温 ほ ど生 成 しや
す い.
(3.26) 850℃ 前 後 で 運 転 され る流 動 層燃 焼 で は,サ 焼 で 発 生 す るNOx量
の80%以
送機 関 か ら排 出 され るNOxは
ーマ ルNOxは
上 は フ ュエ ル 型 で,一
生 成 しな い.微 粉 炭 燃
方,自 動 車 や バ ス な ど の輸
ほ とん ど が サ ー マ ル 型 で あ る.こ れ らのNOxが
化 学 ス モ ッグ や酸 性 雨 の 原 因 物 質 の 一 つ で あ る こ と は よ く知 られ て い る.
表3.4 石 炭 の 燃 焼 に お け る お も なNOx削
減技 術
光
図3.28 低NOxバ
表3.4に
示 す よ う に,微
(combustion
ー ナの 概 念 図 とNO生
粉 炭 燃 焼 に お け るNOx削
modification)と
排 煙 処 理(flue
焼 の 前 段 で は 熱 分 解 が 起 こ り,揮 ュ エ ル 窒 素 の 一 部 も,こ す る.燃
の 過 程 で 揮 発 分 窒 素(含
の 酸 化 を 抑 制 してNOx量
に あ る.図3.28に,火
減(脱
れ て い る.ゾ
ー ンAで
焼 し てNOが
発 生 す る.こ
ー ナ(low-NOx
ず 熱 分 解 に よ り揮 発 分 が 放 出 され,そ
の 初 期 過 程 を 高 温 に し,か に ゾ ー ンBで
転 化 す る.ゾ
は,NOの
ー ンCとDで
ー ンDに
が 抑 え ら れ,一
方,式(3.28)∼(3.32)は
れ に 対 し て,リ
バ ー ニ ン グ(reburning)法
概
つ,燃
の一 部が燃
料 過 剰(空
気 不 足)
一 部 は低 分 子 の 炭 化 水 素 ラ ラ ジ カ ル に 還 元 さ れ,揮
.二 段 燃 焼(two-stage
次 空 気 を 不 足 の 状 態 に し,ゾ
burner)の
こ に燃 焼 改 善 の 基 本 原 理 が網 羅 さ
ジ カ ル と 反 応 し て,CN(HCN)やNH(NH3)の
ー の 燃 焼 が進 行 す る
して 脱 離
の 大 部 分 を 占 め る フ ュエ ル 型 を減 らす こ と
成 に か か わ る 反 応 を示 し た が,こ
窒 素 もCNやNHに
焼改善
分 解 を促 進 し て 揮 発 分 窒 素 量 を 増 や す と
念 図 とNO生
に す る こ と が 重 要 で あ る.次
術 は,燃
分 類 され る.燃
窒 素 フ ラ グ メ ン ト)と
炎 内 で 脱 硝 を 行 う低NOxバ
は,ま
硝)技
gas treatment)に
発 分 が 放 出 さ れ る(3.4.1項,図3.15)が,フ
焼 改 善 の 基 本 的 な 考 え 方 は,熱
と も に,そ
成 に関 与 す る反 応
は,そ
れ ぞ れNOの
combustion)法
で は,ゾ
二 次 空 気 を 吹 き 込 む.そ 促 進 さ れ,NOx発 で は,使
発分
還 元 とチ ャ ー ンAで
一
の 結 果,式(3.27)
生 量 は 低 下 す る.こ
用 す る石 炭 の 一 部 また は天
然 ガ ス を ゾ ー ンCに
投 入 し,NOの
還 元 に 用 い る.燃
焼 改 善 で は,低NOxバ
ナ と 二 段 燃 焼 ま た は リバ ー ニ ン グ の 組 み 合 わ せ に よ り,70%ま
ー
で の脱硝 率が得
ら れ る. 表3.4に
み られ る よ う に,も
脱 硫 と 同 様 に,排 さ れ な い.現
う 一 つ のNOx削
ガ ス 中 のNOxを
減 技 術 が 排 煙 処 理 法 で あ る.排
除 く 方 法 で,フ
煙
ュエ ル 型 も サ ー マ ル 型 も区 別
在 の 主 流 は 選 択 接 触 還 元 法(selective
catalytic reduction)で
排 ガ ス を ア ン モ ニ ア と と も に 触 媒 層 に 通 し,NOxをN2に
あ り,
還 元 す る.
(3.34) (3.35) 酸 化 バ ナ ジ ウ ム(V2O5)/酸 400℃
で 反 応 を 行 う.わ
80∼90%の
化 チ タ ニ ア(TiO2)系
が 国 で 開 発 さ れ た こ の プ ロ セ ス は,燃
高 い 脱 硝 率 が 達 成 で き る の で,諸
が 大 型 に な り 高 価 で あ る.触 (selective
触 媒 を お も に 使 用 し,300∼
non-catalytic
焼 改 善 と比 較 して,
外 国 に 普 及 し て い る.反
媒 を 用 い な い 比 較 的 簡 単 な 方 法 は,無
reduction)で
あ る.還
り に 尿 素 が 使 用 され る 場 合 も あ り,反
元 剤 と し て,ア
面,装
置
触媒 還元法
ン モ ニア の か わ
応 式 は 以 下 の よ う に 表 さ れ る.
(3.36) 接 触 還 元 法 に 比 べ て,反 50%と
応 温 度 は900∼1100℃
低 い が,設 備 は 安 価 で あ る.し
と高 い.一 方,脱
硝 率 は30∼
か し,接 触 還 元 と同 程 度 の 性 能 を得 る に
は,3∼4倍
量 の 還 元 剤 が必 要 とな り,亜 酸 化 窒 素(次 項 参 照)の 発 生 も起 こ る.
現 在,わ
が国 の 多 くの石 炭 火 力 発 電 所 で は,燃 焼 改 善 技 術 と選 択 接 触 還 元 法 と
の組 み 合 わ せ に よ り,厳 し いNOx規
制 に対 応 して お り,50ppm以
下 とい う低 い
排 出 濃 度 を実 現 して い る. b. 亜 酸 化 窒 素 ら,最 近,地 N2O排
亜 酸 化 窒 素(N2O)はCO2と
同様 に温 室 効 果 を持 つ こ とか
球 環 境 へ の 影 響 が 注 目 され る よ う に な っ た が,人 間 の 活 動 に伴 う
出量 は 自然 界 か らの もの よ り小 さい.前 者 で は,石 油 ・石 炭 ・天 然 ガ ス
の燃 焼 時 に発 生 す るN2O量 い が,3種
の 合 計 は,自 動 車 や 船 な どの 輸 送 機 関 に比 べ て 少 な
の 化石 エ ネ ル ギ ーの な か で は,石 炭 の 寄 与 が最 も大 き い.
N2Oは1000℃
以 上 で は容 易 に分 解 す る の で,微 粉 炭 燃 焼 で は無 視 で き る ほ ど
小 さい.一 方,流 動 層 燃 焼 で は50∼100ppmのN2Oが
発 生 す る.こ の 値 は,上
で 述 べ た 無 触 媒 還 元 法 の 使 用 時 よ りか な り高 い.流 動 層 燃 焼 で は,N2OとNOx は い ず れ もフ ュ エ ル窒 素 に基 づ くの で,前 者 を減 らそ う とす る と後 者 が増 加 して
し ま う トレ ー ドオ フ の 関 係 が,多 高 くす れ ば,N2Oは
くの場 合 に観 察 され る.た と え ば,燃 焼 温 度 を
減 少 す る もの のNOxが
増 加 し,石 灰 石 に よ る脱 硫 効 率 は低
下 す る.し た が っ て,こ れ らの 汚 染 物 質 の 同 時除 去 に は,多
くの 課 題 が残 され て
い る.現 在,石 炭 の 利 用 量 に 対 す る流 動 層 燃 焼 の 割 合 は小 さい の で,N2Oは 題 にす る ほ どで は な い が,将
来 に 向 け てN2Oを
問
削減 す るための最適 な方法 の開
発 が必 要 とな るで あ ろ う.
演習問題 3.1 石 炭 の 資 源 的 特 徴 に基 づ き,そ の 利 用 面 で の 得 失 を 石 油 と比 較 せ よ. 3.2 工 業 分 析 の 結 果,水 た.そ
分,灰
の 燃 料 比 を 求 め,石
3.3 元 素 分 析 の 結 果,炭 mass%(daf)で
分,揮
発 分 は,そ
れ ぞ れ2.5,5.3,15.2mass%と
なっ
炭 を 分 類 せ よ.
素,水
素,窒
あ っ た.コ
素,硫
黄 は,そ
れ ぞ れ80.5,4.6,1.8,0.6
ー ル バ ン ド上 で こ の 石 炭 を分 類 せ よ.
3.4 褐 炭 と歴 青 炭 の 性 状 や 化 学 構 造 を比 較 せ よ. 3.5 共 有 結 合 と非 共 有 結 合 につ い て,構 3.6 粘 結 性 に つ い て,そ 3.7 燃 焼 方 式 は3種
の 意 味,石
類 に 大 別 され る.そ
3.8 CO,CO2,H2O,CH4の
造 上 の 差 異 や 加 熱 時 の 挙 動 の 違 い を述 べ よ.
炭 の 種 類 に よ る違 い,利 用 上 の 重 要 性 を考 察 せ よ. れ ぞ れ の 特 徴 を述 べ よ.
標 準 生 成 エ ン タ ル ピ ー 変 化 は,そ
−393 .7,−242.0,−74.89kJ/molで
あ る.こ
れ ぞ れ,−110.6,
れ らの 値 を用 い て,水
蒸気 ガス化
や シ フ ト反 応 の 反 応 熱 を 求 め よ. 3.9 石 炭 か らのH2の
製 造 法 に つ い て 述 べ よ.
3.10 H2OとO2(H2O/O2比2)を
用 い て,1400℃,3.0MPaの
条 件 下で ガ ス化 した
と き の 平 衡 ガ ス 組 成 を 予 測 せ よ. 3.11 水 蒸 気 ガ ス 化 に よ り,石 炭 か ら直 接CH4を
製 造 す る こ と が 可 能 で あ る.ど
のよ
う な 反 応 条 件 を 設 定 す れ ば よ い か. 3.12 液 化 反 応 が 理 想 的 に 進 行 す る と仮 定 して,1000kgの ら れ る か.そ の と き,何m3の そ れ ぞ れCH0.7,CH1.8と 3.13 石 油,石
炭,天
比 較 せ よ.た
3.14 CO2に
石 油 が得
水 素 が 必 要 か.た だ し,石 炭 と石 油 の 元 素 組 成 は,
し,石 炭 中 の 水 分 と灰 分 は0と す る.
然 ガ ス を完 全 に 燃 焼 させ た と き,発 熱 量 あ た りのCO2発 だ し,各
々 の 元 素 組 成 をCH1
生 成 エ ン タル ピ ー 変 化 を,そ お,石
石 炭 か ら何kgの
.8,CH0.7,CH4と
生量 を
し,こ れ ら の 標 準
れ ぞ れ+2.5,+13.8,−78.49kJ/molと
す る.な
炭 中 の 水 分 と 灰 分 は0と す る. よ る チ ャ ー の ガ ス 化 は,CO2の
固 定 化 や 排 出 量 削 減 に 貢 献 で き る か.こ
の 点 を 考 察 せ よ. 3.15 流 動 層 に よ り,100ト 分 を含 む)を
ン の 石 炭(無
水 基 準 で1mass%の
完 全 に 燃 焼 させ た と き,発 生 す るSO2を
硫 黄 と10mass%の
灰
す べ て 除 去 す る た め に は,
何 トンのCaCO3が
必 要 か.そ
3.16 排 煙 脱 硝 法 の 特 徴 を述 べ よ.ま
の 結 果,残 た,微
査 の 量 は 何 トン に な る か.
粉 炭 火 力 発 電 所 で は,一
は 排 煙 脱 硫 装 置 の 前 段 に 設 備 され て い る.そ
の 理 由 を 考 察 せ よ.
般 に,こ
の 装置
4 天然ガス資源化学
4.1 天 然 ガ ス と は 何 か 天 然 ガ ス(natural
gas)と
は,天 然 に存 在 す る常温 常圧 で 気 体 状 態 の 可 燃 性 炭
化 水 素 化 合 物 の 総 称 で あ る.一 般 に80%以 ∼5個 の炭 化 水 素 と ,二 酸 化 炭 素,硫
上 が メ タ ンで,そ
化 水 素,水,窒
の 他 に 炭 素 数 が2
素 な どが 含 まれ る.天 然 ガ
ス は,地 球 環 境 に 優 しい エ ネル ギ ー 資 源 で あ る と 同時 に,化 学 工 業 原 料 と して も 利 用 され て い る.さ ら に,石 油 ほ ど産 出 地 域 が偏 在 して い な い こ と,わ が 国 の近 海 も含 め て 膨 大 な 未 開 発 資 源 が あ る こ と な ど,今 後 の 開発 と利 用 促 進 が 期 待 され て い る有 機 資源 で あ る. 本 章 で は,ま ず,天
然 ガ スの 分 類 と起 源 につ い て 解 説 し,続 い て 資 源 の 地 域 分
布 と埋 蔵 量 お よび 生 産 量 につ い て 紹 介 す る.そ の 後,エ
ネル ギ ー 資 源 お よび 化 学
工 業 原 料 と して の特 徴 と利 用 状況 な ど につ い て述 べ る. 天 然 ガ ス の 分 類 は さ ま ざ ま な 観 点 か ら 行 わ れ て い る.ま 資 源 と して 大 量 に 利 用 さ れ て い る 在 来 型 天 然 ガ ス と,開 型 天 然 ガ ス と に 分 類 され て い る.次 液 化 す る 成 分(炭
素 数3個
gas)と
圧 に よ り比 較 的 容 易 に
含 む 湿 性 ガ ス(wet
と 一 緒 に 産 出 す る 水 溶 性 ガ ス(dissolved-in-water-type
グ ヘ ッ ドガ スcasing ス(non-associated
head gas;ガ
す る 炭 田 ガ ス(coal-field
gasと
gas;油
も い う),少
ス 田 ガ ス,構 gas;石
gas)と,ほ
に 分 類 さ れ て い る.
産 量 の 統 計 は 産 出 形 態 に 基 づ い て 行 わ れ て お り,そ
も に 産 出 す る 油 溶 性 ガ ス(associated
用 度 の 観 点 か ら,
発が進 んでいない非在来
成 の 面 か ら,加
以 上 の 炭 化 水 素)を
と ん ど メ タ ン か ら な る 乾 性 ガ ス(dry ま た,生
に,組
ず,利
natural
田 ガ ス,石
の 場 合 は,地 gas),原
油 随 伴 ガ ス,ケ
下水
油 とと ーシ ン
量 の液 体 と と も に産 出す る遊 離 性 ガ
造 性 ガ ス と も い う) ,石 炭 と 一 緒 に 産 出
炭 ガ ス と も い う)に
分 類 さ れ て い る.そ
こ で,
次 に天 然 ガ スの 起 源 と分 類 につ いて 少 し くわ し く説 明す る. 4.1.1 在 来 型 天 然 ガ ス a. 油 田 ガ ス
油 田 ガ ス とは,地 殻 中で 原 油 と共存 して い る ガ ス で,原 油 中
に 溶 解 して い る溶 解 ガス(dissolved 存 在 す る ガ ス キ ャ ップ ガ ス(gas-cap
gasあ る い はsolution gas)と gas)が
油層の上部 に
あ り,そ の 起 源 は 原 油 と同 じで あ
る と考 え られ て い る. す なわ ち,ま ず,主
と して生 物 の 死骸 が 地 殻 成 分 の 触 媒 作 用 と地 圧 お よび 地 熱
の 働 きで ケ ロ ー ジ ェ ン(kerogen)と
よ ば れ る有機 高 分 子物 質 に変 化 す る.ケ ロ
ー ジ ェ ン が1∼2%以
上 含 まれ た 堆 積 岩(お
もに 泥 岩)が
石 油 根 源 岩(source
rock of petroleum,母
岩 と も い う)と な り,そ の な か の ケ ロ ー ジ ェ ン が分 解 され
て 天 然 ガ ス を生 成 す る. この 分 解 は,地 温 が50℃ 以 下 の 比 較 的低 深 度(∼1000m)の に よ る発 酵 が 主 と な る が,よ とな り,200℃
地殻 中では微生物
り深 い(地 下 数 千m)地 温 の 高 い領 域 で は 熱 分 解 が主
以 上 で は メ タ ン ガ ス が主 成 分 とな る よ うな分 解(メ
metagenesis)が
起 こ る.し
た が っ て,ケ
タ ジ ェ ネ シ ス,
ロ ー ジ ェ ン の組 成 や 分 解 履 歴 に よ りガ
ス の 組 成 が 異 な り,こ れ が 産 出 地 域 に よ る天 然 ガ ス組 成 の差 とな って 現 れ る. 天 然 ガ ス が,熱 分 解 に よ り生 成 した ガ ス(thermogenic 発 酵 に よ り生 成 した ガ ス(biogenic
gas)な
gas)な
の か,微 生 物
の か を判 断 す る基 準 は 二 つ あ る.一
つ は ガ スの 組 成 で あ り,微 生 物 発 酵 で は ほ とん ど メ タ ンの み が生 成 す る こ とか ら, メ タ ン(C1)と
炭 素2個 以 上 か らな る炭 化 水 素(C2+)と
上 の 場 合 は微 生 物 発 酵 起 源,50未
の 比C1/C2+が1000以
満 の 場 合 は熱 分 解 起 源,そ
の 中 間 の 値 を示 す
場 合 は 両 者 が混 合 した ガ ス と判 断 され る.も う一 つ の 判 断 基 準 は,含 ンの 炭 素13(13C)同
まれ る メ タ
位 体 組 成 で あ る.す な わ ち,微 生 物 発 酵 は 多段 階 の 反 応 過
程 で あ る た め,同 位 体 効 果 の影 響 が 大 き く出 る結 果,13Cの
存 在 比 が 異 常 に小 さ
く な る.標 準 試 料 と して ピ ー デ ィ ーベ レム ナ イ ト(PDB)と
よ ば れ る化 石 に含
まれ る石 灰 質 の 殻 を用 い る と,炭 素 同位 体 組 成 δ13C(通 はパ ー ミル と読 む)は,試
料 の13C/12CをA,
常 千 分 率 ‰ で 表 す,‰
PDBの13C/12CをBと
す る と次 式
で表 され る.
この 値 が −50以
下 の 場 合 は微 生 物 発 酵 起 源,−50∼
の メ タ ンで あ る と判 断 され る.
−30の 場 合 は熱 分 解 起 源
図4.1 貯留構造 の模式図
石 油 根 源 岩 中 で生 成 し た ガ スや 原 油 は,比 重 が 小 さい た め砂 岩 や 石 灰 岩 な どの 浸 透 性 の あ る地 層 を上 昇 し,帽 岩(cap
rock)あ
るい は シ ール(seal)と
る緻 密 な泥 岩 な ど が上 部 に存 在 す る貯 留 構 造(図4.1)に ガ ス成 分 は,貯 留 構 造 内 の 貯 留 岩(reservoir
よば れ
集 積 す る.
rock)中
で 石 油 層 に溶 解 した 溶
解 ガ ス と して存 在 す る が,温 度 と圧 力 の 条 件 に よ り過飽 和 状 態 に な る とガ ス と し て遊 離 し,石 油 層 の 上 部 に ガ ス キ ャ ップ ガ ス層 を形 成 す る. な お,油
田 ガ ス は湿 性 ガ ス で あ り,プ ロパ ン,ブ
た もの を液 化 石 油 ガ ス(liquefied petroleum b. ガ ス 田 ガ ス
gas:
タ ン を分 離,加 圧 し,液 化 し LPG)と
よぶ.
ガ ス 田 ガ ス と は,油 田 や 炭 田 とは 関 係 の な い ガ ス 田(gas
field)と よば れ る場 所 か ら産 出 す る天 然 ガ スで あ る .熱 分 解 ガ ス や 微 生 物 発 酵 メ タ ンが地 中 を移 動 して貯 留 構 造 を もつ 地 殻 内 に貯 ま っ た もの と考 え られ て い る. c. 水 溶 性 ガ ス
水 溶 性 ガ ス と は,地 下1000m程
度 の 浅 い堆 積 岩 層 内 の 地
下 水 中 に溶 存 して い る微 生 物 発 酵 メ タ ンを い う.非 在 来 型 天 然 ガ ス に 分 類 され て い る場 合 もあ る.
図4.2 メ タ ンハ イ ドレ ー トの 分 子 構 造(地
質 調 査所 編:地
質 ニ ュ ー ス,
通 巻510号,6,1997)
4.1.2 非 在 来 型 天 然 ガ ス a. 炭 田 ガ ス
炭 田 ガ ス と は,お
もに 樹 木 の 遺 骸 か ら生 成 した ケ ロ ー ジ ェ ン
が石 炭 化 す る際 に発 生 した ガ ス で,地 熱 に よ り高 度歴 青 炭 か ら無 煙 炭 へ 変 化 す る 際 に 多 く生 成 す る.炭 層 か ら上 部 の貯 留 構 造 に移 動 して 集 積 して い る遊 離 ガ ス と, 炭 層 内 で 石 炭 中 の微 細 孔 や 割 れ 目 な ど に含 まれ た り石 炭 に吸 着 して 存 在 す る吸 着 ガ ス に分 類 され る.後 者 は メ タ ン が95%以 ン(coal-bed
methane)と
略 記)と
ー ル ベ ッ ドメ タ
よ ば れ る新 エ ネル ギ ー資 源 と して注 目 され て い る.
b. メ タ ン ハ イ ドレ ー ト MHと
上 の 割 合 を 占め,コ
メ タ ンハ イ ドレ ー ト(methane
hydrate,以
は,特 定 の 温 度 圧 力条 件 下 で 篭 状 構 造 の 水 に メ タ ンが取 り込 まれ
て で き る 固 体 結 晶状 の 包 接 化 合 物 で あ る(図4.2).MH結
晶 の 単 位 格 子 は46個
の 水 分 子 と8個 の メ タ ン分 子 で 構 成 され,理 想 分 子 式 はCH4・5.75H2Oで れ る.こ の 状 態 でMH MHが
1m3あ た り標 準 状 態 で約170m3の
表さ
メ タ ン が含 まれ て い る.
安 定 に存 在 す る条 件 は,水 中 の 共 存 ガ ス や塩 類 の種 類 お よ び 濃 度 に よ り変
化 す る が,低 温 高圧 下 で 安 定 で あ る(図4.3).こ 帯 の 地 下 数 百m程 MHは
下
度 の 地 層 や,水
深500mよ
の た め,MH資
源 は永久凍土地
り深 い 海 底 面 下 に存 在 して い る.
さま ざ まな 大 き さと形 状 で産 出 し,そ れ らを含 む地 層 の 下 に フ リー ガ ス層
と よ ばれ る天 然 ガ ス を含 む 地 層 が存 在 す る場 合 も多 い.ま た,MHは メ タ ン と水 に 分解 す るた め,火 一 方,現
常温常圧 で
をつ け る と燃 え る(図4.4).
時 点 で は 海 底 面 下 に あ る固 体 物 質 を液 体 ま た は 気 体 に 変 化 させ て地 上
に引 き上 げ て利 用 す る こ と が技 術 的 に困 難 な た め,資 源 と して の 開 発 は進 ん で い ない.
図4.4 燃 え る氷:メ 書 編:地
タ ンハ イ ドレ ー ト(地 質 調 査
質 ニ ュー ス,通
巻510号,表
紙写
真,1997)
図4.3 メ タ ンハ イ ドレー トの 相 平 衡 図(小 男:化
学,54(8),31,1999,改
ま た,MHは0℃,30気 準 状 態 ガ ス の約1/150に
林秀 変)
圧 程 度 の 温 度 圧 力 条 件 下 で 存 在 可 能 な 上,体
積 は標
な る こ と か ら(ハ イ ドレー ト結 晶 内 空 隙 の メ タ ン充 足 率
が理 論 量 の70∼80%と
して 計 算 した値),天
方 法 が研 究 され て い る.ま た,MHを
然 ガ スの 運 搬,貯
蔵 用 に利 用 す る
氷 の な か に 分 散 した 状 態 にす る と,氷 が圧
力 容 器 の働 き をす る た め大 気 圧 下 で も分 解 が抑 制 され る とい う報 告 もあ り,今 後 の 研 究 が 期待 され て い る. c. 無 機 起 源 の 深 層 天 然 ガ ス 存 在 す るか,そ
無 機 起 源 の 深 層 天 然 ガ ス とは,地 球 深 層 部 に
こか ら上 昇 して く る ガ スで あ り,そ の起 源 は,地 球 が炭 化 水 素 を
多 く含 む星 雲 ガ ス か ら形 成 され た 際,内 部 に大 量 に取 り込 まれ た 炭 化 水 素 で あ る と考 え られ て い る.海 底 の 熱 水 噴 出 口 な どか ら噴 出 して い る熱 水 中 の メ タ ンが こ の よ うな起 源 の もの で あ る と い わ れ て い るが,存 在 が証 明 され て い るわ け で は な い. d. タ イ トフ ォー メ ー シ ョン ガ ス
タ イ トフ ォー メ ー シ ョン ガ ス とは,浸 透
率 が 小 さい 緻 密 な地 層 に含 まれ る天 然 ガ ス の こ とで あ り,タ イ トサ ン ド(硬 質 砂 岩)ガ
ス や シ ェ ール(頁 岩)ガ
ス が あ る.ガ ス の 浸 透 性 が低 い た め採 取 速 度 が遅
くな り,経 済 的 に採 取 す る の が 難 しい場 合 が 多 い.こ の ため,ま
だ十 分 開 発 が進
ん で い な い. e. ジ オ プ レ ッ シ ャ ー ド ガ ス methane)と
は,水
(abnormal
溶 性 ガ ス の 一 種 で,上
pressured
∼10m3の
ジ オ プ レ ッ シ ャ ー ド ガ ス(geopressured
water)に
部 地 殻 の 圧 力 を受 け た 異 常 高 圧 水
溶 存 す る た め ガ ス 濃 度 が 高 く,水1m3あ
ガ ス が 溶 け て い る と い わ れ て い る .資
た り3
源 と して の 利 用 は ほ とん ど行 わ
れ て い な い.
4.2 天然 ガ ス資 源 の分 布 と埋 蔵 量 ・生産 量 4.2.1 在 来 型 天 然 ガ ス 資源 の埋 蔵 量 ・生 産 量 世 界 の 在 来 型 天 然 ガ ス埋 蔵 量 の 地 域 分 布 を図4.5に 示 す.旧 39%)と
中 東(約35%)に
偏 在 して い な い.ま 兆m3(1999年
多 く埋 蔵 され て い る が,石 油(約65%)ほ
た,確 認 可 採 埋 蔵 量(proved
末 現 在)と
ソ連 東 欧 諸 国(約 ど 中東 に
recoverable reserves)は145.7
見 積 も られ て お り,可 採 年 数 も約62年
で石油 以上 に
な っ て い る.こ の 量 は エ ネル ギ ー換 算(原 油 換 算)で 石 油 の確 認 可 採埋 蔵 量 の 約 90%に
相 当 し,さ
330兆m3と
らに,究 極 可 採 埋 蔵 量(ultimate
recoverable
reserves)は
推 定 され て い る こ とか ら,天 然 ガ ス は在 来 型 に限 っ て も石 油 に 匹 敵
す る資 源 で あ る と い える. こ こ で,本 節 で 用 い られ る種 々 の 用 語 につ い て 解 説 して お く.ま ず,"埋 蔵 量" とい う言 葉 は,そ
の存 在 が 信頼 で き る手 法 に よ り確 認 され て い る場 合 に用 い,そ
れ 以 外 の推 測 値 の 場 合 は"資 源 量"と い う言 葉 を用 い る.さ
らに,"埋 蔵 量"は,
対 象 と な る ガ ス 層 内 の ガ ス総 量 を意 味 す る"原 始 埋 蔵 量"(original
gas-in-place)
と,現 在 の 技 術 で経 済 的 に 回収 利 用 可 能 な 量 を意 味 す る"確 認 可 採 埋 蔵 量",さ
図4.5 在 来型 天 然 ガ ス 資 源 の 確 認 可 採 埋 蔵 量(1999年 (Oil & Gas Journal,
Dec.20,
1999よ
り作 成)
末現 在)
ら に 将 来 的 に み て 技 術 的 経 済 的 に 生 産 可 能 に な る と 予 想 され る 量 を 含 む"究 採 埋 蔵 量"に ま た,"可
分 類 さ れ る. 採 年 数"(ratio
可 採 埋 蔵 量(R)を
of reserves
年 間 生 産 量(P)で
エ ネ ル ギ ー 換 算 と は,各
ガ ス の 場 合,平
は,年
割 っ た 値 で,R/Pと
略 記 さ れ る.
