理工学講座
電力系統工学 柳父 悟 加 藤 政一
TDU東京電機大学出版局
本書 の 全部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作権 法上 で の例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます...
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理工学講座
電力系統工学 柳父 悟 加 藤 政一
TDU東京電機大学出版局
本書 の 全部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ とは,著 作権 法上 で の例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます 。小 局 は,著 者 か ら複写 に係 る 権 利 の 管理 につ き委 託 を受 け て い ます の で,本 書 か らの複 写 を希 望 され る場 合 は,必 ず 小局(03‐5280‐3422)宛 ご連絡 くだ さい。
まえがき
電 力 系 統 技 術 は,電 気 の 利 用 を支 え て き た重 要 な 技 術 で あ る 。 日本 に お け る こ の 技 術 は,電
気 の 需 要 が ほ と ん ど な い 約100年
し て き た 。 この 間 の,先
前 か ら出 発 し,欧 米 に 遅 れ る こ とな く発 展
人 の 先 見 性 と卓 越 性 は 素 晴 ら し い の 一 言 に尽 き る 。 発 電 方 式
は大 き く移 り変 り,発 電 設 備 の 大 容 量 化 だ け で な く,地 球 温 暖 化 防 止 の 観 点 か ら太 陽 電 池 発 電 や 風 力 発 電 な ど分 散 電 源 に つ い て も避 け て 通 る こ と は で き な くな っ た。 送 電 の 分 野 に お い て も,世 界 で はパ ワ ー 半 導 体 の 進 歩 に よ り,交 流 送 電 だ け で な く 長 距 離 大 容 量 直 流 送 電 も採 用 さ れ て い る。 ま た,す る ロ シ ア に 続 き,中 国 な ど で も1000kV送 一 方,戦 て,系
で に1000kV送
電 を実 施 して い
電 が現 実 の もの とな ろう として いる。
後 の 情 報 処 理 技 術 の 進 歩 も忘 れ て は な ら な い 。 計 算 機 の 進 歩 と あ い ま っ
統 解 析 技 術 の 発 展 が,複
雑 化 す る 電 力 系 統 の 制 御 を 可 能 に し,安 定 な 運 用 を実
現 してい るの で ある。 さ らに,近
年 の 電 力 自 由 化 の 流 れ の も と,電 力 系 統 も単 に工 学 的 側 面 か ら 学 ぶ だ け
で な く,経 済 的 問 題 も論 じ る必 要 が あ る。 この よ う に,電 は な く,新
力 系 統 工 学 は枯 れ た 技 術 で
し い 要 素 も関 連 させ て 学 ぶ 必 要 が 生 じ て き た し,こ
れ までの蓄 積 を再検 討
す る こ と も必 要 に な っ て きた 。 本 書 は そ の 電 力 系 統 技 術 を体 系 的 に 取 り ま と め た も の で あ る。 東 京 電 機 大 学 に は, 本 書 に先 ん じて廣 瀬淳 雄 先 生 や 故・ 荒 井 聡 明 先 生 に よ る 授 業 用 教 科 書 が あ っ た が,最 近 の 新 しい 技 術 も取 り入 れ て ま と め な お す こ と に した 。 系 統 工 学 の 中 級 程 度 の技 術 が 網 羅 され て お り,一 般 の 学 生 に は 多 少 難 し い と こ ろ が あ るか も し れ な い 。 しか し,将 来 こ の よ う な分 野 で 活 動 す る で あ ろ う学 生,ま こ と が 直 ち に役 に 立 つ 教 科 書 を と考 え,多 る 。 電 力 系 統 工 学 を 学 ん だ 人 が,社 の 教 科 書 が,勉
た 現 役 の 技 術 者 に と っ て,書
少 高 度 な 項 目,実
いてあ る
際 的 な項 目 も含 め て い
会 に 入 っ て す ぐに 役 立 て られ る こ と を考 えた 。 こ
強 の た め だ け で な く,実 務 に も利 用 さ れ る こ と を切 に 願 って い る。
平成18年7月
著者 ら
目
第1章
次
電 力 系統 の概 要
1.1 電 力 系 統 の 歴 史
1
1.2 交 流 送 電 と直 流 送 電
4
1.2.1
交 流 送 電 の メ リ ッ ト
4
1.2.2
直 流 送 電 の 用 途
5
1.3 系 統 技 術 の 最 近 の 問 題 点
第2章
6
1.3.1 大 規 模 停 電 事 故
6
1.3.2 電 力 自 由 化
7
1.3.3 地 球 温 暖 化 対 策
7
電 力 系統 と三 相 回 路 の 基 礎
2.1 電 力
9
2.1.1
電 圧 お よ び 電 流 の 記 号
9
2.1.2
電 力 の 基 本 式
9
2.1.3
有 効 電 力 お よ び 無 効 電 力
11
2.1.4
皮 相 電 力
11
2.2 複 素 電 力
13
2.3 単 位 法
16
2.3.1
単 位 法 の 定 義
16
2.3.2
単 位 法 に よ る 電 力 お よ び 回 路 の 式
17
2.4 対 称 三 相 交 流 と 送 電 系 統
19
2.4.1
対 称 三 相 交 流 電 圧 と 関 係 式
19
2.4.2
対 称 三 相 交 流 電 流 と 関 係 式
21
2.4.3
三 相 電 力 と 関 係 式
22
2.5 負 荷 のYお
よ びΔ結
線
24
2.5.1
負 荷 イ ン ピー ダ ン ス のYお
よ びΔ結
2.5.2
負 荷 イ ン ピ ー ダ ン ス のΔ-Y変
2.5.3
ア ド ミ タ ン ス のΔ-Y変
線
換
換
24 26 28
2.6 対 称 三 相 回 路 の 解 析
30
2.7 三 相 系 統 に お け る 単 位 法
33
第3章
変圧器
3.1 理 想 変 圧 器
39
3.1.1
電 圧 の 関 係 式
39
3.1.2
電 流 お よ び 電 力 の 関 係 式
41
3.1.3
理 想 変 圧 器 の 等 価 回 路
43
3.2 実 際 の 変 圧 器 3.2.1 励磁 3.2.2
45
電 流 と鉄 損
46
漏 洩 磁 束 と巻 線 抵 抗
47
3.3 単 位 法
52
3.3.1
変 圧 器 の 定 格 量 に よ るpu値
52
3.3.2
変 圧 器 の イ ン ピ ー ダ ン ス
53
3.4 三 相 変 圧 器
55
3.4.1
単 相 変 圧 器 鉄 心 と三 相 変 圧 器 鉄 心
55
3.4.2
三 相 変 圧 器 の 一 般 的 な 関 係 式
56
3.4.3 Y結 3.4.4 Δ
線 の 変 圧 器
59
接 続 の 変 圧 器
62
3.4.5
平 衡 負 荷 に お け るΔ-Y接
続 変 圧 器 の 解 析
63
3.4.6
三 相3巻
線 変 圧 器
64
3.4.7
三 相3巻
線 変 圧 器 の イ ン ピ ー ダ ン ス の 計 算 法
65
3.5 単巻 変 圧 器
66
3.6 タ ッ プ 付 変 圧 器 の モ デ ル
68
第4章
送 電線路
4.1 線 路 の イ ン ダ ク タ ン ス と静 電 容 量
73
4.1.1
架 空 電 線 の 種 類
73
4.2 電 力 ケ ー ブ ル
75
4.3 線 路 イ ン ダ ク タ ン ス
76
4.3.1
直 線 単 導 体 の イ ン ダ ク タ ン ス
76
4.3.2
往 復 導 体 の 単 位 長 イ ン ダ ク タ ン ス
78
4.3.3
正 三 角 形 配 置 の 三 相 送 電 線 の 作 用 イ ン ダ ク タ ン ス
80
4.3.4 撚
架 三 相 送 電 線 の 作 用 イ ン ダ ク タ ン ス
4.3.5
多 導 体 の イ ン ダ ク タ ン ス
84
4.3.6
大 地 帰 路 の イ ン ダ ク タ ン ス
85
4.4 線 路 の 静 電 容 量
第5章
81
87
4.4.1
正 負 等 量 の 平 行 な 線 電 荷 に よ る 電 位
87
4.4.2
2条 の 平 行 導 体 間 の 静 電 容 量
88
4.4.3
単 一 導 体 の 対 地 容 量
89
4.4.4
単 相 配 電 線 の 静 電 容 量
89
4.4.5
正 三 角 形 配 置 の 三 相 送 電 線 の 作 用 容 量 と対 地 電 圧
92
4.4.6
三 相 送 電 線 の 静 電 容 量
95
4.4.7
作 用 イ ン ダ ク タ ン ス と 作 用 容 量
97
4.4.8
ケ ー ブ ル の 静 電 容 量
98
潮流計算
5.1 潮 流 計 算 と交 流 回 路 計 算
101
5.2 ノ ー ドア ド ミ タ ン ス 行 列
102
5.3 潮 流 方 程 式
107
5.4 Newton‐Raphson法
110
5.5 潮 流 計 算 へ のNewton‐Raphson法 5.6 直 流 法 潮 流 計 算
第6章
同 期 発 電 機
の 適 用
113 115
121
6.1 同 期 機 の 基 本 構 造
121
6.2 電 機 子 の 誘 導 起 電 力
123
6.3 電 機 子 反 作 用
126
6.4 端 子 電 圧
127
6.5 磁 気突 極 効 果
129
6.6 電 力 お よ び トル ク
131
6.7 電 力 公 式
132
6.8 無 限 大 母 線 に 接 続 さ れ た 発 電 機 の 運 転
135
6.8.1
同 期 発 電 機 の 運 転 条 件
135
6.8.2
電 力 方 程 式
135
6.8.3
有 効 電 力 の 制 御
137
6.8.4
同 期 化 力
138
6.8.5
定態 安 定 極 限 電 力
138
無 効 電 力 の 制 御
140
同 期 機 の 各 種 の 運 転
142
6.8.6 6.8.7
第7章
故障計算
7.1 対 称 故 障
147
7.1.1 RL直
列 回 路 の 過 渡 現 象
147
7.1.2
同 期 機 の 短 絡 電 流 と リ ア ク タ ン ス
149
7.1.3
負 荷 電 力 を 供 給 し て い る 同 期 機 の 誘 導 起 電 力
153
7.2 対 称 座 標 法
158
7.2.1
対 称 分 か ら不 平 衡 ベ ク トル の 合 成
158
7.2.2
演 算 子
160
7.2.3
非 対 称 ベ ク トル の 対 称 分
160
7.2.4 Y-Δ
接 続 の 変 圧 器 バ ン ク の 対 称 分 の 位 相 変 化
164
7.2.5
対 称 分 に よ る 電 力 の 表 現 式
165
7.2.6
対 称 分 イ ン ピ ー ダ ン ス と対 象 分 回 路 網
167
7.2.7
無 負 荷 発 電 機 の 対 称 分 回 路
168
7.2.8
回 路 要 素 の 対 称 分 イ ン ピ ー ダ ン ス
170
7.2.9
正 相 お よ び 逆 相 回 路
171
7.2.10
零 相 回 路
7.3 非 対 称 故 障 7.3.1
無 負 荷 発 電 機 の 一 端 子 の 地絡 故 障
172 176 177
第8章
7.3.2 無 負 荷 発 電 機 の 線 間 短 絡
180
7.3.3 無 負 荷 発 電 機 の 線 間 短 絡 接 地 故 障
185
7.3.4 電 力 系 統 の非 対 称 故 障
189
7.3.5 電 力 系 統 の一 線 地絡
191
安定 度
8.1 安 定 度 の種 類
193
8.2 発 電 機 の運 動 方 程 式
194
8.2.1 動揺 方 程 式
194
8.2.2 単 位 慣性 定 数 の変 換
198
8.2.3 発 電 機 群 の 縮 約
200
8.3 電 力 相 差角 方程 式
202
8.4 定態 安 定 度― 同 期 化 力 係 数―
210
8.5 等 面 積 法 に よ る過 渡 安 定 度 判 定
213 213
8.5.2 等 面 積 法 の応 用
219
8.5.3 過 渡 安 定 度 の 向 上 対 策
222
第9章
8.5.1 等 面 積 法
電 力 系 統 に お け る 有 効 電 力 と周 波 数 の 関 係
9.1 周 波 数 制 御 の必 要 性
225
9.2 有 効 電 力 と周 波 数 の 関係
226
9.2.1 発 電 ユ ニ ッ トのガバナ 制 御
226
9.2.2 負荷 の 周 波 数 特 性
228
9.2.3 系統 の 周 波 数 特 性
228
9.3 連 系 系 統 の周 波 数-潮 流 特 性
230
9.4 負 荷 周 波 数 制 御― 単 独 系 統 の場 合―
232
9.5 負荷 周 波 数 制 御― 連 系 系 統 の場 合―
234
9.6 連 系 系 統 に お け る周 波 数 制 御 の例
237
第10章
電 力 シ ス テ ム に お け る無 効 電 力 と電圧 の 関 係
10.1 無効 電 力 と電 圧 の 関 係
241
10.2 電 圧 変 動 の 感 度
244
10.3 無 効 電 力 の 供 給 源
247
10.3.1
発 電 機
10.3.2
電 力 用 コ ン デ ン サ,分
10.3.3
同 期 調 相 期
251
静 止 型 無 効 電 力 補 償 装 置
251
10.3.4
247 路 リ アク トル
10.4 電 圧 無 効 電 力 制 御
252
10.4.1
中 央 制 御 方 式(ま
10.4.2
ロ ー カ ル 制 御 方 式(ま
第11章
250
た は,総
合 制 御 方 式)
た は,個
別 制 御 方 式)
252 252
電力 システムの経済運 用
11.1 経 済 運 用
255
11.2 火 力 発 電 ユ ニ ッ トの 経 済 負 荷 配 分
256
11.2.1
燃 料 費 特 性
11.2.2 ラ 11.2.3
グ ラ ンジェ
256 の 未 定 乗 数 法
257
火 力 発 電 ユ ニ ッ トの 最 適 出 力 配 分 (送電 損 失 を 考慮 し な い 場 合)
11.2.4
259
火 力 発 電 ユ ニ ッ トの 最 適 出 力 配 分 (送 電 損 失 を 考 慮 す る 場 合)
11.3 火 力,水
力 発 電 ユ ニ ッ トの 経 済 負 荷 配 分
263 265
11.3.1
水 火 協 調 方 程 式
265
11.3.2
水 火 協 調 方 程 式 の そ の 他 の 適 用
269
11.4 火 力 発電 ユ ニット ―ユ ニット
の 起動 停 止 計 画
コ ミット メン ト―
272
章 末 問 題 の 解 答
277
索 引
280
第1章
電力系統の概要
現代 社会 で は,家 庭 だ けで な く産 業や 交通 な どもすべ て電 気 を利 用 してお り,日 常 の生活 か ら電 気 エネル ギ ー を取 り去 る ことは まった く不可能 で あ る。 この章で は,電 気エ ネ ルギ ー を輸 送す る電 力系 統 の歴 史,電 力 系統 に おけ る送電 方 式 で あ る交 流送電 あるい は直流送 電 の得 失,さ らには電力 系統 を と りま く問題 点 を解 説 す る。
1.1
電 力 系 統 の 歴 史
発 電 機 に よ る 電 気 エ ネ ル ギ ー 発 生 が 実 現 し て 以 来,電
力 系 統 工 学 は急 速 に 発 展 し
た 。 電 気 を発 生 し て,輸 送 し,供 給 ・販 売 す る と い う電 気 事 業 は エ ジ ソ ン に よ っ て 1882年
に始 め られ た 。New
York市
で 直 流 電 力 を 発 生 し,そ れ を 照 明 用 に 供 給 す る
ことが 目的で あった。 残 念 なが ら エ ジ ソ ン は 交 流 で 電 気 を送 る こ とよ り,直 流 で 電 力 を送 る こ と の メ リ ッ トを信 じ て い た 。 そ の た め,自 後 に 確 立 す るニコラ た 。 他 方,ニコラ
社 の 社 員 の 中 に変 圧 器 や 交 流 発 電 機 な ど交 流 の 基 礎 を
・テ ス ラが い た に も か か わ らず,直
流 に よ る 供 給 を 続 行 し続 け
・テ ス ラ は そ の よ う な エ ジ ソ ン の 会 社 に 見 切 り を つ け,変 圧 器 の 開
発 を進 め た 。 そ の 優 位 性 をウェス チ ン グ ハ ウ スが 見 抜 い て 変 圧 器 の 特 許 を 購 入 し,交 流 で電 力 の 送 電 を始 め た 。 当 時,エ
ジ ソ ン の直 流 に よ る供 給 は大 き な 成 果 を あ げ た 。 しか し な が ら,そ
の後 ど
ん ど ん 需 要 が 増 加 して くる と,電 圧 の 低 い発 電 機 か ら多 くの 需 要 家 に 電 気 を送 る こ と は,送 電 線 路 で の 損 失 が 大 き く な る こ とが わ か っ て きた 。 これ を 解 決 す る た め に は, 低 圧 の 送 電 線 の線 路径 を大 き く し な け れ ば な らず,難 ニコラ るた め,送
・テ ス ラ に よ る 変 圧 器 を 用 い,送
し い 問 題 を は らん で き た 。
電 線 の 電 圧 を上 げ る こ とで 電 流 が 小 さ くな
電 に よ る損 失 を 小 さ くで き る と と もに,需
要 家 の 近 くで 電 圧 を 下 げ る こ と
もで き る の で,送
電 が 非 常 に効 率 的 に な っ た 。 また,高
る よ う に な り,こ
こに 電 力 系 統 の 発 展 の 基 礎 が 整 っ て き た 。
圧 化 に よ り長 距 離 送 電 が で き
エ ジ ソ ン は欧 州 で も直 流 に よ る 電 気 事 業 を 開 始 した が,そ る交 流 送 電 の 方 が 盛 ん に な っ て い った 。ニコラ
こ で も長 距 離 送 電 を行 え
・テ ス ラ は また,多
相 交 流方 式 を開発
し,徐 々 に三 相 交 流 が 電 力 系 統 の 主 流 に な っ て い く。 日本 で は 明 治 時 代,欧 1892年
米 か ら の 技 術 導 入 が 急 ピ ッ チ で 進 め られ,事
に各 種 水 車 や 発 電 機 が 導 入 さ れ た 。 そ れ は現 在 の 関 西 電 力(株)の 設 備 で,琵
琶 湖 疎 水 を 利 用 し た蹴 上 発 電 所 で あ る 。 当 時,直 流,あ
流,50Hzあ
る い は60Hz単
相 交
るい は 三 相 交 流 が 順 次 導 入 さ れ た 。 ま た 発 電 機 を複 数 同 期 運 転 す る こ と は大 変
難 し く,1発 の線 路(送
電 機 か ら1需 要 家 へ の配 電 が 原 則 で あ っ た 。 図1.1に 電 線)が
電 柱 に は りめ ぐ ら さ れ た 。 これ らが 後 に,ヨ
導 入 が 中 心 で あ っ た 東 日本 は50Hz,ア 60Hzに
業 用 と し て,
示 す よ う に,多
数
ー ロ ッパ か らの 機 器
メ リ カ か ら の 導 入 が 中 心 で あ っ た 西 日本 は
統 一 され る こ と に つ な が り,多 数 の 発 電 機 の 同 期 運 転 が 可 能 と な っ て きた 。
ま た 送 電 電 圧 は 上 昇 し,1907年 早 稲 田 間 で55kV送
に は 東 京 電 燈(現
・東 京 電 力(株))が
駒 橋 発 電 所―
電 を 始 め た 。 そ の 後 は 日本 各 地 で 都 市 の 経 済 発 展 と と も に長 距
離 送 電 線 が 実 現 し て い く。 世 界 と 日本 の 送 電 電 圧 の変 遷 を 図1.2に
示 す が,欧 米 とほ ぼ 同 時 に電 圧 の上 昇 が 行
わ れ て い る 。 先 人 の 並 々 な らぬ 努 力 を知 る こ とが で き る 。 当 初 は変 圧 器 に よ っ て電 圧 を容 易 に変 更 で き,長 距 離 送 電 が で き る こ とが 大 変 な メ リ ッ トに な り,電 気 事 業 は 規 模 の 点 で 急 激 に 拡 大 し続 けた 。 現 在,わ
が 国 で は,経
済 の 発 展 と共 に500kV送
び る可 能 性 が 考 え られ た た め,1000kVの
電 も完 結 し た が,さ
送 電 線 が 張 られ,図1.3に
らに需 要が 伸
示 す よ う な,変
圧 器 や 遮 断 器 あ る い は ガ ス 絶 縁 開 閉 装 置 な ど送 変電機 器 の 開 発 も行 わ れ た 。 寿 命 試 験 が 終 わ り,開 発 完 了 状 態 に あ る も の の,経
図1.1
済 状 態 が 停 滞 し電 力 需 要 も停 滞 し た た め,
多 数 の送 電線 の あ る回路[提 供 :関西 電 力 株 式会 社]
実 際 に は1000kVで
図1.2
日本 と世 界 で の送 電 電圧 の増 加
図1.3
UHV送
電 機器 の寿 命試 験 設備
の 送 電 は行 わ れ て い な い 。
わ が 国 は 島 国 で 細 長 い 形 を し て い る こ と,需 要 が 都 市 に集 中 して い る こ と,さ 図1.4に
示 す よ う に 国 内 に50Hzと60Hzの
らに
異 な る周 波 数 の 系 統 が 存 在 す る な ど,
電 力 系 統 の構 成 は や や 特 殊 で あ る 。 しか し,大 都 市 に 大 電 力 を送 電 す る こ と は機 器 の
図1.4 現在 の 日本 の 送電 網
小 形化 と高電圧 大容 量化 を促進 し,ま た停 電 を防 ぐた めの ハ ー ド/ソフ ト両 面 に わた って設 備 が充実 した,世 界 に誇 り得 る電 力系 統 で ある。
1.2 1.2.1
交 流 送 電 と直 流 送 電 交流送電の メ リッ ト
エ ジ ソ ンは直 流 に よる電 力供 給 を始 めたが,前 節 で も述 べ た よ うに,そ の後 は電 力 需 要が 増大 す る に従 って,交 流送電 が全 面的 に使 用 され る よ うにな った。 これ は,交 流 送電 には次 の ような メ リ ッ トが あ るため であ る。 (1) 変 圧 器 で 効 率 よ く電 圧 を昇 降 で き る こ と 長距 離送 電で は導体 を細 くして 高電圧 ・小 電流 で送 電 し,需 要家 端 あ るいは電源 端 で は低 電 圧 ・大 電流 で送 電 で きれ ば,送 電 線 の建 設 コス トは著 し く縮 小 され る。 ま た,送 電損 失 も大 き く軽減 され る。 (2) 大 容 量 の 遮 断 器 が作 れ る こ と 交流 で は電流 ゼ ロ点が あ るた め,そ こで比較 的簡 単 に電 流 を遮 断で き る。供 給 の高 信頼 度 化,経 済 運用 を実現 す るた め に,系 統 を接続 して大 きな系統 を構成 す る系統 連 系 が行 われ るが,事 故 の影 響 を局 限化 す るた め に,事 故 系 統 を健 全 な系 統か ら切 り離 す 大容量 遮 断器 が必 要 とな る。
なお,直 流 は電 流 ゼ ロ点が無 い ため,電 流遮 断 は大変 難 しい。遮 断す るた め には特 別 な装置 が必 要 とな る。 (3) 安 価 で 使 いや す い 交 流 発 電 機 や 交流 電 動 機 が 使 え る こ と 交流発 電機 や電 動機 は,直 流の それ らと比 べ る と構造 上簡 単 で あ り,機 器 を製作 す る上 で大 変有 利 で あ る。 直流機 で はブ ラ シの保 守管 理 に手 間が かか るので,交 流機 へ の変 更 は保守 管理 の点 か ら も歓 迎 され る。 (4) 三 相 交 流 シス テ ム に よ る効 率 的 な送 電 が 可 能 な こ と 三 相 交流 にす る ことに よ り,同 じ電力 を送電 す るのに必 要 な送 電線 の数 を減 らす こ とがで きる。 送電 線建 設 コス ト削減 の点 か ら も有利 で あ る。
1.2.2
直流 送電の用 途
しか し,交 流送 電 で送 電で きる電 力 は,送 電 線路 の リアク タ ンス に逆比 例 し,系 統 の安 定度 も低 下 す る。 また長距 離 ケー ブル,例 えば海底 ケー ブル な どで は充電 電流 に よ り容量 い っ ぱい まで送 電で きな い とい った 問題 が ある。 また 異周 波系統 を接 続 で き ない,系 統 を連 系す る ことで短 絡電 流が増 加 す るた め遮 断器 の能 力 を超 えて しま うと いった 問題 もあ り,図1.5に
示 す よ うに,下 記 の用 途 で直流 送電 が適 用 され て いる。
(1) 長 距 離 ・大 容 量 送 電 直 流 で は,交 流 と比 べ 低 い電圧 と,少 ない 回線 で大容 量 の送電 が 可能 で ある。変 換 器 の設備 を考 えて も,送 電線路 の建 設費 が安価 で あ るた め,一 定 の距 離(一 般 的 に は 数百kmと
いわ れ てい る)を 超 える と,直 流送 電 の方が 経済 的 とな る。 しか し,わ が
図1.5 世 界 の直 流 送 電網
国 で は送 電 距 離 が 短 く,こ の 目 的 で の 直 流 送 電 の 適 用 は あ ま り経 済 的 で は な い 。 (2)
ケ ー ブ ル送 電
ケ ー ブ ル の 対 地 静 電 容 量 は大 き い た め,交
流 で は充 電 電 流 が 多 くな り,送
で き る有 効 電 力 が 制 約 され る こ と に な る 。 例 え ば,海 ル を 利 用 せ ざ る を 得 ず,こ 直 流 送 電 シ ス テ ム(関 海 道 電 力 間)が (3)
の た め に,直
流 送 電 が 用 い られ る 。 わ が 国 で は,紀
西 電力― 四 国 電 力 間)や
北 電力― 北
周波数変換
構 成 と な っ て い る。 こ の た め,交 て,60Hzか
(4)
北 本 直 流 送 電 シ ス テ ム(東
伊 水道
運 用 さ れ て い る。
わ が 国 の 電 力 系 統 は50Hzと60Hzの2つ
信 濃,東
る こ との
を挟 ん で の 送 電 で は 海 底 ケ ー ブ
ら50Hzへ,あ
の 系 統 が 存 在 す る と い う非 常 に 特 殊 な
流 で 直 接 連 系 す る こ と はで き な い の で,直
る い は,50Hzか
ら60Hzへ
流 を介 し
の 周 波 数 変 換 が 佐 久 間,新
清 水 の 各 変 電 所 で 行 わ れ て い る。 系統 間 連 系
電 力 品 質 の 異 な る 系 統,例
え ば,周
た 系 統 を交 流 で連 系 す れ ば,連
波 数 変 動 が 非 常 に大 き い 系 統 と周 波 数 が 安 定 し
系 点 で の 潮 流(電
り,系 統 運 用 上 望 ま し くな い 。 ま た,交
力 の 流 れ)の
変 動 が 非 常 に 大 き くな
流 に よ る連 系 で は 潮 流 を制 御 で き な い が,潮
流 を一 定 に し て運 用 す る とい っ た ニ ー ズ も あ る。 直 流 を介 し て 系 統 を連 系 す れ ば,お 互 い の 系 統 の 影 響 を 小 さ く す る こ と が で き る。 こ の よ う な 系 統 連 系 はBack‐to‐ Backと
よ ばれ,米
国 な ど に適 用 例 が 多 い 。 わ が 国 で も,南 福 光 変 電 所 に お い て 潮 流
制 御 を 目的 と し たBack‐to‐Backの
1.3 1.3.1
設 備 が 設 置 さ れ て い る。
系 統 技 術 の 最 近 の 問 題 点 大規模停 電事故
電 力 系 統 が 巨 大 か つ 複 雑 に な り,ち
ょっ と した き っ か け の 積 み 重 ね で,大
電 事 故 に進 展 す る 可 能 性 が あ る 。2003年
の 北 米,北
欧,あ
規 模 な停
るい はイ タ リア の大 規 模
停 電 事 故 が そ の 例 で あ ろ う。 これ ら の 事 故 は い ず れ も,最 初 の き っ か け は 重 大 な事 故 で は な か っ た もの の,そ
の 後,関
係 す る電 力 系 統 間 で 十 分 な情 報 共 有 が で き な か っ た
た め に,適 切 な対 応 が で きず,そ
の影 響 が非 常 に広 範 囲 に拡 大 して し まっ た の で あ
る。 こ の よ う に,大
規 模 か つ 密 接 に連 系 され た 電 力 系 統 で は,お 互 い に 十 分 な 情 報 を
共 有 す る こ とが 信 頼 性 の 高 い 系 統 運 用 の た め に 重 要 で あ る。 ち な み に,過
去2回
に わ た るニ ュ ー ヨ ー ク大 停 電 に関 して,隣
情 報 を 得 られ な い こ とが 原 因 と し て,さ
接 系統 の 十分 な系統
ま ざ ま な 改 善 が 長 年 に わ た っ て 加 え られ て き
た が,今
回 も情 報 共 有 の 欠 如 が,原
因 の 少 な く と も一 つ と し て 事 故 を拡 大 し て し ま っ
た の は 皮 肉 な こ と で あ る。 今 後 と も,信 頼 性 の 高 い 系 統 運 用 の た め に,情 報 処 理 技 術,さ た め の 通 信 技 術 を 含 め たICT(Information,
Communication
ら に は,情 報 伝 達 の
, Technology)の
適用
は大 き な 課 題 で あ ろ う 。
1.3.2 1990年
電力 自由化 以 降,電
力 事 業 に対 す る競 争 原 理 の 導 入,す
な わ ち,電
力 自由化 が 世 界 的
に 進 め ら れ て い る。 電 力 自 由 化 に よ り電 気 料 金 の 低 下 が 報 告 さ れ る と と も に,カ
リフ
ォ ル ニ ア に お け る輪 番 停 電 の よ う な安 定 供 給 に 対 す る 問 題 も発 生 し た 。 電 力 自 由化 は発 電,送 電,配 電 が 別 会 社 で 運 営 さ れ る 分 離 型 の形 態 で 行 わ れ るの が 一般 的 で あるが ,電 力 自 由化 の 先 進 国 で あ る英 国 で は,発 電 と配 電 の 会 社 が統 合 す る こ とで 自 由 化 にお け る リス ク を避 け る(へ た 。 す な わ ち,統 合 す る こ とで,発
ッ ジ す る)こ
と も行 わ れ る よ う に な っ て き
電 会 社 と し て は安 定 した 価 格 で 安 定 した 量 の 電 気
を 配 電 会 社 に売 る こ とが で き,一 方,配
電 会 社 と し て は安 定 した 価 格 で 安 定 した 量 の
電 力 を 入 手 す る こ とが で き る。 これ に よ り,電 力 市 場 の 価 格 変 動 と い う リス ク を お互 い避 け る こ とが で き る の で あ る 。 こ の よ う に,電
力 自 由 化 の 仕 組 み は 日 々,そ
し て 地 域 で 変 化 して い る。 そ れ ぞ れ の
国 あ る い は電 力 系 統 に と っ て 有 効 な 電 力 自 由 化 の 仕 組 み を考 え る た め に は,社 会 的, 経 済 的,そ
して 技 術 的 側 面 か ら広 範 な取 り組 み が 必 要 とな る で あ ろ う。
1.3.3
地球温暖化対策
電 力 系 統 に と って 長 期 的 に も っ と も問 題 とな る の は 地 球 温 暖 化 対 策 で あ ろ う。 化 石 燃 料 の燃 焼 に よ る発 電 は 多 量 の 炭 酸 ガ ス(CO2)の 大 な 問 題 で あ る。 こ の た め に は,こ
放 出 が 避 け ら れ ず,こ
れ ま で の 発 電 方 式 を 見 直 す 必 要 が あ ろ う。CO2
の 排 出 量 は 石 炭 火 力 が 大 き く,そ れ に 続 い て 石 油 火 力,LNG火 る。 また,最
の 削減 が重
力 の 順 に小 さ くな
近 は石 油 の 掘 削量 が ピー ク を迎 え た と い う記 事 が 多 くな り,中 国 や イ ン
ドな どの 経 済 発 展 に 伴 う化 石 燃 料 の 大 量 消 費 も あ い ま っ て,化
石燃料 その ものの枯 渇
へ の 対 応 も重 要 で あ る。 太 陽 光 発 電 や 風 力 発 電 な ど 自然 エ ネ ル ギ(再 望 まれ る が,こ 圧 変 動,周
生 可 能 エ ネ ル ギ ー)の 積 極 的 な 導 入 が
れ ら電 源 の 出 力 の 不 安 定 性 は 系 統 との 連 系 に 重 大 な 問 題,例
え ば,電
波 数 変 動 を 引 き起 こ し,そ の 対 策 が 重 要 で あ る。 原 子 力 発 電 の 導 入 促 進 も
一つ の選択 肢 で あるが
,世 界 的 に見 て も,原 子 力 促 進 に対 す る国 民 的 合 意 が 十 分 と れ
て い な い の が 現 状 で あ る。 こ の温 暖 化 対 策 問 題 は,特 源 を輸 入 に頼 る 国 で は,エ ろ う。
にわが 国 の よ うにエ ネル ギー資
ネ ル ギ ー セ キ ュ リテ ィ ー と の 関 係 も含 め た 検 討 が 重 要 で あ
第2章 電力系統 と三相 回路の基礎
2.1 2.1.1
電 力 電圧 お よ び 電流 の 記 号
電 力 系 統 で 扱 う電 圧 の 波 形 は 正 弦 波 状 で あ り,周 波 数 は商 用 周 波 数 で 一 定 とす る 。 電 圧 お よ び 電 流 の 実 効 値 の ベ ク トル(phasor: の 大 文 字 を 用 い,電
圧 ベ ク トル はV,電
絶 対 値 記 号 を 用 い て│V│お トル はEを
あ る い は複 素 量)*は
流 ベ ク トル はIで
よ び│I│で 表 す 。 発 電 機,変
用 い て 表 す 。 また,電
圧,電
表 し,そ
ア ル フ ァベ ッ ト れ らの大 き さは
圧 器 な どの 誘 導 起 電 力 の ベ ク
流 等 の 瞬 時 値 は ア ル フ ァベ ッ トの 小 文 字 を
用 いて表 す。 例 え ば,電 圧 と電 流 が
と 表 さ れ る と き,電 圧 の 最 大 値 はVm=141 る。 こ こで,添
え字mは
.1V,電
流 の 最 大 値 はIm=14.1Aで
あ
最 大 値 を表 す。上 式 で 表 され る電 圧 お よ び電 流 の 実効 値
(effective value, root‐mean‐square
value
or rms
value)は
最 大 値 を√2で
除 して
得 られ る。
2.1.2
電力の基 本式
端 子 電 圧 がυ の 電 池 か ら電 流iが
負 荷 に 向 か っ て 流 れ て い る と き,負 荷 に 供 給 さ
れ る 電 力 は次 式 で 表 さ れ る。
(2.1) こ こ に,pは
電 力 の 瞬 時 値 を 表 す 。(2
* わ が 国 で は 電気 回路 の 電 圧,電 語 で はphasorと
い う。
流,イ
.1)式
は電力 の基本 式で あ る。
ン ピー ダ ンス な どの 複 素量 をベ ク トル と よん で い る が ,英
図2.1 簡 単 な送 電 系統 図2.1に
こ こ に,ω
示 す 簡 単 な交 流 回路 の電 圧υ と電 流iが
は 角 周 波 数(angular
frequency)で
次 の よ う に表 さ れ る とす る 。
あ り,周
波 数(frequency)をf(Hz)
と表 せ ば,
と な り,T=1/fは
電 源 電 圧 の 周 期,θ
は位 相 角(phase
angle)で
電 圧 が 電 流 よ り進
ん で い る と き 正 とす る。 電 力 は(2.1)式 か ら
(2.2) と表 され る。 電 圧 お よ び 電 流 の 実 効 値 は次 の よ う に表 さ れ る 。
(2.3) (2.4) これ らの 関 係 を 用 い る と,(2.2)式
は
(2.5) とな る 。
2.1.3
有効 電力お よび無効電力
(2.5)式 の右 辺第2項 を展開 し,整 理 す る と, (2.6) を得 る。 (2.6)式 の 右 辺 第1項
の振幅 を
(2.7) と表 す と き,(2.6)式
の1周
い値 を と る。(2.7)式
で 表 され る電 力 を 有 効 電 力(active
こ と と し,cosθ
期(T=1/f)の
を 力率(power
間 の 平 均 値 は(2 .7)式 で 表 さ れ,0で
factor)と
power)と
い う。 し た が っ て,有
表す
効 電 力Pは
瞬時 電
力pの1周
期 の 平 均 値 で あ り,そ の 大 き さ は 力 率 に 関 係 す る 。 単 位 はW(Watt)で
あ る が,電
力 系 統 で はWの
Wが
な
い い ,Pで
単 位 は 小 さ す ぎ る の で,kW=103Wま
た はMW=106
用 い られ る 。
(2.6)式 の 右 辺 第2項
の振幅 を
(2.8) と表 す と き,1周
期(T=1/f)の
力 を 無 効 電 力(reactive
間 の 平 均 値 は 常 に 零 で あ る 。(2 .8)式 で 表 さ れ る電
power)と
い い,Qで
表 す こ と と す る。 無 効 電 力Qは
送電
線 を 半 周 期 毎 に 交 互 に 負 荷 と電 源 の 方 向 に伝 送 さ れ る 電 力 の 成 分 の 最 大 値 で あ る 。 単 位 はvarで
あ る が,有
kvar=103varあ
効 電 力 と 同 様 に 電 力 系 統 で はvarの
る い はMvar=106varが
抵 抗 負 荷(resistive load)は ctor)の power)を (capacitive
消 費 す る。 一 方,コ load)は
用 い られ る。
有 効 電 力 を 消 費 し,リ
よ う な 誘 導 性 負 荷(inductive
単 位 は小 さ す ぎ る の で,
load)は
ン デ ン サ(capacitor)の
負 の 無 効 電 力 を 消 費 す る が,電
アク トル(reactor
正 の 無 効 電 力(positive
or
indu
reactive
よ う な 容 量 性 負 荷
力 系 統 で は,正
の 無 効 電 力 を発
生 す る と見 な して 取 り扱 わ れ る 。
2.1.4
皮 相電力
回 路 の 電 圧 の 大 き さ│V│と (voltamps
or apparent
うに表 され る。
こ の 回 路 に 流 れ る 電 流 の 大 き さ│I│の 積 を 皮 相 電 力
power)と
よ び,│S│で
表 す こ と と す る と,皮 相 電 力 は 次 の よ
(2.9) (2.9)式
は
とな る か ら,皮 相 電 力 は
の よ う に 有 効 電 力 と無 効 電 力 に よ っ て 表 さ れ る。 皮 相 電 力 の 単 位 はVAで 力 系 統 で はkVA=103VA,MVA=106VAが
【 例 題2.1】
図2.2に
あ り,電
用 い ら れ る。
示 す 抵 抗 と誘 導 性 負 荷 の 並 列 の 負 荷 に つ い て 各 種 の 電 力 を 求 め
て み よ う。 この 負 荷 に は 周 波 数50Hz,電
図2.2
圧6kVの
電 圧 が 加 え ら れ る。
単相 回路
[解] 電圧 を位 相 角の基準 とす る。抵抗 負荷 に流れ る電 流 は
とな り,誘 導性 負荷 に流 れ る電 流 は
とな る。 抵抗 負荷 で消費 され る有効 電 力,無 効 電力 お よび皮相 電 力 は次の ように な る。
また,誘 導性負 荷 で消費 され る有効 電 力,無 効 電力 お よび皮相 電 力 は次の ように な る。
図2.2の
並 列負荷 の合 成 イ ンピー ダ ンス は
と な る 。 よ っ て,合 成 負 荷 に 流 入 す る全 電 流 は
とな る。 全有 効電 力,無 効 電力 お よび皮相 電 力 は
と な る。 以 上 よ り有 効 電 力 お よ び無 効 電 力 は そ れ ぞ れ に つ い てP1+P2=Ptお +Q2=Qtの
関 係 が 成 立 す る が,皮
よ びQ1
相 電 力 につ い て は それ ぞれ の負 荷 の皮 相電 力 の和
が 総 合 負 荷 の 皮 相 電 力 に 等 し くな ら ず,│S1│+│S2│>│St│の
関 係 が 成 立 して い る こ と に
注 意 す る。
2.2
複 素 電 力
電 力 系 統 に お い て 複 素 電 力(complex て 非 常 に 有 効 で あ る。 図2.3に れ る と す る。
power)を
使 用 す る こ とは解析 な どに お い
示 す 単 相 回 路 に お い て,電
圧 と電 流 が 次 の よ う に表 さ
図2.3
こ こ に,θVは
単 相 回路 の イ ンピー ダ ンス とア ド ミタ ンス
基 準 に 対 す る 電 圧 の 位 相 角,θIは 基 準 に対 す る電 流 の 位 相 角 で あ る。
な お,
とい う表 現 法 も あ り,本 書 で は 両 方 の表 記 を 用 い て い る 。 ま た,電
圧,電
流 等 の 大 き さ│V│,│I│をV,Iと
簡 略 化 し たV=V・ejθV,I=I・ejθ
Iとい う表 現 も用 い る こ と が あ る。 複 素 電 力Sは
電 圧 と電 流 の 共役 値 の積 で 表 す 。 これ を 式 で 表 せ ば
(2.10) とな る 。 こ こ に,I*は
電 流 の 共 役 値 で あ り,
(2.11) と表 さ れ る。 よ っ て,複 素 電 力Sは
次 の よ うに表 され る
こ こ に,θV− θIは位 相 角 で あ り,複 素 電 力 の 大 き さ は 皮 相 電 力 に等 し い 。 θ=θV− θIとす る と,
(2.12) を得 る。電圧Vお
よび電 流Iが
図2.4
電力 三 角形
と表 さ れ る と き,複 素 電 力 は
(2.13) (2.14) と な る 。 こ こ に,Zは tance)で,イ
イ ン ピ ー ダ ン ス(impedance),Yは
ン ピ ー ダ ン スZの
逆 数 で あ る 。 そ こ で,複
ア ド ミ タ ン ス(admit 素 電 力 を 表 す 式 を ま とめ る
と,
(2.15) の よ う に表 さ れ る。 複 素 電 力Sの
大 き さ│S│は 皮 相 電 力 で,次
の ように表 され る。
(2.16) (2.15)式 お よ び(2.16)式
の 関 係 を複 素 平 面 上 に 描 く と 図2.4の
無 効 電 力 お よ び 皮 相 電 力 は 直 角 三 角 形 と し て 表 さ れ,こ (power triangle)と
【 例 題2.2】
よ う に,有
の三 角形 は電 力三角形
よばれ る。
例 題2.1に
つ い て,複
素 電 力,有
効 電 力 お よ び無 効 電 力 を求 め よ。
[解] (2.15)式 の 右 辺 の 最 後 の 式 か ら,抵 抗 負荷 で 消 費 さ れ る複 素 電 力 は
と な る 。 よ っ て,
効 電 力,
とな る。誘 導 性負 荷 で消費 され る複 素電力 は
とな り,よ
っ て,有
効 電 力 お よ び無 効 電 力 は
とな る。
2.3
単 位 法
電 力 系 統 の 解 析 に は 単 位 法(per る こ と に よ り,電 圧,電
流,電
unit system)が
よ く用 い ら れ る。 単 位 法 を使 用 す
力 な どの 相 対 値 が 得 られ る こ と,変 圧 器 を 含 む 系 統 の
回 路 解 析 が 著 し く簡 単 に な る こ と,回 路 パ ラ メ ー タ は 比 較 的 狭 い 数 値 範 囲 に収 ま る の で,デ
ー タ の 誤 りを 見 つ け易 い こ と な どの 利 点 が 考 え ら れ る。
2.3.1
単 位法の定 義
複 素 電 力Sを
送 電 し て い る 系 統 を 考 え よ う。 電 圧 はV,電
流 はIで
電 流 の 実 効 値 に よ る 基 準 と な る 値 を基 準 値 あ る い は べース 値(base そ れ ら を 任 意 に選 定 し,添 単 位 法 に よ る電 圧,電 定 義 され,次
え字bを
用 い てVb,Ibの
あ る。 電 圧,
value)と
い い,
よ うに表す 。
流 は そ れ ら の べース 値 と の 比 を 取 り,無 次 元 の複 素 数 と して
の よ うに表 され る。
(2.17) (2.18) こ こ に,θ,δ
はV,Iの
位 相 角 を表 す 。
単 位 法 で 表 さ れ る電 圧 お よ び 電 流 な どは 文 章 上 混 乱 の な い 場 合 はV,I等 用 い,特
の記 号 を
に単 位 法 の 量 で あ る こ と を 明 示 し よ う とす る場 合 に は,(2.17)式,(2.18)式
のよ う に添 字puま pu値
た はp.u.を 用 い てVpu,Ipuの
よ うに表 す。 単 位 法 で表 された 値 を
と よ ぶ こ と とす る 。
単 位 法 の 例 と して,基
準 電 圧200kVを
選 ぶ とす る な らば,電
圧が
の場合,単 位法 の値 として
とな る 。 こ のpu値
は実 際 の 電 圧 が 基 準 電 圧 よ り12.5%超
過 し て い る こ とが わ か る 。
す で に選 定 した べース 電 圧 と電 流 に よ っ て 電 力 とイ ン ピ ー ダ ン ス の べース 値 を 次 の ように定義 す る。
(2.19) (2.20) 複 素 電 力Sお
よび イ ン ピー ダ ン スZのpu値
は 次 の よ う に求 め る こ とが で き る,
(2.21) (2.22)
2.3.2
単 位法 による電力お よび回路の式
電 圧,電
流 お よび 複 素 電 力 の す べ て の 量 をPu値
の(2.10)式
は 単 位 法 を 用 い て表 さ れ る。(2.10)式
さ ら に,(2.19)式
で 表 す な ら ば,一
般 的 な複 素電 力
を 複 素 電 力 の べース 値Sbで
割 り,
の 関 係 を 用 い る と,
(2.23) とな る。 次 に 示 す よ う に,単
位 法 は一 般 的 な オ ー ム の 法 則 を 満 足 す る。
(2.24) 4つ の べース 値Vb,Ib,Sbお
よ びZbの
内 の2つ
の 量 を 任 意 に選 ぶ と,残
りの2つ
の量
は これら か ら誘 導 され る。 電 力 系 統 を 実 際 に 解 析 す る場 合,VbとSbを 的 で あ り,残
り の2つ
選 ぶ のが一 般
は 次 の よ う に計 算 され る 。
(2.25) (2.26)
【 例 題2.3】
例 題2.1の
す べ て の 量 を単 位 法 で 表 せ 。 た だ し,べース
値 として 次 の量
を 用 い よ。
[解] (2.26)式 を用 い て,べース
また,べース
イ ン ピ ー ダ ン ス を 計 算 す る。
電 流 に つ い て は,式(2.25)を
用 い て 計 算 す る。
以 上 に 求 め た べース 電 流 とべース イ ン ピ ー ダ ン ス を 用 い て,図2.5に よ る 回 路 を 得 る。 この 図 か ら各 負 荷 を 流 れ る電 流 のpu値
また,各
負 荷 の 消 費 す る電 力 は 次 の よ う に な る 。
図2.5
pu値
で 表 され た 回路
示 すpu値
を求 め る こ とが で き る 。
に
実際 の電 流お よび電 力 の値 は次の ように なる。
2.4
対 称 三 相 交 流 と 送 電 系 統
対 称 三 相 交 流 を送 電 系 統 に適 用 す る こ とで,同 数 を 減 ら す こ とが で き る。 効 率 的,経 が,電
じ電 力 を 送 る た め に 必 要 な 送 電 線 の
済 的 な 電 力 輸 送 を行 う た め に,対 称 三 相 交 流
力 系 統 で は一 般 的 に 用 い られ る。
2.4.1
対称三相交流電 圧と関係式
三 相 送 電 系 統 の 基 本 的 な構 成 の 例 と し て,図2.6に
示 す 送 電 系 統 を考 え る 。 発 電 機
の 発 生 す る 各 相 の 誘 導 起 電 力 の 大 き さ は 等 し く,位 相 差 は そ れ ぞ れ120° であり,相 順(phase
sequence)はa,b,cで
三 相 発 電 機 の 中 性 点(generator
ある。 neutral)に
対 す る発 電 機 の端 子a,b,cの
電圧 は
発 電 機 の 電 機 子 巻 線 の イ ン ピー ダ ン ス に よ る電 圧 降 下 の た め各 相 の 誘 導 起 電 力 に 等 し くは な ら な い 。 各 端 子 の 相 電 圧(phase
voltage
or phase
to neutral voltage)は
と中 性 点 間 の 電 圧 で あ り,次 の よ う に 表 さ れ る。
図2.6 三 相送 電 系 統 の基 本 的 な構 成
端子
図2.7 対 称三 相 系統 の 電圧 お よび電 流 のベ ク トル
(2.27)
こ こ に,υa,υbお よ びυc,は そ れ ぞ れa,bお
よ びc相
の 相 電 圧 で あ り,│Vp│は
相電圧
の実効 値で あ る。 各 相 の 相 電 圧 を そ れ ぞ れ ベ ク トルVa,Vbお 準 と し て,各
よ びVcで
表 し,a相
の 相 電 圧Vaを
基
相 の 相 電 圧 を 式 で 表 す と次 の よ う に な る。
(2.28)
相 電 圧Vaを
基 準 と し て 各 相 の 相 電 圧 を ベ ク トル 図 で 表 せ ば,図2.7の
ようにな
る。 相 間 で 測 られ た 電 圧 は 線 間 電 圧(line
voltage)と
い う。 相 電 圧 と線 間 電 圧 は次 の
関 係 が あ る。
(2.29)
こ こ に,Vabはa相
とb相
間 の 線 間 電 圧,Vbcはb相
とc相
間 の 線 間 電 圧,Vcaはc
相 とa相 間 の 電 圧 で あ る 。 対 称 三 相 回 路 に お け る3つ の 線 間 電 圧 は 大 き さ は 等 し く, 次 の よ う に 表 さ れ る。
(2.30) こ こに,│Vp│は
相 電 圧 の 大 き さ で あ る。 対 称 三 相 回 路 に お い て,線
相 電 圧 の 大 き さ の√3倍 は線 間 電 圧 を用 い,送
間電圧 の大 きさ は
で あ る。 電 力 関 係 で は,三 相 機 器 の 定 格 電 圧 を い う と き に
配 電 に お け る電 線 路 の 電 圧 は線 間 電 圧 を い うの が 普 通 で あ る 。
電 線 路 の線 間 電 圧 は線 路 の 位 置 に よ っ て 違 う の で 線 路 を代 表 す る線 間 電 圧 と し て公 称 電 圧(nominal
voltage)が
電 圧 が275kVで,相
2.4.2
用 い られ る 。 例 え ば,275kVの
電 圧 は275/√3=159kVで
送 電 線 とい う場 合,公
称
あ る。
対称三相 交流電流 と関係式
対 称 三 相 交 流 電 源 か ら供 給 さ れ る 負 荷 が 対 称 で 平 衡 して い る な ら ば,図2.6に た 回 路 の3つ
示 し
の相電 流 は三相 対称 で あ る。
(2.31)
こ こ に,ia,ibお
よ びicは
そ れ ぞ れa,bお
よ びc相
の 線 路 電 流 で あ り,|Ip|は線 路 電
流 の 実 効 値 で あ る 。 位 相 角 φ は 負 荷 の イ ン ピ ー ダ ン ス に よ っ て 決 ま る。 相 電 圧Vaを
基 準 に 選 ぶ と,各 相 の 電 流 ベ ク トルIa,Ibお
よ びIcは
次 の よ うに表 さ
れ る。
(2.32)
電 流 ベ ク トル は 図2.7の
よ う に な る 。 中 性 線 に 流 れ る帰 路 電 流Inは3つ
の相 電 流
の和 で あ る。 各 相 電 流 の ベ ク トル 和 は
(2.33) であ るか ら,中 性 線 を流 れ る帰 路 電流 はな く,帰 路電 流 の線 路 は不 要で あ る。 したが
図2.8 対 称 三相 回 路 と帰 路 電 流 回路
って,図2.8に 示 す よ うに対 称三 相 回路 を描 くこ とが で きる。 実際 の回路 で は電源側 に昇圧 変 圧器,負 荷側 には降圧変 圧器 が あ り,発 電 機 の中性 点 お よび負荷 の中性 点 は 電 位 を定 め るた め接地(grounding)さ
れ る。
各相 が 完全 に対称 で あ り,中 性 線 に電流 が流 れ ない な らば,発 電機 の中性 点 と負荷 の中性 点 は同電 位 で あ り,電 圧降 下 は生 じない。 したが って,対 称 三相 交流 系統 の す べて の相電 圧 は全 系統 を通 して同 一 の電 位 を もつ大地 に対 して測 られ る。
2.4.3
三相電力 と関係式
三相 電力 系統 におい て送 電 され る三相 電力 の瞬時 値 は,各 相 の送 電電力 の瞬 時値 の 和 として次 の よ うに表 され る。 (2.34) (2.27)式
お よ び(2.31)を(2.34)式
に 代 入 し,θ=2ωt−
φ と 置 き,
の 関 係 を考 慮 す る と,次 の 重 要 な 関 係 式 を得 る。
(2.35) こ こ に,P3φ
は 三 相 有 効 電 力,cosφ
対 称 三 相 系 統 に お い て,三 の3倍
は 力 率,P1φ
は1相(単
相)の
有 効 電力 を表 す。
相 瞬 時 電 力 の脈 動 は な く,三 相 有 効 電 力 は1相
に 等 し い 。 三 相 電 力 系 統 の 有 効 電 力 の大 き さ を 表 す 場 合,三
の有 効 電 力
相 電力 をい うのが
一般 的 で あ る
。
三 相 電 力 が 単 相 電 力 よ り優 れ て い る点 は 三 相 電 動 機 や 発 電 機 の トル クが 脈 動 せ ず, 一定 で あ る ことであ る 。 三 相 瞬 時 電 力 は一 定 で あ る が,各 相 電 力 は脈 動 し,単 相 電 力 と変 わ りが な い こ と に 注 意 す る。
三相 無 効電 力 は次式 に よって表 され る。 (2.36) こ こ に,Q3φ に1相
は三 相 無 効 電 力,Q1φ
の 無 効 電 力 の3倍
は1相
の 無 効 電 力 を 表 す 。 三 相 無 効 電 力Q3φ は 単
で あ る。
三 相 複 素 電 力 を表 現 す る と き,有 効 電 力 を(2.35)式
で 表 し,無 効 電 力 を(2.36)式
で
表 す。 同 様 に,三
相 の 皮 相 電 力 は 次 式 に よ っ て 表 され る。
(2.37) こ こに,|S3φ|は 三 相 の 皮 相 電 力,|S1φ|は 単 相 皮 相 電 力 を 表 し,三 相 の皮 相 電 力 は単 相 皮 相 電 力 の3倍
で ある。
【 例 題2.4】150kV送 の を 図2.9に
電 系 統 の 一 部 の 負 荷 を,こ
示 す 。 この 電 動 機 の1相
れ に等 価 な電 動 機 で代 表 させ た も
の イ ン ピー ダ ン ス は
で あ る。1相 の 電 流 と この 負 荷 に 供 給 され る1相 の 有 効 お よ び 無 効 電 力 を求 め,さ に,三 相 の 有 効 電 力,無
効 電 力 と皮 相 電 力 を 求 め て み よ う。
図2.9 150kVの
[解] 相電 圧 の大 きさ は
簡 単 な送 電 系統
ら
相電 流 の実効値 は
とな る。相 電流 の位 相角 は
で あ り,相 電 圧 よ り20.56° 遅 れ て い る。 1相 の 有 効 電 力 お よび 無 効 電 力 は
とな る。 また,三 相 有効 電力,三 相 無効 電力 お よび三 相皮 相電 力 は
と な る。
2.5
負 荷 のYお
よ びΔ
結 線
2.5.1
負 荷 イ ン ピ ー ダ ン ス のYお
図2.9に
示 さ れ た 三 相 負 荷 は 星 形結 線(star-connected
(Y-connected
type)と
(delta-connected ピ ー ダ ン スZに の√3倍
よ ば れ,図2.10(a)に
type)と
は 線 間 電 圧 が 加 わ り,図2.9に
線 され た と き に イ ン ピ ー ダ ン スZに ピー ダ ン スZの3台
る い はY結
線
示 す 三 相 負 荷 は デ ル タ(Δ)結
示 さ れ たY結
線
加 わ る 電 圧 の√3倍
Y結線 され た と き の 電 力 の3倍
ン
線 の 負 荷 に 流 れ る電 流
線 の イ ン ピ ー ダ ン スZに
の 負 荷 をΔ 結 線 し た と き,イ
例 題2.4に
type)あ
よ ば れ る 。 同 じイ ン ピー ダ ン ス をΔ 結 線 し た と き,イ
の 電 流 が 流 れ る 。 また,Δ結
【 例 題2.5】
よ びΔ 結 線
加 わ る 電 圧 は,Y結
で あ る 。 し た が っ て,イ
ン
ン ピー ダ ン ス で 消 費 され る 電 力 は
で あ る。
お い て 負 荷 イ ン ピ ー ダ ン スZがΔ結
線 され た 場 合,負
荷イ
図2.10 Δ 結線 の負 荷 と位 相 図 ンピー ダ ン ス に流 れ る電 流 と線 電 流 を 求 め て み よ う。 [解] 図2.4で
求 め た よ う に,イ
流 れ る 電 流 は1.014kAで る の で,こ
ン ピ ー ダ ン スZに
あ る。 い ま,イ
相 電 圧86.6kVが
ン ピ ー ダ ン スZの
加 わ る と き,
負 荷 がΔ 結 線 さ れ て い
の イ ン ピ ー ダ ン ス に加 わ る 電 圧 は150kV=√3×86.6kVと
な り,負 荷 に
流 れ る電 流 ま た はΔ 電 流 は,
と な る。 Iabは,図2.10(b)に
示 す よ う に,電
よ り120゜ 遅 れ,IcaはIabより240゜
圧Vabよ
遅 れ て い る 。 図2.10(a)か
で あ るか ら,相 電 流IaはIabと(−Ica)の ル和 を 図2.10(b)に
相 電 圧Vaと 負 荷 をY結
位 相 角 は 図2.7と
線 か らΔ結 線 に変 え て も,Δ結
遅 れ て い る 。IbcはIab ら,
ベ ク トル 和 と し て 与 え られ る。 この ベ ク ト
示 す 。−IcaはIabより60゜
相 電 流Iaの
り φ=20.56゜
遅 れ て い る の で,次
図2.10(b)を 線 か らY結
の 関 係 を得 る
比 較 す れ ば わ か る よ う に, 線 に 変 え て も変 化 し な い 。 し
か し,イ
ン ピ ー ダ ンスZの
力 は3倍
とな る 。
2.5.2
負 荷 をY結
負 荷 イ ン ピ ー ダ ン ス のΔ-Y変
図2.11(a)に
換
示 さ れ たΔ 結 線 の イ ン ピ ー ダ ン スZ12,Z23,Z31に
ピ ー ダ ン スZ1,Z2,Z3を
等 価 なY結
線イ ン
求 め て み よ う 。Δ結 線 の イ ン ピ ー ダ ン ス を等 価 なY結
線イ ン
ピ ー ダ ン ス で 置 き換 え る こ と をΔ-Y変 端 子1と2間
線 か らΔ 結 線 に変 更 す る と,相 電 流 と三 相 電
換 とい う。 等 価 で あ る た め に は 図2.11(b)の
の イ ン ピ ー ダ ン ス値 と(a)図
の 対 応 す る端 子 間 の イ ン ピ ー ダ ン ス は等 し
くな け れ ば な らな い 。 す な わ ち,
(2.38)
同様 に,端 子2,3間
の イ ン ピ ー ダ ン ス に つ い て,
(2.39)
ま た,端
子3,1間
の イ ン ピ ー ダ ン ス に つ い て,
(2.40)
の 関 係 が 成 立 す る。 (2.38)式 か ら(2.39)式
を 引 け ば,
と な る 。 こ れ と(2.40)式
の 和 を 求 め れ ば,
図2.11
イ ン ピ ー ダ ン ス のΔ-Y変
換
(2.41)
(2.41)式
の 添 え 字(suffix)を
一 つ ず つ 送 っ て,
(2.42)
同 様 に して,
(2.43)
を 得 る 。 い ま,も
しも
(2.44) が 成 立 す る と きは,
(2.45) と な り,Δ
に結 線 され た3個
ー ダ ン ス はZΔ/3に
なる
Y結 線 に 変 え れ ば,イ
【 例 題2.6】
の イ ン ピ ー ダ ン スZΔ に 等 価 なY結
。 逆 に,Δ
に 接 続 され た3個
ン ピ ー ダ ン ス は3倍
図2.12(a)に
示 さ れ た1個
Y/2か ら成 る 回路 と等 価 な 図2.12(b)の [解] 図(a)の
回 路 の2個
と す れ ば,図(b)の
線 の3個
のイ ンピ
の イ ンピー ダ ン ス をそ の ま まに
に な る。
の イ ン ピ ー ダ ン スZと2個
の ア ドミタ ン ス
回路 を求 め よ 。
の ア ド ミ タ ン スY/2を
イ ン ピ ー ダ ン ス に 書 き換 え て2/Y
イ ン ピ ー ダ ン ス は(2.41),(2.42)式
から
(2.46)
(a)
(b)
図2.12 Δ結
線 に等 価 なY結
線
を得 る 。 また,ア
ド ミ タ ンス は(2.43)式
の逆数 と して
(2.47)
とな る。 図2.12(b)は(a)に
2.5.3
等 価 な 回 路 を 示 す 。 た だ し,1/k=1+ZY/4で
ア ド ミ タ ン ス のY-Δ
変換
イ ン ピー ダ ン ス のΔ結 線 か らY結 こ とが で き る が,そ
の 逆 のY-Δ
あ る。
線 へ の 変 換 は 前 節 に 述 べ た よ う に簡 単 に 求 め る
変 換 は容 易 で は な い 。 し か し,ア
ド ミ タ ン ス のY-Δ
変 換 は比 較 的 容 易 で あ る。 図2.13に ン ス は,(a)図
お い て(b)図
の端 子2と3を
の 端 子2と3を
接 続 した と き の 端 子1と2の
接 続 した と き の1と2端
間 の ア ド ミタ
子 間 の ア ド ミ タ ンス に 等 し く
な け れ ば な らな い か ら,
(2.48)
が 成 り 立 つ 。(2.48)式
の 添 え 字(suffix)を
一 つずつ
送 っ て,
(2.49)
さ ら に,
(2.50)
(a) 図2.13
(b) ア ド ミ ッ タ ン ス のY-Δ
変換
を 得 る。 (2.48)式
か ら(2.49)式
を引 けば
とな り,こ の 結 果 と(2.50)式
との 和 を求 め れ ば
(2.51)
を 得 る 。 添 え字 を一 つ ず つ 送 って
(2.52)
同 様 に し て,
(2.53)
が 得 られ る 。
【 例 題2.7】 スYか
図2.14(a)に
示 さ れ た2個
の イ ン ピ ー ダ ン スZ/2と1個
ら な る 回 路 に 等 価 に な る よ う 回路(b)に
示 した 定 数kを
(a)
(b)
図2.14 Y結 [解] こ の 変 換 はY-Δ
の ア ドミタ ン
求 め よ。
線 に等価 なΔ結 線
変 換 で あ る か ら イ ン ピ ー ダ ン スZは
計 算 す る。 す な わ ち,図2.14(b)の
ア ド ミ タ ン ス1/Zと
イ ン ピ ー ダ ン ス は(2.52)式
の 逆 数 と して
して
(2.54)
とな る 。 ま た,図2.14(b)の2個
の ア ド ミ タ ン ス の 値 は(2.51),(2.53)式
か ら
(2.55) とな る。 よ っ て,図2.14(b)のkはk=1/(1+YZ/4)で
2.6
対 称 三 相 回 路 の 解 析
電 力 系 統 が 正 常 な状 態 で 運 転 さ れ て い る場 合,三 圧,電
ある。
相 電 力 系 統 の ほ と ん ど の部 分 の 電
流 は ほ ぼ 完 全 な 対 称 三 相 で あ る。 三 相 の 発 電 機,電
動機 お よび変圧 器 は各 相が
対 称 に 設 計 製 作 され て お り,送 電 線 も,各 相 の 導体 に 同 じ 導 体 を 使 用 し,こ 架(transpose)す
る こ と に よ っ て,各
れ ら を撚
相 が 対 称 とな っ て い る 。
送 電 線 路 は電 気 的 に 各 相 が 対 称 で あ る の で,線 路 抵 抗,自
己 イ ンダ クタ ンスお よび
相 互 イ ン ダ ク タ ンス は 各 相 等 しい 。 す な わ ち,線 路 抵 抗 は,
(2.56) 自 己 イ ン ダ ク タ ン ス は,
(2.57) 相 互 イ ン ダ ク タ ン ス は,
(2.58) とす る。 各 相 の 電 圧 降 下 と し て,次
式 が 得 られ る 。
(2.59)
これ ら の 関 係 に,(2.32)式
の 関 係 を 用 い る と,式 は 非 常 に 簡 単 に な り,
(2.60)
こ こ に,
(2.61) で あ り,第4章
に 述 べ る作 用 イ ン ピ ー ダ ン ス(正 相 イ ン ピ ー ダ ン ス)で
あ る。(2.60)
式 は 次 の よ う に表 す こ とが で き る 。
(2.62)
この 行 列 を また 次 の よ う に 表 す 。
(2.63) こ こで,イ つ,対
ン ピー ダ ン ス 行 列(phase impedance
matrix)Zpは
対 角 行 列 で あ り,か
角 要 素 は す べ て 等 し い。
(2.62)お よ び(2.63)式 る。 す な わ ち,a相
に お い て 注 意 す べ き こ と は,各
の 電 圧 降 下ΔVaはa相
の 電 流Iaの
相 は完 全 に 独 立 な こ と で あ み に 関 係 し,他 相 の 電 流Ib
およびIc と の相 互 作 用 は ま っ た くな い こ と で あ る。 これ は 中 性 線 の 帰 路 電 流 が 零 で あ る結 果 で あ る 。 ま た,各
相 の 電 流 が 三 相 対 称 で あ るた め,各 相 の 電 圧 降 下 も三 相 対
称 で あ る。 した が っ て,対 称 三 相 回 路 の 解 析 は1相
に つ い て 行 え ば よ く,解 析 を簡 明
に 行 う こ とが で き る 。 以 上 の 関 係 を 図2.15に
示 す 。 添 え 字s,rは
を 表 す 。Vsお
そ れ ぞ れ 送 受 両 端 の 相 電 圧 を 表 す 。 各 相 が120゜の 位 相 差 が
よ びVrは
それ ぞ れ送電 線 の送 電端 お よび 受電 端
あ る こ と を除 け ば,各 相 の対 応 す る ベ ク トル は す べ て 等 し くな り,1相 解析 す れ ばよい ことがわ かる。
【 例 題2.8】
三 相 送 電 線 の1相
で あ る。 送 電 端 の三 相 電 力 は,
の イ ン ピー ダ ン ス は
につ い て のみ
図2.15
線 間 電 圧 は250kVで [解] 1相,例
対称 三相 系 統 の位 相 図
あ る。 受 電 端 の 電 力 と電 圧 を求 め て み よ う。
え ば,a相
に つ い て 解 析 を行 う。 基 準 位 相 と し て 送 電 端 の 相 電 圧 を 選
ぶ もの とす る 。
送 電 端 の1相
当 た りの 電 力 は,
とな る。 電 力 の 公 式 か ら,
が 成 立 す るか ら,電 流 は,
とな る。 受 電 端 の 電 圧 はVsか
ら電 圧 降 下ΔVaを
引 い た 値 に 等 しい 。 よ っ て
と な り,受 電 端 の 線 間 電 圧 の 大 き さ は
となる。 受電 端 の1相 の複 素電 力 は
とな り,受 電 端 の 三 相 電 力 と し て 有 効 電 力=206.3〔MW〕
無 効 電 力=−13.2〔Mvar〕
を 得 る。 送 電 線 の 有 効 電 力 の 損 失 は210−206.3=3.7MWで 抗5Ω
方,1相
得 る。
受 電 端 の 三 相 無 効 電 力 は−13.2Mvarで は30Mvarで
あ る の で,送
あ り,送 電 端 で 供 給 さ れ る 三 相 無 効 電 力
電 線 に お け る 無 効 電 力 の 損 失 は30−(−13.2)=43.2
な る。1相 の リ ア ク タ ン ス60Ω
の送 電 線 の無 効 電 力 損 失 か ら三相 分 の送 電
線 の 無 効 電 力 の 損 失 を 求 め る と3×60×[(0.485)2+(0.0693)2]=43.2Mvarと
な る。
す な わ ち,送
電 線 に お い て 消 費 さ れ る無 効 電 力 は 送 電 端 か ら30Mvar,受
13.2Mvar供
給 さ れ る こ と に よ り釣 り合 う こ と に な る。
2.7
電端か ら
三 相 系 統 に お け る 単 位 法
三 相 系 統 を 単 位 法 に よ っ て解 析 す る 場 合,線 力 を 区 別 す る 必 要 が あ る。 ま ず は じ め に,例 capacity)900MWの 圧,電
の抵
の 送 電 線 に お け る 損 失 か ら三 相 分 の 送 電 線 損 失 を 求 め る と3×5×[(0.485)2+
(0.0693)2]=3.6MWを
Mvarと
あ り,一
流,容
の と し,そ
間 電 圧 と相 電 圧,1相 え ば,電
間 電 圧,三
の 電 力 と三 相 電 電 容 量(transmission
系 統 が あ る と し,こ れ ら を用 い た 基 準 値 の 算 出 と,電
量 お よ び イ ン ピ ー ダ ン ス の 諸 量 を求 め,改 の後,線
圧275kV,送
め て単位 法 の基本 を確実 な も
相 容 量 か ら直 接 単 位 法 の扱 い 方 に つ い て述 べ る こ と に
す る。 基 準 電 圧Vbと
し て 相 電 圧275/√3=158.8kVを,基
準 容 量Sbと
し て1相
当た り
の 電 力900/3=300MWを
選 ぶ の が 単 位 法 の 基 本 で あ る。 し た が っ て,基
