編集 荒船次郎 東京大学名誉教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村 孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
は
素 粒 子 物 理 学 は 今,さ
じ
め
に
ら な る飛 躍 を求 め て模 索 の 段 階 に あ る.本 書 で は,高
エ ネ ル ギー 物 理 学 フ ロ ン テ ィア の最 先 端 の研 究 テー マ の 中 か ら,標 準 理 論 を超 え る新 現 象 探 索 の 試 み を 集 中的 に と りあ げ 解 説 を試 み た.現 在 ま で の と こ ろ, 標 準 理 論 に 矛 盾 す る現 象 は 皆 無 と言 っ て よい.種 々 の 実 験 デ ー タ に新 理 論 の つ け 込 む 余 地 は,た
だ 一 つ の 例 外(ニ ュ ー トリ ノ振 動 現 象)を 除 い て ほ とん ど な
く,そ れ も標 準 理 論 の 訂 正 とい う よ りは わ ず か な 拡 張 を 必要 と して い るの み と い う方 が正 し い で あ ろ う.そ の 意 味 で標 準 理 論 の 実 験 的 裏 付 け は 非 常 に 強 固 で あ る.数 学 的 に も整 合 性 の とれ た体 系 で あ り,こ れ か ら も一 つ の 学 問体 系 と し て 生 き残 りか つ 発 展 す る で あ ろ う こ とは 間違 い な い.し か し,古 典 力 学 や 電磁 気 学 の 限 界 を打 開 す る試 み か ら量 子 力 学 や 相 対 性 理 論 が 生 ま れ た よ うに,新 た な展 開 を 目指 す た め に は,標 準 理 論 を超 え る新 現 象 を見 つ け る必 要 が あ る. 標 準 理 論 に は 適 用 限 界 が あ る.エ ネ ル ギー ス ケ ー ル がTeV ト)を 超 え る現 象,ミ
ク ロの サ イ ズ に して10-17cm以
(1012電 子 ボ ル
下 の 現 象 に対 して は,標
準 理 論 の 予 言 能 力 は大 幅 に 低 下 す る.こ の 領 域 を探 検 して 手 が か りを得 るの は 一 つ の 方 法 で あ る.も う一 つ の方 法 と し て は,電 弱 強 の 大 統 一 理 論,さ らに は 重 力 を も含 む 究極 の統 一 理 論 を 目指 し,そ の試 み の 中 か ら新 物 理 へ の ヒン トを 探 す こ とで あ る.大 統 一 の 階 層 性 とい う理 論 的謎 を解 く解 決 法 の 多 くは,や りTeV領
は
域 に 新 現 象 の 出 現 を予 言 す る.し た が って,新 現 象 を発 見 す る ため
の最 も正 統 的 な 試 み は,TeV領
域 の加 速 器 をつ く り実 験 して み る こ とで あ る.
一 方,大 統 一 理 論 や 重 力 理 論 の 本 格 的 検 証 に 必 要 な,エ ネ ル ギー が1013 ∼1016TeV領 域 で の 実 験 は,近 い将 来 に は と うて い実 現 不 可 能 で あ る.幸 い な こ とに,素 粒 子 統 一 理 論 が初 期 宇 宙 の発 展解 明 につ な が る こ とが わ か り,イ
ン フ レー シ ョンの ア イ デ ア提 起 な ど宇 宙 論 を大 き く発 展 させ た.逆 に 宇 宙 論 の 発 展 が,ビ
ッ グバ ン遺 跡 の探 索 とい う,現 代 技 術 で は 到 底 実 現 不 可 能 な高 エ ネ
ル ギー 現 象 に 対 す る検 証 の 道 を 開 い た.つ
ま り狭 い な が ら も大 統 一 理 論 検 証 へ
の 窓 は開 い て お り,非 加 速 器 素 粒 子物 理 とい う新 しい 分 野 が 発 展 しつ つ あ る. 本 書 は,ま ず 標 準 理 論 の枠 内 に あ るが,実 験 の結 果 次 第 で は標 準 理 論 を超 え る可 能 性 の あ る テー マ と して,第2章 第3章
でCP非
保 存 現 象 の 小 林-益 川 モ デ ル を,
で ヒ ッ グ ス粒 子 の性 質 と発 見 法 を議 論 す る.ヒ ッ グ ス は標 準 理 論 の 根 幹
をな す 真 空相 転 移 概 念 に お け る要 の粒 子 で あ る.第4章 を,第5章
で はニ ュー ト リノ現 象
で は 大 統 一 と超 対 称 性 を解 説 し,非 加 速 器 実 験 と加 速 器 実 験 の 両 面
か ら標 準 理 論 を拡 張 しあ るい は 超 え る方 法 を模 索す る.第6章
で は,イ
ンス タ
ン トンや カ イ ラル 異 常 な ど標 準 理 論 に 内 在 す る もの の これ ま で とは 異質 の 新 概 念 を紹 介 し,自 然 現 象 との 関 わ りを述 べ る.発 展 如 何 で は 伝 統 的 物 質 観 の修 正 を 迫 られ る可 能 性 を見 て の こ と で あ る.強 い相 互 作 用 のCP保 は 第6章
で紹 介 す るア クシ オ ンの 存 在 が,ま
存 を理 解 す るに
た大 統 一 理 論 を認 め る な らば 第7
章 で 扱 う磁 気 単 極 子(モ ノ ポー ル)の 存 在 は 不 可 欠 の よ うに 思 え る.こ れ らの 未 発 見 素 粒 子 の 存 在 や ニ ュー ト リノ の質 量 問 題 は,初 期 宇 宙 の 発 展 や 暗 黒 物 質 の解 明 と密 接 に絡 ん で い るの で,第8章
で は 素 粒 子 との 関 わ りに重 点 を 置 きつ
つ ビ ッ グバ ン か ら現 在 に 至 る宇 宙 の発 展 を概 観 した.こ の 章 は,素 粒 子 物 理 を 直 接 に 扱 うわ け で は な いの で最 後 に 置 い た が,ニ
ュ ー ト リノや ア クシ オ ン さ ら
に は 暗 黒 物 質 の宇 宙 に お け る役 割 を理 解 す る ため に は,先 に 読 ん で お く方 が理 解 が 深 ま るか も しれ な い.筆
者個 人 の 主観 が 入 る に して も,本 解 説 の 中 で 取 り
上 げ た トピ ッ クの 半 数 が 非 加 速 器 物 理 の テ ー マ で あ り宇 宙 の テー マ で もあ る こ とは,21世
紀 に お け る高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 発 展 方 向 を暗 示 す る.
本 書 の 対 象 は,実 験 家 も し くは 大 学 院 の理 論 学 生 で あ る.す な わ ち,素 粒 子 物 理 の 基 本 知 識 は もつ が,個
々 の ト ピ ッ クに つ い て は こ れ か ら入 門的 知 識 を得
よ う とす る読 者 を想 定 して い る.そ の た め,本 解 説 は 各 トピ ッ ク ご とに独 立 さ せ,か
つ 読 み 切 り と して 辞 典 に 準 じた構 成 と し た.各 章 と も,非 専 門家 向 け に
ま ず 基 本 概 念 の 説 明 と可 能 な 限 り(つ ま り筆 者 の 能 力 の 範 囲 で)式 の 導 入 を行 い,そ の 後 で実 験 的検 証 の 現 状 に ふ れ た.興 味 に応 じて どの 章 や ど の節 を切 り 取 っ て読 ん で い た だ い て もよ い.本 書 に至 る前 段 階 と して,素 粒 子 物 理 学 へ の
入 門 用 に まず 朝 倉 物 理 学 大 系 の 第3巻 基 礎 を解 説 した.第4巻
「素 粒 子 物 理 学 の 基礎Ⅰ 」で場 の 理 論 の
「素 粒 子 物 理 学 の 基 礎Ⅱ 」で は ク ォー クモ デ ル が 確 立
し標 準 理 論 が 誕 生 す る経 緯 を描 き,そ
して 第5巻
「素 粒 子 標 準 理 論 と実 験 的 基
礎 」で は ほ とん どすべ て の 実 験 事 実 を標 準 理 論 が 見 事 に 説 明 す る有 様 を解 説 し た.本 書 は,上 記 の 解 説 書 の な か で 説 明 し残 し た こ と と未 解 決 の 問題 点 を整 理 し,こ れ か らの発 展 方 向 につ い て 筆 者 な りの 見 地 で ま とめ た もの で あ る.素 粒 子 物 理 学 の 初 歩 か ら取 り組 む場 合 は4巻 全 部 を ま とめ て,素 粒 子 現 象 解 説 の 観 点 か らは 後 の3巻
を ま とめ て は じめ て 整 合 性 の あ る体 系 とな る.た だ し,各 巻
は論 理 的 に は 閉 じた構 成 に して あ り,独 立 本 と して の 体 裁 は保 つ よ う に した の で,興 味 に 応 じて適 当 に 取 捨 選 択 して い た だ い て も よ い.本 書 と合 わせ て ご 利 用 い た だ け れ ば幸 い で あ る. 本 書 の よ うに読 み切 り短 編 集 に近 い ス タ イ ル の解 説 は,通 常,テ ー マ ご とに そ の道 の 専 門家 が担 当 す る.新
しい ア イデ ア と最 新 デ ー タが 日夜 更 新 され る最
先 端 の トピ ッ ク をフ ォ ロー し,間 違 い を起 こ さ ず に 深 く掘 り下 げ るに は そ れ が 最 上 の 方 法 だ か らで あ る.に
もか か わ らず 身 の程 わ き ま えず に筆 者 が あ え て挑
戦 し た の は,対 象 とす る読 者 層 を 限 れ ば,一
人 の筆 者 が 一 つ の ス タ イル で一 つ
の体 系 を整 合 的 に描 写 す る解 説 書 に は そ れ な りの 意 義 が あ る はず と考 え たか ら で あ る.筆 者 は 実 験 家 で あ る.測 定 器 の 作 り方 や デ ー タの 解 析 法 に は 習 熟 して い て も,こ の解 説 で述 べ て あ る理 論 的 な 発 展 に何 一 つ ア イデ ア を提 供 し た こ と は な い.内 容 は す べ て他 人 の 論 文 な い しは 解 説 書 の受 け 売 りか らス ター ト した もの で あ る.実 験 デ ー タ につ い て も 自分 の 専 門以 外 は 同様 で あ る.理 論 的 に見 当違 い の論 理 を展 開 して い るか 心 配 で あ る し,実 験 的 に も その 分 野 で は常 識 の こ と を 間違 っ て 受 け 止 め て い る可 能 性 は 多 々 あ る.現 に 編 者 に よ る査 読 の段 階 で初 歩 的 な 間違 い を い くつ か 指 摘 され た.読 者 も間違 い を見 つ け た ら遠 慮 な く 筆 者 に 指 摘 して い た だ きた い. 終 わ りに,本 書 を執 筆 す る機 会 を 与 え て下 さ っ た 編 者 の 荒 船 次 郎 氏 と江 沢 洋 氏 に 感 謝 す る.特 に 荒 船 氏 に は全 編 を通 して 詳 細 に査 読 して い た だ き,い ろ い ろ コ メ ン トをい た だ い た.ま た,郷 た だ い た.言 あ る.ま
田 直輝 氏 に は第8章
に つ い て ご批 判 を い
う まで も な い こ とな が ら,本 書 の 誤 りにつ い て は 筆 者 に全 責 任 が
た,こ の執 筆 の ため 筆 者 の研 究 室 ス タ ッ フ学 生 諸 氏 に は い ろ い ろ ご協
力 を い た だ い た.こ
の場 を借 りて 感 謝 の 意 を表 させ て い た だ く.最 後 に,4冊
もの大 き な解 説 書 に な っ て し まい,そ
して初 稿 か ら最 終 稿 に 向 け て大 幅 な 書 き
直 しが あ っ た に もか か わ らず,長 期 間 に わ た っ て 快 く面 倒 を見 て い た だ い た朝 倉 書 店 の 方 々 に 感 謝 の意 を表 す る. 1999年5月 大阪にて 長 島 順 清
目
1 序
次
論
1
1.1 標 準 理 論 の 考 え 方
1
1.2 標 準 理 論 の 構 造
3
1.2.1
3
1.2.2 QCDラ
電 弱 相 互 作 用 の ラ グ ラ ン ジ ア ン グ ラ ン ジ ア ン
7
1.3 標 準 理 論 の 検 証
9
1.3.1 標 準 理 論 の 確 立
9
1.3.2
標 準 理 論 の 精 密 検 証
10
1.4 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の 発 展 方 向
12
2 小 林-益
16
川 行 列
2.1 ヒ ッ グ ス 場 に よ る 質 量 生 成
16
2.1.1
弱 固 有 状 態 と 質 量 固 有 状 態
16
2.1.2
3世 代KM行
19
2.1.3
KM行
列
列 の パ ラ メ タ ー 化
20
2.2 小 林-益 川 行 列 要 素 の 数 値 評 価
21
2.3 ユ ニ タ リー 三 角 形
26
2.4 2粒 子 系 の 混 合
29
2.4.1
質 量 行 列 と 混 合 パ ラ メ タ ー ε
29
2.4.2
中 性K中
31
2.4.3
B中
2.4.4
混 合 パ ラ メ タ ーxd,
2.4.5
D0中
間 子 のCPパ
ラ メ ター
間 子 混 合
間 子 の 混 合
33 xs
35 40
2.5 質 量 行 列 の 理 論 評 価
40
2.5.1
K中
間 子 質 量 行 列 の 評 価
41
2.5.2
B中
間 子 質 量 行 列 の 評 価
46
2.6 ユ ニ タ リー 三 角 形 の 許 容 範 囲
49
2.7 Kの
稀 崩 壊
50
2.8 B崩
壊 で のCP非
2.8.1
レ プ トン 非 対 称
52
2.8.2
CPの
53
2.8.3
崩 壊 モ ー ド とKM行
保 存 の 観 測 法
直 接 の 破 れ
2.9 非 対 称Bフ
列 の 位 相
ァ ク ト リー
52
56 59
2.9.1
xsの 測 定
59
2.9.2
CP非
62
2.10
3 ヒ
CPの
ッ
対 称 の 測 定
諸 問 題
66
ス
72
グ
3.1 ヒ ッ グ ス 粒 子 の 相 互 作 用
72
3.1.1
ラ グ ラ ン ジ ア ン
72
3.1.2
崩 壊 モ ー ド
73
3.2 ヒ ッ グ ス の 質 量
75
3.2.1
放 射 補 正 デ ー タ か ら の 推 定
75
3.2.2
理 論 的 下 限
77
3.2.3 理 論 的 上 限
80
3.3
ヒ ッ グ ス 粒 子 の 生 成
3.3.1
ee反
応 に よ る 生 成
3.3.2
ハ ド ロ ン に よ る ヒ ッ グ ス 生 成
84 84 90
3.4 超 対 称 ヒ ッ グ ス
96
3.4.1
ヒ ッ グ ス モ デ ル の 拡 張
96
3.4.2
MSSMヒ
3.5
ッ グ ス 粒 子 の 検 出
ヒ ッ グ ス は 素 粒 子 か
3.5.1
強 結 合 理 論
100 104 104
3.5.2
ヒ ッ グス 機 構解 明 の 戦 略
4 ニ ュ ー ト リ ノ
109
113
4.1 ニ ュ ー ト リ ノ 質 量 の 理 論 的 諸 問 題
114
4.1.1
質 量の上限値
4.1.2
質 量行
4.1.3
左右対称 モデ ル
列
114
116 122
4.2 レ プ トン 数 非 保 存 テ ス ト
123
4.3 ニ ュ ー ト リ ノ の 電 気 的 性 質
126
4.3.1
電 荷 分 布
126
4.3.2
磁 気 能 率
127
4.4 ニ ュ ー ト リ ノ 混 合
129
4.4.1
ニ ュー ト リノ質 量 の 直接 測 定
129
4.4.2
ニ ュ ー トリ ノ振 動
131
4.5 ニ ュ ー ト リ ノ 天 文 学
135
4.5.1
太 陽 ニ ュー ト リノの 謎
135
4.5.2
物 質 振 動
141
4.5.3
太 陽 ニ ュ ー ト リノの 謎 の解 は あ るか
149
4.6 大 気 ニ ュ ー ト リ ノ
152
4.7 超 新 星 ニ ュ ー ト リ ノ
156
4.7.1
超新 星の形成過程
157
4.7.2
超 新 星 ニ ュー ト リノ検 出
160
4.7.3
素 粒 子物 理 へ の 見 返 り
4.8 お わ り に
163 165
5 大 統 一 と 超 対 称 性
170
5.1 な ぜ 大 統 一 か
170
5.1.1
ワ イ ンバ ー グ角 の 不 定 性
5.1.2
電荷 の 量 子化
5.1.3
三角 異 常 項
171 172 172
5.2 SU(5)
175
5.2.1
大統一 のスケール
5.2.2
フ ェ ル ミオ ン の 表 現
5.2.3
ゲ ー ジ粒 子 の 表 現
5 .2.4 対 称 性 の 破 れ
183
5.2.5
186
SU(5)の
175 176 179
予 言 と破 綻
5.3 SO(10)
190
5.3.1
左 右 対 称 の世 界
190
5.3.2
新 し い 中 性 ゲ ー ジ ボ ソ ン:Z'
191
5.4 階 層 問 題
195
5.5 超 対 称 性
198
5.5.1
超 対 称 性 とは
198
5.5.2
超 粒 子 の性 質
201
5.5.3
超 対 称 大 統 一 理 論(SUSY-GUT)
204
5.6 超 対 称 モ デ ル
207
5.6.1
超粒 子の相互作用
207
5.6.2
最 小SUGRAモ
5.6.3
GMSBモ
5.6.4
質 量 ス ペ ク トル の ま と め
デル
208
デル
214 218
5.7 超 粒 子 探 索
220
5.7.1
チ ャ ー ジ ー ノ,ニ
ュ ー ト ラ リー ノ,ス
5.7.2
ス クォ ー ク とグ ル ー イ ー ノ
レ プ トン
220 224
5.8 お わ り に
6 ア 6.1
ク シ
オ
225
ン
ソ リ ト ン
230
231
6.1.1
1+1次
元 の ソ リ トン
6.1.2
1+2次
元 の ソ リ トン:う
6.1.3
巻 つ
6.1.4
ソ リ トンの 存 在 す る 時 空
き 数
231 ず糸
236 239 241
6.1.5
イ ン ス タ ン トン
243
6.1.6
θ
250
真
空
6.2 強 い 相 互 作 用 に お け るCPの 6.2.1
異
常
6.2.2
カ イ ラ ル変 換 と質 量 項
6.2.3
U(1)問
破 れ
項
題
251 251 254 256
6.3 ア ク シ オ ン の モ デ ル
257
6.3.1
PQ対
257
6.3.2
見 え な い ア ク シオ ン
称 性 と標 準 ア クシ オ ン
6.4 宇 宙 に お け る ア ク シ オ ン
262
264
6.4.1
星 の冷却剤
264
6.4.2
宇 宙の残存 ア クシオン
266
6.4.3
ア ク シ オ ン の探 索
270
6.5 電 弱 相 互 作 用 の 相 転 移 と バ リ オ ン 数 非 保 存
7 磁 気 単 極 子(モ
ノ ポ ー ル)
275
279
7.1 デ ィ ラ ッ ク モ ノ ポ ー ル
280
7.2
283
ト ・フ ー フ ト-ポ リヤ コ フ モ ノ ポ ー ル
7.2.1
は り ねず み ポ テ ン シ ャ ル
7.2.2
7.2.3
磁
7.2.4
モノポールの存在条件
モ ノポ ールの質量
7.3 大 統 一モノ
流
ポールの性質
283 286 287 288 289
7.3.1
質 量 とサ イ ズ
289
7.3.2
触 媒 作 用
290
7.3.3
ア イ ソ ス ピ ンの ス ピンへ の転 化
7.4
291
モノ ポー ル と天体 物 理 学
291
7.4.1
モ ノ ポー ル の 速 度
291
7.4.2
フ ラ ッ クス制 限
292
7.5 モ ノ ポ ー ル 探 索
294
7.5.1
磁 気 誘 導 検 出器
295
7.5.2
イ オ ン化 損 失 を 使 う 方 法
296
7.6 お わ
8 宇
宙
り に
301
論
304
8.1 フ リー ドマ ン 方 程 式
304
8.2
ビ ッ グバ ン宇 宙論
308
8.3 イ ン フ レ ー シ ョ ン
312
8.3.1
宇 宙の急速膨 張
312
8.3.2
地平 線問題
314
8.3.3
平 坦 性 問題
316
8.3.4
モ
8.3.5
宇 宙 項 問題
ノポ ール問題
317
317
8.4 残 存 ニ ュ ー ト リ ノ
319
8.5 宇 宙 の 物 質 組 成
321
8.5.1
バ リオ ン創 生
321
8.5.2
元 素 合 成
323
8.6 宇 宙 構 造 の 進 化
328
8.6.1
ジー ン ズ質 量
328
8.6.2
ゆ ら ぎの 成 長
331
8.6.3
暗黒物 質の役割
332
8.6.4
銀 河 分 布 とパ ワ ー ス ペ ク トル
334
8.6.5
宇 宙 背 景 輻 射(CMB)の
340
付
録
A ホ モ トピー
ゆ らぎ
345
345
B 宇 宙 論 補 足
352
索
359
引
1 序
論
1.1 標 準 理 論 の 考 え 方
物 質 の 究 極 構 造 物 で あ る素 粒 子 と素 粒 子 を構 造 体 に組 み 上 げ る力 の 統 一 理 論 が 提 唱 され て30年
に な る.標 準 理 論 は,極 端 な超 高 エ ネ ル ギー 現 象 を扱 わ な
い 限 りは数 学的 に整 合 性 が とれ て お り,実 験的 に は わ れ わ れ の 知 る 限 りで の 素 粒 子 現 象 を ほぼ 完璧 に記 述 す る.し か し,よ
り ミク ロ な,よ
り高 エ ネ ル ギー 現
象 を求 め て 素 粒 子 物 理 学 は現 在 も発 展 しつ つ あ る.高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 発 展 を 見 通 す ため に は,標 準 理 論 の 検 証 状 況 を まず概 観 して お く必 要 が あ ろ う.標 準 理 論 の 根 底 に あ る考 え方 を考 察 し,歴 史 学 に どの よ うに検 証 され て い った か を 眺 め る こ とに よ り,高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 発 展 へ 参 入 す る準備 をす る. 標 準 理 論 が 新 し くも た ら した 物 質 観 の な か で 最 も革 命 学 な要 素 は真 空 に 対 す る概 念 で あ ろ う.標 準 理 論 に よれ ば,真 に お け る媒 質 の よ うに 何 か(ヒ
空 は何 も な い無 の 空 間 で は な く,物 性
ッ グ ス と呼 ぶ)が 詰 まっ て い る力 学的 構 造 体 で
あ る.し たが っ て真 空 自 身 エ ネ ルギー を もつ こ とが 可 能 で あ り,環 境 変 化 に 応 じて真 空 自体 の 性 質 も変 わ り う る.ヒ
ッ グス場 は 自 己相 互 作 用 を も ち,温 度 が
下 が る と特 定 の 配位 を もつ よ う に な る(対 称 性 の 自発的 破 れ).す
な わ ち真 空
は温度 に よ って そ の相 を変 え る.標 準 理 論 の要 諦 は,わ れ わ れ の 住 む 世 界 が極 低 温 状 態 に あ り ヒ ッ グ ス粒 子 の凝 縮 した い わ ば超 伝 導 相 状 態 に あ る と認 識 す る こ とに あ る.相 転 移 に 応 じて個 々 の素 材 と して の 素 粒 子 の性 質 も変 わ り う る. 素 粒 子 の もつ 質 量 は そ の よ うに 後 天 学 に付 加 され た 力 学的 性 質 の 一 つ と見 な さ れ る.す な わ ち,標 準 理 論 は,素 粒 子 の 本 来 の 質 量は ゼ ロ で あ る と い う立場 を とる.物 質 の 根 源 要 素 で あ る フ ェ ル ミオ ン(ク ォー ク と レ プ トン)は カ イ ラ ル
不 変 性 に よ って,力
を媒 介 す るゲ ー ジ ボ ソ ン は ゲ ー ジ不 変 性 に よっ て,質 量 が
ゼ ロで あ る こ との理 論 的根 拠 を もつ.こ
れ ら の対 称 性 が 自発 的 に 破 れ(相 転 移
が 起 こ り)質 量 が 発 生 す る メ カ ニ ズ ム を ヒ ッ グ ス 機 構 とい う.現 実 の 世 界 で は,フ
ェ ル ミオ ン と電 弱相 互 作 用 の ゲー ジ ボ ソン が 質 量 を もち,カ
性 とゲ ー ジ不 変 性 が と もに破 れ て い る よ う に見 え るが,ヒ
イ ラル 不 変
ッグ ス機 構 を採 用 す
る こ とに よ り,有 限質 量 の素 粒 子 群 の相 互 作 用 を,ゲ ー ジ理 論 の範 囲 内 で 扱 う こ とが 可 能 に な る. 標 準 理 論 で 扱 う物 質 構 成 粒 子 に は 次 の3世 代6種
類 の ク ォー ク と レプ トンが
あ る.
(1.1) こ こに,uL,… 標Rは
の指 標Lは
カ イ ラ ル 固 有 状 態 が 負 の 左 巻 き粒 子 を表 し,指
カ イ ラル 固有 状 態 が 正 の 右 巻 き粒 子 を表 す.d',
s',b'は,弱
い相 互 作 用
をす る と きの 固有 状 態 で,質 量 固 有 状 態 のd, s, bと は小 林-益 川行 列 で 結 び つ い て い る量 で あ る(第2章
参 照).
こ れ らの 物 質 構 成 粒 子 が,そ
れ ぞ れ の もつ 電 磁 力,弱
い 力,強
い力 に よ って
結 びつ き,物 質 構 造 をつ く りあ げ る.素 粒 子 の 相 互 作 用 を記 述 す る数 学 の 枠 組 み は ゲ ー ジ理 論 で あ る.弱 い相 互 作 用 と電 磁 相 互 作 用(合 用)は,素
わせ て 電 弱 相 互 作
粒 子 の もつ ハ イパ ー チ ャ ー ジ(超 電 荷)と ア イ ソス ピ ン に よ り引 き
起 こ さ れ る.電 弱相 互 作 用 はSU(2)×U(1)対 述 さ れ るが,上
称 性 に 従 うゲ ー ジ理 論 に よ り記
記 の ヒ ッ グ ス機 構 に よ り対 称 性 が 自発 的 に破 れ る.た だ し電磁
相 互 作 用 部 分 は厳 密 なゲ ー ジ対 称 性 が 成 立 して い て,フ ォ トンの 質 量 はゼ ロの ま ま で あ る.一 方,強 ラー に は3種
い相 互 作 用 は ク ォー クの もつ カ ラー 荷 に よ り生 じる.カ
類 あ り,SU(3)対
chromodynamics)で
称 性 に 従 う ゲ ー ジ 理 論(QCD:
quantum
は,電 弱 相 互 作 用 と違 い真 空 の 対 称 性 の 自発 的破 れ は起
きて お らず,厳 密 な ゲ ー ジ対 称 性(ゲ ー ジ粒 子 の 質 量 が0と と見 な され て い る.し か し,低 温 し カ イ ラ ル 対 称 性 が 自発 的 に破 れ る.ヒ
い う意 味)に 従 う
で は ク ォー ク対 が 凝 縮 ッ グス が 存 在 しな い に もか か わ らず 力
学的 な要 因 で ヒ ッ グス的 な力 学 構 造 が構 成 さ れ る有 りさ まは,超 伝 導 に お け る クー パ ー 対 に よ く似 て い る.カ
ラー は 左 巻 き と右 巻 き を 区別 せ ず,QCDで
は
パ リテ ィ保 存 が 成 立 す る.し か し,カ ラー カ の 自 己相 互 作 用機 能 に よ りカ ラー が 現 れ な い 閉 じ込 め 相 が 実 現 して お り,ク ォー クや ゲー ジ粒 子 の グル ー オ ン を 単 独 に は 取 り出せ な い.低 エ ネ ル ギ ー で は,ク ォ ー ク と グル ー オ ンの 多重 相 互 作 用 を扱 う必 要 が あ り,格 子 ゲー ジ理 論 な ど非 摂 動的 取 扱 い が 必 要 で あ る.高 エ ネ ル ギ ー で は クォ ー ク と グル ー オ ン(合 わせ て パ ー トン と呼 ぶ)は,ジ ト と し て観 測 さ れ る の で,QCDの
ェッ
検 証 には パ ー トン と ジ ェ ッ トの 対 応 付 け が
必 要 で あ る.理 論 的 に厳 密 な対 応づ け は ま だ で きて い な い が,QCDを
ガイ ド
ラ イ ン と し たハ ドロ ン化 モ デ ル に よ りジ ェ ッ トデ ー タ を定 量的 に再 現 す る こ と は で きて お り,QCDの
精 密 検 証 が 可 能 で あ る.
1.2 標 準 理 論 の 構 造
1.2.1 電 弱 相 互 作 用 の ラ グ ラ ン ジ ア ン 電 弱 相 互 作 用 の 従 う電 弱 統 一 理 論 は,上 記 の 物 質 構 成粒 子 群 が カ イ ラル 対 称 性 を 満 た し,SU(2)×U(1)ゲ
ー ジ 理 論 に 従 う と い う と こ ろ か ら 出 発 す る.
フ ェ ル ミオ ン の右 巻 き成 分 と左 巻 き成 分 は,そ れ ぞ れ独 立 なハ イパ ー チ ャー ジ (超 電 荷Y)と
ア イ ソ ス ピ ン(I, I3)を もつ.す
な わ ち,相 互 作 用 が 左 巻 き粒
子 と右 巻 き粒 子 で 異 な る.運 動 方程 式 の も と と な る ラ グ ラ ン ジ ア ンは ゲ ー ジ セ ク ター と ヒ ッ グ スセ クター に 分 け られ,そ に な っ て い る.ゲ ー ジ セ ク ター は,フ
れ ぞれ が ゲ ー ジ対 称 性 を満 た す よ う
ェ ル ミ オ ン(ク ォ ー ク と レ プ トン)と
ゲ ー ジ ボ ソ ン の 自 己エ ネ ル ギー お よ び相 互 作 用 部 分 で あ る.ヒ
ッグ ス セ ク ター
は ヒ ッ グ ス の 自 己エ ネ ル ギー お よ び ヒ ッ グス に結 合 す るす べ て の粒 子 の 相 互 作 用 を含 む.フ
ェ ル ミオ ン お よび ゲ ー ジ ボ ソ ンの 質 量 は,ヒ
用 に よ る真 空 の 自発的 対 称 性 の破 れ の結 果 と して,ヒ
ッグ ス の 自 己相 互 作
ッ グ ス セ ク ター に生 じる
物 理 量 で あ る.フ ェ ル ミオ ン とゲ ー ジ ボ ソ ンの 相 互 作 用 が 引 き起 こす 現 象 を計 算 す る と きは,質 量 項 を含 め る必 要 が あ るが,質
量 項 だけ を ヒ ッ グ スセ ク ター
か ら分 離 す る と,そ こ の部 分 の ゲ ー ジ不 変 性 は破 れ る.ト
リー 近 似 を扱 う場 合
は そ の 差 は重 要 で は な い が,高 次 効 果 を考 慮 す る と き は両 セ ク ター の 寄 与 を す
べ て 取 り入 れ な け れ ば な ら な い . 後 の 議 論 の た め,SU(2)対 SU(2)×U(1)対
称 の2重
項 で あ る 電 子 と ニ ュ ー ト リ ノ に つ い て,
称 性 を 満 た す 全 ラ グ ラ ン ジ ア ン を 書 き 下 ろ す .他
の2重
項 も
同 様 に 扱 う.
(1.2) (1.3a) (1.3b) (1.3c) (1.3d) (1.4a) (1.4b) 太 文 字 で 表 し た 量は ア イ ソ ス ピ ン 空 間 の ベ ク ト ル で あ る.す (Fa, a=1∼3).ラ
グ ラ ン ジ ア ン(1.2)の
目 が ヒ ッ グ ス セ ク タ ー で あ る.こ
第1行
れ にW0とBの
目 が ゲ ー ジ セ ク タ ー,第2行 混 合 を 取 り 入 れZとAで
書 き 直 し た う え で 対 称 性 の 自 発 的 破 れ を 入 れ れ ば,グ -サ ラ ム(Glashow-Weinberg-Salam)理 a.
BとW0の
BとW0は
な わ ちF=
ラ シ ョ ー-ワ イ ン バ ー グ
論 の ラ グ ラ ン ジ ア ンが 得 られ る
.
混合 同 じ フ ェ ル ミ ン 対 に 結 合 す る の で 混 合 が 生 じ,フ
中 性 の ボ ソ ン 場Zと
な る.混
合 角 をθW(ワ
イ ン バ ー グ 角)と
ォ ト ン 場Aと して
(1.5a) (1.5b) こ の 結 果,Aμ
の 結 合 す る 量 子 数(電
各 粒 子 に つ い てQL=QRが す る.こ
のZμ
とAμ
荷)は,Q=I3+Y/2と
満 た さ れ る の で,電
を代 入 し,Q=I3+Y/2を
書 き表 さ れ る.
磁 相 互 作 用 は パ リテ ィ を保 存 使 っ て 書 き 直 し,Aμ
とフェル
ミオ ン場 の 結 合 定 数 をeと
読 み 替 え る と,ゲ ー ジ セ ク ター の ラ グ ラ ン ジ ア ン
の 相 互 作 用 部 分 は 次 の よ うに変 形 され る.
(1.6a) (1.6b) ワ イ ン バ ー グ 角sin2θWは,標
準 理 論 の範 囲 で は計 算 で き な い 与 え られ た パ ラ
メ タ ー で あ り,0.22∼0.23の b.
値 を もつ .
フ ェル ミオ ン質 量 項
対 称 性 の 自発 的破 れ で,ヒ
ッ グ ス場 が真 空 期待 値υ を も ち
(1.7) と な る も の とす る.フ
ェ ル ミオ ン の 質 量 項 は,(1.2)式
3項 に 対 称 の 自 発 的 破 れ(1.7)を
の ヒ ッ グ ス セ ク ター 第
入 れ て や れ ば,
(1.8a) (1.8b) と な る.ア
イ ソ ス ピ ンI3=-1/2のdク
るだ け で 同 じ方 法 で質 量 をつ くれ る.uク い.エ
ォ ー ク の 質 量 は,結 合 定 数fを
変え
ォ ー ク質 量 発 生 に はφcを 使 え ば よ
ネ ル ギー がΛQCD以 下 の エ ネ ル ギー ス ケ ー ル に な る と,ク ォ ー ク対 が 凝
縮 して 実 効 的 に ヒ ッ グ ス 場 を 構 成 し,カ イ ラ ル 対 称 性 の 破 れ の 結 果 と し て クォ ー ク に は余 分 の 質 量 が付 加 され る. C. WとZの W± とZの
質量項 質 量 項 は ヒ ッ グ ス の運 動 エ ネ ル ギー 項((1.2)式
第2行 第1項)で
の 置 き換 え を し てや れ ば 取 り出せ て,
(1.9)
を得 る.弱 い相 互 作 用 の フ ェ ル ミ結 合 定 数 と は次 の 関 係 で 結 びつ い て い る.
(1.10) (1.11) d.
ヒッグス相互作用
(1.2)式
の ヒ ッ グ ス セ ク タ ー に(1.7)を
入 れ て や れ ば,ヒ
ッグスの 相互 作
用 が 得 ら れ る.
(1.12a) (1.12b) e.
ρ-パ ラ メ タ ー
荷 電 カ レ ン トの フ ェ ル ミ結 合 定 数GFを,式(1.10)で 性 カ レ ン トの フ ェ ル ミ結 合 定 数GNを
定 義 し た よ う に,中
次 式 で 定 義 す る.
(1.13) ρは 高 次 の効 果 を含 め た 中性 カ レ ン ト結 合 定 数 と荷 電 カ レ ン ト結合 定 数 の 比 と して 定 義 され る.
(1.14a) Δρは 高 次 の 補 正 効 果 で あ る.W,
Zゲ ー ジ ボ ソ ン の 重 い フ ェ ル ミ オ ン や ヒ ッ
グ ス の ル ー プ に よ る効 果 が 大 きい の で,ρ の精 密 デ ー タ と高 次 計 算 値 を合 わせ る こ とに よ り トップ ク ォー ク質 量 が 推 定 で き る.ト
ップ は予 想 通 りの とこ ろ で
発 見 され たの で,現 在 は ヒ ッグ ス粒 子 質 量 の 推 定 に 使 わ れ る.ヒ ッ グ ス質 量 が 決 定 した 後 は新 粒 子(す な わ ち新 物 理)の 発 見 に 有 力 な 手段 と な る.ρ は ま た
(1.14b) に よ っ て も定 義 で き る.標 準 理 論 とは 違 っ て,ヒ
ッ グ ス粒 子 が 複 数 個 あ る場 合
は,W,
Zの
質 量 は,式(1.9)の
代 わ りにυiを
中 性 ヒ ッ グ ス 場 の 真 空 期 待 値,
Iiを ヒ ッ グ ス の ア イ ソ ス ピ ン と し て,
(1.15a) (1.15b) と変 更 され るの で,ト
リー 近 似 の段 階 で は
(1.16) と な る.余 が,2重
分 に 存 在 す る ヒ ッ グ ス 場 が,3重
項 を考 え る 限り ヒ ッ グ ス 場 が 複 数 あ っ て も,ト
ρ=ρtree=ρmass=1で mz2)で
項 を 含 め ば
あ る.質
量 殻 に よ るsin2θwの
は ρ の 高 次 効 果 をsin2θwの
に よ っ て1と
1.2.2
な り,高
QCDラ
QCDは,厳 を 伴 わ な い.ク
とな る
リー 近 似 の 段 階 で は,
定 義(sin2θw≡1-mw2/
中 に 取 り込 ん で し ま う の で,ρmass,は 定 義
次 補 正 効 果 を 受 け な い.
グ ラ ンジ ア ン
密 なSU(3)対
称 性 を も つ ゲ ー ジ 理 論 で あ り対 称 性 の 自 発 的 破 れ
ォ ー ク を ψ=(R,G,B)の
よ う に 表 す と,QCDラ
グ ラン ジア
ン は,
(1.17a) (1.17b) (1.17c) で 与 え られ る.t=(tk;k=1∼8),
tk=λk/2は 生 成 子 の3×3表
現 行 列 で あ る.
量 子 場 の 場 合 は,ゲ ー ジ 固定 項 や 幽 霊 ス カ ラー 項 が 付 加 さ れ る.QCDは 換 ゲ ー ジ理 論 で あ り,Fμν はΑ μの 非 線 形 項 を 含 む.QCD特
非可
有 の種 々の 力学
的 性 質 は この 性 質 に 帰 着 で き るこ とが 多 い. ⅰ) 漸 近 自 由 と繰 り込 み 群 方程 式
QCDの
義 さ れ,反 応 の最 低 次(ト
は定 数 で あ るが,高
リー 近 似)で
結 合 定 数 は,αs≡g2/4π で 定 次 効 果 を取 り入 れ
る と 関 与 す る エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ルQの coupling
constant).高
償 と し て,繰
関 数 と な る(実
効 結 合 定 数:running
次 効 果 計 算 に 出 現 す る 無 限 大 の 発 散 を 繰 り込 む と,代
り込 み ス ケ ー ル エ ネ ル ギ ー μ を 導 入 せ ざ る を え な く な る.観
量は 繰 り込 み 点 μ2の と り方 に 依 存 し て は い け な い か ら,物
理 量 の μ2に よ る 変
化 は αsの 変 化 と相 殺 し な け れ ば なら な い.物
理 量 をPと
現 れ る エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ル をQと
元 解 析 に よ りPは
の 関 数 と な り,繰
す る と,次
測
し て,そ
の物理 量が τ=ln(Q2/μ2)
り込 み 群 方 程 式
(1.18a) が成 立 し な け れ ば な らな い.こ れ は
(1.18b) と い う 形 に 書 き 直 せ る.た
だ し,β
関数は
(1.19) で定 義 され る 関数 で あ る.β 関 数 は 実 際的 に は摂 動 論 に よ っ て の み 計 算 可 能 で あ るの で,次
の よ うに展 開 す る.
(1.20) こ こ で 新 し い 関 数 αs(τ)を
(1.21) で定 義 し境 界 条 件 と して
(1.22) と 設 定 す る と,αs(τ)は
次 の 方 程 式 を 満 た す.
(1.23) こ れ を(1.18b)と
比 較 す れ ば,(1.18b)は
一般 解 と して
(1.24) を もつ こ とが わ か る.す な わ ち繰 り込 み群 方 程 式 は,QCDに μ2依 存 性 が す べ て αs(μ2)の中 に あ る こ と を示 す.た
お け る観 測 量 の
だ し,摂 動 展 開 を し た場
合 は,高
次 の 残 余 項 に μ 依 存 性 が 残 る.asのQ依
を(1.19)に
存 性 を 求 め る の に,(1.20)
入れ ると
(1.25) とな る.摂 動 の 最 低 次 を と る と
(1.26a) あ る い は,
(1.26b) に よ っ て,ス ケ ー ル に よ らな い普 遍 定 数Λ を導 入 す れ ば
(1.27) が 得 られ る.Λ
は ∼200MeV程
で あ り,αs(Q)はQの
度 の 値 を もつ.非
可 換 ゲ ー ジ群 で は,β0>0
減 少 関数 で あ る.す な わ ち漸 近 自由 が 成 立 す る.
ⅱ) ク ォー クの 閉 じ込 め
QCDに
は ヒ ッグ ス場 に よ る真 空 の 自発 的 対 称
性 の 破 れ は な く,厳 密 な 意 味 で ゲー ジ対 称 性 が 成 立 し て い る(mg=0と
して
よ い).し か し,非 可 換 ゲ ー ジ対 称 理 論 に 特 有 の グ ルー オ ンの 自 己 相 互 作 用 の お か げ で,ク
ォー クや グ ルー オ ンに は,通 常 の クー ロ ン型 の ポ テ ン シ ャ ル の ほ
か に 距 離 に 比 例 す る ポ テ ン シ ャ ル が 生 じ,自 己 エ ネ ル ギー を もつ 紐 でつ な が れ た状 態 に な る.こ の 結 果,ク
ォ ー クや グ ルー オ ン を大 き く引 き離 そ う とす る と
真 空 か ら ク ォー ク対 を拾 っ て た くさん の ハ ドロ ンが つ く られ,紐 ち ぎれ る.す な わ ち,ク
はば らば らに
ォー クや グル ー オ ン は単 独 で は 分 離 で きず,ジ
ェット
と して観測 され る こ とに な る.
1.3 標 準 理 論 の 検 証*1)
1.3.1 標 準 理 論 の 確 定 電 弱 相 互 作 用 の 標 準 理 論 が 提 案 され た の は1967年 *1) 標 準 理論 の実 験 的 検証 の詳 細 に つ い ては
で あ るが,注
目 を浴 び る
,本 シ リー ズ第5巻 の 『 素 粒 子 標 準 理 論 と実 験 的 基礎 』 を参 照 され た い.以 下 本 書 では第3, 4巻 の 『 素 粒 子 物 理 学 の 基礎Ⅰ,Ⅱ 』 を文 献Ⅰ,第5巻 を文 献Ⅱ と して 引用 す る.
よ う に な っ た の は1971年
に ト ・フ ー フ トに よ り繰 り込 み 可 能 で あ る こ とが 証 明
さ れ て か ら で あ る.1973年
に は 欧 州 原 子 核 研 究 機 構CERNの
ガー ガ メル 泡箱
ニ ュ ー ト リ ノ 実 験 で 最 初 の 中 性 カ レ ン ト現 象 が 発 見 さ れ た.そ
の 後,各
種 中性
カ レ ン ト反 応 が す べ て 同 じ ワ イ ン バ ー グ 角 を 与 え る こ と が 証 明 さ れ て,1970 年 代 の 終 わ り ま で に は,グ
ラ シ ョ ー-ワ イ ン バ ー グ-サ ラ ム(GWS)モ
デ ルが
た く さ ん の モ デ ル の 中 か ら 唯 一 正 し い モ デ ル と 認 識 さ れ た.1970年 1980年
代 に か け て は,電
の ペ ッ プ(PEP),日 (1974),タ
子 コ ラ イ ダ ー で は ド イ ツ の ペ トラ(PETRA),米
本 の
ウ(1975),bク
ト リ ス タ ン(TRISTAN)が ォ ー ク(1978)の
称 性 な ど の 精 密 測 定 で,SU(2)×U(1)構 が 行 わ れ た.1983年 ダ ー(Spps)でW,
に は,セ Zを
こ にSU(2)×U(1)ゲ
代 か ら
発 見 し,予
活 躍 し,チ
発 見 と,生
UA2グ
ャーム
成 断 面積 や 角 分 布 非 対
造 の 精 密 検 証 とZ,
ル ン のUA1,
国
W質
量値 の 予言
ルー プ が ハ ドロ ン コ ラ イ
言 通 りの 質 量 値 を もつ こ と を確 認 し て,こ
ー ジ理 論 は モ デ ル か ら電 弱 相 互 作 用 の 標 準理 論 へ と昇 格
し た の で あ る. 一 方,強
い 相 互 作 用 反 応 で は カ ラ ーSU(3)に
く つ か 提 唱 さ れ て い た.1973年
よ る モ デ ル が1964年
に 漸 近 自 由 が 発 見 さ れ,QCDが
物 理 の 理 論 と し て 急 浮 上 す る.1969年
のMIT/SLACに
頃 か らい
強 い相 互 作 用
よ る深 非 弾 性 散 乱 で
の ブ ヨ ル ケ ン ス ケ ー リ ン グ 発 見 に 始 ま る 一 連 の 深 非 弾 性 散 乱 デ ー タ は,QCD 検 証 に 大 い に 貢 献 し た.1975年 発 見 さ れ,さ 験 でQCD力
に はPEPの
実 験 で ク ォ ー ク の ジ ェ ッ ト構 造 が
ら に チ ャ ー ム ス ペ ク トロ ス コ ピ ー や ニ ュ ー ト リ ノ/ミ ュ ー オ ン 実 学 や 漸 近 自 由 の 証 拠 が 蓄 積 さ れ た.1979年
ル ー オ ン が 発 見 さ れ て,QCDも
ま た1970年
代 終 わ り ま で に は,ク
互 作 用 を 記 述 す る 標 準 理 論 と し て の 地 位 を 確 立 し た.こ ン 加 速 器 は ブ ル ッ ク ヘ ブ ン 研 究 所 の30GeV Synchrotron)加 ミ研 究 所 の200GeV
速 器,セ PSで
ル ン の24GeV
に はPETRAで
PS
AGS (Proton
グ
ォー クの 相
の 時 期 活 躍 し た ハ ドロ (Alternating Synchrotron),フ
Gradient ェル
あ る.
1.3.2 標 準 理 論 の 精 密 検 証 1980年 代 後 半 セ ル ン のLEP
とフ ェル ミ研 究 所 の テ
ヴ ァ トロ ン(TEVATRON:
)の 稼 働 開始 に よ っ て,標 準 理 論 の
研 究 は 高 次 効 果 を含 む精 密 検 証 の 時 期 に 入 っ た.電 子-陽 電 子 反 応 に よ るZ生 成 の 大 きな 断 面 積 は,Z生
成 に 伴 う各 種 反 応 の精 密 測 定 を可 能 に し,高 次 効
果 を テ ス トす るの に 十 分 な 精 度 を も た ら し た.Zの
見 え な い チ ャ ネ ルへ の 崩
壊 幅 よ り,軽 い ニ ュー トリ ノの数 が(し た が っ て たぶ ん世 代 数 も)正 確 に3で あ る こ とが 確 認 さ れ た.ワ
イ ン バ ー グ角sin2θwに は,ト
リー レベ ル で は 同 等
な い くつ か の定 義 が あ り,高 次効 果 を入 れ る と差 が で て くる.ス タ ン フ ォー ド 線 形 加 速 器 セ ン ター(SLAC)のSLC ムやLEPデ
(Stanford Linear Collider)の 偏 極 ビー
ー タ は,こ れ らが す べ て理 論 の 予 想 通 りで あ る こ と を示 した.標
準 理 論 の一 つ の 特 徴 と して,高 次効 果 に は も っ ぱ ら質 量 の 大 きい 粒 子 の寄 与 が 優 勢 で あ る こ とが あ げ られ る.こ の 結 果,精
密 デー タ と高 次 計 算 を比 較 す る こ
とに よ り トップ と ヒ ッ グス の 質 量値 が 予 言 で き る.ト トロ ン で発 見 され,予
ップ は1984年
言通 りの 質 量 値 で あ る こ とが確 認 され た.ト
ク の 質 量 が 決 ま っ てか らは,ヒ
に テヴ ァ ップ ク ォー
ッ グ ス の質 量 値 予 想 に 使 わ れ て い る(第3章
参
照). 閉 じ込 め 効 果 に よ り クォー ク を単 独 に取 り出 せ な い の で,ク ォ ー ク反応 を定 量 的 に 扱 うの に は 当初 は か な りの 困難 を伴 っ た.理 論 で の パ ー トン計 算 と実 験 で の ジ ェ ッ ト現 象 との対 応 が つ け に くか った の で あ る.こ の 状 況 に対 応す る た め,パ
ー トン か らハ ドロ ン を発 生 させ る種 々 の 現 象 論 的 な ハ ドロ ン化 モ デ ル が
提 案 さ れ た.電 子 反 応 に お け る ジ ェ ッ ト現 象 デ ー タ に 合 わ せ,QCDを ラ イ ン と して種 々 の 改 良 を施 した 結 果,ジ
ガイ ド
ェ ッ トデ ー タの 再 現 性 は ほ ぼ満 足 で
き る もの とな っ た.こ の結 果 ジ ェ ッ ト構 造 が 明 らか に な る と と も にQCDの
精
密 検 証 が 可 能 と な っ た.現 在 で は グル ー オ ン ジ ェ ッ ト とクォ ー クジ ェ ッ トの 違 い,QCDの
非 ア ー ベ ル構 造(グ ルー オ ン の 自 己相 互 作 用),漸 近 自 由,グ ル ー
オ ン の 紐 構 造 な どが テ ス トされ,す べ て理 論 の 予 言 通 りで あ る こ とが確 認 され て い る. ハ ドロ ン 同 士 の 反 応 に つ い て は,ク
ォ ー クや グ ル ー オ ン(ま とめ てパ ー ト
ン)反 応 成 分 の う ち 柔 らか い部 分 をハ ドロ ン 内 の パ ー トン分 布 関数 に 繰 り込 み,パ ー トン レベ ル で の 固 い 反 応(運 動 量 遷 移 の 大 き い 反 応)を 分 離 で き る こ
と(factorization)がQCDを
使 って 証 明 さ れ,実 験 デ ー タ と理 論 と の 比 較 検
証 は 大 い に 進 展 し た.ニ ュ ー ト リ ノや 電 子/ミ ュ ー オ ン に よ る深 非 弾 性 散 乱 デ ー タか らパ ー トン 分 布 関 数 を 決 め,発 展 方 程 式 を使 う こ とに よ りQ2の い とこ ろ で の 分 布 関 数 が 正 確 に計 算 で き る.こ の 結 果,高 反 応 か らパ ー トン 反 応 を抽 出 しQCDの で あ る.現 在 のQCDは,ジ
大き
エ ネ ル ギー ハ ドロ ン
高次効果 の精密検 証 が可能 となったの
ェ ッ トの 包 含 反 応 率 が 運 動 変 数 の 関 数 と し て9桁
も変 わ る状 況 を見 事 に 再 現 す る こ とが で き る.こ の こ と は ま た,ハ
ドロ ン反 応
を使 用 して 電 弱 相 互 作 用 反 応 検 証 が行 え る こ とを意 味 す る.例 え ば ハ ドロ ン コ ラ イ ダーLHC
(Large
Hadron
Collider:
)を 使 って ヒ ッ グス を
発 見 す る こ と を 考 え よ う.ヒ ッ グ ス 生 成 反 応 断 面 積(∼10pb× QCD反
応 断 面積(∼100mb)に
分 岐 比)は
比 べ て非 常 に小 さ く,信 号 対 雑 音 比 は10桁 以
上 に もな る.そ れ で い て ヒ ッ グ ス信 号 抽 出 が 可 能 な の は,圧 倒 的 に数 の 大 きい QCD雑
音 を正 確 に評 価 で き るか らで あ る(第3章
参 照).
1.4 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の 発 展 方 向
以 下,本 書 で 取 り上 げ るテ ー マ を概 観 す る.現 在,標 て残 って い る大 き な テ ー マ はCP非 ろ う.CP非 て い るが,こ
準理 論 の 中 の 課 題 とし
保 存現 象 の解 明 と ヒ ッ グ ス粒 子 の 発 見 で あ
保 存 現 象 に つ い て は,小 林-益 川 モ デ ル が 標 準 理 論 に 組 み 込 まれ れ 以 外 の 可 能 性 に つ い て も種 々 の モ デ ル が 提 唱 さ れ て お り,実 験
に よ る検 証 が 待 た れ る.1999年
に は 日本 の 高 エ ネ ル ギ ー 加 速 器 研 究 機 構 や ス
タ ン フ ォー ド線 形 加 速 器 セ ン ター のB-フ ハ ドロ ン コ ラ イ ダ ー で のB物
理 ,HERA-Bな
ァ ク トリー が 稼 働 予 定 で あ り,ま た ど も計 画 さ れ て い るの で,こ の
方 面 で の 大 きな 進 展 が 近 い 将 来 に 見 込 まれ る.小 林-益 川 モ デ ル は標 準 理 論 の 中 に あ る もの の,実
験 デー タの 出 方 次 第 で はCP非
保 存 効 果 が 標 準 理 論 を超 え
る可 能 性 を提 供 す る とい う意 味 で,高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の発 展 とい う本 書 の 主 題 を担 う先 鋒 を務 め る に ふ さわ し い(→
第2章).
統 一 理 論 で は,従 来 は 素 粒 子 に 付 随 す る 固有 の 物 理 量 とみ な され た 質 量 を, 真 空 の 相 転 移 の 結 果 と し て後 天 的 に 素 粒 子 に 付 加 さ れ た 力 学 的 な 性 質 と 見 な す.真
空 を空 虚 な 無 の 空 間 で は な くヒ ッ グ ス の凝 縮 し た 力学 的 構 造 体 とみ な す
とい う点 に お い て,革 命 的 な思 想 を持 ち込 ん だ とい え る.こ の 結 果 と して ゲ ー ジ ボ ソ ンが 有 限 質 量 を もつ 場 合 で もゲー ジ不 変 性 を保 ち繰 り込 み 可 能 な 理 論 が で きて,大
統 一 理 論 や 重 力 を含 む 超 大 統 一 ま で研 究 対 象 と し て 扱 え る よ う に
な っ た.し か し,質 量 問題 に 関 して は質 量 パ ラ メ ター が ヒ ッ グ ス粒 子 との 相 互 作 用 結 合 定 数 と い うパ ラ メ ター に置 き換 わ っ た だけ で,質 量 発 生 メカ ニ ズ ム に 対 して は な ん ら本 質 的 な解 決 法 を与 え て い な い.こ の た め に は ヒ ッ グス 粒 子 を 発 見 し て,そ の 性 質 を調 べ な け れ ば な ら な い.LEPII(欧
州 原 子核 研 究機 構
CERNで
量 値 が〓105GeV
稼 働 中 の100+100GeV
e-e+コ
ラ イ ダ ー)は,質
ま で の ヒ ッ グ ス粒 子 な ら ば 発 見 す る 能 力 が あ る.同 LHC(
,2004年
ス 粒 子 な らば,1TeVま
稼 働 予 定)で は,標
じ くセ ル ン で 建 設 中 の
準 理 論 で予 想 さ れ る ヒ ッグ
で の 発 見 能 力 が あ る.電 弱 反 応 デー タ の総 合 解 析 や
超 対 称 性 理 論 か らは,mH〓150GeVぐ
らい で あ る 可 能 性 が 強 い と予 想 され て
お り,ヒ ッ グ ス の質 量値 を決 め る こ とは,単 る とい うだ け に と ど ま らず,質
に一 つ の 素 粒 子 パ ラ メ ター を決 め
量値 そ の も の が素 粒 子 の 階 層 性 や 次 世 代 の新 物
理 の 有 り さ ま を具 現 して い る とい う点 で 大 き な 意 味 を もつ.第3章
では ヒッグ
ス発 見 法 と質 量 値 に よ り変 わ る将 来 像 に つ い て議 論 す る. ニ ュー ト リノ は,素 粒 子 の 中 で い ろ い ろ な 意 味 で特 別 な地 位 を 占め る.強 い 相 互 作 用 を し な い 中性 の 粒 子 とい う性 質 の た め に,1970年
代 に は 中性 カ レ ン
トの 発 見 で 電 弱 統 一 理 論 確 立 の 先 駆 け とな り,つ い で深 非 弾性 散 乱 で クォー ク の 存 在 と漸 近 自由 を 確 立 し,QCD確
立 に も先 駆 的 な 役 割 を 果 た し て い る.
