学
理工 講座
数値電界計算の 基礎 と応用 宅間
董
濵田昌司
TOU 東京電機大学出版局
本書 の全 部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作 権 法上 で の 例 外 を除 ...
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学
理工 講座
数値電界計算の 基礎 と応用 宅間
董
濵田昌司
TOU 東京電機大学出版局
本書 の全 部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作 権 法上 で の 例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます。 小 局 は,著 者 か ら複写 に係 る 権 利 の 管 理 につ き委託 を受 けて い ます ので,本 書 か らの複 写 を希望 され る場 合 は,必 ず小局(03-5280-3422)宛 ご連 絡 くだ さい。
口絵1 誘 電体 球群 の 電 界 計算
口絵2 人体形状接地導体群の電界計算
口絵3 人 体 両肺 モ デ ルの 誘 導電 界 計 算
口絵4 人体 モ デル 内 の誘 導 電 流計 算
(口 絵1か
ら口 絵4の
計 算 内 容 の 詳 細 は10.8節
で 説 明)
ま えが き
計 算 機 と計 算 手 法 の 発 展 に よ っ て 数 値 的 な電 界 計 算 法 は 画 期 的 な 進 展 を遂 げ た。 電 界 計 算 の 基 本 式 で あ る ラ プ ラ ス の式 が 見 出 さ れ た1782年 た現 在,非
か ら約220年
経
常 に複 雑 な 三 次 元 の 配 置 で も高 精 度 で詳 細 な 電 界 が 求 め られ る よ うに
な っ た 。 そ の結 果,絶 縁 設 計,放
電 応 用,静
電 気 工 学,電 気 環 境 な ど電 気 を 利用
す る さ ま ざ ま な分 野 で,定 量 的 に 電 界 を 求 め る こ とが 必 須 の テ ク ニ ッ ク とな り, 高性 能,高 能 率,小
型 化,な
どの 要 求 か ら最 近 い っ そ う重 要 に な っ て い る。 電界
計 算 は,一 般 的 な 電 磁 波 計 算 あ る い は磁 界 の 計 算 と相 当 異 な り,多
くの 場 合 最 大
の電 界 を高 精 度 で 求 め る こ とが 必 要 で あ る。 そ の た め 電 界 計 算 特 有 の 方 法 が 利 用 され る と と もに,計 算 機 性 能 の 向 上 に応 じて 新 しい技 法 が 開 発 さ れ て き た。 筆 者 の1人 社)は,数
が 昭 和55年(1980年)に
著 した 旧 著 『数 値 電 界 計 算 法 』(コ ロ ナ
値 的 な 電界 計 算 法 の基 礎 か ら種 々 の 場 の具 体 的 な計 算 法 を で き る だ け
分 か りや す く解 説 して,だ
れ で もが 使 え る 道 具 にす る よ う に企 図 した もの で あ っ
た。 実 際 に数 値 電 界 計 算 法 の 開発 時 期 に 自 ら行 っ た計 算 体 験 をベ ー ス に し,ほ と ん どが 自分 の 計 算 例 を使 用 した 内 容 で あ っ た 。 旧著 は各 分 野 で の 数 値 電 界 計 算 に 対 す る必 要 性 を満 た す 書 と して歓 迎 され,中
国 語 で も翻 訳 出 版 さ れ た 。 しか し,
そ の 後 絶 版 と な り,ま た 基 本 的 な手 法 は変 わ りな い もの の,よ
り高 度 な 計 算 を可
能 に す る テ ク ニ ッ ク も導 入 さ れ て 内 容 の 一 部 が 古 くな っ た 。 そ こ で 旧 著 の 内 容 を 全 面 的 に 見 直 し,新 しい 事 項 を含 め て 書 き直 した の が 本 書 で あ る。 この 四 半 世 紀 の 間 に,以 前 は大 型 計 算 機 を必 要 と した 数 値 電 界 計 算 が,個 ー ソ ナ ル コ ン ピ ュー タ(PC)利 (ソ フ トウ ェ ア)を
人 が 自 由 に使 え るパ
用 技 術 へ と進 化 し
,ま た さ ま ざ ま な プ ロ グ ラ ム
ネ ッ トワ ー ク か ら取 得 で き る時 代 とな っ た 。 しか しな が ら,
や や もす る と複 雑 な プ ロ グ ラ ム を い わ ば ブ ラ ッ クボ ック ス と して 盲 信 して 使 用 す る こ とが 多 い の も事 実 で あ る。 本 書 は電 界 計 算 の み を対 象 と し,関 連 の 深 い磁 界 計 算 は扱 わ な い 。 ま た 周 波 数
の 高 い 電磁 波(電
波)の 計 算 も範 囲 外 で あ る 。 い わ ば比 較 的 低 周 波 の 電 界 の 計 算
だ け を説 明 し て い る 。 そ の理 由 は書 中 で も説 明 して い る が,電 界 分 布 を 高 精 度 で 求 め る た め の 手 法 とそ の 応 用 を説 明 した 本 で あ り,そ れ は 磁 界 や 電磁 波 の 計 算 と 異 な る こ とで あ る 。 この 点 が 本 書 の 第一 の特 徴 で あ る。 第 二 の特 徴 は,先 た よ う な情 勢 を背 景 に,プ
に述 べ
ロ グ ラ ム の詳 細 よ りも計 算 法 の 基 礎 や 疑 問 点 を で き る
だ け て い ね い に説 明 して い る こ とで あ る 。 本 書 の 構 成 は,第Ⅰ
部 「各 種 の 数 値 電 界 計 算 法 」,第Ⅱ 部 「各 種 の 場 の 計 算
法 」,付 録 か らな る。 第Ⅰ 部 で は計 算 法 の も と に な っ て い る ラ プ ラ ス の 式(な
ら
び にポ ア ソ ンの 式)と 境 界 条 件 か ら,も っ ぱ ら使 用 さ れ て い る4種 類 の 数 値 計 算 法 を基 礎 的 に 解 説 した 。4種 類 の 方 法 とは,領 域 分 割 法 に属 す る差 分 法 と有 限 要 素 法,境 界 分 割 法 に属 す る 表 面 電 荷 法 と電荷 重 畳 法 で あ る。 さ ら に,各 方 法 の 問 題 点,長 所,短
所 を述 べ て 比 較 す る と と も に,精 度 の 評 価 方 法 や,4種
類 以外 の
計 算 法 も説 明 した 。 さ らに 最 近 の新 しい 発 展 分 野 と して,曲 面 形 状 表 面 電 荷 法 と 高 速 多 重 極 法 を そ れ ぞ れ独 立 した1章 した 計 算 法 で,種
を含 む場 合,直
部 に解 説
々の よ り複 雑 な場 の 電 界 を計 算 す る 方 法 につ い て 説 明 した 。 取
り上 げ た 場 は,複 合 誘 電 体,一 静 電 誘 導 計 算,一
と して 解 説 した 。 第Ⅱ 部 は,第Ⅰ
様 電 界 や 既 知 の 電 界 を 含 む 配 置,静
般 三 次 元 配 置,表
電 容 量 計 算,
面 導 電 性 や 体 積 導 電 性 を含 む 配 置,空
流 イ オ ン流 場,最 適 形 状 設 計,な
間電 荷
ど多 岐 に わ た る 。
先 に 述 べ た よ う に,本 書 は 旧著 『数 値 電 界 計 算 法』(コ ロ ナ 社)の
新版 に相 当
し,実 際 に 共 通 す る部 分 も多 い。 しか し今 回 旧著 の 内 容 を徹 底 的 に見 直 し て相 当 部 分 を書 き直 す と と もに,新
しい 内 容 を含 め た。 そ の た め に,旧 著 に 記 載 して い
た い くつ か の 具 体 的 な 計 算 例 や 電荷 重 畳 法 の プ ロ グ ラム な ど を割 愛 す る こ と に な っ たが,そ
の代 わ り計 算 法 につ い て 解 説 した 第Ⅰ 部 の 各 章 に は 新 た に 演 習 問題 を
作 成 した。 また 付 録 に は,本 文 に含 め る に は い く らか 詳 細 な 内 容 や い さ さ か複 雑 な式 を取 りま とめ た。 本 書 で は,全 体 を通 して な るべ く用 語 や 記 号 を 統 一 す る よ う に心 が け た。 代 表 的 な記 号 は 以 下 の とお りで あ る 。 φ;(空 間 の)電
位,V;電
極 電 圧,Eま
た はE(ベ
ク トル);電
界,q;空
間電
荷 密 度,σ;表
面 電荷 密 度,ρ;体
積 抵 抗 率,ρs;表
ε0;真 空 また は気 体 の 誘 電 率,d;ギ 量,S;境
界(面
面 抵 抗 率,ε;媒
質 の 誘 電 率,
ャ ッ プ の 長 さ(電 極 間 距 離),C;静
電容
積)。
ま た 電 位,電 界 を求 め る 空 間 を 領 域,領
域 を 囲 む 周 辺 を境 界,2種
類 の誘電 体
の境 界 を界 面 と呼 ぶ こ と に して い る 。 本 書 の 執 筆 は,5.6節
特 異 点 の 処 理,第9章
曲 面 形 状 表 面 電 荷 法,第10章
高
速 多 重 極 法,を 主 に濵 田 が 担 当 し,他 の 個 所 と全 体 の 調 整 は 主 に 宅 間 が 担 当 し た。 な お 第Ⅱ 部 に と りま とめ た 電 界 計 算 の 応 用 は 多 方 面 にわ た っ て 多 数 の 論 文 が 存 在 し,重 要 な 内 容 を記 載 した 文 献 は で き る だ け 目 を通 して 言 及 す る よ う に務 め た が,不 十 分 と思 わ れ る分 野 もあ る。 た と え ば放 電 シ ミュ レー シ ョ ン な どは レ ビ ュー 論 文 しか挙 げ て い ない 。 こ れ ら につ い て お 詫 びす る と と も に,今 後 の た め に 読者 か ら ご指 摘 い た だ け れ ば幸 い で あ る。 最 後 に,電 界 に 関す る い ろ い ろ な 問 題 に つ い て 始 終 ご討 論,ご 旧著 の 共 著 者 で も あ る 河 野 照 哉 先 生,な て い る河 本 正 氏,ブ
指 導 い た だ き,
らび に 参 考 文 献 の共 著 者 と して も挙 が っ
ンチ ャ イ ・テ チ ャ ア ム ナ ー ト(Boonchai
ほか,電 力 中 央 研 究 所,京 都 大 学 の 関係 者,な
Techaumnat)氏
,
世 話 に な っ た 東 京 電 機 大 学 出 版 局 植 村 八 潮 氏,編
らび に 本 書 を 出版 す る に あ た りお 集 課 吉 田 拓 歩 氏,京
都大 学東 田
紀 子 氏 に心 か ら感 謝 します 。 2006年7月
著 者 しる す
目
第Ⅰ
部
第1章
次
各 種 の 数 値 電 界 計 算 法
1
電 界 計 算 の 方 法
3
1.1 解 析 的 方 法
3
1.2 影 像 電 荷 法
5
1.3 ア ナ ロ グ 法(フ
ィ ー ル ドマ ッ ピ ン グ)
6
1.4 磁 界 計 算 法 と の 関 係
7
第2章
9
電 界 計 算 の 基礎
2.1 ラ プ ラ ス の 式
9
2.2 境 界 条 件
11
2.3 境 界 条 件 と影 像 電 荷
12
2.4 時 間 的 変 化 が あ る場 合
14
2.5 数 値 電 界 計 算 法 の 分 類
15
第3章
差
分
法
18
3.1 計 算 法 の あ ら ま し
18
3.2 テイ ラ ー 級 数 式 か らの 導 出
20
3.3 分 割 が 等 間 隔 で な い と き の 式
21
3.4 電 位 の 方 程 式
22
3.5 境 界 の 処 理 方 法
23
3.5.1 回転 軸 上
23
3.5.2 対 称 面 な ど ∂φ/∂n(法線 方 向微 係 数)=0の
境界
24
3.5.3 無 限 遠
25
3.5.4 電 極 表 面上
27
3.6 計 算 上 の 問 題 点
27
3.6.1 領 域 分割
27
3.6.2 連 立一 次 方程 式 の 解 法
第4章
29
有 限要 素 法
31
4.1 計 算 法 の 基 礎
32
4.2 具 体 的 な 計 算 手 順
33
4.3 電 位 の 方 程 式 と電 界
35
4.4 回 転 対 称 場 の 場 合
36
4.5 重 み つ き残 差 法
36
4.6 簡 単 な例
37
4.7 精 度 向 上 の 方 法―
第5章
高 次式 の利用
表 面 電 荷 法
40
43
5.1 計 算 法 の 基 本
44
5.2 平 面 要 素 と 曲 面 要 素
45
5.3 二 次 元 場 の 計 算
46
5.4 回 転 対 称 場 の計 算 5.5 電 荷(あ
48
る い は 電 荷 密 度)の
式 と電界
5.6 特 異 点 の 処 理
51
5.6.1 特 異 点 と積 分 の種 類 5.6.2 特 異積 分
54
電 荷 重畳 法
57
6.1 計 算 法 の 原 理
57
6.2 仮 想 電 荷 の 電 位,電
界
6.3 仮 想 電 荷 の 方 程 式 と 電 界 6.4 簡 単 な 例 6.5 計 算 上 の2,3の
59 61 63
問題
6.5.1 仮 想電 荷 と輪郭 点 の 配置 6.5.2 電 位係 数 に つ いて 6.6 仮 想 電 荷 の 種 類 6.6.1 仮想 電 荷 の 条件 6.6.2 円板 電 荷
51 53
5.6.3 準 特異 積 分
第6章
49
64 64 66 68 68 69
6.6.3 仮 想 電 荷 の 一般 化
第7章
71
電 界 計 算 法 の 比 較 と精 度
74
7.1 差 分 法 と 有 限 要 素 法 の 比 較
74
7.2 表 面 電 荷 法 と電 荷 重 畳 法 の 比 較
77
7.3 計 算 法 の 比 較 表
79
7.4 計 算 精 度 の 評 価
81
7.5 領 域 分 割 法 の 計 算 誤 差
83
7.6 境 界 分 割 法 の 計 算 誤 差
85
第8章
そ の 他 の 方 法
8.1 モ ンテ カ ル ロ 法 8.2 境 界 要 素 法
91 91
8.2.2 表面 電 荷 法 との違 い
93
8.4 FDTD法
とFI法
8.4.1 FDTD法 8.4.2 FI法 8.5 SPFD法
曲 面 形 状 表 面 電 荷法
9.1 曲 面 形 状 の 表 現 9.1.1 ベ ジエ 曲 面 に よ る曲面 の 表現
94 96 96 98 98
101 101 101
9.1.2 曲面 上 の接 線 ベ ク トル
103
9.1.3 制 御 点 座標 の決 定 方法
105
9.2 面 積 分
89 90
8.2.1 境 界 要 素 法 の基 礎
8.3 コ ン ビ ネ ー シ ョ ン法
第9章
9.2.1 法 線 ベ ク トル と面積 分 9.2.2 面 積 座 標 上 の面 積分 9.2.3 Log‐L1変 換 によ る準 特異 積 分
9.3 電 荷 密 度 の 表 現 9.4 境 界 条 件 の 表 現 方 法
106 106 107 110 111 113
第10章
高 速 多重 極 法
116
10.1 ツ リー 法
116
10.2 多 重 極 展 開 と局 所 展 開
119
10.3 多 重 極 展 開係 数 の 階 層 的 計 算
121
10.4 距 離 の 判 定
123
10.5 局 所 展 開 係 数 の 階 層 的 計 算
124
10.6 FMMに
よ る相 互 作 用 計 算
127
10.7 表 面 電 荷 法 へ の 適 用
128
10.7.1 適 用 方法
128
10.7.2 FMM‐BEM,FMM‐SCMの 10.8 FMM‐SCMの
第Ⅱ
特徴
129
計算 例
130
10.8.1 多 体系 の 計 算
130
10.8.2 人体 内誘 導 電流 の 計 算
131
部
第11章
各 種 の 場 の 計 算 法
133
複 合 誘 電体 の 計 算
135
11.1 差 分 法 に よ る 計 算
135
11.2 有 限 要 素 法 に よ る計 算
138
11.3 電 荷 重 畳 法 に よ る計 算
140
11.4 表 面 電 荷 法 に よ る 計 算
144
11.5 誘 電 率 が 非 常 に 異 な る と きの 計 算
146
11.6 計 算 例―
147
第12章
三重 点効 果
対 称 的 配 置,周
12.1 対 称 的 配 置,周
期 的 配 置,一
期 的配 置の 計算
様 電 界,既
知 電 界 の 計 算
150 150
12.1.1 対 称 性 と境 界
150
12.1.2 周 期境 界 な ど
152
12.2 一 様 電 界,既
知 電 界 を含 む 計 算
155
12.2.1 原 理
155
12.2.2 単 一誘 電 体 の場 合
156
12.2.3 複合 誘 電体 の場 合
156
12.3 計 算 例
157
12.3.1 一様 電 界 の場 合
157
12.3.2 既 知 電界 の場 合
158
第13章
静 電 容 量 の計 算
160
13.1 静 電 容 量 の 基 礎 式
160
13.2 境 界 分 割 法 に よ る計 算
162
13.3 領 域 分 割 法 に よ る計 算
164
13.4 複 合 誘 電 体 に お け る 問 題 点
166
第14章
168
静 電 誘導 の 計 算
14.1 接 地 導 体 へ の 静 電 誘 導
168
14.4 複 素 仮 想 電 荷 法
173
14.5 複 合 誘 電 体 場 の 浮 遊 電 位 計 算
175
14.5.1 一 般 の場 合
175
14.5.2 一 様電 界 の 場合
177
14.5.3 計 算例
第15章
178
一 般 三 次 元 配 置の 計 算
180
15.1 一 般 三 次 元 配 置 の 計 算 の 問 題 点
180
15.2 領 域 分 割 法 に よ る 計 算
181
15.3 電 荷 重 畳 法 に よ る 計 算
184
15.3.1 各種 の 仮 想 電荷
184
15.3.2 電荷 密 度 の変 化 す る リ ン グ電荷
186
15.3.3 円 弧電 荷
187
15.4 表 面 電 荷 法 に よ る 計 算
189
15.5 三 角 形 表 面 電 荷 法
191
15.6 計 算 例
194
第16章
導 電 率 を含 む計 算
195
16.1 計 算 の 基 礎
196
16.2 差 分 法 に よ る 計 算
197
16.3 有 限 要 素 法 に よ る計 算
198
16.4 電 荷 重 畳 法 に よ る体 積 抵 抗 を含 む計 算
200
16.5 電 荷 重 畳 法 に よ る 表 面 抵 抗 を含 む 計 算
204
16.6 抵 抗 値 が 電 界 に 依 存 す る 場 合
207
16.7 浮 遊 電 位 の 計 算
208
16.7.1 計 算 の 原理
208
16.7.2 計 算例
210
16.8 数 値 計 算 との 比 較 に 用 い ら れ る 配 置
第17章
空 間 電 荷 が あ る 場 合 の 計 算
212
214
17.1 空 間 電 荷 を 含 む 計 算 の 問 題 点
214
17.2 領 域 分 割 法 に よ る 計 算
216
17.3 電 荷 重 畳 法 に よ る 計 算
219
17.4 表 面 電 荷 が 存 在 す る と き の 計 算
222
第18章
直 流 イ オ ン 流 場 の 計 算
225
18.1 イ オ ン流 場 の 基 本 式
226
18.2 イ オ ン の 存 在 が 電 界 に 影 響 しな い とす る 計 算
227
18.3 イ オ ン の 存 在 が 電 界 の 方 向 に 影 響 し な い とす る 計 算
229
18.3.1 基 本 式
229
18.3.2 計 算 の 仮 定
231
18.3.3 Deutschの
仮 定
232
18.4 領 域 分 割 法 に よ る 計 算― 単 極 性 イ オ ン流 場
233
18.5 両 極 性 イ オ ン 流 場 の 計 算
235
18.6 計 算 の 安 定 化
237
18.6.1 上 流有 限要 素 法 18.6.2 電 流 連続 の積 分 式 の使 用 18.7 計 算 例
第19章
最 適 形 状 の 設 計 法
定 義 と構 成
19.1.2 電界 解 析 のCAE 19.2 最 適 設 計 法 の 基 本 19.2.1 最 適 設 計
239 241
19.1 電 界 計 算 に お け るCAE,CAD 19.1.1 CAE,CADの
237
243 244 244 245 246 246
19.2.2 最 適 条 件
246
19.2.3 電 極(導 体)形 状 の最 適 化
247
19.2.4 絶 縁 物(固 体 誘 電体)形 状 の最 適 化
249
19.3 解 析 的 方 法 に よ る 最 適 形 状 設 計
251
19.4 数 値 的 方 法 に よ る 最 適 形 状 設 計
252
19.4.1 計 算 の プ ロセ ス
252
19.4.2 電 極 形 状 の修 正 方法
253
19.4.3 絶 縁 物 形状 の 修正 方 法
254
19.5 計 算 例 と 今 後 の 課 題
255
19.5.1 電 界 最 適計 算 の経 緯
255
19.5.2 計 算 例
256
19.5.3 今 後 の 課題
257
付録
付 録1 仮 想 電 荷 の 電 位,電
界 の式
259
付 録2 最 小 二 乗 法 を用 い る 電 荷 重 畳 法 付 録3 第2種
完 全 だ 円 積 分E(k)の
算術 幾何 平均 法 に よる計算
付 録4 面積 座 標 付 録5
(9・7)式 のkの
259
261 262 262
導出
付 録6 電 荷 密 度λkcoskφ
に よる電 界
264 266
演習 問題 解 答
267
参考 文 献
273
索引
280
第Ⅰ 部 各種 の数値 電界計算法
第1章 電界計算 の方法
数値 電 界 計 算 法 を説 明 す る 前 に,二,三
触 れ て お い た ほ うが よ い と思 わ れ る点
が あ る 。 まず,数 値 電 界 計 算 法 以 外 の(古 典 的 な)計 算 法 や,電 流 界 との 相 似 性 を利 用 して 電 界 を 求 め る ア ナ ロ グ法 で あ る。 また,電 界 と密 接 に 関係 し,類 似 の 式 の多 い磁 界 の 計 算 法 と比 べ て,電 界 計 算 は ど う違 うか と い う点 で あ る 。 本 章 で は こ れ らの 点 を簡 単 に 説 明 す る。
1.1
解 析 的 方 法
電 磁 気 学 の教 科 書 の 多 くは,最 初 が 電界,続
い て 電 流 界,次
界 と磁 界 の 両 方 が 関 係 す る 電 磁 誘 導 に移 り,最 後 に電 磁 波,電
に磁 界,さ
らに電
波 の順 に説 明 して
い る 。 教 科 書 の 前 半 部 分 に説 明 され る静 電 界 の 計 算 法 は,総 括 す れ ば ラ プ ラ ス の 式 を 適 当 な 境 界 条 件 の も とで解 くこ と で あ る が,簡 単 に解 け る の は一 次 元,す わ ち 変 数 が1個
な
の場 合 に 限 られ る。 そ の た め,計 算 機 の な い 昔 か ら影 像 電 荷 法 ,
等 角 写 像 法,座 標 変 換 法,な
ど さ ま ざ ま な方 法 が工 夫 され て きた 。 こ れ ら を ま と
め て 解 析 的 方 法 と 呼 ぶ こ と にす る が,そ
の 特 徴 は電 位 や 電 界 の 分 布 が 直 接(陽
に)式 で与 え られ る こ とで あ る。 な お解 析 的 方 法 の う ち 影 像 電 荷 法 は 数 値 的 方 法 に も し ば しば利 用 され て重 要 なの で 次節 に 説 明 す る。 (1) 等 角 写像 法 等 角 写 像 法 の原 理 は,平 等 電 界 や 円筒 電 界 な ど既 知 の(簡
単 な)電 界 分 布 の等
電位 面 と電 気 力 線 と を適 当 な 複 素 関数 で 写 像 す る と,写 像 され た 配 置 も等 電 位 面 と電 気 力 線 の 関 係 を保 つ とい う こ と で あ る。 こ の 関 数 は初 等 関 数 は もち ろ ん,だ 円 関 数 の よ うな 高 等 関数 で も よい 。 また 何 回 で も繰 り返 し写像 が 行 え る の で,か な り複 雑 な形 状 の 電 極 につ い て も電 界 が 求 め られ る こ とが あ る 。 しか し等 角 写 像 法 は複 素 平 面 上 の 複 素 関 数 を使 用 す る こ とか ら分 か る よ う に, 二 次 元 配 置 に しか 適 用 で きな い 。 一 般 三 次 元 は もち ろ ん,回 転 対 称 配 置 に つ い て も,等 角 写 像 す る よ う な 関 数 は 見 出 さ れ て い な い 。 た だ し,回 転 対 称 の 配 置 を二 次元 電 界 で 近 似 す る こ と は しば し ば行 わ れ て きた。 た と え ば,長 年 放 電 や 高 電 圧 の 分 野 で 平 等 電 界(一 様 電 界)用
電 極 と して 用 い られ て きた ロ ゴ ウ ス キ ー 電 極
は,等 角 写 像 法 で 与 え ら れ た形 状 で あ る。 無 限 に広 い 二 次 元 形 状 は 実 際 に は 使 用 で きな い の で,断
面 を適 当 な半 径 で 回 転 した 形 状 が使 用 され たが,回
転対称 にす
る と二 次 元 の 場 合 よ り電 界 の 一 様 性 が 悪 くな るの で注 意 が 必 要 で あ る。 ま た,等 角 写 像 法 は 与 え られ た 電極 形 状 に 対 して,そ れ を平 等 電 界 や 円筒 電 界 に写 像 す る 関 数 を見 出 す こ とが で きな い。 こ れ が 一 般 的 に 可 能 な の は 多 角 形 の 電 極 だ け で あ る(「Schwartz‐Christoffel変
換 」 と呼 ば れ る 方 法)。 した が っ て,等
角 写 像 法 の 利 用 は,す で に先 人 の 行 っ た計 算 例 か ら役 に 立 ちそ う な もの を探 して くる こ とに な るが,一 般 的 な複 雑 な 形 状 に は も ち ろ ん使 え な い 。 (2) 変 数 分 離 法(座
標 変 換 法)
与 え られ た 電 極 形 状 が座 標 変 換 に よ って1変 この 方 法 が 有 効 で あ る。 極 座 標(球 座 標),円
数 だ け で表 され る場 合,し
筒 座 標 は と くに 有 用 で,ほ
ば しば と ん どの
電磁 気 学 の教 科 書 に ラ プ ラス の 式 とベ ク トル演 算 の 式 が 記 載 され て い る 。 そ もそ も ラ プ ラス の式 自体 が 最 初 は最 も簡 単 な(x,y,z)の 標 で 与 え られ た の で あ る。 他 に,だ 円(体)座 標,放 の座 標 系 が あ り,回 転 だ 円体,回
デ カ ル ト座 標 で は な く極 座 物 面 座 標,円
環 座 標 な ど各 種
転 放 物 面,回 転 双 曲 面 な どの 回 転 対 称 な 電 極 の
電界 を表 す こ とが で きる。 実 際 の 電 極 形 状 を こ の よ う な座 標 系 に 合 う形 状 で 近 似 して,電 界 分 布 や 静 電 容 量 あ る い はそ の パ ラ メ ー タ依 存 性 を調 べ る た め に 用 い る こ と も多 い。 双 球 面 座 標 を 用 い る と,球 対 球 あ る い は 球 対 平 面 配 置 の 電 界 を 求 め る こ とが で
きる 。 こ の配 置 の 電 界 を 影 像 電 荷 法 で 求 め る と きは 点 電 荷 を 無 限 個 使 用 す る の に 対 して,双 球 面座 標 の式 は ル ジ ャ ン ドル 関 数 の 無 限級 数 に な る 。 しか し,実 際 の 球 電 極 に はか な らず 支 え る 導体(支
持 棒)が
存 在 す るの で,球 だ け の 配 置 は 近似
で あ る 。 表 面 電 界 が あ ま り高 くな らな い よ う に支 持 棒 を あ る 程 度 太 く しな け れ ば い け な い が,こ
の よ うな支 持 棒 の 存 在 が今 度 は球 表 面 の 電 界 に 影 響 す る。 支 持 棒
を含 め る と,電 界 は数 値 的 方 法 で ない と計 算 で きな い 。 (3) 解 析 的 方 法 の 意 味 電 磁 気 学 の教 科 書 に説 明 され て い る よ うに,古 典 的 な 電 界 計算 に は 多 彩 な 数学 的 手 法 が 応 用 され て きた。 しか し これ らの 方 法 が 使 え るの は,ご 条 件(媒
く簡 単 な配 置 と
質 の 一様 な特 性 な ど)の 場 合 か,特 殊 な ケ ー ス に 限 られ る 。 現 実 の 複 雑
な導 体 と誘 電 体(絶
縁 物)あ
る い は 抵 抗 体 な どが 存 在 す る配 置 の 電界 は 数 値 的方
法 で な け れ ば 求 ま ら な い。 そ れ ど こ ろ か現 在 で は た とえ 解 析 解 が あ っ て も,複 雑 な 関 数 の 無 限 級 数 で 表 さ れ る よ う な場 合 は,む
しろ 数値 計 算 に よっ て は るか に容
易 に精 密 な解 が得 られ る。 しか し,解 析 的 方 法 はパ ラ メ ー タの 影 響 を理 解 す る た め に役 立 つ ほ か,い る厳 密 解 と して,同
わゆ
じ配 置 を 数 値 的 方 法 で 計 算 して精 度 や 近 似 の程 度 を評 価 す る
の に用 い られ る 。 ま た電 荷 重 畳 法 の 「仮 想 電荷 」 の 電位 や 電 界 の 式 な ど,い ろ い ろ な 数値 的 方 法 の 手 法 に活 か され て い る。 中 で も重 要 な の は 次節 に述 べ る影 像 電 荷 法 で あ る。 影 像 電 荷 に よ っ て 平 面,球,円
筒 形 状 の導 体 を表 す の は い ろ い ろ な
数 値 電界 計 算 で 頻 繁 に使 用 さ れ る テ ク ニ ッ クで あ る。
1.2 影 像 電荷 法 影 像 法 や 鏡 像 法 とい う こ と もあ る。 電 極 表 面 に分 布 して 存 在 す る電 荷(あ
るい
は複 合 誘 電 体 の場 合 の 分 極 電 荷)を
内 部 の 孤 立 した 電 荷 や 電 荷 群 の作 用 で 代 用 す
る方 法 で あ る。 この 電 荷 を影 像(電
荷),鏡
合 少 数 個 の 電 荷 が用 い られ るが,二
つ の 境 界 条 件 を繰 り返 し満 足 させ る た め に無
限個 の影 像 電 荷 を 使 用 す る こ と もあ る 。
像,イ
メ ー ジ な ど と呼 ぶ 。 多 くの 場
電 磁 気 学 の教 科 書 に 出 て くる影 像 電 荷 の適 用 は 簡 単 な配 置 に 限 られ,一 般 的 な 問 題 を解 くこ と はで き な い 。 内 部 に 多 数 個 の電 荷(仮
想 電 荷 と呼 ぶ)を
配置 す る
電 荷 重 畳 法 は 原 理 的 に影 像 電 荷 法 と似 て い る が,も っ と一 般 的 な 配 置 を計 算 で き る。 しか し,数 値 電 界 計 算 法 の な か で も電 荷 重 畳 法 や 表 面 電 荷 法 の よ う に電 荷 を 未 知 数 とす る方 法 で は,大 地(無
限接 地 平 面)や
球 導 体 の 存 在 を 影 像 電荷 で 与 え
る(表 す)の
が 普 通 で,こ の と き影 像 電 荷 法 を使 用 す る こ と に な る。 これ につ い
て は,2.3節
で説 明 す る。
1.3 ア ナ ロ グ法(フ
ィ ー ル ドマ ッ ピ ン グ)
アナ ロ グ法 は 静 電 界 と電 流 界 との相 似 性 をベ ー ス に して,電 流 界 の 電 位 測 定 か ら電 界 を求 め る 方 法 で あ る 。 す な わ ち,静 電 界 で は電 位 φの 式 は,2.1節
で説 明
す る よ う に, (1・1)
で あ る(ε は 誘 電 率)。 一 方 オ ー ム の法 則 が 成 立 す る場 合,直 流 定 常 電 流 界 の 電 位 は この 式 の 誘 電 率 を導 電 率 で 置 き換 え た 式 に な る。 そ こ で 導 電 紙(カ 紙)や 電 解 液 の 直流 電 流 界 の 電 位 を測 定 す れ ば,同
ーボ ン
じ配 置 で 対 応 す る誘 電 率 の 静
電 界 の 電 位 分 布 に な る。 デ カ ル ト座 標(x,y)の 二 次 元 場 で は,導 電 界 以 外 の 空 間 は 導 電 率 が0で
あ る ため,こ
の 空 間 に存 在 す る プ ロ ー ブ は 電 界 を 乱 さ な い 。 こ れ
が 静 電 界 を直 接 プ ロー ブ で測 定 す る方 法 と比 べ た ア ナ ロ グ法 の 利 点 で あ る 。 多 く の 場 合 媒 質 の誘 電 率 は一 定 で あ るが,異
な る媒 質 で は 導 電 紙 の 導 電 率 か 電 解 液 の
深 さ を誘 電 率 に比 例 させ て変 え る。 一 方(r,z)の
回 転 対 称 場 で は,静 電 界 の(1・1)式 は (1・2)
な の で,導 電 率 あ る い は電 解 液 の 深 さ を中 心 軸 か らの 距 離rと 誘 電 率 に比 例 させ て 変 え る。 この よ う な ア ナ ロ グ法 は,数 値 電 界 計 算 法 が 発 達 す る前 に は 電 力 機 器 の 絶 縁 設
計 な ど に盛 ん に利 用 され た。 しか し,電 界 を電 位 分 布 か ら求 め る の で 高 い精 度 が 得 られ な い と い う弱 点 が あ る。 さ ら に,簡 便 な導 電 紙 法 は 本 質 的 に(x,y)の 次 元 配 置 に しか 適 用 で きず,回
転 対 称 配 置 は電 解 液 槽 法 が 使 用 され るが,精
二 度を
上 げ る た め に は 大 き な装 置 が 必 要 に な っ て 多 大 な手 間 を要 す る。 現 在 は 数 値 的 方 法 に よ っ て ア ナ ロ グ法 よ り もは るか に 簡 単 に,ま た 複 雑 な一 般 三 次 元 配 置 まで 電 界 が 計 算 で きる よ う に な り,ア ナ ロ グ 法 は 使 用 さ れ な くな っ た 。
1.4 磁 界 計算 法 との 関係 磁 界 問 題 は電 界 問 題 と と も に 電 磁 気 学 を構 成 す る 二 つ の大 き な テ ー マ で あ る。 両 者 が 共 存 す る 電 磁 波 あ る い は 電 波 の 分 野 は別 と して も,電 界 と磁 界 に は多 くの 共 通 す る 関係 式 が あ る。 ま た磁 界 を利 用 す る機 器 が 多 数 存 在 して磁 界 計 算 の必 要 性 は 電 界 計 算 に 劣 ら な い か そ れ 以 上 とい え る。 低 周 波 領 域 の 電 界 と磁 界 の 計 算 を比 べ る と,多 で あ るが,電
くの 場 合 磁 界 計 算 の ほ うが 複 雑
界 計 算 は よ り高 い 精 度 が 必 要 な こ とが 基 本 的 な相 違 点 で あ る。 磁 界
計 算 の複 雑 さは,電 界 で は 未 知 関 数 が ス カ ラ ポ テ ン シ ャル で あ る の に対 し,磁 界 は多 くの場 合 ベ ク トルポ テ ン シ ャ ルで あ る こ と と,鉄 の よ う な磁 束 密 度 と磁 界 の 関 係 が 非 線 形 な う え に ヒ ス テ リ シ ス を有 す る材 料 が 重 要 で あ る こ とに よ る。 しか し磁 界 で は 平 均 的 な値 の必 要 な場 合 が 多 い の に対 し,電 界 は放 電 や 絶縁 の よ う に 最 大 値 が 支 配 的 な現 象 の た め に 高 い 計 算 精 度 が 要 求 され る。 そ の た め に,電 荷 重 畳 法 の よ うな 電 界 計 算 だ け に 用 い られ る 精 度 の 高 い 方 法 が 発 展 して きた 。 数 値 計 算 方 法 は も ち ろ ん 電 界,磁 界 に 共 通 す る もの もあ り,ま た磁 界 計 算 に つ い て はす で に 多 くの 数 値 計 算 の 解 説 書 が 出 版 さ れ て い る。 しか し磁 界 特 有 の 留 意 事 項 も あ り,精 度 を重 視 す る 電 界 計 算 とは 相 違 点 も多 い 。 そ の た め 本 書 で は 電 界 計 算 の ま と まっ た 解 説 とす る た め に磁 界計 算 に は基 本 的 に 触 れ な い こ と に した 。
第1章
1.フ
演習 問題
ィー ル ドマ ッ ピ ン グ は,静 電 界 を 直 流 電 流 の 場(電
る方 法 で あ る が,静
流 界)の
測 定 か ら求 め
電 界 の 場 に 直 接 プ ロー ブ を持 ち 込 ん で も簡 単 に は電 界 が 求
め られ な い 理 由 を説 明 し な さ い。 2.電
界 計 算(低
周 波 の 場 合)を 磁 界 計 算 と比 べ た と き の特 徴 を述 べ な さ い。
第2章 電 界計算 の基礎
電 界 を計 算 す る に は,ま ず そ の も とに な る 方 程 式 や 計 算 条件 を知 ら な け れ ば い け な い 。 電 界 と磁 界 の振 舞 い は す べ て マ ク ス ウ ェル の 式 で 表 され る が,本 章 で は まず マ ク ス ウェ ル の 式 か ら静 電 界 の 式 を導 き,そ れ に伴 っ て い ろ い ろ な 条 件(場 の特 性)を
説 明 す る。 さ ら に計 算 に 必 要 な,あ る い は 計 算 で用 い られ る2種 類 の
境 界 条 件 を 説 明 す る。 ま た 本 書 で 主 に 取 り扱 う,静 的 な場 で あ る 静 電 界 の 適 用 範 囲,す
な わ ち作 用 源(電
源)が
時 間 と と も に 変化 す る と き の 適 用 条 件 を 述 べ る。
最 後 に数 値 的 な電 界 計 算 法 の 大 まか な 分類 を説 明す る が,計 算 法 の よ り詳細 な比 較 は 第7章 で 述 べ る 。
2.1
ラ プ ラ ス の 式
電 磁 界 の状 態 はす べ て マ ク ス ウ ェ ル の 式 で与 え られ るが,そ
の様相 は高周波 と
低 周 波 で相 当 に相 違 す る。 電 界 と磁 界 が 一 定 の比 率 で 共 存 しつ つ 空 間 を伝 播 す る い わ ゆ る電 磁 波 あ るい は電 波 の 特 性 は ,低 周 波 で は ほ とん ど現 れ ず,電 界 と磁 界 を分 離 して扱 っ て よい 。 電 磁 界 の 基 本 式,い な の は,電 界Eと
わ ゆ る マ クス ウ ェ ル の 式 は4個 あ る が,静
電 束 密 度Dに
関 す る次 の2式
電界 計 算 に 必 要
で あ る。 (2・1)
(2・2)
こ れ ら の 式 中 の 変 数 は 自明 で あ る が,Bは る 。 磁 界 が 存 在 し な い 場 合,あ (2・1)式 の右 辺 が0で
磁 束 密 度,qは
空 間の電荷 密 度で あ
るい は存在 して も時 間的 に変化 しない場合 には
あ る。 す な わ ち, (2・3)
とな る が,回 転 が0の ベ ク トル は ス カ ラポ テ ンシ ャル を有 す る(ス カ ラポ テ ン シ ャ ル で 表 さ れ る)と
い うベ ク トル界 の 法 則 か ら, (2・4)
と な る。 こ の ス カ ラポ テ ン シ ャ ル φが 電 界 計 算 に お け る 電 位 で あ る。(2・2)式 と(2・4)式 を 結 び付 け る に は,さ 必 要 で あ る。 ほ とん どの場 合,両
らに構 成 方 程 式 と呼 ば れ るEとDの
関係式 が
者 は 誘 電 率 εを 一 定 と した次 の比 例 関係 で あ る。 (2・5)
これ ら に よ って,電
位 を与 え る式 は 次 の 基 本 式 に な る。 (2・6)
さ ら に,空
間 電荷 が 存 在 せ ず(電 荷 密 度q=0),誘
電 率 εが 一 定 で あ れ ば 次 の
ラプ ラス の式 に な る。 (2・7)
この ベ ク トル 演 算 の 式 を 具体 的 に基 本 的 な 座 標 系 で の 式 で与 え る と, (x,y)の
(x,y,z)の
二 次 元 デ カ ル ト座 標 ;
三 次 元 デ カ ル ト座 標 ;
(r,z)の 円 筒 座 標(回 転 対 称); ラ プ ラ ス の 式 は 多 くの 静 電 界 問 題 の 基 本 式 で あ るが,多
(2・8)
(2・9)
(2.10) 種多様 な配置の電界 が
す べ て こ の 簡 単 な 式 で 表 され る の は驚 くべ きこ とで あ る 。 ま た こ の簡 単 な式 を解 くの に 四 苦八 苦 す る の が 電 界 計 算 で あ る。 さ らに,熱 伝 導 な ど の物 理 現 象 で も同 じラ プ ラ ス の 式 が 現 れ る 。
2.2
境 界 条 件
静 電 界 計 算 の もっ と も基 本 的 な問 題 は,電 極(導
体)に
定 ま っ た(既 知 の)電
圧 が 印加 され た と き,電 極 内 部 以 外 の 空 間 の 電界 を求 め る こ と で あ る 。 電 極 表 面 を 「境 界 」,電 極 以 外 の 空 間 を 「領 域 」 と呼 ぶ こ とに す る。 と りあ え ず,2種 の 誘 電 体 の境 界(界
類
面)は 別 とす る 。 問 題 は領 域 中 で ラ プ ラス の式 (2・7)
を満 足 し,境 界S上
で 与 え られ た値(電
極 電 圧)を
と る,す
なわ ち (2・11)
と な る よ うな 関 数 φ を 求 め る 境 界 値 問 題 で あ る 。 電 極 が 複 数 個 あ る と き(接 地 状 態 の 大 地 を含 む)は,Vは
もち ろ ん 対 応 して い くつ か の値 を と る。
誘 電 体 界 面 を 考 え な い と き,境 界 条 件 に は 次 の2種 類 が あ る。 (a) 境 界 上 で φ が 一 定(デ
ィ リク レ境 界 条 件)
た と え ば,i番
目の 電 極
(表 面)で (2・12)
(b) 境 界 上 で φの 法 線 方 向 微 係 数 ∂φ/∂n,す な わ ち法 線 方 向 電 界Enが (ノイ マ ン境 界 条 件)
一定
多 くの 場 合, (2・13)
が 用 い られ る 。 普 通 の 配 置 で は境 界 条 件 は(a)だ
け が 現 れ,(b)は
計 算 す る 領 域 を な るべ く狭
くす る た め に人 工 的 に設 定 す る境 界 条 件 と考 え て も よ い 。 た とえ ば 図2・1(a)の よ う に2個
の 同 じ電 極 が 上 下 対 称 に 配 置 さ れ て い て,そ
Vの 場 合 は,両 者 の 中 間 の 水 平 面 は φ=0の 方,(b)の
間 のx=0(y軸
も 回転 対 称 の 配 置 な らr=0の 上)でEn=0の
っ た く同 じ(対 称)な (a),(b)の
デ ィ リ ク レ境 界 条 件 に な る。 一
よ う に両 電 極 が 同 じ電 位 な らEn=0の
の(a),(b)と
れ ぞ れ の 電 位 がVと-
境 界 条 件 に な る。 ま た 図2・1
軸 上(z軸
上),二
次 元 の 配 置 な ら中
境 界 条 件 と な る。 要 す る に 左 右 の 電 界 分 布 が ま
ら,軸 上 の 電 界 は軸 と直 角 な 方 向 の成 分 を持 た な い 。 結 局
配 置 と も,回 転 対 称 で は も ち ろ ん,二
次 元 で も左 右 対 称 で あ れ ば,
図2.1 上 下 対 称 な配 置
全体 の1/4の
図2.2 無 限 遠 を含 む 配置 の 人 工境 界
領 域 だ け を対 象 とす れ ば よい 。
さ ら に,大 気 中 の 放 電 ギ ャ ッ プ な どは 通 常 無 限 遠 まで 広 が っ た 領 域 が 対 象 に な る 。 この よ うな 配 置 の 電 界 を 計 算 す る に は,領 域 を 分 割 す る数 値 計 算 法 で は,遠 方領 域 の 分 割 を粗 くす る と して も ど こ か で 領 域 を 限 らな け れ ば い け な い 。 す な わ ち ど こか に 人工 的 な 境 界 を設 定 す る必 要 が あ る。 こ の と き 「人 工 境 界 」(あ る い は 「仮 想 境 界 」 と もい う)と ら適 当 に離 れ た 個 所 に,φ=0あ
して,中 心 領 域 か
る い は ∂φ/∂n=0の 境 界 を設 け る 。 図2・2は
半
球 棒 対 接 地 平 面 の 配 置 に お い て,こ の よ うな 人 工 境 界 で 領域 を限 っ た例 で あ る 。 な お,無 限 遠 の境 界 条 件 の 設 定 に つ い て は,3.5.3項
2.3
で も説 明 す る。
境 界 条 件 と影 像 電 荷
電 荷 重 畳 法 や 表 面 電 荷 法 の よ う に電 荷 を未 知 数 とす る方 法 で は,大 地(無 地 平 面)の 図2・3(a)に
限接
存 在 を影 像 電 荷 で 与 え る の が 普 通 で あ る。 大 地 に 対 す る 影 像 電 荷 は, 示 す よ う に,二 次 元 場 で も三 次 元 場 で も大 地 面 か ら下 の 同 じ位 置
(影像 の 位 置)に
同 じ種 類 で 等 量 反対 符 号 の電 荷 を置 け ば よい 。 一 方 大 地 で な く,
∂φ/∂n=0の 平 面 が あ る と きは,同
じ(影 像 の)位 置 に等 量 同 符 号 の 電 荷 を置 く。
こ れ に よ っ て対 称 の 平 面 が 与 え られ る。 また接 地 さ れ た 球 や 円 筒 の 内 部 の 電 界 は,た
と え ば電 荷 重 畳 法 で は そ れ ぞ れ の
外 部 に仮 想 電 荷 を 配 置 して 表 現 して も よ いが,影 量 が 自動 的 に 与 え られ る の で,(未
像 電 荷 を用 い る と電 荷 の 位 置 と
知 の)電 荷 数 が 半 分 で 済 む し,外 部 電 荷 の 位
置 を 選 択 し な くて よ い。 影 像 電 荷 の 位 置 は,図2・3(b)の D(=R2/d)の
よ う に 中心 か ら
距 離 で,電 荷 量Q'は,
球 の 場 合:Q'=−(D/R)Q 円筒 の 場 合(単
位 長 さ 当 た りの 電 荷 密 度):Q'=−Q
である。 しか し境 界 面 が2個 あ っ て繰 り返 して 置 くた め に 影 像 電 荷 が 無 限 個 必 要 な と き は,も
はや 影 像 電 荷 に頼 ら な い ほ うが よい こ とが 多 い 。 た と え ば 図2・4の
を電 荷 重 畳 法 で 計 算 す る場 合,影 地)平
配置
像 電 荷 は下 側 平 面 に対 して の み与 え,上 側(接
面 に つ い て は 通 常 の 仮 想 電 荷 で 与 え る ほ うが プ ロ グ ラ ム の変 更 も不 必 要 で
(a)大
地
(b)球
また は 円筒
図2.3 影 像 電荷 の例
図2.4 2枚 の接 地平 板 間 の 高電 位 球 (電界重 畳 法 に よ る計 算)
容 易 に計 算 で き る。 つ ま り空 間 の 電 界 は球 内 と上側 平 面 内部 に 配 置 した 仮 想 電 荷 (と そ れ ぞ れ の 下側 平 面 に対 す る影 像 電荷)に
2.4
よ って 与 え られ る。
時 間 的 変 化 が あ る場 合
与 え られ た 境 界 条 件,具
体 的 に は 決 ま っ た電 圧 が 印加 され た 電 極 系 に対 し て電
界 分 布 が 求 ま った と して,こ の 電 圧 が 時 間 と と もに 変化 す る と きの 電 界 分 布 が ど う な るか とい う こ とで あ る 。 電 界 が 時 間 と と も に変 化 し な い状 態 は一 般 に静 電 界 と呼 ば れ る 。 本 書 で述 べ る 電 界 計 算 の ほ とん ど は静 電 界 計 算 で あ るか ら,直 流 の電 界 に しか 適 用 で きな い よ う に思 わ れ る が そ うで は な い 。 実 際 に は 印 加 電 圧 が 商 用 周 波 数 の 交 流 で も,も っ と変 化 の 早 い イ ンパ ル ス で も,多
くの場 合,各
所 の 電 界 は 単 に 印加 電 圧 の 瞬 時 値
に 「比 例 して」 変 化 す る だ け で 電 界 分 布 は 同 じ なの で あ る。 す な わ ち 誘 電 体 が 導 電性 を有 しな い(完 全 な絶 縁 物 の)場 合,印 加 電 圧 の時 間 的 変 化 が 電 磁 波 の 進 行 時 間 に匹 敵(対 応)す
る ほ ど速 くな い 限 り,電 界 の 状 態 は 定 常 的 な (直 流 の ) 印
加 電 圧 に お け る 分 布 の ま まで,単
に 大 き さ が 比 例 的 に 変 わ る だ け で あ る。 しか
し,次 の よ う な場 合 は 注 意 しな け れ ば い け な い 。 (1) 時 間 的 変 化 が 異 な る複 数 の 印加 電 圧 が あ る 場 合 基 本 的 に は ど の よ う な 時 間 で も,そ れ ぞ れ の 印 加 電 圧 の 瞬 時 値 が 印 加 され た (直流 の)条 件 で 計 算 した 電 界 分 布 で よ い。 しか し実 用 的 に重 要 な ケ ー ス と して 三相 交 流 電 圧 が あ る。 この 場 合 も瞬 時 瞬時 の電 界 分 布 は各(三 瞬 時値 に 対 してそ れ ぞ れ の 電 界 を 加 算 して 求 め られ るが,複
相 の)印 加 電 圧 の
素数表示 に よって交
流 定 常 状 態 の 電 界 分 布 を 一 度 に 表 す こ とが で きる 。 これ に つ い て は14.4節
で説
明す る 。 (2) 誘 電 体 が導 電 性 を 有 す る 場 合 こ の場 合 は比 較 的 ゆ っ く り した 時 間 的 変 化 や,低
い 周 波 数 の 印 加 電 圧 で も 問題
で あ る。 導 電 性 の た め に 電 流 が 流 れ るが こ の 移 動 した 真 電 荷 が 電 界 に 影 響 す る。 真 電 荷 の 移 動 に時 間 を要 す る た め に 一 般 に印 加 電 圧 に比 例 した電 界 分 布 に な らな
い。 こ れ は抵 抗Rと
コ ンデ ンサCか
らな る並 列 回 路 が,交 流 電 圧 に対 し て周 波
数 に依 存 し た イ ン ピー ダ ン ス に な る こ と と同 じで あ る 。 この と き直 列 に存 在 す る 2種 類 の 媒 質(た
と え ば導 電 性 の あ る 固体 誘 電 体 と空 気)の 特 性 が 異 な る と,両
媒 質 の 兼 ね 合 い で分 担 電 圧 や 電 界 が 変 化 す る 。 つ ま り,コ ンデ ンサ だ け か らな る イ ン ピー ダ ンス の場 合 と異 な っ て,固 体 誘 電 体 に か か る 電圧 は 印加 電圧 の 瞬 時 値 に比 例 しな い 。 こ の場 合 の 計 算 は 第16章
に述 べ る 。
(3) 空 間 電 荷 の あ る 場 合 空 間 電荷 が 存 在 して も瞬 時 の電 界 は 空 間電 荷 を含 め て計 算 で き る。 た だ し,空 間 電 荷 は通 常 電 界 の 作 用 で 移 動 す る の で,電 界 の 時 間 的変 化 の 計 算 に は 移 動 を 考 慮 す る こ とが 必 要 に な る 。 大 気 中 の イ オ ン流 の場 合 に は,印 加 電 圧 の変 化 が イ オ ンの 電 極 間 移 動 時 間 よ りず っ と ゆ る や か で な い と定 常 状 態 の計 算 は で きな い 。 ま た,大 気 中 イ オ ン流 を表 す式 が 非 線 形 で あ る た め に,印 加 電 圧 に 比 例 した 電 界 に も な らな い 。 これ ら の空 間 電 荷 や イ オ ン流 が 存 在 す る と きの電 界 計 算 は そ れ ぞ れ 第17章,18章
で 説 明 す る。
(4) 時 間 的 変 化 が 速 い 場 合 非 常 に速 い過 渡 現 象 や 周 波 数 の 非 常 に 高 い 交 流 の場 合 に は,静 電 界 と い う取 扱 い は で きな い。 前 者 は い わ ゆ る進 行 波 現 象 と して,波 源 か ら時 間 と と もに移 動 す る 電 界 とな り,各 所 の 電 界 は到 達 時 刻 に よっ て相 違 す る。 ま た後 者 は,波 源 の 遠 方 で は 電 界 と磁 界 が 一 定 の大 き さで 双 方 に 直 交 す る 方 向 に 空 間 を進 行 す る電 磁 波 あ る い は電 波 とな り,電 界 だ け の 独 立 した(あ
る い は磁 界 と分 離 した)場
では な
い。 本 書 は こ れ らの 電 界 計 算 に つ い て は述 べ ない 。
2.5
数 値 電 界 計 算 法 の 分 類
2.1節 に 述 べ た よ う に,電 界 計 算 の 基 本 は,適
当 な境 界 条 件 の も と で ラ プ ラ ス
の 式 を満 足 す る電 位 φ を求 め る こ とで あ る。 電 位,電
界 は(境 界 を 除 い て)場
所 と と もに 連 続 的 に変 化 す る のが 普 通 で あ る か ら,ど ん な狭 い 領 域 で も無 限 の 関 数 値 が あ る こ と に な る。 こ の よ う な 連 続 的 に 変 わ る量 を,「 離 散 化(飛
び飛 び の
値 を と る こ と),あ
るい は有 限化 」 して,計 算 機 で 求 め る の が 数 値 計 算 で あ る。
電 界 分 布 を有 限 の 個 数(の 電 位 あ る い は 電 界)で か,境 界 を 分 割 す る か の2通 法』※1にお い て,著
り し か な い 。1980年
表 す に は,領 域 を分 割 す る 発 行 の 旧 著 『数 値 電 界 計 算
者 らは い ろ い ろ な数 値 電 界 計 算 法 を まず 「領 域 分 割 法 」※2と
「境 界 分 割 法」 に大 別 す る こ と を提 案 して い る。 そ れ は 有 限化 す る量(変 象 とす る 場 の 方 程 式,電 界 の 求 め 方,精 度,な
数),対
どが,領 域 分 割 法 と境 界 分 割 法 と
で基 本 的 に相 違 す る か ら で あ る 。 こ れ まで も っ ぱ ら使 用 さ れ て きた 主 な数 値 電 界 計 算 法 は4種 類 あ り,す なわ ち 差 分 法,有
限 要 素 法,表
面 電 荷 法,電
荷 重 畳 法(代 用 電 荷 法 とい わ れ る こ と もあ
る)で あ る 。 領 域 分 割 法 は,領 域 を有 限 個 に分 割 し分 割 点 の 電位 を未 知 数 とす る 方 法 で,差 分 法 と有 限 要 素 法 が こ れ に 属 す る。 一 方,境 に存 在 す る電 荷(あ
る い は そ の作 用)を
界 分 割 法 は 境 界 と境 界 上
分 割 して 電 界 を 求 め る方 法 で,表 面 電荷
法 と電 荷 重 畳 法 が こ れ に属 す る。 た だ し,ど ち らの 方 法 で も,境 界,す
な わ ち電
極 表 面 の 電 位 あ る い は電 荷 分 布 が 定 ま る と領域 の 電 界 分 布 は 一 意 的 に定 ま っ て し ま う こ と,す な わ ち 「与 え られ た 境 界 条 件 と ラプ ラス の式 を満 足 す る 解 は た だ一 つ の 正 し い電 界 分 布 で あ る 」 とい う静 電 界 の一 意性 の 定 理 が も と に な っ て い る。 こ れ らの 計 算 法 の 相 互 比 較 は,各 方 法 を説 明 した 後 第7章
で 行 うが,計
算法の
大 分 類 と して 領 域 分 割 法 と境 界 分 割 法 を常 に認 識 して お い て い た だ きた い 。 な お,数 値 計 算 法 が これ らの4種 類 だ け か と い え ば 決 して そ うで は な い 。 た と え ば,モ
ンテ カ ル ロ 法 や 境 界 要 素 法,さ
ら に よ り高 周 波 の 電 磁 波(電
波)に
もっ
ぱ ら用 い られ る計 算 法 が あ る。 な か で も境 界 要 素 法 は 表 面 電 荷 法 と似 て い るが , よ り一 般 的 な(し
たが っ て よ り柔軟 性 の あ る)方 法 で あ る。 こ れ ら につ い て は 第
8章 で 解 説 す る 。
※1 河野 照 哉,宅 間董 共 著 『 数 値 電界 計 算 法』,コ ロ ナ社 ,昭 和55年 ※2 ご く最 近 に な って 「領域 分 割 法 」 とい う名称 が 異 な る意 味 で も使 用 され て い る。 こ の方 法 (domain decomposition method)は,解
析 対 象 が非 常 に 大 きい場 合 に,全 体 を い くつ か の小 領域
に分 割 して,各 小 領 域 の 問題 を別 々 に(並 列 処理 な どで)解 き,こ れ らを統 合 化 して 全体 の解 を 得 る とい う方法 であ る[2.1]。
第2章
1.雷
雲 の 下 で は 地 表 面 付 近 の 電 界 が30kV/mに
大 地 に 立 っ て い る 身長1.8mの る(ビ 2.簡
演習 問題
リ ッと くる)こ
人 が 水 道 の 蛇 口(接 地 状 態)に
標)を
対 象 に す る。 電 位 φが,
φ=ax2+by2+cxy+dx+ey+f(a,b,c,d,e,fは で あ る と,a=−bの
触 れ て も感 電 す
とは な い 。 そ の 理 由 を説 明 しな さい 。
単 の た め,二 次 元 配 置(x,y座
もな る こ とが あ る。 こ の と き,
定 数)
と き こ の 式 は ラ プ ラ ス の 式 を満 た す 。 した が っ て,二
元 配 置 の電 位 は す べ て この 式 で 表 され る。 こ の 主 張 は 正 しい か,正 を述 べ,正 3.半
4.前
し くな い か
し くな い と思 う場 合 は 理 由 を説 明 しな さい 。
径R1,R2(R1<R2)の
心)球
次
の 電圧 がVの
問 題 で,最
同 心 球 の 配 置 で,外 側 球 が 接 地 され て い て 内 側(中 と きの 電 位 と電界 の 式 を求 め な さい 。
大 電 界 と利 用 率(平 均 電 界/最 大 電 界)の 式 を求 め な さい 。 ま た
R1=1cm,R2=2cm,V=1kVの
と きの 最 大 電 界 と利 用 率 の 値 を 求 め な さい 。
第3章 差
差 分 法(finite difference method)は
分
法
電 界 計 算 に 限 らず 微 分 方 程 式 を 数 値 的 に
解 く基 本 的 な 方 法 で あ る。 英 語 のfinite difference(有 現 れ る無 限微 小 量dx,dy,dφ
限 差 分)と
は微 分 の 式 に
な どを 代 用 す る 有 限 の 差(差 分)Δx,Δy,Δ
ど を意 味 す る 。 差 が 有 限 の大 き さで あ れ ば,量
φな
を表 す 個 数 も有 限 に な り,そ の結
果 計 算 機 で扱 え るわ けで あ る 。 差 分 法 は 他 の 方 法 に比 べ て もっ と も古 くか ら用 い られ て お り,19世
紀 末の ボ
ル ツマ ンの 提 案 が そ の 最 初 と され て い る[3・1]。 電 界 計 算 に も他 の 数値 的 方 法 に先 が け て 適 用 さ れ た が,現 在 で もな お 複 雑 大 規 模 な配 置 の 電 界 計 算 に使 用 され て い る。 差 分 法 の計 算 テ クニ ック に は 数 多 くの バ リエ ー シ ョ ンが あ り,特 に 開発 初 期 に い ろ い ろ な検 討 や 提 案 が 行 わ れ た 。 しか し本 章 は,そ れ らの 詳 細 を紹 介 す るの で は な く,計 算 法 の 基 礎 と計 算 上 の 問 題 点 の解 説 を 中心 とす る。
3.1
計 算 法 の あ ら ま し
差 分 法 の基 本 は領 域 を格 子 で 分 割 し,ラ プ ラ ス の 式 を 差 分 の式 に 置 き換 え て, 格 子 点 の 電 位 を未 知 数 とす る方 程 式 を作 る こ と で あ る。 格 子 に よ る分 割 は通 常 各 座 標 軸 に 平 行 な線 上 で 行 う。 (1) 二 次 元 場 の 場 合 図3・1の
よ うな 二 次 元 座 標(x,y)で の 未 知 関 数 φ に対 して,
図3.1 差 分法 の 領域 分 割(二 次 元 場)
(3・1)
の よ う に,近
似 す る 。 φ0は 点(x0,y0)の
y4)の 電 位 で あ る 。 点(x0,y0)近 子 間 隔Δxが
電 位,φ2,φ4は
そ れ ぞ れ 点(x2,y0),(x0,
傍 の 差 分 に は 次 の よ うな 近 似 の 可 能 性 が あ る。 格
一 定 の 場 合,
(3・2)
しか し2階 の 微 分 に 現 れ る1階 微 分 につ い て は 中 間 の値 を取 る の が 妥 当 で あ る。 す な わ ち,
(3・3)
こ こ で,a,bは
そ れ ぞ れ φ0と φ2,φ3と
φ0の 中 間 の 点 のx座
標 で ある。同様 に
して,
(3・4)
図 の よ う に格 子 間 隔 が 一 定(Δx=Δy=h)で
あ れ ば 二 次 元 場 の ラ プ ラ ス の 式 か ら, (3・5)
と な る。 これ が 基 本 の 差 分 式 で あ る が,ど
の 点 も平 等 で あ れ ば(重
み がな けれ
ば)中 央 の点 の 電 位 φ0は 周 囲4点 の 電 位 の(単 純 な)平 均 に な る と期 待 で き る。 (2) 回転 対称 場 の 場 合 (r,z)座 標 の 回転 対 称 場 で は,ラ プ ラ ス の 式 は(2・10)式 で あ る が 次 の よ うにr の1階 微 分 を含 ん で い る。 (3・6)
そ の た め に,こ の1階 微 分 の項 を3.1節
に 述 べ た よ うな 次 の 差 分 式 で 近 似 す る。 (3・7)
差 分 式 は結 局, (3・8)
と な る。 この よ う に 回 転 対 称 場 は二 次 元 場 に比 べ て 微 小 量hの
か か っ た項 が 付
け加 わ る のが 特 徴 で,そ の た め計 算 に 当 た っ て 後 に述 べ る よ う な い くつ か の 余 計 な処 理 が 必 要 で あ る 。
3.2
テ イ ラ ー 級 数 式 か ら の 導 出
(x,y)座 標 の 二 次 元 場 に お い て 点(x0,y0)の 近 傍 の 点 の 電 位 φ を テ イ ラ ー 級 数 で表 す と,
(3・9)
こ こ で 添 字0は 図3・1の
座 標(x0,y0)に
お け る値 を意 味 す る 。
よ う に 領 域 を 間 隔hの
電 位 φ1,φ2,φ3,φ4を
等 間 隔 格 子 で 分 割 し て,0点
二 次 ま で の 項 で 表 す と,(3・9)式
か ら
の 周 り の4点
の
(3・10)
(3・11)
(3・12)
(3・13)
こ れ らの 式 を辺 々相 加 え る と, (3・14)
こ の式 は,二 次 元 場 の ラ プ ラ ス の 式 か ら,や は り(3・5)式 に な る 。 こ こで 注 意 す べ きこ とは,φ の 差 分 式 が テ イ ラ ー展 開 式 の一 次 の 項 で は な く二 次 まで 取 っ て い る こ とで,格
子 間 隔hが
小 さい と きは良い近 似で あ るこ とを意
味 して い る。
3.3 分 割 が 等 間隔 で ない と きの式 図3.2の
よ う な 回 転 対 称 場 で,近 接 格 子 点 と の 間 隔 が そ れ ぞ れh1∼h4の
図3.2 格 子 間隔 が異 な る場 合 (回転 対称 場)
とき
を例 に と る。 図3.1よ
り も 一 般 的 な 番 号 付 け と し,i番
て,上 下 左 右 の 格 子 点(そ
目の格 子点 を中心 と し
れ ぞ れi-m,i-1,i+1,i+m)の
電 位 を,(3・6)
式 の テ イ ラ ー展 開 式 で 表 して(3・7)式 を用 い る。 す る と 次 の よ う な φiと近 接 格 子 点 電 位 との 関 係 式 を 導 くこ とが で き る。 (3・15) こ こ で,
(3・16)
計 算 す べ き領 域 の 各 格 子 点 に順 に 番 号 を付 け,そ の 電 位 を近 接 格 子 点 の 電 位 で 表 す と,格 子 点 電 位φiを 未 知 数 と す る 連 立 一 次 方 程 式 が 作 ら れ る 。 係 数Pi,jは (3・16)式 の よ う に格 子 間 隔h1∼h4とi点 最 初 の 添 字 は 連 立 方 程 式 のi番 φjに関 す る係 数(j列
目(i行
のr座 標r0と
で 与 え ら れ る 定 数 で,
目)で あ る こ とを 示 し,二 つ 目 の 添 字 は
目)で あ る こ と を示 して い る。 回 転 対 称 場 で は な く(x,y)
座 標 の場 合 は 係 数 をr0で 除 した後r0を 無 限 大 に した 式 で あ る。
3.4 電位 の 方程 式 以 上 で 差分 法 に よ る電 界 計 算 の 準備 が で き た。 領 域 全 体 の格 子 点 に つ い て た と え ば 回 転 対 称 場 で は(3・8)式 あ る い は(3・15)式 を作 り,全 体 の 連 立 一 次 方 程 式 を境 界 条 件 を 用 い て 解 け ば よ い。 す な わ ち,
(3・17)
にお い て,境 界 条 件 と して電 極 表 面 と一 致 す る格 子 点 の 電 位 を電 極 電 圧Viと ば解 くべ き多 元 連 立 一 次 方 程 式(支
すれ
配 方 程 式)が 得 られ る。 こ の 連 立 方 程 式 の左
辺 の係 数 は 大 部 分 が0で,疎
行 列 あ る い は スパ ー ス マ トリ ック ス な ど と呼 ば れ る。
以 上 の よ う に差 分 法 の 原 理 は い た っ て 簡 単 で コー デ ィ ング も比 較 的 容 易 で あ る が,実
際 に 計 算 す る場 合 は,以
法,な
どに 種 々の 問 題 が あ る。
3.5
下 に 述 べ る よ う に境 界 の処 理 方 法,領 域 の 分 割 方
境 界 の 処 理 方 法
次 の よ うな 境 界 で 特 別 な 考 慮 が 必 要 で あ る 。 3.5.1
回 転 軸 上(図3・3)
回転 対 称 場 で は常 にr=0(z軸)が
一 つ の 境 界 に な る。 こ れ は 二 次 元 場 と相 違
す る 点 の 一 つ で あ る 。 す な わ ち 図3・1の (3・8)式 の 右 辺 でr0=0で
φ2に 相 当 す る 点 が 存 在 しな い,ま
た
あ る の で 差 分 式 を変 形 しな け れ ば な らな い 。 こ の た め
に はL'Hopitalの 定 理 に よっ て,(3・6)式
の 第2項
が,
(3・18)
と な る こ と を 用 い る と,回
転 軸 上 で は(3・6)式
は 次 式 に な る。
(3・19)
(3・10)式,(3・12)式,(3・13)式 き,一
の テ イ ラ ー 展 開 式 でx→r,y→yと
般 に 回 転 軸 上 で は 電 界 は 常 にz成
と,(3・19)式
分 だ け な の で(∂ φ/∂r)r=0=0で
を 用 い て 偏 微 分 の 項 を 消 去 す る と,等
した と あ る こと
間 隔 格 子 で は(3・8)式
の代
わ り に,
(3・20)
と な る 。 ま た 格 子 間 隔 の 異 な る 場 合 は(3・15)式,(3・16)式
の 代 わ りに次 式 を用
い な け れ ば な らな い 。 (3・21)
図3.3 回転 軸 上 の格 子 点
図3.4 〓
の 面 上 の格 子 点
(3・22)
3.5.2
