3応
用化学シリーズ
高分子工業化学 山岡 亜夫 …
…[編
上田 安中 鴇田 高原 岡野 菊池 松方 鈴木 …
著]
充 雅彦 昌之 茂 光夫 明彦 美樹 淳史
…[著]
朝倉書店
応 用化 学 シ リーズ代表 佐 ...
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3応
用化学シリーズ
高分子工業化学 山岡 亜夫 …
…[編
上田 安中 鴇田 高原 岡野 菊池 松方 鈴木 …
著]
充 雅彦 昌之 茂 光夫 明彦 美樹 淳史
…[著]
朝倉書店
応 用化 学 シ リーズ代表 佐 々 木 義 典 前千葉大学工学部物質工学科教授
第3巻 執 筆者 上
田
充 東京工業大学大学院理工学研究科有機 ・高分子物質専攻教授
安
中
雅
彦 九州大学大学院理学研究院化学部門教授
鴇
田
昌
之 九州大学大学院理学研究院物理学部門教授
高
原
山
岡
亜
夫 千葉大学工学部情報画像工学科教授
岡
野
光
夫 東京女子医科大学先端生命医科学研究所教授
菊
池
明
彦 東京女子医科大学先端生命医科学研究所助教授
松
方
美
樹 前東京女子医科大学先端生命医科学研究所助手
鈴
木
淳
史 横浜国立大学大学院環境情報研究院人工環境 と情報部門教授
茂 千葉大学工学部情報画像工学科助教授
『応 用 化 学 シ リ ー ズ 』 発刊 にあた って
こ の 応 用 化 学 シ リー ズ は,大
学 理 工 系 学 部2年・3年
次 学 生 を 対 象 に,
専 門 課 程 の 教 科 書 ・参 考 書 と して 企 画 さ れ た. 教 育 改 革 の大 綱 化 を 受 け,大 学 の 学 科 再 編 成 が 全 国 規 模 で 行 われ て い る. 大 学 独 自 の 方 針 に よ っ て,応 れ ば,応 用 化 学 科 と,た
用 化 学 科 を そ の ま ま存 続 させ て い る大 学 も あ
とえ ば 応 用 物 理 系 学 科 を合 併 し,新
し く物 質 工 学
科 と して 発 足 させ た 大 学 もあ る.応 用 化 学 と応 用 物 理 を 融 合 さ せ 境 界 領 域 を究 明 す る効 果 を ね ら っ た もの で,こ
れ か ら の理 工 系 の 流 れ を象 徴 す る も
の の よ う で も あ る.し
か し,応 用 化 学 と い う分 野 は,学 科 の 名 称 が ど の よ
う に変 わ ろ う と も,そ
の 重 要 性 は 変 わ ら な い の で あ る.そ れ ど こ ろ か,新
し い特 性 を も っ た 化 合 物 や 材 料 が 創 製 さ れ,ま
す ま す 期 待 さ れ る分 野 に な
りつ つ あ る. 学 生 諸 君 は,そ
れ ぞ れ の 専 攻 す る分 野 を 究 め る た め に,そ
学 問 の 本 質 と,こ
れ を 基 盤 に 開 発 され た 技 術 な らび に そ の 背 景 を理 解 す る
こ とが 肝 要 で あ る.目
の土 台で あ る
ま ぐ る し く変 遷 す る 時 代 で は あ る が,ど
合 で も最 善 をつ く し,可 能 な 限 り専 門 を確 か な もの と し,そ
の よ うな場
の上 に理工 学
的 セ ン ス を 身 に つ け る こ とが 大 切 で あ る. 本 シ リー ズ は,こ
の よ う な 理 念 に 立 脚 して 編 纂,ま
執 筆 者 は教 育 経 験 が 豊 富 で,か
とめ られ た.各
巻の
つ 研 究 者 と して 第 一 線 で 活 躍 して お られ る
専 門 家 で あ る.高 度 な 内容 を わ か りや す く解 説 し,系 統 的 に 把 握 で き る よ うに 幾 度 とな く討 論 を重 ね,こ
こ に 刊 行 す るに 至 っ た.
本 シ リー ズ が 専 門 課 程 修 得 の 役 割 を果 た し,学 生 一 人 ひ と りが 志 を 高 く も っ て 進 まれ る こ と を希 望 す る も の で あ る. 本 シ リー ズ刊 行 に 際 し,朝 倉 書 店 編 集 部 の ご尽 力 に謝 意 を 表 す る 次 第 で あ る. 2000年9月 シ リー ズ代 表 佐 々 木 義 典
は じ め に
本 書 は,「 応 用 化 学 シ リー ズ 」 全8巻
中 の1冊
とし て,大 学 理 工 系 の 基 礎 科 目
を履 修 した 学 生 が,専 門 科 目 を修 得 す る た め の 教 科 書 ・参 考 書 とな る こ とを 目的 に し た.し
か し,高 分 子 工 業 化 学 に関 す る 教 科 書 は これ まで 優 れ た成 書 が 数 多 く
出 版 さ れ て い る.そ
こで,従 来 と は多 少 異 な った 切 り 口,例 え ば現 在 の技 術 発 展
に沿 っ た 側 面 か ら み た教 科 書 を企 画 し よ う と考 え た. 近 年 の 高 分 子 の 工 業 利 用 は多 岐 にわ た り,か つ 日々 の 進 歩 は華 々 し く流 動 的 で あ る.あ
る もの は 技 術 的 に定 着 し,ま た あ る もの は新 しい 技 術 に置 き換 わ る事 例
も また 多 い.し か し一 方 で は,教 科 書 と して の 立 場 か ら あ る程 度 普 遍 性 の あ る 内 容 で な けれ ば な ら ない.ま
た,と
りあ げ る べ き工 業 高 分 子 化 学 の分 野 が あ ま りに
も多 い こ と も,今 更 なが ら再 認 識 せ ざ る を え なか っ た.し た が っ て,本 書 に関 し て は下 記 の分 野 に絞 りそ れ ぞ れ の エ ッ セ ンス にふ れ て い た だ き,そ の他 の 分 野 に つ い て は 次 の機 会 に期 待 す る こ と とした. 本 書 で は,高 分 子 化 学 を勉 強 す る に 当 た って まず必 須 な,合 成 反 応 プ ロセ ス, 得 られ た 高 分 子 の 物 性,高 分 子 の キ ャ ラ ク タ リゼ ー シ ョ ン を基 礎 項 目 と して 記 述 した.続
い て,工 業 的 利 用 と して,エ
高 性 能 高 分 子 材 料,感
ン ジ ニ ア リン グ プ ラス チ ック に代 表 され る
光 性 高 分 子 を中 心 とす る光 材 料,生
外 医 療 材 料 な ど を包 含 した生 命 医療 材 料,そ
体 適 合 性 高分 子,生 体
して,高 分 子 化 学 の環 境 保 全 へ の 前
向 き な 努 力 の現 状 を示 す 環 境 材 料 を と りあ げ た. 各 章 の 性 格 上 多 少 の違 い はあ る もの の,最 新 で 重 要 な,か を表 す よ う に努 め た が,至
つ普 遍 性 の あ る内 容
らぬ点 につ い て は読 者 諸 賢 の ご批 判 を得 て さ ら に よ い
も の に育 て て い きた い. 最 後 に,本 書 の 刊 行 が 朝 倉 書 店 編 集 部 の 方 々 の熱 意 と忍 耐 強 い ご努 力 の 賜 物 で あ っ た こ と を 申 し添 え て感 謝 申 し上 げ る次 第 で あ る. 2003年10月 執 筆者 を代 表 して 山 岡 亜 夫
目
1.合
成 反 応 プ ロセ ス
次
〔 上 田
充 〕
1.1 は じ め に
1 1
1.2 付 加 重 合
3
1.2.1
ラ ジ カ ル重 合
3
1.2.2
ラ ジ カ ル共 重 合
6
1.2.3
カ チ オ ン重 合
9
1.2.4
ア ニ オ ン重 合
11
1.2.5
配 位 ア ニ オ ン重 合
13
1.3 縮 合 重 合
15
1.4 開 環 重 合
23
1.5 重
付
加
25
1.6 付 加 縮 合
2.高
分 子 の 性 質
26
〔安 中 雅 彦 〕
28
2.1 高 分 子 の 分 子 量 と分 子 量 分 布
28
2.2 高 分 子 鎖 の 分 子 構 造
29
2.2.1
化 学 構 造
30
2.2.2
幾何学的構造
31
2.3 高 分 子 の 結 晶 構 造
33
2.3.1
結 晶 構 造
34
2.3.2
結晶性高分 子の高次構造
35
2.4 レ オ ロ ジ ー と力 学 的 性 質
〔 鴇 田 昌 之 〕
38
2.4.1
完 全 弾 性 体 と完 全 流 体
38
2.4.2
力 学 モ デ ル と静 的 粘 弾 性
41
3.高
性能 高分子材 料
〔高 原
茂 〕
3.1 エ ン ジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ ク
48
48
3.1.1
エ ン ジニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ ク とは
48
3.1.2
エ ンジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ック の 基 本 条 件
51
3.1.3
高 性 能 高 分 子 材 料 の 設 計 の考 え 方
3.1.4
高 強 度 ・高 弾 性 率 ポ リマ ー 材 料
55
3.1.5
液 晶 ポ リマ ー
57
3.1.6
耐 熱 性 ポ リマ ー 材 料
58
51
3.2 ポ リ マ ー 複 合 材 料
58
3.2.1
複 合材料 化
59
3.2.2
ポ リマ ー ア ロ イ
60
3.2.3
有 機 無 機 ハ イ ブ リ ッ ド材 料
4.光
と 高
分 子
62
〔山 岡 亜 夫 〕
4.1 感 光 性 高 分 子
63 63
4.1.1
光 照 射 に伴 う高 分 子 の構 造 の 変 化
63
4.1.2
高 分 子 の 光 架 橋 と物 性 変 化
63
4.1.3
感 光 性 樹 脂 の評 価 因 子
86
4.1.4
増
88
4.1.5
可 視 光 へ の増 感
感
92
4.1.6 超 微 細 光 加 工 へ の 応 用
93
4.2 高 分 子 と光 導 電 性
99
4.3 高 分 子 の 光 起 電 力
104
4.4 エ レ ク ト ロ ル ミ ネ ッ セ ン ス 材 料
5.生
命 医 療 材 料
106
〔岡 野 光 夫 ・菊 池 明 彦 ・松 方 美 樹 〕
108
5.1 生 体 適 合 性
5.1.1
は じ め に
5.1.2
バ イ オ マ テ リアル の必 須 条 件
108 108 108
5.2 医 療 器 具
110
5.3 人 工 臓 器/臓 器 再 生 へ の 挑 戦
111
5.3.1
人 工 腎 臓
5.3.2
人 工 心 臓
5.3.3
抗 血 栓 性 材料
5.3.4
ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 臓 器
111
112 114
117
5.4 高 分 子 製 剤 ・ ド ラ ッ グ デ リバ リ ー シ ス テ ム
121
5.4.1
徐 放 性 の制 御
5.4.2
刺 激 に応 答 した 薬 物 放 出制 御
123
5.4.3
ターゲ テ ィング
127
6.環
境
材
122
料
〔 鈴 木 淳 史 〕
6.1 生 分 解 性 ポ リ マ ー
129
129
6.1.1
微 生 物 産 生 ポ リマ ー
130
6.1.2
動植 物 由来の多糖類
134
6.1.3
化 学 合 成 ポ リマ ー
136
6.1.4
生 分 解 性 プ ラ スチ ック の 開発
139
6.2 プ ラ ス チ ッ ク リ サ イ ク ル
139
6.2.1
マ テ リ ア ル リサ イ ク ル
141
6.2.2
ケ ミ カ ル リサ イ クル
142
6.2.3
サ ー マ ル リ サ イ ク ル(エ
6.2.4
そ の 他 の プ ラ スチ ック リサ イ クル
ネ ル ギ ー リ サ イ ク ル)
6.3 持 続 的 発 展 を 可 能 に す る 環 境 材 料
付 録 高分子 の特性 解析 A.1
分子特性解 析
147 148
〔安 中 雅 彦 〕
150
150
A.1.1
分
A.1.2
分子量 分布
153
A.1.3
立体規 則性
155
A.2
子
146
物 質特性解 析
量
150
156
参 考 文 献
157
索
161
引
1 合 成 反応 プ ロセ ス
1.1
は
じ め
わ れ わ れ の 身 の ま わ り を 眺 め て み る と,衣
に
類,電
気 製 品,自
動 車,文
な ど に い か に 多 くの 合 成 高 分 子 が 使 用 さ れ て い る か に 驚 か さ れ る.す ラ ス チ ッ ク,繊
維,ゴ
な くな っ て い る.高
分 子 に つ い て 学 ぶ 第 一 歩 と し て,ど こ で,本
量 体,monomer)の
分 子 量 の 大 き な 化 合 物 で あ り,モ
重 合(polymerization)に
成 法 は 以 下 に 示 す 付 加 重 合,縮
の よ う に して 合 成 さ れ て
章 で は基 本 的 な 高分 子 合 成 法 に つ い て述 べ
分 子(polymer,macromolecule)は
マ ー(単
具
ム な ど の 合 成 高 分 子 な く し て は わ れ わ れ の 生 活 は 成 り立 た
い る か を 知 る 必 要 が あ る.そ る.高
具,家 な わ ち,プ
合 重 合,付
よ り得 ら れ る .そ
加 縮 合,開
環 重 合,そ
ノ
の合
して 重 付 加 に分
類 さ れ る. ⅰ)
付 加 重 合(addition
polymerization):一
有 す る モ ノ マ ー は ビ ニ ル モ ノ マ ー(vinyl 裂 し,他
般 的 に 炭 素-炭 素 二 重 結 合 を
monomer)と
も 呼 ば れ,二
の モ ノ マ ー と連 鎖 的 に 反 応 し て 高 分 子 を 生 成 す る.典
開 始 剤 の 存 在 下 の ス チ レ ン の ラ ジ カ ル 重 合(式(1.1)),触 ン の 配 位 重 合(式(1.2))を
重 結合が開
型 例 と し て,重
合
媒存 在下 の プ ロピレ
あ げ る. 重合開始剤
(1.1)
(1.2) ⅱ) 縮 合 重 合(condensation エ ス テ ル(polyester)の
polymerization):ナ
合 成 で は,重
イ ロ ン(nylon)や
ポ リ
合 が 縮 合 反 応 の 繰 り返 し に よ り進 行 す る
の で,縮
合 重 合 と呼 ば れ る.具
体 例 を 示 す と,ナ
サ メ チ レ ン ジ ア ミ ン の 重 合(式(1.3))で,一
イ ロ ン66は
方,ポ
ア ジ ピ ン 酸 とヘ キ
リエ チ レ ン テ レ フ タ レー ト
は テ レ フ タ ル 酸 と エ チ レ ン グ リ コ ー ル の 重 合(式(1.4))で
製 造 さ れ て い る.
(1.3)
(1.4) ⅲ)
付 加 縮 合(addition
polycondensation):フ
ェ ノ ー ル樹 脂 は フ ェ ノ ー
ル に 対 す る ホ ル ム ア ル デ ヒ ド の 付 加 反 応(式(1.5)),そ 反 応 を利 用 し て 合 成 さ れ て い る(式(1.6)).こ
し て付 加 生 成 物 の縮 合
の よ う な 重 合 を 付 加 縮 合 と い う.
(付加)
(縮合)
ⅳ)
開 環 重 合(ring-opening
環 を 開 い て 重 合 す る 反 応 で,ε-カ
polymerization):文
(1.5)
(1.6)
字 通 り環 状 モ ノ マ ー が
プ ロ ラ ク タ ム の 開 環 重 合 に よ る ナ イ ロ ン6の
合 成 が そ の 典 型 例 で あ る(式(1.7)). 触媒
(1.7) ⅴ)
重 付 加(polyaddition):イ
レ タ ン が 生 成 す る.こ
ソ シ ア ナ ー ト とア ル コ ー ル の 反 応 に よ り ウ
の 反 応 は 付 加 反 応(addition
reaction)で
反 応 の 繰 り返 し で ポ リマ ー が 生 成 す る 重 合 反 応 を 重 付 加 と い う.代
あ り,こ
の付加
表 例 と し て,
ヘ キ サ メ チ レ ン ジ イ ソ シ ア ナ ー トとブ タ ン ジ オ ー ル か らの ポ リウ レ タ ン 合 成 を示 す(式(1.8)).
(1.8) 以 上,高
分 子 合 成 法 の概 要 を示 した.次 節 よ り各 合 成 法 に つ い て よ り詳 細 に述
べ る. 1.2 付 加 重 合 付 加 重 合 は成 長 活 性 種 の違 い に よ りさ らに,ラ
ジ カ ル,カ
チ オ ン,ア ニ オ ン,
配 位 重 合 に 分 け られ る.本 節 で扱 う代 表 的 な ビニ ル モ ノマ ー を表1.1に そ れ で は,そ れ ぞ れ の 重 合 の 特 徴 お よ び 挙 動,速
示 す.
度 論 的 取 り扱 い な ど を 学 ぼ
う. 表1.1 代 表 的 な ビニ ル モ ノマ ー
1.2.1
ラ ジ カ ル 重 合(radical
polymerization)
ラ ジ カ ル 重 合 は 成 長 活 性 種 が ラ ジ カ ル で あ り,工
業 的 に非 常 に重 要 な高 分 子 合
成 法 で あ る.こ
始,成
の 重 合 は 連 鎖 反 応 機 構 で 進 行 し,開
長,停
止 の素 反 応 か ら
な る. a. 素 反 応 ⅰ) tiator)を
開 始 反 応(initiation):ラ 用 い て 開 始 さ れ る.結
ジ カ ル 重 合 は 一 般 的 に ラ ジ カ ル 開 始 剤(ini 合 解 離 エ ネ ル ギ ー の 小 さな ア ゾ化 合 物 や 過 酸 化
物 が 熱 分 解 型 開 始 剤 と し て 用 い られ る.そ
れ ぞ れ の 代 表 例 と し て,ア
ゾビスイ ソ
ブ チ ロ ニ ト リ ル(2,2'-azobisisobutyronitrile;AIBN)(式(1.9))と ン ゾ イ ル(benzoylperoxide;BPO)(式(1.10))の
過酸 化 ベ
分 解 反 応 を 示 す.
(1.9)
(1.10) これ らの 分 解 反 応 は60∼80℃ 付 近 で 進 行 し,生 成 した ラ ジ カ ル(R・)は
ビニ ル
モ ノ マ ー に 付 加 し重 合 を開 始 す る.開 始 反 応 段 階 の 一 般 式(1.11),(1.12)を す.開
始 剤(Ⅰ)か
示
ら生 じ た ラ ジ カ ル は ビニ ル 基 の 置 換 基 の つ い て い な い 炭 素 を
攻 撃 す る.こ れ は ラ ジ カ ル の 安 定 性 が 第 一 級,第 二 級,第 三 級 の順 に増 大 す るか らで あ る. 開始剤
(1.11)
(1.12) X:置 換 基
ⅱ)
成 長 反 応(propagation):開
マ ー に 連 鎖 的 に 付 加 し て,ポ 段 階 は 一 般 式(1.13)で
始 反 応 で 生 じた モ ノマ ー ラ ジ カ ル は モ ノ
リ マ ー ラ ジ カ ル(成
長 ラ ジ カ ル)に
成 長 す る.こ
の
表 さ れ る.
(1.13) ⅲ)
停 止 反 応(termination):成
た はcoupling)ま マ ー に な る.再
長 ラ ジ カ ル は 再 結 合(recombinationま
た は 不 均 化(disproportionation)に
よ り 重 合 活 性 を 失 いポ リ
結 合 は 成 長 ラ ジ カ ル 同 士 が 結 合 す る反 応 で あ り(式(1.14)),不
均 化 で は 成 長 ラ ジ カ ル が 他 の 成 長 ラ ジ カ ル か ら水 素 ラ ジ カ ル を 引 き 抜 き,飽
和 の
末 端 を も つ ポ リマ ー と不 飽 和 末 端 を も つ ポ リ マ ー を 生 成 す る(式(1.15)). 再結合
(1.14) 不均化
(1.15)
ス チ レ ンの よ う な1-置 換 ビニ ル モ ノ マ ー は再 結 合 停 止 を行 い や す く,1,1‐ ジ 置 換 ビニ ル モ ノ マ ー で あ る メ タ ア ク リル 酸 メ チ ル な どは 立体 障 害 に よ り再 結 合 停 止 は 起 こ りに く く,主 に不 均 化 停 止 す る. b. ラ ジ カ ル 重 合 の 速 度 論
ラ ジ カ ル 重 合 挙 動 を明 らか に す る た め に,そ
の 速 度 論 を学 ぶ必 要 が あ る.そ の取 り扱 い の際,以 下 の仮 定 を お く. [ラ ジカ ル の 等 反 応 性,す
な わ ち,ラ ジ カ ル の 反 応 性 は 重合 度 に よ ら な い]
[ラ ジ カル の 生 成 速 度 と消 失 速 度 は等 し い(定 常 状 態,steady-state)が 立 す る]
成
開 始 段 階 は 式(1.11),(1.12)で る と,開
表 さ れ る の で,開
始 ラ ジ カ ル の 生 成 速 度Riは
式(1.16)に
始 剤(Ⅰ)の な る.こ
濃 度 を[Ⅰ]と の 式 中 のkdは
す 開始
剤 の 分 解 速 度 定 数 で あ る. (1.16) 開 始 剤 の 分 解 で 二 つ の ラ ジ カ ル が 生 成 す る の で 係 数2が 開 始 剤 効 率(initiator
efficiency)で
あ り,生
掛 け て あ り,ま
たfは
成 し た ラ ジ カル の うち モ ノ マ ー と
反 応 す る割 合 で あ る. 一 方,停
止 反 応 速 度Rtは
停 止 反 応 速 度 定 数 をktと
す る と 式(1.17)で
表 さ
れ る.
Rt=2kt[M・]2
(1.17)
こ の 段 階 で も二 つ の 成 長 ラ ジ カ ル が 消 失 す る の で,係 こ こ で,定
数2が
掛 け て あ る.
常 状 態 を 仮 定 す る と,式(1.16)と(1.17)よ
り
2fkd[I]=2kt[M・]2
式(1.18)よ
り,成
(1.18)
長 ラ ジ カ ル 濃 度[M・]は
(1.19) とな る.モ ノマ ー の 消 失 速 度 は成 長 反 応 だ け を考 えれ ば よい の で(モ 始 段 階 で も消 失 す る が,成 長 段 階 に比 べ れ ば無 視 で き る),重 反 応 速 度 定 数 をkpと
ノマ ー は開
合 速 度Rpは
成長
す る と,
(1.20) こ れ よ り,重
合 速 度 は 開 始 剤 濃 度 の1/2次,モ
ノ マ ー 濃 度 の1次
に比 例 す る こ と
に な る. 実 際,こ
の 挙 動 は 多 く の ラ ジ カ ル 重 合 で 成 り立 つ こ と が 認 め ら れ て い る.
c. 分 子 量(molecular
weight)
う に 予 測 さ れ る の だ ろ う か.重
ラ ジ カ ル 重 合 に お い て,分
合 を 開 始 し た1個
子 量 は どの よ
の ラ ジ カ ル が 停 止 して 安 定 な高
分 子 に な る ま で に 反 応 す る モ ノ マ ー 分 子 数 を 動 力 学 的 鎖 長v(kinetic length)と
い う.vは
chain
定 義 に よ り開 始 ま た は 停 止 反 応 速 度 と重 合 速 度 の 比 で 与 え
ら れ る(式(1.21)).
(1.21)
式(1.21)に
式(1.17),(1.19)お
よ び(1.20)を
代 入 す る と,
(1.22) も し 後 に 述 べ る 連 鎖 移 動 が 起 こ ら な い な ら ば,生
成 ポ リ マ ー の 数 平 均 重 合 度Xn
(number-average
不 均 化 停 止 の 場 合 にv,再
degree
停 止 の 場 合 に2vと に 比 例 し,開
of polymerization)は
な る.式(1.22)よ
始 剤 濃 度 の1/2次
り,数
結合
平 均 重 合 度 は モ ノ マ ー 濃 度 の1次
に 反 比 例 す る.
d. 連 鎖 移 動 反 応(chain
transfer)
実 際 の 重 合 で 得 ら れ る数 平 均 重 合 度
は 理 論 的 に 得 られ る 数 平 均 重 合 度 よ り は 小 さ い.こ
れ は 不 均 化,再
か に,成
リ マ ー か ら水 素 を 引 き 抜 き 停
長 ラ ジ カ ル が 溶 媒,モ
止 す る た め で あ る.こ
ノ マ ー,開
始 剤,ポ
の 反 応 を 連 鎖 移 動 反 応 と 呼 び,式(1.23)で
結合停 止のほ
表 さ れ る.
(1.23) こ こ でXAは
溶 媒,モ
ノマ ー,開 始 剤,ポ
リマ ー で あ り,A・ は 新 し く生 成 した
ラ ジ カ ル で あ る.こ の新 し く生 成 した ラ ジ カル の 反 応 性 が 成 長 ラ ジカ ル と変 わ ら な けれ ば 重 合 速 度 は変 わ ら な い.し か し,ポ ま る.し た が っ て,数 平 均 重 合 度Xnは とす る と,そ の 速 度Rtrは
リマ ー 鎖 の 成 長 は連 鎖 移 動 に よ り止
低 下 す る.連 鎖 移 動 反 応 速 度 定 数 をktr
次 式 で表 され る. ktr=ktr[M・][XA]
(1.24)
そ の と きの 数 平 均 重 合 度Xnは
(1.25)
で 表 さ れ る.モ
ノ マ ー,溶
媒,開
ktr,M/kp,Cs=ktr,s/kp,C1=ktr,1/kpと
始 剤 へ の 連 鎖 移 動 定 数 を そ れ ぞ れ,CM= す る と生 成 ポ リマ ー の 数 平 均 重 合 度 は
次 式 で 与 え ら れ る.
(1.26) た だ し, 1.2.2
は連 鎖 移 動 が な い と きの数 平 均 重 合 度 で あ る. ラ ジ カ ル 共 重 合(radical
こ れ ま で は1種 成 を 扱 っ て き た.単
copolymerization)
類 の モ ノ マ ー の 重 合 に よ る 単 独 重 合 体(homopolymer)の 独 重 合 体 の 性 質 を 改 善 す る た め に,2種
生
類以上 のモ ノマ ーを
混 合 し,共
重 合(copolymerization)さ
せ,共
が 工 業 的 に も多 く な さ れ て い る.そ
重 合 体(copolymer)を
得 る方法
の 際 に得 られ る共 重 合 体 の組 成 は どの よ う に
な る の で あ ろ うか. a. 共 重 合 体 の 組 成
2種 類 の モ ノ マ ー,M1とM2の
共 重 合 を 考 え る.そ
の 素 反 応 お よ び 各 反 応 の 速 度 は 以 下 の よ う に な る. 反応 速度
(1.27) (1.28)
(1.29) (1.30) 二 つ の モ ノマ ー の 消 失 速 度 は
(1.31) (1.32) と な る.あ
る 時 間 で の 生 成 共 重 合 体 中 の 二 つ の モ ノ マ ー 単 位 の 割 合 は 式(1.31)
を 式(1.32)で
割 る こ と で 得 られ る.
(1.33) こ こ で,定
常 状 態 で はM1・
とM2・
の 濃 度 が 等 し い と す る と,
(1.34) と な る.こ
の 関 係 を 式(1.33)に
代 入 す る と,
(1.35) が 得 ら れ る.た
だ し,r1=k11/k12,r2=k22/k21で
式(copolymerization ぞ れM1お
よ びM2モ
と 呼 ば れ,モ く,一
composition
方,r>1の
あ る.式(1.35)は
equation)で
あ る.ま
ノ マ ー の モ ノ マ ー 反 応 性 比(monomer
ノ マ ー の 共 重 合 性 を 示 す.0
た,r1,r2値 reactivity
示 す.ま
た,各
種r1,r2値
は それ ratio)
場 合 は 交 差 成 長 が 起 こ りや す
場 合 は 自 己 成 長 し や す い こ と を 意 味 す る.代
の 反 応 性 比 を 表1.2に
共重 合組 成
表 的 なモ ノマ ー
の組 み合 わ せ に お け るモ ノ マ
ー ・コ ポ リ マ ー の 組 成 曲 線 を 図1 .1に 示 す. 一 般 的 な 共 重 合 で は,0
あ り,r1r2=1の
場 合 はラ ンダ ム共重 合体
表1.2 代 表 的 な モ ノマ ー の 反 応 性 比
図1.1
モ ノ マ ー ・コ ポ リマ ー の組 成 曲 線
が 得 ら れ,特
にr1=r2=1の
場 合 はモ ノ マ ー の 仕 込 み 組 成 と コ ポ リマ ー 中 の 組 成
が 同 じ で,理
想 共 重 合 と呼 ば れ る.r1r2>1で
ジ カ ル 共 重 合 で は 例 は な い.一 い の で,交
方,r1=r2=0の
は 単 独 重 合 が 優 先 し て 起 こ り,ラ 場 合 は 自 己 成 長 反 応 が 進 行 しな
互 共 重 合 体 が 得 ら れ る.
b. Q,e論
AlfreyとPriceは
モ ノ マ ー の 共 重 合 反 応 性 が モ ノマ ー や そ の
ラ ジ カ ル の 共 鳴 安 定 性 お よ び 極 性 に 依 存 し て い る こ と に 着 目 し,共 応 速 度 定数k12が
式(1.36)で
こ こ で,P1,Q2は
重合の成長反
表 さ れ る と仮 定 し た. k12=P1Q2exp(-e1e2)
そ れ ぞ れM1・
ラ ジ カ ル,M2モ
(1.36) ノ マ ー の 共 鳴 安 定 性,そ
し て,
表1.3
e1,e2は
モ ノ マ ー のQ値
そ れ ぞ れ の 極 性 の 程 度 を 表 す.こ
とe値
れ を用 い て モ ノ マ ー の 反 応 性 比 を表 す
と,
(1.37) (1.38) に な る.い し,ス
ま,基
準 モ ノ マ ー に ス チ レ ン を 選 び,そ
チ レ ン と各 種 の ビ ニ ル モ ノ マ ー の 共 重 合 を 行 い,得
ら 式(1.37),(1.38)を
用 い てQ,e値
ー のQ
示 す.
,e値
を 表1.3に
共 役 型 の モ ノ マ ー は 大 き なQ値 い.電
のQを1.0,eを-0.8と
が 求 め ら れ る.代
を も ち,非
ら れ たr1とr2の
表 的 な ビニル モ ノマ
共 役 型 の モ ノ マ ー のQ値
子 吸 引 性 の 置 換 基 を も つ モ ノ マ ー は 正 のe値
も つ モ ノ マ ー は 電 子 供 与 性 置 換 基 を 有 す る.Q値
値 か
を も ち,一
方,負
は小 さ のe値
を
の大 きな モ ノマー はモ ノマー
と し て 反 応 性 が 高 い が ラ ジ カ ル で は 反 応 性 は 小 さ い.ま
た,式(1
よ りr1r2=exp[−(e1−e2)2]に
の 大 き く異 な る 組 み 合 わ
な る.し
せ の 共 重 合 で はr1r2が0に 1.2.3
近 づ き,交
カ チ オ ン 重 合(cationic
イ オ ン 重 合(ionic
た が っ て,e値
互 性 の 高 い ポ リマ ー が 得 ら れ る.
polymerization)
polymerization)は
イ オ ン種 に よ り さ ら に,カ
.37),(1.38)
成 長 活 性 種 が イ オ ン で あ る 重 合 で あ り,
チ オ ン 重 合 と ア ニ オ ン 重 合 に 分 け ら れ る.
電 子 供 与 性 基 を 有 す る ビ ニ ル モ ノ マ ー の 二 重 結 合 の π 電 子 密 度 は 高 い の で, 電 子 不 足 の 化 学 種,す
な わ ち 求 電 子 剤 の 攻 撃 を 受 け や す い.有
応 を 求 電 子 付 加(electraphilic
addition)反
応 と呼 ぶ.そ
機 化 学 で は この 反
の 際,求
電 子 剤 の対 ア
ニ オ ン の塩 基 性 が 非 常 に 低 い 場 合,カ
ル ボ カ チ オ ン(炭 素 陽 イ オ ン)が 生 成 す
る.こ の カル ボ カ チ オ ンが カ チ オ ン重 合 の成 長 活 性 種 とな り,次 々 に モ ノ マ ー に 付 加 し ポ リマ ー を与 え る.ス チ レ ン誘 導 体,イ のe値
ソ ブ テ ン,ビ ニ ル エ ー テ ル な ど負
を もつ モ ノマ ーが カ チ オ ン重 合 を す る.
素 反応 ⅰ) 開始 反 応:開
始 は 開 始 剤 の 求 電 子 剤 が ビニ ル モ ノ マ ー の 二 重 結 合 へ 求
電 子 付 加 し カ ル ボ カチ オ ン を 生 成 す る(式(1.39)).
(1.39) 開 始 剤 と し て は,プ
ロ ト ン 酸(H2SO4,HClO4,CF3SO3Hな
(BF3・O(C2H5)2,SnCl4,AlC13な I+PF6-な
ど)が
ル コ ー ル,ハ
ど),カ
用 い ら れ る.ル
イ ス 酸
チ オ ン 塩((C6H5)3C+SbF6-,(C6H5)2
イ ス 酸 は そ れ 自 身 で は 重 合 を 開 始 せ ず,水,ア
ロ ゲ ン 化 ア ル キ ル な ど の プ ロ ト ン源 と と も に 用 い る.
ⅱ)
ど),ル
成 長 反 応:開
ー に 付 加 し て ,ポ
BF3+H2O→H+BF3OH-
始 反 応 で 生 じた 開 始 カル ボ カ チ オ ンが 求 電 子 的 にモ ノ マ
リ マ ー カ ル ボ カ チ オ ン(成
の 段 階 は 一 般 式(1.40)で
長 カ ル ボ カ チ オ ン)に
成 長 す る.こ
表 さ れ る.
(1.40) ⅲ) 停 止 反 応:ラ
ジ カ ル 重 合 で は成 長 ラ ジカ ル 同 士 の カ ップ リ ン グ に よ る
二 分 子 停 止 反 応 は容 易 に起 こる が,イ
オ ン重 合 で は,同 種 イ オ ン同 士 の カ ッ プ リ
ン グ は起 こ りえ な い.停 止 反 応 と し て,対 イ オ ン の成 長 カ ル ボ カチ オ ンへ の 再 結 合(式(1.41))が
あ げ られ るが,対
の 水 素 の 引 き抜 き(式(1.42),(1.43))な
ア ニ オ ンや モ ノマ ー に よ る成 長 末 端 の β位 ど の連 鎖 移 動 反 応 が カ チ オ ン重 合 に
お け る主 要 な連 鎖 停 止 反 応 で あ る. (1.41)
(1.42)
(1.43)
1.2.4
ア ニ オ ン重 合(anionic
polymerization)
カ チ オ ン重 合 性 モ ノ マ ー と は逆 に電 子 吸 引性 基 を有 す る ビニ ル モ ノ マ ー の 二 重 結 合 の π 電 子 密 度 は 低 い の で,孤 撃 を 受 け る.有 呼 ぶ.そ ン)が
立 電 子 対 を も つ 化 学 種,す
機 化 学 で は こ の 反 応 を 求 核 付 加(nucleophilic
の 際,求
核 剤 の 対 カ チ オ ン が 安 定 な 場 合,カ
生 成 す る.こ
や す い.し
ル ボ ア ニ オ ン(炭
般 的 に ア ク リル 酸 メ チ ル,メ
ク リ ロ ニ ト リ ル な ど 正 のe値
か し,強
addition)反
応 と
素陰 イオ
の カ ル ボ ア ニ オ ン が ア ニ オ ン重 合 の 成 長 活 性 種 と な り,次
に モ ノ マ ー に 付 加 し ポ リ マ ー を 与 え る.一 ル 酸 メ チ ル,ア
なわ ち求核 剤 の攻
々
タアク リ
を も つ モ ノ マ ー は ア ニ オ ン重 合 し
塩 基 を 用 い る と ス チ レ ン,ブ
タ ジエ ン な ど の重 合 も進 行 す
る. 素 反応 ⅰ)
開 始 反 応:開
こ る の で,開
始 反 応 は 求 核 剤 の ビ ニ ル モ ノ マ ー へ の 求 核 攻 撃 に よ り起
始 剤 の塩 基 の 強 さ と ビ ニ ル モ ノ マ ー の 二 重 結 合 の π電 子 密 度 の 関
係 が 重 要 に な る.
(1.44) 鶴 田 は この 関係 を表1.4に
ま とめ た.
塩 基 性 の 高 い 開 始 剤 で あ る 有 機 ア ル カ リ金 属 類 は二 重 結 合 の π電 子 密 度 の 比 較 的 高 い(e値
が 負 で あ る)ス チ レ ン,ブ
タ ジエ ン類 の重 合 を開 始 で き る し,も
ち ろ ん,こ れ らの モ ノ マ ー よ り二 重 結 合 の π 電 子 密 度 が よ り低 い モ ノ マ ー,例 え ば,メ
タ ア ク リル 酸 エ ス テ ル や ア ク リロ ニ トリル の 重 合 も可 能 で あ る.一 方,
非 常 に塩 基 性 の 低 い ピ リ ジ ン,水 で は,π 電 子 密 度 の 非 常 に低 い(e値 正 で あ る)α-シ ア ノ ア ク リル 酸 エ ス テ ル 類 の重 合 しか 開 始 で きな い.
表1.4
ア ニ オ ン重 合 の開 始 剤 とモ ノ マ ー の 反応 性
が 大 きな
開 始 剤 と し て ナ フ タ レ ン ナ ト リ ウ ム(式(1.45))を
用 い た ス チ レ ン の重 合 で
は,ナ
フ タ レ ン ラ ジ カ ル ア ニ オ ン か ら モ ノ マ ー へ の 電 子 移 動(electron
fer)が
起 こ り,モ
ノ マ ー ラ ジ カ ル ア ニ オ ン が 生 成 す る(式(1.46)),こ
カ ル ア ニ オ ン は速 や か に 二 量 化 し,二
量 化 カ ル ボ ア ニ オ ン(式(1.47))に
trans の ラジ な り,
こ れ が ス チ レ ン の 重 合 を 開 始 す る.
(1.45)
(1.46)
(1.47)
ⅱ) 成 長 反 応:開 に付 加 して,ポ
始 反 応 で生 じた 開 始 カ ル ボ ア ニ オ ンが 求 核 的 にモ ノ マ ー
リマ ー カ ル ボ ア ニ オ ン(成 長 カ ル ボ ア ニ オ ン)に 成 長 す る.こ の
段 階 は一 般 式(1.48)で
表 さ れ る.
(1.48) ⅲ) 停 止 反 応:ア
ニ オ ン重 合 で は対 カチ オ ンの 付 加 に よる 停 止 反 応 は な く,
水 や 酸 性 物 質 な どの 不 純 物 に よ る停 止(式(1.49)),成 内 求 核 置 換 反 応 に よ る停 止(式(1.50))な
長 カル ボ ア ニ オ ンの 分 子
どが あ げ られ る.
(1.49)
(1.50)
1.2.5
配 位 ア ニ オ ン重 合
高 温(180℃
程 度),高
圧(2000気
圧 程 度)下,エ
チ レ ンのラ ジカル重 合 で得
ら れ る ポ リ エ チ レ ン は 分 岐 の 多 い 非 晶 性 の ポ リ マ ー で,低 (low
density
polyethylene;LDPE)と
密 度 ポ リエ チ レ ン
呼 ば れ る.1953年,Ziegler(ド
イ ツ)
は 有 機 ア ル ミ ニ ウ ム 化 合 物 と 四 塩 化 チ タ ン の 混 合 物 に エ チ レ ン を 導 入 す る と常 温 常 圧 で ポ リ エ チ レ ン が 得 ら れ る こ と を見 出 し た(式(1.51)).得
られ た ポ リエ チ
レ ン は 分 岐 の 少 な い 結 晶 性 ポ リマ ー で 高 密 度 ポ リ エ チ レ ン(high ethylene;HDPE)と
density
poly
呼 ば れ る.
(1.51) 一 方
,Natta(イ
タ リ ア)はZiegler触
媒 を 改 良 し て,ラ
ジ カ ル,イ
オ ン重 合 で
は 高 分 子 量 体 が 得 られ な い プ ロ ピ レ ンの 重 合 か ら立 体 規 則 性 の 高 い イ ソタ クチ ッ ク ポ リ プ ロ ピ レ ン の 重 合 に 成 功 し た.以 ら な る 多 く の 触 媒(Ziegler-Natta触
後,有 媒)が
機 金 属 化 合 物 と遷 移 金 属 化 合物 か α-オ レ フ ィ ン,共
役 ジエ ンの重 合
に 用 い ら れ た. 重 合 機 構 重 合 機 構 と し て い くつ か 提 案 さ れ て い る が,こ Cosseeの
モ デ ル を 示 す.TiCl4表
R-…Ti+に
面 上 に 存 在 す る 格 子 欠 陥 にAlR3が
分 極 した 結 合 と 空 配 位 座(vacant
る(式(1.52)).こ
こ で は 広 く受 け 入 れ ら れ て い る
site)を
もつ 重 合 活 性 中 心 が 生 じ
の 空 配 位 座 に オ レ フ ィ ン モ ノ マ ー が 配 位,引
結 合 に 挿 入 す る(式(1.53)).こ
反 応 し て,
き続 きR-…Ti+
の 反 応 が 繰 り返 さ れ る こ と に よ り ポ リマ ー 鎖 が
成 長 す る.こ
の よ う に モ ノ マ ー が 配 位 し た 後,負
れ る の で,配
位 ア ニ オ ン重 合 と呼 ば れ る.
の電 荷 を帯 び た 炭 素 上 に挿 入 さ
重合 中心形成
(1.52) 遷移状態 成長
(1.53) モ ノ マ ー配 位
遷移状態
初 期 のZiegler-Natta触
媒 で は,重
合 触 媒 中 のTi,1g当
た り数kg程
度 しか ポ
リ エ チ レ ン が 生 成 し な か っ た が,現
在 で は,MgCl2な
どの 種 々 の 担 持 成 分 の 導
入 に よ り従 来 の 触 媒 に 比 べ て100倍
以 上 の 活 性 を 有 す る 高 活 性Ziegler-Natta
触 媒 が 開 発 さ れ て い る. Ziegler-Natta触 (metallocene)触 (Cp)が
媒 は 不 均 一 触 媒 で あ る が,均 媒 が あ る.メ
タ ロ セ ン と は2個
一 系 触 媒 と し て,メ
タ ロセ ン
の シ ク ロペ ンタ ジ エ ニ ル 環
サ ン ドイ ッ チ 状 に 金 属 原 子 を は さ ん だ 化 合 物 で あ る(式(1.54)).
(1.54)
メ タ ロセ ン触 媒 はZr,Tiな
どの メ タ ロ セ ン化 合 物 と ト リメ チ ル ア ル ミニ ウ ム と
水 との縮 合 生 成 物 で あ る メ チ ル ア ル ミ ノ キ サ ン(―O―Al(CH3)―)n(MAO)か らな る.不 均 一 系 のZiegler-Natta触 在 しな い た め に使 用 す る触 媒 活 性(触
媒 は 活 性 点 が 固 体 触 媒 の ご く一 部 し か 存 媒 に対 す る生 成 ポ リマ ー 量)が 小 さ く,ま
た 得 られ るポ リマ ー の 分 子 量 分 布 は広 い.一 方,メ の で,ほ
タ ロ セ ン触 媒 は均 一 系触 媒 な
とん どす べ て の 遷 移 金 属 原 子 が 活 性 種 にな り,す な わ ち 非 常 に触 媒 活 性
が 高 く,し か も生 成 す る ポ リマ ー の 分 子 量 分 布 は狭 く,高 い立 体 規 則 性 を有 して い る. 重 合 は まず,遷 移 金 属 の アル キ ル 化 が 起 こ り,脱 ア ル キル 化 を 経 て遷 移 金 属 の 配 位 不 飽 和 カ チ オ ン種 が 重 合 活 性 種 にな り,こ れ に オ レ フ ィ ン モ ノマ ー が 付 加 挿 入 され て ゆ く.MAOの
触 媒 効 果 は明 らか で な い が,カ
チ オ ン種 の 安 定 化 に寄 与
して い る と考 え られ て い る(式(1.55)).
(1.55)
1.3 縮 合 重 合 縮 合(condensation)と
は,有 機 分 子 間,分
子内反 応 で水 の よ うな簡 単 な分
子 の脱 離 を伴 っ て 生 成 物 を与 え る こ とを意 味 し,典 型 例 を カ ル ボ ン酸 とア ル コ ー ル か らの エ ス テ ル 化 反 応 に み る こ とが で き る.こ の 反 応 の 生 成 物 は エ ス テ ル で あ り,簡 単 な脱 離 分 子 が 水 に な る(式(1.56)).
(1.56) こ の 縮 合 反 応 を 二 官 能 性 モ ノ マ ー 間 の 反 応 に拡 張 す る と,多 返 し起 こ り ポ リ マ ー が 生 成 す る(式(1.3),(1.4)).こ
の重合の様子 をジカルボ
ン 酸 と ジ オ ー ル か ら の ポ リ エ ス テ ル 合 成 で み て み よ う.ま オ ー ル の 縮 合 に よ り 二 量 体(dimer)が
くの 縮 合 反 応 が 繰 り
ず,ジ
カ ル ボ ン酸 とジ
生 成 す る(式(1.57)).
(1.57) 次 に 二 量 体 と モ ノ マ ー が 反 応 し て 三 量 体(trimer)に
な る(式(1.58),(1.59)).
(1.58) (1.59) ま た,二
量 体 同 士 で 反 応 す る と 四 量 体(tetramer)が
生 成 す る(式(1.60)).
(1.60) 重 合 は こ の よ う な 縮 合 反 応 を 繰 り返 し て 進 行 し,重 tion)の
大 き な ポ リマ ー に 成 長 し て ゆ く.重
構 造 単 位 の 数 で あ る.こ の で,こ
合 度(degree
of polymeriza
合 度 と は 生 成 ポ リ マ ー 中 の 繰 り返 し
の 重 合 挙 動 か ら わ か る よ う に,重
合 は逐 次 的 に進 行 す る
れ ま で み て き た 連 鎖 的 に 進 行 す る ビ ニ ル モ ノ マ ー の 連 鎖 重 合(chain
polymerization)に
対 比 し て,逐
次 重 合(stepwise
polymerization)と
呼 ばれ
る. a. 縮 合 重 合 の 速 度 論 場 合,反
応 速 度vは
[カ ル ボ ン酸][ア
カ ル ボ ン酸 と ア ル コ ー ル か ら の エ ス テ ル 化 反 応 の
速 度 定 数k1に ル コ ー ル]で
カ ル ボ ン 酸 と ア ル コ ー ル 濃 度 を 掛 け て,v=k1
表 さ れ る.と
ら の ポ リエ ス テ ル 合 成 の 際 に は,上
こ ろ が,ジ
カ ル ボ ン酸 と ジ オ ー ル か
記 の よ う な 多 く の 素 反 応 が あ る の で,こ
れ ら
に 対 応 し た 速 度 定 数 を 考 慮 す る と重 合 の 速 度 論 的 取 り扱 い が 非 常 に 難 し くな る.
そ こで,官 能 基 の 反 応 性 は分 子 量 に依 存 しな い と仮 定 す る. 酸 触 媒(HA)存
在 下,等
モ ル の ジ カ ル ボ ン酸 とジ オ ー ル か らの ポ リエ ス テル
合 成 を考 え る.重 合 は以 下 の よ う な機 構 で 進 行 す る.ま ず,カ ロ トン化 され カ ル ボ カ チ オ ンが 生 成 す る(式(1
ルボニル酸素が プ
.61)).
(1.61) 次 に,こ hedral
の カ ル ボ カ チ オ ン は ジ オ ー ル の 求 核 攻 撃 を 受 け,四 intermediate)を
面 体 中 間 体(tetra
生 成 す る(式(1.62)).
(1.62) こ の 中 間 体 か ら水 と触 媒 に用 い た 酸 が 脱 離 し て エ ス テ ル 結 合 が 生 成 す る(式 (1.63)).
(1.63) この 重 合 の律 速 段 階 は式(1.62)の
段 階 で あ る の で,ポ
リエ ス テ ル 化 の速 度 は
(1.64) で 表 せ る.た 水 酸 基,プ 式(1.64)は
だ し,[COOH],[OH],[C+(OH)2]は
そ れ ぞ れ カ ル ボ キ シ ル 基,
ロ ト ン 化 さ れ た カ ル ボ キ シ ル 基 の 濃 度 を 表 し,tは 直 接 測 定 が 難 し い[C+(OH)2]を
で 置 き 換 え る.式(1.61)よ
含 む の で,測
重 合 時 間 で あ る. 定 可 能 な他 の 濃 度
り
(1.65) が 得 ら れ る.Kは
平 衡 定 数 で あ る.式(1.65)を
式(1.64)に
代 入 す る と,
(1.66) が 導 か れ る.[COOH]=[OH]=C,触 k1K[HA]=k'と
媒 濃 度[HA]は
重 合 中 変 化 し な い の で,
お く と,
(1.67) と な る.こ
れ を積 分 す る と
(1.68) C0は
官 能 基 の 初 濃 度 を 表 す.こ
of reaction)と
定 義 す る.pは
応 が 進 行 す れ ば1と
こ で 官 能 基 の 反 応 し た 割 合 を 反 応 度p(extent 反 応 の 進 み 具 合 を 表 し,反
な り,
応 前 は0で,100%反
の 値 を と る.