ニ ュー ト リノ の現 時 点 で の役 割 は,ま ず は 自己 の もつ 質 量 値 の 小 さ さ の解 明 を 通 して,ヒ
ッ グ ス解 明 とは別 の観 点 か ら質 量 問 題 に 明 り を灯 す こ とに あ る.標
準 理 論 で は,質 量 値 は ヒ ッ グ ス の 真 空期 待 値(246GeV)と
ヒ ッ グ ス との 相 互
作 用 の 強 さfの 積 と して 与 え られ る.ニ ュー ト リノ は 極 端 に 小 さ いfの 値 を もつ が ゆ え に,標 準 理 論 で は 便 宜 上 質 量 をゼ ロ と し て 扱 わ ざ る を え なか っ た. こ の小 さ さ を 説 明 す る もっ と も ら しい 説 明 は シー ソー メ カ ニ ズ ム で あ るが,こ れ は 非 常 に 大 きい エ ネ ル ギー ス ケー ル した が って 新 物 理 の 潜 在 的 存 在 を暗 示 す る.1998年
の 岐 阜 神 岡 の ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ検 出 器 に よ る大 気 ニ ュー ト リ
ノの ニ ュ ー ト リノ振 動 の発 見 は,ニ ュー ト リノの 質 量 の 存 在 を通 して標 準 理 論
を超 え る最 初 の実 験 デ ー タ を提 供 した とい う意 味 で画 期 的 な 意 味 を もつ.大 気 ニ ュー ト リノ振 動 結 果 の もつ 意 味 に つ い て は,現 在 活 発 な研 究 が行 わ れ つ つ あ る の で,こ
こ で こ れ まで の ニ ュー ト リノ物 理 を総 括 を し,発 展 方 向 を探 る こ と
は 重 要 で あ る(→
第4章).
ニ ュー ト リ ノの もつ 第2の 役 割 は,素 粒 子 と宇 宙/天 体 物 理 学 との橋 渡 し で あ る.ビ
ッ グバ ン以 来 の宇 宙 残 存 ニ ュ ー ト リノ の ゆ え に,ニ
値 を決 め る こ と 自身,そ
ュー トリ ノの 質 量
の ま ま宇 宙 の 暗 黒 物 質 解 明 に 大 き な役 割 を果 た す こ と
に も な る.し か し,宇 宙 論 に も役 立 つ とい う間 接 的 な役 割 を超 え て,ニ ュ ー ト リ ノ 自身 を天 体 物 理 学 の 手 段 と し て 使 う道 が 開 け た こ とは 大 きい.も
と もと
ニ ュ ー トリノ の質 量 値 が 極 端 に小 さ い とい う理 由 の た め,加 速 器 に よ る質 量 測 定 実 験 に は 限 界 が あ り,天 体 ニ ュー ト リ ノ に そ の 活 路 を求 め ざ る を え な か っ た.し か し,こ の結 果,太 陽 ニ ュ ー トリ ノや 超 新 星 ニ ュー ト リノ観 測 を通 じて ニ ュー ト リノ天 文 学 とい う新 分 野 が 切 り開 け た の で あ る.さ
らに,従 来 は もっ
ぱ ら加 速 器 を主 た る道具 と して きた素 粒 子 物 理 解 明 に 非 加 速 器 素 粒 子 物 理 とい う新 しい分 野 を開 き,ビ ッ グバ ン 直 後 の 超 高 エ ネ ル ギー 現 象 の解 明 に 通 じる 窓 を開 い た 意 義 は大 きい. 大 統 一 は い う ま で もな くQCDと
電 弱 理 論 を統 合 す る試 み で あ る.そ の エ ネ
ル ギー ス ケ ー ル〓1016GeVが,近
い 将 来 に 加 速 器 で実 現 で き る可 能 性 は な く
本 格 的 な実 験 は 不 可 能 で あ るが,ビ
ッ グバ ン以 来 の 残 留 化 石 を調 べ た り(例;
モ ノ ポー ル探 索),低 エ ネ ル ギー 現 象 と して 顔 を出 した り(例;量
子 崩 壊),ま
た ニ ュ ー トリ ノ質 量 問題 な どで の検 証 可 能 性 な ど い くつ か の 窓 が 開 い て い る. さ らに,大 統 一 や 超 大 統 一 理 論 をつ く る試 み の 中 か ら生 まれ た 超 対 称 性 の 性 質 な ど,現 在 の標 準 統 一 理 論 の 欠 点 を補 い,新
し い分 野 に 進 展 す る可 能 性 を秘 め
て い る.高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 将 来 の 発 展 方 向 性 を見 きわ め る最 も直 接 的 な テー マ と い え る(→
第5章).
ア ク シオ ン は,強 い相 互 作 用 に お け るCP問
題 の 解 決 の た め に 創 作 され た粒
子 で あ る.残 念 な が ら標 準 ア クシ オ ンの 存 在 は 否 定 され,宇
宙論 的 な見 え な い
ア ク シ オ ンの 存 在 可 能 性 も 目々 そ の 窓 が 閉 じ られ つ つ あ る.し か し,ア ン存 在 の 理 論 的 動 機 は 非 常 に 強 く,ソ
リ トン,イ
ク シオ
ン ス タ ン トン効 果,θ 真 空,
電 弱 相 互 作 用 相 転 移 時 の バ リオ ン数 保 存 の 破 れ な ど,優 れ て理 論 的 な 課 題 と密
接 に結 び つ い て い る.宇 宙 の 暗 黒物 質 の 候 補 の 一 つ で あ るこ と を含 め,ま
た通
常 の加 速 器 実 験 とは か け 離 れ た発 見 手 法 な ど,分 野 を超 え た テ ー マ が 集 中 して い る が ゆ え に,高
エ ネ ル ギー 物 理 学 発 展 の た め の 学 習 意 義 は 大 きい(→
第6
章). 磁 気 単 極 子(モ
ノポ ー ル)は,本
来 は 電 荷 に対 す る磁 荷 と い う概 念 か ら出 発
し た が,現 代 の ゲ ー ジ理 論 で は電 磁 場 と共 存 す る ソ リ トンの こ と を指 す.有
限
な大 き さ を もつ 構 造 体 で あ るが,十 分 離 れ た と こ ろで は 点 磁 荷 と同 じ磁 場 をつ くる.大 統 一 が 存 在 す るな らば,電
弱 強相 互 作 用 に分 化 す る と きに 必 ず 出 現 す
る こ とが 理 論 的 に い え る.こ の ため 精 力 的 に モ ノポー ル探 索 が 行 わ れ た が,い まだ に見 つ か っ て い な い.理 論 的 な 流 れ と して は,第6章
の ソ リ トン の1セ
シ ョ ン に含 め る方 が 整 合 性 が とれ るが,実
験 的 探 索 自体,一
う る の で 独 立 な 章 と し た(→
お,イ
第7章).な
ク
つ の テー マ とな り
ン フ レー シ ョ ン モ デ ル は,当
初 モ ノ ポー ル の 不 在 を説 明す るた め に提 案 され た もの で あ る. 大 統 一 理 論 は 宇 宙 論 に イ ン フ レー シ ョン と い うア イ デ ア を提 供 し,ビ ッ グバ ン宇 宙 論 に 内在 し たい くつ か の根 源 的 な 問題 を解 決 した.さ
らに 宇 宙 構 造 創 成
の も っ と も ら しい シナ リオ を も提 供 して い る.宇 宙 の 誕 生 後 わ ず か10-40秒 近 く まで 逆 上 っ て議 論 が で き る の も全 く大 統 一 理 論 の お か げ で あ る.逆 に宇 宙論 の 発 展 が 素 粒 子 論 に も 多 くの 好 ま し い影 響 を及 ぼ した.大 統 一 ス ケー ル の エ ネ ル ギー を人 工 的 に 製 造 す る こ とが 不 可 能 で あ るに もか か わ らず,わ れ われ が大 統 一 理 論 や 超 対 称 理 論 の 実 験 的 検 証 を検 討 す る こ とが で きる の は,ま グバ ン宇 宙 論 の お か げ で あ る.こ の 意 味 で,ビ
さにビ ッ
ッ グバ ン宇 宙 論 の 基 本 を理 解
し,素 粒 子 物 理 学 との接 点 に ふ れ て お くこ とは 高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の発 展 を 洞 察 す る た め に 不 可 欠 で あ る(→
第8章).
2 小林-益 川行列
2.1 ヒ ッ グ ス 場 に よ る質 量 生 成
2.1.1 弱 固 有 状 態 と質 量 固 有 状 態 こ の 章 で は,標 準 理 論 に お い てCP非
保 存 が どの よ うに 取 り扱 わ れ る か を見
て み よ う.標 準理 論 に お い て 現 れ る場 は,ク ォ ー ク と レプ トンの デ ィ ラ ッ ク場 ψ,ゲ ー ジ 場WμとBμ,そ し て ヒ ッ グ ス場 φで あ る.こ れ ら はCPに 対 して 一 定 の 変 換 性 を もつ(Ⅱ-付 録E参 照) .自 由 場 の ラ グ ラ ン ジ ア ン は も と も と こ の変 換 で不 変 な よ うに で きて い る.問 題 は相 互 作 用 項 が どの よ うに変 換 す る か で あ る.こ の た め に ま ず クォ ー クの質 量 項 か ら眺 め て み よ う.ク ォー ク場 と ヒ ッ グ ス場 を
(2.1) と し て,ク
ォ ー ク と ヒ ッ グ ス 場 のSU(2)不
一般化 すれば
変 な 相 互 作 用LI(ψ,φ)(1.2)を,
,
(2.2) と 書 け る.上
式 は,φ0が
真 空 期 待 値 を も っ た と き に,そ
質 量 が 生 じ る よ う ア レ ン ジ し て あ る.こ … を表 す
.ク
ォ ー ク 場 に'を
の 場 で あ り,必 弱 固 有 状 態(weak
れ ぞ れ,uj'とdk'に
こ にuj'=u',c',t',…,dj'=d',s',b',
つ け た の は,こ
れ らが 弱 い相 互 作 用 をす る と き
ず し も 物 理 的 な ク ォ ー ク に 対 応 し て い な い か ら で あ る.こ eigenstate)と
呼 ぼ う.Mjk, Mjk'は
れを
クォ ー ク場 と ヒ ッ グ ス
場 との 結 合 定 数 で あ り,
は 後 の 便 宜 の た め に 導 入 した もの で あ る.自 発
的対 称 性 の 破 れ に よ り ヒ ッ グス 場 が 真 空期 待 値
を もつ
と,(2.2)は,
(2.3a) (2.3b)
(2.3c)
と な っ て クォ ー ク場 の 質 量 項 が 出現 す る.… は ヒ ッグ ス との 相 互 作 用 項 で 以 下 の議 論 に は 必 要 な い.弱 固 有 状 態 は一 般 的 に は 質 量 の 固 有 状 態(mass state)で は な い.物 理 現 象 を記 述 す るに は(2.3)を
eigen-
対 角 化 して 質 量 固 有 状 態
に 直 さ なけ れ ば な ら な い. 行 列 理 論 に よ れ ば ど ん な(N×N)行
列(エ
ル ミー トで な く と も よ い)で
個 の ユ ニ タ リー 行 列 を 使 っ て 対 角 化 が 可 能 で あ る か ら,AL,
AR†, BL, BR†
も2 を4
個 の ユ ニ タ リー 行 列 と し て,
(2.4a)
(2.4b)
と で き る.こ …
, md, ms,
*1) miは
こ で ユ ニ タ リ ー 行 列AL, mb,
… は 正 の 実 数*1)に
一 般 に複 素 数 で あ るが
,カ
AR,
BL,
BRを
う ま く選 ぶ とmu, mc,
で き る.
イ ラ ル 変 換 で 実 数 に で き る(§6.2.2参
照).
mt ,
(2.5)
を つ くる と
(2.6a) (2.6b) で あ る の で,AL,
ARは,そ
れ ぞ れ エ ル ミー ト行 列 で あ るMUMU†,
を対 角 化 す る ユ ニ タ リー 行 列 で あ る こ と が わ か る.(2.4)を
MU†MU
使 う と(2.3)は,
(2.7) と な る.こ て,質
れ は ま さ に,望
む フ ェ ル ミオ ン の 質 量 項 の 形 を して い る.し
量 固 有 状 態 の ク ォ ー ク は,弱
たが っ
固有 状 態 か ら
(2.8) の よ うに ユ ニ タ リー 変 換 し た も の で あ る こ とが わ か る.自 由 ラ グ ラ ン ジ ア ン や,中
性 カ レ ン ト相 互 作 用 の よ う に,ク ォ ー クの 香 りqj'に つ い て は じめ か ら
対 角 化 さ れ て あ る もの は,こ
の ユ ニ タ リー 変 換 に よ っ て,qj'→qjと
変 わ るの
み で あ り,弱 固 有 状 態 で表 し た ラ グ ラ ン ジア ン と質 量 固有 状 態 で表 した ラ グ ラ ン ジ ア ン は 同 一 形 を保 つ.こ 述 で あ る.し か し,香 相 互 作 用Lcは
れ は 中性 カ レ ン トに お け るGIM機
構 の一般 的記
りに つ い て の 非 対 角 要 素 を結 び つ け て い る荷 電 カ レ ン ト
事 情 が 異 な る.Lcに
つ い て 弱 固有 状 態 を 質 量 固有 状 態 で 書 き
直す と
(2.9a) とな り,相 互 作 用 が各 二 重 項 の 中 で 閉 じず に世 代 間 の 混 合 が 起 き る.こ の行 列
(2.10) を小 林-益 川(略 こ れ にCP変
してKM)行 換(Ⅰ,Ⅱ-付
列 と呼 ぶ1). 録E参
照)を 施 す と
(2.9b) とな るの で,CP不
変 性 が 成 立 す る ため に は,Vが
実行列 でなけれ ばな らない
こ とが わ か る.
2.1.2 3世 代KM行 一 般 に(N×N)ユ N2次
列 ニ タ リー 行 列 に はN2個
の 独 立 な実 変 数 が 存 在 す る.こ の
元 の 実 変 数 空 間 に お い て,NC2=N(N-1)/2個
の実 空 間 回 転 が 定 義 で き
る の で,行 列 要 素 の う ち,こ の 個 数 だ け は 回 転 角 θjを使 っ て 書 き表 せ る.残 りは位 相 角 φjと な る.一 方,2N個
の ク ォー ク場 に は 質 量 項 を変 化 させ な い
位 相 変 換 の 自由 度
(2.11a)
(2.11b)
が あ る の で,こ
の 変 換 に よ っ て,
(2.12a) つ ま り
(2.12b) とな る の で,全 体 に 共 通 な1個
の 位 相 を除 い た(2N-1)個
の位 相 は クォ ー ク
場 の 再 定 義 で 吸 収 で き る.結 局
(2.13)
だ け の 位 相 が 残 る.し た が って,N≦2の 数 で 書 き直 せ るの で,CP非 の で,N≧3で
場合 はKM行
保 存 効 果 は現 れ な い.現 実 に はCPが
な け れ ば な ら な い とい う の が,そ
動 機 で あ っ た.LEPで
のZ共
な お,u,
破 れ てい る 列 を導 入 した
ニ ュー ト リノは3
考 え る の が 自 然 で あ ろ う.こ の と
列 は3個 の 回転 角 と1個 の位 相 角 で表 す こ とが で き る. c, tク ォ ー ク 間,ま
れ ば 必 ず し もCPが とsが
も そ もKM行
鳴 幅 の 測 定 か らmν<mz/2の
個 しか な い と わ か っ て い る か ら,N=3と き,KM行
列 要 素Vijを す べ て実
た はd,
破 れ な く な る.そ
縮 退 し て い る と し よ う.そ
s, bク ォ ー ク の 間 で 質 量 が 縮 退 し て い れ は 次 の よ う に し て い え る.例
う す る とdとsの
え ば,d
代 わ りに任 意 のユ ニ タ
リー 変 換 し た 組 み 合 わ せ を つ く っ て も や は り 質 量 の 固 有 状 態 で あ る か ら, ク ォ ー ク群Dは,対
角 位 相 変 換(2.11b)よ
り大 き な 変 換 の 自 由 度
(2.14) を もつ.こ
の こ と に よ っ て,位
列 に な っ て し ま いCPが
2.1.3
KM行
KM行
相 を さ ら に 一 つ 減 らせ る の で,行
列Vは
実行
保 存 す る の で あ る.
列のパ ラメター化
列 の 表 し 方 は い ろ い ろ あ る が,こ
こ で はPDG2)の
基 準 に従 い
(2.15a)
(2.15b) と 書 く こ と に す る.こ
の 表 式 の 特 徴 は θ2=θ3→0の
き て カ ビ ボ 回 転(θc=θI)に
な る こ と,ク
を す べ て 正 に で き る こ と な ど で あ る.つ
と き,第3世
代 が分離 で
ォ ー ク 場 の 適 当 な 再 定 義 に よ りci, si ま り,
(2.16) と し て よ い.c2-1<10-5で
あ る こ とが わ か っ て い る の で(次
節),
(2.17) そ こ で,s1=λ,
s3=Aλ2, s2e-iδ=Aλ3(ρ-iη)と
お く.λ≪1で
あ る の で,O(λ4)
以 上 は省 略 す る と
(2.18) と い う ウ ォル フ ェ ン シ ュ タ イ ン(Wolfenstein)の
表 式3)と な る.こ の 表 し方
は,小 林-益 川 行 列 が ほ ぼ 対 角 行 列 で あ る こ とが 明 瞭 に示 せ,行 列 要 素 間 の 大 小 関 係 が よ く見 通 せ る な ど,デ ー タ解 析 に便 利 で あ る.実 験値 を入 れ る と2,4) (2.19) とな る.
2.2 小 林-益 川 行 列 要 素 の 数 値 評 価
標 準 理 論 で はCPの ン ジ され て い る.CPの
破 れ は小 林-益 川 行 列 の 中 の 虚 数 部 分 に 入 る よ うに ア レ 破 れ の 原 因が 仮 に標 準 理 論 を超 え る新 しい 理 論 で あ る
と して も,標 準 理 論 は 少 な く も真 の理 論 の低 エ ネ ル ギ ー 近 似 とな っ て い る はず で あ る.そ れ は こ れ ま で の 実 験 デー タ との 比 較 に よ って 裏 づ け ら れ て い る. よ っ て 実 験 か ら標 準 理 論 を使 って 決 め られ る行 列 のCP保 絶対 値)は,標
存 部 分(行 列 要 素 の
準理 論 を超 え る新 し い物 理 理 論 が 出 現 して も それ ほ ど変 わ らな
い と期 待 され る.実 際 に提 唱 され て い る た い て い の モ デ ル で は そ う な っ て い る.そ
こ で,こ
こ で はN=3と
い う仮 定 だ け を して,実
験 値 と比 べ てKM行
列の 値 を決 定 す る2,5).
(1) │Vud│:←
原 子 核 β 崩 壊 か ら決 め ら れ て(Ⅰ-§10.1.1参
照),
(2.20)
(2) │Vus│:← :Ke3の
ス トレ ン ジ 粒 子 の レ プ ト ン 崩 壊 式(Ⅰ-§10.4.3参
照)よ
り
崩壊 式
(2.21a)
(2.21b) よ り,GF2│Vus│2f+2が π+e-νe),
求 め ら れ
0.982±0.008(K+→
る.f+と
し て は 理 論 値7)[0.961±0.008(KL0→
π0e+νe)]を
使 い
(2.22a) と 決 め ら れ る.こ
の ほ か ハ イ ペ ロ ン 崩 壊 か ら 求 め る 方 法 も あ る.
:ハ イ ペ ロ ン 崩 壊 か ら は
(2.22b) ハ イペ ロ ンの レプ トン 崩 壊 はSU(3)の
破 れ に よ る不 定 性 が 大 きい が,二
つの
平 均 を とっ て,
(2.22c)
(3) │Vcd│:←
ニ ュ ー ト リ ノ に よ る チ ャ ー ム 生 成(Ⅰ-§12.7.2参
ニ ュ ー ト リ ノ 反 応 の 各 過 程 の 生 成 断 面 積 は,標 在 確 率 とKM行
照)
的 と な る クォー クの 核 子 内 存
列 要 素 の 自 乗 に 比 例 す る こ と を 勘 案 す る と,ア
イ ソ ス カ ラー
標 的の場合
(2.23) と 表 せ る.Kは
共 通 の 係 数 で あ る.チ
ャ ー ム はc(c)→l+(l-)の
ま っ た 符 号 の レ プ トン に 崩 壊 す る か ら,チ
ャ ー ム 生 成 の 信 号 は2個
レ プ ト ン の 存 在 に よ っ て 特 徴 づ け ら れ る.q(x)=u(x)+d(x), s(x)は,
u, d(u,d)ク
ォ ー ク,お
よ びsク
よ うに決 の異符号 の q(x), s(x)=
ォ ー ク の 運 動 量 分 布 関 数 で あ る.
上 式 か ら│Vcd│は,
(2.24)
(2.25) に よ っ て 求 め ら れ る.デ
ー タ はCDHSグ
ル ー プ とColumbia-FNALの
グ
ル ー プ の 結 果9)を 平 均 し て,
(2.26) (4) │Vcs│:←
チ ャー ム粒 子 の レ プ トン崩 壊
チ ャ ー ム 粒 子Dの GFVus→GFVcs,
か ら,f+D(0)に
レ プ ト ン 崩 壊 の 式 はK0→
K0→D,
π+→K+,
f+→f+Dの
は 理 論 値11)(0.7±0.1)を
π+e-ν(2.21)と
同 じ で あ る.
置 き換 え を す れ ば よ い.
使 い
(2.27a) と決 め られ る.た だ し,こ の 量 は ユ ニ タ リテ ィ(後 述)を 使 え ば 間 接 的 で は あ るが,よ
り精 密 に決 め る こ とが で き る.
(2.27b)
(5) │Vcb│副:←B粒 B粒 か ら,適
子 の レ プ トン崩 壊
子 の レ プ トン 崩 壊 式 は,ミ
ュ ー オ ン の レ プ ト ン 崩 壊 式(Ⅰ-§10.3参
当 な 置 き 換 え を し て 得 ら れ る.
照)
(2.28) f(y)は,位
相 空 間 積 分 か ら の 寄 与 で(2.21b)で
実 際 の 数 値 を 入 れ る とf(mu/mb)∼1, 第2項
はQCDに
0.157±0.002で
与 え ら れ て い る.
f(mc/mb)∼0.48で
あ る.{}の
よ る 補 正 で,g(mc/mb)≒2.4, g(mu/mb)≒3.61, あ る.分
よ びARGUSグ
与 え られ
ル ー プ のB→lνxの
の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル で あ る13).b→ulν, が 見 え て い る.こ
αs(mb2)=
岐 比 はBR(B→lνx)=0.12±0.007±0.005と
て い る12).図2.1は,CLEOお
clν, →c→slν
中 の
レ プ トン
の三 つ の モー ド
れ らか ら
(2.29)14)
(6) │Vub│:←Bの
レ プ トン 崩 壊
(5)と 同 じ デ ー タ を 解 析 し て,b→ulν
部 分 を 分 離 抽 出 し て,b→clν
較 す る.
(a) 図2.1
(b) bの
レプ トン崩 壊 各 モー
ドの ス ペ ク ト ル13)
(a) CLEO b→clν, b→c→slν (b) ARGUS
b→clν,
b→ulν
と比
(2.30a) す なわち
(2.30b) こ こ で 第1の 誤 差 は 実 験 か ら,第2の
誤 差 は モ デ ル の 不 定 性 か ら くる.
Vtj成 分 を求 め る に は トップ クォー クの 生 成 ま た は 崩 壊 過 程 が 必 要 で あ る. 現 時 点 で は実 験 的 に は 求 め られ な い が,N=3を
仮 定 す れ ば ユ ニ タ リテ ィ よ り
求 め る こ とが で き る*2).
(7) │Vtb│:←
ユ ニ タ リテ ィ
(2.31a) を使 え ば
(2.31b) (8) │Vts│:←
ユ ニ タ リテ ィ
Vus*≒0.221,
Vcs*≒1, │Vtb│≒1を
使 え ば
(2.32) (9) │Vtd│:←
ユ ニ タ リテ ィ
を 使 っ て も で き る が,Bd0-Bd0混 ps-1(後
*2) N=3に
述(2.86))の
合 か ら 決 め ら れ るΔm(Bd)=0.472±0.018
値 と
おけ るユ ニ タ リテ ィが成 立 して い るか どうか は
よ り検定 で き る.上 記 の数 値 を入れ れ ば と な っ て,一
応 満 た し て い る と い っ て よ い.
,
を 使 い,ηB=0.55,
BBfB2=(1.4±0.1)(175±25MeV)2,
(2.110),(2.118))を
入 れ れ ば
mt=175GeV(後
述
(2.33) を得 る. 以 上 を ま とめ る と各 行 列 要 素 は,
(2.34)
(2.35)
で δの 制 限 は な し とい うこ と に な る.VKMが(3×3)行 は,ト
ップ 粒 子 の 崩 壊 を測 定 し てVtjを 決 め,ユ
か,あ
るい はCPの
破 れ がKM行
2.3
列 で あ る こ と を い うに ニ タ リテ ィ を 直 接 証 明 す る
列 の 予 言通 りで あ るか を示 す 必 要 が あ る.
ユ ニ タ リー三 角 形
ユ ニ タ リテ ィ条 件 に よ って
(2.36a) が 成 立 す る.Vud≒1, Vcd≒-λ,
Vtb≒1を
入 れ る と
(2.36b) と な る.こ
の 関 係 式 は 複 素 平 面 で は 図2.2(a)の
よ う に 表 す こ と が で き る.
さ らに ウ ォ ル フ ェ ン シュ タ イ ン の パ ラ メ ター 化 で
(2.37) と 表 せ る の で,ユ
ニ タ リー 条 件 は,ρ-η
底 辺 の 長 さ が1,頂
点 の 位 置 が(ρ,η)の
両 端 か ら 頂 点 へ の 距 離 は,そ 行 列 要 素 で書 け ば
平 面 上 に 描 く と 図2.2(b)の
よ う に,
三 角 形 を 形 成 す る こ と に な る.底
れ ぞ れ,│Vub│, │Vtd│に
比 例 す る.各
辺 の
頂 角 をKM
(a)
(b) 図2.2
ユ ニ タ リー 三 角 形
(a) 小 林-益 川 行 列 の ユ ニ タ リー 関係:VudVub*+VcdVcb*+VtdVtb*=0 (b) ウ ォ ル フ ェ ン シュ タ イン の パ ラ メ ター を使 う と底 辺 の長 さが1,頂
点 の 位 置 が(ρ,η)の 三 角 形 と
な る.頂 角 φ1,φ2,φ3は付 記 し た反 応 測 定 に よ り決 定 で き る(§2.8参
照).
(2.38a) (2.38b) (2.38c) と表 さ れ る.標
準 理 論 で のCP問
題 は こ の ユ ニ タ リー 三 角 形 を 決 め る こ と に 帰
着 す る*3).
演 習2.1 (2.11)の
こ の 三 角 形 の 面 積 は(1/2)Im(VudVcbVcd*Vub*)で
あ る こ と,面 積 は
位 相 変 換 で 不 変 で あ る こ と を示 せ.
さ て,物
理 観 測 量 はVKMの
る は ず で あ る.こ
表 し 方(回
転 角 や 位 相 の と り 方)に
無 関係 であ
れ は 一 般 に 次 の よ う に い い 表 す こ とが で き る15).
(1) 行 列 要 素 の 絶 対 値 は 物 理 量 で あ り,パ 例 え ば│Vcs│2, │Vcb│2は,c,b→lνxの
ラ メ タ ー の と り方 に よ ら な い.
崩 壊 率 の 中 に 現 れ,測
定 で き る量 で あ
*3) ユ ニ タ リー 三角 形 は全 部 で6個 存在 す る が ,ウ ォ ル フ ェン シ ュ タ イ ンの パ ラ メター を採 用 す る と実 質3個 とな り,す べ て同 じ面積 を もつ.そ れ ぞれ 異 な る物 理 量 間の 関 係 式 を 表 す が,(2.36a)以 外 の他 の 二 つ は辺 の長 さに大 きな差 が あ り,ほ とん ど線 に 近 い三 角 形 を与 え る.こ の こ とは,崩 壊 の 非 対称 が 小 さい こ とを意 味 す る.大 き な非 対 称 を与 え る物 理 的 過 程 の 考 察 に便 利 な の が(2.36a)な の で,ユ ニ タ リー三 角 形 とい う と きは 通 常 これ をさす.
る. (2) CPの
破 れ の 効 果 は,パ
ラ メター の と り方 に よ らず に
(2.39a) に 比 例 す る.│J│は i,j=u,c,t…,
ユ ニ タ リー 三 角 形 の 面 積 の2倍
m,n=d,s,b…
はi≠j,
m≠nと
を 与 え る 量 で あ る.た
だ し,
い う 条 件 以 外 は 任 意 で あ る.
上 に 採 用 し た パ ラ メ タ ー で 表 せ ば,
(2.39b) し た が っ て,CPが
破 れ る た め に は,ど
い こ と が わ か る.い MUか
の 混 合 角,位
ま,[A,B]=AB-BAと
相 も0で あ っ て は な ら な
し て,(2.3)の
質 量 行 列MD,
らつ く る次 の 量 に対 して
(2.40) が 証 明 で き る の で,CP非
保 存 が 現 れ る条 件 は一 つ の 式 に ま とめ て
(2.41) と 表 す こ と が で き る15).CPの
破 れ の 目安Jを
実 験 数 値 で 見積 って み る と
(2.42) でJの
と りう る最 大 値
に 比 べ る と非 常 に小 さ い 量 で あ る.CPの
破れ
の効 果 が 小 さ い の は│J│が 本 質 的 に 小 さ い こ とに 起 因 す る と い え る.KM行 の パ ラ メ ター 設 定 の 方 法 を変 え る と位 相 は 変 わ るが,こ 角 形 を複 素 平 面 上 で 回 転 す る の み で,形 で き る量 と し て は,例
列
の効 果 は ユ ニ タ リー三
と面 積 は 不 変 に保 た れ る.実 験 で 測定
えば 非 対 称 の大 き さが あ る. (2.43)
と考 え られ る.Jの
大 き さ は過 程 に あ ま りよ ら な い 量 な の で,こ の 関 係 式 は,
大 きな 非 対 称 を もつ 過 程 は 分 岐 比 が小 さ く,大 きな 分 岐 比 を もつ 過 程 で は非 対 称 度 が 小 さ い とい うこ と を示 して い る.
2.4 2粒 子 系 の 混 合
2.4.1 質 量 行 列 と混 合 パ ラ メ ター ε B中
間 子 で のCP非
保 存 の議 論 は,KM行
列 要 素 の 違 い 以 外 はK中
場 合 と同 じ形 式 で 進 め る こ とが で き る.一 つ の 大 き な 特 徴 は,B中 量(∼5GeV)がK中
間 子(∼0.5GeV)に
こ の た め位 相 空 間体 積 がK中 ま りBの
寿 命τBはKの
中 間 子 は,質
間子 の 間 子の質
比 べ て 非 常 に 大 きい こ と で あ る.
間 子 に 比 べ て 非 常 に 大 き く崩 壊 幅 が 大 き い.つ
寿 命τKに 比 べ て 大 幅 に 短 い.ま
た2種 類 の 中 性B
量 が ほ ぼ 同 じ で崩 壊 先 の チ ャ ネ ル が 数 多 く開 け て い るの で,崩 壊
幅 が ほ とん ど等 し くな る と考 えて よ い.す な わ ち
(2.44) と な る.こ
の た め,BLとBsを
あ る の で,現
分 離 し て,直
接 ε,ε'を測 定 す る こ と が 困 難 で
象 と し て の 取 扱 い 方 に は,KとBで
CP=±1に
対 応 す る状 態 をB±
大 き な 差 が で る.
と書 き,CPT保
存 を 仮 定 す る と,K中
間子
と同 様 に
(2.45a) (2.45b) (2.45c) と 書 け る.た =ds
だ し,Bq0≡bq,
, K0=sdに
Bq0=bq(q=d,s)と
定 義 す る.こ
合 わ せ た も の で あ る が,BとBを
こ の ε, p,qは 本 来 は εB, pB, qBの よ う にBの と 区 別 す べ き 量 で あ る が,混
の 定 義 はK0
逆 に 定 義 す る 人 も あ る.
指 標 を つ け て,K中
間子 の場合
乱 の お そ れ が な い と き は 省 略 す る.ま
た
(2.46) *4) (次頁)KやB中
間 子 は強 い相 互 作 用 で保 存 す る量 子S(ス
トレ ン ジ ネ ス)やB(B
量子 数)を もっ て い る.こ の場 合, とい う位 相 変換 で運 動 方程 式 は変 わ ら ないの で,位 相 変 換 の 自由度 が あ る.
と し,α=0(modulo nπ)と B0-B0系
す る 定 義 を こ の 章 で は 採 用 す る*4).
の状 態 を
(2.47a) と書 く と,系
の満 た す シ ュ レー デ ィ ン ガー 方程 式 を
(2.47b) で定 義 して,質 量 行 列Mijを
導 入 す る.
質 量行 列 要 素 はMij=Mij-iΓij/2と
表 せ て,
(2.48a) (2.48b) で あ る(Ⅰ,Ⅱ-付
録G参
照).
以 下 の 議 論 で は,CPT不 CP固
有 状 態 の ど ち ら が 短 寿 命 粒 子(Bsと
と書 く)か,ま CP固
変 性 は 仮 定 す る こ と に す る.Kの
場 合 と違 い,
書 く)で ど ち ら が 長 寿 命 粒 子(BL
た ど ち らが 重 い か の 対 応 は知 られ て い な い.そ
こ で,完 全 な
有 状 態 で な くて も,そ れ に近 い状 態 をB± と書 く こ とに す る.B±
の質
量 固 有値 λ±は,固 有 方 程 式 を解 くこ とに よ っ て
(2.49) と表 せ る.混
合 パ ラ メ タ ー ε は,質
量 行 列 を使 え ば
(2.50a) (2.50b) の よ う に 表 さ れ る.質
量,幅
の 平 均 値 をM, Γ
と書 き,差
をΔm, ΔΓ
とす る と
(2.51a) (2.51b) (2.51c) (2.51d)
(2.52) で あ る の で,
(2.53) が 成 立 す る.
2.4.2
中 性K中
間 子 のCPパ
K(中 間 子 崩 壊 に お け るCP非 照 され た い.こ る.K崩
こ で は,こ
壊 で のCP非
ラ メ ター
保 存 現 象 の 詳 細 に つ い て は,Ⅰ-第11章
を参
の 章 の 議論 に 必 要 な用 語 を 定 義 す る の み に と どめ
保 存 の 効 果 と して 直 接 実 験 で 測 定 さ れ て い る 主 な パ ラ
メ タ ー は 次 の 三 つ で あ る.
(2.54a) (2.54b) (2.54c) ηな どの 値 は世 界 平 均 を と る と2)
(2.55a) な お,し
ば し ば で て く る パ ラ メ ター ΔmKな
ど の デ ー タ を も掲 げ て お く.
(2.55b) 次 に上 式 を理 論 的 に解 析 す る と きの パ ラ メ タ ー で 書 き直 す.K→2π 振 幅 はCPTを
仮 定 す れ ば,
の崩壊
(2.56a) (2.56b) と 書 け る(Ⅰ,Ⅱ-付
録G参
照),CP非
終 状 態 で の ア イ ソ ス ピ ンI(=0,2)状 壊 振 幅 を 使 い,ε,ε'と
保 存 の 場 合 はA1≠AI*で
あ る.δIは
態 の 散 乱 の 位 相 の ず れ で あ る.こ
最
れ ら崩
関 連 パ ラ メ タ ー を 次 式 で 定 義 す る.
(2.57) (2.58) (2.59) (2.60) δIは ππ 散 乱 の 位 相 の ず れ で あ り, 1/2を
の 値 を も つ .ω
破 る 遷 移 の 相 対 振 幅 で あ り,だ
η00,ALを
い た い ∼0.03程
は,ΔI=
度 の 値 を も つ .η+-,
ε0,ε'で表 す と
(2.61) (2.62a) (2.62b)16) 実 験 値(2.55)を
入 れ る こ と に よ り,
(2.63) とな るの で
(2.64a) (2.64b) が 第1近
似 と し て い え る.
な お,後
で 使 う の で,ImΓ12を
Γ2πで あ る の で,Γ12(式(2.48b))の よ い 近 似 と な る.位 を 使 う と,
崩 壊 振 幅 で 書 き 直 し て お く,Γs≫ ΓL,Γs〓 中 間 状 態 と し て は2π
相 空 間 体 積 を ρ と し て,(2.56)で
を考 慮 す れ ば 十 分
定 義 さ れ た 崩 壊 振 幅AI
の寄与
(2.65a) の寄与
(2.65b)
を使 えば
上 式 第2行
を 導 く と き に,(2.59),(2.60)を
)を 使 え ば,右
辺 第2項
使 っ た.実
験 事 実(ω
∼0.03,
は 無 視 し て よ い こ とが わ か る.
(2.66)
2.4.3
CPの
B中
間 子 混 合
破 れ に つ い て 実 験 検 証 可 能 な具 体 例 を議 論 す る前 に,CPの
非保 存 と
独 立 な 現 象 で は あ る が,密 接 な 関 係 に あ るB0-B0混
合 現象 につ い て述べ よ
う.K中
で 展 開 し て か ら時 間 発
間 子 の 振 動 と 同 じ く,
展 を させ,再
び も との
を
で書 き直 す と
(2.67a)
(2.67b) で 与 え ら れ る.た
だ し
(2.68) (2.69) こ こ まで は,ど 以 降,B中
ん な2体 混合 に も適 用 で き る一般 的 な 議 論 で あ る.こ れ か ら
間 子 に 特 有 な状 況 を考 慮 して 式 を簡 略 化 す る こ とに す る.
式(2.51d),(2.48b)か
ら,ΔΓ
に はBとBと
か ら 共 通 に 崩 壊 で き る状 態
の み 寄 与 す る こ と が わ か る.そ
れ はuqqu,
uqqc,
cqqc(q=d,s)で
あ り,
す べ て 小 林-益 川 行 列 に よ り 二 重 に 抑 圧 さ れ る 遷 移(∼│VbqVbq'*│;q, た はc)ば
か り で あ る の で,全
通 チ ャ ネ ル の 分 岐 比 が ∼10-3程
体 の 崩 壊 に 占 め る 割 合 は 小 さ い.実 度 で あ る こ と が 知 ら れ て い る17).す
q'=uま 際 に も,共 な わ ち,
(2.70) で あ る の で(こ
れ は す で に 式(2.44)で
述 べ た こ とで も あ る),Δ Γ=0と
お くと
(2.71a) (2.71b) と 書 き 直 せ る.こ
れ よ り,t=0にB0で
あ っ た も の が,t=tで,B0(B0)で
あ
る確 率 は 直 ち に 計 算 で き て,
(2.72a) (2.72b) 同様 に
(2.72c) (2.72d) レプ トン崩 壊 で は
(2.73a) ハ ドロ ン崩 壊 で は
(2.73b)
で あ る か ら,レ B0(bq)ま
プ ト ン の 符 号 ま た はK±
た はB0(bq)状
の ど ち ら を 含 む か を 見 る こ と に よ り,
態 を 区 別 で き る.こ
こ で,
として
(2.74) と 書 き 直 す と,B0-B0振
動 が τB/xを 周 期 と す る こ と が わ か る.し
粒 子 は 寿 命 が 短 い の で(∼10-12秒),崩
か し,B
壊 時 刻 の 測 定 に は 困 難 を 伴 う.崩
壊 点
(時 間)を 測 定 しな い と きは,時
間 で積 分 してや らな け れ ば な らな い.
(2.75a) (2.75b) (2.75c) (2.75d) こ こで,混 合 状 態 と非 混 合 状 態 の 比
(2.76a) (2.76b) を定 義 して お く.混 合 の全 体 に 占め る割 合 χ
(2.77a) (2.77b) も よ く使 わ れ る 量 で あ る.CP保
2.4.4
存 で あ れ ば,r=r,χ=χ
で あ る.
混 合 パ ラ メ タ ーxd,xs
最 初 に 大 き な 混 合 量 を 観 測 し た の はARGUSグ
ルー プ で,そ
の 後,CLEO
グ ル ー プ に よ っ て も確 認 さ れ た18).混 合 の 存 在 の 確 認 は
(2.78) の 過 程 を 調 べ て 得 ら れ た も の で あ る.Υ(4S)は,JPC=1--,M=10508MeV, Γ=23.8MeV,主 い と き は,二 は,同
崩 壊 モ ー ドがBd0Bd0,B+B-のbb共
鳴 で あ る.混
つ の レ プ ト ン は 異 符 号(l1l2=l+l-)で
符 号(l±l±)の
あ る が,混
レ プ ト ン 対 が 生 成 さ れ る.CP保
合 の な
合 が あ る とき
存 を仮 定 す れ ば
(2.79) (2.78)のΥ(4S)を
通 す 反 応 で は,B0とB0は
本 当 は 相 関 を 考 慮 し な け れ ば な ら な い が,後
特 定 の 量 子 状 態 に あ る の で, に 述 べ る よ う に 式(2.76)を
その
ま ま 適 用 し て 差 し支 え な い(式(2.164)参 さ れ る がBsBs対
は生 成 され な い の で,こ
ま ずB0→B0の
照).Υ(4S)で
は,BdBd対
こで の 測 定 量r=rdで
混 合 の 存 在 を確 立 す る た め に は,B0B0も
は生 成
あ る. し くはB0B0が
確 か に 生 成 さ れ て い る事 実 を,崩 壊 生 成 物 を すべ て 観 測 して再 構 築 し て見 せ る の が よ い.B崩
壊 は次 の よ う な連 鎖 崩 壊 を観 測 し て 同定 で き る.
(2.80)
ARGUSが
実 際 に 観 測 し た 例(図2.318))を
た 事 象 で は な い が,そ
示 す.こ
れ ま で は 未 確 認 で あ っ たb→ulν
れ は,最
初 に観 測 され
の 崩 壊 の 存 在(Vub≠
0)の 証 拠 を も 同 時 に 示 し て い る の で こ こ に 掲 げ た.
(2.81)
下 付 き の ρ,Kは 次 に,rを(2.79)に よ びl-l-を B+B-へ
親 を 区 別 す る た め の 指 標 で あ る. よ っ て 定 量 的 に 決 め る た め に は,BBか
観 測 し な け れ ば な ら な い.し も 崩 壊 す る の で,BdBdお
し,b0(b+)をB0(B+)崩
か し,Υ(4S)はB0B0の
よ びB+B-へ
ら のl+l+お ほ か に
の 崩 壊 確 率 をp0とp+で
壊 の レ プ トン モ ー ドへ の 分 岐 比 とす れ ば,
表
図2.3
B0-B0混
合 お よびb→uμν
反 応 の 完 全 に再 構 築 さ れ た 例(ARGUS)18)
(2.82) こ こ で,
(2.83) な る量 を定 義 す れ ば,混 合 変数rdは
観 測 値Nよ
り
(2.84) と し て 求 め ら れ る.λ (ARGUSグ
は 未 知 量 で あ る が 理 論 的 に は1∼1.3の
ル ー プ は1.2を
採 用),か
つxdの
量 で あ り
値 は λの 値 に よ って そ れ ほ ど変
わ ら な い.
演 習2.2
(2.84)を
導 け.
最 近 の 実 験 値 は2),
(2.85) と な っ て い る. な お,現 OPALに
在 で は 混 合 の 時 間 変 化 も 観 測 さ れ て お り,例 よ るLEPデ
ー タ を 示 す19).B0(B0)が
と し て 図2.4に
そ の ま ま 崩 壊 す る とl+(l-)が,
図2.4
e+e-→B0B0+Xに お け るB振 動 の 時 間変 化.同 符 号 の レ プ トン対(l±l±) の相 対 生 成 率 を 固有 時 間 の 関 数 と して プ ロ ッ トし た もの19)
B0→B0(B0→B0)に →B0B0+Xに
混 合 す る とl-(l+)が
放 出 さ れ る こ と を 利 用 し,e+e-
お け る 同 符 号 レ プ ト ン の 崩 壊 に 占 め る 割 合 を プ ロ ッ ト し た もの で
あ る. r値
の 測 定 や 混 合 の 時 間 変 化 を 見 た デ ー タ か ら 得 ら れ る ΔmBの
値 を総 合 す
ると
(2.86) と な る2).
も しB0B0対
を 生 成 す る チ ャ ネ ル が た く さ ん 開 け て い れ ば,B0とB0は
干 渉 的 で あ り 独 立 に 崩 壊 す る の で,N(l±l±)とN(l+l-)の (2.76)の
非
比 と し て は,式
代 わ り に,
(2.87) を 使 わ な け れ ば な ら な い.エ
ネ ル ギ ー が 十 分 高 くて,B0B0生
十 分 超 え て い る と き のe+e-反
応
,LEPで
ハ ド ロ ン コ ラ イ ダ ー で のBB生
成 な ど は こ れ に あ た る.は
成 の し きい値 を のZ0→B0B0, か る 量 は,同
符号
レプ トンの 全 体 に 占め る割 合
(2.88) で あ る.BB対
を 実 験 的 に 抽 出 す る に は,2ジ
ェ ッ ト現 象 の 中 で,大
き なp,pT
を も つ レ プ トン が,そ か し,B0B0に
れ ぞ れ の ジ ェ ッ ト内 に1個 ず つ あ る と い う事 象 を探 す.し
はBd0Bd0とBs0Bs0が
成 も 含 ま れ て い る.こ た が っ て,観
あ り,そ
れ は 混 合 し な い の で,χ
の ほ か にBuBu(=B+B-)生 の 値 を 見 か け 上 小 さ く す る.し
測 さ れ るχ の 値 は
(2.89) こ こ で,fiはbqibqi(qi=u,d,sほ
か)が
0.397,fs=0.10,fother=0.1は
生 成 さ れ る 確 率 で,fu=0.397,fd=
実 験 値 か ら 決 め ら れ る.現
時 点 で の世 界 の平 均 値
は2)
(2.90) で,χdの り,χ
値 を(2.89)に
入 れ る と,こ
と し て 許 さ れ る 上 限 値0.5に
れ か ら 決 ま るχsの 値 は0.497±0.13と 非 常 に 近 い.し
た が っ てχsに
下 限 値 の み デ ー タ か ら 制 限 が つ く と解 釈 す べ き で あ ろ う.混 デ ー タ をBd,Bs両
な
つ い て は,
合 の時 間変化 の
方 の 寄 与 を入 れ て解 析 し た結 果 か らは
(2.91) が 得 ら れ て い る. 理 論 的 に は,4∼20(後 め る の に,xdを
述,式(2.123))と
求 め た の と 同 じ方 法,つ
か ら 定 め る 方 法 は 適 用 が 困 難 で あ る.そ わ か る(図2.5).x〓3-4を
図2.5
超 え る とr値
x=(Δm/Γ)と x〓4∼5に
推 定 さ れ る.こ
の た め,xsを
求
ま り同 符 号 と 逆 符 号 の レ プ ト ン 数 比 の 理 由 はx-rの
関 数 を書 い て み れ ば
は 飽 和 し て し ま い,r値
混 合 比r=[P(B0→B0)]/[P(B0→B0)]の
な る と混 合 比 か ら決 め る の は 困難 とな る.
関係
のわ ず か
な 誤 差 がxを
大 幅 に 変 え て し ま うの で あ る.し
直 接Bs0-Bs0振
た が って,xsを
決 め る に は,
動 の 時 間依 存 性 を測 定 しな け れ ば な ら な い.測 定 方 法 に 関 し
て は 後 述 す る.
2.4.5 D0中 CPの
間 子 の 混合
破 れ の 議 論 に 入 る 前 に,混
く.表2.1は,K0,D0,Bd0,Bs0中 Δm/Γ,ε
に つ い て,実
間 子 の 崩 壊 寿 命 τ=1/Γ,質
た,こ
で あ る こ と,ΔmB∼100ΔmKで れ か らD0-D0混
め ら れ て い る.実
あ る こ とが わ か
合 は 小 さ す ぎ て 観 測 が む ず か し く,CP非
の 検 証 に は 適 さ な い こ と が わ か る.xDは 不 定 性 が 大 き い.い
量 差,Δm,x=
験 値 も し くは 理 論 予 想 値 を ま と め た も の で あ る.K中
間 子 以 外 は る.ま
合 の可 能 な 中性 中間 子 系 の ま とめ を して お
保 存
理 論 的 に は 長 距 離 成 分 が 大 き く20),
ず れ に せ よ 小 さ い 値(0.1以
下)を
予 想 し実 験 的 に も確 か
験 は フ ェ ル ミ 研 究 所 の フ ォ ト ン ビ ー ム を 使 用 し て, を 測 定 し て,rD<0.00367(90%CL)と
だ した
も の で あ る21). 表2.1
*1 K
sの 寿 命,*2
各種 混 合 の 度合 い(括 弧 で く くっ た値 は理 論 予 想値)
文 献21)
2.5 質 量 行 列 の 理 論 評 価
こ の 節 で は,小 林-益 川 行 列 がCPの え ば,K崩
壊 で のCP非
破 れ の 原 因 で あ る とす る標 準 理 論 を使
保 存 デ ー タ を再 現 で き る こ と,そ の 効 果 の 全 容 がB
粒 子 系 を含 む 現 象 で 明 らか に な る 可 能 性 が あ る こ と を示 そ う.K中 は ε≫ ε',す な わ ちCPの
間子系 で
破 れ の効 果 は も っ ぱ ら混 合*5)を 通 して現 れ た.小 林
-益 川行 列 を 使 え ばB中
間子 系 で は これ が 逆 転 し
,崩 壊 過 程 に お け るCPの
接 の 破 れ が 非 常 に 大 き く現 れ る可 能 性 が あ る.そ の 理 由 は,CPの
破 れの大 き
さは ∼│J│で 変 わ ら な い が,実 験 的 に決 め る場 合 は,分 母(崩 壊 率 のCP保 部 分)の 大 き さ に対 す る比 が 問 題 と な る.K中 Vcs)2∼O(λ2)に 比例 す る の に 反 し,B中 り,│J│∼O(λ6)と
直
存
間 子 の 場 合 は こ の 量 が(Vcd*
間 子 の場 合 は(Vtd*Vtb)2∼O(λ6)で
比 べ て 同 じ オー ダー で あ る.つ
あ
ま り最 高 度 の 非 対 称 ∼O(1)
が 観 測 され る可 能 性 が あ る.も っ と も非 対 称 が 大 きい こ とは 必 ず し も実 験 的 に 容 易 で あ る こ と を 意 味 し な い.Bの
場 合 は 質 量 が 大 き い た めQ値
が 大 き く,
崩 壊 モー ドが た くさ ん 存 在 して,チ
ャネ ル あ た りの 分 岐 比 が 小 さ い か らで あ
る.
2.5.1 K中 こ こ で は,こ
間子質量行列 の評価 れ ま で一般 的 な式 と して与 え て き た質 量行 列
(2.92) を,標 準 理 論 を 使 って 評 価 す る.CP非 に 寄 与)とΓ12(直
保 存 の効 果 は,M12(CPの
間 接 の破 れ
接,間 接 の両 方 に寄 与)の 虚 数 部 に 現 れ る.標 準 理 論 で は, の 遷 移 過 程 は 図2.6,図2.7の
箱 型 図 で 与 え られ る の で,
質 量 行 列 は こ の フ ァ イ ンマ ン 図 を計 算 す る こ とに よ り得 られ る.箱 型 図 を中 間 で二 つ に切 断 した もの が 崩 壊 過 程 を与 え るの で,崩 壊 率 と箱 型 図振 幅 は(他 の 崩 壊 過 程 が 寄 与 しな け れ ば)比 例 関係 に あ る.し か し,崩 壊 振 幅 は質 量 殻 上 に あ る とい う条 件 が つ くの で,図 崩 壊 図 に は 寄 与 しな い.K崩
中 のi,j=tク
ォ ー クは 箱 型 図 に は寄 与 して も
壊 の と き はcク
箱 型 図 を二 つ に 切 っ た 崩壊 図 のみ で は,Vtdも な い.そ の た め,理 2.6 (e),図2.7
ォ ー ク も寄 与 し な い.こ し くはVubを
論 的 に 崩 壊 過 程 の 中 にCP非
の結果
入 れ る こ とが で き
保 存 効 果 を入 れ る に は,図
(e)の よ うなペ ン ギ ン図 を考 慮 に 入 れ な け れ ば な らな い .
a. Δm K崩 壊 の 質 量 行 列 は,図2.6
(a)(b)の
箱 型 図 形 を計 算 す れ ば よ い.そ
の
結 果 は23), *5) 混合効果 をCPの 間接 的な破れ ,CPの CPの 直接的な破れ ともい う.
違 う状態 に混合 を通 さず直接 崩壊す る過程 を
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
図2.6
K0-K0系
(a), (b) 箱 型 図.i,j=tの (c), (d) CPを
でCPの
と きCPの
破 れ を生 む 過 程
破 れ ε を生 じ る.
保 存す る崩 壊 振 幅
(e) ペ ン ギ ン図,tク
ォ ー ク を中 間 状 態 に 含 む 図 がCPの
破 れ ε'を生 じ る.
(2.93) F(x),
G(x)は
ル ー プ 計 算 か ら現 れ る 量 で あ り, (x〓1の
F(x)は,xの
でx≪1,
緩 や か な 関 数 で,F(0)=1,
x≪yの
F(4)∼0.57,
と き)
(2.94a)
F(∞)=1/4で
あ る.
とき は
(2.94b) と な る.
はQCD補
正24),fK(=160MeV)は
K→
μνの 崩 壊 定 数 で あ る.
BKは
次 式 で 定 義 さ れ る.中
間 状 態 を 真 空 で 置 き 換 え た と き,BK=1と
なる
よ う に 定 義 さ れ て い る25,26).
(2.95) BKはQCDの
非 摂 動 効 果 に よ る 因子 で あ り,理 論 的 不 定 性 が 大 きい.