対 称 面 な ど ∂φ/∂n(法 線 方 向 微 係 数)=0の
境 界(図3・4)
電 界 が 接 線 方 向 だ け の(電 気 力 線 が 表 面 に沿 っ て い る)境 界 で は そ れ ぞ れ 次 の 式 を用 い る 。 二 次 元 場 で は(3・5)式 の 代 わ りに, (3・23)
(3・24)
た だ し(3・23)式,(3・24)式
は,図3・4の
よ う に そ れ ぞ れ φ2,φ4を
領域 内 の
格 子 点 の電 位 とす る 。 回 転 対 称 場 で は(3・8)式
の 代 わ り に, (3・25)
(3・26)
3.5.3
無 限遠
孤 立 した 電 極 系 な ど,領 域 が 無 限 遠 ま で広 が っ て い る場 合 を 「開 空 間 」 と呼 ぶ こ と もあ る 。 この 場 合 に 人 工(仮 あ る こ とは2・2節
想)境 界 を 設 定 して,領 域 を 有 限 に す る必 要 の
で 触 れ た(図2・2)。
以 下 で は も う少 し詳 し く,次 の よ う な
方 法 を説 明 す る 。 (1) 電 界 値 が 必 要 な 中 心 領 域 か ら 適 当 に 離 れ た 個 所 に,φ=0あ ∂φ/∂n=0の
人 工 境 界 を 設 け る 方 法:2.2節
の 図2・2は
るいは
半球 棒 対平 面 の例 で あ
る。 こ の 方 法 の 難 点 は,第 一 に 電 位 関 数 φが 距 離 と と も に 減 少 す る 割 合 が 小 さ い(遅
い)こ
とで あ る 。 特 に 二 次 元 場 で は 距 離Lに
変 化 す る だ け な の で,φ=0と れ ば な ら な い。 第 二 に,こ
対 して(−1nL)の
関数 形で
見 なす に は相 当 に離 れ た 箇 所 まで 領 域 に 含 め な け の よ う な実 際 と相 違 す る仮 想 境 界 を設 け る こ とが 電 界
値 に どの 程 度 影 響 す る か は ほ とん ど検 討 され て い な い。 (2) 中 心 部 の 電 極 を 解 析 解 が 得 ら れ る もの に 置 き換 え,そ れ に よ っ て 生 ず る 電 位 を 遠 方 領 域 の 境 界 値 と す る 方 法:図2・2の 回転 双 曲 面 や 回 転 放 物 面 で 置 き換 え,得
配置で はた とえば半球 棒 を適 当な
られ た遠 方 領 域 の 電 位 を境 界 値 と し本 来
の電 極 配 置 を差 分 法 で解 く。 た だ この 方 法 は比 較 的 単 純 な配 置 に 限 られ,一 般 的 に使 用 で きる もの で は な い 。 (3) よ り厳 密 な 取 扱 い と して,boundary 方 法[3.2]:こ れ は 図3・5の の 電 位 φsがRの
relaxation
よ う に適 当 な 領 域Rを
methodと
名 付 け られ た
囲 む 仮 想 境 界Sを
と り,S上
内外 で ラ プ ラ ス の 式 を満 足 す る よ うに 定 め る もの で あ る。Sは
適 当 に小 さ く単 純 な 四 角 形 に 選 ぶ 。 まず 境 界 の 各 点 に 適 当 な 電 位 φs(i)を 与 え る。 領 域Rの
内 部 で は電 極 電 位V
と φsと か ら通 常 の 差 分 法 で 電 界 が 計 算 で き る の で,そ の 結 果 か らS上 向電 界(∂ φ/∂n)1を求 め る。 一 方Rの
の法線 方
外 部 で は,等 価 的 な 電 荷 密 度 σと外 部 電 位
φ,法 線 方 向電 界(∂ φ/∂n)2とに次 の 関係 が あ る。
図3.5
boundary
relaxation
method〔3.2〕
(3・27)
(3・28)
こ こ で,lは
電 位 点 と微 小 面 積dsと
の 距 離 で あ る 。 第5章
の考 え を用 い る と,(3・27)式,(3・28)式
に述べ る表 面電荷 法
か ら(∂φ/∂n)2を φSで 表 す こ とが で き
る。 す な わ ち境 界 の 各 点 で次 式 の よ う に書 け る。 (3・29)
を解 い て
(3・30)
P(i,j)は 既 知 の 量 な の で,φsが 与 え ら れ る と(∂φ/∂n)2も求 め られ る。 そ こ で 内 外 の 法 線 方 向 電 界 が 等 し くな る よ うに,k回
目の 境 界 上 電 位 φskを (3・31)
と して 収 束 す る まで 繰 り返 す 。 ω は 適 当 な 定 数 で あ る 。 こ の 方 法 は厳 密 な 代 わ りに もち ろ ん プ ロ グ ラム が 複 雑 に な る の で,む うが 良 い 場 合 が 多 い 。 あ る い は8・3節 な す こ と もで き よ う。
し ろす べ て を表 面 電 荷 法 で 行 うほ
に 述 べ る コ ン ビ ネ ー シ ョ ン法 の 一 種 と見
3.5.4
電 極 表面 上
電 極 表 面 が 曲 面 で あ る と,一 般 に正 方形 格 子,長 方 形格 子 で は 格 子 点 が電 極 面 に一 致 しな い。 一 致 しな い ま まで 最 も近 い格 子 点 で 表 面 形 状 を 凹 凸 に近 似 す る こ と もあ る が,電 界 値 を必 要 とす る よ う な電 極 表 面 で は相 当 に分 割 を密 に しな け れ ば な らな い 。 そ れ よ りは電 極 表 面 に格 子 点 を とっ て 不 等 間 隔 格 子 の 差 分 式 を使 用 す る ほ うが よい 。 す なわ ち 図3・2で
点 線 を電 極 表 面 とす る と,h1,h2を
適 当に
と っ て格 子 点 を電 極 表 面 に一 致 させ,差 分 式 と して(3・15)式,(3・16)式
を使 用
す る。 φi-m,φi-1は 電 極 電 圧(境
界 条 件)と
な る。 な お 滑 らか な 曲面 の境 界 を等
間隔 格 子 で 凹 凸 に(階 段 状 に)近 似 した と き の誤 差 に つ い て は,8.5節
で触 れ る。
簡 単 な 配 置 で は座 標 変 換 が 有 効 で あ る。 通 常 の電 界 計 算 で は 曲率 半 径 の小 さい 電極 に生 ず る 最 大 電 界 の 必 要 な こ とが 多 い が,こ
の 電極 と一 方 の 座 標 面 が一 致 す
る よ う な座 標 変換 を行 い,変 換 した座 標 で 差 分 式 を作 る と正 方 形格 子,長 方 形 格 子 で 分 割 して も,も
との座 標 で は格 子 点 が 電極 表 面 に 一 致 す る 。 電 位,電 界 値 の
低 い相 手 側 の(対)電
極 で は 一 致 して い な くて も求 め る 最 大 電 界 に た い して影 響
しな い 。 先 端 が 半 球 の 丸 棒 対 接 地 平 面 配 置 の 電 界 を双 球 面 座 標 に変 換 して計 算 し た例 で は,双 球 面 座 標 で 等 間 隔 に 分 割 す る と原 座 標 の格 子 点 が 最 大 電界 を生 じる 半 球 表 面 に 一 致 し,ま た 半 球 付 近 の 分 割 が 密 で 遠 方 ほ ど分 割 が 疎 に な る とい う効 果 が 自動 的 に 得 られ る[3.3]。 た だ し座 標 変 換 に よる 方 法 は,適 合 す る 座 標 系 の な い形 状 に は 適 用 で きな い こ と と,差 分 式 が 複 雑 に な る こ とが 欠 点 で あ る 。
3.6
3.6.1
計 算 上 の 問 題 点
領 域分 割
領 域 を どの く らい 細 か く分 割 す るか は,第 一 に対 象 とす る 電 界 の 必 要 精 度 に よ るが,副
次 的 に は 計 算 時 間,計 算 機 容 量 に依 存 す る 重 要 な 問 題 で あ る 。 まず,差
分 式 と し て 図3・1,図3.2の
よ うに φ0を周 囲 の も っ と も近 い4点
の 電 位 か ら与
え る 必 要 は な く,た と え ば周 囲8点
の 電 位 を使 用 して も よ い。 一 般 に 近 接 格 子 点
を 多 く取 る ほ ど同 じ分 割 で は 精 度 が よ くな る。 差 分 法 の 利 用 初 期 に は,こ の よ う な4点
よ り多 い格 子 点 を用 い る各 種 の 差 分 式 が 提 案 され て い る 。 しか し関 係 す る
格 子 点 が 多 くな る と差 分 式 が 複 雑 に な る う え に,以 下 に 述 べ る よ う な境 界 で の 処 理 も面 倒 に な る の で,正 方 形 また は長 方 形 の 分 割 で上 下左 右 の4点 の 電 位 か ら中 心 格 子 点 の 電 位 を与 え るの が 普 通 で あ る 。 格 子 間 隔 を領 域 の場 所 に よ っ て 変 え る こ と は しば しば 行 わ れ る。 む しろ領 域 が 無 限遠 に まで 広 が っ て い る配 置 な ど は,ほ
とん ど の場 合 格 子 間 隔 を 変 え る こ とが
必 要 で あ る。 そ れ は 通 常 の 電 界 計 算 で は,必 要 と す る 電 界 値 が 領 域 の ご く一 部 で,し か もそ の 付 近 の電 界 変 化 の 急 な こ とが 多 い の で,そ
の よ う な箇 所 の分 割 を
局 部 的 に 密 に し て計 算 の 精 度 を上 げ る と と もに,重 要 で な い 部 分 の分 割 を粗 く し て全 体 の格 子 点(つ
ま り方 程 式 の 未 知 数)の
数 を減 らす た め で あ る。
格 子 間 隔 を変 え る に は 次 の 二 つ の や り方 が あ る 。 (a) 場 所(座
標)と
と も に 連 続 的 に 変 え る
これ は格 子 間 隔 を座 標 の 関 数
と して 変 え る場 合 と座 標 変 換 に よ る場 合 とが あ る。 座 標 変 換 で は 一 方 の座 標 系 で は 等 間 隔 の 分 割 が 他 の座 標 系 で は不 等 間 隔 の 分 割 に な る。 と くに比 較 的簡 単 な配 置 で,一
方 の 座 標 面 が 電 極 表 面 あ るい は そ の 一 部 と一 致 す る
よ うな座 標 系 を選 ぶ と,境 界 の 処 理 が 容 易 に な る上 に,こ の 座 標 系 で は等 間 隔 の 分 割 で も元 の座 標 系 で 重 要 な個 所 の 分 割 を密 に す る こ と が で き る。 半 球 棒 対 接 地 平 面 の電 界 を双 球 面座 標 に変 換 して 計 算 した例 を3.5.4項
で
紹 介 した。 (b) 領 域 を い くつ か の 部 分 領 域 に分 け,部 分 領 域 内 で は 等 分 割 とす る 転 対 称 場 な ら,そ れ ぞ れ の 部 分 領 域 内 部 は(3・8)式,部
回
分領域 の境界 で は
(3・15)式 を 用 い る こ と に な る。 問 題 は 部 分 領 域 間で 格 子 間 隔 の 変 化 が 大 きす ぎる と,連 立 一 次 方 程 式(3・17)式
を解 く際,解
が 収 束 し な くな る 場
合 の あ る こ とで あ る。 文 献[3.4]は こ の変 化 の比 率 の 限界 を8と
して い る 。
3.6.2
連 立一 次方 程式 の解 法
差 分 法 も次 章 に述 べ る有 限 要 素 法 も各 点 の電 位 を得 る には 大 規 模 な 連 立 一 次方 程 式 を解 か な け れ ば い け な い 。 た と え ば1座 元,回
転 対 称 場 で は 未 知 数 の 数(方
標 あ た り100に
分 割 す る と,二 次
程 式 の 元 数)は104個,一
般三 次 元場 で は
106個 とな り,係 数 行 列 の 成 分Pi,jは そ れ ぞ れ108個,1012個
と な る 。 した が っ
て 分 割 が い く らか 細 か く な る と,計 算 機 の 容 量 か らす べ て の 係 数 を記 憶 で き な い 。 しか し差 分 法,有
限要 素 法 で は ほ と ん どの 係 数 が0(疎
行 列)な
の で こ の点
を考 慮 した 計 算 に な る。 解 法 は 大 別 して 直 接 法 と反 復 法 が あ る。 直 接 法 は,古
くか ら知 られ て い る ガ ウ
ス の消 去 法 な どで あ る が,要 す る に 逆 行 列 を 作 る 方 法 で あ る。N個 場 合,単
純 に 考 え る と0(N2)(0(M)はMの
の 記 憶 容 量 と0(N3)の
の未 知数 の
オー ダの 数 で あ る こ と を 意 味 す る)
演 算 量 を必 要 とす る 。 そ の た め に,Pi,jの 番 号 付 け を工 夫
し記 憶 容 量 を節 約 して 計 算 す るが,0で
ない 成分 だ け を 行 お よび列 を与 え るポ イ
ン トマ トリ ッ クス と と もに 記 憶 させ る 方 法 が あ り,そ の 一 つ の ウ ェ ー ブ フ ロ ン ト 法[3.5]などが よ く使 用 され る。 一 方 反 復 法 は,最 初 に φiに適 当 な値(初 式 か ら新 し い 値 を 求 め,そ
の 結 果 を2回
期 値 あ る い は 出 発 値)を
与 えて差分
目 の 出 発 値 と して 次 々 に 計 算 を繰 り返
し,真 の値 に近 づ け る 方 法 で あ る。 この 方 法 で も係 数 行 列 の 各 成 分 を 求 め る な ら 0(N2)の
記 憶 容 量 を 必 要 とす るが,演
算 量 は0(N2)で
よい。連立 方程式 全体 で
な く各 差 分 式 だ け を 記 憶 す る方 法 な ら,必 要 な 記 憶 容 量 と演 算 量 は0(N)と
な
り,大 規 模 な 行 列 で は直 接 法 よ り有 利 で あ る。 そ の 代 わ り反 復 法 は収 束 が 遅 い と い う欠 点 が あ り,収 束 を 速 め る ため に,新 め る と と も に,繰 (SOR法;successive の よ う な 未 知 数(あ
しい結 果 を次 々 に組 み 入 れ て計 算 を進
り返 し ご と の 変 化 量 を 過 評 価 して 加 味 す る 逐 次 加 速 緩 和 法 over‐relaxation method)な る い は 分 割 数)と
は,高 速 多 重 極 法(FMM,第10章)に
どが 用 い られ る 。 な お,以
必 要 な 記 憶 容 量,演 関 して10・7節
上
算量 の 関係 につ いて
で も解 説 して い る。
大 規 模 な連 立 一 次 方 程 式 の 解 法 は計 算 機 の 進 歩 と と も に非 常 に 発 達 し,現 在 は
い ろ い ろ な 計 算 機 ラ イ ブ ラ リを利 用 す る こ とが で き る。 した が っ て こ こで は これ 以 上 は説 明 し ない 。 な お 反 復 解 法 につ い て は文 献[3.6],[3.7]に
分 か りや す く解
説 さ れ て い る 。 ま た行 列 の 数 値 計 算 全 般 に 関 して は 文 献[3.8]を 推 薦 で きる 。
第3章 演習問題
1.図
問3・1(a)の
よ う に,直
る 二 次 元 配 置(x,y座 V,凹
標)が
角 の 凸 形 導 体 が 直 角 の 凹 形 導 体 と向 か い あ っ て い あ る 。 距 離d=2cm,凸
形 の 導 体 は 接 地 の と き,図
形 の 導 体 は 電 位V=100
のP点(x=y=1cmの
点)の 電 位 を 簡 単 な 差
分 法 で 求 め な さ い。 (注)図(b)の 点(た
よ う に1cmの
正 方 形 の 格 子 に 分 割 し,境
と え ば,x=5cm,y=1cm)の
電 位 を50Vと
界 条 件 と して,離
す る 。 な お,配
れ た
置 はx,y
に 関 して対 称 で あ る 。
(b)
(a) 図 問3.1
2.前
問 題 で,二 次 元 配 置(x,y座
標)で
は な く回転 対 称 配 置(r,z座
標)の
合 の 差 分 式 を作 り,二 次 元 配 置 との違 い を考 え な さ い 。
場
3.ま
た,回 転 対 称 配 置 の場 合,境 界 条 件 が ど う な る か 考 え な さ い 。
4.本
文 図3・2の
よ う な分 割 間 隔 が 一 定 で な い場 合 の 差 分 式 を導 出 しな さ い。
第4章 有 限要素法
有 限 要 素 法(finite element
method)も
差 分 法 と 同 じ く領 域 を 分 割 す る 方 法 で
あ る。 しか し差 分 法 は 近接 点(格 子 点)の 電 位 の 関 係 式(一 次 結 合)を
も と に した
方 法 で あ る の に対 し,有 限 要 素 法 は領 域 の 小 部 分 の 特 性 をベ ー ス とす る 。 分 割 し た小 部分 が 「有 限 要 素 」 で,二 次 元,回 小 体 積 で あ る。 有 限 要 素 法 は,こ
転 対 称 場 で は小 面 積,一
般三次 元場 では
の部 分 の 電 位 を簡 単 な関 数 で近 似 す る の が 基 本
で あ る。 た だ し求 め る値 は 各 要 素 の頂 点(節 点)の 電 位 で あ る。 有 限 要 素 法 は1943年
のCourantの
提 唱 が 最 初 と さ れ て い る[4.1]。 大 型計 算機
の 発 達 に つ れ て 実 用 の 数 値 解析 の 手 法 と して利 用 され る よ う に な っ た の は,1950 年 以 後 の こ とで す で に半 世 紀 以 上 も前 で あ る 。 そ の 後 の 発 展 は き わ め て 目覚 し く,機 械,建
築,土 木 な どの 分 野 で構 造 解 析 の 手段 と し て研 究 手 法 の 主 流 と な っ
て い る ほ か,近 年 は ほ とん どあ ら ゆ る 分 野 の 数 値 解 析 手 法 と して 利 用 さ れ る に至 っている。 電 界 計 算 へ の 利 用 は1968年
のZienkiewiczの
論 文[4.2]が最 初 で あ る が,当
時
は 同 じ領 域 分 割 法 で あ る差 分 法 が もっ ぱ ら使 用 され,有 限 要 素 法 は ほ と ん ど用 い られ な か っ た 。 電 界 計 算 の 対 象 が よ り複 雑 に な る に 従 っ て 差 分 法 よ りも有 限 要 素 法 を 利 用 す る例 が 増 え た。 本 章 で は 計 算 法 の 基 礎 と と くに 差 分 法 と比 較 した 長 所,短 所 を 中 心 に 説 明 す る 。
4.1
計 算 法 の 基 礎
有 限 要 素 法 に 関 す る 一 般 的 な解 説 は す で に多 くの 本 が あ る(た
と え ば,文 献
[4.3])。 また 具 体 的 な プ ロ グ ラ ム 例 も公 開 さ れ て い る。 以 前 は最 初 に応 用 が 進 ん だ構 造 解 析 分 野 の応 力 と ひず み に 関 す る解 説 が 多 か っ た が,こ
こで は電 界 計 算 の
基 本 に話 を限 る。 先 に述 べ た よ うに,有 で は 電 位)を
限要 素 法 は領 域 の小 部 分(有
限 要 素)の 特 性(電 界 計 算
座 標 の 簡 単 な 関 数 で 近 似 す る。 た とえ ば座 標 の 一 次 式 で あ る とす
る。 こ の よ うに 近 似 して も よ い ほ ど領 域 を細 か く分 割 す る とい い換 え て も よ い。 要 素 内 の 電 位,電
界 は こ の近 似 に よ っ て,要 素 周 辺 の 適 当 な点 の 電 位,た
要 素 の 形 が 三 角 形 な ら3頂 点(通 常 「節 点 」 とい う)の 電 位(ま
とえ ば
だ 未 知 の値 で あ
る)と 座 標 の 関 数 と して表 す こ とが で きる 。 この よ うな 手 続 き に よ って,結 域 全 体 の 電 位 を 節 点 の電 位 で 形 式 的 に 表現 で き る の で,そ
局領
の結 果 領 域 全 体 の ポ テ
ン シ ャル エ ネ ル ギ ー も節 点 の 電 位 に よ っ て 与 え ら れ る こ と に な る。 そ こ で こ の ポ テ ン シ ャ ルエ ネ ル ギ ーが 最小 に な る よ うに 各 点 の電 位 を定 め る の が こ の方 法 の 原 理 で あ る。 有 限 要 素 法 で も結 局 は各 点(節 点)の 電 位 の 関 係 式 に な るが,そ
の もと
に な って い る 考 えが 差 分 法 と全 く違 っ て い る こ とが 理 解 さ れ るで あ ろ う。 以 下 で は まず こ の取 扱 い を式 で 追 っ てみ る。 ラ プ ラ ス の 式 が ポ テ ン シ ャ ルエ ネ ル ギ ー 最 小 の 原 理 と等 しい こ とは,よ
り一 般
に次 の オ イ ラ ー の 理 論 か ら導 か れ る[4.4][4.5]。 す な わ ち あ る領 域 内 で,未 知 関 数 φ(x,y,z)が 微 分 方 程 式,
(4・1)
を満 足 す る こ と と,次 の 積 分 (4・2)
を最 小 に す る こ と と は全 く等 価 で あ る。 誘 電 率 εを含 め た場 の 方 程 式,
(4・3)
を(4・1)式
と 比 較 す る と,
二 次 元場 で は
(4・4)
回転対称場 では (4・5)
で あ る こ とが 容 易 に 分 か る。 す なわ ち(4・3)式 は, 二 次 元場 で は (4・6)
回転対称場 では (4・7)
を 最小 にす る こ と と等 価 で あ る。 こ こ ま で 来 れ ば す ぐ分 か る よ う にXは
領域 の
ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー で あ る か ら,「 ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー が 最 小 に な る よ うに電 位 分 布 を定 め れ ば,こ
れ が 求 め る静 電 界 で あ る」 とい え る。 具 体 的 な計 算
手 順 は 次 の とお りで あ る 。
4.2 具体 的 な計 算 手 順 二 次 元 場 を例 に と る と,図4・1の 素 内 の電 位 φ を座 標x,yの
よ う に領 域 を三 角 形 で 分 割 し,各 三 角 形 要
一 次 式 と して 次 の よ う に近 似 す る。 (4・8)
電 界 のx方
向,y方
向 成 分 は そ れ ぞ れ-∂ φ/∂x,-∂ φ/∂yであ る か ら,(4・8)式
は,「 要 素 内 で 電 界 が 一 定 で あ る 」 と見 な せ る ほ ど各 要 素 が 十 分 小 さい と仮 定 し て い る こ と と 同 じで あ る 。 係 数 α1∼ α3は三 角 形 要 素 の3頂 座 標 と電 位 φi,φj,φm(こ
点(節 点)i,j,mの
れ らは 未 知 数 で あ る)と か ら次 式 で 与 え られ る。
図4.1 有 限 要素 法 の 領域 分 割
(4・9)
こ の 式 か らα1∼α3を
こ こ で,Δ
求 め て(4・8)式
は 三 角 形ijmの
面 積 で,ま
に 代 入 す る と,
た
を 順 に 変 え れ ば よ い)
(4・10)
で あ る。 行 列 表 示 で は,
(4・11)
こ こ で,
領 域 の す べ て の 要 素 の 電 位 φ を(4・11)式
に 従 っ て 各 節 点 電 位(一
す る)で 表 わ す と,ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ーXもφiの
般 にφiと
関 数 で あ る。 した が っ て
Xが 最 小 に な る よ う に φiを定 め れ ば,こ
の値 は(4・8)式 の 仮 定 の も と に得 られ
た 近 似 値 で あ り,要 素 分 割 を細 か くす れ ば得 られ た 値 が 真 の 空 間電 位 に 近 づ くこ とが 期 待 で き る。Xを
最 小 にす る に は 節 点 電 位 φiを変 数 パ ラ メ ー タ と考 え,各
φiに対 す る 微 分 を0と す る。 す な わ ち,要 素1の
ポ テ ンシ ャ ル エ ネ ルギ ーXeは(4・6)式
から (4・12)
した が っ て,系 全 体 の ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ーXは, (領 域 内 の す べ て の 要 素 の和)
Xを む)6個
φiに関 して微 分 して0と お く と,図4・1の
(4・13) よ う にi節 点 に 関 係 す る(囲
の 要 素 だ け が 残 る。 (4・14)
4.3
電 位 の 方 程 式 と電 界
(4・12)式 で分 か る よ うに,各 要 素 の ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー は節 点 電 位 φiの 二 次 式 で あ る 。 そ こ で φiで微 分 す る と節 点 電位(未 知 数)に 関す る 一 次 式 が 導 か れ る。 す べ て の 節 点 電 位 に対 して(4・14)式
を作 る こ とに よ り,未 知 数 と同 じ数
の 多 元 連 立 一 次 方 程 式 が作 られ る。 す な わ ち 境 界 条 件 と して電 極 上 に と っ た節 点 電位 φb=Viを 用 い て,差 分 式 の(3・17)式 と同 様 な 電 位 の 方 程 式(支 配 方 程 式)
(4・15)
を解 く問 題 に な る。 左 辺 の係 数Pijはi節
点 を と り囲 む 数 個 を除 い て ほ とん ど0
で あ り,係 数 は 差 分 法 と同様 に 疎 行 列 で あ る 。 電 界 は 各 要 素 内 で 一 定 で,(4・8)式
か ら次 式 で 与 え られ る。 (4・16)
4.4
回転 対 称 場 の 場 合
回 転 対 称 場 の 計 算 手 順 も,二 次 元 場 と ほ と ん ど同 様 で あ る。(4・8)式 12)式 まで はx→r,y→zと
した 式 が そ の ま ま使 え る。 しか し ポ テ ン シ ャ ル エ ネ
ル ギ ー を求 め る とこ ろ で(4・6)式 エ ネ ル ギ ー 密 度Wを
よ り(4・
と(4・7)式 の 差 が 現 れ る 。 こ れ は 二 次 元場 で は
面 積 積 分 す る の に対 し,回 転 対 称 場 で は体 積 積 分 に な る た
め と考 え て よ い 。Wは
座 標 に対 し て 無 関係 な の で,Δ
を三 角 形ijmの
面 積 とす
る と, 二 次 元 場;
(4・17)
回転対 称場;
(4・18)
の 関 係 か ら,回 転 対 称 場 で 要 素1の
ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ーX1は(4・12)式
の
代 わ りに 次 式 と な る。
(4・19)
こ こ でbi∼bm,ci∼cmは(4・10)式
でx→r,y→zと
空 間 電 荷 も 含 め た よ り一 般 化 し た 取 扱 い は 第17章
して 与 え られ る 。 に 述 べ る。
4.5 重 み つ き残 差 法 有 限要 素 法 の 前 節 まで の 説 明 は 変 分 原 理(最 小 エ ネ ル ギ ー 原 理)を い る。 こ れ に 対 して,一 般 の 数 値 計 算 法 と して は,有
も とに して
限要 素 法 を重 み つ き残 差 法
と して 説 明 す る ほ う が 普 通 で あ る。 こ の 方 法 は,領 域R内
で 成 立 す る偏 微 分 方
程 式 の解 を線 形 独 立 な 関 数 群 φkの 一 次 結 合 で 近 似 して,そ
の 誤 差e(「 残 差 」 と
い う)を 重 み を付 して 領 域 内 で 最 小 に,あ る い は平 均 的 に0に す る も の で あ る 。 す な わ ち,一 般 的 に領 域 内 で 成 り立 つ 方 程 式 を, (4・20)
と し(φ0は 厳 密 解),近
似 解 φ を有 限 個(n個)の
φkの 一 次 結 合 で 表 す 。 (4・21)
Ckは
未 知 の 係 数 で あ る 。 一 般 に,D(φ)≠qで,残
差 はe=D(φ)−qで
あ る が,
重 み 関 数 ψiを 使 用 し て, (4・22)
で あ る よ うに 未 知 係 数 を決 定 す る。 す な わ ち,線 形独 立 の 適 当 な重 み 関 数 群 を用 い る こ とに よ っ て,未 知 係 数Ckを 素dυ は二 次 元 場 で あ れ ばdxdyで
与 え るn個
の 式 が 得 られ る 。 こ の式 の 体 積 要
あ る。
重 み 関 数 の 選 び 方 に よ っ て,選 点 法,最
小 二 乗 法,モ ー メ ン ト法,な
どの 方 法
に な る が,近 似 関 数 と 同 じ φiを用 い る の が 「ガ ラ ー キ ン(Galerkin)法
」 であ
る 。 電 界 計 算 の 場 合 に は,領 域 の 方 程 式 は ラ プ ラ ス の 式 あ るい は ポ ア ソ ン の 式 で,各 三 角 形 要 素 の 近 似 解 φは(4・11)式 で 与 え られ る。 係 数Niは とい うが,ガ
「補 間 関 数 」
ラ ー キ ン法 で は 重 み 関 数 と して 補 間 関 数 を用 い る。 す な わ ち,領 域
全 体 の 電 位(す べ て の 要 素 の 電位 の 和)に
つ い て(4・22)式 を, (4・23)
あ る い は, (4・24)
とす る こ と に よ っ て,Ckを
4.6
与 え る一 次 方 程 式 が 形 成 され る。
簡 単 な 例
4.4節 ま で に述 べ た よ うに 有 限 要 素 法 で は差 分 法 に比 べ て 節 点 電 位 φi(差 分 法 で は 格 子 点 電 位)の 連 立 方程 式 を作 る過 程 が 非 常 に複 雑 で あ る。初 め て有 限 要 素 法 に接 す る と途 中 で何 が何 だか 分 か ら な くな る の が 普 通 で あ る 。 そ こ で この プ ロ セ ス に 慣 れ る た め に図4・2の
よ うな 二 次 元 の 規 則 的 な(regular)要 素 分 割 の 場 合 の
図4.2 規 則 的 に分 割 した ときの 有 限要 素 法 (二次元 場 また は 回転 対称 場)
電 位 方 程 式 を求 め て み る。 こ れ は 差 分 法 の 長 方 形 格 子 に よ る 分 割 に 相 当 す るが, 有 限 要 素 法 で は 三 角 形 が 分 割 単 位 で あ る。 また 誘 電 率 εは領 域 内 で 一 定 とす る。 i番 目の 節 点 φiを含 む 要 素 の ポ テ ン シ ャ ルエ ネ ル ギ ー は 次 の(4・12)式,
で 与 え られ る か ら, (4・25)
こ こ で(4・10)式
で あ る か ら,要
に 示 し た よ う に,
素1で
は
〓し た が っ て, (4・26)
同 様 に 要 素2で
は,(4・25)式
でj→m,m→nと
した 式 に な り,
(4・27)
要 素3は
い く ら か 相 違 し て,(4・25)式
でj→n,m→pと
す る と,
(4・28)
要 素4∼6に
つ い て も 同 様 に ∂Xe/∂φiを作 る。 領 域 内 の 全 要 素 の う ちφiに 関 係
す る の は1∼6の
要 素 だ け で あ る か ら,結 局
(4・29)
こ の 式 を0と
お く と,
(4・30)
(4・30)式 は 実 は 間 隔 が そ れ ぞ れhx,hyの
長 方 形 格 子 で 分 割 して,φiを 上 下 左
右 の 格 子 点 電 位 か ら与 え る差 分 式 と全 く同 じで あ る。 実 際 にhx=hy(正 子)な
方形 格
ら(4・30)式 は 差 分 法 の(3・5)式 と全 く同 じ, (4・31)
に な る。 規 則 的 に分 割 した 場 合 の有 限 要 素 法 が 差 分 法 と全 く同 じ電 位 方 程 式 を 与 え る こ と は 回 転 対 称 場 で も 同 じで あ る。 図4・2が
回 転 対 称 場 の 場 合 ,x→r,y→zと
す る と(4・19)式,(4・26)式
は次 式 とな る 。
か ら,要 素1で
(4・32)
こ こ でr0はi節
点 のr座
標 で あ る 。 同 様 に 要 素2,3に
つ いては
(4・33)
(4・34)
要 素4∼6に
つ い て も〓を作ると,〓
か ら,次 式 が
得 られ る 。
(4・35)
こ の 式 が 差 分 法 の(3・15)式,(3・16)式
でh1=h4=hz,h2=h3=hrと
した 式 と
全 く同 じ な こ とは 容 易 に確 か め る こ とが で き る。
4.7 精 度 向上 の 方法―
高次 式 の利 用
こ れ ま で に述 べ た 有 限要 素 法 は 要 素 内 の 電 位 を座 標 の 一 次 式 で 近 似 して い る。 こ れ は 要 素 内 で は 電 界 が(4・16)式 の よ う に 一 定 とい う こ とで あ る。 こ れ に対 し て 二 次 以 上 の 式 を用 い れ ば 同 じ分 割 で も精 度 が 向 上 す る 。 特 に重 要 な の は 次 の 二 つ である。 (1) 6節 点 要 素 中(通 常 は 中 点)に
図4・3の
よ う に,三 角 形 要 素 の3頂 点 の ほ か に各 辺 の 途
も節 点 を取 り6節 点 とす る。 こ の よ うな 要 素 で は,6個
の係
数 を用 い て φ を 完 全 二 次 多 項 式 で 与 え る こ とが で きる 。 (4・36)
したが っ て 電 界 は (4・37) (4・38)
の よ う にx,yの
一 次 式 と な り,図4・3を
さ ら に4個
の 三 角 形 に 分 割 し た3節
点 要 素 の場 合 よ り精 度 が 良 い 。 回転 対 称 場 で も同 じで あ る 。 (4・36)式 の 係 数 α1∼ α6は,i∼nの6個
の 節 点 の座 標 と電 位 か ら (4・39)
等 に よ っ て 与 え られ,要 素 内 の φ は(4・10)式
と同 様 に6節
点 の 電 位 φi∼φnの
一 次 式 と な る。 こ こ で節 点 だ け で な く各 要 素 間 の す べ て の境 界 で,3節 場 合 と 同様 に φの 連 続 性 が 成 り立 っ て い る こ と に注 意 さ れ た い。
点要素 の
図4.3 6節 点 を有 す る三 角 形 要素
図4.4 四 辺 形 要素
φが 節 点 電 位 の 一 次 式 と して 表 わ され れ ば,そ の あ との 計 算 手 順 は単 純 な 三 角 形 要 素 の場 合 と同 じで あ る。 た だ し,α1∼ α6の 計 算,ポ
テ ンシャルエ ネルギー
の積 分 計 算 な どは は る か に 面 倒 な式 に な る 。 普 通 は 三 角 形 の辺 の 中点 に節 点 を置 くが,こ の 座 標 の 計 算 等 は す べ て計 算 機 に 行 わ せ る 。 (2) 四 辺 形 要 素
対 象 とす る領 域 を 三 角 形 で は な く縦 横 の格 子 で 分 割 す る と
分 割 要 素 は 四 辺 形 に な る。 図4・4の
よ うな4節
点 の 要 素 で は,電 位 を4個 の 係
数 を 有 す る式 で 与 え る こ とが で き る。 (4・40)
この と き,電 界 は 座 標 の 一 次 式 と な る。 (4・41)
そ れ ぞ れ の 四辺 形 を対 角 線 で2分 割 す れ ば 三 角 形 要 素 に な る が,同
じ節 点 数 で も
三 角 形 要 素 の 場 合 よ り四 辺 形 の ほ うが 精 度 が よ い 。 こ れ は 要 素 内 の 電 界 が(4・ 41)式 の よ う に座 標 の 一 次 式 と して 表 され る た め で あ る。
第4章 演習問題 1.有
限 要 素 法 の 電 界 の 式(4・16)が,図
問4・1の
よ うな 三 角 形 の 場 合,電 位 差
÷距 離 で あ る こ とを説 明 しな さい 。
図 問4.1
2.4.7節
に 説 明 した よ う に,二 次 元 配 置(x,y座
標)の 有 限 要 素 法 で 要 素 の 形
状 を三 角 形 で な く四辺 形 にす る と,電 位 φ は, (a,b,c,dは
定 数)
(問4・1)
と表 わ す こ とが で き る。 こ の と きの 電 位 を求 め る手 順 を考 え な さ い 。 た だ し, 四 辺 形 の 頂 点 の 電 位 と座 標 を,そ れ ぞ れ φi(xi,yi)(i=1−4)と (問4・1)式
す る。 ま た,
か ら要 素 内 の 電 界 が ど う な る か,そ の 式 を書 きな さ い(電 界 の 式
に はa,b,c,dを
そ の ま ま使 っ て よい)。
第5章 表面電荷法
差 分 法,有
限 要 素 法 は領 域 の 電 位 の 関係 式 を作 っ て 各 点 の 電 位 を求 め る方 法 で
あ るの に比 べ て,電 界(静 電 界)を 形 成 す る電 荷 を対 象 とす る(求 め る)の が 表 面 電 荷 法(surface
charge method。
また はsuface charge simulation method,な
ど とい う こ と も あ る。)で あ る。 関 係 す る 領 域 内 の す べ て の 電 荷 の 大 き さ(量) と位 置 が 決 まれ ば,ク ー ロ ン の 式 か ら どの 点 の 電 位,電
界 も与 え る こ とが で き
る。 表 面 電 荷 法 は,ま た よ り一 般 的 な 方 法 で あ る境 界 要 素 法 の 一 部 と見 な さ れ る こ と もあ るが,境 界 要 素 法 は第8章
で説明す る。
表 面 電 荷 法 を は じめ て 用 い た の は 電 磁 界 方 程 式 で 有 名 な マ ク ス ウ ェ ル(J.C. Maxwell)で
あ る 。彼 は キ ャ ベ ンデ ィ シ ュ の 実 験 結 果 を検 証 す る た め に,空 間 に
孤 立 す る正 方 形 導 体 を6×6の
小 正 方形 に分 け て そ の 静 電 容 量 を 求 め た[5.1]。も ち
ろ ん 計 算 機 の な い 時 代 な の で筆 算 で あ る。 こ の よ う に 表 面 電荷 法 の 原 理 は古 くか ら 自明 で あ っ た が,電 界 計 算 の 手 法 と して 本格 的 に用 い られ る よ う に な っ た の は や は り計 算 機 が 使 え る よ う に な っ て か ら で あ る。1950年 Reitanら が 小 区分 法(methods を求 め,70年
of subareas)の
代 中 ご ろ に か け て,マ
代 後 半 に,ま ずD.K.
名 称 で,長 方 形 導 体 の 静 電 容 量
イ ク ロ 波 の 分 野 でmicrostripの
算 の 論 文 が 多 数 報 告 さ れ た 。IEM(integral れ て い る。 一 方,航 空 工 学 の 分 野 で は1960年
equation method)の
静電 容量計 名 称 も用 い ら
代 初 め こ ろ ま で に,表 面 電荷 法 に
相 当す る方 法 が 流 体 解析 に適 用 され,多 大 な 計算 が 行 わ れ て い る[5.2]。 な か で も, 1960年 代 にR.F.Harringtonは
一 般 的 な 場 の解 法 と して モ ー メ ン ト法(method
of moments)な
る 名 称 の 方 法[5.3]を 提 案 し,こ
し た 場 合 をequivalent
source
の 方 法 を特 に 静 電 界 計 算 に 適 用
method[5.4][5.5]と 名 付 け た 。70年
代 に入 る と表面
電 荷 法 を 実 際 に 使 用 す る 際 の 問 題 点 や 計 算 速 度 が 検 討 さ れ て い る[5.6]。 数 値 電 界 計 算 法 の 中 で,表
面 電 荷 法 は 最 近 に な っ て 計 算 機 の 大 容 量 化,高
速化
に 伴 っ て と く に 三 次 元 配 置 の 計 算 法 と し て め ざ ま し く発 達 し た 。 そ の 中 で も 曲 面 形 状 表 面 電 荷 法 に つ い て は ま と め て 第9章
5.1
で 説 明 す る。
計 算 法 の 基 本
静 電 界 の場 で は 電 極(導
体)の
電荷 はす べ て表 面 に存 在 す る 。 表 面 の微 小 面 積
Δ Sに お け る表 面 電 荷 密 度 を σ とす る と,こ の 電 荷(密 度)に よ る空 間 の 電 位 は, (5・1)
で あ る。 こ こ でlは
空 間 の 被 作 用 点(電 位 点)と 作 用 源,す
な わ ち表 面 電 荷
(σΔS)と の距 離 で あ る。 す べ て の 電荷 の 作 用 を考 え る と,空 間 のi点 の 電 位 は, (5・2)
とな る が,表 面 を 電 荷 密 度 一 定 と見 なせ る小 区 分(要 素)ΔSjに
分 けて積分 の式
を有 限個 の加 算 式 とす る と,
(5.3) こ の よ う に して,i点
の 電 位 と 各 表 面 要 素 の 電 荷Qj(=σjΔSj)と
きる。lijはi点 とQjと
の距 離 で あ る。
電 極 表 面 で は電 位 は 通 常 一 定 の 値(電 辺 はViと
の 関係 式が で
な る 。 し た が っ て,分
極 電 圧Vi)が
与 え られ て い る の で,左
割 要 素 の 数 と同 じ だ け のViの 点 を取 れ ば 未 知 数
Qiが 求 め られ る こ と に な る。 こ の 点 か ら表 面 電 荷 法 を積 分 方 程 式 法 あ る い は 積 分 方 程 式 法 の1種
とい う こ と も あ る。 境 界 条 件 を与 え る 点(輪 郭 点)は そ れ ぞ れ の
要 素 上 に 適 当 な1点
を取 る こ とが 多 い。 こ れ を選 点 法(あ
る い は ポ イ ン トマ ッチ
ン グ;point
matching)と
い うが,こ
の 方 法 は モ ー メ ン ト法 にお い て 各 点 で デ ィ
ラ ッ クの δ関 数 を作 用 させ る こ と と 同 じで あ る。 た だ し,電 荷 密 度 は各 要 素 内 で 一 定 で は な く座 標 の 関数 と して 変 化 さ せ る こ とが 多 い
。 こ の と き は,σ の作 用 は
(5・1)式 の よ う に 簡 単 で は な く,各 要 素 で 積 分 した 電 位 と しな け れ ば い け な い。
5.2
平 面 要 素 と 曲 面 要 素
以 上 の よ う に表 面 電 荷 法 の 原 理 は い か に も単 純 で あ る が,実 際 の 数値 計 算 は 簡 単 で な い 。 多 種 多 様 な手 法 が あ る が,根 本 的 な 相 違 点 は 表 面 の 分 割 要 素 が 平 面 か 曲面 か で あ る 。 平 面 で あ る と,電 荷 密 度 が 一 定 あ る い は座 標 の 簡 単 な 関 数 で あ る 場 合,そ
の 電 位 や 電 界 は 具 体 的 な解 析 式 で 表 せ るの で,(5・3)式
のQiの
係数 を
直 接(数 値 積 分 な し に)式 で 与 え る こ とが で きる。 しか し,曲 面 の 電 極 形 状 は多 面 体 で 模 擬(近 似)し
なければい けない。
分 割 要 素 が 平 面 三 角 形 で あ る 方 法 を,筆 者 らは 「三 角 形 表 面 電 荷 法 」 と呼 ん で い るが,三 角 形 表 面 電 荷 法 は対 称 性 の な い(あ
る い は対 称 性 を考 慮 しな い)一 般
三 次 元 配 置 の 計 算 に 適 して い る 方 法 な の で,15.5節 座 標 の 一 次 式 で あ る場 合 の 電 位,電
で 説 明 す る。 三 角 形 電 荷 が
界 の具 体 的 な式 もそ こで 説 明 す る 。
一 方,曲 面 の表 面 要 素 を用 い る 場 合 は,形 状 の 模 擬 精 度 は 平 面 要 素 の 多 面 体 よ り改 善 され るが 次 の 問題 が あ る。 (a) 電荷 の 作 用(電 位,電
界)を
陽 に式 で 表 せ ず,数 値 積 分 が 必 要 で あ る 。
(b) そ の 結 果,電 極 表 面 で 電 位 を 与 え る 点,す
な わ ちlijが0と
な る点が特
異 点 と な り,そ の点 で の 積 分 が 面 倒 に な る 。 (c) 曲 面 要 素 の 形 状 は 通 常 座 標 の 簡 単 な 関 数 で 与 え る こ とが 多 いが,実 電 極 形 状 との 整 合 性,要 (d)
際の
素 間境 界 で の 接 続 条件 が 問 題 に な る。
境 界 条件 の 与 え方 も選 点 法 で な く,要 素 全 体 で の 積 分 で 与 え る な どの バ リエ ー シ ョ ンが 可 能 で あ る。
(e)
表 面 の電 荷 密 度 を一 定 で な く,座 標 の 関数,と
くに多 項 式 とす る こ とが
多 い 。 高 次 の式 を用 い る ほ ど 同 じ分 割 で は精 度 が 向 上 す るが,そ
の代 わ り
計 算 は複 雑 に な る。 た だ し,電 荷 と被 作 用 点(電 位 点)が 充 分 離 れ て い る と き,す な わ ちlijが 充 分 大 き い場 合 は 電 荷 を 点 電 荷 と見 な して 簡 略 化 す る こ と もあ る。 二 次 元 場,回 して,二
5.3
転 対 称 場 で は分 割 要 素 は ど ち ら も断 面 の線 分 で あ る。 以 下 に 例 と
次 元 配 置,回
転 対 称 配 置 の 計 算 を説 明す る 。
二 次 元 場 の 計 算
二 次 元 場 の 分 割 は 実 際 には 無 限 に長 い帯 状 の 要 素 に な る。 この と き各 要 素 の 電 荷 密 度 を一 定 で な く,座 標tの 多 項 式 で 表 す と と もに 隣 接 要 素 間 で 連 続 とす る こ とが しば し ば行 わ れ る。 図5・1(a)の
よ うに 電 極 表 面 の 断 面 の 線 分 をtで 表 し,
t1とt2の 間 をj番 目の 要 素 とす る と,j要 素 の 電 荷 密 度 σ(j)の 生 ず る 電位ujは, 次 章 で 説 明 す る電 荷 重 畳 法 の 電 位 の 式(付 録1)を
使 用 して 次 式 の よ うに 与 え ら
れ る 。 二 次 元 場 で は無 限長 線 電荷 の 式 で あ る。 (5・4)
こ の式 は 大 地(接
地 平 面)が
電 極 全 体 のn要
素 の作 用 に よ っ て,i点
(a)二
あ る と きで,そ
の 影像 電 荷 の作 用 も含 ん で い る 。
の 電 位 φiは次 式 で 与 え られ る 。
次元 場 図5.1 表面 電 荷法 の 説 明 図
(b)回
転対 称 場
図5.2 二 次 元場 の 直線 的 な表面 形 状
(5・5)
二 次 元 場 の 電 位 の 式(5・5)式
は,分 割 要 素 が 図5・2の
あ れ ば 積 分 を 陽 に 表 せ る。 こ の 場 合,要
よ う に(断 面 で)直
素 内 の 位 置X,Yは
線で
中 点 の 座 標 をX0,
Y0と して, (5・6)
で あ るか ら
(5・7)
この 式 は σ(j)が 定 数 で あ る と,次 の不 定 積 分 を用 い て解 析 的 に表 せ る。
(5・8)
σ(j)がtの
一 次 式 の 場 合 で も,相 当複 雑 に な る が不 定 積 分 が 可 能 で あ る。 もち
ろ ん 電 界 も数 値 積 分 な しに求 め られ る。
5.4
回 転 対 称 場 の 計 算
回転 対 称 場 の 分 割 は 断 面 で 線 分 で も実 際 は筒 形 の 要 素 に な る。 配 置 が(r,z) 座 標 で 与 え ら れ,回 転 対 称 で あ る こ と を考 慮 す る と,図5・1(b)の
場 合,j要
素
の 電 荷 密 度 σ(j)の 生 じる 電 位ujは 次 式 の よ う に与 え ら れ る。
(5・9)
こ の式 は 次 章 の電 荷 重 畳 法 で使 用 され る リ ング 電 荷 の 式 で ,大 地 に対 す る影 像 電 荷 の作 用 も含 ん で い る 。K(k)は
第1種 の 完 全 だ 円 積 分 で, (5・10)
で あ る。 リ ン グ電 荷 の式 な ら び に完 全 だ 円 積 分 に つ い て は6・2節
で説 明 す る。
電 位 の 式(5・9)式 は常 に 数 値 積 分 が 必 要 で あ る。 数 値 積 分 の 方 法 は 台 形 公 式, シ ン プ ソ ンの 公 式 を用 い る 方 法,ロ
ンベ ル ク積 分 ,ガ
ウ ス積 分 な どあ るが,い
ず
れ も非 常 に多 数 回 の 計 算 が 必 要 なの で数 値 積 分 を な る べ く高 速 で行 う工 夫 が 望 ま しい 。 一 般 に 電極 表 面 の(断 面)形
状 は,直 線 か 円 弧 で あ る こ とが 多 い が,線
分
tを 三 角 関 数 を含 む 式 で 表 す と計 算 時 間 が 長 くな るの で,各 区 分 を 次 の よ う に放 物 線 で 近 似 して一 方 の座 標 につ い て積 分 す る ほ うが 良 い 。 (5・11)
と 表 す と,(5・9)式
は
(5・12)
こ こ でk1,k2は(5・10)式 内 で 一 定 で な い と き は,や 換 え る。
でZを(5・11)式 は りRの
と し た 値 で あ る 。 ま た σ(j)が
一 次 式 と し て(5・9)式
をt→Rと
区分
して書 き
(5・11)式 の 係 数A,B,Cは
各 区 分 の 端 点 と通 常 は 区 分 の 中 間 に と っ た 輪 郭
点 の 座 標 か ら求 め ら れ る。 区 分 の 形 状 がz軸
に 平 行 に 近 い(縦
の)場 合 に は,
(5・11)式 で な く, (5・13)
の 式 を 用 い,(5・9)式
をZに
関 す る積 分 とす る ほ うが 良 い 。 筆 者 ら は 区 分 が 座
標 軸 と な す 角 が45° よ り大 か 小 か で,(5・11)式 Zに
関 す る 積 分 の と き は σ(j)もZの
5.5 電荷(あ
式 と電 界
る い は 二 次 元 場 の(5・4)式,回
う に,各 要 素 の 電 荷Qjの
を 使 い分 け て い る 。
一 次 式 にす る 。
るい は電荷 密度)の
5.1節 の(5・3)式,あ
と(5・13)式
転 対 称 場 の(5・9)式 の よ
生 じ る電 位 を電 極 表 面 の 適 当 な 個 所(輪
郭 点i)で
計
算 す る。 σ(j)が 一 定 の と きの 具 体 的 な手 順 は 以 下 の よ う に な る。 (a) 電 極 表 面 を適 当 に 小 区 分(n要
素)に 分 割 す る。
(b) 各 要 素 上 の適 当 な 点 を輪 郭 点 に と り,全 要 素 の 表 面 電 荷 が 輪 郭 点 に生 じ る電 位 を,(5・4)式
ま た は(5・9)式 に よ り計 算 す る。 これ が σ(j)とi番
目 の輪 郭 点 の 間 の電 位 係 数P(i,j)で (c) 各 輪 郭 点 でφi=V1∼Vn(電 連 立 一 次 方 程 式(支
あ る。
極 電 圧)と
置 い てσjあ る い はQjに
対す る
配 方 程 式),
(5・14)
が 形 成 さ れ る 。(5・14)式
で は 簡 単 の た め にP(i,j)をPij,σ(j)をσjと
書いて いる。 (d)
(5・14)式
(e)
得 ら れ た σ(j)を 用 い て 必 要 な 点 の 電 位,電 (5・4)式
を 解 い て σ(j)を 求 め る 。
ま た は(5・9)式
である。
界 を 計 算 す る。 電 位 の 式 は
電 界 は得 られ た 各 表 面 電 荷 に よ る 電 界 の 作 用 を積 分 あ る い は加 算 して 求 め られ る 。 本 来 の式 は,電 位 の(5・2)式 に 対 応 した 次式 で あ る。 (5・15)
電 荷 か ら 充 分 遠 方 で は 電 位 の(5・3)式
と 同 様 に,各 電 荷 σjΔSjを点 電 荷 と 考 え
て,そ の 作 用 を 放 射 状 の 電 界σjΔSj/(4πε0lij2)と す る こ と も あ る が,さ
もなけ れ
ば電 位 と同 様 に各 電 荷 の 作 用 を積 分 す る こ とに な る。 もち ろ ん電 位 と違 っ て 方 向 (成 分)も 考 慮 しな け れ ば い け な い。 図5・3(a)に
示 す よ う な 電 極 表 面 上 で は,電 界E(の
大 き さE)と
電荷 密 度 σ
に は次 の 関係 が あ る。 (5・16)
し た が っ て 通 常 の 電 極 で は,未
知 数 を求 め る だ け で 電 極 上 の 電 界 が 得 られ る こ と
に な る 。 こ れ は 表 面 電 荷 法 の 長 所 の 一 つ で あ る 。 し か し 図5・3(b)の の な い(厚
み を 考 え な い 薄 板 の)電
両 面 の 電 荷 σ1,σ2と
極 で は こ の 関係 が 成 立 しな い 。 こ れ は 電 極 の
電 界E1,E2に
ら れ る の が σ=σ1+σ2だ
よ う に厚 み
σ1=ε0E1,σ2=ε0E2の
関 係 が あ っ て,求
け で あ る た め で あ る。
(a) 厚 み の あ る電極
(b) 厚 み の ない 電極
図5.3 電 極 表 面 の電 荷 密 度 と電 界
め
5.6
5.6.1
特 異 点 の 処 理
特 異 点 と積 分 の 種 類
5.2節 に お い て,表 面 電 荷 法 は 基 本 的 に 分 割 要 素 が 平 面 か 曲面 か で 相 違 し,曲 面 要 素 で は電 荷 の 作 用 を数 値 積 分 で 与 え な けれ ば な ら な い こ とを 述 べ た 。 数 値 積 分 の 実 行 に あ た っ て 大 き な 障 害 と な る 問題 に,数 値 積 分 の 特 異 点 処 理 が あ る 。 た と え ば 点 電 荷,線
電 荷 か らの 距 離 をrと
す る と,r→0の
位 置 は特 異 点 で 電 位 ・
電界 は 無 限 大 とな り,有 限 け た しか 扱 え な い 数 値 計 算 で は正 解 が 得 られ な い 。 た とえrが0で
な く と もr≪1で
あ れ ば,精 度 の 点 で 各 種 の 困 難 が 発 生 す る。 表 面
電 荷 法 で は基 本 的 に 要 素 と して 面 電 荷 を取 り扱 う の で,一 種 の 角(か
ど)点 で あ
る面 端 部 で 接 線 方 向 電 界 成 分 が 無 限 大 とな る こ と を 除 く と,面 上 で も電 位 ・電 界 は有 限値 で あ る。 しか し,電 荷 の 「面 」 を 「線 の 積 分 」 や 「点 の 積 分 」 と して表 現(数 値 積 分)す
る と き に先 の 特 異 性 が 現 れ る 。 先 に述 べ た よ うHに,平 面 要 素 で
は必 要 な積 分 が 解 析 式 で 与 え られ る の で こ の 困 難 を 回避 で き るが,曲
面 要 素 の場
合 は一 般 的 に特 異 点 処 理 が 避 け られ な い 。 特 異 点 の処 理 に 関 して,ま ず 最 初 に積 分 の種 類 分 け を行 う。 電 位 ・電 界 の 計 算 点 と電 荷 と の 位 置 関 係 に よ り以 下 の3種
に 分 類 さ れ る。(a)計
(b)計
算 点 が 電 荷 上 で は な い が ご く近 傍,(c)そ
(a)特
異 積 分,(b)準
特 異積 分,(c)通
算 点 が 電 荷 上,
れ 以 外 。 これ ら を そ れ ぞ れ,
常 の 積 分,と
呼 ぶ 。 図5・4に
模 式的
な説 明 図 を示 す 。 (a)に
つ い て は,要 素 へ の接 近 方 向 に応 じて 各 方 向成 分 ご とに 値 が 異 な る 場
(a)特 異 積 分
(b)準
特 異積 分
(c)通 常 の積 分
図5.4 要素(曲 線)と 電 界 計 算点(黒 丸)と の位 置 関係
合 と 同一 値 と な る場 合 が あ り,そ れ ぞ れ の 値 も無 限 大 に な る 場 合 と有 限 値 に な る 場 合 とが あ る 。 例 え ば,(電
荷 の)面 上 電位 は接 近 方 向 に よ らず 同 一 の 有 限 値 と
な る。 面 端 部 の 電 界 は 接 近 方 向 に よ って 値 が 異 な り,外 向 き接 線 方 向 成 分 は無 限 大 で他 成 分 は 有 限値 と い う ケ ー ス で あ る 。 無 限 大 成 分 は 数 値 計 算 不 可 能 で あ り, 表 面 電 荷 法 と い う手 法 全 体 の 観 点 か ら 回避 策 を 考 え る必 要 が あ る。 5.5節 で 図5・3(b)に
関 して 述 べ た よ うに,面 要 素 表 裏 の 法 線 方 向 電 界 は,接
近 方 向 に よ っ て 異 な る2種 る。 こ こ でEnpは 界,±Ensは
類 の 有 限 値E1,E2(=Enp±Ens)を
持 つ ケース であ
特 異 点 を く り抜 い た と して 得 られ る特 異 点 位 置 の 法 線 方 向 電
法 線 方 向 電 界 の 特 異 点 寄 与 分 を意 味 す る。 単 独 に存 在 す る 平 面 要 素
電 荷 が 作 る 法 線 方 向 電 界 はEnp=0,Ens=σ/(2ε)で ≠0,Ens=σ/(2ε)と
あ る が,曲
面 要 素 で はEnp
な る 。 σは 要 素 の 考 えて い る 点 で の 電 荷 密 度 で あ る。 な お,
Enpは 一 意 な有 限 値 で あ り数値 積 分 に よ っ て値 を求 め る こ と が で き,コ ー シ ー の 主 値(積
分 の 有 限 部 分 の 一 種)と
呼 ば れ る。
(c) は一 般 的 な ガ ウ ス 積 分 公 式 を用 い て 高 速 か つ 高 精 度 に 積 分 値 が 求 め られ る場 合 で,そ ス型 のN点
れ が 困 難 な ケ ー ス が(b)に
あ た る 。(c)の
通 常 の 積 分 は,ガ ウ
積 分 公 式 の 分 点 をxi,重 み を ωiと す る と,次 式 で 積 分 を実 行 で き る 。 (5・17)
た だ し,分 点 は[0-1]区
間 に 配 置 さ れ て い る と した 。 一 般 に,電 界 計 算 点 が
要素 よ り十 分 遠 方 に あ れ ばNの
小 さな低 精 度 の 公 式 で 目標 精 度 を 達 成 で きる が,
電 界 計 算 点 が 要 素 に接 近 す る につ れ てNの
大 きな高精 度の 公式 を使用 す るこ と
が必 要 に な る。 利 用 可 能 な最 高精 度 の 公 式 を用 い て も 目標 精 度 を達 成 で きな い場 合 は,要 素 を細 分 割 して 分 割 さ れ た 区分 ご と に積 分 公 式 を適 用 す る こ と も多 い。 しか し,計 算 点 の 要 素 へ の接 近 が 著 しい場 合 は この 方 式 で も計 算 速 度 が 著 し く低 下す る の で,準 特 異積 分 専 用 の 計 算 法 を採 用 す るほ うが よ い 。 次 項 以 下 に述 べ る 特 異 積 分,準
特 異 積 分 の ほ か に,サ イ ズ の 異 な る複 数 要 素 の
境 界 位 置 で 積 分 点 配 置 の ア ンバ ラ ンス に起 因 して 計 算 精 度 の 低 下 が 起 こ る ケ ー ス もあ る。 こ う した 問 題 に対 す る包 括 的 で有 効 な 手 法 が 完 備 され て い る と は い い が
た い。 い ず れ に して も,必 要 な 計 算 精 度 を最 速 で 実 現 で きる 計 算 手 法 を 選択 す る に は,真 値(ま
た は低 速 高 精 度 の 数 値 計 算 値)と
の 比 較 な ど を含 め た 計 算 精 度 と
速 度 の面 倒 な 検 証 が 必 要 で あ る。 5.6.2 (a)の
特異積 分 特 異 積 分 を 表 す 基 本 式 は 次 式 で あ る。 (5・18)
x =0が
特 異 点(分 母=0)で
定 され る。 分 子F(x)は
あ る 。 た だ し表 面 電 荷 法 で は 多 くの 場 合a=1,2に
限
一 般 に特 異 点 で も0に な ら な い が,法 線 方 向 電 界 を 求 め
る場 合 の よ う に0因 子xbを
含 む こ と も あ る。 しか し,そ れ で もb<aな
ら特 異 点
処 理 が 必 要 で あ る。 共 通 す る 戦 略 と して は,(a)分
子 に な るべ く高 次 の0因
子
が 現 れ る よ うに 式 の 変 形 や 変 数 変 換 を行 う,(b)巨
視 的 に キ ャ ン セ ル して 和 が
0に な る項 が 発 生 す る よ う に変 形 あ る い は変 換 して そ れ を ス キ ップ す る ,が 挙 げ られ る。 前 者 の 例 と して は,一 般 三 次 元 面 要 素 に 対 し極 座 標 変 換 を施 してbを1 増 加 させ る手 法 が 代 表 的 で あ る。b≧aと
な れ ば こ の 積 分 は 特 異 で な くな り,通
常 の積 分 と 同様 に 容 易 に数 値 積 分 が 可 能 で あ る。 しか し,こ う した 解 析 的努 力 に よっ て も,特 異 性 や 計 算 精 度,速 らの 場 合 はKuttの
度 が 改 善 され ない 場 合 も多 く,こ の と きは 筆 者
有 限 部 分 積 分 公 式[5.7]の適 用 を 試 み て い る。 詳 細 は 省 くが ,
こ れ は 次 式 の よ う に分 母 の 特 異 性 を一 つ 低 減 で き る積 分 公 式 で あ る。
(5・19)
分 点xiは0<x<1区
間 にN-1個
配 置 し,x<0に
も1個 配 置 す る 。 少 な い 計 算
量 と演 算 時 間 で 有 用 な 計 算 結 果 の 得 られ る こ とが 多 い が ,x<0位
置 の分点 の処
理 に 苦 慮 す る場 合 もあ る。 そ れ で も な お,特 異 積 分 値 が 数値 的 に安 定 しな い場 合 は,dを
小 さな 値 と した 準 特 異 積 分 値(次
項 で 説 明)を 近 似 値 と して採 用 す る こ
とが多 い 。dの 値 の 選 択 に任 意 性 が あ る こ と と計 算 の 高 速 化 に難 が あ る こ と を 除 くと,要 求 精 度 が 極 端 に 高 くな け れ ば実 用 精 度 を満 足 で きる こ とが 多 い 。
5.6.3 (b)の
準特 異 積 分 準 特 異 積 分 を表 す基 本 式 は次 式 と な る。 (5・20)
dは 計 算 位 置 と特 異 点(x=0)と 照)。x=0に
の 離 隔 距 離 で 微 小 値(d≪1)で
お い て も分 母 は0と
あ る(図5・5参
な ら な い の で 一 見 簡 単 に 思 わ れ る が,準 特 異 積
分 を 許 容 精 度 内 で 高 速 に 実 行 す る の は,し
ば し ば特 異 積 分 の 実 行 よ り困 難 で あ
る。 標 準 的 な 計 算 法 は,特 異 点 近傍 で は小 サ イ ズ に遠 方 で は大 サ イ ズ に 積 分 区 間 を分 割 し,そ れ ぞ れ に ガ ウス の積 分 公 式 を適 用 す る方 法 で あ る。 そ れ で もd≪1 で は 計 算 速 度 が 著 し く低 下 す る。 こ の と き は 筆 者 らの 場 合 はHayamiの
「Log
‐L1変 換 」[5.8]の 適用 を試 み て い る。Log‐L1変 換 は積 分 公 式 の 分 点 位 置 を,極 近 傍 で は 密 に,遠 方 で は疎 にす る変 換 で あ り次 式 で 定 義 さ れ る。
(5.21) 図5・6に,R座
標 上 で ほ ぼ 均 等 に 配 置 さ れ た 分 点 が,x座
標 上 で不均 一 な配
置 に 変 換 され る様 子 を 示 し た。 積 分 区 間 を特 異 点 近 傍 で は小 さ く遠 方 で は 大 き く す る 手 法 と同 様 の 効 果 が,比 較 的少 な い 分 点 数 の 計 算 で得 られ る。 微 分 の 変 換 式 は 次 の と お りで あ る。
図5.5 準特 異 積 分 の電 界 計算 点
図5.6 Log‐L1変 換 に よ る分点 配 置 の 変 更
よ って,準 特 異 積 分 は 次 式 と な る 。
(5・22)
分 母 に近 い 形 式 の 因子 が 分 子 に現 れ るの で特 異 性 を 緩 和 で き る と も解 釈 で き る 。 結 局,分 母 の 特 異 性 を お お よ そ一 つ低 減 で きる効 用 が あ る。 た だ,準 特 異積 分 は Log‐L1変 換 な ど を用 い た場 合 で も なお 計 算 負 荷 が 大 き い。 類 似 法 と して 「Log‐ L2変 換 」 な ど も提 案 され て お り,ケ ー ス に よっ て はLog‐L1変 換 よ り も有 効 で あ る。 た だ し,経 験 的 に はLog‐L1変 換 の ほ うが 汎 用 性 が 高 い よ う で あ る。
第5章 演習 問題 1. 表 面 電 荷 法 を最 初 に 用 い た の はマ クス ウ ェル で あ る 。 彼 は 空 間 に孤 立 して 存 在 す る正 方 形 導 体 の 静 電 容 量 を 求 め る の に,導 体 を6×6=36個
の小 正方形 に
分 け て 表 面 電 荷 法 を適 用 した。 正 方 形 導 体 の 電 位 を与 え た と き に 電 荷 量 が 求 め られ れ ば 静 電 容 量 が得 られ る わ け で あ る 。 そ れ ぞ れ の小 正 方 形 の 電 荷 を一 定 と す る と,独 立 な 未 知 数 は 何 個 に な る か を 考 え な さ い 。 ま た 正 方 形 導 体 が 大 地 (接地 平 面)上 で 水 平 に存 在 す る と き に は 未知 数 は 何 個 に な る か 。 2. 図 問5・1の
よ うな 電 荷 密 度 一 定 の 長 方 形 電 荷 が 中 心 か ら距 離dの
る 電 位 の 式 を求 め な さ い。 ま たa=b(=w/2)の
正 方 形 の と き,d=0に
点 に生 じ おける
電位 を求 め,電 荷 量 と こ の電 位 の 比 が 前 問 の 正 方 形 導体 の 静 電 容 量 に は な ら な い こ と を説 明 しな さい 。
図 問5.1
3. 本 文5.5節
で は 各 要 素 の 電 荷 密 度 σ(j)が 一 定 の 場 合 の 計 算 手 順 を説 明 した 。
電 荷 密 度 が座 標 の 一 次 式 で,し か も各 要 素 間 で 連続 で あ る とす る と,一 定 の場 合 と どの よ う に違 うか 考 え な さ い。 4. 本 文5.5節
で 述 べ た よ う に,導 体 表 面 で は 電 界Eと
電 荷 密 度 σにE=σ/ε0の
関係 が あ る。 電 荷 密 度 σの 電 気 一 重 層 は σ/(2ε0)の電 界 を 生 じ る は ず で あ る が,2倍
の 違 い が あ る の は なぜ か を 考 え な さ い。
第6章 電荷重畳法
電 荷 重 畳 法(charge
simulation method)は,1969年
ン工 科 大 学 のH.Steinbiglerが べ た 影 像(電
荷)法
当時 の 西 ドイ ツ ミュ ンヘ
博 士 論 文 で 提 案 した 方 法 で あ る[6.1]。 第1章