(1.69) 式(1.69)を
式(1.68)に
代 入 す る と,
(1.70) が 得 られ る.1/(1−P)とtと は重 合 度 に等 しい の で,重
の 間 に直 線 関 係 が 成 り立 つ こ と に な る.1/(1−p)
(1.70)が
合 度 は時 間 と と も に直 線 的 に増 加 す る こ と に な る.式
成 り立 つ こ と は実 験 的 に証 明 さ れ て い る.し た が っ て,官 能 基 の 反 応
性 は分 子 量 に依 存 しな い と した 仮 定 は 成 立 す る こ とが わ か る. b. 分 子 量 と反 応 度 が あ る.そ
こで,反
高 分 子 量 の ポ リマ ー を得 る に は反 応 度 を 高 め る必 要
応 度pと
に あ っ た分 子 数 をN0,あ
分 子 量 の 関 係 を さ ら に み て み よ う.重 合 系 に 最 初
る重 合 時 間 にお け る反 応 度pで
こ の と き に得 ら れ る数 平 均 重 合 度XnはN0/Nで あ る の で,Xnとpと
の分 子 数 をNと
す る.
あ る.ま た,N=N0(1−p)で
の 間 に は 以 下 の 関 係 式(1.71)が
得 られ る. (1.71)
こ の 関 係 を 表1.5に
示 し た.重
合 度 の 高 い ポ リ マ ー を 得 る に はp=0.99以
上 に
し な け れ ば な ら な い. c.分
子 量の調整
逐 次 重 合 に お け る 分 子 量 の 調 整 は ど の よ う に 行 う の か.
ま ず,二
官 能 性 モ ノ マ ー のA―AとB―Bモ
ノ マ ー の 重 合 系 でB―Bモ
ノマー
を 過 剰 に 加 え た 場 合 を考 え よ う. 官 能 基A,Bの
数 を そ れ ぞ れNA,NB,そ
の 比r=NA/NBで
重 合 系 に あ る 全 分 子 数 は(NA+NB)/2=NA(1+1/r)/2と 表1.5
数 平 均 重 合 度 と反 応 度 との 関 係
表 す と,は な る.官
じめ に
能 基 の反応 度
がpの Bの
と き,反
応 し た 官 能 基Bはrpで
あ る.し
割 合 は そ れ ぞ れ(1−p),(1−rp
た が っ て,未
.)で あ り,未
反 応 の 官 能 基A,
反 応 のA,Bの
官能 基 数 はそ
れ ぞ れNA(1−p),NB(1−rp)で
表 さ れ る.全
A,B官
ら に ポ リマ ー 鎖 は 二 つ の 末 端 基 を も つ の で,全
能 基 の 総 数 に 等 し く,さ
ポ リ マ ー 鎖 は 全 ポ リ マ ー 鎖 の 末 端 数 の 半 分,す
ポ リマ ー 鎖 の 末 端 数 は 未 反 応 の
なわ ち
(1.72) に な る.数 平 均 重 合 度Xnは
最 初 に 系 に あ った 分 子 数 と生 成 ポ リマ ー 分 子 数 の比
か ら求 め られ る の で,
(1.73) と な る.二
官 能 性 モ ノ マ ー が 等 モ ル の と き は,r=1な
の で,
(1.74) と な り,式(1.69)と
一 致 す る.一
方,重
合 が100%進
行 し た と き(p=1)は,
(1.75) に な る.た
と え ば,B−Bモ
=NA/NB=1/1
.02=0.98と
d. 分 子 量 分 布 う.二
ノ マ ー を2%過 な る の で,Xn=99と
ポ リ マ ー を 見 出 す 確 率 を 考 え る.こ 末 端 に 未 反 応 の 官 能 基Aを
官 能 基Aが
出 す確 率 は(1−p)に
な る.
重 合 に お い て,繰
り返 し 単 位 をn個
れ は 官 能 基Aが(n−1)回
もつ
連 続 し て 反 応 し,
も つ ポ リ マ ー を 見 出 す 確 率 に 等 し い.
反 応 した 確 率 はpで
な る.重 合 度nの
し,末 端 に1個 の 未 反 応 の 官 能 基Aが 分 子 中 で 重 合 度nの
と き,r
縮 合 重 合 で 得 られ る ポ リマ ー の 分 子 量 分 布 を考 え て み よ
官 能 性 モ ノ マ ーA−A,B−Bの
あ る時 間tで
剰 に 使 用 し た 場 合,p=1の
あ る の で,未
反 応 の 官 能 基Aを
ポ リマ ー で は官 能 基Aが(n−1)回
見 反応
残 っ て い る こ と に な る.し た が っ て,全
ポ リマ ー を 見 出 す 確 率 はpn−1(1−P)と
ろ い ろ な重 合 度 を もつ ポ リマ ー 中 にお い て,重 合 度nを
な る.こ の確 率 は い
も つ ポ リマ ー の モ ル 分
率 に 等 しい. 重 合 系 に あ る ポ リマ ー の全 数 をNと
す る と,重 合 度nの
ポ リマ ー の 数Nnは
(1.76) で あ り,重 合 度nの
分 子 数(モ
ル)分 率 は
(1.77) で あ る.重 で,こ
合 系 に 最 初 に あ っ た 分 子 数 をN0と
の 式 を 式(1.76)に
す る と,N=N0(1−p)で
あ るの
代 入 す る と,
(1.78) が 得 られ る.一 方,n量
体 の 重 量 分 率Wnは
末 端 基 の分 子 量 を無 視 す る と,
(1.79) で 表 され る.数 平 均 重 合 度Xnと
重 量 平 均 重 合 度Xwは
数 お よ び重 量 分 率 か ら導
か れ る.定 義 よ り,
(1.80) 式(1.80)に
式(1.76)を
代 入 す る と,
(1.81) が 得 られ る.一 方,重
量 平 均 重 合 度Xwは
(1.82) (1.83) (1.84) で 表 され る.し た が って,多 分 散 度 は
(1.85) とな る.多 分 散 度 は重 合 度 の 増 大 と と もに大 き くな り,p=1で2と e. 重 合 方 法
な る.
縮 合 系 高 分 子 の 合 成 に は反 応 性 の高 い モ ノ マ ー,低
いモノマ
ー ,熱 的 に安 定 な モ ノマ ー,不 安 定 なモ ノ マ ー な ど多 種 多 様 の モ ノマ ー が 使 用 さ れ る.そ
こで,そ れ ら に対 応 した重 合 方 法 を選 択 す る必 要 が あ る.
ⅰ)
溶 融 重 合(melt
行 わ れ る.重
し た が っ て,モ 合 方 法 は,反 離,精
polymerization)法:重
合 は 無 溶 媒,減
合 が ポ リ マ ー の 溶 融 状 態 で 進 行 す る の で,こ ノ マ ー,ポ
製 が 容 易 で あ る の で,広
く工 業 的 に 用 い ら れ て い る.代
合 成 方 法 を 示 す.ア
で2時
間,さ
イ ロ ン66が
で き る.
ら に 減 圧 下,270℃
溶 液 重 合(solution
モ ノ マ ー,ポ
た,熱
リ(m−
リマ ー の 単
表 例 と し て,ナ
イ
の ナ イ ロ ン塩 を窒 素 雰 囲
間 加 熱 す る と 融 点267℃
応性 の 中 程 度 か ら高 反 応 性 の
的 に 不 安 定 な モ ノ マ ー,ポ え ば,耐
フ ェ ニ レ ン イ ソ フ タ ル ア ミ ド)(商
のナ
の 重 合 で は 重 合 溶 媒 を 用 い,
リ マ ー が 溶 解 し た 状 態 で 進 行 す る.反
を も つ ポ リマ ー 合 成 に 有 用 で あ る.例 ド,ポ
で1時
polymerization):こ
モ ノ マ ー の 重 合 に 適 用 さ れ,ま
の重
ジ ピ ン酸 とヘ キ サ メ チ レ ン ジ ア ミ ン
を エ タ ノ ー ル 中 で 混 合 す る と ナ イ ロ ン 塩 が 生 成 す る.こ 気 下,215℃
温下で
リ マ ー と も に 熱 的 に 安 定 で な け れ ば な ら な い.こ
応 性 の 低 い モ ノ マ ー か ら の ポ リ マ ー 合 成 に 適 用 さ れ,ポ
ロ ン66(式(1.3))の
ⅱ)
圧,高
の 名 前 が つ け ら れ た.
リマ ー,高
融点
熱 性 繊 維 で あ る 芳 香 族 ポ リア ミ 品 名Nomex)は
以下 の よ うに
し て 合 成 さ れ る(式(1.86)).
(1.86) ⅲ)
界 面 重 合(interfacial
polymerization):界
気-液 な ど の 界 面 が あ る が,有
面 と し て,液-液,固-液,
機 相-水 相 を 用 い る 液 ‐液 界 面 重 合 が 一 般 的 で あ る.
こ の 重 合 は 非 常 に 反 応 性 の 高 い モ ノ マ ー の 重 合 に 用 い ら れ る.例 ン66の
合 成 を あ げ る.ア
に 入 れ る.こ
と し て,ナ
イ ロ
ジ ピ ン 酸 ク ロ リ ドを 四 塩 化 炭 素 溶 液 に 溶 か し ビ ー カ ー
の溶 液 に ヘ キ サ メチ レ ン ジア ミン の水 酸 化 ナ トリウ ム 溶 液 を加 え る
と界 面 に 薄 膜 が で き る.こ
の 膜 を ピ ン セ ッ トで つ ま み 上 げ る と ひ も状 の ポ リ ア ミ
ド が 得 ら れ る(式(1.87)).
(1.87) ⅳ)
固 相 重 合(solid
polymerization):モ
ノマ ー の 融 点 以 下 の 温 度 で 重 合
を 行 う 方 法 で,モ
ノ マ ー の 結 晶 状 態 を 反 映 し た 配 向 し た ポ リマ ー が 得 られ る.こ
の 方 法 は 溶 融,溶
液 重 合 法 が 適 用 で き な い ポ リマ ー の 合 成,例
リ マ ー,溶
解 性 の 悪 い ポ リ マ ー,モ
え ば,高
結晶性 ポ
ノ マ ー お よび ポ リマ ー が 融 点 以 上 で 不 安 定 な
場 合 に 用 い ら れ る.例 下,170℃
と し て,6-ア
で 重 合 す る と,配
ミ ノ ヘ キ サ ン 酸(融
向 性 の 高 い ナ イ ロ ン6が
点:204∼205℃)を
減圧
得 られ る(式(1.88)).
(1.88) f. 縮 合 重 合 反 応
膨 大 な有 機 反 応 の 中 で,縮 合 重 合 に用 い られ る反 応 は極
端 に 少 な い.こ れ はポ リマ ー を得 る に は副 反 応 が な く,定 量 的 に進 行 す る反 応 が 必 須 で あ るか らで あ る.こ
こで 代 表 的 な縮 合 重 合 反 応 を紹 介 す る.
ⅰ) 求核 ア シル 置 換 重 合(nucleophilic
acyl substitution polymerization):
代 表 的 な縮 合 系 ポ リマ ー で あ るポ リエ ス テ ル,ポ
リア ミ ドな ど は ジ カ ル ボ ン酸 誘
導 体 とジオ ー ル,ジ ア ミン な どの 求 核 剤 との 求核 ア シ ル置 換 重 合 反 応 で 合 成 され て い る.求 核 ア シ ル 置 換 反 応 は 以 下 の機 構 で進 行 す る(式(1.89)).
(1.89) カルボ ン酸誘導体 求核剤
こ こでNu:は
四面体 中間体
求 核 剤(nucleophile),L:は
生成物
脱 離 基(leaving
脱離基
group)を
表 す.
まず,求 核 剤 は カ ル ボ ン酸 誘 導 体 の カ ル ボ ニ ル 炭 素 を攻 撃 し四 面 体 中 間体 を与 え る.次
に この 中 間 体 か ら脱 離 基 が 脱 離 し,置 換 生 成 物 を与 え る.こ の反 応 は カ
ル ボ ン酸誘 導 体 の 脱 離 基 性 の よ さ,す なわ ち脱 離 基 の塩 基 性 が低 い ほ ど容 易 に進 行 す る. (1)酸
塩 化 物 法(カ
ル ボ ン酸 ク ロ リ ド法):カ
塩 素 イ オ ンで あ り非 常 に塩 基 性 が 低 い,す
ル ボ ン酸 ク ロ リ ドの脱 離 基 は
な わ ち,そ の 共 役 酸 は 強 酸 のHClで
あ り,非 常 に 高 い 反 応 性 を もっ て い る.高 強 度 繊 維 と して有 名 な 芳 香 族 ポ リア ミ ドで あ るポ リ(p-フ
ェニ レ ン テ レ フ タ ル ア ミ ド)(商 品 名:Kevlar)は,非
トン性 極 性溶 媒 中,テ
プロ
レ フ タ ル 酸 ク ロ リ ド とp‐フ ェニ レ ン ジ ア ミ ンの 溶 液 重 合
に よ り製 造 され て い る(式(1.90)).
(1.90) (2)酸
無 水 物 法: 酸 無 水 物 の脱 離 基 は カ ル ボ ン酸(pKa=4)な
の で求核 剤
と容 易 に反 応 す る.電 子 材 料 分 野 で 耐 熱 性 ポ リマ ー とし て有 用 な ポ リイ ミ ドの 合
成 例 を 示 す(式(1.91)).
(1.91) テ ト ラ カ ル ボ ン 酸 無 水 物 と ジ ア ミ ン の 重 合 は 室 温 で 進 行 し ポ リ ア ミ ド酸 を 与 え る,こ ⅱ)
れ を 加 熱 処 理 す る と分 子 内 脱 水 反 応 が 起 こ り ポ リイ ミ ドが 生 成 す る. 芳 香 族 求 電 子 置 換 重 合(aromatic
ization):ま phile)が
electrophilic
ず こ の 反 応 の 機 構 を 眺 め て み よ う.反
substitution
polymer
応 は 求 電 子 剤(electro
π 電 子 密 度 の 高 い ベ ン ゼ ン 環 を 攻 撃 し て カ チ オ ン 中 間 体 を 与 え る.次
に こ の 中 間 体 か ら プ ロ トン が 脱 離 し て 芳 香 環 を 再 生 す る.こ 一 般 に求 電 子 付 加 の 段 階 で あ る
.し
た が っ て,求
の 反 応 の律 速 段 階 は
電 子 モ ノ マ ー と して反 応 性 の 高
い 酸 ク ロ リ ド と求 核 モ ノマ ー と し て π電 子 密 度 の 高 い 芳 香 族 化 合 物 が 用 い られ る(式(1.92)).
(1.92)
例 え ば,こ
の 反 応 を 用 い て ポ リエ ー テ ル ケ トン が 合 成 さ れ て い る(式(1.93)).
(1.93) ⅲ)
芳 香 族 求 核 置 換 重 合(aromatic
tion):芳 し か し,電
nucleophilic
substitution
polymeriza
香 族 ハ ラ イ ドは 脂 肪 族 ハ ラ イ ドに 比 べ て 求 核 剤 と の 反 応 性 に 乏 し い. 子 吸 引 性 の 基 が 芳 香 環 に 導 入 さ れ る と芳 香 環 の 電 子 密 度 が 下 が り,求
核 置 換 反 応 を 受 け る.求 を 形 成 す る.次
核 剤 が ハ ロ ゲ ン の つ い た 炭 素 を 攻 撃 し,ア
に ハ ロ ゲ ン が 脱 離 し て 芳 香 環 が 再 生 す る.す
脱 離 機 構 で 反 応 が 進 行 す る(式(1.94)).
ニ オ ン中 間 体
な わ ち,求
核 付 加-
(1.94) 代 表 的 な エ ン ジ ニ ア リ ン グ ポ リ マ ー で あ る ポ リ エ ー テ ル ス ル ホ ン の 例 を 示 す(式 (1.95)).
(1.95)
1.4 開 環 重 合 環 状 モ ノマ ー が 開 始 剤 に よ り開環 し,成 長 す る重 合 反 応 で あ る.一 般 式 を示 す (式(1.96)).
(1.96) 重 合 の 進 行 は 環 状 モ ノ マ ー と相 当 す る 線 状 ポ リマ ー の 相 対 的 安 定 性,す 熱 力 学 要 因 に よ っ て 決 ま る.熱
力 学 要 因 と し て は,一
に つ く置 換 基 の 反 発 が あ げ ら れ る.開
般 に 環 の ひ ず み,隣
な わ ち, 接原子
環 重 合 は 成 長 種 の 種 類 に よ り ア ニ オ ン,カ
チ オ ン 開 環 重 合 に 分 け ら れ る. a. 環 状 エ ー テ ル(cyclic ⅰ)
エ ポ キ シ ド:エ
ether) チ レ ン オ キ シ ド は ア ル カ リ,ア
ル カ リ土 類 金 属,ア
コ キ シ ド な ど の 各 種 塩 基 開 始 剤 に よ り ア ニ オ ン 重 合 を す る.塩 レ ン オ キ シ ド を 攻 撃 し,ア コ キ シ ア ニ オ ン が さ ら に,エ
基性 開始剤が エチ
ル コ キ シ ア ニ オ ン を 生 成 す る(式(1.97)).こ チ レ ン オ キ シ ド に 攻 撃 し,こ
ル
のアル
の 反 応 の 繰 り返 し に よ
り ポ リ エ チ レ ン オ キ シ ドが 生 成 す る(式(1.98)).
(1.97) (1.98) 一 方
,プ
ロ ト ン 酸,ル
イ ス 酸 の カ チ オ ン性 開 始 剤 を用 い る と カ チオ ン重 合 す る
(式(1.99)).
(1.99) エ チ レ ン オ キ シ ドに カ チ オ ン性 開始 剤 が 付 加 し,二 級 の オ キ ソニ ウ ム イ オ ン を生 成 す る.こ れ にエ チ レ ンオ キ シ ドが さ ら に反 応 し,三 級 の オ キ ソ ニ ウ ム イ オ ン を
生 成 す る(式(1.100)).
(1.100) こ の 繰 り返 し に よ り ポ リ マ ー が 生 成 す る. ⅱ) オ キ セ タ ン,テ
ト ラ ヒ ド ロ フ ラ ン(THF):4員
環 や5員
環 エー テ ル
モ ノ マ ー で あ る オ キ セ タ ン や テ ト ラ ヒ ドロ フ ラ ン は 容 易 に カ チ オ ン重 合 し,エ
チ
レ ン オ キ シ ド と 同 様 な 機 構 で 対 応 す る ポ リ マ ー を 与 え る(式(1.101),(1.102)).
(1.101) オキセタン
(1.102) テ トラ ヒ ドロ フ ラ ン
b. ラ ク トン 与 え る.4員
一 般 的 に ラ ク ト ン 類 は ア ニ オ ン 重 合 に よ り ポ リエ ス テ ル を
環 ラ ク ト ン で あ る β‐ラ ク ト ン は 塩 基 性 開 始 剤 が ラ ク ト ン の 酸 素 原
子 の隣 の 炭 素 を 攻 撃 し,カ
ル ボ キ シ ラ ー ト を与 え る(式(1.103)).
(1.103) こ の カ ル ボ キ シ ラ ー トが さ ら に β-ラ ク トン を 次 々 に 攻 撃 す る こ と に よ り ポ リ エ ス テ ル が 生 成 す る.一
方,5員
る δ-バ レ ロ ラ ク ト ン,7員
環 ラ ク ト ン は 重 合 し な い が,6員
環 ラ ク トン で あ
環 ラ ク ト ン ε-カ プ ロ ラ ク ト ン は ラ ク ト ン の カ ル ボ ニ
ル 炭 素 を 塩 基 性 開 始 剤 が 攻 撃 し,ア
ル コ キ シ ド を 生 成 す る(式(1.104)).
(1.104) 生 成 し た ア ル コ キ シ ドが さ ら に モ ノ マ ー へ の 攻 撃 を 繰 り返 す こ と に よ り ポ リ マ ー を生 成 す る. c. ラ ク タ ム
環 状 ア ミ ドで あ る ラ ク タ ム は カ チ オ ン,ア
水 分 解 重 合 に よ り ポ リ ア ミ ド を 与 え る.ε-カ ま ず,少
量 の 水 と の 反 応 に よ り,ε-ア
ニ オ ン,お
よび加
プ ロ ラ ク タ ム の 加 水 分 解 重 合 で は,
ミ ノ カ プ ロ ン 酸 が 生 成 す る(式(1.105)).
生 成 し た ε-ア ミ ノ カ プ ロ ン 酸 の ア ミ ノ 基 が ε-カ プ ロ ラ ク タ ム の カ ル ボ ニ ル を 求 核 攻 撃 し,ま
た 末 端 に ア ミ ノ 基 を も つ 開 環 付 加 体 を 生 成 す る.こ
を繰 り返 す こ と に よ り ナ イ ロ ン6が
生 成 す る(式(1.7)).
の開環付加 反応
(1.105)
1.5
塩 基 触 媒 存 在 下,イ
重
付
加
ソ シ ア ナ ー トは ア ル コ ー ル と容 易 に反 応 して ウ レ タ ン を生
成 す る(式(1.106)).
(1.106) この 反 応 で は脱 離 成 分 はな く付 加 物 を与 え て い る .こ の よ うな 反 応 を付 加 反 応 と い う.こ の 反 応 を二 官 能 性 モ ノ マ ー に拡 張 す る と付 加 反 応 に よ りポ リマ ー が生 成 す る.こ の 重 合 反 応 は重 付 加 と呼 ば れ る.ビ ニ ル モ ノ マ ー の重 合 も付 加 反 応 で あ るが,連
鎖 的 に重 合 が 進 行 す る.一 方,重 付 加 は逐 次 的 に重 合 が 進 行 す る.こ の
違 い を 明確 に認 識 し よ う.重 付 加 反 応 は逐 次 重 合 で あ るの で,動
力 学 的 取 り扱 い
や 分 子 量 の 調 整 の 方 法 は縮 合 重 合 と本 質 的 に同 じで あ る. a. 累 積 二 重 結 合 へ の 付 加
イ ソ シ ア ナ ー ト基 の よ う に,各 原 子 が 二 重 結
合 で つ な が った 結 合 を累 積 二 重 結 合(cumulative 積 二 重 結 合 を もつ 化 合 物 と して,イ
double bond)と
呼 ぶ.こ
の累
ソシ ア ナ ー ト,カ ル ボ ジ イ ミ ドな どが あ る.
これ ら の化 合 物 は 中央 の 炭 素 原 子 は電 気 陰 性 度 の 大 き な窒 素 や 酸 素 に は さ まれ て 電 子 不 足 に な っ て い る の で,求 核 剤 の 攻 撃 を受 け や す くな っ て い る.し た が っ て,ア
ミン,ア ル コ ー ル,チ
オ ー ル な どの求 核 剤 と反 応 して 付 加 物 を与 え る(式
(1.107)).
(1.107)
代 表 的 な ポ リ ウ レ タ ン 合 成 は 式(1.8)に
示 し た.求
核 性 モ ノマー をジオ ールか
ら ジ ア ミ ン に 変 え る と ポ リ 尿 素 が 得 ら れ る(式(1.108)).
(1.108)
b. 二 重 結 合 へ の 付 加
α,β-不 飽 和 カ ル ボ ニ ル 化 合 物 は ア ミ ン,ア
ル コー
ル,チ
オ ー ル な ど の 化 合 物 と 容 易 に 反 応 し て 付 加 生 成 物 を 与 え る.こ
Michael反
の反 応 は
応 と 呼 ば れ る(式(1.109)).
(1.109) Michael反
応 を 利 用 し た 重 付 加 反 応 と し て,熱
硬 化 性 ポ リ イ ミ ドが ビ ス マ レ イ ミ
ド と ジ ア ミ ン の 重 合 に よ り工 業 的 に 製 造 さ れ て い る(式(1.110)).
(1.110)
c. Diels-Alder反 ィ ル)の
応
ジ エ ン(diene)と
親 ジ エ ン(dienophile,ジ
エ ノ フ
環 化 付 加 反 応 で シ ク ロ ヘ キ セ ン 誘 導 体 が 生 成 す る 反 応 をDiels-Alder反
応 と い う.反
応 で は そ れ ぞ れ4個
化 付 加 反 応 な の で[4+2]環
と2個
の π電 子 を もつ ジ エ ン と親 ジ エ ン の 環
化 付 加 と も い う.例
え ば,1,3‐
ブ タ ジエ ン とエ チ レ
ン を 気 相 で 加 熱 す る と シ ク ロ ヘ キ セ ン が 生 成 す る(式(1.111)).
(1.111) こ の 反 応 を 利 用 し て 各 種 ビ ス ジ エ ン と ビ ス ジ エ ノ フ ィ ル のDiels-Alder重
合 によ
り ポ リマ ー が 合 成 さ れ て い る(式(1.112)).
(1.112)
1.6付 熱 硬 化 性 樹 脂 の フ ェ ノ ー ル 樹 脂,尿
加 縮 合 素 樹 脂,メ
ラ ミ ン樹 脂 な ど は付 加-縮 合 反
応 を利 用 して 製 造 さ れ て い る.付 加 縮 合 反 応 を理 解 す るた め に,フ の 生 成 機 構 を み て み よ う.こ の 樹 脂 はプ レ ポ リマ ー(レ
ェ ノ ー ル樹 脂
ゾ ー ル と ノ ボ ラ ック)と
プ レ ポ リマ ー の橋 か け の2段 階 の反 応 で 成 り立 って い る. a. レゾ ー ル の生 成 機 構 き,こ の ア ニ オ ン で はo,p位
フ ェ ノー ル に 塩 基 を加 え る と フ ェ ノ ラ ー トが で の π電 子 密 度 が 高 い.そ
こ で,ホ ル ム ア ル デ ヒ ド
と反 応 し,メ チ ロ ー ル 基 が 導 入 され る(式(1.113)).
(1.113)
モ ノ メ チ ロ ー ル 化 さ れ た フ ェ ノ ー ル は ベ ン ゼ ン環 の π電 子 密 度 が さ ら に 高 くな り,ホ
ル ム ア ル デ ヒ ド と 反 応 し,メ
チ ロ ー ル 基 を多 く もつ レ ゾ ー ル が 生 成 す る
(式(1.114)).
(1.114)
レ ゾ ール を 酸 性 にす る か,加 熱 す る と縮 合 反 応 が優 先 し て起 こ り,橋 か け ポ リマ ー を生 成 す る. b. ノボ ラ ッ クの 生 成 機 構
酸 性 条 件 下 で は ホ ル ム ア ル デ ヒ ドの カ ル ボ ニ
ル 酸 素 へ の プ ロ トン化 が 起 こ る.こ れ が 求 電 子 剤 と して働 き,フ ェ ノ ー ル へ 求 電 子 付 加 す る.導 入 され た メ チ ロー ル 基 は酸 に よ りプ ロ トン化 され,続
い て脱 水 に
よ りカ ル ボ カ チ オ ン を生 成 し,フ ェ ノー ル と反 応 し て メ チ レ ン結 合 を生 成 す る. 酸 性 条 件 下 で は縮 合 反 応 が 付 加 反 応 に優 先 して起 こ る(式(1
.5),(1.6)).こ
の
付 加-縮 合 反 応 が 繰 り返 され る と ノ ボ ラ ッ クが 生 成 す る(式(1.115)).
(1.115) ノ ボ ラ ッ ク にヘ キ サ メ チ レ ンテ トラ ミ ンの よ う な橋 か け剤 を加 え て加 熱 す る と橋 か け反 応 が 促 進 され硬 化 す る.
2 高分子 の性質
2.1 高 分 子 の 分 子 量 と 分 子 量 分 布 分 子 量 は高 分 子 の基 本 的 な 量 で あ り,高 分 子 の材 料 と して の性 質 も分 子 量 に よ っ て 支 配 さ れ る こ とが 多 い.ま た,あ
る与 え られ た 高分 子 化 合 物 は,化 学 的 に純
粋 で も,一 般 に 分 子 量 分 布 を もつ.す
な わ ち,分 子 量 の 異 な る同 種 高 分 子 の混 合
物 で あ る.特 別 な場 合 を除 き,分 子 量 の均 一 な試 料 を分 別 に よ って 得 る こ とは困 難 で あ る.そ
こで 数 平 均 分 子 量Mn,重
量 平 均 分 子 量Mw,z平
均 分 子 量Mzな
ど
の平 均 分 子 量 が 定 義 され る. 高 分 子 中 に分 子 量Miの
分 子 がN個
存 在 す る と き,数 平 均 分 子 量Mnは
次式
で定 義 さ れ る.
(2.1) これ は,分 子 の 個 数 に つ い て の 平 均 で あ り,末 端 基 定 量 法 や 浸 透 圧 法(付 照)な
録参
どを利 用 して 求 め る こ とが で き る.数 平 均 分 子 量 は,高 分 子 に含 まれ る低
分 子 化 合 物 の 影 響 を敏 感 に受 け る. 高 分 子 量 化 合 物 の 平 均 分 子 量 へ の寄 与 を重 視 した 重 量 平 均 分 子 量Mwは,重
量
分 率 に よ る分 子 量 の 平 均 で あ り,次 式 で 定 義 さ れ る.
(2.2) 重 量 平 均 分 子 量 は光 散 乱 法 を利 用 して 求 め られ る. 高 分 子 量 化 合 物 の 平 均 分 子 量 へ の 寄 与 を さ ら に重 視 し たz平 均 分 子 量Mzは 式 で 定 義 さ れ る.
次
図2.1 分 子 量 分 布 と平 均 分 子 量
(2.3) ま た,Mn,Mw,Mzの
順 番 に分 子 量 の 大 き な分 子 の影 響 が 強 くな り,一 般 に
とい う関 係 が あ る. 高 分 子 の 分 子 量 に分 布 が あ るの は,高 分 子 の 生 成 あ る い は分 解 の 反 応 が 一 般 に 確 率 的 に起 こる こ と に起 因 して い る.通 常 の 高 分 子 の 分 子 量 分 布 は図2.1に た よ う に,あ w(M)は
る 分 子 量 で 極 大 を も つ 曲 線 で 表 さ れ る.通 常,重
ゲ ル 浸 透 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー(GPC)の
とが で き る(付 録 参 照).重
量 平 均 分 子 量Mwと
示し
量分布関数
ク ロ マ トグ ラ ム か ら求 め る こ 数 平 均 分 子 量Mnの
比Mw/Mn
は 分 子 量 分 布 指 数 と呼 ば れ,分 子 量 分 布 の 広 が りの め や す とな る.合 成 高 分 子 で は,こ
の 値 は 通 常1か
分 子 と呼 ぶ.こ
ら10程 度 の 範 囲 に あ り,こ の 比 が 大 き い もの を多 分 散 高
れ に対 し,単 一 の 分 子 量 か ら な る場 合 はMw/Mn=1で
あ り,こ
の よ うな 高 分 子 を 単 分 散 で あ る とい う. 2.2 高 分 子 鎖 の 分 子 構 造 個 々 の 高 分 子 の性 質 は,そ の 分 子 構 造,す 造)と,つ
なが り方(幾 何 学 的 構 造)に
な わ ち繰 り返 し単 位 の構 造(化 学 構
よ って 決 ま る.1種
類 の モ ノマ ー か ら生
成 した 高 分 子 で あ って も,モ ノ マ ー や 重 合 反 応 の種 類 に よ っ て モ ノマ ー 単 位 の結 合 様 式 が 異 な り,1本
の 高 分 子 鎖 中 に さ ま ざ まな 構 造 が 存 在 す る の も合 成 高 分 子
の 特 徴 の一 つ で あ る.こ れ ら高 分 子 の構 造 は,高 分 子 化 合 物 の 高 次 構 造 に大 き く 影 響 し,そ
の性 質 を決 め る大 きな 要 因 とな る.
2.2.1
化 学 構 造
a. 単 一 重 合 体
1種 類 の 繰 り 返 し 単 位Xか
合 体(homopolymer)と ま っ て い る の で,一
呼 ぶ.縮
合 重 合 は,反
ら構 成 さ れ る 高 分 子 を 単 一 重 応 す る官 能 基 の 組 み 合 わ せ が 決
定 の 結 合 順 序 を も っ た 高 分 子 を 生 成 す る.し
か し な が ら,ビ
ニ ル モ ノ マ ー の よ う な 二 重 結 合 に つ い て 非 対 称 な モ ノ マ ー で は,付 2.2に
加 の順 序 は図
示 す 二 通 りが あ る.
通 常,置
換 基 との共 鳴 安 定 化 が で き る よ うな 成 長 末 端 ラ ジ カ ル を生 成 す る方 向
に 結 合 す る の で,特 生 じ る.こ
に ス チ レ ン や メ タ ク リ ル 酸 メ チ ル で は頭 ‐尾 結 合 の 高 分 子 を
れ に 対 し て 非 共 役 系 の 酢 酸 ビ ニ ル の 高 分 子 に は2%程
度 の 頭-頭 結 合
と尾-尾 結 合 が 含 ま れ る こ と が 知 ら れ て い る. b. 共 重 合 体
2種 類 以 上 の 繰 り 返 し 単 位X,Y,Z,…
分 子 を共 重 合 体(copolymer)と
呼 ぶ.特
を ラ ン ダ ム 共 重 合 体(random
に 繰 り返 し 単 位 の 配 列 が 不 規 則 な も の
copolymer),2種
互 に 配 列 し た−X−Y−X−Y−X−Y− copolymer),X,Y,… (X)n―
か ら構 成 され る高
類 の 繰 り返 し 単 位X,Yが を 交 互 共 重 合 体(alternating
そ れ ぞ れ い くつ か 連 続 し て 現 れ る も の―(X)l―(Y)m―
を ブ ロ ッ ク 共 重 合 体(block
copolymer)と
い う(図2.3).
頭-尾(head-to-tail)結
尾-尾(tail-to-tail)結
図2.2
ビニ ル モ ノマ ー の 結 合 様 式
(a)ラン ダ ム共 重 合 体
(b)交互 共 重 合 体
(c)ブ ロ ック共 重 合 体 図2.3 共 重 合 体 の種 類
合
合
交
2.2.2
幾 何 学 的構 造
a. 立 体 規 則 性
実 際 に 重 合 し て 得 ら れ る 高 分 子 は,100%の
こ と は 少 な く,い ー
,tacticity)が
ろ い ろ な 構 造 を 含 む も の で あ り,そ 問 題 と な る.一
の 立 体 規 則 性(タ
は 結 合 し て い る 残 基 がH,側
よ び 重 合 度 や 末 端 基 の 異 な る 二 つ の 高 分 子 で あ る た め,不
立 体 構 造 の 異 な る い くつ か の 異 性 体 が 存 在 す る.dま 主 鎖 に 沿 っ て 配 列 し て い る.こ egularity)と
い う.図2.4(R'=H)に
あ る 場 合,置
換 基Rが
2.4(a))と,交
示 す よ う に,主
者 を イ ソ タ ク チ ッ ク(isotactic),後 い う.さ
造(図2.4(c))が
い ま 図2.5に
斉炭素 とな り
立 体 配 置 を と って
鎖C原
ら に,両
子が同一平面上 に ま た はllll…,図 の2種
類 の規則
者 を シンジオ タ クチ ッ
者 が 不 規 則 に存 在 す る ア タ ク チ ッ ク
存 在 す る.
示 す よ う な 立 体 配 置 の 連 な りか ら な る 高 分 子 に つ い て 考 え よ う.
モ ノ マ ー ユ ニ ッ ト2個
の 連 結 に つ い て の 立 体 規 則 性 を ダ イ ア ド(diad)と
同 じ 立 体 配 置 の 連 続,す 配 置 の 連 続dlま
鎖
の 配 列 の し か た を 高 分 子 の 立 体 規 則 性(stereor
そ の 平 面 の 同 じ 側 に あ る も の(dddd…
ク(syndiotactic)と (atactic)構
た はlの
互 に 両 側 に あ る も の(dldl…,図2.4(b))と
構 造 が 存 在 す る.前
クチ シ チ
置 換 あ る い は 二 置 換 高 分 子 ―(CH2―CαRR')―
が す べ て 頭-尾 結 合 で で き て い る と す る と,Cα のR,お
規 則性 をもつ
た はldを
な わ ちddま
た はllを
ラ セ モ ダ イ ア ド(r)と
(a)イ
ソ タ クチ ッ ク
(b)シ
ン ジ オ タ クチ ック
(c)ア
タ クチ ッ ク
メ ソ ダ イ ア ド(m),異 呼 ぶ.モ
図2.4 高分子連鎖 の立体規 則性
い い, な る立 体
ノ マ ー ユ ニ ッ ト3個
図2.5 高 分 子 の タ ク チ シチ ー
の 連 続 に つ い て の タ ク チ シ チ ー は ト リ ア ド(triad)で,こ 合 わ せ と考 え る こ と が で き,メ ラ セ モ ダ イ ア ドの 連 続rrを イ ア ドの 連 続rm,mrを さ て,こ か.あ
ソ ダ イ ア ド の 連 続mmを
ヘ テ ロ タ ク チ ッ ク(H)と
ソダ イ ア ドと ラ セ モ ダ
い う.
の よ うな 高 分 子 の 立 体 構 造 は ど の よ う な過 程 で 形 成 さ れ る の で あ る
場 合 が あ る.前
の 前 に 起 き た 現 象 の 影 響 を 受 け な い 場 合 と受 け る
者 で は ベ ル ヌ ー イ 統 計,後
合 反 応 が 進 行 す る 過 程 で,末
者 は マ ル コ フ 統 計 に 従 う と い う.多 端 の 繰 り返 し単 位 だ け が,次
モ ノ マ ー 単 位 の 立 体 配 置 に 影 響 を 与 え,ダ う.こ
イ ソ タ ク チ ッ ク(Ⅰ),
シ ン ジ オ タ ク チ ッ ク(S),メ
る現 象 が 生 じ る 場 合,そ
の 場 合,重
れ は ダ イ ア ドの 組 み
の 場 合,メ
ソ 付 加 の 確 率 をPm,ラ
く
に結 合 す る
イ ア ドの 配 列 は ベ ル ヌ ー イ 統 計 に 従 セ モ 付 加 の 確 率 をPrと
ア ド に よ る 生 成 高 分 子 中 の メ ソ ダ イ ア ド の 分 率mと
す る と,ダ
イ
ラ セ モ ダ イ ア ド の 分 率rは
次 式 で 与 え ら れ る. m=Pm( 2.4) r=Pr=1−Pm ト リ ア ド に よ る 分 率 Ⅰ,S,Hは
ダ イ ア ド の 繰 り返 し と 考 え れ ば 式(2.5)で
与
え ら れ る.
(2.5)
この よ うに ベ ル ヌ ー イ統 計 に従 っ て成 長 す る場 合,立 (2.5)に
示 し た よ う に 一 つ のパ ラ メ ー タPmま
れ を グ ラ フ で 表 す と図2.6の
体 配 置 の分 率 は式(2.4),
た はPrで
表 す こ とが で き る.こ
よ う に な る.実 際 に さ ま ざ ま な 条件 で メ タ ク リル 酸
メ チ ル の ラ ジカ ル 重 合 の 結 果 を プ ロ ッ トす る と理 論 曲 線 に よ く一 致 して お り,こ の重 合 で は末 端 基 の み が 立 体 配 置 に影 響 を与 え て い る と考 え る こ とが で き る. Pm>0.5の
場 合 が 多 い イ オ ン重 合 や 配 位 重 合 で は 曲 線 と測 定 値 が一 致 せ ず,末 端
基 に加 えて 前 末 端 基 の影 響 が 重 要 で あ る こ とを示 して い る. b. 分 枝 高分 子 と環 状 高 分 子
こ れ ま で 述 べ て き た 高 分 子 は,す べ て 二 つ
図2.6 ダ イ ア ドと ト リア ドの関 係 ポ リメ タ ク リル 酸 メ チ ル,Pm<0.5は カ ル 重 合,Pm>0.5は て得 られ た 高 分 子,○
ラジ
アニオ ン重合 に よ っ イ ソ タ ク チ ッ ク,〓
シ
ン ジ オ タ クチ ッ ク,● ヘ テ ロ タ ク チ ッ ク.
(a)星 型
(b)櫛 型
(c)ラ ン ダ ム 型
図2.7
の 末 端 を 有 す る 線 状 高 分 子(linear 分 子 の 中 に は,枝
polymer)で
polymer)が
あ っ た が,合
成 あるいは天然高
polymer)や
線状 高分 子 の両末
存 在 す る.図2.7に
点 か ら3本
ま た は そ れ 以 上 の 枝 が で た 星 型(star)(図2.7(a)),主
点 か ら1本
ず つ の 枝 が で た 櫛(comb)型(図2.7(b)),不
も の を ラ ン ダ ム(random)型
と い う.特
櫛 型 を グ ラ フ ト共 重 合 体(graft 2.3
え ば,高
示 す よ う に,1 鎖 の異 なる
規 則 に枝 分 か れ した
に 主 鎖 が―(X)l―,枝
copolymer)と
が ―(Y)m―
の
呼 ぶ.
高分 子 の 結 晶構 造
高 分 子 鎖 は 分 子 量 が 大 き い た め に,そ す.例
(e)環 状
分 枝 高 分 子 と環 状 高 分 子
分 か れ し た 高 分 子(branched
端 が 結 合 し た 環 状 高 分 子(ring
(d)グ ラ フ ト型
の性 質 は低 分 子 と は 異 な っ た 特 徴 を 示
分 子 も分 子 が 配 列 す る こ と に よ り結 晶 化 を 起 こ す が,低
分子物 質
の 結 晶 化 に 比 べ て一 様 性 に欠 け る.し た が っ て,結 晶 性 高 分 子(crystalline ymer)と
pol
は い っ て も結 晶 部 分 と非 晶 部 分 か ら な り,低 分 子 物 質 の よ うな 完 全 結
晶 で は な い. 2.3.1 結 晶 構 造 高 分 子 の 結 晶 構 造 は化 学 構 造 に よ っ て 支 配 さ れ,多 造 が,X線
くの 高 分 子 に つ い て結 晶 構
回 折 を は じ め とす る い くつ か の 測 定 手 法 を 用 い て 明 らか に され て い
る.以 下 に,代 表 的 な例 と して ポ リエ チ レ ン とポ リア ミ ドに つ い て説 明 す る. a. ポ リ エ チ レ ン 7.40A,b軸
が4.93A,c軸
図2.8に
ポ リ エ チ レ ン の 結 晶 構 造 を 示 す.a軸
が2.53Aの
斜 方 晶 で あ る.分 子 鎖 はc軸
い て い る.単 位 胞 内 に は,分 子 鎖 は2本 入 っ て お り,4個
のCH2単
が
方 向 を向
位 が 含 まれ
る. b. ポ リア ミ ド 脂 肪 族 ポ リア ミ ドは平 面 ジ グ ザ グ 分 子 鎖 がNH…O=C水 素 結 合 で 結 ば れ た シ ー トを作 る.ナ 子 鎖 に方 向 性 は な い(図2.9).ナ
イ ロ ン66は 分 子 鎖 中 に 対 称 中 心 が あ り,分 イ ロ ン6分 子 は,鎖
ン ス構 造 の 分 子 鎖 が 伸 び 切 っ た 構 造 を もつ α型(逆 が や や 短 縮 した γ型(平
行)が
に方 向 性 が あ り,全
平 行)の
トラ
ほ か に,繊 維 周 期
存 在 す る.こ れ ら は,面 内 の 分 子 間 水 素 結 合 の
密 度 が 異 な る(図2.10).
図2.8
ポ リエ チ レ ン の 結 晶構 造
大 円 は炭 素 原 子,小 (文献1),p.112よ
円 は水 素 原 子 の 位 置 を 示 す. り)
図2.9
ナ イ ロ ン66の
結 晶 構 造
(文 献2),p.160よ
図2.10
ナ イ ロ ン6の
り)
水 素 結 合 (a)α
型,逆
平 行,
(b)γ
型,平
行.
(文 献2),p.160よ
り)
2.3.2 結 晶 性 高 分 子 の 高次 構 造 結 晶 性 高 分 子 の特 徴 は,不 完 全 な 結 晶 性 の 固体 で,結
晶部 分 と非 晶 部 分 か ら構
成 され て お り,そ の 中 に高 分 子 鎖 が さ ま ざ まな 形 態 を と って 凝 集 して い る こ とで あ る.高 分 子 固 体 中 で 結 晶 部 分 の 占 め る割 合 は結 晶 化 度(crystallinity)と れ,結
呼ば
晶性 高 分 子 を特 徴 づ け る 重 要 な量 とな る.高 分 子 にお い て も結 晶部 分 を局
所 的 に み れ ば,規 則 的 な 結 晶 格 子 を組 ん で お り,そ の 結 晶 構 造 が 決 め られ て い る.し か し この構 造 は,高 分 子 の 部 分 鎖 に よ り構 成 され て い る もの で,分 子 一 つ 一 つ が 分 子 全 体 と して 特 定 な形 態 を と り,そ れ らが 規 則 的 に配 列 して い る もの で は な い.し た が っ て,結
晶構 造 は同 じ で あ っ て も,1本
の高分子鎖 が どの ような
形 態 を と り,ど の よ う な 高 次構 造 を とる か に は無 数 の 可 能 性 が あ る.そ に,高 分 子 の結 晶 形 態(morphology)の a. 折 りた た み 鎖 結 晶
こで以 下
代 表 的 な い くつ か の例 を紹 介 す る.
比 較 的 分 岐 の 少 な いポ リエ チ レ ンの0.01%程
度の
図2.11
ポ リエ チ レ ン の 結 晶(文 p.161よ
図2.12
献2),
ポ リエ チ レ ン 単 結 晶 の 電 子 線 回折 像(文
り)
p.111よ
図2.13 (a)単
希 薄 キ シ レ ン溶 液 を80℃
ポ リエ チ レ ンの 単 結 晶
位 胞 との 関 係,(b)折
(文献2),p.162よ
りた た み の 配 列 様 式.
り)
で 数 日 間 放 置 し,徐 々 に冷 却 す る と白濁 した溶 液 を得
る.こ れ を 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 す る と,図2.11に 約100Aの
薄 板 状 の単 結 晶(ラ
メ ラ晶)が
を入 射 して 得 られ る 回 折 像(図2.12)か がb軸,厚
さ 方 向 がc軸
献1),
り)
示 す よ う な 一 辺 約 数 μm,厚
さ
み え る.単 結 晶 の板 面 に 垂 直 に 電 子 線 ら,単 結 晶 の 菱 形 の 長 軸 がa軸,短
軸
に対 応 す る こ とが わ か っ て い る.
折 りた た み構 造 に つ い て は,(110)面
に 沿 っ て き れ い に折 りた た ま れ る様 式
(規則 的 折 りた た み モ デ ル,図2.13),折
りた た み部 分 が 長 くラ メ ラ面 に ラ ン ダ
ム に出 入 りす る様 式(ス
イ ッチ ボ ー ドモ デル)な
どが 考 え られ て い る.
図2.14
ポ リエ チ レン の伸 び切 り鎖 結 晶 の
図2.15
シ シ カ バ ブ 結 晶 の構 造 モ デ ル
破 断 面 の レプ リカ 透 過 電 子 顕 微 鏡 写 真(文
献3),p.157よ
り)
(Hill,
M.
J., Barham.
J.,Keller, Polym.
P.
A.:Colloid Sci.,
258,
1030,
1980)
b. 伸 び 切 り鎖 結 晶
常 圧 下 で の 結 晶 化 は前 述 の 折 りた た み 鎖 が で き る が,
ポ リエ チ レ ン を 高圧 下,あ
るい はず り流 動 下 で 結 晶 化 させ る と,分 子 鎖 が 伸 び切
った 伸 び 切 り結 晶 が 得 られ る.図2.14の
電 子 顕 微 鏡 写 真 に示 す よ うに,折
りた
た み鎖 と は異 な り,分 子 鎖 方 向 に1μm程
度 の大 き さ を もつ 伸 び切 り鎖 結 晶 が 観
測 さ れ る. 伸 び切 り鎖 結 晶 は,高 速 撹 拌 下 で の結 晶 に よ っ て も得 られ る.こ れ は シ シ カ バ ブ結 晶 と呼 ば れ,櫛
の核 部 分(シ
シ)が 伸 び 切 り鎖 結 晶,肉
の部 分(カ バ ブ)が
折 りた た み鎖 か ら構 成 され て い る(図2.15). c. 球
晶
一 つ の 結 晶 核 を 中 心 と して 球 対 称 の 成 長 様 式 で 成 長 した結 晶組
織 を球 晶 と呼 ぶ.高 分 子 の 溶 融 体 も し くは 濃 厚 溶 液 か ら結 晶 化 させ た と き に 現 れ,球 晶 の 直 径 は数 μmか ら数mmに
及 ぶ.偏 光 顕 微 鏡 を 用 い て直 交 偏 光 子 の
間 に は さ ん で 観 測 す る と明 暗 の十 字 線(Maltese 屈 折 性 で あ る こ とが わ か る(図2.16).ポ を向 き,a軸,c軸
cross)が
み え る と こ ろ か ら複
リエ チ レ ン で は,b軸
が半 径 軸 の まわ り を回転 し て い る こ とが,X線
か に な っ た.し た が っ て,球
は常 に 半 径 方 向 回折 よ り明 ら
晶組 織 の 構 造 は,球 晶 の 中心 か ら半 径 方 向 へ 板状 の
折 りた た み鎖 結 晶 が 同 じ周 期 で ね じれ なが ら放 射 状 に成 長 して,全 体 的 に 球 状 に な った 結 晶組 織 で あ る(図2.17).
図2.16
ポ リエ チ レ ン球 晶 の偏 光 顕 微 鏡 写 真 (文献2),p.163よ
図2.17 (a)成 長 の模 式 図,(b)ラ p.164よ
り)
球 晶 の微 細 構 造
メ ラ 晶 の ね じれ に 伴 う単 位 格 子 の配 向 と屈 折 率 楕 円体 の 変 化(文
献2),
り)
2.4 レ オ ロ ジ ー と力 学 的 性 質 2.4.1 完 全 弾 性 体 と完 全 流 体 高 分 子 は結 晶 ・ガ ラス 状 態 ・ゴ ム 状 態 ・溶 融 体 ・準 濃 厚溶 液 ・希 薄 溶 液 な どさ ま ざ まな 状 態 を形 成 し う る物 質 で あ る.こ れ らの 物 質 状 態 は,さ ま ざ まな 物 性 に 顕 著 に反 映 され る こ とが知 られ て い る.な か で も高 分 子 物 質 の 力 学 的 性 質 は,わ れ わ れ が触 感 に よ っ て直 接 的 に認 識 す る こ とが で き る物 理 量 で あ る.工 業 的 に も 高 分 子 物 質 の 力 学 的 性 質 は大 きな意 味 を もつ た め,生 産 現 場 に お け る製 品 の 管 理 や 開 発 に とっ て も非 常 に重 要 で あ る.こ
こで は,高 分 子 の力 学 的性 質 を理 解 す る
う えで 重 要 な い くつ か の基 礎 的 な事 項 に関 して 記述 す る こ とに す る.
