回像処理 応用システム 基 礎 から応用まで (社)精 密工 学会 画像 応 用 技術 専 門委 員会 ―[編]
東京電機大学出版局
編集 委員 会 [編集 委員 長] [編集 幹事]
石井 石井
[編 集 委 員]
伊...
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回像処理 応用システム 基 礎 から応用まで (社)精 密工 学会 画像 応 用 技術 専 門委 員会 ―[編]
東京電機大学出版局
編集 委員 会 [編集 委員 長] [編集 幹事]
石井 石井
[編 集 委 員]
伊藤
明 立命館大学理工学部 明 香川大学工学部
谷水 克行
裕
宇野 伸 一 岡
昌世
加藤 純一
NTTコ
ミュ ニ ケ ー シ ョ ン ズ(株)
(株)東芝 浜川崎工場 池上通信機(株) 技 術研究所 理化学研究所光工学研 究室
金子 俊一
北海道大学大学院工学研 究科
肥 塚 哲男
(株)富士 通研 究所
小 林 芳樹
(株)日立 製作 所 日立研究所
高増
東京大学大学院工学 系研 究科
潔
国際事業部
東京電機大学工学部
西 川 喜 八 郎 技術士事務所西川 エンジニア リングリサ ーチ 秦
清 治
原
靖彦
香川大学工学部 日本大学工学部
ま
え
が
き
画 像 とそ の処 理技 術 は,対 象 の状 態 に 関す る時 空 間情 報 を効 率 的 に伝 え,必 要 とす る情 報 を 選 択 して 抽 出す る技 術 と して,産 業 に お け る計 測 と検 査 の分 野 で 積 極 的 に 導 入 さ れ,各 種 の 応 用 技 術 が 開 発 さ れ て き た。 ま ず,1970年
代 に トラ ン ジ ス タ用 自動 ワ イ ヤ ボ ンデ ィ ン グ装 置 の 位 置 決 め 技
術 と して 開花 し,そ の 後,プ
リ ン ト回 路 板 検 査 装 置,VTR磁
気 ヘ ッ ド検 査 装 置
な どの 高 密 度 電 子 部 品 や 高 精 度 メ カ トロ ニ ク ス 製 品 の 計 測 検 査 技 術 と して多 くの 応 用 技 術 が 生 み 出 され た。 そ して,画 像 処 理 応 用 技 術 は,半 導 体 部 品,精 密 機 械 工 業 の発 展 に な くて は な らな い 基 盤 技 術 と して確 固 た る 地 位 を築 く と と も に,さ ら に農 水 産 業 な ど他 の 産 業 分 野 に も広 く波 及 して い っ た 。 広 く産 業 の各 分 野 へ 浸 透 す る の に伴 い,画 像 処 理 応 用 技 術 の 導 入 や 開発 に従 事 す る技 術 者,あ
る い は こ れ か ら従 事 しよ う とす る技 術 者 や 研 究 者 の数 が年 々 増 え
て きて い る。 こ れ らの 人 々 の 画像 技 術 に接 す る度 合 い,保 有 す る 関連 知 識,経
験
は さ ま ざ ま で あ り,画 像 処 理 応 用 技 術 に 関心 を もつ 人 々 は 多 岐 に わ た っ て い る。 精 密 工 学 会 画 像 応 用 技 術 専 門 委 員 会 は,1986年11月
に発 足 以 来,こ
れ らの
人 々 の 関 心 に応 え て,研 究 と技 術 開 発 の 成 果,応 用 事 例 に つ い て の発 表 と討 論 の 場,あ
るい は最 新 の 技 術 動 向 に つ い て の 調 査 研 究 の場 を提 供 して きた 。本 委 員 会
は,活
動 が10年
を 越 え た こ と を 記 念 して,こ
れ ま で の 活 動 期 間 を 通 じて 蓄 積 さ
れ た 画 像 処 理 技 術 の 産 業 応 用 に 関 す る経 験 と知 識 を ま とめ て 出版 し,画 像 処 理 応 用 技 術 に関 わ る技 術 者 や 研 究者 の 便 宜 を 図 る こ と と した 。 執 筆 は 専 門委 員 会 の 運 営 委 員 が 主 に担 当 した 。 読 者 と して,大 学,研
究機 関の
研 究 者 や 大 学 院 学 生,画 像 応 用 技 術 の 導 入 を考 え て い る 産 業 の 各 分 野 の技 術 者 を 対 象 と して い る 。 本 書 で は,広 範 な読 者 を想 定 し,個 々 の 読 者 の 目的 に応 じて 利 用 し て い た だ け る よ う に構 成 に 配 慮 を行 っ て い る。 第1章 で は,本 書 で 対 象 とす る 産 業 用 画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム の 構 成 の全 体 像 に
つ い て 述 べ る。 また 計 測 ・検 査 分 野 へ 画 像 処 理 技 術 を応 用 す る こ との 意 義 につ い て述 べ,画 像 処 理 応 用 シ ス テ ムが 実 現 す る主 要 な計 測 ・検 査 機 能 を大 別 して示 し, 画 像 処 理 応 用 シ ス テ ムの 導 入 が 成 功 す るた め の 開 発 条 件 に つ い て 述 べ る 。 第2章 お よ び 第3章 にお い て は,本 書 の 基 礎 編 と して,画
像処理 応用 システ ム
の 基 盤 と な る画 像 処 理 技 術 とそ の 関 連 技 術 お よび シス テ ム 設 計 の 進 め方 に つ い て 述べ る。 第4章 は 応 用 編 と して 個 々 の 応 用 事 例 に つ い て シ ス テ ム構築 の 実 際 につ い て 述 べ る。 第5章 で は今 後 の 画 像 処 理 応 用 技 術 の 発 展 動 向 と研 究 開 発 課 題 につ い て 述 べ る。 した が っ て初 学 者 は,第2章
と第3章
に よ り画像 処 理 応 用 シス テ ム の基 盤 と な
る個 々 の 基 本 技 術 につ い て学 習 す る こ とが で きる 。 す で に画 像 処 理 技 術 の 知 識 を あ る程 度 有 す る読 者 は,実 際 に シ ス テ ム を構 築 す る際 の ヒ ン トと して 第4章
を利
用 す る こ とが で き る。 ま た 産 業用 画 像 処 理 応 用 シス テ ム の特 質 と全 体 像,お
よび
今 後 の技 術 動 向 に つ い て 最 初 に概 観 した け れ ば,第1章
と第5章
だ け を 通 読 して
もよ い 。 本 書 は,画 像 処 理 応 用 に実 際 に 取 り組 ん で い る 第 一 線 の研 究 者 と技 術 者 に よ り 執 筆 さ れ た も の で,画 像 応 用 技 術 専 門 委 員 会 の活 動 を通 して 見 す え た現 実 を踏 ま え た 内容 に な っ て お り,画 像 処 理 応 用 に従 事 す る 読 者 の 指 針 と な る もの と期 待 し て いる。 最 後 に,多 数 の 執 筆 者 の 原稿 を忍 耐 強 く取 り ま とめ られ た 東 京 電 機 大 学 出 版 局 の 編 集 課 課 長 植 村 八 潮 氏 と徳 富 亨 氏 に深 く感 謝 い た し ます 。
2000年6月 画 像処理 応用 システ ム編集 委員 会 委員 長 石 井
明(立 命館 大学)
目
次
第1章 計 測 ・検 査シス テムへ の画像処理技術 の応用
(石 立命館大学) 井明
1
1.1 産 業 用 画 像 処 理 応 用 シス テ ム の構 成
2
1.2 画 像 処 理 技 術 の 計 測 ・検 査 へ の導 入 の 意 義
4
1.3 画 像 処 理 技 術 の 応 用 分 野
5
1.4 画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム の 開発 条 件
7
第2章 画像計測 ・検査技術 の基礎
14
2.1 画 像 形 成 (加 藤 純 一[2.1.1,
2.1.2],高
2.2 画 像 処 理
谷 裕 浩[2.1.3],井
口 征 士[2.1.4])
15
( 金 子 俊 一,五 十 嵐 悟,渋 川 勝 久)
74
(浅野 敏 郎,秦 清 治)
108
(西川喜 八郎)
119
2.3 感 覚 量 の 評 価
第3章 画像計測 ・検査 システムの設計 3.1 シ ス テ ム 設 計
119
3.2 仕 様 決 定 と基 礎 実 験
126
3.3 仕 様 と デ ザ イ ン ポ リ シ ー
134
第4章 画像計 測 ・検査 システムの構築 4.1 見 つ
け る
144
(石井 明 香川大学)
144
4.2 数
え
る
(小林 芳 樹,村 松 彰二)
160
4.3 形
を 測
る
(肥塚 哲男)
173
4.4 合
わ せ
る
(高増 潔)
182
(宇 野 伸 一)
190
(原 靖 彦)
203
4.7 記 号 ・文 字 を 読 む …(辻 角 精 二,木 村 誠 聡,朝 日 睦,中 野 宏 毅)
215
(伊藤 裕)
223
(谷水 克行)
234
(原 靖彦)
244
4.5 識 別 す る 4.6 比 較 す
る
4.8 見 え な い も の を 視 る
4.9 感 覚 量 を測 る
第5章 画像応用 システムの発展 と展望
索
5.1 電 子 産 業 にお け る 画 像 応 用 技 術 の 展 開
244
5.2 画 像 応 用技 術 の現 状
248
5.3 今 後 の 展 望
249
引
256
第1章
計 測 ・検査 システムへ の 画像処理技術の応用
生 産 工 程 の 自動 化 に お い て,機 械 で は制 御 困 難 な 不 確 実 な 要 因 を含 む工 程 は 自 動 化 が 困 難 で あ り,人 間 の 柔 軟 な作 業 能 力 に依 存 して きた。 しか し,メ カ トロニ ク ス の 進 歩 に よ り,こ の よ う な工 程 も逐 次 自動化 が 進 め られ て き た。 自動 化 の 進 展 に お い て,人 の 視 覚 機 能 を代 行 す る 画 像 処 理 技 術 が 果 た して きた 役 割 は大 きい 。 画 像 処 理 技 術 は,組 立 て工 程 や 検 査 工 程 に お い て,対 象 の位 置 決 め,検 出,識 別, お よ び状 態 計 測 の 手 段 と して,製 進 め られ,製
品 の 高 精 度化,高
品 の 歩 留 り向 上 と省 力 化 を 目的 と して 導 入 が
性 能 化,高 信 頼 化 に貢 献 して き た。
しか し,そ の 導 入 の経 過 は,各 生 産 分 野 にお い て 一 様 で は な く,使 用 し う る セ ン シ ン グ手 段 や 費 用 効 果 比 の 観 点 か ら一 定 の 制 約 の も とに 画 像 処 理 応 用 シス テ ム の 開 発 が 行 わ れ,導 入 が 進 め られ て きた 。 感 覚 量 を対 象 とす る官 能検 査 の 分 野 で は,感 覚 量 の 定 量 化 が 導 入 上 の大 きな 課 題 で あ り,研 究 開 発 の重 要 な 対 象 とな っ て い る。 本 章 で は,第2章
お よ び 第3章 に お い て,画 像 処 理 技 術 とそ の 関 連 技 術 お よび
シス テ ム設 計 の 進 め 方 に つ い て具 体 的 な 内 容 を述 べ る前 に,ま
ず本 書 で 対 象 とす
る 産 業 用 画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム の構 成 の全 体 像 につ い て 述 べ る 。 そ れ か ら,第4 章 にお い て個 々の 応 用 事 例 につ い て シス テ ム構 築 の実 際 につ い て 述 べ る た め の 導 入 と して,計
測 ・検 査 分 野 へ 画 像 処 理 技 術 を応 用 す る こ との 意 義 に つ い て 述 べ,
種 々の 応 用 事 例 を全 体 と し て見 る と き,画 像 処 理 応 用 シス テ ム が 実 現 す る 主 要 な 計 測 ・検 査 機 能 を大 別 して 示 す 。 そ して,画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム の 導 入 が 成 功 す るた め の 開発 条 件 に つ い て 述 べ る 。
1.1 産業用画像処理応用システムの構成 産 業 用 画 像 処 理 応 用 シス テ ム の 機 能 的 な構 成 図 を 図1.1に 示 す 。 対 象 は 三 次 元 空 間 に存 在 す る が,三 次 元 空 間 を 二 次 元 空 間 に画 像 と して 写像 し,画 像 情 報 か ら 対 象 に つ い て必 要 とす る情 報 を獲 得 す る。 産 業 シス テ ム で は獲 得 す べ き情 報 は明 確 で あ る か ら,最 も信 頼 性 の 高 い,あ
る い は信 頼 度 が 明 らか な 写 像 手 段 を選 択 す
る 。 す な わ ち,対 象 の 情 報 を画 像 化(セ ン シ ン グ)す る ま で の 画 像 形 成 過 程 が 画 像 処 理 応 用 シス テ ム の 設 計 の 重 要 な 部 分 を 占 め る。 対 象 か ら情 報 を獲 得 す る た め の 情 報 キ ャ リ ヤ と して は,光 波,X線
な どの 電 磁 波 や超 音 波 な どが あ り,そ れ ぞ れ
に 対 応 して 各 種 の 検 知 器 が使 用 さ れ る 。X線 や 超 音 波 は,物 の 内 部 の 情 報 を取 得 で き る とい う大 きな 長 所 を有 し,プ ラ ン ト設 備 診 断,製 品 内 部 の 検 査 な どに 利 用 さ れ る。生 産 業 で は,発 生 源 と検 知 器 の 簡 便 性 と扱 い や す さお よ び計 測 精 度 の 点 か ら,光 を使 用 す る場 合 が多 い 。可 視 光 で は製 品 の 外 観 情 報 が 主 体 と な る が,赤 外 光 で は温 度 分 布 を通 じて 製 品 の 内部 状 態 を反 映 した 情 報 を獲 得 す る こ とが で き る。
図1.1 産 業 用 画像 処 理 応 用 シ ス テム の基 本構 成15)
画 像 形 成 の 過 程 は,対 象 を照 明 す る た め の光 源 と,散 乱,回 折,干
渉 な どの 光
学 現 象 を利 用 して 目的 とす る光 の 像 を 得 るた め の 光 学 処 理 を行 う光 学 系 と,光 の 像 を画 像 信 号 に変 換 す る光 ・画 像 変 換 装 置 に よ り実 現 さ れ る 。光 学 処 理 の基 本 的 な もの は結 像 で あ る。 照 明 と光 学 処 理 の 役 割 は,対 象 か ら獲 得 すべ き情 報 を最 も よ く表 現 す る 画 像 特 徴 を 精 度 よ く,安 定 に,あ る い は強 調 して 表 示 した り,生 成
す る こ と にあ る。 光 学 処 理 が 重 要 な役 割 を演 じる分 野 は,特
に光 学 計 測1)と して 一 つ の技 術 領 域
を な して い る。 表1.1に 見 られ る よ う な種 々 の照 明 方 法 が 開 発 さ れ 用 途 に応 じて 使 い分 け られ て い る 。 適 切 な 照 明 を行 い,散 乱,回
折,干
渉 な どの 光 学 現 象 を利
用 す る こ と に よ っ て,対 象 の微 細 な構 造 や 変 形 を明 確 な画 像 と して と らえ る こ と が で きる 。 表1.1
各 種 照 明 形 態15)
光 切 断 法 は,線 状 光 の投 影(一 般 的 に は構造 化 照 明)に よ り対 象 の 三 次 元 形 状 の 特 徴 を 直接 的 に と らえ る 照 明 法 で あ る。 また,共 焦 点 光 学 系 が 多 層 膜 パ ター ンの 像 コ ン トラス トの改 善 に使 用 され た り,寸 法 計 測 の 場 合,物 体 の 位 置 変 動 に よ る 測 定 値 の 変 動 を避 け る た め テ レセ ン トリ ック光 学 系 が 用 い られ る な ど光 学 系 の 構 成 に は 十 分 注 意 が 払 わ れ る2)。 光 学 像 か ら画 像 信 号 へ の 変 換 に は,通 常CCDカ メ ラ な どの 固体 撮 像 デ バ イ ス が 使 用 さ れ る 。 可 視 光 のCCDカ
メ ラ と赤 外 線 カ メ
ラの 併 用 に よ り,輝 度 情 報 と温 度 分 布 の よ うな相 互 補 完 的 な 画 像 情 報 の取 得 が 可 能 と な り,情 報 利 用 の 高 度 化 と高 信 頼 化 が 期 待 で き る3)。 画 像 解 析 で は,ま ず 前 処 理 と して,ノ
イ ズ 除去 や 階 調 変 換 な ど画 像 品 質 を改 善
す る処 理 が 行 わ れ る。 次 に 特 徴 解 析 を進 め るた め に,2値 グ 処 理 に よ り対 象 と背 景,お
化 処理 また はラベ リン
よ び対 象 領 域 間 の分 離 が 行 わ れ2値 化 画 像 が 得 られ
る 。2値 化 画 像 か らは各 領 域 の 面 積,周
囲 長,重
心 位 置 な どの 幾 何 学 的 特 徴 を計
算 す る こ とが で き る。 また,濃 淡 画 像 の もつ 濃 度 分 布 を表 現 す る 代 表 的 な特 徴 と して,各 種 画 像 フ ィ ル タ処 理 に よ り対 象 の 形 状 特 徴 を表 現 す る エ ッ ジ画 像 が 抽 出 され る。 こ れ らの 特 徴 解 析 の 結 果 に つ い て,各 種 演 算 ・評 価 ・判 定 処 理 や モ デ ル
との 照 合 処 理 が 行 わ れ,対 象 の位 置 決 め,識
別,状 態 計 測 あ るい は検 査 が行 わ れ
る。 画 像 解 析 の 具 体 的 な 方 法 に つ い て は,1970年
代 に 始 ま り,四 半 世 紀 に わ た っ
て発 展 して き た画 像 処 理 の 産 業 応 用 の歴 史 に お い て,2値 ー タ法 ,パ ター ンマ ッチ ング 法(2値/多
値),ウ
化 処 理 法,特 徴 パ ラ メ
ィ ン ドウ(窓 枠)法 な ど の 二 次 元
画 像 解 析 法 や 光 ス ポ ッ ト,線 状 光,光 縞 パ ター ンな どの投 影 に よ る三 次 元 形 状 解 析 技 術 が 整 理 さ れ 蓄 積 さ れ て きた4)。 これ らの技 術 は,高 性 能 マ イ ク ロ プ ロ セ ッ サ や 画 像 処 理LSIの
普 及 に よ り,逐 次,生
産 現 場 に導 入 され,画 像 処 理 応 用 シス
テ ム の 高 機 能,高 性 能 化 が 図 られ て き た 。 しか し,一 方 にお い て,感 覚 量 の 評 価 に基 づ く官 能 検 査 の分 野 で は,と
らえ るべ き特 徴 量 は何 か,そ
れ を見 出 す た め の
方 法 論 は何 か に つ い て多 くの こ とが 研 究 途 上 に あ り5),感 性 計 測 技 術 と して 今 後 の 画 像 処 理 応 用 の 重 要 な 開発 課 題 とな っ て い る。 機構 系 は 対 象 の 位 置 決 め,焦 点 合 わせ,走
査 機 能 を実 現 す る もの で,画 像 処 理
シス テ ム と協 調 して 画像 処 理 の 効 率 的 な 実 行 に寄 与 す る。 た とえ ば,あ
らい 位 置
決 め に よ り画 像 に よる探 索 処 理 範 囲 を 限 定 す る こ とが で き る。 ま た,精 密 位 置 決 め の よ う に,画 像 処 理 の 結 果 が 機 構 系 の 位 置 決 め 制 御 に用 い られ る 。 機 構 系 は, 画 像 処 理 応 用 シス テ ム構 築 上 の 重 要 な構 成 要 素 とな って い る。
1.2
画 像 処 理 技 術 の 計 測 ・検 査 へ の 導 入 の 意 義
人 間 の視 覚 能 力 は 柔 軟 性 に富 ん で い る が,判
断 の 客 観 性 や安 定性 に つ い て は機
械 の 視 覚 シス テ ム に ゆ ず ら ざ る を得 な い 。 機 械 は,上 を受 け る もの の,画
に述 べ た枠 組 み に よ る制 限
像 特 徴 の 強調 や客 観 的 な比 較 基 準 の 設 定 に よっ て 安 定 な視 覚
機 能 を実 現 す る こ とが で き る。 ま た,距 離 情 報 を定 量 的 に取 得 す る こ と に よ り三 次 元 情 報 を正 し く と ら え る こ とが で きる な ど,目 的 に合 っ た セ ン シ ン グ手 段 を選 択 で き る とい う大 き な特 徴 を有 して い る。 す な わ ち,画 像 処 理 応 用 シス テ ム は, セ ン シ ン グ手 段 と画 像 処 理 技 術 の バ ラ ンス の とれ た,そ
の 目的 に合 った 構 成 とす
る こ とに よ り,人 の 視 覚 機 能 以上 の 能 力 を発 揮 す る こ とが で き る。 ま た,新
しい
セ ンシ ン グ手 段 の 開 発 に よ っ て,応 用 分 野 を拡 大 し て い くこ とが 可 能 とな る 。 画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム導 入 の 品 質 管 理 面 の意 義 と して は,客 観 的,継 続 的 な 品
質 管 理 デ ー タの取 得 に よ る 生 産 ラ イ ンの 適 正 管 理,製 上,製 作 期 間短 縮,顧
品 の 信 頼 性 確 保,歩
留 り向
客 対 応 の 合 理 化 な どが,労 働 管 理 面 か らは省 人 化,過 酷 な
検 査 作 業 の 解 消 な どが あ げ られ る。
1.3 画像処理技術の応用分野 い まや 画 像 処 理技 術 の応 用 分 野 は,電 子,機 械,医
薬 品,農 林 水 産 分 野 と,生
産 業 の 多 くの分 野 に い きわ た っ て い る と考 え て よい 。 中 で も高 速 高精 度 化,微 細 化 が 進 め られ て き た電 子 部 品 製 造 業 にお い て,1970年
代 の 発 展 期 に は大 い に応
用 技 術 の 開 発 が 進 め られ,前 述 した よ うな 今 日 の画 像 処 理 技 術 の重 要 な 基 盤 が つ く られ た 。 具 体 的 な応 用 形 態 に つ い て は,画 像 の もつ優 れ た 情 報 の伝 達 力(百
聞
は一 見 に しか ず)と 情 報 処 理 技 術 の 柔 軟 性 に基 づ く画 像 処 理 技 術 の 特 質 の 上 に立 っ て,対 象 の 特 性 と応 用 の経 済 的 条 件 に応 じて,さ
ま ざ ま な画 像 処 理 応 用 シ ス テ
ム が 実 現 さ れ て い る。そ れ ら を個 別 に 述 べ る こ とは あ との章 に ゆ ず る こ と と して, 表1.2 画 像 処 理応 用 シス テ ム の主 要 な機 能 と応 用 事 例
こ こ で は 応 用 分 野全 体 を画 像 処 理 技 術 の 応 用 に よ り実 現 され る機 能 につ い て横 断 的 に見 て み る。 表1.2は,画
像 処 理 応 用 シ ス テ ムが 実 現 す る機 能 を九 つ に分 類 し,そ れ ぞ れ に
つ い て種 々の 応 用 の 事 例 を列 挙 した もの で あ る 。 "見 つ け る"は,画
像 処 理 の基 本 的 機 能 で,不
良 箇 所,欠
陥の検 出に関わる事例
が 多 い 。 画 像 の 中 か ら異 常 事 象 を見 つ け る とい う点 で は,監 視 作 業 の機 械 化 の 事 例 も これ に入 る 。 "数 え る"は 画 像 処 理 の特 徴 をい か し た応 用 分 野 で あ る 。 物 流 ・生 産 管 理 以 外 で も,交 通 ・公 共 の 場 にお け る広 視 野 の 計 数 技 術 と して,動 画 像 処 理 技 術 の 進 展 と と もに,近 年 発 展 しつ つ あ る 分 野 で あ る。 "形 を測 る"は,製
造 分 野 に お け る部 材,製
品 の 形 状 計 測,検
査 技 術 と して,画
像 処 理 技 術 の 非 接 触 で 対 象 の 形 に 柔 軟 に 対 応 で き る特 徴 が 発 揮 され る 分 野 で あ る。 そ の 汎 用 的 な 機 能 か ら農水 産 業 にお け る 生 産 物 の等 級 判 定 シ ス テ ム と して も 広 く応 用 さ れ て い る。 "合 わせ る"機 能 も製 造 業 にお い て 基 本 的 な もの で,特
に電 子 部 品 工 業 の よ う に
微 細 な 製 品 の組 立 て に 欠 か せ な い 。LSIの 重 要 な 製 造 設 備 で あ る ス テ ッパ ー にお い て は,光 学 的 手 段 の極 限 領域 で マ ス クパ ター ンの 位 置 合 せ を行 っ て い る。 "識 別 す る"は,空 象 を 認 識,識
間 的 あ るい は時 系 列 的 に 生 じる複 数 の 対 象 の 中 か ら特 定 の 対
別 す る機 能 で あ る。 部 品 の有 無,取
付 け誤 りな ど の 部 品 の 識 別,検
査 に 多 くの応 用 事 例 が あ る 。 "比 較 す る"は,対
象 の 画 像 と基 準 画 像 に つ い て,対 応 す る画 素 の 特徴 値 の 差 異
ま た は 異 同 を検 出 す る機 能 で あ る。 プ リ ン ト配 線 板,ホ
トマ ス ク パ ター ン,ウ エ
ハ パ ター ン な どの 欠 陥検 査 が 代 表 的 な応 用 事 例 で あ る。 比 較 す る 以 前 に位 置 合 せ を精 度 よ く行 う こ とが 重 要 で あ る。 "記 号 ・文 字 を読 む"は パ ター ン認 識 技 術 そ の もの で あ るが,文 OCR技
書 処 理 にお け る
術 とは 異 な る,生 産 現 場 で の多 様 な 環 境 条 件 に 応 じた 開 発 が 要 求 さ れ る 。
"見 え な い もの を視 る"機 能 は,通 常 の 光 学 的 手段 で は視 る こ とが で きな い 対 象 の 内 部 の状 態 や 対 象 の特 定 の 性 状 を,主 に セ ンシ ング 手 段 の 選 択 に よ り,現 象 の 画 像 化 を行 う こ と に よ っ て,把 握 す る もの で あ る 。X線 画 像,超
音 波 画 像,赤
外 線 画 像 な どが 用 い られ,半 導 体 部 品 の 内 部 あ る い は 隠 れ た接 続 部 の 検 査 な どに
応 用 事 例 が 見 られ る。 "感 覚 量 を 測 る"は,人
の行 う評 価 や 判 定 を 定 量 化 す る こ とで あ る。 こ の こ と を
実 現 す る た め に は,評 価 や 判 定 の 尺 度 を明 らか に し て,そ
れ を定 量 的 に表 現 す
る 測 定 可 能 な物 理 量 を求 め る こ とが 要 求 さ れ る。 感 覚 量 と物 理 量 の 関係 を 求 め る た め の 手 法 に つ い て,個
々 の対 象 に対 して研 究 開 発 が 行 わ れ て い る 。 先 駆 的
な 事 例 と して,印 字 品 質,画 像 表 示 品 質,カ 真 珠,焼
ラ ー 印 刷 品 質,塗 装 品 質,化 粧 品,
物 な どの 品 質 評 価 シ ス テ ム が あ る。
1.4 画像処理応用システムの開発条件 画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム が 実 際 に用 い られ る た め に は,人 頼 性 が 要 求 さ れ る こ と は 当 然 で あ るが,十
を超 え る 高 速 性 と信
分 な 経 済 効 果 が 得 られ る こ とが 最 も
重 要 な こ とで あ る。 経 済 性 に影 響 を与 え る要 因 と して は,生 速 性 と高 信 頼 性 に よ る歩 留 り向上 と省 人 効 果,そ
産業 において は高
して 設 備 価 格 が あ る が,シ
ス
テ ム 導 入 時 の エ ン ジ ニ ア リ ン グ に か か る 費 用 と導 入 後 の 運 用 費 用 に も十 分 注 意 を 払 う必 要 が あ る。 導 入 期 の 対 象 か ら新 規 対 象 に替 わ っ た と き,柔 軟 に 対 応 で き な い シ ス テ ム で は 設 備 投 資 効 果 は 損 わ れ る 。 新 規 の 対 象 に対 す る シ ス テ ム の 立 ち上 げ期 間,運
用 中 の 対 象 の 変 動 に よ る 生 産 ラ イ ン の調 整 期 間,ま
た対象 の
変 更 に よ る ラ イ ン更 新 の た め の ラ イ ン停 止 期 間 は,極 力 短 縮 す る 必 要 が あ る。 す な わ ち,画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム の 開発 と設 計 の 課 題 は,目 と低 価 格 性 を追 究 す る こ とに 加 え,シ
的 に応 じて 高 速 性
ス テ ム構 築 と運 用 時 の 柔 軟 性 を 十 分 確 保
す る こ と で あ る と い え る。 シス テ ム の 柔 軟 性 は,シ
ス テ ム の 導 入 と運 用 の 費 用
に 影 響 し,最 終 的 な 経 済 性 を左 右 す る こ と に な る 。 以 下,柔
軟 な シ ス テ ム を 開 発 す る た め の 条 件 につ い て列 挙 し,現 状 の 技 術 と
期 待 さ れ る技 術 の動 向 に基 づ き説 明 を加 え る。
1.4.1 作 業 教 示 の 容 易 化 最 近 の 汎 用 画 像 処 理 シ ス テ ム で は,位
置 決 め,識
別 な ど の作 業 に お け る対 象
の モ デ ル と処 理 方 法 の 教 示 を 容 易 化 す る 手 段 が 工 夫 さ れ て い る 。 具 体 的 に は, 特 徴 パ ラ メ ー タ の 自動 辞 書 作 成,関
心 部 位 の マ ル チ ウ ィ ン ドウ に よ る 設 定,比
較 基 準 パ タ ー ンの 良 品 サ ンプ ル か ら の 自動 登 録 な どの 手 段 が 用 意 さ れ て い る。
1.4.2 対 象 の 変 動 へ の 適 応 化 対 象 の 濃 度 分 布 の 変 動 や 変 形 に対 して,基
準 テ ン プ レー トを 適 応 的 に変 更 処
理 す る こ とが 行 わ れ て い る 。 照 明(明 暗)の 変 動 に対 し て は,LSI化
に よ り正 規
化 相 関 処 理 に よ る 対 応 が 可 能 と な っ た 。 背 景 の 変 動 に対 し て は ハ ブ変 換 な ど の 投 票 型 の マ ッチ ン グ法 が 有 効 で あ り,マ イ ク ロ プ ロ セ ッサ の 高 性 能 化 に 伴 い 実 用 さ れ る よ う に な っ て きた 。
1.4.3 セ ン サ の 高 信 頼 度 化 画 像 処 理 応 用 シス テ ム の 導 入 を 成 功 さ せ る上 で 何 よ り も効 果 的 な こ と は,応 用 分 野 に応 じて,環
境 雑 音 に強 く,出 力 のS/N比
の 高 い セ ン シ ン グ 手 段 を 開発
す る こ とで あ る 。 セ ンサ の 短 所 を画 像 処 理 で解 決 し よ う とす る と,対 象 依 存 性 が 大 き くな り柔 軟 性 が 損 わ れ る 。 生 産 応 用 で は,対 応 点 の 認 識 処 理 を含 む ス テ レオ ビ ジ ョ ン よ りは,あ
い ま い さの 少 な い レー ザ 光 投 射 に よ る ア ク テ ィ ブ レ ン
ジ セ ンサ が 多 く用 い ら れ る 。 動 作 条 件 が 過 酷 な ア ー ク溶 接 用 ビ ジ ョ ンセ ンサ で は,そ の 耐 環 境 性 と信 頼 性 が 導 入 の 成 否 を決 定 す る6,7)。最 適 な セ ン シ ング 手段 を シス テ ム 構 築 が 容 易 で 運 用 性 に優 れ た 汎 用 画 像 処 理 シ ス テ ム に組 み 合 せ て構 成 した,い
わ ば 汎 用 的 な 専 用 シス テ ム が 柔 軟 な画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム の 条 件 と
考 え られ る。
1.4.4 画 像 処 理 シ ス テ ム の 部 品 化 マ イ ク ロ プ ロ セ ッサ の 高 性 能 化 と画 像 処 理LSIの
発 展 は,こ
の20年 間 に画 像
処 理 シ ス テ ム に大 幅 な(1桁 以 上 の)低 価 格 化 を も た ら した 。DSPあ 処 理LSIを
る い は画 像
搭 載 す る画 像 処 理 ボ ー ドをパ ー ソナ ル コ ンピ ュ ー タ(PC)に 内 蔵 した,
シ ンプ ル で 安 価 な シ ス テ ム に よ っ て,生 行 で き る よ う に な っ た 。 現 在 で は,テ
産 分 野 の 多 くの 画 像 解 析 を実 時 間 で 実 レ ビ カ メ ラ,画 像 処 理 回路,お
よ びマ イ
ク ロ プ ロ セ ッサ を一 体 化 した もの が イ ンテ リ ジ ェ ン トセ ンサ と して 開 発 さ れ て い る8)。 ま た,生
産 現 場 で 多 用 され る 画 像 処 理 機 能 につ い て は,メ
で 設 定 で き る ま で に教 示 が 簡 易 化 さ れ,プ
ニ ュー選択
ロ グ ラ ム 開 発 を 要 しな い もの ま で 製
品 化 され て い る 。 この 場 合,比 で 多 用 が 許 さ れ れ ば,見 る こ と に よ っ て,柔
較 的 品 質 の よ い 画 像 に制 限 さ れ るが,低
価格化
や す い位 置 に カ メ ラ を 配 置 し,処 理 装 置 を分 散 配 置 す
軟 で信 頼 性 の 高 い生 産 ラ イ ン を構 築 す る こ とが で き る。 究
極 的 に は 画 像 処 理 シ ス テ ム が 従 来 のFAセ
ンサ の よ う に 部 品 化 さ れ る こ と に な
る。
1.4.5
位 置 決 め,組
近 年,車
付 け機 構 と の融 合
両 組 立 て工 程 の 自動 化 率 を上 げ る方 策 と して,モ
ジ ュ ー ル生 産 方 式
に 注 目が 寄 せ られ て い る。 組 立 て作 業 を複 数 の モ ジ ュ ー ル に 分 割 し,各 モ ジ ュ ー ル の サ ブ ラ イ ン に よ る並 列 生 産 と,モ ジ ュ ー ル の 組 付 け作 業 に よ る メ イ ン ラ イ ン の 組 立 て 工 数 削 減 に よ り,生 産 リ ー ドタ イ ム の 短 縮 と 自動 化 率 の 向 上 を 図 る も の で あ る9)。 モ ジ ュ ー ル 化 に よ る位 置 決 め 機 構や 組 付 け機 構(ね じ締 め機, ロ ボ ッ ト)の 共 通 化 に よ り,生 産 の 多 様 化 に 容 易 に対 処 す る こ とが で きる 。 個 々 の 製 品 モ ジ ュ ー ル の 組 付 け に 際 して は,不 確 実 性 を吸 収 す る た め に画 像 処 理 シ ス テ ム が 用 い られ るが,作
業 の モ ジ ュ ー ル化 に よ っ て視 覚 機 能 も限 定,共
通化
さ れ る の で 都 合 が よ い 。 ホ イ ー ル装 着 や ガ ラス 装 着 の た め の 位 置 決 め が 実 現 さ れ て お り10),画 像 処 理 シス テ ム の 部 品 化 に よ っ て,今 け機 構 との 一 体 化,融
後 は各 種 モ ジ ュ ー ル 組 付
合 が 容 易 に行 わ れ る だ ろ う 。 最 近,移
動 ・回 転 ス テ ー ジ
と 画 像 処 理 シ ス テ ム を一 体 化 した 製 品 も 出 て き て い る11)。ア ー ク 溶接 や シー リ ング の よ う な な らい 作 業 を行 う ロ ボ ッ トで は,視
覚 機 能 と ロ ボ ッ ト動 作 が 一 体
と な っ た 働 きが 必 要 で あ る。 実 時 間性 と信 頼 性 が 要 求 され る が,画 化 を 検 出 す れ ば よ い の で 簡 単 と な る。 た だ し,セ
像処理 は変
ン シ ング デ バ イ ス の 性 能 が 鍵
と な る6)。
1.4.6
セ ンサ の 高 性 能化 と多 様 化
セ ンサ の 高 性 能 化 と多 様 化 に よ り,画 像 処 理 応 用 シス テ ム の 適 用 領 域 拡 大 と 対 象 の 変 動 に対 す る 柔 軟 性 を 高 め る こ とが で き る。 生 産 現 場 で は,ア
ル ミニ ウ
ム 製 鋳 物 部 品 や 電 子 部 品 の は ん だ 部 の よ う な 反 射 輝 度 の ダ イ ナ ミ ック レ ンジ が 大 き い 対 象 が あ る。 この よ う な対 象 に対 応 で き る高 ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジ カ メ ラ の 開 発 に よ っ て,画
像 品 質 が 十 分 で な い た め 自動 化 が 遅 れ て い る 分 野 へ の 画 像
処 理 の適 用 が 期 待 さ れ る12)。 また,電
子 部 品 実 装 の 高 密 度 化 や 組 立 て の 自動 化 の 進 展 に伴 い,対
象 を三 次
元 物 体 と し て 取 り扱 う必 要 性 が 高 ま り,三 次 元 の距 離 ・形 状 セ ン サ が ま す ます 重 要 と な っ て き て い る。 しか し,受 光 器 がCCDカ
メ ラ で あ る た め,こ
理 速 度 が 標 準 の ビデ オ フ レー ム レー トで 制 限 さ れ て い た 。 最 近,こ
れ まで処
の 限界 を打
破 し三 次 元 距 離 ・形 状 セ ンサ を 高 速 化 す る 試 み が な さ れ て きて い る13)。受 光 部 の構 成 は従 来 のCCDカ
メ ラ と 同様 な構 造 を と るが,光
電 荷 の 読 出 し回 路 に 高 速
度 化 の 工 夫 が な され て い る 。 距 離 ・形 状 セ ンサ の 構 成 につ い て は,三 に 基 づ く もの がFA分
野 で は 一 般 的 で あ るが,レ
軸 が 交 差 す る2軸 構 成 を と る た め,セ
角測 量法
ー ザ ビー ム投 射 系 と受 光 系 の 光
ンサ デ バ イ ス そ の も の の 小 型 化 に 限 界 が
あ り,ま た 対 象 の 一 部 に死 角 が 生 じ る こ とが あ る 。 特 に 高 密 度 実 装 が 進 む 電 子 部 品 の 形 状 検 査 の 場 合,限
界 が あ る 。 最 近,対
状 計 測 を行 うshape-from-focus法
象 表 面 の合 焦 位 置 を検 出 し て形
に基 づ く三 次 元 形 状 セ ンサ の 開 発 が 進 ん で お
り14),高 密 度 空 間 計 測 技 術 と し て期 待 され て い る。
■ 参
考
文
献
1) (社)計 量 管 理 協 会 光 応 用 計 測 技 術 調 査 研 究 委 員 会 編:光
計 測 の ニ ー ズ と シ ー ズ,コ
ロ ナ 社,
1990. 2) 本 書 第2章2.1.1項,第3章3.2.1項 3) 西 條,吉 発,精
田,鈴
木,大
密 工 学 会 第7回
4) 江 尻,太 5) 長 田,亀 論 文 誌C,
隅,塚
参 照. 本:赤
外 画 像 と 可 視 画 像 を用 い た 非 接 触 皮 膚 温 計 測 装 置 の 開
「外 観 検 査 の 自 動 化 」 ワ ー ク シ ョ ッ プ 論 文 集,pp. 60-65,
田,池
内:マ
シ ン ビ ジ ョ ン,pp. 13-29,昭
井,赤
根,中
嶋:感
112, 2, pp. 111-116,
性 計 測 技 術 に 基 づ く真 珠 品 質 評 価 シ ス テ ム の 開 発,電
い 作 業 ロ ボ ッ トの セ ン シ ン グ,日
7) 石 井,金
子,片
pp. 96-101, 8) 小 林,武 学 会 第7回 9) 小 飼:メ pp. 935-938, 10) 前 川:車
月:ア
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1992.
6) 奥 平:倣
山,望
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本 ロ ボ ッ ト学 会 誌,15,
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ー ク 溶 接 ロ ボ ッ ト用 視 覚 セ ンサ,日
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木:高
開 発 と そ の 応 用,精
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1998. 長,北
村,荒
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性 能 画 像 処 理LSI(ISP-X)の
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本 ロ ボ ッ ト学 会 誌,15,
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1997. 11) 袴 田:画
像 処 理 機 能 付 き ア ラ イ メ ン トコ ン ト ロ ー ラ,精
密工 学 会画 像 応 用技 術 専 門委 員会
研 究 会 報 告,10, 12) 山 田,中
野,山
工 学 会 第7回 13) 八 木,矢
4, pp. 30-33, 本:広
1996.
ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジ 視 覚 に よ る 照 明 変 動 に 強 い 部 品 位 置 決 め,精
「外 観 検 査 の 自 動 化 」 ワ ー ク シ ョ ッ プ 論 文 集,pp. 27-32, 橋,糊
田,藤
井,田
邊:高
速 光 切 断 法 に よ る3次
「外 観 検 査 の 自動 化 」 ワ ー ク シ ョ ッ プ 論 文 集,pp. 44-48, 14)
M.
Noguchi
Illumination, 15) 石 井:次
and Proc.
S.K.
Nayar:
on Intl. Conf.
Microscopic on Patt. Recog.,
元 形 状 計 測,精 密 工 学 会 第7回
1995. Shape
October
from
1997.
Focus
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1994.
世 代 生 産 シ ス テ ム の た め の ビ ジ ョ ン セ ン シ ン グ 技 術,日
6, pp. 834-837,
密
1995.
本 ロ ボ ッ ト学 会 誌,15,
第2章 画像 計測 ・検 査技 術 の基礎 で は,画 像 形成 技術 とその光 学 的基礎,画 像 の処 理 法,お よび感 覚量の 客観 的評 価 法 につい て述 べ て いる。 第3章 画像計 測 ・検 査 シス テ ムの設 計 で は,シ ステ ム 設計 の基 本的 な方 法 と設計上 留 意 すべ き事項 につ いて述 べ てい る。画像 処理 につ いて すで に基 本 的 な知 識 を有 す る読 者 あ るい はと りあえ ず画 像処 理応 用 の全体像 をつ か み た い と考 え る読者 は,本 編 を飛 ば し第4章 以 下の応 用 編 に進 み,必 要 に応 じて本編 を参照 しても よい。
第2章
画像計測 ・検査 技術の基礎
画 像 は,狭 義 で は 自然 界 や 人 工 環 境 中 の 目 に見 え る シー ンの 二 次 元 的 な投 影 で あ り,身 近 な 例 は,写 か し最 近 は,コ
真,テ
レ ビ な どに よ り映 し出 され る 画(え)で あ ろ う。 し
ン ピ ュ ー タ グ ラ フ ィ ック ス な ど に よっ て も さ ま ざ ま な リ ア ル な画
像 が つ くれ る よ う に な り,ま た,X線CT(computer
tomography)な
ど に よ って,
か つ て 人 間 が 直 接 見 る こ との で き な か っ た 生 体 の 断 層 像 の 可 視 化 が で きる よ うに な り,そ の対 象 は きわ め て 広 範 囲 に わ た る もの とな っ て い る 。 そ の 中 で,計 測 や 検 査 の 対 象 と な る"画 像"と は,画 像 が 形 成 さ れ る過 程 を通 し て 画 素 の 明 暗 や 色, ま た は そ の 二 次 元 的 な 変化 の 仕 方 に違 い が 生 じ,そ れ に 何 らか の 物 理 的 情 報 が 投 影 さ れ た もの で あ る。 計 測 や 検 査 は そ の情 報 を抽 出 し対 象 の 状 態 を判 断 す る手 段 と い え る(図2.1)。
そ の た め,画 像 計 測 ・検 査 で は,対 象 と な る 画 像 が どの よ う
に形 成 さ れ た の か(画 像 形 成)と い う点 を よ く理 解 した 上 で,適 切 な 情 報 抽 出(画
図2.1 画像 の 形成 と処理
像 処 理)の 方 法 を適 用 す る こ とが 必 要 とな る。 ま た,外 観 検 査 の よ う な人 間 の 目に 頼 っ た検 査 を 自動 化 す る こ と を 目的 とす る 場 合 に は,人
間 が もの を どの よ うに"見 て"い る の か と い う点 も重 要 とな る。 人 間
の 目 そ の もの の性 能 は,必 ず し も高性 能 な もの で は な い に も関 わ らず 対 象 の微 妙 な 差 や 特 徴 を き わ め て短 時 間 で"認 識"ま た は"発 見"す る。 こ れ は,い
か に人間
の 脳 の 中 で 高 次 元 の 情 報 処 理 が行 わ れ て い る か を示 して い る 。 この 能 力 を現 在 の 計 算 機 に 要 求 す る こ と は で きな い 。 一 方 わ れ わ れ は,人 間 の 目 よ り も よ り高 機 能 な"画 像 形 成"法 また は セ ンサ を使 う こ とが で き る。 た とえ ば,偏 光 や 位 相 の 情 報 を抽 出 す るセ ンサ に よ り,人 間 の 目 よ り も単 純 化 され,信 られ,後
頼 性 の 高 い"画 像"が 得
段 の 演 算 能 力 が低 レベ ル で あ っ て も肉 眼 を 上 回 る"計 測 ・検 査"が 可 能 と
な る。 つ ま り,い か に セ ンサ の段 階 で 検 査 の た め に必 要 とな る情 報 を しぼ り出 せ る か が 重 要 で あ り,そ の た め の画 像 形 成 法 が 画 像 を用 い た 検 査 ・ 計 測の基本 とな る 。 外 観 検 査 で は 人 間 の見 た い情 報 をい か に 強 調 す る か,ま た 画 像 に現 れ る感 覚 的 な量 の 取 扱 い を どの よ うに行 うか も重 要 な 課 題 と な る 。 い ず れ に して も,画 像 計測 ・ 検 査 の 過 程 で最 も重 要 な 部 分 は,画 像 を形 成 す る過 程 お よ び そ れ に よ っ て い か に 目的 に最 適 な検 出信 号(情 報)を 得 る か で あ り,こ の 章 で はそ の基 礎 につ い て 概 説 す る。
2.1
画 像 形 成
画 像 の 形 成 は,種
々 の"光 学 系"と"照 明"に よ り構 成 され る対 象 の 画像 情 報 の伝
送 部 と,そ れ を 電 気 信 号 に 変換 す る"セ ンサ"に よ り行 わ れ る。 こ こで,そ れ ぞ れ につ い て 概 説 し よ う。
2.1.1
画 像 形 成 の た め の基 本 要 素
(1) 基 本 的 な 結 像 光 学 系 こ こ で は,何
らか の 照 明 に よ っ て照 ら さ れ た 物 体 か ら受 光 ま た は撮 像 素 子 ま
で 画 像 を伝 達 す る 画 像 形 成 光 学系,主
と して 結 像 光 学 系 の 基 本 的 な事 柄 につ い て
述 べ る 。 光 学 系 を構 成 す る 要 素 と して は,レ な どが あ るが,レ
ンズ,ミ
ラー,プ
ンズ に よ る変 換 作 用 を 中心 に述 べ る 。
リズ ム,偏 光 素 子
(a) レン ズ の 結 像 作 用 結 像 の た め に用 い られ る光 学 系 と は、 対 象 とな る物 体 の 空 間(物 空 間)を 画像 の 空 間(像 空 間)へ 座 標 変 換 す る もの で あ る。 一 般 的 に は 球 面 系 か らな る反 射 ・ 屈折 を介 して この 変 換 は 行 わ れ,凹 まず,最
凸 レ ンズ,反
射 鏡 な どが 用 い ら れ る 。 こ こ で は
も基 本 と な る 薄 肉 凸 レ ンズ に よ る結 像 に つ い て説 明 す る 。
① 薄 肉 レ ン ズ に よ る結 像
こ こ で 表 裏 で 等 しい 曲 率 半 径 を も ち,そ
の厚
み が 他 の 関 連 す る 距 離 パ ラ メ ー タ に 比 べ て 十 分 薄 い レ ン ズ に よ り,物 体OAを 像0'A'へ
結 像 して い る 場 合 を考 え る(図2.2)。
で は考 え な い。 こ こで,F,
あ と で 簡 単 に ふ れ る収 差 は こ こ
F'を 前 方 焦 点,後 方 焦 点(forward,
points)と 呼 び,そ れ ぞ れ と レ ンズ 中 央 との 距離f,
backward
focal
f'を 前 方 お よ び後 方 焦 点 距 離
(focal length)と 呼 ぶ 。 焦 点 を 通 過 す る光 束 は レ ンズ 通 過 後,光
軸 に対 して 平 行
光 とな り,逆 に 平 行 光 は 焦 点 に 集 ま り,ま た レ ン ズ 中 央 を 通 過 す る 光 線 が 直 進 す る とい う性 質 を使 っ て,図 す こ とが で き る。 この 場 合,物
のOAか
らO'A'へ の 結 像 の様 子 を作 図 に よ っ て 示
体 お よび そ の像 と レ ンズ との 距離z, z'と
点 距離f, f'と の 間 に は,物 体 空 間 お よ び像 空 間の 屈 折 率(index)を
上記焦
そ れ ぞ れn,
n'と して (2.1) な る よ く知 ら れ る 関 係 が 成 り 立 つ 。 レ ン ズ 周 囲 を 空 気 と し て,簡 と お け ば 周 知 の ガ ウ ス(Gauss)の hは 像 面 で 高 さh'に
レ ンズ公 式 が 得 られ る。 こ の系 で 物 体 の 高 さ
変 換 さ れ そ の 横 倍 率(transverse
図2.2
単 にn=n'=1
薄 肉 レンズ に よ る結像
magnification)mTは,
(2.2) 光 軸 方 向 の 縦 倍 率(longtudinal
magnification)mLは,
(2.3) と な る 。 実 際 の 光 学 系 で は,複 数 の レ ンズ を組 み 合 わせ て 適 切 な 倍 率,焦
点深
度(後 述)を 得 る こ とが 多 い 。 た と え ば2枚 の 薄 肉 レ ンズ を用 い た結 像 は,図2.3 の よ う に焦 点 距 離f1, f2の2枚 の 薄 肉 凸 レ ンズⅠ,Ⅱ を距離dだ 単 の た め周 囲 媒 質 を空 気(n=n'=1)と Ⅰに よ る像 位 置z'1(レ
け 隔 て てお き,簡
す る と,先 の レ ンズ 公 式 を用 い て レ ンズ
ンズⅡ に 対 して はz2=d-z'1手
前 に で きる)が 計 算 で き
る。 そ れ を レ ンズⅡ に よ り再 結 像 し,最 終 的 な像 は レ ンズⅡ か ら,
(2.4)
の 位 置 に,
(2.5) な る横 倍 率 で 形 成 され る 。 また この レ ンズ系 の 合 成 焦 点 距 離fは, (2.6) とな る 。
図2.3 2枚 の薄 肉 レ ンズ によ る結 像
② 厚 肉 レ ン ズ の 場 合
レ ン ズ 両 面 の 曲 率 半 径 が 大 き く異 な っ て い た り,
図2.4 厚 肉 レ ンズ に よ る結像 と主 平面
そ の 厚 み が 大 き い場 合 に は,前 の 場 合,図2.4の
述 の 公 式 は そ の ま まで は 成 り立 た な くな る 。 こ
よ う に,各 屈 折 面 を薄 肉 レ ンズ とみ な し,主 点 また は 主 平 面
とい う概 念 を導 入 す る こ と で,同 様 に扱 う こ とが で き る。 こ の場 合 は,H, を物 主 点,像
主 点 と呼 び,そ れ ぞ れ と前 方,後 方 焦 点位 置F,
H'
F'と の 間 の 距 離 が
f, f'と な り,一 般 に 等 しい値 を与 え る 。 主 点 を含 み 光 軸 に垂 直 な 面 が 主 平 面 で あ る。 よ り詳 細 な,厚 肉 レ ンズ に よ る 結 像 理 論 に つ い て は参 考 文 献 に ゆ ず る。 ③ 絞 り と瞳
こ こ ま で は,レ
ン ズ は そ の 口径 全 面 に 入 射 した 全 光 束 を 結
像 面 ま で伝 播 す る と考 え て きた が,入 像 度),被
射 光 量 の 調 節,後
述 す る結 像 の細 か さ(解
写 体(界)深 度 な どの 結 像 特 性 を左 右 す る も う一 つ の 要 素 と して 絞 り
(stop)が あ る。 た とえ ば図2.5の
よ う に,二 つ の レ ンズⅠ,Ⅱ に よ りな る光 学 系
の レ ンズ 間 に光 束 を制 限 す る よ う絞 り(開 口)を お くこ と を考 え る。 図 よ りわ か る よ う に レ ン ズ に入 射 し た 光 束 は,絞
りに よ っ て レ ン ズ全 体 の 口 径 に 入 射 す る
光 線 に空 間 的 な 制 限 を与 え,結 像 面 に 到 達 す る光 量 を調 節 で き る。 絞 りが し ぼ ら れ る と物 体 か ら発 散 さ れ る光 束 の 光 軸 に 対 す る 角 度 に も制 限 を加 え る こ と と な り,最
も しぼ られ た 状 態 で は,物 体 か ら光 軸 に 対 して 平 行 に 発 散 す る光 束 の
み を 選 択 す る こ とに な る 。 こ の こ と は,結 像 光 学 系 の"被 写 体 深 度'を よ り深 く す る 反 面,像
の細 か さ を低 下 させ る こ と と な る 。 また,絞
ぞ れ に よ り見 た像(破 線 で 示 した)は,そ 出 瞳(exit
pupil)と 呼 び,そ
りの レ ンズ Ⅰ,Ⅱ そ れ
の光 学 系 の 入 射 瞳(entrance
pupil),射
れ ぞ れ か ら入 射,出 射 レ ンズ の 口径 で 決 ま る入 射,
図2.5
しぼ りと レ ンズ系 の 瞳
出射 窓 を見 込 む角 度 が,光 学 系 の"視 野 角"つ ま り観 測 可 能 な 角 度 範 囲 を 与 え る。 (b) レン ズ の フ ー リエ 変 換 作 用 凸 レ ンズ に は,単
な る 結 像 以 外 に,フ
ー リエ 変 換(Fourier
作 用 と い う重 要 な 機 能 が あ る 。 た と え ば,図2.6の
transformation)
よ う に,あ
る周 期 構 造 を も
っ た 物 体 を レ ンズ の前 方 焦 点 位 置 にお き,あ る 凸 レ ンズ の 後 方 焦 点 位 置(フ ー リ エ 変 換 面)で の 像 に つ い て 考 え る こ と とす る 。 物 体 表 面 に 垂 直 に照 明 光 が 入 射 し て い る と して,物 体 表 面 に よ り回折(diffraction)さ
れ る光 の 方 向 の 面 法 線 に対
す る 角 度 は,そ の 構 造 が 細 か い ほ ど大 き くな る。 つ ま り,よ 折 した 光 を光 学 系 で 集 め る こ とが で きれ ば,そ 点 面 にス ポ ッ ト状 に集 光 し,よ
り大 き な 角 度 で 回
の光 線 は レ ンズ 通 過 後,後
方焦
り細 か な 周 期 構 造(よ り高 い周 波 数)に 相 当 す る
回 折 光 ほ ど光 軸 か ら離 れ た 位 置 に ス ポ ッ トを 形 成 す る 。 こ の よ う に,物 体 を レ
図2.6
レ ン ズ の フ ー リエ 変 換 作 用
ンズ の 前 方 焦 点 面 に お い た 際 に フ ー リエ 変 換 面 で 得 られ る強 度 分 布 は,物 体 表 面 の 構 造 の 周 波 数 成 分 を表 した もの とい え る 。 この 原 理 を用 い,フ
ー リエ 変 換
面 に適 当 な透 過 特 性 の マ ス ク を お くこ と に よ り,さ ま ざ ま な 光 学 的 二 次 元 画 像 処 理 が 可 能 とな る。 (c) そ の 他 の画 像 形 成 光 学 系 レ ンズ に代 表 され る結 像 光 学 系 の 特 徴 は,二 次 元 の 物 体 表 面 を一 度 に像 とす る こ とが で き る点 で あ る 。 しか し,さ
ま ざ ま な制 約 に よ り信 号 と して 二 次 元 撮
像 デ バ イ ス に と っ て 十 分 な 光 量 が 得 られ な い 場 合,ま
た は そ の ダ イ ナ ミ ック レ
ン ジ が 不 十 分 な 場 合 に は,物 体 上 を ビ ー ム また は ス ポ ッ トで 二 次 元 走 査 し,ポ イ ン トセ ンサ で 信 号 を受 け る こ とで 二 次 元 画 像 を形 成 す る こ と も多 い 。 代 表 的 な例 は,図2.7に
示 す,共 焦 点(コ ンフ ォー カ ル,confocal)光
学 系 で あ る。 走 査
型 顕 微 鏡 で よ く用 い られ る系 で あ り,物 体 表 面 上 に ビ ー ム を ス ポ ッ ト状 に集 光 し,そ の 結 像 面 に形 成 さ れ る ス ポ ッ ト像 の 位 置 に微 小 な 開 口 を お き,焦 点 を合
図2.7
共 焦 点(confocal)光
学系
図2.8 ポ リ ゴ ン ミラー とf-θレ ンズ に よる平 行 走査 光 学 系
わ せ た 物 体 表 面 以 外 か ら到 達 す る 光 を 遮 断 す る こ とで,光
軸方 向の分解 能 を高
め る こ とが で きる 。 物 体 を 三 次 元 ス テ ー ジでx, y, z方 向 に 走 査 し,画 像 を形 成 す る(注:ニ プ コ ウ 回転 盤 を用 い る 二 次 元 走 査 法 もあ る)。 入 射 光 を周 期 的 に変 調 し,ホ
トデ ィテ ク タか らの信 号 を 同周 期 で ロ ッ ク イ ン(lock-in)検 出 す る こ とで,
微 弱 な 反射 成 分 も検 出 で き る点 も通 常 の 結 像 方 式 に な い メ リ ッ トで あ る。 も う一 つ の 代 表 例 は,レ
ー ザ ビ ー ム プ リ ン タ に お い て 用 い られ る ポ リ ゴ ン ミ
ラ ー とf-θレ ンズ の 組 み 合 わせ で あ る。 図2.8に
示 す よ うに 数 面 の 平 面 鏡 を多 角
形 状 に組 み 合 わせ た ミラ ー を高 速 に 回 転 す る こ とで ビ ー ム を角 度 走 査 し,f-θ レ ンズ に よ り平 行 ビ ー ム走 査 に変 換 した あ と,も
う1枚 の 回転 平 面 ミ ラ ー な どで
高 速 な 広 範 囲 の 二 次 元 走 査 を実 現 で き る 。 こ れ と 同 様 の こ と は2枚 の 振 動 回転 ミ ラー(ガ ルバ ノ ミ ラー)を 直 交 して組 み 合 わせ る こ と に よっ て も実 現 で き る。 X線CT(computer STM
tomography)に
(scanning
tunneling
代 表 さ れ る 断 層 映 像 法,近
microscope), AFM
年 身 近 とな っ た
(atomic force microscope)に
代表
さ れ る プ ロ ー ブ走 査 顕 微 鏡 の 場 合 に お い て も,可 視 光 で得 られ な い 情 報 を走 査 に よ り二 次 元 的 な画 像 と して 得 て い る 。
(2) 光 源 ・照 明 法 後 述 す る よ う に,最
終 的 に 画 像 を 取 得 す る各 種 イ メ ー ジ セ ンサ は,そ の ダ イ
ナ ミ ック レ ン ジ と し て あ る一 定 の 幅 を もっ て い る 。 また,像 一 般 的 に 用 い られ る結 像 光 学 系 も,倍 率,焦
を形 成 す る た め に
点 深 度 な ど使 用 目的 に 応 じて 選 定
の 必 要 が あ り,そ の 明 る さ に も制 限 が あ る 。 そ の た め,計
測 対 象 表 面 の もつ さ
ま ざ ま な光 学 的 特 性 に 応 じて 最 適 な 像 を 得 る た め に は,い
か に 適 切 な 明 る さ,
特 性 を もつ 照 明 法 を採 用 す る か が 決 め 手 と な る こ とが 多 い 。 結 果 と し て 得 られ る像 の 性 質 は,照
明 に用 い られ る光 源 と照 明 光 学 系 お よ び 物 体 表 面 の 光 学 的 特
性 に よ っ て 決 定 され る。 (a) 光
源
身 近 な 光 源 と して は,タ diode)な 灯,キ
どが あ り,多
セ ノ ン管,レ
ン グ ス テ ン ラ ンプ,蛍
く用 い ら れ る 。 ま た,一般
光 灯,LED
(light emission
に 明 る い 光 源 と して は,水 銀
ー ザ な どが用 い られ る 。 照 明 用 光 源 の 重 要 な 要 素 は 光 源 の
明 る さ,分 光 分 布(色),コ
ヒ ー レ ン ス(可 干 渉 性)に 大 別 で き る。 また,あ
る光
図2.9 測 光 量 に よ る光源 の 明 る さの 表現
源 に よ り照 明 さ れ た 部 分 が,最
終 的 に 観 察 面 視 野 で ど の よ うな 明 る さ の 分 布 を
もつ か につ い て も考 慮 す る必 要 が あ る。 ① 光 源 の 明 る さ 人 間 の 肉 眼 が 感 じ る光 源 の 明 る さ は 主 観 的 な もの だ が, 標 準 比 視 感 度 を基 準 と した光 束(luminous
flux)F(単
位 ル ー メ ン〔lm〕)に つ い
て客 観 的 な 測 光 量 が 定 め られ て い る。 光 源 が 点 光 源 で あ る か 面 光 源 で あ る か に よ っ て 測 光 量 が 異 な り,前 者 で は 光 度(luminous 〔cd〕),後者 で は輝 度(luminance)L(単
intensity)I(単
位 カ ンデ ラ
位 〔cd/m2〕)が 用 い られ る 。 図2.9に
示 す よ う に光 度 は,点 光 源 を頂 点 とす る測 定 方 向 に 開 い た 立 体 角dω の錐 体 内 に 光 束dΦ が 放 射 され る と き,単 位 立 体 角 あ た りの 光 束dΦ/dω
に よ り表 さ れ,白
金 の 融 点 に お け る 黒 体 表 面 か ら の 放 射 を基 準 と して 定 め ら れ て い る。 輝 度 は, 微 小 面 積dA〔m2〕
を もつ 光 度dI〔cd〕 の 光 源 を 光 源 面 法 線 か ら角 度 θ を なす 方 向
か ら見 た と き に感 じる 単 位 面 積 あ た りの 明 る さ(ま ぶ し さの 程 度)で あ る。 光 源 に よ り照 明 され た あ る面 積dAの
面 を見 た と き に感 じる 一 種 の 二 次 光 源 の 明 る さ
も同 様 に 定 義 で き,こ れ を照 度(illluminance)E(単
位 ル ッ クス 〔lx〕)と呼 ぶ 。
光 度I〔cd〕 の 点 光 源 に よ り距 離d〔m〕 に お か れ た 角 度 θ傾 い た 面 を 照 明 した と き の照 度 は,Icosθ/d2と
な る。
一 方,レ
ー ザ や 電 球 な どの よ う に,そ の 光 源 が 単 位 時 間 中 に 輻 射 す るエ ネ ル
ギ ー に よ っ て 光 源 の 明 る さ を表 現 す る こ と も多 い 。 こ の場 合 そ の 単 位 は ワ ッ ト 〔W〕で あ る 。 物 理 的 な意 味 で の 光 強 度(intensity)は
単 位 面 積 あ た りの通 過 エ ネ
ル ギ ー 量 の 時 間平 均 で 定 義 さ れ,単 位 は 〔W/m2〕で あ る。 ② 光 源 の 色(ス ペ ク トル 分 布)
必 要 な光 源 の 明 る さ は,実 際 に は そ の 輻
射 の 色 に 対 し肉 眼 ま た は 検 出器 が どの 程 度 の 感 度 を もつ か も関 係 す る 。 よ っ て, 光 源 お よ び セ ンサ を 選 ぶ と き は,画 像 形 成 の対 象 と測 定 目的 に 応 じて 両 者 の マ ッチ ン グ を 考 慮 せ ね ば な ら な い。 ま た,計 測 対 象 と な る 物 体 表 面 の 波 長 に対 す る 分 光 反 射 率 特 性 も考 慮 す る必 要 が あ る 。 一 般 に幅 広 い 波 長 幅 で な る べ く安 定 した 照 明 を行 う に は,タ
ン グ ス テ ン 白 熱 電 球 や キ セ ノ ン管 な どが 用 い られ る。
計 測 対 象 が あ る 波 長 に対 して 特 異 的 な 反 射 特 性 を もつ 場 合 に は,そ 源 で 照 明 す る と効 果 的 な こ とが 多 い 。 この 場 合,上
の波長 の光
記 の ような光源 の特定波 長
の み を フ ィル タ に よ り選 択 す る な ど の 方 法 が と ら れ る。 た だ し,発 光 波 長 が 単 一 波 長 に近 い 準 単 色 光 と な る と ,後 述 す る よ う に時 間 的 な コ ヒー レ ンス も高 く な り,画 質 に変 化 が 生 じる 。 極 端 な例 は レー ザ で あ る。 また,短
波 長の光源 ほ
ど,結 像 に お い て 高 い 空 間 分 解 能 を与 え る 点 も光 源 の ス ペ ク トル 分 布 を選 択 す る 際 に重 要 な 要 素 とな る。 ③ コ ヒ ー レ ン ス
コ ヒ ー レ ンス(可 干 渉 性)は,簡
単 に い う と光 の 干 渉(異
な る 位 相 の 波 の重 ね 合 わ せ に よ る 強 度 的 な 強 め 合 い と弱 め 合 い)の 程 度 を表 す 用 語 で あ り,時 間 的 コ ヒ ー レ ンス と空 間 的 コ ヒー レ ンス に 分 け られ る(図2.10参 照)。 しか し,一 般 の(輻 射 の 原 理 か ら見 て)低 コ ヒー レ ン トな 光 源 にお い て も,
図2.10
時 間 的 コ ヒ ー レ ン ス と空 間 的 コ ヒ ー レ ン ス
図2.11
低 コ ヒ ー レ ン ト照 明 と 高 コ ヒ ー レ ン ト照 明
そ の 空 間 的 コ ヒー レ ンス が,撮 像 さ れ た 画 像 の 性 質 に著 し く影 響 す る 。 そ の様 子 を 図2.11(a), れ た 光 は,多
(b)に 示 す 。(a)の よ う に比 較 的 広 い 面 積 を もつ 光 源 か ら放 出 さ
く用 い られ る ケ ー ラー 照 明 に お け る コ ンデ ンサ ・レ ンズ に よ り物 体
に異 な る 角 度 を もっ て 照 射 され る。 これ が 低 コ ヒ ー レ ン ト照 明 で あ る。 一 方(b) の よ う に 絞 りな ど に よ っ て 光 源 の 面 積 を 規 制 し,点 に 近 い光 源 か ら放 出 さ れ た 光 は,レ
ン ズ に よ り平 行 光 に 近 い 状 態 と な り物 体 を ほ ぼ あ る1方 向 か ら照 明 す
る こ と に な る。 これ を 空 間 的 な コ ヒ ー レ ン ト照 明 と呼 ぶ 。 コ ヒ ー レ ン ト照 明 で は結 像 で き る深 さ(焦 点 深 度)が 深 い 反 面,可 干 渉 性 の 高 さ の た め 画 像 に 斑 状 の ノ イ ズ(ス ペ ッ ク ル)が の りや す い 。 ま た 低 コ ヒー レ ン ト照 明 の 方 が,物
体面 に
対 して 傾 い た 方 向 か らの 照 明 光 成 分 を もつ た め得 られ る 解 像 力 に お い て も有 利 で あ る 。 した が っ て,レ
ー ザ を光 源 と して 用 い る場 合 に は,こ の 点 に 十 分 注 意
す る必 要 が あ る 。 画 像 形 成 に お い て コ ヒー レ ンス が 高 い場 合 が 常 に不 利 か とい う とそ うで は な い 。 レー ザ が 時 間 的 に も空 間 的 に も高 コ ヒー レ ンス 光 の 代 表 で あ る が,可 性 の 高 さ は,光
干渉
の 波 と し て の さ ま ざ ま な 性 質 を顕 著 に 示 す た め に必 要 で あ り,
コ ヒ ー レ ン ト光 源 を 用 い る こ と に よ り光 の 波 長 を基 準 と し た干 渉 法 な どに よ り 高 さ や 屈 折 率 の 分 布 の 画 像 形 成 が 可 能 と な る。 また,レ れ て い る た め,光
ーザ はそ の直進性 が優
の 利 用 効 率 を 上 げ る こ とが で き,し か も光 の 電 場 ベ ク トル の
振 動 方 向 で あ る偏 光 に つ い て も良 好 な 直 線 偏 光 を得 る こ とが で き る た め,光
の
偏 光 の 変 化 を伴 う物 理 的 画 像 情 報 の抽 出 に お い て も威 力 を発 揮 す る 。 こ うい っ た 意 味 で,光 (b) 照
明
の波 動 性 を い か した 画 像 形 成 で は レ ーザ 光 の利 用 は不 可 欠 で あ る。 法
あ る 光 源 か ら放 出 され る 光 を 効 率 よ く物 体 に照 射 す る こ と は,明
るい 画像 を
図2.12 代 表 的 な照 明法
得 る た め に重 要 で あ る。 顕 微 鏡 な どで用 い られ る照 明 は,大 別 す る と図2.12に 示 す,臨 界 照 明,ケ
ー ラ ー(Koeler)照 明,暗 視 野 照 明 が あ る 。 臨 界 照 明 は 光 源 の
像 を物 体 表 面 に直 接 投 影 す る方 法 で あ り,強 い 照 明 が で き る反 面,光 ラ メ ン トな どの 場 合,そ ケ ー ラー 照 明 は,光
の 形 が そ の ま ま像 に重 な る た め 画 像 む らの 原 因 と な る 。
源 ま た は そ の 一 次 結 像 面 を コ ンデ ンサ ・レ ンズ の 前 方 焦 点 面
に お く こ とで この 問 題 を解 決 した もの で,均 ま た,光
源が フィ
一 で 比 較 的 強 い 照 明 が 得 られ る 。
源 の 一 次 結 像 面 に 絞 り を配 置 す れ ば そ の大 き さ に よ っ て,照
明 の強 さ
と,先 に 述 べ た 空 間 的 コ ヒー レ ン ス を コ ン トロ ー ル す る こ とが で き,ス