に述
と似 て い るが,影 像 法 は ご く簡 単 な配 置 の計 算 に しか 使 え な
い の に対 し,も っ と一 般 的 な 配 置 に適 用 で き る計 算 法 で あ る。 電 荷 重 畳 法 と は 電 極 内 部 に配 置 した 仮 想 的 な 電荷 の 作 用 を重 畳 して,真 の 電 界 分 布 を模 擬 す る こ と を意 味 して い る。 一 方,境 界(単
一 誘 電 体 で は 電 極 表 面)上
に輪 郭 点 を 置 く点 で
は前 章 の 表 面 電荷 法 と似 て い る が,表 面 電 荷 そ の もの を 直 接 相 手 に しな い 。 た い て い の 数値 計 算 法 は電 界 計 算 だ け に適 用 され る わ け で は な いが,電 法 は 等 電 位 面 を 電 極 の模 擬 に 用 い る点 で,他 ず,も
荷重畳
の 場 の 計 算 に は ほ とん ど用 い られ
っ ぱ ら静 電 界 計 算 に使 用 さ れ る ユ ニ ー ク な 方 法 で あ る 。 と くに 高電 圧 工 学
や 絶 縁 設 計 の 分 野 で は,プ
ロ グ ラ ム が 簡 単 で コ ー デ ィ ング が 容 易 な上 に精 度 の 高
い電 界 計 算 法 と して重 宝 され て きた 。
6.1
計 算 法 の 原 理
電 荷 重 畳 法 は,と
くに 二 次 元 場,回 転 対 称 場 に 適 した 方 法 で あ る。 図6・1の
よ う に,二 次 元 場 で は 無 限長 線 電 荷(紙 ン グ(円 環)電 荷,線
電 荷(軸
上)を,「
面 に 垂 直),回
転 対 称 場 で は点 電 荷,リ
電 極 の 内 部 に 電 極 形 状 に近 い よ う に 配
置 」 し,こ れ ら の 電荷 の作 る 等 電 位 面 で電 極 を模 擬 す るの が 計 算 の 基 本 で あ る 。
(a)二 次元 場
(b)回
転 対称 場
図6.1 電荷 重 畳 法 の説 明 図
内 部 に置 く電 荷 を 仮 想 電 荷 と呼 ぶ 。 実 際 に は電 極 表 面 に 存 在 す る 電 荷 の代 わ りに 代 用 す る と い う点 か ら仮 想 電 荷 を代 用 電荷,電 で はErsatzladungsmethode;substitute
荷 重 畳 法 を 代 用 電荷 法(ド
charge method)と
イ ツ語
呼 ぶ こ と も あ る。
電 荷 重 畳 法 で は,電 極 の 内 部 に 置 く一 つ 一 つ の 仮 想 電 荷 は,も
はや影像法 の内
部 電 荷 の よ う に電 極 の 電 位 と 直接 の 関 係 を持 っ て い る わ け で は な い。 電 荷 全 体 で (他 に 電 極 が あ れ ば そ の 中 の 仮 想 電 荷 の作 用 も含 め て),で
きる だ け電 極 の 形 に 近
い等 電 位 面 が で き る よ う にす る だ け で あ る。 そ の た め に空 間 の 本 来 電 極 表 面 で あ る面 上 に有 限 個 の 点 を と っ て,こ
の 点 の 電 位 が 電 極 電 圧Vに
を決 定 す る。 この 電 荷 群 の 作 る φ=Vの
な る よ う に電 荷 群
等 電 位 面 が 電 極 表 面 と一 致 す る な ら,電
荷 群 の作 る電 界 は 電 極 外 部 の 正 しい電 界 を与 え る。 こ れ は 「等 電 位 面 を 同 じ電 位 の 電極 と置 き換 え て も電 界 分 布 は変 わ らな い 」 とい う静 電 界 の定 理 に よ っ て 保 証 され て い る。 電 位 を与 え る電 極 上 の 点 を 輪 郭 点(ド イ ツ 語 でKonturpunkt;contour point)と 呼 び。し
ば しばKPと
略称 する。
電 荷 重 畳 法 は ま た 次 の よ う に 考 え る こ と もで きる 。 そ れ ぞ れ が ラ プ ラス の 式 を 満 足 す る 電 位u1,u2,…,unの ∼unの
和 φ(一 次 結 合)が 境 界 条 件 を満 足 す る よ う にu1
係 数 を 決 め る の で あ る。Ajを 定 数 と して φ=ΣAjujが
境 界 条件 を満足 す
る と,φ も ラ プ ラ ス の 式 を 満 足 す る の で,φ は電 極 外 部 の 正 しい 解 で あ る。 こ れ は 「ラ プ ラス の 式 を満 た し,境 界 条 件 を満 足 す る解 は た だ 一 つ で あ る 」 と い う静 電 界 の 一 意性 の 定 理 に よ って 保 証 され る。 こ の よ う な部 分 解 の 和 に よ っ て 真 の 解 を求 め る 方 法 は,1.1節
に述 べ た 座 標 変 換 に よる 級 数 解(し
そ の例 で あ る。 し た が っ て 部 分 解ujは は ない が,こ
6.2
界
電 荷 重 畳 法 で 使 用 され る仮 想 電 荷 の 種 類 と位 置 を 与 え る 値(特
値:X,Y,R,Zな
性
ど)を 示 す 。 これ 以 外 の 仮 想 電 荷 を使 う こ と も可 能 で あ る
が この 点 は6・6節 た は(r,z)に
必 ず し も具 体 的 な電 荷 の作 用 で あ る 必 要
れ まで に提 案 され て い る の はす べ て 具体 的 な形 状 の 電 荷 で あ る。
仮 想 電 荷 の 電 位,電
図6・2に
ば しば 無 限 級 数)も
で 説 明 す る。 電 界 計 算 に は 図6・2の
与 え る 電 位,電
界 の 式 が 必 要 で あ るが,こ
電 荷 が 領 域 の 点(x,y)ま れ ら は 付 録1に
まとめ
て示 した。 この う ち回 転 対 称 場 の リ ン グ電荷 に つ い て だ け い くらか 説 明 を加 え る 。 図6・3の
よ う なz軸 に 関 し て 回 転 対 称 な リ ン グ電 荷 の 電 位 は,帯
電 コイ ルあ
る い は帯 電 円 環 とい う名 前 で 通 常 の 電 磁 気 学 の 本 に も述 べ られ て い るが,ほ
とん
ど は ル ジ ャ ン ドル 関 数 を用 い た 無 限級 数 式 が 与 え られ て い る。 電 荷 重 畳 法 で は完 全 だ 円積 分 の 式 を用 い る の が 普 通 で あ る。 リ ング 電 荷 の 位 置(高 をR,電
荷 密 度 を λ とす る と,P点(r,z)の
(a)二 次 元 場
電 位 は次 式 に な る 。
(b)回
転 対 称場
図6.2 電荷 重 畳法 で使 用 され る仮想 電 荷
さ)をZ,半
径
図6.3 リ ング電荷 に よ る電 位
(6・1)
こ こ でlは リ ング 電 荷 のdθ 部 分 とP点
と の距 離 で あ る。
(6・2)
θ/2=α と 置 き,cos2α
の 対 称 性 を 考 慮 す る と(6・1)式
は,
(6・3)
積 分 は 第1種 完 全 だ 円 積 分 と呼 ば れ,通 常K(k)と
表 され る。 これ を用 い る と, (6・4)
こ こ でQは
全 電 荷 でQ=2πRλ,ま
た 母 数kは,
(6・5)
ま たr方 ぞ れr,zで
向,z方
向 の 電 界Er,Ezは,付
録1に
与 え て い る が,(6・4)式
をそれ
微 分 し,
(6・6)
の式 を用 い れ ば導 く こ とが で き る。 こ こ で
(6・7)
は第2種 完 全 だ 円 積 分 と呼 ば れ る。 な お付 録1の
式 は す べ てy=0ま
考 慮 し た 式 で,二 (B+z)を
た はz=0の
次 元 場 で は(y+Y),回
位 置 に あ る 大 地(接
地 平 面)を
転 対 称 場 で は(z+Z),(A+z)
含 む 項 が 大 地 に対 す る 影 像 電 荷 の作 用 で あ る。 逆 にy=0ま
,
た はz=0
が 対 称 面 に な る と き は,こ れ らの 項 で 電 荷 の 符 号 を 逆 に す れ ば よい 。 す な わ ち (y+Y),(z+Z),(A+z),(B+z)を
含 む 項 の 符 号 をす べ て 変 え れ ば 対 称 面 を考
慮 した 式 に な る。
6.3
仮 想 電 荷 の 方 程 式 と電 界
図6・1に
示 した よ う に,電 荷 重 畳 法 で は 電 極 内 部 の 「適 当 な 位 置 に 適 当 な 個
数 」 の 仮 想 電 荷 を置 き,こ の仮 想 電 荷Q(j)を
未 知 数 と して 境 界 条 件 を満 足 す る
よ う に決 定 す る。 仮 想 電 荷 の 個 数 と配置 は 前 も って(入 力 デ ー タ と し て)与 え る の が 普 通 の 方 法 で あ る。Q(j)に じるが,P(i,j)は
よ っ てiな る点 にuj=P(i,j)Q(j)の
「電 位 係 数 」 と呼 ば れ,(6・4)式
か ら分 か る よ うに,電 荷 の 種 類 と位 置,な し,Q(j)に
よ らな い 。 そ こでn個
電 位 を生
あ る い は 付 録1の
電位 の式
らび に被 作 用 点i点 の位 置 だ け に依 存
の 仮 想 電 荷 に よっ てi点 の 電 位 φiは線 形和 , (6・8)
と な る 。 電 極 表 面 上 の 適 当 なn点(輪
郭 点)を と っ て,仮 想 電 荷 群 の 生 じ る電 位
(通常 は 大 地 に 対 す る影 像 電 荷 の作 用 も含 め る)を 電 極 電 圧 に等 しい と置 く。 輪 郭 点 は 電 極 電 圧 と等 しい電 位 の 等 電 位 面 を な るべ く電 極 形 状(輪
郭)に
一致す る
面 にす るた めで あ る 。 仮 想 電 荷 と 輪 郭 点 の 個 数 が と も にn個
で あ る と,(6・8)式
のn個
未 知 数 とす る次 の多 元 連 立 一 次 方程 式(支 配 方 程 式)が 形 成 され る。
のQ(j)を
(6・9)
こ こ で 簡 単 の た めQ(j)をQj,P(i,j)をPijと
書 い て い る。 Steinbiglerの
博士
論 文 で は,仮 想 電 荷 と輪 郭 点 の 数 を変 え,誤 差 の 最 小 二 乗 法 に よ っ て支 配 方 程 式 を作 る方 法 も提 案 され て い る が,こ 電 極 電 圧V1∼Vn(図6・1で
れ に つ い て は 付 録2に 紹 介 す る。
は す べ てV)は
境 界 条 件 と して 与 え ら れ,係
P(i,j)も 仮 想 電 荷 の 種 類 と位 置 が 与 え られ れ ば 決 ま る値 な の で,(6・9)式 Q(1)∼Q(n)が
求 め ら れ る 。 この 電 荷 量(普
含 め て)は 領 域(電 電位,電
極 外)全
数
から
通 は大 地 に対 す る 影 像 電 荷 の作 用 も
体 の 電 界 分 布 を等 価 的 に 与 え る もの で,任
意の点 の
界 を容 易 に 計 算 す る こ とが で きる 。
す な わ ち電 位 φ は(6・8)式 と 同 じ式 で,既 知 の(求 め られ た)Q(j)を
用 い て, (6・10)
か ら計 算 さ れ る 。 電 界 は領 域 分 割 法 の よ うに 電 位 を微 分 す る の で は な く,各 仮 想 電 荷 の 電 界 の 解 析 式(付 録1)を 場 で はr,z方 Fy,Fr,Fzを
向 に つ い て,そ
加 算 す る。 二 次 元 場で はx,y方 れ ぞ れ 電 界 係 数(単
向,回 転 対 称
位 の 電 荷 量 に よ る 電 界)Fx,
使 用 して 次 式 の よ うに 表 さ れ る 。
二 次元場 ;
(6・11)
回転 対 称 場 ;
(6・12)
電 界 の 精 度 は,仮 想 電 荷 の作 る 等 電 位 面 が どの く らい 電極 形 状 に近 い か に依 存 す る の で,二 つ の輪 郭 点 の 中 間 の 電 極 表 面 上(に (し ば しばAP:ド
イ ツ 語 でAufpunktと
相 当す る領 域 中 の 点)に
「検 査 点
呼 ば れ る)」 を と り,こ の 点 の 電 位 が ど
の く らい 電 極 電 圧 と相 違 して い る か を調 べ る 。
6.4 簡 単 な 例 電 荷 重 畳 法 の計 算 原 理 とそ の 問 題 点 を理 解 す る た め に ご く簡 単 な 例 題 を示 す 。 図6・4の 2cm,大
よ う な球 対 大 地(接
地 平 面)の 配 置 の 電 界 を対 象 とす る。 球 の 直 径 を
地 との 離 隔 距 離 を1cm,球
の 電位 を1kVと
す る。
図 の よ う に,輪 郭 点 をz軸 上 の 両 端,す
な わ ち 座 標(0,1),(0,3)に,仮
想電荷
と し て 点 電 荷Q1,Q2を(0,1.5),(0,2)に
置 く。 こ れ に よ っ て 電 荷 と電 位 の 式,
(6・8)式 は,大 地 に対 す る 影像 電 荷 の作 用 も含 め て,
と な る 。 た だ し,単
位 は 〔cm〕 と
〔kV〕 で,Qi/(4π
ε0)=qi(i=1,2)と
して い
る 。 こ れ を 解 く と,
で あ る 。 球 先 端 の 最 大 電 界Emは
求 め たQ1,Q2の
作 用 を計 算 す れ ば よい 。
とな る 。 影 像 電 荷 の 作 用 は電 位 で は マ イ ナ ス に,電 界 で は プ ラ ス に な る こ と に注 意 が 必 要 で あ る。 こ の1.87kV/cmと べ て5.6%相
い う値 は 詳 しい 計 算 に よ る真 値 の1.77と 比
違 す る だ け で あ る。
図6.4 球 対 大 地 の配 置
仮 想 電 荷 の 位 置 は そ の ま まで(0,3)の
点 の 輪 郭 点 を球 側 面 の(1,2)に
合,電 荷 と電 位 の 関係 式 は い くらか 複 雑 に な るが,そ
れ で も未 知 数 が2個
か ら筆 算 で も求 め られ る 。 結 果 は,q1=0.114,q2=1.227で 大 電 界Emは1.84kV/cmと
移 し た場 で ある
あ る。球 先端 の最
な っ て,真 値 との 差 は わ ず か4.0%で
あ る。
こ の計 算 例 か らつ ぎの こ とが 分 か る。 (a) た っ た2個 の 輪 郭 点 と2個 の 電荷(2個
の 未 知 数!)で,か
な り真 値 に
近 い 最 大 電 界 値 が 得 られ る の は驚 くべ き こ と で あ る 。 こ れ は た と え ば 差 分 法 や 有 限 要 素 法 で 領 域 を 分 割 して計 算 す る こ と を想 像 す れ ば 容 易 に理 解 さ れ よ う。 輪 郭 点 の 数 と仮 想 電 荷 の種 類 や 数 を増 や せ ば 計 算 手 順 は そ の ま ま で 高 い 精 度 が 得 られ そ うで あ るが,実
際 にそ うで あ る 。
電荷 重 畳 法 は 原 理 が 簡 単 なた め に影 像 電荷 法 の 一 種 の よ う に考 え られ た り,ま た 誰 に で も思 い つ け る方 法 の よ うに み な さ れ る こ とが あ るが,そ は い わ ば 「コ ロ ン ブ ス の卵 」 で あ る。Steinbiglerが
れ
発 表 す る まで は,誰
も電 荷 重 畳 法 が こ の よ うに 精 度 の 高 い,一 般 的 な電 界 計 算 法 に な る とは 考 え な か っ た の で あ り,こ の 点 か ら電 荷 重 畳 法 を 「Steinbigler法 」 と呼 ん で も差 し支 え な い 。 (b) 計 算 例 か ら も分 か る よ うに,計 算 す べ き配 置 が 与 え られ て も輪 郭 点 の取 り方,仮 想 電 荷 の種 類 と配 置 方 法 に は相 当 の 自由 度 が あ る。 計 算 結 果 が こ れ らに依 存 す る こ と と,良 い 配 置 の 選 定 に は 「経 験 と勘 」 を必 要 とす る こ とが 電 荷 重 畳 法 の 欠 点 で もあ る 。 以 下 に お い て 輪 郭 点 と電 荷 の 配 置 方 法 な ど を説 明す る。
6.5
計 算 上 の2,3の
問 題
6.5.1 仮 想 電 荷 と輪 郭 点 の 配 置 電荷 重畳法 の計 算精度 は仮 想電荷 と輪 郭点の配置 に顕 著 に依存 す るので,良 い 配置 を選ぶ こ とが重 要で ある。輪郭点 は電極 表面上 なので,ま ず 輪郭点 の位 置 を
(a)丸 み の ない 凸部 の 先 端
(b)丸
み の ない 凹 部 の底,角
(c)誘 電体 界 面 と 電極 との 接触 点
図6.5 輪 郭 点 を配 置 で きな い箇所
定 め そ れ に 対 応 させ て仮 想 電 荷 の位 置 を決 め る の が 普 通 で あ る 。 輪 郭 点 は 電 界 値 を 求 め た い 重 要 な箇 所 や,電 置 す る。 外 側 の 電 極(シ
ー ス)や
界変化が急激 な ところでは密 に配
タ ン ク壁,近 接 物 体 の よ うに 電 界 値 を 必 要 とせ
ず,電 位 を 与 えれ ば よ い もの は,わ ず か の 輪 郭 点 と仮 想 電 荷 で も十 分 で あ る 。 図 6・5の よ う に丸 み を帯 び な い 凸 部 や 凹 部 の先 端,2種 面 が 接 触 して い る 箇 所(三
重 点,11.6節)は,二
類 の 誘 電 体 の 界 面 と電 極 表
次 元 場 で も回 転 対 称 場 で も輪
郭 点 を置 く こ とが で き な い。 これ らの 点 は電 界 特 異 点 で 電 界 が 理 論 上 無 限大 ま た は0に
な る点 で あ る 。 丸 み を帯 び な い 凹 部 は実 際 に た と え ば 図6・1(b)の
配置に
あ る よ う に,電 極 と支 持 導 体 との 接 続 部 分 な ど で しば しば 生 ず る。 仮 想 電 荷 の 配 置 は 輪 郭 点 に比 べ さ らに 自由 度 が あ り,す で に述 べ た よ う に 良 い 配 置 を選 ぶ に は い く らか の 経 験 が 必 要 で あ る。 二 次 元 場 の 無 限 長 線 電 荷 や 回転 対 称 場 の 点 電 荷,リ 6・6の
ン グ電 荷 の よ う に断 面 図 で 境 界 に対 して 点 状 に な る もの は,図
よ う に輪 郭 点 に 対 向 し て 境 界 の 垂 線 上 に 置 くの が よ い。 この 垂 線 の 長 さ
aと両 隣 りの 輪 郭 点 間 の 距 離 の 和bと
は適 当 にバ ラ ンス させ る必 要 が あ る 。 す な
わち (6・13)
と置 く と,fが 点)で
小 さす ぎ る と図6・6(b)の
電極 形 状 が 模 擬 で きず,電
よ う に 等 電 位 面 は 輪 郭 点 の 中 間(検 査
位 不 足 に な る。 一 方,fが
大 きす ぎ る と電 荷 が
(a)仮 想 電 荷 と輪 郭 点
(b)fが
小のとき
(c)fが
大の とき
図6.6 輪 郭 点 と仮 想 電荷 の 位 置 の 関係
密 す ぎて,図(c)の
よ う に等 電 位 面 が 正 負 に 振 動 して か え っ て 電 界 誤 差 が 大 き く
な る こ とが あ る う え に,け た 落 ち誤 差 も生 じや す くな る(6.5.2項 fの 最 適 値 は 配 置 に よ って 異 な り,一 般 に0.2∼1.5の らは 電 荷 重 畳 法 の 計 算 経 験 か ら通 常 の 配 置 に はf=0.6を 点 の 粗 な 場 合 は0.5,密
な 場 合 は1.0,一
般 に0.75付
脚 注 参 照)。
範 囲 と され て い る。 筆 者 用 い て い る。 また 輪 郭 近 が 良 い と い う報 告 も あ
る 〔6.2]。 い ず れ に し て も輪 郭 点 が 粗 に な る に従 い,電 荷 は ほ ぼ 一 定 のfに な る よ う電 極 表 面 か ら離 して 配 置 しな け れ ば な らな い 。 6.5.2
電位 係 数 につ い て
(6・9)式 の 係 数 行 列 は 領 域 分 割 法 に お け る電 位 方 程 式 の 係 数 行 列 の よ う に0 項 の 多 い い わ ゆ る疎(ス 係 数P(i,j)の
パ ー ス)行 列 で は な い。 単 一 誘 電 体 の 場 合 に は通 常 電 位
す べ て が0で
数,電 界 係 数,特
な い。 し た が っ て 計 算 時 間 を短 くす る に は,電 位 係
に 回 転 対 称 場 で は完 全 だ 円 積 分 の計 算 を な る べ く速 くす る必 要
が あ る。 た と え ば 回 転 対 称 場 に 輪 郭 点,検 査 点 が そ れ ぞ れn個,計
算 点 がk個,
リ ン グ電 荷 がl個 使 用 さ れ て い る と,検 査 点 で は電 位 だ け 計 算 す る と して も大 地 に 対 す る 影 像 電 荷 も含 め て4(n+k)l回
の 第1種
完 全 だ 円 積 分,4kl回
の 第2種
完 全 だ 円 積 分 の 計 算 が 必 要 で あ る。 完 全 だ 円 積 分 は 数 学 の 書 で は母 数kの が 多 い 。 た と え ばK(k)は[6.3],
べ き級 数 展 開 式 が 与 え ら れ て い る こ と
ま た は,
(6・14)
ここで
E(k)に
つ い て も 同 様 にkま
た はlの 展 開 式 が あ り,と も にkよ
級 数 の ほ うが 収 束 が 速 い 。 しか し,よ
り もlの べ き
り収 束 が 速 い の は 次 の算 術 幾 何 平 均 法 で あ
る[6.4]。 2数a,bに
対 し て,a1=(a+b)/2,b1=√abと
し,以
下
(6・15)
と置 く と,数 列{an},{bn}は
同 じ極 限値,算 術 幾 何 平 均L(a,b)に
収 束 し,た と
え ば第1種 完 全 だ 円積 分K(k)は, (6・16)
で与 え られ る 。E(k)に
つ い て は付 録3に
述 べ る。
電 荷 重 畳 法 で も う一 つ の 問題 は,(6・9)式
を解 く際 に け た 落 ち ※が 起 こ りや す
い こ とで あ る 。特 に電 荷 や 輪 郭 点 の 配 置 が 密 で あ る と起 こ りや す い 。 こ れ は た と え ばj番 目の 電 荷 とk番 とP(i,k)(k列)が
目の 電 荷 が 同 じ種 類 で近 接 して い る と,P(i,j)(j列)
近 い 値 とな っ て,係
数行 列 が 「特 異(singular)」
に 近 くな
るた めで あ る 。 輪 郭 点 が 近 接 す る と係 数 行 列 の2行 が 近 い 値 とな って 同様 な 現 象 が 起 こ る。 こ れ を防 ぐに は 倍 精 度 計 算 ※が 有 効 で,基 本 的 に は 常 に倍 精 度 計 算 と す るの が よ い。
※:数 値 計 算 に は離 散 化 誤 差,打 切 り誤 差,丸 め誤 差,け た 落 ち とい っ た 種 々の 誤 差 を伴 う。 離 散化 誤 差 は連 続 的 に 変 わ る量 を と び とび(discrete)の
値 で 近似 す る た め の 誤 差 で,た と え
ば 積 分 をΔhの き ざみ 幅の 関数 和 で 代 用 す るた め に 生 じる(台 形 公 式,シ
ンプ ソ ンの公 式 な ど
す べ て の 数値 積 分 の)誤 差 であ る。 打切 り誤差 は本 来 無 限 回 の 操作 の必 要 な計 算 を有 限 回 で打 ち 切 る こ とに よ る誤 差 で,無 限 級 数 の和 を 求 め る と きや 反 復 計 算 で収 束 を判 定 して打 ち切 る と きに 生 じる。 ま た丸 め 誤差 は本 来 無 限 あ る い は もっ と け た数 の 多 い 数 を,有 限 の け た 数で 近 似 して 取 り扱 うた め に生 じる。 けた 落 ち は 二 つ の 数a,bが 効 け た 数がa,bの
近 い値 の 数 で あ る と,差(a−b)の
有
有効 けた 数 に比 べ て小 さ くなる こ と を意 味 す る。
け た 落 ち 誤 差 を防 ぐに は倍 精 度 計 算 が 有 効 で あ る。倍 精 度 計算 は,普 通 の 計算(1倍 算)で 一つ の数 字 を1語(た
とえ ば32ビ
ッ ト)で 表 す の に対 し,2語
精度計
で表 現 して 有効 け た数 を
増 や す もの で あ る。1倍 精 度 の 有効 数 字 は 約7け た,倍 精 度 の そ れ は約16け
たで あ る。 な お さ
らに 有効 けた 数 を増 や す4倍 精 度 計算 が あ る 。
6.6
6.6.1
仮 想 電 荷 の 種 類
仮 想 電荷 の条 件
通 常 の 電 荷 重 畳 法 で 用 い る仮 想 電 荷 は,6.1節
で 述 べ た よ う に,二 次 元 場 で は
無 限 長 線 電 荷,回 転 対 称 場 で は リ ン グ電 荷 とz軸 上 の 点 電 荷,線
電 荷 の3種 類 で
あ る。 し たが っ て,こ れ 以 外 の 電 荷 あ る い は 一 般 に 具 体 的 な電 荷 と関 係 の な い ラ プ ラ ス の 式 の解 を使 用 す る こ とが 考 え られ る 。 しか し上 記 の仮 想 電 荷 で非 常 に 一 般 的 な 計 算 法 が構 成 で き て い る た め,新
たに
使 用 す る電 荷 は 少 な くと も次 の 条 件 を満 た さ な け れ ば な ら な い。 (a) 電 位,電 界 が 解 析 的 に 表 され る こ と。 も し数 値 計 算 が 必 要 で あ る とむ し ろ 表 面 電荷 法 を使 用 す る ほ うが 良 い 。 (b) 電 荷 重 畳 法 で は計 算 の 難 しい,ま
た は不 可 能 な配 置 を計 算 で き る こ と。
(c) 計 算 精 度 や 時 間が 改 善 され る こ と。 旧著 に は,二 次 元 場 で 複 素 関 数 を用 い て仮 想 電 荷 の 数 を減 ら した り,計 算 時 間 を短 縮 す る例 が 説 明 され て い る 。 一 つ の 例 は 一 部 の境 界 条 件 を満 足 す る関 数(有 限領 域 の グ リー ン関 数)を 使 用 す る方 法 で,計 算 対 象 は接 地 さ れ た 半 無 限 矩 形 導 体 壁 間 の 円 筒 導 体 チ ャ ネ ル で あ る 。壁 上 で0に
な る よ う な 関 数 を用 い れ ば壁 外
の 仮 想 電 荷 が不 要 に な る 。 しか し,種 々 の 配 置 に対 し て そ の た び に異 な る グ リー ン関 数 を用 い る の で は計 算 法 の一 般 性 が 失 わ れ,面
倒 で あ る。 他 の 例 は厚 み の な
い 箔 状 電 極 の 計 算 で あ る 。 電 荷 重 畳 法 は仮 想 電 荷 が 常 に電 極 内 に な け れ ば な らな い とい う制 約 が あ るが,適
当 な座 標 変 換(等
角 写 像 法)に
よ っ て 箔 形 状 を 円形 に
す る と,内 部 に 電 荷 を お く こ とが で きて,確 か に電 荷 重 畳 法 で 計 算 で き る。 しか し適 用 は あ く まで も二 次 元 配 置 に 限 られ る の で,通 常 は表 面 電 荷 法 で 容 易 に計 算 で き る。 6.6.2
円板 電荷
円 板 電 荷 と い っ て も円 板 上 の 電 荷 密 度 の 分 布 に よ っ て 無 数 の 可 能性 が あ る が, た い て い は 電 位,電
界 を 解 析 的 に表 せ な い。 図6・7の
電 位 一 定 の 円板 電 荷(円 にz=0平
板 導 体)に
限 り,電 位,電
よ う に無 限 空 間 中 に あ る
界 を解 析 的 に表 せ る[6.5]。 特
面 上 に あ る と きの 電 位,電 界 の 式 は, (6・17)
(6・18)
(6・19)
こ こ で,〓,Qは
円板 上 の 全 電 荷
である。
図6.7 円板 電荷(帯 電 円板 導体)
円 板 電 荷 は 先 に 述 べ た(a)∼(c)の が 解 析 的 に 表 され る うえ に,リ の で 計 算 時 間 は 約1/2で
条 件 を ほ ぼ満 た して い る 。 電 位,電
界 の式
ン グ電 荷 と比 べ て完 全 だ 円 積 分 の 計 算 が 不 必 要 な
済 む 。 また 回 転 軸 に垂 直 な 導 体 と い う性 格 か ら,次 の よ
う な種 々 の特 殊 な利 用 が 可 能 で あ る。 (a) 平 た い 電 極 を少 な い 数 の 電荷 で 模 擬 す る場 合 。 (b) 先 端 で 電 界 が 無 限 大 とな る切 断 さ れ た 丸棒 の 模 擬(電
荷 上 で も電 位 が 一
定 な た め 棒 先 端 表 面 に置 く こ とが で きる)。 (c) 厚 み の ない 部 分 を有 す る 特 殊 な(す べ て で は な い)電 極 の 模 擬 。 図6・8に
支 持 円板 を有 す る シー ル ド電 極 を 計 算 す る た め の 電 荷 配 置 と得 られ
た電 界 分 布 を示 す 。 円板 電 荷 で注 意 す べ きこ とは 単 独 に存 在 す る厚 み の な い 円 板 を 円 板 電 荷 で 模 擬 で き な い こ とで あ る 。 す な わ ち こ の よ う な 円 板 を1個(1枚) の 円板 導 体 で 模 擬 し よ う と して も,大 地 や 他 の 電極 の 作 用 で 導 体 が 一 定 電 位 に な らな い た め で あ る。 また 複 数 個 の 半 径 の異 な る 円板 電 荷 を 重 ね る の は,そ
れぞれ
の端 部 が 電 界 特 異 点 で無 限 大 の 電 荷 密 度 で あ る た め,正 確 な模 擬 に な ら な い 。 同 じ理 由 で 穴 の あ い た 円板 導 体 も模 擬 で きな い 。
(a)電 極,輪 郭 点,仮 想 電 荷 の 配置
(b)上
部平 板 上 下 側(大 地 側)の 電 界
図6.8 厚 み の な い平 板 を含 む配置 の計 算例
6.6.3
仮 想電 荷 の一 般化
標 準 的 な電 荷 重 畳 法 に 用 い る仮 想 電 荷 は点,直 の な い 電 荷 で あ る が,よ
の 電位,電
半 径 を そ れ ぞ れa,bと
ン グ)と い う体 積
り一 般 的 な 電 荷 形 状 と して体 積 を 有 す る電 荷 を用 い る こ
とが で き る。 た と え ば 二 次 元 の 場 合,(x,y)座 電 荷 で あ るが,こ
線,曲 線(リ
標 で断 面が だ円 の電荷 はだ円筒
界 は 簡 単 な式 で 表 せ る。 さ らに,だ
す る と,だ 円 筒 電 荷 はa=bの
(厚 み の な い)箔 電 荷,a=b=0の
円 の 長 半 径,短
と きは 円筒 電 荷,b=0は
と き は線 電 荷 に な る とい う融 通 性 が あ る。 た
だ し適 用 は 二 次 元 配 置 に 限 られ る 。 回 転 対 称 場 に つ い て は 考 え ら れ る電 荷 形 状 が 図6・9の
よ う に 整 理 され て い
る[6.6〕 。 図 の 矢 印 は縮 退 の 方 向 を示 し,縮 退 の 少 な い もの ほ ど一 般 的 な 形 状 で あ る。 こ の 図 に よ る と回転 だ 円 体 は有 限 長 線,円 板,点
を縮 退形 状 と して含 ん で い
る の で,回 転 だ 円体 電荷 と リ ング 電荷 を用 い る 通 常 の 電 荷 重 畳 法 よ り も一 般 的 な 電 荷 重 畳法 を構 成 で きる こ と に な る 。 そ れ だ け で は プ ロ グ ラム 上 仮 想 電 荷 の 種 類 を増 や す に す ぎ な い が,球 や だ 円体 電 荷 の 利 点 は 高 電 圧 の 配置 で しば しば 生 じる 球,半
球,回 転 だ 円体 形 状 の 電 極 表 面 に 直 接(表
面 に一 致 させ て)置
くこ とが 可
能 な 点 で あ る。 こ の よ う な電 極 の 一 部 と一 致 す る 電 荷 が 作 る電 界 分 布 は,模 擬 し よ う とす る 電 極 の 作 る電 界 分 布 に近 い と考 え られ る(た だ し前 項 で 述 べ た 円 板 電
図6.9 電荷 形 状 の整 理
荷 は端 部 で 電 界 が 無 限 大 に な る の で 例 外 で あ る)の で,仮
想 電 荷 の 数 を減 ら した
り精 度 を 向 上 させ る こ とが で きる 。 実 際 に一 般 三 次 元 の水 平 配 置 球 ギ ャ ップ に 回 転 だ 円 体 電 荷 を 適 用 して 計 算 し,そ の よ う な効 果 が 報 告 され て い る[6.7]。 問題 は 縮 退 形 状 を含 め て7∼8種
類 もの 仮 想 電 荷 を使 用 す る こ とで,プ
ログラムや入力
デ ー タの作 成 が 面 倒 に な る こ とで あ る。 た だ 回 転 だ 円 体 電 荷 の 電 位,電 あ ま り複 雑 な も の で は な い。
界の式 は
第6章 演習問題 1. 電 荷 重 畳 法 の 簡 単 な 例 を 計 算 す る 。 図 問6・1の 1cm)で,z軸
に対 して 回 転 対 称 な 円筒 電 極(円
こ れ を3個 の 点 電 荷Q1,Q2,Q3で
よ う に 両 端 が 半 球(半
筒 部 分 の 長 さ2cm)が
径
ある。
模 擬 す る。Q2の 位 置 を 原 点 と し,点 電 荷
を そ れ ぞ れ(0,1),(0,0),(0,−1)に
置 く。 電 極 の 電 位 が1Vの
と き,輪 郭 点
(KP)の 位 置 を, (a) 半 球 先 端(0,2)と 円 筒 部 分 中 央(1,0)
(b) 円 筒 部 分 の端(1,1)と
円筒 部 分 中 央(1,0)
の場合 につ いて,各 電 荷 の値 な らび に この 電極 の静 電 容 量 の近 似 値 を求 め な さい 。
(a)
(b)
図 問6.1
2. 前 問 題 の 仮 想 電 荷 を2個
の 点 電 荷Q1,Q3と1個
は それ ぞ れ 半 球 の 中心(0,1),(0,−1)に,線 (軸 上)に 置 く。 輪 郭 点 が 前 問 題 の(a),(b)の
の 線 電 荷Q2と
電荷 は2個 の 点 電 荷 をつ な ぐ線 上 場 合 につ い て,各 電 荷 の 値 な
らび に こ の 電極 の 静 電 容 量 の 近 似 値 を求 め な さ い。 3. 本 文6.6.2項
し,点 電 荷
の 円板 導 体 上 の電 界 と電 荷 密 度 を 求 め な さい 。
第7章 電界 計算法 の比較 と精 度
第3章
か ら第6章
で,代 表 的 な 数値 電 界 計 算 法 と して,領 域 分 割 法 で あ る差 分
法 と有 限 要 素 法,境 界 分 割 法 で あ る 表 面 電 荷 法 と電 荷 重 畳 法 に つ い て 説 明 した 。 2.5節 に述 べ た よ う に,他 に もい くつ か の 電 界 計 算 法 が あ るが これ ら に つ い て は 次 章 で 述 べ る。 電 界 計 算 で は どの よ う な 目 的 の 計算 を,ど ん な 配 置 や 条 件 で 行 う か に よ っ て 適 切 な計 算 法 が 相 違 す る 。 し たが っ て,適
当 な 計 算 法 を 選 ぶ に は計 算 法 の 特 徴 を 知
ら な け れ ば い け な い 。 特 に重 要 な の は 計 算 精 度 で あ る 。 この 章 で は 差 分 法 と有 限 要 素 法 の 比 較,表 面 電 荷 法 と電 荷 重 畳 法 の比 較,全 体 の 比 較 表,さ
ら に計 算 精 度
につ い て 説 明 す る。
7.1
差 分 法 と有 限 要 素 法 の 比 較
差分 法 と有 限 要 素 法 は微 分 を 点 間 の 差 分 で 近 似 す るか,要 素 の特 性 を簡 単 な 関 数 で 近 似 す る か の 違 い が あ るが,ど
ち ら も領 域 の 各 点 の 電 位 φiの連 立 一 次 方 程
式 に な る の で,計 算 上 の相 違 は この 方 程 式 を作 る まで の プ ロ セ ス で あ る。 と こ ろ が4.6節
に述 べ た よ う に,二 次 元 場 で も回 転 対 称 場 で も一 様 に 長 方 形 格 子 で 分 割
した と きの 差 分 法 と,さ
らに 二 分 割 した 三 角 形 要 素 に よ る有 限 要 素 法 は ま った く
同 じ φiの式 を与 え る。 した が っ て 境 界 に お け る い く らか の相 違 を 除 け ば,同
じ
電 位 ・電 界 値 が 得 られ る し精 度 も同 じで あ る。 相 違 点 は有 限 要 素 法 の ほ うが プ ロ
グ ラ ム,入 力 デ ー タ と も複 雑 で,何 倍 も手 間 が か か る こ と だ け で あ る。 比 較 的 簡 単 な単 一 誘 電 体 の 配 置 で 境 界 も複 雑 で な い場 合 に は差 分 法 で な く有 限 要 素 法 を 適 用 す る メ リ ッ トは あ ま りな い とい っ て よ い。 そ れ に もか か わ らず,電 界 計 算 の 分 野 で も有 限 要 素 法 の 利 用 が 増 加 し て き た の は,有 限 要 素 法 の ほ う が 柔 軟 性 が あ り,一 般 的 に複 雑 な 問 題 ほ ど有 利 に な る た め で あ る。 高 次 近 似 関 数 の 利 用 に よ る 精 度 の 向上 は4.7節
で 説 明 した が,他
に 次 の よ う な利 点 が あ る 。
(1) 領 域 分 割 差 分 法 で は通 常 領 域 を座 標 軸 に 平 行 な正 方 形 あ る い は 長 方 形 格 子 で 一 様 に(規 則 的 に)分 割 す る が,有
限要 素 法 で は電 界 の 高 い と こ ろ や 変 化 の 激 しい と こ ろ を
密 に し,遠 方 領 域 を粗 にす る の が 容 易 で あ る 。 ま た座 標 軸 に無 関 係 に分 割 で きる の で,た
と え ば電 極 表 面 で は 法 線 方 向 に分 割 点 を取 れ る な ど,分 割 に 自 由度 が あ
る。 こ れ ら に よ っ て,未 知 数 の 節 約,同 た だ し差 分 法 の ほ うが 分 割(メ
じ未 知 数 の 数 で は精 度 の 向 上 が 図 れ る。
ッ シ ュ生 成)の
容 易 な の は 当 然 で あ る。
(2) 境 界 の 処 理 差 分 法 は 回転 軸 上 や 電 極 表 面 な ど種 々 の境 界 で 特 別 な処 理 の 必 要 な こ とを3.5 節 で説 明 した 。 有 限 要 素 法 で は 方 程 式 が 要 素 の 処 理 を も と に して い るの で,回 転 軸 上 で も特 別 な 考慮 を必 要 と し ない 。 電 極 表 面 上 も常 に 節 点 を 置 くこ とが で きる の で 同 様 で あ る。 さ ら に 第11章
に述 べ る よ う な複 合 誘 電 体 界 面 に お い て も,界
面 上 に節 点 を 置 き,界 面 の 両 側 で 要 素 の 誘 電 率 を 変 え た 式 を 使 用 す る だ け で 済 む。 特 に 有 利 な の は,∂ φ/∂n=0と な る 対 称 面 な どの 境 界 の 処 理 で あ る 。 この 電 気 力 線 が 境 界 に 並 行 で あ る とい う 条 件 は,「 自 然 境 界 」 あ る い は 「断 熱 境 界 」 と も呼 ば れ る が,有
限 要 素 法 で は境 界 値 を指 定 しな い境 界 は 自動 的 に この 条 件 が 満
足 され る の で あ る 。 こ の こ とは た と え ば以 下 の 例 で 示 す こ とが で き る。 図7・1でiを 要 素1,2,3に
∂φ/∂y=0上 の 点 で あ る とす る と,図4.2で 対 す る ∂Xe/∂φiは(4・26)∼(4・28)式
計 算 した よ う に,
で 与 え ら れ る。hx=hyの
と きポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー の微 分 を0と お くと,∂X/∂ φi=Σ ∂Xe/∂φi=0か ら (7・1)
図7.1
自然境 界
〓上 の節 点(二 次元 場)
と な っ て,差 分 法 で 与 え た ∂φ/∂y=0の(3・24)式
にな る。
た だ無 限遠 に 関 して は差 分 法 と 同様 に ど こ で領 域 を 局 限(人 工 境 界 の 設 定)し て,い
か な る境 界 条 件 を与 え るか の 考 慮 が 常 に 必 要 で,2.2節
あ る い は3.5.3項
で 解 説 した 方 法 を用 い な け れ ば い け な い 。 (3) 入 力 デ ー タの 作 成 プ ロ グ ラ ム,入 力 デ ー タが 複 雑 で,作 成 に手 間 が か か る と い う有 限 要 素 法 の 難 点 は,計 算 機 処 理 手 法 の 発 達 に よ っ て,領 域 の 自動 分 割 法 な ど入 力 デ ー タの 自動 作 成 ソ フ トが 開 発 され,か
な りの 程 度 克 服 さ れ る よ うに な っ た。
こ の よ う な デ ー タ作 成 ソ フ トは,CAD(19.1節
参 照)な
どにお ける幾何 形状
モ デ リ ング ソフ トと格 子 分 割 ソ フ ト(メ ッ シ ュ ジ ェ ネ レー タ)と か ら成 る が,有 限 要 素 法 等 の 市 販 ソ フ トウ ェ ア に は た い て い付 属 して い る 。 ま た イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 無 料 の ソ フ トウ ェ ア も無 数 に公 開 され てい る。 い くつ か の 研 究 機 関 も ソ フ ト ウ ェ ア の ラ イ セ ンス 提 供 を行 っ て お り,理 化 学研 究 所 のV―CADと
呼 ば れ る三
次 元 ボ リ ュ ー ム デ ー タ 用 ソ フ ト ウ ェ ア 〔7.1],日本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 の GRID3DSTと
呼 ば れ る並 列 メ ッ シ ュ ジェ ネ レー タ[7.2]などが 利 用 で きる 。
メ ッシ ュ ジェ ネ レー タ の概 要 と動 向 に つ い て は,メ
ッ シ ュの 最 適 化 や 品 質 評 価
も含 め て,文 献[7.3]な どが 参 考 に な る。 この 文 献 に は イ ン タ ー ネ ッ ト上 の 各 種 フ リ ー コ ー ドの 情 報 も記 載 され て い る。
7.2 表 面 電荷 法 と電 荷 重畳 法 の 比較 電 荷 重 畳 法 は まず プ ロ グ ラ ム が 簡 単 で,そ の 最 大 の 理 由 は 電 位 や 電 界 が 式 で与 え られ る こ とで あ る 。 表 面 電 荷 法 は 平 面 電 荷 を用 い る場 合 を除 い て電 位,電
界の
計 算 に 数 値 積 分 が 必 要 で あ る。 さ ら に数 値 積 分 に お け る特 異 点 の 処 理(5.6節), 要 素 形 状 の 模 擬 方 法,電
荷 密 度 を座 標 の 高 次 式 で 表 す 場 合 の処 理,要 素 境 界 で の
連 続 性 な どの 付 帯 条 件,な
ど を考 慮 し な け れ ば い け な い。
第二 に 計 算 時 間 は 一般 に表 面 電 荷 法 の ほ う が 長 い 。 数 値 積 分 を伴 う 回転 対 称 場 の計 算 時 間 は,表 面 電 荷 法 の 要 素 数 と同 じ電 荷 数 の 電 荷 重 畳 法 に比 べ て3-4倍
と
され て い る 。 第 三 に計 算 時 間 と 関係 す るが,電 荷 重 畳 法 は電 極 表 面 が 滑 らか で あ れ ば分 割 要 素 上 で電 荷 密 度 が 一 定 の 簡 単 な表 面 電荷 法 よ りは精 度 が よい 。 こ れ は 電 荷 重 畳 法 で は 電 極 を等 電位 面(必 然 的 に滑 らか で あ る)で 模 擬 す るの に,表 面 電 荷 法 は 表 面 電 荷 を直 接 用 い るた め,特 に よ る 。 旧 著 に は,球 対 大 地(接
に電 極 表 面 付 近 で 誤 差 が 大 き くな る こ と
地 平 面)の
荷 を使 用 した 電 荷 重 畳 法 で は 最 大 で0.2%,未
電 界 計 算 の 誤 差 が,16個 知 数 が 同 じ数 の16要
電荷 密 度 一 定)に 分 割 した表 面 電 荷 法 で は0.9%で
の仮 想 電
素(各
要素 の
あ る結 果 を 紹 介 して い る 。
しか し表 面 電荷 法 で 電 荷 密 度 を高 次 の 多 項 式 で表 し,表 面 積 分 を 十 分 な精 度 で 実 行 す る と,電 荷 重 畳 法 よ り高 精 度 な電 界 計 算 の 可 能 な こ とが 文 献[7.4]に 示 さ れ て い る。 こ れ は 本 来 表 面 に存 在 す る電 荷 を電 荷 重 畳 法 で は内 部 の(離 れ た 位 置 の)仮 想 電 荷 で模 擬 す る た め と され て い る 。 この よ うな 高 精 度 の 計 算 は 最 近 の計 算 機 の 大 容 量 化 で 可 能 に な っ た も の で,さ (SCM)‐
高 速 多 重 極 法(FMM)の
らに発 展 した 曲面 形状 表 面 電荷 法
組 合 せ につ い て は 第9章,10章
で まとめ て
説 明 す る。 また 表 面 電 荷 法 は 次 の よ う な利 点 が あ り,電 荷 重 畳 法 で は 計 算 で きな い 配 置 も あ る。 (a) 入 力 デ ー タの作 成 が 容 易 で あ る。 計 算 プ ロ グ ラ ム が存 在 す る と,表 面 電 荷 法 は電 極 形状(表
面)を 要 素 に分 割 す る だ け で,表 面 電 荷 の 種 類 や 位 置
を 考 え な くて よい 。 つ ま り電 荷 重 畳 法 で 必 要 な仮 想 電 荷 の 種 類,位 置 を決
め る た め の 「経 験 と勘 」 が 不 要 で あ る。 (b) 厚 み の な い,あ
るいは薄い電極の計算 が容易で ある。電荷 重畳法 では仮
想 電 荷 は 通 常 電 極 内 部 に な け れ ば な らな い の で,金 属 箔 の よ うに 厚 み の な い 電 極 は 計 算 が で きな い。 絶 対 に 計 算 で き な い わ け で は な く,図7・2に 示 す よ うな 仮 想 の境 界(点 線)を
設 けて 領 域 を二 つ に分 け て 計 算 す る方 法
が あ る[7.5] 。 こ の 図 で 電極 と境 界 の 両 側 に仮 想 電 荷 を 置 き領 域Aの
電界 は
電 荷7∼12,領
境界 条
域Bの
電 界 は電 荷1∼6で
与 え,輪 郭 点a∼fの
件 か ら電 荷 を求 め る 。 この 方 法 は領 域A,Bと 質 的 に は 第11章 る。 図7・2か
も同 じ誘 電 率 で あ る が,本
に 述 べ る複 合 誘 電 体 の 電 荷 重 畳 法 に よ る 計 算 と同 じで あ ら分 か る よ う に電 極 上 で も輪 郭 点 の2倍
の 数の電荷 が必 要
な うえ に,余 計 な仮 想 の境 界 を作 り余 分 な輪 郭 点 と仮 想 電 荷 を 与 え な け れ ば な らな い の で,た (c) 誘 電 体 の 界 面(境 は 第11章
い て い の 場 合 表 面 電 荷 法 で 計 算 す る ほ うが 良 い 。 界 面)で
は 電 荷 数 が 少 な くて 済 む。 複 合 誘 電体 の 計 算
に説 明 す る が,電 荷 重 畳 法 で は 界 面 の 分 極 電 荷 を模 擬 す る の に ,
界 面 よ り離 れ た 位 置 で 両 側 に仮 想 電 荷 を 配 置 し な け れ ば い け な い。 さ ら に,一 方 の 誘 電 体 が 薄 い 場 合 な どは 適 切 に配 置 す る の が 必 ず し も簡 単 で な い 。 これ に対 して,表
面 電 荷 法 で は界 面 に 直 接 電 気 一 重 層 を 置 くだ け で よ
く,半 分 の 数 の 未 知 数(電 荷)で
済 む上 に 配 置 が 容 易 で あ る。
数 値 計 算 で は 一 般 に プ ロ グ ラ ム 内 容 は複 雑 で も,よ
り一 般 性 が あ り入 力 の手 間
の 少 な い 方 法 は 次 第 に使 用 割 合 が増 加 す る。 こ の こ とは 表 面 電荷 法 と電荷 重 畳 法
図7.2 厚 み の な い電 極 の電 荷 重畳 法 に よる計 算
との 関 係 に も当 て は ま り,曲 面 要 素 に よ る形 状 模 擬 手 法(第9章
に説 明)の 発 展
な ど に伴 っ て 汎用 的 な表 面 電 荷 法 の使 用 が 増 え て きて い る。 重 要 な点 は,差 分 法 と有 限要 素 法 の 関 係 と異 な り,表 面 電 荷 法 と電 荷 重 畳 法 は両 者 を併 用 す るの が 可 能 な こ とで あ る 。 む しろ複 雑 な配 置 で,表 面 電 荷 と電極 内 の仮 想 電 荷 を そ れ ぞ れ 適 当す る個 所 に 配 置 し,積 極 的 に 両 方 法 の 長 所 を 活 用 す る こ とで う ま く計 算 で き る場 合 が あ る 。
7.3
計 算 法 の 比 較 表
2.5節 に,数 値 電 界 計 算 法 は 領 域 分 割 法 と境 界 分 割 法 に 大 別 さ れ る こ と を述 べ たが,計
算 法 の も と に な っ て い る 方 程 式(支
程 式 法,後
配 方 程 式)の 形 式 か ら前 者 は微 分 方
者 は 積 分 方 程 式 法 と呼 ば れ る こ と もあ る。 領 域 分 割 法 は領 域 を有 限個
に 分 割 し分 割 点 の 電 位 を 未 知 数 とす る 方 法 で,差 分 法 と有 限 要 素 法 が こ れ に属 し,境 界 分 割 法 は境 界 と境 界 上 に 存 在 す る電 荷(あ 電 界 を 求 め る方 法 で,表
るい は そ の作 用)を
面 電 荷 法 と電 荷 重 畳 法 が これ に属 す る 。
こ れ ら4種 類 の 方 法 の 主 な 特 徴 を ま とめ て 表7・1に 数 は32bitPC(パ
分 割 して
示す 。表 中の未 知変数 の
ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ)を 使 用 した 場 合 の 概 算 値 で あ る。 旧
著 の 表 で は,未 知 数 の 数 は 領 域 分 割 法 が400‐50000,境
界 分 割 法 が1000以
下で
あ っ た が,現 在 は は る か に 大 き く な っ て い る。 こ の 頃 以 降 の さ ら に大 きな 進 展 は,当 時 大 型 計 算 機 で な け れ ば 出 来 な か っ た 電 界 計 算 が,現 在 は は る か に複 雑 な 問題 を 誰 もがPCで
解 け る よ うに な っ た こ とで あ る。
以 下 で は,領 域 分 割 法 と境 界 分 割 法 とい う区 別 が,次
の よ う な決 定 的 な相 違 を
生 じる こ と だけ を再 度 強 調 した い 。 (a) 領 域 分 割 法 で は 系 の(支
配)方
程 式 か ら求 め ら れ る の が 電 位 で あ る た
め,電 界 を計 算 す る際 の 数 値 微 分 に よ る誤 差 が 大 い に 問 題 で あ る。 こ れ に つ い て は さ らに7.5節
で解 説 す る。
(b) 領 域 が 無 限 遠 に ま で 至 る場 合(開
空 間),境 界 分 割 法 で は 電 荷 の 作 用 が
無 限 遠 で 零 に な る の で 無 限 遠 の境 界 条件 が 自動 的 に満 足 さ れ る 。 領 域 分 割
表7・1
数値 計 算 法 の比 較(原 則 的 に 電界 計 算 に 関 す る内 容)
法 で は適 当 な 箇 所 に仮 想 の境 界(人 工 境 界)を 設 け る必 要 が あ る。 (c) 境 界 分 割 法 は 領 域 分 割 法 に比 べ 分 割 数 が1次 元 少 な い た め,方 程 式(未 知 数)の
数 も1次 元 分 少 な くな る 。 そ の結 果,境 界 分 割 法 の連 立 一 次 方 程
式 は 未 知 数 が 少 な け れ ば 直 接 法 で 解 くこ と が で き る。 境 界 分 割 法 は フ ル (密 な)行 列 で あ る の に 対 して,領 域 分 割 法 の 係 数 行 列 は 大 規 模 で スパ ー ス(疎
な)行 列 に な るの で,3.6.2項
に 触 れ た よ う な特 別 な 方 法 が 必 要 で
あ る。 (d)
しか し記憶 容 量 の点 か らは,境 界 分 割 法 の ほ うが 少 な くて 済 む の は二 次
元,回
転 対 称 場 まで で,三
次 元 配 置 で は係 数 行 列 の 番 号 付 け を工 夫 す る こ
と に よっ て,領 域 分 割 法 の ほ うが む しろ必 要 容 量 が 少 な い 。 た だ し,こ れ は1座 標 に 対 して 同 じよ うな(間 隔 で の)分 割 を した場 合 で,境 で も高 速 多 重 極 法(第10章)の
界分割法
よ うな 細 か い 分 割 が 可 能 な方 法 は も ち ろ
ん 大 容 量 が 必 要 で あ る。 さて この よ う な 長 所 短 所 か ら,各 数 値 計 算 法 が どの よ う な電 界 問 題 に 適 して い る か,言 葉 を か え れ ば与 え られ た 問題 に対 して どの 計 算 法 を用 い る の が 良 い か と い う点 で あ るが,ご
く一 般 的 に は表7・1に
記 した とお りで あ る。 読 者 の 中 に は,
電 界 だ け で な く どん な場 で も有 限 要 素 法 で解 け るの で,こ れ さ え あ れ ば 他 の計 算 法 は不 要 と考 え る 人 が い る か も しれ な い。 有 限 要 素 法 は た しか に もっ と も汎 用 性 の高 い方 法 とい っ て よ く,ほ とん どあ らゆ る場 の解 析 に適 用 され て い る 。 しか し 電 界 計 算 で は 少 し事 情 が 違 っ て い て,有 限 要 素 法 は い くつ か あ る数 値 計 算 法 の 一 つ にす ぎな い 。 こ れ は 第 一 に電 界 の多 くの 問 題 が 高 い 精 度 を 必 要 と し,計 算 機 の 限 られ た容 量 と計 算 時 間 の も とで は,電 荷 重 畳 法 や 表 面 電 荷 法 の ほ うが 精 度 が 高 い た め で あ る。 また 人 体 内 の 誘 導 電 界 計算 の よ う に,複 雑 で 大 規 模 な計 算 に は 有 限 要 素 法 で な く分 割 の 容 易 な 差 分 法 も使 わ れ て い る。 計 算 法 の 選 択 に 関 して,筆 者 の 独 断 的 な意 見 を述 べ る とす れ ば,「 境 界 分 割 法 で計 算 で き る とこ ろ は な るべ く境 界 分 割 法 を用 い よ」 で あ る。 しか し境 界 分 割 法 は あ く まで も ラ プ ラス の 式 の解 を も と に して い るの で,そ きな い。 た と え ば,空 間 電 荷 の あ る場 合(ポ
れ 以 外 の場 に は適 用 で
ア ソ ンの 式)や
導 電 率 が 電 界 に依 存
す る非 線 形 の 場 で は,特 殊 な 問題 を除 い て 領 域 分 割 法 を用 い る しか 手 が ない 。 な お,具 体 的 な 配 置 に 実 際 に計 算 法 を適 用 し,比 較 す る こ と も行 わ れ て い る 。 た と え ば,文 献[7.6]は 高 電 圧 実 験 室 の 配 置 を 有 限 要 素 法,電 荷 重 畳 法,モ カ ル ロ 法 で 計 算 し,文 献[7.7]は よ り線 導 体,凹
み 電 極(固
ンテ
体誘 電体 の凸形 ボ イ
ド),偏 軸 棒 ギ ャ ップ,を 各 種 の 方 法 で 計 算 し比 較 して い る 。
7.4
計 算精 度 の 評価
測定,計 算 を問 わずすべ ての定量的 な解析 では精度が決 定的 に重要 であ る。 明
確 な精 度 評 価 な く して は 定 量 的 な 議 論 は で きな い とい っ て よい 。 電 界 計 算 は 定 量 的 な解 析 に使 わ れ る もの で あ る か ら,計 算 誤 差 は もち ろ ん 非 常 に重 要 で,自 分 の 計 算 した 結 果 の精 度 を常 に把 握 あ るい は評 価 で き な け れ ば い け な い。 と ころ が 現 実 に は残 念 なが ら,計 算 精 度 が お ろそ か に され,誤 差 の不 明 な計 算 結 果 の報 告 さ れ る こ とが しば しば あ る。 実 験 の 場 合 は ま っ た く同 じ条 件 で も測 定 値 が ば らつ くのが 普 通 で あ るが,計
算 で は 同 じ プ ロ グ ラ ム で 計 算 す る 限 り何 度 で
もま っ た く同 じ結 果 が 得 られ る。 そ の た め に,も
っ と も ら しい 値 で あ る と,正
し
い結 果 だ と信 じ込 み や す い 。 さ らに 電 界 計 算 で は次 の よ うな 問 題 が あ る 。 (a) 通 常,計 算 誤 差 を評 価 す る に は実 験 値 と比 較 す る こ とが 行 わ れ るが,電 界 を求 め る実 験,た
と え ば ア ナ ロ グ法 に よ る測 定 は 数 値 計 算 よ り精 度 が は
る か に低 くほ とん ど使 用 で きな い 。 (b) そ の た め 解 析 的 に 求 め られ る配 置 を 選 ん で,数 値 計 算 の 結 果 を解 析 解 (厳密 解)と
比 較 す る こ とが し ば しば 行 わ れ る が,解 析 解 の あ る の は 単 純
な 配 置 に限 られ る。 そ の た め に 実 際 の複 雑 な 配 置 の計 算 誤 差 よ り も低 く見 積 も られ る こ とが多 い 。 (c) 数値 計 算 で 求 め られ る値 に は,電 位,電 界,電
荷 量,電
荷 密 度 な どが あ
る が,電 位 の 値 で精 度 を評 価 す るの は危 険 で あ る。 電 界 の 誤 差 は電 位 よ り 通 常 大 き く,と くに 領 域 分 割 法 で は は る か に 大 き くな る こ とが あ る。 (d) 電極 形 状 と表 面 電 界 の 関 係 と して,次 式 は力 線 の 式,あ
の式 を用 い る こ とが で き る。 こ の
る い は 「Spielreinの 関 係 式 」 な ど と も 呼 ば れ るが,表
面 付 近 の 電 束 密 度 の振 舞 い か ら容 易 に導 出 で き る式 で あ る 。
(7・2)
こ こでnは
電 極 表 面 の 法 線 方 向 単 位 ベ ク トル,Hは
径 の逆 数 の 平 均)で
平 均 曲 率(主
あ る。 た とえ ば 電 極 先 端 が 半 径Rの
曲率 半
球 状 な らH=1/R
で あ る 。(7・2)式 の左 辺 は 電 界 計 算 か ら得 られ る 値,右 辺 は形 状 か ら与 え
られ る値 で あ る。 両 辺 を比 較 す る こ と に よ っ て,た
とえ ば 電 荷 重 畳 法 で は
仮 想 電 荷 に よ る近 似 の 良 さ,す な わ ち計 算 精 度 をチ ェ ッ クで き る。 通 常 両 辺 の 値 は0.5%以
下 の 精 度 で 一 致 しな け れ ば 良 い近 似 と い え な い 。
この 式 で は左 辺 の計 算 に 電 位 の2階 微 分 が 必 要 で あ る た め鋭 敏 な精 度 評 価 が 出 来 る 。 た と え ば 旧著 の例 で は,仮 想 電 荷 の 配 置 が まず い場 合 は,電 位 が5け
た,電 界 が2け
た まで 合 っ て い て も左 辺 の 曲 率 半 径 は1け た ま で
しか 合 わ な い例 を示 し て い る[7.8]。こ れ に 対 して,良 が7け
7.5
た,曲 率 半径 は4-5け
い配置 の場合 は電位
た まで 一 致 す る 。
領 域 分 割 法 の 計 算 誤 差
領 域 分 割 法 で あ る差 分 法,有
限 要 素 法 で の 電 界 の 計 算 誤 差 は,主 に 電 位 か ら電
界 を近 似 的 に(平 均 的 に)求 め る 際 に 生 じる。 この 誤 差 は電 極 配 置 や 分 割 の 細 か さ に依 存 す る 。 必 要 な 精 度 を 得 る の に ど の く らい細 か く分 割 す べ きか に つ い て, 簡 単 な配 置 で の 結 果 を述 べ る。 図7・3の
配 置 で,二
次 元 場,回
転 対 称 場 で 電 気 力 線 に 沿 っ て(x方
向 に)一
様 に 等 間 隔 に 分 割 して電 位 を求 め た と きの 電 界 の誤 差 を調 べ る 。 電 気 力 線 上 の 各 点(格 子 点 あ る い は 節 点)の 電 位 を φ(0),φ(1),φ(2),… る と,電 極 表 面(0点)の (a) E1:電
とす
電 界 値 を 得 るの に 次 の よ う な 方 法 が 用 い られ る 。
極 と最 近 接 点 の電 位 差 を距 離 で 割 っ て 電 界 とす る。 図7・3で
は,
(7・3)
(b) E2:二
次 式ax2+bx+cを
隣 接3点
の 電 位 に あ て は め て 電 界 を求 め る。
図7.3 電 極上 の電界 を求 め るた め の分 割
(7・4)
(c)E3:四
次 式 を 隣 接5点
の 電 位 に あ て はめ る。 (7・5)
中 心 電 極,外 側 電 極 の 半 径 をそ れ ぞ れr,Rと 界 付 近 の 電 界 は,二 K/(r+x)2(同
次 元 場 で はK/(r+x)(同
心 球 形)と
な る こ とが 多 い。Kはrに
す る と,中 心 電 極 表 面 の 最 大 電 軸 円 筒 形),回
転対称 場 では
よ ら な い 常 数 で あ る 。 同心 球
形 の 電 位 分 布 で 電 位 が 正 しい 値 に求 ま っ た と き のE1,E2,E3の
誤 差 を 図7・4
に示 す 。 誤 差 は真 値 か らの 最 大相 対 誤 差 で あ る 。 この 図 か ら も っ と も簡 単 に電 位 差/距 離 と して 求 め た電 界(E1)は
誤 差 が 非 常 に大 きい こ と,分 割 数 を増 や す と
電界 誤 差 が しば しば 分 割 数 の 反比 例 以 上 に減 少 す る こ とが 分 か る。 結 論 と して,電 極 表 面 の 最 大 電 界 を誤 差5%で
求 め る た め に は,電 極 付 近 の 必
要 な 分 割 の お お よ そ の 見 積 も りは,電 界 分 布 がK/(r+x)2の
図7.4 図7.3の 計 算 誤差(同 心 球 形 の場 合)
同 心 球 形 の場 合E1,
E2,E3で 方,図
そ れ ぞ れ 電 極 半 径rの1/20,1/5,2/5程 は 省 略 し た が,電 界 分 布 がK/(r+x)の
10,1/3,1/2程
の 電 位,電 界 分 布 で2%の
7.6
同 軸 円筒 形 の 場 合 は そ れ ぞ れ1/
度 で よ い 。 た だ し,高 電 圧 機 器 の 絶 縁 設 計 や放 電 現 象 の 解 析 な
どで は 多 くの場 合5%よ
電 圧 の5%以
度の分 割 が必 要 であ る。一
り もっ と高 い 精 度 が 必 要 で あ る。 また 通 常 の 高 電 圧 機 器 精 度 を得 る に は,隣 接 す る分 割 点 間 の 電 位 差 が 電 極 間
下 で なけ れ ば な ら な い とい う報 告 もあ る[7.9]。
境 界 分 割 法 の 計 算 誤 差
電 荷 重 畳 法 で は 第6章 点(AP)を
に述 べ た よ う に,輪 郭 点(KP)の
中 間 の 境 界 面 上 に検 査
と り,境 界 条 件 が ど の 程 度 満 足 され て い るか を 調 べ る。 要 す る に そ の
点 で の 電 極 電 圧 と の 差 を調 べ る。KPで
は 境 界 条 件 が 完 全 に 満 足 され て い る の
で,計 算 さ れ た 電位 と電 極 電 圧 と の差 は 一 般 にAPで く な る。 しか し電 界 の 誤 差 はKPとAPの
最 大(絶
対 値 で極 大)に
近
両 方 で極 大 値 を とる こ とが 多 い 。
電 荷 重 畳 法 の仮 想 電 荷 群 で 与 え ら れ る 近 似 的 な電 位 を φ,真 の 電 位 を φrと す る と,電 位 の誤 差, (7・6)
もや は りラ プ ラス の 式 を満 足 す る。 そ こで 誤 差Pの
ポ テ ン シ ャ ル 問題 を 考 え る
こ と に よ っ て 電 界 誤 差 の 検 討 が 行 わ れ て い る[7.10][7.11]。 す な わ ち,電 極 上 で は真 値 φr=Vに
対 して φ は 図7・5(a)ま
こ れ ら は図6・6で
た は(b)の よ うな 分 布 に な る こ とが 多 い が,
説 明 した よ う に輪 郭 点 と仮 想 電荷 の 相 対 的 な 配 置 か ら生 じる。
電 界 特 異 点 の な い電 極 を対 象 に,こ れ らの 分 布 を次 の よ うに 正 弦 波 で 近 似 す る 。
(a)
(7・7)
(b)
(7・8)
こ こでPmは 角 度,nは
電 極 上 の 電 位 誤 差 の 最 大 値,θ は 電 極(球
電 極 を 想 定)表
面 を表 す
分 割 数 で あ る。 この 近 似 を 用 い る と電 界 誤 差 の最 大 値fmは
一般 に次
式 で 与 え ら れ る。
(a)P=Pmsin2nθ
(b)P=Pmsinnθ
図7.5 電 位 誤 差 の二 つ の タ イ プ(o印:輪
郭 点,た だ し実 際 の輪 郭 は曲 面)
(7・9)
こ こで,k=2:球
電 極 の 軸 上 で電 位 誤 差 が(7・7)式 の と き
=1 .5:球 電 極 の 軸 上 で 電位 誤 差 が(7・8)式 の と き =1:そ
の他の とき
ま たlは 輪 郭 点 間 の 距 離 で あ る。 Pmは 検 査 点 電 位 と電 極 電 圧 の 差 と考 えて よ い の で,こ
の 式 は 電 界 誤 差 を評 価
す る の に便 利 な 式 で あ る。fmは 絶 対 誤 差 を意 味 し,相 対 誤 差 はfmを そ の 点 の 電 界 で割 れ ば よ い。 実 際 の電 位 誤 差 は(7・7)式,(7・8)式 分 布 に は な ら な いが,問
の よ う な ピー ク値 一 定 の
題 に して い る付 近 の 最 大 電 位 誤 差 をPmと
すればや は り
(7・9)式 が 適 用 で き る。 また 輪 郭 点 が 等 間 隔 で な い と きは そ の付 近 の 電 極 上 の 電 位 誤 差 分 布 を(7・7)式,(7・8)式
に あ て は め れ ばや は り電 界 誤 差 の 近 似 値 が 得 ら
れ る。(7・9)式 に よ る と輪 郭 点 を密 に してlを 小 さ くす る と電 界 の 誤 差 が む し ろ 増 え る よ う に見 え るが,実
際 に はPmがl以
上 に 減 少 し て 電 界 誤 差 も小 さ く な
る。 しか し境 界 の 分 割 を細 か く して も電 界 の 精 度 は電 位 ほ ど は 良 く な らず,lが 非 常 に小 さ い と電 界 誤 差 は電 位 誤 差 よ りは るか に大 き くな り う る こ とに注 意 し な けれ ば な らな い 。 なお,文
献[7.12]で は電 荷 重 畳 法 で 仮 想 電 荷 の 配 置 の 影 響 を調 べ て い る。6.5.