理 想 気 体 の性 質 を調 べ る こ とに よ っ て 熱 力 学 や 気 体 の 分 子 運 動 論 が 大 き く進 展 した よ う に,理 想 化 さ れ た モ デ ル は基 礎 科 学 の 発 展 に お い て 重 要 な 位 置 を 占 め る.変 形 体 の 力 学 に お い て は,完 全 弾性 体 とニ ュー トン流 体 が 理想 化 さ れ た モ デ ル に対 応 す る1). a. 完 全 弾 性 体
応 力 が 作 用 し て い る も と で は物 体 は 変 形 す る.こ
こで,
応 力 と歪 み の 時 間 的 な 関係 が 問 題 とな る.結 晶 の よ うな物 体 で あ っ て も,刺 激 と 応 答 の 間 にわ ず か で は あ るが 時 間 的 な 遅 れ(弾 性 余 効)が 現 れ る.こ の よ う な弾 性 余 効 が ま った くな い理 想 的 な弾 性 体 を考 え,こ れ を完 全 弾性 体 と呼 ぶ.し って,完 全 弾 性 体 で は,図2.18(b)に
たが
示 した よ うに,応 力 が作 用 した 瞬 間 に歪
み が 現 れ,応 力 を取 り去 った 瞬 間 に歪 みが 消 滅 し,物 体 は 応 力 が 作 用 して い な い 状 態 に戻 る と考 え る. 応 力 が あ る限 界 を こ え る と,物 体 は破 壊 した り流 動 した りす るた め,応 力 を取 り去 っ て も も との状 態 に は戻 らな い.こ
の 限界 を弾 性限 界 と呼 ぶ.完 全 弾 性 体 で
あ っ て も,一 般 に応 力 と歪 み の 間 の 関 係 は複 雑 で あ る.し か し なが ら,応 力 が十 分 小 さ い と い う条 件 下 で は,応 力 と歪 み の 間 に 比 例 関 係 が 成 り立 つ と考 え て よ い.応 力 と歪 み が比 例 す る とい う現 象 は,1660年 事 実 で あ り,フ ッ ク の 法 則 と呼 ば れ る.い
にHookeが
ま応 力 をP,歪
実 験 的 に見 出 した み を ε と表 す こ と に
す る と フ ッ ク の 法則 は次 式 に よ っ て表 され る.
P=γ ε
(2.6)
こ こで 応 力 と歪 み の 間 の 比 例 定 数 γ を弾 性 率 と呼 ぶ.そ
うす る と,弾 性 率 は 物
(a)
(b)
図2.18
完 全 弾 性 体 とニ ュ ー トン流 体 の 力 学 的 応 答
ス テ ッ プ 的 な 応 力(a)に (c)
ニ ュ ー トン 流 体(c)の
対 す る完 全 弾 性 体(b)と 応 答.完
高 さが 歪 み の 大 き さ を与 え,ニ
全弾 性体で は矩形 の ュー トン流 体 で は,直
線 の傾 きが 歪 み 速 度 の 大 き さ を与 え る.
体 に単 位 の 歪 み を生 じ させ る た め に必 要 な応 力 とい う意 味 を有 す る. 応 力 の作 用 す る形 式 に よ っ て,物 体 は さ ま ざ ま に変 形 す る.静 水 圧 の よ う に物 体 の 面 に垂 直 に物 体 を押 す 方 向 に応 力 が 作 用 す る と,物 体 は圧 縮 さ れ る.こ の と きの 圧 力 と体 積 歪 み を関 係 づ け る弾 性率 を体 積 弾 性 率 と呼 ぶ.同 様 に,物 体 の 伸 張 や ず り変 形 に対 して は,引 張 り応 力 と伸 び歪 み,な
らび にず り応 力 とず り歪 み
を 関 係 づ け るヤ ン グ 率 や 剛 性 率 が定 義 され る.ま た,棒 状 の 物 体 を伸 張 す る と, 通 常,棒
の 断 面 積 は無 応 力 の状 態 よ り小 さ くな る.こ の と きの 伸 張 歪 み と これ に
垂 直 方 向 の収 縮 歪 み の 比 を ポ ア ソ ン比 と呼 ぶ.こ
れ ら四 つ の 弾 性 率 は 実 用 弾性 率
と呼 ばれ る. 実 用 弾 性 率 は等 方 性 物 体 を対 象 とす る もの で あ る.変 形 体 の 力 学 に よ る と,等 方 性 物 体 の弾 性 的 性 質 は二 つ の 独 立 な 弾 性 係 数(ラ
メ の定 数 λ,μ)に
よって表
さ れ る こ と を示 す こ とが で き る.し た が っ て,四 つ の実 用弾 性 率 の うち二 つ の 弾 性 率 が 独 立 に 測 定 され れ ば,残
りの 二 つ は それ ら よ り計 算 に よ っ て導 出 す る こ と
が 可 能 で あ る. b. ニ ュ ー トン 流 体
ビー カ ー に 入 れ た 液 体 を一 定 の 方 向 へ と撹 拌 す る と
液 体 に は 巨視 的 な ス ケ ー ル に お け る回転 運 動 が 起 こ る.液 体 の こ の よ うな 運 動 を 流 動 と呼 ぶ.撹
拌 を 止 め て放 置 す る と,流 動 して い た 液 体 はい ず れ は静 止 す る.
この よ う な現 象 は液 体 の み な らず 気 体 を含 む一 般 の 流 体 に お い て も生 ず る.こ の こ と は,流 体 内 部 で 流 動 を妨 げ る摩 擦 力 が 働 い て い る こ と を意 味 す る.こ の よ う な,流 体 の 巨 視 的 な 流 動 に対 す る 内部 摩 擦 を粘 性 と呼 ぶ.も
ち ろ ん,静 止 して い
る液 体 で あ っ て も分 子 レベ ル で は激 し い運 動 を 起 こ して い る こ とが わ か っ て い る.し か し,静 止 状 態 にお い て は流 体 分 子 の運 動 の 方 向 が ラ ン ダ ム で あ るた め, 巨 視 的 な流 動 は生 じな い.し た が っ て,液 体 が 巨 視 的 に流 動 し て い る と きに は, 分 子 の 熱 運 動 に よ る ラ ン ダム な運 動 に外 部 か ら加 えた 応 力 に よ る一 定 方 向 へ の 流 動 が 重 畳 さ れ て い る こ とに な る.そ て流 動 を消 滅 させ,も
うす る と,粘 性 とは分 子 間 の相 互 作 用 に よ っ
との ラ ン ダ ム な運 動 状 態 へ と移 行 さ せ る作 用 で あ る とい う
こ とが で きる. 流 体 に応 力 を作 用 させ る と一 定 の速 度 で 流 動 す る.例 え ば,水 飴 を ス プ ー ンで す くい 取 り,ス プ ー ン を傾 け る と重 力 の 作 用 で 水 飴 は ゆ っ く り とス プ ー ンか ら流 れ 落 ち る.こ の と き,水 飴 は時 々 刻 々 そ の 形 を変 えて ゆ く こ とが 観 察 で き る.つ ま り,流 体 で あ っ て も外 力 が 作 用 す る と き に は変 形 が 生 ず る こ とを示 して い る.
し か し,流 体 の 変 形 は 外 力 が 作 用 して い る限 り続 く と い う点 が 弾 性 体 とは大 き く 異 な る.ま た,外 力 を取 り去 る と流 体 の変 形 は直 ち に 止 ま る.こ の 様 子 を模 式 的 に示 した の が 図2.18(c)で
あ る.そ
うす る と,あ
る一 定 の 応 力Pを
た と き に,流 体 に 生 ず る単 位 時 間 当 た りの 歪 み 量,歪
作 用 させ
み速 度(dε/dt),が
の しや す さ に対 す る め や す を与 え る こ とに な る.実 際 に,水,ア
流動
セ トン,グ
リセ
リン な どの 低 分 子 液体 や 気 体 で は応 力 と歪 み速 度 の間 に比 例 関 係 が成 り立 つ こ と が知 られ て い る. (2.7) この 関 係 式 は,1687年
にNewtonが
通 常 の 液 体 に対 し て要 請 し た も の で あ る.
この よ う な 法 則 に従 う流 体 を ニ ュ ー トン流 体 と呼 び,こ
の式 の 比 例 係 数 を粘 性 率
と呼 ぶ.弾 性 率 が そ うで あ っ た よ うに,粘 性 率 に対 して も応 力 の 作 用 の しか た に よ っ て,ず
り粘 性 率,伸
び粘 性 率,体 積 粘 性 率 な どが あ る.
2.4.2 力 学 モ デ ル と静 的粘 弾性 通 常,わ
れ わ れ の身 の まわ りに あ る物 体 の 力 学 的 な性 質 は,上 述 した よ うな完
全 弾 性 体 と もニ ュ ー トン流体 と も異 な っ て い る.金 属 や 結 晶 は 弾性 限 界 の範 囲 内 で あ れ ば,か な り完 全 弾 性 体 に近 い力 学 的性 質 を示 す.ま た,低 分 子 液 体 や 気 体 の 流 動 もニ ュ ー トン流 体 で近 似 して も問題 が な い.し か し,多
くの コ ロ イ ド分 散
系 ・高 分 子 物 質 ・生 体 物 質 な ど は これ らの理 想 的 な弾 性 体 や 流 体 と は著 し く異 な っ た 力 学 的 性 質 を示 す こ とが 知 られ て い る.例 え ば,卵 か な 弾 性 を 示 す.ま が,重
白 は液 体 に み え るが 明 ら
た,包 装 用 の ポ リエ チ レ ン の 袋 な ど は 明 ら か に 固体 で あ る
い もの を入 れ て つ り下 げて お く とゆ っ く り と伸 び る こ とが わ か る.こ れ ら
の物 質 は 固体 的 な性 質 で あ る 弾性 と,液 体 的 な性 質 で あ る粘 性 流 動 をあ わ せ もつ 粘 弾 性 体 で あ る とい う こ とが で き る.こ の よ うな 物 質 の 変 形 と流 動 に 関 す る性 質 を研 究 す る学 問 を レオ ロ ジ ー と呼 ぶ.レ オ ロ ジ ー で は物 体 に与 え る応 力 ・歪 み ・ 歪 み速 度 の三 者 を 同 時 に考 え な けれ ば な らな い.こ れ が 弾 性 体 の力 学 と は異 な る 点 で あ る.高 分 子 の 力 学 的 性 質(以
後簡 単 の た め粘 弾 性 と呼 ぶ)は,試
料物 質 に
よ っ て 大 き く異 な る た め,モ デル 的 に理 解 す る こ と は非 常 に 重 要 で あ る.高 分 子 物 質 の 力 学 的性 質 は,卵
白の よ うに液 体 に近 い もの か ら ポ リエ チ レ ンの よ う に固
体 に近 い もの まで さ ま ざ ま な もの が あ るた め,た だ 一 つ の モ デ ル で 幅 広 い性 質 を 記 述 す る こ と は不 可 能 で あ る.こ
こで は,理 想 的 な 弾 性 体 と理 想 的 な粘 性 体 を用
い た二 つ の 基 礎 的 な力 学 モ デ ル に つ い て述 べ る こ とに す る.粘 弾 性 物 質 の 弾 性 的 性 質 を担 う力 学 模 型 と し て は,フ
ッ ク の法 則 に従 う ば ね を用 い る.こ れ に対 し
て,粘 性 的 性 質 を表 す 力 学 模 型 と して は ニ ュー トン の法 則 に 従 う粘 性 の 高 い液 体 が 入 っ た シ リン ダ ー と ピ ス トン(ダ こ れ ら を,力 学 要 素 と呼 ぶ.お
ッシ ュポ ッ トと呼 ぶ)を
考 え る こ と にす る.
の お の の力 学 要 素 は そ れ ぞ れ 式(2.6),式(2.7)
に従 う もの と仮 定 す る.こ れ らの 力 学 要 素 を組 み合 わ せ て作 る こ とが で き る最 も 簡 単 な 力 学 モ デ ル に は2種 類 の もの が 考 え られ る. a. 液 体 的 粘 弾 性 モ デ ル(直 デ ル は図2.19(a)に
列 モ デ ル ・マ ッ ク ス ウ エ ル モ デ ル)
第 一 のモ
示 した よ うな,二 つ の力 学 要 素 を直 列 に つ な い だ も の で あ
る. この 力 学 モ デ ル の 両 端 を伸 張 し時 間 的 に一 定 の歪 み を 与 え続 け る と ど うな るで あ ろ うか.ば ね の部 分 は完 全 弾 性 体 で あ るた め,歪 み が 与 え られ た 瞬 間 に伸 長 す る で あ ろ う.こ れ に対 して ダ ッ シ ュ ポ ッ トの 部 分 は液 体 の 高 い粘 性 の た め瞬 間 的 に は応 答 で きな い.し
か しな が ら,時 間 が 経 過 す る に つ れ て ばね が ダ ッ シ ュ ポ ッ
トに流 れ を生 じ させ る た め,こ れ に よ りばね の伸 び が緩 和 し て ゆ く.無 限 時 間 経 過 す る と,ば ね の 伸 び は 完 全 に緩 和 す る.し た が っ て,流 れ も消 失 し平 衡 状 態 と な る.こ の過 程 にお い て は,力 学 モ デ ル に一 定 歪 み を与 え る に必 要 な応 力 は徐 々 に 減 少 す る こ と に な る.こ の よ う な 現 象 を 応 力 緩 和 と呼 ぶ.応 力 緩 和 の 過 程 で は,系 に与 え られ た 歪 み に よ りば ね が 弾 性 エ ネ ル ギ ー を蓄 え る.こ れ と同 時 に,
図2.19
マ ッ ク ス ウエ ル モ デ ル(a)と
フ ォー ク
トモ デル(b) 実 際 に は ダ ッ シ ュポ ッ トの 中 に高 粘 性 ニ ュー トン流 体 を入 れ な け れ ば な らな いが,モ
デル とし て表 す と
き に は通 常 は これ を省 い て こ の図 の よ うに描 く.
ダ ッ シ ュ ポ ッ トに は 流 動 が 生 じ る た め,こ
の 弾 性 エ ネ ル ギ ー を 散 逸 す る.つ
ま
り,応 力 緩 和 現 象 で は力 学 エ ネル ギ ー の貯 蔵 と散 逸 が 同 時 に進 行 して い る こ とに な る. マ ッ ク ス ウエ ル モ デ ル の各 力 学 要 素 の力 学 的 応 答 は式(2.6),(2.7)で
表 され
る と仮 定 す るか ら基 礎 方 程 式 を 作 る こ とが で き る.要 素 の直 列 結 合 の場 合 に は以 下 の条 件 が 成 り立 つ. (1)各
要 素 の歪 み は一 般 的 に は異 な る.
(2)各
要 素 は等 し い応 力 を受 け る.
(3)全
体 の 歪 み量 は既 知 で あ る.
した が っ て,以 下 の 関 係 式 が成 り立 つ .
(2.8a)
(ば ね)
(ダ ッ シ ュ ポ ッ ト)
(2.8b) (2.8c)
式(2.8c)は
モ デ ル 全 体 の 歪 み の 時 間 変 化 と 応 力 の 関 係 を 与 え る.こ
ッ ク ス ウ エ ル モ デ ル の 基 礎 方 程 式 と 呼 ぶ.こ
の式 をマ
の式 を与 え られ た 条 件 の も とに解 く
こ と に な る. i) 一 定 歪 み(ε=constantま
た はdε/dt=0,応
力 緩 和):
この場 合 に は
次 式 が 成 り立 つ.
この 式 は積 分 で き る の で,
(2.9) た だ し,t=0でP=P0,τ=η/γ こ の 関 数 を 図2.20に 合 に は,そ ぶ.緩
と した . 示 し た.マ
ッ ク ス ウ エ ル モ デ ル に一 定 の 歪 み を与 え る場
の 応 力 は 指 数 関 数 的 に 減 少 す る.こ
の と き の 時 定 数 を 緩 和 時 間 と呼
和 時 間 は 粘 性 率 と弾 性 率 の 比 で 表 さ れ る .ま
た,式(2.9)の
両 辺 を歪 み
εで 割 っ た も の を 緩 和 弾 性 率 と呼 ぶ . ⅱ)
一 定 応 力(P=constantま
た はdP/dt=0):
この場 合 に は次 式 とな
図2.20
マ ッ クス ウエ ル モ デ ル
図2.21
一 定 の応 力 に対 す る マ ック ス ウ エ ル モ デ ル の応 答
の応力緩和曲線 応 力 は指 数 関 数 的 に減 少 し,無
応 力 を取 り去 っ て もダ ッシ ュポ ッ ト
限 時 間 後 に ゼ ロ とな る.こ
の 流 動 に起 因 す る歪 み が 残 る.
質 か ら,マ
の性
ック ス ウ エ ル モ デ ル
は液 体 的 粘 弾 性 モ デ ル とい わ れ る.
り,ニ
ュ ー ト ン の 法 則 に ほ か な ら な い.
(2.10) ⅲ) 急 激 な 変 化(t《
τ,あ る い は短 時 間 の 観 測):基
礎 方 程 式 を次 の よ う
に書 き換 え て お く.
(2.11) そ うす る と,急 激 な 変 化 の 条 件 はdP/dt》P/τ
とい う こ とが で き る.こ の 条 件
は,緩 和 時 間 よ り十 分 短 い 時 間 の 間 に 歪 み が 与 え られ た場 合 や,非 常 に長 い緩 和 時 間 を有 す る系 の力 学 的 応 答 に対 応 す る.こ の と き,
(2.12) と 考 え て よ い が,こ ⅳ)
れ は フ ッ ク の 法 則 に ほ か な ら な い.
緩 慢 な 変 化(dP/dt《P/τ):こ
視 す る こ とが で き る の で,再 これ ら の 結 果 か ら,マ
の 場 合 に は 式(2.11)でdP/dtを
無
び ニ ュ ー ト ン の 法 則 を 得 る.
ッ ク ス ウ エ ル モ デ ル に 瞬 間 的 に 一 定 の 応 力 を与 え,一
の 時 間 の 後 応 力 を 取 り去 る 場 合 の 振 る 舞 い が わ か る.図2.21に
定
示 した よ う に,
応 力 を与 え た 瞬 間 に ば ね の部 分 が 応 答 し,そ れ に 引 き続 い て ダ ッシ ュ ポ ッ トに ニ ュ ー トン流 動 が 起 こる.応 力 をか け続 け れ ば,い
つ まで も流 動 す る.応 力 を取 り
去 っ た 瞬 間 に,ば ね の変 形 に対 応 す る初 め の 歪 み と等 しい 量 だ け縮 む が,ダ ュ ポ ッ トの流 動 の た め 回復 しな い 歪 み が残 る.マ
ッシ
ッ クス ウエ ル モ デ ル は 急 激 な変
形 に 対 し て は 固 体 的,緩 慢 な変 形 に対 して は液 体 的 な振 る舞 い を示 す.ま た,歪 み を 一 定 とす れ ば 応 力 緩 和 が観 察 され る.こ の よ うな こ とか ら,マ ック ス ウエ ル モ デ ル は液 体 的 粘 弾 性 モ デ ル と も呼 ば れ る . b. 固体 的 粘 弾 性 モ デ ル(並
列 モ デ ル ・フ ォ ー ク トモデ ル)
ル モ デ ル に対 して,図2.19(b)に ル を フ ォー ク トモ デ ル と呼 ぶ.こ
マ ッ ク ス ウエ
示 した よ うに要 素 を並 列 に 結 合 した 力 学 モ デ の モ デ ル は ばね が 並 列 に結 合 し て い る た め,応
力 を与 えて も流 れ 続 け る こ とは な い.し
た が って,こ
の モ デ ル は固 体 的 粘 弾 性 の
モ デ ル と な る.要 素 が 並 列 に結 合 し て い る場 合 に は以 下 の 条件 が 満 た さ れ る. (1)各
要 素 の 歪 み は等 しい.
(2)各
要 素 の 応 力 は一 般 的 に は異 な る.
(3)全
体 の 応 力 は既 知 で あ る.
した が って,以 下 の 関 係 式 が 成 り立 つ.
(2.13a) (2.13b) (2.13c) 式(2.13c)が
フ ォー ク トモ デル の基 礎 方 程 式 とな る.こ の 方程 式 は一 次 線 型 微
分 方 程 式 で あ る か ら常 法 に よ り解 く こ とが で き る.得
られ る一 般 解 は以 下 の よ う
に な る.
(2.14) 積 分 は 時 刻 ゼ ロ か らtま
で 行 う.ま
た,ε0は
残 留 歪 み と 呼 ば れ,時
刻 ゼ ロで系
に 残 っ て い る 歪 み を 表 す. マ ッ ク ス ウ エ ル モ デ ル と 同 様 に τ=η/γ と し た.い
ま,図2.22(a)に
示 した
よ う な ス テ ッ プ 的 な 応 力 が 与 え られ た 場 合 に つ い て 上 の 式 を 計 算 す る と以 下 の よ う に な る.
(a)
(b)
図2.22
一 定 の 応 力 に対 す る フ ォー ク トモ デ ル の 応 答
歪 み は徐 々 に現 れ る.ま た,応
力を
取 り去 った 場 合 に も歪 み は直 ち に消 失 す るわ けで は な い.し か し,マ クス ウエ ルモ デル の よ う に,い
ッ
つま
で も流 動 が 続 くわ けで は な いの で, この モ デ ル は固 体 的 粘 弾 性 モ デ ル と い わ れ る.
(2.15) 時 刻 ゼ ロ に お け る残 留 歪 み ε0をゼ ロ とす る と
(2.16) ま た,時 てP=0と
刻t1に
お い て 応 力 が ゼ ロ と な る か ら,こ
の と き の 歪 み を 新 た に ε0と し
す れ ば 次 式 を 得 る.
(2.17) た だ し,t1を 新 た に 時 刻 ゼ ロ と した.こ れ らの 関 数 を 図2.22(b)に (2.16)か
ら,フ
示 した.式
ォ ー ク トモ デル で は歪 み は時 間 と と も に徐 々 に増 加 す る こ と,
な ら び に時 刻 無 限 大 に お い て フ ッ クの 法 則 が 成 り立 つ こ とが わ か る.こ の こ とが 固体 的 粘 弾 性モ デ ル と呼 ばれ る理 由 で あ る.応 力 を取 り去 っ た とき に は,ば ね は 伸 ば され た ま まな の で縮 も う とす る.し か し,並 列 に結 合 さ れ て い る ダ ッ シ ュポ ッ トの大 きな制 動 力 が 瞬 時 に縮 む こ とを妨 げ る.そ の 結 果,歪
み は徐 々 に 消 失 す
る こ とに な る.歪 みが 応 力 よ り遅 れ て 現 れ て く る現 象 を遅 延 弾 性(creep),歪
み
が消 失 す る過 程 は弾 性 余 効(creep
recovery)と
呼 ぶ.ま
た,こ
の と きの 特 性 時
間 は遅 延 時 間 と呼 ば れ る.遅 延 弾 性 は金 属 な どで も観 察 さ れ る現 象 で あ る. これ らの 力 学 モ デ ル は高 分 子 物 質 が 示 す 力 学 的性 質 の あ る側 面 を端 的 に表 す も の で あ る.し か し な が ら,一 般 の 高 分 子 固 体 ・高 分 子 液 体 ・高 分 子 溶 液 な ど の力 学 的 性 質 が これ らの 二 要 素 モ デ ル の い ず れ か で 表 され る こ と は非 常 に まれ で あ る.高 分 子 物 質 の 特 微 で も あ る分 子 量 分 布 や 測 定 以 前 の熱 履 歴 あ る い は結 晶 化 度 な ど に よ っ て,同 一 の 物 質 で あ っ て も力 学 物 性 は 異 な る の が 普 通 で あ る.こ の よ うな構 造 的 な 要 因 は緩 和 時 間 あ る い は遅 延 時 間 に影 響 を及 ぼ す.純 粋 に力 学 モ デ ル の立 場 に立 つ な らば,弾 性 率 や粘 性 率 の 異 な る さ ま ざ まな 要 素 を 用意 し,こ れ を直 列 あ る い は並 列 に 結 合 した複 雑 な 力 学 模 型 を 用 い る こ と に よ り,実 験 結 果 を う ま く記 述 す るモ デ ル を作 る こ とが 可 能 で あ る.し か し この よ うな解 析 方 法 は, 必 ず し も緩 和 現 象 や遅 延 弾 性 の 分 子 論 的 な メ カ ニ ズ ム に対 す る知 見 を与 え るわ け で は な い.実 際 の 研 究 で は緩 和 時 間 や 遅 延 時 間 の分 布 の様 相,す
な わ ち 緩 和 スペ
ク トル を実 験 結 果 か ら求 め,解 析 を進 め る こ とが 有 効 な 方 法 で あ る.詳 細 は参 考 文 献 を み て い た だ きた い. こ こで は静 的 粘 弾 性 に つ い て の み 述 べ た が,静
的 粘 弾 性 の 実 験 は長 時 間 に わ た
る測 定 に な るの が 普 通 で あ る.こ の た め,力 学 的 あ る い は 熱 的 外 乱 の影 響 を受 け や す い.装 置 の 除 振 や 試 料 まわ りの 温 度 コ ン トロー ル な ど に細 心 の 注 意 を は らわ な けれ ば な らな い.こ
れ に対 して,応 力 や 歪 み を周 期 的 に 与 え る動 的 粘 弾 性 の測
定 は,静 的 測 定 に比 べ て あ る程 度 は利 点 が あ る と思 わ れ る.こ の場 合 に は周 期 的 な応 力 や 歪 み を与 え,系
の線 型 性 を仮 定 して基 礎 方 程 式 を解 け ば よい.こ
の場 合
に は,複 素 弾 性 率 や 複 素 コ ンプ ラ イ ア ン ス が測 定 され る こ とに な る.複 素 弾 性 率 の 実 数 部 は貯 蔵 弾 性 率,虚 数 部 は損 失 弾 性 率 と呼 ばれ る.ま た,最
近 で はパ ル ス
的 な 応 力 や 歪 み を与 え,そ の後 の 自 由減 衰 を フー リエ変 換 す る こ と に よ り力 学 物 性 を測 定 す るパ ル ス-フ ー リエ 変 換 型 の 粘 弾 性 測 定 装 置 も あ る9).こ の よ う な 方 法 は 変 性 の影 響 を受 けや す い生 体 物 質 に対 して は き わ め て 有 効 な 方 法 で あ る と考 え られ る.
3 高性能高分子材料
高 性 能 高 分 子 材 料 と は,一 般 に,過 酷 な環 境 や 用 途 に耐 え られ る有 機 高 分 子 を 主 とす る軽 量 な材 料 を い う. この 高性 能 高 分 子 材 料 に よ っ て,こ れ ま で 金 属 な ど無 機 材 料 が 用 い られ て い た 構 造 体 な どの 一 部 が置 き換 え られ,省 エ ネ ル ギ ー に役 立 っ た り,快 適 で安 全 な 生 活 に い か され て い る.こ の よ う な 実 用 上 の応 用 は,複 数 の 科 学 や技 術 の融 合 で あ る.こ
こで は機 械 的 強 度 や 弾 性 率,耐
熱 性 な どの物 性 の 面 と化 学 的 な高 分 子 の 分
子 設 計 と材 料 設 計 との 関係 を考 え て み よ う. 特 に,主
と して 固 体 と して 用 い られ る材 料 の設 計 の うえで は,高 分 子 の分 子 設
計 を孤 立 した 分 子 だ け で考 え る の で は な く,高 分 子 集 合 体 と して 高 次 の 構 造 形 成 や 高 分 子 間 の 相 互 作 用,混 合 物 の組 織 と し て と ら え る こ とが 高 い性 能 の 発 現 の た め に は重 要 で あ る. 3.1 エ ン ジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ ク 3.1.1 エ ン ジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ ク とは エ ン ジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ ク とは 高性 能 高 分 子 材 料 と して 市 場 に出 て い る い くつ か の製 品群 の 総 称 で あ り,エ ン プ ラ と略 さ れ て 呼 ば れ る こ とが 多 い.工 学 材 料 で あ るエ ン ジ ニ ア リ ング マ テ リア ル に対 応 す る分 類 で あ るが,広
い意 味 で エ ン
ジ ニ ア リン グ プ ラス チ ックが 高性 能 高 分 子 材 料 一 般 の こ と を さ して用 い られ る場 合 もあ る.も
と も と汎 用 プ ラ ス チ ッ ク で は不 可 能 で あ っ た 機 械 的 強 度 や 耐 熱 性 が
必 要 な 自動 車 部 品 や 電 子 部 品 な ど に用 い る こ とが で き る材 料 と して製 品 化 さ れ, これ らが エ ン ジ ニ ア リン グ プ ラ ス チ ック と呼 ばれ る こ とに な った.エ ン グ プ ラ ス チ ッ クの 中 で も150∼200℃
ン ジニ ア リ
以 上 の 耐 熱 性 を有 す る エ ン ジ ニ ア リ ン グ
プ ラ ス チ ッ ク を また 別 にス ーパ ー エ ン プ ラ と呼 ぶ こ とが あ る.
図3.1
汎 用 エ ン ジ ニ ア リン グ プ ラ ス チ ック
エ ン ジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ ク と し て,一 (PA),ポ
リ カ ー ボ ネ ー ト(PC),ポ
テ レ フ タ レ ー ト(PBT),変
般 的 な もの と し て は ポ リ ア ミ ド
リ オ キ シ メ チ レ ン(POM),ポ
性 ポ リ フ ェ ニ レ ン オ キ シ ド(m-PPO)が
こ れ ら の 汎 用 エ ン ジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ ク は,図3.1に 高 分 子 を 主 成 分 と し て 身 近 な と こ ろ で 広 く役 立 っ て い る.
リブ チ レ ン あ る.
示す化学構造 をもつ
図3.2
汎 用 エ ン ジニ ア リン グ プ ラ ス チ ック の使 わ れ て い る も の
汎 用 エ ン ジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ ク の 応 用 例 を み て い こ う. ポ リ ア ミ ドで は ナ イ ロ ン6や
ナ イ ロ ン66が
代 表 的 な 高 分 子 で あ る.繊
ン ジ ン ル ー ム の 部 品 な ど に 多 く用 い られ て い る .ポ く用 い ら れ て い る の は 図3.2に (4,4'-isopropylidenediphenylene)(ビ る.ポ
あ る よ う な4,4'-イ
維や エ
リ カ ー ボ ネ ー ト樹 脂 と し て 広 ソプ ロ ピ リデ ン ジフ ェニ ル
ス フ ェ ノ ー ルA骨
格)を
もつ も の で あ
リ カ ー ボ ネ ー ト樹 脂 は コ ン パ ク トデ ィ ス ク や 光 学 機 器 用 の 部 品 な ど に 用 い
ら れ る.ポ
リオ キ シ メ チ レ ン は ポ リア セ タ ー ル と も呼 ば れ,ギ
用 い ら れ る.ペ
ア な どの 摺 動 部 に
ッ ト ボ トル に 使 わ れ る ポ リ エ チ レ ン テ レ フ タ レ ー ト(PET)と
類 似 の 化 学 構 造 を も つ ポ リ ブ チ レ ン テ レ フ タ レ ー トは コ ネ ク タ ー や ソ ケ ッ ト な ど の 電 子 部 品 に よ く用 い ら れ る. 変 性 ポ リ フ ェ ニ レ ン オ キ シ ド樹 脂 は ポ リ フ ェ ニ レ ン オ キ シ ド(PPO)と
ポ リ
ス チ レ ン(PS)と
の 相 溶 混 合 物 で あ る ポ リ マ ー ア ロ イ(polymer
る.家 電 やOA機
器 な どの ハ ウ ジ ン グ(外 形 を覆 う部 品)な
alloy)で
あ
ど に使 わ れ て い る.
ポ リマ ー 同 士 の複 合 材 料 の形 態 で あ るポ リマ ー ア ロ イ に つ い て は次 節 で学 ぶ. 3.1.2 エ ン ジ ニ ア リ ン グ プ ラ スチ ック の 基 本 条 件 外 部 か らの 力 や 過 酷 な環 境 に 対 して 形 の変 化 が 小 さ い こ とが エ ン ジ ニ ア リン グ プ ラ ス チ ッ ク と して 応 用 さ れ る基 本 的 な条 件 で あ る.基 本 的 に は次 の 三 つ の 性 質 が あ げ られ る. (1) 高 強 度:切
れ な い,壊 れ な い こ と
(2) 高 弾 性 率:機 械 的 に変 形 しに くい こ と (3) 耐 熱 性:高
い 温 度 で も変 形 しな い こ と
エ ンジ ニ ア リ ン グ プ ラ ス チ ッ クの 性 能 的 な め や す と して は お お む ね 引 張 り強 さ が60MPa以
上,弾
性 率2GPa以
上,長 期 耐 熱 性 が100℃ 以 上 と され る こ とが あ
る. こ の ほ か に も成 形 性 や 寸 法 安 定 性,耐 薬 品性,光 電 気 的 特性,吸
水 性,耐
学 的 な透 明 性,誘
電 率 な どの
摩 耗 性,耐 衝 撃 性 な ど に つ い て それ ぞ れ の 高 分 子 材 料 の
特 性 が 調 べ られ,そ れ ぞ れ の 物 性 を いか した 応 用 が 図 られ て い る. 3.1.3 高 性 能 高 分 子 材 料 の 設 計 の考 え方 で は,エ
ン ジニ ア リ ング プ ラ ス チ ック は どの よ うな 考 え方 を も とに開 発 され て
き た の だ ろ うか. a.高
分 子 の 強度 ・弾性 率
まず 高 分 子 を一 つ の ば ね と考 え よ う(図3.3).
さ ら に そ の 中 の一 つ の 化 学 結 合A―Bを ッ ク の 法 則 か ら応 力(σ)を
考 え る と弾 性 率(E(A―B))は,フ
表 す 変 形 量 の比(ε)の
係 数 で あ る の で,
σ=Eε
(3.1)
とな る. こ こ で,単 純 な 調 和 振 動 子 モ デ ル を考 えて,k:結 結 合 長,S:結
合 の 伸 縮 の ば ね 定 数,r:
合 の 断 面 積 とす る と
(3.2) と表 さ れ る. 一 方,強
度 に 対 応 す る 最 大 応 力(σmax)を
考 え て,こ
の ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー が 結 合 エ ネ ル ギ ー(D)に
の と き の 変 位 Δrの 等 し い と仮 に お く と
とき
図3.3 高 分 子 の ばね モ デ ル 表3.1
化学結合エ ネルギー
N:ア
ボガ ドロ数
(3.3)
と表 され る. 多 くの化 学 結 合 が 連 な っ た 高 分 子 鎖 の場 合 は,結 合 角 の 変 角 運 動 な ど実 際 に は も っ と複 雑 で あ るが,こ
れ ら は高 分 子 化 学構 造 の設 計 の基 本 的 な指 針 を与 え る.
す な わ ち,分 子 鎖 の 結 合 エ ネ ル ギ ー(D)が と,ま た 分 子 鎖 の 断 面 積(S)が
大 き く,ば ね 定 数(k)が
大 きい こ
小 さ い こ とが 強 度 ・弾 性 率 を 向 上 さ せ る こ とに
な る(表3.1). 次 に,高 分 子 の コ ン フ ォ メ ー シ ョンや 集 合 状 態 を考 え て み よ う.分 子 鎖 の 断 面 積 が 小 さ く,直 鎖 状 に パ ッ キ ン グ され て い る配 列 集 合 体 が 強 度 ・弾 性 率 を発 現 す る理 想 的 な構 造 で あ る.し た が っ て,高 分 子 の化 学構 造 も側 鎖 基 が 大 きな もの や らせ ん構 造 な ど は好 ま し くな く,直 線 に近 い剛 直 な 分 子構 造 が化 学 結 合 の も って
図3.4
房 状 ミ セ ル(fringed
micelle)構
造 モ デル
い る理 論 的 な 強度 を発 現 で き る こ と にな る. した が っ て,高 分 子 の 集 団 の 固体 構 造 が 材 料 と して の 強 度 ・弾 性 率 の 発 現 に 深 くか か わ っ て い る こ とが 理 解 され るだ ろ う.高 分 子 の微 細 構 造 と して は微 結 晶 と 非 晶 領 域 か らな る房 状 ミセ ル 構 造(図3.4)が の 加 工 法 に よ って 図3.5の
図3.5
一 般 的 で あ るが,分
子設計 や材料
よ うな伸 び切 り鎖 結 晶 に近 い構 造 を もつ 材 料 が 開発 さ
分 子鎖 の 断面 積 と伸 び 切 り鎖構 造 の パ ッキ ン グ
れ,鉄 鋼 よ り も大 きな 強 度 を発 現 で きた の で あ る(図3.6). b. 高 分 子 の 耐 熱 性
耐 熱 性 を 表 す 指 標 とな る現 象 と して は,熱
に よる物
理 的 な軟 化 と熱 分 解 を含 む 化 学 的 な熱 変 化 が あ る. 熱 に よ る軟 化 は,高 分 子 材 料 中 の ガ ラ ス状 態 に あ る非 晶 質 が 流 動化 す る ガ ラ ス 転 移 温 度(Tg)と
結 晶 が 融 解 す る 融 点(Tm)に
よ っ て 示 され る.理 想 的 な 伸 び
切 り結 晶 に お い て は,Tmは
(3.4)
ΔHm:融
で 与 え ら れ る.す ピ ー ΔSmが
解 の エ ン タ ル ピ ー,ΔSm:融 な わ ち,融
解 の エ ン タ ル ピ ー ΔHmが
小 さ な 高 分 子 が,熱
言 い 換 え る と,ΔHmを
大 き く,融
解 の エ ン トロ
に よ る 軟 化 が し に く い こ と に な る .分
大 き くす る た め,水
図3.6 伸 び切 り鎖 結 晶 と折 りた た み 鎖 結 晶 ・ 非晶
解 の エ ン トロ ピー
子構造 で
素 結 合 な どの 分 子 間 相 互 作 用 が 大 き
図3.7
ナ イ ロ ン6の 結 合 の例
水素
い 基 を もっ て い る こ と,ま た 対 称 性 が よ く剛 直 で ΔSmが 小 さい こ とが 基 本 的 な 設 計 に な る(図3.7). 一 方,熱
分 解 に つ い て 考 えて み よ う.単 純 化 した モ デ ル反 応 と して,最 初 に主
鎖 の 開 裂 に よ る ラ ジ カ ル の 発 生 が起 こ る と仮 定 で き る.熱 分 解 し に く くす るた め に,主 鎖 の 化 学 結 合 が切 れ に くい安 定 な もの,お
よ び ラ ジ カ ル が 発 生 して も ラ ジ
カ ル を安 定 化 させ る構 造 が 試 み られ て きた. 例 え ば,は
し ご状 に 結 合 した ラ ダ ー 構 造 の ポ リマ ー や 架 橋 構 造 をた くさ ん有 す
る ポ リマ ー で は ポ リマ ー の低 分 子 化 が 進 み に くい た め,耐 熱 性 に 有 利 で あ る.分 子 間 の 相 互 作 用 も,熱 に よ る分 子 運 動 を抑 制 す るの で 熱 分 解 を抑 制 す る の に有 効 で あ る.生
じた ラ ジ カ ル の安 定 化 の た め に主 鎖 に π共 役 系 の 基 を導 入 す る こ と
も指 針 の一 つ で あ る(図3.8). 3.1.4 高 強 度 ・高 弾 性 率 ポ リマ ー 材 料 代 表 的 な 高 強 度 ・高 弾 性 率 ポ リマ ー材 料 を み て い こ う. a. 高 強 度 ・高 弾 性 率 ポ リエ チ レ ン
ポ リエ チ レ ン は基 本 的 なCとHか
な る 高 分 子 で あ る.分 子 鎖 の 断 面 積 は0.182nm2と
ら
さ ま ざ まな 高 分 子 の 中 で も小
図3.8 直 鎖 ポ リマ ー と ラ ダー ポ リマ ー の 開裂
さ く,高 強 度 ・高 弾 性 率 が 得 られ や す い(図3.9). ポ リエ チ レ ン は汎 用 ポ リマ ー と して容 器 や 包 装 材 と して 身 近 な とこ ろで 使 わ れ て い る.高 性 能 な ポ リエ チ レ ン材 料 を作 るた め に,100万
以 上 の 分 子 量 を もつ ポ
リエ チ レ ン を 用 い て 材 料 中 の 分 子 末 端 の数 を減 ら し,ゲ ル 紡 糸 法 とい った 伸 び切 り鎖 配 列構 造 を作 る方 法 に よ って,後 率 を達 成 した.こ
に述 べ るア ラ ミ ド繊 維 を こ えた 強 度 ・弾 性
の 高 強 度 ・高 弾 性 率 ポ リエ チ レ ン は,ロ ー プ や 防 弾 チ ョ ッキ,
パ ラ シ ュ ー ト,複 合 材 料 な ど に利 用 さ れ て い る. ゲ ル 紡 糸 法 とは,パ
ラ フ ィ ン系 溶 媒 に 溶 か し た 高 分 子 溶 液 を空 気 中 に吐 き 出
し,溶 液 を含 む ゲ ル 状 繊 維 を数 十 倍 に延 伸 す る こ とに よ り,ゲ ル状 態 で の 折 りた た み分 子 鎖 を引 き延 ば し,伸 び切 り鎖 配 列 を作 る方 法 で あ る.こ の ほ か に も超 延 伸 法 と呼 ばれ る 多 くの 加 工 法 が あ る. b. ア ラ ミ ド 3.10).脂
ア ラ ミ ド(aramide)と
は,芳 香 族 ポ リア ミ ドを さ す(図
肪 族 ポ リア ミ ドを よ り剛 直 に した 構 造 で あ り,折
りた た み 構 造 を と り
に く く高 強 度 ・高 弾 性 率 を有 す る. と こ ろ が,一 般 的 に ア ラ ミ ドは剛 直 な分 子 の た め,溶 融 す る前 に熱 分 解 して し
図3.9
ポ リ エ チ レ ン(PE)
図3.10
ア ラ ミ ド
ま う の で熱 をか け て の 溶 融 加 工 が 困 難 で あ っ た.そ 晶 紡 糸 法 が 発 見,開
発 さ れ,鉄
こで,特 殊 な加 工 法 で あ る液
の5倍 の 強 度 を 示 す ケ ブ ラ ー(Kevlar)が
製品
として 開発 され た. 剛 直 な分 子 は液 晶 状 態 を と りや す く,溶 液 中 で 一 定 濃 度 範 囲 で リオ トロ ピ ック 液 晶 相 を形 成 す る.こ
の相 か ら延 伸 す る こ とな く高 速 で 糸 をひ く こ と に よ り伸 び
切 り鎖 構 造 を形 成 す る こ とが で きた. ア ラ ミ ド繊 維 は タ イ ヤ コー ドや航 空 機 部 品 や 耐 熱 性 もい か して石 綿 の代 替 や セ メ ン ト補 強 剤 な ど に用 い られ る. c. ポ リア リ レー ト ア リ レー ト(polyarylate)で
芳 香 族 ポ リア ミ ドに対 し て芳 香 族 ポ リエ ス テ ル が ポ リ あ る(図3.11).ポ
リ-p-オ キ シベ ン ゾエ ー トは溶
融 も溶 解 も し な い が,分 子 不 整 と呼 ばれ る高 分 子 内 へ の適 当 な 非 対 称 性 の 導 入 に よ り,ア ラ ミ ド繊 維 と異 な り熱 溶 融 に よ る加 工 が 可 能 とな っ た. ア ラ ミ ド よ り強 度 ・弾 性 率 は大 き くは な い もの の,ポ
リア リレ ー トは液 晶 性 を
有 す る.こ の た め,高 分 子 間 のパ ッ キ ン グ を伸 び切 り鎖 構 造 に しや す く,加 工 性 との バ ラ ン ス の とれ た 材 料 とな って い る. 3.1.5 液 晶 ポ リマ ー 実 際 に高 性 能 高 分 子 材 料 に用 い られ る ほ とん どの 高 分 子 は 主 鎖 型 液 晶 ポ リマ ー に分 類 され る.ア ラ ミ ドな どの芳 香 族 ポ リア ミ ドは溶 液 中 で 液 晶 性 を示 す ライ オ トロ ピ ッ ク液 晶 で あ る.ま た,ポ
図3.11
リア リレー トは あ る温 度 範 囲 で 液 晶 性 を示 す サ
代 表 的 な ポ リ ア リレ ー ト
図3.12
主 鎖 型 液 晶 ポ リマー の モ デ ル
ー モ トロ ピ ッ ク液 晶 で あ る. モ デ ル 的 に,永 久 双 極 子 を もち,剛 直 な棒 状 あ る い は平 板 状 の メ ソー ゲ ン基 と ア ル キ ル 鎖 な どの屈 曲鎖 を直 線 的 に もつ 高 分 子 の構 造 が 主 鎖 型 液 晶 ポ リマ ー とな り うる(図3.12).こ
の構 造 は高 強 度 ・高 弾 性率 を もつ高 分 子 の 条 件 と類 似 して
い る.ま た,加 工 法 と高 分 子 の配 列 な どを考 え る と,液 晶 性 を も って い た か ら こ そ伸 び切 り鎖 構 造 の材 料 に加 工 で きた と もい え る. 3.1.6 耐 熱性 ポ リマ ー 材 料 代 表 的 な 耐 熱 性 ポ リ マ ー と し て ポ リイ ミ ドが あ げ ら れ る(図3.13).Tgが 400℃ 程 度,Tmが500℃
以 上,5%重
量 減 少 温 度 が600℃ に達 し,こ の フ ィル ム
上 で卵 焼 きが 焼 け るの は もち ろん 電 子 材 料 や航 空 宇 宙 材 料 に広 く用 い られ る. 一 般 に,イ 後,加
ミ ド体 の 溶 融 成 形 性 と溶 媒 溶 解 性 は低 い の で ア ミ ド酸 の状 態 で成 形
熱 して 閉環 させ る か粉 体 成 形 す る.分 子 不 整 の 考 え方 を入 れ て,や や 耐 熱
性 が 低 くな る もの の,熱 溶 融 が 可 能 な ポ リイ ミ ドも開 発 され て い る. 高 強 度 ・高 弾性 率 材 料 で あ げた ポ リア リレ ー ト,ア ラ ミ ド も代 表 的 な耐 熱 性 ポ リマ ー で あ る.耐 熱 性 の高 い セ ラ ミ ッ クや ガ ラ ス へ 近 づ い た さ ま ざ ま な有 機 高分 子 が 提 案 され て い る(図3.14). 3.2 ポ リマ ー 複 合 材 料 高 性 能 高 分 子 材 料 へ 炭 素 繊 維 や ガ ラ ス繊 維 な ど を埋 め込 ん だ複 合 材 料 とす る と 強 度 と剛性 にす ぐれ る だ けで な く,金 属 材 料 に比 べ 腐 食 に 強 く軽 量 な材 料 を得 る
図3.13
図3.14
代 表 的 な ポ リィ ミ ド
さ まざ まな 耐 熱 性 高 分 子
こ とが で き る. 3.2.1 複 合 材 料化 ポ リマ ー 複 合 材 料 の か た ち と して は,粒 子 状 に フ ィ ラ ー と呼 ば れ る有 機 や 無 機 の 材 料 を分 散 した 粒 子 分 散 型 や 各 種 繊 維 を編 み 込 ん だ 繊 維 型,い
くつ か の材 質 の
図3.15
ポ リマ ー 複 合 材 料 の構 造
異 な る積 層 体 で あ る積 層 型,分 子 レベ ル で 混 合 され た 分 子 複 合 型 な どの モ デ ル 的 な 分 類 が な さ れ る(図3.15). これ ら は そ れ ぞれ の大 き さ の レベ ル で の 組 織 の 作 りか た で あ る とい え る.繊 維 型 モ デ ル で い え ば,一 方 向 に繊 維 を並 べ た もの や 編 み込 ん だ もの な どが あ り,多 様 な組 み合 わ せ が 可 能 で あ る. 繊 維 型 複 合 材 料 は 一 般 にFRP(fiber
reinforced
plastics)と
呼 ばれ る.そ れ
ぞ れ の 材 料 との 組 み 合 わ せ か ら,炭 素 繊 維 補 強 プ ラ ス チ ッ ク はCFRP,ガ 繊 維 補 強 プ ラ ス チ ッ ク はGFRP,ア
ラス
ラ ミ ド繊 維 補 強 プ ラ ス チ ッ ク はArFRPな
ど と略 され て 呼 ばれ る こ とが あ る.そ れ ぞ れ高 分 子 との組 み 合 わ せ に よ り,剛 性 や 衝 撃 性,耐
熱 性,X線
透 過 性 な ど応 用 に 適 した 多 様 な特 性 に 特 徴 が 見 出 され
て い る. 3.2.2 ポ リマ ー ア ロイ 異 な る特 性 を もつ い くつ か の高 分 子 を分 子 レベ ル で混 合 した 多 成 分 高 分 子 材 料 が ポ リマ ー ア ロ イ(高 分 子 合 金)で
あ る.