最 近 の値 は
(2.96) で あ る20). 式(2.93)を
眺 め れ ば わ か る よ うに,各 中 間 状 態 の寄 与 は 中 間 状 態 の 質 量 の
自乗 に比 例 し,ま た 中 間状 態 と外 の 中 間 子 を結 びつ け る小 林-益 川 行 列 要 素λq2 に 比 例 す る.し た が っ て,小 林-益 川 行 列 の寄 与 で 抑 圧 さ れ な け れ ば,本 一 番 重 いtク
ォー クの 寄 与 が き くは ず で あ る.B中
な って い る が,K中
間 子 の 場 合 は,外
来は
間 子の場 合 は確 か にそ う
の クォ ー ク がs, dで
あ る た め にt
ク ォー クの質 量 に よ る 因 子 よ り小 林-益 川行 列 に よ る 因子
が き き,チ
ャ ー ム ク ォ ー ク の 寄 与 が 優 勢 と な る.tの
入 る の み で あ る.Γ12に =(Vcd*Vcs)2が
関 し て も 同 様 で あ り,こ
支 配 す る こ と に な る .し
寄 与 は小 さ な 補 正 と して
の 結 果 質 量 行 列 の 位 相 は,λc2
たが って
(2.97) が 成 立 す る.こ
の こ と は(2.50),(2.51)を
参 照 す れ ば,
(2.98) (2.99) を意 味 す る. 箱 型 図以 外 の寄 与 を も取 り入 れ た と きの 質 量行 列 の実 部 は,K10, K20の 質 量 差ΔmKと
(2.100) の 関 係 に あ る.D(=0∼0.5)は 呼 ば れ る(箱
箱 型 図 形 以 外 の 過 程 の 寄 与 を 表 し長 距 離 効 果 と
型 図 の 寄 与 は 短 距 離 効 果 と 呼 ば れ る).理
い 部 分 で あ り,以
論 的 に評価 のむ ずか し
下 の 議 論 で は 無 視 す る.GF=1.166×10-5GeV-2, mw=81
GeV, │ΔmK│=3.5×10-15GeVな
ど を 使 う と,精
度 よ く決 め ら れ る 部 分 は
(2.101) と い う 形 に 書 け る.具
体 的 にΔmKを
書 き 下 ろ す と,mc2≪mt2,mw2の
近似 で
(2.102) と な る.最 初 に こ の箱 型 図 形 の 寄 与 を検 討 した と きは,ま だ チ ャー ム 粒 子 が発 見 さ れ て お らず,ΔmKの 5GeVと
実 験 値 を再 現 す る とい う条 件 か らmcを
だ い た い1.
推 察 した の で あ っ た26).
b. ε0と ε'の評価 CP非
保 存 の効 果 は2世 代 だ け で は 入 ら な い こ とは,す
あ り,tク
で に 述べ た とお りで
ォ ー ク の 中 間 状 態(λtを 含 む 項)を 考 慮 す る必 要 が あ る.tク
ク中 間 状 態 の寄 与 は,Δmの
絶 対 値 に は あ ま り きか な いが,虚
混 合 パ ラ メ ター εへ の寄 与 を 与 え る の で,CPの
数 部 した が っ て
議 論 に は 欠 か せ な い.CP非
保 存 の も う一つ の パ ラ メ ター ε'(2.59)は,崩
壊 振 幅 の 中 のCP非
保存部 分 で
あ る.箱 型 振 幅 を 中 間 で 切 れ ば 崩 壊 振 幅 と な る が(図2.6(c), が 質 量殻 上 に あ る とい う条 件 か ら,c,tク の 崩 壊 振 幅 に 含 ま れ るKM行 み 寄 与 しCP非 は,tク
列 は,VusVud*の
ギ ン 図 を考 慮 す る 必 要 が あ る.こ こ で は,d→t遷
Γ12部分 は,K0お 幅 のCP非
よ びK0の
な わ ち,こ
み で あ り,振 幅 の 実 数 部 に の
保 存 項 は 存 在 しな い.崩 壊 行 列 要 素 にCP非
非 保 存 効 果 がVtdを
(d)),終 状 態
ォー クの 寄 与 は な い.す
ォ ー クの 寄 与 が 含 め られ る よ うに,図2.6(e)の
る の で,CPの
ォー
保 存項 を含 め るに よ う な い わ ゆ るペ ン
移 が 中間 状 態 と して 含 まれ
通 じて 入 る の で あ る.な お,質
量行 列 の
共 通 終 状 態 へ の崩 壊 振 幅 の積 で あ るか ら,崩 壊 振
保 存 成 分 は,ImΓ12と
して εへ も寄 与 す る.
K崩 壊 の 振 幅パ ラ メ タ ー ε0は,混
で 関 係 づ け ら れ て い て(2.57),近
合 パ ラ メ タ ー ε と,
似 的に
(2.103) と 書 く こ と が で き る((2.66)と し ば 混 同 し て 使 用 さ れ る.通 が,ε0は
常,差
を 使 え).な
お,ε0と
εは し ば
は 小 さ い の で 不 都 合 が 生 じ る こ とは な い
測 定 で き る 物 理 量 で あ る の に 反 し,ε
は位 相 変 換 で 変 わ る量 で あ る こ
と に 留 意 し て お く 必 要 が あ る*6).以
下 は,K崩
壊 で の εは ε0の こ と を 意 味 す
る も の とす る. ε'は,
(2.104) (2.105) と表 さ れ る
〔(2.59),(2.60)〕.δIは
は,ΔI=1/2則
ππ 散 乱 の 位 相 の ず れ で あ り,│ω│≒0.03
を 破 る 度 合 い で あ る.ε'へ
ペ ン ギ ン 図 はΔI=1/2遷 0の 振 幅A0の
移 過 程 で あ る の でA2へ
虚 数 部 に 寄 与 す る.A0の
表 さ れ る ト リー 図 で あ る.KM行 リー 図 の 振 幅 をAp,Atと
の 寄 与 は ペ ン ギ ン 図 か ら く る が, の 寄 与 は な く,ア
イ ソスピン
実 部 へ の 主 寄 与 は,図2.6(c),(d)で
列 要 素 を取 り 出 し た 後 の ペ ン ギ ン 図 と ト
書 くと
(2.106) と な る.ペ
ン ギ ン 図 はQCD部
分 を 含 み 評 価 が 困 難 で あ る が,│Ap/At│〓O(1)
と 見 積 も ら れ て い る.│ε│∼2×10-3を さ い と 考 え ら れ る.す (2.104), (2.105)にIm 10-3を
な わ ち,Im A2=0を
考 慮 す る と,ε Γ12≪Im M12が
の 中 のIm
A0の
成 立 す る.実
寄 与 は小 験 的 に は
入 れ て 得 ら れ る 式 に, │ε'/ε│≒2.2×
入れ ると
(2.107) と な り,理 *6) (2
.46)を
論 的 予 想 と合 っ て い る. 使 っ て,
で あ る の で,α
と 再 定 義 す る と,
を 微 小 量 と し た と き,
と変 化 す る.ε0や
ε'は こ の 変 換 で 変 わ ら な い.α
は0に
の 自 由 度 を 利 用 し て,Im
で き る,こ
る.こ の と き,ア と 同 一 と な る.こ ε'の 式 の 中 のIm
を適 当 に選 べ ば上 記 変 数 の どれ か一 つ
A0=0と
す る の が,Wu-Yangの
手法 であ
イ ソ ス ピ ン0状 態 へ の 崩 壊 振 幅 パ ラ メ タ ー ε0は,混 合 パ ラ メ タ ー ε の 章 で 現 れ る 計 算 式 は,α=0と い う条 件 で 計 算 さ れ て い る か ら,ε や A0/ReA0≠0で
あ る.
箱 型 図 お よ び ペ ン ギ ン 図 の 計 算 結 果 を 実 際 に 入 れ,ウ
ォ ル フ ェ ン シュ タ イ ン
の パ ラ メ ター を 使 う と20,27),
(2.108)
(2.109) と表 す こ とが で き る.実 験 デ ー タ は標 準 理 論 の 予 想 範 囲 内 に 入 っ て い る.
2.5.2
B中
間 子 質 量 行 列 の評 価
a. Δm M12=
で
あ る か ら,行
列 要 素 はK中
(b)の
箱 型 図 形 か ら 計 算 で き る の で,(2.93)と
し,今
度 はtク
間 子 と 同 じ く 図2.7(a), ま っ た く 同 じ 形 と な る.た
ォ ー ク 中 間 状 態 の 寄 与 が 圧 倒 的 に 大 き い(mt≫mc,mu)の
だ で,
M12は
(2.110) と書 け る.式 の 中 に現 れ る 量 は,K→Bと
す る以 外 は ま っ た く同 様 に 定 義 さ
れ る.
(2.111) fBはBの
崩 壊 定 数 で あ るが,fKと
違 っ て実 験 的 に 未 定 で あ る.QCDや
格子
ゲ ー ジ理 論 計 算 で は5)
(2.112) b. Δ Γ Γ12には 終 状 態 が 質 量 殻 上 に あ る とい う条 件 が つ くか ら,図2.7の を破 線 で 切 っ た と こ ろの エ ネ ル ギー 値 がmBに が っ て,t状
態 は寄 与せ ずuお
よ びcの
箱 型図形
等 し くな け れ ば な ら な い.し
み が 寄 与 す る.計 算 に よ れ ば22)
た
(a)
(b)
(d)
(c)
(e) 図2.7 (a),
(b) 箱 型 図
(c),
(d) Γ12に
B中
間 子 系 のCPの
寄 与 す る 図.(a),
らi,j=u,cで
(b)を
破 れ に 寄 与 す る過 程
切 断 し て 得 ら れ る が,質
量 殻 上 とい う条 件 か
あ る.
(e) ペ ン ギ ン 図
(2.113)
(2.114a) mu2≪mc2≪mb2の
近 似 で,
(2.114b) で あ るの で,こ れ を代 入 す る と
ユ ニ タ リテ ィ条 件
(2.115)
を入 れ る と
(2.116) (2.117) 第1項
は│Γ12/M12│を
与 え,第2項
項 で あ る の で,M12と
はIm(Γ12/M12)に
寄 与 す る.第1項≫
Γ12は ほ と ん ど 同 じ位 相 角 を も つ.も
角 を も つ と す れ ば,(2.50)を
見 れ ば わ か る よ う に,q/pは
εBは 純 虚 数 と な る.こ
の 場 合│B0>の
く で き る か らεB=0と
な り,混
た が っ て,CPの
あ る こ と が わ か る.ImM12,
位 相 角 を 適 当 に 選 べ ば,q/pは1に
合 に よ るCPの
M12と
等 し
破 れ は 存 在 し な い.εBの
破 れ が 小 さ い と き,小 ImΓ12が
し 完 全 に 同 じ位 相 純 粋 な位 相 に な り,
部 は 位 相 の 再 定 義 で 変 化 す る の で 観 測 量 で は な く,Re εBの も つ.し
第2
虚数
みが物理 的意 味を
さ く な る 方 法 と し て は2通
と も に 小 さ く て│ε│が 小 さ い か,ま
Γ12が ほ ぼ 同 じ位 相 を も っ て,ε
た は,
が 純 虚 数 に 近 く な る か で あ る.わ
れわ
れ の 採 用 し た 小 林-益 川 行 列 の パ ラ メ タ ー 形 式 に よ る 位 相 の と り 方 で は,前 がKで
実 現 し,後
者 がBで
実 現 す る の で あ る.後
者 の 場 合(2.51)よ
り
者
り,
(2.118) さ て,ΔΓB≪ΓBと
実 験 デ ー タ(2.85)(xd=ΔmB/ΓB=0.723±0.032)を
使 え
ば,
(2.119) が モ デ ル に よ ら ず に 成 立 し な け れ ば な ら な い が,(2.118),
(2.117)よ
り,
(2.120) で あ り,KMモ
デ ル は 実 験 デ ー タ に 矛 盾 し な い.歴
大 き な 値 を も つ と わ か っ た 時 点 で,ト (mt≫mb)と c. xd, xsの xはΔmとΓ
史 的 に はxdが
∼1程 度 の
ップ クォ ー ク の 質 量 が 予 想 外 に 大 き い
い う こ と が 認 識 さ れ た の で あ る. 評価 の 比 で あ るか ら,Δmの
表 式(2.118),
(2.110)を
使 えば
(2.121)
qはdま
た はsの
意 味 で あ る.こ
の 式 はBdとBsに
共 通であ り
(2.122) で あ る と 考 え ら れ る の で,τBd∼τBs=τBと
お く と,
(2.123) と な り,実 験 値(2.91)と
は矛 盾 しな い.
上 式 か ら わ か る よ う に,xsはCPの リー 三 角 形 の 頂 点 の位 置 をρ=1か
破 れ を 表 す 変 数 で は な い が,ユ
ニタ
らの 半 円 周 上 に 固定 す る こ とが わ か る.ま
た,│Vub│は
原 点 に 中 心 を もつ 半 径(ρ2+η2)1/2の 円 を 与 え る.し た が って,xs
とb→ulν
の 崩 壊 率 を精 密 に 測 定 す れ ば,ユ
の で,CPの
ニ タ リー 三 角 形 の 頂 点 が 決 ま る
破 れ が 非 対称 実 験 で 直 接 検 出 さ れ な く も,間 接 的 に決 め られ る.
そ の 意 味 で,xsお
よ びb→ulν
の 精 密 測 定 はCPの
破 れ の 測 定 と同 様 に 重 要
で あ る.
2.6 ユ ニ タ リー 三 角 形 の 許 容 範 囲
こ れ ま で に 考 察 し た 知 識 を 使 っ て,ユ
ニ タ リー 三 角 形 の 許 容 範 囲 を 評 価 し て
み よ う29,30).ま ず,(2.30a)の│Vub/Vcb│=0.08±0.02は,ρ-η
平 面 で一 つ の 円
を 与 え る.
(2.124) 次 に,(2.108)よ
り,BKの
値(2.96)を
入れて
(2.125) な の で,│ε│は
ρ-η平 面 上 で 双 曲 線 を与 え る こ と に な る.ま
た,(2.109)
(2.126) に よ っ て,η Bd-Bd混
に 対 し て あ る 幅 の 値 を 与 え る. 合(2.121)は,
(2.127) と い う 形 に 書 け る の で,ρ=1,η=0を
中 心 とす る 円 を 与 え る.
し た が っ て,上 図2.8に,こ
記 四 つ の 条 件 か ら,実
れ ま で の 実 験 値 と理 論 最 良 推 定 値 を 使 っ て 許 さ れ る ユ ニ タ リ
テ ィ三 角 形 の 許 容 範 囲(黒
影 部 分)を
限 は あ ま り強 くは な い.あ き く,例
験 誤 差 内 で ρ-η の 許 容 範 囲 が 決 ま る.
え ばBd-Bd混
示 す2).た
だ し,こ
の 解 析 か ら得 られ る 制
く ま で も 目安 と考 え る べ き で あ る.理
合 で は,fB=175±25MeV,│ε│で
論 的誤差が大
は,BK=0.75±0.15
程 度 の 不 定 性 が あ る.
図2.8
小 林-益 川 行 列 とユ ニ タ リテ ィ
図 はCPの 破 れ をKM行 列 で 表 す とき,種 つ け て 囲 ん だ領 域 内 が 許 され る.
2.7 Kの
CP非
々 の 実 験 か ら制 限 され る ρ,ηの 値.影
稀
を
崩 壊
保 存 パ ラ メ ター を決 め る に 適 す る過 程 は,こ
の ほか に い ろい ろ あ る
が,比 較 的 近 未 来 に 検 証 が 期 待 さ れ る過 程 と して,Kの
稀 崩壊 反 応 をあげて
お こ う. a. KL→ CP保
π0ee
存 が 成 立 して い る と き は,CPが
正 のK10は,1フ
通 して π0eeに 崩壊 で きる(γ1崩 壊).CPが
ォ トン 中 間 状 態 を
負 のK20は,2個
の フ ォ トン放 出
を通 して の み π0eeに 崩 壊 で き る の で(γ2崩 壊),振 幅 は相 対 的 に α程 度 小 さ い.CPの
破 れ が あ る と,KLの
崩 壊 で き る の で,CPの
中 に εだ け あ るK10成 分 か ら γ1過 程 を通 して
間 接 的 破 れ に よ る崩 壊 は,CP保
γ2崩 壊 よ り大 き い と期 待 され る.KL→
存 過 程 のK20成
π0γ γの 実 験 値 を取 り入 れ てCP保
分の 存
成 分 を 評 価 し た 結 果 は,分 の 崩 壊 振 幅 は,K+→
岐 比 が10-12よ
π+ee崩
り小 さ い と し て い る31).K10→
壊 と 結 び つ い て お り,
π0ee
の実験 デー
タ と理 論 値 の 比 較 か ら
(2.128) が い え る.K20成
分 が 直 接 的CPの
破 れ に よ り崩 壊 す る分 岐 比 は
(2.129) と評 価 され て い る32)の で,KL→
π0ee崩 壊 か ら直接 のCPの
破 れ効 果 を検 出
で き る可 能 性 が あ る.現 在 の 実 験 値 は
(2.130) で あ る33).
b.K+→
π+νν
この 過 程 に は,い わ ゆ る長 距 離 相 互 作 用 効 果 が な く,図2.9に
表 され る よ う
な 箱 型 の 寄 与 が 主 で あ り,理 論 的 な不 定 性 が 小 さ い と い う特 徴 が あ り,KM 行 列 要 素 に 対 して 独 立 の 実 験 情 報 を 与 え る.計 算 式 は,K+→
π0eνの 式 との
比 を と り理 論 的 不 定 性 を軽 減 し た もの で34),
(2.131a) (2.131b)
(a) 図2.9
(b) K+→
π+νν過 程 に 寄 与 す る グ ラ フ
XlNLとF(xt)は ∼10-10で
ル ー プ 計 算 に 使 う 量 で あ る.崩
あ る .
壊 分 岐 比 の理 論 推 定 値 は
モ ー ドの デ ー タ は,ρ-η
平 面 で,ρ0≒1.4を
中心
と す る 円 を 与 え る. 実 験 的 に は 反 応 例 を 一 事 象 見 つ け た と し て い る35).分 を 与 え る の で,理 論 を す る に は も う1桁 c.K0L→ CPが も,こ
岐 比 を計 算 して み る と
論 予 想 値 と 矛 盾 は し な い が,確
定 的 な議
ほ ど感 度 を上 げ る 必 要 が あ る.
π0νν 保 存 し て い れ ば 存 在 し な い 崩 壊 モ ー ドで あ る.し
の 反 応 を 確 認 で き れ ば,CPの
証 拠 と な る.K0L→
破 れ が⊿S=1の
π0νν崩 壊 振 幅 は,K+→
た が っ て,一
例 で
崩 壊 に 存 在 す る こ との
π+νν 崩 壊 振 幅 と ア イ ソ ス ピ ン
に よ っ て 関 係 づ け ら れ て い る.
(2.132) CPの
間 接 の 破 れ す な わ ち 混 合 効 果 に よ る 分 岐 比 は ∼10-15と
り36),直
見積 もられて お
接 の 破 れ 効 果 に よ る 分 岐 比37)
(2.133) の 方 が 圧 倒 的 に 大 きい の で,CPの るが,困
直 接 の破 れ を検 証 す るの に最 適 の 反 応 で あ
難 な 実 験 で あ るの で理 論 との 比 較 が 可 能 に な る に は,ま だ しば ら く時
間 が か か るで あ ろ う.現 在 の 上 限値 は5.9×10-7で
2.8 B崩
2.8.1 CPの
壊 で のCP非
あ る38).
保存の観測法
レプ トン非 対 称 破 れ は,非
対称
(2.134) を検 出 す る こ と に よ りそ の 存 在 が 検 証 で き る. fを
レ プ トン と す れ ば,(2.75),(2.76)を
参 照 し て,
(2.135) ま た(2.50)と(2.120)か
ら
(2.136) こ れ よ り(2.117)を
参 照 して
(2.137a)39) で,K中
間 子 の 場 合 の ε よ り1桁 は小 さ い と予 想 さ れ る.B中
短 くか つBLとBsを
分 離 す る こ とは ほ とん ど不 可 能 な の で,K中
と違 っ て εBを 直 接 測 定 す る の は 困 難 で あ る.し か しCPの 行 列 に の み あ る場 合,つ は,CP非
間子 の寿 命が
ま り超 弱(super
weak
間 子 の場 合
破 れの 原因が質 量
interaction)理
論 で あ る場 合
保 存 の検 証 に は こ う し た ε効 果 を 直 接 見 られ る 反 応 は 重 要 で あ る.
実験 値
(2.137b)2) は理 論 予 想 値 と矛 盾 しな い.
2.8.2 CPの CPの
直接の破 れ
破 れ がKM行
反 応 に お い てCPが CPTが
列 起 因 で あ る場 合 は,CPの
直 接 の破 れ,す
な わ ち崩 壊
保 存 し な い可 能 性 が あ る の で 実 験 の 選 択 肢 は 大 き く増 す.
保 存 しか つ 終 状 態fを
特 定 した場 合 の 崩 壊 振 幅 は,
(2.138a) (2.138b) と書 け る(Ⅰ,Ⅱ-付
録G19).こ
こ に,iは
異 な る 中 間 状 態 を示 し,φwは
弱い
相 互 作 用 振 幅 の位 相,δsは 終 状 態 粒 子 の 強 い相 互 作 用 に よ る散 乱 の位 相 の ず れ で あ る.CPの 条件
直接 の 破 れ が あ る と き は
で あ る.実 験 検 証 に 必 要 な
(2.139) を満 た す ため に は,干 渉効 果 の存 在 が 必 要 で あ り,こ の た め に は少 な く も2種 類 の 干 渉 振 幅 が 必 要 で あ る.
(2.140) と す れ ば,
(2.141) で あ る.上 記 の 式 か ら わか る よ うに,CPの の 振 幅 の 弱 い 相 互 作 用 の 位 相,散 い.中 性K粒
直 接 の破 れ を見 る た め に は,2種
乱 の位 相 と もに 異 な っ て い な け れ ば な らな
子 の 崩 壊 の場 合 の ππ 終 状 態 に は,I=0,2の2種
り,こ の条 件 を満 た して い た.一 方,K± か 存 在 せ ず,CP非
→ π±π0で は,終 状 態 にI=2状
保 存 効 果 は 見 る こ とが で きな い.Bの
で も,例 え ば,B-→K-ρ0の
類 の振 幅が あ 態し
場 合は荷電 粒子崩壊
よ うに,Wの
交 換 に よ る ト リー 型 振 幅 とペ ン ギ
ン型 振 幅 を と もに も ち,か つ 終 状 態 が2種
類 以 上 の 振 幅 に分 解 で き る と き は,
CP非
保 存効 果 が 原 理 的 に は観 察 可 能 で あ る.し か し,位 相 差(φw1− φw2)を
知 る ため に,少 な くも2個 の未 知 量│D1/D2│と(δs1− δs2)の知 識 が 必 要 で あ り, 一 般 的 に考 え て 分 離 は容 易 で は な い. こ こ で,中 性B粒
子 の と き は 混 合 効 果 に よ り,A(B→f)とA(B→B→
f)の 干 渉 が 生 じ る こ と に注 目す る.特 に終 状 態 のfとfと
してCPの
固有状
態
(2.142) を選 ぶ と,た だ1種 類 の 振 幅 が寄 与 す る場 合 で も弱 い相 互 作 用 の位 相 が 取 り出 せ る こ とを示 そ う40). (2.67a,b)か
ら,終
状 態f,お
よ びfへ
の崩 壊 幅 を計 算 す る と
(2.143a)
(2.143b)
た だ し,
(2.144) で あ り,β,β
は 次 の よ う に 定 義 さ れ る*7).
(2.145) こ こ で,た
だ一 種 の 散 乱 振 幅 が 寄 与 しか つ 終 状 態f,fがCPの
る と しよ う.こ の 条 件 を満 た す と き,ρf,ρfは
固有 状 態 で あ
と も に純 粋 な位 相 で あ り,
(2.146) と 書 き 直 せ る. q/pに
のCP固
つ い て は,(2.136)よ
と が 保 証 さ れ て い る.い で あ る か ら│q/p│=1と の で,そ
り,絶
有 値 で あ る. 対 値 が ほ と ん ど1で
純 粋 な位 相 に近 い こ
ま は 非 対 称 が 十 分 大 き い と い う状 況 を 考 察 し て い る の お い て よ い.す
の 位 相 を-2φMと
な わ ち,q/pも
また純粋 な位相 であ る
書 け ば,(2.50)と(2.110)か
ら
Bdの 場 合 Bsの 場 合
(2.147)
し たが っ て
(2.148) と な り,(2.143)に
入 れれば
(2.149a) (2.149b) し たが っ て 非 対 称 パ ラ メ タ ー は
(2.150) 時 間 変 化 を見 な い 場 合 は,積 分 した 量 の 比 を と り
(2.151) す な わ ち,考 く,最
察 中 の 非 対 称 パ ラ メ タ ー に は,強
大x/(1+x2);(Bdの
場 合 ∼0.47)く
念 の た め に 繰 り 返 す が,(2.147)のq/pの *7) │p/q│≠1が
間 接 な破 れ
,│A/A│≠1が
崩 壊 の 干 渉 に よ る 破 れ と い わ れ る.
い相 互 作 用 に よ る不 定 性 が な
ら い ま で の 値 が 可 能 で あ る. 位 相 はKM行
列 と し て(2.15)
直 接 の 破 れ と い わ れ る の に 対 し,Imβ
≠0は
混合 と
を採 用 し た こ とか ら生 じた 特 殊 事 情 で あ る.q/pの
位 相 は
義 で 吸 収 で き る の で,そ れ 自身 は 観 測 量 で は な い が,ρfを 変 換 で 不 変 で((2.103)の
の 位 相 の再 定
掛 け た もの は位 相
脚 注 を参 照),観 測 可 能 な物 理 量 な の で あ る.
な お,非 対 称 の 時 間 変 化 が 正 弦 関数 で あ る こ と は一 般 的 な議 論 か ら い え る. CP=Tで
あ るか ら,CPの
反 し混合 はCP非
2.8.3
あ り,質
量 行 列 に あ る 効 果(q/p)と
ρfの 位 相 で
崩 壊 振 幅 に あ る 効 果 ρfを 組 み 合 わ せ た も
々 の 反 応 を観 測 す る こ と に よ っ て,ユ
立 に 決 め ら れ る.CPの よ う.こ
列の位相
混 合 を 利 用 し て 調 べ ら れ る 物 理 量 φ は,β=(q/p)・
の で あ る.種
れに
保 存 に は 関 係 し な い の で余 弦 関 数 とな るの で あ る.
崩 壊 モ ー ド とKM行
中 性Bの
破 れ は 時 間 の 奇 関 数 で な け れ ば な らな い.こ
ニ タ リー 三 角 形 の 頂 角 が 独
破 れ を 見 る 反 応 と し て,
の 反 応 を考 え
の 反 応 に 優 勢 に 効 くフ ァ イ ン マ ン 図 を 図2.10(a)に
示 す.
こ の 図 か ら 明 ら か な よ う に 崩 壊 過 程 はb→c遷
移 で あ り,振
を 含 む.し
比 例 す る.KM行
た が っ て,ρfは(VcbVcs*/Vcb*Vcs)に
ル フ ェ ン シ ュ タ イ ン 表 示(2.18)のO(λ3)ま 位 相 を 含 ま な い が,q/pがVtd/Vtd*を
幅 はVcbVcs* 列の ウォ
で の 近 似 を と る 限 り,こ 含 む の で,Bd→J/ψ+Ksに
の ρfは お け る非
対 称 の 中 の 位 相 角 φ は,
(2.152) か ら 決 め ら れ る.こ
の 場 合 の 位 相 φ は,混
φ1,φ2,φ3は 図2.2で
定 義 し た ユ ニ タ リー 三 角 形 の 頂 角 で あ る.
次 に,Bd→
π+π-反 応(図2.10(c))を
遷 移 で,
合 パ ラ メ タ ー(q/p)の
見 て み よ う.こ
位 相 で あ る.
の 過 程 はb→uの
を含 む の で
(2.153) こ の場 合 の位 相 角 φ は 混合 パ ラ メ ター の 位 相 角 φMと 崩 壊 振 幅 の 位 相 角 φwの 両 方 の 和 で あ る.同 様 に
反 応 で のCP非
保存の
位 相 は そ れ ぞ れ,
(2.154)
(a)
(b)
(c)
(d)
図2.10
CPの
破 れ に よ る非 対 称 とKM位
相 を決 め るの に 有 用 な 過 程,右
(e)
側
は左 側 と同 じ崩 壊 モー ドを与 え る ペ ン ギ ン図
(f) (a),(b)
が 測 れ る. (c),(d) が 測 れ る. (e),(f)
(g)
が 測 れ る.
(h) (g),(h)
が測 れ る.
(2.155) とな る.こ の最 後 の過 程 で はCPの CPの
破 れ をKM行
破 れ に よ る 非 対 称 は存 在 し な いが,そ
性 を立 証 す る に は,こ
列 に 求 め た こ とか ら生 じた こ と で あ り,KM行
れは
列 の正 当
の過 程 で の非 対 称 の 欠 如 は他 の過 程 の非 対 称 の 検 出 に劣
らず 重 要 で あ る.表2.2に
これ ら 四つ の 反 応 を ま とめ る.こ れ らの 反 応 で非 対
称 パ ラ メ ター を 決 定 す る こ とが 可 能 な らば,ユ ニ タ リー 三 角 形 の頂 角 をす べ て 表2.2
CPの
破 れ を見 る反 応 例
決 め ら れ るの で,単
にCPの
破 れ の み な らずKM行
列 の 全 容 を知 る こ とが 可
能 で あ る. 雑 音過 程
話 を 混 乱 させ な い た め に,上
の 考 察 で は あ る 特 定 の 振 幅(図
2.10の 左 側 に掲 げ た 崩 壊 の ト リー 図)の み が き く と した.も
ち ろ ん,世
の中
は そ れ ほ ど簡 単 で は な い.上 記 の 崩 壊 過 程 図 に 対 応 して,強 い 相 互 作 用 を含 む 振 幅 が 存 在 す る.そ の うち 最 も簡 単 な も の は ペ ン ギ ン図 で あ り,図2.10の 側 に 掲 げ る.主 過 程 の ト リー 型 崩 壊 振 幅 をAT,ペ
右
ン ギ ン 図 の 振 幅 をAPと
し,そ れ ぞれ の 位 相 を αT,αPとす る と,非 対 称Aは,
(2.156) 程 度 の 変 更 を 受 け る.ペ 場 合 は 運 動 量 遷 移 がmb程
ン ギ ン 図 の 中 間 状 態 に は,u,c,tが 度 で あ り,KM行
き く が,u,cの
列 以外の力学過程 に
(2.157) に 比 例 す る ほ ぼ 同 じ だ け の 寄 与 を 与 え る41).ユ
ニ タ リテ ィ に よ り
(2.158) で あ るか ら,u,c中 な わ ちAPの
間 状 態 の 振 幅 和 はt中 間 状 態 振 幅 と 同 じ位 相 を もつ.す
位 相 はtク
b→scc崩
b→duu崩
で あ り,b→sccの
ォー クで 決 ま る こ とに な る.
壊
の 場 合 は,
壊
の 場 合 は,
場 合 は,上
に 示 す よ うに ト リー 崩 壊 図 とペ ン ギ ン 図 の位
相 が 同 じな の で,影 響 は小 さ く非 対 称 の 変 更 量 は小 さ い と期 待 され る.し か し,b→duuの
場 合 は,位 相 が 異 な るの で,ペ ン ギ ン 図 過 程 の ト リー 崩 壊 過
程 に対 す る相 対 的 大 き さ に よ っ て は,非 対 称 が 大 き く変 更 さ れ る 可 能 性 が あ る. ペ ン ギ ン図 の 大 き さ は,グ ル ー オ ン 交 換 に よ り(2.157)の
抑 圧 因子 がか か
るの で,単 純 に 考 え れ ば ト リー 崩 壊 図 に 比 べ て 小 さ い と考 え ら れ るが,裸
の
ク ォ ー ク 図 と実 際 に 観 測 さ れ る メ ソ ン 過 程 の 関 係 は 正 確 に 評 価 す る こ と が む ず か し い.モ
デ ル に よ っ て は,
と見 積 も ら れ る 場 合 が あ る.実
計 算 に よ れ ば, が,Bd→
で は 非 対 称 量 の 変 更 は 小 さ く数%以
π+π-は,最
高20%の
下 で あ る
変 更 を 受 け る と さ れ て い る42).た
場 合 で も ア イ ソ ス ピ ン 解 析 を 行 う こ と に よ り,す
際 の
だ し,こ
の
な わ ち,
の6種 の 崩 壊 率 を 測 定 比 較 す る こ と に よ り,ペ
ンギ ン
図 を 分 離 す る こ と が で き る43).
2.9
2.9.1 xsの a. 2体
測
非 対 称Bフ
ァ ク ト リー
定
の 相 関
こ れ ま で は 論 理 の 筋 道 を 明 らか に す る た め,親 る と し て話 を進 め て きた.し 産 さ れ,B0か
ら もB0か
のB0,B0状
態 はわか って い
か し実 際 の 実 験 条 件 で は,B0とB0は
と もに 生
ら も崩 壊 可 能 な モー ドの 非 対 称 を測 定 す る と きは 親
の 状 態 を同 定 す る必 要 が あ る.レ プ トン崩 壊 モ ー ドは崩 壊 状 態 を同 定 す る だ け で親 の 区 別 も同時 に 自動 的 に で き るが,崩 壊 状 態 と してCPの
固有 状 態 を観 測
す る と き は,親 の 同 定 が 欠 か せ な い 。 した が っ て,BBの
対 生 成 の 一 方 をB
ま た はBと
突 型 加 速 器 で実 験
同 定 した 上 で他 方 の 崩 壊 を測 定 す る.e+e-衝
を 行 う と き は,Υ(4S)(ス (ス ピ ン0-と1-の
ピ ン0の
中 間 子B0B0がL=1の
中 間 子BB*がL=1の
光 子 状 態 を 経 由 す る の で,C=P=-,CP=+状 状 態 は,軌 道 角 運 動 量Lが
Υ(5S)
状 態)を 通 す と,軌 道 角 運 動 量 状 態
を確 定 で き るの で ク リー ン な実 験 が 可 能 と な る.e+e-反
子B0B0の
状 態)や
応 で は ほ とん どが1
態 に あ る.し た が っ て2粒 偶 ま た は 奇 に よ って,
(2.159a) そ こ で,粒
子1(2)が
と す る.た
だ し
い ま,時
刻t1に,粒
時 刻t1(t2)に
量 子 状 態k1(k2)に
あ る 波動 関 数 を
(2.159b)
れ は
は(2.67)で 子1が
与 え ら れ て い る.
量 子 状 態k1でB0と
し て 崩 壊 し た と す る と(こ
の よ う な 終 状 態 を 選 ぶ こ と,例
え ばl+が
観
測 さ れ る こ と を 意 味 す る.こ
の と き 終 状 態 がgで
あ れ ば,B0と
し て観 測 さ れ
た こ と に な る).
(2.160) さ らに 第2の 粒 子 が,時 刻t2に 量 子 状 態k2でB0と
して 崩壊 した とす る と
(2.161a) 第2の
粒 子 が,時
刻t2に
量 子 状 態k2でB0と
し て 崩 壊 し た とす る と
(2.161b) 同様 に
(2.161c) (2.161d) B0B0状
態 を 終 状 態 の レ プ ト ン で 同 定 す る こ と に し て,g=l+νh,g=l-νhと
書 けば
(2.162) 時 間 変 化 を見 な い とき は,積 分 をす る必 要 が あ るの で,
(2.163a) (2.163b) を考 慮 す る と,
L=偶
数
L=奇
数
(2.164)
と な り,L=奇
数 の 場 合 の 逆 符 号 レ プ ト ン 数 比 は2体
の 式(2.76)と
一 致 す る.r(4S)はL=1で
あ る か ら,1体
使 っ て よ か っ た 理 由 は こ こ に あ る.こ ボ ー ス 統 計 か ら 導 か れ る.L=奇 らB0B0,
B0B0状
の 相 関 を考 慮 し な い と き
の 一 致 は 偶 然 で は な く,B中
数 で あ れ ば2体
態 は 存 在 し え な い.し
た が っ て,時
し か あ り え な い.し
刻t1に
子2はB0で
壊 す る 確 率 は1粒
子 状 態 のB0→B0の
確 率 と 同 じ で あ る.
な お こ れ は2粒
子 を 十 分 離 れ た2点
で 独 立 にB0ま
関 が 存 在 す る は ず が な い(cΔt<Δxな
ア イ ン シ ュ タ イ ン-ロ ー ゼ ン-ポ
間 子 の
の波 動 関 数 は 反 対 称 で あ るか
認 定 さ れ る と,粒
に,相
の 式 を その ま ま
粒 子1が,B0と
た が っ て こ の 後 にB0に
た はB0と
崩
同 定 した と き
ら ば 因 果 律 が 効 か な い)と
い う
ドル ス キ ー パ ラ ド ッ ク ス に 対 す る 一 つ の 反 例 と
な っ て い る. b. 実 験 条 件 さ て 前(§2.4.4)に
述 べ た よ う に
る 方 法 が 適 用 で き な い.xs∼4∼20と 振 動 の 混 合 定 数xsを
間 差│t1-t2│(実
崩 壊 時 刻t1とB0の
応 でB0B0を
決 め
時 間 変 化 を 見 てxsを 生 成 す る 場 合,衝
崩 壊 時 刻t2を
際 に は 二 つ の 崩 壊 点 間 の 距 離)の
が っ て(2.162)をt1+t2に
を 測 っ てxを
予 想 さ れ て い る わ け で あ る か らBs-Bs
決 め る に は 実 際 に(2.162)の
て や ら な け れ ば な ら な い.e+e-反 ら な い の で,B0の
の と き はr値
決 め
突 点 は わか
独 立 に は 決 め ら れ ず,時
み が 測 定 可 能 で あ る.し
た
つ い て は 積 分 す る と,dN(l±l±)は, L=偶
数
L=奇
数
(2.165a)
(2.165b)
の よ うに時 間 変 化 す る.た だ し
(2.166) を 使 っ た.測
定 時 間 の 分 解 能 σtが,σt≪(τ/x)を
満 た し て い れ ば,時
間変 化
に よ る 振 動 が 測 定 で き る.対 →r(4S)か
称e+e-衝
突 型 加 速 器(Ee+=Ee-)に
よ るe+e-
ら の 平 均 崩 壊 長lは
(2.167) と非 常 に 短 い の で,B中 る 前 に 崩 壊 す る.し
間 子 が 発 生 点(e+e-の
た が っ て,崩
壊 点 は,崩
外 で 測 定 し外 挿 し な け れ ば な ら ず,十
衝 突 点)か
壊 生 成 物 の 軌 跡 を ビー ム パ イプ の
分 な 分 解 能 を得 る の が 困 難 で あ る.そ
で 非 対 称e+e-衝
突 型 加 速 器(Ee+≫
を 使 え ば,BBは
相 当 の 速 度 を も っ て 生 成 さ れ る か らロー
き く な り,≒380μmと
な る.崩
す る と,xs=∼8-10く に,xs=10と
ら ビー ム の 外 へ 出
ま た は≪Ee-,例
こ
え ば2.5GeV×12GeV) レ ン ツ 因 子 βγが 大
壊 点 再 現 の 空 間 分 解 能 と し て40μmを
想定
ら い ま で は 測 定 可 能 で あ ろ う と 予 想 さ れ る.図2.11
し た と き,予
想 誤 差 を 含 む 実 験 条 件 を 入 れ,モ
ン テ カル ロシ
ミ ュ レ ー シ ョ ン し た と き ど の よ う に 見 え る か を示 す44).
2.9.2 CPの
CP非
対称 の測定
破 れ を ハ ドロ ン のCP固
を 考 え よ う.粒
子1が
時 刻t1に
に 崩 壊 し た と す る と,(2.160)を
有 状 態fへ 状 態gに
の 崩 壊 の 非 対 称 か ら測 定 す る場 合
崩 壊 し てB0と
同 定 さ れ,時
刻t2にf
参 照 して
(2.168a) こ こ で,± 粒 子1が
の 符 号 は,軌
時 刻t1にB0と
道 角 運 動 量L=even(+), し て 同 定 さ れ,時
刻t2にfに
odd(-)に
対 応 す る.ま
た
崩 壊 し た と す る と,
(2.168b) こ れ か ら,(2.161)を
参 照 し,
とお い て
図2.11 xs振
動 モ ン テ カ ル ロ シ
ミュ レー シ ョ
ン44) 非 対 称e+e-衝
r(4S), r(5S)の
r(4S)はL=1状
生 成 断 面 積45)
態,B0B0,
B+B-生
成
が 主 反 応 で あ る.
突 型 加 速 器(2.5GeV×12GeV),
∫Ldt=1040cm-2,衝突 る.混
図2.12
点分解能40μmを 仮 定 す
合 パ ラ メ タ ーxs=10の
と き の シ ミュ レ ー
シ ョ ン.
(2.169) (2.170) (2.171) こ の 式 を 眺 め る とL=奇
数 の 場 合 は 非 対 称 パ ラ メ ター はΔt=t1-t2の
で あ る こ とが わ か る.し た が っ てt1とt2を
対 称 的 に 取 り扱 う場 合,特
で積 分 して しま う場 合 は 非 対 称 は相 殺 さ れ て0と のB0B0はL=1状
態 に あ るの で,CP非
対 称 と し,B0とB0の
ら
対 称 は,対 称 衝 突 型 加 速 器 を使 う 限 数 の 状 態 を含 む と こ ろ
り上 に エ ネ ル ギー を設 定 す るか(こ の 場 合BB生
小 さ い の で,計 数 率 で 損 をす る.図2.12参
に時 間
な る.す な わ ちr(4S)か
り時 間 積 分 さ れ て し ま うの で 消 え る.こ の た めL=偶 例 え ばr(4S)よ
奇 関数
照45)),e+とe-の
飛 翔 中 に崩 壊 を起 こ させ,崩
成断 面積 が
エ ネ ル ギ ー を非
壊 時 刻 の差Δtを 測 定 す る
こ とに よ り非 対 称 を測 定 す る必 要 性 が で て く る.後 者 の 場 合 は│Δt│の み が 測 定 可 能 で あ る の で,(2.169)(下
側 の 符 号)をt1+t2に
つ いて 積 分 す れ ば
(2.172) 図2.13に
非 対 称 衝 突 型 加 速 器 で,B0B0を
測 定 した と き の 反 応 事 象 が ど う見
え るか の 一 例 を示 す. な お 対 称 衝 突 型 加 速 器 でCPの L=偶
数(あ
る い は い ろ い ろ なLが
非 対 称 が 観 測 で きな い とい うわ け で は な い.
あ る.(2.169)(上
混 在 して い る)の と きは 時 間積 分 が 可 能 で
側 の 符 号)を 積 分 す る と
(2.173) つ ま り,非 対 称 の 大 き さ は(2x/(1+x2)2)分 因 子(dilution
factor)と
だ け 小 さ くな る.こ の 項 を薄 め の
呼 ぶ.対 称 衝 突 型 加 速 器 の と き は,生 成 断 面 積 が小
さ くな り,か つ 薄 め の 因 子 が か か る分 だ け 実 験 が 困 難 に な る とい うこ とで あ っ て,そ れ に 見合 うだ け加 速 器 の 性 能 が 上 回 れ ば 原 理 的 に は 実 験 可 能 で あ る. CPの
破 れ の 測 定 はBs系
で はBd系
に 比 べ て さ ら に む ず か しい で あ ろ う と
想 定 され る.そ の 理 由 は (1) Bsの 生 成 数 はBdに
比べ て1/2∼1/3
(2) 混 合 効 果 は最 高 度 に起 きて お り,振 動 が 激 し くてΔtの 測 定 が 困難 (3) 非 対 称 が 大 きい と きは 分 岐 比 が 小 さ く,分 岐 比 が 大 き い と き は 非 対 称 が小 さ い. した が っ て,CP非 こ こ で,CPの
保 存 はBd系
で観 測 す るの が 容 易 で あ ろ う.
非 対 称 を有 意 に 観 測 し う るた め に加 速 器 に 要 求 さ れ る輝 度 を
計 算 し て み よ う.例 と して 採 用 す る反 応 はB→J/ψ+Ksと
し,Bは
レプ ト
ン も し くはK± で 同 定 す る もの とす る.非 対 称 は ポア ソ ン 分 布 をす る の で,非 対 称 度 の 実 効 値 をAと
す る と き,統 計 有 意 度(中 央 値 の 差ΔSの 統 計 誤 差 σ
に 対 す る比ΔS/σ の こ と)をnに
す るた め の 事 象数 は
こ の と き加 速 器 に 必要 な積 分 輝 度 ∫Ldtは
次 式 で 与 え られる46).
(2.174)
図2.13
非 対 称 衝 突 型 加 速 器 で は(t1-t2)ま が 測 れ る.図
でB0はK-ま
た は ヴ ァー テ ッ ク ス 間 の 距 離
は
た はl-で
同 定 し相 手 のB0崩
壊 を見 る.
ここで n:統
計 有 意 数=こ
こ で は3と
A:実
効 的 非 対 称 の大 き さ
設定
σ:e+e-→r(4S)の
断 面 積=1.15nb=1.15×10-33cm2
f:r(4S)→B0B0の
分 岐 比=0.5
B:上
記 のf以
降 の す べ て の崩 壊 分 岐 比 の 積
∼4×10-4 =BR(B0→
∼0 .14
ψKs)BR(ψ
→l+l-)BR(Ks→
εr:B1の
再 現 効 率 ∼0.65=ε(ψ)・ ε(Ks)
εt:B2の
識 別 効 率(l±
w:識別 d:非
誤認率
∼0.69 π+π-)
ま た はK±)∼0.48 ∼0.07
対 称 の 薄 め 因 子*8)∼xd/(1+xd2)=0.47
sin2φ:物
理 的 非 対 称 の 大 き さ ∼0.1-0.6
*8) 測 定 時 間分 解 能 の幅 だ け は時 間積 分 しなけ れ ば なら な い こ とに よる .
こ れ よ り,n=3と
し て,
(2.175) 1年 に107秒(=115日)運 を 実 現 で き れ ば,1年 現 在,日
ア メ リカ の
ァ ク ト リー 加 速 器 建 設 が 進 行 中 で あ り,BELLE (SLAC)の
BELLE測
以 内 の 実 験 で 非 対 称 が 観 測 で き る こ と に な る.
本 の 高 エ ネ ル ギ ー 加 速 器 科 学 研 究 機 構(KEK)と
SLACで,B-フ BABAR
転 で き る も の とす る と輝 度 と し て は,1034/cm2/sec
(KEK)と
実 験 グ ル ー プ が 実 験 準 備 を 進 め て い る.図2.14に
定 器 の 概 要 を 示 す.1999年
に は 稼 働 予 定 で あ る の で,今
世 紀 中に
は 何 ら か の 結 果 が で る も の と期 待 さ れ る*9).
図2.14 8GeVの
電 子 ビー ム と3.5GeVの
KEKのBELLE検
B中 間 子 対 を つ く りそ の 崩壊 生 成 物 を検 出す る.崩 磁 場 の 強 さ は1テ
ス ラ,CDCの
の 性 能 を もつ.SVD:シ
出器(1/2切
断面)
陽 電 子 ビー ムが 衝 突 しe-+e+→r(4S)→B0+B0反 壊 点 分 布 をSVDで
位 置 分 解 能 は100μm,
リ コ ン ヴ ァー テ ッ ク ス検 出器,CDC:中
(PTの
この 章 で は,CPの
*9) BELLE
, BABAR両
グ ル ー プ は,2000年
密 デ ー タ を 提 供 し て い る.特 当 性 を完 全 に 裏 付 け た.
よびCPの
単 位 はGeV/c) エ ロジェ
ウ化 セ シ ウ ム カ ロ リ メ ター,
諸 問 題15)
破 れ を標 準 理 論 の 範 囲 で 議 論 し たが,標
で 理 解 し よ う とす る試 み,お
定 精 度80μm,
央 軌 跡 検 出器,ACC:ア
ル チ ェ レ ン コ フ カ ウ ン ター,TOF:飛 行 時 間 測 定 カ ウ ン ター,CsI:ヨ KLM:KL中 間 子/ミ ュ ー オ ン検 出 器.
2.10 CPの
応 に よ り中 性
測 定 す る.Z測
破 れ を巡 る話 題 を,い
準 理 論 の範 囲 外 くつ か 簡 単 に 紹
夏 に 最 初 の デ ー タ を 発 表 し て 以 来,数
に,sinφ1=0.736±0.04947)の
値 は,小
々 の精
林-益 川 モ デ ル の 正
介 して お こ う. a. 超 弱相 互 作 用 K崩
壊 で のCP非
保 存 効 果 は,ΔS=2の
論 で あ るの で,第1近
似 で は,ΔS=1の
新 相 互 作 用 が 原 因 で あ る とす る理 崩 壊 は存 在 せ ず,
(2.176) とな る.最 近 の 実 験 で
が 確 立 した の で16)少 な く もKメ
ソンに関
して は 超 弱 理 論 は否 定 さ れ た とに な る. B崩
壊 に 関 して も,ΔB=2の
超 弱 相 互 作 用 が 原 因 とす る と,CPの
混 合 パ ラ メ タ ー εBに の み 存 在 す る.こ の 場 合,B0-B0混
破 れは
合 を通 し て のCPの
固有 状 態 へ の 崩 壊 非 対 称 パ ラ メ ター は,
(2.177) とな る.負 の 符 号 は,そ れ ぞ れ の 終 状 態 のCP固
有 値 が 逆 で あ る こ と に よ る.
標 準 理 論 で は,こ の 条 件 は η=(1-ρ)[ρ/(2-ρ)]1/2に よ っ て満 た す こ とが で き る の で,実 験 検 証 の際 の 誤 差 を考 慮 す る と,ρ-η 平 面 で,標
準理 論 と超 弱理 論
と区別 で き な い領 域 が 存 在 す る48). b. 複 数 の ヒ ッグ ス 標 準 理 論 で の ヒ ッ グ ス場 に は,一 つ の 二 重 項 が 存 在 す るの み で あ る.超 対 称 性 理 論(第5章)や
ア ク シ オ ン の 存 在(第6章)に
は,2個
の ヒ ッグ ス二 重 項
を必 要 とす る.ヒ ッ グ ス場 の 真 空 期 待 値 は複 素 数 で あ るの で,も 重 項 が,2個
存在 す れ ばCP非
し ヒ ッ グ ス二
保 存 効 果 が 生 じ る.た だ し,こ の 理 論 に 基 づ い
た 計 算 で は,中 性 子 の 電 気 双 極 子 の 値 が大 き くな りす ぎ,実 験 値 と矛 盾 す る よ うに 見 え るの で,現 時 点 で は あ ま り真 剣 に は 取 り上 げ られ て い な い が,将
来の
可 能 性 と して 残 る49). c. 左 右 対 称 モ デ ル 標 準 理 論 で の 電 弱 相 互 作 用 の ゲ ー ジ群 はSU(2)L SU(2)L
SU(2)R
U(1)で
あ る が,こ
U(1)に 拡 張 す る試 み が あ る50).こ の場 合,右
巻 きのWボ
ソ ンが 導 入 さ れ る.自 発 的 対 称 の破 れ に よ り,現 実 の 世 界 で は,SU(2)L対 の み 実 現 され て い る と考 え るの で あ る.そ の た め に は,WRの
れを
称
質 量 は十 分 重
く,既 知 の 粒 子 へ の 結 合 は 小 さ い と しな け れ ば な ら な い.左 右 対 称 モ デ ル で は,右 巻 き ク ォー ク も荷 電 カ レ ン ト反 応 に 関 与 して く る の でKM行
列 へ の制
限 が ゆ る くな り,ク ォ ー ク2世 代 でCPの CPの
破 れへ の 寄 与 は,例
破 れ を 引 き 起 こ す こ とが で き る.
えば 箱 型 図 の 中 のWLの
代 わ りにWRが
入 っ た状 態
を考 え る こ とが で き る.実 験 値 と矛 盾 しな い とい う条 件 をつ け る と,WRの 量 は 数TeV以
質
上 で な け れ ば な らな い.
d. 強 い相 互作 用 のCPの
破れの問題
通 常 は 無 視 す る が,QCDラ
グ ラ ン ジ ア ンの 中 に,次 式 で表 され る よ う な グ
ル ー オ ン 自 己相 互 作 用 項 が 存 在 し て は な らな い とい う理 由 は な い.
(2.178) (2.179) こ の 項 は 全 微 分 の 形 を し て い る た め に 摂 動 論 で は 寄 与 し な い が,非 (θ-真 空)に
よ っ て,有
限 な 値 を 生 じ る こ と が 示 さ れ て い る51).θ0はQCDに
お け る 真 空 を 記 述 す る 量 で あ り,MU, ラ ン ジ ア ン がP,
Tお
よ びCPを
性 子 の 電 気 双 極 子 の 値 が0で た め に は,
MDは
質 量 行 列 で あ る.問
破 る こ と で あ り,こ
た が っ て,理
し て は い け な い と考 え る の が 妥 当 で あ ろ う.こ の 問 題 は,第6章
題 は この ラ グ
の 結 果 と し て,例
な く な る(dn∼10-16θecm).実
で な け れ ば な ら な い.し
題 で あ る.こ
摂動効 果
れ が,強
えば 中
験 値 と矛 盾 し な い 論 的 に こ の項 は 存 在 いCPの
破 れ の52)問
で 詳 し く議 論 す る.
e. 宇 宙 の バ リ オ ン 数 わ れ わ れ の 住 む 宇 宙 に お け る物 質 量 と 反 物 質 量 は 等 し く な い.ビ
ッ グバ ン状
態 か らバ リ オ ン 数 と 反 バ リ オ ン 数 の 非 平 衡 を 生 み 出 す た め の 必 須 条 件 と し て, (1) CP非 と い う3条
保 存,(2) バ リ オ ン数 非 保 存,(3) 件 が あ げ ら れ て い る53).つ
在 理 由 解 明 に 関 わ っ て い る が,こ
宇 宙 が 熱 的 非 平衡 状 態 を経 由 す る
ま り,CPの
の 問 題 は 第8章
解 明 は,わ
「宇 宙 論 」 で ふ れ る こ と に す
る.
参 考 文 献
1) M.Kobayashi
and T.Maskawa:Prog.Theor.Phys.,49(1973)652
2) Particle Data Group:Phys.Rev.,D50(1994);D54(1996);EPJ,3(1998) 3) L.Wolfenstein:Phys.Rev.Lett.,51(1984)1945
れ わ れ 自身 の 存
4) G.Altarelli
and
P.Franzini:Z.Phys.,C37(1988)271
S.Stone:"Semi-Leptonic Stone,World V.Luth:Talk 5)
Decays;Experiments"in
the
book"B
Decays",ed.S.