ライ ド
プ ロ ジ ェ ク タ な ど に 一 般 的 に最 も多 く用 い られ て い る 。 暗視 野 照 明 は,顕 微 鏡 に お い て 結 像 分 解 能 を越 え る小 さ な構 造 の存 在 を確 認 す る た め の 照 明 法 で,照 明光 が 直 接 結 像 系 に入 射 しな い よ う に物 体 を斜 め か らの み 照 明 す る方 法 で あ る 。 細 か い 構 造 に よ っ て 散 乱 され た 光 の み を結 像 す る こ とで,暗
い 背 景 中 に微 小 な
物 体 や わ ず か な不 均 一 の 存 在 が 観 察 で きる 点 が特 徴 で あ る。 外 観 検 査 な どで使 用 さ れ る特 殊 な照 明法 と して は,図2.13に
示す斜方照 明 と
無 影 照 明 が あ げ ら れ る。 斜 方 照 明 は 物 体 を 平 行 光 に 近 い 光 で 斜 め か ら照 明 し, 物 体 の 表 面 形 状 に よ る反 射 や 散 乱 の 違 い を 強 調 す る 照 明 法 で あ り,物 体 が 光 沢 面 で あ る場 合 に は そ の エ ッ ジや き わ め て わ ず か な 凹 凸 の 変 化 な ど を画 像 と して 強 調 で きる 。 ま た,照
明 光 源 を既 知 の 角 度 に 複 数 配 置 し,そ れ ぞ れ の 光 源 に対
図2.13 斜 方照 明 と無影 照 明
す る 反 射 分 布 を と ら え る こ と に よ り,物 体 表 面 の 形 状 な ど の 情 報 を得 る こ と も で き る。 一 方,一
般 の 照 明 法 で は 物 体 の 表 面 形 状 や 照 明 角 度 に 応 じて 画 像 中 に
影 が 生 じた り,同
じ反 射 率 の 面 の 場 合 で も明 る さ の む らが 生 じて し ま う。 物 体
の 形 状 に左 右 さ れ ず に,物 体 表 面 の 性 状 の 変 化 を と らえ た い場 合 な ど に お い て は,こ
の よ うな 影 や む ら を除 去 した い 場 合 が 多 くあ る 。 こ う した 場 合 に用 い ら
れ る の が 無 影 照 明 で あ る 。 複 数 の 点 光 源 を広 い 面 積 中 に ア レイ 状 に 配 置 した も の や,リ
ン グ状 の 蛍 光 管,EL素
子 や 液 晶 デ ィス プ レイ 用 バ ッ ク ラ イ トの よ う な
面 状 光 源 が 用 い られ る こ とが 多 い 。
(3) イ メ ー ジ セ ンサ3) あ る照 明,光
学 系 に よ り得 られ た 像 を最 終 的 に 画 像 とす る の が,イ
ンサ で あ る。 画 像 の 点,線,面
メ ー ジセ
の 情 報 に着 目 して 分 類 した もの を 図2.14に
まと
め て あ る 。 離 散 的 な 空 間点 の 強 度 情 報 を観 測 す る 際 の サ ン プ リ ン グ 定 理 に つ い て も簡 単 にふ れ る 。 (a) ポ イ ン ト(点,0次
元)セ ンサ
画 像 の1点 で の 光 強 度 を有 限 の 面 積 を もつ 単 一 光 検 出 器 で 受 光 す る もの で,
図2.14
各 種 イ メー ジ セ ンサ
光 電 効 果 を利 用 した 光 電 子 増 倍 管(photomultiplier)や る ホ トダイ オ ー ド(PD: photo
diode),ホ
半 導 体 の光 起 電力 を用 い
ト トラ ンジ ス タ(photo
transistor)に
代 表 さ れ る。 画 像 化 で は 多 次 元 の 走 査 型 光 学 系 と組 み 合 わ せ て 用 い る。 素 子 内 で の 電 気 的 走 査 が な い た め,高 ンジ が 得 ら れ,低
い 時 間 的 サ ン プ リ ン グ レー トと ダ イ ナ ミ ッ ク レ
周 波 数 の ノ イ ズ を抑 制 し高 感 度 が 得 られ る ロ ック イ ン検 出 と
の 組 み 合 わ せ が 容 易 な 点 に 特 徴 が あ る 。 遠 赤 外,X線
な ど可 視 光 領 域 外 で 感 度
を もつ もの も あ り,そ の領 域 で ア レイ 検 出 器 が 入 手 困 難 な場 合 に も有 効 で あ る。 ま た,ホ
トダ イ オ ー ドの 光 検 出 部 を2な い し4分 割 した デ バ イ ス もあ り,光 ス ポ
ッ ト位 置 の 変 位 検 出 な ど に も用 い られ る。 (b) ラ イ ン(線,一
次 元)セ ン サ
ポ イ ン トセ ンサ(こ れ を画 素 と呼 ぶ)を 一 次 元 に 配 列 し,そ の 方 向 の 光 強 度 分 布 を電 気 的 な走 査 ま た は並 列 出力 に よ り検 出す る イ メ ー ジ セ ンサ で あ る。 代 表 的 な もの はCCD CCDラ
(charge coupled
device,電
荷 結 合 素 子)ラ イ ンセ ンサ で あ る 。
イ ンセ ンサ は,ホ トダ イ オ ー ドと電 荷 転 送 部 を一 次 元 に 配 列 した もの で,
ホ トダ イ オ ー ドに 蓄 積 され た光 励 起 電 荷 を ラ イ ン方 向 に 逐 次 転 送 す る こ とで 線 状 の 光 強 度 分 布 を 出 力 す る。 フ ァ ック ス に代 表 さ れ る よ う に セ ンサ 軸 に垂 直 な 方 向 へ の 物 体 ま た は セ ン サ の 走 査 と組 み合 わ せ て 二 次 元 の 画 像 を 得 る 。 ま た, 物 体 表 面 に投 影 さ れ た 光 ス ポ ッ トの像 位 置 を斜 め か ら検 出 す る こ と で 三 角 測 量 に よ る 距 離,変
位 セ ンサ と して 用 い られ る こ と も多 い 。 信 号 を並 列 出 力 す る ホ
ト ダ イ オ ー ド ア レ イ や ス ポ ッ トの 位 置 検 出 を 行 う 一 次 元PSD sensitive device)な
(position
ど もあ る 。 機 械 的 走 査 の 柔 軟 性 と電 気 的 走 査 の 高 速 性 を う
ま く組 み合 わ せ,全 体 の ス ル ー プ ッ トを上 げ る応 用 が 多 い 。 (c) エ リア(面,二
次 元)セ ン サ
画 素 を 二 次 元 に配 列 し,電 気 的 な 二 次 元 走 査(ラ ス タ走 査)に よ り画 像 情 報 を 得 る もの で あ る 。 素 子 配 列 は 人 間 の 目 を模 倣 し て い る が 画 像 信 号 は 逐 次 時 間 信 号 に 変 換 さ れ る 。 目の よ う な並 列 処 理 を行 う こ と は将 来 の 課 題 だ ろ う。 か つ て は ビ ジ コ ン に 代 表 さ れ る 撮 像 管 方 式 で あ っ た が,現 oxide semiconductor),
CMOS
(complimentary
在 はCCD,
MOS)な
MOS
(metal
ど固体 撮 像 素 子 が 主 流
で あ る。 固体 撮 像 素 子 の 画 素 は 精 度 よ く二 次 元 配 置 され て い る た め 画 像 の ひず み が 少 な い こ と,高
感 度 で 劣 化 が 少 な く小 型 化 が 容 易 な 点 が メ リ ッ トで あ る。
現 在 はCCD撮
像 素 子 が ほ とん どで あ るが,低
電 力 で広 い ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジ を
もつCMOS撮
像 素 子 が 今 後 増 え る 可 能 性 が あ る。 エ リア セ ンサ で は 光 検 出感 度
に 空 間 的 な む ら(シ ェ ー デ ィ ン グ)が 生 じ る場 合 が あ る 。 画 像 計 測 で は こ の む ら を あ らか じめ 測 定 し補 正 す る必 要 が あ る(シ ェ ー デ ィ ン グ補 正)。 ほ か に は,光 ス ポ ッ トの 二 次 元 座 標 を検 出 す る た め の 二 次 元PSDも
あ る。
(d) サ ン プ リ ン グ定 理 前 述 の 一,二
次 元 セ ンサ に よ り連 続 的 な画 像 が 離 散 的 な量 子 化 さ れ た 信 号 列
へ 変 換 され る。 こ の と き どの 程 度 の 細 か さ の 画 像 が得 られ る か は"サ ンプ リ ン グ (標 本 化)定 理"に 従 う。 画 素 ピ ッチPで サ ンプ リ ング され た 画 像 で 分 解 され る最 小 の 構 造(周 期)は2P以
上 で な けれ ば な らず,そ
れ 以 上 細 か い構 造 は縞 模 様 な ど
の"折 り返 し誤 差(エ イ リア ジ ン グ)"を 生 じる 。 固体 撮 像 素 子 に は縦 横 の 画 素 寸 法 比(ア ス ペ ク トレ シ オ)の 異 な る もの もあ り,そ の 際 に は縦 横 で の 分 解 能 が 異 な る。 こ れ ら の 点 に注 意 して 結 像 光 学 系 の 分 解 能 と撮 像 素 子 の サ ンプ リ ング 特 性 を う ま く適 合 させ る 必 要 が あ る 。 ま た,こ
うい っ た 問 題 を避 け る た め に,ポ
イ ン トま た は ラ イ ンセ ン サ と機 械 的 走 査 を組 み 合 わ せ る場 合 もあ る 。 デ ィ ジ タ ル 画 像 と して 画 像 メ モ リ に 蓄 え計 算 機 処 理 を行 う場 合 に は,撮
像素 子のサ ンプ
リ ン グ特 性 で は な く,画 像 メ モ リ で どの よ う な 電 気 的 サ ン プ リ ン グ を 行 っ て い る か に従 う場 合 が 多 く注 意 を要 す る 。
2.1.2
光 の 強 度 を 利 用 した 画 像 形 成
(1) 濃 淡 画 像 形 成 これ まで 述 べ た 光 源,光
学 系 に よっ て 形 成 さ れ る像 を用 い る こ とで,そ
度 情 報 を 用 い る場 合 が 画 像 応 用 に お い て 基 本 とな る。 そ の 際,画 る上 で 重 要 な フ ァ ク タ と して,得 力),収
られ る像 の 明 る さ,細
の強
像 の 質 を論 じ
か さ(空 間 分 解 能 ・ 解像
差 な どが あ げ られ る。 そ れ ぞ れ に つ い て簡 単 に説 明 す る と と も に,形 成
され た 画 像 か ら得 られ る情 報 と して どの よ う な もの が あ る か に つ い て 考 え る 。 (a) 画 像 形 成 能 力 ① 光 学 系 の 明 る さ ・分 解 能4)
先 に述 べ た,あ
強 度 に 関 す る情 報 を 最 大 限 得 る た め に は,ま
るイメー ジセ ンサにお いて
ず い か に 照 明 され た 物 体 表 面 か ら
の 発 散 光 を 効 率 よ く得 る か が 肝 要 で あ る。 そ の 際 に光 学 系 の 明 る さ に つ い て 考
図2.15 光学 系 の 明 る さ
え る必 要 が あ る 。 図2.15に 光 学 系 の 明 る さの 基 本 的 概 念 を示 す 。 物 体 表 面 を照 明 し,そ の 面 か ら発 散 され る光 束 を口 径2r,焦
点 距 離fの 凸 レ ンズ 光 学 系 に よっ
て 受 け る と き,像 側 の屈 折 率 をn'と し,光 束 は レ ンズ 有 効 径 か ら結 像 面 中央 に光 軸 に対 し角 度u'を な して 円 錐 状 に 集 ま る とす る と,像 面 で 受 け るエ ネ ル ギ ー密 度 は,(n'sin
u')2に 比 例 し,光 学 系 の 明 る さ を 規 定 す る 。 した が っ て物 体 が 焦
点 距 離 よ り十 分 遠 方 に あ る と き,明 る さ は(r/f)2に 比 例 す る。 口径d=2rの 点 距 離fに 対 す る 口径 比(relative aperture)は1:f/dと
表 し,f/dを
焦
レ ンズ のF
ナ ンバ ー(ま た はf値)と 呼 ぶ 。Fナ ンバ ー の 二 乗 が 光 学 系 の 明 る さ を 表 す 。 た と え ばFナ
ンバ ー1.2の レ ンズ はF/1.2と
(Fナ ンバ ー)はFナ
表 さ れ る。 写真 カ メ ラ に お け る絞 りの値
ンバ ー の 二 乗 が 公 比2の 等 比 級 数 と な る よ う に並 べ た もの で,
シ ャ ッ タ ー ス ピー ド(露 光 時 間 の 逆 数)はFナ
ンバ ー の 二 乗 に逆 比 例 す る 。
光 学 系 の 結 像 分 解 能 は,基 本 的 に は レイ リ ー(Rayleigh)規
範 に従 う。 い ま,
図2.16の
と して 分 離 して 解
よ う に 物 体 面 上 でΔxだ
け 離 れ た 点 が 結 像 面 で2点
像 で き る 限界(分 解 と も い う)を そ の 光 学 系 の 分 解 能 ま た は解 像 限 界 と呼 ぶ 。 前 節 と は逆 に物 体 の 光 軸 上 の1点 か ら レ ンズ を見 込 む 角 度 をu,レ
ン ズ と物 体 の 間
の 媒 質 の屈 折 率 をnと す る と,照 明 光 源 の 波 長 を λと して 無 収 差 を仮 定 す る と, 分 解 能 は, (2.7) で 与 え ら れ る 。 分 母 のnsinu(=d/2f)は,開 呼 ば れ,多
く の 場 合,顕
メ ー タ で あ る 。 前 節 のFナ
口 数NA(numerical
aperture)と
微 鏡光 学系 の分解 能や 明 るさの指標 となる重要 なパ ラ ン バ ー は1/(2NA)の
関 係 で 結 ば れ る 。 光 軸 上 の2点
図2.16
の 分 解 可 能 な深 さ もNAを
Rayleighの
分解 能 と焦点 深 度
使 って 定 義 で き, (2.8)
と な り,こ の値 が 光 学 系 の 焦 点 深 度 を与 え る 。 こ の こ と よ り光 源 の 波 長 が 短 い ほ ど分 解 能 が 高 く,焦 点 深 度 は 浅 くな るが,同
じ分 解 能 で 深 い 焦 点 深 度 を得 る
に は 波 長 の 短 い 光 源 を用 い る方 が 有 利 で あ る こ とが わ か る。 ま た レ ンズ の 外 側 の 媒 質 の 屈 折 率nを 大 き くす る と分 解 能 を高 くと れ る。 顕 微 鏡 に お い て 高 屈 折 率 のイ マ ー ジ ョ ンオイ ル を 対 物 レ ンズ と観 察 試 料 間 に 満 た す の は,1以 NAを
得,分 解 能 を 上 げ る た め で あ る。
② OTFとMTF が,実
上の 高い
前 述 のNAは,理
想 的 な 無 収 差レ ン ズ の 分 解 能 を 与 え る
際 に は さ ま ざ ま な 要 因 で レ ンズ の 結 像 性 能 が左 右 され る 。 そ の た め 結 像
性 能 の 実 際 の 評 価 に は,光 絶 対 値 で あ るMTF
学 伝 達 関 数(OTF:
(modulation
transfer
optical function)が
体 と し て コ ン ト ラ ス ト1の 正 弦 波 格 子 を 入 力 し,そ の 変 化 を も っ て,結
③ cos4則
transfer
function)や
その
用 い ら れ る 。 一 般 に,物 の 結 像 面 で の 変 調 度 と位 相
像 光 学 系 の 評 価 を行 う手 法 で あ る。
前 節 で述 べ た結 像 光 学 系 で は,薄 肉 レ ンズ を用 い た 場 合 に つ
い て 物 体 が 光 軸 近 辺 に存 在 す る こ とを 前 提 と して きた 。 しか し,実 際 の レ ン ズ は複 数 の レ ン ズ の 組 み 合 わ せ で あ る こ とが 多 く,光 軸 か ら大 き くは ず れ た 物 体 の 像 は レ ンズ に よ る"け られ"が 問 題 と な る こ とが あ る(こ の こ と を 口 径 蝕 と い う)。 こ の た め 像 の 中 央 部 に 比 較 し,像 周 辺 で は光 量 が 減 少 し,像 が 暗 く な る現
象 が 生 じ る。 これ は2.1.1項(b)に で き る。 い ま,図2.17に
お い て 述 べ た,輝
示 す よ う に,あ
度 の 定 義 よ り考 え る こ とが
る面 積dA,光
θの 方 向 で面 法 線 方 向 にdだ け離 れ た 受 光 面dA'へ
度Iの 光 源 面 の 面 法 線 と
入 る光 束dFは (2.9)
と な る 。dA'は
結 像 光 学 系 で は 入 射 瞳 と考 え て よ く,こ の 大 き さ が 口 径 蝕 に よ
り角 度 θ方 向 で 開 口効 率D(θ)/D(0)分
小 さ くな り,透 過 率 につ い て もT(θ)/T(0)
と変 化 す る とす る と,物 体 中 央 か ら レ ンズ 中 央 を通 過 す る 光 束I(0)と
角 度 θだ
け 傾 い た周 辺 位 置 か ら入 射 す る光 束I(θ)の 関 係 は, (2.10) とな り,cos4に
比 例 して 減 少 す る こ と に な る。 この 関係 をcos4則
と呼 び,画 像
の周 辺 部 の 明 る さ低 下 の 原 因 とな る こ とが 多 い の で注 意 を要 す る。
図2.17 cos4θ
④ 収
差
則
こ こ ま で述 べ た 球 面 レ ン ズ に よ る結 像 で は,光 軸 近 辺(近 軸)
を通 過 す る光 線 は1点 か ら1点 へ 理 論 どお りに射 出 ・収斂 す る 。 しか し,実 際 の 球 面 レ ンズ 系 で は レ ンズ 全 面 を通 過 す る 光 線 が 像 形 成 に 寄 与 し理 想 状 態 と は 異 な る 結 像 を し,画 像 の ぼ けや ひず み を生 じ る。 この 偏 差 が"収 差"と 呼 ば れ,単 色 系 で の5収 差(ザイ デ ル 収 差)と 異 な る波 長 の 光 に対 し て 生 じる 色 収 差 に大 別 さ れ る 。 図2.18に
そ の概 要 を示 す 。
こ れ ら を簡 単 に 整 理 す る と, (1) 球 面 収 差(spherical
aberration):物
点 が 光 軸 上 に あ っ て も,そ こ か ら出
て レ ンズ で 軸 外 を通 過 す る光 線 が レ ンズ か ら異 な る距 離 に 焦 点 を結 ぶ現 象 。 視 野 全 面 で 同 じ誤 差 を も ち画 像 全 面 で の ぼ け とな る 。
図2.18 ザ イ デ ルの5収 差 と色 収 差
(2) コマ(coma)収
差:軸 外 の 物 点 か ら 出 た視 野 角 の 異 な っ た光 線 に対 して レ
ンズ の 倍 率 が 異 な る た め に 生 じる ぼ け で 視 野 角 θに 比 例 して そ の影 響 が 大 き くな る 。点 光 源 の 焦 点 面 上 で の 像 は,彗 星 の 尾 の よ うな パ タ ー ン を示 し,画 像 周 辺 で 流 れ る よ う な ぼ け とな る 。 (3) 非 点 収 差(astigmatism):軸
外 の 物 点 か ら出 た 光 線 が,光
源 と光 軸 を含 む
面(メ リ ジ オ ナ ル面)と そ れ に 直 交 す る面(サ ジ タル 面)で 異 な る距 離 に焦 点 を 結 ぶ 現 象 。 そ の 程 度 を 非 点 隔 差 と呼 び視 野 角 θの 二乗 に比 例 して大 き くな る。 (4) 歪 曲 収 差(distortion):軸
外 の異 な る位 置 の 物 点 の 像 が 光 軸 か ら理 想 と異
な る位 置 に 結 ぶ た め に 生 じる 。 コ マ と異 な り像 の 鮮 鋭 度 は 変 わ ら な い が,像 形 が 樽 形 や 糸 巻 き形 に ゆ が む。 この 収 差 は(1)∼(3)と も小 さ くは な らな い 。
異 な り,絞
の
りをしぼって
(5) 像 面 湾 曲(field curvature):上
記4収 差 が な い場 合 で も,球 面 系 で は焦 点
面 は 平 面 か らわ ず か にず れ た 球 面 と な る 。 こ の た め 平 面 焦 点 面 で は 光 軸 か らの 距 離 の 二 乗 に比 例 し て像 が ぼ け る。 (6) ガ ラス の 屈 折 率 は波 長 に よ っ て わず か に異 な る,こ
の違 いに よって波長
に よ っ て 異 な っ た 位 置 に像 を 結 ぶ 現 象 が 色 収 差(chromatic
aberration)で あ る。
通 常 こ れ ら の 収 差 は異 な る 曲率,屈 せ,お
折 率 を もつ 複 数 の 球 面 レ ン ズ の 組 み 合 わ
よび 絞 りの 位 置 の 最 適 化 に よ りあ る程 度 補 正 で き る。 最 近 で は 非 球 面 レ
ン ズ に よ り少 な い 枚 数 で 高 度 な補 正 が 可 能 とな っ て い る 。 こ の 場 合 で も,仕 様 と異 な る 配 置 で の 使 用 や,レ
ンズ の 偏 心 や 傾 き に よ っ て 収 差 は 増 大 す る の で 注
意 を 要 し,事 前 の 収 差 測 定 が 必 要 な場 合 も あ る 。 中 で も,像 面 湾 曲 と色 収 差 は 画 像 計 測 に お い て大 き な誤 差 を 生 じるた め,十 分 な対 策 が 必 要 で あ る。 (b) 二 次 元 の 強 度 分 布 か ら得 られ る情 報 こ こ ま で 述 べ た 結 像 光 学 系 で は,イ 結 像 を 前 提 と して きた が,こ
ン コ ヒ ー レ ン トな 照 明 に よ る濃 淡 画 像 の
こ で は こ う し た濃 淡 画 像 よ りど の よ うな 情 報 が 抽
出 で き る か につ い て 考 え て み よ う。 基 本 的 に濃 淡 画 像 よ り得 られ る の は物 体 の 反 射 率 分 布 また は透 過 率 分 布 で あ る 。 ① 物 体 表 面 の 反 射 特 性 と透 過 特 性 され た 光 の ど の よ うな 成 分 が,最
照 明 さ れ た物 体 か ら反 射 また は拡 散
終 的 に像 を形 成 す る か は,物
体表 面の光学 的
特 性 に よ っ て 大 き く異 な る 。 光 学 的 特 性 の 中 で も重 要 な の は,そ
の分 光 反 射 率
(反 射 率 の 波 長 に よ る変 化)お よび 拡 散 特 性(物 体 表 面 の性 状 に よる 光 の 拡 散 の 程 度)で あ ろ う。 前 者 につ い て は,均 質 な物 質 の場 合 で あ れ ばそ の複 素 屈 折 率 が 求 まれ ば 任 意 の 条 件 で 計 算 で き るが,皮
膚 表 面 な ど複 雑 な組 織 の場 合,実
際 に分
光 測 定 に よ り求 め る 必 要 が あ る 。 物 体 表 面 は,光
を拡 散 す る 場 合 が 多 い 。 完 全 拡 散 面 とは,任
に お け る光 度(放 射 強 度)Iθが次 の ラ ンバ ー トの余 弦 則(Lambert's
意 の角度方 向 θ cosine law)に
従 う面 で あ る 。 (2.11) こ こ で,Inは
表 面 法 線 方 向 の 光 度 で あ る 。 こ の 法 則 に 従 う 面 を ラ ン バ ー ト面 と
も 呼 ぶ 。 実 際 の 表 面 の 拡 散 状 態 は,鏡 図2.19の
よ う に,そ
面 状 態 と完 全 拡 散 面 の 中 間 状 態 を と り,
の 拡 散 成 分(diffused
component)と
正 反 射 成 分(specular
図2.19 鏡 面 と完全 拡 散 面
reflection)が 混 在 した状 態 と な る。 拡 散 成 分 は,像 面 で 低 強 度 で あ る の に 対 し, 正 反 射 成 分 は 撮 像 デ バ イ ス の 出 力 を 飽 和 させ る ほ ど 強 い こ とが 多 く,照 明 方 法 お よび 結 像 方 向 を適 切 に選 ぶ こ とが 必 要 と な る こ とが 多 い 。 物 体 を 後 方 か ら照 明 して そ の 透 過 率 分 布 を画 像 と し て 観 測 す る こ と も多 い 。 透 過 特 性 もや は り,物 体 の 吸 収 率 分 布(屈 折 率 と い っ て も よ い)の 波 長 依 存 性 お よ び 散 乱 性 に よ っ て 支 配 さ れ る 。 吸 収 係数a〔cm-1〕 で 厚 さdの 媒 質 に 強 度I0の 光 が 入 射 した 際 の 透 過 光 強 度 は ラ ンバ ー トの 法 則 に よ り, (2.12) と な る。 散 乱 性 の 扱 い は 多 重 散 乱 を 考 慮 せ ね ば な らな い た め,す
っ き り扱 う こ
と は 容 易 で は な い 。 しか し,近 年 で は 低 コ ヒー レ ン ス 干 渉 な ど の技 術 に よ り皮 膚 な どの 多 重 散 乱 媒 質 内 部 の イ メ ー ジ ング な ど も試 み られ て い る。 ② ど ん な 情 報 が 得 られ る か? で 同 じ性 質 を もつ 領 域 が,最
前 述 の よ う な物 理 的 過 程 を 経 て,物 体 中
終 的 に 得 ら れ た 画 像 中 の 濃 度 の 差 と して 分 離 で き
る とい う前 提 に た て ば,対 象 の さ ま ざ ま な特 徴 を 分 離 し て得 る こ とが 可 能 と な る。 実 際 の濃 淡 画 像 に よる計 測 ・ 検 査 の 手 法 お よ び そ の と き画 像 中 か ら抽 出 す る 情 報 は,4章 布,テ
に 述 べ る よ う に きわ め て 多 様 だが,最
も代 表 的 な例 は,か た ち,分
クス チ ャで あ ろ う。
・か た ち(形)
対 象 と な る物 体 の 二 次 元 形 状 情 報 。 物 体 が 面 で 構 成 され る場
合 は そ の境 界 を は さ ん で 面 の 反 射 率 特 性 に変 化 が あ る た め,そ
の境 界 ま た は面
形 状 そ の も の を濃 度 の差 よ り互 い に分 離 して 測 定 で き る 。 計 測 の 精 度 は,光 学 系 の倍率 ・ 分 解 能 ・収 差,撮 た と え ばCCDカ
像 セ ン サ の 分 解 能 に よ っ て 決 ま る が,画
像 セ ンサ が
メ ラ の よ うな 離 散 的 サ ンプ リ ン グ を行 う もの で,そ の 画 素 分 解
能 よ り も結 像 系 の 分 解 能 の 方 が 高 い場 合 に は,隣
接 画 素 間 の 濃 度 差 を内 挿 す る
こ とで,画 素 ピ ッチ よ り も高 い 精 度 で寸 法 な どの 計 測 が 行 え る。 ・分 布
得 られ る 画 像 中 の あ る特 徴 を も っ た形 や 濃 度 の 分 布 や 統 計 量 の 計 測
代 表 的 な もの と し て は,視
。
野 中 の 円 形 に 近 い もの の み を抽 出 し,そ の 計 数 を行
う細 胞 画 像 処 理 な どが あ げ られ る 。 ・テ クス チ ャ
濃 度 的 に 分 離 可 能 な ,特 徴 の あ る周 期 性 や 分 布 を示 す 領 域 の
抽出 または認識。 ③ 照 明 法 の 特 徴 を利 用 した情 報 の 抽 出
画 像 を 得 る 際 に,野 外 や 室 内 な
どで そ の 場 の 通 常 の 照 明 下 で 画 像 を 得 る場 合 と,意
図 的 に対 象 の特 徴 を 抽 出 し
や す い よ う な 特 別 な 照 明 を与 え て 画 像 を得 る 場 合 が あ る 。 前 者 を受 動 的 画 像 形 成,後
者 を 能動 的 画 像 形 成 と呼 ぶ 。 わ れ わ れ が 扱 う画 像 を用 い た 計 測 ・ 検 査の多
くの 場 合 は,そ
の 検 査 系 特 有 の 能 動 的 画 像 形 成 を行 っ て い る場 合 が 多 い 。 能 動
的 画 像 形 成 に お い て よ く用 い られ る照 明 法 と得 られ る 情 報 に つ い て は 下 記 の よ う な もの が あ る。 実 際 の 例 は,応 用 編 に詳 しい。 1) 照 明 方 向 を変 え る: 例) 低 角 度 照 明:斜
方 照 明 の 一種 。 物 体 表 面 の わ ず か なへ こ み な ど の 強調 。
例) 特 定 角 度:物 体 中 の 一 定 の傾 き を も っ た領 域 の 抽 出(形 状,境 界 の抽 出)。 例) 異 な る 照 明 に よ り得 られ た画 像間 の 演 算:減 算,ORな
ど。 面 の 抽 出。
2) 照 明 の 強 度 に 空 間 的 に 変 調 を与 え る: 例) 構 造 化 照 明:光
切 断 法,格 子 投 影 法,モ
ア レ法,ラ
ンダ ム パ ター ン投 影 。
三 次 元 形 状 の抽 出 。 3) 照 明 の 強 度 に時 間 的 に変 調 を与 え る: 例) 二 次 元 ロ ッ クイ ン検 出:照 明 の 明 滅 に合 わせ た 周 波 数 成 分 の 強 調 。 低 反 射率物体 の画像化。
■ 参考 文献 1) 久 保 田 広:光
学,岩
2) 鶴 田 匡 夫:忘
用 光 学Ⅰ,Ⅱ,培
3) 木 内 雄 二:イ
メ ー ジ セ ンサ ー 画 像 情 報 を と ら え る 電 子 の 目 一,日
4) 河 田 聡,南 5) 大 越 孝 敬,野
茂 夫 編:科
波 書 店,1974
学 計 測 の た め の 画 像 デ ー タ処 理,CQ出
田 健 一 監 修:応
6) 国 立 天 文 台 編:理
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風 館,1990. 刊 工 業 新 聞 社,1978
版 社,1994
用 光 エ レ ク トロ ニ ク ス ハ ン ドブ ッ ク ,昭
科 年 表1997,丸
善,1997.
.
晃 堂,1989.
.
2.1.3 光 の 波 動 性 を 利 用 した画 像 形 成 光 の干 渉,回
折,偏
光 現 象 は,光
が 波 と して の特 性(波 動 性)を も っ て い る と
考 え る こ と に よ っ て 説 明 さ れ る 。 光 の 波 動 性 に起 因 す る こ れ らの 光 学 現 象 は, と き に 画 像 形 成 に 悪 影 響 を与 え る干 渉 ノ イ ズ や ス ペ ック ル ノイ ズ な ど の発 生 原 因 と な る場 合 も あ る が,一
方 で は,逆
に光 の 波 動 性 を積 極 的 に 利 用 し た 画 像 形
成 に 基 づ く光 計 測 法 も実 現 さ れ て い る 。 した が っ て,光
の 本 質 と して の 波 動 性
に つ い て よ く理 解 して お くこ と は画 像 形 成 を考 え る 上 で 必 要 不 可 欠 で あ る とい える。
(1) 干渉 による画像形成 干 渉 現 象 は,二 つ 以 上 の 光 波 が 同一 点 で 重 な り合 った と き に,そ い に よ っ て 互 い に 強 め 合 っ た り,ま た は 弱 め 合 っ た り して,干 明 暗 の 縞 が で き る現 象 で あ る。 干 渉 縞 は,光
の位相 の違
渉 縞 と呼 ば れ る
の 位 相 情 報 が 強 度 情 報 に 変 換 され
た も の で あ り,一 般 に 人 間 の 目 で は 直 接 観 察 す る こ と の で き な い 光 の 位 相 を, 縞 画 像 と して 可 視 化 す る こ とが で き る。 (a) 干 渉 縞 形 成 と位 相 情 報 は じめ に 二 つ の 光 波 の 干 渉 現 象 につ い て 考 え て み よ う。 図2.20は 長 λの 光 波1と 光 波2お
振 幅a,波
よ び干 渉 波 を示 した もの で あ る。 一 般 に,干 渉 波 は 光 波
1と 光 波2の 合 成 波 とな り,そ の 波 形 は 二 つ の光 波 の位 相 差 に よ っ て 変 化 す る 。 い ま,光 波1と 光 波2の 位 置Aに お け る位 相 をそ れ ぞ れ φ1,φ2とす る と,二 つ の 光 波 の 位 相 差 δは δ=φ1-φ2で て お り干 渉 波 の 振 幅 は2aに
あ る 。 図2.20(a)は
な る。 さ ら に,図2.20(b)に
δ=0の
場 合の干 渉 を示 し
示 す よ う に位 相 差 が δ=
π/2に な る と,干 渉 波 の 振 幅 は√2aと 変 化 す る 。 こ の よ うに,干 な わ ち干 渉 縞 の 強 度 は 光 波1と2の
渉波 の振 幅す
位 相 差 δに よ っ て 変化 す る た め,逆
に干渉縞
の 強 度 変 化 か ら位 相 差 の 変 化 を求 め る こ とが で き る。 い ま,一 般 的 な場 合 と して振 幅a1の 光 波1と 振 幅a2の 光 波2が 位 相 差 δを もつ と きの 干 渉 縞 の 強 度 分布Iは,
(2.13)
で 与 え ら れ る。 式(2.13)の
強 度Iは 図2.21の
干 渉 縞 を形 成 す る。 ま た,図2.21よ
よ う な周 期 的 な変 動 を く り返 し,
り位 相 差 δの 変 化 πご と に干 渉 縞 の 明 暗 が 逆
転 して い る こ とが わ か る。
図2.20 光波 の 干渉
図2.21 干 渉 縞 強 度 と位 相 差 の 関係
一 般 に干 渉 縞 の コ ン トラ ス トま た は可 視 度Cは ,
(2.14) で 評 価 さ れ,干 C=0.198程 a1=a2の
渉 さ せ る2光
波 の 強 度 比 が10倍
度 の コ ン ト ラ ス トに な る 。2光 と き に コ ン ト ラ ス トはC=1と
く な る 。 し た が っ て,明
の と き はC=0.575,
100倍
波 の 強 度 が 等 し い と き,す
最 大 と な り,干
瞭 な 干 渉 縞 を 得 る た め に は,2光
では
なわ ち
渉 縞 は 最 も観 測 し や す 波 の 振 幅 が な る べ く等
しい 条件 が 得 られ る よ う考 慮 され る。
(b) 縞 画像処理 と位 相情報 の抽 出 一 般 に,光
の 干 渉 を利 用 し た 画 像 処 理 応 用 計 測 は,ま ず 縞 画 像 か ら位 相 情 報
を抽 出 し,次 に 光 の 位 相 情 報 か ら被 計 測 対 象 の 物 理 量 へ の 変 換 を行 う と い う手 順 を と る 。 こ の と き,周 期 的 な 干 渉 縞 を い か に細 か く分 割 して 読 み 出 す か に よ っ て計 測 精 度 が 左 右 され る。 干 渉 縞 解 析 法 と して, ① 位 相 シ フ トモ ア レの原 理 を用 い る位 相 シ フ ト法 ② 気 的 処 理 に よっ て 高 い精 度 を得 る ヘ テ ロ ダイ ン法 ③ 干 渉 す る 一 方 の 光 波 の 位 相 を段 階 的 に 変 化 させ な が ら干 渉 縞 の 強 度 を光 電 検 出 して位 相 を求 め る縞 走 査 法 ④ フ ー リ エ 変 換 の 計 算 に よ っ て 干 渉 縞 の 空 間 的 な周 波 数 を 分 離 す る フ ー リ エ変 換法 ⑤ 参 照 光 に 位 相 変 化 を 与 え,干 渉 縞 の極 大 ま た は極 小 に よっ て位 相 を 検 出 す る フ ェ ー ズ ロ ッ ク法 な どの さ ま ざ ま な 方 法 が 提 案 され て い る。 一 例 と し て,位 (a)お よ び(b)に る と,Δ=π/4の
相 シ フ ト法 に よ る 縞 画 像 解 析 の 手 法 に つ い て 述 べ る 。 図2.22 示 す よ う な 二 つ の 格 子I0お と き 図2.22(c),Δ=π/2の
よ びIRを
初 期 位 相Δ を ず ら し て 重 ね
と き 図2.22(d)に
相 シ フ トモ ア レ縞(図 中 白 の 横 縞)が 生 成 さ れ る 。 い ま,干 の 参 照 格 子 パ タ ー ン をIRと み な し,縞 y)と す る と,I0お
よ びIRは
空 間 周 波 数 をf,干
示 す よ う な積 の 位
渉 縞 をI0,初
期位相 Δ
渉 縞 の 位 相 分 布 を δ(x,
そ れ ぞ れ,
(2.15) (2.16)
図2.22
で 表 さ れ る。
ここ で,Aは
積 の モ ア レ 縞I0・IRは
位 相 シ フ トモ ア レ
干 渉 縞 の バ イ ア ス 成 分,Bは
式(2.15)と
式(2.16)の
強 度 振 幅 で あ る 。 さ ら に,
積 を と っ て,
(2.17) で 表 され る 。 こ の と き,第3項
の 低 周 波 数 成 分 は,干 渉 縞 の 位 相 情 報 δ(x,y)に 参
照 格 子 の 初 期 位 相 Δが 加 わ っ た 位 相 シ フ トモ ア レ縞 と し て,分 離 さ れ て 観 察 さ れ る。 し た が っ て,参
照 格 子 の初 期 位 相 Δを何 段 階 か に ず ら し,モ
ア レ縞 を移
動 させ る こ とに よ っ て,干 渉 縞 の 位 相 δ(x,y)を参 照 格 子 の初 期 位 相 Δと低 周 波 の モ ア レ縞 の 位 相 か ら高 精 度 に 求 め る こ とが で き る 。 こ の 原 理 を干 渉 縞 の 位 相 抽
出 の 手 法 に 適 用 し た の が 位 相 シ フ ト法 で あ る。 実 際 に は参 照 格 子 を電 子 的 に処 理 す る こ と に よっ て 実 時 間 の縞 画 像 解 析 が 可 能 で あ る。 この 方 法 は,バ イ ア ス ・ コ ン トラ ス トの 変 動 の 影 響 を受 け ず に 画 素 ご と に 高 精 度 な 位 相 検 出 を 行 え る と い う優 れ た 特 徴 を有 して い る 。 (c) 干 渉 計 の構 成 干 渉 計 は,距 離,形
状,表
面 の 凹 凸,屈 折 率 あ る い は 光 源 の ス ペ ク トル構 造
な ど測 定 対 象 の 物 理 量 を光 の 位 相 変 化 に変 換 し,そ れ を干 渉 縞 画 像 あ る い は光 強 度 変 化 と して 検 出 す る もの で あ る 。 干 渉 計 の 基 本 的 な構 成 は,図2.23に よ う に,光
束 導 入 部,光
束 分 割 部,干 渉 光 路 部,光
部 か ら な っ て い る 。 ま ず,光
示す
束 合 成 部 お よ び干 渉 縞 検 出
源Sと 光 源 か ら射 出 さ れ た 光 を整 え る た め の 光 学
系 な どか ら構 成 さ れ た 光 束 導 入 部 か らの 光 は,光 束 分 割 部H1に お い て 光 波1お よ び 光 波2の 二 つ の 光 波 に分 割 さ れ る 。 この よ う に,干
渉 計 で は,振 幅 が 等 し
く位 相 の そ ろ っ た 二 つ の 光 波 を得 る た め に,基 本 的 に 一 つ の 光 源 か ら 出 た 光 波 を 分 割 す る の が 一 般 的 で あ る 。 次 に,干 渉 光 路 部 で は そ れ ぞ れ 独 自の 光 路 を進 む光 波1と2の
間 に位 相 差 δを生 じさせ,光
束 合 成 部H2に
お い て 再 び一 つ の光 束
に 重 ね 合 わ せ る こ と に よ っ て 干 渉 縞 を形 成 す る 。 最 後 に,干 渉 縞 の 強 度 分 布 は 検 出光 学 系 と検 出 器Dか
らな る干 渉縞 検 出部 に よ って 検 出 され,光 波1と2の
位
相 差 の情 報 が 得 られ る。 以 上 の よ う に干 渉 計 は,光 波1と2に あ る が,こ の 位 相 差 δは,図2.23に す な わ ち光 路 差dに
生 じた 位 相 差 δを計 測 す る こ とが 基 本 で
示 す よ うに 光 波1と2が
よ っ て 生 ず る。 こ こで,光
伝 播 す る光 路 長 の 差,
路 長 とは光波 の伝 播す る光学 的
図2.23 干 渉 計 の基 本構 成
図2.24 干渉 縞 の 形成
距 離 の こ と で あ り,媒 質 の 屈 折 率 と幾 何 学 的 距 離 の積(す な わ ち 光 路 長=屈 率 ×幾 何 学 的 距 離)に よっ て 与 え られ る。 光 波1と2の
折
光 路 差dと 位 相 差 δの 関係
は,光 の 波 長 を λとす る と,
(2.18) に よ っ て 与 え ら れ る の で,屈
折 率 や 距 離 な ど各 種 計 測 へ の応 用 を 可 能 に し て い
る。 た と え ば,中
央 に 波 長 の1/2程 度 の 凹 部Dを
の 透 過 物 体 を干 渉 計 の 干 渉 光 路 に入 れ,波
もつ 図2.24(a)の
よ う な屈 折 率n
長 λの 光 波1と 物 体 を 透 過 し た光 波2
を干 渉 させ る場 合 を 考 え る。 こ の と き,厚 い 部 分 と 中心 の 薄 い 部 分 の 光 路 差 は d=(n-1)Dと
な る た め,こ
の 物 体 に よ っ て 変 化 した位 相 差 δは,
(2.19) に よ っ て 与 え ら れ る 。 い ま,図2.24(b)の
よ う に 波 面S1が
一 定 角 度 αだ け 傾 い た
参 照 波S'1と 干 渉 させ る と,波 面S'1と 波 面S2の 交 差 す る 位 置 に 明 ま た は 暗 の 干 渉 縞 が 形 成 され る。 す なわ ち,図2.24(b)に 相 差 δの 部 分 で はP0∼P2,そ さ れ,図2.24(c)の っ て 変 化 し,さ
お い て,波 面S2の 位 相 物 体 に よる位
れ 以 外 で はQ0∼Q3に
対 応 す る位 置 に干 渉 縞 が 形 成
よ うな 干 渉 縞 とな って 現 れ る。 この と き縞 間 隔 は 角 度 αに よ ら に縞 間 隔PQとPPの
比 か ら求 め られ た 位 相 差 δか らDを 求 め
る こ とが で き る。 具 体 的 な 干 渉 計 の例 と して,平
面 鏡,プ
リ ズ ム,回
折 格 子,結
像 レ ンズ や球
面 あ る い は 非 球 面 鏡 な どの 光 学 性 能 を精 密 測 定 す る こ とが で き る トワ イ マ ン・グ リー ン干 渉 計 の構 成 を 図2.25に 示 す 。 図2.25は
レ ンズ の 精 度 を 測 定 す る場 合 を
示 し て お り,被 検 レ ンズ と高 精 度 な 球 面 鏡 を組 み 込 み,さ
ら に参 照 面M1を 光 軸
に対 して わ ず か に傾 け て 設 置 す る 。 カ メ ラ の 焦 点 を 参 照 面M1に
合 わ せ る と,被
検 レ ンズ の 波 面 収 差 の2倍 の 変 形 を受 け た 波 面S2と わ ず か に 傾 い た 参 照 波 面S1 に よ る 干 渉 縞 が 観 測 さ れ る 。 こ の 干 渉 縞 を解 析 す る こ とに よ っ てレ ンズ の精 度 を 測 定 す る こ とが で き る。
図2.25
トワ イ マ ン ・グ リ ー ン干 渉 計
(d) 画 像 形 成 に お け る干 渉 の応 用 事 例 こ れ ま で に述 べ た 光 の 干 渉 を応 用 し た事 例 を い くつ か 紹 介 す る.光 干 渉 法 は き わ め て 広 範 な応 用 分 野 を も っ て い る が,こ
こ で は画 像 応 用 計 測 の 立 場 か ら測
定 量 が 可 視 化 さ れ た 干 渉 縞 画 像 に よ る 計 測 技 術 の 代 表 的 な もの を あ げ て お く. 表2.1は ホ ロ グ ラ フ ィ干 渉 法1),走 査 型 白色 干 渉 法2,3),フ ィ ゾ ー 干 渉 法 の 応 用 例 と そ の 原 理 につ い て ま と め た もの で あ る.ホ ど の 変 形,形
状,振
ロ グ ラ フ ィ干 渉 法 は,機 械 部 品 な
動 特 性 の 評 価 技 術 や 光 学 部 品 の精 度 検 査 技 術 と して す で に
実 用 化 され て い る. また,走
査 型 白色 干 渉 法 は ナ ノ メ ー トル オ ー ダ の精 度 が 要 求 され る 表 面 解 析
技 術 と して 用 い られ て い る.さ
ら に,フ
ィゾー干渉 法 は半導体 シリコ ンウエハ
の 平 坦 度 測 定 法 と し て 重 要 な技 術 と な っ て い る.な お,本
書 の 第4章 で も,薄
膜 干 渉 を利 用 した ウエ ハ マ ー ク 検 出 法 につ い て 述 べ られ て い る.
表2.1 干 渉 を利 用 した画 像形 成 の 応用 事 例
(2) 回折,散
乱 の画 像 形 成 へ の 影 響 と利 用
回折 現 象 は,光
を 直 進 す る 光 線 で あ る と考 え る と本 来 到 達 し得 な い 障 害 物 の
裏 側 の 影 の 部 分 に 光 波 が ま わ り込 ん で 進 む 現 象 で あ る 。 た と え ば,非 常 に細 い ス リ ッ トに 光 を入 射 した 場 合,光
を光 線 と考 え る と ス リ ッ トを とお っ た 光 は 図
2.26(a)の よ う にス ク リー ンに輪 郭 の くっ き り と した ス リ ッ トの 像 を形 成 す る は ず で あ るが,実
際 は 回 折 を生 じて ス リ ッ トの 影 の 部 分 に も光 が ま わ り込 み,図
2.26(b)に 示 す よ う な ス リ ッ トの像 とは 異 な っ た 回折 パ ター ン を形 成 す る。 一 般 に あ る 物 体 に光 を照 射 し て撮 像 す る 場 合,画
像 の状態 は反射 面 に よる光
の 回折 や 散 乱 の 影 響 に 支 配 され る 。 照 明 条 件 に よ っ て像 の 特 性 が 変 わ っ た り顕 微 鏡 像 の 分 解 能 に 限 界 が あ る の は この た め で あ る 。 特 に レー ザ 光 の よ う な コ ヒ ー レ ン トな光 を用 い る場 合 は,回 折 現 象 が 画 像 形 成 に顕 著 な 影 響 を 与 え る た め, そ の 基 本 的 な 特 性 を十 分 考 慮 す る必 要 が あ る。
図2.26
ス リ ッ トに よ る 回 折 現 象
(a) 反 射 面 の 構 造 と回折,散
乱特性
わ れ わ れ に物 体 が 見 え る の は,照 明 され た 物 体 が 光 を 反 射 し,そ れ が わ れ わ れ の 目 に到 達 して 結 像 す る か ら で あ る 。 一 方,画
像 応 用 計 測 の 分 野 で も三 次 元
物 体 の 表 面 に 照 射 した 反 射 光 に よっ て 画 像 を 形 成 す る こ とが 多 く,特 に可 干 渉 性 の 高 い レ ー ザ を光 源 と して 用 い た 場 合,物
体 表 面 に よ る 回折 や 散 乱 現 象 が 画
像 形 成 に 大 きな 影 響 を与 え る要 因 と な る こ とが あ る。 しか し,一 方 で は 反 射 面 の 回折 ・散 乱 現 象 を巧 み に 利 用 した計 測 法 もあ る。 そ こで,こ 性 を 支 配 す る 主 な 要 因 と微 細 な 凹 凸 に よ る 回 折,散
こで は反 射 光 の 特
乱 現 象 の 基 本 的 な考 え方 を
中心 に 述 べ る こ と にす る 。 まず,レ
ー ザ 光 を あ る 表 面 に 照 射 し た と きの,特 徴 的 な 反 射 光 の タ イ プ を 図
2.27に 示 す 。 な お,そ い る。 図2.27(a)は
れ ぞ れ 反 射 光 の 強 度 の 大 き さ を反 射 光 線 の 長 さ で 表 して
レー ザ 光 を,表 面 に 凹 凸 が ま っ た くない,理 想 的 な鏡 面 に 入
射 し た 場 合 の 反 射 を表 して い る 。 入 射 角 θi,反 射 角 θrとす る と,反
射 の法 則
(θi=θr)に従 っ て,反 射 光 は 決 ま っ た 方 向 に の み 現 れ る。 この よ う な反 射 光 を正 反 射 光 とい い,そ の 方 向 を正 反 射 方 向 と い っ て い る。 図2.27(b)は 表 面 に 規 則 的 に 凹 凸 を く り返 す 微 細 な溝 が あ る 場 合 の 反 射 を表 し て お り,正 反 射 方 向 以外 に 一 次 光 ,二 次 光 な ど の 回 折 光 が 現 れ る 。 一 般 に,周 期 構 造 の ピ ッチ をΛ,入 射 光 の波 長 を λ,回 折 角 度 を φdとす る と,
(2.20) の 関 係 が あ る 。 特 に微 細 な 物 体 を結 像 す る 場 合,回
折 光がレ ンズ の 開 口 に入 る
条 件 を 満 た さ な け れ ば 十 分 な分 解 能 が 得 られ な い 。 一 方,波
長 に よる回折角 の
違 い を利 用 す れ ば 波 長 成 分 の 分 離 が 可 能 で あ る。 図2.27(c)は 表 面 に 不 規 則 で微 細 な 凹 凸 が 均 一 に 分 布 して い る場 合 の 反 射 を 示 して お り,入 射 光 は そ の 凹 凸 に よ っ て さ ま ざ ま な 方 向 に均 一 に散 乱 さ れ る。 こ の よ う な 反 射 光 を完 全 拡 散 反 射 光 と呼 ん で い る 。 完 全 拡 散 反 射 の 場 合,表
面 の法 線 方 向 の 強 度 をIn,φ 方 向 の 強
度 をIφとす る と,入 射 光 の 角 度 に 関 係 な く次 の ラ ンバ ー ト(Lambert)の
法則 に
従 う。
(2.21) 図2.27(a)∼(c)は
ど れ も 表 面 が 理 想 的 な 凹 凸 を も っ て い る 場 合(あ
るい は凹凸
図2.27 特 徴 的 な 反射 光 の タイ プ
が な い 場 合)の 反 射 を 表 し て い る が,現 実 の 表 面 は複 雑 な 凹 凸形 状 を もっ て い る 場 合 が 多 く,そ の 反 射 光 は 図2.27(a)∼(c)が
混 在 した 状 態 と な っ て い る と考 え
て よ い 。 た と え ば,現 実 の不 規 則 な 凹 凸 を もつ 表 面 の 場 合,図2.28に
示 す よう
な 正 反 射 成 分 と拡 散 反射 成 分 か らな る 反 射 光 と な っ て い る こ とが 一 般 的 で あ る。
図2.28 一 般 的 な反 射光
反 射 現 象 を整 理 す る と,図2.29の
よ う に な る 。 ま ず,反 射 光 の特 性 は散 乱 角
φ,Ψ と そ の 方 位 の 強 度 お よ び偏 光 に よ っ て 表 す こ とが で き,そ の よ う な 反射 光
図2.29 反 射 光 の状 態 を決 め る 要 因
の 特 性 を 決 め る 要 因 は入 射 光 の 状 態 と 反 射 面 の 状 態 に大 別 さ れ る。 入 射 光 特 性 の 主 な もの と して,波
長,入
射 角,強
度,偏 光 お よ び コ ヒー レ ンス な どが あ げ
ら れ る 。 表 面 あ ら さが 小 さい 表 面 の 場 合,入
射 角 が あ る 角 度 よ り大 き くな る と
正 反 射 現 象 を 表 す い わ ゆ る シ ー ン現 象 や,特
にレ ー ザ 光 源 を用 い た場 合 に散 乱
光 ど う しの 干 渉 が 顕 著 に 現 れ る ス ペ ック ル 現 象 な ど は,画 像 形 成 に 大 き な影 響 を与 え る場 合 が あ る 。 反 射 面 特 性 と して は,金 属 や 誘 電 体 な どの 材 質,反 射 率 や 屈 折 率 な どの 光 学 的 特 性 お よび 表 面 あ ら さ や 規 則 的 凹 凸 な どの 表 面 微 細 構 造 が あ る 。 い ず れ も,散 乱 光 の 強 度 や 散 乱 角 に 直接 影 響 を 与 え る要 因 とな る 。 (b) ス ペ ック ル 画 像 の形 成 と その 利 用 金 属 や プ ラス チ ッ ク の粗 面 な ど,拡 散 反 射 す る 表 面 に レー ザ 光 を 照 射 す る と, 日常 の 光 で は 見 られ な い 不 規 則 な斑 点 状 の模 様 が 現 れ る 。 この 斑 点 模 様 は ス ペ ック ル(speckle)ま
た は ス ペ ック ル パ ター ン と呼 ば れ て い る 。 ス ペ ッ クル パ タ ー
ン は コ ン トラ ス トが 高 く,レ ー ザ 光 照 明 に よ る結 像 に お い て は画 質 を著 し く低 下 させ る た め,対
処 の む ず か しい ノ イ ズ と見 な さ れ て きた 。 し か し一 方 で は,
スペ ッ ク ル の統 計 的 な性 質 を利 用 した計 測 や 情 報 処 理 も数 多 く行 わ れ て い る。 実 際 に ス ペ ッ ク ル の 観 察 を行 う と き に は,図2.30に
示 す よ う な光 学 系 の 配 置
が と られ るの が 一 般 的 で あ る。 図2.30(a)の 配 置 に よ っ て 観 察 さ れ るス ペ ック ル は 回 折 界 ス ペ ック ル,ま
た,図2.30(b)の
よ うな 結 像 光 学 系 に よっ て 観 察 さ れ る
ス ペ ッ クル は像 界 ス ペ ッ ク ル と呼 ば れ て 区別 され て い る 。 回折 界 ス ペ ック ル は, 物 体 表 面 上 の 各 点 か らの 位 相 が ラ ン ダ ム に 異 な っ た 回 折 光 が 観 察 面 上 の1点 に 到 達 し,干 渉 す る こ と に よ っ て形 成 され る。 ま た,像
界 ス ペ ッ ク ル は像 面 の1点 に対 応 す る 物 体 表 面 上 の1点 だ け で な く,
そ の 周 辺 の 多 数 の 点 か らの 位 相 が 異 な っ た 光 が 到 達 し,ラ
ンダ ム な 干 渉 が 起 こ
る こ とに よ っ て 形 成 され る。 回 折 界 ス ペ ッ ク ル に お い て は拡 散 面 の照 射 領 域 を, ま た像 界 ス ペ ッ ク ル にお い て は 結 像 系 の 開口 を小 さ くす る ほ どス ペ ッ ク ル の 斑 点 は大 き くな る 。 さ らに,像 界 ス ペ ッ ク ル は 画 像 に の っ た ス ペ ック ル ノ イ ズ と し て現 れ る が,ス る た め,ス
ペ ック ル ノ イ ズ は画 像 を構 成 して い る 要 素 の 一 部 と な っ て い
ペ ッ ク ル を 低 減 し よ う とす る と画 像 自 身 も劣 化 して し ま う。 ま た,
拡 散 面 に合 わせ て い た結 像 系 の ピ ン トを ぼ か し て も,像 は ぼ け ず に高 い コ ン トラ ス トを維 持 した ま まで あ る。
はぼ けるがスペ ックル
図2.30 スペ ッ クル の観 察 光学 系
そ の た め,こ
の ス ペ ッ ク ル ノ イ ズ を 除 去 す る 方 法 が い ろ い ろ と提 案 され て い
る。 ス ペ ッ ク ル の 特 性 か ら,光 源 の 空 間 コ ヒ ー レ ンス を調 整 した り多 波 長 光 を
利 用 す る こ と に よ っ て コ ン トラ ス トを低 下 させ た り,ま た,ス
ペ ッ ク ル パ ター
ンの 平 均 的 な大 き さ は 観 察 す る光 学 系 の 条 件 に よ っ て 変 化 す る の で,レ
ーザ照
射 領 域 や 結 像 系 の 開 口 を変 え た りす る こ とに よ っ て ス ペ ッ ク ル の 影 響 を小 さ く す る な ど,ス ペ ッ ク ル を 目立 た な くす る と い っ た 工 夫 が さ れ て い る 。 さ らに, レー ザ 光 の 波 長 や 入 射 角 を 変 え て 多 数 の ス ペ ッ ク ル ノ イ ズ の あ る 画 像 を撮 り, そ れ らを強 度 で 重 ね合 わ せ て 平 均 化 す る方 法 も効 果 的 で あ る。 ス ペ ック ル の統 計 的 な性 質 や コ ン トラス トは,光
源 の 空 間 コ ヒー レ ン ス と表
面 あ ら さ に よ っ て 変 化 す る 。 さ ら に,ス ペ ッ ク ル は 拡 散 面 の 変 位 や 変 形 に よ っ て,形
を 変 化 させ な が ら移 動 す る。 また,条
件 に よっては移動 せず にスペ ック
ル の 変 形 だ け が 生 ず るboiling現 象 や 逆 に ス ペ ッ ク ル の 変 形 が ほ と ん ど な い ま ま 移 動 す る場 合 もあ る。 これ らの性 質 は,種 々 の計 測 に積 極 的 に利 用 さ れ て い る 。 (c) 光 学 的 フ ー リエ変 換 に よ る画 像 処 理
光 の 回折 現象 を利 用 した有用 な光画像 情 報処理法 と して,光 学 的 フー リエ変 換 処 理 が あ る 。 特 に コ ヒー レ ン ト照 明 下 で の 物 体 の 結 像 に お い て,空
間周波数
フ ィ ル タ リ ン グが よ く用 い られ て い る。 空 間 周 波 数 フ ィル タ リ ング の 原 理 は 図 2.31に 示 す よ うな 二 重 回 折 光 学 系 に基 づ い て い る。 い ま,物 体 面P0に お か れ た 開 口u0(x,y)に 合,光
コ リ メ ー タ レ ンズL0に
よって広 げた レーザ光 が 照射 され た場
学 的 フ ー リエ 変 換 面P1に は フ ー リエ 変 換 レ ン ズL1に よ っ て 開 口u0(x,y)
の フ ー リエ ス ペ ク トル が 形 成 され る 。 フ ー リエ ス ペ ク トル は 物 体 が もつ 周 期 的 な構 造 を 周 波 数 で 表 した も の に相 当 す る 。 この と き,さ
らに 図2.31の
ように焦
点 面 に 配 置 し た フ ー リエ 変 換,レンズL2を とお せ ば,像 面P2の ス ク リー ン に は 等 倍 の像 が 結 像 す る 。 空 間 周 波 数 フ ィ ル タ リ ン グ は,特 定 の ス ペ ク トル を カ ッ ト す る フ ィル タ をP1に 入 れ る こ と に よ っ て,P2に お け る像 の構 造 が 大 き く変 化 す る 現 象 を基 本 原 理 と して い る 。 図2.31は 物 体 面 に格 子 状 の 開口 を 用 い た 例(Abbe Porterの 実 験)で あ る 。P1に フ ィル タA,
B,お
よびCの
よ うな そ れ ぞ れ 横,縦,
斜 め 方 向 の フ ー リ エ ス ペ ク トル を カ ッ トす るマ ス ク を入 れ る と,P2で 画 像 は そ れ ぞ れ 画 像A,
Bお よ びCの
得 られ る
よ う な 開 口 の特 定 の 構 造 の み を抽 出 した も
の とな る。 こ の よ うな 空 間 周 波 数 フ ィ ル タ リ ン グ の 特 性 を利 用 す れ ば,ロ
ーパ
ス・フ ィ ル タや ハ イパ ス ・フ ィル タ を 用 い た 高 周 波 ノ イ ズ や 低 周 波 ノ イ ズ の 除 去 や 特 殊 な フ ィル タ を用 い た 特 徴 抽 出 や 欠 陥 検 出,劣 化 像 の 復 元 な どへ の 応 用 が
図2.31 空 間 周 波数 フ ィル タ リ ング の原 理
可 能 で あ る。 (d) 画像 形 成 に お け る 回折 ・散 乱 の 応 用 事 例 表 面 欠 陥検 出技 術 は光 の 回 折 ・散 乱 特 性 を利 用 し た代 表 的 な技 術 で あ り,第4 章 で 応 用 事 例 が 詳 し く紹 介 され る。 た とえ ば,パ や 液 晶 基 板 の 欠 陥 検 査 技 術 で は,入
ター ンつ き シ リ コ ンウ エ ハ 上
射 光 の 入 射 角 や 偏 光 を 変 化 させ た場 合 の基
表2.2 回折 ・散 乱 を利 用 した画 像 形 成 の応 用 事例
板 に よ る 反 射 特 性,異
物 の 散 乱 特 性 お よ び 突 起 欠 陥 に よ る散 乱 特 性 の 違 い が 巧
み に 利 用 さ れ,複 雑 な 凹 凸 を もつ 表 面 の 欠 陥 識 別 が 可 能 とな って い る 。 そ こで, こ こ で は ス ペ ック ル パ タ ー ンや 回 折 ・散 乱 パ タ ー ン を積 極 的 に 利 用 した 計 測 技 術 や 空 間 周 波 数 フ ィル タ リ ン グ の応 用 例 を表2.2に ま とめ た 。 スペ ック ル 画 像 は焦 点 位 置 検 出 や 機 械 部 品 の 表 面 あ ら さ,変 形,変
位,振
動,移
動 速 度 な ど多 様 な
計 測 技 術 に応 用 され て い る4)。 また,規 則 的 な表 面 微 細 形 状 に よ る回 折 パ ター ン か ら表 面 あ らさ や 微 細 形 状 パ ラ メ ー タ の 測 定 が 可 能 で あ る5,6)。さ ら に,空
間周
波 数 フ ィ ル タ リ ン グの 応 用 と して は,複 雑 な構 造 を もつ 散 乱 面 の 欠 陥 計 測 技 術 に適 用 した例7)を あ げ て あ る。
(3) 偏 光 を 利 用 した 画 像 形 成 光 は1平 面 内 で 振 動 す る横 波 と して の 特 性 を もっ て お り,こ の振 動 の 偏 り を 偏 光 と呼 ん で い る 。 偏 光 現 象 は,方 解 石 な ど の あ る特 定 の構 造 を も っ た 結 晶 に よ っ て複 屈 折 を起 こ した り,屈 折 率 の 異 な っ た境 界 面 で 反 射(あ る い は屈 折)さ れ た 光 の 偏 光 状 態 が 変 化 す る 現 象 で あ る 。 た と え ば,図2 に 斜 め か ら入 射 した 場 合,反
.32の よ う に 光 が 水 面
射 光 は 反 射 面 に 水 平 に振 動 す る 光 波 の 成 分 が 多 く
含 まれ る 。 この よ う な光 の偏 光 特 性 を利 用 す る こ と に よ っ て,反
射光 だ けの情報 や透過
光 だ け の 情 報 を 抽 出 す る こ とが で き,ま た あ る 特 定 の 偏 光 成 分 か ら画 像 を形 成 し て,反 射 面 の微 細 構 造 や 結 晶 の 光 学 的 特 性 を可 視 化 す る こ とが で きる 。 特 に, レ ー ザ 光 は 質 の よい 直 線 偏 光 の 光 な の で,レ を行 う場 合 は,そ
ー ザ 光 を 照 明 光 に用 い た 画 像 形 成
の 偏 光 特 性 の 影 響 を受 け る こ とが あ る た め,偏
的 な 性 質 を 十 分 理 解 して お く必 要 が あ る 。
図2.32 偏 光 現 象 の一 例
光現象 の基本
(a) 反 射 面 の偏 光 特 性 一 般 に,光 波 が 図2.33(a)に 示 す よ う に進 行 方 向 に垂 直 な 一 つ の 平 面 内 で 振 動 し て い る 場 合,光 い る の で,こ
波 の振 動 の 方 向 を表 す 振 幅 ベ ク トルEの 軌 跡 が 直 線 とな っ て
れ を 直 線 偏 光 と呼 ん で い る。 な お,任
ベ ク トルEは,図2.33(a)に で き る 。 そ こで,ExとEyに ルEの
示 す よ うに,直
意 の方 向 を向いて いる振幅
交 す るX成 分ExとY成
位 相 差Δ が あ る 場 合,そ
分Eyに 分 解
れ ら を合 成 し た振 幅 ベ ク ト
軌 跡 は,位 相 差 の 大 き さ に よ っ て 円 お よ び楕 円 を描 くの で,こ
光 は 円 偏 光 お よ び 楕 円偏 光 と呼 ば れ て い る 。 図2.33(b)は の 円 偏 光 を示 して い る。 振 幅 ベ ク トルEの 軌 跡 は番 号1か く円 偏 光 とな っ て い る 。 ま た,振
幅 ベ ク トルEは
ら見 て右 回 り と な っ て い るの で,右
れ らの 偏
位 相 差Δ=π/2の
ら12の よ う に 円 を描
光 波 の 進 行 方 向 と逆 の 方 位 か
回 りの 円偏 光 とい う。 こ の場 合,位
図2.33 偏 光 の状態
とき
相 はEx
よ りEyが 進 ん で い る が,こ も一 般 的 な偏 光 と して,楕
れ が 逆 の 場 合 は 左 回 りの 円偏 光 に な る 。 さ ら に,最 円 を描 く場 合 を楕 円偏 光 と呼 ん で い る。
図2.34 境 界面 にお け る 反射 ・屈 折 と偏 光
さ ら に,光 の 偏 光 状 態 は,図2.34に て,自
然 光,部
分 偏 光,完
示 す よ う な振 幅 ベ ク トルEの 状 態 に よ っ
全 偏 光 に分 類 さ れ る 。 普 通 の 熱 的 光 源 は時 間 的 に 変
化 す る ラ ン ダ ム な振 動 方 向 を も っ た 光 波 が 混 在 す る 自然 光 と な っ て い る 。 ま た, 自然 光 が 境 界 面 で 反 射,透
過 した りす る と特 定 の 偏 光 成 分 が 抽 出 され て,自 然
光 の 一 部 が 偏 光 特 性 を もっ た 部 分 偏 光 に な る。 部 分 偏 光 は,自 然 光 と完 全 偏 光 の 中 間 的 な状 態 に あ る と考 え て よ い 。 さ ら に,レ ー ザ 光 の よ う な直 線 偏 光 や 円 偏 光,楕
円 偏 光 は完 全 偏 光 に属 して い る。
一 般 に,反 射 や 屈 折 の 際 に受 け る振 幅 や 位 相 の 変 化 は,入 射 光 の 偏 光 に よ っ て 異 な っ て い る こ とが 知 られ て い る 。 ま ず,屈 折 率n1とn2の 射 光 の 偏 光 お よ び反 射 波,屈
境 界 に お け る,入
折 波 の 関係 に つ い て 示 した の が 図2.35で
ある。入
射 光 線 と境 界 面 の 法 線 を 含 む 面 を入 射 面 と呼 ん で お り,入 射 光 の 偏 光 成 分 に お い て,入 射 面 に平 行 な 成 分 をP偏 光,垂 具 体 的 な 例 と し て,表 (n2=1.5)に
直 な 成 分 をS偏 光 と呼 ん で い る 。 い ま
面 の 凹 凸 に よ る 影 響 が 無 視 で き る な め ら か な ガ ラス 板
光 が 空 気 中(n1=1.0)か
ら入 射 した場 合 を考 え る。 こ の と き,入 射
波Eiの 一 部 は 反 射 光 と して も との 空 気 中 に戻 り,残 部 に入 っ て い き,そ れ ぞ れ 反 射 波Er,屈 伝 わ る 。 入 射 波 の 振 幅 を│Ei│,反
りは屈 折 光 と して ガ ラ ス 内
折 波Etと して 空 気 中 お よ び ガ ラ ス 中 を
射 波 お よ び 屈 折 波 の振 幅 を そ れ ぞ れ│Er│,
図2.35 境 界 面 にお け る反 射 ・屈 折 と偏 光
│Et│と す る と,振 幅 反 射 率rはr=│Er│/│Ei│(振 反 射 率RはR=│r│2(強
度 透 過 率T=1-R)で
幅 透 過 率t=│Et│/│Ei│),強
度
定義 される。
この と き,入 射 角 θiと反 射 波Er(屈 折 波Et)の 振 幅 反 射 率r(振 幅 透 過 率t)お よ び 強 度 反 射 率R(強 度 透 過 率T)と 反 射 波 の 位 相 変 化 δを示 した の が 図2.36で あ る 。 ま た,そ
れ ぞ れsお よ びpの 添 字 を つ け てs偏 光 お よ びp偏 光 を 区 別 し て い る 。
図2.36(a)よ
り,振 幅 反 射 率,振
幅 透 過 率 はs偏 光 とp偏 光 と も に入 射 角 に よ っ
て 変 化 して い る こ とが わ か る 。 こ こ で,振
幅 反 射 率 が 負 に な っ て い る の は,反
射 に 際 して 位 相 が 反 転 す る こ と を 示 して い る。 特 にp偏 光 の 場 合,振 が0と な る 入 射 角 Ψbが あ る 。 こ の と き,図2.36(b)の
幅 反射率
位 相 変 化 を見 る と,p偏
光
図2.36 境 界面 にお け る反 射 率,屈 折 率 お よび 位相 と偏 光
の 反 射 波 は πの 位 相 変 化 を 受 け て 位 相 が 反 転 して い る こ とが わ か る 。 こ の 入 射 角 は次 式 で示 す よ う に屈 折 率 の 比 で決 ま る角 度 で,Brewster角
また は偏 光 角 と
呼 ば れ て い る。
(2.22) な お,s偏
光 は す べ て の 入 射 角 に対 して 位 相 が 反 転 す る 。 また,図2.36(c)よ
反 射 光 の 強 度 はs偏 光 成 分 とp偏 光 成 分 の 平 均 値 で与 え られ,Brewster角 射 した 場 合 はs偏 光 成 分 の み と な って い る こ とが わ か る 。
り で入
以 上 は 表 面 凹 凸 の 影 響 を考 え て い な い例 を あ げ た が,物 折 率 の 不 均 一 性,薄
体 表 面 に あ ら さや 屈
膜 な どが あ る場 合 に は,反
射光 の偏光 状態 は空 間的に一様
で は な く,空 間 的 に複 雑 な偏 光 分 布 と な り,逆
に こ の 偏 光 の 空 間 的 状 態 を知 る
こ と に よ っ て 均 一 性 な ど を評 価 す る こ とが で きる 。 (b) 偏 光 に よ る光 学 性 質 の 可 視 化 一 般 に物 体 表 面 に あ らさ や 屈 折 率 の 不 均 一 性,薄 膜 な どが あ る場 合,入 の 偏 光 状 態 が 変 わ れ ば 反 射 光 や 透 過 光 の偏 光 状 態 も変 化 す る。 ま た,空
射光 間的に
よ り複 雑 な 偏 光 分 布 と な る こ と もあ る 。 こ の よ う な 偏 光 の 変 化 や 空 間 的 状 態 を 知 る こ とに よ っ て,均
一 性 な どの 評 価 や 物 体 内 部 の 光 学 的 特 性 を知 る こ とが で
き る 。 した が っ て,偏
光 特 性 を利 用 す れ ば,可
視 化 の 困 難 な物 体 内 部 の 光 学 的
性 質 を 画像 化 す る こ と も可 能 で あ る 。 こ れ ま で 述 べ て きた ガ ラス や 水 な どの よ うな 均 一 な透 過 物 体 を等 方 性 物 体 と 呼 ん で い る 。 これ に 対 し,光 が 入 射 す る と異 な っ た 偏 光 状 態 の 二 つ の 光 に分 か れ て 物 体 内 部 を 透 過 す る物 体 を異 方 性 物 体 あ る い は 複 屈 折 物 体 と呼 ん で い る。 偏 光 を用 い る こ とに よ っ て,こ
の よ うな 物 体 内 部 の 異 方 性 の 分 布 を 可 視 化 す る
こ とが で き,等 方 性 物 体 と異 方 性 物 体 を見 わ け る こ と が で き る。 物 体 の 複 屈 折 性 を 可 視 化 す る た め の 最 も代 表 的 な 光 学 機 器 と して 偏 光 顕 微 鏡 が あ る。 図2.37 は偏 光 顕 微 鏡 の 基 本 原 理 の 一 つ を示 して お り,オ ル ソ ス コ ー プ観 察 と呼 ば れ て