汎 用 エ ン ジ ニ ア リ ン グ ポ リマ ー の 一 つ で あ るm-PPOは シ ド(PPO)ヘ
ポ リス チ レ ン を混 合 し た ポ リマ ー ア ロ イ で あ る.PPOは
る 際 に滴 下 しな い こ とや,自 難 しか っ た.ポ
ポ リフ ェニ レ ン オ キ 燃焼 す
己 消 火性 が あ る な ど の利 点 が あ る もの の成 形 加 工 が
リス チ レ ン とア ロ イ化 す る こ と に よ り成 形 性 が 改 良 され 広 く用 い
図3.16
い くつ か の ポ リマ ー ア ロ イ の か た ち
られ る よ う に な っ た.ア ず,TgはPPOの
ロ イ化 さ れ る と,こ の材 料 は,一
つ の 値 のTgし
か示 さ
重 量 分 率 と と も に100℃ か ら210℃ 付 近 まで ほ ぼ直 線 的 に 変 化
す る. ポ リマ ー ア ロ イ の 形 態 は高 分 子 同 士 の 性 質 に よ っ て さ ま ざ ま な もの が知 られ て い る(図3.16). 同 じ も し くは異 な る部 分 構 造 の集 合 体 で あ る高 分 子 の 混 合 は興 味 あ る ミク ロの 組 織 構 造 を形 成 す る.ほ
と ん どの場 合,異
な る高 分 子 同 士 は分 子 次 元 で溶 け合 わ
な い の で 機 械 的 に混 合 し ミク ロ に相 分 離 した 材 料 に な る.こ れ もポ リマ ー ア ロイ の範 疇 に分 類 され て い る.こ の ほ か に,一 定 の温 度 領 域 で相 溶 す る半 相 溶 系,お 互 い に分 子 レベ ル で 相 溶 す るm-PPOの
よ うな 均 一 系 の ア ロ イ 材 料 な ど に分 類
さ れ る. 非 相 溶 な部 分 構 造 を もつ ブ ロ ック 共 重 合 体 や グ ラ フ ト共 重 合 体 は そ れ ぞ れ の 部
図3.17
シ ロ キ サ ン構 造 を側 鎖 に もつ 有 機 無 機 ハ イ ブ リ ッ ド材料
分 が 集 ま って 数 十nmの
サ イ ズ の凝 集 を起 こす.ま
も つ相 互 高分 子 網 目(interpenetrating あ る.さ
polymer
た,異 な る種 類 の 架橋 構 造 を network)構
造 の よ うな もの も
ら に非 相 溶 系 に ブ ロ ッ ク ポ リマ ー を加 え た り,化 学 反 応 を組 み合 わ せ た
りす る さ ま ざ ま な ア ロ イ 形 成 の 方 法 が あ る. 3.2.3 有 機 無 機 ハ イ ブ リッ ド材 料 自然 界 に は,貝 殻 や 骨,歯,珪
藻 な どす ぐれ た バ イ オ コ ン ポ ジ ッ トと呼 ばれ る
有 機 無 機 ハ イ ブ リ ッ ド材 料 が 存 在 す る.こ れ ら を まね て高 分 子 と金 属 組 織 との 微 細 構 造 体 や粘 土 鉱 物 の 層 間 へ 高 分 子 を挿 入 した材 料 な ど無 機 相 と高 分 子 が ミク ロ 構 造 を作 り,高 性 能 材 料 へ の応 用 が 図 られ て い る(図3.17).
謝辞 本章 を執筆 するに当た り資料 等でご協力 いただいた伊藤正義氏(三 井化学)に 感謝 し ます.
4 光 と 高 分 子
4.1 感 光 性 高 分 子 高 分 子 化 合 物 は繊 維,プ
ラ ス チ ッ ク容 器,レ
材 料 として 日常 生 活 に 用 い られ て い る.そ
ンズ な ど形 の あ る もの を作 る構 造
して,こ れ まで 構 造 材 料 と して の 高 性
能 化 の 研 究 に加 え,種 々 の 機 能 を付 加 した 高 分 子 の 開 発 も活 発 に 行 わ れ た.こ れ ら は機 能 高 分 子 と呼 ば れ て い る が,そ
の 中 で光 やX線
な ど の 電 磁 波,電
子線 な
どの 高 エ ネ ル ギ ー 粒 子 線 を照 射 す る と,本 来 もっ て い る性 質 が 顕 著 に変 化 す る タ イ プ の 高 分 子 材 料 が あ る.こ
れ ら は感 光 性 高 分 子(photopolymers),ま
た は感
光 性 樹 脂 と呼 ば れ,外 部 エ ネル ギ ー の 照 射 に よ り顕 著 な性 質 の 変 化 を示 す もの で あ る. 4.1.1 光 照 射 に伴 う 高分 子 の構 造 の 変 化 感 光 性 高 分 子 化 合 物 を薄 膜 状(1∼100μm)に
し て光 照 射 す る と表4.1に
示す
よ うな 性 質 の変 化 を示 す.こ れ らの性 質 の変 化 は光 化 学 反 応 が 生 じ高 分 子 に分 子 構 造 の 変 化 が 起 こ る た め で あ る.そ す る と図4.1の
して,ど
の よ うな 構 造 変 化 が 生 じ るか を整 理
よ う に な る.
4.1.2 高 分 子 の 光 架 橋 と物 性 変 化 線 状 構 造 を有 す る高 分 子 化 合 物 が光 反 応 に よ り三 次 元 網 目構 造 に変 化 す る と溶 剤 な ど に不 溶 性 に な る.分 子 量 が 比 較 的 大 き い線 状 高 分 子 の,主 鎖,ま 構造 と して 光 反 応 性 の感 光 基 を含 む もの,あ
た は側 鎖
る い は 単 純 に光 反 応 性 の架 橋 物 質 を
混 合 した も の が この 分 類 に 属 す る感 光 性 樹 脂 で あ る.こ の 感 光 基,あ
る い は架 橋
物 質 が 光 を吸 収 して 感 光 基 が 反 応 し,そ の結 果,線 状 構 造 が 架 橋 構 造 に変 化 し溶 剤 な どに不 溶 化(ゲ
ル 化)す
と光 架 橋 物 質 の例 を示 す.古
る.表4.2(a)に
は,混 合 型 に 分 類 され る高 分 子
くは天 然 高 分 子 と重 ク ロム 酸 塩 を 混 合 した もの が 使
表4.1
光 照 射 で変 化 す る性 質 の 変 化
図4.1 高 分 子 の 光 に よ る構 造 変 化 の 分 類
わ れ て い た.ま た,表4.2(b)に
は光架橋 性感 光基 を分子 構造 の一部 として含
む 感 光 性 高 分 子 の例 を示 す. a. 光 架 橋 剤 を混 合 す る タ イ プ
長 鎖 線 状 高 分 子 に単 純 に混 合 す る だ け で,
表4.2(a)
表4.2(b)
高 分 子 に光 架 橋 剤 を混 合 す る タイ プ の 例
光 架 橋 性 感 光 基 を構 造 中 に 含 む タイ プ
線 状 の 高 分 子 を 光 架 橋 し網 目構 造 に変 化 させ る光 架 橋 剤 は表4.2(a)に て い るが,こ
示 され
れ 以 外 に も多 数 見 出 され て い る.こ の タ イプ の感 光 性 高 分 子 は と も
に用 い る高 分 子 化 合 物 の性 質 をい か す こ とが で き る点 で 有 利 な場 合 が 多 い. b. 光 架 橋 性 の 官能 基 が 内 在 す る タ イ プ1-3) 社 のMinskら
内 在 タ イ プ と して,E.Kodak
に よ り開 発 され た ポ リ(け い皮 酸 ビニ ル)が 最 初 の例 で あ る1).け
い皮 酸 が光 二 量 化 して ツ ル キ シ ン酸 を生 成 す る反 応 を利 用 して い る.ポ
リ(ビ ニ
ル ア ル コー ル)の 側 鎖 基 で あ る水 酸 基 に け い皮 酸 を エ ス テ ル 化 した 高 分 子 で あ る.こ
れ を有 機 溶 剤 に溶 解 し基 板 に コ ー テ ィ ン グ し1∼2μm程
成 す る.こ の 薄 膜 に紫 外 線 を照 射 し,現 像 液(有
度 の薄 膜 層 を 形
機 溶 剤)で 洗 う と,露 光 部 の膜
は不 溶 性 に 変 化 し基 板 上 に 残 る.し か し,非 露 光 部 の膜 は現 像 液 に溶 解,除 れ,そ
去さ
の 結 果 基 板 表 面 が 露 出 され る.マ ス ク の パ ター ン と反対 の パ タ ー ン が 高 分
子 膜 に よ り形 成 され る.光 で 不 溶 化 す る の は,図4.2の
ス キ ー ム で 示 す よ う に露
光 で け い 皮 酸 エ ス テ ル が 光 を吸 収 して励 起 状 態 に な り二 量 化 反 応 を起 こ し,そ の 結 果,高
分 子 が 架 橋 され 三 次 元 網 目構 造 とな るた め で あ る.け い 皮 酸 エ ス テ ル の
光 二 量 化 の 反 応 は 短 波 長 光(280nm付
近)を
要 す るた め,実 際 に使 用 す る と き
は三 重 項 ‐三 重 項 エ ネ ル ギ ー 移 動 型 の 増 感 剤 を添 加 し365nmの
光 で反応 す る よ
う に調 整 され る.高 分 子 化 合 物 は線 状 構 造 で あ れ ば,そ れ を溶 か す た め の 何 らか の 溶 剤 や 水 溶 液 が存 在 す るが,架 橋 され 三 次 元 網 目構 造 に な る と基 本 的 に 溶 解 し な くな る.し た が っ て,露 光 部 の膜 が 溶 け な くな るの は光 に よ り架 橋 構 造 が 形 成 され た こ と を示 す.こ の よ う に,露 光 部 が 不 溶 性 とな る感 光 性 高 分 子 をネ ガ型 と
図4.2
け い 皮酸 の光 二 量 化反 応 を 利 用 す る架 橋
図4.3 光 架 橋 反 応 の 例
い う. 図4.3に
ジ ア ジ ド化 合 物 を混 合 した感 光 性 高 分 子 の光 架橋 反 応 の例 を示 す.
c. 光 架 橋 と感 度
線 状 高 分 子 を光 架橋 に よ り不 溶 化 させ る機 構 の場 合,高
分 子 の1分 子 に対 して平 均 何 本 の架 橋 が必 要 か とい う問題 は感 度 を決 め る うえ で 重 要 で あ る.こ れ は統 計 力 学 に基 づ く高分 子 の ゲ ル 化 理 論 に よ っ て 説 明 され る. Charlesbyの
ゲ ル 化 理 論4)に よれ ば,高 分 子 の ゲ ル 化 と架 橋 数 の 関 係 は式(4.1)
図4.4
高 分 子 の ゲ ル 分 率 と架 橋 係 数 の関 係
∼(4 .3)で 与 え ら れ,図 示 す る と図4.4の
曲 線 で 示 され る.こ
こで,横 軸 は 高分
子 の架 橋 係 数 δ,す な わ ち 重 量 平 均 重 合 度 当 た りの架 橋 数 で あ り,縦 軸 は ゲ ル 分 率 を表 す.高
分 子 化 合 物 の 分 散(平 均 の 分 子 量 分 布)を
が 示 さ れ て い る.架 橋 係 数 δが1.0で ル 分 率 が 増 え て ゆ くが,そ る.分 散 が1,す
の 増 え 方 は 高 分 子 の 分 子 量 分 散 に よ っ て か な り異 な
な わ ち,高 分 子 の 分 子 量 が す べ て 等 し い 場 合,架
程 度 で ゲ ル 分 率 が ほ ぼ1.0に が 起 これ ば ほ ぼ100%不 で は1.0近
パ ラ メー タ と した各 曲線
ゲ ル 化 が 始 ま り,δ が 増 大 す る に つ れ ゲ
達 す る.高 分 子,1分
橋 係 数 δ=3
子 に対 して お よ そ3本 の 架橋
溶 化 す る こ と を示 して い る.分 子 量 分 散 が ポ ア ソ ン分 布
くの ゲ ル分 率 を得 る た め に は δ=5程 度 が 必 要 で,単 分 散 に比 べ る と
よ り多 くの架 橋 が 必 要 に な る.分 散 が 広 くな る に 従 い よ り多 くの架 橋 が 必 要 に な る.こ れ らの 架 橋 は フ ォ ト ンに よ って 形 成 さ れ る た め,そ れ だ け 多 くの フ ォ トン 数 が 必 要 で,言
い換 えれ ば低 感 度 にな る.
(4.1) (4.2) (4.3) こ こ で,g:ゲ
ル 分 率,s:ゾ
ッ ト を 含 む 分 子 の 数,q:架
A.Reiserら
は,架
に つ い て,δ=1と ー(Emin)に
橋 密 度,δ:架
ノ マ ー 数,n:u個
の モノマ ーユ ニ
橋 係 数,u2=A2/A1,Ai=Σnui.
橋 反 応 が逐 次 的 に起 こ るケ ー ス と連 鎖 反 応 で 起 こる ケ ー ス
な る 点(ゲ
ついて
ル 分 率,u:モ
,そ
ル が 現 れ 始 め る 点)ま
れ ぞ れ 式(4.4)お
で に必 要 な 照 射 光 エ ネ ル ギ
よ び 式(4.5)でEminお
よ びE′minの
よ う に 表 し て い る.
(4.4) (4.5) こ こで,r:高
分 子 の 密 度,d:膜
の量 子 効 率,Xw:重
の厚 み,ε:感
量 平 均 分 子 量,m:感
光 基 に よ る光 吸 収 率,Φ:架
橋
光 基 の モ ル 分 率.
d. 光 に よ り高 分 子 の 極 性 を 変 化 さ せ る タ イ プ
高 分 子 化 合 物 が 溶 剤 な ど
へ 溶 解 す る原 理 と して 大 き く分 け る と,高 分 子 と溶 剤 の溶 解度 パ ラ メ ー タの 近 い 組 み合 わ せ を用 い る方 法,酸 ‐塩 基 中和 を利 用 して溶 解 させ る 方 法 に分 類 され る. 図4.5に
示 す 例 は ポ リ(p-ホ
転 位 を 起 こ し,ポ
リ(p-ヒ
ル ミル オ キ シ ス チ レ ン)が 光 照 射 に よ り フ リー ス ド ロ キ シ ス チ レ ン)に 変 化 しア ル カ リ水 溶 液 に 可 溶
性 に な る もの で あ る5,10). e. 感 光 物 質 と高 分 子 との 相 互 作 用 を変 化 させ る タ イ プ
高 分 子 の分 子 量 は
変 化 し な い が,高 分 子 に 内 在 す る極 性基 が 共 存 物 質 とコ ンプ レ ッ ク ス形 成 な どの 相 互 作 用 を して お り,光 に よ りそ の相 互 作 用 が解 除 され る こ とに よ り溶 解 性 が 向 上 す る タ イ プ の感 光 性 高 分 子 が あ る.最
もよ く知 られ,か
つ重 要 な例 は ノ ボ ラ ッ
ク樹 脂 とo-ナ フ トキ ノ ン ジ ア ジ ド-5-ス ル ホ ン酸 エ ス テ ル(o-NQD)の で あ り,印 刷 用PS版
や微 細 加 工 用 レ ジ ス トと して 現 在 もな お 不 可 欠 な材 料 で あ
る.そ の パ タ ー ン形 成 の 機 構 は図4.6の よ うに,ク
混合 系
モ デル で説 明 され る.よ
く知 られ て い る
レ ゾー ル 型 ノ ボ ラ ッ ク樹 脂 は フ ェ ノ ー ル の存 在 に よ り希 ア ル カ リ水 溶
液 に可 溶 で あ る.し か し,o-NQDを
混 合 す る と フ ェ ノ ー ル グ ル ー プ との 水 素 結
合 に よ り希 アル カ リ水 溶 液 に対 す る溶 解 性 が 著 し く低 下 す る.し か し,350∼440 nmの
光 を照 射 す る と溶 解 性 が 上 昇 し ク レ ゾ ー ル 型 ノ ボ ラ ッ ク樹 脂 自体 よ り,い
っ そ う高 い溶 解 性 を 示 す よ うに な る.こ の 露 光 前 後 の溶 解 性 の 差 を利 用 し て ポ ジ
図4.5 側鎖官能基 の光 反応 による高分子 極 性の変化
図4.6 o-ナ
フ トキ ノ ン ジ ア ジ ド-5-ス ル ホ ン酸 エ ス テ ル ‐ク レ ゾ ー ル 型 ノ ボ
ラ ッ ク樹 脂 の フ ォ ト レジ ス トの 原 理
型 フ ォ トレ ジ ス トと して の機 能 を発 揮 す る.o-NQDの うに非 水 溶 性 のo-NQDが
光 反 応 は図4.6に
示すよ
光 に よ り窒 素 分 子 を放 出 し,吸 着 水 の 存 在 で イ ン デ ン
カ ル ボ ン酸 誘 導 体 に変 化 す る.露 光 前 のo-NQDが
溶 解 阻 止 剤 と して作 用 し,イ
ン デ ン カ ル ボ ン酸 は反 対 に ノ ボ ラ ッ ク樹 脂 の ア ル カ リ水 溶 液 へ の溶 解 性 を促 進 す る た め 露 光 部 と非 露 光 部 で 溶 解 性 に大 き な変 化 が 生 じる.
f. 光 触 媒 に よ り高 分 子 内 の 官 能 基 を 変 化 させ る タ イ プ(化 学 増 幅 型 レジ ス ト)光
に よ り触 媒 物 質 を生 成 す る前 駆 体 を,適 当 な 高 分 子 化 合 物 に共 存 させ
て お き,露 光 に よ り生 成 す る物 質 を触 媒 的 に利 用 して 高 分 子 の 官 能 基 を変 化 させ る機 構 の感 光 性 高 分 子 で あ る. 微 細 加 工 の 分 野 で短 波 長 光(248∼193nm)露 た"化
光 用 の レ ジ ス ト と して 開 発 さ れ
学 増 幅 型 レ ジ ス ト"5)を例 とす る と図4.7の
行 わ れ る.ポ
リ(p-ヒ
よ うな 機 構 でパ タ ー ン形 成 が
ドロ キ シ ス チ レ ン)の 水 酸 基 をtert-ブ
トキ シ カ ル ボニ ル
基 で ブ ロ ッ ク した 高 分 子 を合 成 す る.こ の高 分 子 は水 酸 基 が 保 護 され た構 造 で, 本 来 可 溶 性 で あ る 塩 基 性 水 溶 液 に 不 溶 性 に な る.こ の 高 分 子 に 光 酸 発 生 剤 (photoacid
generator;PAG)と
して ジ フ ェ ニ ル ヨー ドニ ウ ム ・SbF6を 少 量 加
え て フ ォ トレ ジ ス トとす る.露 光 に よ り強 酸 が 発 生 し,さ ら に加 熱 す る こ とで保 護 基 のtert-ブ
トキ シカ ル ボ ニ ル 基 が脱 離 し て水 酸 基 が 復 元 し,塩 基 性 水 溶 液 に
可 溶 性 に な る.こ の 反 応 で 酸 は触 媒 的 に 作 用 し何 度 も反 応 に 関 与 で き る.こ の酸 の プ ロ トン の 反 復 使 用 が 増 幅 に相 当 す る.ま た,酸
濃 度 は露 光 直 後 で は表 面 近 傍
で 高 く底 辺 付 近 で 低 い が,加 熱 工 程 な どで 平 均 化 され る こ と もあ り,露 光 後 の レ ジ ス トの プ ロ フ ァ イ ル は す ぐれ て い る.た だ し,レ
ジ ス ト表 層 で 大 気 と接 触 して
い る と こ ろ は,空 気 中 の塩 基 性 物 質 で 酸 が 中和 され る表 面 層 の不 溶 化 が 生 じる傾 向 が あ り,こ の現 象 を防 ぐた め の 工 夫 が 行 わ れ て い る.
図4.7
ポ リ(tert-ブ
トキ シカ ル ボ ニ ル オ キ シ スチ レ ン)と
光 酸発生 剤
か らな る化 学 増 幅 型 レ ジ ス トの 原 理
g. 分 子 量 が 変 化(減
少)す
るタイプ
光 に よ っ て 線 状 高 分 子 の 主 鎖 が 切
断 され 分 子 量 が 低 下 す る高 分 子 や,分 解 し て 出 発 の モ ノ マ ー に戻 る高 分 子 な ど も 開 発 さ れ て い る.分 子 量 の低 下 に よ り不 溶 性 で あ った もの が 可 溶 性 に な った り, 固体 薄 膜 が ガ ス状 に な った りす る興 味 あ る高 分 子 も得 られ て い る(図4.8). h. 架 橋 の 切 断 に よ り可 溶 化 させ る タ イ プ
最 初 に 三 次 元 網 目構 造 を有 し,
した が っ て 不 溶 性 の 高 分 子 の架 橋 を光 に よ っ て 切 断 して 可 溶 性 化 す るタ イ プ の フ ォ トレ ジ ス トもあ る.ビ ニ ル エ ー テ ル に よ る架 橋 構 造 を酸 分 解 して二 次 元 化 す る 例 を 図4.9に
示 す.
図4.8 光 分 解,光
図4.9
解 重 合 に よ る分 子 量 の 低 下
光 に よ る架橋 切 断 と フ ォ トレ ジ ス トへ の 応 用 例
i. 光 重 合 に よ る分 子 量 の 増 大 お よ び 架 橋 形 成 を利 用 す る タ イ プ
ビニ ル 基
や エ ポ キ シ基 を含 む 化 合 物 は連 鎖 重 合 し数 百 ∼ 数 千 の モ ノ マ ー 分 子 が つ なが り高 分 子 化 合 物 を形 成 す る.連 鎖 重 合 す る前 の 化 合 物 を単 量 体(モ ー が 連 鎖 重 合 して つ な が っ た 多 量 体(ポ
ノ マ ー),モ
ノマ
リマ ー)を 高 分 子 化 合 物 とい う
.エ チ レ
ン,ス チ レ ン,塩 化 ビニ ル な どの モ ノマ ー は気 体 や 液 体 で あ るが,重 合 した ポ リ エ チ レ ン,ポ
リス チ レ ン,ポ
知 られ て い る よ う に,著 起 こる が,モ
リ塩 化 ビニ ル は 固体 の フ ィル ム や チ ップ と し て よ く
し い物 性 の 変 化 を示 す.連 鎖 重 合 は重 合 開 始 種 の 存 在 で
ノマ ー の性 質 に よ り フ リー ラ ジ カ ル,カ チ オ ン,ア ニ オ ン の いず れ
か の開 始 種 を必 要 と し,そ れ ぞ れ ラ ジ カル 重 合,カ 呼 ばれ る(図4.10参
照).こ
チ オ ン重 合,ア
ニ オ ン重 合 と
れ らの連 鎖 重 合 を感 光 材 料 とし て応 用 す る場 合 は,
何 らか の基 質 に モ ノ マ ー を結 合 させ た状 態 で使 用 す る.ま た,光 は 開 始 種 が 光 に よ っ て フ リー ラ ジ カ ル,カ
重 合 させ る場 合
チ オ ン,ま た は,ア ニ オ ン を生 成 す る
光 重 合 開 始 剤 が 用 い ら れ るが,実 用 的 に は ラ ジ カ ル重 合 とカ チ オ ン重 合 が 利 用 さ れ る.ア ニ オ ン重 合 は水 や 不純 物 の影 響 を受 け る た め,現 在 の と こ ろ実 用 的 な感 光 材 料 と して は用 い られ て い な い. 光 ラ ジ カ ル 重 合 の 素 反 応 と反 応 速 度8,9) これ まで,ラ
ジ カ ル 重 合 が最 も一 般 的 に使 わ れ て い る.こ れ は,水 や 不 純 物 の
影 響 を受 け に く く材 料 化 に 際 して 種 々 の 添 加 剤 や 色 素 類 と混 合 し て も,選 択 的 に モ ノ マ ー 同 士 が 反 応 す る点 で有 利 で あ る.た だ し,空 気 中 の酸 素 に よ り重 合 阻 害 が あ り,こ れ を防 止 す るた め の工 夫 が 必 要 で あ る.光 ラ ジ カ ル 重 合 は基 本 的 に下 式 に示 す素 反 応 に従 っ て 進 む と され る.
開
始
(4.6) (4.7) (4.8)
成
長
停
止
(4.9) (4.10) (4.11)
連 鎖 移 動
(4.12) (4.13) (4.14)
図4.10 光 ラ ジカ ル 重 合,光
こ こ で,Ri:初 Φ:ラ [In]:開
カ チ オ ン重 合,光
開 環 重 合 の モ デル
Rp=kp[R・][M]
(4 .15)
Rt=kt[Pn・][Pm・]
(4 .16)
Rtr=ktr[p・][S]
(4.17)
Rp′=kp′[S][M]
(4 .18)
期 重 合 速 度,λ:照
射 光 波 長,I0λ:波
長 λ に お け る 照 射 光 強 度,
ジ カ ル 生 成 の 量 子 効 率,ε λ:波 長 λ に お け る 開 始 剤 の 分 子 吸 光 係 数, 始 剤 の 濃 度,L:光
路 長,Pm・,Pn・:成
長 ラ ジ カ ル,S:連
鎖 移 動 剤,
kp:成
長 の 速 度 定 数,kt:停
止 反 応 の速 度 定 数,ktr:連
す.こ
れ らの 素 反 応 か らモ ノ マ ー の重 合 速 度(コ
鎖 移 動 の 速 度 定 数 を表
ンバ ー ジ ョン)d[M]/dtは
次
式 で 表 され る.
(4.19) こ こ で,(-2.3ε
λ[In]L)が
小 さ い 場 合 は 式(4.19)は
式(4.20)で
近 似 で き
る.
(4.20) また,光 重 合 開 始 剤 が照 射 光 量 に対 して 一 次 反 応 で 減 少 す る場 合 は,光 照 射 時 間 に 対 す るモ ノ マ ー濃 度[M],お の比 率 は そ れ ぞ れ 式(4.21)と
よび,十 分 に光 照 射 した と きの 残 存 モ ノ マ ー 式(4.22)で
表 され る.た だ し,こ の よ うな反 応
速 度 は上 記 の 素 反 応 が 化 学 量 論 的 に進 む 条 件 の と き に得 られ る.実 際 の 材 料 で は モ ノマ ー の 重 合 に伴 い マ ト リッ ク ス が硬 化 した り,開 始 剤 の分 子 占有 体 積 とマ ト リ ッ ク ス ポ リマ ー の ガ ラス転 移 点 の 関 係 や さ ま ざ ま な条 件 が 重 な るた め,上 式 の 通 りに は進 まな い場 合 もあ る.
(4.21)
(b) 固形 感 光 性 樹 脂
(a) 液 状 感 光 性 樹 脂 図4.11 光 重合 型 モ ノマ ー を用 い た感 光 性 樹 脂 の 基 本 的 な組 成
(4.22) ラ ジ カル 重 合 性 モ ノ マー を 用 い て 感 光 性 高 分 子 を作 り上 げ る際 に は基 本 的 に は図 4.11の 組 成 か ら構 成 され る.塗 料 や 印 刷 イ ン キ の よ うな 液 体 材 料 は(a),ま 固 層 や フ ィル ム状 で 使 用 す る場 合 は(b)の Bootsは
た,
よ う な組 成 とす る.
四 官 能 モ ノマ ー が重 合 す る過 程 を 図4.12の
よ う に コ ン ピ ュー タ シ ミ
ュ レ ー シ ョン で 示 し て い る6).ラ ジ カ ル が 生 成 した 点 か ら重 合 が 始 ま り連 鎖 的 に つ な が って ゆ き,最 終 的 に全 体 が 固 相 に な る6). よ く使 用 さ れ る ラ ジ カル 重 合 性 モ ノ マ ー はア ク リル酸 エ ス テ ル(一 般 的 に ア ク リレ ー ト とい う)で あ るが,低 分 子 量 の ア ク リレ ー トモ ノマ ー は揮 発 性 の 液 体 で あ り,有 害 な もの も多 い の で そ の ま ま で は使 用 で きな い.通 常,適 オ リゴ マ ー(バ
当な分子量の
ラス ト)に ア ク リ レー トモ ノマ ー を数 分 子化 学 的 に組 み込 み,反
応 性 オ リゴ マ ー(プ
図4.12
レポ リマ ー と もい う)の 形 に して 使 用 す る(図4.13).プ
四 官 能 モ ノマ ー が 重 合 し て ポ リマ ー 化 す る際 の シ ミュ レー シ ョ ン
レ
図4.13
プ レ ポ リマ ー の設 計 例
表4.3(a)
a25℃
表4.3(b)
水 溶 液
種 々のモノマーの連鎖長
,b40℃
純 モ ノ マ ー.
種 々 の モ ノマ ー の重 合 熱,重
aア ク リ ロイ ル基 当 た りの モ ル 反 応 熱
合 速 度,活
性化 エネルギー
,bd[M]/[M]dl%,c重
合
の ピー ク速 度 の 温 度 依 存 性 よ り計 算.
ポ リマ ー は光 硬 化 後 の 樹 脂 物 性 を決 め る役 割 を す る た め使 用 目的 に応 じて 設 計 す る.例
と して 光 接 着 剤 の た め に合 成 され た プ レ ポ リ マ ー に つ い て各 部 の 役 割 を示
す.ま た,よ
く用 い られ る ラ ジ カ ル 重 合 型 の モ ノマ ー の例 を表4.3に
示 す.
光重合開始 剤 ⅰ) ラ ジ カ ル 重 合 開始 剤: 光 重 合 型 の 感 光 性 樹 脂 で 開 始 剤 は 光 の取 り入 れ
口 で あ る の で 反 応 の開 始 に と り最 も大 事 な 組 成 物 で あ る.感 度,感 との 接 着 性,安
光 波 長,基 板
定 性 な どに も影 響 す る.開 始 剤 は非 常 に多 く開 発 され て い るが,
実 用 化 され て い る もの は あ ま り多 くな い.モ
ノ マ ー との 相 溶 性,貯
蔵 安 定 性,基
板 との 接 着 性 に す ぐれ,黄 変 性 が な い こ と,の ほ か に も安 全 性 な ど さ ま ざ まな性 質 が 要 求 さ れ る た めで あ る. 重 合 開 始 剤 と して は単 分 子 系 と二 分 子 系 が あ る.前 者 は単 独 で 開 始 種 を生 成 す る タ イ プ,後 者 は 単 独 で もよ い が,他
の 適 当 な促 進 剤 や 色 素 と組 み合 わ せ て使 う
こ とが 多 い.そ の場 合,感 度 が 著 し く高 くな っ た り,可 視 光 で も重 合 を開 始 した りす る.特 に後 者 は レー ザ 記 録 や ホ ロ グ ラ ム 記 録 に使 用 す る際 に可 視 光 波 長 域 に 感 光 性 を広 げ る た め に利 用 さ れ る(表4.4). マ ト リ ック ス ポ リマ ー 中 で の重 合 反 応 は,マ 転 移 点)に
ト リ ッ ク ス高 分 子 のTg(ガ
ラス
よ る影 響 を顕 著 に受 け る.い わ ゆ る反 応 場 の 問題 で マ トリ ッ ク ス ポ リ
マ ー の 自由 体 積 率 に モ ノマ ー の重 合 が 影 響 を受 け る.マ
ト リ ック ス のTgが
高い
と光 で生 成 し た 開始 ラ ジカ ル の マ ト リ ック ス 中 で の 移 動 が抑 制 され モ ノ マ ー と反 応 す る速 度 が 低 下 す るた め,重 合 反 応 の速 度 も低 下 す る.こ の 間,ラ
ジ カル が 酸
素 に よ り消 滅 し,重 合 の 連 鎖 数 が低 下 し て結 果 的 に感 度 の低 下 につ な が る.ラ ジ カ ル の動 き を 阻 害 しな い た め に は,Tgの
低 い マ トリ ッ ク ス を 選 ぶ か,開
始 ラジ
カ ル の分 子 サ イ ズ を小 さ くす る か の 方 法 を考 え る必 要 が あ る.現 実 の材 料 系 で は 高 分 子 をバ イ ン ダー とす るマ トリ ッ ク ス 中 で の 反 応 を行 う場 合 が 多 い た め,単 純 な 溶 液 中 で の 光 化 学 反 応 の ほか に さ ま ざ ま な 因 子 の 影 響 を受 け る こ とに な る. Molaire7)はTgの
異 な る4種 の バ イ ン ダ ー ポ リマ ー(Tg以
ほ ぼ 同 じ に設 計)を
合 成 し,こ れ らの バ イ ンダ ー の それ ぞ れ にア ク リレ ー トモ ノ
マ ー と重 合 開 始 剤 を加 え た4種 類 の 異 な っ たTgを に,図4.14に のTgお
外 の化学 的性 質 は
もつ感 光 層 を作 成 し た.さ
ら
示 す 分 子 サ イ ズ の 異 な る2種 類 の 開 始 ラ ジ カル を 用 い て,感 光 層
よ び開 始 ラ ジ カル の分 子 サ イ ズ と感 光 層 の 感 度 の 関 係 を 具 体 的 に示 し て
い る.表4.5に
は それ らのバ イ ン ダ ー のTgお
ノ マ ー と重 合 開始 剤 を加 え た感 光 層 のTgを
よび,そ れ ぞ れ の バ イ ン ダ ー にモ 示 す.
光 重 合 開 始 剤 と し て,ミ ヘ ラ ー ズ ケ ト ン(MK)/ベ
ン ゾ フ ェ ノ ン(BP)二
子 系,お
メチ ル ア ミノ安息 香酸 エ
よび,2-ク
ロ ロ チ オ キ サ ン トン(CTX)/p-ジ
チ ル エ ス テ ル(EDAB)二
分 子 系 の2種
類 を 用 い た.こ
れ らは 図4.14に
分
示 され
る よ う な光 化 学 反 応 を経 て,ミ ヘ ラ ー ズ ケ トン ラ ジ カ ル とp-ジ メ チ ル ア ミノ 安
表4.4
主 な 光 ラ ジ カ ル 重 合 開 始 剤1-3,8-10)
図4.14
二 分 子 系 光 ラ ジカ ル 重 合 開 始 剤 の重 合 開 始 ラ ジ カル の 生 成過 程
(a)ミ
ヘ ラー ズ ケ トン(MK)/ベ
MKラ
ジ カ ル が 開 始 種.(b)2-ク
ン ゾ フ ェ ノ ン(BP)二
分 子 系.
ロ ロ チ オ キ サ ン トン(CTX)/
p-ジ メチ ル ア ミノ 安 息 香 酸 エ チ ル エ ス テ ル(EDAB)二 分 子 系. EDABラ ジ カル が 開 始 種.こ れ ら2種 の 開 始 種 の 分 子 サ イ ズ が 異 な る こ とに注 意.
息 香 酸 ラ ジ カ ル を生 成 す る が,ラ
ジ カ ル分 子 の サ イ ズ は後 者 が 前 者 の 約 半 分 ぐ ら
い に な る. 表4.5に
示 した4種 類 の感 光 層 で 光 硬 化(重
合 して感 光 層 が 現 像 液 に不 溶 化)
の 速 さ(感 度)を
露 光 時 の 温 度 を 変 え て 求 め た.開 始 系 と してCTX/EDABを
使 用 した 場 合,露
光 時 の 温 度 が30℃,40℃,50℃
と高 く な る に従 い感 度 は 高 く
表4.5
4種 の ガ ラ ス 転 移 点(Tg)を
もつ高 分子 バ イ ン
ダー とそ れ らに ア ク リ レー トモ ノ マ ー と光 重 合 開 始 剤 を含 む 感 光 性 樹 脂 層
な る.こ
れ は,連
鎖 重 合 速 度 が 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を もつ こ と が 主 な 原 因 で あ る.
し か し,PIT(40)A,PIT(60)A,PIT(70)AとTgの に 対 し て 各 温 度 で の 感 度 はTgと 一 方,開
始 系 にMK/BPを
温 度 を41℃ (75)Aと ち,感
無 関 係 に 同 一 で あ る こ とが わ か っ た.
使 用 し て 同 様 の 感 度 測 定 を 行 っ た 場 合 は,露
光 時
に 固 定 し た も の で あ る がPIT(30)A,PIT(40)A,PIT(50)A,PIT
感 光 層 のTgと 光 層 のTgが
こ こ で,感
異 な る それ ぞ れ の感 光 層
の 関 係 を み る と,こ
れ ら の 間 に 強 い 相 関 が あ る.す
高 くな る に 従 い 感 度 は 著 し く低 くな る こ と が 示 さ れ た.
度 は 次 の よ う に 定 義 さ れ て い る.一
を 通 し て 露 光,現
定温度 中でステ ップタブレ ッ ト
像 し た 後 に 感 光 層 が 不 溶 化 し た 最 小 エ ネ ル ギ ー(ス
レ ッ トの 光 透 過 率Tr)を ロ ッ トす る.こ
なわ
求 め,露
光 時 間 を 横 軸 に と り,1/Trを
れ ら の 直 線 の 勾 配,d(1/Tr)/dtを
テップタブ
縦 軸 に とっ て プ
感 度(Em)と
定 義 す る(式
4.23).
(4.23) 図4.15の
グ ラ フ の よ う に,横
と の 差(T-Tgc)を
と り,そ
軸 に そ れ ぞ れ の 感 光 層 のTgcと
得 ら れ た 感 度 に つ い て は,(71一Tgc)と ら(T-Tgc)が 4.16で
露 光 時 の 温 度T
の 感 度 と の 関 係 を プ ロ ッ ト し た.例
え ば,71℃
感 度 の 関 係 を プ ロ ッ トす る.こ
大 き い ほ ど 感 度 も 高 く な る こ と が 直 接 示 さ れ る.さ
は 横 軸 に そ れ ぞ れ の 感 光 層 の 自 由 体 積 率V∫
ッ ト し 直 し た グ ラ フ を 示 す.Vfは
感 光 層 の 自 由 体 積 率 を 表 し,感
転 移 温 度 に お け る 自 由 体 積 率 をVfgと こ こ で 重 要 な こ と は(T-Tgc)=0に が ゼ ロ と い う こ と は,光 な い こ と を 意 味 す る.
を と り図4.15の
す る と,式(4.24)の
で
の関係 か ら に,図
結果 をプロ 光層 のガ ラス
関 係 が 得 ら れ る.
な る と 感 度 も ゼ ロ と な る こ とで あ る.感
度
で 生 成 した重 合 開 始 種 が 感 光 層 中 で拡 散 す る こ とが で き
図4.15
図4.14(b)の 51℃,71℃
実験 を露光時温度 で 行 い,露
と感 光 層 のTgの
図4.16 横 軸 に 感 光 層 の 自 由 体 積 率 を と り 図4.15
光 時 温 度T
の値 を プ ロ ッ ト した 結 果
差,(T-Tgc)を
横 軸 に と り,縦 軸 の 感 度Sと
の関
係 をプ ロ ッ ト した グラ フ
(4.24) 以 上 の実 験 は光 重 合 開 始 剤 と し て,MK/BP二
分子 系開 始剤 を用 いて行 われ
た.こ の 結 果 を ま と め る と開 始 剤 系 でMK/BPで
は感 光 層 の ガ ラ ス 転 移 点 に よ
っ て 感 度 が 影 響 を受 け るが,開
始 剤 系 がCTX/EDABで
こ とが 示 され て い る.こ の 差 異 は 開始 種(ラ を 受 け,EDABラ ル とEDABラ
は その影響 を受 けな い
ジ カ ル)がMKラ
ジカル で は影響
ジ カ ル で は影 響 を 受 け な い こ と を意 味 して い る.MKラ
ジカ
ジ カ ル の分 子 占有 体 積 に大 きな 違 い が あ り,後 者 は前 者 の約 半 分
で あ る.そ の 開 始 ラ ジ カ ル の 分 子 サ イ ズ は小 さい こ とが 感 度 に とっ て重 要 な因 子 とな る. 表4.6に4種
の 開 始 系 に つ い て 自 由体 積 率(ガ
ラ ス転 移 点)の
影 響 を比 較 す る
と,開 始 ラ ジ カ ル の 分 子 サ イ ズ の 影 響 が はっ き り と示 さ れ て い る.ま た,反 対 に 感 光 層 の ガ ラ ス転 移 点 が 高 い場 合 は感 度 が低 下 す るか,低 温 で 感 度 を ほ とん ど示 さ な い こ とに な る. この よ う に光 重 合 系 で の感 度 はバ イ ンダ ー 高 分 子 また は 感 光 層 のTgな め て考 察 す る必 要 が あ り,そ の場 合 の感 度 は 式(4.25)を
ど も含
用 い て 表 さ れ る.マ
ト
リ ッ クス 中 で モ ノ マ ー が 重 合 す る に従 い マ ト リッ ク ス層 は全 体 的 に硬 くな るが, これ は ガ ラス 転 移 点 が 上 昇 す る こ とを意 味 し,同 時 に高 分 子 と し て の 自由 体 積 率 が 小 さ くな る こ と と同 義 と考 え られ る.ま た,重 合 が 進 む に従 い,架 橋 密 度 も高 くな りラ ジカ ル の拡 散 を抑 制 す る.
表4.6
重 合 開 始 ラ ジ カ ル 種 の 分 子 サ イ ズ と感 光 層 のTg依
存性
(4.25) た だ し,Vf:感
光 層 の 温 度Tで
の 自 由 体 積 率,Vm:モ Tgc:感
の 自 由 体 積 率,Vfg:感
ノ マ ー の 体 積 分 率,Tr:感
光 層 の ガ ラ ス 転 移 点,αc:感
熱 膨 張 係 数 過 剰 分,αm:モ
ⅱ)
ノ マ ー の 熱 膨 張 係 数 過 剰 分,T:絶
体 定 数,A:衝
マ ー と し て エ ポ キ シ 環,オ
ど のPF6-,お
よ びSbF6-塩,鉄
対 温 度,Tgp:バ
ノ マ ー の ガ ラ ス 転 移 点,E:活
ニ ル エ ー テ ル 基,ま
性 化
た は ア リル 基 な ど
ポ キ シ 基 を 含 む モ ノ マ ー は 図4.17の
合 し実 用 的 に も重 要 な 材 料 と な っ て い る.エ て 芳 香 族 ジ ア ゾ ニ ウ ム,ト
リマ ー の
カ チ オ ンや ル イ ス酸 に よ っ て 重 合 す る モ ノ
キ セ タ ン 環,ビ に,エ
度,
突 確 率.
光 カ チ オ ン 重 合 と開 始 剤:
が よ く知 ら れ て い る.特
光 層 の 光 透 過 率,Em:感
光 層 の 熱 膨 張 係 数 過 剰 分,αp:ポ
イ ン ダ ー ポ リ マ ー の ガ ラ ス 転 移 点,Tgm:モ エ ネ ル ギ ー,R:気
光 層 のガ ラス転 移 点で
よ う に光 重
ポ キ シ類 の 光 開 環 重 合 の 開 始 剤 と し
リ フ ェ ニ ル ス ル ホ ニ ウ ム,ジ
フ ェ ニ ル ヨー ドニ ウム な
‐ア レ ー ン 錯 体 な ど が 知 ら れ て い る(図4.18).
図4.17
エ ポ キ シ モ ノ マ ー の ル イス 酸 に よ る開 環 重 合
図4.18
エ ポ キ シ モ ノ マ ー の光 重 合 開 始 剤
また,ビ ニ ル エ ー テ ル 基 な どで は光 で ブ レ ン ス テ ッ ド酸 を生 成 す る化 合物 が 開 始 剤 と し て用 い る こ とが で きる.こ の よ うな,光 ド酸 を生 成 す る化 合 物 は,Crivelloら い る8-10).ま た,こ
に よ りル イ ス 酸 や ブ レ ンス テ ッ
に よ りオ ニ ウ ム 塩 と して数 多 く開発 さ れ て
れ らオ ニ ウム 化 合 物 の 強 酸 塩 は カ チ オ ン重 合 開 始 剤 の ほ か に
も,前 述 の化 学 増 幅 型 レ ジ ス トに お け る酸 発 生 剤 と して も重 要 な物 質 で あ る た め,精 力 的 な研 究 が 行 わ れ て い る.ジ ア リー ル ヨー ドニ ウ ム塩 は溶 媒(SH)中 で 下 記 の機 構 で 酸 を 生 成 す る と説 明 され て い る.ト
リア リー ル ス ル ホニ ウ ム塩,
ト リア リー ル セ レ ノ ニ ウム 塩 な ど も類 似 の 機構 で 酸 を生 成 す る.
ス ル ホ ン酸 塩 類 も,光 酸 発 生 剤 と して 多 くの化 合 物 が 研 究 さ れ て い る.光 酸 発 生 剤 は短 波 長 光 露 光 用 と して活 発 に研 究 され て い るが,近 紫 外 線 や 可 視光 線 露 光 用 の感 光 性 高 分 子 に も応 用 さ れ て い る.こ れ らの 化 合 物 を,図4.19に
まとめて
図4.19
光酸 発生剤の例
図4.20
光酸発生剤の可視光増感色素
示 す. また,近 紫 外 線 や 可 視 光 に感 光 す る酸 発 生 剤 の 研 究 も行 わ れ て い る.主 な例 を 図4.20に
紹 介 す る.
4.1.3 感 光 性 樹 脂 の 評 価 因子 a. 相 対 感 度 と測 定 法
フ ォ トポ リマ ー の場 合 の 感 度 は,露 光,現
の 処 理 を完 了 した 後 に,最 初 の膜 が 何%残
像な ど
っ て い る か を測 定 して 求 め る.そ
し
て,横 軸 に 露 光 エ ネ ル ギ ー を,ま た,縦 軸 に残 った膜 の厚 さ(場 合 に よ って は重 量)を 表 示 す る.ま た,ポ 示 す.ネ
ジ型 の 場 合 は最 初 の塗 布膜 厚 に対 し て現 像 後 の膜 厚 を
ガ 型 もポ ジ 型 も露 光,現
像,乾 燥 な どの 工 程 を経 た 後 の厚 み を と るた め
に,当 然 支 持 体 や 表 面 の 性 質 や平 滑 度,現 像 液 の 種 類 や 濃 度 な どの因 子 を含 む 相 対 値 で あ る.
b. 感 度 曲 線 の 作 成 は感 度 曲線 を描 き,こ
基 板 に塗 布 さ れ た 比 較 的 薄 い 膜 が 形 成 で き る もの で
の 曲線 か ら材 料 と して の評 価 を行 う.下 記 の感 度 曲 線 は横
軸 に露 光 エ ネ ル ギ ー を,縦 軸 に は露 光,現 像 後 に 基 板 に残 った 膜 の 厚 さ を記 録 す る.感 光 性 高 分 子 で は光 照 射 に よ り,ネ ガ 型 とポ ジ型 で,そ う な感 度 曲 線 が 得 ら れ る.こ
の感 度 曲 線 か ら感 度(mJ/cm2)や
れ ぞ れ 図4.21の
よ
ガ ン マ 値(γ)
を求 め る.
図4.21
フ ォ トレジ ス トの 感 度 曲 線
さ ら に,簡 便 な ス テ ッ プ タ ブ レ ッ ト法 も相 対 感 度 値 を求 め るの に よ く利 用 され る.ス
テ ップ タ ブ レ ッ ト法 は光 透 過 率 が90∼0.09%を21段
トを密 着 し て 露 光,現
階 に分 け た タ ブ レ ッ
像 を行 い,現 像 後 に膜 が残 り始 め る ス テ ップ の光 透 過 率 を
求 め る.照 射 光 強 度 がI0,n番
目 の ス テ ップ を通 過 した 光 の強 度InはI0×Tnで
あ り,露 光 時 間,tの
と きn番
目 の ス テ ップ で膜 が 残 り始 め た とす る と,そ の 高
分 子 薄 膜 の 感 度Enは
式(4.26)で
表 す. (4.26)
この 際,I0をmJ/cm2単
位 で 表 示 す れ ば感 度 も こ の単 位 で 与 え られ る.
c. 分 光 感 度 の 測 定
分 光 感 度 の 定 義 は,感 光 材 料 が感 光 性 を有 す る波 長 域
とそ こで の 感 度 をい う.多
くの場 合 は感 光 材 料 の感 度(量
子 効 率 で は な い)は
そ
の 中 に 含 まれ る感 光 物 質 の電 子 スペ ク トル の形 状 と対 応 す る.分 光 感 度 は分 光 写 真 機 を用 い て測 定 で き る.原 理 的 に は光 源 の光 を 回 折 格 子 に よ り分 光 し,基 板 に 塗 布 した 感 光 材 料 に照 射 し て現 像 す る.こ の際,感 光 材 料 の位 置 を動 か しな が ら 露 光 時 間 を長 い 方 か ら段 階 的 に短 く して 露 光 す る.露 光 時 間 が 短 くな る に従 い感
図4.22 分 光 感 度 写 真 の 記 録 装 置 の例
度 の 高 い 波 長 が最 後 まで 感 光 す るた め,現 像 後 山型 のパ ター ンが 形 成 され ピ ー ク 波 長 が 最 も感 度 が 高 い こ とを 示 す. また,別
の 方法 と して ス リ ッ ト幅 が 下 か ら上 方 向 に対 数 的 に狭 くな る入 射 ス リ
ッ トを 用 い る と1回 の 露 光 で 山型 の 感 度 パ タ ー ンが 形 成 され る.し か し,い ず れ の 場 合 も照 射 光 自体,波
長 に対 して 強 度 分 布 を有 す る た め,得
られ た分 光 感 度 パ
ター ン を 波 長 ご とに光 源 の 強 度 で補 正 し て規 格 化 す る必 要 が あ る.こ の手 数 を省 くた め光 源 の 波 長 ご とに 自動 的 に照 射 時 間 を調 節 して 露 光 す る装 置 も開発 され て い る. 4.1.4 増
感
種 々 の感 光 物 質 を材 料 の感 光 素 子(要
素)と
して 用 い る際,材 料 感 度 の 向上,
す な わ ち増 感 が 必 要 な場 合 が し ば しば あ る.増 感 は分 光 増 感 と化 学 増 感 に分 類 さ れ る.前 者 は使 用 す る化 学 物 質 が,本 よ う にす る 方 法,す
来 光 を吸 収 しな い 波 長 領 域 の光 に感 光 す る
なわ ち,感 光 波 長 域 を広 げ る 方 法 で あ る.後 者 は そ の化 学 物
質 が感 光 す る波 長 で の 感 度 を向 上 さ せ る方 法 で あ る. a. 三 重 項 ‐三 重項 エ ネ ル ギ ー移 動 に よ る増 感1)
けい皮 酸 の光二 量化 反応
の 分 光 感 度 を観 測 す る に あ た り,そ の電 子 スペ ク トル は図4.23の 付 近 に吸 収 ピ ー ク を示 し,330nm付
よ う に270nm
近 まで しか 吸 収 を示 さ な い.し
た が っ て,
け い皮 酸 が 反 応 す るた め に は この ス ペ ク トル で 吸 収 を 有 す る波 長 域 の光 を照 射, 吸 収 させ な けれ ば な らな い こ とは い うま で も な い.