1項 の(6・13)式,す
な わ ち(仮 想 電 荷 と輪 郭 点 間 の 距 離 / 両 隣 り輪 郭 点 間 の 距
離)と 誤 差 の 関 係 を 円 筒,球,回
転 だ 円体,な
どの 電 極 配 置 につ い て検 討 した も
のである。 第11章
に説 明 す る 複 合 誘 電 体 の 場 合 に は,誘 電 体 の 界 面(境
界 面)に
お いて
境 界 条 件 が どの 程 度 満 足 され て い る か を調 べ る。 す な わ ち2種 類 の 誘 電 体 の そ れ ぞ れ につ い て,界 面 上 のKPの (電束 密 度),接
中 間 に 検 査 点(AP)を
線 方 向 電 界 を計 算,表
と り,電 位,法
線 方 向電界
示 して 比 較 す る。 電 位 の 合 致 度(連 続 性)
に 比 べ て 電 界 の 連 続 性 は相 対 的 に は か な り劣 る の が 普 通 で あ る 。 一 方,表 面 電 荷 法 の計 算 精 度 は これ まで に述 べ た 電 荷 重 畳 法 の 考 え が ほ とん ど そ の ま ま適 用 で き る が,表 で,特
面 に直接 電荷 が存在 す る点 が相違 す る。表 面電荷 法
に滑 らか な 電 極 を滑 らか で な い 形 状 で 模 擬 す る こ とや 不 連 続 な電 荷 分 布 の
使 用 は 表 面 に近 い ほ ど大 きな 電 界 誤 差 を もた らす 。 た と え ば,文 献[7.13]は 電 荷 密 度 を ス テ ッ プ状(区
分 的 に 一 定 の)関 数 で 近 似 し た と きの 誤 差 を検 討 して い
る 。 しか し電 荷 密 度 の 高 次 表 現 や 高 精 度 の 表 面 積 分 に よっ て 表 面 電 荷 法 が 電荷 重 畳 法 以 上 の 高 精 度 を実 現 し得 る こ とを す で に7.3節
で述べた。
複 合 誘 電 体 場 で の も う一 つ の 相 違 点 と して,第11章
に 述 べ る よ う に,表 面 電
荷 法 で は複 合 誘 電 体 は界 面 の 電 気 一 重 層 で 表 さ れ る の で,電 位 と接 線 方 向 電 界 の 連 続性 は常 に満 足 され て い る 。 したが っ て 電 荷 重 畳 法 と異 な り,電 束 密 度(の 法 線 方 向 成 分)の
連 続 性 だ け をチ ェ ック す れ ば よい とい う利 点 が あ る 。 た だ し,電
位 の 局 所 的 な誤 差 が 電 界 で は 拡 大 さ れ て 現 れ る こ とが あ る の で,接
線方 向電界 も
チ ェ ッ クす る こ とが 望 ま しい 。 なお 電極 表 面 の電 界 は,す べ て の 電 荷 の作 用 を積 分 して得 ら れ る 電 界 の 他 に,5.5節 れ る σ/ε0の2通 りが 可 能 な の で,両 用 い る こ とが で きる 。
の(5・16)式 の よ う に,電 荷 密 度 σか ら得 ら 方 を計 算 して 比 較 す る こ と も精 度 の 評 価 に
第7章 演習問題 1. 次 の よ うな 電 界 を計 算 す る の に最 も適 して い る方 法(数 値 計 算 法)を
選択の
理 由 と と も に述 べ な さい 。
(a) 縦 向 きの球 ギ ャ ッ プ(支 持 す る た め の 柄 も含 む)の 最 大 電 界
(b) 送 電 線(鉄 塔 の 効 果 は無 視)下
(c) 薄 い正 方 形 電極 対 大 地 の 配 置(電 界 計 の 校 正 に使 わ れ る)の 電 界 分 布
(d) 誘 電 率 が電 界 に 依 存 す る 固体 材 料 内 部 の 電 界 分 布
(e) 電 磁 界 に よっ て 誘 導 さ れ る 人 体 内 の 電 界 分 布
の地 上 電 界
2. 電 荷 重 畳 法 と表 面 電 荷 法 を比 較 して 長 所 短 所 を述 べ な さい 。 3. 電 界 計 算 の 精 度 の評 価 に用 い られ る,電 極 形 状 と表 面 電 界 の 関係 式(7・2)式 を,曲 率 半 径Rの
電 極 表 面 に つ い て 導 出 しな さ い(図 問7.1参
図 問7.1
照)。
第8章 その他 の方 法
こ れ ま で に 述 べ た代 表 的 な四 つ の 方 法 の ほか に もい ろ い ろ な方 法 が 使 用,あ
る
い は提 案 され て い る。 モ ンテ カ ル ロ 法 の よ う に ま っ た く異 な る計 算 原 理 に よ る も の もあ るが,四
つ の 方 法 の バ リエ ー シ ョ ン とい うべ き も の もあ り,そ れ らを含 め
る とか な り多 数 に 上 る。 こ こ で は電 界 計 算 法 と して 比 較 的 重 要 と思 わ れ る い くつ か を 説 明 す る。 た だ し,主 に周 波 数 の 高 い電 磁 波(電 波)の で 取 り上 げ る の は,モ で あ る 。 ま た,時
計 算 に用 い られ る方 法 は 扱 わ な い。 こ こ
ン テ カ ル ロ法,境 界 要 素 法(BEM),コ
ン ビネ ー シ ョ ン法
間的 に変 動 す る磁 界 に よ って 生 じる場 の 計 算 が,た
とえば人体
内 誘 導 電 界 や 誘 導 電 流 の計 算 で 行 わ れ る が,こ れ らの い くつ か も こ こで 簡 単 に 説 明 す る。 そ れ ら はFDTD法,FI法(あ
る い はFIT法),SPFD法
な どで あ る。
これ らの 方 法 を実 際 に使 用 す る に は媒 質 の モ デ リ ン グや 境 界 条件 の 設 定 な どに つ い て もっ と詳 し く解 説 す る 必 要 が あ るが,こ
こで は 各 方 法 の 特 徴 と相 互 の比 較 を
中心 に 簡 単 に説 明 す る。 ほ か に,過 渡 的 電 磁 界 の解 析 方 法 と して,線 電 流 や 面 電 流 の分 布 を仮 定 し周 波 数 成 分 ご と に電 磁 界 を 計 算 す る モ ー メ ン ト法,人
体 の 誘 導 電 界 や 電 流 の 計 算 で,
人体 を抵 抗 か ら な る 電 流 回路 網 で 構 成 し,こ の 回 路 網 方 程 式 を解 く方 法(「 イ ン ピー ダ ンス 法 」 と呼 ば れ る),格 子 点 で の 物 理 量 に加 え て そ の微 分 値(ま 分 値)も
考 慮 す る,セ
polation profile)法,な
ミ ・ラ グ ラ ン ジ ュ法 の一 種 で あ るCIP(constrained ど もあ る が こ こで は述 べ な い 。
た は積 inter
8.1
モ ン テ カ ル ロ 法[8.1][8.2]
モ ンテ カ ル ロ法(Monte
Carlo method)は,一
般 に数学 や物 理 の 問題 を対応
す る確 率 的 な過 程 に置 き換 え て 解 く方 法 で,偏 微 分 方 程 式 の解 法 の 一 つ で あ る。 電 界 計 算 で は,ラ と も呼 ば れ る が,ジ
プ ラ ス の 式 に従 う よ う な 「ラ ンダ ム 歩 行 」(酔 歩 あ る い は 乱 歩 グザ グ の 勝 手 な 運 動 を させ た試 行 を 意 味 す る)を
させた確率
か ら電 位 分 布 を 求 め る。 こ れ ま で に解 説 した 方 法 の どれ と も全 く相 違 して い る が,空
間 の電 位 を求 め る点 で は領 域 分 割 法 に属 す る。
図8・1の 1点Bjに
よ う な二 次 元 場 で 規 則 的 に 分 割 した 領 域 内 の1点P点
至 る確 率p(P,Bj)を
この 確 率 はP点
か ら,境 界 の
考 え る。 格 子 間 隔 ず つ しか 移 動 で き な い とす る と,
の 隣 接 格 子 点 の 確 率 と次 の 関係 に あ る。 (8・1)
Pが 境 界 上 の 点 の と き は
(8・2)
と定 義 す る と, (8・3)
は,(8・1)式
に よ って 領 域 内 で(正
方格 子 の)差 分 方程 式 を満 足 し,境 界 で 与 え
図8.1 ラ プ ラス式 の計算 領 域
られ た 関 数V(Bj)と を,P点
な る よ う な ラ プ ラ ス の 式 の 解 で あ る。 そ こで 確 率p(P,Bj)
か ら ラ ン ダ ム歩 行 させ てBjに 至 る も の の 比 率 と して 求 め れ ば(8・3)式
か ら φ(P)が 得 られ る。 した が っ て,モ
ン テ カ ル ロ法 は全 体 の 電 位 を計 算 す る こ
とな く,局 所 の 電 位 だ け を求 め る こ と の で きる の が 特 徴 で あ る 。 モ ンテ カ ル ロ法 の可 能性 は前 か ら知 られ て い た が,電 界 計 算 に限 らず た い て い の偏 微 分 方 程 式 は直 接 解 くほ うが 有 効 で あ っ た 。 モ ン テ カ ル ロ 法 の 最 大 の 欠 点 は 格 子 間 隔 ず つ 移 動 して境 界 に 達 す る の に きわ め て 長 い 時 間 の か か る こ と で あ る 。 そ の 後"floating
random
walk method"と
呼 ば れ る 計 算 の 速 い 方 法 が 提 案 さ れ,
電 界 計 算 へ の 応 用 も報 告 さ れ た 。 こ の 方 法 は歩 行 の 方 向 を格 子 点 に 限 らず 任 意 の 方 向 に取 り,し か も1回 の歩 行 長 さ を境 界 まで の最 短距 離 に取 る もの で あ る。 文 献[8.3]は,有 して,モ
限 要 素 法,電
荷 重 畳 法,モ
ンテ カ ル ロ 法 を種 々 の 電 極 配 置 で 比 較
ン テ カ ル ロ 法 は 入 力 デ ー タ,記 憶 容 量 が 少 な くて 済 む の で,複 雑 な一 般
三 次 元 配 置 の 局 所 領 域 の 電 界 計 算 に 適 して い る と述 べ て い る 。 ま た ポ ア ソ ンの 式 へ 適 用 した 論 文[8.4]も 報 告 さ れ た が,そ 経 た現 在,モ
の 後 約4半
世紀を
ン テ カ ル ロ 法 は 電 界 計 算 に ほ とん ど適 用 さ れ て い な い 。 こ れ は 計 算
機 の 発 達 と この 方 法 以 外 の 数値 計 算 手 法 の 進 展 に よ って,当
時計 算 の 困 難 で あ っ
た 複 雑 な 配 置 の 電 界 計 算 が 比 較 的 容 易 に で き る よ う に な った た め で あ る。
8.2
8.2.1
境 界 要 素 法
境 界要 素法 の基 礎
表 面 電荷 法 が もっ ぱ ら電 界 計 算 に使 用 され る 方 法 で あ るの に対 して,境 界 要 素 法(boundary
element
method,BEM)は
よ り一 般 的 な 方 法 で あ る 。 表 面 電 荷
法 は 間接 境 界 要 素 法 と して境 界 要 素 法 の 一 部 と見 な され る こ と もあ る 。 電 界 計 算 に お け る ポ テ ン シ ャ ル φは,2.1節
に 述 べ た ポ ア ソ ン の式,(2・6)式
で 与 え られ る が,誘 電 率 ε0が一 定 で 空 間 電 荷 密 度 が0の 式 に な る。
場 合 ,次 の ラ プ ラス の
(8・4)
一 方,φ
と ψ が2階
Sに お い て,グ
微 分 可 能 な 関 数 の と き,図8・2(a)の
よ う な 領 域 Ω,境
界
リ ー ン の 定 理 か ら 次 の 関 係 が 成 り立 つ 。
(8・5)
φ と ψ が と もに ラ プ ラ ス の 式 を満 足 す る と き は, (8・6)
と な る 。 ψ は 「基 本 解 」 と呼 ば れ る が,三
次 元 場 で は1/(4πr),二
ln(1/r)/2π で あ る。 す な わ ち係 数 を別 に して 三 次 元 で はP点 元 で は 無 限長 線 電 荷 の 作 る 電 位 を示 し,rはP点 Pが 領 域 内 に あ る と き,Pを 境 界Ssと
して,こ
次元 場 で は
に あ る点 電荷 ,二 次
か ら任 意 点 まで の距 離 で あ る。
中 心 とす る 半 径Rの
球 面(二
次 元 場 で は 円)を
の 境 界 で 次 の 積 分 を考 え る。 (8・7)
Ssの 半 径Rを0に
近 づ け る と こ の 積 分 はP点
う に(8・5)式 の 積 分 表 面SをSsと
の 電 位 φ と な る。 図8・2(b)の
そ れ 以 外 に 分 け て,こ
よ
の よ うな操作 を施す
と,一 般 に 次 式 が 成 り立 つ 。 (8・8)
係 数CはPが
領 域 内 部 に あ っ てSsが 球 面 で あ れ ば1で あ る が,滑
(a)
(b)
図8.2 境 界要 素 法 の計 算 領域 と境 界
らか な 境 界
上 な ら1/2と
な る。 こ の よ うに して 得 られ た(8・8)式 は,電 位 が 境 界 で の値 と そ
の法 線 方 向 微 係 数 の 境 界 積 分 に よ っ て 表 され る こ と を示 し,境 界 要 素 法 の 基 本 式 である。 8.2.2
表 面 電 荷 法 との 違 い
媒 質 の境 界(電 極 表 面 と誘 電 体 界 面)だ
け を分 割 し,分 割 要 素(セ
ル,パ
ッチ
な ど と もい う)上 の量 を 未 知 数 とす る の は 表 面 電 荷 法 も境 界 要 素 法 も 同 じで あ る 。 しか し,表 面 電 荷 法 は具 体 的 な電 荷 密 度(誘 電 体 界 面 で は分 極 電 荷 密 度)を 未 知 数 とす るの に対 して,境 界 要 素 法 の 未 知 数 は ポ テ ン シ ャル(電 界 計 算 で は 電 位 φ)と そ の 法 線 方 向 微 係 数 ∂φ/∂n(電 界 で は法 線 方 向 成 分En)の 電 極 表 面 で は 電 位 の 値 は 与 え ら れ(既 知),電 よ うにEnに
荷 密 度 σ は5.5節
二 つで ある。 の(5・16)式
の
比 例 す る の で,二 つ の 方 法 は 同 じで あ る。
一 方,誘 電 体 界 面 で は 電 位 は 既 知 で な く,電 荷 密 度 σは両 誘 電 体 表 面 のEnの 差 に比 例 す る の で,φ
と ∂φ/∂nの 両 方 を 未 知 数 とす る境 界 要 素 法 は 表 面 電 荷 法
と相 違 す る。 こ れ を 説 明 す る に は,基 本 式(8・8)式 に お い て 内 部 の 点 に対 して は C=1で
あ るが,境 界Sの
外 部 を考 え る と(8.6)式 か ら, (8・9)
で あ る 。 こ こ で,φeは
外 部 領 域 で の ラ プ ラ ス の 式 の 解 で,境
向 き が 逆 に な る た め に2項 S上 で は φ=φeで
目 は(8・6)式
界S上
で は法線 の
と符 号 が 異 な る 。(8・8),(8・9)式
か ら
あ る こ と を 用 い る と,
(8・10)
す な わ ち,任 意 点 で の 電 位 はS上
の(内
部 領 域 と外 部 領 域 の)電
位 の法 線方 向
微 係 数 で 表 され,法 線 の 向 きを 考 え る と両 者 の 差 で あ る。 誘 電 体 界 面 の 電 荷 密 度 は こ の 値 に比 例 す る。 こ の よ う な 定 式 化 か ら,表 面 電 荷 法 は 「間 接 境 界 要 素 法 (indirect BEM)」
あ る い は 「間接 法 」 と呼 ば れ る こ とが あ る 。
また 表 面 電荷 法 は,実 際 に 存 在 す る 電荷(分
極 電 荷 も含 め る)を 対 象 と して,
存 在 す る す べ て の境 界 で の 電 荷 の作 用 を加 算(積
分)す
る の に対 して,境 界 要 素
法 は前 節 の 式 の 導 出 か ら分 か る よ うに,任 意 の 閉 曲 面 を対 象 と して よい 。 具 体 的 な媒 質 の 境 界 で な くて も よい の で あ る 。 こ の点 か ら,境 界 要 素 法 の ほ うが 融 通 性 に富 む とい って よい 。逆 に,同
じ誘 電 体 界 面 で 同 じ分 割 な ら境 界 要 素 法 は 未 知 数
が2倍
に な る。 表 面 電 荷 法 は ぎ り ぎ りの 少 な い 未 知 数 で 計 算 法 を構 成(場
現)す
る た め に融 通 性 が 乏 しい の で あ る。
8.3
を表
コ ン ビ ネ ー シ ョ ン 法[8.5][8.6]
コ ン ビ ネ ー シ ョ ン法 は領 域 分 割 法 と境 界 分 割 法 を併 用 す る方 法 で あ る。7.3節 に説 明 した よ う に,領 域 分 割 法 と境 界 分 割 法 はそ れ ぞ れ 長 所,短 所 が 異 な り,適 当 な 計 算 対 象(電
極 配 置)も
異 な っ て い る 。 そ こで そ れ ぞ れ別 な計 算 法 が 適 して
い る 部 分 か ら成 り立 って い る 計 算 対 象 の場 合 に,適 材 適 所 で 各 計 算 法 が 分 担 す れ ば効 果 的 と考 え られ る。 コ ン ビネ ー シ ョ ン法 は,有
限 要 素 法(あ
る い は 差 分 法)
と電 荷 重 畳 法 を組 み 合 せ た計 算 な どが 報 告 され て い る。 計 算 対 象 は2種 類 あ る い は そ れ 以 上 の 個 数 の 複 合 誘 電 体 で 領 域 が 無 限 遠 に ま で 広 が っ て い る場 合 で あ る 。 以 下 文 献[8.5]に
したが っ て この 方 法 の概 略 を述 べ る 。
コ ン ビ ネ ー シ ョ ン法 は全 体 の 領 域 を 有 限要 素 法 で計 算 す る 領 域(FE領 電 荷 重 畳 法 で 計 算 す る領 域(CS領
域)に
域)と
分 け,二 つ の 領 域 の 境 界 と して 結 合 面
を置 く。 結 合 面 は 実 際 の 誘 電 体 界 面 に と って も よい が,全
く仮 想 の 境 界 面 で も よ
い 。 む しろ 全 く仮 想 の境 界 面 に とっ た ほ うが 処 理 が 簡 単 で,ま た 一 度 作 成 して お け ば 他 の 問 題 に も適 用 で きる とい う メ リ ッ トが あ る 。 図8・3に 領 域 内 部 の 節 点 数 をNF,結
合 面 上 の 節 点 数 をNG,CS領
とす る と,結 合 面 上 でCS領
域 の 電 位(境 界 条 件)を
NG個
示 す よ う に,FE
域 の 仮 想 電 荷 数 をNc 与 え る た め にFE領
域 内に
の 仮 想 電 荷 を置 く必 要 が あ る。 そ こで 全 体 の未 知 数 は, (8・11)
とな る。N個 電 位 か ら,CS領
の 未 知 数 が す べ て 求 ま る と,FE領 域 で は(NC+NG)個
域 内 で は(NF+NG)個
の節 点
の 仮 想 電 荷 の 電 荷 量 か らそ れ ぞ れ 電 界 分
図8.3
コ ン ビネー シ ョン法 の 説 明図
布 が 求 め られ る 。 さ て コ ン ビ ネ ー シ ョ ン法 の 支 配 方 程 式 で あ る が,結 合 面 以 外 の 領 域 で は そ れ ぞ れ 通 常 の有 限 要 素 法,電
荷 重 畳 法 の 式 で あ る。 結 合 面 のi点 で は
まず 電 位 の 連 続 条 件 か ら, (8・12)
φFE(i)は 未 知 数 そ の も の で あ る が,φCS(i)は
次式 で 与 え られ る。
(8・13)
ま た 電 束 密 度(の
法 線 方 向成 分)の
連 続 条 件 か ら,結 合 面 に 垂 直 な方 向 の 電 界
Enに つ い て, (8・14)
結 合 面 が 同 一 誘 電 体 中 で あ れ ば も ち ろ ん εFE=εCSで
あ る 。 こ の 式 でEnFE,EnCS
をそ れ ぞ れ 次 式 で 与 え る 。
(8・15)
(8・16)
こ こ でd(i)はi点
と法 線 方 向 の 隣接 節 点i'点 と の距 離 ,Fn(i,j)は
法線 方向電界
図8.4 コ ン ビネー シ ョ ン法 の 方程 式 構 成
係 数(単 位 の 電 荷 に よ る 法 線 方 向電 界,第11章 以 上 で φ(i),Q(i)に
参 照)で
対 し線 形 な方 程 式 が2NG個
領 域 に 一 定 電 位 の 電 極 が な い 場合,図8・4の
あ る。
で き た。 全 体 の 方 程 式 はFE
よ う な行 列 に な る。 こ の 図 で ① は
CS領
域 の 輪 郭 点 に 対 す る 式,②,③
は そ れ ぞ れ(8・13)式,(8・14)式,④
FE領
域 の各 節 点 に対 す る式 で あ る。 電 荷 重 畳 法 と有 限 要 素 法 の 係 数 が 混 在 す る
た め に,一 部 は 零 要 素 が 無 く,一 部(図8・4のA44)は
は
零 要素 の多 い行 とな っ
て お り,方 程 式 の解 法 に配 慮 が 必 要 で あ る 。 未 知 数が 少 な い と きは で きる だ け 直 接 法 で 解 くの が よ い が,多
い と きはSOR法
な ど の 反 復 解 法 や 部 分 行 列 を用 い る
こ とに な る。 計 算 例 と して は,球 電 極 の 下 に 平 板 の絶 縁 物 が あ る場 合 ,平 板 上 に 表 面 電 荷 が 存 在 す る 場 合 や,さ
ら に複 雑 な 配 置 と して 棒 電 極,絶
縁 油,油
浸 紙,
ガ ラ ス,空 気 か らな る 回 転 対 称 配 置 の 計 算 結 果 が 報 告 さ れ て い る。
8.4
FDTD法
8.4.1
とFI法
FDTD法
FDTD(finite
difference time domain;有
限 差 分 時 間領 域)法
は,も
ともとの
時 間 変 化 も含 め た マ クス ウ ェ ル の 式 を差 分 法 で 解 く方 法 で あ る。 時 間 的 変 化 を 追 う 点 に特 徴 が あ る。 三 次 元 配 置 の 電 磁 現 象 の 汎 用 的 な解 析 法 と して,1966年 K.S.Yeeに
に
よ って 提 案 され た[8.7]が,当 時 は 計 算 機 性 能 の 点 で 活 用 で き る状 態 に
至 ら な か っ た。1985年
ご ろ か ら利 用 が 増 加 し,最 近 は と くに ア ン テ ナ な ど 波 源
や 散 乱 体 を含 む 電 波 伝 播 の 標 準 的解 析 方 法 と し て広 く用 い られ る よ うに な っ た。 時 間 を含 め た マ クス ウ ェ ル の式 と して,(2・1)式
の (8・17)
な ら び に,
(8・18)
を用 い る。(8・17)式 の 右 辺 に,磁 界 の エ ネ ル ギ ー 損 失 を表 す κ'Hな る項 を 付 加 す る(κ'は
「等 価 磁 気 伝 導 率 」 と呼 ば れ る)こ
と もあ る。FDTD法
は これ らの
式 と媒 質 の 特 性 を与 え る(関 係 づ け る)構 成 方 程 式 を も とに して 差 分 法 で 解 く。 構 成 方 程 式 は,次 の よ う な2章 の(2・5)式 な らび にBとHの
関 係 式 で あ る。
ε,μ は そ れ ぞ れ 媒 質 の 誘 電 率,透 磁 率 で あ る。 電 波 解 析 の 分 野 に 多 数 の 解 説 が あ る の で,こ
れ 以 上 の 詳 細 は述 べ な い が,座 標 軸 に平 行 な 分 割格 子 の 各 点 に ポ テ
ン シ ャル で は な く電界,磁
界 を定 義 し,一 般 的 に 時 間 を含 め て 電 磁 波(電 波)の
挙 動 を追 う。 こ の と き,安 定 に解 くた め に は,時 (分割 格 子 間 隔)hと
間 ス テ ップ δtは 領 域 分 割 セ ル の 大 き さ
伝 播 速 度υ の 比h/υ よ り小 さ くな け れ ば い け な い(こ
「CFL(Courant‐Friedrichs‐Levy)条
れは
件 」 あ る い は 「Courantの 条 件 」 と呼 ば れ
る)。 伝 播 速 度υ を 光 速 とす る と,こ の 条 件 の た め に低 周 波 で は 電 磁 界 の 変 化 時 間 に比 べ て け た違 い に 小 さい 時 間 ス テ ッ プ に な る 。 そ こ で低 周 波 の 場 合 は,電 磁 波 の伝 播 速 度 を人 為 的 に小 さ く(遅 く)し て条 件 を 緩 和 す る と か,高 周 波(た え ば10MHz)で
計 算 しそ の結 果 を 「周 波 数 ス ケ ー リ ン グ」 に よ っ て 低 周 波(た
と え ば商 用 周 波)に 換 算 す る,と FDTD法
と
い っ た 方 法 も用 い られ る。
は差 分 法 で あ る か ら分 割 は座 標 軸 に 平 行 で,直 方 体 セ ル を用 い る の
が 基 本 で あ る。 媒 質 の 境 界 が 座 標 軸 に 平 行 で な い場 合 に斜 め格 子 を 用 い る方 法 や 斜 交 座 標 の 適 用 もす で に報 告 さ れて い る[8.8]が,いず れ も プ ログ ラ ムが 複 雑 に な る。
8.4.2
FI法[8.9]
FI(finite
integral;有
三 次 元 の 電 界,磁
限 積 分,あ
る い はfinite integral
界 を 時 間 変 化 を 含 め て 追 う 点 でFDTD法
と は 独 立 に1977年
にT.Weilandに
の 式 を も と に し,こ
technique;FIT)法
は
に 近 い が,FDTD法
よっ て 提 案 さ れ た 。 積 分 形 式 の マ クス ウ ェ ル
れ を 離 散 化 し て 計 算 す る 。 前 項 の(8・17),(8・18)式
を境 界
S上 で 面 積 分 す る と,
(8・19)
(8・20)
と な る。 た だ し,回 転 の 面 積 分 を 閉 曲線Cに
沿 うdlの 線 積 分 に書 き換 え,ま た
等 価 磁 気 伝 導 率 κ'Hの 項 も含 め て い る。 こ れ らの 式 を 離 散 化 して 解 くが,Eと Hの 代 わ りにEとBを
変 数 にす る こ と もあ る 。
こ の よ うに,積 分 形 が も と に な る の で,計 算 対 象 の境 界 に応 じた 要 素 形 状 を使 用 す る こ とや,場
所 に よ っ て 格 子 間 隔 を変 化 させ る こ とがFDTD法
よ り容 易 で
あ る。 ま た,媒 質 境 界 で 磁 束 密 度 の 法 線 方 向 成 分 の 連 続 性 や 要 素 の 辺 で 電 界 の 接 線 方 向成 分 の 連 続 性 が 自動 的 に満 足 され る な ど の利 点 が あ る。
8.5
SPFD法[8.10]
SPFD法(scholar
potential finitedifference;ス
変 動 磁 界 に よっ て 発 生 す る電 界,誘 る磁 界(二
カ ラ ポ テ ン シ ャル 差 分 法)は,
導 電 流 を,誘 導 電 流 が 十 分 小 さ い と き発 生 す
次 効 果)を 無 視 して解 く方 法 で あ る。 低 周 波 で の 人体 誘 導 電 界,電 流
の計 算 に用 い られ,人 体 を立 方 体 の セ ル に分 割 して分 割 点(格 子 点)の ス カ ラ ポ テ ン シ ャ ル(電 位)を 計 算 す る。 人 体 の 電気 的 特 性 は導 電 率 だ け を考 慮 し,外 部(空 気 部 分)の る。 前 節 の マ ク ス ウ ェ ル の 式(8・17),(8・18)式
分割 は不要 であ
にお いて 時 間変化 を角周 波数
ω の 複 素 数 で扱 う と, (8・21) (8・22)
で あ る。 た だ し,商 用 周 波 領 域 の 低 周 波 で あ る た め 変 位 電 流 の 項 を 無 視 し て い る 。 また,人 体 の 電 気 的 特 性 は 導 電 率 κ だ け で 考 え る。 変 位 電 流 を無 視 した 場 合 の 電 流 連 続 の 式 は, (8・23)
で あ る。(8・23)式
よ り,導 電 率 κ を有 す る 媒 質(人 体)と
空 気(導
電 率0)と
の 境 界 の境 界 条件 は, (8・24)
で あ る 。 一 方,磁
束 密 度BはdiυB=0の
と ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAで
条 件 よ り,
表 す こ と が で き る 。こ れ を(8・21)式
に代 入 す る と, (8・25)
で あ る 。 回 転 が0の
ベ ク トル は ス カ ラ ポ テ ン シ ャ ル で 表 さ れ る の で
,
(8・26)
と な る 。(8・26)式
を(8・23)式
に 代 入 して 整 理 す る と, (8・27)
と な る 。 媒 質 と 空 気 と の 境 界 の 境 界 条 件 は ,(8・26)式
を(8・24)式
に 代 入 して, (8・28)
で あ る。 し たが っ て,こ
の 式 を 境 界 条 件 と して ,(8・27)式
を 離 散 化 して 解 け ば
よ い。 人体 内 の 誘 導 電 界 や誘 導 電 流 の 計 算 で は,外 か ら印加 され る磁 界 を ベ ク ト ル ポ テ ン シ ャ ルAで
与 え ,こ のAに
求 め る。 こ れ がSPFDな
対 し て,ス カ ラポ テ ン シ ャ ル φ を 差 分 法 で
る 名 称 の 由 来 で あ る。(8・27)式 を積 分 形 式 に 書 き換 え
る と, (8・29)
で あ る(演 習 問 題)。 3.5.4項
に も触 れ た が,滑
らか な境 界 を(座 標 軸 に 平 行 な)等 間 隔 格 子 で 凹 凸
に模 擬 す る こ とは 誤 差 に な る。 この よ う な 「階段 近 似(staircasing)」 つ い て は 文 献[8.11]で 検 討 され て い るが,SPFD法
に 限 らず 差 分 法 に 共 通 す る 問
題 で あ る。 この 文 献 は 具 体 的 に簡 単 な 配 置 で の 誤 差 を調 べ て い るが,低 磁 界 下 の 球 内 の 誘 導 電 界 で は 最 大 値 が20-30%,一 最 大 値 が250%を
の誤差 に
周波一様
様 電界 下の球導 体で はや は り
越 え る誤 差 を 生 じて い る。 こ れ を 防 ぐに は,境 界 上 に 分 割 点
(格子 点)を 取 っ た 不 等 間 隔 格 子 の 適 用 が 考 え られ る が,そ
の付近 では差分 式の
変 更 が 必 要 で,人 体 の誘 導 電 界 ・誘 導 電 流 計 算 の よ う な複 雑 か つ 膨 大 な分 割 の 場 合 に は非 常 に 面 倒 で あ る 。 実 際 に 階段 近似 誤 差 の 有 効 な 防止 方 法 の 開発 や 定 量 的 評価 は ま だ ほ とん ど行 わ れ て い な い。
第8章 演習問題 1. 本 文(8・8)式 のCが
滑 らか な 境 界 表 面 上 で1/2に
な る こ とを 説 明 しな さ い 。
2. コ ン ビ ネ ー シ ョ ン法 の 難 点 を述 べ な さい 。 3. SPFD法 標)で
の 離 散 化 し た式 を考 え る 。 図 問8・1の
よ う な 二 次 元 配 置(x,y座
格 子 間 隔 が す べ て等 しい 正 方 格 子 の場 合,点 線 の 領 域 で電 流 の 出入 りを
考 え て 離 散 化 した 式 を作 りな さい 。
図 問8.1
第9章 曲面形状表面電荷法
一 般 三 次 元 形 状 の 曲 面 物 体 に 対 して は,第5章
や15.5節
に 述 べ る平 面 要 素 よ
り曲 面 要 素 を 用 い る方 が,実 際 に 近 い 模 擬 が で きる 上 に,必 要 な演 算 時 間 や 記 憶 容 量 が 少 な くて 済 む場 合 が 多 い。 電 界 計 算 の 分 野 で,旧 著 の刊 行 以 降 に 著 し く進 展 し たの が 曲 面 形 状 表 面 電 荷 法 で あ る が,内 容 が多 岐 に わ た る の で こ こで独 立 し た 章 に ま と め て 説 明 す る 。 曲 面 形 状 表 面 電 荷 法 は計 算技 法 が 複 雑 で コー デ ィ ン グ の 手 間 も大 きい が,計 算 プ ロ グ ラ ム が 完 成 す れ ば 汎 用 性 が 高 く,魅 力 的 で あ る。 この 章 の 説 明 は,曲 面 要 素 に よ る形 状 の 表 現(模 擬),電
荷 密 度 の 表 現,境
界条件
の 表 現(整 合 法),さ ら に数 値 積 分 を 高 精 度 ・高 速 に 実 行 す る技 法,で あ るが,目 標 は 実 際 の 表 面 電荷 状 態 に な るべ く近 い模 擬 状 態 を 数値 的 に実 現 す る こ とで あ る。
9.1
9.1.1
曲 面 形 状 の 表 現
ベ ジエ 曲 面 に よ る 曲 面 の 表 現
表 面 の 分 割 要 素 を こ こ で は 「パ ッ チ 」 と 呼 ぶ こ と に す る。 まず ベ ジ エ(Bezier )曲 面 パ ッチ[9.1]を例 に して,媒 介 変 数 を 用 い た 曲 面 形 状 の 表 現 方 法 を 説 明 す る。 な お,CAD分
野 で は ベ ジ エ 曲 線 とい う線 分 端 部 の 接 線 方 向 を 自 由 に 制 御
で き る 曲線 が 有 名 で あ る が,ベ
ジ エ 曲 面 は ベ ジエ 曲線 を拡 張 した も の で あ り,面
の接 線 方 向や 法 線 方 向 を 制御 で きる とい う便 利 な長 所 を もつ 。
図9・1(a)の
平 面 三 角 形 の表 現 を考 え る。 空 間 中 の3点P1,P2,P3を
す る 平 面 三 角 形 上 のP点
は,付 録4に
頂点と
説 明 の あ る面 積 座 標(u,υ,w)を
媒介 変 数
と して 次 式 で 表 さ れ る。 (9・1)
容 易 に 分 か る よ う に,P(1,0,0)=P1,P(0,1,0)=P2,P(1/3,1/3,1/3)=P1/3 +P2/3+P3/3な P3の
ど の 関 係 が あ り,結
局,Pは
総 和 が1の
重 み が 付 い たP1,P2,
平 均 値 と 理 解 で き る 。 こ こ で は こ れ を 「ブ レ ン ド」 と 呼 ぶ こ と に す る 。 こ
の よ う に 面 積 座 標 を 用 い れ ば,空
間 図 形 を 数 個 の ベ ク トル の ブ レ ン ド と し て 表 現
で き る 。 平 面 三 角 形 は 面 積 座 標 の 一 次 式 で あ る が,こ
の 考 え方 を 高 次 に 拡 張 す
る。 図9・1(b)の
よ う に6点P1∼P6が
P4,P5P4P3の
三 つ の 組 合 せ に 注 目 し,(9・1)式
(u,υ,w)を
与 え ら れ た と す る 。 先 ずP1P6P5,P6P2 よ り3枚
与 え る と そ れ ぞ れ 平 面 三 角 形 上 の1点(計3点)が
P165,P624,P543と
す る 。 次 に 図9・1(c)の
よ う に,こ
の 平 面 三 角 形 を作 る。 定 ま る。 こ れ ら を
れ ら の3点
(a) 平 面 三角 形
(b) 曲面 三角 形 の 準備
(c) 曲 面三 角 形(二 次)
図9.1 一 次 曲面 パ ッチ と二次 曲面 パ ッチ
を頂 点 とす る
新 た な 平 面 三角 形 を考 え てP点
を次 式 で 表 す 。 (9・2)
(9・1)式 (u,υ,w)と
の 拡 張 を 意 図 し て い る の で あ え て(9・1)式
と同 形 と して い る。 こ の 点 が
と も に ど の よ う に 変 化 す る か を 考 え る 。P(1,0,0)=P1は
か る 。P(1/3,1/3,1/3)は3個
の 小 三 角 形 の 重 心 を3頂
重 心 位 置 で あ る 。 さ ら に(u,υ,w)を
容 易 に分
点 とす る 新 た な 三 角 形 の
変 化 さ せ た 状 況 を 考 え る と,PはP1∼P6
で 定 義 さ れ た 三 角 形 領 域 上 を 動 く 点 で あ る こ と が 分 か る 。 こ こ で,P1∼P6が1 平 面 上 に 無 け れ ば,Pも (9・1)式
平 面 上 に 固 定 さ れ ず 曲 面 上 の 点 と な る 。P165な
で 表 現 し て(9・2)式
ど を
に 代 入 す る と次 式 とな る。
(9・3)
つ ま りPはP1∼P6を(u,υ,w)の
二 次 式 で ブ レ ン ド し た 点 で あ り,こ
二 次 の ベ ジ エ 三 角 形 パ ッ チ と 呼 ぶ 。P1∼P6の
固 定 点 は 制 御 点 と 呼 ば れ,制
れ を 御 点
座 標 を 数 値 で 与 え れ ば,(u,υ,w)に
応 じ た 空 間 上 の 点(こ の 曲 面 パ ッ チ 上 の 点)
を 計 算 で き る 。 な お,P1,P2,P3は
常 に こ の パ ッ チ 上 の 点 で あ る が,高
チ の 場 合 はP4以
次パ ッ
降 は パ ッチ 上 の 点 に は な ら な い こ とに 注 意 を 要 す る。 た と え
ば,P(0,1/2,1/2)はP4の
近 傍 に 位 置 す る が,一
さ ら に 高 次 へ の 拡 張 も 手 順 は 同 様 で,三
般 的 に はP4と
一 致 しな い 。
次 の 場 合 の 結 果 は 図9・2の
記 号 を用
い て 次 式 とな る 。
(9・4)
この 場 合 は,10個
の 制御 点 ベ ク トル の ブ レ ン ドで 曲面 パ ッチ が 表 現 さ れ る 。
9.1.2 曲 面 上 の 接 線 ベ ク トル 次 に 必 要 な の は 面 上 の 接 線 ベ ク ト ル で あ る 。 図9・3の
現 され る 曲 面 上 で は一 般 に,uを
一 定 と し た と き の〓
よ う に(u,υ,w)で
表
υを 一 定 と
図9.2 三次 パ ッチ の制 御 点
した と き の
図9.3 曲面 上 の接 線 ベ ク トル
〓wを 一 定 と した と き の
接 線 ベ ク トル が 基 本 と な る 。 た だ し,u+υ+w=1よ
だ か ら明 らか に),u,υ,wが
る い は 接 線 ベ ク トル
そ れ ぞ れ 一 定 な線 上 の 各2本
の ベ ク トル は 大 き さ
向 きで あ る。 さ ら に
形 の式 が6種
類)の
〓な ど(同
関 係 も一 般 に 成 立 す る 。 これ は 図9・3の
た は 差)は 他 の1本
類の
り(あ
が 等 し く,逆
和(ま
〓の6種
ベ ク トル の2本
と一 致 す る こ とを 意 味 す る 。 結 局,接
の
線 ベ ク トル は6
種 類 中2種 類 の み が 独 立 で あ る。 具 体 的 な 式 は(9・1),(9・3),(9・4)式 か ら
〓が 得 られ る
れ ら は 図9・1(a)の
三 角 形 の 辺 の ベ ク トル 表 示 に 一 致 す る 。 平 面 パ ッ チ な
の 場 合 は(9・1)式 が,こ
を偏 微 分 す れ ば得 られ る。 一 次 パ ッチ
の で 場 所(u,υ,w)に (9・4)式
よ ら な い 定 ベ ク トル と な っ て い る 。 三 次 パ ッ チ の 場 合 は
を偏 微 分 して 形 を整 え る と以 下 と な る。
(9・5)
(9・6)
三 次パ ッチ の 接 線 ベ ク トル は,制 御 点 間 ベ ク トル の 差(図9・2の
小 さな一 次パ
ッチ の接 線 ベ ク トル)を 二 次 ブ レ ン ドした 形 式 で あ る こ とが 分 か る。
9.1.3 制 御 点 座 標 の 決 定 方 法 こ こ まで は 制 御 点 座 標 を既 知 と して い た が,実 際 に は与 え られ た,あ
るい は所
望 す る 曲 面 形 状 に合 わせ て 制 御 点座 標 を定 め る 必 要 が あ る。 目標 とす る 面 形 状 が 既 知 の 場 合,基
本 の3頂
他 の 点(P4∼P10)を
点P1,P2,P3は
そ の 面 上 に 適 宜 配 置 す れ ば 良 い が,
目標 面 上 に 配 置 して もパ ッチ 形 状 は 端 部 で 滑 らか に な ら な
い 。 そ こ でP4∼P10は,所
望 す る 面 の 接 線 ベ ク トル や 法 線 ベ ク トル を 考 慮 して
定 め る。 三 角 形 頂 点 位 置P3((u,υ,w)=(0,0,1))に ∂P/∂u│υ一 定,∂P/∂υ│u一 定を考 え る と,図9・3よ 線 ベ ク トル を意 味 す る 。 三 次 パ ッチ の 場 合,こ
お い て,接 りこれ らはP3位
線 ベ ク トル
置 での辺方 向接
れ ら は(9・5),(9・6)式
で き,
か ら計 算
〓と な る(図9・4参
つ ま り,P3と
隣 接 制 御 点P5,P6だ
三 角 形 頂 点 位 置P3と
しか し な お,三 る 。 一 方,三
け で 定 ま る ベ ク トル と な っ て い る 。 よ っ て ,
そ こ で の 辺 方 向 接 線 ベ ク ト ル が 既 知 な ら,制
を 逆 算 で き る 。P4,P7,P8,P9も
照)。
御 点P5
,P6
同様 で あ る 。
角 形 頂 点 位 置 の 辺 方 向 接 線 ベ ク トル は 既 知 で な い の が 普 通 で あ
角形 頂点 位置 とそ こでの 面の法 線方 向が既 知 であ る場合 は多 いの
で,こ
の と き は 次 式 で 接 線 ベ ク ト ルt1=kτ1,t2=kτ2を
9・5参
照)。
推 定 す る と よ い(図
(9・7)
た だ し,Rは2頂
点 間(辺
の)ベ
ク トル,n1,n2は
τ2は単 位 接 線 ベ ク トル で あ る 。(9・7)式 のkの
単 位 法 線 ベ ク トル,τ1,
導 出 につ い て は付 録5で
説 明す
る が,こ の 値 を採 用 す る と,曲 線 の 両 端 点 と 中央 点 の3点 で接 線 ベ ク トル長 が 自 動 的 に一 致 す る。 この た め,面 積 座 標 か ら実 座 標 へ の形 状 の 引 き伸 ば し率 が 曲 線 上 の全 域 で 概 ね 均 一 と な り,形 状 の ひず み が小 さ くな っ て都 合 が 良 い。
図9.4
三 次 パ ッ チ 頂 点(P3)の
一 方,P10の
接 線 ベ ク トル
図9.5 接 線 ベ ク トルの 推 定
設 定 に は任 意 性 が あ る が,簡 易 的 に 次 の ブ レ ン ド式 で 値 を定 め る
こ と が多 い[9.1]。 (9・8)
あ る い は,P10を(u,υ,w)の
関 数 と して 適 切 に 定 義 す れ ばパ ッチ の辺 近 傍 形 状
の 制 御 も 可 能 に な り[9.2],隣接 パ ッ チ と 辺 上 で 滑 ら か な 接 続(「 幾 何 的 連 続 (G1連 続)」 と も呼 ぶ)も 行 え るが 詳 細 は 省 く。
9.2 面 積 分
9.2.1
法 線 ベ ク トル と 面 積 分
次 に法 線 ベ ク トル の 計 算 を考 え る。2個 の 独 立 な 接 線 ベ ク トル の 外 積 方 向 が 単 位 法 線 ベ ク トルn(u,υ,w)を J(u,υ,w)の w)│で
与 え る か ら,
絶 対 値 を│J(u,υ,w)|
あ る 。 こ こ で,│J(u,υ,w)|
(面 積 素 の 引 き 伸 ば し 率)で
あ り,次
と す る と,n(u,υ,w)=J(u,υ,w)/│J(u,υ, は面 積 座 標 か ら実 座 標 へ の 変 換 の ヤ コ ビ ア ン 式 が 成 立 す る。 (9・9)
よって,曲 面 上 の 面 積 分 は 次式 の よ うに 面積 座 標 上 の面 積 分 と して 実 行 可 能 であ る。
(9・10)
こ の 式 で 関 数Fが1な σ(P)=σ(u,υ,w)を
ら パ ッ チ 面 積 を 与 え る 面 積 分 で あ る。 ま た,
電 荷 密 度 と してF(P)=σr-1,F(P)=σr-2な
位,電 界 を計 算 で き る。 結 局,空
ど とす れ ば 電
間 曲 面 上 の 面 積 分 を 面 積 座 標 上 の 面 積 分 に 変換
で きた の で,以 下,面 積 座 標 上 の 面 積 分 の み を考 察 す れ ば よ い。 つ ま り面 積 分 に 関 して は,空
間座 標 が 関 与 す る手 続 きが完 了 し た こ とに な る。
9.2.2 面 積 座 標 上 の 面 積 分 三 角 形 の 面 積 座 標 上 で の 通 常 の 面 積 分 は,「 分 点 の 面 積 座 標 」 と 「分 点 の 重 み 」 と の 対 で 表 現 さ れ る 数 値 積 分 公 式 に よ っ て 実 行 で き る 。 例 え ば3点
公 式 を採 用 す
る と 分 点 が(u,υ,w)=(4/6,1/6,1/6),(1/6,4/6,1/6),(1/6,1/6,4/6)(図9・6(a) 参 照)で
重 み が す べ て1/3で
あ り,面
積 分 は次 式 とな る。
(9・11)
こ こ で 因 子1/2は,Jを
外 積(平
行 四 辺 形 面 積)で
ま た は 基 準 三 角 形 の 面 積 を1/2と w)=F(P(u,υ,w))│J(u,υ,w)│と
算 出 した た め の 調 整 係 数,
す る 規 格 化 係 数 と 解 釈 で き る。f(u,υ,
見 な せ ば(9・10)式 の 計 算 が 行 え る。 高 次 の 三
角 形積 分 公 式[9・3] の使 用 方 法 も3点 公 式 と同 様 で あ る 。 参 考 の た め 図(b)に73点 公 式 の 分 点 を示 す 。 三 角 形 形 状 に 応 じた対 称 的 な 分 点 配 置 と な っ て い る。 な お, 分 点 の(u,υ,w)が
定 数 な の で,パ
ッチ の 位 置,接 線 ベ ク トル の ブ レ ン ドの 重 み
も定 数 とな る。 こ れ らの 定 数 を 予 め 計 算 してお け ば 分 点 の座 標 や 接 線 ベ ク トル を 高 速 に計 算 で き る。73点 公 式 な どの 単 一 公 式 で は精 度 が 不 足 す る場 合 は,三 角 形 領 域 を 階層 的 に 多 分 割 して 三 角 形 公 式 を複 合 使 用 す る こ と もあ る。 図(c)に こ の例 を示 す が,電 界 計 算 点 近 傍(こ 表 面電 荷 に よ る電 位,電
の 例 で は重 心 付 近)に 分 点 が 集 中 して い る。
界 の 計算 に お い て は,特 異 点 処 理 の常 套 手 段 と して 極
座 標 変換 が 使 用 さ れ る。 そ こで,(u0,υ0,w0)を
極 と して 極 座 標 変 換 を行 う方 法
(a)3点
(b)73点
公式
(c)階 層 的複 合 公 式
公式
図9.6 各種 積 分 公式 の分 点
を 説 明 す る 。 面 積 座 標 を 図9・7(a)の ,w)=(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1),(u0,υ0,w0)に と し,三
角 形 重 心 か らp1に
線 分 の 長 さ をp0pi,こ
対 応 す る 位 置 をp1,p2,p3,p0
向 か う 方 向 に 角 度 θ の 基 準 線 を と る 。p0とpiを
結 ぶ
の 線 分 の 角 度 を θiと す る 。 こ の 正 三 角 形 の 各 頂 点 か ら対
辺 ま で の 距 離 を 単 位 長 さ と す る と,辺 成立す る。
様 に 正 三 角 形 と し て 作 図 す る 。(u,υ
長 は2/√3,面
積 は1/√3と
な り,次
式が
(a)面 積 座 標
(b)極 座 標 変 換
図9.7 面 積 座 標 か ら極 座 標へ の変 換
(9・12)
以 上 の 準 備 の 下 でp0を
極 と す る 極 座 標 を 考 え る 。 図9・7(b)の
角 度 θ を な し 距 離 ρ に 位 置 す るp点 cos(θ −2π/3)+υ0と
よ う にp0か
ら
の 面 積 座 標 は,u=ρcosθ+u0,υ=ρ
表 現 で き る 。 因 子cosは
線 分p0pのu,υ
方 向 長 さ を幾 何 学
的 に 算 出 し た こ と を 意 味 す る。 こ の 変 換 の ヤ コ ビ ア ン を 計 算 す る と
〓が 成 立 す る こ とが わ か る。 よ っ て,極 座 標 変 換 時 の 面 積 分 は 次 式 で 表 さ れ る。 (9・13)
た だ し,ρ(θ)maxは め る(図9・8参 結 局,極
θ1∼ θ2,θ2∼ θ3,θ3∼ θ1+2π
照)。 図 中 のA,Bは
座 標 変 換 を 実 行 す る と,被
の 位 置 で はf(u,υ,w)の
の 区 間ご とに幾何 学 的に 求
適 宜p0p1,p0p2,p0p3に 積 分 関 数 がf(u,υ,w)ρ
読 み替 え る と良 い 。 の 形 式 と な り,ρ=0
特 異 性 が 緩 和 され る。
電 位,電
界 の 計 算 で は,一 般 に(u0,υ0,w0)は
三 角 形 の 頂 点,辺
上,三
角形
の 内部,外
部 に 位 置 し,こ れ に 応 じて θ,ρ と も に積 分 区 間が 変 化 す るが,19通
りの場 合 を考 慮 す れ ば 自由 な極 位 置 で 変 換 を 実 行 で きる 。 こ の と き,ρ の積 分 区 間は 一 般 に ρ(θ)min∼ ρ(θ)maxと
な お,〓
な る が,以
下 で は そ れ ぞ れρmin,ρmaxと
は どち ら も一 次 元 の 積 分 で,ガ
表 記 す る 。
ウ ス の積 分 公 式 な ど を 用 い
図9.8
ρmaxの
図9.9 線積 分 の変 換
計 算
て計 算 で き る。 積 分 公 式 が∫01dsと い う形 で 与 え られ て い る と き は,図9・9の うに 変 数 をsに 線 形 変 換 して〓 9.2.3
Log-L1変
よ
な ど とす る 。
換 に よる準特 異積 分
5.6.3項 に も述 べ た が,動 径 方 向(ρ 方 向)の 一 次 元積 分 をLog-L1変 て準 特 異 積 分 を行 う方 法 を説 明 す る 。 この 変 換 は 図9・10に 9と 同様 な 変 数sに 対 す る積 分 で,結
換[9.4]し
示 す よ うに,図9・
局 次 式 と な る。
(9・14)
こ こで,Rは
図9・10に
与 え て い る が,積 分 公 式 の 分 点 を 極 近 傍 で は 密 に,遠
方 で は疎 にす る 変 換 で あ る。 ま たDは,実 との 実 垂 直 距 離d(図9・11参
照)で
座 標 の 極 位 置P0と
積 分 値 計 算 点C
定 ま る 定 数 で あ る 。 例 え ば ρ の射 線 毎(θ
毎)に〓と
規 格 化 す る 。 な お,前 項 に
述 べ た よ う に,〓
で ある。規 格化式 の分 母 は
P0位 置 で の 積 分 路 方 向 の接 線 ベ ク トル 長 で あ る が,P0位
置 で のdρ か ら 「dρに
対 応 す る 実 空 間 微 小 距 離 」 へ の 引 き伸 ば し率 で も あ る 。 実 際 に は,Cの が 与 え ら れ,P0お 点Pの
中 でCを
よ び(u0,υ0,w0)は
実座 標
未 知 で あ る こ と も多 い 。 こ の と き は 面 上
鉛 直 上 方 位 置 とす る もの を,評 価 関 数〓
かつ〓 (C-P)=0な 図9・12に(1/3,1/3,1/3)の
ど と して ニ ュ ー トン法 な どで 探 索 す る と よ い。 位 置 を極 と した と きの 極 座 標 変 換 時 の 分 点 お よ
図9.10
Log‐L1変
図9.11 準特 異 積 分 点 と極 位 置
換
(a) 極 座標 変換 時
(b) 極 座 標 変換+Log‐L1変
換時
図9.12 積 分 の分 点
び 極 座 標 変 換+Log-L1変 (16×16×3点)と
換 時 の 分 点 の 例 を 示 す 。(a)(b)の
した 。 図9・6と
分点数 は同数
比 較 す る と,極 座 標 変 換 に よ り分 点 配 置 が
極 周 辺 で 密 とな る こ とが 分 か る。 ま た,Log-L1変
換 に よ りさ ら に極 近 傍 に 分 点
が 集 中 し,極 近 傍 で の 積 分 精 度 の 向上 に 寄 与 す る こ とが 分 か る。
9.3 電 荷密 度 の 表現 こ こで は 曲面 形 状 の 表 現 に用 い た ベ ジエ パ ッチ よ り一 般 的 な ラ グ ラ ン ジ ュ 補 間 多 項 式[9.5]を採 用 して,電 荷 密 度 σ(u,υ,w)の 表 現 を考 え る 。 一 次 の σ は具 体 的 に は 次 式 で 表 現 され る。 (9・15)
た だ し,σ1,σ2,σ3は3頂 ,w)と
点 で の 電 荷 密 度 で あ る 。 一 般 的 に は σ=ΣiσiNi(u,υ
記 述 で き,Ni(u,υ,w)は
形 状 関 数 と呼 ば れ る。 形 状 関 数 と い っ て も こ こ
で は 「空 間 形 状 の 表 現 」 に 使 用 し て い る の で は な い が,通 15)式 は(9・1)式 方,二
称 に 従 っ て い る 。(9・
と 同 形 で あ り 形 状 関 数 は 座 標 の ブ レ ン ド表 現 と 考 え て 良 い 。 一
次 の σは 次 式 とな る 。
(9・16)
た だ し6点(各
点 を こ こ で は ノ ー ド と呼 ぶ)の 番 号 は 図9・1(b)と
これ らの 関 数 の特 徴 は,例
え ばN1=u(2u-1)は1番
∼6番 ノー ド位 置 で は 値 が0と の 性 質 を持 ち,(9・3)式
同 じ とす る 。
ノ ー ド位 置 で は値 が1で2
な る こ と で あ る(図9・13参
照) 。N2∼N6も
同様
の 二 次 ベ ジ エ パ ッチ と は性 質 が 異 な る。 三 次 以 上 の 形 状
関 数 も広 く知 られ て い るが,通 常 の 電界 計 算 で は電 荷 密 度 は 二 次 表 現 で 十 分 で あ る こ とが 多 い 。 な お,形 状 表 現 に は 端 部 接 線 制 御 が可 能 なベ ジエ パ ッチ を使 用 し,電 荷 密 度 の 表 現 には ノ ー ド値 が1ま
た は0に な る ラグ ラ ン ジ ュ 多 項 式 を使 用 す る の は 以 下 の
理 由 に よ る。 形状 の 「端 部勾 配 の不 連 続 」 は 角(か
ど)を 生 成 して電 界 強 度 を大
(a)u(2u-1)
(b)υ(2υ-1)
(c)4uυ
図9.13 二次 の 形状 関 数 の例
き く変 動 させ る が,ベ
ジエ パ ッチ を用 い れ ば角 の生 成 を回 避 で き る。 一 方,電 荷
密 度 表 現 に ラグ ラ ン ジ ュ 多 項 式 を用 い る と,電 荷 密 度 分 布 の 一 部 が ノ ー ド位 置 で 0に な り,こ こ で の特 異 積 分 に 零 因 子 と して作 用 し有 利 で あ る。 通 常 はパ ッチ(分 割 要 素)を
複 数 枚 使 用 す る が,要 素 の接 続 線 上 な ら び に接 続
頂 点 上 の 電 荷 密 度 を,隣 接 要 素 の 値 と同 じ(連 続)と す る か ど う か とい う選 択 が あ る 。 滑 らか な 曲 面 上 で は電 荷 密 度 の 値 は連 続 的 に 変 化 す る の で,電 荷 密 度 の値 (σ1∼σ6)を 隣 接 要 素 と 共 有 させ た 方 が 自然 で あ り,精 度 も よ く な る 。 し か し, 形状 の 角 部 や 媒 質 の不 連 続 部 な どで は 電 荷 密 度 は必 ず しも連 続 で な い の で この 原 則 は 当 て は ま ら な い。 な お,隣 接 要 素 と電 荷 密 度 を連 続 的 に 表現 す る こ と を 「適 合 」,不 連 続 に 表 現 す る こ とを 「非 適 合 」 と呼 ぶ こ と もあ る。 適 合 表 現 と非 適 合 表 現 とで は,電 荷 密 度 表 現 に必 要 な 未 知 数(ノ 方 程 式 の 元 数(=境
ー ドの 電 荷 密 度 値)の 総 数 が 相 違 す る の で,解
くべ き
界 条 件 式 の 個 数)も 相 違 す る点 に注 意 を 要 す る 。
9.4 境 界条 件 の 表現 方 法 表 面 電 荷 法 に よ る 静 電 界 計 算 で は,導 体 境 界 に て 電 位 φが 指 定 値 φ0と一 致 す る(φ − φ0=0)こ
と と,誘 電 体 境 界(界
面)に
で あ る こ と,す な わ ち界 面 の 表 値(Dnface)と −Dnback=0)こ
て電束 密 度法線 方 向成分 が 連続
裏 値(Dnback)と
が 一 致 す る(Dnface
とが 要 請 さ れ る。 理 想 的 に は形 状 を表 現 す るパ ッチ 上 の あ らゆ る
位 置 で この 条 件 を満 足 させ た い が,こ
れ は計 算 モ デ ル(形 状 や 電 荷 密 度 の 表 現)
の 近 似 誤 差 に よっ て も,計 算 時 間 の 制約 に よっ て も不 可 能 で あ る。 特 に,電 荷 密 度 表 現 に用 い る 未 知 数 の 総 数 は 有 限 個(N個)で
あ る か ら,未 知 数 を 連 立 一 次
方 程 式 の解 と して 数 値 的 に 求 め る た め に,境 界 条 件 式 もN個 あ る。N個
に集約 す る必要 が
の 境 界 条 件 式 を 適 切 に 作 成 す る 汎 用 的 な手 法 と し て は,モ ー メ ン ト
法(重 み 付 き残 差 法 と ほ ぼ 同 義)が 重 み付 き残 差 法,後 も解 説 して い る。
標 準 的 なの で,ま ず こ れ を 説 明 す る。 な お,
で 述 べ る ガ ラー キ ン法 な ど に つ い て は有 限 要 素 法 の4 .5節 で
通 し番 号 でi番 ノー ド(i=1∼N個)に
て 定 義 され た 電 荷 密 度 値 σiはi番 ノ ー
ドを 含 む 要 素 上 に 形 状 関 数 に応 じた 分 布 で σ を 「張 る 」(図9・13参
照)。 こ の
影 響 領 域 をSiと 表 示 す る。 前 節 で 述 べ た 適 合 表 現 の 場 合 はi番 ノー ドを含 む全 要 素 がSiの 構 成 要 素 と な る 。Siは 幸 いN種
類 存 在 し,し か もSj≠iと は 必 ず 異 な
る領 域 とな る。 非 適 合 表 現 の 場 合 は 電 荷 密 度 値 の 通 し番 号iを1∼N'と σiの 関 与 の あ る 要 素 の み でSiを 定 義 す れ ば,や
して,
は りN′種のSi(≠Sj≠i)が 得 られ
る 。 そ こ で誘 電 体 境 界 の場 合 は 境 界 条 件 と して 次 式 を採 用 す る 。 (9・17)
こ こで,ωiはSi上
で 定 義 さ れ る 重 み 関 数 で あ る。 導 体 境 界 の場 合 も被 積 分 関 数
を φ−φ0に 変 更 す る だ け で あ る 。 ωi=1と 境 界 条 件 の 満 足 具 合(0か
す れ ば(9・17)式 は,Si上
の平均 的 な
ど う か)を 表 現 す る式 で あ る。 こ の 値 が0な
的 に は境 界 条 件 が 満 足 され て い る とい う の が,モ
ー メ ン ト法(重
ら ば平 均
み付 き残 差 法)
の考 え方 で あ る。(9・17)式 の場 合 はSiを 通 過 す る電 束 本 数 の 連 続 に まで 条 件 を 緩 め た と も解 釈 で き る。 実 際 に は,ωiを1で
は な く,ωiの 形 状 関 数(関
連 要 素 個 あ る)と
同 じ とす る
こ とが 多 い。 この 場 合 は(9・17)式 はSi上 の 重 み 付 き平 均 と して境 界 条 件 を表 現 す る 。 σiの の 形 状 関 数 はi番 ノ ー ド位 置 で値 が ピー ク に な る か ら,i番
ノ ー ド位 置
の 満 足 具 合 を重 視 した 重 み 付 き平 均 と な る。 この 方 式 は特 に ガ ラ ー キ ン法 と も呼 ばれ る。 曲 面 要 素 を用 い る表 面 電 荷 法 の 場 合 は(9・17)式 を解 析 的 に 処 理 で きず, 数 値 面 積 分 を行 う必 要 が あ るが,こ
の 点 を い とわ な け れ ば ガ ラー キ ン法 の 適 用 は
容 易 で あ る 。 数 値 面 積 分 の 方 法 は す で に説 明 した と お りで あ る。 しか し,Dnの 計 算 に既 に 数 値 面 積 分 を行 っ て い るの で,(9・17)式
は 実 は二 重 の 数 値 面 積 分 を
行 わ ね ば 計 算 で きず,計 算 負 荷 が きわ め て 高 い 。 実 用 的 に は 計 算 負 荷 を低 減 す る工 夫 が 必 要 で,代 表 的 な方 法 は2種 類 あ る 。 一 つ は(9・17)式 の 数値 面 積 分 精 度 を緩 め る 方 法 で あ る。(9・17)式
はそ もそ も平 均
的 な 意 味 しか もた な い と割 り切 っ て必 要 精 度 を緩 め れ ば,計 算 速 度 が 改 善 され 実 用 的 な解 法 に な る。 こ の方 法 は,他
の有 効 な計 算 手 段 が 少 な い角 点 や 稜 線 近 傍 の
処 理 に 特 に 有 効 で あ る。 も う 一 つ は重 み 関 数 ωiに δ関 数 を採 用 す る 方 法 で あ る。 要 す る に面 積 分 を1点 で の境 界 条 件 式 に 置 き換 え て 面 積 分 を回 避 す る方 法 で あ り,一 般 に選 点 法(ポ
イ ン トマ ッチ ング)と 呼 ば れ る 。 選 点 位 置 は 可 能 な ら ノ
ー ド位 置 を選 択 す る こ とが 多 い が
,次 の場 合 に は不 都 合 が 生 じる。
(a) 電荷 密 度 表 現 に 非 適 合 部 が あ れ ば境 界 条 件 の数 よ り未 知 数 の総 数 が 大 き くな る。 (b) 誘 電 体 角 点 や稜 線 上 の ノ ー ドで はDnを
正 し く計 算 で き ない 。
(c) σ を二 次 表 現 した と きの 辺 中 点 の ノ ー ド位 置 で パ ッチ の 接 続 が 辺 上 で 滑 らか で な い と きに(b)と 同様 の 不都 合 を生 じ る。 この よ う に 選 点 法 に は 制 約 が 多 い が 適 用 可 能 な ら計 算 速 度 を大 幅 に改 善 で き る。 た だ し,解 の 安 定 性 は ガ ラ ー キ ン 法 に 及 ば な い 。 筆 者 ら の 場 合 は,(a), (b)は
ガ ラ ー キ ン法 を 適 用 し,(c)は
滑 らか な 接 続(G1接
続)が
可 能 なパ ッ
チ[9.3]の使 用 で 対 応 して い る。 この 方 法 に よ り経 験 的 に は相 当 に 複 雑 な形 状 の 系 で も有 意 な 数 値 解 が得 られ て い る 。 一 般 論 と して は要 素 の 次 数 や 境 界 条 件 整 合 法 の 選 択 に お い て は,連 立 一 次 方 程 式 の 数 値 解 法 の性 質 も加 味 した総 合 的 な 判 断 が 必 要 で,た
と え ば 次章 に 述 べ る 高速 多 重 極 法 な どの 高 速 解 法 を採 用 した上 で,そ
れ に適 した選 択 を行 う こ とが 望 ま しい。
第9章 演習問題 1. 高 次 の ベ ジ エ 曲 面 パ ッ チ で は,P1,P2,P3以
外 の点 は曲面上 に ない ことを
説 明 しな さ い。 2. 本 文(9・12)式 3. 本 文9.2.2項
を導 出 しな さい 。 の 図9・7に
cosθ+u0,υ=ρcos(θ
お い て,距
−2π/3)+υ0と
離 ρ に 位 置 す るp点
の 面 積 座 標 は,u=ρ
表 され る こ と を説 明 し な さ い。
第10章 高速多重極法
高 速 多 重 極 法(fast したN体
multipole method:FMM)はV.Rokhlinが1983年
間相 互 作 用 のO(N)計
ー ダの 数 を 意 味 す る 。N体
に提 案
算 ア ル ゴ リ ズ ム で あ る[10.1][10.2]。O(N)はNの オ
間 相 互 作 用 の 計 算 に は 古 典 的 に はO(N2)回
必 要 で あ る と考 え られ て い た が,FMMを の 数 値 計 算 が 可 能 と な る 。 境 界 要 素 法,表 計 算 法 に 対 して もFMMが
用 い れ ばO(N)の
の演 算が
演 算量 で実用精 度 内
面 電 荷 法 な ど のN×N密
行 列 を扱 う
適 用 可 能 で,必 要 な 記 憶 容 量 と 演 算 回 数 と をO(N)
に まで 激 減 させ る こ とが で き る。 この 章 で は,FMMア
ル ゴ リズ ム の 骨 子 を 解 説
す る が,空 間 を分 割 す る 木 構 造 を 用 い た分 割統 治 法 の適 用 と,場 の 級 数 展 開 表 現 とを う ま く使 っ た,大 変 に効 率 の 良 い 計 算 手 法 で あ る。 説 明 の 都 合 上,最 初 に ツ リー 法(tree
method)[10.3]と 呼 ば れ る方 法 を説 明 す る。 な お,筆 者 の1人
が執筆
を分 担 した 文 献[10.4]に も基 本 的 に本 章 と同 じ内 容 が 記 載 され て い る。
10.1
ツ リー 法
ツ リー 法 もN体
間 相 互 作 用 の 高 速 計 算 ア ル ゴ リズ ム の 一 種 で あ り,こ の ア ル
ゴ リズ ム を使 用 す る と演 算 回 数 はO(Nlog え 方 に 高 い 共 通 性 を 持 ち,ツ
N)と
な る 。 ツ リー 法 とFMMと
は考
リー 法 に追 加 と修 正 を加 え る こ と でFMMア
ルゴ
リズ ム が 得 られ る とい う位 置 付 け にあ る。 図10・1(a)に
多 数 の 点 電 荷 が 描 か れ た 図 を示 す 。 こ の 例 で は 約700個
の点が
描 画 さ れ て い る 。 こ の う ち,中 央 や や 右 上 に1点 を描 い て い る 。 この 白丸 位 置 で の電 気 力(ま 考 え る 。 最 初 の作 業 は,図(b)の
た は 電 界,電 位)を
よ う な空 間 格 子(セ
で あ る 。 図 に は 最 小 サ イ ズ の 正 方 形 セ ル(リ 16×16個
描 か れ て い る。 セ ル の 作 成 に は,次
先 ず 点 電荷 全 体 を含 む 大 き な 正 方 形(図 考 え,こ れ をル ー トセ ル(根 セ ル)と で,一
だ け 白 丸 印 の 点(矢
計算す るこ とを
ル と呼 ぶ)を
ー フ セ ル:葉
印 で 指 示)
導入す る こ と
セ ル と 呼 ぶ)が
の よ うな 階 層 的 な 手 法 を用 い る。
で は 辺 長 が リー フの16倍 呼 ぶ 。 次 に ル ー トセ ル を4分
の 正 方 形)を 割すること
回 り小 さな 正 方 形 セ ル を4個 作 成 す る。 こ の 手 順 を繰 り返 して 細 分 化 さ れ
た セ ル を次 々 と作 成 して い く と,各 種 大 小 セ ル か らな る階 層 化 され た セ ル 群 が で き上 が る。 こ の よ う な 階 層 的 分 割 を 木構 造 と呼 ぶ。 こ こ で は 絵 を 描 く都 合 か ら, 二 次 元 問 題 用 の4分 木 正 方 形 セ ル を用 い て 解 説 して い るが,三
次元問題 を考 える
際 は8分 木 立 方体 セ ル に読 み 替 え る と よい 。 これ らの セ ル を 使 っ て 点 電 荷 群 を グ ル ー ピ ン グ して い くの が 次 の作 業 で あ る 。 方 針 と して は,な る べ く多 くの 点 電 荷 を 大 き くま とめ て グ ルー ピ ン グ した い と考 え る。 た だ し,白 丸 印 に 「遠 い 」 位 置 で は 大 き な セ ル が 使 用 で き,白 丸 印 に 「近 い 」 位 置 で は小 さい セ ル しか 使 用 で き な い とす る。 図(c)は リ ー フ の8倍
の辺長
を持 つ セ ル を使 っ て グ ル ー ピ ン グ し た と こ ろで あ る(太 線 で描 い た左 下 の大 き な 正 方 形 領 域)。 白 丸 印 か らあ る程 度 「遠 い 」 位 置 とす る 必 要 が あ る の で,こ で は1個 の グ ル ー ピ ン グ が や っ とで あ る 。 図(d)は リー フの4倍
の例
の 辺 長 を持 つ セ
ル を使 って さ らに グル ー ピ ング を した と ころ で あ る。 今 回 は8個 の グル ー ピ ン グ を 行 え た 。 セ ル サ イ ズ を小 さ く し なが ら同 様 の 手 順 を繰 り返 す と,図(e)を
経 て,
最 終 的 に 図(f)の 状 態 と な る。 た だ し,白 丸 点 を 含 む リー フ セ ル と,そ の 周 辺 の 8個 の リー フ セ ル につ い て は,白
丸 印 に 「近 す ぎ る 」 の で グ ル ー ピ ング を あ き ら
め た(「 遠 い 」 「近 い 」 の 具 体 的 判 定 方 法 は 後 述)。 結 局,白 丸 点 の 近 傍 を 除 い て, 点 電 荷 群 が 各 種 セ ル に よ っ て 集 団 に分 割 され た こ とに な る 。 この グル ー ピ ング を有 効 に利 用 して,ツ
リー 法 で 白 丸 点 位 置 の 電 気 力 を計 算 す
る。 た だ し,計 算 精 度 の 面 で や や 荒 っ ぽ い 手 法 を用 い る が,精 度 の 改 善 法 は 次節 で述 べ る。 図(g)は,先
の グ ル ー ピ ン グ した セ ル の 内 部 点 電 荷 群 を,思
い切 っ て
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
(g) 図10.1
等価 な点 電 荷(2重
丸 で 表 示)1個
ツ リー法 に よる計 算
で 近 似 した 様 子 で あ る 。 も し も こ の 近 似 が 許
され る な ら,特 に 大 き な セ ル で は,多 数 の 点 電 荷 の 寄 与 を た っ た1点
で表現 で
き,計 算 効 率 が劇 的 に改 善 され る と期 待 で きる 。 等 価 点 電 荷 の 電荷 量 の 求 め 方 は 後 述 す る と し て,図(g)の 電荷 の 寄 与:25個
分,遠
白丸 位 置 の電 気 力 の 計 算 に必 要 な 計 算 回 数 は,近 傍 点 方 セ ル の寄 与:34個
分 で,計59回
す れ ば よ い。 すべ て の点 電荷 に対 す る総 当 り計 算 で は700回
ク ー ロ ンの式 を 適 用 近 い計算が必要 であ
る か ら,こ れ は 大 変 に効 率 の 良 い 方 法 と い え る。 こ こで 各 寄 与 の 計 算 回 数 を吟 味 す る と以 下 の よ う に な る。 近 傍 点 電 荷 の 個 数 は 概 ね 定 数 個 で あ る(Nが
大き く
な っ て も変 化 し な い)。 遠 方 セ ル の個 数 は,各 大 き さ の セ ル ご と に は 概 ね 定 数 個 で あ る が,小
さ い も の か ら大 きい も の まで の セ ル の 種 類 は概 ねlog N種
よ っ て,近 傍 点 電 荷 の 寄 与 数 はO(定 (定 数 ×logN)=O(logN)と
数)=O(N0),遠
で あ る。
方 セ ル の 寄 与 数 はO
表 現 で きる 。 相 互作 用 計 算 で は,白 丸 の 位 置 をN