び基 準 イ ン ピー ダ ン ス は1相
解 析 の 結 果,電
準 電流 お よ
の値 と して そ れ ぞ れ 次 の よ う に 計 算 さ れ る。
圧 と して0.9puを
得 た とす れ ば,相 電 圧 と し て
で あ り,線 間 電 圧 と し て,
を得 る。 ま た,有
効 電 力 と し て0.65puを
を得 る。 ま た,三
相 有 効 電 力 と して は
得 た とす れ ば,1相
の有効 電力 として
を得 る。 次 に 例 題 を考 え よ う。
【 例 題2.9】 電 圧250kV,三
例 題2.8を
単 位 法 を用 い て 検 討 して み よ う。 電 圧,容
相 容 量300MVAと
す る。
[解] 1相 に 関 す る単 位 法 の べ ース 値 は,
と な る。 基 準 電 流 と基 準 イ ン ピ ー ダ ンス は 次 の よ う に な る 。
量 の 基 準 値 を線 間
これ ら1相 当 た りの べ ー ス 値 を用 い て,送 は,Vsを
電 端 の1相
の 電 圧 ,電 力,イ
ンピー ダンス
基 準 位 相 に 選 ぶ とす る と,
で あ る。 相 電 流 は
と な る。 電 流 のkA値
とな り,例題2.8と
は
一 致 して い る。
受 電 端 の 電 圧 は,
とな る。受 電端 の相 電圧 のkV値
とな り,ま た,受
は電圧 のpu値
に基 準電 圧 を乗 じて
電 端 の 線 間 電 圧 の 大 き さ は相 電 圧 の√3で
あ り,pu値
の大 き さに
基 準 線 間 電 圧 を 乗 じ,
を 得 る 。 こ の 値 は 例題2.8と 受 電 端 の1相 役 値 を乗 じ,
の 電 力 のpu値
一 致 して い る 。 は,pu値
で 表 さ れ た 電 圧 にpu値
で表 された 電流 の共
と な り,1相
の複 素 電 力 はpu値
で 表 され た 上 式 の 結 果 に基 準 電 力 を 乗 じ,
と な り,三 相 複 素 電 力 は上 の 結 果 を3倍
と な り,こ れ らの 結 果 は例題2.8と
して,
一 致 して い る 。
実 際 に電 力 系 統 の解 析 を 扱 う場 合 に は,電 圧 と し て相 電 圧 よ り も線 間 電 圧 を,電 と し て1相
の 電 力 よ り も三 相 の 電 力 を 問 題 に す る の が 普 通 で あ る 。 そ の た め,実
系 統 解 析 を行 う 場 合,基
力
際に
準 電 圧 と し て 線 間 電 圧 を,基 準 電 力 と し て 三 相 の 電 力 を 選
ぶ。 基 準 値 と して 三 相 電 力 お よ び 線 間 電 圧 を使 用 す る場 合,基 ンス を誘 導 す る式Ib=Sb/Vb,Zb=Vb/Ibを
準電 流 お よび イ ンピー ダ
修 正 す る必 要 が あ り,次 式 を 用 い る。
(2.64)
(2.65) ここに,SbはMVA単
位 の三 相電 力 の基 準 値,Vb,l-lはkV単
位 の 線 間 電圧 の基 準
値 で あ る。 基準 電圧 として線 間 電圧 のkV値 ると き,基 準三 相 電 力 のMVA値 値 が求 まり,線 間 電 圧 のkV値
を,基 準 電 力 と して三相 電 力 のMVA値
を用 い
を基 準 線 間 電圧 の√3倍 で 除す と基 準 電 流 のkA の2乗 を三 相 電 力 のMVAで
除 す こと に よっ て基 準
イン ピー ダンス の Ω値 が計 算 され,そ れ らは1相 の電 圧,電 力 か ら計 算 され る電 流, イン ピー ダ ンス の基 準値 と一致 す る。pu値 は,電 圧 につ いて は線 間 電圧 を線 間電 圧 の基 準値 で,容 量 につ い て は三 相容 量 を三相 容量 の基準値 で 除 して求 め られ る。 具体 的 に,例題2.9か 相 電力300MWを
ら,基 準電 圧 と して線 間 電圧250kVを,基
準 電 力 として三
選 ぶ もの とす る。 この線 間電 圧 と三相 容 量 か ら直 接 に基 準 電 流 と
イ ンピー ダ ンス を計 算 す る と
と な り,例題2.9に
お い て1相
の 基 準 電 圧 と1相 の 基 準 電 力 か ら求 め た 基 準 電 流 お よ
び 基 準 イ ン ピ ー ダ ン ス の 値 と一 致 す る結 果 を得 る。
問題 (1)時
間 をt〔sec〕,角 周 波 数 を ω 〔deg/sec〕 とす る と き,単 相 回 路 の 電 源 端 子 に お い て,端
子 間 電 圧υ=14.1sinωt〔kV〕,電
流i=28.2sin(ωt+15°)〔A〕
であ
っ た 。 有 効 電 力 お よ び 無 効 電 力 の 実 効 値 を求 め よ 。 (2)イ
ン ピ ー ダ ン スが5+j3Ω
の 負 荷 の 端 子 間 に周 波 数50Hz,実
効 値35kVの電
圧 が 加 わ っ て い る 。 この 抵 抗 に 加 え ら れ る複 素 電 力 お よ び皮 相 電 力 を求 め よ。 (3)線
間 電 圧300kVの 無 効 電 力15Mvarで
(4)ベ
母 線 が 受 電 し て い る 三 相 電 力 は 有 効 電 力60MW,遅 あ る。 母 線 の 相 電 圧 を基 準 と して,線
ー ス 電 圧100kV,べース
容 量100MVAを
れ の
電 流 を求 め よ。
選 ぶ と き,べース
電 流,べース
イ ンピーダ ンスの値 を求 め よ。 (5)べー
ス値 と して 問 題1・4の
kA,1相 (6)線
べ ー ス を 選 ぶ と き,線 間 電 圧250kV,線
の イ ン ピ ー ダ ン ス1.25+j45.7Ω
間 電 圧60kVの
負 荷 の1相
のpu値
電 流3.5
を求 め よ 。
の イ ン ピーダ ンス は
で あ る。 こ の 負 荷 に供 給 さ れ る三 相 の 有 効 電 力,無
効 電 力 お よ び 皮 相 電 力 を求め
よ。 (7)図2.16に
与 え られ た 回 路 の 両 端 部 の2個
の ア ド ミタ ン ス を 除 い た 部 分 をΔ 回
路 に変 換 す る こ と に よ り,全 回 路 を1個
のΔ 結 線 の 回 路 に書 き改 め た 場 合 の
イ ン ピ ー ダ ン ス値 と2個 の ア ド ミタ ン ス の値 を求 め よ。 (8)三
相 送 電 線 の1相
の イ ン ピー ダ ン ス は
図2.16 Y結
線 を含 む回 路
で あ る。 送 電 端 の 三 相 電 力 は,
線 間 電 圧 は150kVで (9)問
題(8)に び,受
お い て,基
あ る 。 受 電 端 の 三 相 電 力 と線 間 電 圧 を 求 め よ。 準 値 と し て 線 間 電 圧150kV,三
電 端 の 三 相 電 力 と線 間 電 圧 のpu値
相 電 力100MWを
選
を求 め よ。
【解答 は巻 末】
第3章
変圧器
発 電 機 で 発 生 す る電 圧 は最 高 で も25kV程 を数100kmに
度 で あ り,10GW程
わ た っ て 経 済 的 に送 電 す る に は,1000kVの
度 の大 容 量 の電力
超々 高 圧(Ultra
High
Voltage)の
送 電 技 術 が 必 要 と さ れ て い る。 変 圧 器 は低 い 発 電 機 電 圧 を 高 い 送 電 電 圧
に 昇 圧し,受
電 端 で降 圧 し,さ
3.1
ら に需 要 家 端 で 使 用 電 圧 に降 圧 す る 。
理 想 変 圧 器
理 想 変 圧 器(ideal
transformer)は,巻
心 の み を 通 り,漏 れ 磁 束 は な く,透磁 に小 さ く,そ
し て,鉄
線 抵 抗 を 無 視 す る こ と が で き,磁 率 は 十 分 に 大 き く,励磁
束 は鉄
電 流 は 無 視 で き る程 度
心内 の損 失が ない変圧 器 で ある。
変 圧 器 の 巻 線 に流 れ る 電 流 の 向 き と鉄 心 を通 る 磁 束 の 向 き の 関 係 は重 要 で あ り,巻 線 端 子 に 黒 丸 印 を つ け て 極 性 を示 す 方 法 が 用 い られ る 。 こ の 方 法 は,電 つ い た端 子 か ら変 圧 器 に 流 入 す る と き,こ
流 が 黒丸 印 の
の 電 流 が 巻 線 内 を 流 れ る 向 き と磁 束 の 向 き
の 関 係 は 右 ね じ の 法 則 に従 い,電 流 は磁 束 と正 に鎖交 す る。
3.1.1
電圧の 関係式
鉄 心 を通 る磁 束 をφ,巻 υ1 ,巻
き 数N2の
き 数N1の
一 次 側 巻 線 に 鎖交 す る磁 束 をψ1,誘
導起 電 力 を
二 次 側 巻 線 に 鎖交 す る 磁 束 を ψ2,誘 導 起 電 力 をυ2と す る と き,電
磁 誘 導 の 法 則 か ら次 の 関 係 が 成 立 す る 。
(3.1) (3.2) 磁束 が時 間 的 に正 弦 波状 に変化 す る な らば,交 流 のベ ク トル(複 素)表 示 と同様, 誘 導起 電 力υ は電 圧 ベ ク トルV,磁
束 ψは 磁 束 ベ ク トルΦ で 表 す こ とが で き,
(3.1)式
お よ び(3.2)式
は 次 の よ う に 表 され る。
(3.3) (3.4) こ こ に,V1は
一 次 側 巻 線 の 誘 導 起 電 力 の 実 効 値 の 電 圧 ベ ク トル, V2は 二 次 側 巻 線 の
誘 導 起 電 力 の 実 効 値 の 電 圧 ベ ク トル,ω
は 角 周 波 数 で あ る。(3.3)式
を(3.4)式 で 割 る
と,誘 導 起 電 力 と巻 き数 に 関 す る次 の 重 要 な 関 係 を 得 る 。
(3.5)
こ こ に,aは
変 圧 器 の 巻 き 数 比 あ る い は 変 圧 比(transformation
ratios)と
よ ばれ
る。
【 例 題3.1】3巻 kVの
線 の 三 相 変 圧 器 が22kVの
三 相 発 電 機 か ら275kVの
工 場 に 電 力 を 供 給 し て い る。 三 相 変 圧 器 は3台
れ て お り,各 巻 線 はY結
の3巻
送 電 線 と154
線 の単 相 変圧 器 で構 成 さ
線 され て い る も の とす る。 変 圧 器 バ ン ク の 巻 き数 比 を 求 め
て み よ う。 [解] V1,V2,お
よ びV3は3巻
線 変 圧 器 の 一 次,二
次 お よび三 次 の相 電 圧 を表 す も
の と し て,
で あ る 。 よ っ て,巻
き数 比 は
とな る。 こ こ に,a12は
一 次 と二 次 間,a13は
一 次 と三 次 間 の 巻 き数 比 で あ る。
3.1.2
電流 および電 力の関係式
一 次 巻 線 の 巻 き数 がN1,二 気 抵 抗(magnetic
path
次 巻 線 の 巻 き数 がN2の2巻
reluctance)を〓
とす る と,次
線 変圧 器 の鉄心 の磁路 の磁 の関係 が成立 す る。
(3.6) こ こ に,φ
は 鉄 心 を 通 る 磁 束,i1,i2は
一 次,二
次 巻 線 を 流 れ る 電 流 で あ り,N1i1,N
2i2な ど の 巻 き数 と電 流 の 積 は 起 磁 力 で あ る 。 電 流 と磁 束 が 時 間 的 に 正 弦 波 で あ る な ら ば,(3.6)式
は 電 流 ベ ク トルIお
よび磁 束
ベ ク トルΦ を 用 い て 次 の よ う に 表 す こ とが で き る 。
(3.7) 理 想 変 圧 器 は透磁 率 が非 常 に大 き い の で,磁 な す こ とが で き る 。 よ っ て,(3.7)式
気 抵 抗 は非 常 に小 さ く,〓Φ=0と
み
は,
(3.8) とな る。 (3.8)式 か ら電 流 の 共 役 値 を 取 る と次 の 関 係 を 得 る 。
(3.9) (3.5)式 の 関 係 を利 用 し て,次
の 関 係 が 成 立 す る こ とが 容 易 に わ か る。
(3.10) (3.10)式 よ り,理 想 変 圧 器 で は 一 次 巻 線 の 入 力 と二 次 巻 線 の 出 力 は 相 等 しい とい う こ とが で き る 。 3巻 線 変 圧 器 に つ い て,(3.9)式
お よ び(3.10)に
相 当 す る 関 係 は次 の よ う に な る。
(3.11) お よ び,
(3.12)
【例 題3.2】 22kV,二
図3.1の
変 圧 器 を 考 え る。 発 電 機 に 接 続 さ れ る変 圧 器 の 一 次 の 電 圧 は
次 の 電 圧 が275kV,二
次 出 力 が 有 効 電 力600MW,
無 効 電 力150
Mvarで
図3.1 3巻 線変 圧 器
あ り,三 次 の 電 圧 が154kVで
あ り,三 次 の 負 荷 は150MW,
力 率cosθ=1で
あ る3
巻 線 の 三 相 変 圧 器 を考 え る。 各 巻 線 の 電 流 と電 力 を求 め よ 。 [解] V1を 基 準 ベ ク トル に 選 ぶ 。V1,V2お
よ びV3は
図3.2に
示 す よ うに 同相 で あ
る。
図3.2 磁 束,相 電 圧,巻 線 電流
巻 線2お
よ び3の1相
の 出 力 電 力 は そ れ ぞ れ 次 の よ うに 表 され る。
(3.10)式 か ら,発 電 機 の1相
の 電 力 と して 次 の 関 係 を得 る。
発 電 機 の 端 子 電 圧 が22kVで
あ る か ら,電 流 は上 式 を 用 い て 得 ら れ る。
図3.2に
3.1.3
は,以 上 で 求 め た 電 流I1,I2,I3お
を示 す 。
理想変圧器 の等価 回路
2巻 線 変 圧 器 の 理 想 等 価 回 路 は 図3.3に 比a12を
よ び電 圧 に90° 遅 れ る磁 束Φ
示 す よ う に表 さ れ る 。2巻 線 変 圧 器 の 巻 数
次 の よ う に表 す 。
(3.13) こ の場 合,電
圧 と電 流 の 関 係 は次 の よ う に 表 さ れ る。
(3.14) (3.15)
図3.3(a)の
二 次 側 に は イ ン ピ ー ダ ン スZの
負 荷 が 接 続 さ れ て い る と す れ ば,次
の関係 が成立 す る。
こ こ に,V2は
変 圧 器 二 次 側 端 子 電 圧,I2は
この 式 に(3.14)式
お よ び(3.15)式
二 次側電 流 であ る。
を 代 入 す る と,
(3.16)
ま た は,
(a)
(b)
図3.3 2巻 線 理想 変 圧 器 の等 価 回路
(3.17)
と な り,Z'は
二 次 の 負 荷 イ ン ピ ー ダ ンスZを
3巻 線 変 圧 器 に つ い て,一 る と き,次
一次 側 に換 算 した値 で ある。
次 と二 次 の 巻 数 比 をa12,一
次 と三 次 の 巻 数 比 をa13と す
の 関 係 が 成 立 す る。
(3.18) こ こ に,I2'お る。(3.18)式
よ びI3'は 変 圧 器 一 次 側 に換 算 さ れ た 二 次 お よ び 三 次 巻 線 の 電 流 で あ は図3.4に
示 す よ う な等 価 回 路 に な る 。
図3.4 3巻 線 理想 変 圧 器 の等 価 回 路
【例 題3.3】
図3.1に
二 次 電 圧275kVの は300Ω
示 す よ う な3巻 線 変 圧 器 に お い て,一 巻 線 の 各 相 に は250Ω
の 抵 抗,三
次 電 圧 は22kVで
次 電 圧154kVの
あ り,
巻線 の各 相 に
の 抵 抗 が 接 続 され て い る。 発 電 機 側 か ら見 た 全 負 荷 の 抵 抗 値 は い く らか 。
[解] 各 相 に は 図3.5(a)に 図3.5(b)に
示 す よ う に負 荷 が 接 続 さ れ て い る 。(3.17)式
示 す よ う な 等 価 負 荷 を得 る。 この 並 列 負 荷 の 和 を求 め る と,
と な る。 発 電 機 の 負 荷 は
を 用 い て,
図3.5 3巻 線 変 圧 器 の抵 抗 負荷
あ る い は,三 相 電 力 と し て,3×127.2=381.6MWを
3.2
得 る。
実 際 の 変 圧 器
理 想 変 圧 器 モ デ ル は簡 単 で あ るが,重
要 な 情 報 を得 る こ とが で き る 。 理 想 変 圧 器 に
よ る解 析 の結 果 は,実 際 の変 圧 器 で得 られ る値 か ら数 パ ー セ ン ト相 違 す るの みで あ る。た だ,理 想変 圧器 は損 失が な いので,温 度上 昇 がな く,送 電 す る電力 に制 限 は な い一方,実 際 の変 圧器 で は損 失 を伴 い,送 電 電力 に限界 が あ る。 また,理 想変 圧器 で は電圧 降下 はな く,電 流 の大 きさ に無関係 に端 子 電圧 は一 定で あ るが,実 際 の変圧 器 で は電圧 降下 が あ り,場 合 に よっ て は,こ れ が重 要 な結果 を もた らす。 ここで は,理 想 変圧器 に損 失 や磁 束の漏 洩 な どを加 えて実際 の変圧 器 を表 す こ と と し,理 想 変圧 器 の等価 回路 を実 際の 変圧器 に拡 張 す る。
3.2.1 励磁
電流 と鉄損
実際 の変圧 器で は鉄心 の磁 気抵 抗 は0で はな いので,二 次側巻線 を開放 した変圧 器 の一次側 巻線 には励磁電 流 が流 れ る。励磁 電 流 のベ ク トル量 をImと す る と, (3.19) で 与 え られ る 。 こ こ に,〓
は 鉄 心 の磁 気 抵 抗,N1は
一 次 巻 線 の 巻 き数,Φ
は鉄 心 を
通 る磁 束 の ベ ク トル 量 で あ る 。 また,次
こ こ に,V1は
の 関 係 が 成 り立 つ 。
一 次 巻 線 の 誘 導 起 電 力 の ベ ク トル 量,ω
は電 源 電 圧 の 角 周 波 数 で あ る。
よ っ て,
(3.20) こ こ に,Ymは
(3.21) で あ り,一 次 側 か ら見 た磁 気 ア ド ミタ ン ス(magnetizing 以 上 か ら,図3.3の
admittance)で
理 想 変 圧 器 の 回路 に 並 列 ア ド ミタ ン ス を加 え る こ とに よ っ て励磁
電 流 を 表 す こ とが で き る。 こ う し て 得 られ る等 価 回 路 を 図3.6(a)に ITは
あ る。
理 想 変 圧 器 を表 す 。(ZL1,ZL2に
つ い て は 後 述)
磁 気 ア ド ミタ ン ス が 純 粋 な リ ア ク タ ン ス の み の 場 合,
示 す 。 図中 の
図3.6 理 想 変圧 器 に漏洩 イ ン ピー ダ ンス と励磁 イ ン ピー ダ ンス を加 えた等 価 回路
(3.22) と表 さ れ る。 し か し な が ら,無 負 荷 変 圧 器 は鉄 心 の ヒ ス テ リ シ ス や 渦 電 流 な ど に よ る 損 失 す な わ ち 鉄 損 を含 む た め,磁
化 の 電 力 に は 有 効 お よ び 無 効 電 力 が 含 ま れ る。 よ っ
て,Ymは,
(3.23) と表 す ほ うが よ り精 度 が 高 くな る。 磁 気 ア ド ミ タ ン ス に 抵 抗 分Gmを 係 を等 価 回路 で 表 す と,図3.6(b)と
3.2.2
な る。
漏 洩 磁 束 と巻 線 抵 抗
一 次 お よ び 二 次 の 巻 線 抵 抗 の 損 失 は 抵 抗R1お ま た,両
加 えた上 記 の 関
巻 線 に は 漏 洩 磁 束(leakage fluxe)φL1お
等 価 回路 で は漏 洩 リア ク タ ン ス(leakage き る。 よ っ て,変
よびR2を
用 い て 表 す こ とが で き る 。
よ びφL2が 生 じ る の で,こ
reactance)X1お
よ びX2で
れ らを
表 す こ とが で
圧 器 の 等 価 回路 に対 す る巻 線 抵 抗 と漏 洩 磁 束 の効 果 は,次 の よ う な
2つ の イ ン ピー ダ ン ス で 表 す こ とが で き る 。
(3.24) (3.25)
こ こ に,ZL1お
よ びZL2は
一 次 お よ び 二 次 の 漏 洩 イ ン ピー ダ ン ス(leakage impedance)
で あ る 。 これ らの 漏 洩 イ ン ピー ダ ン ス は図3.6(a)に
示 す よ う に理 想 変 圧 器 の 一
次 と二 次 に 直 列 に挿 入 して 表 す こ とが で き る。 さ ら に,理 想 変 圧 器 の 一 次 お よ び二 次 の漏 洩 イ ン ピ ー ダ ン ス は 次 式 の よ う に1つ ま と め,図3.6(b)に
に
示 す よ う に表 す の が 一 般 的 で あ る 。
(3.26)
【 例 題3.4】
周 波 数60Hz,容
量30MVAの2巻
線単 相 変 圧器 の定 格 電 圧 お よ び定
格 電 流 は 次 の 通 りで あ る。 高圧 側
:66.4〔kV〕,451.8〔A〕
低 圧 側 :13.2〔kV〕,2273〔A〕 巻数比
:a=66.4/13.2=5.03
1.低 圧側 を開放 し,高 圧 側 に定 格電 圧 を印加 して無負 荷試 験 を行 い,次 の結 果 を 得 た。 │I1│ =│Im│=14 .0〔A〕(高 圧 側 定 格 電 流 の3.1%) P1
2.低
=41 .0〔kW〕(定
格MVAの0.1367%)
圧 側 を 短 絡 し,高 圧 側 の 電 流 が 定 格 電 流 に な る まで 高 圧 側 の電 圧 を上 昇 さ せ,
短 絡 試 験 を行 い 次 の 結 果 を 得 た 。 │V1│ P1
=7 .97〔kV〕(高 =206〔kW〕(定
圧 側 定 格 電 圧 の12.0%)
格MVAの0
こ れ ら の 試 験 結 果 か ら,Ymお
よ びZLを
.687%) 求 め よ。
[解] 無 負 荷 試 験 の 結 果 で は,定 格 電 流 の3.1%の る こ とが で き る。 した が っ て,実 き,次 の 関 係 を 得 る。
ま た,
電 流 が 流 れ る の で,銅
損 は無 視 す
測 さ れ た 電 力 は 鉄 心 の み の 損 失 と見 な す こ と が で
低 圧 端 子 の 短 絡 試 験 で は,鉄
心 の 磁 束 は定 格 電 圧 の 印 加 時 の12%で
損 は無 視 す る こ とが で き る 。 した が っ て,実 こ とが で き,次
あ る の で,鉄
測 さ れ た 電 力 は銅 損 の み の 損 失 と見 な す
の 関 係 を得 る。
故 に,変 圧 器 の 一 次 側 か ら見 た リア ク タ ン ス は,
よ り,
とな る。 こ こ に,I1は
変 圧 器 一 次 側 の 定 格 電 流,P1は
RLは変 圧 器 の 一 次 側 か ら見 た 抵 抗,XLは
変 圧 器 に 定 格 電 流 が 流 れ る と き の 銅 損,
変 圧 器 の 一 次 側 か ら見 た リア ク タ ンス で あ
る。 よ っ て,高 圧 側 に換 算 し た 漏 洩 イ ン ピー ダ ン ス は,
と な る。
【 例 題3.5】
例 題3.4の
変 圧 器 が 定 格 負 荷 の30%で,力
率cosθ=0.8で
運 転 さ れて て
い る と き,そ の 効 率 を 求 め よ。 [解] 変 圧 器 の 定 格 容 量 は30MVAで であ る。有効 電力 は P2=9×0.8=7.2〔MW〕 と な る。
あ るか ら,変 圧 器 の 出 力 は30×0.3=9MVA
入 力 は出 力 と鉄損 お よび銅損 を加 えた もの に等 しい。 鉄損PFeは 電圧 お よび磁 束 が 一定 に保 た れ てい るので 負荷 に無 関係 に一 定 であ り,銅 損Pcuは 負荷電 流 の2乗 に比 例 す るか ら,変 圧 器 の入力 は
とな る 。 よ っ て,効
率は
と な る。
【例 題3.6】
図3.7に
示 す よ う に,送 電 端 電 圧 が66.4kV,距
題3.4の2巻
線 単 相 変 圧 器 が 接 続 さ れ て い る。 変 圧 器 の低 圧 側 に6Ω
図3.7 送電 線 と変圧 器 の等 価 回路
離40kmの
送 電線 に例 の抵抗 負荷 が接
続 さ れ て い る 。1km当
た りの 送 電 線 の リア ク タ ン ス は1.25Ω/kmで
似 を 行 い,変 圧 器 の 一 次,二 [解] 励磁
次 側 の 電 圧,電
あ る 。 適 当 な近
流 を求 め よ 。
ア ド ミ タ ンス を イ ン ピー ダ ン ス で 表 す な ら ば,次
の よ うに なる。
この イ ン ピ ー ダ ン ス は高 圧 側 に換 算 さ れ た 負 荷 イ ン ピ ー ダ ン スR'よ い。 し た が っ て,負
荷 電 流I2'と 比 較 し て,励磁
電 流Imは
こ の 例 の よ う に,電 力 系 統 の 解 析 に お い て はZm=∞
り著 し く大 き
無 視 す る こ と が で き る。
と置 くの が 一 般 的 で あ る。 さ ら
に,漏 洩 イ ン ピ ー ダ ンス は 主 と し て誘 導 性 で あ り,抵 抗 分 は 無 視 す る こ とが で き る。 こ の よ う な 近 似 を 行 う こ と に よ っ て,送 3.7(b)の
電 線,変
圧 器,お
よ び負 荷 の 等価 回路 を図
よ う に描 く こ とが で き る。
負 荷 抵 抗 を 変 圧 器 の 一 次 側 に換 算 す る と,5.032×6=151.8Ω,例 器 の リア ク タ ン ス は17.6Ω
と な る 。 こ こ に,I1は
題3.4よ
り変 圧
で あ る か ら,変 圧 器 の 一 次 電 流 は
送 電 線 の 電 流 で,ま
た,変
圧 器 の 一 次 側 の 電 流 で あ り,I2'は
変 圧 器 二 次 側 の 電 流 を 一 次 側 に換 算 した 電 流 で あ る 。 変 圧 器 の 二 次 電 流I2は
とな る。 理 想変 圧器 の二 次側 の電 圧 を一次側 へ換 算 した電圧 は,
と な る。 よ っ て,理
想 変 圧 器 の 二 次 側 の電 圧 は,
と な る。 変 圧 器 の 一 次 側 の 端 子 電 圧 は,
と な る。 無 負 荷 の と き は,電
流 は 流 れ な い か ら,変 圧 器 の 二 次 側 電 圧 は66.4/5.03=13.2
kVで
あ る 。6Ω の 負 荷 を 接 続 す れ ば 二 次 側 電 圧 は11.45kVと
な る の で,こ
の変 圧
器 は負 荷 を接 続 した こ とで 二 次 側 電 圧 に お い て,
の 電 圧 が 変 動 す る こ とに な る。
3.3
単 位 法
3.3.1
変 圧 器 の 定 格 量 に よ るpu値
電 圧,電
流 お よ び イ ン ピ ー ダ ン ス は 変 圧 器 の巻 線 間 で 変 化 し,唯 一,電
変 で あ る。 電 圧,電 ら ば,こ
流,イ
ン ピー ダ ン ス を ボ ル ト,ア ンペ ア お よ び オ ー ム 値 で 表 す な
れ ら の値 は各 巻 線 に つ い て 異 な る値 を と る。 し た が っ て,実
お い て,系
力 の みが 不
際 の系 統解 析 に
統 に は多 くの 変 圧 器 が 設 備 され て い る の で,各 巻 線 毎 に電 圧,電
流,イ
ン
ピ ー ダ ン ス を ボ ル ト,ア ン ペ ア お よび オ ー ム 値 で 表 す こ とに な り非 常 に煩 雑 と な る。 一方
,単 位 法 の使 用 は こ の 問 題 を著 し く軽 減 す る 。
例 題3.6の30MVA変 2010Aで
圧 器 を 例 に 考 え る 。 一 次 側 電 流 は399.6A,二
あ る 。 定 格 一 次 電 流 は451.8Aで
あ る か ら,こ
次側電流 は
れ を電 流 の べー ス 値 に 選 ぶ
と,一 次 負 荷 電 流 は,
とな る。 ま た,二
次 側 の べー ス 電 流 は 定 格 二 次 電 流 に な るか ら,こ れ 対 す る 二 次 の 負
荷 電 流 は,
と な る。 この 例 の よ う に,単 位 法 に よ る と変 圧 器 一 次 と二 次 側 電 流 のpu値
は等 し く
な る。 一 次 側 の 定 格 電 圧 を べー ス 電 圧 に 選 ぶ と,二 次 側 で は二 次 の 定 格 電 圧 が べー ス 電 圧 に な る か ら,変 圧 器 の 一 次 と二 次 側 の 電 圧 のpu値
は,
と な る。 最 後 に,定 格 容 量 に よ る入 力 と出 力 の皮 相 電 力 のpu値
とな る。│S1│お よ び│S2│の 値 は直 接 電 圧 お よ び 電 流 のpu値
を 求 め る と,
か ら計 算 す る こ と も で き
る。
3.3.2
変 圧 器 の イ ン ピー ダ ン ス
実 際 に 電 力 系 統 を解 析 す る に は 単 位 法 を用 い て 行 わ れ る 。 そ の た め,変 ピ ー ダ ン ス を 単 位 法 で 計 算 す る こ と が 必 要 で あ る。 例 題3.4の30MVAの 考 え よ う。 変 圧 器 の 一 次 側 か ら見 た 漏 洩 リ ア ク タ ン ス は,
で あ る。 基準 量 として定格容 量 お よび一 次側 の定 格電 圧 を選ぶ。
変 圧 器 の 漏 洩 イ ン ピ ー ダ ン ス のpu値
は,
とな る。 次 に,変 圧 器 の 二 次 側 か ら見 た 漏 洩 リア ク タ ンス の Ω 値 は,
圧器 の イ ン 変圧器 を
であ る。二次 側 の基準 量 は定格 容量 お よび二 次の定 格電 圧 となるか ら,
変 圧 器 の 漏 洩 イ ン ピ ー ダ ン スZLのpu値
は,
と な る。 以 上 よ り,次 の よ う な重 要 な 結 果 を 得 る 。 電 圧 の 基 準 値Vbが
一 次,二
次 側 で 巻 き数 比a=N1/N2に
応 じ て決 定 され る な らば,
単 位 法 で 表 され る変 圧 器 イ ン ピー ダ ン ス の 値 は 一 次 と 二 次 の 両 側 で 等 しい 。 し た が っ て,変 圧 器 の パ ー セ ン トイ ン ピー ダ ン ス は1つ の 値 で 表 示 され る。 これ に よ り,変 圧 器 一 次,二
次 側 の 電 圧 の 基 準 を巻 き数 比 に合 わ せ て 選 ぶ 限 り,変 圧 器 は,直 列 イ ン ピ
ー ダ ン ス で 表 現 す る こ とが で き る。 一 般 的 に は 変 圧 器 の 一 次,二
次 の定格 電圧 が基 準
値 に選 ばれ る。
【 例 題3.7】
例 題3.6を
単 位 法 を 用 い て検 討 し て み よ う。 任 意 に 次 の よ う な 基 準 値 を
選定 す る。
[解]与
え られ た 容 量,電
圧 の 基 準 値 か ら電 流 お よ び イ ン ピー ダ ン ス の 基 準 値 を 求 め
る。
以 上 の 基 準 値 を 用 い て 送 電 線 路,変
圧器 お よび負荷 の イ ン ピーダ ンス を計算 す る。
線 路 の イ ン ピー ダ ン ス は1.25×40=50Ω pu値
は,
あ る か ら,送 電 線 路 の イ ン ピ ー ダ ン ス の
と な る。 変 圧 器 の定 格 電 圧66.4kV,容 のpu値
はj0.12puで
量30MVAを
基準 とした変圧 器 の イ ン ピ ー ダ ンス
あ る。 新 し い 基 準 値100kVお
よ び100MVAに
基 づ くpu値
は,
とな る。 変 圧 器 二 次 側 に接 続 され た6Ω
と な るか ら,pu値
の負荷 の イ ンピーダ ンス を一次側 に換算 す る と
は
とな る。 回 路 全 体 を単 位 法 で 表 し た 等 価 回 路 を 図3.7(c)に
示 す 。 送 電 端 電 圧 のpu
値 は,
で あ る。 以 上 よ り,電 流 のpu値
を求 め る こ とが で き る 。
電 流 の ア ンペ ア値 はIb=1kAで
3.4 3.4.1
あ るか ら,399.6Aと
な る。
三相変圧 器 単 相 変 圧 器 鉄 心 と三 相 変 圧 器 鉄 心
三相 変圧 器 は3台 の単相 変圧 器 を用 い るか,あ るい は,1台
の三 相 鉄 心 の変 圧 器 を
用い る。三相 鉄心 変圧 器 の各相 の電圧 は対称 三相 で あ り,鉄 心 の磁 束 も同様 に対 称三
相 で あ る 。 そ の 結 果,三
相 鉄 心 の 磁 束 の和 は い か な る 瞬 間 も0で あ り,三 相 鉄 心 で は
磁 束 の帰 路 は 不 要 で あ る。 こ の た め,三 相 鉄 心 変 圧 器 の鉄 心 は 単 相 変 圧 器3台(こ を変 圧 器 バ ン ク と い う)の 鉄 心 よ り鉄 心 の 量 は 少 くて す み,廉
3.4.2
れ
価 と な る。
三 相変圧器の一 般的な関係 式
図3.8は2巻
線 の 三 相 変 圧 器 を示 す 。 こ の変 圧 器 に つ い て,一
次 と二 次 の 電 圧 お よ
び電 流 の 関 係 を考 え て み る 。 次 の 基 本 的 な 事 項 を 前 提 とす る。 1.変
圧 器 は理 想 変 圧 器 とす る 。
2.一
次 お よ び 二 次 電 圧 は 対 称 三 相 で あ る とす る 。
3.負
荷 は 三 相 平 衡 で あ り,し た が っ て,電
流 は 一 次 お よ び 二 次 と も対 称 三 相 で あ
る とす る 。 4.添
字1,2お
よ び3は
一 次(primary),二
次(secondary)お
よ び 三 次(tertiary)
を表 す。 5.位
相 を 区 別 す る場 合 に 添 え字a,b,cを
使用 す る。
6.線
間 電 圧 は二 重 の 添 え字 で表 す 。 例 え ば,a,b相
間 の 一 次 電 圧 は,
(3.27) と な る。 単 相 変 圧 器 で は,変 圧 比 は 常 に 正 で あ り,一 次 と二 次 の 電 圧 ベ ク トル は 同 一 位 相 と な る。 し か し,三 相 変 圧 器 で は この 関 係 は 常 に 成 立 す る と は 限 ら な い 。 三 相 変 圧 比 は 次の ように複 素数 となる。
図3.8 三相2巻 線 変 圧器
(3.28) この 関 係 は,一 次 と二 次 の 電 圧 位 相 が 変 化 す る こ と を 示 す 。 角 α が 正 な ら ば,V2は V1に 遅 れ る の で,変 図3.8は
圧 器 は電 圧 を遅 らせ る働 き を す る。
理 想 変 圧 器 で あ る 。 この 変 圧 器 に お い て,
(3.29) が 成 り立つ 。 電 流 に 関 して は,
(3.30)
が 成 立 す る。 (3.28)式
と(3.30)式
か ら,次
の 結 果 を得 る。
(3.31) (3.31)式 か ら,変 圧 器 の 一 次 と二 次 の 電 圧 と電 流 の 位 相 差 は 図3.9に
示す ように常 に
等 し い とい う こ とが で き る。 実 際 的 に,変
圧 器 の 一 次 と二 次 の 電 圧 お よび 電 流 の 位 相 変 化 が 等 し く な る こ と は三
相 変 圧 器 の 並 列 運 転 に お い て 重 要 で あ る 。 す な わ ち,三
相 変 圧 器 の 巻 数 比 と位 相 の 変
図3.9 三相 変 圧 器 の等 価 回 路
(a)
(b)
(c) 図3.10
Y-Y接
続 の2巻 線三 相 変圧 器
化 が 等 し い 場 合 の み,三 相 変 圧 器 の 並 列 運 転 が 可 能 で あ る。
3.4.3 Y結
線の変圧器
い ま,2つ
の 三 相 母 線 の 間 に 設 置 さ れ る2巻 線 三 相 変 圧 器(2−winding
transformer)を
考 え る 。 図3.10はY-Y結
ン ク は 図3.10(a)に
示 す よ う に,3台
線 の変圧 器 バ ン クを示 す。 この変 圧 器バ の 単 相2巻
る こ と に よ っ て構 成 さ れ る 。 図3.10(b)お 路 表 示 法 を示 す 。 図3.10(c)の とが で き る の で,こ
線 変 圧 器 の 一 次 と二 次 をY結
よ び(c)は2巻
線 三 相Y結
線 す
線変圧器の回
表 示 は電 圧 ベ ク トル と巻 線 の 向 き を 一 致 し て 表 す こ
の 表 現 が よ く使 用 さ れ る 。
図3.10(c)の1と2の 号1の
3−phase
記 号 を つ け られ た2つ
の 巻 線 は鉄 心aに
付 い た 一 次 巻 線 は 一 次 側 母 線 電 圧V1a=│V1│∠0°
二 次 巻 線 は二 次 側 母 線 電 圧V2a=│V2│∠0°
巻 か れ て お り,記
が 印 加 さ れ,記
が 加 わ る 。 図3.10(c)の
号2の
付 いた
表 示 に よ って三 相
変 圧 器 の 変 圧 比 を 表 して み る。 三 相 変 圧 器 の 変 圧 比 は,
とな る。 こ こ に,N1お 図3.10に
よ びN2は
巻 線1お
よ び2の
巻 き数 で あ る。
示 さ れ た 三 相 変 圧 器 の 二 次 側 に 対 称 三 相 負 荷 が 接 続 さ れ た と き,各
は 同 じ大 き さ の 電 流 が 流 れ,電 ,そ の た め,1相
相 に
圧 降 下 が 生 じ る。 各 相 で 異 な る の は位 相 角120° であり
に つ い て の 解 析 で 充 分 で あ る。 各 相 の 電 力 は三 相 の 全 電 力 の1/3
でめ る 。 各 巻 線 に は 線 間 電 圧 の1/√3の
電圧 が 加 わ る。三 相 変圧 器 の定 格 は三 相 電
力 お よ び線 間 電 圧 で 表 さ れ る 。
【 例 題3.8】
図3.11に
圧 器 バ ン クT1お kVの
示 す 系 統 を考 え る 。23kVの
よ びT2の
並 列 運 転 に よ っ て 母 線2の
送 電 線 を 通 し て90km離
ら変 電 所 の 母 線4の 変 電 所 母 線4の 母 線4の
電 圧69kVに
60Hz,Y-Y接
れ た 母 線3に
。 た だ し,変 続,一
電 圧230kVに
送 電 す る。 変 圧 器T3は
ら2台
の 三相 変
昇 圧 さ れ,230 母 線3の
電圧か
降 圧 す る。
二 次 側 の 電 圧 は正 確 に69kVに
負 荷 を120+j60MVA,母
の 電 圧 は 何kVか
発 電 機 母 線1か
線2の
維 持 す る 必 要 が あ る も の と す る。
負 荷 を150+j60MVAと
圧 器 バ ン クT1お
次/二 次 電 圧23/230kVで
よ びT2は
す る と,母
容 量150MVA,周
あ り,変 圧 器T3は
容 量150MVA,
線1 波数
図3.11
周 波 数60Hz,Y-Y接
続,一
次/二 次 電 圧230/69kVで
ー ダ ン ス は定 格 容 量 べー ス(自 タ ンス は1相
当 た り60Ω
送電系統
己 容 量 べー ス)でj0
あ る。 各 変 圧 器 の漏 洩 イ ン ピ .1puで
あ る 。 送 電 線 路 の リア ク
で あ る。
[解] 1相 当 た りの 基 準 容 量 をSb=100MVAと
す る。 母 線1の
基 準 に す る と,基 準 電 圧 はVb=23/√3kV,母
線2,3の
kV,母
線4の
23kV線
基 準 電 圧 はVb=69/√3kVと
電 圧 の1相
の 電圧 を
基 準 電 圧 はVb=230/√3
なる。
路 の 基 準 電 流 は,
とな り,同 様 に して,230kV線 2.510kAで
路 の 基 準 電 流 は0.753kA,69kV線
路 の基 準電 流 は
ある。
各 変 圧 器 の 漏 洩 リア ク タ ン ス は変 圧 器 の1相 で あ る か ら,1相
の 基 準 容 量 を100MVAに
の 定 格 容 量 べー ス(50MVA)で0.1
す れ ば,変 圧 器 の 漏 洩 リア ク タ ン ス は,
と な る。 230kV送
電 線 の 基 準 イ ン ピ ー ダ ン ス は(230)2/300=176.3Ω
ク タ ン ス60Ω
は60/176.3=0.340puと
以 上 よ り,pu値 図3.12に
線4の
路 リア
な る。
を 用 い て 表 し た 系 統 図 は 図3.12の
お い て,母
で あ る か ら,線
電 圧V4を
よ う に表 さ れ る 。
基 準 に 選 ぶ 。 す な わ ち,V4=1.0∠0°
とす
(b)
(a) 図3.12
る。 母 線4の1相
pu値
に 加 わ る 負 荷 のpu値
で 表 した 系 統 図
は(120+j60)/300=0.4+j0.2で
あ る か ら,
次 の 関 係 か ら 負 荷 電 流 を計 算 す る。
を得 る。 母 線2の
電 圧 をV2と
とな る。 母 線2に
接 続 さ れ た 負 荷 の1相
+j0.2で
あ るか ら,こ
す れ ば,
とな る。 こ の 関 係 よ り,電 流I2を
とな る。 母 線1の
の 複 素 電 力 のpu値
は(150+j60)/300=0.5
の 負 荷 に 流 れ る 電 流 をI2と す る と,
求 め る と,
電 流I1は,
とな る 。 よ っ て,母 線1の
電 圧V1は,
となる。
以 上 よ り,母 線4の ×23=27.07kVに
電 圧 を69kVに
維 持 す る た め に は,発
保 持 す る必 要 が あ る。
電 機 母 線 の 電 圧 は1.177
3.4.4 Δ
接続の変圧 器
Y接 続 の 変圧 器 は非 常 に簡 単 で あ るが,重 大 な実 際 上 の欠 点 が あ る。鉄 心 材 料 の 磁 気特 性 の非 線形 特 性 の た め,対 地 電 圧 が 歪 み,高 調 波電 流 を発生 す るが,Y接
続
で は,こ の電 流 が中性線 を流れ,電 子機器,通 信設 備 お よび コ ンデ ンサ な どに影響 を 及 ぼす。 Y接
続 の 変 圧 器 は,負
3.11の
変 圧 器T3を
3.13(a)は
荷 の わ ず か な 不 平 衡 の 場 合 に も非 常 に 厳 し い 。 例 え ば,図
考 え て み よ う。 こ の 変 圧 器 の 負 荷 は 不 平 衡 で あ る とす る 。 図
最 悪 の 場 合 を 示 し て い る。a相
流 は0で
あ る。69kVの
は1puの
電 流 が 流 れ る が,こ
で,b,c相
は1puの
電 流 が 流 れ て お り,b,c相
二 次 の 中 性 線 は 負 荷 電 流 の 帰 路 とな る。 一 次 側 で は,a相 の 電 流 はb,c相
に
の鉄 心 の起磁 力 の平衡 が存在 しな い の
を 帰 路 とす る こ と が で き な い。 そ の た め,1puの
たT1とT2の
の電
一 次 電 流 は80km離
れ
変 圧 器 の 中 性 点 へ の 帰 路 を 大 地 に取 ら な け れ ば な ら な い 。 こ の 途 中 で,
迷 走 す る電 流 が 電 子 機 器 や 通 信 設 備 に 擾 乱 を与 え る場 合 が あ る。 図3.13(b)に
示 す よ う に,変
圧 器T3の
三 次 巻 線 がΔ 接 続 さ れ た 変 圧 器 な ら ば ど
(a)Y-Y接
続
(b)Y‐Y‐Δ
接続
図3.13
変圧 器 の不 平衡 負荷
う な る か を前 述 の 場 合 と比 較 す る。 前 述 の 場 合 と 同 様 に,1puの 荷 の た め,三
次 巻 線 に は0.33puの
循 環 電 流 が 流 れ,こ
二 次 側 の不 平 衡 負
の電 流 は一次 の総 ての相 に電
流 を 流 す 。 三 相 の 全 相 の 鉄 心 に は 平 衡 し た起 磁 力 が 生 じ,大 地 電 流 は 流 れ な い。Δ 接 続 は必 ず し も三 次 巻 線 で 行 う必 要 は な く,一 次 あ る い は 二 次 の どち らか 一 方 の 巻 線 を Δ接 続 す る こ と に よ っ て,同 様 な効 果 が 得 られ る。
3.4.5
平衡負荷 におけるΔ‐Y接 続変圧器 の解析
図3.14は2巻 の 中 性 点 と し,ど 図3.14(a)に
線 変 圧 器 のΔ‐Y結 線 を 示 す 。 二 次 側 端 子 の ど ち らの 極 性 をY接 ち ら を電 圧 端 子 に 選 ぶ か に よ っ て2つ
続
の 可 能 性 が あ る。
示 す 極 性 の 場 合 に つ い て 検 討 し て み よ う。 図 か ら 直 ち に,二
次電圧
は一 次 電 圧 よ り30° 進 ん で い る こ と が わ か る。 す な わ ち,
(3.32) (3.31)式 に よ り,二 次 の 相 電 流I2aは 一 次 の 相 電 流I1aよ 流I1ab,I1caと 相 電 流I1aと
り30° 進 む 。 一 次 のΔ 電
の 関 係 は 次 式 で 表 さ れ る。
(3.33) 対 称 三 相 回 路 に 接 続 さ れ て い る とす る と,I1ab,I1bCお で,
(a)
(b) 図3.14 Δ‐Y結
線 変圧 器
よ びI1caは 対 称 三 相 と な る の
(3.34) と な る 。 こ の 関 係 を 用 い る と,(3.33)式
は次 の よ う に な る。
(3.35) (3.35)式 か ら,相 電 流 の 大 き さ はΔ 巻 線 の 電 流(Δ
電 流 :Δ‐current)の√3倍
であ
る 。
【 例 題3.9】
例 題3.4の30MVA単
ン ク を用 い て,定 格 電 圧13.2kV,定 に昇 圧 す る。 変 圧 器 が 全 負 荷(full
相 変 圧 器3台
をΔ‐Y結 線 し,こ
格 容 量90MVAの load)で
の 三相 変 圧器 バ
発 電 機 か ら 母 線 電 圧115kV
運 転 され る と き一 次 お よ び 二 次 電 流 を 求
めよ。 [解]全
負 荷 に お い て,二
次電 流 の大 きさは次 の ように表 され る。
三相 変圧 比 は
とな る 。
した が っ て,一
次 の全 負荷 に お ける相電 流 は
とな る 。Δ 電 流 の 大 き さ は
とな る 。
3.4.6
三 相3巻
線変圧器
三相 変圧 器が3つ の電 圧階 級 の間 で電力 を送 る場 合,3巻
線 を有 す る三相3巻 線 変
圧 器 を使用 す る。3巻 線 はそれ ぞれ一 次,二 次,三 次巻線 とよば れ る。3巻 線 はYお
よ びΔ 結 線 を含 み,Y‐Δ‐Y結 さ せ,変
線 が よ く用 い ら る 。Δ 結 線 に よ っ て 第3高
調 波 を循環
3.4.7
電 所 な ど に お い て は調 相 設 備 な どが 接 続 され る。
三 相3巻
図3.15(a)に
線 変 圧 器 の イ ン ピー ダ ン スの 計 算 法
示 さ れ る2巻 線 変 圧 器 の イ ン ピ ー ダ ン スZのpu値
二 次 の イ ン ピー ダ ン スZ1,Z2の ダ ン ス も図3.15(b)に
和 に 等 し い。 こ れ と 同様 に,3巻
は,一
次 お よび
線変 圧器 のイ ン ピー
示 す よ う な 構 成 に な っ て い る とす る と,次 の よ う な 関 係 が 成
立す る。
(3.36)
こ こ に,Z12は
二 次 端 子 を 短 絡 し,三 次 端 子 を 開 放 し て 一 次 端 子 で 測 定 し た 漏 洩 イ ン
ピー ダ ン ス,Z23は
三 次 端 子 を短 絡 し,一 次 端 子 を 開 放 し て 二 次 端 子 で 測 定 し た 漏 洩
イ ン ピー ダ ンス,Z31は
一 次 端 子 を短 絡 し,二
次 端 子 を 開 放 して 三 次 端 子 で 測 定 し た
漏 洩 イ ン ピ ー ダ ンス で あ る 。 (3.36)式
の 関 係 か ら,
(3.37)
を 得 る。 た だ し,多
くの 場 合,基
準 容 量 は3巻 線 に 共 通 と し て 与 え ら れ な い た め,
Z12, Z23, Z31は 共 通 の 基 準 容 量 に対 し て 換 算 す る 必 要 が あ る 。
(a) 図3.15
(b)
2巻 線 変 圧 器 と3巻 線 変圧 器 の 等価 回 路
3.5
単 巻変圧器
図3.16に
示 した2巻
線 単 相 変 圧 器 を考 え る 。 この 変 圧 器 の定 格 容 量 は100kVAで
あ り,定 格 電 圧 は1000/200Vと 側 が500Aで
す る。 よ っ て,定
あ る。 次 に,図3.16(b)お
こ の 結 線 に よ っ て,1巻
格 電 流 は,高
よ び(c)に
圧 側 が100A,
低圧
示 す よ う に 両 巻 線 を 結 合 す る。
線 当 た り の 電 圧 は 変 化 せ ず,鉄
心 の 磁 束 の 変 化 も な く,1200
Vの 巻 線 が 得 られ る。 1000V端
子 側 を二 次 と す る場 合,図3.16(b)に
圧 器(autotransformer)が 3.16(c)に も,2次
得 ら れ,ま
示 す よ う に1200/200Vの 端 子 の 最 大 電 流 は600Aで
示 す よ う に1200/1000Vの
た,200V端
単巻 変
子 側 を 二 次 と す る 場 合,図
単 巻 変 圧 器 が 得 ら れ る。 い ず れ の 場 合 に お い て あ り,図3.16(b)お
よ び(c)に
示 す よ う に巻 線
電 流 の 定 格 値 に よ っ て 制 限 さ れ る。 鉄 損 お よ び 銅 損 を増 加 させ る こ と な く,ま た,変 圧 器 を 過 負 荷 に す る こ と な く,定 格 容 量 を600kVAあ 600%あ
る い は20%増
る い は120kVAす
なわ ち
加 す る こ とが で き る 。
定 格 容 量 を 増 加 させ る こ と に よ る 実 質 的 な 利 点 は コ ス トで あ る。 この 巻 線 の 結 合 に よ る変 圧 器 の イ ン ピ ー ダ ン ス や 短 絡 電 流 へ の 影 響 を 調 べ て み よ う。 図3.16(a)に し た2巻
線 単 相 変 圧 器 の イ ン ピ ー ダ ン ス はj0.06puで
1/0.06=16.7puと
あ る と す る。 短 絡 電 流 は
な る。
(a)基
(b)接
本接続
(c)接
続1
図3.16
単 巻変 圧 器
示
続2
次 に,図3.16(b)に
示 す よ う に単 巻 変 圧 器 を結 線 す る場 合,短
二 次 側 に お い て 発 生 す る とす る。 こ の場 合,1200Vの
に加 わ る こ と に な る 。 イ ン ピ ー ダ ン ス の変 化 は な い の で,短 200倍,す
な わ ち6倍
0.06/6=0.01puと
表3.1か
絡 電 流 は 前 の 値 の1200/
ン ピ ー ダ ン ス のpu値
は1/6に
減 少 し,
の 問 題 点 は,一
次 と二 次 が 直 流 的 に 接 続 さ れ て い る こ と で あ
単 巻 変 圧 器 の 定 格 とイ ン ピ ー ダ ン ス に 関 す る特 性 を 示 す 。 ら,単 巻 変 圧 器 の電 圧 比 を1に 近 づ け る と,MVA容
流 も増 加 す る 。 単 巻 変 圧 器 は電 圧 比 が2:1あ 図3.17は
巻線
な る。
単 巻 変 圧 器 の も う1つ る。 表3.1に
に な る 。 よ っ て,イ
絡 が 電 圧1000Vの
一 次 側 の 電 圧 が200Vの
量 は 増 加 し,短 絡 電
る い は そ れ 以 下 の場 合 に 利 点 が あ る。
一 般 的 な 三 相 構 造 の 巻 線 結 線 を示 す 。 三 次 のΔ 巻 線 は 三 相 平 衡 の 場 合 は
機 能 し な い が,不
平 衡 負 荷 あ る い は 不 平 衡 故 障 の 場 合 に 作 用 す る 。 こ の変 圧 器 は2巻
表3.1
注 :接 続1,接
図3.17
続2は,そ
れ ぞ れ 図3.16(b),(c)に
示 す 接 続 に相 当
3次 巻 線 としてΔ 結 線 を持 つY‐Y結
合 の 単巻 変 圧 器
線 変圧器 と比 較 し,小 型 で安 価 で あ る。
3.6
タ ップ付変圧器 の モデル
電 力 系 統 に お け る変 圧 器 の 基 本 的 な 機 能 は,発 電 機 の 低 い電 圧 側 か ら送 電 線 の 高 い 電 圧 側 に昇 圧,ま
た は,変 電 所 で 降 圧 な どの 電 圧 変 換 で あ る。 し か し な が ら,変 圧 器
は有 効 電 力 お よ び 無 効 電 力 の 流 れ を制 御 す る付 加 的 機 能 も備 え て い る。 一 般 に,変 器 は 電 圧 の 大 き さ を ±10%の 化 さ せ,ま
範 囲 で 調 節 し,あ
圧
る種 の 変 圧 器 は 線 路 電 圧 の 位 相 角 を 変
た は,電 圧 の 大 き さ と位 相 の 両 者 を制 御 す る。 こ の よ うな 機 能 を 持 つ 変 圧
器 は電力系 統 の重要 な 回路要 素で あ る。 無 電 圧 タ ッ プ切 換 変 圧 器(no‐voltage
tap changing
transformer)で
は変 圧 器 の
タ ン ク 内 の 巻 線 近 傍 に 切 換 器 を置 き,無 電 圧 の状 態 で 変 圧 器 の 外 部 か ら タ ップ 操 作 を 手 動 で 行 う 。 負 荷 時 タ ッ プ 切 換 器(on‐load
tap changer)で
は変 圧 器 が 負 荷 を 取 っ
て い る と き タ ッ プ を切 り換 え る方 式 で リ ア ク トル 式 と抵 抗 式 が あ り,タ
ッ プ間 短 絡 時
の 電 流 制 御 に 使 用 す る 。 操 作 は 電 動 で 行 う。 負 荷 時 タ ッ プ切 換 器 を備 え た 変 圧 器 を 負 荷 時 タ ッ プ切 換 え 変 圧 器(on‐load 別 に 負 荷 時 電 圧(位
相)調
tap changing
整 器(on‐load
れ は負 荷 時 タ ッ プ 調 整 器 を使 用 す る が,線
transformer)と
よぶ が,こ
voltage(phase)regulator)が
れ とは
あ る。 こ
路 に直 列 に変 圧 器 巻 線 を挿 入 し,電 圧 あ る
い は位 相 ま た は そ の 両 方 を調 整 す る 。 また,電
圧 を段 階 的 に 調 整 す る負 荷 時 タ ップ 切 換 え変 圧 器 の 他 に,電
相 を微 調 整 す る典 型 的 な 変 圧 器 と し て 調 整 変 圧 器(regulating
図3.18
負 荷 時 電圧 調 整 変 圧器
圧 あ る いは位
transformer)が
あ
る。 こ の 変 圧 器 に は 電 圧 を微 調 整 で き る 負 荷 時 電 圧 調 整 変 圧 器(regulating former
for voltage
変 圧 器(regulating
magnitude
control)お
transformer
for phase‐angle
control)が
あ る 。 図3.18に
の 大 き さ を調 整 す る 負 荷 時 電 圧 調 整 変 圧 器 を示 す 。 ま た,図3.19は 変 圧 器 を 示 す 。 図3.20の タ ッ プ 巻 き線(tapped 位 相 巻 き線(phase
trans
よ び位 相 を微 調 整 で き る負 荷 時 位 相 調 整 電圧
負荷 時 位相 調 整
位 相 図 は負 荷 時 位 相 調 整 変 圧 器 に よ る位 相 角 の 変 化 を示 す 。 winding)と
winding)と
よ ば れ る タ ッ プ を も つ3つ
の 巻 き線 は そ れ ぞ れ
同 じ鉄 心 上 に巻 か れ て い る。 そ の 電 圧 は 中 性 点 か ら
タ ップ 巻 き線 の 中央 の 点 の 電 圧 と90° の 位 相 差 とな る。 例 え ば,図3.20に
お い て,Vbcと
整 電 圧 に よ っ て 中 性 点nに に,調
同 相 か あ る い は180° の 位 相 差 が あ るΔVanの
対 す る 電 圧Vanは
変 化 し,新
し いVanと
調
な る 。 図3.20
整 電 圧 の 大 き さ の僅 か な 変 化 に よ っ て 各 線 間 電 圧 の 位 相 角 が 変 化 す る様 子 を 示
す。
図3.19
図3.20
負 荷 時位 相 調 整 変圧 器
負 荷 時位 相 調 整 変圧 器 の位相 図
と こ ろ で,変
圧 器 の 一 次,二
法 を用 い て,変
圧 器 は直 列 イ ン ピ ー ダ ン ス で 表 現 で き る こ と を説 明 した 。 し か し,タ
ッ プ付 変 圧 器 の 場 合,定
次 の電 圧 べー ス 値 の 比 を巻 線 比 に 等 し く選 べ ば,単
位
格 タ ッ プ で あ る基 準 巻 線 比 か ら ず れ て 運 転 さ れ る と き に は,
そ の取 り扱 い に 工 夫 を 要 す る。 図3.21に
変 圧 比1/aで
運 転 され て い るタ ップ付変 圧
器 を 示 す 。 ち な み に,a=1の
場 合 が 基 準 巻 線 比 で の 運 転 と な り,電 圧 の 大 き さ が
2%上
相 が3° 変 化 す る場 合 に は〓
昇 す る場 合 に は1.02,位
図3.21は2つ 電 圧V1,V2は
の 母 線 か ら変 圧 器 に 流 入 す る電 流I1とI2を
とな る 。 示 す た め 矢 印 を 付 加 し,
基 準 母 線 に対 す る 両 側 母 線 の 電 圧 で あ る 。 こ こで 電 圧,電
二 次 の 基 準 電 圧,電
流 で 表 わ し たpu値
で あ る。 母 線#1か
流 は一 次,
ら理 想 変 圧 器 に 流 れ 込 む
複 素 電 力 の 式 は 次 の よ う に な る。
(3.38) 母線#2か
ら理 想 変圧 器 に流れ 込 む電力 は (3.39)
で あ る。 い ま,損 失 の な い 理 想 変 圧 器 を考 え て い る の で,母 流 入 す る 複 素 電 力 は,こ
の 変 圧 器 か ら母 線#2に
な らな い 。 す な わ ち,次
の 関 係 が 成 立 す る。
線#1か
ら理想 変 圧器 に
流 出 す る 複 素 電 力 に 等 し く な けれ ば
(3.40)
よ っ て,
(3.41)
図3.21
変圧 比1/aで 運転 され て い る タ ップ付 変 圧 器
図3.22
また,電
流I1は
タ ップ付 変 圧器 の π型 等 価 回路(aが
定 数 の 時)
次 式 に よ っ て も表 さ れ る。
(3.42)
ま た は,
(3.43)
と な る 。 こ こ でY=1/Zで
あ る 。(3.41),(3.43)式
を 用 い て,I2に
つ いて解 くと
(3.44)
式(3.43)と(3.44)か
ら,aa*=│a│2で
あ る の で,母
線#1,#2に
関 す る ノ ー ドア ド ミ
タ ン ス 行 列 は 次 の よ う に な る。
(3.45)
上 記 の 値 につ い て,aが が で き る。 す な わ ち,タ い な ら ば,図3.22に
実 数 の 時 の み,Y21=Y12と
な り,等 価 π 回 路 で 表 す こ と
ッ プ 付 変 圧 器 が 電 圧 の大 き さ の み を変 化 し,位 相 が 変 化 し な
示 す よ う な π 型 等 価 回 路 を得 る。
問題 (1)定
格 が110/440V,2.5kVAの ピー ダ ン ス が0.06Ω ス のpu値
単 相 変 圧 器 が あ る。 低 圧 側 か ら は か っ た イ ン
で あ る 。 こ の 変 圧 器 の 定 格 値 を 基 準 とす る イ ン ピー ダ ン
を 高 圧 側 と低 圧 側 に つ い て 求 め よ 。
(2)
電 圧275/66kV,容 き,こ
量300MVAの
の 変 圧 器 の275kV側
変 圧 器 の イ ン ピ ー ダ ン ス が14%で
か ら見 た イ ン ピー ダ ン ス と66kV側
ある と
か ら見 た 内 部
イ ンピー ダ ンスのオ ーム値 を求 め よ。 (3)
問 題(2)の kVに
(4)
変 圧 器 に つ い て,基
取 れ ば,高
問 題(3)に
準 容 量 を500MVAに
高 圧 側 の 基 準 電 圧 を250
圧 側 か ら見 た 変 圧 器 の% イ ン ピー ダ ン ス は い く らに な るか 。
関 連 して,基
準 容 量 を500MVAと
見 た% イ ン ピ ー ダ ン ス 値 も同 じ く28.2%に
し て,こ
の変 圧器 の低 圧 側 か ら
す る た め に は低 圧 側 の 基 準 電 圧 を
い くらに選 べ ばよいか 。 (5)
50kVA,400/2000Vの 0.02Ω,リ
単 相 変 圧 器 は 一 次 側 の イ ン ピ ー ダ ン ス が 抵 抗R1=
ア ク タ ン スX1=0.06Ω,二
Ω,リ ア ク タ ン スX2=1.5Ω Gm=2mS,リ
kVA,力
で あ り,磁 気 ア ド ミ タ ン ス(一
ア ク タ ン ス 分Bm=−6mSで
率0.8の
次 側)の
抵抗分
あ る 。 こ の 変 圧 器 は2000V,40
負 荷 に 電 力 を供 給 して い る。 図3.6(a)の
を用 い て 一 次 側 端 子 の 電 圧,電 (6)
次 側 の イ ン ピ ー ダ ン ス が 抵 抗R2=0.5
変 圧 器 の等 価 回 路
流 を 求 め よ。
3台 の 単 相 変 圧 器 を 用 い て 三 相 変 圧 器 バ ン ク を構 成 し,線 間 電 圧13.8kVの 相 発 電 機 電 圧 か ら線 間 電 圧154kVの 量 は45MVAで Δ(c)一 一次
,二
送 電 線 電 圧 に 昇 圧 す る。 発 電 機 の 定 格 容
あ る 。 三 相 変 圧 器 バ ン ク を(a)一
次Δ 二 次Δ に 結 線 す る場 合,そ 次 の 定 格 電 圧,電
三
次Δ 二 次Y(b)一
次Y二
次
れ ぞれ の結 線 に お け る単相 変 圧 器 の
流 お よ び 容 量 を求 め よ 。
【 解答 は巻 末】
第4章 送電線路
4.1
線路の イ ンダ クタ ンスと静電容 量
4.1.1
架空電線の 種類
送 配 電 線 の 建 設 費 の 低 下 を 図 る た め に は,径 らす こ とが 大 切 で あ る 。 しか し,径 間 長Sを
間 長 を増 大 させ,鉄
塔や 電柱 の数 を減
増 大 さ せ れ ば 電 線 の 弛 度(た
る み)は
増 大 し,架 線 の 地 上 高 が 減 少 す る。 この た め に 鉄 塔 の 高 さ を 増 大 さ せ れ ば,そ っ て 鉄 塔 全 体 の 構 造 の 強 化 が 必 要 とな る。 し た が っ て,弛 度 が あ り,弛 度 を一 定 値 に 抑 え,かつ
度 の大 き さ に は経 済 的 な 限
径 間 長 を で き る だ け長 く保 つ た め に は,電 線 に
加 わ る張 力 を 増 大 させ る こ とが肝 要 で あ る 。 この た め に,架 い は ア ル ミ線 に は,必
れ に伴
空 線 に使 わ れ る銅 線 あ る
ず 冷 間 圧 延 され た 硬 銅 線 あ る い は 硬 ア ル ミ線 を 用 い,可撓
性
(flexibility)を 増 大 させ る た め に撚 り線 を使 用 して い る。 硬 銅 線 の 抗 張 力 は 同 じ寸 法 の 軟 銅 線 の お よ そ160%で
あ る が,導
電 率 は お よ そ95%で
あ る。
電 線 は 高 温 に さ ら さ れ る と焼 き鈍 し され て 抗 張 力 が 低 下 す る。 こ の た め,電 線 に 流 れ る 電 流 値 は そ の 電 線 の 許 容 電 流(安 通,電
全 電 流)を
越 え て は な ら な い 。 わ が 国 で は普
線 の 最 高 許 容 温 度 を鋼 心 ア ル ミ よ り線 で は 連 続 使 用90℃,短
ま た硬 銅 よ り線 で は連 続 使 用90℃,短 表4.1は
時 間 使 用100℃
時 間 使 用120℃,
としてい る。
架 空 線 に 使 用 さ れ る硬 銅 よ り線 の わ が 国 の 標 準 寸 法 を 示 し て い る 。 素 線 数
は7‐19‐37… とい う よ う に進 ん で い く こ とに 注 意 し よ う。 鋼 心 ア ル ミ よ り線(A.C.S.R.:Aluminium
Cable
Steel Reinforced)は
張 力 の 高 い 鋼 線 の よ り線 の 上 に硬 ア ル ミ線 を 撚 っ た 線 で,電 線 に依 存 し,導
電 は 専 らア ル ミ線 に頼 る方 式 の 電 線 で あ る 。 わ が 国 の110kV以
送 電 線 の 多 くはA.C.S.R.を 表4.2に
極 めて抗
線 の 抗 張 力 の 大 部 分 は鋼 上 の
採 用 して い る。
わ が 国 の 鋼 心 ア ル ミ よ り線 の 標 準 を示 す 。A.C.S.R.に
っ き鋼 線 の 抗 張 力 は1225〔N/mm2〕
以 上 もあ り,ピ ア ノ線 並 の 強 度 で あ る。 図4.1は
鋼 心 ア ル ミ よ り線 の 構 造 を 示 す 。 ま た,わ ACSR(TACSR)が154kV,275kV,500kV系
使用 され る亜鉛 め
が 国 で は特 に超 高 電 圧 の送 電 線 に耐 圧 に 導 入 さ れ,使
用 さ れ て い る。 こ
表4.1
表4.2
Al:
ア ル ミ ニ ウ ム,St:
硬 銅 よ り線 標 準(JIS
鋼 心 ア ル ミ よ り線 の 標 準(JIS
鋼 を 示 す 。1条
で,許
C
3110)
あ る 。
ル ミに 微 量 の ジ ル コ ニ ウ ムZrを
容 電 流 は通 常 のACSRよ
3105)
の 標 準 長 さ は 公 称 断 面 積 が25∼95mm2は1000m,
120∼330mm2は2000m,410∼810mm2は1600mで
れ は,ア
C
り40∼50%多
添 加 し た ア ル ミ合 金 線 を 使 用 し たACSR くな る。
(a)外
観
(b)断
面形 状
図4.1 鋼 心 アル ミ線 の構 造
4.2
電 力ケー ブル
わ が 国 の 大 都 市 で は 中 心 部 の 電 力 需 要 が 急 激 に増 大 しつ つ あ り,中 心 部 の 変 電 所 へ の地 中 送 電 電 圧 も これ に と もな っ て 上 昇 し て い る 。 特 に 東 京,大 は,郊 外 の 変 電 所 か ら154kVあ
る い は275kVの
電 が 行 わ れ て い る 。 こ の た め,こ mの
ト ン ネ ル が 掘 削 さ れ,そ
ー ブ ル(Oil
電力 ケー ブ ルで都 心 の 変 電 所 へ 送
れ らの 都 市 で は地 下 に 洞 道 と よ ば れ る高 さ お よ そ2
の 中 に 電 力 ケ ー ブ ル が 布 設 さ れ て い る。 こ の 電 圧 範 囲
の 電 力 ケ ー ブ ル に は 単 心 のOFケ 単 心 のOFケ
阪の よ うな大都 市 で
ー ブ ル あ る い はCVケ
Filled Cable)の
ー ブ ル が 使 用 され る。
構 造 は 図4.2(a)に
示 され る よ う に 中 心
に絶 縁 油 の 通 路 が あ り,そ の 外 側 の 導 体 に は絶 縁 紙 が 巻 か れ て い る 。 絶 縁 紙 層 の 外 側 に は ア ル ミの 管 の 被 覆 が 施 さ れ,油 に耐 電 圧 が 高 い た め,ア
密 性 が 保 た れ る 。 絶 縁 紙 は一 般 に 紙 面 に 垂 直 方 向
ル ミ被 覆 管 は電 界 を紙 面 に直 角 に保 つ こ とに よ っ て,絶
縁の
強 化 に も役 だ っ て い る。 絶 縁 油 は 油 タ ン ク の ヘ ッ ドに よ っ て 大 気 圧 以 上 に 常 時 加 圧 さ れ て い る た め,絶
縁 体 内 の ボ イ ド(気 体 の 泡)の
が 可 能 に な る。 実 際,275kVの
発 生 が 防 が れ,絶
ケ ー ブル で も絶 縁 厚 は25mmに
縁 を薄 くす る こ と
満 た な い。 こ の ア ル
ミ被 覆 の 腐 食 を 防 止 す る た め に,外 側 に ビ ニ ル の 防 食 層 が 設 け られ て い る 。 OFケ
ー ブ ル は絶 縁 性 は極 め て 高 い が,油
関 係 の 補 助 設 備 を 必 要 とす る た め,ケ
ブ ル 長 が 短 い 場 合 に は 経 済 的 で は な い 。 ま た,高 係 か ら,使 用 が 制 限 され る。 こ の た め,最 領 域 で は図4.2(b)に CVケ
近 で は技 術 の 進 歩 と 共 に,22∼270kVの
示 さ れ る乾 式 のCVケ
ー ブ ル が 多 く使 わ れ る よ う に な っ た 。
ー ブ ル は 架 橋 ポ リエ チ レ ン 絶 縁 ケ ー ブ ル(Cross-linked
sulated vinyl sheathed
cable)の
polyethylene
略 称 で あ る 。 架 橋 ポ リエ チ レ ン と は,高
有 し な が ら も耐 熱 性 に 劣 る通 常 の ポ リエ チ レ ンの 重 合 度 を高 め,耐 リエ チ レ ン で あ る 。 ご く最 近 で は500kVのCVケ CVケ
ー
低 の落 差 が 大 き い 場 所 で は油 圧 の 関
in
い絶 縁性 を
熱 性 を付 与 し た ポ
ー ブ ル も作 ら れ る よ う に な っ た 。
ー ブ ル は 通 常 は洞 道 内 に 布 設 さ れ る か , 直 埋 され る。
(a)OFケ
ー ブル
(b)CVケ 図4.2
ー ブル
単 心 ケー ブ ル
ケー ブル は架 空線 に比 べれ ば占有空 間が極 めて小 さ い こ とと,都 市 美観 の見地 か ら も優 れて い る こ とが大 きな特徴 であ る。 そのた め,架 空線 に比 して遥 か に建 設費 が高 価で あ るに もかか わ らず,最 近,使 用 の増加 傾 向が著 しい。
4.3 4.3.1
線 路 インダ クタンス 直 線 単 導 体 の イ ンダ ク タ ン ス
電流Iが 流 れ る半径aの 直線 導体 の 中心軸 か らr(r≧a)の
点 の磁 束 密 度B(r)は, (4.1)