図2.37 偏光 顕 微 鏡 の基 本
い る 。 は じめ に顕 微 鏡 視 野 が 暗 黒 に な る よ うに 偏 光 子Pと 検 光 子Aを お き,試 料wを
調 整 して
挿 入 して 回 転 させ る。 試 料 が 等 方 性 で あ れ ば 視 野 に変 化 は な い
が,複 屈 折 性 が あ る と 回転 角 θに よ っ て位 相 差Δ が 生 じ,図 に示 す よ う に透 過 光 は楕 円 偏 光 な どの 入 射 光 と異 な っ た 偏 光 と な る た め,検
光 子Aを
透過す る とき
に強 度 変 化 が 起 きる 。 ま た,試 料 回転 角 θと強 度 変 化 の 関 係 か ら位 相 差Δ を知 る こ とが で き,強
度 の 変 化 に よ っ て 複 屈 折 特 性 を 可 視 化 す る こ とが で き る 。 図
2.38に 偏 光 顕 微 鏡 の 基 本 構 成 を 示 す 。 偏 光 顕 微 鏡 は,普 と検 光 子Aを
通 の 顕 微 鏡 に偏 光 子P
組 み 込 んだ構 成 となっ てい る。偏
光 子 と検 光 子 は そ の 透 過 軸 が 直 交 す る い わ ゆ る ク ロス ニ コ ル の 状 態 に な っ て お り,さ
らにそ れ
らの 間 に 光 学 系 の 調 整 の た め の 補 償 器 が 入 っ て い る の が 一 般 的 で あ る 。 補 償 器 は 偏 光 に任 意 の 位 相 差 を 与 え る こ との で き る素 子 で あ る。 (c) 画 像 形 成 に お ける偏 光 の 応 用 事例 光 の 偏 光 特 性 を積 極 的 に 利 用 した 画 像 応 用 計 測 の 事 例 は,前
項 の偏 光 顕微 鏡以 外 に顕著 な も
の は ほ と ん ど見 あ た ら な い 。 そ の 主 な 理 由 と し て は,偏
光 の 測 定 技 術 が 煩 雑 で あ る こ とや 物 質
の 偏 光 特 性 が 複 雑 で あ る こ と な どが あ げ られ る が,反
対 に こ れ か らの 発 展 が 期 待 さ れ る 領 域 で
もあ る 。 一 方,表
面 欠 陥 検 出 の 分 野 で は,複
雑
な 散 乱 光 や 強 い 反 射 光 か ら特 定 の 微 弱 な 光 情 報 を 抽 出 す る 手 法 と して 多 用 さ れ て い る重 要 な技 術 で もあ る。 た と え ば,第4章 応 用 事 例 と して,表
で は,偏 光 特 性 の
面異 物 に よる偏 光解 消現 象
を 利 用 した 表 面 異 物 検 出技 術 やs偏 光 とp偏 光 の 反 射 ・屈 折 特 性 の 違 い を 利 用 し て,ガ
ラス の表
面 と 裏 面 の 欠 陥 を 識 別 す る 手 法 な どが 紹 介 され て い る の で 参 照 さ れ た い 。 ま た,反 系 にお い て,レ
射照 明光 学
ン ズ の 表 面 反 射 に よ る フ レ ア(迷
図2.38 偏 光 顕微 鏡 の 基本 構 成
光)を
防止 す る 方 法 に も偏 光 が 利 用 され て い る。
■ 参
考
文
献
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三 次 元 画 像 形 成
(1) ス テ レ オ 法 二 つ の 地 点(計
測 点)か
を 知 る こ と に よ っ て,対
ら1点(対
象 点)を
眺 め る と き,計
測 点 の 位 置 と視 線 方 向
象 点 の 位 置 が 求 ま る 。 こ れ は,図2.39に
図2.39 三 角 測量 法 に基 づ く三 次 元位 置 計 測
示 す よ う に,
三 角 形 の 底 辺(計 測 点 間 の 距 離)と そ れ を は さむ 角 度(視 線 方 向)が 与 え られ れ ば, 三 角 形 が 決 定 され る とい う性 質 に基 づ く もの で,三 角 測 量 法 と呼 ば れ る 。 こ の性 質 を利 用 して 対 象 点 の 三 次 元 位 置 を計 測 す る と き,最 も重 要 な ポ イ ン トは,二 つ の計 測 点 か ら見 た2枚 の画 像 中 で 対 応 す る点 を決 定 す る こ とで,"対
応 づ け 問 題"
と呼 ばれ る 。 人 間 は,左 右 の 目が 同 じ もの を見 る よ う に プ ロ グ ラ ム化 され て い る が(い い か え れ ば,二 つ の 目で別 々 の も の を見 る こ とが で きな い),コ
ンピュータ
で この 機 能 を実 現 す る の は む ず か しい 。 い ま,こ
の 対 応 づ け が で き た と仮 定 す る と,図2.40に
の 三 次 元 座 標(x,y,z)は,2枚
示 す よ う に,対 象 点P
の 画 像 中 の 対 応 点 座 標(xa,ya)と(xb,yb)か ら求 め る こ
とが で きる1)。
図2.40 ス テ レオ 画像 法 にお け る三 次 元位 置 計測 法
対 応 づ け で は,左 の 画像 か ら特 徴 的 な点(xa,ya)を 選 び,同
じ特 徴 を もつ 点 が右
画 像 の ど こ にあ るか を調 べ る。 しか し,逐 次 処 理 しか で きな い コ ン ピ ュー タ を使 っ て,画 像 中 で 同 じ特 徴 を もつ 点 を探 す に は,長 い 時 間 が か か る 。 そ こで い くつ か の 拘 束 条件 を利 用 して,限
られ た領 域 の 探 索 だ け で 対 応 づ け を行 う方 法 が と ら
れ る 。 た とえ ば,左 画 像 の 特 徴 点(xa,ya)とPと
を結 ん だ 線(視 線 に相 当す る)を 右
画 像 中 に投 影 す る と,xlと 記 した 直 線 が 得 られ る 。 点(xa,ya)に 対 応 す る座 標 は, こ のxl上 に存 在 す る こ とに な り,一 次 元 線 分 上 の探 索 で す む こ とに な る。 こ の 線
分 をエ ピポ ー ラ線 と呼 ぶ 。 次 に,特 徴 点 の 選 び方 お よ び比 べ 方 が 問題 と な る 。 一 般 に よ く使 わ れ る の は, エ ッジ信 号 で あ る 。 た だ し,エ ッ ジ候 補 の 画 素 の 数 は きわ め て 多 く,そ の 中 で よ り特 徴 的 な 情 報 の 抽 出が 必 要 に な る。 た とえ ば,垂 直 に 長 い エ ッ ジで あ る とか, 近 傍 に対 応 づ け が確 定 した エ ッジ が 存 在 す る とか,付 加 的情 報 を利 用 して対 応 づ け を進 め る。 こ の ほ か に も,第3の
計 測 点 を つ く り3枚 目 の 画 像 を参 照 す る 方 法,分 解 能 の
低 い粗 い 画 像 で大 ざ っ ぱ な対 応 を見 つ け,順 に分 解 能 を上 げ な が ら対 応 点 の細 部 の 対 応 をつ け て い く階 層 的手 法,二 つ の カ メ ラ に位 置 を 固 定 せ ず に,近 い と こ ろ か ら少 しず つ 離 して い きつ つ 対 応 を追 っか け る方 法,カ
メ ラの 光 軸 に沿 っ て 前 後
に カ メ ラ を移 動 させ る方 法 な ど,さ ま ざ ま な方 式 が 提 案 さ れ て い る。 いず れ の 方 法 に お い て も,対 応 づ けの 処 理 は通 常 の コ ン ピ ュー タ に とっ て 苦 手 な計 算 手 法 で あ り,処 理 時 間 が 長 くか か る。 しか し,処 理 ア ル ゴ リズ ム は比 較 的 簡 単 で 局 所 的 で あ るの で,そ の 部 分 を特 殊 なハ ー ドウ エ ア で 並 列 化 す る こ とが 可 能 で あ る 。 現 在 で は,リ ア ル タイ ム に対 応 づ け を行 う ビジ ョン シス テ ム も出 現 し つつ ある。
(2) ア ク テ ィブ ス テ レオ 法 図2.41の
よ う に,一
方 の カ メ ラ を光 パ タ ー ン を投 影 す る プ ロ ジ ェ ク タ に お き
換 え,他 方 の カ メ ラか ら得 られ る画 像 中 の投 影 像 を抽 出 す る と,対 応 づ け の 問 題 を 回避 した ス テ レ オ画 像 法 が 実 現 で きる2)。 こ れ を ア ク テ ィブ ス テ レオ法 と呼 ぶ 。 (a) ス リ ッ ト光 投 影 法(ス リ ッ ト画像 法,光 切 断 法) 投 影 パ タ ー ン と して ス リ ッ ト光 を投 影 す る と,1回
の 撮 像 で1本 の ス リ ッ ト,
い い か え れ ば1枚 の 光 シ ー トが 物 体 を切 断 した と きの 切 断像 が 得 られ る 。 この こ と か ら,ス
リ ッ ト画 像 法 の こ と を光 切 断 法 と も呼 ぶ 。 ス リ ッ トプ ロ ジ ェ ク タの 投
影 方 向 を 少 しず つ 変 化 さ せ つ つ,観
測 対 象 を走 査 す る と,図2.42の
よ うな ス リ
ッ ト画 像 が 得 られ る3)。 一 般 に ス リ ッ ト光 とい う と,障 子 の 隙 間 か ら差 し込 む 日光 を思 い 浮 か べ るが, こ の よ う な平 行 な ス リ ッ ト光 は こ こで は不 適 当 で あ る 。 ス リ ッ ト画像 法 で 用 い ら れ る ス リ ッ ト光 は,点 光 源 とス リ ッ トマ ス ク,あ
る い は ビー ム状 の 光 線 と シ リ ン
図2.41 光 パ ター ン投 影 型 ア ク テ ィブ ス テ レオ 法
ダ状 レ ンズ か ら生 じ る よ うな,光 束 が 放 射 状 に広 が っ て い く よ う な も の で な け れ ば な らな い 。 ま た,1本
の 走 査 線 上 で た か だ か1箇 所 の ス リ ッ ト像 とな る た め に,
次 の よ う な 条 件 が 課 せ られ る 。 「カ メ ラ レ ンズ の 主 点 を とお り,走 査 線 に平 行 な 直 線 上 に ス リ ッ ト光 源 の 中 心 をお き,ス リ ッ トの長 さ方 向 が この 直 線 に 直 交 す る よ う に プ ロ ジ ェ ク タ を 配 置 す る。」 一 般 に は,カ メ ラ と プ ロ ジ ェ ク タ を 同 じ高 さ で 走 査 線 が 水 平 に な る よ う にお く こ とで,上 の 条 件 は 概 ね 満 足 され て い る 場 合 が 多 い が,念
の た め チ ェ ッ クが 必 要 で あ る。
これ に よ っ て 得 ら れ る画 像 は,視 覚 的 に は 図2.42に 示 す よ う に,線 り2値 画 像 に見 え るが,お
図形 で あ
の お の の ス リ ッ トに はス リ ッ ト番 号(ア ドレス)が 書 き
込 ま れ,各 ス リ ッ トの投 影 方 向 を画像 デ ー タ か ら読 み 取 る こ とが で きな け れ ば な らな い 。 具 体 的 に は1本1本
の ス リ ッ ト投 影 ご とに,画 像 を入 力 し ス リ ッ ト位 置
図2.42
ス リ ッ ト画 像 の 一 例
を検 出 し,そ の 画 素 とス リ ッ ト番 号 を 対 応 づ け て 記 録 す る。 した が っ て,N本 の ス リ ッ ト画 像 を得 るた め に はN回 上 記 の ス リ ッ ト光 方 式 で は,密
の画 像 入 力 ・処 理 が 必 要 で あ る 。 な距 離 画 像 を得 る に は計 測 に時 間 が か か る し,
後 述 の コ ー ド化 法 で は量 子 化 誤 差 に よ る 精 度 の 制 約 が あ る 。 こ れ らの 問 題 を, イ メ ー ジ エ ン コー ダ と呼 ば れ る 画 像 変 換 装 置 を用 い て解 決 し,ス
リ ッ ト光 投 影
に よ り密 な距 離 画像 を得 る シ ス テ ムが 開発 され て い る4)。 図2.43は,こ
の シ ス テ ム の構 成 で あ る 。 こ の シ ス テ ム で の 特 徴 は,ス
画 像 を観 測 す る テ レ ビ カ メ ラ か ら の ビデ オ 信 号 が,イ
リット
メ ー ジ エ ン コー ダ 内 の メ
モ リ に格 納 され る 点 に あ る。 こ の イ メ ー ジ エ ン コー ダ は,内 部 に2枚 の 画 像 メ モ リ(A,
B)を もっ て お り,次 々 に や っ て く る ビ デ オ信 号 は,画 素 ご と に画 像 メ
モ リAの 値 と比 較 され る 。 入 力 信 号 の 方 が 大 きい と きは,こ 画 素 値 が そ の 入 力 に よ っ て 更 新 さ れ る。 す な わ ち,こ
の メ モ リAの 当該
の メ モ リAに
は,各 画 素
ご と に最 大 輝 度 が 記 憶 さ れ る 。 ま た 更 新 と 同 時 に,画 像 メ モ リBの
同 じ ア ドレ
ス に,最
大 輝 度 が 生 じ た 時 刻(投 影 角 度)が 記 録 さ れ る 。 こ の 画 像 メ モ リBの 内
容 は,従
来 の ス リ ッ ト画 像 の よ う な と び と び の 輝 線 デ ー タ で は な く,コ ー ド化
図2.43
イ メー ジエ ン コー ダ を用 いた レ ンジ フ ァイ ンダ
図2.44 図2.43の シ ステ ム で計 測 された 三 次元 画像 例
法 か ら得 ら れ る密 な距 離 画 像 と 同 じ も の で あ る。 図2.44に,計 この 例 で は,視
野256mm×240mm,分
解 能1mm,計
測 事 例 を示 す 。
測 時 間8秒(左 右 か ら2枚
撮 像)で あ る。 (b) コ ー ド化 パ タ ー ン光 投 影 法 ス リ ッ ト画 像 法 は,ス
リ ッ トの 微 小 移 動 ご とに 画 像 を入 力 しス リ ッ ト像 の 位
置 を検 出 す る必 要 が あ っ た 。 そ の た め,分
解 能 の 高 い 三 次 元 画 像 を 得 る に は,
長 い 入 力 時 間 を要 した 。 こ の 問 題 を解 決 す る た め,対 象 空 間 を2進 数 の よ うな コ ー ド列 で 符 号 化 す る こ とに よ っ て,少
な い投 影 回 数 で距 離 画 像 を入 力 す る方
法が ある。 複 数 の コ ー ド化 パ ター ンを 時 系 列 的 に投 影 し,空 間 を コ ー ド化 す る方 法 と し て,上
田 らは,モ
ス を,2進
ア レ縞 の 次 数 を決 定 す る た め に 必 要 な 格 子 ス リ ッ トの ア ド レ
数 符 号 化 す る 時 系 列 符 号 化 を提 案 し,PLZT電
気 光 学 シ ャ ッ タ列 を用
い て,機 械 的 位 置 合 わ せ の 必 要 が な い シス テ ム を試 作 して い る5)。光 学 マ ス ク を 用 い る代 わ りに,複 数 個 の光 源 を制 御 す る試 み もあ る6)。
図2.45
液 晶 シ ャ ッタ を用 い た レ ンジ フ ァイ ンダ
こ の よ う な 時 系 列 コー ドに よ っ て 空 間 の よ うな ア ナ ロ グ量 を コ ー ド化 す る場 合,微
妙 な 位 置 ず れ か ら コ ー ド化 エ ラ ー が 生 じ る場 合 が あ る。 これ を 回 避 す る
た め に,図2.45の
よ う に,投 影 コー ド と し て グ レ イ コー ド(交 番2進 符 号)を 採
用 し,か つ 光 学 マ ス ク と して 液 晶 シ ャ ッ タ を 用 い た レ ン ジ フ ァ イ ン ダが 開発 さ れ て い る7)。こ の 液 晶 シ ャ ッ タの 利 用 は,副 次 的 に 次 の よ う な特 徴 を発 揮 し,精 度 の 高 い距 離 画 像 計 測 が 可 能 に な っ て い る。 ① ネ ガ ・ポ ジ 反 転 パ ター ンの投 影 画 像 の 比 較 に よ る 画 像2値 化 の 安 定 化 。 こ れ に よ り,反 射 率 の低 い 物 体 の計 測 で も安 定 に2値 化 パ タ ー ンが 得 ら れ て い る。
② グ レ イ コ ー ドパ タ ー ンの 明 暗 境 界 線 の サ ブ ピ ク セ ル 検 出 に よる 高 精 度 化 。 これ に よ り,な め らか な 曲面 を精 度 よ く形 状 計 測 で き て い る 。 (c) ス ポ ッ ト光 投 影 法 レー ザ ビ ー ム を対 象 に投 影 して で きる ス ポ ッ ト像 を得 る方 法 は,三 角 測 量 の 原 理 に最 も忠 実 な ア ク テ ィ ブ レ ン ジ フ ァ イ ン ダ で あ る が,画 適 用 す る に は 時 間 が か か りす ぎて,実 い ず,PSDの
像 処 理 的 な手 法 を
用 的 で な い 。 しか し,テ
よ うな 特 殊 な セ ンサ を用 い れ ば,ビ
レ ビ カ メ ラ を用
デ オ レー トに 拘 束 さ れ ず,か
え っ て 高 速 ・高 精 度 な レ ン ジ フ ァ イ ンダ が 実 現 で きる 。 カ ナ ダNRCで
は,図2.46に
示 す よ う な巧 妙 な 光 学 系 を用 い た精 度 の 高 い レ ン
ジ フ ァイ ン ダ を発 表 して い る8)。Sは レ ーザ 光 源 で あ り,Dは
一 次 元PSDで
あ る。
中 央 に あ る多 角 錐 形 の ミ ラ ー が こ の シス テ ム の 中 枢 で あ り,自 己 同 期 走 査 ミラ ー と呼 ば れ て い る 。 レー ザ 光 源 か ら発 した ビ ー ム は,こ 角 錐 ミ ラー の1面 に あ た り,固 定 ミ ラーM1,副
走 査 ミ ラーM3を
投 光 され る 。 こ の と き多 角 錐 ミ ラ ー の 回 転 に よっ て,ビ 物 体 面 上 でa-bで
の 高 速 回 転 して い る多
示 した 方 向 に 走 査 さ れ る。M3の
経 て物 体 面 上 に
ー ム は面 素M1上
お よび
回転 に よ り物 体 面 上 を適 当 な
ピ ッチ で 走 査 し,そ の 結 果 二 次 元 走 査 が 行 わ れ る。 物 体 面 上 の ス ポ ッ ト像 は投 光 側 と対 称 的 な光 学 系 を とお り,PSDセ こ の シ ス テ ム の 最 大 の 特 長 は,PSDの
ンサ 上 に 結 像 さ れ る 。 よ うな デ バ イ ス で 実 質 的 に高 い分 解 能
の 距 離 画 像 が 得 ら れ る 点 で あ る 。 図2.47のx軸 点 に 検 出 用 結 像 系 の レ ン ズ 中 心,z=z0の るも の とす る 。 物 体 面 が(d/2,l)の
上(d,0)に
レ ー ザ 光 源 が あ り,原
面 に ス ポ ッ ト光 検 出 器 が 配 置 さ れ て い
位 置 に あ っ た と き,そ
の ス ポ ッ ト像 はz=z0の
図2.46 自 己同 期 走査 ミラー を用 い たス ポ ッ ト投 影型 レン ジフ ァイ ン ダ
図2.47 図2.46の システ ム の光 学 的配 置 説 明 図
面 でx=-df/2(l-f)と
な り,セ
ン サ の 中 心 が こ の 点 に 一 致 し て い る とす る 。 従
来 の 三 角 測 量 法 を 利 用 し た シ ス テ ム で は,(x,z)に でx=pの
位 置 に 結 像 す る が,こ
生 じ た ス ポ ッ トは セ ン サ 面 上
の シ ス テ ム で は,ビ
ー ム の 走 査 と同 期 した ミ ラ
一 が 検 出側 に取 り付 け られ て い る の で ,こ の ミ ラ ー に よ りス ポ ッ ト像 は偏 向 さ れ る。 ビー ム の 走 査 角 が θの と き検 出 側 の 偏 向 角 も θとな り,ス ポ ッ ト像 は 図 中 x=p'の
位 置 に移 動 す る 。 このp'を 計 測 す る こ と に よ り,pの
値 を次 の式 か ら求
め る こ とが で きる 。
こ こ でp'の 変 化 域 はpに 比 べ て 小 さ く,せ ま い範 囲 の 位 置 計 測 値 か ら広 い 範 囲 の ス ポ ッ ト像 位 置 を求 め る こ とが で き,見 か け上 分解 能 が 向 上 した こ とに な る。
(3) 光 レー ダ法 光 の 飛 行 時 間 を計 測 して2点 間 の 距 離 を計 測 す る方 法 は,古
くか ら物 理 計 測
に 利 用 さ れ て い た 。 この 光 ビー ム を二 次 元 的 に 走 査 す る こ と に よ り,広 が りの あ る対 象 の 各 点 ま で の 距 離 を計 測 し,距 離 画 像 を得 る こ とが で き る。 こ の 方 式 の 中 に も時 間 の 計 測 に応 じて2種 類 が 存 在 す る。 (a) 光 飛 行 時 間 計 測 法 光 パ ル ス が 対 象 に あ た っ て 発 射 し て帰 っ て く る ま で の 時 間 を 計 測 して 距 離 を 求 め る 方 法 で あ る。 図2.48はJPL(ジ
ェ ッ ト推 進 研 究 所)で 開発 さ れ た レ ン ジ フ
図2.48 JPLで 開発 され た光 飛行 時 間計測 型 レ ンジ フ ァ イ ンダ
ァイ ンダ で あ る。 受 光 強 度 に比 例 して 変 化 す る し きい 値 回 路 と高 速 な 時 間―パ ル ス 高 変 換 回路 を用 い て約2cm精 に よ り64×64の
距 離 画 像 を4秒
度 の セ ンサ を試 作 して い る9)。Jarvisも こ の 方 式 で 入 力 で き る ロ ボ ッ トア イ を つ くっ て い る10)。
こ の 方 式 は,原 理 は 簡 単 で あ るが 光 の 飛 行 速 度 が 非 常 に速 く(3×10m/s)
,ま た
対 象 の 表 面 の 反 射 率 や 距 離 に よ っ て 受 光 強 度 が 大 き く変 化 す る こ とか ら,精 度 の よ い 計 測 は むず か しい 。 (b) 位 相 差 計 測 法 正 弦 波 状 に強 度 変 調 した レ ー ザ ビー ム を発 射 して,そ
の 反 射 波 との 位 相 差 を
計 測 す れ ば,飛 行 時 間が 求 ま り距 離 を知 る こ とが で き る。SRIで よ う な,HeNeレ
ー ザ を9MHzで
変 調 した ビ ー ム を用 い て,室
よ く観 測 す る シ ス テ ム を発 表 した11)。こ こで は反 射 光 のS/Nを 変 調 器 に対 して,AGCを う た め,ネ ALV
Land
Vehicle)の
内 シー ン を精 度 確 保す るため光
ら に信 号 振 幅 に影 響 され な い 位 相 検 出 を行
ッ トワ ー ク ア ナ ラ イ ザ(HP8407A)を
(Autonomous
Navlabプ
き かせ,さ
は,図2.49の
用 い て い る。 最 近 ア メ リ カ で
研 究 が 活 発 で あ る が,CMUで
ロ ジ ェ ク トで用 い られ て い るERIMセ
進 行 中の
ンサ も この 原 理 に基 づ い た もの
で あ る。
図2.49 SRIで 開 発 され た位 相 差計 測 型 レ ンジ フ ァイ ンダ
こ の よ う な レ ー ダ 法 で 得 ら れ る 画 像 は,正 い る こ と と,光 点 で,真
方 格 子 点 で の 画 素 の距 離 を 表 して
源 と 受 光 点 が 同 軸 上 に 存 在 し得 る 点 で 不 可 視 領 域 が な い と い う
の 意 味 で 距 離 画 像 と な っ て い る 。 過 去 に 発 表 さ れ た も の は,精
測 時 間 の 上 で 大 き な 欠 陥 を も っ て い た り,シ に は 不 十 分 で あ っ た が,現
度や 計
ス テ ム が 複 雑 で あ っ た り で,実
用
在 の レー ザ 技 術 と エ レ ク ト ロ ニ ク ス を 駆 使 す れ ば も
っ と 性 能 の よ い も の が 容 易 に 実 現 で き る と の 見 通 し を も っ て い る オ プ トロ 技 術 者 は 多 い 。 この 分 野 の今 後 の 発 展 は期 待 で き る。 光 レ ー ダ 型 レ ン ジ フ ァ イ ン ダ に つ い て は,ERIMの が 発 表 さ れ た が,サ Odetics社
ン プ ル の 域 を 出 な か っ た よ う で あ る 。1990年
が 正 弦 波 変 調 光 を 投 影 す る 方 式 を 世 に 出 し,Oak
Laboratoryに
お い て,原
し て い る 。 ち な み に,Oak サ イ ズ:128×128画
Ridgeで
素,画 角:60°
ッ ト長:9∼8ビ
Ridge
National
分 な 成 果 を上 げ な い ま ま中 座
×60°,計 測 距 離:1∼10m,距
Projectに
離 分 解 能:2
で あった。
使 用 さ れ て い るPerceptron社
の レ ンジ
一 市 販 さ れ て い る 光 レ ー ダ型 の レ ン ジ フ ァ イ ン ダ と い わ れ る
(執 筆 当 時)。 こ の ス ペ ッ ク は サ イ ズ:256×256画 離:40m,距
代 に 入 っ て,
用 い ら れ た シ ス テ ム の ス ペ ッ ク を 示 す と,
ッ ト) ,計 測 時 間:0.825秒
最 近 で は,CMUのAmbler フ ァ イ ン ダ が,唯
3の 製 品
子 力 プ ラ ン ト 内 の メ ン テ ナ ン ス ロ ボ ッ トHERMIES
IIIの 視 覚 へ の 可 能 性 が 検 討 さ れ た12)。 し か し,十
∼4cm(ビ
セ ン サ の あ と,2,
離 分 解 能:1cm(ビ
ッ ト長:12ビ
ジ フ ァ イ ン ダ も ト ラ ブ ル が あ る ら し く,安
素,画 角:60°
×60°,計 測 距
ッ ト)で あ る 。 し か し,こ
の レン
定 に市 場 に 供 給 され る に は ま だ しば
ら くか か りそ うで あ る。 光 レ ー ダ 型 レ ン ジ フ ァ イ ン ダ は,ア
メ リ カ の 専 売 特 許 の よ う で あ る が,日
で も ご く 限 定 さ れ た 場 面 で は 開 発 さ れ て い る 。 注 目 さ れ る の は,災 ロ ボ ッ ト の 目 と し て,煙
本
害時 の救助
の 中 で も 透 過 す る 赤 外 線 を 用 い た も の13),鉄
鋼 プ ラ ン
トの 灼 熱 し た 分 厚 い ス ラ ブ の 側 面 形 状 を 計 測 す る シ ス テ ム が あ る 。 い ず れ も ス リ ッ ト画 像 法 の よ う な レ ン ジ フ ァ イ ン ダ が 役 に 立 た な い と こ ろ で あ り,光 ダ 方 式 の 利 点 をい か した応 用 で あ る とい え る 。
■ 参 考 文 献 1) 谷 内 田正 彦:ロ ボ ッ トビ ジ ョ ン,昭 晃 堂,1990.
レー
2) 井 口 征 士,佐 藤 宏 介:三 3) Oshima, Trans.,
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次 元 画 像 計 測,昭
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using
three-dimensional
information,
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4) 上 杉 ほ か:イ
メ ー ジ エ ン コ ー ダ を 用 い た 三 次 元 曲 面 形 状 計 測,第4回
ン シ ン グ技 術 シ ン ポ ジ ウ ム ,pp. 235-240, 5) 米 沢 進 ほ か:符 pp. 411-418,
晃 堂,1990.
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産 業 にお け る画 像 セ
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号 化 格 子 を 用 い た 物 体 形 状 の 計 測,電
子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌,J61-D,
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6) 吉 見 隆 ほ か:複
数 光 源 に よ る レ ン ジ フ ァ イ ン ダ シ ス テ ム,日 本 ロ ボ ッ ト学 会 誌 ,9, 7, pp. 1-
10, 1991. 7) 佐 藤 宏 介,井 テ ム,電
口 征 士:液
晶 レ ン ジ フ ァ イ ン ダ ー液 晶 シ ャ ッ タ に よ る 高 速 距 離 画 像 計 測 シ ス
子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌,J71-D,
8) Rioux,
M.:
Laser
range
finder
7, 1988.
based
on
synchronized
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, Applied
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21, 1984. 9)
Lewis,
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scanning
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range
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a robotic
vehicle,
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1977. 10)
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PAMI-5, 11)
Nitzan,
datain 12)
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laser
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高 橋 秀 実 ほ か:移
time-of-flight
range
scanner
for
robot
vision
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Proc.
measurement IEEE,
65,-2,
Experiments Conference
and
in on
動 ロ ボ ッ ト 用CO2レ
of
registered
reflectance
and
range
1977.
Mobile
Image
use
Robot
Navigation
Analysis, ー ザ レ ー ダ3次
pp.
371-387,
and
Range 1993
元 視 覚 セ ン サ,日
Imaging
, Proc.
. 本 ロ ボ ッ ト学 会 誌
,
8, 4, 1990.
2.2 2.2.1
画 像 処
理
画 像信 号処 理
(1) 画 像 補 正 一 般 に,入 力 画 像 に は 幾 何 学 的 な ひ ず み や 濃 度 の不 均 一 な どが 存 在 す る。 画 像 計 測 や パ タ ー ン認 識 な ど を行 う際 に,こ れ らの ひず み や 濃 度 の不 均 一 が 問題 に な る場 合 はそ の補 正 が 必 要 で あ る。 こ れ を画 像 補 正 と呼 ぶ 。 こ こ で は,基 本 的 な幾 何 学 的 な ひず み の 補 正 と,シ ェー デ ィ ング に よ る濃 度 の不 均 一 の補 正 につ い て述 べ る。 (a) 画 像 の 幾 何 学 的 補 正 幾 何 学 的 な ひず み の 例 と して は,画 像 を斜 め の 方 向 か ら撮 影 した た め に起 こ る
遠 近 法 的 な ひず み や,光 学 的 な撮 像 系 あ る い は電 子 的 走 査 シ ス テ ム の 影 響 に よ る ひず み が あ る。 幾 何 学 的 な ひ ず み の な い 座 標(x, y)か ら,ひ ず み を 受 け た座 標(x', y')へ の 変 換 は,一 般 に以 下 の変 換 方 程 式 に よ っ て 表 され る。 (2.23)
ひ ず み がx, y方 向 へ の 平 行 移 動,拡 大,縮
小,お
よ びx, y平 面 内 の 回 転 に よ る
遠 近 法 的 ひず み の場 合 に は,変 換 はa∼fを 定 数 と し て次 式 の よ うに線 形 変換(ア フ ィ ン変 換)で 表 す こ とが で き る。 (2.24) した が っ て,係
数(a∼f)が
既 知 で あ れ ば 容 易 に ひず み の補 正 を行 う こ とが で き
る。 ひず み が 撮 像 に使 わ れ る カ メ ラ の レ ンズ の 収 差 や,x, y軸 回 りの 回転 に よ る ひ ず み を含 む 場 合 に は 変 換 は非 線 形 と な り,そ の 補 正 は遠 近 法 的 ひ ず み に比 べ て む ず か し くな る。 特 に,画 像 計 測 な どで 物 体 座 標 系(ワ ー ル ド座 標 系)と カ メ ラ座 標 系 と の相 対 的 な 位 置,姿 を行 っ て,こ
勢 を 利 用 す る場 合 に は,カ メ ラ ・キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン1,2)
れ らの ひず み を考 慮 した変 換 式 を求 め て お く必 要 が あ る。
デ ィジ タ ル画 像 の 場 合,画
像 デ ー タ は離 散 的 な格 子 点 の 座 標(整 数)に お け る量
子 化 さ れ た 濃 度 値 と し て与 え られ る 。 い ま,ひ ひず み を受 け た 画 像 の濃 度 を関 数gで
ず み の な い 画 像 の濃 度 を 関 数f,
表 す と,fの 格 子 点(i0, j0)に 対 応 す る ひ ず
んだ画像 の座標
は 一 般 に 整 数 と は な らず,gの 復 元 す る に は,次
の よ う な方 法 を とる 。
① (a, b)に 最 も近 いgの ② (a, b)がgで
格 子 点 と は 一 致 し な い 。 ひ ず み 補 正 を 行 っ てfを
格 子 点(i1, j1)を 選 び,f(i0, j0)=g(i1,
次 の 四つ の格 子 点
で 囲 まれ て い る もの とす る。 す な わ ち,
j1)と す る 。
と す る 。f(i0,j0)の 値 を こ れ ら 四 つ の 点 で のgの
値 か ら次 式 を使 っ て 内 挿 に よっ て
求 める。
(2.25) た だ し,a=a-i1,β=b-j1で
ある。
(b) 画 像 の シ ェ ー デ ィ ン グ補 正 画 像 の シ ェー デ ィ ン グ(shading)と
は,画 像 の 比 較 的広 い 範 囲 に わ た る明 る さ
(露 光)の 不 均 一 を さす 。 シ ェ ー デ ィ ン グ に は,照 明 の 不 均 一 に よる もの と,撮 像 に使 わ れ る レ ンズ の光 軸 近 傍 を通 過 す る光 量 に比 べ て 光 軸 か ら離 れ た 部 分 を通 過 す る 光 量 が 少 な い こ と に よ る もの(口 径 蝕(vignetting),あ ン グ),と
るいは変調 シェーデ ィ
が あ る 。 以 下 に シ ェ ー デ ィ ン グの 補 正 につ い て 述 べ る 。 た だ し,説 明
の 都 合 上,こ
こで は座 標,濃
露 光 の不 均 一 の 補 正 は,与
度 は と も に連 続 量 と して扱 う。 え られ た 画 像 に 関す る 露 光 写 像 関数 を 求 め る こ とが
で き れ ば,均 一 な露 光 を受 け た場 合 の 画 像 に変 換 す る こ とが で きる 。 い ま,シ ェ ー デ ィ ング 画 像g(x
,y)が (2.26)
で 与 え ら れ た と す る 。 こ こ で,f(x, お け る 理 想 的 な 濃 度 を 表 し,e(x, で は,fは
一 定 値cを
像 関 数 はe(x, y)=gc(x,
y)は
露 光 が 均 一 な と き の 画 像 上 の 点(x, y)に
y)は 露 光 写 像 関 数 で あ る 。 明 る さ が 一 様 な 領 域
と る 。 こ の 一 様 な 領 域 の 実 際 の 画 像 をgc(x, y)と す る と,写 y)/cで
表 さ れ る 。e(x, y)が わ か れ ば,次
式 に よっ て シ ェ ー
デ ィ ン グ 補 正 す る こ とが で き る 。
(2.27)
一 方,不 均 一 な 照 明 に よ る シ ェ ー デ ィ ン グ を,準 同形 フ ィ ル タ(homomorphic filter)3)と 呼 ば れ る高 域 フ ィル タ を利 用 して 補 正 す る方 法 もあ る。
(2) 画 像 の2値
化
画 像 の2値 化 は 画 像 の特 殊 な 濃 度 変 換 の 一 種 で,画
像 の 中 か ら処 理 の 対 象 と
そ れ 以 外 の 部 分(背 景)と を分 離 し,対 象 を形 と し て抽 出 す る 最 も基 本 的 な手 法 で あ る。 最 も単 純 で 広 く使 わ れ る し きい 値 処 理 は,あ
る濃 農度値tを し き い値 と して,次
式 に よ っ て2値 画 像 を 得 る方 法 で あ る。 (2.28) こ こで は,し
きい 値tの 代 表 的 な選 択 法 と して モ ー ド法 に つ い て 述 べ る 。
対 象 と背 景 の濃 度 の 差 が 大 き く,ヒ ス トグ ラ ム が 対 象 の 濃 度 平 均 付 近 と背 景 の 濃 度 平 均 近 くに そ れ ぞ れ ピー ク(モ ー ド)を も ち,双 峰 形 の 分 布 を示 す 場 合 に は,分 布 の 谷 の 底 に 対 応 す る濃 度 を し きい 値 に選 べ ば 良 好 な2値 化 画 像 が 得 ら れ る 。 こ の 方 法 を モ ー ド法(mode
method)と
呼 ぶ 。 た だ し,ヒ ス トグ ラ ム が 双
峰 形 で あ っ て も,こ の 方 法 で 良 好 な結 果 が 得 られ な い 場 合 も あ る こ と に注 意 す る必 要 が あ る。 この ほ か にpタ イ ル 法,統 計 的 手 法4),動 的 し きい 値 法 な どが あ り,さ ら に多 くの し きい 値 選 択 法 が 提 案 され て い る5,6)がこ こで は省 略 す る 。
(3) 画 像 の平 滑 化 入 力 画 像 に は,一
般 に さ ま ざ ま な 雑 音 が 含 ま れ る。 画 像 に含 ま れ る雑 音 を 除
去 し,画 像 か ら本 来 の 情 報 を抽 出す る た め に行 わ れ る処 理 が,画
像 の平 滑化処
理 で あ る。 (a) 局 所 平 均 注 目画 素 の 近 傍 領 域 で 濃 度 の 平 均 値 を 求 め,注
目画 素 の 濃 度 値 を平 均 値 で お
き換 え る方 法 で あ る。 近 傍領 域 の と りか た は い ろ い ろ考 え ら れ るが,通 を正 の 整 数 と して 注 目画 素 を 中心 とす る(2N+1)×(2N+1)の
常 はN
正 方形領域 が と ら
れ る こ とが 多 い 。 各 画 素 の 重 み を 一 様 に して 単 純 平 均 を と る 方 法 で は,画 像 全 体 が な め らか と な り,物 体 の 輪 郭 や エ ッ ジ な どが ぼ け た 画 像 が 得 られ る。 そ こ で,注
目画 素 の
重 み を他 の画 素 に比 べ て 大 き く して 加 重 平 均 を行 う方 法 が あ る 。 (2.29)
こ こで,W(k,l)は
重 み 係 数 で あ る。 近 傍 領 域 が3×3の
場 合 の 重 み 係 数Wの
例と
して は, あるいは
な どが あ る 。 さ ら に,よ
り大 きな 近 傍 領 域 に 対 して 正 規 分 布 を用 い た 重 み係 数
を採 用 す る方 法 もあ る。 これ らの 方 法 で は,注 に よ っ て,平
目画 素 の 重 み を大 き くす る こ と
滑 化 の 程 度 は単 純 平 均 の 場 合 に比 較 して お だ や か な もの と な り,
よ り自然 な 平 滑 化 が 得 られ る が,輪 郭 や エ ッ ジの ぼ け を 避 け る こ とは で きな い 。 (b) メ デ ィ ア ン フ ィル タ メデ ィア ン フ ィル タ(median
filter)7)は,画 像 に含 まれ る イ ンパ ル ス状(あ る い
は,ス パ イ ク状)の 雑 音 を 除 去 す る フ ィ ル タで,注
目点(i,j)の近 傍領 域 内 で の濃
度 値 の 中 央 値(メ デ ィ ア ン)を 注 目点 で の濃 度 値 と して 採 用 す る 。 近 傍 領 域 は 窓 と呼 ば れ,そ
の 大 き さ(窓 の 画 素 の 総 数)と 形 は さ ま ざ ま で あ る が,中 央 値 を採
用 す る た め に,大
きさ は必 ず 奇 数 と な る よ う に構 成 され る。
た と え ば,(i,j)を 中 心 とす る3×3の た 場 合,中
窓 で濃 度 値 が{9,2,8,10,4,7,3,12,5}で あ っ
央 値 は7で あ るか ら,点(i,j)に
お け る 濃 度 値f(i,j)は (2.30)
と な る。 こ の 方 法 で は,濃
淡 画 像 内 の エ ッ ジ や 線 な ど の重 要 な 情 報 を 損 わず に雑 音 を
除 去 す る こ とが で きる 。 ま た,な
め ら か に 変 化 す る エ ッ ジ に対 して は,そ
の形
状 をそ の ま ま保 存 す る とい う特 徴 を も って い る 。 (c) その 他 の 平 滑 化 法 濃 淡 画 像 に お い て,輪
郭,エ
ッ ジ,線
な ど画 像 の 重 要 な 情 報 を損 わず に平 滑
化 す る た め の 手 法 が 数 多 く提 案 され て い る8)。
(4) 微 分 処 理 デ ィ ジ タ ル 画 像 の微 分 処 理 とは,画
素 間 の 濃 度 値 の差 分(値)を 求 め る こ とで
あ る 。 微 分 処 理 を実 行 す る こ とに よ っ て 濃 度 変 化 の 空 間 周 波 数 の 高 調 波 成 分 が
強 調 さ れ る の で,画
像 の 鮮 鋭 化 お よび エ ッ ジ や 物 体 の 輪 郭 線 検 出 な どの 際 に 用
い られ る 。 画 像 は二 次 元 空 間座 標 点,す 情 報 で あ る か ら,i方
な わ ち画 素[i,j]に お け る濃 度値f[i, j]の
向 とj方 向 の 単 位 ベ ク トル を そ れ ぞ れei,ejと して着 目 点 画
素[i,j]に お け る濃 度 勾 配 ▽f[i, j]は,
(2.31)
とな る。 す な わ ち,濃 度 勾 配(微 分 値)の 大 き さMと
最 大 勾 配 方 向 θは そ れ ぞ れ,
(2.32)
と 表 せ る 。 式(2.31)に
お い て,微
分df[i, j]/di,
df[i, j]/djを
そ れ ぞ れ どの よ う
な 差 分 Δif[i, j],Δjf[i, j]で 表 す か に よ っ て い ろ い ろ な 方 法 が 提 案 さ れ て い る 。 単 純 に は,着
目 画 素[i, j]と隣 り の 画 素 の 濃 度 値 の 差 分,
(2.33) で 近 似 で き る 。 し か し,式(2.33)に
よ っ て 与 え られ るMと
か ら半 画 素 ず れ た[i+1/2,
の 値 と な っ て い る 。 そ こ で,着
む 前 後2画
j+1/2]で
θの 値 は 着 目 画 素[i, j] 目画 素 を含
素 ず つ の 和(平 均)の 差 分,
(2.34)
図2.50 微 分 の図 式 表現
図2.51 プ レヴ ィ ッ トお よ び ソーベ ル の微 分 法 の 図式 表 現
(2.35) で 近 似 して 画 素 との 対 応 を 改 善 し,加 え て 微 分 に よ っ て ノ イ ズ が 強 調 され る の を避 け る 方 法 が あ る。 式(2.34)の 過 程 を 図2.50(a)に,式(2.35)の (b)に 示 す 。 さ らに ノ イ ズ の 影 響 を減 じた 微 分 法 と して,プ と ソー ベ ル の微 分 法 を 図2.51(a), ま た,斜
結 果 を 図2.50
レ ヴ ィ ッ トの微 分 法
(b)に 示 す 。
め 方 向 の 画 素 間 の 差 分 を とっ て 濃 度 勾 配 の 大 き さMと
最大 勾配方 向
θを,
(2.36)
とす る ロバ ー ツ の 微 分 法 もあ る。 濃 度 値 が 一 様 に 変 化 して い る よ う な領 域 で は,微 分 値 が 一 定 の 領 域 と な り, エ ッ ジ検 出 の 際 そ の 領 域 全 体 をエ ッ ジ と見 な して し ま う危 険 が あ る。 これ を 避 け る に は,二 次 微 分 を次 の よ う な差 分 で 近 似 して用 い る と よ い 。
(2.37)
二 次 微 分 で よ く用 い られ る もの に 次 の ラ プ ラ シ ア ン式(2.38)が 方 向 に無 関係 な ス カ ラ量 で あ る。
あ る。 これは
(2.38) しか し,式(2.38)は
上 下 左 右 方 向 の微 分 しか 考 慮 され て い な い 。 この 点 を改 良
して 斜 め方 向 の 変 化 も考 慮 した 式(2.39)で 定 義 す る場 合 もあ る。(こ うす る こ と で斜 め 方 向 の微 分 も よ く検 出 され る)。
(2.39)
(5) 画 像 の 強 調 と 鮮 鋭 化 目的 に応 じ て 画 像 の あ る特 徴 を 強 調 した り抑 制 した りす る 処 理 を一 般 に 画 像 の 強 調 と 呼 ん で い る 。 画 像 の ぼ け を排 除 し て 画 像 を鮮 鋭 化(鮮 明 化)す る手 法 も 広 い 意 味 で は強 調 と呼 ば れ る。 こ こ で は,濃 度 階 調 変 換 と ヒ ス トグ ラ ム変 換 に よ る コ ン トラ ス トの 強 調,お
よび 画 像 の 鮮 鋭 化 の 手 法 と して エ ッ ジ の 強 調 に つ
い て述 べ る。 (a) コ ン トラ ス ト強 調 ① 濃 度 階 調 変 換 に よ る強 調
入 力 画 像 の濃 度 分 布 が あ る 階 調 に偏 っ て い
る場 合 に は,鮮 明 な 画 像 が 得 られ な い こ とが 多 い 。 こ の よ うな 場 合 に画 像 の 濃 度 階 調 を 変 換 し て,重 要 な情 報 の 含 ま れ る 部 分 の 階 調 を 引 き伸 ば し,情 報 の 少 な い 部 分 の 階 調 を圧 縮 し て画 像 の コ ン トラス トを 強 調 す る こ とが で きる 。 こ の 変 換 は,画 素 ご と に異 な っ た 変 換 を行 うの で は な く画 像 全 体 に わ た っ て 同 じ変 換 を行 う。 濃 度 変 換 は,濃 度 値zを 濃 度 値z'に 写 像 す る変 換 で あ り,一 般 に次 の よ う に 書 け る。 こ こで は説 明 の都 合 上 濃 度 値 は連 続 量 とす る 。 (2.40) 変 換 の 前 後 の 階 調 は 同 じ で,z1≦z≦zK, 数 で あ っ て も よ い が,こ
す る 。tは
どの よ う な 関
こ で は 区 分 線 形 な 変換 を例 と して考 え る。
画 像 が 露 出 不 足(underexposed)な し て い な い 場 合,す
z1≦z'≦zKと
な わ ちza≦z=f(i,
ど に よ っ て,濃 j)≦zbで[za,
度階調全 体 にわ たって分布 zb]が[z1,
zK]の 部 分 区 間 で
あ る と き,
(2.41) と す れ ば 濃 度 階 調 の 引 き伸 ば し と平 行 移 動 が 行 わ れ て,変 換 後 の 濃 度 値 は階 調 全 体 に 渡 っ て分 布 す る よ うに な り,コ ン トラス トが 強 調 され る。 ② ヒ ス トグ ラ ム 変 換 に よ る 強 調
ヒス トグ ラ ム 変 換 は,入 力 画 像 の 濃 度
(輝 度)ヒ ス トグ ラ ム を,目 的 に 応 じて あ らか じめ 指 定 さ れ た ヒ ス トグ ラ ム に 変 換 す る方 法 で あ る 。 こ こ で は,コ の 平 坦 化(flattening),あ
ン トラ ス トの 強 調 を 目的 と し た ヒ ス トグ ラ ム
る い は 均 一 化(equalization)に つ い て 述 べ る。
い ま,入 力 画 像 の 大 き さ をMN,濃
度 階 調 をKと
し,濃 度 値ziの 画 素 数 をpiと
す る と,
が 成 り立 つ 。 ヒス トグ ラ ム の 平 坦 化 を 行 っ た 画 像 で は,ど 同 じ画 素 数q=MN/Kが
の濃 度 値 に つ い て も
割 り当 て られ る 。 実 際 に平 坦 化 を行 う に は 以 下 の 方 法
を と る。 初 め に (2.42) を満 た すk1を 求 め,z1∼zk1-1ま で の濃 度 値 を もつ 画 素 を濃 農度 値z1に 変 換 す る。 も し,そ の 画 素 数 がqよ
り少 な け れ ば,濃 度 値zk1の 画 素 の 中 か ら残 りの 画 素 数 だ
け 選 ん で濃 度 値 をz1と す る。 次 に (2.43) を満 た すk2を 求 め る。 も しk2=k1な
ら ば,濃 度 値zk1の 画 素 か らq個 の 画 素 を選
び そ の濃 農度 値 をz2と す る。k2>k1な
ら ば,濃 度 値zk2の 画 素 か ら濃 度 値zk1∼zk2-1
を もつ 画 素 を濃 度 値z2に 変 換 す る 。 そ の 画 素 数 がqよ
り少 な け れ ば,濃
度 値zk2
の画 素 の 中 か ら残 りの画 素 数 だ け選 ん で そ の 濃 農度 値 をz2と す る。 以 下 同 様 の 変 換 を く り返 せ ば,濃
度 階 調Kの
平 坦 化 さ れ た ヒ ス トグ ラ ム を も
つ 画 像 が 得 られ る 。 こ れ ら の操 作 で の 画 素 の 選 び方 に は,ラ
ンダムに選ぶ 方法
と,近 傍 領 域 で の 濃 度 平 均 値 の 小 さい もの か ら選 ぶ 方 法 とが あ る 。 近 傍 平 均 を
利 用 す る 方 が ラ ンダ ム に 選 ぶ 方 法 よ り も,変 換 後 の 画 像 に含 まれ る ノ イ ズ は少 な い。 (b) 画 像 の 鮮 鋭 化 一 般 に 劣 化 画 像 に は い わ ゆ る ぼ け が存 在 し,重 要 な情 報 を含 む エ ッ ジ が 不 鮮 明 に な っ て い る こ とが 多 い 。 ぼ け は積 分 作 用 に よ っ て生 じる の で,画 す る こ とに よ っ て エ ッ ジ を 強 調 して,画 き る。 ま た 空 間 周 波 数 で 考 え れ ば,ぼ
像 を 鮮 鋭 化(sharpening)す
像 を微分 る こ とが で
け は平 均 化 あ る い は積 分 作 用 で あ る か ら,
高 周 波 成 分 を減 衰 さ せ て い る。 した が っ て,高 域 強 調 フ ィ ル タ を とお す こ と よ っ て ぼ け を除 き画 像 を鮮 鋭 化 す る こ とが で き る。 た だ し,画 像 に雑 音 が 含 ま れ る 場 合 は これ らの操 作 に よ っ て雑 音 も強 調 され る こ とに 注 意 す べ きで あ る 。 ① 微 分 演 算 に よ る鮮 鋭 化
微 分 処 理 に つ い て はす で に述 べ た が,微
分フ
ィル タ に よ っ て さ ま ざ ま な方 向 の ぼ け た エ ッ ジ や 線 を鮮 鋭 化 す る こ とが で きる 。 この 場 合,フ
ィル タ は等 方 的(isotropic)で あ る こ とが 必 要 で あ る。 等 方 性 に関 し
て は次 の 事 実 が 証 明 さ れ て い る。(1)等 方 的 な 線 形 微 分 フ ィル タ は偶 数 次 の 偏 微 分 の み を含 む 。(2)任 意 の 等 方 的 な微 分 フ ィ ル タ に含 ま れ る 奇 数 次 の 偏 微 分 は偶 数 乗 さ れ た 形 で現 れ る。 こ こ で は,画 像fは 連 続 で微 分 可 能 とす る 。 一 次 微 分 を含 む 等 方 性 の微 分 フ ィ ル タ は勾 配(gradient)で あ る。 一 方,線
形な
微 分 フ ィ ル タ と して は ラ プ ラ シ ア ン(Laplacian)が あ る。 も との 画 像 か らそ の ラ プ ラ シ ア ンの 定 数 倍 を引 くこ とに よ っ て画 像 を鮮 鋭 化 す る こ とが で きる 。 ② 高 域 強 調 フ ィル タ
微 分 操 作 を空 間 周 波 数 領 域 で 考 え れ ば,低 周 波 領
域 の 成 分 を 弱 め 高 周 波 領 域 の 成 分 を強 調 す る こ とに 対 応 す る。 この 目的 に 使 用 さ れ る の が 高 域 強調 フ ィ ル タで あ る。 フ ィ ル タの作 用 は,画 像 関 数f(i, j)と フ ィ ル タ 関数(フ ィ ル タの イ ンパ ル ス 応 答)h(i, j)と の た た み 込 み 演 算 に よ っ て 出 力 画 像 関 数g(i, j)を 生 成 す る こ と で あ る 。 (2.44) こ れ を周 波 数 領 域 で 表現 す れ ば,次 式 が 得 られ る。 (2.45) こ こ で,G(ωi,ωj),
H(ωi,ωj),
F(ωi,ωj)は
そ れ ぞ れg(i, j),
h(i, j)お
よ びf(i,
j)の
フ ー リエ 変 換 で あ る。 した が っ て,高 域 強 調 を行 う に は式(2.44)に 示 す よ う にた た み 込 み 演 算 を行 う方 法 と,式(2.45)に 示 す よ う に フ ー リ エ 変 換 の 積 を 求 め そ の 結 果 を フ ー リ エ逆 変 換 す る方 法 とが あ る。
(6) 細
線
まず,い 隣
接:着
化
くつ か の 語 句 に つ い て 説 明 す る。 目画 素 とそ の 上 下 左 右 の4画 素 との 関 係 を 表 す4隣 接 と,着 目画 素
とそ の周 りの8画 素 との 関 係 を表 す8隣 接 とが あ る 。 近
傍:着
目画 素 に4隣 接 して い る 画 素 四つ を表 す4近 傍 と,着
目画 素 に8隣
接 して い る画 素 八 つ を表 す8近 傍 とが あ る 。 連
結:着
目画 素 とそ の4近 傍 画 素 と の 関係 を表 す4連 結 と,着
目画 素 とそ の
8近 傍 画 素 との 関 係 を表 す8連 結 とが あ る。 着 目領 域(図 形 部 分)を4連
結(8連 結)で 考 え た 場 合 に は,背
景 部 分 は8連 結
(4連 結)で 考 え な け れ ば 連 結 性 に対 して矛 盾 が 生 じる。 連 結 数:着
目画 素 と そ の 近 傍 画 素 との 連 結 の 度合 い を表 す 。
4連 結 の場 合
(2.46)
8連 結 の場 合
(2.47)
た だ し,k={1,
3, 5, 7}で あ り,着
て 反 時 計 回 り に 順 にg2,
g3…g8と
を と る と す る 。 ま た,g9=g1, 距
離:画
目 画 素 をg0,そ
の8近
傍 画 素 の 右 隣 り をg1と
しg0と 同 一 種 類 の 画 素 な ら1を gk=1-gkで
そ れ 以 外 な ら0
あ る。
素 間 の 距 離 に は 幾 通 りか の 定 義 方 法 が あ る が,画
子 状 に 並 ん で い る の で,4近
素 は二次元正方格
傍 距 離 と8近 傍 距 離 が 多 用 さ れ て い る 。
ユ ー ク リ ッ ド距 離:
(2.48)
4近 傍 距 離(街 区距 離):
(2.49)
8近 傍 距 離(チ ェ ス 盤 距 離):
(2.50)
こ こ で,Δi=i1-i2,Δj=j1-j2は 方 向 の 距 離 で あ る。
し
そ れ ぞ れ2画
素[i1,
j1],
[i2, j2]間 のi方
向,j
細 線 化 とは,2値
化 さ れ た 画 像 を対 象 に行 わ れ,白(黒)画
素 の領 域(図 形)を そ
の 中 心 の1画 素 か ら な る線 分 に収 縮 させ る 操 作 で,微 分 画 像 を2値 化 して エ ッジ 検 出 を行 う 際 な ど に行 わ れ る 。 ま た,細 け ば,そ
い帯 状 の 図 形 で は機 械 設 計 図 な ど を 除
の線 幅 に 含 ま れ る情 報 よ りそ の 図形 の 中 心 線 の 位 置 や 形 に 含 ま れ る 情
報(端 点,分 岐 点 な ど)が 重 要 に な る場 合 が 多 い 。 細 線 化 を 行 う に は,次
の点が考
慮 され ね ば な ら な い。 線 幅:細 線 化 さ れ た と きの 線 幅 は1で あ る こ と。 位 置:線
の 位 置 は も との 図 形 の 中心 に あ る こ と。
連 続 性:も
との 図 形 の 連 続 性(ト ポ ロ ジ カ ル な性 質)を 保 存 す る こ と。
安 定 性:端
点 を削 りす ぎ な い こ と。
耐 雑 音 性:図
形 周 辺 部 の 小 さ な ギザ ギ ザ(形 状 雑 音)に 影 響 さ れ な い こ と。
た だ し,細 線 化 され た線 図 形 を も との 図形 に戻 す こ とは 一 般 に不 可 能 と な る。 細 線 化 処 理 の 基 本 は,上 記 の 五 つ の 条 件 を満 た し な が ら図 形 の周 辺 の 画 素 を 順 に 削 っ て 図 形 の 中 心 に1画 素 か ら な る 連 な りを 残 す こ と で あ る。 す な わ ち, 着 目図 形(領 域)の 境 界 上 の 着 目画 素 に そ れ と 同種 類 の 画 素 が ど の よ う に連 結 し て い る か,連
結 数 を も と に着 目画 素 が ど の よ う な状 態(端 点,連
続 点,分
岐 点,
交 差 点 な ど)に あ るか を判 断 し消 去 可 能 な ら消 去 し(図 形 か ら背 景 へ 変 換),消
去
で き る画 素 が な くな る ま で こ の 操 作 を く り返 す 。 どの 条 件 を重 視 す る か で さ ま ざ ま な 方 法 が 提 案 され て い る。 た と え ば,単
純 な 方 法 と して 図2.52に 示 す8種 類 の マ ス クパ タ ー ン を用 い る
図2.52
細線 化 の マ ス クパ ター ン
方 法 が あ る 。 この 方 法 は,対 象 とす る2値 画 像 全 域 の3×3局
所 領 域 に 対 してP1
の パ ター ンを探 しそ の 中心 画 素 を1か ら0(図 形 か ら背 景)に 変 え る 。 続 い てP2の パ ター ン で処 理 を し,P8ま
で を1サ イ ク ル とす る 。 こ のサ イ ク ル を,1か
変 え る画 素 が な くな る ま で く り返 す 。 こ の 処 理 は,順 画 像 の 左 上 か ら右 下 に走 査 す る た め,得
ら0に
次 パ ター ン を 変 え なが ら
られ る 結 果 は,あ
て は め る パ ター ンの
順 番 に 依 存 した り細 線 化 さ れ た 結 果 が 必 ず し も図 形 の 中心 に な る とは 限 らな い 。 こ の 点 を改 良 した 方 法 に ヒ ル デ ィ ッチ の方 法 が あ る 。 細 線 化 と似 た 操 作 に,骨
格 線 を求 め る操 作 が あ る。 こ れ は,安
定 性 と連 続 性
を満 た さ な い が も との 図 形 に戻 せ る こ とに 重 点 をお い て い る(ユ ー ク リ ッ ド距 離 を使 っ た 場 合 は必 ず し も も とに戻 せ な い)。 骨 格 化 の 基 本 的 な操 作 は,ま 離 を 求 め,次
ず 図 形(領 域)内 の 各 画 素 につ い て 境 界 か ら の距
に 着 目画 素 の 距 離 が 近 傍(4近 傍 か8近 傍 か で 当然 得 られ る 結 果 は
異 な る)の そ れ よ りも大 き い か 等 しけ れ ば,そ
の 着 目画 素 を 骨 格 線 と して 残 す 。
こ の操 作 を図 形(領 域)全 体 に対 して 行 う と図 形 の 骨 格 線 が得 られ る。
(7) 領 域 分 割 画 像 あ る い は 画 像 の一 部 を局 所 的 に あ る 特 徴 量(濃 度 値,テ ど)が 一 様 な 部 分 領 域 に分 割 す る処 理 で,背
ク ス チ ャ,色 相 な
景 と物 体 の 分 離 や 認 識,あ
る い は画
像 情 報 の 圧 縮 を 目的 に 行 わ れ る。 現 在 の と こ ろ確 定 的 な 方 法 は な く,対 象 に応 じ て適 当 な 手 法 を選 ぶ 必 要 が あ る 。 代 表 的 な 方 法 と して次 の よ う な方 法 が あ る。 (a) 領 域 拡 張 法 各 画 素 の 特 徴 量 を近 傍 画 素 の そ れ と比 べ,特
徴 量 の 差 が あ る し き い 値 よ り小
さい と き 同 一 領 域 とす る。 領 域 間 の 場 合 は そ れ ぞ れ の 領 域 の 特 徴 量 の 平 均 値 で 比 較 しそ の 差 が 決 め られ た し き い値 の範 囲 内 な ら領 域 を統 合 す る 。 領 域 結 合 に 変 化 が な くな っ た ら し きい 値 を少 し増 減 し て 上 記 の 統 合 処 理 を行 う。 こ の 操 作 全 体 を 適 当 回 く り返 す 。 こ の 方 法 は 単 純 で 基 本 的 で あ り,し た 領 域 の 関係(し きい 値 の 意 味)が 理 解 しや す い 反 面,し
きい 値 と分 割 され
きい 値 の 初 期 値 や 増 分
お よ び終 了 条件 の 決 定 が む ず か しい 。 (b) 統 計 的仮 設 検 定 法 まず 画 像 を適 当 な 大 き さ の 領 域 に分 割 し,隣 接 領 域 の あ る特 徴 量(た とえ ば 濃
度 の ヒ ス トグ ラ ムH(f))を は 隣接 領 域A,
Bそ
比 較 し類 似 して い れ ば領 域 を統 合 す る。 類 似 の 判 定 に
れ ぞ れ の 濃 度 の ヒ ス ト グ ラ ム をHA(f),
HB(f)と
し,c1,
c2を
し き い 値 と し て,
(2.51) ま た は,
(2.52) で あ る と き類 似 して い る と判 定 し,領 域A,
Bを 統 合 し,統 合 が 行 わ れ な くな る
ま で く り返 す 。 式(2.51)を コ ル モ ゴ ロ フ ース ミル ノ フ検 定,式(2.52)を
スムー ズ
ドーデ ィ フ ァ レ ンス 検 定 とい う。 この 方 法 は,初
め の 分 割 領 域 の 形 を 決 め る 手 が か りが な く,一 般 に 矩 形 の 分
割 領 域 か ら始 め る た め 得 られ る 領 域 の 形 が 不 自然 に な りが ち で あ る 。 こ れ を改 善 す る た め に,初
め の 分 割 領 域 の 大 き さ を小 さ くす る と検 定 の信 頼 性 が 低 下 す
る。 (c) ヒ ュー リス テ ィ ッ ク法 領 域 の 形 状 と濃 度 差 を考 慮 した 方 法 。 濃 度 一 定 の 基 本 領 域 に 分 割 し,任 意 の 隣 接 領 域A,
Bの 周 囲 長 を そ れ ぞ れLA,
LB,
AとBの
共 通 境 界 線 の 長 さ をL,
L
の 両 側 の 濃 度 差 が あ る 値 εよ り小 さい 部 分 の 長 さ をl, c1, c2を し きい 値 と して,
(2.53) の と きAとBを
統 合 す る 。 この 方 法 は,得
う に工 夫 され て い る が,し
られ る領 域 の 形 が 自然 な 形 に な る よ
きい値c1,c2の 決 め 方 が む ず か しい 。
(d) その 他 の方 法 画 像 を 中 程 度 の 大 き さの 領 域 に 分 割 し,任 意 の 領 域 内 の あ る特 徴 量 が 単 峰 性 を示 す ま で 領 域 を適 当 な 大 き さ に 分 割 す る 。 次 に各 領 域 の 特 徴 量 の 平 均 を 求 め 互 い に 隣 り合 う領 域 の 平 均 の 差 が し き い 値 以 下 な ら これ らの 領 域 を一 つ に統 合 す る 。 こ の 方 法 は,分
離(分 割)統 合 法 と呼 ば れ,デ
ロ グ ラ ミ ング 環 境 に よ っ て は 有 利 で あ る が,分 が 多 く,得
ー タが木構造 とな るので プ
割 領 域 の 形 に 矩 形 を用 い る こ と
られ る 領 域 の 形 が 不 自然 に な る 。 ま た,特
し きい 値 の 決 定 な どが む ず か しい 。
徴 量 の 単 峰 性 の 判 断 や,
ま た,実
画 像 空 間 の 代 わ りに特 徴 空 間 で 分 割 に適 し て い る特 徴 量 を用 い て容
易 に 分 割 可 能 な 領 域 か ら逐 次 分 割 す る,特 徴 空 間 で の ク ラス タ化 を用 い る分 割 方 法 も あ る 。 こ の 方 法 で は,適 切 な 特 徴 量 の 選 び 方,判
断 基 準 や境 界 値 の 決 定
が むず か しい 。 こ れ ま で に 説 明 して き た 方 法 は,画 像 の 不 鮮 明 さや 低 周 期 の ノ イ ズ な ど に よ る特 徴 量 な どの あ い ま い さ に よ っ て,よ
い 結 果 を得 に くい 場 合 が あ る 。 こ の あ
い ま い さ を除 去 す る た め に,局 所 的 な矛 盾 が 少 な くな る よ う に並 列 反 復 的 に弛 緩 法 を使 う方 法 が あ る。 た と え ば,一
つ の領 域 の 各 画 素 に 濃 度 の あ い ま い さが あ る と考 え,各 画 素 の
濃 度 を近 傍 の 画 素 の濃 度 と矛 盾 の な い よ う に こ の あ い ま い さの 範 囲 内 で 弛 緩 法 を用 い て 反 復 修 正 し,特 徴 空 間 に お け る ク ラ ス タ(峰)の 発 見 を容 易 に す る こ と が で き る。 弛 緩 法 を 画 像 の 領 域 分 割 に用 い る場 合,各
画 素 が 各 ク ラ ス タ に属 す
る確 率 を局 所 的 に 矛 盾 が な くな る よ う に 反 復 修 正 す る確 率 的 弛 緩 法 と,さ 勾 配 を 考 慮 して 修 正 方 向 を規 制 す る勾 配 弛 緩 法 が あ るが,反
らに
復計算 のため多 く
の 計 算 時 間 を要 す る 。
(8) モ ル フ ォ ロ ジ ー 処 理 2値 画 像 で 表 現 され た 画 像 パ ター ン を画 素 位 置 の 集 合 と考 え,ミ 和 お よ び差 と い う集 合 演 算 を 施 す こ と に よ っ て,パ
ン コ フス キ ー
ター ン を変 形 す る操 作 をモ
ル フ ォ ロ ジ ー 処 理 とい う。 ミン コ フ ス キ ー 和 お よび 差 は次 の 式 で 定 義 され る9)。 (2.54) パ タ ー ンAの 各 画 素 を 中 心 と して パ ター ンBを 配 置 して で き上 が る 画 素 集 合 の 論 理 和 お よ び 論 理 積 を 意 味 して い る 。 最 も よ く用 い られ る モ ル フ ォ ロ ジ ー 処 理 の基 本 処 理 で あ る膨 張(dilation)と 収 縮(erosion)処
理 に お い て は,集 合Bは
い
わ ゆ る8近 傍 を用 い る。 (2.55) こ の と き,膨 張 はパ ター ンAの 輪 郭 を1画 素 幅 で 太 らせ,逆
に収 縮 は 細 らせ る 。
こ れ らは 収 縮-膨 張 の順 に用 い て画 像 中 の 小 さ な孤 立 領 域 や 細 い線 分 を除 去 し た り,逆 順 に 用 い て小 さ な穴 や と切 れ を埋 め 戻 した り,あ る い は 画 像 の 論 理 積 や 論 理 和 と併 用 して そ れ らを検 出す る た め に用 い る こ とが で きる。 た と え ば,
とい う処 理 に よ っ て孤 立 領 域 を抽 出 で き る。 モ ル フ ォ ロ ジ ー処 理 はそ の数 学 的基 盤 を利 用 して,2値
画 像 だ け で な く濃 淡 画
像 の フ ィ ル タ リ ン グ な ど に も広 く用 い ら れ て い る。 特 に2値 画 像 を 扱 う場 合 に は,そ
の 高 速 性 や ハ ー ドウエ ア化 が 容 易 で あ る点 が 注 目 され て い る 。
(9) 直 交 変 換 異 な る ベ ク トル ど う しが 直 角 に交 わ る とい う性 質 は幾 何 学 的 に 内積 に よっ て 明 快 に 定 義 され る 。 こ れ を拡 張 し た 直 交 変 換 に お け る 直 交 性 は,変 換 行 列 の 列 あ る い は 行 が 互 い に直 交 す る こ と に現 れ る 。 次 に 説 明 す る こ れ らの 変 換 は,画 像 処 理 の 分 野 で は 画 像 圧 縮,フ
ィ ル タ リ ン グ な ど,パ
徴 抽 出 な ど の 分 野 で 広 く用 い られ て い る。 た と え ば,画
ター ン認 識 の 分 野 で は 特 像伝 送す るため にはで
き る だ け 特 徴 の 豊 富 な 少 数 の成 分 に圧 縮 して 短 時 間 に多 量 の 情 報 を 送 る必 要 が あ る 。直 交 変 換 後 の 画 像 は 互 い に 直 交 す る た め に 情 報 の重 複 が な く(むだ が な い), 有 限 量 の デ ー タ に圧 縮 す る の に 向 い て い る。 ま た,符 号 化・ 復 号 化 も容 易 で あ る。 イ ン タ ー ネ ッ ト上 で 画 像 や 音 声 な どの 大 き な デ ー タ を や りと りす る た め の 技 術 に と っ て は 重 要 な 変換 とな る 。 (a) 離 散 フ ー リ エ変 換 離 散 フ ー リ エ 変 換(DFT)は
空 間 領 域 で サ ン プ リ ング(標 本 化)さ れ た 離 散 画 像
を,離 散 周 波 数 領 域 へ 変 換 す る た め の 直 交 変 換 で あ る 。 そ れ は 単 位 複 素 関 数 を 正 規 直 交 基 底 関 数 と して,次 の 式 で 正 変 換 お よび 逆 変 換 が 定 義 さ れ る。 (2.56)
(2.57) 変 換 行 列 は次 の(i,j)要 素 を もつ 正 方 行 列Wと
なる。