お,欧
の で,1億m3が
す る.天
然
原 油10.6万m3
米 の 統 計 で は 原 油 が バ レ ル 単 位(bbl,1bbl=
然 ガ ス が 立 方 フ ィ ー ト単 位(cf,1cf=0.0283m3)で
る こ と が あ る.た
と え ば,145.7兆m3は5148
Tcf
表 記 され て い
(trillion cubic feet, trillion=
な る.
世 界 の 天 然 ガ ス 生 産 量 は1997年 と 約2倍
に 増 え て い る.ま
た,一
で2.3兆m3と
な っ て い る が,1970年
次 エ ネ ル ギ ー(primary
energy;化
の 自 然 界 に 存 在 す る エ ネ ル ギ ー で 人 間 が 利 用 可 能 な も の)の ほ と ん ど の 国 で 増 加 し て お り,利
界 全 体 の0.1%に
と 比 較 的 多 い.ま あ り,そ
す ぎ な い が,水
た,わ
の 約22%が
な か に 占 め る割 合 も
末 時 点 で 約400億m3程
が 国 に お け る 天 然 ガ ス 生 産 量 は1997年
水 溶 性 ガ ス で,約76%が
は か な り 多 い も の と 考 え ら れ て い る.わ
度 で23億m3で
ガ ス 田 ガ ス で あ る.現
が 国 で は,ガ
日本 の 地域 別 天 然 ガ ス 生 産 量(1997年 学 会 誌,78(7),540,1999よ
度 であ
溶 性 ガ ス の 確 認 可 採 埋 蔵 量 は7000億m3
ガ ス を 商 業 的 に 生 産 し て い る の は 世 界 でわ が 国 だ け で あ る が,世
図4.6
と比 べ る 石燃料 な ど
用 が 拡 大 し て い る.
わ が 国 の ガ ス 田 ガ ス の 確 認 可 採 埋 蔵 量 は1997年 り,世
度 末 時 点 の確 認
油 の 平 均 発 熱 量 は3.87×107kJ/m3と
均 発 熱 量 は4.10×104kJ/m3な
に 相 当 す る こ と に な る.な 0.159m3),天
to production)と
種 エ ネル ギ ー資 源 の 量 を平 均 発 熱 量 を基 準 に して原 油
の 量 に 換 算 す る 方 法 で あ る.原
1012)と
極 可
り作 成)
在,水
溶性
界 全 体 の資 源 量
ス を分 離 した地 下 水 か ら ヨ
度)(日
本エネルギ ー
ウ素 を分 離 生 産 して い るた め,コ ス ト的 に 水 溶 性 ガ スの 商 業 的 生 産 が 可 能 に な っ て い る.わ が国 に お け る天 然 ガ ス生 産 量 の 地 域 分 布 を図4.6に 示 す が,新 潟,千 葉,福
島 の 産 出量 が 多 い.一 方,量
約97%を
的 に は 天 然 ガ ス総 供 給 量 の 約3%に
す ぎず,
輸 入 に 頼 って い る.
4.2.2 非 在 来 型 天 然 ガ ス 資 源 の 資 源 量 非 在 来 型 天 然 ガ ス の 資 源 量 は,ま だ 調 査 が 十 分 行 わ れ て い な か っ た り,調 査 法 自 体 が 確 立 され て い な い場 合 もあ り,各 種 資 料 に報 告 され て い る値 に もか な り幅 が あ る.以 下,資 源 量 が 推 定 され て い るガ ス につ い て 利 用 状 況 を 含 め て 紹 介 す る が,現 時 点 で も推 定 資 源 量 は膨 大 で あ り,在 来 型 天 然 ガ スの 確 認 可 採 埋 蔵 量 以 上 の 資 源 量 が 存 在 す る とい わ れ て い る. a. コ ー ル ベ ッ ドメ タ ン
コー ル ベ ッ ドメ タ ンの 資 源 量 は,石 炭 の 資 源 量 と
比 例 す る と考 え られ,そ の 分 布 も石 炭 と同様,ロ シ ア,中 国,米 国,カ ナ ダ,オ ー ス トラ リア な ど に 多 い と考 え られ る .世 界 の 資 源 量 に つ い て は,少 な く と も 84兆m3以
上 存 在 す る も の と推 定 され て い る.米 国 で は年 間230億m3以
上生産
され て お り,中 国 で も膨 大 な資 源 量 が あ る こ とか ら開 発 が進 め られ て い る.わ が
図4.7 世 界 に お け るメ タ ンハ イ ドレー トの 分 布 図(日 p.24,日
本 エ ネル ギ ー学 会 編:よ
く わ か る 天 然 ガ ス,
本 エ ネル ギ ー学 会,1999)
○ および●は海域,□ および■は陸域 を表す.● および■ は試料 が採取 されてい る場所で あり, ○お よび□は存在 が推定 されてい る場所で ある.
図4.8 日本 周 辺 海 域 の メ タ ンハ イ ドレ ー ト分布(エ
国 で は,コ
ネル ギ ー総 合 工 学研 究 所 ホ ー ムペ ー ジ,改 変)
ール ベ ッ ドメ タ ン は炭 鉱 爆 発 や ガ ス 突 出 な どの 原 因 と もな るた め,石
炭 の 採 掘 前 に ボ ー リ ング な ど に よ り排 除 して お り,資 源 と して の生 産 は北 海 道 で 年 間 約1000万m3(1997年 度)採 取 され て い る程 度 で,ほ と ん ど行 わ れ て い ない. 一 方 ,資 源 量 は 在 来 型 天 然 ガ ス の 確 認 可 採 埋 蔵 量 の 約6倍(2500億m3)程 度あ る もの と推 定 され て い る. b. メ タ ン ハ イ ド レー ト
メ タ ンハ イ ドレ ー トは,フ
来 型 天 然 ガ ス の 究 極 可 採 埋 蔵 量 に 匹敵 す る400兆m3以
リー ガ ス を含 め る と在
上 の 資 源 量 が あ る もの と
見 積 も られ て お り,陸 域 で は シベ リアや ア ラス カ の 永久 凍 土 地 帯 に,海 域 で は オ ホ ー ツ ク海,メ
キ シ コ 湾 や わ が 国 周 辺 に 存 在 して い る(図4.7,図4.8).わ
で も現 在 の 天 然 ガ ス年 間 消 費 量 の100年 が あ る と推 定 され て お り,ご イ ドレ ー ト含 有 率(約20%)の
分 以 上 に相 当 す る7兆m3以
が国
上 の資源量
く最 近 で も,浜 松 市 沖 の 海 底 に世 界 最 高 の メ タ ンハ 砂 岩 層 が発 見 され て い る.こ の た め,21世
紀中
頃 に は 天 然 ガ ス資 源 の 中心 的 役 割 を果 た す こ とが 期 待 され て お り,採 掘 技 術 の 開 発 が 待 た れ て い る.
4.3 天 然 ガ ス の輸 送 法 と貿易 4.3.1 天 然 ガ ス の 輸 送 法 天 然 ガ ス を そ の ま ま の状 態 で 輸 送 す る方 法 は,ガ ス の密 度 が 小 さい た め 経 済 的 に成 り立 た な い.そ
の た め,天 然 ガ ス は8MPa程
度 の 高 圧 に して パ イ プ ラ イ ン
図4.9 輸 入LNGの
組 成 例(日
表4.1 LNG中
本LNG会
議:LNG便
覧,p.31,1981よ
り作 成)
の不 純 物 ガ イ ドラ イ ン(日 本 エ ネ
ル ギ ー 学会 天 然 ガ ス部 会 編 ,1999)
に よ り 輸 送 す る 方 法 と,−162℃ natural
gas:
LNG)と
に 冷 却 し て 液 化 し た 液 化 天 然 ガ ス(liquefied
し て 専 用 タ ン カ ー で 輸 送 す る 方 法 に よ り運 搬 利 用 さ れ て
い る.
LNGは CO2やH2Sな
パ イ プ ラ イ ン で 送 られ た 天 然 ガ ス を液 化 して 製 造 され るが,こ ど の酸 性 ガ ス お よび 水 分 を 除 去 す る た め(表4.1),炭
の 成 分 が ほ とん ど含 まれ な い と い う特 徴 が あ る(図4.9)
の際
化水素 以外
.
4.3.2 天 然 ガ スの 貿 易 天 然 ガ ス の 地 域 別 生 産 量 と消 費 量 を 図4.10に ア ジ ア ・大 洋 州,旧
ソ連 ・東 欧 は生 産 量,消
ア フ リカ は ど ち ら も少 な い.ま て お り,残
りの 約20%が
示 す が,西
欧,北
米 ・中 南 米,
費 量 と も に大 き い の に 対 し ,中 東,
た,年 間 生 産 量 の 約80%は
国 際 市場 で 取 引 され て い る.
生 産 国 内 で消 費 され
図4.10
図4.11
天 然 ガ ス の 地 域 別 生 産 量 お よ び消 費量(1997年
度)
(日本 エ ネル ギ ー 学 会 誌,79(3),158,2000よ
り作 成)
世 界 の 主 要 な天 然 ガ ス 貿 易(1996年)(BP統
計,1997年
版 よ り作 成)
図4.11に 世 界 の 主 要 な 天 然 ガ ス貿 易 を示 す が,国 際 貿 易 量 の76%が イ ンに よ り輸 送 され,残
りがLNGタ
わ が 国 は,世 界 のLNG流 ネ シ ア,マ
パ イプラ
ン カー に よ る輸 送 と な っ て い る.
通 量 の60%以
上 を輸 入 して お り,供 給 国 は イ ン ド
レ ー シ ア,ブ ル ネ イ と い っ た 東 南 ア ジ ア諸 国 が約80%を
他 オ ー ス トラ リア,ア ブ ダ ビ,カ タ ール,ア
占 め,そ の
ラス カ な どか ら も輸 入 して い る.
パ イ プ ラ イ ン経 由 の 貿 易 は ロ シ ア とオ ラ ン ダ,ノ ル ウ ェ ーか ら西 欧 へ の 輸 出, お よ び,カ ナ ダか ら米 国 へ の 輸 出 が その ほ と ん ど を 占 め て い る. 4.4 天 然 ガ ス の エ ネ ル ギ ー 資 源 と し て の 環 境 調 和 性 と 利 用 法 天 然 ガ ス の 約90%は
エ ネ ル ギ ー 資 源 と して 利 用 され て い る が,利 用 量 は 年 々
図4.12
地 球温 暖 化 に 対 す る各 種 温 室 効 果 ガ ス の 寄 与 率(IPCC: 第 二 次 評 価報 告 書,1995年12月
よ り作成)
増 大 して い る.そ の 理 由 と して は,オ イル シ ョッ ク以 来 の エ ネ ル ギ ー 源 の 多様 化 へ の要 求 と,環 境 に対 す る配慮 が あ げ られ る. す な わ ち,近 年,地 球 温 暖 化 に よ り気 候 が大 き く変 化 す る こ と や,氷 河 が 融 解 して海 水 面 が 上 昇 す る こ とな どが 懸 念 され て い る.地 球 温 暖 化 の 一 因 と して,人 間 の さま ざ まな 活 動 に伴 い大 気 中 に放 出 され る 二酸 化 炭 素,メ タ ン,亜 酸 化 窒 素, フ ロ ンな ど の い わ ゆ る温 室 効 果 ガ ス(greenhouse
gas)の
濃 度 増 大 が指 摘 され て
い る. 温 室 効 果 ガ ス は,太 陽 光 は通 過 させ るが熱(赤
外 線)を 吸 収 す る ため,結 果 的
に 地 球 表 面 か ら反 射 され る太 陽 光 の赤 外 線 成 分 が大 気 圏 外 に 放 散 す るの を妨 げ , 大 気 温 度 の 上 昇 を 引 き起 こす.図4.12に
図4.13
温室効 果 ガスの地球 温暖 化への寄 与率
ラ イ フサ イ クル 二 酸 化 炭 素 排 出量(日 天 然 ガ ス,p.194,日
本 エ ネル ギ ー学 会編:よ
本 エ ネル ギ ー学 会,1999よ
り作 成)
くわ か る
(世界 全 体)を
示 す が,現 時点 で は二 酸 化 炭 素 の 寄 与 が最 も大 きい こ とが わ か る.
した が っ て,地 球 温 暖 化 を防 ぐた め に 二酸 化 炭 素 発 生 量 を減 らす こ と が要 求 さ れ,省 エ ネ ル ギ ー と と もに基 本 的 に温 室 効 果 ガ スの 発 生 量 が 少 な いエ ネル ギ ー源 へ の 転 換 が要 求 され て い る. 天 然 ガ ス,と 化 物(SOx)を
くにLNGは,燃
焼 時 に酸 性 雨(acid
rain)の
原 因 と な る硫 黄 酸
原 単 位(CO2
ほ と ん ど排 出 しな い こ と と,石 油 や石 炭 と比 べ て 二 酸 化 炭 素 排 出 emission
フサ イ クル(採
per kcal;単
位 エ ネ ル ギ ー あ た りの 発 生 量)お
よ び ライ
掘 か ら消 費 に至 る全 過 程)で の 二 酸 化 炭 素 発 生 量 の いず れ も少 な
い こ と か ら(図4.13),石
油 や 石 炭 に変 わ る環 境 に 優 しい エ ネル ギ ー 源 と して注
目 され て い る. 天 然 ガ ス燃 焼 時 の 二 酸 化 炭 素 発生 量 が 少 ない 理 由 は,主 成 分 で あ る メ タ ンが単 結 合 の な か で 最 大 の 解 離 エ ネ ル ギ ー(435kJ/mol)を
有 す るC-H結
合 を4個
含 み,炭 化 水 素 の な か で最 も炭 素 の 含 有 率 が 少 な い分 子 で あ る た め,単 位 重 量 あ た りの 発 熱 量 が 最 も大 き く,逆 に二 酸 化 炭 素 発 生 量 は 最 も少 な い か らで あ る. 下 式 に示 す熱 化 学 方 程 式 で 表 され るよ うに,燃 焼 に よ りメ タ ン1mol(16.04g) あた り803.2kJの は4092kJの
熱 が 発 生 す る.一 方,た
(50.07kJ/g)の
熱 が 発 生 す る.し
と えば ヘ キ サ ン1mol(86.17g)か
た が って,単
ら
位 重 量 あ た りの発熱 量 は メタ ン
方 が ヘ キ サ ン(47.49kJ/g)の1.054倍
の 二 酸 化 炭 素 発 生 量 は ヘ キ サ ン(1.466mol/MJ)の
多 く,単 位 発 熱 量 あ た り 方 が メ タ ン(1.245mol/MJ)
の1.178倍 多 い こ と に な る.
1998年 に お け る世 界 の 一 次 エ ネ ル ギ ー消 費 量 の 燃 料 別 内 訳 をみ る と,24%が 天 然 ガ ス に よ り ま か な わ れ て い るが,わ
が 国 で は天 然 ガ ス の 占 め る割 合 は12.3
%と ま だ 少 な い の が現 状 で あ る.こ の た め,今 後 わ が 国 に お い て も一次 エ ネル ギ ー 供 給 源 の 天 然 ガ スへ の転 換 が さ らに進 む こ とが考 え られ る .以 下,現 在 実 用 化 ない しは検 討 され て い る天 然 ガ ス の利 用法 につ い て 説 明す る. 4.4.1 LNG火 LNGは,硫
力 発 電 の 燃 料 と しての 利 用 ・特 徴 黄 分 を ほ と ん ど含 ま な い こ とか ら燃 焼 時 にSOxの
発 生 が無 視 で き
る こ と,芳 香 族 成 分 を含 ま な い た め煤 塵 の 発 生 が な い こ と,二 酸 化 炭 素 や 窒 素 酸 化 物 の発 生 が 他 の 燃 料 に 比 べ て 少 な い こ と な ど,火 力 発 電 の原 料 と して 環 境 面 で
す ぐれ た 特 性 が あ る.さ 意 味 合 い か ら もLNGの
らに,供 給 源 の 多様 化,供 給 安 定 性 の 確 保 な ど政 策 的 な 火 力 発 電 へ の 利 用 が促 進 され て い る.わ が 国 で は,現 在,
総 発 電 電 力 量 の 約25%がLNG火
力 発 電 に よ り供 給 され て い る.コ
サ イ クル 発電 方 式(combined
cycle power
generation;
LNGを
ンバ イ ン ド
液 化 す る際 に高
圧 の ガ ス を発 生 させ て まず ガ ス タ ー ビ ン に よ る 発電 を行 い,そ の 後 ガ ス をボ イ ラ ー で燃 焼 させ て 蒸 気 タ ー ビ ン発 電 を行 う方 式)が 効 率(thermal
efficiency;供
主 流 で あ り ,50%近
い高 い 熱
給 され た 熱 量 に対 す る発 生 有 効 仕 事(発 電 の 場 合
は電 気 量 で あ り,熱 量 に 換 算 して計 算 に 用 い る)の 比)が 得 られ て い る. 4.4.2 都 市 ガ ス原 料 と しての 利 用 わ が 国 の 都 市 ガ ス は,二 次 エ ネ ル ギ ー(secondary
energy;電
力や都市 ガ ス
の よ うに 一次 エ ネル ギ ー を 使 い や す く変 換 ・加 工 した もの)総 量 の5.5%(1996 年 度 末)を
占 め る が,原 料 の83%が
天 然 ガ ス で あ り,家 庭 用 の ほ か に 工 業 用 や
商 業 用 に も利 用 され て い る.天 然 ガ ス を原 料 に用 い る と,一 酸 化炭 素 の な い都 市 ガ ス を供 給 で き るた め,漏 洩 ガ ス に よ る一 酸 化 炭 素 中毒 を防 げ る利 点 も あ る.わ が 国 で は,一 般 家 庭 用 エ ネ ル ギ ー源 と して の 利 用 以 外 に,以 下 の よ う な利 用 シ ス テ ムが 開 発 され て い る. a. 熱 併 給 発 電 熱 併 給 発 電(heat and power co-generation,コ ジェネ レ ー シ ョン)と は ,都 市 ガ ス の 燃 焼 に よ り タ ー ビ ン ま た は エ ンジ ン を動 か して発 電 す る と同 時 に,排 気 ガ スや 冷 却 水 の廃 熱 を温 水 や 蒸 気 と して回 収 して冷 房 や 給 湯, 暖 房 に 利 用 す るエ ネル ギ ー利 用 シ ス テ ム の こ と をい う.こ の シ ス テ ムで は,総 合 効 率(combined
efficiency)が70∼80%に
も及 ぶ こ と か ら,病 院 や ホ テル,大
型 ビル な どの エ ネル ギ ー供 給 シ ス テ ム と して 導 入 が 進 ん で い る.な お,総 合 効 率 と は,一 次 エ ネル ギ ーの 二 次 エ ネ ル ギ ー へ の 変 換 効 率(conversion と二 次 エ ネル ギ ーの 輸 送,貯 蔵,最
efficiency)
終 利 用 の 効 率 をす べ て 考 慮 した変 換 効 率 を い
う.ま た,変 換 効 率 とは,そ れ ぞ れ の 過 程 で エ ネル ギ ーEaが 入 力 され た 際 にEb が 出 力 され る場 合,Eb/Eaを b. ガ ス 冷 房 て い る上,電
い う.
ガ ス冷 房 は,フ
ロ ン を ま っ た く使 わ な い た め 環 境 面 で す ぐれ
力 の 夏 季 ピ ー ク緩 和 に も役 立 つ こ とか ら,す で に東 京 ドー ムや 両 国
国 技 館 な どの 大 型 施 設 で 利 用 され て い る.わ が 国 に お け る業 務 用 ビル の ガ ス冷 房 シ ェ ア は1998年 て い る.
度 末 で18.7%で
あ り,今 後 は家 庭 用 へ 普 及 す る こ と が期 待 され
図4.14
ガス冷房システムの概念図
ガ ス冷 房 法 は,冷 媒(refrigerant)お
よび 冷 媒 再 冷 却 剤 と して 水 を用 い る と こ
ろ が特 徴 で あ る.冷 媒 と は,冷 凍 機 に お い て 低 温 源 と冷 却 され る物 体 の 間 で熱 を 運 ぶ 流 体 の こと を い う.シ ス テ ムの 概 念 図 を 図4.14に 示 す. ま ず,室
内空 気 を冷 却 して 温 度 が12℃
の 水 が 入 っ た減 圧 容 器(6∼7mmHg,水
程 度 に上 昇 した 冷 媒 を,冷 媒 再 冷 却 用 の 沸 点 は5℃ 程 度 に な っ て い る)内 の
熱 交 換 器 に通 す こ とに よ り冷 媒 再 冷 却 水 を蒸 発 させ る.こ の 過 程 で 冷 媒 は7℃ 程 度 に再 冷 却 され る.ま た,こ の 過 程 で 生 じ た冷 媒 再 冷 却 水 の蒸 気 は,水 蒸 気 吸 収 剤(臭 化 リチ ウ ム水 溶 液)に 吸 収 され る.濃 度 が薄 くな っ た水 蒸 気 吸 収 剤 は別 の 減 圧 容 器(680∼700mmHg)に
移 送 し,都 市 ガ ス を利 用 した ガ スバ ー ナ ー で加
熱 して 吸 収 した水 分 を蒸 発 させ,も
との 濃 度 まで 濃 縮 す る.こ の段 階 で 生 成 した
水 蒸 気 は,冷 却 水 に よ り凝 縮 器 で熱 交 換 され て 凝 縮 し,再 び冷 媒 冷 却 水 に再 生 さ れ る. 4.4.3 自動 車 燃 料 と して の 利 用 現 在,わ
が 国 の タ ク シ ー な どで 利 用 され て い る ガ ス燃 料 はLPGで
タ ン を主 成 分 とす る天 然 ガ ス は,オ るた め,エ
あ る が,メ
ク タ ン価 が高 く耐 ノ ッキ ング性 が す ぐれ て い
ンジ ンの 圧 縮 比 を高 め て 燃 焼 効 率 を高 め る こ と が で き る こ と,芳 香 族
成 分 を含 ま な い た め,粒 子 状 物 質 が ほ とん ど排 出 され な い こ と な ど,自 動 車 燃 料 と して す ぐれ た性 質 を持 っ て い る.こ の た め,天 然 ガ ス を約20MPaま
で圧縮 し
た 圧 縮 天 然 ガ ス(compressed
natural gas, CNG)を
燃 料 と して利 用 す る低 公害
天 然 ガ ス 自動 車 の 普 及 が期 待 され て い る.世 界 的 に み る と,ロ シ ア,ア ル ゼ ンチ ン,イ タ リア な ど の天 然 ガ ス 産 出 国 を 中心 に100万 用 され て い る.一 方,わ に す ぎず,充
が 国 で は,2001年
台 以 上 の 天 然 ガ ス 自動 車 が利
末 時 点 で 約1万
台 が 利 用 され て い る
〓 設 備 も100か 所 を超 え た ば か りで あ る が,デ
ィー ゼル 車 の排 気 ガ
ス規 制 が 進 む につ れ て,今 後 急 速 に普 及 す る こ と も予 想 され る. 4.4.4 LNGの LNGは
も つ 冷熱 の利 用
超 低 温 の 液 体 で あ る こ と か ら,1kgあ
energy;常
た り約840kJの
温 よ り温 度 の低 い 熱 エ ネル ギ ー)を 有 す る.LNGを
冷 熱(cold
利 用 す る際 に は
気 化 させ て 用 い るが,こ の 際,熱 源 が必 要 で あ り,熱 源 とな る物 質 は熱 交 換 に よ り冷 却 され る こ と に な る.し た が っ て,冷 却 した い物 質 を熱 源 にす る こ とで 冷 熱 の 有 効 利 用 が で き る こ と に な る.わ が 国 で は,現 在,LNGの
冷 熱 は炭 酸 ガ スか
ら液 化 炭 酸 や ドラ イ ア イ スの 製 造,冷 蔵 倉庫 用 の 冷 媒 の 製 造 な どに利 用 され て い る.ま
た,沸 点 の 差 を利 用 して 常 温 で 気 体 の 物 質 を冷 却 液 化 して 分離 す る 目 的,
た と え ば 空 気 か らの 窒 素 と 酸 素 の 分 離,な LNGが
ど に も利 用 さ れ て い る.さ
気 化 す る際 の 体 積 膨 張 に よ る圧 力 を利 用 した 冷 熱 発 電(cryogenic
generation)も
ら に, power
行 わ れ て い る.
4.4.5 燃 料 電 池 用 燃 料 と して の利 用 燃 料 電 池(fuel
cells)と は,外 部 か ら燃 料 と酸 化 剤 を供 給 して電 池 内 で 酸 化 還
図4.15
天 然 ガ ス を用 い る燃 料 電 池 の 仕 組 み
図4.16
燃 料 電 池 発 電 と従 来 の 発 電
元 反 応 を行 って 電 極 に電 子 を放 出 させ,そ 池 で あ る(図4.15).こ
の電 子 を外 部 回路 に通 じて利 用 す る電
の た め,燃 料 と酸 化 剤 を供 給 し続 けれ ば電 池 と して機 能
し続 け る.燃 料 電 池 の特 徴 は,燃 料 の もつ 化 学 エ ネル ギ ー を熱 や運 動 エ ネ ル ギ ー に 変 換 す る過 程 を含 ま な い で電 気 エ ネル ギ ー に変 換 す る た め,40∼60%と
高い
発 電 効 率(power
素酸
generation
efficiency)が 期 待 され る こ と と(図4.16),窒
化 物 な ど の排 出 が 少 な い こ とで,環 境 面 か ら もそ の 実 用 化 が期 待 され て い る.な お,発 電 効 率 と は,原 動 機 へ の 入 力 エ ネ ル ギ ー に対 す る発 電機 か らの 出 力 エ ネ ル ギ ー の 割 合 を い う.実 際 に燃 料 電 池 内 で 燃 料 と して利 用 され るの は水 素 で あ るた め,天 然 ガ ス を利 用 す る燃 料 電 池 は,天 然 ガ ス を水 素 に変 換 す る装 置(改
質 器,
4.5節 参 照)を 有 す る.
4.5 天 然 ガ ス資 源 の化 学 的 変換 法 とその 特徴 天 然 ガ ス の 化 学 的 変 換(図4.17)は,輸
送 や 貯 蔵 が しや す い液 体 物 質(燃
へ の変 換 と ,基 礎 化 学 製 品 の 製 造 を 目的 に 行 わ れ て い る.現 在,天 の 約10%が
料)
然 ガ ス利 用 量
化 学 的 変 換 に用 い られ て い る.
天 然 ガ ス の 主 成 分 で あ る メ タ ンの 利 用 法 に は,い 合 物 で あ る合 成 ガ ス(synthesis
gas)に
っ た ん一 酸 化炭 素 と水 素 の 混
変 換 して か ら各種 化 学 製 品 を合 成 す る間
接 転 換 法 と,メ タ ン を直 接 化 学 製 品 に転 換 す る 直 接 転 換 法 が あ るが,現 在 の 主 流 は 間 接 転 換 法 で あ る. 合 成 ガ ス や その 反 応 で得 られ る メ タ ノ ー ル な ど,炭 素 原 子1個 利 用 す る化 学 製 品 製 造 プ ロ セ ス はC1化
学 と よ ば れ,化
石 油 依 存 の 観 点 か ら実 用 化 が 進 め られ て い る.