Scientific,Singapore,1991 Int.Conf.on
例 え ば,F.Gilman
Lepton
and
and
Photon,Ithaca,NY,USA(1993)
Y.Nir:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,40(1990)213-238
A.J.Buras,M.Jamin
and
P.Weisz:Nucl.Phys.,B347(1990)491
M.Neubert:Phys.Rev.,D51(1995)5101 6)
A.Sirlin:Phys.Rev.,D35(1987)3423
7)
H.Leutwyler
8)
J.F.Donoghue
9)
CDHS;H.Abramowicz
and et
C.Foudas
et
et
et
A.O.Bazarko
J.Raab 11)
et
J.C.Anjos
et et
M.Bauer
al.:Phys.Rev.Lett.,70(1993)134
al.:Z.Phys.,C65(1995)189
al.:Phys.Rev.Lett.,62(1989)1587
al.:Phys.Rev.,D37(1988)391 et
al.:Z.Phys.,C29(1985)637
B.Grinstein 12)
al.:Z.Phys.,C15(1982)19
al.:Phys.Rev.Lett.,64(1990)1207
S.A.Rabinowitz
10)
M.Ross:Z.Phys.,C25(1984)91 al.:Phys.Rev.,D35(1987)934
et al.:Phys.Rev.Lett.,56(1986)298;Phys.Rev.,D39(1989)799
CLEO;R.Fulton
et
G.Crawford
et
al.:Phys.Rev.Lett.,64(1990)16
al.:EPS
Conf.,Marseille,France,July,1993,Conf.93-30
ARGUS;H.Albrecht
et al.:Phys.Lett.,B234(1990)409;Z.Phys.,C57(1993)533;
Phys.Lett.,B275(1992)195 13) CLEO;I.P.J.Shipsey:Proc.Les "Results and Perspectives
in
Rencontres Particle Physics"
de
Physique
,La
de
la
Vallee
Thuile,Italy,March
d'Aoste, 3-9,1991,
PU-91-654 ARGUS;Phys.Lett.,B255(1991)297 14)
H.Albrecht
15)
C.Jarlskog:"CP
et
al.:Phys.Lett.,B229(1989)175 Violation",Advanced
Physics,Vol.3,ed.by 16)
T.Yamanaka:Talk -31
Series
C.Jarlskog,World at
54th
Annual
on
Directions
in
High
Energy
Scientific,p.3 Meeting
of
Japan
Physical
Society,March
28
,1999
17) I.I.Bigi
and
V.A.Khoze
in 15),p.75
18)
ARGUS;H.Albrecht
19)
OPAL;K,Ackerstaff
20)
L.Wolfenstein:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,36(1986)137
CLEO;M.Artuso
et al.:Phys.Lett.,B192(1987)245 et
al.:Phys.Rev.Lett.,63(1989)2233 et
al.:Z.Phys.,C76(1997)401,417
C.Sachradja:Heavy
Flavor
Interactions,July
1997,Hamburg,Germany
21)
E691;L.Louis:Phys.Rev.Lett.,56(1986)1027
22)
J.S.Hagelin:Nucl.Phys.,B193(1981)123
S.McHugh:Proc.ⅩⅩⅣ
L.L.Chau:Phys.Rep.,95(1983)1
Physics,ⅩⅧ
Int.Conf.High
Int.Symp.on
Energy
Lepton
Conf.,Heidelberg,1989
and
Photon
23)
T.Inami
24)
F.Gilman
and
C.S.Lim:Prog.Theor.Phys.,65(1981)297;65(1982)1772
25)
P.J.Franzini:Phys.Rep.,173(1989)1
26)
M.K.Gaillard
27)
A.Buras
28)
A.J.Buras
29)
C.S.Kim
and
M.Wise:Phys.Rev.,D27(1983)1128
and and
B.W.Lee:Phys.Rev.,D10(1974)897
J.-M.Gerard:Phys.Lett.,B203(1988)272
K.R.Schubert:Prog.Part.Nucl.Phys.,21(1988)3 et
al.:Nucl.Phys.,B245(1984)369;B347(1990)491
et
al.:Phys.Rev.,D42(1990)96
P.Langacker:UPR-0468T,Talk Sci.and
at
Symp.on
TeV
Phys.,at
China
Center
of
Ad.
Tech.,May,1990A
30) I.A.Sanda:Task
Force
Report
on
Asymmetric
B-Factory
at KEK,Feb.28,1990,p.
86 31)
A.Pich:CERN-TH High
32)
Physics
B.Winstein
and
A.Buras 33)
7114/93,CP
Energy
et
L.Littenberg
J.Ellis
at
ICTP
Summer
School
in
1993
L.Wolfenstein:Rev.Mod.Phys.,65(1993)1113
and
C.Valencia:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,43(1993)
et al.:Phys.Rev.Lett.,71(1993)3914 and
J.S.Hagelin:Phys.Lett.,B192(1987)201
J.Rosner:The
Cabbibo-Kobayashi-Maskawa
decays",World 35)
Violation,Lecture
Cosmology,ICTP,Trieste,Italy,June
al.:Nucl.Phys.,B423(1994)349
D.H.Harris 34)
and
BNL-E787;M.S.Atiya S.Adler
et
et
L.Littenberg:Phys.Rev.,D39(1989)3322
37)
A.J.Buras:Phys.Lett.,B333(1994)476
38)
K.Hanagaki:Ph.D.Thesis,O'saka
39)
Y.Azimov
et
A.Buras
which
appeared
in"B
et and
al.:Phys.Rev.Lett.,64(1990)21
al.:Phys.Rev.Lett.,79(1997)2204
36)
40) I.I.Bigi
Matrix
Scientific,Singapore,1991,ed.S.Stone
Univ.,August,1998
al.:Yad.Fiz.,45(1987)1412
al.:Nucl.Phys.,B238(1984)529 A.Sanda:Nucl.Phys.,B193(1981)85;B281(1987)41
41)
D.London
and
42)
M.Gronau:Phys.Rev.Lett.,63(1989)1451
R.D.Peccei:Phys.Lett.,B223(1989)257
43)
M.Gronau
44)
T.Kamitani:Task
B.Grinstein:Phys.Lett.,B229(1989)280 and
D.London:Phys.Rev.Lett.,65(1990)3381 Force
Report
on
Asymmetric
B-Factory
at
KEK,Feb.28,1990,
p.145 45)
CLEO;D.Besson CUSB;K.Han
46)
et al.:Phys.Rev.Lett.,54(1985)381;67(1991)1698 et
H.Ozaki:Task
al.:Phys.Rev.Lett.,55(1985)36
Force
Report
on
Asymmetric
B-Factory
at
KEK,Feb
28,1990,p.
185 47)
T.Browder:ⅩⅩⅠ High
48)
Energies,August
International
Symposium
11-16,2003,Fermilab
B.Winstein:Phys.Rev.Lett.,68(1992)1271
on
Lepton
and
Photon
Interactions
at
49) I.I.Bigi
and
in"CP 50)
A.T.Sanda:On
Violation"文
R.N.Mohapatra:CP
Spontaneou
CP
Violation
Triggered
by
Scalar
Bosons,
献15),p.362 Violation
and
Left-Right
Symmetry,in"CP
Violation"文
献
15),p.384 51)
G.'t
52)
R.D.Peccei:"The
Hooft:Phys.Rev.Lett.,37(1976)8;Phys.Rev.,D14(1976)3432
53)
A.D.Sakharov:Pisma Lett.,5(1967)24
Strong
CP
Problem"in
Zh.Exp.Teor
CP
Violation,文
Fiz.,5(1967)32,English
献15),p.503 Translation
JETP
3 ヒ
ヒ ッ グ ス は,対 GWS理
ッ
グ
ス
称 の 自発 的 破 れ を 引 き起 こ す 機 構 の 鍵 を握 る粒 子 と し て,
論 の 要 をな す 粒 子 で あ る.し か し,対 称 性 を破 る 力 学 的 原 因 が 不 明 な
の で,GWS理
論 の理 論 と して の 弱 点 が 集 中 して い る と こ ろ で も あ る.ゲ ー ジ
セ ク ター 側 は,ヒ
ッ グ ス の役 割 は質 量 を付 加 す る だ け の こ とで,質
えば 後 は 関 知 しな い とい う態 度 を とっ て い る の で,ヒ は ゲ ー ジセ ク ター か らは得 られ な い.ヒ
量 さえ も ら
ッ グ スに 対 す る手 が か り
ッグ ス粒 子 の質 量 を決 め る 手 が か りは
き わめ て 薄 弱 で あ る.ま た フ ェル ミオ ン の質 量 を決 め るの に,粒 子 の数 だ け パ ラ メ ター(結 合 定 数)が 必 要 とい うの は,統 一 理 論 と し て は は な は だ 不 満 で あ る.逆 に い う と,現 在 す べ て の 実 験 事 実 を 矛 盾 な く説 明 して,欠 点 の な い よ う に 見 え る標 準 理 論 に,綻
び が あ る とす れ ば そ れ は ヒ ッ グス セ クター で見 つ か る
こ とは ほ ぼ 確 実 で あ る と思 わ れ る.そ れ ゆ え に こ そ ヒ ッ グ ス粒 子 を発 見 し ヒ ッ グ ス機 構 の 仕 組 み を解 明す る こ とが 肝 要 で あ る. こ の 章 で は ヒ ッ グ ス粒 子 の 性 質,質 量 の 許 容 範 囲,発
見 法1),そ して ヒ ッ グ
ス 粒 子 を発 見 で き なか っ た場 合 の 戦 略 を議 論 す る.ま た,超 対 称 ヒ ッ グス の 可 能 性 に つ い て もふ れ る.
3.1 ヒ ッ グ ス 粒 子 の 相 互 作 用
3.1.1 ラ グ ラ ンジ ア ン GWS理
論 の ラ グ ラ ン ジ ア ンか ら,ヒ ッ グ ス粒 子 の 関 わ る と こ ろ を抜 き出 し
て 書 き下 ろす.共
変微分 を
(3.1) と し て,
(3.2) (3.3a) (3.3b) (3.3c) (3.3d) と な る.こ の 式 か ら わか る よ うに ヒ ッ グ ス粒 子 の結 合 の 強 さ は 結合 す る相 手 の 質 量 に 比 例 す る.ヒ グ ス の 質 量(の
ッ グ ス 粒 子 の 自己 相 互 作 用 の 強 さ を表 す 量 λ も また ヒ ッ
自乗)に 比 例 す る.λ は 未 知 の パ ラ メ ター で あ り,し たが っ て
ヒ ッ グ ス粒 子 の 質 量 も未 知 で あ る.ヒ ッ グ ス粒 子 の相 互 作 用 に 関 す る フ ァ イ ン マ ン 規 則 を図3.1に
示 す.
3.1.2
ー
a.
崩 壊
モ
ド
フ ェ ル ミ オ ンヘ の 崩 壊
ラ グ ラ ン ジ ア ン が 与 え ら れ て い る か ら,2個
の フ ェ ル ミ オ ンヘ 崩 壊 す る 行 列
要 素 が 書 き 下 ろ せ る.
(3.4) これ か ら崩 壊 幅 は容 易 に 計 算 で き て
(a)
(c)
(b)
(e)
(d)
図3.1
ヒ ッ グ ス相 互 作 用 の フ ァイ ン マ
ン 則.gW=e/sin
θW,gZ=gW/cosθW=e/ sinθWcosθW (a) は フ ェ ル ミ オ ン,(b), (c)はW,(d),(e)はZと の 相 互 作 用 を 表 し,(e), (f)は
(f)
(e)
自 己 相 互 作 用 で あ
る.
(3.5) レ プ ト ン に 対 し て はNc=1,ク さ が 質 量 に 比 例 す る た め,ヒ
ォ ー ク に 対 し てはNc=3で
あ る.結
合 の大 き
ッグ ス粒 子 の フ ェ ル ミオ ン崩 壊 は エ ネ ル ギー 的 に
許 さ れ る 範 囲 で 最 も 大 き な 質 量 を も つ フ ェ ル ミオ ン 対 へ 崩 壊 す る モ ー ドが 優 勢 で あ る.す
な わ ちmH<2mWで
は,H→bbが
最 も優 勢 と な る.
b. ボ ソ ンヘ の 崩 壊 ヒ ッ グ ス の 質 量 が2mW,2mZを へ 崩 壊 す る 行 列 要 素 は,(3.2)の
超 え る と き は,W,Z対 第3行
を参 照 し て
へ 崩 壊 で き る.W
(3.6) こ れ か ら,横 偏 極(λ=±)と
縦 偏 極(λ=3)のW対
へ の 崩壊 幅 は,
(3.7a) (3.7b)
(3.7c) (3.7d) と求 め られ る.こ れ か ら,mH≫mWな れ るW対
は 縦 偏 極 のWが
ら ば,ヒ
ッグスの 崩壊 に よって生 成 さ
優 勢 で あ る こ とが わ か る.Zへ
の 崩 壊 も同様 に し
て,
(3.8) Wへ
の 崩 壊 と2だ け の 因 子 分 異 な る が,こ
因 子 で あ る.mH≫mZに
れ は 同 一 粒 子 に対 す る ボ ー ス統 計
対 して,Γ(H→WW)≒ZΓ(H→ZZ)で
あ る.
c. ヒッ グ ス の 崩 壊 分 岐 比 上 記 の 崩 壊 幅 の 計 算 をす べ て の 可 能 な 崩 壊 モー ドにつ い て行 え ば,ヒ 粒 子 の 崩 壊 モ ー ドの 分 岐 比 が計 算 で き る.mH<2mWな はbbで
あ る.mH>2mWな
ソ ン で あ る.図3.2に ∼160GeV付
らば,主 要 崩 壊 モ ー ド
ら ば 主 要 崩 壊 モ ー ドはWWとZZの 崩 壊 幅ΓH,分
近 でH→ZZの
ッグス
岐 比BRをmHの
ベ ク トル ボ
関 数 と して 描 く.mH
分 岐 比 が 減 少 す る の は,WW生
成 の しきい値
効 果 で あ る.
3.2
3.2.1
ヒッ グ スの 質 量
放 射 補 正 デ ー タ か らの 推 定
ヒ ッ グ ス がLEPII( き て い な い と い う事 実 か ら,質
のe+e-コ
ラ イ ダ ー)で
量 値 はmH〓114.4GeV(95%CL)と
これ まで発 見 で い う条 件
(a) 図3.2
(b) ヒ ッ グス 粒 子 の 崩 壊 幅 と分 岐 比 (a) ヒ ッ グ ス粒 子 の 崩 壊 幅 のmH依
存性
(b) ヒ ッ グ ス粒 子 の 崩 壊 モー ドの 分 岐 比
が つ い て い る2,3).そ れ 以 外 の 質 量 情 報 は放 射 補 正 に 対 す る効 果 か ら得 ら れ て, ヒ ッ グ ス質 量 の 推 定 値 を 引 き 出 す こ とが で き る.Z崩
壊 幅 な どの 精 密 測 定 を
す る こ と に よ りsin2θWや 中 性 カ レ ン ト/荷 電 カ レ ン ト結 合 定 数 比 ρ を決 め, トップ の 質 量175GeVを は,Ⅱ-§7.3を
入 れ,ヒ
ッ グ ス 質 量 に つ い て 解 くの で あ る(詳 し く
参 照).
(3.9)
(3.10a) (3.10b) どの 実 験 値 を どれ だ け の重 み を入 れ て解 くか で 答 が か な り変 わ る.ヒ ッ グス粒 子 の 寄 与 は対 数 的 に しか 変 化 しな い の で,質 量 変 化 に よ る放 射 補 正 の 変化 が わ ず か で あ り,mHの
推 定 に は数 値 的 に は大 きな 不 定 性 が あ る.逆 に い う と現 時
点 で の デ ー タ か ら決 め られ る質 量値 は,ま だ 流 動 的 で不 定 性 が 大 きい.図3.3 (b)にLEPデ
ー タ を 総 合 的 に 使 用 し て,最 適 化 し た 曲 線 の 質 の よ さ(X2値)
をmt,mHの
関 数 と して 示 す4).ヒ ッ グ ス粒 子 に許 さ れ る範 囲 内 で の質 量 下 限
値 に 近 い と こ ろが 最 適 値 で あ るが,mH〓1TeVは が 決 め た トッ プ の 質 量 値mt=175±20GeV5)を
十 分 許 容 範 囲 で あ る.CDF 初 期 条 件 と し て 入 れ れ ば,
ヒ ッ グ ス の質 量 につ い て は も う少 し制 限 が つ き,1σ で
(3.11) と推 定 で き る(図3.3(a)),95%信
頼 度 上 限 値 は1.1TeVで
(a) 図3.3
あ る6)*1).
(b)
トッ プ と ヒ ッ グ ス を考 慮 した放 射 補 正 式 を,精 密 デー タ で 最 適 化 して 得 られ るX2曲 (a) LEPな (b) mt,mHを
ど電 弱 相 互 作 用 デ ー タ を総 合 し,mt=165GeVに 独 立 パ ラ メ ター とす るX2の2次
線
固 定 した と きのmH-X2曲
線6)
元 平 面 で の 曲 線4)
3.2.2 理 論 的 下 限 上 に 述 べ た よ う に,ヒ が,ト
ッ グ ス の 質 量 は 数 百GeV以
下 で あ る可能 性 が あ る
ップ 質 量 を推 定 した と きほ どの信 頼 性 は な い の で,以 下 で は,こ れ に 縛
られ ず に 議 論 をす る. ヒ ッ グ ス粒 子 の 質 量 に 対 す る 下 限 条 件 の 一 つ は,真
空 の 安 定 性 よ り得 られ
る.対 称 性 が 自発 的 に破 れ る ため に は,一 定 の 条 件 が つ い て い た.す
な わ ち,
λ>0で あ る こ とが ヒ ッグ ス ポ テ ン シ ャ ル
(3.12a)
*1) 最 近 で は る3).
,mH=83∼140GeV,95%信
頼 度 上 限 値 は〓360GeVと
一 層 きつ く な っ て い
(3.12b) が
に お い て最 小 値 を もつ こ と を保 証 して い た.し か し,そ れ は
トリー 近 似 の 範 囲 で あ り,量 子 補 正 を入 れ る と条 件 が変 わ る.ヒ 伝 播 関 数 に ル ー プ 補 正 を入 れ た と き の 結 合 定 数 λの 変 化 は,繰
ッグ ス 粒 子 の り込 み 群 方 程
式 に よ っ て 次 式 で 与 え られ る1).
(3.13)
(3.14) こ こ に,τ=ln(Q2/Q02), ,gBはU(1)結
合 定 数 で あ り,ト
ォ ー ク 以 外 の 軽 い ク ォ ー ク の 寄 与 は 無 視 し た.λ 関 数 で あ る.も
と も との λ はQ=Q0(=υ)で
を 入 れ た 結 果,ポ
い .簡
単 の た め,h,gW,gBのQ2依
の 値 で あ る と見 な せ る.放
初 期 値 λ0=λ(Q0)の
射 補正
の 真 空 期 待 値υ
も また
期 待 値 と定 義 し 直 さ な け れ ば な ら な
存 性 を 無 視 す れ ば,β(λ)はλ
あ り 二 つ の 根 λ± を も つ.4mt4>2mW4+mZ4に
(3.13)の
は も は や 定 数 で は な く,τ の
テ ン シ ャ ル は 変 更 を 受 け る の で,φ
ポ テ ン シ ャ ル の 極 小 値 を 与 え る φ=φcの
ップ ク
の2次
関数で
対 し て は,λ-<0<λ+で
大 小 す な わ ち,λ0>λ+,ま
た は,0<λ0<λ+に
あ る. 応 じ て,
解 は 次 式 で 与 え ら れ る.
(3.15a) (3.15b) 0<λ0<λ+な
らば,β(λ)<0で
あ る の で,Qを
大 き く して い く と あ るQ=
Λ
で λ<0と な る.こ の と き,ポ テ ン シ ャ ル は φの 大 き い と こ ろ で 負 と な り,極 小 値 を もた な い.す 領 域 で,λ>0を
な わ ち 真 空 は 不 安 定 とな る.も っ と もQの
すべ ての変数
要 求 す るの は きび しす ぎ るか も しれ な い.な ぜ な ら,そ
も出 発 点 の ラ グ ラ ン ジ ア ン で す らQの け で は な い か らで あ る.そ
こ で,ラ
もそ
全 領 域 で の 有 効 性 を保 証 さ れ て い るわ
グ ラ ン ジ ア ン の 適 用 有 効 限 界 をQ<Λ
しそ の 範 囲 内 で 真 空 の 安 定 を要 求 す る と,Λ に 依 存 す る λ の 下 限,し
と
たが っ
て ヒ ッ グ ス質 量 の下 限 が 存 在 す る.こ の下 限 の 概 略 値 を簡 単 に 見 る に は λ>λ+
と 設 定 す れ ば よ い.λ0>λ+な
ら ば β(λ)>0で
あ る の で,λ>0は
る.し
た が っ て,
は,真
空 が 安 定 す る た め の 十 分 条 件 で あ る.た だ し,あ
保証 され てい
(3.16) とな って 摂 動 的 取 扱 い は破 綻 す るの で,Q〓Λ
るQ=Λ
で,λ → ∞
で は新 現 象 が起 き る と しな け れ
ば なら な い.以 上 は 定 性 的 な議 論 で あ る.実 際 の 真 空 安 定 条 件 は,Λ 与 え て,gW,gB,hを 図3.4に
の値 を
含 む 繰 り込 み 群 連 立 方 程 式 を数 値 的 に 解 い て 得 られ る.
初 期 の 計 算 例 を示 す7).右 側 の 斜 め に 走 る 直 線 が ヒ ッ グ ス の 質 量 の 下
限 値 を与 え る.
図3.4
真 空 の 安 定 性 か ら く る条 件(斜 め の 線)と ト リヴ ィア リテ ィ条 件(横 の 線) に よ り,ヒ ッグ ス の 質 量 と トッ プ の 質 量 は 各 線 の 下 側 か つ 左 側 に 限 られ る. 各 線 に あ る値 は切 断Λ の 値 で あ る7).
以 上 の 議 論 は,摂 動 の 最 低 次 の 閉 ル ー プ の み を入 れ た繰 り込 み群 方 程 式 に 基 づ く.さ らに 高 次 の 閉 ル ー プ を と りい れ て 精 密 化 して も,定 性 的 な 話 の 筋 道 に 変 わ りは な い.た だ し,数 値 的 に は 初 期 の 議 論 か らか な り変 わ っ て き て お り,
例 え ば 真 空 の 安 定 性 の 議 論 か ら は,Λ
∼1015GeVに
対 し,
(3.17) を 得 て い る8).も
っ と も こ の 制 限 は き つ す ぎ る と い う 考 え 方 も あ る.真
安 定 で あ っ て も 崩 壊 寿 命 が 現 在 の 宇 宙 年 齢(≒1010年)よ
空が不
り長 け れ ば よ し と す
れ ば9),
(3.18) と な り,制
3.2.3
限 は ず っ と緩 く な る.
理
論
的 上
限
a. ユ ニ タ リテ ィ ヒ ッ グ ス の 質 量 は無 制 限 に は 大 き くな れ な い.最
も簡 単 な議 論 は ト リー レベ
ル の 散 乱 振 幅 の ユ ニ タ リテ ィか ら くる.そ の た め に ゲー ジ ボ ソ ン特 にWの 乱 振 幅 を考 え よ う.WWの
弾 性 散 乱 の フ ァ イ ンマ ン 図 を図3.5に
散
示 す.
ゲ ー ジ不 変 性 が 成 立 して い る と,種 々 の グ ラ フ が相 殺 し て無 限大 の発 散 をた か だ か 対 数 発 散 に と どめ る.例 え ば,散 乱 振 幅 の部 分 波 でs2に 比 例 す る項 は 図3.5の
ゲー ジ ボ ソン の グ ラ フが 互 い に相 殺 し合 い,sに
ボ ソ ン と ヒ ッ グ ス を 交 換 す る項 が 相 殺 し合 うの で,残 と な る.
比 例 す る項 は ゲ ー ジ る は た か だ かIn s程 度
で優 勢 と な るの は ヒ ッ グ ス を仲 介 とす る過 程 で あ り,
そ の 振 幅 は近 似 的 に次 式 で 与 え られ る10).
(3.19) 部分 波に分解 すれ ば
(3.20) で あ る の で,mH2≫mW2と
してa0を
求め れば
(3.21) 十 分 高 エ ネ ル ギー で は 第1項
が優 勢 で あ る.ユ
ニ タ リテ ィ か ら│a0│≦1が 要 求
さ れ るの で,
(3.22)
(a)(b)(c)
(d)(e)
(f)(g) 図3.5
を 得 る.WLWL,
ZLZL,
減 少 因 子 が 得 ら れ る.す
W-W+散
HH,
乱 にお け るZ0, γ,H0仲
HZL散
介 グラフ
乱 の 複 合 系 と し て 解 く と,さ
ら に2/3の
なわ ち
(3.23) ボル ン近 似 は 実 数 で あ るの で,│Rea0│≦1/2を 良 され て ∼700GeVと
の値 は さらに改
な る.
ま た別 の議 論 と して は,ヒ くもmH>ΓHが
考 慮 す れ ば,上
ッ グス が素 粒 子 で あ る と解 釈 で き るた め に は少 な
必 要 で あ る と要 求 す る.条 件
(3.24) か ら はmH<1.4TeVと 2λυ2=2λ ×(250GeV)2で
な る.し
か し,こ
の く ら い 質 量 が 大 き く な る とmH2=
あ る の で,λ が 非 常 に 大 き く な る こ と(λ/4π〓O(1))
を 意 味 す る.つ
ま り,ヒ ッグ ス粒 子 の 自己相 互 作 用 は強 い相 互 作 用 と な る の で
摂 動 論 を 適 用 す る こ とに 疑 問 が で る.オ ー ダー と して1TeVく
ら い よ りは小
さ い で あ ろ う とい うに 留 ま る. b. トリヴ ィア リテ ィ(triviality) 今 度 は 別 の 観 点,繰
り込 み群 方程 式 か ら どの よ う な上 限 が 得 られ るか を調 べ
て み よ う.λ が 大 きい 極 限 を議 論 す るの で あ る か ら,(3.13)で 結 合 定 数 の 寄 与 を無 視 す れ ば,次
の 解 が 得 られ る.Q0=υ
λ以 外 の 他 の
と して
(3.25a) こ の 式 の も と と な る ヒ ッ グ ス の 方 程 式 が 摂 動 的 処 方 で 意 味 を も つ た め に は, λ(Q)は
有 限 で な け れ ば な ら ず,そ
と な る.す
な わ ち,ヒ
ッ グ ス の 従 う 方 程 式 は,相
な け れ ば な ら な い.こ る.上
の 場 合 はQを
の こ と を さ し て"無
大 き く し て い く と,λ(υ)=0 互 作 用 の な い 自由場 の 理 論 で
意 味 な(=trivial)"と
い うので あ
式 を書 き直 せ ば
(3.25b) で あ る か ら,十
分 大 き いQに
対 し て 分 母 が0と
な り(Landau
pole),λ
は発
散 す る.す
な わ ち,Qの
非 常 に 大 き い と こ ろ で は 摂 動 論 が 成 立 し な い.こ
こ と はQが
あ る 値Λ
を 超 え た と こ ろ で は 新 現 象 が 起 き て い る こ と を 示 す.す
な わ ち,ヒ 効"方
ッ グ ス の 満 た す 方 程 式 は,低
エ ネ ル ギ ー(Q〓Λ)で
の み 有 効 な"実
程 式 と 見 な さ な け れ ば な ら な い こ と を 示 し て い る.Q〓Λ
有 限 で あ る場 合 の λ(υ)最 大 値 は,(3.25a)で
λ(Q)=∞
の
で,λ(Q)が
と し て 得 ら れ る か ら,
(3.26) こ こ で,Λ=Mplanck〓1019GeVと
い う 大 き な エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ル ま で λが 有
限 で か つ 小 さ い と 要 求 す る と,mH<150GeVを 定 の 仕 方 に は ほ と ん ど よ ら な い.λ(Q)=∞ 値 的 に は ほ と ん ど 同 一 で あ る.こ こ ろ で 大 統 一 が あ る と し,そ
得 る.こ
の 値 は,λ(Q)の
の 代 わ り に λ(Q)=1を
の こ と は 興 味 深 い.も
使 っ て も数
しエ ネ ル ギー の 高 い と
こ ま で 何 も 新 現 象 が な い と す る と,ヒ
量 は 軽 く な け れ ば な ら な い こ と を 意 味 す る.後
設
ッ グ スの 質
で議 論 す る超 対 称 理 論 は これ に
該 当 す る.逆 に い う と,ヒ ッ グ ス粒 子 の 質 量 が 大 きい と きは 新 現 象 が 比 較 的 低 い エ ネ ル ギー 領 域 に 存 在 す る こ とを 意 味 す る.も
し,比 較 的 低 い エ ネ ル ギー で
新 現 象 が 起 き る と して も,ヒ ッ グ ス粒 子 は 存 在 す る とい う条 件,す <Λ
をつ け る と,mH〓800GeVと
変 え た と き に,ヒ
な る.図3.4の
な わ ちmH
横 に 走 る 曲 線 は,Λ
の値 を
ッ グ ス粒 子 の質 量 上 限 が ど う変 わ るか を示 して い る.真 空 の
安 定 性 と トリヴ ィ ア リテ ィの 議 論 か ら は,mHの の 下 お よ び 左 側 で あ り,Λ
許 さ れ る値 は 図 で示 す 折 れ 線
を ど こ に と るか で 変 わ る.mt=175GeVと
し,新
現 象 は 大 統 一 ス ケ ー ル エ ネ ル ギー ま で 存 在 し な い と い う仮 定 を 入 れ る と150 GeV〓mH〓200GeVと
な り,ヒ ッ グ ス粒 子 の 質 量 に対 す る制 限 は か な り きつ
い こ とが わ か る.こ の値 が 放 射 補 正 か ら導 い た ヒ ッ グ ス質 量 推 定値 とそ れ ほ ど 違 わ な い の は 興 味 深 い. これ まで は,λ が 大 きい とこ ろ で は新 現 象 が起 き る とい う設 定 で 議 論 を して きた.こ
の仮 定 は正 しい で あ ろ うか?
λが 大 き くな る と い う こ とは,単
に摂
動 的 取 扱 い が破 綻 す る とい う こ とで あ り,必 ず し も新 現 象 を意 味 しな いか も し れ な い.こ の 場 合,Q>ΛNTでλ ΛNT
が 大 き くな っ て 摂 動 論 が 破 綻 す る とす れ ば,
は,新 現 象 は起 きな い が 非 摂 動 的 取 扱 い が 必 要 と さ れ る領 域 で あ
る.こ の よ うな領 域 が あ る か ど うか は非 摂 動 的 手 法 の格 子 ゲ ー ジ理 論 で 調 べ る こ とが で き る.こ の 場 合 は 格 子 間 隔 が 実 質 的 な切 断Λ の役 割 を演 じ る.格 子 ゲー ジ理 論 の枠 内 で,上
で行 っ た と同 じ論 理 構 成 で計 算 をす る と,ヒ ッ グ ス粒
子 の 質 量 上 限 は,MH<750GeVと <Λと
い う結 果 が で て お り11),ど うや らΛNT
い う非 摂 動 的 取 扱 い の 必 要 な領 域 は 存 在 し な い.す
な わ ち,摂 動 論 で
扱 っ た繰 り込 み群 方 程 式 の 結 論 は そ の ま ま信 用 し て よ さ そ うで あ る.し た が っ て,も
し ヒ ッ グ ス 粒 子 が 質 量〓1TeVで
見 つ か らな か っ た な らば,標
準理 論
を越 え る新 しい新 現 象 が その へ ん の エ ネ ル ギー 領 域 で見 つ か るは ず で あ る.す な わ ち,ヒ
ッ グ ス粒 子 を発 見 す る た め の 作 戦 を練 る と きは,mH〓1TeVと
う条 件 を課 して よ い.た
だ し,mH〓1TeVは
囲 の 最 大 値 で あ り,最 適 予 想 値 で は な い.Z0崩 み群 に よ る 予 想 で は,ヒ
い
ヒ ッ グ ス質 量 の合 理 的 な 許 容 範 壊 の 精 密 デ ー タ解 析,繰
り込
ッ グ ス の質 量値 は 相 当低 い と こ ろ に あ る とい うこ と を
留 意 して お く必 要 が あ る. 以上 の 議 論 か ら,ヒ
ッ グス の 質 量 の 大 小 を 問 う こ とは,新 現 象 の あ り方 に 直
接 関 わ る重 要 な 設 問 で あ る こ とが わ か る.ヒ
ッ グス を発 見 し質 量 の 値 を決 め る
こ との 重 要 な理 由 は こ こ に あ る.他 方 に お い て は,ヒ 方 法 は ヒ ッ グ ス の 質 量 に依 存 す る.ま たeeコ
ッグ ス の 生 成 機 構 や 検 出
ラ イ ダー か ハ ドロ ン コ ラ イ ダー
を使 うか で も多 少 異 な る の で,以 下 は 順 を追 っ て ヒ ッグ ス の検 出法 の 解 説 をす る.
3.3
3.3.1
ee反
ヒッ グス粒 子 の 生 成
応 に よ る生 成
a. ee→HZ ヒ ッ グ ス 粒 子 の 質 量 が 小 さ け れ ば(<2mZ), で,
(Z*は
な ら ば, が,検
(Zは
出 に 有 利 な モ ー ドで あ る(図3.6).
の 制 動 放 射 と い う.(3.27)の
崩 壊 率 は 小 さ い が,Z0共
図3.6
e+e-反
で は仮 想Zを
(3.27) (3.28)
反 応 をZに
よ るヒッグス
鳴 で はZ0粒
子 が 多量
分 崩 壊 率 は1,12)
(b)
(a)
(a)
実 粒 子)
(3.28)の
に つ く られ る の で 十 分 使 え る チ ャ ネ ル と な る.微
仮 想 粒 子)
(c)
応 にお け る ヒ ッ グ ス粒 子 生 成 メ カ ニ ズ ム(Z*は
仲 介 す る.反 応e-e+→H0Z*→H0llはmH<60GeVの
仮 想Z) と きに 有 効 な
方 法 で あ る. (b)
で 使 え るチ ャ ネ ル はe-e+→H0Z0で60<mH〓100GeVの
と きに 有 効 な 方
法 であ る. (c)
で は,WW融 る.
合 に よ る生 成 が 優 勢 で あ る.mH>100GeVの
と きに 有効 な方 法 で あ
(a) 図3.7
(a) e+e-→HZ*→Hll生
成 断 面積 のm(l+l-)依
で あ る の でZ*は
μ=mH/mZを0.05∼0.7ま くな る12). (b)
(b)
で のe+e-→HZ生
存性.
仮 想粒 子 で あ る. で変 え た.ヒ
ッ グ ス質 量 が 大 き くな る と断 面 積 は 急 速 に小 さ
成 断 面 積.Zは
実 粒 子 と して 生 成 さ れ る.
(3.29) x, zの
範 囲 は,2z≦x≦1+z2で
大 き くす る か ら,muは
与 え ら れ る.分
母 の小 さ い と こ ろが 崩 壊 率 を
な る べ く大 き くな ろ う と し,
の とこ ろ が 極 大 に な る(図3.7
(a)).原 理 的 に はmH<mZの
ス粒 子 の 探 求 が 可 能 で あ るが,mH→mZに
範 囲 での ヒッグ
近 づ く と生 成 率 が 急 速 に減 少 し,
多大 の ル ミ ノ シ テ ィが 必要 で あ る こ とが この 図 か らわ か る.LEPI(
)
の実 験 で は,こ の 方 法 に よ る検 出 で ヒ ッ グ ス粒 子 の 質 量 値mH<60GeVの 能 性 は 完 全 に 除 外 さ れ て い る3).mH>60GeVの ドの 方 がHllモ
ー ドよ り優 勢 とな るが,分
と きはZ0→Hγ
の 崩 壊 モー
岐 比 は10-6と 小 さ い の で,Zに
る制 動 放 射 反 応 を使 う方 が 有 利 で あ る. b. Zに
よ る制 動 放 射
LEP200
(LEP増
強 計 画;
制 動 放 射 す る 過 程(図3.6
)で は (b))が
可 能 と な る.事
可
で あ り,ZがHを 象 の 識 別 は,Z→ll,
よ
qq(2-ジ
ェ ッ ト)の 不 変 質 量 がZに
と き は"見
等 し く な る こ と を 要 求 す る か,Z→νν
え な い エ ネ ル ギ ー+H0か
ら の 崩 壊 生 成 物 で あ る ジ ェ ッ トの 一 つ"
を 要 求 す る こ と に よ っ て 得 ら れ る.ヒ り計 算 で き る.こ
の
ッ グス の 質 量 は運 動 量 変 数 の再 構 築 に よ
の 断 面 積 は 次 式 で 与 え ら れ る13).
(3.30a) (3.30b)
│k│は 重 心 系 で の ヒ ッ グ ス 粒 子 の 運 動 量 で あ る.こ ると 急 速 に 立 ち 上 が り, mH(GeV)く 114GeV
で 最 大 と な る.σmax/σpoint(μ μ)∼47/
ら い で あ る(図3.7 (95%CL)が
(b)).結
局,LEPIIで
似
大 き く 超 え,
も 大 き く な る と,Zの
ク トル ボ ソ ン に よ る 融 合(e+e-→e+e-V*V*→e+e-H, (c)の
過 程)が
制 動 放 射 よ りは ベ V=W,
Z:図3.6
優 勢 と な る(図3.8).
図3.8 e+e-反 低 エ ネ ル ギー で はe+e-→HZ0(一 ZZ(ダ
は 見 つ か ら ずmH>
得 ら れ て い る3,14).
c. ボ ソ ン 融 合 と 等 価W近 mH>100GeVを
の 断 面 積 は し き い値 を超 え
応 で の ヒ ッ グ ス生 成 全 断 面 積 の依 存 性15) 点 鎖 線)が 優 勢 で あ るが,高 エ ネ ル ギ ー で はWW(実
ッ シ ュ線)融 合 反 応 が 大 き い.
線),
ボ ソ ン 融合 生 成 に関 して は,ト
リー 近 似 で解 析 的 に正 確 な式 が 求 め られ て い
るが15),直 観 的 に理 解 しや す い等 価W近
似(effective
方 法 で もか な り精 度 の よ い(誤 差〓20%)式
W approximation)の
を与 え る.等 価W近
似 の方 法 と
は ワ イ ゼ ッ カー-ウ ィ リア ム ス近 似 の 適 用 の こ とで,入 射 粒 子 の エ ネ ル ギー が mWに
比 べ て 十 分 高 け れ ば,電 子(ま た は クォ ー ク)はWの
こ のW同
士 が 反 応 を し て ヒ ッグ ス粒 子 を生 成 す る と い う考 え 方 の こ とで あ
る.こ の 場 合,電
子 も し くは ク ォ ー ク は 反 応 に は 寄 与 し な い で,単
給 源 と して の 役 割 を 果 た す.W放 -mW2)の
出 に 伴 い 現 れ るWの
極 に 一 番 近 い と こ ろ(q2〓mW2)の
とす る近 似 で あ り,同 様 の考 察 はQCDの と きに も行 っ た(Ⅱ-第5章
参 照).す
ル ミオ ンの エ ネ ル ギー がWの Wを
雲 を伴 って い て,
似 で あ る.等 価W近
似 に よ るWWの
グ ス粒 子 生 成 に 限 らず,他
のWW反
供
伝 播 関 数 ∼gμν(q2
運 動 変 数 領 域 の 寄 与 が優 勢 で あ る 発 展 方 程 式 を対 数 第1近 似 で導 い た
な わ ち 等 価W近
似 とは,関 与 す る フ ェ
質 量 に対 して 十 分 大 き い場 合,放
実 の 粒 子 とみ な し,か つW放
にWの
出 され る仮 想
出 は ほ ぼ 前 方 に 限 られ る(θ ≒0)と す る近 ル ミ ノ シ テ ィ は,WW融 応(例 え ばWW→WW散
合 に よ るヒッ 乱)に
も使 え
る な ど応 用 範 囲 が広 い. そ れ ぞ れ エ ネ ル ギー 運 動 量p1, p2を もつ 入 射 電 子 と陽 電 子 が,x1p1, 運 動 量 を もつ2個 とす れ ば,W融
のWを
x2p2の
供 給 す る とみ な し,そ の フ ラ ッ ク ス をF(x1),
合 に よ る ヒ ッ グ ス生 成 の 断 面 積 σ(e+e-→e+e-H)は,ベ
トル ボ ソ ン融 合 反 応 素 過 程 の 断面 積σ(VV→H;s)を
F(x2) ク
使 って
(3.31a) (3.31b) と 書 け る.mH2≫mW2と
す れ ば,σ(VV→H;s)は,τ=mH2/sと
して
(3.32) で あ る か ら,こ
れ を(3.31)に
入 れれば
(3.33a)
と な る.こ
こに
(3.34) は,e+e-が
提 供 す るWW反
応 の ル ミ ノ シ テ ィ で あ る.(3.7)を
入 れ て 書 き直
す と,
(3.33b) とな る. 運 動 量pを
もつ 粒 子Aが
に な る と き,放
運 動 量xpを
出 さ れ るBの
もつ 粒 子Bと(1-x)pを
もつ 粒 子C
相 対 フ ラ ッ ク ス を求 め る 方 法 はⅡ-付 録C. 6に
与 えて あ る.す な わ ち
(3.35) を 計 算 す れ ば よ い.こ と 異 な る.こ
の 式 は,pT2→pΥ2+(1-x)mW2の
れ は,Wが
質 量 を も つ た め,パ
2xp)を(xp+(pT2+mW2)/2xp)と に(e→e+W)の
分 だ け(Ⅱ-(C.
34))
ー ト ン エ ネ ル ギ ー(xp+pT2/
変 更 し た た め で あ る.(3.35)の
中 に具体 的
ラ グ ラ ン ジ ア ン を代 入 す れ ば
(3.36a) た だ し,gvとgAはW,
W粒
Zの
場 合 で 異 な る.
(3.36b)
子:
Z粒 子
(3.36c) (3.36d)
を計 算 す れ ば,横 偏 極(の 平均)お
よ び縦 偏 極 の ボ ソ ン に 対 して16)
(3.37a) (3.37b) を 得 る.た
だ し,s≫mW2と
し た.横
偏 極Wの
ル ミ ノ シ テ ィ は,(gV2+gA2)/
(4π)→
α と 置 き 換 え れ ば,電
ウ ィ リ ア ム ス の 式(Ⅱ-(C. (V=W,
Z)反
子 が 与 え る フ ォ ト ン フ ラ ッ ク ス の ワ イ ゼ ッ カ ー-
38))に
な る.(3.34)を
使 っ て,横,縦
偏 極 のVV
応 の ル ミ ノ シ テ ィ を計 算 す る と
(3.38a) (3.38b) WWの
ル ミ ノ シ テ ィ を 図3.9に
ル ミ ノ シ テ ィ はWWに
示 す17).e+e-コ
ラ イ ダ ー で は,等
比 べ る とず っ と小 さ く 無 視 し て よ い.こ
子 の 結 合 が 小 さ くほ と ん ど0で
あ る こ と に 起 因 す る.ま
ノ シ テ ィ が 縦 偏 極 に 比 べ て 大 き い が,こ
た,横
れ は[ln(s/mW2)]2の
価ZZの
れ は,Zと 偏 極Wの
電 ル ミ
因 子 に よ る.す
なわち
(3.39) これ はWが
質 量0の
フ ェ ル ミオ ン に供 給 され る過 程 に 特 有 な 状 況 で あ る.な
ぜ な ら,縦 偏 極 ベ ク トル はWの
進 行 方 向 をz軸
に と る座 標系 で は
(3.40)
図3.9
コ ラ イ ダー に お け るWW反 (a) 1個 の 電 子 の 提 供 す る γ, WT(横 (b) WW反
応 の ル ミノ シ ティ.
応 の ル ミ ノシ テ ィ(等 価W近
偏 極),WL(縦 依 存 性.
偏 極)の
似)17)
フ ラ ッ クスx=pw/pe
とな り,第1項
は質 量0の
フ ェ ル ミオ ン カ レ ン トを掛 け る と0と な る.こ の た
め 通 常 は 縦 偏 極 に よ る成 分 は 増 大 因 子(∼ ω/mW)と ル ミオ ン に結 合 す る場 合 は 抑 圧 因 子(∼mW/ω)と 偏 極Wに
よ るH生
成 断 面 積 が,横 偏 極Wに
て あ ま りあ る の で,全 体 と して縦 偏 極Wに ラ ッ クス を(3.33b)に
量0の
フェ
な る の で あ る.し か し,縦
よ る断 面 積 よ り も もっ と大 き く
,ル
縦 偏 極 のWWフ
な るの に,質
ミ ノ シ テ ィが 小 さ い 分 を補 っ
よ る生 成 断 面 積 が優 勢 とな る. 入 れれ ば,ヒ
ッ グ ス生 成 断 面 積
(3.41) を得 る18). d. 横 運 動 量 分 布 kT分
布 を 求 め る に は,式(3.35)ま
量 をkTと
で さ か の ぼ る.ヒ
ッグス粒 子 の横 運 動
す る と,
(3.42) で あ る か ら,d2pT1d2pT2→d2kTd2pT2と
し て,pΥ2に
つ い て の 分 布 が 得 ら れ る.図3.10に い て,ヒ
│pT2│2≒mW2の
寄 与 が 大 部 分 を 占 め る か ら,ヒ
度 で あ り(≒mW2),図3.10の
等 価W近
似 はO(mW2/s)を
よ く な る.
3.3.2
場合 につ
存 性 を 正 確 な 解 析 式 を 用 い た 場 合 と,
似 の 場 合 に つ い て プ ロ ッ トす る19).Wの
たmW程
eeコ
, mH=200GeVの
ッ グ ス 粒 子 生 成 断 面 積 のkT依
等 価W近
つ い て 積 分 す れ ばkTに
伝 播 関 数 の 影 響 で,│PΥ1│2, ッグ ス粒 子 の横 運 動 量 もま
分 布 は そ の 事 実 を 反 映 し て い る.
無 視 す る 近 似 で あ る の で,sの , mH>300GeVで
は 精 度 は5%く
大 き い ほ ど近 似 が ら い に お さ ま る.
ハ ド ロ ン に よ る ヒッ グ ス 生 成 ラ イ ダ ー に よ る ヒ ッ グ ス 生 成 は バ ッ ク グ ラ ウ ン ドが 小 さ く ク リー ン な
信 号 が 得 ら れ や す い.Z→llは
も ち ろ ん の こ と,Z→qqで
ラ ウ ン ドか ら分 離 す る こ と は 可 能 で あ る.し グ ス を 探 求 す る に は, し い が,近
のe+e-コ
もほ ぼ バ ッ ク グ
た が っ て,mH>100GeVの
ヒッ
ラ イ ダ ー を建 設 す る の が 望 ま
い 将 来 に 実 現 が 可 能 な の は ハ ドロ ン コ ラ イ ダーLHC*2)で
あ る の で,
(a)
図3.10 実 線:正
e+e-反 応 か ら,WW融 合 に よる ヒッグ ス粒 子 生 成 断 面積 の 横 運 動 量 分 布19) 確 な解 析 式,ダ
ッシ ュ 線:等
価W近
似
,mH=200GeV
図3.11
(b)
ハ ドロ ン 反 応 に お け る ヒ ッ グス 生 成 メ カニズム
(a) グル ー オ ン融 合 (b) WW(ZZ)融 合, ,mHの ろ で は(b)が 優 勢 とな る.
以 下 は ハ ドロ ン コ ラ イ ダ ー で の ヒ ッ グ ス 検 出 法 を 述 べ る.ハ で の ヒ ッ グ ス 生 成 は,mHの sお
ドロ ン コ ラ イ ダ ー
小 さ い と こ ろ で は グ ル ー オ ン 融 合(図3.11(a)),
よ び ヒ ッ グ ス 質 量 の 大 き い と こ ろ で はW融
な る.LHCで
大 きい とこ
はmHが900GeV∼1TeVが
合(図3.11(b))が
主過 程 と
境 目 と な る.
a. グ ル ー オ ン 融 合 ハ ド ロ ン 反 応 に よ るH生 数 をg(x)と
成 の 断 面 積 は,ハ
ドロ ン の 中 の グ ル ー オ ン 分 布 関
し て 次 式 で 与 え ら れ る20).
(3.43a) (3.43b) 式(3.33)と
比 較 す る と き,(3.43a)の
よ る ス ピ ン お よ び カ ラ ー 因 子 で あ り,そ 統 計 因 子 で あ る.H→ggの
前 に あ る1/4, の 前 の2は
1/64は
グルー オ ン に
同一 粒 子 で あ る こ とに よ る
過程 は
(3.44) *2) LHC (e-e+コ
(Large
Hadron
ラ イ ダ ー,周
を 使 っ て,8テ
ス ラ,
稼 働 開 始 は2007年
Collider)はCERN(欧 囲22km)ト
州 原 子 核 研 究 機 構)に
ン ネ ル を 流 用 す るppコ を 実 現 し,ル
と予 定 さ れ て い る.
あ る稼 働 中 のLEP
ラ イ ダ ー 計 画.超
ミ ノ シ テ ィ は1034/cm2/secを
伝 導磁石 め ざ す.
と計 算 で き るが,こ
れ は 実 効 的 に は 現 象 論 的 ラ グ ラ ン ジア ン
(3.45) か ら 導 け る と し て よ い.た
だ し,Iは
フ ェ ル ミオ ン ル ー プ の 計 算 か ら 現 れ る 量
で
(3.46) Ijの 値 をλj=mj/mHの い フ ェ ル ミ オ ン,す
関 数 と し て 図3.12に
値 は実 際 的 に は 一 番 重
な わ ち ト ッ プ ク ォ ー ク の 質 量 に よ り影 響 さ れ る.│I│2は
〓0 .4で 最 大 値 ∼3.2に λj)4で あ る.す
示 す.Iの
な り,λj〓1でI≒1と
な わ ち,mH≫mtで
な る.λj≪1で
は σeffはほ ぼλj4∼1/mH4で
λj
は,│I│2∝(λjlog 減 衰 す るこ と
が わ か る.
図3.12 mfは
b.
WW融
gg→Hに
現 れ る ル ー プ 関 数I(λ),
ル ー プ を つ く る フ ェ ル ミ オ ン の 質 量.図
λ=mf/mH
に は│I│zを
描 い て あ る.
合
ハ ドロ ン か ら のWW融
合 に よ る 生 成 断 面 積 は,σ(ee→eeH)の
式(3.31)
で 電 子 変 数 を ク ォ ー ク変 数 に 置 き 換 え た も の に,ク
ォ ー ク ル ミ ノ シ テ ィ を掛 け
て 得 ら れ る16).ハ
応 の ル ミ ノ シ テ ィ は,ハ
ドロ ン 衝 突 で のWTWT,
ロ ン 中 の パ ー ト ン 分 布 関 数 をfi(x)と
WLWL反 すれば
(3.47a)
ド
で 与 え ら れ る か ら,x1x2=τ'と
お く と[…]の
中は
(3.47b) と な る の で,
(3.48a) を定 義 す れ ば,断
面積 は
(3.48b) で 与 え ら れ る.た
だ し,σ(VV→H),
dL/dξ│qq/VVは,電
子 衝 突 で の 変数 か ら
し か る べ き ク ォ ー ク衝 突 で の 変 数 に 置 き換 え る も の と す る.W融 成 断 面 積 のmH2に の で,s,
mHの
合 に よ る生
よ る減 少 率 は グ ルー オ ン融 合 に 比 べ て ず っ と緩 や か で あ る
大 き い と こ ろ で はWW融
ト ッ プ ク ォ ー ク の 質 量 が 大 き い ほ どWW融 な る.mt≒175GeVを
合 に よ る 生 成 が 大 き く な る.た 合 が 優 勢 に な るmHの
入 れ る と,
融 合 が 優 勢 で あ る.図3.13に
だ し,
値 は大 き く
で は ほ ぼ 全 領 域 でgg
グ ル ー オ ン 融 合 お よ びW融
合 に よる ヒッグス
生 成 断 面 積 を 示 す21).
図3.13
ハ ドロ ン コラ イ ダ ー
に お け る ヒ ッ グ ス粒 子生 成 断面 積21)
(a)実 線:グ ル ー オ ン 融合,(b)ダ ッ シュ 線:WW(ZZ)融 こ の計 算 はtク ォー ク発 見 以前 に な さ れ た の でmt=150,
合,(c)点 線:tt融 合 200GeVと な っ て い る.
c. ヒ ッ グス 粒 子 検 出 の 信 号 ee反
応 に よ る ヒ ッ グス の 生 成 に お い て は 雑 音 信 号 が 少 な く,十 分 な信 号 数
さえ 得 られ れ ば,H→jj(j=ジ
ェ ッ ト),llに よ っ て ヒ ッ グ ス を 同定 す る の は
比 較 的 容 易 で あ る.ZHの2体
生 成 で は,Zを
量 の 決 定 が 可 能 で あ る.一 大 き く,信
方,ハ
同 定 す る だ け で もHの
ドロ ン 生 成 の 場 合 はQCDに
不 変質
よ る雑 音信 号 が
号 検 出 に は ヒ ッ グ ス の 質 量 に よ る崩 壊 分 岐 比 の 変 化 な ど を考 慮 し
最 良 の 信 号 対 雑 音 比 が 得 ら れ る よ う な 工 夫 が 必 要 で あ る.よ
っ て,こ
こ で はハ
ド ロ ン コ ラ イ ダ ー に お け る ヒ ッ グ ス 検 出 の 方 法 を議 論 す る. LHCの
目 標 ル ミ ノ シ テ ィ(L=1034/cm2/sec)が
際 に 運 転 で き る 時 間 を107secと ノ シ テ ィ が 得 ら れ る.断 る.こ
間(実
仮 定 す る)で,
面 積1pbに
のル ミ
対 し約105個
の ヒッグス粒 子 が生 成 で き
の 数 が 十 分 か ど う か を 以 下 検 討 し よ う.ヒ
ッ グ ス の 崩 壊 モ ー ドが 質 量 に
よ り 異 な る の で(図3.2(b)),検
出 方 法 も ま た 質 量 に よ り 異 な る.LEP
は 見 つ け ら れ な か っ た の で,mH>110GeVの ⅰ ) 110GeV<mH<130GeV 主 と な る が,QCDバ 3.2(b)を
200で
場 合 を 以 下 に 考 慮 す る. mH<2mW以
下 で は,bb崩
壊 モ ー ドが
ッ ク グ ラ ウ ン ドが 大 き い の で こ の モ ー ドは 使 え な い.図
眺 め れ ば,H→
す な わ ち,下
で,2個
実 現 で き れ ば,1年
γγ モ ー ドの 分 岐 比 が ∼10-3あ
り 使 え そ う で あ る.
記の包含 反応
の γ を 捕 ま え て 不 変 質 量Mγ γを 組 み,ヒ
ッ グス 質 量 に相 当 す る鋭 い 山
を 見 つ け る こ と に よ り ヒ ッ グ ス 粒 子 を 同 定 す る.し とす る の で は,QCDに 音 信 号 が あ り,エ
よ る γγ 生 成,QCDジ
成 反 応 を 使 い,Wま
方,qq→WHX, ttHXな た はttか
磁 カ ロ リ メ タ ー)を ど のWやtt対
の モ ー ド で,ヒ
使用
を伴 う生
ら 出 る 孤 立 レ プ トン を 標 識 と し て 使 う モ ー ド
を 使 え ば 雑 音 の 少 な い き れ い な 信 号 が 得 ら れ る が23),こ ら れ る か が 問 題 で あ る.LHCの
の γの み を 信 号
ェ ッ トの γ誤 認 に よ る 大 き な 雑
ネ ル ギ ー 分 解 能 の よ い γ検 出 器(電
す る 必 要 が あ る22).一
か し,2個
の 場 合 は 十 分 な数 が 得
実 験 グ ル ー プATLASとCMS*3)は,こ
ッ グ ス の 質 量 が80∼130GeVま
れ ら
で の 範 囲 な らば 検 出 可 能 と し
て い る24). ⅱ) 130GeV<mH<800GeV
ヒ ッ グ ス 粒 子 の 質 量 がmZの2倍
以上 で あ
れ ば,主
た る 崩 壊 モ ー ドはWWお
よ びZZで
モ ー ドは 大 き な 断 面 積 を も つQCDジ
あ る.W,
Zの
ハ ドロ ン へ の 崩 壊
ェ ッ トか ら 分 離 す る の が む ず か し い が,
最 終 状 態 に4個 の 荷 電 レ プ トン の 存 在 す る 崩 壊 モ ー ド を 使 え ば 最 も き れ い な 信 号 が 得 ら れ る22).こ
の モ ー ドは 通 常 黄 金 事 象(gold
plated
events)と
呼ば れ る.