(2.58) こ の 変 換 は 複 素 変 換 で あ る の で,行 列Wの
逆 行 列 は転 置(T)に 加 え て 複 素 共 役
(*)を 必 要 とす る(ユ ニ タ リ性)。 (2.59) DFTは,バ
タ フ ラ イ 演 算 を 導 入 す る こ とに よ っ て,演 算 結 果 を保 持 す る こ と に
よっ て重 複 した む だ な計 算 を節 約 す る こ とが で き,高 速 フ ー リエ 変 換(FFT)と 呼 ば れ る。 (b) ウ ォル シ ュ・ア ダ マ ール 変 換 ウ ォル シ ュ・ア ダ マ ー ル 変 換(WHT)の
変 換 行 列Hは
次の再帰式 で定義 される。 (2.60)
こ こ で は ク ロ ネ ッ カ ー 積 で あ る 。
(2.61)
WHTは
もち ろ ん 直 交 変 換 で あ り,FFTと
に基 本 演 算 は和 と差 の み で あ るの で,プ
同様の高速計算 が可能 である。 さ ら
ロ グ ラ ミ ング は 容易 で あ る。
(c) カル ー ネ ン・レー ベ 変 換(K-L変 換) 効 果 的 な画 像 圧 縮 な どに よ く用 い られ る 直 交 変 換 で あ る 。 こ れ は対 象 とす る 画 像 群 の 相 関特 性 を 考 慮 に 入 れ た も の で あ り,分 散 共 分 散 行 列 の 固有 ベ ク トル を用 い た 部 分 空 間 へ の 写 像 と な っ て い る 。 原 理 的 に は 多 変 量 解 析 に お け る主 成 分 分 析 法 と同 一 で あ る。N×N画
像 群 を行 あ る い は列 展 開 して 次 のN2×1ベ
ク
トル群 で 表 す 。 (2.62) この 集 合 の標 本 分 散 共 分 散 行 列S,そ
の 固 有 ベ ク トル ,固 有 値 を次 式 で 求 め る。
(2.63) (2.64) 固 有 ベ ク トル ど う し は直 交 性 を もつ の で,こ
れ らを列 挙 した 固有 直 交 行 列Uに
よ っ て標 本 画 像 は 無 相 関 画 像f'に 変 換 で き る。 一 般 に は 固 有 値 の 降 順 に ベ ク ト ル を列 挙 し た 行 列Uを
用 い る こ と に よ り,エ ネ ル ギ ー の 大 き な成 分 を優 先 して
得 る こ とが で き る。 (2.65) (2.66) す な わ ち,f'の
各 要 素 は も うす で に単 純 な 明 度 に は 対 応 せ ず,分
散 の大 き な(標
本 画 像 群 に お い て特 徴 の 顕 著 な)固 有 座 標 値 とな っ て い る 。 この 変 換 は画 像 の ベ ク トル表 現 に対 応 す るN2×N2行 常 は大 きい順 にL(
列 の操 作 を必 要 と して 計 算 コ ス トが 大 きい 。 通
の 固 有 値 に付 随 す る 固有 ベ ク トル の み を列 挙 して 構 成
され る よ り小 さ なL次 元 部 分 固有 空 間 を用 い る 。 カ ル ー ネ ン・レー ベ 変 換 に よ る 画 像 圧 縮 で は,係
数 は 分 散 の 降順 に求 め られ る 傾 向 を もつ の で,一 般 に よい 効
率 を達 成 で き る10)。
(10) 動 画 像 処 理 運 動 す る 対 象 物 を 記 録 した 動 画 像 系 列 を処 理 す る 技 術 は,時 らず 保 存 され る 画 像 内 の相 似 部 分,あ
間 移 動 に も関 わ
る い は 特 徴 を 利 用 す る とい う点 で 静 止 画
像 処 理 と は異 な っ て くる。 (a) 差 分 処 理 基 本 的 な 処 理 と して,時 顕 著 に 変 化 す る 部 分,あ
間 的 に連 続 す る 画 像 ど う しの 差 画 像 に お い て 明 度 が
る い は保 存 さ れ る 部 分 に注 目す る こ とが で き る11)。
(b) オ プテ ィカ ル フ ロ ー カ メ ラの 移 動 に 伴 う画 像 の 動 き を オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー(OF)と
呼 ぶ 。 こ こで は,
画 像 全 体 に 生 じ る 明 度 の 移 動 を 利 用 して 運 動 を復 元 す る処 理 に つ い て 述 べ る。 ま ず,Hornは
オ プ テ ィ カ ル フ ロ ー拘 束 式 と呼 ば れ るOFを
特徴 づ ける基本特 性
を 導 い た12)。これ は 画 像 を 空 間 と時 間 の 関数f(x, y, t)と考 え,対 象 物 の 明 度 の 恒
常 性 に基 づ い てお り次 式 で 表 現 さ れ る 。 (2.67) す な わ ち,短
い 時 間 間 隔 に お い て は正 し い移 動 方 向[dx,dy]に お け る 空 間 的 な
明 度 変 化 成 分 と時 間 的 な明 度 変 化 成 分 は 互 い に キ ャ ン セ ル す る とい う拘 束 条 件 で あ る 。 こ れ は,明 度 変 化 の 急 峻 な 特 徴 部 分 で は よ く観 測 で き,単 な る 局 所 部 分 画 像 の 恒 常 性 と な る が,一
見 して 特 徴 の な い よ うな,な
め らか な 明 度 変 化 部
分 に お い て も成 立 す る と考 え る 。 この 条 件 式 に 加 え て 速 度 場 の 平 滑 性 の 条 件 を 考 慮 し てOFを
求 め る方 法 で あ る 。 ほ か に も こ の条 件 式 を基 本 に して ヒ ュー リス
テ ィ ッ クス を加 え た 手 法 が 提 案 さ れ て い る 。 この 手 法 は,明 度 の 変 化 量 に 依 存 す る の で,不
安 定 で あ る こ とが 多 い 。 そ れ を解 消 す る た め に,弛 緩 法 な どの 平
滑 法 が よ く併 用 され る が,一般
に分 解 能 は 低 く な っ て し ま うの で,適
用 す る対
象 を よ く吟 味 して 用 い る の が 賢 明 で あ る 。 (c) そ の 他 の 手 法 運 動 に よ っ て も変 化 の 少 な い 相 似 特 徴 を 照 合 処 理 に よ っ て 対 応 づ け る 手 法 も よ く用 い られ る 。 特 徴 と し て は,コ
ン トラ ス トの 強 い エ ッジ 点,直
エ ッ ジ セ グ メ ン ト,近 傍 に対 して 顕 著 な 有 色 領 域,な
線近似 した
どが 有 効 と され て い る 。
こ の種 の 手 法 は 扱 う画 像 ご と に多 数 提 案 され て い るが,概
して粗 なOFし
か得 ら
れ な い こ とが 多 い 。 手 法 と して は ス テ レ オ 画 像 処 理 に お い て 用 い られ る対 応 点 照 合 の 方 法 と類 似 の もの が 多 い が,時
系 列 画 像 に わ た る時 間 的 な相 関 特 性 を併
用 す る場 合 もあ る。
2.2.2
画像認識の手法
(1) 特 徴 記 述 お よ び特 徴 抽 出 法 画 像 認 識 の た め に は,対 象 に 関 す る さ ま ざ ま な特 徴 の 中 か ら認 識 に 有 用 な特 徴 を選 択 して 抽 出 し,対 象 の 特徴 を記 述 す る必 要 が あ る。 しか し,特 徴 は 対 象 画 像 に強 く依 存 す る の で,対 象 を記 述 す る特 徴 を見 つ け だす 一 般 的 な 手 法 は 存 在 し な い 。 抽 出 した 特 徴 を計 量 値 と して 表 した もの が,特 徴 量 あ る い は特 徴 パ ラ メー タ (feature parameter)で
あ る。 どの よ う な 特 徴 量 を使 うべ きか に つ い て も一 般 論
は な い が,対 象 と 目的 に応 じて,位 置 に 関す る不 変 性(平 行 移 動 や 回転 に 関 して
不 変),大
き さ に 関 す る 不 変 性(拡 大 ・縮 小 に 関 して 不 変),反
(鏡像 反 転 に 対 して不 変),輝
転 に 関す る不 変 性
度 に関 す る不 変 性(照 明 の ゆ ら ぎに 対 し て不 変)な ど
の 不 変 性 を考 慮 す る必 要 が あ る 。 特 徴 抽 出(feature extraction)を 効 率 よ く,正 確 に行 う に は,画 像 に 対 して 適 切 な前 処 理 が 行 わ れ て い な け れ ば な ら な い 。 こ こで は,前 処 理 に よ っ て 画 像 はあ ら か じめ 領 域 分 割 され,対 象 と背 景 の 分 離 が 行 わ れ て い る もの と し,対 象 の 面 積 や 周 囲長な どの画像の濃 農度 分 布 を問 題 と しな い 幾 何 学 的特 徴 と,モ ー メ ン トな どの 濃 度 分 布 に 関 連 した 特 徴 を用 い た 対 象 の 記 述 方 法 に つ い て 述 べ る 。 特 に 幾 何 学 的 な特 徴 を扱 う場 合 に は,画 素 が 分 割 され た 部 分 領 域 に 属 す るか 属 さ な い か を知 れ ば よい の で,画 像 は2値 画 像 と考 え る。 また 画 像 中 に 複 数 の 対 象 が 含 まれ る場 合 に は,分 割 され た 各 部 分 領 域 は ラベ ル づ け さ れ た 部 分 図 形 と して 扱 う こ とが で き る も の とす る 。 (a) 境 界 記 述 線 画 や 輪 郭 形 状 に基 づ く特 徴 記 述 で あ る 。 こ こ で は そ の基 礎 とな る輪 郭 や エ ッ ジ か らの 線 分 の 抽 出方 法,お ① 線 分 の抽 出
よび 境 界 記 述 の 基 本 的 な 方 法 につ い て 述 べ る。
線 分 と して は 曲線 を対 象 とす る こ と もあ る が,直 線 の 抽 出
が 最 も基 本 的 な もの で あ る 。 こ こで は 主 に 直 線 の抽 出 法 につ い て 説 明 す る。 1) 最 小 二 乗 法
点 群pi(xi,yi)(i=1∼n)に
直線 (2.68)
を あ て はめ る場 合,次
の誤 差 関 数 を最 小 とす る係 数c0, c1を 求 め る方 法 で あ る。 (2.69)
2) 固 有 ベ ク トル に よ る方 法
点 群 の 重 心 を原 点 とす る座 標 系 を と り,こ の
座 標 系 で 点 の 位 置 ベ ク トル をpiと す る 。 あ て は め る べ き直 線 は 原 点 を とお り,法 線 ベ ク トル がnの 直 線 と し,直 線 か ら各 点 まで の垂 直 距 離 の 二乗 和 を最 小 とす る ベ ク トルnを
求 め る 方 法 で あ る 。 各 点 か ら直 線 ま で の 垂 直 距 離di(n)は,nとpi
の ス カ ラ ー 積:di(n)=ntpi=pitn(tは転
置 を 意 味 す る)で 与 え られ る か ら,誤 差
関数 は 次 式 で 与 え られ る 。 (2.70) した が っ て,S≡
Σ(PiPit)の 最 小 固有 値 に対 応 す る 固 有 ベ ク トルnが 求 め る 直 線
の 法 線 ベ ク トル で あ る 。 3) ハ フ変 換 と一 般 化 ハ フ変 換
ハ フ 変 換(Hough
transformation)12)は,
パ ラ メ ー タで 表 現 す る こ との で き る 線 図 形(直 線,円,楕
円,放 物 線 な ど)を 抽
出 す る 代 表 的 な 方 法 で あ る が,一 般 に は 直 線 の抽 出 に 広 く使 わ れ て い る 。 こ の 方 法 は 複 数 の 線 分 を抽 出 す る こ とが で き,雑 音 に 対 して 強 い と い う優 れ た 特 徴 が あ る。 直 線 の 表 現 と して は,勾 配mとy軸
との切 片cを パ ラ メ ー タ とす る (2.71)
あ る い は,直 線 か ら原 点 にお ろ した 垂 線 の 長 さ ρ,垂 線 がx軸 と な す 角 θをパ ラ メ ー タ とす る (2.72) を 使 う 方 法13)が あ る 。 こ こ で は 後 者 の 方 法 に つ い て 述 べ る 。x-y座 pi(xi, yi)(i=1∼n)と
す る と,点piは,パ
標系の点群 を
ラ メ ー タ(θ,ρ)空 間 内 の 曲 線
(2.73) に 変 換 さ れ る 。 パ ラ メ ー タ 空 間 の各 点 に 曲 線 が そ の 点 を通 過 す る 度 数 を 表 す 関 数p(θ,ρ)を 定 義 す る と,式(2.73)を
満 た す(θ,ρ)に対 してp(θ,ρ)に1が 加 算 さ
れ る。 こ れ を パ ラ メ ー タ空 間(投 票 空 間)へ の投 票 と呼 ぶ 。x-y座 標 系 で 直 線 を構 成 す る複 数 の 点 は,パ
ラ メ ー タ空 間 で は そ の 直 線 を 表 す(θ0,ρ0)の点 を とお る 曲
線 と な る か ら,そ の 交 点 でp(θ0,ρ0)にピ ー クが 生 じる 。 した が っ て,ピ
ー クを
検 出 して 直 線 を 抽 出 す る こ とが で きる 。 通 常 は あ る し きい 値n0を 定 め て,p(θ, ρ)≧n0を 満 たす 点 を ピー ク と判 定 す る。 実 際 に は,点
群 が 一 直 線 上 に並 ん で い る と は 限 らず ば らつ きが あ り,ま た デ
ィ ジ タル 画 像 で は 量 子 化 誤 差 が あ る の で,θ-ρ 空 間 を 適 当 な 大 き さ の格 子 に分 割 し,各 格 子 を通 過 す る 曲線 を計 数 す る 方 法 が と られ る。 ハ フ 変 換 で は,複 数 の 線 分 が 抽 出 で きる ほ か,直 で あ る が,パ
線 以 外 の 曲線 の 抽 出 も可 能
ラ メ ー タが 増 え る と高 次 元 の パ ラ メ ー タ空 間 で の処 理 が 必 要 とな
り,処 理 が 煩 雑 と な る 。 画 像 の 画 素 の 座 標 値 だ け で な く,画 素 で の エ ッ ジ の 方 向 を利 用 す る こ と に よ っ て,パ
ラ メ ー タ空 間 の 次 元 を 減 少 させ,処
す る方 法 と し て 一 般 化 ハ ブ 変 換14)があ る 。 こ の ほ か に,処
理 を高 速 化
理 の効率化 や適用範
囲 の 拡 大 を 図 る方 法15∼17)が数 多 く提 案 され て い る。 4) 投 影(周 辺 分 布)の 利 用
画 像f(i, j)(i=1, 2,…,M; j=1,
2,…,N)のx軸
お
よ びy軸
上 へ の 投 影(周 辺 分 布)F(x),
F(y)は,次
式 で 与 え られ る。
(2.74)
(2.75) 特 に2値 画 像 で は,x軸
ま た はy軸 に平 行 な黒 画 素(値 が1の 画 素)の 数 を数 え
る だ け で よい 。 周 辺 分 布 か ら線 の 位 置 が 抽 出 で き るの で,漢
字 の 大 分 類18)や楽
譜 の5線 の位 置,音 符 や 記 号 の有 無 の 判 定19)など に利 用 され て い る 。 ② チ ェ イ ン コ ー ドと形 状 数 ン(Freeman)の と し て,あ
境 界 記 述 の 基 礎 を な す もの と して フ リー マ
チ ェ イ ン コー ド(chain code)20)が あ る 。 デ ィ ジ タ ル 曲線 の 表 示 法
る 任 意 の 始 点Aか
ら曲線 に沿 って 隣接 す る画 素 の 向 きを順 次 図
2.53(a)に 示 す 量 子 化 符 号 に よっ て 表 して い く方 法 で あ る。 た と え ば,図2.53(b) の 閉 曲線 のAを 始 点 とす るチ ェ イ ン コ ー ドは070223456と
な る 。 チ ェ イ ン コー
ドは 始 点 に任 意性 が あ る の で,回 転 に対 して 不 変 で は な い 。
図2.53
こ れ を 解 決 す る 方 法 と し て,チ
チ ェイ ンコー ド
ェ イ ン コ ー ドの 最 小 の 一 次 差 分 と し て 定 義 さ
れ る 形 状 数21)が あ る 。 チ ェ イ ン コ ー ドの 一 次 差 分 は 隣 り合 う コ ー ドの 差 を 反 時 計 回 り に 数 え る こ と に よ っ て 得 ら れ る,た 合,1か
ら反 時 計 回 り に5ま
る た め,最 は271201111と
で 数 え て4と
と え ば,隣
り合 う コ ー ドが …15… の 場
な る 。 た だ し,コ
ー ドは 巡 回 系 列 と す
後 の コ ー ド を 先 頭 に も っ て き て 差 分 を と る 。 図2.34(b)の な る 。 こ れ を8進
て 得 ら れ る 最 小 の 数 値,011112712を
法 の 数 値 と 見 な し,巡
回 し て1桁
場 合,差
分
ずつ ず らし
形 状 数 とす る。 形 状 数 は差 分 を と っ て い
る た め 回 転 に対 して 不 変 で あ り,最 小 値 を とる た め 始 点 は一 意 に定 ま る。 ほ か に フ ー リェ 記 述 子22,23),凸 包24),構 文 的 記 述 法25)な ど も あ るが,こ
こで
は省 略 す る。 (b) 領 域 記 述 ① 位 相 幾 何 学 的 な 方 法
図 形 の 位 相 幾 何 学 的(topological)な 性 質 を利 用 す
る 方 法 で あ る 。 位 相 幾 何 学 的 な性 質 は,本 の で あ る が,簡
単 に は,図
来 図 形 の 隣 接 性 と連 結 性 に 関 す る も
形 を ゴム シ ー ト上 に描 い て ゴ ム シ ー トに任 意 の 変 形
を与 え た と き,変 化 し な い 図 形 の 性 質 を さす 。 よ く使 わ れ る特 徴 量 に は,連 領 域 の 数C,孔 number)あ
の数H,お
結
よび そ の差 と して 次 式 で定 義 され る オ イ ラ ー 数(Euler
る い は種 数(genus)Eが
ある。 (2.76)
こ の性 質 を利 用 す る 方 法 は,大 域 的 な領 域 の 記 述 に適 して い る 。 ② モ ー メ ン トを用 い る 方 法
画 像f(x, y)の(p+q)次
の モ ー メ ン トwpqは 次
式 で定 義 さ れ る 。 (2.77) p≠0,
q=0の
と きx軸
軸 に つ い て のq次
に つ い て のp次
の モ ー メ ン ト,p=0,
の モ ー メ ン ト,pq≠0の
の デ ィ ジ タ ル 画 像f(i, j)の 場 合 は,上
q≠0の
と き,y
と き 相 乗 モ ー メ ン ト と 呼 ぶ 。M×N
式 の 積 分 記 号 を 総 和 記 号 に お き換 え て 次 式
で 定 義 され る。
(2.78) 0次 の モ ー メ ン トw00は 画 像 の 濃 度 値f(x,
y)の 総 和 で あ り,2値
は 対 象 の 面 積 と な る 。 一 次 の モ ー メ ン トw10とw01をw00で の 重 心(centroide)の
画像 の場合 に
正 規 化 す る と,画
像
座 標(i0, j0)が 求 め ら れ る 。
(2.79)
2値 画 像 の場 合,あ
る い は等 価 的 に画 像 の 濃 度 値 をす べ て 一 定 と して,濃
度分
布 を 無 視 す れ ば,こ の 値 は対 象 の 図 心 を与 え る 。 重 心 ま わ りの モ ー メ ン ト (2.80) は 重 心 モ ー メ ン ト(central 次 の 重 心 モ ー メ ン トw01,
moment)と w10は0で
座 標 原 点 を とお る 直 線y=xtanθ
呼 ば れ る 。 定 義 か ら 明 ら か な よ う に,一 ある。
の まわ りの 慣 性 モ ー メ ン トWθ は 次 式 で 与 え られ
る。
(2.81) Wθが 最 大 と な る θの値 θ0と最 小 と な る値 θ0+π/2は 次 式 か ら求 め られ る 。 (2.82) 最 大,最 小 を与 え る 直 線 を慣 性 主 軸 と呼 ぶ 。最 大 値 と最 小 値 は次 式 で 与 え られ る。 (2.83) 画 像fの 重 心 ま わ りの慣 性 モ ー メ ン トWfは 次 式 で 定 義 され る 。 (2.84) ③ 領 域 をそ の ま ま の 形 で記 述 す る方 法 1) 面 積
デ ィ ジ タル 画 像 で は領 域 内 の 画 素 数 で 面 積 を 表 す 。 こ の 特 徴 量
は 対 象 の 大 き さ を表 し,回 転 や 平 行 移 動 に 対 して 不 変 で あ る。 2) 周 囲 長
注 目す る対 象 領 域 と背 景 との 境 界 の 長 さ を 意 味 し,基 本 的 に
は 境 界 要 素 の 画 素 数 で 表 さ れ るが,境
界 要 素 が 上 下,左
右 に 隣 接 す る場 合 は 長
さ を1と し,斜 め方 向 の 隣接 に対 して は√2と す る 方 法 もあ る 。 こ の特 徴 量 は 形 状 の 複 雑 さ を 表 し,回 転,平 3) 分 散 度
行 移 動 に 対 して 不 変 で あ る。
対 象 領 域 の 分 散 度(dispersedness)は,面
積A,周
囲 長Lと
して
L2/Aで 定 義 され る。 こ の 特 徴 量 は 形 状 の複 雑 さ を表 し,等 周 不 等 式L2/A≧4π 満 た す 。 等 号 は 円 に対 し て だ け成 り立 つ 。 す な わ ち,同 最 も短 い 周 長 を もつ 円 が 最 小 値4π を もち,最
を
じ面 積 を もつ 図 形 で は
もま と ま り(compactness)の
よい
図 形 で あ る こ と を意 味 す る。Lが 大 き く な る に つ れ こ の 値 は 大 き くな り図 形 の
複 雑 さが 増 す 。 こ の ほ か に も多 くの 特 徴 量 が あ り26),目 的 に応 じて 利 用 さ れ る 。 4) そ の 他 の 記 述 法 し て,4分
そ の ほ か に,階 層 的 な処 理 に適 した 画 像 の 記 述 法 と
木 あ る い は4進 木(quad
tree)27)があ り,線 図 形 に よ る領 域 記 述 と して
使 わ れ る,骨 格 あ る い は ス ケ ル トン(skeleton)が あ る 。
(2) 照 合 処 理 画 像 中 の 図 形 の検 出 や 認 識 ・ 識 別 あ る い は図 形 の 位 置 合 わせ(位 置 決 め)の 際 に 行 う処 理 で,図 形(領 域)の 特 徴 量 の い くつ か を二 つ の 図形A,
Bに 対 して 求 め て
(A, Bの う ち一 方 は あ らか じめ 与 え られ て い る場 合 が 多 い)比 較 し,図 形AとB が ど の 程 度 同 じで あ るか を求 め,そ
の 結 果 か ら認 識 や 位 置 の判 断 を行 う。 次 の
よ う な方 法 が あ る 。 (a) テ ン プ レー ト照 合 検 索 対 象 の パ タ ー ン(テ ンプ レ ー ト)を 探 索 範 囲 内 で動 か し,テ
ンプ レ ー トと
最 も よ く合 っ た 場 所(図 形)を 探 し出 す 。 こ の 場 合 の 類 似(一 致)度 は,対 応 す る 画 素 の 白 黒 が 一 致 した 画 素 数 で 判 断 で き る。 濃 淡 画 像 の場 合 に拡 張(一 般 化)す る と,残 差R
(2.85) が 最 小 の と き に合 致 した とす る。 この 残 差 の加 算 中 に 和 の値 が 閾値(し き い 値) を越 え た ら そ こ で 打 ち切 り,パ タ ー ン を次 の 場 所 へ 移 して 残 差 を計 算 す る(残 差 逐 次 検 定 法)。この 方 法 に は,し また,比 べ る二 つ の領 域A, の値,式(2.86)で
きい値 を 自動 的 に 決 め る方 法 が 提 案 され て い る。 Bの 濃 農度 値 の正 規 化 さ れ た 共 分 散(相 互 相 関係 数)
判 定 す る正 規 化 相 関 法 が あ る 。
(2.86) た だ し,
で あ り,領 域Aは N(M≧m,
N≧n)の
テ ン プ レー トで 大 き さm×n,領
域Bは
被 検 査 領 域 でM×
矩 形 と した 。
(b) 構 造 照 合 線 図 形 な どの 場 合,そ
の構 造 に 注 目 し た構 造 照 合 法 が あ る 。 こ れ は,エ
ッジ
や 線 図 形 の 特 徴 点(分 岐 点 や 交 差 点 な ど)な ど を抽 出 し,そ れ らの 形 や 空 間 的 配 置 を比 較 して 線 図 形 の 類 似 度 を求 め る方 法 で あ る。 これ に は,線
分 を重 視 す る
線 分 主 導 型 と分 岐 点 を 重 視 す る分 岐 点 主 導 型 とが あ る 。 こ れ ら の ほ か に,動 計 画 法 を用 い た照 合(DP照
的
合)法 な ど も あ る 。
(c) ベ イ ズ 識 別 に よ る照 合 事 後 確 率 を導 く次 式 の ベ イ ズ 規 則 を利 用 して ク ラ ス の 事 後 確 率 を 最 大 に す る よ う な ク ラス にパ タ ー ン を分 類 す る 。 (2.87) こ こで,p(ci│x)は
特 徴xの 観 測 後 の ク ラスciの 事 後 確 率 密 度,p(x│ci)は
ク ラ スci
を 前 提 と し た 観 測xの 条 件 つ き確 率 密 度,P(ci)は ク ラス 単 独 の 生 起 確 率 で あ る。 こ の 原 理 は パ タ ー ン認 識 の 統 計 学 的 解 釈 と な っ て い る28)。す な わ ち,観 測 し た 特 徴 か ら最 も妥 当 な ク ラ ス を確 率 の大 き な ク ラス とみ な す とい う考 え 方 で あ る 。 こ の 流 儀 で は ク ラス は確 率 的 に 生 起 す る とい う 見 方 を と る。 統 計 的 パ ラ メ ー タ 推 定 な どで よ く使 わ れ る 最 尤 推 定 法 は,条 大 化 す る ア プ ロ ー チ で あ る が,ベ
件 つ き確 率 密 度 を 尤 度 とみ な して 最
イズ 識別 はそ れ に加 えて クラス の事 前確 率
P(ci)に 関 す る知 識 を用 い る点 で 異 な っ て い る。 そ の よ うな 知 識 の な い 場 合 に は 最 尤 法 と等 価 とな る。 さて,ベ
イ ズ 識 別 を実 際 に行 う た め に は,上
の確 率 密 度 や 確 率 値 を 求 め る必
要 が あ る 。 ノ ンパ ラ メ トリ ッ ク な ヒ ス トグ ラ ム 推 定 値 を用 い る場 合 も あ る が,
一 般 に は パ ラ メ トリ ッ ク な 多 変 量 正 規 分 布 が 最 も よ く用 い られ る。 これ は各 ク ラスiご と の 学 習 標 本 集 合 の 平 均{Pik}(k=1,
2…,Ni)の 平 均 ベ ク トルpiと 共 分
散 行 列Siに よ っ て 決 ま る。 (2.88) ベ イ ズ規 則 の 右 辺 の 分 母 は観 測xの 確 率 密 度 で あ る の で,通 常 定 数 とす る 。 ク ラ スciの 生 起 確 率 を ク ラ ス ご とに 既 知 で あ りそ れ が 定 数 と な る場 合 に は,事 後 確 率 最 大 とい う規 則 は次 式 の 尤 度 最 大 とい う規 則 と な る。
(2.89)
さ らに 対 数 尤 度 と して 指 数 部 を最 小 化 す る とい う規 則 を 導 く こ とが で き る。 こ れ は次 式 の マ ハ ラ ノ ビ ス距 離dmiを が 最 小 と な る よ う な ク ラス にパ ター ン(特 徴p に対 応 す る)を 分 類 す る こ と に等 しい。 (2.90) こ の 距 離 関 数 は 通 常 の ユ ー ク リ ッ ド距 離 と異 な り,共 分 散 行 列 に よ っ て 統 計 的 に正 規 化 され て い る の が 特 徴 で あ る。 こ の 操 作 に よっ て,各 (本 質 的 な違 い に加 え て,た
と え ば単 位 の と りか た の 違 い に も よ る)を 考 慮 せ ず
にす む 。 この 識 別 規 則 で は,一 が 異 な る の で,距
要素特徴 の分散値
つ の パ ター ン に 対 して も各 ク ラス の 共 分 散 行 列
離 値 を個 々 に計 算 す る 必 要 が あ る が,ク
ラ ス ご と に 特 徴 の相
関特 性(共 分 散 行 列)が 等 しい とお け る場 合 に は, (2.91) の ユ ー ク リ ッ ド距 離diを 最 小 とす る規 則 を用 い る こ と が で きる 。 そ の と き,ク ラスciとcjと の 識 別 に は,次 の 線 形 な 関 数 の 正 負 判 定 を用 い る こ とが で きる 。 こ の 線 形 識 別 関 数 は ク ラス の二 つ 組 の 数 だ け必 要 で あ る。
(2.92)
線 形 識 別 の 原 理 は,ク
ラ ス ご と に複 数 の 代 表 ベ ク トル を 用 い る 区分 的 線 形 識
別 な ど に拡 張 さ れ て 利 用 さ れ て い る29)。
(d) 投 票 型 パ タ ー ン照 合 た と え ば 前 項 で 述 べ た ベ イ ズ 識 別 の 原 理 は 距 離,あ
る い は残 差 の 二 乗 和 の 最
小 化 とい う最 小 二 乗 原 理 と 関係 して い る 。 よ く知 られ て い る よ う に,最 小 二 乗 原 理 は 対 象 とす る分 布 が 正 規 分 布 の 場 合 に最 適 な方 法 とな る 。 で は 正 規 分 布 で は な い 場 合 に は ど う す れ ば よ い か 。 こ の と き対 象 は 例 外 値 を含 ん で 正 規 分 布 か ら はず れ る こ とが 多 く,認 識 手 法 に は ロバ ス ト(頑健)性 が 要 求 され る 。 先 に解 説 さ れ たHough変 最 頻 値(mode)を
換 に代 表 さ れ る投 票 型 認 識 法 は,投 票 空 間 に お け る
認 識 モ デ ル とす る方 法 で あ り,い わ ば多 数 決 原 理 に 則 っ て い る。
これ は 原 理 的 に は最 頻 値 の順 位 を 反 転 し な い か ぎ り例 外 値 の混 入 を 許 す ロ バ ス ト性 を もつ 。 Geometric
Hashing法
は 相 似 変 換 に線 形 の ひず み を加 え た ア フ ィ ン変 換 に不
変 な投 票 型 認 識 法 で あ る30)。モ デ ル も対 象 物 も特 徴 点 の 配 置 パ タ ー ンで 表 現 さ れ る。 (2.93) 認 識 に入 る 前 の オ フ ラ イ ン処 理 に よ っ て す べ て の モ デ ル を投 票 空 間 に登 録 す る 。 二 次 元 直 交 座 標 空 間 に 設 定 さ れ る投 票 空 間 は,一
定 幅 の 長 方 領 域(箱)の 寄
せ 集 め と考 え ら れ る 。 次 の手 続 き をす べ て の モ デ ル に つ い て く り返 す 。 モ デ ルk の 任 意 の 特 徴 点 の3点 組hを 基 底 と して 選 ぶ(た だ し共 線 とな る組 み 合 わせ は 除 く)。3点 に よ っ て 直 交 座 標 軸 を構 成 す る よ う に残 りのNk-3点 新 しい 二 次 元 座 標 値 に 対 応 す る箱 に組 み 合 わせ{k,h,(P1,P2,P3)}を
を 変換 し,そ の 登録 する。 こ
れ をす べ て の 可 能 な3点 組 に つ い て く り返 す 。 こ の 操 作 に よ っ て,認 の特 徴 点 配 置 を照 合 す る た め の,シ
フ ト,回 転,ス
識対象 物
ケ ー リ ン グ に 対 して 不 変 な
特 徴 群 が 投 票 空 間 に構 成 さ れ る こ と に な る 。 認 識 時 に は対 象 物 パ タ ー ンか ら任 意 の3点 組 を い くつ か 選 択 す る(ノ イ ズ 点 な ど を含 ま な い 組 み 合 わせ が 必 要 で あ る)。 登 録 時 と同 様 の 座 標 変 換 を残 りの 特 徴 点 に 施 し投 票 空 間 に投 票 す る(こ の 場 合 の 投 票 とは,対 応 す る箱 内 にあ るす べ て の 要 素 に1票 を 与 え る こ とで あ る)。 対 象 物 と似 た 点 配 置 を もつ モ デ ル が 高 い得 票 率 を得 る こ と に な る 。 この 方 法 は 登 録 処 理 に か な りの 計 算 コ ス トを要 す るが,こ
れ は オ フ ラ イ ン計 算 で あ る の で
実 現 可 能 で あ る 。 実 用 を 促 す た め に は投 票 空 間 を小 さ くす る 工 夫 が 必 要 で あ る。
(3) 多 重 分 解 能 処 理 画 像 認 識 ・識 別 や 照 合 な ど を行 う際,画 像 の 解 像 度(分 解 能)す な わ ち1画 面 中 の 画 素 数 を段 階 的 に変 え て 効 率 化 を図 る た め の 処 理,す
な わ ち,同 一 の 対 象 に
対 して 幾 種 類 か の 分 解 能 を もつ 画 像 を用 意 し,目 的 に 応 じた 分 解 能 の 画 像 を用 い る。 た と え ば,原 画 像 の2×2画
素 の 濃 度 の 平 均 値 を1画 素 の 濃 度 値 と(平 滑
化)し て 画 像 を平 滑 縮 小 す る 。 この 操 作 を く り返 す こ とに よ り種 々 の解 像 度 の 画 像 の 列 が 得 られ る(こ
れ を 画 像 の ピ ラ ミ ッ ド構 造 とい う)。 は じめ に解 像 度 の あ
ら い 画 像 か ら大 局 的(概 略 的)に 解 析 し,そ の 結 果 か ら さ らに 解 像 度 の 高 い画 像 を用 い て 局 所 的(詳 細)に 解 析 す る 。 あ る い は,解 析 す る対 象 に応 じ た解 像 度 の 画 像 を 用 い て 解 析 す る。 こ う す る こ と で,解 析 す べ き領 域 を 画 面 全 体 で は な く 部 分 領 域 に 制 限 した り目 的 に よ っ て は ノ イ ズ と も な りか ね な い情 報 を低 減 で き, 場 合 に よ っ て は そ れ ほ ど解 像 度 の 高 くな い 画 像 で 十 分 な 認 識 ・識 別 や 照 合 が で き る こ と もあ り,処 理 の効 率 化 が 可 能 に な る。
(4) ニ ュ ー ラ ル ネ ッ トワ ー ク 脳 の神 経 回 路 網 で 行 わ れ る情 報 の 高 度 に 並 列 的 な分 散 処 理 が 注 目 さ れ,脳 の 神 経 細 胞(neuron)に し,パ
内
対 応 す る 多 数 の ユ ニ ッ トを結 合 して ネ ッ トワ ー ク を構 成
ター ン認 識 な ど の情 報 処 理 に こ の ネ ッ トワ ー ク を 利 用 す る,神 経 回 路 網
(neural networks)に
関 す る研 究 が 盛 ん に行 わ れ て い る。
神 経 細 胞 の モ デ ル は 多 入 力1出 力 の ユ ニ ッ トと呼 ば れ る 情 報 処 理 素 子 と して 表 さ れ る 。 神 経 回路 網 の モ デ ル は,ユ
ニ ッ トを複 数 個 結 合 した ネ ッ トワ ー ク で
表 現 さ れ る。 ユ ニ ッ ト間 の 結 合 に は,可 変 な結 合 係 数 を与 え,ネ
ッ トワ ー クが
希 望 す る 処 理 を行 う よ う に 結 合 係 数 を調 整 す る 。 あ る ユ ニ ッ トへ の 入 力 は,他 の ユ ニ ッ トか らの 入 力Iiに 結 合 係 数wiを 乗 じた値 の 総 和I=ΣwiIiと らに し きい 値 をhと
して ユ ニ ッ トの 状 態 変 数 をx=I-hと
なる。 さ
し,ユ ニ ッ トか らは
入 出 力 関 数f(x)の 値 を 出 力 す る 。 入 出力 関 数f(x)と して は し きい 関 数 と シ グモ イ ド関 数(ロ ジ ス テ ィ ック 関 数)が よ く使 わ れ る 。 ネ ッ トワー ク の 構 造 に は,基 本 的 に 階 層 型 と相 互 結 合 型 の 構 造 が あ る 。 階 層 型 ネ ッ トワ ー ク で は ユ ニ ッ トを層 状 に 配 置 し,信 号 は入 力 層 か ら出 力 層 へ1方 向 に 伝 達 され る 。 代 表 例 と して はパ ー セ プ トロ ン(perceptron)が
あ る31∼33)。 相
互 結 合 型 ネ ッ ト ワ ー ク で は 層 が 存 在 せ ず,ユ
ニ ッ ト間 に は 双 方 向 の 結 合 が 存 在
す る 。 代 表 例 と し て ホ ッ プ フ ィ ー ル ド(Hopfield)モ (Boltzmann
machine)35)が
こ の ほ か に,入 る,福
デ ル34)と ボ ル ツ マ ン マ シ ン
ある。
力 パ タ ー ン に位 置 ず れ や 変 形 が あ っ て も認 識 す る こ とが で き
島 ら36)に よ っ て 提 案 さ れ た ネ オ コ グ ニ ト ロ ン(Neocognitron),中
よ っ て 提 案 さ れ た 連 想 記 憶 を 行 う ア ソ シ ア トロ ン(accociatron)が ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク の 応 用 分 野 は 広 く,多 で は,階
野37)に
あ る。
く の 研 究 が あ る が,画
像 関係
た 例38),ボ
層 型 ネ ッ トワ ー ク を 利 用 し て 照 度 差 か ら 曲面 の 曲 率 とそ の 方 向 を求 め ル ツ マ ン マ シ ン を 用 い て 画 像 修 復 を 行 っ た 例39),小
ー ク を 並 列 結 合 し て 顔 画 像 認 識 を 行 っ た 例40)な ど が あ る ル ネ ッ ト ワ ー ク 用 の ハ ー ド ウ エ ア も 開 発 さ れ て お り,高 き て い る の で,さ
規 模 の ネ ッ トワ
。 現 在 で は,ニ
ュー ラ
速演 算が 可能 となって
ら に 応 用 研 究 が 進 む も の と思 わ れ る 。
(5) フ ァ ジ イ 理 論 フ ァ ジ イ理 論(fuzzy systems 処 理 を,数 理 的 に 扱 う理 論,方
theory)は,人
間 が 通 常 行 って い る あ い ま い さの
法 論 で あ り,1965年
にザ デ ー(Zadeh)41)に よっ て
提 唱 され た,フ ァジ イ集 合 論 に端 を発 す る。 フ ァ ジ イ集 合 論 は"大 き い""小 さい", "広 い""狭 い" ,"高 い""低 い"な ど,境 界 が あ い まい な 集 合 を 定 量 的 に 扱 う こ と を可 能 に した集 合 論 で あ る。 フ ァジ イ集 合 に対 して 通 常 の 集合 は ク リス プ (crisp)集 合 と呼 ば れ,全 体 集 合 の 要 素(元)が 集 合 に属 す る か 否 か は,属
す る場
合 に1属 さな い 場 合 に0を とる 特 性 関 数 に よ っ て 表 現 さ れ る 。 フ ァジ イ 集 合 で は 集 合 に 属 す る 度 合 い(grade)を0か (member-ship)関
ら1の 間 の 実 数 値 で 与 え る メ ンバ ー シ ッ プ
数 が 使 わ れ る 。 この 関 数 は 特 性 関 数 とは 異 な り,本 来 人 間 の 主
観 に よ っ て 決 め る こ との で きる 関 数 で あ る。 フ ァ ジ イ集 合 論 で は 集 合 に 関 して, 各 種 の 演 算 と集 合 間 の フ ァ ジ イ 関 係 が 定 義 さ れ,通 常 の 関 数 を フ ァ ジ イ 集 合 論 的 に 拡 張 す る 拡 張 原 理 に よ り,あ い ま い な 約5な
どを 表 す フ ァジ イ 数 の演 算 が
可 能 とな って い る 。 フ ァ ジ イ 理 論 は,上
述 の 集 合 に お け る あ い ま い さ を扱 う フ ァ ジ イ 集 合 論,測
度 の あ い まい さ を扱 う フ ァ ジ イ 測 度 論,お
よ び論 理 に お け る あ い まい さ を 扱 う
フ ァ ジ イ 論 理 の 三 つ の 枠 組 み か ら な っ て い る 。 こ れ らは 相 互 に 関 連 を もつ が,
フ ァ ジ イ 集 合 論 と フ ァ ジ イ 論 理 に 関 す る 研 究 が 特 に 進 ん で お り,画
像処 理分野
で は,フ ァ ジ イ 推 論,フ ァ ジ イ ク ラ ス タ リ ン グ に よ る パ タ ー ン認 識 な ど の 研 究42,43) が行 われて いる。
(6) 最 適 化 手 法 数 値 計 算 の 分 野 な ど で は 多 くの 最 適 化 法 が 知 られ て お り,画 像 理 解 の分 野 で も用 い られ て い る が,計 算 コ ス トを 除 け ば最 も注 目 しな け れ ば な ら ない の は 大 域 解 へ の 収 束 性,あ
る い は 局 所 解 を い か に 避 け る か とい う 問 題 で あ る。 そ の た
め に提 案 され て い る最 近 の話 題 を紹 介 す る。 (a) 遺 伝 的 アル ゴ リズ ム(genetic GAは
algorithm,
GA)
生 物 進 化 の 一 般 的 原 理 を模 倣 した 最 適 化 手 法 あ る い は解 生 成 手 法 で あ
る44)。そ の 手 続 きは,初 期 集 団 の ラ ン ダ ム生 成,交 選 択,集
差,突
然 変 異,適
応 度 計 算,
団 更 新 を く り返 す 。 集 団 を構 成 す る 各 個 体 は独 自 の 遺 伝 子 を も つ 。 通
常 は 適 当 な長 さ の ビ ッ ト列 で あ る 。 交 差 と は 異 な る2個 体 間 で の ビ ッ ト列 の 部 分 交 換 で あ り,突 然 変 異 と は あ る 確 率 で 起 こ る ビ ッ ト反 転 とす る。 こ の 二 つ の 操 作 に よ っ て生 ま れ る新 しい 個 体 の 価 値 は 適 応 度 と呼 ば れ,高
い適 応 度 を もつ
優 秀 な個 体 を次 世 代 に残 す 処 理 が 選 択 で あ る 。 こ の 一 連 の処 理 を く り返 す こ と に よ り,淘 汰 を期 待 す る こ とが で き る。 交 差 に よ っ て 生 成 され る の は,い
わ ば 両 親 の特 性 を 内 挿 さ れ た 子 と な る の で,
交 差 だ け で は探 索 領 域 が 狭 ま っ て しま う。 そ れ を 解 消 す る効 果 を もつ の が 突 然 変 異 で あ り,探 索 領 域 を広 く予 測 外 の 領 域 へ 拡 張 す る機 能 を もつ 。 GAに
お い て は 通 常 大 きな 集 団 サ イズ(記 憶 容 量)を 必 要 と し,さ
らに 多 くの パ
ラ メー タ を調 整 しな けれ ば な らず,試 行 錯 誤 が 必 要 とな る。 (b) 焼 な ま し法(simulated SAは
annealing:
SA)
統 計 力 学 に お け る 状 態 遷 移 モ デ ル を 利 用 して 局 所 解 を避 け る 手 法 で あ
る45)。金 属 の焼 な ま しは 高 温 状 態 か ら徐 々 に冷 却 す る こ と に よ っ て 整 然 と した 原 子 配 列 状 態 を 得 る た め の 方 法 で あ る。 統 計 物 理 学 的 に は 原 子 の 移 動 確 率 を 徐 々 に制 限 す る こ とに よ っ て,全 体 の 配 列 を整 え る こ と に相 当 す る。SAは
この
原 理 を 模 倣 した も の で あ る 。 通 常 の 最 急 降 下 型 の 最 適 化 法 に 加 え て,状 態 選 択 を 確 率 的 に 行 う。 た と え ば,最 小 化 問 題 で は,状 態Snよ り も評 価 値 の 低 い 状 態
Sn+1に は 無 条 件 で 遷 移 す るが,評 価 値 が 高 い状 態 へ もあ る確 率 に比 例 す る 頻 度 で 遷 移 を可 能 にす る 。 こ れ に よ り局 所 解 を 取 り囲 む 評 価 値 の 壁 を越 え る こ とが 期 待 で き る 。 通 常 こ の 確 率 値 は温 度(ス テ ッ プ数 で お き換 え る)の 単 調 減 少 関 数 と す る。 (c) ス ネ ー ク ス ス ネ ー ク ス(Snakes)は
閉輪 郭 な ど の領 域 抽 出処 理 に 用 い られ る 最 適 化 手 法 で
あ る46)。こ れ は,緩 慢 に収 束 す る弾 力 を もつ 輪 郭 と定 義 され る 。 全 体 の 収 束 は 通 常 は2種 類 の エ ネ ル ギ ー 項 に よ っ て 制 御 さ れ る。 一 つ は 二 次 形 式 で 表 現 さ れ る 弾 性 エ ネ ル ギ ー(あ るい は 内 部 エ ネ ル ギ ー)で あ り,初 期 状 態 で は 輪 郭 は 伸 ば され て い る 。 他 の 一 つ は 画 像 エ ネ ル ギ ー(あ る い は外 部 エ ネ ル ギ ー)で あ り,所 望 の 輪 郭 条 件,た
と え ば,コ
ン トラ ス ト極 大 な どを 実 現 す る や は り二 次 形 式 と
な る 。 こ れ らの 重 み つ き和 と して全 体 エ ネ ル ギ ー を 定 義 し,最 小 化 す る。 最 小 化 す る手 続 きは 部 分 的 全 探 索 や 動 的 計 画 法 な ど を使 用 す る47)。ス ネ ー ク ス の 変 形 ア ル ゴ リズ ム は 数 多 く提 案 さ れ て い る が,応
用 に お け る大 き な 問 題 はパ ラ メ
ー タ の調 整 が むず か し く,初 期 輪 郭 の 設 定 方 法 が な い点 な どで あ る。
■ 参
考
文
献
2.2.1 画 像 信 号 処 理 1) 金 谷 健 一:カ
メ ラ キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン の 数 理,数
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感覚量 の評価
人 間 に は,視 覚 ・聴 覚 ・味 覚 ・嗅 覚 ・触 覚 の五 つ の 感 覚 が あ る 。 これ らを一 種 の"測 定 器"と
して用 い,良 品 ・不 良 品 の 判 定 を行 っ た り,評 価 す る こ とを官 能
検 査 と呼 ん で い る1)。官 能検 査 で最 も多 い の は,視 覚 を用 い る検 査 で あ る。 官 能 検 査 は"人
間 の 感 覚"を 用 い て 行 う た め,評 価 の安 定 性,検 査 時 間,熟 練 を要 す
る な ど問 題 点 が 多 く,自 動 検 査 の た め の研 究 が 推 進 され て い る2,3)。 本 節 で は,長
さや 大 き さの よ う な単 純 な 物 理 量 の 計 測 で は な く,美 し さ,見 や
す さ,印 象 な どの よ う に,人 間 の 感 覚 を 定 量 評 価 す るた め の基 礎 的 な 手 法 につ い て述べ る。
2.3.1
感覚測定法
感 覚 の測 定 は,感 覚 を発 生 させ る 物 理 量(光,音
な ど)の 強 さ を変 化 させ,そ れ
が 心 理 量 と して知 覚 で き るか ど うか で 行 わ れ る 。 測 定 項 目 と して は,刺 激 閾,弁 別 閾,主 観 的 等 価 値 な どが あ る。 刺 激 閾 は,感 覚 を生 じ させ る最 小 の刺 激 値 の こ とで あ る。弁 別 閾 と は,二 つ の刺 激 の 違 い が 弁 別 で き る 最 小 値 で あ る。た とえ ば, 光 の 波 長 の 弁 別 閾 は,波 長 に よ っ て 変 化 す る が,1nm程 値 と は,あ
度 で あ る。 主 観 的 等 価
る刺 激 に対 し,そ れ とは 質 的 に異 な る 刺 激 が 同 じ感 覚 量 を生 じ させ る
刺 激 値 の こ とで あ る。 た と え ば,波 長 の 異 な る二 つ の 光 刺 激 に対 し,同
じ明 る さ
と感 じる 光 の 強 さ を主 観 的等 価 値 とい う。 主 な測 定 方 法 と して は,以 下 の3種 が ある。
(1) 調
整
法
被 験 者 自身 が 標 準 刺 激 と 同 じに な る よ う に,比 較 刺 激 を変 化(調 整)さ せ る方 法 で あ る 。 主 観 的 等 価 値 の 測 定 に 最 も適 して い る 。 例 と し て,図2.54に の 様 子 を示 す 。 視 野 の 下 半 分 に標 準 刺 激 と して,あ 赤,緑,青
る色Coを
等 色実験
表 示 し,上 半 分 に
の3色 を適 当 な 強 さ に な る よ う調 整 して比 較 刺 激Cを 作 成 し,標 準 刺
激 と 同 じ と感 じ られ る よ う に3色 の 混 合 比(α,β,γ)を求 め る。
図2.54 感覚 測 定 法 の例(調 整法)
(2) 極
限
法
刺 激 を一 定 の ス テ ップ で 徐 々 に変 化 させ,そ
の1ス テ ップ ご と に,被 験 者 の 判
断 を 求 め,閾 値 を求 め る もの で あ る。 た とえ ば,音 圧 を 少 しず つ 変 化 させ,聞
こ
え た か ど うか を 試 験 す る場 合 な どで あ る。
(3) 恒 常 刺 激 法 極 限 法 で,刺
激 の 順 序 を ラ ン ダム に した もの で あ る 。 絶 対 閾,弁
別 閾,主 観 的
等 価 値 の 測 定 す べ て に用 い る こ とが で きる 。 刺 激 の提 示 も一 度 で は な く,同 激 を何 度 もラ ン ダ ム に く り返 す の で,実 験 に要 す る 時 間 は長 いが,最 り適 用 範 囲 も広 い4)。
じ刺
も正 確 で あ
2.3.2
感 覚 量 の 性 質5)
感 覚 量 が 物 理 的 な 強 度 と比 例 し な い こ と は よ く知 られ て い る 。 ウ ェ ー バ ー (E.H. Weber)は,刺
激Sの
強 度 が 変 化 し て も"相 対 弁 別 閾 は 一 定"で あ る と し,ウ
ェ ー バ ー の 法 則 を提 案 した 。
(2.94) こ の 比 を ウ ェ ー バ ー 比 と い い,模 Fechner)は,こ
の 極 限 を と り,差
式 図 を 図2.55に
示 す 。フ ェ ヒ ナ ー(G.T.
分 を 微 分 に お き 換 え,両
辺 の積分 をとる こと
に よ り,
(2.95) の フ ェ ヒナ ー の 法 則 を提 案 した 。 こ こで,Rは 例 係 数,Cは
感 覚 量,Sは
積 分 定 数 で あ る。 フ ェ ヒナ ー の 法 則 は,感
刺 激 の 強 さ,kは
比
覚 量 が 刺 激 の対 数 に 比
例 す る こ とを 示 し て い る 。 表2.3 各 種 刺 激 のべ き乗値(n)
図2.55
ウェー バ ー の 法 則
文 献1),表12.13か
さ ら に,ス
テ ィ ー ブ ン ス(S.S. Stevens)は,各
係 を 実 験 し,経
験 的 な 近 似 式 と し て,べ
ら抜 粋
種 の 刺 激 に つ い て 感 覚 量 との 関
き関 数 を用 い た 以 下 の 式 を提 案 した 。
(2.96) こ こ で,nは
刺 激 の 強 さSに
る 。 た と え ば,通 て は0.5で
対 す る べ き数 で あ る が,刺
常 の 明 る さ 感 覚 に つ い てnは0.33で
あ る 。 コ ー ヒ ー の 匂 い に 対 し てnは0.55で
激 に よ り異 な っ た値 を と あ り,点 あ り,両
光 源 刺 激 に対 し 耳 で の 音 の 強 さに
つ い て は,n=0.6で
あ る 。 表2.3に
ス テ ィ ー ブ ン ス に よ る 各 種 刺 激 に 対 す るn
の 測 定 値 を 示 す1)。
2.3.3
感覚の数量化
数 量 化 とは,あ
る 規 則 に従 っ て対 象 に 数 字 を割 り当 て る こ と で あ る。 そ して,
こ れ ら数 値 の集 合 を尺 度 とい う。 尺 度 は,次 の4種 の 水 準 に分 け られ る。
(1) 尺 度 の 種 類 (a) 名 義 尺 度 カテ ゴ リー に数 値 を 対 応 させ た だ けの もの で あ る。 た と え ば,リ
ン ゴ は1,ミ
カ ン は2と い う よ うな も の で,数 値 を交 換 して も問 題 は な い 。 (b) 順 序 尺 度 数 値 の 大 小 関係 だ け が 意 味 を もつ もの で あ る 。 た とえ ば鉱 物 の モ ー ス 硬 さ は, 互 い に こす りあ わ せ て 硬 さ の 順 序 を決 め た もの で あ る 。 デ ィ ス プ レイ の 画 質 の よ う な 工 業 製 品 に お け る グ レ ー ド付 け も,優 劣 の 順 序 を決 め た も の で,順
序尺
度 と考 え る こ とが で き る。 (c) 間 隔 尺 度 相 互 の 間 隔(距 離)が 意 味 を もつ 尺 度 で あ る 。 任 意 の 原 点 と等 間 隔 な単 位 を も ち,た
と え ば摂 氏 温 度 が こ れ にあ た る。
(d) 比 例 尺 度 原 点 が 存 在 し,尺 度 の 比 計 算 が 有 効 と な る 。 通 常 の 物 理 量(長 さ,質 量 な ど) は,比 例 尺 度 で あ る。 温 度 も絶 対 温 度 に換 算 す れ ば比 例 尺 度 とな る 。 感 覚 量 を扱 う と き,得
ら れ る デ ー タ は,通 常,順
序 尺 度 ど ま りで あ り,間 隔
尺 度 や 比 例 尺 度 で あ る こ と は少 な い 。
(2) 尺 度 構 成 法 そ れ で は,ど の よ うに し て,尺 度 を構 成 す れ ば よい の だ ろ うか 。 (a) 評 定 尺 度 法 あ る 評 価 項 目 に 対 して,段 い い,広
階 的 な カ テ ゴ リ ー で 評 価 す る 方 法 を評 定 尺 度 法 と
く用 い られ て い る 。 た と え ば,通 信 に お け る 了 解 度 や,画
質の主 観評
価 が これ に あ た る 。5段 階 や7段 階 評 価 が 多 く,5段 し て,1を い,普
非 常 に悪 い,5を
通 を0と して+-で
るが,計
階 評 価 の と き,普 通 を3と
非 常 に 良 い の よ う に段 階 分 けす る の を単 極 尺 度 とい 評 価 す る の を両 極 尺 度 と呼 ん で い る 。 見 か け は異 な
算 処 理 を す る と きは,ま
っ た く同 一 に 扱 え る 。5段 階 の と き の 例 を 表
2.4に 示 す 。 表2.4 評 定尺 度 法 の例(5段 階)
(b) 一 対 比 較 法 意 匠 デ ザ イ ン な ど で,た
と え ば"美
しさ"な ど,評 価 の む ず か しい と き,2個
ず つ を 取 り出 して ど ち らが優 れ て い るか の 評 価 を行 い,全 体 の 評 価 を行 う方 法 で あ り,サ ー ス トン(L.L.Thurstone)の
もの が よ く知 られ て い る 。 す べ て の 組 み
合 わ せ に つ い て 判 断 す る こ と に よ り,測 定 対 象 の 間 隔尺 度 を構 成 す る こ とが で きる 。 計 算 方 法 を図2.56に 示 す 。
図2.56
サ ー ス ト ン の 一 対 比 較 法(ケ ー スV)
① 2個 ず つ 比 較 し た と きの そ れ ぞ れ の 刺 激 をSi, Sjと す る。 そ れ ぞ れ の対 に つ い て,刺 激SjがSiよ ② 刺 激Si,
り も大 きい と判 断 され た比 率(選 択 確 率)を 求 め る。
Sjに 対 す る 心 理 的 評 価 値Ri, Rjは,平
均 値 μi,μj,標 準 偏 差 σの
正 規 分 布 に従 う とす る(ケ ー スV)。 ③ こ の と き,心
理 的 評 価 値Ri, Rjの
差Rijは,平
均 が μjーμiで標 準 偏 差
が √2σの 正 規 分 布 とな る。 ④ これ を 基 準 化 す れ ば,平 均0,標
準 偏 差1の 基 準 正 規 分 布 と な る の で,正
規 分 布 表 を用 い て,① で 求 め た 選 択 確 率 を標 準 得 点 に換 算 す る。 ⑤ 標 準 得 点 を合 計 して,刺
2.3.4
激 数 で 割 る こ と に よ り,各 刺 激 の 尺 度 が 求 ま る。
物 理 量 と感 覚 量 と の対 応 づ け
感 覚 量 は,各 種 の 要 因 が 総 合 し て 生 じる の で,対 応 す る物 理 量 を 特 定 す る こ とは 大 変 困 難 で あ る 。 これ に利 用 で き る手 法 と して は,一 用 い る こ とで,多 い て,感
変 量 解 析 が 有 用 で あ る 。 ま た,ニ
覚 量 と物 理 量 の 関 係 を学 習 させ,疑
わ れ て い る 。 多 変 量 解 析 につ い て は,多
つ は,統 計 的 手 法 を
ュ ー ラ ル ネ ッ トワ ー ク を用
似 的 に 感 覚 量 を生 成 す る試 み も行
くの 成 書 が あ る の で,数
学的 な取扱 い
は そ れ らを参 考 に さ れ た い 。
(1) 因 子 分 析 画 質 や 印 字 品 質 な ど,現 在 は官 能 検 査 に な っ て い て,対
応 す る物 理 量 が 不 明
確 な と きは,因 子 分 析 を用 い て 評 価 の構 造 を解 析 す る こ とが で き る6)。因 子 分 析 法 は,多 種 の 要 因 の 相 関 関 係 を見 出 し,そ の 背 後 に あ る 共 通 因 子 を探 り出 す 手 法で ある。 い ま,人iが
評 価 対 象jを 評 価 し,評 価 値qijを 得 た とす る と,因 子 数 をmと
し て,以 下 の モ デ ル を考 え る 。
こ こ で,xkjは,因
子 得 点 と呼 ば れ,評 価 対 象jがm因
子 中 のk番 目の 因 子 を含 む
度 合 い を示 して い る 。aikは 因 子 負 荷 量 と呼 ば れ,評 価 者iがk番 る重 み で あ る 。eはm因 計 算 は,ま ず,相
目の 因 子 に与 え
子 で は説 明 で きな い 変 動 部 分 で あ る。
互 相 関 係 数 を 求 め,相
互 相 関 係 数 行 列 の 固有 値 を 求 め る こ
とに な る。 固 有 値 の う ち,通 常 は,1以
上 の 値 の も の3個 程 度 を選 ぶ 。 感 覚 量 の
評 価 の と きは,選 択 し た 因 子 が,全 体 の デ ー タの ど れ く らい を 説 明 で きる か を示 す 指 標 で あ る 寄 与 率 の合 計 が0.8∼0.9程
度 で 十 分 と し な け れ ば な ら な い 。因 子
分 析 で は,選 択 した 因 子 が どう い う意 味 を もつ の か の 適 切 な解 釈 が 重 要 で あ る。
(2) 主 成 分 分 析 主 成 分 分 析 は,相
関 の あ る多 くの 変 数 の値 を一 つ ま た は,少 数 の合 成 変 量(主
成 分)で 表 す 方 法 で あ り,現 象 を要 約 す る の に有 効 で あ る。 い ま,p個
の 説 明 変 量x1, x2,…,xpを用 い て,
をつ く る 。 合 成 変 量Yは,各 は,合
説 明 変 量 を最 大 限 に反 映 す る こ とが 必 要 で,こ
れ
成 変 量Yの
分 散 を最 大 にす る こ と に ほ か な ら な い 。 こ の 条 件 か ら主 成 分
係 数a1,…,apは,最
大 固 有 値 に対 す る 固 有 ベ ク トル の 要 素 と して 求 め る こ とが
で き,こ の と き のYを 第1主 成 分 と呼 ぶ 。
第1主 成 分 だ け で は,十 分 に デ ー タ を反 映 して い な い と き は,2番 有 値 に 対 して,第2主
成 分Y2を 計 算 す る 。 各 主 成 分 が も と の デ ー タ を どれ く ら
い 反 映 し て い る か は,各
主 成 分 の 固有 値 とp個 の 固 有 値 の 総 和 との 比 で あ る 寄
与 率 に よ り判 定 す る こ とが で きる 。 第1か は,i番
らi番 目 まで の 寄 与 率 を合 計 した もの
目 ま で の 累 積 寄 与 率 とい う。 こ の よ う に して,主
に よ り,よ
目 に大 きい 固
成 分 分 析 を用 い る こ と
り少 な い 変 量 で 現 象 を記 述 す る こ とが で き る。
(3) 重 回 帰 分 析 一 つ の 結 果(目 的 変 量y)を ,複 数 の 原 因(説 明 変 量x)の な ん らか の結 合 式 で あ らわ そ う とす る もの で あ り,広
く用 い られ て い る 。 結 合 式 は一 次 式 を用 い る こ
とが多 い 。
回帰 係 数a0,…apは,誤 重 回 帰 分 析 は,感
差 が 最 小 とな る よ う最 小 二 乗 法 を用 い て 決 定 す る 。 覚 に 対 応 す る物 理 量 を発 見 す る と き に も使 用 で き る し,い
くつ か の 物 理 量 を結 合 して 判 定 式 をつ くる と き に も利 用 され て い る。
(4) SD法 SD(semantic か ら20個
differential)法
は,"明
る い-暗
い""澄
ん だ-濁
っ た"な ど の10
の 形 容 詞 対 を 用 い て 段 階 評 価 を 行 う も の で あ る7)。 評 価 結 果 を 因 子 分
析 し て 共 通 要 因 を 発 見 す る 。 因 子 分 析 と 同 様 で,因
子 の 解 釈 が 重 要 で あ る。
(5) 多 次 元 尺 度 法 MDS(multi
dimensiollal
scaling)と 呼 ば れ,対 象 間 の な ん らか の 基 準 に よ る
差 異(非 類 似 度)が 与 え られ て い る と き,対 象 を多 次 元 空 間 内 で,点
間 の距 離 が
差 異 と最 も よ く一 致 す る よ う に配 置 す る方 法 で あ る 。 あ ま り次 元 が 高 い と結 果 の 解 釈 が む ず か し くな り,見 や す さ も損 わ れ る の で,二
次 元 な い し は,三 次 元
程 度 が よ く用 い られ る。
(6) ニ ュー ラ ル ネ ッ トワ ー ク 感 覚 量 の よ う な非 線 形 な 特 性 を数 式 で 近 似 す る こ と は む ず か し い の で,ニ ュ ー ラ ル ネ ッ トの 重 み と して学 習 ・ 記 憶 させ る こ とで ,物 理 量 か ら感 覚 量 へ 変 換 す る こ とが 行 わ れ て い る。 た とえ ば,物
理 量 と し て分 光 反 射 率 を 与 え る こ とに よ
り,感 覚 量 と して の 色 名 を 出 力 し た り,色 む ら を構 成 す る物 理 量 を 入 力 し て, 色 む らの 感 覚 的 な 強 度 を判 定 す る シ ス テ ム が つ く られ て い る8)。 ま た,フ
ァジィ
と組 み合 わ せ て,印 刷 物 の 検 査 に も応 用 され て い る9)。構 造 が よ く研 究 され て い る階 層 型 を 使 うこ とが 多 い。
2.3.5
良 品 ・不 良 品 の 判 定 基 準
た と え ば,図2.57に
示 す 欠 陥 判 定 が 欠 陥 画 像 部 の 周 囲 と の色 の 相 違 や 大 き さ
図2.57 製 品 の しみ 欠 陥例
図2.58 欠 陥判 定
で 求 め ら れ る 場 合,一 が 描 か れ,こ
般 に 図2.58に 示 す よ う な 良 品,不
良 品,限 度 品 の 分 布 図
の 上 で 良 品 と不 良 品 を 分 け る た め の し きい 値 が,図
切 られ る よ う に 決 定 さ れ る。 こ こ で 良 品 は○,不
中 の直線 で区
良 品 は ×,限 度 品 は△,で
示
され て い る。 判 定 基 準 と して は,不 良 品 は確 実 に検 出 され な け れ ば な らな い が, 限 度 品 が 多 少 不 良 品 に 含 まれ る こ と は や む を得 な い と考 え られ る こ とが 多 い 。 この 場 合,そ
の 判 定 基 準 の 考 え方 は,次 の よ うで あ る 。
一 般 に,あ
るパ ラ メ ー タ に つ い て,特
分 布 は,図2.59に
定 の値 を と る よ う管 理 した 場 合,そ
の
示 す よ う な 正 規 分 布 に な る と推 定 され る 。 こ こで 不 良 品 は,
そ の 管 理 限 界Thを 超 え た 部 分 とな る。 製 造 プ ロ セ ス が 安 定 で あ るほ ど,こ の分 布 は管 理 目標 値 の 周 囲 に せ ま く分 散 し,不 安 定 で あ る と分 布 が 広 が っ て,不
良
品 が 増 え る こ と に な る。 と こ ろ で,外 観 検 査 の 場 合,あ に 頼 っ て い る わ け で あ り,そ
く ま で も そ の パ ラ メ ー タ値 の 評 価 は,目 分 量
こ に は 評 価 誤 差 が 真 値 の ま わ りに や は り正 規 分 布
で 分 散 し て い る と考 え られ る。 した が っ て,こ
の 評 価 誤 差 の 分 散 を せ ま くす る
よ う に 限 度 見 本 を用 い て 訓 練 す る わ け で あ り,限 度 品 は 評 価 誤 差 の 許 容 範 囲 で あ る と考 え られ る 。 も ち ろ ん,目 視 に よ る 外 観 検 査 の場 合,そ
の評価パ ラメー
タ は 明 確 で な く,ま た 多 数 の パ ラ メ ー タ が 複 合 し て い る 場 合 が 多 い が,検
査員
は 経 験 か らこ れ らの パ ラ メ ー タ を直 感 的 に 選 別 し,そ の 管 理 限 界 値 を決 定 して い る わ けで あ る。
図2.59 過 検 出 と見 逃 し
画 像 処 理 に よ る外 観 検 査 の 自動 化 に あ た っ て は,ま ず 画 像 か ら計 測 され る 色 や 大 き さ な ど の い ろ い ろ な 計 測 値 の うち,目
視 検 査 に用 い られ て い る 評 価 パ ラ
メ ー タ を 選 別 し,人 間 の 判 定 結 果 を も と に,不 定 す る こ と に な る。 と こ ろ で,こ つ は,人
良 品 と判 断 して い る境 界 値 を決
の 段 階 で 二 重 の 問 題 が 生 じ る こ と に な る。 一
間 の 目視 評 価 値 の ば らつ き(分 散 σ1)であ る 。 そ して,画
像処 理 に よる
評 価 パ ラ メ ー タ の 計 測 の ば らつ き(分 散 σ2)があ る 。 一 般 に,外 観 検 査 装 置 の 評 価 で は,人
間 の 目視 結 果 と の 比 較 評 価 が 行 わ れ,不
良 品 を 良 品 と判 断 し て し ま
う見 逃 し αと,良 品 を 不 良 品 と判 定 して し ま う過 検 出 βが 問題 とな る。 人 間 の 判 断 や 画 像 処 理 計 測 値 に ば らつ きが な い と考 え られ れ ば,こ の αや βは,一 律 に真 値Thtと,画
像 処 理 装 置 で の 設 定値Thmの 大 小 関係 で 決 ま る こ とに な り, Tht
ら ば 見 逃 し:α
Tht>Thmな
らば過 検 出:β
が 発 生 す る こ とに な る。Tht=Thmな
ら ば 問 題 は な い こ とに な る が,し
か しここ
で そ れ ぞ れ の分 散 が あ る た め に,結 果 と して 図2.59に 示 す よ う にTht=Thmの 合 に も,両 方 の分 散 の 和(σ1+σ2)を あ わ せ た形 で,見
新 た な分 散 と して そ の 範 囲 内 の 分 布 を か け
逃 しや 過 検 出 が 発 生 す る こ と に な り,両 方 を0に す る こ と は
で き な い 。 見 逃 しや 過 検 出 が 両 方 と も多 い 場 合,顕 を行 っ て,
場
微 鏡 観 察 な どの 厳 密 な測 定
① 目視評価 の妥 当性 の検証 ② 画 像 処 理 計 測 値 の分 散s2の 把 握 と,そ れ を小 さ くす る た め の 対 策 を行 う こ とが 必 要 で あ る。
■参 考 文 献 1) 日 科 技 連 官 能 検 査 委 員 会 編:官
能 検 査 ハ ン ド ブ ッ ク,日
2) T. Asano
Measurement
"Progress
Inspection"
Int.
3) 特 集:外
on
Kansei
J. Japan
Soc.
Prec.
Eng.,
科 技 連 出 版,1975.
Technology Vol. 32,
観 検 査 の 自 動 化 と こ れ か ら の 課 題,映
and
No. 2, pp.
Its Application
85-89,
to
Visual
2, pp.
18-51,
1998.
像 情 報 イ ン ダ ス ト リ ア ル,No.
1999. 4) 秦 清 治,宮
下 義 弘,花
房 秀 行:色
自 動 化 ワ ー ク シ ョ ッ プ,pp.
12-17,
彩 感 覚 特 性 の 外 観 検 査 へ の 組 み 込 み,第8回
5) 田 中 良 久:心
理 学 的 測 定 法(第2版),東
6) 大 串 健 吾,中
山 剛,福
田 忠 彦:画
質 と 音 質 の 評 価 技 術,昭
7) 木 村 一 郎,武
井 努,黒
江 康 明:ニ
ュ ー ラ ル ネ ッ ト に よ る 色 感 性 の 実 現,計
論 文 集,32, 8) M.H.
2, pp. 224-230,
Purunomo,
Electronic 118-C,
Displays 7/8,
pp.
9) K. Kawakami, System 621-624,
T. Asano,
using 1994.
by
京 大 学 出 版 会,1977. 晃 堂,1991. 測 自動 制 御 学 会
1996. E. Shimizu: Learning
1164-1169,
1998.
S. Hata,
M. Takuma,
Fuzzy-Neural
外 観 検 査 の
1996.
Network,
Identification the
Human
H. Hanafusa: 2nd.
of Color
Perception
Japan-France
Uniformity
Records,電
Printing
Sheet
Congress
Defect
on
the
気 学 会 論 文 誌C,
Visual on
Inspection
Mechatronics
pp.