図4.23
ポ リ(け い 皮 酸 ビニ ル)の 吸 収(電 スペ ク トル(破
線)と
子)
中圧水銀 ランプの
発 光 波 長 と相 対 強 度
しか し,実 際 に使 用 す る場 合 は ガ ラ ス板 や フ ィル ム を通 して 露 光 す る た め 短 波 長 光 は カ ッ トされ,365∼436nmの
光 で 露 光 し な け れ ば な ら な い こ とが 一 般 的 で
あ る.そ の た め,増 感 剤 を 添 加 し これ ら長 波 長 光 で 反 応 す る よ う に設 計 す る.い くつ か の増 感 機 構 が あ る が,け
い皮 酸 エ ス テ ル の 二 量 化 反 応 は励 起 三 重 項 状 態 か
ら起 こる こ とが わ か っ て い る.図4.24に
増 感 機 構 の 原 埋 を示 す が,色
素 と して
最 低 励 起 三 重 項 が け い皮 酸 エ ス テ ル の そ れ よ り低 く,三 重 項 エ ネ ル ギ ー は け い 皮 酸 エ ス テル の そ れ よ り高 い エ ネル ギ ー を有 す る色 素 が 増 感 剤 と して の 可 能 性 が あ る.図4.25は
分 光 感 度 を示 し,270∼300nm付
近 と400nm付
近 に二 つ の 山が
あ る.短 波 長 側 は けい 皮 酸 自体 の感 度 で あ り,長 波 長 側 は増 感 剤 に よ る感 度 を 示 して い る.縦 軸 は相 対 感 度 を示 す.
図4.24 三 重 項 ‐三 重 項 エ ネ ル ギ ー 移 動 に よ る分 光 増感 のモデル
図4.25 三 重 項 増感 剤 を加 えた ポ リ(け ビ ニ ル)の 分 光感 度
い皮 酸
(4.27) (4.28) (4.29) (4.30) 増 感 剤 の励 起 三 重 項 状 態 か ら基 質(増 感 され る物 質)の 励 起 三 重 項状 態 へ の エ ネ ル ギ ー 移 動 の 効 率(Ef)は 数)お
よび[A](基
式(4.31)で
表 され,kq(エ
ネル ギー移 動 の速度定
質 の 濃 度)が 等 し い場 合 は増 感 剤 の 励 起 三 重 項 状 熊 の 寿 命
τtが長 い方 が効 率 が 高 くな る. また,式(4.32)に
よ りエ ネ ル ギ ー の ドナ ー とア ク セ プ タ ー の 三 重 項 エ ネ ル ギ
ー 間 の差 を ΔETと す る と,Δlog
kqは ΔET に対 して ほ ぼ直 線 が 得 られ る.三 重
項 エ ネ ル ギ ー の ア ク セ プ タ ー を一 定 に して 三 重 項 エ ネル ギ ー の 異 な る増 感 剤 を変 化 させ て ゆ く と,増 感 し な くな る エ ネ ル ギ ー か ら ア ク セ プ タ ー の 三 重 項 エ ネ ル ギ ー を求 め る こ とが で き る.
(4.31) (4.32) b. 電 子 移 動 に よ る増 感1,2,8-10) 増 感 剤 と基 質 で増 感 剤 を光 励 起 す る こ と に よ り図4.26に
示 され る よ う に増 感 剤 の励 起 状 態(一
重 項 あ る い は三 重 項 励 起 状
態)で 増 感 剤 か ら基 質 へ,ま た 基 質 か ら増 感 剤 へ の電 子 移 動 が 生 じ る.そ して, 電 子 移 動 が 起 こ る結 果,基 質 が分 解 あ る い は反 応 を起 こす 機 構 を利 用 す る増 感 方 法 で あ る. 増 感 剤 か ら基 質 へ の 電 子 移 動 は移 動 に 伴 う 系 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 ΔGが 低
図4.26 励 起状 態 か らの 電 子 移 動 の モ デ ル
い ほ ど高 い 効 率 を 示 す.Rhem-Wellerに 場 合,電
り低 い
子 移 動 は 拡 散 律 速 で 自 発 的 に 起 こ る(Rehm,D.,Weller,A.:Israel J.
Chem.,8,259,1970).希
薄 溶 液 中 で は励 起 状 態 の寿 命 が 長 い三 重項 励 起 状 態 の 方
が 高 い 効 率 を 示 す こ と が 多 い.電 (4.33)で
従 え ば,ΔGが-5kcal/molよ
子 移 動 に 伴 う 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 ΔGは
式
近 似 さ れ る.
(4.33) こ こ で, プ タ ー(A)の
は 電 子 ド ナ ー(S)の 還 元 電 位,E*は
酸 化 電 位,
は電 子 ア クセ
電 子 ドナ ー の 最 低 励 起 エ ネ ル ギ ー を表 す .
表4.7 可 視 光 に感 光 す る開 始 剤 の 例
4.1.5 可 視 光 へ の 増 感 光 重 合 型 感 光 層 を例 に と る と,プ レポ リマ ー は感 度 と光 硬 化 した 樹 脂 の物 理 的 お よび 機 械 的 な 特 性 に,ま た,開 始 剤 は感 光 波 長 と感 度 を支 配 す る.特 に感 光 波 長 は開 始 剤 の感 光 波 長,通 nmの
常 開 始 剤 の 吸 収 ス ペ ク トル に依 存 す る.例
え ば,365
光 で 露 光 す る場 合 は この 波 長 に吸 収 を もつ 開 始 剤 を 用 い る こ と はい う まで
も ない.ま
た,可 視 光 レー ザ で露 光 す る場 合 は レー ザ 光 の波 長(ア
レー ザ で は488nm,514.5nm)を
ル ゴ ンイ オ ン
吸 収 す る開 始 剤 が 必 要 に な る.単 独 で 可 視 光
を吸 収 す る開 始 剤 も種 々 開 発 さ れ て い るが,ラ
ジ カル,あ
る い は カチ オ ン発 生 剤
と増 感 色 素 と を組 み合 わ せ る二 分 子 系 を用 い る場 合 も多 い.光 カ チ オ ン重 合 系 の 樹 脂 を可 視 光 で 反 応 させ る た め に は400∼700nmの
波 長 光 で 酸 を発 生 す る化 合
物 が 必 要 にな る.紫 外 線 の み に感 光 す る酸 発 生 剤 は数 多 く存 在 す る の で,こ れ を 色 素 で 増 感 す る二 分 子 系 タ イ プ が よ く用 い られ る.可 視 光 領 域 に感 光 性 を有 す る 光 ラ ジ カ ル 重 合 お よ び光 カ チ オ ン重 合 開 始 剤 に つ い て 主 な 例 を表4.7に
紹 介す
る.開 始 剤 は感 度 の ほ か,プ
リン ト配 線 板 の よ う な金 属 銅 と接 触 して感 光 層 の寿
命 に影 響 を与 え る もの や,逆
に 金 属 銅 表 面 との 接 着 性 を改 善 す る もの も あ る.ま
た,感 光 層 が 薄 膜 の場 合 と厚 膜 の 場 合 で は,そ れ ぞれ に応 じて 分 子 吸 光 係 数 を選 択 す る こ とが 必 要 で あ る.感 光 層 が 厚 い場 合 は 照 射 光 が な るべ く底 辺 まで 到 達 す る よ うな 設 計 が 行 わ れ な け れ ば な ら な い.図4.27に で の 開始 剤 の 分 子 吸 光 係 数,ε λ,開 始 剤 の 濃 度,[c]が
示 す よ う に 露 光 波 長,λnm 大 きす ぎ る と光 が底 辺 ま
で 十 分 に 届 か な い こ とに な る.
図4.27
感 光 層 の厚 み 方 向 の光 強 度 の変 化
4.1.6 超 微 細 光 加 工 へ の 応 用5) フ ォ トポ リマ ー の 微 細 加 工 へ の応 用 と して は,光 照 射 に よ る屈 折 率 の 変 化 を 用 い るホ ロ グ ラ ム,光 透 過 率 の 変 化 を 用 い る記 録 材 料 な ど個 々 に取 り上 げ る に は例 が 多 す ぎ る.最
も身 近 な もの と して,半 導 体 素 子 や デ ィス プ レ イ の作 製 は光 に よ
り溶 解 性 が 変 化 す る高 分 子 で あ る フ ォ トレ ジ ス トの応 用 で あ る.フ
ォ トレ ジ ス ト
は高 分 子 薄 膜 を 必 要 部 分 に形 成 させ る こ と に よ り,そ の部 分 をエ ッチ ン グ,メ
ッ
キ,蒸 着 な どか ら保 護 す る さ ま ざ まな微 細 加 工 の工 程 で使 わ れ て い る.最 近 の微 細 加 工 は遠 紫 外 線 の 波 長 と同 等 ま た は 同 等 以 下 の線 幅 を作 製 す る.し た が っ て, マ ス ク を通 して 露 光 す る と光 の フ レネ ル 回 折 が 生 じて マ ス ク に忠 実 な パ タ ー ン形 成 が で きな い.回 折 を加 味 した 光 学 像 の 解 像 度(R)と (4.29)お
よ び(4.30)で
表 さ れ る.こ
学 系 の レ ン ズ の 開 口数,Rは
焦 点 深 度(DOF)は
こ で,λ は光 源 の 波 長,NAは
解 像 度,DOFは
式
光源の光
焦 点 深 度 数 を示 す.
(4.34) (4.35) 式(4.34)か
ら 高 解 像 度 化 の た め に は,レ
長 を 短 く す る 方 法 が あ る.前
者 で はNAを
ン ズ のNAを
大 き くす る方 法 と波
大 き くす る と,式(4.35)に
よ り焦
点 深 度 が 浅 くな り レ ジ ス ト層 の 厚 み の 違 い な ど に よ る ピ ン ボ ケ の 可 能 性 が 大 き く な る.し
た が っ て,波
長 を 短 く す る 方 法 が 選 択 さ れ て い る.表4.8に
遷 と そ れ に 伴 う レ ジ ス ト材 料 の 対 応 を ま と め て 示 す.現 ー(光
源 と し てKrFエ
(193nm)リ
キ シ マ レー ザ の248nmを
在 はKrFリ
用 い る)が
DRAMメ
ソグラ フィ
主 流 で あ る がArF
ソ グ ラ フ ィ ー も生 産 ラ イ ン に 組 み 込 ま れ て い る.研
表4.8
解像度 の変
モ リ数 を パ ラ メー タ とす る微 細 加 工 の 推 移
究 レ ベ ル で はF2
図4.28
エ キ シ マ レ ー ザ の157nm光 用 い るEUVリ
の 使 用 が 検 討 さ れ て い る.さ
ら に,13nmのX線
ソ グ ラ フ ィ ー の 実 験 も 行 わ れ て い る.図4.28に
を
各 波 長 の光 に対
し て 使 用 さ れ る レ ジ ス トの 例 を ま と め て 示 す. ⅰ)
g-線 お よ びⅰ-線 リ ソ グ ラ フ ィ ー:g-線
を 使 う 方 法 で 表4.8に さ れ て い た.ポ NQDが
よ れ ば0.50μmの
は 水 銀 ラ ン プ の436nmの
解 像 度,DRAMで
は16Mbitま
輝線 で使 用
ジ 型 と し て は ク レ ゾ ー ル 型 ノ ボ ラ ッ ク 樹 脂 に 下 記 の 構 造 のo-
使 用 さ れ る.o-NQDを
テ トラ ヒ ド ロ キ シ ベ ン ゾ フ ェ ノ ン(THBP)の
図4.28
水 酸 基 に,エ
ス テ ル 化 に よ り2∼4モ
(つ づ き)
ル を 導 入 した もの の 混 合 物 を ノ ボ ラ ッ ク樹
脂 に加 え て使 用 す る.高 解 像 度 を得 るた め に は ノ ボ ラ ック樹 脂 の 選 択 が 重 要 な 要 因 に な る.前 述(図4.6参
照)の 機 構 に従 っ て ポ ジパ タ ー ンが形 成 され る.
ⅰ-線用 に は,光 源 波 長 が365nmでg-線 い た め,365nmに
よ り短 くTHBPの
吸収 の 低 い基 質 が使 用 さ れ る.例
吸 収が 無視 で きな
と して 図4.28の
物 質 な どが
報 告 さ れ て い る. こ れ らのo-NQDが
ノ ボ ラ ッ ク 樹 脂 の水 酸 基 な ど と コ ン プ レ ッ ク ス 形 成 に よ
り,溶
解 抑 制 が 生 じ,露
光 に よ り形 成 さ れ る イ ン デ ン カ ル ボ ン 酸 が 反 対 に促 進 作
用 を 示 し て パ タ ー ン 形 成 が 行 わ れ る.ノ ル,ま
ボ ラ ッ ク 樹 脂 は フ ェ ノ ー ル や ク レ ゾー
た こ れ ら の 混 合 体 を 縮 合 し た も の,分
す る.高
子 量 が 異 な る も の な どが 数 多 く存 在
解 像 度 パ タ ー ン を得 る た め に は これ らノ ボ ラ ック樹 脂 か ら慎 重 な選 択 が
な さ れ て い る. ⅱ)
248nmリ
と し てKrFエ
ソ グ ラ フ ィ ー:パ
タ ー ン 幅 が0.3μmよ
キ シ マ レ ー ザ の248nm光
を 用 い る.し
上 記 のⅰ-線 用 は ノ ボ ラ ッ ク 樹 脂 が248nmに な っ た.そ
こ で,従
り狭 く な る と,光
か し,レ
来 の フ ォ トレ ジ ス ト と は材 料 と反 応 機 構 の 異 な る 新 し い レ ジ
ス トが 使 わ れ る.こ
こ れ は248nmの G.Willsonら た5).ポ
れ は,化
学 増 幅 型 レ ジ ス ト(前
述)と
呼 ば れ て い る .フ
波 長 に 対 し 吸 収 が 小 さ い こ と に よ る.IBM社
リ(p-ヒ
ドロ キ
ド ロ キ シ ス チ レ ン)の
熱 処 理 を 行 う(post
のH.ItoとC.
機構 で ポ ジパ タ ー ン が 形 成 で き る レ ジ ス トを考 案 し 水 酸 基 をtert-ブ
保 護 し た ポ リ マ ー に 光 酸 発 生 剤(photoacid 光 後,加
,ポ
ェノ
使 用 さ れ る.
が 図4.29の
リ(p-ヒ
ジ ス ト と し て,
強 い吸 収 を もつ た め に使 用 で き な く
ー ル 骨 格 を 有 し ア ル カ リ水 溶 液 で 現 像 可 能 な 高 分 子 と し て シ ス チ レ ン)が
源
exposure
トキ シ カ ル ボ ニ ル 基 で
generator)を bake;PEB)と
工 程 で 保 護 基 を は ず し水 酸 基 が 復 元 さ れ,ア
加 え て 露 光 す る.露 露 光 で 生 じた 酸 が 加 熱
ル カ リ現 像 液 に 可 溶 性 と な る .こ
の
際,酸
は 繰 り返 し 作 用 す る た め,露
光 し た フ ォ ト ン 数 よ り多 く の 保 護 基 を は ず
し,こ
の 部 分 が 増 幅 過 程 に な る.露
光 に よ り発 生 す る 酸 は レ ジ ス ト層 の 深 さ 方 向
に 分 布 を 有 す る が,得
られ た パ タ ー ン は ほ ぼ 垂 直 な プ ロ フ ァ イル を もつ 点 で す ぐ
れ て い る.
図4.29
ⅲ) 248nmよ
193nmリ
ソ グ ラ フ ィ ー:パ
り さ ら に 波 長 の 短 いArFエ
タ ー ン 線 幅 が0.2μmレ キ シ マ レ ー ザ の193nmの
ベ ル に な る と, 光 が 使 用 され
図4.30
る.193nm用
193nmで 形 成 さ れ た40nm孤 立 ラ イ ン と90nm L&S(ラ スペ ー ス)の パ タ ー ン(写 真 提 供:ASET森 重 恭)
の レ ジス トに つ い て は,248nmと
な け れ ば な らな か っ た.そ
れ は193nmの
イ ン&
本 質 的 に異 な った 問題 を克 服 し
光 に 高 い 透 過 率 を有 し,か つ,後 工 程
の半 導体 作 製 で 行 わ れ る プ ラ ズ マ処 理 に 耐 性 を もつ とい う,相 反 す る性 質 をあ わ せ もつ レ ジ ス トが 要 求 され る.芳 香 環 が 含 まれ て い る とプ ラ ズ マ エ ッチ ング耐 性 は大 き く な る が,193nmの
波 長 に強 い 吸 収 を 有 す るた め,芳 香 族 を導 入 で きな
い.
芳 香 族 グル ー プ を含 まず プ ラ ズ マ エ ッチ ン グ耐 性 を有 す るポ リマ ー と して,ポ リマ ー の 主 鎖 に ラ ダ ー構 造 を もたせ る方 法,芳 香 環 の代 わ りに 脂 環 式 構 造 を導 入 し て,単 位 体 積 に多 くの 共 有 結 合 を存 在 させ る(原 子 密 度 を高 くす る)こ どが 検 討 され た.従 来 は レ ジ ス トパ タ ー ンの 厚 み と し て1μm程
と,な
度必 要で あった
が,最 近 は薄 い レ ジ ス ト膜 厚 で も作 製 で き る プ ロ セ ス 技 術 が 導 入 され て い る.し た が っ て,材 料 とプ ロ セ ス 技 術 の両 面 か らの 歩 み寄 りで 困 難 を の り こえ た こ とに な る.193nm光
で 形 成 した 超 微 細 パ タ ー ン,40nm孤
Sパ タ ー ン を 図4.30に ⅳ) 157nmリ
立 パ タ ー ン と90nm
L&
示 す.
ソ グ ラ フ ィ ー:193nmの
次 にF2エ
キ シ マ レー ザ の157nm
の 波 長 で 露 光 す る研 究 が 行 わ れ て い る.こ の 波 長 に対 し て高 い 透 過 率 を もつ 高分 子 レ ジ ス ト材 料 の 分 子 設 計 は さ らに 困難 な 課 題 で あ る.こ の 波 長 に対 して は脂 環 式 グ ル ー プ の導 入 だ け で は解 決 しな い.し か し,脂 環 式 高 分 子 をベ ー ス に フ ッ素 原 子 を 導 入 す る こ とに よ り透 過 率 が 高 くな る こ とが わ か り,フ ッ素 原 子 やパ ー フ ロ ロ メ チ ル 基 の 導 入 位 置 や 導 入 率 と透 過 率 の 関 係 な どか ら地 道 な 研 究 が 行 わ れ て い る.ま た,157nm付
近 で ベ ン ゼ ン環 の 吸 収 が 低 下 す る こ と もわ か り芳 香 族 を
導 入 で き る可 能 性 もあ る. ⅴ) EUVリ
ソ グ ラ フ ィ ー:
ソ グ ラ フ ィ ー は,50nmよ
13nm光(軟X線
領 域)照
射 に よ るEUVリ
り微 細 な パ タ ー ン を 得 るの に 不 可 欠 な 技 術 とい わ れ
る.露 光 波 長 が 短 い た め回 折 の 影 響 に よ る解 像 度 の低 下 が 小 さ い こ とが 大 き な利 点 で あ る.ま た,レ
ジス トと して も上 述 のKrFエ
キ シ マ レ ー ザ 用 の芳 香 族 を含
む ポ リマ ー を使 用 で き る こ と も示 唆 さ れ て い る.森 ら はKrFエ ソ グ ラ フ ィー 用 の 化 学 増 幅 型 フ ォ トレ ジ ス トに13nm光
図4.31
KrFリ
を照 射 し,そ の 感 度 に
ソ グ ラ フ ィ ー 用 の フ ォ トレ ジ ス トに つ
い て13nm光(-▲-)とKrF光(-●-)に
対
す る感 度 の比 較
図4.32
180nmの 形 成 例(写
膜 厚 に よ る70nmのL&Sパ 真 提 供:ASET岡
露 光 条 件 NA:0.147,露
崎 信 次)
光 量:15mJ/cm2,σ:0.01.
キ シマ レー ザ リ
ターンの
つ い てKrF露 に13nmで
光 時 との相 違 を検 討 して い る.そ の 結 果,図4.31に の 感 度 はKrFエ
示 され る よ う
キ シ マ レ ー ザ 露 光 時 よ り も高 感 度 で あ り,γ 値 も十
分 高 い 値 を示 す.岡
崎 ら は 図4.32のSEM(走
る よ う に,180nmの
膜 厚 で70nmのL&Sパ
査 型 電 子 顕 微 鏡)写
真 に 示 され
タ ー ン を形 成 し て い る.
4.2 高 分 子 と 光 導 電 性 高 分 子 化 合 物 は通 常 電 導 度 が 低 く電 気 絶 縁 用 に使 用 され て い る.し か し,そ の 高 分 子 化 合 物 も分 子 構 造 や 添 加 剤 の使 用 に よ り導 電 性 に な る もの が 多 い.電 荷 を もつ粒 子 が あ り,こ れ に電 界 を与 え る と電 場 方 向 また は電 場 と逆 方 向 に加 速 され る現 象 を導 電 性 とい っ て い る.し た が って,導 電 性 を もつ た め に は荷 電 粒 子 の 存 在 が 必 要 で,こ
の荷 電 粒 子 は キ ャ リア ー と いわ れ る.原 子 や 分 子 が集 合 し結 晶 を
形 成 した 場 合,あ
る い は原 子 や 分 子 が 集 合 して強 い相 互 作 用 を示 す状 態 に な る と
導 電 性 が 発 生 す る可 能 性 が 生 じ る. 原 子 は核 の周 囲 に 電 子 が 在 在 す るが,原 い場 合,電
子 が 単 独 で 存 在 し外 部 か らの 影 響 が な
子 は原 子 軌 道 に収 ま っ て い る.原 子 は核 の 電 価 数 と等 しい 数 の 電 子 が
原 子 軌 道 の エ ネ ル ギ ー の 低 い 順 に 入 る.原 子 軌 道 で 電 子 が 入 っ た 軌 道 を被 占軌 道,電
子 が 入 っ て い な い軌 道 を 空 軌 道 とい う.金 属 原 子 が 集 合 し た状 態 で は個 々
の 原 子 軌 道 は相 互 作 用 の 大 き さに 従 い個 性 を失 い集 合 体 と して の軌 道 に変 化 して ゆ く. 図4.33に 配 列,ま
は,あ
る原 子 の1s軌
道 と2s軌
道 を考 え,12個
の原 子 が規 則 的 に
た は,凝 集 し て い る と き,原 子 間 距 離 に対 し て1sと2s軌
ギ ー の 変 化 を定 性 的 に 示 し て い る.12個 き る 場 合 は12の1sと2s軌
道 の エ ネル
の 原 子 が 離 れ て い て相 互 作 用 が 無 視 で
道 が それ ぞれ の軌道 エ ネル ギー を も って存 在 す る
が,原 子 間距 離 が 短 くな る と,1sと2s軌 る レベ ル に 分 裂 して ゆ く.そ して,そ
道 は そ れ ぞ れ12の
の分 裂 幅 が 狭 い場 合 は軌 道 間 の エ ネ ル ギ ー
差 は室 温 の熱 エ ネ ル ギ ー な み に な る.2s軌
道 も同 様 に相 互 作 用 し,あ る エ ネ ル
キ ー 幅 を もつ バ ン ドを形 成 す る よ う に な る.最 る こ とは い う まで もな い が,そ
エ ネルギ ーの異 な
もよ く知 られ て い る の は 金 属 で あ
の 導 電 性 の機 構 は次 の よ うに説 明 され る.金 属 で
は価 電 子 バ ン ド と空 軌 道 か ら生 じ る導 電 性 バ ン ドが 接 近 しギ ャ ッ プ は狭 く,常 温 で も電 子 は 熱 的 に導 電 性 バ ン ドに励 起 さ れ導 電 性 が 生 じる.こ れ ら の場 合 は励 起 電 子 が キ ャ リア ー に な り導 電 性 が 生 じ る.こ の ギ ャ ッ プ の大 き さで 導 電 体,半
導
図4.33
原 子 軌 道 間 の 相 万 作 用 に よ る バ ン ド構 造 形 成 の モ デ ル(文 594,図19.4よ
体,絶
献14),p
り)
縁 体 に分 か れ る.
高 分 子 化 合 物 で ポ リエ チ レ ン,ポ
リス チ レ ンな ど は一 般 的 に よ く知 られ て い る
よ う に絶 縁 性 で あ る.こ れ らの線 状 高 分 子 化 合 物 は分 子 が 糸 状 で ラ ンダ ム に絡 み 合 って い るた め,バ
ン ド構 造 を形 成 し に くい こ と も あ る が,こ れ は絶 対 的 で は な
い.た だ 通 常 はバ ン ドギ ャ ップが 大 きい こ とや,キ
ャ リア ー とな る電 子 の熱 励 起
が 生 じ るバ ン ドギ ャ ップ を狭 くで きな い な どの原 因 が 考 え られ る.し か し,高 分 子 化 合 物 もそ れ らの 分 子 構 造 に よ り導電 性 を有 す る も の が見 出 され,現 在 で は多 くの 導 電 性 高 分 子 が 開 発 され て い る.高 分 子 の 導電 性 の機 構 につ いて は そ の 分 子 構 造 か ら分 類 され て い る.よ ン,ポ
く知 られ て い る の は ポ リア セ チ レ ン,ポ
リチ オ フ ェ ン,複 素 環 ポ リマ ー,ポ
リア ニ リ
リフ タ ロ シ ア ニ ンな どで あ る.こ れ ら
は,高 分 子 主 鎖 に長 い 共 役 系 を有 す る.ポ
リア セ チ レ ン を例 に と る と π電 子 共
役 系 が 長 く π電 子 は 主鎖 に沿 っ て 移 動 で き るが,そ
れ で もバ ン ド理 論 が 適 用 で
き る ほ どで は な い.主 鎖 に π電 子 共 役 系 を も つ 高 分 子 は,電 子 を受 容 しや す い 化 合 物 のI2やAsPF6な
どを ドー ピ ン グ す る と そ の 導 電 性 は著 し く向上 す る こ と
が 知 られ て い る. これ に対 して ポ リア セ チ レ ン は電 子 受 容 性,ま ピ ング す る ご と に,中 性,ま
た は電 子 供 与 性 の 化 合 物 を ドー
た は荷 電 ソ リ トン,ポ ー ラ ロ ンが 形 成 され,こ
の 導 電 性 の寄 与 が 大 きい と考 え られ て い る.ま た,ポ
れら
リフ タ ロ シ アニ ン の よ う に
比 較 的 面 積 の 広 い平 面 構 造 を もち,平 面 に垂 直 方 向 に π電 子 共 役 系 の 軌 道 を有
図4.34 導電性 高分子の分子構造 の例
し,こ れ が 中 心 金 属 と配 位 子 を介 して 重 な った 構 造 を形 成 し て お り,π 電 子 が キ ャ リアー とな っ て 導 電 性 を発 生 す る とい わ れ て い る. 光 導 電 性 高分 子 セ レ ン,酸 化 亜 鉛,酸 化 チ タ ン,硫 化 カ ド ミウム な どの金 属 や 金 属 酸 化 物 が 光 照 射 に よ り導 電 性 を示 す こ と はか な り以 前 か ら知 られ て い た が,そ
の 後,有 機 高
分 子 化 合 物 や 高 分 子 に分 散 され た 有 機 化 合物 の 中 に も この よ う な光 照射 で 導 電 性 が 増 大 す る もの が 数 多 く見 出 され て い る.高 分 子 化 合 物 は フ ィル ム化 や 成 形 性 な ど にす ぐれ て い る こ とが 特 徴 で あ り,こ の よ うな 物 質 が 光 導 電 性 を もつ と応 用 面 で大 変 重 要 な こ と に な る. 光 導 電 の 基 本 過 程 は光 励 起,電
子 移 動,電 荷 分 離,電 荷 の 移 動,電 極 か らの 出
力 とい う一 連 の 流 れ で あ るが,光 物 理 機 構 に よ る もの と光 化 学 機 構 に よ る もの に 大 き く分 類 され る. 有 機 半 導 体(organic
photoconductor;OPC)を
高分 子バ イ ンダー に分散 す
る単 層型 で 高 感 度 化 す る こ とか ら始 ま っ た.高 分 子 とし て は,ポ ゾ ー ル(polyvinyl
carbazol),ポ
リ ピ ロ ー ル,ポ
リ ビニ ル カ ル バ
リ ア セ チ レ ン な どの 電 子 供 与
性 セ グ メ ン トを含 む タイ プ の もの が よ い特 性 を 示 す. 光 導電 性 を示 す とい わ れ る ポ リマ ー の薄 膜 に光 照射 を行 う と,ポ
リマ ー 中 で イ
オ ン化 が 生 じ カ チ オ ン種 と電 子 の 対 が 生 じ る.こ の ま まで は電 子 が カ チ オ ン に捕 獲(逆 電 子 移 動)さ
れ て も とに戻 るが,ポ
ん で,電 圧 をか け た状 態,あ
る い は,ポ
リマ ー薄 膜 を一 方 が透 明 な電 極 に は さ リマ ー表 面 に 静 電 荷 を与 え帯 電 さ せ た状
態 で光 照 射 す る と,イ オ ン化 した 電 子 とカ チ オ ン 種 の 静 電 荷(正 れ,プ
孔)が
それぞ
ラ ス 側 とマ イ ナ ス側 に移 動 す る.言 い 換 え る と,光 照 射 に よ り電 子-正 孔
の 電 荷 分 離 が起 こ り,電 極,あ
る い は 帯 電 表 面 で 中和 され る.電 子 と正 孔 が キ ャ
リア ー とな り導 電 性 が 生 じ る こ とに な る.電 導 度 の大 き さ は,光 (キ ャ リア ー 生 成)の リテ ィー)な
量 子 効 率,キ
ャ リア ー の寿 命,キ
ャ リア ー の 移 動 度(モ
ビ
ど に依 存 す る.
研 究 が 進 む うち に種 々 の 有 機 物 や有 機 高 分 子 で,キ 高 い が,モ
に よ る イ オ ン化
ビ リテ ィー が あ ま り高 くな い もの,あ
な どが 見 出 さ れ て きた.そ
こで,光
ャ リア ー生 成 の 量 子 効 率 は
る い は そ の 逆 の性 質 を もつ物 質
で キ ャ リア ー 生 成 の効 率 が 高 い物 質 と,キ ャ
リア ー を輸 送 す る物 質 を組 み 合 わ せ て 用 い る機 能 分 離 型 が 主 流 に な って き た. ポ リビ ニ ル カ ル バ ゾー ル(PVK)の
膜 表 面 に シア ニ ン色 素,ベ
ン ゾ ピ リ リウ
図4.35 光 イ オ ン化 と電 荷 分 離 表4.9
有 機 光 半 導 体 高 分 子 の 例13)
ム 塩 な ど の 薄 膜 を 積 層 す る 機 能 分 離 型 が 初 期 に は よ く知 ら れ て い た.こ ア ニ ン 色 素,ベ し て,PVKを
れ は,シ
ン ゾ ピ リ リ ウ ム 塩 が 光 照 射 に よ り 電 荷 分 離 を 行 う 層(CGL)と 電 荷 を 輸 送 す る 層(charge
transfer
layer;CTL)と
し て積 層 塗
布 す る.光 照 射 に よ るCGLで
電 荷 が 発 生 し,正 電 荷 がCTL層
を通 して 表 面 へ
移 動 し表 面 電 荷 が 消 滅 す る.有 機 光 導 電 体 へ 応 用 され て い る主 な 化 合 物 を表4.9 に ま と め て示 す. 4.3 高 分 子 の 光 起 電 力3) n型 半 導 体 とp型 半 導 体,半
導体 と金 属,ま
面 を共 通 に接 触 して い る場 合,光
た は半 導体 と電 解 質 溶 液 が そ の 界
吸 収 に よ り電 位 差,す
な わ ち起 電 力 が生 じ る可
能 性 が あ る. 一 方,バ
ン ド構 造 を形 成 して い ない 高 分 子 化 合 物 や有 機 色 素 に お い て も光 起 電
力 が生 じ る こ とが あ る.光 照 射 に よ りキ ャ リア ー を生 成 す る高 分 子 や有 機 化 合 物 は光 起 電 力 を発 生 させ る こ とか ら光 電 池 へ の 応 用 が研 究 され て い る.原 理 的 に は 光 導 電 性 と共 通 点 が あ るが 電 荷 分 離 性 が 高 く,キ ャ リア ー の 易 動 度 な ど効 率 を い か に 高 くで き るか が 鍵 と な る. ポ リア セ チ レ ン に電 子 受 容 性 の 化 合 物 を ドー プ した 高 分 子 膜 に光 照 射 した 場 合,局 所 的 に電 子 移 動 が 生 じる.そ の ま まで は再 結 合 に よ り戻 っ て し ま うが,負 電 荷 と正 電 荷 を 引 き離 す 必 要 が あ り,こ の過 程 を電 荷 分 離 とい う.電 荷 分 離 の 方 法 と して はpn接
合 や シ ョ ッ トキ ー 接 合 を形 成 させ る方 法 が あ る.こ
げた ポ リア セ チ レ ンの 場 合 は,ド ー プ す る物 質(ド ナ ー)お
よ び電 子 受 容 性(ア
ク セ プ ター)に
こで 取 り上
ーパ ン ト)の 電 子 供 与 性(ド
よ り,そ れ ぞれ,p型
お よびn型
半
導 体 の 性 質 を もつ.図4.36に
示 され る よ う に ガ ラ ス 基 板 に透 明 電 極 を つ け,こ
の 表 面 にn型 半 導 体 層,p型
半 導 体 層 を積 層 し,ガ ラ ス面 か ら光 照 射 す る こ とに
よ り起 電 力 を発 生 させ る こ とが で き る.
図4.36
n型 お よ びp型
半 導 体 を積 層 し た光 起 電 力 の モ デ ル
初 期 に は ポ リ(ビ ニ ル カル バ ゾ ー ル や ポ リ(フ ッ化 ビニ リデ ン))な
どの 高 分
子 に 銅 フ タ ロ シ アニ ンや 金 属 テ トラ フ ェニ ル ポ ル フ ィ リン を分 散 して ア ル ミニ ウ ム 表 面 に塗 布 した シ ョ ッ トキ ー 接 合 型 の 光 電 池 が 検 討 さ れ た .最 近 の高 効 率 型 で は銅 ブ タ ロ シ ア ニ ン とベ ンズ イ ミダ ゾー ル,ペ
リレ ン をITOガ
ラ ス と銀 電 極 で
は さ ん だ も のが 高 い 効 率 を示 す こ とが わ か っ て きた. 例 と して,3種 で,Dは
類 の化 合 物,D,Aお
よ びPが
電 子 を放 出 しや す い化 合 物(ド
(ア クセ プ タ ー),ま
た,Pは
共 存 して い る 系 を考 え る.こ
ナ ー),Aは
こ
電 子 を 受 容 しや す い 化 合 物
光 吸 収 して 励 起 状 態 で 条 件 に よ り電 子 を放 出,あ
る
い は受 容 す る化 合 物 で あ る.こ の よ う な系 に光 照 射 す る と起 電 力 が発 生 す る場 合 が あ るが,そ
の プ ロ セ ス は次 の よ う に考 え られ て い る. 光
図 示 す る と 図4.37の る.続
い て,D分
よ う に,光 照 射 でP分
子 か ら電 子 がP分
子 が 励 起 さ れ 電 子 をA分
子 に移 動 して,D+とA-が
子 に与 え
生 成 す る.Aと
電 極 間 の 反 応 に よ り電 子 は電 極 に移 動 す る.こ の プ ロ セ ス を繰 り返 し て電 位 差 が 生 じ る.
図4.37
キ ャ リア ー 注 入 型EL発
光 素 子 の構 造
4.4 エ レ ク トロル ミネ ッ セ ン ス 材 料3) エ レ ク トロ ル ミ ネ ッセ ンス材 料 は,電 場 を与 え る こ と に よ り発 光 す る無 機 お よ び有 機 物 質 は多 く見 出 さ れ て お り,エ レ ク トロ ケ ミカ ル ル ミネ ッセ ン ス,あ る い は エ レ ク トロ ル ミネ ッセ ン ス(EL)と 分 類 され るが,近
い わ れ て い る.真 性ELと
注 入 型ELに
年,薄 膜 形 成 技 術 が 進 歩 した こ とに よ り有 機 化 合物,ま
金 属 化 合 物 の薄膜 を用 い る注 入 型ELに
た有機
関 心 が 高 ま り,効 率 の 高 い 物 質 が 開 発 さ
れ て い る.光 励 起 で 蛍 光 を 発 生 す る多 環 芳 香 族 炭 化 水 素 や ヘ テ ロ環 化 合 物,有 機 金 属 錯 体 な ど はELを
示 す 可 能 性 が 高 い.従 来 の 半 導 体 タ イ プ に 比 べ る と,青 色
か ら赤 色 まで 原 理 的 に任 意 の 色 の 光 が得 られ る点 で期 待 が 高 い.そ れ は有 機 色 素
図4.38
図4.39
上:EL発
3成 分 型EL発
光 素 子 の機 構 モ デ ル
光 素 子 の モ デ ル,下:白
よ る カ ラ ー デ ィス プ レイ の モ デ ル
色 発 光 型ELに
類 の発 光 波 長 は色 素 分 子 の発 光 波 長 と関 連 す る こ とが 特 徴 で あ る.そ れ は発 光 が バ ン ドギ ャ ップ で は な く個 々 の 分 子 の π電 子 系 の励 起 幅 に 対 応 す る た め で あ る . EL素
子 の セ ル は 発 光 効 率 に よ り異 な るが,例
う で あ る.透 明 ガ ラ ス電 極(ITOガ け,そ の 上 にMgAgの
ラ ス)に2種
合 金 電 極 を設 け る.そ
と し て は 図4.38に
示 され る よ
類 な い し3種 類 の 色 素 層 を 設
して,両
電 極 間 に電 圧 を か け る.
単 層 型 で は電 場 に よ り電 子 が 生 成 し,同 一 層 内 で 電 子 が 輸 送 され 再 結 合 す る際 に 発 光 す る.2層
型 で は電 子 輸 送 層 とホ ー ル 輸 送 層 を積 層 させ る.電 子 輸 送 層 で 電
子 が 輸 送 され ホ ー ル輸 送 層 で結 合 して 発 光 す る.3層
構 造 は別 に発 光 層 を設 け,
電 子 輸 送 層 と ホ ー ル輸 送 層 か ら運 ば れ た 電 子 とホ ー ル が 発 光 層 で 再 結 合 す る.色 素 に よ る電 子 や ホ ー ル の 移 動 は集 合 体 で 生 じる バ ン ドモ デ ル と異 な り分 子 間 の 電 子 移 動 に よ る もの と考 え られ て い る. 実 際 のELを
利 用 した デ ィ ス プ レイ の構 造 は 図4.39に
青 を発 光 す るEL発
光 層 を組 み合 わ せ る方 法 と,白 色EL発
タ ー を組 み合 わ せ て作 製 す る方 法 な どが あ る.
示 す よ う に,赤,緑, 光 層 と カ ラー フ ィ ル
5 生命 医療材料
5.1 生 体 適 合 性 5.1.1 は じ め に 現 代 医療 の 進 歩 は新 生 児 の 生 存 率 を向 上 させ,人
間 の平 均 寿 命 を著 し く伸 ば し
て い る と同 時 に健 康 を通 した 生 活 の 質 的 向 上 に大 き く貢 献 して い る.こ れ は抗 生 物 質 を は じ め とす る各 種 の す ぐれ た 医 薬 品 に加 えて,各 種 医 療 用 機 械 ・器 具 お よ び 材 料 の 開 発 に よ っ て い る こ とは い う ま で もな い.医 学 ・薬 学 に加 え理 工 学 の 知 識 と技 術 を融 合 させ た 生 命 医 工 学 は 医 療 現 場 の近 代 化 とハ イ テ ク 化 に大 きな 役 割 を果 た して お り,21世
紀 に 向 か って そ の役 割 は ま す ます 大 き くな っ て きて い る.
治 療 や診 断 に利 用 す る材 料 は,生 体 や 細 胞 な どの 生 体 要 素 と直 接,あ
る い は間 接
的 に 接 触 す る とい う意 味 で 特 殊 で あ り,こ の よ うな 材 料 を"バ イ オ マ テ リア ル (biomaterials)"と
呼 ん で い る.バ イ オ マ テ リア ル に は金 属,セ
分 子 な ど人 工 的 に作 られ た 材 料 と,多 糖 類,タ
ラ ミ ック ス,高
ンパ ク質,核 酸 な ど の生 体 高 分 子
材 料 とが あ る.な か で も高 分 子 材 料 は そ の機 能 設 計 や 分 子 設 計 の デ ザ イ ンの 多 様 性 に応 え られ る材 料 と し て今 後 の 発 展 が 期 待 され る材 料 で あ る.バ イ オ マ テ リア ル と定 義 され る範 囲 は 広 く,ま た 分 類 方 法 もい ろ い ろ あ る が,本 章 で は 用途 別 に 注 射 器 や カ テ ー テ ル な どの"医 療 用 具",生 器",診
断,治
体 機能 の 補 助,代
行 を行 う"人 工 臓
療 の た め の"高 分 子 製 剤 ・ドラ ッ グ デ リバ リー シ ス テ ム"の
三つ
に分 類 し,そ れ ぞ れ に つ い て解 説 す る. 5.1.2 バ イ オ マ テ リア ル の 必 須 条 件 機 能 を喪 失,損 失 した 臓 器 ・組 織 の 機 能 を代 替 す る人 工 シス テ ム を人 工 臓 器 と い う.現 在,わ
れ わ れ の 体 の さ ま ざ ま な臓 器 ・組 織 が人 工 臓 器 の 対 象 とな っ て お
り,そ の 高 度 な機 能 を実 現 す る 主 役 と して バ イオ マ テ リア ル の 発 展 が 期 待 され,
図5.1
現 在 臨 床 応 用,研
究 開発 され て い る 人 工臓 器
多 面 的 な研 究 が 推 進 さ れ て い る(図5.1). わ れ わ れ の体 は細 胞-組 織-器 官 とい う階 層 構 造 で 精 密 に組 み 立 て られ,各 パ ー ツ が 神 経 回 路 に よ っ て脳 か らの情 報 を受 け,相 互 作 用 しな が ら機 能 し,生 命 を維 持 し て い る.生 体 は本 来 自分 以 外 の もの を異 物 と し て認 識 し,自 己 防衛 反 応 に よ り それ を 排 除 す る.し た が っ て コ ン ピ ュ ー タ が 故 障 し た と きに 破 損 した パ ー ツ を た だ 取 り替 え る の とは 異 な り,生 体 の 一 部 の機 能 が 失 わ れ た とき に は そ れ を代 替 す る機 能 と同 時 に生 命 全 体 と協 調,適
合 す る もの を探 す こ とが 必 要 とな り,機 能
を復 活 さ せ る に は広 範 な 観 点 か らの 考 慮 が必 要 で あ る.で
は どの よ うな 材 料 が 必
要 とさ れ て い る の だ ろ うか. 第 一 に バ イ オ マ テ リア ル は生 体 内,生 体 表 面,生 体 要素 と直 接 的 ・間 接 的 に接 触 す るた め,生 体 に とっ て 安 全 で な くて は な ら な い.い
か に生 体 と協 調 し て 同
化 ・適 合 す る材 料 を作 り出 す か が 重 要 とな る.す な わ ち材 料 が 生 体 と接 触 して安 全 に 利 用 さ れ る た め の"生 体 適 合 性(biocompatibility)"が に効 果 を 出 す た め の"機 能 性"が
必 要 で あ る.代 替 す る器 官 や 組 織,シ
また 使 用 期 間 に よ っ て さ ま ざ まな 機 能 が 要 求 され る.例 性,機
必 要 とな る.第 二 ス テ ム,
え ば フ ィ ル ム性,ゴ
械 的 強 度 な どの材 料 に起 因 す る機 能 と,光 透 過 性,物
質 透 過 性,ガ
ム弾 ス交 換
性,分 子 認 識 機 能 性 な ど生 体 機 能 に代 替 可 能 な さ ま ざ まな 機能 が 追 究 さ れ て い
る.つ
ま り生 体 適 合 性 と機 能 性 を兼 ね備 えて い る こ とが バ イ オ マ テ リア ル の 必 須
条 件 と な る.と
りわ け使 用 目的,生 体 との 接 触 部 位,期
間 に よ り個 々 の ニ ー ズ に
あ わ せ た 材 料 設 計 が 必 要 と な るた め,材 料 の 合 成 ・物 性 に加 え て 生 命 科 学,医 学,薬
学 か らの 集 学 的 な ア プ ロー チ が きわ め て 重 要 とな っ て きて い る. 5.2 医 療 器 具
医 療 現 場 で 目に す る医 療 器 具 に はプ ラ ス チ ッ ク製 の注 射 筒 を は じめ高 分 子 材料 が 多 い.そ
の 大 部 分 は個 別 包 装 で 滅 菌 さ れ て お り,使 い 捨 て(デ
ル)医 療 器 具 で あ る(表5.1).ポ
ィスポー ザブ
リプ ロ ピ レ ンや ポ リス チ レ ン製 の 注 射 筒 や 点
滴 筒 の使 用 は洗 浄 や滅 菌 の 手 間 や費 用 を削 減 し,低 コ ス トで あ る う え に安 全 で あ る の で,国
内 で は1963年
よ り発 売,普 及 して い る.ま た輸 血 用 バ ッグ は1973年
よ りエ チ レ ン-酢 酸 ビニ ル 共 重 合 体(EVA)製
の もの が 滅 菌 性 の よ さ に よ り使 用
さ れ て い る.ま た ガ ラ ス ボ トル よ り軽 く,落 と して も割 れ な い な どの 種 々 の メ リ
表5.1
デ ィ スポ ー ザ ブル 医 療 用 器 具 に使 用 さ れ て い る主 な高 分 子 材 料6)
ッ トが あ る.こ の よ うに 高 分 子 材 料 が 多 くの 医 療 器 具 に使 わ れ るの は素 材 の種 類 が 豊 富 で,そ
の 多 彩 な性 質 を利 用 で き る こ と,ま た さ ま ざ ま な成 形 加 工 が 可 能 で
あ る こ と,安 価 で 大 量 生 産 で き るた め に使 い捨 て を 可 能 に し,安 全 に利 用 で き る こ とに起 因 して い る.プ ラ ス チ ッ ク製 医療 器 具 の 品 質 は,鉛,カ 有 害 重 金 属,フ
ド ミウム な どの
タル 酸 エ ス テ ル,塩 化 ビニ ル モ ノ マ ー な ど の毒 性 問題 が 起 きた こ
と に よ り,現 在 で は物 性,材
質,有 害 物 質 の 溶 出,お
につ い て 安 全 性 が 検 討 さ れ,よ
よ び生 体 組 織 に与 え る影 響
りよ い製 品 開 発 が 目 指 され て い る.
5.3 人 工 臓 器/臓 器 再 生 へ の 挑 戦 人 工 臓 器 は狭 義 に は 内臓 の 人工 代 替 物 を さす が,近
年,生 体 の組 織,器
官,臓
器 の い ず れ で もそ れ を代 行 す るな ら ば人 工 臓 器 と呼 ぶ傾 向 に あ る.本 章 で は現 在 臨 床 応 用 され て い る代 表 的 な人 工 臓 器 とそ の 材 料,ま
た 研 究 開発 途 上 に あ る材 料
につ い て 紹 介 す る. 5.3.1 人 工 腎 臓 わ が 国 で は,現 在 約17万
人 の慢 性 腎 不 全 患 者 を 週3回
た め に 用 い られ る人 工 腎 臓 が,最
も多 く利 用 され て い る人 工 臓 器 の一 つ で あ る.