で与 え られ る。 ここ に,μ は透 磁率 で あ り,大 気 中の 場合 には真 空 の透 磁 率μoで 表 す こ とがで きる。 この関係 を用 い て,導 体 が大 気 中 にあ る場 合 につ いて,導 体 表面 か ら半 径R(R≧a)ま
での導体 の外側 に存在 す る磁束 と導体 単 位長 あた りの磁 束鎖 交 数
は, (4.2) と な る 。 し た が っ て,(4.2)式
よ り,電 流Iが
い て,導 体 の 中 心 軸 か ら 半 径aとRの
流 れ る直 線 導 体 の 単 位 長 さ 当 た り に つ
間 の 導 体 の 外 部 を 通 る磁 束 を計 算 す る こ と が
で き る。 こ の磁 束 と導 体 とが 鎖 交 す る磁 束 に よ る 外 部 イ ン ダ ク タ ン ス は,
(4.3)
図4.3 円形 断面 の 導体 とな る。 磁 束 は導 体 内 部 に も存 在 す る。 い ま,図4.3に
示 さ れ た 半 径aの
度 で 電 流I〔A〕 が 流 れ て い る と き,導 体 の 中 心 軸 か らr(r≦a)の
導 体 に均 一 な 密
点 の 磁 束 密 度 は,
となる。 い ま,単 位 長 さ の 導 体 を 図 示 の よ う に 半 径r,厚
さdrの
薄 肉 の 管 の 集 合 と考 え,
そ の 一 つ に鎖 交 す る 導 体 内 の磁 束 を求 め れ ば,
とな る 。 し た が っ て,電
流Iが
角 周 波 数 ω の 交 流 で あ る と き,こ
の 管 に は軸 方 向 に
単 位 長 さ あ た り,
の 誘 導 起 電 力 が 誘 起 さ れ る。 そ の 値 は 中 心 で 最 大 で,rに る 。 す な わ ち,中
対 して放 物 線 状 に減 少 す
心 に 近 い 管 ほ ど誘 導 起 電 力 が 大 き く,交 流 周 波 数 が 高 い 場 合 に は 中
心 部 に は 電 流 が ほ とん ど 流 れ な くな る。 こ の よ うに 交 流 電 流 の 周 波 数 が 高 く,導 体 の 直 径 が 大 き くな る に従 い,導
体 内 の 電 流 が 中 心 部 で 減 少 し,表 面 に近 づ くほ ど大 き く
な る 。 この 現 象 を 表 皮効 果(skin
effect)と
よん で い る。
さて,い ま上 述 の 円形 断 面 に働 く面積平 均 の誘導起 電力 を求 めれ ば,
と な る。 し た が っ て,平
均 的 な 内 部 イ ン ダ ク タ ン ス と して,
(4.4)
を得 る。 す なわ ち,円 形 断面 導体 の 内部 イ ンダ ク タ ンスLiは 導体 半 径 に無 関係 で あ る 。
半 径aの
円 形 断 面 の 直 線 導 体 の 中 心 軸 か らR(r≧a)ま
長 さ 当 た りの イ ン ダ ク タ ンスLは
で の磁 束 を対 象 とした単 位
外 部 イ ン ダ ク タ ン スLoと
内 部 イ ン ダ ク タ ン スLi
の和 と し て,
(4.5)
とな る。 さ ら に,真
空 の 透 磁 率,
(4.6) を(4.5)式
に代 入 す れ ば,
(4.7) が 得 られ る。 ACSRの
場 合 は 電 流 は ア ル ミ線 の 中 だ け を 流 れ る か ら,内 部 イ ン ダ ク タ ン ス は
(4.4)式 よ り小 さ い が,こ
の 値 自体 が 小 さ い た め,一
般 に イ ン ダ ク タ ン ス と し て(4.7)
式 が 用 い られ る。
4.3.2 図4.4は,半
往復導 体の単位長 インダク タンス
流I1とI2が
径aの2本
の 直 線 導 体 が 間 隔dを
も っ て 平 行 に 置 か れ,そ
れぞれ電
流 れ る と き の 磁 界 の 模 様 を表 して い る 。 両 電 流 と も紙 面 か ら読 者 に 向 か
っ て 流 れ て い る もの とす る。 い ま,I1が I2が 流 れ る右 側 導体 か らP点
流 れ る 左 側 導 体 か らP点
まで の 距 離 をR2と
まで の 距 離 をR1,
す る と き,左 側 導 体 に流 れ る電 流I1
に よ っ て 生 じ,こ の 導 体 自 身 に反 時 計 方 向 に鎖 交 す る 外 部 磁 束 を 実 線 で 表 す 。 こ の 外 部 磁 束 との 磁 束 鎖 交 数 は 次 の よ う に表 さ れ る。
図4.4 平行 導 体 に よる磁 界
また,右 側 導体 に流 れ る電流I2に よっ て生 じ,左 側 導 体 に反 時計 方 向 に鎖 交 す る 外部磁 束 を点線 で表 す と,磁 束 鎖交 数 は
とな る。 した が って,左 側 導体 と反時計 方 向 に鎖 交 す る全 外部 鎖交磁 束 数 ψは (4.8)
で あ る 。 い ま,も
しも
な らば,す なわ ち,右 側 導体 の電 流 の向 きが逆 に な り,往 復 電流 が直線 導体 に流 れ る 場合 には,左 側 導体 に鎖 交 す る反 時計 方向 の正 味 の外 部鎖 交磁 束 は
と な る。 さ ら に,こ
こ で,P点
き,左 側 導 体 に鎖 交 す る 磁 束 は
と な る。
を十 分 遠 方 に 移 せ ば, R1/R2の
値 は 限 りな く1に 近 づ
右 側 導 体 につ い て も全 く同 じ関 係 が 得 られ る。 こ の場 合 も,導 体 の 内 部 で 鎖 交 す る 磁 束 鎖 交 数 か ら得 られ る 内 部 イ ン ダ ク タ ン ス は(4.4)式 で 表 さ れ る 。 左 側 お よ び 右 側 の 各 導 体 に つ い て,導
体 の 外 部 お よ び 内 部 で 鎖 交 す る磁 束 鎖 交 数 か ら得 ら れ る外 部 イ
ンダ ク タ ン ス と 内 部 イ ン ダ ク タ ン ス を 合 わ せ た 全 イ ン ダ ク タ ン ス は
(4.9) とな る 。(4.9)式 は 単 相 回 路 の1線 は,回 路 の 全 イ ン ダ ク タ ン ス は1線
の イ ン ダ ク タ ン ス を与 え る。 単 相2線 の イ ン ダ ク タ ンス の2倍
と な る。
4.3.3
正三角形 配置の三相 送電線の作用 インダク タンス
図4.5に
示 さ れ た1辺
直 線 導 体#1,#2お
の 長 さ がdの
よ び#3が
式 の 回路 で
正 三 角 形 の頂 点 に配 置 さ れ た 半 径aの3本
あ る。 各 導 体 に は そ れ ぞ れ 電 流I1,I2お
の
よ びI3が 流 れ
て お り,こ れ らの 電 流 の 間 に 次 式 の 関 係 が あ る もの とす る 。
(4.10) こ の と き,図4.5に
お い て,P点
#3と
す れ ば,導
の 距 離 をR3と
と導 体#1と 体#1か
らP点
の 距 離 をR1,導
体#2と
に 至 る間 に 導 体#1に
す る正 味 の磁 束 鎖 交 数 は,
と な る 。(4.10)式
の 条 件 か らI3=−(I1+I2)を
図4.5
上 式 に 代 入 す れ ば,
正三 角形 配 置 の直線 電 流 に よる磁 界
の 距 離 をR2, 時 計 方 向 に鎖 交
とな る 。
こ こで,P点
を無 限 遠 ま で 動 か せ ば, R1/R3とR2/R3と
は い ず れ も1に
な り,上 式
は,
(4.11) とな る。(4.11)式 I2,I3か
に従 え ば,導 体#1に
鎖 交 す る外 部 磁 束 鎖 交 数 はI1だ
けで 表 さ れ,
ら の 外 部 磁 束 鎖 交 数 は一 見 存 在 し な い よ う に見 え る。 同 様 に,導
の 外 部 磁 束 鎖 交 数 もI2,13だ 送 電 の 分 野 で は1本
体#2,#3
け で 表 さ れ る。
の 導 体 を1条
の 導 体 と い い,1相
の 導 体 を 相 導 体 と い う。
(4.11)式 か ら得 ら れ る 外 部 イ ン ダ ク タ ン ス と(4.4)式 で 表 さ れ る内 部 イ ン ダ ク タ ン ス を 用 い る と,三 相 回 路 の1相
の1条
の 導 体 の1km当
た り の イ ン ダ ク タ ンス は 次 の よ
うに表 され る。
(4.12)
こ の 式 で 表 さ れ る イ ン ダ ク タ ン ス は 導 体 が 正 三 角 形 に配 置 さ れ た 三 相 送 電 線 の 作 用 イ ン ダ ク タ ン ス(working
inductance)*と
ク タ ン ス に 関 す る計 算 に あ た っ て,他
よ ば れ る。(4.12)式
は,導 体1条
の リア
導 体 と の相 互 イ ン ダ ク タ ン ス を外 見 上 は 考 慮 し
な い で 済 む と い う こ とで あ り,回 路 計 算 な ど に お い て 大 変 に 好 都 合 で あ る。 す な わ ち,三
相 送 電 線 の 各 相 に対 称 三 相 電 流 が 流 れ て い る場 合,1相1条
の 導 体 の1km当
た りの イ ン ダ ク タ ン ス は作 用 イ ン ダ ク タ ン ス で 表 され る。 対 称 三 相 回 路 の 計 算 は1相 に つ い て 計 算 を行 うが,1相
が1条
の 導 体 で 構 成 され る 場 合,計
当 た り の イ ンダ ク タ ン ス と し て は(4.12)式 る 。4.3.2に
述 べ た 往 復 導 体 の1条
算 に 使 用 す る1km
か ら得 られ る作 用 イ ン ダ ク タ ン ス を用 い
当 た りの イ ン ダ ク タ ンス も,1相
当 た りの回路 の
作 用 イ ンダ ク タ ン ス に 等 し い 。
4.3.4
撚 架 三 相 送 電 線 の 作 用 イ ン ダ ク タ ンス
三 相 送 電 線 は 一 般 に 図4.6の 法d12,
d23, d31は 通 常 は,一
鉄 塔 に 架 設 す る際 に,電
よ う な 不 等 辺 三 角 形 の 配 置 で あ る。 しか し,図 示 の 寸 つ の 送 電 線 路 で は 一 定 で あ る。 三 相 送 電 線 路 で 電 線 を
線 は こ の よ う な不 等 辺 三 角 形 に配 置 さ れ る が,図4.7に
れ る よ う に 送 電 端 か ら受 電 端 ま で の 距 離 を3等 分 し,そ の3等
* 作 用 イ ン ダ ク タ ン ス は正 相 イ ン ダ ク タ ン ス と もよ ば れ る。
示 さ
分点 の位 置 にお いて導
図4.6 不 等辺 三 角 形配 置 の送 電線
図4.7 3相 送 電線 の撚 架
体 の 配 置 を入 れ 替 え る こ とが 行 わ れ る。 これ は 撚 架(transposition)と い ま,図4.7に
お い て 長 さLの
Icが 流 れ て い る とす れ ば,最
よ ば れ る。
最 初 の 区 間 で は 上 段 に 電 流Ia, 中 段 にIb,下
初 の 区 間 の 電 流Iaの
流 れ る 導 体 とP点
段 に
まで の 間 で 鎖 交
す る 外 部 磁 束 ψ1は,
であ る。
し か し,第2の とP点
区 間 で は 電 流Iaの
導 体 は撚 架 の た め 中段 に 降 り る た め,こ
の 導体
ま で の 間 で 鎖 交 す る外 部 磁 束 ψ2は,
で あ り,第3の
区 間 の 電 流Iaの
導 体 とP点
まで の 間 で 鎖 交 す る外 部 磁 束 ψ3は,
と な る。 し た が っ て,全
長3Lの
区 間 で 電 流Iaの
流 れ る 導 体 に 鎖 交 す る全 外 部 磁 束
ψ は,
とな る 。 この 場 合 に お い て も,(4.10)式
の 関 係 が 成 立 す る の で,こ
の関 係 を用 いて上
式 を整 理 すれ ば,
を得 る。電 流Iaの 流 れ る導体 の単 位 長 さ当 た りに鎖 交 す る平 均 の外 部磁 束 鎖交 数 は 表 面 上 電 流Ib,Icに
無 関 係 で あ り,
(4.13) を も っ て 表 され る 。 い ま,
(4.14) と表 す と,deは
三 相 送 電 線 の 幾 何 学 平 均 距 離(geometrical
は等 価 線 間 距 離(equivalent
cable
ば,撚 架 され た 三 相 送 電 線 の1条
distance)と
mean
distance)あ
るい
よ ば れ る。 等 価 線 間 距離deを
使 え
の 単 位 長 さ 当 た りの 作 用 イ ン ダ ク タ ン ス は,
(4.15) と な り,(4.9)式,(4.12)式
と同 形 に な る。
送 電 線 の 撚 架 は撚 架 鉄 塔 で 行 わ れ る が,こ
の 鉄 塔 は通 常 の もの に 比 して 大 型 で 高 価
に な り,特 に 超 高 圧 以 上 の 線 路 で は 経 済 性 が な い た め,近 とん ど行 わ れ ず,開
年 は鉄 塔 に お け る撚 架 は ほ
閉 所 や 変 電 所 の 母 線 で 不 完 全 な 撚 架 が 行 わ れ る 程 度 で あ る。 しか
し,実 際 に は,送 電 線 路 の イ ン ダ ク タ ンス は,理 想 的 な 撚 架 が 行 わ れ て い る もの と し て(4.15)式
を用 い て計 算 が 行 わ れ る。
わ が 国 の 送 電 線 は 同 一 鉄 塔 の 左 右 に3相 送 電 線 が1回
路 ず つ,2回
が 普 通 で あ り,こ の 回 路 を 回 線(circuit)と
送 電 線 で は3条
回線 を構 成 す る。 ま た,同
よ び,3相
路 を併 架 す る の の 相 導 体 が1
一鉄 塔 に異 なった電 圧 の回線 が併 架 され る場合 あるい は同
じ 電 圧 の3回
線 以 上 が 併 架 さ れ る 場 合 も あ り,こ の よ う な 送 電 線 を 多 回 線 送 電 線
(multi‐circuit transmission
line)と
よ ん で い る。 平 行2回
線 に お け る相 導 体1条
た り,単 位 長 当 た りの イ ン ダ ク タ ン ス す な わ ち作 用 イ ン ダ ク タ ンス の 計 算 は,わ で は通 常,他
当
が国
回 線 か らの 誘 導 を 無 視 し て 計 算 を行 っ て い る。
(4.15)式 の 中 のde/aの 数 の 値 は4.6か
ら6.9に
比 は100か
が 大 き くな る と共 に,ACSRが わ が 国 の66kVか
で 変 化 し た と して も,そ れ らの 自 然 対
使 わ れ る か ら導 体 直 径aも
ら154kVま
1.1∼1.3mH/kmの
ら1000ま
変 化 す る に す ぎ な い 。 一 般 に 送 電 線 の 電 圧 が 高 くな れ ばde
で の 送 電 線 の1条
大 き くな る 。 こ の た め ,
当 た りの 正 相 イ ン ダ ク タ ン ス の 値 は
範 囲 に 収 ま る場 合 が 多 い 。 し か し,こ れ よ り高 い 電 圧 の 送 電 線
で は,次 節 で 述 べ る よ う に こ の 範 囲 以 下 に な る の が 普 通 で あ る 。
4.3.5
多導体のイ ンダクタ ンス
相 導 体 が 同 寸 法 の2条 導 体 を複 導 体 と い い,2条
の 導 体 を も っ て 並 列 に配 置 さ れ 構 成 さ れ て い る と き,こ
の相
以 上 で 構 成 さ れ る相 導 体 を 多 導 体 と い う。 多 導 体 の そ れ ぞ
れ の 導 体 を 素 導 体 とい う。 相 電 流Iは
各 素 導 線 に 等 分 し て 流 れ る の で,図4.4に
い てI1とI2は
間 距離dをsと
同 方 向 にI/2と
お き,線
書 き 改 め れ ば,1素
お
導 体 の外
部 磁 束 鎖 交 数 ψ0は,
とな る 。
い ま,図4.8(b)に
(a)
お い て2条
の 導 体 の 中 間 点 か らP点
(b) 図4.8 複 導 体 の イ ン ダ クタ ンス
ま で の 距 離 をRと
(c)
し,R
を 導 体 間 隔sよ
り十 分 に大 き い と す れ ば,R≒R1≒R2と
置 く こ とが で き る か ら,上
式 は,
とな る 。
これ を図4.8(a)に 束 鎖 交 数 の(4.3)式
示 さ れ た 直 線 単 導 体 に 電 流Iが と比 較 す る と,そ
複 導 体 の 外 部 イ ン ダ ク タ ン ス は,同 √ asの
の差 はaと√asの 図(c)に
流 れ た と き のP点
まで の 外 部 磁
違 い だ けで あ る 。 こ の こ とは
示 され た複 導体 の 中心 にお か れ た半 径
単 導 体 と 等 価 で あ る こ と を 意 味 し て い る。 こ の 意 味 で√asは
(equivalent
radius)と
複 導 体 の2条
等価 半径
よばれ る。
の 並 列 に 配 置 さ れ た 素 導 体 は そ れ ぞ れ μo/8πの 内 部 イ ン ダ ク タ ン ス
を 有 して い るの で,合
成 内 部 イ ン ダ ク タ ン ス は そ の1/2に
な り,複 導 体 送 電 線 の 作 用
イ ン ダ ク タ ン ス は,
(4.16)
と な る。 た だ し,deは
複 導 体 中 心 を基 準 と し た 等 価 線 間 距 離,aeは
複 導体 の等 価 半
径 で,
(4.17) とす る。
4.3.6
大地帰路の インダク タンス
中性 点直 接接 地 の三相 回路 に1線 地 絡 の よ うな故 障 が起 き る と,地 絡 点 か ら大 地 を 通 り中性 点 に戻 るルー プ に地 絡電 流が 流れ る。 この よ うな場 合,ル ー プの イ ンダ ク タ ンス として作用 イ ンダ ク タンス を用 い る こ とはで きな い。地 絡電 流が 流れ る場合 のイ ンダ クタ ンスは大地 帰路 の イ ンダ クタ ンス とよ ばれ る。 大地 の導 電率 が複雑 で あ るた め地 絡電 流 の分 布 も複雑 とな り,大 地 を流 れ る電 流の ルー プ を正確 に求 め る ことは不 可能 で,大 地帰 路 のイ ンダ ク タ ンスを計算 で 求 め るこ とはで きない。線 間短 絡 や 三相 短絡 の ときに比 べ て地絡 電流 の流 れ るル ー プの往路 と複 路 の間 の間隔 は大 き くな り, 大地 帰路 の イ ンダク タ ンス の値 は単相 ある いは三相 の作 用 イ ンダ クタ ンスの値 よ り大 き くな る。 その値 は,電 流 の周波 数 お よび大 地の 導電 率の 関数 で,こ れ らの値 が 高 い
ほ ど小 さ くな る。
い ま,大 地 の イ ンダ クタ ンスの最 小値 を求 め るため,周 波 数 お よび大 地導 電率 が共 に極 め て大 きい とすれ ば,こ の とき磁 束 は大地 の 中に存 在 す る こ とはで きない。 なぜ な ら,極 端 に高 い周波 数 の磁 束 は大地 中に大 きな渦起 電 力 を誘 起 し,大 地 中 に磁 束 が 侵入 す る こ とを ほぼ完 全 に防止 す るか らであ る。 この とき地 表 に垂直 な磁 束 の成 分 は 零で,磁 束 は地 表 に平行 にな る。 い ま,地 上 に 平 均Hの
高 さ に 張 られ た 半 径aの
導 体 が,こ
の よ うな仮 想 的 な大地
に 対 して 地 絡 故 障 を起 こす とす れ ば,磁 束 は 大 地 の 内部 に は存 在 せ ず,大
地 電流 は も
っ ぱ ら地 表 に 集 ま る 。 この 地 表 を 流 れ る電 流 の 影 像 を大 地 の 中 に 図4.9の
ように取 れ
ば,1条
当 た りの イ ン ダ ク タ ン ス と し て,
(4.18) を得 る。 現 実 の大 地 の 導 電 率 は砂 漠 や 山 岳 地 帯 で は小 さ く,水 田 地 帯 で は比 較 的 高 い 。 導 電 率 が 低 け れ ば,磁 束 は大 地 中 に深 く侵 入 す るか ら影 像 の 位 置 は 深 くな り,イ ン ダ ク タ ン ス の 値 は 増 大 す る。 した が っ て,(4
.18)式 か ら導 電 率 が 無 限 大 の と き の イ ン ダ ク タ
ン ス は 理 論 的 に 最 小 値 とな る。 しか し,一 般 に 平 均 地 上 高Hは て か な り大 き い た め,こ
等 価 線 間 距 離 に比 し
の 理 論 的 な 最 小 値 で さ え も作 用 イ ン ダ ク タ ン ス を上 回 る こ と
図4.9 大 地帰 路 の電 流
表4.3 送 電 線 の大 地 帰 路 の イ ンダ ク タ ンス(mH/km)
にな る。
表4.3は
わ が 国 の154kVま
示 し て い る。 そ の 値 が1線
での送 電線 の大 地帰路 のイ ンダ クタ ンスの 実測 結 果 を と大 地,2線
一 括 と大 地,3線
一 括 と大 地,6線
一 括 と大
地 の 順 に 小 さ くな る の は,一 括 す る こ と に よ っ て 多 導 体 と して の 等 価 半 径 が こ の 順 に 大 き くな る た め で あ る 。
4.4 4.4.1
線路 の静電 容量 正負等 量の平行 な線電荷 による電位
単 位長 さ当た りの電 荷 密度 がq〔C/m〕 で,直 線状 に分 布 す る電 荷 か らr〔m〕 の 点 Pの 電界E(r)は (4.19) で あ る 。 こ こ に,εoは 真 空 の誘 電 率 で あ り,大 気 中 の誘 電 率 も こ の値 に 等 し い 。 図4.10(a)に
お い て 直 線 電 荷 か ら距 離Rの
点P0の
電 位 を 基 準 に 取 る と き,P点
の 電 位V(r)は,
(4.20) とな る 。 そ れ ゆ え,図4.10(b)に 平 行 な線 電 荷 ±q〔C/m〕
示 さ れ る よ う に 間 隔dを
に よ るP0点
に 対 す るP点
も って配 置 され た正 負 の
の 電 位 は,
(a)
(b) 図4.10
線 電 荷 に よ る電界
と な る 。P0点
を 十 分,遠
方 に 遠 ざ け れ ば,R1/R2=1と
な り,
(4.21)
を得 る。 (4.21)式 に お い てr2/r1が1よ の 値 は 正 と な り,逆
4.4.2
2条
半 径aの2条
り も大 き け れ ば,P点
に小 さ け れ ばVの
は正 電 荷 に よ り近 い の で,V
値 は 負 と な る。
の 平 行 導体 間 の 静 電 容 量 の 導 体 が 間 隔dを
〔C/m〕 お よ び−q〔C/m〕
も っ て 平 行 に 配 置 さ れ て お り,そ
に 帯 電 し て い る と す る。 こ の 場 合,こ
電 界 は 導 体 の 中 心 軸 に 沿 っ て ±q〔C/m〕
れ ぞ れ +q
れ らの導 体 の 外 部 の
の 直 線 電 荷 を 置 き,導 体 を取 り除 い た 空 間
に 対 し て計 算 す る こ と が で き る。 正 電 荷 の 帯 電 し た 導 体 の 表 面 電 位V+は(4.21)式 の 半 径a,r2を2導
体 の 線 間 距離dと
を使 っ て,r1を
正 に帯電 す る導 体
置 き換 え る と,
(4.22)
と な る。
負 に帯 電 した 導 体 の 表 面 電 位V-は
同 じ く(4.21)式 か ら次 式 で 与 え られ る 。
(4.23)
これ ら2導 体 間 の 電 位 差Vdは,
(4.24) とな り,し た が っ て,2導
体 間 の 静 電 容 量Cは,
(4.25)
とな る 。
4.4.3
単一導体の対 地容量
図4.11は
地 上H〔m〕
導 体 に +q〔C/m〕
の 高 さ に,地 表 に 平 行 に 張 られ た 半 径aの
導体 を示 す。 この
の 電 荷 を 与 え た と き,電 線 直 下 の 地 表 に は 反 対 極 性 の 電 荷 が 誘 導
さ れ る 。 この 誘 導 電 荷 は,地 表 面 下H〔m〕
の−q〔C/m〕
の仮 想 的 な影像 直 線電 荷 を
もっ て代 表 させ る こ とが で き る 。 こ の と き,正
に 帯 電 し た 導 体 の 電 位 は地 表 面 と導 体 間 の 電 位 差 で あ り,ま た,地
面 の 電 位 は零 で あ る か ら,(4.24)式
か らd=2Hと
し て 求 ま る 電 位 の1/2で
表
あ る。 よ
っ て,
と な る。 し た が っ て,図4.11の
単 一 導 体 の 単 位 長 さ 当 た りの 対 地 静 電 容 量 は,
(4.26) と な る。
4.4.4
単 相 配 電 線 の静 電 容 量
対 称 三 相 の 任 意 の2相
の 電 圧 を図4.12(a)に
示 す2導
体間 に加 え る と き,2導
体間
お よ び 導 体 と大 地 間 に 電 気 力 線 が 通 る。 そ の 中 で 導 体 間 を直 接 に 結 ぶ 電 気 力 線 に 相 当 し て 線 間 容 量Cmを,導
体 と地 表 を結 ぶ 電 気 力 線 に 対 応 し て 対 地 容 量Csを
とが で き る 。 これ ら の 容 量 を通 して2導 線 間 容 量Cmは 4.12(b)の 充 電 電 流Iは
容 量2Cmの2個
体 間 に は充 電 電 流 が 流 れ る。
の 直 列 コ ン デ ン サ に 置 き 換 え る こ とが で き,図
よ う に 表 す こ と が で き る 。 線 間 電 圧 をVと 図4.12(b)か
考 えるこ
ら わ か る よ う に,
図4.11
地表 上 の 帯 電導 体
す れ ば,こ
の線 路 に流 入 す る
と な る 。 こ こ に,
(4.27) で あ り,Cwは
作 用 容 量(Working
Capacity)*と
よ ば れ る。 作 用 容 量 は 線 間 容 量 お
よ び対 地 容 量 を考 慮 した 相 導 体 の 単 位 長 さ 当 た りの 静 電 容 量 で あ る 。 対 地 容 量Csの
値 は 次 の よ う に 計 算 さ れ る 。 図4.13に
お い て2線
(b)
(a) 図4.12 2導
図4.13
* 作 用 容 量 は正 相 容 量 と も よ ばれ る。
体 間 の 静電 容 量
帯 電 平行2導 体 の作 る電界
を一 括 して対 地
電 圧Vを
加 えた と き各 導 体 の 電 荷 をqと
とな る。 こ れ よ り1km当
た りの 導 体1条
す れ ば,(4.21)式
を2度 用 い て,
の対 地 容 量 と し て,
(4.28)
を得 る。 も し も,H≫dが
成 立 す る な ら ば(4.28)式
は,
(4.29)
とな る。(4.29)式
の√adは
半 径a,間
隔dの2条
の 素 導 体 か ら な る複 導 体 の 等 価 半
径 と同 じ で あ る こ と に注 意 す る。 作 用 容 量 は 次 の よ う に 計 算 さ れ る。 図4.13に
示 す 往 復 線 路 に お い て,交
両 導 体 間 に 印 加 さ れ て い る と す る 。 導 体 の 一 方 が +q〔C/m〕,他 帯 電 した 瞬 間 を 考 え れ ば,正
流電 圧 が
方 が−q〔C/m〕
に
に帯 電 した 導 体 の 電 位Vは,
と な る。
上 式 か ら求 め たq/Vの っ て,作
値 は,導
体 上 の 単 位 長 さ 当 た り の 電 荷 と導 体 電 位 の 比 で あ
用 容 量 に 他 な ら な い。 す な わ ち,
(4.30)
とな る。 上 式 でH≫dす
な わ ち2H≫dが
成 立 す る と き は,
(4.31)
とな る。
(4.31)式 はH≫dの は,線
条 件 が 成 立 す る限 り作 用 容 量,つ
ま り,単 相 線 路 の 充 電 電 流
間 距 離 と導 体 の 半 径 だ けで 定 ま る こ と を 示 し て い る。2条
よ う に 水 平 に 張 ら れ て い る場 合 で も,線 間 距離dと 充 電 電 流 に 変 わ りは な い 。 同 様 に(4.29)式 立 す る 限 り,2条
の 導 体 が 図4.13の
導 体 の 半 径aの
比 が 等 しい 限 り
に 示 さ れ た 対 地 容 量 も,H≫dの
関係 が成
の 導 体 の 配 置 に は 無 関係 で あ る 。 現 実 の 単 相 配 電 線 で は 通 常H≫d
の 関 係 が 成 立 す る。 し た が っ て,CsとCwの
計 算 に 当 た っ て は 通 常 は(4.29)式
と
(4.31)式 に よ る 計 算 で 十 分 で あ る。
【 例 題4.1】
地 上6.5mの
が あ る 。 線 径 を13mmと
高 さ に,40cmの した と き,1km当
Cwを 求 め よ。 ま た,60Hz,6900Vに
間 隔で水 平 に置 かれ た 単相 の 高圧 配電 線 た り導 体1条
対 す る 導 線1条,亘
の 対 地 容 量Csと 長1kmの
作 用容 量
充 電 電 流 の値
を 求 め よ。 [解] H≫dが
成 立 す る か ら,長
さの 単 位 と し てcmを
用 い て 表 し,
が得 られ る。
この計 算 は,高 圧 配 電 線で は導 体1条,亘
長1km当
た りの作 用容 量Cw中
に占 め
る対 地容 量Csの 割合 は約1/3で あ る ことを示 してい るが,特 別 高圧 の送電 線 で は こ の割 合 は1/2程 度 の こ とが多 い。 これ は,配 電 線 で は地上 高 に比 して線 間 の間隔 が小 さいた め に,送 電線 に比 して作 用容 量が比 較 的大 きいた めで あ る。 また,導
体1条,亘
長1km当
た りの充 電 電 流 左Icは,
とな る。
4.4.5
正 三角形配置 の三 相送電線 の作 用容量 と対地電圧
送 電 時 の送 電線 の送受 両端 間の 電圧 降 下率 は,主 幹 送 電 線 路 で10%,そ
の他 の線
路 で は5%の
範 囲 内 に維 持 さ れ,超
き くな り,5%あ
高圧 長距 離送 電線 で は線 路 の充 電 電 流 の影響 が 大
る い は そ れ 以 下 と な る。 し た が っ て,送
電 線 の各 相 導体 の対地 電 圧
Vは全 長 に わ た っ て ほ ぼ 一 定 とみ な す こ とが で き る 。 い ま,図4.14に 一 辺 の長 さdの
正 三 角 形 配 置 の三 相 送 電 線 が あ り ,そ
場 合 を考 え る。 図 の 導 体1の
電 位 をVa,単
3に つ い て そ れ ぞ れ 電 位 をVb,Vc,単 体1の
対 地 電 位VaはH≫d≫aの
の 導 体 の 中 心 が 地 上Hと
位 長 さ 当 た りの 電 荷 をqa,導
位 長 さ 当 た り の 電 荷 をqb,qcと 条 件 の 下 に,影
示 す よ う に,
体2,導
なる 体
す る と き,導
像 法 に よ っ て,
(4.32) とな る 。 同 様 な 式 が 導 体2お
よ び3に
お い て も成 立 す る 。 これ ら を ま とめ て マ ト リ ク
ス 表 示 を す れ ば,
(4.33)
図4.14
正 三 角 形配 置 の3相 送 電 線
と な る 。 い ま,三 相 の対 地 電 位 に つ い て 次 の 条 件,
を(4.33)式
に代 入 す れ ば,
と な る か ら,
が 得 られ る 。 これ を(4.33)式
のVaに
関 す る式 に戻 せ ば,
(4.34)
と な り,導 体1の
対 地 電 位Vaは
そ の 導 体 に 帯 電 し て い る 単 位 長 さ 当 た りの 電 気 量qa
の み に 関 係 し,他 の 相 導 体 の 電 荷 に は無 関 係 と な る。(4.34)式
か ら導 体1の
静 電容 量
を 求 め る と,
(4.35)
を得 る。(4.35)式
は 正 三 角 形 配 置 の 三 相 送 電 線 の1相
相 配 電 線 の 作 用 容 量 の(4.31)式 対 称 三 相 回 路 の 計 算 を1相 容 量 で あ る。 また,作 一 方,1相
の 対 地 容 量Csは3条
体 電 位Vは
れ か ら,
用 す る1相
の静電 容量 は作用
用 容 量 は 回 路 の 充 電 電 流 を決 定 す る 静 電 容 量 で あ る 。 を一 括 し た と き の対 地 容 量 の1/3で お い て3条
d≫aの 条 件 が 満 た さ れ た と き,導 体3条
と な り,こ
の 作 用 容 量 で あ っ て,単
と ま っ た く同 じ式 で あ る こ と に 注 意 す る。
に つ い て計 算 す る場 合,使
以 下 の よ う に説 明 で き る。 図4.14に
た が っ て,導
の1条
あ る 。 これ は,
を一 括 し て 対 地 電 圧Vを
の 単 位 長 さ 当 た りの 電 荷qは
影 像 法 に よ っ て,(4.32)式
与 え,H≫ 相 等 しい。 し
を 導 い た の と同 様 な 方 法 に よ り,
(4.36)
を得 る。 こ れ は単 相 配 電 線 の,導 体1条
の 対 地 容 量 の(4.29)式
こ の 式 中 の(ad2)1/3は 正 三 角 形 配 置 の 導 体3条 式 で 表 さ れ る対 地 容 量 は(4.26)式
の 半 径aを
に似 た 形 を して い る。
の 等 価 半 径 で あ る 。 す な わ ち,(4.36) 等 価 半 径 に 置 き換 え た 静 電 容 量 の 値 の
1/3で あ る。
4.4.6
三 相 送 電 線 の静 電 容 量
イ ンダ クタ ンス と同様 に,静 電容 量 にお いて も三相 送電線 の3条 の導体 を完 全 に撚 架 を す れ ば,導 体 の1条 等 価 線 間 距離deを
の 作 用 容 量Cwは(4.35)式
のdの
代 わ り に(4.14)式
に よる
使 っ て,
(4.37)
とな る 。 実 際 に撚 架 が 行 わ れ て い な い 送 電 線 に対 し て も,そ のCwは(4.37)式
に よっ
て計 算 され る。 撚 架 送 電 線 の 各 相 が 多 導 体 の 場 合 に は,1相 半 径aeを
の 作 用 容 量 は(4.37)式
に お い て,等
価
代 入 し て,
(4.38)
と な る。
平行2回 線 の場合 の作 用容量 は,わ が国 で は通 常,他 回線 か らの静 電誘 導 は無視 す る。 す な わ ち,2回
線 の 場 合 の作 用 容 量 は1回 線 の2倍
わ が 国 の66∼154kVの
送 電 線 は ほ と ん どす べ て 単 導 体 を使 用 し て い るが,実
果 に よ れ ば そ の 作 用 容 量 は0.008∼0.01μF/kmの 当 た り,ほ ぼ1μFで
と して い る。 測結
範 囲 に あ る。 す な わ ち,100km
あ る。 多 導 体 送 電 線 の 場 合 は(4.37)式
と(4.38)式
の比 較 か ら わ
か る よ う に,導 体 の 等 価 半 径 が 大 き い た め に 作 用 容 量 は 上 記 の 値 よ り大 き く な る。 撚 架 され た 多 導 体 送 電 線 の 相 導 体 の 対 地 容 量Csの
値 は,送
電 線 に平 行 に そ の 上 部
に 張 られ た大 地 電 位 の 架 空 地 線 と鉄 塔 の影 響 を 無 視 す れ ば,三 相 の 相 導 体 の 中 心 の 地 上 高 をH,多
導 体 の 等 価 半 径 をaeと
し て,
(a)
(b)
図4.15
正 相 容量 と対 地容 量
(4.39)
とな る 。 実 際 に は,架 た,2回 Csよ
空 地 線 と鉄 塔 の 存 在 の た め に,こ
線 の場 合 に は,1回
れ よ りや や 大 き く な る 。 ま
線 の3条
の相 導 体 を一 括 し,他 回 線 を 開 放 し た 対 地 容 量
り6条 の 相 導 体 を一 括 したCsの
値 の 方 が 大 き い。 多 くの 送 電 線 に お い て 相 導 体
1条 当 た り のCsの
値 はCwの
約1/2で
ある。
三 相送 電線 の相 導体 間 の静電 容量 を相互 容量 とい い,こ れ をCmで 対 地 容 量 をCsで
表 せ ば,図4.15に
示 す よ う に,作
表 し,相 導体 の
用 容 量 は,
(4.40) と な る。 この 式 は単 相 配 電 線 に 対 す る作 用 容 量 の(4.27)式
【例 題4.2】
図4.16に
与 え られ た 送 電 線 の1回
線 は 公 称 断 面 積240mm2のACSRと [解]
相 導 体#1と#2の
は そ れ ぞ れ,
に対 応 す る 。
線 の 作 用 容 量 を 求 め よ 。 た だ し,電
す る。
線 間 距離d12,#2と#3の
距離d23,#3と#1間
の 距離d31
図4.16
で あ る 。 し た が っ て,こ
作 用 容量 と相 互容 量 お よび対 地容 量
れ ら の 幾 何 学 平 均dmは,
に な る 。 導 体 半 径 は 前 出 の 表3.2か
1条 の 作 用 容 量Cwは(3.39)式
ら22.4/2=11.2mmで
あ る 。 し た が っ て,導
体
か ら,
を得 る 。
4.4.7
作 用 イ ン ダ ク タ ン ス と作 用 容 量
多 導 体 の 作 用 イ ン ダ ク タ ン スLwの
値 は,内
を等 価線 間距離,aeを
導体 の等 価半 径 として,
を も っ て与 え られ,作
用 容 量 は,
部 イ ン ダ ク タ ン ス を 無 視 す れ ば,de
で 表 され る。 した が っ て,両
と な り,真
一 方
,わ
者 の積 を作 っ て み る と,
空 中 の 光 の 速 さ をC0と
が 国 の66∼154kVの
し て εoμo=1/c02=1.1×10-17s2/m2で
CWは0.008∼0.01μF/kmで
あ る。
送 電 線 で は 既 述 の 通 り, Lwは1.1∼1.3mH/km, あ る か ら,平 均 値 を 取 っ て計 算 す れ ば,
と な り,ほ
ぼ理 論 通 りの 結 果 を示 す こ とが わ か る 。
4.4.8
ケ ー ブル の 静 電 容 量
絶 縁 の 見 地 か ら見 た ケ ー ブ ル の 最 大 の 特 徴 は絶 縁 の 厚 み が 極 め て 小 さ い こ とで,図 4.17の
絶 縁 物 の 厚 さdは154kVの
ブ ル の 絶 縁 物 の 比 誘 電 率 はCVケ
場 合 で も僅 か23mm程 ー ブ ル の 場 合2.3,OFケ
度 で あ る。 しか も,ケ ー ー ブ ル で 約2.7で
あ る。
この た め ケ ー ブ ル の静 電 容 量 は架 空 送 電 線 に比 し て 極 め て 大 きな 値 を示 す 。 ケ ー ブ ル の単 位 長 さ 当 た り の静 電 容 量 は 図4.17を
参 照 し て 次 式 で 与 え られ る 。
(4.41)
こ こ に,εsは 絶 縁 物 の比 誘 電 率,rは (4.41)式 に よ り,66kVのCVケ
導 体 半 径,dは
絶 縁 物 の 厚 さで あ る。
ー ブ ル に つ い て εs=2.3,r=24mm,d=13mm
と し て 計 算 す れ ば,C=0.30μF/kmの
値 を 得 る。 す な わ ち,架
空線 の作 用容 量 の
30倍 以 上 の 値 に な る。 作 用 容 量 の 値 は ケ ー ブ ル の 電 圧 が 低 い ほ ど大 き くな る。
ケー ブル の場合 には,導 体 半径rに 対 す る導体 半径 と絶 縁 物 の厚 さdの 和(r+d)
図4.17
単 心CVケ
ー ブル
(a)
(b) 図4.18
の 比 す な わ ち(r+d)/rは1に
3心 ケ ー ブ ル
近 い た め,こ
の 値 次 第 で 静 電 容 量 の 値 は 大 き く変 化
し,架 空 線 の 場 合 の よ う に 作 用 容 量 の 値 が 狭 い 範 囲 内 に 収 ま る現 象 は み られ な い 。 ケ ー ブ ル は 図4 .18に み ら れ る よ う に3心
の もの で あ っ て も,互 い に 接 地 され た 金 属 シ
ー ス に よ っ て 遮 蔽 さ れ て い る た め,相 互 容 量Cmは
零 で,対
地 容 量Csが
作 用 容 量Cw
に な っ て い る。 ケ ー ブ ル の 作 用 容 量 が 架 空 線 に 比 して 著 し く大 き い の に反 し て,作
用
イ ン ダ ク タ ン ス は一 般 に か な り小 さ い 。
問題 (1)
高 圧 配 電 線 の3条
が 水 平 な腕 木 の 上 に700mmの
等 間 隔 で 配 線 さ れ て い る。3
条 の幾何 学平 均距離 を求 め よ。 (2)
等 価 線 間 距 離 が5.5m,公
称 断 面 積 が410mm2のACSRの154kV送
イ ン ダ ク タ ン ス を前 出 の 表4.2を 送 電 線 の80℃ の20℃ (3)
用 い て 計 算 せ よ。 ま た,60Hzに
に お け る リ ア ク タ ン ス と抵 抗 の 比X/Rを
に 対 す る抵 抗 温 度 係 数 は0.40%/℃
表4.2を
用 い て,公
電線 の 対 す る この
求 めよ。 ただ しアル ミ
とす る 。
称 断 面 積610mm2ACSRの
単 導 体,複
電線 の正相 イ ンダク タンス値 を等価 線 間距離9m,素
導 体 の220kV送
導体 間 隔40cmに
対 して
計 算 せ よ。 (4)
問 題(3)の
各 送 電 線 の50Hzに
を 求 め よ 。 電 線 温 度 は80℃ (5)
問 題(3)の
(6)
公 称 断 面 積240mm2のACSRを
の リ ア ク タ ン ス と抵 抗 の 比,X/R
とせ よ。
公 称 断 面 積610mm2のACSRつ
の と きの1条 (7)
対 す る1条
い て 作 用 容 量 を計 算 せ よ。
使 用 し た154kV送
電 線 の 平 均 値 上 高 が35m
の 大 地 帰 路 イ ン ダ ク タ ン ス の 理 論 最 小 値 を求 め よ 。
あ る275kVのOFケ
ー ブ ル の 導 体 半 径 が20㎜,絶
絶 縁 物 の 比 誘 電 率 を2.7と
縁 厚 み が20mmで
し て 単 位 長 あ た りの 静 電 容 量 を 求 め よ。
あ る。
(8)問
題(7)の
単 心 ケ ー ブ ル が 線 間 距 離72mmを
に配 置 さ れ た3心
も っ て 図4.18の
よ うに正三 角 形
ケ ー ブ ル の 作 用 イ ン ダ ク タ ン ス を求 め よ 。
【 解 答 は巻 末】
第5章 潮流計算
電力 系統 内各部 の電圧 や,送 電線,変 圧器 を流 れ る電 力 を知 る こ とは,電 力 系統 の 計 画,運 用,制 御 の各 点 か ら非常 に重 要 で あ る。 この電 力 の流 れ の こ とを潮 流 とよ び,こ の分布 の計 算手 法が潮 流 計算 で あ る。 こ こで は,潮 流 計 算 の 基 礎 とな る ノ ー ドア ド ミタ ン ス行 列 を も と に,電 導 出 す る。 電 力 方 程 式 は 非 線 形 連 立 方 程 式 と な る の で,そ
力 方程式 を
の 解 法 に つ い て も説 明 す
る 。 この よ う に して 得 られ た 潮 流 計 算 手 法 は厳 密 な も の で あ る一 方,計
算 機 を使 用 し
な い と計 算 す る こ とが で き な い 。 簡 易 的 に潮 流 分 布 を計 算 す る手 法 で あ る直 流 法 潮 流 計 算 に つ い て も,合 わ せ て 説 明 す る 。
5.1
潮流 計算 と交 流回路 計算
電 力系 統 は交流 回路 で あるの で,基 本 的 には交 流回路計 算 と同 じで あ る。 回 路 計 算 の 目的 は,電
圧 源,電
流 源 が 与 え られ,回
路 内 の ノ ー ドの 電 圧,ブ
ランチ
を 流 れ る 電 流 を計 算 す る こ とで あ る。 一 方,電 わ ち,発
力 系 統 を 考 え る と,発 電 機 か ら電 力 が 供 給 さ れ,負
荷 で消費 され る。 すな
電 機 が 接 続 さ れ て い る ノ ー ド(発 電 機 ノ ー ド)か ら電 力 系 統 に 注 入 さ れ る有
効 電 力(す
な わ ち,発 電 電 力)が
与 え ら れ,一
荷 ノー ド)か ら取 り出 さ れ る 有 効 電 力(す
方,負
荷 が 接 続 さ れ て い る ノ ー ド(負
な わ ち,負 荷 電 力)が
与 え られ て い る と考
え られ る 。 し か も,発 電 機 は 自動 電 圧 調 整 装 置(AVR:Automatic tor)で
端 子 電 圧 が 一 定 に な る よ う に 制 御 さ れ て い る の で,発
Voltage
電 機 ノ ー ドの 電 圧 も与
え られ て い る と考 え る こ とが で き る。 負 荷 に つ い て は力 率 を想 定 す れ ば,無 決 ま る の で,有
Regula
効電 力 が
効 電 力 と一 緒 に無 効 電 力 も与 え ら れ て い る と考 え ら れ る。 こ の よ う
に,発 電 機 ノ ー ドに つ い て は,有 負 荷 ノ ー ドに つ い て は,有
効 電 力 と電 圧 が 指 定 さ れ る の で,PV指
効 電 力 と無 効 電 力 が 指 定 さ れ る の でPQ指
定 ノー ド, 定 ノー ドと よ
ぶ。 と こ ろ で,発
電 機 ノ ー ド,負 荷 ノ ー ドの 有 効 電 力 が 指 定 さ れ て も,系 統 で 生 じ る送
表5.1
電 損 失 は 未 知 で あ る た め,発 発 電 機 ノ ー ド を考 え る)の
ノ ー ドの 種 類
電 機 ノ ー ド(負 荷 ノ ー ドで もか まわ な い が,一
般 的 には
少 な く と もひ とつ の 有 効 電 力 の 値 を 指 定 す る こ と は で き な
い 。 こ の ノ ー ドの こ と を ス ラ ッ ク ノ ー ド,あ る い は,し
わ と り ノ ー ド と よ ぶ 。 また,
各 ノ ー ドの 電 圧 を計 算 す る に あ た っ て は,位 相 の 基 準 を決 め る必 要 が あ る。 位 相 の 基 準 とな る ノ ー ドを 基 準 ノ ー ド とよ ぶ 。 基 準 ノ ー ド と ス ラ ッ ク ノ ー ドは別 々 に 選 ぶ こ と もで き る が,一
般 的 に は 同 じ ノ ー ドを選 び,ス
と して 発 電 機 ノ ー ドが 選 ば れ た 場 合 は,こ (基準 ノー ドで あ る の で0)の こ の ほ か,ブ
ラ ック ノー ドとよぶ。 ス ラ ックノー ド
の ノ ー ドの 電 圧 の 大 き さ,お
よ び,位
相
み が 指 定 され る こ と に な る。
ラ ンチ の 接 合 点 と し て の ノ ー ド も存 在 す る 。 この よ う な ノ ー ドは浮 遊
ノー ド とよ ば れ る が,扱
い と し て は 有 効 電 力,無
効 電 力 と も に0の
負 荷 ノ ー ド と考 え
れ ばよい。 以 上,電
力 系 統 の ノ ー ドは 表5.1の
こ の よ う に,同
よ う に ま とめ られ る 。
じ交 流 回 路 の 計 算 で あ って も,条 件 の 与 え 方 が 異 な る た め,交 流 回
路 計 算 と潮 流 計 算 で 異 な った 手 法 が 必 要 と な る の で あ る 。
5.2
ノー ドア ドミ タンス行列
図5.1に ど)か
示 す3つ
の 母 線(ノ
ー ド)と3つ
の 線 路(ブ
ラ ン チ :変 圧 器,送
ら な る簡 単 な 電 力 系 統 を 考 え よ う 。 ノ ー ド1,2,3の
ぞ れ の ノ ー ドか ら電 力 系 統 に 流 れ 込 む 電 流 をI1,I2,I3と
電線 な
電 圧 をV1,V2,V3,そ
す る(流
れ
れ 込 む 方 向 を正 と
す る)。 ノ ー ド1に 注 目 す る と,ノ ー ド1に 流 れ 込 む 電 流I1は 総 和 に 等 し い か ら,
電 力 系 統 に流 れ 出す 電 流 の
図5.1
3ノ ー ド3ブ
ラ ン チ 系 統(1)
(5.1) こ こ に,
同 様 に,I2,I3に
つ い て も,(5.2)式,(5.3)式
の 関 係 式 が 得 られ る 。
(5.2) (5.3) こ こ に,
一 般 に
,Nノ
ー ドか ら な る電 力 系 統 の,各
系 統 に流 れ 込 む 電 流 をIiと
す れ ば,(5.4)式
ノ ー ドの 電 圧 をVi, の 関 係 が 得 られ る。
各 ノ ー ドか ら電 力
(5.4)
(5.4)式
は
(5.5)
あ る い はマ ト リク ス を 用 い て,
(5.6) と 表 す こ と が で き る 。 こ こ に,
(5.7)
で あ る 。(5.7)式
のYを
ノ ー ド ア ド ミ タ ン ス 行 列(Node
Admittance
Matrix)と
よ
ぶ。
Yの 対 角 要 素Yiiは ン ス :Driving (Mutual
Point
Admittanceあ
る。 図5.1に
自 己 ア ド ミ タ ン ス(Self Admittance)と
Admittanceあ
よ ば れ,非
る い は駆 動 点 ア ド ミタ
対 角 要 素Yijは
る い は伝 達 ア ド ミ タ ン ス :Transfer
示 す 簡 単 な例 か ら も わ か る よ う に,自
相 互 ア ド ミタ ン ス
Admitance)と
己 ア ド ミ タ ン スYiiは
よば れ ノ ー ドiに
つ な が る線 路 の ア ド ミタ ン ス お よ び 対 地 ア ド ミタ ン ス の 総 和 とな る 。 一 方,相 ミタ ン スYijは,ノ
ー ドiとjの間
に つ な が る線 路 の ア ド ミタ ンス に負 符 号 を つ け た
も の で あ る。 この こ と か ら明 らか な よ う に,Yij=Yjiが タ ン ス 行 列 は対 称 行 列 とな る 。
互 ア ド
成 立 す る の で,ノ
ー ドア ド ミ
【 例 題5.1】
図5.2の
系 統 の ノ ー ドア ド ミタ ン ス 行 列 を 求 め よ。 線 路 の 数 字 は イ ン ピ
ー ダ ンス ,対 地 容 量 は ア ド ミタ ン ス を表 す 。
図5.2
3ノ ー ド3ブ
ラ ン チ 系 統(2)
[解] ノ ー ド1に 着 目 し,自 己 ア ド ミ タ ン スY11を
相 互 ア ド ミタ ン スY12,Y13は
計 算 す る と,
それ ぞれの線 路 の イ ンピー ダ ンスの逆数 に負符 号 をつ
けた もの で あ るか ら,
とな る。 他 の ノ ー ド に つ い て も,同 様 に し て 計 算 す れ ば,次
【 例 題5.2】
図5.2の
系 統 に,新
の よ うに な る。
た に ブ ラ ンチ と ノ ー ドが 図5.3の
よ うに追加 され た
と き,こ の 系 統 の ノ ー ドア ド ミタ ン ス 行 列 を求 め よ。 [解] ノ ー ド1に 着 目 す る と,ノ ー ド1と 追 加 さ れ た ノ ー ド4の 間 に は ブ ラ ン チ が な い の で,例
題5.1の
自 己 ア ド ミタ ン スY11の
値 は 変 ら ず,相
互 ア ド ミタ ン スY14は
図5.3
0と
ノ ー ド,ブ
な る 。 相 互 ア ド ミ タ ン スY12,Y13の
ド2と ら ず,相
ノ ー ド4の
ラ ン チの追 加
値 は 変 ら な い 。 ノ ー ド2に
間 に は ブ ラ ン チ が な い の で,自
互 ア ド ミ タ ン スY24は0と
関 し て も,ノ
己 ア ド ミ タ ン スY22の
な る 。 相 互 ア ド ミ タ ン スY21,Y23の
ー
値 は変
値 は変 らな
い。
一 方,ノ タ ン スY33の
ー ド3に 着 目 す る と,新 値 は例 題5.1の
た に ブ ラ ン チ が 追 加 さ れ て い る の で,自
値 か ら変 化 し,ま た,相
加 さ れ る。 相 互 ア ド ミ タ ン スY31,Y32の
【 例 題5.3】
己 ア ドミ 新 た に追
値 は 変 ら な い。
ノ ー ド4に 着 目 す る と,自 己 ア ド ミ タ ン スY44は
す な わ ち,ノ
互 ア ド ミタ ン スY34が
次 の よ う に な る。
ー ドア ド ミ タ ン ス行 列 は そ の 対 称 性 を考 慮 し て 次 の よ う に な る 。
図5.3の
系 統 に お い て,ノ
ー ド2と ノ ー ド3の 間 の 送 電 線 が1回
線増設
され た 。 この と き,ノ
ー ドア ド ミ タ ン ス行 列 で 値 が 変 る要 素 は どれ か 。
[解] ノ ー ド2と ノ ー ド3の 間 に 送 電 線 が 増 設 さ れ た とい う こ と は,ノ
ー ド2と
ノー
ド3を 結 ぶ ブ ラ ン チ の イ ン ピー ダ ン ス が 変 化 す る こ とで あ る 。 よ っ て,ノ
ー ド2お
よび ノ ー ド3の 自 己 ア ド ミタ ン ス,お
よ び,ノ
ー ド2と3の
間
の 相 互 ア ド ミタ ン ス の 値 が 変 る こ とに な る。 す な わ ち,Y22,Y23,Y32,Y33の
この よ う に,ノ
値 が 変
る こ と に な る 。
ー ドア ド ミ タ ン ス 行 列 は電 力 系 統 が 与 え ら れ れ ば,直
接 求める こ
とが で き,系 統 構 成 の 変 更 に 対 して は,一 部 の 要 素 を修 正 す るだ けで こ とが 足 り る。 ま た,系 統 の規 模 が 大 き くな り,ノ ー ド数 が 増 え る とノ ー ド間 を 結 ぶ 線 路 の 数 は相 対 的 に 少 な くな る の で,要
素 が0と
な る割 合 が 大 き く な る 。 この よ う に,多
0と な る よ う な 行 列 は疎 行 列(Sparse
Matrix)と
の方 法 が 種 々 提 案 さ れ て い る。 な お,ノ ピー ダ ン ス 行 列(Node
Impedance
くの 要 素 が
算 機 で の効 率 的 な処 理
ー ドア ド ミ タ ンス 行 列 の 逆 行 列 は ノ ー ドイ ン
Matrix)と
る こ とが 困 難 で あ る こ と(実 際 に は,ノ と で 求 め る の が 一 般 的),ノ
よ ば れ,計
よ ば れ る が,電
力 系 統 か ら直 接 求 め
ー ドア ド ミ タ ンス 行 列 の 逆 行 列 を 計 算 す る こ
ー ドア ド ミタ ン ス行 列 と異 な り,す べ て の 要 素 が 非 零 と
な り計 算 機 で の 扱 い が 面 倒 で あ る な ど の 理 由 で,潮
流計 算 に はほ とん ど用 い られ な
い。
5.3
潮流方程 式
各 ノー ドか ら電力 系統 に流れ込 む有 効電 力,無 効 電力 は (5.8) で与 え ら れ る。 各 ノ ー ドか ら電 力 系 統 に 流 れ 込 む電 流 は,ノ 用 い て,(5.5)式
の よ う に表 現 さ れ る の で,(5.8)式
ー ドア ド ミタ ン ス 行 列 を
に 代 入 す る と,(5.9)式
が 得 られ
る。
(5.9) こ の 式 を,電
力 方 程 式(Power
と こ ろ で,表5.1に ー ド ,負
Equation)と
示 し た よ う に,ノ
荷 ノ ー ドで 異 な る。
よぶ 。
ー ドの 指 定 条 件 は ス ラ ッ ク ノ ー ド,発 電 機 ノ
ノ ー ドlが 負 荷 ノ ー ド(PQ指 Pls,Qlsと
定 ノ ー ド)と
し,有
効 電 力,無
効 電 力 の指 定 値 を
す る と,
(5.10) の関係 が満 足 され な けれ ばな らない。 ノー ドgが 発 電 機 ノ ー ド(PV指 値 をPgs,Vgsと
定 ノ ー ド)と
し,有 効 電 力,電
圧 の 大 き さ の指 定
す れ ば,
(5.11) (5.12) の関係 が満足 され な けれ ばな らな い。 (5.10),(5.11),(5.12)の
さ,位 相)が
左 辺 は 既 知 量 で,右
辺 のVmな
ど の ノ ー ド 電 圧(大
未 知 量 と な る。 潮 流 計 算 と は(5.10)∼(5.12)の
き
条件 の下 で電 力方 程式 を
解 く こ と に他 な ら な い の で あ る 。 も う少 し具 体 的 に見 て み よ う。 ノ ー ド電 圧 を直 角 座 標 表 示 して,
(5.13) と お く 。 ノ ー ド 電 圧 が 未 知 量 で あ る の で,e1,f1,e2,f2,…eN,fNが (5.9)式
未 知 量 と な る。
は,
(5.14) と 表 さ れ る か ら,ノ …eN
,fNの
ー ドkに
流 れ 込 む 有 効 電 力Pk,Qkは
次 の よ う に,e1,f1,e2,f2,
関 数 と な る。
(5.15)
ま た,ノ
ー ド電 圧 の 大 き さ は
(5.16) と な り,や
は りek,fkの
関 数 と な る 。 電 圧 の 大 き さ の 指 定 に つ い て は,5.5に
お け る
ヤ コ ビア ン 行 列 の 要 素 を簡 略 化 す る た め に,│Vk│で
は な く│Vk│2を 用 い る の が 一 般 的
であ る。 す な わ ち,(5.10)∼(5.12)の
関 係 式 は 次 の よ う なe1,f1,e2,f2,…eN,fNに
関 す る二
次 方 程 式 とな る 。 p- Q指 定 ノ ー ド (5.17)
P-V指
定 ノ ー ド
(5.18)
(5.19) ま た,ノ が,本
ー ド1(ス
ラ ッ ク ノ ー ドに は ノ ー ド番 号1を
質 的 な こ と で は な い)が
あ て る こ とが 一 般 的 で あ る
ス ラ ッ ク ノ ー ド と し,電 圧 の 大 き さの 指 定 値 をV1sと
す れ ば,
(5.20)
の 関 係 が 成 り立 つ 。 これ らの 式 を よ く見 る と,以 下 の こ とが わ か る。 Nノ
ー ドの 系 統 に お い て,直
角 座 標 表 現 さ れ た ノ ー ド電 圧 に 関 す るe1,f1,e2,f2,
…eN ,fNが 未 知 量 とな るの で,2Nの PQ指
定 ノ ー ド,PV指
ー ドで あ れ ,ひ
未 知 変 数 が 存 在 す る。 一 方,す
べ て の ノ ー ドは
定 ノ ー ドあ る い は ス ラ ッ ク ノ ー ドで あ る 。 い ず れ の 種 類 の ノ
とつ の ノ ー ドに 対 し て2つ
の 方 程 式 が 得 ら れ る 。 す な わ ち,2N本
方 程 式 が 立 て ら れ る こ とに な る 。 指 定 条 件 を満 足 す る解 を求 め る,す 程 式 を 解 く とい う こ と は2N変
の
な わ ち,潮 流 方
数 の連 立 非線形 方程 式 を解 く とい うこ とに他 な らな
い。
【 例 題5.4】
例 題5.1の
系 統 に お い て,ノ
指 定 ノ ー ド,ノ ー ド3がPQ指
ー ド1が ス ラ ッ ク ノ ー ド,ノ ー ド2がPV
定 ノ ー ド とす る。 各 ノ ー ドに お い て 満 足 す べ き 電 力
方 程 式 を ノ ー ドア ド ミ タ ン ス 行 列 の 要 素 を 用 い て 示 せ 。 [解] ノ ー ドkの 有 効 電 力,電
電 圧 をek+jfkと
圧 指 定 値 をP2s,V2s,ノ
表 し,ノ ー ド1の 電 圧 指 定 値 をV1s,ノ ー ド3の 有 効 電 力,無
とす る 。 ノ ー ド2に 対 し て は,(5.11)式
よ り,
ー ド2の
効 電 力 の 指 定 値 をP3s,Q3s
(5.12)式
よ り,
ノ ー ド3に
対 し て は,(5.9)式
ノ ー ド1は
ス ラ ッ ク ノ ー ド で あ る の で,e1=V1s,f1=0と
5.4
よ り,
な る。
Newton‐Raphson法
非 線 型 方 程 式 の 代 表 的 な 数 値 解 法 にNewton‐Raphson法
が あ る。 こ れ は,近 似 解
を順 次 修 正 して 精 度 の よ い解 を求 め る繰 り返 し解 法 で あ る。 い ま,f(x)=0の
解 α に対 す る近 似 解 をx(i),そ
の 誤 差 を ε(i)とす れ ば,
(5.21) と な る 。 し た が っ て,f(x)をx(i)の
ま わ り で テ イ ラ ー 展 開 す る と,(5
.22)式
が 得 ら
れ る。
(5.22) ε(i)が小 で あ る とす れ ば,ε(i)2以 下 の 項 を無 視 す る こ とが で き て,
(5.23) とな る 。 よ り良 い 近 似 解 を 得 る 修 正 式 と し て
(5.24) が 得 ら れ る。 こ こ で,右 す な わ ち,適
当 な初 期 解x(0)か
適 当 な 収 束 条 件(例 く な る,あ
肩 の 添 え 字(i)はi回
目 の繰 り返 しを 意 味 す る 。
ら出 発 し て,(5.24)を
用 い て 繰 り返 し計 算 を行 い,
え ば,誤 差 ε(i)の絶 対 値 が あ ら か じ め 定 め た 小 さ な 正 数 よ り小 さ
る い はf(x(i))の 絶 対 値 が あ らか じ め 定 め た 小 さ な 正 数 よ り小 さ くな る)
を 満 た した と こ ろ で,x(i)を
解 とみ な し て,繰
り返 しを 打 ち切 る のがNewton‐Raph
son法 で あ る。 こ の 方 法 を グ ラ フ を 用 い て 説 明 し よ う 。 図5.4に f(x)の
接 線 がx軸
と交 わ る 点 をx(i+1)と
し て,次
示 す よ う に,近
似 解x(i)で
の
々 に よ り良 い 近 似 解 を 求 め て い く
と い う こ とで あ る。 た だ,初 期 解 の 設 定 い か ん で は 発 散 す る な ど の 問 題 が 生 じ る こ と もある。 次 に,連
立 方 程 式 の 解 法 を考 え て み よ う。s個 の 変 数x1,x2,…
図5.4
グ ラ フ に よ るNewton‐Raphson法
の 説明
,xsに 関 す るs個
の
方 程 式 が,
(5.25)
と与 え ら れ て い る と き,1変
数 の 場 合 と 同様,i回
目の 繰 り返 し で の 近 似 解x1(i),x2(i),
…xs(i)に 対 す る そ れ ぞ れ の 誤 差 ε1(i) ,ε2(i),…εs(i)は(5.26)式 の 連 立 一 次 方 程 式 を 解 い て 求 め ら れ る 。 た だ し,右 辺 行 列 の 値 はx1(i),x2(i),…xs(i)に お け る値 で あ る。 こ の 右 辺 の 行 列 を ヤ コ ビ ア ン行 列(Jacobian
Matrix)と
よぶ 。
(5.26)
(5.26)か ら,ヤ
コ ビ ア ン 行 列 をJと
表 せ ば,各 近 似 解 の 誤 差 は(5.27)式
の よう に
表 さ れ る。
(5.27)
よ っ て,よ
り良 い 近 似 解 を得 る式 と し て
(5.28)
が 得 ら れ る。 こ れ を 修 正 方 程 式 と よぶ 。1変 数 の と き と同 様 に,適 x2(0), …xs(0)か ら 出 発 し て
,(5.28)式
当 な 初 期解x1(0),
を 用 い て 繰 り返 し計 算 を 行 い,適
当 な収 束 条件
を満 た し た と こ ろ で,x1(i),x2(i),…xs(i)を る。 収 束 条 件 と し て は,種
解 とみ な し て,繰
々 考 え ら れ るが,例
え ば,あ
り返 し を 打 ち 切 る の で あ
らか じ め 定 め た 小 さ な 正 数 ε
に対 して
(5.29) を満 足 し た と き に 打 ち 切 れ ば よ い 。
5.5
潮流 計算へ のNewton‐Raphson法
こ こで は,潮 流 計 算 に い か に してNewton‐Raphson法
の 適用 を適 用す るか に つ いて考 え
て み よ う。 簡 単 化 の た め に,図3.1の PV指
系 統 を 考 え,ノ
定 ノ ー ド,ノ ー ド3がPQ指
け れ ば な ら な い 条 件 は,ス
ー ド1が ス ラ ッ ク ノ ー ド,ノ ー ド2が
定 ノ ー ド とす る 。 この と き,各
ラ ッ ク ノ ー ド を 除 い て,例
る。 ス ラ ッ ク ノ ー ド1の 電 圧 は 決 ま っ て い る の で,未
題5.4の
ノ ー ドで 満 足 しな
よ う に4つ
の 式 とな
知 変 数 はe2,f2,e3,f3の4つ に
な る 。4つ の 変 数 の 近 似 解 をe2(i),f2(i),e3(i),f3(i)(右 肩 の(i)は 繰 り返 し 回 数 を示 す) と し,そ の とき の4つ す れ ば,4つ
の 条 件 の 指 定 値 か らの 誤 差 を そ れ ぞ れΔP2,Δ│V2│2,ΔP3,ΔQ3と
の変 数 の 修 正 方 程 式 は ヤ コ ビ ア ン行 列 を用 い て,(5.30)式
の よ うに表 さ
れ る。
(5.30)
こ れ を,収 束 条 件 が 満 足 さ れ る ま で 繰 り返 せ ば,指 圧 を求 め る こ とが で き る 。 な お,こ
定 条 件 を 満 足 す る 各 ノ ー ドの 電
の よ う な 繰 り返 し計 算 で は初 期 解 の 設 定 が 重 要 で
あ る こ と を説 明 した が,潮
流 計 算 で は初 期 解 と し て,ス
ノ ー ド に対 し て,ek(0)+jfk(0)=1+j0と
ラ ッ ク ノ ー ドを 除 くす べ て の
す れ ば よ い 。 こ れ は フ ラ ッ トス タ ー ト と よ ば
れ る。 (5.30)式 で も用 い ら れ て い る ヤ コ ビ ア ン行 列 の 要 素 を計 算 す る式 は次 の よ う に 導 出 され る。 い ま,ノ
ー ドア ド ミ タ ン ス 行 列 の 要 素Ykmを
(5.31) と お け ば,各
ノ ー ドか ら系 統 に注 入 さ れ る電 流Ikは
(5.32)
あ る い は,
(5.33) こ こに,
(5.34) (5.35) で 与 え られ る 。
有効 電 力Pkと 無効 電 力Qkは
(5.36)
で あ る か ら,(5.36)式
に(5.34),(5.35)式
を代入 して
(5.37) (5.38) が 得 ら れ る 。 ま た,│Vk│2は(5.16)式
で 与 え られ る。 以 上 の 式 か ら,ヤ
の 要 素 を計 算 す る と以 下 の よ う に な る。
コ ビ ア ン行 列
k≠mの
時
(5.39)
k=mの
時
(5.40)
5.6
直 流 法 潮 流 計 算
これ ま で 説 明 し て き た 方 法 は 厳 密 な 電 圧 分 布,潮
流 分 布 が 求 め られ る 反 面,計
を使 わ な け れ ば 計 算 す る こ とは 不 可 能 で あ る 。 一 方,精 分 布,電
算機
度 が 多 少 落 ち て も概 略 の 潮 流
圧 位 相 角 の 分 布 を 知 りた い と い っ た 場 合 に 使 わ れ る の が 直 流 法 潮 流 計 算 で あ
る。 図5.5に
示 す 送 電 線 を考 え る 。 簡 単 化 の た め,送
タ ン ス は 省 略 す る 。 送 電 端 電 圧 をVS=VS)受 の イ ン ピ ー ダ ン ス をZ=jXと
電 線 の 抵 抗,お
す る。
この と き,受 電 端 電 力PT+7Qrは
よ び,対
電 端 電 圧 をVr=Vre-jδ
次 の よ う に表 さ れ る。
図5.5 送電 線 モ デ ル
地 ア ドミ
と し,送 電 線
(5.41) す な わ ち,有 効 電 力Prは
(5.42) となる。 通 常,電
力 系 統 に お い て は,系 統 内 各 部 の 電 圧 は1puの
近 傍 に あ る。 ま た,送
線 両 端 の 位 相 差 δ は 小 さ い の が 普 通 で あ る 。 す な わ ち,Vs≒Vr≒1,sinδ せ る の で,(5.42)式
は(5.43)式
電
≒ δ とみ な
の よ う に な る。
(5.43)
こ の 式 を よ く見 る と,図5.6に
示 す よ う に,直 流 回路 に お け る オ ー ム の 法 則 と同 じ
類 似 性 が あ る こ とが わ か る 。 す な わ ち,直
流 回路 計 算 と同 様 の 手 法 で 系 統 内 各 部 の 位
相,潮
流 を 求 め る こ とが で き る。 この よ う な 近 似 化 さ れ た 手 法 を 直 流 法 潮 流 計 算 と よ
び,一
方,前
節 ま で説 明 した 厳 密 な 潮 流 計 算 を交 流 法 潮 流 計 算 と よ ぶ 。
直流 法潮 流計算 では以 下の 点 に注意 す る必 要が ある。 (1) 送 電 線 の 抵 抗 を 無 視 して い る の で,系 統 内 で送 電 損 失 は 発 生 しな い 。 この た め,発
電 と負 荷 は一 致 す る の で, ひ とつ の ノ ー ドの 発 電 量(負
荷 量)は
自動 的 に 決 定
され る 。
(2) 送 電線 の抵抗 を無視 で きな い ような系統,一 般 的 に は電 圧 が低 い系 統 で は誤 差 が 大 き くな る傾 向 が あ る 。
図5.6
直 流 回路 との対 応
(3)
ノ ー ドの位 相 を 決 定 す る に あ た り,基 準 と な る位 相 を決 め る 必 要 が あ る 。 こ
れ は,直
流 回路 計 算 に お い て,基
【 例 題5.5】
図5.2の
計 算 せ よ。 こ こで,ノ
準 電 位 を決 め る こ とに 相 当 す る 。
系 統 に お い て,各 ー ド1か
送 電 線 を 流 れ る潮 流 を 直 流 法 潮 流 計 算 に よ り
ら1.0pu,ノ
ー ド2か
ら0.8puの
電力 が 供 給 され て
いる。 [解] 直 流 法 潮 流 計 算 を行 う う え で,図5.2の
抵 抗,対
5.7の 直 流 回 路 を考 え る 。 ノ ー ド1の 電 圧(位
相 に相 当)を0と
ド3の 電 圧 をV2,V3と
地 ア ド ミタ ン ス を省 略 し た 図
す る。 各 ブ ラ ン チ を 流 れ る 電 流(潮