第3章
画像計測 ・検査 システムの設計
本 章 は画 像 シス テ ム を実 際 に設 計 す る と きの 注 意 事 項 と,そ の手 順 につ い て述 べ る 。 設 計 とい う こ との 考 え方,開 発 の遅 延 を避 け る た め に 開発 の 最 初 に注 意 し な け れ ば な らな い こ と,装 置 と して完 成 後 に必 要 な検 討 項 目の順 に記 載 し た。
3.1
3.1.1
シス テム設計
設計の意義
一 般 的 な意 味 で は,設 計 とは 頭 で 考 え た こ と,す な わ ち 実 体 化 して い な い 目標 を実 現 す る手 段 を考 え て計 画 を立 て る こ とで あ る。 した が って,人
生や経済の面
で も設 計 と い う言 葉 が 使 わ れ る 。 工 学 的 に考 え た 設 計 は,表3.1に
示 す よ う に 目標 とす る 機 能 を 工 学 的 に分 析 し
て,属 性(数 値 的 な要 求 に応 じた構 成 要 素)に 分 解 し,そ れ を組 み 合 わせ,統
表3.1 設計 の意 味
合し
て 機 能 を 実 現 す る よ う に ま と め あ げ る こ とで あ る 。 した が っ て,目 標 が 明確 で な けれ ば設 計 は で き な い 。 画 像 に 関 連 す る測 定 項 目は,感 性 の分 野 に近 い もの もあ り,必 ず し も数 値 で表 す こ とが で きな い 対 象 もあ る 。傷 や,汚 れ,色 む ら な どは, 数 値 化 が む ず か しい。 限 度 見 本 や 測 定 実 験 で で きる か ぎ り明確 に して お く こ とが 必 要 とな り,場 合 に よっ て は,そ れ を数 値 化 す る こ とが 目標 に な る 。 こ れ が,画 像 シ ス テ ム の 設 計 上 の特 徴 で あ る 。
3.1.2
シ ス テ ム と は何 か
画 像 処 理 を実 際 の実 験 や 作 業 現 場 に 利 用 す る た め には,装 置 と して の シ ス テ ム が 必 要 に な る 。 シス テ ム とい う言 葉 は い ろ い ろ の と ころ で 使 わ れ て い るが,完 全 な 定 義 は 明 瞭 で は な い 。 オペ レ ー シ ョン リサ ー チ(OR)で
は 「 多 数 の構 成 要 素 が
有 機 的 な秩 序 を保 ち,同 一 目 的 に 向 か っ て行 動 す る もの 」(JIS Z 8121),信
頼性
工学 では 「 所 定 の 任 務 を 達 成 す る た め に,選 定 され,配 列 さ れ,互 い に連 携 して 動 作 す る 一 連 の ア イ テ ム(ハ ー ドウ エ ア,ソ せ 」(JIS Z 8115)な
フ トウ エ ア,人
間 要 素)の 組 み 合 わ
ど と表 現 さ れ て い る。 いず れ に して も,一 つ の 目的 を果 た す
た め に種 々 な 構 成 要 素 が 組 み 合 わ され 結 合 さ れ て い る もの で あ り,主 体 とな る 目 的 機 能 と,そ の 目的 を果 た す た め の 要 素 機 能 を受 け もつ構 成 要 素 が 組 み 合 わ され て い る。 した が っ て,シ ス テ ム は通 常 階 層 構 造 に な り,主 体 目的機 能,そ
れ を実
現 す る た め の 付 属 機 能 を含 む こ とに な る。 画 像 処 理 応 用 シス テ ム の 場 合,概
略 的 に次 の よ うな 構 成 要 素 が組 み 合 わ され て
い る こ とが 多 い 。
主体 目的機能
入力 の画像化 とその処理 に よる結 果の 出力
付属機能
入 力 系-対 象 物 の ハ ン ドリ ン グ と位 置 決 め 出力 系-判 定 結 果(go, no etc,)の処 置 照 明系,入
力 光 学 系(走 査 方 式),出
これ らの要 素 を組 み 合 わ せ て,経
力 表 示 系,そ
の他
済 的 に も,技 術 的 に も最 適 の シ ス テ ム をつ く
り上 げ る こ とが,よ い 設 計 で あ る とい え る。 画 像 応 用 の場 合,目
的 と な る 出力 は
何 か と い うこ とが 明 確 に され て い な け れ ば な らな い。 特 に工 業 的 な 生 産 工 程 に利 用 す る場 合,経
済 的 制 約 か ら要 求 さ れ る 目的 機 能 が複 数 に な る こ と もあ り,は じ
め に十 分 に 目的 を 明確 に す る こ とが 重 要 で あ る。 シ ス テ ム構 成 の 一 例 を 図3.1に
図3.1
シス テム 構 成 の一 例
示す。
3.1.3
目標 の 明確 化
画 像 処 理 応 用 の 分 野 は,非 ク ロ ンの 遺 伝 子 や,分
常 に 広 い 。 宇 宙 衛 星 に よ る地 球 観 測 か ら,サ ブ ミ
子 構 造 の 測 定 に まで 及 ん で お り,入 力 に も種 々 な 方 法 が
あ る。 入 力 の 方 法 は,宇 宙 衛 星 の 地 球 観 測 の よ う な 点 の 情 報 を 集 め る 走 査 方 式,光 学 レ ンズ の 結 像 画 面 を 点 情 報 に 変 換 す る電 子 走 査 方 式(テ レ ビ カ メ ラ)の2種
類
に 大 別 す る こ と が で き る 。 い ず れ に して も,画 像 を形 成 す る 画 素 の 輝 度 に情 報 を変 換 し,そ れ を 総 合 し て処 理 す る こ と に よ っ て,目 行 っ て い る こ と に な る 。 ま た,測
的 とす る測 定 や,判
定を
定 に利 用 さ れ る波 長 も,温 度 画 像 計 測 の 赤 外
線 波 長(μmオ ー ダ)か ら,超 微 細 計 測 分 野 の 紫 外 線,電
子 線 波 長(nmオ
ー ダ)な
ど に ま で及 ん で い る(詳 細 は2.1節 参 照)。 こ れ らの 計 測 に 使 用 され る付 属 機 能 も,最 終 的 な 目的 に従 っ て,精 密 性 が 要 求 さ れ る こ と に な り,高 価 な も の と な る。 対 振 動,表
面 仕 上 げ,運
動 安 定 性,
再 現 性 な どの 要 求 か ら,超 精 密 の加 工 や 制 御 が 必 要 と な り,い か に して こ の 要 求 を軽 減 す る か が 入 力 系 の 設 計 で は 大 き な課 題 と な る 。 した が っ て,技
術者 の
発 想 の 転 換 が 要 求 され る 。 特 に工 業 的 な応 用 の 場 合 に は,投 下 資 金(開 発 費)の 効 率 が 問 題 と な り,要 求 の 明確 化 とそ れ に応 じた 最 適 な手 段 の 選 定 が 重 要 とな
る 。 研 究 的 な 測 定 で は,不 可 能 を可 能 にす る こ とが 目的 とな り,手 段 は 問 わ な い場 合 も多 い が,一
般 的 に は思 考 に よ り,よ
り単 純 な安 い 最 適 手 段 を 見 つ け る
こ とが 重 要 で あ る 。 いず れ に して も,シ ス テ ム の 目 的 を 明 確 に し て ,付 属 機 能 に対 す る 要 求 も含 め て,可 定 す る こ とが 第1段
(1) 省
力
能 な か ぎ り 目標 を 数 値 化 し,そ れ に 最 適 な 手 段 を 決
階 で あ る。 応 用 目的 に従 っ て,以 下 に留 意 事 項 を述 べ る。
化
工 業 的 に は この 要 求 が最 も多 い と考 え られ る。 人 間 は 多 種 類 の 判 断 項 目 を 同 時 に処 理 す る す ば ら しい 能 力 を もっ て い る 。 一 例 をあ げ る な ら ば,コ
ンベ ヤ ー 上 を流 れ る 目標 物 の 汚 れ,欠
け,変 色,形
状変
化 を 瞬 時 に 判 定 し,分 類 す る こ とが 可 能 で あ る。 測 定 機 で 上 記 の 項 目 を完 全 に 判 定 す る に は,入 力 画 像 を 各 判 断項 目 に 従 っ て 最 適 化 す る 必 要 が 出 て く る。 す な わ ち 照 明,レ
ン ズ 倍 率,部
品 の位 置 決 め な ど を,そ れ ぞ れ の 目的 に従 っ て最
適 化 す る必 要 が 出 て く る。 か つ て は,各 項 目 に 対 して,そ
表3.2
人 と装 置 の 比 較3)
れ ぞ れ の 工 程 を設 け
て 対 処 して い た が,速
度 も遅 く,か つ 費 用 が か か りす ぎて 実 用 化 さ れ な か っ た 。
最 近 は コ ン ピ ュ ー タの 処 理 速 度 が 非 常 に速 く な り,照 明 や レ ンズ 倍 率 を切 替 え た り して1工 程 で 多 項 目 を判 定 す る こ とが で きる よ う に な っ た 。 人 間 の 目視 検 査 と機 械 的 検 査(画 像 応 用 検 査 機)の 特 徴 を表3.2に 示 す 。 判 断 処 理 速 度 は,単
純 な 穴 の有 無 と文 字 の 読 取 りな どで は差 が あ り,上 記 の 数 字 は単
な る 目安 で あ る 。 機 械 的 な検 査 の 大 き な課 題 は 柔 軟 性 と汎 用 性 の 問 題 で あ る。 一 つ は測 定 の 対 象 物 の 変 化 に容 易 に対 応 で き るか で あ り,も う一 つ は,考 い が け な い 他 部 品 の 混 入,停
電,汚
え られ る異 常 事 態(思
れ な ど)に どの 程 度 対 応 で きる か で あ る。 こ
れ ら は 設 計 の 最 初 に 十 分 調 査 して お く必 要 が あ る。 ま た,こ
の分野 では感覚 的
な 検 査 の 問 題 も多 く,目 的 の 数 値 化 が 困 難 で あ る。 し た が っ て,実 は,あ
際の現場 で
らか じ め 決 め られ た 限 度 見 本 との 比 較 で 判 断 が くだ さ れ る。 そ の た め,
し き い 値 は こ の 限 度 見 本 が 基 準 と な る が,絶
対 的 な も の で は な い の で,し
きい
値 は 実 情 に 合 わ せ て,実 験 に よっ て 設 定 す る 必 要 が あ る 。 着 手 時 点 で の 測 定 実 験 が重 要で ある。 処 理 速 度 に 対 す る 要 求 は,単 械 加 工,特
位 時 間 あ た りの 生 産 量 に よ っ て 左 右 され る 。 機
に プ レ ス作 業 の 生 産 量 は,1分
間 に500∼1000個
とい う場 合 もあ る 。
こ の場 合 に は,不 良 品排 出 時 間 を考 慮 す る と,検 出 判 定 の処 理 速 度 に10ms以
下
が 要 求 され る 。
(2) 品 質 管 理 と検 査 こ の項 で は 測 定 結 果 が 数 値 で 要 求 さ れ,そ
の結果 が統計 または制御 に利用 さ
れ る 場 合 に,設 計 上 で 注 意 す る こ と を述 べ る。 (a) 寸 法 公 差 測 定 分 解 能 は指 定 され た公 差 の 最低10分 例:公
の1を 確 保 しな け れ ば な らな い。
差 ±0.01な ら ば,分 解 能 は0.001
分 解 能 の 意 味 は測 定 再 現 性 の 限 界 値 で,精
度 的 な 誤 差 は あ っ て も よい 。 平 均
値 処 理 に よ る見 か け の分 解 能 で は な い こ と に留 意 す る必 要 が あ る。 画 像 の 場 合1 画 素 が 分 解 能 と呼 ば れ て い るが,寸 ジの 確 定 が 可 能 で あ る。 ま た,レ
法 測 定 の と き は,1画
素以下 の分解能でエ ッ
ンズ に は 歪 曲収 差(distortion)が あ るの で,要
求 精 度 に よ っ て は 校 正 とそ の 補 正 手 段 が 必 要 とな る。 (b) 処 理 速 度 移 動 体 や コ ンベ ヤ ー 上 の 移 動 中 の 部 品 の 寸 法 測 定 の場 合,画
像 の入力 許容 時
間 は,測 定 誤 差 の ない よ うに 設 定 しな け れ ば な らな い。 例:連
続 的 な 引抜 き材 料 の 寸 法,移 動 中 の 部 品 の 穴 径 の 測 定
運 動 中 の 物 体 の 像 は,露 光 時 間 に よ っ て ぼ け る と 同時 に変 形 す る 。 した が っ て,高
速 シ ャ ッ タ や ス トロ ボ の 必 要 が あ る 。 処 理 時 間 は,測
定 間 隔,不
良品排
出 時 間 と関 係 す る 。 要 求 確 認 が 必 要 で あ る。 (c) 安
定
性
測 定 性 能 が よ くて も,被 測 定 物 の 状 態 が 管 理 さ れ て い な い と確 実 な 安 定 した 測 定 が 不 可 能 に な る。 現 場 の 確 認 が 重 要 で あ る 。 レ ンズ と被 測 定 物 との 距 離 が 変 化 す る と レ ン ズ 倍 率 が 変 化 し,誤 差 の 原 因 と な る 。 入 力 画 像 自身 が 影 響 され る の で 安 定 しな い 。 例:振 動,ご
み,油
の付 着,加 工 の バ リ,き ず,な
ど
(d) 対 環 境 性 精 密 測 定 で は 温 度 が 影 響 す る こ と は 当 然 で あ る が(レ ン ズ 鏡 筒 も伸 縮 す る), 現 場 に よ っ て は 電 灯 や 太 陽 光 に よ っ て照 明 が 影 響 を 受 け る場 合 もあ る。
(3) セ ン シ ン グ 問 題 セ ンシ ン グ に は 大 別 す る と次 の2種 類 が あ る。 (a) 見 に くい も の の 可 視 化 火 事 の 煙 の 中 の 可 視 化 や,溶 接 中 の 溶 接 点 の 検 出,高
温 で 発 光 して い る物 体
の 端 面 や きず の 検 出 な ど は こ れ に あ た る。 赤 外 カ メ ラ,赤 外 線 カ ッ トフ ィ ル タ ー ,新 デバ イ ス の 利 用 な ど,種 々 の 試 み が 行 わ れ て い る 。 (b) 測 定 分解 能 の 向 上 従 来,検
出 不 可 能 な微 細 領 域(生 体,半
る 分 野(三 次 元 計 測,移
動 体 測 定),測
導 体 分 野),ま
だ 測 定 精 度 に不 満 の あ
定 に手 間 が か か る とか,環
が 必 要 で 設 備 費 が 高 価 な分 野(電 子 顕 微 鏡,放
境 条件 の整備
射 線 利 用)な ど,各 種 の 問 題 が 山
積 し て い る。 セ ン シ ン グ技 術 は,原 理 的 に は歴 史 的 な も の が 周 辺 技 術 の 進 歩 で 新 た に 脚 光 を あ び た り(核 磁 気 共 鳴,共
焦 点 顕 微 鏡),STM
(scanning
tunnel
microscope)の
よ う に,ノ ー ベ ル賞 受 賞 と と も に全 世 界 が 注 目 して 製 品 化 とそ の
改 良 が 進 ん で い る よ う な方 式 も あ る。 原 理 的 な セ ンシ ン グ の 技 術 開発 は重 要 な 課 題 で あ り,同時 に どの よ う な原 理 を採 用 す る かが 成 功,不 成 功 の 分 か れ 目に な る。
(4) 事 業(商 品 化)と して の 注 意 事 項 前 述 した 目標 の 設 定 は,設 商 品 化,事
計 計 画 をた て る場 合 の 一 般 的 注 意 事 項 で あ る が,
業 化 を 目的 と した 開発 設 計 で は,目
的 達 成 だ け で は な く事 業 と し て
の 評 価 が 重 要 に な る 。 目的 を達 成 す る こ とは 当 然 で あ る が,そ
れ だけ では事業
と して の商 品 価 値 が 薄 い 。 発 売 目標 期 日が 決 ま っ て い る よ う な と き に は,設 計 着 手 時 点 に お い て,未
知 数 が あ っ て は な らな い。 開 発 作 業 に は,多
の あ る こ とが 多 いが,納
少 の未知 数
入 期 日が 決 ま って い る よ う な場 合 に は,原 則 と し て,ど
う した ら よ い の か解 決 手 段 が わ か らな い ま まで 設 計 作 業 に か か っ て は な らな い 。 差 別 化 は 目標 の 重 大 な 要 素 で あ る 。 自社 の 製 品 に どの よ う な特 徴 を も たせ る の か を始 め に 考 え て お くの は 当 然 で あ る 。 セ ン シ ン グ の 原 理 が 他 社,ま 界 に な い も の で,機
能 が 飛 躍 的 に 向 上 す る な らば,そ
で あ る。 技 術 的 な差 別 化,特 ① 他 社 製 品,業
たは業
れ が 大 き な 差 別 化 の項 目
徴 を 決 定 す る と きの注 意 事 項 を以 下 に述 べ る 。
界 の 競 合 内容 の 調 査:独
り善 が りで あ っ て は な ら な い 。 で
きる 限 り世 界 の情 報 を集 め る こ と。 ② 現 行 技 術 で 容 易 に他 社 が 追 従 で き な い レベ ル か:簡 な こ と な ら ば,性
単 に 追 従 され る よ う
能 で な く何 に特 徴 を もた せ る か 検 討 す る 。 パ テ ン ト出 願
で きる よ う な こ とが 望 ま しい 。 ③ 決 定 す る 前 に基 礎 実 験 を す る こ と:頭 の 中 の み で 考 え た こ と は,場 合 に よ っ て 落 し穴 が あ る。 で き れ ば確 か め の 実 験,お
よび有 識者 にそ の実験 を
見 せ て確 認 す る こ と。 商 品 開発 と して は,次
の こ と も考 慮 す る 必 要 が あ る。
④ 宣 伝 ま た は営 業 担 当 者 が 説 明 す る と き に使 え る,最 大 の 特 徴 を 一 つ 選 定 して お く こ と(重 点 目標 の 設 定):う た い 文 句 は 一 つ で,説
得 性 の あ る もの が
望 ま しい 。 多 数 あ る こ と は混 乱 し特 徴 が い か せ な い 。 ⑤ 価 格 も大 き な 特 徴 で あ る:価 格 低 減 は,汎 用 品 と 自社 開 発 品 の 組 み 合 わ せ に よ っ て 変 化 す る 。 生 産 量 と 自社 の 能 力 に よ っ て 最 適 化 を 図 る こ と。 多
少 余 分 の 機 能 が あ っ て も,市 販 品 を利 用 した 方 が 生 産 量 に よ っ て は コ ス トダ ウ ン と な る。 ⑥ 基 本 設 計 は,価 格 の 許 す か ぎ り汎 用 性 を 考 えて お く こ と。 ⑦ ハ ー ドと ソ フ トの 配 分 は合 理 的 に行 う こ と。 ⑧ 最 終 試 作 品 は必 ず 実 際 現 場,ま の 顔,ユ
た は 同等 の 妥 当 性 試 験 を実 施 す る こ と:客
ー ザ の存 在 は 重 要 で あ る 。
⑨ 自社 の も て る力,特 徴 を可 能 な か ぎ りい か す こ と。 設 計 者 が 注 意 しな け れ ば な ら な い こ と は,独 善 に 陥 らな い こ とで あ る。 開発 の 過 程 で は設 計 審 査 の 段 階 を 設 け,広
3.2
く意 見 を求 め る こ とが 大 切 で あ る。
仕 様 決 定 と基 礎 実 験
目標 を決 定 した あ と は実 現 手段 の 決 定 で あ る。 画 像 の 場 合 に は,頭 の 中,あ
る
い は机 上 の 計 算 で 決 め られ な い こ とが 多 い 。 した が っ て,実 験 で確 認 して お く必 要が ある。
3.2.1
画 像 形 成 の基 礎
画 像 は何 らか の 手段 で セ ンサ 上 に 結 像 した 光 量 を検 出 し,そ の 出力 を 電気 信 号 と し て取 り出 し,目 的 に従 っ て処 理 す る こ と に よ っ て形 成 され る。 入 力 され る光 量 を決 定 す る要 因 は,下 記 に示 す よ うに レ ンズ 系 と被 写 体(目 標)の 明 る さで あ る。 レ ン ズ に よ る結 像 の 明 る さ は次 式 で 求 め られ る。 図3.2に 結 像 光 路(点 線)を 示 し た(2.1参 照)。
(3.1) E:結
像 面 の 明 る さ,B:被
D:レ
ンズ の 有 効 口径,b=レ
写 体 の 輝 度,θ:入
射 角,k:レ
ンズ の 吸 収 係 数,
ンズ の 後 側 主 点 よ り像 面 まで の 距 離
通 常 の 写 真 撮 影 で は,被 写 体 ま で の 距 離 が 焦 点 距 離fよ りも非 常 に大 きい の で, b≒fと み な して,D/fの
逆 数 を レ ンズ の 明 る さ を示 すFナ
一 般 的 に は物 体 を照 明す る 光 の 強 さ,照 度 をI,反
ンバ ー と称 して い る 。
射 率 を γとす れ ば
図3.2 結 像 光路
式(3.1)よ
り
(3.2) す な わ ち,通 常 の 画 像 セ ンサ の 入 力 信 号 は,被 写 体 か らの 反 射 光 量,換
言すれ
ば 写 真 画 像 や汚 れ や きず の場 合 は,反 射 率 γを検 出 して い る こ と に な る。 よ い 検 出結 果 を得 る た め に は,こ の こ と を熟 知 して,照 明 光 の 性 質,角
度,波
長 を選 定 し な け れ ば な な らな い 。 これ が 見 に くい も の を よ く見 え る よ うに す る技 術 とい え る。 ソ フ トに よ って,解 決 す る手 段 もあ るが,十 分 な入 力 が 得 ら れ れ ば, 簡 単 な る2値 化 処 理 で も検 出 対 象 の判 定 が 可 能 とな る 。 も う一 つ の 問 題 は,式(3.1)で
わ か る よ うに 像 面 の 照 度 は 周 辺 に お い て非 常 に
減 衰 す る と い う こ とで あ り,こ れ がcos4θの 法 則 とい わ れ て い る 。 広 角 や,明
る い レ ンズ の場 合 に は,こ の ほ か に レ ンズ 鏡 筒 に よ る周 辺 部 の 入 射
光 の 減 衰 が あ り,こ れ は レ ンズ の 口 径 蝕(vignetting)と
呼 ば れ る。
い ず れ に して も こ れ ら を補 正 す る こ と が 必 要 に な り,こ れ を シ ェ ー デ ィ ン グ (shading)補 正 と呼 んで い る 。 こ の 問 題 を解 決 す る た め に は,テ
レセ ン トリ ッ ク光 学 系 を採 用 す れ ば よ い が,
視 野 が レ ン ズ 口径 で 制 限 さ れ る こ と に な る 。 レ ンズ 口径 の 小 さ い高 倍 率 の拡 大 顕 微 鏡 系 で は,入 射 角 θが 小 さい の で 必 然 的 に テ レ セ ン トリ ック系 とな る。 テ レセ ン トリ ック系 の 原 理 は,図3.2の
太 い 実 線 で示 し た よ う に像 面 側 の レ ン
ズ 焦 点 位 置 に絞 りIを 設 け,入 射 光 の平 行 成 分 の み を結 像 させ る こ と に あ る 。 平 行 度 はIの 直 径 に よっ て 決 ま る。 像 面 照 度 をE'と す れ ば,
と な り,こ れ に はcos4θ の項 が な く,像 面 照 度 は 均 一 と な る 。 ま た,図3.2に し た点 線 の 結 像 光 路 と異 な り,物 体 位 置 の 変 動,す
示
な わ ちaの 変 化 が あ っ て,像
が ぼ け て も,明 暗 の 中央 に 設 け た2値 化 信 号 に よ っ て得 られ る像 の 大 き さは変 化 し な い。 テ レセ ン トリ ッ ク絞 りは,こ の ほか,ハ
レー シ ョ ンや 光 干 渉 な どの ノ イ
ズ 光 を減 少 させ る効 果 も あ る。
3.2.2
画 像 の ぼ け とMTF
レ ンズ に よ る 結 像 に は,必 ず ぼ けが 伴 っ て い る。1点 か ら発 した 光 線 は,中 心 が 明 る い照 度 分 布 を も った 小 円(錯 乱 円 と呼称 され る)と して 結 像 す る。 レ ンズ解 像 力 は,結 像 面 に お け る収 差 そ の他 の 影 響 に よ っ て 生 ず る,結 像 光 線 の錯 乱 円 の 直径 で 左 右 され る。 通 常 の 解 像 力 評価 は 空 間 に お け る 白黒 のパ ター ンが 見 え る か ど う か の 評 価 で,コ ン トラス トの 評 価 で は な い 。そ れ に対 してMTF transfer function)は,コ な る。MTFは1が
(modulation
ン トラ ス トの 低 下 の 程 度 を 表 し,ぼ け の 評 価 が 可 能 と
最 高 値 で,白 黒 の パ タ ー ン数 の密 度(空 間 周 波 数,本/mm)が
高 くな る と減 少 し,コ ン トラ ス トの低 下 を示 す 。 CCDの
アパ ー チ ャの ピ ッチ で 決 ま る 空 間 周 波 数 に対 す る,レ
α,セ ンサ の 配 列 構 造 な ど に よ っ て決 まる セ ンサ のMTFを の コ ン トラ ス トの 低 下 を示 すMTFの
αを0.6,β
値Mは
を0.8と す れ ば,Mは0.48と
ンズ 系 のMTFを
βとす れ ば,系
と して
次 式 で求 め られ る。
な り,約50%に
コ ン トラ ス トが 低 下
す る こ と を 意 味 して い る。 言 葉 を変 え て い え ば,ナ イ フエ ッジ の よ う な コ ン トラ ス トの よ い 明 暗 画 像 を 入 力 して も,CCD1画
素 で な く,2画
素 に わ た る ぼ け た信
号 に な る とい う こ とを 意 味 して い る 。 した が っ て,よ い 検 出 を す る た め に は,レ ンズ 系 のMTFはCCDの 物 の 状 態,目
もつ 空 間周 波 数 にお い て1に 近 い こ とが 望 ま しい。 被 検
的 に合 っ た レ ンズ の選 定 が 必 要 で あ る 。 解 像 力 は レ ンズ 系 お よび倍
率 に よ っ て左 右 さ れ,顕 微 鏡 レ ンズ の 限 界 は,0.5μmと
いわれ ている。
3.2.3
基礎実験の重要性
3.1節 で述 べ た よ う に シ ス テ ムの 目的 を明 確 化 す る こ とが 重 要 で あ り,そ の 目 的 に 合 っ た シス テ ム構 成 を考 え る こ とが 次 の 手 順 に な る。 測 定 対 象 物 に も ば らつ きが あ り,限 度 見 本 な ど も現 状 調 査 を行 っ て 数 種 類 集 め る こ とが 必 要 で あ る 。 また,現
場 の 測 定 環 境,必
要 な検 出 速 度,処
理速 度 な
ど も よ く調 査 す る こ とが 重 要 で あ る。 製 品 の ナ ンバ ー の 読 取 りな ど,原 理 的 に は 簡 単 そ う に 見 え る が,そ
れ は被 検 物 が 明 確 な 場 合 で あ り,最 近 で も残 っ て い
る 課 題 は測 定 環 境 が 非 常 に 悪 い もの ば か りで あ る。 鋳 物 に 刻 印 さ れ た 文 字,位 置 が 不 明 確 な もの,油 動 す る文 字,手
が つ い て 反 射 率 に差 が あ る製 品,擦
れ た 文 字,高
書 きの 文 字 な ど例 を あ げ れ ば 際 限 が な い 。 きず,変
ど も,単 体 で 見 た と き に は 簡 単 そ う に 見 え る が,限 否 は,現 場 で の 十 分 な 聞 き と りと,サ 黒 い し み や,変 色 の 場 合,人
速で移
色,欠
界 の 決 定 方 法 や,検
けな
出の可
ンプ ル を収 集 して確 か め る必 要 が あ る。
間 に は よ く見 え る が,CCDカ
メ ラ で は検 出 で き
な い こ とが あ る 。 これ は 人 間 とセ ンサ の 光 の 波 長 に 対 す る感 度 特 性 が 違 っ て い る か らで あ る 。 した が っ て,照
明 手 段 と表 面 状 態,照
との 関 連 を見 きわ め る こ とが,よ
明 波 長 と検 出 対 象 の 性 質
い検 出 が で きるか ど うか の重 要 な 課 題 とな る 。
3.2.1項 で 述 べ た よ う に,入 力 と し て得 られ る 画 像 信 号 は,反
射 率,透
過 率,
光 波 干 渉 な ど に よ る 明 暗 を検 出 した も の とい え る 。 照 明 光 の 性 質 に よ る特 徴 を 表3.3に 示 した 。 光 の 種 類 は,光
の 進 行 方 向 の性 質 に よ っ て,散 乱(く も りガ ラ ス を とお して の
照 明 の よ う に 方 向 性 の な い 光),拡 を も っ た 光),平
行,収
ラ ン プ ハ ウ ス,反 み 合 わ せ は,一
斂(1点
射 面,な
散(光 源 に レ ン ズ をつ け,あ
る程 度 の 方 向 性
に集 中 す る光)な ど に 区 別 され,レ
ンズ,光
源,
ど に よ っ て 決 ま る 。 表 に 示 した 測 定 面 と照 明 光 の 組
般 例 で あ り,検 出 対 象 に よ っ て 調 整 す る 必 要 が あ る 。 顕 微 鏡 に
付 属 して い る照 明 シ ス テ ム は,歴 史 的 経 験 に 基 づ い て 設 計 さ れ て い る の で 目的 に応 じて そ の 方 式 を 選 定 す れ ば 非 常 に よ い 結 果 が 得 ら れ る。 参 考 の た め に備 考 欄 に名 称 を記 した 。 表 の 最 終 欄 に示 した 特 殊 な照 明 は,2.1節 れ たい。
画 像 形 成 を参 照 さ
表3.3 測 定対 象 と照 明 の組合 せ
図3.3は 色 を利 用 して 三 次 元 画 像 を得 て い る例 で,赤,緑,青
の3色 と光 の 照
射 方 向 の 差 を利 用 し て,電 子 部 品 の は ん だ付 け形 状 を測 定 して い る 。 色 フ ィル タな どの 利 用 も,カ
ラー カ メ ラ と組 み合 わ せ る とお も しろ い 効 果 が 出 る 。
移 動 体 の 測 定 で は,ぼ
け と変 形 に対 す る対 策 が 必 要 に な る 。 検 出 時 間,す な
わ ち 画 像 取 込 み の 走 査 時 間 中 に,ど
の 程 度 被 測 定 物 が 移 動 す るか に よ っ て ぼ け
が 生 じ,同 時 に画 像 が 変 形 す る 。 レ ンズ の光 軸 に 平 行 な 位 置 変 化 は,測 定 距 離 の 変 動 と な っ て レ ンズ 倍 率 が 変 化 し,同 時 に 像 もぼ け る 。 レ ンズ 倍 率 は,被 写 体 まで の 距 離aと 結 像 距 離bと の 比 で 求 め ら れ る 。 した が っ て,aが
Δa変 化 し
た とす れ ば,変 化 率xは 次 式 で 求 め られ る。
測 定 精 度 に応 じて,Δaを
制 限 し な け れ ば な らな い 。
レ ンズ の 光 軸 に平 行 な運 動 は,変 形 と同 時 に ぼ け を生 ず る 。 被 測 定 物 が 振 動, 移 動 して い る場 合 に は,検 出(画 像 取 込 み)時 間 を 十 分 に短 くす る必 要 が あ る。
図3.3 色 を利 用 した形 状測 定 の 例 〔オム ロ ン(株)製 品 カ タ ロ グ よ り〕
CCDは
記 憶 型 で あ る か ら,高 速 電 子 シ ャ ッ タや,キ
セ ノ ン放 電 管 の 瞬 間発 光 が
利 用 され て い る。 しか し,キ セ ノ ン管 は寿 命 が 短 い の で,用 こ れ らの変 動 量 に よ る影 響 は,あ て,あ
途 が 制 限 さ れ る。
る程 度 理 論 的 に 計 算 が 可 能 で あ る。 した が っ
ら か じめ 最 適 な 検 出 条 件 を定 め て 基 礎 実 験 で 確 か め る こ とが 望 ま しい 。
3.3
仕様 とデザ インポ リシー
3.3.1
構 成 要 素 の 仕様 と性 能 の決 定
シ ス テ ム の 目 的 が 明 確 化 さ れ,基
礎 実 験 で 検 出 で き る こ とが 確 認 さ れ れ ば,
次 の 段 階 は各 構 成 要 素 の 具 体 的 設 計 で あ る 。 設 計 実 務 で は,市 販 され て い る製 品 を主 体 と して 選 定 す る こ とが 価 格 的 に も有 利 で あ る が,何
らか の 工 夫 を必 要
とす る こ と も多 い 。 仕 様 決 定 に必 要 な基 礎 的 な項 目,要 素,注 意 事 項 を 次 に示 す 。
(1) 入 力 系―
測 定 範 囲(視 野)と 照 明 の 決 定
照 明 系:拡 散,平 レ ン ズ系:焦
行,ビ
点 距 離-撮
ー ム 走 査,完 全 拡 散(無 影),透 像 距 離,レ
トリ ッ ク系=測 セ ン シ ン グ系:撮
像用
ンズ(写 真,顕 微 鏡,ズ
定 顕 微 鏡,投 ―CCD,撮
光走査方式用
過,落 射,斜
影 機,特 殊),自
像 管,リ
ニ アCCD,
ー ム 系,テ
め レセ ン
動焦 点調節機構 MCP
― 各種 ポ イ ン トセ ンサ,光 電 子 増 倍 管,な
位 置 セ ンサ:リ ニ アス ケ ー ル,電 気 マ イ ク ロ,光 応 用 測 定 器,な
ど
ど
これ らの も の が 結 合 さ れ て 入 力 信 号 と な る。 した が っ て 目的 に応 じて 最 適 な もの を選 定 し,調 整 す る 必 要 が あ る。 限 度 見 本 な ど も重 要 な 資 料 で あ る。 また, 三 次 元 測 定 に は,分 解 能 に 応 じて 各 種 の 方 式 が あ り,何 を選 択 す る か が 大 き な 課 題 と な る 。 前 述 した 基 礎 実 験 は,こ
れ らの 問 題 を解 決 す る た め に行 わ ね ば な
らな い 。
(2) 画 像 処 理 系 画 像 信 号 入 力 を受 け て,そ
れ を 処 理 して何 らか の 出力 を 出 す こ と に な る。
(a) ハ ー ドの 選 定 項 目 記 憶 容 量,処 理 速 度,ル (b) ソ フ トウ エ ア 検 出アル ゴリズムの選定 2値 化,輪 郭 検 出 方 法,
ック ア ッ プ テ ー ブ ル,パ
ラ レル処 理,CPUな
ど
ウ ィ ン ドウ処 理,グ
レイ ス ケ ー ル処 理,そ
の他各種 あ り
(c) ソ フ トとハ ー ドの 役 割 分 担 標 準 的 な市 販 の コ ン ピ ュ ー タ の使 用 か,専 用 の ハ ー ドをつ く るか で 大 きな 差 が あ る 。 こ れ は,後 述 す る実 際 に使 う人 の レベ ル,使 うに 十 分 に検 討 す る必 要 が あ る。 また,ソ の で,固
用 法(操 作 性)に 適 す る よ
フ トにバ グ とい う 問 題 が つ き ま と う
定 して よい こ と は ハ ー ドで 処 理 す る こ と も考 え て お く必 要 が あ る 。 単
純 な 計 算,固
定 メ モ リ な どが そ の例 に あ た る。 ハ ー ドに よ る演 算 は速 度 が 速 く
確 実 で あ る 。 ソ フ トは 万 能 で は な い。 パ ソ コ ン に 付 加 す る 専 用 画 像 処 理 ボ ー ドが 多 数 市 販 さ れ て お り,容 易 に ハ ー ドの構 成 が で き るが,自 表3.4に
分 に合 うか ど うか 注 意 す る 必 要 が あ る 。
目標 機 能 と 二 次 元 画 像 処 理 の 処 理 内 容 を示 した 。 ソ フ ト要 素 機 能 は
表3.4 二次 元 画像 処 理 の 目標 機 能 と処 理 内 容
種 々 な 組 合 せ が あ り,目 的 に従 っ て 適 宜 組 み 合 わ せ る こ と に な る。 表 の 内 容 は 一 例 で あ り厳 密 で は な い 。 ま た,表 示 以 外 に も,新 しい ア ル ゴ リ ズ ム が 多 数 提 案 され て い る 。2.2節 の 画 像 処 理 を参 考 に され た い 。
(3) ア ウ トプ ッ トの 処 理 (a) 表
示
デ ィス プ レ イ はCRTが
主 体 で あ る が,実
る こ とが 重 要 で あ る。GO/NO判
定,不
際 現 場 で は何 が 必 要 な の か 調 査 をす
良数 な ど,特 別 な表 示 手 段 が 必 要 に な る
こ と もあ る。 (b) 機 構 系 統 の 制 御 目的 に従 って 制 御 す る こ とに な るが,種 か ら数 値 的 な 信 号 と 自動 制 御,自
類 は非 常 に多 い。 単 純 なon,
動 ピ ン ト検 出 と調 節 ま で,そ
off制 御
の程 度 に よって
分 担 機 能 を決 め る必 要 が あ る。 機 構 部 は独 立 して 調 整 や機 能 の確 認 が で きる よ うに,可
能 な か ぎ り制 御 系 ま で 含 ん だ独 立 した構 成 に し て お くこ とが 望 ま しい 。
す な わ ち 数 値 信 号 だ け与 え れ ば所 定 の 時 間 内 に動 作 が 完 了 す る よ うに 設 計 し, 機 構 部 単 独 で 試 験 確 認 が で き る よ う に 配 慮 し た方 が よ い 。 全 部 結 合 して か ら問 題 が 出 る と,事 故 原 因 の 発 見 が 困 難 とな る 。
(4) 操 作 系 に 対 す る配 慮 完 全 に シ ス テ ム仕 様 が 固 定 さ れ,測
定 項 目が 確 定 し て い て,現
何 も しな い 場 合 は 問 題 が な い 。 しか し,測 定 項 目の 変 更 や,そ 調 節 が 必 要 な場 合 に は,そ
場 の使用者 が
れ に伴 う装 置 の
れ らの こ とが 容 易 に現 場 で で き る よ う に配 慮 す る こ
と が 重 要 で あ る 。 特 に 操 作 者 が 作 業 員 の 場 合 に は,可 能 な か ぎ りス イ ッチ ボ タ ン の み の操 作 で す む よ う に して お くこ とが 重 要 で あ る。 現 場 に評 判 の 悪 い装 置 の 原 因 は,操 作 性 に あ る 。 時 に は 置 い て あ る だ け で 使 用 さ れ な い 装 置 とな る 。 多 少 の 費 用 が か か っ て も,操 作 しや す い よ う にす る こ とが 望 ま しい 。
(5) 機 構 系 に対 す る 配 慮 搬 送 や 選 別 の 機 構 は,特 殊 の 物 を 除 い て大 き な 問 題 は な い 。 市 販 さ れ て い る 装 置 や ロ ボ ッ トの 組 合 せ で 可 能 で あ る 。 しか し,精 密 測 定 や 電 気 部 品,半 導 体
製 品 の10μm以
下 の 精 密 位 置 決 め に は種 々 の 配慮 が 必 要 で あ る 。 ロ ボ ッ トや 通
常 の 位 置 固 定 法 は,100μm程
度 の バ ラ ツ キ を生 ず る 。
位 置 制 御 の 性 能 向 上 は,慣 性 モ ー メ ン ト,摩 擦,ガ
タ との 戦 い で あ り,特 に1
デ ィ ジ ッ ト送 りの 制 御 を行 う と きに は,制 御 分 解 能 を 十 分 に 高 くす る 必 要 が あ る 。 これ に は,立 す る こ と や,ハ
ち上 が り加 速 度 を大 き くす る た め に,駆 動 力 を十 分 に大 き く ンチ ング(振 動)を 防 ぐた め に ガ タ を 要 求 駆 動 分 解 能 に応 じ た量
以 下 に す る こ と が 必 要 に な る。 そ れ に伴 い,表
面 仕 上 げ も大 きな 問 題 とな る 。
精 密 機 械 が 高価 な の は,こ れ らの要 因 に よ る。 機 構 系 に お い て は,保 守,点 検 へ の 配 慮 も忘 れ て は な ら ない 。
仕 様 決 定 上 の 注 意 点 を 述 べ た が,シ
ス テ ム の場 合 に は,す べ て の機 能 が よ く
調 和 して い る こ とが 重 要 で あ る 。 した が っ て,第2章
画 像 計 測 ・検 査 技 術 の 基
礎 を よ く理 解 して 最 適 の手 段 を選 定 し,結 合 す る必 要 が あ る。
3.3.2
デ ザ イ ン ポ リ シ ー(設 計 方 針)と デ ザ イ ン レ ビ ュ ー(設 計 審 査)
目標 とす る機 能 が 決 ま り,構 成 要 素 が 決 ま れ ば,具 体 的 な 設 計 が 開始 され る 。 全 体 的 な 概 念 図,シ
ス テ ム 構成 図 が 作 成 さ れ,開 発 日程 や 分 担 が 決 ま り,設 計
の 具 体 的 な活 動 が 開 始 さ れ る。 した が っ て,こ
の段 階 で は 設 計 で き な い よ う な
不 明 な 点 が あ っ て は な ら な い 。 確 信 が な け れ ば,具
体 的 設 計 は不 可 能 で あ る。
こ れ が 研 究 と設 計 の 差 で あ る 。 開 発 日程 が ず るず る と遅 延 す る こ とが あ る が, こ の 点 に原 因が あ る こ とが 多 い 。
(1) 分 担 す る 責 任 の 明 確 化 具 体 設 計 の 第1段 階 で は,要 設 計 仕 様 書,構 信 号 のin,
想 設 計 図,ブ
素 機 能 を 決 め,部
品,構
造,材
料 を 選 定 して,
ロ ッ ク ダ イ ア グ ラ ム が 作 成 され る。 各 ブ ロ ック の
outが 決 定 され,機 能 的 な 関 係 と分 担,作
業 分 担 が 明確 に な る。 この
時 点 で 共 通 の認 識 と して の デ ザ イ ンポ リ シ ー が 必 要 に な る 。 作 業 分 担 は,機 械 屋,電 い が,シ
気 屋,ソ
ス テ ム の場 合 に は,可
フ ト屋 な どの 専 門別 に 分 け られ る こ とが 多
能 なか ぎ りin, outで 区切 られ る ブ ロ ッ ク 別 に,
複 合 機 能 に対 応 で きる 分 担 グ ル ー プ に編 成 し,各 ブ ロ ック 別 に確 実 な機 能 確 認
を実 施 す る こ とが 必 要 で あ る。 ブ ロ ック ご と にin, outの 確 認,機 械 系 の場 合 に は そ の 動 作,精
度 確 認 が な さ れ な け れ ば な らな い 。 全 体 を組 み 合 わせ て か ら問
題 が 発 生 す る こ と の な い よ う に,各
ブ ロ ッ ク で の 責 任 を も っ た確 認 が 重 要 で あ
る。 ま た,具
体 設 計 の ブ ロ ック 間 調 整 と,無 理,む
け る た め に,適 ―
以 下DRと
だ と独 り善 が りの リス ク を避
当 な 中 間段 階 で 何 回 か デ ザ イ ン ・レ ビ ュ ー(design
review
略 す)を 行 う必 要 が あ る。
(2) デ ザ イ ン ポ リシ ー の 注 意 点 (a) 企 業 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ と規 格 各 企 業 に は,そ 観 や 色,製
れ ぞ れ独 自 の方 針 や 歴 史 的 に つ く ら れ た 標 準 規 格 が あ る。 外
作 法 な ど,守 る べ き こ と は始 め に 明 確 に し て お く方 が よ い 。 特 に類
似 品 の 利 用 や 標 準 部 品 の 採 用 は,設 計 費 や コ ス トの 削 減 に 効 果 が あ る 。 過 去 の 経 験 の伝 承,失 シ ー は,企
敗 の 記 録 の 調 査 な ど も重 要 で あ る。 した が っ て,デ ザ イ ン ポ リ
業 の 財 産 で あ り,熟 達 した 技 術 者 の 参 加 に よ っ て 決 定 す べ き こ と で
ある。 (b) 生 産 量 に よ る差 汎 用 的 な画 像 処 理 装 置 や,パ
ソ コ ンに 付 加 す る 専 用 ボ ー ドは 種 々 市 販 され て
い る 。 こ れ を購 入 す る の は 簡 単 で あ る が ,も
し100台
生 産 す る な らば,目
的に
応 じた む だ の な い 自社 製 の 専 用 装 置 に した 方 が 付 加 価 値 が 多 く な り,利 益 もあ が る可 能 性 が あ る 。 前 述 した ソ フ トとハ ー ドの 関 係 や 機 構 部 品 関 係,電
子制御
か 機 械 制 御 か の 問 題 も総 生 産 量 で 決 ま る 。 自社 の 生 産 能 力 との 関 連 も,み のが せ な い 。 ま た 機 能 的 に 将 来 の 汎 用 化 を考 え て,余
裕 を も っ た 設 計 に して お く必
要 の あ る 場 合 も あ る。 開 発 費 の 低 減 を 考 え て,ど
の ような設計 にす るか始め に
論 議 し て,方 針 を 決 め た 方 が 迷 い が な い 。 ブ ロ ッ ク組 立 て,メ
ンテ ナ ンス 性 も
始 め に 全 体 的 に考 えて お く必 要 が あ る。 (c) 市 場 性 の 配 慮 完 成 し た 装 置 を使 うの は,設 計 者 で は な い 。 現 場 作 業 者 で あ り,客 先 の ユ ー ザ で あ る。 膨 大 な 取 扱 い 説 明 書 を 読 ま な くて も,操 作 で き る よ う に 配 慮 す る こ と,す な わ ち 自社 の 既 製 品 や 業 界 の 操 作 手 順,ブ
ロ ッ ク や 機 能 の 名 称 を共 通 化
す る こ と で あ る。 少 な く と も,標 準 化 さ れ て い る方 式 や,社
会 的 な通 用 規 格 を
尊 重 して わ か りや す くす る必 要 が あ る 。 社 内 製 品 相 互 で も,ユ ー ザ の 使 用 す る ソ フ トウエ ア,キ
ー 操 作 な ど は,前 例
を 調 査 し て 矛 盾 の な い よ う に配 慮 す る こ とが 重 要 で あ る 。 新 旧 製 品 や 類 似 品 が ま っ た く違 っ た コ ンセ プ トの 場 合,営
業 に も使 用 者 に も混 乱 が 生 ず る。 また,
既 存 の シ ス テ ム や 他 社 の 製 品 と結 合 す る シ ス テ ム の 場 合 に は,コ 市 場 性 を 考 慮 して,あ
ン ピ ュ ー タの
ま り独 自 の 用 語 の 使 用 や 操 作 を しな い よ う に 配 慮 す る こ
とが 必 要 で あ る。 (d) 基 本 ソ フ トとユ ー ザ ソ フ トの 明 確 化 組 み 込 まれ て い る 変 更 禁 止 の基 本 ソ フ ト と,パ
ラ メ ー タ な ど との ユ ー ザ が 変
更 可 能 の ソ フ トや 係 数 な どの 区 別 は,明 確 に し て お くこ と。 工 業 用 設 備 と して 使 用 さ れ る シ ス テ ム で は,変
更 禁 止 の 部 分 に,で
き る か ぎ りユ ー ザ が ふ れ る こ
と の な い よ うに 配 慮 す る こ と が 重 要 で あ る 。 操 作 性 との 関 連 も あ るが,納
入後
の トラ ブ ル の も と に な る 。
(3) DR(設 DRは,設
計 審 査) 計 品 質,製
造 品 質,製
品 品 質(機 能,稼 働,操
保 証 す る こ とが 狙 い で あ り,信 頼 性 や,PL も含 ん で い る 。 企 業 と し て は,商
作,保
守 サ ー ビス)を
(product liability,製 造 物 責任)問 題
品 企 画 か ら生 産,品
質 保 証 ま で,す
べ て の活
動 の 根 本 が 設 計 に あ り,場 合 に よ っ て は 開 発 商 品 の 成 否 が 企 業 の 命 運 を左 右 す る こ と に も な る 。 し た が って,DRの よ う な と きに は,当 然,経
第1段 階 は商 品 企 画 で あ り,社 運 を賭 け る
営 の トッ プ,社 長 を 交 え て 企 画 を審 議 し,決 定 す る
必要 が ある。 国 際 規 格(品 質 シ ス テ ム)ISO9001の DRの
設 計 管 理 の 項 目 に は,重
要 項 目 と して
実 施 が 要 求 さ れ て い る。
DRの
詳 細 は,紙
面 の 制 限上,専
門書 に ゆ ず る と して,こ
こで は,設 計 者 ま た
はDRの
責 任 者 が 心 得 て お か ね ば な ら ない,画 像 処 理 応 用 シス テ ム と して の 注 意
事 項 を簡 単 に 述 べ る 。 (a) 目的,要
求仕様 の確認
設 計 が確 実 に 目的 を 達 成 す る機 能 を 果 た す よ うに な っ て い るか の確 認 が,第1
優 先 の作 業 で あ る。 構 想 段 階 の審 査 会 で は,被 測 定対 象 の サ ンプ ル,限 度 見 本 実 験 結 果 な どに よ り,目 標 シス テ ム の 有 効 性 を判 断 す る 。 も し,汎 用 性,他 テ ム との結 合,発
展 性 が 必 要 な らば,入
のシス
出力 や 機 能 の 余 裕 度 な ど も課 題 と な る。
(b) 中 間 審 査 の 目的 は,品 質 保 証 の た め の 試 験 状 況 と その 結 果 の チ ェ ッ ク 審 査 は 会 議 で は な い 。 検 出性 能 の余 裕 度,外
乱,環 境 に対 す る強 さ,耐 振 性,
信 頼 性,寿 命 な どの 試 験 結 果 の 確 認 で あ る。 記 録 が あ り,保 存 さ れ て い な けれ ば な ら ない 。 (c) 最 終 審 査 は,製 品 と して の 適 合 性 生 産,販
売,保
守 メ ン テ ナ ン ス,PL,信
頼 性,使
い勝 手 な ど,完 成 品 に 対 し
て 商 品 と し て の 妥 当性 を 審 査 す る 。24時 間 稼 働 の シス テ ム で は サ ー ビス 体 制 も 大 きな 問 題 で あ る。 (d) 審 査 は企 業 の 義 務 PLも 含 め て,企 し てDRが
業 は 自社 の 製 品 に 責 任 を もた な け れ ば な ら な い。 そ の 手 段 と
あ る 。 専 門家,経
験 者,営
業 の 目に よ る,広 い 意 味 の 品 質 の 確 認 作 業
で ある。 (e) 専 門 家 の 参 加 DRに
は,社
内外 の 技 術 的 専 門 家,経 験 者,決 定 権 を もっ た 責 任 者 の 参 加 が望
ま し い。ユ ーザ の 立 場,将 来 性,せ ま い観 点 で の 独 り善 が りの 防 止 な どの 点 か ら, 有 識 者 の広 くて 高 い 意 見 を集 め る こ とが 望 ま しい。 設 計技 術 者 の 欠 点 は,自 分 の ア イ デ ア に 固 執 す る こ とで あ り,謙 虚 な 心 が 必 要 で あ る 。 しか し,決 定 は設 計 担 当 者 と責 任 者 の 責 任 で あ る 。 (f) その 他 注 意 事 項 DRは
日程 管 理 や,設 計 を非 難 す る 場 所 で は な い 。 あ くま で も問 題 を 解 決 し,
設 計 を支 援 し,失 敗 を防 ぐ場 所 で あ る 。場 合 に よ っ て は小 姑 的 な あ ら さが しに な る の で,注 意 が 必 要 で あ る。 設 計 者 が 感 謝 す るDRと 開発 を 円滑 に進 め るた め に,生 産,品 管,販
な る こ とが 望 ま しい 。
売 な どの 関連 部 門 の参 加 も必 要 で
あ る 。 意 見 の 疎 通 や 参 加 意 識 に も効 果 が あ る 。 本 節 の 内 容 は,必 ず し も画 像 関 連 シ ス テ ム に 特 有 の こ とで は な い。 一 般 的 な商 品 開発,設
計 作 業 に も共 通 の手 順 で あ り,考 え る こ とが 必 要 な 問 題 で あ る 。
本 章 の ま とめ と して,上 記 の 手 順 を 整 理 して 表3.5に 示 した 。 シ ス テ ム 設 計 に
表3.5 設 計 の 手順
共 通 す る 事 項 で あ り,実 際 面 で は社 内 用 語 で 表 現 さ れ た り,さ して い る 会 社 も あ る が,開 要 が あ る。
らに 丁 寧 に実 施
発 の 標 準 的 な作 業 手 順 と して 技 術 者 が 心 得 て お く必
第4章 画 像 計 測 ・検 査 シ ス テ ム の 構 築 で は,画 応 用 シ ス テ ム を,そ の 主 な 機 能 に よ り"見 え る","形
を測 る","合
わ せ る","識
る","記
号 ・文 字 を読 む","見
よ び"感
覚 量 を測 る"に
例 に つ い て,用
像処 理
つ け る","数
別 す る","比
較 す
え な い も の を 視 る",お
大 別 し,そ れ ぞ れ の 代 表 的 な 事
い られる画像処 理 技術 とシス テム設 計上
の 考 え方 を 中 心 に,シ
ステ ムの構 築 の実際 に つい て述べ
てい る。 第5章
画 像 応 用 シ ス テ ム の 発 展 と 展 望 で は,各
応 用分
野 に お け る技 術 の発 展 の 歴 史 を た ど り,現 在 の 到 達 点 と 今後 の発 展方 向 につ いて述 べ てい る。
第4章
画像計測 ・検 査 シス テムの構築
4.1
見
つ け る
画 像 計 測 ・検 査 シ ス テ ム に お い て"見 つ け る"こ とは,最
も基 本 的 な処 理 機 能
で あ る 。 画 像 処 理 シス テ ム が最 も多 く使 わ れ て い る工 場 内 で の 製 造 ラ イ ン を考 え る と,ワ ー ク(加 工 され る も の)は 必 ず 定 位 置 に セ ッ トさ れ,何 エ ッチ ン グ,切 削,接
合,組
らか の加 工(印 刷,
立)を 受 け,次 の 製 造 ライ ン に搬 送 され る。 そ の 際 ,
① ワー ク が 定 位 置 に あ る こ と の確 認 も し くは ワ ー ク を定 位 置 に合 わ せ る た め に, ワ ー ク 上 に付 け られ た 基 準 マ ー カ(も し くは特 定 パ タ ー ン)を"見 つ け"(位 置 検 出), 基 準 マ ー カの 定 位 置 か らの"ず れ"を 計 測 し,必 要 に応 じて ワ ー ク の 位 置 補 正 を 行 う。 さ らに,② 加 工 を行 う前 に,加 工 面 に異 物 ・きず な どの 不 良 箇 所 が な い か ど うか の確 認 と,加 工 後 に加 工 が 正 し く行 わ れ た か ど うか を確 認 す る た め に,各 種 の 検 査 が 行 わ れ,不
良 箇 所 を"見 つ け る"(欠 陥検 出)。 不 良 箇 所 が 見 つ か っ た
場 合 に は,そ の 箇 所 を 補 修 す る か,ワ
ー ク ご と不 良 品 と して排 除 す る。 また,③
現 在 の 製 造 ラ イ ン は,そ の 多 くが 無 人 化 も し くは きわ め て 少 数 の 人 々 に よっ て 運 転 さ れ て い る こ とか ら,製 造 ラ イ ン の 異 常 を い ち早 く"見 つ け"(監 視),他
の製
造 ラ イ ンへ の 波 及 を 防 ぐこ とが 行 わ れ て い る。 こ の よ う に"見 つ け る"に は,位
置 検 出,欠
陥検 出,監 視 の 三 つ の 機 能 が 含 ま
れ る。 こ れ らの 中 で,欠 陥 検 出 は,最 終 製 品 の 品 質確 保 の た め に,素 材 の段 階 か ら完 成 品 の段 階 ま で最 も多 種 多 様 に行 わ れ て い る 。特 に,消 費 者 の 目 に 直接 ふ れ
る 製 品 の外 観 の 欠 陥 や 印 刷 文 字 の 欠 陥 に 対 して は,製 造 物 責 任 制 度 と相 ま っ て, 100%の
欠 陥 検 出率 が 要 求 され る な ど,質 的 に も高 レベ ル な欠 陥 検 出 能 力 が 要 求
さ れ て い る。 そ こで,こ
こで は,欠 陥検 出 に 特 有 な画 像 処 理 シス テ ム に つ い て述
べ る。
4.1.1
画 像 に よ る欠 陥 検 出
(1) 欠 陥 検 出 の 産 業 分 野 外 観 表4.1は,欠
陥検 出 が 産 業 分 野 で どの よ う に使 わ れ て い る か を概 観 し,画 像 処
理 シス テ ム を構築 す る上 で 特 に重 要 な観 測 系 につ い て整 理 し た もの で あ る1)。 さ ま ざ ま な 産 業 分 野 で,さ
ま ざ ま な 欠 陥 検 出 が 行 わ れ て い る。 電 子 ・機 械 部 品産 業
で は,半 導 体 製 造 を 中心 に各 種 電 子 部 品 の 製 造 の た め の 目視 検 査 の 自動 化 が徹 底 的 に図 られ た あ と に も,製 品 の精 密 化,高 機 能 化,高
品 質 化 お よび 低 コ ス ト化 の
流 れ に対 応 して,検 査 需 要 は ます ます 増 大 して お り,い か に検 査 要 求 に対 して 手 間 をか け ず に 実 用 化 して い くか が 大 き な課 題 とな っ て い る。 農 水 産 ・食 品 業 で は, 異 物 の付 着,混
入 に対 す る検 査 が きび し くな る と と も に,小 容 器 化 に伴 う検 査 速
度 の 一 層 の 向 上 と低 コス ト化 が課 題 と な っ て い る 。 薬 品 工 業 で は,異 物 の 混 入 や 印 刷 文 字 の 欠 落,包
装 ・印 刷 産 業 で は,製 造 年 月 日を は じめ とす る 印 刷 文 字 の 欠
落 ・不 読 に対 す る検 査 の 徹 底 が 要 求 され て い る 。 こ の よ う に 表4.1は 過 去 に 検 査 の 自動 化 が 図 れ た対 象 を示 した もの で あ る が,そ れ らの 多 くは 現 在 で も改 善 が 進 め られ て い る。
(2) 観
測
系
画 像 処 理 シス テ ム を構 築 す る上 で 最 も検 討 を要 す るの が 観 測 系 で あ る 。 表4.1 の そ れ ぞ れ の 対 象 に 対 す る観 測 系 につ い て 概 観 して み る と,照 明 ・光 学 系 の 多 様 さ に 比 して,使 用 され る セ ンサ の 選 択 の 自 由 度 は 低 い こ とが わ か る 。 す な わ ち, 使 用 され るセ ンサ は ほ とん どの もの が 受 光 素 子 がCCDで
あ る エ リ ア セ ンサ(二 次
元 走 査)か ラ イ ン セ ンサ(一 次 元 走 査)で あ る。 ラ イ ンセ ンサ は エ リ ア セ ンサ に 比 して 高 価 で あ る が,空
間 分 解 能 が 高 く,図4.12)の
よ う に,被 検 査 面 が 平 面 状(も
し くは 円 筒 状)の 対 象 に対 して は,線 状 の斜 方 照 明 系 ・透 過 照 明 系 を利 用 す る こ と に よ って 均 一 な 反 射 ・透 過 光 強 度 を得 る こ とが で き る た め,広
く利 用 され て い る。
表4.1 応 用 分 野 と観 測系(欠 陥検 出)
図4.1 斜 方 照 明 と透 過 照 明2)
図4.2 プ リ ン ト配線 基 板検 査 に用 い られ る照 明方 法3)
ま た,セ
ル セ ンサ は,一 次 元 走 査 さ れ る レー ザ 照 明 光 の 反 射 光 を効 率 よ く高 速
に検 出 した りす る場 合(ホ トダ イ オ ー ド,ホ
ト トラ ン ジ ス タ な ど)や,微
紫 外 域 ・赤 外 域 の 物 体 か らの 光 を検 出 す る 場 合(光 電 管,ホ な ど)で,き 一 方,照
弱光や
トマ ル,光 導 電 素 子
わ め て 特 殊 な使 用 で あ り,適 用 対 象 は きわ め て制 限 され る。 明 ・光 学 系 に は さ ま ざ まな 手 法 が 用 い られ る。 本 来,欠 陥 検 出 は,正
常 部 と は違 う領 域 と して 欠 陥 部 を検 出 す る こ とで あ り,照 明 ・光 学 系 で正 常 部 と 欠 陥 部 のS/N比
を十 分 高 くす る こ とが で きれ ば,そ の 後 の 画 像 処 理 に よ る欠 陥
検 出 は き わ め て 容 易 とな る。 図4.23)は,プ
リ ン ト配 線 基 板(現 在 は,携 帯 用 電 子
端 末 に見 ら れ る よ う に 数 十 層 の 多 層 板 が 製 造 さ れ る よ う に な り,さ
らに き び し
い 検 査 が 要 求 され て い る)の 検 査 に対 して 適 用 され た照 明 手 法 で あ る。 基 本 的 に は,図4.34)の
よ う な 回 路 パ ター ン の異 常 を検 出 す る もの で あ る が,表
面の配線
パ ター ンか らの 不 均 一 な 金 属 反射 や 下 層 の 配 線 パ ター ンの 影 響 を受 け な い 工 夫 が 行 わ れ て い る。 こ の よ う に,応 用 事 例 で は,そ れ ぞ れ の 欠 陥 対 象 に対 し て 最 適 な 照 明 ・光 学 系 が 選 択 さ れ て い る が,そ
の 選 択 に あ た っ て は,そ
図4.3
銅 箔 パ タ ー ン の 欠 陥 例4)
れ ぞ れ の 欠 陥 が 有 す る特
性 ・特 徴 と,照
明 用 光 源 や セ ンサ の 性 能 ・特 徴 に つ い て の十 分 な 検 討 が 必 要 で
ある。
(3) 欠 陥 検 出 の た め の 照 明 ・光 学 系 本 項 で は,通 常 の 落 射(同 軸)照 明,拡 散 照 明 で は検 出 が 困 難 な 欠 陥 検 出 の た め の特 徴 的 な照 明・光 学 系 に つ い て 解 説 す る。 (a) 斜 方 照 明 図4.4(a)5)に 異 物 や,微
示 す よ う に,本 照 明 法 は被 検 査 面 が 鏡 面 で,そ
の 面 上 の微 小 な
小 な 凹 凸 ・きず な ど の 欠 陥 の 形 状 の異 常 に 起 因 す る 散 乱 光 を検 出(暗
視 野 受 光)す る場 合 と,そ れ らの存 在 に よ る正 反 射 光 の 強 度 の 減 少 を 検 出(明 視
図4.4 斜 方 照 明 に よ るカ ラー フ ィル タ基板 の欠 陥 検 出
野 受 光)す る場 合 が あ る。 図4.4(b)は,本
照 明 法 の特 徴 を巧 み に利 用 して微 小 な
突 起 欠 陥 と異 物 と して の 塵 埃 を 区別 して 欠 陥 検 出 を図 っ た事 例 で あ る6)。検 査 対 象 は,図4.4(c)に
示 す よ う に液 晶 の 製 造 過 程 に お け る カ ラ ー フ ィ ル タ基 板(こ の
図4.5 低 傾 斜 角 度斜 方照 明 に よ る欠 陥 の顕 在 化2)
工 程 後 に,カ
ラ ー フ ィ ル タ基 板 は液 晶 をは さん で 電 極 基 板 と貼 り合 わ さ れ る)で
あ る 。 突 起 欠 陥 か らの 反 射 光 は そ の傾 斜 部 で 偏 向 す る た め,集
光 レ ンズ の 後 ろ
に設 置 した 遮 光 板(カ ラ ー フ ィ ル タの 周 期 性 を考 慮 して あ らか じめ 作 成 され る写 真 乾 板 製 の 空 間 フ ィル タ)を 通 過 して 検 出 され る。 一 方,正 常 部 か らの正 反 射 光 は 遮 光 板 で カ ッ トされ,塵 さ くな る の で,検
埃 か ら の散 乱 光 は,集 光 レ ンズ に入 射 す る 割 合 が 小
出 さ れ る光 強 度 は 小 さ くな り,図4.4(d)に
示 す よ うに2値 化
処 理 に よ り,突 起 欠 陥 と の 弁 別 が 可 能 と な る(塵 埃 の検 出 方 法 は,次 項(b)を 参 照)。 一 方,図4.5(a)は,斜
方 照 明 の傾 斜 角 度(検 査 面 と の な す 角)を 小 さ くす る こ
と に よっ て,表 面 の 微 小 な 凹 凸 欠 陥 の領 域 を強 調 した 事 例 であ る2)。検 査 対 象 は, 図4.5(b)の
多 層 セ ラ ミ ッ ク ス 基 板 の 製 造 工 程 で つ く られ る グ リー ン シー トで あ
る 。 セ ラ ミ ッ ク ス 粉 末 を主 成 分 とす る 数 μm以 下 の微 粒 子 で 形 成 さ れ て い る た め,そ
の 表 面 は 光 学 的 に は,ほ
ぼ 完 全 拡 散 面 で あ る。 本 照 明 法 に よ っ て 完 全 拡
散 面 で の 凹 凸 欠 陥 が 強 調 され る 原 理 は,以 散 面 とす る と,図4.5(c)の
下 の とお りで あ る 。 検 査 面 を完 全 拡
よ う に,照 明 光 の 傾 斜 角 θ,強 度L0の 平 行 光 で グ リ ー
ン シ ー トを照 明 した 場 合,A点
に お け る単 位 面 積 あ た りの 照 明 強 度Lは, (4.1)
と な り,(θ+α)≦90°
の 範 囲 で,欠 陥 部 の 傾 斜 が 存 在 す る こ とに よ っ て正 常 部
よ り照 明 強 度Lが 高 くな る 。 ま た,照 明 強 度Lは 欠 陥 部 の 傾 斜 角 αが 大 きい ほ ど 高 くな る 。 一 方,完 全 拡 散 面 か らの 反 射 光 強 度 は,図 示 す る よ う に検 査 面 に対 し て垂 直 な 方 向 か ら測 定 す る こ とか ら,単 位 面 積 あ た りの 反 射 光 強 度Rは, (4.2) と な り,欠 陥 部 の 傾 斜 角 αが 増 加 す る に つ れ て,反
射 光 強 度Rは
減少 す る。式
(4.1)を式(4.2)に 代 入 し,傾 斜 が 存 在 し ない 正 常 な 場 合 の 反 射 光 強 度 をR0と す れ ば,欠
陥 部 の 傾 斜 の 存 在 に よる 反 射 光 強 度 の コ ン トラ ス トCは,α
が十分 小 さい
場 合 に は, (4.3) と な る 。 式(4.3)は,照
明 光 の 傾 斜 角 θが 小 さ い ほ ど,欠 陥 部 の 傾 斜 角 度 αの 影
響 が 増 加 し,結 果 と して コ ン トラ ス トが 高 くな る こ とを示 して い る。
(b) 偏 光 の 利 用 図4.6は,海
苔 に 付 着 した 異 物 の検 出 に偏 光 を利 用 した 事 例 で あ る7)。 海 苔 は
全 反 射 に 近 い 反 射 特 性 を有 す る 。 そ こ で,高 輝 度 蛍 光 灯 か らの 照 明 光 が 正 反 射 す る方 向 に ラ イ ン セ ンサ カ メ ラ を 設 置 し,光 源 側 と受 光 側 に偏 光 フ ィル タ を装 着 す る。 偏 光 フ ィ ル タ の偏 光 面 を互 い に90° ず らす こ と に よ り,海 苔 表 面 で正 反 射 した 照 明 光 は カ ッ トさ れ る。 表 面 に 異 物 が 存 在 す る場 合 に は,無 偏 光 に 近 い 散 乱 光 を 生 じ る た め,散 乱 光 の 一 部 は偏 光 フ ィ ル タ を通 過 して,異 反 射 光 と して 検 出 さ れ る。 な お,本
手 法 は,光
沢 面 を 観 察 す る 際 に,照 明 光 に
よる 鏡 面 反 射 の 影 響 を低 減 す る手 法 と して も利 用 で き る。
図4.6 偏 光 を利 用 した鏡 面 反射 光 の 除去7)
図4.7
物 か らの
偏 光 を 利 用 し た パ タ ー ン ウ エ ハ 上 の 異 物 検 出5)
一 方,図4.7は,パ
ター ン付 きウ エ ハ 上 の 異 物 の検 出 に偏 光 を利 用 した事 例 で
あ る5)。 ウ エ ハ 表 面 にs偏 光 レー ザ を照 射 した と き,パ るが,偏
ター ンで も散 乱 光 を 生 じ
光 面 に平 行 あ る い は 直 交 す るパ ター ン形 状 で は,散 乱 光 の偏 光 はs偏 光
を維 持 す る。 しか し,異 物 で は 表 面 形 状 が 複 雑 な た め 無 偏 光 に近 い(p偏 光 成 分 を もつ)状 態 に な る の で,偏 光 板 に よっ てs偏 光 成 分 を カ ッ トす る こ と に よ っ て, 異 物 か らの 散 乱 光 を検 出す る こ とが で き る。 ま た,図4.8(a)は,図4.4(c)の
塵 埃(異 物)を 検 出 す る際 に,図4.8(b)の
よう
に 照 射 レー ザ の 表 面 反 射 率 が 偏 光 方 向 に よ っ て 大 き く異 な る とい う特 性 を利 用 して,表
面 の 異 物 か 裏 面 の 異 物 か を 区 別 して 検 出 した 事 例6)で あ る。 表 面 に あ る
異 物 に 対 し て は,低 度SA,
傾 斜 角 度 の レ ー ザAも 高 傾 斜 角 度 の レ ー ザBも
散乱光 の強
SBは ほ ぼ 同 一 と な る。 しか し,裏 面 の 異 物 に 対 して は,レ ー ザAで
面 反 射 率 が 高 い た め に そ れ ら の 反射 強 度 はSA≪SBと 異 物 か 裏 面 の異 物 か の 区 別 は,散 乱 光 の 強 度SA,
な る。 した が っ て,表 面 の
SBを 比 較 す る こ と に よ っ て 可
能 となる。
図4.8 s偏 光,p偏
の表
光 の 反射 率 の違 い を利 用 した表 面 と裏 面 の異 物 の 弁別6)
(c) 赤 外 光 の 利 用 図4.9(a)は,前
述 の 海 苔 の異 物 検 出 に対 し て,さ
例 で あ る7)。海 苔 の 分 光 透 過 特 性 は,図4.9(b)に 過 率 が 大 き くな る。 そ こ で,CCDセ は赤 外LEDを
ら に,赤 外 光 を利 用 した事
示 す よ う に800nm付
近 か ら透
ンサ の 感 度 が あ る赤 外 領 域 の 光(本 事 例 で
使 用)を 透 過 照 明 と して 使 用 す る 。 こ の 領 域 の 光 に対 し て も不 透
明 で あ る 異 物 は,輝 度 の き わ め て低 い 領 域 と して検 出 す る こ とが で き る。
図4.9 赤 外 光 を利 用 した海 苔 の異 物検 出7)
(d) 逆 反 射 ス ク リー ンの 利 用 図4.10(a)は,逆
反 射 ス ク リ ー ン と呼 ば れ る特 別 な ス ク リー ン を利 用 して,比
較 的 平 坦 か つ 光 沢 の あ る対 象 表 面 に 生 じる10μm程
度 の 高 さ の 凹 凸 欠 陥 を光 学
的 に強 調 し,顕 在 化 す る手 法 で あ る8)。強 調 原 理 と して は,逆 反 射 ス ク リ ー ン に 散 りば め られ て い る ビ ー ズ 状 の 反 射 球 が,入
射 光 線 に 対 して,指
射 パ ター ン を も つ こ とに よ る 。 す な わ ち,カ
メ ラ ビ ュ ー イ ン グ方 向 か ら被 検 査
面 を と ら え た場 合,照 に対 す る 反 射 強 度),傾 強 度),傾
明 光 の 反 射 強 度 は,平 坦 なA点 斜 が右 上 が りのB点
斜 が 右 下 が りのC点
で は,逆
で は,小
向性 の強 い反
で は,若 干 小 さ く(角 度 α さ く(角 度 βに 対 す る反 射
に,角 度 γが 角 度 αよ り小 さ くな る た め
反 射 強 度 は 大 き くな り,欠 陥 部 と して の 凹 凸 部 が 強 調 さ れ る。 図4.10(b)は,自 動 車 ボ デ ィ に適 用 し た結 果 で あ り,肉 眼 で は と ら え られ な い 表 面 の 凹 凸 が 強 調 され,ド
ア の 端 部 や 取 手 の周 囲 に波 打 ち が 存 在 す る こ とが わ か る8)。
図4.10 逆 反射 ス ク リー ンに よる 凹凸 欠 陥 の強 調8)
(e) 円
錐
鏡
図4.11(a)は,エ
ン ジ ン シ リ ン ダ 検 査 用 の セ ン サ ヘ ッ ドの 構 成 図 で あ る9)。 シ
リ ン ダ 内 面 壁 の ピ ン ホ ー ル,巣
な ど の 欠 陥 を 検 出 す る た め に,円
図4.11 円 錐鏡 に よ る円筒 内面 の 欠陥 検 出9)
錐 鏡 を 使 い,
一 度 に 一 定 視 野(奥 行 き)の 内 面 画 像 を入 力 す る 方 法 で あ る 。 シ リ ン ダ の 内 径 に 合 わ せ た 光 学 系 の 調 整 と,奥 行 き方 向 の 座 標 の換 算 は 必 要 と な る が,円
周方 向
に対 す る 機 械 的 な 走 査 系 を使 わ ず に,内 面 画 像 を 取 得 で き る 点 が き わ め て 実 用 的 で あ る 。 図4.11(b)は,シ
リ ン ダ 内 壁 に 生 じた 直 径0.5mmの
欠陥 を とらえた
入力画像 で ある。
4.1.2
欠 陥 検 出 の た め の画 像 処 理 手法
図4.12は,検
査 シ ス テ ム 開発 で よ く用 い る 画 像 処 理 手 法 の 分 布 を示 した もの
で あ る10)。2.2節 で さ ま ざ ま な画 像 処 理 手 法 に つ い て解 説 して い るが,実 査 で 使 用 さ れ る 画 像 処 理 手 法 は,ほ
と ん どが,2値
際に検
化 処 理 と2値 図 形 に対 す る 形
状 特 徴 抽 出 処 理 で あ り,電 子 ・機 械 部 品 の 検 査 の よ う に 基 準 パ ター ン を用 意 で き る 場 合 に は,パ
タ ー ンマ ッチ ン グ が こ れ に加 わ る。 ま た,ノ
平 滑 化 処 理,欠
陥 領 域 の 強調 の た め の 画 像 強 調 処 理,欠
イズ 除去の ための
陥領域 検 出のた めのエ
ッ ジ 検 出 処 理 の 使 用 頻 度 も高 い こ と が わ か る 。 観 測 系 で の 正 常 部 と欠 陥 部 の S/N比
が 高 け れ ば 高 い ほ ど,こ の よ う な 単 純 な 画 像 処 理 手 法 の み で 欠 陥 検 出 は
可 能 と な り,結 果 と して,検 査 の 高 速化 が 図 れ る こ と に な る 。
図4.12 検 査 シス テ ム 開発 で よ く用 い られ る 画 像 処理 手 法 の分 布10)
図4.13
欠 点 検 出 処 理 の フ ロ ー チ ャ ー ト11)
こ の よ う な 単 純 な 画 像 処 理 手 法 の み で の 欠 陥 検 出 の典 型 的 な フ ロ ー チ ャー ト を 図4.13に 示 す11)。 欠 陥 と して は,正 常 領 域 中 に 周 囲 よ り輝 度 の 低 い 領 域 と し て ポ ツ ン と発 生 す る"欠 点"を 想 定 す る。 最 初 の 画 像 平 均 化 は,画
像 入 力 系 の 信 号 ノ イ ズ を低 減 させ る た め の もの で,
N回 の 画 像 平 均 化 で ラ ン ダ ム ノ イ ズ は1/√Nに は,通 常 のNTSC準
拠 のTVカ
の 画 像 入 力 まで33msを
低 減 さ れ る 。 しか し,実 用 的 に
メ ラ を 使 用 す る か ぎ り,1回
必 要 とす る の で,1画
目の 画 像 入 力 か ら次
面 あ た り数 十ms∼
数 百msで
の処
理 が 必 要 と な り,高 速 な検 査 に は適 用 で き な い こ と が 多 い 。 平 滑 化 処 理 で は, 検 出 し よ う とす る 欠 陥 の サ イ ズ と コ ン トラ ス トに 応 じて,適
切 な平滑化 処理 手
法 とサ イ ズ を 選 択 す る こ と が 必 要 で あ る 。 しか し,次 の し き い 値 処 理 に お け る し きい 値 の 設 定 な らび に検 出 され た 欠 陥 に対 す るOK/NG判 ザ と と り決 め た 限 度 見 本 に 従 っ て 決 定 しな け れ ば な らず,十
定 につ い て は,ユ ー 分 な 限度見本 が な
い場 合 に は,シ ス テ ム 完 成 後 に 問題 を 生 じる こ とが あ る の で 注 意 を要 す る 。 さ て,単
純 な し き い 値 処 理 で は,欠
陥 と正 常 領 域 が 区 別 で き な い 場 合 に は,
後 述 の4.2節
∼4.7節
の さ ま ざ ま な 手 法 の 適 用 が 必 要 で あ る 。 そ こ で,本
上 述 の 基 本 的 な 処 理 を 適 用 す る に あ た り,注
項 で は,
意 を要 す る 点 に つ い て 述 べ る こ と
に す る。 (a) オ ペ レ ー タ の サ イ ズ 通 常,微 さ れ る が,検
分 オ ペ レ ー タ や エ ッ ジ 検 出 オ ペ レ ー タ は,3×3画 出 し よ う と す る 欠 陥 の エ ッ ジ は,必
な い 。 図4.14は,エ
ッ ジ 検 出 の 際 のSobelオ
も の で あ る10)。 図4.14(b)の
図4.14
素 のサ イズで定義
ず し も明 瞭 で あ る と は か ぎ ら
ペ レー タ の サ イ ズ の 影 響 を表 し た
よ う に エ ッ ジ で の 輝 度 変 化 範 囲 に 対 し て,適
エ ッ ジ 検 出 オ ペ レ ー タ サ イ ズ の 選 択10)
切 な大
き さ の オ ペ レ ー タが 選 択 さ れ る 場 合(2K≒d)に 2K≪dの
場 合 に は,得
られ ず,欠
そ の場 合 に は,図4.14(b)下
は,大
きな 出 力 が 得 ら れ るが,
陥 領 域 の 境 界 を検 出 で き な い お そ れ が あ る 。
の よ うに"足 の 長 い"エ ッジ 検 出 オ ペ レ ー タが 有 効 と
な る。
図4.15 低 コ ン トラ ス ト欠 陥 の平 均 化処 理 に よる強 調
(b) 欠 陥 強 調 の た め の 平 滑 化 処 理 低 コ ン トラ ス ト欠 陥 の 一 例 と して,図4.15(a)に
示 す よ う にX線 透 過 写 真 フ ィ
ル ム に現 れ る 内 部 溶 接 欠 陥 が あ る12)。本 例 の よ うな微 細 な割 れ で は,図4.15(b) に 示 す よ う に 欠 陥近 傍 の輝 度 プ ロ フ ィ ー ル か ら は,割 れ とX線 の 散 乱 ノ イ ズ と の 区 別 は 不 可 能 で あ る。 しか し,割 れ が 溶 接 線 方 向(図 の 上 下 方 向)に 細 長 い と い う特 徴 を使 い,縦
長 の1×21画
素 の 平 均 値 オ ペ レ ー タ に よ る平 滑 化 処 理 を 行
う こ とに よ り,図4.15(c)に
示 す よ う に割 れ の 部 分 が 顕 在 化 す る こ とが わ か る。
通 常,SobelやLaplacianを
使 用 す る場 合 に は,ノ イ ズ を 強調 し な い よ う に前 処
理 と して 平 滑 化 処 理 を行 う こ とが 多 い 。 しか し,平 滑 化 処 理 は欠 陥 の コ ン トラ ス ト も同 時 に 引 き下 げ る こ とか ら,特 に 低 コ ン トラ ス トの 欠 陥 の検 出 に 際 して は,意 味 な く使 用 す る こ と は避 け た 方 が よ い。
■ 参
考
文
献
1) 輿 水 大 和 監 修:目 2) 1)のpp.
視 検 査 の 自動 化 技 術,テ
ク ノ シ ス テ ム,1995.
329-336.
3) 目視 検 査 の 自 動 化 技 術 調 査 委 員 会 編 集:画 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ズ,pp. 4) 3)のpp.
90-91.
5) 1)のpp.
169-178.
6) 小 泉 光 義:LCDお
11-16,
像 処 理 に よ る 目 視 検 査 の 自動 化 事 例 集,新
技術
1991.
よ び デ ィ ス ク 部 品 の 異 物 ・欠 陥 検 出 技 術,精 密 工 学 会 誌,61,
5, pp. 605-
609, 1995. 7) 1)のpp.
291-295.
8) 森 芳 一,西
元 善 郎:逆
反 射 ス ク リ ー ン に よ る 欠 陥 画 像 の 強 調,映
像 情 報(Ⅰ),
22, 23, pp.
73-78, 1990. 9) 江 尻 正 員 監 修:画
像 処 理 産 業 応 用 総 覧(下 巻:応 用 技 術 編),フ
ジ ・テ ク ノ シ ス テ ム,pp.
84-
91, 1994. 10) 1)のpp.
49-75.
11) 1)のpp.
476-484.
12) 石 井 明:溶
接 欠 陥 を 例 と した 低 コ ン ト ラ ス ト欠 陥 の 検 出,精 密 工 学 会 誌,61,
5, pp.
625-
629, 1995.