腎臓 は動 脈 血 を 糸球 体 で ろ過 し,水 物 の 排 出,薬
の血液透析 で治 療す る
・電 解 質 の 調 節,尿
物 の 排 出,血 圧 の 調 節,赤
素 な どタ ンパ ク質 代 謝 産
血 球 数 の 調 節,ビ
タ ミ ンDの
活性 化 な
ど を行 っ て い る.こ の 腎 臓 機 能 が低 下 す る と代 謝 産 物 の 排 泄 が不 十 分 とな り,体 内 に水 や 尿 素 が 蓄 積 し て し ま う.人 工 的 に血 液 中 の代 謝 物 を除 去 す るた め に,人 工 腎 臓 に よ る人 工 透 析 が 必 要 とな る.実 際 に は血 液 を 一 時 的 に体 外 循 環 させ,病 因 物 質 を 除 去 し て か ら そ の 浄 化 済 み 血 液 を体 内 に戻 す(血 取 り出 した血 液 は長 さ20∼30cm,外 析 器 内 に は 内 径 が 約200μm,膜 り,総 膜 面 積 は1∼2m2に
径 約5cmの
厚10∼50μmの
液 浄 化 療 法).体
外に
円 筒 形 透 析 器 に送 られ る.透 中空 糸 が 約1万 本 束 ね られ て お
も な る.こ の 半 透 膜 中 空 糸 を介 して物 質 分 離 ・ろ過 の
機 能 を代 替 す る.現 在 市 販 さ れ て い る膜 素 材 を表5.2に
示 し た.セ ル ロー ス 膜 は
結 晶 性 部 分 と非 晶 性 部 分 が 適 度 に混 じ りあ っ て お り,溶 質 透 過 性 と水 透 過 性 の バ ラ ン ス が よ く,吸 水 状 態 で も力 学 的 強 度 を保 っ て い る.ま た γ線 照 射 や 熱 処 理 に よ る 滅 菌 に も耐 え られ る こ とか ら,長 年 セ ル ロ ー ス 系 の 膜 素 材 が 主 流 で あ っ た.し
か しセ ル ロ ー ス膜 を透 過 で き ない 微 量 の 代 謝 産 物 が 明 らか に され,さ
らに
免 疫 に関 与 す る補 体 の 活 性 化 と白血 球 数 の一 時 的 減 少 が起 こ る こ とか ら,現 在 ポ
表5.2
日 本 で市 販 され て い る 透析 器 の 主 な 膜 素 材
リス ル ホ ン多 孔 性 中 空 糸 膜 が 次 第 に利 用 さ れ て きて い る. 日本 は世 界 で 最 も血 液 透 析 患 者 が 多 い とい わ れ て い る.そ の 理 由 は 腎臓 移 植 数 が 少 な い こ と と,透 析 患 者 の 予 後 が 世 界 一 高 い こ とに あ る.必 然 的 に長 期 透 析 患 者 数 も増 え,さ
ま ざ ま な合 併 症 の 予 防 と治 療 を 目的 と して透 析 器 の性 能 と生 体 適
合 性 の改 善 が 図 られ て きた.現
在,最
も大 きな 問題 は血 液 適 合 性 で あ る.血 液 は
異 物 で あ る透 析 膜 との 接 触 に よ り自己 防 衛 反 応 を起 こ し,血 液 成 分 が膜 に 付 着, 凝 固 す る(血 栓 反 応).透
析 時 に は抗 凝 固 剤 の ヘ パ リ ンが 使 用 さ れ,マ
クロ的 に
は血 栓 形 成 が 阻 止 され る もの の,透 析 終 了後 の膜 表 面 に は 白 血 球,血 小 板 な どの 血 球 の粘 着 が 観 察 され る.血 液 成 分 の 付 着 は膜 の 素 材 に加 えて,血 液 流量,透
析
器 の デ ザ イ ン,透 析 器 の 滅 菌 法 な ど多 くの条 件 が 影 響 す る.ま た ヘ パ リ ンの 長 期 使 用 に よ る副 作 用 が報 告 さ れ て お り,で きる だ け少 量 のヘ パ リン で透 析 を行 うた め に は まず 材 料 自身 の 抗 血 栓 性 を改 善 し な け れ ば な らな い.理 想 的 な 抗 血 栓 性 材 料 の 開 発 は人 工 臓 器 創 製 に お け る重 要 な 課 題 で あ り,大
き な 力 を 注 ぐ必 要 が あ
る. 5.3.2 人 工 心 臓 人 工 心臓 は心 臓 手 術 後 の補 助,急 と して の 補 助,代
行 と して1980年
ン プ の形 式 は図5.2に ク(sac)型
性 心 筋 梗 塞 の 際 の 補 助,心
臓移植 へのつ なぎ
代 か ら臨 床 応 用 さ れ て い る.補 助 人 工 心 臓 ポ
示 した もの の う ち,ダ イ ア フ ラ ム(diaphragm)型,サ
が 一 般 的 で,血
ッ
液 の 流 入 出部 に逆 流 防 止 用 の 人 工 弁 が 装 着 さ れ て お
り,空 気 圧 に よ り血 液 の 拍 出 を行 う. 心 臓 は 血 液 と接 触 す る面 積 が 大 き く,繰
り返 し疲 労 強 度 が 要 求 され るた め,素
材 と して は抗 血 栓 性 と同 時 に,機 械 的 耐 久性 を兼 ね 備 え た も のが 必 要 とな る.人
b.sac型
a.diaphragm型
d.centrifugal型
e.pusher-plate型 c.concentric
tube型
(piston型)
図5.2 臨 床 応 用 され て い る補 助 人 工 心 臓 の形 式 (人工 臓 器1992,中
工 心 臓 の 本 格 的 研 究 は1957年
山書 店,1992よ
ア メ リ カ ・ク リ ー ブ ラ ン ド病 院 に お い てKolffと
阿 久 津 に よ っ て ポ リ塩 化 ビ ニ ル を 材 料 と し て 始 め られ,そ 天 然 ゴ ム,ダ
ク ロ ン な ど が 検 討 さ れ た.セ
て 初 め て 長 期 使 用 が 可 能 と な り,現 図5.3に
り)
の 後 シ リ コ ー ン ゴ ム,
グ メ ン ト化 ポ リ ウ レ タ ン ウ レ ア に な っ
在 臨 床 で は こ れ が 主 流 と な っ て い る.
セ グ メ ン ト化 ポ リ ウ レ タ ン ウ レ ア の 一 般 的 構 造 を 示 す.柔
軟 性 に富 ん
だ ポ リ エ ー テ ル を 主 と す る ソ フ トセ グ メ ン ト と ウ レ タ ン お よ び ウ レ ア 結 合 か ら構 成 さ れ る ハ ー ドセ グ メ ン ト と の マ ル チ ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 で,通
常 ハ ー ドセ グ メ ン
ト部 分 は 分 子 間 水 素 結 合 に よ り凝 集 し て ク ラ ス タ ー を 形 成 し,こ
れ が ソ フ トセ グ
メ ン トの マ ト・ リ ッ ク ス 中 に 分 散 し た 結 晶/非 晶 型 の ミ ク ロ 相 分 離 構 造 を と る.特 にR=−[(CH2)4−]のBiomerRは
抗 血 栓 性 と 耐 久 性 に す ぐれ て お り,そ
の後 も
含 フ ッ 素 セ グ メ ン ト ポ リ ウ レ タ ン や セ グ メ ン ト化 ポ リ ウ レ タ ン-ポ リ ジ メ チ ル シ
図5.3
セ グ メ ン ト化 ポ リウ レタ ンウ レア の 構 造 式
ロ キ サ ン共 重 合 体 な ど比 較 的 抗 血 栓 性 の あ る材 料 が 開 発 され て い る. 人 工 心 臓 で も最 大 の 問 題 は材 料 の 抗 血 栓 性 で あ る.血 栓 は拍 動 流 ポ ンプ で は人 工 弁,ポ
ン プ の継 ぎ 目な ど,遠 心 ポ ン プ で は羽 根 や 回 転 軸 の軸 受 け な どに よ くで
き る.つ
ま り血 栓 形 成 を促 進 す る 因 子 は材 料 表 面 の 化 学 的組 成,構 造 以 外 に 流 体
力 学 的 要 素 が 大 き く関係 す る の で,安 全 で しか も長期 間 使 用 で き る人 工 心 臓 の 作 製 に は さ ま ざ ま な技 術,材 料,医
学,薬
学 の専 門 的 な 観 点 か らの ア プ ロ ー チ を統
合 し て開 発 され て い か な けれ ば な らな い. 5.3.3 抗 血 栓 性 材 料 血 液 と直 接 接 触 して使 用 され るバ イ オ マ テ リア ル の抗 血 栓 性 化 の試 み は,1960 年 初 頭 よ り展 開 され 多 くの研 究 が な さ れ て い る.血 液 は 電 解 質 イ オ ン,水 な どの 低 分 子,タ
ンパ ク質,赤 血 球,白
血 球,リ
ンパ 球,血 小 板 な どの 細 胞 を含 んで い
る.材 料 が 血 液 と接 触 す る と,そ の 直 後 に材 料 表 面 に タ ンパ ク質 が 吸 着 す る.そ の 後 血 小 板,リ
ンパ 球,マ
り,血 栓 形 成,炎 症,貪
ク ロ フ ァー ジ な どの 細 胞 レベ ル の 反 応 が 続 い て 起 こ
食 な どの細 胞 レベ ル の 反 応 が 起 きる.材 料 表 面 の構 造 に
応 じて吸 着 す る タ ンパ ク 質 の 量,コ
ン フ ォ メ ー シ ョ ン変 化,配
化 し,こ れ に よ り自 己 防御 反 応 を 引 き起 こす の で,バ
向,分 布 な どが 変
イオ マ テ リア ル を設 計 す る
場 合 に は タ ンパ ク質 の 吸 着 挙 動 に つ い て 詳 細 に検 討 す る必 要 が あ る. 実 際 の抗 血 栓 性 材 料 の表 面 作 製 に は 図5.4に
示 す よ う な三 つ の ア プ ロー チが あ
る. a. 偽 内 膜 形 成 型 材 料
こ の 種 の 材 料 は,適 度 な 血 栓 形 成 に よ っ て 血 栓 膜
を材 料 表 面 に作 り,こ の血 栓 膜 を足 場 と して 内 皮 細 胞 を増 殖 させ,血 管 の 内 腔 面 と類 似 した 構 造 に した も の で あ る.現 在 臨 床 で は延 伸 ポ リテ トラ フル オ ロエ チ レ ン(ゴ
ア テ ッ ク ス,ダ
用 さ れ て い るが,6mm以
ク ロ ン)が 用 い られ て い る.内 径6∼30mmの
範 囲 で利
下 の動 脈 と静 脈 で は初 期 血 栓 で 血 管 が 閉 塞 し,偽 内 膜
図5.4 抗血栓性材料 の分類
形 成 に至 ら な い,と い う欠 点 が あ る. b. 血 栓 溶 解 型 材 料
血 栓 を溶 解 す る ウ ロ キ ナ ー ゼ や ス トレ プ トキ ナ ー ゼ
な ど の酵 素 を材 料 表 面 に 固 定 化 す る こ とで,形 成 され た 血 栓 を溶 解 し抗 血 栓 性 を 獲 得 す る.血 栓 形 成 反 応 に比 べ 溶 解 反 応 の 速 度 が小 さ い こ と,固 定 化 に よ る酵 素 活 性 の低 減 な どの課 題 が あ る. c. 血 栓 形成 抑 制 型 材 料
血 小 板 や 凝 固 因 子 の活 性 化 を抑 制 す る機 能 を もつ
血 栓 形 成 抑 制 型 材 料 に は,生 理 活 性物 質 を用 い る もの と用 い な い もの とが あ る. 前 者 は血 液 凝 固 因 子 を 阻害 す るヘ パ リンや,血 小 板 の凝 集 を抑 制 す る プ ロ ス タ サ イ ク リ ンな ど を表 面 に 固定 化 し た もの で あ る.一 方,後 者 は表 面 構 造 に よ り血 小 板,血
漿 タ ンパ ク質 の物 理 吸 着 を抑 制 し,血 栓 形 成 を防 ぐ表 面 で あ る.特 に親 水
性 の ポ リ(2-ヒ チ レ ン(PSt)の
ドロ キ シ エ チ ル メ タ ク リ レー ト)(PHEMA)と
疎 水 性 の ポ リス
ブ ロ ッ ク コ ポ リマ ー は各 セ グ メ ン トが 相 分 離 して ミク ロ ドメ イ
ン構 造 を形 成 し,こ の ドメ イ ン幅 が25nmの こ とが わ か っ て い る.図5.5に
と き に す ぐれ た 血 液 適 合 性 を 示 す
示 す よ う に,材 料 表 面 に吸 着,接 触 した 血 小 板 の
活 性 化 の抑 制 は血 漿 タ ンパ ク質 が ミク ロ ドメ イ ンに 沿 って 吸 着 す る こ とに よ る も の と考 え られ て い る.ア ル ブ ミ ン は選 択 的 に 親 水 性 ドメ イ ン に,γ-グ ロ ブ リ ン は疎 水 性 ドメ イ ン に吸 着 して,血 小 板 の膜 タ ンパ ク質 の 動 きが 制 御 され る.内 径 3mm,長
さ70cmの
小 口 径 人 工 血 管 を イ ヌ の頸 動 脈 に埋 め 込 む と,1年
以上 に
わ た っ て血 栓 形 成 が 完 全 に抑 制 さ れ た.こ の と き,ミ ク ロ ドメ イ ン化 表 面 は単 分 子 層 の タ ン パ ク質 吸 着 で長 期 に安 定 化 され る,と い う きわ め て興 味 深 い 結 果 が 得
図5.5 PSt
PHEMA-PStブ
ロ ッ ク コポ リマ ー の 構 造 と その 表 面 に お け る細 胞 との相 互 作 用
図5.6
ポ リ(MPC-co-BMA)共
重 合 体 の構 造 式
られ て い る. リ ン脂 質 極 性 基 を ポ リマ ー 側 鎖 に導 入 した2-メ タ ク リロ イ ル オ キ シエ チ ル ホ ス ホ リル コ リン(MPC)とn-ブ
チ ル メ タ ク リ レ ー ト(BMA)の
コ ポ リマ ー 表
面 で は,血 小 板 の 粘 着 が 著 し く抑 制 さ れ る こ とが 報 告 され て い る(図5.6).こ の ポ リマ ー をセ グ メ ン ト化 ポ リウ レ タ ン と ブ レ ン ド して 内 径2mmの
人工 血管
を作 製 し,ウ サ ギ頸 動 脈 に埋 め込 ん だ と こ ろ5日 間 閉 塞 せ ず に抗 血 栓 性 を示 した こ とが 報 告 され て い る.こ の よ う な材 料 表 面 の抗 血 栓 性 の発 現 を,表 面 に お け る 水 の 構 造 か ら考 察 さ れ て い る.材 料 中 の極 性 官 能 基 と水 分 子 は水 素 結 合 を介 して 相 互 作 用 す る.こ
の と き,水 分 子 が 強 く相 互 作 用 して 束 縛 さ れ る と この 水 は冷 却
して も凍 ら な い(不
凍 水).一
で 凍 る.さ
る程 度 相 互 作 用 して束 縛 され る が 冷 却 下-60℃
ら に,あ
方,分 子 運 動 が 束 縛 さ れ な い 水(自
由 水)は0℃ 付 近で凍 る中
間 水 が 存 在 す る.材 料 に よ って これ ら3種 類 の 水 の組 成 が 異 な る こ とが 知 られ て い るMPCポ
リマ ー 表 面 の 抗 血 栓 性 の発 現 に,水
に さ れ つ つ あ る.さ
の構 造 が 影 響 す る こ とが 明 らか
らな る詳 細 な 抗 血 栓 性 発 現 機 構 が 今 後 解 明 され る こ とが 望 ま
れ て い る. 最 近,ポ
リ(2-メ
トキ シエ チ ル ア ク リレ ー ト)(PMEA)表
面 とポ リ(MEA
HEMA)共
重 合 体 が す ぐれ た抗 血 栓 性 を示 す こ とが 報 告 さ れ た.血 小 板 の 粘 着
や 形 態 変 化 が ほ とん ど生 起 し な か っ た 表 面 で の 水 の構 造 を 調 べ た と こ ろ,0℃ で 凍 る水,-60℃
程 度 で 凍 る水,凍
多 い こ とが 示 さ れ た.お
らな い水 の う ち,-60℃
で 凍 る 中 間水 の組 成 が
そ ら く,中 間 水 の表 面 近 傍 で の組 織 化 が 吸 着 タ ンパ ク質
の 変 性 を 抑 制 し,そ の 後 に生 起 す る細 胞 の粘 着 を抑 制 す る と と もに粘 着 細 胞 の形 態 変 化 を抑 制 し た もの と考 え ら れ る.先
に示 し たPHEMA-PSt-PHEMAを
コ
ー テ ィン グ した 血 管 を イ ヌ の頸 動脈 に移 植 した場 合 で も吸 着 タ ンパ ク の 変性 は生 起 して い な か っ た こ とか ら,PMEAやPMPCの
系 で み られ た よ う に 界 面 で の
水 の 構 造 が 関 与 して 抗 血 栓 性 が 発 現 して い る可 能 性 が 示 唆 され,今 後 よ り詳 細 な
解 析 が 望 まれ る. 5.3.4 ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 臓 器 人 工 材 料 の み で 生 体 を模 倣 し,人 工 臓 器 を創 製 す る に は さ ま ざ まな ハ ー ドル が あ る.そ
こで 天 然 あ る い は合 成 の 高 分 子 を マ ト リ ッ ク ス とし,細 胞 や 生 体 組 織 を
この 中 に組 み 合 わ せ て 利 用 す る ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 臓 器 の 研 究 が 進 め ら れ て い る.生 体 の 軟 組 織 を 形 成 して い る コ ラ ー ゲ ンや グ ル コ サ ミノ グ リ カ ン(ム 糖)は60∼80%の
コ多
水 を有 す る生 体 ヒ ドロ ゲ ル で あ り,多 細 胞 生 物 の細 胞 は この
ゲ ル状 の細 胞 外 マ トリ ッ クス(extracellular を維 持 して い る.そ
こで 生 体 組 織 を ゲ ル 上,ま
工 皮 膚,人 工 肝 臓,人
工 膵 臓 と して体 表 面,あ
matrix;ECM)に
包 括 され て機 能
た はゲ ル 内 で培 養 ・増 殖 させ,人 るい は体 内 に 移 植 す る とい う試 み
が な さ れ て い る.高 分 子 マ トリ ッ クス に は コ ラ ー ゲ ン や ポ リペ プ チ ドな ど天 然 高 分 子,合 成 高 分 子 との 複 合 体 が 多 く用 い られ て い る. a. 人 工 皮 膚
広 範 な 熱 傷 で は,創 傷 部 位 か ら体 液 が 漏 出 す る と同 時 に,
感 染 の可 能 性 が きわ め て高 くな り,早 期 に皮 膚 を再 生 す る こ とが 望 ま しい.こ の 治 療 法 と して,コ
ラー ゲ ン ゲ ル と コ ン ドロ イ チ ン硫 酸 の 複 合 体 を患 部 に貼 付 し,
この マ ト リ ック ス に 自己 の皮 膚 細 胞 を誘 導,増
殖 させ る とい う方 法 が あ る.こ の
複 合 体 は細 胞 が 増 殖 して組 織 化 す るた め生 体 と一 体 化 す る.被 覆 材 に は シ リコ ー ン膜 が 用 い られ,水 分 な どの 蒸 発 を防 ぐ と同 時 に細 菌 感 染 を 防止 して い る.さ
ら
に この複 合 体 内 に表 皮 の基 底 細 胞 を播 種 した 改 良 型 も報 告 さ れ て い る.一 方,表 皮 細 胞 を生 体 外 で 培 養 し,移 植 す る方 法 もあ る.表 皮 細 胞 は単 独 で は培 養 が 困 難 で あ るが,あ
らか じめ線 維 芽 細 胞 を培 養 した コ ラ ー ゲ ン上 で は増 殖 し,人 工 皮 膚
を構 築 で きる.一 部 は,治 療 目的 で利 用 され る まで に至 っ て い る.こ の よ うに生 体 外 で ハ イ ブ リッ ド組 織 を構 築 す る技 術 は こ れ か らの 医 療 に お い て ます ます重 要 とな っ て きて い る. b. 人 工 膵 臓
膵 臓 は 胃 の 背 面 に あ り,膵 頭 部 は 外 分 泌 性 の細 胞 群 が 消 化
酵 素 を腸 管 に分 泌 して 消 化 促 進 を行 う一 方,膵
尾 部 で は血 糖 値 の 適 正 な制 御 を行
うイ ン ス リ ン,グ ル カ ゴ ン の よ うな ホ ル モ ン を 分 泌 す る.特
に膵 尾 部 の機 能 が 著
し く低 下 す る と高 血 糖 とな り,生 体 に種 々 の 障 害 が 起 こ る.そ
こで,血 糖 値 を測
定 し,そ れ に 合 わ せ た イ ン ス リ ン の 自己 注 射 を行 う方 法 が 一 般 的 に と られ て い る.し か し,こ の 方 法 で は血 糖 値 の 厳 密 な制 御 は難 し く,イ ン ス リ ンの過 剰 投 与 に よ る低 血 糖 の た め に,昏 睡状 態 に陥 っ た り,場 合 に よ っ て は生 命 の 維 持 に危 険
を及 ぼ す.そ
こで,動 物 の膵 臓 細 胞 を移 植 す る手 法 が 検 討 され て い る.臓 器 移 植
に 伴 う拒 絶 反 応 を 回 避 す るた め に,高 分 子 ゲ ル で 細 胞 を被 覆 し免 疫 隔 離 す る方 法 が 追 究 され て い る.膵 臓 内 の ラ ン ゲ ルハ ンス 氏 島 細 胞 は血 糖 値 を制 御 して お り, と りわ け血 糖 値 を 降 下 させ るイ ン ス リ ンを分 泌 して 血 糖 値 を一 定 に保 っ て い る. そ こで ア ル ギ ン酸 ナ トリウ ム や ア ガ ロ ー ス ゲ ル ビー ズ 中 に ラ ンゲ ル ハ ンス 氏 島 細 胞 を封 入 した ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 膵 臓 が 開発 され検 討 され て い る.ゲ ル表 面 の 物 質 透 過 性 と ビー ズ の大 き さ を精 密 に制 御 し,免 疫 細 胞 や 抗 体 を回 避 しつ つ,血 糖 値 の変 化 に応 答 し,直 ち に至 適 量 の イ ン ス リ ンを放 出 す る こ とが で き る.実 際, 糖 尿 病 の マ ウス腹 腔 内 に 移 植 す る と イ ン ス リン が放 出 され,血 糖 値 は正 常 値 に復 帰 し,1年
以 上 に わ た っ て血 糖 値 が適 正 範 囲 内 に保 持 され て い る こ とが 報 告 さ れ
て い る.こ の よ う な,ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 臓 器 は,代 謝型 の 人 工 臓 器 と して生 体 中 で きわ め て重 要 な 役 割 を 担 う もの とな る.こ の シ ス テ ム が 実 現 す る と,現 在 イ ンス リ ンの 自 己 注射 を余 儀 な くされ て い る Ⅰ型糖 尿 病 患 者 の福 音 とな る こ と は想 像 にか た くな い.こ の ハ イ ブ リッ ド型 人 工 膵 臓 は今 後 実 現 に 向 け て大 き く展 開 し よ う と して い る. c. 人 工 肝 臓
現 在,急 性 肝 不 全 患 者 の究 極 的 な治 療 は肝 移 植 しか 方 法 が な
い.し か し,移 植 に 適 応 で き る肝 臓 は圧 倒 的 に 少 な く,わ が 国 で は近 親 者 か らの 生 体 肝 移 植 に頼 っ て い るの が 現 状 で あ る.急 性 肝 不 全 が起 こ る と,生 体 の解 毒 や 代 謝 機 能 が 著 し く低 下 し,種 々 の タ ンパ ク 質 な ど生 命 維 持 に 重 要 な物 質 が 不 足 し,生 命 の維 持 が 困 難 と な る.そ
こで,急 性 肝 不 全 患 者 の 治 療 の 目 的 で,従 来
は,動 物 の肝 臓 に患 者 の 血 管 を接 続 して,肝 機 能 を代 替 させ る,あ
る い は肝 細 胞
を移 植 す る,と い う方 法 が 研 究 さ れ て い た が,手 技 の複 雑 さや 免 疫 機 能 に よ る移 植 細 胞 の 機 能 や 絶 対 数 が低 減 し て し ま うた め,現 在 は,短 期 間 内 だ け 用 い られ る ハ イ ブ リッ ド型 人 工 肝 臓 が研 究 され て い る.こ の シ ス テ ム で は,中 空 糸 や ス ポ ン ジ状 の 担 体 表 面 に ブ タ な どの肝 細 胞 を生 着 させ た モ ジ ュ ー ル を体 外 循 環 シス テム に接 続 して 用 い,肝 細 胞 の解 毒 機 能 や 代 謝 機 能 を利 用 して血 液 浄 化 を 図 る.し か し なが ら,こ れ らの場 合,細 胞 が 単 層 で接 着 して い た り,ゲ ル な ど に よ り物 質 透 過 性 が 阻 害 され て し ま うた め に肝 細 胞 自体 の活 性 が 短 期 間 内 に 著 し く低 下 して し まい,数
時 間 か ら数 日以 内 で の使 用 しか で きな い の が 実 情 で あ る.肝 細 胞 の 形 態
と機 能 の発 現 の 関 係 を考 慮 し,よ
り分 化 し た形 態 を維 持 した ま ま培 養 で き る シス
テ ム が 検 討 され,今 後 さ ら に高 機 能 性 の ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 肝 臓 が 創 製 さ れ る こ
とが期 待 され る. d. これ か らの ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 臓 器"組 織 工 学" の相 互 作 用,生 体 組 織,器
近 年,多 種 類 の細 胞
官 の 成 り立 ち を研 究 し,さ ら に は組 織,器
して 医 療 に 用 い よ う とす る組 織 工 学(tissue
engineering)が
官 を再 構 築
注 目され て きてい
る.細 胞 は秩 序 を も っ て組 織 化 され 臓 器 を形 成 し,そ れ に よ っ て初 め て 高度 な 機 能 を発 現 す る.そ
こ で二 次 元 平 面 で細 胞 接 着 領 域 と非 接 着 領 域 を設 計 す る こ と に
よ り,任 意 のパ タ ー ン を有 す る細 胞 組 織 体 を形 成 した り,光 リ ソグ ラ フ ィー技 術 を利 用 して さ まざ ま なパ ター ン化 表 面 が 作 製 され,細 胞 の 接 着,組
織 化 の過 程 に
つ い て検 討 され て い る.こ の 手 法 は新 しい 共 培 養 シ ス テ ム と同 時 に 人 工 神 経 との 関 連 か ら興 味 が もた れ て い る. これ まで に組 織 工 学 的手 法 で 作 製 さ れ た 器 官 ・組 織 は,主 あ る い は合 成 高 分 子 を マ ト リッ ク ス と し,こ の 表 面 上,あ る細 胞 を培 養,増 の手 法 で,ア
殖 させ,こ
に生 分 解 性 の天 然,
る い は 内部 に 目 的 とす
れ を患 部 に 移 植 す る とい う方 法 が と られ て い る.こ
メ リカ の研 究 者 が ヒ トの 耳 介 構 造 の生 分 解 性 マ トリ ッ ク ス に軟 骨 細
胞 を播 種 ・増 殖 さ せ ネ ズ ミの 背 中 に移 植 した 写 真 を発 表 し,世 界 に セ ン セ ー シ ョ ン を起 こ した の は記 憶 に新 し い.実 際,ポ 酸-ε-カ プ ロ ラ ク トン)の を作 製 し,こ
リ(乳 酸-グ リコ ー ル 酸)や
ポ リ(乳
よ う な 分 解 性 合 成 高 分 子 で 管状 の 多 孔 性 マ トリ ック ス
こに 患 者 の血 管 細 胞 を播 種 して マ トリ ック ス 上 で 成 長 させ,こ
患 部 に移 植 す る 治療 が 考 案 され,臨 床 試 験 され て い る.こ の 方 法 で は,マ ク ス は体 内 で 分 解,消
失 す る一 方,培
れを トリ ッ
養 され た 細 胞 や 組 織 は生 体 内 の 環 境 に適 合
して他 の組 織 で み られ る の と同 等 の血 管 組 織 を形 成 す る.例 え ば小 児 の治 療 に 用 い る と,従 来 の人 工 血 管 で は患 者 の成 長 に合 わ せ て よ り太 い 人 工 血 管 に移 植 す る 手 術 が必 要 とな る が,組 織 工 学 的 に作 製 され た 血 管 は小 児 の 成 長 に 合 わ せ 自 身 も 成 長 す る血 管 とな り,成 長 に合 わ せ た 手 術 は 不 要 とな る の で 患 者 のQOLの
向上
とい う点 か ら も福 音 とな る.現 在 は三 次 元 プ リン タ を 用 い,任 意 の形 に生 分 解 性 ポ リマ ー を"印 刷"し
て マ ト リ ック ス を 作 製 す る,と い う技 術 も登 場 し,種 々 の
組 織 構 築 が検 討 さ れ て い る.し か しな が ら,こ の方 法 で作 成 して い る組 織 の 多 く は,血 管 組 織 を ほ とん ど必 要 と し な い組 織 で あ り,生 体 の 多 くの組 織 ・器 官 の よ う に代 謝 機 能 を 司 る組 織 ・臓 器 を作 製 す るの は き わ め て難 し い. 培 養 され た 細 胞 を移 植 な どの 目的 で培 養 皿 表 面 か ら脱 着 ・回 収 す る場 合,物 的 に剥 離 した り,キ
理
レー ト剤 や タ ンパ ク 質 分 解 酵 素 を 用 い て細 胞-基 材 表 面 間 の
結 合 を切 り離 さな けれ ば な らな い.し か し,こ の操 作 に よ って 組 織 化 され た細 胞 は ば らば ら に な り,回 収 で きた と して も細 胞 表 面 の タ ンパ ク 質 構 造 の破 壊 の た め に 細 胞 の機 能 は低 下 して し ま う.そ 性 が 変 化 す る 高 分 子 の ポ リ(N-イ 5.7)を
こで,温 度 に よ っ て32℃ を境 に親 水 性/疎 水 ソ プ ロ ピル ア ク リル ア ミ ド)(PIPAAm,図
基 材 表 面 に電 子 線 重 合 法 に よ りナ ノ メ ー トル オ ー ダ ー の厚 み を制 御 して
グ ラ フ トした イ ン テ リ ジ ェ ン ト培 養 皿 が 開 発 され た.一 般 的 に細 胞 は比 較 的 疎 水 性 表 面 に 接 着 し,親 水 性 の 高 い 表 面 に は 接 着 し な い こ とが 知 ら れ て い る. PIPAAm表
面 は細 胞 培 養 温 度 の37℃ で は比 較 的 疎 水 性 を示 し,細 胞 は接 着 ・伸
展 ・増 殖 す る.PIPAAm表
図5.7 ポ リ(N-イ
面 は 室 温 で は親 水 性 に な る の で,培 養 し た 細 胞 を
ソ プ ロ ピ ル ア ク リル ア ミ ド)(PIPAAm)の
図5.8 (a) 細胞 シー ト工 学 に基 づ くPIPAAm培
構 造式
養皿 か らの 培 養 細 胞 の細 胞 シ ー
トの 脱 着 ・回 収 37℃ で は比 較 的疎 水 性 表 面 とな り細 胞 が 培 養 で き る. 低 温 に す る と細 胞 外 マ ト リッ ク ス を細 胞 側 に残 して シ ー ト状 で細 胞 を脱 着 ・回収 で きる.
図5.8 (b) PIPAAm培
養 皿
か ら低 温処 理 に よ シー ト状 で脱 着 す る血 管 内皮 細 胞 写 真 右 側 よ り細 胞 が シ ー ト状 で 培 養 皿 表 面 よ り剥 離 し て い る.
20℃ に 静 置 す る と細 胞 が 細 胞‐細 胞 間 の 結 合 を保 持 した ま ま シー ト状 で 表 面 か ら 〓 離 す る(図5.8).こ
の よ う に,温 度 変 化 に よ っ て 回 収 した 血 管 内 皮 細 胞 培 養
シー トを ラ ッ ト背 部 の 全 層 皮 膚 欠 損 部 と植 皮 片 との問 に移 植 した と ころ,植 皮 片 内 の 血 管 新 生 を有 意 に亢 進 す る効 果 が 認 め られ て い る.心 筋 細 胞 か ら な る細 胞 シ ー トを重 層 化 す る と,互 い に協 調 して 自律 的 に拍 動 す る.こ の 拍 動 シー トを 心 不 全 モ デ ル の ネ ズ ミ心 臓 に移植 す る と,ネ ズ ミの心 機 能 が 亢 進 す る こ と を見 出 し, 組 織 工 学 に よ る心 臓 の再 生 が 可 能 で あ る こ とが 示 唆 され た.ま た 最 近,肝 実 質細 胞 と内 皮 細 胞 を別 々 にPIPAAm培
養 皿 上 で 培 養 し,低 温 処 理 に よ り回収 し た細
胞 シー トを 重 ね 合 わ せ る こ と に よ り肝 小 葉 の モ デ ル を実 現 し,初 め て 共 培 養 に よ っ て肝 細 胞 の長 期 培 養 化 を達 成 し て い る.こ
の よ うな 技術 は組 織 構 造 を備 え た ハ
イ ブ リ ッ ド型 人 工 臓 器 の新 手 法 とし て,今 後 の発 展 に大 き な期 待 が寄 せ られ て い る. 5.4 高 分 子 製 剤 ・ ドラ ッ グ デ リバ リ ー シ ス テ ム 薬 物 に よ る病 気 治療 は天 然 物 か らの 抽 出物 や 化 学 合 成 物 の 開 発 と と もに 進 歩, 変 化 し て きて い る.通 常 投 与 さ れ た 薬 物 の 血 中 濃 度 は 図5.9Aの 与 直 後 に 急 激 に上 昇 し,代 謝,排
よ うに薬物 投
泄 され て次 第 に減 少 す る とい う,鋸 歯 状 に 変 化
し,有 効 濃 度 範 囲 に保 つ の は難 しい.そ
こ で治 療 有 効 濃 度 を保 つ た め に は頻 回 投
与 が 必 要 とな る.し か し,薬 物 に よ って は治 療 域 が 非 常 に狭 く,投 与 量 に よ って 容 易 に毒 性 域 に入 っ て し ま う.さ
らに 薬物 が 十 分 に吸 収 さ れ な か った り,ア レル
図5.9 薬 物 の血 中 濃 度 変 化 A:従
来 の投 与 法,B:理
想 的 な投 与 法.
ギ ー 反 応 が 生 起 し た りす る な どの副 作 用発 現 が しば し ば問 題 とな る.薬 物 が 治 療 域 内 の 濃 度 で 一 定 に放 出 で き る,あ
るい は,必 要 な部 位 だ け に,必 要 な と きに,
必 要 なだ け投 与 で きれ ば副 作 用 を大 き く軽 減 で き るだ けで な く,安 全 な薬 物 治療 が 可 能 と な る.こ
の よ う な 製 剤,治
(drug delivery systems;DDS,薬
療 の 概 念 を ド ラ ッ グ デ リバ リ ー シ ス テ ム 物 送 達 シ ス テ ム)と
い い,近 年 活 発 に研 究 さ
れ て い る.例 え ば高 分 子 マ ト リ ッ クス に 薬 を分 散,あ る い は 内 包 し,こ れ を一 定 速 度 で 放 出 す る技 術 や 拡 散 の制 御,浸
透 圧 の制 御 が検 討 され て い る.現 在 で は薬 物
の 血 中濃 度 を一 定 に 保 つ 徐 放 性 の制 御 だ けで な く,病 巣 部 位 に選 択 的 に薬 剤 を運 搬 し た り,特 定 の 時 間 だ け薬 物 を放 出 す る,時 空 間 的 制 御 に 基 づ くタ ー ゲ テ ィ ン グ に つ い て 多 くの研 究 が 展 開 され て い る.高 分 子 材 料 は ゲ ル や カ プ セ ル な どの マ ク ロ な レベ ル だ け で な く,薬 物 を 自己 免 疫 反 応 か ら回 避 さ せ るた め,あ
るい は腫
瘍 へ の特 異 的 な結 合 反 応 を 引 き起 こす た め の ミ ク ロ分 子 と して 利 用 さ れ て い る. 5.4.1 徐 放 性 の 制 御 薬 物 の 血 中 濃 度 を一 定 に保 つ た めの 徐 放 性製 剤 は,薬 物 を生 体 に不 活 性 な隔 離 膜 内 に 内 包 す る リザ ー バ 型(reservoir
device)と,薬
一 に溶 解 ,あ る い は分 散 した モ ノ リシ ック型(monolithic
物 が マ ト リ ッ ク ス 内 に均 device)と
リザ ー バ 型 で は,内 包 した薬 物 濃 度 が飽 和 し て い る場 合,薬
が あ る.
物放 出の駆動力で
あ る膜 内 外 で の 薬 物 濃 度 差 を ほ ぼ 一 定 に 保 つ こ とが で き る の で ゼ ロ 次 放 出 とな る.内 包 した 薬 物 濃 度 が飽 和 して い な い場 合 に は,経 時 的 に 内包 した 薬 物 濃 度 が 低 下 し,膜 内外 で の 薬 物 濃 度 差 が 小 さ くな るた め に薬 物 放 出 は指 数 関 数 的 に減 少 し,一 次 放 出 に な る. 一 方,モ
ノ リシ ック型 で は,リ ザ ー バ 型 で 薬 物 の制 御 放 出 に 問題 とな る隔 離 膜
の ピ ン ホ ー ル や 膜 厚 の不 均 質 さ な どの 問 題 が 起 こ らな い.薬 物 が マ ト リ ック ス 内 に溶 解 す る に は,薬 物 とマ ト リ ック ス の 物性 が 大 き く影 響 す る.薬 物 が 分 散 した デバ イ ス の場 合,マ
ト リッ ク ス 内 の薬 物 含 量 に よ り,放 出挙 動 が 変 化 す る.0∼5
%程 度 の場 合 は薬 物 の マ トリ ック ス 内 へ の 溶 解 とマ ト リ ック ス 表 面 へ の拡 散 に よ り薬 物 が 放 出 され る.5∼20%の
と きは,外 液 が 薬 物 を放 出 した 後 の微 小 空 孔 内
に 浸 入 し,薬 物 放 出 に 影 響 す る.こ の効 果 は薬 物 含 量 が20%以
上 に な る と顕 著
で,薬 物 が抜 け た空 孔 が 連 続 した チ ャ ン ネル に な り,薬 物 の ほ とん どは この チ ャ ンネ ル を通 して 放 出 され る.チ
ャ ンネ ル 内 に満 た され た 溶 液 中 へ の薬 物 の溶 解性
と拡 散 性 が放 出 速 度 を決 定 す る.
5.4.2 刺 激 に応 答 した薬 物 放 出制 御 薬 物 放 出 のOn-Off制
御 を実 現 す る に は リモ ー トコ ン トロ ー ル が 可 能 な シ ス テ
ム の 構 築 が 必 要 で あ り,薬 て い る.こ
・工 ・医学 の 境 界 を こ えた 領 域 で 製 剤 の 開 発 が 行 わ れ
の 製 剤 は,病 気 に よ っ て生 じ る シ グ ナ ル を検 知 し(sensor),シ
ル の 大 き さ を 判 断 し(processor),至 fecter),さ
グナ
適 量 の 薬 物 を 放 出 し て 治 療 を 行 い(ef
ら に体 が 正 常 に戻 る こ と を検 知 して 放 出 を停 止 す る オ ー トフ ィー ド
バ ッ ク シ ス テ ム を もつ.ま た,生 体 内 で 発 生 す る シ グナ ル だ けで な く,外 部 か ら 熱,電
流,超
音 波 な どの 物 理 信 号 を与 え,薬 物 放 出制 御 を可 能 とす る シ ス テ ム が
考 案 され て い る. 高 分 子 ゲ ル 中 の物 質 透 過 性 は ゲ ル の含 水 率 が 高 くな る ほ ど上 昇 す るの で,ゲ
ル
の膨 潤 度 を体 内 の シ グ ナ ル に よ っ て変 化 させ る こ とが で きれ ば 内 包 した 薬 物 の放 出制 御 が で き る.こ
こで は さ ま ざ ま な シグ ナ ル に応 答 す るDDSゲ
ル に つ い て紹
介 す る. a. 化 学 物 質 に応 答 す るシ ス テ ム(図5.10)
化 学 物 質 に応 答 し て薬 物 放 出
を す る シ ス テ ム と して最 も代 表 的 な もの は グル コ ー ス 応 答 型 イ ンス リン放 出 シ ス テ ム で あ る.ゲ ル 内部 に グ ル コ ー ス オ キ シ ダ ー ゼ(GOD)を ー ス の 酸 化 反 応 に伴 うpH変
固 定 化 し,グ ル コ
化 に 応 答 し た ゲ ル の膨 潤 度 の違 い に よ り,イ
ン の放 出 制 御 が で き る.ま たGODを
ンス リ
固 定 化 した ポ リ ア ク リル ア ミ ド膜 とニ コ チ
ン ア ミ ド基 を有 す る酸 化 還 元 膜 を組 み合 わ せ た シ ス テ ム も考 案 され て い る.こ れ は酵 素 反 応 に よ り生 じた過 酸 化 水 素 が 酸 化 還 元 膜 中 の ニ コ チ ン ア ミ ド基 を 酸 化 し,膜 中 に正 電 荷 を生 成 して ゲル を膨 潤 させ,イ
ンス リン を放 出 す る.グ ル コ ー
ス濃 度 が 下 が れ ば放 出量 は少 な くな る. 酵 素 は ゲ ル か ら漏 出 す る と生 体 中 で免 疫 反 応 を誘 導 す る可 能 性 の あ る タ ンパ ク 質 で あ る の で,酵 素 を 用 い る こ とな くグ ル コー ス濃 度 に応 答 して イ ンス リン を放 出す る シ ス テ ム が 検 討 され て い る.多 価 ア ル コー ル とボ ロ ン酸 は水 中 で 可 逆 的 に コ ン プ レ ック ス を形 成 す る.フ ェ ニル ボ ロ ン酸 基 を有 す る水 溶 性 合 成 高 分 子 は ポ リ ビニ ル ア ル コー ル(PVA)と
ボ ロ ン酸 基 と水 酸 基 を介 して コ ン プ レ ッ ク ス を
形 成 す る.こ の コ ン プ レ ッ ク ス は グル コ ー ス の 存 在 に よ り置 換 反 応 を起 こ し て解 離 す る た め,グ ル コ ー ス 濃 度 に応 答 して イ ンス リ ンを放 出 で きる.最 近,温 度 応 答 性 高分 子 ゲ ル に フ ェ ニ ル ボ ロ ン酸 を導 入 し,一 定 温 度 で グ ル コー ス 濃 度 に応 答 し て ゲ ル の 膨 潤 を変 化 させ 内 包 した イ ンス リン を放 出 す る シ ス テ ム も考 案 され て
図5.10
グル コ ー ス に応 答 す るDDSシ
ス テム
い る.こ の ゲ ル で は,グ ル コー ス濃 度 が 低 下 す る とゲ ル の収 縮 が 起 こ りイ ンス リ ン の放 出 を完 全 に停 止 させ る緻 密 な 収 縮 層 が 形 成 され る.こ れ に よ りイ ンス リン のOn-Off放
出制 御 が 行 え る こ とが 示 され て い る.
b. pHに
応 答 す るシ ス テ ム
経 口投 与 さ れ る薬 物 はpHが
酸 性 か ら中 性,
弱 ア ル カ リ性 へ と変 化 す る消 化 管 内 を通 過 しな けれ ば な らな い.ま
た この 間,さ
ま ざ ま な消 化 酵 素 や 消 化 管 内容 物 と接 触 す る.特 に ポ リペ プ チ ドは 胃 の 低pH領 域 で 不 活 性 化 して し ま う た め小 腸 まで 到 達 で き る の は ご く微 量 で あ る.ま た イ ン
ドメ タ シ ン な どの抗 炎 症 剤 は 胃へ の副 作 用 が 大 き い た め,小 腸 で の選 択 的 吸 収 が 望 まれ る.そ
こでpHに
応 答 す る薬 物 放 出 シ ス テ ム が 考 案 さ れ た.pH応
答性ゲ
ル はア ク リル 酸 や ア ミノ エ チ ル メ タ ク リ レー トな どの イ オ ン性 モ ノ マ ー を導 入 す る こ とに よ っ て 得 られ る.例
え ば ア ク リル 酸 を導 入 した ゲ ル で は低pHで
カル ボ
キ シル 基 の プ ロ トン化 に よ り解 離 が抑 制 さ れ 収 縮 して 薬 物 放 出 を抑 制 し,高pH で は カ ル ボ キ シル 基 の解 離 に よ り膨 潤 して 薬 物 が 放 出 され る. c. 温 度 に 応 答 す る シ ス テ ム (PIPAAm)ゲ PIPAAmゲ
ポ リ(N-イ
ソ プ ロ ピル ア ク リル ア ミ ド)
ル を 用 い る と,薬 物 放 出 を 温 度 に よ りOn-Off制
御 で き る.
ル は低 温 で は ポ リマ ー鎖 が水 和 して い るが32℃ 以 上 の 高 温 で は脱 水
和 して収 縮 す るの で 温 度 変 化 に対 して 大 き な膨 潤 度 変 化 が 生 じ る.疎 水 性 の ブ チ ル メ タ ク リレ ー ト(BMA)を 表 面 で緻 密 な ゲ ル の収 縮 層(ス
共 重 合 させ る と,高 温 に変 化 させ た と き に ゲ ル の キ ン層)が 形 成 さ れ,ゲ ル 内 部 の水 の 放 出 を も停
止 さ せ る こ とが で き る.こ の ゲ ル の薬 物 放 出挙 動 を 温 度 変 化 さ せ な が ら調 べ る と,ゲ ル が 膨 潤 して い る10℃ で は薬 物 の 透 過 性 が 高 くな り薬 物 が 放 出 さ れ,ゲ ル が 収 縮 す る30℃ で放 出 が 停 止 す る.On状
図5.11
10∼30℃ の 温 度 変 化 に対 す るPIPAAmゲ ル の機 械 的 強 度 を上 げ る た め にn-ブ
態 か らOff状 態 に な る と き,ゲ ル の
ル か らの イ ン ド メ タ シ ン の 放 出挙 動(ゲ チ ル メ タ ク リ レー ト(BMA)を
共 重 合 し た)
図5.12
グ ラ フ ト型 の 分 子構 築 を有 す るPIPAAmゲ
ル の 素早 い収 縮 メ カ ニ ズ ム
収 縮 に伴 う大 き な体 積 変 化 が 起 こ り,ゲ ル 表 面 か ら急 激 に薬 物 が 絞 り出 さ れ (squeezing効
果),非
を 下 げ てOn状
透 過 性 の ス キ ン層 が形 成 さ れ て放 出 は停 止 す る.再 び 温 度
態 に な る と薬 物 が 放 出 され,パ
ル ス 型 放 出 パ タ ー ン を示 す(図
5.11). また ゲ ル網 目 の分 子 構 造 を設 計 す る こ と に よ り速 度 制 御 で きる こ とが 明 らか に さ れ て い る.PIPAAmの PIPAAm自 (図5.12).自
自 由末 端 鎖 をPIPAAmゲ
ル の 主 鎖 に グ ラ フ トす る と,
由末 端 鎖 の素 早 い脱 水 ・凝 集 変 化 が 起 こ りゲ ル の 収 縮 を加 速 で き る 由 末 端 鎖 は,運 動 性 の 高 い 自 由 末 端 を有 す る の で,両 末 端 を架 橋
点 で 固 定 さ れ た網 目の 収 縮 に先 立 っ て,急 激 に脱 水 して凝 集 す る.こ れ に伴 い 自 由 末 端 鎖 間 に強 い 疎 水 性 相 互 作 用 が働 き,ゲ ル 内 部 の凝 集 力 が 増 大 す る こ と に よ り,ゲ ル 全 体 が 素 早 く収 縮 す る と考 え られ る.こ の 変 化 に は 自 由末 端PIPAAm 鎖 の分 子 鎖 長 が きわ め て 重 要 で,分 子 量 が 低 い と大 き な凝 集 力 は得 られ ず,ゲ ル は ゆ っ く り と収 縮 変 化 す る.こ の よ う に ゲ ル の 分 子 設 計 に よ り新 しいパ ル ス型 投 与 が 実 現 可 能 とな って き て い る. 解 熱 剤 へ の 応 用 を考 え る と,体 温 の 上 昇 に伴 い 薬 物 が放 出 され る シ ス テ ム は き わ め て効 果 的 で あ る.ア
ク リル ア ミ ド‐ブ チ ル メ タ ク リ レー ト共 重 合 ゲ ル とア ク
リル 酸 ゲ ル とか らな る交 互 侵 入 網 目(IPN)ゲ
ル は,低 温 で ア ク リル ア ミ ド とア
ク リル 酸 の水 素 結 合 形 成 に よ りゲ ル が 収 縮 す る一 方,高 温 で は水 素 結 合 の 解 離 に よ りゲ ル が膨 潤 し,低 温 側 でOff,高
温 側 でOnと
な る薬 物 放 出 シ ス テ ム を 実 現
で き る. そ の ほ か に も電 場 や磁 場 な どの物 理 刺 激 に応 答 し て素 早 い形 態 変 化 を起 こす ゲ ル を利 用 す れ ば,生 体 外 部 か らの 刺 激 で パ ル ス 型 薬 物 投 与 が可 能 とな る. 5.4.3 タ ー ゲ テ ィ ン グ 薬 剤 の 吸 収 効 率,臓
器 集 積 性,作
用 時 間,選 択 的 活 性 発 現 な ど の体 内挙 動 を 改
善 す る た め に天 然 高 分 子 や合 成 高 分 子 で 薬 剤 を化 学 修 飾 した り,非 共 有 結 合 で 内 包 す る こ とが あ る.こ の よ うな 高 分 子 は病 巣 部 位 まで薬 剤 が安 定 に運 ば れ る た め の キ ャ リア ー と して の 働 きや標 的 指 向 性 を もつ.高 分 子 自体 が 薬 理 活 性 を もつ も の もあ れ ば,環 境 や 外 部 の シグ ナ ル に応 じて 機 能 を発 現 す る も の もあ る. a. 特 異 性 を有 す る タ ー ゲ テ ィ ン グ/ミ サ イ ル ドラ ッ グ
病 巣 に選 択 的 に薬
物 を作 用 させ る標 的 指 向性 を有 す る薬 剤 を ミサ イル ドラ ッ グ とい う.腫 瘍 抗 原 に 対 す る抗 体,腫 瘍 細 胞 表 面 の糖 鎖 に対 す る レ ク チ ン,レ セ プ タ ー に対 す る特 異 的 糖 鎖 な ど,高 い特 異 性 を利 用 し て これ ら を薬 物 に結 合 させ た 複 合 体 が 開 発 され て い る.こ の 手 法 は,一 時"魔
法 の弾 丸"と
呼 ばれ,夢
の 治 療 法 と して 期 待 され て
い た.し か し,白 血 球 や マ ク ロ フ ァー ジ な どの細 胞 に貪 食 され た り,標 的 部 位 に 達 す る前 に正 常 細 胞 や 正 常 組 織 に移 行 して し ま い,期 待 した ほ どの効 果 を得 る こ とが で き なか っ た り,腫 瘍 の 抗 原 性 が頻 繁 に変 化 した り,複 合 体 に 対 す る抗 体 が 出現 す る な どの諸 問 題 が あ が っ て い る. b. 高 分 子 ミセ ル
ミサ イ ル ドラ ッ グ で 問 題 と な った 正 常 組 織 で の 副 作 用
や非 効 率 性 を改 善 す る た め に,近 年,正
常 細 胞 や正 常 組 織 へ の移 行 を最 小 限 にす
る必 要 性 が 高 ま って い る.一 方 で は 炎症 部 位 に お い て 血 管 壁 の透 過 性 が 亢 進 し て い る一 方,高 分 子 が 蓄 積 しや す い こ とが 報 告 され て い る(EPR効 permeability
and retention effect).非
く停 留 で き れ ば,こ
のEPR効
果,enhanced
特 異 的 な相 互 作 用 を最 小 に して体 内 に長
果 を利 用 したDDSが
可 能 とな る.こ れ を 達 成 す
る に は製 剤 の血 中 滞 留 時 間 の延 長 と,腎 糸 球 体 か ら の ろ過 を免 れ るた め の 適 切 な サ イ ズ が 重 要 な フ ァ ク タ ー とな る.そ 粒 子 表 面 の性 質(油
こで 体 内動 態 を分 子 サ イ ズ,粒 子 の 電 荷,
・水 親 和 性 な ど)に よ り規 定 す る試 み が行 わ れ,リ
ボ ソーム
や,高 分 子 ミセ ル な どが 考 案 さ れ て い る. リ ポ ソ ー ム は リン脂 質 集 合 体 か らで き て お り親 水 性 の薬 剤 を内 水 層 に,疎 水 性
図5.13 高 分子 ミセ ル の 構 造
薬 剤 を脂 質 二 重 層 内 に それ ぞ れ包 含 で き る.し か し構 造 的 に弱 く,肝 臓 に 取 り込 ま れ や す い の で,各 種 臓 器 に対 す る キ ャ リア ー と して は 難 しい 問 題 を抱 え て い る.最 近 は,リ
ン脂 質 の組 成 を変 化 させ て よ り安 定 な リ ポ ソ ー ム を作 製 す る試 み
や,親 水 性 で 生 体 適 合 性 の 高 い ポ リエ チ レ ン グ リコ ー ル(PEG)を
導 入 し,生
体 内安 定 性 を高 め る試 み が検 討 され て い る. 一 方,PEGと 理 的,あ
ポ リア ス パ ラ ギ ン酸 か ら な る高 分 子 ミセ ル は疎 水 性 の薬 物 を物
る い は化 学 結 合 を介 して 内 包 し,PEGの
だ ナ ノオ ー ダ ー の 粒 子構 造 を も ち,か
親 水 性 鎖 が ま わ りを取 り囲 ん
さ高 い 分 子 とな るだ け で な く,PEG自
が 低 濃 度 で 生 物 学 的 に比 較 的非 活 性 で あ る(図5.13).実
身
際,抗 癌 剤 の ア ド リア
マ イ シ ン を内 包 した 高 分 子 ミセ ル は肝 臓 や 脾 臓 に移 行 し に く く,大 腸 癌 な ど を治 療 で きる こ とが 確 認 され て い る.こ れ は 固 形 癌 に 対 す るEPR効 され て い る こ と を示 して い る.外 殻 とな るPEGに
果 が う ま く活 用
機 能 性 分 子 を賦 与 し て さ ら に
タ ー ゲ テ ィ ン グ能 を高 め る こ と も可 能 で あ り,こ れ か らの 高 分 子 医薬 と して 期 待 が 大 きい.