か らな る原 料 を
学 製 品 原 料 の 多 様 化 と脱
図4.17
ま た,現 在,中
天然ガスの化学的変換
小 規 模 ガ ス 田 の 天 然 ガ ス は,採 算 性 の 問題 か ら 多大 な 開発 投 資
を必 要 とす るLNG化
が で きな い た め,ほ
とん ど開 発 が 進 ん で い な い.こ の た め,
中小 ガ ス 田 の ガ ス を経 済 的 に 運 搬利 用 す る た め の手 段 と して,天 然 ガ ス をメ タ ノ ール や液 状 炭 化 水 素 混 合 物(合 成 ガ ソ リ ン)な ど の液 体 燃 料 に転 換 す る技 術 の 開 発 が注 目 され て い る.経 済 的 な液 化 技 術 が 開発 で きれ ば,天 然 ガ ス の確 認 可 採埋 蔵 量 は大 幅 に増 加 す る と い われ て い る. した が っ て,天 然 ガ ス,特
に主 成 分 で あ る メ タ ンの 化 学 的 変 換 法 の 開 発 は,今
後 ま す ま す重 要 性 を増 す もの と考 え られ る.そ
こで 本 節 で は,ま ず,メ
タ ンの 最
も重 要 な 用 途 で あ る合 成 ガス へ の 変 換 と,合 成 ガ ス の お も な利 用 法 お よ び 代 表 的 なC1化 学 製 品 の 製 造 法 につ い て 述 べ る.次 に,メ
タ ン か ら合 成 ガ ス を経 由 しな
い で製 造 され る化 学 製 品 に つ い て 解 説 し,続 い て,将 来 の 実 用 化 が期 待 され,現 在 盛 ん に研 究 され て い る メ タ ンの 直 接 変 換 法 につ い て紹 介 す る.最 後 に,天 然 ガ ス 中 に含 まれ るエ タ ンな どの 少 量 成 分 を利 用 した 化 学 製 品 製 造 プ ロ セ ス に つ い て 述 べ る. 4.5.1 メ タ ン を原 料 に用 い る合 成 ガ ス 製 造 法 合 成 ガ ス は,さ 造 され る が,メ
ま ざ ま な化 学 製 品 の合 成 原 料 とな るた め 種 々 の炭 素 資 源 か ら製
タ ン か らの工 業 的 製 造 は お も に水 蒸 気 改 質 法(steam
に よ り行 わ れ て い る.一 方,よ
reforming)
り高 い経 済 性 の 実 現 や 低 品 位 天 然 ガ ス の 利 用 を 目
指 して,部
分 酸 化 法(partial
複 合 改 質 法(combined
oxidation),炭
reformingま
酸 ガ ス改 質 法(CO2
た はparallel reforming)な
reforming), どの 技 術 も開発
され て い る.な お,複 合 改 質 法 は水 蒸 気 改 質 法 と部 分 酸 化 法 を組 み 合 わ せ て 効 率 を高 め た方 法 で あ る. a. 水 蒸 気 改 質 法
水 蒸 気 改 質 法 は,メ
法 で(式(4.1)),通 800∼900℃
常,ア
タ ン と水 か ら合 成 ガ ス を製 造 す る方
ル ミナ に担 持 した ニ ッケ ル 触 媒 を用 い て2∼4MPa,
で行 わ れ て い る.メ タ ンの 水 素 と炭 素 の 比(H/C)は
大 で あ る こ とか ら,メ
炭 化 水 素 中最
タ ン を原 料 に水 蒸 気 改 質 法 で合 成 ガ ス を製 造 す る と,生 成
物 中の 水 素 と一 酸 化 炭 素 の 比(H2/CO)は
最 大(=3)と
な る.こ の た め,メ
ン は水 素 の 製 造 原 料 と して も利 用 され,得
られ た合 成 ガ ス を分 離 精 製 す る こ とに
よ り純 粋 な 水 素 が 製 造 され る.世 界 的 に は,水 素 の76%が
タ
この 方 法 で 製 造 され
て い る.
(4.1) b. 部 分 酸 化 法
部 分 酸 化 法 と は,触 媒 を 用 い て メ タ ン と酸 素 か ら合 成 ガ ス
を得 る反 応 で(式(4.2)),50年
以 上 前 か ら知 られ て い た が,最 近,合
成 ガスの
製 造 法 と して 注 目を集 め る よ う に な っ た. こ の 反 応 は 大 き な 発 熱 反 応 で あ る こ と か ら,平 conversion)は
室 温 で もほ ぼ100%に
成 分 が ど の 程 度 反 応 して い る か を示 す 数 値 で,(反 量)×100(%)で
衡 転 化 率(equilibrium
な る.平 衡 転 化 率 と は,化 学 平衡 時 に原 料 応 した 原 料 の 量/仕 込 み 原 料
表 され る.ま た,生 成 物 のH2/COは2と
る.触 媒 と して 白金,ロ
ジ ウ ム を用 い,900∼1100℃
な るの が特 徴 で あ
の高 温 下,10−4∼10−2秒
と い うき わ め て 短 い反 応 器 滞 在 時 間 で 反 応 を行 う と合 成 ガ ス が得 られ る.こ の 方 法 は触 媒 との 接 触 時 間 が短 い た め 反 応 器 を小 型 化 で き る と い う利 点 が あ り,発 熱 反 応 で あ る た め エ ネ ル ギ ー効 率 も よ い.水 蒸 気 改 質 法 に比 べ て約30%の
コス ト
ダ ウ ン も可 能 とい わ れ る.
(4.2) c. 炭 酸 ガ ス 改 質 法
天 然 ガ ス の 利 用 範 囲 が広 が る に つ れ て,炭 酸 ガ ス を多
く含 む 低 品 位 天 然 ガ スの 利 用 技 術 が 重 要 に な って き た.炭 酸 ガ ス改 質 法 は,多 量 の 炭 酸 ガ ス が 共 存 す る 条 件 下 で メ タ ン か ら合 成 ガ ス を 製 造 す る方 法 で あ る(式 (4.3)).こ の 反 応 の 特 徴 は生 成 物 のH2/COが1に
な る こ とで あ る.本 反 応 は 大
きな 吸 熱 反 応 で あ る た め,ニ ッケル や 白金 触 媒 を用 い て900℃
以 上 の 高 温 で 行 う.
この 方 法 の 問題 点 は 触 媒 上 へ の 炭 素 析 出 で あ り,こ の炭 素 析 出 を防 ぐた め の 触 媒 開 発 や 反 応 器 の 工 夫 が進 め られ て い る.
(4.3) 4.5.2 合 成 ガ ス か らの化 学 製 品 製 造 法 a. 合 成 ガ ス か らの ア ンモ ニ ア 製 造 法
ア ンモ ニ ア 製 造 原 料 の 約80%は
然 ガ ス で あ り,合 成 ガ ス を経 て 製 造 され る(式(4.4)).反
天
応 に必 要 な の は 水 素
と窒 素 で あ るた め,ま ず,水 蒸 気 改 質 法 と空 気 を酸 素 源 に利 用 した 部 分 酸 化 法 を 併 用 し,ア ン モ ニ ア合 成 に適 し た比 率(N2:H2=1:3)の
窒 素 と水 素 を含 む
合 成 ガ ス を製 造 す る.そ の 後,不 要 の 一 酸 化 炭 素 を 除去 して 原 料 ガ ス と し,ア ン モ ニ ア合 成 工 程 に 供 給 す る.ア ンモ ニ ア合 成 は,鉄 系 触 媒 を用 い て450∼550℃, 15∼40MPaの
条 件 下 で行 わ れ る.
(4.4) b. 合 成 ガ ス か ら の メ タ ノ ール 製 造 法
現 在,メ
タ ノ ール は世 界 で 約2800
万 トンの 年 間 需 要 が あ り,使 用 量 は毎 年 増 加 して い る.製 造 原 料 の 約70%は 然 ガ ス で あ り,合 成 ガ ス を経 て 製 造 され て い る(式(4.5)).こ
天
の 反 応 は,発 熱
反 応 で あ るた め 低 温 ほ ど平 衡 転 化 率 が高 くな るが,十 分 な反 応 速 度 を得 る た め に 銅,亜 鉛 系 触 媒 を用 い て200∼300℃,5∼15MPaの
条 件 下 で 行 わ れ る.
(4.5) c. 合 成 ガ ス か ら の フ ィ ッ シ ャ ー-ト ロ プ シ ュ 合 成 ュ(Fischer-Tropsch)合
成(F・T合
す る 方 法 で(式(4.6)),古
成)は,合
フ ィ ッ シ ャ ー-ト ロ プ シ
成 ガ ス か ら液 状 炭 化 水 素 を 製 造
く か ら 工 業 化 さ れ て い る.現
在,わ
が 国 で は行 わ れ
て い な い が,南
ア フ リ カ や マ レ ー シ ア で は 工 業 的 に 実 施 され て い る.反
反 応 で あ り,鉄
お よ び コ バ ル ト触 媒 な ど を 用 い て220∼350℃,1∼3MPaの
件 下 で 行 わ れ る.生
成 油 はn=1∼100の
か ら ワ ッ ク ス 成 分 ま で 含 む.こ
応 は発 熱 条
炭 化 水 素 混 合 物 で あ り,ガ
ソ リン成 分
の 方 法 で 得 ら れ る ガ ソ リ ン成 分 は,硫
黄 分 を含 ま
な い た め 燃 料 と し て 環 境 面 で す ぐ れ て い る.
(4.6) 4.5.3 メ タ ノ ー ル か らの化 学 製 品 製 造 法 メ タ ノー ル は 需 要 量 の10%程
度 が 燃 料 と して 利 用 され て い る が,残
り約90%
は ホル ム アル デ ヒ ドや 酢 酸 の よ うな基 礎 化 学 製 品 の 原 料 と して 使 用 され て い る. 以 下 に,メ
タ ノー ル の代 表 的 な利 用 法 を示 す.
a. メ タ ノ ー ル か らの ガ ソ リン製 造 法(methanol メ タ ノー ル は,4.5.2項 こ と か ら,メ
to gasoline:
MTG)
で示 した よ う に 天 然 ガ ス か ら合 成 ガ ス を経 て 合 成 で き る
タ ノ ール を液 状 炭 化 水 素 混 合 物 に 変 換 す る技 術 が 開 発 され て お り,
ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドで は 商 業 生 産 が行 わ れ て い る.メ タ ノール は,ま ず脱 水 縮 合 に よ り ジ メ チ ル エ ー テル に変 換 され,続 水 素,重
合,異
され る.ゼ
性 化,環
い て,ZSM-5型
ゼ オ ラ イ ト触 媒 に よ る脱
化 な どの 複 雑 な 過 程 を経 て 液 状 炭 化 水 素 混 合 物 に 変 換
オ ラ イ トとは,1nm以
下 の細 孔 を持つ 多孔質 の結 晶性 アル ミノケ
イ 酸 塩 で あ り,イ オ ン交 換 能 を示 す こ と を利 用 して プ ロ トン酸 性 ま た はル イ ス 酸 性 を 発 現 で き る.ZSM-5型
ゼ オ ラ イ トは 直 径 約0.55nmの
細 孔 を も ち,
Na2(AlO2)2(SiO2)94の 組 成 式 を もつ. b. メ タ ノ ール か らの ホ ル ム ア ル デ ヒ ド製 造 法
ホ ル ム アル デ ヒ ドは,フ
ェ
ノー ル樹 脂 を は じめ さま ざ まな プ ラ ス チ ック の原 料 と して 用 い られ て い る.ホ ル ム ア ル デ ヒ ドは メ タ ノー ル を適 当 な脱 水 素 能 力 を もつ 銀 触 媒 な ど を用 い て600∼ 700℃ で 脱 水 素 反 応(式(4.7))を
行 わ せ る と得 られ る.一 方,こ
の反応 は吸熱
反 応 で あ る た め,一 般 に は 同 時 に酸 素 を共 存 させ る こ とに よ り メ タ ノ ール の酸 化 反 応(式(4.8))を
併 発 させ,反 応 熱 を供 給 す る方 法 で 行 わ れ る.反 応 は600∼
650℃,0.03∼0.05MPaの
条 件 下 で 行 わ れ る.
(4.7) (4.8) c. メ タ ノ ー ル か らの 酢 酸 製 造 法(Monsant法)
酢 酸 は従 来 ア セ トア ル デ
ヒ ドの 酸 化 反 応 で 製 造 され て い た が,現 在 で は,お
もに メ タ ノ ール と一 酸 化 炭 素
を反 応 させ る 方 法 で製 造 され て い る(式(4.9)).反 錯 体 触 媒,助
応 は,触 媒 と して ロ ジ ウ ム
触 媒 と して ヨ ウ素 を用 い て170∼200℃,2∼3MPaの
条 件 下 で行
わ れ る.
(4.9) 4.5.4 メ タ ン を原 料 とす る 直 接 的 化 学 製 品 製 造 法 a. メ タ ン か らの シ ア ン化 水 素 製 造 法
シ ア ン化 水 素 は,メ
ア お よび 空 気 か ら白金 触 媒 を用 い て 約1000℃,常 れ る(式(4.10)).未
タンとアンモニ
圧,短 時 間 の 条 件 下 で 合 成 さ
反 応 の ア ンモ ニ ア を硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム に変 換 後,水
溶液 か
ら シア ン化 水 素 を蒸 留 して精 製 す る.
(4.10)
b. メ タ ン か らの ク ロ ロ メ タ ン 類 製 造 法
代 表 的 な 製 造 法 と して メ タ ンの 熱
的 塩 素 化 法 が あ る.塩 素 とメ タ ン を350∼370℃
で 反応 させ る と,大 き な発 熱 を
伴 う ラ ジ カル 反 応 に よ り塩 化 メ チル,塩 化 メ チ レ ン,ク ロ ロホ ル ム,お よび 四 塩 化 炭 素 の 混 合 物 が 得 られ る(式(4.11)∼(4.14)).生
成物組成 は原料 中のメ タン
と塩 素 の 混 合 比 を変 え る と変 化 す る.Cl2/CH4=1.7の 60%,塩
化 メ チ レ ン約30%,ク
場 合,塩
ロ ロ ホ ル ム 約10%,残
化 メチル約
りが 四塩 化 炭 素 とな る.
副 生 す る塩 化 水 素 を水 で 洗 浄 して 除 い た後,蒸 留 に よ り各 成 分 に分 離 す る.
(4.11) (4.12) (4.13) (4.14) c. メ タ ン か ら の 二硫 化 炭 素 製 造 法
メ タ ン と硫 黄 の 蒸 気 を約700℃
させ る と,二 硫 化 炭 素 と硫 化 水 素 の 混 合 物 が得 られ る(式(4.15)).副 化 水 素 を酸 素 との 反 応 で硫 黄 に 変 換 した後(式(4.16)),再 る こ とで,式(4.17)の
で反 応
生 す る硫
度 メ タ ン と反 応 させ
全 反 応 に よ り二 硫 化 炭 素 が得 られ る.
(4.15) (4.16) (4.17) 4.5.5 今 後 実 用 化 が 期 待 され るメ タ ンの 直 接 活 性 化 法 メ タ ンか ら直 接 化 学 製 品 を合 成 す る プ ロ セ ス は,コ
ス ト高 の 原 因 とな る合 成 ガ
ス製 造 工 程 を 省 く こ と がで き る た め,有 力 な 製 造 技 術 と して 期 待 され て い る.以 下 に,現 在 検 討 が 進 め られ て い る技 術 につ い て 述 べ る. a. メ タ ン の カ ップ リン グ反 応 を 経 由 す る液 状 炭 化 水 素 合 成 法
メ タ ンの カ
ップ リ ング 反 応 に よ るC2以 上 の炭 化 水 素 合 成 は,天 然 ガ ス の 液 体 燃 料 化 に よ る 運 搬 ・貯 蔵 の容 易 化 とい う観 点 か ら も重 要 な 反 応 で あ る.金 属 触 媒 を用 い て メ タ ン と酸 素 を700∼800℃
で 反 応 させ る と,か な り高 い選 択 性 で エ チ レ ンな どの酸
化 カ ップ リン グ生 成 物 が得 られ る(式(4.18)).こ
の 反 応 は 中 間 に メ チル ラ ジカ
ル を経 由 し,そ の カ ップ リ ング 生 成 物 で あ るエ タ ンが酸 素 に よ り脱 水 素 され て エ チ レ ン に な る と考 え られ て い る.触 媒 と してNa/La/Nb(1:1:0.2)を て,CH4/O2=9,反 15.3%,C2+選
応 温 度750℃ 択 率76%と
用い
と い う条 件 下 で 反 応 を行 う と,メ タ ン転 化 率
い う結 果 が得 られ て い る.
(4.18) ま た,メ し,カ
タ ン を水 素 と と も に1100℃
以 上 に加 熱 す る と メ チ ル ラ ジ カ ル が 発 生
ップ リ ング 反 応 に よ りエ チ レ ンな どが 得 られ る こ とが 知 られ て い る.高 温
を 必 要 とす る が,副 生成 物 が ほ ぼ 炭 素 の み で あ る こ とか ら注 目 され る. 以 上 の 反 応 で得 られ た エ チ レ ン を主 成 分 とす るC2+炭
化 水 素 は,ゼ オ ラ イ ト触
媒 を用 い る低 重 合 反 応 に よ り液 状 炭 化 水 素混 合 物 に変 換 で き るが,収 率 な ど経 済 性 の 面 で 検 討 の 余地 が あ るた め,ま だ 実 用 化 は され て い な い. b. メ タ ン か らの メ タ ノ ー ル 製造 法 れ ば,天
メ タ ンか ら直 接 メ タ ノー ル を合 成 で き
然 ガ ス を原 料 とす るC1化 学 工 業 が大 き く発 展 す る こ とが 期 待 され る.
こ の た め,古
くか ら メ タ ンの 部 分 酸 化 に よ る メ タ ノ ール 合 成 法 が検 討 され て きた
(式(4.19)).し
か し,メ タ ノ ー ル を生 成 す る条 件 下 で は メ タ ノー ル の 二 酸 化 炭
素 と水 へ の 転 換 も進 行 す る た め,満 足 で き る収 率 が 得 られ て い な い.た
と え ば,
メ タ ン と酸 素 の混 合 ガ ス を380℃,7MPaで
無 触 媒 条 件 下 反 応 させ る と,メ タ ン
転 化 率11.3%で,メ
い う結 果 が得 られ る が,実 用 化 で き
タ ノ ール 選 択 性73%と
て い な い.
(4.19) この た め,多 段 階 の 化 学 反 応 を組 み 合 わせ て メ タ ン を メ タ ノー ル に 変 換 す る方 法 も研 究 され て い る.た と え ば,式(4.20)∼(4.22)に モ ン触 媒 を 用 い る塩 化 メ タ ン(X=Cl)ま
示 す よ う な 白金 や ア ンチ
た は臭 化 メ タ ン(X=Br)を
経 由す
る合 成 法 が提 案 され て い る.
(4.20) (4.21)
(4.22) ま た,メ
タ ン を 白金 錯 体 触 媒 を用 い る硫 酸 酸 化 に よ りメ タ ノール の硫 酸 エ ス テ
ル にす る反 応 が報 告 され て いる(式(4.23)).こ テ ル が これ 以 上 の 酸 化 に対 して安 定 な の で,メ 得 られ,72%と
の 方 法 で は,生 成 した硫 酸 エ ス タ ンの 転 化 率 を上 げ て も高収 率 が
い う収 率 が報 告 され て い る.硫 酸 エ ス テル は 容 易 に 加 水 分 解 さ
れ て メ タ ノ ール を 定 量 的 に与 え(式(4.24)),二 に 再 生 で き るの で(式(4.25)),本
酸 化 硫 黄 は 酸 素 酸 化 に よ り硫 酸
法 は メ タ ノー ル の 高 収 率 合 成 法 と い え,今 後
の 実 用 化 が 期 待 され る.
(4.23)
メ タ ン ハ イ ド レ ー トを資 源 と し て 利 用 す る た め に は
平成11年 末の 浜松 市沖海 底 に お ける メ タ ンハ イ ドレー ト(以 下MHと
略 記)高
度 含 有層 の発 見 は,自 前 の エ ネル ギ ー資源 に乏 しい わ が国 で非 常 に大 きな注 目 を 浴 び てい る.こ こで は,海 底 のMHを
資源 と して 開発 す るた め に今後 何 が必 要 に
な るの か考 えて み る. まず,MHが
資 源 と して成 り立 つ ため に は,① メ タンガ ス と して採 取 で きる こ
とが 前提 とな る.す な わ ち,MHに
含 まれ る メ タンは,石 油 や 天 然 ガ ス とは異 な
り井 戸 を掘 って も自噴 しな い ため,海 底 か ら ガス と して採 取 す る場 合,メ MHか
ら遊 離 させ て 回収 す る方 法 が必 要 とな る.原 理 的 に はMHを
タン を
安 定 温度 圧 力
条 件 か らはず れ た状 態 にす れ ば よい わ けで あ るか ら,加 熱 す る,減 圧 す る,塩 類 や溶 剤 を注 入 して凝 固点 を周 囲温 度 よ り も下 げて溶 か す,と い った方 法 が考 え ら れて い る.さ らに,二 酸化 炭 素でMH中
の メ タンを置 換す る方 法 も,地 球温 暖 化
の原 因 と な る二 酸 化炭 素 を処 分 で きる一石 二 鳥 の方 法 と して提 案 されて い る.一 方,海 底 下のMH資 源 の 場合,開 発 の 前例 が な いため,ど の採 取 方 法 が実現 可 能 か不 明で あ り,今 後 の研究 が必 要 で ある. さらに,② 採 掘 した メ タ ンの 燃 焼 で得 られ るエ ネル ギ ーが,開 発 に要 す る総 エ ネル ギ ー を上 回 る こ と,③ 経済 的 に成 り立 つ こ と(設 備 投 資額 や 運転 経 費 な どが ガ ス売 却益 で最終 的 に まか な えるこ と),④ 環 境破壊 がない こ と,が 必 要で あ る. 現 在,② は実 現 で きる と考 え られ て い るが,海 底 下 の 資源 開発 は陸上 の 資源 開 発 に比 べ て膨大 な経 費 が必 要 とな るた め,③ の経済 性 を確 保 す るた め に は大 きな確 認 可 採埋 蔵量 と採取 速 度 が 必要 で あ り,今 後 よ り精 密 な埋蔵 量 調 査 な どが 必要 で あ る.ま た,④ につ いて は,メ タ ンが二酸 化 炭素 以 上 の地球 温 暖 化効 果 を持 つ こ とか ら,ガ スの大 量 噴 出事 故 を防 ぐ技術 の 開 発 が必要 で あ り,さ らに,MH採
取
後 の海 底地盤 崩 落 を防止 す る技 術 の開発 な ど も重要 とな る. 以 上 に示 した よ うに,MHを
実際 に資源 と して利 用 す るた め には 多 くの 困難 を
克 服 す る必要 が あ るが,わ が 国 に とっ てエ ネル ギ ー資 源の確 保 は最 も重 要 な課 題 の一つ で ある こ とか ら,今 後 の技術 開発 を期待 したい.
(4.24) (4.25) 4.5.6 天 然 ガ ス 中 に含 ま れ る メ タ ン以 外 の 炭 化 水 素 か らの オ レ フ ィン製 造 法 飽 和炭 化 水 素 の 熱 分 解 反 応 に よ りエ チ レ ンな どの オ レ フ ィ ン類 を製 造 す る こ と が で き る.反 応 は 式(4.26)∼(4.28)に
一 例 を示 す よ う な ラ ジ カル 反 応 で あ り,
まず,炭 素-水 素 結 合 よ り開裂 エ ネ ル ギ ーが 小 さい炭 素-炭 素 結 合 が 高温 で 開 裂 し て ア ル キル ラ ジ カ ル が生 じ る(式(4.26)).続
い て アル キル ラ ジ カル に よ る飽 和
炭 化 水 素 か らの 水 素 引 き抜 き(式(4.27))と,ア
ル キ ル ラ ジ カル の 分 解 が 起 こ
り,炭 素 数 が2個 減 少 した アル キ ル ラ ジ カル と エ チ レ ンが生 成 す る(式(4.28)). これ らの反 応 が繰 り返 され る こ とで,原 料 の エ チ レ ンへ の 転 換 が進 行 す る.反 応 生 成 物 の最 終 的 な組 成 は,各 生 成 物 の 熱 力 学 的安 定性 に支 配 され る た め,高 温 に な る と ジオ レ フ ィ ンや芳 香 族 の 生 成 が多 くな る.こ の た め,適
当 な転 化 率 で 反 応
が止 ま る よ う に反 応 時 間 の 設 定 と生 成 物 の 急 冷 が行 わ れ る.エ タ ンは メ タ ン につ い で 多 く天 然 ガ ス に 含 ま れ て い る が,熱 分 解 す る と転 化 率 が60%程 が80%以
度,選
択性
上 で エ チ レ ン に 変 換 され る.ア メ リ カで は主 と して この 方 法 で エ チ レ
ンの 製造 が 大規 模 に行 わ れ て い る.
(4.26) (4.27) (4.28)
お わ りに 以 上 に述 べ て きた よ うに,天 然 ガ ス は他 の炭 化 水 素 資 源 と比 べ て 環 境 にや さ し い エ ネル ギ ー資 源 で あ り,利 用 促 進 が求 め られ て い る.ま た,既 存 の 石 油 化 学 体 系 に 接 続 す る た め の 中間 原 料 製 造 法 の 発展 に よ り,化 学 工 業 原 料 と して の 利 用 範 囲 拡 大 も期 待 され て い る.し た が って,天 然 ガ ス は今 後 ま す ます 使 用 量 の 増 大 が 予 想 され る.一 方,需
要 の 増 大 に 対応 す るた め に は,未 利 用 資 源 の 開 発 技 術 の確
立 と,運 搬 や保 管 の 難 し さを克 服 す るた め の 経 済 的 な化 学 的液 化技 術,あ ハ イ ドレ ー ト化 して 運 搬 貯 蔵 す る技 術 の 開 発 が 必 要 で あ る.さ
るい は
ら に,主 成 分 で あ
る メ タ ンの 経 済 的 な 直 接 転 換 技 術 の 開 発 も重 要 な課 題 で あ り,今 後 の 技 術 革 新 が 期 待 され る.
5 バ イオ マ ス資源 化 学
5.1 バ イ オ マ ス 資 源 の 特 徴 5.1.1 バ イ オ マ ス資 源 と は 化 学 物 質 の 分 類 法 に"無 機 物"と"有 の 資 源 も無 機 物 で あ る"鉱 物 資 源"と,生
機 物"と
い う分 け方 が あ る よ うに,地 球
物 体 か ら生 まれ た"有 機 資 源"に 分 け
る こ と が で き る.有 機 資 源 は さ ら に"化 石 燃 料"(石
油 な ど)と"バ
イ オ マ ス"
に 分 け られ る. バ イオ マ ス とい う言 葉 は 本 来 は 生 態 学 の 用 語 で"生 物 量"と 訳 す こ とが で き る. つ ま りバ イオ マ ス 資 源 とは,一 般 的 に は 図5.1の よ う に植 物 の 光 合 成 作 用 に よ り 太 陽 エ ネ ル ギ ー を変 換 して 生 産 され る 資 源 を意 味 す る.地 球 上 に総 量2兆
トン程
度 が存 在 す る とい わ れ て い る再 生 可 能 な物 質 で あ る.
図5.1 光 合 成 に よ るバ イオ マ ス の 生 産
5.1.2 バ イ オマ ス資 源 の 特 徴 バ イ オ マ ス資 源 と して は廃 棄 物,未 利 用 資 源,新
資 源 な どが 考 え られ る.こ の
よ う なバ イ オ マ ス の 特 徴 を以 下 に示 す. ① 太 陽 エ ネ ル ギ ーの 良 好 な変 換 ・貯 蔵 シ ス テ ム で あ る.