4.2
数
え
る
電 子 部 品 の 製 造 管 理 や セ キ ュ リテ ィー 監 視 を行 う画 像 応 用 シ ス テ ム に お い て, 部 品 の 個 数 や 欠 陥 の箇 所 を数 え た り,自 動 車 や 侵 入 者 な どの 個 体 数 を数 え る こ と は基 本 的 な画 像 処 理 機 能 で あ る 。 表4.2に 示 す よ う に,対 象 を 数 え る こ とが 主 要 な 要 素 とな っ て い る 実 応 用 分 野 が多 数 存 在 して お り,画 像 応 用 シ ス テ ム を 理解 す る上 で"数 え る"技 術 を理 解 す る こ とは 重 要 で あ る 。 応 用 分 野 を概 観 す る と,製 造 分 野 にお い て は,数 え る対 象 は無 数 に 存 在 し,た と え ば,プ 部 品,ボ
ル トや 部 品 装 着 の た め の穴,錠
リ ン ト板 に実 装 す る
剤 な ど粒 子 状 の 物 体 な どが あ る。 化 学 ・
医療 分 野 で は,素 材 の 成 分 や 細 胞 の 数 な ど を画 像 処 理 に よ り計 測 す る こ とを あ げ る こ とが で き る。 この分 野 で は,数 え る 対 象 が 非 常 に小 さい こ と も あ り,顕 微 鏡 な どの 光 学 機 器 と組 み合 わ せ て使 用 す る 場 合 が 多 い 。 ま た 近 年 で は,半 導 体 技 術 の著 しい 向上 に よ っ て,高 度 な画 像 処 理 機 能 が 実 シス テ ム に 導 入 さ れ る よ うに な っ た 。 そ の た め,監 視 分 野 の よ う に,屋 内 だ け で な く屋 外 の 応 用 分 野 に お い て も
表4.2
自動 化 が 進 み,主
応 用 分 野"数
要 道 路 の 交 通 流 計 測,河
や 駅 で の 人 流 計 測,駐
え る"
川 や 上 下 水 道 の水 質 管 理,エ
レベ ー タ
車場 内 の 車 両 検 知 な ど に も画 像 処 理 が 適 用 され る よ うに な
っ た1,2)。本 節 で は,"数 え る"た め に 必 要 と な る 技 術 を説 明 し,応 用 事 例 に よ り "数 え る"技 術 の活 用 につ い て 述 べ る 。
4.2.1 "数 え る"た め の 技 術 何 を数 え る の か,何
の た め に 数 え るの か に よっ て,"数
え る"た め に 必 要 と な る
技 術 は 異 な る 。 そ こ で,現 在 使 用 され て い る"数 え る"技 術 に つ い て ポ イ ン ト型 光 セ ンサ と画 像 セ ンサ と を取 り上 げ,画 像 セ ンサ 導 入 に対 す る利 点 を 考 え る 。 さ ら に,次 の 小 節 で 画 像 を用 い て対 象 を"数 え る"場 合 の 処 理 に つ い て説 明 す る 。
(1) ポ イ ン ト型 光 セ ンサ と 画 像 セ ンサ 生 産 現 場 の ラ イ ン な ど で 一 般 的 に使 用 さ れ て い る セ ン サ に,半 導 体 発 光 素 子 (LEDな
ど)を 用 い た ポ イ ン ト型 光 セ ンサ が あ る 。 こ の セ ンサ の最 も簡 単 な 活 用
方 法 は,図4.16に
示 す よ う に,ベ
ル トコ ンベ ア の 側 面 に装 着 さ れ,対 象 物 の 存
在 を光 の 遮 断 か 反 射 を利 用 して 検 知 す る もの で あ る。こ の ポ イ ン ト型 光 セ ンサ は, エ リ ア型 画 像 セ ンサ に比 べ 非 常 に安 価 で あ る た め さ ま ざ ま な用 途 に活 用 さ れ て い る 。 しか し,ポ イ ン ト型 光 セ ンサ で は,ベ ル トコ ンベ ア 上 を 通 過 した 製 品 の個 数 は 数 え られ て も,製 品 に付 着 して い る汚 れ の 度 合 い を計 測 す る とい っ た高 度 な処 理 を す る こ と は で き な い 。 当 然,せ
ま い 領 域 で の 光 量 の み を利 用 して い る た め,
図4.16
ポ イ ン ト型 光 セ ン サ
プ リ ン ト板 上 の 部 品 の有 無 を検 知 す る こ と な ど に活 用 す る こ と は 困 難 で あ る。 そ の た め,品 質 管 理 な ど に必 要 な 情 報 で あ る 欠 陥 や 部 品 の 数 量 を 数 え る 場 合 に は, 画 像 セ ンサ を 導 入 す る必 要 が あ る。
(2) "数 え る"た め の 画 像 処 理 画 像 セ ンサ に は ラ イ ン型 画 像 セ ンサ(ラ イ ン セ ンサ)と エ リ ア 型 画 像 セ ンサ(エ リ ア セ ンサ)と が あ る が,本
項 で は い ず れ か の 画 像 セ ンサ か ら得 られ た二 次 元 の
画 像 デ ー タ に対 して"数 え る"の に必 要 な処 理 につ い て述 べ る 。 特 に,ポ 光 セ ンサ で 実 現 が 困 難 と な る 場 合,つ
イ ン ト型
ま り,画 面 内 に複 数 の 数 え るべ き対 象 が 存
在 す る場 合 に つ い て 説 明 す る。 図4.17に 本 項 で扱 う錠 剤 の 品 質 検 査 と交 通 流 計 測 に使 用 す る画 像 を示 す 。 画 像 中 の 物 体 の 個 数 を 数 え る と き の 一 般 的 な処 理 フ ロ ー を 図4.18に 示 す 。 物 体 の個 数 を数 え る と き に は,数 え る対 象 を 画像 か ら抽 出 し,カ ウ ン トす る必 要 が あ る 。 対 象 を 画 像 か ら抽 出す る 代 表 的 な 方 法 と して,2値
化 処 理 とパ タ ー ンマ ッ
チ ン グ処 理 が あ る 。 図4.17(a)に 示 す よ う に,錠 剤 の 輝 度 が 背 景 よ り も高 い場 合,
図4.17
図4.18
"数 え る"シ ス テ ム が 扱 う画 像
"数 え る"た
め の一 般 的 な処 理 フ ロー
つ ま り,数 え る対 象 の 輝 度 分 布 が,背 景 の そ れ よ りも十 分 に 高 い(も し く は低 い) 場 合,2値
化 処 理 に よ り背 景 か ら対 象 を分 離 す る こ とが で きる。
一 方,図4.17(b)に る場 合,2値
示 す よ うに,屋 外 で 得 られ た 画 像 か ら 自動 車 の 台 数 を数 え
化 処 理 で は対 象 を抽 出 す る こ とは 困 難 とな る 。 この よ うな 場 合,濃
淡 画 像 の テ ン プ レー ト照 合(パ タ ー ンマ ッチ ング)に よ っ て 自動 車 を 追 跡 し台 数 を数 え る。 以 下 に,2値
化 処 理 とテ ンプ レ ー ト照 合 処 理 とに よ って 対 象 を 数 え る
と きの処 理 に つ い て 説 明 す る 。 (a) フ ィル タ処 理 数 え る対 象 を強 調 し,容 易 に画 像 中 か ら対 象 を抽 出 で きる よ う,エ ッジ 強 調 や 平 滑 化 処 理 な ど さ ま ざ ま な フ ィル タ処 理 を組 み 合 わせ て処 理 を行 う こ とが多 い 。 (b) 2値 化 処 理 2.2.1項 に あ る よ うに,2値
化 処 理 は,物 体 と背 景 と を分 離 す る の に 最 も広 く
使 用 され る。2値 化 処 理 で は,し
きい値 をい か に 選 択 す る か が 重 要 で あ り,一 般
図4.19 背 景 と錠 剤 の 分離
的 に 照 明 な どの 環 境 も同 時 に整 備 す る 必 要 が あ る 。 また,信 ム に す る た め に は,特 徴 や 対 象 の領 域 を強 調 し,2値
頼 性 の 高 い シス テ
化 処 理 の た め の し きい 値 選
択 を 容 易 に す る 努 力 が 必 要 とな る。 図4.17(a)の 画 像 に 対 し,単 純2値 化 に よ っ て 抽 出 した 錠 剤 の 図 と,最 大 値 ・最 小 値 フ ィル タ処 理3)に よっ て 得 られ た背 景 画 像,お
よ び 背 景 差 分 を行 っ た あ とに2値 化 処 理 した 結 果 の 図 を 図4.19に 示 す 。
こ の 例 の よ う に,何
らか の 影 響 で 照 明 に む らが 生 じ た場 合,前
処理 な しの単純
な2値 化 処 理 で は,錠 剤 と背 景 と を 区 別 す る こ とが で きな い 。 しか し,シ ス テ ム に 適 当 な前 処 理 を行 う こ と に よ っ て,照
明 の 変 動 や む らに対 処 で き る こ とが
わか る。 (c) ラ ベ リン グ処 理 2値 画 像 の領 域 の 個 数 を数 え る方 法 と して,領 域 ご と に番 号(ラ ベ ル)を つ け る 方 法(ラ ベ リ ン グ)が あ る。 ラ ベ リ ン グ処 理 の処 理 例 を 図4.20に 示 す 。 具 体 的 な ア ル ゴ リズ ム は い ろい ろ と存 在 す るが,1ラ 法 が 一 般 的 で あ る。 図4.20の ず,1回
例 で は,1の
て,2回
箇 所 を ラベ リ ン グ の 対 象 とす る。 ま
目の 走 査 にお い て,前 段 と の 関係 か ら仮 ラベ ル をつ け る 。 そ の 後,再
ラベ ル を つ け 直 す の に必 要 な 情 報,つ (AとC)や
イ ンず つ 前 段 との 重 な りを調 べ る 方
度
ま り,仮 ラ ベ ル 時 で 統 合 が 必 要 な ラベ ル
ラベ ル 自体 をつ け替 え る必 要 の あ る ラベ ル(D)に つ い て 調 べ る。 そ し 目 の走 査 で 調 べ た情 報 を も とに 最 終 的 な ラベ ル づ け を行 う。 ラベ リ ン グ
処 理 に は,近 傍 にお け る ラベ ル の 結合 関係 に よ っ て,4連 ラベ リ ング が 存 在 す る。 ま た,ラ
結 ラベ リ ング と8連 結
ベ リ ン グ さ れ た 結 果 に 対 し,ラ ベ ル 数 を調 べ
図4.20
ラベ リ ング処 理
る こ とで対 象 を"数 え る"こ とが で きる 。 (d) 縮
退
化
2値 画 像 の 形 状 処 理(モ ル フ ォロ ジ ー 処 理)に よ っ て 領 域 の 個 数 を数 え る方 法 と し て,縮
退 化 処 理 が あ る 。 縮 退 化 処 理 で は,領
させ る 効 果 を も つ 。 しか し,こ の 方 法 は,一
つ の 領 域 内 部 に背 景 部 分 を含 ま な
い とい う対 象 領 域 の 形 状 に 制 限 が あ る た め,雑 応 用 で は,縮 退 化 処 理 が,①
域 を 最 終 的 に1画 素 ま で 縮 退 化
音 に弱 い とい う欠 点 を もつ 。 実
雑 音 に 弱 い,② 計 算 量 が 大 きい な どの 理 由 か らあ
ま り使 用 され て い な い の が 実 状 で あ ろ う。 (e) テ ン プ レー ト照 合 対 象 を数 え る場 合,濃
淡 画 像 に も適 用 で きる 方 法 と し て,テ
ン プ レー ト照 合
に よ る方 法 が あ る 。2.2.2項 で 紹 介 され て い る テ ンプ レー ト照 合 に は,単 純 差 分 か ら算 出 さ れ た 残 差 に よ っ て 照 合 を行 う方 法 や,正 規 化 した 共 分 散 で パ タ ー ン の 照 合 を行 う正 規 化 相 関 法 とい っ た 方 法 が あ る。2値 化 処 理 が 困 難 と な る屋 外 で は,明
る さ の 変 動 を吸 収 す る こ とが 可 能 な 正 規 化 相 関 法 を使 用 す る方 が 望 ま し
い 。 正 規 化 相 関 法 は,膨 大 な 計 算 量 が 課 題 と され て い る が,近
年の計 算機 の著
しい 進 歩 や 処 理 の ハ ー ドウエ ア化 に よ り現 在 で は 高速 処 理 が 可 能 と な っ て い る。
4.2.2
応用事例紹介
本 項 で は,"数
え る"こ とが 主 要 な 要 素 と な っ て い る応 用 事 例 を 二 つ 取 り上 げ
て 説 明 す る 。 い ず れ の シス テ ム も,動 画 像 か ら対 象 とな る魚 や 自動 車 を数 え て お り,時 間軸 を考 慮 した 動 画 像 処 理 シ ス テ ム とい え る 。
(1) 浄 水 場 監 視 シ ス テ ム1,4) (a) シス テ ム の 目的 と概 要 浄 水 場 で は,原 水 水 質 の 安 全 性 を確 認 す る た め に,魚 類 の 生 死 や 異 常 行 動 を 画 像 に よ っ て 監 視 して い る4)。 画 像 シス テ ム に よ る監 視 を 実 現 す る こ とで,24 時 間 体 制 で 監 視 を行 う こ とが 可 能 に な る と同 時 に,監 視 員 の 認 識 の ば らつ き を 抑 え,客 観 的 な 判 断 に よ る迅 速 な対 処 を 可 能 と した 。 浄 水 場 監 視 シ ス テ ム で使 用 され て い る画 像 処 理 シス テ ム の 構 成 を 図4.21に 示 す 。 水 槽 に は 複 数 尾 の 魚 が 飼 育 さ れ て い る 。 原 水 が 濁 っ た 場 合 で も安 定 に魚 を認 識 す る た め に,水 槽 の 後
図4.21 浄水 場監 視 シス テ ム
図4.22 浄 水 場 監視 シス テム で扱 う画像
方 か ら光 散 乱 板 を と お して 照 明 す る方 法 を採 用 し て い る。 こ の 方 法 は,魚 平 方 向 か ら影 絵 の よ う に撮 像 す る も の で,常 この 照 明 方 法 は,①
ウ ロ コ の 反 射 が な い,②
で き る,③ 魚 に ス トレス を与 え に くい,な
を水
に魚 を 暗 い物 体 と して 認 識 す る。 直 接 照 明 に比 べ て低 い 照 度 で 撮 像
ど の メ リ ッ トが あ る。
急 性 毒 性 物 質 が 混 入 した水 が 水 槽 に 流 入 す る と,魚 が 水 面 近 くを 浮 遊 す る"鼻 上 げ行 動"や,狂
っ た よ う に 泳 ぎ回 る"狂 奔 行 動"な どが 観 察 され る 。 図4.22に
処 理 対 象 画 像 と異 常 時(鼻 上 げ 行 動 時)の 処 理 結 果 画 像 を示 す 。 次 項 で 画 像 処 理 の 内 容 につ い て 述 べ る 。
(b) 画 像 処 理 工 業 用 テ レ ビ カ メ ラで 撮 像 した 画 像 か ら魚 を認 識 し,行 動 異 常 を評 価 す る ま で の 画 像 処 理 フ ロ ー を図4.23に よ っ て,2値
示 す 。 魚 の 抽 出 処 理 は,照
明 を工 夫 す る こ とに
化 処 理 で 対 処 して い る。2値 化 処 理 に よっ て,対
象(魚)を 背 景 か ら
分 離 し,ラ ベ リ ン グ処 理 に よ っ て個 々 の 魚 を 認 識 す る。 そ し て,そ れ ぞ れ の 魚 の 重 心 を算 出 し,重 心 位 置 を 数 フ レー ム 間 追 跡 す る こ と に よ っ て速 度 を 算 出す る 。 魚 の 分 布 す る位 置 を計 測 す る と 同 時 に,魚 の 移 動 速 度 を調 べ,異 判 定 す る。"数 え る"技 術 は,魚
常 行動 を
を背 景 か ら分 離 し,ラ ベ リ ン グ処 理 に よ っ て 魚
の 分 布 を 調 べ る の に活 用 され て い る 。
図4.23 画像 フ ロー(浄 水 場監 視 シス テ ム)
(2) 道 路 交 通 計 測 シ ス テ ム5,6) (a) シ ス テ ム の 目的 と概 要 渋 滞 の な い 高 度 な 道 路 交 通 シ ス テ ム を め ざ して,信
号 機 の 動 的 制 御,ド
ライ
バ ー へ の 高 精 度 な 情 報 提 供 な ど道 路 交 通 へ の 積 極 的 な 知 的 制 御 が 行 わ れ 始 め て い る。 こ の よ うな 高 度 道 路 交 通 シス テ ムITS
(intelligent transport
system)に
お い て画 像 処 理 シ ス テ ム は知 的 な セ ンサ と して 開 発 が 進 め られ て い る5)。画 像 処 理 シ ス テ ム が 現 在 ま で に 実 用 化 さ れ て い る 分 野 は,ナ 路 上 の 落 下 物 の検 知,交
ン バ ー プ レ ー トの 認 識,
差 点 で の 交 通 渋 滞 や 車 速 な どの 計 測 を 目的 と した イ ン
フ ラ 側 の セ ンサ 分 野 で あ る 。 この 分 野 の 画 像 処 理 シ ス テ ム に は,交 時 々刻 々 と変 化 す る た め,ほ
とん どの 適 用 分 野 に お い て1秒 以 内 の サ ン プ リ ン
グ 時 間 が 要 求 さ れ て い る 。 ま た,前
方 の車 両 との 距 離 や 付 近 の 車 両 の 挙 動 を車
載 カ メ ラ に よ っ て 監 視 す る とい っ た 車 載 分 野 に つ い て は,こ が,コ
通 状 況 が,
こでは言及 しない
ス トと安 全 性 の 制 約 な ど を ク リ ア し な が ら今 後 実 用 化 さ れ る と考 え ら れ
る。 道 路 交 通 シ ス テ ム で は,高 度 な画 像 処 理 性 能 を 求 め られ る と同時 に,屋 外 に 画 像 処 理 シ ス テ ム を設 置 す るた め,以 ① 24時 間,365日
下 の よ う な きび しい 条 件 が あ る 。
稼 動(天 候,昼 夜 を 問 わ ず 稼 動)
② 広 域 を 一 つ の カ メ ラで 計 測(特 殊 カ メ ラ ,高 速 処 理 が必 要) ③ 複 数 の 機 能 を並 列 に処 理(異 常 検 知,車
速,渋 滞,ナ
ンバ 認 識 な ど)
④ 処 理 結 果 や 画 像 を管 理 セ ン タ に通 知(ネ ッ トワー クが 必 要) 上 記 の よ うな き び しい 条 件 を 満 たす た め に,図4.24で
示 す よ う な耐 環 境 性 を
図4.24 耐 環境 型 画 像処 理 装 置(IP2000X:日 立製 作 所)
図4.25 道 路 交 通計 測 シス テ ム
考 慮 して 設 計 され た 画 像 処 理 装 置 に よ っ て シ ス テ ム 構 築 を 行 っ て い る。 現 在, 道 路 交 通 に 関 す る画 像 処 理 シス テ ム は,高 速 道 路,料 事 故 多 発 箇 所 の ほ か,主
金 所,ト
ン ネ ル,駐 車 場 ,
要 道 路 の い た る と こ ろ に導 入 さ れ て い る 。 導 入 の 目的
と して は,車 両 の 台 数 を 数 え る こ とか ら,車 両 の 同定,挙
動 の 監 視 ,道 路 状 況
の 把 握 な ど広 い範 囲 に わ た っ て い る。 道 路 交 通 計 測 シ ス テ ム で 実 用 化 され て い る シス テ ム の概 要 を 図4.25に 示 す 。 こ の シス テ ム で は,路 側 帯 に設 置 さ れ た工 業 用 カ メ ラ と画 像 処 理 装 置 に よ っ て,画 像 処 理 エ リア を通 過 す る車 両 台 数,速
度,挙
動 や 落 下 物 な ど を計 測 す る 。
計 測 さ れ た リア ル タ イ ム の 情 報 は,交 通 管 制 セ ン タ に送 られ て 処 理 され,さ
ら
に,信 号 の 制 御 や ドラ イ バ ー へ 情 報 を提 供 す る た め の 電 光 掲 示 板 表 示 な どに 使 用 さ れ る。 こ の シ ス テ ム に よ っ て,ド
ラ イ バ ー は,前
方 の事 故 や 危 険 を即 座 に
知 る こ とが 可 能 とな り交 通 事 故 の 防 止 に大 き な効 果 を 発 揮 して い る 。 (b) 画 像 処 理 工 業 用 テ レ ビ カ メ ラ で 撮 像 した 画 像 か ら 自動 車 を認 識 し,台 数 と速 度 を計 測 す る画 像 処 理 フ ロ ー を 図4.26に
示 す 。 屋 外 で 計 測 を 行 う た め,2値
化 処 理 を使
用 せ ず に処 理 を行 う。 以 下 に,各 ス テ ッ プの 詳 細 を説 明す る 。 ① 車 両 検 知
自動 車 が水 平 方 向 の エ ッ ジ成 分 を多 く含 む こ とを利 用 して,
車 両 の 検 知 を行 う。 まず,垂
直微 分 を行 い,あ
ら か じめ 設 定 さ れ た 領 域 内 で の
微 分 強 度 が 大 き く な っ た と き に,車 両 が 領 域 内 に進 入 した も の とす る 。 図4.27
図4.26 画像 処 理 フ ロー(道路 交 通 計測 シス テム)
図4.27 車両 検 知
に 図4.17(b)の 垂 直 微 分 画 像 と微 分 強 度 の 投 影 図 を示 す 。 こ の 車 両 検 知 処 理 は, 道 路 の各 レー ン に 対 し,お の お の 実 行 さ れ る 。 ② テ ン プ レ ー ト登 録
車 両 を 検 知 した あ と,車 両 前 方 部 分 を テ ンプ レ ー
トと し て登 録 す る。 登 録 す る位 置 は,垂 直 微 分 画 像 か ら最 も微 分 強 度 が 大 きい 部 分 を抽 出 す る 。 通 常,ヘ ③ 追 跡
ッ ドラ ンプ を含 む 部 分 が 登 録 され る。
正 規 化 相 関 法 を用 い て,フ
レ ー ム 間 で対 象 パ タ ー ン の対 応 を と
図4.28 テ ン プ レー ト照 合 に よ る車 両 追跡
る 。 図4.28に
示 す よ う に,テ
ン プ レ ー ト を 随 時 更 新 す る こ と に よ っ て,車
両 の
追 跡 を 行 う 。 テ ン プ レ ー ト照 合 の 手 法 と し て 正 規 化 相 関 法 を 採 用 す る こ と に よ り,カ
メ ラ のAGC
(auto
gain
control)機
能 に よ る輝 度 変 化 や 外 乱 光 に よ る急
激 な照 明 変 動 に対 応 す る こ とが 可 能 と な る 。 ④ 速 度 計 算
追 跡 の 結 果,画
面 内 で の 車 両 の 軌 跡 が 得 ら れ る 。 軌 跡 と画
像 の 取 り込 み タ イ ミ ン グ と か ら車 両 の 速 度 を 算 出 す る こ と が で き る 。速 度 の 算 出 は,画
像 の 分 解 能 が 高 い 手 前(画
⑤ 台 数,速 ご と に,通
度,渋
面 下 部)の
滞長 の計測
追 跡 結 果 を用 い て行 う。
車 両 の 軌 跡 と速 度 計 算 終 了 後,各
過 し た 台 数 と 速 度 を 処 理 す る 。 ま た,速
さ を 計 測 す る 。 そ し て,こ
レー ン
度 や 微 分 画 像 か ら渋 滞 の 長
れ ら最 終 的 な デ ー タ を 交 通 管 制 セ ン タ に 送 信 す る 。
■ 参 考 文 献 1) 馬 場 研 二,矢 萩:水 質 異常 検 知 を 目的 とす る魚 類 行動 の画 像 監視― 画像 認 識 手法 の検 討 ―, 水 質 汚濁 研 究,11,
2, pp. 114-12, 1988.
2) 長谷 川 為 春,松 本 泰 輔,小 沢 慎 治:車 両 の移 動 に着 目 した駐 車場 にお ける 車両 の 計 数,電 子 情 報通 信 学 会春 季 全 国 大会,pp. 7-336, 1991. 3) M. Takatoo, M. Kanasaki, Technology
T.Mishima,
Industrial Applications of Machine
Recognition System,
Vision and Machine
4) 小 林 芳 樹,馬 場 研 二:画 像 処 理VLSIを 用,Oplus
T. Shibata, H. Ota: Gray Scale Image
Applied to Vehicle License Number
Processing
Int. Workshop
Intelligence, pp. 76-79,
on
1987.
用 い た 汎用 画 像 認 識装 置 と交通 ・ 上 下水 分 野 へ の応
E., pp. 94-110, 1988.
5) 高橋 一 哉,北 村 忠 明,小 林 芳 樹:画 像 処 理 に よる 交 通 流 監 視 方 法 の研 究,PRMU97-5, pp. 41-48, 1997. 6) 北 村 忠 明,高 藤 政雄,高 橋 一 哉,小 林 芳樹,佐 藤 良 幸:画 像 処 理 に よ る交 通 流 ・ 渋滞の リ アル タイ ム計 測,第 一 回画像 セ ン シ ング シ ンポ ジ ウム 講 演論 文 集,pp. 293-296,
4.3
形 を 測
本 節 で は,"形
1996.
る
を測 る"シ ス テ ム の構 築 につ い て 述 べ る 。"形 を測 る"こ とに よ っ
て,"検 査"や"識 別"な どが 可 能 と な る 。 本 節 の前 半 で は,シ ス テ ム構 築 に お け る 設 計 につ い て議 論 し,考 慮 す べ きポ イ ン トを整 理 す る 。 ま た,後 半 で は,"形 測 る"事 例 と して は ん だ付 け検 査 につ い て 述 べ る。
を
4.3.1
シ ス テ ム 設計
(1) 目 標 性 能 の 設 定 シス テ ム の 目標 性 能 を設 定 す る た め に は,ユ ー ザ 仕 様 を吟 味 し,シ ス テ ム仕 様 を導 出 す る必 要 が あ る 。 特 に,ユ ー ザ 仕 様 を明 確 に(定 量 的 に)表現 す る こ と,あ るい は,さ せ る こ とが 必 要 で あ る 。 この段 階 で は,え て して,あ 陥 りが ち で あ るが,最
い ま い な 表現 に
初 にユ ー ザ の 目的 を定 量 的 に 把 握 で きな い と,シ ス テ ム 設
計 も不 可 能 で あ る 。 ば らつ き な どの 項 目 は,対 象 の 設 計 に含 ま れ て い な い ケ ー ス や,そ
の 設 計 どお
りに製 造 され て い な い 場 合 もあ る た め,必 要 な らフ ィー ル ドで の 実 際 の デ ー タ を 取得す る。 ま た,対 象 の 製 品 開 発 前 や,あ
るい は並 行 し て,計 測 ・検 査 シ ス テ ム の構 築 を
行 う場 合(い わ ゆ る コ ン カ レ ン トエ ン ジ ニ ア リ ン グ)に は,未 決 定 の 仕 様 も含 ま れ る。 そ の 際 に も,経 験 上 の 根 拠 か らあ る程 度 の範 囲 を もっ た 設 計 を行 い,実 運用 に際 して ロバ ス トな 対 応 が 可 能 な よ う に して い く こ と もや む を得 な い。 表4.3に ユ ー ザ 仕 様 の 例 を示 す 。
表4.3 測 る こ とに対 す る 目標(ユ ー ザ仕 様)
ま た,表4.4に
シ ス テ ム 仕 様 の 例 を示 す 。
表4.4
シ ス テ ム に対 す る 目標(シ ス テ ム 仕 様)
(2) シ ス テ ム 設 計 表4.5に シス テ ム 設 計 の 概 要 を示 す 。 大 別 して,セ
ンシ ン グ系 ・画像 入 力 系 ・画
像 処 理 系 に分 け られ る 。 各 構 成 要 素 の 組 み 合 わせ に よ り,シ ス テ ム を構 成 す る。 表4.5
シス テ ム設 計例
(a) セ ン シ ン グ系 画 像 入 力 に与 え られ た 時 間 と,計 測 範 囲,精 度(分 解 能)か ら,1画 処 理 時 間(k×l/j/t)を ビー ム 走 査,ま
算 出 し,エ リ ア セ ンサ(<10MHz)か
素 あ た りの
高 速 ラ イ ンセ ンサ/
た は マ ル チ セ ンサ を選 択 す る 。 ま た,対 象 の 目的 部 分 の コ ン ト
ラス トを得 や す い 照 明 法(明 視 野 ・暗 視 野 ・偏 光 ・干 渉)を 選 択 しな け れ ば な ら ない。 (b) 画 像 入 力 系 エ リ ア セ ンサ で あ れ ば標 準 のNTSC系(メ
モ リつ き)が 採 用 さ れ る。 た だ し,
画 像 処 理 時 間 が 限 定 さ れ て い る 場 合 はパ イ プ ラ イ ン系 を構 築 す る 必 要 が あ る。 高 速 の 主 走 査(ラ イ ンセ ンサ/ビ
ー ム走 査)+副
走 査 で あ れ ば,特
殊 な入 力 系 が
必 要 と な る。 画 像 メ モ リ+MPUで
処 理 可 能 か,高 速 専 用 ハ ー ドが 必 要 か は処 理
時 間 に依 存 す る。 グ レー ス ケ ー ル で 入 力 す る か2値 化 す る か は,セ
ン シ ング 系
出 力 の コ ン トラ ス トに 依 存 す る 。 (c) 画 像 処 理 系 近 年 はハ ー ド・ソ フ トの 充 実 に よ り,汎 用 処 理 が 比 較 的 容 易 に実 現 可 能 と な っ て い る 。 しか しな が ら,最 終 的 に は,速 度 や 精 度 の制 約 か ら専 用 論 理 をハ ー ド・ ソ フ トで 構築 す る ケ ー ス が 多 い 。
4.3.2
実 用 化 例
は ん だ付 け検 査 を例 に,"形 検 査 の 自動 化 は,照
を測 る",実
用 化 例 を紹 介 す る 。 は ん だ 付 け 外 観
明 法 を含 め た セ ン シ ング 系 と画 像 認 識 論 理 の 両 側 面 か ら さ
ま ざ ま な 試 み が な さ れ て きて い る 。 しか しな が ら,光 沢 性 を有 し た複 雑 な 立 体 形 状 の は ん だ 部 分 を正 確 に 計 測 す る こ とが 非 常 に 困 難 な こ と,外 観 だ け で は ん だ 不 良 の す べ て を検 査 す る こ とに 限 界 が あ る こ と,な
どの 理 由か ら100%に
近い
自動 検 査 を実 現 す る の は む ず か しい 。 た だ し,自 動 化 に よ る,高 速 性 と 定 量 性 は,明
らか に この 分 野 に着 実 な 成 果 を も た ら し て い る こ と も事 実 で あ り,今 後
の 新 しい技 術 開発 に 期 待 した い 。
(1) 4方 向 高 さ カ メ ラ を 用 い た視 覚 検 査 装 置1) 4方 向 に リ ー ドを有 す るQFP
(quad
flat package)の
図4.29 は んだ 欠 陥
は ん だ 形 状 を検 査 す る 目
的 で 開 発 され た シ ス テ ム で あ る。 は ん だ付 け 欠 陥 は,図4.29に 示 す よ う に,は ん だ ブ リ ッジ,は ん だ 不 足,リ ー ド浮 き な どの 項 目が あ る 。 こ の よ う な,は ん だ 検 査 に お い て は,① 立 体 形 状 を計 測 す る た め の三 次 元 計 測 技 術,② 高 分 解 能(∼25μm),が こ の よ う な,目
高 速 検 査(4s/QFP[200∼300リ
ー ド]),③
必 要 に な る。
的 に対 して,図4.30に
示 す よ うな,レ
ー ザ 走 査 系 と4方 向 か
らの 三 次 元 計 測 を可 能 にす る た め の4方 向 高 さ カ メ ラ を 開発 した 。
図4.30
4方 向 高 さ カ メ ラ
図4.31 レー ザ 走査 を用 い た光 切 断(三 角 測 量)法
計 測 原 理 は,図4.31に 向 か ら 高 さ カ メ ラ(3-D て,高
示 す よ う に,鉛 imager)内
直 方 向 か ら の レ ー ザ 走 査 光 を,斜
のPSD(position
sensitive
detector)上
め方
に結 像 し
さ 情 報 を リ ア ル タ イ ム で 計 測 す る 光 切 断 法(三 角 測 量 法)で あ る 。 さ ら に,
三 角 測 量 法 の 欠 点 で あ る 死 角 を 補 完 す る た め に,斜 設 置 し て い る 。 こ れ に よ り,QFPの
各 辺 の リ ー ド部 の は ん だ 形 状 を 漏 れ な く検
査 す る こ と が 可 能 と な っ た 。 計 測 速 度 は,PSDの の 場 合 で,1M画
応 答 速 度 に 依 存 し て お り,こ
素/sが 得 ら れ て い る 。
図4.32
図4.33は,こ
め 方 向 の 高 さ カ メ ラ を4台
4方 向高 さカ メ ラに よ る死 角 の補 完
の シ ス テ ム に よる リー ド浮 きの 検 査 結 果 例 で あ る。 こ の 例 で は,
写 真 の左 側2本 の リー ド浮 き欠 陥 を検 出 した。 高 さ方 向 の計 測 精 度 と して, ±30μmの 精 度 を得 た 。 図4.34は,は して,前
ん だ フ ィ レ ッ トの 検 査 結 果 例 で あ る 。PSDか
述 の 高 さ情 報 と,同 時 に輝 度 情 報 を得 る こ とが で き る 。 は ん だ フ ィ レ
ッ トの 形 状 検 査 と し て,高 法 と,図4.34(c)に 特 に,良
ら得 られ る信 号 と
さ情 報 を 用 い て フ ィ レ ッ トの 立 体 形 状 を計 測 す る手
示 す よ う に,輝 度 情 報 の プ ロ フ ァ イ ル を用 い る手 法 が あ る 。
品 と不 良 品 とで,輝
度 情 報 に明 らか な 相 違 が あ る場 合 は,輝
用 い た 検 査 の 方 が,計 測 速 度(検 査 論 理)の 観 点 か ら有 利 な場 合 が 多 い 。
度情報 を
図4.33
リ ー ド浮 き の 検 査
図4.34 は んだ フ ィレ ッ トの形 状検 査
(2) メ ガ ス コー プ を 用 い たI/Oピ
ン は ん だ 検 査 装 置2)
た く さ ん の リー ドピ ン(I/Oピ ン)が林 立 す る 状 態 で,各 良 を検 査 す る シス テ ム で あ る。 対 象 は,図4.35に ラ ミ ッ ク基 板 上 のI/Oピ 検 査 項 目 は,図4.36に
ピ ンの 根 元 の は ん だ 不
示 す よ う に,大 型 計 算 機 用 セ
ン で,基 板 あ た り約8000本
が 一 括 は ん だ付 け さ れ る。
示 す よ う に,① 真 上 か ら観 測 した 場 合 の ドー ナ ツ形 状 の
フ ィ レ ッ ト幅,② 部 分 的 な欠 け,③
ピ ンの 実 装 位 置,で
ある。
図4.35 ピ ンはん だ検 査
図4.36 はん だ検 査 項 目
この 場 合 の セ ン シ ング系 は,対 象 が 林 立 し た ピ ンの 根 元 付 近 で あ る た め,(1) で述 べ た よ う な斜 め 観 測 系 の 三 次 元 計 測 は不 可 能 で あ る。 そ の た め,図4.37に 示 した よ う に,垂 直 落 射 照 明 に よ り,フ い た 。 ま た,8000本
ィ レ ッ ト斜 面 部 を暗 部 にす る照 明 を用
もの ピ ンを 高 速 で 検 査 す る た め に,メ
た 高 分 解 能 カ メ ラ を採 用 した 。 メ ガ ス コ ー プ は,カ ン サ 素 子 を機 械 的 に 副 走 査 す る こ と に よ っ て,高 得 る こ とが で き る。 こ の 例 で は,10μmの
ガス コー プ と名 づ け
メ ラの 撮 像 面 上 で ラ イ ンセ
分解 能の二次 元画像 を高速 で
分 解 能 で2048×2048画
素 を4秒 で 処
図4.37 検 出 光 学系
理 して い る。 図4.38に 検 査 結 果 例 を示 す 。 顕 微 鏡 写 真 内 に見 られ るハ ンダ 未 着 不 良 欠 陥 を, 自動 検 査 に よ り検 出 し て い る。 検 査 論 理 で は,ピ
図4.38 検 査 結 果
ンの 中 央 部 か ら放 射 線 状 に測
長 を行 い,フ
以 上,"形
ィ レ ッ ト幅 が 所 定 値 を満 足 して い な い ピ ン を検 出 す る。
を測 る"と
い う観 点 か ら,シ ス テ ム 設 計 の ア プ ロ ー チ 方 法 の 解 説 と
実 用 化 例 の 紹 介 を行 っ た 。 自動 化 とい う意 味 で は,ロ を あ て て 測 る わ け で は な い た め,当
ボ ッ トが 対 象 に メ ジ ャ ー
然 二 次 元 ま た は 三 次 元 の 画 像 を用 い た 手 法
が 実 用 的 で あ る 。 そ の 際 の キ ー ポ イ ン トは,い
か に 目 的 に適 した,決
して オ ー
バ ス ペ ック に な らな い 画 像 を得 る か と い う点 で あ る 。 そ の 意 味 で,シ
ス テ ム設
計 に お け る ユ ー ザ 仕 様 の 把 握 は 重 要 で あ る 。 産 業 に お け る実 用 化 例 で は,汎 用 の テ レ ビ カ メ ラ と汎 用 画 像 処 理 論 理(画 像 ボ ー ドの ラ イ ブ ラリ な ど)では 対 応 が で き な い ケ ー ス が 少 な くな い 。 これ ま で に,こ
の 分 野 の 技 術 者 が,セ
ン シ ン グ系
と専 用 論 理 を個 別 に 開発 し,成 果 を 納 め て き た 例 が 多 々 あ る 。 今 後,そ 貴 重 な 実 用 化 例 に示 さ れ た 有 用 な計 測 原 理 が,広 術 と して 定 着 し,"形
を測 る"こ
れ らの
く用 い ら れ 磨 か れ て,汎 用 技
との 実 用 化 が 一 層 進 展 す る こ と を期 待 した い 。
■参考文献 Koezuka,
1)
System
T., Kakinoki,
Using
Y., Hashinami,
Multi-Directional
3-D Imager.
S., and Nakashima, Proc. SPIE. Optical
M.:
Visual
Testing
Inspection
and Metrology
III, 1332, pp. 323-329, 1990. 2) Koezuka,
4.4
4.4.1
T., Suto, Y. and Ando, M.: I/O
Pin Solder
Inspection
System, 1993.
合 わ せ る
画像 に よ る位 置 決 め
加 工,組
立 て な どの生 産 設 備 の 自動 化 に お い て位 置 決 め の重 要 性 はい うま で も
な い 。 製 品 や 部 品 の 位 置 決 め 精 度が 自動化 シス テ ム が 必 要 とす る精 度 に入 っ て い れ ば,自 動 化 シス テ ム の構 成 はか な り 自由 度 が 上 が り,簡 単 な もの と な る。 しか し,実 際 に は 製 品 や 部 品 な ど の形 状 は複 雑 で あ り,対 象 と な る 形 状 は シス テ ム に よ っ て 異 な る 。 ま た,同
じ シス テ ム に お い て も少 量 多 品 種 生 産 を考 えれ ば生 産計
画 の状 況 に よ り,対 象 とな る形 状 は変 化 す る。 特 に,三 次 元 的 に 複 雑 な形 状 を も っ た 部 品 を対 象 とす る シス テ ム で は,そ の 位 置 決 め は むず か しい 。
製 品 や 部 品 を位 置 決 め す る に は,種 々 の 手 法 が用 い られ る。 一 般 的 に は,自 動 化 シス テ ム に 対 して 部 品 の 姿 勢 や 位 置 を 移 動 させ る こ と に よる 能 動 的 な位 置 決 め が 行 わ れ る 。 しか し,複 雑 で 多 品種 の 部 品 に対 して,柔 軟 に対 応 で き る よ う な移 動 シス テ ム を 設 計 す る こ と は むず か しい 。 多 量 な 部 品 をで きる だ け 速 く位 置 決 め す る に は,そ の 部 品 の 形 状,重 量,材
質 な ど の特 性 に合 わせ た 自動 的 な位 置 決 め
シ ス テ ム を採 用 す る こ とが 適 し て い る 。 た と え ば,図4.39は
パ ー ツ フ ィー ダ と
呼 ば れ る小 型 機構 部 品 を 自動 的 に位 置 決 め す る装 置 で あ る。 こ の 装 置 で は,振 動 を利 用 し部 品 が1列 に並 ぶ よ う に 自動 的 に設 定 で き る。 この よ う な装 置 が 使 え る 場 合 に は,画 像 処 理 シ ス テ ム を利 用 した 部 品 の 位 置検 出 な どは必 要 が な くな る。
図4.39
パ ー ツ フ ィ ー ダ(シ ス テ ム コ ナ リ 社 製)
一 方,複 雑 で 多 品 種 の 部 品 に 対 して は,ロ ボ ッ トな ど を利 用 した位 置 決 め シス テ ム が 使 わ れ て い る。 図4.40は る部 品 の 位 置,姿
ロ ボ ッ トを 利 用 した 生 産 シ ス テ ム で,画 像 に よ
勢 の 認 識 と ロ ボ ッ トに よ る位 置 合 わ せ シス テ ム を複 合 す る こ と
で,多 種 の 部 品 に 柔 軟 に対 応 す る位 置 決 め シス テ ム を つ くっ て い る。 この よ う な シス テ ム で は,ま ず,画 像 に よ り部 品 の 位 置 お よ び姿 勢 の 検 出 を行 うの が 一 般 的 で ある。 位 置 決 め を行 う シス テ ム で は,部 品 の 位 置 お よ び姿 勢 に 合 わせ て シ ス テ ムが 位 置 お よび 姿 勢 を 変 化 させ る 受 動 的 な方 式 もあ る 。 こ の場 合 に は,前 述 した ロ ボ ッ トを利 用 し た シ ス テ ム に お い て,ロ ボ ッ トは不 要 で,画 像 に よ っ て 部 品 の 位 置 お よ び姿 勢 を検 出 す れ ば よ い 。 以 上 の こ と を整 理 す る と表4.6に 示 す よ う に,位 置 決 め に は い くつ か の 方 法 が
図4.40
視 覚 を も っ た 組 立 て ロ ボ ッ ト(フ ァ ナ ッ ク 社 製)
考 え られ,こ の 中 で 少 量 多 品 種 の 部 品 に柔 軟 に対 応 す る 場 合 に は,機 械 的 な 手法 よ り画 像 に よる 位 置,姿 勢 の 検 出が 優 れ て い る こ とが わ か る。 表4.6 位 置 決 め の方 式
4.4.2
画 像 に よる 位 置決 め シ ス テム の構 成
図4.41に
画 像 に よ る位 置 決 め シ ス テ ム の 基 本 的 な構 成 を示 す 。 まず,位
め を行 う部 品 の 一 つ を モ デ ル 部 品 と して,幾
何 学 的 な特 徴(外 形,重
置決
心 な ど)を
抽 出 して お く。 実 際 に位 置 決 め した い部 品 に対 して,同 様 な特 徴 抽 出 を行 い,特 徴 を比 較 す る 。 この 特 徴 の比 較 に よ っ て 部 品 の 位 置 を検 出 し,そ の 結 果 に基 づ い て ロ ボ ッ トが 部 品 を位 置 決 め す る。 こ の よ う に部 品 に合 わせ て シス テ ム の 位 置 決 め を行 う シ ス テ ム は,部
品 の特 徴 的 なパ ター ン を検 出す る 画像 処 理 装 置 と,検 出
さ れ た 部 品 の位 置 お よ び姿 勢 に合 わ せ て シス テ ム を移 動 す る移 動 装 置 お よ び全 体 を制 御 す る計 算 機 に よ っ て構 成 され る。
図4.41 画 像 に よる位 置 決 め シス テ ムの構 成
画 像 に よ る 位 置 検 出 方 法 は,種
々 の もの が 考 え られ るが 大 き く分 け て 二 次 元
形 状 の 部 品 を対 象 に す る 場 合 と三 次 元 形 状 の 部 品 の位 置 決 め を考 え る場 合 に 分 け られ る 。 三 次 元 形 状 を対 象 にす る場 合 に は,2.1節 像 を扱 わ な け れ ば な らな い の で,画
で も示 し た よ う に三 次 元 画
像 シ ス テ ム はス テ レ オ 法 や 光 投 影 法 を利 用
した 複 雑 な シ ス テ ム に な り,そ の処 理 も複 雑 で あ る 。 そ こ で 本 項 で は,二 次 元 的 な 部 品 の位 置,姿 勢 を 中 心 に説 明 す る。 二 次 元 的 な 部 品 の 位 置 合 わ せ の 場 合,部 び 平 行 移 動 す れ ば よい 。 こ の た め,特
品 また は 自動 化 シス テ ム を 回 転 お よ
に 平 行 移 動 だ け を考 え る場 合 に は,装
置
の構 成 は簡 単 に な り,移 動 量 の 検 出 も比 較 的 容 易 で あ る。
4.4.3
画 像 に よ る二 次 元 位 置 検 出 の 基 本 的 な 考 え 方
まず,画
像 に よ り二 次 元 位 置 を検 出 す るた め の 基 本 的 な考 え方 を示 す 。 は じ
め に,一 般 的 な 画 像 補 正,平
滑 化 な ど を 行 っ た あ と,画 像 の 特 徴 点 に対 して 基
準 と な る画 像 と実 際 に入 力 した 画 像 の 比 較 を行 う。 基 準 に な る画 像 は,一 般 的
に部 品 が わ か っ て い る位 置,姿 勢 に あ る場 合 の 画 像 で あ る。 これ と実 際 に 入 力 し た 画 像 と を比 較 し,実 際 に入 力 した画 像 が ど の よ う な位 置,姿
勢 の関係 にあ
る か を抽 出 す る。 実 際 に入 力 さ れ た 画 像 と基 準 に した 画 像 の相 対 位 置 関係 が わ か れ ば,そ 係 に基 づ い て 位 置 決 め 装 置 も し くは 部 品 そ の もの を 移 動 す る こ とで,位
の関
置決 め
が 行 わ れ る 。 こ の と き の移 動 は,幾 何 学 変 換 と し て表 現 で きる 。 幾 何 学 変 換 は, 式(4.4)の
よ う に 表 され る。 これ は,拡 大 ・縮 小,回
ど の 組 み 合 わ せ とな り,ア フ ィ ン変 換,疑
転,平
行 移 動,ス
似 ア フ ィ ン変 換,ヘ
キュー な
ル マ ー ト変 換 な
ど を 表 現 で きる 。 位 置 合 わ せ の場 合 は,光 学 系 な ど の補 正 を 考 え な け れ ば ,拡 大 ・縮 小,回
転,平
行 移 動 だ け が 問 題 と な り,式(4.5)を
こ こ で,拡 大 ・ 縮 小 のa, bは
考 慮す るこ とにな る。
拡 大 率 を表 し,回 転 の θは 回 転 角 を,平 行 移 動 のa ,
bは 平 行 移 動 量 を 表 す 。
(4.4)
(4.5)
また,現
実 的 に は,拡 大 ・ 縮小 は考 えない場合 や回転 を考えず平行移 動だ けを
行 う場 合 も あ る。 位 置 合 わ せ で は,こ の よ う な 移 動 成 分 の パ ラ メ ー タ の 画 像 に よ る検 出 方 法 が 問 題 と な る 。
4.4.4
移 動 パ ラ メ ー タ の検 出
基 準 画 像 と入 力 画 像 を 比 較 す る こ とで,入 こ の 場 合 に は,主
に,2.2節
力 画 像 の移 動,回
転 を検 出 す る。
の 画 像 認 識 の 手 法 で 解 説 した,特 徴 抽 出 の 方 法 を用
い る。 つ ま り,画 像 の 移 動 に 関 連 す る特 徴 量 を 検 出 し て ,二 つ の 画 像 の 特 徴 量 が 移 動 パ ラ メ ー タ の 関 数 と して 表 現 さ れ る 場 合,関
数 が 一 番 近 い 値 を もつ と き
表4.7 位 置決 め に 用 い る特徴 量
の移 動 パ ラ メ ー タが 画 像 の 移 動 量 とな る 。 特 徴 量 と し て は,表4.7の
よ うな 量 が 一 般 的 に利 用 され る。 基 準 点 は,位 置 合
わ せ の 基 準 と な る点 で,重 心,エ
ッ ジ セ グ メ ン トの 交 点,テ
ン プ レー ト照 合 さ
れ た テ ンプ レ ー トの 原 点 な どが 基 準 点 と して使 わ れ る 。 基 準 点 の 最低 数 は表4.8 に 示 す よ う に,検
出 す べ き移 動 の 成 分 の 自 由 度 で 決 ま る。 基 準 点 の 検 出 誤 差 を
考 慮 す る と,こ の 数 よ り多 くの 基 準 点 を 使 っ て,最 ー タ を求 め る方 が 確 実 で あ る。 ま た,こ
小 二 乗 法 な どで 移 動 パ ラ メ
の 場 合 の 位 置 決 め 精 度 は,誤 差 伝 播 の
法 則 を利 用 して基 準 点 の 位 置 決 め誤 差 か ら求 め る こ とが で き る。 表4.8 位 置決 め に用 い る基 準 点 の数
一 つ の 基 準 点 の 位 置 検 出精 度 は,カ
メラお よび画像 処理 シス テムの画 素のサ
イ ズ が 対 象 物 体 上 で ど の 大 き さ を もつ か に依 存 す る。2.2節 で 示 した よ う なサ ブ ピ ク セ ル処 理 を行 っ て も,位 置 検 出精 度 は お お よ そ1画 素 の サ イ ズ の 対 象 物 上 で の 大 き さ程 度 に な る。 この 場 合,基
準 点 の 数 をn個 と した り,一 つ の 基 準 点
を検 出 す る の に 利 用 す る 画 素 の 数 をn個
と し た りす る と,誤 差 伝 播 の法 則 に よ
り基 準 点 の 検 出 精 度 は,±s/√n程 度 に小 さ くす る こ とが で きる 。 こ こ でsは, 一 つ の 画 素 に対 応 す る対 象 物 上 で の 大 き さ で あ る 。 こ の 値 は,各 基 準 点 の位 置 な どに ラ ン ダ ム な誤 差 だ け を仮 定 で きる 場 合 で,系
統 的 な誤 差 を減 らす こ と は
で きな い 。 ま た,光 学 的 な 限 界 も存 在 す る 。sの 値 は,拡 大 光 学 系 を使 用 す れ ば小 さ くす
る こ とが で きる が,光
の 回折 限 界 に よ り解 像 度 は 式(4.6)に よ り決 定 す る の で,
光 の波 長 オ ー ダ よ り解 像 度 を よ くす る こ と は で き な い。
(4.6) こ こ で,dは 際 的 に は,ミ
光 学 系 の 分 解 能,λ は 光 の 波 長,NAは
レ ンズ の 開 口 数 を示 す 。 実
ク ロ ンオ ー ダが 解 像 度 の 限 界 と な る。 こ れ よ り細 か い位 置 合 わ せ
に対 応 す る に は,超 解 像 や 近 接 場 光 学 な どの 手 法 を 使 う必 要 が あ る が,こ
のよ
う な手 法 は まだ 一 般 的 で は な い 。
4.4.5
実 際 の画 像 に よ る位 置 決 め シ ス テ ム
以 上 の 基 本 的 な 考 え 方 を も とに,半
導 体 製 造 装 置 お よ び光 学 的 測 定 機 に お け
る 二 つ の 実 際 の シス テ ム を紹 介 す る 。
(1) 半 導 体 製 造 装 置 に お け る位 置 決 め シ ス テ ム 図4.42は,半
導体 製造装 置 にお ける シリ コンウエハの検査 をす るシステ ムの
例 で あ る 。 半 導 体 製 造 装 置 で は,シ
リ コ ン ウ エ ハ ヘ パ ター ンの 検 査 お よび 露 光
と化 学 的 な加 工 を く り返 す こ と で,メ モ リやCPUな の と きに,2回
どの 半 導 体 を製 造 す る。 こ
以 上 の 露 光 間 の 位 置 が合 っ て い な い と半 導体 が 製 造 で き な い。
こ の よ う な シ ス テ ム で は,ウ
エ ハ の ア ラ イ メ ン トを と る こ とが 重 要 と な り,
い くつ か の 位 置 決 め の シ ス テ ム が 複 合 的 に 含 ま れ て い る。 た と え ば,ウ
図4.42 ウエハ 検 査 装 置(ニ コ ン社 製)
エハ の
傾 斜 計 測 に は,光 る。 ま た,ウ
の 反 射 を利 用 した ウ エ ハ の 角 度 計 測 の シ ス テ ム が 使 わ れ て い
エ ハ の 上 側 か らの 光 学 系 は,上
下方 向の ウエハ の位置 を計測 す る
シ ス テ ム で あ る。 この よ う に,三 次 元 的 な位 置 の う ち,上 下 方 向 と面 外 の 回 転 方 向 に対 し て は,画 像 以 外 の セ ンサ が 使 わ れ て い る。 これ は,画 像 を上 か ら観 察 す る 場 合,画
像 処 理 で は この よ う な方 向 を 検 出 しに くい か らで あ る 。
画 像 処 理 シ ス テ ム は,二
次 元 的 な 平 行 移 動 と 回 転 の 計 測 に利 用 され て い る 。
こ れ は,計 測 用 の マ ー ク を ウ エ ハ 上 に 配 置 し て,こ 的 な 位 置 検 出 を行 う。 実 際 に は,マ 使 い,四
の マ ー ク を利 用 して 二 次 元
ー ク の エ ッジ お よび 重 心 の 位 置 を基 準 点 に
つ の マ ー ク の 位 置 か ら ウエ ハ の 平 行 移 動 お よ び面 内 の 回転 を計 測 して
い る。 ま た,も
っ と多 くの マ ー ク か ら統 計 的 に 位 置 を 検 出 す る こ と も行 わ れ て
いる。
(2) 光 学 的 測 定 機 に お け る位 置 決 め シ ス テ ム 図4.43は,光
学 的 な測 定 シ ス テ ム の 例 で あ る 。 こ の タ イ プ の 計 測 器 は,画 像
に よ り二 次 元 的 で 細 か いパ ター ン を もつ 製 品,た 法,穴
と え ば プ リ ン ト基 板 な ど の寸
の 位 置 な ど を計 測 す る 。 光 学 的 な 測 定 シ ス テ ム の 構 成 を 図4.44に 示 す 。
図4.43 画像 測 定 機(ミ ツ トヨ社 製)
図4.44 画 像 測 定機 の構 成
こ の 測 定 機 で は,検 査 対 象 の 部 品 は移 動 テ ー ブ ル に 固 定 さ れ,移
動 テー ブルが
二 次 元 的 に 平 行 移 動 す る。 カ メ ラ シス テ ム は,固 定 され て い て,移 動 テ ー ブ ル 上 の 部 品 の 画 像 を画 像 処 理 装 置 に入 力 す る。 二 次 元 的 な 移 動,位
置 合 わ せ は 画 像 の パ タ ー ンマ ッチ ン グで 行 い,高
の 位 置 合 わ せ は フ ォ ー カス を利 用 し て い る。 この 測 定 機 で は,画
さ方 向
像 に よ る位 置
決 め の 機 能 が 重 要 な役 割 を果 た して い る。 こ の シ ス テ ム で は,簡 単 な 測 定 と して 円 穴 の 直 径 な ど の計 測 が で き る だ け で な く,部 品 の エ ッ ジ や 穴 な どか ら座 標 系 をつ く り,そ の 座 標 系 に お け る要 素 の 位 置 や 関係 な ど も計 測 で き る。 ま た,パ
ター ン に よ る位 置 合 わせ な ど も可 能 で,
基 準 と し て 入 力 され て い るパ タ ー ン と入 力 画 像 を利 用 し て位 置 合 わ せ を行 っ て い る。 こ の技 術 を 使 う こ とで,自
動 測 定 にお け る測 定 対 象 の 認 識 お よび 位 置 決
め を行 う こ とが で き,自 動 測 定 で 必 要 な テ ィ ー チ ン グ を簡 略 化 して,部
品 の設
置 位 置 も比 較 的 ラ フ で す む 。
4.5
識 別 す る
識 別 と は,対 象 を含 む 画 像 デ ー タか ら,対 象 の 特 徴 量 を抽 出 し,こ の 特 徴 量 を 用 い て あ る 特 定 の 対 象 を判 別 す る こ とで あ る 。 識 別 を行 うた め に は,画 像 の 数 多 くあ る特 徴 量 の 中 か ら 目的 とす る識 別 に有 利 な特 徴 量 を 決 定 し な け れ ば な ら な い 。 ど の 特 徴 量 が 識 別 に と っ て 有 効 で あ る か は,識 別 す る対 象,評
価基準
に よ り異 な り,一 概 に 述 べ る こ と は で きな い 。 こ れ まで 発 表 さ れ て い る 例 は, 工 業 応 用 と し て使 用 され て い る分 野 か ら農 業 な どの 分 野 ま で 幅 広 い。 また,こ
れ
らの 識 別 に使 用 され て い る画 像 処 理 手 法 ・認 識 手 法 も数 多 い 。 こ こで は,代 表 的 な例 に つ い て述 べ る。
4.5.1 シ ス テ ム構 築 の 基 本 識 別 処 理 の 基 本 プ ロ セ ス を 図4.45に 示 す 。 画 像 入 力,前 そ の 固 有 な特 徴 が 抽 出 さ れ る 。 そ の 後,あ
処 理 さ れ た 画 像 は,
らか じめ 用 意 され た 対 象 との 特 徴 の 照
合 が 行 わ れ る。 この 特 徴 抽 出,対 象 との 照合 が 識 別 処 理 の 要 と な る 。 シ ス テ ム 構 築 に あ た っ て は,特 徴 抽 出 の 決 め 手 とな る対 象 の 属 性 と識 別 内 容 の 要 求 仕 様 と を 明確 にす る こ とが 重 要 で あ る 。
図4.45
識 別 の処 理 プ ロセ ス
(1) 識 別 対 象 の 属 性 識 別 対 象 の 属 性 と して は,幾 何 学 的属 性(形,大 属 性(傷,汚 率,分
れ,欠
き さ,位 置,姿 勢 な ど),質 的
陥,色 合 い,表 面 あ ら さ な ど),光 学 的 属 性(反 射 特 性,透
光 特 性 な ど)な ど が あ る1)。 これ らの 属 性 の 特 徴 を用 い て,あ
を組 み 合 わせ て対 象 を識 別 す る こ と とな る。
過
る い は特 徴
(2) 要 求 仕 様 要 求 仕 様 と して は,"選 別","位
置 決 め","加
工 ・組 立","検
査","監
証"な どの 識 別 の 目 的 を 明 確 にす る と と も に,識 別 精 度,識 別 率,処
視","認
理 速度 な ど
の 性 能 お よ び コス トを 明 らか に す る必 要 が あ る。こ れ らの 仕 様 に よ り識 別 す る手 法 の候 補 を選 定 して い く。 (a) 精
度
検 出 精 度 は,光 学 系 な どの シス テ ム構 成 を決 め る上 で の 基 準 事 項 とな る。 一 般 に 要 求 精 度 以 下 の 分 解 能 を 設 定 す る 。 た と え ば,要 10μm以
下 の 分 解 能 を設 定 す る 。 識 別 で は,検
求 精 度 が30μmな
らば,
出 精 度 よ り も対 象 物 が 何 で あ るか
を特 定 で き る能 力 が 重 視 さ れ る場 合 が 多 く,対 象 物 の検 出 精 度 はそ れ ほ ど こだ わ ら な い場 合 も多 い 。 (b) 識
別
率
複 数 の類 似 物 の 中 か ら特 定 の 対 象 を識 別 す る 場 合 や 複 雑 な 背 景,環 境 の 中 で 対 象 物 の 識 別 を要 求 さ れ る場 合 が 多 い。 し たが っ て,ど
の よ うな 識 別 方 法 を選 択 す
る か が 識 別 率 を大 き く左 右 す る。 対 象 物 の 属 性 を 的 確 に表 現 で き る特 徴 パ ラ メ ー タ を選 定 す る 必 要 が あ る 。 この 選 定 は 識 別 の 心 臓 部 で あ り,個 々 の 対 象,そ
のお
か れ て い る環 境 に よ り異 な る。 定 ま っ た ア プ ロ ー チ は な く,適 切 な 識 別 方 法 の 選 定 と個 々 の対 象 に応 じた創 意 工 夫 が 大 事 で あ る。 (c) 処 理 速 度 処 理 速 度 は,処 理 内容 に よ り大 き く異 な る。 一 般 に識 別 の 場 合 は,処 理 対 象 が 画 像 全 体 に及 び か つ 処 理 内容 も複 雑 に な る こ とが 多 く,結 果 と して多 大 な時 間 が 必 要 とな る。 処 理 時 間 を勘 案 した 実 用 的 な判 断 パ ラ メ ー タの 選 定,適 切 な ア ル ゴ リズ ム の 考 案,ハ
ー ドウエ ア に よる 処 理 の 高 速 化 な どが 施 され て い る の が 一 般 的
で ある。 (d) コ
ス
ト
コ ス トは シス テ ム の 構 成 に よ り大 き く変 わ る 。 特 に,画 像 処 理 が 複 雑 と な り, 膨 大 な量 の デ ー タを 高 速 で 処 理 す る た め に専 用 の ハ ー ドウエ ア を新 た に 設 計 す る 場 合 は コス トが 増 大 す る。 シ ス テ ム が 複 雑 ・高 価 に な る ケ ー ス が 多 く,コ ス トが シ ス テ ム や 方 式 を制 約 す る こ とが 起 こ りや す い 。 シス テ ム を 設 計 す る場 合,常 トー タ ル コ ス トを睨 ん だ基 本 設 計 が 大 事 で あ る。
に
4.5.2
画像処理手法
対 象 とす る画 像 デ ー タか ら,目 的 の 対 象 を抽 出 す る 画 像 処 理 手 法 を決 め る こ とが 最 大 の キ ー ポ イ ン トとな る。 この 手 法 は,種 こ こ で は,テ
ンプ レー トマ ッチ ング 法,ツ
々 の 手 法 が 提 案 され て い る が,
リ ー 決 定 法,遺 伝 ア ル ゴ リ ズ ム 法 を
紹介 す る。
(1) テ ン プ レ ー トマ ッチ ン グ に よ る 識 別 テ ンプ レー トマ ッチ ン グ は,複 雑 形 状 部 品,顔
の 識 別 な どに 使 用 さ れ て い る。
あ る対 象 を画 像 中か ら検 出 した い場 合 、そ の対 象 の パ ター ン を テ ンプ レー トと し て 用 意 し,対 象 画 像 と テ ンプ レー トを 移 動 しな が ら重 ね 合 わ せ,両
者 の一致 度
(相 関処 理)に よ り対 象 の 識 別 を行 う方 法 で あ る。 こ の 方 法 は,一 般 に テ ンプ レ ー トマ ッチ ン グ法 と呼 ばれ る最 も基 本 的 な 方 法 で あ る。 この 方 法 の課 題 は 、組 合 せ の 数 が 多 く,重 ね 合 せ 処 理 に 時 間 が か か る こ とで あ る 。 この 課 題 へ の 対 応 と し て,い
くつ か の 方 法 が 提 案 され て い る。
重 ね 合 せ の よ さ を見 る 簡 単 な 方 法 は,両
画 像 の 差 を と る こ とで あ る。 両 画 像
が 等 し く,重 ね 合 せ が ず れ て い な け れ ば差 は ゼ ロ に な る。 実 際 に は,両 画 像 の 間 に 変 形 や 雑 音 が あ る の で,重
ね 合 せ が 完 全 で も差 は ゼ ロ に な らな い こ とが 多
い 。しか し,最 小 値 に な る こ と は期 待 で き る 。した が っ て,一
方 の画像 をい ちい
ろ 移 動 させ て 最 小 と な る 移 動 を も っ て 重 ね 合 せ が 達 成 さ れ た も の とす る 。 こ の 場 合 、重 ね合 せ が ず れ て い る と,各 画 素 に つ い て順 次 誤 差 を加 算 して い く際,そ
図4.46
テ ン プレー
トマ ッ チ ン グ2)
の 累 積 誤 差 が 急 激 に増 大 す る 。 こ の 点 に着 目 して,累
積 誤 差 が あ る し きい 値 を
超 え た ら,そ の 時 点 で 両 画 像 の 重 ね 合 せ は よ くな い もの と判 断 し,そ れ か ら先 の 加 算 は 打 切 り次 の 移 動 に移 る 方 法 が 提 案 され て い る 。 こ の 方 法 は残 差 逐 次 検 定(SSDA)法
と呼 ば れ て い る2)(図4.46)。
(2) ツ リー 決 定 法 前 述 の テ ン プ レー トマ ッ チ ン グ な どの 統 計 的 手 法 に 基 づ く識 別 は,対
象 とな
る パ タ ー ン が 複 雑 に な っ て く る と十 分 に対 応 で き な い場 合 が 生 じて くる 。 こ の よ う な 場 合 に 対 応 す る 方 法 と して,構
造 的 に パ ター ン を識 別 す る 方 法 が あ る 。
こ の 方 法 の 一 つ に ツ リー 決 定 法 が あ る。 一 般 に,対 象 とす る パ ター ンか ら抽 出 可 能 な複 数 個 の 特 徴 の す べ て が そ のパ ター ン の識 別 に必 要 と は 限 ら ない 。あ る い くつ か の 特 徴 が 明確 に な っ て い れ ば,そ
れ らの 特 徴 を用 い て 対 象 を分 類 で き る
こ とが 考 え られ る 。た と え ば,あ る一 つ の特 徴 が 明 確 に な っ て い れ ば,そ れ は"A" の ク ラス に識 別,ほ
か の特 徴 が 現 れ て い れ ば"B"の ク ラ ス に識 別 され る,と い っ
た よ う に順 次 識 別 して い く こ とが 可 能 で あ る3)。
図4.47
ツ リ ー 決 定 法3)
こ の 手 法 を 図4.47を 参 照 しな が ら述 べ る と次 の よ う に な る。 ① まず,与
え られ た ク ラス 集 合Pを 特 徴fiで 二 つ の組P1,
P2に 分 割 す る。
② 次 に,特
徴fiに よっ てP1を さ ら に2つ に 分 け,特 徴fkに よ っ てP2を さ ら
に 二 つ に分 け る 。 以 上 の よ う な 分 割 処 理 を行 っ て い っ て,最 リ に到 達 す る よ う に す る。この 場 合,最
終 的 に そ れ ぞ れ た だ一 つ の カ テ ゴ
終 判 定 に 到 達 す る まで の ス テ ップ 数 をで
き る だ け 少 な くす る工 夫 が 必 要 で あ る 。n個 の ク ラ ス を分 類 す る場 合,特 最 も少 な い と きでlog2n個
と な るが,実
徴数は
際 に は さ ら に多 くの 特 徴 が 必 要 で あ る。
この よ う に決 定 木 をつ く る と き、最 終 段 階 に到 達 す る ま で の ス テ ップ 数 をで き る だ け少 な くす る た め に は入 力 パ ター ンの 出 現 頻 度 を考 慮 し,非 常 に よ く現 れ る ク ラ ス につ い て は少 な い ス テ ップ 数 で 最 終 段 階 に 到 達 させ る 。 また,出 数 の 少 な い ク ラ ス につ い て は,ス
現回
テ ッ プ数 は 比 較 的 多 くて も よ い が,平 均 的 に
は最 も少 な い ス テ ップ 数 と な る よ うに す る とい う工 夫 が 必 要 で あ る。
(3) 遺 伝 ア ル ゴ リズ ム に よ る識 別 遺 伝 ア ル ゴ リ ズ ム は,生 物 の 遺 伝 と進 化 の メ カ ニ ズ ム を工 学 的 に モ デ ル し た 最 適 化 手 法 の 一 つ で あ り,決 定 論 的 に 最 適 解 を求 め る こ とが 困 難 な 問 題 に対 す る有 効 な探 索 手 法 と して 注 目 を あ び て い る4)。 まず 親 か ら遺 伝 子 に よ っ て 遺伝 情 報 伝 達 が 行 わ れ る 。次 世 代 へ は,各 個 体 の 中 で 優 れ た,す
な わ ち 環 境 へ の 適 応 度 の 高 い 個 体 の 遺 伝 子 情 報 が 優 先 的 に伝 え ら
れ る 。 適 応 度 の 低 い 個 体 は 自然 淘 汰 され る。 こ の よ う な 原 理 で 世 代 を 重 ね て い く と次 第 に環 境 に適 応 度 の 高 い 個 体 が多 くな って くる 。これ が 遺 伝 ア ル ゴ リズ ム
図4.48 遺伝 アル ゴ リズ ムの 処 理 の流 れ4)
の 基 本 的 な 原 理 で あ る。遺 伝 ア ル ゴ リ ズ ム で の 基 本 的 操 作 に は,選 択,交 然 変 異 の 三 つ が あ る 。 選 択 で は,集
叉,突
団 の 中 で の 適 応 度 の 分 布 に従 っ て,次
のス
テ ッ プ で 交 叉 を行 う個 体 の 生 存 分 布 を決 定 す る 。交 叉 で は,二 つ の 染 色 体 間 で, 遺 伝 子 を 組 み 替 え て,新
し い個 体 を発 生 さ せ る 。 突 然 変 異 で は,遺 伝 子 の 一 部
分 の値 を強 制 的 に 変 え る。 図4.49の 事 例4)に基 づ い て,遺 伝 ア ル ゴ リズ ム の動 作 を説 明 す る。 染 色 体 の長 さ を10ビ
ッ トと し,適 応 度 は 前 半 の5ビ
図4.49
ッ トにつ い て は0の 要 素 数,後
遺 伝 ア ル ゴ リ ズ ム の 例4)
半 の5
ビ ッ トは1の 要 素 数 とす る(ス テ ップ1)。 次 に,初 期 遺 伝 子 集 団 の 数 を6個 とす る(ス テ ップ2)。 問題 は,で
き る だ け 適 応 度 の大 きい 染 色 体 を見 つ け る こ とで あ
り、そ れ ぞ れ の 適 応 度 は 図4.49(a)の
よ う に な る(ス テ ップ3)。
次 の ス テ ッ プ4で は 、選 択 を実 行 す る。 い ろ い ろ な選 択 の 方 法 が あ るが,こ で は,適
応 度 の 一 番 低 い個 体 を一 番 高 い 個 体 で お き換 え る,エ
こ
リー ト選 択 法 を
単 純 化 した もの を用 い る(図4.49(b))。 ス テ ップ5の 交 叉 で は,二 つ の 遺 伝 子 を 組 み に し て 図4.49(c)に 示 す よ う に交 叉 位 置 を ラ ン ダ ム に 決 め,そ
こ を境 に 遺 伝
子 の 要 素 を互 い に 交 換 す る。 ス テ ッ プ6の 突 然 変 異 で は,遺 伝 子 の 一 部 を 強 制 的 に 変 更 す る。 こ の よ う に 世 代 交 代 の操 作 を く り返 し,適 応 度 を 高 め最 大 値 を 求め る。 選 択 法 に つ い て は,適 応 度 比 例 方 式,エ
リー ト保 存 方 式,期 待 値 方 式,ラ
ン
ク方 式,ト ー ナ メ ン ト方 式 な どい ろ い ろ な 方 式 が あ り,目 的 に応 じて 使 い分 け る 。 交 叉 法 に つ い て も複 数 点 交 叉,一 様 交 叉 な どい ろい ろ な方 式 が あ る。 遺 伝 ア ル ゴ リズ ム は,単 純 な並 列 的 解 探 索 に 比 べ て よ り よい 解 が 見 つ か りや す い,ア
ル ゴ リズ ム が 単 純 で,評 価 関 数 が 不 連 続 な場 合 で も適 用 で き る な どの
利 点 が あ る 。 一 方,遺 伝 ア ル ゴ リズ ム を解 くた め の 一 般 的 な 方 法 が な い,個 体 数 、選 択 方 法 や 交 叉 方 法 の 決 定,突
然 変 異 の 割 合 な ど,パ ラ メ ー タ の 数 が 多 い,
な ど の 問題 もあ る。
4.5.3
応 用 事 例
(1) 部 品 の 形 状 識 別 部 品 の 種 類 を識 別 す る 方 法 が い くつ か 提 案 さ れ て い る。 こ こ で は,部
品 の外
径 お よ び 内 部 特 徴 に着 目 した 識 別 方 法 を述 べ る5)。 エ ン ジ ン部 品 の外 形 を 図4.50に 示 す 。部 品 は4種 類 で あ る が,そ
の姿 勢 に よ り
全 部 で7種 類 の パ ター ン に な る 。 これ ら を識 別 す る た め に次 の よ う な 形 状 の 特 徴 量 を使 用 す る 。 x1:周
囲 長,
x2:面 積 の 平 方 根,
x3:穴
の全面積
x4:重 心 か ら外 側 輪 郭 まで の 最 小 距 離, x5:重 心 か ら外 側 輪 郭 まで の 最 大 距 離, x6:重 心 か ら外 側 輪 郭 まで の 平 均 距 離,
x7:細 長 さ(x1/x2)
図4.50
部 品 の 外 形5)
カ メ ラ か ら得 られ た 画 像 を 適 当 な し きい 値 で2値 化 し,そ れ ぞ れ の 部 品 に つ い て 上 記7種 類 の 特 徴 量 を計 算 す る。 実 際 に は,7種 必 要 は な く,図4.51に
類す べ ての特徴量 を求め る
示 す よ う な判 別 ツ リー を使 う と ロ ッ ドの 例 で は,x3とx4
の 二 つ の 特 徴 量 で 識 別 で き る。 一 方,こ
の 外 形 に よ る識 別 方 法 は,簡 便 で は あ る が,外
で 識 別 を行 っ て い る の で,類
形 の簡単 な特徴 のみ
似 した 形 の も の が あ る と識 別 で き な くな る とい う
欠 点 が あ る。 そ こ で,谷 内 田5)らは,外 形 の情 報 を よ り有 効 に利 用 す る と と もに, 部 品 表 面 の特 徴 も利 用 す る シ ス テ ム を 開 発 した 。対 象 は,エ 類 で あ る が,各 部 品 は上 面,底 面,側
ン ジ ン部 品 の20種
面 な どい くつ か の 安 定 な 姿 勢 を もつ の で,
約60種 類 の パ タ ー ン を識 別 す る 必 要 が あ る 。 シス テ ム の構 成 を 図4.52に 示 す 。 部 品 を テ レ ビ カ メ ラで 上 方 か ら眺 め る 。 前 処 理 に よ り視 野 の 中 か ら一 つ の 部 品 を選 ん で2値 化 し,そ の 外 形 と重 心 を算 出 す る。 次 に,重
心 を 中 心 と して3度 ご と に直 線 を 引 き,重 心 か ら輪 郭 ま で の 距
離rを 求 め る。 図4.53に
部 品 の 外 形(a)の 重 心 か ら直 線 を引 き(b),各
対 す るrの 値 を 表 示 した グ ラ フ(c)を 示 す 。 これ をr-θ 曲線 と呼 ぶ が,コ
角 度 θに ンピュ
図4.51
部 品 を 識 別 す る 判 別 ツ リ ー5)
図4.52
シ ス テ ム 構 成5)
図4.53
r-θ
曲 線5)
ー タ に あ らか じめ 各 部 品 に対 す る 標 準 のr-θ 曲線 を用 意 し て お き r-θ 曲線 と比 較 して,最
,未 知 部 品 の
も よ く相 関 の とれ る もの を捜 す こ と に よ り部 品 を識 別 す
る 。 画 面 内 に お け る部 品 の 回転 は,r-θ 曲線 の 比 較 は入 力 のr-θ 曲線 を少 しず つ 右 に 平 行 移 動 し なが ら行 うだ け で よ い 。 外 形 が よ く似 た 部 品 で あ れ ば,あ 度 で 急 に 誤 差 が 小 さ く な る の で,こ
る角
の 角 度 か ら標 準 パ タ ー ン(モ デ ル)に 対 す る
未 知 部 分 の 回 転 角 度 を求 め る こ とが で き る 。 ま た,線 分 化 画像 処 理 ア ル ゴ リズ ム が 提 案 さ れ て い る6)。入 力 画 像 を2値 化 し た あ と,セ
グ メ ンテ ー シ ョ ン処 理 に よ り部 品 領 域 を切 り出 し,輪 郭 線 を多 角 形
で 近 似 して,頂 点 座 標 の列 と し て表 す 。こ れ を線 分 化 処 理 と呼 び,頂 点 列 の デ ー タ を線 分 化 デ ー タ と呼 ぶ 。 線 分 化 処 理 で は,多 数 の細 か く分 割 され た 線 分 に よ り部 品 を近 似 す る 。 線 分 化 デ ー タ の 頂 点 数 は,ほ
とん ど の 場 合100点
以 下,通
常 は50点 前 後 で あ る 。 テ レ ビ カ メ ラ か ら の 原 画 像 は6万 以 上 の 画 素 デ ー タ か ら な る の で,線 分 化 に よ り,処 理 す べ きデ ー タが1/1000以
下 に圧 縮 さ れ た こ とに
図4.54
線 分 化 デ ー タ に よ る パ タ ー ン識 別6)
な り,処 理 の 高 速 化 が 可 能 で あ る 。 線 分 化 デ ー タ か ら の 部 品 の 認 識 に は,画 像 の特 徴 量 の 組 合 せ に よ る 方 法 と線 分 化 パ タ ー ンマ ッチ ン グ に よ る方 法 の2方 法 が あ る。この 様 子 を 図4.54に 示 す 。 画 像 の 特 徴 量 と して は,重 心,面 い られ る 。 これ らの 値 は,線
積,周
囲長,二
次 モ ー メ ン トな ど の 値 が 用
分 化 デ ー タ の 頂 点 座 標 値 か ら数 値 計 算 に よ り簡 単
に 求 め る こ とが で き る量 で あ る が,こ
の値 を辞 書 パ ター ン と比 較 す る こ と に よ
り,簡 単 な 部 品 を種 類 を 判 定 で き る 。 線 分 化 パ ター ンマ ッチ ン グ で は,現 画 像 と 辞 書 パ タ ー ン の 線 分 化 デ ー タ を,重 心 位 置 お よ び姿 勢 を 合 わ せ て 重 ね 合 せ, そ の 重 な り程 度 に よ り,部 品 の 判 定 を行 う も の で あ る 。 特 徴 量 に よ る方 法 と比 べ,直
接 形 状 デ ー タ に よ る比 較 を行 うた め,精 度 の 高 い 判 定 が 可 能 で あ る。
(2) フ ァ ジ ィ理 論 に よ る 農 産 物 の画 像 識 別 リ ン ゴ,ミ
カ ンな ど の 農 産 物 の 種 別 を画 像 識 別 す る こ と は,工 業 製 品 の よ う
な規 格 品 の 識 別 と は異 な る む ず か し さが あ る 。 これ は,農 産 物 が 同 一 種 で も形 状,色
彩 な どが 均 一 で な い な どの あ い ま い さ を もつ た め,正 確 な判 断 基 準 が も
ち に くい た め で あ る。 こ こ で は,こ の よ うな 特 徴 量 の あ い ま い さ を もつ 対 象 を識 別 す る 方 法 と して フ ァ ジ ィ理 論 を適 用 した 画 像 処 理 シ ス テ ム につ い て述 べ る7)。 識 別 の 対 象 と して は,ニ
ン ジ ン,キ
ュ ウ リ,イ チ ゴ な ど10種 類 の 農 産 物 を準
備 し,そ F5,
れ ぞ れ の 形 状 に 関 し て3種
F6)の 合 計6種
こ こ で,A:対 B:カ
類(F1,
F2,
F3),色
彩 に 関 し て3種
類(F4,
類の 特 徴 量 を選 定 す る。
象 物 の 面 積,L:周
ラ ー 画 像 の 赤,緑,青
こ れ ら の 値 は,正
囲 長,M:輝
度 値 の 重 心 モ ー メ ン ト,R,
G,
の輝度
規 化 に よ り無 次 元 化 さ れ て お り,位
置,大
き さ,回
転 に対
して 影 響 を 受 け な い 量 で あ る。 こ こ で は,多
く の も の か ら 一 つ を 選 び 出 す こ と よ り,二
つ の もの か ら一 つ を
選 び 出 す 方 が よ り正 し く容 易 に で き る と い う 考 え の も と に,2項
対 比 較 と い う方
法 を 採 用 して い る。 こ の 識 別 の た め に,比
較 関 数Rx(Zi,
較 関 数Bx(Zi,
の 基 準 値 の 集 合Z={Z1,Z2,・・,Zn}と
Zj)は,n個
え ら れ た と き,Zjよ 較 関 数P(Zi,Zj)は,対 味 でZjよ
りZiを
り もZiがxに
Zj)と 相 対 比 較 関 数P(Zi,
Zj)を 定 義 す る 。比
対 象 の 特 徴 値xが
似 て い る と い う 度 合 い で あ る 。 ま た,相
象 の 特 徴 値xに
対 し てZjよ
与
対比
り もZiの 方 が 似 て い る と い う 意
とる 度 合 い で あ る 。
比 較 関 数Rx(Zi,Zj)は,図4.55に 画 像 処 理 の 流 れ を 図4.56に
図4.557)
示 す メ ンバ シ ップ 関 数 か ら求 め る。 示 す 。 最 初 に セ ン サ で 三 次 元 の対 象 物 を二 次 元 の
図4.56
画 像 処 理 ア ル ゴ リ ズ ム7)
デ ィ ジ タル 画 像 と し て 取 り込 み,特 徴 抽 出 に よ り一 次 元 の 特 徴 量 へ と次 元 の減 少 を 行 う 。次 に 識 別 ア ル ゴ リズ ム に よ り,得 ら れ た 特 徴 量 とあ らか じめ 用 意 した 基 準 値 と の比 較 照 合 を行 い,類 似 度 の 評価 の 結 果,属 各 対 象 物 につ い て30組(1組 300組(1800個
す る カ テ ゴ リ を決 定 す る 。
の デ ー タは6種 類 の特 徴 値 の 集 合)の 測 定 デ ー タ,
の 測 定 デ ー タ)を 未 知 特 徴 値 と して,認
す 。この 方 法 に よ る 識 別 率 の平 均 値 は,98.3%と
識 した 結 果 を表4.9に 示
基 準 値 の設 定 が 困 難 な 農作 物 で
あ る に も関 わ らず 高 認 識 率 を得 て い る 。 表4.9
■ 参
考
文
識 別 率7)
献
1) 江 尻 正 員,大
田 友 一,池
内 克 史:マ
シ ン ビ ジ ョ ン,p.9,昭
晃 堂,1990.