回変 更 して 以上 の 計 算 を 繰 り返 す こ と に な る の で,相 互 作 用 計 算 回数 は 先 の 結 果 にNを
掛 け て,総
リー法 はO(NlogN)の
計 算 回 数 はO(N)+O(NlogN)=O(NlogN)と
な り,結 局 ツ
相 互 作 用 計 算 ア ル ゴ リ ズ ム と な る。 こ の よ う に ツ リー 法
の ポ イ ン トは,階 層 的 な 空 間 セ ル構 造 を導 入 して,階 層 的 分 割 統 治 を可 能 に した 点 とい え る 。 しか し,実 は こ こ ま で 説 明 して きた 方 法 に は重 大 な 欠 点 が あ る 。 そ れ は,こ
の
ま まの 方 法 を実 行 して も 「計 算 精 度 が さ っ ぱ りあ が ら ない 」 とい う点 で あ る。 理 由 は簡 単 で,遠
方 セ ルの 寄 与 を 「等 価 な 点 電 荷 」 で近 似 す る とい う のが,精
度の
面 で 問 題 が あ る の で あ る。
10.2 多重 極展 開 と局 所展 開 前 節 の 方 法 で は精 度 が 不 十 分 と い う結 論 で あ っ たが,こ
れ を改 善 す る の は 実 は
容 易 で あ る。 電 荷 群 を1個 の 等 価 な 「点 電 荷 」 で 近 似 した の が 精 度 が あ が らな か っ た原 因 な の で,こ
れ を,「 点 電 荷+双
極 子+四
重 極 子+…」で
近似 す れ ば 精
度 向 上 が 可 能 だ と考 え られ る 。 実 際 に こ の 方 法 は うま くい き,電 荷 の 近 似 表 現 の 次 数 を 目標 精 度 に応 じて 必 要 な 次 数 に 上 げ る こ とで,目
的 に 適 う精 度 で の相 互 作
用 計 算 が 可 能 と な る 。 数 学 的 に は こ れ は,場 の 多 重 極 展 開 に 対 応 し,次 式 で 表現 され る 。 な お 本 章 の 数 式 はす べ て 一 般 三 次 元 配 置 用 の 公 式 を示 して い る 。 (10・1)
こ こ で,φ:展
開 半 径 外 部 の 任 意 点 の ポ テ ン シ ャ ル,r,θ,φ:ポ
テ ン シ ャル を 求
め る 点 の 極 座 標(極 座 標 中心 は展 開 中 心 座 標),Ynm:球 極 展 開 係 数 で あ る 。 この 式 は,先
面 調 和 関 数,Mnm:多
に述 べ た 「点 電 荷+双
極 子+四
重
重 極 子+…」
に よ る表 現 そ の もの で あ る 。 (10・1)式 の 使 用 方 法 を 図10・2に
示 す 。 多 重 極 展 開 係 数 が 既 知 で あ れ ば,展
開 半 径 の外 部 か ら観 測 す る 限 り,展 開 半 径 内部 に存 在 す る各 点 電 荷 の 寄 与 を 個 別 に直 接 計 算 す る こ と と,多 重 極 展 開係 数 を 用 い て(10・1)式 で 寄 与 を 計 算 す る こ と とは,数
学 的 に 等 価 な 結 果 を与 え る。 静 電 界 計 算 の 場 合 だ と,例 え ば6∼10
次 程 度 まで の 計 算 で も,実 用 上 十分 な 精 度 の計 算 が 可 能 で あ る。 高 精 度 を要 求 す る ほ ど高 次 の 計 算 が 必 要 で,演 算 の 手 間 も増 え る が,そ
れ で もた か だ か10次
程
度 の 級 数 計 算 で,莫 大 な 数 の 点 電 荷 群 を ま と め て(10・1)式 で 取 り扱 え る こ とに な る。 な お,演 算 の 手 間 は 目標 精 度 に依 存 す る が,Nと の 演 算 回 数 を 考 え る と きに はNに がO(NlogN)の
対 す る定 数 部 に あ た る。 こ の た め,ツ
リー法
相 互 作 用 計 算 ア ル ゴ リズ ム で あ る とい う結 論 に変 化 は な い。
ツ リー 法 の 骨 子 は以 上 で あ るが,実 方 法 が 必 要 で,そ
は 無 関 係 な の で,全 体
際 に は多 重 極 展 開係 数 を 具 体 的 に決 定 す る
れ は 次節 で 説 明 す る 。 こ こで は,少
しだ け 寄 り道 し,ツ リー 法
で は使 用 し なか っ た 局所 展 開 につ い て触 れ る。 多 重 極 展 開 が 展 開 球 面 の外 部 場 を 記 述 す る 式 で あ る の に 対 し,展 開球 面 の 内 部 場 を記 述 す る 式 が 局 所 展 開 で,次 式 で表 現 され る。 (10・2)
こ こ で,Lnm:局
所 展 開係 数 で あ る。(10・2)式
た 。 局 所 展 開 係 数 が 既 知 で あ れ ば,展
の 使 用 方 法 を 図10・3に
図示 し
開半 径 の 内部 か ら観 測 す る 限 り,展 開 半 径
外 部 の 点 電 荷 の 寄 与 を個 別 に 直 接 計 算 す る の と,局 所 展 開係 数 を用 い て(10・2) 式 で 計 算 す る の と は,数 学 的 に等 価 な結 果 を与 え る 。 多 重 極 展 開 と は表 裏 の 関 係 にあ り,FMMア
ル ゴ リズ ム で は 局 所 展 開 を使 用 す る こ とに な る。
図10.2 多重 極 展 開 の使 用 方法
図10.3 局所 展 開 の使 用 方法
10.3 多 重極 展 開係 数 の階層 的計 算 ツ リー 法 で は 全 セ ル の 多 重 極 展 開 係 数 が 既 知 で あ る 必 要 が あ る。 先 に 図10・1 に示 した よ う に,ツ
リー法 で は様 々 な大 き さの セ ル を使 用 し,さ
らに,図10・1
の 白丸 の 位 置 を変 更 す る と,利 用 す る セ ル の 配 置 ・組 合 せ も変 化 す る。 そ こ で, 関 与 し うる す べ て の セ ル(大
きな もの も小 さ な もの も)に 対 して,最 初 に 一 度 だ
け多 重 極 展 開 係 数 の 計 算 を実 施 す る 。 最 初 に一 度 だ け 計 算 して お け ば,後 は何 度 で も繰 り返 し,こ れ らの 係 数 を使 う こ とが で きる 。 そ の計 算 に は 図10・4の
よう
な 階層 的 な 方 法 を使 用 す る。 図10・4(a)に
は点 電 荷 群,(b)に
は 「リー フセ ル に対 し て定 義 され た多 重 極 展
開 の 収 束 円 」 を 描 画 した。 セ ル形 状 は 正 確 に は 常 に 正 方 形 ま た は 立 方 形 で あ る が,以
下 で は こ の 円 も単 に セ ル と呼 ぶ こ とが あ る 。 実 際 に は 収 束 円 同士 は オ ー バ
ー ラ ップ し隙 間 は で き ない が
,図 が 煩 雑 に な る の で 円 のサ イ ズ を少 し小 さ 目に 作
図 して い る。 図(b)の 各 リー フセ ル に 多 重 極 展 開 係 数 を定 義 す る に は,内 部 点 電 荷 の個 数 回 だ け,次 の 「点 電 荷 の 寄 与 を多 重 極 展 開 係 数 に 変 換 す る公 式 」 を実 行 す れ ば よい 。 (10・3)
た だ し,q:点
電 荷 量,ρ,α,β:点
電 荷 の 極 座 標(極 座 標 中 心 は 展 開 中 心)で あ る 。
点 電荷 が 複 数 個 存 在 す る と き は,単 純 にMnmの
ス カ ラ和 を 計 算 す れ ば よ い。 こ
の計 算 は,す べ て の 点 電 荷 に つ い て 実 行 す る の で,総 計N回(10・3)式
を使 用 す
る こ とに な る。 次 に,図(c)の
よ うに,リ
ー フ セ ル を4個
ま とめ た ひ と回 りサ イ ズ の 大 きい セ
ル を考 え る 。 この 大 きな セ ルの 多 重 極 展 開係 数 は,内 部 の4個
のセ ルの多重極展
開係 数 か ら計 算 で き る。 具 体 的 な 式 は記 載 しな い が,「 多 重 極 展 開係 数 を 別 の 多 重 極 展 開係 数 に変 換 す る 公 式 」 は既 知 で あ る の で,こ の 公 式 を4回 適 用 す るの で あ る 。 な お,多 重 極 展 開 か ら多 重 極 展 開 へ の 変 換 をM2M(multipole )変 換(図10・5(a)参
照)と
to multipole
呼 ぶ 。 これ で,リ ー フ セ ル よ りひ と 回 り大 き
い(親 の)セ ル に多 重 極 展 開 係 数 が 定 義 さ れ る。 さ らに,図10・4(d)の
よ う に,こ
重 極 展 開 を 定 義 で き る の で,こ 明 は省 略 す る が,セ
の操 作 を 階 層 的 に 繰 り返 す と,全 セ ル に 多
れ で ツ リ ー法 が使 用 で き る状 態 と な る。 な お,証
ル の総 数 を 計 算 す る とO(N)と
な る の で,M2M変
(a)
(b)
(c)
(d)
図10.4 多 重極 展 開係 数 の階 層 的計 算
換 の実行
(a) M2M変
(b) M2L変
換
換
(c) L2L変
換
図10.5 展 開式 の 変換
回 数 もO(N)と
な る。 ツ リー 法 はO(N1ogN)の
節 に 述 べ た 多重 極 展 開係 数 の 計 算 量 は,Nが
ア ル ゴ リズ ム で あ る か ら,こ の 大 きけ れ ばO(NlogN)に
対 して 無
視 す る こ とが で きる 計算 量 で あ る 。
10.4 距 離 の 判 定 ツ リー 法 をベ ー ス に して,FMMの は,変 更 点1点
と追 加 点1点
考 え 方 を説 明 す るの で あ るが,こ
の ため に
の説 明 が 必 要 で あ る。 こ の節 で は 変 更 点 の 説 明 を 行
う。 実 は ツ リー 法 で はセ ル と 白 丸 と の 「遠 近 」 の 判 定 を,「 セ ル と白 丸 との 距 離 r」 と 「セ ルサ イ ズa(正
確 に は 多 重 極 展 開 半 径)」 との 比 較 で 実 行 す る 。 通 常 は
次式 を満 足 す る と きに,「 遠 い 」 と判 定 す る(図10・6(a)参
照)。
(10.4)
(a) ツ リー法 の 実距 離 判 定
(b) FMMの
図10.6 距 離 の 判 定
セル 間距 離 判 定
一 方,FMMで
は 「セ ル と 白 丸 との 遠 近 の 判 定 」 と い う 考 え 方 は 用 い ず,「 セ
ル 同 士 の 遠 近 判 定 」 とい う考 え方 だ け を用 い,し か も同 サ イ ズ の セ ル 同 士 の 遠 近 だ け を 考 慮 す る。 例 え ば 「セ ル 同 士 の 間 に1セ 参 照)」 あ る い は 「セ ル 同士 の 間 に2セ
ル 分 の離 隔 が あ る(図10・6(b)
ル 分 の離 隔 が あ る」 の ど ち らか を満 足 す
る と きに 「遠 い 」 と判 定 す る。 どち らの 遠 近 判 定 規 則 を用 い て も構 わ な い が,前 者 を採 用 す る場 合 は,あ
る セ ル に と っ て は 隣 接 す る セ ル だ け が 「近 い(近 接)」
セ ル と な り,そ れ 以 外 の セ ル は 「遠 い(遠 方)」 セ ル と な る。 い ず れ に して も, FMMで
は 遠 近 を 「実 距 離 」 で は な く 「セ ル の 離 隔 数 」 だ け で 判 定 し,セ ル に よ
る分 割 統 治 を徹 底 す る の で あ る。
10.5 局所 展 開係 数 の階 層的 計算 次 に ツ リー 法 に 対 す る 追 加 点 の 説 明 を行 う。 実 行 す る 内 容 は,す べ て の セ ル に 局 所 展 開 係 数 を 定 義 す る こ とで あ る。 ツ リー 法 で は,多 重 極 展 開 係 数 だ け を 定 義 した が,今 回 は そ の 多 重 極 展 開 係 数 を用 い て 局 所 展 開係 数 を 定 義 す る。 この た め に,今 回 も階 層 的 な方 法 を使 用 す るが,使
用 す る公 式 は 以 下 の 二 つ で あ る。
(a) 多 重 極 展 開 係 数 を 局 所 展 開 係 数 に 変 換 す る公 式(図10・5(b)参 M2L(multipole
to local)変
換 と呼 ぶ 。
(b) 局 所 展 開 係 数 を 局 所 展 開 係 数 に 変 換 す る公 式(図10・5(c)参 (local
to local)変
照)=
照)=L2L
換 と呼 ぶ 。
どち ら も,具 体 的 な変 換 公 式 が 整 備 さ れ て い る が,計
算 手 法 を理 解 す る 上 で
は,数 式 の 詳 細 は 無 視 して よ い 。 局 所 展 開 の 定 義 手 順 を示 す 。 大 き な セ ル か ら小 さ な セ ル に 向 か っ て 階 層 的順 序 に従 っ て 定 義 して い く。 図10・7(a)の
よ う に,あ
る セ ル で は既 に 局 所 展 開 係 数
が 定 義 さ れ て い る とす る。 こ の 局 所 展 開係 数 に は,近 接 セ ル の寄 与 を除 く,遠 方 セ ル か ら の寄 与 が す べ て 記 述 され て い る 。 図(a)で 描 い た 白 丸 セ ル よ り外 側 の 遠 方 セ ル の 寄 与 は,す で に局 所 展 開 係 数 の形 で情 報 が 記 録 され て い る とい う意 味 で あ る。 な お,系 全 体 を 内包 す る 大 き なセ ル,す な わ ち ル ー トセ ル は,外 側 に 点 電
荷 が 存 在 しな い の で,こ の セ ル の 局 所 展 開係 数 は 値 が 零 とな る。 よっ て,ル セ ル は 局 所 展 開係 数 が 定 義 済 み(既 知)の 図10・7(a)の
ー ト
セ ル で あ る。
中央 セ ル の 内 部 に は,新 た に 局 所 展 開係 数 を定 義 す べ きセ ル が4
個 含 まれ て い る が,図(b)の
よ うに そ の 内 の1個
に 注 目す る。 な お,大
きい 方 の
セ ル を 「親 セ ル 」,内 側 の 小 さ い セ ル を 「子 セ ル」 と呼 ぶ 。 先 ず 図(c)の よ う に, 親 セ ル の 局 所 展 開 の 内 容 を子 セ ル の 局 所 展 開 係 数 に変 換 す る(L2L変
換 公式 を
使 用)。 次 に,「 親 セ ル の 近 接 セ ル の 子 セ ル で,自 分 の 近 接 セ ル で は な い セ ル 」 を 考 え る と,図(d)の
よ うに 多 数(こ
の 場 合 は27個)の
らの セ ル の多 重 極 展 開 の 内 容 を,図(e)の 換 し て加 え る(M2L変
セ ル が 選 択 され る。 こ れ
よ うに 作 成 中 セ ル の 局 所 展 開係 数 に 変
換 公 式 を使 用)。 この 結 果,図(f)に
描 い た8個
の近接 セ
ル を 除 き,遠 方 セ ル の 寄 与 はす べ て 局 所 展 開係 数 の 形 で 情 報 が 記 録 され る。 同 時 に,図(f)と
図(a)と は サ イ ズ の相 違 以 外 は全 く同 一 の状 態 に な っ て い る の で,さ
らに 内 側 の 子 セ ル(孫 セ ル,子 孫 セ ル)に 関 して も 同様 の手 順 で 次 々 と局 所 展 開 係 数 を 定 義 す る こ とが で き る。 最 終 的 に は全 セ ル に 局 所 展 開係 数 が 定 義 され る こ とに な る 。 な お,セ
ル の 総 数 はO(N)な
とな る 。 た だ し,図(c)と
換 とM2L変
換 の 実 行 回 数 もO(N)
図(e)を 比 較 す れ ば 明 らか な よ う に,ど
あ っ て も,比 例 定 数 はM2L変 M2L変
の で,L2L変
ち ら もO(N)で
換 の 方 が 圧 倒 的 に大 き く,要 す る に 演 算 速 度 は
換 の 計 算 効 率 に 大 き く依 存 す る こ とに な る 。
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f) 図10.7 局 所展 開係 数 の 階層 的 定 義
10.6 FMMに
よる相 互作用 計 算
よ うや く,FMMに 中 に,電 気 力(ま リー フセ ル(こ
よ る相 互 作 用 計 算 が で きる段 階 に到 達 した。 図10・8の
真
た は電 界 ・電 位)を 計 算 す べ き 白丸 の位 置 と,そ の 白丸 を含 む
れ の 局 所 展 開係 数 は定 義 済 み)を 描 い た。 同 図 に は さ ら に,こ の
リー フセ ル の局 所 展 開 係 数 が 寄 与 情 報 を持 っ て い な い,近 接 セ ル群(周
辺 の8セ
ル)内 の 点 電 荷 群 と,自 セ ル 内 の 点 電 荷 群 も描 い た 。 白丸 位 置 で の計 算 を実 行 す る が,必 要 な計 算 は 次 の2種 類 だ け で あ る。 (a) 局 所 展 開係 数 を用 い て 遠 方 セ ル の 寄 与 を1回
だけ計算
(b) 残 っ た点 電 荷 の 寄 与 を 直接 クー ロ ンの式 で 計 算 こ れ で,全 点 電 荷 の 寄 与 が 漏 れ な く計 算 され る こ とに な る。 この と き,(a)の 算 回 数 は1回,(b)の で,合 計 もNに
計 算 回 数 は 概 ね 定 数 個 分(Nに
なる。
ル ゴ リズ ム の 説 明 は 以 上 で あ るが,も
理 して お く。 多 重 極 展 開係 数 の 定 義 にO(N),局 備 計 算 を要 し,相 互 作 用 の 本 計 算 にO(N)の O(N)の
は 依 存 しな い)で あ る の
依 存 しな い 定 数 回 と な る。 相 互 作 用 計 算 回 数 は こ の 結 果 にNを
掛 け れ ば求 め ら れ,総 計 算 回数 はO(N)と FMMア
計
う一 度,FMMの
演 算 回 数 を整
所 展 開 係 数 の 定 義 にO(N)の 計 算 を 要 す る の で,結
計 算 量 とな る 。
図10.8 白丸 位置 の 場 の計 算
準
局全計 算 が
10.7 表 面 電 荷 法 へ の 適 用
10.7.1適
用 方法
FMMは
も と も と,境 界 要 素 法(BEM)の
表 面 電 荷 法(SCM)は
ため に開発 された高速 解法 であ る。
境 界 要 素 法 の 一 種 で あ るか ら,FMMはSCMに
きる 。 本 節 で は こ の 適 用 方 法 の 概 略 を 述 べ,FMM-BEM,
も適 用 で
FMM-SCMの
特徴 を
あ る。 ベ ク トルxは
表面電荷 密
述 べ る。 SCMの
支 配 方 程 式 は 連 立 一 次 方 程 式Ax=bで
度 分 布 を 表 すN個
の 未 知 数 で あ り,N×N密
(積分 方 程 式)を 表 す 。Ax=bか
行 列Aの
各 行 が1個
の境界 条件 式
らxを 解 くこ とが 目標 で あ る。 まず,通
常解 法
を 用 い る 場 合 につ い て 述 べ る 。Aは 密 行 列 な の で,行 列 の成 分 をす べ て 記 憶 す る に はO(N2)の
記 憶 容 量 が 必 要 で あ る 。 標 準 的 な 直 接 解 法(ガ
で 連 立 一 次 方 程 式 を解 く と,求 解 に は さ らにO(N3)の
ウ ス の 消 去 法 な ど)
演 算 量 が 必 要 で あ り,莫
大 な 計 算 コス トを要 す る こ とに な る。 そ こで,非
対 称 行 列 用 の 反 復 解 法[10.5](Bi-CGSTAB法,GMRES法
使 用 してAx=bを 算 結 果)さ
解 く とす る と,係 数 行 列Aと
え計 算 で きれ ばxが
数 行 列 ベ ク トル 積Axの
の 表 面 電 荷 分 布xが
FMMを
格 納 す る必 要 は な くな る 。 こ れ で,記
演
え計 算 で 憶 容量 が
なる とい う問 題 点 は解 決 され る。
一 方,係
が,こ
任 意 ベ ク トル との 積(Axの
求 め られ る 。 係 数 行 列 ベ ク トル積Axさ
きれ ば 良 い の で,係 数 行 列Aを O(N2)に
な ど)を
計 算 は,「 境 界 条 件 式 を 立 て た 全 境 界 位 置 で
作 る 電 位 ・電 界 」 を 計 算 す る 作 業 を意 味 して い る。 と こ ろ
の 作 業 はFMMで 用 い れ ばAxが
行 うN体
間 相 互 作 用 の 計 算 と 同一 作 業 と み な せ る の で,
計 算 で き る。 しか も そ の 演 算 量 ・必 要 記 憶 容 量 はO(N)
で よい 。 よ っ て反 復 解 法 と組 み 合 せ る こ とで,演 算 量,記 憶 容 量 と も にO(N)で xを求 め る こ とが で き る。 こ の 計 算 法 がFMM‐SCMで な お,BEMやSCMで
あ る。
使 用 す る境 界 要 素 は,図10・9(a)の
よ うな 面(平
面ま
た は 曲 面)形 状 だ が,数 値 面 積 分 公 式 で 離 散 化 す る と(b)の 様 に 複 数 の点 電 荷 群
(a)
(b)
図10.9 三角 形 要 素 の点 電荷 群 へ の 置 き換 え
と等 価 で あ る。 よ っ て,面 形 状 要素 で あ っ て も,点 電荷 を用 い て 解 説 したFMM の 考 え 方 を そ の ま ま 適 用 で き る。 た だ し,要 素 を分 割 統 治(リ
ー フ セ ル へ 配 属)
して か ら点 電荷 群 へ 離 散 化 す る 考 え方 と,要 素 を 点 電荷 群 に離 散 化 して か ら点 電 荷 を分 割 統 治 す る 考 え方 とが あ り,筆 者 らの 場 合 は前 者 を採 用 して い る 。 10.7.2
FMM‐BEM,FMM‐SCMの
計 算 法 の 比 較 に つ い て は7.3節
特徴 に も記 載 した が,こ
明 す る.FMM‐BEM,FMM‐SCMは,BEMあ
る い はSCMの
長 所 を併 せ 持 つ 。 未 知 数 の 個 数 をN,系 して,主
の1次
含め て説
特 徴 とFMMの
元 あ た り分 割 数 の 代 表 値 をDと
な 特 徴 を 列 挙 す る と以 下 の とお りで あ る。(a)NがO(D2),(b)演
コ ス トがO(N)=O(D2) 高 い,(d)無
,(c)ポ
こ こで 特 に(a)(b)が
算
テ ンシャル勾 配す なわち電界 の数値計 算精度 が
限境 界 の 取 扱 いが 容 易,(e)要
が 比 較 的 容 易,(f)表
素 分 割(メ
ッ シ ュ パ タ ー ン の生 成)
面 力 の優 勢 な 系 の解 析 に適 す る。 最 も重 要 な 特 徴 で あ る。(a)は,三
の 二 次 元 問 題 に 変 換 さ れ る た め で あ る。 な お,差 (FEM)な
こ で はFMMも
ど の 領 域 分 割 法 で はNはO(D3)と
次元問題 が境界面上
分 法(FDM),有
限要 素 法
な る。 よ っ て,同 程 度 の 要 素 サ イ
ズ で 同 じス ケ ー ル の 問 題 を取 り扱 う場 合 は,BEM
,SCMはFDM,FEMよ
な い 未 知 数 で 計 算 を 行 え,高 速 解 法 を 適 用 す れ ば 演 算 コ ス トもFDM
り少
(O(D3)以 SCM,BEMと
上)よ
り有 利 で あ る[10.6]。 さ ら に,FMMを
比 較 した と きのFMM‐BEM,FMM‐SCMの
,FEM
適 用 し な い(普
通 の)
高 速 ・大 容 量 性 能 の
向上 は 顕 著 で あ る。 た とえ ば32bitのPCで 前 者 はせ い ぜ い1万
一 般 三 次 元 の 電 界 計 算 を 行 う場 合,
未 知 数 程 度 が 限 界 な の に対 し,後 者 は100万
未 知 数 を超 え る
規 模 の計 算 が 可 能 で あ る。 一 方,短 所 も把 握 して お くべ きで あ り,全 体 的 に はFDM,FEMと 汎 用 性 ・柔軟 性 の 面 で 劣 る。 具 体 的 に は以 下 の 点 で あ る。(g)非 が 困 難,(h)非
比 較 して 同 次 項 の取 扱 い
線 形 項 の 取 扱 い が 大 変 困 難 で あ る。 こ う した 計 算 も必 ず し も不 可
能 で は な い が,(a)をO(D3)と
せ ざ る を得 な くな り,(b)もO(D3)と
なっ て し
ま う。 結 局 「O(D2)の 長 所 を 残 した ま ま」 と い う の は 無 理 の よ う で あ る。 全 体 に,FMM-BEM,
FMM-SCMとFDM,FEMは
互 い に補 い 合 う よ う な 長 所 ・
短所 を持 っ て い る 。 互 い の 長 所 を う ま く組 み 合 せ て,効 率 の 良 い 計 算 法 を得 るの が 望 ま し い。
10.8 FMM-SCMの
計算 例
三 次 元 ラ プ ラ ス場 の 解 析 にFMM-SCMを
適 用 す る と,通 常 のSCMと
て飛 躍 的 に 多 数 の 要 素,未 知 数 を用 い た計 算 が 可 能 に な る 。 特 に,第9章 した 曲 面 形 状SCMにFMMを
比較 し で説明
適 用 す る と,高 速,大 容 量,高 精 度 の 電 界 計 算 法
に な る。 こ う し た長 所 を活 か して,一 般 的 に は解 析 が 困 難 な 「大 小 ス ケ ー ル の媒 体 が 混 在 す る 問 題 」 や 「画 素 デ ー タ をそ の ま ま要 素 と した解 析 」 な どが す で に行 わ れ て い る。 以 下 で は筆 者 らの 計 算 例 を い くつ か 示 す が,す
べ て32bit PCで
実
行 した も の で あ る。 10.8.1
口絵1に
多 体 系 の 計 算[10.7]
垂 直 方 向 の 一様 電 界 下 に あ る多 数 個 の 誘 電 体 球 の 電 界 計 算 結 果 を示 し
た。 各 誘 電 体 球 は 曲面 要 素192個 した 。1球 あ た り386未
で表 現 し,電 荷 密 度 分 布 は二 次 形 状 関 数 で 表 現
知 数 で あ る。 こ の 球 を14×14×14=2744個,格
配列 させ た 。 総 未 知 数 は1059184個
子状 に
で あ る 。 図 中 の カ ラ ー グ ラ デ ー シ ョ ンは 電
界 強 度 の 強 弱 を意 味 し,各 球 の 上 下 方 向の 南 北 極 付 近 が 強 電 界 とな っ て い る 。 注
意 深 く観 察 す る と,球 の 位 置 に応 じて電 界 分 布 が微 妙 に異 な っ て い る こ とが 分 か る。 な お,球 の 位 置 が 規 則 的 な 配列 か らず れ た場 合 や,欠 陥 が存 在 す る場 合 の 計 算 な ど も可 能 で あ る。 口絵2は
一様 電 界 下(上
空 に雷 雲 を想 定)の 大 地 に 整 列 した多 数 の 人体 表 面 で
の 電 界 強度 で あ る 。 人 体 は 接 地 導 体 と してお り,曲 面 要 素 を使 用 し電 荷 密 度 表 現 は二 次 で あ る。1人 体 あ た り4078未 た 。 総 未 知 数 は652480個
知 数 で 表 現 して,こ れ を8×20体
整 列 させ
で あ る。 電 界 強 度 分 布 を カ ラー 表 示 した が,人 体 モ デ
ル の 頭 部 で 電 界 が 強 く,特 に列 の 角 に あ た る位 置 の モ デ ル の 頭 部 で 強 くな っ て い る こ とが 分 か る 。全 体 と して 非 常 に複 雑 な形 状 で あ る が,問 題 な く電 界 計 算 を実 行 で き る。
10.8.2 人 体 内 誘 導 電 流 の 計 算 以 下 は 静 電 界 計 算 で は な いが,変
動 磁 界 に よっ て 人 体 に誘 導 され る 電 流(誘
電 界 が 各所 の 導 電 率 に対 応 す る 電 流 を生 じる)の 計 算 結 果 を示 す 。 口絵3は
導
人の
両 肺 形 状 を2分 岐 細 管 で 近 似 した モ デ ル で あ る。 この モ デ ル を胸 郭 状 の 容 器 内 に 納 め,低 周 波 一 様 磁 界 を 印 加 した 場 合 の体 内 誘 導 電 界 分 布 を計 算 し た 結 果 で あ る[10.8〕 。 分 岐 細 管 の 作 成 に は 数 学 モ デ ル を用 い,気 数 は414391個
管 支 末 端 数 は2036,総
未知
で あ る 。 形 状 は 曲 面 要 素 表 現,電 荷 密 度 は二 次 表 現 で あ り,境 界
条 件 の表 現 に は細 管 分 岐 の谷 部 分 で ガ ラー キ ン法 を採 用 して い る。 分 岐 の谷 部 で 誘 導 電 界(=電 口絵4は
流)の 顕 著 な 増 大 が 確 認 で き る。
情 報 通 信 研 究 機 構(NICT)が
公 開 して い る 日本 人 成 人 男 性 標 準 モ デ
ル を対 象 と した 計 算[10.9][10.10]で,約800万 個 の 立 方 体 ボ ク セ ル(1辺2mm)で モ デ ル が 表 現 さ れ て い る。 こ の ボ ク セ ル の 面 に注 目 し,表 裏 の 導 電 率 が 異 な る 面 を平 面 四 角 形 要 素SCMの
要 素 と見 な す と,FMM‐SCMが
適 用 で き る。 鉛 直 方
向 一様 交 流 磁 界 を 印加 し て体 内誘 導 電 界 を計 算 し,誘 導 電 流(=誘 率)分
導 電 界 ×導 電
布 を カ ラ ー表 示 した 図 で あ る 。 平 面 形 状 で 電荷 密 度 一 定 の 要 素 を 使 用 して
い る が,境 界 条 件 表 現 を ガ ラ ー キ ン法 と して 計 算 結 果 の 安 定 性 を確 保 して い る 。 総 要 素 数 は3921953個
だ が 約6時
間 で 電界 計 算 が 可 能 で あ る 。
第10章 演習問題 1.三
次 元 解 析 用 の8分
らな り,こ れ を第0層 を 第1層
木 セ ル構 造 を 考 え る 。 ル ー トセ ル は1個(80)の とす る。 そ の 子 セ ル は8個(81)の
とす る。 第L層
は8L個
な お,r≠1の
2.計
セ ル の総 数Mと
セ ルか ら な り,こ れ
の セ ル か ら な り,こ こ で は こ の 層 を リー フ セ
ル 層 とす る。 各 リー フセ ル に点 電荷 が1個 の 総 数Nと
セ ルか
ず つ 配 属 され て い る場 合 に ,点 電 荷
の 関係 を示 しな さい 。
と き,
〓で あ る。
算 した い 配 置 に 一様 な電 界 が 存 在 す る場 合,高
取 り扱 え ば よ いか 考 え な さい 。
速 多重極法 では どの ように
第Ⅱ 部 各種 の場 の計算 法
第11章 複合誘電体 の計算
次 章 以 下 の,一 様 電 界,既 知 電 界,静 電 誘 導 の 計 算 な ど に複 合 誘 電体 の 計 算 が 出 て くるの で,第Ⅱ
部 の 最 初 に まず 複 合 誘 電体 の 計 算 法 を説 明 す る。
複 合 誘 電 体 とは誘 電体(絶
縁 物)が2種
εが 場 所 に よっ て 変 わ る と きは,場
類 以 上 あ る 配 置 で あ る。 一 般 に誘 電 率
の方 程 式 は 第2章
の(2・6)式,す
なわ ち (11・1)
で あ る 。 しか しほ とん どの 計 算 で は,媒 質 と して 存 在 す る 気 体(静 電 界 で は真 空 も同 じで あ る),液 体,固 体 は そ れ ぞ れ 誘 電 率 が 一 定 の 材 料 と して 扱 わ れ る。 こ の と き各 誘 電 体 の 内 部 で は,空 間 電荷 が 存 在 しな い場 合 ラプ ラ スの 式 (11・2)
が 成 り立 つ 。 そ こで εが 不 連 続 に変 化 す る誘 電 体 界 面(境
界 面)に
お い て の み境
界 条件 を満 足 す る よ うな 処 理 を行 うの が 普 通 で あ る。 た だ し材 料 の 誘 電 率 が た と え ば 電 界 に依 存 して 変 わ る よ うな場 合 に は,境 界 だ け の処 理 で は計 算 で き な い。 な お 第Ⅰ 部 で は境 界 分 割 法 を表 面 電 荷 法,電 荷 重 畳 法 の 順 に 説 明 した が,以 下 で は 電荷 重 畳 法 を先 に 説 明 す る。
11.1 差 分 法 に よ る 計 算 差 分 法 を 使 用 す る 場 合,誘
電 体 界 面 で は まず 格 子 点 の あ て は め 方 が 問 題 で あ
る。 電極 表 面 の 場 合 の(3・15)式,(3・16)式
の よ う に,等 間 隔 で な い 格 子 に よ っ
て 界 面 上 に格 子 点 を とる こ と もで き るが,差 分 式 が 複 雑 に な る の で 図11・1の う に等 間 隔格 子 で,界
よ
面 に最 も近 い 格 子 点 を界 面 上 の 点 とす る計 算 が ほ とん どで
あ る。 界 面 と格 子 点 が 一 致 しな い 場 合,界 面 付 近 の 電 界 は も ち ろ ん あ ま り正 確 に は求 ま らな い 。 界 面 上i点 の 差 分 式 を 得 る に は,i点
を囲 む 領 域 に ガ ウ ス の 定 理 を適 用 して 求
め る方 法 と,界 面 に 垂 直 な電 束 密 度 の 連 続 条件 を適 用 す る 方 法 とが あ る。 前 者 の 方 法 は, (11・3)
を計 算 す る[11.1]。 こ こ で(εgradφ)nは 微 小 面 積dsに 線 方 向 成 分 を意 味 す る。 た と え ば 図11・1の が違 う場 合,領 域1に
お け る 電束 密 度 の 外 向 き法
二 次 元 場 で1∼8の
各領域 の誘 電率
お け る(11・3)式 の 寄 与 分 は 図 の 点 線 に 沿 っ て, (11・4)
領 域2∼8に
つ い て も(11・3)式 を計 算 して加 え合 わせ る と次 式 が得 られ る 。
(11・5) 二 つ の 誘 電 体(εAお
よ び εB)の
境 界 面 の 格 子 点 が た と え ば 図11・1のr,i,n
で あ る と,ε7=ε8=ε1=ε2=εA,ε3=ε4=ε5=ε6=εB,ま
た 境 界 面 がj,i,qで
図11.1 差 分 法 にお け る誘 電 体界 面 の 処 理
あ
る と,ε1=ε2=ε3=ε4=ε5=εA,ε6=ε7=ε8=εBと
し て そ れ ぞ れ(11・5)式
を 使 用
す る わ け で あ る。
一 方,回
転 対 称 場 に(11・3)式
を 適 用 す る と,た
と え ば 領 域1に
つ い て は(11・
4)式 の 代 わ りに 次 式 と な る 。
(11・6)
領 域1∼8に
つ い て も 同様 な 式 を作 っ て加 え合 わせ る と,
(11・7)
界 面 以 外 の 格 子 点 で は 第3章
に述 べ た通 常 の 差 分 式 が で き る の で,結
局(11・5)
式 あ る い は(11・7)式 と界 面 以 外 の 格 子 点 電 位 に対 す る 連 立 一 次 方 程 式 を解 け ば よい 。 とこ ろ が 回 転 対 称 場 で は 次 式 の よ う な もう一 つ の 差 分 式 が あ る 。
(11・8)
両 式 の 違 い はh/r0の な い と も 言 え る が,回 誘 電 体 界 面 がr,i,nの
項 だ け で あ る か ら分 割 が 細 か い と き に は あ ま り問 題 に な ら 転 軸 付 近 で は 明 ら か に 差 を 生 じ る 。(11・8)式 場 合,ε7=ε8=ε1=ε2=εA,ε3=ε4=ε5=ε6=εBと
界 面 領 域 全 体 が そ れ ぞ れ εA,εBで
はた とえば す る と,
あ る と した 差 分 式 と電 束 密 度 の 連 続 性 か ら導
出 さ れ る[11.2]。
(11・7)式 をA-タ
イ プ,(11・8)式
をB-タ
イ プ と名 付 け る と,界 面 の 格 子 間
隔,誘 電 率 の 相 違 に よっ て 差 分 式 は複 雑 に も簡 単 に も な るが,常 ち らか の タ イプ に分 類 され る。 実 際 に 図11・2の
に この 二 つ の ど
よ う な同 心 球 の 電 極 に,二
つの
図11.2 比 較 計算 に用 い られ た同 心球 電 極
差 分 式 を 適 用 し て比 較 した 例 で は,計 算 値 の 誤 差 は,特
に 回 転 軸 上(r=0)で
B-タ イ プ の 差 分 式 の ほ う が小 さい こ とが 報 告 さ れ て い る[11.3]。 初 期の差分法 の文 献 に は,A,Bが
ほ と ん ど 同 じ く らい の 割 合 で 現 れ て い る が,そ
の 後 は 主 にB-
タイ プ が 使 用 され て い る よ うで あ る。 こ れ につ い て は 次 節 の 有 限 要 素 法 で も言 及 す る。 な お 図11・1で
格 子 間 隔 が す べ て相 違 す る と きの 差 分 式(回
転 対 称 場 で はB-
タイ プ)は 文 献[11.4]に 与 え られ て い る の で 必 要 とす る読 者 は 参 照 され た い 。
11.2 有 限要 素 法 に よる計 算 有 限 要 素 法 は 複 合 誘 電 体 場 の 計 算 で ほ とん ど何 の 問 題 も生 じな い 。 節 点 を 常 に 誘 電 体 界 面 上 に とる こ とが で き る し,4.1節
で 説 明 した よ う に,最 初 の ポ テ ン シ
ャル エ ネ ル ギ ー の 式 に誘 電 率 が 含 まれ て い るの で,各 三 角 形 要 素 が 有 す る誘 電 率 をポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー の 式 に与 え る だ け で 済 む 。 た め しに 前 節 で 差 分 式 を導 出 した 図11・1の
配 置 につ い て,有
限 要素 法 で 電 位 の 式 を 求 め て 差 分 法 の場 合 と
比 較 して み る 。 二 次 元 の 場 合 三 角 形 要 素1に 節 の(4・26)式 でhy=hと
つ い て は,ポ
テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー の 微 分 は4.6
し た式 と同 じで (11・9)
こ こ でΔ
は 要 素 の 面 積 で あ る 。 要 素2∼8に
=1∼8)の
つ い て も 全 く 同 様 で,∂Xe/∂φi(e
式 は 誘 電 率 が 対 応 す る 要 素 の 誘 電 率 ,φjが
る 点(j,n,p,r)の
図11・1のi点
と対 向 す
電 位 に な る に す ぎ な い 。 結 局,
(11・10)
に よ って 差 分 式 と同 じ(11・5)式 が 得 ら れ る 。 す な わ ち こ の 場 合 に も 「領 域 を規 則 的 に 分 割 した有 限 要 素 法 は 差 分 法 と 同 じ電 位 の 式 を 与 え る」 とい う原 則 が 成 り 立 っ て い る。 も ち ろ ん要 素 内 の 電 位 を座 標 の 一 次 式 で近 似 した場 合 で あ る。 一 方,回
転 対 称 場 で 同 様 な 計 算 を 行 う と 要 素1,2の
の 微 分 は(4・32)式,(4・33)式
でhr=hz=hと
ポ テ ン シ ャ ル エ ネル ギ ー
した 式 で あ る。
(11・11)
(11・12)
要素3に
つい ては (11・13)
要 す る に(4・19)式 か ら分 か る よ う に,定 数 倍 を 除 き二 次 元 場 でx→r,y→zと した 式 に各 三 角 形 要 素 の 重 心 のr座 標 を掛 け れ ば よ い 。i点 の まわ りの す べ て の 要素 に つ い て こ れ ら を加 え る と,(11・10)式
か ら次 式 が 得 られ る 。
(11・14)
この 式 は,差 分 法 の(11・7)式
と も(11・8)式 と もす べ て の 電 位 の係 数 が 相 違 して
い る 。 そ こ で 前 節 で 行 っ た ガ ウ ス の 定 理(11・3)式 の か を検 討 す る。 実 は(11・14)式 は 図11・3の 辺 が4h/3の
四 辺 形(実
か ら の導 出 と ど こが 相 違 す る
よ う なi点 を 中心 とす る 断 面 の1
際 に は 回転 対 称 な 円筒)に
ガ ウ ス の 定 理 を適 用 し,(11・
図11.3
有 限 要 素 法 の(11.14)式
を 与 え る 区 分(点 線)
6)式 の 代 わ り に,
(11・15)
を作 って す べ て の側 面 につ い て加 え合 わせ れ ば 得 られ る 。 す な わ ち 回 転 対 称 場 で はi点 を 囲 む どの よ うな 体 積 に ガ ウ ス の 定 理 を適 用 す るか で電 位 の 式 が 相 違 す る。 (11・7)式,(11・8)式,(11・14)式
の 相 違 は〓
の と き,す な わ ち 回転 軸 付
近 で の み 差 を生 ず る が,回 転 軸 上 で 最 大 電 界 を生 じる 配 置 は は な は だ 多 い の で 無 視 で きな い 問 題 で あ る 。 実 は領 域 を規 則 的 に分 割 した場 合 に,差 分 法 と有 限 要 素 法 とで 電 位 の 式 が 異 な る こ とは 単 一 誘 電 体 の 場 合 に もあ り,回 転 軸 上 の 式(差 法 で は(3・20)式)が
分
そ の 例 で あ る。 差 分 法 で どの 式 を用 い る と最 も精 度 が 高 い
か は 現 在 の と こ ろ 必 ず し も明 らか に さ れ て い な い よ う で あ るが,領 域 の ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー最 小 の 条 件 か ら導 か れ る(11・14)式 が最 も良 い と思 わ れ る。 しか し これ は 付 近 の電 界 分 布 に依 存 す るか も しれ な い。
11.3
電荷 重畳 法 に よる計 算
二つの誘電体が 電界の作用 を受 けて分極 す ると き,そ れぞれの誘 電率が場 所 に
よ らず 一 定 で あ る と分 極 電 荷 は 界 面 に の み 現 れ,こ
の 界 面 電 荷 は電 気 一 重 層 で あ
る。 電 気 一 重 層 は単 極 性 の 電 荷 の 層 で あ っ て,そ の 両 側 で 電 位 は連 続 で あ る が , 電 界 は存 在 す る電 荷 量(密 度)に
比 例 した不 連 続 を生 じる 。 ま た場 の 電 界 は分 極
電 荷 を含 め て す べ て の 空 間 が 単 一 誘 電 体(真
空 と見 な して よい)で
あ る 場 合 の電
界 に等 しい 。 電 荷 重 畳 法 で は,実 際 は 電 極 表 面 に 存 在 す る 電 荷 の 作 用 を電 極 内 部 に 配 置 し た 仮 想 電 荷 の 作 用 で 置 き換 え る よ う に,誘 電 体 の 界 面 電 荷 を仮 想 電 荷 で 代 用 す る 。 た だ 誘 電 体 の 界 面 は電 極 表 面 と違 っ た境 界 条 件 で あ り,ま た二 つ の 誘 電 体 の 両 方 の 電 界 を与 え な け れ ば な らな い 。 そ の た め に図11・4に
模 式 的 に示 す よ う に ,誘
電 体 εA,εBの 双 方 の 内 部 に 仮 想 電 荷 を 配 置 し,εA内 の 仮 想 電 荷QAと 仮 想 電 荷Qと
で εB内 の電 界 を,εB内 の仮 想 電 荷QBと
電極 内の
電 極 内 の仮 想 電 荷Qと
で
εA内の 電 界 を与 え る 。 そ れ ぞ れ の 仮 想 電 荷 は電 極 表 面 と誘 電 体 界 面 の 境 界 条 件 か ら与 え られ る全 体 の 連 立 一 次 方 程 式 を解 い て 求 め られ る。 境 界 条件 は, (a) 電極 上:電 位 一 定(=V(i)) (b) 誘 電 体 界 面 上:電 位 の 連 続 お よ び電 束 密 度(の 法 線 方 向 成 分)の
図11.4 複 合 誘 電体 場 の 電荷 重 畳 法(説 明図)
連 続,
で あ る。
図11・4に
示 した よ う に,電 極 内,εA内,εB内
の仮想 電荷 を番号付 け してそれ
ぞ れ〓
と表 わ す と,
各 輪 郭 点iに お け る境 界 条件(a),(b)は
次 の よ うに な る。
(a) 電 極 上 εA側電 極 上:
〓(11・16)
εB側電 極 上:
〓(11・17)
た だ し図11・4で
は εB側 の電 極 は な い 。 ま た 大 地(接
作 用 と してP(i,j)に
含 める。
地 電 位)は
影像 電荷 の
(b) 誘 電 体 界 面 上
電位の連続 条件 (11・18)
電束密度 の連続 条件
(11・19)
こ れ ら の 式 で,P(i,j)は6.2,6.3節
で 説 明 し た 電 位 係 数 で,付
録1に
て い る 。 ま た 電 界 係Fn(i,j)は,同
様 に(6・11)式,(6・12)式
に 与 え た 電界 係
数Fに
与 え られ
よ っ て,
二 次 元 場;
〓(11・20)
回転対称場;
〓(11・21)
の よ う に 与 え ら れ る 。Fn(i,j)はj点 電 界 で あ る 。 角 度 θは 図11・5に 線 がy軸
ま た はz軸
の 単 位 電 荷 量 が 界 面 上i点
に 生 じる法 線 方 向
示 す よ う にεA< εBと し て εBか ら εAに 立 て た 垂
と な す 角 と 定 義 し て お く と,(11・20)式,(11・21)式
て の 場 合 に 変 更 な し に 使 用 で き る 。 そ の 代 わ り,θ は0∼360°(あ
をす べ る い は-180°
図11.5 界 面 上 電界 の 法線 方 向 成分
か ら180°)の 範 囲 を とる 。 こ こで 往 々 に して誤 解 を生 じ るの は,電 位 係 数,電 界 係 数 と電 荷 との 関 係 で あ る。 最 初 に述 べ た よ う に分 極 電 荷 を含 め て す べ て の 空 間 を 真 空 中 と見 なす な ら, 電 位 係 数,電 界 係 数 は ε0のつ い た 式 を用 い る。 ま た す べ て の 空 間 を εA中 と見 な す な ら ε0の代 わ り に εAと お い た 式 を用 い る。 どち らで も同 じ電 界 を与 え る が, 求 め られ る仮 想 電 荷 は εA/ε0倍だ け 相 違 す る 。 た とえ ば 真 空 中 と見 な した 取 扱 い で は 電 極 表 面 の 電 荷 密 度 は(真 電 荷+分
極 電 荷)が
求 め られ,実
際 に εA内 に あ
る 場合 の 真 電 荷 と相 違 す る の で 「静 電 容 量 」 を 求 め る際 に注 意 が 必 要 で あ る。 こ の 点 に つ い て は13.4節 (11・16)∼(11・21)式 し,表11・1の
で よ り詳 し く解 説 す る。 に よ っ て 仮 想 電 荷Q(j),QA(j),QB(j)を
未知数 と
よ うな係 数 を有 す る 支 配 方 程 式 が で き る。 単 一 誘 電 体 の場 合 と異
な り係 数行 列 はか な り0項 を含 ん で い る。 こ の方 程 式 か ら得 られ た 電 荷 量 を用 い て 各所 の 電 位,電 界 を求 め る手 順 は,6.3節
に説 明 し た単 一 誘 電 体 の 場 合 と同 様
で あ る 。 た だ し計 算 点 が ど ち らの 誘 電 体 に属 す る か を 入 力 デ ー タに よ っ て 与 え, そ れ ぞ れ 電 位,電 界 の 計 算 式 を使 い 分 け な け れ ば な らな い 。 解 の 精 度 を チ ェ ッ ク す る た め に は誘 電 体 界 面 で も輪 郭 点(KP)の
中 間 に検 査 点(AP)を
とる が,電 極 表
面 の よ う に電 極 電 圧 との 一 致 の 程 度 で 判 定 す る わ け に は い か な い 。7.6節 に 述 べ た よ うに,界 面 上 の検 査 点 に は εA側 と εB側 の そ れ ぞ れ の 電 位,電 界,電 線 方 向 成 分,接 線 方 向 成 分,両
界 の法
者 の εA側,εB側 の比 を求 め て 総 合 的 に 判 断 す る
のが 普 通 で あ る 。 も う一 つ 電 極 表 面 と誘 電 体 界 面 とが 相 違 す る点 は,後 者 で は1個 の 輪 郭 点 に対 して2個 の 仮 想 電 荷(未 知 数)が 必 要 な こ とで あ る。 これ は輪 郭 点1個
に境 界 条
件 が 二 つ あ る こ と に対 応 して い る 。 そ の 結 果 複 雑 な形 状 で 誘 電 体 が 多 数 あ る場 合 に は電 荷 重 畳 法 の 適 用 は難 し くな る。
表11.1 複合 誘 電 体場 の係 数 行列 の各 項
11.4 表 面 電荷 法 に よる計算 分 極 電 荷 は 電 気 一 重 層 で あ る か ら表 面 電 荷 法 で は 電 極 の 表 面 電 荷 と 同様 に 表 現 で き,電 荷 重 畳 法 の よ う に2個(界
面 両 側)の
電 荷 を与 え る 必 要 が な い 。 こ れ
は,表 面 電荷 法 で は界 面 に お い て電 位 の 連 続 性 が 満 足 さ れ て い て,電 束 密 度 の 連 続 条 件 の み 必 要 な こ とに対 応 して い る 。 図11・6の
よ う な複 合 誘 電 体 の 界 面i点 に お け る電 荷 密 度 を σ(i),法 線 方 向
電 界 を εA,εBに つ い て そ れ ぞ れEnA,EnB,ま の 電 界 をEn0と
た σ(i)以 外 の 電 荷 に よ る 輪 郭 点
す る と, (11・22)
(11・23)
こ こ で は 全 空 間 を 真 空 中 と 見 な し て い る 。 εA中 と 見 な す と き は(11・23)式 び 電 位,電
界 の 式 の ε0を εAと す れ ば よ い 。 こ の 二 つ の 式 か ら,
お よ
図11.6 複 合 誘 電体 に お け る表 面 電荷 法
(11・24)
電 極 表 面 あ る い は 界 面 のj要 素(区 よ るi点 の 法 線 方 向 電 界En(i,j)は,二
間t1∼t2:図11・6)に
あ る 電 荷 σ(j)に
次 元 場 で は,
(11・25)
回 転 対 称 場 で は,
(11・26)
と書 け る。 こ こ でFx,Fyは
単 位 電荷 密 度 の無 限 長 線 電荷 に よ る 電 界,Fr,Fzは
単 位 電荷 密 度 の リ ン グ電 荷 の 電 界 で と も に付 録1に のEn0は,(11・25)式
与 え られ て い る。(11・24)式
あ る い は(11・26)式 を輪 郭 点 の ご く近 傍 を 除 く全 要 素 に つ
い て加 え合 わ せ て 次 式 を得 る。
(11・27)
これ が 誘 電 体 界 面 の電 荷 密 度 に対 す る 方 程 式 で あ る。 こ こで 電 荷 密 度 が 座 標 の 関 数 と して 要 素 内 で 変 化 す る と きは,同
じ要 素 内 で あ っ て も σ(j)の 値 は 輪 郭 点 に
よ って 異 な る。 電 極 表 面 電 荷 に対 す る式 と(11・27)式 とが 全 体 の 電荷 量(電 荷 密
度)を 求 め る支 配 方 程 式 と な る。 あ る い は 電極 に つ い て は 電荷 重 畳 法,界 面 に つ い て は表 面 電荷 法 とす る こ と も可 能 で あ る。 な お ,第5章 電荷 法 に は い ろ い ろ な計 算 技 法(バ 形 状 の 模 擬,電 荷 密 度 表 現,境
で触 れ た よ う に,表 面
リエ ー シ ョ ン)が 存 在 す る が,電 極 や 誘 電体
界 条件 の 設 定 方 法 の 詳細 な どは ま とめ て 第9章
で
説 明 した 。 実 際 の 計 算 に あ た っ て 重 要 な の は,誘 電 体 界 面 の角 度,電 界 の 方 向 を 間違 え な い よ うに 定 め てお く こ とで あ る 。 界 面 の 角 度 は ,前 節 の 図11・5で に εBか ら εA(εA< εB)に立 て た 垂 線 がy軸
また はz軸
説 明 した よ う
と なす 角 と し,EnA,EnBは
常 に εBか ら εAの向 き を正 と決 め て お く と よい 。
11.5 誘電 率 が非 常 に異 な る と きの計算 誘 電 率 が 非 常 に 異 な る2種 類 の 誘 電 体 が 電 界 の方 向 に 直 列 に存 在 す る と,誘 電 率 の 大 き い方 の電 界 が 小 さ くな るが,こ
の よ う な配 置 を 電 荷 重 畳 法 で 計 算 す る と
大 きな(相 対)誤 差 を 生 じる。 これ は誘 電 率 の 大 き い方 の 電 界 は外 部 の(た い は 電極 の 作 る)電 界 と誘 電 体 界 面 の(分 極)電 殺 して表 され るが,両
いて
荷 に よ る 電 界 が 重 畳 あ る い は相
者 が 同 じよ うな 大 き さで 逆 方 向 で あ る の で,電 荷 重 畳 法 や
表 面 電 荷 法 で は大 きな け た 落 ち誤 差 を 生 じる た め で あ る。 電 荷 重 畳 法 で 仮 想 電 荷 を 用 い て 電 界 を 表 す の に 別 な 方 法[11.5][11.6]があ る 。 こ れ は 各 誘 電 体 の 電 界 を,そ
れ を 直 接 と り ま く周 囲 の 電 荷 だ け で 表 す も の で ,図11・
4を 例 に と る と εB内 の 電 界 を εA内 の 仮 想 電 荷 だ け で 与 え る 。 す な わ ちQ(j) (j=1∼k)とQB(j)(j=m+1∼n)で
εA内 の 電 界 を,QA(j)(j=k+1∼m)で
内 の 電 界 を 与 え る の で あ る 。 電 極 上,界 式 と は 違 っ た 式 で 表 さ れ,係 16)∼(11・19)式
εB
面 上 の 境 界 条 件 は,(11・16)∼(11・19)
数 行 列 も 表11・1と
は 相 違 す る が,こ
れ ら は(11・
に な ら っ て 容 易 に 作 れ る の で こ こ で は 省 略 す る 。 こ の 方 法 を β-
法 と名 付 け る と,実 際 の εB内 の 電 界 は電 極 表 面 電荷 と誘 電 体 界 面 電 荷 で 形 成 さ れ て い る か ら,先 に説 明 した 通 常 の 方 法(α-法)の
ほ うが 実 際 の 状 況 に 近 い が ,
多 くの 場 合 両 方 法 は等 価 で あ る。 しか し次 の よ うな違 い が あ る。
(a)β-法
は,図11・4で
い え ば εBが εAよ り非 常 に 大 きい と きの 電 界 計 算 に
適 して い る。 この と き は εB内 部 の 電 界 が 非 常 に小 さ くな るの で,α-法 で は電 極 内 の 電 荷Qと 必 要 が あ る が,有
εA内の 電 荷QAの
作 用 が εB内 で ち ょう ど相 殺 さ れ る
限個 の 電 荷 個 数 あ るい は近 似 した 電 荷 分 布 で は これ は 必
ず し も容 易 で な い。 そ れ に 比 べ β-法で はQAが0に 擬 しや す く,精 度 が 高 くな る 。 こ れ は εB=∞
近 づ けば よい ので模
とい う実 際 に導 体 の場 合 を
と って み れ ば容 易 に理 解 で きる 。 (b)逆
に εB/εAが1に
近 い と α-法 が 有 利 で あ る 。 こ の と き は,α-法
0に 近 くな る 。 εA=εBの =0と
(c)同
な るが
,β-法
と き 実 際 に 界 面 電 荷 は0に
で はQAが
のQAが
な り α-法 で はQA=QB
有 限 の 値 を 有 す る こ とに な る 。
じ使 用 電 荷 数 で あ っ て も,実 際 に電 位,電
界 を計 算 す る と きの 延 べ 使
用 電 荷 数 は β-法の ほ う が少 な くい く らか 有 利 で あ る 。 電荷 重 畳 法 で は εAと εBの界 面 の 電 荷 を 界 面 両 側 の 電 荷 で模 擬 す る た め に,そ の作 用 を一 方 は εB内の 電 界,他
方 は εA内 の 電 界 を 表 す よ う に分 離 して扱 う こ と
が で き る。 しか し表 面 電 荷 法 の 表 面 電 荷 は 電 気 一 重 層 で ,通 常 は 分 離 で き な い 。 そ の た め に,誘 電 率 の 非 常 に 異 な る複 合 誘 電 体 場 の 計 算 で は,2種
類 の表面 電荷
を用 い る方 法 が 試 み られ て い る。 電 荷 重 畳 法 の β-法 と 同 様 に,εB内 の 電 界 は 一 方 の 表 面 電 荷 だ け で表 され る。 各 区分 の 輪 郭 点 の 未 知 数 が2倍
に な る の に対 応 し
て 境 界 条 件 も電 位 の 連 続 条 件 と電 束 密 度 の 連 続 条 件 が 課 され る。 あ る い は輪 郭 点 で 電 位 と電 束 密 度 の 二 つ を未 知 数 とす る境 界 要 素 法(8
.2節)を
用 い て も通 常 の
表 面 電 荷 法 よ り精 度 が 向 上 す る 。
11.6 計 算 例―
三重 点効 果
複 合 誘 電 体 の 計 算 例 は 多 数 あ る が,こ
こ で は 実 用 的 に も重 要 な 三 重 点 効 果
(triple-junctioneffect)の 計 算 を述 べ る。 三 重 点 効 果 とは,電 極 と2種 類 の 誘 電 体 が そ れ ぞ れ 直 線 上 の 境 界 面 を な し1点
に会 す る点 で の電 界 の特 異 性 で あ
る[1l.7][11.8]。 通 常 は 一 方 の 誘 電 体 が 固体 絶 縁 物 な の で 接 触 点 の 電 界 と考 え て も よ
い。6.5.1項
の 図6・5に
電 荷 重 畳 法 で 輪 郭 点 を置 け な い場 所 と して,丸
み を帯
び な い電 極 凸 部 や 凹部 の 先 端 とな らん で 複 合 誘 電 体 の 界 面 が 電極 と接 触 して い る 点,す
な わ ち 三 重 点 を あ げ た 。 こ れ らの 点 は理 論 上 電 界 が 無 限 大 あ る い は零 に な
る点 で,本 来 電荷 重 畳 法 に よ る電 界 の模 擬 が 難 し く,ま た 差 分 法,有
限要素法で
も電 界 の 振 舞 い を調 べ る に は,三 重 点 付 近 で 分 割 を非 常 に細 か く し な け れ ば な ら ない。 電 極 と固 体 絶 縁 物 との 接 触 は 支 持 絶 縁 物 と して しば しば 生 じる が,接
触角 が
90度 で な い と き は接 触 点 は 常 に電 界 特 異 点 に な る。 こ の 場 合 の 電 界 計 算 は 誘 電 体 界 面 が(断
面 で)直
線 で あ れ ば 表 面 電 荷 法 が 適 して い る が,こ
法 の 計 算 を 説 明 す る 。 計 算 例 は 図11・7に
こ で は電 荷 重 畳
示 す よ う な二 次 元 の 平 行 平 板(平
電 極 間 に斜 め の 誘 電 体 界 面 が あ る配 置 で,誘
面)
電 率 の比 は εB/εA=4で あ る。 なお
現 実 の 配 置 は 二 次 元 で は な いが 接 触 点 の ご く近 傍 の 電 界 挙 動 を考 え る と きは 二 次 元 と して よい 。 上 下 の 電 極 との 接 触 点P点,Q点 Qか
付 近 の 電 界Eは,そ
れ ぞ れP,
らの 距 離lに 対 して 両 対 数 グ ラ フで 直 線 に な る。 す な わ ち, (11・28)
と表 され る。 こ こ でVは
印 加 電 圧(電
極 間 の 電 位 差),dは
は 配 置 に依 存 す る 定 数 で あ る 。 図 の 場 合 接 触 角 αが90度
図11.7
「高木 効 果 」 の配 置 と計 算 結果―
電 極 間 距 離,K,m 以 下 で あ る と,P点
三重 点 付 近
の 誘 電 体 界 面 上 電 界(εB/εA=4,α=45°)
付
近 で はm<0で
電 界 は無 限 大 に 近 づ き,Q点
付 近 で はm>0で
零 に近 づ く。 筆 者
の 一 人 は こ の 電 界 特 異 性 を 最 初 の 報 告 者 に ち な ん で 「高 木 効 果 」 と 名 付 け て い る。 α=90°の 場 合 に はm=0と 図11・8に
な っ て 電 界 特 異 性 は 生 じな い 。
三 重 点付 近 の 電 界 を 電 荷 重 畳 法 で 計 算 す る場 合 に 筆 者 らが 用 い て い
る輪 郭 点 と仮 想 電 荷 の 配 置 を示 す 。 仮 想 電荷 は三 重 点 を 通 る 直 線 上 に 配 置 し,輪 郭 点 の 位 置 をx軸
上 でxK(j)と
す る と,対 応 す る仮 想 電 荷 のxL,yL座
標 を次式
で 与 え る。 (11・29)
こ こでjは 輪 郭 点 あ る い は 電 荷 の 番 号,α は 図11・7の
接 触 角 で あ る 。 さ らに 隣
接 電荷 に 次 の 関係, (11・30)
を与 え る と,三 重 点 に 一 定 の比 で(等 比 級 数 的 に)近 づ く配 置 に な っ て,電 界 が 無 限 大 あ るい は零 に 近 づ くよ うな 場 所 で も比較 的 容 易 に計 算 で き る。 三 重 点 か ら 離 れ る に したが っ て,輪 郭 点 と仮 想 電 荷 の 数 は バ ラ ンス を保 ちつ つ 少 な く(ま ば ら に)す る。
図11.8 三重 点 付 近 の輪 郭 点 と仮 想 電荷 の配 置
第12章 対 称 的 配 置,周
期 的 配 置,一
様 電 界,
既 知電界 の計算
計 算 す る 配 置 が 与 え られ た と き,す
ぐに計 算 に取 りか か らず に な るべ く楽 に,
つ ま り容 量 や 計 算 時 間 を節 約 で き る 方 法 を考 え る と,計 算 時 間 や コス トだ け で な く,計 算 精 度 も改 善 され る こ とが あ る 。 そ の 典 型 的 な 例 は,対 称(的)配 置 や周 期 的 配 置,あ
るい は一 様 電 界,既 知 電 界 が 印 加 さ れ た と きの 計 算 で あ る。 以 下 で は
主 に電 荷 重 畳 法 や 表 面 電 荷 法 を対 象 に して,こ れ らの 計 算 法 を述 べ る。 た だ し, 大 容 量 計 算 機 の 進 展 の お か げ で い ろ い ろ 面 倒 な工 夫 を す る よ り,複 雑 な ま ま 直接 計 算 した ほ うが よ い場 合 も多 くな っ た。 計 算 精 度 は 分 割 を細 か くす る こ とで 稼 ぐ とい う,技
よ りも力 任 せ の 方 向 で あ る が,少
な く と も以 下 に述 べ る ケ ー ス は適 用
して 損 は な い と思 わ れ る。
12.1 対 称 的配 置,周 期 的 配置 の計算 12.1.1
対 称 性 と境 界
計 算 す べ き配 置 の 対 称 性 を利 用 す る と,多
くの 場 合 計 算 が 非 常 に簡 単 に な る。
そ もそ も回 転 対 称 配 置 は,回 転 角 に依 存 しな いr,zだ 用 し て い る。 そ の ほ か の 配 置 で は,図12・1は
け の 配 置 で あ る こ と を利
よ く知 られ た 例 で,一 様 電 界E0
中 に 球 あ る い は 円 筒 が あ る と,中 心 を 通 っ てE0に
垂 直 な 面(図(a)の
点 線 部 分)
が 等 電位 面 に な る 。 した が っ て一 様 電 界 対 大 地 上 半 球 あ る い は 半 円 筒 の 配 置 に な
(a)
(a)
(b)
(b)
図12.1 一 様 電 界 中 の球 あ るい は 円筒
る。 もち ろ んy平 全 体 の1/4の
面(x=0)あ
図12.2 球 あ るい は 円筒 の 無 限列 ①
る い はz軸 に対 して も対 称 で あ る か ら,結 局 図(a)
配 置 を 考 え る だ け で よ い。
こ れ らは す ぐ分 か る 例 で あ る が,ほ 図12・2の
(c)
か に 図2・1の
配 置 を2.2節
で 説 明 した 。
よ う な 球 あ るい は 円 筒 が 等 間隔 に 無 限 個 並 ん だ 配 置 に な る と う っか り
す る こ とが 多 い 。 図 の よ う に各 電極 の 電 位 差 が 同 じで あ る と,点 線 の 面(球 あ る い は 円 筒 の 中 心 を通 っ て紙 面 に垂 直 な面)が の よ うな0とV(あ
る いVと2Vで
等 電 位 面 に な る。 した が っ て 図(b)
も同 じ)の 電極 で 囲 まれ た 領 域 だ け を計 算
す れ ば よい 。 これ は さ ら に 中 間 の等 電 位 面 が あ る か ら結 局 図(c)の 領 域 が 計 算 の 領 域 に な る 。 も ち ろ ん 一 点 鎖 線 の 面 に対 して も対 称 で,こ
の面上 では電位の法線
方 向微 係 数 ∂φ/∂n=0で あ る 。 同 じ球 あ る い は 円 筒 の 無 限 列 で も電 圧 が 異 な る と対 称 面 の 電 界 条 件 が 相 違 す る。 図12・3で
円 筒 に 交 互 に 同 じ電 圧 を与 え た配 置 は,電 気 集 じん な どの 分 野 で
荷 電 粒 子 の 移 動 や 閉込 め に使 わ れ る 「電 界 カ ー テ ン」 の 配 置 で あ る。 この 配 置 は 対 称 性 か らV1とV2の そ こ で 図(b)の
球 の 中 心 を通 る 図(a)の 点 線 の面 が ∂φ/∂n=0の 面 に な る。
よ う な 領 域 を と っ て 電 界 を 計 算 す れ ば よ い。 一 点 鎖 線 の 面 も
∂φ/∂n=0で あ る。4.3節
に 述 べ た よ う に,有 限 要 素 法 で は こ の 境 界 条 件 は 自然
境 界 と呼 ば れ 自然 に満 足 され る。 電 荷 重 畳 法 で は,左 右 の 境 界 外 に配 置 した仮 想 電 荷 をQ(j)と
す る と,輪 郭 点 にお け る 次 の 式 か ら電 荷 量 が 求 め られ る。
(a)
(b) 図12.3 球 あ る いは 円筒 の 無 限列 ②
電極 上(図 の実線 上): 左右 の点線の境界 上: (12・1) こ こ で,P(i,j)は Fn(i,j)=Fx(i,j)(二
12.1.2
電 位 係 数,Fn(i,j)は 次 元 場)あ
法 線 方 向 電 界 係 数 で,図(b)の
る い はFn(i,j)=Fz(i,j)(回
場 合 は
転 対 称 場)で
あ る。
周 期境 界 な ど
球 あ るい は 円 筒 が 図12・4の
よ うV1,V2,V3の
は 少 々 複 雑 で あ る 。V1,V2,V3が
三 つ の 電 圧 で繰 り返 す と き
三 相 交 流 の 場 合 は,進 行 波 を生 じ る 「進 行 波
電 界 カ ー テ ン」 の 配 置 で あ る 。 こ の 配 置 に は対 称 な 等 電 位 面 あ る い は ∂φ/∂nの 面 は な い が,3導
体 ず つ 全 く同 じ電 界 分 布 を繰 り返 す こ とか ら,た
とえ ば 図(a)
の 点線 間 の 領 域 を とっ て 次 の よ うな 周 期(的)境 界 と して計 算 で き る。 (a) 領 域 分 割 法 で は,領 域 内 の 通 常 の 方 程 式 の ほ か に,図(b)の の 境 界 の格 子 点i点 で,次
よ う に両 側
の 条 件 を付 加 す る。
(12・2)
こ こで,添 字 のl,rは
左 右 の 境 界 を 意 味 して い る 。
(b) 電 荷 重 畳 法 で は,図12・5の 右 の 境 界 外 の仮 想 電 荷 をQ(j)と
説 明 図 に示 す よ うに 電 極 内 の 仮 想 電 荷 と左 す る と,次 の 式 か ら仮 想 電 荷 量 が 求 め ら
(a)
(b)
図12.4 三 相 の球 あ るい は平 行 円筒 の無 限 列
図12.5
図12.4の
電 荷 重 畳 法 に よ る計算
れ る 。 た だ し,境 界外 の 電 荷 の 配 置 に は注 意 が 必 要 で あ る 。
電極(導 体)上: 左 右 の境 界 上 :
こ こ で,m,m'は 場 で はFx(i,j),回
(12・3)
左 右 の境 界 上 の 輪 郭 点 番 号 で あ る 。Fn(i,j)は 転 対 称 場 で はFz(i,j)で
対 称 で,一
点 鎖 線 上(y=0の
大 地(接
地 平 面)が
あ る。 図12・5は
平 面 あ る い はz軸)で
大 地 が あ る 場 合 に は電 界 分 布 は も はや 同 図 の(b),(c)の
∂φ/∂n=0に な る の で,図(b)の
場 合 は図12・6の
もち ろ ん 上 下 に も
∂φ/∂n=0で あ る。
あ る と対 称 性 も変 化 す る。 図12・2(a)で
じで は ない 。 しか し図12・3の
や は り二 次 元
電極列 の下 部 に
簡 単 な領域 の分布 と同
よ う に,相 変 わ らず 点 線 の 面 が
よ う な 領 域 の 計 算 を行 え ば よ い。 上 下 方 向 に 関
して は もは や 対 称性 が な く,特 に球 の 場 合 は 一 般 三 次 元 の 配 置 に な る。 図12・4 の 三 相 電 圧(進
行 波 電 界 カー テ ン)の
算 方 法 は 図12・4(b),図12・5に
と き も,上 下 の 対 称 性 が 失 わ れ る だ け で計
関 して述 べ た も の と全 く同 じで あ る 。
図12・7は
も う少 し複 雑 な列 で,一 平 面 に規 則 正 し く無 限 個 並 ん だ 球 と大 地 の
配 置 で あ る[12.1]。 球 の 電 位 が す べ て 同 じで あ る と,こ の 配 置 は 高 電 圧 部 分 の シー ル ドに 用 い られ る分 割 形 電 極(ポ
リ コ ン電 極)の 例 で あ る。 ポ リ コ ン電 極 は 高 電
圧 機 器 の 寸 法 が 大 き く,ま た そ の 電圧 が 非 常 に高 い た め に1個 の シ ー ル ド電 極 で は 大 きす ぎ る場 合,そ
の代 わ りに使 わ れ る。 実 際 に は 球 で は な い が 簡 単 の た め に
球 電 極 と して 話 を 進 め る。 こ の 配 置 は 上 か ら見 た 図(a)に 点 線 で 示 した よ う に, 六 角 形 の電 界 分 布 の 繰 り返 しで,さ
らに そ の う ち 角 度30°の 部 分 が 分 か れ ば 他 の
部 分 は す べ て 同 じで あ る 。 した が っ て 高 さ方 向(z方
向)も
考 え る と,六 角 柱 あ
る い は三 角 柱 の 電 界 分 布 を 求 め れ ば よ い。 図(c)に 示 す よ う に この 点 線 は 面 の 対 称 性 か ら ∂φ/∂n=0の 面 に な っ て い る 。
(a)
(b)
図12.6 球 あ るい は 円筒 の 無 限列 対 大 地
(a)
(b)
(c)
図12.7 無 限個 の球(ポ リコ ン)対 大 地
12.2 一 様 電 界,既
12.2.1
知 電 界 を含 む 計 算
原 理
無 限遠 で の 電 界 が 一 様 電 界 や 簡 単 な既 知 の 電 界E0で,求
め る 電 界Eは
局 部の