② 再 生 可 能 な資 源 で あ る. ③ 環 境 面 へ の 影 響 が少 な い ク リー ンな 資 源 で あ る. ④ エ ネ ル ギ ー,食 糧,飼 料,工 業 原 料 な ど と して 多 目的 に利 用 で き る. ⑤ 地 球 上 に 広 く存 在 す る 自給 可 能 資 源 で あ る. バ イオ マ ス を資 源 と して利 用 す る上 で 考 え な け れ ば な ら ない の は,基 本 的 にバ イ オ マ ス は 分 布 密 度 が低 く,原 料 の 重 量 あ た りの経 済価 値 も低 く,既 存 の 関 連 資 源 に比 べ 付 加 価 値 が高 くな い こ とで あ る.こ の た め,資 源 の 回 収,搬 送 に 多 大 な エ ネ ル ギ ー が必 要 で あ り,ま た エ ネル ギ ー の 発生 量 も小 さ い.さ
らに資 源 の種 類
が 多 い た め に それ ぞ れ の バ イ オ マ ス に 合 わせ た 多 くの プ ロ セ ス技 術 が 必 要 とな る. 5.1.3 バ イ オ マ ス は再 生 可 能 資 源 地 球 上 の 生 物 の生 態 エ ネ ル ギ ー源 は草 木 で 営 まれ る光 合 成 で あ り,そ れ は 大 気 中 の 二 酸 化 炭 素 と大 地 か ら吸 い 上 げた 水 を葉 の 中 で 太 陽 光 の エ ネル ギ ー に よ っ て 生 物 体 を生 み 出 す もの で,こ の 光 合 成 で生 まれ た 植 物 細 胞 を動 物 が食 べ 、バ クテ リア の 繁 殖 の エ ネル ギ ー とな っ て い る.光 合 成 に よ っ て地 上 に生 ま れ る植 物 細 胞 の 総 量 は,全 世 界 で1年 間 に消 費 され るエ ネ ル ギ ー総 量 の お よ そ10倍
に もあた
る と考 え られ る.こ の エ ネ ル ギ ー源,す
示すよう
な わ ちバ イオ マ ス は,図5.2に
図5.2 地球上 における炭素循 環
表5.1 代 表 的 な石 油 代 替 エ ネル ギ ー資 源
な地 球 上 の 炭 素 循 環 に よ っ て 毎年 新 た に 生 まれ る もの で,枯 渇 し な い再 生 可 能 資 源 で あ る. これ に対 し,石 油 な ど の化 石 資 源 は 枯 渇 性 の 資 源 で あ る.長 い 時 間 を か け れ ば 植 物 の 一 部 は石 油 に な るの で 化 石 資 源 を再 生 可 能 資 源 と考 え られ な く は な い が, 現 実 的 で は な い.い ず れ は す べ て が消 費 され 消 え失 せ る枯 渇 性 資 源 に頼 る現 在 の 生 活 は,環 境 ・経 済 の 両 面 で持 続 的 で は ない.一 方,地
球 の 人 口 増 加 は め ざま し
く,い ま人 間 は 食 糧 ・資源 ・エ ネル ギ ー ・環 境 を め ぐっ て,い に直 面 して い る.エ
ネル ギ ー 源 に 関 して は,表5.1に
ろい ろ 困難 な 問題
示 し た よ うに,す で にバ イ
オ マ ス以 外 に も さ ま ざま な石 油 代 替 エ ネ ル ギ ー が利 用 され て い る.し か し,現 代 の 人 類 の 生 活 を支 え て い る化 学 製 品 の 原 料 につ い て は,化 石 資 源 に か わ る有 力 な 有機 資 源 は,バ
イオ マ ス 以外 に は 考 えに くい.こ の よ うな 状 況 で 有 限 の化 石 資 源
の 使 用 よ り脱 して 食 糧 資源 同様,再
生 循 環 しう るバ イ オ マ ス 資 源 の 利 用 が検 討 さ
れ 始 め て い る. 5.1.4 バ イ オ マ ス資 源 の 不 安 要 因 再 生 可 能 な バ イオ マ ス 資源 も,経 済 ・環 境 面 で 弱 点 を抱 えて い る.経 済 面 で は 入 手 可 能 性 の 問 題 が 大 きい.す な わ ち石 油 に比 べ れ ば短 時 間 で 製 造 で き る再 生 可 能 資 源 で は あ るが,干
ばつ や 不作 で 供 給 が 途 絶 え る とい う欠 点 が つ ね に存 在 して
い るの も事 実 で あ る. ま た,別 の 不 安 要 因 と して,作 物 を資 源 と して 利 用 す る と考 え る と,い ま ま で の よ うな大 量 生 産 を支 え るの に は広 大 な 土 地 が 必 要 と な る.つ ま り栽 培 に膨 大 な 土 地 とエ ネ ル ギ ー を使 う従 来 の作 物 は 化 石 資 源 にか わ る資 源 と して 利 用 で き な い た め,食 用 と して 利 用 され な い種 々 の 植 物 を新 しい バ イ オ マ ス 資 源 と考 え,斬 新 なプ ロ セ ス を使 う手 段 を開 発 しな けれ ば な らな い.
5.2 バ イオ マ ス 資源 の 種 類 と利 用 5.2.1 バ イ オ マ ス資 源 の種 類 バ イ オ マ ス資 源 の う ち廃 棄物,未
利 用 資 源 と して お も に考 え られ るの は,イ ネ
ワ ラ,も み が ら,野 菜 残 査,家 畜 ふ ん 尿,食 品 加 工 廃 棄物,魚 水 産 廃 棄 物 で あ る.ま た,バ られ て い る.表5.2に
体 残 査 な どの農 林
イオ マ ス に利 用 で き る資 源 と して種 々 の植 物 が考 え
代 表 的 な栽 培 植 物 由 来 の バ イ オ マ ス資 源 を あ げ る.こ れ ら
の 植 物 系 バ イオ マ ス の利 用 可 能 資 源 の 多 くは セル ロー ス で あ る.ほ か の大 量 に存 在 す るバ イオ マ ス資 源 と して は,菌 類 の 細 胞 壁 や カ ニ や エ ビの 甲殻 に存 在 す るキ チ ン が あ る. 表5.2 代表的な栽培植物由来のバ イオ マス資源
5.2.2 バ イ オ マ ス資 源 の利 用 状 況 バ イ オ マ ス資 源 は,地 球 上 に総 量2兆
トン程 度 が存 在 す る と い わ れ て い る.図
5.3に は お もな バ イオ マ ス 資 源 の 利 用 状 況 を示 す.こ
の な か で 大 量 に存 在 し利 用
価 値 の 高 いバ イオ マ ス が 多糖 類 で あ る.セ ル ロ ー ス は 最 も代 表 的 な天 然 多糖 で あ り植 物 を構 築 す る組 織 と して存 在 して い るが,資 源 と して の セル ロ ー ス は お もに 木 材 か ら得 られ て い る.木 材 の 主 要 成 分 は セル ロ ー ス,ヘ
ミセル ロ ー ス お よ び リ
グ ニ ンで あ り,セ ル ロ ー スの 存 在 比 率 は樹 種 に よ って 異 な る が,約50%で 生 合 成 され る セ ル ロ ー ス の 量 は年 間1000億
あ る.
トン に も達 す る と推 定 され て お り,
地 球 上 で は最 も豊 富 な有 機 化 合 物 で あ る.セ ル ロ ー ス は 古 くか ら衣 料,紙,パ
ル
プ な ど と して利 用 され て きて お り,今 後 も最 も重 要 なバ イオ マ ス資 源 と して さま ざ ま な利 用 の 開発 が 期 待 され て い る. ま た セ ル ロ ー ス以 外 の天 然 多 糖 資 源 と して は,節 足 動物 の 甲 殻 に存 在 す るキ チ ンが あ げ られ る.現 在,工
業 的 に は カニ お よ び エ ビの 甲 殻 よ り生 産 され て い る.
キ チ ンは セ ル ロ ー ス に構 造 類 似 の 多糖 で あ るが,2位
に ヒ ドロキ シ基 の か わ りに
図5.3 お もな バ イオ マ ス資 源 の 利 用(寺
田 ら,1995)
ア セ トア ミ ド基 を もつ ア ミノ 多糖 で あ る.そ の 生 合 成 され る量 は膨 大 な もの で, 年 間10億
∼1000億
トン と推 定 され て お り,地 球 上 で セル ロ ー ス につ い で 豊 富 な
有 機 物 で あ るが,不 溶,不 融 性 の た め ほ と ん ど が廃 棄 され続 け て い る き わ め て低 利 用 度 の バ イオ マ ス 資 源 で あ る. 陸 地 に お け るバ イオ マ ス資 源 の 開 発 が か な り進 ん だ現 在,開 発 の 遅 れ た海 洋 の バ イ オ マ ス 資 源 に大 き な関 心 が もた れ て い る .し か し,海 洋 は 地 球 上 で の 面 積 は 大 きい が,陸 地 ほ どの 生 物 生 産 性 は な く,1年
間 の 有 機 物 は約550億
され る.海 洋 生 物 は微 生 物,微 細 藻 類,大 型 藻 類,無 脊 椎 動物,脊
トン と推 定 椎 動 物 に大 別
され て い る.こ の な かで 生 産 性 の 高 い バ イ オ マ ス 資源 は 大型 藻類 で あ り,そ の細 胞 膜,細
胞 膜 間 物 質 を構 成 して い る もの が アル ギ ン酸 で,構 成 単 位 の 約30%を
占め る.ア ル ギ ン酸 は陸 上 植 物 の セル ロ ー ス に相 当 す る海 洋 植 物 の 多 糖 類 で あ り, 海 洋 で は 最 も有 効利 用 が望 まれ る資 源 で あ り,実 際 に 資 源 化 構想 が 検 討 され,一 部 実 施 され て い る. 一 方,廃
棄 物,未 利 用 バ イ オ マ ス 資 源 の な かで,日 本 の 農 産物 の 地 上 部 残 査 の
主 な もの は水 稲 と野 菜 残 査 で92%を
占 め て お り,こ れ は食 用 資 源 と 同 量 の バ イ
オ マ ス が未 利 用 の ま ま廃 棄 され て い る こ と に な る.ま た,新
しい バ イオ マ ス 資源
と して 種 々 の 植 物 も考 え られ て い る.ス イ ー トソル トガ ム は トウモ ロ コ シの 変 種 で 茎 の搾 汁 中 に12∼13%の
糖 を含 ん で い る.こ の 作 物 は栽 培 が比 較 的 容 易 で地
域 適 応 性 も高 い とい う特 徴 を有 し,今 後 の 技 術 開発 が期 待 され て い る.こ の植 物 の 搾 汁 を エ タ ノー ル に変 換 し,ア
ミノ酸 その 他 の 化 学 製 品 に,ま
た,搾
りか す は
燃 料 ・飼 料 に利 用 す る用 途 が考 え られ,耕 地 系 バ イ オ マ ス 資 源 と して 最 も期 待 さ
れ て い る 一 つ で あ る.油 料 作 物 と して は ナ タネ や ヒマ ワ リな ど が あ る.ヒ マ ワ リ は種 子 中40∼50%の
油 脂 を含 み,大 豆 の2∼2.5倍
の含 油 率 で,経 済 性 も高 い .
さ らに林 地 系 バ イ オ マ ス 資 源 と して世 界 各 国 で 造 林 が 進 め られ て い る.そ の ほ と ん ど はエ ネ ル ギ ー利 用 を 目的 と して い る.樹 種 と して は早 生 型 の ポ プ ラが 中 心 で あ る. ア メ リカ で は 中西 部 に お け る トウ モ ロ コ シ な ど の 余 剰 農 産物 対 策 と して エ タ ノ ール を生 産 して い る.ま た ブ ラ ジル で は1975年 の 第 一 次 石 油 危 機 に よ る石 油 価 格 値 上 げ に伴 う国際 収 支 の 悪 化 と,砂 糖 産 業 の不 振 な ど を背 景 に,国 家 的 事 業 と して サ トウ キ ビ を原 料 とす る ア ル コ ール 生 産 を行 い,400か
所 以 上 に 及 ぶ アル コ
ー ル 生 産 工 場 が稼 働 して い る . 5.3 多 糖 類 系 バ イ オ マ ス 資 源 5.3.1 セ ル ロー ス 資 源 a. セル ロー ス の 存 在 と化 学 構 造 る有 機 化 合 物 で あ り,古
セ ル ロー ス は地 球 上 で 最 も大 量 に 存 在 す
くか ら衣 料,紙,パ
ル プ な ど と して利 用 され て きた.そ
の 有 効 利 用 は わ れ わ れ 人 類 に と って 大 変 重 要 な こ とで あ り,こ こ十 数 年 来 は誘 導 体 と して の利 用 も進 め られ て きて い る.た と えば 代 表 的 な セル ロ ー ス誘 導 体 で あ る セル ロ ー ス ア セ テ ー トの 製 造 は,わ が 国 にお い て は ほぼ 半 世 紀 の 工 業 的 歴 史 を もつ.ま
た,レ ー ヨ ン,キ ュ プ ラお よ び セ ロハ ン な どの 再 生 セル ロ ー ス と して の
利 用 も行 われ て きた. セル ロ ー ス は主 と して 木 綿,麻,木
材繊 維 な どの 植 物 を構 築 す る組 織 と して 存
在 して い る が,そ の他 に海 藻 セル ロ ー ス,動 物 セ ル ロ ー ス さ ら に はバ ク テ リアセ ル ロ ー ス な ど も知 られ て い る.こ の な か で 木 綿 は 自然 界 で 得 られ る最 も純 粋 な セ ル ロ ース で あ る.ふ つ うの 植 物 繊 維 は リグ ニ ン,ヘ
ミセル ロー ス な ど が随 伴 して
お り,た と え ば セル ロー ス の 最 も代 表 的 な 原料 は 木材 で あ るが,木 材 繊 維 か ら リ グ ニ ン な ど を溶 出 させ て分 離,さ
らに は精 製 して 溶解 パ ル プ の 形 で セル ロ ー ス 原
料 と して い る. セ ル ロ ー ス の化 学 構 造 は 図5.4の ス が1,4-β-グ
と お りで,繰
リコ シ ド結 合 に よ り鎖 状 に 連 結 した もの で あ る.セ ル ロ ー ス の 重
合 度 は種 類 や 由 来 に よ っ て 異 な る が,た 1000∼1500で
り返 し単 位 で あ るD-グ ル コ ー
と え ば 木 材 中 の セル ロ ー ス は 重 合 度 が
あ る の に 対 し,綿 セ ル ロ ー ス で は8500∼9500と
い わ れ て い る.
図5.4 セル ロ ー ス の 化 学 構 造
この 重 合 度 に グ ル コ ー スユ ニ ッ ト(C6H10O5)の
分 子 量(162)を
乗 ず る と セル ロ
ー ス の 分 子 量 とな る こ と よ り ,木 材 中 の セ ル ロ ー スの 分 子 量 は16∼24万 木 材 は セ ル ロ ー ス50∼55%,ヘ
ミセ ル ロ ー ス10∼20%,リ
とな る.
グニ ン20∼30%
を 含 ん で い る. b. 木 材 か らセ ル ロー ス の精 製
建 築 材 や 燃 料 と して 人 類 の生 活 と深 い 関 わ
り を も って き た 木 材 は,時 代 と と もに そ の利 用 方 法 が変 化 した とは い え,貴 重 な 資 源 の 一 つ で あ る こ とは い ま も変 わ りが な い.木 材 は太 陽 エ ネル ギ ー の も とで 循 環 再 生 が 可 能 で あ る.こ の 利 点 を生 か して樹 木 の 育 成 に努 め,同 時 に木 材 の 有 効 利 用 をは か る こ と が 必 要 で あ る. 木 材 の細 胞 壁 を 構 成 す る要 素 間 の マ ク ロ な存 在 様 式 につ い て み る と,セ ル ロ ー ス は骨 格 物 質,ヘ
ミセ ル ロ ー ス と リグニ ン は充〓 物 質 と い え る.す な わ ち,木 材
は,セ ル ロ ー ス で 骨 組 み をつ く り,そ の 回 りに ヘ ミセル ロ ー ス を詰 め込 み リグ ニ ン で包 ん だ もの と い え る.細 胞 壁 の 各 層 に は ミク ロ フ ィブ リル とよ ばれ る配 向 が み られ る.こ れ は セ ル ロ ー スが 集 合 して 長 く薄 い糸 状 物 と な っ た もので,断 直 径10nmの
面が
円 と仮 定 す る と,セ ル ロ ー ス鎖 が240個 集 ま っ た もの とな る.
木 材 需 要 量 の 約36%は,パ
ル プ お よ び 紙 と して 消 費 され て い る.パ ル プ とは
木 材 な ど を原 料 と し,こ れ を機 械 的 また は化 学 的 な パ ル プ化 法 に よ り処 理 し,得 られ る セル ロ ー ス繊 維 を と きほ ぐ して 取 り 出 した もの で あ り,溶 解 パ ル プ と製紙 用 パ ル プ に 分 け られ る.溶 解パ ル プ は,レ
ー ヨ ン,キ ュ プ ラ,ア セ テ ー トな どの
繊 維 や セ ロハ ン な ど の原 料 とな るパ ル プ で,溶 媒 に 溶 解 したの ち紡 糸 あ る い は成 膜 をす るの で この 名 が あ る.合 成 繊 維 や プ ラ ス チ ッ ク フ ィル ムの 進 出 に よ っ て溶 解 パ ル プの 生 産 は 衰 退 を余 儀 な く され て い る. 一 方,製 紙 用 パ ル プ は紙 や板 紙 に使 用 され るパ ル プ で,化 学 的 ・機 械 的 ま た は 両 者の 併 用 に よ っ てパ ル プ化 す る.機 械 的 パ ル プ化 法 は,丸 太 を突 起 の あ る ス ト
ー ン に押 しつ け て ,せ ん断 力 で繊 維 細 胞 を引 き は が して パ ル プ を得 る もの で あ る. 機 械 的 パ ル プ化 法 で は 木 材 か ら90%以
上 の 収 率 で パ ル プ が 得 られ るが,リ
ンが その ま ま残 留 して お り,こ れ が340nm付
グニ
近 の 紫 外 線 に よ っ て変 色 す るの で ,
使 用 期 間 が 長 い用 途 の紙 に は利 用 で き な い. 一 方,木
材 繊 維 を 接 着 して い る リグ ニ ン を化 学 的 に分 解,可 溶 化 して 繊 維 を単
離 す るの が 化 学 的パ ル プ 化 法 で あ る.も い られ て い た が,ま 現 した.ま
もな く亜 硫 酸・ 重 亜 硫 酸 カル シ ウ ム溶 液 に よ る亜硫 酸 法 が 出
た,近 年,ア
加 え られ,パ
と も と は,ア ル カ リを使 用 す る方 法 が用
ル カ リに よ っ て リグ ニ ン を分 解,除
去 す る方 法 に 改 良 が
ル プ廃 液 を 回 収 ・使 用 す る ク ラ フ トパ ル プ化 法 が 開発 され た.こ の
方 法 で は,樹 種 に対 す る選 択 性 が な く,し か もセ ル ロ ー ス の加 水 分 解 が 少 な い た め,現 在,わ
が 国 で 使 用 され て い るパ ル プの ほ とん ど は こ の方 法 で製 造 され て い
る. c. 紙 の 製 造
紙 は木 材 パ ル プ その 他 の 植 物 繊 維 を 水 を媒 体 と して 金 網 上 で
薄 層 に す き上 げ,乾 燥 した もの で あ る.乾 燥 と 同 時 に セ ル ロ ー ス間 の 水 素 結 合 が 生 じ,繊 維 の 絡 み合 い と相 ま って 強 度 が得 られ る. 原 木 か ら紙 に な る まで の 製 造 工 程 の 概 略 を 図5.5に 示 す.工 程 は パ ル プ を作 る パ ル プ 工 程 と,こ れ を紙 にす る抄 紙 工 程 の 二 つ に大 別 され る.前 項 で 述 べ た よ う に機 械 的 パ ル プ化 法 は木 材 をす りつ ぶ して繊 維 状 にす る方 法 で あ り ,化 学 的パ ル プ化 法 で は 化 学 薬 品 に よ って 木 材 チ ップ か ら リグニ ンや ヘ ミセル ロ ー ス な ど を溶 解,除
去 して セル ロー ス だ け を取 り出す.抄
紙 工 程 で は まずパ ル プの セル ロ ー ス
繊 維 を細 断,解 離 して機 械 的 な処 理 を行 う.こ れ を こ う解(リ
フ ァ イニ ン グ)と
い う.次 に 紙 を均 一 にす るた め の 調 製 を行 い ,同 時 に 白土,滑 石,硫
酸 バ リウ ム
な ど,不 透 明 さ を 出す た め の 充〓 剤 を加 え,ま た 着 色 剤 な ど も配 合 す る.つ いで 抄 紙 機 に よ り抄 紙,圧 搾,乾 燥 を経 て 紙 に 仕 上 げ る.
図5.5 紙 の 製 造 工 程(園
田 ・亀 岡,1997)
古紙 の再 資源化 現 在 で は,古
紙 を 回 収 して 再 生 紙 と して 利 用 す る こ と は あ た り前 の 技 術 と な っ
て い る.古 紙 再 生 の 目的 は 資 源 の 節 減 が 第 一 で あ る が,古 れ だ け で は な い.た で は,原
と え ば,チ
紙 利 用 の メ リ ッ トは こ
ップ か らパ ル プ を製 造 す る 場 合 に 比 べ て 古 紙 利 用
料 の 輸 送 に 必 要 な 容 積 は1/4以
プ を海 外 か ら輸 入 して い る の で,古
下 と な る.わ
が 国で は か な りの量 の チ ッ
紙 利 用 に よ る輸 送 エ ネ ル ギ ー の 節 減 は 大 き い.
ま た 古 紙 再 生 プ ロ セ ス の エ ネ ル ギ ー 消 費 も木 材 か らパ ル プ を 製 造 す る こ と に比 べ れ ば 著 し く小 さい. 以 上 の よ う に 古 紙 利 用 の 社 会 的 意 義 は 一 般 に理 解 され て い る よ り も は る か に 大 きい の で あ る.
d. セル ロ ー ス由 来 の 繊 維
木 綿,麻 類 な どの 植 物 由 来 の 天 然 繊 維 の 主 成 分
は セル ロ ー ス で あ る.こ れ らの 天 然 繊 維 は,セ ル ロー ス の構造 か らわ か る よ うに, 酸 性 水 溶 液 に対 して は速 や か に 加 水 分 解 を うけ るが ア ル カ リに は強 い.天 然 繊 維 を い っ た ん化 学 的 に溶 解 させ,再 生 ・紡 糸 し直 して繊 維 と した もの が 再 生 繊 維 で あ り,セ ル ロー ス を原 料 とす る レー ヨ ンや キ ュプ ラ が その 代 表 で あ る. レー ヨ ン を製 造 す る反 応 を図5.6に 示 す.溶
解 パ ル プ を原 料 と して,水 酸 化 ナ
トリ ウム 水 溶 液 で 処 理 して アル カ リセ ル ロー ス をつ く り,つ い で 二 硫 化 炭 素 と反 応 させ て セ ル ロ ー ス キ サ ン トゲ ン酸 ナ ト リウ ム(セ ル ロ ー ス ザ ンテ ー ト)と し, これ をア ル カ リ水 溶 液 に 溶 かす と ビス コ ー ス とい わ れ る粘 性 の あ る液 と な る.ビ ス コ ー ス を細 か い ノズ ル の 孔 か ら硫 酸 中へ 押 し出 す と(湿 式 紡 糸),分
解 によっ
て セ ル ロー ス が 再 生 され,糸 の 形 で レ ー ヨ ンが遊 離 す る. 一 方,キ
ュ プ ラ とは セ ル ロ ー ス を銅(Ⅱ)ア
ン ミ ン錯 体 溶 液 に溶 解 して 紡 糸 液
図5.6 セ ル ロ ース か ら レ ー ヨ ン を得 る反 応 行 程
トリア セテ ー ト
アセ テ ー ト
図5.7
を つ く り,セ ま た,セ
ト リア セ テ ー ト,ア セ テ ー トの 化 学 構 造
ル ロ ー ス を 再 生 し た 繊 維 で あ る.
ル ロ ー ス を 無 水 酢 酸 で エ ス テ ル 化 し た も の が,ア
テ ー ト と よ ば れ る 半 合 成 繊 維 で あ る(図5.7).図5.8の 酢 酸,酢 る.こ
セ テ ー トや ト リ ア セ
よ うに セル ロ ー ス を無 水
酸 お よ び 硫 酸 に よ り ア セ チ ル 化 す る と ト リ ア セ チ ル セ ル ロ ー ス を生 成 す れ を 一 部 加 水 分 解 し た の ち,ア
が ア セ テ ー トで あ る(図5.9).す テ ー トの 中 間,つ
セ ト ン に 溶 解 し,乾
な わ ち,ア
セ テ ー トは ト リ ア セ テ ー ト と ジ ア セ
ま り グ ル コ ー ス 単 位 あ た り の2.5個
造 を 有 し て い る(図5.7に
式 法 に よ り紡 糸 し た の
程 度 の ア セ チ ル 基 を含 む構
示 し た ア セ テ ー トの 構 造 は 便 宜 上,ト
図5.8
セル ロ ー ス か ら ア セ テ ー トへ の 変 換 反 応
リ ア セ テ ー トユ
図5.9
ア セ テ ー ト,ト
リ ア セ テ ー トの 製 造 工 程(園
田 ・亀 岡,1997)
ニ ッ トと ジ ア セ テ ー トユ ニ ッ トが 交 互 に存 在 す る よ う に書 かれ て い る が,実 際 は ラ ン ダ ム な 配 置 を とっ て い る).セ 立 され て い な い た め,ト
ル ロ ー ス か ら ア セ テ ー トへ の 直 接 合 成 法 が確
リア セ チ ル ま で エ ス テ ル 化 し,再 び 加 水 分 解 す る 方 法 を
と っ て い る. 一 方,ト
リア セ テ ー トとは トリア セ チル セ ル ロ ー ス を意 味 し,適 当 な溶 剤 が な
く,化 学 的 に も不 安 定 な た め に,工 業 化 は ア セ テ ー トよ り遅 れ た.近 年,塩 化 メ チ レ ンの よ うな安 価 で取 り扱 い や す い溶 剤 が供 給 され て か ら生 産 され る よ うに な っ た.方 法 は 図5.9の よ う に トリア セ チ ル セ ル ロ ー ス を ア セ テ ー トにせ ず,そ の ま まの か た ち で塩 化 メ チ レ ン/メ タ ノ ー ル の混 合 溶 媒 に溶 か し,こ れ を 乾 式 紡 糸 した もの が トリア セ テ ー トで あ る.ア セ テ ー トに 比 べ て 親 水 性 に乏 しい が,耐 熱 性,耐
アル カ リ性 が高 い.
e. セ ル ロ ー ス の機 能化
セル ロー ス は 合 成 高 分 子 と は か な り異 な っ た 化 学
構 造 を も ち,ま た溶 剤 との 溶 媒 和 の 違 い で分 子 鎖 の か た さを変 え う るな ど物 性 的 に も特 異 な材 料 で あ る.合 成 高 分 子 物 質 に は期 待 で き な い こ れ らの特 異 性 を生 か して,セ ル ロ ー ス誘 導 体 の 新 しい 合 成 と用途 の 開 発 が さ ま ざま な領 域 で 行 わ れ て い る.具 体 的 な検 討 例 と して は,新 規 誘 導 体 の 開 発 に 関す る もの が 多 い が,分 離 膜,イ
オ ン交 換 樹 脂,固
定 化 酵 素 用 担 体,ビ
ー ズ 状 ゲル 粒 子,光 学 分 割 用 担 体,
微 生 物 分 解 性 ポ リマ ー,医 薬 あ る い は 医 用高 分 子 と して の利 用 に 関 して 興 味 あ る 成 果 が 得 られ て い る. 5.3.2 キ チ ン,キ a. キ チ ン,キ あ るが,2位
トサ ン資 源
トサ ン の 存 在
キ チ ン は セル ロ ー ス に構 造 類 似 の 天 然 多 糖 で
に ヒ ドロ キ シ基 の か わ りに ア セ トア ミ ド基 を もつ ア ミノ多 糖 で あ る
ヘ ミ セ ル ロー ス と リ グ ニ ン 木 材 な ど の 植 物 繊 維 は セ ル ロ ー ス 以 外 に ヘ ミセ ル ロ ー ス や リ グ ニ ン が 含 ま れ て い る.ヘ
ミ セ ル ロ ー ス は,キ
シ ロ ー ス や マ ン ノ ー ス な ど グ ル コ ー ス 以 外 の 糖 も構
成 成 分 で あ り,重 合 度 が100∼200程
度 の 多 糖 類 で あ る.一 般 に 水 に は 不 溶 で あ る
が ア ル カ リ水 溶 液 に は 可 溶 で あ り,酸
に よって セル ロ ース よ りも加 水分 解 されや
す い. リグ ニ ン の 構 造 は 単 純 で は な い が,図 され て い る.植
の よ うな 基 本 構 造 を もつ こ と が 明 ら か に
物 の種 類 によ って そ の主 要構 造 が それ ぞ れい ずれ か を多 く含 んで
い る か は 異 な っ て い る.材
木 中 で リ グ ニ ン は さ ま ざ ま な 結 合 に よ り炭 水 化 物 と結
び つ い て い る. ヘ ミセ ル ロ ー ス や リ グ ニ ンの 資 源 と し て の 利 用 も種 々 試 み られ て い る が,本
格
的 な 利 用 は 今 後 の 研 究 に よ る と こ ろ が 大 き い.