2) テ レ ビ ジ ョ ン 学 会 編:画
像 工 学,pp.
132-134,コ
ロ ナ 社,1989.
3) テ レ ビ ジ ョ ン 学 会 編:画
像 工 学,pp.
140-141,コ
ロ ナ 社,1989.
4) 萩 原 将 文:ニ
ュ ー ロ ・フ ァ ジ ィ ・遺 伝 的 ア ル ゴ リ ズ ム,pp.
5) 谷 内 田 正 彦:視
93-111,産
業 図 書,1994.
覚 を 用 い た 自動 検 査 お よ び 自動 組 立 シ ス テ ム の 動 向,pp.
192-199,日
経
エ レ ク ト ロ ニ ク ス,1982.6.7. 6) 秦 清 治,有
賀 誠,鈴
理 装 置"HVIR-1", 7) 朝 倉 俊 行:フ
4.6
木 健 司,辻
pp. 735-740,日
征 郎,川
崎 恭 一,志
立 評 論,66,
村 安 規:ロ
ボ ッ ト視 覚 用 小 形 画 像 処
10, 1984.
ァ ジ ィ 理 論 に よ る 農 産 物 の 画 像 識 別,pp.33-36,画
像 ラ ボ,5,
8, 1994.
比 較 す る
"比 較 す る"は 色 々 な 意 味 を も
っ て い る。 広 い 意 味 で は,画 像 か ら抽 出 した 抽
象 的 な 情 報 と評 価 基 準 とを比 較 す る こ と と考 え られ る。 狭 い 意 味 で は,検 出 画像 と基 準 画 像 とを 直接 比 較 す る こ と と考 え られ る。 マ ッチ ン グや 正 規 化 相 関演 算 も "比 較 す る"こ とで あ るが ,こ の 意 味 の"比 較 す る"は,他 節 に あ る"数 え る","記 号 ・文 字 を読 む"な ど で扱 わ れ て い る。 本 節 で は,特 に"比 較 す る"と い う概 念 の も と に配 線 パ ター ン の外 観 検 査 自動 化 法 について述べ る。
4.6.1
シス テ ム構 築 の基 本 的 な 考 え 方
シ ス テ ム の 構 築 法 を,① 対 象 物 の 検 出法,②
検 出情 報 を処 理 して 欠 陥 を抽 出す
る画 像 処 理 法,③ 装 置 と して の シス テ ム化,の
順 で 以 下 述 べ る。
(1)画
像 検 出法
(a)画 像 検 出 デ バ イ ス に よ る検 出 テ レビ カ メ ラ は,最 合,対 CCDリ
も一 般 的 な 検 出 デバ イ ス で あ るが,配
線 パ ター ン検 査 の場
象 画 像 の 情 報 量 が 大 きい の で テ レ ビ カ メ ラ で は 速 度 的 に満 足 で きな い 。 ニ ア イ メ ー ジ セ ンサ は,対
象 物 を 連 続 的 に走 査 し なが ら検 出 を行 う こ と
が で き る の で よ く用 い られ る 。CCDセ こ ろ1チ ャ ンネ ル あ た り約10∼20MHz/画
ンサ の 場 合,検
出 速 度 の 上 限 は い まの と
素 で あ る 。TDIセ
ンサ1)は通 常 の リ ニ
ア イ メ ー ジ セ ンサ に比 べ て,画 像 の 蓄 積 時 間 を数 十 倍 に し,か つ,複 ネ ル を用 い る こ と に よ り100MHz以
数のチ ャン
上 の 検 出速 度 が得 られ る。
(b) 光 点 走 査 形 検 出 レ ー ザ 光 点 で 対 象 物 面 上 を 走 査 し て 反 射 光 な ど を検 出す る と10∼20MHz/画 素 の 速 度 で対 象 物 を検 出 で き る。 光 点 走 査 手 段 と して は主 に振 動 鏡 や 多 面 体 鏡 回 転 に よ る機 械 的 な手 法 が用 い られ る 。 一 般 的 に は 画 像 検 出 デ バ イ ス を用 い た 方 が 簡 便 な場 合 が多 い の で,本 検 出法 の 特 徴 が い かせ る場 合 に用 い られ る。 本 検 出法 は,走 査 範 囲 を 大 き く とれ る こ と,焦 点 深 度 が 大 きい こ と,ま た,対 象 物 全 面 に 光 をあ て な い で 検 出 を行 う こ とが で き るの で画 像 検 出 デ バ イ ス と は違 っ た 検 出 特 性 が 実 現 で きる 。 (c) 照 明 法 ・検 出 法 の 工 夫 画 像 処 理 を実 用 化 す る場 合,照
明 法 と検 出法 は 検 査 性 能 を左 右 す る の み な ら
ず 実 用 化 の 可 否 を握 る とい っ て よ い 。 す な わ ち,照
明 法 ・検 出法 に よ っ て 対 象 物
を顕 在 化 す る こ とが 成 功 へ の 第 一 歩 とな る。 通 常,照 られ るが,対
明光 には落射照 明が用 い
象 物 に よっ て は斜 め 照 明 あ る い は拡 散 照 明 が 有 効 で あ る。 こ れ ら は
対 象 物 の光 反 射 特 性(正 反 射,拡
散 反 射)に よっ て 決 定 さ れ る。 対 象 物 の 分 光 反 射
特 性 に よ っ て は,照 明波 長 を選 ぶ と顕 在 化 が 行 わ れ る。 照 明光 か ら赤 外 線 を カ ッ トし て お く こ と は,CCDセ
ンサ の解 像 力 を 劣 化 させ な い 上 で 重 要 で あ る。 半 導
体 パ タ ー ンの 場 合,多 波 長 光 を利 用 す る こ とに よ り薄 膜 に よ る 干 渉 作 用 を低 減 で き る こ とが あ る。 プ リ ン ト板 パ ター ンの 場 合,短
波 長 光 照 明 に よ り基 材 か ら発 生
す る蛍 光 を 検 出 す る こ と に よ り,パ ター ンを シル エ ッ トと して鮮 明 に検 出 で き る こ とが あ る 。 同 様 に セ ラ ミ ック の よ う に偏 光 を解 消 す る基 材 を 用 い る場 合 は 偏 光 で 照 明 を行 い,偏 光 板 を とお して 検 出 す る と鮮 明 な画 像 が 得 られ る。 半 導 体 パ ター ンを検 出 す る 際,通 常 光 で は 十 分 な解 像 力 が 出 な い 領 域 に な っ て お り,紫 外 線 顕 微 鏡 や 共 焦 点 顕 微 鏡 の適 用 が 試 み られ て い る が,SEM(走 子 顕 微 鏡)に よ る検 出 が 必 要 な時 期 に な っ て い る 。SEMの
ネ ッ ク と して は 対 象 物
に帯 電 が 起 きや す く検 出 上 障 害 に な る こ と,検 出 画 像 のS/Nが 速 度 が 数MHzと
査 型電
悪 い こ と,検 出
光 学 的 方 法 よ り劣 る こ とが あ げ られ る2,3)。
(2) 欠 陥 検 査 法 表4.10に 各 種 の検 査 法 を示 す4,5)。以 下 手 法 ご とに 説 明 す る。 (a) デ ザ イ ンル ー ル 法(特 異 形 状 検 出法,特 徴 抽 出 法) パ タ ー ン形 状 に 一 定 の 規 則 を 想 定 し,規 則 か ら はず れ た パ タ ー ン形 状 部 を 欠 陥 と判 定 す る も の で あ る 。 最 も抽 象 的 な 基 準 デ ー タ との 比 較 法 と も考 え られ る。 具 体 的 に は,た
と え ば パ ター ン幅,パ
ッ ド幅 を 規 定 し,さ
ず パ ッ ドで 終 る とい う規 則 を 想 定 す る 。 また,パ 形 状 を欠 陥 と判 定 す る(図4.51(a)(c),表4.10A)。
らにパ ター ンには必
ター ン幅 以 下 の微 細 なパ タ ー ン 本 方 法 で は,ア
ナ ロ グパ ター
ン,電 源 層 パ タ ー ン な ど上 述 の 規 則 を適 用 で き な い場 合,検 査 性 能 が 低 下 す る。 ま た,図4.57(d)∼(f)に
示 す よ う な欠 陥 は検 出 で き な い か,正 常 部 を 欠 陥 と して
誤 検 査(虚 報)す る こ とが 多 い 。 次 に述 べ る比 較 検 査 法 と異 な り,比 較 デ ー タの 集 録,位 置 合 せ を行 う必 要 が な い の で,簡 便 に 検 査 が 実 行 で きる こ とが 特 徴 で あ る。
注) 基 準 パ タ ー ン と して,実
物 あ る い は,CAD設
各 種 の 検 査 法5)
計 パ タ ー ンが 用 い ら れ る 。
表4.10
具 体 的 な デ ザ イ ンル ー ル 法 と して は,図4.58に
示 す よ うに パ ター ンの 膨 張 ・縮
退6)を 利 用 す る こ と に よ りパ ター ンの 微 小 部 を抽 出 す る 方 法 が 開発 され た 。 また 配 線 パ タ ー ン を細 線 化 して 骨 格 線 を 抽 出 し,そ の 形 状 的 特 徴 か ら特 異 形 状 を求 め る こ と もで きる7)。
図4.57
図4.58
デ ザ イ ン ル ー ル 式 検 査 法4)
膨 張 ・縮 退 処 理 を用 い た デ ザ イ ン ル ー ル 法6)
(b) 比 較 検 査 法 デ ザ イ ンル ー ル検 査 法 の 欠 点 を解 決 す る た め に比 較 検 査 法 が 用 い られ る。 比 較 検 査 を行 う た め に は,画 像 の位 置 合 せ が 必 要 で あ る が,比 較 す べ く抽 出 し た 特 徴 の 抽 象 度 が 高 い ほ ど位 置 合 せ 許 容 度 は緩 く,処 理 情 報 量 も少 な くな る 。 し か し特 徴 抽 出 は 他 の 情 報 を捨 て る こ とで もあ る か ら,検 る可 能 性 は 高 くな る 。 徴 点(端 点,分
出 しない欠陥が 出て く
抽 出特 徴 の抽 象 度 が 高 い 方 法 と して は,パ
岐 点)を 抽 出 して 比 較 をす る 方 法(表4.10B)8),配
タ ー ンの 特
線 パ ター ン のつ
な が り状 態 を画 像 処 理 に よ り抽 出 して,電 気 導 通 検 査 用 の デ ー タ と比 較 す る方 法(表4.10C)9)が は,図4.59に
あ る 。 画 像 を そ の ま まの 画 素 状 態 で 比 較 す る方 法(表4.10D,E)
示 す よ う に二 つ の パ ター ン を比 較 し,不 一 致 部 を 欠 陥 と判 定 す る
こ と を原 理 とす る もの で あ る 。 検 査 精 度 を 上 げ る た め に は,パ
ター ン の 許 容 内
変 形(公 差)や 位 置 合 せ 誤 差 を 欠 陥 と判 定 し な い た め の 特 別 な工 夫 が 必 要 で あ り, 種 々 の 研 究 開発 が 試 み られ て い る10,11)。画 像 比 較 の た め の 基 準 デ ー タ の 集 録 方 法 と し て は,① 実 物 パ ター ンか らデ ー タ を 取 り込 ん で 記 憶 して お く方 法,お び ②CADデ
よ
ー タ か ら情 報 を得 る 方 法 が あ る10,11)。
図4.59 画 素 画像 比 較検 査 法4)
(c) 多 値 画 像 パ タ ー ン の検 査 多 値 画 像 パ タ ー ン と して,半 導 体 ウエ ハ パ ター ン,プ リ ン ト板 最 終 製 品(は ん だ レ ジ ス ト・シ ル ク パ タ ー ン な ど)な どが あ る 。 こ れ ら の パ タ ー ン の 場 合 は 主 に 実 物 パ タ ー ン を 記 憶 して お き,こ れ と検 出 パ ター ン との 差 を欠 陥 と判 定 す る 方 式 が 基 本 とな っ て い る 。 こ れ は,こ
れ らの パ ター ンが 多 値 情 報 で あ り情 報 量 が
大 き い た め に,上 述 の 画 像 処 理 原 理 を そ の ま まあ て は め る に は 画 像 処 理 の 内 容 が 複 雑 に な りす ぎる こ とが 一 つ の 原 因で あ る と考 え られ る 。 プ リ ン ト板 最 終 製 品 の 場 合,カ
ラ ー 画 像 処 理 が 用 い られ る こ と もあ る 。 基 準
パ タ ー ン と検 出 パ タ ー ン との 比 較 の 際,微 妙 な位 置 誤 差 の 影 響 を 除 去 す る手 法 につ い て注 意 が は らわ れ て い る12)。 (d) 検 査 法 の 選 択 パ ター ンの 形 状 を最 も厳 密 に 検 査 す る た め に は,表4.10D,Eの
画像 比較法 が
最 も優 れ て い と考 え られ る。 な ぜ な ら,他 の 方 法 は 何 らか の 方 法 で パ タ ー ン情 報 の 抽 象 化 を行 っ て お り,こ の 過 程 で パ タ ー ン の 情 報 が 失 わ れ る か らで あ る 。 しか し,実 用 的 観 点 か ら は,検 査 の厳 密 性 を追 求 す る こ とが 必 ず し も最 重 要 で は な く,検 査 装 置 の 費 用 効 果 比 が 重 要 で あ る。 この 場 合,デ 4.10A)や 補 助 的 な比 較 検 査 法(表4.10B)は
ザ イ ン ル ー ル 法(表
画 像 比 較 法(表4.10D,
E)よ
り も検 査
装 置 は 簡 単 で 安 価 に す る こ とが で き る。 検 査 方 法 の 選 択 は,対 象 パ タ ー ン の 形 状 や検 出欠 陥 の モ ー ドを考 慮 して最 適 の 方 法 を選 択 す べ きで あ る 。
4.6.2
シ ス テ ム化
(1) ス テ ー ジ 配 線 パ タ ー ン の検 査 機 は,XY2軸
に よ り対 象 面 上 を走 査 す る ス テ ー ジ と検 出
器 光 軸 を制 御 す るZ軸 ス テ ー ジ か らな る。 ス テ ー ジの 精 度 は,対 度 に よ り決 め られ るが,半
象物 の寸 法精
導 体 向 け の よ う な 高 精 度 装 置 の 場 合 は サ ブ ミク ロ ン
の ス テ ー ジ位 置 精 度 と レ ー ザ に よ る移 動 量 測 定 が 用 い られ る。 ス テ ー ジ の 移 動 速 度 が 変 化 して し ま う場 合 は,こ れ に よ り検 出 器 の 感 度 変 化 や 画 素 サ イ ズ 変 化 が 起 き な い よ う に 考 慮 す る 必 要 が あ る 。 対 象 物 の 回転 方 向 の 設 置 誤 差 が 大 き い 場 合 は,回 転 ス テ ー ジ を設 け,こ れ を補 正 す る。
(2) 焦 点 合 せ 検 査 対 象 物 は 通 常 エ ア ー 吸 着 さ れ る が,こ
れ で矯 正 で きず に焦 点 合 せ が 必 要
と な る 場合 が あ る。 焦 点 検 出法 と して は,投 影 光 の 三 角 測 量 法,投
影パ ター ン
の ぼ け 状 態 計 測 法13),エ ア ー マ イ ク ロ メ ー タ適 用 な ど の ア ク テ ィ ブ な方 法 が 用 い られ る 。 ビ デ オ カ メ ラ に 代 表 さ れ る よ うな 対 象 物 画 像 の コ ン トラス トを最 大 に す る制 御 法 は,合
わ せ 精 度 が 対 象 物 の パ ター ン に依 存 す る の で あ ま り用 い ら
れない。
(3) 画 像 処 理 回 路 検 出 した パ ター ン は,デ
ィ ジ タ ル 化 さ れ て 欠 陥 を認 識 す る た め の 画 像 処 理 が
行 わ れ る 。 画 像 を 高 速 で 処 理 す る た め に,多
くの 場 合,パ
イ プ ラ イ ン専 用 画 像
処 理 回路 が 用 い られ る 。 回路 設 計 に あ た っ て は,市 販 の 画 像 処 理LSIを
用いた
り,LCAな
どの プ ロ グ ラ マ ブ ル な 素 子 を 利 用 す る よ うに す る が,専 用 の プ リ ン
ト板 を 設 計 す る こ と に な る こ とが 多 く装 置 価 格 低 減 の ネ ッ ク に な っ て い る。 一 部 の 検 査 装 置 に は 多 数 の マ イ ク ロ プ ロ セ ッサ を並 列 に 用 い て 処 理 を行 う も の も あ る が,高
速 化 の た め に 画 像 処 理 の 内 容 に制 限 を受 け る場 合 が あ る 。 将 来 的 に
は 専 用 画 像 処 理 装 置 の 汎 用 化 あ る い は,プ
ロ セ ッサ の 並 列 化+ソ
フ ト処 理 に よ
っ て 上 述 の 画 像 処 理 が 可 能 に な る こ とが 望 ま しい 。
4.6.3
応 用 事 例紹 介
(1) 接 続 状 態 比 較 に よ る検 査9) 図4.60は,セ
ラ ミ ック 基 板 上 に 印刷 し た 配 線 パ ター ンの検 査 を配 線 の 接 続 状
態 を電 気 導 通 検 査 機 の 接 続 リス トと比 較 して 検 査 す る もの で あ る。 配 線 パ ター ン を ラ ベ リ ン グ して 配 線 の 端 点 と端 点 の 接 続 状 態 の グ ラ フ を作 成 す る。 も し, パ ター ン に短 絡 や 断 線 が あ れ ば 接 続 リス トと 接続 状 態 が 違 っ て くる の で,欠
陥
を検 出 す る こ とが で き る。 短 絡 しか か り,断 線 しか か り欠 陥 を検 出 す る た め に あ らか じめパ ター ン を膨 張 あ るい は縮 退 処 理 させ て お く。
図4.60 接続 状 態 比 較 に よ る検査 法9)
(2) 2値 化 画 像 の 比 較 に よ る検 査10,11) 図4.61は,検
出 した プ リ ン ト配 線 板 パ ター ン と設 計 デ ー タか らつ く られ た パ
タ ー ン と を比 較 す る こ とに よ り欠 陥 を検 出 す る装 置 で あ る。 精 密 な 位 置 合 せ の た め に,事
前 に 検 知 した 伸 縮 に合 せ て 検 出 時 の 画 素 サ イ ズ
を 変 化 させ る こ と に よ り対 象 物 の 伸 縮 を補 正 す る 。 ま た,位
置合せ 画像処 理 回
路 に よ り二 つ の 画 像 の 画 素 単 位 の 位 置 合 せ が 行 わ れ る 。 二 つ の パ ター ン を比 較 検 査 す る際,公 ば な ら な い 。 この た め に,図4.62(a)に
差 は欠 陥 とせ ず に欠 陥 を検 出 しな け れ 検 査 ア ル ゴ リズ ム を示 す 。 まず パ タ ー ン
幅 よ り も微 小 な パ タ ー ン を 同 図 右 側 に示 す オペ レー タHBxに
よ り抽 出 して,互
い に 存 在 を比 較 す る 。 片 方 に しか 特 徴 が 存 在 しな い と き,欠 陥 が あ る と判 定 す る。 大 きな 欠 陥 の 検 出 に は,図4.62(b)に
示 す よ う に設 計 パ ター ン を公 差 分 だ け
膨張 ・ 縮 退 させ て,こ れ ら と検 出 パ タ ー ン との マ ッチ ング に よ り欠 陥 を検 出 す る。 前 述 の 欠 陥 判 定 法 で は,パ
タ ー ンの 変 形 は す べ て 欠 陥 と判 定 す る 。 しか し,
電 気 回 路 と して の有 害 性 とい う観 点 か ら は,同
図4.61
じ形 状 の 変 形であっても
プ リ ン ト配 線 板 パ タ ー ン 検 査 装 置 の 構 成10)
周囲の
図4.62
プ リ ン ト配 線 板 パ タ ー ン比 較 検 査 法14)
パ タ ー ン状 況 に よ り,欠 陥 と判 定 しな くて もよ い 場 合 もあ る 。 本 装 置 で は,こ の 致 命 性 の 判 定 も 自動 化 さ れ た14,15)。こ れ は,図4.61の
右 部 に示 す よ う に 検 出
さ れ た 欠 陥 候 補 画 像 を致 命 性 判 定 用 画 像 処 理 装 置 に 入 力 し て,詳 細 な 画 像 処 理 を施 して 致 命 性 を判 定 す る もの で あ る。
(3) 多 値 画 像 の 比 較 に よ る 検 査16) 半 導 体 ウ エ ハ は チ ップ パ タ ー ンが く り返 し描 か れ て い る。 図4.63に 示 す よ う に,あ
る チ ッ プ の 画 像 を記 憶 して お き,こ の 画 像 と新 た に検 出 した チ ップ パ タ
ー ンを 比 較 検 査 す る 。 ウ エ ハ は 多 層 パ ター ンで あ り,各 層 のパ タ ー ン 間 に は 位
置 誤 差 が 存 在 す る。 微 少 な 欠 陥 を検 出 す る に は,こ
れ らの 層 間 誤 差 と欠 陥 と を
区 別 す る必 要 が あ る 。 図4.64に 示 す よ う に,検 出 画 像(a)と 記憶 画 像(b)を エ ッジ 画 像 を用 い て 位 置 合 せ す る(c)。 画 像 の差(d)を と り,そ の差 が 小 さ い 部 分 を正 常 部 分 と して マ ス キ ン
図4.63
図4.64
半 導 体 ウ エ ハ パ タ ー ン 検 査 装 置 の 構 成16)
半 導 体 ウ エ ハ パ タ ー ン 比 較 検 査 法16)
グす る(e)。 さ らに,マ ス キ ン グ し な か っ た 部 分 の 画 像 を用 い て 再 度位 置 合 せ と 差(f)を と り1回 目の 差 画 像(d)と2回
目の 差 画 像(f)を と る。 両 差 画 像(d), (f)の最
小 値 を合 成 す る と層 間 誤 差 が 除 か れ た 差 画 像(欠 陥)が 得 られ る 。
■ 参
考
文
献
1) DALSA社TDIセ
ン サ ー カ タ ロ グ:伊
藤 忠 テ ク ノ サ イ エ ン ス 扱 い.
2) 越 柴 ほ か:走 査 型 透 過 電 子 顕 微 鏡 に よ るX線
マ ス ク パ タ ン 検 査,応
用 物 理,58,
12, 1765,
1989. 3) 和 田 容 房 ほ か:電
子 ビ ー ム を 用 い た マ ス ク 欠 陥 検 査 の 検 討,電 子 通 信 学 会 論 文 誌,J64-C,
4, 230, 1981. 4) 原 靖 彦 ほ か:プ 5) 原 靖 彦:大 会 第5回
リ ン ト基 板 パ タ ー ン の 欠 陥 検 査,計
学 術 講 演 大 会 講 演 論 文 集,31,
6) Masakazu
Ejiri, et al.: A
Computer
graphics
7) Quin-Zhong
shrinking,
327,
1987.
Novel
for detecting
processing,
2, 326,
inspection
defects
in complicated
patterns,
1973.
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Method
リ ン ト回 路 学
for analysis
of printed
using
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IBM
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ceramic
substrates,
machine
intelligence,
10) 原,土
4,
1990.
process
image
Proceeding
R. Mandeville:
Develop., 9) T.
and
Ye, et al.: Visual
preserving 8) Jon
測 と 制 御,26,
型 計 算 機 用 プ リ ン ト回 路 板 製 造 に お け る 外 観 検 査 の 自 動 化:プ
井,柄
346,
崎,飯
田,南
基 板 パ タ ー ン 検 査 装 置,精 11) 法 貴,佐
野,辻
ョ ッ プ 資 料;精
pattern
Proceedings;
中:プ
IEEE
inspection
workshop
layers
of multi-layer
on machine
vision
and
1987. 谷,品
田,北
村:設
密 工 学 会 誌,59,
計 パ ター ンとの 比 較 に よ る高 精 度 プ リ ン ト
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リ ン ト配 線 板 外 観 検 査 シ ス テ ム,第6回
密 工 学 会 画 像 応 用 技 術 専 門 委 員 会,78,
12) 谷 水 克 行 ほ か:濃
for unbaked
International
外 観 検 査 の 自動 化 ワ ー ク シ
1994.
淡 画 像 処 理 に よ る 印 刷 物 外 観 検 査 の 自 動 化,第9回
産 業 に お け る画像 セ
ン シ ン グ 技 術 シ ンポ ジ ウ ム 講 演 論 文 集,1993. 13) 大 島 良 正 ほ か:半 第22回SICE学
導 体 ウ エ ハ(ア ル ミ パ タ ー ン)に 適 用 可 能 な 光 学 的 自 動 焦 点 合 わ せ 法,
術 講 演 会 予 稿 集,223,
14) 原 靖 彦,土 性 判 定 法,精
井 秀 明,柄
崎 晃 一,飯
密 工 学 会 誌,61,
15) 大 西 浩 之 ほ か:事
6, 844,
1983. 田 正,北
村 茂 樹,古
谷 貴 史:回
路 パ ター ン欠 陥 の致 命
1995.
例 ベ ー ス 推 論 に 基 づ く プ リ ン ト基 板 欠 陥 判 定 の 一 手 法,第8回"外
査 の 自 動 化"ワ ー ク シ ョ ッ プ 資 料(精 密 工 学 会 画 像 応 用 技 術 専 門 委 員 会),84, 16) 前 田 ほ か:カ
ス ケ ー ドパ タ ー ン マ ッチ ン グ に よ るLSIウ
電 子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌,J72-DII,
12, 2012,
1989.
観検
1996.
エ ハ 多 層 パ タ ー ン 自 動 外 観 検 査,
4.7
記 号 ・文 字を読 む
こ こ十 数 年 の コ ン ピ ュ ー タの 発 展 は著 し く,OAやFAの
分 野 の み な らず さ ま
ざ ま な エ リ ア で コ ン ピ ュ ー タ は利 用 さ れ て き た 。 特 にFAの CIM化"と
分 野 で は"工 場 の
い う流 れ の 中 で,製 造 現 場 か ら生 産 管 理 ま で 幅 広 く コ ン ピ ュ ー タの 導
入 が 進 め られ,そ
れ まで 人 間 が 行 っ て い た デ ー タ収 集 作 業 や オ フ ィス 業 務 を コ ン
ピ ュ ー タ は支 援 して きた 。 工 場 の 自動 化 ・無 人化 と い う点 で,製 品 の 組 立 て 作 業 は ロ ボ ッ トにお き換 え られ,人
間 の 目視 作 業 に 頼 って い た記 号 や 文 字 の 読 み 取 り
作 業 に は 機 械 に よる 自動 認 識 技 術 が 導 入 さ れ て い る。 当初 は バ ー コー ドの よ う に 特 殊 な 記 号 や コ ー ドを製 品 も し く は製 品 を搬 送 す るパ レ ッ トな ど に取 り付 け,そ れ を機 械 が 読 み取 っ て 識 別 す る とい う もの で あ っ た が,最 近 で は人 間 と同 じ よ う に文 字 を読 み 取 る技 術 も研 究,開 発 され,そ の い くつ か は 実 用 化 が な され て い る。 こ の 節 で は,画 像 処 理 に よ る記 号 ・文 字 の 読 み 取 りが どの よ う な分 野 で 応 用 さ れ,ま た どの よ うな 手 法 が 用 い られ て い る の か を そ の応 用 事 例 と と もに 紹 介 す る。
4.7.1
記 号 ・文 字 の 読 み 取 り技 術 の 動 向
記 号 ・文 字 の読 み 取 り と い うの は 画 像 処 理 の 重 要 な応 用 技 術 で あ り,以 下 の よ う に非 常 に 広 い分 野 で 実 用 化 が 進 め られ て い る 。 ① 道 路 交 通:車 番 認 識(駐 車 場 入 出庫 管 理),道
路 標 識 の認 識(運 転 支 援)
② 郵便:郵
便 番 号 読 み 取 り,宛 先 の 認 識(自 動 仕 分 け)8)
③ 物 流:伝
票 の 文 字 ・バ ー コー ド認 識(物 流 管 理,自
動 仕 分 け),ISBN認
識
(書籍 の在 庫 ・ 返 品 管 理) ④ 電 子 機 器:プ
リ ン ト基 板,IC,
ル な どの 文 字 認 識(生 産 管 理),キ
LSIパ
⑤ FA:バ
ー コー ド認 識(生 産 管 理)
⑥ OA:新
聞,雑 誌,論
⑦ 自動 車:エ
ッケ ー ジ,CD,ウ
エ ハ,液
晶パ ネ
ー ボ ー ドの 文 字 認 識(検 査)
文,名 刺 な どの 文 字 認 識(文 書 管 理)
ンジ ン,車 体 の刻 印 文 字 認 識(生 産 管 理)
⑧ 鉄 鋼 ・電 力 ・ガ ス:鋼
板 印 字 文 字,ボ
ンベ,燃
料 棒 な どの 刻 印 文 字 認 識
(生 産 管 理) ⑨ 薬 品 ・食 品:商
品 や パ ッ ケ ー ジ の文 字 認 識(生 産 管 理,出 荷 検 査),缶
・ビ
ンの 印 字 文 字 認 識(生 産 管 理)
記 号 ・文 字 の 読 み 取 り技 術 の動 向 と して,今 後 よ り微 細 な認 識 に 対 応 で き る技 術 開発,認
識率 の 向 上 な どの た め,入 力,処
い る 。 さ らに,複
こ れ に応 え る もの と して た とえ ば,ア コー ドの標 準 規 格 で あ るBC412が
4.7.2
理 な どの 要 素 技 術 の 開発 が 急 が れ て
雑 な処 理 を可 能 とす る安 価 な シ ス テ ム の 出現 が 望 ま れ て お り, メ リ カ で は1996年
に 半 導 体 ウエ ハ の バ ー
実 施 され て い る 。
シ ス テ ム 構 築 の基 本
こ の 項 で は シ ス テ ム の(1)目
的,(2)方
法,(3)対
象,(4)仕
様,(5)シ
ス テ ム構 成
と注 意 点 につ い て 述 べ る。
(1) 目
的
シ ス テ ム 導 入 の 目的 は大 き く二 つ に分 け られ る 。 一 つ は 生 産 管 理 とい う 目的 で あ る。 た とえ ば,製 報 を生 産状 況,仕
品 に 添 付 さ れ た 記 号 ・文 字 を読 み 込 む こ と に よっ て,そ
の情
分 け な どの デ ー タ に活 用 す る 場 合 が こ れ に相 当す る。 も う一 つ
は 製 品検 査 とい う 目的 で,LSIパ
ッケ ー ジ に 印 字 され た 情 報 が,そ
の製 品 と一 致
し て い る か ど う か を検 査 す る場 合 が これ に相 当 す る。
(2) 方
法
認 識 な の か 検 査 な の か 。 た とえ ば 郵便 番 号 の 読 み 取 りの場 合,郵 便 物 に 書 か れ た 郵 便 番 号 の 文 字(数 字)は 前 もっ て わ か っ て い な い た め,そ れ ぞ れ の 文 字 を認 識 す る とい う作 業 が 必 要 とな る。 一 方,商
品 に 印 字 され た製 造 年 月 日が 該 当 す る 日
付 と一 致 して い る か ど うか を検 査 す る場 合,商 で,該
品 に印 字 さ れ た 日付 を認 識 した 上
当す る 日付 との マ ッチ ング を 行 う必 要 が あ る。
(3) 対
象
文 字 認 識 な の か,そ
れ と も記 号 認 識(バ ー コ ー ドを含 む)な の か 。 文 字 の 場 合,
印 刷 され た 文 字 な の か,そ の か,そ
れ と も手 書 きな の か 。 ま た,対 象 の 文 字 は英 数 字 な
れ と も ひ らが な,漢
字 を含 む の か 。 これ ら の違 い が,認
ズ ム や シ ス テ ム の 仕 様 に 大 き な影 響 を 与 え る 。
識の ア ルゴ リ
(4) 仕
様
認 識 率/誤 な の か,シ
認 識 率/認
識 不 可 率 は ど の く らい な の か,処
理 速 度 は どの く らい
ス テ ム 実 現 の た め に どの く ら い の 開 発 コ ス トを か け られ るの か な ど,
シ ス テ ム を構 築 す る上 で こ れ らの 要 素 は 互 い に か か わ り合 っ て く る た め仕 様 を 明 確 に す る 必 要 が あ る 。 シ ス テ ム と し て は 認 識 率 が 高 く,誤 認 識 率,認 率 が 低 い こ とが 理 想 で あ る が,そ
れ を実 現 す る た め に,処
識不可
理 速 度 が 仕 様 を満 足
で き な く な っ た り,開 発 コ ス トが 大 幅 に膨 らん だ りす る こ と の な い よ う注 意 を 払 わ な けれ ば な らな い 。
(5) シ ス テ ム 構 成 と 注 意 点 記 号 ・文 字 認 識 は大 き く分 け て(a)記 号 ・文 字 パ タ ー ンの 入 力,(b)前 処 理,(c) 特 徴 抽 出,(d)認
識,の
四つ の手 順 で 行 われ る1)。
(a) 記 号 ・文 字 パ タ ー ン入 力 記 号 ・文 字 パ ター ン と して の 画 像 入 力 と し て ラ イ ン セ ンサ,二
次 元CCDカ
メ
ラ,ま た は入 力 用 パ ネ ル(タ ッチパ ネ ル)な ど の 方 法 が あ るが,一
般 的 に記 号 ・ 文
字 パ タ ー ン画 像 の 入 力 に は紙 送 り機 構 を備 え た ラ イ ンセ ン サ を用 い る場 合 が 多 く,ま た 近 年,二 込 み,該
次 元CCDカ
メ ラ な どの 撮 像 デ バ イ ス を用 い て 画 面 全 体 を取 り
当 す る 記 号 ・文 字 部 分 だ け を切 り出 す 手 法 も用 い られ る。 こ の と き,
後 の 処 理 が 容 易 に な る よ う,背 景 と記 号 ・ 文 字 部 の コ ン トラ ス トの 強 調 を す る こ とが 望 ま し く,そ の た め に も対 象 物 に対 す る 照 明 に つ い て は コ ン トラス トの 区 別 が つ く よ う に 適 切 な 照 明 方 法 を 選 択 す る。 照 明 器 具 に も通 常 の 白 色 光 を 用 い た も の か らLEDを (b) 前
処
一 般 的 に,得
利 用 した サ ー ク ル 型 の もの まで 種 々 あ げ られ る。
理 ら れ た 画 像 は不 鮮 明 で あ っ た り,雑 音 が 重 畳 し て い る 場 合 な ど
で そ の ま ま で は 正 しい 処 理 が で きな い 。 この た め に 前 処 理 と して雑 音 除 去(平 均 値 フ ィ ル タ,メ ジ ア ン フ ィル タ1)な ど),正 規 化(拡 大,縮 小,切 出 し,回 転 な ど), ひ ず み 補 正,強
調(unsharp
maskingな
ど),復 元(ウ ィ ナ ー フ ィ ル タな ど)な ど
の処 理 が 必 要 とな る2)。 (c) 特 徴 抽 出 特 徴 抽 出 は,与
え られ た 画 像 か ら的 確 な画 像 だ け を抽 出 す る こ とで,処
理方
法 と し て は し きい 値 処 理(threshold),エ
ッ ジ抽 出(edge detection),ハ
フ変 換,
特 徴 選 択 法3)な ど種 々 の 手 法 が提 案 さ れ て い る4)。画像 全 体 か らあ る部 分 を抽 出 す る に は特 徴 と な る 部 分 を限 定 す る必 要 が あ り,長 方 形 の 切 出 し に は ハ フ変 換 が 用 い られ て い る5)。 ま た,し
きい 値 処 理 に よ る2値 化6)ま た はエ ッジ 抽 出 な どで,画 像 の あ る特 定
の 部 分,複
数 の 記 号 ・文 字 が あ る画 像 の 場 合 は,一 つ の記 号 ・文 字 に分 離 した デ
ー タを 抽 出 し(記 号 ・ 文 字 の 切 出 し) ,以 後,認 識 処 理 しや す い 画 像 デ ー タ に加 工 す る方 法 も提 案 さ れ て る 。 (d) 認
識
記 号 ・文 字 の 認 識 は,は じめ の う ち は 印刷 さ れ た 数 字 な ど単 純 構 造 の 入 力 パ タ ー ンが 主 で あ っ た が ,認 識 処 理 手 法 の 技 術 が 確 立 さ れ る に つ れ,英 数 字,漢 字 の 認 識 が 実 用 化 さ れ,最
近 は 手 書 き文 字 に 対 す る 認 識 処 理 の研 究 が 盛 ん に行 わ
れ て い る。
4.7.3
画像処理手法
文 字 認 識 は 大 別 して(1)類 似 度 法(パ タ ー ンマ ッチ ング),(2)構 げ ら れ る 。 印 刷 文 字 の 認 識 に は 類 似 度 法 が 使 用 さ れ,手
造解析 法が あ
書 き文 字 の 認 識 に は構
造 解 析 法 と類 似 度 法 が 主 に使 わ れ る。
(1) 類 似 度 法(パ タ ー ンマ ッチ ン グ) 類 似 度 法 は テ ンプ レー ト(template)と 呼 ば れ る モ デ ル画 像 と入 力 処 理 され た 画 像 と を比 較 して,相 互 の 関 係 が 強 い モ デ ル を 選 ぶ 手 法 で あ る。 類 似 度 法 に は(a) 相 関法 と(b)残 差 逐 次 検 定 法7)が 提 案 され て い る。
(2) 構 造 解 析 法 構 造 解 析 法 は,前 処 理 で 分 割 され た 部 分 画 像 に対 し,画 像 模 様 の 構 成 要 素 を 抽 出 し配 置 規 則,濃
度,幾
何 学 的特 徴 か ら模 様 の パ ター ン を決 定 す る 手 法 で あ
る。 模 様 の パ タ ー ン と して は 記 号 ・文 字 の 特 徴 あ る 部 分 を取 り出 して,そ
の記
号 ・文 字 が 何 で あ る か を判 断 す る。 近 年,こ の 構 造 解 析 法 を応 用 して 知 的 信 号 処 理 を行 う手 法 が 幅 広 く研 究 され て お り,こ の 知 的信 号 処 理 に は(a)フ ァ ジ ー推 論
を 用 い た 手 法9∼12),(b)ニ
ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク13∼15)を 用 い た 手 法 な ど が あ げ
られ る。
記 号 ・文 字 認 識 に 関 して は現 在 も種 々 の研 究 が 行 わ れ て い る が,基 本 的 に 問題 設 定 や モ デ ル 設 定 に あ る 制 限 を設 け て い るた め に,1箇
所 で使 用 さ れ た 手 法 が ほ
か の と ころ で も使 用 さ れ る とは 必 ず し も い え な い 。 した が っ て,ど
の よ う な記
号 ・文 字 を 認 識 す る か に よ っ て最 適 な 手 法 を選 び,組 み 合 わせ て い く必 要 が あ る。
4.7.4
応 用 事 例:LSIパ
こ こ で は,LSIパ
ッケ ー ジ 表 面 の 印 字 品 質 検 査
ッ ケ ー ジ の 表 面 に捺 印 さ れ た,記
質 検 査 に つ い て 述 べ る 。LSIな
号 お よびマー クの 印字 品
どの 電 子 部 品 に お い て,外 見 上 の 品 種 の 識 別 は
表 面 に捺 印 さ れ た 記 号 の み に よっ て 可 能 で あ り,捺 印 さ れ た 記 号 の 品 質 は 製 品 の 品 質 の 一 部 で あ る 。 こ の 節 で はLSIの
出荷検 査 にお ける印字 品質検 査 につい
て 述 べ る 。 印 字 品 質 の 不 良 項 目 と して,以 下 が あ げ られ る。 ① 捺 印 文 字 違 い ② か す れ,に
じみ
③ 文 字 の 欠 け,汚 れ 図4.65に,プ
リ ン ト基 板 に 実 装 さ れ た 状 態 のLSIの
例 を,図4.66に,捺
図4.65 プ リ ン ト基板 上 に実 装 され たLSI
印不
図4.66 捺 印 不 良 の例
図4.67 装置 構 成例
良 の 例 を,図4.67に,捺
従 来,こ
印 品 質 検 査 装 置 の 装 置 構 成 例 を 示 す 。17)
の 種 の 捺 印 品 質 検 査 は,処 理 装 置 に 取 り込 ん だ 画 像 を あ らか じめ 決
め られ た し きい 値 で2値 化 し,縦 方 向 お よ び 横 方 向 に 白 画 素 数(あ る い は黒 画 素 数)を 集 計 して 文 字 列 の 位 置 を求 め,さ
ら に1文 字 ず つ 文 字 の 位 置 を 同 定 して,
辞 書 パ ター ン と照 合 す る とい う方 式 が と られ て い た。16)しか し こ の方 法 で は,経 時 的 な照 明 条 件 の 変 動 や,捺
印 の 濃 さの 変 化 に よ り,あ
らか じめ 定 め た し きい
値 と,最
適 な し き い 値 との 差 が 大 き くな り2値 化 に失 敗 した り,文 字 が 部 分 的
に 欠 け て い る場 合 な どで は,辞 書 パ タ ー ン との 重 ね 合 せ に 失 敗 す る こ とが あ っ た 。 そ こ で,近
年 で は,照
明 条 件 の 変 動 に 強 く,最
もパ タ ー ン ど う しが 重 な る
座 標 と,そ の 座 標 で の 一 致 度 を 求 め る こ と の で き る,正
規化相 関 アル ゴリズム
に よ る 濃 淡 パ ター ンマ ッチ ン グ 手 法 が 利 用 され る傾 向 に あ る 。 正 規 化 相 関 で は, 二 つ の 濃 淡 パ ター ン をそ の 画 素 数 を次 元 とす るベ ク トル と考 え,そ
の二つ のベ
ク トル の な す 角 度 の 余 弦(cosθ)を 一 致 度 と して い る(2.2.1項 の 画 像 信 号 処 理 を 参 照)。 次 に,各 不 良 項 目の 検 査 方 式 につ い て述 べ る。 印 字 文 字 違 い:検 査 対 象 を 文 字 と し て 認 識 し,別 の 文 字 と認 識 あ るい は,文 字 と して 認 識 で きな か っ た 場 合 に印 字 文 字 違 い と判 定 す る か,そ
れ と も,文 字
も記 号 も濃 淡 パ ター ン と考 え,基 準 パ タ ー ンか らの 形 状 あ る い は濃 度 の 逸 脱 を 印 字 間 違 い と判 定 す る か で ア プ ロ ー チ が 異 な る。 こ の例 で は,文 字 パ ター ン と文 字 コー ドとの 対 応 づ け が不 要 で あ る た め,後 者 の ア プ ロ ー チ を とる 。 捺 印 の に じみ,か
す れ,欠
け,汚
れ:印 字 文 字 違 い の 検 査 と同 様,一
致度 の
許 容 範 囲 内 の も の を 良 品 とす る。 濃 淡 パ タ ー ンマ ッチ ン グ 手 法 の 問 題 点 と そ の 対 処 方 法:正
規化 相 関手法 に よ
る捺 印検 査 に は以 下 の 問 題 点 が あ る 。 ① 類 似 文 字 と の 文 字 違 い が あ っ た場 合 に,パ
ター ン変 動 の 許 容 範 囲 が 広 い
と,不 良 品 の リー ク要 因 と な る(た とえ ば6と8の
違 い を許 容 範 囲 内 と して
し ま うケ ー ス)。 ② 文 字 違 い な の か,捺
印 の に じみ な の か が,一 致 度 か らは判 断 で きな い 。
一 致 度 が 低 い と き に,そ の 原 因 が 文 字 違 い,文
字 の 欠 け,か す れ,あ
るい は
に じみ な の か を 区 別 す る に は,次 の 二 つ の 方 法 が 考 え られ る。 ① 文 字 単 位 だ け で な く,文 字 の 部 分 的 な テ ン プ レー トも作 成 し,そ れ ぞ れ の 一 致 度 の 中 で,一 致 度 が し き い 値 よ り低 い 部 分 を欠 け ま た は 汚 れ と判 定 す る 。 欠 け か,汚
れ か の 判 別 は,そ
均 よ り値 が 高 い 画 素 数 を,テ
の 部 分 パ タ ー ン を含 む 矩 形 の 画 素 値 平
ン プ レ ー ト と被 検 査 文 字 とで 比 較 して 判 断 す
る。 ② 文 字 単 位 で も,画 素 値 平 均 よ り値 が 高 い 画 素 数 を,テ
ンプ レ ー トと被 検
査 文 字 とで 比 較 し,に
じみ か,か す れ か を判 別 す る。
各 画 素 値 と平 均 値 との 差 分 は,正 規 化 相 関 値 を求 め る過 程 で計 算 され る。 文 字 の 部 分 的 テ ンプ レ ー トマ ッチ ング を行 う こ とは 余 計 に 処 理 時 間 を要 す る の で, 要 求 検 査 精 度 と処 理 時 間 との 兼 ね合 い で 検 査 ア ル ゴ リズ ム を設 計 す る 必 要 が あ る。
■ 参
考
文
献
1) 尾 上 守 夫 ほ か:画 2) A.Rosenfeld:
像 処 理 ハ ン ド ブ ッ ク,昭 晃 堂,1978.
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3) 若 林 哲 史,鶴
Picture
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5) 安 居 院 猛,崔 領 域 抽 出,電
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学 会 論 文 誌(D), 11) 萬 木 正 樹,永
J67-D,
情 報 通 信 学 会 論 文 誌(D), 12) 来 海 雅 俊,勅
トロ ー ク 結 合 規 則 を 用 い た オ ン ラ イ ン く ず し字 分 類,電 11, pp. 1285-1292,
田 静 男,小
沼 賢 二,久 J68-D,
使 河 原 正 樹,金
子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌(D-Ⅱ), 13) 中 野 ほ か:入
門 と実 習
14) 今 井 勝 次,郷
原 一 寿,内
置,大
6, pp. 1320-1327,
山 憲 司:フ J77-D-Ⅱ,
原 一 寿,内
層 分 析 法 に よ る オ ン ラ イ ン文 字 認 識,電
2, pp. 271-277,
1994.
ニ ュ ー ロ コ ン ピ ュ ー タ,技 術 評 論 社,1989. 川 嘉 樹:ニ
ュ ー ラ ル ネ ッ トワ ー ク の 学 習 に よ る 目標 パ タ ー ンの 位
川 嘉 樹:3層BPモ
J75-D-Ⅱ,
6, pp. 748-756,
1991.
デ ル を用 い た ノ イ ズの あ る 原画 像 に対 す る手 書 J75-D-Ⅱ,
2, pp. 314-323,
1992.
ン ピ ュ ー タ ー 画 像 処 理 入 門,総 研 出 版,1985.
17) 中 野 宏 毅:PM55パ
子
1985.
ァ ジ ー 推 論 の 手 書 き 文 字 認 識 へ の 応 用 に つ い て,電
き文 字 認 識,電 子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌(D-Ⅱ), 16) 田 村 進 一:コ
子 情報 通信
1984.
保 田 恵 子:階
き さ の 検 出,電 子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌(D-Ⅱ),
15) 今 井 勝 次,郷
子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌(D-Ⅱ),
1989.
タ ー ンマ ッ チ ン グ ボ ー ド,画 像 ラ ボ96年10月
号,pp.
50-53, 1996.