変 化 にす ぎな い と い う 配 置 が しば しば あ る。 典 型 的 な例 と して は雷 雲 下 の 地 上 物 体 付 近 の電 界 な どが あ げ られ る。 もっ と小 さな 電極 で も要 す る に 考 慮 す べ き局 部 に比 べ て,全 体 の 電 界 を形 成 す る電 極 が 十 分 大 き く離 れ て い れ ば こ の よ う な取 扱 いが で きる。 さ ら に一 様 電 界 中 で は 理 論 解 の求 まる 配 置 が い ろ い ろ あ る の で,数 値 計 算 結 果 の精 度 を調 べ る た め に も重 要 で あ る。 問 題 は求 め る 電 位 φ,電 界Eを, (12・4) (12・5)
と して,変 動 項 φp,Epの 計 算 を ご く局 部 の 数 値 計 算 だ け で 済 ませ ら れ る か と い う こ とで あ る。 差 分 法 や 有 限 要 素 法 の よ う な 領 域 分 割 の 方 法 で は,(12・4)式, (12・5)式 の よ う に分 け て も計 算 が 非 常 に 簡 単 に な る わ け で は な く,計 算 の 領 域 が 小 さ くな る こ と も な い 。 せ い ぜ い φp,Epが が 正 確 に(た
とえ ば解 析 式 で)与
φ0,E0に
比 べ て 小 さ く,φ0,E0
え られ る と き に数 値 計 算 の 誤 差 を小 さ くす る 目
的 に 使 わ れ る程 度 で あ る。 これ に対 して電 荷 重 畳 法 や 表 面 電 荷 法 で は,局 限 され た境 界 部 分 に あ る 電荷 だ け で 領 域 全 体 の 電 界 を与 え る の で,き
わ め て 効 率 の 良 い 計 算 の で き る場 合 が あ
る 。 回 転 対 称 場 の 電 荷 重 畳 法 を 例 に こ の 方 法 を説 明 す る。 二 次 元 場,表
面 電荷 法
で もほ とん ど 同様 で あ る。 な お 既 知 電 界 の 特 別 な 場 合 と して,電 界 が 無 限 大 とな る特 異 点 近 傍 で の電 界 や 電 荷 の振 舞 い が 分 か っ て い る場 合,対
象 とす る(求 め る)変 数 か ら こ の 関 数 を差 し
引 く こ と で特 異 性 を軽 減 で きる こ とが あ る 。 た と え ば,x=−1か 状 導 体 の端 部 の 電 荷 密 度 が1/(π√1−x2)と
ら1の
幅 の箔
な る こ と を用 い る な どで あ る[12.2]。
12.2.2 第6章
単 一 誘電 体 の場合 に 述 べ た 式 の 代 わ りに 電 極 上 の 輪 郭 点i点
に 対 し て 次 式 を 用 い る。 φ0
が既 知 の 電 位 で あ る。 (12・6)
電界 に つ い て は そ れ ぞ れ 次 式 よ り計 算 す る 。 (12・7)
(12・8)
こ こ でQ(j)は Fz(i,j)は
第6章
仮 想 電 荷,V(i)はi点
の 電 位(電
に 述 べ た 電 位 係 数,電
極 電 圧),P(i,j),Fr(i
,j),
界 係 数 で あ る。
12.2.3 複 合 誘 電 体 の 場 合 11・4節 の(11・16)∼(11・19)式 (a)電
の 代 わ りに境 界 条 件 の 式 が 次 式 の よ う に な る 。
極上
εA側電 極 上: 〓(12・9)
εB側電 極 上: 〓(12・10)
(b) 誘 電体 界面上 電位 の連 続条件 (11・18)式
電束密度 の連続条件
と 同 じ。
(12・11)
こ こ でQ(j),QA(j),QB(j)は は(11・20)あ
そ れ ぞ れ 電 極 内,εA内,εB内
る い は(11・21)式
の 仮 想 電 荷 ,Fn(i,j)
で 与 え ら れ る 電 界 係 数 ,∂ φ0/∂nは 界 面 に お け
る φ0の 法 線 方 向 微 係 数 で あ る 。
プ ロ グ ラ ム に い く らか の 修 正 は 必 要 で あ る が,φ0が 簡 単 な 関 数 で あ る と仮 想 電 荷 群 で φ0を与 え る よ り も計 算 が ず っ と簡 単 に な る。 そ の 例 を 次 節 に示 す 。
12.3
計算 例
12.3.1 図12・8の
一様 電界 の場 合 よ う な 一 様 電 界E0(-zの
方 向)の
場 で は,
(12・12)
で あ る。 そ こで 電 極 上 の 輪 郭 点 に 対 して(12・6)式 を作 り,Q(j)が
求 め られ る。
一 様 電 界 を表 わす た め に遠 方 に仮 想 電 荷 を 配 置 す る代 わ りに
,半 球 内 の仮 想 電 荷
だ け で 電 界 分 布 を 与 え る こ とが で き る。 差 分 法 や 有 限要 素 法 と比 べ て い か に簡 単 に な る か 理 解 さ れ る で あ ろ う。
図12.8 一様 電 界 中 の半 球 突起
半 球 が 固体 誘 電 体 で あ る 複 合 誘 電 体 の 場 合 は 同 様 に(12・9)∼(12・11)式
で,
(12・13)
とお け ば よ い 。 θは 図11・5で
定 義 した 界 面 上 の 角 度 で あ る 。 導 体 の場 合 と同 様
に,広 い 領 域 内 で 各所 の 電 位 を 計 算 す る領 域 分 割 法 に比 べ,電 部(半
球 内 部)の
12.3.2
荷 重 畳 法 は ご く局
電荷 を求 め る だ け で よ い 。
既 知電 界 の場 合
一 様 電 界 で は な い が や は り無 限 遠 に及 ぶ 電 界 が あ ら か じ め分 か っ て い る と き は,こ の 電界 を重 畳 す る と計 算 が 簡 単 に な る。 図12・9の
ような同軸円筒構 造の
ガス 絶 縁 線 路 の ス ペ ー サ(支 持 用 固体 絶 縁 物)部 分 の 電 界 を例 に とる と,
(12・14)
を用 い れ ば よ い。 θはや は り図11・5で 係 が(12・13)式 12・9はr方
定 義 した 角 度 で あ る 。 電 界 と角 度 との 関
と違 う の は,一 様 電 界 場 で は 電 界 が−zの
向 の た め で あ る。 ま た 図12・9はz=0の
置 で あ る か ら,2.3節
面 に対 し て上 下 対 称 な 配
に 述 べ た よ う に,電 界 計 算 は この 面 に対 称 な位 置 に あ る 同
極 性 で 等 量 の 電荷 の作 用 をP(i,j),Fn(i,j)に 図12・9の
方 向 な の に 対 し,図
含 め て 行 わ れ る。
よ うに既 知 の 電 界 を生 じる外 部 電 極(図 で は 中 心 導 体 と シー ス)が
有 限 の 位 置 に存 在 す る と き は,一 様 電 界 場 ほ どは 有 利 な計 算 に な らな い 。 こ れ は 局 部 的 な 電 界 の 乱 れ が外 部 電 極 の表 面 電 荷 に も影 響 を与 え る た め で あ る。 しか し 重 畳 しな い 計 算 に比 べ て 明 らか に 次 の 点 で 有 利 で あ る。 (a) 既 知 電 界 を作 る仮 想 電 荷 を置 く必 要 が な い 。 電極 内 の電 荷 は 分 極 電荷 に
影 響 され た 分 だ け を与 えれ ば よ く,局 部 に 仮 想 電 荷 を 置 くだ け で 済 む 。 (b) 一 般 に 電 界 の 必 要 な箇 所 よ り離 れ る に従 っ て 輪 郭 点 の 間 隔 を大 き くと り 仮 想 電 荷 の 数 を減 らす の が 普 通 で あ るが,図12・9の
よ うな 同軸 円筒 配 置
の 内 側 導 体 内 な ど で はz軸 に 近 づ くた め こ れが 困 難 な こ とが あ る。 既 知 電 界 を重 畳 す る と この 問題 も解 決 さ れ る 。
図12.9 既 知 電界 の重 畳 に よる電 界 計算
第13章 静電容 量 の計 算
1個 あ る い は 複 数 の 導 体 が 存 在 す る と きに 導 体 間 や 導 体-大 地 間 の 静 電 容 量 の 計 算 が しば しば 必 要 に な る 。 い っ た ん 静 電 容 量 が 求 まる と電 圧 と電 荷 量 の 関係 が 等 価 な静 電 容 量 の 回路 で 明確 に 表 され る。 簡 単 な電 極 配 置 の 静 電 容 量 は解 析 式 で 与 え ら れ る が,電 界 分 布 が 数 値 計 算 で し か 求 め られ な い 配 置 で は,静 電 容 量 も数 値 的 に計 算 しな け れ ば い け な い。 静 電 容 量 の 計 算 に は本 質 的 に境 界 分 割 法(電 荷 重 畳 法 あ る い は 表 面 電 荷 法)の
ほ うが 領
域 分 割 法 よ り適 して い る。 これ は境 界 分 割 法 が 電 荷 を未 知 数 と して,本
質的に電
位 と電 荷 の 関係 式 を も と に して い るか らで あ る。 この 章 で は,静 電 容 量 の 計 算 法 を境 界 分 割 法,特 る。 ま た 第11章
に 電 荷 重 畳 法 を 中 心 に述 べ
に も触 れ た が,間 違 い や す い 複 合 誘 電 体 場 で の 静 電 容 量 の 計 算
を最 後 に説 明 す る。
13.1 静 電 容 量 の 基 礎 式 m個 の 導 体 の電 圧(大 荷 をQ1,Q2,…,Qmと
地 に対 す る 電 位)をV1,V2,…,Vm,各
す る と,QiとViの
る係 数Cijを 用 い て 次 式 の よ う に書 け る。
導 体 が有す る電
関係 は 導 体 の 形 状 と配 置 だ け に依 存 す
(13・1)
こ こ でCi0は 導 体iの 自 己 容 量 あ るい は対 地 容 量 と呼 ば れ,Cij(i≠j)は
導 体iと
jとの 間 の 部分 容 量 あ る い は相 互 容 量 と呼 ば れ る。 そ の 意 味 す る と こ ろ は 図13・ 1に 明 らか な よ う に,各 導 体 間 の 電 位 差 と電 荷 量 の 関 係 を与 え る等 価 的 な コ ン デ ンサ の値 で あ る 。
図13.1 多 導 体系 の静 電容 量 (13・1)式
は ま た次 式 の よ う に 書 くこ と もで き る。
(13・2)
こ こ で 一 般 にDijは 容 量 係 数,Dij(i≠j)は
静 電 誘 導 係 数 と呼 ば れ ,i以
をす べ て 接 地 した と き,導 体iの 電 位 を1Vに
外 の導体
す る た め に そ れ ぞ れ 導 体iあ
るい
はjに 与 え るべ き電 荷 量 で あ る。 (13・1)式
と(13・2)式
を比 較 す る と一 般 に次 式 の成 り立 つ こ と が分 か る 。
(13・3)
す な わ ち,Dii,Dijが
分 か れ ばす ぐに 容 量 が 求 め られ る。
ま た 一 般 にDij=Djiの
関 係 が あ る の で, (13・4)
で あ る。 対 地 容 量 お よ び相 互 容 量 は す べ て 正 の値 で あ る。 初 め に述 べ た よ うに,静 電 容 量 の 計 算 に は本 質 的 に境 界 分 割 法(電 荷 重 畳 法 あ る い は 表 面 電 荷 法)の
ほ うが 領 域 分 割 法 よ り適 して い る。 そ れ は 第Ⅰ 部 で解 説 し
た よ う に境 界 分 割 法 の 支 配 方 程 式 が 電 圧 と電 荷 の 関 係 式 で ,(13・2)式
と よ く似
て い る た め で あ る。 中 で も電 荷 重 畳 法 が 最 も適 して い る。 各 導 体 の 電 荷 量Qiを 求 め る の に,表 面 電 荷 法 で は 電 極 表 面 の 電 荷 密 度 を数 値 積 分 す る 必 要 が あ る が, 電 荷 重 畳 法 で は仮 想 電 荷 の 値 を た だ 加 算 す る だ け で よ い 。
13.2 境 界 分割 法 に よる計算 電荷 重 畳 法 に お け る仮 想 電 荷 の 電 荷 量 と電 極 電 位 の 方 程 式(支
配 方 程 式)は
次
式 の よ う に な っ て い る。
(13・5)
こ の 式 は(6・9)式 式,(13・2)式
と 同 じ で あ る が,仮
のQi,Viと
想 電 荷 の 電 荷 量 ,輪
郭 点 の 電 位 を(13・1)
混 同 しな い よ うに 小 文 字 で 表 わ して い る。
(13・5)式 か ら静 電 容 量 を求 め る に は 二 つ の 方 法 が あ る。 一 つ は た と え ば導 体 1の 電 圧V1=1,他
のす べ て の 導 体 の 電 圧 を0と
して 電 界 計 算 を 行 い ,仮 想 電 荷
の値 を求 め る 。 各 導 体 内 の 仮 想 電 荷 の和 は,そ れ ぞ れ の 個 数 をm1 ,m2,…,mmと す る と, (13・6) こ の と き(13・2)式
か ら分 か る よ う に, (13・7)
こ れ か ら(13・3)式
に よ っ て,
(13・8)
こ の 方 法 は 電 荷 重 畳 法 に よ る電 界 計 算 プ ロ グ ラ ムが そ の ま ま使 え,静 電 容 量 を求 め る に は(13・6)式,(13・8)式
の 容 易 な 計 算 だ け で 済 む が,m個
べ て の 静 電 容 量 を 求 め よ う とす る とm回
の導体 群 のす
の電 界 計 算 が 必 要 で あ る。
も う一 つ の 方 法 は,通 常 の 電 界 計 算 の よ う に 適 当 な輪 郭 点 を と っ て(13・5)式 の電 位 係 数 行 列 を作 り,電 界 計 算 す る こ と な く逆 行 列 を 求 め る もの で あ る。 逆 行 列 の計 算 プ ロ グ ラ ム は た い て い の 電 子 計 算 機 に サ ブ ルー チ ン と して備 え られ て い る。 す る と(13・5)式 か ら,
(13・9)
と な る 。 導 体1の
仮 想 電 荷(輪
郭 点)の
個 数 をm1,導
す で に 述 べ た よ う に 導 体 内 の 仮 想 電 荷 量 は(13・6)式 の 電 位 に つ い て はυ1=υ2…=…=υm1=V1等
体2をm2,…
と す る と,
で与 え られ る。 また 輪 郭 点
が 成 り立 つ 。 こ れ か ら(13・9)式
は,
(13・10)
の よ うに ま とめ る こ とが で きる 。 この 式 は(13・2)式 と同 じで あ るか ら,(13・3) 式 を用 い て 仮 想 電 荷 の値 を計 算 す る こ とな く各 部 の容 量 が 求 め られ る。 導 体2∼ mに
つ い て も 同 様 で あ る。 こ の 方 法 は(13・10)式
に 至 る 計 算 を電 荷 重 畳 法 の プ
ロ グ ラ ム に付 加 す る必 要 が あ る が,導 体 数 が 多 い と き に も一 度 にす べ て の 容 量 が 計 算 で き る の で 便 利 で あ る 。 た だ電 界 計 算 な し に容 量 が 求 め られ る と述 べ た が, 電 界 分 布 が 仮 想 電 荷 で正 し く模 擬 され て い るか ど うか をチ ェ ッ クす る た め に,電 界 計 算 を行 っ て チ ェ ッ クす る ほ うが 安 全 で あ る。 も う一 つ の境 界 分 割 法 で あ る表 面 電荷 法 で は,要 素 内 で 電 荷 密 度 一 定 の 方 法 な
ら電 荷 重 畳 法 にお け る 仮 想 電 荷q(j)を
各 要 素 の 電 荷 量 と考 え れ ば 以 上 の 計 算 法
が そ の ま ま使 え る 。 す な わ ちj番 目の 要 素 を線 分t1∼t2(図5・1)と
す る と,
二 次元場:
〓(13・11)
回転 対 称 場 : と な る 。 こ こ でrは
〓(13・12)
σ(j)のr座
標 で あ る 。(13・11),(13・12)式
転 対 称 場 で は 数 値 的 に 行 わ な け れ ば な ら な い の で,電
の線積 分 は 回
荷 重 畳 法 よ り面 倒 で あ る。
13.3 領 域 分割 法 に よる計 算 13・1節 に述 べ た よ う に領 域 分 割 法 で も導 体 の 有 す る 電 荷 が得 ら れ れ ば 静 電 容 量 を 求 め る こ とが で き る。 通 常 の 電 界 計 算 の プ ロセ ス に従 うな ら,電 界 計 算 → 導 体 表 面 の 電 界 と電 荷 密 度 の 計 算 → 表 面 電 荷 密 度 の 積 分,と
い う手 順 で 導 体 の 電荷
を 得 れ ば よ い。 しか し差 分 法 や 有 限 要 素 法 で こ の 手 順 か ら静 電 容 量 を 求 め る の は,領 域 分 割 法 に比 べ 面 倒 で 精 度 も劣 る。 差 分 法 で い く らか 簡 便 な方 法 は系 の 方 程 式 に 導 体 の 有 す る電 荷Qを
未知 数 と
して 繰 り入 れ る 方 法 で あ る[13.1]。 こ れ は 導 体 を 囲 む 閉 じた 小 領 域 に 次 の ガ ウ ス の 定 理 を適 用 して 関係 式 を作 る。 (13・13)
こ こ でDnは
微 小 面 積ds上
の 電 束 密 度 の 外 向 き法 線 方 向 の 成 分,Qは
小領 域 内
の全 電荷 で あ る。 図13・2の
説 明 図 で い え ば,導 体 を 囲 む 領 域 と し て 図 のa∼fの
(13・13)式 を適 用 す る と,た と え ば 表 面a上 (hは 格 子 間 隔)と
点線部分に
で はDn=−ε∂ φ/∂n=− ε(φ2−V)/h
な る か ら,全 体 と して 二 次 元 場 で は, (13・14)
回転 対 称 場 で は(11・6)式 と同 様 な計 算 か ら,
図13.2 領 域分 割 法 に お け る導 体 電荷 の計 算
(13・15)
こ こ で 添 字 は 各 格 子 点 で の 値 を 示 し て い る 。(13・14)式 格 子 点 電 位 φiの差 分 式 と と も に 電 位 の 方 程 式 と し てQを m個 あ る と き は13.2節
を,
求 め れ ば よい 。 導 体 が
で 説 明 し た よ う に 導 体 の 電 位 をV1=1,V2=…=Vm=0,
次 にV2=1,V1=V3=…=Vm=0,… 割 法 の(13・10)式
あ る い は(13・15)式
と 変 え たm回
の計算 が必要 である。境 界分
の よ うに す べ て の静 電 容 量 を 一 度 に求 め る こ とは で きな い 。
一 方 有 限 要 素 法 で は,第4章
で解 説 した よ うに 差 分 法 と相 違 す る の は,節 点 電
位(差 分 法 で は格 子 点 電 位)を 未 知 数 とす る連 立 方 程 式 を作 る 過 程 だ け で あ るか ら,(13・13)式
か ら導 か れ る節 点 電 位 と導 体 電 荷 の 関 係 式 を も と も との 支 配 方 程
式 に付 加 す れ ば よ い。 ほ か の 点 は差 分 法 と 同 じで あ る。
13.4 複 合 誘 電体 にお け る 問題点 2種 類 以 上 の誘 電 体 が 存 在 す る 場 合 の静 電 容 量 の 計 算 は い さ さ か 複 雑 で,電 荷 重畳 法 で も単 純 に電 極 の 電 位 と仮 想 電 荷 の 和 を結 びつ け る わ け に い か な い 。 こ れ は 非 常 に間 違 い やす い 点 な の で こ の節 で 分 か りや す く説 明 す る。 ま た こ の 問 題 は 次 章 に 述 べ る絶 縁 され た(浮 遊)導 体 の 誘 導 電 位 計 算 に 直 接 関係 して い る 。 11.3節 で 述 べ た 電 荷 重 畳 法 に よ る複 合 誘 電 体 場 の計 算 は,誘 電 体 界 面 に 分 極 電荷(両
側 の 仮 想 電 荷 で 模 擬)を
配 置 し 「真 空 中 」 と見 な して 電 界 計 算 す る も の
で あ っ た。 この 方 法 で は 電 極 内 の 仮 想 電 荷 は 等 価 的 な 電 極 表 面 電 荷 を 模 擬 し, 「真 電 荷 」 を与 え る の で は な い 。 た と え ば 図13・3の
ような平行 平面 の電極 間 に
二 つ の 誘 電 体 εA,εBが あ り電 極 に 垂 直 な 界 面 で 分 け ら れ て い る 場 合,電
荷 重畳
法(表 面 電 荷 法 で も同 じ)で 与 え る 表 面 電 荷 密 度 は真 電 荷 密 度 σtrueと分 極 電 荷 密 度 σpolの和 な の で あ る 。 した が って 真 空 中 と した 電 界 計 算 か ら静 電 容 量 を求 め る と,εA内 で は ε0SA/d,εB内 で は ε0SB/dと な っ て し ま う(SA,SBは
そ れぞ れ
εA,εBに お け る 電 極 面 積 で あ る)。 と こ ろ が 電 磁 気 学 の 教 え る よ うに,Eを
表面
電 界 とす る と, (13・16)
で あ り,静
電 容 量 の 計 算 に は σtrue+σpolで な く σtrueをと ら な け れ ば な ら な い こ と
を 考 慮 す る と,静
電 容 量 の 値 は,
図13.3 複合 誘 電 体場 の 静 電容 量(誘 電 体 界 面 が 電 極 表面 と交 わ る場合)
図13.4 複合 誘 電 体 場 の静 電 容 量 (誘電 体界 面 が 電極 表 面 に 接 して い ない 場合)
εA内で は (13・17)
εB内で は
が 正 しい 式 に な る。 す な わ ち 図13・4の きは13.2節
よ う に 電 極 表 面 が す べ て εB内 に あ る と
の 方 法 で 求 め られ る 電 極 内 の 仮 想 電 荷 あ る い は 静 電 容 量 を εB/ε0倍
す れ ば正 しい 静 電 容 量 に な る。 図13・3の
よ う に誘 電 体 界 面 が 電 極 表 面 と交 わ る と きは 電荷 重 畳 法 で は簡 単 に
い か な い 。 そ れ は 仮 想 電 荷 の 電 界 が,εA内 の 電 極 表 面 と εB内の 電 極 表 面 の 両 方 に 及 ん で い て 分 離 で き な い か らで あ る 。 こ の と きは 面 倒 で あ るが εA側 の 表 面 電 荷 密 度σAと εB側の 表 面 電 荷 密 度 σBを そ れ ぞ れ 求 め,
(13・18)
か ら静 電 容 量 を 求 め な け れ ば な ら な い 。 表 面 電 荷 法 で は 図13・3の
場 合 に,εAに
の 表 面 で は σ(j)=σBεB/ε0と
お い て,(13・11)式
ば よ い 。 こ れ は 結 局(13・18)式
接 す る 表 面 で は σ(j)=σAεA/ε0,εB内
と 同 じ こ と で,電
あ る い は(13・12)式
を適用す れ
荷 重 畳 法 と 異 な りσA,σBが
配 方 程 式 か ら 直 接 求 め ら れ る の で い く らか 計 算 が 楽 で あ る 。
支
第14章 静 電誘導 の計算
電 圧 の 印 加 さ れ た,あ
る い は電 位(多
くの場 合 は高 電 位)を
有す る導体が他 の
導 体 に生 じ る静 電 誘 導 は,両 者 の 静 電 容 量 で 決 ま るの で,静 電 誘 導 の 計 算 は静 電 容 量 の計 算 法 と 共 通 す る点 が 多 い 。 静 電 容 量 に は2種 類 あ る。 一 つ は被 誘 導 導 体 が 決 ま っ た(通 常 は 接 地)電 位 に あ る場 合 で,こ の と きは 静 電 誘 導 で 流 れ る電 流 が 問 題 で あ る。 他 の 一 つ は 被 誘 導 導 体 が 絶 縁 され て い る場 合(し と い わ れ る)で,実
用 的 に は 絶 縁 され た 電 線,柵,電
ば しば 「浮 遊 」
界 緩 和 用 の シ ー ル ド電 極 な
どで 問題 に な る。 この と きは通 常 静 電 誘 導 電 圧 が 問 題 に な るが,と
きに は こ の導
体 の静 電 誘 導 電 流 が 必 要 な こ と もあ る。 こ の 章 で は,2種
類 の静 電 誘 導 の計 算 法 を,前 章 と 同 じ く電 荷 重 畳 法 を中 心 に
述 べ るが,絶 縁 され た 導 体 が2種 類 の 誘 電 体 と接 して い る と きの 誘 導 電 圧(浮 遊 電 位)の 計算 は 間 違 い や す いの で注 意 を要 す る。 最 後 の節 で この 計 算 法 を解 説 す る。
14.1 接 地 導 体へ の静電 誘 導 13.1節 に述 べ た よ うに,導 体iの 対 地 容 量 をC0,導 Cj(j≠i)と す る と,導 体iの 有 す る電 荷Qは
体jに 対 す る 相 互 容 量 を
各 導 体 の 電 位 に よっ て, (14・1)
で与 え られ る。 導 体iが 接 地 され て い る と き はVi=0で,
(14・2)
こ れ が 接 地 導 体 に 対 す る誘 導 の 基 本 式 で あ る 。 相 互 容 量Cjは で 定 ま る定 数 で,第13章
各導体 の配置 だけ
の 方 法 で 計 算 す る こ とが で き る。
(1) 過 渡 的 な 電 圧 の場 合 他 の 導 体 が す べ て接 地 さ れ て い て 導 体1に
急 に 電圧V1(t)が
印 加 され た とす る
と,導 体iに 誘 導 さ れ る 電 荷 お よび 電 流 は,そ れ ぞ れ (14・3)
(14・4)
で 与 え られ る。 (2) 交 流 電 圧 の 場 合 交 流 電 圧V0cosωtが
印 加 され た と きの 定常 状 態 の計 算 に は,場
の状態がすべ
て 角 周 波 数 ω で変 化 す る こ とか ら複 素 数 計 算 を 行 う のが 便 利 で あ る。 す な わ ち, す べ て の 量 がexpj(ωt+ψ)で V1=V0cosωtが
表 さ れ る も の と す る。 導 体1だ
け に交 流 電圧
印 加 さ れ他 の 導 体 は す べ て 接 地 さ れ て い る と,導 体iの 電 荷,
電 流 は,
(14・5)
た だ しV1の
位 相 角 を0に
と っ て い る。
他 の 導 体 に も交 流 電 圧 が 印 加 さ れ て い る と き は,そ れ ぞ れ の 複 素 数 電 圧 を (14・2)式 で重 畳 す れ ば よ い 。 実 用 的 に しば し ば生 じ る の は 三 相 交 流 で あ る。 導 体1,2,3に
三 相 交 流(線
間 電圧V0)が
印加 され て い る とす る と,
(14・6)
こ こで(14・6)式 の 絶 対 値(波
高 値)だ
すべ て 実 効 値 で な く波 高 値 で 示 す 。
け を考 え る と次 の 式 に な る 。 以 後 の 式 も
(14・7)
(14・7)式 が 導体1,2,3に
対 し て完 全 に 対 称 な 式 に な っ て い る の は,三 相 電
圧 の対 称 性 か ら考 え て 当然 の 結 果 で あ る。 導 体iと 三 相 導 体 との 電 気 的 な結 合 が 等 し くてC1=C2=C3の
と きは,Q=I=0で
誘 導 は生 じな い 。 ま た 三 相 交 流 の1
線 が 地 絡 して 接 地 状 態 に あ る線 に 誘 導 で 流 れ る 電 流 も,(14・6)式,(14・7)式
か
ら容 易 に 計 算 で き,他 の2線 の 電 圧 が 変 わ らな い とす る と, (14・8)
(14・9)
と な る。 もち ろん 実 際 の1線 地 絡 で は 健 全 相 の 電圧 上 昇(非 接 地 の 系 統 で は 線 間 電 圧V0ま
で)を 考 え な け れ ば な らな い 。
14.2 絶縁 され た(浮 遊)導 体 へ の静 電誘 導―
境界分割
法 に よる計 算 静電誘導 問題 に限 らず絶縁 された(浮遊 の)導体 を含 む電界計算 の必要 なこ とが
図14.1 絶縁 され た 導 体 の誘 導 電圧
しば しば あ る 。 こ の よ うな 場合 に は絶 縁 され て い る 導 体 の電 位 が 未 知 で,他 の作 用 で 生 じ る誘 導 電 位 の値Vfを
求 め な け れ ば な らな い 。 そ の た め に は 通 常 絶
縁 さ れ た 導 体 上 の 全 電 荷 の和 が 零 で あ る こ と を 利 用 してVfを 法 で は 図14・1に
導体
求 める。電荷重 畳
模 式 的 に示 す よ う に絶 縁 さ れ た 導 体 内 部 に 仮 想 電 荷q1∼qmを
配 置 す る な ら,輪 郭 点1∼mで
す べ て の仮 想 電 荷 に対 して 次 の諸 式 が 成 り立 つ 。
(14・10)
ま た,
(14・11)
(14・10)式 か らVfを 消 去 した(m−1)個 個 の 輪 郭 点 に対 してm個
の式 と(14・11)式 とか ら,や は りm
の 方 程 式 が で き る 。他 の導 体 上 の 輪 郭 点 に対 す る電 位
の 方 程 式 は通 常 の 電 荷 重 畳 法 の 場 合 と同 様 で あ る。 結 局 領 域 全 体 の 仮 想 電 荷qj (j=1∼n)に
対 して 次 の 式 が で きる 。
(14・12)
こ の式 が 絶 縁 され た 導 体 を含 む 配 置 の 仮 想 電 荷 を与 え る 式 で あ る。 こ れ を解 い て
得 た 電荷 量 か ら領 域 内 の す べ て の 点 の 電 位,電 様 に 得 られ る 。 もち ろ ん 誘 導 電 圧Vfも る一 定 電 荷Qfを
界 が 通 常 の 電荷 重 畳 法 の 場 合 と 同
同 様 に計 算 さ れ る。 絶 縁 さ れ た 導 体 が あ
有 す る と きは(14・11)式 の 代 わ りに, (14・13)
と し て(14・12)式
を作 れ ば よい 。
た だ し,こ の 方 法 は(14・12)式 か ら分 か る よ う に解 くべ き連 立 一 次 方 程 式 の か な りの 要 素(成 分)が
も と も と のP(i,j)よ
り変 わ る こ とに な る 。 こ れ に対 して
次 の 方法 で は ほ とん どの 要 素 の値 を変 え な い で 計 算 で き る 。 (14・10)式 か ら,Vfを
左 辺 に移 して, (14・14)
とす る。 す な わ ちVfも 仮 想 電 荷 量qjと 同 じ未 知 数 と し て扱 い ,(14・11)式
を付
加 して 連 立 一 次 方 程 式 を作 る 。 浮 遊 導 体 以 外 の 輪 郭 点 で の 方 程 式 は 通 常 の 電 荷 重 畳 法 と同 じで あ る 。 こ の 方 法 で は(14・12)式
の 方 法 よ り方 程 式 が1個
多 くな る
が,係 数 行 列 の 要 素 は ほ と ん ど も との ま まで あ り,ま た 浮 遊 電 位Vfは
得 られ た
電 荷 量 か ら再 計 算 す る こ と な く,直 接 求 め られ る。 表 面 電 荷 法 に よ る誘 導 電 圧 の 計 算 は電 荷 重 畳 法 とほ と ん ど同 様 で あ る 。 す な わ ち絶 縁 さ れ た 導 体 の 表 面 電 荷 の 和 を0あ
る い は既 知 の 電荷 量Qfと
し,そ の 代 わ
り輪 郭 点 に 関 す る方 程 式 か ら未 知 電 位 の 値 を消 去 す る こ と に よっ て,場 の 状 態 を 与 え る 方 程 式,し 置,特
た が っ て 表 面 電 荷 を求 め る こ とが で き る。 た だ通 常 の 導 体 配
に誘 導 問題 を生 じる よ う な送 電線 導 体 の 場 合 に は,表 面 電 荷 法 よ り電 荷 重
畳 法 の ほ うが は る か に 計 算 が 楽 で あ る。
14.3 絶縁 された(浮 遊)導 体 へ の静 電誘 導―
領域 分 割
法 に よる計算 多 くの場合 電荷重畳法 が正確 な静 電誘導量 を得 る最 適の方法 であ るが,差 分 法
や 有 限 要 素 法 で も も ち ろ ん 計 算 は 可 能 で あ る。2種 類 あ る静 電 誘 導 の う ち,接 地 導 体 へ の 誘 導 電 流 は す で に述 べ た よ う に 静 電 容 量 の計 算 に 帰 せ ら れ る 。 絶 縁 され た 導体 の 誘 導 電 圧(浮 遊 電 位)は,図13・2に
示 した よ うに,ガ
ウスの定理 を こ
の 導 体 を 囲 む小 領 域 に 適 用 し て計 算 さ れ る。 す な わ ち 二 次 元 場 で は前 章 の(13・ 14)式 を あ らた め てV=Vfと
お き,
(14・15)
と書 く と,絶 縁 され た 導 体 が 電 荷 を持 た な い と きは(14・15)式 り,Vfが
未 知 数 とな る。 す な わ ちVfに 対 して1個
の 右 辺 が0と
な
の 方 程 式 が で きた わ け で,こ
の 式 を 他 の 格 子 点 に お け る電 位 の 関係 式 と と も に解 け ば よい 。 回 転 対 称 場 で は (13・15)式 でV=Vf,Q=0と
した 式 に な る だ け で 全 く同 じで あ る。
有 限 要 素 法 で も,差 分 法 と同 様 に絶 縁 さ れ た 導 体 の 電 位Vfを 程 式 に 組 み 込 む こ と もで き るが,プ
未 知 数 と して 方
ロ グ ラム と方 程 式 の一 般性 を保 持 した 全 く別
の 方 法 が あ る。 こ れ は電 磁 気 学 で よ く知 られ て い る よ う に,電 界 分 布 の 点 か ら は 導 体 を無 限 大 の 誘 電 率 を 有 す る誘 電 体 と見 な して よい こ とか ら,絶 縁 され た導 体 の 部 分 を非 常 に誘 電 率 の 大 きい(計 算 機 に は 無 限 大 の数 は入 れ られ な い)領 域 と して,複 合 誘 電 体 の電 界 計 算 を行 う方 法 で あ る 。 この 方 法 で,一 様 電 界 中 の 導 体 球 あ る い は導 体 円 筒 の 電 界 を 計 算 した と こ ろ(回 転 対 称 場 で 球 あ る い は 円 筒 を 48,外
部 を180の
要 素 で 分 割),電
位,電
界 の 誤 差 は そ れ ぞ れ 約0.02%,1∼2%
で あ っ た と報 告 さ れ て い る[14.1]。 導 体 部 分 の比 誘 電 率 と して は104∼106が
もっ と
も良 い 。 この 方 法 は プ ロ グ ラ ム を 変 更 す る必 要 が な い代 わ りに,導 体 内 部 の 余 計 な 分割 の 必 要 な こ とが 欠 点 で あ る 。
14.4 複 素仮 想 電荷 法 これ まで に述 べ た ほ とん どの 電 界 計 算 で は,印 加 電 圧 の 時 間 的 変 動 は 全 く考 慮 して い なか っ た。 た とえ 時 間的 に 変 動 して も,電 磁 波 の取 扱 い が 必 要 な ほ ど速 い
時 間 変 化 で な け れ ば,場 の 電 界 分 布 は 印 加 電 圧 に 比 例 す る だ け で全 く変 化 しな い 。 これ は2.4節
に 説 明 して い る 。 た とえ ば交 流 電 圧 の 導 体 が1個
だ けある とき
は,場 の 電 位,電 界 は 至 る と こ ろ 印 加 電 圧 と位 相 が 同 じで 瞬 時 値 に 比 例 す る。 し か し多 相 交 流 の 場 合 に は 各 点 の 電 位,電 界 は,そ
れ ぞ れ の 相 の 電 圧 に よ る 電 位,
電界 を位 相 を考 え て 重 畳 した もの にな る。 こ れ を求 め る に は 瞬 時 瞬 時 の 印 加 電 圧 か ら各 相 の作 用 を実 数 計 算 して重 畳 す る こ と も可 能 で あ る が,印 加 電圧 を複 素 数 と し場 の 状 態 を 「複 素 仮 想 電 荷 」 で与 え るの が 便 利 で あ る[14.2][14.3]。 普 通 の 電 荷 重 畳 法 の 電 界 計 算 で は 支 配 方 程 式 は(6・9)式 あ る い は(13・5)式 で あ る が,そ
の代 わ りに,
(14・16)
と す る 。υ1∼υnが
同 じ角 周 波 数 ω で 変 化 す る と き は,q1∼qnも
変 化 す る こ と は 容 易 に 分 か る 。 た と え ば 三 相 交 流(線 の 輪 郭 点 を1∼k,k+1∼m,m+1∼nと 14・2に
角 周波 数 ω で
間 電 圧V0)の
す る と,(14・16)式
場 合,各
の 右辺 の電位 を図
示 す よ う に,
(14・17)
図14.2 複 素 仮想 電 荷 法(説 明 図)
相
と と れ ば よ い 。Vは√2V0/√3で
あ る。(14・16)式
を 計 算 機 で 解 くの は ,実 部 と
虚 部 を分 け て あ らた め て 消 去 法 を適 用 して も よ い し,あ る い は実 数 係 数 で複 素 数 解 を 直接 得 るサ ブ ル ー チ ンを 使 う こ と もで き る。 い ず れ に して も通 常 の 電 荷 重 畳 法 の 計算 プ ロ グ ラ ム を複 素 仮 想 電 荷 法 の プ ロ グ ラム に変 え る の は難 しい こ とで は な い。 な お,複 素 仮 想 電 荷 法 で 間 違 い や す い こ とは,仮 想 電 荷 とそ の所 属 す る導 体 とは一 般 に 位 相 が 相 違 す る とい う こ とで あ る。 した が っ て,接 地 導 体 で も位 相 角0の 電 位 を 有 す る導 体 で も そ の 内 部 の 仮 想 電 荷 は 複 素 数 に な る 。 こ れ は仮 想 電 荷 の 値 が 所 属 す る 導 体 の 電 位 だ け で 定 ま るの で は な く,他 の 導 体 電 位 に も影 響 さ れ る ため で あ る。 そ の結 果 輪 郭 点1個
につ い て 常 に2個(実
部 と虚 部)の
未知数
が 生 じる こ とに な る。 絶縁 され た導 体 の 浮 遊 電 位 は実 用 上 は ほ とん ど時 間 的 に 変 化 す る 印 加 電 圧 で 問 題 に な る 。 直 流 電 圧 で は,静 電 的 な結 合 よ り導 体 を支 持 す る 絶 縁 物 の 漏 れ(ろ え い)抵 抗 が 支 配 的 で,接
う
地状 態 と見 な して よい こ とが 多 い た め で あ る 。 先 に述
べ た よ うに,高 電 位 の 導 体 が1個
の と きは,交 流 電 圧 で も一 般 的 な過 渡 電 圧 で も
誘 導 電 圧 は 印 加 電 圧 の 瞬 時 値 に 比 例 して 変 わ る に す ぎ な い。 しか し多 相 交 流 にお い て は瞬 時 瞬 時 の 電 位 が 各 相 の作 用 で 変 わ る の で,複 素 仮 想 電 荷 法 に よる 計 算 が 便 利 で あ る。 す な わ ち(14・16)式 の 位 相 差ψ に よ っ てexp(jψ)の
と同 様 に,た
とえ ば(14・12)式 の 右 辺 を各 電 圧
複 素 数 で 表 し,左 辺 の 仮 想 電 荷 をす べ て 複 素 数
とす る。 そ の他 の 点 は実 数 計 算 と 同様 で あ る 。
14.5 複 合 誘電 体 場 の 浮遊 電位 計 算 14.5.1
一 般 の 場 合
2種 類 以 上 の 誘 電 体 が 存 在 す る複 合 誘 電 体 場 で も,浮 遊 導 体 の 接 す る誘 電 体 が 1種 類 で あ れ ば14.2節
に述 べ た 方 法 が そ の ま ま適 用 で き る 。 し か し浮 遊 導 体 と
い って も実 際 に は そ れ だ け で 空 間 に 浮 か ん で い る こ とは ほ と ん どな く,通 常 は 固
体 の 絶 縁 物 で 支 え られ て い る 。 こ の よ う に浮 遊 導 体 が2種 類 の 誘 電 体 と接 して い る と,電 荷 重 畳 法 で 「浮 遊 導 体 内 部 の仮 想 電 荷 量 の 和 が 零 で あ る 」,あ
るいは表
面 電荷 法 で 「浮 遊 導 体 の 表 面 電荷 の 和 が 零 で あ る 」 とい う条 件 で計 算 す る の は 間 違 い で あ る。 す な わ ち,13.4節 荷 法 で は 表 面 電 荷)は,誘
で も説 明 し た よ う に,内 部 の 仮 想 電 荷(表
電 体 の 分 極 電 荷(の
作 用)を
面電
含めた等価 的な電荷 を表
わ して お り,浮 遊 電位 を正 し く求 め る に は,分 極 電 荷 を除 い て 真 電 荷 だ け の 和 が 零 で あ る とい う計 算 を 行 わ な け れ ば い け な い[14.4][14.5]。 図14・3の
よ うな空 間 中 の 浮 遊 導体 が ガ ス(真 空 で も同 じ)と 固 体 誘 電体 に接
して い る場 合 を と る。 浮 遊 導 体 の 電 荷 がQで
あ る と,前 章 の(13・13)式
の ガウ
ス の 定 理 に よ って, (14・18)
こ こ でDnは
表 面 の 微 小 面 積ds上
に お け る 電 束 密 度 の外 向 き法 線 方 向 成 分 ,Q
は積 分 領 域 内 の 全 電 荷 で あ る。 この 式 は 浮 遊 導 体 に 対 して 導 体 表 面 の 電 界Eng , Endに よ っ て 次 の よ う に与 え られ る。 (14・19)
(14・20) (14・21)
図14.3 固体 誘 電 体 に 支持 され た 浮遊 導 体
こ こ で,添
字e,g,dは
そ れ ぞ れ 電 極 内,ガ
そ れ ぞ れ 浮 遊 導 体 の ガス 側 表 面,固 電 率(真
ス 側,固
体 側 を表 し,Eng,Endは
体 側 表 面 の 法 線 方 向 電 界,εg,εdは ガ ス の 誘
空 中 の 誘 電 率 ε0にほ ぼ等 しい)と
固体 の 誘 電 率,qは
仮 想 電 荷,Fnは
電界 係 数 の法 線 方 向成 分 で あ る。 これ ら の式 の 電 界 係 数 に は 複 合 誘 電 体 場 の 電 荷 重 畳 法 の式 が 用 い られ るが 説 明 は省 略 す る。(14・19)式
に(14・20),(14・21)式
を代 入 して,次
の 関係, (14・22)
(14・23)
を用 い る と,以 下 の 式 が 導 か れ る 。
(14・24)
こ の 式 でQ=0と
お け ば,仮 想 電 荷qe,qg,qdに
で,こ の 式 を14.2節
の(14・11)式
対す る一つ の方程 式 とな るの
の代 りに 用 い れ ば 良 い 。 た だ し,複 合 誘 電 体
場 で あ る か らガ ス と固 体 絶 縁 物 の境 界 の 輪 郭 点 に は(通 常 の)複 合 誘 電体 場 の 式 が 適 用 され る。 14.5.2
一様 電界 の場 合
送 電 線 下 の 電 界 の よ う に電 圧 源 が 遠 方 に あ っ て 浮 遊 導 体 付 近 が 一 様 電界 と見 な せ る場 合,一
様 電 界E0を
導 入 す る と電 源 を 考 慮 しな くて よい の で 計 算 が 容 易 に
な る。 こ の と き導 体 表 面 の(真)電 荷 の和Qは, (14・25)
こ こで,En0はE0の
導 体 表 面 にお け る 法 線 方 向成 分 で あ る 。 (14・26)
な ど を用 い て 変 形 す る と,
(14・27)
と,(14・24)式
〓の 項 を 含 む 式 に な る 。 した が っ て,一 様 電
に
界 下 の 浮 遊 電 位 の 計 算 に は(14・24)式
14.5.3
の 代 りに(14・27)式
を 用 い れ ば 良 い。
計 算 例
浮 遊 電 位 計 算 の 一 例 は,送 電 線 下 の 電 界 を計 測 す る た め の 交 流 電 界 計 で あ る。 電 界 測 定 の 原 理 は交 流 の 電 界 に よ って 上 下 の導 体(セ 流 を 求 め る も の で あ る 。 図14・4(a)は れ た 円板 状 導 体(セ
ンサ 電 極,プ
サ 電 極 は 厚 みL1,L2の2個
ンサ 電 極)に
誘 起 され る電
そ の モ デ ル で,円 柱 形 状 絶 縁 物 に 支 持 さ
ロー ブ)が 一 様 電界 下 にあ る場 合 で あ る 。 セ ン
の 電 極 か ら成 っ て い るが,計
算 で は セ ンサ 電 極 間 の
イ ンピー ダ ンス が 小 さ い の で 同 電 位 と して 扱 っ て い る。 文 献[14.4][14.5]で
は支 持 絶 縁 物 の 電 界 計 出 力 に及 ぼ す 影 響 が,い
(a)
(b)
図14.4 一様 電 界 下 の電 界 計 と支 持 絶縁 物 の 配置 と電荷 重 畳 法 に よる計 算 の 配置(説 明図)
ろ い ろ な条
件 で調 べ られ て い る 。 計 算 結 果 は 省 略 す る が,変 化 のパ ラ メー タは,支 持 絶 縁 物 の 半 径,長
さ,誘 電 率,セ
る。 図14・4(b)に
ンサ 電 極 の 厚 み,上
下 の セ ンサ 電 極 の厚 み の 比 で あ
電 荷 重 畳 法 で 計 算 す る と き の 輪 郭 点 と仮 想 電 荷 の 配 置 の 例 だ
け を示 す 。 た だ し図(b)は 模 式 図 で 固体 絶 縁 物 を 図(a)よ りず っ と太 く して い る。 固体 の 絶縁 物 が 存 在 す る と,存 在 しな い場 合 に比 べ て,浮 遊 導 体 先 端 の 電 界 は 上 昇 す る が 電 位 は低 下 す る 。 なお 固 体 絶 縁 物 に 体 積 導 電 性 や 表 面 導 電 性 が あ る場 合 の 計 算 法 を16.7節 べ る。
で 説 明 し,図14・4の
電 界 計 モ デ ル に対 す る計 算 結 果 も述
第15章 一 般三 次元配置 の計算
通 常 の 空 間 的 配 置 で,回
転 対 称 で な い 場 合 を 一 般 三 次 元 配 置 と呼 ぶ こ と に す
る。 これ まで に説 明 した 計 算 は 第9,10章
を除 い て ほ と ん どが 二 次 元 か 回 転対 称
の 配 置 で あ る が,実 際 の 配 置 はす べ て 多 か れ 少 な か れ 一 般 三 次 元 で あ る。 しか し 一 般 三 次 元 配 置 の 電 界 計 算 は二 次 元 や 回 転 対 称 に比 べ て 種 の 困 難 を伴 い,し
,次 節 に 述 べ る よ うな 各
ば しば 三 次 元 用 の工 夫 が 必 要 で あ る 。
た だ し,差 分 法 と有 限 要 素 法 で は一 般 三 次 元 配 置 の電 界 計 算 は 二 次 元 場 と本 質 的 な相 違 は な い。 ど ち ら も手 法 の 拡 張 で 処 理 で き る。 こ れ に対 して 電 荷 重 畳 法 は 通常 使 用 す る仮 想 電 荷 が す べ て 二 次 元 用(無
限 長)か
回転 対 称 な もの なの で,一
般 三 次 元 で は そ れ な りの対 応 が 避 け られ な い 。 また 表 面 電 荷 法 で は 三 角 形 表 面 電 荷 法 と名付 け た一 般 三 次 元 用 の 方 法 が あ る。 な お この 章 で は 説 明 の都 合 か ら,第 5章,第6章
と は異 な り表 面 電 荷 法 は 電荷 重 畳 法 の後 で 説 明 す る。
15.1 一 般 三 次 元 配 置 の 計 算 の 問 題 点 容 易 に分 か る こ と で あ る が,以 下 の よ うな 問 題 が あ る 。 (a) プ ロ グ ラ ムが 複 雑 に な り,計 算 時 間 が 増 大 す る 。 二 次 元,回 と比 べ る と,計 算 時 間 は1∼2け
転対称 配置
た 増 加 す る と考 え て よい 。
(b) 未 知 数 と連 立 方程 式 の 係 数(行 列 の 要 素)が 増 大 して しば し ば計 算 機 の 容 量 を越 え る。 た とえ ば 領 域 分 割 法 で は1座 標 あ た り20∼100に
分割す る
と,未
知 数(ス
数 は 大 半 が0で
カ ラ ポ テ ン シ ャ ル で あ る 電 位)の
数 は8000∼106個,係
あ る が と に か く そ の 個 数 は6.4×107∼1012個
う 。 使 用 計 算 機 の 計 算 限 界 を 見 積 も る と,記 精 度 計 算 の 場 合,106(100万)個
になって しま
憶 方 法 を 工 夫 し な け れ ば,倍
で8Mbyte,108(1億)個
で800Mbyte
の 記 憶 容 量 を必 要 とす る。
(c) 三 次 元 配 置 そ の もの や 分 割 状 態 を図 示 す る の が 難 し く,正 確 な 配 置 を理 解 す る の が 容 易 で な い 。 そ の た め 入 力 デ ー タの作 成,計 算 結 果 の 表示 が 難 し く誤 りや す い 。 三 次 元 配 置 の こ の よ う な計 算 の 面 倒 さ を軽 減 す る た め に,あ
らか じめ い くつ か
の 部 分構 造 を用 意 して 配 置 を構 成 す る 方 法 も提 案 さ れ て い る。 筆 者 らの 提 案 し た 方 法 は,電 荷 重 畳 法 で,部 分 パ ー ツ(「 ブ ロ ッ ク」 と呼 ぶ)と 板,円
し て 球,円 柱,平
錐 台 な どの 導 体 形 状 を用 意 し,入 力 デ ー タ と して 各 ブ ロ ッ ク の 位 置,寸
法,電 位,さ
らに 重 要 度 に応 じて 輪 郭 点 と仮 想 電 荷 の 数 が 異 な る レベ ル を 選 択 す
る こ と に よっ て 三 次 元構 造 を 表 現 す る もの で あ る[15.1]。 文 献[15.2]は,や 荷 重 畳 法 で 基 本 パ ー ツ(「 セ グ メ ン ト」 と呼 ん で い る)と ブセ グ メ ン トと して 半 球,T字
円 柱,エ
は り電
して リ ン グ や 曲 面,サ
ル 形 構 造 な どを 含 め た 三 次 元 電 界 解 析 法
を提 案 して い る。
15.2 領 域 分割 法 に よ る計 算 差 分 法 で はx,y,zの
デ カ ル ト座 標 に お け る ラ プ ラ ス の 式, (15・1)
を,二 次 元 場 と同 じ よ う に格 子 点 電 位 の差 分 式 で 近 似 す れ ば よ い。 そ の た め に は 図15・1の
よ う なP(x0,y0,z0)点
に 隣接 す る6点 の 格 子 点 電 位 φ1∼ φ6を テ イ ラ
ー 展 開 の 二 階 微 分 ま で と っ て 近 似 す る と簡 単 に得 られ る。 た と え ば φ1,φ2に つ い て は,
図15.1 x,y,z座
標 にお け る格 子 点
(15・2)
これ か ら一 階微 分,二 階 微 分 の 項 を消 去 す る と,図15・1の
場 合,
(15・3)
hx=hy=hzの
と き は,φ0は 予 想 さ れ る よ う に φ1∼ φ6の 算 術 平 均 で あ る。 領 域
内 の 各 格 子 点 に つ い て,(15・3)式
あ る い は 類 似 の 一 次 の 関 係 式 を 作 り,境 界 条
件 を用 い て(3・17)式 の多 元 連 立 一 次 方程 式 を解 け ば 各 点 の電 位 が 求 め ら れ る 。 有 限 要 素 法 で は 二 次 元,回 転 対 称 場 を三 角 形 で 分 割 す る の に 対 し,一 般 三 次 元 場 を 四 面 体 要 素 で分 割 す る。 四 面 体 要 素 の 特 性(電
位)を
表 す(近
似 す る)に
は,次 の よ う に座 標 の 一 次 式 にす る の が 最 も簡 単 で あ る 。 (15・4)
α1∼ α4は 図15・2の 示 で,
よ うに 四 面 体 の4頂
点(節 点)の 座 標 と電 位 の 値 か ら行 列 表
図15.2 四 面体 要 素
図15.3 10節 点 を有 す る 四面 体 要素
(15・5)
と表 され る。 これ に よ っ て 要 素 内 の φが4節 られ る わ け で,次
点 の 電 位 φ1∼ φ4の 関 数 と して与 え
式 の ポ テ ン シ ャ ルエ ネ ル ギ ー, (15・6)
を 最 小 に す る よ う に 領 域 の φiを定 め れ ば こ れ が 求 め る解 で あ る 。 そ の 計 算 手 順 等 は 第4章
に述 べ た の と全 く同 じで,結 局 差 分 法 と 同様 な 各 節 点 の 電 位 を未 知 数
とす る 多 元 連 立 一 次 方 程 式 を解 くこ と に な る 。 電界 は(15・4)式 に よれ ば 各 要 素 内 で 一 定 で, (15・7)
で あ る が,4.7節 で は 図15・3の
に述 べ た6節 点 の 三 角 形 要 素(図4・3)に よ う な10節
対 応 して,三 次 元 場
点 を有 す る 四 面 体 要 素 を 用 い て 解 の 精 度 を 向 上 させ
る こ とが で き る。 す な わ ち要 素 内 の 電 位 を,
(15・8)
とお き,要 素 内 の 電 界 を 一 次 式 で表 す こ とが で き る。 係 数 α1∼ α10は四 面体 の4 頂 点 と各 稜 の 中 間 点6個 の 計10個
の 節 点 の座 標 と電 位 の 値 か ら,(15・5)式
様 に して与 え られ る。 た だ し計 算 の プ ロ グ ラ ム は相 当 複 雑 に な る。
と同
15.3 電荷 重畳 法 に よ る計 算 す で に 述 べ た よ うに 電 荷 重 畳 法 で 一 般 三 次 元 場 を計 算 す る に は,回 転 対 称 場 の 仮 想 電荷(点,リ
ン グ,線 電 荷)が
す べ て 回 転 対 称 な電 界 しか 与 え な い の で,こ
れ ら の 電 荷 だ け で は 計 算 で き な い 。 非 対 称 性 を表 現 で き る 電 荷 配 置 が 必 要 で あ る。 一 般 三 次 元 場 とい っ て も,た
と え ば 高 電 圧 工 学 の 分 野 で 通 常 現 れ る 配 置 は,
電 極 そ の も の は 回転 対 称 で 周 囲 の 電 極 配 置 に よ っ て 電 界 が 一 般 三 次 元 に な る 場 合,あ
る い は個 々 の 電 極 が 局 所 的 に 回転 対 称 な 形 状 か ら成 る 場 合 が多 い 。 こ の よ
うな 場 合,非 対 称 性 を表 す に は,電 荷 の位 置 を局 所 回転 軸(電
極 の軸)よ
りず ら
せ る か,電 荷 密 度 を場 所 に よ っ て 変 え る か で あ る。 具 体 的 に 回 転 対 称 な リ ン グ電 荷 の 代 わ りに用 い られ る仮 想 電 荷 を 図15.4に
示
し,こ れ らを以 下 に 説 明 す る。 な お リ ング 電荷 以 外 の 仮 想 電 荷 の 一 般 三 次 元 場 に お け る取 扱 い に は触 れ ない が,電
極 の 支 持 棒(柄)の
よ うな 細 い 円筒 で 電 界 の 非
対 称 性 が あ る と きは,円 筒 の 回 転 軸 よ りず ら して 何 本 か の線 電 荷 を 配 置 す る。 点 電荷 は も ち ろ ん軸 上 だ け で な く適 当 な とこ ろ に 自由 に置 く こ とが で き る。 15.3.1
各種 の仮 想電 荷
図15・4の 電荷,回
仮 想 電 荷 の う ち,ま
ず 点 電 荷(と
転 軸 よ りず ら した リ ン グ電 荷,に
線 電 荷),直
線(弦)電
荷,円
板
つ い て 簡 単 に説 明 す る。 ほ と ん どは 電
荷 密 度 が 場 所 的 に 一 定 で あ る。 (1) 点 電 荷 と(回 転 軸 に平 行 な)線 電 荷:こ
れ は プ ロ グ ラ ム は簡 単 で あ る が あ
ま り有 効 な方 法 で は な い。 円 形 断 面 を 表 す た め に 回転 対 称 場 な ら1個 の リ ン グ電 荷 で 済 む の に 比 べ て多 数 個 の 点 電 荷 が 必 要 に な る。 通 常 の(電 荷 密 度 一 定 の)リ
ング電 荷 を局 所 回 転 軸 を 中心 に して 配 置 し,残
りの 非 対 称 な電 界 成
分 を点 電 荷 と線 電 荷 で 表 す 方 法 の ほ うが い くらか は よい 。 (2) 直 線(弦)電 く方 法 で,リ
荷[15.3][15.4]:こ れ は リ ン グ電 荷 の 代 わ りに 有 限 長 線 電 荷 を 置 ン グ を弦 の電 荷 で 代 用 す る 方 法 と も考 え られ る。 電 極 模 擬 の 状
態 は リ ング電 荷 よ り劣 る が 電 位 係 数,電 界 係 数 の 計 算 は は る か に 速 い。 直 線
(a) 電 極 形状
(b) A‐B断 面 の電 荷 配置 図15.4 局 所 的 回転 対 称 形状
電 荷 の 電荷 密 度 を一 定 で な く距 離 の 関 数(座 標 の 高 次 式)と
す る こ と も可 能
で あ る。 (3) 円板 電荷:表
面 電 荷 の代 わ りに電 極 内 部 に 配 置 した 円 板 電 荷 で 電 界 分 布 を
表 す 方 法 で あ る。 円板 電 荷(6.6.2項
に 説 明)は 電 位,電
界が簡 単な解析 式
で 与 え られ る こ とが 利 点 で あ る。 た だ し多 数 の 円板 電 荷 の 位 置 と半 径 を入 力 デ ー タ と して作 成 しな け れ ば な らず,あ
と で述 べ る 三 角 形 表 面 電 荷 法 の よ う
な一般性 に欠ける。 (4) 局 所 回転 軸 よ りず ら した リ ン グ電 荷:局
所 的 に 回 転 対 称 な電 極 の 断 面 に 何
個 か の 中心 位 置 をず ら した リ ン グ電 荷 を配 置 し,対 応 し て 同 じ数 の 輪 郭 点 を 電 極 表 面 に 置 く。 い くつ か の 断 面 で こ れ を行 っ て全 体 の 電 界 分 布 を模 擬 す る わ けで あ る が,リ
ン グ電 荷 の 位 置 と径 を適 当 に とる と一 つ の 断面 に置 く電 荷
の 数 は比 較 的 少 な くて す む 。 電 荷 密 度 一 定 の リ ング 電 荷 に よ る電 位,電 界 は 局 所 軸 が 大 地 に対 して 斜 め の場 合 に は影 像 リ ング 電荷 の作 用 を含 め た 式 は か な り複 雑 に な る[15.5]。 しか し,そ れ で も回転 対 称 場 と同 様 に,算 術 幾 何 平 均 法 で 比 較 的高 速 に 計 算 で きる完 全 だ 円積 分 の 値 しか 含 まな い の が 利 点 で あ る 。
15.3.2 電 荷 密 度 の 変 化 す る リ ング 電 荷 電荷 密 度 が 場 所(角
度)と
と も に変 わ る リ ン グ電 荷 は 多 くの場 合 電 位,電
界の
式 が解 析 的 に 表せ ず 数 値 積 分 が 必 要 に な る 。 現 在 使 用 され て い る 方 法 は,局 所 的 に 回 転 対 称 な 電 極 に 対 し て,リ
ン グ 電荷 の 電 荷 密 度 を 回 転 角φ の フ ー リエ 級 数
で表 す も の で あ る[15.6]。 た と え ば 配 置 に面 対 称性 が あ る と き を例 に と る と,こ の 場 合 の 電 界 分 布 はφ の 偶 関数 に な るか ら,図15・5に
示 す よ う にj番 目 の リ ング
電 荷 の線 電荷 密 度q(j)を, (15・9)
で 与 え る 。(15・9)式 じ る 電 位 φkは,次
の1成
分λjkcoskφ
が 図15・6の
よ う にP(r,θ,z)点
に生
の よ うに 特 殊 関数 で表 せ る。
(15・10)
こ こ で
〓は
半 整 数 次 の ル ジ ャ ン ドル 関 数 で あ る。q(j)がP点
に 生 ず る 電 位 は, (15・11)
す べ て の 仮 想 電 荷 に よ る電 位 は, (15・12)
とな り,電 極 表 面 に適 当 に配 置 した 輪 郭 点 の 電 位(図15・5)を
電 極 電圧 とす る
こ とに よ って,λjkを 未 知 数 とす る 方 程 式 が形 成 さ れ る 。(15・12)式 q,k)は(15・10)式
を意 味 し,輪 郭 点P点
の 配 置,リ
の 係 数A(P
,
ング 電 荷 の 位 置 と径 お よ び
kで定 ま る定 数 で あ る。 通 常 は さ らに 大 地 に対 す る影 像 電 荷 の作 用 も含 め る。 未 知 数 の 数 は 回 転 対 称 場 のn個
か らn(K+1)個
に 増 加 す る 。 た だ しKの
値 は各 リ
ン グ電 荷 で 同 じで は な い 。 一 般 に一 つ の 断 面 の 輪 郭 点 は,対 応 す る面 内 の リ ン グ 電 荷 の 次 数 に 対 応 して(K+1)個
置 くの が よい 。 実 際 の 計 算 に は さ ら に電 位 だ け
図15.5 電荷 密 度 がφ の 関数 で あ る リン グ電荷
図15.6 リ ング電 荷 とP点 との 関係
で な く 電 界 の 式 が 必 要 で あ る 。 こ れ ら の 式 は ま と め て 付 録6に る か らEr,Eθ,Ezの3成 お よ びQk+1/2(Y)が
分 が 必 要 で,半
示す 。三次元 であ
整 数 次 の ル ジ ャ ン ド ル 関 数Qk-1/2(Y)
含 まれる。
こ の方 法 の利 点 は,リ
ン グ電 荷 の 配 置 と怪 を 決 め る手 間 が ご くわ ず か で,回 転
対 称 場 と ほ と ん ど同 様 に1個
の リ ン グ電 荷 を 配 置 し,Kの
値 を与 え るだ けで よ
い こ とで あ る。 また 電 界 の 計 算 精 度 も高 い 。 問 題 は半 整 数 次 の ル ジ ャ ン ドル 関 数 の 計 算 が 面 倒 な こ とで あ る。 この 関 数 は ,ラ プ ラス の式 を 円 環 座 標 で 解 く と き に 現 れ る もの で 「円 環 関 数」[15.7]と 呼 ば れ て い る 。種 々 の計 算 方 法 が あ る が 精 度 の よい もの は 計 算 時 間が 長 く,計 算 時 間の 短 い 方 法 は 大 き な け た 落 ち誤 差 を生 じる こ とが あ る(旧 著 で は付 録5に
円環 関 数 の数 値 計 算 法 の 検 討 結 果 を記 載 して い た
が 本 書 で は 割愛 した)。 15.3.3
円 弧 電 荷[15.8]
これ まで に説 明 した 方 法 の 多 くは,電 極 が 回 転 対 称 で な く断 面 が 円 形 で な い 場 合 に は 適用 が 難 しい 。 局 所 的 回 転 対 称 な形 状 で は な く,角 を 丸 め た 長 方 形 の よ う に 一 部 が 丸 ま っ た形 状 を模 擬 す る に は,リ
ング(円)の
一部 であ る円弧電荷 を用
い る方 法 が 適 して い る 。 円弧 電荷 は電 荷 密 度 が 一 定 で,電
位,電 界 の作 用 を数 値 積 分 で 与 え る 方 法[15.9]
も提 案 され て い る が,電 荷 密 度 が 角 度 と と も に変 化 す る円 弧 電 荷 を次 の よ う に だ
円積 分 で 表 す こ とが で き る。 図15・7の あ る 半 径eの
円 弧 電 荷 が 点P(r,θ,z)に
よ うに,中 心 がz軸 上 でz=dの
面上 に
生 じ る電 位 は,円 弧 電 荷 の 電 荷 密 度 σが
角 度 θの 余 弦 関 数 で 変 化 す る と き,次 の 式 に な る 。 角 の 点(角
度 π/4)で 対 称 と
して, と す る と,
(15・13)
こ こ で,
(15・14)
こ の 式 に 現 れ る 積 分Ia,Ib,Icは
次 の(不
表 す こ と が で き る 。 な お,u=sinψ,x=sinθ
完 全)だ
円 積 分Fお
よ びEを
用 い て
で あ る。
第一種 だ円積分 (15・15)
第二種 だ円積分 (15・16)
電 界 の 式 はP点
の 電 位 を3成 分r,θ,zで
り分 母 が 高 次 の積 分 式 が 生 じる が,こ らの 不 完 全 だ 円積 分 は 分 母kの
微 分 す れ ば 求 め ら れ る。Ia∼Icよ
れ ら もだ 円積 分 で 表 す こ とが で き る。 こ れ
べ き級 数 展 開式 もあ る が,完 全 だ 円積 分 と 同様
に算 術 幾 何 平 均 法 に よ っ て ず っ と高 速 に計 算 で き る。
図15.7
円弧 電荷
15.4 表 面 電 荷法 に よる計 算 表 面 電荷 法 は境 界(電 極 表 面 あ るい は誘 電 体 界 面)の で あ る か ら,と
電 荷 を未 知 数 とす る方 法
もか く境 界 形 状 を分 割 して分 割 要 素 の 電荷 あ る い は 電 荷 密 度 を 未
知 数 とす る 方 程 式 を作 る点 で は 一 般 三 次 元 配 置 で も 同 じで あ る。 この と き分 割 要 素 が 曲 面 で あ る と電 荷 の作 る電 位,電 界 を 数 値積 分 で与 え な け れ ば い け な い。 表 面 電 荷 法 で 個 々 の 電 極 形 状 が(局 15.3.2項 8(a)の
所 的 に)回
転 対称 で あ れば電荷 重畳 法 の
に 説 明 し た 方 法 と ほ と ん ど 同 じ や り方[15.10]が使 え る 。 す な わ ち 図15・ よ う に 円 筒 座 標(r,θ,z)の
座 標 系 で,区
分t1∼t2の
表 面 電 荷 密 度 σがP(r,
θ,z)点 に 生 じ る 電 位 は,
(15・17)
こ こ でkは〓 =(z−Z)2+r2+R2で
と お い た フ ー リ エ 級 数 の 次 数,Y=L2/2rR,L2 あ る 。(15・17)式
の 線 積 分 をZ=A+BR+CR2と
お い てR
の 関数 とす る な どの 点 は 回転 対 称 場 と 同 じで あ る。 こ の よ う な フ ー リエ 級 数 表 現
(a)電 極 形 状 が 回転 対 称 な と き
(b)回
転対称でないとき
図15.8 表 面 電荷 法 に よる計 算
の 電 荷 密 度 を用 い る表 面 電 荷 法 や,チ 表 面 電 荷 法(HSSSM)」
ェ ビ シ ェ フ多 項 式 を用 い る 高 精 度 な 「高 速
と呼 ぶ 方 法 も 開発 され て い る[15.11]。 た だ し,こ れ らの 方
法 の 適 用 は基 本 的 に 局 所 的 に 回 転 対 称 な 形 状 か らな る 配 置 に 限 られ る。 こ れ に 対 して,も っ と一 般 的 な 曲面 形 状 を対 象 とす る 表 面 電 荷 法 は 旧 著 の 刊 行 以 降 に 著 し く発 展 した 方 法 で,内 容 が 豊 富 な た め 独 立 した 章 と して 第9章
で まと
め て説 明 した 。 しか し三 角 形 や 四 角 形 の平 面(曲 面 で な い)電 荷 の 電 位,電
界は
数 値 積 分 で な く陽 に式 で 与 え られ る こ とか ら,三 次 元 配 置 に 適 した計 算 法 を構 築 す る こ と が で き る 。 た とえ ば 図15・8(b)に
示 す 直 方 体 電 極 は,電 荷 重 畳 法 で は
計 算 の難 しい 配 置 で あ る が,三 角 形 表 面 電 荷 法 で 容 易 に計 算 で き る。 以 下 の 節 で 説 明 す る。
15.5 三 角形 表 面電 荷 法 三次元配 置の電位 を次 の表面電荷法 の基本式 で表す。 (15・18)
この 式 で σは 電 極 表 面 のds部
分 の 電荷 密 度,lはdsと
る 。 複 合 誘 電体 の 界 面 で は11.4節
空 間 のP点
との 距 離 で あ
の 式 を用 い れ ば よ い。
具 体 的 な 計 算 の 過 程 は 次 の よ う に な る 。 (a) 電 極 表 面 を三 角 形 あ るい は 四 角 形 の 小 要 素 に分 割 す る 。 (b) 各 要 素 の 電 荷 密 度 σを一 定 あ る い は座 標 の 関係 式 とす る。 (c) j番
目の 要 素 の適 当 な 点(重 心 あ る い は 三 角 形,四
を と っ て,(15・18)式
角 形 の 頂 点)に 輪 郭 点
か ら σjの 式 を 作 る 。
分 割 が 四 角 形 の 場 合 は 四 角 形 上 の 表 面 電 荷 密 度 σ を 図15・9(a)の
よ う な(X,
Y)平 面 上 で, (15・19)
の 関 数 形 で 表 す と,σ
に よ るP点(x,y,z)の
電 位 φ が 次 の 式 よ り計 算 さ れ る 。
(15・20)
こ こ で,l=√(X-x)2+(Y-y)2+z2。
こ の 四 角 形 電 荷 に よ る電 位,電
界 の 式 も数
値 積 分 で な く解 析 式 で表 す こ とが で きる 。 しか し電極 形 状 を模 擬 す る に は三 角 形 の ほ うが 一 般 的 なの で 以 下 三 角 形 分 割 の場 合 につ い て述 べ る。 図15・9(b)の
よ う に 頂 点A,B,Cの
三 角 形 が(X,Y)平
面 上 に あ る と し て,
そ の 表 面 電 荷 密 度 σを座 標 の 一 次 式 で 与 え る。 (15・21)
この 三 角 形 表 面 電 荷 がP点(x,y,z)に
生 じ る電 位 φは 次 式 で 与 え られ る ※。
※ こ れ ら の式 の導 出 はか な り厄 介 で あ る。 最 も面 倒 な の は電 荷 密 度 の α1に関 係 す る 電 位 の 式 で,ln(t+√at2+bt+c)のtに
関 す る不 定 積 分 の式 が 必 要 で あ る。
(a)四
(b)三
角形
角形
図15.9 板 状表 面 電荷
(15・22)
こ こ で,
また
Σ
はA,B,Cを
順 に 変 え て3回 加 算 す る こ と を意 味 す る 。
三 角 形 の3頂 点A,B,Cの表
面電 荷密度 σA,σB,σCはα1,α2,α3と
(15・23)
の 関 係 が あ る の で,3頂
点(輪 郭 点)の 電 位 条 件 か ら σA∼ σC,一 般 にσiを 未 知 数
とす る 連 立 一 次 方 程 式 を構 成 で き る。 得 られ た 電 荷 密 度 の値 か ら領 域 の 任 意 の 点 の 電位,電
界 が 計 算 され る。 こ の 方 法 は 三 角 形 に よ る分 割 とい う点 で は(次 元 は
三 次元 か ら二 次 元 に低 下 して い る が)有
限要 素 法 と共 通 す る 面 が あ り,ま た 三 角
形 を電 極 内 部 に 配 置 す れ ば 電 荷 重 畳 法 の 仮 想 電荷 と も な る。 三角 形 表 面 電 荷 法 は特 に 一 般 三 次 元 配 置 の ラ プ ラ ス 場 の 計 算 法 と して 次 の よ う な特 徴 が あ る。 (a) 有 限要 素 法 に比 べ る と,有 限 要 素 法 が 空 間(容 積)を 分 割 す る の に対 し て,面(電
極 表 面)の
分 割 だ け で 済 むか ら分 割 が 非 常 に容 易 で あ る 。 ま た
電 界 も解 析 式 で 表 さ れ る の で 精 度 も比 較 的 良 い 。 (b) 電 界 重 畳 法 に 比 べ て 局 所 的 に 回転 対 称 性 を持 た な い 一 般 的 な 電 極 を模 擬 す る こ とが で き る。 また 三 角 形 を電 極 表 面 に 置 くと,(仮 想)電
荷 の種 類
や 配 置 な どの 入 力 デ ー タ が 要 らな い 。 しか し,表 面 が 滑 らか な 電 極 で は, 特 に 電極 表 面 付 近 の 計 算 精 度 が 電 荷 重 畳 法 よ り劣 る。 (c) 回 転対 称 場 の表 面 電 荷 法 あ るい は局 所 的 に 回 転 対 称 な 電 極 の 表 面 電 荷 法 に比 べ て,電 位,電 界 の 計 算 に 数 値 積 分 を要 しな い の で 計 算 時 間 が 短 い 。 ま た 輪 郭 点 を 三 角 形 の 頂 点 に と っ て もそ の 点 の 電 位 は 有 限 で,5.6節