D-グ ルコー ス
D-ガ ラク トー ス
D-キ シ ロー ス
L-ア ラビ ノー ス
D-マ ン ノー ス
4-O-メ チル-D-グ ルク ロ ン酸
ヘ ミセ ル ロ ー スの 構 造
リグ ニ ンの 構 造
(図5.10).そ
の 生 合 成 され る量 は 膨 大 な もの で 年 間10億 ∼1000億
トン と推 定 さ
れ て い る.つ ま り,地 球 上 で セ ル ロ ー ス につ い で 豊 富 な有 機 物 で あ る が,そ の 利 用 研 究 の 遅 れ の た め に ほ とん ど廃 棄 され 続 け て い る き わ め て低 利 用 度 の バ イオ マ ス資 源 で あ る.ま た キ トサ ン は,キ チ ン を高 温 の 濃 アル カ リ液 で 処 理 した 際 に得
図5.10
キ チ ン,キ
トサ ンの 化 学 構 造
られ る,キ チ ン の脱 ア セ チ ル 化物 で あ る. セ ル ロ ー ス は 主 と して 高 等 植 物 の細 胞 壁 に存 在 す る が,菌 類 お よび 一 部 の 藻 類 な どの 下 等 植 物 で は構 造 類 似 の 多糖 で あ る キ チ ン にお き か え られ て い る もの が 多 い.ま
た,動 物 界 に お いて も下 等 動 物 を 中心 に広 く分 布 して い るが,と
くに節 足
動 物 の 甲殻 に 多 く含 有 され お り,単 離 も容 易 で あ る.現 在,工 業 的 に は カニ お よ び エ ビ(十 脚 目)の 甲殻 よ り生 産 され て い る.こ の 甲 殻(ク チ ク ラ と も よば れ る) に は,キ
チ ンの ほ か タ ンパ ク質 や無 機 塩 を含 ん で お り,そ の存 在 比 は種 に よ って
大 き く異 な る(表5.3).ま
た,オ キ ア ミや イ カ,貝
な ど か ら もキ チ ン を 多量 に調
製 す る こ と が 可 能 で あ る.十 脚 目 クチ ク ラの 構 造 を図5.11に 示 す.表
クチ ク ラ
の 主 成 分 は脂 質 と タ ンパ ク質 で あ り,膜 層 は お もに キ チ ン と タ ンパ ク質 で 構 成 さ 木 材 の プラ スチ ック化 木 材 を金 属,セ
ラ ミ ッ ク,プ
め の 加 工 法 が 狭 く,偏
ラ ス チ ッ ク な ど の 材 料 と 比 較 し た と き,利 用 の た
っ て い る こ と に 気 づ く は ず で あ る.す
っ た りす る 加 工 に 限 られ て い る た め,材 し か し,木 材 は 有 機 物 で あ り,同 し て 軟 化 させ 形 に 押 し出 せ た り,溶
な わ ち,切
っ た り貼
料 と し て の 利 用 範 囲 が 狭 く な っ て い る.
じ有 機 物 で あ る プ ラ ス チ ッ ク な ど の よ う に 加 熱 剤 に 溶 解 して 加 工 で き た ら木 材 の 利 用 範 囲 も
広 が り,付 加 価 値 の あ る 材 料 へ と応 用 で き る の で は な い だ ろ う か.ま
た,現
在は
ほ と ん ど利 用 され て い な い 間 伐 材 や 木 材 工 業 廃 棄 物 な ど の 有 効 利 用 に も つ な が る と考 え ら れ る.こ
の よ うな 観 点 か ら,木
に 行 わ れ て い る.具 液 化 ・液 化,あ 付 与 し,そ
材 の プ ラ ス チ ッ ク 化 に 関 す る研 究 が 盛 ん
体 的 な 研 究 内 容 と して は 木 材 へ の 熱 流 動 性 の 付 与,木
る い は 木 材 の 化 学 修 飾 な ど で あ る.い
材 の溶
ず れ も木 材 に新 しい 性 質 を
の 加 工 性 に 新 しい 展 開 を 見 い だ す 目 的 で 試 み ら れ て い る も の で あ る.
現 時 点 で は 諸 現 象 の 解 明 と い っ た 基 礎 的 な 知 見 を得 る段 階 で は あ る が,今 究 に よ っ て 木 材 の プ ラス チ ッ ク化 と い う大 き な夢 の 現 実 が 期 待 さ れ る.
後 の研
表5.3 十 脚 目甲殻 中 の キ チ ンの 含 有 量
図5.11 十 脚 目ク チ ク ラの 構 造
れ て い る.外 み,そ
クチ ク ラ と内 クチ ク ラで はキ チ ン と タ ンパ ク質 の ほ か ム コ多糖 を含
れ らが繊 維 を形 成 して い る.
キ チ ン は高 い 生 分 解 性 を有 す るば か りで は な く,特 異 な活 性 ・機 能 を示 し,さ ら に生 体 適 合 性 も良 好 で あ るな ど,多 くの 特 徴 を もつ た め に,新 た な視 点 か らい ろ い ろ な分 野 で 興 味 が もた れ は じめ た.と
くに,キ チ ン あ る い は キ トサ ン は セル
ロ ー ス と違 っ て ア ミ ノ多糖 で あ る点 に 最 も特 徴 が あ り,高 い 可 能性 を もつ機 能 性 高 分 子 素 材 と して 注 目で き,高 度 な利 用 開 発 が可 能 な はず で あ る.こ の よ う に 多 量 に存 在 し,そ の 開 発 が期 待 され て い る に もか か わ らず 利 用 研 究 が 遅 れ て い るの は,キ チ ンが 不 溶 ・不 融 で あ るの が 最 大 の 原 因 で あ る.そ
こで,キ チ ンや キ トサ
ン に対 して化 学 修 飾 を行 い,可 溶 化 す る と と もに機 能 化 を図 る試 み も盛 ん に な っ て い る. b. キ チ ン,キ
トサ ンの 利 用
キ チ ンは 一 般 の 溶 媒 に溶 解 しな い が,キ
ンは 可 溶 で あ る た め,利 用 しや す い(表5.4).こ
トサ
れ らの ア ミノ多 糖 の 特 異 な性 質
表5.4 キ トサ ンの 利 用
が解 明 され る につ れ,そ の 応 用 に 向 け て の 開 発研 究 が 盛 ん に な って き て い る. キ トサ ンは 酸性 水 溶 液 に は塩 と な って 溶 解 しポ リカ チ オ ン とな る ため,水 処 理 の 凝 集 剤 と して 実 際 に利 用 され て い る.キ
トサ ンは凝 集 させ る対 象 に よ っ て は合
成 系 の ポ リカ チ オ ン よ り もす ぐれ た 性 能 を示 す 上,毒 性 も低 く,し か も高 い生 分 解 性 を示 す た め に環 境 保 護 の 観 点 か ら も好 ま しい.こ の ほ か,食 品 の 加 工 工 業 の 排 水 か らの タ ンパ クの 回 収,液 状 食 品 の 濁 りと り,あ る い は飲 料 の 酸 味 成 分 の 除 去 な ど の応 用 の可 能 性 が 示 唆 され て い る. ま た,キ チ ン,キ
トサ ンは顕 著 な 薬 理 活 性 が期 待 され,毒 性 が低 い こ とか ら医
薬,医 療 面 で の利 用 が 期 待 され て い る.キ
トサ ンは,塩 基 性 多糖 で あ る た め,胃
に お け る制 酸 作 用 や 潰 瘍 抑 制 作 用 が考 え られ,実 際 に動 物 実 験 で確 か め られ て い る.さ
らに動 物 飼 料 中 に キ チ ン あ るい は キ トサ ン を混 入す る と血 漿 お よび 肝 臓 中
の コ レス テ ロ ール,ト れ た.さ
リグ リセ リ ドの レベ ル を下 げ る と い う重 要 な 作 用 が認 め ら
らに,消 化 器 官 中の ビ フ ィズ ス菌 の 発 育 促 進 作 用,免 疫 増 強 作 用 な ど も
報 告 され て い る.キ
トサ ンお よ び キ トサ ンオ リゴ マ ー の抗 細 菌 性,抗
カ ビ性,抗
ウ イル ス性 な ど も報 告 され て い る. 最 近 注 目 され て い るの は,キ チ ンの 創 傷 治 癒 促 進 効 果 で あ る.以 前 か ら傷 口 に キ チ ン粉 末 を散 布 す る と治 りが早 くな る こ と は知 られ て お り,こ の性 質 を利 用 し て,人 工 皮 膚 お よ び手 術 用 縫 合 糸 がつ く られ て い る.た と え ば キ チ ン を ア ミ ド系 の 溶 媒 か ら湿 式 紡 糸 して 得 られ る糸 は,引
っ張 り強 度 の点 で代 表 的 な合 成 高 分 子
系縫 合 糸 で あ る ポ リグ リコ ール 酸 よ りや や 劣 るが,腸
を再 生 した糸 で あ る カ ッ ト
ガ ッ トよ りは強 い.こ の キ チ ン糸 を実 際 に縫 合 糸 と して使 用 し,強 度 変 化 を調 べ た 結 果,デ
キ ソ ン糸 と似 た 挙 動 を示 す こ とが わ か っ た.し か も,縫 合 後 の 癒 合 強
度 は 早 期 の 場 合,デ
キ ソ ン糸 よ りも高 く,治 癒 促 進 効 果 が確 認 され て い る.
ま た,キ チ ン,キ
トサ ン は種 々 の金 属 イオ ン と複 合 体 を形 成 し,す ぐれ た重 金
属 イ オ ンの 補 集 能 を示 す.一 般 に キ チ ン よ りも キ トサ ン の方 が高 い 吸 着 能 を示 す. Cu,Hg,Cd,Fe,Ni,Zn,Pb,Agイ
オ ンな ど は と く に よ く吸 着 し,ま た無
機 水 銀 の み で な く,毒 性 の 高 い有 機 水 銀 に対 して もす ぐれ た捕 集 能 を示 す こ とか ら,工 場 排 水 に含 まれ る有 毒 な重 金 属 イ オ ンの除 去 に有 効 で あ る と考 え られ る. 以 上 の ほ か,化 粧 品 ・香 粧 品成 分,殺 菌 な ど の た めの 薬 剤,酵 担 体,高
分 子 担 体 試 薬,分
離 膜 素 材,ク
素 ・細 胞 固定 化
ロ マ トグ ラ フ ィー 用 充〓 剤,食
品処理
剤 ・添 加 物,土 壌 改 良 剤 な ど,き わ め て 多岐 にわ た っ て利 用 研 究 が 進 ん で い る. しか し,こ の よ う な新 しい機 能性 材 料 と しての キ チ ンの 研 究 は 始 ま っ た ば か りで あ る.キ チ ンの よ う に容 易 に 入 手 で き,し か も多様 な利 用 の 可 能 性 の あ るバ イオ マ ス 資源 は少 な く,今 後 の 発 展 が注 目 され る. 5.3.3 デ ン プ ン デ ンプ ンは 植 物 の エ ネ ル ギ ー 貯 蔵 源 と して働 く多糖 で あ る.穀 類,イ ウ モ ロ コシ,コ
メ な ど の主 成 分 は デ ンプ ンで あ り,植 物 が グ ル コ ー ス を蓄 え るた
め の 形 態 と考 え られ る.デ
ンプ ン は,α-D-グ
ル コ ー ス を構 成 単 位 と して お り,
ア ミ ロー ス と ア ミロ ペ ク チ ンの2種 成 分 か ら成 っ て い る.ア の 重 量 の 約20%を
占 め,数 百 のD-グ
結 ば れ た構 造 を有 して い る.一 方,デ あ り,ア
モ類,ト
ミロ ー ス は デ ン プ ン
ル コ ー ス分 子 が1,4-α-グ ン プ ンの残 りの80%は
リ コ シ ド結 合 で
ア ミ ロペ ク チ ンで
ミロー ス よ り複 雑 な構 造 を して い る.
デ ンプ ン は安 価 で生 産 量 も 多い が,腐 敗 性 や 吸湿 性 が 著 しく,ま た成 形 性 も よ くな い.こ の た め,そ の ま まで は材 料 と して 用 い に くい.し が微 生 物 に 分 解 され や す い 性 質 を利 用 して,デ
か し,近 年 デ ン プ ン
ン プ ン を含 む 生 分 解 性 プ ラ スチ ッ
ク の 開 発研 究 が 盛 ん で あ る. 5.4 マ リ ン バ イ オ マ ス 資 源 5.4.1 マ リンバ イ オ マ ス 資 源 の 種 類 わ が 国 は国 土 が小 さ く資 源 小 国 で あ るが,四 方 を豊 か な海 に 囲 まれ て い る.と く に表 日本 側 に は 広 大 な太 平 洋 が あ り,200カ に して現 在 の 国 土 の12倍
イ リ経 済 水 域 を設 定 す る と,面 積
もの 海 洋 表 面 を 有 効 利 用 で き る こ とに な る.ま
た,近
年 は化 石 資 源 の 枯 渇 や 人 口 増 加 か ら予 想 され る資 源 確 保 を考 え る と,地 球 表 面 の 2/3を 占め る海 洋 に存 在 す るマ リ ンバ イオ マ ス資 源,と は 注 目 され て い る.
く に その な か で も海 藻 類
天然 多糖 のプ ラスチ ック材 料 と しての利用 す で に 本 文 で 述 べ た よ うに,セ
ル ロ ー ス や デ ン プ ン な どの 天 然 多 糖 は 石 油 由 来
の 高 い 高 分 子 に か わ る プ ラ ス チ ッ ク材 料 と して 期 待 され て お り,一 て い る.天 る が,化
部 実 用 化 され
然 多 糖 は 再 生 可 能 な 資 源 で あ る とい うバ イ オ マ ス な らで は の 利 点 が あ
石 資 源 の 方 が 安 価 で あ り,合
材 料 と し て は 有 利 で あ る.し
成 や 加 工 が 容 易 な石 油 由 来 の 合 成 高 分 子 が
か し,天 然 高 分 子 に は,合
成 高 分子 には ない生 物 親
和 性 と い う特 性 を 生 か した 材 料 と し て の 利 用 が 期 待 さ れ て い る.具 用 材 料 や(生)分
プ ラ ス チ ッ ク 材 料 と して 利 用 す る た め に は,こ 用 途 に 応 じた 強 度 や 加 工 性 が 必 要 と な る.こ け に く く,ま
体 的 には医 療
解 性 プ ラス チ ッ ク が 考 え ら れ る. の 特 性 を 生 か した 上 で,さ
の よ う な 点 で 天 然 多 糖 は,溶
た 吸 湿 性 が 高 く熱 的 に 不 安 定 な ど不 利 な点 が 多 い.そ
らに
剤 に溶
こで 多 糖 あ る
い は 多 糖 と合 成 高 分 子 を ブ レ ン ド して プ ラ ス チ ッ ク 材 料 と し て 利 用 す る試 み が 成 さ れ て い る.た と え ば,セ ル ロ ー ス と キ トサ ン か ら成 る 複 合 素 材 が フ ィ ル ム ・シ ー ト成 形 能 を有 し ,生 分 解 性 プ ラ ス チ ッ ク と し て の 利 用 が 可 能 で あ る こ と が 見 い だ され て い る.ま
た,デ
ン プ ン を ポ リ エ チ レ ン な ど の 合 成 高 分 子 に 練 り込 ん だ プ
ラ ス チ ッ ク が 開 発 され て お り,実 用 化 も され て い る.こ
の 材 料 で は,デ
ンプ ンは
生 分 解 す る が 合 成 高 分 子 の 部 分 は 分 解 し な い た め 完 全 な 生 分 解 性 材 料 で は な く, そ の た め 崩 壊 性 プ ラ ス チ ッ ク とい わ れ て い る.
海 藻 類 は,わ ン ブ,ワ
が 国 で は古 来 か ら食 用 と して珍 重 され て き て お り,ア マ ノ リ,コ
カ メ を は じめ,多
くの種 類 の 海 藻 が 日本 の 食 文 化 に定 着 して い る.こ の
ほ か 海 藻 類 の 用 途 と して は,家 畜 の 飼 料,作 物 の肥 料,医 薬 品,化 粧 品,食 品添 加 物,工
業 原 料 な どそ の 用 途 は 多 い.わ
種 は あ り,全 海 藻 生 産 高 は約1800億
が 国 で 食 用 とな る海 藻 は少 な く と も100
円 に も達 して い る.
5.4.2 ア ル ギ ン酸 マ リ ンバ イ オ マ ス の な か で 最 も そ の 利 用 が期 待 され て い るの が 大 型 藻 類 で あ る.大 型 藻 類 は大 部 分 渇 藻 類 に属 し,こ れ らの 渇 藻 類 の 細 胞 膜,細 胞 膜 間 物 質 を 構 成 して い る の が アル ギ ン酸 で,構 成 体 の30%を
占 め る.し た が っ て,ア ル ギ
ン酸 は 陸 上 植 物 の セ ル ロ ー ス に相 当す る海 洋 植 物 の 多糖 類 で あ る.そ れ ゆ え,海 洋 で は 最 も有 効 利 用 が 望 まれ る資 源 で あ り,実 際 に資 源 化構 想 が検 討 され 始 め て い る. ア ル ギ ン酸 は マ ンヌ ロ ン酸(M)単 ロ ッ ク お よび そ の 中間 のMG単
位 の ブ ロ ック,グ ル ロ ン酸(G)単
位の ブ
位 の ブ ロ ッ ク が1 ,4-グ リコ シ ドか ら な る直 鎖 の
図5.12
アル ギ ン酸 の構 造
コ ポ リマ ー で あ る(図5.12).poly-Mは
平 ら な リボ ン状 で あ り,poly-Gは
ぼ み の あ る折 れ 曲 が り構 造 を有 して い る.ア ル ギ ン酸 は現 在,食 料,製 紙 工 業,染 色 工 業 な どの 分 野 で 増 粘,安
く
品製 造,医 療 材
定,乳 化 な ど の機 能 剤 と して は広
く使 用 され て い る.ま た,ア ル ギ ン酸 は 食 品 添 加 物 と して も重 要 で,こ れ は アル ギ ン酸 が,① 滑 らか で 高 い 粘性 を示 す,②
ゼ リー化 性 が大,③ 親 水 性 が 高 い,④
デ ンプ ン老 化 防 止 性 が あ る,⑤ 少 な い添 加 量 で 効 果 が大 きい,な
どの す ぐれ た性
質 を もつ た め で あ る. 以上 の よ うに アル ギ ン酸 は工 業 用 や 食 用 と して 利 用 され て い るが,陸 上 生 物 の セル ロー ス に比 較 して海 洋 多 糖 類 の応 用 開 発 は は じま っ た ば か りで あ り,と
くに
機 能 材 料 と して は今 後 の研 究 の 発 展 が望 まれ る.ア ル ギ ン酸 は天 然 に それ を分 解 す る微 生 物 が存 在 す るの で 分 解 性 の天 然 高 分 子 素 材 で あ り,資 源 的 に興 味 が もた れ る. 5.5 そ の 他 の バ イ オ マ ス 資 源 そ の他 の 有 力 なバ イ オ マ ス 資源 と して あ げ られ るの は,農 業 廃 棄 物,都 市 ごみ, 産 業 廃 棄 物,畜 産 廃 棄物 で あ る.現 在,農
産 物 関係 で は,食 用 資 源 と 同量 のバ イ
オ マ ス が未 利 用 の ま ま廃 棄 され て お り,ま た畜 産 廃 棄 物 で はふ ん尿 処 理 の 経 費 が 多 くな り,経 営 を圧 迫 して い る.食 品 加 工 産 業 で も廃 棄 物 の 処 理 が 問題 と な って い る.一 部 で 飼 料 と して利 用 され て は い る が,廃 棄 物 系 バ イオ マ ス の効 率 的 な利 用 に は至 っ て お らず,有
効 利 用 技 術 の 開 発 が望 ま れ て い る.た と え ば農 業 廃棄 物
か らは表5.5の よ うな利 用 が 考 え られ る. 表5.5 農業廃棄物 を原料 にす る化学合成
5.6 エ ネ ル ギ ー 資 源 と して の バ イ オ マ ス 炭 素 資 源 で あ るバ イ オ マ ス は エ ネ ル ギ ー 資源 と して も期 待 され て い る.し か し, その まま燃 焼 した の で は,発 熱 量 が 低 い た め,効 率 よ くバ イオ マ ス を エ ネ ル ギ ー へ 変 換 す る技 術 の 開 発 が 重 要 で あ る(図5.13).エ ル コ ール や メ タ ン発 酵 法,熱 分 解,ガ
ネ ル ギ ー へ の 変 換 手 法 は,ア
ス化,液 化,燃
焼 発 電 と 多様 で あ る が,と
二酸化 炭素 の資源 と しての利 用 炭素 資 源 の循 環 は,大 気 中の 二 酸化 炭素 が バ イオ マ スへ と変 換 され,そ れ らの 分 解 な ど によ り二 酸 化炭 素 が放 出 され る とい う過 程 で行 われ て い る.近 年 問題 視 され て い る 二酸 化 炭 素の 増大 は,化 石 燃料 の 燃焼 や 熱帯 雨林 な どの バ イオ マ ス資 源 の消 滅 に よって もた らされ た もので ある.本 章 で は 二酸 化炭 素 が 化学 的 に 固定 化 され た有機 化 合 物 で あ るバ イオ マ スの 資源 と して の利 用 につ いて取 り上 げて い るが,そ れ で は二 酸 化炭 素 その ものの 資源 と しての利 用 は可能 で あ ろ うか.二 酸 化炭 素 を分離 ・回 収 ・貯 蔵 す る技術 は さま ざま に開 発 され て い るが,さ
らに これ
をそ の ま まで は利 用 しに く く,二 酸 化 炭素 を化学 的 に有 機 化合 物 へ 変換 す るこ と が 考 え られ る.こ れ に は,バ イオ マ スな ど を利 用 して生 体有 機 物 へ と変 換 す る方 法 や,二 酸 化 炭 素 を人工 的 に還元 し,有 用物 質 に変 換 す る化学 的 固定 法 が あ る. 現在 の と こ ろい ず れ も研 究段 階 で あ り,二 酸 化炭 素 の 固定 量 も少 な く,実 用 に は 至 っ てい な い.し か し,二 酸 化 炭素 は究極 の炭 素 資 源 と考 え られ,そ の 有 効 な化 学 的 固定技 術 が 開 発 され れ二 酸 化炭 素 を人 工 的 に資 源 と して循 環 ・利 用 す るこ と も可 能で あろ う.
図5.13 バ イ オ マ ス か らの エ ネル ギ ー 変 換
くに セル ロ ース 系 バ イ オ マ ス か らの エ タ ノー ル の 生 産 は 有 力 な方 法 で あ る. セル ロ ー ス は,加 水 分 解 に よ り構 成 単 位 で あ る グ ル コー スへ と変 換 で き る.グ ル コ ー ス か らの 発 酵 に よ り得 られ るエ タ ノ ール は,燃 料 と して の 利 用 が可 能 で あ る.エ
タ ノ ール は硫 黄 分,窒 素 分,重 金 属 な どの 不 純 物 を含 ま な い ク リー ンな液
体 エ ネ ル ギ ーで あ る.単 位 重 量 あ た りの 発 熱 量 は ガ ソ リン よ りも小 さい もの の高 い燃 焼 効 果 が 得 られ る た め,二 酸 化 炭 素 発 生 量 は15%以 ワ ラ,バ ガ ス(サ
トウ キ ビ の搾 りか す),木
上 少 な い.現 在,イ
ネ
材 を対 象 に エ タ ノ ー ル 生産 が 行 わ れ
て い る.こ の よ うな セ ル ロ ー ス系 バ イオ マ スか らの エ タ ノ ール 生 産 に至 る工 程 は 種 々検 討 され て い る.セ ル ロ ー ス は一 般 的 に分 解 酵 素 セ ル ラ ー ゼ に よ っ て分 解 さ れ,グ
ル コ ー ス が得 られ る.し か し,リ グ ニ ンが混 じ って い る と セ ル ロ ー ス の 酵
素 分 解 が 阻 害 され るの で,効 率 よ くセル ロ ー ス を加 水分 解 して グル コ ー ス を得 る た め に は バ イオ マ ス か ら リグニ ン を除 く前 処 理 が必 要 で あ る.バ ガ ス,イ ネ ワ ラ につ い て は アル カ リ処 理 に よ って,効 率 よ く リグ ニ ン を除 去 す る こ とが可 能 で あ る.一 方,木 材 は ア ル カ リ処 理 の み で は脱 リグ ニ ン化 され ず,爆 砕 に よ り前処 理 す る.こ の よ うに して得 られ た セル ロ ー ス を セル ラー ゼ 酵 素 に よ っ て 分解 しグ ル コ ー ス と し た後,ア ル コ ー ル 発 酵 で エ タ ノー ル に 変 換 す る. ブ ラ ジル で は,サ
トウキ ビ を原 料 に して エ タ ノー ル が 生 産 され,自 動 車 燃 料 と
して 実 用 化 され て い る.ブ
ラ ジル の 大 きな収 入 源 の 一 つ は砂 糖 の 生 産 で あ る が,
これ は サ トウ キ ビの搾 り汁 か らつ く られ る.こ の と きの 搾 りか す がバ ガ ス で,バ ガ ス は砂 糖 の 生 産 プ ロセ スの 熱 源 と して 使 われ る ほ か,余 剰 分 は他 の 工場 用 燃 料 に使 わ れ て い る.サ
トウ キ ビの 搾 り汁 は発 酵 させ て 酒 をつ くる が,さ
らに 蒸 留 し
て エ タ ノ ール を生 産 す る.ブ ラ ジル で は国 策 に よ り これ を 自動 車 燃 料 と して 使 用
ブ ラ ジ ル はCO2排
出 ゼ ロ の 国?