し,ノ
流 に 相 当)を
ー ド2,ノ
ー
図5.7の
向
きで 定 義 す る。 こ の と き,電 圧 を 未 知 変 数 と し て,ノ
ー ド1,2で
キ ル ヒホ ッフの法 則 を満 足 す る
ように式 を立 て る と
ノ ー ド1:1.0=
ノ ー ド2:0.8=
こ れ を 解 く と,V2=0.104,V3=-0.565と よ っ て,各
なる。
ブ ラ ン チ を流 れ る 電 流 は
図5.7
直 流法 潮 流 計算
とな る。 す な わ ち,ノ
ー ド2か
向 か っ て1.13pu,ノ
この 例 題 で は,次
ら ノ ー ド1に
ー ド2か
向 か っ て0.130pu,ノ
ら ノ ー ド3に
ー ド1か
向 か っ て0.669puの
ら ノ ー ド3に
潮 流 が 流 れ る。
の こ と に注 意 す る 必 要 が あ る。
この 系 統 で は,送 電 損 失 が な い た め,ノ
ー ド3の 負 荷 は1.0+0.8=1.8と
記 で は ノ ー ド3に 対 して 式 を立 て て い な い が,も
と な る。 これ は,結 局,ノ
ー ド1,ノ
立 な 式 で は な い 。 未 知 変 数 が2つ
こ の よ う に し て,直
し式 を立 て る とす る と
ー ド2で の2つ
で あ る の で,式
の 式 を 足 し合 わ せ た も の で,独
は2本
で よ い こ と に な る。
流 法 潮 流 計 算 で は,連 立 線 型 方 程 式 と して,各
各 ブ ラ ン チ を 流 れ る潮 流 を簡 単 に 計 算 す る こ とが で き る。
題 問 図5.8
なる。上
4ノ ー ド系 統
ノ ー ドの 位 相,
(1)①
図5.8に ②
示 す4ノ
ー ド系 統 の ノ ー ドア ド ミタ ン ス 行 列 を 求 め よ。
ノ ー ド2は 浮 遊 ノ ー ドで あ る。 浮 遊 ノ ー ドの 条 件 で あ る ノ ー ド2の 注 入 電
流I2=0を
用 い て,①
の ノ ー ドア ド ミタ ン ス 行 列 か ら ノ ー ド2を 消 去 せ よ 。
注 :① の ノ ー ド ア ド ミタ ン ス 行 列 をY1,② す れ ば,以
(2)図5.8に
示 す4ノ
ー ド系 統 の ノ ー ド1に は 発 電 機 が,ノ
つ な が れ て い る。 発 電 機 の 出 力 を1 .0pu,ノ き,各
の ノ ー ドア ド ミタ ン ス 行 列 をY2と
下 の 関 係 式 が 成 り立 つ 。
ー ド3と4に
ー ド4の 負 荷 を0.7puと
は負 荷 が した と
ブ ラ ン チ を 流 れ る 有 効 電 力 を 直 流 法 潮 流 計 算 に よ り求 め よ 。 な お,図
5.8に は 直 流 法 潮 流 計 算 で 考 慮 し な い デ ー タ も含 ま れ て い る の で,そ
れ らにつ
い て は無 視 す る こ と。
【解答 は巻 末】
第6章 同期発電機
電 力 系 統 に お い て,電 erator)で
力 の 発 生 は三 相 同 期 発 電 機(three‐phase
synchronous
gen
行 わ れ るの で,三 相 同 期 発 電 機 は 電 力 系 統 に お け る 最 も重 要 な 要 素 の 一 つ
で あ る。 電 力 系 統 の 運 用 や 制 御 は発 電 機 の 特 性 と密 接 に 関 連 して お り,発 電 機 の 特 性 を よ く理 解 し て お く こ とが 重 要 で あ る。 こ こで は,系 特 性 を 述 べ,電
6.1
気 回路 に適 用 で き る モ デ ル に つ い て 検 討 す る こ と に す る。
同期機 の基本構 造
図6.1に ator)の
統 の解 析 に 必 要 な 同期 発 電 機 の
蒸 気 タ ー ビ ン に よ っ て 駆 動 さ れ る2極
の タ ー ビ ン 発 電 機(turbogener
基 本 的 な構 造 を示 す 。 タ ー ビ ン発 電 機 は極 数 が2な
り,回 転 子(rotor)が に 耐 え る た め,直 な わ ち,回 winding)が
い し4の
同期発 電機 で あ
高 速 で 回 転 す る タ ー ビ ン に直 結 さ れ る。 回 転 子 は,高
速 回転
径 を 小 さ く し,回 転 軸 方 向 の 長 さ を長 く し,円 筒 状 に 作 られ る。 す
転 子 は 非 突 極 で あ る。 図6.1に
示 す よ う に 回 転 子 に は 界 磁 巻 線(field
巻 か れ る。 界 磁 巻 線 に直 流 電 流 を流 す こ と に よ り,回 転 子 の 磁 極 を励 磁
す る 。 そ の た め の 直 流 電 源 と して は,直 tion machine)あ
流 発 電 機 を 用 い た 直 流 励 磁 機(dc
exicita
る い は 小 型 の 同 期 発 電 機 の 出 力 を整 流 器 で 整 流 し た 励 磁 装 置 な どが
用 い られ る 。 2極 の 回転 子 の 界 磁 巻 線 に よ り作 られ る磁 束 の 通 路 は 図6.1に 転 子 の 界 磁 巻 線 の 磁 軸 は直 軸 あ る い はd軸(direct‐axis に垂 直 な 軸 を 横 軸 あ る い はq軸(quadrature‐axis 固 定 子(stator)に winding/armature
は,そ
示 す よ う に な り,回
or d‐axis)と
or q‐axis)と
よ ば れ,d軸
よぶ 。
の 内 周 に 沿 っ て 固 定 子 巻 線 す な わ ち 電 機 子 巻 線(stator
winding)が3等
分 さ れ て 巻 か れ,三
の 電 機 子 巻 線 の 一 端 は 共 通 に 接 続 さ れ,発
相 の 巻 線 を構 成 す る 。 各 相
電 機 中 性 点(generator
neutral)を
構成
す る。 水 車 発 電 機 の よ う な 回 転 速 度 の 小 さい 発 電 機 は極 数 が 多 く,回 転 子 は突 極 で あ る。 図6.2に
水 車 発 電 機 の例 と して6極
の同期 発電 機 を示 す。界磁 巻線 は回転子 の磁 極 に
図6.1 三 相 同期 発 電 機(タ ー ビ ン発 電 機)
図 の よ う に コ イ ル 状 に巻 か れ る。 水 車 発 電 機 型 の 同 期 機 の 回 転 子 に は 界 磁 巻 線 の 他 に ダ ン パ ー 巻 線(damper
wind
ing)が
induc
設 け ら れ て い る。 ダ ンパ ー 巻 線 は か ご形 誘 導 電 動 機(squirrel‐cage
tion motor)の
回 転 子 の か ご形 導 体 に類 似 した 形 状 を し て い る 。 ダ ンパ ー 巻 線 は定 常
運 転 に お い て は運 転 に な ん ら影 響 を与 え な い が,過 さ せ る よ う作 用 す る 。
渡 現 象 の 期 間 に お い て振 動 を減 衰
図6.2
図6.3
6.2
三相 同期 発電 機(水 車 発 電機)
ター ビン発 電機 の空隙 の磁 束分 布
電機 子 の 誘 導 起 電 力
界磁 巻線 に電流 を流 す と,回 転子 の磁 極 に は磁束 が形 成 され る。突極 形 の 回転 子 で は,磁 束 密度 は磁極 面 の湾 曲形状 のた めd軸 にお いて最大 とな り,q軸
に おい て零 と
な る。 回転子 と固 定子 の間 の 空隙(air‐gap)の 磁 束 密度 分布 は正 弦 波状 に分布 す る よ う設計 され て い るの で,突 極形 お よび円筒形 の両 回転 子 と も,そ の 円周 に沿 った空 隙の磁 界 分布 は正弦 波 として取 り扱 う ことが で きる。図6.3に ター ビ ン発 電機 の空隙 の磁 束分布 を示 す。 回転 子 の回転 に伴 っ て正弦 波 の空隙 磁界 が運 動す るこ とに よ って,電 機子 巻線 は磁 束 を切 る。 このた め電機 子巻 線 に は正 弦波 の誘 導起電 力が 生 じ る。 空 間的 に正弦波 で 分布 す る空隙磁 界 の運動 に伴 って,電 機 子巻 線 に は時 間的 に正 弦
波 で変 化 す る誘 導起 電 力 が生 じる。 回転 子 の極 数 をPと
す る と,空隙 磁 界 お よび誘
導 起電 力 の 空 間分 布 は両者 とも,回 転 子 の1周 につ い てP/2サ が って,回 転 子 の回転 数 が毎 分N回
イ クル とな る。 した
で あ る とす れ ば,電 機 子 導体 に誘 導 す る起電 力
の周波 数fは 次 式 で表 され る。 (6.1)
例 え ば,2極 3000min-1の
で,回
転 数3600min-1の
場 合,50Hzで
導 さ れ る起 電 力 はP/2電
場 合,周
波 数 は60Hzで
あ る。 回 転 子 の1° の 回 転 に 対 し て,電 気 角 だ け変 化 す る。 例 え ば,2極
電 気 的 回 転 角 が 等 し い 。b相
お よ びc相
あ り,回 転 数 が 機 子 の巻線 に誘
の 同 期 機 は機 械 的 回 転 角 と
の 電 機 子 巻 線 に 誘 導 さ れ る 起 電 力 はa相
よ
り120° お よ び240° そ れ ぞ れ 遅 れ る 。 図6.4は q軸 がa相
電 機 子 巻 線 に 生 じ る正 弦 波 状 の誘 導 起 電 力 が 最 大 の 瞬 間 を表 し,回 転 子 の の 電 機 子 巻 線 の 磁 軸 と一 致 し た 瞬 間 で,こ
の瞬 時 の磁 束 鎖交 数 は零 で あ
る。 界 磁 巻 線 に よ っ て 生 じた 磁 束 の う ち 電 機 子 巻 線 と鎖 交 す る磁 束 鎖 交 数 をfaの で 表 す 。 図6.4に ま た,固
添字
示 す 回 転 子 に乗 っ て磁 束 を見 る 観 測 者 は一 定 の 直 流 磁 束 φ を 見 る 。
定 子 に 乗 っ た 観 測 者 は 同 じ 磁 束 を 周 波 数fの
交 流磁 束 ψ として見 る こ とに
な る。 a相
の 電 機 子 巻 線 の磁 軸 を基 準 とす る と,回 転 子 お よ び 固 定 子 に乗 っ て 測 定 さ れ る
両 磁 束 の 関 係 は 次 の よ う に な る。
図6.4 a相
の 誘 導起 電 力 が最 大 の瞬 間 にお け る空隙 磁界Ψfaと 誘 導 起 電力Eの
分布
(6.2) こ こに,α
は 図6.1に
示 した よ う に,a相
の 電 機 子 巻 線 の 磁 軸 を 基 準 に測 っ たd軸
回 転 角 で あ り,φfaは 界 磁 巻 線 に よ っ て生 じ た 磁 束 の う ちa相 る磁 束 鎖 交 数 の 最 大 値,ω a相
の
の 電 機 子 巻 線 と鎖 交 す
は角速 度 であ る。
に誘 導 され る起 電 力 は 次 の よ うに 表 され る。
(6.3) この誘 導起 電 力 の実効値 は, (6.4)
と な る。 こ こ に,|E| は 誘 導 起 電 力eの
実 効 値,Mfaはa相
の 電 機 子 巻 線 の磁 軸 とd
軸 が 一 致 した と き の 界 磁 巻 線 と電 機 子 巻 線 の 相 互 イ ン ダ ク タ ン ス,ifは あ る 。 誘 導 起 電 力 の 実 効 値|E|は 回 転 子 の 毎 分 の 回 転 数Nに 圧(speed
voltage)と
比 例 す る の で,速
度電
よばれ る。
磁 束 鎖 交 数 ψfaお よ び 誘 導 起 電 力eは ,Eで
界磁電流で
正 弦 波 状 で あ る の で,ベ
表 す こ とが で き る。 図6.5は(6.3)式
よ りd軸
ク トル す な わ ちΨfa
の 磁 束 がq軸
に速 度 電圧 を
誘 導 す る こ と を示 す 。 発 電 機 に対 称 三 相 負 荷 が 接 続 さ れ る と,各 相 の 電 機 子 巻 線 に は対 称 三 相 交 流 の 相 電 流Iが
流 れ る 。 こ の相 電 流 に よ っ て,P/2を1周
期 と して 固定 子 の 内面 に沿 って正
図6.5 速 度 電圧 ベ ク トル
図6.6
分布 電 流I,空隙
弦 波 状 に 分 布 す る電 流 が 形 成 さ れ,こ
磁 界Ψfaと 誘 導起 電 力Eの
分布
の正弦 波状 の分布 電 流 は同期速 度 で 固定子 の 内
周 面 を 回 転 す る。 そ の 分 布 電 流 の 最 大 値 は,相 電 流 の 最 大 値 と 同 じ時 点 に お い て 電 機 子 の 相 巻 線 の 中 央 に 一 致 し,そ の 最 大 値 は電 機 子 巻 線 を 流 れ る 相 電 流 の 大 き さ│I│に 比例 す る。 図6.6に
誘 導 起 電 力Eが
6.4の 空隙 磁 界 分 布Ψfaを
6.3
電 機 子 の 分 布 電 流Iよ
り角 β進 ん で い る も の と し,図
重 ねて 示す 。
電 機 子 反 作 用
三 相 同 期 発 電 機 の 固 定 子 に 巻 か れ た3個
の 電 機 子 巻 線 が,そ
れ らの 軸 を互 い に
120°の 電 気 角 ず つ ず ら し て 配 置 さ れ て お り,そ れ ら に 位 相 が120° ず つ ず れ た 三 相 交 流 電 流 が 流 れ る と,同 期 速 度(synchronous の 磁 束 を電 機 子 反 作 用(armature
speed)で
reaction)と
回転 す る磁 束 が 発 生 す る。 こ
よ び,φaaで
束 φaaは 電 機 子 電 流 分 布 が 零 の 位 置 で 最 大 と な り,φfaよ a相
を 基 準 と し て,電
表 す。電 機 子 反 作 用 磁
り90°+β 遅 れ て い る。
機 子 反 作 用 磁 束 φaaの う ち 固 定 子 と鎖 交 す る 磁 束 ψaaは
(6.2)式 と同 様 に 次 の よ うに 表 さ れ る。
(6.5) この 磁 束 鎖 交 数 に よ っ て,a相 され る 。
には速度 電圧 が誘 起 され る。 その電圧 は次 の よ うに表
図6.7 磁 束,電 流 お よ び誘 導起 電 力 のベ ク トル
(6.6) こ こ に,eIは
速 度 電 圧 で あ る 。 速 度 電 圧eIの
実 効 値│EI│は,
(6.7)
と な る。 こ こ に,φaa/√2と│I│の
比 を相 互 イ ン ダ ク タ ン スMaaで
表 す 。EIお
よ び,
固 定 子 巻 線 と鎖 交 す る 界 磁 磁 束 の 磁 束 鎖 交 数 ψfaと 電 機 子 反 作 用 磁 界 の 磁 束 鎖 交 数 ψaaを 合 成 し た 磁 束 鎖 交 数 を ψresと表 し,図6.7に
示 す 。 図6.7に
ψaa,ψres等に つ い て 正 弦 波 状 で あ る の で,Ψfa,Ψaa,Ψresの
お い て は,ψfa,
よ う に ベ ク トル 表 示 し て
い る。
6.4
端子電圧
磁 束鎖 交 数ΨfaとΨaaを 合 成 した磁 束 鎖交 数 をΨresとした の と同様 に,電 機 子 に 誘 起 す る2つ の誘 導起 電 力EとEIを
合 成電 圧す る と,次 の よう に表 され る。 (6.8)
こ こに,Eは
界磁 磁束 によ る誘 導起 電力,EIは
電 機子 反作 用 に よる誘 導起 電 力,
Eresは 空隙 起 電 力 で あ る。 図6.7か
らわ か る よ う に,電
は界 磁 磁 束 の 鎖 交 数Ψfaに(90°+β)遅 EはΨfaよ
れ て お り,Ψaaは
り90° 遅 れ て お り,EIはΨaaに90°
90°遅 れ る。Eresは
機 子 反 作 用 磁 束 鎖 交 数Ψaa 電 流 ベ ク トルIと
遅 れ る。 し た が っ て,EIは
空隙 の合 成 磁 束 鎖 交 数Ψresよ り90° 遅 れ,中
一 致 す る。 電 流Iに
性 点 に対 して 測 られ
る電 圧 で あ る 。 空隙 起 電 力Eresか
ら電 機 子 巻 線 の 抵 抗raと
漏 洩 リア ク タ ン スxlに
を減 ず る こ とに よ り,発 電 機 の 端 子 の 相 電 圧Vが
よる電 圧 降 下
得 られ る。
す なわ ち
(6.9) であ る。 電 機 子 反 作 用 に よ る誘 導 起 電 力EIは か ら導 か れ る の で,次
電 流 ベ ク トルIに90°
遅 れ,│EI│は(6.7)式
の よ うに 表 す こ とが で き る。
(6.10) こ こ に,XI=ωMaaで
あ る。
(6.9)式 に(6.8),(6.10)式 して 無 視 す れ ば,次
を代 入 し て,さ
ら に 電 機 子 巻 線 抵 抗raは
十 分小 さい と
の 関 係 を得 る。
(6.11) XS=XI+xlは,同
期 リア ク タ ン ス(synchronous
(6.11)式 の 関 係 は 図6.8(a)に 端 子 電 圧Vは electromotive
reactance)と
よ ば れ る。
示 す よ う な ベ ク トル で 表 さ れ る 。
界 磁 磁 束 に よ っ て 電 機 子 巻 線 に 誘 導 さ れ る 誘 導 起 電 力(internal force)Eか
ら,同 期 イ ン ピ ー ダ ン ス に よ る電 圧 降 下 を 引 い て 表 さ れ
(a)(b)) 図6.8
同期 発 電機 の等価 回路
る 。 そ の 等 価 回 路 は 図6.8(b)で
表 さ れ る。 ち な み に,同 期 機 の 定 格 を基 準 と した 同
期 リア ク タ ン ス は0.6∼1.5puで
あ る の に対 し,内 部 抵 抗 は0.01puの
程 度 で あ るの
で,内 部 抵 抗 を 無 視 す る こ とが で き る の で あ る。 同 期 リ ア ク タ ン ス の 測 定 は 次 の よ うに 行 わ れ る 。 発 電 機 端 子 を短 絡 して,短
絡 電流
が1puに
磁 電流
な る ま で,励
磁 電 流 を増 加 す る。 短 絡 電 流 が1puに
な っ た と き,励
を そ の ま ま の 値 に 固 定 し て 発 電 機 の 端 子 を 開 放 す る。 こ の と き 端 子 に 現 れ た 相 電 圧 を,単 位 法 で 表 した 値 が 同 期 リ ア ク タ ン ス のpu値
6.5
で あ る。
磁 気 突 極 効 果
以 上 述 べ た よ う に,電 を 発 生 し,こ
機 子 電 流Iは
磁 束Ψaaを
作 り,磁
は,磁 気 抵 抗(magnetic
reluctance)がdお
あ る。 これ は,回 転 子 が 円 筒 形 の 同 期 機(非
よ びq軸 突 極 機)で
い て は 当 て は ま らな い 。 同 期 機 の 磁 気 抵 抗 は,図6.9に 線 の 溝 に よ っ て,q軸
誘 導 起 電 力EI
に 沿 っ て 等 し い と した こ とで は 妥 当 で あ る が,突
極 機 につ
示 す よ う に,回 転 子 の 界 磁 巻
方 向 の 磁 気 抵 抗 が 増 加 す る。
した が っ て,回 転 子 に対 す る 電 機 子 電 流 分 布 はΨaaとEIに てXsに
束Ψaaは
の 起 電 力 の 大 き さ は 位 相 差 β に 無 関 係 で あ る と考 え て い る 。 そ の 理 由
影 響 す る。 界 磁 磁 束Ψfaに
れ に よ っ て 電 機 子 に 流 れ る 電 流Iと
影 響 し,そ
の結果 とし
よ っ て 電 機 子 巻 線 に 誘 起 さ れ る 起 電 力Eと,こ の 位 相 差 を β と す れ ば,電
図6.9 回転 子 の凸極 効 果
流Iの
位 置 は磁 束
Ψaa,す な わ ちq軸 お よ びXsの
か ら位 相 差 β と な る た め,こ
値 に影 響 す る。 そ こ で,磁
が 必 要 に な る 。 電 機 子 電 流Iを れ ば,電
流Idはd軸
図6.10に
れ に よ っ て 誘 導 さ れ る 起 電 力EI,
化 をdお
よ びq軸
方 向 の成 分 に分 け る こ と
示 す よ う に,Idお
方 向 の磁 束Ψaa,dを 作 り,電 流Iqはq軸
よ びIqの
成 分 に分 解 す
方 向 の 磁 束Ψaa,qを 作
る。 こ れ ら磁 束Ψaa,dとΨaa,qは
速 度 電 圧EIdお
よ びEIqを
誘 起 し,そ
れ らの大 き さ は
次 の よ うに表 され る。
(6.12) (6.13) EIdお
よ びEIqは,ま
た,次
の よ う に表 さ れ る。
(6.14) (6.15) こ こ に,Xdは
直 軸 同 期 リ ア ク タ ン ス(direct‐axis
横 軸 同 期 リ ア ク タ ン ス(quadrature‐axis 端 子 電 圧 は,電
synchronous
機 子 巻 線 抵 抗 を 無 視 す れ ば,E,EIdお
synchronous
reactances)
reactances)と よ びEIqの
,Xqは
よぶ。 和 で あ り,次
よ う に表 され る。
(6.16)
図6.10
直 軸,横 軸 同 期 リア ク タ ンス に よ る端 子電 圧 と誘 導 起 電力 の関 係
の
この式 に よって表 され るベ ク トル図 を図6.10に 示 す。 この 図 にお い て,位 相 角 θは 端 子 の相 電 圧Vと 相 電 流Iよ
相 電 流Iの
なす角 で あ り,送 電 電 力 を計 算 す る際,相 電 圧Vが
り進 んで い る とき正 とす る。 電 力角 δは,界 磁磁 束 に よ り電機 子巻 線 に
誘 導 され る1相 の誘 導起電 力Eが,端
6.6
子 の相 電圧Vよ
り進 んで い る とき正 とす る。
電 力 お よ び トル ク
発 電機 の回転 子 と固定子 間 の空隙 に発生 す る トル クTemは,タ 力 を供給 して いる発電機 の端 子 にお け る電 力PGと
ー ビン出力PTと
電
の間 を結 合 す る基本 的 な物理 的 関
係 を与 え る。 磁 束 密度Bと
これ に垂 直 な電 流Iと の 間 に働 く力 の関 係 を図6.11に 示 す。界 磁
磁束Ψfaと 電機 子電 流Iの 間 に作 用 す る電磁 力 を考 える とき,誘 導起 電 力Eと
電機
子電 流Iの 位 相 角 βが-90° <β<90°の範 囲 に あ るな らば,固 定 子 は 回転 方 向 に力 の作 用 を受 け るこ とが分 か る。一 方,回 転 子 は大 き さが等 し く,回 転 方向 と向 きが反 対の 反作 用の 力 を受 ける。 回転 子 に作 用す る電磁 力 は 回転 子 を減速 す る方 向 に作 用 す るので,こ れ に対 し,回 転子 の 回転 速 度 を一 定 に保持 す るため に,タ ー ビ ンか ら回転 子 に この 力 に厳 密 に釣 り合 う駆 動 トル クが 作用 され な けれ ばな らな い。 発 電機 の回転 子 と固定 子 間の空 隙 に発 生 す る トル クTemは 次式 で表 され る。 (6.17) こ こ に,Bfaは
界 磁 磁 束Ψfaの 磁 束 密 度 で あ る。
(6.17)式 は 回 転 子 と固 定 子 間 の 空隙 が 全 周 に わ た っ て 一 定 で あ れ ば,厳 る 。 しか し,現 実 に は,空隙
は 不 均 一 で あ る た め,ト
ル クお よび電力 方程 式 に この空
隙の 不 均 一 性 に よ る補 正 項 を加 え る 必 要 が あ る。
図6.11
密 に成立 す
磁 界 中 の通 電 導 体 に作 用 す る力
6.7
電力公式
界磁磁 束 の磁束 密度Bfa,電 機 子 電流Iお よび誘 導起 電力 と電機 子電 流 の位 相 角 β な どは測 定 す る こ とが で き ないの で,(6.17)式 は現 実 的 な式 とは い えな い。 実 際 に有 用 な式 は,容 易 に測定 可能 な量 に よって発電機 の電 力 を表す こ とが で き る式 で な けれ ばな らない。発 電機 の トル クを表 す式 を求 め るた め,ま ず,複 素 電力 に関す る次 の式 を用 い る。 (6.18) こ こ に,図6.10に
示 し た よ う に,Vは
端 子 の 相 電 圧,Iは
相 電 流,θ
な す 位 相 角 で あ る。 電 流Iが
発 電 機 か ら流 れ 出 る と き 正 と す る か ら,同
の状 態 に あ る と き,(6.18)式
のPGお
あ る。 図6.10に
よ びQGは
期機が発電
正 で あ る 。(6 .18)式 は1相
示 し た ベ ク トル 図 か ら,端 子 の 相 電 圧Vお
の電力で
よ び相 電 流Iを,界
電 流 に よ っ て発 生 し た磁 束 に よ り電 機 子 巻 線 に 誘 導 され る起 電 力Eの これ に 垂 直 な成 分 す な わ ちd軸,q軸
はVとIの
磁
方 向 の 成 分 と,
式 分 に分 解 す る と,次 の 関 係 が 成 立 す る。
(6.19) (6.20) こ こ に,δ は界 磁 電 流 に よ る電 機 子 巻 線 の 誘 導 起 電 力Eと,発 の位 相 角,す
な わ ち 電 力 角 で あ る。 ま た,次
電 機 端 子 の 相 電 圧V
の 関 係 が あ る。
(6.21) (6.22) 角 度 に つ い て は,次
の 関 係 が 成 り立 つ 。
(6.23) (6.23)式
か ら,
の 関 係 を利 用 し,こ れ ら の 式 の 両 辺 に│I│を 乗 じ,(6 と,
.21)式 お よ び(6.22)式
を用 い る
(6.24) (6.25) を得 る。 (6.18)式 に(6.24)式,(6.25)式
を 代 入 し,(6.19)式
お よ び(6.20)式
の 関 係 を利 用 す
る と,発 電 機 が 供 給 す る有 効 電 力 お よ び 無 効 電 力 に つ い て次 の 重 要 な 一 般 電 力 公 式 を 得 る。
(6.26) (6.27)
(6.26)式 の 右 辺 第1項
の 値 に比 し て 第2項
の値 は小 さ い 。 これ は,空隙
に よ る トル ク成 分 に対 応 す る電 力 で あ り,特 に,タ は,Xd=Xqの
関 係 が 成 り立 つ の で,(6.28)式
(6.26)お よ び(6.27)式
は(6.29)お
よ び(6.30)式
の不 均一 性
ー ビ ン発 電 機 の よ う な非 突 極 機 で
の 関 係 を 用 い る と,電
力 の一般 式
の よ う に簡 単 に な る 。
(6.28) (6.29) (6.30)
(6.26)式,(6.27)式
お よ び(6.29)式,(6.30)式
は電 力 に関 す る非 常 に重 要 な 式 で あ
り,界 磁 磁 束 に よ る電 機 子 巻 線 の 誘 導 起 電 力Eと 大 き さ が 一 定 な ら ば,有
効 電 力PGお
発 電 機 の 端 子 相 電 圧Vそ
よ び 無 効 電 力QGは
れぞ れ の
電 力 角 δの み の 関 数 とな
る。 (6.26)式,(6.27)式 電 力Eお
お よ び(6.29)式,(6.30)式
よ び端 子 電 圧Vが,kV単
力 のMWあ て はXdとXqの
は,発 電 機 の 界 磁 磁 束 に よ る誘 導 起
位 の 線 間 電 圧 で 表 さ れ る な ら ば,三
る い は 無 効 電 力 のMvar値
を 与 え る 。 な お,同
相 の有効 電
期 リ ア ク タ ン スXsと
し
平 均 値 が 使 用 され る こ とが 多 い。
【 例 題6.1】 水 車 発 電 機 は周 波 数60Hz,定 で あ る。 有 効 電 力PGを
格 電 圧13.6kV,定
格 三 相 容 量15MVA
厳 密 式 と近 似 式 か ら計 算 せ よ。
こ こ で,発 電 機が│E│=│V│=13.6kVで
運 転 さ れ て い る と し,べ ー ス値 と し て 定 格
MVA値
お よび定格 端子 電圧 のkV値
を用 い,上 に求 めた有 効電 力 を単位 法 で表せ 。
水車 発電 機 の リア クタ ンスは,
とす る。 [解] ま ず,厳
密 な 式 に よ り有 効 電 力 を計 算 す る。
(6.31) 次 に,近
似 式 に よ る計 算 を 行 う。
(6.32) 図6.12に
厳 密 式 と近 似 式 に よ っ て 計 算 したPG‐ δ の グ ラ フ を 示 す 。 発 電 機 が 普 通 使
用 さ れ る0°∼30° の δの 範 囲 で は,両
計 算 の 結 果 は よ く一 致 し て い る こ とが わ か る 。
図6.12 PG‐
δの グ ラフ
6.8
無 限 大 母 線 に 接 続 さ れ た 発 電機 の 運 転
図6.13に 示 す ように,発 電機 と無 限大母 線 は変 圧 器 と線 路 か らな る回路 で接 続 さ れ てお り,回 路 の リア クタ ンス はXl,無
6.8.1
限大 母線 の電 圧 はVNで
あ る とす る。
同 期 発 電機 の 運 転 条 件
同期 発 電 機 を無 限大 母線 に接続 す るた めに は,次 の条 件 が 成立 しな けれ ばな らな い。 1.発 電機 と系統 の周 波数 は等 しい。 2.発 電機 の相 順 は系統 の相 順 に等 しい。 3.EとVNは
同相 で あ る。
同期機 が 系統 に接続 され る と,有 効 電力 お よび無効 電 力 を発生 あ るいは吸収 す る こ とがで きる。有効 電力 の流 れ の向 き と大 きさは発電機 の軸 トル ク に よって決 ま り,無 効電 力 は界磁 電 流 に よる誘 導起 電力 の大 きさ│E│に よって決 まる。
6.8.2
電 力方 程 式
無 限大母 線 の周 波数 お よび電圧VNは,発
電機 の運 転状 態 によっ てほ とん ど影響 さ
れ ない ので,発 電 機か らは無 限大 母線 を電圧 が一 定 な母線 と見 る こ とがで きる。 そ れ ゆえ,無 限大母 線 の電圧 の大 きさ│VN│は 一 定 とす る。 発 電機 の端子 電圧Vと
無 限 大母 線 の電圧VNと
の差 は回路 の リア ク タ ンス降下 に
等 しいの で,次 の 関係 が成立 す る。 (6.33) こ こ に,Xlは
回 路 の リア ク タ ン ス で あ る。
こ の 関 係 を 図6.14(a)に
示 す 。 発 電 機 の 端 子 電 圧Vを
VNと電 機 子 の 誘 導 起 電 力Eで
表 す な ら ば,(6.34)式
介 さず に無 限 大 母 線 電 圧
よ り図6.14(b)の
トル 図 を 得 る。
図6.13
無 限大 母線 に接 続 され て運転 され る発 電機
よ うなベ ク
(b)
(a) 図6.14
無 限 大母 線 に接 続 され て運 転 され る発 電機 の電 圧 と電 流 の ベ ク トル
(6.34)
【 例 題6.2】 例 題6.1の
水 車 発 電 機 が,電
圧1puの
無 限 大 母線 に接 続 され て い る も
の とす る。 発 電 機 と無 限 大 母 線 の 間 の 線 路 の イ ン ピ ー ダ ンス は,発 ス と し てj0.11puで 10MWで
電 機 の 定 格 をべ ー
あ る 。 発 電 機 の 誘 導 起 電 力 の 大 き さ│E│=1.22pu,有
あ る 。 図6.14(a)の
δ,δN,Iお よ びVを
[解] (6.26)式 お よ び そ の 変 形 式(6.29)か
ら,次
効電力 は
求 め て み よ う。 の 関 係 を 得 る。
(6.35) PG
=10/15=0
図6.14か
電 流 成 分Iqお
.667puよ
り,δN=25.7°
と な る。
ら次 の 結 果 を 得 る。
よ びIdに
つ い て,次
の結 果 を得 る。
(6.33)式 か ら,発 電 機 端 子 電 圧 と して 次 の 結 果 を得 る 。
よ っ て,
を得 る。
6.8.3
有効電 力の制御
無 限大母 線 の電 圧 の大 きさ│VN│を 一定 とす る。 さ らに,界 磁 電 流 を一定 に保 ち, 電機 子 の誘 導起 電力│E│も 一 定 とす る。 円筒形 回転 子 の発電 機 を考 え るな らば,そ の 有効 電力 は次の よ うに表 され る。 (6.36) こ こ に,Pmax=│E││VN│/(Xs+Xl)は 図6.15は δNはEがVNよ
一 定 で ある。
発 電 機 の 有 効 電 力PGが
電 力 角 δNに 対 し て 変 化 す る 様 子 を 示 す 。 正 の
り進 ん で い る こ とを 表 し,こ
の 位 相 関 係 に お い てPGが
機 は 発 電 運 転 し て い る こ と を 表 す 。 一 方,VNがEよ
図6.15
PGとδNの
正 で,発
り進 ん で い る と,PGは
関係
電
負 で,
同 期 機 は 系 統 か ら有 効 電 力 を吸 収 し て お り,電 動 機 と し て 運 転 さ れ て い る こ と を表 す 。 無 限 大 母 線 の 相 電 圧VNに
対 す る 電 機 子 の 誘 導 起 電 力Eの
位相 は 回転 子 の位 置
に よ っ て決 ま り,正 のδNは 原 動 機 が 発 電 機 に トル ク を加 え て い る こ と を 意 味 す る 。 負 の δNは 原 動 機 が 発 電 機 か ら トル ク を受 け て い る こ と を意 味 す る 。
6.8.4
同期化 力
同期 機 の 同 期 化 力(synchronizing
coeffcient)は
次 式 で 表 され る。
(6.37)
す な わ ち,同 り,│E│を
期 化 力 は 電 力 角 の 増 分 に 対 す る電 力 の 増 加 の 割 合 を 表 す 。(6.37)式
増 加 し,同 期 リア ク タ ン スXsを
減 少 させ,小
よ
さな 電力 角 で運 転 す る こ と
に よ り,同 期 機 の 同 期 化 力 を 大 き くで き る こ とが わ か る。
6.8.5
定態安定 極限電 力
同期 機 の 同 期 化 力 は 電 力 角δNの 増 加 に対 して 減 少 す る の で,同
期 機 を δN=30° を
超 え て 運 転 さ れ る こ と は ほ と ん ど な い。 電 力 角 を 増 加 さ せ,90° に 近 づ け る と,同 期 機 は 同 期 化 力 を 次 第 に減 じ,90° に お い て 同 期 化 力 を 失 う。 同期 機 の 軸 トル ク を 増 加 し,δNを
次 第 に90° に 近 づ け る と,ト
ル ク の 伝 達 は減 少
す る こ とに な る。 同 期 機 に よ っ て 発 生 あ る い は 消 費 さ れ る 有 効 電 力 は,図6.15に すPmaxの
示
値 を超 え る こ と は で き な い 。 この 電 力 は 定 態 安 定 極 限 電 力(steady‐state
stability limit)と
よ ば れ る。 タ ー ビ ンの パ ワ ー が 定 態 安 定 極 限 電 力 を 超 え よ う と す
る と,発 電 機 は 同 期 運 転 が で き な くな る。
【例 題6.3】
例 題6.2の
発 電 機 を考 え る 。 こ の 発 電 機 は13.6kVの
い る 。 電 気 出 力PGは9MW(0.6pu)で (1)│E│が1puに
保 た れ る と き,電
系 統 に 接 続 され て
あ る。 力 角 δ を求 め る。
(2)同 期 化 力 を 計 算 す る。 (3)定 態 安 定 極 限 電 力 を 求 め る。 (4)定 態 安 定 極 限 電 力 に お け る電 流 を 求 め る。 [解] (1)│E│=│VN│=13.6/√3kV=1puで る。
あ る か ら,(6.36)式
か ら次 の 関 係 を 得
こ の 関 係 か ら,δN=30.1° (2)(6.37)式
を得 る。
か ら 次 の 関 係 を得 る。
(3)
(4)定 態 安 定 極 限 電 力 に お い て δN=90° で あ る か ら,VN,Eお 6.16に
よ びIの
関 係 は図
示 す よ う に な る。 こ の 図 か ら次 の 関 係 を得 る。
定 態 安 定 極 限 電 力 に お い て,発
図6.16
【 例 題6.4】
例 題6.3の
定 態 安 定 度,同
電 機 は69%の
過 電 流 で あ り,過 負 荷 量 は20%と
な る。
定 態安 定 極 限電 力 にお け る電圧 と電 流 の 関係
同 期 発 電 機 に 対 し て,励
磁 を30%増
加 す る と き,電
期 化 力 を 求 め よ 。 た だ し,電 気 出 力 は例 題6.3と
る。 [解] 電 機 子 の 誘 導 起 電 力 は新 し い 実 効 値│E│=1.3puと (6.36)式 か ら次 の 関 係 を 得 る 。
な る。
同 様 に9MWで
力 角, あ
こ の 式 か ら,δN=22.7° (6.37)式
を得 る。
か ら次 の 関 係 を得 る。
定 態安 定極 限電 力 として
とな る。
6.8.6
無 効 電 力 の 制 御*
(6.30)式 を 用 い て,無 を,無
効 電 力 の 制 御 を検 討 し よ う。 発 電 機 か ら供 給 され る無 効 電 力
限 大 母 線 に お い て 測 定 し た 値 をQGと
す る。 次 の 条 件,
(6.38) が 成 立 す る な ら ば,(6.30)式
か ら,QGは
正 と な る 。 これ は発 電 機 が 遅 れ の 無 効 電 力
を 発 生 す る こ と を 意 味 し,回 路 か ら見 る と き,発 電 機 は コ ン デ ン サ と し て 作 用 し て い る こ と を表 す 。(6.38)式
が 成 立 す る た め に は,電
に 依 存 す る 。 一 般 に,(6.38)式
は│E│が
力 角 δN,す な わ ち,有
大 き い 場 合,す
合 に満 足 さ れ る。 こ の 状 態 を過 励 磁(overexitation)と
効 電 力PG
な わ ち,界 磁 電 流 を 強 め た 場 い う。同 期機 が電 動 機 あ る
い は発 電 機 と し て 運 転 さ れ て い て も,過 励 磁 の 同 期 機 は 系 統 側 か ら眺 め る と き,遅 の 無 効 電 力 を発 生 し,電 一 方,同
力 用 コ ン デ ン サ(shunt
capacitor)と
れ
同様 に作 用す る。
期 機 が 電 動 機 あ る い は 発 電 機 の ど ち ら で 運 転 さ れ て い て も,不 足 励 磁
(underexcited)で
運 転 さ れ る 同 期 機 は 系 統 側 か ら眺 め る と き,系 統 か ら遅 れ の 無 効
電 力 を 吸 収 し,分 路 リ ア ク トル(shunt
reactor)と
同 様 に作 用 す る。 不 足 励 磁 は 次
式 に よ って 表 さ れ る。
(6.39) 無 効 電 力 を 発 生,消
* 6.8.6,6.8.7にっ
費 す る 同 期 機 は,同 期 調 相 機(synchronous
い て は 第10章
を 参照 の こ と。
capacitor)と
し
て 利 用 さ れ る。 同 期 調 相 機 は,普 (6.30)式 か ら,次
通,無
効 電 力 の み 系 統 に 供 給 し,δN=δ=0で
あ る。
の 式 を 得 る。
(6.40)
(6.40)式 は,無
効 電 力QGが
大 き さ と向 き を簡 単 に,か
電 機 子 の誘 導 起 電 力│E│,す
な わ ち励 磁 電 流 に よ っ て
つ 連 続 的 に制 御 で き る こ とを 表 す 。
発 電 機 の 有 効 電 力 は 原 動 機 か ら の 機 械 的 入 力 に よ っ て 決 ま る の で,界 化 は発 電 機 の 有 効 電 力PGに
影 響 し な い こ と を認 識 し て お く こ とが 大 切 で あ る 。 界 磁
を 変 化 さ せ る こ と は 定 態 安 定 極 限 電 力Pmaxの
大 き さ に影 響 し,し
の 同 期 化 力 に 影 響 す る こ と に な り,有 効 電 力PGは る こ と を示 す 。 例 え ば,界 化 させ,定
磁 の強 さの変
た が っ て,同
変 化 せ ず に,電
期機
力 角 δNが 変 化 す
磁 電 流 の 減 少 は 電 力 角 δNの 大 き さ を 大 き くな る よ う に 変
態 安 定 極 限 電 力Pmaxま
で も変 化 さ せ る。
発 電 機 の 軸 トル ク の 変 化 は,PGに 無 効 電 力QGはcosδNに
直 接 影 響 す る 。 同 時 に,電
関 係 す る の で,無
効 電 力QGの
力 角δNも 変 化 し,
変 化 も生 じ る。 し か し,電 力
角 δNは30° 以 下 で 運 転 さ れ る の が 普 通 で あ り,こ の よ う に 小 さ な 電 力 角 δNに お い て は,δNの
変 化 に対 し て,cosδNの
変 化 は 小 さ い の で,無
効 電 力QGは
大 き く変 化
し な い と考 え られ る 。
【例 題6.5】 例 題6.3お
よ び 例 題6.4の,2つ
の運 転 条件 にお け る無効 電 力 を求 めて
み よ う。 [解] ま ず,例 で,不
題6.3の
場 合 に つ い て 検 討 す る。 界 磁 の 状 態 は(6.39)式
足 励 磁 の 状 態 に あ る 。(6.30)式
三 相 べ ー ス 容 量 は15MVAで
を満 た す の
は 次 の よ う に表 さ れ る。
あ る の で,同
期 機 は 系 統 か ら15×0.161=2.42Mvar
の無 効電 力 を吸収 す る。 電 機 子 の 誘 導 起 電 力│E│を30%増
同 期 機 は過 励 磁 で 運 転 され,系
加 す る と,
統 に15×0.239=23.59Mvarを
供 給 す る。
6.8.7
同期機 の各種の運転
有 効 電 力 と無 効 電 力 の 大 き さ と向 き に 基 づ い て,図6.17に 件 を 示 す 。 こ こで は,接
続 さ れ る無 限 大 母 線 電 圧VNを
重 要 な実 際上 の運 転 条
基 準 と し て 考 え る。
同 期 機 が 発 電 機 と して 運 転 され る場 合,図6.17の(a)お
よ び(b)の
よ う に,無
効
電 力 を 発 生 あ るい は 吸 収 す る よ う に 運 転 す る こ とが で き る。 同 期 機 が 電 動 機 と し て 運 転 され て い る 場 合,図6.17の(c)お
よ び(d)に
な 関 係 が 成 り立 つ 。
(a) 過励磁発 電機
(b) 不足励磁発 電機
(c) 過 励 磁 電 動 機
(d) 不足励磁 電動機
(e) 同期調相機 の無効電力発 生
(f) 同期調相機 の無効 電力消 費
図6.17
同期 機 の 代表 的 な運転 状 態
示すよう
同 期 機 が 電 動 機 と し て 無 負 荷 で 運 転 され る場 合,す さ れ る 図6.17(e)の 様,無
な わ ち,同 期 調 相 機 と し て運 転
運 転 状 態 は,過 励 磁 の状 態 で あ り,並 列 コ ン デ ン サ バ ン ク と同
効 電 力 を 発 生 す る。 一 方,図6.17(f)の
運 転 状 態 は不 足 励 磁 で あ り,無 効 電
力 を 吸 収 す る。 こ の状 態 の 運 転 は,夜 間 の よ う に 有 効 電 力 の 需 要 が 少 な く,超 高 圧 系 統 に お い て 多 量 の 無 効 電 力 が 発 生 す る場 合,そ
の 無 効 電 力 を消 費 す る た め に用 い られ
る。
【 例 題6.6】
例 題6.1の
水 車 発 電 機 が,電
この 発 電 機 の 容 量 は15MVAで
あ り,い
圧1puの
無 限 大 母 線 に 接 続 され て い る。
ま,系 統 に7.5Mvarの
無 効 電 力 をを供 給
す る 同 期 調 相 機 と し て運 転 され て い る 。 励 磁 は ど の程 度 か 。 [解] 電 圧1puの
母 線 電 圧 で,0.5puの
無 効 電 力 を 発 生 し な け れ ば な ら な い の で,
電 流 は0.5puに
等 し くな け れ ば な ら な い 。
図6.17(e)か
ら,
発 電 機 の 線 間 端 子 電 圧 は13.6×1.418=19.3kVと
【 例 題6.7】 合,発
例 題6.1の
な る。
水 車 発 電 機 の 軸 トル ク と,励 磁 電 流 の 両 者 が 制 御 さ れ る 場
電 機 の 有 効 お よ び 無 効 電 力 出 力 を 調 べ よ。 こ の 発 電 機 は,例 題6.2の
電 圧 が1
puの 無 限 大 母 線 に 電 力 を供 給 して い る 。 発 電 機 の 定 格 を べ ー ス値 と し て 単 位 法 を 用 い る 。 最 初,発 0.25puで
電 機 は,電
機 子 の 誘 導 起 電 力 が│E│=1
.5,有
効 電 力 の 出 力 がPG=
運 転 され て い る 。
[解] まず,式(6.36)を
用 い,電
力 角 δNを 計 算 す る。
こ れ を解 い て,
を得 る。 無 効 電 力QGに
関 す る 方 程 式 か ら,無 効 電 力 出 力 を 求 め る と,
を得 る。 よ っ て,発
電 機 の 皮 相 電 力 出 力 は,
と な る。 この 値 は無 限 大 母 線 で供 給 され る値 で あ る 。 (1)ト
ル ク制 御 水 車 の 主 軸 トル ク を100%増
有 効 電 力 出 力 を0.25puか
ら0.5puに
加 す る と して,ガ
イ ドベ ー ン を 開 き,
増 加 さ せ る 。 この と き の 電 力 角 は 有 効 電 力 の
式 よ り,
とな る。 こ の 関 係 よ り,
を得 る。 こ の新 し い 回 転 子 の 位 置 に対 し て,無
効 電 力 の 出 力 は,
とな る 。 この 無 効 電 力 の 値 は 無 限 大 母 線 で の 値 で あ る。 軸 トル ク 入 力 が100%増 る と,無 効 電 力 の 出 力 は0.581puか (2)界 磁 制 御 まず,ガ
ら0.528puへ9.2%減
少 す る。
イ ドベ ー ン の 開 度 を一 定 に して 水 車 か ら の 入 力 を一 定 と し,
界 磁 電 流 を変 化 す る。 例 え ば,界 は1.20×1.50=1.8puに
磁 電 流 を20%増
増 加 す る 。 有 効 電 力PGの
加 す る と,電 機 子 誘 導 起 電 力│E│ 式 か ら,新
しい 電 力 角 は,
とな る 。 これ よ り,電 力 角 と し て,
を得 る。 電 気 出 力PGの
加す
変 化 は な く,新
し い無 効 電 力 の 出 力QGを
求 め る と,
とな る 。 この 値 は 無 限 大 母 線 で の値 で あ る。 無 効 電 力 の 出 力 は0.581puか
ら62%増
加 す る。 し た が っ て,発
電機 の無効 電 力 出 力 は界磁 電 流 の変 化 に関 して非 常 に敏 感 と言 え
る。
問題 (1) 同 期 発 電 機 の 短 絡 電 流 特 性 に お い て,定 格 電 機 子 電 流 は 界 磁 電 流 が0.55puの と き得 られ,無
負 荷 電 圧 特 性 に お い て,定
格 端 子 電 圧 は 界 磁 電 流 が1.05puの
と き得 られ た 。 両 特 性 と も直 線 的 で あ る と し て,同 期 リア ク タ ン ス のpu値
を
求 め よ。 (2) 定 格 容 量9440kVA,定
格 電 圧13.8kV,定
格 周 波 数60Hz,2極,Y結
タ ー ビ ン発 電 機 の 同 期 リア ク タ ン ス は1.8Ω が 遅 れ の0.8,(c)力
率 が 進 み の0.8の
て 電 圧1puの
力 は1.2puで
同 期 発 電 機 が リア ク タ ン ス0.2puの
し た と き流 れ る電 流 を 求 め よ。 た だ し,定 態 安 定 極 限 電
あ る。 突 極)回
転 子 の 同 期 発 電 機 が 無 限 大 母 線 に1.2puの
電 し て い る。 界 磁 誘 導 起 電 力 の 大 き さ は1.3puで 無 限 大 母 線 の 電 圧 を1.0puと を 求 め よ。 有 効 電 力,無
線 路 を通 し
磁 誘 導起 電 力 を求 め
得 られた界 磁誘 導起 電力 の大 きさを保 った状 態 で発 電機 の有 効
出 力 電 力 を0.5puと
(4) 円 筒 状(非
率
を 用 い て 求 め よ。
無 限 大 母 線 に 電 力 を 供 給 し て い る。(a)界
よ 。(b)(a)で
率 が1,(b)力
そ れ ぞ れ 場 合 に お け る発 電 機 の 全 負 荷
に お け る 一 相 の 界 磁 誘 導 起 電 力 を(6.11)式 (3) 同 期 リア ク タ ン ス が1.5puの
で あ る 。(a)力
線の
皮 相 電 力 を送
あ り,電 力 角 は20° で あ る。
す る と き,こ の 同 期 発 電 機 の 同 期 リア ク タ ン ス
効 電 力 は(6.29)式,(6.30)式
を用 い る。
【解 答 は 巻 末 】
第7章 故障計算
7.1
対 称故 障
電 力 回路 に故 障(事 故)が 発 生 した とき,流 れ る電 流 は回路 の発 電機 お よび電動 機 な どの誘 導起 電 力,そ れ らのイ ン ピー ダ ンス,発 電 機 あ るい は電動機 と故障 点間 の回 路 の イ ンピー ダ ンスに よって決 定 され る。発 電機 お よび電動 機 の誘 導起 電力 を発生 す る磁 束 に加 えて電 機 子電 流 に よる磁 束 が影 響 す るため,こ れ ら回転機 に流れ る故 障直 後 の電 流,数 サ イ クル後 の電流 お よび それ以 降の故 障継 続 中 の電流値 の大 き さはかな り異 なる。故 障電 流 の大 きさは初期 値 か ら定 常値 に比 較 的 ゆ っ くり減 少 す る。 こ こで は,故 障継続 中 の それ ぞれ異 な る期 間 の故 障電 流 の計算 を検 討 し,故 障 発生 の初期 値 か ら定常 値 まで の電 流 の変 化 に伴 う同期機 の リア ク タ ンス お よび誘 導起 電力 の変化 を 検討 す る。 なお,三 相 短絡 故 障の ような三相 故障 を対称 故障 あ るい は平衡 故 障 とよび,一 線 地 絡故 障 の よ うな それ以 外 の故障 を非対称故 障 あ るい は不 平衡 故 障 とよぶ 。
7.1.1
RL直
列回路 の過渡現象
抵 抗 とイ ンダ クタ ンス とか ら成 る回路 に交 流電圧 が 印加 され た とき流 れ る電 流 を検 討 して み よ う。 印 加 され る電 圧 をVmsin(ωt+α)と
す る。 こ こ に,時 間tは 電 圧 が
印加 された時 間 を0と す る。α は短絡 位相 と よばれ,回 路が 閉 じられた 瞬間 の電 圧 の 位相 で あ り,そ の瞬 間の電 圧 の大 き さを決 定 す る。電 圧 の瞬 時値 が0の とき遮 断器 が 閉 じ られ,そ れ 以 降,電 圧 が正 の方 向 に増 加 す る状 態 に あ る場 合,短 絡位 相 αは0 で あ る。電 圧 が正 の最 大瞬 時値 にあ る瞬 間 に遮 断器 が 投入 され るな らば,α は90°ま た は π/2であ る。 電圧 力 が印加 され た際 に流れ る電 流iに 関 して,次 の微分 方程 式 が成 り立 つ。 (7.1)
この方程式 の解 は次の ように表 され る。
(7.2)
こ こに,│Z│は√R2+(ωL)2お
よび θはtan-1(ωL/R)で ある。
(7.2)式 の右 辺 の第1項 は時 間 的 に正 弦 波状 に変化 し,第2項
は非 周期 的 で あ り,
L/Rの 時定 数で 指数 関数的 に減 衰 す る。 この非 周期 的 な項 は電 流 の直流 分(dc
com
ponent)と
路の
よばれ る。正 弦 波状 に変 化 す る項 は加 え られ た 電圧 に対 す るRL回
定常 電流 値 で あ る。 時間t=0に
お い て,定 常 電流 値 の項 が零 で な いな らば,遮 断 器
を閉 じた瞬 間 の電 流が0と い う物 理 的 な条件 を満足 す るた め,解 に直 流成分 が 含 まれ な けれ ばな らな い。 も し,回 路が α−θ=0ま た は α−θ=π の電 圧 位相 で閉 じ られ る な らば,直 流分 は零で ある。 も し,回 路 が α−θ=± π/2の電 圧 位相 で閉 じ られ る な らば,そ の瞬 時の直 流分 は電 流 の正弦 波成 分 の最大 値 に等 しい初期 値 とな り,そ の値 は種 々 な短 絡位 相 にお いて過 渡電 流 に含 まれ る直 流分 の内の 最大値 で あ る。 短 絡瞬 時 の電圧 の瞬 時値 と回路力 率 に依 存 して,閉 路 瞬 時 の直流 分 は0か らVm/│Z│ま
で の任
意 の値 を とる。 電圧 が 印加 され た瞬 間,そ の瞬 時 の電 流 が0で な け れ ば な らな いた め,電 流 の直 流分 と定常 分 は常 に大 きさが等 し く,符 号 が反対 にな る。 同期 発電 機 の回転 子 の回転磁 界 によ って電機 子巻 線 に誘 導起 電力 が発 生 す る原理 に つ いて は,第6章
で述べ た。 発電 機が 短絡 された とき流 れ る電 流 は,交 流電 圧 が抵 抗
とイ ンダク タ ンスの直列 回路 に印加 され る時 に流 れ る電 流 に類 似 してい る。 しか しな が ら,大 きな違 い は電機 子電 流が 回転 磁界 に影 響 す る ことで あ る。 無 負荷 同期発 電機 の端 子 に発生 す る三相 短絡 現象 を解析 す る有効 な方法 は,三 相 短 絡故 障が発 生 した時 の1相 の電流 の オ シロ グラム を観測 す る ことで ある。三 相 同期 発 電機 の各 相 の誘 導 起電 力 は相 互 に120°の位 相 差 が あ るので,短 絡 位 相 は各 相 にお い て異 な る電 圧位 相 で発 生 す る。 この た め,短 絡 電 流 に含 まれ る直 流 分 は各 相 で異 な る。 図7.1は,各
相 の電 流か ら直 流分 を除い て,時 間 に対 す る短絡 電流 の交 流 分 の変
化 を示 す。 同期 発電機 で は固 定子 と回転子 間 の空隙 を通 る磁束 は,短 絡 が発 生 した瞬 間 のほ うが 短絡 か ら数サ イ クル後 の磁 束 よ りかな り大 きい。 磁束 の減 少 は電機子 の起 磁 力 の増 加 によ って生 じる。電機 子 電流 の この効 果 は電 機 子反作 用(armature
reaction)と
よばれ る。第6章 に述 べた 等価 回路 は,電 機 子 反
作 用 に よる磁 束 の減 少 を説明 し,直 流 分が 消滅 した 後,す な わち 図7.1に 示 した電 流 波形 の振幅 が一 定 にな った後 の定 常状 態 に適用 され る。 短絡 が 同期発 電機 の端子 で発 生 す る場 合,時 間 と共 に空隙 を通過 す る磁束 は減少 す
図7.1 無 負 荷 同期 発 電機 を運 転 中 に短 絡 した場 合,直 流分 を除 い た交 流 分電 流 る。 磁 束 が 減 少 す る に 従 い,空隙
を通 過 す る磁 束 に よ っ て 誘 導 さ れ る起 電 力 も減 少
し,電 機 子 電 流 は電 機 子 巻 線 の 抵 抗 お よ び 漏 洩 リア ク タ ン ス に よ っ て 決 定 す る た め, 電 機 子 電 流 す な わ ち 短 絡 電 流 は時 間 の 経 過 と と も に 減 少 す る 。
7.1.2
同 期 機 の 短 絡 電 流 と リア ク タ ン ス
電 力 系 統 の 短 絡 電 流 の計 算 に 必 要 な定 義 を,図7.1に こ に述 べ る リア ク タ ン ス は 第6章 ce)で
よ っ て 行 う こ とが で き る 。 こ
に 述 べ た 直 軸 リア ク タ ン ス(direct‐axis
reactan
あ る 。 直 軸 リア ク タ ン ス は無 負 荷 に お け る誘 導 起 電 力 に対 して 位 相 角90° の 電
機 子 電 流 の 成 分 に よ っ て 生 じ る 電 圧 降 下 か ら計 算 さ れ る 。 電 機 子 の 抵 抗 は誘 導 リア ク タ ン ス と比 較 し て 小 さ く,短 絡 期 間 の 電 流 は 常 に90° 近 く遅 れ る の で,短 ク タ ン ス と して,直 図7.1の
オ シ ロ グ ラ ム に お い て,電
る 。 この1/√2倍 値│I│で
流0aは
reactance)あ
nous reactance)と
あ る。 定 常 状 態 の 短 絡 電 流 実 効
割 っ た値 は発 電 機 の 同期 リア ク タ ン ス
る い は 直 軸 同 期 リア ク タ ン ス(direct‐axis
よ び,Xdで
電 流 の 包 絡 線 を 時 間 の 原 点0ま
synchro
表 す 。 電 機 子 の 抵 抗 は比 較 的 小 さい の で 無 視 さ れ る。 で 延 長 し,減 少 が 非 常 に激 し い は じ め の数 サ イ ク ル
を 除 外 す る と,電 流 軸 と の 交 点 はbと 値 す な わ ち0bで │I '│と よ ばれ る
定 常 状 態 にお け る短 絡 電 流 の 値 で あ
の 電 流 値 が 短 絡 電 流 の 実 効 値│I│で
発 電 機 の 無 負 荷 誘 導 起 電 力│Eg│を
(synchronous
絡 時 の リア
軸 リア ク タ ン ス が 使 用 さ れ る 。
な る。 こ の 交 点 に よ っ て 表 さ れ る 電 流 の 実 効
表 され る電 流 値 の1/√2倍
の 電 流 値 は過 渡 電 流(transient
。 過 渡 電 流│I'│で 発 電 機 の 故 障 前 の 無 負 荷 誘 導 起 電 力│Eg│を
current) 割 った 値
│ Eg│/│I'│は 発 電 機 の過 渡 リア ク タ ン ス(transient ク タ ン ス(direct‐axis
transient
reactance)と
reactance)あ よ ば れ,Xd′
よ う に,定 常 状 態 に お け る短 絡 電 流 値(図7.1の0a)を 対 数 方 眼 紙 上 に プ ロ ッ トす る こ と に よ っ て,電 求 め る こ とが で き る 。 図7.1の0bに は,こ
るい は直軸過 渡 リア で 表 す 。 図7.2に
示す
超 過 した電 流 の 包絡 線 を半
流 包 絡 線 と電 流 軸 の 交 点 を よ り正 確 に
対 応 す る過 渡 電 流 の最 大 瞬 時 値 を得 るた め に
の包 絡 線 の 直 線 部 分 を電 流 軸 まで 延 長 し,こ の 交 点 の 電 流 値 を 求 め れ ば よ い 。
時 間 原 点0の
電 流 軸 と電 流 の 包 絡 線 の 交 点 に よ っ て 決 定 さ れ る 電 流 の 実 効 値 は初 期
過 渡 電 流 あ る い は 次 過 渡 電 流(subtransient い て,初 期 過 渡 電 流 は0cの1/√2で
current)│I"│と
よ ば れ る。 図7.1に
お
あ る 。 初 期 過 渡 電 流│I"│で
発電機 の端 子 に お け
る三 相 短 絡 故 障 前 の 無 負 荷 誘 導 起 電 力 を割 っ た 値│Eg│/│I"│は,発
電機 の直 軸初 期 過
渡 リア ク タ ン ス(direct‐axis
subtransient
以 上 に述 べ た 電 流 と リ ア ク タ ン ス は,発 荷 誘 導 起 電 力│Eg│に
reactance)と
よ ば れ, Xd"で
表 す。
電 機 の 端 子 に お け る三 相 短 絡 故 障 前 の 無 負
対 し て 次 の 式 に よ っ て 表 さ れ る。
(7.3) (7.4) (7.5)
図7.2
図7.1の 定 常短 絡 電 流 を超過 した 短 絡 電流 の包 絡 線
こ こ に,│I│=定
常 状 態の短 絡電 流 の実効 値
│I'│
=直 流 分 を 含 ま な い 過 渡 電 流 の 実 効 値
│I"│
=直 流 分 を 含 ま な い初 期 過 渡 電 流 の 実 効 値
Xd=直
軸 同 期 リア ク タ ン ス
Xd '=直 軸 過 渡 リ ア ク タ ン ス Xd"=直 軸 初 期 過 渡 リア ク タ ン ス │ Eg│=発
電 機 の 中性 点 と端 子 間 に 発 生 す る 無 負 荷 誘 導 起 電 力 の 実 効 値a
,b,c=図7.1の
縦軸 の点
で あ る。 解 析 に お い て は,定
常 短 絡 電 流,過
渡 電 流,お
よ び 初 期 過 渡 電 流 はEgを
基準 とし
て ベ ク トル で 表 さ れ る 。 電 機 子 巻 線 に 流 れ る短 絡 電 流 に よ っ て 生 じ る発 電 機 の 空 隙 を 通 る磁 束 は故 障 発 生 直 後 か ら徐 々 に減 少 す る の で,初
期 過 渡 電 流│I"│は 定 常 状 態 の 短 絡 電 流 よ りか な り大
きい 。 故 障 直 後 に 電 機 子 巻 線 に誘 導 さ れ る起 電 力 は,短 絡 電 流 が 定 常 状 態 に 到 達 した 後 の 誘 導 起 電 力 よ りか な り大 き い 。 しか し な が ら,初 期 過 渡,過 条 件 に つ い て 電 流 を 求 め る に は,無
負 荷 誘 導 起 電 力│Eg│を
渡,お
よ び 定 常 の各
一 定 と し,こ
の誘 導起 電
力 と直 列 な リア ク タ ン ス が 時 間 の 経 過 と共 に 異 な る値 を と る も の と し て 計 算 す る 。 (7.3)式 か ら(7.5)式 は リア ク タ ン ス が 与 え られ た と き発 電 機 の 短 絡 電 流 を 求 め る方 法 を 示 し て い る 。 発 電 機 が 故 障 発 生 直 前 に 無 負 荷 で あ る とす れ ば,発
電機 の 等価 回路
は 中性 点 に 対 す る無 負 荷 誘 導 起 電 力 と直 列 な リア ク タ ン ス で 表 さ れ る 。 さ ら に正 確 な 計 算 が 要 求 され る場 合 に は抵 抗 も考 慮 す る 。 発 電 機 端 子 と故 障 回 路 間 に外 部 イ ン ピー ダ ン ス が あ る場 合 に は,そ
【 例 題7.1】 図7.3に
の外部 イ ンピーダ ンス を回路 に含 めな けれ ば な らない。
示 す よ う に,三 相 変 圧 器 はΔ‐Y結 線 で あ り,そ
台 の 発 電 機 が 並 列 に 接 続 さ れ て い る。 発 電 機#1は り,発 電 機#2は
定 格25,000kVA,13.8kVで
定 格50,000kVA,13.8kVで
あ る。 各 発 電 機 は25%の
ア ク タ ンス を 持 っ て い る。 変 圧 器 は 定 格75,000kVA,13.8(Δ)/69(Y)kV,リ
図7.3
例 題7.1の
の 低 圧 側 に2
単線 図
あ 初 期 過渡 リ アク
タ ン ス は 自 己 容 量(機
器)ベ
器 の 高 圧 側 の 電 圧 は66kVで
ー ス で10%で
あ る 。 三 相 短 絡 故 障 が 発 生 す る前 は 変 圧
あ る。 変 圧 器 は 無 負 荷 で あ り,発 電 機 間 に は循 環 電 流
は 存 在 し な い 。 三 相 短 絡 故 障 が 変 圧 器 の 高 圧 側 で 発 生 す る も の と して,各
発電 機 の初
期 過 渡 電 流 を 求 め よ。 [解] べ ー ス 値 を 高 圧 側 の69kV,75,000kVAに ス 電 圧 は13.8kVで
選 ぶ 。 し た が っ て,低
圧 側 のべ ー
あ る。
発 電 機#1に
つ いて
発 電 機#2に
つ いて
変圧 器 につ いて
であ る。 図7.4は
故 障 発 生 前 の リ ア ク タ ン ス 図 を示 す 。P点
の 三 相 短 絡 故 障 は ス イ ッ チS
を 閉 じ る こ と に よ っ て 表 さ れ る 。 両 発 電 機 間 に は循 環 電 流 は 流 れ な い の で,両 の 誘 導 起 電 力 は大 き さ と位 相 が 等 し い 。 等 価 並 列 初 期 過 渡 リ ア ク タ ンス は,
図7.4
例 題7.1の
リア クタ ンス図
発電 機
と な る。 し た が っ て,Egを
基 準 とす る ベ ク トル と し て,三
相 短 絡 に お け る初 期 過 渡
電流 は次 の よ うにな る。
変圧 器 のΔ 接 続側 の電圧 は
とな る。 そ して,発
電 流 をAの
電 機#1と#2に
単 位 で 表 す に は,pu値
お い て,
に回路 のべ ー ス電 流値 を か け るこ とに よっ て求
め られ る。
7.1.3
負荷電 力を供給 している同期機の誘導 起電 力
短絡 故 障 が発 生 す る以前 に負荷 電 流が 流 れ てい る場 合 の 同期 発 電 機 の 特性 を調 べ る。図7.5(a)は が 発生 す る点Pと
平 衡三相 負荷 を持 つ発 電機 の等価 回 路 で あ る。 発電 機 の端 子 と故 障 の 間の イ ンピー ダ ンスが 示 され て い る。 点Pに
障 が 発生 す る前 に流 れ て い る電 流 をIL,故
障 点 の電 圧 をVf,発
Vtとす る。 同期 発 電機 の等価 回路 は無 負荷 電圧Egと 表 され る。 系 統 の点Pで
お いて三 相短 絡故 電 機 の端 子 電 圧 を
直列 な同期 リアク タ ンスXsで
三相 短 絡故 障 が発 生 す る とき,初 期 過 渡電 流 を計 算 す る場
合 は発 電機 の リア ク タ ンス はXd",過
渡 電 流 を計 算 す る場 合 はXd'を 用 いな けれ ば
な らな いので,こ の等価 回路 は初 期過渡 電 流 を計 算 す る条件 を満足 して いない。 図7.5の(b)は
修 正 した 回路 を示 す 。 こ こで,Xd"と
直 列 な誘 導起 電力Eg"は
ス
イ ッチSが 開 い てい る間 は定 常負荷 電 流ILを 流 してお り,ス イ ッチSが 閉 じ られ る
(a) 定 常状 態 負 荷 を とっ て い る発
(b) 三相 平 衡 故 障計 算 に適 用 され る負
電 機 等価 回路
荷 を とって い る発 電 機 等 価 回路
図7.5 定常 状 態 に お い て三相 対 称 負 荷 を とる発 電 機 の 等価 回路 と三 相 平 衡 故 障 計 算 に 適 用 され る三 相対 称 負 荷 を とる発 電 機 の 等価 回路
と,Xd"とZextを
通 して 短 絡 回 路 に 電 流 を 流 す 。Eg"が
流 れ る 電 流 はI"で
あ る。 ス イ ッ チSが
決 定 さ れ る な ら ば,Xd"を
開 い て い る と き,次
の よ う に な る。
(7.6) この 方 程 式 は初 期 過 渡 誘 導 起 電 力(subtransient 同様 に,過 渡 リア ク タ ン スXd'を
internal voltage)Eg"を
通 し て短 絡 回 路 に 流 す 過 渡 電 流I'を
電 圧 は過 渡 誘 導 起 電 力(transient
internal
voltage)Eg'を
定 義 す る。 計 算 す る と き,
定 義 す る 。 こ こ に,次
式
が 成 立 す る。
(7.7) 電 圧Eg"とEg'はILに 負 荷 電 圧Egに こ こ で,故
よ っ て 決 定 さ れ,電
流ILが0の
等 し く,そ の と き,EgはVtに 障 前 の 電 流 がILで
と き,電
あ る と き の み,Xd"に
直 列 なEg"は
対 し て,図(a)の
発 電 機 の 誘 導 起 電 力 はEg"で
同期 電 動 機 は 発 電 機 と同 様 に,各 動 機 が 短 絡 さ れ る と,も が 流 れ,回
故 障 が発 生 す る
期 リア ク タ ン スXs
任 意 の 負 荷 の 定 常 状 態 に お け る同 期 発 電 機 の 等 価 回 路 を表 す 。 図7.5
の 両 回 路 の 同 じ負 荷 電 流 値ILに が,図(b)の
無
等 しい 。
前 と故 障 が 発 生 した 直 後 の 発 電 機 の 誘 導 起 電 力 を表 す 。 一 方,同 に直 列 なEgは
圧Eg"とEg'は
発 電 機 の 誘 導 起 電 力 はEgで
あ る
ある。
過 渡 状 態 に応 じた リア ク タ ン ス を 持 っ て い る 。 電
は や 系 統 か ら電 力 を 受 電 で き な い が,そ
の 界 磁 に は励 磁 電 流
転 子 の 慣 性 と接 続 さ れ て い る 負 荷 は,短 時 間 の 間,電
動 機 の 回 転 を継 続 さ
せ る。 同 期 電 動 機 の誘 導 起 電 力 は 系 統 に 電 流 を 供 給 し,発 電 機 の よ う に作 用 す る 。 発 電 機 で 導 か れ た 式 と比 較 す る こ と に よ っ て,同
期 電 動 機 に対 して も,初 期 過 渡 誘 導 起
電力,過 渡誘導起 電 力 が次 の よ うに与 え られ る。 (7.8) (7.9) 負 荷 に電 力 を供 給 し て い る状 態 に あ る発 電 機 お よ び電 動 機 を含 む 回 路 は,次 に示 す よ う に,テ
の例 題
ブ ナ ン の 定 理*と 初 期 過 渡 あ る い は過 渡 誘 導 起 電 力 を使 用 し て 解 析
す る こ とが で き る 。
【 例 題7.2】
同 期 発 電 機 お よ び電 動 機 は定 格30,000kVA,13.2kVで
初 期 過 渡 リ ア ク タ ン ス は 自 己 容 量(機 の リ ア ク タ ン ス は,発
器)べ
ー ス で20%で
電 機 の 定 格 値 の べ ー ス で10%で
あ る。 電 動 機 の 端 子 で 三 相 短
絡 故 障 が 発 生 す る と き,電 動 機 は 進 み 力 率0.8で20,000kWを と き の 端 子 電 圧 は12.8kVで 電 機,電
受 電 し て お り,そ
の