(3.49) こ の モ ー ドへ の 崩 壊 分 岐 比 は1.1×10-3で
あ る の で,信
2組 の レ プ ト ン 対 の 不 変 質 量m(ll)〓mZを に 落 とせ る の が 強 み で あ る.バ →ZZの
要 求 す る こ と に よ り偽 信 号 を 大 幅
ッ ク グ ラ ウ ン ドの 主 要 成 分 は,qqま
連 続 ス ペ ク ト ル 生 成,Zbb,
3.14(a)に,CMSグ
号 数 は 大 き く な い が,
Ztt生
ル ー プ の 予 想 獲 得 信 号 図 を 示 す24).4lモ
は,mH<800GeVが
検 出 限 界 と さ れ て い る.そ
事 実 に 加 え て,mH>800GeVで
た はgg
成 に よ る も の な ど で あ る.図
れ は,信
ー ドの 検 出 で
号 数 が 少 な い とい う
は,幅ΓHが>250GeVと
非 常 に 大 き く な り,
共 鳴 は 鋭 い 山 で は な く緩 や か な 盛 り上 が り程 度 に しか な ら な い の で,確 た 共 鳴 が 見 つ け に く く な る と い う事 情 に よ る.ま
た,こ
固 とし
の よ う な幅 の 広 い 共 鳴
を素 粒 子 と呼 べ る か と い う理 論 上 の 問 題 も 存 在 す る. mH<2mZで
あ っ て も,H→ZZ*→4l(Z*は
ト ン 崩 壊 は 可 能 で あ る.た
検 証 も 可 能 と な る.こ
0.8テ
大 き い と こ ろ で は,検
出器 の密 閉性 が
え な い運 動 量 を利 用 して ニ ュ ー トリ ノへ の 崩 壊 モー ド の 場 合,Hの
Troidal
Lhc
ス ラ の 超 大 磁 場(中
信 号 は,横
Apparatus 心 部 は2テ
,内(外 ス ラ)を
運動量 分布 の ジャ コビア ン頂
径)が5(10)m,長 も ち,液
さ26mの
体 サ イ ズ は,14×20m,
調 し た デ ザ イ ン で あ る.
12000t.名
空 芯 で,
体 ア ル ゴ ン カ ロ リ メ ター を 使 う
大 型 の 汎 用 測 定 器.全 体 の サ イ ズ は20φ ×44mで,重 量 は6000t. CMS=Compact Muon Solenoid:コ イ ル は3mφ ×14m, 4テ ス ラ,結 を 使 う.全
り は低
ピ デ ィ テ ィ η の 十 分 大 き な と こ ろ ま で エ ネ ル ギ ー ベ ク トル
が 測 定 可 とい う条 件)見
*3) ATLAS=A
の レプ
度 が 検 出 可 能 な 質 量 下 限 と な る.
700GeV<mH<1TeV mHの
十 分 で あ れ ば(ラ
よ り,4個
だ し 分 岐 比 が 急 速 に 減 少 す る の で,2mZよ
い と こ ろ ま で い くが,130GeV程 ⅲ)
仮 想Z)に
晶 カ ロ リ メ ター
前 が 示 す よ う に ミュ ー オ ン 検 出 能 力 を 強
(a) 図3.14
(b) LHCに
お け る ヒ ッ グ ス 生 成 信 号 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン24)
(a) mH=300GeV,
H0→ZZ→4l±(CMS)
(b) mH=700GeV,
H0→ZZ→l+l-νν(ATLAS)
上*4)と して 現 れ る.図3.14(b)に,2個
の レプ トンの 存 在 を要 求 し適 当 な 切
断 条 件 を つ け た 後 の 見 え な い 横 運 動 量 分 布 のATLASグ す24).mHが1TeVに
ループ の 予想 を示
近 い と ころ で は,幅 が 大 き くな る こ と,不 変 質 量 分 布 を
組 め な い こ とな どの 理 由 で,ヒ
ッ グ スの 存在 は 雑 音 信 号 を上 回 る過 剰 の事 象数
と い う形 で現 れ るの で,雑 音 信 号 の 理解 が重 要 とな る. ま とめ る と,標 準 モ デ ル に お け る ヒ ッ グ ス 粒 子 は,100GeV〓mH〓1TeV で あ れ ばLHCで
探 索 可 能 とみ な され て い る.
3.4 超 対 称 ヒ ッ グ ス
3.4.1
ヒツ グ ス モ デル の 拡 張
標 準 理 論 の 枠 内 に お け る ヒ ッグ ス粒 子 の 性 質 は,種 々 の 可 能 性 の う ち で最 も 簡 単 な構 造 を与 え る とい う理 由 で選 ば れ た最 小 モ デ ル で あ る.現 在 まで の とこ ろ,こ の 選 択 で 実 験 事 実 との 矛 盾 は起 きて い な い.ま
た最 小 モ デ ル は,対 称 の
自発 的破 れ に 対 す る 原 因や 性 質 を探 り,ヒ ッ グ ス粒 子 を発 見 す るた め の 実 験 を 計 画 す る上 で の 貴 重 な指 針 を与 えて も きた.し か し,大 統 一 理 論 な ど を視 野 に
*4) 運動 変 数(こ の 場合p
T)の 限 界値 で スペ ク トルが 切 断 さ れ る結 果現 れ る山.
お い て,よ
り一 般 的 な モ デ ル の 可 能 性 を 検 討 し て お く こ と は 大 切 で あ る.標
モ デ ル を 拡 張 す る 場 合 に 考 慮 す べ き 制 約 と し て,二 mW2/mZ2cos2θW≒1, が あ る.(1)の
ッ グ ス が2重
に 満 た さ れ る の で(式(1.16)を
考 慮 す る必 要
も簡 単 な 拡 張 は ヒ ッ グ ス2重
た,超
対 称 理 論(後
分 の ヒ ッ グ ス2重
条 件 を 満 た す 処 方 は い くつ か あ る が,通 c,t)とQ=-1/3の
は, の2重
項
項 を 付 加 す る 場 合 に,(2)の
常 は,Q=2/3の
ダ ウ ン ク ォ ー ク(d,s,b)に
項が
述,第5章)で
項 ヒ ッ グ ス の 存 在 が 最 小 必 要 条 件 で あ る こ と か ら も,2個
モ デ ル の 検 討 の 価 値 は あ る.余
ρ=
項 で あ る 限 り は い くつ あ っ て も 自 動 的
参 照),最
二 つ(φ1, φ2)あ る と す る こ と で あ る.ま 2個 の2重
つ の 観 測 事 実[(1)
(2) 香 り を 変 え る 中 性 カ レ ン トの 不 在]を 条 件 は,ヒ
準
ア ッ プ ク ォ ー ク(u,
別 々 の ヒ ッ グ ス を 結 合 させ る
こ と で 実 現 さ せ て い る. a. 超 対 称 ヒ ッ グ ス ポ テ ン シ ャ ル 標 準 モ デ ル の 拡 張 選 択 肢 は た く さ ん あ る が,以
下 の 議 論 で は 超 対 称 を 取 り入
れ る こ と と し,そ
の 中 で も 最 も簡 単 なMSSMモ
デ ル(minimum
metric
model)に
対 称 を 要 求 す る と,例
standard
限 る こ と に す る.超
supersym えば
ヒ ッ グ ス の 自 己結 合 定 数 が ゲー ジ 結 合 定 数 と関 係 が つ くな ど種 々 の 制 限 が つ き,予
言 能 力 が 増 す.MSSMで
役φSMcと
同 じ量 子 数(超
が 必 要 で あ る.超 は,MSSMで
は,標
準 モ デ ル の ヒ ッ グ ス φSMと そ の 荷 電 共
電 荷Y=1,-1)を
も つ 二 つ の ヒ ッ グ ス2重
項H1,
対 称 性 に つ い て の 議 論 は 後 の 章 に ゆ ず る こ と に し,こ
H2 こで
の ヒ ッ グ ス ポ テ ン シ ャ ル1)は 与 え ら れ た も の と し て 議 論 す る.
(3.50) 二 つ の ヒ ッ グ ス は 混 合 す る の で,後 し て お く と便 利 で あ る.φ1=H1,
の議 論 の た め に 量 子 数 を揃 え た 表示 を導 入 φ2=H2cと
し,φ10,
φ1±,φ20, φ2±を 次 式 で 定
義 す る.
(3.51a) (3.51b)
ポ テ ン シ ャ ル の 最 小 値 は,
(3.52) に あ る*5).φ1がdク
ォー ク と荷 電 レ プ トン に,φ2がuク
ォー クに 結 合 す る
もの とす る. b. 質
量
対 称 性 が 自発 的 に破 れ る と質 量 行 列 が 生 じる が,CP保
存 に よ り,中 性 ヒ ッ
グ スの 実 数 部 と虚 数 部 が 混 じる こ とは な く,ま た荷 電 ヒ ッ グ ス も分 離 す る.質 量 行 列 を対 角 化 す る こ とに よ り次 の5種 の ヒ ッグ ス粒 子 が 発 生 す る.
(3.53a) (3.53b) (3.53c) (3.53d) ここに
(3.54) で 定 義 さ れ る.υ2=υ12+υ22は,mW2=gW2υ2に
よ っ て 固 定 さ れ る.α
が 正 の 中 性 ヒ ッ グ ス の 質 量 行 列 を対 角 化 す る 際 の 混 合 角 で あ る.質 方 をH0,小
さ い 方 をh0と
書 く の が 慣 例 で あ る.H±,
ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン と し て,W±, が 負,H0,
h0はCPが
Z0の
正 の ボ ソ ン で あ る.ま
A0に
はCP
量 が 大 きい
直 交 す る 成 分 は,
縦 波 成 分 に 吸 収 さ れ る.A0はCP ず,CPが
負 の 中 性 ヒ ッ グ スA0
の質量 は
(3.55) と な る こ と が 示 せ る.し MSSMモ
を ヒ ッ グ ス セ ク タ ー に 限 定 し た 場 合,
デ ル で は 独 立 な 二 つ の パ ラ メ タ ー は 二 つ し か な い の で,以
tanβ とmAを
*5) 通 常 は
か し,話
独 立 変 数 に と る こ と と す る*6).荷
,
で 定 義 す る.こ
電 ヒ ッ グ スH±
の質 量は
こ で の 定 義 は 以 下 の 計 算 式 を 簡 略 化 す る た め で,
特 別 な 意 味 は な い. *6) 超 対 称 条 件 を 課 さ ず て,mH±2,
下 で は,
,2重 項 を2個 入 れ る 場 合 の 一 般 の モ デ ル で は,tanβ, mA2に mh02, mH02お よ び 混 合 角 α の6個 が 独 立 な パ ラ メ タ ー と な る.(3.53)の
合 の 式,表3.1,
3.2の
結 合 定 数 の 関 係 式 は 一 般 の 場 合 で も成 立 す る.
加 え 混
(3.56) で 与 え ら れ る.H0, で,φ10=υ1,
h0の 質 量 行 列 を 求 め る に は,ヒ
φ20=υ2, φ1±=φ2±=0と
∂2V/∂υi∂υjを求 め れ ば よ い.結
ッ グ ス の ポ テ ン シ ャ ルV
お き,∂V/∂υi=0の
条 件 の も と で,
果 は
(3.57)
で あ り,こ れ を対 角 化 して
(3.58) (3.59) を 得 る.こ
れ ら の 質 量 関 係 式 よ り,
(3.60) が 導 け る.す な わ ち,中 性 ヒ ッ グ ス粒 子 の 少 な く も1個 は,Zよ を もつ の で,mh<mZの
り軽 い 質 量
軽 い ヒ ッグ スh0の 存 在 を検 証 で きれ ば,超 対 称 モ デ
ル(少 な く も最 小 限 拡 張 モ デ ルMSSMに
関 し て は)の 存 在 の 可 能 性 が 大 き く
な る.た だ し,こ れ らの 条 件 は ト リー レベ ル で の み 成 立 す る話 で あ る.放 射 補 正 を入 れ る と,質 量 の 大 きい トッ プ な どの 寄 与 が 無 視 で き な くて,mh2の
値が
変 化 す る25).
(3.61) tはtの
パ ー トナ ー の 超 対 称(SUSY)粒
ず し もmZやmAよ =1TeVに を,mAの
子 で あ る.こ
り軽 い と は 限 ら な く な る.例
と る とmh〓120GeVと 関 数 と し て 種 々 のtanβ
入 れ て もmh〓130∼150GeVに 存 在 は 超 対 称 理 論 の 特 徴 で あ る.
の 結 果mhの
え ば,mt=140GeV,
な る .図3.15(a)に,ヒ の 値 に 対 し て 示 す.こ お さ ま る こ と が い え る.軽
値 は,必 m(t)
ッ グ ス 質 量mh れ か ら,放
射 補正 を
い ヒッグス粒 子の
(a)
(b) 図3.15
(a) トリー 近 似 で は,mh<mA,
MSSMで
mh<mZの
許 さ れ るmh-mAの
範囲
み が 許 さ れ る が,放 射 補 正 を 入 れ る と斜 影 部 分 が 許 容 範
囲 と な る25). tanβ=υ2/υ1は,ヒ ッグ ス の 二 つ の真 空期 待 値 の 比. パ ラ メ ターm(t)=1TeV , mt=140GeVは 固定. (b) LEPに お け るALEPHの 実 験 結 果26). 灰 色 部 分 は理 論 的 に 禁 止 され る.斜 線 でハ ッチ をつ け た と こ ろ がe+e-→h0A, 応 よ り95%信
3.4.2
e+e-→h0Z反
頼 度 で デー タ か ら除外 さ れ る領 域.
MSSMヒ
ッ グス粒 子 の 検 出
a. 相 互 作 用 ヒ ッ グ ス とベ ク トル ボ ソ ン や フ ェ ル ミ オ ン と の 相 互 作 用 は,(3.53)を て 書 き 直 す こ と に よ り一 義 的 に 決 ま る が,全 一 部 を 表3
.1∼3.2に 表3.1
掲 げ る.φSMは
使 っ
部 書 き下 ろ す の は 煩 雑 で あ る の で
標 準 モ デ ル に お け る ヒ ッ グ ス を さ す.
中性 ヒ ッ グ ス とフ ェ ル ミオ ンの 結 合 定 数
表3.2
中 性 ヒ ッグ ス と ベ ク トル 粒 子 の 結 合Oi:
中性 ヒ ッ グ ス とベ ク トル粒 子 の結 合:
ま た,H±
と フ ェ ル ミオ ン と の 結 合 は
(3.62) で 表 さ れ る.こ
の 式 はt,
bで 書 い た が,一
般 の フ ェ ル ミ オ ン2重
項 につ いて
も 同 様 な 式 が 成 立 す る. 許 さ れ る 結 合 と 禁 止 さ れ る結 合 の 一 部 を 下 に 書 き下 ろ す.た リー 結 合 で 成 立 す る 話 で,フ こ の 限 り で は な い.V=γ,
だ し,こ
れは ト
ェ ル ミオ ン ルー プ を入 れ た 高 次 補 正 を考 慮 す れ ば W±, Zと
括 弧[・ ・]内 の 結 合 は,[sinx,
して
cosx]の
よ うに 片 方 が 小 さ い と き は 他 方 が 大
きい とい う相 補 的 な 関 係 に あ る.こ れら の相 補 性 は ユ ニ タ リテ ィ と関 係 が あ る.自 発 的 に対 称 性 の破 れ た 理 論 で は,ヒ く相 殺 す る役 目 を担 う.例 え ば,H0とh0を
ッ グ ス を含 む 過 程 が発 散積 分 を正 し 交 換 す る過 程 の 寄 与 が,WW散
乱 の 発 散 積 分 を相 殺 す る役 目 を担 うの で あ れ ば,両
者 の 結 合 定 数 は標 準 モデ ル
ヒ ッ グ ス の 結 合 定 数 と一 定 の 関 係 に なけ れ ば な ら な い.
(3.63a) 表3.2を
見 れ ば こ の 関 係 式 が 成 立 して い る の が わ か る.ま た
(3.63b) (3.63c) も 成 立 す る.さ
ら に,s∼mZ2付
近 で,h0ZZとh0A0Zの
結 合 が と も に小 さ い
と い う こ と も あ り え な い. こ れ ら の 事 実 は,次
が,エ
の 反 応(φ0=H0,
h0)
ネ ル ギ ー 的 に 許 さ れ る 遷 移 で あ れ ば,A0, h0,
つ に はφSMに
H0の
少 な く も どれ か 一
対 す る と 同 程 度 の 検 出 効 率 を もつ こ と を 意 味 す る.
b. MSSMヒ
ッ グ ス探 索 の 現 状 と将 来
荷 電 ヒ ッ グ ス に つ い て は,(3.62)を
参 照 す る と,
(3.64) が い え る.H+の
検 出 は,τν モ ー ド で も 純 ハ ド ロ ン モ ー ド で も 可 能 な の で,
tanβ の 値 に よ ら な いmH+の
下 限 値 がLEPで
求 め ら れ て い る3,26).
(3.65a) (H0,
h0, A0)のeeコ
ラ イ ダ ー で の 発 見 法 は,標
ほ と ん ど 同 じ で あ る が,Aの
存 在 で 自 由 度 が 増 す の で,e-e+→h0Z*の
に,e-e+→h0A→ττbb,4ジ で は,LEP,
SLCのデ
準理論 の ヒッグス発 見法 と ほか
ェ ッ トチ ャ ネ ル も 使 え る よ う に な る.現
時 点
ー タ よ り3,26),
(3.65b) が い え て い る(図3.15(b)).LEP200で GeVな
は,中
性 ヒ ッ グ ス に 対 し,mh〓105
ら ば 発 見 能 力 が あ る こ と は す で に 述 べ た.
LEP200で
発 見 で き な い と き,次
期e+e-コ
の く ら い に 設 定 す る 必 要 が あ ろ う か.中 射 補 正 を し て も,mhの ら れ て い る.ち
ラ イ ダ ー の エ ネ ル ギ ー
性 の 軽 い ヒ ッ グ スh0に
値 は そ う 大 き くは な ら ず,150GeV程
な み に,パ
は ど
対 し て は,放 度 が 上 限 と考 え
ラ メ ター 値 を 超 対 称 理 論 の 合 理 的 な 範 囲(例
えば
m(t)=1TeV,
mt=175GeVと
し て,1
動 か す 限 り は,0<mA<∞
パ ラ メ ター を
の 範 囲 で,mh〓115GeVと
な る.し
た が っ て,
で あ れ ば 発 見 領 域 に 入 る. ハ ド ロ ン コ ラ イ ダ ー で のh0, 見 法 に 準 じ る が,ヒ
H0, A0の
発 見 法 も また 標 準 理 論 で の ヒ ッ グ ス 発
ッ グ ス 粒 子 種 の 増 え る こ と,超
壊 分 岐 比 が 大 い に 変 わ る こ と な ど に よ り,前 ず し も 当 て は ま ら な い.し
た が っ て,h0が
イ ダ ー で 見 つ か る 保 証 は な い.荷 ttX,
t→H+b,
LEP200も ば,崩
H+→
軽 い か ら と い っ て,ハ
電 ヒ ッ グ ス は,mH±<mtな
し くはLHCで,h0(ま
た は 他 の ヒ ッ グ ス)の
準 モデ ル の ヒ ッ グ スφSM0で
ら ば,pp→
tanβ)の
パ ラ メ タ ー を決 め あ る と確
る い は 標 準 モデ ル に は な いA0やH±
の生 成
反 応 な ど の 存 在)が
不 可 欠 で あ り,こ
は な くMSSMヒ
存 在 が 確 認 で きれ
ッ グ スh0で
岐 比 の 決 定(あ
は,ヒ
ドロ ン コ ラ
τνを 通 じ て 見 つ け る こ と が で き る.
認 す る た め に は,分
とLHCで
節 で 議 論 した ヒ ッ グ ス探 索 法 は 必
壊 分 岐 比 を 精 度 よ く 測 る こ と に よ り,(mA,
ら れ る.標
対称粒子 の存在 によって崩
れ が 次 の 課 題 と な る.た
だ し,LEP200
ッ グ ス セ ク タ ー の 探 索 の み か ら は,MSSMの
可否 が判 定 で
き る 上 記 パ ラ メ タ ー 平 面 の す べ て を 被 う こ と は む ず か し い か も し れ な い と議 論 さ れ て い る24,27)(図3.16).先
図3.16
に 標 準 モ デ ル に お け る最 小 ヒ ッ グ ス の 探 索 で
LEP200とLHCで 探 索 可 能 な 超 対 称(MSSM)パ ラ メ ター 領 域 を 各 種 ヒ ッグ ス(H±, H0, h0, A0)の 検 出 可 能 な 崩 壊 モ ー ド と と も に示 す24).パ ラ メ ター を楽 観 的 に とれ ば す べ て の 領 域 を カ バー で き るが,設
定 の 仕 方 で は,探
索 達 成 不 可 能 な 領 域 が 生 じ る.
も 検 出 の 不 確 実 な 質 量 領 域(H0→2γ
モ ー ド と4lモ
超 対 称 モ デ ル の ヒ ッ グ ス で はH0,h0→ な り,検
γγ,4llな
ー ドの 境 目)が
どの分 岐 比 が さ ら に 小 さ く
出 困 難 な 領 域 が 存 在 す る た め で あ る.こ
の 高 輝 度 のe+e-リ
強
結
合
の 場 合 は,
ニ ア コ ラ イ ダ ー を 必 要 と す る.
3.5
3.5.1
ヒッ グス は素 粒 子 か
理 論
ユ ニ タ リテ ィ や ト リ ヴ ィ ア リ テ ィ の 議 論 か ら,ヒ そ1TeVを
超 え る こ と は な い と議 論 し た.も
な い と き は ど う な る か.ヒ WW散
あ っ た が,
し,質
ッグ ス粒 子 の質 量 は お お よ 量1TeV以
ッ グ ス の 質 量 が1TeVを
乱 振 幅(3.21)で,mH2≫sと
下 で見つか ら
大 き く 上 回 る と き は,
す る と,
(3.66) と な り,s≒(1.8TeV)2で
ユ ニ タ リー 極 限 に 到 達 す る.こ の場 合,1.8TeVよ
りエ ネ ル ギ ー の 低 い と こ ろ で,新 現 象(共 鳴 現 象 の 発 生 も し くは 新 相 互 作 用 の 介 入)が 発 生 す る こ とが期 待 され る.ヒ
ッ グ ス の 質 量 が,新 現 象 の 介 入 す る エ
ネ ル ギー よ り大 き い と こ ろ に あ る とい う こ と は,ヒ
ッ グ ス の相 互 作 用 が 新 現 象
で の理 論 体 系 の 低 エ ネ ル ギ ー近 似 とい う こ と を 意 味 す る.ヒ
ッグ ス の 実 体 は,
素 粒 子 で は な く新 相 互 作 用 に よ る 力 学 的 現 象(例
に述 べ るテ クニ
え ば,後
クォー ク の 束 縛 状 態)と 見 な さ なけ れ ば な ら な い. こ の よ うな新 現 象 を探 る有 効 な手 段 は何 で あ ろ うか.仮 らな い と して も,ゲ ー ジ ボ ソ ン の 縦 波 成 分WL,ZLは る か ら,WL,ZLの した が っ て,WLWL散
に ヒ ッグ ス が 見 つ か
ヒ ッ グ ス機 構 の 産 物 で あ
もつ 相 互 作 用 は ヒ ッ グ ス の もつ 相 互 作 用 と 同 起 源 で あ る. 乱(WLZL,ZLZL散
乱 を含 む)を 調 べ る こ と に よ り電 弱
対 称 の 破 れ の 原 因 を 追 求 す る こ とが で き る.mH〓1TeVと き い こ と(λ/4π〓O(1)),す
い う こ とは λが 大
な わ ち ヒ ッ グ ス セ ク ター が 強 結 合 とな る こ と を示
す か ら,摂 動 論 的 扱 い は 予 言能 力 を失 う.わ れ わ れ はWLWL散 し て,新
し い 物 理 現 象 の ヒ ン トを知 りた い わ け で あ る が,そ
散 乱 の 反 応 率 の 信 頼 で き る計 算 法 が あ る だ ろ うか,と
乱 過 程 を観 察 の 場 合,WLWL
い う疑 問 に直 面 す る.幸
い な こ とに答 は イ エ ス で あ る.こ の 道具 とな るの が"等 価 定 理"と"低 ギー 定 理"で まず,わ
エネル
あ る.
れ わ れ は ヒ ッ グ ス粒 子 は存 在 し な い に して も対 称 性 の 自発 的 破 れ を
引 き起 こす ヒ ッ グ ス機 構 は 働 い て い る と仮 定 す る.こ の 場 合 ヒ ッ グス は超 伝 導 に お け る クー パ ー 対 の よ うに 複 合 粒 子,ま グ ス機 構 を働 かせ る に は,ヒ
た は 類 似 の 力 学 的 現 象 で あ る.ヒ
ッ
ッ グ ス ス カ ラー と同 じ役 割 を果 たす 少 な く も4種
の 等 価 ス カ ラー 場(w±, z, hと 書 く.必 ず し も素 粒 子 で あ る必 要 は な く複 合 体 で も よ い)が 存 在 し,そ の 系 の 自 己 相 互 作 用 は 実 効 的 に 次 のLSB(SB: metry
breakingの
sym
略)で 表 さ れ る とす る28).
(3.67a) こ の 式 は,ヒ
ッ グ ス 自 己相 互 作 用 項 と 同 じ形 を採 用 し た もの で あ る.す
ち,対 称 が 自発 的 に破 れ る前 の(3.2)の
なわ
ラ グ ラ ン ジ ア ン で,
(3.68) と お け ば,(3.67a)が
得 ら れ る.こ
の 新 しい 相 互 作 用 が 活 躍 す る領 域 の エ ネ
し よ う.こ
の相 互 作 用 の 結 果 自発 的 に 対 称 性 が 破 れ
ル ギ ー ス ケ ー ル をMSBと て,hが をhと
真 空 期 待 値,=υ お く.こ
の と き,hが
ス トー ン ボ ソ ンw±,
を も つ と き,h=υ+h'と
し て,あ
質 量 を もつ と と も に,3個
zが 出 現 す る.こ
ら た め てh'
の 質 量 の な い ゴー ル ド
れ ら の 粒 子 間 の 相 互 作 用LSBは
(3.67b) で表 され る.こ の ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ンが ゲ ー ジ場 と結 合 す れ ば,弱 相 互 作 用 のW±
とZ0が
質 量 を獲 得 す るの は 今 ま で通 りで あ る.こ の と き次 の 等 価 定
理 が 成 立 す る. a. 等 価 定 理 十 分 高 エ ネ ル ギ ー(s≫mW2 Hの
散 乱 振 幅 は,w±,
等 価 定 理 が 成 立 す れ ば,ベ で 置 き換 え られ るから,相
, mZ2)で は,W±,
Z0の 縦 波 成 分 や ヒ ッ グ ス
z, hの 散 乱 振 幅 と等 し い. ク トル 粒 子 で あ るW,
Zを,ス
カ ラー 粒 子 のw,
z
互 作 用 の 性 質 を調 べ る上 で計 算 が 簡 単 に な る とい う
利 点 が あ る.等 価 定 理 を摂 動 の1次
で検 証 す るの は 容 易 で あ る7).例 え ば
(3.69a) (3.69b) は,LSBを
使 っ て 容 易 に 計 算 で き る が,mH2=2λυ2,
(3.69)は(3.19)に
等 し い こ と が 直 ち に わ か る.等
ゲ ー ジ 結 合 の 最 低 次,λ る29).こ
を 使 え ば,
の こ と は 大 事 で あ る.な
な い 強 結 合(λ/4π ≒1)の
価 原 理 はRゲ
ー ジ で は,
の す べ て の 高 次 に お い て 正 し い こ とが 証 明 さ れ て い ぜ な ら,わ
れ わ れ は摂 動 展 開 で は 近 似 の よ く
場 合 に 応 用 し た い か ら で あ る.
b. 低 エ ネ ル ギ ー 定 理 次 に,(3.67a)で,w± σ はJP=0+の
→ π±, z→
メ ソ ン,fπ
MeV, Ⅰ-§10.1.3参
照)と
い る も の に 等 し い30).σ れ に よ っ て,σ
π0, h→
σ,
(π は π 中 間 子,
は π→ μν崩 壊 の 崩 壊 定 数 でfπ=0.94mπ=132 置 き 換 え た も の は,い
わ ゆ る σ モ デ ル と呼 ば れ て
モ デ ル は カ イ ラ ル 対 称(SU(2)L×SU(2)R)の
が 真 空 期 待 値
を も つ と き,現
ン ボ ソ ン が π 中 間 子 で あ る と 見 な す 立 場 で あ り,強 や,ア
イ ソ ス ピ ン 対 称(SU(2)L+R)を
再 現 し,低
れ る ゴ ー ル ドス トー
い 相 互 作 用 で のPCAC
エ ネ ル ギー で の πや 核 子 の 関
与 す る 現 象 を よ く記 述 す る こ と が 知 ら れ て い る.σ て 次 の 低 エ ネ ル ギ ー 定 理 が 成 立 す る31).例
自発 的破
モ デ ル か ら ππ 散 乱 に つ い
え ば π+π-→
π0π0過 程 で,
,4πfπ な ら ば,
(3.70) が 成 立 す る.こ 称;QCDで
の 定 理 は,σ
モ デ ル が も つ 対 称 性 の 性 質(SU(2)L×SU(2)R対
ク ォ ー ク の 質 量mu=md=0な
ら ば 厳 密 に 成 立 す る)と,π
が こ
の 対 称 群 の 自 発 的 破 れ に 伴 う ゴー ル ドス トー ン ボ ソ ン で あ る と い う 議 論 か ら カ レ ン ト代 数 を 使 っ て 導 か れ る も の で,反
応 現 象 の モ デ ル の 如 何,摂
関 わ ら ず 成 立 す る 一 般 的 な 定 理 で あ る.そ と も と に も ど し て,s≪(4πυ)2で す る 条 件 が 整 い,
こ で,π あ れ ば,低
±→w±,
動の次数 に
π0→z,
σ→h,
エ ネ ル ギー 定 理 が 成 立
(3.71) が い え る.さ ンWL,
ZLに
ら にs≫mW2で
あ れ ば 等 価 定 理 が 成 立 し て,w,
zは
ゲー ジ ボ ソ
置 き 換 え ら れ る か ら,
(3.72) が 成 立 す る.(3.69b)と 動 の0次
比 較 す る と,s≪2λυ2で
あ れ ば,強
結 合 の 場 合 で も摂
計 算 が 正 し い 低 エ ネ ル ギ ー の 振 る 舞 い を 与 え る こ とが わ か る.(3.20)
を 使 っ てJ=0の
部 分 波 振 幅a00(J=I=0)に
変換す る と
(3.73a) が い え る.可 W±W±
ZZの
能 な チ ャ ネ ル と し て はW+W-→ZZの
ほ か に,W+W-,
の 弾 性 散 乱 が あ り,aJI=a00, a11, a02の3個
弾性 散 乱 振 幅 は こ の 近 似 で は0で
W±Z,
の 独 立 な 振 幅 が 存 在 す る.
あ る.そ れ ぞ れ の 振 る舞 い は
(3.73b,c) と な る29).こ
れ ら の振 幅 は低 エ ネ ル
タ リ テ ィ 極 限│a00│=1に
ー で はsに
達 す るsは,(3.73a)か
比 例 し て 増 加 す る の で,ユ
ニ
ら
(3.74) し た が っ て,sが(1.8TeV)2に ム が 働 い て,ユ
到 達 す る 以 前 に,s≒MSB2で
何 らか の メ カ ニ ズ
ニ タ リ テ ィ を満 た す よ う に な る は ず で あ る.有
ス が 存 在 す れ ばMSB=mHで
あ り,ま
限質量 の ヒッグ
さ し くそ う し た メ カニ ズ ム の 一 つ を与 え
る. ヒ ッ グ ス が 比 較 的 軽 い 粒 子(mH≪1TeV)で 4π=mH2/(8πυ2)≪1)の
で,弱
の 議 論 は 弱 い 力 の4-フ
と も に 増 加 す る 振 幅 を 与 え,
U(1)の
ニ タ リー 極
ェ ル ミ相 互 作 で,ユ
タ リテ ィ が 破 れ る と い う 昔 の 議 論 と 平 行 し て い る.mW≪400GeVで ゆ え に,ユ
は 小 さ い(λ/
相 互 作 用 は 弱 結 合 の ま ま で あ り,ユ
限 を 超 え る 事 態 は 心 配 し な くて よ い.こ 用 がsと
あ る な ら ば,λ/4π
ニ
あったが
ニ タ リ テ ィ極 限 が 実 現 す る 前 に 振 幅 を 減 衰 さ せ る 機 構(SU(2)×
非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ 理 論)が
い 値 で あ っ た.mW∼400GeVで
介 入 し,弱
相 互 作 用 の 結 合 定数gWは
あ っ た な ら ばgW∼O(1)と
小 さ
な り弱 相 互 作 用 は
強 結 合 に な っ て い た で あ ろ う.mH∼1TeVの (a)に
示 す32).mHが1TeVく
な っ て,強
振 幅a00の
振 る 舞 い を 図3.17
ら い ま で 見 つ か ら な け れ ば,λ/4π
結 合 の 理 論 と な り,π π が 共 鳴 を つ く る よ う にWLWLも
≒O(1)と 共 鳴 をつ く
る な ど 多 彩 な 現 象 が 現 れ る 可 能 性 が あ る. c. テ ク ニ ロ ー こ う し た 理 論 の 代 表 的 な も の が テ ク ニ カ ラ ー 理 論33)で あ る*7).σ QCDが
対 応 し た よ う に,LSBに
は,テ
ク ニ フ ェ ル ミ オ ン に,テ
の 源 を 付 与 さ せ,そ
は テ ク ニQCDを
対 応 さ せ る.テ
同 様 で あ る と す る も の で あ る.QCDに
π, σが 存 在 し た よ う に テ ク ニ π と テ ク ニ σが 存 在 し て,こ
で あ り,テ
ク ニQCDと
ク ニ カ ラ ー と い う カ ラ ー に 比 べ て 一 回 り強 い 力
の 力 学 はQCDと
トー ン ボ ソ ン と し て,ヒ
モデル に
ッ グ ス 機 構 を 司 る.す
れ が ゴー ル ドス
な わ ち ヒ ッ グス粒 子 は 複 合 粒 子
ク ニ フ ェ ル ミ オ ン 対 が 凝 縮 し た も の と 見 な す 立 場 で あ る.テ
クニカ
ラ ー と い う 強 い 相 互 作 用 が こ れ ら テ ク ニ フ ェ ル ミ オ ン に 作 用 す る の で,QCD に お け る ρや ω メ ソ ン に 対 応 し て,テ ち,テ
ク ニ ρ や テ ク ニ ω を つ く る.す
ク ニ カ ラ ー 理 論 に よ れ ばO(1TeV)の
領 域 に た くさ ん の 共 鳴 が 存 在 す
(a) 図3.17
なわ
(b) TeV領
域 で のWLWL散
乱 の振 る舞 い
(a) I=J=0の 散 乱 振 幅.点 線 は937GeVの ヒ ッ グ ス が あ る と きの 標 準 理 論 最 低 次 摂 動 計 算.実 線 お よび 一 点 鎖 線 はユ ニ タ リー化 した場 合 の振 る 舞 い.ダ ッ シ ュ線(LET)が 低 エ ネル ギー 定 理 に よ る32). (b) テ ク ニ ρ メ ソ ン(ρrc)が 存 在 す る場 合,LETに 比 べ どれ だ け 断 面 積 が 大 き く な るか の 例 を, e-e+コ ライ ダ ー の場 合 につ いて 示 す.mρrc=mρ(υ/fπ)≒1.8TeVと した17).
*7) テ クニ カ ラー 理 論 は フ ェル ミオ ンの質 量 発生 機 構 や 香 りを変 え る中 性 カ レ ン ト抑 圧 に 問 題 が あ り,現 実 味の あ る モデ ル構 築 は 困難 で あ るが,こ こに 述 べ る考 え方 は十 分 成 立 す る.
る.テ
ク ニ ロー の 質 量 は,QCDと
の 類 推 が 成 り立 つ も の な ら ば30)
(3.75) くら い と推 察 され る.こ 3.17(b)に
の と き,WLWL散
乱 の 振 る舞 い が ど う変 わ るか を 図
示 す17).
d. WW散
乱
ヒ ッグ ス が 存 在 せ ず と も テ ク ニ ρの よ う な共 鳴 群 をつ く る場 合 は,WLWL の 不 変 質 量MWWの
スペ ク トル に 共 鳴 の 山 が 出 現 し,LHCの
よ うな ハ ドロ ン
コ ラ イ ダー で 調 べ る こ とが で き る.天 地 創 造 主 が 意 地 悪 くて,強 結 合 相 互 作 用 で も共 鳴 をつ く らな い 宇 宙 をつ くった場 合 が 考 え う る最 も悲観 的 な シナ リオ と な るが,こ
の と きで も低 エ ネ ル ギ ー 定理 に よ っ て最 低 限 の振 幅 は保 証 さ れ て い
る.し か し,こ の場 合 のWLWL散 中 か ら意 味 の あ るWLWL散
乱 の 計 数 率 は 非 常 に低 い の で,QCD雑
音の
乱 情 報 が得 ら れ るか を確 認 して お くこ と は,対 称
性 の 破 れ の 原 因 を追 求 す る際 の抜 け 道 をつ く らな い とい う意 味 で非 常 に 重要 な 課 題 で あ る.
3.5.2 ヒ ッ グ ス機 構 解 明 の 戦 略 こ れ ま で の ヒ ッ グ ス セ ク タ ー で の 議論 に よ れ ば,軽 1TeV)が
い ヒ ッグ ス(mH≪
見 つ か るか,弱 相 互 作 用 が 強 結 合 理 論 に な るか の ど ち らか の シ ナ リ
オ が 確 実 に 実 現 す る.標 準 理 論 を正 し い と して 計 算 した放 射 補 正 と実 験 デ ー タ と の 比 較 か ら,あ 100∼300GeVの
る い は 超 対 称 性 が 存 在 す る な ら ば,ヒ
と こ ろ で見 つ か る可 能 性 が あ る.そ れ ほ ど軽 くは な い に して
も標 準 モ デ ル ヒ ッ グ ス に 対 し て ∼800GeVく ダーLHCに
ッ グ ス は 軽 くて
ら い ま で は,ハ
ドロ ン コ ラ イ
発 見 能 力 が あ る.ヒ ッ グ ス が素 粒 子 と して 発 見 さ れ た 場 合 は,後
に 議 論 す る よ うに 超 対 称 性(後 述 第5章)の
存 在 す る可 能 性 が 大 き く,超 対 称
粒 子 の 存在 が 期 待 され るな ど大 い な る発 展 が望 め る で あ ろ う.ヒ ッ グス が 非 常 に 重 いか 存 在 し な い と き,つ ま り強 結 合 の 場 合 は 多 分1TeV付 ラー な どの 共 鳴群 が あ る と予 想 され,や
近 に テ クニ カ
は り新 しい物 理 の 豊 か な実 りを期 待 で
き る. 強 結 合 で な お か つ 共 鳴群 が 存 在 しな い とい う最 悪 の シナ リオ の場 合,ヒ
ッグ
ス セ ク タ ー の 解 明 の 鍵 と な る の はWLWL散 イ ダ ー と し て は,最
乱 で あ る.次
悪 の シ ナ リ オ の 場 合 で もWLWL散
世 代 の ハ ドロ ン コ ラ
乱 の 調 査 が 可 能 とな る
た め の 最 低 限 の エ ネ ル ギ ー お よ び ル ミ ノ シ テ ィ を も つ こ と が 望 ま し い.将
来計
画 に お け る ハ ドロ ン コ ラ イ ダ ー の 設 定 す べ き エ ネ ル ギ ー と ル ミ ノ シ テ ィ は,電 弱 対 称 性 の 破 れ が い か な る形 態 を とろ う と もあ らゆ る場 合 に 対処 で き るた め の 必 要 最 低 限 の 仕 様 を 満 た さ な け れ ば なら な い と い う 論 理(い theorem)は,Chanowitz34)に を40TeVよ
よ り 強 調 さ れ た,こ
り相 当 大 き く し,か
わ ゆ る,no
lose
れ を 実 現 す る た め に は,
つ ル ミ ノ シ テ ィ は1034/cm2/secを
実 現す
る ス ー パ ー ハ ドロ ン コ ラ イ ダ ー を 必 要 とす る. 一 方,比 第5章
較 的 軽 い ヒ ッ グ ス が 発 見 さ れ た 場 合 を 想 定 し て み よ う.こ
で 後 述 す る よ う に,超
が っ て,次
の 段 階 と し て,ヒ
対 称 性 が 存 在 す る 確 率 は か な り 高 く な る.し ッ グ ス の 崩 壊 分 岐 比 を 測 る こ と に よ り,標
グ ス か 超 対 称 ヒ ッ グ ス か を 決 め な け れ ば な ら な い が,こ ン コ ラ イ ダ ー よ りeeコ
の 場 合,
の 点 に 関 し て は ハ ドロ
ラ イ ダ ー の 方 が は る か に 強 力 で あ る.ヒ
超 対 称 粒 子 の 生 成 能 力 も ま た,ハ
ッグス以外の
ドロ ン コ ラ イ ダ ー の 場 合 は,強
い相 互 作 用 を
す る グ ル ー イ ノ*8)か ク ォ ー ク の パ ー ト ナ ー で あ る ス ク ォ ー ク(squark)に ぼ 限 ら れ る が,eeコ
ラ イ ダ ー で は,エ
た
準 ヒッ
ほ
ネ ル ギー 的 に可 能 な らば ほ と ん どす べ
て の 新 粒 子 の 生 成 か つ 同 定 が 可 能 で あ る. 一 般 的 にeeコ て い る の で,ヒ
ラ イ ダ ー は,発 ッ グ ス 発 見 後,そ
見 能 力 ば か り で な く,精
の 質 量 に 合 わ せ て 的 を絞 る 戦 略 が あ り う る.
ヒ ッ グ ス の 質 量 が 未 知 の 現 時 点 で は,標 件 は 外 せ な い で あ ろ う.軽
準 ヒ ッ グ ス の 生 成 能 力 を も つ と い う条
い ヒ ッ グ ス の 発 見 機 と し て 期 待 す る な ら ば,
が 最 低 の 要 求 で あ る が,将 secが
密 実 験 能 力 に も優 れ
来 的 に は
必 要 で あ ろ う と考 察 さ れ る.LHCの
こ れ だ け の 性 能 が 必 要 で あ り,JLC
次 に く る 次 世 代 の 加 速 器 と し て は,
(Japan
Linear
(CERN
LInear
Collider;日
(Next
Linear
(独)な
ど の 建 設 を め ざ し て 研 究 開 発 が 精 力 的 に 進 め られ て い る.
*8) 詳 細 は 第5章
Collider;米),CLIC
,L〓1034/cm2/
本),NLC
Collider;欧),TESLA
で 議 論 す るが ,超 対 称 性 が あ れ ば す べ て の 既 知 の 素 粒 子 に 対 し,ス ピ ン が 1/2異 な る 超 粒 子 パ ー トナ ー が 存 在 す る.グ ル ー イ ノ は グ ル ー オ ン の パ ー トナ ー で ス ピ ン1/2を も ち,ス ク ォ ー ク は ク ォ ー ク の パ ー トナ ー で ス ピ ン0を も つ.
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4 ニ ュ ー
これ ま で は,い
ト リ ノ1)
か に 標 準 理 論 が実 験 デ ー タ を矛 盾 な く統 一 的 に 記 述 す る か と
い う観 点 か ら話 を進 め て きた.こ れ か らは,む
しろ 標 準 理 論 の 欠 点 に 焦 点 を あ
て て 議 論 を進 め る こ と にす る.現 在 の と こ ろ標 準 理 論 に 明 らか に 矛 盾 す る事 実 は,実 験 デ ー タ と し て は な い.CPの
非 保 存,ヒ
ッ グ ス粒 子 の 存 在 と相 互 作 用
の性 質 が 実 験 的 に解 明 され れ ば,結 果 次 第 で は標 準 理 論 の 改 訂 に つ なが る可 能 性 が あ る が,標 準 理 論 の 枠 内 に お さ まっ て し ま うこ と も考 え られ る.こ の 章 で は標 準 理 論 の わ ず か な 拡 張 です み,か つ実 験 的 に も最 初 に標 準 理 論 の 限 界 を越 え た ニ ュー ト リノ の現 象 に つ い て述 べ る こ と と し,理 論 的 に発 展 性 の あ る大 統 一 理 論 お よ び そ の 関 連 に つ い て は 第5章 で 述 べ る .標 準 理 論 を越 え よ う とす る こ れ らの 試 み が,検
証 手 段 と し て の 実 験 手 法 に も新 風 を吹 き込 み,高 エ ネ ル
ギー 加 速 器 を使 用 す る伝 統 的 な手 段 の ほ か に,非 加 速 器 素 粒 子 物 理 学 と い う学 際 的 な 要 素 を もつ 新 しい 分 野 を開 拓 した こ とは 興 味 深 い.そ
の手 段 の 一 つ,地
下 に 設 置 した水 チ ェ レ ン コ フ測 定 器 を使 い,陽 子 崩 壊 検 出 とい う素 粒 子物 理 学 上 の研 究 テー マ を追 求 す る段 階 で,副 産 物 と して 超 新 星 ニ ュー トリ ノが観 測 さ れ,続
い て 太 陽 ニ ュー ト リノ検 出の 成 功 に よ って,ニ
ュ ー トリノ天 文 学 と い う
新 しい 学 問 分 野 が 創 始 され た.学 問 の発 展 が新 し い手 法 の 開 拓 を促 し,新 し い 手 段 が 新 し い学 問 を創 始 す る相 互 発 展 の典 型例 で あ る.ニ ュ ー トリ ノ天 文 学 を 含 め 天 体 物 理 学 と素 粒 子 物 理 学 との 境 界 領 域 は,将 来 性 豊 か な新 分 野 で あ る. この 章 で は,ニ
ュ ー トリ ノ天文 学 にふ れ て,こ の 興 味 あ る分 野 を垣 間見 る こ と
に す るが,深 入 りは せ ず素 粒 子 物理 に とっ て の 意 義 づ け に絞 って 話 を進 め る.
4.1 ニ ュ ー ト リ ノ 質 量 の 理 論 的 諸 問 題
4.1.1
質 量 の 上 限 値
ニ ュ ー ト リ ノ の 質 量 問 題 は,古
くて 新 し い 問 題 で あ る.そ
ウ リ が ニ ュ ー ト リ ノ の 存 在 を 予 言 し た と き,す ロ に 近 い で あ ろ う と 予 想 し て い た.今
も そ も1930年
で に 質 量 は(当
時 の 基 準 で)ゼ
日 に 到 る ま で β 崩 壊 の ス ペ ク トル か ら
推 察 さ れ る ニ ュ ー ト リ ノ の 質 量 は 実 験 精 度 の 限 界 で 常 に ゼ ロ に 等 し い.こ 実 とパ リテ ィ 非 保 存 発 見 に よ り,ニ 照)と
み る 可 能 性 が 生 じ た.実
い う事 実 は,ワ 示 す.さ
ュ ー ト リ ノ を2成
場 合νR=(νL)c=νRで 一 方,質
照)で
量 が 有 限 で あ れ ばνRが
の 結 果,ニ
準 理 論 で はνRは
準 理 論 で は,νRが
ー ジ 粒 子 に よ るSU(2)相
い 不 毛(sterile)粒
あ っ て 悪 い わ け で は な い.ま い わ け で も な い.例
か し,こ
ま り,検
た 標 準 理 論 の 枠 内 でνRが
出 の方 法 が な
ま っ た く相 互 作 用 し な
の 湯 川 型 相 互 作 用 はSU(2)×U(1)
れ は,uク
ォ ー クに 質 量 を与 え る た め に
量 項 を 与 え る.す
な わ ち,νRが
こ と と質 量 が 有 限 で あ る こ と は 標 準 理 論 内 で は 同 じ こ と を 意 味 す る.こ 荷 電 共 役 状 態 と し て 指 定 す る と き はνcRと
は,νcR=νR,マ
よっ
ォ ー ク とが 結 合 す る 相 互 作 用 が あ る の と 同 じ 理 由 で あ る.こ
の 場 合 φ が 真 空 期 待 値 を も て ば,質
*1) νLの
の根拠
単 の た め な い と し て い る だ け で あ り,
え ば,L∼gνLνRφ
ゲ ー ジ 理 論 の 範 囲 内 で 許 さ れ る.こ
量
存 在 し な い と要 請 して
ら に,Q=I3+Y/2に
互 作 用 も な い.つ
子 で あ る か ら,簡
ぜ な ら,質
あ っ た と し て も1重 項 に 属 す る
互 作 用 は な い.さ
ま た0で あ る の で,U(1)相
ヒ ッ グ ス とuク
の
ュー トリ ノに 先行 す る座 標 系 で 見 れ ば
ュ ー ト リ ノ の 質 量 は ゼ ロ と な っ て い る.し
は 強 固 な も の で は な い.標
てYも
あ る 可 能 性 も 否 定 で き な い.こ
存 在 し な け れ ば な ら な い.な
ヘ リ シ テ ィ が 逆 転 す る か ら で あ る.標
の で,ゲ
子 と反 粒 子 の 区 別
あ る.
が 有 限 な ら ば 光 速 以 下 で し か 走 れ ず,ニ
い る.こ
みが観察 され る と
然 が ψLの み を 選 択 し て い る こ と を
ュ ー ト リ ノ は 電 荷 を も た な い こ とか ら,粒
の つ か な い マ ヨ ラ ナ 粒 子(Ⅰ-§3.8参
の事
分 ワ イ ル 解(Ⅰ-§3.8参
験 的 に は 常 にνLとνcR*1)の
イ ル 解 ψLと ψRの う ち,自
ら に,ニ
パ
ヨ ラナ 粒 子 の と き は,νcR=νRで
書 く.粒 あ る.
存在す る の と き,
子 と反 粒 子 の 区別 が あ る とき
物 質 との相 互 作 用 の 強 さ は,ヒ
ッグ ス を介 す る とい う理 由 で 質 量 に 比例 し,質
量 が 小 さい と き は存 在 検 証 の テ ス トが 困 難 な の で あ る.以 上 がνRを な い と し て も 困 らな い理 由 で あ る. 現 在,ニ
ュ ー ト リ ノ の 質 量 は 実 験 誤 差 内 で い ず れ も0も
し く は 非 常 に0に
近
い こ とが 示 さ れ て い る2).
(4.1) 一 方
,宇
宙 論 を使 え ば,す
べ て の 香 りの ニ ュ ー トリノ に つ い て
(4.2) (4.3a) (4.3b) の 範 囲 に な け れ ば な ら な い こ とが い え る(文 献3,4),後 述 §8.4参 照).す ち,宇 宙 論 に よ れ ば,ニ
ュー ト リ ノの 質 量 が あ っ て は い け な い禁 止 領 域 が あ
り,こ の 条 件 を考 慮 す る と,ν μ, ν τの質 量 も また100eVを 論 で き る.な お,LEPに 質 量 が45GeV以
なわ
お け るZの
超 え な い こ とが 結
見 え な い モー ドへ の 崩 壊 幅 の 測 定 か ら,
下 の ニ ュ ー トリ ノの 存 在 は既 知 の3種 以 外 は 否 定 さ れ る.
現 在 で は ニ ュー ト リノ振 動 の 存 在 が 確 立 し,ニ ュー トリ ノが 質 量 を もつ こ と は実 験 的 に 証 明 さ れ た とい え る(後 述 §4.6).そ れ が 素 粒 子 論 の 中 で どの よ う な位 置付 け を与 え られ るか は こ れ か らの 話 で あ るが,標 準 理 論 を超 え て発 展 す べ き方 向 の 指 針 とな る こ と は 間違 い な い. 標 準 理 論 で は,仮 も,な
に ニ ュー ト リ ノに 有 限 質 量 を与 え る こ と が で き た と して
ぜ ニ ュ ー ト リ ノ だ け が 他 の レ プ トン や ク ォ ー ク に 比 べ て 極 端 に 質 量 が 小
さ い の か(例
え ばmνe/me〓10-5)を,同
問 題 が あ る.質
時 に説 明 しなけ れば な らな い とい う
量 の 起 源 が ヒ ッ グ ス の 真 空 期 待 値 に あ る な ら ば,ヒ
ッ グ ス との
相 互 作 用 が ニ ュ ー ト リ ノ だ け 違 う 理 由 は 何 も な い か ら で あ る.注
意 深 い読者
は,ト て105も
ッ プ の 質 量(mt∼175GeV)は 大 き く,質
一 番 軽 い 電 子 の 質 量(0.5MeV)に
比べ
量 の ス ケ ー ル 問 題 は ニ ュ ー ト リノ に 限 った 特 殊 な 問題 で は
な い と思 う か も しれ な い.し に 軽 い(mνe≪me, mνμ≪mμ, mν
か し,ニ
ュ ー ト リ ノ の 質 量 は 同 じ世 代 の 中 で 特 別
τ≪mτ)の
に 反 し,ト
ップ の 質 量 が 重 い こ と
は 世 代 の 謎 と密 接 に結 びつ い て い て,別 の 次 元 の 問 題 と と ら え る必 要 が あ る. な お余 談 に な るが,世 代 の謎 に 関 して は,現 時 点 で 説 得 力 の あ る説 明 は存 在 し な い.一 つ の可 能 性 は,ク ォー クや レ プ トン が 複 合 粒 子 で,第2,第3世
代は
第1世 代 の 励 起 状 態 で あ る と考 え る もの で あ る.し か し,こ れ とて も,励 起 状 態 の エ ネ ル ギー が 基 底 状 態 の105倍
もあ る レベ ル 構 造 は考 え に くい とい う難 点
を もっ て い る. そ こで,以 下 マ ヨラナ の可 能 性 を含 め て,質 量 項 の 一 般 的 な取 扱 いか ら議 論 を始 め よ う.
4.1.2
質
量
行
列
a. マ ヨ ラ ナ 質 量 任 意 の 二 つ の ス ピ ノ ー ル場,ψ1,
ψ2に 対 し て,
(4.4) は,ロ
ー レ ン ツ 不 変 量 で あ る.ψ1=ψ2の
を デ ィ ラ ッ ク 質 量 項 と い う.し
と き,ラ
か し,ψ1=ψ2cも
己 エ ネ ル ギ ー と して の 解 釈 は 成 立 す る か ら,質
グラ ンジア ンの 中の この項 し く は ψ2=ψ1cで
あって も 自
量 項 と し て の 候 補 に な る.通
常
こ の 形 を 質 量 項 に 加 え な い の は,
(4.5a) (4.5b) で あ るの で,位 相 変 換 に対 して不 変 で は な く,電 荷 ま た は レプ トン数 保 存 則 を 破 るか ら で あ る.こ の こ とか ら直 ち に荷 電 粒 子 は 上 記 の よ う な質 量 項 を もた な い こ と,つ ま りマ ヨラ ナ 粒 子 で は あ りえ な い こ とが わか る.ニ ュー ト リノ は, 荷 電 レプ トン と と もに2重 項 をつ くるの で,荷 電 粒 子 と共 通 の レプ トン数 を も ち,か つ レ プ トン数 保 存 が 成 立 す る と考 え る と,弱 相 互 作 用 の 実 験 事 実 は 矛 盾 な く説 明 で き る.こ の 場 合 ニ ュ ー ト リノ は マ ヨ ラナ で は な い.し か し,よ
く考
え る とニ ュー ト リ ノ は 中 性 で あ り,粒 子 と 反 粒 子 を 区 別 す る 指 標 が な い.実 際,こ えば
れ ま で レプ トン数 保 存 の証 拠 と考 え られ て きた あ る種 の 反 応 の有 無,例
な ど は,弱
相 互 作 用 のV-A型
と い う 性 質 に よ っ て,レ
プ トン と右 巻 き は1対1に い こ と に 気 が つ く*2).真
対 応 す る の で,ヘ
プ ト ン と左 巻 き,反
レ
リ シ テ ィ 保 存 則 の テ ス トで し か な
の レ プ ト ン 数 非 保 存 の テ ス ト は 後 述 す る 二 重 べー タ
崩 壊 を 見 な い と い け な い.す
な わ ち,こ
れ ま で の実 験 事 実 の み で は ニ ュー トリ
ノ が デ ィ ラ ッ ク ニ ュ ー ト リ ノ で あ る と は 断 定 で き な い の で あ る.し レ プ トン 数 保 存 が 破 れ て もか ま わ な い と い う条 件 を 入 れ れ ば,ニ
た が っ て,
ュ ー トリノ の
最 も 一 般 的 な ラ グ ラ ン ジ ア ン は,
(4.6) と書 け る.第1項
が 運 動 エ ネ ル ギー を表 し,第2項
3, 4項 をマ ヨ ラ ナ 質 量 項 と呼 ぶ.第3,
以 下 が 質 量 項 で あ る.第
4項 が な け れ ば,こ
れ は通常 のデ ィ
ラ ッ ク粒 子 の ラ グ ラ ン ジア ンで あ る.こ の ラ グ ラ ン ジ ア ンは 次 式 で定 義 され る 2個 の マ ヨ ラナ 場
(4.7) を導 入 して 書 き直 す と理 解 しや す い.任 意 の フ ェ ル ミオ ン場χ, φに 対 し,
(4.8) が 成 立 す る こ とを 使 えば
(4.9a) (4.9b) (4.9c) (4.9d) が 示 せ るの で,ラ
*2) ニ
グ ラ ン ジア ン は
ュ ー ト リ ノ が 質 量 を も て ば,ニ
分 が(mν/Eν)2の
割 合 で 混 じ る.ま
テ ィ 成 分 の 寄 与 が あ る.し
ュ ー ト リ ノ生 成(π+→ た,反
た が っ て,こ
応(ν μ+p→
μ+νμ)に お い て 逆 ヘ リ シ テ ィ 成 μ+n)に
も 同 じ割合 だ け逆 ヘ リシ
れ を 越 え る 精 度 で,π+→
+nの 存 在 を 否 定 す れ ば,真 の レ プ トン 数 保 存 の 証 拠 と な る.逆 レ プ トン 数 非 保 存 の 証 拠 と な る.