ブ ラ ジ ル の エ ネ ル ギ ー の 基 本 構 成 は,電 マ ス ・エ タ ノ ー ル,工
電 力 は 水 力 発 電 で ま か な わ れ,電 た,国
の と き の 搾 りか す が バ ガ ス で,バ
動 車 用 燃 料 はバ イ オ
資 源 豊 か な 国 で あ る か ら,
力 の 余 裕 か ら電 気 ボ イ ラ ー が 使 わ れ て い る.ま
の 最 大 の 収 入 源 で あ る 砂 糖 は,サ
る ほ か,余
力 は 水 力 発 電,自
場 燃 料 は バ イ オ マ ス で あ る.水
トウ キ ビ の 搾 り汁 か らつ く られ る が,こ
ガ ス は 砂 糖 の 生 産 プ ロ セ ス の 熱 源 と して 使 わ れ
剰 分 は 他 の 工 場 用 燃 料 に 使 わ れ る.さ
ら に,サ
ガ ス か ら 自動 車 用 燃 料 と して エ タ ノ ール を つ く っ て い る.国
トウ キ ビの 搾 り汁 や バ 際 収 支 が赤 字続 きで
あ り,自 動 車 燃 料 を 国 内 で 調 達 し な け れ ば な ら な い こ と が,エ 産 す る 一 つ の 理 由 で は あ る が,い
か な り の 割 合 の エ ネ ル ギ ー を得 て い る こ と に な る.ブ 人 を 超 え て お り,こ
タ ノール 燃料 を生
ず れ に して も ブ ラ ジル で は バ イ オ マ ス 資 源 か ら
の よ う な 大 国 で,こ
ラ ジ ル の 人 口 は1億5000万
れ ほ どまで にバ イオマ ス 資源 で エ ネル ギ
ー を ま か な っ て い る こ と は 驚 くべ き こ と で あ る .「 ブ ラ ジ ル はCO2排 と は い え な い ま で も,エ
出 ゼ ロの 国」
ネ ル ギ ー 問 題 は グ ロ ー バ ル な 視 点 で 考 え る べ き課 題 で あ
る し,今 後 の エ ネ ル ギ ー 問 題 を考 え る 上 で参 考 に な る事 例 で あ る.
して い る.現 在 ブ ラ ジル 内 の アル コ ール 車 総 数 は400万 台 を超 え,ガ ソ リ ン車 数 よ り多 い.ア ル コー ル 車 の 排 気 ガ ス は ガ ソ リン車 の それ よ りか な り ク リー ンで あ る.た と え ば エ タ ノー ル を ガ ソ リ ンの か わ りに車 の燃 料 と して使 えば,二 酸 化炭 素 と して の 炭 素 の 排 出 量 は90%も 出量 も1/3か
減 少 す る.ま た,一 酸 化 炭 素 や 炭 化 水 素 の 排
ら1/4に 減 少 す る.エ タ ノー ル 燃 料 の 弱 点 は価 格 で あ る.現 在 は ガ
ソ リン よ り約2倍 高 価 で あ るが,今 後 の エ タ ノ ール 生 産 の技 術 開 発,高 効 率 化 に よ って,ガ
ソ リ ンの値 段 に 競 合 で き る く らい まで 値 下 が りす る 可 能性 が あ り,さ
らな る需 要 の 増 加 が見 込 ま れ て い る.
6 廃炭素資源化学
6.1 廃 炭 素 資 源 炭 素 は,炭 酸 塩 や二 酸 化 炭 素 と して 地 球 上 に広 く存 在 して お り,ま た 化 石 資 源 や バ イ オ マ ス と い っ た 有機 炭 素 資 源 を構 成 す る重 要 な 元 素 で あ る.有 機 炭 素 資 源 は,資 源 や エ ネル ギ ー と して 利 用 され て い る が,最 終 的 に は廃 棄 物 や 二 酸 化 炭 素 と な る.こ れ ら廃 有 機 炭 素 資 源 は,木 材,生 る.こ れ ら廃 炭 素 資 源 は,現 在,十
ご み,プ
ラ スチ ック,汚 泥 な ど で あ
分 に利 用 され て い る と は い え な い.化 石 資 源
な ど,有 機 炭 素 資 源 は有 限 で あ り,貴 重 な有 機 炭 素 資 源 と して 廃 炭 素 資 源 を位 置 づ け る必 要 が あ る.現 在 に お け る廃 炭 素 資源 の 利 用 は,表6.1の
よ うに ま と め ら
れ る. 表6.1 廃 炭 素 資 源 とそ の利 用
6.2 廃 棄 物 の 現状 廃 棄 物 は 事 業 活 動 に よ っ て 排 出 され る産 業 廃 棄 物 と,家 庭 や 事 業 所 か ら排 出 さ れ る一 般 廃 棄 物 に 区 分 され る.わ が 国 は6億
トン も の物 質 を輸 入 し,0.8億
トン
の 製 品 な ど を輸 出 して い るが,産 業 廃 棄 物 お よ び 一般 廃 棄 物 と して排 出 され る量 は,そ
れ ぞ れ4億
トン お よ び5000万
トン に達 して い る.こ れ らは,脱 水 や焼 却,
表6.2 廃 棄 物 とそ の 処 理 の 現 状
中 和 な ど に よ っ て 減 量,あ
る い は リサ イ クル され て い る が,最 終 的 に は最 終 処 分
場 に 埋 め 立 て され て お り,そ れ らは 産 業 廃 棄 物 で6800万 1300万
トン に達 して い る(表6.2).最
トン,一 般 廃 棄 物 で
終 処 分 場 の 容 量 に は限 度 が あ り,産 業 廃
棄 物 の 最 終 処 分 場 は,受 け入 れ寿 命 が2年
を切 る状 態 が続 い て い る ため,廃 棄 物
の 減 量 ・リサ イ クル が 切 望 され る よ う に な っ た. 最 終処 分場 とは 最 終 処 分 場 に は,①
安 定 型,②
管 理 型,③
遮 断 型 の3種
埋 め 立 て で き る廃 棄 物 が 異 な る.安 定 型 に は,プ 化 を 起 こ さ な い,安 じ ん(焼
却 灰)や
泥 な ど そ の 他 の 大 半 の 廃 棄 物 が 埋 め 立 て され る.こ
ら管 理 型 に埋 め 立 て され る廃 棄 物 は,化
て お り,わ
れ ぞ れ,
定 な 廃 棄 物 を 埋 め 立 て す る こ と が で き る.管 理 型 に は,ば
木 材,汚
い れ
学 的 変 化 あ る い は 溶 出 な ど を 起 こ す た め,
排 水 は 環 境 排 出 基 準 に達 す る よ うに 処 理 ・管 理 さ れ る.ア が 不 十 分,あ
類 が あ り,そ
ラ ス チ ッ ク や金 属 な ど化 学 的 変
メ リ カ で は,閉
鎖状 態
る い は トラ ブ ル な ど で 環 境 中 へ の 有 害 物 質 の 漏 出 が 数 多 く指 摘 され が 国 で も最 終 処 分 場 の 新 規 建 設 に は 強 い 反 対 運 動 が あ る.新
分 場 の 建 設 が 難 し く な る な か で,産 場 の 寿 命 は,1989年
に は4.5年,1996年
規 最終 処
業 廃 棄 物 を 受 け 入 れ る こ と の で き る最 終 処 分 に は3年
以 上 あ っ た が,2000年
1.5年 前 後 と短 く な っ て い る.
表6.3 産 業 廃 棄 物 の種 類 と排 出 量(万
トン)(1996年)
に入 ると
図6.1 廃 棄物 に対す る基本的考 え方(優 先順位)
6.3 再 生 資 源 の 利 用 産 業 廃 棄 物 の種 類 と そ の割 合 を表6.3に 示 す.汚 泥 や 動 物 の ふ ん尿,建 な ど の 割 合 が 多 く,こ れ らで全 体 の80%を
設廃材
占 め る.廃 棄 物 の 埋 立 て量 を減 らす
た め に は,ま ず 廃 棄物 の ① 発 生 抑 制(Reduce)が
第 一 の重 要 対 処 法 で あ り,続
い て ② リユ ー ス(Reuse),さ
らに③ リサ イ ク ル(Recycle)と
る(図6.1).こ
済 的 な動 機 づ け で は な か な か達 成 で きず,廃 棄 物
れ ら3Rは,経
い う優 先 順 位 とな
表6.4 廃 棄物 や リサ イ クル に 関 連 す る法 律 の制 定 ・改 正 な ど
の有 効 利 用 が な か な か進 まな い.そ の た め,近 年,廃 棄 物 の 有 効 利 用 を進 め るた め の法 律 が次 々 と整 備 され る よ うに な っ た.こ れ ら を表6.4に 示 す.と (平 成12)年
くに2000
に は循 環 型 社 会 形 成 推 進 基 本 法 が制 定 され,建 設 廃 材 や 食 堂 か らの
食 品廃 棄 物 な ど につ い て も再 利 用 が画 策 され る こ と とな っ た.
6.4 家 庭 ごみ お よび 事 業 系 ご み の組 成 家 庭 か ら出 る ご み の 種 類 につ い て,横 浜 市 の 組 成 例 を表6.5に 示 す.重 量 比 で は厨 芥 や 紙 な どの 割 合 が高 い が,容 積 比 で は60%以 そ の な か で は90%以 の ほ か,金 属 類,ガ
上 が包 装 材 ・容 器 で あ る.
上 が 紙 や プ ラ ス チ ッ クで あ り,木 類 な どの 有 機 炭 素 化 合 物 ラ ス類,陶 磁 器 な どの 無 機 化 合 物 が あ る.
ま た容 器 包 装 以 外 の 家 庭 ごみ に は プ ラ ス チ ッ ク類,紙 衣 類,衛
類,生
生 用 品 な どの 有 機 炭 素 化 合 物 の ほ か,金 属 くず,ガ
ごみ,植 木 ご み, ラス ・陶 磁 器 くず,
小物 家 電 製 品 な どの 無機 化 合 物 が あ る. 事 業 系 廃 棄 物 に つ い て も家庭 系 と同 様 で あ り,古 紙,流
通 資 材(箱
ごみ,建 具 な ど の 有 機 炭 素 化 合 物 と,廃 容 器(金 属 ・ガ ラス類)な
どの 無 機 化 合
物 が あ る.
表6.5 横 浜 市 の 家 庭 ごみ の 組 成(廃
な ど),生
棄 物 リサ イ クル 技 術 情 報 一 覧,1999)
6.5 容 器 包装 リサ イ クル法 およ び 家電 リサ イ クル 法 家 庭 ご み に 含 まれ る容 器 包 装 材 の リサ イ クル を進 め るた め の 容 器 包 装 リサ イ ク ル 法 が,2000(平 類(無 色,茶 類(段
色,そ
ボ ー ル,紙
トボ トル,そ
成12)年4月 の他),②
か ら完 全 施 行 され た.対 象 は,① 飲 料 缶2種 類(ス
チ ール 缶,ア
パ ッ ク,そ の他 紙 製 容 器 包 装),④
の他 プ ラス チ ック 製 容 器 包 装)の10種
ガ ラ スび ん3種
ル ミ缶),③
紙3種
プ ラ ス チ ッ ク2種 類(ペ
ッ
類 で あ る.飲 料 缶 や 紙 パ ッ
ク,段 ボ ー ル な ど,資 源 価 値 の あ る ごみ を除 き,表6.6の
よ うに そ れ ぞ れ につ い
て 再 商 品 化 方 法 が決 め られ て い る. 一 方,家 庭 か ら排 出 さ れ る家 電 製 品 の うち,約80%は
小 売 業 者,20%は
村 に よ って 回 収 され て い る が,半 分 は 直接 埋 め 立 て され,残
市町
り も一 部 の 金 属 が 回
表6.6 容器包装 リサイクル法 における分別収集 の対象 と再商品化方法
容 器 包装 リサ イ クル法 とは 容 器 包 装 リ サ イ ク ル 法 は,ド た.そ
イ ツ や フ ラ ン ス な ど の 法 律 を参 考 に し て 制 定 され
れ ら先 行 法 と の 大 き な 違 い は,最
が 負 うか に あ る.分
別 は 市 民,再
も負 担 の 大 き い 「分 別 収 集 」 の 義 務 を誰
商 品 化(リ
責 務 は ドイ ツ や フ ラ ン ス と 同 様 で あ る が,ド
サ イ ク ル)は
事 業 者 が 負 う,と
い う
イ ツや フ ラン スで は分 別収 集 の義 務
も事 業 者 に あ る. こ れ に 対 し,わ
が 国 で は 市 町 村 に 責 務 が あ る.こ
の た め わ が 国 で は,容
リ サ イ ク ル 法 の 本 来 の 目 的 で あ る,「 容 器 包 装 」 の 量 を減 らす,と て い な い.500mlの
器包 装
い う結 果 に至 っ
ペ ッ トボ トル な ど,減 少 ど こ ろ か む し ろ 大 幅 に増 え る傾 向 に あ
り,市 町 村 の 収 集 義 務 は 容 器 包 装 リサ イ ク ル 法 の 欠 陥 と指 摘 され る と こ ろ で あ る.
収 され る ほ か は廃 棄 され て い る.こ れ ら廃 棄 物 の 再 利 用 を促 進 す る た め,特 定 家 庭 用機 器 再 商 品化 法(家
電 リサ イ ク ル 法)が 制 定 され た.排 出者(消
費 者)は 費
用 を支 払 っ て小 売 業 者 な ど に引 き取 っ て も らい,製 造 業 者 に は 引 き取 り義 務 と再 商 品 化 実 施 義 務 が あ り,製 品 に応 じた リサ イ クル 率 が設 定 され て い る.指 定 品 目 で あ る テ レ ビ,冷 蔵 庫,エ 55%,50%,60%,50%と
ア コ ン,洗 濯 機 につ い て,リ
サ イ クル 率 が そ れ ぞ れ
設 定 され て い る.こ れ ら はほ ぼ 該 当家 電 製 品 の 含 有
金 属 量 に比 例 す る. 6.6 古
紙 の 生 産 量 は1997年
で3100万
紙
トン に達 して い る.そ の 原 料 と して 使 用 され る
古 紙 は,パ ル プ の 消 費 量 を上 回 り,全 体 の54%を の 内 訳 は,新 聞 用 紙,印 刷 ・情 報 用紙,包 1827万
トンで あ り,段 ボ ール,白
板 紙,そ
占 め て い る.生 産 され る製 品
装 用 紙,衛 生 用 紙,雑 種 紙 な どの 紙 が の 他 板 紙 な ど の板 紙 が1275万
トンで
あ る. 6.6.1 古 紙 の 再 利 用 に お け る前 処 理 古 紙 を利 用 した紙 お よび 板 紙 の製 造 に お い て は,新 聞紙 を は じめ,印 刷 ・情 報 用 紙 な ど は事 前 に,除 塵 の 後,脱
イ ンキ や 漂 白処 理 を行 う必 要 が あ る.紙 と して
再 利 用 す る場 合 に は,繊 維 質 の 長 さが 品 質 に大 き な影 響 を与 え るた め,古 紙 単 独 か らの 紙 生 産 は 不 可 能 で あ り,パ ル プ との 混 合(カ
ス ケ ー ドリサ イ クル)が 不 可
欠 で あ る.繊 維 質 が か な り短 い低 級 古 紙 の 場 合 に は,図6.2に
示 す よ うな ア ス フ
ァル トな どへ の利 用 も な され て い る.な お 段 ボ ール 箱 な ど の場 合 に は,前 処 理 は 不 要 で あ る. 6.6.2 紙 の 利 用 形 態 排 出 され た段 ボ ール の お よ そ84%が,再
度 段 ボ ー ル と して 製 品 化 され て い る
図6.2 低 級 古 紙 の セル ロ ー ス フ ァイバ ー と して の利 用(ク
リー ン ジ ャパ ン,1998)
図6.3 古 紙 の リサ イ ク ル(廃
(図6.3).新
棄 物 リサ イ クル 技 術 の 開発 事 業 化 動 向,2000)
聞 は,新 聞 用 紙 や 印 刷 ・情 報 用紙 へ の 用 途 が,そ れ ぞ れ51%,46%
と大 きい.雑 誌 は50%近
くが段 ボ ール 原 紙 と して 使 わ れ,40%が
して 使 わ れ て い る.こ れ ら3種 類 が紙 利 用 全 体 の80%以
図6.4 わ が 国 に お け るプ ラス チ ック の流 れ(プ プ ラ ス チ ッ ク処 理 促 進 協 会,1997)
紙器 用板紙 と
上 を 占 めて い る.
ラ ス チ ック トゥモ ロー,
6.7 プ ラ ス チ ッ ク の 再 利 用 プ ラ ス チ ッ ク生 産 量 は,1980年 え て,1997年
代 後 半 に1000万
に は 図6.4に 示 す よ うに 年 間1500万
た製 品 と して 貯 留 され て い る分 を除 き949万 廃 棄 物 が478万
トン,産 業 廃 棄 物 が471万
ラス チ ッ ク は399万
トン(42%)に
れ て い る量 が280万
トン(29%)を
トン を超 え,そ の 後 順 調 に増 トン以 上 生 産 され て い る.ま
トン が排 出 され て い る.内 訳 は一 般 トンで あ る.有 効利 用 され て い る廃 プ
達 して い る が,発 電 や 熱 利 用 用 途 で 焼 却 さ 占 め て い る.
6.7.1 プ ラ ス チ ッ ク リサ イ クル の 種 類 プ ラ ス チ ック は モ ノマ ー と よば れ る構 成 単 位 が何 百 か ら何 万 個 も結 合 した材 料 で あ り,加 熱 に よ っ て 柔 ら か くな り,形 を変 え る こ との で き る熱 可 塑 性 樹 脂 と, 加 熱 して も柔 らか くな らず 分 解 す るだ けの 熱 硬 化 性 樹 脂 が あ る.こ れ らプ ラス チ ッ クの リサ イ クル は,表6.7の サ イ クル,③
よ うに,① マ テ リア ル リサ イ クル,②
ケ ミカ ル リ
フ ュ ー エル リサ イ クル,④ エ ネル ギ ー リサ イ クル の 四つ に 分類 され
る. モ ノ マ ー ど う しの 結 合 を壊 さず に,加 熱 して形 を変 え,プ ラ ス チ ック 素 材 と し て再 利 用 す る の が ① マ テ リアル リサ イ ク ル,で ④ エ ネ ル ギ ー リサ イ クル は,プ
あ り熱 可 塑 性 樹 脂 が 対象 と な る.
ラ ス チ ック の直 接 焼 却 に よ っ て発 電,温
室 ・浴
場 ・プ ー ル な どの 熱 源 と して利 用 す る方 法 で あ り,③ フ ュ ー エル リサ イ クル は, 油 化 して液 体 燃 料 とす る,あ る い は紙 類 や 木 材 類 と破 砕 成 形 して 固形 燃 料 と して 利 用 す る方 法 で あ る.③ フ ュ ーエ ル リサ イ クル と④ エ ネル ギ ー リサ イ クル は サ ー マ ル リサ イ クル と も よば れ る が,コ ス ト的 に現 実 的 な処 理 で あ る.し か し素 材 な どへ の 利 用 で は な い た め,リ サ イ クル に 含 め な い 場 合 が あ る. ② ケ ミカ ル リサ イ クル は,モ ノ マ ー ど う しの 結 合 を壊 す もの で あ り,狭 義 で は も との モ ノマ ー に戻 し,化 学 原 料 と して利 用 す る こ と を意 味 して い たが,近 年 は
表6.7
プ ラ ス チ ック リサ イ クル の 分 類
プ ラ スチ ック リサ イクルの種 類 リサ イ ク ル の 名 称 は,国 は,プ
に よ っ て 定 義 が 異 な る の で 注 意 が 必 要 で あ る.欧
米で
ラ ス チ ッ ク と して 再 利 用 す る マ テ リ ア ル リ サ イ ク ル は メ カ ニ カ ル リサ イ ク
ル と よ ば れ,ま
た,分
解 な ど の 化 学 変 換 プ ロ セ ス を 経 る ケ ミ カ ル リサ イ ク ル は フ
ィ ー ドス ト ッ ク リ サ イ クル と よ ば れ て い る.一 ギ ー 回 収 と され,リ
方,サ
ー マ ル リサ イ ク ル は エ ネ ル
サ イ クル で は な い.
広 い意 味 で,油 化 や 高 炉 還 元 も化 学 変 換 プ ロセ ス を含 む こ とか ら,ケ
ミカル リサ
イ ク ル に 位 置 づ け られ る よ うに な っ た. 6.7.2 プ ラ ス チ ック の サ ー マ ル リサ イ クル プ ラ ス チ ック を直 接 あ るい は ほ かの 可 燃 性 廃 棄 物 と 固形 化 させ て 燃 焼 させ,そ の 熱 を回 収 す る方 法 が広 く行 わ れ て い る.小 規 模 な らば温 水 発 生 器,大 規 模 な ら ば 廃 熱 回 収 ボ イ ラ ー が用 い られ る.実 際 の運 用 に あ た っ て は,プ
ラ スチ ック単 独
よ りは 多 様 な 可燃 性 廃 棄 物 との 混 合 燃 焼 が 行 わ れ て い る.温 水 発 生 器 は,給 湯 や 暖 房 な ど に利 用 され る. 廃 熱 ボ イ ラー で は方 式 に よ っ て大 規 模 な 余 熱 利 用 が 可 能 で あ り,熱 か ら電 気 エ ネ ル ギ ーへ の 転換 が 行 わ れ て い る.こ の際,組
成 が不 均 質 な 廃 棄 物 の 燃 焼 を制 御
し,発 生 熱 量 を 安 定 に保 つ こ と が重 要 で あ る.ま た,排 ガ ス 中 に は 多様 な腐 食 性 ガ ス も存 在 す る た め,そ
の 腐 食 を抑 え る よ うな 蒸 気 温 度 の 設 定 が な され て い る.
300℃ 以 上 の 高 温 で は,塩 化 鉄 や ア ル カ リ鉄 硫 酸 塩 な ど に よ る高 温 腐 食,ま 150℃ 以 下 で は,電 気 化 学 的 作 用 に よ る低 温 腐 食 が起 き る た め,250か
た
ら300℃
に お け る蒸 気 温 度 が 設 定 され て い る.こ の温 度 は発 電 効 率 と して は高 くな い温 度 領 域 で あ る. 6.7.3 プ ラ ス チ ッ クの マ テ リア ル リサ イ クル マ テ リア ル リサ イ クル は,廃 プ ラス チ ッ ク を加 熱 溶 融 ・再 成 形 して,利 用 す る 方 法 で あ る.こ の マ テ リアル リサ イ クル は,熱 可 塑 性 樹 脂 を対 象 と し,① 単 一 樹 脂 の み を集 め て 再 ペ レ ッ ト化 して利 用 す る単 純 再 生 と,② 物 性 の 似 た複 数 の樹 脂 を集 め,溶 融 ・成 形 加 工 して再 生 製 品 とす る複 合 再 生,の
二 つ の 方 法 が あ る.製
品 の 品 質 や そ の 均 一 性 の 維 持 を考 えた場 合,② の 複 合 再 生 で は,品 質 管 理 が難 し い ば か りで な く,場 合 に よ っ て は成 形 そ の もの が不 可 能 な 場 合 が あ り,適 用 範 囲 は か な り制 限 され て い る. 以 上 の こ とか ら① の 単 純 再 生 を達 成 す る た め に は,表6.8に
示 す よ うな プ ラス
表6.8
プ ラ ス チ ッ クの 分 別 方 法
チ ック の 分 別 が 不 可 欠 で あ る.し か し,い ず れ の方 法 も 分 別 精 度 に は限 界 が あ り,と くに 多 種 類 の プ ラス チ ッ ク が混 合 して い る一 般 廃 棄 物 の場 合 に は,再 利 用 し う る程 度 ま で不 純 物 を 減 少 させ る こ とは 不 可 能 に 近 い. 単 純 再 生 が 可 能 な例 と して ペ ッ トボ トル や発 泡 ス チ ロ ール が あ る.ペ
ッ トボ トル は,容 器 包 装 リサ イ ク ル
法 で 回 収 の 対 象 と な っ て お り,図6.5に
示 す よ うな 再
生 工 程 で 樹 脂 原 料 化 され る.ペ ッ トボ トル の 場 合 に は, 再 利 用 を前 提 と した製 品 つ く りが 行 わ れ て い る.得 れ た原 料 は,図6.6に
ら
示 す よ うな 各 種 製 品 に再 生 され
て い る.ま た 発 泡 ス チ ロ ー ル 樹 脂 の 場 合 に も,図6.7 に示 す よ うな各 種 用 途 へ の 利 用 が な され て い る. この よ う に,分 別 が 可 能 な一 般 廃 棄 物 や 由来 の は っ き り して い る産 業 廃 棄 物 の 場 合 に は,単 一 組 成 の樹 脂 を集 め や す い ため,単 純 再 生 が可 能 で あ る と考 え られ る.一 方,通
常 の 一 般 廃 棄 物 の 場 合 に は,プ ラ ス チ ッ
ク に生 ご み な ど,さ ま ざ ま な物 質 が 付 随 して い る こ と が 多 く,洗 浄 が 不 可 欠 で あ る.こ れ ら洗 浄 と分 別 の 限 界 は,再 生 品 の 品 質 の 劣 化 や コス ト高 に直 結 して い る. 6.7.4 プ ラ ス チ ック の ケ ミ カル リサ イ ク ル(油 化) 廃 プ ラ ス チ ック の 熱 分 解 油 化 プ ロ セ ス は1970年
代
に 盛 ん に 研 究 され,現 在 まで に 表6.9に 示 す よ うな利 用 技 術 が知 られ て い る.最 近 の 熱 分 解 方 式 は槽 型 反 応
図6.5 ペ ッ トボ トル の 再 生 工程 (古橋:プ
ラ ス チ ッ クエ ー ジ,1997)
図6.6 再 生 ペ ッ ト樹 脂 フ レー クの 用 途(廃
棄 物 リサ イ クル 技 術 情 報 一 覧,1999)
器 に限 られ て お り,生 成 物 の軽 質 化 を図 る ため に,触 媒 の 使 用例 が 多 い.最 規 模 な プ ラ ン トは5000ト が,経 済 性,安 定 性,適
ン/年 の処 理 能 力 を有 して い る が,さ
も大
まざまなプ ラン ト
応 性 な ど の点 で実 用 化 の 検討 が続 い て い る状 態 で あ る.
6.7.5 プ ラ ス チ ッ クの ケ ミカル リサ イ ク ル(高 炉 還 元) 製 鉄 プ ロ セ ス に お い て,コ ー ク スの 代 替 物 と して廃 プ ラス チ ッ ク を利 用 す る方 法 が高 炉 還 元 で あ る.製 鉄 プ ロセ ス にお いて は,コ ー ク ス に よ って 鉄 鉱 石(酸
図6.7 発 泡 ス チ ロ ー ル(EPS)の
マ テ リア ル リサ イ クル(廃
棄物 リサ イ クル 技 術 情 報 一 覧,1999)
化
表6.9 廃 プ ラス チ ック の 熱 分 解 利 用 技 術(廃
鉄)を
プ ラ ス チ ック,1994)
還 元 して い る.高 炉 還 元 法 は,こ の コ ー ク スの か わ りに廃 プ ラス チ ッ ク を
用 い る もの で あ る. 塩 素 系 の プ ラス チ ッ クが混 合 され て い る場 合 に は,炉 の 損 傷 が懸 念 され るた め, 脱 塩 素 工 程 を経 て 炉 に投 入 され る.工 程 が シ ン プル で あ り,既 存 の 高炉 を活 用 で き る こ とか ら経 済 性 が高 く,ま た各 炉 の受 け 入 れ 量 も多 い こ とか ら実 用 性 も高 い. 高 炉 還 元 で は,プ
ラ スチ ッ ク は資 源 と して は 再 利 用 され な い の で リサ イ クル に
含 ま れ るか ど うか議 論 が あ る.し か し熱 的 で は な く化 学 的 に利 用 され る こ とか ら 近 年 ドイ ツや わ が 国 で も,ケ
ミカル リサ イ ク ル へ の 位 置 づ け が な され る よ う に な
っ た.マ テ リアル リサ イ クル で も ケ ミカ ル リサ イ クル で も,プ ラス チ ッ ク処 理 に お い て 課 題 に な る分 別 処 理 な どが 不 要 な た め,現 実 的 な リサ イ クル と して 期待 が 寄 せ られ て い る.