あ る。 発 電 機 お よ び 電 動 機 の 誘 導 起 電 力 を 用 い て,発
動 機 お よ び故 障 点 に お け る初 期 過 渡 電 流 を求 め よ。
[解] 同 期 発 電 機 お よ び 電 動 機 の 定 格30,000kW,13.2kVを 7.6(a)は
あ り,両 者 の
あ る。 そ れ ら を 結 ぶ 線 路
べ ー ス値 に選 ぶ。 図
問 題 とす る 系 の 等 価 回 路 で あ る。
基 準 ベ ク トル と し て 故 障 点 の 電 圧Vfを
使 用 す る な ら ば,
(a)
(b) 図7.6
* テ ブ ナ ン(Thevenin)の
例 題7.2の
定 理 :一 般 に 電 圧 源,電
電 源 側 を見 込 ん だ等 価 回路 は,そ
流 源 を含 む 回 路 に お い て,任
の端 子 対 の 開 放 電 圧 をV0,電
そ の端 子 対 か ら見 込 ん だ イ ン ピー ダ ン ス をZ0と 回路 で 表 さ れ る。
等 価 回路
意 の端子対 よ り
圧 源 を短 絡 し,電 流 源 を開 放 し て,
す る とき,開 放 電 圧V0と
イ ン ピ ー ダ ン スZ0の
直列
べ ー ス 電 流 は,
で あ る 。 負 荷 電 流 は,
と な る。 発 電 機 につ い て は,
で あ るか ら,初 期 過 渡 電 流 は 次 の よ う に な る 。
電 動 機 につ い て,
で あ る か ら,初 期 過 渡 電 流 は 次 の よ う に な る 。
と な る。 よ っ て,短
絡 電 流 につ い て,
を 得 る 。 図7.6(b)は
発 電 機 電 流Ig",電
動 機 電 流Im"お
よ び 故 障 点 電 流If"の
流れ
る回路 を示 す。
故 障 点 に お け る 初 期 過 渡 電 流 は テ ブ ナ ン の定 理 を 用 い て も求 め る こ とが で き る 。 こ の 定 理 は 線 形,双
方 向 性 回 路 に 適 用 され る。 こ の 定 理 が 図7.5(b)の
る と き,等 価 回 路 は故 障 が 生 じた 点 を端 子 とす る1つ
回 路 に適 用 さ れ
の 等 価 電 源 と1つ の 等 価 イ ン ピ
ー ダ ン ス を持 つ 回 路 で あ る
。 等 価 電 源 は,故 障 が 起 こ る前 の 故 障 点 の 電 圧Vfに
い 電 圧 を 持 ち,等
等 し
価 イ ン ピー ダ ン ス は対 象 と す る 回 路 の す べ て の 電 圧 源 を短 絡 し,故
障 点 か ら見 た こ の 回 路 の イ ン ピ ー ダ ン ス で あ る。 初 期 過 渡 電 流 を 求 め よ う と す る と き,回 路 の イ ン ピ ー ダ ン ス と し て 初 期 過 渡 リ ア ク タ ン ス を 用 い る。 図7.7は,図 7.5(b)の
テ ブ ナ ン等 価 回路 で あ る。 イ ン ピー ダ ン スZthは,
に 等 し い 。P点
に お け る 三 相 短 絡 の 発 生 を,ス
イ ッ チSを
閉 じ る こ とに よ っ て 模 擬
す る と,故 障 の 初 期 過 渡 電 流 は 次 の よ う に な る 。
(7.10)
図7.7
【 例 題7.3】
例 題7.2を
テ ブ ナ ン等 価 回 路
テ ブ ナ ンの 定 理 を 用 い て 解 く こ と に し よ う。
[解] 等 価 イ ン ピー ダ ン ス は,
等価 電源 の電 圧 は,
図7.5(b)の
と な る 。 短 絡 電 流 は,
を得 る。
7.2
対 称 座 標 法
不 平 衡 多 相 回 路 の 問題 を 扱 う非 常 に有 効 な 方 法 が,1918年C.L.Fortescueに て 提 案 され た 。 そ の 方 法 は 対 称 座 標 法(method ば れ る 。 そ れ 以 来,1線
of symmetrical
あ る い は2線 地 絡 故 障,線
間 短 絡 故 障,断
よっ
components)と
よ
線 な ど の 送 電系 統
の 不 平 衡 故 障 に対 称 座 標 法 が 利 用 さ れ て い る 。
7.2.1
対 称 分 か ら 不 平 衡 ベ ク トル の 合 成
Fortescueは,不
平 衡 なn相
の ベ ク トル系 がn相
る こ とが で き る こ と を証 明 し,こ の 対 称 分(symmetrical ル はn個
の 平 衡 な系 の ベ ク トル に 分 解 す
の 平 衡 な系 の ベ ク トル を 不 平 衡 な元 の系 の ベ ク トル
components)と
よ ん だ 。 各 対 称 分 を 構 成 す る一 組 の ベ ク ト
の ベ ク トル か ら成 り,各 ベ ク トル は同 じ 大 き さ を 持 ち,隣
り合 う ベ ク トル
の な す 角 は等 し い 。 この 方 法 は 任 意 の 不 平 衡 多 相系 ベ ク トル に応 用 で き る が,こ
こで
は,三 相系 に 限 定 す る こ とに す る。 三 相系 の3つ
の不 平 衡 ベ ク トル は,3組
の 平 衡 した ベ ク トル の 成 分 に分 解 す る こ と
が で き る 。 ベ ク トル の成 分 が 平 衡 し た 組 は次 の よ う で あ る 。 (1) 正 相 分(positive‐sequence
components)は3つ
き さ は 等 し く,位 相 差 は互 い に120° で あ り,元 順(phase
sequence)で
の ベ ク トル で 構 成 さ れ,大
の ベ ク トル と同 じ相 回 転 あ る い は 相
ある。
(2) 逆 相 分(negative‐sequence
components)は3つ
大 き さ は 等 し く,位 相 差 は互 い に120° で あ り,元 (3) 零 相 分(zero‐sequence
components)は3つ
さ は 等 し く,位 相 角 は お 互 い に等 し い(位
の ベ ク トル で 構 成 さ れ,大
き
相 差 は0)。
対 称 分 を用 い て不 平 衡 の 問題 を 解 く場 合,系 相 回 転 が 時 計 回 りで あ る な らば,こ
の ベ ク トル で 構 成 さ れ,
の ベ ク トル と逆 の相 回 転 で あ る 。
統 の 電 圧 電 流 の 相 がa,b,cで
れ と同 様 に 対 称 分 の 三 相 を表 す 記 号 もa,bお
あ り, よ
びcで
表 す の が 一 般 的 で あ る 。 ま た,元
回 りにa,b,cの
相 順 で あ り,逆 相 分 の 相 回 転 は反 時 計 回 り にa,b,cの
る 。 元 の 電 圧 ベ ク トル をVa,Vb,Vcと に つ い て,正
相 分 は添 字1,逆
相 分 はVa0,Vb0,Vc0と
相順であ
表 し,こ の ベ ク トル 系 の 対 称 分 の3つ
相 分 は 添 字2,零
三 相 不 平 衡 電 圧 ベ ク トルVa,Vb,Vcの Vb2,Vc2,零
の 不 平 衡 ベ ク トル の 正 相 分 の 相 回 転 は 時 計
相 分 は 添 字0を
正 相 分 はVa1,Vb1,Vc1,逆 表 す 。 図7.8は,こ
表 す 。 電 流 ベ ク トル の 対 称 分 は電 流 の 表 示 記 号Iに
の組
用 い て 表 す 。 よ っ て, 相 分 はVa2,
の よ う な3組
の対 称 分 を
電 圧 と同 様 な 添 字 を用 い て 表 す 。
電 圧 の 元 の 不 平 衡 ベ ク トル は各 成 分 の 和 で あ り,次 式 で 表 され る。
(7.11) (7.12) (7.13) 図7.8の3組
の 対 称 分 か ら3つ の 不 平 衡 ベ ク トル の 合 成 を 図7.9に
正相分
逆相分
示 す。
零相分
図7.8 三 相 不 平衡 ベ ク トル か ら得 られ た対 称 分
図7.9 対 称 分 を合 成 して 得 られ た 三相 不 平 衡 ベ ク トル
7.2.2
演算子
三 相 系 統 の 電 圧 お よ び 電 流 の 対 称 分 の 位 相 差 を 表 す た め,120°
の相 回 転 を表 す簡
単 な 表 記 法 を 用 い る の が 便 利 で あ る。2つ の 複 素 数 の 積 は大 き さ の 積 と位 相 角 の 和 と な る 。 ベ ク トル を 表 す 複 素 数 が 大 き さ1で,位
相 角 θ の 複 素 数 が か け られ る な らば,
か け ら れ た 複 素 数 は元 の ベ ク トル を 角 θだ け回 転 し た ベ ク トル と な る。 大 き さ1で 位 相 角 θ の 複 素 数 は,そ れ が 作 用 す る ベ ク トル を 角 θ回 転 させ る演 算 子(operator)で
あ る 。 演 算 子jは
す で に よ く知 られ て い る よ う に,jを
ベ ク トル は90° 反 時 計 回 り に 回 転 し,j2=-1を る。 演 算 子jを
続 け て2回
か け られ た
か け ら れ た ベ ク トル は180° 回 転 す
ベ ク トル に 作 用 す る と,作 用 さ れ た ベ ク トル は 角 度 が90°
+90° 回 転 す る。 こ れ はj×jが
作 用 さ れ た ベ ク トル を180° 回 転 さ せ る の で,j×jが
-1に 等 し い こ とが わ か る。 演 算 子jを 続 け て 作 用 す る と き,す
な わ ちjの 累 乗 の 作
用 は90° の 累 乗 の 数 倍 だ けベ ク トル を 回 転 さ せ る 。 一 般 に,反 時 計 方 向 に120° 回 転 さ せ る 演 算 子 をaで で,位
表 す 。 こ の 演 算 子 は 大 き さ1
相 角120° の 複 素 数 で あ り,次 式 の よ う に表 され る。
演 算 子aを
続 け て2回
ベ ク トル に作 用 す る と,作 用 さ れ た ベ ク トル は120°+120°=
240°回 転 し,演 算 子aを3回
作 用 す る と,ベ ク トル を360° 回 転 す る 。 す な わ ち,
で あ る。
7.2.3
非 対 称 ベ ク トル の 対 称 分
図7.9に
お い て3組
の 対 称 ベ ク トル を用 い て 三 相 の 非 対 称 ベ ク トル を 合 成 で き る こ
とが わ か っ た 。 合 成 は(7.11)式,(7.12)式,お 対 称 ベ ク トル を3組
よび(7 .13)式 に よ っ て 行 う 。 三 相 の 非
の 対 称 ベ ク トル に分 解 す る 関係 式 は,合
成 に使 用 した(7.11)式
か
ら(7.13)式 に よ っ て 導 か れ る 。
ま ず,未
知 数 で あ る対 称 分 の 数 をVa1,Va2,Va0と
減 少 す る こ と が で き る。 こ こで は,Va1,Va2,Va0を 図7.8を
演 算 子aの
累 乗 の 積 に よっ て
そ れ ぞ れV1,V2,V0と
参 考 に して 次 の 関 係 が 成 立 す る こ とが わ か る。
表 す。
(7.14)
(7.11)式
を 用 い,(7.14)式
を(7.12)式
と(7.13)式
に代 入 し て 次 の 関 係 を 得 る 。
(7.15) (7.16) (7.17) 行列 式 で表せ ば,
(7.18)
とな る。 便 宜 的 に,演 算 子 行 列 を次 の よ う に表 す 。
(7.19)
(7.19)式 の 逆 行 列 と し て 次 式 が 得 ら れ る。
(7.20)
(7.18)式 の 両 辺 の 左 側 にA-1を
か け る と,次 の 結 果 を得 る 。
(7.21)
(7.21)式 は 非 対 称 ベ ク トル を 対 称 ベ ク トル に 分 解 す る 関 係 式 で あ る 。(7.21)式
を対
称 分 ご と に代 数 式 に書 き表 す と,次 の よ う に 表 さ れ る。
(7.22) (7.23)
(7.24) と な る。 そ の 他 の 成 分Vb0,Vb1,Vb2お
よ びVc0,Vc1,Vc2が
必 要 な と き は,
(7.14)式 か ら計 算 さ れ る。 (7.22)式 は非 対 称 ベ ク トル の和 が0な 系 統 の 線 間 電 圧 の 和 は 常 に0で
ら ば,零 相 分 は 存 在 しな い こ と を 示 す 。 三 相
あ る の で,線
間電圧 には零相 分 は存在 しない。各 線路
と 中 性 線 間 の 電 圧 す な わ ち各 相 電 圧 の和 は0で
あ る と は 限 らな い の で ,中 性 点 の 電 圧
は零 相 分 を含 む こ と もあ る。 以 上 の 式 は電 圧 に つ い て 表 し て い る が,電
圧 の代 わ りに 電 流 に つ い て も 同様 な形 式
で 書 く こ とが で き る 。 電 流 に つ い て ま とめ て 表 す と,次 対 称 分 か ら,各 線 電 流(相
電 流)の
の よ う に な る。
合 成 は 次 の よ うに な る。
(7.25) (7.26) (7.27) 各線 電 流か ら対称 分電 流 を求 める には,次 の関 係式 によ る。
(7.28) (7.29) (7.30) 三 相 系 統 に お い て,線 電 流 の 和 は 中 性 点 を 通 る 帰 路(return
pass)の
電 流Inに
等
しい 。 よ っ て,
(7.31) が 成 立 し,(7.28)式
と(7.31)式
を 比 較 し て,
とな る。 三相 系 統 にお いて 中性 点 を通 る帰 路 が な い な らば,Inは0で
(7.32) あ り,線 電 流
は零 相 分 を含 まな い。Δ 接続 の負荷 は中性 点 を通 る帰路 が な いので,Δ 接続 の負荷 に 流 れ る線 電 流 は零 相分 を含 まない。
図7.10
【 例 題7.4】 三 相 回 路 の1導 に 流 れ る 電 流 は10Aで とす る,線
例 題7.4の
回路
体 が 断 線 し た と す る。a相
の 導 体 を 通 してΔ 接 続 の 負 荷
あ る 。a相 の 線 路 の 電 流 を基 準 と し,c相
の 線 路 が 断 線 した
路 を 流 れ る線 電 流 の 対 称 分 を 求 め よ。
[解] 図7.10に
回 路 図 を示 す 。a相 の 線 電 流 が す べ てb相
で あ る。(7.28)式
か ら(7.31)式
と な る 。(7.14)式
か ら
を流れ るこ とにな るので
に よ っ て 電 流 の 対 称 分 を求 め る。
を得 る。 c相 の線 路が 断線 す れば,電 流 は流 れな いが,c相 は0で な い値 を取 る こ とに注意 す る。
の線 路 の正 相 お よび逆 相 分電 流
7.2.4 Y‐Δ
接続 の変圧器 バンクの対称 分の位相変化
図7.11はY‐Δ
変 圧 器 の 結 線 図 で あ り,ま ず,Y結
に つ い て 位 相 変 化 を検 討 す る 。 高 圧 側 端 子U,V,お よ びC相
に 接 続 さ れ,相
順 はA→B→Cで
線 が 高 圧 の 電 源 側 に あ る場 合 よ びWは
そ れ ぞ れA,B,お
あ る。 平 行 な 向 き に描 か れ た 巻 線 は,同
じ鉄 心 上 に巻 か れ て 磁 気 的 に結 合 して い る。 図7.11(a)に
お い て,Y結
線 側 の 相 巻 線UNはΔ
結 線 側 の 相 巻 線uvと
結 合 して い る 。 巻 線 上 の 点 印 の 位 置 は,VANがVabと 子 をA相
に,VをB相
に,WをC相
に 接 続 す る。
Y‐Δ あ る い はΔ‐Y結 線 の 変 圧 器 に つ い て,わ 線 の 場 合,電 Δ ,2次
圧 の 位 相 は2次
側 がY結
線 の 場 合,1次
る。1次 側 がY,2次
が 国 で は1次 側 がY,2次
側 よ り1次 側 が30° 進 み と な る 結 線,ま 側 が2次
磁気的 に
同 相 で あ る こ と を 示 す 。U端
側 がΔ 結 た,1次
側 がΔ 結 線 の 場 合 に つ い て,電
圧 の対 称 分 の 位 相 図 は 図
(a) 三相 変 圧 器 のY‐Δ 結 線 図
(b) 電圧 の対称 分
(c) 電 流 の対称 分 図7.11
三 相 変圧 器 の高 圧側 をY結
側 が
側 よ り30°遅 れ と な る 結 線 を標 準 と し て い
線 とす るY‐Δ 結 線 と電 圧,電 流対 称 分
7.11(b)に
示 す よ うに な る。 正 相 分 電 圧 をVA1と
VA1 はVa1よ
示 し た 正 相 分 お よ び 逆 相 分 ベ ク トル の 位 相 図 を 見 る と,VA1がVa1
よ り30°位 相 が 進 み,VA2がVa2よ
り30° 位 相 が 遅 れ て い る。 図 で はVA1とVA2が
相 に 描 か れ て い る が,VA1とVA2の
間 の 位 相 差 は 任 意 で よ く,VA1とVa1,お
間 の 位 相 差 は変 化 は な い 。 図7.11(a)のIAに
器 巻 線 に点 を 印 した 位 置 か ら 点 の な い 向 き に,Iabの 位 置 か ら点 の な い 向 き で あ る の で,こ て,Y結
の電圧 も同様 に表 示 す る。
り30° 位 相 が 進 む 。
図7.11(b)に
VA2とVa2の
表 し,他
よび
指 定 さ れ た 向 き は,変
圧
向 き は変 圧 器 巻 線 に 点 を 印 し た
れ ら の 電 流 の 位 相 差 は180° で あ る。 し た が っ
線 とΔ 結 線 の 電 流 間 の 位 相 関 係 は 図7.11(c)に
よ り位 相 が30° 遅 れ,Ia2はIA2よ
同
示 す よ う に な る 。Ia1はIA1
り位 相 が30° 進 む こ と に 注 意 す る。 変 圧 器 の1次
と
2次 の線 電 流 の対 称 分 間 の 関 係 を ま とめ る と次 の よ うに な る。
(7.33) こ こ に,各 図7.12は に,Uか
電 圧 と電 流 は単 位 法 で 表 し て い る。 高 圧 側 がΔ 結 線 で,電
源 側 に あ る場 合 を 示 す 。 図7.12(b)に
ら 中性 点 へ の 正 相 分 電 圧 がuか
れ る た め に は,VcA1とVc1の
示す よ う
ら 中 性 点 へ の 正 相 分 電 圧 よ り30° 位 相 が 遅
位 相 差 は 等 し く,図7.19(c)に
示 す よ う にIcA1とIc1
の 位 相 差 も等 し くな け れ ば な らな い 。 電 圧 と電 流 の 位 相 図 か ら(7.34)式
が 成 立 す る。
(7.34) IA,IBお
よびICは 変 圧器 に向 か う方 向,Ia,Ibお
よびIcは 変 圧 器 か ら流 れ 出す
方向 を正 としてい る。
7.2.5
対称 分による電 力の表現式
電流 お よび電圧 の対称 分 が与 え られ る な らば,各 相 の電力 は対称 成分 か ら直 接計 算 す る ことが で きる。 a,bお
よびc相 に よって送電 され る全 複素 電 力 は,次 の ように表 され る。 (7.35)
こ こ に,Va,Vbお
よ びVcは
端 子 に お け る 相 電 圧 で あ り,Ia,Ibお
の線 電 流 で あ る。 行 列 で 表 す と,
よ びIcは
各相
(a) 三 相変 圧 器 のY‐Δ 結 線 図
(b) 電 圧 の対 称 分
(c) 電 流の 対称 分 図7.12
三 相 変 圧 器 の高 圧側 をΔ 結線 とす るΔ‐Y結 線 と電 圧,電 流対称 分
(7.36)
こ こ に,行
列 の 共 役 値 は元 の 行 列 の 対 応 す る要 素 の 共 役 値 で あ る 要 素 か ら成 り立 っ て
い る。 電 圧 お よ び 電 流 の 対 称 分 を 導 入 す る た め,(7.36)式
お よ び(7.37)式
を使 用 す る 。
(7.37) こ こ に,
(7.38)
で あ る。 行 列 演 算 に お い て,2つ
の 行 列 の 積 の 転 置 行 列 は,そ
を交 換 し た 行 列 に 等 しい 。 す な わ ち,(7.39)式
れ ぞれ の転 置 行列 の積 の順 序
の よ う な 関 係 が 成 り立 つ 。
(7.39) この 法 則 に 従 い,
(7.40) を得 る 。 さ ら に,AT=Aで
あ り,aとa2は
共 役 で あ る こ と に 注 意 し て,次
の結 果 を
得 る。
(7.41)
よ っ て,
(7.42)
複 素 電 力Sは
次 の よ う に表 さ れ る。
(7.43) この関係 は三相 回路 の複 素 電力 が電圧 お よび電 流の 各対称 分 か ら直接 計算 され る こと を示 す。
7.2.6
対 称 分 イ ン ピー ダ ン ス と対 称 分 回 路 網
一般 に,平 衡 回路 の あ る部 分 に対称 分電 流が流 れ る とき,そ の電 流 に対 す る対称分 イ ン ピー ダ ンス はその部 分 に別 の対称 分電 流が流 れ る と きの対 称分 イ ン ピー ダ ンス と 異 なる値 を示 す。
正 相 電 流 の み が 流 れ る場 合 の 回 路 の イ ン ピー ダ ン ス は 正 相 イ ン ピ ー ダ ン ス(posi tive‐sequence ative‐sequence (zero‐sequence
impedance),逆
相 分 の 電 流 が 流 れ る場 合 は逆 相 イ ン ピー ダ ン ス(neg
impedance),零 current
相 電 流 の みが 流 れ る場 合 は零 相 イ ン ピ ー ダ ン ス
impedance)と
系 統 に 発 生 した 非 対 称 故 障(不
よぶ。
平 衡 故 障)の
解 析 は,流
れ る不 平 衡 電 流 に対 す る対
称 分 イ ン ピ ー ダ ン ス を まず 求 め る こ とで あ る 。1つ の 対 称 分 回 路 に は そ の 回 路 に 対 応 す る 対 称 分 電 流 が 流 れ,同
じ対 称 分 の 電 圧 降 下 の み を生 じ,他
は無 関 係 で あ る 。 正 相 電 流 は正 相 回 路 に の み 流 れ,逆 い 。 正 相 電 流 の 流 れ る 回 路 は 正 相 回 路,逆 の 流 れ る回 路 は 零 相 回 路 と い い,こ
の対称 分 回路 の電 流 に
相 回路 や 零相 回路 に は流 れ な
相 電 流 の 流 れ る 回路 は逆 相 回 路,零
れ ら を 総 称 して 対 称 回 路(sequence
相電 流
network)
と よ ぶ 。 対 称 回 路 は 同 じ対 称 分 の 発 電 機 の誘 導 起 電 力 を含 む 。
7.2.7 図7.13に
無負荷発電機 の対称分 回路 リア ク トル 接 地 さ れ た 無 負 荷 発 電 機 を示 す 。 故 障 が 発 電 機 の 端 子 に お い
て 発 生 す る と き,電
流Ia,Ib,Icが
発 電 機 の 中 性 点 に は電 流Inが
線 路 に 流 れ る 。 故 障 が 接 地 事 故 で あ る な ら ば,
流 れ る 。 一 線 あ る い は二 線 の 電 流 が0で
あ っ て も,ま
た ど ん な 不 平 衡 で あ っ て も,電 流 は 対 称 分 に 分 解 す る こ とが で き る 。 発 電 機 は平 衡 した 三 相 電 圧 の み を 供 給 す る よ う に設 計 さ れ て い る の で,発 生 す る誘 導 起 電 力 は正 相 分 の み で あ る。 し た が っ て,正
電機 の 発
相 回路 は発 電機 の正 相 イ ン ピ
ー ダ ン ス と直 列 な 発 電 機 の誘 導 起 電 力 か ら成 り立つ。 逆 相 お よ び 零 相 回 路 は誘 導 起 電 力 は含 ま な い が,そ
れ ぞ れ 逆 相,零
相 イ ン ピー ダ ン ス を含 ん で い る。 図7.14に
称 分 電 流 に対 応 す る対 称 分 回 路 を 示 す 。 図7.14に
図7.13
示 さ れ た 対 称 分 回 路 は,不
中性 点 リア ク タ ンス 接 地 の発 電 機 の 回路 図
各対 平衡 電
(a) 正 相 電 流 回路(b)
(c) 逆相 電 流 回 路(d)
(e) 零 相 電 流回 路(f)
対称分電流の回路 図7.14
正相 回路
逆相 回路
零 相 回路
対称分 回路
発 電機 の対 称 分電 流 回路 と対称 分 回路
流 か ら得 られた対 称分 の三相 電流 が流 れ る と考 え る対称 分 三相 回路 の一相 につい て表 した回路 で あ る。 正相 回路 の誘導 起電 力 は,無 負荷 発電 機 の中性 点 と無負荷 端 子 間の 電圧 で あ り,発 電機 が無 負荷 で あ るので,そ の電圧 は初 期過 渡,過 渡 あ るい は定常誘 導起 電力 で あ る。正 相 回路 の リア クタ ンス は,検 討 し よう とす る現象 が初期 過渡,過 渡 あ るいは定 常状 態の いず れ を対 象 とす るか に よって,初 期 過渡,過 渡 あ るいは同期 リアク タ ンスが用 い られ る。 正相 お よび逆相分 回路 の 中性線 は,発 電機 の中性 点 で ある。正相 お よび逆 相分 回路 の発電 機 の中性 点 に関 して は,中 性 点 と大地 の間 にイ ン ピーダ ンスが接 続 され て いて い るか,あ るい は直 接接 地 され てい るか には関係 な く,中 性 点 と大 地 との間 には正相
電 流 お よび 逆 相 電 流 は 流 れ な い の で,中 一 方,発
性 点 は大 地 電 位 に あ る 。
電 機 の 中 性 点 と大 地 の 中 性 線 と の 間 に 挿 入 さ れ た 接 地 イ ン ピ ー ダ ン スZn
に 流 れ る電 流 は3I0で
あ る。 図7.14(e)を
見 る と わ か る よ う に,発
ら大 地 ま で の 零 相 回 路 の 電 圧 降 下 は−3I0Zn−I0Zg0で
あ る 。 こ こ に, Zg0は 発 電 機 の
1相 当 た りの 零 相 イ ン ピー ダ ン ス で あ る。 零 相 回 路 は1相 と して 扱 う の で,図7.14(f)に 路 の イ ン ピー ダ ン ス は,発
示 す よ う に,発
値 を加 え,3Zn+Zg0と
電 機 の 端 子aか
の 零 相 電 流 の み を流 す も の
電 機 の 端 子aか
ら大 地 ま で の 零 相 回
電 機 の 零 相 イ ン ピ ー ダ ン ス に接 地 イ ン ピ ー ダ ン ス の3倍
し な け れ ば な らな い 。 電 流I0が
の
流 れ る 発 電 機 の端 子 か ら大 地
の 中性 線 まで の 零 相 回路 の全 零 相 イ ン ピ ー ダ ン ス は,
(7.44) となる。 一 般 に,a相
の 電 流 と電 圧 の 成 分 は,対 称 分 回 路 に 関 す る式 か ら 求 め られ る。a相
に つ い て の 発 電 機 の 端 子aか 程 式 は,図7.14か
ら大 地 の 中 性 線 ま で の 電 圧 降 下 の 各 対 称 分 に 関 す る 方
ら,次 の よ うに 表 され る 。(添 字aを
省 略)
(7.45) (7.46) (7.47) こ こ に,Eaは
中 性 点 に対 す る 発 電 機 の 正 相 無 負 荷 電 圧,す
導 起 電 力,Z1お
よ びZ2は
な わ ち 発 電 機 の1相
の誘
発 電 機 の 正 相 お よ び 逆 相 イ ン ピ ー ダ ン ス で あ り,Z0は
(7.44)式 で 表 さ れ る零 相 イ ン ピー ダ ン ス で あ る。 不 平 衡 電 流 を 流 し て い る発 電 機 に適 用 され る(7.44)式
∼(7.47)式
式 の 出 発 点 で あ る 。(7.44)式
は,種
々 な 故 障 に 関 す る電 流 の 対 称 分 を求 め る際 の 方 程
∼(7.47)式
は定 常 状 態 に お い て 負 荷 を と っ て 運 転 さ れ て
い る 発 電 機 に も適 用 さ れ る 。 過 渡 条 件 あ る い は 初 期 過 渡 条 件 に お け る計 算 に は,Ea に対 しEg',Eg"を
代 入 し て,(7.44)式
∼(7.47)式
が 負 荷 を と っ て い る 発 電 機 に適 用
され る。
7.2.8
回 路 要 素 の 対 称 分 イ ン ピー ダ ン ス
回 転 機 の対 称 分 電 流 に 対 す る イ ン ピー ダ ン ス は 各 対 称 分 に つ い て 異 な る。 逆 相 の 電 機 子 電 流 に よ っ て 誘 導 され る起 電 力 は,回 転 子 の 回 転 方 向 と反 対 の 方 向 に 回転 す る。 回 転 子 と逆 の 向 き に 回 転 す る電 機 子 の 磁 束 に よ っ て,回 (damper
winding)に
転 子 の 界磁 巻線 や制 動 巻 線
誘 導 さ れ る電 流 は この 磁 束 が 回 転 子 を透 過 す る の を 抑 制 す る。
この状 態 は,回 転 機 の端 子 にお け る短 絡故 障が 発生 した直 後 の磁 束 の急 速 な変 化 に似 てお り,磁 束 の通 路 は初期 過渡 リア クタ ンス を求 める際 の磁 束 の磁 路 に近似 で きる。 そのた め,円 筒形(非 突極)回 転 子 の回転機 におい ては,初 期過 渡 リア クタ ンス と逆 相 リア ク タ ンス は等 しい。 零 相電 流が 三相 の 回転 機 の電 機子 に流 れ る とき,1相 の零 相 電 流や この電 流 に よっ て誘 導 され る起 電 力 は,他 の相 の それ ぞれ の電流 や起電 力 と同 じ時 間 に最 大 に な る。 巻線 は電 機子 の周 囲 に分布 してい るの で,1相
によ って生 じる最 大磁 束 の 点 は,他 の
相 の最 大起 磁力 の点 か ら空 間 的 に電気 角 で120°変 位 してい る。 各相 の電 流 に よ っ て 生 じる起磁 力 が,空 間 的 に完 全 に正 弦波状 に分 布 して い るな らば,電 機子 の周 囲 の起 磁 力 は3つ の正 弦波 の合 成 とな り,そ の和 はすべ ての点 で0と なる。 零相 電流 によ る 磁 束 は空 隙 に発 生せ ず,任 意 の相 巻線 の リア クタ ンス は漏 洩磁 束 に よる リア クタ ンス で ある。実 際 の回転機 で は,巻 線 は完 全 に正弦 波状 の起磁 力 を生 じるよ うに は分布 し て いな い ので,零 相電 流 に よ る起 磁 力 の和 の磁 束 密度 は非 常 に小 さい が,0で
はな
い。 したが っ て,零 相 電 流 に よる空隙磁 束 が ない理想 的 な場 合 と比 べ幾 分 高い零 相 リ ア クタ ンスを生 じる。 撚 架 され た送電線 のイ ンダ ク タ ンスや静電容 量 に関 す る式 を導 く際 に,平 衡 した三 相電 流 を仮定 し,相 順 を指 定 しなか った。 したが って,送 電線 で は正 相 イ ン ピーダ ン スお よび逆相 イ ン ピーダ ンス は等 しい。 零相電 流 が送電線 を流れ る ときに のみ各相 の 電流 は等 し く,ま た,零 相 電流 は大 地 お よび架 空地 線 を帰路 とす る。 各相 導体 を流れ る零相 電 流 は等 しいの で,零 相 電流 によ る磁界 分布 は正相 ある いは逆 相電 流 に よる磁 界分布 と著 し く異 な る。 この磁界 分布 の相 違 のた め,架 空 送電 線 の零相 リア ク タンス は正相 リア クタ ンスの2倍 ない し3.5倍 となる。 この割合 は2回 線 送 電線 お よび架 空 地線 のな い送電線 で はさ らに増加 す る傾 向 を示 す。 三相 回路 の変圧 器 は3台 の単相 変圧 器 か ら構成 され るか,あ るい は三 相変 圧器 であ る。3台 の単 相変 圧器 か ら成 る零相 イ ンピー ダンス は,正 相 あ るい は逆 相 イ ンピー ダ ンス の値 とわず か に異 な るもの の,各 対 称分 イ ンピーダ ンスの値 は変 圧器 の型式 に関 係 な く等 し くす るの が一般 的 で ある。 線 形 で平 衡 して い る回路 の,Yあ
るい はΔ 結線 され た負荷 は零相,正 相 お よび逆
相 イ ンピー ダ ンスが等 しい。
7.2.9
正相お よび逆相 回路
電力 系統 の対称 分 イン ピーダ ンス を得 るた め,全 系統 の対称 分 回路 をつ くる必 要が あ る。
正 相 回路 か ら逆相 回路へ の変換 は簡 単 で ある。 三相 同期発 電機 お よび電 動機 は正相 誘導 起電 力 の み を有 し,正 相 お よび逆 相 イ ン ピー ダ ンス は送 電 系統 で は同 じであ るの で,正 相 回路 か ら逆相 回路 への転 換 は同期 機 の イ ンピー ダ ンスを正相 か ら逆相 に変換 し,正 相 起 電力 を除去 すれ ばよい。 対称 三 相 電流 が流 れ る場 合,平 衡 した三 相 系統 の中性 点 のす べ ての電位 は等 しいの で,全 中性 点 は正 相 お よ び逆 相 電流 に対 して 同電 位 に な け れ ば な らな い。 した が っ て,対 称 三相 系 統の 中性点 は正相 お よび逆 相電 圧 降下 成分 の基準 電位 とな る。 機器 の 中性 点 と大 地 を結ぶ 中性点 イ ン ピー ダ ンス は,正 相分 電流 も逆相 分電 流 も流 れな いの で,正 相 お よび逆相 回路 に関 して は無 関係 であ る。
7.2.10
零相 回路
零相 電流 は系 のす べて の点 にお いて大 きさ と位 相が 等 しいた め,三 相 系統 は単相 と して扱 える。 したが って,零 相 電流 は帰路 を通 して完 全 な閉 回路 が形 成 され る場合 に のみ流 れ る。零 相電 圧の基 準電 位 は,系 統 の基準 電位 と して指 定 され た位 置 にお け る 大 地 の電位 で あ る。 零相電 流が 大地 を流 れ る場 合,大 地 は必ず し もすべ て の点 におい て同電位 で はな く,大 地 を一様 な電位 であ る と して零 相 回路 の中性線(基 準 電位)と す る ことはで きない。大地 および架 空地線 のイ ンピー ダン スは送電線 の零 相 イ ン ピー ダ ンス に含 まれ,零 相回路 の帰 路 はイ ン ピー ダ ンス零 の導 体 で あ り,こ れが 系の 中性 線 とな る。 大地 の イ ンピー ダ ンスは零相 分 イ ン ピー ダ ンス に含 まれ るので,零 相 回路 の中性 点 は大地 の指 定 された位 置 で あ り,零 相 回路 の電圧 は この位 置 にお け る電圧 を 基 準電 位 として測定 され た電圧 で あ る。 Y接 続 された 回路 の中性 点が大 地 あ る いは 回路 の別 の 中性 点 に接 続 され ない場 合, このY接
続 され た 中性 点 に流入 す る三 相電 流 の和 は0で あ る。和 が0と な る三 相 電
流 は零 相分 を含 まな いので,零 相電 流 に対 す るイ ン ピー ダ ンス は中性 点 よ り先 は無限 大 で あ り,Y結
線 の 中性 点 と帰路 との間 の零相 回路 は開放 され てい る と表 され る。
これ を図7.15(a)に
示 す。
Y結 線 の中 性点 が 直接 接地 され る と き,イ ン ピー ダ ンス0の 導体 が 中性 点 と零 相 回路 の帰 路 の間 に挿 入 され る。 これ を図7.15(b)に
示 す。 この 回路 は零 相 電 流計 算
のた め に利 用 し,零 相電 流 が求 まる と改 めて基準 電位 に対 す る中性 点 電圧 が計算 され る。 Y結 線 の中性 点 と大 地 の間 にイ ン ピー ダ ンスZnが 挿入 され る場 合,3Znの イ ン ピ ー ダ ン ス が 中 性 点 と零 相 回路 の 帰 路 の 間 に置 か れ な け れ ば な ら な い。 これ を 図 7.15(c)に 示 す 。3Znを 流 れ る零相 電 流I0に よ って零 相 回路 に零 相 の電 圧 降 下 が生
(a)
(b)
(c) 図7.15 Y接
図7.16 Δ
続 の 零 相 回路
接 続 の零 相 回 路
じ る。 故 障 中 の 零 相 電 流 を制 限 す るた め,発
電 機 の 中性 点 と大 地 間 に接 続 さ れ る イ ン
ピー ダ ン ス は抵 抗 あ る い は リア ク トル で あ る 。 この よ う な 故 障 電 流 を制 限 す る リア ク トル あ る い は抵 抗 の イ ン ピー ダ ン ス は,零 相 回 路 の 一 部 と し て 表 さ れ る 。 Δ 接 続 され た 回路 は,帰 路 を持 た な い の で,零 ン ス を 示 す 。Δ 回路 で は,零
相 電 流 に対 し て無 限 大 の イ ン ピ ー ダ
相 回 路 は 開 放 され て い る。Δ 回 路 は 単 相 電 流 に 対 し て 循
環 す る ル ー プ 回 路 を構 成 す る の で,零 相 電 流 はΔ 回 路 内 を循 環 す る。Δ 回 路 内 に零 相 誘 導 起 電 力 が あ れ ば 循 環 電 流 がΔ 回 路 内 に 流 れ る。Δ 回 路 お よ び 零 相 回 路 を 図7.16
に示 す。零相誘 導起 電力 がΔ 回路 に発 生 して も,各 相 の零相 誘 導起 電力 は各 相 の零 相 イ ンピーダ ンスの電 圧降 下 と等 しいの で,零 相電 圧 はΔ 回路 の端 子 間 に は現 れ な い。 三 相 変圧 器 の零 相等 価 回路 は,特 別 な注 意 を払 う必 要 が あ る。Yお
よびΔ 接 続 し
た一 次 お よび二次巻 線 の種 々 な組 み合わ せ に よって,零 相 回路 はそ れぞ れ異 な る。 こ の 際,変 圧器 の励磁 電流 を無 視 す る と,一 次 電流 は二次 電流 と巻線 比 に よって決定 さ れ るの で,二 次巻線 に電 流 が流 れ な いな らば,一 次側 に も電 流 は流 れ な い。三 相 の2 巻線 変 圧 器 につ い て,5通
りの 可能 な結 線 方 法 が考 え られ,こ れ らの結 線 を図7.17
に示す。 変圧 器の結 線 図上 の矢 印 は,零 相電 流が 流れ る こ とので きる回路 を示 す。矢 印 の ない回路 は,零 相電 流 を流 す ことが で きな い変圧器 の結 線 を示 す。各 結線 につ い
図7.17
三 相 変圧 器 の接続 と零 相 等価 回 路
て,抵 抗 と励 磁 回路 を無 視 した零相 回路 の近 似 的 な等価 回路 も合 わ せて 図7.17に 示 す。PとQの
記号 は変圧 器 結線 図 と零 相 等価 回路 の対 応す る点 を表 す。
(1) Y-Y結 線,片 側 の 中 性 点 の み 接 地 Y-Y結 線 変 圧 器 の 中性 点 の どち らか 一方 が非接 地で あ るな らば,零 相 電 流 は どち らの巻線 に も流 れ る こ とはで きな い。1 つの巻 線 を流れ る電流 の 回路が ない と他 の巻 線 に も電 流 は流れ な い。 変圧 器 に よ って 接続 され て い る電力 系統 の2つ の部 分 の 間 に,零 相 回 路 の 開放 され た部 分 が存 在 す る。 (2) Y-Y結
線,両
側 中 性 点接 地 Y-Y結
線 変 圧 器 の 両 側 の 中性 点 が 接 地 され
てい る場 合,零 相 電流 は変 圧器 の両 巻線 間 を流 れ る。 変圧器 の両側 に回路 が接 続 され るな らば,零 相電 流が 変圧 器 の両側 に流 れ る。零 相 回路 におい て,変 圧器 の両 側 の点 PとQが
変圧器 の零 相 イ ンピー ダ ンス によ って接続 され る。
(3) Y-Δ 結 線,Y結
線 の 中性 点 接 地 Y-Δ 結線 変圧 器 の中性 点が 接地 され て い
る な らば,零 相 電 流 に対応 す る誘 導 電 流 がΔ 巻線 を循環 電 流 と して流 れ るの で,零 相 電流 がY巻 線 を通 って大地 に流 れ る。Y結 線 の零 相 電流 と平 衡 してΔ 巻 線 に循 環 す る零 相 電流 は,Δ 結 線 に接 続 され た線路 に流 れ 出 る こ とはな い。変 圧 器 のY結
線
に接続 され た線 路 か ら変 圧器 の イ ン ピー ダ ンス を通 して中性線 に零 相等 価 回路 が形 成 され る。Δ 結線側 で は線路 と帰 路 との 間の 回路 は開放 され る。 中性点 と大 地間 の 回路 が イ ン ピー ダ ンスZnで あるな らば,変 圧器 のY結 線 側 の線 路 と大地 の 間 に変 圧 器 の イ ンピー ダンス と直 列 に3Znの イ ン ピー ダ ンスが挿 入 され る。 (4) Y-Δ 結 線,Y結
図7.18
線 の 中 性 点 非 接 地 Y結 線 の 中性 点 が非 接地 な ら ば,中 性
小規 模 な電 力 系 統 の 単 線 図 とその零 相 回路 の 例
点 と大地 間 の イ ンピー ダ ンスZnは 無 限大 で あ る。(3)の 場 合 の零相 イ ン ピーダ ンス 3Znが 無 限大 に対 応 す る。 したが って,零 相電 流 は変圧 器巻 線 に流 れ ない。 (5) Δ‐Δ 結 線 Δ 結線 は零 相電 流 に対 して帰路 を持 た な いの で,零 相 電流 はΔ‐Δ 結線 変 圧器 に流入 す る こ とはで きな い。 しか し,零 相 電流 はΔ 巻 線 内 を循 環 電 流 と して流れ る ことが で き る。
電力 系統 の それ ぞれ の部分 につい て個 々 に求 め られた零 相 回路 を全体 的 な零相 回路 に構成 す るた め,系 統全 体 の零相 回路 は各部 分 の零相 回路 を単 に結 合 す る ことに よっ て容易 に構 成 され る。 図7.18は,抵
抗 と並列 ア ド ミタ ンス を省 略 した,小 規 模 な電
力 系統 の単線 図 と零 相 回路 の例 を示す。
7.3
非対 称故 障
電 力系 統 に発生 す る故障 の ほ とん どは非 対称 故障(不 平 衡故 障)で あ る。送 電線 の 非対称 故 障 は一 線地 絡故 障,二 線 地絡 故障,二 線 短絡 故 障,あ るい は二線 短絡地 絡故 障 な どが あ る。 導体 間,あ るいは導体 と大 地間 の故障 電流 の通 路 は イ ンピー ダ ンス を 含 む か,あ るい は含 まな い場 合 があ る。 遮 断器 や ヒュー ズの動 作時,三 相 回路 の一相 あ るい は二相 が 先 に遮断 され,残
りが遅 れ て遮 断 され る場 合 に は非対 称 故 障 と類 似 な
現 象 とな る。 非対称 故 障 は電力 系統 に不 平衡電 流 を流 すので,故 障発生 後 の系統 の電圧 や電 流 を 解析 す る には対称 座標 法 を用 い るのが非 常 に有 効 であ る。 まず,無 負荷発 電機 の端 子 にお ける故障 を取 り上 げ る。次 に,テ ブナ ンの理論 を応 用 して電 力 系統 の故障 を検 討 す る。 テ ブナ ンの理論 に よ り,故 障 点か ら見た 全系統 を1台 の発 電機 と1つ の直列 イ ン ピー ダ ンスに よっ て置 き換 え るこ とによ って,故 障電 流 を求 め る ことが で き る。最 後 に,非 対 称故 障計 算 へ のノー ドイ ンピーダ ンス行列 の適 用 方法 を検 討す る。 発 電機 の端 子 に生 じ る故 障 の形 に は無 関 係 に,(7.44)式 お よ び(7.46)式 を適 用す る。 これ らを行 列 の形 で表 せ ば,(7.48)式 の よ うに表 され る。 故 障の種 類 に よって, (7.48)式 と故障 の条 件 を表 す式 を合 わ せて用 い る。
(7.48)
7.3.1
無 負 荷 発 電機 の一 端 子 の 地 絡 故 障
中性 点 が リア クタ ン スを通 して接 地 され,無 負荷 運転 のY結
線 発 電 機 の一 端 子 が
地 絡故 障 を起 こした場合 の回路 図 を図7.19に 示 す。故 障 した相 をa相
とす る。
無 負荷運転 お よび故障 の条 件 か ら次の よ うに表 され る。
Ib
=0お
よ びIc=0に
こ れ よ り,I0,I1お
よ っ て,電
よ びI2は
流 の対 称 分 は 次 の よ う に 表 さ れ る。
そ れ ぞ れIa/3に
等 し い の で,
(7.49) が 成 り立 つ 。(7.48)式
のI2お
よ びI0にI1を
代 入 し,次 の 結 果 を 得 る。
(7.50)
(7.50)式 の 両 辺 の そ れ ぞ れ の 左 側 か ら行 ベ ク トル[111]を
乗 ず る と次 の 関 係 を
得 る。
(7.51) ま た,
図7.19
中性 点 リア ク タ ンス接 地 の 無負 荷Y結
線 発 電 機 のa相
地絡 故 障
で あ る の で,I1に
つ い て 式(7.51)を
解 い て 次 の 関 係 を 得 る。
(7.52)
(7.49)式 お よ び(7.52)式 す よ う に,発 電 機 の3つ ダ ン ス は電 圧Eaと
は一 線 地 絡 に お け る 対 称 分 電 流 の 式 で あ る。 図7.20に
の 対 称 分 回路 が 直 列 に接 続 され る と,3つ
直 列 に な る の で,電
流I1と
電 圧Eaは(7.52)式
対 称 分 回 路 に お い て,各 対 称 分 回 路 の 電 圧V0,V1お 図7.20に
示 す 対 称 分 回 路 の 接 続 は,一
発 電 機 の 中性 点 が 非 接 地 で あ る な ら ば,零
で あ る 。 故 障 相aの で,線
路aに
線 電 流Iaは
あ る か ら,I2お
よ びI0も0
各 成 分 電 流 の 和 で あ り,各 成 分 電 流 が0で
あるの
電 機 の 中性 点 が 接 地 さ れ て い
障 電 流 の 流 れ る 回 路 が 存 在 し な い こ とか ら も理 解 さ れ る。
制 動 巻 き 線 を持 た な い 突 極 の 発 電 機 の 定 格 は20MVA,13.8kVで
よ び0.10puで
電 圧 で,無
相 分 回 路 は 開 放 さ れ て い る の で,Z0は
無 限 大 の 時,I1は0で
り,直 軸 初 期 過 渡 リア ク タ ン ス が0.25pu,逆 0.35お
対称 分 で ある。
利 であ る。
は故 障 電 流 は 流 れ な い 。 こ の こ と は,発
な い な ら ば,故
【 例 題7.5】
はZ0が
を 満 足 す る。 この
よ びV2はVaの
線 地絡 故 障 の解 析 に必 要 な方程 式 を この よ う
に対 称 分 回 路 の 構 成 か ら導 くこ とが で き る の で,便
無 限 大 で あ る。(7.52)式
示
の 対 称 分 イ ン ピー
あ
相 お よ び 零 相 リア ク タ ン ス が そ れ ぞ れ
あ る。 発 電 機 の 中 性 点 は 直 接 接 地 さ れ て い る 。 発 電 機 が 定 格
負 荷 運 転 さ れ て い る と き,一 端 子 に お い て 一 線 地 絡 故 障 が 発 生 した 。 こ の
と き,発 電 機 の 故 障 端 子 の 初 期 過 渡 電 流 と初 期 過 渡 状 態 の 端 子 間 電 圧 を 求 め よ。 抵 抗
図7.20
無 負 荷 発電 機 のa相 地 絡 故 障 時 の対 称 分 回路 の 接続
は無 視 す る 。 [解] 発 電 機 の誘 導 起 電 力 は無 負 荷 の 端 子 電 圧 に 等 し い の で,20MVA,13.8kVを べ ー ス と し て,Ea=1.0を
基 準 とす る 。 よ っ て,図7.20に
示 す 正 相,逆
ア ク タ ン ス お よ び 誘 導 起 電 力 の 関 係 か ら(7.52)式 が 成 立 す る の で,こ
よって,故 障相aの 線 電流Iaは 各成 分電 流 の和 で あ り,
を得 る。
基準電流〓 で あ るか ら,初 期過 渡電 流 は
とな る。 故 障相aの 端 子 の対 地 電圧 の対称 分 は次 の よ うにな る。
よ っ て,各
端 子 の 相 電 圧 は 次 の よ う に な る。
a端 子 の相 電 圧 は,
b端 子 の相 電 圧 は,
c端 子 の 相 電 圧 は,
相,零
相 リ
れ を利 用 して,
とな る。 ま た,線
間電 圧 は次 の よ うにな る。
a b間 の線 間 電 圧 は,
bc間 の 線 間 電 圧 は,
ca間 の 線 間 電 圧 は,
とな る。 発 電 機 の 誘 導 起 電 力Eaは
中性 点 に対 す る 電 圧 で,1.0puで
電 圧 は相 電 圧 を 基 準 電 圧 に 対 す るpu値
で 表 さ れ る の で,故
あ り,上
に求 め た 線 間
障 後 の 線 間 電 圧 をkV値
で 表 す と次 の よ う に な る。
故 障 前 の 線 間 電 圧 は平 衡 し て お り,13.8kVで た め,基 準 位 相 と してVan=Eaを
用 い る と,故 障 前 の 電 圧 は 次 の よ う に な る 。
故 障 前 後 の 電 圧 の ベ ク トル 図 を 図7.21に 位 は中 性 点 の 電 位(0)に
7.3.2 無 負 荷Y結
あ る 。 故 障 後 の 線 間 電 圧 と比 較 す る
示 す 。 図7.21(b)に
示 す よ う に,a相
の電
あ る。
無負荷 発電機の線 間短絡 線 発 電 機 の 端 子bとcの
相 間 短 絡 の 回 路 を 図7.22に
示 す。故 障条 件
(a) 故 障 前(b) 図7.21
図7.22
例 題7.5の
故 障後 後
故 障 前 後 の 電 圧 の ベ ク トル 図
中性 点 リア ク トル接 地 の無 負荷 発 電 機 のbc梱
の短 絡 故 障
は次 式 で 表 さ れ る。
Vb =Vcと
し て,電 圧 対 称 分 は次 式 に よ っ て 表 され る 。
これ か ら 次 の 関 係 を 得 る。
(7.53) Ib =−Icお
よ びIa=0で
あ る か ら,電 流 の対 称 分 は 次 の よ う に な る 。
した が っ て,
(7.54) (7.55) 発 電 機 の 中 性 点 と大 地 が 接 続 さ れ て い る場 合 に は,Z0は りI0=0で
有 限 で あ り,(7.54)式
よ
あ る の で,
(7.56) で あ る 。(7.53)式,(7.54)式,(7.55)式
お よ び(7.56)式
を(7.48)式
に 代 入 し て,次
の
関 係 を得 る。
(7.57)
(7.57)式 の 両 辺 の 左 側 か ら[1 1 -1]の
行 ベ ク トル を乗 ず る と,
(7.58) を 得 る 。I1に つ い て 解 く と次 の 結 果 を得 る。
(7.59)
(7.53)式,(7.54)式,(7.55)式
お よ び(7.59)式
は2端
子 間 短 絡 故 障 を表 す 式 で あ
る。 こ れ ら の 式 と(7.48)式 お よび 対 称 分 の 関 係 を用 い て,故 る こ と が で き る。Z0は あ る の で,正
方 程 式 に 現 れ な い の で,零
相 回 路 は 無 関 係 で あ る 。V1=V2で
相 お よ び 逆 相 回 路 は並 列 で な け れ ば な ら な い。 零 相 回 路 を含 ま な い正 相
回 路 と逆 相 回 路 の 並 列 接 続 は,(7.55)式 な い 。 以 上 に よ っ て,線 7.23に
障 点 の 電 圧 と電 流 を求 め
よ っ て,対
式 を満 足 す る 。
に 示 さ れ る よ う に,I1=−I2で
間 短 絡 の 対 称 分 回 路 の 接 続 は 図7.23に
な けれ ばな ら
示 す よ う に な る。 図
称 分 回 路 の 電 流 と電 圧 は線 間 故 障 に 関 し て 導 か れ る す べ て の 方 程
図7.23
発 電 機 のbc相
故 障 点 が 接 地 して い な い 場 合,発
短絡 故 障 時 の対 称 分 回路 の 接 続
電 機 の 中 性 点 は 接 地 され て い て も,大 地 を通 る電
流 は 流 れ な い。 線 間 短 絡 故 障 の 関 係 か ら,零 相 電 流I0は0で り,地 絡 電 流Inは3I0に され て い る か,い い な い な ら ば,Z0は
【 例 題7.6】
等 し い の で,地
な い か は,故
絡 電 流 は流 れ な い 。 発 電 機 の 中 性 点 が 接 地
障 電 流 に は影 響 し な い 。 発 電 機 の 中 性 点 が 接 地 され て
無 限 大 で,零
例 題7.5の
あ る こ とが わ か っ て お
相成 分 を含 まない線 間電 圧 を求 め る こ とがで きる。
発 電 機 の 端 子 で 線 間 短 絡 故 障 が 発 生 し た と き,初 期 故 障 条 件
に お け る故 障 点 の 初 期 過 渡 電 流 と線 間 電 圧 を求 め よ。 故 障 が 発 生 し た と き,発 電 機 は 無 負 荷 で,定 格 電 圧 で 運 転 さ れ て い た とす る。 抵 抗 は 無 視 す る。 [解] 正 相 電 流 は(7.59)式
より
と な る 。 逆 相 電 流 は(7.55)式
より
とな る。 零 相 電 流 は(7.54)式
より
となる。 よ っ て,a相
b相 電 流 は,
電 流 は,
c相 電 流 は,
とな る。 例 題7.5と
同 じ よ う に,べ
ー ス 電 流 は837Aで
あ る か ら,a相,b相
電 流 は そ れ ぞ れ,
と な る。a相
の相 電 圧 の 正 相 お よ び 零 相 分 は(7.57)式
とな り,a相
の相 電 圧 は,
b相
は,
c相
は,
とな る。 線 間 電 圧 は そ れ ぞ れ,
よ り,そ れ ぞ れ,
お よ びc相
の
と な り,線 間 電 圧 をkVで
表 す と そ れ ぞ れ,,
を得 る。
7.3.3
無 負 荷 発 電 機 の 線 間短 絡 接 地 故 障
図7.24に,中
性 点 が リア ク トル接地 され たY結 線 で無 負荷運 転 され る発 電機 の線
間短 絡接 地故 障 を示す 。故 障相 をbとcと
Vb=0お
よびVc=0に
し た が っ て,V0,V1お
す る。故 障条 件 は次式 の よ う に表 され る。
よ り,電 圧 の 対 称 分 は 次 の よ う に 表 さ れ る。
よ びV2はVa/3に
等 し い 。 よ っ て,
(7.60) と な る 。(7.48)式
のV1,V2お
よ びV0にEa-I1Z1を
代 入 し,Z-1を
両 辺 の 左 か らか
け る 。 こ こ に,Z-1は,
図7.24
中 性 点 リア ク トル 接 地 の無 負 荷 発 電機 のbc相 短 絡 接 地故 障
で あ る。
(7.61)
を得 る 。 (7.61)式 の 両 辺 に 左 辺 か ら行 ベ ク トル[111]を
乗 じ,I1+I2+I0=Ia=0を
考
慮 す る と,次 の 関 係 を 得 る。
(7.62)
これ を整 理 して,次
の 結 果 を得 る。
(7.63)
す な わ ち,
(7.64)
(7.60)式 お よ び(7.64)式 逆 相,お
は線 間 短 絡 接 地 故 障 の 式 で あ る。 こ の故 障 に お い て 正 相,
よ び 零 相 電 圧 は 等 し い の で,図7.25に
示 す よ う に,対
称 分 回路 が 並 列 に接
続 さ れ な けれ ば な ら な い こ と を 示 す 。 線 間 短 絡 接 地 故 障 に 関 し て,以 て の 条 件 が 図7.25に はZ1と
上 に導 いた すべ
示 す 接 続 に よ っ て 満 足 さ れ て い る こ とが わ か る 。 正 相 分 電 流I1
これ に 直 列 なZ2とZ0の
並 列 イ ン ピ ー ダ ン ス に 流 れ,こ
の 電 流 は 電 圧Eaを
印 加 す る こ とに よ っ て与 え られ る。 発 電 機 の 中 性 点 が 接 地 さ れ て い な い 場 合 に は,故
障 時 に 大 地 に流 れ る電 流 は な い 。
図7.25
中性 点 リア ク トル 接 地 の無 負 荷 発電 機 のbc相
こ の 場 合 に は,Z0は に な る。(7.64)式 絡 の(7.59)式
【 例 題7.7】
無 限 大 で あ り,I0は0で
の 分 母 のZ0を
短 絡 接地 故 障 時 の対 称 分 回 路 の接 続
あ る。 電 流 は,線
間 短 絡 の場 合 と同 じ
無 限 に 大 き くす る こ と に よ っ て,(7.64)式
は線 間 短
に 近 づ く こ と が わ か る。
例 題7.5に
述 べ た 発 電 機 の端 子 で,線
間 短 絡 接 地 故 障 が 発 生 す る と き,
初 期 過 渡 電 流 と線 間 電 圧 を 求 め よ。 発 電 機 は無 負 荷 で あ り,故 障 発 生 時 は定 格 電 圧 で 運 転 さ れ て い る もの とす る 。 抵 抗 は 無 視 す る。 [解] (7.64)式 に 数 値 を代 入 し,電 流 の 正 相 成 分I1と
(7.60)式 よ り電 圧 の対 称 分 と し て 次 の 結 果 を得 る。
電 流 の 逆 相 お よ び 零 相 成 分 は,図7.25を
と な る 。 よ っ て,a相
b相 の 電 流 は,
の 電 流 は,
参 照 して,
し て 次 の 結 果 を得 る。
c相 の 電 流 は,
とな る。 ま た,中
性 点 を 流 れ る 電 流 は,
あ る い は,
とな る 。 a相 の 電 圧 は,
で あ り,b,c相
の電 圧 は,
で あ る 。 また,線
間 電 圧 は,
と な る 。 電 流 値 をAで
電 圧 をkVで
表 す と,
表 す と,
となる。
7.3.4
電 力系統 の非対称故 障
故 障 中 の電 力 回 路 網 に お け る電 流 お よ び 電 圧 の対 称 分 に 関 す る方 程 式 を誘 導 す る場 合,故
障 点 に お い てa,bお
よ びc相
か ら流 れ 出 す 電 流 を そ れ ぞ れIa,Ibお
と表 す 。 故 障 が 発 生 した 箇 所 に お い て,故 体 を 接 続 す る こ と に よ っ て,故
よ びIc
障 前 に平 衡 し て い た 各 相 そ れ ぞ れ に 仮 想 導
障 中 の 電 流Ia,Ibお
よ びIcを
知 る こ とが で き る 。 こ
の 仮 想 導 体 の端 子 を適 当 に 接 続 す る こ とに よ っ て 各 種 の 故 障 を表 す こ とが で き る。 た とえ ば,仮
想 導 体bとcを
短 絡 す る こ とに よ っ て,線
aの 電 流 は 零 で あ り,Ibは−Icに
等 しい 。
故 障 点 に お け る線 路 の 対 地 電 位 はVa,Vbお 前 は,故
間短 絡 故 障 を表 す。仮 想 導体
障 点 の 中性 点 に 対 す る相 電 圧 をVfと
よびVcで
表 さ れ る。 故 障 が 発 生 す る
表 せ ば,系
統 が平 衡 して い るの で正相
分 電 圧 で あ る。 例 と して 三 相 同 期 発 電 機 お よ び 電 動 機 を 含 む 電 力 系 統 の 単 線 図 を 図7.26(a)に す 。 この 系 統 は 単 純 で は あ る が,こ
系 統 に 適 用 す る こ と が で き る。 こ の 系 統 の 対 称 分 回 路 を 図7.26(b),(c)お (d)に 示 す 。 故 障 が 起 こ る と仮 定 され る 位 置 を図(a)の よ び(d)の
対 称 分 回 路 図 に 記 号Pで
力 と初 期 過 渡 リア ク タ ン ス,過
示
れ に よ っ て 誘 導 した 式 は一 般 的 に任 意 の 平 衡 し た よび
単 線 図 お よ び 図(b),(c)お
表 す。 発 電 機 お よ び 電 動 機 は 初 期 過 渡 誘 導 起 電
渡 誘 導 起 電 力 と過 渡 リア ク タ ン ス あ る い は無 負 荷 電 圧
と同 期 リ ア ク タ ン ス の い ず れ か で 表 さ れ る。 対 称 分 回 路 を描 く場 合,各
対 称 分 回 路 は 中 性 線 と 故 障 点Pを2端
子 と し,こ
の2
端 子 間 か ら見 た 系 統 を テ ブ ナ ンの 等 価 回路 に よ っ て 置 き換 え る。 各 対 称 分 回路 の テ ブ ナ ン の 等 価 回 路 は 図7.26に 並 べ て(e),(f)お
電 圧 の 基 準 で あ り,イ の 相 電 圧 が,テ で はVfで
正 相,逆
よ び(g)に
相 お よ び 零 相 の 対 称 分 回 路(b),(c),(d)と
示 し て あ る 。 こ こ で,中 性 線 は全 系 統 に つ い て 共 通 な
ン ピ ー ダ ン ス を 持 た な い仮 想 的 な線 で あ る 。 故 障 前 の 故 障 点 で
ブ ナ ン 等 価 回 路 にお け る正 相 回 路 の 発 電 機 の 誘 導 起 電 力 と な り,こ
表 す 。 テ ブ ナ ン正 相 回 路 の イ ン ピー ダ ン スZ1は,単
回 路 の す べ て の 内 部 起 電 力 を短 絡 し,P点
線 図(a)で
こ
表 され た
と 中 性 線 か ら系 統 を 見 込 ん だ 正 相 分 回 路
図7.26
の 図(b)に
(a)3相
対 称 回路 の単線 図
(b)正
相回路
(e)テ
ブナ ン正 相 分 等価 回 路
(c)逆
相 回路
(f)テ
ブ ナ ン逆相 分 等価 回路
(d)零
相 回路
(g)テ
ブナ ン零 相 分 等価 回 路
三相 系 統 の単 線 図,対 称 回路,故 障 点 にお け る各対 称 回路 の テ ブナ ンの等 価 回路
つ い て 求 め た イ ン ピ ー ダ ン ス で あ る 。 故 障 発 生 か らの 時 間 に よ っ て 採 用 さ
れ る 回 路 要 素 の イ ン ピ ー ダ ン スZ1の
値 は 変 化 す る。 例 え ば,遮
を計 算 す る場 合 な どに は,発 電 機 は 過 渡 リア ク タ ン ス,同
断器 が遮 断す る電流
期 電 動 機 は 過 渡 リア ク タ ン
ス な どが 使 用 さ れ る。 テ ブ ナ ン逆 相 分 回 路 お よ び テ ブ ナ ン零 相 分 回 路 に つ い て は,故 障 が 発 生 す る前 は電 流 の 逆 相 成 分 も零 相 成 分 も流 れ な い の で,故 る 。 故 障 点 か ら 見 た 系 統 の 逆 相,零 イ ン ピ ー ダ ン スZ1を (c),(d)そ
障 前 のP点
と 中性 線 間 の 電 圧 は0で
相 イ ン ピ ー ダ ン スZ2お
求 め る 方 法 と 同 様 に,P点
よ びZ0の
求 め 方 は,正
あ 相
と中性 線 の 端 子 間 か ら眺 め た 図
れ ぞ れ の 回 路 に つ い て 求 め ら れ る。
系 統 の 故 障 点 か ら流 れ 出 す 電 流 をIaと 図7.26の(b),(c),(d)に す 。 図7.26の(e),(f),(g)に
す れ ば,そ
示 す よ う に,そ
の 各 対 称 分I1,I2お
れ ぞ れ の対 称 分 回 路 のP点
示 す 系 統 の 正 相,逆
よ びI0は か ら流 れ 出
相 お よび零 相 分 回路 の テ ブ ナ
ン等 価 回 路 は,発
電 機 端 子 の 故 障 計 算 回路 と同 じで あ る。 した が っ て,(7.48)式
い て,EaをVfに
置 き換 え る以 外 は,ま
にお
った く同 じ で あ る。 す な わ ち,
(7.65)
と表 さ れ る。
7.3.5
電 力系 統 の 一 線 地 絡
一 線地 絡故 障 にお いて は,各 相 の導 体 の故 障点 に接続 された仮 想導体 の うち地 絡相 の導体 が接地 され る ことにな る。a相 地絡 故 障 に関 し,次 の関係 が成立 す る。
これ ら3つ の 式 は,発
電 機 の 一 線 地 絡 故 障 に 用 い た 式 と 同 じで,(7.65)式
に 関 す る 式 はEaをVfで Vfは,前
と対 称 分
表 す 以 外 は 発 電 機 の 一 線 地 絡 の 式 と同 じで あ る 。 こ こ に,
節 に 述 べ た よ うに,故
障 前 に 故 障 点 に 現 れ て い た 相 電 圧 で あ る 。 した が っ
て,一 線 地 絡 故 障 に つ い て,
(7.66) お よ び,
(7.67)
が 成 立 す る。 (7.66)式 お よ び(7.67)式
は,3つ
の 対 称 分 回路 が 一 線 地 絡 故 障 を 模 擬 す る た め に,
故 障 点 に お い て 直 列 に接 続 さ れ な け れ ば な ら な い こ と を示 し て い る。
問題 (1)相
電 圧 の 対 称 分 のpu値 puの
(2)発
場 合,a,b,c相
電 機 のa端
がV1=0.5∠0°pu,V2=0.2∠90°pu,V0=0.1∠180° の 相 電 圧 のpu値
子 が 開 放 さ れ,b,c端
を求 め よ 。
はI1=600∠−90°A,I2=250∠90°A,I0=350∠90°Aで
子 が 短 絡 接 地 し て い る と き,対
る電 流 お よ び 各 相 の 電 流 を 求 め よ。
称 分 電流
あ る。大 地 を 流 れ
(3)各
相 電 流 のpu値
がIa=1.0∠0°,Ib=1.0∠230°,Ic=1.0∠130°
の 場 合,対
称 分 電 流 を求 め よ。 (4)Δ
結 線 の対 称 イ ン ピ ー ダ ン ス 負荷 に電 力 が 供 給 さ れ て い る場 合,線 電 流 と 負 荷 の 相 電 流 の 対 称 分 との 関 係,す
な わ ちI1とIab1の
路 の対 称 分
関 係,I2とIab2
の 関 係 を 図 示 せ よ。 (5)周
波 数60Hz,定 電 機 は,電
格 電 圧22 kV,定
機 子 巻 き 線 がY結
格 容 量500MVAの
発 電 機 が あ る 。 この 発
線 で あ り,中 性 点 は 直 接 接 地 さ れ,無
負 荷,定
格 電 圧 で 運 転 さ れ て い る。 リア ク タ ン ス はX"=X2=0.15pu,X0=0.05pu で あ る。 こ の 発 電 機 の 対 称 三 相 短 絡 に お い て 流 れ る 初 期 過 渡 電 流 に対 す る一 線 地 絡 に お い て 流 れ る初 期 過 渡 電 流 の比 を求 め よ。 (6)問
題(6)に
お け る発 電 機 に つ い て,こ
の発 電機 の対 称三 相短 絡 に おい て流れ る
初 期 過 渡 電 流 に対 す る 線 間 短 絡 に お い て 流 れ る初 期 過 渡 電 流 の比 を 求 め よ。 (7)問
題(6)に
お け る発 電 機 に つ い て,一
限 す る た め,発
線 地 絡 に お い て 流 れ る 初 期 過 渡 電 流 を制
電 機 の 中性 点 を 抵 抗 を 通 して 接 地 した 。 こ の 発 電 機 の 対 称 三 相
短 絡 に お い て 流 れ る初 期 過 渡 電 流 に対 す る 一 線 地 絡 に お い て 流 れ る初 期 過 渡 電 流 の比 と中 性 点 接 地 抵 抗 の オ ー ム 値 との 関 係 を 求 め よ。 (8)周
波 数60Hz,定
格 電 圧20kV,定
ス がX"=X2=20%,X0=5%で,電
格 容 量100MVAの 機 子 巻 き 線 がY結
発 電 機 は,リ 線,中
の リア ク トル を通 し て 接 地 さ れ て い る 。 この 発 電 機 が 無 負 荷,定 さ れ て い る と き,発 電 機 の1端
ア クタ ン
性 点 が0.32Ω 格 電圧 で運転
子 に お い て 地 絡 故 障 が 発 生 した 。 故 障 端 子 を流
れ る 初 期 過 渡 電 流 を求 め よ。
【解答 は巻 末】
第8章 安定度
8.1
安 定 度 の 種 類
電 力 系 統 の安 定 度(power
system
時 に 電 力 系 統 の 擾 乱(disturbance)に
stability)は
あ る平 衡 な 運 転 点 で 運 転 し て い る
対 して,他
の 平 衡 点 に移 り ひ き つ づ き 安 定 に
運 転 を 継 続 し得 る よ う な 電 力 系 統 の 持 つ 能 力 の こ と で あ る 。 安 定 度 の 問 題 は 一 般 に擾 乱 の 性 質 や 大 き さ の 程 度 に よ っ て 過 渡 安 定 度(transient (steady-state
stability)に
stability)と
定 態 安 定度
分 け ら れ る。
過 渡 安 定 度 は大 き な 擾 乱 に対 す る安 定 度 で,時
間 的 に は擾 乱 発 生 か ら数 秒 程 度 の時
間 領 域 の 現 象 を い う 。 過 渡 安 定 度 問 題 は,電 力 系 統 に送 電 線 路 の 事 故 や 発 電 設 備 の 脱 落 の よ う な 大 き な 擾 乱 が 発 生 す る 際 に 系 統 が 安 定 に運 転 を維 持 で き る か 否 か を決 定 す る こ とで あ る。 安 定 度 に 関 す る 研 究 は数 十 年 前 か ら始 ま っ て い るが,発
電 機 が1あ
る い は2機
お け る運 動 論 的 な 問 題 の 検 討 に 限 られ て い た 。 現 在 の 電 力 系 統 は 超 高 圧,超
系に
超高圧の
送 電 網 を 通 して 相 互 に 連 系 さ れ た 多 数 の 発 電 機 を含 む 大 規 模 系 統 を構 成 し て い る 。 こ れ ら の発 電 機 に は 励 磁 制 御 系(AVR: 制 御 系(ガ
バ ナ)が
自 動 電 圧 調 整 装 置),ま
た,タ
ー ビ ン に は調 速
設 置 さ れ て い る 。 これ らの 制 御 装 置 は 系 統 に加 え ら れ た 擾 乱 に対
して 適 切 に応 答 す る よ う モ デ ル 化 さ れ る必 要 が あ り,こ れ に よ り安 定 度 解 析 は 一 層 複 雑 に なる。 定 態 安 定 度 は,常