μ++ν μ, ν μ+p→
μ+
に 一 例 で も見 つ か れ ば
(4.10a) と書 き 直 せ る.こ
こ に,
(4.10b) は ニ ュ ー ト リ ノ 質 量 行 列 と 呼 ば れ る.
上 の ラ グ ラ ン ジ ア ン か ら,ニ ュー ト リノが 質 量 を もち か つ 実 験 事 実 に 適 合 す る ケー ス は 次 の3通
りに 分 類 で き る こ とが わ か る.
(1) mD≠0, mL=mR=0: デ ィ ラ ッ ク ニ ュ ー ト リノ で 荷 電 粒 子 と 同 じ方 程 式 に し た が う.同
つνRとνLの
両 方 が 存 在 し,こ の 事 実 に よっ て 位 相 変 換 不 変 性 が 成 立 し,そ
の 結 果 レ プ トン数 が保 存 す る.こ の 場 合,νRの
不 在 と質 量 が な い こ と は 同 じ
こ とを意 味 す る.こ の事 情 はνRの 存 在 しな い任 意 の モデ ル,例 なSU(5)大
じ質 量 を も
え ば 最 も簡 単
統 一 理 論 で も同 じで あ る.こ の場 合 の 質 量 を与 え る メ カ ニ ズ ム は,
uク ォー ク と同 じで あ り,フ ァ イ ンマ ン 図 と して は 図4.1(a)の 他 の レ プ トン質 量 を導 く と同 じ真 空 期 待 値 で,小
よ うに 表 す.
さ い 質 量 を 出 す た め に は,
ヒ ッ グ ス とニ ュ ー トリノ の結 合 は 他 に 比べ て 大 幅 に小 さ い と仮 定 しな け れ ば な らず,不
自然 で あ る と考 え られ て い る.
(2) mL≠0, mR=mD=0: 左 巻 き の マ ヨ ラ ナ ニ ュ ー ト リ ノ の み で 質 量 が 組 め る ケ ー ス で あ る.標 で は,左
巻 き ニ ュ ー ト リ ノ の み が 存 在 す る.し
ノ で あ れ ばνRが
な り,ア
ヨ ラナ ニ ュ ー ト リ
存 在 せ ず と も 質 量 を も つ 可 能 性 は 存 在 す る.し
子 と 組 ん で ア イ ソ ス ピ ン2重 ピ ン1と
た が っ て,マ
項 を 構 成 す る の で,質
イ ソ ス ピ ン1/2の
準理論
か し,νLは
電
量 項∼νLTCνLは
ア イ ソス
ヒ ッ グ ス に は 結 合 し な い か ら,ト
リー レベ
ル の 標 準 理 論 で は や は り質 量 は も て な い.た
だ し,ア
イ ソ ス ピ ン1の
ヒッグス
χ =(χ0 , χ-, χ--)が存 在 し て 真 空 期 待 値 を も て ば 質 量 を も つ こ と が で き る5).こ の 場 合 の ラ グ ラ ン ジ ア ン は 次 の 形 と な る.
(4.11) こ の ラ グ ラ ン ジ ア ン 自 身 は レ プ ト ン 数 を破 る と は 限 ら な い.χ を 担 え ば よ い か ら で あ る.し
か し,そ
に よ っ て 質 量 を 発 生 さ せ た 段 階 で,も 破 る こ と に な る.こ のχ')が
発 生 し,こ
の 結 果 質 量0の
え る.天
の 場 合χ に 真 空 期 待 値 を も た せ る こ と と も と は 保 存 し て い た レ プ ト ン 数Lを ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン(χ0=υ+ρ+iχ'
れ を マ ヨ ロ ン と呼 ぶ.し
に 対 す る 考 察 か ら,こ
時 発 生 す る有 限 質 量 の ρ
ρeに よ る 星 の 冷 却 作 用 加 速 が,観
進 化 速 度 と矛 盾 し な い と い う条 件)よ い う 条 件 が つ くの で6),Z→
り,ρ
Γinvに 対 す る 寄 与 は3種
測 され る星 の
の質 量 は 軽 くな け れ ば な ら な い と
ρχ'が運 動 学 的 に 可 能 と な る.こ
え な い チ ャ ネ ル へ の 崩 壊 幅ΓinvにΓ(Z→
の 場 合,Zの
ρχ')=2Γ(Z→νiνi)だ
な わ ち,ア
に よ り 否 定 さ れ る.ま
た,χ0が
の と き は,レ
イ ソ ス ピ ン1の
マ ヨ ロ ン の 存 在 はLEP実
験 験
レ プ トン数 を もた な い と きは マ ヨ ロ ン は 発 生
プ ト ン 数 保 存 を 破 る相 互 作 用 を は じ め か ら 仮 定 す る
つ ヒ ッ グ ス の 真 空 期 待 値 を小 さ く し な け れ ば な ら な い と い う 困
難 を合 わ せ もつ. 標 準 理 論 の ヒ ッ グ スΦ=(φ+,φ0)を
(a)
見
け 寄 与 し,
の 既 知 の ニ ュ ー ト リ ノ で つ き て い る と い うLEP実
デ ー タ に 矛 盾 す る.す
こ と に な り,か
か し,同
の マ ヨ ロ ンの 存 在 は 否定 され る こ とが 次 の よ う に して い
体 物 理 の 考 察(γe→
し な い が,こ
が レ プ ト ン 数2
(b) 図4.1
使 っ て 質 量 項 を 出 す に は,
(c)
(d)
ニ ュ ー ト リノに 質 量 を与 え る メ カニ ズ ム
(a) デ ィ ラ ッ ク ニ ュー トリ ノ (b) マ ヨ ラナ ニ ュー ト リ ノ,(c), (d)は(b)の モデ ル 例 (c) レ プ トン数 を破 る荷 電 ス カ ラーh-と 荷 電 ヒ ッ グ ス φ-を 通 す ルー プ (d) シー ソー メ カ ニ ズ ム φ0は ア イ ソス ピ ン1/2の
標 準 ヒ ッ グス で あ る.
(4.12) の 形 の 相 互 作 用 が 必 要 で あ る(図4.1(b)).こ で,何
らか の 新 相 互 作 用(適
れ は,繰
用 エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ル ∼Λ)の
ル ギ ー で の 実 効 ラ グ ラ ン ジ ア ン と 見 な せ る.そ こ れ に は,レ
ス が あ れ ば,h-と
ら に荷 電 ヒ ッ グ
も結 合 す る の で ル ー プ が 形 成 で き て,(4.12)の こ で φ が 真 空 期 待 値υ
mν ∼fυ2/Λ と な り,f∼1, υ=246GeVと ∼1014GeVを
を も て ば,ニ
す れ ば,数eV程
必 要 と す る.こ
な る1).す
な わ ち,ニ
実効 ラグラ ュー ト リノ質 量
度 の 質 量 を つ くる
の 相 互 作 用(νLφ
散 乱)に
ケ ー ル で の ユ ニ タ リ テ ィ を 要 求 す る と,f/Λ<2π/mPlanckと mν〓10-5eVと
示 す.
項 の 荷 電 ス カ ラ ーh-
存 在 を 想 定 す る(L∼-glcRνLh-).さ
ン ジ ア ン が つ く れ る.こ
に は,Λ
高 次効 果 の低 エ ネ
の 一 例 を 図4.1(c)に
プ ト ン 数 保 存 を 破 る ア イ ソ ス ピ ン1重
(ヒ ッ グ ス で は な い)の
り込 み 不 可 能 で あ る の
プ ラン クス
な り,こ
の ときは
ュ ー ト リ ノ 質 量 が 小 さ い と い う 事 実 は,
ニ ュ ー ト リ ノ質 量 発 生 の 原 因 と な る 新 相 互 作 用 の エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ル が 非 常 に 大 き い と い う こ と を 示 唆 す る こ とが わ か る.大 ∼1015GeV)が
,ニ
統 一 理 論(エ
ネ ル ギー ス ケ ー ル
ュー ト リノ質 量 を 説 明 す る有 力 な候 補 と して 注 目 さ れ るの
は こ の 理 由 に よ る. (3) mD≠0,
mL≠0,
左 巻 き と右 巻 き の2種 で あ っ て,上 る.こ
mR≠0:
の マ ヨ ラ ナ ニ ュ ー ト リ ノ が 存 在 し,mL≠mRの
場合
記 の 最 も一 般 的 な ニ ュ ー ト リ ノ質 量 行 列 で 記 述 さ れ る場 合 で あ
の 場 合,余
分 の 右 巻 き マ ヨ ラ ナ 粒 子νRが
と は 両 立 し な い.νRが
存 在 す れ ば,そ
存 在 す る の で や は り標 準 理 論
れ の 交 換 に よ っ て,上
結 合 を 実 効 的 に 実 現 で き る(図4.1(d)).こ
に 述 べ たνLνLφφ
の 場 合Λ=mνRと
な る.こ
れ を
シ ー ソ ー メ カ ニ ズ ム と呼 ぶ. b.
シ ー ソ ー メ カ ニ ズ ム7)
(4.10)の
ニ ュ ー ト リ ノ 質 量 行 列 を 対 角 化 し て 得 ら れ る 二 つ の 場 を,ν', N,
そ の 固 有 質 量 を そ れ ぞ れmν, の 混 合 で あ り,決 外 は,標
mNと
す る.こ
の 質 量 固 有 解 はL成
ま っ た カ イ ラ リ テ ィ 固 有 状 態 に な い.い
準 理 論 の 枠 内 で 考 え る こ と に し よ う.そ
ヒ ッ グ ス が な い か ら,νLは
質 量 を も て ず(mL=0),デ
まνRを
うす る と,ア
分 とR成
分
導 入 す る以
イ ソ ス ピ ン1の
ィ ラ ッ ク 質 量mDは
通
常 の ク ォ ー ク も し く は 荷 電 レ プ トン の 質 量 を 表 す こ と に な る.し
た が っ て,
(4.13) と い う条 件 が 設 定 され る の で,質 量 固有 解はmLを
無 視 す る近 似 で 次 の よ うに
表 され る.
(4.14a)
(4.14b) 質 量 が 負 で あ る こ とは 問 題 で は な い.ν ≡γ5ν'と変 換 す れ ば,質 量 を正 に で き る から で あ る.上 式 か ら
(4.15) と な り,mRを
大 き くす る こ と に よ りmν
シ ー ソ ー 機 構 と い う 名 の 由 来 で あ る.こ
を 小 さ くす る こ と が で き る .こ の と き,ν
れが
は ほ ぼ 左 巻 き で あ り,N
は ほ と ん ど 右 巻 き で あ る. mD≒mlと mRを
お き,ニ
ュ ー ト リノ質 量 を実 験 に 矛 盾 し な い 範 囲 に 入 る よ うに
設 定 す る と,
(単位eV)
(4.16) と な る.す
な わ ち,ニ
∼O(1015GeV)か
ュ ー ト リ ノ 質 量 だ け か ら は,mRは
ら ∼200GeVく
大 統 一 の スケー ル
らい まで の 可 能 性 が あ る .た
宇 宙 論 に よ る 制 限 を信 じ る な ら ば,mRは
だ し,(4.2)の
相 当 に 大 き く(〓108GeV)と
らな
け れ ば な ら な い. 以 上 に 述 べ た よ う に,マ
ヨ ラ ナ ニ ュ ー ト リ ノ で あ れ ば,ニ
を 小 さ くす る メ カ ニ ズ ム が い くつ か 考 え ら れ る.デ 合 は,小
ィ ラ ッ クニ ュー ト リノの 場
さ い 質 量 を 自 然 に 導 入 す る こ と が む ず か し く,恣
れ ば な ら な い.こ が 有 力 で あ る.
の 理 由 で,ニ
ュー ト リノの 質 量
意的 に 手 で 入 れ な け
ュ ー ト リ ノ は マ ヨ ラ ナ 粒 子 で あ る とす る 考 え 方
4.1.3
左右対称 モデル
a. 質 量 ハ イ ラ ー キ ー こ う し た メ カ ニ ズ ム を 与 え る 一 つ の 可 能 性 と し て 左 右 対 称 モ デ ル が あ る8). 左 右 対 称 モ デ ル と は,標 る も の で,対
準 理 論 の 中 のSU(2)LをSU(2)R×SU(2)Lに
称 性 の 破 れ が 次 の2段
拡 張 す
階 を 経 て 生 じ る と 仮 定 す る.
(4.17) <φ>R, Lは,そ
れ ぞ れ 右 巻 き,左
巻 きゲ ー ジ粒 子 に質 量 を 与 え る ヒ ッ グ ス
粒 子 が 真 空 期 待 値 を も つ こ と を 示 す.最 を 獲 得 し,次
初 の 段 階 で ゲ ー ジ ボ ソ ンWRが
に 通 常 の 電 弱 相 互 作 用 の 対 称 の 破 れ が 起 き て,WLと
ク ォ ー ク や レ プ ト ン も 質 量 を 獲 得 す る と 考 え る.WRの ば,WRの
右 巻 き フ ェ ル ミオ ン2重
制 さ れ る から,右 る 舞 う.し
質量 と もに
質 量 が 十 分 大 きけ れ
項 に 対 す る 結 合 は 大 幅 に(∼mWL2/mWR2)抑
巻 き フ ェ ル ミ オ ン は,近
似的 にSU(2)Rの1重
項 の よ う に振
た が っ て,
(4.18) は,左
右 対 称 理 論 の 枠 組 み の 中 で は 自 然 な 設 定 で あ る.左
一 理 論 の 枠 組 み の 中 で 自 然 に 現 れ る(例 標 準 理 論 のSU(2)L×U(1)と す る こ と に よ り,ニ
え ばSO(10)モ
右 対 称 モ デ ル は大 統
デ ル)
.以
上 の 議 論 で,
い う 枠 組 み を,SU(2)R×SU(2)L×U(1)に
拡 張
ュ ー ト リ ノ の 質 量 の 有 限 性 と小 さ さ が 自 然 に 説 明 で き る こ
と が わ か る. b. 右 巻 き ボ ソ ン の 質 量 の 現 象 論 的 制 限 現 象的 には,左
右 対 称 理 論 に 対 す る 制 限 は,次
の よ う に 与 え ら れ る.右
巻 き
粒 子 に 作 用 す る ゲ ー ジ ボ ソ ン と 左 巻 き粒 子 に 作 用 す る ゲ ー ジ ボ ソ ン は 混 合 角 ζ で 混 合 し,物
理的 に 観 測 さ れ る 質 量 固 有 状 態 のW1±, W2±,
常は 混 合 角 ζは 小 さ い と み な し,W1≒WL, て,mR≫mLと (1) mZRの ZRが
す る.数
な る.通
Z2≒ZRと
考 え
値的 に は 次 の よ う な 条 件 がつ く.
制 限
存 在 す る と, ZRを
介 す る 過 程 の 寄 与 が 加 わ る.す
トに よ る 断 面 積 が 変 わ る が,標 mZRに
W2≒WR, Z1≒ZL,
Z1, Z2と
制 限 が で き て9),
な わ ち,中
性 カ レン
準 理 論 で 実 験 デ ー タ を よ く説 明 で き る こ とか ら
(4.19) (2) mWRの
制限
m(νR)≪mμ の 場 合:こ +A相
の 場 合,νRが
μ の 崩 壊 生 成 物 と して 現 れ る が,V
互 作 用 を通 す の で,μ の 崩 壊 のV-A相
うか を見 れ ば,WRの
存 在 が わ か る.最
互 作 用 から の ズ レが あ るか ど
も厳 密 な制 限 は,静 止 した 偏 極 μ の 崩
壊 で 測 定 した ミシ ェル パ ラ メ ター(ξ)の 測 定 か ら得 られ る10).
(4.20) m(νR)〓mμ の 場 合:WRが
あ る と,WLと
の 質 量 差 に 寄 与 す る(図2.6の
同 様 の 過 程 に よ り中 性K中
箱 型 図 の 中 のWL→WRと
間子
す る).ク ォ ー ク の
混 合 行 列 が 左 右 対 称 とす れ ば,こ の 寄 与 は計 算 で き て
(4.21) SMの
指 標 は標 準 理 論 の 意 味 で あ る.質 量 差 は標 準 理 論 で ほぼ 説 明 で き る こ と
か ら,
(4.22) が い え る10,11).な お,QCD補 な る12).上
正 を 考 慮 す る とmWRの
記 議 論 の 結 論 は,mZR,
mWRの
下 限 は さ ら に2倍
質 量 が 十 分 大 き け れ ば,左
大 き く
右 対 称 モ
デ ル の 存 在 は 現 在 の デ ー タ と矛 盾 し な い と い う こ と で あ る.
4.2
レ プ トン 数 非 保 存 テ ス ト
マ ヨ ラ ナ 粒 子 が 存 在 す る と い う こ とは レ プ ト ン数 が 保 存 し な い と い う こ と で あ る.レ
プ トン 数 非 保 存 の テ ス トで 重 要 な のは2重
崩 壊 と は 原 子 核 が 電 子 を2個 応 で,2ν
放 出 し て,原
モ ー ド と0ν モ ー ドの2種
β 崩 壊 で あ る13,14).2重
子 番 号 が2大
β
き い原 子 核 に 変 わ る 反
類 あ る.
2ν モ ー
ド
(4.23a)
0ν モ ー
ド
(4.23b)
2ν モ ー ドは 通 常 の β 崩 壊 が 核 内 で2重
に 起 き る も の で(図4.2),弱
い相 互
(a)
(b) 図4.2
(c)
2重 ベ ー タ崩 壊 の三 つ の 過 程
(a) 2ν モ ー ド,(b)
0ν,(c)
マ ヨロ ン放 出 モ ー ド
作 用 の 高 次 の 結 果 と し て 当 然 に 期 待 さ れ る も の で あ る.0ν 後 で レ プ トン 数 が2変
化 し て い て,レ
モ ー ドは 反 応 の 前
プ トン 数 保 存 が 破 れ て は じめ て 起 こ る 反
応,つ
ま り ニ ュ ー ト リ ノ が マ ヨ ラ ナ で な い と 起 こ ら な い 反 応 で あ る.図4.2
(b)の
ヴ ァ ー テ ッ ク ス1の
は,と
も に 電 子 放 出 に 関 わ る の で,一
ニ ュ ー ト リ ノ と ヴ ァー テ ッ ク ス2の
方 が 放 出 な ら ば 他 は 吸 収 の 関 係 に あ る.
つ ま り,一
方 が ヘ リ シ テ ィ プ ラ ス で あ る な ら ば,他
ら な い.ヘ
リ シ テ ィ が 逆 の 成 分 と 結 合 さ せ る に は,ニ
か(こ
の 場 合,逆
参 照),あ る.実
方 は マ イナ ス で なけ れ ば な
の ヘ リ シ テ ィ 成 分 が ∼(mν/me)2程
る い はV+A相
験 的 に は,0ν
ニ ュー ト リ ノ
ュ ー ト リ ノ が 質 量 を もつ 度 存 在 す る.Ⅰ-(3.97)
互 作 用 を もつ か の ど ち らか ま た は 両 方 が 必 要 で あ モ ー ド と2ν モ ー ドは,2個
の 電 子 の エ ネ ルギー 和 が,一
定 の 値 を と る か 連 続 ス ペ ク トル と な る か で 区 別 が で き る(図4.3).2重ベー 崩 壊 は1023年
も し く は そ れ 以 上 の 崩 壊 寿 命 を も ち,自
タ
然 環 境 に よ る背 景 雑 音
(宇 宙 線 も し く は 測 定 器 を 構 成 す る物 質 内 の ア イ ソ トー プ か ら の 乱 雑 信 号)の 影 響 の 除 去 が 困 難 な 実 験 で あ る.2ν
モ ー ドは 観 測 さ れ て い て15),
(4.24) (4.25) を 与 え る が,0ν ウ ム(Ge)か
モ ー ドは 検 出 さ れ て い な い.現
在,最
良の上 限値 はゲ ルマ ニ
ら 得 ら れ て いて16),
(4.26)
こ れ を,ニ ュ ー ト リノ質 量 の 上 限値 に換 算 す る に は 原 子 核 行 列 の知 識 が 必 要 で あ るが,1桁
くら い の不 定 性 を伴 う.
しか し,0ν モー ドに 現 れ る行 列 要 素 は2ν モー ドに現 れ る行 列 要 素 と同 じ で あ る の で,2ν
モー ドが 測 定 で きて い る場 合 の 両 モー ドの 比 は信 用 で き る と
考 え られ る.種 々 の 計 算 を総 合 してマ ヨ ラナ ニ ュー ト リノの 質 量 の上 限 値 は17)
(4.27) とな る. 左 右 対 称 モ デ ル で は,V+Aに 定 数 のV-A結
結 合 す る相 互 作 用 が 存 在 す る.V+A結
合
合 に 対 す る 比 を λ とす る と,実 験的 に は,
(4.28) を 与 え る.た
だ し,モ
デ ル 計 算 を す る と,軽-重
う 余 分 の パ ラ メ タ ー が 入 る の で,WR-WLの
ニ ュー ト リノ の 混 合 角 θ と い
混 合 角 ζやmWRに
対 す る制 限は
モ デ ル に 依 存 す る13). マ ヨ ロ ン が 存 在 す れ ば,2個 る(図4.2(c)).こ
の ニ ュ ー ト リノが マ ヨロ ン とな る過 程 が 存 在 す
の と き は2ν モ ー ドの ス ペ ク トル の 形 が 変 わ る の で 検 知 で
き る(図4.3(c)).実
験 的 に は2ν モ ー ドの 電 子 エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル が マ ヨ
ロ ン が な い と し た と き の ス ペ ク トル に よ く合 う の で,マ
図4.3
2重ベー
ヨロ ンに 制 限 が つ け ら
タ崩 壊 に おけ る電 子 の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル
(a) 2ν モ ー ド,(b)
0ν,(c)
マ ヨ ロ ン放 出
*3) ニ ュ ー トリノに 香 りの 混合 が 存 在 す る と きは ,2重 ベ ー タ崩 壊 よ り求 め られ るマ ヨ ラナ 質 量 は, と質 量 固有 状 態 の 混合 行 列 の 重 み をつ け た平 均 値 で 置 き 換 えね ば な らな い.こ こ に,ηjは 位相 因子 で,CP固 有 状 態 に よ り符 号 を変 え る量 で あ る.こ の 位 相 因 子 が あ る おか げ で,固 有 の マ ヨ ラ ナ質 量 は 大 き い に もか か わ らず2重 ベー タ崩壊 に寄 与 す る<mν>は 小 さい とい う状 況 も起 こ りう る こ とに 注 意す る.た だ し 大 方 の モ デ ル で は,<mν>≒mνeで
あ る.
れ る.し
か し,マ
ヨ ロ ン はνR2個
す で に 述 べ た よ う に,LEPのZ崩
か ら つ く ら れ る の で ア イ ソ ス ピ ン1を
も ち,
壊 の 実 験 結 果 で 否 定 さ れ て い る.
4.3 ニ ュ ー ト リ ノ の 電 気 的 性 質
ニ ュー トリ ノの 電磁的 性 質 は,次 の 電 流 の 形状 因子 を調 べ る こ とに よ り得 ら れ る.
(4.29) こ こ に,qμ=pμ-p'μ 率,第4項
で あ る.第1,
2項 は 電 気 分 布 を 与 え,第3項
が 電 気 双 極 子 能 率 を与 え る.電 気 双 極 子 はT保
が磁 気能
存 を破 る の で 以 下
の 議 論 で は 考 え な い こ と にす る.
4.3.1
電
荷
分
νLに 対 し て は,γ5は
布 単 に-1を
をQ(q2)=F1(q2)+G1(q2)と 径 をrと
す る と,形
与 え る の み で あ る の で,νLの
書 く.ニ 状 因 子Q(q2)は
電 気 形 状 因子
ュー ト リノ の 電 荷 の 広 が りの 平 均 自乗 半 ρ(r)を 電 荷 分 布 関 数 と し て
(4.30) と書 け るか ら,ニ
ュ ー ト リ ノ の 全 電 荷(上
互 作 用 が 可 能 と な る.ニ 与 え られ る.計
式 第1項)は0で
あ っ て も,電
磁相
ュ ー ト リ ノ の 電 磁 形 状 因 子 を発 生 す る 過 程は 図4.4で
算 に よ れ ば18),
(4.31) を 与 え る.νe, ντの値 電 気 分 布 効 果 は,現
は20∼30%の
象的 にはZ0の
範 囲 でν μの 値 に ほ ぼ 等 し い.こ
の
ベ ク トル 結 合 定 数 の 値 の 変 化gV→gV+δgV
(ま たは 同 じ こ と で あ る が δsin2θW)と
し て 現 れ る.
(4.32) sin2θWの 値 の 世 界 平 均 値 とνμe散乱 デ ー タか ら導 い た値 との 差 を電 荷 分 布 に
よ る効 果 とす れ ば,
(4.33) が 得 ら れ1),計
算 値 の 精 度 に あ と一 息 と い う と こ ろ で あ る.
(a) 図4.4
4.3.2
磁
気
(b)
ニ ュ ー ト リノ と電 磁 場 との 相 互 作 用 を示 す フ ァ イ ンマ ン 図
能
率
γ行 列 の 性 質 か ら任 意 の フ ェ ル ミ場X,
φ に 対 し,
(4.34) が 成 立 す る か ら,磁
気 相 互 作 用 は ス ピ ン を 反 転 す る.し
イ ル ニ ュ ー ト リ ノ は 磁 気 能 率 を も て な い.デ で あ る.次
た が っ て,2成
ィ ラ ッ クニ ュ ー ト リノ な らば 可 能
に マ ヨ ラ ナ ニ ュ ー ト リ ノ を 考 察 す る た め に,(4.29)の
を ニ ュ ー ト リ ノ が 複 数 の 香 り を も つ 場 合 に 一 般 化 し て,マ をNi=niL+nicRと
書 く と,磁
分 の ワ
磁 気 能率 項
ヨ ラナ ニ ュ ー ト リノ
気 能 率 に よ る相 互 作 用 ラ グ ラ ン ジ ア ン は 次 の よ
う な 形 に 書 き 表 せ る.
(4.35) 次 に,njcR=CnjLTを
使 え ば,
(4.36) で あ る か ら,
(4.37) と な る.し
た が っ て,対
気 能 率 を も て な い.し
角 項 は な く,マ か し,非
ヨ ラ ナ ニ ュ ー ト リ ノは 自 分 自 身 で は 磁
対 角 項 は 存 在 し う る か ら,2種
ニ ュ ー ト リ ノ が 存 在 す る と き は,
以 上 の マ ヨ ラナ
(4.38) に よ っ て,磁
場 と相 互 作 用 が 可 能 で あ る(遷
移 磁 気 能 率 を も つ).す
な わ ち,
ニ ュ ー ト リノ が 磁 気 能 率 を もつ こ とが わ か れ ば そ れ は デ ィ ラ ッ ク粒 子 で あ る が,磁
場 に よ る 相 互 作 用 が あ る か ら と い っ て,デ
ィ ラ ッ ク 粒 子 と証 明 さ れ た こ
と に は な ら な い. 標 準 理 論 で,図4.4の
ル ー プ 図 を 計 算 す る と19),
(4.39) とな り,非 常 に小 さい. 磁 気 能 率 μνを もて ば,電 子 と散 乱 が 可 能 で あ り,断 面積 が
(4.40) だ け 増 加 す る20).Eν
は 入 射 ニ ュ ー ト リ ノ の エ ネ ル ギ ー,Eeは
散 乱 さ れ た電 子
の エ ネ ル ギ ー で あ る. 原 子 炉,加
速 器 に よ る 実 験 デ ー タ は,ニ
い 標 準 理 論 で よ く 説 明 で き て い る か ら,こ
ュー ト リノの 磁 気 能 率 効 果 を含 まな れ か ら,μν の 上 限 が 求 め ら れ る2).
(4.41a)21) (4.41b)21) (4.41c)22) 地 上 の 実 験 値 制 限 よ りは 多 少 強 い 制 限 が,恒 る.星
の 中 で は,フ
星 の 冷 却 機 構 考 察 よ り得 られ
ォ トンが 質 量 を もつ プ ラ ズ モ ン γ*に な って い て,γ*→
νν反 応 を 引 き起 こす.ニ
ュ ー ト リノ は超 高 密 度 星 で な い 限 り星 の 内部 の 物 質
との相 互 作 用 は 無 視 で き るの で その ま ま外 部 に エ ネ ル ギー を もち さ り,恒 星 の 燃 焼 に よ る進 化 を促 進 す る.ニ ュー トリ ノが磁 気 能 率 を も て ば,そ の 分 冷 却 作 用 が 大 き くな る.こ の効 果 は,恒 星 の 進 化 の 後 期 で特 に 著 しい.恒 星 の 冷 却 速 度 を観 測 結 果 と矛 盾 しな い 範 囲 に お さめ る と,μν に対 す る上 限 が得 られ る. μ(νe)<1.1×10-11
恒 星 冷 却(γ*→
νν )
<(2∼3)×10-12
赤 色 巨星
<0.5×10-10
宇 宙 元 素 合 成(νLe→νRe)
(4.42a)23) (4.42b)24) (4.42c)23)
(4.42d)25) 宇 宙 元 素 合 成 の 議 論 は,ビ が,宇
ッ グバ ン 直 後 電 弱 相 互 作 用 に よ りつ く ら れ る νR
宙 の エ ネ ル ギー 密 度 を あ ま り大 き く しな い とい う条件(宇 宙 の ヘ リウム,
重 水 素 組 成 な ど を 乱 す)か
ら得 ら れ る.超
新 星SN1987Aに
関 す る考 察
な り定 性的 な 取 扱 い を含 む の で,3種
の ニュー トリノ
は §4.7.3で 後 述 す る. 天 体 物 理 の 議 論 は,か
が もつ 一 番 大 き な磁 気 能率 に対 して の制 限 は,大
ざっぱに言って
(4.43) と して よ い で あ ろ う.い ず れ にせ よ,標 準 理 論 の予 想 値 とは か け 離 れ た大 きさ の 精 度 で しか 抑 え られ て い な い.逆 が,標
に い え ば,上
記 の 実 験 の 上 限 値 を下 回 る
準 理 論 予 想 値 よ りは 大 き い値 が 見 つ か れ ば,そ れ は新 現 象 の 証 拠 とい う
こ とに な る.
4.4
4.4.1
ニ ュ ー トリノ混合
ニ ュ ー トリノ質 量 の 直 接 測 定
ニ ュ ー ト リ ノ には3種
類 の 香 りの 状 態νf(f=e,μ,τ)が
は 質 量 固 有 状 態νj(j=1∼3)と
一 致 し な い か ら,異
あ る.こ
れは一般 に
種 ニ ュ ー ト リ ノ間 の 混 合 が
起 こ る 可 能 性 が あ る.
(4.44) こ こ に,Ufjは こ の 場 合,香
ク ォ ー ク セ ク タ ー の 小 林-益 川 行 列 に 対 応 す る 混 合 行 列 で あ る. りの 固 有 状 態 の 質 量 は 各 質 量 の 加 重 平 均 で 表 さ れ る.ま
り の 状 態 が 現 れ る と き は,そ と を 意 味 す る の で,次
た あ る香
れ と結 合 し て い る 質 量 固 有 状 態 が す べ て 現 れ る こ
の よ う な 現 象 が 期 待 で き る26).
(1) K±(π ±)→ μ±νj,e±νjの 崩 壊 がνjとνμ,νeと に 比 例 す る 確 率 で 起 き る.こ
の と き,μ(e)の
の 混 合 を 通 じ て,│Ufj│2
エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル に は,mj
に 対 応 す る と こ ろ に 山 が で き る(図4.5(a)). (2) ベー タ 崩 壊 の よ う な3体 ペ ク トル)の
中 で,mjに
崩 壊 では,カ
ー リー プ ロ ッ ト(エ
対 応 す る と こ ろ が 階 段 状(図4
.5(b))に
ネ ルギー な る.
ス
(3) νjが
μ や 電 子 よ り重 け れ ば,さ
こ の と き の 検 出 方 法 は,い
ら に μ やeに
わ ゆ る ビ ー ム ダ ン プ の 実 験 に ニ ュ ー ト リ ノ検 出 器
を組 み 合 わ せ て 得 ら れ る(図4.6(c)).1次 K中
崩 壊 で き る(図4.6(a)).
陽 子 ビ ー ム が 標的
間 子 を 生 成 し ニ ュ ー ト リ ノ(ν μ も し く はνe)に
ビー ム と な る と き,混
合 が 存 在 す れ ば,│Uiμ│2ま
重 いνiが つ く ら れ る.こ
の 重 いνiは,通
を 叩 い て,π
崩 壊 して ニュー トリノ
た は│Uie│2に
比 例 す る確 率 で
常 の ニ ュー ト リノ と同 じ くニ ュ ー ト
リ ノ検 出 器 の と こ ろ ま で 飛 来 し て,そ
こ で 再 び│Uiμ│2ま た は│Uie│2に
確 率 で μ+(eνe)も
崩 壊 し,異
信 号 を 出 す.し
し く はe+(μνμ)に
た が っ て,μe対
や
比例 す る
種 レ プ ト ン 対(eμ)の
の 生 成 率 よ り│UfiUif'│2(f,f'=μ
特徴 的
ま た はe)が
測 定 で き る27). (4) 香 り の 固 有 状 態 が 時 間的 に 変 化 す る.こ
れは 例 え ば,ν μが 生 成 さ れ て
も 時 間 が た つ とνeに な っ た り す る 現 象 で あ り,ニ
ュー トリノ振動 と呼 ばれ
る28). (1),
(3)の
過 程 は,Kま
MeV領
域 で,(2)の
1MeV領
域 で,有
た は π の 崩 壊 で 生 成 さ れ る の で,1〓mj〓490
過 程は,原
子 核 β 崩 壊 で 生 成 さ れ る の で,1keV〓mj〓
限 質 量 の ニ ュ ー ト リ ノ を 探 す の に 適 し て い る.現
実 験 で は 検 出 さ れ て お ら ず,│Ufj│2<10-3-10-6と
在 までの
い う制 限 が 得 ら れ て い る
(図4.729))*4).
(a) 図4.5
ニ ュー ト リノ混 合 が存 在 して,質 トル
(a) 2体 崩 壊 で はmνi>0で
(b) 量 固 有 状 態 が 混 在 し て い る と きの エ ネ ル ギー 運 動 量 ス ペ ク
あ る と,そ れ ぞ れ の 対 応 す る と こ ろ に 山 が 生 じ,そ の 大 き さ は│Uai│2
(図 は α=μ)に 比例 す る. (b) ベー タ崩 壊 な どの3体 が 階 段 状 と な る.
崩 壊 で は,カ ー リー プ ロ ッ トが 直 線 で な く,Emax-mνiに
対 応 す る とこ ろ
(a)
(b)
(c) 図4.6 ビ
ー ム ダ ンプ に よ る重 い ニ ュー ト リノの 探 求
陽 子 ビー ム を標 的 に あ て て,D,K,π を生 成 させ る.標 的 が 薄 け れ ば,K,π が 崩 壊 す る と き,重 い ニ ュ ー トリ ノが で き,μ-フ ィ ル ター を通 過 し た後,ニ ュー ト リ ノ検 出器 の とこ ろ で 崩壊 し てμ±e〓と い う信 号 を与 え る.標 的 を十 分 厚 くす れ ば,K,π
は 崩 壊 す る 前 に 吸 収 さ れ るが,短
寿 命 のDな
どは
崩壊 で き る. (a) νiの 生 成. (b) νiの 崩 壊 の フ ァ イ ンマ ン図.生 成 ×崩 壊 の 反 応 率 は│UμiUie│2,│Uμi│4に 比例 す る. (c) ニ ュ ー トリ ノ ビー ム 生 成,検 出 器 を ビー ム ダ ンプ 実 験 装 置 と して使 用 す る.
(4)の
ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 で は,質
差
量 そ の も の は 測 定 で き な い が,質
が 観 測 量 と し て 入 っ て く る.シ
じ れ ば,
で あ る か ら,Δm2を
る こ と と 同 等 で あ る.二 直 接 測 定 で は,到 ノ 振 動 で は,実
ー ソー メ カニ ズ ム を 信
決 め る こ と は質 量 を決 め
リチ ウ ム ベ ー タ 崩 壊 に よ る 質 量 の
達 質 量 下 限 が た か だ か0.1∼1eV程
度 で あ る が,ニ
験 条 件 を 適 当 に 設 定 す る こ と に よ り(後
(keV)2∼10-11(eV)2の ら な か っ た こ と,理 ど か ら,質
重 べー タ 崩 壊 や,ト
量 は1eVよ
に 使 え る 現 象 は,ほ
ュー ト リ
述 表4.1),Δm2≒1
領 域 で 測 定 が 可 能 で あ る.(1),(2),(3)の 論 の 予 想 値(4.16)は
量 の 自乗
方法 で見つ か
非常 に 小 さ い 質 量 値 を与 え る こ と な
り は る か に 小 さ い と 考 え ら れ る.こ
の と き,質
量検 出
ぼ ユ ニ ー ク に ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 に 限 定 さ れ る.
4.4.2 ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 異 種 ニ ュ ー ト リ ノ 間 の 振 動 現 象 を 正 確 に 扱 う に は,3種
*4) ベ ー タ 崩 壊 の ス ペ ク トル の 精 密 測 定 より う実 験 デ ー タ が 一 時 話 題 と な っ た が30),こ
,mν=17keVの
間 の遷 移 を 同 時 に解
ニ ュ ー トリ ノ が 存 在 す る と い
の 存 在 は 否 定 さ れ た31).
図4.7
2体,3体
崩 壊 で 得 られ た重 いニ ュー ト リノiと
限 値.mν〓1GeVはe+e-→νiνi反 壊,mν〓1MeVは
く必 要 が あ るが,通
ミュー オ ン ま た は 電 子 との 混 合 行 列 要 素 の 上
応,mν〓500MeVはK崩
壊,mν〓100MeVは
π崩
ペ ー タ崩 壊 で 得 られ た もの29).
常 は 実 験 デー タ を2種 間 の遷 移 の み を仮 定 した 公 式 を使 っ
て解 釈 す る.簡 単 の た めνμとνeの 間 の 遷 移 の み を考 え よ う.こ の 場 合 独 立 な 混 合 行 列 要 素 は た だ1個
の み と な るの で,混 合 角 θ を 使 っ て 次 の よ う に 表 す
こ とが で き る.
(4.45a) (4.45b) νjは エ ネ ル ギ ーEν
(4.46) を も つ と き,時
間 と と もに
(4.47) の よ う に 変 化 す る.し
た が っ て,t=0でνeで
変 化 す る 確 率P(νe→ν
μ)は 簡 単 に 計 算 で き て,
あ っ た も の が,時
刻tでνμ
に
(4.48a) と な る.
を使 え ば,
(4.48b) と書 け る.た
だ し,こ
こ でL=Ctは
ニ ュ ー ト リ ノ発 生 点 よ り測 定 点 ま で の 距
離 を メ ー ト ル(m)で,Δm2は(eV)2で,エ た.ま
ネ ル ギ ーEはMeVの
単位 で表 し
た振 動 の 波 長 λは
(4.49) と な る.νeがνeの
ま ま で 残 る 確 率 は,
(4.50) で 与 え られ る.こ の 式 か ら わ か る よ うに ニ ュー ト リ ノ振 動 は,混 合 が あ り(θ ≠0)か つ 質 量 差 が あ っ て(Δm2≠0)は
じめ て起 こ る現 象 で あ る こ とが わ か る.
測 定 に か か る質 量 の 目安 は,
(4.51) で与 え られ るの で,E/Lを が 可 能 とな る.表4.1に
う ま く選 ぶ こ とに よ り,Δm2の
小 さい 領 域 の 探 索
主 な ニ ュ ー ト リ ノ源 と測 定 で き るΔm2の
目安 を与 え
る. 実 験 的 に は,最 初νeビ ー ム をつ くっ て お い た 上 で,下 流 でνμが 現 れ るか を み る"出 現 の 実 験"と,2カ をみ る"消 滅 の 実 験"と
所 以 上 の 地 点 でνeの 数 を測 定 し,νeの 数 の 変 化 の2種 類 の 方 法 が あ る.技 術 的 に は 出現 の実 験 の 方 が
容 易 で あ るが,測 定 数 値 が 混合 行 列 要 素 を含 む の で,仮 に 振 動 が 存 在 して も混 合 が小 さ い と測 定 に か か ら な い とい う難 点 が あ る.一 方,消
滅 実 験 は,技 術 的
に は よ り困難 で あ るが,混 合 行 列 の 大小 や ニ ュー トリノ種 の数,ま
たニ ュー ト
リ ノが 振 動 に よ っ て変 化 す る先 のニュー ト リノ の種 類(例 え ば,こ
こでは考慮
しな か っ たνL→νR,ν →ν の 可 能 性 を含 む)に
も よ らず に,ニ
動 の有 無 を一 般 的 に 決 定 で き る とい う利 点 が あ る.
ュー ト リノ振
表4.1
ニ ュ ー ト リノ振 動 に よ るΔm2探
索 領 域 の 目安
(%) 地球の直径 ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 が 存 在 す れ ば,混 と が 可 能 で あ る が,振 外 さ れ る 領 域 を2次 域)で
合 比sin22θ
とΔm2を
動 が 観 測 さ れ な い と き は 通 常sin22θ 元 プ ロ ッ ト で 表 す.長
波 長 近 似(L≪
同時 に決 め る こ とΔm2の λ;Δm2の
値 の除 小 さ い領
は,(4.48b)は
(4.52a) と な る.ニ
ュ ー ト リ ノ 振 動 が 見 つ か ら な い と き は,実
験 誤 差 を δ と し て,上
限値
(4.52b) が 与 え られ る.逆 の 短 波 長 近 似(L≫
λ;Δm2の 大 きい領 域)で は,Eが
幅 をも
つ こ と,ニ ュー ト リノ源 や 測 定 地 点 が 広 が っ て い る こ とな ど を考 慮 す る と,振 動 は 平均 化 され て,
(4.53) と な り,混 合 比 の 上 限 値 の み 求 め られ る.加 速 器 実 験 で は δ≒O(10-3∼10-4) ま で 可 能 で あ る が,原 子 炉 や 宇 宙 線 を使 う方 法 で は δ〓0.1で あ り,混 合角 に 対 す る感 度 は大 き くな い. Δm2の 小 さ い領 域 を調 べ るに は,E/Lが
小 さい ほ ど有 利 で あ る.表4.1よ
り太 陽 ニ ュー ト リノ を測 定 す るの が 最 も感 度 が よ い こ とが わ か る.図4.8に
こ
れ まで の 加 速 器 や 原 子 炉 に よ る振 動 実 験 で 除 外 され た領 域 を示 す32).加 速 器 や 原 子 炉 で の 振 動 実 験 の 結 果,探
索 可 能 な領 域 は,わ ず か な 例 外*5)を 除 きほ ぼ
つ き た の で,Δm2の
小 さ な 領 域 に 進 出 し た い 場 合 は,宇
宙 線 も し くは太 陽
ニ ュ ー ト リ ノ に 求 め ざ る を え な い.
(b)
(a) 図4.8
加 速 器,原
子 炉 に お け るニ ュー ト リノ振 動 実 験 で の許 容 範 囲
除 外 さ れ る 領 域 は 各 線 の 右 上 側. (a) ν μ→νe, ν μ →νe, νe→νx (b) ν μ→ν τ, ν μ→ν μ, (νμ→νx) GOESGEN,
CHOOZが
原 子 炉,IMBが
宇 宙 線 に よ る デ ー タ で,そ
れ 以 外 は す べ て 加 速 器 の デ ー
タ32).
4.5
4.5.1
ニ ュ ー ト リ ノ 天 文 学34)
太 陽 ニ ュー トリノ の 謎
a. 標 準 太 陽 モ デ ル(SSM:standard 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ は,太
*5) L〓100∼1000km以
solar model)
陽 の 中心 で の 熱 核 融合 反 応
上 も とる長 基 線振 動 実 験 は これ か らで あ る
.例
え ば,筑
波の高エネ
ル ギ ー 加 速 器 研 究 機 構 の 陽 子 シ ン ク ロ ト ロ ン で ニ ュ ー ト リ ノ ビ ー ム を つ く り,岐 の ス ー パ ー カ ミ オ カ ン デ で 振 動 を 検 出 す る 計 画(K2K)が リ カ の フ ェ ル ミ研 究 所-ス ー ダ ン 鉱 山(MINOS),セ 様 な 計 画 が あ る.
進 行 中 で あ る33).ま
阜神 岡 た,ア
メ
ル ン-グ ラ ン サ ッ ソ の 研 究 所 に も 同
(4.54) の 際 放 出 さ れ る も の で,そ 主 と し てppチ
ェ イ ン と 呼 ば れ る さ ま ざ ま な 原 子 核 反 応(図4.9)の
て 起 こ る も の で あ り,放 4.10に
示 す35).な
で は,同 が,こ
の 正 体 は 電 子 ニ ュ ー ト リ ノ で あ る.熱
お,中
核 融合反応 は 結果 と し
出 さ れ る ニ ュ ー ト リ ノ の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル を 図 心 温 度 が2×107度
じ ヘ リ ウ ム 生 成 反 応 で もC,
N, Oを
を 超 え る 場 合(太 触 媒 と す るCNOチ
陽 よ り重 い 恒 星) ェインが効 く
れ は ま っ た く違 っ た エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル を も つ の で 区 別 は 容 易 で あ
る. b. 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ の 検 出 ⅰ)
ホ ー ム ス テ イ ク実 験
最 初 に 太 陽 ニ ュー ト リ ノ フ ラ ッ ク ス を測 定 し
た の は ア メ リ カ の ホ ー ム ス テ イ ク に 設 置 し た ニ ュ ー ト リ ノ検 出 器 で あ り,1968 年 に ま で さ か の ぼ る36).方 法 は (4.55) の 反 応(エ
ネ ル ギ ー し き い 値:Eν>0.81MeV)を
号 を 防 ぐ た め,615ト
ン の 液 体2塩
図4.9
化 炭 素(C2Cl4)を
太 陽 の 熱 核 融 合 反 応:ppチ
用 い る.宇
宙 線 に よ る偽 信
ア メ リカ の サ ウ ス ダ コ タ
ェイン
図4.10 実 線 がp-pチ
太 陽 ニ ュー トリノ の エ ネ ル ギ ー スペ ク トル
ェ イ ン に よ る もの で,破
線 がCNOサ
州 に あ る ホ ー ム ス テ イ ク 金 鉱 の 地 下1620mに
イ クル に よ る もの.
設 置 し た.さ
雑 音 を 防 ぐ た め 装 置 全 体 を水 の プ ー ル の 中 に 沈 め る.ニ 成 さ れ る ア ル ゴ ン 原 子 核 は,軌 も ど る が,装
置 を35日
る 数 と が つ り合 い,液 に な る.こ
ュ ー トリ ノに よ って 生
道 電 子 を捕 獲 し て 半 減 期35日
で も との 塩 素 に
以 上 働 か せ れ ば 間 断 な くつ く ら れ る 数 と,も 体2塩
とに も ど
化 炭 素 の 中 に は一 定 量 の ア ル ゴ ンが 存 在 す る よ う
の ア ル ゴ ン は 気 体 と な っ て 浮 い て い る の で ヘ リ ウ ム ガ ス を送 り込 ん
で 取 り 出 し,活 X線
らに中性子起 因の
性 炭 に 吸 わ せ て 回 収 す る.ア
を 放 射 す る の で,こ
のX線
ル ゴ ン は 塩 素 に も ど る と き,特
の 数 を 比 例 計 数 管 で 測 れ ば ア ル ゴ ン の 数,し
た が っ て ニ ュ ー ト リ ノ の 反 応 率 が 測 定 で き る.こ を貯 め る 方 式 な の で,ニ
性
の 方 法 は,一
定期間 アル ゴン
ュ ー ト リ ノ が ど の く ら い の エ ネ ル ギ ー を も ち,い
ど の 方 向 か ら き た か と い う こ と は わ か ら な い.ホ
つ,
ー ム ス テ イ ク 測 定 器 は,
ニ ュ ー ト リ ノ捕 獲 率 を, (4.56) と測 定 し た37)(図4.11).た capture/sec/1036atomsの
だ し,SNUと
はSolar
こ とで あ る.一
方,標
Neutrino
Unitの
略 で,1
準 太 陽 モ デ ル35)は
(4.57) を 与 え る の で,観 差 は,理
測 値 は 理 論 の1/3程
論 的 な3σ(σ:自
算 で は6.4±1.4SNUを
度 し か な い.こ
乗 平 均 誤 差)に 与 え る が38),理
の モ デ ル の1σ
とい う誤
相 当 す る 値 を 採 用 し て い る.別
の計
論 値 が 大 幅 に 大 き い こ とは 変 わ り な
い.こ れ が 太 陽 ニ ュー ト リノ の謎 と呼 ば れ る もの の実 体 で あ る.太 陽 ニ ュー ト リ ノの 謎 は,提 起 さ れ て か ら も う20年 以 上 に もな る.こ の 原 因 を太 陽 モ デ ル に求 め れ ば 天 体 物 理 の 問 題 とな り,ニ ュー トリ ノ 自身 の 性 質(ニ ュ ー ト リノ振 動)に 求 め る な らば素 粒 子 の 問 題 とな るの で あ る.
図4.11
ホ ー ム ステ イ ク鉱 山 の35Clに
1日 あ た りの ア ル ゴ ン生 成 率 を示 す.長
ⅱ) 神 岡 実 験
よ る太 陽 ニ ュ ー ト リノ捕 獲 率
破 線 が 標 準 太 陽 モ デ ル.短 破 線 で デ ー タの 平 均 値 を示 す36,37).
これ に 対 して,神
岡地 下 実 験 グ ルー プ は,水
タ ン クの 壁
に光 電 子 増倍 管 を並 べ た 測 定 器 を使 って 太 陽 ニ ュー ト リノ を測 定 した39).こ の 水 チ ェ レ ン コ フ測 定 器 は も と も とは 大 統 一 理 論 の検 証 を 目的 と した 陽 子 崩 壊 検 出 の た め に建 設 され た もの で あ るが,天 然 に 存 在 す る ウ ラ ンか らの 背 景 雑 音 を 減 ら して,検
出 可 能 な粒 子 の 最 小 エ ネ ル ギ ー を6∼7MeVに
に よ って,太
陽 ニ ュー ト リ ノ検 出器 と し て も機能 で き る よ う に した も の で あ
る.ニ ュ ー トリ ノ 自身 は 中性 で検 出 で きな いが,ニ
まで下 げ るこ と
ュ ー トリノ 反 応 (4.58)
に よっ て 放 出 さ れ る電 子 は,水 の 中 で チ ェ レ ン コ フ光 を発 す る の で,光 倍 管 で 感 知 で き るの で あ る.リ
ン グパ ター ン か ら電 子 の 同定 が で き,光 量 か ら
エ ネ ルギー が 測 定 で き る(図4.12(b),(c)).反
跳 電 子 の 方 向 は,ニ ュ ー ト リ
ノの 入 射 方 向 とか な りよ い精 度 で 一 致 す るの で,ニ 来 方 向,そ
電 子増
ュー ト リノの 到 着 時 間 と飛
れ とエ ネ ル ギー ス ペ ク トル が わ か る.そ の意 味 で,ホ ー ム ス テ イ ク
測 定 器 よ り一 段 進 ん だ ニ ュ ー トリ ノ測 定 器 で あ り,ニ ュー ト リノ望 遠 鏡 として の 資 格 を備 え て い る とい っ て よ い で あ ろ う.現 在 は 改 良 型 で さ らに大 型 の5万
トン 検 出 器(ス
ー パ ー カ ミ オ カ ン デ:図4.12(a))が
図4.13(a)は,νee反 し て お り,0度
稼 働 し て い る.
応 デ ー タ39)を ニ ュ ー ト リ ノ 飛 来 方 向 の 関 数 と し て 示
す な わ ち 太 陽 方 向 に 明 瞭 な 信 号 が 見 ら れ る.図4.13(b)に
ネ ル ギ ー ス ペ ク トル を 示 す.ス
エ
ー パ ー カ ミ オ カ ン デ の 観 測 値 は,
(4.59a) (4.59b) で あ り,SSM理
論 値(BP9835))の
約1/2と
い う値 を 与 え て い る.デ
イヴ ィス
(b)
(c)
(a) 図4.12
神 岡水 チ ェ レ ン コ フ 測 定 器(ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ) 岐 阜 県神 岡鉱 山地 下1000mに
設 置 して あ る.(東 京 大 学 宇 宙 線 研 究 所 提 供)
(a) ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ検 出器.光 電子 増 倍 管 を取 り付 け た後 注 水 して い る と こ ろ.ス ー パ ー カ ミ オ カ ン デ は 直 径40m,高 さ42mの 水 タ ン クの 内壁 に 径50cmの 光 電 子 増 倍 管 を約1万 本 配 置 して あ る. (b) 荷 電 粒 子 が 水 中 を走 る とチ ェ レ ン コフ光 を出 し,光 電 子 増 倍 管 が 感 知 す る. (c) チ ェ レ ン コフ 光 受 信 の 実 際 例.前 例 で,図
身 の カ ミオ カ ンデ 検 出器 に よ る超 新 星 ニ ュー ト リノの 観 測 の一
中 『+』 か ら電 子 が 矢 印 の 方 向へ 向 か って 走 っ た.丸
丸 の 大 き さが 光 量 を表 す.リ
ン グパ ター ン が 見 え る.
印 が 光 っ た光 電 子 増 倍 管 を 表 し,
図4.13
神 岡の 太 陽 ニ ュー
ト リ ノ デ ー タ39,40)
(a) 反 跳 電 子 の 方 向 と太 陽 方 向 との なす 角 の余 弦 と して プ ロ ッ トし た もの.太 え る.実 線 は 最 適 化 曲線 . (b) 反 跳 電 子 の エ ネ ル ギー スペ ク トル.黒
ら と値 は や や 異 な る も の の,標
丸 が デー タ で,ヒ
陽 方向 に明 瞭 な 山が 見
ス トグ ラム が 太 陽 標 準 モデ ル.