6.7.6 プ ラ ス チ ック の ケ ミカ ル リサ イ ク ル(高
温水 中 でのプラ スチ ックの分
解 反応) 近 年 超 臨 界流 体 が,抽 出 や反 応 媒 体 と して注 目 を集 め る よ うに な っ た.と 臨 界 温 度 が374℃,臨
界 圧22MPaで
くに
あ る水 は,高 温 で 安 定 な溶 媒 で あ り,さ ら
に,温 度 の上 昇 と共 に誘 電 率 が低 く な って 有 機 化 合 物 を可 溶 化 で き る よ うに な る な ど興 味 深 い 特 徴 を有 して い る.こ れ ら超 臨 界 水 中 に お い て は,酸 素 雰 囲 気 下 で ダ イ オ キ シ ン な ど さ ま ざ まな 有 害 物 質 を酸 化 分 解 で き る こ と が確 認 され て お り, 非 酸 素 雰 囲 気 で も,PETな
ど の 熱 可 塑 性 樹 脂 が 高 温 水 中 で容 易 に 分 解 す る こ と
が確 認 され て い る. プ ラス チ ック リサ イ クル へ の 社 会 的要 請 が 大 き くな る な か で,多 様 な処 理 技 術 の 発展 が 切 望 され て い る.超 臨 界 状 態 を 含 む 高 温 水 中 に お い て は,熱 硬 化 性 樹 脂 で あ る フ ェ ノール 樹 脂 も容 易 に分 解 し,フ ェ ノー ル な ど の構 成 単位 を与 え る こ と が見 い だ され て い る.こ の 反応 で は,分 解 生成 物 に水 が取 り込 まれ て い る こ と が 確 認 され た が,こ れ は水 が 熱 的 に安 定 な 媒体 と して で は な く,化 学 試 薬 と して関 与 して い る こ と を示 して い る.こ の よ うな処 理 プ ロ セ ス は,溶 媒 が 水 の み で あ る こ と か ら反 応 の 後 処 理 が容 易 で あ り,さ らに プ ラ スチ ック だ け で な く さ ま ざま な 化 学 物 質 へ の 適 用 が可 能 で あ るた め,実 用性 の 高 い エ コ プ ロセ ス と して の 展 開 が 期 待 され る. 6.8 木
く
ず
木 くず に は,建 設 廃 棄 物 中 の廃 木 材,製 材 工 場,木
工 所 か らの 廃 材,流
通パ レ
ッ ト,解 体 梱 包 材 な どが あ る.建 設 廃 棄 物 は,排 出 量 が徐 々 に小 さ くな っ て い る.
水 に油 水 と油 は,溶
け合 わ な い代 表 的 な 組 み 合 わ せ で あ る.そ
水 の 高 い 誘 電 率(常 品)の
低 い 極 性 と い う,物
200℃,300℃ は,6程
温 で78.5)と,有
度 に ま で 下 が る.こ
の 溶 け合 わ な い 性 質 は,
くにパ ラ フ ィンな どの石 油 製
理 的 な 性 質 の 違 い に 起 因 して い る.水
と 高 い温 度 に な る と,徐
水 は 熱 的 に 安 定 で あ り,さ
機 化 合 物(と
々 に 誘 電 率 を 下 げ,臨
の こ と に よ り,水
は,100℃,
界 温 度(374℃)で
と油 は 完 全 に溶 け 合 う こ と に な る.
ら に 超 臨 界 状 態 に お い て は 粘 性 が 低 い こ と か ら,化
物 質 の 反 応 に は 理 想 的 な 溶 媒 と考 え られ る.
学
建 設 廃 棄 物 の 中心 は,ア タ で は全 体 の70%以
ス フ ァル トや コ ン ク リ ー ト塊 で あ り,平 成7年 度 の デ ー
上 を 占 め る.建 設 汚 泥 が10%,建
設 発 生 木 材 が6%程
度で
あ る. ま た,国 内 の 木 材 需 要 ・供 給 量 は年 間 約1億1000万m3程
度 で あ り,こ れ らの
利 用 過 程 で 発 生 す る工 場 廃 材 や 林 地 残 材 の うち700万m3が
な ん らか の 形 で 有 効
利 用 され て い る.木
くず の 用 途 に は,ボ
イ ラ ー用 代 替 燃 料,製
紙 用 原 料 チ ップ,
木 質 系 ボ ー ド用 原 料 チ ップ,畜 産 用 水 分 調 整 剤,土 壌 改 良 剤,木 炭 な どが あ る. 6.8.1 木 くず の 原 料 化 多 量 に排 出 され る木 くず の再 利 用 に はチ ップ化 が必 要 で あ り,木 サ イズ に粉 砕 し,鉄 な ど の不 燃 物 や,紙
くず を一 定 の
な どの 可 燃 物 を 分 離 し,製 紙 用 お よ び木
質 系 ボ ー ド用 チ ッ プの 生 産 が行 わ れ て い る.最 終 的 に パ ー テ ィ クル ボ ー ドや繊 維 板 と して の 利 用 が な され,木 質 ボ ー ドに は木 材 繊 維 を接 着 剤 で 固 め た もの が 多 い. 6.8.2 木 くず の燃 料 化 木 くず は 粉 砕 した だ け,あ 液 体 燃 料,ガ
る い は転 換 処 理 を した 後,チ
ス燃 料 な ど と して利 用 され て い る.チ
ップ燃 料,炭
化 燃 料,
ップ燃 料 は,長 所 短 所 は あ る
が,石 油 代 替 燃 料 の 位 置 づ けで,産 業 用 ボ イ ラ ーの 燃 料 と して広 く利 用 され て い る.木 炭 は 従 来,樹
木 や 間 伐 材 か ら製 造 され て い た が,木
くず の 炭 化 処 理 に よ っ
て炭 化 燃 料 が 製 造 され て い る. さ らに 木 くず の 加 水 分 解 に よ って 得 られ た単 糖 類 を発 酵 す る こ とで エ タ ノ ール が,ま た 木 くず を ガ ス 化 し,合 成 法 で メ タ ノール とい っ た液 体 燃 料 が合 成 で き る.
多孔質 材 料 と しての炭 の魅 力 活 性 炭 は,そ の 表 面吸 着能 に よっ て調湿,消 臭 な どの機 能 を有 して い る.木 く ず の炭 化 に よ って 得 られ る木炭 も,賦 活 に よ って大 きな表 面 積 を有 す る多 孔 質材 料 と して の機 能 が 期待 で きる.近 年,断 熱 性 能 の よい家 が建 て られ,結 露 に よ る 家 具 な どの ダ メー ジ や揮発 性 有機 物 質 に よ る シ ックハ ウ ス症 が社 会 問題 化 してい る.健 康 住 宅 とい わ れ る家 の なか に は,こ れ らの 問題 を防 ぐた め に,床 や 壁 に炭 を埋 め込 む方 法 が採 用 され は じめ た.こ れ は炭 が湿 気 や 揮 発性 物 質 を吸 着 し,調 湿 や消 臭 効 果 を発揮 す る こと を期 待 した もの で あ る.廃 木 材 か ら木炭 は容 易 に製 造 で きるため,廃 棄物 の 「 健 康維 持へ の貢 献」 の一例 で あ る.
6.9 汚
泥
排 水 を 活 性 汚 泥 法 で処 理 す る際,増 殖 したバ ク テ リア は原 生 動 物 な どに捕 食 さ れ て 凝 集 沈 殿 し,汚 泥 と な る.産 業 廃 棄 物 中 の45%は 約1/4が
汚 泥 で あ り,そ の うち の
有 機 性 汚 泥 で あ る.
廃 棄 物 処 理 法 で は,動 植物 原 材 料 を使 用 す る製 造 業(食
品 加 工,パ
ル プ,繊 維
加 工,有 機 化 学,皮 革 な ど)の 廃 水 処 理 汚 泥 な ど比 較 的 高 含 水 成 分 で,乾 燥 物 中 に 多量 の 可 燃 分 を含 ん で い る産 業 廃 棄 物(家 畜 ふ ん尿 を除 く)が,有 分 類 され る.こ れ ら有 機 性 汚 泥 の 再 利 用 は表6.10の
機性汚泥 に
ように まとめ ることがで き
る. 6.9.1 汚 泥 の メ タ ン発 酵 有 機 性 汚 泥 に は可 燃 性 物 質 が 含 まれ て い る が水 分 が 多 い た め,単 な る直 接 燃 焼 に よ る エ ネ ル ギ ー回 収 は 困難 で あ る.そ の ため,メ タ ン発酵 が実 用 化 され て き た. た だ し製 紙 工 場 や 合 成 化 学 工 場 か ら排 出 され る汚 泥 の よ うに 生 物 分 解 が 困難 な有 機 物 を含 む汚 泥 の メ タ ン発 酵 は 困難 で あ る. メ タ ン発 酵 の 第 一 段 階 は,嫌 気 性 細 菌 に よ る高 分 子 状 化 合 物 の 加 水 分 解 で あ る. この 反 応 に よ って 水 に可 溶 な 酢 酸,プ
ロ ピオ ン酸 な どの 低 級 脂 肪 酸 や アル コ ー ル
が 生 成 す る と と もに,一 部 は 二 酸 化 炭 素 と して 排 出 され る.第 二 段 階 で は 水 可溶 化 物 が さ らに 分 解 し,メ タ ンな ど に ガ ス化 され る.通 常 の 条 件 で は,有 機 化 合物 の 処 理 量 は1∼3%程
表6.10
度 で あ る が,発 酵 温 度 な どの 制 御 に よ り3∼10%程
有 機 性 汚 泥 の 再 利 用 シ ス テ ム(廃 棄 物 処 理 ・リサ イ クル,1995)
度に
ま で高 め る こ とが で き る. 6.9.2 汚 泥 の 焼 却 大 量 の 水 分 を含 む 汚 泥 は,十 分 に乾 燥 して か らで な い と焼 却 処 理 に よ る エ ネ ル ギ ー 回収 は 困 難 で あ る.す な わ ち,脱 水 お よ び 乾燥 操 作 に石 油 な どの 炭 素 資 源 の 燃 焼 を利 用 す るの は,総 括 的 に は エ ネル ギ ー損 失 に相 当 す る.そ の た め,自 然 乾 燥 ・脱 水 に よ る汚 泥 の カ ロ リー の増 加 や,紙
な ど他 の高 カ ロ リー廃 棄 物 との 混 合
に よ る焼 却操 作 な どが 提 案 され て い る. 6.9.3 汚 泥 の 肥 料 化 農 産 加 工 工 場 な どか らの 汚 泥 は,自 然 界 に存 在 す る有 機 資 源 と同 等 で あ り,肥 料 と して土 壌 の 改 良 に寄 与 で き る.商 品 と して流 通 させ るた め に は,規 格 に 合 致 した成 分 が 必要 で あ り,化 学 肥 料 との ブ レ ン ドな どに よ り,実 用 化 され て い る. しか し,第 一 の 問 題 点 と して,汚 泥 中 に重 金 属 な どの 有 害 物 質 が混 入 され て い る危 険 性 が あ る.含 有 量 と施 肥 量 を考 え,汚 染 土 壌 に至 らな い よ う に十 分 な 考 慮 が 必 要 で あ る.ま た,土 壌 中 で容 易 に分 解 し,大 量 の炭 酸 ガス を発 生 す る場 合 に は,発 生 した炭 酸 ガス に よ っ て 植物 の 根 の 呼 吸 を 阻害 して,作 物 の 生 育 に重 大 な 悪 影 響 を与 え る こ と も懸 念 され る.そ の た め,有 機 性 汚 泥 をあ らか じ め好 気 性 発 酵 させ て炭 酸 ガ ス発 生 を終 了 させ,得
られ た堆 肥 ・コ ンポ ス トを完 熟 堆 肥 と して
農 耕 地 へ 施 用 す る こ とが 行 わ れ て い る. 6.9.4 汚 泥 の飼 餌 料化 原 生 動 物 な どが 凝 集 ・沈 殿 して得 られ た有 機 汚 泥 中 に は,生 物 体 を構 成 して い る タ ンパ ク 質 な どが 含 まれ,そ と 同 じで あ る.こ の た め,有
れ らは 家 畜 の 飼 料 や養 殖 漁 業 な どの 餌 料 の 主 成 分 害 物 質 含 有 の 恐 れ の な い 有 機 汚 泥 に つ い て は,養
豚 ・養 鶏 ・養殖 な どへ の 利 用 が 可能 で あ り,さ らに脱 水 な どの 前 処 理 が不 必 要 な こ と は大 き な メ リ ッ トで あ る. 6.10 繊 維 くず の 再 利 用 繊 維 製 品 は,産 業 用,衣 料 用 と して 大 量 に生 産 され て お り,生 産 工 程 や 流 通 工 程 お よび 製 品 に な った 後 に廃 棄 され る もの が あ る.多 品種 で 少 量 の 排 出 が特 徴 で あ り,設 備 の ス ケ ール メ リ ッ トは 期 待 で き な い.再 利 用 は,図6.8の
よ うに ま と
め られ る. 回 収 され た古 繊 維 や 裁 ち くず な ど の 繊 維 くず は,切 断 に よ っ て 前 処 理 され る.
図6.8 古 衣 料 品 お よ び繊 維 くず の リサ イ クル(廃
そ の 後,開 繊(反 毛)さ
棄 物 リサ イ クル 技 術 情 報 一 覧,1999)
れ る が,繊 維 の長 さや 収 率 が 重 要 で あ る.再 生 繊 維 の 紡
績 に お い て は,繊 維 長 の 短 い 不 揃 い の 再 生 繊 維 の 紡 績 も可 能 と な っ た. 従 来,半 毛 は原 料 と して 再 利 用 され て きた が,そ の他 の繊 維 につ い て も,紡 績 原 料 お よび フ ェル トや不 織 布 な どの 原 料 して も利 用 可 能 で あ る.さ
らに,産 業 資
材 と して,自 動 車 カ ー ペ ッ トの 裏 打 ち や プ ラス チ ッ ク強 化 材,木 質 系 床 材 の 下 面 相 な どに 使 わ れ て い る. 6.11 廃 タ イ ヤ,ゴ
ム くず の利 用
タイ ヤ は ゴ ム,カ ー ボ ン,ス チ ール,硫 黄 か ら構 成 され て お り,タ イ ヤ の 柔 軟 性 を保 持 した 再 生 利 用 や,構 成 成 分 の 特 徴 を活 か した,セ
メ ン ト原 料 や燃 料 な ど
へ の利 用 が な され て い る.こ れ らを 図6.9に ま とめ て 示 す. 廃 タイ ヤ も,傷 が 少 な くダ メ ー ジが 少 な い もの は,表 面加 工 され タ イ ヤ と して 再 び使 用 され る.こ の 際,未
加 硫 ゴ ム シ ー トを貼 り付 け て加 硫 し,製 品 とす る例
が 多 い.
図6.9 廃 タ イ ヤ の リサ イ クル(廃
棄 物 リサ イ クル 技 術 情 報 一 覧,1999)
図6.10 廃 タイ ヤ か らの 活 性 炭 の 製 造 工 程
天 然 ゴ ムの 比 率 が 高 い トラ ックや バ ス な ど の廃 タ イ ヤ は,粉 砕 し,ゴ ム粉 以 外 の もの を除 去 した 後,加 熱 して シ ー ト状 に し製 品 とす る方 法 も行 わ れ て い る.農 耕 用 タ イヤ や ベ ル ト,ホ ー ス な どの 工 業 製 品 に も使 用 され て い る. 冷 凍 粉 砕 法 に よ っ て 得 られ た ゴ ム粉 は,消 に添 加 され,騒
し ゴ ムの ほ か,ア ス フ ァル ト舗 装 材
音 が 少 な く,磨 耗 耐 久 性 が よ い,寒 冷 地 で 凍 結 し に くい,排 水 性
舗 装 に適 して い る,な ど の特 徴 を有 す る. タ イ ヤ は 高 発 熱 量 で あ り,エ ネル ギ ー 多消 費産 業 で あ る セ メ ン ト製 造 工 程 へ の 利 用 が な され て い る.タ
イヤ を構 成 す る ス チ ー ル は 酸 化 鉄,硫 黄 は石 膏 と して 石
灰 石 や 粘 土 と混 合 され,ゴ
ム や カ ー ボ ン を燃 料 と して 高 温(1500℃)で
処理 さ
れ,粉 砕 して セ メ ン トとな る. タ イ ヤ を熱 分 解 し,炭 化 す る こ と に よ っ て 図6.10の
よ うに 活 性 炭 を製 造 す る
方 法 が知 られ て い る.硫 黄 の 脱 離 に伴 う廃 ガ ス の処 理 が 不 可 欠 で あ るが,得
られ
る活 性 炭 に は 吸 着 剤 な ど と して 多様 な 用途 が 期 待 で き る. 6.12 廃 食 用 油 廃 食 用 油 は,直 接 廃 棄 処 分 す れ ば 土 壌 汚 染 や水 質 汚 濁 な ど の環 境 汚 染 を引 き起 こす 可 能 性 が あ る.ま た不 適 切 に 焼 却 処 理 す れ ば不 完 全 燃 焼 に よ る黒 煙,煤 塵 な ど に よ っ て 大 気 汚 染 を 引 き起 こ し,熱 回 収 を行 わ な い 焼 却 は資 源 の 無 駄 遣 い に位 置 づ け られ る.廃 食 用 油 は,図6.11に
示 す よ う に工 業 用 原 料 や 飼 料 な ど に リサ
図6.11
廃 食 用 油 の 発 生 と再 利 用(廃
棄 物 処 理 ・リサ イ クル,1995)
イ クル で き る貴 重 な 再 生 資 源 で あ る. 現 在,家
庭 か らの 排 出量 は950g/人
り,外 食 産 業 が48%,食
・年 程 度 で,全
排 出 量 の32%を
品 工 業 な どか らの排 出 が20%程
占めてお
度 と な って い る.家 庭
か らの 回 収 油 は石 鹸 な どへ の 利 用 例 が あ るが,外 食 産 業 や 食 品 産 業 で 排 出す る食 用 油 に 関 して は塗 料,脂 肪 酸,石 鹸,飼 料 の ほ か 燃 料 な ど と して利 用 され て い る. 6.13 動 植 物 性 残 査 動 植 物 性 残 査 は,排 出 場 所 にお い て 付 加 価 値 の 高 い製 品 な どへ の利 用 が な され て い る.も み 殻 に つ い て は,水 分 を30%程 10気 圧 の 処 理 で 粗 飼 料,吸 て の 利 用 が な され て い る.ホ
着 剤,堆
度 に 調 整 した後,150∼180℃,5∼
肥 原 料,水
分 調 整 剤,土
壌改 良剤 な どと し
ップ か す は,発 酵 に よ り,適 度 な 窒 素 ・リン酸 ・カ
リ ウ ム を含 む肥 料 と な る.豆 腐 か す は,発 酵 ・脱 水 ・凝 集 に よ っ て,保 存 性 の 向 上 され た飼 料 が得 られ て い る.ア
ミノ酸 か す は,発 生 量,需 要 量 に応 じて肥 料 化
お よ び 燃 料 化 が行 わ れ て い る. 動 物 性 残 査(魚
腸 骨 や 内臓 な ど)は100℃
以 上 で 蒸 煮 し,油 脂 や タ ンパ ク質 な
ど の 回 収 が 行 わ れ て い る.魚 の 内臓 お よ び 骨 は,メ
タ ン発 酵 に よ って,メ
タ ンガ
ス と有 機 肥 料 と して利 用 され て い る .水 産 加 工 工 程 か ら排 出 され る加 圧 浮 上 ス カ ム は,油 脂 分 だ け を選 択 的 に分 解 す る菌 を 用 い て 肥 料 に 変 換 し,さ らに余 剰 活 性 汚 泥 も肥 料 化 され て い る. こ れ ら有 機 性 資 源 は,表6.11に
示 す よ うな 嫌 気 性 分 解 に よ っ て,メ
タ ン化 が
表6.11
嫌 気 性 分解 の プ ロ セ ス(生 物 系 廃 棄 物 資 源 化 リサ イ クル 技 術,2000)
行 わ れて い る.そ れ ぞれ 第 一 段 階 で は 水 溶 性 化 合 物 に分 解 し,さ
らに第 二 段 階 で
メ タ ンな どへ 分 解 され る. 6.14 家 畜 ふ ん 尿 家 畜 ふ ん尿 中 に は,い わ ゆ る肥 料 成 分 の ほ か に有 機 物 を大 量 に含 んで お り,肥 料 あ るい は土 壌 改 良 剤 と して緑 農 地 還 元 に有 効 で あ る.た だ し土 壌 の 性 質 や還 元 時 期,そ の 方 法 な どに つ い て は事 前 の 調 査 検 討 が不 可 欠 で あ る. 家 畜 の 飼 育 に よ っ て 排 出 され るふ ん尿 の うち固 形 分 は,稲 わ らや お が くず と混 合 し コ ン ポ ス ト化 が 行 わ れ る.水 分 が 多 い た め 乾 燥 な どの 前 処 理 を行 い,好 気 性 微 生 物 を利 用 して コ ン ポ ス ト化 を行 うが,発 酵 程 度 は温 度 測 定 や 発 生 ガ ス,炭 素 率 な どの 測 定 に よ っ て 行 わ れ る.家 畜 の ふ ん を液 状 化 し,メ タ ン発 酵 に よ る燃 料 化 が 行 わ れ て い る. 6.15 生 ご み の コ ン ポ ス ト化 一般 ごみ の 排 出 抑 制 を 目的 に
,ご み を有 料 化 す る 自治 体 が増 えつ つ あ る.家 庭
に お いて は,生
ごみ 処 理 は ご み 排 出 量 を減 らす 有 力 手 段 で あ り,ご み の 自家 処 理
に位 置 づ け られ る. 生 ごみ 処 理 に は,表6.12に
示 す よ うに,乾 燥 方 式 と微 生 物 方 式 が あ る.乾 燥
方 式 は処 理 が簡 便 で あ る が,資 源 と して の 利 用 に は制 限 が あ る.一 方,微 生 物 処 理 は時 間 と手 間 は かか る もの の,堆 肥 資 源 な ど と して の再 利 用 が可 能 で あ る.微 生 物 処理 に お け る有 機 成 分 の 変 化 を図6.12に 示 した.高 温 の 前 発 酵 に よ っ て腐 食 が進 行 し,後 発 酵 に よ って 堆 肥 化 が完 了 す る.
表6.12 生 ごみ処理 における乾燥 方式 と微生物 分解方式 (生物系廃棄物 資源化 リサイクル技術,2000)
図6.12
コ ン ポ ス ト中の 有 機 成 分 の 変 化(生
物 系 廃 棄 物 資 源 化 リサ イ クル 技 術,2000)
6.16 ご み 発 電 ごみ の焼 却 に よ って エ ネル ギ ー の 回収 が な され て い る.燃 焼 状 態 や 熱 の 利 用 形 態 に よ って,図6.13に の 利 用),蒸
示 す よ うに 空 気 の形 で の 熱 利 用(高
温 空 気 や 温 水 と して
気 の 形 で の利 用(電 力,高 温 水,蒸 気 な ど と して の 利 用),温
で の 利 用(温 水 と して の利 用)が
水の形
な され て い る.
ごみ 焼 却 に よ る熱 利 用 の 際 に問 題 に な るの が ば い煙 の処 理 で あ る.ば い 煙 中 に は,表6.13に
図6.13
示 す よ う に,粒 子 状 物 質,硫
黄 酸 化 物,窒
焼 却 排 熱 の エ ネル ギ ー変 換 に よ る熱 利 用技 術(東:日
表6.13
ばい煙の処理
素 酸 化 物 の ほ か,有 害
本 エ ネル ギ ー学 会 誌,1993な
ど)
ごみ焼 却 平 野 が 狭 く人 口密 度 が高 い わ が国 で は,伝 染 病 の蔓 延 を防 ぐな ど,衛 生 上 の 問 題 か ら焼 却 に よる ごみ処 理 が 広 く行 われ て きた.そ の 結 果,焼 却 施 設 の数 は世界 の70%と
もい われ てい る.ダ イオ キ シ ンは,農 薬 な どの 不純物 と して非意 図 的 に
合成 され た もの で あ るが,燃 焼 に よって も生 成 す るこ とが確 か め られ てお り,そ の量 は全 ダイオ キ シ ン発 生量 の90%と 見 積 もられて い る.従 来,問 題 ない と され て きた 自家 焼却 の 自粛 は大 きな議 論 を巻 き起 こ してい るが,生 活 と廃 棄 物,そ
し
て その処理 を考 える上で よい機 会 に なって い る.
有 機 化合 物,有
害 重 金 属 な どが 含 まれ て い る.こ れ ら は,フ
除 去 や ア ル カ リ化 合 物 な ど に よ る除 去 が 行 わ れ て い る.
ィル タ を用 い た 吸着
7 資 源 とエ ネ ル ギ ー
7.1 一 次 エ ネ ル ギ ー と は 石 油,石 炭,天
然 ガ ス,原 子 力 エ ネ ル ギ ー,自 然 エ ネル ギ ー な どは 自然 界 か ら
直 接 得 られ るエ ネル ギ ー 源 で あ り,こ れ ら を一 次 エ ネ ル ギ ー と い う.一 次 エ ネル ギ ー は,表7.1に
示 す よ うに さ らに 化 石 エ ネ ル ギ ー と非 化 石 エ ネル ギ ー に 分 類 さ
れ る. ガ ソ リ ン,灯 油,軽 油 な どの 石 油 製 品,電 気,都 市 ガ ス,製 鉄 用 の コ ー ク ス な ど は,一 次 エ ネル ギ ー を製 油 所 や 発 電 所,都
市 ガ ス工 場 な ど で 加 工,転 換 した も
の で あ る こ とか ら,二 次 エ ネル ギ ー とよ ん で い る.廃 棄 物 か ら得 られ るエ ネル ギ ー も二 次 エ ネル ギ ー で あ る。 表7.1 エ ネ ル ギ ー の種 類
図7.1 わ が 国 の一 次 エ ネ ル ギ ー需 給 の 推 移(単 (資 源 エ ネル ギ ー 庁:総
位:石
油 換 算 億 キ ロ リ ッ トル)
合 エ ネル ギ ー統 計 ほ か)
石 炭 は,わ が 国 を 含 め世 界 的 に広 い 地 域 で 産 出 し,埋 蔵 量 も豊 富 で あ る.こ の こ と か ら,19世
紀 か ら20世 紀 初 頭 に か け て,エ
く実 用 化 され,工
ネ ル ギ ー 資 源 と して の 利 用 が 広
業 生 産 の 飛 躍 的 な伸 び を支 えた.20世
紀 に 入 る と,ガ
ソリン
や 重 油 を用 い る動 力 用 エ ン ジ ンが 普 及 し,固 体 で あ る石 炭 に か わ っ て流 体 系 の 石 油 が 大 量 に 生産 され る よ うに な っ た. 7.2 一 次 エ ネ ル ギ ー の 需 要 の 推 移 と 見 通 し わ が 国 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 総 供 給 量 に お け る 石 油 の シ ェ ア は,1957年 22%で
あ っ た が,高 度 成 長 と と も に増 加 し,1977年
シ ョ ック を経 て1997年
度 に は54%に
度 に は75%に
まで 減 少 し,2010年
まで 低 下 す る との 見 通 しが な され て い る(図7.1).し
度には
達 した.石 油
度 に は,さ
らに47%
か し,減 少 率 は石 油 シ ョッ
ク直 後 の 見 通 し よ り も小 さ く,こ れ は石 油 代 替 エ ネ ル ギ ーの 導 入 の遅 れ を反 映 し て い る. 一 方,石
炭 は,1957年
以 降,石 油 へ の 転 換 が 図 られ て,48%か
ら14%ま
で減
少 し た が,資 源 の 多様 な利 用 を図 る なか で,需 要 産 業 の 活 動 水 準 の変 化 に 対 応 し た供 給 を果 た して い る. も うひ と つ の 化 石 資 源 で あ る天 然 ガ スの 供 給 量 は,石 油 シ ョッ ク以 降 に大 幅 に 増 加 し,1997年
に は12%に
達 した.表7.2に
示 す よ うに,単 量 あ た りの 発 熱 量
表7.2 有機炭素資 源の発 熱量 の比較
の 大 き な資 源 で あ り,環 境 問 題 へ の対 応 を反 映 して,2010年
に は13%に
な る見
通 しが な され て い る. 一 方,非 化 石 エ ネル ギ ー に つ い て は,一 次 エ ネ ル ギ ー 総供 給 量 に お け る原 子 力 の シ ェ ア が,石 油 シ ョ ック 以 降,確 実 に増 加 して い る.1987年 年 に は13%,2010年
に は17%に
に は10%,1997
増 加 す る との 見 通 しが な され て い る.ま た 新 エ
ネ ル ギ ー の 一 次 エ ネル ギ ー供 給 に 占 め る割 合 は,2010年
に は4%と
な る見 通 し
で あ る. 7.3 二 次 エ ネ ル ギ ー の 需 要 見 通 し 電 力 は その ク リー ン性,安
全 性 お よ び利 便性 な どか ら,今 後 も総 エ ネ ル ギ ー需
要 に 占め る割 合 は増 加 す る と予 測 され る.都 市 ガ ス も,ガ ス コ ジ ェ レー シ ョンの 一 層 の 普 及 な ど を背 景 に 着 実 に増 加 す る見込 み が な され て い る.石 油 製 品 につ い て は 原 料 用 お よび 燃 料 用需 要 は減 少 して い るが,輸 送 用 需 要 は堅 調 に増 加 す る見 込 み で あ る.ま たLPGは
民 生 用 需 要 の 堅 調 な伸 び が 見 込 まれ,さ
ッ クの 代 替 と して の 環 境 負 荷 の 少 な いLPG自 確 実 に増 加 す る見 込 み で あ る.さ
らに軽 油 トラ
動 車 の増 加 が 考 え られ る こ とか ら,
らに,新 た な 供 給 形 態 と して,太
陽光 発 電 な ど
の 再 生 可 能 エ ネル ギ ー,廃 棄 物 発 電 な どの リサ イ クル 型 エ ネル ギ ー,コ
ジェネレ
ー シ ョン な どの 従 来 型 エ ネル ギ ー の新 利 用 が 考 え られ ,こ れ らの 合 計 が 二 次 エ ネ ル ギ ー消 費 に 占 め る割 合 は,2010年
に は6%と
大 き く な る見 通 しが な され て い
る.