時 の 負 荷 変 動 の よ う な 微 小 擾 乱 に 対 す る安 定 度 で,時
10数 秒 以 上 の 現 象 が 対 象 で あ る。 した が っ て,定
状 態 に お け る変 化 に 対 す る 系 統 の 安 定 性 に 関 係 す る。 わ が 国 で は,定 て は,発 電 機 の励 磁 制 御 系,タ 定 度(あ
間的 には
態 安 定 度 は,系 統 の 定 常 的 な 運 転 態安定 度 に関 し
ー ビ ン の調 速 制 御 系 の 動 作 ま で 考 慮 す る もの を動 態 安
る い は 動 的 定 態 安 定 度)と
よ び,区 別 され て き た が,海
外 で は 一 律,定
態安
定 度 と し て 扱 わ れ て い る 。 この た め,こ れ ら用 語 に つ い て,学 会 レ ベ ル で 議 論 が な さ れ て い る段 階 で あ る が,本
書 で は,従
来 どお りの 用 法 で 用 い る こ と と す る。
発 電 機 あ る い は発 電 機 系 が 動 作 点 か らわ ず か に 変 化 した と き,す
な わ ち定 態 安 定 度
あ るいは動 態安定 度 を解析 す るに あた って,系 統 の状 態 を記 述 す る多 くの非線 形微 分 方程 式 や非線 形代 数方 程式 を線形 代 数方程 式 の組 み合 わせ に置 き換 え る線 形解 析法 が 用 い られ る。 一 方,過 渡 安定 度 の検 討 は実際 上最 も重 要 な課題 の1つ で あ り,非 常 に多 くの研 究 が行 わ れて い る。 過渡 安定度 の問題 は線 形 化 す る ことがで きない大 きな擾 乱 を含 むの で,多 くの非 線形 微分 方程 式や代 数方 程式 を解 くた めに,直 接法 や数値 解 析 の逐 次繰 り返 し法 な どが用 い られ る。 すべ ての安 定度 問題 の検討 におい て,そ の 目的 は擾乱 を受 けた発電機 の回転子 が正 常 な一定 の 回転速 度 の運 転状 態 に戻 るか否 か を決定 す る こ とで あ る。 これ は,少 な く と も短時 間 の間 に一時 的 に回転子 速度 が 同期 速 度 か ら外 れ る こ とを意味 す る。安 定度 解析 は数値 シ ミュ レー シ ョ ンで検 討 され るが,そ の 際,次 の基 本 的 な仮 定 が行 わ れ る。 1.固
定子 巻線 お よび電力 系統 に つい て,基 本周 波数 の電 流 お よび電 圧 のみ を考 慮
す る。 そのた め,直 流分 お よび高 周波成 分 は無 視す る。 2.同
期 機 は,動 揺 中の誘 導起電 力 が一定 に保 た れ る とす る。
3.同
期 機 への機 械的 入力 は,動 揺 中一定 とす る。
なお,安 定度 解析 におい て は,発 電機 お よびター ビン まで考 慮 す るが,火 力発電 に お いて はボ イ ラー を,水 力発 電 にお いて は鉄 管 を含 む水理 系 は考慮 しない。 しか しな が ら,近 年,長 い時 間領域 で の現 象 によ る大 規模 停電 事故 の発 生 に よ り,中 間領域 安 定 度(mid−term
stability)と よばれ る10秒 以上 の 時間領 域 を扱 う安定 度解析 の必 要
性 が高 ま り,検 討が 進 め られ てい る。 この よ うに長 い時 間 を扱 う場 合 は,例 えば,ボ イ ラーの制 御 系の応 動や 水理 系の現 象 まで考 慮 す る必 要 があ り,さ らに複雑 な取 り扱 いが必 要 とな る。
8.2
発 電機の運 動方程 式
8.2.1
動揺方程式
同期機 の回転 子 の運 動 を支配 す る方程 式 は力学 の基本 的 な原 理 に基 づ い て表 され, 回転 子 を含 む 回転 系 に作 用す る トル クは この 回転 系 の慣 性 モー メ ン トと角加速 度 の積 に等 しい。 同期発 電機 につ いて,こ の方程 式 は次 の形 に書 くことが で き る。
(8.1) こ こ に,J:
回 転 子 を 含 む 回 転 系 の 全 慣 性 モ ー メ ン トで あ り,回 転 系 は 発 電 機 の 回 転 子,回
転 主 軸,タ
を指 す が,安
ー ビ ン な ど原 動 機 の 回 転 体 が 一 体 とな っ て 回 転 す る 系
定 度 解 析 の 概 念 を簡 明 に す る た め,以
下発 電機 の回転 子 で
代 表 させ る,単 位 はkg・m2, θm:固 定 軸 に対 す る回 転 子 の 回 転 角 で あ り,単 位 は ラ ジ ア ン, t: 時 間 で あ り,単 位 は秒, Tm: 回 転 損 失 を 差 し 引 い た 原 動 機 に よ っ て供 給 さ れ る正 味 の 機 械 的 主 軸 ト ル ク で あ り,単 位 はN・m, Te:正 Ta:正
味 の 電 気 的 トル クで あ り,単 位 はN・m, 味 の 加 速 トル ク で あ り,単 位 はN・mで
機 械 的 主 軸 トル クTmと 8.1に 示 す よ う に,加
電 気 的 トル クTeは
速 トル クTaは
あ る。
同 期 発 電 機 に対 し て は 正 と考 え る。 図
主 軸 に 作 用 す るTmとTeの
合 成 トル ク で あ り,
回 転 子 の 回 転 角 θmの 正 の 方 向 に 回 転 子 を 加 速 す る 方 向 を正 とす る。 発 電 機 の 定 常 状 態 の 運 転 に お い て は,TmとTeは 回 転 子 は加 速 も減 速 も され ず,一
等 し く,加 速 トル クTaは
零 で あ る 。 こ の 場 合,
定 速 度 す な わ ち 同 期 速 度(synchronous
speed)で
回 転 す る。 こ の よ う に,一 定 速 度 で 回 転 す る 発 電 機 の 回 転 子 と原 動 機 か ら な る回 転 系 は,電
力 系 統 に お い て 同期 速 度 で 運 転 さ れ る 他 の 発 電 機 と同 期(synchronism)し
て
い る とい う。 原 動 機 は水 車 タ ー ビ ンあ る い は蒸 気 タ ー ビ ン な どで あ り,こ れ ら原 動 機 の機 械 トル ク を表 現 す る た め に 種 々 の 複 雑 な モ デ ル が 採 用 され る。 θmは 固 定 子 の 静 止 基 準 軸 に対 し て 測 られ る 回 転 子 の 絶 対 回 転 角 を 表 す 。 そ の た め, 絶 対 回 転 角 θmは 一 定 な 同 期 速 度 と時 間 の 積 で 表 さ れ,時 る。 また,同
間 と共 に 連 続 的 に 増 加 す
期 速 度 で 回 転 す る 回 転 軸 に 対 し て 測 ら れ る 回 転 子 の 相 対 回 転 角 を δmで
表 す 。 絶 対 回 転 角 と相 対 回 転 角 の 間 に は次 の 関 係 が 成 立 す る 。
図8.1
回転 子 に お け る回転 方 向 と機械 お よ び電 気 トル ク の方 向
(8.2) こ こ に,ωsmは
同 期 機 の 同期 速 度 で あ り,単 位 は ラ ジ ア ン/秒(rad/s),δmは
度 で 回 転 す る 回 転 軸 か ら の 回 転 子 の 変 位 角,す ア ンで あ る。(8.2)式
同期 速
な わ ち 相 対 回転 角 で あ り,単 位 は ラ ジ
を時 間 に関 して微分 す る と
(8.3)
そ し て,
(8.4) とな る 。(8.3)式 のdθm/dtは
回 転 子 の 絶 対 回 転 角 速 度,dδm/dtは
角 速 度 で あ る 。(8.3)式 の 相 対 回転 角 速 度 が 零 で あ る な ら ば,絶 速 度 に 等 し く,時 間 的 に一 定 で あ る 。 した が って,相
対 回転 角速 度 は 同期
対 回転 角速 度 は回転 子 の同期 速
度 か ら の 変 動 を表 し,単 位 は ラ ジ ア ン/秒 で あ る。(8.4)式 単 位 はrad/s2で
回転 子 の相 対 回転
は 回 転 子 の 加 速 度 を 表 し,
あ る。
(8.4)式 を(8.1)式 に代 入 す る と,次
の 関 係 を得 る。
(8.5) 回転子 の絶 対 回転 角速 度 を表 す ため記 号 ωmを 用 い る と,回 転 子 の 絶対 回転 角速 度 は次の ように表 され る。 (8.6)
パ ワ ー は トル ク に角 速 度 を 乗 じ て 表 さ れ る か ら,(8.5)式
の両 辺 に回転 子 の 絶対 回
転 角 速 度ωmを か け る と次 の 関 係 を 得 る。
(8.7) こ こ に,Pmは
回 転 損 失 を 無 視 し た 原 動 機 か ら発 電 機 へ の 機 械 的 入 力(軸
は発 電 機 か ら系 統 へ 供 給 さ れ る 電 気 的 出 力,PaはPmとPeの
入 力),Pe
差 に よ る両 者 の 不 平 衡
を表 し,回 転 子 の加 速 パ ワ ー で あ る 。 (8.7)式 の係Jωmは
回 転 子 の 角 運 動 量(angular
momentum)で
あ り,同 期 速 度
ωsmに
お いて は
と表 し,Mを
同 期 機 の 慣 性 定 数(inertia
を用 い て,次
constant)と
よ ぶ 。(8.7)式
は慣 性 定 数M
の よ う に 表 され る。
(8.8) こ の場 合,(8.8)式
に お い て,回
い て 同 期 速 度ωsmと
転 子 の 絶 対 回 転 角 速 度 ωmは あ ら ゆ る 運 転 状 態 に お
は 限 ら な い の で,Mは
厳 密 な意 味 に お い て 定 数 で は な い 。 し か
し な が ら,実 際 の 問 題 に お い て はωmは 発 電 機 が 定 常 運 転 さ れ て い る と き に は 同 期 速 度 と ほ と ん ど同 じ で あ り,ま
た,(8.5)式
の よ う に トル ク で 表 さ れ る式 を 用 い る よ り
もパ ワ ー で 表 さ れ る 関 係 式 の 方 が 便 利 で あ る の で,一
般 に は(8.8)式 が よ く使 用 さ れ
る。 安 定 度 問 題 に 関 し て 提 供 さ れ る 同 期 機 の 慣 性 モ ー メ ン トに関 す る デ ー タ と し て,単 位 慣 性 定 数(inertia
constant)Hが
よ く使 用 さ れ る。Hは
次 式 に よっ て定 義 され
る。
H=
同期速度 にお いて 回転系 に蓄 積 され る回転 運動 エネ ル ギー(MJ) /同期 機 の定格 容量(MVA)
す な わ ち,
(8.9) こ こ に,SmachはMVAで 数Mに
表 さ れ た 同 期 機 の 三 相 定 格 容 量 で あ る。(8.9)式
を慣 性 定
つ い て 解 く と,
(8.10)
を 得 る 。(8.10)式
を(8.8)式
に 代 入 し て,次
式 を得 る。
(8.11)
(8.11)式 に お い て,相
対 回 転 角 δmは ラ ジ ア ン の 単 位,同
期 速 度 ωsmは ラ ジ ア ン/
時 間 の 単 位 を 有 す る の で,(8.11)式
は単 位 法puを
用 い て 次 式 の よ う に表 さ れ る。
(8.12) こ こ に,相
対 回 転 角 δ の 単 位 と し てradを
rad/secで
あ り,Hの
用 い る な ら ば,同
単 位 はMJ/MVA,す
の 単 位 を 用 い る。 回転 子 の 加 速 パ ワーPa,原 力 電 力PeはHと
同 じ基 準 容 量(三
期 角 速 度 ωsの 単 位 は
な わ ち秒 と な り,時
間tはHと
同 じ秒
動 機 に よ る 機 械 的 軸 入 力Pmお
相 容 量)に
対 す るpu値
で あ る 。 添 え字mが
ωsお よ び δに 付 け られ る と,そ れ らの 量 は機 械 角 を表 し,そ 角 を 表 す も の と す る。 系 統 周 波 数 がfHzの
場 合,(8.12)式
よび 出 ω,
れ以 外 の場 合 には電 気
は
(8.13) とな り,δ は 電 気 角 で,単 位 はradで
あ る。
(8.12)式 は 同 期 機 の 動 揺 方 程 式(swing
equation)と
期 機 の 回 転 子 の 運 動 を 表 す 基 本 方 程 式 で あ る。 こ の2階
い い,安
定度 解析 にお ける同
の 微 分 方 程 式 は2つ
の1階
の
方程 式 として書 き表 され る。
(8.14) (8.15) こ こ に,ω,ωsの radで
単 位 は電 気 角/時 間 で,rad/sで
あ り,δ の 単 位 は 電 気 角 で あ り,
あ る。 動 揺 方 程 式 が 解 か れ る と,そ の 解 δ は 時 間 の 関 数 と し て 表 され る。 動 揺
方 程 式 の 解 の 相 対 回 転 角 δ と時 間tの よ ば れ,系
グ ラ フ は 同 期 機 の 動 揺 曲 線(swing
curve)と
統 内 の 全 同 期 機 の 動 揺 曲 線 を調 査 す る こ と に よ り,擾 乱 が 加 え られ た 後 の
同 期 機 が 同 期 を維 持 で き る か 否 か を知 る こ とが で き る 。
8.2.2
単位慣性 定数の変換
(8.9)式 のHの
算 出 に用 い られ た基準 容量 のMVA値
はHを
求 め よ う と して い る
同期機 の三相 定格 容 量 で ある。多 くの同期発 電機 を含 む電 力系 統 の安定 度 の検 討 に お いて は,系 統 のす べて の部 分 に共 通 す る唯 一 のMVA基
準 値 が 選 ばれ る。各 同期 機
に対 す る動 揺方程 式 の右 辺 は この系統 に共通 な基準 容量 で 基準 化 され て表 され な けれ ばな らな いか ら,各 動揺 方程 式 の左 辺 のHも
系 統 に共 通 な基 準 容量 に対 して表 され
表8.1
な けれ ば な ら な い 。 こ の た め,各 のHは
同期 機 の典 型 的 な単 位 慣 性 定 数
々 の 同 期 機 の 定 格 に基 づ い て表 さ れ て い る 各 同 期 機
全 系 統 に 共 通 な 基 準 容 量Ssystemを 基 準 容 量 とす るPu値
る 。 そ れ ぞ れ の 同 期 機 の 定 格 容 量 に 基 づ い て 表 さ れ たHのpu値 量Ssystemを 基 準 とす るPU値
に変 換 す る必 要 が あ か ら系 統 の基 準 容
に変 換 す る公 式 は次 の よ う に表 さ れ る 。
(8.16) こ こ に,Hsystemは
全 系 統 の 基 準 容 量Ssystemを 基 準 と す るpu値,Hmachは
機 の定 格 容 量smachに 慣 性 定CMは
基 づ い て 表 さ れ たpu値
を示す。
実 際 に は ほ とん ど用 い られ ず, Hを
れ る。 そ れ は,慣 性 定 数Mの して,表8.1に
慣 性 モ ー メ ン トJか
慣 性 モ ー メ ン トを 持 ち,定
用 い た 動 揺 方 程 式 が よ く使 用 さ
値 が 同期機 の大 きさや形 式 で広 範 囲 に変 化 す るの に対
示 す よ うにHの
【 例 題8.1】
個 々 の同期
取 り得 る数 値 は狭 い 範 囲 に と ど ま る た め で あ る。
らHを
計 算 す る 公 式 を 導 き,J=245255kg・m2の
格 容 量1333MVA,1800rpmの
発 電 機 のHを
求 め よ。
[解] 同 期 速 度 に お け る 回転 運 動 エ ネ ル ギ ーKEは,
こ こに,Nは 結 果 を得 る。
発 電 機 の毎 分 の 回転 数 で あ る。MVAの
発 電機 定 格 容 量 で 割 る と次 の
これ は 次 の よ うに 簡 単 化 され る 。
上 式 に 与 え られ た 同 期 機 の デ ー タ を 代 入 して,次
8.2.3
の結果 を得 る。
発 電 機 群 の 縮約
広 い地域 に散 在 す る多数 の発電機 を有 す る大規 模 な系 統の安 定度 問題 の検 討 にお い て,解 析 に必要 とす る動揺 方程 式 の数 をで きるだ け少 な くす るこ とが好 ま しい。 送 電 線 の故 障,あ る いは電力 系統 の擾 乱が1つ の発 電所 内 の複数 の発電 機群 に影 響 す る場 合,各 発電 機 の回転子 は共 に動 揺 す る。 この様 な場合,発 電所 内 の発電 機群 を各 回転 子が統 合 され て機械 的 に1台 の等価 発 電機 として表 され るな らば,こ の発電 機群 の動 揺 は1つ の動揺 方程式 で表 され る。 電力 系統 の擾 乱 の発 生位 置 か ら電 気 的 に離れ た母線 に接 続 され てい る2台 の発 電機 を持 つ発電所 を考 える。全 系統 の共 通 な基準 容量 に基 づ く動揺 方程 式 は次の よう に表 され る。 (8.17) (8.18) 両 式 を加 え,ま
た,回
転 子 は 等 し く動 揺 す る と考 え られ る の で,δ1と
δ2は共 通 で あ
り,こ れ ら を δ と表 せ ば,次 の 結 果 を 得 る。
(8.19) こ こ に,HはH1+H2で はPm1+Pm2,お
あ り,等
価H定
よ びPeはPe1+Pe2で
所 の動揺 方程 式 を表す ことに なる。
数(equivalent あ る 。(8.19)式
H
constant)と
は(8.12)式
い い,Pm
と 同 じ 形 で,発
電
【 例 題8.2】60Hzの
系 統 に電 力 を 供 給 し て い る発 電 所 の2台
の発 電 機 は 並 列 に 運 転
さ れ て い る 。 こ れ ら の 発 電 機 は 次 の よ う な 定 格 を持 っ て い る。 発 電 機#1:500MVA,力
率0.85,電
圧20kV,回
転 数3600rpm,H1=4.8
率0.90,電
圧22kV,回
転 数1800rpm,H2=3.27
MJ/MVA 発 電 機#2:1333MVA,力 MJ/MVA 基 準 容 量 を100MVAと
して 両 発 電 機 の 等 価 なH定
数 を求 め よ。
[解]2 台 の 発 電 機 の 全 回 転 運 動 エ ネ ル ギ ー は 次 の よ う に な る 。 (4.8×500)+(3.27×1333)=6759〔MJ〕 した が っ て,100MVAを
基 準 容 量 とす るHは
H=67.59〔MJ/MVA〕 と な る。2台 の 発 電 機 が 同 期 し て 動 揺 す る な ら ば,こ
の 値 は1つ
の動 揺方 程式 に使 用
で き,こ れ ら発 電 機 の 回 転 子 の 角 度 は 同 じ と な る。
同 期 して 動 揺 す る複 数 の 発 電 機 は コ ヒー レ ン ト(coherent)で 度 お よ び位 相 角 が 電 気 角(ラ 揺 方 程 式 は,1つ
ジ ア ン)で 表 さ れ る場 合,コ
あ る と い う。 同 期 速
ヒ ー レ ン トな 発 電 機 群 の 動
の 方 程 式 で 表 さ れ る。 こ れ は,多 数 の 同 期 機 を含 む 系 統 に お い て,
多 数 の 動 揺 方 程 式 を以 上 の 方 法 に よ っ て 統 合 す る こ と に よ り,方 程 式 を減 じ,多 機 系 統 の 安 定 度 の 解 析 を簡 素 化 す る こ とが で き る 。 系 統 内 の コ ヒ ー レ ン トで な い 発 電 機 の 任 意 の1組 (8.18)と
に つ い て は,(8.17)式
お よび
同 様 な 動 揺 方 程 式 を 書 く こ とが で き る。 左 辺 の 係 数 を そ れ ぞ れ の 方 程 式 で
除 し,こ れ ら方 程 式 の差 を と る と,次 の 結 果 を 得 る。
(8.20) 両 辺 にH1H2/(H1+H2)を
乗 じ,整 理 して,次
の 結 果 を得 る。
(8.21) こ の 式 は 次 の よ う に,さ
ら に,よ
り簡 単 な 基 本 的 な 動 揺 方 程 式(8.12)式
の形 に書 くこ
とが で き る。
(8.22) こ こ に,相 対 角 度 δ12は δ1-δ2で あ り,H12は 力,お
よ びPe12は
等 価H定
数,Pm12は
等価機械的軸入
等 価 出 力 電 力 と よ び 次 の よ う に表 され る。
(8.23) (8.24) (8.25) (8.21)式 は,系 統 内の1台 の 同期 機 の安定性 は系 統 の他 の同期 機 が動揺 す る動 作 に 関 連 した性 質 で あ る こ とを表 して い る。 着 目 してい る同期 機 の 回 転 子 の相 対 回転 角 δ1は,他 の複 数 の同 期機 の回転 子 の相 対 回転 角 を δ2で代表 して 表 す とき,こ れ と比 較 し,そ の相対 値 を δ12で表 す。 系統 に故障 が発 生 した 際,故 障点 を除去 す るた め遮 断器 が動 作 し,開 動作終 了の時 点 にお いて,系 統 の安 定 が保持 され るた め には,全 同 期機 の 回転子 の相対 回転 角 の差 が減 少 しな けれ ばな らない。 以 上 に述べ た よ うに,系 統 の安定 性 を検 討 す るこ とは電 力 の安定 な輸送 に非 常 に重 要 であ り,安 定 性 の解析 の主要 な特徴 は2機 問題 で表 され る。 この2機 問題 に よる安 定度 の解析 は,2つ に分 け る こ とが で き る。1つ は無 限大 母線 に接続 され る有 限 な慣 性定 数 を持 つ1台 の同期 機 に関 す る安 定度 解析 であ り,も う1つ は連 系 され る2台 の 有限 な慣性 定数 を持 つ同 期機 に関す る動揺 の解析 で あ る。安 定 度 の解析 に関す る無 限 大母線.(infinitebus)と
はイ ン ピー ダ ンスが0で 無限 大の慣 性 定数 を持 ち,一 定 の誘
導起電 力 を持 つ同期機 が 接続 された母線 と考 える。大規模 な系統 に接続 され る発 電機 の接続 点 は無限 大母 線 と見 な され る。 すべ ての事例 におい て,動 揺 方程 式 は(8.12)式 の形 で表 され,こ の 方程 式 の各 項 は明確 に定量 的 に表 され な けれ ばな らな い。 出力電 力Peを 表す式 は動 揺方 程式 の記 述 のた め に欠 くこ とはで きない。
8.3
電 力相差角 方程式
安 定度 の解析 にお いて原 動機 の速 度制御 系 が動作 す る前 に,電 力系 統 の状 態が 変化 す る こ とが予想 され るの で,発 電機 の動揺 方程 式 にお いて,原 動 機 か らの機械 的軸 入
力Pmは
一 定 と考 え る の は 合 理 的 な仮 定 で あ る 。(8.12)式
発 電 機 の 回 転 子 が 加 速 す る か,減 出 力 電 力Peで お り,Peが
あ る。PeがPmに
のPmは
一 定 で あ るの で,
速 す るか あるい は同期速 度 に あるか を決 定 す るの は 等 し い と き,同 期 機 は定 常 の 同 期 速 度 で 運 転 され て
この 値 か ら変 化 す る と き,回 転 子 の 相 対 速 度 は 同 期 速 度 か ら外 れ,変
化
す る。 発 電 機 の 出 力 電 力Peの
変 化 は 系 統 の 状 態 に よ っ て 決 定 さ れ る。 線 路 故 障 や 遮 断 器
の 動 作 に よ る電 力 系 統 の擾 乱 は発 電 機 に電 気 的 お よ び 機 械 的 な 過 渡 現 象 を起 こ させ, 発 電 機 出 力 を急 激 に 変 化 させ る。 基 本 的 な 仮 定 は発 電 機 の 速 度 の 変 化 が 発 電 機 の 誘 導 起 電 力 に影 響 し な い とす る こ とで あ る 。 この 仮 定 に よ っ て,発
電 機 出 力Peの
変化は
電 力 潮 流 方程 式 お よ び 同 期 機 の 電 気 的 な 動 作 を表 す モ デ ル な どに よ っ て 決 定 す る こ と が で き る。 図8.2(a)に モ デ ル は,過
示 す よ う に,過
渡 リ ア ク タ ン スX'dお
渡 安 定 度 解 析 に 用 い られ る最 も簡 単 な 発 電 機
よ び 過 渡 誘 導 起 電 力E'に
圧 一 定 モ デ ル で あ る。 こ れ は無 負 荷 誘 導 起 電 力 がE,同
よって 表 され る背 後電
期 リア ク タ ン ス がXdで
表さ
れ る定 常 状 態 の 同 期 機 の モ デ ル と類 似 し て い る。 電 機 子 抵 抗 は大 抵 の 場 合 無 視 で き る の で,ベ
ク トル 図 は 図8.2(b)の
よ うに表 され る。
系 統 内 の 負 荷 に 電 力 を供 給 す る2台
の 発 電 機 系 に つ い て 考 え る 。 図8.3に
系 統 に対 す る ノ ー ドア ド ミ タ ン ス行 列 の 要 素 は,次
示 す 送電
の ように表 され る。
(8.26)
図8.2
背 後電 圧 一 定 モ デル の ベ ク トル 図
図8.3 安 定 度 解 析 のた めの2機 モ デル
こ こで 発 電 機 の 過 渡 リア ク タ ン ス は ノ ー ドア ド ミタ ン ス行 列 に含 まれ て い る とす る。 ノ ー ドか ら注 入 さ れ る電 力 は
(8.27)
と な る。kとNを
そ れ ぞ れ1と2に
等 し く置 き,VにE2'を
代 入 す る と,(8.27)式
は 次 の よ う に 表 され る。
(8.28) こ こ に,
で あ る。 よ っ て,次
の 結 果 を得 る。
(8.29) (8.30) 上 の2式
の 添 え 字 を2に
変 化 す る こ と に よ り,母 線#2に
つ い て も(8.29)式,
(8.30)式 と同 様 な 関 係 が 得 られ る。 い ま,
と し,次
の よ うな角
を 用 い る と,(8.29)式
と(8.30)式
か ら次 の 関 係 が 得 られ る。
(8.31) (8.32) (8.31)式 は更 に 次 の よ う に簡 単 な 関 係 で 表 され る。
(8.33)
こ こ に,
(8.34) で あ る。(8.33)式
は 電 力 相 差 角 方 程 式(power−angle
equation)と
の 関 数 と して 表 し た グ ラ フ は 電 力相 差 角 曲 線(power−angle こで,P1は
curve)と
よ ば れ ,電
力角
よ ば れ る。 こ
電 機 子 の 損 失 を 無 視 した 発 電 機 の 有 効 電 力 出 力 を表 す の で,(8
.33)式 で
はPeで
表 し て い る。 回 路 構 成 お よ び 電 圧 の 大 き さ│E1'│お よ び│E2’│は 一 定 な の でPc,
Pmaxお
よ び γ も一 定 と な る 。 送 電 網 の 抵 抗 を 無 視 で き る と考 え られ る場 合 に は,ノ
ー ドア ド ミタ ン ス 行 列Y
busの す べ て の 要 素 は サ セ プ タ ン ス の み で あ り,G11と
γは0
で あ る。 リア ク タ ン ス の み か らな る送 電 系 統 に 適 応 さ れ る電 力 相 差 角 方 程 式 は,よ
く
知 られ た 次 の よ う な 方 程 式 と な る。
(8.35) こ こ に,Pmax=│E1'││E2'│/Xで
あ り,そ
し てXはE1'とE2'の
間 の リア ク タ ンス で あ
る。
【 例 題8.3】
図8.4は
無 限 大 母 線 に 平 行2回
を示 す 。 発 電 機 は1.0puの の 大 き さ は1.0puで
線 を 通 し て 接 続 さ れ て い る1台
の発 電機
電 力 を 送 電 し て お り,発 電 機 の 端 子 と無 限 大 母 線 の 電 圧
あ る。 発 電 機 の 端 子 は発 電 機 と変 圧 器 の 接 合 点 で あ る。 図8 .4
の 図 上 に示 さ れ て い る 数 値 は 系 統 に 共 通 な基 準 イ ン ピ ー ダ ン ス に基 づ く リア ク タ ン ス のpu値
を示 す 。 発 電 機 の 過 渡 リア ク タ ン ス は0.2puで
あ る。 系 統 の 電 力 相 差 角 方 程
式 を示 せ 。
図8.4 例題8.3の
[解] 電 力 系 統 の リア ク タ ン ス 図 を図8.5に の リ ア ク タ ンス は 次 の よ う に な る。
単線 図
示 す 。 発 電 機 の 端 子 と無 限 大 母 線 との 間
図8.5
した が っ て,発
事 故 前 の イ ンピ ーダ ンス マ ップ
電 機 出 力 は1.0puで
あ る か ら,次 の 電 力 相 差 角 方 程 式 が 成 立 す る 。
こ こに,│Vt│は 発 電機 端 子 電圧 の大 きさ,Vは
無 限大 母線 の電 圧,α は無 限大 母 線
に対す る発電 機端 子電圧 の位 相 角 で ある。α につい て解 き,次 の結果 を得 る。
よ って,発
電 機 の端 子 電 圧 は
とな る。 発 電 機 か ら送 電 線 路 に供 給 され る電 流 は 次 の よ う に な る。
また,発 電機 の 内部過 渡誘 導起 電力 は次 の ように計算 され る。
発 電 機 の 内部 過 渡誘 導起 電力E'と 無 限大 母 線 の電 圧Vに は全直 列 リア クタ ンス に よって決定 され る。
したが って,求 め る電力 相差 角方 程式 は
関 す る電 力 相 差 角 方 程 式
図8.6 電 力 相 差 角 曲線
と な る。 こ こ に,δ は 無 限 大 母 線 を 基 準 と す る発 電 機 の 回 転 子 の 相 対 回 転 角 で あ る 。 こ の 電 力 相 差 角 方 程 式 に よ る 電 力 相 差 角 曲 線 を 図8.6に Pmは
一 定 で あ り,運 転 角 δ0=0 .4964rad.に
図 示 す る。機 械 的 軸 入 力
お い て電 力 相 差 角 曲 線 に 交 わ る 。 こ の δ0
は与 え られ た 発 電 機 の 事 故 前 運 転 条 件 に対 応 し,動 揺 開始 前 の 回 転 子 位 置 す な わ ち相 対 相 差 角 で あ る。 発 電 機 の 動 揺 方 程 式 は次 の よ う に な る。
こ こ に,Hの rad)で
単 位 はMJ/MVA(=sec),fは
系 統 の 周 波 数 ,δ は 電 気 角(単
位 は
あ る。 正 常 な 送 電 網 の 状 態 に お け る 発 電 機 の 運 転 条 件 の も とで は,Pe=2.10
sin 0.4964=1.0puは
機 械 的 軸 入 力Pmに
完 全 に等 し く,角 加 速 度 は0で
ある。
次 に,例 題8.3で
用 い ら れ た 送 電 系 統 に つ い て 送 電 線 の1回
て 三 相 短 絡 事 故(故
障)が
継 続 し て い る間,発
電 機 の 回 転 子 の 加 速 が 続 く こ とを 次 の例 題 に よ っ て 示 す 。
【 例 題8.4】
例 題8.3で
線 の 中 間 点Pに
発 生 し た 場 合 の 電 力 相 差 角 方 程 式 を 求 め,事 故(故
用 い た 系 統 に お い て,図8.4のP点
おい 障)が
で 三相 短 絡 事 故 が 発 生
した とす る。 事 故 が 継 続 し て い る 期 間 に お け る こ の 系 統 の 電 力 相 差 角 方 程 式 とそ れ に 対 応 す る動 揺 方 程 式 を求 め て み よ う。 た だ し,H=5MJ/MVAと [解] P点
す る。
で 短 絡 事 故 が 生 じた 時 の 送 電 線 の リア ク タ ン ス 図 を 図8 .7に 示 す(図
は ア ド ミタ ン ス で 表 示)。 例 題8.3で は 動 揺 中 一 定 との 仮 定 に基 づ い てE'=1
計 算 し た よ う に,発 .05∠0.4964に
中
電 機 の過 渡 内 部 誘 導 起 電 力
保 たれ る。
図8.7
事故 中の イ ン ピー ダ ン スマ ップ 注)ブ
ラ ンチ はア ドミタ ンス表 示
電 圧 源 に接 続 さ れ る正 味 の ア ド ミ タ ン ス は 次 の よ う に 決 定 さ れ る。 母 線 は 図8.7に 示 す よ う に 番 号 を付 け,ノ
ー ドア ド ミ タ ン ス 行 列Ybusは
図か らわか る よ うに次の よ
う に表 さ れ る 。
母 線#3に
注 入 され る電 流I3は,ノ
ー ドア ド ミ タ ンス 行 列 を 用 い て,
と な る。 母 線#3は
浮 遊 ノ ー ドで あ る の で,I3=0と
な る 。 す な わ ち,V3に
つ い て 解 く と,
となる。 一 方
,母
線#1,#2に
注 入 さ れ る 電 流I1,I2は
とな る。 こ の式 に,上
記V3の
関 係 式 を代 入 す る と
ノ ー ド ア ド ミ タ ン ス 行 列 を 用 い て,
が 得 られ る*。 この 結 果,母
線#3を
消 去 した ノ ー ドア ド ミ タ ン ス 行 列 は 次 の よ う に な る 。
相 互 ア ド ミタ ン ス の 大 き さ は0.769で
あ り,し た が っ て 次 の 結 果 を 得 る。
事 故 中の電力 相差 角 方程 式 は次 の ように なる。
そ し て,対 応 す る動 揺 方 程 式 は次 の よ う に な る。
回転 子 は慣 性 の た め に,事 す る。 し た が っ て,回
故 の 発 生 と 同 時 に瞬 時 に 位 置 を変 化 で き な い こ と に注 意
転 子 の 相 対 回転 角 δは例 題8.3の
あ り,出 力 電 力 はPe=0.808sin0.4964=0.385で
あ る。 初 期 の 加 速 パ ワ ー は
と な り,初 期 加 速 度 は 次 式 で 与 え られ る値 を も ち,こ
ここに,fは
よ う に は じ め は0.4964radで
の 値 は 正 で あ る。
系統 の周 波数 で あ る。
系統 の保護 リレー シ ステ ム は送 電線 の事故 回線 を検知 し,そ の送 電線 の両 端 の遮 断 器 を同時 に動 作 させ て,事 故 回線 を遮断 し,事 故 を除去 す る よ うに動 作 す る。 この遮 断器 の事 故除 去動 作 に よって,電 力 系統 の構成 の変 化が起 こるた め,さ らに,別 の電 力相 差 角方程 式 を適用 す る こ とが必 要 に なる。
* こ こ で行 っ た技 法 が 「浮 遊 ノ ー ドの 消 去 法 」 と よば れ る もの で あ る。
【例題8.5】
例題8.4の 電 力 系統 の事故 は事 故 回線 の送 受両端 の遮 断 器 の 同時遮 断 に
よっ て除去 され る。事 故 除去 後 の電 力相 差 角 方程 式 お よび動 揺 方 程 式 を求 めて み よ う。 [解] 事故 回線 の遮 断 除去後,電 力系 統 は1回 線 のみ とな り,こ の送 電線 の正味 の相 互 ア ドミタ ンス は次 の よ うにな る。
ま た は,ノ
ー ドア ド ミタ ン ス行 列 に お い て は
とな る。 し た が っ て,事
故 回 線 除 去 後 の 電 力 相 差 角 方 程 式 は 次 式 の よ う に な り,
動 揺 方 程 式 は 次 の よ う に な る。
事 故 を除 去 した 瞬 間 の 回転 子 の 加 速 度 は そ の 時 間 に お け る 回転 子 の 相 対 回 転 角 に よ る 。 例 題8.3か
ら例 題8.5ま
で の3つ
の 電 力 相 差 角 曲線 を 図8.6で
比 較 す る事 が で き
る。
8.4
定 態 安 定 度― 同 期 化 力 係 数―
例題8.3に お いて,図8.6に
示 され た発 電機 の出力 電 力Peの 正 弦 曲線 上 の動 作 点
は機械 的軸 入 力 と出力電 力が 等 し くな る回転 子 の相対 相差 角 で あ り,そ の 角度 として δ0=0.4964rad.が 得 られた。 同図 におい て δ=2.645radの 点 も出力電 力Peと 機械 的 軸 入力Pmが
等 し くな り,δ0と 同様 な動 作点 の よ うに思 われ る。 しか し,ま だ こ こ ま
で の検 討で は,こ の点 の動 作 が安定 か否 か は不明 で あ る。 同期運 転 が可能 な動 作点 に関 して要求 され る必 要条件 は発電 機 の出力 電力 に一 時的 な微 小変 化 が起 きた とき,同 期 を失 わ ない こ とで あ る。 この条 件 を調べ るた め,発 電 機 への機 械 的軸入 力が一 定 で あ る とし,動 作点 にお いて,回 転 子の相 対相 差角 お よ び 出力 電力 に次 式 で表 され る微 小 な変化 を与 えて,発 電機 の 同期運 転 か らの変化 を考 え
てみ る。
(8.36) こ こ に,0の
添 え字 は定 常 状 態 の 動 作 点 に お け る値 を 示 し,添
を 表 す 。(8.36)式
を(8.35)式
に代 入 し,一 般 的 な2機
え字 のΔ は 変 化 の 増 分
系 に 関 して,次
の ような形 の電
力 相 差 角 方 程 式 を得 る。
δΔは δ0にお け る非 常 に小 さ な 変 化 で あ る か ら,
(8.37) とす る こ と が で き,次 の よ う に な る。
(8.38) 始 め の 動 作 点 δ0にお い て
(8.39) で あ り,(8.38)式
お よ び(8.39)式
か ら次 の 結 果 を得 る 。
(8.40) 基 本 的 な 動 揺 方 程 式(8.12)式
に(8.36)式
の 変 化 を代 入 し,次
の 結 果 を得 る。
(8.41)
こ の 方 程 式 の 右 辺 を(8.40)式
で 置 き 換 え,δ0は 一 定 値 で あ る こ と を考 慮 し て,次
の 結 果 を得 る。
(8.42)
Pmaxcosδ0は 配 を 記 号Spで
角 δ0にお け る電 力 相 差 角 曲 線 の 勾 配 で あ る こ と に 注 意 し て,こ 表 せ ば,Spは
次 の よ う に表 され る。
の勾
(8.43) こ こ に,Spは
同 期 化 力 係 数(synchronizing
同期 化 力 係 数Spを
power
coefficient)と
い う。(8.42)式
に
代 入 す る と,回 転 子 の 相 対 回 転 角 の 変 化 分 を 支 配 す る 動 揺 方 程 式
は 次 の よ う な 形 に 書 け る。
(8.44) この 式 は線 形2階 存 在 す る。Spが
常 微 分 方 程 式 で あ り,そ の 解 はSpの
正 で あ る な ら ば,解
δΔ(t)は単 純 調 和 振 動 に対 応 し,そ
衰 の な い 振 動 に よ っ て 表 さ れ る 。Spが 加 す る。 し た が っ て,図8.6に
正 負 の 符 号 に 依 存 し て2つ
負 の 場 合 に は,解
お い て,動
の運 動 は減
δΔ(t)は指 数 的 に 無 限 に 増
作 点 δ=0.4964radは
定常振動 の点で あ
り,回 転 子 の 相 対 回 転 角 の 動 揺 は 微 小 擾 乱 に お い て振 幅 に 限 界 が あ る こ と,す
なわ ち
安 定 で あ る こ とを 意 味 す る。 実 際 に は 抵 抗 分 そ の 他 ダ ン ピ ン グ が あ る の で,一
時的に
微 小 な 擾 乱 に よ っ て 生 じ た 回転 子 の 振 動 は 減 衰 振 動 とな り,δ0=0.4964radの
相 対相
差 角 に 減 衰 す る。 一 方,動
作 点 δ=2.645rad.はSpが
負 で あ り,不 安 定 な 平 衡 点 で
あ る。 以 上 か ら,同 期 化 力 係 数 が 正 で あ る な ら ば,式(8.44)の
解 は正 弦 振 動 を表 す こ とが
わ か っ た 。 減 衰 の な い振 動 の 角 振 動 数 は 次 の よ う に与 え ら れ る。
(8.45) これ は次 式 に与 え られ る振 動周 波数 に対 応 す る。
(8.46)
【 例 題8.6】
例 題8.3の
=0 .4964rad.を
同 期 機 が 一 時 的 に微 小 な 系 統 の 擾 乱 を受 け る と き,動 作 点 δ
起 点 と して 動 揺 す る。 同 期 機 の 回 転 子 の 振 動 周 波 数 と振 動 周 期 を 求
め て み よ う。H=5MJ/MVAと
す る。
[解] 動 作 点 に お け る 同 期 化 力 係 数 は次 の よ う に な る。
振 動 の角振動 数 は次 の よ うにな る。
これ に対 応 す る振 動 の 周 波 数 は 次 の よ う に な る 。
そ し て,振
動 の 周 期 は,
とな る。 この例 題 は商用 周波 数50ま た は60Hzに
対 して動 揺(振 動)の 周 期 が この程度 で
あ る ことを示す もの で実際 的 な視点 か ら重 要で あ る。 系統 の負荷 は1日 を通 して不規 則 に変 化 す るの で,1Hz程
度 の周 波 数 を含 む同期 機 の動揺 はい つで も発生 す る傾 向
があ る こ とが予想 され るが,原 動機,系 統 負荷 お よび同期機 自身 な どに よる種々 な減 衰効 果 に よって動 揺 は急速 に減 衰 す る。
8.5 8.5.1
等面 積法 による 過渡安 定度判 定 等 面積法
図8.8に 示す 系統 は,事 故 を模擬 す るスイ ッチ を加 えた 以外 は図8.4の 系 統 と同 じ で あ る。最 初,ス イ ッチ は開 い てい る。 したが って,例 題8.3と 最初 の運 転 条件 は同 じで ある。位 置Pの
母 線 で三 相短 絡 が 発生,す なわ ちス イ ッチ を閉 じ,短 時 間 の後
ス イ ッチ を開 くこ とによって事 故 が除 去 され る。 したが って,実 質 的 に電力 を送 電 し て い る送電 系統 は事 故が継 続 してい る間以 外 は変化 しない。事故 に よって生 ず る三相 短絡 は実質 的 に母線 で生 じた もの と同 じであ り,そ のた め母線電 圧 が0と な るので, 事故 が除去 され るまで発電 機 か ら送電 線路 へ の出力 は0で ある。事故 の前,事 故 中,
図8.8 事故 を模 擬 す るス イ ッチ を加 えた例 題8.3の 単 線 図
事 故 除 去 後 の 状 態 は図8.9に
示 す 電 力 相 差 角 曲 線 を解 析 す る こ とに よ り理 解 す る こ と
が で き る。 始 め に,発 入 力Pmは
電 機 は 回 転 子 の 相 対 相 差 角 δ0の同 期 速 度 で 運 転 され て お り,機 械 的 軸
図8.9(a)の
が 発 生 す る と き,出
点aに
示 す 出 力 電 力Peに
力 電 力 は 突 然0に
等 しい 。 時 間t=0に
な るが 機 械 的 軸 入 力 は 図8.9(b)に
お い て,事
故
示 す よ うに
変 化 し な い 。 こ の 電 力 の 差 は 回 転 子 系 の 質 量 に蓄 積 さ れ る 回 転 運 動 エ ネ ル ギ ー の 変 化,す
な わ ち 回転 子 の 速 度 の 増 加 に よ っ て 達 せ ら れ る。 事 故 を 除 去 す る に 要 す る時 間
をtcで 表 す な ら ば,tc以
内 の時 間 に対 して,動
揺 方 程 式 は 次 の よ う に与 え ら れ る。
(8.47) 事 故 が 継 続 し て い る間 は,回 転 子 は 加 速 され,単 を時 間tで
位 時 間 当 た りの 増 加 量 は(8.47)式
積 分 す る こ とに よ っ て 求 め ら れ る。
(8.48) さ らに,時 間 に関 して積分 を行 い,回 転子 の相対 相 差 角の位 置 として次 の結果 を得 る。
(a)
(b)
(c) 図8.9 発 電 機 の電 力相 差 角 曲 線
(8.49)
(8.48)式 お よ び(8.49)式
は,同 期 速 度 と相 対 的 な 回 転 子 の 速 度 が 回転 子 の 相 対 相 差
角 が δ0か ら事 故 の 除 去 に お け る δcに進 む 時 間 内 に お い て,す δがbか
な わ ち,図8.9(b)の
らcに 進 む 時 間 内 に お い て 相 対 的 な 回転 子 の 速 度 は 時 間 的 に 直 線 的 に 増 加 す
る こ と を示 す 。 事 故 除 去 の 瞬 間t=tcに
お い て,回
転子 の相対 相 差 角 の速度 の増加 お
よび 発 電 機 と無 限 大 母 線 の間 の 回 転 子 相 差 角 は そ れ ぞ れ 次 の よ う に 与 え られ る。
(8.50) お よ び,
(8.51) 事 故 が δ=δcで 除 去 さ れ る と き,出 力 電 力 は電 力 相 差 角 曲 線 のd点 に突 然 上 昇 す る 。d点 で は,出 な る 。 そ の 結 果 と し て,回 8.9(b)に が,点eに
力 電 力 は機 械 的 出 力 を 超 え,加
転 子 は 減 速 し な が ら 回 転 子 の 相 対 回 転 角 δは 進 み ,図
示 さ れ る よ う にPeはdか
らeに 進 む 。 回 転 子 の 相 対 回 転 角 は δxに 進 む
お い て 回 転 子 速 度 は 同 期 速 度 に な る 。 点eの
そ の た め,回 転 子 は同 期 速 度 に 留 ま る こ とは で きず,減 速 度 は 負 で あ り,回 転 子 の相 対 相 差 角 は図8.9(c)の ら 回転 子 の 速 度 が 同 期 速 度 よ り遅 い 点aへ 的 軸 入 力 が 出 力 電 力 を上 まわ る の で,回
加 速 パ ワ ー は な お 負 で あ り, 速 を続 け ね ば な らな い。 相 対
電 力 相 差 角 曲 線 に 沿 っ てe点
減 速 運 動 す る 。 さ ら に,aか
転 子 は 再 び 加 速 し,点fで
まで 加 速 す る。 減 衰 の な い 場 合 に は,回 転 子 は点eとfで e,e→a→fの
に相 当 す る値
速 パ ワ ー の 符 号 は負 に
か
らfへ は機 械
同 期 速 度 に達 す る
同 期 速 度 に 達 し,f→a→
過 程 の 振 動 を 続 け る。
そ れ で は,図8.9(b)(c)に
お け るe,f点
に お け る δx,δfは どの よ う に 求 め ら れ
る の で あ ろ う か 。 母 線 に接 続 さ れ て い る発 電 機 の 動 揺 方 程 式 は 次 の よ う に表 さ れ る。
(8.52) い ま,次 式 に よって同期 速度 と相 対的 な 回転 子 の角速 度 ωrを表 す。 (8.53)
(8.53)式 を 時 間 に 関 し て 微 分 し,そ
の 結 果 を(8.52)式
に 代 入 し て,次
の 結果 を得
る。
(8.54)
回 転 子 速 度 が 同 期 速 度 で あ る と き,ω で あ る。(8.54)式
の 両 辺 に ωr=dδ/dtを
は ωsに 等 し く,ωrは0で
あ る こ とは 明 か
か け る と,次 式 を 得 る。
(8.55) こ の 方 程 式 の左 辺 は 次 の よ う に書 く こ と が で き る 。
(8.56) い ま,事 故 が 発 生 した 時 刻t=0(δ=δ0)か
ら,相 対 回 転 角 が 最 も 開 く時 刻t=t0(δ
=δx)ま で積 分 す る と次 の 結 果 を得 る。
(8.57)
式(8.57)の
左 辺 は,次
の よ うにな る。
ωrは 回 転 子 速 度 の 同 期 速 度 か らの 偏 差 を 表 す の で,回 同期 速 度 で あ る た め,ωr=ω0と 一 方,t=0の
な り,結 局,左
と き δ=δ0,t=t0の
辺=0と
転 子 速 度 が 角 δ0,δxに お い て な る。
と き δ=δxと な る の で,式(8.57)の
右 辺 は次 の
よ う に な る。
す な わ ち,
(8.58) 式(8.58)は
次 の よ う に も書 く こ とが で き る 。
(8.59)
ま た は,
(8.60) 左 辺 は 事 故 継 続 中 に対 応 し,一 方,右 に 対 応 す る。 図8.9(b)か
辺 は事 故 除 去 後 の 最 大 振 幅 角 δxま で の 時 間
ら わ か る よ う に,事
(8.60)式 の 左 辺 は斜 影 を施 した 面 積A1を,右 面 積A1とA2は
故 継 続 中 に お い てPeは0で 辺 は斜 影 を施 し た 面 積A2を
等 し い こ とを 意 味 す る。 す な わ ち,δxは
面 積A1とA2が
あ る。 表 し,両
等 し くな る
角 と し て 決 定 され る こ と に な る。 この よ う に,電
力 相 差 角 曲 線 を 用 い て,発
き る 。 これ を,等 面 積 法(equal−area
電 機 の 運 転 の 安 定 性 を評 価 す る こ とが で
criterion)と
よ ぶ 。 ち な み に,(8.60)式
の左
り下 側 の 領 域 の 面 積 が 加 速 エ ネ ル ギ ー,(8.60)式
の右
辺,す
な わ ち,機 械 入 力Pmよ
辺,す
な わ ち,機 械 入 力 よ り上 側 の 領 域 の 面 積 が 減 速 エ ネ ル ギ ー に 相 当 し,等 面 積 法
は この 両 者 が バ ラ ンス す る こ と を 意 味 して い る 。 f点 に お け るδfも 等 面 積 法 の 考 え 方 を用 い て 求 め る こ とが で き る。 この 場 合 は, 図8.9(c)の
面 積A3とA4が
斜 影 を施 した 面 積A1は
等 し く な る点 と し てf点 が 求 め られ る 。 事 故 を 除 去 す る に 要 す る時 間 に 依 存 す る。 除 去 に要 す る時
間 が 長 くな る と,位 相 角 δcは増 加 し,同 時 に,面
積A1は
増 加 し,角
転 子 を 同 期 速 度 に 復 帰 させ る た め に は等 面 積 法 に よ り,面 積A2が
δxに お い て 回
よ り一 層 大 き く な
り,最 大 振 幅 角 δxが 増 大 す る。 事 故 を遮 断 除 去 す る に 要 す る時 間 が 長 くな り,回 転 子 の 相 対 相 差 角 δが 図8.9の
回 転 角 δmaxを 超 え る な らば,加 速 パ ワ ー が 再 度 発 生 し,
相 差 角 は 増 加 す る。 こ の 加 速 パ ワ ー の 影 響 に よ っ て,相 不 安 定(instability)と
な る 。 こ の 安 定 が 維 持 さ れ る か,不
差 角 δcは臨 界 故 障 除 去 位 相δcr(critical 積A1とA2の
関 係 は 図8.10の
面 積A1は
お い て,臨
clearing
angle)と
よ う に な る。 事 故 発 生 後,臨
時 間 を臨 界 故 障 除 去 時 間tcr(critical 図8.10に
差 角 δは 際 限 な く増 大 し,
clearing
time)と
安 定 に な るかの境 界 の 相 よ ば れ,こ
の と きの 面
界故 障除去 位 相 に達 す る
よぶ。
界 故 障 除 去 位 相 と臨 界 故 障 除 去 時 間 は 次 の よ うに 計 算 さ れ る 。
次 のよ うにな る。
(8.61)
図8.10
一 方
,面 積A2は
臨 界 故 障 除去位 相 を表 す電 力 相差 角 曲線
次 の よ う に な る。
(8.62) A1とA2の
式 を 等 置 し,整 理 し て,次
の 結 果 を得 る。
(8.63)
δmax=π-δ0お し,δcrに
よ びPm=PmaxSinδ0で
つ い て 解 く と,臨
あ る の で,(8.63)式
に δmaxとPmを
代 入
界 故 障 除 去 位 相 δcrは 次 の 結 果 の よ う に な る 。
(8.64) (8.64)式 の 臨 界 故 障 除 去 位 相 に対 応 す る 臨 界 故 障 除 去 時 間tcrを(8.51)式
の左 辺 に
代 入 す る と,
(8.65)
(8.64)式 お よ び(8.65)か
ら,臨 界 故 障 除 去 時 間 を 次 式 に よ っ て計 算 す る こ とが で き
る。
(8.66)
【 例 題8.7】
図8.8に
示 すP点
に お い て,三
相 短 絡 を 生 じ た と き,こ
の系統 の臨 界故
障 除 去 位 相 お よ び 臨 界 故 障 除 去 時 間 を計 算 して み よ う。 初 期 条 件 は例 題8.3と あ り,f=60Hz,Pm=1.0pu,H=5MJ/MVAで [解] 例 題8.3か
同様 で
ある。
ら,電 力 相 差 角 方 程 式 は,
は じめ の回転 子の相 対 回転 角 は
で あ り,機 械 的 軸 入 力Pmは1.0puで
あ る 。 し た が っ て,(8.64)式
か ら臨 界 故 障 除
去 位 相 は 次 の よ う に な る。
例 題 に 指 定 さ れ て い る値 と上 に得 た 値 を(8.66)式
に代 入 し て,臨
界 故障 除去 時 間 と
して 次 の 結 果 を得 る。
こ の 臨 界 故 障 除 去 時 間 の 値 は60Hzの
周 波 数 に 基 づ い た サ イ ク ル 数 で,13.3サ
イ ク
ル に 等 しい 。 この 例 題 は,事 故 除 去 に対 し,適 切 な保 護 リ レー シ ス テ ム の 設 計 に重 要 な 条 件 を与 える。
8.5.2
等面積法 の応用
等 面積 法 は2機 系 あるい は1機 無 限大母 線系 にの み適用 で き るけれ ども,事 故 が起 きた とき何 が起 きるか を調 べ るに は非 常 に有効 な方法 で あ る。等 面積 法 は過 渡安 定度 を図 式的 に可視 化 して,そ の概 念 を理 解 し,計 算機 を利 用 した動 揺 曲線 の決 定 や安定 度解析 の応 用方 法 を議論 す るた めの基 礎知 識 として役 立 つので,さ らに,も う少 し考 察 してみ よう。 1台 の発 電機 が2回 線 に よっ て無限大 母線 に電 力 を供 給 して い る と き,事 故 除 去 の た め1回 線 が遮 断 され る こ とに よ り,負 荷 は残 りの健 全 な1回 線 に よって電 力 を供給 され るが,発 電機 は同期 を失 う場合 もあ る。2回 線 が接 続 され て い る母 線 に三 相短 絡
が 生 ず る な ら ば,両 で あ る 。 ま た,事
回 線 に よ っ て 電 力 は 送 られ な い 。 こ れ は本 質 的 に例 題8.7の
故 が1回
線 の 一 端 の 母 線 近 傍 で 生 ず る な ら ば,そ
断 器 を 開 く こ とに よ っ て 事 故 を 系 統 か ら切 り離 し,残 送 る こ とが で き る。 三 相 短 絡 事 故 が 母 線 以 外 の2回
場合
の 回線 の 両 端 の 遮
りの 健 全 な 回線 を通 し て 電 力 を
線 の うち の1回 線 の線 路 の 途 中 の
点 で 発 生 す る と き に は,母 線 と事 故 点 との 間 に は イ ン ピ ー ダ ン ス が 存 在 し,事 故 が 継 続 中 で も電 力 が 低 減 さ れ た状 態 で 送 られ る。 例 題8.4の
電 力 相 差 角 方 程 式 は この 事 実
を示 す 。 事 故 継 続 中 も電 力 が 送 ら れ る と き,等 面 積 法 を 適 用 す る た め 図8.11に い られ る 。 こ の 図 か ら,事 故 前 に 送 電 さ れ て い る電 力 はPmax 続 期 間 中 に,送 電 さ れ て い る電 力 はr1Pmax
sinδ で あ り,そ
示 す 図が 用
sinδ0で あ り,事 故 継
して,δ=δcrの
時 点 で,
遮 断 器 に よ っ て 事 故 が 除 去 さ れ た 後 は,送
電 さ れ る 電 力 はr2Pmax
8.11か
臨界 故障 除去 位相 で あ る こ とがわ か る。
ら明 らか な よ う に,こ
の場 合,δcrは
等 面 積 法 に よ り斜 線 を施 し た 面 積A1とA2を
Sinδ で あ る。 図
等 し く置 く こ と に よ っ て,臨 界 故 障 除
去 位 相 に つ い て 次 の 関係 を得 る。
(8.67) 図8.8に
示 した 系 統 と事 故 の 位 置 に お い て は,r1=0,r2=1に
式 は(8.67)式
相 当 す るの で,(8.63)
に含 まれ る こ と に な る。
事 故 の 位 置 にか か わ らず,三
相 短 絡 以 外 の 事 故 で は,正 相 イ ン ピー ダ ン ス 回 路 の 事
故 点 と中 性 点 との 間 が 完 全 に 短 絡 され る の で は な く,む を 挿 入 し た 事 故 条 件 に よ っ て 表 さ れ る の で,事
図8.11
し ろ あ る量 の イ ン ピー ダ ン ス
故 が 継 続 す る 間 で も,あ
事 故継 続 中 も電 力 が 供給 され る場 合 の電 力 相差 角 曲線
る量 の 電 力 が
送 電 され る 。 事 故 を表 す た め事 故 点 と中性 点 と の 間 に 挿 入 さ れ る イ ン ピー ダ ン ス が 大 き け れ ば 大 き い ほ ど,事 故 継 続 期 間 中 に 送 電 され る電 力 も大 き くな る。 事 故 継 続 期 間 中 に 送 電 さ れ る 電 力 は,与 し た が っ て,r1が
え られ た 故 障 除 去 位 相 δcに対 す る 面 積A1に
影 響 す る。
小 さ い と事 故 継 続 中 に送 電 され る 電 力 が 少 な く,面 積A1,す
ち加 速 エ ネ ル ギ ー が 大 き くな る こ と を意 味 し,r1が
なわ
小 さい こと は系統 への 擾 乱 の影
響 が 大 で あ る。 事 故 の 過 酷 度 を増 加 させ る こ と,す な わ ちr1Pmaxが
小 さ くな る よ う
な事 故 に は 次 の も の が あ る。 1.一
線地 絡事 故
2.線
間短 絡
3.二
線地 絡事 故
4.三
相短 絡
一 線 地 絡 事 故 は送 電 線 路 に 最 も頻 繁 に発 生 す る事 故 で あ り,三 相 短 絡 は 最 も頻 度 の 少 な い 事 故 で あ る 。 信 頼 性 を 完 全 に確 保 す るた め に は,系 統 に最 も過 酷 な 擾 乱 を与 え る場 所 で 発 生 す る 三 相 短 絡 に つ い て 過 渡 安 定 度 を考 慮 し,系
統 構 成 を 設 計 す る こ とが
必 要 で あ る。
【例 題8.8】 と き,例
は じ め の 系 統 配 置 お よ び運 転 状 態 が 例 題8.3の
題8.4お
よ び 例 題8.5に
配 置 と状 態 に 同 じ で あ る
述 べた三 相短 絡事 故 にお ける臨界故 障 除去位 相 を決
定 して み よ う。 [解] 例 題8.7に 事 故前
お い て 得 ら れ た 電 力 相 差 角 方 程 式 は 次 の よ う に な る。 :Pmax
事 故継 続期 間 事 故 除去後
sinδ=2.100 :r1Pmax
:r2Pmax
し た が っ て,
例 題8.3か
ら
δ0=0.496〔rad〕
図8.11 か ら次 の 結 果 を 得 る 。
sinδ
sinδ=0.808
sinδ=1.500
Sinδ sinδ
し た が っ て,(8.67)式
に 数 値 を代 入 して,次
の 結 果 を 得 る。
し た が っ て,
δcr=1.444〔rad〕
臨 界事 故除 去時 間 を決定 す るため に は,δ とtの 動 揺 曲線 を求 めな けれ ばな らない。
8.5.3
過 渡 安定 度 の 向 上 対 策
過 渡 安 定 度 の 向 上 対 策 と して,以 (1)
下 の もの が 実 際 に適 用 さ れ て い る。
高速度遮断器
これ まで の 説 明 で も明 ら か な よ う に,事 ら な い の で,加 速 エ ネ ル ギ ー,す
故 を 高 速 に 除 去 で き れ ば,δcが
な わ ち,図8.9(b)のA1の
大 き くな
面 積 を小 さ くす る こ と
が で き る 。 こ れ に よ り,不 安 定 に な りに く くな る 。 (2)
超速応 励磁
事 故 発 生 後,短
時 間 で 誘 導 起 電 力(背
(8.34)式 か ら電 気 出 力Peを す な わ ち,図8.9(b)のA2の
後 電 圧)│E'│を
大 き くす る の で,(8.33)式,
大 き くす る こ とが で き る 。 これ に よ り,減 速 エ ネ ル ギ ー 面 積 を 大 き くす る こ とが で き る の で,安
定 度 が 向上 す
る。 (3)高
速 バ ル ブ 制 御(EVA:
事 故 発 生 後,短
Early
Valve
Actuation)
時 間 で タ ー ビ ンの 蒸 気 流 入 弁 を急 閉 す る こ と に よ り,機 械 的 入 力 を
絞 り込 む 。 図8.9で
は,動 揺 中 の 機 械 的 入 力 が 一 定 で あ る と考 え て い る が,こ
が 下 側 に シ フ トす れ ば,加 速 エ ネ ル ギ ー,す
な わ ち,A1の
の入 力
面 積 が 小 さ くな り,一
方,
減 速 エ ネ ル ギ ー,す
なわ ち,A2の
た だ,実
故 継 続 中 の 短 い 時 間 で 機 械 的 入 力 を絞 り込 む の は 困 難 な た め,事
際 に は,事
面 積 が 大 き くな り,安 定 化 し や す く な る の で あ る 。
故 除 去 後 の 減 速 エ ネ ル ギ ー を増 加 させ る こ とで 安 定 化 を 目 指 し て い る。 こ れ ら は,わ
が 国 にお い て い ず れ も 実 用 化 され て い る。EVAに
つ い て は設 備 コス
トが か か りす ぎ る こ とか ら適 用 例 は 少 な い が,超 速 応 励 磁 に 関 して は,発 制 御 系 を変 更 す る こ とで 対 応 で き る た め,適
電 機 の励 磁
用 例 は 多 い 。 高速 度 遮 断 器 に 関 し て は,
現 在,わ
が 国 の 基 幹 系 統(200kV以
の 事 故 設 備 の 遮 断(事
上 の 系 統)で
故 の 除 去)が
は,事 故 発 生 か ら3∼4サ
イ クル で
一般 的 で ある。
こ の ほ か に も,制 動 抵 抗 器(damping
resistor),直
列 コ ン デ ン サ,中
間開 閉 所 の
設 置 な どで 過 渡 安 定 度 を 向 上 さ せ る こ とが 可 能 で あ る。 制 動 抵 抗 器 は事 故 除 去 後,発
電 機 近 傍 の 母 線 に設 置 され た 抵 抗 を 投 入 す る こ とで,
発 電 機 の 電 気 出 力 が 増 し,加 速 エ ネ ル ギ ー を抑 制 し て,安 定 化 す る もの で あ る 。 直 列 コ ン デ ンサ は,送
電 線 に直 列 に コ ンデ ンサ を 挿 入 し て送 電 線 の リア ク タ ン ス 分
を補 償 す る の で,(8.34)式
のY12が
大 き く な る。 こ れ に よ り,電 気 出 力Peを
で き る の で,発 電 機 は不 安 定 に な り に くい,す
な わ ち,過
大 き く
渡安 定 度 の 向 上 に つ な が
る。 中 間 開 閉 所 の 設 置 に よ り,事 故 回 線 の 遮 断 区 間 が 短 くな る の で,事 線 の リ ア ク タ ン ス が 小 さ く な り,直 列 コ ン デ ン サ と 同 様,電
故 除去後 の送電
気 出 力Peを
大 き くで
き,過 渡 安 定 度 の 向 上 に 寄 与 す る。 こ れ ら は,わ
が 国 で も一 部 実 用 化 され て い る もの の,コ
ス トの 問 題 や 直 列 コ ン デ ン
サ 設 置 に よ る 共 振 現 象 の 発 生 な どの 問 題 も あ り,適 用 は 限 定 的 で あ る 。
問題 (1)周
波 数60Hz,定
格 電 圧22kV,定
7.5MJ/MVAの
格 容 量500MVA,の4極
慣 性 定 数 を 持 っ て い る。(a)同
られ る 運 動 エ ネ ル ギ ー は い く ら か 。(b)回 の と き,出 力 が400MWな (2)(1)の
の 発 電 機 はH=
期 速 度 にお い て回転 子 に蓄 え
転 損 失 を無 視 し,入 力 が452MW
らば 角 加 速 度 は い く らか 。
発 電 機 に つ い て 求 め た 加 速 度 が15サ
イ ク ル の 期 間 一 定 な ら ば,こ
の期
間 の δ の電 気 角 の 変 化 と こ の 期 間 の 終 わ り に お け る毎 分 の 回 転 速 度 を求 め よ 。 た だ し,こ の 発 電 機 は初 期 状 態 で 大 規 模 系 統 と 同 期 して お り,加 速 トル ク は0 で あ る と す る。 (3)(1)の
発 電 機 が 遅 れ 力 率0.8の
出 力 が40%だ −
meterの
定 格 出 力 で 運 転 され て い た と き,事 故 に よ っ て
け 減 少 し た 。 事 故 が 発 生 し た 瞬 間 の 加 速 トル ク をnewton
単 位 で 表 せ 。 た だ し,損 失 を 無 視 し,発 電 機 軸 入 力 は 一 定 とす る 。
【 解 答 は巻 末 】
第9章 電力系統 にお ける有効 電力と周波数 の関係
電気 の 品質 として周波 数 の安 定 は非 常 に重 要で あ る。 ここで は,電 力 系統 の周波 数 を維 持 す る必 要性 につ い て触 れ た後,な ぜ,系 統 の 周波 数 が 変 化 す るか に つ い て学 ぶ。 次 に,電 力 系 統 は複 数 の電 力会社 が連 系 され てい るのが 普通 で あ るが,こ の よう な連 系系統 にお け る周 波数 と連 系線 潮流 の関係 につい て考 え る。 周波 数 を基 準値 に保 つた め の負荷周 波 数制御 の方式 につい て,単 独 系統 と連 系系 統 で は どの ような制御 が 行わ れ てい るか説 明 し,最 後 に,わ が 国や海外 で の状 況 に つい て も簡 単 に触 れ る。
9.1
周 波 数 制 御 の 必 要 性
まず 最 初 に,電
力 系 統 の 周 波 数 を 規 定 値 に保 た な け れ ば な ら な い理 由 に つ い て 考 え
て み よ う 。 需 要 家 側 か ら見 る と,系 統 周 波 数 が 一 定 に保 た れ て い る と,電 動 機 の 回 転 速 度 が 一 定 に保 た れ る の で,製
品 の 質 の 向 上 に つ な が る 。 また,同
時 計 に つ い て も周 波 数 が 一 定 で あ れ ば,よ な み に,周 波 数 偏 差(規
定 値 か らの ず れ)の
期 モ ー タ を用 い た
り正 確 な 時 間 を表 示 す る こ とが で き る 。 ち 積 分 を時 差 と よぶ が,こ
れ は周 波 数 の ず
れ に よ り ど れ だ け 時 計 の 表 示 時 間 が ず れ る か を意 味 し た も の で あ る 。 しか し な が ら,最 近 はパ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 装 置 を 用 い た モ ー タ の 速 度 制 御 が 広 く行 わ れ る よ う に な っ て お り,需 要 家 側 か ら見 た 場 合,周
波 数 が一定 に保 たれ てい る
必 要 性 は 以 前 ほ ど大 き くは な い 。 一 方,系
統 側 か ら見 る と,周 波 数 が 変 動 す る とい う こ とは,同
期 発 電 機,そ
の発電
機 と直 結 し て い る タ ー ビ ン あ る い は 水 車 の 回 転 数 が 変 化 す る とい う こ と を意 味 す る。 特 に,近 年 の 大 容 量 火 力 発 電 ユ ニ ッ ト*1で は タ ー ビ ン(特 い 巨 大 な 翼(時
に は1.3メ
圧 タ ー ビ ン)に 薄
ー トル 近 くに な る)を 用 い て い るた め,周
とタ ー ビ ン翼 が 振 動 を起 こす な ど,機 器 の 安 全 上,悪 *1発
に,低
波 数 が変化 す る
影 響 を及 ぼ す 。 この た め,周 波
電機 とボイラー,タ ー ビンあ るいは水車 を合 わせた ものを発 電ユニ ッ ト,発 電所 は発電 ユニ
ッ トが複数設 置 された ものを言 う。火力発電ユニ ッ ト,水 力発電 ユニッ トを,そ れぞれ,火 力機,水 力機 とよぶ こともある。
数 が 規 定 値 か ら大 き くず れ た 場 合,機
器 を 保 護 す る た め に発 電 ユ ニ ッ トを停 止 す る こ
とが あ る 。 この よ う に,系 統 周 波 数 を規 定 値 に 維 持 す る こ と は,需 要 家 側,系 っ て 重 要 で は あ る が,近
9.2
年 は,む
統 側 の両者 に と
し ろ 系 統 側 の ニ ー ズ が よ り重 要 とな っ て い る。
有 効 電 力 と 周 波 数 の 関 係
こ こで は,電 力 系 統 に お け る 有 効 電 力 と周 波 数 の 関 係 に つ い て 考 え る。 電 力 系 統 の 周 波 数 は 発 電 機 の 回 転 数 で決 ま る。 発 電 機 で は 機 械 的 入 力,す
なわ ち火
力 の 場 合 は蒸 気 タ ー ビ ン,水 力 の 場 合 は水 車 か らの 回 転 エ ネ ル ギ ー が 電 気 エ ネ ル ギ ー に変 換 さ れ る 。 機 械 的 入 力 と電 気 的 出 力 が バ ラ ン ス し て い れ ば,発 電 機 は一 定 の 回 転 数 で 運 転 さ れ,周
波 数 は一 定 と な る。 し か し,実
て お り,そ れ に 伴 い,発