準 太 陽 モ デ ル の 予 想 よ り大 幅 に 小 さ い と い う太
陽ニ ユ ー ト リ ノ の 謎 問 題 の 存 在 は 再 確 認 し た と い え る. ⅲ)
ガ リウ ム 実 験
上 記 二 つ の 実 験 は,い
ず れ も太 陽 ニ ュー ト リノ エ ネ
ル ギ ー ス ペ ク トル の エ ネ ル ギ ー の 高 い 部 分 に の み 感 じ る.有 ギ ー ス ペ ク トル 全 体 か ら 見 れ ば ご く わ ず か で あ り,太 い と こ ろ で も あ る.そ 0.5MeV)を
こ で,pp-Ⅰ
陽 モ デ ル の不 定 性 の大 き
素(Cl)の
代 わ り に ガ リ ウ ム(Ga)
を 使 用 す る と エ ネ ル ギ ー の 低 い ニ ュ ー ト リ ノ(E〓233keV)に ペ ク トル の 低 エ ネ ル ギ ー 側 が 測 定 で き る.Gaを 在 ロ シ ア のSAGE41)と
る.こ
れ ら の 実 験 は,ホ
ネル
チ ェ イ ン の エ ネ ル ギ ー の 低 い と こ ろ(Eν 〓
観 測 す る こ と が 重 要 と な る.塩
は,現
感 領 域 は,エ
感 じ る の で,ス
含 む 太 陽 ニ ュー ト リノ検 出 器
イ タリ ア のGALLEX42)の2カ
所 で 稼 働 して い
ー ム ス テ イ ク の 塩 素 標 的 の 実 験 と 手 法 が 同 一 で あ り,
リ ア ル タ イ ム で は ニ ュ ー ト リ ノ を 捕 ま え ら れ な い. 標 準 モ デ ル で は137±8SNU期 月)で
待 さ れ る の に 対 し て35),現
時 点(1998年10
は,
(4.60) (4.61) と い う デ ー タ が で て い る.太 と い う こ と が で き よ う.
陽 ニ ュ ー ト リ ノ の 謎 は 依 然 と し て,解
けて いない
4.5.2
物
質
振
動
a. 物 質 中 で の シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 方 程 式 塩 素 反 応(4.55)は,ニ
ュ ー ト リ ノ がνeで
し く はν τで あ る な ら ば 検 出 は で き な い.ニ 可 能 で あ る が,断
ュ ー ト リ ノ 電 子 散 乱 はν μ,ντで も
面 積 が 小 さ く感 度 が 悪 い.し
動 が 存 在 し て,νeがν け 上νeが
あ る な ら ば 検 出 で き る が,ν μ も
し ニ ュ ー ト リ ノ振
μ,ντに 遷 移 す る な ち ば 測 定 に は か か ら な い の で,見
消 滅 す る こ と に な る.太
き け れ ば,Δm2の
た が っ て,も
か
陽 ま で の 距 離 が 振 動 波 長 λに 比 べ て十 分 大
値 に 関 係 な く,式(4.53)に
よ っ て,
(4.62) とな るの で,sin22θ ≒1く らい の 大 き な混 合 が 存 在 す れ ば ほ ぼ1/2に 般 にN種 N=3と
の ニ ュー ト リ ノが 存 在 す る と きは,P(νe→νe)は1/Nに す れ ば,太
な る.一 な る の で,
陽 ニ ュー ト リノ の 謎 は う ま く説 明 で き る(後 の 物 質 振 動 解
に 対 し て真 空 振 動 解 と い う).し か し,こ の よ う に 大 きな 混 合 比 は,理 論 的 に は 考 え に くい.ク ォ ー クの 混合 行 列 との 類 推 を考 え る と,混 合 角 は た か だ か カ ビ ボ角 くら い と考 え られ るか ら で あ る. 1986年 に ミケ エ フ とス ミル ノ ブ は43),混 合 比 が10-3く
らいに小 さい場合 で
も,太 陽物 質 の影 響 に よ り共 鳴 振 動 が 起 こ り,実 験 デー タ を説 明 し う る可 能 性 を示 した.現 在,太
陽 ニ ュー ト リノの 謎 を解 決 す る有 力 な候 補 と して 注 目 され
て い る の が この 物 質 振 動 解 で あ るの で,少
し詳 し く述 べ る こ とに す る.
物 質 の 振 動 解 は 次 の よ う に して 求 め られ る.ま ず 真 空 中 で の 質 量 固 有 状 態 νiが満 た す シ ュ レー デ ィ ンガ ー 方 程 式
(4.63)
を考 慮 す れ ば,│νe>と│ν
μ>が(4.45)で
与 え ら れ る と き,質
量 項 を 与 え る行 列
は,νe,ν μ表 示 で,
(4.64)
(4.65a)
(4.65b) (4.65c) と な る.こ
れ ら の 式 は 真 空 中 で 成 立 す る 式 で あ る.
物 質 中 で はνe,ν μ と も に 物 質 と の 相 互 作 用 が あ る の で 上 式 が 変 更 さ れ る.中 性 カ レ ン ト に よ る 相 互 作 用 は,νeとν を 変 え る が,質
量 差(Δm2)は
一 方 荷 電 カ レ ン トは か な い.物
変 え ず,し
量(M)
た が っ て 振 動 に は 影 響 を 与 え な い.
電 子 と の 間 の 相 互 作 用 は 引 き起 こ す が,ν μに は 効
質 と の 可 干 渉 な 相 互 作 用 の 影 響 は,屈
と が で き る.こ す る の で,も
,νeと
μ に 同 じ 影 響 を 与 え る の で,質
の と き,平
面 波 ∼exp(ipx-iEt)の
折 率nの
形 で と りい れ る こ
空 間 部 分 がp→npと
変化
と の 波 動 と の 差 を エ ネ ル ギ ー 部 分 に 取 り入 れ る た めct→xと
す
る と,
(4.66a) と表 せ る.光 学 で よ く知 られ て い る よ うに,屈 折 率 を散 乱 振 幅 で 表 す 式 を使 う とエ ネ ル ギ ー の 変 化 は
(4.66b) f(0):νeeの 前 方 散 乱 振 幅 GF:フ
ェ ル ミ結 合 定 数
ne:電 子 数 密 度 と な り,質
量 行 列 の 中 のMeeが
(4.67) と変 更 さ れ る.p∼Eで
あ る か ら以 下pの
代 わ りにEと
書 くこ と に す る.ne
を定 数 とみ な せ ば,物 質 解 は 真 空解 と同 様 に して求 め られ る.物 質 内 で の質 量 行 列 の 固有 値 を ρ+mν2/2Eと
お く と,質 量 固 有 値 と混 合 角 θmは,
(4.68a)
(4.68b) (4.68c) と な る.λ(=λ/2π)は
真 空 中 の 振 動 波 長 で あ る.GF=1.436×10-49erg・cm3を
入 れ る と
(4.69) とな る.ρ は密 度 で あ る.太 陽 中 で の 電 子 数 密 度neを
次 の 式 で近 似 す れ ば34)
(4.70a) NAは
ア ボガ ドロ数
(4.70b)
(4.70c) R〓 は 太 陽 半 径 を 示 す.ρ 的 な 値(例
は,中
え ばR≒0.4R〓)は
図4.14に
∼2(gr/cm3)で
あ る が,太
陽中の典 型
あ る.
太 陽 の 中 で の ニ ュ ー ト リ ノ の 質 量 が 電 子 密 度 の 関 数 と し て ど う変
化 す る か を 定 性 的 に 描 く.混 空 中(ne=0)で
心 で は ∼100(g/cm3)で
合 が 存 在 し な い と き(破 線:Δm2sin2θ=0),真
は,
(4.71a) で あ るが,十
分 電 子 密 度 が 高 け れ ば,
(4.71b) と な る こ と が わ か る.物
図4.14
質 内 で の 固 有 解ν1,ν2は,νeとν
太 陽 内 で 質 量 が電 子数 密 度Neの
関 数 と し て変 わ る様 子
νeは電 子 密 度 が 大 き くな る と質 量 が 大 き くな る.ν μは 変 わ らな い.物 νμの 混 合 で あ り,Ne≫Nerの 子 数 密 度,Nerは
と きν2∼νe, Ne≪Nerの
共 鳴 の起 き る密 度 を示 す.Ne=0が
μ と の 混 合 で あ り,
質 中 で の 固 有 解ν1,ν2はνeと
と きはν2∼νμで あ る.Necは
真 空(太
陽 の 外)に
対 応 す る.
太 陽 中心 の 電
図4.14の
二 つ の 実 線 に 対 応 す る.そ
こ と は な い.二 (共 鳴)が
の 質 量 は(4.68a)で
つ の 曲 線 が 一 番 近 く な る の は,cos2θ
与 え ら れ,交 ∼λ/λ で,最
わ る
大 の混合
起 こ る と こ ろ で あ る.
共 鳴条件
(4.72a) をΔm2で
書 き直す と
(4.72b) で あ る の で,
を考 慮 す る とΔm2の 有 感 領 域 は
(4.73) と 真 空 振 動 だ け の 場 合 に 比 べ て 大 い に 広 が っ た こ と に な る. b. 断 熱 近 似 い ま,場 る.こ
所 に よ る 密 度 変 化 が 十 分 緩 や か で あ る と す れ ば,断
の 場 合 の 解 の 時 間 依 存 性 は,密
度 を定 数 と して 解 い た 解 に密 度 の 時 間変
化 を 入 れ る こ と に よ り得 ら れ る の で,図4.14の る.太
陽 の 中 心 で 十 分 密 度 が 高 け れ ば,生
も 大 き く,図4.14の
上 の 曲 線(固
て 進 行 す る に つ れ,密 す る.共
成 さ れ たνeの 質 量 はν μの 質 量 よ り
有 解ν2)上
鳴 混 合 が 起 き れ ば 曲 線 は 交 差 せ ず,外
Wolfensteinは
密 度-質 量 の 関 係 は 有 効 で あ
に あ る.νeが
度 が 徐 々 に 小 さ く な っ て い き,や
νeは 消 滅 し た こ と に な る.こ
れ をMSW
太 陽 の外 に 向 か っ
が て 共 鳴 混 合 地 点 に達
に 出 た と き はν μに な っ て お り,
(Mikheyev-Smirnov-Wolfenstein:
物 質 中 で の 振 動 理 論 を つ く っ た)効
わ か る よ う に,真
熱近似が成 立す
果 と い う43). (4.68b)か
ら
空 中 の 混 合 角 が 非 常 に小 さ く と も共 鳴 混 合 が起 こ り うる可 能
性 の あ る こ と が わ か る. 共 鳴 が 起 こ る た め に は,共
鳴 を 起 こ す 密 度(ner)が,太
り 小 さ く な け れ ば な ら な い.共 に よ り ρc〓100gr/cm3で
鳴 条 件 は(4.72)で
あ る か ら,太
陽 中 心 密 度(nec)よ
与 え ら れ て い る.(4.70)
陽 中 で 共 鳴 の 起 き る条 件 は 次 の よ う に
表 さ れ る.
(4.74) 断 熱 近 似 の 条 件 は,密 度 の 変 化 に よ るエ ネ ル ギ ー 変 化 δEが,二
つ の 固有 解
の エ ネ ルギー 差ΔEに よ っ てΔEの 2E/Δm2に (4.67)よ
比 べ て 小 さ い こ とで あ る.い い 換 え る と,密 度 変 化 に
変 化 を誘 起 す るの に 必 要 な 距 離Lρ が,物 質 中 の 振 動 波 長λm= 比 べ て 十 分 長 い こ とで あ る.密 度 変 化 に よ る エ ネ ル ギ ー 変 化 は
り
化 がΔEに
で あ るか ら,距 離Lρ を 走 っ た と き の エ ネ ル ギ ー 変
等 しい とお い てLρ が 求 め られ る.
(4.75)
(4.76) した が って,断
熱条件 は
(4.77a) と な る.共
鳴 点 で は,
(4.78) で あ るの で,断 熱 条 件 は
(4.77b) と書 き 換 え ら れ る.(4.70)を
使えば
(4.79) と な る. c. 三 つ の 可 能 性 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル が0∼14MeVで し,(4.74),(4.79)の -Δm2平
条 件 を参 照 す る と,物
あ る こ と を考 慮
質 振 動 の 許 さ れ る 領 域 は,sin22θ
面 上 で 三 つ の 境 界 に 囲 ま れ た 三 角 形 内 に 限 ら れ る こ と が わ か る .各
界 に 対 応 す る 解 は, (c-1)
解1:断
熱 解:Δm2≒10-4(eV)2, の 三 角 形 の 上 辺 部 分 に あ た る.
で 表 さ れ る境 界 で,図4.15
境
(a)
(b)
図4.15 太 陽 ニ ュー ト リノ の物 質 振 動 解 二 つ の 線 の 内側 が 各 デ ー タ に よ り許 さ れ る 範 囲 で,ほ ぼ 三 角 形 の 帯 をつ くる44). (a) 神 岡 デ ー タ(実 線)と ホー ム ステ イ クデ ー タ(ダ ッ シ ュ線)か ら許 され る領 域 を斜 線 で 示 し て あ る.一 点鎖 線 は神 岡 デ ー タの 日夜 変 化(地 球 効 果)か ら除 外 され る領 域. (b) (a)を さ ら にGaデ ー タ を使 っ て領 域 を絞 っ た もの.黒 影 部 分 が3個 の デ ー タ にす べ て合 う領 域 で,左 側 を小 混 合 角(SMA)解,右 側 を大 混 合 角(LMA)解 とい う.灰 色 部 分 は 地 球 効 果 で 除 外 さ れ る部 分.
(c-2) 解2:準
真 空 解=sin22θ
≒1, 10-10〓Δm2〓104で
三 角 形 の 右 辺 に 相 当 す る.真
表 さ れ る 境 界 で,
空振 動解 に近 いの で準 真 空解 と
い う. (c-3) 解3:非
断 熱 解:非
断 熱 近 似 で は,γm〓1で
あ る か ら,
(4.80) を 与 え る 境 界 線 は,図4.15の 一 般 の 振 動 解 は,上 断 熱 解 で は7MeV以 欠 損)が,こ は,νeが
三 角 帯 の 左 下 辺 で あ る.
記 三 つ の 解 で 囲 ま れ た 三 角 形 の 内 部 に 存 在 す る.解1の 上 の νeが ほ と ん ど す べ て νμに 変 わ る(高
エ ネ ル ギー側
れ よ り低 い エ ネ ル ギ ー で は ほ と ん ど 影 響 を 与 え な い.準 全 エ ネ ル ギ ー で 一 様 に 減 少 す る.一
の 小 さ い ニ ュ ー ト リ ノ の 数 を 少 な くす る.し
方,非
断 熱 解 は,エ
た が っ て,条
真空解 で
ネ ル ギ ーE
件 を 適 当 に 選 べ ば,
三 つ の 太 陽 観 測 実 験 デ ー タ を 同 時 に 説 明 す る解 が あ り う る(図4.15(b))44).
d. 地 球 の 影 響 物 質 に よ る 共 鳴 振 動 は 地 球 で も 起 き る(式(4.72)に よ).地
球 効 果 は,太
→νe)が
あ り,ニ
陽 中 でνe→ν
こ と に よ り 観 測 で き る.日
μ と 振 動 し た も の を も と に も ど す 作 用(ν μ
球 効 果 は,夜
質
間 と 日 中の デ ー タ の 差 を とる
夜 変 化 が 検 出 で き な か っ た こ と か ら,図4.15(a)
でsin22θ〓0.1,Δm2∼10-5.5付
近 の 突 出 部 分 を 除 外 で き る.
生 き残 り確 率
断 熱 解 で は,ν1とν2は ν2→ν1の
入 れ
ュ ー ト リ ノ 強 度 の 時 間 で 積 分 し た 値 を 見 て い る 限 り,物
振 動 解 で 許 さ れ る 範 囲 が 広 が る.地
e. νeの
ρ〓5gr/cm3を
独 立 で 混 じ る こ と は な い が,一
遷 移 が 起 き る.こ
生 き残 る確 率 は,次 ま ず,t=0で
の確率Pjumpが
般 に は,共
鳴領 域 で
与 え ら れ た と き の,νeが
最終 的 に
の よ う に し て 求 め ら れ る.
太 陽 中 心 でνeが 生 成 さ れ た と す る.│νe>を
す る に は,(4.45)で
θ→ θm(t=0)≡
物 質 固有 解 で 展 開
θ とお い て
(4.81) 共 鳴 領 域 に 到 達 す る 時 刻 をtrと
す る と,t≦tr-ε
で は,
(4.82) と い う 時 間 発 展 を す る.E1,2は tr+ε で,ν1,ν2間
物 質 中 で の 固 有 エ ネ ル ギ ー で あ る.tr-ε
の 遷 移 が 起 こ り,t=tr+ε
≦t≦
で は,
(4.83a) (4.83b) に な っ た と す る.こ
の と き,│νe(t)>は
(4.84) と な る.t>tr+ε は,太
陽 外 に 出 て,
で は 再 び,(4.82)と
同 様 な 時 間 発 展 を す る が,t→
∞ で
(4.85) と な る か ら,再
び(4.45)を
使 っ て も と のνe,ν μで 書 き 直 す と
(4.86) こ れ か ら,
(4.87) と な る か ら,νeが
生 き 残 る確 率P(νe→νe)は,
(4.88a) が 導 け る.干 渉 項 は ニ ュー ト リノの有 限 なエ ネ ル ギー 幅,発 広 が りな どで 平 均 す れ ば 寄 与 しな い.│A│2, │B│2は(4.84)か
生 地 点,測 定 点 の ら計 算 で きて
(4.88b) を 得 る.最
後 の 式 は,│β│2=Pjump, │α│2=1-Pjumpと
お い て 得 ら れ る.上
断 熱 条 件 充 足 の 有 無 に 関 わ ら ず 成 立 す る 式 で あ る.断
式 は,
熱 近 似 の 式 はPjump=0
と し て 得 ら れ る. Pjumpは,共
鳴 振 動 を 起 こ す 領 域 で 密 度 が 線 形 的 に 変 化 す る と い う条 件 で は
解 く こ とが で きて
(4.89) と な る45).こ dau-Zener)公
の 式 は,準
位 交 叉 に お け る よ く知 ら れ た ラ ン ダ ウ-ゼ ナ ー(Lan
式46)を 適 用 し て 得 ら れ る.
θ は 物 質 中 で の 混 合 角 の 太 陽 中 心(よ で の 値 で あ る.太
り正 確 に はνeが 生 成 さ れ る と こ ろ)
陽 中 心 で は 十 分 密 度 が 高 くν2〓νeで
あ る の で,θ
≒ π/2と
お け ば,
(4.90) と な る.
典 型 的 な パ ラ メ タ ー を 設 定 し た と き のP(νe→νe)の 掲 げ る47).(4.88b)に
数 値 計 算 例 を 図4.16に
よ る近 似 計 算 は この 数 値 計 算 とほ とん ど同 じ答 を 与 え
る.
図4.16
MSW解 で のνe生 存 確 率 をx=(E/Δm2)の 関数 と し て 描 く(実 線).P(νe→νe)の 小 さい とこ ろ の 左 方 は断 熱 解 に,右 方 は 非 断 熱 解 に 対 応 す る.ダ ッ シ ュ線 は 太 陽 物 質 効 果 に 地 球 物 質 を加 味 した 計 算 で あ る47).
4.5.3
太 陽 ニ ュ ー トリノ の謎 の解 は あ る か
a. 太 陽 モ デ ル 解 ホ ー ム ス テ イ ク と神 岡 デ ー タ は 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ ス ペ ク トル の 高 エ ネ ル ギ ー 部 分(ホ
ー ム ス テ イ ク〓1MeV,神
岡〓7.5MeV)の
み を 見 て い る.ppチ
イ ン で こ の よ う に 高 い エ ネ ル ギ ー の ニ ュ ー ト リ ノ を 出 す の は,8Bの 壊 で あ り,全 4.9).し
体 に 対 す る 寄 与 は わ ず か0.02%を
応 率∝T18),温
わ ず か な 誤 差 で 大 幅 に ニ ュ ー ト リ ノ 強 度 が 変 化 す る の で,8Bか
準 太 陽 モ デ ル に 手 を 入 れ て,ニ
デ ー タ に 合 わ せ よ う と す る 多 く の モ デ ル は,何 か し,ホ
こ ち ら の 方 は,8Bか
度 評価 の らの ニ ュー ト
ず し も太 陽 モ デ ル を全 面 的 に信 用 す る わ け に は
い か な い とす る議 論 が 成 り立 つ.標
う とす る.し
べ 一 タ崩
占 め て い る に す ぎ な い(図
か も こ の 過 程 は 温 度 に 非 常 に 敏 感 で あ り(反
リ ノ フ ラ ッ ク ス に つ い て は,必
ュー トリ ノ
ら か の 要 因 で こ の 温度 を 下 げ よ
ー ム ス テ イ ク デ ー タ は,7Bか
ら の ニ ュ ー ト リ ノ を含 み,
ら の ニ ュ ー ト リ ノ ほ ど 温 度 に 敏 感 で は な い の で,神
デ ー タ の 方 が 減 少 率 が 少 な い と い う観 測 デ ー タ は 説 明 が 困 難 で あ る. 一 方,ppチ
ェ
ェ イ ン に よ る 低 エ ネ ル ギ ー の ニ ュ ー ト リ ノ(<Eν>=0.26MeV)
岡
は,陽 子 が 融合 して 重 水 素 をつ く る と きに 生 成 さ れ る.こ の 反 応 は全 体 の 大 部 分 を 占め る上 に 温 度 依 存 性 も小 さ い(∝T-1.2)の
で,こ の 場 合 の ニ ュー ト リノ
生 成 率 は 太 陽 モデ ル を信 用 して よ い と思 われ る.最 近 の解 析 に よ る と,標 準 太 陽 モデ ル の 範 囲 内 で,三 つ の デ ー タ を同 時 に説 明 す る こ とは 不 可 能 で あ り,ま た どれ か 一 つ を間 違 っ て い る と して捨 て て も説 明 が 困 難 で あ る こ とが 明 らか に され た44).他 方 で 太 陽星 震 の 精 密 観 測 デ ー タが 標 準 モ デ ル に よ り非 常 に 良 い 精 度 で再 現 され る こ とか ら,太 陽 標 準 モ デ ル が 間違 っ て い る可 能 性 は小 さ い と考 え られ る よ うに な っ た48).し た が っ て,Ga検
出 器 に よ る観 測 で も ニ ュ ー ト リ
ノの 強 度 が標 準 モデ ル よ り大 幅 に小 さい とい う事 実 は,太 陽 ニ ュー ト リノ問 題 の 答 が,ニ
ュー トリ ノ 自身 の 性 質 に あ る こ とを 強 く示 唆 して い る もの と考 え る
こ とが で き る. b. ニ ュ ー トリ ノ振 動 解44) 物 質 振 動解 が エ ネ ル ギ ー 依 存 性 を もつ こ とか ら,太 陽 ニ ュー ト リノの エ ネ ル ギー ス ペ ク トル(図4.10)と
比 較 す る こ とに よ っ て,物 質 振 動 解 の 三 角 帯 の
どの部 分 が効 いて い るの か が 特 定 で き る.断 熱 解 で は エ ネル ギー の 大 きい と こ ろ で混 合 が 大 き くな るの で 減 少 率 も大 き い.し か し,エ ネ ル ギー の小 さ い と こ ろ で の ス ペ ク トル に は ほ とん ど影 響 を与 え な い.一 方,三 角 形 の下 辺,非
断熱
解 を与 え る境 界 付 近 で は 低 エ ネ ルギー 側 の減 少 が 大 き い.準 真 空解 で は,エ ネ ル ギー ス ペ ク トル をほ ぼ 一 様 に減 少 させ る. 神 岡 デ ー タ の エ ネ ル ギ ー スペ ク トル の絶 対値 は 標 準 太 陽 モ デ ル に 合 わ な い も の の,形
は よ く合 って い る(図4.13(b)).こ
の こ とか ら,直 ち に 断 熱 解 の 大
部 分(物 質 解1)を
否 定 で き る.物 質 振 動 の 立 場 で解 析 をす る と,ホ ー ム ス
テー ク デー タは
を積 分 し た値 を見 て い るの に 反 し,神 岡 デ ー
タ は,
に感 度 が あ る の で,多 少 両 者 の 観 測 値 が 違 っ て も 説 明 は
つ け られ る. 地 球 効 果 は,太
陽 中 でνe→νuと 振 動 した もの を,ν μ→νeと も とに も どす
作 用 が あ り,ニ ュー ト リノ 強度 の 時 間 で積 分 し た値 を見 て い る限 り,物 質 振 動 解 で許 され る範 囲 が 広 が る.し か し,も
し地球 効 果 が あ る な らば,日
タ と夜 間 の デー タ で 差 が で な け れ ば な らな い.神 の デー タ を比 較 した が,差
岡測 定 器 で は,日
が認 め ら れ な か っ た の で,sin22θ-Δm2の
中のデー
中 と夜 間 と こ の領 域
が 除 外 さ れ る(図4.15(a)一
点 鎖 線).こ
う し て,ホ
ー ム ス テ イ ク と神 岡 の 両
方 の デ ー タ が 正 し い と し て 共 通 部 分 を 描 く と,図4.15(a)の
斜線部 分 の よ う
に な る. 次 に,ppチ
ェ イ ン の 低 エ ネ ル ギ ー ス ペ ク トル 部 分 の 測 定 に よ り,さ
2θ-Δm2平 Gaの
面 の 特 定 領 域 に 限 ら れ る 可 能 性 が あ る.実
値(4.60)(4.61)を
る.太
受 け 入 れ れ ば,図4.15(b)で
ュ ー ト リ ノ の 質 量 値 は ほ ぼ2カ
れ た と い う こ とが で き る.さ た が,真
えば
黒影 部分 のみ 許 され
陽 ニ ュ ー ト リ ノ 観 測 の デ ー タ が す べ て 正 し い と し て,物
す れ ば,ニ
ら にsin2
際 の 実 験 デ ー タ,例
所(LMA解
質 振 動 解 を適 用
とSMA解)に
限定 さ
ら に い ま まで は 物 質 振 動 解 に 限 って 話 を進 め て き
空 振 動 解 が 除 外 さ れ て い る わ け で は な く,も
う一 つ の 可 能 性 と して
残 っ て い る40,44).デ ー タ は ,Δm2∼10-10(eV)2と
すれ ば再 現 で きる
(Just So解). こ れ ら三 つ の 解 は,エ
ネ ル ギ ー ス ペ ク トル,日
ぞ れ 異 な っ た 影 響 を 与 え る の で,ス
夜 変 動,季
節 変 動 な どで そ れ
ー パ ー カ ミオ カ ン デ の デ ー タ が 貯 れ ば 選 別
で き る と期 待 さ れ て い る*6). c. 磁 気 能 率 に よ る 可 能 性 標 準 理 論 を 忘 れ て,ニ
ュ ー ト リ ノ が か な り大 き な 磁 気 能 率 を も つ と し よ う.
太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ は 太 陽 磁 場(対 と す る)の
流 圏 に は 磁 場 が 存 在 す る;そ
の 厚 さ をLsun
中 で 相 互 作 用 を し,
(4.91) で あ れ ば,相 な る.νRは
当 数 の ニ ュ ー ト リ ノ が ス ピ ン 反 転 し て 右 巻 き ニ ュ ー ト リ ノνRと 物 質 と相 互 作 用 を し な い か ら,ニ
ュ ー ト リ ノ が 磁 気 能 率 を も て ば,
太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ の 謎 を 解 く一 つ の 解 と な り う る51).
と お い て,B∼104gauss,Lsun∼2×1010cmを
入 れ る と,(4.91)が
成 立 す る条
件 は
(4.92) *6 カ ナ ダ のSNO検
出 器(後
述 §4
.8)は,太
陽 ニ ュー トリノの 全 フ ラ ックス が 標 準 モ デ ル
と一 致 す る こ とを 示 し太 陽 ニ ュー トリ ノの 謎 が ニ ュー ト リノ振 動 で あ る こ と を示 し た49).次
い で,カ
子 炉 か ら のνeフ る と と も に,LMA解
ミオ カ ン デ を 改 造 し たKAMLAND液 ラ ッ ク ス を 測 定 し,人
体 シ ン チ レー ター 測 定 器 は,原
工 ニ ュー ト リノに よ る振 動 効 果 を初 め て検 出 す
を 唯 一 の 解 と し て 特 定 し た50).
とな る.地 球 上 の 実 験 室 で の ニ ュ ー ト リノ散 乱 か ら得 られ て い る磁 気 能 率 の上 限 値((4.41)参
照)
(4.93) とは 矛 盾 しな い が,他
の天 体 物 理 よ り決 め た上 限値(4.43)
(4.94) と は 折 り合 い が 悪 い. 太 陽 黒 点 活 動 が 太 陽 磁 場 と 密 接 な 関 係 に あ る こ と は よ く知 ら れ て い る.し が っ て,太
た
陽 ニ ュ ー ト リ ノ の 謎 が ニ ュ ー ト リ ノ の 磁 気 能 率 起 因 で あ る な ら ば,
太 陽 ニ ュ ー ト リ ノ 数 と 太 陽 黒 点 活 動 は 相 関 が あ る は ず で あ る.実 ホ ー ム ス テ イ ク デ ー タ と,太
際 の と こ ろ,
陽 黒 点 活 動 とが 反 相 関 関 係 に あ る の で は な い か と
い う 指 摘52)が,こ
の モ デ ル の 出 発 点 で あ っ た(図4.17(a)の
テ イ ク デ ー タ,ダ
ッ シ ュ 線 は 黒 点 活 動 を 示 す).し
相 関 が 認 め ら れ ず(図4.17(b)),ニ
か し,神
実 線 は ホー ム ス 岡 の デ ー タ39)で は
ュ ー ト リ ノの 磁 気 能 率 に 太 陽 ニ ュ ー ト リ
ノ の 謎 の 原 因 を 求 め る 根 拠 は 薄 い.
(a)
(b) 図4.17
太 陽 ニ ュ ー トリ ノの 年 変 化
(a) ホ ー ム ス テ イ ク デ ー タ(図4.11と
同 じ も の)と
太 陽 黒 点 活 動 の 相 関 を示 す52).
(b) 神 岡 デ ー タ39)
4.6
最 近,大
大 気 ニ ュ ー トリ ノ
気 ニ ュ ー ト リ ノ のν μ成 分 がνe成 分 に 比 べ て 少 な い と い う デ ー タ53)
が 注 目 を あ び て い る.大 が 大 気 と 反 応 し て,π
気 ニ ュ ー ト リ ノ は1次 宇 宙 線(高
やKを
大 量 生 成 し,そ
エ ネ ル ギ ー の 陽 子)
れ ら が 崩 壊 し てν μやνeに
な る
もの で あ る.地 上 で の ミュー オ ン降 下 量 が わ か って い る の で,そ れ か ら1次 宇 宙 線 量 を逆 算 し,ニ ュー トリ ノ生 成 量 も一 応 は 計 算 で きる54).し か し,現 時 点 で の 計 算 は 必 ず し も精 度 が よ い と は い え ず,各
理 論 計 算 間 の 差 は最 大30%に
達 す る.し たが っ て,個 々 の ニ ュ ー ト リノ 降下 量 を絶 対 的 に測 定 して理 論 と比 較 す るの は 困 難 で あ り,実 験 的 に もむ ず か し い.し か し,(νμ+νμ)/(νe+νe)の 比 につ い て は,大
きな誤 差 は相 殺 さ れ るの でか な り信 頼 で きる もの と思 わ れ る.
こ の 場 合 各 理 論 計 算 間 の 違 い は10%以 GeVく
ら い ま で な らば,主
下 に お さ ま る.エ ネ ル ギ ー が〓3
な生 産 崩壊 モー ドは
で あ る の で,N(νμ)/N(νe)〓2で
あ る.神
岡 グル ー プ は 電 子 ニ ュー ト リ ノ に つ
い て は ほぼ 理 論 の 予 想 通 りの値 を得 たが ,ミ ュ ー ニ ュー ト リノの観 測 数 は理 論 予 想 値 よ り相 当低 い 値 を得 て,2重
比す なわち
(4.95) と し て デ ー タ を 発 表 し た51).MCは
モ ン テ カ ル ロ 計 算 を 意 味 す る.こ
れが
ニ ュー ト リノ振 動 現 象 に よ る もの で は な いか とい う解 釈 は直 ち に な され た もの の,R〓1と
す る観 測 デー タ も あ り55),理 論 の 信 頼 性 が 確 定 的 で な か っ た こ と
も原 因 して,し ば ら く論 争 が 続 い て い た.こ れ が実 際 に ニ ュ ー トリ ノ振 動 現 象 に よ る結 果 で あ る と確 定 的 に な っ たの は,ス ー パ ー カ ミオ カ ンデ 測 定 器 に よ り 多 量 の デー タが 集 積 さ れ て 天 頂角 分 布 が 明 らか に な っ て か らで あ る. 地 表 に お け るニ ュー トリ ノ生 成 量 は ど こで も一 様 と考 え られ る.た だ し,低 エ ネ ル ギ ー1次 宇 宙 線 は地 球 磁 場 に 捕 ま って磁 極 に 集 中 す る傾 向 が あ る の で, 必 ず し も一 様 とは 言 い切 れ な い が,エ
ネ ル ギー が500MeV以
ノ な ら ば 地 球 磁 場 の 影 響 は 無 視 して よ い か,あ
上 のニュー トリ
る い は 補 正 で き る.天 頂 角 が
90度 よ り大 き い ニ ュー トリ ノ は地 球 の 裏 側 で 生 成 さ れ,天 頂 角 分 布 に 依 存 す る 距 離Lだ
け 地 球 を 通 り抜 け て 測 定 器 に 達 す る(図4.18).ニ
ュー トリノに
と って は 地 球 物 質 は 透 明 で あ る か ら,上 か ら く るニ ュー ト リノ と下 か ら 来 る ニ ュ ー ト リノ は 同 じ数 だ け な け れ ば な らな い.す な わ ち天 頂 角 分 布 は上 下 対 称 で な け れ ば な ら な い.図4.19に
スー パ ー カ ミオ カ ン デ に よ る 天 頂 角 分 布 の
デ ー タ を 示 す56).電
子 ニ ュ ー ト リ ノ は ど の エ ネ ル ギ ー 領 域 で も対 称 分 布 を 示 す
が,高
エ ネ ル ギ ー ミ ュ ー ニ ュ ー ト リ ノ は 明 ら か に 対 称 分 布 か ち 大 き くず れ て い
る.非
対 称 の 原 因 は ニ ュ ー ト リ ノ に よ る 飛 来 距 離 の 差 だ け し か な い か ら,
ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 以 外 の 原 因 を 考 え る の は 困 難 で あ る. ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 現 象 で あ る と す る 場 合,ν
μ→νe, νμ→ντ, νμ→νsの3
図4.18
天 頂 角 分 布 と地球 内 部 通 過 距 離Lと
図4.19 (a)(b)が
の関係
スー パ ー カ ミオ カ ン デ測 定 器 に よ る大 気 ニ ュ ート リノの 天 頂 角 分 布54)
電 子 反 応 で,(c)(d)が
ミュー オ ン 反 応 事 象.(d)のPCはpartially
測 定 器 内 で生 成 され て 外 へ 突 き抜 け た ミュー オ ン事 象 の こ と,〈p〉=15GeVと 線 付 四 角 は ニュ ー ト リノ振 動 を入 れ な い と き の予 想 値 で,実
containedの
こ とで,
見 積 も ら れ て い る.斜
線 が ニ ュー ト リノ振 動 解 を 表 す.
種 類 が 考 え ら れ る.νsのsはsterile(=不
毛 の)の
略 で,右
巻 き ニ ュー ト リ
ノ も し く は 物 質 と は 相 互 作 用 を し な い 新 種 の ニ ュ ー ト リ ノ の こ と を 意 味 す る. νeは 物 質 振 動 を す る の で 地 球 効 果 が 他 と は 多 少 異 な る.ス
ー パ ー カ ミオ カ ン
デ グ ル ー プ は ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 効 果 を 入 れ た 解 析 を 行 い,νμ →νs振
→ντも し くはν μ
動 解 と し て,
(4.96) を得 た56).図4.20(a)に,νeとν ト し た.な
μの 数 を振 動 変 数L/Eの
お,ν μ と地 球 物 質 に よ る 反 応 で 生 成 さ れ た ミュ ー オ ン は,下
く る ミ ュ ー オ ン と し て 観 測 さ れ る が,こ 結 果 を 与 え る57).ν μ→νeは,原 (図4.8(a)).図4.20(b)に メ タ ー 領 域 を 示 し た.パ
子 炉 に よ る 独 立 な 実 験 で 完 全 に 否 定 さ れ た58)
は デ ー タ か ら許 容 さ れ る ニ ュ ー ト リ ノ振 動 の パ ラ ラ メ ター 領 域 が 確 定 さ れ た の で,よ
ギ ー 加 速 器 研 究 機 構(KEK)の12GeV陽
り実 験 条 件 を コ ン
在,筑
波 の高 エ ネル
子 シ ン ク ロ トロ ン で ニ ュー ト リ ノ
ビ ー ム を つ く り,KEKと270km離
れ た 神 岡 の2カ
所 で 測 定 す るK2K計
ェ ル ミ研 究 所 の 主 入 射 器 で ニ ュ ー ト リ ノ を つ く り700km離
ネ ソ タ の ス ー ダ ン(Soudan)で る.K2K計
か ら
れ ら に よ る結 果 もす べ て 整 合 性 の あ る
ト ロ ー ル で き る 加 速 器 実 験 に よ る 追 認 が 可 能 と な る.現
画33)と,フ
関 数 と して プ ロ ッ
測 定 す る ミ ノ ス(MINOS)計
画 に つ い て は,∼2000年
れ た ミ
画 が 進 行 して い
頃 に は 結 果 が で る も の と期 待 され て い
る*7).
図4.20 (a) デ ー タ をL/Eの の最適
ニ ュ ー トリ ノ振動 解 析 結 果56)
関 数 と し て プ ロ ッ ト,(b)sin22θ-Δm2平
解 はsin22θ=1,Δm2=2.2×10-3eV2に
あ る.
*7) ス ー パ ー カ ミオ カ ン で の 結 果 を追 認 し た59) .
面 の 許 容 領 域.ス
ー パ ー カ ミオ カ ンデ
νμ→ ντと νμ→νsは,中
性 カ レ ン ト反 応 を 調 べ れ ば 区 別 で き る.ντ は 中 性
カ レ ン ト反 応 を 起 こ し て π0を つ くれ る がνsは つ くれ な い の で,π0生 差 が 生 じ る の で あ る.別 →νsに
成 量 に
の 方 法 は,ν μ→ντ に つ い て は 物 質 振 動 が な い が,ν μ
は あ る 事 実 を 使 う.神
岡 グ ル ー プ は,π0生
成 量 や 物 質 効 果 が 顕 著 に現
れ る 天 頂 角 の 大 き い と こ ろ で の 振 る 舞 い を 調 べ,νμ →ντ 振 動 で あ る こ と を ほ ぼ 確 認 し た60). 大 気 ニ ュ ー ト リ ノ に よ る ニ ュ ー ト リ ノ 振 動 効 果 存 在 の 証 明 は,標
準理 論の枠
内 で は 扱 え な い 実 験 デ ー タ を 初 め て 与 え た と い う こ と で 意 義 が 大 き い.m3≫ m2, m1と
仮 定 す れ ば
で あ る か ち,
(4.97) を意 味 す る.シ ー ソー メ カニ ズ ム を仮 定 す れ ば 右 巻 き の ニ ュ ー トリ ノ質 量mR も し くは 新 しい エ ネ ル ギー ス ケ ー ル が,
とい
うこ とに な る.一 方,最 近 の 宇 宙 論 の展 開 で は,宇 宙 の物 質 密 度 が 臨 界 密 度 に 等 し く,冷 た い 暗 黒 物 質 が80%,熱
い 暗 黒 物 質 が20%と
さ れ て お り(文 献61お
「宇 宙 論 」 を参 照),∼5eVの
よ び 第8章
い うシ ナ リオ が 提 案 質 量 を もつ
ニ ュー ト リノが 熱 い暗 黒 物 質 と して ぴ た り適 合 す る とい う考 え 方 も あ る.こ れ を重 視 す れ ば,ニ
ュー ト リノが 縮 退 して お り,
(4.98) と い うシ ナ リオ が 描 け る.い ず れ に しろ,こ の 振 動 結 果 の意 味づ け に つ い て は 現 在 活 発 な研 究 が 進 行 中 で あ る.
4.7 超 新 星 ニ ュ ー ト リ ノ
1987年2月23日,大 ラー 以 来400年
マ ゼ ラ ン 星 雲 に 出 現 し た 超 新 星SN1987Aは,ケ
プ
ぶ りの 肉 眼 観 測 と,同 期 して ニ ュ ー ト リノ が 観 測 さ れ た(図
4.21)62)と い う意 味 で 画 期 的 な 現 象 で あ り,太 陽 ニ ュー ト リ ノ観 測 と合 わせ, ニ ュ ー トリ ノ天 文 学 の 黎 明 を告 げ る も の で あ っ た.SN1987Aか
ら の ニ ュー ト
リ ノ観 測 は,恒 星 の進 化 モ デ ルが 基本 的 に正 しか った こ とを裏 づ け た とい う意 味 で,天 体 物 理 学 上 で の 一 つ の エ ポ ッ ク を画 す る もの で あ るが,同
時に素粒子
物 理 学 の 面 に お い て も,地 上 で は 設 定 不 可 能 な テ ス トベ ンチ を与 え て くれ る と
図4.21
神 岡 測 定 器 に よ る超 新 星SN1987Aの
観 測 デ ー タ62)
横 軸 が 時 間(秒),縦 軸 が エ ネ ル ギ ー を示 す.中 央0の と こ ろ か ら始 ま る11例 ニ ュー トリノ.前 後 の エ ネ ル ギ ー の 低 い現 象 は背 景 雑 音.
が
い う意 味 で 重 要 で あ る.こ の た め に は 超新 星 か らニ ュ ー トリノが 放 出 され るか ら く りを理 解 して お く必 要 が あ る63).
4.7.1 超 新 星 の 形 成 過 程 a. 星 の 進 化 超 新 星 は 太 陽 よ りは数 倍(8倍
以 上)重 い 恒 星 の 進 化 の 終 焉 現 象 と見 な さ れ
て い る. ⅰ) 原 始 星
星 の起 源 は,銀 河 宇 宙 に漂 う星 間 物 質 が,重
力 に よ り収 縮
し て芯 を形 成 す る と こ ろか ら は じ ま る.こ の芯 は さ ら に周 りの物 質 を吸 収 して 太 っ て い くが(原 始 星),吸 収 さ れ た 物 質 は 落 下 の 際 得 た 運 動 エ ネ ル ギ ー に よ り熱 運 動 を し,そ の 結 果 この 成 長 しつ つ あ る原 始 星 の 内部 に は 圧 力 が 生 じ る. こ の圧 力 が 重 力 と釣 り合 っ て準 安 定 状 態 とな るの で,原 始 星 は つ ぶ れ ず に有 限 の 大 き さ を保 持 す る.付 加 した粒 子 の 運 動 エ ネ ル ギー の半 分 は放 射 エ ネ ル ギ ー と して放 出 さ れ るの で,失
っ た エ ネ ル ギー を補 充 す る ため に は,原 始 星 は収 縮
し て 重 力 エ ネ ル ギ ー を放 出す る 必 要 が あ るが,そ の ため に 中心 付 近 の 圧 力 と温 度 が 間 断 な く上 昇 し,表 面 温度 も ま た 上 昇 す る.表 面 温 度 が2000度
を超 え れ
ば,放 射 ス ペ ク トル は 可視 光 領 域 に 入 り,輝 き 始 め る.こ れ が 星 の 誕 生 で あ る.
ⅱ) 主 系 列 星
中 心 温 度 が107度
を超 え た 段 階 で,水 素 に火 が つ き熱 核
融 合 反 応 が 始 ま る.核 融 合 が始 ま る と,表 面 か らの 損 失 エ ネ ル ギー は核 融 合 に よ っ て補 わ れ る の で,水 素 燃 料 の 続 く限 り重 力収 縮 は起 こ らず安 定 な状 態 を維 持 す る.こ れ が 主 系 列 星 と呼 ば れ る 星 の 状 態 で あ り,太 陽 もこ の 仲 間 で あ る. 太 陽 で は 中 心 温 度 が1.5×107度 程 で あ るが,こ
くら い で あ り,融 合 反 応 はppチ
れ よ り温 度 の 高 い 星 で はCNOサ
ェ イ ンが 主 過
イ クル が 優 勢 とな る.重 い星
で は 圧 力 が 高 く温 度 も高 い の で 燃焼 率 が 大 き く,放 出エ ネ ル ギー が 大 き くて早 く燃 えつ き る.こ の よ うな星 で は 表 面 温 度 も高 く青 白 い星 とな る.水 素 燃 焼 反 応 は 弱 い相 互 作 用 を経 由 す る の で これ が 燃 焼 率,し
たが っ て 寿 命 を決 め る.太
陽 の 場 合 は100億
年 くら い の余 命 を もつ が,
太 陽 の10倍
年 程 度 の 寿 命 を もつ の で後50億
重 い 星 は107年
く らい で寿 命 が つ きる と計 算 さ れ て い る.
ⅲ) ヘ リウ ム 燃 焼 過 程
水 素 が 燃 え つ き る と,再 び 重 力 収 縮 が 始 ま るが,
この 結 果 ま た もや 中心 付 近 の 温 度 と圧 力 が 上 昇 し,今 度 は 水 素 の 燃 え か す で あ っ たヘ リウ ム に 火 が つ く.ヘ リウ ム に火 が つ くと圧 力 が 非 常 に 高 くな り,星 全 体 が 膨 張 す る と同 時 に周 縁 部 の 温 度 が 下 が っ て 赤 色 巨 星 とな る.太 陽 程 度 の 質 量 を もつ 星 は,こ の 段 階 で周 縁 部 を吹 き飛 ば して,中 心 部 は 白色矮 星 と して 残 る.吹
き飛 ば さ れ て 膨 張 中 の 周縁 部 と中心 の 星 は 惑 星 型星 雲 と して観 測 さ れ
る. ⅳ) 炭 素 燃 焼 過 程 階 に 進 み,炭
太 陽 よ り重 い星 は,ヘ
素 や 酸 素 が,さ
らに は ケ イ素,マ
リウ ム が 燃 え つ き る と次 の 段 グネ シ ウ ム,硫 黄 な どい ろ い ろ
な もの が 形 成 さ れ て は 燃 え,最 終 的 に は鉄 に い きつ く.鉄 は 元 素 の 中 で最 も安 定 な の で,鉄 が 燃 え る こ とは な く鉄 の 芯 が だ ん だ ん と発 達 して い き,こ れ以 上 核 融 合 に よ っ て は エ ネ ル ギー が つ くられ な い死 の 段 階 に近 づ く.超 新 星 と して 爆 発 す る 直 前 の恒 星 は,上
に述 べ た 元 素 の殻 が 重 い 順 に次 々 と層 をつ く る玉 ね
ぎ構 造 を し て い る.水 素 か ら鉄 が つ くら れ る ま で に 開 放 さ れ るエ ネ ル ギー は, 水 素1個
当 た り8.6MeVで
て し ま う の で,水 で あ るが,ヘ
あ る.こ の う ち水 素 燃 焼 だ け で,6.9MeV放
出し
素 燃 焼 終 了後 の余 命 は短 い.水 素 燃 焼 継 続 時 間 は,∼1010年
リウ ム 燃 焼 時 間 は107年 程 度 で あ る.
中 心 温 度 が108Kよ
り高 い とフ ォ トン放 出 よ りニ ュ ー トリ ノ放 出 に よ る エ ネ
ル ギー もち 出 しが 大 き くな る.炭 素 燃 焼 で大 体 この 段 階 に達 す るが,い
った ん
ニ ュ ー ト リノ冷 却 が 始 ま る と燃 焼 率 は 加 速 度 的 に速 くな る.酸 素 の 燃 焼 時 間 の ス ケ ー ル は105年 程 度 で あ るが,ケ
イ素 の燃 焼 時 間 は数 秒 程 度 で終 わ る.そ れ
以 後 の 燃 焼 過 程 は よ り急 速 で あ る. ⅴ) 星 の 死
鉄 の 芯 が 十 分 発 達 す る と,鉄 は エ ネ ル ギ ー を供 給 しな い の
で,重 力 に よ る収 縮 が 起 こ り,温 度 と密 度 が さ らに上 昇 して い く.つ い に は鉄 の 光 分 解 が 始 ま り,ヘ
リウ ム に壊 れ,さ
らに は 陽 子 と中性 子 に 分 解 す る.安 定
な鉄 が 壊 れ るの で これ はエ ネ ル ギ ー を吸 収 す る吸 熱 反 応 で あ り,重 力収 縮 に ま す ます 弾 み が つ き,つ い に は 爆縮 とな る.何 億 年 もか け て築 い た鉄 を一 瞬 に し て 壊 す の で あ る. b. Ⅱ 型 超 新 星 星 の 終 末 に は縮 退 圧 が 大 きな役 割 を演 じ る.密 度 が あ る程 度 以 上 大 き くな る と,同 一 粒 子 は 同 じ運 動 状 態 を もつ こ とが で き な い とい うパ ウ リの排 他 原理 に よ り,あ る距 離 以 上 に他 の粒 子 が 近 づ くの を妨 げ る よ うに な る.こ の よ うな状 態 を縮 退 して い る と い う.縮 退圧 は 量 子 力学 的効 果 に よ る もの で,温 度 に は ほ とん ど よ らず,エ
ネ ル ギー が供 給 され な く も も ち こ た え る圧 力 で あ る.い っ た
ん 縮 退 す れ ば 圧 力 は 温 度 に は よ ら な いが,ど
の へ ん の密 度 で 縮 退 が起 こ るか は
温 度 に よ る.白 色矮 星 は炭 素 燃 焼 が 起 こ る前 に 電 子 が 縮 退 を起 こ して 重 力 に よ る収 縮 が そ こ で 止 ま っ て し ま っ た状 態 で あ る.陥 没 が 起 き た と き,縮 退 圧 で も ち こ た え られ る圧 力 に は 限 度 が あ り,残 され た芯 が 太 陽 質 量 の1.4倍(チ
ャン
ドラ セ カ ー ル の 限 界)を 超 えて い る と,電 子縮 退 で は も ち こ た え ら れ ず,電 子 は陽 子 に 押 しつ け ら れ て 中 性 子 に な り,中 性 子 の 縮 退 圧 が 作 用 して は じめ て陥 没 が 止 ま る.こ の と き衝撃 波 が 発 生 す る.も し陥 没 を起 こす 中心 部 の 質 量 が 十 分 大 きい と中性 子 の 縮 退 圧 を もっ て して も止 め る こ とは で きず ブ ラ ッ ク ホー ル とな る.陥 没 の結 果 残 され た 周 辺 部 の殻 は,支 下 す る が,先
え を外 され て 中心 に 向 か っ て落
の 衝 撃 波 に 跳 ね 返 され て 爆 発 が 起 こ る.衝 撃 波 の み で は 不 足 で,
大 量 発 生 した ニ ュ ー ト リノに よ る 内圧 上 昇 効 果 が 重 要 と考 え る人 も い る.こ れ がⅡ 型 の 超 新 星 と呼 ば れ る もの で あ り,質 量 が 太 陽 の8倍 以 上 重 い 星 は こ う し て終 焉 を迎 え,後 残 る.
に は パ ル サ ー と呼 ば れ る 中性 子 星 か ま た は ブ ラ ッ ク ホー ル が
c.
Ⅰ型 超 新 星
Ⅰ型 の 超 新 星 と は,炭
素 燃 焼 が 暴 走 し た と き に 発 生 す る.爆
放 射 エ ネ ル ギ ー ス ペ ク ト ル がⅡ 型 と 異 な る.通 ギ ー が 発 生 す る と,圧
力 が 上 昇 し,膨
常 は,核
焼 率 の 均 衡 が と れ る.と
燃 焼 が 始 ま っ た と き に す で に 縮 退 が 起 き て い る と,縮 が な く と も 持 続 す る 圧 力 で あ る の で,エ 度 の み が 上 昇 し,燃
4.7.2 a. 検
素
退 圧 は エ ネル ギー の供 給
ネ ル ギー が 発 生 して も圧 力 が 下 が ら
の よ う な 状 況 は,あ
の場 合 星
る程 度 発 達 し た 星 に
星 か ら物 質 が 付 加 さ れ る と き に 起 こ る と さ れ て い る.
超 新 星 ニ ュ ー トリノ検 出 出
法
ニ ュ ー ト リ ノ の 大 量 発 生 は ま ず,衝 応(neutronization;e-+p→n+νe)に 続).こ
焼率が
こ ろ が,炭
焼 率 が 増 大 し て 暴 走 が 起 き る の で あ る.こ
は 粉 々 に 砕 け 後 に は 何 も残 ら な い.こ 伴 星 が あ っ て,伴
燃焼 に よってエ ネル
張 が 起 き て 温 度 が 下 が る の で,燃
下 が る と い う 自然 な 抑 制 効 果 が 働 き,燃
ず,温
発 の時間経過や
撃 波 が 生 じ た 時 点 で,陽
の ニ ュ ー ト リ ノ は 直 ち に 外 に 放 出 さ れ る.芯
け ニ ュ ー ト リ ノ に 対 し て す ら 不 透 明 に な る.し ニ ュ ー ト リ ノ は,多
子 の中性子化反
よ り 引 き 起 こ さ れ る(約10msec持 の 密 度 は こ の 間 増 大 し続
た が っ て,芯
の中 で発 生 した
重 散 乱 に よって 熱 ニュー トリノに な り ,表
(ニ ュ ー ト リ ノ に 対 し て 透 明 に な る 密 度 の と こ ろ,こ 光 球:neutrinosphereと
い う)脱
さ れ る と き は ∼1000kmく
出 可 能 と な る.最
面 か らの み
の領 域 内 を ニ ュ ー ト リ ノ 初 ニ ュ ー ト リノ光 球 が 形 成
ら い の 半 径 を も つ が,
(4.99) な ど の 熱 過 程 に よ っ て エ ネ ル ギ ー を も ち 去 ら れ,最 る と き は 半 径 が ∼10kmく
終 的 に 中性 子 星 と な っ て残
ら い と な っ て い る.図4.22(a)に
陥 没 と跳 ね 返 り
の 様 子 を,図4.22(b)に
そ の 結 果 放 出 さ れ る ニ ュ ー ト リ ノ の 強 度 を 描 く64).
こ れ は 質 量 を 太 陽 の25倍
と し た と き の シ ミュ レ ー シ ョ ン で,Lνe,
そ れ ぞ れ,νe, νe,そ
の 他(ν μ, νμ, ντ, ντ)の 強 度 で あ る.最
子 化 に よ るνeの 放 出 を示 す.ニ
Lν e,Lνμは
初 の 鋭 い 山 は 中性
ュ ー ト リ ノ の 平 均 エ ネ ル ギ ー は,
(a) 図4.22 (a) 超 新 星 内部 各 層 の 時 間 変 化.ケ る様 子 を示 して い る.
(b) 超 新 星 爆 発 の シ ミュ レー シ ョ ン64) イ素(Si)お
よび それ よ り外 に あ る殻 が,外
向 きにバウ ンスされ
(b) 超 新 星 爆 発 の 際放 出 さ れ るニ ユ ー ト リノ の エ ネ ル ギ ー 強 度 の 時 間 変 化.νμ, ντ, ντ,のLはLν μ に 同 じ.星 の質 量 は25M〓
(4.100) で あ る. 地 上 で の ニ ュ ー ト リ ノ 観 測 は 次 の 反 応 に よ る65).