7.4 資 源 の 有 限性 第 一 次 お よび 第 二 次 石 油 シ ョ ック を経 て,石 油 資 源 の 有 限 性 が強 く認 識 され た. エ ネル ギ ー資 源 の長 期 的 ・安 定 的確 保 は 非 常 に重 要 で あ る こ とか ら,省 エ ネ が最
表7.3 石 油 代 替 エ ネル ギ ーの 開 発
も重 要 な方 策 に な る.さ
らに,石 油 代 替 エ ネル ギ ーの 開 発 が不 可 欠 で あ る.表
7.3に 示 す よ うに 石 油 代 替 エ ネ ル ギ ーの 開 発 に は,① 石 油 の 寿 命 を長 くす る た め の 化 石 資 源 の効 率 的利 用,② 原 子 力 発 電 の 利 用,③ 再 生 産 可 能 な エ ネル ギ ーで あ る 自然 エ ネル ギ ー利 用 技 術 の 開発,が
あ げ られ る.天 然 ガ ス は,石 油 同 様 に流 体
系 の燃 料 で あ り,100年
に も及 ぶ 寿 命 が あ る.同
ガ ス は,石 油 の3/4,石
炭 の3/5の
じ発 熱 量 を得 る た め に は,天 然
二酸 化 炭 素 発 生 量 で あ る.ま た オ イル サ ン ド
や オ イル シ ェ ー ル の 有 効 利 用 技 術 の 開 発 も,石 油 系 燃 料 の寿 命 を延 ば す た め に は 重 要 で あ る. 表7.4 新 エ ネ ル ギ ー技 術 開 発
7.5 エ ネ ル ギ ー を 安 定 的 に 獲 得 す る た め の 国 家 的 計 画 1973年 末 の 第 一 次 石 油 危 機 の 頃,日
本 の石 油 依 存 率 は75%以
そ の た め 当 時 の 新 エ ネル ギ ー 開発 は,主
上 と高 か っ た.
と して 石 油 代 替 エ ネ ル ギ ー 開 発 で あ り,
サ ン シ ャ イ ン計 画 で は表7.4に 示 した よ うに,石 炭 の 液 化 ・ガ ス化,地 熱 利 用 技 術,太
陽 エ ネル ギ ー利 用技 術 の 開 発 が行 わ れ た.省 エ ネル ギ ー技 術 開発 の た め の
ム ー ン ラ イ ト計 画 は,そ の 後 サ ン シ ャ イ ン計 画 と と も に ニ ュ ー サ ンシ ャ イ ン計 画 に統 合 され た. 7.6 環 境 問 題 と の 関 係:エ
ネ ル ギ ー 利 用 と二 酸 化 炭 素 の 放 出 量
地 球 温 暖 化 問 題 を契 機 と し,二 酸 化 炭 素 排 出 削 減 が 叫 ば れ る よ うに な っ た. COP3(気
候 変 動 に 関 す る国 際 連 合 枠 組 み 条 約 第3回 締 約 国会 議)に
国 の二 酸 化 炭 素 排 出 目標 が設 定 され,わ が 国 は2010年 の 水 準 の6%削
に お け る排 出量 を1990年
減 とす る こ と を約 束 した.
わ が 国 の1990年 あ る.1996年
お い て,各
にお け る二 酸 化 炭 素 排 出量 は,炭 素 換 算 で2億8700万
に お け る排 出 量 は3億1400万
え て い る.現 状 維 持(年 に達 す る.1990年
率9%上
昇)の
レベ ル の 排 出量 を6%削
と か ら,予 想 量 で あ る3億8100万
トンで
トンで あ る こ とか ら,年 率9%も ま ま だ と,2010年
に は3億8100万
減 した 量 は2億7000万
トン を29%削
トン
トンで あ る こ
減 す る必 要 が あ る(図7.2).
図7.2 二酸化炭 素排 出量実績 と削減 目標
増
大 気 中の二 酸化炭 素濃 度 19世 紀 後 半 か ら100年 し た.こ
の 間 に,大
で あ る.こ
の ま ま 化 石 資 源 を 燃 料 と して 使 い 続 け る と,現
に 達 して い る 二 酸 化 炭 素 量 は,ど 限 で あ る こ と か ら,化 1750ppmに
気 中 の 二 酸 化 炭 素 量 は,100ppm近
くも上昇
れ は 化 石 資 源 の 燃 焼 と,熱 帯 雨 林 な ど バ イ オ マ ス 資 源 の 減 少 に よ る も の
れ く らい に な る の だ ろ う か.有
機 炭 素 資 源 も有
石 資 源 の 究 極 の 可 採 埋 蔵 量 を す べ て 燃 や し た 場 合,
な る と の 試 算 が な され て い る.こ
想 で き な い が,少
在350ppm(0.035%)
の値 が どの よ うな影響 を与 えるか予
な く と も化 石 資 源 が 有 限 で あ る こ と を忘 れ て は い け な い.
この 約 束 を遂 行 す る た め に,原 子 力 発 電 所 の 建 設 が 考 え られ て い る.原 子 力 発 電 所 を20基 建 設 す る こ とで,3400万
トンの 削 減 が 期 待 で き る.さ
らに 必 要 な削
減 は,省 エ ネ な ど に よ っ て 達 成 す る 必 要 が あ る.不 況 な ど に よ っ て排 出 量 の 低 減 も考 え られ る が,現 状 で は か な り厳 しい と考 え られ る.
参 考文 献
第1章 1) 矢 野 恒 太 郎 記 念 会:世 2) 宮 田 秀 明:ダ 3)
界 国 勢 図 絵,国
勢 社,1999.
イ オ キ シ ン,岩 波 新 書,1999.
日本 化 学 会 編:ダ
イ オ キ シ ン と環 境 ホル モ ン,東 京 化 学 同 人,1998.
第2章 1) 冨 永 博 夫 ・神 谷 佳 男:有
機 プ ロ セ ス化 学,丸
善,1981.
2) 森 田 義 郎 ・吉 富 末 彦:改
著 石 油 化 学 と そ の 工 業,昭
3) 石 油 学 会 編:新
石 油 精 製 プ ロ セ ス,幸
書 房,1984.
4) 石 油 学 会 編:新
石 油 化 学 プ ロ セ ス,幸
書 房,1986.
5) J.J.ベ 6) D.ヤ
ル ビ ー(門 ー ギ ン(日
田 光 博 訳):世
界 の 石 油 史,幸
高 義 樹 ・持 田 直 武 訳):石
晃 堂,1989.
書 房,1966.
油 の 世 紀― 支 配 者 た ち の 興 亡―,日
本 放 送 出 版 協 会,1991. 7) 村 上 勝 敏:世
界 石 油 史 年 表― 国 際 石 油 産 業 の 変 遷―,日
本 石 油 コ ンサ ル タ ン ト,
1975. 8) 化 学 工 業 年 鑑,化
学 工 業 日報 社,1999.
9) 石 油 化 学 工 業 の 現 状,石 10) 今 日の 石 油 産 業,石 11) 石 油 情 報 資 料,石
油 化 学 工 業 協 会,2000.
油 連 盟,2000.
油 情 報 セ ン ター,2001.
第3章 1) 神 谷 佳 男 ・真 田 雄 三 ・富 田
彰:石
炭 と 重 質 油― そ の 化 学 と応 用―,講
談社 サ
イ エ ン テ ィ フ ィ ク,1979. 2) 触 媒 学 会 編:C1ケ
ミス ト リー 未 来 を創 る 化 学,講
談 社 サ イ エ ン テ ィ フ ィ ク,
1984. 3) 化 学 工 学 協 会 編:石
炭 化 学 工 学,化
4) 安 藤 淳 平:世
界 の 排 煙 浄 化 技 術,石
5) 西 岡 邦 彦:太
陽 の 化 石"石
炭",ア
学 工 業 社,1986. 炭 技 術 研 究 所,1990. グ ネ叢 書2,ア
6) エ ネ ル ギ ー 総 合 工 学 研 究 所 石 炭 研 究 会 編:石
グ ネ技 術 セ ン タ ー,1990.
炭 技 術 総 覧,電
力 新 報 社,1993.
第4章 1) 日本 エ ネ ル ギ ー 学 会 天 然 ガ ス 部 会 編:よ 資 源 の す べ て―,日 2) K.Weissermel
and
H.-J.Arpe(向
中 間 体―(第4版),東 3)
日本 化 学 会 編,藤
くわ か る天 然 ガ ス― 新 しい エ ネル ギ ー
本 エ ネ ル ギ ー 学 会 発 行,コ
ロ ナ 社 発 売,1999.
山 光 昭 監 訳):工
業 有 機 化 学― 主 要 原 料 と
京 化 学 同 人,1996.
元
薫 ・八 嶋 建 明 著:有
機 プ ロ セ ス 工 業,大
日本 図 書,1997.
第5章 1) 寺 田
弘 ・筏
英 之 ・高 石 喜 久:地
球 に や さ しい 化 学,化
2) 横 山 孝 男 ・長 谷 川 雅 康 ・多 賀 谷 英 幸 ・廣 瀬 宏 一:環
学 同 人,1995.
境 資 源 と 工 学,朝
倉 書 店,
1997. 3) 園 田
昇 ・亀 岡
4) 土 肥 義 治 編:生
弘:有
機 工 業 化 学,化
分 解 性 高 分 子 材 料,工
学 同 人,1997.
業 調 査 会,1990.
第6章 1)
廃 棄 物 リサ イ ク ル 技 術 情 報 一 覧,ク
2)
廃 棄 物 リサ イ ク ル 技 術 の 開 発 事 業 化 動 向,日
リー ン ・ジ ャ パ ン セ ン タ ー,2001. 本 機 械 工 業 連 合 会,ク
リー
ン ・ジ ャパ ン セ ン タ ー,2000. 3)
産 業 リサ イ クル 事典,産
4)
廃 棄 物 処 理 ・リサ イ ク ル,産
業 調 査 会,2000.
5)
廃 棄 物 リサ イ ク ル 技 術 情 報 一 覧(家
業 調 査 会,1995. 庭 系 排 出 物 編),ク
リ ー ン ・ジ ャ パ ン セ
ン タ ー,1999. 6)
廃 プ ラ ス チ ッ ク サ ー マ ル&ケ
ミカ ル リサ イ ク リ ング,化 学 工 業 日報,1994.
7)
生 物 系 廃 棄 物 資 源 化 リサ イ ク ル 技 術,エ
ヌ ・テ ィ ー ・エ ス,2000.
第7章 1)
資 源 エ ネ ル ギ ー年 鑑,通
2)
エ ネル ギ ー ・資 源 リサ イ ク ル,化
産 資 料 調 査 会,1999. 学 工 学 会,1996.
索
欧
文
引
液 相 吸 着 分 離 法 29 エ タ ノー ル 99 ,113
化 石 資 源 96
エ タ ンの 熱 分 解 22
化 石 燃 料 94
C1化 学 85
エ チ レ ン 93
ガ ソ リ ン製 造 法 89 ガ ソ リ ン留 分 15
IGCC
エ ネ ル ギ ー換 算 75
家 畜 ふ ん 尿 中 134
エ ネ ル ギ ー 資 源 112
活性 化 エ ネ ル ギ ー 52
エ ネ ル ギ ー消 費 量 40
活 性 炭 132
LNG LNG火
61 78 力発 電 81
LPG
71
エ ネ ル ギ ー リサ イク ル 122
活性 表 面 積 54
LPG自
動 車 140
塩 基 性 多 糖 108
褐炭 36,39 家電 リサ イク ル 法 119
Monsant法
89
MTG
89
黄 鉄 鉱 36,57,64
PDB
70
汚 泥 129
紙 101 環境 5
オ レ フ ィン製 造 プ ロ セ ス 17
環境 ホ ル モ ン 5
オ レ フ ィ ン製 造 法 92
含酸 素 官 能基 35,39
オ レ フ ィンの 用途 24
乾性 ガ ス 69
オ レ フ ィン誘 導 体 24
間接 液 化 57
ア
行
亜 酸 化窒 素 66 ア ス フ ァル テ ン 57
温 室 効 果 ガ ス 80
ア セ テ ー ト 103
木 くず 127
圧 縮 天 然 ガ ス 84 アニ リ ン 3
カ
行
キ シ レ ン異 性 体 30 キ チ ン 97,104
ア ミノ 多 糖 98,104
海 草 類 110
キ トサ ン 104
ア ミロ ー ス 109
揮 発 分 35,47
ア ミロ ペ ク チ ン 109
海 洋 生 物 98 化学企業 4
アル カ リセ ル ロ ー ス 102
化学工業 1
アル ギ ン酸 98,110
化 学 的 固 定 112
急 速 熱 分解 46 吸 着 ガ ス 72
アル コ ー ル発 酵 113
架 橋 39
キ ュ プ ラ 102
亜 歴 青 灰 36
架 橋 形 成 43
凝 集 剤 108
ア レニ ウ ス の式 51
確 認 可 採 埋 蔵 量 74
強 粘 結 灰 36,44
ア ンモ ニ ア製 造 法 88
確 認埋 蔵 量 7,34
共 有 結 合 40
可 採 年 数 34,75
究 極 可 採 埋 蔵 量 75
硫 黄 酸 化 物 62
可 採埋 蔵 量 8
気 流 層 54 気 流 層 ガ ス化 61
異 性 化 31
ガ ス化 49 ガ ス 化 技 術 54
クチ ク ラ 106
異 性 化 反 応 26 一 次 エ ネル ギ ー 40 ,75,81,138 一 般 廃 棄 物 116 ,122,124 移 動 層 54
ガ ス化 速 度 51 ガ ス キ ャ ップ ガス 70 ガ ス境 膜 内 拡 散 52 カ ス ケ ー ドリサ イ クル 120
グ ラ フ ァ イ ト 54 グル コ ー ス 99,109,113 グル ロ ン酸 110 ク ロ ロ メ タ ン類 製 造 法 90
液 化 54 液 化 石 油 ガ ス 71
ガ ス 田 ガ ス 71 ガ ス灯 2
軽 質 原 油 15
液 化 天 然 ガ ス 78
ガ ス冷 房 82
液空 間 速 度 27
化 石 エ ネ ル ギ ー 138
軽 油 留 分 15 ケー シ ン グヘ ッ ドガ ス 69
結 合 解 離 エ ネ ル ギ ー 43 結 晶 化 法 29
産 業 廃 棄 物 116,122,124,129 サ ン シ ャ イ ン計 画 142
石 炭 ガス 69 石 炭 ガ ス化 複 合 発 電 61 石 炭 資 源 化 学 33
ケ ミカル リサ イ ク ル 124 ケ ロ ー ジ ェ ン 10,70
シア ン化 水 素 製 造 法 89
石 炭 消 費 量 40
原 始 埋 蔵 量 74
シ ェー ル ガ ス 73
石油
原 子 力 140
ジオ プ レ ッ シ ャ ー ドガ ス 74
原 子 力 発 電 143
事 業 系 廃 棄 物 118
― ―
の可採年数 8 の埋蔵量 7
建 設 廃 棄 物 127
資 源 量 74
―
の 輸 送 10
元 素 分 析 35
自然 エ ネル ギ ー 141
―
の歴史 8
原 油 10 ― の 成 分 14
湿 性 ガ ス 69 シ フ ト反 応 49
石 油 化 学 原 料 17
原油生産量 8
シ ャ ト リン グ 57
原 料 炭 44
重 質 原 油 15
石 油 化 学 コ ン ビ ナ ー ト 12 石 油 化 学 製 品 12
石 油 化 学 工 業 12
重 縮 合 反 応 43,45
石 油 根 源 岩 70
高 温 熱 分 解 反 応 19
手 術 用 縫 合 糸 108
石油資源化学 7
高 温 熱 分 解 プ ロセ ス 22 こ う解 101
循 環 型 社 会 形 成 推 進 基 本 法 118
石 油 シ ョッ ク 140 石 油 随 伴 ガ ス 69
工 業 分 析 35
循 環 流 動 層 48 常 圧 残 油 15
光 合 成 94
省 エ ネル ギ ー 142
石 油 製 品 11
合 成 ガ ス 49,50,57,85
触 媒 ガ ス化 53
石 油 代 替 エ ネル ギ ー 90,141
合 成 ガ ソ リ ン 86
触 媒 の 再 生 28
石 灰 石 48,62
合成染料 2 ― の発 見 3
シ ール 71
接 触 改 質 25
新 エ ネル ギ ー技 術 開 発 141
接 触 改 質 反 応 用 触 媒 26
人 工 皮 膚 108
接 触 改 質 プ ロ セ ス 27 セ メ ン ト 132
構 造 性 ガ ス 69 鉱 物 資 源 94
深 層 天 然 ガ ス 73
石 油 精 製 15
セル ロ ー ス 97,99,104,113
鉱 物 質 34,53 高 炉 還 元 123,125 コ ー ク ス 製 造 44
水 蒸 気 改 質 49,87
セル ロ ー ス フ ァイバ ー 120
水 蒸 気 ガ ス 化 49
繊 維 く ず 130
古 紙 102,120 コ ジ ェ ネ レー シ ョン 82
水 素 移 動 56
選 択 接 触 還 元 法 66
コ ジ ェ ネ レー シ ョン シ ス テ ム 25
水 素 ガ ス 化 49 水素 化 精 製 27
総 合 効 率 82
水 素 化 熱 分 解 46
藻 類 98
水素 供 与 46
固 定 炭 素 35 ごみ 発 電 136 コ ール ク リー ニ ン グ法 64
水 素 供 与 性 溶 剤 56 水 素 結 合 40
コ ール ベ ッ ドメ タ ン 72,76
ス イ ー トソル トガ ム 98
ダ イ オ キ シ ン 5
コ ンバ イ ン ドサ イ クル 発電 方 式
水 分 35
タ イ トサ ン ドガ ス 73
82 コ ン ポ ス ト 130,134
水 溶 性 ガ ス 71 ス チ ー ム ク ラ ッカ ー 23
タ イ トフ ォー メ ー シ ョ ンガ ス
ス ラ リー 床 反 応 器 59
脱 ア ル キ ル化 30
サ
タ
行
73 脱 揮 発 分 過程 41
行 製紙 用パ ル プ 100
脱 水 素 環 化反 応 26
細 孔 内拡 散 52
生 殖毒 性 5
脱 水 素 反応 26
最 終 処 分 場 4,116
生物 量 94
再 生 セ ル ロー ス 99
生 分解 性 107
多糖 類 97,99 タ トレイ 法 31
在 来 型 天 然 ガ ス 70
生 分 解性 プ ラス チ ッ ク 110
酢 酸 製 造 法 89
精 密蒸 留 29
サ トウ キ ビ 99,113
世界人口 6 石 炭 33 ― の 化 学 構 造 37
サ ー マ ル リサ イ ク ル 123 産業革命 2
ター ル 2,44 単位 発 熱 量 81 炭 化 水 素 18 炭 化 度 37 炭 酸 ガ ス 改 質 法 87
炭 素 鎖 成 長 確 率 58
ニ ュ ー サ ン シ ャ イ ン計 画 142
炭 素 同 位 体 組 成 70
二 硫 化 炭 素 製 造 法 90
炭 田 ガ ス 72
ピ ッチ 44 ピ ーデ ィーベ レ ム ナ イ ト 70 微 粉 炭 54
熱 化 学 方程 式 81
微 粉 炭 燃 焼 47,61
地 球 温 暖 化 80,140
熱 可塑 性 樹 脂 123
頻 度 因 子 52
地 球 環 境 問 題 60
熱 効 率 82
窒 素 酸 化 物 64
熱 分解 41,47
チ ップ 128
熱 分解 起 源 70
チ ャー 47
熱 分 解 フ ラ グ メ ン ト 43
不 均 化 31
超 臨 界 流 体 127
熱 分 解 メ カ ニ ズ ム 20
複 合 改 質 法 87
直 接 液 化 55
熱 併 給 発電 82
ブ ドア ール 反 応 49
貯 留 岩 71
粘 結 性 36
部 分 酸 化 49,51
貯 留 構 造 71
粘 結 炭 36 燃 焼 47
部 分 酸 化 法 87 フュ ーエ ル リサ イ クル 122
低NOxバ ー ナ 65 天 然 ガ ス 69 ― の 貿 易 78
燃 焼 改 善 65
フ ラ イ ア ッ シ ュ 48
燃 焼 熱 47
プ ラス チ ッ ク リサ イ クル 122
燃 料 電 池 62,84
フ リー ガス 層 72
天 然 ガ ス 自動 車 84
燃 料 比 35
分 別 124
天 然 ガ ス 生 産 量 75 天 然 ガ ス組 成 70 天 然 繊 維 102
フ ィッ シ ャ ー-ト ロプ シ ュ 合 成 57,88
噴 流 層 54 農 林 水 産 廃 棄 物 97 ノ ー ブル ユ ー ス 13
天 然 多 糖 104,110 ハ
デ ン プ ン 109
行
平均寿命 6 平 衡 定 数 50 ペ ッ トボ トル 124 ヘ ミセ ル ロー ス 97,100,105
動 植 物 性 残 査 133
ば い煙 136
動 物 性 残 査 133
排 煙 処 理 65
トウ モ ロ コ シ 99
変 換 効 率 82
排 煙 脱 硫 62 バ イオ マ ス 94
帽 岩 71
灯 油 留 分 15 都 市 ガ ス 82
廃 棄 物 111
芳 香 族 製 造 プ ロセ ス 25
土 壌 改 良剤 128,134 トラ ン ス ア ル キ ル 化 反 応 31
廃 食 用 油 132
芳 香 族 炭 化 水 素 29
廃 タ イ ヤ 131
膨 張 性 36
廃 炭 素 資 源 115 パ イ プ ラ イ ン 78
母 岩 70 ポ リカ チ オ ン 108
灰 分 35 バ イ メ タル 触 媒 28
ホル ム アル デ ヒ ド製 造 法 89
ト リア セ テ ー ト 103 トル イ ジ ン 3 ナ
行
内 分 泌 撹 乱 化 学物 資 5 ナ フ サ 14,17
発 電 効 率 61 発 電 用 燃 料 41,60
芳 香 族 ク ラス ター 39
マ
行
ナ フ サ分 解 生 成 ガ ス 23
発 熱 量 36 バ ブ リ ン グ型 流 動 層 48
埋 蔵 量 74 マ テ リア ル リサ イ クル 123
ナ フ テ ン基 原 油 17
パ ラ フ ィ ン基 原 油 15
マ リ ンバ イオ マ ス 109
生 ごみ 処 理 135
パ ル プ 100
マ ンヌ ロ ン酸 110
軟 化 溶 融 42
バ レル 18 半 合 成 繊 維 103
無 煙 炭 36
二 元 機 能 触 媒 26
半 再 生 式 接 触 改 質 プ ロ セ ス 27
無 機 硫 黄 36,64
二 酸 化 炭 素 60,95,112,144
反 応 熱 49
無 水 無 灰基 準 35 ム ー ン ラ イ ト計 画 142
二 酸 化 炭 素 排 出原 単 位 81 二 酸 化 炭 素 排 出 削減 142
非 共 有 結 合 40
二 酸 化 炭 素 発 生量 81
火 格 子 燃 焼 48
メ タジ ェネ シス 70
二次 エ ネル ギ ー 82,140
非 在 来 型 天 然 ガ ス 72
メ タ ノー ル 86,88
二段 燃 焼 65
微 生 物 発 酵 起 源 70
メ タ ノー ル 製 造 法 88,91
有機 性 汚 泥 129
リグ ニ ン 97,100,105 リサ イ クル 117,119,122,132
メ タ ンハ イ ドレ ー ト 72,77,92
有機 炭 素 資 源 3,115
律 速 段 階 52
メ タ ン発 酵 129,133 メ チ ル シ ク ロペ ン タ ン 26
遊 離 ガ ス 72
流 動 層 54
遊 離 基 連 鎖 反 応 31
流 動 層 燃 焼 48,63 リユ ー ス 117
メ タ ン 89 ― の カ ッ プ リ ン グ反 応 90
有 機 資源 94
遊 離性 ガス 69 木 材 の プ ラス チ ッ ク化 106
油 田 ガ ス 70
木 質 繊 維 組 織 33
油 溶性 ガ ス 69
冷 熱 84
木 炭 128 モ ー ブ 3
油 料 作物 99
冷 熱 発 電 84
溶 解 ガ ス 70
歴 青 炭 36 レ ー ヨ ン 102
溶 解 パ ル プ 100
連 鎖 担 体 30
ヤ
行
容 器包 装 リサ イク ル 法 119,124 薬 理 活 性 108 有害化学物質 4
溶 媒抽 出 法 29 ラ
炉 内 脱 硫 63 行
有 機 硫 黄 36 有 機 汚 泥 130
ラ イ フサ イ クル 81
有機化学工業 2
ラ ジカ ル 連 鎖 22
著 者 略歴 多賀 谷英幸
進藤 隆世 志
1955年 群 馬県 に生 まれ る 1980年 東 北大 学大学 院工学 研究科 修士課 程修 了 現 在 山形大 学工学 部物 質化学工 学科教 授 工 学博 士
1958年 秋 田県 に生 まれ る 1982年 東北 大学 大学 院工学 研究科修 士 課程修了 現 在 秋 田大学 工学 資源学 部環境物 質工 学科助教 授 工学 博士
大 塚 康 夫 1946年 宮城県に生まれる 1976年 東北大学大学院工学研究科博士課程修了 現 在 東北大学多元物質科学研究所教授 工学博士
玉 井 康 文
門 川
1956年 東 京都 に生 まれる 1983年 東北 大学 大学院 工学研 究科 博士課 程修了 現 在 日本 大学 工学部物 質 化学工 学科教 授 工学 博士
淳 一
1964年 愛 媛県 に生 まれる 1992年 東北 大学 大学院 工学 研究科 博士課程 修 了 現 在 鹿 児島大 学大 学院理 工学研 究科教授 工 学博士
応 用化学 シ リーズ 2 定価 は カパ ーに表示
有 機 資 源 化 学 2002年4月10日 2007年6月30日
初版 第1刷 第3刷
著 者 多
賀
谷
英
幸
進
藤
隆
世
志
大
塚
康
夫
玉
井
康
文
門
川
淳
一
発行者 朝
倉
邦
造
発行所 株 会社 式 朝
倉
書
店
東 京 都 新 宿 区 新 小 川 町6-29 郵 便 番 号 電
FAX
2002〈 ISBN
無 断 複 写 ・転 載 を禁 ず 〉
978-4-254-25582-9
03(3260)0180
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162-8707
話 03(3260)0141
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