電 機 の 電 気 出 力 も時 々 刻 々 変 化 し て い る。 一 方,発
械 的 入 力 は瞬 時 に変 え る こ とが で き な い た め,発 ラ ン ス し な い こ と に な る 。 第8章
電 機 の 回 転 数 は上 昇,す
波 数 は下 が り続 け る こ と 速 制 御)が
働
ず 安 定 な 周 波 数 で運 転 さ れ る こ とに な る。
発 電 ユ ニ ッ トの ガ バ ナ 制 御
発 電 ユ ニ ッ トで は,周 波 数(回 (水量)を
なわ ち周波数 が あが
電 ユ ニ ッ トで は ガ バ ナ 制 御(調
き,負 荷 に も 自 己 制 御 性 が あ る た め,必
9.2.1
電 機 の運 動 方 程 式 か ら,機 械
に,機 械 入 力 が 電 気 出 力 を下 回 っ て い る場 合,周
に な る。 実 際 に は,後 述 の よ う に,発
電機 の機
電 機 の機 械 的 入 力 と電 気 的 出 力 が バ
で 説 明 し た よ う に,発
入 力 が 電 気 出 力 を上 回 っ て い る 場 合,発 り続 け,逆
際 の 系 統 で は負 荷 は時 々 刻 々 変 化 し
抑 制 し,逆
転 数)が
上 昇 す る と タ ー ビ ン(水 車)へ
に,周 波 数 が 下 降 す る とタ ー ビ ン(水 車)へ
を増 加 さ せ る こ とで,発
の蒸 気流量
の 蒸 気 流 量(水
量)
電 機 へ の 機 械 的 入 力 す な わ ち 電 気 出 力 を制 御 して い る。 こ の
よ う に 発 電 機 の 回 転 速 度 を一 定 に 維 持 す る よ う に,ガ バ ナ(調
速 機 :governor)の
動 作 に よ っ て 機 械 的 入 力 を 制 御 す る こ と を ガ バ ナ 制 御 あ る い は 調 速 制 御(Speed Governing
Control)と
よ ぶ 。 図9.1に
ガ バ ナ の 構 成 を 示 す。 出 力 指 令 値 は 中 央 給 電
指 令 所 等 か ら の発 電 機 出 力 の 目標 値 で あ る。 出 力 指 令 値 が 変 化 し な い 場 合,周 差 に応 じた 出 力 が サ ー ボ モ ー タ ー に 与 え られ,火
波数 偏
力 ユ ニ ッ トの 場 合 は蒸 気 加 減 弁 の 開
度 を,水 力 ユ ニ ッ トの場 合 は ガ イ ドベ ー ンの 開 度 を変 え る こ とで 流 量 を調 整,す
なわ
ち,機 械 入 力 を調 整 し,発 電 機 出 力 が 変 化 す る こ と に な る。 後 述 の 負 荷 周 波 数 制 御 を 行 う場 合 は,出 力 指 令 値 そ の もの も変 化 し,周 波 数 偏 差 と出 力 指 令 値 の 変 化 に応 じた 出 力 が サ ー ボ モ ー タ に与 え られ る こ と に な る。
図9.1
ガ バ ナ の構 成
図9.2 発 電 機 出力 と負 荷 の電 力 周 波数 特 性
出 力 指 令 値 が 一 定 の場 合 を考 え よ う。 実 際 に は,周 波 数 と発 電 機 出 力 の 関 係 は 必 ず し も直 線 で 表 さ れ るわ けで は な い が,図9.2で
は簡 単 の た め に,こ
の関係 が直線 で表
る い は定 格 回 転 速 度 をFN,無
負荷 時 回転速 度
され る もの と し て い る 。 い ま,定 格 周 波 数(基 (周波 数)をF0と
準 周 波 数)あ
す る と,
(9.1) を 速 度 調 定 率(Speed
Regulation)と
よ ぶ 。 εの 定 義 か ら明 らか な よ う に,ε が 小 さ
い ほ どわ ず か の 周 波 数 変 化 で 電 気 出 力 が 大 き く変 化 す る こ と に な る 。 周 波 数 の 安 定 の た め に は,ε は小 さい ほ うが 望 ま し い が,あ に 対 し て,出
ま り に も小 さ い と,わ
ずか な周 波 数変 化
力 が 大 き く変 動 す る こ と に な り,発 電 ユ ニ ッ トに と っ て は望 ま し くな
い 。 一 般 に,ε は4∼5%程 単 位 周 波 数(1Hz)の を発 電 力 特 性KGと
度 に 設 定 さ れ て い る の が 普 通 で あ る。 変 化 に対 し て,発
電 機 出 力 が 定 格 出 力GNの
何%変
化 す るか
す れ ば,
(9.2) と な る 。 こ の 式 に,(9.1)式
を 代 入 す る と,
(9.3) とな る 。 す な わ ち,
(9.4) こ の こ とか ら,調 定 率 が4%で の場 合),41.7%(60Hzの
あ れ ば,1Hzの
場 合)出
タ,流 量 調 整 部 の ゲ イ ン は1で
周 波 数 変 化 に 対 し て,50%(50Hz
力 が 変 化 す る こ と に な る。 図9.1の
あ る の で,発
電 力 特 性KGは,周
サ ー ボ モー
波 数偏 差 に対 す るゲ
イ ン とな る。
9.2.2
負荷の 周波数特性
負 荷 に つ い て も,図9.2に
示 す よ う に 周 波 数 が 上 昇 す る と負 荷 が 増 加 す る とい う特
性 が あ る こ とが 知 られ て い る。 こ れ は,例
え ば,負 荷 の か な りの 部 分 を 占 め る 回 転 機
負 荷 を考 え る と,周 波 数 の 上 昇 に よ りモ ー タ の 回 転 数 が 上 昇 し,モ ー タ に つ な が れ た 機 械 的 負 荷 トル ク(フ
ァ ン,ポ
転 数 ×機 械 的 負 荷 トル ク)が ス負 荷(電
熱 負 荷)で
ン プ等)が
ほ ぼ一 定 で あ る の で,結
果 と し て 負 荷(回
増 加 す る こ とで 理 解 で き る。 こ の ほ か,定
イ ンピー ダ ン
あ っ て も,周 波 数 の 上 昇 に 伴 う系 統 電 圧 の 上 昇 で 負 荷 が 増 加 す
る ケ ー ス も あ る 。 この よ う に,負
荷 に 関 して は周 波 数 が 上 昇 す る に 従 い 消 費 電 力 が 増
加 す る とい う 自 己 制 御 性 が あ る。
9.2.3
系統の周波数特 性
さ て,図9.3に
示 す よ う に,系
統 内 の 発 電 ユ ニ ッ トを ま と め た 仮 想 的 発 電 ユ ニ ッ ト
と負 荷 を ま と め た 仮 想 的 負 荷 が つ な が れ て い る系 統 を考 え る 。 定 格 周 波 数 で 運 転 し て い る状 態 す な わ ち 発 電 量 と負 荷 が バ ラ ン ス し て い る状 態 か ら,何
らか の 理 由 で 発 電 量 と負 荷 にΔPの
る)が
生 じ,系 統 周 波 数 がΔF変
い ま,周 〔MW/Hz〕,負
波 数 が1Hz変
ア ンバ ラ ン ス(発
化 した 場 合 を考 え よ う。
化 し た 時 に 発 電 ユ ニ ッ トの 出 力 が 変 化 す る 割 合 をKG
荷 が 変 化 す る割 合 をKL〔MW/Hz〕
とす れ ば(共
発 電 ユ ニ ッ トの 出 力 変 化 量ΔGは−ΔF×KG(マ 合,発
電 力 が 多 い場 合 を正 と す
電 出 力 が 減 少 す る こ と を 意 味 し て い る),負
に 絶 対 値 を 考 え る),
イ ナ ス 符 号 は 周 波 数 が 上 昇 した 場 荷 の 変 化 量ΔLはΔF×KLと
な
図9.3 系 統 の簡 略 モ デル る。 す な わ ち,発
電 出 力 の 変 化ΔGと
負 荷 の 変 化ΔLに
よ り需 給 ア ン バ ラ ン スΔP
が 吸 収 さ れ た こ と に な る。
(9.5) となる。 こ こで,K=KG+KL〔MW/Hz〕
を,系
統 定 数(System
Constant)と
よ ぶ 。Kの
値 が 大 き い ほ ど,系 統 内 に 発 生 し た 需 給 ア ン バ ラ ン ス に よ る周 波 数 偏 差 が 小 さ い,す な わ ち,周 波 数 が 変 化 し に くい こ と を意 味 して い る。 Kの
値 は,運
転 し て い る 発 電 ユ ニ ッ トの 特 性 等 で 変 化 す る が,特
(運転 して い る発 電 機 の 定 格 容 量 の和)に
大 き く依 存 す る た め,一
に,系
統容量
般 に系 統 容 量 に 対
す る百 分 率 で 表 現 され る こ とが 多 い 。 す な わ ち, %K=100×K/系 で,10∼20〔%MW/Hz〕
統 容 量 〔%Mw/Hz〕 の 範 囲 に あ る こ とが 知 ら れ て い る。 こ れ ら は,系
統事故 に
伴 う 負 荷 脱 落 時 や 電 源 脱 落 時 あ る い は 特 定 発 電 ユ ニ ッ トの ガ バ ナ 試 験(負
荷遮断試
験)時
の 周 波 数 変 化 デ ー タ か ら推 定 され る。 負 荷 特 性 定 数KLに
つ い て は,周
化 に 伴 う系 統 電 圧 変 化 に よ る影 響 も受 け る た め 推 定 は 困 難 で あ る が,一 MW/Hz〕 MW/0.1Hzが
【例 題9.1】
程 度 の 値 が 用 い ら れ る。 な お,単
位 と し て は,%MW/Hzよ
使 わ れ る の が 一 般 的 で あ る。 後 者 は 前 者 の1/10の
新 設 の 火 力 発 電 ユ ニ ッ ト1000MWの1/2出
(運転 中 に ユ ニ ッ トを 系 統 か ら 切 り離 す 試 験)を
ユ ニ ッ トの1/2出
般 に3〔% り も,%
値 で あ る。
力 で の ガ バ ナ カ ッ ト試 験
行 っ た と こ ろ,周 波 数 は0.045Hz
低 下 した 。 こ の 系 統 の 系 統 定 数 を 求 め よ。 系 統 容 量 は100GWと [解] 定 格1000MWの
波数 変
す る。
力 で ガバ ナ カ ッ ト試 験 を行 っ た の で,ユ
ニ
ッ ト解 列 直 後 は 系 統 に500MWの こ の500MWの
需 給 ア ン バ ラ ン ス(発
需 給 ア ン バ ラ ン ス で0.045Hz周
統 定 数Kは500/0.045=11,111MW/Hzと
電 力 不 足)が
生 じ て い る。
波 数 が 低 下 し た の で あ る か ら,系
な る。
よ っ て,%Kは11,111/100,000=11.1%MW/Hz=1.11%MW/0.1Hzと
と こ ろ で,Kの
値(10∼20〔%MW/Hz〕)か
KG(調
場 合,50〔%MW/Hz〕:50Hzの
定 率4%の
の 場 合)は
な る。
ら推 定 さ れ るKGと,発
電 ユ ニ ッ トの
場 合,41.7〔%MW/Hz〕:60Hz
大 き くず れ て い る。 これ は す べ て の 発 電 ユ ニ ッ トが 調 速 制 御 さ れ て い な い
こ と,ガ バ ナ(調 速 機)の られ るが,以
非 線 形 特 性(リ
ミ ッ タ ー,不
感 帯 な ど)に
よ る こ と も考 え
下 の影 響 も大 き い。 す な わ ち,ガ バ ナ 制 御 あ る い は調 速 制 御 は 周 波 数 の
変 化 に よ り,タ ー ビ ン へ の蒸 気 流 量 を調 節 す る た め に,タ
ー ビ ン入 り口 弁 の 開 度 を制
御 す る。 しか し,発 電 ユ ニ ッ トへ の 出 力 指 令 値 が 増 加 し て い る場 合 に は,タ
ー ビ ン入
り 口弁 の 開 度 はす で に最 大 と な っ て お り,こ の と き に 周 波 数 が 下 が っ て 蒸 気 流 量 を 増 や そ う と し て も こ れ 以 上 弁 を 開 く こ とが で きな い た め,蒸 な い 。 出 力 指 令 値 は後 述 の 負 荷 周 波 数 制 御(LFC)に
気 流 量 を 増 や す こ とが で き
よ り,数 秒 か ら十 数 秒 の 周 期
で 変 化 し て お り,こ の た め,周 波 数 変 動 に伴 う ガ バ ナ制 御 あ る い は 調 速 制 御 の 効 果 が 抑 制 さ れ る の で あ る 。 上 記 系 統 定 数Kは 10∼20〔%MW/Hz〕
こ の よ う に,系 統 内 で 発 電 量,負 偏 差 が 生 じ る が,大
厳 密 に は,運
用 状 態 に よ り変 化 す る が,
とい う の は,平 均 的 な値 と い う こ とが で き る。 荷 量 の 変 化 が 生 じ る と,系 統 定 数 に 応 じ た 周 波 数
体 数 秒 程 度 の 過 渡 現 象 の後,そ
の値 に 落 ち 着 く。 これ は,発 電 機
や 負 荷 の 電 動 機 に は 慣 性 が あ る こ と,調 速 制 御 の過 渡 応 答 が あ る た め で あ る。 た だ, 系 統 の 過 渡 現 象 に対 す る 時 定 数 は3秒
程 度 で あ る こ と,負 荷 周 波 数 制 御 の よ う に10
秒 以 上 の 時 間 間 隔 を 対 象 と す る場 合 は,こ
9.3
の よ う な 過 渡 特 性 を 考 慮 す る必 要 は な い 。
連 系 系 統 の 周 波 数‐ 潮 流 特 性
単 独 系 統 に お い て 発 電 量,負
荷 量 が 急 変 し た 時 の 周 波 数 変 化 は前 節 で 述 べ た よ う に
な るが,系
統 が 連 系 され た 場 合 は ど う な るで あ ろ うか 。
図9.4の
よ う に,A,B2つ
合 を 考 え よ う。 今,A系 化 量)の
の 系 統 が1本
の 送 電 線(連
統 でΔPA=ΔGA-ΔLA(ΔGA:
需 給 ア ン バ ラ ン ス が 生 じ,周 波 数 がΔF変
で は 需 給 バ ラ ン ス は とれ て い る も の とす る。A,B両 波 数 は 互 い に 等 し い 。 この 場 合,A系
統 側 で は,周
系 線)で
連 系 され て い る場
発 電 変 化 量,ΔLA:
負荷 変
化 し た と し よ う。 一 方,B系
統
系 統 は連 系 さ れ て い るの で,周 波 数 変 化 に よ り需 給 ア ン バ ラ ン
A系 統
B系 統
図9.4 連 系 系 統 の簡 略 モ デ ル
ス 分 の 一 部 は 吸 収 され るが,残
り は,連 系 し て い る 送 電 線 を通 し てB系
こ の潮 流 変 化 分 をΔPT(A系
統 か らB系
こ の 時,A系
の よ うな 関 係 式 が 成 り立 つ 。
統 側 で は,次
統 に流 れ る。
統 へ 向 か う方 向 を正 とす る)と
す る。
(9.6) 一 方
,B系
統 側 で は,次
の よ う な 関 係 式 が 成 り立 つ 。
(9.7) こ こで,KA,KBはA,Bそ
れぞれ の系統 の系統 定 数で あ る。
これ よ り,
(9.8)
す な わ ち,周
波 数 偏 差 は需 給 ア ン バ ラ ン ス量 を両 系 統 の 系 統 定 数 の 和 で 割 っ た 値 と
な る。 これ は,当 然,A,B2つ
の 系 統 と考 え ず に,1つ
の 系 統 と考 え た 場 合 の 周 波
数 偏 差 と同 じで あ る。
【 例 題9.2】A系
統 で50MWの
変 化 を求 め よ。A,B系
電 源 脱 落 が 発 生 し た 時 の,周
統 の 系 統 容 量 を そ れ ぞ れ1000MW,500MWと
数 は両 系 統 と も1%MW/0.1Hzと [解] A系 統 の 系 統 定 数 は B系 統 の 系 統 定 数 は A系
Δ
し,系 統 定
す る。 0.01×1000=10〔MW/0.1Hz〕=100〔MW/Hz〕
0.01×500=5〔MW/0.1Hz〕=50〔MW/Hz〕
統 に お け る電 源 脱 落 に よ り,−50MWの
力 不 足 を あ らわ す)が
波 数 変 化 と連 系 線 潮 流
発 生 した の で,(9.8)式
F=−50/(100+50)=−0.3Hz
Δ PT=50×(−50)/(100+50)=−16.7MW
需 給 ア ンバ ラ ン ス(マ よ り,
イ ナ ス は発 電
す な わ ち,周 MW潮
波 数 は0.03Hz低
流 が 変 化 す る((9.8)式
を正 と し て い る)こ
と こ ろ で,通
系 線 に はB系
統 か らA系
統 に 向 け て16.7
で は 連 系 線 の 潮 流 はA系
下 し,連
統 か らB系
統 に向 か う方 向
と に な る。
常,A,B両
系 統 で,発
電 力 の 変 化 分ΔGA,ΔGBは
れ ぞ れ の 系 統 の 負 荷 の 変 化 分ΔLA,ΔLBを
把 握 で き る が,そ
直 接 知 る こ と は で き な い 。 し か し,両
系統
で,
(9.9)
の 関 係 が 成 り立 つ の で,周
波 数 変 化ΔFお
ば,需 給 ア ンバ ラ ン ス 分ΔPA,ΔPBを
よ び 連 系 線 潮 流 変 化ΔPTを
知 る こ と が で き る の で,こ
推 定 す る こ とが で き る。 この た め に は,各
測 定 してお け
れ か らΔLA,ΔLBを
系 統 の 系 統 定 数KA,KBを
正 確 に把 握 し て
お く必 要 が あ り,こ の 点 か ら も系 統 定 数 の 正 確 な把 握 が 重 要 と な る。 実 際,新 電 ユ ニ ッ トが 運 転 を開 始 す る 際 に は,ガ バ ナ 試 験 を 行 い,系
しい発
統特性 定数 の 推定 が行 わ
れ て い る。
9.4
負 荷 周 波 数 制 御―
単 独 系 統 の 場 合―
周 波 数 が 変 化 す る の は,発 電 機 へ の 機 械 的 入 力 と電 気 的 出 力 の ア ンバ ラ ン ス に よ っ て 発 生 す る こ と を 説 明 し た 。 この こ とか ら,周 波 数 制 御 を行 う た め に は,周 波 数 が 低 下 した 場 合 は 機 械 的 入 力 を増 や し,逆
に 周 波 数 が 上 昇 した 場 合 は 機 械 的 入 力 を 抑 制 す
れ ば よ い こ と に な る。 と こ ろ で,周 に,負
波 数が 変化 す るの は系 統 内 の負 荷 が 変動 す るた め で あ る。 この た め
荷 変 動 の性 格 を 明 らか に す る こ と は き わ め て 重 要 な こ とで あ る。 一 般 に 負 荷 変
動 は2つ
に大別 で きる。
(1)日 負 荷 変 動 に 見 られ る ゆ っ く り し た 大 き な変 化 (2)変 化 量 は大 き くな い が,短 こ の う ち,(1)の ッ ト は第11章 Load
負 荷 変 化 は あ る 程 度 正 確 に予 測 す る こ とが 可 能 な た め,発
で 述 べ る 経 済 的 な ス ケ ジ ュ ー ル 運 転(経
Dispatch:ELD))が
測 す る こ とが 実 際 上,不 L FC)は
い 周 期 で 頻 繁 に起 こ る 変 化
行 わ れ る。 一 方,(2)の
済 負 荷 配 分 運 転(Economic
短 い 周 期 で 起 こ る負 荷 変 化 は 予
可 能 で あ る。 負 荷 周 波 数 制 御(Load
こ の 変 化 を対 象 とす る リ ア ル タ イ ム(実
電ユニ
時 間)制
Frequency 御 で あ る。
Control:
負 荷周 波数 制御 で は,系 統 の需 給 ア ンバ ラ ンス を調整 す る中央給 電指 令所 が周 波数 に応 じて各発 電 ユニ ッ トに出力調 整の 指令 を出す。 この出力 調整 の指令 はすべ ての発 電 ユニ ッ トに対 して出 され るの で はな く,速 い出力 変動 を行 って も問題 とな らない石 油焚 き火 力発 電 ユニ ッ トや水 力 ユニ ッ トに対 して 出 され,原 子力 ユ ニ ッ トや石炭 焚 き 火力 ユニ ッ ト,さ らには運用 上 の理 由 で 出力 変動 を避 けた い発 電 ユニ ッ トに は出 され な いのが普 通 で あ る。 この ように,負 荷 周 波数制 御 で は,中 央給電 指令 所 か ら指令 が 出 され るた め,実 際 に出力が 変化 す る まで に は数 十秒 程度 の遅 れが あるのが普 通 で あ る。 (2)の 負 荷変 化 につ い てみ る と,数 十 秒 程 度 よ り短 い変 化 とそれ よ り長 い10分 程 度 以下 の変 化 に分 け る ことが で き る。数 十秒 よ り短 い変化 に対 して は,前 述 の よ うに 出力指 令 を出 して も,発 電機 出力が 変化 しないた め,負 荷 周波 数制御 の対 象 とは しな い。 しか しなが ら,こ の よ うな 負荷 変化 に対 して も需 給 ア ンバ ラ ン スが発 生 す るた め,周 波数 は短 い周期 で変 動 す る。 そ こで,こ の ような短 い周 期の変 化 に対 して は発 電 ユニ ッ トの調速 制御 で,発 電 ユニ ッ トの調速 制御 で も対応 で きない さ らに短 い周期 の変 化 に対 して は負荷 の特性(自 己制 御性)で 対応 す る ことにな る。 す なわ ち,数 十 秒 か ら10分 程度 の周 期の 負荷変 化 に対 して,負 荷 周波 数制 御が対 応 す る こ とにな る。 負荷変 化 幅 と周期 の関係 におい て,図9.5の
よ うに経 済 負荷配 分運転,負 荷 周波 数
制御,調 速制 御 の分担 を決 め る こ とがで きる。 負荷周 波数 制御 の目的 は,周 波 数 を許容 値 内 に収 める こ とで あ る。 周波 数の偏 差 は 負荷量 と発電 量 の アンバ ラ ンスで発生 す るの で,周 波数 偏差 に応 じて発 電機 出力 を調 整 すれ ば よい。 この方 法 として大 き く分 けて2つ の方法 が あ る。
変動周期 図9.5
負荷 変 動 の制 御 分 担
・間欠制 御 ・PID制 御 間 欠制御 は,周 波 数が 基準 範 囲 を超 えて下が っ た場 合,対 象発電 ユ ニ ッ トに出 力上 げ信号 を出 し,周 波 数が 基準 範 囲 に収 まれ ば信号 は停 止 す る。 逆 に,周 波 数 が基準 範 囲以上 に上 が った場 合,対 象 発電 ユ ニ ッ トに出力下 げ信号 を出す。 この方 式 の問題 点 として,制 御 周期(周 期 が長 す ぎ る と周波 数 が大 き く変 動 す る可 能性 が あ る),周 波 数基準 範囲(不 感 帯)の 設 定(周 波数 基準 範 囲 が狭 い と,頻 繁 に発 電 機 に出力 上 げ/ 下 げ信 号が 出 る),時 差 の扱 い(周 波数 が 基準 範 囲 に収 まって い て も,周 波 数偏 差 の 積 分が 大 き くず れ る)に つ いて,留 意 が必 要で あ る。 PID制 御 は,周 波 数偏 差 に応 じた比 例 量,積 分 量,微 分 量 を組 み合 わ せ て,発 電 ユニ ッ トに出力指 令 を出 す もので あ る(一 般 に,制 御 の安定 性等 の理 由か ら微分 制 御 は行 わ れな い)。 す なわ ち,周 波数偏 差ΔFに 対 して,
Δ G=αΔF+β∫ΔFdt
(9.10)
で 計 算 さ れ る 出 力 調 整 量 を計 算 し,こ 1項 の 比 例 量 だ け で な く第2項
れ を各 発 電 ユ ニ ッ トに 配 分 す る もの で あ る 。 第
の 積 分 量 を含 め る こ とで,周
に つ い て も0に 近 づ け る こ とが で き る が,α,β
波 数 偏 差 だ け で な く時 差
をい か に設 定 す るか とい う問題 が あ
る(α の 設 定 が大 き過 ぎ る と,出 力 調 整 量 が 大 き く な りす ぎ,結 果 と し て,周 大 き く変 動 し て し ま う こ とに な る。 逆 に,小
波数が
さ過 ぎ て も,負 荷 変 動 後 の 初 め の 周 波 数
偏 差 が 大 き くな る)。
9.5
負 荷 周 波 数 制 御― 連 系 系 統 の 場 合―
連系 系統 の負荷 周 波数 制御 につい て考 えて み よう。複数 の系 統 が電 気的 に接 続 され た連 系系統 も一 つ の系統 で あ るか ら,単 独 系統 の場 合 と同 じ負 荷周 波 数制 御 を行 うこ とは可 能で あ る。 しか しなが ら,以 下 の2つ の理 由か ら単独 系 統 の場合 とは異 な る制 御 方式 が採 用 され てい る。 ・単 独系統 の場 合 は,1つ
の 中央 給電 指令 所が 負荷 周波 数制 御 に責任 を持 って い る
の に対 し,連 系系 統 の場 合 は それぞ れの系統 に中央給電 指 令所 が あ る。 ・連 系系統 を構 成 す る各 系 統が個 別 に負荷 周波 数制御 を行 う と,系 統 を連 系 す る メ リット が損 なわれ る。 この た め,連 系 された各 系統 で は,次 の3つ の制 御 方式 の いずれ かが 採 用 され る。
(1)
定 周 波 数 制 御(Flat
Frequency
Contro1:FFC)
この 制 御 方 式 は,単 独 系 統 の 負 荷 周 波 数 制 御 方 式 と ま っ た く同 じ で,系 規 定 範 囲 内 に 維 持 し よ う と す る も の で あ る。 こ の た め,間
統 周波 数 を
欠 制 御 あ る い はPID制
御
に よ り発 電 機 出 力 が 調 整 さ れ る。 こ こで 注 意 す べ き こ と は,単 独 系 統 の 場 合 と異 な り,周 波 数 変 動 の 原 因 は 自 分 の 系 統 だ け で は な く,他 の 連 系 系 統 に も あ る と い う こ とで あ る 。 この た め,定
周波 数制 御
を行 う系 統 の 発 電 調 整 量 は 非 常 に大 き な もの とな る。 こ の 方 式 は単 独 系 統 以 外 で は 連 系系統 内 の主要 系統 で行わ れ るの が普 通で あ る。 (2)
定 連 系 線 電 力 制 御(Flat
この 制 御 方 式 は,連
Tie
Line
Flow
Control:FTC)
系 線 を流 れ る 電 力 を検 出 し,そ の 値 が 計 画 値 に な る よ う に 制 御
す る も の で あ る。 この よ う な制 御 は 小 さ な 系 統 と主 要 な 系 統 と の 間 の 連 絡 線 電 力 を制 御 す る 目 的 で 適 用 さ れ る。 明 らか な よ う に,周
波 数 と無 関 係 に 制 御 を行 っ て い る の で,連
系 系統 の い
ず れ か で 定 周 波 数 制 御 が 行 わ れ て い な い と,安 定 な運 転 を 行 う こ とが で き な い 。 (3)
周 波 数 バ イ ア ス 連 系 線 電 力 制 御(Tie
Line
Power
Frequency
Bias
Control:TBC) い くつ か の 系 統 が 連 系 し て い る場 合,そ
れ ら がFFC, FTCを
行 っ て い れ ば,一
つ
の 系 統 で 需 給 ア ン バ ラ ン ス が 生 じ て も す べ て の 系 統 の 発 電 機 出力 が 調 整 され る こ とに なる。 これ に対 して,TBCは,周
波 数 変 化 と連 系 線 電 力 変 化 を常 に検 出 し,(9.9)式
で計
算 さ れ る 自系 統 の 需 給 ア ンバ ラ ン ス を 監 視 し,各 系 統 が 自分 の 系 統 内 で 発 生 した 需 給 ア ン バ ラ ン ス分 の み を調 整 し よ う と す る もの で あ る 。 9.3で 説 明 した よ う に,各 ±ΔPT(複
る。 す な わ ち,(系 を す れ ば,自 こ と を,そ
統 定 数)×(周 波 数 変 化 量)+(連
Control
2つ の 系 統 がTBCを
け,発
電調整
統)で
出 力 調 整 す べ き量 と い う意 味 で,地
も,そ
の 地 域 で 制 御 し きれ な か っ た 量 と い う意 味 で 地 域 制 御
Error:ACE)と
実 施 し て い る場 合 の 周 波
示 す。
十 分 に 機 能 す る た め に は,系
の 値 が 正 確 で な け れ ば,自
域 要 求 量(Area
も よ ば れ る。
実 施 し て い る場 合, TBC+FFCを
数 と連 系 線 電 力 の 関 係 を 図9.6に TBCが
系 線 電 力 変 化 量)だ
系 統 内 で 生 じ た 需 給 ア ンバ ラ ン ス だ け に 応 動 す る こ とに な る。 こ の 量 の の 地 域(系
Requirement:AR)と 誤 差(Area
系 統 内 で 生 じた 需 給 ア ンバ ラ ン スΔPはΔP=−K×ΔF
号 は連 系 線 電 力 を ど ち らの 向 き で 考 え る か に よ る)で 把 握 す る こ とが で き
統 定 数Kが
正 確 で あ る こ とが 必 要 で あ る。 こ
系 統 内 の 需 給 ア ンバ ラ ン ス に対 し て,過
制御 また は不足 制
(a)
TBC+TBC
(b)
TBC+FFC
図9.6 周波 数― 連 系 線 電力 の関 係
御 とな って し まう。実 際 の系 統定 数 は系統 の運 用状 態 に よって も変 化 し,先 に延 べ た よ うに調速機 の非線 形特 性 に も影響 され るが,こ の値 の正 確 な把握 が重 要 とな る。
【 例 題9.3】
例 題9.2の
B系 統 か らA系
統 の 方 向 に16.7MW増
(1)地 域 要 求 量ARの て,A,B両
連 系 系 統 に お い て,周 波 数 が0.33Hz低
(2)地 域 要 求 量ARの し て,A,B両
計 算 に あ た っ て は,両
系 統 のARを
題9.2と
し
系 統 の 系 統 定 数 を0.9%MW/0.1Hzと
求 め よ。 よ り,A系
同 様 にA,Bそ
Hz,50MW/Hzを
系 統 の 系 統 定 数 を1%MW/0.1Hzと
求 めよ。
[解] (1)の 場 合,(9.9)式 は,例
加 した 。
計 算 に あ た っ て は,両
系 統 のARを
下 し,連 系 線 潮 流 が
統 の 需 給 ア ンバ ラ ン ス す な わ ち 地 域 要 求 量
れ ぞ れ の 系 統 に 対 し て,系
統 定 数 と し て100MW/
用 い て, ARA=100×(−0.33)-16.7=−50(MW) ARB=50×(−0.33)+16.7=0(MW)
と な る。 す な わ ち,A系
統 で は50MW発
力 を増 加 す れ ば よ い 。 一 方,B系 (2)の 場 合,地
電 力 が 不 足 し て い る の で,50MW発
統 で は発 電 出 力 の 調 整 は 行 わ な い 。
域 要 求 量 の 計 算 に はA,B各
系統 で以 下 の 系 統 定 数 の値 を使 う こ
と に な る。 A系 統:0.009×1000=9(MW/0.1Hz)=90(MW/Hz) B系 統:0.009×500=4.5(MW/0.1Hz)=45(MW/Hz) よ っ て,両
電出
系統 の地域 要求 量 は
ARA=90×(−0.33)-16.7=−46.4(MW)
と な る。 す な わ ち,A系
統 で は46.4MW発
電 出 力 を増 加 す れ ば よ い 。 一 方,B系 1.85MW発
電 量 が 不 足 し て い る の で,46.4MW発
統 で は1.85MW発
電 出 力 が 過 剰 で あ る の で,
電 出 力 を抑 制 す れ ば よ い 。
と こ ろ で,例
題9.2に
あ る よ う に,実 際 に はA系
た だ け で あ る。 本 来,TBCは
統 で50MWの
電 源 脱落 が生 じ
各 系 統 の 需 給 ア ン バ ラ ンス に見 合 っ た 量 だ け発 電 出 力
を 調 整 す れ ば よ い の で あ る か ら,A系 る 。 し か し な が ら,例 題9.3(2)の
統 の み,発
電 出 力 を調 整 す れ ば よ い は ず で あ
ケ ー ス の よ う に,実
際 の 系 統 定 数 と は 異 な る値 を
用 い て 計 算 す る と,上 記 の よ う な調 整 量 の 誤 差 が 生 じ る の で あ る。 この 点 か ら も,系
統 定 数 を正 確 に 推 定 す る こ と は,TBCを
行 う うえで重 要 で あ る
こ とが わ か る 。 い ず れ の 方 法 を 採 用 し た と して,上
記 で は各 系 統 で 制 御(調
定 さ れ る 。 実 際 の 制 御 に あ た っ て は,こ な る 。 もち ろ ん,1つ
整)す
べ き発 電 量 が 決
の 量 を 各 発 電 ユ ニ ッ トに割 り振 られ る こ と に
の 発 電 ユ ニ ッ トで 発 電 量 を 制 御 す る こ と も 可 能 で あ るが,下
記
の理 由で 実際 的で な い。 1.発
電 ユ ニ ッ トの 出 力 が 大 き く変 化 す る た め に,機 器 の 寿 命 が 損 な わ れ る可 能 性
が ある。 2.近
傍 の 送 電 系 統 の 潮 流 が 出 力 調 整 に よ り大 き く変 化 す る こ と に な り,送 電 設 備
の 有 効 利 用 と い う観 点 か ら得 策 で は な い 。 一 般 的 に は,出 力 変 化 速 度 が 大 き く調 整 が 容 易 と い っ た 水 力 発 電 ユ ニ ッ トや 石 油 火 力 ユ ニ ッ トな ど,発 電 ユ ニ ッ トの 特 性 に 応 じて 複 数 の 発 電 ユ ニ ッ トに割 り振 ら れ る の が 普 通 で あ る。
9.6
連 系系統 にお ける周波数 制御の例
わ が国 で は,9つ す。50Hz系
の系 統 が 連系 され て い る。図9.7に 現在 の周 波 数 制 御 方 式 を示
統 は3つ,60Hz系
統 は6つ の系 統 が連 系 され,50Hz系
統 と60Hz系
統 は周波 数変 換装 置 に よ り連 系 されて い る。 60Hz系
統 で は,以 前 は関 西 電力 系 統 がFFCを,他
していた が,現 在 で は6つ の 系統 すべ てがTBCを
の5つ の系 統 がTBCを
実施
実施 して い る。 中国電 力 系統 は九
州電 力系 統,四 国 電力 系統,関 西電 力系統 と,関 西 電力 系統 は中国電 力系 統,北 陸電
図9.7
わ が 国の 周 波数 制 御 方式
力 系統,中 部 電力 系統 とい ずれ も3つ の連 系線 を持 ってい るの で,連 系線 電力 の変 化 は これ ら3つ の連 系線 の電力 変化 の総 和 を用 い てい る。 な お,北 陸電力 系統 と中部 電力 系 統の間 に は南福 光 直流連 系 シス テムが,四 国電 力 系統 と関西電 力 系統 の間 には紀伊 水 道直 流送 電 シス テムが あ るが,こ れ らはいず れ も 潮 流制御(前 者 は北陸電 力 系統 か ら中部 電力 系統 に,後 者 は四 国電力 系統 か ら関西 電 力 系統 に,決 め られ た一 定 の電 力 を送電)に 用 い られ,後 述 の北 本直 流送 電 シス テム の ように常時 の周 波数制 御 の 目的 に は用 い られ てい ない。 50Hz系
統 で は,東 京電力 系 統 がFFCを,東
北 海 道電 力 系統 は,1979年 った た め,FFCを
北 電 力 系統 がTBCを
実 施 して い る。
まで単 独 系 統,す なわ ち,他 の系統 と連 系 さ れ て い なか
実施 し,現 在 もFFCが
採 用 され て い る。 た だ,1979年,本
州と
北海 道 系統 を直 流で連 系す る北本 直 流送 電 シス テムが 運転後 は,こ の直流 変換 設備 が 北海 道 電力 系統 と本州側50Hz系
統 の周 波数 をで きるだ け基準 値(50Hz)に
維持す
る よう に本州-北 海道 間 の電力 を制 御す るよ うにな ったた め,北 海道 電力 系統 で は 自 系 統 内の発 電量 を調整 して周波 数 を一 定 に保 つFFCと
北 本直 流 送電 シス テム の潮 流
を制御 して周波 数 を一 定 に保つ 周波 数制 御 の2本 立 て とな って い る。 ちなみ に,直 流 送 電 シス テム の潮流制 御 に よる周波 数維 持 は高速 に行 われ るた め,発 電量 制御 に よる FFCは
補 助 的に使 用 されて い る。
50Hz系
統 と60Hz系
統 の間 で は,一 方 の系統 の周 波数 が大 幅 に変 動 した場 合 の緊
急 制御 は行 われ るが,常 時 の負 荷周 波数 制御 は行 わ れて いな い。 一 方,諸 外 国で はTBCが てお り,FFCを
中心 で あ る。 北 米 系統 はす べ て の系統 がTBCを
実施 し
実施 して い る系 統 が な い に も関わ らず,周 波数 の変動 はわ が 国 よ り
も小 さい。 これ は,系 統容 量が 非常 に大 きいた めで あ る。
問題 (1)周
波 数 を規 定 値 に 維 持 しな け れ ば な ら な い 理 由 に つ い て 説 明 せ よ 。
(2)100MWの
発 電 機5台
れ200MWの
が そ れ ぞ れ80MWで,250MWの
出 力 で 負 荷800MWに
がそれぞ 発
電 機1台
が 解 列 し た と きの 周 波 数 変 化 とそ れ ぞ れ の 発 電 機 の 出 力 を 求 め よ。 こ
こ で,系
統 周 波 数 を50Hz,100MWの
発 電 機 の 速 度 調 定 率 を3%,250MW
の 発 電 機 の 速 度 調 定 率 を4%,負 (3)A,B2つ 0.1Hz低
荷 特 性 定 数KLを0.3%MW/0.1Hzと 系 統 で 負 荷 変 化 が 生 じ,周
下 し,連
統 へ 向 け,30MW増
系 線 潮 流 がAか
らB系
し,そ れ ぞ れ の 系 統 定 数 を10%MW/Hzと
(4)A,B2つ
の 系 統 が 連 系 し て い る と き,B系
し,周 波 数 が0.05Hz低 した 。A系 題9.3に
す る。
の 系 統 が 連 系 さ れ て い る 時,両
B両 系 統 に お け る 負 荷 変 化 を求 め よ 。A,B系 MWと
(5)例
発 電 機2台
供 給 し て い た 。 こ の と き,100MWの
下 し,Aか
らB系
波数が
加 し た 。A,
統 の 系 統 容 量 を300MW,500 す る。 統 で 発 電 機 が ト リ ッ プ(解 統 へ の 連 系 線 潮 流 が40MW増
列) 加
統 の 系 統 定 数 を求 め よ 。 お い て,(1),(2)の
条 件 で 発 電 量 を 制 御 した と き の,最 終 的 な 周
波 数 変 化 お よび 連 系 線 潮 流 変 化 を 計 算 せ よ。 た だ し,過 渡 状 態 は 無 視 し,系 統 状 態 は 変 ら な い もの とす る。
【 解 答 は巻末 】
第10章 電力システム にお ける無効電 力 と 電圧 の関係 電 力 系 統 内 各 部 の 電 圧 を定 格 電 圧 付 近 に 保 つ こ とは,負 運 転 を 保 証 す る 上 で 重 要 で あ る と と も に,さ
荷 で あ る電 気 機 器 の 正 常 な
ら に,過 電 圧 に よ る送 変 電 機 器 を保 護 す
る上 で も必 要 で あ る。 無 効 電 力 と電 圧 の 関 係 は,第9章
で 述 べ た 有 効 電 力 と周 波 数 の 関 係 と 同様,非
常 に
密 接 な 関 係 に あ る。 し か し,有 効 電 力 の 変 化 は 周 波 数 の 変 化 と し て 系 統 全 体 に 波 及 す るの に対 し,無 効 電 力 の 変 化 は局 所 的 な電 圧 変 化 に伴 う とい う特 徴 が あ る 。 こ こで は,無 効 電 力 と電 圧 の 関 係 に つ い て 定 量 的 に 検 討 す る こ とで,な
ぜ局 所 的 な
電 圧 制 御 が 必 要 か を 説 明 す る 。 次 に,無 効 電 力 発 生 源 の 種 類 を 説 明 し,具 体 的 な 電 圧 無 効 電 力 制 御 方 式 に つ い て 説 明 す る。
10.1
無 効 電 力 と 電 圧 の 関 係
こ こ で は,無 効 電 力 と電 圧 の 関 係 を考 え て み よ う。 い ま,簡 単 の た め に,送
電 線 の 等 価 回 路 に お い て リア ク タ ン ス 成 分 の み と考 え,抵
抗 分 と対 地 静 電 容 量 を 無 視 す る 。 送 電 端 電 圧 の 大 き さ│Vs│を 一 定 と し,受 電 端 に 負 荷 を 接 続 す る。 こ の と き 流 れ る 電 流 をIと
す る。
送 電 端 の 電 圧vsと
受 電 端 の 電 圧Vrの
う に な る 。 負 荷 力 率 が1の 電 圧Vrは 下VLの
図10.1(b)の
関 係 を ベ ク トル 図 で 示 す と 図10.1(a)の
場 合 は,受 電 端 電 圧Vrと よ う に送 電 端 電 圧Vsと
電 流Iの
よ
位 相 は等 し く,受 電 端
送 電 線 の リア ク タ ン ス に よ る 電 圧 降
ベ ク トル 和 とな る 。
一 方,同
じ大 き さ の 電 流 が 流 れ た とす る と,図10.1(c)の
電 端 電 圧 の 位 相 か ら π/2遅 れ た と き,Vrの
大 き さ は 最 小 とな り,図10.1(d)の
に 電 流 の 位 相 が 受 電 端 電 圧 の 位 相 か ら π/2進 ん だ と き,Vrの 前 者 は 遅 れ 零 力 率 負 荷,後
よ うに電 流 の位 相 が 受
者 は進 み 零 力 率 負 荷 と よ ば れ るが,後
電 端 電 圧 の 大 き さ が 送 電 端 電 圧 の 大 き さ よ り も大 き く な る。
よう
大 き さ は 最 大 と な る。 者 の ケ ー ス で は,受
(a)一
般 的 な負荷
(b)力
(c) 遅 れ 零力 率 負荷
【 例 題10.1】
をj0.2puと [解]送
送 ・受 電 端 の電 圧 の関 係
図10.2
送 電線 の π型等 価 回路
受 電 端 側 に 負 荷 が つ な が れ て い な い 場 合,受
電 端 電 圧 を 計 算 せ よ。 た
電 線 の イ ン ピ ー ダ ン ス をj0.1pu,対
地 ア ドミタ ンス
す る。
電 線 を 図10.2の
あ る の で,受
(d) 進 み 零 力率 負 荷
図10.1
だ し,送 電 端 電 圧 を1.0pu,送
率1の 負 荷
π型 等 価 回 路 で 表 現 し た 場 合,A-C間
電 端 電 圧(B-C間
の 電 圧)Vrの
の 電 圧 が1.0puで
大 き さ は イ ン ピー ダ ン ス比 か ら以 下 の
よ う に な る。
す な わ ち,受
電 端 電 圧 の ほ うが 送 電 端 電 圧 よ り1%高
送 電 線 を 図10.3(a)の
くな る。
π型 等 価 回 路 で 表 現 す る と,図10.3(b)の
よ う に3つ
の2
(a)
(b)
(c) 図10.3
送 電 線 の π型 等価 回 路
端 子 対 回 路 の 直 列 接 続 と な る。 そ れ ぞ れ の2端 10.3(c)の
子 対 回 路 の 電 圧 ・電 流 の 関 係 は 図
よ う に な る の で,π 型 等 価 回 路 で 表 現 した 送 電 線 の 送 電 端,受
る電 圧 電 流 の 関 係 式 は(10.1)式
電端 にお け
の よ う に な る。
(10.1)
す な わ ち,送
電 端 電 圧Vsと
受 電 端 電 圧Vr,
受 電 端 電 流Irの
間 に は,(10
.2)式 が 成
り立 つ。
(10.2) い ま,受 電 端 に負 荷 が つ な が れ て い な い 無 負 荷 状 態 を考 え れ ば,Ir=0と 電 端 電 圧Vsと
受 電 端 電 圧Vrの
関 係 は(10.3)式
な り,送
の ように なる。
(10.3) 送 電 線 の イ ン ピー ダ ン スZの 分 の み とな り,イ 量 をCと
う ち 抵 抗 分 は小 さ い の で 無 視 す れ ば,リ
ン ダ ク タ ン ス をLと
し てjωLと
な る 。 一 方,送
す れ ば,送 電 線 全 体 の 対 地 ア ド ミ タ ン スYはjωCと
系 統 電 圧 の 角 周 波 数 で あ る。 こ れ ら を(10.3)式 と,(10.4)式
ア クタ ン ス
電線 の対地 静 電 容 な る。 こ こ で,ω
は
に 代 入 し,電 圧 の 大 き さ の 比 を と る
の よ う に な る。
(10.4) す な わ ち,│Vs│<│Vr│と
な り,受 電 端 電 圧 の ほ う が 高 くな る 。
実 際 の 電 力 系 統 で は,負 荷 が つ な が れ て い る た め,(10.2)式 圧 降 下 分 が あ る こ と,ま
た,対
にお け る 電 流 に よ る電
地 静 電 容 量 は 架 空 送 電 線 で は そ れ ほ ど大 き くな い こ と
か ら,受 電 端 電 圧 の ほ うが 送 電 端 電 圧 よ り高 くな る こ と は ま れ で あ る 。 裏 を返 せ ば, 対 地 静 電 容 量 の 大 き な ケ ー ブ ル 系 統 に お い て,深 夜 の よ う に 負 荷 が 軽 い 時 間 帯 で は こ の よ う な現 象 が 発 生 す る 可 能 性 が あ る 。 この よ う に 受 電 端 電 圧 が 送 電 端 電 圧 よ り も高 くな る 現 象 を フ ェ ラ ンチ 効 果(Ferranti
Effect)と
系 統 機 器 を損 傷 さ せ る可 能 性 が あ る た め,実 リア ク トル を 接 続 し,ケ
よぶ 。 こ の よ うな 過 電 圧 に よ り,
際 の 電 力 系 統 で は ケ ー ブ ル と大 地 の 間 に
ー ブ ル の 静 電 容 量 を 補 償 す る(等 価 的 に 小 さ くす る)対
策が
と られ る こ と も あ る。
10.2
電 圧 変 動 の 感 度
い ま,図10.4の
よ う に,無
限 大 母 線*か
ら変 圧 器,送
電線 を介 して 負 荷 に電 力 を
* 有効,無 効 電力の注入,送 出が あって も,電 圧の大 きさ,位 相が まった く変 らない容量 が非 常 に 大 きな仮想 的系統 。
図10.4
負荷 と電 圧
供 給 す る こ と を考 え る 。 簡 単 の た め に 送 電 線 の 対 地 静 電 容 量 は無 視 し,変 圧 器 も含 め た 送 電 線 の イ ン ピ ー ダ ン ス をZ=R+jX,送 (無 限 大 母 線 電 圧)の
受 電 端 電 圧 をVs,Vrと
位 相 を 基 準 に と り(Vs=Vs・ej0),Vr=Vr・e-jδ
この と き,受 電 端 で は(10.5)式
し,送 端 電 圧 とす る 。
の 関 係 式 が 成 り立 つ 。
(10.5)
(10.5)式 を実 部,虚
部 に 分 け る と,下 式 が 成 り立 つ 。
(10.6) (10.7) 上 式 を そ れ ぞ れ 二 乗 し て加 え る と,(10.8)式
の 関 係 式 が 得 られ る。 明 らか な よ う に,
受 電 端 電 圧 の位 相 δ に無 関 係 の 式 で あ る。
(10.8)
【 例 題10.2】 きの,受
受 電 端 の 有 効 電 力 負 荷,無
電 端 電 圧 の 大 き さ の変 化ΔVrを
[解] (10.8)式 に お い て,イ
効 電 力 負 荷 が そ れ ぞ れΔP,ΔQ変
化 した と
求 め よ。
ン ピ ー ダ ン ス のR,Xお
よ び 送 電 端 電 圧 の 大 き さVsは
定数 で ある。 す な わ ち,受 電 端 の 有 効 電 力 負 荷,無 きの,受
効 電 力 負 荷 が そ れ ぞ れΔP,ΔQ変
電 端 電 圧 の 大 き さ の変 化ΔVrは,以
化 した と
下 の よ う に 表 され る 。
(10.9)
(10.10) (10.8)式 のVrが
そ れ ぞ れ,P,Qの
関 数 と考 え て偏 微 分 す る と,
(10.11) (10.12) こ こ でZ2=R2+X2 一 般 に,送
電 端 電 圧,受
電 端 電 圧 と もに,単
し支 え な い の で,(10.11)式,(10.12)式 有 効 電 力,無
位 法 で 表 す と1近 辺 に あ る と考 え て 差
と もに 負 とな る 。 す な わ ち,受
電端 の負荷 を
効 電 力 い ず れ を増 や して も,受 電 端 電 圧 は 下 が る こ とに な る 。
次 に,有 効 電 力,無 う。(10.9)式
効 電 力 が 同 じ値 変 化 し た と き の 電 圧 変 化 の 差 に つ い て 見 て み よ
と(10.10)式
の 比 を と り,(10.11)式,(10.12)式
を代 入 す る と
(10.13) とな る 。 こ こで,C=Vr2/Zは
受 電 端 で 短 絡 故 障 が 発 生 し た と き に 送 電 端(無
ら供 給 さ れ る皮 相 電 力 を表 す 短 絡 容 量*で,P,Qよ ク タ ン スXは れ ば,(10.13)式
抵 抗Rよ
り大 き い の で,Z≒X≫Rと
限 大 母 線)か
り は る か に 大 き い 。 ま た,リ な る こ と か ら,XC≫ZQと
ア す
は 以 下 の よ う に な る。
(10.14) す な わ ち,有 効 電 力,無 図10.5の
効 電 力 の 変 化 に 対 す る 電 圧 変 化 の 関 係 はΔVr,Q≫ΔVr,Pよ
り
よ う に な り,電 圧 変 動 に 対 し て は 無 効 電 力 の 影 響 が 有 効 電 力 の 変 動 に 比 し
て は るか に 大 き い こ とが わ か る 。
* 短絡容量 はその地点 に設置 され る遮断器の容量 を決定す る重要 な数値であ る。
図10.5
10.3
有 効 電 力,無 効 電力 の変 化 に対 す る電 圧 変 化 の 関係
無 効 電 力 の 供 給 源
電 力 系 統 に お い て は,特
に電 圧 階 級 が 高 くな る ほ ど,送 電 線 あ る い は 変 圧 器 の リア
ク タ ン ス が 抵 抗 よ り も は る か に大 き い。 送 電 線 あ る い は 変 圧 器 に 電 流Iが そ れ ぞ れ の イ ン ダ ク タ ン ス でI2Xの じ る有 効 電 力 損 失I2Rよ
無 効 電 力 損 失 が 発 生 し,こ
り も は る か に 大 き い 。 し た が っ て,送
れ は,抵
流 れ る と, 抗 に よ り生
電 端 あ るい は受 電端
の どち らか 一 方 か ら無 効 電 力 を 供 給 し て も,そ の う ち の 多 くが 消 費 さ れ て し ま い,相 手 端 に届 く量 は 少 な い 。 こ の 無 効 電 力 損 失 の 分 を上 乗 せ し て 送 ろ う とす る と,皮 相 電 流 が 大 き くな り,今 度 は 有 効 電 力 損 失 が 増 大 して し ま う。 した が っ て,送
電線 や 変圧
器 で 生 じ る 無 効 電 力 損 失 を送 電 端 と受 電 端 か ら供 給 す る こ とが 望 ま しい 。 こ れ が,電 圧 ・無 効 電 力 に 関 して 局 地 的 な 対 応 を 求 め られ る ゆ え ん で あ り,無 効 電 力 の 供 給 に お い て は,量
だ け で は な く,場 所 の 選 定 が 重 要 とな る。
電 力 系 統 にお け る無 効 電 力 の 供 給 源 と して は (1)発 電 機 (2)電 力 用 コ ン デ ン サ,分 路 リア ク トル (3)同 期 調 相 機 (4)静 止 型 無 効 電 力 補 償 装 置 (5)送 電 線(架 が あ げ られ る 。 この う ち,(5)の
空 送 電 線,ケ
ー ブ ル)
送 電 線 は対 地 静 電 容 量 に よ る も の で,無
効 電 力 の供
給 に 関 して は直 接 制 御 す る こ と は で き な い 。 一 般 に,(2)∼(4)を
10.3.1
総 称 して,調
相 設備 とよぶ。
発 電機
い ま,同 期 発 電 機 の 最 も簡 単 な モ デ ル と し て,背 わ ち,発 電 機 を 内 部 誘 起 起 電 力Eg(こ で 表 現 す る 。 背 後 電 圧Egは
後 電 圧 一 定 モ デ ル を考 え る。 す な
れ を背 後 電 圧 と よ ぶ)と
同 期 リア ク タ ン スXg
励 磁 電 流 に 比 例 す る。 こ の と き の 背 後 電 圧Egと
発電機
(a) 遅 れ 力率(b)
力 率1(c) 図10.6
端 子 電 圧Vt,
発 電 機 電 流Igの
発 電 機 端 子 電 圧Vtと
関 係 は 図10.6(a),(b),(c)の
発 電 機 電 流Igの
ら,発 電 機 端 子 電 圧 を 一 定 と す れ ば,力 て,背
進 み力率
端 子電 圧 と背 後 電圧 の関 係
後 電 圧 の大 き さ が 減 少,す
よ う に 表 さ れ る。
間 の 力 率 が 発 電 機 の 力 率 と な る。 図10.6か 率 が 遅 れ 力 率 か ら進 み 力 率 に変 化 す る に つ れ
な わ ち,励
磁 電 流 を 減 ら さ な け れ ば な ら な い こ とが
わ か る。 いま,発
電 機 端 子 電 圧 の位 相 を基 準 と し,背 後 電 圧Eg=Egeδ
発 電 機 が 供 給 す る 有 効 電 力,無
効 電 力 は(10.15)式
と す る。 こ の と き,
の ように なる。
す な わ ち,
(10.15)
い ま,端 子 電 圧 の 大 き さ を一 定 に 保 ち,供 δ を調 整 す る 必 要 が あ る。 す な わ ち,有
給 す る 有 効 電 力 を一 定 に す る た め に は,
効 電 力P0を
供 給 す る δ0は(10.16)式
で表 さ
れ る。
(10.16) これ を,発
電 機 が 供 給 す る無 効 電 力 を あ ら わ す(10.15)式
に代 入 す る と,(10.17)式
が 得 られ る。
(10.17)
こ の 式 か ら明 らか な よ う に,発
電 機 の 有 効 電 力,端
圧 を大 き くす れ ば供 給 で き る 無 効 電 力 が 増 加 し,逆 電 力 が 減 少,場
合 に よ っ て は,無 効 電 力 が 負,す
子 電 圧 を一 定 に保 て ば,背
後電
に,背 後 電 圧 を小 さ くす れ ば無 効
な わ ち,無 効 電 力 を消 費 す る こ とが
で きる。 電 力 系 統 に お い て は,発 電 機 は 自 動 電 圧 調 整 装 置(AVR:Automatic Regulator)に よ う に,励
よ っ て,端
子 電 圧 あ る い は 供 給 さ れ る無 効 電 力 が 決 め られ た 値 に な る
磁制 御 が行 われ る。
【 例 題10.3】 密 に は,短
電 圧 がEth,直
列 イ ン ピ ー ダ ン ス がZth,=j0.2puで
絡 イ ン ピ ー ダ ン スZth,=j0.2puと
と き,端 子 電 圧 はVt=0.97ej0puで
電 機 の 端 子 電 圧 の 大 き さが1.0puで,発
[解] (a)発
後 電 圧Ee,お
無 効 電 力Qを
求 め よ。
電 機 が 系 統 に 同 じ有 効 電 力Pを
よ び 発 電 機 が 供 給 す る 無 効 電 力Qを
求 め よ。
電 機 か ら 系 統 へ 供 給 され る電 力 は
とな る。 ち な み に,発
(b)系
電 流 を供給 してい る
あ る。
(a) 発 電 機 端 子 か ら供 給 さ れ る 有 効 電 力Pと
供 給 し て い る場 合,背
表 さ れ る系 統(厳
な る ノ ー ド)に 同 期 リ ア ク タ ン ス1.0
puの 発 電 機 が 電 力 を供 給 して い る 。 発 電 機 がIg=0.8−j0.2の
(b)発
Voltage
電 機 の 背 後 電 圧Eeは
統 の 電 圧Ethは,発
次 の よ うにな る。
電 機 端 子 電 圧 に 影 響 さ れ な い の で,発
Vt =0 .97ej0を 用 い て,Vt=Ig・Zth+Ethよ
電 機 端 子 電圧
り
となる。 一 方
,端 子 電 圧 の 大 き さ,お
よ び,発
電 機 か ら供 給 さ れ る有 効 電 力 か ら,端 子 電 圧
と大 規 模 系 統 の 電 圧 の位 相 差 δ は 次 の よ う に 計 算 さ れ る。
よ っ て,発
電 機 端 子 電 圧 の 位 相 は-0.170+0.165=-0.005radと
Vt=1.0ej(-0.005)。
な る 。 す な わ ち,
発 電 機 電 流Igは
で あ る 。 背 後 電 圧Egは
となる。 ち な み に,発 電 機 か ら供 給 さ れ る電 力 は
となる。
こ の 例 題 の よ う に,発 電 機 端 子 電 圧 を上 げ る と,供 給 さ れ る無 効 電 力 が 増 加 す る こ とが わ か る 。 ま た,当
然 の こ と な が ら,発
圧 を上 げ る と い う こ とで,励
電 機 端 子 電 圧 を上 げ る とい う こ と は 背 後 電
磁 電 流 を増 加 させ る こ と に な る。
こ の よ う に,発 電 機 端 子 電 圧 を変 化 させ る こ とで,発
電 機 か ら供 給 さ れ る 有 効 電 力
を変 え ず に 無 効 電 力 を 変 化 さ せ る こ とが で き る。
10.3.2
電 力 用 コ ン デ ン サ,分
無 効 電 力 の 供 給 源,吸 い られ る。 こ れ ら は,母 Capacitor)と (Shunt
よ ば れ,無
Reacter)と
路 リ ア ク トル
収 源 と し て は,コ
ン デ ンサ あ る い は リア ク トル が 一 般 的 に 用
線 に 並 列 に 接 続 さ れ る。 前 者 は 電 力 用 コ ン デ ン サ(Shunt 効 電 力 の 供 給 源 と し て 用 い ら れ,後
よ ば れ,無
効 電 力 の 吸 収 源(消
費 源)と
者 は 分 路 リ ア ク トル
して用 い られ る。
系 統 に と っ て必 要 な 無 効 電 力 は 負 荷 の 状 態 に よ っ て 変 る た め,こ リア ク トル は ス イ ッチ で 接 続 され た り,切
れ ら コ ン デ ン サ,
り離 さ れ た りす る。 な お,ケ
ー ブル の対 地
静 電 容 量 を補 償 す る リア ク トル は 常 に接 続 さ れ て い る場 合 が あ る 。 これ に つ い て は, 直 付 け リ ア ク トル と よ ば れ る。 コ ン デ ンサ,リ の 大 き さ をVと
ア ク トル の ア ド ミ タ ン ス の 大 き さ をY,接 す れ ば,こ
れ ら に よ り,YV2の
続 され て い る母 線 電 圧
無 効 電 力 が供 給(負
の 場 合 は 吸 収)
さ れ る。 こ の 式 か ら明 らか な よ う に,母 線 電 圧 が 大 き く変 動 す る場 合 に は,供 収)さ
れ る無 効 電 力 が 大 き く変 動 す る とい う 欠 点 は あ る も の の,他
て 安 価 で 低 損 失 で あ る た め,広
10.3.3 第6章
給(吸
の 調 相 設 備 と比 べ
く用 い られ て い る 。
同期調相機 で 説 明 し た よ う に,同 期 機 は 励 磁 電 流 を変 え る こ とで 供 給(吸
電 力 を変 化 さ せ る こ とが で き る。 こ の 特 性 は 同 期 機 が 電 動 機,発
収)す
る無 効
電 機 の いずれ で運 転
さ れ て い て も同 様 で,線
路 に 無 負 荷 の 同 期 電 動 機 を 接 続 し て,励 磁 電 流 を 変 化 させ る
こ とで,供
る無 効 電 力 を 制 御 す る こ とが で き る。 この よ う な 目的 に用 い
給(吸
収)す
ら れ る 同 期 電 動 機 を 同 期 調 相 機 と よ ぶ 。 ス イ ッチ で 開 閉 す る電 力 用 コ ン デ ンサ ー や 分 路 リ ア ク トル と異 な り,連 続 的 に か つ 高 速 に無 効 電 力 を 調 整 で き る と い う 特 徴 が あ る。 た だ,電 力 用 コ ン デ ンサ ー や 分 路 リア ク トル に比 べ て 高 価 で あ る こ と,回 転 機 で あ る た め メ ン テ ナ ン ス が 面 倒 で あ る とい う欠 点 も あ り,電 圧 維 持 の ニ ー ズ が 特 に 強 い 特 定 の 変 電 所 に の み 設 置 され る の が 現 状 で あ る 。
10.3.4
静止 型無効電 力補償装置
静 止 型 無 効 電 力 補 償 装 置(SVC:Static
Var
Compensator)は,半
流 ス イ ッ チ と して 利 用 し,等 価 的 に イ ン ピ ー ダ ン ス を可 変 に して,無 る も の で あ る。SVCに Reactor)は
導体 素 子 を交 効 電 力 を制 御 す
は い く つ か の 種 類 が あ り,TCR(Thyristor
リ ア ク トル,TSC(Thyristor
い ず れ も直 列 に つ な が れ た 半 導 体 素 子(サ
Switched
Capacitor)は
Controlled コ ン デ ン サ を,
イ リス タ)で 制 御 し,供 給 す る無 効 電 力 を
調 整 す る もの で あ る。 な お,近 Bipolar
年 はGTO(Gate
Thyristor)の
Turn-off
よ う に,オ
Thyristor)やIGBT(Insulated
Gate
ン す る タ イ ミ ン グ もオ フ す る タ イ ミ ン グ も 自 由 に
制 御 で き る 自 己 消 弧 型 デ バ イ ス を 用 い た 自 励 式 無 効 電 力 補 償 装 置(STATCOM: STATic
COMpensator)も
導 入 さ れ つ つ あ る。SVCと
コ ン デ ンサ を設 け ず に無 効 電 力 を制 御 で き る た め,省
異 な り,外 部 に リ ア ク トル や ス ペ ー ス 化 が 図 れ る こ と,系 統
電 圧 が 大 き く低 下 し た と き で も電 圧 維 持 能 力 が 高 い とい う特 徴 が あ る 。
10.4
電 圧 無 効 電 力 制 御
電 力 系 統 内 各 部 の 電 圧 を 基 準 値 付 近 に維 持 す る こ と は,需 質 を保 つ 上 で 重 要 で あ る と と もに,系 る。 さ ら に,供 給 の 安 定 性(系
要 家 に供 給 す る電 力 の 品
統 構 成 機 器 の安 定 的 な利 用 の う え で も重 要 で あ
統 で 事 故 が 発 生 した 際 に,供
こ す こ と な く供 給 を 継 続 す る能 力)や
給 支 障(停
電)を
引 き起
送 電 損 失 の 低 減 と い っ た 観 点 か ら も重 要 で あ
る。 これ ま で に 説 明 し て き た よ うに,系
統 内 の 電 圧 に対 す る感 度 は,有
電 力 の 方 が は る か に大 き い 。 す な わ ち,系 明 した 無 効 電 力 の 供 給(消 この ほ か,第3章
費)量
効 電 力 よ り無 効
統 内 の 電 圧 を 制 御 す るた め に は,前 節 で 説
を 制 御 す る の が 効 果 的 で あ る。
で 説 明 し た 変 圧 器 の タ ッ プ 制 御(タ
ッ プ 切 換)も
電圧 制御 の 目的
に用 い られ る 。 変 圧 器 は 基 準 とな る電 圧 に 対 応 した タ ップ の 前 後 に ±2.5%も ±1.5%き
ざ み で 数 個 の タ ッ プ が つ け られ て い る の が 普 通 で,こ
し くは
の タ ッ プ を切 り換 え
る こ と で 電 圧 を制 御 す る もの で あ る 。 無 効 電 力 を制 御 す る の で は な く,電 圧 を直 接 制 御 す る もの で,基
幹 系 統 の 変 圧 器 か ら配 電 系 統 の 変 圧 器 に 至 る ま で,幅
て い る。 特 に,電
圧 制 御 に お い て は,負
し に)タ Tap
電圧 にす る ことな
ッ プ を 切 り替 え る こ とが で き る 負 荷 時 タ ッ プ 切 換 装 置(LTC:On-Load
Changer)付
(吸収)す
荷 電 流 を流 し た ま まで(無
広 く用 い られ
の 変 圧 器 が 用 い られ る 。 変 圧 器 の タ ッ プ 制 御 は 無 効 電 力 を 供 給
る も の で は な い が,無
効 電 力 の 流 れ を制 御 で き,電
圧 分 布 を 変 え る こ とが
で き る もの で あ る。 電 圧 制 御(一
般 に は,無
御(VQC:Voltage
効 電 力 の 調 整 に よ る電 圧 制 御 で あ る た め,電
Reactive
Power
Control)と
り,前 述 の よ う に ロ ー カ ル 性 が 強 い た め,2つ
10.4.1
中 央 制 御 方 式(ま
た は,総
よ ば れ る)は,周
圧無 効電 力制
波 数 制 御 と異 な
の方式 に分 けられ る。
合 制 御 方 式)
中 央 給 電 指 令 所 に す べ て の情 報 を集 め て 集 中 管 理 し,系
統 全 体 か ら見 て 最 適 な制 御
量 を決 定 す る方 式 で あ る 。 例 え ば,系 統 全 体 の 送 電 損 失 を 最 小 化 す る よ う な 目 的 関 数 を 選 定 し,こ
の 目的 関 数 が 最 小 とな る よ う に 個 々 の 変 電 所 に制 御 指 令 を 出 す 。 最 適 化
とい う観 点 か ら は優 れ て い る も の の,膨 処 理 が 必 要 で,電
10.4.2ロ
大 な デ ー タ の収 集,お
よ び,最
適 化の ため の
力 系 統 の 規 模 が 比 較 的 小 さ い 系 統 に適 した もの で あ る。
ー カ ル 制 御 方 式(ま
各 変 電 所 に お い て,一
次 電 圧,二
た は,個 次 電 圧,変
別 制 御 方 式) 圧 器 通 過 無 効 電 力 な ど,あ
らか じ め 決
め ら れ た 範 囲 に お さ ま る よ う,制 御 量 を変 電 所 ご と個 別 に 決 定 す る 方 法 で あ る 。 上 記 範 囲 は,系
統 の 状 態 に 応 じ て ス ケ ジ ュ ー ル 的 に(時
間 ご と に)決
定 され る こ とが 多
い 。 電 力 系 統 の 規 模 が 大 き い 系 統 に適 し た も の で あ る。
こ こで は,ロ
ー カ ル 制 御 方 式 の 一 例 を示 す 。 ロー カ ル 制 御 方 式 に も制 御 目標 を何 に
す る か に よ り,い
くつ か の 種 類 が あ る が,一
次 側(高
圧 側)V1と
二 次 側(低
V2が と も に許 容 範 囲 に 入 る よ う に制 御 す る方 式 を示 す 。 図10.7は 例 で あ る 。 調 相 設 備 の頻 繁 な 入 り切 り,あ る よ う に,V1,V2に も し,V1とV2が
る い は変 圧 器 タ ップ の頻 繁 な 切 換 を 防 止 す
は 不 感 帯 が 設 け られ て い る。 この 不 感 帯 を外 れ て第 一 象 限 に あ る場 合 は,無 効 電 力 の供 給 が 過
剰 で あ る た め,電 (ShR)を
圧 側)
その制 御 方 式 の一
力 用 コ ン デ ン サ(SC)を
る い は,分
路 リ ア ク トル
入 れ る な どの 制 御 を行 う。 逆 に 第 三 象 限 に あ る場 合 は,無
効 電力 が 不足 し
て い る こ と か ら,ShRを 一 方,V1とV2が
切 る,あ
る い は,SCを
切 る,あ
入 れ る な どの 制 御 を 行 う。
第 二 象 限 に あ る場 合 は,二 次 側 の 無 効 電 力 が 過 剰 で,一
効 電 力 が 不 足 し て い る こ とか ら,変 圧 器 の 巻 線 比 を 変 化 さ せ,二 効 電 力 の 不 足 分 が 流 れ る よ う に す る 。 具 体 的 に は,例 側 が275kVの
場 合,事
前 の 巻 線 比 が500/275で
巻 線 比 を大 き くす る 方 向 に切 換 え る。 逆 に,第 力 が 過 剰 で,二
え ば,一
次側 の無
次 側 か ら一 次 側 に無 次 側 が500kV,二
あ っ た とす る と,500/260の 四 象 限 に あ る場 合 は,一
次 よ うに
次側 の無効 電
次 側 の 無 効 電 力 が 不 足 し て い る こ と か ら,変 圧 器 の 巻 線 比 が 小 さ くな
る よ う に タ ッ プ を 制 御 し,一 次 側 か ら二 次 側 に 無 効 電 力 の 変 化 分 が 流 れ る よ う に す る。
問題 (1)154kVの P=1puの
無 限 大 母 線 か ら,イ
ン ピ ー ダ ン ス0.02+j0.1を
介 し て 力 率0.9,
負 荷 に電 力 を供 給 し て い る 。
① 負 荷 の 無 効 電 力Q,受
電 端 電圧 の 大 き さVrを
計算 せ よ。
② 〓を求めよ。 (2)図10.8の
よ う に 負 荷 にP,Qを
供 給 し て い る 送 電 線 が あ る。 受 電 端 側 の 電 力
用 コ ン デ ンサ の 容 量 を連 続 的 に変 化 で き る と した 場 合,送 た め の 条 件,す
な わ ち,Q,V,Cの
電 損 失 を 最 小 にす る
関 係 式 を求 め よ 。 送 電 線 の 静 電 容 量 は無 視
す る。
図10.8
(3)変
電 所 の 一 次 側(高 場 合,変
電 圧 側)の
電 圧 が 高 く,二 次 側(低
電 圧 側)の
電圧 が 低 い
圧 器 の タ ッ プ比 は ど の よ う に 制 御 す べ き か?