バ イ オ マ テ リア ル の 研 究 は これ か らの 医 療 を支 え る と い っ て も過 言 で は な い. 多 くの優 秀 な人 材,長
い年 月,費 用 が 必 要 で あ るが,な
に よ り も医 学 ・工 学 ・薬
学 ・化 学 ・生 物 学 な どの関 連 諸 科 学 分 野 の領 域 を こえ た 知 識 や 技 術 の 融 合 と集 学 的 な ア プ ロー チ が 必 要 で あ る.こ の よ う な観 点 か らバ イ オ マ テ リア ル の 開 発 が 活 発 に推 進 され,新
し い人 工 臓 器,再
生 医 療,ド
ラ ッグ デ リバ リー シス テ ム,バ
オ テ ク ノ ロ ジ ー が さ らに 開拓 され て い く こ と を期 待 した い.
イ
6 環 境
材 料
21世 紀 を迎 え て,材 料 技 術 が 厳 し い 現 実 に 直 面 し て い る こ とが 衆 知 の 事 実 に な っ て い る.化 石燃 料 の枯 渇,地
球 温 暖 化 現 象,オ
ゾ ン層 の 破 壊 な どグ ロ ー バ ル
な 環 境 問題 の深 刻 さが 叫 ば れ て い る.地 球 環 境 問 題 の根 本 的 原 因 が,現 代 の 物 質 文 明 に あ る こ と は疑 い よ う の な い事 実 で あ る.こ れ か らの 時 代 に求 め られ て い る 材 料 は,機 能 面 の有 用 性 に加 え て,人
に も環 境 に もや さ しい もので あ り,材 料 開
発 の 目的 が 以 前 に も増 し て多 様 化 す る こ とが 予 想 さ れ る.再 生 可 能 な材 料,天 材 料,生 分 解 性 材 料,長
寿 命 材 料,枯
渇 性 材 料 の 代 替 材 料,非
然
毒 性 材 料 な ど,環
境 負 荷 を最 少 に し再 生 資 源 化 率 を最 大 に した環 境 材 料 の 開 発 が 期 待 され る. 合 成 高 分 子(プ
ラ ス チ ッ ク)の 大 量 生 産 が 始 ま っ て30年
料 な しで は人 類 の生 活 が も は や成 り立 ち え な い.し
が 経 過 し,高 分 子 材
か し,地 球 の 限 界 が み え て き
た とい う現 実 の 中 で,全 世 界 で 生 産 さ れ て い る1億2000万
トン に も及 ぶ 大 量 の
プ ラ ス チ ッ ク に よる 環 境 汚 染 の 問題 も その 根 本 的 な解 決 が 要 請 され て い る.持 続 発 展 可 能 な循 環 型 社 会 を作 る た め の技 術 開 発 に,高 分 子 を は じ め と した 材 料 研 究 者 と技 術 者 は この 問題 に迅 速 に取 り組 む 必 要 が あ る.本 章 で は,各 種 の 環 境 負荷 低 減 を 目指 した 環 境 材 料 の 技 術 の 中 か ら,生 分 解 性 ポ リマ ー と プ ラ スチ ック リサ イ クル に つ い て,わ
が 国 にお け る研 究 開 発 動 向 を中 心 に紹 介 し,そ の 基 本 的 な 考
え 方 を詳 説 す る. 6.1 生 分 解 性 ポ リ マ ー 実 用 材 料 と し て の生 分 解 性 ポ リマ ー は,次 の よ う に定 義 さ れ て い る. 「 従 来 の プ ラ ス チ ッ ク に劣 ら な い 機 能 を もち,自 然 界 に存 在 す る微 生 物 の 働 き に よ っ て,低 分 子 化 物 に 分 解 され,最 二 酸 化 炭 素 に分 解 され る ポ リマ ー 」
終 的 に 土 の有 機 物 成 分 や 水 と
微 生物 は分 解 酵 素 を体 外 に 出 して,高 分 子 鎖 を連 結 して い る エ ス テル 結 合,グ リ コ シ ド結 合,ペ
プ チ ド結 合 な どの化 学 結 合 を加 水 分 解 反 応 に よ り切 断 し,さ ら
に 高 分 子 鎖 は酵 素 に よっ て 有 機 酸,グ
ル コー ス,ア
ミ ノ酸 とい っ た 低 分 子 化 合物
に分 解 す る こ とが で き る.分 子 量 が 数 百 以 下 に な る と,微 生 物 は化 合 物 を細 胞 内 に取 り込 み,さ
ま ざ まな 代 謝 経 路 を 経 て,各 種 の生 体 高 分 子 を合 成 し た り,水
と
二 酸 化 炭 素 に な る.生 分 解 性 ポ リマ ー は,地 球 環 境 へ の 負 荷 を低 減 で きる プ ラス チ ッ ク原 料 と して の 実 用 化 が 強 く望 まれ て お り,多
くの 大 学,研
究 所,企
業な ど
で,基 礎 か ら応 用 に至 る ま で の幅 広 い研 究 開 発 が 進 め られ て い る.そ の対 象 とな るポ リマ ー は,作 成 方 法 に よ り大 別 す る と,微 生 物 産 生 ポ リマ ー,動 植 物 由 来 の 天 然 ポ リマ ー,人 工 化 学 合 成 ポ リマ ー の 三 つ に分 類 す る こ とが で き る. 6.1.1 微 生 物 産 生 ポ リマ ー 微 生 物 が作 る ポ リマ ー に は,ポ ミ ノ酸,核
酸,タ
リエ ス テル,セ
ル ロー ス な どの 多 糖 類,ポ
リア
ンパ ク質 な どが あ る.
バ イオ ポ リエ ス テ ル は,200種
類 以 上 の原 核 生 物(細
られ,自 然 界 か ら炭 素 源(糖,有
機 酸,ア ル コ ー ル,炭 酸 ガ ス な ど)を 細 胞 膜 を
通 して 取 り入 れ,ポ
菌,ら
ん 藻 な ど)か ら作
リエ ス テ ル を体 内 で 合 成 す る.図6.1に,さ
ま ざ まな 菌 株 を
用 い て微 生 物 合 成 され た ポ リエ ス テ ル に含 まれ るモ ノマ ー ユ ニ ッ トの分 子 構 造 を 示 す.微 生 物 の 重 合 酵 素 の基 質 特 異 性 が 比 較 的幅 広 い こ と,微 生 物 の 幅 広 い代 謝 作 用 に よ っ て,多 様 な モ ノ マ ー が 供 給 可 能 で あ る こ とに よ り,多
くの種 類 の 共 重
図6.1 微 生 物 が合 成 す るポ リエ ス テ ル に含 まれ る モ ノ マ ー ユ ニ ッ ト
図6.2 P[(R)-3HB]の (Ⅰ):β-ケ NADP依 PHAデ
トチ オ ラ ー ゼ,(Ⅰ)*:NAD依 存 性 ア セ ト ア セ チ ルCoAリ
ダ ク タ ー ゼ,(Ⅲ):PIIAポ
ポ リ メ ラ ー ゼ,(Ⅴ):(R)-3-ヒ
トア セ チ ルCoAシ
生 合 成 と代 謝 分 解 経 路 存 性 ア セ トア セ チ ルCoAリ
ダ ク タ ー ゼ,(Ⅱ): リ メ ラ ー ゼ,(Ⅳ):
ド ロ キ シ ブ チ レー トデ ヒ ドロ ゲ ナ ー ゼ,(Ⅵ):ア
セ
ン テ タ ー ゼ.
合 ポ リエ ス テ ル が 微 生 物 合 成 され る よ う に な っ て きた.微 生 物 の作 る最 も典 型 的 な ポ リエ ス テ ル は,(R)体
の3-ヒ
ドロ キ シ ブ タ ン酸(3HB)ユ
以 上 も結 合 し た 高 分 子 量 の ポ リ[(R)-3-ヒ
ニ ッ トが1万 個
ドロ キ シ ブ チ ラ ー ト]:P(3HB)
で,図6.2に
示 す よ う な生 合 成 と代 謝 分 解 過 程 を経 る.微 生 物 が 体 内 に蓄 積 した
P(3HB)の
微 粒 子(0.5∼1.0μmの顆
に よ り抽 出 で き る.P(3HB)は,水
粒 状)は,有
機 溶 媒 や次 亜 塩素 酸 処理
不 溶 性 で 光 学 活 性 を もつ ポ リマ ー で あ る.
結 晶 性 のバ イ オ ポ リエ ス テ ル は,後 に述 べ る化 学 合 成 ポ リマ ー と同 じ く熱 可 塑 性 で,加 工 成 形 が 可 能 で あ る.結 晶 性 が 高 くも ろい た め に汎 用 プ ラ ス チ ック と して の 実 用 化 に は 向 か な いが,耐 チ ッ ク原 料 と して,さ
熱 性 お よ び 弾 性率 にお い て もす ぐれ て お り,プ ラ ス
らに 他 の 生 分 解 性 ポ リマ ー の 改 質 材 と して も有 用 で あ る.
微 生 物 が 作 る ポ リエ ス テ ル は,大 地,海 洋,汚
泥 な どさ ま ざ ま な環 境 にす む微 生
物 に よ っ て容 易 に 分 解 さ れ る 性 質 を もつ.ま
た,共 重 合 組 成 を変 え る こ と に よ
り,多 様 な す ぐれ た 物 性 を 示 す.す とに よ り,P(3HB)に
な わ ち,微 生 物 に与 え る炭 素 源 を工 夫 す る こ
な い性 質 を もつ 共 重 合 ポ リエ ス テ ル を生 産 す る こ とが
で き る.最 近,各 種 の ヒ ドロ キ シ ア ル カ ン酸 をモ ノ マ ー成 分 とす る共 重 合 ポ リエ ス テ ル が微 生 物 合 成 で きる よ う に な っ て きた.例 酸 と グ ル コ ー ス を与 え る発 酵 法 に よ り,3HBと3-ヒ
え ば,炭 素 源 と して プ ロ ピオ ン ドロ キ シバ リ レ ー ト:(3
HV)か
ら な る ラ ンダ ム 共 重 合 ポ リエ ス テ ル を生 合 成 す る こ とが で き る.こ の 系
で,基 質 と して 与 え る プ ロ ピオ ン酸 とグ ル コー ス の比 を変 え る こ とに よ っ て,幅 広 い組 成 範 囲 で 発 酵 生 産 で き る.ま た,基 質 と して,ブ
タ ン酸 とペ ンタ ン酸 を用
い て も,広 い 組 成 範 囲 の ラ ン ダ ム共 重 合 体 を微 生 物 合 成 す る こ とが で き る.さ に4HB(4-ヒ
ドロ キ シ ブ チ ラ ー ト),5HV(5-ヒ
合 わ せ で,さ
ら
ドロ キ シ バ リ レー ト)の 組 み
ま ざ まな共 重 合 ポ リエ ス テ ル を生 産 で き る よ うに な っ た.こ
のよ う
に し て微 生 物 に よ り合 成 され た 共 重 合 ポ リエ ス テ ル は,自 然 界 に生 きて い る微 生 物 に よ っ て分 解 され,炭 酸 ガ ス と水 に な る生 分 解 性 を も つ 高 分 子 量 の ポ リマ ー で,約180℃
で 融 け る とい う熱 可 塑 性,さ
あ る規 則 正 し い構 造 を もつ(ア
ら に主 鎖 に 対 して 一 方 向 だ け に側 鎖 が
イ ソタ クチ ック規 則 性)な
どの ユ ニ ー ク な性 質 を
も っ て い る. 一 方,微 生 物 が 菌 体 外 に セ ル ロ ー ス を産 生 す る こ と は,古 る.セ ル ロー ス産 生 菌(食 を吸 収 して,体
酢 を作 る酢 酸 菌 の一 種)は,グ
くか ら知 ら れ て い
ル コー ス の よ う な単 糖
内 で 重合 し鎖 状 に つ な い で セ ル ロ ー ス を作 る.グ ル コー ス な どを
基 質 とす る培 地 中 で培 養 す る と,菌 体 外 に セル ロ ー ス を産 生 し,こ の セ ル ロ ー ス はバ ク テ リア セル ロ ー ス と呼 ばれ る.バ ク テ リア セ ル ロ ー ス は,化 学 組 成 と分 子 構 造 は植 物 セ ル ロー ス と同 じ で(図6.3),植
物 セ ル ロ ー ス に 混 ざ っ て い る リグ
ニ ンや ヘ ミセ ル ロ ー ス と呼 ばれ る 多糖 を含 ま な い 純 粋 な セ ル ロー ス で あ る.バ ク テ リ ア セ ル ロ ー ス は,微 生 物 に よ り 自然 界(地
圏,水
圏)で 容 易 に分 解 され る
が,動 物 の体 内 で は分 解 され な い.熱 可 塑 性 で は な い た め,汎 用 プ ラス チ ック に
図6.3
(a)
(b)
(c)
(d)
(a)セ
ル ロ ー ス,(b)デ
ン プ ン,(c)キ
チ ン,(d)キ
トサ ン の 化 学構 造
は適 さ な い が,物 理 的性 質 が す ぐれ,い あ る.ま た,結
晶化 度,吸
水 性,重
ろ い ろ な形 状 の 不 織 布 と して 生 産 可 能 で
合 度 を生 合 成 過 程 で 制 御 で きる な どの 利 点 が
あ る.菌 体 外 に出 た セ ル ロ ー ス分 子 は,集 合 結 晶 化 し て極 細(幅100∼150Å, 厚 さ10∼50Å)の
リ ボ ン状 の セ ル ロ ー ス ミク ロ フ ィ ブ リル(CMF)を
形 成 し,
これ が 複 雑 に絡 み合 っ て緻 密 な三 次 元 的 な網 目 を作 る.半 透 明 の寒 天状 で 任 意 の 形 状 が 得 られ,こ
れ を105℃ で プ レ ス乾 燥 す る と,CMFの
結 合 し剛性 の高 い シ ー トが 得 られ る.ま た,こ
表面 の水酸 基 が水 素
の 寒 天 物 は,ミ キ サ ー で 離 解 す る
と糊 状 に な る.こ れ らの 特 性 を い か して,機 能 性 材 料 とし て の応 用 が 期 待 され て い る. タ ンパ ク 質 は,ア
ミ ノ酸 が ペ プ チ ド結 合(―NH―CO―)に
よ り鎖 状 に連 な
っ た ポ リペ プ チ ドか ら で きて い る.生 体 は,遺 伝 子 情 報 に よ り20種 類 の ア ミ ノ 酸 か ら種 類 と配 列 を選 ん で,ユ
ニ ー ク な タ ンパ ク質 を作 る.化 学合 成 で は,ア
ミ
ノ酸 の配 列 を 自 由 に選 ぶ こ とは難 しい が,最 大 数 千 個 の ア ミノ酸 か らな る ポ リペ プ チ ドを得 る こ とが で き,ポ ノ酸 と して は,ポ PL)が
リア ミノ酸 と呼 ば れ て い る.微 生 物 が 作 る ポ リア ミ
リ(γ-グ ル タ ミ ン酸):(γ-PGA)と
ポ リ(ε-リ ジ ン):(ε-
知 られ て い る.こ れ らの ポ リア ミノ酸 は,高 効 率 で 発 酵 生 産 さ れ,水 溶
性,加 水 分 解 性,生 分 解 性 を もつ ポ リマ ー で あ る.グ ル タ ミ ン酸 は,微 生 物 に よ る発 酵 法 で 大 量 に生 産 さ れ る.γ-PGAは,図6.4に
示 す よ う に,グ ル タ ミ ン酸
の 光 学 異 性 体D体
とL体
存 在 す るCOOH基
の う ち,γ 位 の もの が ペ プ チ ド結 合 に関 与 して い る と い う特
徴 を も つ.γ-PGAは,水 薬,増
の各 単 一 重 合 体 の 混 合 物 で あ り,グ ル タ ミン 酸 に2個
溶 酸 性 ポ リ マ ー と し て の 特 徴 を い か し て,食
粘 剤 な どに使 用 す る こ とが で き る.ま た,フ
汎 用 材 と し て使 用 す るた め に は,PGAの
図6.4
γ-PGAと
品,医
ァ イバ ー や フ ィル ム とい った
カ ル ボ キ シ ル基 をエ ス テ ル 化 す る こ と
ε-PLの 化 学 構 造
に よ り得 られ る熱 可 塑 性 を利 用 した り,γ 線 照 射 に よ るハ イ ドロ ゲ ル と して利 用 す る試 み が あ る.ハ
イ ドロ ゲル は砂 漠 の 緑 化 を は じ め と した 各 種 の環 境 調 和 材 料
と して の応 用 が 期 待 され る.一 方,PLは,分
子 鎖 に そ の 重 合 度 と同 じ数 の ア ミ
ノ 基 を も って お り,水 溶 性 の ポ リカ チ オ ン ポ リマ ー と して,食 品 保 存 料,繊 維 加 工 剤,製 紙 用 助 剤 と して 応 用 で き る.微 生 物 が 作 るア ミノ酸 は,化 学 合 成 の よ う な複 雑 な装 置,工 程 を必 要 とせ ず,材 料 作 製 プ ロ セ ス の環 境 負荷 低 減 の 観 点 か ら 大 変 す ぐれ て お り,今 後 の 技 術 発 展 と実 用 化 が 期 待 され る. 6.1.2 動 植 物 由 来 の 多糖 類 デ ン プ ン は,自 然 界 で 豊 富 に生 産 さ れ,毎 年 再 生 産 可 能 な素 材 の 一 つ で あ り, 植 物 組 織 か らの 分 離,精 D-グ ル コ ー ス(ブ
製 技 術 も確 立 され て い る.デ
ド ウ糖)が,脱
ン プ ン は,植 物 組 織 の 中 の
水 的 に 重 合 し た 高 分 子 化 合 物 で あ る.D-グ
ル
コ ー ス は,炭 酸 ガ ス と水 か ら太 陽 光 を エ ネ ル ギ ー と して 合 成 さ れ る.天 然 に存 在 す る デ ン プ ン は,図6.5に
示 す よ う な分 子 構 造 を もつ,ア
チ ンの2種 類 の 多 糖 類 に よ っ て 形 成 さ れ る.ア %を
占 め,D-グ
ル コ ー ス が α-1,4結 合(グ
ミロ ー ス とア ミロペ ク
ミ ロ ー ス は,デ
リ コ シ ド結 合)の
数 十 万 の 直 鎖 状 の ポ リマ ー化 合 物 で あ る.ま た,ア
ン プ ン の20∼30
み か らな る分 子 量
ミ ロペ ク チ ン は,ア
ミロー ス
鎖 を互 い に α-1,6結 合 で連 結 した 枝 別 れ構 造 を もつ 分 子 量 数 億 以 上 の ポ リマ ー 化 合 物 で あ る.ア
ミロ ー ス は水 に 溶 け るが エ チ ル ア ル コー ル に は溶 け な い.デ
プ ン を熱 水 に溶 か した もの に,ブ チ ル アル コ ー ル を加 え る と,ア
ン
ミロ ー ス は結 晶
状 に析 出 す るが ア ミロペ ク チ ンは 溶 けた ま まで,両 者 を分 離 す る こ とが で き る. ア ミロペ クチ ン は枝 別 れ 構 造 と大 きな 分 子 量 に よ り規 則 的配 列 が で きず,強
度を
もた せ る に は分 子 鎖 の 切 断 とい っ た 分 子 構 造 の 改 質 を必 要 とす る.こ れ らの ポ リ マ ー を実 用 材 料 の原 料 とし て使 用 す るた め に は,熱 可 塑 性 を与 え,プ ラ ス チ ック との 相 溶 性 を向 上 させ る こ とが 必 要 で あ る. セ ル ロ ー ス は植 物 細 胞 の 外 側 を取 り囲 む 細 胞 壁 を構 成 して い る物 質 で,植 物 体 の1/3∼1/2を
占 め て お り,全 有 機 物 中 最 も存 在 量 が 多 い.微 生 物 の もつ 酵 素 に
よ っ て分 解 さ れ て,自
然 界 の 中 で 物 質 循 環 し て い る.セ ル ロー ス は,D-グ
ー ス が β-1
,4-グ ル コ シ ド結 合 した 多 糖 類 で,ア
い る(図6.3,6.5).ア ス環 が180度
ルコ
ミロ ー ス の 分 子 構 造 と類 似 し て
ミロ ー ス と比 べ る と,D-グ
ル コ ー ス ユ ニ ッ トの ピ ラ ノ ー
回転 した位 置 関 係 に あ り,直 線 上 に配 列 す るた め,分 子 鎖 相 互 間 に
強 力 な 水 素 結 合 を形 成 し,結 晶 性 の高 い安 定 な化 合 物 を形 成 す る.セ ル ロー ス は
(Ⅰ):非
図6.5
還 元 性 末 端 グル コー ス残 基,(Ⅱ):還
元 性 末 端 グ ル コ ー ス 残 基,(Ⅲ):α-1,6結
ア ミロ ー ス とア ミ ロペ ク チ ン の 分 子 構 造 合 を したD-グ ル コー ス残 基.
す べ て の 植 物 体 中 に形 成 さ れ るが,綿 や バ クテ リア セ ル ロ ー ス を除 け ば,リ
グニ
ン な らび にヘ ミセ ル ロー ス と共 存 し,い わ ゆ る リグ ノ セ ル ロー ス と して 存 在 して い る.リ グ ノセ ル ロー ス は,通 常 の熱 圧 加 工 で は熱 流 動 性 を示 さ な い.そ れ は セ ル ロー スが,立 体 規 則 性 を もち,官 能 基 と して 水 酸 基 を もち,こ れ らが 結 晶 構 造 を形 成 す るた め で あ る.こ の 性 質 の た め に,セ ル ロ ー ス は ガ ラス 転 移 点 や 融 点 を もた ず,約320℃
以 上 で 熱 分 解 し炭 化 す る.そ
こで,誘
導 体 と し て融 解 性 を高 め
た り,成 形 性 を高 め る試 み が 数 多 くな され て い る.セ ル ロ ー ス誘 導 体 は,セ ル ロ ー ス 分 子 中 の水 酸 基 をエ ス テ ル 化 また は エ ー テ ル 化 す る こ とに よ り製 造 され る. 置 換 基 の 種 類,置 換 度,重 合 度 に よ り種 々 の誘 導 体 が 得 られ る.セ ル ロ ー ス とそ の誘 導体 を用 い て,そ カ ニ,エ
の生 分 解性 を いか した 医 用 材 料 が 開発 され て い る.
ビな どの 甲殻 動 物 が,図6.3に
示 す 化 学 構 造 を もつ キ チ ン と呼 ばれ る
ポ リマ ー 多 糖 を作 る こ と もよ く知 られ て い る.自 然 界 で は セ ル ロー ス に つ い で 多 く産 生 され て い る.キ チ ン の 化 学 構 造 は セ ル ロー ス に似 て お り,セ ル ロ ー ス を構 成 す る グ ル コ ー ス の 第2位
の炭 素 の 水 酸 基 が ア セ トア ミ ド基 に 置 換 さ れ た も の
で,分 子 量 は数 万 か ら数 百 万 の もの まで あ る.キ チ ン を ア ル カ リで 処 理 して 脱 ア セ チ ル 化 した もの が キ トサ ンで,天 然 に も存 在 す る.こ れ は,自 然 界 に存 在 す る 唯 一 の塩 基 性 ポ リマ ー で あ る.酸
性水 溶 液 に対 し て溶 解 性 が あ り,こ の水 溶 液 を
溶 解 後 ア ル カ リ固 定 し て,種 々 の 機 能 を もつ製 膜 素 材 の 開発 が 行 わ れ て い る.こ の カ チ オ ン性 の キ トサ ン は,セ ル ロー ス と化 学 構 造 が 似 て い る こ とか ら,ア ニ オ ン性 の セ ル ロー ス と親 和 性 が 良好 で あ る.こ れ ら を組 み合 わ せ る こ とに よ り,フ ィ ル ム な どへ の 良 好 な 成 形 性 を も ち,水 中 で十 分 な強 度 を保 ち,土 壌 中 の み で 分 解 さ れ る複 合 素 材 な ど とし て,生 分 解 性 プ ラ ス チ ッ ク開 発 へ の 応 用 が 進 め られ て いる. 6.1.3 化 学合 成 ポ リマ ー これ まで に述 べ た 微 生 物 産 生 ポ リマ ー や 動 植 物 由来 の天 然 ポ リマ ー の よ う な生 分 解 性 ポ リマ ー を,化 学 合 成 に よ り人 工 的 に作 る こ とが 可 能 で あ る.脂 肪 族 ポ リ エ ス テ ル,ポ
リビ ニ ル ア ル コ ー ル(PVA),ポ
ポ リウ レタ ン(PU),ポ
リエ チ レ ン グ リ コ ー ル(PEG),
リエ ー テ ル な どは,化 学構 造 に よ っ て は 生 分 解 され る こ
とが 知 られ て い る.化 学 合 成 ポ リマ ー の分 解 され や す さ を表6.1に 化 学 合 成 ポ リマ ー の う ち,ポ
リ カプ ロ ラ ク トン,ポ
ま とめ る.
リグ リ コー ル 酸,ポ
リ乳 酸
と い っ た脂 肪 族 ポ リエ ス テ ル に つ い て の研 究 が 多 数 行 わ れ て い る.環 状 モ ノマ ー
表6.1 化 学 合成 ポ リマ ー の 分 解 され や す さ
図6.6
PCL,PGA,PLAの
の ε‐ カ プ ロ ラ ク ト ン:(ε-CL)を (ε‐カ プ ロ ラ ク ト ン):(PCL)が イ ソ シ ア ネ ー ト と反 応 さ せ,PU発 い ら れ て い る.高
分 子 量PCLを
ど が 行 わ れ る.PCLの
化 学 構 造 と合 成
熱 と触 媒 の 作 用 に よ り 開 環 重 合 さ せ る と ポ リ 生 成 さ れ る(図6.6).PCLは 泡 体,弾
性 体,塗
料,接
低 分 子 量 で あ り, 着 剤 の原料 として用
得 る た め に は,「ア ニ オ ン 重 合,カ
チ オ ン重 合 な
生 分 解 性 に つ い て は 多 くの 報 告 が あ り,種
々 の リパ ー ゼ
が 脂 肪 族 ポ リ エ ス テ ル を 分 解 す る こ と が 確 認 さ れ て い る .ポ
リカ プ ロ ラ ク トンは
融 点 が60℃ と低 く,汎 用 プ ラ ス チ ッ ク と し て の ホ モ ポ リマ ー の 実 用 性 は 乏 しい が,天
然 高 分 子 と同 程 度 の す ぐれ た 生 分 解 性 を有 し て い る.こ の 性 質 を利 用 し
て,種
々 の 生 分 解 性 ポ リマ ー との複 合 化 に よ り,実 用 化 を 目指 した 研 究 が行 わ れ
て い る. ポ リグ リ コー ル 酸(PGA),ポ
リ乳 酸(PLA)もPCLと
同様 に生 分 解 しや す
い構 造 を も つ脂 肪 族 ポ リエ ス テ ル で あ る(図6.6).PGAは とPLAの
融 点 は それ ぞ れ230∼240℃,180℃
結 晶 性 が 高 い.PGA
と高 く,成 形 加 工 に適 し,実 用 的
な 機 械 強 度 を有 して い る.ま た,結 晶 融 解 温 度 よ り も若 干 高 い温 度 で容 易 に熱 分 解 す る こ と も知 ら れ て い る.PGAとPLAは,医
用 材 料 と して 生 体 吸 収 性 を も
つ 縫 合 糸 と して 実 際 に使 用 され て お り,天 然 産 の コ ラー ゲ ン の代 替 材 料 と して の 応 用 が 期 待 さ れ て い る. ポ リ ウ レ タ ン(PU)樹 (ポ リオ ー ル)と
脂 は,分 子 内 に水 酸 基OHを
イ ソ シ ア ネ ー ト基CNOを
二 つ 以 上 もつ ア ル コー ル
二 つ 以 上 もつ ポ リイ ソ シ ア ネ ー トか
ら重 付 加 反 応 で合 成 され る 熱硬 化性 樹 脂(ウ
レ タ ン結 合 を もつ)の
2種 類 の 化 合 物 を選 択 す る こ とに よ り,い ろい ろ な 性 質 のPU樹 で き る.一 般 に,2価
の ア ル コ ー ル(ジ
プ ロ ピ レ ン グ リコー ル,2価
オ ー ル)と
して,エ
こ と を い う.
脂 を作 る こ とが
チ レ ン グ リ コー ル,
の イ ソ シ ア ネ ー ト(ジ イ ソ シ ア ネ ー ト)と し て,ヘ
キ サ メ チ レ ンジ イ ソシ ア ネ ー トや ト リ レ ン ジ イ ソ シ ア ネ ー トで作 られ る.ウ ン樹 脂 を発 泡構 造 に成 形 した も の は,マ
レタ
ッ トレ ス や ク ッシ ョ ンの 材 料 とし て使 用
さ れ て い る.生 物 に対 す る親 和 性 に す ぐれ て い るた め,医 用材 料 と して 人 工 血 管 な どへ の 応 用 が 考 え られ て い る.生 分 解 性 を もた せ る た め に,水 酸 基 を もっ ポ リ 乳 酸 と カ プ ロ ラ ク トンの共 重 合 体 を作 り,ジ イ ソ シ ア ネ ー ト化 合 物 と反 応 させ る とい う試 み が あ る.こ の よ う な生 分 解 性 の 向 上 と,コ ス トの 低 下 を 目指 して さ ま ざ まな 研 究 が行 わ れ て い る. 化 学 合 成 に よ る新 しい生 分 解 性 プ ラ ス チ ック と し て,ビ オ ノー レ と呼 ば れ る脂 肪 族 ポ リエ ス テ ル が 開 発 され て い る.高 強 度 で,ポ
リエ チ レ ン(PE)に
工 性 を有 し,熱 可 塑 性 の フ ィル ム 状 に 成 形 で き る.2価 ル)と2価
の 脂 肪 族(ジ
カル ボ ン酸)を
の ア ル コ ー ル(ジ オ ー
原 料 に脱 水 縮 合 に よ って 作 られ る.機 能
性 材 料 と して の 実 用 化 が期 待 さ れ て い る.ビ オ ノー レ の延 伸 強 度 はPEよ か に す ぐれ,ポ で,PEな
リエ チ レ ン テ レ フ タ ラー ト(PET)に
み の 成 形 加 工 性 を有 し,さ
似 た加
りはる
匹敵 し,融 点 は90∼120℃
ま ざ ま な形 状 に成 形 で き る.
6.1.4 生 分 解 性 プ ラ ス チ ッ クの 開 発 微 生 物 産 生 ポ リマ ー と動 植 物 由来 の 天 然 ポ リマ ー は,自 然 界 にお け る物 質 循 環 に よ り産 生 され る もの で,環 境 負 荷 が きわ め て小 さ い.一 方,人 工 化 学 合 成 ポ リ マ ー は,汎 用 性 とい う観 点 か ら期 待 が 大 き い.し か しな が ら,一 般 に,PEや
ビ
ニ ル 系 の 汎 用 高 分 子 は,微 生 物 分 解 を受 け な い .そ れ は,主 鎖 の(―C―C―) 結 合 を直 接 切 断 す る酵 素 が,特 殊 な例 を除 い て 自 然 界 に存 在 しな い こ と に よ る. 自然 界 に存 在 す る高 分 子 と距 離 の あ る人 工 合 成 高 分 子 を,微 生 物 で分 解 す る こ と は きわ め て 困難 で あ る.し か し,こ
こで取 り上 げ た,生 分 解 性 プ ラ ス チ ッ ク の精
力 的 な 基 礎 研 究 と実 用 化 研 究 に よ っ て,汎 用 ポ リマ ー に 匹 敵 す る物 性 を も つ もの も現 れ つ つ あ る.い ず れ も再 生 資 源 で あ る生 物 資 源 を原 料 と して製 造 で き る.現 時 点 で は医 用 分 野 な ど の特 定 の 目的 に使 用 す る場 合 を 除 い て,従 来 望 まれ て きた デ ィス ポ ー ザ ブ ル の 用 途 と して,生 分 解 性,プ
ラ ス チ ッ ク と して の物 性 機 能 お よ
び価 格 な どの す べ て の条 件 を満 足 す る ポ リマ ー は,い
まだ 開 発 され て い な い.こ
れ か ら は,微 生 物 に よ り分 解 され る よ うに デ ザ イ ン さ れ た ポ リマ ー の合 成 と と も に,微 生物 産 生 ポ リマ ー,動 植 物 由 来 の天 然 ポ リマ ー と組 み 合 わ せ る な ど し て, 汎 用 高 分 子 と して利 用 され る こ とが 望 まれ る. 6.2 プ ラ ス チ ッ ク リサ イ ク ル わ が 国 で1年 間 に 生 産 され る プ ラ ス チ ッ ク の 量 は1500万 れ る量 は1000万
トン を こ え て い る.プ
ラ ス チ ッ ク処 理 促 進 協 会 に よ る と,1年
間 に廃 棄 され る プ ラ ス チ ッ ク の 内 訳 は,1993年 業 廃 棄 物337万 478万
トン,そ の 合 計 は756万
トン,471万
トン,合 計949万
トン に達 し,廃 棄 さ
に は一 般 廃 棄 物419万
トン で あ っ た が,1997年
ト ン,産
に はそれ ぞれ
トン に も及 ん で い る.こ の 間,1年
に50万
トン も の ペ ー ス で 増 加 して お り,産 業 廃 棄 物 の 量 が 急 増 して い る.図6.7に, 1997年 の プ ラ ス チ ッ ク製 品 ・廃 棄 物 ・再 資 源 化 フ ロ ー を 示 す.廃 の約50%は の うち,発
焼 却 され,34%が
埋 め 立 て られ,12%が
プ ラスチ ック
再 生 利 用 され て い る.焼 却
電 や 熱 な ど と して の エ ネ ル ギ ー利 用 は 約55%で,再
生 利 用 と合 わ せ
て も,有 効 利 用 され て い る量 は全 廃 プ ラ ス チ ック の 半 分 に満 た な い. プ ラ ス チ ック を リサ イ クル す る 方 法 は,大 別 す る と,マ テ リア ル リサ イ ク ル (再 生 利 用),ケ
ミカ ル リサ イ ク ル,サ
類 す る こ とが で き る(図6.8).こ
ー マ ル リサ イ クル(熱 的 利 用)の 三 つ に分
こ で は,わ が 国 に お け る これ らの 研 究 開 発 の
図6.7
プ ラ ス チ ッ ク 製 品 ・廃 棄 物
・再 資 源 化 フ ロ ー(文
献4),p.2,3よ
り)
図6.8
プ ラ ス チ ック の リサ イ ク ル
現 状 に つ い て ま と め る. 6.2.1 マ テ リア ル リサ イ ク ル マ テ リア ル リサ イ ク ル と は,プ
ラ ス チ ッ ク廃 棄 物 を 樹 脂 と し て使 用 す る 方 法
で,化 学 的 変 化 を伴 わ ず,破 砕 ・粉 砕 な ど してペ レ ッ トを作 成 し,原 料 とし て再 利 用 す る もの で あ る.使 用 され る廃 プ ラス チ ック は 汚 れ が 少 な く,数 量 が ま と ま る必 要 が あ る.回 収 され た 廃 プ ラ ス チ ッ ク は,再 生 処 理 施 設 に運 ば れ,選 別,破 砕,金
属 分 離,洗
浄,異
物 分 離,乾 燥,造
粒 の過 程 を経 て ペ レ ッ トに な る.異 種
の ポ リマ ー 分 子 は一 般 に非 相 溶 で あ るた め に,マ テ リア ル リサ イ ク ル で は 廃 プ ラ ス チ ッ ク を で き る だ け 単 一 種 類 で 回収 す る こ とが 重 要 で あ る.混 合 廃 プ ラ ス チ ッ ク の 分 別 に は,比 重 差,重
量 差 を利 用 した り,電 磁 場 やX線
を 用 い る な ど,さ
まざ ま な物 理 的 手 法 が 用 い られ る.こ の よ うに,単 一 樹 脂 と して再 生 ペ レ ッ トと した 後 に,再 生 樹 脂 として 利 用 す るた め に,単 独 で ま た はバ ー ジ ン樹 脂 と混 合 し
再 度 成 形 品 にす る方 法(単 純 再 生)と,性
質 の類 似 した い くつ か の樹 脂 が 混 合 し
た ま ま の状 態 で,再 ペ レ ッ ト化 す る こ とな く,溶 融 し製 品 に成 形 す る方 法(複 再 生)が
合
あ る.マ テ リア ル リサ イ ク ル は,一 般 に はバ ー ジ ン の原 料 と比 較 す る と
品 質 劣 化 は避 け られ な い.再 生 樹 脂 を成 形 品 と して使 用 す るた め に は,成 形 品 の 用 途 に よ り,品 質 劣 化,色
む ら,臭 い な どの 問 題 を解 決 す る必 要 が あ る.ま た,
最 終 的 に は廃 棄 物 とな る の で,そ
の処 理 が 問 題 視 され る.
マ テ リア ル リサ イ クル の代 表 例 は,一 般 廃 棄 物 の 中 で,比 較 的 汚 れ の 少 な い状 態 で 分 別 回 収 で き る ポ リエ チ レ ンテ レ フ タ レ ー ト(PET)ボ ボ トル は,1997年
に醤 油 用 ボ トル に使 用 され て 以 来,軽
どの 利 点 か ら急 速 に普 及 し,現 在 で は,PETボ
量,透
明 性,耐
トル の 全 体 の7割
が 占 め て い る.1995年
の 容 器 包 装 リ サ イ ク ル 法(通
急 速 に増 大 し,1998年
に は全 生 産 量25万
い る.再 生PET樹
トル で あ る.PET
称,後
述)に
ト ンの う ち約20%近
を清 涼 飲 料 用 よ り回 収 率 が
くが 回収 さ れ て
脂 の用 途 として は,再 び も との ボ トル に 戻 す(ホ
型 リサ イ ク ル)こ
久性 な
リゾ ン タ ル
とが 理 想 的 で あ るが,現 状 で は非 食 品 用途 に限 られ て お り,シ
ー ト製 品 ,衣 服 類 の繊 維 製 品,洗 ス ケ ー ド型 リサ イ ク ル).後
剤 ボ トル な どの成 形 品 が大 半 を 占 め て い る(カ
述 す る よ う に,PETを
化 学 的 に リサ イ クル し,モ ノ
マ ー や オ イ ル化 す る研 究 も進 ん で い る が,再 生 ポ リエ ス テ ル 糸 の 衣 料 製 品 へ の マ テ リア ル リサ イ クル な ど,そ の長 所 を い か した リサ イ クル シス テ ム の整 備 が 望 ま れ る. 6.2.2 ケ ミカ ル リサ イ ク ル ケ ミカ ル リサ イ ク ル は,廃 プ ラ ス チ ック を溶 解 ・分 解 して化 学 的 に処 理 す る方 法 で,モ クル),化
ノマ ー や 低 分 子 に解 重 合 あ る い は分 解 した り(フ ィー ドス トック リサ イ 学 原 料 や 液 体 原 燃 料 と し て使 用 す る方 法(ヒ
ュエ ル リサ イ ク ル)に 大
別 され る.エ ネ ル ギ ー 的 に有 利 な マ テ リア ル リサ イ ク ル は,品 質 面,用 途 面 あ る い は埋 め立 て や 廃 棄 物 処 理 に一 定 の 限 界 が あ るた め,ク ロ ー ズ ドル ー プ の リサ イ クル と して,こ
の ケ ミカ ル リサ イ クル が 大 い に 期 待 さ れ て い る.ま た,有
害物質
対 策 が 容 易 で あ り,環 境 保 全 の点 で す ぐれ て い る.ガ ス化 や 油 化 な どの研 究 開 発 が 盛 ん に行 わ れ て お り,廃 プ ラ ス チ ッ ク の熱 分 解 に よ り得 られ る生 成 物 を,触 媒 を用 い て 接 触 分 解 して,分
解 ガ ス や 分 解 油 とい っ た 燃 料 化 す る 方 法 が 進 ん で い
る.た だ し,回 収 シ ス テ ム の 確 立,回 的 な 課 題,分
解 副 産 物 の 処 理,コ
収 率 が ど こ まで 上 げ られ るか とい っ た 技 術
ス トの 面 で課 題 が あ り,現 時 点 で は,本 格 的 に
実 用 化 され る に は至 って い な い. ポ リエ チ レ ン(PE),ポ
リ プ ロ ピ レ ン(PP),ポ
リ ス チ レ ン(PS),PETな
どの混 合 プ ラ ス チ ッ ク廃 棄 物 を熱 分 解 して,オ イ ル に戻 す(油 化 還 元)技 次 の 三 つ が あ る.無 (400℃)後200℃
酸 素 中,高
温(650∼800℃)で
術には
の 単 純 熱 分 解,熱
分解
前 後 の触 媒槽 中 に通 す 接 触 熱 分 解,高 圧 水 素 中300∼500℃
で行
う水 添 法 で あ る.熱 分 解 油 化 還 元 技 術 の 特 徴 は,表6.2の PE,PP,PS,PETな
よ う に ま とめ られ る.
ど の ポ リオ レ フ ィ ン系 お よ び ス チ レ ン系 プ ラ ス チ ッ ク に
つ い て は,ゼ オ ラ イ ト触 媒 を 用 いた 接 触 分 解 油 化 技 術 が 開 発 され,プ
ラスチ ック
廃 棄 物 を燃 料 油 と して 回 収 す る プ ラ ン トが 稼 働 して い る. 一 方,各 種 モ ノ マ ー の 回 収 技 術 も盛 ん に研 究 され て い る.表6.3に に,PET,ナ
イ ロ ン(ポ
リア ミ ド,PA),ポ
ー ト(PC)の
よ う に,ア ル コ ー ル 分 解,加
リ ウ レ タ ン(PU),ポ
示すよう リカ ー ボ ネ
水 分 解 に よ り比 較 的 高 収 率 で モ ノ マ
ー に戻 す こ とが で き る ポ リマ ー も あ る.こ れ らは,欧 米 を中 心 に 開発 が 行 わ れ て お り,一 部 は商 業 化 され て い る. PETは,テ
レ フ タ ル 酸(TPA)ま
ッ トとエ チ レ ン グ リコ ー ル(EG)ユ
た は テ レ フ タ ル 酸 ジ メ チ ル(DMT)ユ
ニ
ニ ッ トの エ ス テ ル 結 合 に よ る繰 り返 し構 造
で あ る こ とか ら,加 ア ル コ ー ル や 加 水 分 解 に よ り解 重 合 す る(図6.9).溶 加 水 分 解 プ ロ セ ス と し て,メ ル 分 解(グ
リコ リ シ ス),エ
タ ノ ー ル 分 解(メ ス テ ル 交 換,エ
タ ノ リ シ ス),エ
し た 再 生PETは
タ ノ リ シ ス)す
チ レ ン グ リコ ー
チ レ ン グ リコ ー ル 分 解/エ ス テ ル 交換
併 用 法 が あ り,い ず れ も実 用 化 さ れ て い る.例 え ば,PETを で 解 重 合(メ
る とDMTとEGが
る と き に使 用 す るエ ス テ ル 交 換 反 応 触 媒(例 用 した 場 合 に比 べ て 品 質 が 悪 化 す る.ま た,メ
メ タノール溶 媒 中
得 られ る.こ の生 成 物 を原 料 と
食 品 梱 包 用 と して 利 用 され て い る.DMTか
らPETを
え ば,酢 酸 亜 鉛)で
作成す
は,TPAを
使
タ ノ ー ル が 副 産 物 と して 生 成 す る
場 合 もあ り,そ の利 用 方 法 を考 え る必 要 が あ る.低 純 度 の 再 生PETか 用 材 料 と して の再 生PETを
解,
ら,食 品
製 造 で き る メ タ ノー ル 分 解 技 術 の 開 発 が 期 待 さ れ て
い る. PAの
中 で も,ナ イ ロ ン6は,ε‐ カ プ ロ ラ ク タム をモ ノ マ ー と して 開 環 さ せ る
こ と に よ る重 付 加 や,ε ‐ア ミノ カ プ ロ ン 酸 の 重 縮 合 に よ る平 衡 反 応 に よ り得 ら れ,解
重 合 さ せ る とモ ノ マ ー に戻 す こ とが で きる.反 応 器 内で,過
熱 水 蒸 気 と酸
性 触 媒 と し て の 硫 酸 を加 え て 分 解 され,ε ‐カ プ ロ ラ ク タ ム とな り,ナ イ ロ ン6
表6.2
熱 分 解 油 化 還 元 技 術 の特 徴(プ
ラ ス チ ック処 理 促 進 協 会)
表6.3
ポ リマ ー の モ ノマ ー へ の解 重 合 プ ロセ ス
図6.9 PETの
加 水 分 解 と メタ ノ リシ ス
の 製 造 に再 利 用 す る こ とが で き る.PA以 術 的 課 題 で,コ PUは,主
外 の不 純 物 の影 響 を除 去 す る こ とが 技
ス トを下 げ る こ とが 重 要 とされ て い る.
鎖 の 繰 り返 しユ ニ ッ トに ウ レ タ ン結 合 を もつ 高 分 子 化 合 物 の 総 称 で
あ る.そ の廃 棄 物 の 処 理 方 法 の 中 で も,化 学 分 解 に よ る方 法 が 多 用 され て い る. PUは
化 学 分 解 に よ りポ リオ ー ル や 置 換 ア ミン を 再 生 す る こ とが で き る.加 水 分
解 法,加
ア ル コ ー ル分 解 法,加
ア ミ ン分 解 法 に よ る,化 学 的 分 解(ケ
モ リ シス)
が 一 般 的 で あ る.ま た,特 殊 触 媒 系 に よ る グ リ コ リ シ ス反 応 を利 用 した 分 解 再 生 法,ヌ
レ ー トフ ォ ー ム(イ
ソ シ ア ヌ レー ト環 を有 す る フ ォ ー ム)の 簡 易 再 生 法 の
開 発 が,実 用 を 目指 して 行 わ れ て い る. PCは,NaOHで Na2CO3に
処 理 す る こ とに よ り,出 発 原 料 で あ る ビ ス フ ェ ノ ー ルAと
還 元 され,再 度PCと
し て重 合 す る こ とが で き る.
ポ リ メ チ ル メ タ ク リレ ー ト(PMMA)は,熱 95%以
上 の 収 率 で 分 解 さ れ る.製 造,加
分 解 に よ りMMAモ 工 工 程 か ら出 るPMMAの
ノ マー に 廃 材 は,マ
テ リア ル リサ イ ク ル や この ケ ミカル リサ イ ク ル に よ り,す で に 実 際 に リサ イ クル さ れ て い る.今 後PMMAの
消 費 が 増 加 す る こ とが 予 想 され,一
度市 場 に出 た
PMMA製
品 の リサ イ ク ル の た め に,ケ
ミカ ル リサ イ ク ル の た め の解 重 合 技 術 の
向 上 が 期 待 され る. ポ リ ア セ タ ー ル(POM)は,オ
キ シ メ チ レ ン基 が 直 鎖 上 に結 合 し た 主 鎖 に,
エ ー テ ル結 合 を もつ 結 晶 性 高 分 子 で,エ
ンジ ニ ア リン グ プ ラ ス チ ック ス の 代 表 と
して 多 用 され て い る.平 衡 重 合 系 の ポ リマ ー で あ り,技 術 的 に は容 易 に解 重 合 し て モ ノ マ ー に戻 る の で,ケ
ミカ ル リサ イ ク ル に適 して い る.し か し,現 実 に は,
分 別 回収 が容 易 で な い た め に,実 用 化 が 難 しい. ポ リ塩 化 ビ ニ ル(PVC)は,そ
の 重 量 の 約60%は
塩 素 で あ り,200℃ 以 上 に
加 熱 す る こ と に よ り塩 化 水 素 を発 生 させ る こ とが で き る.こ の 塩 化 水 素 をモ ノマ ー 合 成 プ ロセ ス に組 み 込 む こ と に よ り,ケ 最 近,廃
ミカ ル リサ イ ク ル が 可 能 で あ る.