4.8
見 えない ものを視 る
こ こ で は"見
え な い もの を視 る"を テ ー マ に画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム の事 例 を述
べ る。"見 え な い"要
因 は さ ま ざ まで,①
現 象 が 速 す ぎ た り,逆 に 遅 す ぎた りす
る,② 単 発 で 生 じる た め 観 測 す る タイ ミ ン グが 計 れ な い,③ あ る,④ 対 象 物 が 物 に さ え ぎ られ て い る,な
人間の可視領域 外で
どが あ る。 と りあ げ た 事 例 は③,④
の 場 合 で あ り,電 磁 波,超 音 波 また は赤 外 線 を利 用 して 対 象 物 の 情 報 を 可 視 化 し て い る 。X線 の 利 用 に つ い て は参 考 文 献17∼21を
4.8.1
参 照 さ れ た い。
地 中 レー ダ
(1) 地 中 レー ダ 開 発 の 経 緯 電 磁 波 を利 用 して 地 中 に あ る物 体 を探 査 す る装 置 は"地 磁 レ ー ダ","電 1900年
磁 波 レー ダ"な
どと呼 ばれ て いる。 地 中 レー ダの構 想 は古 く
当初 か ら試 み られ て い るが,レ
格 化 した の は1960年
中(地 下)レ ー ダ""電
ー ダ方 式 の地 中 探 査 シス テ ム の 開 発 が 本
代 に な っ て か らで あ る。 そ の 主 な原 因 は地 中 で は 電 磁 波 の
減 衰 が 著 し く,ま た地 中 に存 在 す る探 査 対 象 物 以 外 の さ ま ざ ま な 物 質 か らの 反射 信 号 が 重 ね合 わ され る こ と に よ っ て,良 好 なS/N比
が得 られなか っ たこ とであ
る。 事 例 と して は都 市 に お け る地 中埋 設 物,道 路 の 陥没 の 原 因 とな る 空 洞4),遺 跡5,6) な どの 調 査 が あ る。 (2) 埋 設 管 の 探 査2) 都 市 の地 中 に は 電 話,電 気,ガ
ス,上 下 水 道 な どの さ ま ざ まな 管 路 が埋 設 され
て い る。これ らの 位 置 を精 度 よ く記 録 した 図 面 が 整 備 され て い な い状 況 に お い て, 電 磁 波 を応 用 した探 知 器 を利 用 して 埋 設 物 体 を短 時 間で 精 度 よ く探 知 で き る技 術 の 開発 が 求 め られ て い る。 現 在 実 用 化 さ れ て い る埋 設 物 探 査 法 と して は,電 磁 誘 導 法,水
中 音 波 法,電
磁 レー ダ法,電 磁 法 な どが あ るが,適
用 対 象 ご と に種 々 の
問 題 が あ る。 こ の う ち電 磁 レー ダ法 は地 表 面 よ りパ ル ス状 の 電 磁 波 を地 中 に発 信 し,埋 設 物 か らの 反 射 波 を検 出 す る もの で あ り,埋 設 さ れ た 管 の材 質 に よ らず 媒 質 との 間 に比 誘 電 率 の 差 が あ れ ば検 出 が 可 能 で あ る。 以 下 に示 した 事 例 で は 送 受 信1対 の ア ン テ ナ を使 用 して い るが,こ
の ア ンテ ナ3組 を120度
回 転 した 位 置 に
配 置 し て異 な る偏 波 方 向 の 電 磁 波 を用 い て,地
中埋 設 管 の方 向 に よ らず 三 次 元 的
な 検 出 を可 能 に した 開発 事 例 も あ る3)。 (a) 電 磁 レー ダ法 の 原 理 装 置 は 図4.68に 示 す よ う に1組 の 送 信 と受 信 ア ン テ ナ か ら な り送 信 ア ン テ ナ に 給 電 し て,周 波 数 が 数 百MHz程
度 で,パ
ル ス 幅 約1∼3nsの
イ ンパ ル ス を 発
生 させ る。 この 電 磁 波 は 地 中 を伝 搬 し,誘 電 率 な ど電 気 的 特 性 の 異 な る物 体 に あ た る と反 射 し,受 信 ア ンテ ナ で 検 出 され る。 こ の信 号 に種 々 の演 算 が 施 さ れ埋 設 物 が 検 出,判 定 され る。埋 設 物 の 深 さL〔m〕 は 近 似 的 に式(4.7)に よ り求 め られ る。
(4.7) こ こ で,T〔s〕 は電 磁 波 の 往 復 伝 搬 時 間,V〔m/s〕 は地 中 で の 電 磁 波 伝 搬 速 度,C 〔m/s〕は 空 気 中 で の 電 磁 波 伝 搬 速 度,εsは 土 の 比 誘 電 率 で あ る。
図4.68 電 磁 波 レー ダ法 に よる埋 設管 検 出の 原理 図
実 際 の 測 定 で は 図4.68の 矢 印 方 向 に ア ン テ ナ を移 動 させ,た ご と に受 信 信 号 を記 録 す る。 図4.69に(a)地
と え ば2cm移
動
中 断 面 図 と(b)観測 パ タ ー ンの 例 を示
す 。 図4.69(b)中 の 双 曲線 状 の パ タ ー ンが 埋 設 管 か らの 反 射 波 で あ る。 ア ン テ ナ か らは 広 角 度 に 電 磁 波 が 放 射 され,受 信 ア ン テ ナ は埋 設 物 に対 して横 断 的 に移 動 しな が ら信 号 を 収 集 す る た め,反 射 像 は 双 曲線 状 に な る。 さ らに,実 際 の 道 路 な ど で 使 用 す る場 合 に は,① 比 が低 い,②
地 中 で は 電 磁 波 の 減 衰 が 大 き い の で 受 信 信 号 のS/N
電磁 波 は埋 設 物 の ほか,地
層 や 地 下 水 の 境 界 面 な どで も反 射 す る の
図4.69 地 中断 面 と観 測 パ ター ン例
で,反
射 信 号 は さ ら に 複 雑 な もの に な る。 こ れ ら の 問 題 点 を解 決 す る た め に
種 々 の 信 号 処 理 技 術 を適 用 す る。 (b) 信 号 処 理 技 術 ① 感 度 の 自動 設 定 と前 処 理 受 信 ア ンテ ナ で 検 出 され た 反 射 像(観 測 パ タ ー ン)か ら埋 設 物 を容 易 に判 定 す る に は ,観 測 パ ター ン全 体 の 中 で 埋 設 物 の 信 号 が 目立 つ よ う に 受 信 条 件 の う ち の 信 号 増 幅 率 を適 切 に 設 定 す る 必 要 が あ る 。 ま た埋 設 物 の 断 面 観 測 パ タ ー ン で は,受 と な る た め,こ
信 時 間 の 短 い 部 分 は ほ とん ど同 一 の 波 形
の 部 分 を除 去 す る 前 処 理 を施 す 。
② 合 成 開 口 法
ア ン テ ナ は 指 向 性 が 広 く,か な り広 い角 度 で 電 磁 波 を送
受 信 して い る 。 しか も受 信 し た 反 射 波 は ア ンテ ナ の 真 下 の 位 置 に 表 示 さ れ る た め 図4.70に 示 す よ う に管 か らの 反 射 信 号 は双 曲 線 状 に広 が る 。
図4.70 ア ンテナ か らの電磁 波 の照 射 と反 射 波 の つ くる形 状
図4.71 埋 設管 か らの 反射
図4.71に
測 定 位 置Xか
ら発 信 され た電 磁 波 が 斜 め に管 に到 達 し,こ の 反 射 波
が 測 定 さ れ る模 様 を示 す 。 反 射 波 が位 置Xの 真 下(深 さL)に 表 示 され る の で そ の 座 標 は,
(4.8) とな る 。 こ こでDは
管 の 半 径 で あ る。 こ れ は埋 設 位 置 座 標(X0, L0)を 頂 点 とす る
双 曲 線 を表 す 。 式(4.7)に よ り距 離Lを 往 復 伝 搬 時 間Tに 変 換 す れ ば,ア
ンテナ
の真 下 に 埋 設 管 が あ る と きの 往 復 伝 搬 時 間 をT0と す る と,(X0, T0)を 頂 点 とす る 双 曲線,
(4.9) と な る 。 し た が っ て,こ
の 反 射 波 の振 幅 値(強 度)を 本 来 の 埋 設 管 の 位 置 に 重 畳
す る と実 際 の 埋 設 管 の 位 置 が 強 調 され る。 そ の 他,埋
設 物 か ら の 反 射 波 が 小 さ な 場 合 に も有 効 とな る よ う受 信 波 形 の振
幅 値 を そ の ゼ ロ ク ロ ス 点 で 規 格 化 し て か ら合 成 開 口 処 理 を行 っ た り,反 射 波 の 周 波 数 分 布 の 特 徴 を利 用 した処 理 方 法 な どが あ る 。 (c) 探 査 性 能 地 盤 条 件 が よ く配 管 状 態 が よ け れ ば,深
さ2mま
で の 径 数cmの
配 管 を探 知 で
き る。 し か し,実 際 の 現 場 の 種 々 の 条 件 下 で 実 用 可 能 とな る た め に は ハ ー ド ・ ソ フ ト両 面 に お い て さ ら な る改 良 が 必 要 で あ る。
4.8.2
魚 群 探 知 機13,14,27)
超 音 波 の 通 信 的 な応 用 法 の 中 で最 も普 及 して い るの は水 中物 体 の 探 査 で あ る 。 魚 群 探 知 機(以 下 魚 探 とい う)は トラ ン ス ジ ュ ー サ で 海 中 に 音 波 を 発 射 し,魚 群 か らの 反 射 に よ っ て戻 って くるエ コ ー を 受 信 して 魚 群 の 存 在 を 知 る 装 置 で あ る。
(1) 超 音 波 とそ の 特 性 こ う も りや イ ル カ が 超 音 波 を 発 信/受 信 し て獲 物 や 障 害 物 の 検 出 に利 用 し て い る こ と は広 く知 られ て い る。20kHz以
上 の 音 波 を 超 音 波 と呼 ぶ が 主 に水 中 で
の 特 性 を述 べ る 。 (a) 縦 波 と横 波 音 波 は 空 気 中 を約340m/s,海
水 中 を約1500m/s,鋼
中 を約5000m/sで
伝搬
す る 。 超 音 波 は気 体 よ り も液 体 や 固体 中 で よ く伝 搬 し,液 体 と気 体 中 で は 縦 波 だ け が伝 わ る 。 縦 波 で は波 の 進 行 方 向 と媒 質 の 振 動 方 向 とが 一 致 す る 。 (b) 水 中 音 の 拡 散 減 衰 と吸収 減 衰 水 中 の 減 衰 に は 拡 散 減 衰 と吸 収 減 衰 の 二 つ が 考 え られ る。 拡 散 減 衰 は距 離rの 二 乗 に比 例 して 音 響 強 度Iが 減 衰 す る もの で, (4.10) で 表 さ れ る。I0は 定 数 で あ る。 デ シベ ル 表現N〔dB〕 で は,
(4.11) と な り,20log10rの 一 方,吸
減 衰 とな る。
収 定 数 を αとす る と吸収 減 衰 は
(4.12) で 与 え られ,デ
シ ベ ル 表 現 で は,
(4.13) と な り,αrの 収 減 衰 は,周
(c) 音
減 衰 が 起 こ る 。 し た が っ て 全 損 失 は,20log10r+αrと
な る。吸
波 数 が 高 く な る ほ ど大 き く な る 。
圧
水 面 を十 分 に広 い 板 で た た く と水 中 に縦 波 が 進 行 して い くが これ を 平 面 波 と
呼 ぶ 。 こ の 平 面 波 が 水 や 空 気 中 を伝 搬 す る と き,あ る 点 に お け る 音 圧Pと
粒子
速 度 μの 比 率 は 一 定 で あ る 。 こ の比 率 は,伝 搬 媒 質 の 密 度 ρと音 速cの 積Z0に 等 し い 。 こ のZ0を 固 有 音 響 イ ン ピ ー ダ ン ス と い うが,気 100万,固
体 で は1000万
数 をfと す る と μ=dfの た,P=μZ0に
体 で は100,液
体では
の 桁 で あ る。 い ま,発 信 器 の 振 動 変 位 をd ,振 動 周 波 関 係 か ら,fが 大 きい ほ ど粒 子 速 度 μは大 き くな る。 ま
よ り液 体 や 固 体 中 の 方 が よ り大 き な音 圧Pが 発 生 し強 力 なパ ワ ー
を伝 搬 させ られ る。 (d) 超 音 波 の 直 進 性 と指 向 性 周 波 数 が 高 くな る と波 長 が 短 くな る(水 中 で の50kHz超
音 波 の 波 長 は 約3cm)
の で 光 の よ うに 直 進 す る性 質 を もつ よ う に な り,波 長 が10cm以
下 であれば屈折
や 反 射 な ど,伝 搬 通 路 を幾 何 光 学 的 に取 り扱 え る。 送 受 信 器 の振 動 面 面 積 を 波 長 に 比 べ て 大 き くす る と,鋭 い 指 向 特 性 をつ く る こ とが で き る。 振 動 子 開 口 径 が φの 円 形 単 板 振 動 子 か ら超 音 波 を送 波 した と きの 指 向特 性 は30),
(4.14) で 表 さ れ る。 こ こで,θ:ビ
ー ム 幅 の 開 口半 角,λ:超
音 波 の波 長 で あ る。 また ,
短 波 長 の 超 音 波 信 号 は幅 の 短 い パ ル ス(波 長 の数 倍 程 度)と して 放 射 で きる 。 この 鋭 い 指 向 性 と短 パ ル ス 特 性 に よ り,方 向 と距 離 分 解 能 の よい 魚 探 や ソナ ー な ど に 応 用 で き る 。 パ ル ス 幅 が 長 くな る と,パ ワー が 増 し,探 知 能 力 が 向 上 す る が,分 解 能 は低 下 す る。
(2) 魚 探 の 原 理 以 上 述 べ た よ う に 魚 探 で 用 い る音 波 に は,① 水 と い う媒 質 中 を伝 搬 す る,② 周 波 数 が20kHz以
上 の 超 音 波 で あ る,③ 単 一 周 波 数 の 音(コ ヒー レ ン ト)で あ る,
④ 持 続 時 間 の短 い パ ル ス 音 で あ る,と い う さ ま ざ ま な特 徴 が あ る。 魚 探 は 図4.72に 示 す よ う に,超 音 波 周 波 数 の パ ル ス 状 電 気 信 号 を つ く り出 す 発 振 部 と これ を水 中音 響 信 号 に 変 換 す る トラ ンス ジ ュ ー サ,魚 群 か らの 微 弱 な エ コー を増 幅 し検 波 す る 受 信 部,こ る。 通 常,同
れ を 視 覚 情 報 と し て表 示 す る 表 示 部 か らな
じ トラ ンス ジ ュ ー サ が 送 信 と受 信 両 方 の 役 目 を果 た す が ,送 波 用
と して は外 部 送 波 器 と呼 び,受 波 に 対 して はハ イ ドロ ホ ン と呼 ぶ 。
図4.72 魚 群 探 知機 シス テ ム
図4.73
ト ラ ン ス ジ ュ ー サ と指 向 性
(a) トラ ン ス ジ ュ ー サ トラ ンス ジ ュ ー サ(図4.73)は
電 気 エ ネ ル ギ ー を音 響 エ ネ ル ギ ー に 変 換 す る装
置 で あ る 。 水 中 音 響 トラ ン ス ジ ュ ー サ に は 固 体 の伸 縮 ひ ず み を 利 用 す る 。 原 理 的 に は磁 わ い 型,電
わ い 型 な どが あ るが 磁 わ い 型 は電 わ い 型 に お き換 え られ つ
つ あ る。 振 動 子 が 水 と接 触 す る 面 は ピス トン状 に振 動 す る の で振 動 面 と垂 直 な 方 向(音 軸)に は 各 部 か らの 音 響 エ ネ ル ギ ー が す べ て 加 算 さ れ 指 向 性 が 形 成 さ れ る。 (b) 魚 の 音 響 散 乱 音 波 が 魚 に あ た り,そ
の パ ワ ー が 散 乱 さ れ て,一
部 が 入 射 方 向 に戻 って くる 。
こ れ を 後 方 散 乱 と い い そ の 程 度 を 表 す の が 後 方 散 乱 断 面 積(backscattering cross
section,σbs)で あ り,入
射 波Iiと 単 位 距 離 戻 っ た 点 で の 後 方 散 乱 波 の 強 さIr
の 比 で 定 義 され る。
(4.15) 魚 探 で よ く使 わ れ る ター ゲ ッ トス トレ ング スTS〔dB〕 とい う用 語 は,こ
の後方散
乱 断 面 積 σbsのデ シベ ル表 現 で あ り,次 式 で 表 さ れ る 。
(4.16) σbsは散 乱 体 の 断 面 積 に比 例 し,魚 の体 長 の 二 乗 に比 例 す る の で 魚 の サ イ ズ を推
定 で き る 。 トラ ンス ジ ュ ー サ か ら送 出 さ れ る音 響 強 度 をI0と し,後 方 散 乱 断 面 積 σbsの魚 が 音 軸 上 の 距 離rに い た とす る と,受 波 強 度Ieは
(4.17) と な る。 (c) 体 積 後 方 散 乱 係 数 魚 群 の 個 々 の 魚 か らの 後 方 散 乱 波 を合 成 し,魚 群 量 情 報 を 求 め る も の が体 積 後 方 散 乱 係 数Svで backscattering
あ り,そ の デ シベ ル 表 現 を 体 積 後 方 散 乱 強 度Sv(volume
strength)と い う。 計 量 魚 探 は,船
を走 らせ な が らSvを あ る 深 度
範 囲 に つ い て 積 分 す る こ とで 単 位 面 積 あ た りの 後 方 散 乱 断 面 積 を得 るが,こ に 調 査 海 域 の 面 積 を掛 け れ ば 全 資 源 尾 数 が 計 算 さ れ,さ
れ
らに対象魚 の平均体 重
を 掛 け れ ば 全 資 源 重 量 が 得 られ る 。
(3) そ の 他 の 超 音 波 応 用 ソ ナ ー:超 音 波 を 利 用 して 水 中 を探 索 す る こ とは 同 じで あ る が,魚 場 合,通
探 とい う
常 は垂 直 魚 探(船 の 真 下 に い る魚 群 の 探 知 機)を さ し,水 平 方 向 へ の探
知 装 置 と して は ソ ナ ー(SONAR: 時 に して 半 径1800m内
sound
navigation
and
rounding)と
い う。 瞬
の魚 群 状 況 を探 知 表 示 で き る ス キ ャニ ング ソナ ー も実 用
化 され て い る。 ま た,船 舶 航 行 の 際 の氷 河 検 出 に も利 用 され て い る。 探 傷:超 部 品,鉄
音 波 を利 用 して 金 属 体 中 の 見 え な い 傷 を 調 べ る こ とが で き,航 空 機
道 車 輪 の 軸 な ど の検 査 に応 用 さ れ て い る。 これ ら は検 知 距 離 が 短 い の
で,分 解 能 を よ くす るた め に0.5∼10MHzの れ る。 また,魚
探 と 同 様,探
波長 の短い超 音波パ ルスが用 い ら
傷 面 に 垂 直 に縦 波 を入 射 させ る垂 直 探 傷 法 と,固
体 内 で は横 波 も存 在 す る の で 幾 何 光 学 の 理 論 を適 用 して 斜 め に 超 音 波 を照 射 し, 横 波 だ け が 金 属 内 に入 射 す る よ う に工 夫 した 斜 角探 傷 法 が あ る29)。 医 療 診 断:医
療 応 用 と して超 音 波 医 療 診 断 装 置 が あ る 。 魚 探 の 周 波 数 は低 く
20∼400kHz程
度 で あ る が,胎
70倍 の3.5MHzと
児 用 に は近 距 離 で精 度 よ く見 る た め に 魚 探 の約
い っ た 高 い 周 波 数 を採 用 し,ま た 人 体 に対 す る害 を少 な くす
る た め に 弱 い 出 力 の 超 音 波(100mW/cm2程 生 体 牛:農
度)を 用 い て い る。
学 系 で は生 体 牛 に お け る 肉 質 を 測 定 す る の にX線
やMRIと
とも
に,超 音 波 に よ る 方 法 も試 み られ て い る9∼12)。こ の分 野 へ の 超 音 波 利 用 の 歴 史 は古 く,家 畜 へ の 応 用 で は1956年
に ウ シ の 皮 下 脂 肪 厚 が 測 定 され て い る 。 牛 肉
の測 定 に用 い られ る超 音 波 は 短 距 離 で 高 分 解 能 を め ざ し,1∼5MHzの
波 長 の短
い超 音 波 パ ル ス を利 用 す る 。 農 産 物:農
産 物 へ の 応 用 で は,ジ
ャ ガ イ モ の 空 洞 の 測 定22,23)に250kHzの
超 音
波 が 用 い られ た り,他 の 事 例 で は横 波 超 音 波 を利 用 した ダ イ コ ンの ス入 り検 査, リ ン ゴの 内 部 押 せ 傷 判 定24)な どが あ る 。
4.8.3
赤 外 線 に よ る 温 度 計 測 ・応 力 計 測
(1) 赤 外 線 サ ー モ グ ラ フ ィ に よ る 外 壁 の 検 査25) 建 物 の 外 壁 は 長 年 に わ た り日射 や 風 雨 に さ ら さ れ て 経 年 劣 化 した り,水 分 ・ 熱 応 力 な ど に よ り外 装 材 が 剥 離 現 象 を 起 こ す こ とが あ る 。 早 期 に 外 装 材 の 劣 化 状 況 を把 握 す る こ とで,未
然 に 事 故 を 防 止 す る こ とが で き る 。 そ の た め に 一 つ
の方 法 と して 非 破 壊 検 査 が あ り,簡 便 な検 査 と して"赤 外 線 サ ー モ グ ラ フ ィ 法" が あ る 。 こ の 赤 外 線 セ ンサ を 応 用 した 赤 外 線 映 像 装 置 は気 象 ・宇 宙 関 係 を初 め と して 医 療 関 係,工 用 で は 昭和58年
業 関 係 な ど多 岐 に わ た っ て 応 用 され て い るが,建
物へ の応
頃 か ら研 究 が 行 わ れ て きた 。
赤 外線 映像装 置 は物 質面 か らその温度 に対応 して放射 され る赤外線 エ ネル ギ ー を赤 外 線 セ ンサ で 検 出 し,対 象 物 の 表 面 温 度 分 布 を 熱 画 像 と し て モ ニ タ に 表 示 す る装 置 で あ る。 建 物 の 外 壁 表 面 温 度 は 太 陽 の 日射 な どの気 象 変 化 を 受 け る と,そ の壁 の もつ 断 面 形 状 と材 料 の 比 熱,熱 伝 導 率 な ど,熱 特 性 の 違 い に よ り, 種 々 の 表 面 温 度 が 生 じる 。 一 般 に,外 装 材 の 剥 離 部 分 は空 気 層 を形 成 して お り, 熱 の不 導 体 とな って 健 全 部 分 に 比 べ 表 面 温 度 は高 く(場 合 に よ っ て は低 く)示 さ れ る傾 向 が あ る 。 この 温 度 差 に よ り剥 離 部 分 を判 定 す る 。
(2) 赤 外 線 応 力 画 像 シ ス テ ム に よ る 応 力 測 定26) サ ー モ ビ ュー ワ を使 用 す る と,物 体 表 面 か ら放 射 され る 赤 外 線 が 温 度 に 関 係 す る こ と を利 用 して,二
次 元 の 温 度 計 測 が 可 能 に な る。 この サ ー モ ビ ュ ー ワ を
利 用 して,物 体 に力 が 加 わ る と き に熱 弾 性 効 果 に よ り発 生 す る 温 度 を計 測 す る こ とに よ り,間 接 的 に応 力 を 測 定 す る もの で あ る。
気 体 を 断 熱 的 に 圧 縮 す る と温 度 が 上 が り,膨 張 させ る と温 度 が 下 が る が,固 体 に 対 して も力 が 加 わ っ た と きに 同 様 の 発 熱,吸
熱 が 生 じ る こ とが 熱 弾 性 効 果
と して 知 ら れ て い る 。 弾 性 限 界 内 で は加 わ る力 の 量(主 応 力 の 和)と 発 熱 量 が 比 例 関 係 に あ り次 式 で 示 され る。
(4.18) こ こで,ΔT:温
度 変 化 量,K:熱
弾 性 定 数 ,T:試
験 片 の絶 対 温 度,Δ σ:主 応
力 和 の 変 化 量 で あ る。 した が っ て,く り返 し荷 重 を受 け る物 体 の 温 度 変 化 量 を 計 測 す れ ば 主 応 力 和 の 変 化 量 を 求 め る こ とが で き る。 固体 に お い て 通 常 の 応 力 変 化 に 伴 う温 度 変 化 の 値 は非 常 に小 さい の で荷 重 の タ イ ミ ン グ に 同期 を と りな が ら積 算 回 数 を重 ね
, 微 小 な温 度 を信 号 と して 取 り出 し画 像 化 を行 う。 赤 外 線 法 で 得 られ る 値 が く り 返 し荷 重 に よ る温 度 の 変 化 量 で あ り,0.5∼0.001℃
くらいの オー ダとなるが,
こ の 値 か ら実 際 の 応 力 値 へ 変 換 す る に は ,ひ ず み ゲ ー ジ を用 い て キ ャ リ ブ レー シ ョ ン した り,サ ンプ ル の 温 度 を実 測 して 比 例 定 数 を定 め た り して 行 う。 応 力 測 定 に お い て は ひず み ゲ ー ジ が 多 く使 用 され る が,点 測 定 で あ る た め パ ター ン測 定 を す る に は 数 多 くの ゲ ー ジ と手 間 が 必 要 で あ る。 こ れ に 対 し赤 外 線 法 の 長所 は, ① 面 と して の 応 力 分 布 図 が 得 られ る の で応 力 集 中す る 箇 所 の 見 逃 しが な い 。 ② 実 物 で 測 定 で き る の で 計 算 手 法 で は 困 難 な溶 接 部 の 測 定 や 複 合 材 料 に適 用 で きる 。 ③ 非 接 触 で 測 定 で きる の で 形 状 の 大 小,複
雑 さ に 関 わ らず 対 応 で きる 。
④ 取 り扱 い が 簡 単 で比 較 的 短 時 間 で 測 定 で き る。 ⑤ 理 想 的 ゴ ム(ボ ア ソ ン比0.5)を 除 くほ と ん どの材 料 に適 用 で き る。 こ れ に対 し短 所 と し て は, ① 一 定 周 波 数(0.2∼ 約90Hz)の ② 熱 応 力,残
留 応 力,ね
じれ,せ
く り返 し荷 重 が 必 要 で あ る。 ん 断応 力 は測 定 で き な い。
③ 主 応 力 の和 を測 定 す る の で 応 力 の 方 向 は 測 定 で きな い 。 ④ 放 射 率 の低 い 対 象 物 に は,黒 体 塗 料 を塗 布 す る必 要 が あ る。 が あ げ られ る。
■ 参
考
文
献
1) 可 視 化 情 報 学 入 門(見 え な い も の を 視 る),可
視 化 情 報 学 入 門 編 集 委 員 会 編,東
京 電 機大 学
出 版 局,1994. 2) 増 田 順 一,永
島 裕 二,有
岡 良 祐,河
野 貞 男:電
学 会 画 像 応 用 技 術 専 門 委 員 会 研 究 会 報 告,6,
磁 波 法 に よ る 地 下 埋 設 物 探 知 技 術,精
3) 熊 澤 孝 夫:三
次 元 検 知 が 可 能 な 地 中 埋 設 物 レ ー ダ,セ
4) 西 田 道 夫:地
中 レー ダ ー の 現 況,測
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感覚 量を測 る
感覚 量 を測 る と は
産 業 に お い て は,製 品 の 外 観 検 査 や グ レ ー ド付 け,選 別 な ど,作 業 員 の 目視 で 行 わ れ て い る作 業 も多 い 。 人 間 の 感 覚 が 判 断 基 準 とな る もの と して,た 色 み,質 感,表
と え ば,
面 の美 し さ な どを 問 題 とす る製 品 の 判 定 にお い て は,既 存 の 計測
器 で は直 接 的 に評 価 で き る も の が な く,人 間 の作 業 に 頼 ら ざ る を得 ない 状 況 が あ る。 画 像 計 測 ・検 査 シ ス テ ム の 開発 にお い て,人 間 の 感 性 に依 存 す る検 査 判 別 な どの 作 業 を 自動 化 す る 要 求 は 強 く,"感 覚 量 を測 る"こ と は,こ の た め の重 要 な技 術 と して位 置 づ け られ る 。 作 業 員 に よ る判 定 は 五 感 を 駆 使 して 行 わ れ る 。 画 像 処 理 応 用 シ ス テ ム の 場 合, 人 間 の 五 感 の 中 で 視 覚 に 関 連 す る 感 覚 量 に ほ と ん ど限 定 され る こ と に な る が,対 象 物 に よ っ て は,表 面 性 状 な ど,人 手 の 検 査 で は触 覚 に よ る部 分 も,画 像 処 理 に よ って 解 決 を 図 る 場 合 もあ る。 ま た,人 間 は単 純 に視 覚 に よ る判 断 を行 う の で は な く,対 象 物 の 観 察 部 位 周 辺 も含 め た 大 局 的 感 覚 や,素
材 の 意 味 や絵 柄 の美 的感
覚 の 要 素 も含 ま れ る。 顧 客 か ら の判 定 に 対 す る要 求,社
内 規 定 や,社
内生産管理
上 の 要 求 条 件 な ど,さ
ま ざ ま な要 因 に対 して,無
意 識 に 総 合 的 な 判 断 を行 っ て い
る 。 さ らに,人 間 は手 に よ る対 象 物 の 操 作 で 多 様 な 方 向 か ら対 象 物 を観 察 して お り,人 間の 観 察 条 件 を 機 械 に よ っ て模 倣 す る こ と 自体 困 難 で あ る 。 しか し,作 業 員 に よる 判 定 に は 次 の 問 題 点 が あ り,現 場 で の 自動 化 要 求 の 原 因 とな っ て い る 。 ① 作 業 員 で も基 準 や 選 別 尺 度 を 表 現 す る こ とが む ず か し く,社 内 基 準 を 明確 化 で き な い 。 ② 判 定 の 尺 度 が あ い ま い で あ り熟 練 した 感 覚 が 頼 りで あ る 。 ③ 尺 度 に は作 業 員 ご とに ば らつ きが あ り,検 査 員 の 違 い に よ る判 定 の 違 い が 避 け られ な い 。 ④ 作 業 速 度 に 限界 が あ り生 産量 の 増 加 に対 応 し き れ な い 。 ⑤ 疲 労 に よ る判 定 ミス は避 け られ な い 。 欠 陥 検 査 で は,細 か い 欠 陥 は 見 つ け て も,大
き
な欠 陥 を見 逃 して し ま う こ と もあ る。 ⑥ 熟 練 検 査 者 を育 成 し続 け る必 要 が あ る。 "感 覚 量 を測 る"こ との 基 本 は,① 人 間 の 判 定 ・評 価 を定 量 化 す る た め の 尺 度 を 決 定 す る こ と,② そ の 尺 度 に お い て,感 覚 量 との 対 応 づ け を行 う こ と,③ 検 査 判 定 に お い て そ の 尺 度 にお け る 評価 値 を 人 間 の 判 定 条 件 と リ ン ク させ る こ と,で あ る。 感 覚 量 を定 量 的 に評 価 す る 応 用 例 と して は,プ
リ ン タ印 字 品 質,カ
ラ ー 印刷 色
調 検 査,印 刷 欠 陥 評 価,真 珠 品 質 評 価,焼 物 表 面 評価,材 料 表 面性 状 の 自動 分 類, CRT画
面 品 質 評 価,化
ガ ラス 反 射 映 像,煎
粧 品 や シ ー トベ ル トの色 判 定,カ
茶 の 品 質 評 価,IC捺
ラ ー フ ィル ム,自 動 車
印 濃 淡 む らな ど,さ
まざ まな分野 にわ
た る1)。
4.9.2
シ ステ ム構 築 の 基 本
こ こで は"感 覚 量 を 測 る"こ との 目的,対 象,注 (1) 目的:検 査,計 測,分
意 す べ き項 目 を解 説 す る 。
類 な ど を 目的 とす る。 感 覚 量 を何 らか の定 量 的 な尺
度 に対 応 づ け,そ の 尺 度 を用 い る こ と に よ り,良 否 判 断,グ
レー ドづ け な ど を行
う。 (2) 対 象:上
記 目的 を達 成 す る た め に人 間 の 感 覚 を用 い て い る もの が 対 象 で あ
り,対 象 物 の 見 た 目の 特 性 を判 定 す る。 対 象 物 上 で 取 り扱 う カ テ ゴ リー は,大 く分 類 す る と,色 や 濃 淡 の 違 い に 関す る"色 調/濃 淡 レベ ル",表 の 外 観 形 状 と して の"形 状",色 どにわたる。
き
面 の絵柄 や物体
合 い/光 沢/つ や/肌 ざ わ りと い っ た"表 面 性 状"な
対 象 に よ っ て は,観 測 部 位 の み な らず,周
囲 の状 態 も含 め た判 断 が 必 要 な もの
もあ り,人 間 の大 局 感 を模 擬 す る トー タ ル 的 な 評価 が 必 要 とな る場 合 も あ る。 た と え ば,カ
ラ ー 印刷 物 表 面 の きず 検 査 の 場 合,同
性 に よ っ て,欠
じ程 度 の きず で も,絵 柄 の重 要
陥 の重 要 度 が 異 な る場 合 が あ る 。 また,局 所 的 に は 許 容 で き る程
微 細 な欠 陥 で も,頻 度 が 多 い と欠 陥 と な る場 合 が あ る。 こ の よ う に,何 が パ ラ メ ー タ で あ る か を見 つ け る こ とが 要 求 さ れ る た め ,感 覚 量 を扱 う判 定 は 困 難 で あ る。 (3) 要 求 仕 様:シ ス テ ム と して,現 場 の 自動 化 担 当 者 の 要 求 は,突 き詰 め る と "人 間 の判 断 基 準 の完 全 な模 倣"と な る だ ろ う 。 しか し,実 用 的 に は,投 資 コス ト との バ ラ ンス が 重 要 で あ り,シ ス テ ム と して妥 当 な 仕 様 を見 出 す 必 要 が あ る。 む や み な仕 様 拡 大 は コス トパ フ ォー マ ンス を悪 化 させ る こ と とな り,現 場 で の 自動 化 担 当者 は,シ ス テ ム と して の 妥 協 点 を見 出 す 必 要 が あ る。 (4) シ ス テ ム 構 成 と注 意 点:"感 自動 化 の 際 は,①
覚 量 を 測 る"上 で の 勘 所 を示 す 。 シ ス テ ム の
目視 作 業 の 現 状 把 握,②
③ 目標 とす る シ ス テ ム性 能 の 決 定,④
目視 判 定 結 果 済 み の サ ンプ ル の吟 味,
投 資 コ ス トの 算 出,の
手順 が大切 であ る
と い わ れ て い る。 まず ① で は,目 視 作 業 員 が 何 に着 目 して い る の か を 明 らか に す る 。 ヒ ア リ ン グ を行 い,チ
ェ ック 表 や 集 計 表 を活 用 して,判
る 項 目 を 明 らか に す る。 ② で は,目 の サ ン プ ル に つ い て,目 表 や 集 計 表 に,目
断要 因 とな り得
視 判 定 結 果 の状 況 を把 握 す る た め に,個
々
視 の 判 定 結 果 を で き る だ け 詳 細 に記 述 す る 。 チ ェ ッ ク
視 判 定 で 考 慮 した 事 項,影
響,総
合 的 な点 数 あ る い は グ レ ー
ドを で き る だ け 数 値 的 に記 述 して も ら う。 ③ で は,②
で 得 られ た 結 果 か ら シ ス
テ ム構 築 す る た め の 必 要 要 素 を決 定 す る。 ④ の コス ト算 出 に つ い て は,実 用 上 は 人 間 の作 業 コ ス トと得 られ る判 定 の 品 質 と のバ ラ ンス が 大 切 で あ る。 シ ス テ ム の 構 成 要 素 で あ る,照 明,視 覚 セ ンサ,画 像 処 理 判 定,搬 送 選 別 系 の 中 で,"感
覚 量 を 測 る"技 術 は,画 像 処 理 の 部 分 が 最 も重 要 な部 分 で あ り,そ の
性 能 を左 右 す る。 画 像 処 理 の 産 業 応 用 の 中 で,"感
覚 量 を 測 る"分 野 は,感 覚 的 検 査 や 認 識 に 関
す る 分 野 で あ り,見 た 目の"印 象""美 し さ"な ど の 感 性 を認 識 す る 必 要 が あ る。 実 現 の た め に は,画 像 処 理 と して 不 得 意 な 大 局 的 処 理 が 要 求 され る。"感 覚 量 を 測 る"分 野 で は,画 像 処 理 の 能 力 は ま だ ま だ人 間 に 及 んで い な い2)。
人 間 の感 覚 に頼 る 部 分 を100%自 自動 化 の 場 合,現
動 化 す る こ と は不 可 能 とい っ て よい だ ろ う。
場 で は コス トを無 視 す る こ とは で きな い 。 無 理 に仕 様 拡 大 し
て も装 置 の コス トパ フ ォー マ ンス を低 下 させ る だ け で あ る。 現 場 で は 装 置 の 判 定 が 絶 対 で あ る とい う誤 っ た認 識 を し て は な らな い 。 自動 化 で き な い 部 分 は あ る 程 度 の 妥 協 を行 い,感
覚 に頼 らざ る を得 な い 部 分 の み を 人 間 に任 せ,残
りの
部 分 を 自動 化 す る こ とで 人 間 の 負 担 を軽 減 させ る と い う よ う に,人 間 と機 械 の 住 み 分 け を 考 え る こ とが 大 切 で あ る。
4.9.3
画 像 処理 手 法
感 覚 量 を測 る た め の 特 別 な 手 法 と い う もの は な く,定 量 化 し た い 感 覚 量 を, 画 像 処 理 の 結 果 で 得 られ る特 徴 量 や,対
応 す る 物 理 量 とい か に対 応 づ け をす る
か が 重 要 で あ る 。 す な わ ち 感 覚 的 な 計 測 を 「い か に画 像 処 理 パ ラ メ ー タで お き換 え る か 」とい う こ とで あ る。 い き な り画 像 処 理 パ ラ メ ー タ との 対 応 を 考 え る の で は な く,後 述 す る真 珠 品 質 評 価 の 例 の よ う に,セ
ン シ ン グ手 法 自体,新
た な系
とす る こ と も有 効 な 手 段 で あ る 。 判 定 に寄 与 す る 画 像 処 理 パ ラ メ ー タ が 得 られ や す くな る よ う,入 力 系 や 前 処 理 を工 夫 す れ ば よい 。 得 られ た パ ラ メ ー タか ら, 判 定 に 関 連 の あ りそ う な もの を列 挙 し,人 間 に よ る 判 定 結 果 を い か に 説 明 で き るか とい う観 点 で 評 価 を行 う こ とが 必 要 で あ る 。 判 定 結 果 の 説 明 や,物
理 量 と感 覚 との 対 応 づ け を行 うた め に,さ
法 が 用 い ら れ る 。 ニ ュ ー ラ ル ネ ッ トワー ク(NN),遺 は じ め,種
ま ざ ま な手
伝 的 ア ル ゴ リズ ム(GA)を
々 の 要 因 か ら判 定 に大 き く寄 与 す る 因子 な ど を抽 出す る た め の"多
変 量 解 析",多
段 階 評価 な ど定 量 的 尺 度 が な く,5段
階(A,B,C,D,Eな
ど)や10段
階 で 評 価 さ れ た 統 計 デ ー タ を も と に して こ れ らの 多 段 階 評 価 に 対 応 す る定 量 値 を算 出 す る た め の"数 量 化 手 法"な ど,定 量 化 の た め の 基 本 的 な数 学 手 法 が 用 い られ る。 詳細 は2.3節 を参 考 に され た い。 色 の 違 い を定 量 評 価 す る た め に,CIEL*a*b*,
CIEL*u*v*な
ど の均 等 表 色 系
の 尺 度 を用 い た カ ラ ー 画 像 処 理 が 行 わ れ る 。 しか し,必 ず し も現 場 で の 評 価 に 合 致 す る尺 度 で は な い の で,さ
らに こ れ らの 表 色 系 をベ ー ス と して 非 線 形 変 換
の処 理 を施 して い る事 例 もあ る。 画 像 処 理 の 段 階 で 処 理 が 重 くな ら な い よ う,画 像 形 成 や 画 像 前 処 理 で 工 夫 を
行 う こ とは有 効 で あ る 。 画 像 形 成 イ ンプ ッ ト:目 的 とす る 評 価 量 を得 る た め の 画 像 を形 成 す る た め に, 最 も効 果 的 な条 件 を 整 え る 。 照 明,光 学 系,セ
ン サ の 構 成 に お い て,最 適 な 照
明 条 件 を考 慮 す る 。 た とえ ば,表 面 の きず を評 価 した い 場 合,斜
め か ら照 明 をあ
て る こ と に よ り,き ず の 画 像 が 単 独 で,ク リア に得 られ る よ う に工 夫 す る 。 あ る い は,特 定 波 長 光 の 影 響 を処 理 しや す くす る た め に光 学 フ ィ ル タ が用 い られ る。 画 像 処 理:目
的 に 応 じて,前
処 理 段 階 で可 能 な,シ
ル タ リ ン グ な ど を行 う。2値 化,エ
4.9.4
ッジ 強調,平
ェ ー デ ィ ング 補 正,フ
滑 化,空
ィ
間特 徴 抽 出 を行 う。
応 用 事 例
感 覚 量 を測 る 応 用 事 例 と して,真
珠 品 質 評 価,CRT画
面 検 査,カ
ラー印刷物
検 査 の 例 を紹 介 す る 。 シ ス テ ム の 紹 介 は 他 の 文 献 に ゆ ず り,こ こ で は,特
に,
三 つ の 例 か ら,感 覚 量 を測 る た め の 第 一 ス テ ップ の 部 分 を紹 介 す る。
(1) 真 珠 品 質 評 価 シ ス テ ム3,4) 真 珠 の 加 工 工 程 現 場 に お け る 品 質 評 価 を 自動 で 行 う た め の シ ス テ ム で あ る。 本 シ ス テ ム は,①
評 価 要 因 の 分 析,②
分 析 に基 づ い た 新 セ ン シ ン グ 系 の 開 発,
③ 人 間 と仮 の 計 測 シス テ ム の 比 較・ 解 析 と フ ィー ドバ ッ ク,の 三 つ の ス テ ッ プ を概 念 と し て お り,人 間 と 同 じ よ う な 評 価 あ る い は 応 答 能 力 を もつ 機 械 を実 現 す る こ と を 目的 と して 構 築 され た 。 シ ス テ ム の 概 念 を図4.74に と して,色
彩,照
示 す 。 第1段 階
り,色 み の評 価 量 の 定 量 化 を 目標 と した 。 ア ンケ ー トに よ り
検 査 員 が 評 価 に用 い る 用 語 を調 査 し,分 散 の 大 きい もの を 除 外 して 最 終 的 に表 4.11に 示 す19の 評 価 用 語 を選 定 した 。40の サ ン プ ル真 珠 につ い て,評 価 用 語 の お の お の の項 目 に対 して,5段
階 評 価("か な りそ う思 う"か ら"か な りそ う思 わ な
い"ま で)を 得 て,主 因 子 法 に よ る因 子 分 析 に よ り,"層 の 均 一 性","輝 の 均 一 性",の3因 ま た,入
き","面
子 を求 め て い る 。 因 子 負 荷 量 の 結 果 を表4.12に 示 す 。
力 層 に学 習 デ ー タ と して 分 光 ス ペ ク トル を,ま
た,出 力 層 に教 師 デ
ー タ と し て検 査 員 の10段 階 評 価 を与 え る ニ ュー ラ ル ネ ッ トワ ー ク に よ り,色 彩 評 価 に お け る感 度 特 性 を 求 め て い る。 この 結 果,色
彩 評 価 に 寄 与 す る計 測 波 長
が 決 定 され,真 珠 品 質 評 価 に 適 した独 自 の セ ン シ ン グ系 を構 築 して い る。
図4.74 真珠 品質 評価 シス テ ムの 概念
表4.11
評 価 用語
表4.12
因子 負 荷量
絶 対 値 が0.6未 満 は省 く
(2) カ ラ ー テ レ ビの 画 質 評 価5,6) この 研 究 例 で は,高 精 細 カ ラーCRT
(cathode
ray tube)の 画 質 を定 量 的 に評
価 す る方 法 を示 して い る。CRT画
質 評 価 の 心 理 的 要 因 で あ る,"美
す さ","正
につ い て,そ
確 さ(色 ・ 形)",の3点
あ る 白 色 均 一 性,フ
しさ","見 や
れ ぞ れ の代 表 的 画 質 評 価 項 目で
ォ ー カ ス,色 純 度 の 評 価 方 法 を 紹 介 して い る 。 こ こで は特
に,画 面 の 白 ら し さ の総 合 評 価 で あ る 白色 均 一 性 の 自動 評 価 の考 え方 を示 す 。 まず,白
色 均 一 性 評 価 モ デ ル の解 明 の た め,擬
画 面 を 熟 練 検 査 員 に 見 て も らい,色
似 的 に 色 む らを 表 示 したCRT
む らの 状 態 とそ れ に 対 す る 白 色 グ レ ー ド
(目 視 に よ り色 む らの 程 度 を10数 段 階 で 示 し た も の)を 書 い て も ら う。 そ し て, 色 む ら の 形 状,面
積,位
置,個
数,色
相,彩
度,色
エ ッ ジ強 度 な どの パ ラ メ ー
タ の う ち,白 色 グ レー ドに 影 響 を 与 え る もの を調 べ る。 こ の結 果,色 相 と彩 度 が 最 も影 響 が あ っ た が,図4.75(a)に 座 標 上 で の,等 る。 また,色
む らの 色
示 す よ うに,色 差 信 号(R-Y,
B-Y)
白色 グ レ ー ド曲 線 は楕 円形 で あ り,色 相 に依 存 す る こ とが わ か
む らの 面 積 と色 エ ッジ も影 響 を与 え,そ れ ぞ れ 図4.75(b),
(c)に 示
す よ う に,白 色 グ レー ド との 関 係 を 得 て い る 。 最 後 に こ れ ら の 結 果 を用 い て, 撮 影 し たCRT白
色 画 像 の 自動 評 価 例 を示 して い る。
図4.75 白色 均 一性 評 価 モ デ ル
(3) カ ラー 印 刷 物 色 調 検 査7,8) この 研 究 例 で は,カ
ラ ー 印 刷 物 を対 象 物 と して,色 調 判 定 の 定 量 化 と,絵 柄
の 重 要 性 に着 目 した色 調 評 価 方 法 の 一 例 を 示 して い る 。 人 間 の 感 覚 に依 存 す る 印刷 面 の 色 調 検 査 の 定 量 評 価 を 目 的 と した 事 例 で あ る 。 制 約 条 件 と して,色
調
以 外 に ピ ンホ ー ル な ど の 検 査 を一 つ の 画 像 で 同 時 に行 う必 要 が あ っ た た め,画 像 入 力 に はCCDカ
メ ラ(RGBの3色)を
使 用 す る こ と,ま た 処 理 時 間 の 制 約 で 分
光 測 色 な どの 測 定 器 が使 用 で きな い こ と な どが あ っ た 。 検 査 員 に よ る事 前 の ア ンケ ー トで,色 人 の 顔,②
背 景,③
調 検 査 時 に 重 要 視 す る絵 柄 と し て,①
会 社 な ど の ロ ゴ,④ 衣 服,⑤
る。 目視 判 定 はABCDな
商 品 や 商 品 ロ ゴ,を
あげて い
ど に よ り10段 階 で 評 価 さ れ て い る 。 図4.76に 示 す と
お り,重 視 す る 絵 柄 領 域 と,各 サ ンプ ル の 各 領 域 にお け る色 差 値 お よ び 検 査 員 の10段
階 評価 を デ ー タ と して得 る。 多 段 階 評 価 に対 す る定 量 尺 度 はCIEL*a*b*
表 色 系 の 色 差 値 と し,数 量 化 手 法,主
成 分 分 析 に よ り,多 段 階 評 価 に対 す る 定
量 値 と,絵 柄 の 意 味 に よる 重 み づ け値 を 算 出 して い る。
なお,微
細 色 調 欠 陥 につ い て は,目 視 検 査 員 に よ る 欠 陥 寸 法 と色 差ΔEab*値 に
応 じた判 定 結 果(図4.77)を
得 た 上 で,自 動 良 否 検査 の 判 定 基 準 を定 め て い る。
図4.76 定 量 値算 出方 法
図4.77 欠 陥の 程 度 と 目視 判定 結 果 の 一例
■ 参
考
文
献
1) (社)精 密 工 学 会 画 像 応 用 技 術 専 門 委 員 会:視 2) 秦 清 治,輿
水 大 和,坂
上 勝 彦,小
関 修,原
動 化 に 有 効 な 新 し い 手 法 は 無 い か,第4回
3) 長 田 典 子,亀
井 光 仁,赤
の 開 発,電 学 論C, 4) 長 田 典 子:真
根 正 樹,中
ラ ボ,5,
月 淳,萩
10, pp. 29-32,
113-117,
性 計 測 技 術 に 基 づ く真 珠 品 質 評 価 シ ス テ ム
1992.
7) 谷 水 克 行:カ 32-37,
121-122,
前 絹 代:CRT画
外観
1993.
面 の 品 質 評 価 ―感 性 的 ビ ジ ョ ン を 目指 し て ―,画 像
1994.
内 立 夫,川目啓
動 化 ワ ー ク シ ョ ッ プ,pp.
8) 布 谷 正 勝:印
ワ ー ク シ ョ ッ プ,pp.
珠 の 品 質 評 価 ―ニ ュ ー ラ ル ネ ッ トワ ー ク に よ る 感 性 情 報 処 理 ―,第5回
6) 浅 野 敏 郎,堀
ッ プ,pp.
ネ ル デ ィス カ ッ シ ョ ン 外観 検 査 の 自
外観 検 査 の 自動 化
嶋 紘 之:感
112, 2, pp. 111-116,
検 査 の 自 動 化 ワ ー ク シ ョ ッ プ,pp. 5) 浅 野 敏 郎,望
覚 検 査 に 関 す る 技 術 動 向 調 査 報 告 書,1992. 靖 彦:パ
介:カ
ラ ー テ レ ビ の 官 能 画 質 評 価 技 術,第8回
外 観検 査 の 自
1-6, 1996.
ラ ー 印 刷 画 像 の 色 調 目 視 判 定 の 自動 化,第4回
外 観 検 査 の 自動 化 ワー ク シ ョ
1992. 刷 物 の 外 観 検 査 装 置,画 像 ラ ボ,4, 2, pp. 56-59,
1993.
第5章
画像応 用 シス テムの発展 と展望
5.1
電子産 業 における画像応 用技術 の展開
画 像 応 用 技 術 の 源 流 は,ア メ リ カ に お け るOCR,生
物 関連 の顕微鏡 画像 計測
や 産 業 計 測 か ら発 して い る。 日本 にお け る産 業 分 野 へ の 本 格 的 な 応 用 は トラ ンジ ス タ用 自動 ワ イ ヤ ボ ンデ ィ ング か ら始 ま っ た。 トラ ン ジス タ 回路 パ ター ンの一 部 分 を基 準 パ タ ー ン と し て登 録 して,検
出 パ ター ン との2値 画像 マ ッチ ン グ を実 行
す る こ とに よ り対 象 位 置 を検 出す る こ と に成 功 した1)。 この こ と は,画 像 応 用 技 術 が 工 業 的 に有 用 で あ る こ と を示 した もの で,以 た 。 以 下,図5.1を
5.1.1
降,飛 躍 的 に研 究 開発 が 拡 大 し
例 に と り,そ の 発 展 につ い て 説 明 す る。
位 置 決 め,文
字 検 査 ・認 識
トラ ンジ ス タ 自動 ワ イ ヤ ボ ンデ ィ ング 装 置 の位 置 認 識 に は専 用 回 路 に よ る2値 パ タ ー ンマ ッチ ン グ法 が 適用 され た。 この 画 像 処 理 手 法 は ,各 種 の 汎 用 画 像 処 理 装 置 に組 み 込 ま れ て 製 造 工 程 自動 化 用 の位 置 検 出,文 字 認 識 ・検 査 技 術 と し て発 展 した 。 マ ッチ ン グ法 は,次 の 段 階 と して 濃 淡 画 像 処 理 を用 い た"正
規 化 相 関"
に発 展 して い っ た。 最 近,汎
用 画 像 処 理 装 置 はパ ソ コ ン用 画 像 処 理 ボ ー ドが 主 流 に な りつ つ あ り低
価 格 化 が 実 現 した 。 位 置検 出 法 と して はマ ッチ ング の ほ か に濃 度 投 影 分 布 計 測 や エ ッ ジ検 出 な どの 基 礎 的 な 画 像 処 理 法 が用 い られ て い る 。 また,対 象 物 の 変 形 や
図5.1 電子 工 業 にお け る画 像 応用 技 術 発 展 図
雑 音 に 強 い 位 置 認 識 法 が 試 み られ て い る2,3)。
5.1.2
感 覚 量 検 査(官 能 検 査)
感 覚 量 検 査(官 能 検 査 と も呼 ば れ る こ とが あ る)の 工 業 的 な 応 用 と し て は, CRTや
液 晶 デ ィス プ レ イ の 検 査 や4),各 種 製 品 の 最 終 検 査 が あ げ ら れ る 。CRT
の 場 合,当
初,電
子 ビ ー ム の 集 束 性 や 色 ず れ な どの よ う に個 別 の要 素 に 分解 で き
る も の を 認 識 対 象 と し て い た が,次 第 に空 間 的 に広 が る色 む らや 明 る さ む らの 検 査 へ と移 っ て きた。 この 場 合,人
の 感 覚 的 な認 識 過 程 に まで 踏 み 込 ん で取 り組 む
必 要 が あ る 。人 に よ る評 価 基 準 を機 械 に い か に 取 り込 む か が 課 題 とな っ て い る5)。
5.1.3
露 光 機 の位 置 合 せ
半 導 体 ウ エ ハ な どの 回路 パ ター ン焼 付 け 用 露 光 機 に お い て は,ホ トマ ス ク と ウ エ ハ を 高 精 度 で 位 置 合 せ す る必 要 が あ る。 この た め に ,位 置 合 せ 用 ター ゲ ッ トマ ー ク の位 置 検 出 が 行 わ れ る 。 当初,マ ー ク位 置 変 化 に よっ て 生 じる反 射 光 バ ラ ン ス 変 化 を 計 測 す る 手 法 が 用 い られ て い た が"次 す る よ うに な っ た。 検 出 手 段 と して は,ス
の段 階 で は マ ー ク形 状 自体 を検 出
リ ッ ト走 査 法 か ら リニ アセ ンサ や テ レ
ビ カ メ ラ に よ る 撮 像 が 用 い られ る よ う に な っ た 。 ウ エ ハ の マ ー ク を検 出す る 際 , 照 明 光 の 帯 域 に よ り,膜 に よる干 渉 縞 が 生 じ るの で これ を利 用 して検 出 を行 うか6), あ る い は多 波 長 光 を用 い て これ を消 し去 る こ とが 行 わ れ た 。 ス テ ッパ と呼 ば れ る 縮 小 投 影 式 の露 光 機 が 用 い られ る につ れ て,さ
らに位 置 検 出 を高 精 度 化 す る 必 要
が 生 じ,ホ ロ グ ラム を用 い て レ ンズ の 色 収 差 を補 正 して 検 出 す る こ と も行 わ れ て い る7)。
5.1.4
パ タ ー ン検 査
プ リ ン ト配 線 板 パ ター ン,ホ
トマ ス ク パ ター ン,ウ エ ハ パ ター ンな どの 外 観 的
欠 陥 を 自動 検 査 す る研 究 は古 くか らあ り,当 初 は光 の 回 折 を利 用 した 光 学 的 な手 法 が 盛 ん に 試 み られ た8)。 この 分 野 は,テ
レ ビ カ メ ラ や デ ィジ タ ル画 像 処 理 回 路
が 一 般 化 した'70年 後 半 か ら大 きな 飛 躍 が 見 られ る よ うに な っ た。 当 初,検
査 法 と し て,通 常 パ タ ー ン に は な い 特 異 な 形 状 部 分 を 欠 陥 と判 定 す
る 手 法 が 試 み られ た(デ ザ イ ンル ー ル法)9)。 この 手 法 は ,位 置 合 せ が 不 要 で あ り,
簡 便 で あ るが 正 常 パ タ ー ン に類 似 した 欠 陥 をみ の が す 。 こ の 手 法 の 欠 点 を 少 な く し た パ タ ー ン の 分 岐 点 な ど を比 較 す る 手 法 が 開 発 され た10)。他 方,検
査対象
パ タ ー ン を 正 常 な パ ター ン(基 準 パ ター ン)と 比 較 して 検 査 す る 手 法 が 開 発 され た 。 この 手 法 は 二 つ の パ ター ン の位 置 合 せ が 重 要 で あ り,こ れ に よ っ て 検 査 精 度 が左 右 さ れ る 。 比 較 法 は よ り厳 密 な検 査 が 可 能 な設 計 パ タ ー ン との 比 較 法 に 発 展 し た11)。現 状 で は対 象 物 の 特 性 に 合 わせ て,上 記 検 査 法 が 選 択 され,ま
た,
比 較 対 象(基 準 パ ター ン)が 選 択 され て装 置 化 さ れ て い る。
5.1.5
実 装 回 路 板検 査 お よび 三 次 元形 状 計 測
実 装 回 路 板 検 査 に お い て は,は
ん だ 付 け 部 の検 査 自動 化 が 重 要 な課 題 とな っ
て い る 。 は ん だ 付 け 部 は 三 次 元 の 光 沢 面 で あ り,検 出 に は技 術 的 な 困 難 さが つ き ま と う。 は ん だ 付 け 部 の 検 出 手 法 と して は,光 切 断 な どの 三 角 測 量 法 が 試 み ら れ た12)。 こ の 手 法 が 有 効 で あ る た め に は は ん だ 表 面 の 散 乱 光 を検 出 し な け れ ば な らな い の で,テ
レビカ メラな どの通常 の検 出器 では ダイナ ミック レンジが
十 分 で な い 。 ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジの 高 い 検 出 器 の 採 用 や レー ザ 照 明 光 の 動 的 制 御 が 必 要 とな る。 上 記 手 法 と は 逆 に は ん だ付 け 部 表 面 の 正 反 射 光 を 検 出す る こ と に よ り,は ん だ 形 状 を検 知 す る方 法 が あ る13)。 これ は 対 象 物 を 多 角 度 か ら照 明 し,そ の 光 反 射 分 布 か ら は ん だ の 形 状 を検 知 す る もの で あ る。 逆 に 単 一 の 平 行 光 で 照 明 して 光 反射 分 布 を 計 る方 法 もあ る 。 こ れ ら の 検 出手 法 は,大 に 従 っ て,は お り,こ
きな 検 出 立 体 角 が 必 要 と され る 。 実 装 密 度 が 上 が る
ん だ 付 け 部 周 囲 に十 分 な空 間 を と る こ とが む ず か し くな っ て きて
れ ら と は 違 っ た 検 出 手 法 が 要 望 さ れ て い る 。X線
重 焦 点 に よ る 検 出 法15)やShape
実 装 回 路 板 の 検 査 に は,は
from
defocus法16)な
に よ る 検 出 法14),多
どが 試 み られ て い る。
ん だ 付 け 部 の 検 査 の ほ か に,部 品 種 違 い,実
装位
置 誤 差 大 な ど の 欠 陥 を 検 査 す るニ ー ズ が あ る 。 こ れ も三 次 元 的 な 検 査 に な る の で 光 切 断 法,部
ま た,光
品 の 影 を用 い た計 測 法 な どが 試 み ら れ て い る 。
学 部 品,面
板(磁 気 デ ィ ス ク,磁
気 ヘ ッ ド),半
導 体 パ タ ー ン,タ
ビ ン羽 根 な どの 工 業 製 品 の 三 次 元 計 測 に は,対 象 物 の 特 性 に 合 わせ て,単 干 渉,白
色 光 干 渉,三 角 測 量 法 な どが 用 い られ て い る 。
ー
色光
5.1.6
異 物,き
ず,汚
半 導 体 製 造 工 程 で は,異
れ検査 物 の 存 在 に よ り製 造 歩 留 りが 低 下 す る の で,そ
査 技 術 が 発 展 した 。 基 本 的 に は レー ザ 光 を対 象 物 に 照 射 して,そ
の検
の 散 乱 光 を検
知 す る こ とに よ っ て 異 物 を検 出 す る 。 ウ エ ハ や レチ ク ル な ど の対 象 物 に は 回路 パ タ ー ンが 描 か れ て い る の で,回 路 か らの 散 乱 光 と異 物 散 乱 光 を 区別 す る必 要 が あ る 。 こ の た め の 手 段 と して,偏
光 板 の 適 用17),光 学 的 フ ー リエ 変 換 面 で の
フ ィル タ リ ング18),さ らに は 散 乱 光 検 出 画像 の 比 較 法 が 開 発 さ れ て い る19)。 圧 延 板,布,紙
な どの 検 査 で は,検 査 ニ ー ズ が 高 度 化 す る につ れ て,む
らや
テ クス チ ャ の 欠 陥検 出 の よ う に む ず か しい 課 題 が で て きて い る。 こ れ らの 欠 陥 は 人 は比 較 的 容 易 に 検 知 で き る が 従 来 の 画 像 処 理 で 検 出 す る こ とが むず か しい 欠 陥 で あ る 。 こ れ を 実 現 す る に は,人 の 感 覚 量 を 画 像 処 理 と し て 定 量 的 に取 り 扱 え る よ う に な る こ とが 必 要 で あ る20,21)。
5.2
画像応用技術の現状
画 像 応 用 技 術 を そ の 効 果 か らA, を 図 る 場 合 は,あ て,ニ
B,
Cの 三 つ の 分 野 に 分 類 して み る 。 実 用 化
る 課 題 が これ らの 分 野 の どれ に属 す る か を あ らか じめ 考 察 し
ー ズ と適 用 技 術 の 間 に乖 離 が な い か ど うか を み き わ め る 必 要 が あ る 。
A分 野 は,LSIや
大 型 コ ン ピ ュ ー タ 用 配 線 板 パ タ ー ン の 検 査 が あ て は ま る。
これ らの 検 査 作 業 は長 時 間 の 単 純 作 業 で あ り,欠 陥 の み の が しが 避 け ら れ な い の で 人 に よ る 検 査 は適 して い な い 。 ま た,こ
れ らの 製 品 の 生 産 に お い て は 欠 陥
低 減 に よ る歩 留 り向 上 効 果 が 大 き く,検 査 自動 化 に よ っ て き わ め て 大 き な効 果 が 得 られ る の で,大
き な 投 資 が 許 され る。 画 像 を 的 確 に検 出 す る た め に有 効 な
あ ら ゆ る 検 出 手 段 が 採 用 さ れ,画 像 処 理 装 置 も専 用 の 高 速 回 路 を 用 い る こ とが で き る。 欠 陥 形 状 は 明 確 に規 定 さ れ て い る 。 こ の よ う な 分 野 で は 機 械 以 外 に よ る検 査 は 考 え られ ず,機 械 の性 能 と機 能 が 人 の 能 力 を上 回 っ て い る 分 野 で あ る。 B分 野 は,部
品 の 位 置 決 め,文 字 検 査 ・認 識,実
装 回路 板 検 査 の よ う な製 造
工 程 自動 化 の た め の視 覚 系 に代 表 さ れ る分 野 で,自
動 化 に よ っ て 数 人 程 度 の省
人 効 果 が期 待 で き る分 野 で あ る。 歩 留 り向 上 効 果 は あ ま り期 待 で き な い の で,A
分 野 ほ ど の投 資 は 許 され な い 。 検 出 器 は 主 に テ レ ビ カ メ ラ,画 像 処 理 は 汎 用 画 像 処 理 装 置 に よ っ て 実 現 さ れ て い る分 野 で あ る。 検 出 手 段 や 画 像 処 理 内 容 は, 装 置 コ ス トの 関 係 で 必 ず し も最 適 な手 段 を採 用 で きる と は 限 らな い の で,欠
陥
情 報 と正 常 部 情 報 と を 明 確 に分 離 で きず に悩 ま さ れ る こ とが あ る。 は ん だ付 け 部 の 検 査 が この 例 で あ る 。 C分 野 は,た
と え ば 製 品 の 最 終 外 観 検 査 の よ う に多 種 の 検 査 項 目が あ り,検
査 内 容 も,"質 感"の よ うに 必 ず し も検 査 基 準 が 明 確 で な い分 野 で あ る 。256階 調 以 上 の 多 値 画 像 処 理 を要 す る(色 彩)画 像 の む ら検 出 や,大
局 的な画像処 理 を要
す る 製 品 組 立 て 状 況 や 外 観 形 状 検 査 の よ う な例 が あ げ られ る。 この 分 野 の検 査 自動 化 を 実 現 す る に は,高
度 な 画 像 認 識 処 理 を必 要 とす る。 しか も,検 査 自動
化 が む ず か し い に もか か わ らず,自
動 化 を実 現 して もた か だ か1∼ 若 干 人 の 省
人 効 果 しか 期 待 で き な い 。 この よ うな 分 野 の 画 像 応 用 技 術 は,機 械 の 能 力 が 人 に追 い つ い て い な い 分 野 で あ る 。
5.3
今 後 の展望
今後の展望 を四つ の分野 に分 けて検討 する。
5.3.1 検 出解 像 力 の改 善 お よび高 速 化 半 導体 分野 で は配 線パ ター ン幅がサ ブ ミクロ ンにな り,検 出すべ き対 象 のサ イ ズ は光 学 的 な 解 像 力 の 限 界 を 超 えつ つ あ る 。 共 焦 点 検 出 系22),短 波 長 化 な ど の 光 学 的 な 限 界 を伸 ばす た め の 試 み が 行 わ れ て い る が,さ
らな る進 展 が 望 まれ
る。 図5.2は,種 SEMや
々 の 画 像 検 出 法 の 検 出解 像 力 と検 出 速 度 の 傾 向 を示 す もの で あ る。
各 種SPMは
光 学 的 手 法 よ りさ らに 高 い解 像 力 を実 現 す る が,検
出速 度
は遅 い 。 検 出速 度 向 上 へ の研 究 が 望 まれ る。 図5.3は,種
々 の 画 像 検 出器 の検 出 分 解 能 と検 出 速 度 の 傾 向 を示 す 。TDIリ
ア イ メー ジ セ ンサ は,通 常 のCCDリ を 有 す る。 検 出 速 度 も100MHz以
ニ
ニ ア イ メ ー ジ セ ンサ に比 べ て 数 十 倍 の 感 度 上 が 可 能 で あ る 。 画 像 検 出 デ バ イ ス は さ らに
ダ イナ ミ ッ ク レ ン ジ 向 上 と分 解 能(画 素 数)の 向 上 が 望 まれ る。
図5.2 画 像検 出法 と解 像 力
図5.3 画 像検 出器 の 特徴
図5.4 三 次 元 形状 検 出 法 の特 徴
画 素 サ イ ズ が 小 さ くな る と,検 査 時 間が 加 速 的 に増 大 す る 。 こ の た め に 検 出 速 度 の 向 上 や サ ブ ピ ク セ ル 処 理 の 適 用 が 図 られ て い るが,対 間 内 で 検 査 す る こ とが で きな い 場 合 が あ る 。 こ の場 合,部
象 物 を実用 的な時 分 的 な 検 査 か ら得 ら
れ た 欠 陥 情 報 か ら,欠 陥 低 減 や 製 造 工 程 制 御 を行 う な ど運 用 面 か ら有 効 な 活 用 法 を 考 え る必 要 が あ る。
5.3.2
三 次 元 物 体 の 検 査 ・計 測
図5.4に,種
々の 三 次 元 物 体 形 状 検 出 法 に つ い て 距 離(奥 行 き)検 出精 度 と検 出
速 度 の傾 向 を 示 す 。 マ ク ロ 物 体 に お い て は 三 角 測 量 法 が 有 効 で あ る が,倍
率を
増 す と焦 点 深 度 が 小 さ くな る の で,ミ
ク ロ物 体 に は 適 用 が 困 難 に な る 。 ま た 工
業 製 品 に は金 属 光 沢 面 が 多 い の で,本
法 は 必 ず し も最 適 で は な い 。 三 次 元 形 状
検 出 法 に つ い て は各 所 で研 究 が 進 め られ て い るが,対
象 物 の 表 面 性 状 に よ らず
に距 離 画 像(range image)を 高 精 度(10μm以 下)か つ,高 速(テ レ ビカ メ ラ以 上)で 検 出 で き る手 法 の研 究 が 望 ま れ る 。 こ れ が 実 現 す れ ば,三 次 元 物 体 検 査 ・計 測 に 関 す る産 業 応 用 は 大 き く拡 大 す る と思 わ れ る。 距 離 画 像 が 得 られ た とす る と,距 離 画 像 を用 い た 検 査 ・計 測 ア ル ゴ リ ズ ム が
必 要 と な る 。 この 分 野 で は,ア
カ デ ミ ッ ク な研 究 が 盛 ん で あ る の で,実
応用へ
の 適 用 が 期 待 で きる 。
5.3.3
感 覚 量(官 能)検 査
感 覚 量 検 査 自動 化 の ニ ー ズ と して は液 晶 デ ィス プ レ イ の 検 査 や,半 ハ パ ター ン欠 陥 画 像 の 分 類 の 例 が あ るが,多
導体 ウエ
くは三次元物 体 を含め た製品 の最
終 外 観 検 査 の よ う に 自動 化 効 果 の 少 な い 分 野 で あ る。 この た め 従 来 は,感
覚量
検 査 自動 化 に 十 分 な 取 り組 み が な さ れ て こ な か っ た 。 これ は この 自動 化 を実 現 す る に は,高 度 で 複 雑 な画 像 認 識 処 理 を 安 価 で 実 現 しな け れ ば な らな い と い う 技 術 的 な制 約 に よ る が,現 実 に は この よ うな 検 査 を 自動 化 す る ニ ー ズ は 大 きい 。 工 場 で 自 動 化 され ず に残 され て い る工 程 は,ほ と もい え る 。 この よ う な分 野 で は,あ 的 手 法 や ハ フ変 換,ニ 度 解 析,多
とん どこの種 の外観検 査で ある
い ま い な 画 像 の 処 理 が 必 要 で あ り,統 計
ュ ー ラ ル ネ ッ トワ ー ク,遺 伝 的 ア ル ゴ リズ ム,多 重 解 像
角 度 検 出 画 像 処 理 や 動 的 画 像 処 理 な ど新 しい 手 法 が 有 効 と思 わ れ,
そ の 適 用 拡 大 が 期 待 され る。
5.3.4
画像処理システム
画 像 応 用 装 置 の 画 像 処 理 内 容 は,用
い る画 像 処 理 装 置 に よ っ て 内 容 が 限 定 さ
れ る 。 そ の た め に 高 速 処 理 が 可 能 な ア ル ゴ リズ ム を見 出 す こ とが 従 来 の 技 術 者 の一つ の役割 であった。 図5.5は,種
々 の 画 像 処 理 装 置 につ い て,処 理 速 度 と処 理 柔 軟 性 の傾 向 を示 す
も の で あ る。 高 速 な 画 像 処 理 を実 現 す る た め に専 用 の 画 像 処 理 装 置(パ イ プ ライ ン処 理)が つ く られ た 。 さ ら に高 速 化 を図 る た め に は,そ る。 最 近 で は プ ロ グ ラ マ ブ ル なLSIを
の並 列 化 が 図 られ て い
使 い,処 理 内 容 に 柔 軟 性 を もた せ る こ と
が で き る よ う に な った 。 他 方,汎
用 画 像 処 理 装 置 は,パ
ソ コ ン の オ プ シ ョ ンボ ー ド化 が 図 られ て お り
低 価 格 化 が 実 現 し た。 最 近 で はパ ソ コ ンの32ビ
ッ ト化(OS, bus)と ク ロ ッ クの 高
速 化 が 進 展 しつ つ あ り,ソ フ トウエ ア に よ り従 来 汎 用 画 像 処 理 装 置 で 行 わ れ て い た画 像 処 理 を 実 現 す る こ とが 現 実 的 に な っ て き た。 大 量 の 画 像 情 報 を さ ら に高 速 で 処 理 す る に は,高 速 ・汎 用 の 画 像 処 理 装 置 が
図5.5 画像 処 理 シ ス テ ムの特 徴
必 要 で あ る。 従 来 か ら各 所 で 開 発 が 行 わ れ て い る 超 並 列 プ ロ セ ッサ23,24)によ る 画 像 処 理 装 置 が 安 価 に な り普 及 し な け れ ば な ら い 。 こ れ につ い て は 近 い 将 来 現 実 に な る こ とを期 待 した い 。 以 上"応 用"の 視 点 に 立 っ て展 望 して き た が,画
像 処 理 技 術 を応 用 す る こ と は
必 ず し も人 の 認 識 機 能 を機 械 で 実 現 す る こ とで は な い 。 そ の 目的 は 自動 化 で あ り,し た が っ て,人
の 認 識 機 能 の 弱 点 を補 う こ と も 目 的 と な る 。 人 の 認 識 機 能
はす ば ら し い もの で あ る が 同時 に 弱 点 も多 い 。 疲 労 に よ る不 安 定 さ,認 識 基 準 の ば らつ き,錯 覚,処
理 速 度 の 問 題,定
量 的 な 距 離 ・寸 法 ・濃 度 計 測 能 力 の 欠 如
が そ の 例 で あ る 。 応 用 を価 値 あ る も の に す る に は,こ の 研 究 開発 が 必 要 で あ る 。 画 像 の 顕 在 化,厳
れ らの弱 点 を 補 う視 点 で
密 な比 較 基 準 パ ター ンの 用 意 や 距
離 画 像 の採 用 も人 に は な い機 能 を 実 現 し よ う とす る 例 で あ る 。 こ の よ う な視 点 の ア プ ロ ー チ に 立 つ こ と に よ っ て 画 像 応 用 技 術 は ます ます 発 展 を と げ る で あ ろ う。 ま た,感 覚 的 な欠 陥 の検 査,複 物 体 の 認 識 な どの 分 野 で,ア
雑 な画像 の処理 や三次 元
カ デ ミ ッ ク な 研 究 成 果 が 応 用 に 直接 的 な 意 味 を も
ち つ つ あ る 。 今 後 の研 究 の 発 展 と応 用 サ イ ド との 連 携 が 期 待 さ れ る と きで も あ る。
■ 参
考
文
献
1) 柏 岡 ほ か:時 文 集,96-C,
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式 は ん だ 付 検 査 装 置 の 開 発,精
15) T.
Automated
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devices
based
on Machine Nayar
machine
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5) 秦 清 治 ほ か:色
7) Y.
of a mash-backed
IEICE
Shape
algorithm
shape 261, from
2, 428,
1995.
密 工 学 会 誌,59,
1, 65, 1993.
for solder
analysis,
Proc.
joint
1981.
IAPR
1996. focus, IEEE
Trans.,
on Pattern
analysis
16, 8, 824, 1994.
光 レ ー ザ に よ る パ タ ー ン付 試 料 上 の 異 物 検 査 の 自動 化,計
2, 237,
of surface
of MVA'96,
測 自動制 御 学
18) 野 口 稔 ほ か:ピ
ッ チ 可 変 フ ィ ル タ を 用 い たLSIウ
エ ハ 上 の 異 物 検 査 技 術,第6回
の 自動 化 ワ ー ク シ ョ ッ プ 資 料(精 密 工 学 会 画 像 応 用 技 術 専 門 委 員 会),104, 19) 秋 山 伸 幸 ほ か:差 20) 石 井 明:微
画 像 検 出 方 式 異 物 検 査 装 置 の 開 発,精
小 欠 陥 の 認 識 と検 出,第5回
画 像 応 用 技 術 専 門 委 員 会),71, 21) 輿 水 大 和:マ 22) 米 沢 良:レ
シ ン ビ ジ ョ ン の 最 近 の 動 向,O
24) 本 沢 邦 朗 ほ か:試
密 工 学 会 誌,57,
plus E, 1994年12月
号,70,
学 技 報,ICD94-,
作 結 果 に 基 づ く 高 速 画 像 処 理 用 並 列 計 算 機RIPEの 83, 6, 41, 1993.
1994.
技 術 コ ン タ ク ト,29, 10, 559,
モ リ 集 積 型 プ ロ セ ッサIMAP-LSI,信
学 会 研 究 会 資 料,CV93,
11, 1955, 1991.
外 観 検査 の 自 動 化 ワ ー ク シ ョ ッ プ 資 料(精 密 工 学 会
1993.
ー ザ ー 顕 微 鏡 の 工 業 的 応 用,光
23) 岡 崎 亨 ほ か:メ
外観検査
1994.
1991. 81, 9, 1994.
性 能 評 価,情
報処理
索
引
ウイ ン ドウ法
あ
4
ウェ ーバ ーの 法則
110
I/Oピ ン 179
ウ ェーバ ー比
ITS
ウ ォ ル シ ュ ・ア ダ マ ー ル 変 換
169
ア クテ ィブス テ レオ法
64
ア クテ ィブ レ ンジ セ ンサ アス ペ ク トレ シオ
8
29
薄 肉 レ ンズ
110
美 し さ
236,240
SD法
115 56
厚 肉 レ ンズ
17
s偏 光
暗視野照明
25
エ ッジ検 出 オペ レー タ
位相
エ ッジ抽 出
37
位 相 差 計測 法
72
位 相 シ フ トモ ア レ縞
39
f値
30
Fナ
ンバ ー
30
MOS
28
182
MTF
31
位置検出
144
エ リア セ ンサ
39
位 置 検 出精 度 187 一対 比 較 法 112
LED
21
円錐 鏡
155
移動 パ ラ メー タ 186
円偏光
55
異物
応 力 計測
248
イ メ ー ジセ ンサ 色収 差
OTF
26
印刷 物色 調 検 査
因 子 負荷 量 因 子 分析 印象
231 31
折 り返 し誤 差(エ
色 む ら 240
印 字 品 質検 査
28,145,175
オ プテ ィカ ル フ ロー
32
241 219
音響散乱
229
温度計測
231
238
91
イ リ ア ジ ン グ)
か
113,238 開 口効 率
236
イ ンテ リジ ェ ン トセ ンサ
158
218
位置決め
位 相 シ フ ト法
8
90
16
開 口 数NA
32 30
29
回折
官 能 検査
45
回折 界 スペ ック ル 回折 光
49
46
解 像 限界
93
幾 何 学変 換
186
キズ
30
解像力
238
キセ ノ ン管
29
回路 パ ター ン
輝度
148
ガ ウ ス(Gauss)の
レ ンズ公 式
16
逆 反 射 ス ク リー ン
可 干渉 性
23
拡 散成 分
34
吸収係数
34
吸 収 率 分布
過検出
117
画 質 評価 可視度
240
画 像解 析
3
画像形成
2
35
球面収差
32
境界記述
93 3,20
109
局所 平 均
77
魚群探知機
74
画 像 の シェ ーデ ィ ング補 正
76
距離
227
84
83
均 等 表 色系
76
近傍
77
空 間周 波 数 フ ィル タ リ ング
画 像 の 鮮鋭 化 画 像 の2値 化 画 像 の 平滑 化
237
84
空 間 的 コ ヒー レンス
74
カ ラー 印刷 物
241
カ ルー ネ ン ・レーベ 変換(K-L変 換)
空 間分 解 能 90
屈 折率
16 151
感覚測定法
108
形 状 数
感 覚 的検 査
236
ケ ー ラー(kohler)照 明
感覚量検査
252
欠 陥検 出
95 24,25
144
感覚量
4,108,234
結 像 光学 系
監視
144
結 像 分解 能
干渉
37
け られ
干 渉計
41
検 出
干 渉縞
37
高 域 強調 フ ィル タ 83
234,236
光 学系 の 明 る さ 29,30
感性
感性 計測 技 術
4
完全 拡 散 反 射 光
46
24
29
グ リー ンシー ト
111
51
23
空 間 的 な コ ヒー レ ン ト照 明
か た ち 35
間隔 尺 度
35
極 限法
画 像 の 幾何 学 的 補 正
154
176
共焦 点 光 学系
39
画 像 補 正
21
22
QFP
拡 散特 性
4,108
幾 何 学 的特 徴
15 30 31
光学処理
248
2
光 学 的 な測 定 シス テ ム
完全 拡 散 面
34
光 学 的 フ ー リエ 変換
完 全偏 光
56
光 学 伝 達 関数
31
189 51
光 学 フ ィル タ 238
サ ンプ リ ング定 理
口径 蝕
31
散乱 性
口径 比
30
CRT
光源
35 240
CRT画
21
光 源 の明 る さ 恒常刺激法 合 成 開口 法
質
240
CMOS
21,22
29
28
109
CCD
225
シ ェー デ ィ ング
28 29
シ ェー デ ィ ング補 正
29
構造解析法
218
shape-from-focus法
10
構造化照明
3
時 間的 コ ヒー レンス
23
合 成 焦 点 距離
光束
17
し きい値 処理
22
光 電 子 増 倍管 光度
28
22
後 方 焦 点 距離
色調検査
241
色調 評 価
241
刺 激 閾
108
16
シス テム 仕様
42
自然 光
後方焦点 光路長
16
218
コー ド化 パ ター ン
68
コ ー ド化 パ ター ン光投 影法 コ ー ド化 法
視線方向 68
62
絞 り 18
66
縞画像処理
39
cos4則
31
視野 角
19
cos4則
32
尺度
111
固体 撮 像 素子 骨格線
28
尺 度構 成 法
86
射 出瞳
111
18
コ ヒー レ ンス
21,23
斜方照明
コ マ(Coma)収
差
熟練 検 査 者
33
コ ルモ ゴロ フ ―ス ミル ノ フ検 定 コ ンカ レ ン トエ ン ジニ ア リン グ コ ン トラス ト強調
174
56
87 174
81
周 囲長
25,149 235
97
重 回帰 分 析 収差
114
29,32
収縮(erosion) さ サ ース トン(L.L.Thurstone) サ ーモ ビュ ー ワ ザ イデ ル 収差
231
作業教示
112
縮退 化
235
88 108
166
主成 分 分 析 主走 査
32
作 業 員 に よる判 定
主観 的 等 価値
114
175
主点
18
受動 的画 像形 成
7
サ ジ タル 面
33
主平 面
三角測量法
63,178
順序 尺 度
111
準単 色 光
23
残 差 逐 次検 定 法
98
18
36
焦 点深 度
Sobelオ ペ レー タ
31
照 度
22
照 明
2
80 た
照 明 光 学系
21
照 明条 件 照 明法
158
ソー ベ ルの 微 分法
対応づけ
238
63
大 局 的感 覚
24
シ リ コ ンウ ェハ の検 査 真 珠 品 質評 価
楕 円偏 光
188
234 55
多 次 元尺 度 法
238
115
振幅透過率
57
多 値 画 像パ ター ンの検 査
振幅反射率
57
縦倍 率
水銀 灯
垂 直 落射 照 明
180 110
ス ペ ク トル 分布
23
ス ペ ック ル(speckle) ス ポ ッ ト光 投 影 法
49
69
ス リ ッ ト画像 法
正反射光
64
赤外 光
64
221
前処 理
前 方 焦点
231
直 線偏 光
55
直 交 変換
89
テ ンプ レー ト
3 93 16 16 49
ソナ ー
230 159
224 171 164,166
テ ンプ レー ト登 録
171
投 影(周 辺分 布)
94
透過 特 性 34
3
テ ンプ レー ト照合
動画像処理
18
像 面湾 曲(Field Curvature)
205
28
電 磁 波 レー ダ法
Sobel
24
235
電 荷 結合 素 子
148
像 界 ス ペ ック ル
230
109
テ レセ ン トリ ック光 学 系
28
前 方 焦 点距 離
像 主点
218
227
デ ザ イ ンル ー ル法
154
線 分 の抽 出
超音波
テ ク スチ ャ 36
34
赤 外 線 サ ーモ グ ラフ ィー
セ ンサ
223
定量 的 な 尺 度
46
セル セ ンサ
地 中 レー ダ
低 コ ヒー レ ン ト照 明
98,166
正 反射 成 分
223
調整 法
ス リ ッ ト光 投 影法
95
地 中探 査
超 音 波 医療 診 断 装 置
64
正 規 化相 関法
87
21
230
知 的信 号 処 理
スム ー ズ ド ―デ ィ フ ァ レンス 検定
正 規 化相 関
探傷
チ ェ イ ンコ ー ド
62
ス リ ッ ト光
113
タ ングス テ ンラ ンプ
ス テ ィー ブ ンス(S.S.Stevens) ス テ レオ法
17
多 変量 解析
21
208
透 過率 分 布
91 34 34
特 徴 パ ラ メー タ 92 投 票 型 パ ター ン認 識
101
特 徴 解析
3
比 較検 査 法
特 徴 記述
92
光強度
特 徴 選択 法 特 徴抽 出
218
光 切 断法
93
3,64,178
光 飛行 時 間計 測 法
特徴 パ ラメ ー タ法 特徴 量
208
23
4
光 レー ダ法
92
非球 面 レ ンズ
トワ イマ ン ・グ リー ン干 渉 計
43
微細欠陥
2値 化 処 理
18
ヒ ス トグ ラ ム
87
ヒス トグ ラム 変換
164
2値 化 処 理 法
34
242
被 写 体深 度 な
71
71
4
美 的 感覚
234 33
82
入 射 瞳
18
非 点 隔差
入 射 面
56
非 点 収差(Astigmatism)
ニ ュー ラ ル ネ ッ トワー ク 熱 弾性 効 果
102 ,115
231
濃 淡 画像 形 成
36
能動 的 な位 置 決め 濃度 階 調 変換
18
微 分 オペ レー タ
29
能動 的画 像 形 成
瞳
183
81
158
微分 フ ィル タ
83
評価 パ ラメ ー タ
117
評価 用 語
238
評定 尺 度法
111
ピ ラ ミ ッ ド構 造 は 配 線 パ ター ン検 査 白色 グ レー ド パ ター ン検 査
比例尺度
204 240
246
102
111
フ ァ ジイ理 論
103
フ ィル タ処 理
164
フー リエ ス ペ ク トル
パ ター ンマ ッチ ング
164
パ ター ンマ ッチ ング法
4 ,244
33
フー リエ 変換
51
19
フー リエ 変換 面
19
ハ フ変 換
8,94,218
フェ ヒ ナー の法 則
110
反射 特 性
34
フ ォ トダイ オー ド
28
反射 率 分 布
フォ ト トラ ンジス タ
34
は んだ フ ィ レ ッ ト 178
複 屈 折性
59
は んだ ブ リ ッジ
副走査
175
は んだ 不足
177
177
は んだ付 け検 査
はん だ付 け部 の検 査 半 導体 製 造 装 置
物主点
176 247
188
18
部 分 偏光 不 変性
56 93
Brewster角
58
PSD
28,178
プ レヴ ィ ッ トの微 分法
p偏 光
56
分解能
ビー ム走 査
175
28
29,30
分 光反 射 率
34
80
分光 反射 率 特性
23
分 光分 布(色)
21
や,ら,わ
分散 度
97
ユ ー ザ仕 様
分布
36
横倍率
16
ライン
28
分離(割)統
合法
87
ベ イ ズ識 別 に よる照 合
99
174
ラ イ ンセ ンサ
145,175
偏光
24,54,152
Laplacian
偏光角
58
ラプ ラ シ ア ン式
80
ラベ リ ング処 理
165
偏 光顕 微 鏡 弁別閾
59
ラ ン バ ー ト(Lambert)の
108
ポ イ ン ト(点,0次
元)セ
膨張(dilation)
88
ンサ
26
223
マ ス クパ ター ン 窓枠 法
85
175
117
見 やす さ
240
25
名義尺度
111
25
88
メ ジオ ナ ル面
33
メデ ィア ンフ ィル タ
連結
97 77
89
79
218
レ イ リ ー(Rayleigh)規
連結数
範
21
レー ダ 法
78
177
73
84 84
レ ンジ フ ァ イ ンダ
69
レンズ の結 像 作用
16
レンズ の フー リエ変換
モ ー メ ン ト 96 234
露 光 写像 関 数
ロボ ッ ト
9
モ ル フ ォロ ジー処 理
88,166
19
76
ロバ ー ツ の微 分法
236
35,46
84
レー ザ走 査 系
180
目視 判 定
臨 界 照明
類 似 度法
メ ガス コー プ
モ ジュ ー ル生 産
96
レー ザ
無 影照 明
目視
177
輪 郭 線検 出
ミ ンコ フス キ ー和 お よび差
モ ー ド法
リ ー ド浮 き
隣接
見 逃 し
面積
179
領 域 記述
法則 34
34
リ ー ドピ ン
離 散 フ ー リエ 変換
4
マ ル チ セ ンサ
ラ ンバ ー トの 余 弦 則 ラ ンバ ー ト面
ま 埋 設物 探 査 法
159
80
183
歪 曲 収 差(Distortion)
33
30
〈著
者 〉
石 井
明
立命 館 大 学理 工 学 部
石 井
明
香 川 大 学工 学 部
加 藤
純 一
高 谷 裕 井
理 化 学研 究所 光 工 学研 究 室
浩
大 阪大 学大 学 院 工 学研 究 科
口 征 士
大 阪大 学 大学 院 工 学研 究 科
金 子
俊 一
北海 道 大 学大 学 院 工 学研 究 科
五 十 嵐
悟
渋 川 勝
久
北 海 道 大学 大 学 院 工 学研 究 科
浅 野 敏
郎
広 島工 業 大学 工 学 部
秦
清 治
西 川 喜 八 郎 村 松
北海 道 大学 大 学 院 工 学研 究 科
香 川 大 学工 学 部 技 術 士 事務 所 西 川 エ ンジ ニ ア リ ング リサ ー チ
彰 二
(株)日 立 製作 所 日立研 究 所
小 林 芳 樹
(株)日 立 製作 所 日立研 究 所
肥 塚
(株)富 士通 研 究 所
高 増
哲 男 潔
宇 野
伸 一
原
靖 彦
辻
角 精 二
木 村 朝
誠 聡
東京 大 学 大学 院 工 学系 研 究 科 (株)東 芝
浜川崎工場
日本 大 学 工学 部 日本 ア イ ・ビ ー ・エ ム(株)ES事 業 部 日本 アイ ・ビー ・エ ム(株)ES事 業 部
日
睦
日本 アイ ・ビー ・エ ム(株)ES事 業 部
中 野
宏 毅
日本 ア イ ・ビー ・エ ム(株)ES事 業 部
伊 藤
裕
谷 水
克 行
東京 電 機 大学 工 学 部 NTTコ
ミュ ニ ケー シ ョ ンズ(株)国 際事 業 部
画像処理応 用 システム 基礎 から応用まで 2000年7月10日
第1版1刷
編
者 (社)精 密 工 学会 画像 応 用 技術 専 門委 員会 発 行 者 学校 法 人 東 京 電 機 大 学 代 表 者 丸 山 孝 一 郎 発 行 所 東 京 電 機 大 学 出 版 局 〒101-8457
発行
東京 都 千 代 田 区神 田錦 町2-2 振替 口座00160-5-71715 電話(03)5280-3433(営 業) (03)5280-3422(編 集) 印刷 三 立 工 芸(株) 製 本 (株)徳 住 製本 所 装丁 鈴 木堯[タ ウハ ウス]
C
Ishii Akira,
Ishii Akira,
Takaya
Yasuhiro,
Kaneko
Shun'
Shibukawa
Kato
Seiji,
ichi, Igarashi
Satoru,
Katsuhisa,
Asano
Nishikawa
Kihachiro,
Kobayashi
Yoshiki,
Koezuka
Takamasu
Kiyoshi,
Uno
Hara
Yasuhiko,
Kimura
Printed
Toshio,
Muramatsu
Tsujikado
Tomoaki,
Ito Hiroshi,
Jun-ichi,
Inokuchi
Asahi
Tanimizu
Hata
Tetsuo,
Shinichi, Seiji, Mutsumi,
Nakano
Katsuyuki
in Japan
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Seiji,
Shoji,
C3055
R〈 日本複 写 権 セ ンター 委託 出版 物 ・特 別 扱 い〉
Hiroki, 2000