に述
べ た よ うな 面 倒 な特 異 点 の 処 理 を必 要 と しな い 。 電 界 は各 三 角 形 要 素 の 辺 上 で 無 限大 に な るが,三 なお,三
角 形 を電 極 内 部 に置 け ば 電 界 も有 限 で あ る 。
角 形 表 面 電 荷 法 で 電 荷 密 度 に 高 次 の 式 を用 い る ほ ど式 は複 雑 に な る
が,精
度 が 向 上 す る 。 こ こ で は(15・21)式
の 一 次 式 の 場 合 を 説 明 し た が,二
式,三
次 式 の 場 合 の 式 が 報 告 さ れ て い る[15.12]。
次
15.6 計 算 例 す で に多 数 の 一 般 三 次 元 配 置 の 電 界 計 算 が 報 告 され て い る 。 旧 著 で は そ の い く つ か を 挙 げ る と と も に,一 部 を や や 詳 し く説 明 して い る。 図 面 を示 して い る の は,有
限 要 素 法 で は,三 相 一 括 ガ ス 絶 縁 線 路 の ス ペ ー サ 部 分 の 計 算 で あ る[15.12]。
電 荷 重 畳 法 で は,高 電 圧 の電 圧 測 定 に用 い られ る標 準 球 ギ ャ ップ(垂 直 配 置,水 平 配 置)な
らび に 偏 軸 球 ギ ャ ッ プの 計 算 で あ る[15.13]。 ど ち ら も15.3.2項
した 方 法 で あ る が,用
い た リ ン グ電 荷 の フー リエ 級 数 の 次 数 は2か
に説明
ら6の 範 囲 で
あ る 。 なお 標 準 球 ギ ャ ップ に つ い て は,球 ギ ャ ップ の 接 続 線 や 近接 物 体 の効 果 も 解 析 され て い る 。 一 般 三 次 元 場 計 算 の 問 題 は,解 析 的 に求 め られ る よ う な配 置 が な く計 算 精 度 の 評 価 が 難 しい こ とで あ る。 しか し便 法 と して,回 転 対 称 場 を 回転 対 称 で な い分 割 や(電 荷)配
置 で 計 算 して そ の 結 果 を解 析 解 と比 較 で き る。 た とえ ば 電 荷 重 畳 法
で は,図15・10の
よ うな 球 対 接 地 平 面 の 回 転 対 称 な配 置 で,リ
す る 軸 を 水 平 に す れ ば 一 般 三 次 元 の 計 算 に な る。15.3.2項
ン グ電 荷 を配 置
に 説 明 した 方 法 で リ
ン グ 電 荷9個
で 計 算 した 結 果 で は,最 大 電 界 の 計 算 誤 差(相 対 誤 差)は(3∼
11)×10-5で
あ っ た 。 同 じ数 の リ ン グ 電 荷 を 回 転 対 称 に 配 置 し た 場 合 は(5∼
8)×10-5で
あ る か ら,一 般 三 次 元 の 計 算 で も回 転 対 称 場 に 近 い 精 度 が 可 能 な こ
とを示 して い る。
(a)回 転 対 称電 荷 配 置
(b)一
般 三 次元 電 荷 配 置
図15.10 誤 差 を調べ る ため の 配置(説 明 図)
第16章 導電率 を含 む計算
これ まで に述 べ た 計 算 で は,媒 質 は誘 電 率 が 変 わ る だ け で す べ て 完 全 な絶 縁 物 と見 な して い た 。 しか し固体 や 液 体 が 存 在 す る場 合 の電 界 は しば し ばそ の導 電性 が 問 題 に な る。 一 般 に 導 電 性 が 無 視 で き ない 場 の 電 界 は,材 料 の 誘 電 率 を ε,抵 抗 率 を ρ,印 加 電 圧 の 角 周 波 数 を ω とす る と,パ ラ メ ー タ ερω に よ っ て 支 配 さ れ る こ とが 知 ら れ て い る 。 εは 通 常 あ ま り大 き く変 わ る値 で は な い が,ρ は け た 違 い に変 わ り得 る値 で,抵 抗 値 の 小 さ い場 合 や 直 流 な い し低 周 波 の 場 合 に,導 電 性 を無 視 で き な い 。 実 用 的 に は 直 流 印加 時 の 電 界 分 布,半 固体 絶 縁 物 表 面 の汚 損 の 影 響,抵
導 電 材 料 を含 む 配 置,
抗 要 素 を含 む 分圧 器 の特 性 の 検 討,な
ど にお い
て,導 電 性 を含 め た 電 界 計 算 が 必 要 で あ る。 な お,以 下 で は 抵 抗 率 を使 用 す る の で,導 電性 あ る い は 導 電 率 で な く抵 抗 と い う用 語 を用 い る 。 抵 抗 に は 体 積 抵 抗 と表 面 抵 抗 の2種 類 が あ る。 表 面 抵 抗 は電 流 路 の 厚 みtが ご く薄 い 体 積 抵 抗(抵
抗 率 ρ)で あ る が,厚
み の な い 抵 抗 と して 表 面 抵 抗 率 ρs
=ρ/t(有 限)で 取 り扱 わ れ る も の で あ る 。 以 下 の 節 で は体 積 抵 抗 と表 面 抵 抗 の 計 算 法 を,主
と して抵 抗 率 が 電 圧,電
り立 つ と き)で,交
ー ム の 法則 が 成
流 定 常 場 に つ い て 解 説 す る 。 また 絶 縁 され た導 体 が2種 類 の
誘 電 体 と接 触 して,一 算 法 も説 明 す る 。
流 に よ らず 一 定 な場 合(オ
方 の 誘 電 体 が 導 電 性 を有 す る と きの 電 位(浮
遊電 位)の 計
16.1 計 算 の 基 礎 一 般 に 誘 電 率 ε,体 積 抵 抗 率 ρの 媒 質 に お い て,電 界 をE,電
流 密 度 をj,空
間 電 荷 密 度 をqと す る と次 の 式 が 成 立 す る 。 (16・1)
(16・2)
こ の2式
か ら,ε が 時 間 的 に 一 定 で あ る と, (16・3)
角 周 波 数 ω の 交 流 電 圧 に対 し,定 常 的 な 電 界 分 布 を 複 素 数 で 取 り扱 う こ とが で きる。 (16・4)
(16・4)式
か ら ε,ρ,ω
に よ っ て以 下 の ケー ス に 分 か れ る。
(a) 高 周 波 あ る い は容 量 の 場 合(ε ρω≫1) (16・5)
これ は 通 常 の静 電 界 の(交 流 で の)式
である。
(b) 直 流 あ る い は低 抵 抗 の 場 合(ε ρω≪1) (16・6)
こ れ は(16・5)式 に お い て εを1/ρ と した 式 と同 じで,1.3節 や 導 電 紙 の 電 流 場 を利 用 して 電 界 を 求 め る ア ナ ロ グ 法(フ
に述 べ た 電 解 液 ィ ー ル ドマ ッ ピ ン
グ)の 基 礎 式 で あ る。 (c) 一 般 的 な 場 合 (16・4)式 は ω が 一 定 の と き通 常 の 誘 電 率 を複 素 誘 電 率 (16・7)
で 置 き換 えた 式 に 等 し い。 ε,ρが 場 所 的 に 一 定 で あ る とdiυE=0が
成 立 し再
び ラ プ ラ ス の 式 に な る。 これ か ら い ろ い ろ な 特 性(関
係)を
導 く こ とが で き,
また 電 荷 重 畳 法 の 適用 が 可 能 に な る。 た と え ば,ε と ρが 至 る と こ ろ 場 所 的 に 一 定 な一 様 媒 質 中 で は
,ど の よ う な電 圧 波 形 で も どの よ うな ε,ρ の 組 合 せ で
も電界 分 布 は常 に 同 じで あ る。 しか し実 際 に は 固 体,液 体 の 抵 抗 率 は 電 界 に依 存 す るの が 普 通 で,そ の た め に場 所 的 に一 定 で な くな りラ プ ラス の式 が 使 え な い こ と も多 い。 そ の 場 合 に は (16・4)式 か ら の計 算 が 必 要 で あ る。 この よ う な非 線 形 の 計 算 は16.6節
に述べ
る 。 また 抵 抗 率 を含 む 計 算 が 誘 電 率 の場 合 と相 違 す る の は,第 一 に,始 め に 述 べ た よ う に,た い て い の 場 合 媒 質 の比 誘 電 率 εsは1か は10ま
らせ いぜ い数 十,多
で で あ る の に,ρ は け た違 い に 変 わ り う る こ とで,実
106Ω ・m程 度 まで あ りう る。 第 二 に,2.4節 圧 波 形 に影 響 され,時
際 に10-7か
く ら
に も述 べ た こ と で あ るが,印 加 電
間 と と も に変 化 す る こ と で あ る 。
16.2 差 分 法 に よ る 計 算 差 分 法 で は通 常 の(抵 抗 分 の な い 場 合 の)計 算 を複 素 数 計 算 に 変 え れ ば よ い。 各 媒 質 の 内 部 で は ε,ρ と も一 定 で 界 面(境 は,11.1節
のみ不 連続 に変化す る と き
に述 べ た 複 合 誘 電体 の 界 面 の 差 分 式 の εを複 素 誘 電 率(16・7)式
え る だ け で よ い。 た だ し各 格 子 点 の 電 位(未 図16・1の
界 面)で
知 数)は
に変
すべ て 複 素 数 で あ る。
よ うな 隣 接8格 子 点 を使 用 した 報 告[16.1]で は,(16・4)式
を,
(16・8)
の差 分 式 に して 計算 して い る。 しか し係 数Ajは
格 子 内 の エ ネ ルギ ー ε│E2│/2が最
小 とな る条 件 か ら与 えて い る の で,一 様 な 分 割 で は あ る が この 方 法 は 差 分 法 よ り む しろ 有 限 要 素 法 の 考 え に近 い。 以 上 は体 積 抵 抗 の 計 算 で あ る が,表 面 抵 抗 は電 流 路 を狭 い 格 子 間 隔 で の 体 積 抵 抗 に 置 き換 え て計 算 が 行 わ れ て い る。 た だ し,こ の方 法 は 格 子 間隔 が 非 常 に狭 い
図16.1 複素 電 位 に よ る差分 法
と誤 差 が 大 き くな る。
16.3 有 限要 素 法 に よ る計 算 (16・3)式
か ら時 間 微 分 をdiυ の 外 へ 出 し た 式,
(16・9)
は,4.1節
に 述 べ た オ イ ラ ー の 理 論 に よっ て,次 の 汎 関 数 を領 域V内
において最
小 に す る こ と と等 価 で あ る。 (16・10)
二 次 元場:
回転対称 場:
f1は 単位 時 間 に単 位 体 積 あ た り消 費 さ れ る ジ ュ ー ル損,f2は テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー を示 す 。 した が っ て,(16・10)式
単 位 体 積 あ た りの ポ
の汎 関 数 の 次 元 は4.1節
で 述 べ た汎 関 数 と時 間 の 単位 だ け相 違 し,瞬 時 エ ネル ギ ー で あ る。 交 流 の場 合 は(16・10)式
は 回転 対 称 場 で, (16・11)
に な る。 した が って(4・7)式
と比 較 す れ ば 分 か る よ う に,通 常 の 静 電 界 の有 限 要
素 法 で εを(1/ρ+jω ε)に変 え,電 位 φの 座 標 に よ る微 分 値 の2乗 位 φ の絶 対 値 の2乗
の 項 を複 素 電
とす れ ば 同 様 に 計 算 す る こ とが で きる[16.2]。 な お,φ が 波 高
値 で 与 え られ て い る と きは,エ
ネ ル ギ ー は全 体 に1/2を
表 面 抵 抗 を考 え る場 合 は,(16・10)式
掛 け る 必 要 が あ る。
に 表 面 で 消 費 され る ジ ュー ル 損, (16・12)
を付 け 加 え る。 こ こ で ρsは 表 面 抵 抗 率,isは
表 面 に 沿 う電 流 密 度 で あ る。 交 流
の場 合 次 の よ う な計 算 が 提 案 さ れ て い る[16.2]。 (16・13)
と して,要 素 内 電 位 の 近 似 関 数 と して 最 も簡 単 な 一 次 式 を使 う と きは,図16・2 に示 す よ う に三 角 形 要 素i,j,mの
界 面i,jに
沿って は (16・14)
た だ しLはi,j間
の距 離 で あ る 。
二 次 元場: (16・15)
回転 対 称 場: (16・16)
図16.2 有 限要 素 法 の表 面 抵抗 を有 す る界面
こ こ でri,rjは
そ れ ぞ れi,j点
のr座 標 で あ る 。
結 局 表 面 抵 抗 を含 む 場 合 に は,領 域 で 作 られ る系 の 方 程 式 に ∂Xs/∂φi,∂Xs/∂ φjの項 を付 け 加 え る こ と に な る。 有 限 要 素 法 の 最 大 の 利 点 は 非 線 形 の 計 算,す な わ ち抵 抗 率 が 電 界 に依 存 して 変 わ る場 合 に も計 算 の 可 能 な こ とで あ る が,こ につ い て は16.6節
れ
で述 べ る。
16.4 電 荷 重 畳 法 に よる体積 抵 抗 を含 む計 算 16.1節
に述 べ た よ う に,ε,ρ が 電 界 や 電 流 に よ っ て 変 化 せ ず,場 所 的 に 一 定
で あ る と ラ プ ラ ス の 式 が 成 り立 つ 。 す な わ ち オ ー ムの 法 則 が 成 立 す る な らば,媒 質 中 を電 流 が 流 れ て も境 界 を 除 け ば 真 電 荷 は存 在 せ ず 至 る と こ ろq=0で
あ る。
電 荷 重 畳 法 は ラ プ ラ ス の 式 の 解 を 重 畳 す る 方 法 な の で 適 当 な境 界 条 件 を与 え る と,体 積 抵 抗 を含 む 配 置 の電 界 を 計 算 す る こ とが で き る。 た だ し交 流 の 定 常 場 で は 「複 素 仮 想 電 荷 」[16.3]が 必 要 で あ る。 界 面 で の 境 界 条件 と して通 常 の 複 合 誘 電 体 と違 うの は,電 束 密 度 の連 続 条 件 に 体 積 抵 抗 で 生 じ る真 電 荷(電 すA,B,2種
類 の 導 電 率(抵
荷 密 度 σ)の 作 用 が 入 る こ と で あ る。 図16・3に 抗 率ρA,ρB)を 有 す る 誘 電 体(半
導 体)界
示
面 を考
図16.3 導 電 率 を有 す る誘 電体 界 面
え る と,電 束 密 度(の
法 線 方 向成 分)の
連続条件 は, (16・17)
こ こ で 添 字nは
界 面 に 垂 直 な 成 分 を表 し,以 下 同 様 で あ る 。 一 方 σ は 次 式 で 与
え られ る。 (16・18)
jは 電 流 密 度 で,j=E/ρ
で あ る か ら,
(16・19)
角 周 波 数 ω の 交 流 場 で は 時 間積 分 を1/jω で置 き換 え て, (16・20)
この式 と(16・17)式 を組 み 合 せ て 書 き直 す と次式 に な る。
(16・21)
こ の 式 は 通 常 の 複 合 誘 電 体 に お け る 電 束 密 度 連 続 の 境 界 条 件 で ,誘 電
εA,εB
を複 素 誘 電 率 に 書 き直 した 式 に等 しい。 した が っ てす で に 領 域 分 割 法 に よ る計 算 で 述 べ た よ うに,体 積 抵 抗 場 の 交 流 電 界 は す べ て の 式 の誘 電 率 を複 素 誘 電 率 に書 き直 す だ け で よい 。 第11章
の複 合 誘 電 体 場 に な らっ て 輪 郭 点iで の 境 界 条 件 を
ま とめ る と次 の よ う に な る。 (a)
電 極 上: (16・22)
さ し当 た り印 加 電 圧(高 位 相 角 を0に
圧 電 極)は1種
類 とす る。 こ の と き は一 般 に 印 加 電 圧 の
と る こ とが で き る。 多 相 の 場 合 は 位 相 差 を考 えて 複 素 数 で 扱 うだ け
で あ る。 (b) 誘 電 体 界 面 上:
電位の連続 条件: (16・23)
電束密度(の 法線方 向成分)の 連続 条件: (16・21)式
図16・4に
模 式 的 に示 す よ う な電 極 内,誘 電 体A内,B内
の 仮 想 電 荷Q,QA,
QBの 式 と して,上 の 境 界 条 件 を具 体 的 に 式 で 与 え る。 以 下 の 式 で 実 部,虚 そ れ ぞ れ 添 字re,imで す る 仮 想 電 荷Q(j)の 21)式)で (a)
表 し,ま たP(i,j),Fn(i,j)の
部は
は そ れ ぞ れ 輪 郭 点i点 に 対
電 位 係 数,法 線 方 向 電 界 係 数(11.3節
の(11・20),(11・
ある。
電 極 上:
A側 電 極 上: (16・24)
(16・25)
図16.4 複 素仮 想 電 荷 重畳 法(体 積 抵 抗,表
面 抵抗 の場)
B側 電極 上: (16・26)
(16・27)
(b) 誘 電 体 界 面 上:
電位の連続 条件: (16・28)
(16・29)
電束密 度の連続 条件:
(16・30)
(16・31)
こ れ ら の 式 に よ っ て6種
類 の 未 知 数Qre,Qim,QAre,QAim,QBre,QBimに
対 し
て 連 立 一 次 方 程 式 が で き る の で これ を解 け ば よい 。 得 られ た 電 荷 量 か ら任 意 の 点 の 複 素 電 位,複
素 電 界,そ
れ ぞ れ の 絶 対 値(波
高 値 ま た は実 効 値),位
相 が計算
され る。 通 常 の(抵 抗 を含 ま な い)複 合 誘 電 体 の 電 界 計 算 プ ロ グ ラム が あ れ ば , コ ー デ ィ ング も容 易 で あ る。 電 荷 量 に 対 す る方 程 式 の 係 数行 列 は 表16・1に
示す
表16・1
(注)a:電
抵 抗 を含 む電 荷 重 畳法 の 方程 式 の係 数 行 列 の0項
位 の連 続 条件,実 部,b:電
c,d:電
位 の連 続 条件,虚 部
束 密 度 の 連 続 条 件,⃝:0項,〓:表
面 抵 抗 場 の み0項
よ う に約 半 分 が0項 で あ る 。
16.5 電荷 重畳 法 に よ る表面 抵抗 を含 む計 算 表 面 抵 抗 を 含 め た計 算 法 と して,Bachmann法
と呼 ば れ る方 法 が あ る[16.4]。 旧
著 で は この 方 法 が 原 理 的 に 間違 って い る こ とを 分 か りや す く説 明 して い る。 正 し い 計算 の 原 理 は,表 面 導 電 性 の た め に生 じる 表 面(誘 電 体 界 面)の 真 電 荷 密 度 の 作 用 を,界 面 の 電 束 密 度(の 法 線 方 向 成 分)連 続 の境 界 条 件 に 組 み 入 れ る こ とで あ る[16.3]。 図16・5の 流I(i)に
よ う に界 面(固 体 表 面)上i点
の 真 電荷 密 度 σを,界 面 を流 れ る 電
よ っ て 次 の よ う に与 え る。 た だ し二 次 元 場,回
転 対称 場の ように電流
路 が 一 次 元 に表 現 で き る場 合 とす る。
(16・32)
図16.5 表 面 抵抗Rと
こ こ でR(i)は
図16・5に
表 面 電荷 密 度 σ
示 す よ う にi点 と(i−1)点
間 の 抵 抗,S(i)はi点
に
属 す る微 小 表 面積 で あ る。 交 流 の場 合 に は, (16・33)
す な わ ち表 面抵 抗 の 場 合 も体 積 抵 抗 と同 様 に複 素 仮 想 電 荷 を使 用 して,(16・33) 式 の表 面 電 荷(真
電 荷 密 度)を 表 せ ば,電 界 分 布 を与 え る こ とが で き る 。 そ の た
め に は電 束 密 度 の 連 続 条 件 に(16・33)式 のσ(i)を 使 用 す る。 (16・34)
体 積 抵 抗 と比べ て 相 違 す る の は こ の 電 束 密 度 の連 続 条 件 式 だ け で あ る。 した が っ て 図16・4に QA,QBに
模 式 的 に 示 し た よ う な 電 極 内,誘
対 す る 式 は,(16・24)∼(16・29)式
電 体A内,B内
ま で は 全 く同 じで,界
度 の 連 続 条 件 の み相 違 す る。 す な わ ち(16・30)式,(16・31)式 に な る。
の 仮 想 電 荷Q, 面上 電束密
の二つが次 の よ う
(16・35)
(16・36)
こ れ ら の 式 に よ っ て6種 ば,任
類 の 未 知 数Qre,Qim,QAre,QAim,QBre,QBimを
意 の 点 の 複 素 電 位,複
表16.1に
示 す と お りで,体
(16・32)式,(16・33)式 意 味 し て お り,ま
求 めれ
素 電 界 を 計算 す る こ とが で き る。 係 数 行 列 の状 況 は 積 抵 抗 の 場 合 とほ とん ど 同 じで あ るが 一 部 相 違 す る。 の σ(i)を 与 え る 式 は,界
面 上 電 位 の 差 の さ ら に差 を
た抵 抗 分 は長 さ に比 例 す るの で電 界 の 式 で与 え る こ とが考 え ら
れ る 。 た と え ば 二 次 元 場 で は,(16・32)式
の 代 わ り に, (16・37)
図16.6 導電 性 の あ る2媒 質A,B
を使 用 す る こ と もで き る。 こ こ でl(i),ρs(i),Et(i)は (i−1)点 間 の 長 さ,表 面 抵 抗 率,接 電界 の微 分(電 位 の 二 階 微 分)を
そ れ ぞ れ 表 面 上i点
と
線方 向平均 電界 で ある。 この式 か らさ らに
用 い た式 も考 え られ る 。
ま た 回 転 対 称 場 で は,(16・34)式
で 体 積 導 電 性 も含 め る と次 の よ う な 式 に な
る[16.5]。
(16・38)
こ こ でEtは
接 線 方 向 電 界,r(i),r(i+1)な
ど は 図16・6に
示 す 。lは 電 流 路 の
長 さで あ る。
16.6 抵 抗値 が電 界 に依 存 す る場合 抵 抗 値 が 電 界 に無 関 係 とい う オ ー ム の法 則 は一 般 的 に成 り立 つ わ け で は な い 。 特 に電 界 計 算 で 問 題 に な る よ うな比 較 的 高 い抵 抗 で は多 か れ 少 な か れ 電 界 に依 存 して変 化 す る ほ うが 普 通 で あ る。 絶 縁 油,油 浸 紙 の抵 抗 率 は,電 界,温 等 の 周 囲 条 件 で2け
度,水 分
た程 度 も変 わ り うる 。
体 積 抵 抗 が 電 界 に依 存 す る場 合,有
限 要 素 法 で は体 積 抵 抗 率 と電界 の 関係 も入
力 デ ー タ と して記 憶 させ て お き,適 当 な抵 抗 率 の 初 期 値 か ら出発 して,得
られ た
電 界 に対 応 す る抵 抗 率 を与 え て 次 々 に 計 算 を繰 り返 す 。 各 要 素 内 の 抵 抗 率 は 場 所 的 に 一 定 で あ るが,適
当 に細 か く分 割 さ れ て い れ ば正 しい 電 界 分 布 に収 束 す る 。
こ の 方 法 の 各 回 の 計 算 は11.2節
に述 べ た複 合 誘 電 体 の 計 算 で,誘 電 率 が す べ て
の 要 素 ご と に変 わ る場 合 と考 え て も よい 。 した が っ て誘 電率 が 電 界 に依 存 す る場 合,あ
る い は抵 抗 率 と誘 電 率 の 両 方 が 電 界 に 依 存 す る場 合 に も 同様 に用 い られ
る。 これ に対 し電 荷 重 畳 法 は 体 積 抵 抗 が 電 界 に依 存 す る と き に は 適 用 で き な い 。 こ れ は領 域 が ラ プ ラ ス の 式 の 場 で な く非 線 形 に な っ て い る た め と も言 え る し,場 所 場 所 で 抵 抗 率 が 異 な るた め 領 域 分 割 法 で な い 電 荷 重 畳 法 は 適用 で き な い と考 え る こ と もで き る。 表 面抵 抗 が 電 界(表
面 の 接 線 方 向 電 界)に 依 存 す る場 合 に は,有
限要 素 法 で も
電 荷 重 畳 法 で も どち らで も使 用 で きる 。 と もに 適 当 な表 面抵 抗 率 の 初 期 値 か ら 出 発 して,得
られ た電 界 に対 応 す る抵 抗 率 を与 え て 計 算 を繰 り返 せ ば よ い。 二 次 元
場 の(16・38)式 は接 線 方 向 電 界Et÷
表 面 抵 抗 率ρsの 形 に な っ て い るが,一
般に
ρsとEtの 関 係 が 複 雑 な た め に,反 復 な しに 一 度 で 計 算 が 済 む よ うな う ま い 方 法 は な い よ うで あ る。
16.7 浮遊 電位 の 計算 16.7.1
計算 の原 理
14.5節 に説 明 した 複 合 誘 電 体 場の 浮 遊 電 位 計 算 は,固 体 絶 縁 物 の 導 電 性 が0, す な わ ち 抵 抗 無 限大 の 完全 絶 縁 物 の 場 合 で あ る 。 実 用 的 に は しば し ば 固体 の 導 電 性 が 問題 に な る 。 特 に重 要 な の は 表 面 抵 抗 の 影 響 で あ る。14.5節
で は導体 表面
の真 電荷 量 を0と
電 性)に
した が,導 電 性 が あ る場 合 に は 真 電 荷 が抵 抗(導
て流 出す る の で,残 す な わ ち,流
よっ
っ た 真 電 荷 と流 出 した 電 荷 の和 を0と す る 式 を用 い る[16.6]。
出電 流 をIと す る と
(16・39)
角 周 波 数 ω の 交 流 場 で は, (16・40)
体 積 抵 抗 の場 合,抵 抗 率 ρ を一 定 とす る と,Iは
図16・7の
よ う に 固体 誘 電 体
との接 触 面(Γd)で の電 流 密 度Jの 積 分 で 与 え られ る。 (16・41)
こ の 式 に14.5節
の(14・21)式
を代 入 す る と
(16・42)
こ の よ う な 電 流 とQの
式 を 浮 遊 電 位 の 式 に 付 加 す れ ば 良 い 。 た だ し,Q,I,q
はす べ て複 素 数 と して 取 り扱 う。 一 方,表
面 抵 抗 の 場 合,電 流 の流 出 路 は面 だ け なの で,二 次 元 や 回転 対 称場 の
断 面 で は 線(一
次 元)に
な る。 図16・7の
よ う に(浮 遊)導
体 の 電 位 をVf,Vf
に最 も近 い 輪 郭 点 の 電 位 をV1と す る と,流 出 電 流 は (16・43)
こ こ でR1はVfとV1の
間 の 抵 抗 で,表
面 抵 抗 率 を ρsと す る と,
(16・44)
図16.7 浮 遊 導体 と固体 絶 縁 物 の配 置 例
こ こ でl1は 電 流 路 の 長 さ,Wは に,こ の よ う な 電 流 とQの
電 流 路 の 巾 で あ る。 体 積 抵 抗 の 場 合 と 同 じ よ う
関係 式 を,仮 想 電 荷 の 一 つ の 方 程 式 と し て 付 加 す れ
ば よ い。 これ らの 式 の 中 でR1は
定 数,Vfは
未 知 数 で あ るが,V1は
作 用 と して与 え られ る。 もち ろ んI,Vf,V1は 16.7.2
仮想 電荷 の
すべ て 複 素 数 で あ る。
計算例
図14・4の
一 様 電 界 下 の 電界 計(電 界 プ ロー ブ)モ デ ル の 配 置 で 固 体 支 持 絶 縁
物 の 表 面 抵 抗 の 影 響 が 調 べ られ て い る[16.5]。 送 電 線 下 の 電 界 を測 定 す る と きな ど に 湿 度 や 雨 の 影 響 で 絶 縁 物 の 表 面 抵 抗 が低 下 す る こ とが 考 え られ る の で,こ
のよ
うな 計 算 は実 用 的 に 重 要 で あ る 。 一 様 電 界 中 に 固体 絶 縁 物 で支 持 され た絶 縁(浮 は 固体 絶 縁 物 の 表 面 抵 抗(抵
抗
遊)導 体 が あ る と き,こ の 電 位
ρs)に よ っ て,図16・8の
よ うに変化 す る。
表 面抵 抗 が 充 分 大 きい と浮 遊 電 位 は ほ とん ど実 数 部 だ け で あ るが,抵
抗 率 の低 下
と と もに 虚 数 部 が 増 加 し,抵 抗 が 充 分 低 い と虚 数 部 だ け,す な わ ち位 相 の 逆 転 し た 値 に な る。 浮 遊 電 位 の 絶 対 値 は 抵 抗 が 大 きい と き は ρsに よ らず ほ ぼ 一 定 で, 抵 抗Rが
充 分 低 く な る と ρsに 比 例 して 低 くな る 。 な お,図16・8のV0は
絶 縁 物 が な い と き(εs=1,R=∞)の(空
間)電 位 で,支
固体
持 棒 が 細 い た め に,
表 面 抵 抗 が 大 きい と きの 浮 遊 電 位 とほ と ん ど同 じで あ る。 こ の よ うな 特 性 は,定 性 的 に 図16・9の
よ うな 浮 遊 導 体 と支 持 物 の 等 価 回路 で
理 解 す る こ とが で きる 。 浮 遊 導 体 の 電 位Vfは (16・45)
と表 わ され る。Vは 高 電 圧 電 源 の電 圧,C〓Rは 抗Rの
対 地 静 電 容 量C(jωC)と
表面抵
並 列 イ ン ピー ダ ン ス で あ る 。 の と き;
〓(16・46)
の と き;
〓(16・47)
図16.8 図14.4の 浮 遊電 位 の 表面 抵 抗 率 に よ る変化
一 方,浮 遊 導 体 へ の誘 導 電荷(電 出 力 に相 当 す る)は,図
図16.9 浮 遊導 体 と固体 絶 縁物 の等 価 回 路
界 計 の 上 側 電極 に誘 導 さ れ る 電荷 で 電 界 計 の
に は 示 して い な い が,常
に実 数 部 が 虚 数 部 よ り大 き く,
抵 抗 が 十 分 大 きい と き は十 分 小 さい と きの ほ ぼ1/3に C0とCの
な る。 抵 抗 が 大 きい と きは
分 圧 回 路 の 誘 導 電 荷 で あ り,抵 抗 の小 さ い と き は浮 遊 導 体 と固 体 絶 縁
物 が 一 体 の 導 体 の ケ ー ス(単 一 誘 電 体 の 電 界)に
な る。
こ の よ う な 等 価 回 路 か ら分 か る よ う に,固 体 絶 縁 物 の 導 電 性 が 問 題 に な る の は,抵 抗 の イ ン ピ ー ダ ンスZRが
対 地 静 電 容 量Cの
程 度 以 下 に な る と き で あ る。 た だ し,等 価 回 路 のCは 求 め られ な い 。 文 献[16.5]に,電 る評 価 と お よそ1け
イ ン ピー ダ ン スZcの10倍 数 値 計 算 で な い と正 確 に
界 計 支 持 棒 の 表 面 抵 抗 の影 響 は 等 価 回路 に よ
た相 違 す る こ と,表 面 抵 抗 を含 め た 浮遊 電 位 の 正 確 な計 算 に
数 値 的 方 法 が有 用 で あ る こ とが 説 明 さ れ て い る。
16.8 数 値 計 算 との比 較 に用 い られ る配置 導 電性 を含 む電 界 計 算 例 もす で に多 数報 告 され て い る 。 旧著 に は 有 限 要 素 法 で は 表 面 抵 抗(半
導 電 層)が
あ る場 合 と な い 場 合 の ピ ンが い しの 電 位 分 布 の 計 算,
電荷 重 畳 法 で は 抵 抗 分 圧 器[16.3],同軸 ガス 絶 縁 線 路 の 円 板 状 ス ペ ー サ の 電 界 計 算 が説 明 され て い る 。 以 下 で は 数 値 計 算 の 妥 当性 や 精 度 の チ ェ ッ ク に 用 い ら れ る解 析 解 だ け を述 べ る。 交 流 定 常 場 に 図16・10に Bが 導 電 性(体
示 す よ う なA,B,2種
積 抵 抗 率 ρま た は 表 面 抵 抗率ρs)を
二 次 元 場 で は,2個
有 す る 場 合 で あ る 。 図(a)の
の 平 行 平 面 の 電 極 間 に 交 流 電 圧Vexp(jωt)が
Bが 直 列 に存 在 す る配 置,図(b)の で媒 質Aの
類 の 媒 質 が 存 在 して,媒 質
中 に 球 形 のBが
印 加 され ,A,
回転 対 称 場 で は,一 様 電 界E0exp(jωt)の
存 在 す る配 置 で あ る 。 これ らの 電 位 は 次 の よ う な式
に な る。 図(a)の 場 合 は体 積 抵 抗 の み,(b)は
体 積 抵 抗 また は 表 面 抵 抗 の 場 合 で
あ る。 図(a)の 場 合:
(16・48)
こ こで
図(b)の 場 合: (r,θ)の 極 座 標 表 示 で,
下
〓で あ る 。
(16・49)
こ こ でT2=ω
ρ(2εA+εB)(体
抗 の と き)で
あ る。
積 抵 抗 の と き),ま
た はωRρs(2εA+εB)/2(表
(a) 図16.10 一 方 が 導 電性 を有 す る2媒 質 の 配置
(b)
面 抵
第17章 空 間電荷 が あ る場合 の計算
第2章
に説 明 した よ う に,空 間 電 荷 が 存 在 す る場 合 の 電 界 は,こ れ まで 述 べ て
きた よ う な ラ プ ラス の 式 で は な く,ポ ア ソ ンの 式,(2・6)式
で 与 え られ る。 媒 質
の 誘 電 率 εが 一 定 の 領域 で は,次 式 と な る。 (17・1)
こ こでqは
空 間 電 荷 密 度 で あ る 。 一 般 に放 電 現 象 の 関係 す る場 で は常 に 空 間 電 荷
が存 在 す る。 これ は放 電 現 象 が 電 荷 の 発 生 を 意 味 す る か ら 当然 の こ とで あ り,そ の た め ポ ア ソ ンの 式 を解 くこ とは,放 電 現 象 の 解 析 や 放 電 を利 用 す る機 器 の 設 計 で 重 要 で あ る。 ポ ア ソ ンの 式 で は 電位 φ とqと い う二 つ の 関 数 が 存 在 す る た め に,qが れ た(既 知 の)関 数 で あ る か,あ
与えら
るい は も う一 つ 別 な 関係 式(と 境 界 条 件)が
な
い と問 題 が 解 け ない 。 こ の章 で は まず ポ ア ソ ンの 式 を解 く際 の 問題 点 を説 明 した 後,主
17.1
にqが 与 え られ て い る 場合 の 計 算 法 を 実 際 の計 算 例 を も とに説 明 す る。
空 間 電 荷 を含 む 計 算 の 問 題 点
数値的 な電界 計算法 は,ラ プ ラスの式 であれば基本 的に どんな配 置で も十分 な 精度で解 ける まで進展 したの に対 して,ポ ア ソンの式 の一般的 な解法 は これ まで 確 立 され ていない。 これは空間電荷の取扱 いや式 にいろい ろな問題 があ るか らで
あ る。 以 下 に まず この 点 を説 明 す る。 (1) 一 般 に,電 荷 密 度qを 荷 の な い 場 合,未
与 え る 条 件 が 明 確 に 定 ま ら な い:こ
の 点 は空間電
知 関 数 φが ラ プ ラ ス の 式 と境 界 条 件 で 一 意 的 に 定 ま る こ と と
比 べ て 決 定 的 に相 違 す る。 さ ら に,多
くの場 合,空
間電 荷 は ドリ フ ト,拡 散 な ど
の作 用 で 移 動 し,電 荷 密 度 が 変 化 す る の が 普 通 で あ る。 した が っ て ポ ア ソ ン場 で qを与 え られ た(既 知 の)関 数 とす る取 扱 い は,単
なる仮定 か大 まかな近似 なの
が 普通 で あ る。 またqを 与 え る式 が 明確 で あ っ て も境 界 条件 が 明確 で ない こ と も 多 い。 そ の 例 は 次 章 の イ オ ン流 場 の 計 算 で あ る 。 (2) 解 析 的 に解 け るポ ア ソ ン の 式 が 少 な い:ラ
プ ラ ス 場 で は二 次 元 場,回 転 対
称 場 で 簡 単 な式 で 表 さ れ る 配 置 が 多 数 あ る の に 比 べ て,ポ ア ソ ンの 式 で は解 析 解 が 得 られ る の は ほ とん ど一 次 元(1変
数)に
限 ら れ,そ の 場 合 で もす で に 相 当 に
複 雑 な式 に な る。 た と え ば,一 次 元(座 標x)の
電 荷 密 度q(x)に
対 す るポ ア ソ
ン式 の 解 は, (17・2)
で あ るが,二
次 元 の 計 算 が 難 しい た め に 放 電 の シ ミュ レー シ ョ ン に この 式 が 代 用
され る こ とが あ る く らい で あ る。 二 次 元 場,回 転 対 称 場 で も電 荷 密 度 が 一 定 な 場 合,無 在 す る。 た とえ ば,帯 電 液 体(上 部 は気 体)を
限 級 数 で 表 され る式 は存
含 む 円筒 タ ン ク 中 の 電 界 が,変
数
分 離 法 を適 用 しベ ッセ ル 関数 と双 曲線 関数 を含 む無 限級 数 で 求 め られ て い る[17.1]。 (3) 解 を 重 畳 す る の が 容 易 で な い:qを
含 む た め に ラ プ ラ ス場 の よ う に簡 単 に
解 を重 畳 す る こ とが で きな い 。 特 別 な場 合 にポ ア ソ ン場 の 特 解 を ラ プ ラス 場 の解 に重 畳 す る こ とは 可 能 で あ るが,特 解 が 得 られ る ケ ー ス に限 られ,一 般 的 な電 荷 分 布 に適 用 で き る方 法 で は ない 。ポ ア ソ ンの 式 を数 値 的 に解 く場 合 で も式 の非 線 形 性 が しば しば 障 害 に な る 。 さて,す
で に 述 べ た よ う に,ポ ア ソ ンの 式 を解 くの は,基 本 的 に
(a) 電 荷 密 度qが 既 知 の 場 合
(b)qが
未 知 数(未 知 関 数)の 場 合
に分 け られ る。(a)の
場 合,qは
時 間 に 関 係 な く,座 標 だ け の 関 数 とす る 計 算 が
多 い 。 先 に 述 べ た よ うに,空 間 の電 荷 は ドリ フ ト,拡 散 な どの作 用 で 移 動 し,電 荷 密 度 も変 化 す るの が 普 通 なの で,qの 一 方(b)の 式)を
時 間 的変 化 は 繰 返 し計 算 で 追 跡 す る。
場 合 は,一 般 に は二 つ の 偏 微 分 方 程 式(ポ
連 立 させ て 解 くが,ラ
ア ソ ンの 式 とqを 与 え る
プ ラス の 式 に帰 せ られ る特 別 な ケ ー ス もあ る。 た と
え ば誘 電体 の 表 面 を電 流 が 流 れ る 表 面 導 電性 の 場 合 や,導
電率が一 定で オームの
法 則 が 成 り立 つ 体 積 導 電性 の 場 合 で あ る。 これ らは前 章 に解 説 した よ う に誘 電 体 界 面 で 適 当 な処 理(境
界 条 件 の 設 定)を
行 う だ け で よい 。 ま た 注 意 す べ き点 は,
qは正 味 の 電 荷 密 度 で あ る か ら,正 負 の 電 荷 密 度 が至 る と こ ろ バ ラ ンス して い る と,た と え 「空 間 電荷 電 流 」 が 存 在 して も,場 の状 態 を 与 え る式 は ラ プ ラ ス の 式 で あ る 。 この た め に,空 間 電 荷 あ る い は 電 荷 密 度 を,空 間 中 の正 味(ネ 電 荷(正
電 荷‐負 電 荷)と
ッ ト)の
定義す る こともある。
17・2 領域 分割 法 に よ る計 算 差 分 法 の 場 合 は 図17・1の
よ う に 回 転 対 称 場 の(r,z)座
で 分 割 した とす る と,(17・1)式
標 を 一 定 の格 子 間 隔h
の左 辺Δ φ は次 式 の よ う に近 似 され る。 (17・3)
した が っ て,点(r0,z0)に
お け る 電 荷 密 度 をq0と
す る と, (17・4)
と な る。 こ こで,考 (17・3)式
でr0=0の
え て い る空 間 は 気 体 と して 誘 電 率 を ε0と して い る 。 と き は,(3・20)式
に な ら っ て,
(17・5)
ま た 二 次 元 場(x,y座
標)で
は,(17・4)式
は も ち ろ ん,
図17.1 差 分 法 の領 域 分 割
図17.2 平 行 平板 電 極 間 の放 電 モ デ ル
(17・6)
と な る 。 各 点 の 電 荷 密 度 が 与 え ら れ て い れ ば,す 式 あ る い は(17・6)式
を 作 り,未
べ て の 点 に(17・4)式,(17・5)
知 数 φiを 求 め る こ と が で き る 。
比 較 的 初 期 の計 算 例 と して平 行 平 板 電 極 間 の 放 電 に つ い て 空 間 電荷 に よ る電 界 ひ ず み を 求 め た 論 文[17.2]があ る。 図17・2の
よ う な 半 径Rの
回転対 称 な放電 路
を有 す る低 気 圧 水 素 中 の 放 電 の 計 算 で あ る 。 計 算 に 必 要 なqの 値 は 電 離 増 倍 の 式 か ら得 た もの が用 い られ て い る 。 論 文 中 に は 明 記 さ れ て い な いが こ の 値 は ひず み を無 視 し た電 界 か ら計 算 した値 ら しい 。 放 電路 半 径 は 得 られ た電 界 か ら再 び電 離 増 倍 量 を計 算 して 実 験 と も っ と も良 く合 うRを
と っ て い る。 そ の10年
進 展 シ ミュ レー シ ョ ンの 計 算 で は,差 分 式 の 電 位 φ(r,z)−V(z/d)と q(r,z)を,zに
後の放 電 電荷 密 度
関 して フー リエ 級 数 に展 開 して 計 算 を速 め た 方 法 が 報 告 され て い
る[17.3]。 しか し差 分 法 を使 う と,電 界 を 電 位 か ら求 め る 際 に大 きな 誤 差 が 生 じる ため,放
電 シ ミュ レー シ ョン の よ うな 繰 返 し計 算 で は,誤 差 が 累 積 して 計 算 が 不
安 定 に な りや す い 欠 点 が 指 摘 さ れ て い る[17.4]。 電 子 な どの 荷 電 粒 子 が 電 界 に よ っ て 加 速 さ れ る こ とが 放 電 の 基 因 で あ る か ら, 電 界 計 算 は放 電 シ ミュ レー シ ョ ンに お い て 決 定 的 な重 要 性 を有 す るが 本 書 で は こ れ 以 上 解 説 す る余 裕 が な い 。 文 献[17.5]に は グ ロー 放 電 か ら大 気 中 の 長 ギ ャ ップ 放 電 に わ た る計 算 機 シ ミ ュ レー シ ョ ンの 現 状 が 分 か りやす く解 説 され て い る。
有 限 要 素 法 で は4・1節
に 述 べ た オ イ ラー の 理 論 に よっ て(17・1)式
は次 式 の 汎
関数 を最 小 にす る こ と と等 価 で あ る。 (17・7)
したが っ て 各 要 素 の 電荷 密 度 の値 が 与 え られ て い れ ば,通 常 の 有 限 要 素 法 に よ る 電 界 計 算 と 同様 に,各 節 点 電 位 φiに よ っ て(17・7)式 の 被 積 分 項 を表 し,X(φ) を 最 小 に す る よ う なφiの 組 を こ の 式 か ら求 め れ ば よ い,そ −q φの 項 は,二 次 元 場 で要 素 内 のqが
の 際(17・7)式
の
一 定 で あ る と 次式 を導 く こ とが で きる 。 (17・8)
こ こで,Xq(e),q(e),Δ(e)は る一 つ の 要 素(e要
素)の
図17・3に 汎 関 数 のqに
示 す よ う に,そ れ ぞ れi節 点 に 関 係 す よ る寄 与 分,電 荷 密 度,面
節 点 電 位 に つ い て(17・8)式 を 付 け加 え た 連 立 一 次 方 程 式 が,節
積 で あ る。 各
点 電位 を与 える
支 配 方 程 式 で あ る。 た と え ば 図17・3の (4・29)式
よ う な 規 則 的 な 分 割(4.6節
の ∂X/∂φiに(17・8)式
の 図4・2と
同 じ)の
と き は,
が 付 け 加 わ る 。 つ ま り,
(17・9)
図17.3 空 間電 荷 を含 む有 限要 素 法(説 明 図)
q
こ こ でΔ=hxhy/2で
あ る 。 特 にhx=hy=hの
と きは,
(17・10)
(e)がす べ て等 しい な ら もち ろ ん 差 分 法 の(17・6)式 と一 致 す る 。 また 回 転 対 称 場 で は や は り要 素 内 のqを 一 定 とす る と,次 式 に な る。
(17・11)
こ こ で,Δ(e)は
各 要 素 の 面 積,(2ri+rj+rm)eは
rmの 式 を 意 味 す る 。 図17・3の 式 に(17・11)式
各 要 素 の3頂
点 のr座
よ う な 規 則 的 な 分 割 の と き は4.6節
標ri
,rj,
の ∂X/∂φiの
を 付 加 し て,
(17・12)
が,φiに
対 す る 式 に な る 。hr=hzで,6個
ん 差 分 法 の(17・4)式
の 要 素 のq(e)が
等 しい と き は も ち ろ
と 同 じで あ る。
17.3 電 荷重 畳 法 に よる計算 領 域 分 割 法 で はポ ア ソ ンの 式 を直 接 解 くが,電 荷 重 畳 法 で は こ の 方 法 は使 え な い 。 しか し空 間電 荷 以 外 の(電 位,電
極 電 荷 に よ る)ラ プ ラ ス場 の 電 界 に 空 間 電 荷 の 電
界 を重 畳 す る 方 法 が しば しば 用 い られ る 。 空 間電 荷 は リ ン グ電 荷 や 線 電 荷
の よ うな 電 荷 重 畳 法 の仮 想 電 荷 で模 擬 す る こ と もあ り,よ
り精 密 に適 当 な分 布 を
仮 定 して模 擬 す る こ と もあ る。 い ず れ に して も この 方 法 の本 質 は ラ プ ラス 場 の 計 算 で あ る。 以 下 い くつ か の 基 礎 的 な 計 算 例 に よ っ て 計 算 方 法 を概 説 す る。 電 荷 重 畳 法 の 計 算 例 で は,空 気 中 の 長 ギ ャ ップ で放 電 路(リ 上 電 界 の計 算[17.6]があ る。 図17・4に
ー ダ)を 含 め た 地
示 す よ う に,上 部棒 電極 か ら伸 び 出 した 導
図17.4 長 ギ ャ ップ放 電 にお け る電 界 計算
電 性 の 高 い リー ダ チ ャ ンネ ル(直 径2cm,電
図17.5 直流 コ ロナ イ オ ンの 電荷 重 畳 法 に よ る計算(説 明 図)
し,リ ー ダの 各 所 に存 在 す る コ ロ ナ(ス
位 勾 配1kV/cm)は
線 電荷 で 模 擬
トリー マ)電 荷 群 は 多 数 個 の リ ング 電 荷
で 模 擬 して い る。 コ ロ ナ 電 荷 群 の空 間 電 荷 量 は放 電 進展 中 に 注 入 され た電 荷 量 の 測 定 値 か ら与 えて い る 。 この 計 算 は 空 間 電 荷 の 存 在 す る領 域 内 部 の 電 界 は 問題 に して い な い が,本 質 的 に 一 般 三 次 元 配 置 の ラ プ ラ ス場 の 電 界 計算 で あ る。 同 様 に電 荷 重 畳 法 に よる 計 算 例 と して,図17・5に
示 す よ うな 棒 対 平 板 ギ ャ ッ
プか らの 正 極 性 イ オ ン雲 を リ ング電 荷 で 模 擬 した計 算[17.7]があ る 。 計 算 内容 は イ オ ンが 電 界 の作 用 で ドリ フ トす る時 間変 化 を追 っ た もの で,当 の 電 界 計 算 が 必 要 で あ る。 こ の 電 界Eは
対 象 とす る イ オ ン(リ
の 電荷 の 作 用 と して与 え られ る。 計 算 の プ ロセ ス は,イ 時 間Δt=Δl/(kE)(Δlは
微 小 距 離, kは 移 動 度)の
に 繰 り返 し計 算 す る。 繰 返 しの1ス
然空間電荷領域 内 ン グ 電荷)以
外
オ ンに働 く電 気 力 が 微 小
間 に 移 動 させ る 距 離 を 次 々
テ ップ はΔlを 一 定 と し て最 も速 い イ オ ンが
移 動 す る 時 間 で あ る 。棒 電 極 先 端 の 電 界 が イ オ ンの ドリ フ トの た め に 回復 す る と,新 た に リ ン グ電 荷 を与 えて 次 々 に発 生 す る イ オ ンを模 擬 す る 。 しか し電 極 先 端 の 最 初 の電 荷 分 布 や 次 々 に 発 生 す る リ ング 電 荷 の 電 荷 量 な どを 厳 密 に与 え る こ
と は容 易 で な い 。 そ の 後 の計 算 で も ほ とん ど 同 じ手 法 が 用 い られ て い る。 た とえ ば 文 献[17.8]で は,円 形 の平 行 平 板 電 極 間 で(一
方 の 電極 の 中心 の孔 に あ る)針 電 極 か らの 負 極
性 パ ル ス コ ロ ナ の 挙 動 が 電 荷 重 畳 法 で 計 算 され て い る 。 空 間 電 荷 は62個 グ電 荷(離
隔40μm)で
テ ッ プ,2か
の リン
模 擬 し,繰 返 しの 時 間 間 隔 は2μ 秒 まで は0.01μ 秒 の ス
ら20μ 秒 ま で は0.1μ 秒 ス テ ッ プ,…
と,コ ロ ナ の発 生 直 後 は電 荷
同 士 の 反 発 力 の大 きい こ と を考 慮 して 間 隔 を短 く して い る 。 この よ う な 電 荷 重 畳 法 の 空 間 電 荷 を含 め た 計 算 は,空
間に置 いた仮 想 電荷群
Qs(k)が 既 知 で あ る と,電 極 上 の 輪 郭 点i点 にお い て, (17・13)
の式 を作 り,電 極 内 の仮 想 電 荷 量Q(j)を Qs(k)の 作 用,す
求 め る こ とに な る。 このQ(j)は
当然
な わ ち影 像 電 荷 を含 ん だ値 で あ る。 も し空 間電 荷 で 生 じる電 極
内 の影 像 電 荷 量Q'(j)が
必 要 な と きは,次 式 か ら求 め れ ば よ い 。 (17・14)
さ らに大 地 が存 在 す る と き に は,(17・13)式,(17・14)式 係 数P(i,k)に
で 空 間 電 荷 に よる 電 位
大 地 に対 す る 影 像 電 荷 の作 用 を含 め る。
電 荷 重 畳 法 に よ る計 算 で 注 意 が 必 要 な の は,第 一 に 電極 内 仮 想 電荷 の 配 置 で あ る。 空 間電 荷 の な い と きは 電 極 の形 に 近 い(相 似 な)配 置 に す れ ば よい が,空 電 荷 が あ る とそ の 近 くの電 極 表 面 の 電荷 密 度 が 増 大 す る の で,内
間
部仮 想 電 荷 の 密
度 を増 や す と か,影 像 点 付 近 に仮 想 電 荷 を 置 くな ど の配 慮 が 必 要 で あ る。 第 二 に 空 間 に連 続 的 に存 在 す る仮 想 電 荷 を 離 散 的 な点,リ す る の は,考 慮 す る 点Pが 空 間 電荷 密 度qに
ン グ,線 電 荷 で模 擬
空 間 電 荷 に近 い と 大 き な 誤 差 を も た らす 。 厳 密 に は
よる 電 位,電
界 と して 次式 を用 い る必 要 が あ るが,数
値積分が
必 要 な た め に 計 算 時 間 の 長 くな るの が 難 点 で あ る 。 (17・15)
(17・16)
回転 対 称 場 で は(17・15)式 が 次 式 に な る こ と は電 荷 重 畳 法 にお け る リ ング 電 荷 の電 位 の 式(付 録1),あ
る い は 第5章
に 述 べ た 表 面 電 荷 法 の 電 位 の 式 か ら容 易
に理 解 され よ う。 (17・17)
こ こ で(R,Z),(r,z)は
そ れ ぞ れ 空 間 電 荷 と 点Pの
座 標, K(k)は
第1種
の完
全 だ 円 積 分 で,
で あ る。 電界 の 式 も 同様 に リ ン グ電 荷 の 式 か ら容 易 に導 か れ る 。 こ の よ うな 空 間 電荷 の電 位,電
界 の計 算 法 は た と え ば 放 電 進 展 の 計 算 機 シ ミュ レー シ ョ ン[17.5]に
用 い られ て い る。 時 々刻 々 の 電 子 の な だ れ 増 倍,イ を考 慮 してqが 与 え られ,こ のqに
オ ンの発 生 消 滅,電 荷 の 移 動
よ っ て 求 め た 電 界 か らま た放 電 進 展 を計 算 す
る とい う繰 返 し計 算 が 行 わ れ る。 一 様 な電 荷 密 度 の 立 方 体 電荷 を 同 じ電 荷 量 の 点 電 荷 で 模 擬 した と きの 電 位,電 界 の 誤 差 は文 献[17.9]に
示 され て い る。 一 様 で も広 が りの あ る電 荷 密 度 を 点 電
荷 で 近 似 す る の は 相 当 に粗 い 近 似 で あ る か ら,正 確 に は10.2節
で述べ た多重 極
電 荷 で 表 す ほ うが よい 。
17.4 表面 電荷 が 存在 す る と きの 計算 表 面 電 荷 は空 間電 荷 の 一 種 と考 え て も よ いが,有
限 の厚 み の 電 荷 分 布 と考 え る
よ り厚 み の な い電 荷 層 と見 なす ほ うが 良 い 場 合 が しば しば あ る。 た とえ ば 固 体 誘 電 体 表 面 に蓄 積 した電 荷 な どで あ る 。 この 空 間 電荷 と表 面電 荷 の 関係 は,体 積 抵 抗 と表 面 抵 抗 との 関係 に相 当 して い る 。 有 限 要 素 法 で は 表 面 電 荷(電 荷 密 度 σ)に よ る エ ネ ル ギ ー 量 を(17・7)式
に付
け加 え て 次 式 の 汎 関 数 とす る 。 (17・18)
た だ し,表 面 電 荷 以 外 の 空 間 電荷qに
よ る項 は除 い て い る。
要 素 内 電 位 の 近 似 関数 と して 最 も簡 単 な 一 次 式 を使 う と き は,図17・6に よ うに 界 面i,jに
示す
沿 っ て は 次 式 に な る。 (17・19)
た だ しLはi,j間 項 は 要 素 の1辺
の 距 離 で あ る 。 し た が っ て 二 次 元 場 で は(17・18)式 の σ を 一 定 と す る と,次
の− σφ の
式 を 導 く こ と が で き る[17.9]。
(17・20)
こ こで,Xσ(f),σ(f),L(f)は
図17・6の
「辺 」 にお け る汎 関 数 の σに よ る寄 与 分,表
よ う に,そ
れ ぞ れi節 点 に 関 係 す る
面 電 荷 密 度,長
さ で あ る。 空 間 電 荷
の 場 合 と同 様 に各 節 点 の 方 程 式 に(17・20)式 が付 け加 わ る こ と に な る。 回 転 対 称 場 で は(17・18)式
が2πrの か か っ た 積 分 に な る た め,や
は り要 素 のr座 標 に 関
係 した別 の 式 に な る 。 式 の導 出 は 必 要 な 読 者 に まか せ る。
電荷 重畳 法 では誘 電体界 面 の電束密 度連 続 の境界 条件 に表 面電荷 密度 σを組 み入れ れば よい。す なわ ち, (17・21)
で あ る。 こ れ は 絶 縁 物 に導 電 性 が あ る と き に,そ の作 用 で 生 じ る真 電 荷 の 電荷 密
図17.6 表面 電荷 が あ る と きの有 限 要素 法
度 を組 み 入 れ る(第16章
で 説 明)の
と 同 じで あ る。 具 体 的 に は界 面 の 各 輪 郭 点
i点 で与 え られ た σ(i)を 付 加 した 式 を立 て る こ と に な るが ,左 辺 の式 は複 合 誘 電 体 の 計 算 法 で 述 べ た もの と同 じで あ る。 計算 例 と して真 空 中 の 固 体 絶 縁 物 の 表 面 電 荷 の 作 用 を 検 討 し た も の が あ る[17.10]。 な お,(17・21)式 に 示 した よ う に εA<εBと して,電
の 左 辺 は,図11・5
界 は 常 に εBか らεAの 向 き を正 と 定 め て お く
と よい 。 一 方 表 面 電荷 法 で は界 面 の 分 極 電 荷 に,与 え られ た 真 電 荷 の 密 度 σ(i)を 付 加 す れ ば よい 。 こ れ ら の 計 算 は 第16章
の体 積 抵 抗,表
面 抵 抗 の 場 合 よ り簡 単 で あ
る。 しか し空 間 電荷 の場 合 と同 様 に,表 面 電 荷 の 正 確 な値 を測 定 あ る い は 評価 す るの が 困難 な た め,既 知 の 表 面 電 荷 密 度 とい うの は粗 い 近 似 で あ る こ とが 多 い 。 放 電 現 象 の 解 析 な どで は,放 電 条 件 を設 定 す る こ と に よ っ て,(17・21)式 用 い る こ とな く真 電 荷 密 度 を 求 め る こ と が で きる[17.11]。 た と え ば,沿
を
面放 電 の
放 電路 の 電 界Edが 与 え られ て い る と き,各 点 の放 電 路 の 電 位 φ は, (17・22)
とな る 。 こ こで,V0は(沿
面 放 電 が 出発 す る)電 極 の電 圧,lは
で あ る。 表 面 の 各 点 の境 界 条 件 と して,(17・22)式 を与 え る式 に な る。
電 極 か らの 距 離
の 電 位 を用 い れ ば真 電荷 密 度
第18章 直 流 イ オ ン流 場 の計 算
高 電 界 に よ っ て放 電 が 発 生 し,生
じた イ オ ンが 電界 な どの 作 用 で移 動 す る と き
の 電界 分 布 が イ オ ン流 場 で あ る。 電 界 分 布 は ポ ア ソ ンの 式 で 与 え られ る が,電
荷
密 度qは
ア
既 知 で な く,電 位 φ とqと い う二 つ の 未 知 関数 が 存 在 す る の で,ポ
ソ ンの 式 の ほ か に別 な 式 が 必 要 で あ る。 こ の と き φ とqを 二 つ の 式 か ら 反 復 計 算 で 求 め よ う とす る と,計 算 が 不 安 定 で 発 散 しや す い とい う問 題 が あ る 。 実 用 的 に は針 対 平 板 電 極 の 放 電 特 性,電
気 集塵 器 の 電 気 的特 性,直
流 送電線 の
イ オ ン流 帯 電 や コ ロ ナ放 電 の 解 析 な どに 現 れ る 重 要 問 題 で あ る 。 この よ う なケ ー ス で は,イ
オ ン流 の 存 在 す る媒 質 は 多 くの 場 合 大 気 で,印 加 電 圧 は 直 流 で あ る 。
したが っ て イ オ ンの 速 度 は 電 界 に比 例 し,比 例 定 数 が 移 動 度 で あ る。 イ オ ン流 場 の 計 算 方 法 に 関 して は,こ れ ま で に,特 ご ろ にか け て 多 数 の 論 文 が 発 表 され,こ
に1970年
代 か ら90年 代 中
れ ら を ま とめ るだ けで 優 に1冊 の 本 に な
る ほ どで あ る。 この 章 で は ま ず イ オ ン流 場 の 基 本 式 を 説 明 した 後,簡
易計算 法 と
して イ オ ンの存 在 が 電 界 の方 向 を変 え な い とす る近 似 計 算 な ど を述 べ,さ
らに イ
オ ン流 場 の さ ま ざ ま な計 算 方 法 や 計 算 条 件 を 説 明 す る 。 な お 直 流 イ オ ン流 計 算 に 関 して は,文 献[18.1]に 計 算 の も と に な る 条 件 か ら実 用 面 まで,こ 自 身 の 手 法 も含 め て広 汎 か つ 詳 細 な 内 容 が ま とめ られ て い る。
の文献の著 者
18.1 イ オ ン流 場 の 基 本 式 電 流 が1種
類 の イ オ ン流 に よる 場 合 に は,電 流 密 度jは 電 荷 密 度qと
次の関係
にある。 (18・1)
こ こ でvは
イ オ ンの 速 度 で あ る。 さ ら に 移 動 速 度 が 電 界 に 比 例 す る と きは,比
例 定 数 をk(移
動 度)と
して, (18・2)
が 成 り立 つ 。 定 常 電 流 界 で は電 流 連 続 の 式 が 成 り立 つ の で,結
局,次
の2式 が 基
本 式 で あ る。 ボ ア ソ ン の 式 :〓
電 流 連 続 の 式 :〓
(18・3)
ま た は〓 (18・4)
と く にk=一
定 の と き は,
(18・5)
で あ る。 これ らの 二 つ の 偏 微 分 方 程 式 か ら,適 当 な境 界 条 件 の も と に φ とqと を 求 め る 問 題 に な る。 正 負 の イ オ ンが 存 在 す る(両 極 性 あ る い は 双 極 性 の)と に は もっ と複 雑 な 式 が 必 要 で あ る が,こ れ に つ い て は18.5節 イ オ ン流 は空 間 的,時
間 的 に一 様 で な い こ とが 多 い が,現
ン流 が 空 間的 に対 称(二
き
に述 べ る。 実 際 の
在 まで の と ころ,イ
次 元 場 あ る い は 回 転 対 称 場 の取 扱 い)で,時
オ
間的に変動
しな い 定 常 的 な場 合 しか 計 算 さ れ て い な い 。 こ の 計 算 の 第 一 の 難 点 は,前 章 に も述 べ た よ う にqの 境 界 条 件 が φの よ う に 明確 に 与 え られ な い こ とで あ る。 そ れ どこ ろ か(18・4)式,(18・5)式
の電流連続
の 式 で さ え い た る と こ ろ で 成 り立 つ わ け で は な い。 イ オ ンを発 生 す る 高 電 界 電 極 近 傍 の い わ ゆ る電 離 領 域 で は,1種
類 の イ オ ン だ け が 存 在 す る の で は な く,ま た
イ オ ンの 移 動 速 度 が 電 界 に 比 例 す る とい う こ と も必 ず し も成 り立 た な い た め で あ
る。 これ らにつ い て は さ らに 以 下 の節 で 実 際 の 計 算 例 に 関 連 して 述 べ る 。
18.2 イ オ ンの存 在 が 電 界 に影響 しない とす る計算 この 計 算 方 法 は 電 界 分 布 をq=0の
ラ プ ラ ス の 式 か ら求 め る も の で,空
間電荷
密 度 の 小 さい 場 合 に限 ら れ る 。 しか し次節 以 下 に述 べ る も っ と複 雑 な計 算 法 と比 べ て 決 して 無 意 味 な 方 法 で は な く,実 際 に イ オ ン流 に よる 帯 電 量 の 計 算 な ど に し ば しば 用 い られ る 。 問 題 は どの よ う な 電流 密 度 まで こ の 方 法 が 適 用 で きる か と い う点 に あ る。 計 算 例 と して 有 名 な の は 一 様 電 界 イ オ ン流 中 の 誘 電 体 球(比 電 量 の 計 算 で あ る[18.2]。 図18・1の て,半 径Rの
誘 電 体 球 がQだ
よ うに 無 限 遠 で 一 様 電 界E0で
誘 電 率 εs)の 帯 あ る場 に お い
け 帯 電 す る と,球 表 面 上 で 半 径 方 向(r方
向)の
電界 は, (18・6)
とな る。 電荷 は電 気 力 線 に沿 っ て 球 に流 れ 込 む とす る。 球 面 上 で 電 界 が0に
なる
角 度 を θ0と し,こ の θ0で囲 まれ る 電 気 力 線 数 Ψ を と っ て こ の 中 の 電 荷 数 を 求 め る 。 一 様 電 界 領 域 に お け る 一 様 な 電 流 密 度 をj0と す る と,誘 電 体 球 の 帯 電 量 を与 え る 方程 式 は, (18・7)
図18.1 一様 イオ ン流 に よる誘 電 体 球 の帯 電
こ こ で Ψ は, (18・8)
で あ る か ら,(18・6)式
を 代 入 し て(18・7)式
を 解 く と,帯
電 量 と して 次 式 が 得 ら
れ る。
(18・9)
この 式 は 最 初 に 導 出 した研 究 者 の 名 前 を と っ て 「Pauthenierの 式 」 と呼 ば れ る 。 球 が 導 体 の と き の 計 算 はεsを 無 限 大 とす れ ば よ い。 こ の よ うな 計 算 は 図18・2 の よ う な モ デ ル配 置 に 対 して,直 流 送 電 線 か らの イ オ ン流 に よ る帯 電 計算 に も適 用 さ れ て い る 〔18.3]。 帯 電 量 に 及 ぼ す 直 列 抵 抗R,大
地 か らの 高 さD,被
帯 電体 の
形 状 等 の影 響 を検 討 した もの で あ る 。 こ の 計 算 で は,(18・6)式
か ら分 か る よ う に,誘 電 体 球 は 「一 様 に 」 帯 電 す る
こ とが 仮 定 され て い る の で,球
の絶 縁 抵 抗 が 高 く電 界 に対 す る向 きが 固 定 され て
い る と きは 計 算 どお り にな らな い。 導 電 性 あ る い は 回転 の た め に一 様 に帯 電 す る 粒 子 よ り帯 電 量 は小 さ く な る[18.4]。 文 献[18.5]は
こ の よ う な絶 縁 球 の 帯 電 の 時 間
特 性 を誘 電 率 な ど各 種 の パ ラ メ ー タに つ い て計 算 して い る 。 以 上 の 計 算 は要 す る に被 帯 電 体 の存 在 と帯 電 電 荷 に よ る 電 界 変 化 は 考慮 して い るが,イ
オ ンの 存 在(空
間 電 荷)に
よる 電 界 の 変 化 を無 視 して ラ プ ラ ス の 式 を適
用 す る もの で あ る。 どの よ う な電 流 密 度 に な る と この 計 算 法 が 適 用 で きな い か は 文 献[18.6]に 記 載 さ れ て い る。 図18・3に 圧V,ギ
ャ ッ プ間 距 離d)に
示 す よ う な平 行 平 板 ギ ャ ップ(印 加 電
一 様 な電 流(電
流 密 度j)が
流 れ て い る 場 合,ギ
ャ
ッ プ間 の 電 界 は近 似 的 に次 の パ ラ メ ー タ ξで 与 え られ る 。 (18・10)
こ こ で,E0は
イ オ ン流 が な い と きの 電 界,kは
三 の 値 に つ い て ギ ャ ッ プ中 の 電 界 を 図18・3に 10%変
わ る の は,ξ〓0.4の
イ オ ンの 移 動 度 で あ る。 ξの 二, 示 す が,ギ
ャップ中の電界が最大
と きで あ る。 これ か ら イ オ ン流 に よ る 電 界 ひず み を
図18.2 イ オ ン流 帯 電 を 計 算 す るた め の モ デ ル配 置
図18.3 イオ ン流 に よる電 界 ひ ず み(一 様 イ オ ン流)
無 視 で き ない 限界 値 と して 次式 が 得 ら れ る。 (18・11)
空 気 中 の イ オ ン の 移 動 度 と し てk=2×10-4m2/V・sを
と り,jlimの
二,三
の値 を
求 め る と,
のと き の とき こ の よ う に限 界 電 流 が 著 し く小 さい の で,大 気 中 イ オ ンの存 在 を無 視 す る計 算 方 法 を用 い て よ い か ど うか は十 分 注 意 しな け れ ば い け な い。
18.3 イ オ ンの存 在 が電 界 の方 向 に影 響 しな い とす る計算 18.3.1
基 本 式
イ オ ン 流 に よ る 電 界 ひ ず み を 無 視 で き な い と き は,(18・3)式,(18・4)式 は(18・5)式
か ら,φ,qを
求 め る 計 算 に な る が,厳
また
密 な 計 算 が 難 し い た め に,
「イ オ ン は 電 荷 の 方 向 に は 影 響 せ ず 大 き さ だ け に 影 響 す る」 と い う 仮 定 (「Deutschの 仮 定」 と呼 ば れ る)に 基 づ い た計 算 が し ば しば行 わ れ て きた 。 こ の 仮 定 を用 い る と空 間 電 荷 が な い と きの 電 界 分 布 が 計 算 で きる場 合,そ
の電気力 線
に 沿 っ た 経 路 を と る こ と に よっ て 一 次 元 の 計 算 に 帰 せ られ る こ とが ミ ソ で あ る。 つ ま り ベ ク トル 量 の 計 算 を ス カ ラ で 取 り扱 う こ と が で き る。 こ の 仮 定 は, Deutsch,
Felici, Popkovら
の 研 究 者 に用 い られ て きた が,単 極,双
極 の直流 送
電 線 の コロ ナ 問 題 の 解 析 に 適 用 した 論 文[18.7]が 有 名 で あ る。 以 下 に まず 二 次 元 配 置 の 単 極 性 の場 合 を簡 単 に 解 説 す る。 空 間 電 荷 の 存 在 しな い 場 合 の 電 界 をF,存 量Cを
在 す る場 合 の 電 界 をEと
す る と,計 算 の 仮 定 か らス カ ラ
用 い て, (18・12)
こ れ を(18・4)式
に 代 入 してdivF=0を
用 い る と,kが
一 定 の 場 合, (18・13)
こ の 式 は 電 気 力 線 に 沿 っ てCq=一 な わ ち電 線 上 の 値 を示 す)で
定=C0q0(添
字0は
電 気 力 線 の 出 発 点,す
あ る こ と を意 味 して い る。 ま た(18・3)式,(18・5)
式 か ら, (18・14)
と な る 。 電 気 力 線 に 沿 う 距 離 をlと q0×F/q(電
す る と,gradq=dq/dl,ま
気 力 線 に 沿 っ て は 電 界 を ス カ ラ 量E,Fと
し て よ い)を
たE=CF=C0 用 い る と,
(18・15)
これ を積 分 して, (18・16)
電 気 力 線 路l上 のF(空 演 算 に よっ てq0,C0を
間電 荷 が な い と き の 電 界)は 分 か って い る の で,適 与 え れ ば こ の式 か らqが 得 られ る。
当な
18.3.2
計算 の仮 定
直 流 イ オ ン流 場 の 計 算 で はDeutschの
仮 定 の ほ か に次 の 特 性 が 仮 定 され る こ
とが 多 い。 (a) イ オ ンの 拡 散 は電 界 に よ る移 動 に比 べ て 無 視 で きる。 (b) 移 動 度kは
電界 に よ らず 一 定 で あ る。
(c) 電 離 領 域 の 厚 さ は無 視 で き る。 (d) 電 線 表 面 の 電 界 は コ ロナ 開始 電圧 以 上 で は 常 に コ ロナ 開 始 電 界 の ま まで あ る。 Deutschの
仮 定 の 前 に,他
の計 算 法 で も使 用 さ れ る(a)∼(d)の
に つ い て説 明 す る。 まず(a)と(b)の
仮 定 は,直
仮 定 の妥 当 性
流 送 電 線 の イ オ ン流 場 で は ほ ぼ
成 り立 つ と考 え て よ い。 他 の 計 算 法 で もそ の ま ま使 用 さ れ る こ とが 多 い が,(b) に つ い て は 高 電 界 領 域 で イ オ ン発 生 後 の 時 間 的 変 化 や 電 界 依 存 性 を考 慮 した 計 算 も あ る[18.1][18.8]。(c)に つ い て は,二 (1μA/cm以
下)で
次 元 場 で は 実 用 送 電 線 の イ オ ン流 の 範 囲
は,導 体 近 傍 の 電 界 分 布 は イ オ ン流 に よ っ て ほ と ん ど変 わ ら
な い こ とを 計 算 で確 か め,仮
定 が 成 り立 つ と結 論 さ れ て い る[18.9]。 また 回転 対 称
場 で は,正 極 性 針 対 平 板 配 置 の イ オ ン流 場 の 電 界 分 布 と正 イ オ ン密 度 が こ の 計 算 法 で 検 討 され て い る[18.10]。 電 離 領 域 を 考 慮 す る と針 先 端 付 近 の 正 イ オ ン密 度 が 大 き くな る が,電 界 分 布 は全 領 域 に わ た っ て ほ とん ど 同 じで仮 定(c)の
成立 す る
こ とが 明 らか に され て い る。 仮 定(d)は
イ オ ン流 計 算 で 非 常 に重 要 な電 荷 密 度 に対 す る境 界 条 件 で あ るが,
こ の ほ か に 電 線 表 面 で 電 荷 密 度 一 定,な 11]は,気
体 で は電 界 一 定,液
密 度 が 電 界 に 依 存(た
どが 使 用 され る こ と も あ る。 文 献[18.