プ ラ ス チ ッ ク を部 分 酸 化 して,水 素 と一 酸 化 炭 素 を含 む ガ ス燃 料 と し
て 利 用 した り,メ タ ノー ル を合 成 し て,燃 料 や工 業 原 料 と して 利 用 す る技 術 が 開 発 さ れ て い る.ま た,PVCを
含 む プ ラ ス チ ッ ク廃 棄 物 の 高 炉 原 料 化 リサ イ クル
技 術 の 開発 も行 わ れ て い る.こ れ は,上 記 の再 生 樹 脂 の原 料 に適 さ な い,処 理 し に くい廃 プ ラ ス チ ッ クの 再 利 用 と し て の,フ
ィー ドス トック リサ イ ク ル と考 え ら
れ る. わ が 国 に お い て は,廃
プ ラ ス チ ッ ク の 燃 料 源(灯
油 な ど)と
して の 油 化 還 元
が,各 地 で小 規 模 で 実施 され て い る のが 現 状 で あ る.そ れ は,地 域 に お け る都 市 ごみ 問 題,プ
ラ ス チ ッ ク加 工 メ ー カー の産 業 廃 棄 物 の 処 理 方 法 の 一 つ と し て行 わ
れ て い るに す ぎ な い.一 方,欧 米 で は,石 油 化 学 メ ー カ ー が 中 心 とな って 廃 プ ラ ス チ ック の利 用 が 大 規 模 に行 わ れ て い る.す な わ ち,化 学 原 料 還 元 と して,混 合 プ ラ ス チ ッ ク廃 棄 物 を熱 分 解 して,液 状 の ハ イ ドロ カ ー ボ ン を製 造 して,そ れ を 石 化 原 料 とす る技 術,超
高 温 中 で ガ ス化 して水 性 ガ ス を製 造 し,そ れ を化 学 原 料
とす る とい っ た 技 術 が,プ
ラ ン トを建 設 して 実施 す る段 階 に あ る.
6.2.3 サ ー マル リサ イ ク ル(エ
ネ ル ギ ー リサ イ ク ル)
サ ー マ ル リサ イ ク ル は,廃 棄 物 を直 接 焼 却 し,そ の 熱 を利 用 し て電 気 や 蒸 気 を 回 収 す る もの で,エ
ネ ル ギ ー リサ イ ク ル,エ ネ ル ギ ー リカバ リー と も呼 ばれ て い
る.プ ラ ス チ ッ ク廃 棄 物 を そ の ま ま直 接 燃 焼 し,発 電 用 や温 水 な どの 熱 源 と して エ ネ ル ギ ー 回収 す る 方 法 と,紙 や木 材 と一 緒 に混 ぜ て,破 砕 成 形 して い った ん燃 料 化 した 後,燃
焼 して エ ネ ル ギ ー 回 収 す る 方 式 と に分 け られ る.
プ ラ ス チ ッ ク廃 棄 物 の 焼 却 炉 で の 燃 焼 に つ い て は,有 害 ガ ス や 煤,ダ
イオキシ
ンの 発 生,ク きた.し
リ ン カ ー(粒 状 塊)に
よ る炉 の損 傷 な ど,マ イ ナ ス 面 が 強 調 され て
か し,本 来 プ ラス チ ック は石 油 が 原 料 で あ り,発 熱 量 が 大 き く,灯 油 や
重 油 と同 等 の 石 油 燃 料 に な り う る 可 能 性 が あ る.マ イ ナ ス面 を克 服 す る た め に は,最 適 な燃 焼 技術 を確 立 す る こ とが 必 要 で あ る.最 近,ご
み を2段 階 に加 熱 し
て ガ ス化,原 燃 料 化 す る ガ ス 化 溶 融 法 が 開 発 さ れ,次 世 代 の処 理 技 術 と して 注 目 さ れ て い る. 十 分 分 別 さ れ た プ ラ ス チ ッ ク廃 棄 物 は,一 般 の 石 油燃 料 の よ う に性 状 の安 定 し た 高 発 熱 量 の 良質 な 燃 料 とす る こ とが で き る.プ ラ ス チ ッ ク廃 棄 物 の 組 成 や 性 状 が,地
域 性,分 別 形 態,経
済 性 に依 存 す るた め,燃 料 化 に は さ まざ ま な方 法 が と
られ るが,い ず れ にせ よ 高 い 燃 料 効 率 が 得 られ る.一 方,ご み 発 電 な ど の燃 料 と し て再 利 用 す る場 合,燃 色,結
料 と して 排 出 され る廃 棄 物 の状 態(ラ ベ ル,不 純 物,着
晶 化 度 な ど)が 一 定 で な い た め に,高
い エ ネ ル ギ ー 回収 率 は期 待 で き な
い.ま た,焼 却 残 灰 につ い て は,マ テ リア ル リサ イ ク ル に よ る廃 棄 物 と同 様,最 終 処 理 の 問 題 が 残 る.最 近,廃 ス化 溶 融 法 が 開 発 され,実
棄 物 を2段 階 に加 熱 して ガ ス 化,原 燃 料 化 す る ガ
用段 階 に あ る.
ま た,都 市 ご み や,廃
プ ラ ス チ ック との混 合 物 に石 灰 な ど を加 え て,押 出 機 で
ペ レ ッ ト状 と し て,こ
れ を 焼 却 す る こ と に よ り エ ネ ル ギ ー 回 収 す るRDF
(refuse derived
fuel)技 術 が 注 目 を集 め て い る.廃
プ ラ ス チ ッ クの み を原 料 と
し,生 石 灰 を混 合 して成 型 した もの は,発 熱 量 が 高 く,効 率 の よ い ごみ発 電 用 燃 料 と して期 待 され て い る. 6.2.4 その 他 の プ ラ ス チ ッ ク リサ イ ク ル 多 くの汎 用 プ ラ ス チ ッ ク は,本 来 耐 久 性 に す ぐれ て お り,再 生 処 理 を必 要 と し な い リュ ー ス(再 利 用)を
前 提 と した 材 料 設 計 も重 要 で あ る.例
え ば,リ
ター ナ
ブ ル プ ラ ス チ ッ ク 容 器 の 利 用 が あ げ られ る.容 器 と して 回 収 し たPETを,洗 浄,再
充〓 して 利 用 す る と い っ た リュ ー ス は,ヨ ー ロ ッパ で は 進 ん で お り,ド イ
ツ で は洗 浄 液 と して1.5%の
水 酸 化 ナ トリウ ム水 溶 液 と0.1%特
殊洗剤水溶 液 を
用 い て い る.洗 浄 回 数 は コ カ コ ー ラ な どの ガ ス 入 り飲 料 水 で 約20回,牛 ネ ラル ウ ォー タ ー な どの ノ ン ガ ス 飲 料 水 で50回
か ら100回
乳や ミ
まで が 限 界 で あ り,
そ の 後 は ケ ミカ ル リサ イ クル な どの 用 途 に利 用 され る.リ ュ ー ス は,使 用 で き る 回数 の 増 加 と,最 後 に残 った ボ トル を どうす る か が 問題 とな る と思 わ れ る. PS系 樹 脂 と し て,梱 包 材 な ど に多 用 され て い る発 泡 ス チ ロ ー ル(EPS)の
リ
サ イ クル 手 法 と して,d‐
リモ ネ ン を用 い た 付 加 価 値 を高 め た リサ イ ク ル 技 術 が
開 発 され て い る.d‐ リモ ネ ン は 柑 橘 系 植 物 精 油 で,天 然 の 柑 橘 類 の 皮 に 含 まれ る テ ルペ ノ イ ドの 油 で,食 品 添 加 物 と して も用 い られ,PSの 温 で 溶 解 す るた め にEPSの 体 積 を1/20以
熱 劣 化 が な く,d‐ リモ ネ ン に溶 解 させ る こ とで輸 送
下 に減 少 させ る こ とが で き る.回 収 され たPSリ
加 熱 に よ り,リ モ ネ ン とPSに 泡 樹 脂,ラ
良 溶 媒 で あ る.室
ベ ル,ほ
分 離 す る.EPS以
こ りな ど)はd‐
去 す る こ とが で き る.再 生PSは,ガ し,こ れ を100%使
用 したEPSは
外 の 異 物(オ
モ ネ ン は,減 圧 レフ ィン系 の発
リ モ ネ ンへ の 溶 解 度 が 低 い た め,容 易 に 除 ラ ス転 移 温 度 や 力 学 特 性 が 新 品PSに
匹敵
発 泡 セ ル の 大 き さ が 新 品 材 料 よ り大 き く,強
度 が や や低 下 す る もの の 実 用 上 問 題 が な く,新 しい リサ イ クル技 術 と して期 待 で き る. 一 方,超
臨 界 水 を 用 い た新 し い技 術 が 開 発 され て い る.臨 界 温 度(374℃)お
よび 臨 界 圧 力(22.1MPa)に
な る と,水 は気 体/液 体 の両 方 の性 質 を もつ 高 密 度
流 体 とな る.こ の状 態 を超 臨 界 状 態 とい い,こ の状 態 で は,通 常 の 水 で は溶 解 し な い 有 機 系 物 質 を 溶 解 す る こ とが 可 能 に な る.例 え ば,PETの
ようにエチ レ ン
グ リ コ ー ル とテ レ フ タ ル 酸 を脱 水 縮 合 重 合 した もの は,超 臨界 水 を反 応 溶 媒 と し て 用 い る と,容 易 に 短 時 間 で 加 水 分 解 さ れ て も と の 原 料 にす る こ とが で き る. PETの
加 水 分 解 で は,DMTが
生 成 せ ず にTPAが
生 成 す る の で,ま
た,高
温
高 圧 の水 を使 用 す るた め余 分 な 有 機 溶 剤 を 用 い な い で 分 解 で き る.現 在 の と こ ろ,TPAが90%,EGが20%の
回 収 率 で あ り,回 収 効 率 の 向 上 が課 題 で あ る.
回収 効 率 が 向 上 しな い の は,EGな
どが さ らに 分 解 し て副 生 成 物 と な る か らで あ
る.回 収 効 率 が 高 く副 産 物 の 生 成 が 少 な い 技 術 の 開 発 が 望 まれ る. 6.3 持 続 的 発 展 を可 能 に す る環 境 材 料 日本 に お け る廃 棄 物 の処 理 と再 資 源 化 に関 連 す る主 な法 律 は,表6.4に りで あ る.一 般 廃 棄 物 中 の容 器 包 装 の 再 商 品 化 を 目的 と し て,1995年
示 す通 度 に 「容
器 包 装 リサ イ クル 法 」(容 器 包 装 に係 る 分 別 収 集 及 び 再 商 品 化 の促 進 等 に 関 す る 法 律)が
成 立 した.分 別 回収 され た 容 器 包 装 を リサ イ ク ル す る た め に,樹 脂 製 造
や 飲 料 メ ー カ ー な どの業 界,自 ック は,軽
治 体,消 費 者 の 役 割 が 規 定 され て い る.プ ラ ス チ
くて丈 夫 で,耐 薬 品 性 が あ り腐 らな い,成 形 加 工 しや す く安 価 で あ る
な どの す ぐれ た性 質 を もち,急 速 に 日常 生 活 の あ ら ゆ る分 野 に普 及 した.金 属,
表6.4 日本における廃 棄物の処理 と再資源化 に関連 す る主な法律
セ ラ ミ ッ ク ス,半 導 体 な ど と と も に,先 進 技 術 を支 え る素 材 と して多 用 され て き た.プ
ラス チ ック の 長 所 が 逆 に,か
こ し,そ の 結 果,廃
さ ば る,処 理 しに くい とい っ た 問題 を引 き起
棄 され る プ ラ ス チ ック量 の 急 激 な増 大 が,廃 棄 物 処 理 の 中 で
も深 刻 な 問 題 の一 つ とな っ て い る.リ サ イ クル に は,分 別 回 収,再 生 処 理,再 製 品 の 使 用 の 段 階 が 考 え られ る.最 近 で は,わ が 国 に お け る リサ イ ク ル の 意識 が 高 ま っ て きた とは い え,リ サ イ ク ル の 現 状 は,分 別 回収 に偏 り,品 質 の低 下 を伴 う 再 利 用,ま
た は 単 純 な廃 物 利 用 に と ど まっ て い る.こ
こで 取 り上 げ た,再 生 可 能
な プ ラ ス チ ック の 有 効 利 用 と リサ イ ク ル は,物 質 循 環 型 社 会 を実 現 す るた め に大 変 重 要 か っ 有 効 な 手 法 の一 つ で あ る.プ まで の す べ て の 過 程 を"環 境 負荷"の 手 法 で あ るLCA(life
ラス チ ック が 作 製 され て か ら廃 棄 され る
観 点 か ら分 析 す る必 要 が あ る.そ の有 力 な
cycle assessment)の
活 用 に つ い て も,さ ら に発 展 が 期 待
され て い る.持 続 発 展 可 能 な社 会 作 りの た め に,環 境 材 料 と して プ ラ ス チ ック 開 発 が,こ
れ か らの 高 分 子 材 料 開 発 に求 め られ て い る.
付録 高分子の特性解析
高 分 子 の特 性 解 析(キ
ャ ラ ク タ リゼ ー シ ョン,characterization)と
高 分 子 に特 有 な構 造 ・物 性 を 分析,測
は,あ
る
定 し,そ の 高 分 子 が どの よ うな もの で あ る
か 特 徴 づ け を行 う こ と を い う.特 性 解 析 は,解 析 を行 う特 性(characteristics) に よ っ て 二 つ に分 け る こ とが で き る.す な わ ち,分 造,立
子 量,分
子 量 分 布,化 学 構
体 規 則 性 な ど,一 つ の 分 子 と して の 高 分 子 の 特 徴 づ け を行 う分 子 特 性
(molecular
characteristlcs)解
析 と,結 晶 構 造,結
晶化 度 な ど集 合 状 態 に あ る
高 分 子 鎖 の 空 間 的 な 配 列 に か か わ る物 質 特 性(material が あ る.こ
characteristics)解
析
こで は,そ れ ぞ れ の 特 性 解 析 の代 表 的 な 方 法 を述 べ る. A.1 分 子 特 性 解 析
A.1.1 分
子
量
高 分 子 の 分 子 量 の 測 定 は,一 般 に 高 分 子 が 孤 立 した 状 態 に あ る希 薄 溶 液 の性 質 を用 い て行 わ れ る.2章
で 述 べ た よ うに,高 分 子 は分 子 量 に分 布 を もつ た め に,
求 め られ る 分 子 量 は平 均 分 子 量 で あ る.さ
らに,用
い る測 定 法 に よ りそ れ ぞ れ 異
な る(数 平 均,重 量 平 均 な ど)平 均 分 子 量 が 得 られ る.ま た,そ れ ぞ れ の測 定 法 で 可 能 な分 子 量 範 囲 が あ る. (1) 浸 透 圧 法
溶 液 と純 溶 媒 を半 透 膜 で 隔 て て お く と,溶 媒 の 化 学 ポ テ ン
シ ャル は溶 液 の 方 が 低 いた め に,溶 媒 が 純 溶 媒 側 か ら溶 液 側 へ 浸 透 す る.こ の 溶 媒 の 浸 透 を 妨 げ て系 を平 衡 に保 つ た め に溶 液 側 に加 え られ る余 分 な圧 力 を溶 液 の 浸透 圧(osmotic
pressure)と
い う(図A.1).希
薄 溶 液 で は,浸 透 圧 π は
(A.1) と 表 さ れ る.こ
こ で,R,T,Aは
そ れ ぞ れ 気 体 定 数,絶
対 温 度,ビ
リア ル 係
図A.1
図A.2 高分子溶液 の浸透圧 と濃度の関係
高 分 子 の 示 す浸 透 圧
数 を表 し,濃 度Cは
溶 液 単 位 体 積 当 た りの 溶 質 の 質 量 で あ る.高 分 子 濃 度Cを
変 化 させ て 浸 透 圧 を 測 定 し,π/RTCをCに ゼ ロ に外 挿 す れ ば,そ (2) 光 散 乱 法
対 して プ ロ ッ ト し,高 分 子 濃 度 を
の切 片 よ り数 平 均 分 子 量Mnが
求 め られ る(図A.2).
溶 液 中 の 濃 度 の 揺 ら ぎ に起 因 す る 屈 折 率 の 不 均 一 に よ っ て
散 乱 され る光 の 強 度(図A.3)か
ら分 子 量 を求 め る こ とが で き る.濃 度 揺 ら ぎ
の 大 き さ は,浸 透 圧 圧 縮 率(∂ π/∂C)−1に比 例 し,そ れ に よ る光 の 散 乱 強 度Iは I∝(∂π/∂C)−1=(1/M+2A2C+…)−1で
表 さ れ る の で,光 散 乱 強 度 の 測 定 か ら
分 子 量 が求 ま る.具 体 的 に は 次 式 を用 い る. (A.2) こ こ でK=4π2n2(∂n/∂C)2/λ4NA(n:溶 る 屈 折 率 増 分,λ:光
の 波 長,NA:ア
液 の 屈 折 率,(∂ ボ ガ ド ロ 数),R(0)は
る溶 質 に よ る 過 剰 散 乱 の レ イ リ ー 比 で あ る.高 乱 強 度 は 一 般 に 散 乱 角 θ に 依 存 し,散 (4π/λ)sinθ/2<1(Rg:慣
性 半 径)で
π/∂C):濃
度 増加 に よ
散 乱 角 θ=0に
お け
分 子 鎖 内 の 散 乱 の 干 渉 に よ り,散
乱 角 θ に お け る レ イ リ ー 比R(θ)はRg はC→0の
極 限 と して
(A.3) と表 せ る.こ の 式 を用 い る と,散 乱 光 強 度 の散 乱 角 依 存 性 よ り高 分 子 鎖 の平 均 二 乗 慣 性 半 径 〈R2g〉を求 め る こ とが で き る.通 常Zimmプ
ロ ッ ト と呼 ば れ る図A.4
図A.3
高分 子 鎖 か らの 光 散 乱
図A.4
Zimmプ
ロ ッ トの 例
ポ リ ス チ レ ン の ベ ン ゼ ン 溶 液35℃,λ=488nm.
の よ う な プ ロ ッ トを行 い,KC/R(θ)軸
の 切 片 よ り重 量 平 均 分 子 量Mw,C→0
で の傾 きか ら 〈R2g〉,θ→0で の 傾 きか らA2が (3) 粘 度 法
固 有 粘 度[η]と
求 め られ る.
分 子 量 の関 係 が既 知 の高 分 子 に つ い て の
[η]の 測 定 よ り分 子 量 を求 め る方 法 で あ る.濃 度C(g/dl)の 純 溶 媒 の粘 性 率 を η0とす る と[η]は
溶 液 の粘 性 率 を η,
次 式 で 定 義 され る.
(A.4) [η]と
分 子 量 の 関 係 はMark-Houwink-Sakuradaの
式
[η]=KMa の 形 で 表 さ れ る.定 の で,K,aの で き る.毛 た.こ
数K,aは
(A.5)
さ ま ざ ま な高 分 子 溶 液 系 に つ い て 知 ら れ て い る
既 知 な 溶 媒 を 用 い る こ と が で き れ ば,[η]か 細 管 粘 度 計(図A.5)で
こ で 求 め ら れ る 分 子 量 は,粘
らMを
知 る こ とが
測 定 で き る簡 便 な 方 法 と して 用 い られ て き 度 平 均 分 子 量Mvと
い わ れ,
(A.6) で あ る.Mvは,MnやMwと
異 な り,与 え られ た 高 分 子 に 固 有 の 量 で は な い こ
と に注 意 し な け れ ば な ら な い.溶 媒 や 温 度 の変 化 に よ り定数aが も ま た変 化 す る.実 在 の 屈 曲 性 高 分 子 で は,aは0.5∼0.8の
変 わ れ ば,Mv
間 の値 を とる こ と
表A.1 各種分子量測定 法の比較
図A.5 (a)オ
毛管粘度系
ス トワル ド型,(b)キ
型,(c)ウ
ャ ノ ン‐フ ェ ンス ケ
ベ ロー デ 型.
(高 分 子 学 会 編:高
分 子 化 学 の 基 礎,p.121,
1978)
が知 られ て い る. (4) そ の 他 の 方 法
分 子 鎖 の末 端 の 官 能 基 の 数 を,物 理 的 あ る い は化 学 的
方 法 で 定 量 す る こ とが で き る場 合 は,こ れ に よ り分 子 数,す
なわ ち 数 平 均 分 子 量
を 求 め る こ とが で き る.そ の ほ か に,溶 液 の東 一 的 な 量 か ら数 平 均 分 子 量 を求 め る方 法 と して,凝 固 点 降 下 法,沸 点 上 昇 法 が あ る. (5) 分 子 量 測 定 の ま とめ
こ こ に は述 べ な か った 他 の 分 子 量 測 定 法 も加 え
て,各 種 の 方 法 か ら得 られ る平 均 分 子 量 を表A.1に A.1.2
ま と めた.
分子量分布
高 分 子 の適 当 な 溶 媒 系 に対 す る溶 解 性 の 違 い を利 用 して,部 分 溶 解 と沈 殿 を繰 り返 して い くつ か の 分 別 物 を 作 り,A.1.1項
の分 子量 測定法 を用 いて分 子 量 を
求 め れ ば,分 子 量 分 布 を知 る こ とが で き る.し か しな が ら,ゲ ル 浸 透 ク ロ マ トグ ラ フ ィー(Gel
permeation
chromatography;GPC)の
出 現 に よ り,こ の 非 常
に複 雑 な方 法 は あ ま り用 い られ ず,現 在 で は も っ ぱ らGPCに
よ り分 子 量 分 布 が
用 い られ て い る. GPCは,分
子 サ イ ズ の 違 い を利 用 して物 質 を分 離 す る方 法 で あ る.網
目構 造
を もつ 高 分 子 多 孔 質 ゲ ル を カ ラ ム に 充 〓 し,分 子 サ イ ズ の異 な る高 分 子 の 混 合 物
図A.6
ゲル 浸 透 ク ロ マ トグ ラ フ ィー の概 念 図
大 きい 分 子 はゲ ル 内 に 入 れ な い.小
さ い 分 子 は ゲ ル 内部 の小 さ い網 目の 中 に 入 って ゆ く.
図A,7 カ ラ ム:TSK-GEL
標 準 ポ リス チ レ ンの 分 離 SuperHM-M(6.1mm
i.d.×150
mm)
溶 離 液:THF 流
速:0.6ml/min
温
度:25℃
試
料:1.Mw 4.Mw
8420000
2.Mw
1260000
3.Mw
422000
107000
5.Mw
16700
6.Mw
2800
(東 ソ ー 株 式 会 社,Separation
Report
No.088)
の溶 液 を流 す と,高 分 子 が ゲル 粒 子 中 に 侵 入 す るか 否 か で 分 子 の カ ラ ム通 過 時 間 が 異 な る(分 子 ふ る い効 果,図A.6)た
め に,分 子 量 の 高 い順 に溶 液 が 流 出 し
て くる.こ の 溶 出溶 液 中 の高 分 子 濃 度 を,溶 媒 と の屈 折 率 差,あ 収 な どで 検 出 す る.す
るい は紫 外 線 吸
なわ ち,試 料 溶 液 を注 入 し て か ら,あ る分 子 量 の 高 分 子 が
溶 出 す る まで の溶 出 液 の 体 積Ve(溶 濃 度 に比 例 した 屈 折 率 差,紫
出 体 積,elution
volume)と
溶 出高分 子の
外 線 吸 収 との 関 係 が 測 定 さ れ る(図A.7).こ
の溶
出 曲線 が 分 子 量 分 布 を そ の ま ま表 して い る.定 量 的 に は,分 子 量 既 知 で 分 子 量 分 布 の狭 い標 準 試 料 を 用 い て,Veに bration
curve,図A.8)を
た が っ てGPCか
対 して 分 子 量 の プ ロ ッ ト した 校 正 曲線(cali-
あ らか じめ 求 め て お き,Veを
ら求 め られ る分 子 量 は,あ
子 量(reduced
molecular
weight)で
分 子 量 に換 算 す る.し
く まで 標 準 試 料 を基 準 に し た換 算 分
あ る.
A.1.3 立 体 規 則 性 モ ノ マ ー 単 位 の 結 合 様 式,連 鎖 分 布,立 は,核 磁 気 共 鳴 分 光 法(NMR)が NMR,13C-NMRを
体 規 則 性 な ど化 学 構 造 の 特 性 解 析 に
主 要 な 測 定 手 段 と し て 用 い られ て い る.1H-
中 心 と して 化 学 シ フ トや ス ピ ン結 合 に よ る ス ペ ク トル の 分
裂 を測 定 す る こ とに よ り,分 子 構 造 の 解 析 を行 う.同 一 核 種 で も,近 傍 の 化 学 的 環 境 に よ り電 子 密 度 や 電 子 分 布 が 異 な り,共 鳴 は異 な っ た 周 波 数 で起 こ る.し た が っ て,化 学 的 環 境 の 違 い が 異 な る化 学 シ フ トを 生 み,そ
れ に よ っ てNMRス
ペ ク トル を化 学 構 造 と関 連 づ け る こ とが で き る.立 体 規 則 性 に つ い て い え ば,ダ
図A.8
THFで
の ポ リス チ レ ン に よ る
図A.9
ポ リ メ タ ク リル 酸 メ チ ル の100 MHzlHNMRス
校 正 曲線
ペ ク トル
溶 離 液:THE
A:ト ル エ ン 中n-BuLi触 媒(重 合 温 度 −78℃) ,B:紫 外 線 重 合(重 合 温 度 −30℃)光 増 感 ベ ン ゾ イ ン,C:熱 重合
流
速:0.6ml/min
(重合 温度60℃).
温
度 25℃
試
料:標
カ ラ ム:TSK-GEL (6.1mm
SuperHM-M i.d.×150mm)
準 ポ リ スチ レ ン
(東 ソ ー 株 式 会 社,Separation No.088)
Report
イ ア ドの 立 体 配 置 が 同 じ(dd,ll)で ld)ラ
セ モ(r)が
あ る.さ
チ ッ ク),mr(ト ク)の3通
あ る メ ソ(m)と,互
ら に,ト
リ ア ド に つ い て はmm(ト
リ ア ドヘ テ ロ タ ク チ ッ ク),rr(ト
り の 連 鎖 が 可 能 に な る.こ
さ れ れ ば,そ
い に 異 な る(dl, リ ア ドイ ソ タ ク
リア ドシ ンジオ タ ク チ ッ
れ ら 可 能 な 連 鎖 に 対 応 す るNMRが
れ ら の 連 鎖 の 存 在 と分 率 が 推 算 さ れ,立
観測
体 規 則 構 造 の詳 細 が わ か
る.図A.9に3種
類 の 異 な っ た 重 合 法 で 調 製 さ れ た メ タ ク リ ル 酸 メ チ ル の100
MHzlH-NMRス
ペ ク トル を 示 す.α ‐メ チ ル プ ロ ト ン の シ グ ナ ル は0.91,1.05
お よ び1.22ppmに3本 ppmの
吸 収 が,ま
い こ と か ら,こ
に 分 裂 し て 現 れ る.イ
ソ タ ク チ ッ ク ポ リ マ ー で は1.22
た シ ン ジ オ タ ク チ ッ ク ポ リ マ ー で は0.91ppmの
れ ら3本
の 分 裂 は 低 磁 場 側 か ら,そ
吸 収 が 最 も強
れ ぞ れ イ ソ タ ク チ ッ ク,ヘ
テ
ロ タ ク チ ッ ク お よ び シ ン ジ オ タ ク チ ッ ク ト リ ア ド に 帰 属 す る こ と が で き る.
A.2
物 質 特 性 解 析 は 多 種 多 様 で あ り,こ ま と め る だ け に と ど め る.測
特
物 質 特性 解 析
こ で は 解 析 の 対 象 項 目 と代 表 的 な 測 定 法 を
定 法 の 詳 細 は,そ
性
れ ぞ れ の 成 書 を 参 考 に さ れ た い.
主な測定方法
結晶構造
X線 回折
結晶性高分子の高次構造
電子顕微鏡,偏 光顕微鏡,X線 X線 散乱,中 性 子小角散乱
非晶性高分子の構造 液晶構造 橋 か け構 造 表面 ・界面構造 ブ レンド構 造
小角散乱,中 性子小角散乱
光学顕微鏡,円 偏光二色性(CD),旋
光分散(ORD),X線
回折
膨 潤挙動 ・力学的性質 などの利用 電子顕微鏡,電 子分光法,中 性子反射率 X線 散 乱,中 性 子散 乱,光 散乱,電 子顕微鏡,位 相差顕微 鏡
参考文献
第1章 1) 大 津 隆 行:高
分 子 合 成 化 学,化
2) 伊 勢 典 夫,今
西 幸 男,川
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本 順 三,東
村 敏 延,山
川 裕 巳,山 本 雅 英:新
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4) 鶴 田 禎 二,川
上 雄 資:高
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第2章 1) 岡 村 誠 三,中
島 章 夫,小
野 木 重 治,河
高 分 子 化 学 序 説(第2版),化 2) 伊 勢 典 夫,今
西 幸 男,川
高 分 子 化 学 序 説,化 3) 中 浜 精 一,野
合 弘迪,西
島 安 則,東
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勢 典 夫:
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本 順 三,東
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完 全 弾 性 体 や 粘 性 流 体 の 力 学 に関 す る詳 細 は,変 形 体 の 力 学 や 流 体 力 学 に 関 す る 書 物 を お 読 み 頂 き た い. 6) 中 川 鶴 太 郎:岩
波 科 学 の本13流
れ る 固 体,岩
波 書 店,1975.こ
の本 に は さま ざ
ま な物 質 の レオ ロ ジ ー 的 挙 動 が 美 しい 写 真 と と も に 解 説 さ れ て い る. 7) 斉 藤 信 彦:物
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Wiley&Sons,
Inc.,1980.高
分 子 系 の 重 要 な実 験 デ ー タ は ほ とん ど こ の 本 に 網 羅 さ れ て い る とい
っ て よ い.ま
た,実
験 装 置 の 構 成 や デ ー タ の解 析 方 法 に つ い て も詳 細 に記 述 さ れ
て い る. 9) 中 村 邦 男,鴇
田 昌 之:日
本 バ イ オ レ オ ロ ジ ー 学 会 誌,2,116-126,1988.
第3章 1) 伊 勢 典 夫,今
西 幸 男,川
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2) 高 分 子 学 会 編:高
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3) 高 分 子 学 会 編:液
晶 ポ リ マ ー,共
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リ マ ー ア ロ イ,共
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江 一 之:エ
索
引
エ チ レ ン‐酢 酸 ビ ニ ル 共 重 合 体
p型 半 導 体 104 欧
Q,e論
文
RDF ArFRP
BP
エ ー テル スル ホ ン 23
147
Squeezing効
60
BiomerR
110
8
THE
113
エ レ ク トロル ミネ ッ セ ン ス材 料
Ziegler-Natta触
78
CFRP
Zimmプ
60
Charlesbyの
ゲ ル 化 理 論 66
Cosseeの
エ ポ キ シ ド 23
果 126
24 煤
13
ロ ッ ト 151
z平 均 分 子 量 28
106 エ ン ジニ ア リン グ プ ラ ス チ ック 48
モ デ ル 13
ア
CTX
78
DD5
122
行
応 力 緩 和 42 オ キセ タ ン 24
Diels-Alder反
応 26
ア ク リ レ ー トモ ノ マ ー 73
親 ジエ ン 26
ECM
117
ア ゾ化 合 物 3
折 りた た み鎖 結 晶 35,54
EPR効
果 127
ア ゾ ビ ス イ ソ ブ チ ロ ニ ト リル
温 度 に応 答 す る シ ス テ ム 125
EUVリ
ソ グ ラ フ ィ ー 98
3
EVA
110
ア タ クチ ッ ク 31
FRP
60
ア ドリア マ イ シ ン 128
カ
行
アニ オ ン重 合 11
開 環 重合 2,23
ア ミ ノ酸 133
開 始 剤 効 率 5
g‐線 94
ア ミ ロー ス 134
開 始 反 応 3
ITOガ
ア ミ ロペ クチ ン 139
界 面 重 合 20
i‐線 94
ア ラ ミ ド 56
化 学 構 造 29
KrFエ
キ シ マ レ ー ザ 96,98
ア ラ ミ ド繊 維 補 強 プ ラ ス チ ック
化 学 増 幅 型 レ ジ ス ト 70,96
LCD
149
GFRP
60
GOD
123
ラ ス 106
60 ア ル ブ ミ ン 115
Mark-Houwink-Sakuradaの
化 学 物 質 応 答 型DDS
123
核 磁 気 共 鳴 分 光 法 155 過 酸 化 物 3
式 152
イ ソ タ クチ ッ ク 31,32
過 酸 化 ベ ン ゾ イル 3
1s軌 道 99
カ チ オ ン塩 10
半 導 体 104
医 用 材料 138
カ チ オ ン重 合 9
PEG
127,128
医 療 器 具 110
ε‐カ プ ロ ラ ク タ ム 24
PET
142
医 療 用 具 108
ガ ラ ス繊 維 補 強 プ ラ ス チ ッ ク
MK
78
MPC n型
116
PHEMA pH応
答 型DDS
PIPAAm PMEA
120
ポ リ マ ー 115 123
60 ガ ラ ス転 移 温 度 54
124
ウ ロキ ナ ー ゼ 115
ガ ラス 転 移 点 82
液状 感光 性 樹 脂 74
カ ル ボ カ チ オ ン 10
液 晶 ポ リマ ー 57
環 境 材 料 129
液 体 的粘 弾性 モ デ ル 42
環 境 負 荷 129
カル ボ ア ニ オ ン 11
116
PSt-PHEMA-PStブ
PVA
イ ンス リ ン 117
115
ロ ッ ク コ
換 算 分 子 量 155
ケ ミ カル リサ イ クル 139,142
環 状 エ ーテ ル 23
ゲ ル 浸 透 ク ロマ トグ ラ フ ィ ー
ジ エ ン 26
環 状 高 分 子 33
時 空 間 的 制 御 122
含 水 率 123
ゲ ル 分 率 67
自 己消 火 性 60
完 全 弾 性 体 39
ゲ ル 紡 糸 法 56
自 己成 長 7
153
ジ ア リー ル ヨー ドニ ウ ム塩 84
自 己防 衛 反 応 109
感 度 曲線 87 γ‐ グ ロ ブ リン 115 ガ ン マ値 87
抗 凝 固 剤 112
シ シ カバ ブ結 晶 37
抗 血 栓 性 112
持 続 発 展 可 能 129
緩 和 時 間 43
抗 血 栓 性 材 料 114
実 用弾 性 率 40
緩 和 弾 性 率 43
交 互 共 重 合 体 8,30
ジ フ ェ ニ ル ヨ ー ドニ ウ ム ・
交 互 侵 入 網 目 ゲ ル 126
SbF6 70
機 械 的耐 久 性 112
交差成長 7
脂 肪 族 ポ リエ ステ ル 138
幾 何 学 的 構 造 29
光 酸 発 生 剤 70
p‐ジ メ チ ル ア ミ ノ 安 息 香 酸 エ
キ チ ン 136
校 正 曲線 155
キ トサ ン 136
剛 性 率 40
偽 内 膜 形 成 型 材 料 114
高 分 子 医 薬 128
四面 体 中 間体 16,21
機 能 性 109
重合速度 5
求 核 ア シル 置 換 重 合 21
高 分 子 製 剤 ・ドラ ッ グ デ リバ リ ー シ ス テ ム 108
求 核 付 加 11
高分 子 の コ ンフ ォ メー シ ョ ン
重 付 加 2,25
求核付加 ‐ 脱 離 機 構 22
重 量 平 均 分 子最 28
球 晶 37
高 分 子 の光 架 橋 63
縮 合 15
求 電 子 付 加 9
高 分 子 ミセ ル 127,128
縮 合 重 合 1,15
共 重 合 7
固 形 感 光 性 樹 脂 74
循 環 型 社 会 129,149
共重合組成式 7
固 相 重 合 20
触 媒 137,143
固 体 的 粘 弾 性 モ デ ル 45 コ ラー ゲ ン 117
徐 放 性 製 剤 122
共 重 合 体 30 ― の組 成 7
チ ル エ ス テ ル(EDAB) 78
52
共 重 合 反応 性 8
徐 放 性 の制 御 122 人工 化 学 合 成 ポ リマ ー 130
共 培 養 シ ス テ ム 119
サ
行
人 工 肝 臓 118 人 工 心臓 112
共 役 型 の モ ノ マ ー 9 均一 系触 媒 14
自 由体 積 率 81,82,83
再結合 4
人 工 腎臓 111
再 結 合 停 止 6
人 工膵 臓 117
グ リコ シ ド結 合 134
再 生 医 療 128
人 工臓 器 108,111
グ ル コ ー ス 132
再 生 ペ レ ッ ト 141
人 工 皮 膚 117
グル コ ー ス オ キ シ ダー ゼ 123
最 大 応 力 51
シ ンジ オ タ クチ ッ ク 31,32
グル タ ミン酸 133
細 胞 外 マ トリ ック ス 117
浸 透圧 圧縮 率 151
2‐ク ロ ロ チ オ キ サ ン トン 78
サ ッ ク型 112
浸 透圧 法 150
サ ー マ ル リサ イ ク ル 139,146 け い皮 酸 エ ス テ ル 89
酸 塩 化 物 法 21
水 素 結合 54,127
血 液 浄 化 療 法 111
酸 化 還 元膜 123
水 添 法 143
血 液 透 析 111
三 次 元 網 目構 造 63
水 透 過性 111
結 晶 化 度 35
三 重 項 ‐三 重 項 エ ネル ギ ー 移 動
数 平 均重 合 度 6
結 晶 形 態 35 血 小 板 の活 性 化 115 血 栓 形 成 112
88 三 重 項 ‐三 重 項 エ ネ ル ギ ー 移 動 型 65
数 平 均 分 子 量 28 ス キ ン層 125 ス テ ップ タ ブ レ ッ ト法 87
血 栓 形 成 抑 制 型 材 料 115
酸 無 水 物 法 21
ス トレプ トキ ナー ゼ 115
血 栓 溶 解 型 材 料 115
残 留 歪 み 45
ス ー パ ー エ ン プ ラ 48
ケ ブ ラ ー 57
ず り粘性 率 41
生 体 高 分 子材 料 108
単 分 散 29
尿 素 樹 脂 26
生 体 適 合 108
単量体 1
二 量 化 反 応 89
成長 反応 4
遅 延 弾 性 46
熱 硬 化 性 樹 脂 26
成 長 反 応速 度 定 数 5
逐 次 重 合 15
熱 分 解 型 開 始 剤 3
成 長 ラ ジ カル 5
中空 糸 111
粘 性 40
静 的 粘 弾 性 41
超 微 細 光 加 工 93
粘 性 率 41
生 分 解 性 ポ リマ ー 129
超 臨界 水 148
粘弾性
生命 医 工 学 108
直 列 モ デ ル 42
粘 度 平 均 分 子 量 152
セ グ メ ン ト化 ポ リウ レ タ ン ウ レ
貯 蔵 弾 性 率 47
粘 度 法 152
使 い 捨 て 110
伸 び 切 り鎖 結 晶 37,53
生体 適 合性 109
41
ア 113 接 触 熱 分 解 143 セ ル ロ ー ス 132,134
伸 び粘 性 率 41
セ ル ロ ー ス膜 111
停 止反応 4
ノ ボ ラ ッ ク樹 脂 68
繊 維 型 複 合 材 料 60
停 止反応速度 5
ノ ボ ラ ック の 生 成 機 構 27
線 状 高 分 子 33
停止反応速度定数 5 ハ
定常状態 4
行
増 感 88
デ ィス ポー ザ ブル 110
相 互 高 分 子 網 目 62
テ トラ ヒ ドロ フ ラ ン 24
相 対 感 度 86
電 子 移 動 12,90
配 位 ア ニ オ ン重 合 13 バ イ オ コ ンポ ジ ッ ト 62
相 対 感 度 値 87
電 子 供 与 性 104
バ イ オ マ テ リア ル 108
相 分 離 61
電 子 受 容 性 104
π電 子 密 度 11
組 織 工 学 119
天 然 ポ リマ ー 130
ハ イ ドロ ゲ ル 134
ソ フ トセ グ メ ン ト 113
デ ン プ ン 134
廃 プ ラ ス チ ッ ク 139 ハ イ ブ リ ッ ド型 人 工 臓 器 117
動 的 粘 弾 性 47 頭‐頭 結 合 30
発 泡 ス チ ロー ル 147 ハ ー ドセ グ メ ン ト 113
損 失 弾 性 率 47
タ
行
頭 尾 結 合 30
パ ル ス 型 放 出 126
ダ イ ア ド 31
動力学的鎖長 5
反応 度 17
ダ イ ア フ ラ ム型 112
特 性 解 析 150
汎 用 エ ン ジニ ア リ ン グ プ ラ ス チ
代 謝 121
ドー パ ン ト 104
体 積 弾 性 率 40
ドラ ッ グ デ リバ リー シ ス テ ム
体 積 粘 性 率 41 体 内 動 態 127
ッ ク 49
122
光 架 橋 64
ト リア ド 32
― の 分 解 64 光 カ チ オ ン重 合 83
耐 熱 性 54 タ ク チ シ チ ー 31
ナ
行
光起 電 力 104 光散 乱 法 151
ター ゲ テ ィ ン グ 122 多 孔 性 マ ト リ ック ス 119
内皮 細 胞 114
光 重 合 64
ダ ッ シ ュ ポ ッ ト 42
ナ イ ロ ン 1,2
光 重 合 開 始 剤 77
多 分 散 高 分 子 29
ナ イ ロ ン6 24,34,50,143
光 導 電 性 高 分 子 102
単 一 重 合 体 30
ナ イ ロ ン66 34,50
光 分 解 64
単 純 熱 分 解 143
o‐ナ フ トキ ノ ン ジ ア ジ ド‐5‐ ス
光 モ デ ィ フ ィケ ー シ ョ ン 64
弾 性 限界 39
ル ホ ン酸 エ ス テ ル 68
弾 性率
39,51
光 ラ ジ カ ル重 合 72 光 リ ソ グ ラ フ ィ ー技 術 119
弾 性 余 効 39,47 炭 素 繊 維 補 強 プ ラ ス チ ッ ク 60
2s軌 道 99 二 重 結 合 25
非 共 役 型 の モ ノ マ ー 9 ビス フ ェ ノー ルA 50
単独重合体 6
ニ ュ ー トン流体 40
微 生 物 産 生 ポ リマ ー 130
ヒ ドロ キ シ ア ル カ ン酸 131
芳 香 族 求 電 子 置 換 重合 22
ビニ ル モ ノ マ ー 1,73
芳 香 族 ポ リア ミ ド 56
標 的 指 向性 127
芳 香 族 ポ リエ ス テ ル 57
145 ポ リ(2‐ メ トキ シ エ チ ル ア ク リ レ ー ト) 116
補 体 の活 性 化 111 マ
行
フ ィ ラ ー 59
ポ リア スパ ラ ギ ン酸 128
フ ェ ニ ル ボ ロ ン酸 123
ポ リア セ タ ー ル 146
フ ェ ノ ー ル樹 脂 2,26
ポ リア セ チ レ ン 100
マ ッ ク ス ウ エル モ デ ル 42
フ ォ ー ク トモ デ ル 45
ポ リア ニ リン 100
マ テ リ ア ル リ サ イ ク ル 139,
付加重合 1
ポ リア ミ ド 34,49
付 加 縮 合 2,26
ポ リア リレ ー ト 57
付加反応 2
ポ リ(N-イ
ル ア ミ ド) 120
不 均 一 触 媒 14 不 均 化 4
ソプ ロピルア ク リ
141 魔 法 の弾 丸 127 マ ル チ ブ ロ ック共 重合 体 113
ポ リ(N-イ
ソプロ ピルア ク リ
ル ア ミ ド)ゲ ル 125
不均化停止 6 複 素 環 ポ リマ ー 100
ポ リイ ミ ド 22,58
房 状 ミセ ル構 造 53
ポ リウ レ タン 2
ミク ロ相 分 離 61 ミク ロ ドメ イ ン構 造 115 ミサ イ ル ドラ ッグ 127 水 の構 造 116
フ ッ ク の 法則 39
ポ リウ レ タ ン樹 脂 138
物 質 特 性 150
ポ リエ ス テ ル 1,130,136
tert‐ブ ト キ シ カ ル ボ ニ ル 基
ポ リエ チ レ ン 34,55
メ ソ ダ イア ド 31
ポ リエ チ レ ング リ コー ル 128
2‐メ タ ク リロ イ ル オ キ シ エ チ ル
70 不 溶 化 63
ポ リエ チ レ ン テ レ フ タ レ ー ト
プ レ ポ リマ ー 26
ミヘ ラ ー ズ ケ トン 78
ホ ス ホ リル コ リン 116 メ タ ロ セ ン触 媒 14
2,142
プ レ ン ス テ ッ ド酸 84
ポ リエ ー テ ル ケ トン 22
メ チ ル ア ル ミノ キ サ ン 14
ブ ロ ック 共 重 合 体 30
ポ リ塩 化 ビニ ル 146
滅 菌 110
プ ロ トン 酸 10
ポ リオ キ シメ チ レ ン 49
メ ラ ミ ン樹 脂 26
分 解 性 合 成 高 分 子 119
ポ リカ プ ロ ラ ク トン 136
免 疫 隔 離 118
分 子 占有 体 積 82
ポ リカ ー ボ ネ ー ト 49
分 子 特 性 150
ポ リグ リコ ー ル 酸 138
分 子 量 と反 応 度 17
ポ リチ オ フ ェ ン 100
分 子 量 の 調 整 17
ポ リ乳 酸 138
分 子 量 分 散 67
ポ リ(乳
酸 ‐ε‐カ プ ロ ラ ク ト
ン) 119
分 子 量 分 布 18,29,153
ポ リ(乳 119
ポ リ尿 素 25
ポ リ(2‐ ヒ ドロ キ シ エ チ ル メ タ
73
― の共重合性 7 ― の 連 鎖 長 77 モノマー反応性比 7 モ ノ リ シ ッ ク型 122
酸 ‐グ リ コ ー ノ レ酸)
並 列 モ デ ル 45 ヘ テ ロ サイ ク リッ クモ ノマ ー
ヘ テ ロ タ クチ ッ ク 32
モ ノマ ー 1
ク リ レー ト) 115
ヤ
行
薬 物 送 達 シス テ ム 122 薬 物 放 出 のOn-Off制
御 123
ヘ パ リ ン 112
ポ リ(p‐ ヒ ドロ キ シ ス チ レ ン)
ペ プ チ ド結 合 133
ベ ル ヌ ー イ 統 計 32
ポ リ ビニ ル ア ル コ ー ル 123
融 解 の エ ン タル ピー 54
変 性 ポ リフ ェニ レ ンオ キ シ ド
ポ リ フタ ロ シ ア ニ ン 100
融 解 の エ ン トロ ピー 54
ポ リブ チ レ ン テ レ フ タ レ ー ト
有 機 半 導 体 102
49
ベ ン ゾ フ ェ ノ ン 78
70,96
49 ポ リ(p‐ ホ ル ミル オ キ シ ス チ
ポ ア ソ ン比 40
ヤ ン グ率 40
有 機 無 機 ハ イ ブ リッ ド材 料 62 有 効 濃 度 範 囲 121
レ ン) 68
ポ ア ソ ン分 布 67
ポ リマ ー ア ロ イ 51,60
溶 液 重 合 20
芳 香 族 求 核 置 換 重 合 22
ポ リメ チ ル メ タ ク リ レ ー ト
容 器 包 装 リサ イ クル 法 142
溶 質 透 過 性 111
ラ セ モ ダ イ ア ド 31
溶 融 重 合 18
らせ ん構 造 52
ラ
行
リュ ー ス 147
ラ ダ ー構 造 55
ル イ ス酸 84
ラ ダ ー ポ リマ ー 55
累 積 二 重 結 合 25
ラ メ ラ 晶 36 ラ ク タ ム 24
ラ ン ダ ム共 重 合体 30
レ イ リ ー比 151 レオ ロ ジー 41
ラ ク トン 24 ラジカル 3
リザ ーバ 型 122
レ ゾー ルの 生 成 機 構 26
―
理想 共 重 合 8
連鎖移動反応 6
ラ ジ カ ル 開 始 剤 3
立体 規 則 性 13,31
連 鎖 移 動 反 応 速 度 定 数 6
ラ ジ カル 共 重 合 6
リポ ソー ム 127
連 鎖 重 合 15
ラ ジ カ ル 重 合 3
リモ ネ ン 148
連鎖反応機構 3
の等反応性 4
編著者略歴 山 岡 亜
夫
1939年 神奈 川県 に生 まれ る 1962年 千葉 大学工 学部写 真印刷 工業科卒 業 現 在 千葉大 学工 学部情 報画像 工学科 教授 理学 博士
応 用化学 シリーズ3 定 価 はカバー に表示
高分子工 業化学 2003年12月1日
初 版 第1刷
著 者 山 上 安 鴇 高 岡 菊 松 鈴
岡 田 中 田 原 野 池 方 木
発行者 朝
倉
発行所 会社 朝 株式
亜
光 明 美 淳
夫 充 彦 之 茂 夫 彦 樹 史
邦
造
雅 昌
倉
書
店
東 京 都 新 宿 区 新 小 川 町 6-29 郵 便 番 号 電
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〈 検 印省 略〉 C2003〈 ISBN
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