【 解 答 は巻末 】
第11章 電力システムの経済運用
一 日 の 電 力 負 荷 変 化 に対 し て,火 力 ・水 力 発 電 ユ ニ ッ ト を ど の よ う に運 転 す るの が 経 済 的 か を決 定 す る こ と は 非 常 に 重 要 な 問 題 で あ る。 こ の た め に,本 に,負 荷 曲線 に つ い て 説 明 す る。 こ の 後,運
章 で は,最
初
用 の 基 本 とな る 発 電 ユ ニ ッ トの 特 性 に つ
い て 説 明 し,火 力 発 電 ユ ニ ッ トか ら な る系 統,火
力 ・水 力 発 電 ユ ニ ッ トか らな る 系 統
に対 し て 経 済 的 な 出 力 配 分 を 与 え る協 調 方 程 式 を導 出 す る。 最 後 に,火
力発 電 ユニ ッ
トの起 動 停 止 計 画 に つ い て も簡 単 に 説 明 す る。
11.1
経 済 運 用
電 力 シ ス テ ム に お い て は,日 第9章
で 説 明 し た よ う に,負
々 の 需 要 に 見 合 っ た 量 の 電 力 を供 給 す る必 要 が あ る。 荷 の1日
の 変 化,す
な わ ち,負
荷 曲 線 は 図11.1に
示す
よ う に, (1)日
負 荷 変 動 に 見 られ る ゆ っ く り した 大 き な 変 化,サ
(2)変 化 量 は 大 き くな い が,短
ス テ イ ン ド分 と よ ば れ る 。
い 周 期 で 頻 繁 に起 こ る変 化,フ
図11.1
負荷 曲線
リ ン ジ分 と よ ば れ る。
に 分 け る こ とが で き る 。 サ ス テ イ ン ド分 と よ ば れ る 大 き な変 化 は,曜 温,さ
日,天 候,気
ら に は イ ベ ン ト等 を 加 味 し て 予 測 す る こ とが で き る。
電 力 シ ス テ ム に お い て は,こ
の 予 測 さ れ た 負 荷 曲 線 に対 し て,最
も経 済 的 な 運 用 を
行 う こ とが 重 要 とな る。 図11.1の
負 荷 曲 線 に見 ら れ る よ う に,最
大 需 要(季
域 に も よ る が,夏
ご ろ)と
ご ろ)に
期 で は 午 後2時
最 低 需 要(午
前4∼5時
節や地
は大 き な
差 が あ る。 も し,最 大 需 要 を供 給 す る こ とが で き る発 電 設 備 を 一 日中 運 転 す る と す れ ば,最
低 需 要 付 近 で は 出 力 を か な り絞 り込 ま ざ る を得 ず,後
述 す る よ う に,こ
のよう
な 運 用 は非 常 に非 効 率 的 で あ る。 こ の た め,負 荷 に応 じ て 発 電 設 備 を運 転 し た り停 止 した りす る が,ど
の タ イ ミン グ で 発 電 設 備 を運 転 し,ど
済 的 で あ る か を 決 定 す る の が,発 一方
電 機 起 動 停 止 計 画(Unit
,運 転 す る発 電 設 備 が 決 ま っ た 状 態 で,出
Commitment)で
Load
Dispatch)で
燃料 費特性
こ こ で は,ま
ず,火
力 発 電 ユ ニ ッ トの燃 料 費 特 性 に つ い て 説 明 す る 。 火 力 発 電 ユ ニ
ッ トは ボ イ ラ ー で 蒸 気 を 発 生 し,発 生 し た 蒸 気 で タ ー ビ ン を 回 転 し,そ で 発 電 機 を 回 す こ と に よ り電 気 を 発 生 す る。 す な わ ち,あ 生 す る の に 熱 量H〔kcal/h〕 よび,そ
図11.2(a)の ち,最
あ る。
火 力 発 電 ユ ニ ッ トの 経 済 負 荷 配 分
11.2.1
HR)と
あ る。
力 を どの よ う に 配 分 す れ ば経 済 的 で あ
る か を決 定 す る の が 経 済 負 荷 配 分(ELD:Economic
11.2
の タイ ミングで停止 すれ ば経
が 必 要 で あ る 。 こ のH/Pを
の 回 転 トル ク
る 電 気 出 力P〔MW〕
燃 料 消 費 率(Heat
を発 Rate:
の 逆 数 ηを 効 率 と よぶ 。 燃 料 消 費 率 は 一 定 で は な く,出 力 に 応 じ て
よ う な 特 性 を 持 ち,一
般 に 定 格 出 力(最
大 出 力)付
近 で 最 小,す
高効 率 と な る。
(a) 図11.2
(b) 出力 と燃 料 消 費 率,燃 料費 の関 係
なわ
と こ ろ で,使
用 す る燃 料 ご とに 発 生 熱 量 は決 ま っ て い る の で,1kcal発
必 要 な燃 料 単 価 をC〔¥/kcal〕
と す れ ば,出
力P〔MW〕
を1時
生 す るの に
間 発 生 す る の に必 要 な
燃料 費 は
(11.1)
とな る。 こ の 時 の,出 燃 料 費 特 性 は,タ もあ る が,お
力 と燃 料 費 の 関 係(燃
料 費 特 性)は
図11.2(b)の
よ う に な る。
ー ビ ン バ ル ブ の 動 作 等 の 理 由 で な め ら か な 変 化 とな らな い ケ ー ス
よ そ 下 に 凸 の 曲 線 と考 え て 差 し支 え な い。 こ の 特 性 を二 次 関 数 で 近 似 す
る の が 普 通 で あ る。
11.2.2
ラ グ ラ ン ジ ェ の 未 定 乗 数 法*
こ こで は,経
済 負 荷 配 分 を考 え る と き に 用 い られ る ラ グ ラ ン ジ ェ の 未 定 乗 数 法 に つ
い て 説 明 す る。 変 数x1,x2…xnに
対 して,以
目 的 関 数 :f(x1,x2,…,xn)→ 制 約 条 件
下 の 問 題 を考 え る 。(m<n) 最 小 化(min)
:g1(x1,x2,…,xn)=0 g2(x1,x2,…,xn)=0 ……
(11.2)
gm(x1,x2,…,xn)=0
この 問 題 に 対 し て は,制
約 条 件g1,g2,…gmに
対 応 付 け てm個
λmを導 入 す る。 こ の 変 数 を ラ グ ラ ン ジ ェ 乗 数(Lagrangian 時,ラ
グ ラ ン ジ ェ関 数Iは
の 変 数λ1,λ2,…
multiplier)と
よぶ。 この
以下 の よ うに なる。
(11.3) n個
の 変 数x1,x2,…,xnは
す べ て 独 立 で あ る と考 え,Iの
し,こ
こで は,λ1,λ2,… ,λmは定 数 で あ る が,そ
の 値 はIを
最 小 値 を求 め る。 た だ 最 小 化 した 後,m個
約 条 件 を 満 足 す る よ う に 決 定 す る も の と す る。 変 数x1,x2,…,xnが て い る 限 り,Iの わ ち,制
第2項
以 下 は 常 に0と
約 を満 足 す るx1,x2,…,xnに
* な お,詳
な る か ら,I=fと
制 約条 件 を満 足 し
な り,Iの
対 す るfの 最 小 値 と な る。
細 に つ い て は,非 線 形 最 適 化 に関 す る 書 籍 を参 考 に され た い 。
の制
最小 値 は す な
Iの 最 小 値 は,n個
の 独 立 変 数x1,x2,…,xnに
つ い て,Iを
偏微 分 し
(11.4)
と お い て,x1,x2,…,xnに
つ い て 解 け ば よ い 。 こ の よ う に し て 得 ら れ た 解 は λ1,λ2,…,λm
の 関 数 と な り,
(11.5)
と 表 さ れ る の で,す
べ て の 制 約 条 件 を 満 足 す る よ う に λ1,λ2,…,λmを
決 めて や れ ば よ
い こ とにな る。 す な わ ち,(11.6)式
を 満 足 す るx1,x2,…,xn,λ1,λ2,…,λmに
つ い て解 け ば よい こ と
に なる。
(11.6)
【 例 題11.1】
変 数x1,x2に
対 して,以
下 の 問 題 を考 え よ。
目的 関 数 f=x12+x22→min 制 約 条 件 x1+2x2-2=0 [解] ラ グ ラ ン ジ ェ 関 数Iを(11.3)式
とな る。
に な ら っ て 作 る と,
(11.6)式
よ り,
の連 立方程 式 を解 け ば よい。 よ って,x1=2/57,x2=4/5の な お,こ
と き,最 小 値4/5と
の 例 題 の 目 的 関 数fは,x1-x2平
す な わ ち,目
的 関 数 の 最 小 値 は,x1+2x2=2に
な る 。 値 が 一 致 す る こ と を,各
11.2.3 い ま,n台
な る。
面 に お け る 原 点 か ら の 距 離 を意 味 す る 。 原 点 か ら垂 線 を 引 い た と き の 距 離 と
自,試 み られ た い 。
火 力 発 電 ユ ニ ッ トの 最 適 出 力 配 分(送 の 火 力 発 電 ユ ニ ッ ト を運 転 し,あ
電 損 失 を 考 慮 し な い 場 合)
る 予 測 さ れ た 電 力 負 荷PRを
る こ と を考 え よ う。 各 ユ ニ ッ トが どの よ う な 出 力 で 運 転 す れ ば,燃 だ ろ うか 。 各 ユ ニ ッ トの 出 力 をPi, 燃 料 費 特 性 をFi(Pi)と
を 満 足 す るP1,P2,…,Pnの
を最 小 に す るP1,P2,…Pnを
満足 させ
料 費が 最小 とな る
す れ ば,
う ち,
求 め れ ば よ い こ と に な る。 す な わ ち,次
の よ うな 問題 と
して 定 式 化 で き る。 目 的 関 数:
(11.7)
制約条件: (11.8)
こ の 問 題 に 対 し て,前 最小化 す る。
述 のLagrangeの
未 定 乗 数 法 を 適 用 し,Lagrange関
数Iを
(11.9) (11.6)式 に し た が っ て,Iを 同 時 に制 約 条 件(11.8)式
各 変 数P1,P2,…
,Pnに つ い て 偏 微 分 し,ゼ
を連 立 さ せ る こ とで,以
ロ と お き,
下 の 式 が 得 ら れ る。
(11.10)
す なわ ち,
(11.11)
(11.11)式 を 満 足 す るP1,P2,… dFi/dPiを
,Pnで 運 転 す れ ば,燃
増 分 燃 料 費(incremental
満 足 し つ つ,増
fuel cost)と
料 費 が 最 小 と な る 。 こ こで,
よぶ 。(11.11)式
は需 給 バ ラ ン ス を
分 燃 料 費 が 等 し くな る 出 力 で 運 転 す る の が 燃 料 費 が 最 小 と な る こ とを
意 味 し て い る。 これ を等 増 分 燃 料 費 則 と よ び,火
力 ユ ニ ッ トの 経 済 運 用 の 基 礎 と な る
考 え 方 で あ る。 い ま,各 発 電 ユ ニ ッ トの 燃 料 費 特 性 は 出 力 の 二 次 関 数 で 近 似 で き る の で, Fi=ai+biPi+ciPi2と
表 せ ば,
(11.12)
よ っ て,
(11.13) こ の 式 を 需 給 バ ラ ン ス の 式 に 代 入 す れ ば,
(11.14) が 得 られ る 。 こ こで,λ は(11.14)式
を 満 足 す る よ う に選 ぶ 必 要 が あ る 。 す な わ ち,
(11.15)
とな る 。 こ の λを 用 い て,各
発 電 ユ ニ ッ トの 最 適 出 力 が 次 の よ う に 決 定 され る。
(11.16)
【 例 題11.2】 MWの
次 の 燃 料 費 特 性 を持 つ2台
間 で 経 済 運 用 を 行 な っ た 時 の,そ
の 火 力 ユ ニ ッ トで,負
荷 が80MWか
ら300
れ ぞ れ の ユ ニ ッ トの 出 力 配 分 を グ ラ フ で 表
わ せ。
[解] 等 増 分 燃 料 費 則 に した が い,各
発 電 ユ ニ ッ トの 出 力 は 次 の 式 を 解 く こ とで 求 め
られ る。
した が っ て,
と な る。 グ ラ フ に あ らわ す と,図11.3の こ こ で,負 トAの
荷 が175MWよ
よ う に な る。
り も大 き くな る と,等 増 分 燃 料 費 則 で 得 られ る ユ ニ ッ
出 力 は最 大 出力 の100MWを ニ ッ トBで
超 え る の で,そ
れ 以 降 は,ユ
ニ ッ トAの
100MWに
固 定 さ れ,ユ
100MWよ
り も小 さ くな る と,等 増 分 燃 料 費 則 で 得 ら れ る ユ ニ ッ トBの
出力は
残 りが 供 給 さ れ る こ と に な る。 同 様 に,負 荷 が 出 力 は最 小
図11.3
出 力 の50MWを
下 回 る の で,出
A,Bユ
ニ ッ トの 出 力 配 分
力 は50MWに
固 定 さ れ,残
りを ユ ニ ッ トAが
供給
す る こ と に な る。
例 題11.2で 出 力(出
も わか る よ う に,実
力 上 下 限)が
際 に は各 発 電 ユ ニ ッ トに は 運 転 で き る最 小,最
大
存 在 す る 。 こ こ で 導 い た 式 で は,こ れ ら各 ユ ニ ッ トの 最 小,最
大 出 力 を考 慮 し て い な い た め,こ
れ ら を 考 慮 した 場 合 の 扱 い は幾 分 複 雑 とな る。 しか
し,こ の 場 合 で も等 増 分 燃 料 費 則 は 満 足 され て い る の で,以
下の フロー で最適 出力 配
分 を 決 定 す る こ とが で き る 。 (1)増 分 燃 料 費 λの 初 期 値 を与 え る。 例 え ば,任
意 の 発 電 ユ ニ ッ トの 最 大 出 力 時 の
増 分 燃 料 費 とす る 。 (2)与
え られ た λに 等 し くな る 各 発 電 ユ ニ ッ トの 出 力 を計 算 す る 。 も し,こ
の値 が
最 小 出 力 を下 回 っ て い れ ば 最 小 出 力 に,最 大 出 力 を 上 回 っ て い れ ば 最 大 出 力 に 設 定 す る(等 増 分 燃 料 費 則 の 考 え 方)。 (3)発 電 ユ ニ ッ ト出 力 の 総 和 を計 算 す る 。 (4)出
力 の 総 和 が 負 荷 を 下 回 っ て い れ ば λを 大 き く,逆 に 出 力 の 総 和 が 負 荷 を 上 回
っ て い れ ば λ を小 さ くす る。 (5)(2)∼(4)を な お,(2)に
出 力 の 総 和 と負 荷 が 十 分 に近 づ く まで 繰 り返 す 。 お い て 与 え ら れ た λに対 して,最
は,出 力 と増 分 燃 料 費 の 関 係 を 図11.4の
小,最
大 出 力 を逸脱 した場 合 の処 理
よ う に考 え て い る の と 同 じ こ と で あ る。
図11.4
11.2.4
火 力 発 電 ユ ニ ッ ト の 最 適 出 力 配 分(送
電 力 系 統 に お い て は,送 同 じ2つ
最 大 ・最 小 出力 で の 増分 燃 料 費 の扱 い方
電 損 失 を 考 慮 す る 場 合)
電 設 備 の 抵 抗 分 に よ り損 失 が 生 じ る。 も し,燃 料 費 特 性 の
の発 電 ユ ニ ッ トが あ り,一 つ は 負 荷 の 近 く,も う一 つ は 負 荷 か ら離 れ て い る
な ら ば,明
らか に 負 荷 の 近 くに あ る 発 電 ユ ニ ッ トの ほ うが 損 失 が 発 生 し な い 分,経
済
的 に有 利 で あ る。 こ の よ う に,経 済 負 荷 配 分 に お い て も送 電 損 失 を考 慮 す る必 要 が あ る。 一 般 に 系 統 内 の送 電 損 失PLは
各 発 電 ユ ニ ッ ト出 力 の2次
式 と して,以
下 の よ うに
表 現 で き る。
(11.17)
ここで,BlmをB係
数 とよび,系 統 内 各部 の電 圧,相 差 角(位 相 角)等 で 表 現 さ
れ る。 す なわ ち,経 済 負荷 配分 に よ り発電 ユニ ッ トの出力 を変化 させれ ば潮 流分 布 が 変わ り,B係
数 その もの の値 が変 わ る こ とに な るので,送 電 損失 を考 慮 した 経済 負荷
配分 を厳密 に行 お う とす る とは なはだ都 合 が悪 い。 しか しなが ら,あ る潮 流 分布 が与 えられた場合(こ れ を基準 潮 流状 態 とよぶ),発 電 ユ ニ ッ ト出力 をわ ず か に変 えて も 系統 内各部 の相差 角,電 圧値 は ほぼ一 定 と考 え られ るので,実 用的 に はB係 数 は定 数 と考 えて も差 し支 えな い。 送 電損 失 を考 慮 した場 合 の定 式化 は,前 節 の送 電損失 を考 慮 しない場 合 の需 給バ ラ ンスの式 に送電 損 失が組 み込 まれ る こ とに な る。 す なわち, 目的関 数:
(11.18)
制約条件: (11.19)
前 節 と同 様 にLagrange関
数Iは
(11.20) と な る の で,Iを
各 変 数 で 偏 微 分 して0と
お く こ とで,以
下 の 式 が 得 ら れ る。
(11.21)
こ こ で,1/(1-∂PL/∂Pi)≡Liを
ペ ナ ル テ ィー 係 数(Penalty
送 電 損 失 を 考 慮 し な い場 合,す
な わ ち,PL=0の
この 送 電 損 失 を 考 慮 し た 式 を,火
Factor)と
場 合,Li=1と
よぶ。
なる。
力 の 協 調 方 程 式(Coordination
Equation)と
よ
ぶ。 ペ ナ ル テ ィ ー 係 数 の意 味 に つ い て 考 え て み よ う。 ∂PL/∂Piは,i発 力 を 変 化 さ せ た と き の 送 電 損 失 の 変 化 率 を 示 し て い る 。 い ま,i発 をΔPi増
加 さ せ る と送 電 損 失 は ∂PL/∂Pi×ΔPiだ け 増 加 し,結
-∂PL/∂Pi)×ΔPiし か 増 え な い こ と に な る。 す な わ ち,ペ 点 で 単 位 量 の 負 荷 を 供 給 し よ う と した と き に,発
(正味 の 増 分 燃 料 費 に1よ
局,負
荷 地 点 で は(1
ナ ル テ ィー 係 数 と は負 荷 地
電 ユ ニ ッ トが どれ だ け発 電 し な け れ
ば な らな い か を 示 して い る とい え る 。 この こ とか ら,ペ う こ とは 送 電 損 失 が 大 き い とい う こ とで,負
電 ユ ニ ッ トの 出 電 ユ ニ ッ トの 出 力
ナ ル テ ィ ー 係 数 が 大 き い とい
荷 か ら見 た 場 合,増
分 燃 料 費 を高 く見 て
り大 き い ペ ナ ル テ ィ ー 係 数 が か か っ て い る た め)配
分す る
必 要 が あ る と い う こ とで あ る 。
【 例 題11.3】
例 題11.2の2台
の各 ケ ー ス に対 し て,そ
の ユ ニ ッ トで150MWの
負 荷 に供 給 し て い る。 以 下
れ ぞ れ の ユ ニ ッ トの 出 力 配 分 を求 め よ。
(1)送
電損 失 を考慮 しない場 合。
(2)送
電 損 失 を 考 慮 す る場 合 。 ペ ナ ル テ ィ ー 係 数Liを
ッ トBは0.95,系 [解] (1)例
統 全 体 の 送 電 損 失 を5%と 題11.2のPR=150と
ユ ニ ッ トAは0.9,ユ
せ よ。
し て 計 算 す る と,P1=83.3MW,P2=66.7
ニ
MW (2)
損 失 を 考 慮 し た 場 合,(11.21)式
か ら,以 下 を解 く こ と で 出 力 が 計 算 され る 。
こ れ を 解 く と,P1=93.5MW,P2=64.0MW
11.3
火力,水
11.3.1
力発電ユニ ッ トの経 済負荷 配分
水火協調 方程式
これ ま で は,火
力 発 電 ユ ニ ッ トか ら な る系 統 の 最 適 負 荷 配 分 に つ い て 取 り扱 っ て き
た 。 実 際 の 系 統 で は,火 力 だ け で な く,水 力 発 電 ユ ニ ッ ト も運 用 さ れ て い る の で,こ れ ら も考 慮 し た 経 済 運 用 を考 え る必 要 が あ る。 と こ ろ で,水
力 発 電 は,自
流 式(流
れ 込 み 式),調
整 池 式(貯
水 池 式),揚
水 式 の3
つ の タ イ プ に分 け られ る。 自 流 式 水 力 は ダ ム の貯 水 能 力 が 非 常 に小 さ く,上 流 か ら流 れ て き た 水 を貯 め て お く こ とが で き ず直 ち に 発 電 す る タ イ プ で あ る。 こ の よ うな タ イ プ の 発 電 所 は 出 力 の 調 整 はで き な い た め,経
済 負荷 配 分 の対 象 とは せ ず,マ
イナ スの
負 荷 と同 じ扱 い を す る。 調 整 池 式 水 力 は 大 きな ダ ム を 有 し,貯 水 能 力 が 大 き い 。 こ の た め,必
要 な と き,例
え ば 経 済 的 に 有 利 な時 に発 電 す る こ とが 可 能 で あ る 。 揚 水 式 水
力 は 夜 間 等 の 負 荷 が 小 さ い 時 に下 池 の 水 を上 池 に く み上 げ,昼
間 に 上 池 に貯 え られ た
水 を 使 っ て 発 電 す る タ イ プ で あ る。 こ の た め,揚 水 発 電 所 に は発 電 機 で は な く,発 電 電 動 機(発
電 機 と し て も モ ー タ ー と し て も使 え る)が 備 え られ て い る。 経 済 負 荷 配 分
の 対 象 とな る の は,調 整 式 あ る い は 揚 水 式 発 電 所 で あ る 。 水 力 発 電 ユ ニ ッ トは燃 料 が 不 要 で あ る の で,発 料 費 を節 約 で き る。 しか しな が ら,使 され た 負 荷 に対 し て,ど
電 す れ ば す る ほ ど火 力 ユ ニ ッ トの 燃
う こ と の で き る水 量 は 限 られ て い るの で,予
の 時 間 帯 に どの 程 度 発 電 す れ ば よ い か,す
な わ ち,水
測
を最 大
限 有 効 に 利 用 して 火 力 燃 料 費 を 最 小 に す る よ う な 運 転 を 決 定 す る必 要 が あ る。 こ れ が,水 火 協 調 運 用 と よ ば れ る も の で あ る。 と ころ で,水
力 発 電 ユ ニ ッ トに も,火 力 の 燃 料 費 特 性 と類 似 の 特 性 が あ る。 す な わ
ち,水 力 ユ ニ ッ トは水 の 力 で水 車 を 回 し,こ の 機 械 的 トル クで 発 電 機 を回 転 さ せ,電 力 を 発 生 さ せ て い る。 こ の た め,あ 〔m3/sec〕 の 水 量 が 必 要 で あ る。PとWの 11.4の
よ う な 関 係 とな る。 こ こ で,注
る 電 気 出 力P〔MW〕
を 発 生 す る た め に はW
関 係 は使 用 水 量 特 性 と よ ば れ,一 意 す べ き こ と は,水
般 に,図
力発 電 の原 理 が 水 の持 つ
位 置 エ ネ ル ギ ー を 電 気 エ ネ ル ギ ー に変 え て い る と い う こ と で あ る。 す な わ ち,同 m3の
水 で あ っ て も落 差 が10mと100mで
高 落 差 の 発 電 所 す な わ ち,貯
じ1
はそ のエ ネル ギー に大 き な違 い が あ る。
水 池 と発 電 ユ ニ ッ トの 間 に大 き な高 低 差 が あ る場 合 は,
貯 水 池 の水 位 が 少 し 変 動 し て も全 体 と し て の 位 置 エ ネ ル ギ ー は あ ま り変 わ ら な い の で,水 位 に 関 係 な く 図11.5の き る。 一 方,低 る た め,厳
よ う な 電 気 出 力Pと
水 量Wの
関 係 を 求 め る こ とが で
落 差 の 発 電 所 で は 貯 水 池 の 水 位 変 動 が 位 置 エ ネ ル ギ ー に大 き く影 響 す
密 に は,電
気 出 力Pは
水 量Wと
貯 水 池 水 位Hの
差 変 動 が な い,あ
る い は 一 定 の 場 合 と よ び,後
が,こ
差 変 動 が な い場 合 に つ い て 説 明 す る 。
こで は,落
関 数 と な る。 前 者 を 落
者 を 落 差 変 動 を 考 慮 す る場 合 と よ ぶ
水 火 協 調 運 用 を 決 定 す る 式 は ど の よ うに な る の で あ ろ う か 。 こ こ で 注 意 し な け れ ば な ら な い の は,火
力 発 電 ユ ニ ッ トの み の 経 済 負 荷 配 分 で は1つ
の時 間断面 の 負荷 に対
して 各 発 電 ユ ニ ッ トの 出 力 を決 定 で きた の に 対 し,水 火 協 調 運 用 で は あ る一 定 期 間 の 使 用 水 量 を制 約 と し て 考 え な け れ ば な らな い と い う こ と で あ る。 す な わ ち,時
間 の要
素 が導 入 され る ことに なる。 目的 関 数 は,あ は,需
る一 定 期 間 の 火 力 発 電 ユ ニ ッ トの 全 燃 料 費 で あ る 。 制 約 条 件 と し て
給 バ ラ ン ス 以 外 に水 力 発 電 所 の 使 用 水 量 制 約 が 新 た に追 加 さ れ る 。 送 電 損 失 に
関 し て は,火 力 の み の ケ ー ス と ま っ た く同 様 に扱 え る の で,以 下 の定 式 化 で は 送 電 損 失 は考 慮 しな い こ と とす る 。 目 的 関 数:
(11.22)
図11.5
使 用 水量 特 性
制約条件:
(11.23)
こ こ で,PTit:i火 PHjt:j水
力 発 電 ユ ニ ッ トの 時 刻tに
お け る出力
力 発 電 ユ ニ ッ トの 時 刻tに
お ける出力
Wj(PHj):j水 Wj0:j水 PRt:時
力 発 電 ユ ニ ッ トの使 用 水 量 特 性
力 発 電 ユ ニ ッ トの 使 用 水 量 刻tに
お ける電力 負荷
この 問 題 に 対 して も,Lagrangeの 制 約 に対 し て λt(t=1,2,…,l),次 定 乗 数 を 導 入 し てLagrange関
未定 乗 数法 が適 用で きる。最 初 の需 給バ ラ ンス の 使 用 水 量 制 約 に 対 し てγj(j=1,2,…,m)な
数Iを
構 成 し,そ
る未
の最小 化 を図 る。
(11.24) PTit,PHjtの
各 変 数 で 微 分 し,0と
お き,制 約 条 件(11.23)式
を連立 させ る こ とで以
下 の 式 が 得 ら れ る。
(11.25)
す な わ ち,
(11.26) が得 られ る。前2項 が火力 ユニ ッ トの みの場 合 の等増 分 燃料 費 則 に対 し,新 た に第3
項 が 追 加 さ れ て い る。 こ れ が送 電 損 失 を考 慮 しな い場 合 の 水 火 協 調 方 程 式 で あ る。 な お,11.2.4と
同 様 に し て,送
電 損失 を考慮 した場 合 の水 火協 調 方 程 式 は次 式 の
ように なる。
(11.27) dWj/dPHjtは,j水 示 す も の で,火 方,未
力 ユ ニ ッ トが さ ら に 出 力 を単 位 量 増 加 さ せ る の に 必 要 な 水 量 を
力 発 電 ユ ニ ッ トの増 分 燃 料 費 に 対 し て 増 分 使 用 水 量 と よ ば れ る 。 一
定 乗 数 のγ は水 火 協 調 方 程 式 か らdF/dWの
水 量 を 単 位 量 変 化 させ る こ とが,火 表 わ す もの で,そ
意 味 を持 っ て い る 。 これ は,使
用
力 発 電 ユ ニ ッ トの 燃 料 費 を い く ら変 化 さ せ る か を
の 水 力 発 電 所 の 水 の 価 値 と い え る。 そ こ で,γ
を増分 水 単価 とよ
ぶ。
【 例 題11.4】
例 題11.2の2台
ッ ト1台 が あ る 場 合,負 め よ 。 な お,増
の 火 力 ユ ニ ッ トに 下 記 の 使 用 水 量 特 性 を 持 つ 水 力 ユ ニ
荷300MWに
分 水 単 価 γは100と
供 給 す る と きの,各
ユ ニ ッ トの 出 力 配 分 を 求
し,送 電 損 失 は考 慮 し な い 。
水 力 ユ ニ ッ トの 使 用 水 量 特 性 :W(P3)=5×10-3P32+P3+5(m3/sec) [解]負
荷300MWの
視 して,水
と きの 最 適 配 分 で あ るの で,(11.26)式
に お い て 添 え 字tを
無
火 協 調 方 程 式 を立 て る と,
と な る 。P1,P2,P3を
λの 関 数 と し て 表 し,上 記 第2式
よ っ て,P1=70MW,P2=60MW,P3=170MWと
に代 入 す る と λ=270と
な る。
な る。
こ の 例 題 で は,増 分 水 単 価 γの 値 が 与 え ら れ て い た が,普 程 で 決 定 さ れ る も の で あ る。 そ れ で は,こ
通,こ
の γは計 算 の過
れ を い か に計 算 す る の で あ ろ う か?
一般
に 以 下 の よ うな 繰 り返 し計 算 で 各 ユ ニ ッ トの 出 力 配 分 が 決 定 で き る。 (1)水 力 発 電 所 ご と の 増 分 水 単 価 γjの初 期 値 を与 え る。 例 え ば,任 意 の 正 の 数 を 与 え る。 (2)各 時 間 ご と の 増 分 燃 料 費 ラ ム ダtの
初 期 値 を与 え る 。
(3)与
え られ たλt,γjを 用 い て,協
の 出 力 を 計 算 す る。 も し,こ
調 方 程 式 か ら各 火 力,水
力 ユ ニ ッ トの 時 間 帯 毎
の値 が 最 小 出 力 を 下 回 っ て い れ ば 最 小 出 力 に,最
大
出 力 を上 回 っ て い れ ば最 大 出 力 に 設 定 す る(等 増 分 燃 料 費 則 の 考 え 方)。 (4)時
間 帯 ご と に発 電 ユ ニ ッ ト出 力 の 総 和 を計 算 す る。
(5)出
力 の 総 和 が 負 荷 を下 回 っ て い れ ば λtを大 き く,逆 に 出 力 の 総 和 が 負 荷 を 上 回
っ て い れ ばλtを 小 さ くす る 。 (6)(3)∼(5)を
出 力 の 総 和 と負 荷 が 十 分 に近 づ く ま で繰 り返 す 。 こ れ を す べ て の 時
間 帯 で 行 う。 (7)各 水 力 発 電 所 の 使 用 水 量 を計 算 す る。 使 用 水 量 が 指 定 値 よ り少 な い な ら ばγjを 小 さ く,多 い な ら ば γjを大 き くす る 。 (8)(3)∼(7)を
使 用 水 量 が 指 定 値 に 十 分 に近 づ く ま で繰 り返 す 。
一 般 に 水 力 ・火 力 ユ ニ ッ トか ら な る系 統 の 運 用 計 画 は1時 日 単 位 で 決 定 さ れ る 。 す な わ ち,(6)の
間 き ざ み で,短
計 算 は 少 な くて も24の
くて も1
時 間帯 で 行 わ れ る こ
と に な る。
11.3.2 11.3.1で
水 火 協 調 方 程 式 の そ の他 の 適 用 説 明 し た 手 法 は 他 の 様 々 な ケ ー ス に も適 用 可 能 で あ る。 こ こ で は,揚
発 電 へ の 適 用,お
水
よ び,燃 料 消 費 量 制 約 の あ る火 力 発 電 ユ ニ ッ トへ の 適 用 に つ い て 説
明 す る。 (1)揚
水 発 電 ユ ニ ッ トを 含 む 系 統 の 最 適 運 用
揚 水 発 電 も水 力 発 電 の ひ とつ の 方 式 で あ る が,上 す るた め,使
池 に くみ上 げ た 水 を 利 用 し て 発 電
用 水 量 特 性 の 扱 い が 少 し異 な る。 す な わ ち,揚 水 ユ ニ ッ トで は,使 用 水
量 特 性 は 図11.6の
よ うに 出 力Pが
マ イ ナ ス 側 す な わ ち動 力 と し て使 っ て い る場 合 も
考 慮 す る必 要 が あ る。 しか し な が ら,そ の 他 の 扱 い は ま っ た く同 じで あ る た め,水
火
協 調 方 程 式 は そ の ま ま用 い る こ とが で き る。 一 般 に,揚
水 発 電 は週 末 の 夜 間 に上 池 に水 を くみ 上 げ,平
う週 間 サ イ ク ル の 運 用 が 基 本 とな る 。 こ の た め,1週 必 要 が あ る。 また,運
用 途 中 で 上 池 が 溢 水(あ
日 の昼 間 に 発 電 す る と い
間 に わ た る 出 力 配 分 計 算 を行 う
ふ れ る)し
た り,空 に な らな い よ う チ
ェ ッ ク す る必 要 が あ る。 こ れ らの 条 件 は制 約 と し て 組 み 込 む こ とが 困 難 で あ る た め, 池 容 量 の 制 約 を緩 和(無
視)し
た 出 力 配 分 を決 定 した 後,シ
ミュ レー シ ョ ン で 上 池 の
水 位 チ ェ ッ ク を行 い,も
し上 記 の 違 反 が あ れ ば 出力 を調 整 す る手 法 が 一 般 的 で あ る。
(2)燃
料 消 費 量 制 約 を 有 す る 火 力 発 電 ユ ニ ッ トを 含 む 最 適 運 用
近 年,ク
リー ン で か つ 安 価 な エ ネ ル ギ ー 源 と し て 液 化 天 然 ガ ス(Liquefied
Natural
図11.6 注)破
揚 水 発 電 ユニ ッ トの使 用 水量 特 性
線 部 は,こ の 出力帯 で は実 際 に運 用 さ れ ない こ とを示 して い る。
Gas:LNG)を
用 い た 火 力 ユ ニ ッ トが 増 え て き て い る 。 LNGは
定 期 的 に 燃 料 基 地 に 運 ば れ て く る た め,計 LNG火
タ ンカー に よ り
画 的 に 消 費 す る必 要 が あ る。 一 般 的 に
力 ユ ニ ッ トは燃 料 費 が 安 い た め,単 純 に 最 適 負 荷 配 分 計 算 を行 え ば 燃 料 を 使
い す ぎ る こ と に な る。 運 搬 船 が 来 る ま で に備 蓄 が な くな れ ば 発 電 で き な い とい う事 態 も考 え られ る 。 この よ う な 事 態 を避 け る た め に,一 燃 料 の 総 量 を 決 め て お き,そ
定 期 間 た とえ ば1日
で消費 で きる
の範 囲 内 で 経 済 負 荷 配 分 す る必 要 が 生 じ る 。
この よ う な 場 合 も,水 火 協 調 方 程 式 を 導 出 した の と 同 じ方 法 で 取 り扱 う こ とが で き る。 あ る 燃 料 基 地 か らm箇
所 の 発 電 ユ ニ ッ トに 燃 料 が 供 給 され て お り,一 定 期 間 の
使 用 総 量 が 与 え られ て い る と し よ う。 こ の 時,m個 燃 料 は燃 料 単 価 をC,一
所 の 発 電 ユ ニ ッ トで 消 費 さ れ る
定 期 間 の 使 用 総 量 をLNG0と
す れ ば,以
下 の制 約 を満 足 し
な け れ ば な ら な い こ と に な る。
(11.28) こ こで,PLjt:LNG発 FLj:LNG発
電 ユ ニ ッ トjの 時 刻tに
お け る出力
電 ユ ニ ッ トjの 燃 料 費 特 性
この 制 約 は,水 力 の 使 用 水 量 制 約 と類 似 の 制 約 で あ り,特 に,m=1の
場 合 は,次
の よ う な 協 調 方 程 式 が 得 られ る。
(11.29) 第1項 は燃 料消 費量 制約 の ない ユニ ッ トに対 す る増分 燃料 費 で,第2項
が燃 料消 費
量 制 約 の あ る ユ ニ ッ トに 対 す る増 分 燃 料 費 で あ る。 燃 料 消 費 量 制 約 が あ る ユ ニ ッ トに 対 して は,元
の 増 分 燃 料 費 に(1+γ)を
か け た仮 想 的 な 増 分 燃 料 費 に対 して 等 増 分 燃
料 費 則 を適 用 す れ ば よ い とい う こ とに な る 。 γの 決 定 は水 単 価 の 決 定 と 同 様,燃
料消
費 量 制 約 を満 足 す る よ う に調 整 され る。
【 例 題11.5】
例 題11.2の2台
約 が あ る 。150MWの こ こ で,1+γ
の ユ ニ ッ トの う ち,ユ
ニ ッ トBに
は燃 料 消 費 量 の 制
負 荷 に 対 す る 出 力 配 分 を計 算 せ よ。
を0.8お
よ び1.2と
す る。 ま た,送
電損 失 は考慮 しない 。
[解] (11.29)式 よ り,
と な る の で,1+γ=0.8の
と き は,
よ り,P1=61.5MW,P2=88.5MWと 1+γ=1.2の
な る。
と き は,
よ り,P1=100MW,P2=50MWと
例 題11.3か
な る。
ら,ユ ニ ッ トBに 燃 料 消 費 量 の 制 約 が な い場 合 の 出 力 配 分 はP1=93.5
MW,P2=64.0MWで
あ る。 こ れ は,1+γ=1の
ッ トBの 増 分 燃 料 費 が 等 価 的 に 低 くな る た め,P2の を余 計 に使 う こ と に 相 当 す る。 一 方,1.2の 的 に 高 くな る た め,逆
に,P2の
場 合 に 相 当 し,0.8の
場 合 はユ ニ
配 分 が 多 くな る 。 これ は,燃 料
場 合 は,ユ ニ ッ トBの
配 分 は 小 さ く な る。 これ は,使
増分 燃料 費 が等価
う こ との で き る燃 料
の 量 に制 約 が あ る こ と に 相 当 す る。 この γ(あ る い は1+γ)の 法 と同 じで あ る。
決 定 法 は 水 火 協 調 方 程 式 に お け る増 分 水 単 価 γ の 決 定
11.4
火 力 発 電 ユ ニ ッ ト の 起 動 停 止 計 画 ―
ユ ニ ッ ト コ ミ ッ ト メ ン ト―
い ま,燃 料 費 特 性 の 異 な る2台 費 特 性 をF1,最
の 火 力 発 電 ユ ニ ッ ト を考 え る。1号 ユ ニ ッ トの 燃 料
大 ・最 小 出 力 をG1max,G1min,2号
大 ・最 小 出 力 をG2max,G2minと
ユ ニ ッ トの 燃 料 費 特 性 をF2,最
す る 。 こ こ で,2台
の ユ ニ ッ トを 運 転 し,負 荷PRに
燃 料 費 が 最 小 とな る よ う に 出 力 配 分 を決 定 した 時 の燃 料 費 特 性 をF3と 図11.7にF1,F2,F3の に 応 じて,最
一 例 を 示 す 。 こ の 図 か ら明 らか な よ う に,負 荷PRの
も燃 料 費 が 安 くな る運 転 状 態 は 変 わ る 。 す な わ ち,F1とF2の
の 負 荷 をX1,F2とF3の G1min〓PR〓X1の X1〓PR〓X2の
交 わ る点 の 負 荷 をX2と 時,1号 時,2号
交 わ る点
す れ ば,
ユ ニ ッ トの み 運 転 時,1号,2号
ユ ニ ッ トの 運 転
も燃 料 費 が 安 くな る 。
こ う して 見 る と,負 荷 が 徐 々 に 増 加 して い く時,ま 負 荷 がX1よ
り も大 き くな れ ば,1号
さ ら にX2よ
り も大 き くな っ た 時 に1号
か?
大 きさ
ユ ニ ッ トの み 運 転
X2〓PR〓G1max+G2maxの が,最
す る。
これ は,以
ず,1号
ユ ニ ッ トを 停 止 し て2号
ユ ニ ッ トの み 運 転 し, ユ ニ ッ トの み で 運 転 し,
ユ ニ ッ トも運 転 す る の が 最 も経 済 的 で あ ろ う
下の 理 由で現実 的 で はない。
・火 力 発 電 ユ ニ ッ トは 高 温 ・高 圧 の 蒸 気 を 用 い て タ ー ビ ン を回 転 さ せ る の で,頻 起 動 ・停 止 は タ ー ビ ン そ の 他 機 器 の 温 度 を急 激 に 変 化 さ せ,機
繁 な
器 の 寿 命 を縮 め て し
ま う。 ・火 力 発 電 ユ ニ ッ トの 起 動 ・停 止 操 作 は完 全 に は 自 動 化 さ れ て お ら ず
,運 転 員 にか か
る負担 の問 題が ある。 一 方,一
日の 負 荷 変 化 に対 して,す
に応 じ て,こ
で あ ろ うか?
これ も以 下 の 理 由 で 現 実 的 で は な い 。
・深 夜 の 負 荷 は 非 常 に 少 な く(一 る),ま
べ て の 火 力 発 電 ユ ニ ッ トを運 転 し て お き,負 荷
れ まで 説 明 して きた 協 調 方 程 式 を 用 い て 経 済 負 荷 配 分 を行 うの が 経 済 的
日 の ピ ー ク 負 荷 に 対 し て50%程
度 に まで 減 少 す
た 原 子 力 発 電 等 の 出 力 変 動 を行 え な い 発 電 ユ ニ ッ ト も あ る た め,火 力 発 電
ユ ニ ッ トを 最 小 出 力 に絞 り込 ん で も,そ れ で も負 荷 を 上 回 る ケ ー ス が あ る。 ・火 力 発 電 ユ ニ ッ トを 最 小 出 力 付 近 で 運 転 す る の は 効 率 が 悪 い だ け で な く,負 荷 周 波 数 制 御 の た め に 出 力 を下 げ よ う と して も下 げ ら れ ず,周
波 数 が 基 準 値 か ら逸 脱 す る
恐 れ が ある。 以 上 の 理 由 で,火
力 発 電 ユ ニ ッ トは負 荷 に応 じ て 停 止,運
つ発 電 ユ ニ ッ トを 停 止 し,い 画(ユ
転 させ る必 要 が あ る。 い
つ 起 動 す れ ば よ い か を 決 定 す る の が,発
電機 起動 停止 計
ニ ッ トコ ミ ッ トメ ン ト)と よ ば れ る問 題 で あ る。 ち な み に,水 力 の 場 合 は火 力
と異 な り,熱 的 な 問 題 もな く起 動 停 止 を 頻 繁 に 行 う こ とは,(必 い けれ ど も)可 能 で あ る。 な お,こ
ず し も望 ま し くは な
れ ま で 説 明 し て き た 協 調 方 程 式 あ る い は等 増 分 燃
料 費 則 に よ る 出力 配 分 は運 転 して い る発 電 ユ ニ ッ トに対 し て の 出 力 を決 定 す る こ とが 目 的 で あ り,運 転 す るか,停
止 す る か を決 定 す る も の で は な い こ と に注 意 す る 必 要 が
あ る。 起 動 停 止 計 画 を決 定 す る手 法 は い くつ も提 案 さ れ て い る が,こ
こ で は最 も一 般 的 に
用 い ら れ て い る並 列 優 先 順 位 に 基 づ く方 法 に つ い て 説 明 す る 。 火 力 発 電 ユ ニ ッ トの 燃 料 費 特 性 を 図11.8(a)の
よ う に表 わ さ れ る と し よ う。 こ の 曲 線 上 の1点
ぶ 直 線 の 傾 き μ=F(P)/Pは dF/dPは
出 力Pに
お け る 発 電 単 価 を表 し,曲
増 分 燃 料 費 を 表 す 。 発 電 単 価 が 最 も小 さ くな る の は,原
曲線 に接 線 を引 い た 時 で,こ
と原 点 を 結
線 の 接 線 の 傾 き λ= 点 か ら燃 料 費 特 性
の 接 点 で は λ=μminの 関 係 が 成 り立 っ て い る 。 一 般 に,
発 電 単 価 が 最 も小 さ くな る出 力 は発 電 ユ ニ ッ トの定 格 出 力 付 近 の 値 で あ る。 次 に,出
力 を 変 化 させ な が ら発 電 単 価 μ と増 分 燃 料 費 λを計 算 して い く と図
11.8(b)の
よ うな 曲 線(λ-μ 特 性)が
る 時 に は,各
得 られ る 。 複 数 の 発 電 ユ ニ ッ トが 運 転 さ れ て い
ユ ニ ッ トの λが 等 し く な る よ う に 出 力 配 分 さ れ る の で,同
て μ の 小 さ な ユ ニ ッ トか ら並 列(運
転)し
複 数 の ユ ニ ッ トのλ-μ 特 性 に対 し,λ=μ
じ λに対 し
て い くの が 経 済 的 で あ ろ う。 す な わ ち, な る直 線 と原 点 に近 い 点 で 交 わ るユ ニ ッ ト
か ら順 に 並 列 優 先 順 位 を 決 め て い くの で あ る。 こ の よ う に し て 決 定 され た 火 力 機 の 並 列 順 位 に 応 じ て,負
荷 が 大 き い 時 間 帯 で は順 次 並 列 し,逆 に 負 荷 が 小 さ い 時 間 帯 で は
順 次 停 止 し て い くの で あ る。
(a)
(b) 図11.8
並 列優 先 順 位 の決 定 方法
実 際 の 起 動 停 止 計 画 で は,発
電 ユ ニ ッ トか らの 制 約,例
制 約(い
定 時 間 経 た な い と起 動 で き な い,あ
っ た ん停 止 す れ ば,一
た ん 運 転 す れ ば,一 定 時 間 経 た な い と停 止 で き な い)や
え ば,最 小 運 転 ・停 止 時 間
え ば,同 一 発 電 所 内 で 同 時 に 複 数 の ユ ニ ッ トの 起 動 操 作,停 に は,系 統 運 用 上 の 制 約,例
え ば,特
る い は逆 に,い
っ
発 電 所 運 用 に お け る制 約,例 止 操 作 は で きな い,さ
ら
定 の 送 電 線 に 一 定 以 上 の 潮 流 を 流 せ な い とい っ
た 非 常 に 多 くの 制 約 を考 慮 し な け れ ば な らず,現
在 も様 々 な 手 法 に つ い て 検 討 が 行 わ
れ てい る。
問題 (1)火
力 ユ ニ ッ トか らな る 系 統 の 最 適 負 荷 配 分 計 算 と火 力 ・水 力 か ら な る 系 統 の 最 適 負 荷 配 分 計 算 の 違 い につ い て 説 明 せ よ 。
(2)次
の燃 料 費 特 性 を持 つ2台
の 火 力 ユ ニ ッ トが 図11.9の
負 荷 に 電 力 を供 給 し て い る。L1=100MW,L2=50MWの
図11.9
よ う な 系 統 に つ な が れ, と き,連
系 線CT
の容 量 に 応 じて,総
A:0.5P12+200P1+10
B:P22+150P2+30 (3)送
発 電費 用 は どうな るか検 討せ よ。 (30〓P1〓100) (50〓P2〓200)
電 損 失 を考 慮 し た 水 火 協 調 方 程 式(11.27)式
を導 出 せ よ。
【解答 は巻末 】
答
解 の 題
末 章
第2章 電力系統 と三相回路の基礎 (1) 有 効 電 力193〔kW〕,無
効 電 力51.8〔kvar〕
(2) 複 素 電 力180.1+j108.1〔MVA〕,皮 (3)
115-j29〔A〕
(4)
べ ー ス 電 流1000〔A〕,べ
(5)
電 圧1.44〔pu〕,電
ー ス イ ン ピ ー ダ ン ス100〔
流3.5〔pu〕,イ
(6) 有 効 電 力108〔MW〕,無 (7)
相 電 力210〔MVA〕
Ω〕
ン ピ ー ダ ン ス0.0125+j0.457〔pu〕
効 電 力36〔Mvar〕(遅
れ),皮
相 電 力113.8〔MVA〕
(1+YZ/12)Z,[(1+YZ/18)/(1+YZ/12)]Y/2
(8)
電 力109.8+j3.2〔MVA〕,電
圧134〔kV〕
(9)
電 力1.098+j0.032〔pu〕,電
圧0.893〔pu〕
(1)
0.0124〔pu〕
(2)
35.3〔
(3)
28.2%
(4)
60.0〔kV〕
第3章 変圧器
(5)
Ω〕,2.03〔
V1=410.5∠1.0°
(6)
Ω〕
〔V〕 I1=102.2∠−37.7°
〔A〕
(a)13.8/88.9〔kV〕,1.087/0.169〔kA〕,15〔MVA〕 1.882/0.0974〔kA〕,15〔MVA〕(c)13.8/154〔kV〕,1.087/0.0972〔kA〕,15 〔
MVA〕
第4章 送 電線路 (1) 882〔mm〕 (2)
1.24〔mH/km〕5.37
(3)
1.30〔mH/km〕,0.963〔mH/km〕
(4)
6.95,10.3
(5)
0.0089〔
(6)
1.80〔mH/km〕
(7)
0.22〔 μF/km〕
(8)
0.31〔mH/km〕
μF/km〕,
0.012〔
μF/km〕
(b)7.97/154〔kV〕,
問
第5章 潮流 計算 (1)①
②
(2)
第6章 同期発 電機 (1) (2)
0.52〔pu〕 (a)7.999∠5.5°〔kV〕
(b)8.413∠3.88°〔kV〕
kV〕
(3) (4)
2.04〔pu〕
(a)
(b)0.996∠−28.90°〔pu〕
0.414〔pu〕
第7章 故障計 算 (1)
Va=0.447∠25.8°
〔V〕
Vb=0.751∠−14.5°
〔V〕
Vc=0.373∠−2.2°
〔V〕
(2) Ia=0〔A〕
(3)
In=1050∠90°
Ib=904.2∠−95.6°
〔A〕
Ic=904.2∠−84.4°
〔A〕
I0=0.093∠−180° I1=0 .99∠0°
〔A〕 〔A〕
I2=0.105∠0°
〔A〕
(4)
図7.11の(c)参
照
(5)
0.429
〔A〕
(c)7.562∠4.31°〔
(6)
0.847
(7) j0.15/(j0.35+3R) (8)
3.0〔pu〕
(1)
(a)3750〔MJ〕
(2)
188.8〔rad/s〕
(3)
0.849〔MN・m〕
第8章 安定度 (b)1.31〔rad/s2〕 0.041〔rad〕
第9章 電力系統 におけ る有効電 力 と周波数 の関係 (1)
9.1参
照
(2)
0.148〔Hz〕
(3)
A系
(4)
800〔MW/Hz〕
(5)
(1)Δf=0〔Hz〕
統25〔MW〕
89.87〔MW〕(100MW機)
B系
ΔPT=0〔MW〕
(2) Δf=−0.040〔Hz〕
第10章
214.8〔MW〕(250MW機)
統−33〔MW〕
ΔPT=0.033〔MW〕
電 力 シ ス テ ム に お け る無 効 電 力 と電 圧 の 関 係
(1) ① Q=0.484〔pu〕
Vr=141.8〔kV〕
② 0.3 (2) Q=2πfCV2:fは
周波数
(3) 小 さ くす る
第11章 (1) (2)
11.3.1参 CTの
容 量 が16.7MWよ
これ はA,B2台 CTの
電 力システムの経済運 用
照
容 量 が16.7MWよ
用 が で き な い 。 例 え ばCTの (3)
り大 の 時,総
発 電 費 用34,623。
の ユ ニ ッ トの 最 適 出 力 配 分 に相 当 す る 。
(11.24)式 のPRtをPRt+PLtに
り小 の と き,CTで 容 量 が10MWの
過負 荷 が発 生す るため上記 最適 運 と き,総
お き か え てPTit,PHjtで
発 電 費 用34.690。 微 分 す る。
索
引
角 運 動量
【A-Z】
角 周 波数
Back-to-Back
6
196 10
過 渡 安定 度
193 149
263
過 渡電 流
d軸
121
過 渡誘 導起 電 力
154
ICT
7
過 渡 リア クタ ンス
150
ガバ ナ
226
B係
数
Newton-Raphson法 O Fケ
111
ー ブ ル
PID制 PQ指
定 ノ ー ド
pu値 PV指
ガ バ ナ制 御
226
233
火 力 の協 調 方程 式
264
101
過 励磁
140
17
間 欠制 御
233
101
慣 性定 数
197
124
75
御
定 ノ ー ド
q軸
121
線
24
機械 的 回転 角
Δ結 線
24
幾何 学 平 均距 離
83
26
基 準値
16
基準 電 圧
33
基準 電 流
34
基準 容 量
33
Y結
Δ-
Y変
換 【ア 】
安 定 度
193
位 相 角
10
起 磁 力
位 相 巻 き 線
69
逆相 イ ン ピー ダ ンス
168
1線 地 路
85
逆 相 回 路
168
逆相 分
158
演 算 子
160
行 列 許 容 電 流
遅 れ 零 力 率 負 荷
241 【力 】
界 磁 巻 線 回 線 回 転 子
121
41
31 73
帰 路
162
空 隙
123
駆 動 点 ア ドミタ ンス
104
83 121
外 部 イ ン ダ ク タ ン ス
76
架 橋 ポ リ エ チ レ ン絶 縁 ケ ー ブ ル
75
経 済 負荷 配 分 系 統 定 数
233,256 229
硬 ア ル ミ線
71
水 火 協 調 方程 式
268
硬銅 線
73
水 車 発 電機
121
硬銅 よ り線
73
進 み零力 率 負 荷
241
効率
256
ス ラ ック ノ ー ド
102
交流 法 潮 流計 算
117
固定 子
121
静 止型 無 効 電 力補 償 装置
251
固定 子 巻線
121 【サ 】
サス テ イ ン ド分
255
正相 イ ン ピー ダ ン ス
168
正 相 回路
168
正 相 分
158
制 動 巻 線
170
三 相3巻 線 変圧 器
64
正 の無 効電 力
三 相短 絡
85
絶 対 回 転 角
195
絶 対 回転 角 速 度
196
三 相 同期 発 電機 三相 負 荷
121 24
11
接 地
22
線 間短 絡
85
直付 け リア ク トル
251
線 間電 圧
20
次過 渡 電 流
150
線 間容 量
89
磁 気 ア ドミタ ンス 磁 気 抵抗
46 41,129
相 回転
158
自己 ア ドミタ ンス
104
相 互 ア ドミタ ンス
自己制 御 性
228
相 順
時 差
225
相 対 回転 角
195
相 対 回転 角 速 度
196
実効 値 自動 電 圧 調整 装 置(AVR) 周期
9 249
104 19,158
相 電圧
19
10
送 電損 失
263
修 正 方 程 式
113
送電 容 量
33
収 束 条 件
113
増分 使 用 水量
268
充 電 電 流
89
増 分 水 単 価
268
周 波 数
10
増 分 燃 料 費
260
225
速 度 調 定 率
227
速 度 電圧
125
周 波 数 の安 定 瞬 時値
9
使 用水 量 特 性
265
擾 乱
193
初 期 過 渡 電 流
150
初 期 過 渡誘 導 起 電力
154
ター ビン発 電機
121
自流 式(水 力 発 電)
265
対 称 回路
168
対 称 故 障
147
対 称 座 標 法
158
水 火協 調 運 用
265
素 導体
84 【夕】
対 称分
158
電 圧 制御
252
大地 帰 路 の イ ン ダク タ ン ス
85
電 圧 無効 電 力 制御
大地 導 電 率
86
電 機 子 反作 用
対 地 容 量
89
電 機 子巻 線
121
多 回線 送電 線
84
電 気 的 回転 角
124
タ ップ巻 き線
69
伝 達 ア ド ミタ ンス
104
多導 体
84
電 力 角
131
単 位 慣性 定 数
197
252 126,148
電 力 ケ ー ブル
75
単 位 法
16
電 力三 角形
短 時 間使 用
73
電 力相 差 角 曲線
205
15
205
ダ ンパ ー巻 線
122
電 力相 差 角 方程 式
短 絡位 相
147
電 力方 程 式
短 絡容 量
246
電 力用 コ ンデ ンサ
地 域制 御 誤 差
236
等価H定
地 域 要求 量
235
等価 線 間 距離
中間領 域 安 定度
194
等価 半 径
調 整池 式(水 力 発 電)
265
同期
195
調 整変 圧 器
数
200 83 85
同期 化 力
138
調相 設 備
247
同期 化 力係 数
212
調 速制 御
226
同期 速 度
126,195
調 速制 御 系(ガ バ ナ)
193
同期 調 相機
140,251
潮 流
101
同期 リア ク タ ンス
128,149
潮 流計 算
101
銅心 ア ル ミよ り線
直 軸
121
等増 分燃 料 費 則
260
直軸 過 渡 リア ク タ ンス
150
動 態 安定 度
193
直軸 初 期 過渡 リア クタ ン ス
150
洞道
直軸 同 期 リア クタ ンス
68
108 140,250
73
75
130,149
等 面積 法
直 流 分
148
動 揺 曲線
直 流法 潮 流計 算
117
動 揺 方程 式
198
地 絡 故 障
177
突極
121
地 絡 点
217 98
85 【ナ 】
抵 抗 負荷
11
定 態 安定 極 限 電 力
138
定 態 安定 度
193
2巻 線 三 相 変圧 器
59
撚架
30
デル タ(Δ)-Y変 換
26
撚架 鉄 塔
デル タ(Δ)結 線
24
燃料 消 費 率
83 256
燃 料 費特 性
257
ノー ドア ド ミタ ン ス行 列
104
ノー ドイ ン ピー ダ ンス行 列
107
ペ ナル テ ィー係 数
264
変 圧器 の タ ップ制 御
252
変 圧比
40
星 形結 線
24
【ハ 】 【マ 】
発 電 機 起 動 停 止計 画(ユ ニ ッ トコ ミ ッ トメ ン ト)
256,273
巻 き数 比
40
発電 機 中性 点
19,121
発電 機 ノ ー ド
101
無 限大 母 線
発電 力 特性
227
無 効電 力
11
無 電圧 タ ップ切 換 変圧 器
68
皮相 電 力 非対 称 故 障 表皮 効 果
11
【ヤ 】
147 77
135,202,244
ヤ コ ビア ン行列
112
不安 定
217
有 効電 力
フ ェラ ンチ効 果
244
誘 導起 電 力
123
11
負荷 曲線
255
誘 導性 負 荷
11
負荷 時 位相 調 整 変圧 器
69
負荷 時 タ ップ切換 え変 圧 器
68
揚 水式(水 力発 電)
負 荷時 電 圧(位 相)調 整 器
68
容 量性 負荷
負 荷時 電 圧調 整 変圧 器
69
横 軸
121 130
265 11
負 荷周 波 数制 御
233
横 軸 同期 リア クタ ンス
負 荷特 性 定 数
229
撚 り線
負 荷 ノー ド
101
73 【ラ 】
複 素電 力
13
不 足励 磁
140
ラ グ ジ ェ ンジ ェ関数
257
11
ラ グ ジ ェ ンジ ェ乗 数
257
負 の無 効 電 力 不 平衡 故 障
147
浮 遊 ノ ー ド
102
力率
フ ラ ッ トス タ ー ト
114
臨界 故 障 除去 位相
217
255
臨界 故 障 除去 時 間
217
励 磁 制御 系
193
フ リ ンジ分 分 路 リア ク トル
11
140,250
平 衡故 障
147
零相 イ ン ピー ダ ンス
168
並 列優 先 順 位
273
零相 回 路
168
零相 分
158
べ ー ス値
16
連 系
230
漏 洩 イ ン ピー ダ ンス
48
連 系 系 統
234
漏 洩磁 束
47
連 続 使 用
73
漏 洩 リア ク タ ンス
47
<著者紹介>
柳 父 悟 学 歴 東 京 大 学工 学 部 電 気工 学 科 卒業(1964) 工 学博 士(1990),Ph.D.(1971) 職 歴 株 式 会 社 東 芝 入 社(1964) 現 在 東 京 電機 大 学 工 学 部教 授
加 藤 政 一 学 歴 東 京 大学 工 学 系 大 学院 博 士課 程 修 了(1982) 工 学博 士(1982) 職 歴 広 島 大 学工 学 部 助 手(1982) 株 式会 社 東 芝 入 社(1984) 現 在 東 京 電機 大 学 工 学部 教 授
理工学講座 電力系統工 学 2006年7月20日
第1版1刷
発行
著 者 柳 父 悟 加藤 政一
学校法人 東京電機大学 発行所
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Yanabu
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Satoru,
Kato
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C3054
Masakazu
2006