体 で は 電 荷 密 度 一 定,固
と え ば電 界 の 指 数 関 数),と
体 へ の 電荷 注 入 で は 電 流
して3種 類 の 簡 単 な 電 極 で そ
の 効 果 を検 討 して い る。 な お 電 界 一 定 の 特 別 な ケ ー ス と して,電 界 が 零(こ き 電 流 が 一 定 な ら 電 荷 密 度 無 限 大)の charge
limited flow)あ
のと
場 合 は 「空 間 電 荷 制 限 条 件 」(space
る い は 「Mott‐Gurney近 似 」 と 呼 ば れ る 。 文 献[18.12]
は 針 対 平 板 の 配 置 で 電 界 一 定(な
らび に 零)と 電 荷 密 度 一 定 の場 合 を計 算 し,両
者 は 空 間 の 電 界 や 電 荷 に大 き く は影 響 しな い との 結 果 を得 て い る。 文 献[18.1]は 以 上 の(a)か 仮 定(d)に
ら(c)の 仮 定 に つ い て も詳 し く論 じて い るが,特
に
つ い て は,平 滑 な 導 体 で コ ロ ナ が 導 体 表 面 で 一 様 に発 生 して い る 場 合
は よ く成 り立 つ が,そ
う で な い 場 合 は 適 当 で な い と報 告 して い る。 す な わ ち 実 用
送 電 線 の よ う に コ ロナ 放 電 の 発 生 状 態 が 一 様 で な い と きは,仮 定(d)の (e) 導 体 表 面 の 発 生 イ オ ン流 密 度j0は そ の 表 面 電 界 値E0で の 仮 定 を 用 い,実 験 式j0=bexp(aE0)を る[18.1][18.13]。 た だ し定 数a,bは
代 わ りに,
定 まる 。
境 界 条 件 に す る ほ うが 良 い と し て い
放 電 状 態 に 依 存 す る の で,送 電 線 の 素 導 体 配 置
に よ って 変 化 し,実 測 の 電流 特 性 と比 較 して 定 め られ る。 18.3.3
Deutschの
仮 定
こ の節 の 計 算 法 で 最 も根 本 的 な 問 題 は も ち ろ んDeutschの
仮 定 で あ る。 こ の
仮 定 に基 づ い た 計 算 が 多 数 行 わ れ て 実 験 結 果 と も比 較 され て い る。 コ ロ ナ を発 生 す る電 極 は全 体 の 領 域 に 比 べ て細 い た め に しば しば座 標 変 換 して 解 か れ る 。 た と え ば(垂 直 の)針 対 平 板 で は双 曲 面 座 標[18.12],電気 力 線 と 等 電 位 面 で 分 割 す る 「電 気 力 線 法 」[18.1]な どで あ る。 こ れ まで の 検 討 結 果 の い くつ か を述 べ る と,ま ず 回転 対 称 な 正 極 性 針 対 平 板 電 極 の 場 合,な うに定 数 を定 め る と,針 直 下(回 離 まで は電 界 の 誤 差 約6%と
る べ くDeutschの
転 軸 上)か
仮 定 が 成 り立 つ よ
ら平 板 上 で ギ ャ ッ プの 長 さ程 度 の距
い う報 告 が あ る[18.8]。 ま た,単 極 の 水 平 導 体 対 平 板
配 置 で 線 下 方 の 電 界 や イ オ ン流 は ほ ぼ(対 称 軸 に対 して 線 下 の 角 度 θ=60° 以 下 の 範 囲 で)正
確 に 求 め ら れ,ま
た 実 験 結 果 と合 う こ と も 報 告 さ れ て い
る[18.1][18.14]。 さ ら に,水 平 線 対 平 板,偏 心 円 筒,垂 直 線 対 平 板 で 計 算 し,最 大 値 で 基準 化 した計 算 値 は実 測 値 と よ く合 うが,電 流,電
荷 密 度 の 大 き さ は移 動 度 に
依 存 す る と い う結 果 が 得 られ て い る[18.15]。 しか しこ れ まで に妥 当性 が 検 討 さ れ た の は,ほ
とん どが 比 較 的簡 単 な電 極 配 置
で あ る。 針 対 平 板 や 導 体 対 平 板 配 置 の線 直 下 とい うの は,本 来 対 称 性 か らい か に コ ロ ナ を生 じて もDeutschの
仮 定 が 成 り立 つ 領 域 で あ る。 とす る と,両 極 性 の
送 電 線 で も こ の 計 算 法 が 適 用 され て い る け れ ど も[18.16],多線,多
極 の 送電線 で
そ の よ う な(方 向 の 変 わ らな い)対 称 面 が な い場 合,妥
当 な計 算 法 で あ る か ど う
か は あ や しい。 さ ら に風 の作 用 が あ る と き に,電 界 に よ る移 動 と風 に よ る 移 動 を 複 合 さ せ て な お か つDeutschの
仮 定 が 成 り立 つ とす る計 算 ま で あ る が,そ
の妥
当性 は 裏付 け られ て い な い。 筆 者 ら の考 え で は多 線,多 極 の 配 置 で風 の 作 用 が あ る 場 合 の 計 算 は,次 節 以 下 に 述 べ るDeutschの
仮 定 に よ らな い 方 法 を 用 い る べ
きで あ る。
18.4 領 域 分割 法 に よる計 算― 単 極性 イ オ ン流 場 「空 間電 荷 は電 界 の 方 向 を 変 え な い 」 と い うDeutschの 法 で は,ポ
ア ソ ンの 式(18・3)式
仮 定 を使 用 しな い計 算
と,電 流 連 続 の 式 で あ る(18・4)式 ま た は(18・
5)式 と を交 互 に使 用 して,二 つ の 未 知 関 数 の 一 方 を既 知 と して 収 束 す る ま で反 復 計 算 す る。 差 分 法 で は 図18・4の と,点(r0,z0)の
よ う に 回 転 対 称 場 の 領 域 を一 定 の 格 子 間 隔 で 分 割 す る
電 位 φ0,電 荷 密 度q0と 周 辺 格 子 点 の 値 との 関 係 式 は,ポ
アソ
ンの式 か ら(17.4)式 と同 じ, (18・17)
電 流 連 続 の 式 か ら,
図18.4 差 分 法 の 領域 分 割(回 転 対 称場)
(18・18)
が 導 か れ る 。 こ れ ら を領 域 の 各 点 につ い て作 り,そ れ ぞ れ,φi,qiを 一 次 方 程 式 とす る 。 適 当 な初 期 値 か らφiの 計 算(qi:既 知)→φiの 計 算(新
しいqiを 使 用),を
求 める連立
知)→qiの 計 算(φi:既
収 束 す る まで 反 復 す る。
同 じ領 域 分 割 法 で あ る 有 限 要 素 法 は,差 分 法 に比 べ プ ロ グ ラ ムが 複 雑 な うえ に 入 力 デ ー タの 量 が 何 倍 に もな るが,イ る 。 第 一 に イ オ ン流 場 は,イ
オ ン流 場 の 計 算 に よ り適 して い る と思 わ れ
オ ンを発 生 す る 小 さ い(あ
る い は 細 い)放 電 電 極 の
あ る著 し く不 平 等 な 電 極 配 置 の た め,高 電 界 部 分 を細 か く分 割 す る必 要 が あ り, 領 域 分 割 の 自由 な有 限要 素 法 が 適 して い る 。 第 二 に 時 間 的 変 化 な ど複 雑 な条 件 を 組 み 入 れ る の に 有 限 要 素 法 の ほ うが 柔 軟 性 が あ る。 有 限 要 素 法 に よ る直 流 イ オ ン 流 場 の 計 算 もす で にか な りの 論 文 が あ るが,最
初 の報 告 は1979年
と 思 わ れ る 。 た だ し一 次 元 の 同 軸 円筒 配 置 で あ る。 そ の 後,ダ (集 塵 器),単
の 文献[18.17] ク ト中 水 平 導 体
線 の 送 電 線 の計 算 が 行 わ れ た[18.18]が,と も に単 極 性 で あ る。
差 分 法 や 有 限 要 素 法 の 計 算 で も っ と も重 要 な こ と は,電 流 連 続 の 式 に一 階 微 分 の項 が含 まれ る た め に,先 に述 べ た よ う な単 純 な 反 復 計 算 で は不 安 定 を生 じや す い,あ る い は簡 単 な 分 割 で の 反復 計 算 で は常 に 不 安 定 とな っ て絶 対 に計 算 で きな い点 で あ る。 そ の た め に細 い 電極 付 近 で 分 割 を 密 にす る ほ か,適 夫 して 計 算 を安 定 化 しな け れ ば い け な い 。 文 献[18.18]の 既 知 と して ポ ア ソ ン の式 か ら電 位 を求 め,次 (method
当 な 計 算 法 を工
計 算 で は,電 荷 密 度 を
に電 位 を既 知 と し て 「特 性 曲線 法 」
of characteristics)と 呼 ぶ 方 法 で 電 荷 密 度 を 求 め る 計 算 を反 復 す る が,
後 者 の方 法 は イ オ ンの 移 動 方 向上 で の 関 係 式 を用 い る もの で あ る。 しば しば 用 い られ る の は 「上 流 有 限 要 素 法 」 で あ る。 上 流 有 限要 素 法 は座 標 に よ る一 階微 分 の 項 を 「上 流 側 」 の 要 素 だ け で 近 似 す る もの で,そ
の点 の 未 知 変 数
の 値 は作 用 す る上 流 の 影 響 は受 け る が 下 流 側 の 影 響 を受 け な い とい う考 え が も と に な っ て い る[18.19]。 イ オ ン流 場 で は作 用 す る 力 は 電 界,変 (18・5)式 のgradqの
数 は 電 荷 で あ る が,
項 に 上 流 有 限 要 素 法 を適 用 す る こ と に よ っ て 安 定 な 数 値 計
算 法 に な る 。 これ につ い て は18.6節
で さ らに説 明 す る。
18.5 両 極性 イオ ン流 場 の計算 発 生 源(高 電 圧 電 極)が
正 負 両 極 性 で あ る と,正 負 両 イ オ ンの 電 荷 密 度q+,
q-が 未 知 数 に な る う え に,イ オ ンの 再 結 合 も考 慮 し な け れ ば な ら な い 。18.3節 に述 べ た よ うに,こ
の よ う な両 極 性 の 直 流 送 電 線 の 場 にお い て も,Deutschの
仮
定 を も と に した計 算 が あ り,ま た風 の効 果 を含 め た 計 算 まで あ る 。 しか し,こ こ で は こ の 仮 定 を用 い な い よ り一 般 的 な 有 限 要 素 法 に よ る筆 者 ら の 計 算 法 を 述 べ る[18.20]。 両 極 性 イ オ ンの 存 在 す る場 で は 定 常 イ オ ン流 場 の方 程 式 は,電 位 φ,正 負 の イ オ ン流(電 流)密
度j+,j-に
対 して次 の 諸 式 に な る。 (18・19)
(18・20) (18・21)
(18・22)
(18・23)
こ こでk+,k-は
正 負 イ オ ンの 移 動 度 で電 界 に よ らず 一 定 とす る。 ま た,イ
の拡 散 を電 界 に よ る移 動 に比 べ 無 視 して い る。eは 電 子 の 電 荷,Rは の再 結 合 係 数,Wは
風 速(ベ
オン
正 負 イオ ン
ク トル 量)で あ る。
領 域 分 割 法 で は特 に 電 界 が 不 平 等 な送 電 線 付 近 で 電 位,電 界 の 誤 差 を生 じやす い の で,計 算 精 度 を あ げ る た め に φ は空 間 電 荷 が な い と きの 静 電 界 φeと空 間電 荷 に よる 電 位φqに 分 離 す る 。 (18・24)
φeに対 す る 方 程 式 と境 界 条 件 は,通 常 の ラ プ ラ ス 場 と同 じで あ る 。 φqに つ い て は, (18・25)
φq=0(す
べ て の 境 界 上)
(18・20)∼(18・23)式
(18.26)
は 次 の よ うに 書 き換 え られ る。
(18・27)
(18・28)
こ こ でυ+,υ-は
正 負 イ オ ンの 移 動 速 度 で, (18・29) (18・30)
q+
,q-に
対 す る 境 界 条 件 は,こ
の 論 文[18.20〕 ではそ れぞれ正負の送電 線上で 一定
値 に と っ て い る。 q+=q
m(m番
q-=qn(n番 大 地,架
空 地 線,仮
目 の 正 極 送 電 線 上)
(18・31)
目の 負 極 送 電 線 上)
(18・32)
想 境 界 に お い て は,q+,q-の
境 界条件 は不 要で ある。す で
に述 べ た よ うに電 荷 密 度 の 境 界 条件 は イ オ ン流 場 電 界 計 算 の 難 点 で,導 体 表 面 の イ オ ン発 生 機 構 を も と に して物 理 的 プ ロ セ ス を 考 慮 しな け れ ば 正 しい境 界 条 件 は 与 え られ な いが,現 在 は残 念 な が ら合 理 的 な境 界 条 件 を与 え る まで に至 っ て い な い。 そ こ で18.3節
に述 べ た仮 定(d)や(e)が
用 い られ て い るわ け で あ る が ,こ
の 論 文 で は全 体 の 領 域 に 比 べ 送 電 線 が 細 い こ と,さ
らに線 対 平板 の 精 密 計 算 の 結
果 で 線 表 面 の 電 荷 密 度 が 一 定 に な っ て い る こ と を 考 慮 して,(18・31)式,(18・ 32)式 の よ うに 電 荷 密 度 一 定 の 境 界 条 件 を 与 え て い る。 しか しqmやqnの
値はこ
の ま ま で は 不 明 な の で,送 電 線 上 の コ ロナ 電 流 や大 地 上 の電 流 分 布 の 測 定 値 か ら 決 め る必 要 が あ る。 これ に よ っ てq+,q-を
求 め る準 備 が で き た。 こ れ ら の方 程 式 と境 界 条 件 に 対
し,全 体 の領 域 を小 要 素 に 分 け て 有 限要 素 法 を適 用 す れ ば よ い。 計 算 手 順 の概 略 は 次 の と お りで あ る。 (a) 空 間 電界 が な い と きの 電 位 φeと 電界Eeを (b) 正 極 送 電 線 上 以 外 の 節 点 で はq+(i)=0,負
求 める。 極 送電線上 以外 の節 点で は
と お く。 (c)
(18・25)式
で9+,q-を
既 知 と し て φqを 求 め る 。 こ の 計 算 法 は17.2節
で 述 べ た も の と 同 じ で(17.4)式
を 用 い れ ば よ い 。q+ ,q-が
で な く座 標 の 線 形 な 関 数 に す る と,少
要素 内 で一定
し違 う取 扱 い に な る が ,結
果 はほ と
ん ど変 わ ら な い。 (d)
grαdφe,grαdφq,Wの
値 か ら(18・29)式,(18・30)式
を 用 い て,v+,
v-を 求 め る 。 (e) q+(i),q-(i)をq+(i),q-(i)と
し て 記 憶 し て お く。
(f)
後 述 す る 上 流 有 限 要 素 法 に よ り 新 た なq+(i),q-(i)を
(9)
max{│q+(i)-q+(i)│,│q-(i)-q-(i)│}/max{│q+(i)│,│q-(i)│}が
求 め る。 与
え ら れ た 収 束 判 定 パ ラ メ ー タ よ り小 さ く な る ま で(c)∼(f)の 返 す 。maxは
計 算 を繰 り
最 大 値 を 意 味 す る。
18.6 計 算 の 安 定 化
18.6.1
上流 有 限 要素 法
イ オ ン流 場 の 計 算 プ ロ セ ス で φ(電 位)とq(電 は,18.4節
荷 密 度)の
計 算 が 難 しい の
に 述 べ た よ う に,反 復 計 算 が 不 安 定 に 陥 り発 散 しやす い こ とで あ る。
これ は方 程 式 に含 まれ る座 標 の 一 階 微 分 の 項(移
流 項 と呼 ば れ る)か
ら生 じる数
値 的 誤 差 が 反 復 の 度 に 蓄 積 し,増 大 す るた め で あ る。 上 流 有 限要 素 法 は この よ う な不 安 定 性 を 回 避 す る 一 つ の 方 法 で,一
階 微 分 の 項 を(通 常 の 両 側 差 分 で は な
く)上 流 側 だ け で 近 似 す る 方 法 で あ る 。 図18・5の 微 分gradq+を
よ う な 二 次 元 の 有 限 要 素 分 割 中 の 節 点i点 を と る と,q+に
対す る
「上 流 要 素 」 に お け る量 だ け で 近 似 す る[18.19]。 こ こで 上 流 要 素 と
は終 点 がi節 点 に な る よ うな ベ ク トルv+(i)を 三 角 形 要 素 の こ とで 図18・5で て 同様 な 上 流 要 素(図
描 い た と き,こ の ベ ク トル を含 む
は 三 角 形ijkで あ る。q-に
で はilm)が
つ い て もv-(t)に つ い
定 め られ る。 す る と イ オ ン流 場 の 方 程 式 中 の
図18.5 上 流 有 限要 素 法 gradq+は
三 角 形ijkで
次 の よ う に近 似 され る。 (18・33)
こ こ で,b,cは
そ れ ぞ れ ベ ク トルki,jiを90度
ク トル の 外 積 を 表 す 。qi,qj,qkは 分)で
回 転 し た ベ ク トル で,b×cは
各 点 に お け る 重 心 領 域(図18・6(a)の
ベ
斜 線部
定 義 さ れ た 電 荷 密 度 で あ る 。 こ の よ う な 近 似 か ら(18・27),(18・28)式
は
次 式 に な る。
(18・34)
(18・35)
e,fは
そ れ ぞ れ ベ ク トルmi,liを90度
度υ+,υ-,そ
回 転 し た ベ ク トル で あ る 。 こ の2式
の 他 の 値 が 与 え ら れ た(既
知 の)と
き,未
知 数qi+,qi-を
は速 求 め る
二 次 式 と考 え る こ とが で き る。 す る と,こ (18・34)式
こ で は 証 明 を 省 略 す る が,qj+≧0,qk+≧0,か
でqi+の
小 さ く な い 方 の 根 は0よ
つqi-≧0で
り大 き くqj+,qk+,qi-の
あ る と,
は 小 さ い と い う こ と が 成 り立 つ 。 同 様 に,ql-≧0,qm-≧0か
つqi+≧0で
最大値 よ り あ る と,
(a)
(b)
図18.6 i接 点 を 囲 む三 角形 要 素(斜 線 部分 が 重心 領 域)
(18・35)式 でqi-の 小 さ くな い 方 の根 は0よ
り大 き くql-,qm-,qi+の
最大 値 よ り
は小 さい と い う こ とが 成 り立 つ 。 こ れ らに よ っ て,電 荷 密 度 は 正 負 両 極 性 と も0 よ り大 き く,最 大 値 は境 界 で 生 じる とい う物 理 的 事 実 と合 致 す る。 こ れ が い わ ゆ る「最 大 値 原 理 」 で,繰 返 しの数 値 計 算 で 発 散 が 生 じず,安
定 性 を もた らす 。
18.6.2 電 流 連 続 の 積 分 式 の 使 用 φ(電 位)既
知 と し て ρ(電 荷 密 度)を
計 算 → ρ既 知 と して φ を計 算,と
いう
反 復 にお い て,φ を求 め る の に ポ ア ソ ンの 式 で は な く次 の 電 流 連 続 の 積 分 式 を使 用 す る方 法 で あ る[18.21]。 (18・36)
す な わ ち,あ る 閉 曲 面 で 電 流 の 出 入 りが 定 常 的 に は0と い う条 件 で あ る。 こ の 式 を φ を 数 値 的 に求 め る 具 体 的 な 式 に す る に もい ろ い ろ な 方 法 が あ るが,も
っと
も簡 単 な の は次 の二 つ で あ る。 (a) 図18・6で (b)
節 点iを 囲 む三 角 形 要 素 に 流 入 す る電 流 を0と す る 。
この 図 の重 心 領 域 に流 入 す る 電 流 を0と す る。
文 献[18.21]は
理 論 解 の あ る単 極 性 イ オ ン流 で の 計 算 で い く らか 精 度 の よか っ
た方 法(a)を
採 用 して い る。 この と き,図 の1要 素(三
か ら流 入 す る 電 流 は,風(風
速W)の
角 形ijk)に
関 し て辺jk
作 用 も考 慮 して, (18・37)
これ ら を 図 の 各 三 角 形 要 素 につ い て加 算 す る と,
(18・38)
こ こ で 各 点 の 電 荷 密 度 は 重 心 で の 値,ρc+,ρc-を
と っ て い る 。 す な わ ち,
(18・39)
ま た,Δ
は 三 角 形 要 素 の 面 積 。f,g,hは
の 絶 対 値 。Wnは
風 速 のjkに
そ れ ぞ れ ベ ク ト ルij,jk,ki。gはg
垂 直 な 成 分 で あ る。 風 が な い と きに は上 式 は 次 式 に
な る。
(18・40)
図 か ら分 か る よ う に,三 積,h・g,f・gは
角 形 要 素ijkが 鈍 角 三 角 形 で な け れ ば,ベ
ク トル の 内
と も に0以 下 の 値 で あ る。 こ の こ と か らi点 を 囲 む 三 角 形 要
素 に鈍 角 三 角 形 が な け れ ば(18・40)式 の(φj− φi),(φk− φi)の 係 数 は す べ て0 以 下 で あ る 。 す な わ ち,i点
の 周 りに は か な らず φiよ り小 さ な あ る い は大 きな 電
位 を有 す る 点 が 存 在 し,結 局 電 位 の 最 大 あ るい は最 小 は境 界 に存 在 す る とい う こ と に な る。 こ の 結 果,節
点 電 位 に 「最 大 値 原 理 」 が 成 り立 ち,こ れ が 数 値 計算 の
安 定 性 を保 証 す る 。 以 上 の 証 明 は風 が な く,ま た鈍 角 三 角 形 要 素 が 存 在 し な い とい う 条 件 で あ る が ,こ れ らは最 大 値 原 理 の 必 要 条 件 で は な く十 分 条 件 で あ る 点 に注 意 す べ きで あ る 。 す な わ ち,こ れ ら の条 件 が 完 全 に は満 た され て い な くて も,ま た か な りの風 速 まで(18・36)式 式(の
は φiの安 定 な 計 算 法 を構 成 す る。 こ の よ う に,解
組 合 せ)を 換 え た だ け で 計 算 が 安 定 に な る の は 興 味 深 い 。
くべ き方 程
18.7
計 算例
有 限要 素 法 に よ る計 算 例 と して,送 電 線1本(単 界 と イ オ ン流(電 流)密 密 度 で,風 密 度(q0)一
度 分 布 を,図18・7に
極 配 置)の 場 合 の大 地 表 面 電 示 す[18.20]。 地 表面 の 電界 と電流
速が パ ラ メ ー タで あ る。 上 流 有 限 要 素 法 で 電 線表 面 の境 界 条 件 は 電 荷 定 と し て い る 。 横 方 向 の 風 速 が パ ラ メー タ に な っ て い るが,電
界よ
りも電 流 の ほ うが風 の 影 響 を 大 き く受 け る。 これ は電 流 密 度 が 電 界 と電 荷 密 度 の 積 で あ る こ とか ら当 然 予 想 され る特 性 で あ る。 ま た 両 極 性 イ オ ン 流 場 の 計 算 結 果 と し て18.6.2項 high
voltage)2回
線 直 流 送 電 線 の 結 果 を 図18・8に
の 方 法 に よ るUHV(ultra 示 す[18.21]。や は り地 表 面 で
の 電 界 と 電 流 密 度 で あ る 。 図 中 に は 実 測 値 も 記 載 して い る が,負
極性 の電流密 度
以 外 は よ く合 っ て い る 。 た だ し実 測 値 は バ ラ ツ キ が は な は だ し く大 き い 。
(a) 送 電 線 配置
(b) 地 表 面電 界 図18.7
(c) 地 表 面 電流 密 度
単 極 配 置 の 地 表 面 電 界 と 地 表 面 電 流(q0=8.854×10-8C/m3)
(a)要 素 分割 図
(b)地
表 面電 界
(c)地
表面 電 流密 度
図18.8 双 極 直流 送 電線 の イオ ン流 場 の 有 限要 素 法 に よる計 算
第19章 最適形 状 の設計法
こ れ ま で の 章 の 説 明 は す べ て与 え られ た 電 極 形 状,配
置,条 件(電
圧,誘
電率
な ど)に 対 して 電 界 分 布 を計 算 す る もの で あ っ た。 逆 に望 ま しい 電 界 分 布 を持 つ よう な電 極 形 状 や 絶 縁 物(誘 電 体)形
状 の 必 要 な場 合 が あ る。 望 ま しい 電界 分 布
とは,絶 縁 設 計 の 面 で は た と え ば与 え られ た配 置 で 最 大 電 界 の も っ と も小 さ くな る形 状 が あ げ られ る。 筆 者 らの 意 見 で は,電 界 分 布 の 面 で 一 般 的 に使 用 で き る,す な わ ち一 意 的 に 可 能 な 「最 適 設 計 法 」 とい うの は確 立 され て い な い。 現 在 の 設 計 法 は,最 適 な 条件 に合 う よ うに 形 状 を繰 り返 し修 正 す る とい う方 法 で あ る。 比 較 的 簡 単 な最 適 条件 に対 して形 状 を求 め る こ と はす で に多 くの 論 文 が あ る 。 一 方,計 CAE,CADと
算 機 を駆 使 す る
呼 ば れ る 自動 設 計 手 法 は,こ の よ う な 最 適 設 計 を そ の 一 部 と して
含 ん で い る が,必 ず し も並 行 しな い で 進展 して きた 。 こ の章 で は まずCAE,CADに
触 れ た後,電
界 分 野 に お け る最 適 形 状 設 計 を 説
明す る。 最 適 設 計 法 の 基 礎 と して,電 界 問 題 で の最 適 条 件 な どを 説 明 し,解 析 的 方 法 や数 値 的 方 法,設
計 例 な どを レ ビ ュー す る。 な お,最 適 条件,最
う用 語 は しば し ば最 適 化 条 件,最 適 化 形状 と も い わ れ る が,こ を使 用 す る。
適 形 状 とい
こで は簡 単 な前 者
19.1 電 界 計 算 に お け るCAE,
19.1.1
CAE,
CADの
CAD
定 義 と構 成
計 算 機 に よっ て 詳 細 か つ 正 確,高 速 の 計 算 が 可 能 に な り,放 電 現 象 の 解 析 や 絶 縁 設 計 に 革 命 的 な進 歩 が も た ら され た 。 現 在 の 電 界 計 算 は,一 方 で は,複 雑 な (特殊 な)場 合 や よ り一 般 化 した 場 合 の 計 算 法 の 開 発 が 行 わ れ,他 方 で は,で るだ け 使 い 易 く,短 い 時 間 で 安 心 して使 え る(user‐friendlyな)技
術 の確 立 へ
と進 ん で い る 。 計 算 機 に よ っ て 研 究 や 設 計 ・開 発 を 支 援 す る 技 術 を,一 CAE(computer IEEE(米
aided
engineering)あ
国 電 気 電 子 学 会)電
気,電
る い はCAD(CA
子 用 語 辞 典1984年
き
design)と
般に 呼 ぶ。
版[19.1]は, CAEを
「計
算 機 援 用 工 学 」 の 名 称 で 「工 学 的 な 解 析 や 設 計 に計 算 機 を応 用 す る こ と。 数 学 的 な 問 題 を解 くこ と,プ ロセ ス の制 御,数
値 的 な 制 御,複 雑 な 計 算 や 反 復 計 算 を行
うプ ロ グ ラ ム の 実 行 等 が 含 ま れ る。」 と説 明 して い る 。 一 方,CADは
「計 算 機
援 用 設 計 」 の 名 称 で,「 各 種 の 設 計 や 解 析 に 計 算 機 を応 用 す る こ と。 モ デ ル の 製 作,解 析,シ
ミュ レー シ ョン,製 造 の た め の設 計 の 最 適 化 な ど を行 う。 計 算 機 援
用 製 造 と組 み 合 せ てCAD/CAMと CAEは
よ ば れ る こ と も あ る。」 と な っ て い る。
「色 々 な 現 象 の 解 析 や 機 器 の 開発,設
計 段 階 に お い て モ デ ル を用 い て
様 々 の現 象 を 計 算 機 で シ ミュ レ ー トす る シ ス テ ム 」 と,「 シ ミュ レ ー シ ョ ン」 に 重 点 を お い て 定 義 さ れ る こ と もあ る。CADが の に対 し て,CAEは
個 々 の 設 計 を意 味 す る こ とが 多 い
初 期 の 基 本 設 計 か ら詳 細 設 計 まで 開発,設
計 の 全 体 を対 象
とす る。 CAEを
構 築 し て い く ス テ ッ プ と し て 次 の よ う な 段 階 が 考 え られ て い る[19.2]。
ス テ ップ1:
単 な る解 析 技 術 の 適 用
ス テ ッ プ2:
プ リ処 理(前
処 理),ポ
ス ト処 理(後 処 理)を
充 実 さ せ,開
癸
者 や 設 計 者 が 計 算 機 上 で モ デ ル を作 成 す る と と も に,解 析 結 果 を 望 ま しい 出力 形 態 で 与 え る 。 ス テ ッ プ3:
与 え ら れ た モ デ ル の 解 析 だ け で な く,最 適 化 ル ー チ ン を 導 入
し,計 算 機 に よ っ て 最 適 値 を 求 め る。 ス テ ップ4:
モ デ ル化 や シ ミュ レ ー シ ョン を単 一 の 現 象 や 解 析 に つ い て 行 う の で な く,複 数 の現 象,解 析 を総 合 し,エ ン ジニ ア リ ン グの す べ て を対 象 と した 計 算 支 援 シス テ ム。
現 在CAEと
よ ば れ る も の は ス テ ッ プ2よ
究 極 の シ ス テ ム は,い い は 広 義 のCAEと
19.1.2
わ ゆ るCIM(computer
り上 の レ ベ ル を 指 し,ス
テ ッ プ4の
integrated manufacturing)あ
る
呼 ば れ る もの に な る。
電 界 解 析 のCAE
放 電 現 象 の 解 析 や 機 器 の 絶 縁 設 計 に お け る 電 界 計 算 あ る い は電 界 解 析 の役 割 は,対 象 とす る 現 象 に よ っ て 様 々 で あ る 。 た と え ば,絶 縁 物 の 基 礎 的 物 理 特 性 (た と え ば 気 体 の 電 離 係 数 の 値 な ど)を 抽 出 して 電 界 の 関 数 と して 与 え(モ デ リ ング あ る い は シ ミュ レー シ ョ ン),放 電 特 性 を計 算 機 上 で 求 め,予 一 般 に,電 界 解 析 の概 略 の シス テ ム は 図19・1の プ リ処 理 部,ポ
測 す る。
よ うな 三 つ の 部 分 か ら成 り,
ス ト処 理 部 を援 用 して 解 析 部 で 電界 計 算 が行 わ れ る。 こ の よ う な
シス テ ム の 基 本 は 一般 の(電 界 解 析 以 外 の)CAEシ
ス テ ム と も共 通 して い るが,
解 析 部 と解 析 部 の 入 力 作 成 は,電 界 計 算 特 有 の もの で あ る。 ドイ ツ で は1980年
代 後 半 か ら,い
電 界 解 析 法 を 総 合 化 したVENUSと が,10年
くつ か の 大 学 と 産 業 界 が 共 同 して す べ て の 呼 ぶ 広 汎 な シ ス テ ム の 構 築 を 目指 した[19.3]
も し な い う ち に こ れ に 関 す る 報 告 は 立 ち 消 え に な っ た。 プ リ処 理 部,
図19.1 電界 解 析CAEの
概 略 シス テ ム
ポ ス ト処 理 部 と 結 合 し た 電 界 解 析 シ ス テ ム と し て,わ 一 般 三 次 元 場 解 析 シ ス テ ム[19.4] ,電 with
electric field analysis)と
が 国 で は表 面 電 荷 法 に よ る
荷 重 畳 法 を ベ ー ス と し たCADEF(CAD 呼 ば れ るPC(パ
ソ コ ン)用
system
の シ ス テ ム[19.5]が
開発 され て い る。
19.2 最 適 設計 法 の基本 19.2.1
最適 設計
電 界 分 野 に 限 らな い が,最
適 設 計 で は 次 の よ う な点 を選 択 す る か,少
な くとも
考慮 す る必 要 が あ る 。 (a)
電 位 や 電 界(一
般 に,ポ
テ ンシ ャル や フ ィー ル ド)を 求 め るの に どの よ
う な計 算 法 を 用 い る か 。 (b)
「最 適 」 と は ど うい う状 況 か,ま
た どの よ う な最 適 条 件 を用 い る か 。
(c) ど の よ うに 最 適 化 す るか 。 (a)は 電 界 解 析 全 般 の 問 題 で,7.3節
に 各種 の 数 値 計 算 法 の 比 較 を 行 っ て い る
の で こ こで は触 れ な い 。 19.2.2
最適 条件
電圧 の 印 加 さ れ る 機 器 や 電 界 を発 生 す る 機 器 は 多 種 多 様 な も の が あ り,最 適 化 の 要 求 も千 差 万 別 で あ る。 機 器 の 場 合,究 極 的 な 最 適 条 件 は コ ス トの 最 小 化 と考 え る の が 普 通 で,実 際 に も設 計 にお け る 重 要 な 考 慮 項 目で あ る。 しか し,製 作 年 数(金 利),設
計 余 裕,信
頼 度 な ど も考 慮 に含 め る と複 雑 な条 件 に な る 。
電 界 設 計 が 支 配 的 要 素 で あ る 高 電 圧 機 器,高
電 界 機 器 を と っ て も,機 器 の 材
質,形 状,配 置 な ど色 々 な設 計 の パ ラ メ ー タが あ る。 固体 絶 縁,油
浸絶縁 で なる
べ く絶 縁 耐 力 が 高 く,損 失 の 少 な い 絶 縁 材 料 を選 ぶ こ と も一 種 の 最 適 設 計 で あ る 。 また 材 料 や 形 状 が 与 え られ て 配 置 を 最 適 に す る例 で は,絶 縁 距 離 す な わ ち ギ ャ ップ 長 の 選 択 が あ る。 特 別 な例 で は,三 相 の 高 電 圧 送 電 線 で(静
電誘導 の点か
図19.2 固体 絶 縁物 の表 面 電界
ら)地 表 面 の 電 界 を最 も低 くす る 配 置 な ど もあ る 。 この よ うな 複 数 の設 計 パ ラ メ ー タに つ い て は ,最 後 の19.5.3項
で も触 れ る。
しか し,こ れ まで の電 界 問 題 の 最 適 設 計 の 論 文 は,ほ て最 適 な 形 状 を求 め る もの で,主 (a) 電極(導
とん どが 電 界 分 布 に 関 し
に 次 の2種 類 で あ る。
体)形 状 の 最 適 化
(b) 絶 縁 物(支 持 用 固 体 絶 縁 物)形
19.2.3 電 極(導 体)形
状 の 最 適 化(図19・2)
状 の最 適 化
最 適 条 件 は 「電 極 表 面 の 電 界 を一 定 にす る 」 の が ほ とん どで あ る。 最 も普 通 の (誘 電 体 が1種 の で,与
類 の)ラ
プ ラス の式 の 場 合,最 大 の 電 界 は 必 ず 電 極 表 面 に生 じる
え られ た 条 件 の も とで 電 極 表 面 の 電 界 を 一 定 に す る の は,「 配 置 の 最 大
電 界 を最 も低 くす る」 と い う条 件 と多 くの 場 合 等価 で あ る。 こ の よ うな 条 件 は,高 電圧 絶 縁 の分 野 で 放 電 発 生 が 最 大 電 界 に 支 配 さ れ,放 電 開 始 電 圧 が 最 大 電 界 で 与 え られ る こ とが 多 い こ と に基因 して い る。 た だ し,「 放 電 開 始 」 で あ っ て,火 花 放 電 が コ ロ ナ を経 由 し て 生 じ る場 合 に は,「 火 花 電 圧, あ る い はフ ラツ シ オー バ 発 生 」 は必 ず し も最 大 電 界 で 決 ま らな い 。 ま た,厳 密 に は電 極 表 面 の 各 所 の 放 電 開始 電 圧 を一 定 にす る,あ
るい は全 体 と して 最 低 に す る
形 状 が 望 ま しい 「最 適 条 件 」 に な る。 た と え ば,気 体 中 の コ ロ ナ 開 始 電 圧(平 電 界 に近 い 配 置 で は火 花 電圧)を
等
最 も高 くす る た め に は,電 界 あ る い は 最 大 電 界
そ の も の で は な く,電 極 表 面 全 体 で電 気 力 線 に 沿 っ て 次 の 積 分 か ら放 電 開 始 電 圧
を計 算 し,こ れ を 最 大 にす る形 状 を求 め る こ とに な る。 (19・1)
こ こ で(α − η)は 気 体 の 実 効 電 離 係 数,Kは
適 当 な 定 数 で あ る 。 さ らに,絶 縁
油 の よ う に絶 縁 破 壊 電 圧 が 油 中 の 弱 点 分 布 か ら決 ま る と きは,最 く,体 積 効 果(volume
theory)を
大電界だけで な
考 慮 した 計 算 が 必 要 に な る。
こ の よ う な表 面 電 界 だ け で な く,放 電 開始 電 圧 を考 慮 した 最 適 形状 計 算 の 試 み もす で に 初 期 の こ ろ か ら報 告 され て い る[19.6]が,さ らに 表 面 電 界 だ け で な く,気 体 の 放 電 特 性 を考 慮 した 最 適 化 も報 告 され て い る[19.7]。 た だ し,い ず れ も簡 単 な 電 極 系 で,こ
れ まで の と こ ろ研 究 室 で の試 算 の レベ ル で あ る。 表 面 電 界 一 定 と い
う簡 単 な 最 適 条 件 に比 べ て,複 雑 な計 算 を必 要 とす る ほ ど絶 縁 特 性 が 大 き く改 善 され る か ど う か は,対 象 とす る 高 電 圧 機 器 の絶 縁 物,配
置 と絶 縁 条件 に 依 存 す る
と思 わ れ る。 境 界 条 件 と ラ プ ラス の式 に よっ て 一 意 の解 が 得 られ る 「順 問題 」 と比 べ て,表 面 電 界 が 最 低 あ る い は一 定 の 形 状 を求 め る こ と には 次 の よ う な 問 題 が あ る。 (a) 電 界 は 配 置 を大 き くす れ ばい く らで も低 くな る の で,適
当な付帯条件が
必要で ある。 (b) 領 域 全 体 で は最 適 条件 を満 足 で きな い こ とが しば しば あ る 。 図19・3は
ガ ス 絶 縁 開 閉 装 置(GIS;gas
基 本 構 造 で,そ
insulated switchgear)に
れ ぞ れ 単 相 線 路(同 軸 円 筒),三
相 線 路,単
用 い られ る
相線路 の端 末であ る
が,こ れ らの 簡 単 な例 で最 適 計 算 の 条 件 や プ ロ セ ス を説 明 す る。 こ の場 合 の最 適 条 件 は最 大 電 界 を最 も低 くす る こ とで あ るが,シ
ー ス(外 側 容
器)を 大 き くす れ ば最 大 電 界 は い く らで も低 くで き る。 そ の た め に,ま ず 占有 容 積 あ る い は 製 作 コス トが 最 も低 くな る よ う に,「 シ ー ス 径 一 定 」 とい う付 帯 条 件 で 最 適 化 す る こ とが 多 い 。 よ く知 ら れ て い る よ う に,単 相 の 同 軸 円筒 配 置 で は, シー ス 半 径Rが r=R/e≒0.37Rの
一 定 の と き,最 大 電 界 が も っ と も低 く な る の は 中 心 導 体 半 径 と きで あ る 。 三 相 線 路 の 配 置(二 次 元)で
も シー ス 径 が 与 え ら
れ れ ば 最 大 電 界 を最 低 にす る 導 体 径 が 決 まる が,導 体 径 だ け で な く,導 体 の 位 置
(a)単 相 線 路(一 次 元)
(b)三 相 線 路(二 次 元)
(c)単 相 線 路端 末(回 転 対 称) 図19.3 高電 圧 線路 の配 置例
と印 加 電 圧 の組 合 せ も最 適化 の パ ラ メ ー タで あ る。 一 方,単 相 線 路 の 端 末 で は 導 体 先 端 か ら シ ー ス 端 ま で の 距 離Lも
最適化 の変
数 あ る い は パ ラ メ ー タ に な る 。 た と え ば 導 体 の 先 端 が 半 球 形 状 でL=2Rの 最大 電 界 が もっ と も低 くな る の は,図19・4に と きで あ る[19.8]。 この 配 置 で はLを
と き,
示 す よ う に導 体 半 径r≒0 .48Rの
ど の よ うに と っ て も端 末 部 分 の 電 界 は 同軸 部
分(中 心 部)の 電 界 よ り高 くな る 。 そ の た め 表 面 電 界 一 定 とい う条 件 を 導 体 全 体 に課 す こ とが で き な い。 も ち ろ ん 同 軸 部 分 の 導 体 径 を 変 えれ ば 導 体 の全 表 面 の電 界 を一 定 にす る こ と は可 能 で あ るが,同
軸 部 分 で は不 必 要 に高 い 電 界 に な るの で
実 用 的 に無 意 味 で あ る。 した が っ て電 界 を 一 定 にす る個 所(範
囲)を 指 定 す る よ
うな付 帯 条 件 が 必 要 に な る。 19.2.4
絶 縁 物(固
体 誘 電 体)形
状 の最適 化
こ れ ま で の 報 告 は,電 極 形 状 が 与 え られ て い て,電 極 間 の 固 体 絶 縁 物 の(表 面)形 状(電 界 問 題 と して は2種 類 の 誘 電 体 の 界 面 形状)を ん どで あ る。2種 類 以 上 の 誘 電 体(絶 縁 物)が
変 化 させ る の が ほ と
存 在 す る 複 合 誘 電 体 で は,最 大 電
(a)配
(b)最
置
大 電 界Em
図19.4 同 軸 円筒 配 置 に お け る最 大電 界
界 が 常 に 電 極(導 体)表
面 で 生 じる とい う法 則 が も は や 成 り立 た な い 。 こ の よ う
な場 合 に使 用 さ れ る最 適 条 件 は,「 絶 縁 物 表 面 の 電 界 を 一 定 にす る」 とい う もの で あ る 。 しか し,絶 縁 物 と 電極 と の接 触 角 が90度 論 的 に0ま
た は無 限 大 に な る(11.6節
で な い と,接 触 点 の電 界 は 理
に 述 べ た 「高 木 効 果 」 あ る い は 「三 重 点
効 果 」)の で 注 意 を要 す る 。 最 適 化 す る表 面 電界 は,絶 縁 の 分 野 で は 図19・2に
例 を示 す よ うに 次 の2種
類
が ある。 (a) 電 界 の絶 対 値(最
大 電 界)E
(b) 沿 面 方 向 成 分Et どち らの 電 界 が 絶 縁 特 性 に支 配 的 か は,雰 囲 気(周 絶 縁 条 件 に依 存 す る が,こ
囲 の 媒 質)や
印加 電 圧 な どの
れ ま で の 報 告 の多 く は沿 面 方 向 電 界 を とっ て い る。 し
か し,大 気 圧 空 気 中 で 球 対 平 板 電極 間の ひ だ な し固 体 絶 縁 物 につ い て 調 べ た実 験 で は,表 面 が 清 浄 な場 合,相 対 湿 度 の低 い と き も,高 い と き も(60%以
上),最
大
電 界 を最 も低 くす る 設 計 の ほ うが フ ラ ツ シ オ ー バ 電 圧 が 高 い[19.9]。 沿 面放電 は本 質 的 に 固 体 絶 縁 物 外 の 放 電 で あ る か ら,乾 燥 して 清 浄 な 雰 囲 気 な ら この 論 文 が 示 す よ う に 沿 面 方 向 電 界 よ り最 大 電 界 の ほ うが 支 配 的 で あ る と思 わ れ る。 しか し, 湿 度 が 高 い 場 合 や,汚 損 表 面,金 属 ダス トが 存 在 す る場 合 な どは簡 単 で は な い 。
19.3 解 析 的 方 法 に よる最 適形 状 設 計 電 界 問 題 で,最
適 条 件 か ら最 適 な設 計 値(形
状)を
直接 求 め る こ とは 特 別 な場
合 を除 いて は出 来 ない。あ るい はその よ うな一般 的方 法 は まだ見 出され てお ら ず,次 章 に 述 べ る よ う な繰 返 し修 正 とい う方 法 が 用 い られ る 。 簡 単 な 最 適 形 状 が 繰 返 しに よ らず に 求 め ら れ る場 合 が あ る が,等 角 写 像 法 を用 い る もの で 二 次 元 配 置 に 限 られ る。 中 で も,中 心 部 分 が ほ ぼ平 行 平 面 で 端 を 適 当 な曲 面 形 状 とす る平 等 電 界 電 極(あ
る い は 一 様 電 界 形 成 用 電 極)は,放
試験,放 電 励 起 レー ザ の電 極 と して重 要 な もの で,Rogowski電
電や絶縁
極,Chang電
極な
ど等 角 写 像 法 に よ る形 状 が提 案 され て い る 。 ギ ャ ップ 中 の 至 る と こ ろで 電 界 が 一 様 な 完全 平 等 電 界 は 無 限 の大 き さが 必 要 で 実現 で き な い 。 実 用 の電 極 が 最 適 か ど うか,す
な わ ち 電 界 が 一 様 か ど うか は 通 常 電 極 表 面 の電 界 分 布 で評 価 され る。
電 極 の 表 面 電 界 が 完 全 に 一 定 で あ る形 状 はBorda電 に な る 流 体 噴 出 孔 の 形 状 と して1766年
にBordaが
に示 す よ う に,上 部 電 極 の 電 界(電 気 力 線)の よ っ て π/2-Borda電 面 の 場 合(上
極 と π-Borda電 極 の2種
下 が 非 対 称)と,影
極 と 呼 ば れ,流 速 が 一 定
与 え た も の で あ る。 図19・5
方 向 の 変 化 範 囲(図
の 角 度 θ)に
類 が あ る。 ま た 下 部 電 極 が 接 地 平
像 の位 置 に 上 部 電 極 と 同 じ形 状 が あ る場 合(対
称)と が あ る 。 Borda電
極 は,完
全 な 平 等 電 界 で あ るW平
面 → 実 際 の 形 状 で あ るz平 面(x,y座
(a)π/2-Borda
標)ま
面 か ら,t平 で4段
面 →logζ 平 面 → ζ平
階 の 変 換(写
像)を 経 て 導 出
(b)π-Borda
図19.5 2種 類 のBorda電 極 の形 状(太 い矢 印 が 電界 一 定 の範 囲)
され る[19.10]が,い ず れ に して も次 節 に 述 べ る繰 返 し修 正 の 方 法 で な く,形 状 を 直 接 式 で 与 え る こ とが で き る 。 文 献[19.11]に 電 界 が 一 定 な領 域 の 端 点 の 電 界 異 常 性 が 述 べ られ て い る。 一 方,回
転 対 称 配 置 で は表 面 電 界 が 一 定 な 電 極 形 状 は,
数値 的 な方 法 で しか 求 め られ ない が,文
献[19.12]に 記 述 され て い る 。
19.4 数値 的 方法 に よ る最 適 形状 設 計 19.4.1
計算 の プ ロセス
図19・6に
示 す よ う に,電 界 計 算 → 最 適 条 件 の 判 定 → 形 状 の 修 正 → 電 界 計 算,
とい う プ ロセ ス を繰 り返 す 。 この 中 で,形 状 の 修 正 方 法 が,最 適 形 状 設 計 の 鍵 と
図19.6
最 適 設計 の 概略 の フロ ーチ ャー ト
な る 部 分 で,こ の 方 法 の 良 否 が 計 算 時 間 と精 度 を支 配 す る。 す で に何 種 類 もの 方 法 が提 案 さ れ て い るが,ど
れ が よ い か は 必 ず し も明 らか で な い 。 一 般 的傾 向 と し
て は,特 殊 な 方 法 は精 度 が 高 い が 適 用 範 囲 が 狭 く,広
く使 用 で き る方 法 は 精 度 が
劣 る 。 この 傾 向 は 数 値 的 な 電 界 計 算 法 全 体 の 傾 向 と同 じで あ る 。
19.4.2 電 極 形 状 の 修 正 方 法 電 荷 重 畳 法 で は 形 状(輪
郭 点)の
修 正 を 中 心 とす る方 法 と,電 荷(仮
想 電 荷)
の位 置 や 大 き さ(量)の 修 正 を 中心 とす る方 法 が あ る。 前 者 で は 各 点 の 電 界Eと 平 均 値 の 差 に比 例 した 量 だ け 輪 郭 点 を移 動 させ る方 法[19.13]や,平 均 曲 率Hと 界Eと
の 次 の 関 係(Spielreinの
関 係 式,7.4節)を
電
用 い る方 法 が 使 用 さ れ て い
る[19.6][19.14]。 (19・2)
こ れか ら電 界 の 修 正 量ΔEと
形状 の 修 正 量ΔHの
関係 は,次 の よ う に な る。 (19・3)
こ こでnは
境 界(電
極 表 面)の 法 線 方 向 単 位ベ ク トル で あ る。
一 方,電 荷 の 位 置,大
き さ を変 化 させ,生
じた 等 電 位 面 を電 極 形 状 とす る 方 法
(「Metzの 方 法 」 と呼 ば れ る)[19.15]は,計 算 時 間 の 点 で は優 れ て い るが 自動 化 が 難 しい 。 こ の 方 法 を発 展 させ て,自 動 的 に電 荷 を 追 加 して行 く方 法 も 開発 され て い るが,次
に述 べ る絶 縁 物 形 状 の 最 適 化 に は適 用 が 難 しい よ うで あ る。
表 面 電 荷 法,境
界 要 素 法 で は,表 面 の輪 郭 点(節 点)を 移 動 させ る 方 法 と,分 割
要 素 を変 形 す る 方 法 とが あ る 。 これ ま で の 報 告 は ほ とん ど前 者 で,た
とえばマ ク
ス ウ ェ ル 応 力 εE2/2に 比 例 した 量 を修 正 量 とす る方 法[19.16]などが 提 案 され て い る。 分 割 要 素 を 変 形 す る方 法 で は 図19・7の セ ク タ に 分 け,各
よ う に電 極 断 面(円
あ る い は弧)を
セ ク タ を電 界 に応 じて 相 似 に 拡 大 あ る い は 縮 小 す る 方 法 が あ
る[19.17]。 こ の方 法 は 電 荷 重 畳 法,有
限 要 素 法 に も適 用 可 能 で あ る。
表 面 電 荷 法 を 用 い る手 法 の う ち,表
面 電 界Eiと
目標 電 界 値Eの
差 の平 方和
(a)半
球棒 対 平 板(b)棒
(c)セ
ク タの 変形(d)最
先端 表 面 の セ ク タ分 割
終形 状
図19.7 分 割 形状 の変 形 に よ る最適 化
Σ(E−Ei)2を
目 的 関 数 と し,ニ
か つ 収 束 も 早 い(反
ュ ー ト ン法 で 最 適 化 す る 方 法 は,一
復 関 数 が 少 な い)の
般 的 で あ り,
で 有 力 な 方 法 で あ る[19.18]。
19.4.3 絶 縁 物 形 状 の 修 正 方 法 最 適 条 件 が 沿 面 方 向電 界 一 定 の場 合,絶 縁 物 表 面 近 くの近 接 した 等 電 位 面 φA, φB(距 離Δl)か
ら (19・4)
と して,Etが
望 み の値 に な る よ う にΔlあ る い は等 電 位 面 を 動 か す 方 法 が 多 い 。
た と え ば 図19・8(a)で
は,Etが
与 え られ た 一 定 値E0に
一 致 し な い と き, B点
を 同 じ等 電 位 線 上 のB'点 に移 動 させ る 。 あ る い は 文 献[19.19]で でΔlを 変 え る よ り,図(b)の 方 が 良 い と して い る。
は,等 電 位 面 上
よ うにΔlを 一 定 に して 別 な 等 電 位 面 に 移 動 させ る
(a)同
(b)同
じ等電 位 面 に移 動
じΔlで 移 動
図19.8 誘 電 体 界 面形 状 の修 正
ま た,表 面 電 荷 法 で は各 部 分 の 電 荷 密 度 の 面 を適 当 に 回転 させ る 方 法[19.20]や 形 状 の 表 現 に ス プ ラ イ ン 関 数 を用 い る 修 正 方 法[19.21]が 提 案 され て い る。 ス プ ラ イ ン関 数 を 用 い る利 点 と して,少
な い 変 数 で電 極 形 状 が 滑 らか に な る こ とな どが
あ げ られ て い る。
19.5 計 算例 と今後 の課 題 19.5.1
電界最 適 計算 の経 緯
計 算 機 を 用 い た 最 適 形 状 設 計 は,電
界 分 野 で は1972年
告[19.22]が 最 初 と思 わ れ る 。 同 軸 円 筒 電 極 間 の 円錐 ス ペ ー サ(固
のK.Antolicの
報
体 の 支 持 絶 縁 物)
表 面 の 沿 面 方 向電 界 を 一 定 にす る 形 状 を有 限 要 素 法 で 求 め た もの で あ る 。 そ の後 の 約15年
間 に 多 数 の 論 文 が 発 表 さ れ た が,最 適 化 の 手 法 が 一 通 り開 発 され,新
しい 手 法 や 応 用 を提 案 す る の が 難 し く な り,発 表 は低 調 に な っ た 。1990年 ば に他 分 野 に お け る 逆 問 題 研 究 の発 展,AI(人
代半
工 知 能)技 術 の 応 用 な どに 刺 激
され て 一 時 論 文 数 が 増 加 した。 た と え ば ニ ュー ラ ル ネ ッ トワ ー ク を用 い る電 界 最 適 化[19.23]であ る 。 さ らに,非 線 形 計 画 問 題 や 磁 界 分 野 の 最 適 計 算 に お け る 手 法 と して,逐 次 二 次 計 画 法,シ
ミュ レー テ ィ ッ ド ・ア ニ ー リ ン グ法,ロ
ーゼ ンブ ロ
ッ ク法,遺 伝 的 ア ル ゴ リ ズ ム が 発 表 さ れ,こ れ らの 手 法 の適 用 が 期 待 され る と こ ろで あ るが,画 期 的 な進 展 は見 られ て い な い 。
19.5.2
計 算 例
文 献[19.24]に 文36件
は1995年
こ ろ まで の 電 極 形 状,絶
につ い て,発 表 年,計
縁物 形状 の最適形状設計 の論
算 法,計 算 内 容 が 表 に な っ て い る。 こ れ に よる と,
1980年 こ ろ まで は も っ ぱ ら差 分 法 と 電 荷 重 畳 法 が 用 い ら れ,そ
の後表面電 荷法
が 多 くな っ て い る。 基 礎 的 な 配 置 で は,回 転 対 称 の棒 対 大 地(接 地 平 面)ギ
ャ ッ プ で棒(先 端)表
面 の 電 界 を一 定 にす る 計 算 が 多 数 報 告 され て い る 。 実 用 機 器 で は ガ ス絶 縁 開 閉 装 置(GIS)に
関 す る 計 算 が もっ と も多 い 。 こ れ は 高 気 圧 ガ ス の 絶 縁 特 性 が 最 大 電
界 に 依存 し,最 大 電 界 を低 下 させ る と寸 法 が 小 型 に な るた め で あ る。 実 用 機 器 で は 気 中絶 縁,ガ
ス絶 縁(お
も にGIS)の
さ ま ざ ま な個 所 の 最 適 計 算
が報 告 され て い る。 複 雑 な形 状 で はた と え ば 変 圧 器 引 出 し リー ド線 部 分 の シ ー ル ドリ ン グ の 電 界 を 最 小 に す る 形 状 の 計 算(表
面 電 荷 法)が
あ る[19.25]。 最適 計算
で一 般 的 に 難 しい の は,三 次 元 配 置 で 複 合 誘 電 体 の 場 合 で あ るが,図19・9は の よ う な 計 算 の 例 で,単 相 ガ ス絶 縁 線 路 の 円柱(コ 計 算(境
界 要 素 法)[19.26]であ る。 なお 筆 者 の1人
置(R=3cm)
(b)電
ー ン)形 支 持 ス ペ ー サ の 最 適
が 委 員 長 を務 め た 「電 磁 界 解 析
と そ の 逆 ・最 適 化 問 題 へ の 応 用 調 査 専 門 委 員 会(設
(a)配
そ
置 期 間:1993年4月
界絶対値 最適 化 形 状
∼1996
(c)沿 面 方 向電 界 最 適 化 形状
図19.9 固体 絶 縁 物(支 持 ス ペー サ,比 誘 電 率6)の 電 界 最 適化
(a) A点,B点 を 固定 し,AB 間 の形状 を変 え て,AB間 の表 面電 界 を一様 にす る。
(b) C点 を固 定 し,CD間 の 形状 を変 え て,AB間 の 表面 電 界 を一 様 にす る。
(c) A点,B点 を 固定 し,内 部 導体 の形 状 を変 え て,表 面 電界 を一 様 にす る。
図19.10 電 界 の 最 適形 状 計算 の 比 較 に用 い た モ デ ル
年3月)」
は,電 界 ・磁 界 の 標 準 的 な計 算 モ デ ル を設 定 して 各 種 の 比 較 計 算 を 行
って い る が,電 界 で は 図19・10の
よ う な モ デ ル を 採 用 して い る[19.27] 。回転対称
配 置 で接 地 容 器 中 の 課 電 導 体 端 末 の 表 面 電 界 を一 様 にす る 問 題,な
ら び に三 次 元
配 置 で接 地 立 方 体 容 器 中 の課 電 導 体 球 の表 面 電 界 を一 様 に す る問 題 で あ る。 19.5.3
今 後 の課 題
最 初 に も述 べ た よ う に,電 界 分 野 で の 一 般 的 な 最 適 設 計 法 は ま だ確 立 され て い な い とい っ て よい 。 ラプ ラ ス の 式 に 対 す る数 値 的 な 電 界 計 算 法 は十 分 確 立 さ れ て い るが,最
適 計 算 で は 最 適 化 の 手 法,形 状(あ
る い は 設 計 変 数 の)修
種 々雑 多 な バ リエ ー シ ョ ンが あ る 。 この よ う な現 状 を背 景 に,よ
正 法 な どに
り有 効 な最 適 計
算 法 の課 題 を ま と め る と, (a) 各 種 の 最 適 計 算 法 の 適 当す る 問 題(計 算 対 象)を
明 らか にす る 。
(b) 一 意 な解 を得 る た め に必 要 な付 帯 条 件 を 明 らか にす る。 (c) 計 算 時 間 と精 度 あ るい は許 容 範 囲 との 関係 を 明 らか にす る。 (d) 形 状 修 正 の 繰 返 し計 算 で発 生 す る 不 安 定 性 や 局 所 的 最 適 解 の 回避 方 法 を 確 立 す る。
な どで あ る 。 さ らに,19.2.2項
に触 れ た 設 計 パ ラ メ ー タ(設 計 変 数)が
手 法 の 問 題 が あ る。 電 気 機 器 設 計,特
多 い場合 の最 適化
に 磁 界 解 析 の 分 野 で は そ の よ う な検 討 も進
ん で い る。 設 計 変 数 が 多 数 あ っ て 計 算 負 荷 が 過 大 な 場 合 の 「応 答 曲 面 近 似 法 」[19.28]な どで あ る。 こ の 手 法 は対 象 とす る 機 器 の応 答 を多 項 式 な どの 回 帰 式 で モ デ ル 化 し,実 験 結 果 か ら回 帰 式 の 係 数 を推 定(応 答 曲面 式 を算 出)す あ る設 計 変 数 は 目的 関 数 を重 み付 け し,線 形 化 す る こ とで1個
る。 複 数
の 目的 関 数 にす る
こ と もあ るが,遺 伝 的 ア ル ゴ リズ ム に よ っ て よ り総 合 化 した 最 適 化 を 行 う こ と も あ る。
付録
付 録1 仮想 電 荷(図6・2)の
電位,電
界 の式
す べ て大 地 に対 す る 影像 電 荷 の作 用 を含 ん だ式 で あ る。 a. 二 次 元 場 λを単 位 長 さ あ た りの 電 荷 密 度 〔C/m〕 とす る。 電 位:
電界:
b. 回転対称場 Qを 全 電 荷 〔C〕,λを単 位 長 さ あ た りの 電 荷 密 度 〔C/m〕 とす る。 (b.1) 点 電 荷
電位:
電界:
(b.2) 線 電 荷 ・有 限 長 線 電 荷
電位:
特 にr=0の
と き,
電界:
特 にr=0の
と き,
・半 無 限長 線 電 荷(B→
∞)
電 位:
特 にr=0の
と き,
電 界:
特 にr=0の
と き,
C. リ ン グ 電 荷
電 位:
特 にr=0の
と き,
電界:
ここで
K(k),E(k)は
そ れ ぞ れ 第1種,第2種
の完全 だ円積分。
付録2 最小二乗法 を用 いる電荷重畳法 5.1節 に 述 べ た仮 想 電 荷 の 作 る 等 電 位 面 を 同 じ数 の 輪 郭 点 で 電 極 電圧 と 同 じに 置 く方 法 で な く,次 式 の誤 差 の 二 乗 の和 を最 小 に す る こ と に よっ て 支 配 方 程 式 を 作 る[a.1]。この 方 法 で は仮 想 電 荷 の 数nと
輪 郭 点 の数mは
同 じで な くて も よ い 。
i番 目 の輪 郭 点 にお け る 電 位 差 を δφiとす る と,二 乗 誤差 の 和Rは,
二 乗 誤 差 に は 重 要 な部 分 の誤 差 が よ り小 さ くな る よ う に重 み を つ け る こ と もで き る。Rを
最 小 に す る た め に は 各 電 荷 に つ い て,
と置 く。 こ れ か ら次 のn個
のQjを 未 知 数 とす る連 立 一 次 方 程 式 が 形 成 さ れ る 。
こ こで
Steinbiglerは 実 際 の 配 置 に つ い て 通 常 の 電 荷 重 畳 法 と比 較 計 算 を行 っ て い る が,最 小 二 乗 法 に よる 方 法 で ほ ん の わず か精 度 が 改 善 さ れ る だ け で あ る。 そ の た め 支 配 方 程 式 の 作 成 が 面 倒 な こ と もあ っ て ほ とん ど使 用 され て い な い 。 た だ使 用 す る仮 想 電 荷 数 を な る べ く減 ら した い と きに は い く らか有 効 で あ る 。
付 録3 第2種
完 全 だ 円積 分E(k)の
算術幾何平均法 によ
る計算[a.2] 正 の2数a,bに
つ い て, と し て,以
と お く と,数 列{an},{bn}は
下
同 じ値M(a,b)に
近 づ く。
さ ら に,〓
か ら 出 発 し て 順 にan,bn,cn,を
算 す る 。 十 分 大 き なnに
た だ し,c0=k2で
付録 4面
計
対 し て,
あ る 。
積座標
(a) 面 積 座 標 の 定 義 面積 座 標 は以 前 は 主 に 有 限 要 素 法 に お い て 用 い られ,頻
繁 に必 要 に な る 面積 積
分 な どの 計 算 に 利 用 さ れ た 。 そ の 後 表 面 を分 割 す る表 面 電 荷 法 で も利 用 され て い る。 図A・1に
示 す よ う な 二 次 元(x,y)座
標 の 三 角 形ijmに
義 され る三 つ の座 標u,υ,ω が 面積 座 標 で あ る 。
お い て,次
の式 で定
図A.1 面 積 座 標
(A5・1)
u =1
,υ=w=0が
ま たu=0と
頂 点iを 表 わ す こ と は 容 易 に 分 か る 。 頂 点j,mも し てυ,wを
が 得 ら れ,u=0が と1対1に
辺jmを
=
表 わ す こ と が 分 か る 。 ま た 座 標u,υ,wはx,y座
標
示 す よ う に,
三 角 形Pjmの 面 積 /三 角 形ijmの 面 積
が 成 り立 っ て い る 。υ,wも
こ こで,Δ
消 去 す る と,
対 応 し,図A・1に u
同 様 で あ る。
は三 角 形ijmの
同 様 で あ る 。 さ ら に(A5・1)式
面 積 で,ai,bi,ci等
は4.2節
あ る。 面積 座 標 は負 の 値 を と る こ と もあ る。 図 のP点 合 で あ る。 面 積 座 標 は 通 常1以 標 は1以 上 にな る こ と もあ る。
下 の値 で あ る が,1個
か ら
に与 え た も の と 同 じで
が 三角形 の外 側 にある場 の 座 標 が 負 で あ る と他 の 座
(b) 面積 座標 の図示 と積分 座 標u,υ,wは2個
だ け が 独 立 な の で 二 次 元 平 面 に 図 示 す る こ とが で き る。
デ カ ル ト座 標 の横 軸,縦 軸,を
そ れ ぞ れ 座 標u,υ
とす る こ と もあ るが,そ
き は三 つ の 座 標 に 対 して対 称 で な くな る。9.2.2項(図9・7)で (極 座 標 の θ=0の をυ 軸,w軸
方 向)をu軸,そ
のと
述 べ た の は横 軸
れ か らそ れ ぞ れ2π/3,4π/3回
転 した方 向
とす る 表 示 で あ る。 こ の 図 示 方 法 で は,(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)
は正 三 角 形 に な る。 面 積 座 標 を用 い る こ とに よっ て 複 雑 な計 算 が 相 当 に 簡 単 に な る。 そ の 一 つ と し て 有 限 要 素 法 で は 三 角 形 全 体 に わ た る面 積 積 分 の 計 算 が しば しば必 要 で あ る が, こ の積 分 が 面 積 座 標 で表 わ され る と次 の公 式 で た だ ち に 計 算 で きる 。
(c) 有 限 要 素 法 の 電 位 の表 現 前 節 の 面 積 座 標 を使 用 す る と,通 常 の 三 角 形 要 素 で 三 つ の節 点 電 位 を未 知 数 と す る有 限 要 素 法 の 近 似 関 数 は 次 式 で 与 え られ る。 こ れ は(4・10)式 と比 較 す れ ば 容 易 に確 か め られ る。
この よ う な 一 次 式 の場 合 はk1=φi,k2=φj,k3=φmで
あ る。
また 三 角 形 の3節 点 と3辺 の 中点 の 電 位 を未 知 数 とす る近 似 関 数(6節 形 要 素)は,二
点三 角
次式 で
一 つ の 三 角 形 内 の φ を二 次 式 で 近 似 す る ほ うが ,こ の 三 角 形 を さ ら に4個 の 三 角 形 に細 分 して 一 次 式 で 近 似 す る よ り,一 般 に精 度 の 向 上 す る こ とは4.7節
で説
明 した。
付 録5
(9・7)式
のkの
本 文 図9・2のP3,P6,P7,P1で
導 出[a.3] 表 現 さ れ る 辺 曲 線(υ=0)を
例 に して 説 明 す
図A.2
る 。P3位
置(u=0,w=1)で
し,P1位
置(u=1,w=0)で
る 。 た だ し,t1,t2ま る 。 ま た,こ (9・5)式
の 接 線 ベ ク ト ル をt1,単 の 接 線 ベ ク ト ル をt2,単 た は τ1,τ2の 向 き は 図9・5に
の 辺 曲 線 の 中 点 位 置(u=w=0.5)で
位 接 線 ベ ク トル を τ1と 位 接 線 ベ ク ト ル を τ2と す
合 わ せ て 図A・2の
の 接 線 ベ ク ト ル をtcと
定 義 す る と,次
こ れ ら よ り,tcを
よ っ て,tcの
式 も成 り 立 つ 。
書 き直 す と次 式 とな る。
長 さ の2乗
は 次 式 で 表 さ れ る。
こ の 曲 線 の 歪 を 小 さ くす る 簡 便 な 方 法 と し て,│t1│=│t2│=│tc│=kと
られ る。
す る。
よ り以 下 の 式 が 成 立 す る 。
今,R=P1−P3と
課 し て,こ
向 きに と
のkを
与 え る 式 を 導 出 す る 。t1=kτ1,t2=kτ2も
い う条 件 を
考 慮 す る と次 式 が 得
こ こ で,R・(τ1−
よ っ て,k/3│R│は
τ2)/│R│=A,τ1・
τ2=Bと
お くと 次 式 と な る。
次 式 とな る 。
k/(3│R│)を 正 の値 に す る た め に+符
号 を採 用 す る と,本 文(9.7)式 が 得 られ る 。
付 録6 電荷 密 度 λkcoskψ に よる電界 こ の式 は,電 荷 重 畳 法 に よ る一 般 三 次 元 場 の 計 算 で リ ン グ電 荷 の 成 分 と して 出 て くる 式 で あ る 。 この 成 分 がP点(r,θ,z)に に対 す る 影 像 電 荷 の 作 用 は含 ま な い 場 合)で
生 じる電 界 の 式(た あ る 。k=0の
だ し,接 地 平 面
と き は 〔付 録1〕 の
リ ング電 荷 の 式 に な る の で 省 略 す る。
こ こで
特 にr=0の
と き は,〓
Er=0(k≧2ま
(k=1で
た は θ≠0の
方 向),Eθ=Ez=0
θ=0の
方 向)
演習問題解答
第1章 1. 持 ち込 ん だ プ ロ ー ブが 電 界 を乱 す た め 。 電 流 界 で は 大 気 の 導 電 率 が 零 で あ る た め そ こ に存 在 す る プ ロ ー ブ は 電 界 を乱 さ な い 。 静 電 界 で も等 電 位 面(線)に 沿 っ て プ ロー ブ を 配 置 す れ ば電 界 を乱 さ な い が 等 電 位 面 の位 置 が 不 明 な と き は適 用 で き ない 。 2. 1.4節 に説 明 。 電 界 計 算 は お も に ラ プ ラス の 式 を対 象 に し,未 知 数(関 数) は ス カ ラポ テ ン シ ャル で そ の境 界 条件 が 明 確 で あ る(導 体 表 面 で電 位 が 一 定)。 ま た,多
くの 場 合 媒 質 の 特 性 は線 形 で あ る。 しか し,電 界 値 に高 精 度 が 要 求 さ
れる こ とが 多 い。 磁 界 問題 に も ラ プ ラス の 式 が 現 れ る が,し
ば しば ベ ク トル ポ テ ンシ ャ ル が 未 知
数 と な り,ま た鉄 心 の よ う な異 方 性 や ヒス テ リ シス を伴 う材 料 が 重 要 で あ る 。
第2章 1. 雷 雲 に よ る電 界 は 短 時 間 に は 変 動 し な い(直 流 で あ る)。 この よ う な 電 界 に 対 して 人体 は 導 体 と見 な して よい 。 そ の た め 大 地 と同 じ接 地 電 位 で 水 道 管 との 間 に電 位 差 が 発 生 しな い 。 2. 正 し くな い 。 正 しい 電 位 で あ る た め に は ラ プ ラ ス の 式 を満 足 す る ほ か に境 界 条件 を満 足 しな けれ ば い け な い 。 3. (2・10)式 で 電 位 がrだ
け の 関 数 で あ る か ら,容 易 に積 分 で き る。 積 分 して 境
界 条 件 を用 い る と,電 位 φ,電 界E(r方
向 成 分 の み)は,
4. 最 大 電 界 はV/{R1ln(R2/R1)},ま
た 平 均 電 界 はV/(R2−R1)で
あ る か ら,利
用 率 はR1ln(R2/R1)/(R2−R1)
R1=1cm,R2=2cm,V=1kVの
と き の 最 大 電 界 は1.44kV/cm,利
用 率 は
0.693
第3章 1. 図 問3・1(b)の
よ う に 間 隔1cmの
の 格 子 点 を 順 にP,A,B,C,Dと A点
格 子 で 分 割 し て 差 分 法 を 適 用 す る 。y=1
す る と,対
称 性 か らx=1,y=2のG点
の電位 は
と 等 し い 。 差 分 式 は,
4φP=2φA(1)
4φ4=φP+φB+100(2)
4φB=φA+φC+100(3)
4φC=φB+φD+100(4)
φD=50と
す る と,φP=2050/97=21.1。
し て は 良 い 近 似 値 で あ る 。 も し,φDを を50と
し て も,φP=7650/362=21.1と
と す る と,φP=550/26=21.2と 2. 一 般 に,間
隔hの
正 し い 電 位 は20.2な 未 知 数 と し,さ
ので荒 い分割 に
ら に 先 の 点(6,1)の
電位
ほ と ん ど 同 じ で あ る 。 一 方,φC=50 僅 か に 相 違 す る。
正 方 格 子 で 分 割 し た と き,P点
と 周 囲 の4点a,b,c,dと
の
電 位 の 関 係 式 は,
とな り,P点
のr座r0の
項 が 付 け 加 わ る 。 二 次 元 配 置 で は 図 問3・1の
電極
が どこ にあ って も(平 行 移 動 して も)差 分 式 は 同 じで 電 位 も変 わ ら な い が,回 転 対 称 配 置 で はr座 標 の ど こ に あ る か が 電 位 に 影 響 す る。r0が 大 き くな る と 二 次 元 配 置 の 電 位 に近 づ く。 さ ら に,回 転 対 称 配 置 で は 図 問3・1(b)のG点 の電 位 はA点 3. 問3・1が ろ で はy=1の
と等 し くな い 。 回 転 対 称 配 置 の と き,rが 電 位 は50Vで
充 分 大 き い(か
ど部 分 よ り離 れ た)と
こ
あ る。 一 方zが 充 分 大 きい と こ ろ で は 同軸 円 筒 電
極 配 置 の 電 位 に な る。 4. 本 文3.3節
に説 明 し た よ う に,各 格 子 点 の 電 位 を テ イ ラ ー 展 開 の 式 で 表 し
て,ま ず 一 次 の微 分 項 を消 去 し,ラ プ ラス の式 を用 い る。
第4章 1. こ の 三 角 形 の 各 頂 点 で φ0,φ1,φ2と
で あ る 。 こ れ か ら電 界(の 2. 要 素 の 頂 点 の 電 位,座
で あ る。a,b,c,dを
各 成 分)は
標 とa,b,c,dの
この4個
電 位 差 ÷距 離 とな る。 関 係 は,
の 連 立 一 次 式 の 未 知 数 と考 え て解 く と,φiの 一
次 式 と して 表 され る。 後 は4.2節 の 計 算 にxあ
な る 電 位 は,
と同 じ手 順 で あ るが ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ー
る い はyの 積 分 が 必 要 で あ る 。
電 界 の 式 は(4・41)式 の よ う に座 標 の 一 次 式 に な る。
第5章 1. 対 称 な 位 置 の 電 荷 は 同 じに して よ い の で6個
で あ る 。 ま た大 地(接
地 平 面)
は 同 じ影 像 電 荷 を 配 置 す れ ば 表 され る の で独 立 な未 知 数 は や は り6個 で あ る 。 2. 図 問5・1の
斜 線 部 の よ う な1/4部
い。す な わ ち電 位 φ は,
の 式 を用 い,さ
らにyの 積 分 が
で あ る こ と を 用 い る と,
分 の 電 荷 の 作 用 を積 分 し,4倍
すれ ば よ
こ の式 は,も
ち ろ ん 本 文15.5節
の 三 角 形 表 面 電 荷 法 の 式 を 用 い て 出す こ と も
で きる。 a=b=w/2,d=0と
す る と,φ=σwln(1+√2)/(π
さ の 正 方 形 の 場 合,σw2/φ=π
ε0/ln(1+√2)=31.6pF。
定 の 正 方 形 の 中 心 の 電 位 で,正 頂 点 な ら 中 心 の1/2)が,導
ε0)と な る 。1辺
が単 位長
この電位 は電荷密 度一
方 形 の 場 所 に よ っ て 電 位 が 相 違 す る(正
方形 の
体の場合 は電位が一 定で電荷 密度 が場所 に よって
相違す る。
3. 要 素jの 端 点 の 電 荷 密 度 を λj,λj+1とす る と,電 荷 密 度 が 一 定 の 場 合 の 電 位 係 数P(i,j)は
σ(j)だ け で 決 ま る の に 対 して,λj,λj+1の2個
の変数 が関与す
る。 ま た 電 極 表 面 が 閉 じて い な い 断 面 の と き はλjの 数 は 要 素 の 数 よ り1個 多 くな る 。 選 点 法 を用 い る と境 界 条件 が 不 足 す る の で,電 荷 密 度 の 変 化 が 少 な い 方 の端 で λn=λn+1と す る な どの 便 法 が 用 い られ る。 4. 自分 自身 以 外 の 電 荷 の 作 用(電 界)に よ る。 こ の 電 界 は 表 面 に垂 直 に σ/(2ε0) で あ る 。 電 気 一 重 層 は 両 側 に(反 対 向 きの)σ/(2ε0)の 電 界 を作 るが,導 内 側 で は 他 の 電 荷 の 作 用 で 打 ち 消 さ れ,外
体の
向 き に は加 算 さ れ て σ/ε0とな る 。
導 体 表 面 の い た る と こ ろで そ の よ う に な っ て い る 。
第6章 1. 対 称 性 か らQ1=Q3で
あ る 。 計 算 は 未 知 数 をq1=Q1/4π
ε0,q2=Q2/4π
す る と よ い 。(a)Q1=8.884×10-11C,Q2=−1.437×10-11C,静
ε0と 電 容 量 は
(2Q1+Q2)/V=163pF,(b)Q1=7.287×10-11C,Q2=0.821×10-11C,静 電 容 量 は154pF。
正 確 な 値 は158pFな
の で 静 電 容 量 の 値 に 関 す る 限 り(b)の
模 擬 の ほ うが よ い。
2. 電 荷 の 式 は 付 録1に がQ2で(0,−1)か
与 え ら れ て い る 。 輪 郭 点 の 座 標 が(r,z)の ら(0,1)に
あ
る 線
電 荷
の
生
じ
と き,電 る 電 位
荷 量 は,
〓 で あ る 。 こ れ か ら(a)Q1=9.275×10-11C,Q2 =−2 =1
.259×10-11C,静 .441×10-11C,静
電 容 量 は163pF,(b)Q1=6.969×10-11C,Q2 電 容 量 は154pF。
仮 想 電 荷 の 電 荷 量 は 相 違 す る が,静
電 容 量 は 中 央 の 電 荷 が 点 電 荷 で も線 電 荷 で も ほ とん ど同 じで あ る。 3. Ezの(6・19)式
で はz=0と
す る と 常 に0に
な る よ う に 見 え る が,zの
小 さい
と き,Y=z/√R2−r2と 端 点(r=R)以
な っ て,Ez=Q/(4π
外 は 常 に0で
ε0R√R2−r2)で
あ る 。 一 方,Erは
あ る 。 電 荷 密 度 は,σ=ε0Ez=Q/(4πR√R2−r2)
第7章 1. (a)-(c)は
比 較 的 局 所 的 な 電 界 を精 度 よ く求 め る場 合 が 多 く,境 界 分 割 法
が 適 して い る。 コー デ ィ ング の 容 易 な 点 も考 慮 す る と,(a),(b)は 法,(c)は
表 面 電 荷 法 。(d),(e)は
(e)でmmオ
差 分 法 あ る い は 有 限 要 素 法 で あ る が,
ー ダ の 細 分 割 の 場 合 は 差 分 法 が 適 して い る。(e)は
き る高 速 多 重 極 法 の 表 面 電 荷 法(第9,10章)の 2. 本 文7.2節
極細 分割 で
適 用 も可 能 で あ る 。
に記 載 。 主 要 な 相 違 点 は コ ー デ ィ ング(プ
度,計 算 時 間,特 異 点 の 処 理,汎 3. 図 問7・1の
電荷重 畳
用 性,な
ロ グ ラ ム)の 難 易,精
ど。
よ う に,電 極 表 面 の 電 界 をE,ΔR離
れ た 点 の 電 界 をE+ΔEと
して ガ ウ ス の 定 理 を適 用 す る 。 πR2E=π(R+ΔR)2(E+ΔE) 二 次 の 微 小 項 を 無 視 して 整 理 す る と,ΔE/ΔR=−2E/R。
第8章 1. (滑 ら か な)境 界 表 面 上 のP点 を本 文(8・7)式 のSeと
を 中 心 とす る半 径Rの
す る。 半 球 の 表 面 積 が2πR2で
づけ る と この 積 分 は,φ(P)/2す
な わ ちC=1/2と
半 球 を 取 り,こ の半 球 あ る か ら,Rを0に
な る。 φ(P)はP点
近
の電位 で
あ る。 2. 本 文8.3節 界 分 割 法(た
に記 載 。 一 番 の 難 点 は,領 域 分 割 法(た と えば 電 荷 重畳 法)を 併 用 した場 合,対
上 に,全 体 の(支 配)方
と え ば 有 限 要 素 法)と
境
象 とす る未 知 数 が 異 な る
程 式 の係 数 が 疎 な部 分 と密 な 部 分 とか ら成 り,大 規 模
な 問題 で は解 くの が 容 易 で な い こ とで あ る。 3. (8・28)式 を離 散化 す る と次 の 式 に な る 。
こ こ で,図
問8・1に
子 点1,2,3,4の
示 す よ う に κA∼ κcは 各 象 限 の セ ル の 導 電 率 ,φiは 電 位,Aiは
(A2,A3はx方
各格
φ0を通 る 辺 の 中 点 の 磁 気 ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル
向 成 分,A1,A4はy方
向 成 分),hは
格 子 間 隔 で あ る。
第9章 1. ま ずu+υ+w=1と
い う 条 件 に 注 意 す る 。 た と え ばP4を
の 場 合 はu=0,υ=w=1/2と り,(P2+P3)/2=P4の たP4に
考 え る と,二
場 合 はP(0,1/2,1/2)=P4と
な
な る が,任
意 に配 置 され
対 し て は こ の 等 式 は 成 立 し な い 。 ま た 三 次 式 で は,u=0,υ=2/3,
w =1/3と
し て ,P(0,2/3,1/3)=(P3+6P5+12P4+8P2)/27と
的 に はP(0,2/3,1/3)≠P4で
な る が,一
余 弦 法 則 か ら)導 3. 付 録5の
般
ある。
2. (解 答 は 省 略)重 心 を原 点 と す る正 三 角 形 を作 図 して(た
u軸,そ
次式
し て,P(0,1/2,1/2)=P2/4+P4/2+P3/4と
とえば角度 の式 は
く こ とが で き る。
面 積 座 標 の 説 明 で 述 べ た よ う に,横 軸(極 れ か ら そ れ ぞ れ2π/3,4π/3回
座 標 の θ=0の
転 した 方 向 をυ 軸,w軸
方 向)を
とす る 表 示 方
法 を と る と,容 易 に こ れ らの 式 が 導 け る。
第10章 1. 〓
こ の例 か ら も分 か る よ う に,通 常 は セ ル の 総 数 はO(N)で 2. 一様 電 界(無
限 遠 か らの 寄 与)の
計 算 点 に はL2L変
ある。
効 果 を ル ー トセ ル に加 え る と よい 。 各 電 界
換 の 繰 返 し に よ っ て こ の効 果 が 伝 え ら れ る。FMMの
回 数 に 対 し て 追 加 す る 計 算 回 数 は1回
で 済 む 。 た だ し,L2L変
計算
換 の 繰 返 しに
よ り若 干 の 数 値 計 算 誤 差 の混 入 が 懸 念 さ れ る 。 そ こ で 普 通 は,FMMの
計算 と
は 別 に各 電 界 計 算 点 で 一 様 電 界 の 効 果 を個 別 計 算 し(と い っ て も一 様 電 界 で あ れ ば 一 定 値 で あ る),FMMの
計 算 結 果 に これ を足 し込 む と よい 。FMMの
算 回 数 に対 して 追 加 す る計 算 回 数 はN回 荷 と して は実 際 上 問 題 に な らな い 。
とな る が,O(N)で
計
あ るので計算 負
参考文献 参 考 文 献 は本 書 の 記載 事 項 と直 接 関係 す る もの に限 っ て い る。
第2章 [2.1] た と え ば,秋
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坪 井,ほ
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大 久 保,ほ
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E.Kim,ほ
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H.Okubo,
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河 本,宅
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磁 界 解 析 と そ の 逆
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No.4,
No.2,
p.1902(2004)
付録 [a.1] [6.1]の 文 献 [a.2] [6.4]の 文 献 [a.3] 濱 田,宅
間:平
成11年
電 気 学 会 全 国 大 会 予 稿,No.38
術 報 告 第611号(1996)
p.371(2003),な
ら び に,
索
引
FMM‐BEM,
FMM‐SCM
128
数 字
G 6節
点 要 素 40
GIS;gas
insulated
switchgear
248
B
H Bachmann法 Borda電
204
HSSSM
極 251
boundary
relaxation
method
190
25
I C
IEM(integral CAD
equation
method)
43
244
K CADEF
246
CAE
Kuttの
244,245
CFL(Courant‐Friedrichs‐Levy)条
有 限 部 分 積 分 公 式 53
件 97
L charge
simulation
method
57
CIM
245
L2L(local
CIP法
89
Log‐L1変
Courantの
to local)変
換 124
換 54,110
条 件 97
M D
M2L(multipole Deutschの domain
decomposition
to local)変
M2M(multipole
仮 定 230,232 method
method
16
methods
of moments
43
of subareas
43
E
Metzの equivalent
source
method
Monte
44
方 法 253 Carlo
method
Mott‐Gurney近
90
似 231
F
P fast
multipole
FDTD法
method:FMM
Pauthenierの
integral)法
FIT(finite
integral
fl oating
116
96
FI(finite
random
walk
98
method
式 228
point matching
technique)法
98 91
換 124
to multipole)変
45
換 122
重 み つ き残 差法 36
S Schwartz‐Christoffel変 SOR法
開 空 間 25
29
space
charge
SPFD法
limited flow
substitute
回転 だ 円体71 method
method T
triple‐junction effect 147 V VENUS
階段 近 似 100
64
charge
charge
解析 的方 法 3 階層 的分 割統 治 119
関 係 式 82,253
Steinbigler法
surface
231
98
Spielreinの
か
換 4
245
58 43
ガ ス絶 縁 開 閉装 置 248,256 仮想 境 界 12 仮想 電 荷 58,64,68,259 ガ ラー キ ン法37,114 間接 境 界 要素 法 93 完全 だ円積 分 66
幾何 的 連続 106 あ
ア ナ ロ グ法 6,196
木構 造 117 既 知 電 界 155 境 界 条 件 11,113 境 界 分 割法 16,80,85,160
イ オ ン 流 場 225
境 界 要 素法 43,91,128,147,253,256
一 意 性 の 定 理 59
鏡 像 法 5
一 様 電 界 155
,177 一 様 電 界 形 成 用 電 極 251 一 般 三 次 元 配 置 180
極 座 標 変換 107 局所 展 開 119 曲面 形状 表 面 電荷 法 101
移 流 項 237 イ ン ピ ー ダ ン ス 法 89
空 間 電荷 214 空 間 電荷 制 限 条件 231
打 切 り誤 差 67
計 算機 援 用 工 学 244 影 像 電 荷 12
計 算機 援 用 設計 244
影像 電荷 法 5
計 算 法 の比 較 表 79
円 環 関 数 187
係 数行 列 66
円 弧 電 荷 187
けた 落 ち誤 差 146
円 板 電 荷 69
検 査 点 62
オ イ ラ ー の 理 論 32
格子 分 割 76
応 答 曲 面 近 似 法 258
高 速多 重 極 法 116
高 速 表面 電 荷 法 190
絶 縁 物(固 体 誘 電 体)形 状 の最 適 化 249
交 流 電界 計 178
接 触 点 148
コ ンビ ネー シ ョ ン法 94
接 線 ベ ク トル 103
さ 最小 二 乗 法 261
セ ル 117 線 電荷 57 選 点法 44,115
最大 値 原理 239,240 最 適 形状 設 計 243
相 互 容 量 161
最 適 条件 246 た
座 標 変換 法 4 差 分 法 18,135,181,197,216,233
第1種 完全 だ 円積 分 60
三 角 形表 面 電 荷 法 45,191
第2種 完 全 だ円 積 分 61
残 差 36
対 称 的 配 置 150
三 重点 効 果 147,250
対 称 面 24
算術 幾 何 平 均 法 67
体 積抵 抗 195 対 地 容量 161
磁界 計 算 法 7
代用 電 荷 法 58
自己容 量 161
だ 円筒 電 荷 71
自然 境 界 75
高木 効 果 149,250
支 配 方 程式 22,35,49,61,79
多 重 極 展 開 119
四辺 形 要素 41
断熱 境 界 75
周 期 的 配置 150 準 特 異積 分 51,54
逐 次 加 速緩 和 法 29
小 区 分法 43
直 接 法 29
上 流有 限要 素 法 234,237
直 流 イ オ ン流 場 225
人工(仮 想)境 界 12,25
直 流 送電 線 241
進行 波 電 界 カー テ ン 152,153 ツ リー法 116 酔歩 90 ス カ ラポ テ ンシ ャル差 分 法 98
デ ィ リク レ境 界 条 件 11 適 合 表 現 113
制御 点 103
電 位 係 数 61
静 電 界 14
電 位 の 方程 式 22,35
静 電 誘導 168
電 界 カー テ ン 151
静 電誘 導 係 数 161
電 界係 数 62
静 電容 量 160
電荷 重 畳 法 57,141,184,200,204,219,253
積分 方 程 式 法 44,79
電気 一 重 層 141
絶縁 され た 導体 170
電極(導 体)形 状 の 最 適化 247
電 気力 線 法 232
ポ ア ソ ンの 式 214
電 流連 続 の積 分 式 239
ポ イ ン トマ ッ チ ン グ 44,115 法 線 ベ ク トル 106
等 角写 像 法 3
補 間 関 数 37
等価 磁 気伝 導 率 97
ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー 最 小 の 原 理 32
導 電性 195
ポ リ コ ン 電 極 154
特 異積 分 51,53 ま
特 異点 51 マ クス ウェ ルの 式 9
特性 曲線 法 234
丸 め 誤 差 67
な ノ イマ ン境 界 条 件 11 は
メ ッ シ ュ ジ ェ ネ レ ー タ 76 面 積 座 標 262 面 積 分 107
倍 精 度計 算 67,68 パ ッチ 101
モ ー メ ン ト法 43,113
反 復 法 29
モ ン テ カ ル ロ 法 81,90 や
非 適合 表 現 113 微 分 方程 式 法 79
有 限 差 分 時 間 領 域 法 96
平 等電 界 電極 251
有 限 要 素 法 31,138,182,198,218,234,262
表 面抵 抗 195 表 面電 荷 222
容 量 係 数 161
表 面電 荷 法 43,128,144,224,253 ら
フ ィー ル ドマ ッ ピ ング 6,196
ラ グ ラ ン ジ ュ 補 間 多 項 式 111
複合 誘 電体 135,166,175
ラ プ ラ ス の 式 9,135,197
複 素仮 想 電荷 200
ラ ン ダ ム 歩 行 90
複 素仮 想 電荷 法 173 複素 誘 電率 196,201
力 線 の 式 82
部分 容 量 161
離 散 化 15
浮遊 電位 168,175,208
離 散 化 誤 差 67
ブ レン ド 102
領 域 分 割 27
ブ レ ン ド表 現 112
領 域 分 割 法 16,80,83
分 極 電荷 141
両 極 性 イ オ ン流 場 235 輪 郭 点 58,61,64
ベ ジエ 曲面 101 変 数分 離 法 4
リ ン グ 電 荷 57,59
著者 略歴
宅 間
董
昭和36年 東 京 大 学 工学 部 電 気 工学 科 卒 業 昭和41年 東 京 大 学 大学 院 工 学系 研 究 科 博 士課 程 修 了,工 学博 士 東 京 大 学 工学 部 専 任 講 師 昭和42年‐ 平成 7年 まで 電 力 中央 研 究 所 勤務 平 成 7年‐平成14年 まで 京 都 大学 工 学 部(後,大 平 成14年 よ り 電 力 中央 研 究 所研 究 顧 問 平 成16年 よ り 東 京 電機 大 学 特 別専 任 教 授
学院 工 学研 究 科)教 授
濵田 昌 司 昭和62年 京都大学工学部電子工学科卒業 平成 4年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了,博 士(工 学) 東京電機大学助手 平成 5年 同学専任 講師 平成 9年 京都大学大学院工学研究科専任 講師 平成17年 より 同学助教授
理 工学講座 数値 電界計算 の基礎 と応用 2006年9月20日
第1版1刷
発行
著
者 宅 間 董 濵 田昌 司 学校法人 東京電機大 学
発行所 東 京電機 大学 出版 局 代表者 加藤康太郎 〒101-8457
東 京都 千 代 田 区神 田錦 町2-2 振 替 口 座00160-5-71715
印刷 三 美 印刷(株) 製本 渡 辺製 本(株) 装丁 鎌 田正 志
〓
Takuma
電 話 (03)5280-3433(営
業)
(03)5280-3422(編
集)
Tadasu,Hamada
Printed inJapan *無 断 で転 載 す る こ と を禁 じます 。 *落 丁 ・乱 丁 本 はお 取 替 え い た し ます 。 ISBN4-501-11310-3
C3054
Shoji
2006