(4.101) ニ ュー ト リノ検 出 に水 を使 う場 合,自 →e+nで
あ る .νep反
応 で は,電
由 中性 子 が ない の で,重 要 な 反 応 はνep 子 が 等 方 的 に 放 出 さ れ る の で,入
射 の
ニ ュ ー ト リ ノ の 飛 来 方 向 の 情 報 は 失 わ れ る.νee反 (N(νep)/N(νee≒20/1),ν
は 少 な い が
の 飛 来 方 向 を 特 定 で き る の で 重 要 で あ る.ニ
ト リ ノ 検 出 測 定 器 は 大 き い に も か か わ ら ず(神 観 測 さ れ た ニ ュ ー ト リ ノ 事 象 数 は,神 ん ど がνep反
応 は,数
岡 で2140t,
岡 で11例,IMBで8例
ュー
IMBで6800t), と 少 な く,ほ
と
応 と 思 わ れ る.
b. ニ ュ ー ト リ ノ ル ミ ノ シ テ ィ ニ ュ ー ト リ ノ の 地 球 上 で の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク ト ル は,フ 統 計 に 従 う と し て,測 れ る と,超
定 器 の 効 率,SN
1987
Aま
ェ ル ミ-デ ィ ラ ッ ク
で の 距 離(50kpc)な
新 星 爆 発 時 の ニ ュ ー ト リ ノ 温度Tν, νeの
ど を入
全 エ ネ ル ギ ーL(νe)
は66),
(4.102) と 計 算 で き る.他 の ニ ュ ー ト リ ノ の 寄 与 を考 慮 し て,6倍
す れ ばSN
1987 A
の全 放 出 エ ネ ル ギ ーEは
(4.103) と計 算 され る.一 方,超 新 星 爆 発 の 際 放 出 さ れ るエ ネ ル ギーEは し て 推 定 で き る.星 性 子 星 に はnsと
の 質 量Mや
半 径Rに
爆 発 前 はstar,爆
次 の よ うに
発 後残 され た 中
指 標 をつ け る と
(4.104) と 表 さ れ る.Gは
万 有 引 力 定 数 で あ る.Rstar∼1010cm,
で,Mstar≫Mnsに
も か か わ ら ず 第2項
Rns∼106cmで
あ るの
が 優 勢 と な り,
(4.105) と な る67).M●(=1.989×1030kg)は
太 陽 質 量 で あ る.観 測 値 との 一 致 は 非 常
に よ い.既 知 の 粒 子 に関 す る相 互 作 用 の み で超 新 星 の エ ネ ル ギ ー を うま く説 明 で き る の で,新 粒 子新 相 互 作 用 の 入 る余 地 は少 な い.こ
の事 実 を使 え ば,仮 説
に 基づ く新 粒 子 の 性 質 に 関 し大 き な制 限 が つ け られ るの で あ る.§4.3.2で べ た磁 気 能 率 に対 す る制 限 は こ の議 論 か ら得 ちれ た も の で あ る.
述
4.7.3
素 粒 子 物 理 へ の 見返 り
以 下 にSN
1987 A観
測 に よ り得 ら れ た 情 報 の う ち,素
粒 子物 理 に関す る も
の を い くつ か 抜 き 出 し て み よ う34,68). a. ニ ュ ー ト リ ノ 質 量69) ニ ュ ー ト リ ノ が 質 量 を もつ と,速
度υν は 光 速 よ り小 さ くな り
(4.106) とな るの で,超 新 星 ま で の 距 離 をLと
す る と,mν=0の
場合 に比べ て余 分 に
か か る時間 は
(4.107a) で 与 え ら れ る.E1とE2の
エ ネ ル ギ ー を もつ ニ ュ ー ト リ ノ の 到 着 時 間 差 は
(4.107b) に よ り与 え ら れ る.し ば,ニ
た が っ て,観
測 さ れ た事 象 に つ い て上 記 の 時 間差 を見 れ
ュ ー ト リ ノ 質 量 の 見 当 が つ く.到
て い る の で,m〓20eVと
着 時 間 は,幅〓10sec以
抑 え ち れ る.こ
内 に お さ まっ
れ は 実 験 室 で の 上 限 値 ∼10eVと
同
程 度 で あ る. b. ニ ュ ー ト リ ノ の 寿 命
超 新 星 か ら の ニ ュ ー ト リノ を観 測 した とい う事 実 は,そ
れ が 途 中 で 崩壊 しな
か っ た こ と を意 味 す る.し た が っ て,相 対 論 的効 果 に よ る時 間 の遅 れ を考 慮 し て
(4.108a) す な わ ち,
(4.108b) と な る.こ
れ に よ っ て,太
陽 ニ ュ ー ト リ ノ の 謎 をνeの 崩 壊 に 帰 す る モ デ ル は
大 方 除 外 ざ れ る. c. ニ ュ ー ト リ ノ の 電 荷70) ニ ュ ー ト リ ノ が 電 荷Qνeを よ り 曲 げ ら れ る の で,電 み の 長 さ)に
比 べ,地
も つ と す れ ば,銀
河 磁 場(B∼10-6ガ
荷 を も た な い 場 合 の 直 線 路LB(磁
球 まで の 到 達 時 間 が
ウ ス)に
場 の あ る とこ ろ の
(4.109) だ け 余 分 に か か る の で,2個 べ さ ら に,ΔtQだ
の ニ ュ ー ト リ ノ の 到 着 時 間 差 は,(4
.107b)に
比
け 大 き くな り,
(4.110) と な る.Qν
の 上 限 値 は,ニ
ュ ー ト リ ノ 質 量 の 上 限 値 を使 っ て 書 き 直 せ る の で,
結 果 は,
(4.111) を 与 え る. d. ニ ュ ー ト リ ノ の 磁 気 能 率25,71) ニ ュ ー ト リ ノ が 磁 気 能 率κ μBohrを も て ば,磁 ニ ュ ー ト リ ノ 光 球 の 中 でνRが を も ち,か
生 産 さ れ る .こ
気 相 互 作 用 に よ り超 新 星 の れ は エ ネ ル ギ ー100∼200MeV
な りエ ネ ル ギ ー の 高 い ニ ュ ー ト リ ノ で あ る.い
れ る と,νRは
物 質 と磁 気 相 互 作 用 か,右
巻 き相 互 作 用 し か し な い の で,断
面 積 は小 さ くその ま まニ ュー ト リノ光 球 外 ヘ 輝 度 が 小 さ く な る .観
散 乱 を受 け な い の で,生
ニ ュ ー ト リ ノ光 球 内 で 多 重
産 さ れ た と き の エ ネ ル ギ ー を 保 持 し た ま ま地 球 に 到 達
気 能 率 を も っ て い れ ば 銀 河 磁 場 と の 相 互 作 用 でνLに
き る の で,エ
測 と矛 盾 し
に 対 す る 制 限 が つ く.
も う一 つ の 議 論 は 次 の よ う な も の で あ る.νRは
す る.磁
変 換 さ
巻 きゲー ジ ボ ソ ン との 結 合 に よ る右
エ ネ ル ギ ー を も ち 出 し て し ま う の で,νLの な い と い う条 件 で,κ
っ た んνRに
も ど る こ とが で
ネ ル ギ ー の 高 い ニ ュ ー ト リ ノ が 観 測 さ れ る は ず で あ る.そ
の よう
な 高 エ ネ ル ギー の ニ ュ ー ト リ ノ は 観 測 され な か っ た とい う事 実 が κに 制 限 を つけ て
(4.112) と な る.こ れ ら の 制 限 が 真 実 な ら ば,ニ ュ ー ト リ ノ の 磁 気 能 率 に よ る 太 陽 ニ ュ ー ト リノの 謎 の解 決 法 は破 綻 す る.し か し,こ れ ら の制 限 に つ い て は,超 新 星 内 の ニ ュ ー ト リノ生 成 機 構 理 解 が か な り定 性 的 で あ る こ と を考 慮 す る と, 早 急 な 結 論 は避 け るべ き で あ ろ う.
4.8
お
わ
り
に
超 新 星 から の ニ ュー トリ ノ反 応 を わ ず か 十 数 事 象 観 測 した だ け で,こ の結 論 が 引 き出 せ たの で あ る.も あ れ ば,ど
れだけ
う少 し定 量 的 な議 論 が で き るだ け の事 象 数 が
れ ほ ど役 に立 つ か は 論 を待 た な い で あ ろ う.そ の よ うな 意 味 で ス ー
パ ー カ ミオ カ ンデ に よ る新 た な 超 新 星 観 測 が望 ま れ る.ま た 太 陽 ニ ュー ト リノ 問題 に決 着 をつ け る こ と も必 要 で あ る.Gaを 積 は こ れ か らで あ る.カ ナ ダ のSudburyに
使 う装 置 の本 格 的 な デ ー タ の 集 建 設 中 の 測 定 器72)は1000tの
重水
を使 用 す る もの で,太 陽 ニ ュ ー トリノ(νe)を
(4.113) に よ り観 測 す る.ま
た,次
の 中 性 カ レ ン ト反 応 を 検 出 す る こ と に よ り,
(4.114) νeとνμとντを合 わ せ た も の の 飛 来 率 が 測 定 で き る.こ の 反 応 はν 振 動 が 起 きて 他 のν に変 わっ た と して も,併 せ て 観 測 で き る とい う利 点 を もつ. スー パ ー カ ミオ カ ン デ と これ らの 装 置 を合 わ せ て低 エ ネ ル ギー 太 陽ニ ュー ト リノデ ー タが得 られ れ ば,謎 の 原 因 が 太 陽 モ デ ル に あ るの か,ニ
ュー トリ ノ振
動 に あ る の か 決 着 をつ け て くれ る で あ ろ う*8).
参 考文 献
1)
ニ ュ ー
ト リ ノ の 種 々 の 可 能 性 を 包 括 的 に 議 論
M.Fukugita of
and
T.Yanagida:"Physics
Neutrinos,ed.M.Fukugita
of and
し た 解 説 と し て は, Neutrinos"in
Physics
and
Astrophysics
A.Suzuki,Spring-Verlag,Tokyo,1994,p.1を
あ げ て お く. 2)
Particle
Data
Group:Phys.Rev.,D50(1994)1173;D54(1996);European
Phys.J.,
C3(1998)1 3)
D.A.Dicus
4)
B.W.Lee E.W.Kolb
5)
G.B.Gelmini
et al.:Phys.Rev.,D18(1978)1819 and
S.Weinberg:Phys.Rev.Lett.,39(1977)165
and
M.S.Turner:The and
Early
Universe,
Addison
Wesley,1990
M.Roncadelli:Phys.Lett.,B99(1981)411
*8) す で に 注*6)で 述 べ た よ う に 正 解 と い う こ と で 決 着 し た.
,太
陽 ニ ュ ー ト リ ノ の 謎 は,ニ
ュ ー ト リ ノ振 動 のLMAが
H.Georgi et al.:Nucl.Phys.,B193(1983)297 M.C.Gonzalez-Garcia and Y.Nir:Phys.Lett.,232(1989)383 P.Langacker and H.A.Weldon:Phys.Rev.Lett.,52(1984)1377 6)
D.A.Dicus
et
al.:Phys.Rev.,D18(1978)1829
M.Fukugita
et
K.Choi 7)
and
al.:Phys.Rev.,D26(1983)1840
C.W.Kim:Phys.Rev.,D37(1988)3225
T.Yanagida:Proc.of
Workshop
Unified
theory
and
Baryon
Number
in
Universe(KEK,Tsukuba,Japan),1970;Prog.Theor.Phys.,B135(1978)66 M.Gell-Mann,P.Ramond
and
R.Slansky
in Supergravity
(North
Holland),1979,
p.315 8)
C.Pati
and
A.Salam:Phys.Rev.,D10(1974)275
R.N.Mohapatra
and
G.Senjanovic 9)
10)
and
L.Durkin
and
V.Barger
et
A.Jodido
P.Langacker:Phys.Lett.,B166(1986)436 al.:Phys.Rev.,D42(1990)152
et
al.:Phys.Rev.,D34(1986)1967
G.Barenboim 11)
et
G.Beall
et
al.:Phys.Rev.,D55(1997)4213
al.:Phys.Rev.Lett.,48(1982)848
W.S.Hon
and
J.Baseq
et
A.Soni:Phys.Rev.,D32(1985)163
al.:Phys.Rev.,D32(1985)175
P.Colaugelo
and
12)
I.I.Bigi
13)
M.Doi,T.Kotani
and
G.Ecker
J.C.Pati:Phys.Rev.,D11(1975)2588
R.N.Mohapatra:Phys.Rev.,D12(1975)1502
G.Nardulli:Phys.Lett.,B253(1991)154
J.M.Frere:Phys.Lett.,B129(1983)469
and
W.Grimus:Nucl.Phys.,B258(1985)328 and
E.Takasugi:Prog.Theor.Phys.Supp.,83(1985)1
P.Langacker:Neutrino Study 14)
H.Ejiri:"Double Fukugita
15)
Mass,in"Testing
Beta
and
Standard
Decay"in
Physics
and
Astrophysics
A.Suzuki,Springer-Verlag,Tokyo,1994,p.500
M.Alston-Garnjost M.Gunther
et et
16)
L.Baudis
17)
PDG:European
18)
M.A.Beg,W.J.Marciano
et
al.:Phys.Rev.,C55(1997)474
al.:Phys.Rev.,D55(1997)54
al.:Phys.Lett.,B407(1997)219 Phys.J.,C3(1998)1 and
G.Degrassi,A.Sirlin 19)
the
Model",Proc.Theor.Ad.
Inst.,1990,p.863
B.W.Lee
and
K.Fujikawa
and
R.E.Shrock:Phys.Rev.,D16(1977)1444 and
R.E.Shrock:Phys.Rev.Lett.,45(1980)963
20)
H.A.Bethe:Proc.Cam.Phil.Soc.,31(1935)108
21)
Derbin
22)
Cooper
23)
M.Fukugita
P.Vogel
and et
J.Engel:Phys.Rev.,D39(1989)3378
al.:PAN,57(1994)222
L.A.Ahrens,et et
M.Ruderman:Phys.Rev.,D17(1978)1395
W.J.Marciano:Phys.Rev.,D39(1989)287
al.:Phys.Rev.,D41(1990)3297 al.:Phys.Lett.,B280(1992)153 and
S.Yazaki:Phys.Rev.,D36(1987)3817
of
Neutrinos,ed.M.
the
M.Fukugita
et
G.G.Raffelt
al.:Phys.Rev.Lett.,60(1988)879
and
S.P.Dearborn:Astrophys.J.,336(1989)6124)G.Raffelt:Phys.
Rev.Lett.,64(1990)2856 25)
Goyal
26)
R.E.Shrock:Phys.Lett.,B96(1980)159;Phys.Rev.,D24(1981)1232
et
al.:Phys.Lett.,B346(1995)312
27)
BNLE734;L.Ahrens,et
28)
B.Pontecorvo:Sov.Phys.,JETP6(1958)429;ibid.,7(1958)172
al.;Phys.Lett.,B194(1987)586
Z.Maki,M.Nakagawa 29)
R.Eichler
and
et
S.Sakata:Prog.Theor.Phys.,28(1962)870
al.:Proc.1987 Int.Conf.on
High
Energy
Phys.,Humburg,Nucl.Phys
B(Proc.Suppl.)3,(1988)389 30)
J.J.Simpson B.Sure
and
A.Hime:Phys.Rev.,D39(1989)1825,1837
et al.:Phys.Rev.Lett.,66(1991)2444
A.Hime
and
31)
H.Kawakami
32)
29)お
N.A.Jelly:Phys.Lett.,B257(1991)441 et
al.:Phys.Lett.,B287(1992)45
よ び
BNLE734;L.Ahrens
et
al.:Phys.Rev.,D31(1985)2732
BNLE776;L.Borodovsky,et 33)
al.:Phys.Rev.Lett.,68(1992)274
K.Nishikawa:"A KEK
PS
Possible and
Super
Long
Baseline
Kamiokande",INS
Neutrino Rep.-924,
Oscillation April
Experiment
Using
1992
D.S.Ayres:Nucl.Phys.,B(Proc.Suppl.)59(1997)297 Proc.4th
KEK
ed.Y.Kuno
Topical and
34)
J.N.Bahcall:Neutrino
35)
J.N.Bahcall and
R.Davis,
Physics,KEK,Tsukuba,Oct.29-31,1996,
Univ.Press,1989
R.K.Ulrich:Rev.Mod.Phys.,60(1988)297 M.H.Pinsonneault:Rev.Mod.Phys.,67(1995)781
J.Bahcall,S.Basu 36)
Flavor
Astrophysics,Cambridge
and
J.Bahcall
Conf.on
M.M.Nojiri
and
D.Harmer
M.Pinsonneault:astro-ph/9805135
and
R.Davis,A.Mann
and
K.Hoffman:Phys.Rev.Lett.,20(1968)1205 L.Wolfenstein:Ann.Rev.Nucl.and
Part.Sci.,39(1989)
467 37)
38)
B.T.Cleveland
et
al.:Nucl.Phys(Proc.Suppl.),38(1995)47
B.T.Cleveland
et
al.:Nucl.Phys.,B38(1995)47
S.Turk-Chieze
and
I.Lopes:J.Astrophys.,408(1993)347
S.Turk-Chieze,S.Cahen,M.Casse 39)
and
KAMIOKANDE;K.S.Hirata,et
C.Doom:J.Astrophys.,335(1988)415
al.:Phys.Rev.Lett.,63(1989)16;ibid.,65(1990)
1297,1301;ibid.,66(1990)97;Phys.Rev.,D44(1991)2241;D45(1992)21705 S.KAMIOKANDE;Y.Fukuda
et
al.:Phys.Rev.Lett.,77(1996)1683;Phys.Rev.
Lett.,81(1998)1158 40)
Y.Suzuki:Proc.ⅩⅧ kayama,Japan,June
41)
th
Int.Conf.on
Neutrino
Physics
SAGE;J.N.Abdurashitov
et
al.:Phys.Lett.,B328(1994)234;Nucl.Phys.,B38
(1995)60 42)
GALLEX;P.Anselmann
and
1998
et
al.:Phys.Lett.,B327(1994)377;B357(1995)237
Astrophysics,
Ta
W.Hampel 43)
et al.:Phys.Lett.,B388(1996)384
S.P.Mikheyev
and
Y.Yu
Smirnov:Sov.J.Nucl.Phys.,42(1986)913
H.Bethe:Phys.Rev.Lett.,56(1986)1305 H.Bethe
and
J.N.Bahcall:Phys.Rev.Lett.,44(1991)2962
L.Wolfenstein:Phys.Rev.,D17(1978)2369;ibid.,D20(1979)2634 44)
N.Hata
45)
W.V.Haxton:Phys.Rev.Lett.,63(1986)
and
P.Langacker:Phys.Rev.,D56(1997)6107
46)
L.Landau:Phys.Zeits.d.Sowetunion,2(1932)46
47)
Y.Takeuchi:Measurement
S.J.Parke:Phys.Rev.Lett.,57(1986)1275
C.Zener:Proc.Roy,.Soc.,London,A137(1932)696 of
Solar
Kamiokande-Ⅲ,PhD.Thesis
Neutrinos
submitted
from
to Tokyo
One
Thousand
Institute
of
Days
1995 48)
J.N.Bahcall
49)
SNO:Phys.Rev.Lett.,89(2002)011301
50)
KAMLAND:Phys.Rev.Lett.,90(2003)021802
51)
A.Cisneros:Astrophys.Space
et al.:Phys.Rev.Lett.,78(1997)171
M.Voloshin
et
C.S.Lim
and
Sc.,10(1971)87
al.:JETP64(1988)446;Sov.J.Nucl.Phys.,44(1986)440
W.J.Marciano:Phys.Rev.,D37(1988)1368
E.Kh.Akhmedov:Phys.Lett.,B213(1988)64 52)
R.Davis
53)
KAMIOKANDE;K.S.Hirata,et
et al.:Prog.Nucl.Part.Phys.,32(1994)13 al.:Phys.Lett.,B205(1988)416.ibid;B280(1992)
146 Y.Fukuda
et al.:Phys.Lett.B433(1998)9
I MB;Phys.Rev,.Lett.,66(1991)2561 SOUDAN2;W.W.M.Allison 54)
et
G.Barr,T.K.Gaisser
and
E.V.Bugaev
and
al:Phys.Lett.,B391(1997)491
T.Stanev:Phys.Rev.,D39(1989)3532
V.A.Naumov:Phys.Lett.,B232(1989)391
M.Honda,K.Kasahara,K.Hidaka
and
S.Midorikawa:Phys.Lett.,B248(1990)
193 H.Lee
and
Y.S.Koh:Nuovo
Cimento,B105(1990)883
55)
NUSEX;M.Aglietta
et
56)
Y.Fukuda
et al.:Phys.Lett.,B436(1998)33;Phys.Rev.Lett.,81(1998)1562
57)
Y.Fukuda
et
58)
CHOOZ;M.Apollonio
59)
K.Nishikawa:Talk
60)
S.Fukuda
61)
E.Gawiser
62)
KAMIOKANDE;K.Hirata
FREJUS:K.Daum
et
al.:Europhys.Lett.,8(1989)611
al.:Z.Phys.,C66(1995)417
al.:Phys.Rev.Lett.,81(1998)2016 et at
al.:Phys.Lett.,B420(1998)397
Lepton
and
Photon
and
J.Silk:Science,280(1998)1405 et
al.:Phys.Rev.Lett.,58(1987)1490;Phys.Rev,D38
(1988)448 I MB;R.M.Bionta
2003,Aug.2003,Fermilab
et al.:Phys.Rev.Lett.,85(2000)3999
et al.:Phys.Rev.Lett.,58(1987)1494
of Data
Technology,Jan.,
at
C.B.Bratton 63)
et
鈴 木 英 之:物
al.:Phys.Rev.,D37(1988)3361
理,43(1992)106
H.Suzuki:Supernova and 64)
Neutrinos
in"Physics
and
Astrophysics"
,ed.M.Fukugita
A.Suzuki,Springer-Verlag,p.763,1994
S.A.Colegate:Nature,341(1989)489 S.E.Woosley,J.R.Wilson
and
T.Mayle,J.R.Wilson 65)
J.Arafune
66)
J.M.Lattimer
and
and
R.Mayle:Astrophys.J.,302(1986)19
D.N.Schramm:Astrophys.J.,318(1987)288
M.Fukugita:Phys.Rev.Lett.,59(1987)367 and
A.Yahil:Astrophys.J.,340(1989)426
67) J.Cooperstein:Phys.Rev.,C37(1988)786 68)
R.N.Mohapatra World
69)
K.Sato
and
A.Burrows J.Arafune 70)
P.B.Pal:Massive
Neutrinos
et
and
Astrophysics
J.M.Lattimer:Ap.J.Lett.,318(1987)L63
and et
G.Cocconi:Nature,329(1987)21
al.:Phys.Rev.Lett.,60(1988)1789
and
J.Cooperstein:Phys.Rev.Lett.,61(1988)24
R.Barbieri
and
R.N.Mohapatra:Phys
SNOW;E.W.Beier SNOW
Physics
al.:Phys.Lett.,B194(1987)477
J.Lattimer
Ⅱ
in
H.Suzuki:Phys.Rev.Lett.,58(1987)2722 and
G.Barbiellini
71) I.Goldman
72)
and
Scientific,Singapore,1991
and
D.Sinclair:Scientific
Detector,SNO-89-15(1989)
.Rev.Lett.,61(1988)27 and
Technical
Description
of
Mark
,
5 大統 一 と超 対称 性
第4章
で は,ニ
ュ ー トリノ質 量 とい う昔 か ら な じん で い る 問題 を取 り扱 う に
は,標 準 理 論 を 多 少 は 拡 張 す る必 要 性 が あ る こ と を議 論 した.こ
こで は,さ
ら
に 標 準 理 論 の 欠 点 を積 極 的 に掘 り下 げ,そ の 解 決 法 を探 る こ とに よ って 新 しい 方 向 を模 索 す る よ す が と しよ う.標 準 理 論 は,現 象 論 と して は ほ とん ど難 攻 不 落 の よ うに 見 え る が,理 論 的 に は い くつ か の 不 満 が あ り,新 しい拡 張 モデ ル が た くさ ん提 案 さ れ て い る.し たが っ て,こ れ か らの議 論 は 必 然 的 に 思 索 的 に な ら ざ る をえ な い.し か し,ア イデ ア だ け で デ ー タ の裏 づ け の な い モ デ ル を詳 細 に 議 論 す る こ とは あ ま り意 味 が な いか ら,以 下 は将 来 の 方 向 を大 き く左右 し そ うな もの に つ い て,ま た 実 験 検 証 の可 能 性 の あ る もの に つ い て,大 づ か み の 議 論 を す る こ と に す る.ま ず,標 (grand
準理 論 の最 も 自然 な拡 張 で あ る大統 一 理 論
unified theory: GUT=QCDとGWS理
の 困 難 で あ る階 層 問 題 か ら超 対 称 性(super
論 の 統 合)を 導 入 し,大 統 一 symmetry)へ
入 る.超 対 称 性 は
大 統 一 とは独 立 の独 自の 対 称 性 と考 え て も よ く,超 対 称 粒 子(超 粒 子 も し くは SUSY粒
子 と もい う)の 探 索 は そ れ 自身 興 味 の あ る研 究 対 象 で あ る.超 対 称
性 をゲ ー ジ化 す る と重 力理 論 に 到 達 す るの で,究 極 の統 一 理 論 に は不 可 欠 と考 え られ る.こ
こ で は,低 エ ネ ル ギー 現 象 に 関係 す る と こ ろの み 定 性 的 に ふ れ る
こ とに す る.
5.1
な ぜ 大 統 一 か1)
標 準 理 論 に 内 在 す る パ ラ メ タ ー の 数 は20近 結 合 定 数:ΛMS(ま
く も あ る.
た は αs),e, sinθw
質 量:ゲ
ー ジ ボ ソ ン;W±
お よ びZ0
フ ェ ル ミ オ ン;mq,
ml(9個)
ス カ ラ ー 粒 子;mH KM行
列:θ1,θ2,θ3,δ
世 代 数:ng QCDのCPパ
ラ メ ター θ
ア イ ン シュ タ イ ンの 重 力 方程 式 が,パ
ラ メ ター と し て万 有 引 力 定 数1個
しか 含
ま な い こ と と対 比 す る と,標 準 理 論 が 真 の統 一理 論 に は ほ ど遠 い こ とは 明 か で あ る.特 に,対 称 性 を破 る機 構 す な わ ち質 量 問題 を解 くに は,ヒ
ッグ ス の 本 質
を 明 らか に し な け れ ば な ら な い が,こ
で 議 論 し た.
の 問 題 に つ い て は 第3章
フ ェ ル ミオ ン の 中 で は ニ ュー ト リノの 質 量 が特 殊 な役 割 を演 じ る.ニ ュ ー ト リ ノ に質 量 を与 え るた め に は標 準 理 論 を拡 張 す る 必要 性 が あ る こ と は 第4章 で す で に議 論 した. ク ォー ク と レ プ トンの 数 は こ れ で つ き て い る の か,な ぜ 世 代 が 繰 り返 さ れ る の か とい う世 代 の 謎 は,古
くはe-μ の 謎 とい わ れ 歴 史 は 古 い が,未
だに手 が
か りが ま っ た くつ か め な い とこ ろ で あ る.群 を拡 張 して 世 代 を ま る ご と包含 す る よ う な モ デ ル もつ くれ な くは な い が,い た い.一 つ の 見 方 は,ク
ま の と ころ 成 功 して い る とは い い が
ォー ク と レプ トン を,よ
り根 元 的 な粒 子(サ ブ クォー
ク ま た はプ レオ ン)の 複 合 体 と見 な し て,各 世 代 は 第1世 代(基 底 状 態)の 励 起 状 態 とす る こ とで あ るが,質
量 ス ケ ー ル がmt/me∼105も
違 う粒 子 を一 つ の
束縛 状 態 に ま とめ られ るか は 大 い に 疑 問 で あ る.以 下 で は,大 統 一 理 論 へ 進 む こ とに よ っ て,解 決 の 可 能 性 の あ る事 項 を い くつ か あ げ る.
5.1.1 ワイ ンバ ー グ角 の不 定性 標 準 理 論 は,SU(3)color×SU(2)L×U(1)Y群 さ れ,少
に 基 づ くゲ ー ジ理 論 と して 記 述
な く も電磁 力 と弱 力 部 分 に つ い て は 不 完 全 なが ら も統 一 が で きて い
る.不 完 全 とい う意 味 は,SU(2)群
とU(1)群
が 一 つ の群 に は ま と ま って い
な い の で,電 磁 力 と弱 力 の 二 つ の 結 合 定 数 は独 立 で あ り,ワ イ ンバ ー グ混 合 角 とい う不 定 パ ラ メ ター を導 入せ ざ る を え な い不 満 が あ る こ とで あ る.し
たが っ
て,次 の 目標 は 当 然 の こ とな が ら,ワ イ ンバ ー グ角 を決 め られ る よ うな,よ
り
大 き な群 を見 つ け るこ とで あ る.さ て い る よ う に見 え るQCDも,ゲ ば,三
ら に電 弱 相 互 作 用 とは ま った く切 り離 され
ー ジ理 論 に 立 脚 す る とい う共 通 点 に 着 目す れ
つ の 力 をす べ て 含 む ゲ ー ジ群Gが
も たせ る.こ れ が 可 能 な らば,ワ
存 在 す るの で は な い か とい う希 望 を
イ ンバ ー グ角 を含 め て3個 の 結合 定 数 を1個
に 減 らせ る で あ ろ う.大 統 一 とは,電 弱 強 の三 つ の 相 互 作 用 の 統 一 の こ と を さ す.重
力 を含 む 統 一 は超 大 統 一 とで も い うべ きな の で あ ろ うが,ま だ 定 着 した
慣 用 の 名 称 は な い.超 対 称 ゲ ー ジ理 論 は 超 大 統 一 理 論 の一 つ で あ るが,通 常 は 超 重 力 理 論(super
gravity,略
してSUGRA)と
特 別 の名 前 を与 え られて い
る.
5.1.2 電 荷 の 量 子 化 群Gの
存 在 す べ き理 由 は ま だ あ る.標 準 理 論 で は,電
磁 相 互 作 用 はU(1)
ゲ ー ジ グ ル ー プ に 属 す るが,ア ー ベ ル群 の ゲ ー ジ場 の 方程 式 は 線 形 で あ り結 合 定 数 の 規 格 は 自由 で あ る.い い か え る と,電 荷 は量 子 化 さ れ る必 然 性 は な く, 各 粒 子 は任 意 の 電 荷 を もち う る.し か し,わ れ わ れ は 陽 子 の 電 荷 と電 子 の 電 荷 は10-21の 精 度 で 等 し く2),ク ォ ー ク の 電 荷 が 電 子 の 電 荷 の 正 確 に1/3で
ある
こ と を知 っ て い る.し た が って,電 荷 の 量 子 化 は理 論 の 中 に本 来 組 み 込 まれ て い な け れ ば な ら な い は ず の も の で あ る.電 荷 が よ り大 き な 単 純 ゲ ー ジ群Gの 生 成 演 算 子(Liと
書 く)の 組 み 合 わ せ で つ く られ る保 存 量 で あ る な らば,多
重 項 ご とに
(5.1) を 満 た す の で 量 子 化 が 達 せ られ る*1).群Gは,標
準 理 論 を含 ま な い と い け な
い か ら,
(5.2) が 条 件 で あ る.
5.1.3 三 角 異 常 項 わ れ われ は レプ トンが 強 い相 互 作 用 を もた ず,ク
ォ ー ク とは大 い に 性 質 を異
*1) 三 角 異 常 項 を な くす る と い う条 件 で も決 め る こ と が で き る 考 え 方 もあ る.
.こ
の 方 が よ り本 質 的 と い う
図5.1 素粒子 の家族構 成 と世代構造
に し て い る こ とを知 っ て い る.電 弱 相 互 作 用 を共 有 す る と は い え,バ
リオ ン数
お よ び レプ トン数 保 存 に よ って 両 者 が 混 じ ら な い こ とは保 証 さ れ て い る よ うに 見 え る.し か し,統 一 ゲー ジ理 論 の枠 組 み の 中 で は,ゲ ー ジ不 変 性 に保 証 さ れ な い保 存 則 は破 られ て い て も不 都 合 は 生 じな い.い 虚 心 坦 懐 に 眺 め て み れ ば新 し い世 界 が 開 け る.す
っ た ん,こ の垣 根 を越 え て
なわ ち,現 象 論 的 に 分 類 す る
と素 粒 子群 が クォー ク と レプ トン で 家 族 を構 成 す る こ と,少 な くも3世 代 の 家 族 が 存 在 す る こ と,標 準 理 論 は 各 家 族 の 中 で 完 全 に 閉 じ る こ とに 注 目 し よ う (図6.1).そ
こで,も
しバ リオ ン数 や レ プ トン数 保 存 を破 る よ う な共 通 の 相 互
作 用 が 存 在 す れ ば,ク ォ ー ク と レプ トン は混 合 し う る.つ
ま り,ク ォー ク と レ
プ トン が 家 族 を構 成 す るか らに は 同 じ仲 間 で あ ろ う とい う論 理 で あ る.現 象 的 に は ク ォー ク と レプ トン を結 び つ け るべ き理 由 は こ の くらい しか ない が,理 論 的 に は,三 角 異常 項3)の 消 去 とい う強 い理 由 が 存 在 す る. 軸 性 カ レ ン トJ5μ=gψ γμγ5ψは フ ェ ル ミオ ン の 質 量 が0で ベ ル で は保 存 す るが,い よ っ て,カ
わ ゆ る三 角 図(図5.2(a))と
あ れ ば,ト
リー レ
呼 ば れ るル ー プ 効 果 に
レ ン ト保 存 則 が成 立 し な くな る.異 常 項 は フ ェ ル ミオ ン ル ー プ の 三
つ の ヴ ァー テ ッ ク ス の う ち,一つ
ま た は 三 つ に 軸 性 カ レ ン トが 結 合 し,他 の
ヴ ァー テ ッ ク ス は極 性 カ レ ン トに 結 合 す る と き に 生 じ る(§6.2で く説 明 す る).異 常 項 の 寄 与 は,
さ らに詳 し
(b)
(a)
図5.2
三 角 異 常 項.フ ェ ル ミオ ン(f)のつ くる ルー プ に3種 の カ レ ン トが 結 合 す る.(a)は 一般 に ゲ ー ジ群 生 成 演 算 子行 列Ta, Tb, Tcで 結 合 して い る場 合.(b)はZγ γが 結 合 す る場 合.
(5.3) で 与 え られ る.Gμν は,こ
の フ ェ ル ミオ ン に結 合 す るゲ ー ジ場 で あ る.軸 性 カ
レ ン トに 基づ く対 称 性 に は,こ の 異 常 項 に よ り破 られ る危 険性 が 常 に 内在 す る が,こ
れ が 大 域 対 称 で あ る場 合 に は 害 は な い.し か し,局 所 対 称 す な わ ち ゲー
ジ カ レ ン トが 関 与 す る と きは 問題 とな る.こ の三 角 図 に よ っ て カ レ ン ト保 存則 が 破 れ る の で,繰
り込 み が 不 可 能 とい う重 大 事 態 とな る.標 準 理 論 はSU(2)L
群,つ
ま りカ イ ラ ル ゲー ジ 群 に 基 づ くの で,三 角 異 常 項 の 発 生 は避 け られ な
い.繰
り込 み 可 能 性 が 正 しい理 論 の 条 件 で あ るな らば,三 角 異 常 項 は存 在 して
は な らな い の で あ る.三 角 異常 項 が 消 滅 す る た め の 条 件 は,種 々 の フ ェ ル ミオ ン の つ く る三 角 異 常 項 の 和 が 相 殺 す る こ とで あ る.簡 単 な 例 と して,一 つ の ヴ ァー テ ッ ク ス が 軸 性 ベ ク トル に,他 の 二 つ が極 性 ベ ク トル に 連 が っ て い る場 合,す
な わ ちZ→
γγ(図5.2(b))を
フ ェ ル ミオ ンfのZと
の 結 合 がgzf,γ
考 慮 し て み よ う.Z→ との結 合 がQfで
γγの 場 合 は,
あ る の で,
(5.4) で あ れ ば,異 +Y/2お
常 項 は 消 滅 す る.gzfの
よ び ΣT3,ΣT33は,各
軸 性 部 分 はT3Lで
あ る か ら,Q=T3
多 重 項 の 中 で 和 を と る と0に
な る事 実 を 使
う と,
(5.5) 標 準 理 論 で は,左 とか ら
巻 き粒 子 は すべ て2重 項 の 中 に あ り,(T3L)2が
同一 であ るこ
(5.6) が,異
常 項 の消 滅 条 件 とな る.そ こ で,各 粒 子 の 電 荷 の和 を とっ て み る と,
(5.7) とな り,ま さ に この 条 件 を満 た して い る.こ の こ とは単 な る偶 然 とは考 えに く い.正
しい理 論 で は 異常 項 の 消 滅 が保 証 され て い る とす れ ば,ク
トン とは 常 に 組 に な っ て い なけ れ ば な らな い の で あ る.つ
ォ ー ク とレプ
ま り,ク ォ ー ク とレ
プ トン を 包 含 す る家 族 構 造 は 本 質 的 な 性 質 と考 え ざ る を え な い.し
た が っ て,
クォ ー ク と レプ トン を統 合 す る大 統 一 理 論 は 当 然 な論 理 的 帰 結 とな る. な お,異 常 項 消 滅 の 一 般 的 条 件 は,各(カ
イ ラ ル)ゲ ー ジ群 の 生 成 演 算 子 を
Taと す る と き,
(5.8) で 与 え ら れ る.標 準 理 論 で は第2項
は0で
あ っ たが,大
し も0に な る必 要 は な い.実 際 の と こ ろ,第2項 トル 型 とい う),例 え ば,SO(10)の
統 一 で は 第2項 が 必 ず
が 第1項
に 等 し い理 論(ベ
ク
よ うに左 右 対称 な 大 統 一 理 論 は,自 動 的 に
異 常 項 を消 す の が 一 つ の 魅 力 と な っ て い る.い ず れ に せ よ,異 常 項 消 滅 は 群 Gを 選 ぶ と き の一 つ の 条 件 とな る.
5.2
5.2.1
大 統一の スケール
大 統 一 が 可 能 で あ る た め に は,あ 数,αiが
SU(5)
一 致 す る 必 要 が あ る.ス
り込 み 群 方 程 式(1.23)を
る エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ル で,3個
の結合 定
ケ ー ル μ に 依 存 す る 結 合 定 数 αi(μ)は,繰
満 た し,最
低次 では
(5.9) と表 さ れ る.こ
こ に,αiはSU(i)の
ゲ ー ジ 群 の 結 合 定 数 で,係
数 βiは ゲ ー ジ ボ
ソ ン の 自 己エ ネ ル ギ ー に寄 与 す る フ ェ ル ミオ ン とボ ソ ン の ル ー プ を計 算 す る こ と に よ り得 られ る. 非 ア ー ベ ル 群 で は,βi>0と 入 れ る と,各
αiの 発 展 は,定
な り漸 近 自 由 が 成 立 す る.αi(mW)に 性 的 に 図5.3の
よ う に 表 さ れ,μ
測定 値 を
∼1015GeVで
3個 の 結 合 定 数 は 大 体 一 致 す る4).し 可 能 性 は 十 分 に あ る.し
か も,こ
(hc5/GNewton)1/2)∼1019GeVよ
た が っ て,単
一 の 大 統 一 群Gが
存在 す る
の エ ネ ル ギ ー は プ ラ ン ク エ ネ ル ギ ーMPl(=
り は ま だ 下 で あ る の で,将
来,重
力 まで含 め る
超 大 統 一 の 可 能 性 が 残 さ れ て い る.
図5.3
SU(i)群
大 統 一 が 成 立す る ため に は,あ
の 結 合 定 数 の 発 展 と大 統 一 の ス ケー ル
る ス ケ ー ル(大 統 一 ス ケー ル)で 結 合 定 数 が 一 致 しな け れ
ば な ら な い.た だ し,3個 の 結 合 定 数 が 必 ず しも 同時 に一 致 す る 必 要 は な く,あ ル μ1で2個 の結 合 定 数 が一 致 し,別 の スケ ー ル μ2で3個 が一 致 して もよ い.
群Gの
可 能 性 は い ろ い ろ あ る が,大
る に は,最
も 簡 単 なSU(5)を
論 は 特 に 断 ら な い 限 り,SU(5)に
5.2.2 SU(5)の 個 のSU(5)の 参 照).こ U(1)の
統 一 理 論 の 基 本 的 構 造 と筋 道 を 理 解 す
考 え る の が よ い5).実
に は 多 少 の 修 正 が 必 要 で あ る が,そ
験 デ ー タ に 整 合 させ る た め
れ は 後 ほ ど 議 論 す る こ と に し て,以
下 の議
限 定 す る.
フ ェ ル ミ オ ンの 表 現 生 成 演 算 子 は52-1=24個 生 成 演 算 子Liの れ をSU(3)カ
あ る.ラ
整 理 し て み よ う.15個
あ る 第1世
あ る の で,24 あ る(Ⅱ-付
イ ソ ス ピ ンI3(SU(2)のI3)お
対 応 さ せ る こ と に す る.次
トン が ど の 表 現 に 属 す る か を 考 察 す る た め に,基 表 現 次 元 数,SU(2)の
ン ク は5-1=4で
う ち 対 角 化 可 能 な も の は4個
ラ ー 群 のλ3,λ8,ア
超 電 荷Y(=2(Q-I3))に
を,SU(3)の
る ス ケー
録F よび
に ク ォー ク とレプ
本 的 な フ ェ ル ミオ ン の 量 子 数
表 現 次 元 数,U(1)の
超 電 荷Yで
代 の 既 知 の フ ェ ル ミ オ ン は,
多重度
表 して
(5.10) の よ う に 表 さ れ る.こ ucL, ecLの
こ で,ア
イ ソ ス ピ ン1重
項 のdR,
よ う に 荷 電 共 役 の 形 で 書 い た 理 由 は,ゲ
ベ ク トル 型 で あ リ カ イ ラ リテ ィ を 変 え な い こ と,し
uR, eRの
ー ジ 理 論 に よ る相 互 作 用 は た が っ て,1重
も 含 め て す べ て の 粒 子 を 同 じ 多 重 項 に あ て は め る た め に は,カ え て お く必 要 が あ るか ら で あ る.な νLc
は,標
要 に 応 じ て 使 う こ と に す る.こ
は,ま
巻 きの ニ ュ ー ト リノ (5.11)
の 既 知 の フ ェ ル ミ オ ン を,SU(5)の
属 させ て 矛 盾 が 生 じ な い か を 眺 め て み よ う.本
と め て 一 つ の 表 現 の 中 に 入 れ る 方 が す っ き りす る が,別
,u,カ
眺 め れ ば,5*を
ラ ー の 自 由 度 を指 標i(i=1∼3)で
当
々 に して は 不 可
つ く る 可 能 性 が2通
り あ る.q
表 す こ と に し て, (q=uま
この2通
イ ラ リテ ィ を揃
統 一 理 論 に は 現 れ る 可 能 性 が あ る の で,必
れ ら15個
と い う 理 由 は な い.(5.10)を =d
項の粒 子 を
(1,1,0)
準 理 論 で は 存 在 し な い が,大
最 小 次 元 の 表 現,5と10に
お,右
代 り にdcL,
た はd)
(5.12)
りの 不 定 性 は,多 重 項 内の 電 荷 を考 慮 す るこ とに よ り一 意 的 に決 め ら
れ る.電 荷Qは,
(5.13) で 与 え られ るの で,SU(5)群 子 の 和 とな り,し た が ってQも
の場 合 は,2個
(し た が っ てQに
の 無 軌 跡(traceless)の
生成 演算
ま た 無 軌 跡 で あ る.こ れ は,標 準 理 論 で はY
も)に 条 件 が つ け られ な か っ た の とは 事 情 を 異 に し て い る.
こ の こ とか ら多 重 項 内 の 粒 子 の 電荷 の 和 は0と
な らな け れ ば な ら な い.す な わ
ち,
(5.14) し た が っ て,5*に
属 す る3個
に 属 す る 場 をψ5a(a=1∼5)と
のqcLiはdcLiで
な け れ ば な ら な い.基
書 く こ と に す る と*2),(5.12)の
本 表 現5
複素 荷 電 共役
を と り,
(5.15a)
(5.15b) の よ う に 表 さ れ る.a=1∼3は
カ ラ ー の 指 標R,
ア イ ソ ス ピ ンI3=+1/2, -1/2に ψ 5aの 量 子 数 が 決 ま っ た.す 量 子 化 さ れ,ク
対 応 す る.こ
G, Bに
れ で,基
対 応 し,a=4 本 表 現5の
,5は,
中の 各 要 素
で に 大 統 一 の 利 点 の 一 つ が 明 らか で あ る.電
ォ ー ク の 電 荷 が レ プ トン の 電 荷 の1/3の
荷 は
整 数 倍 で あ る こ とが 説
明 で き た. 次 元 数 の 大 き い 表 現 内 の 量 子 数 は5次 こ と が で き る.た
の よ う に,a,
で あ る の で(表5.1),表
bの 指 標 に つ い て 反 対 称 で あ る .し
は,カ
ラ ー 積 表 現
る.同
様 に し て,a,b=4,5に
∼3
元 表 現 の 積 をつ く る こ と に よ り決 め る
と え ば,
, b=4,5は,カ
の3*に は,ア
ラ ー で3,ア
が こ れ に 該 当 す る.ま
とめ て,表
た が っ て,a,
対 応 す る の で,ucLiに
イ ソ ス ピ ン0のeLcが
イ ソ ス ピ ンI=1/2に 現10の
現10は,
b=1∼3の
部分
当 ては め られ 対 応 す る.a=1
対 応 す る か ら,(uL,
dL)
要 素 ψ10abは
(5.16)
の よ う に 表 す こ と が で き る. す.こ
れ に よ っ て,15個
*2) (前ペ ー ジ)以 下
は 規 格 因 子 で あ り,Lの
の 既 知 の フ ェ ル ミ オ ン が,正
指 標 は 左 巻 き を表
しい量子数 をもちつつ
,SU(5)群 の指 標 を,便 宜 上 テ ン ソル 形 式 に 書 き,列 ベ ク トル を反 変 ベ ク トル の よ うに,行 ベ ク トル は共 変ベ ク トル の よ うに 見 な して,上 つ きお よび 下つ き の指 標 を 導 入 す る と便 利 で あ る.上 下 同 じ指 標 が 現 れ た と き は 和 を と る こ と と約 束 す る.
過 不 足 な く き っ ち り と5と10に に 入 れ よ う と 思 え ば,1重 現 れ る 基 本 的 なSU(5)表
納 ま っ た.νLcの
入 る 余 地 は な い の で,無
理
項 表 現 に あ て は め る し か 手 は な い.表5.1に,よ 現 と,そ
れ をSU(3)×SU(2)×U(1)に
く
分 解 した と き
の 構 成 を 示 す. 表5.1 SU(5)のSU(3)×SU(2)×U(1)表
5.2.3
ゲ ージ粒子の表 現
a. 随 伴 表 現(adjoint 次 に,SU(5)群 本 表 現5を
示*3)
representation)
の 生 成 演 算 子[Li]ab(i=1∼24,
参 照 す れ ば,a,b=1∼3は
a,b=1∼5)を
カ ラ ー,a,b=4,5は
標 で あ る か ら,i=1∼8をQCD, i=9∼11をSU(2)の
つ く ろ う.基 ア イ ソス ピンの指
生 成 演 算 子 に対 応 させ
て
(5.17)
の よ う に と る こ と に す る.た
だ し,σjはj=1∼3と
す る.こ
れ らLiは
(5.18) と い う 規 格 条 件 を 満 た す.L3, *3) 積 表 現 の つ く り方 に つ い て は
L8, L11=2I3が ,Ⅱ-付
録Fを
対 角 行 列 で あ る か ら,も
参 照 の こ と.
う一 つ
の 対 角 行 列 をL12=cYと
す れ ば,表
現5のY(5.15)を
参 照 し,(5.18)の
規
格 条 件 を 使 え ば,
(5.19)
と 表 さ れ る こ と が わ か る.残
りの12個
の 生 成 演 算 子L13∼L24は,
(5.20a)
(5.20b)
の よ う に し て つ く る こ と が で き る.L15∼L18, ∼L24は
,ク
L21∼L24は
上 記 に な ら う.L13
ォ ー ク と レ プ トン を 入 れ 替 え る 演 算 子 で あ り,標
準理論 に はな く
て 大 統 一 に よ っ て 新 し く出 現 し た 演 算 子 で あ る. ゲ ー ジ ボ ソ ンVμ
の 属 す る 表 現24は
次 の よ う に 表 す こ とが で き る.
(5.21a)
(5.21b)
(5.21c) gi(i=1∼8)は
グ ル ー オ ン を 表 す.X,
ジ ボ ソ ン で,ク ば,X∼dLceRcま
大 統 一 に よ り出 現 し た 新 し い ゲー
ォ ー ク と レ プ トン を 互 い に 変 換 す る 作 用 を もつ.量 た はuRuL, Y∼dLcνRcま
ラ ー 量 子 数,レ SUB(2)の
Yが
プ ト ン 量 子 数,ア
た はuRdLと
子 数 で表 せ
同 じ で あ る の で,カ
イ ソ ス ピ ン 量 子 数 を 合 わ せ も つ.SU(3),
表現 で書けば
(5.22a) 電 荷,ア
イ ソ ス ピン,超 電荷 で書 け ば
(5.22b) で 表 さ れ る.こ のゲ ー ジ場 を使 う と,共 変微 分 お よび ラ グ ラ ン ジ ア ン の 中 の 運 動 エ ネ ル ギ ー 部 分 が,ゲ ー ジ場Vと
ψ5につ い て は す ぐに 書 き下 ろせ て,
(5.23a) (5.23b) (5.23c) た だ し,g5はSU(5)に
伴 う結 合 定 数 で あ る.ψ10に 対 す る共 変 微 分 とラ グ ラ ン
ジ ア ン は,多 少 の群 論 計 算 を必 要 とす るが,
(5.24) で あ る こ とが 示 せ る. 証 明 基 本 表 現 ベ ク トル を ψa,10次 ψ 空 間 で の 生 成 演 算 子 をLAab, X空 A=1∼24, で,微
a,b=1∼5)と
元 ベ ク トル ψ10の テ ン ソ ル 表 現 をXab,
間 で の 生 成 演 算 子 をLAabcd(以
書 く,Xabは(ψaψb-ψbψa)の
上 す べ て,
よ うに変 換 す るの
小 変 換 を考 え る と
(5.25)
(5.26) が 成 立 す る.こ れ か ら
(5.27) が 導 け る.ラ
グ ラ ン ジア ンの 中 に は双1次
形 式 で現 れ るの で
(5.28) で あ る.ゲ ー ジベ ク トル 場 の行 列 表 現
を使 え ば,ラ
グラ ンジ
ア ンの 中 の運 動 量 項 は
(5.29) と 書 け る. b.
(証 明終)
ワイ ンバ ー グ角
(5.23)よ
り直 ち に 大 統 一 ス ケ ー ル μ〓MGUTで
は,
(5.30) が 成 立 し て い る こ と が い え る.次 る た め に,ラ ン 場Aμ
に,U(1)ゲ
ー ジ ボ ソ ンBの
グ ラ ン ジ ア ン か ら 中 性 のWμ0とBμ
とZμ0で
結 合 定 数 を求 め
を 含 む 項 を 抜 き 出 し,フ
ォ ト
書 き直 す と
(5.31a) た だ し,sW=sinθW≡sinθWMS, cW=cosθWで
あ る.こ
れ よ り,電
荷 行 列Qは
(5.31b) と表 せ る.電
荷 行 列 は 一 方 でQ=I3+Y/2と
表 せ る か ら,I3=L11/2お
よび
を 使 え ば,
(5.32) と書 け る の で,(5.31b)と
比 較 し て,
(5.33a) (5.33b) (5.34) が 導 け る.こ
のsinθWの
値 は,大
統 一 ス ケ ー ル(μ ≒1015GeV)で
の値 で あ る
こ と を 注 意 し て お く.
5.2.4 対 称 性 の 破 れ X,
Yゲ ー ジ ボ ソ ン は,ク
ォー ク〓 レ プ トン間 の 遷 移 を 引 き起 こ す が,陽
子 は 十 分安 定 で あ る こ とが知 られ て い る.陽 子 崩 壊率 を実 験 デ ー タ と矛 盾 させ な い た め に は,X,
Yの 質 量MX, MYは
十 分 重 くす る必 要 が あ る.そ の た め に
は対 称 性 の 自発 的破 れ が生 じて い て,
(5.35) の よ う に対 称 性 が2段
階 で破 れ る とす る.ま ず 大 統 一 エ ネ ル ギー ス ケー ル(μ
∼MGUT〓1015GeV)で
第1段
階(μ ∼250GeV)で こ り,WとZが
階 の破 れ が 生 じてX
, Yに 質 量 を 与 え,第2段
標 準 理 論 に お け る弱相 互 作 用 と電 磁 相 互 作 用 へ の 分 化 が起 質 量 を獲 得 し た とす る.第1段
Yに 質 量 を与 え る に は,24次
階 で ゲ ー ジ ボ ソ ン で あ るX,
元 表 現 に属 す る ヒ ッグ スΦabが,
(5.36)
の よ う な 真 空 期 待 値 を 獲 得 す る とす れ ば よ い6). こ れ を み る た め に,ま
ず 共 変 微 分Dμ
を 求 め る.
で あ る か ら,
Φi(i=1∼24)を
(5.37) と い う5×5行
列 の 形 に 表 せ る((5.21b)の
ψ5,ψ5*はSU(5)の
微 小変換 で
ゲ ー ジ ボ ソ ン の 表 式 を 参 照 せ よ).
(5.38a) (5.38b) な どの 変 換 を受 け る か ら,Φ
の変 換 は
(5.39) で 与 え られ る こ とに な り,対 応 す る共 変 微 分 は
(5.40) これ に対 応 し て ヒ ッグ ス ラ グ ラ ン ジ ア ンの 運 動 エ ネ ル ギ ー 項 は,
(5.41) の よ うに 書 け る.ゲ ー ジ ボ ソ ン の 質 量 項 は,Φ
を ヒ ッ グ ス の 真 空期 待 値 で 置
き換 え て得 られ る.
(5.42) <Φ>とVμが,
(5.43)
の 形 を も っ て い れ ば,
(5.44)
の 形 に な る の で,(5.42)の
中 のViはXま
な る.p=V, q=-3V/2と
す れ ば,
た はYの
み が 生 残 り,望
む形 と
(5.45)
g5の 値 に つ い て は,後
述 の(5.54)を
参 照 せ よ.真
空 期 待 値Vは
統 一 の エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ル 程 度 で あ る か ら, る ポ テ ン シ ャ ル の 形 は,標
だ い た い大
で あ る.Φ
のつ く
準 理 論 の ヒ ッ グ ス 場 の ポ テ ン シ ャ ル が,
(5.46) と表 せ る こ と に な らっ て つ くる.自 発 的 に 対 称 性 を破 る た め に は│Φ│の4乗
ま
で の 項 を含 む 必 要 が あ るか ら一 般 的 な 形 で 表 して
(5.47) と す る.Φ 7b/5な
の3乗
ら ば,ポ
の 項 は あ っ て も よ い が 簡 単 の た め 省 く,b>0, テ ン シ ャ ル の 最 小 値 が 唯 一 に 決 ま る.こ
待 値 は∂P/∂Φ│Φ=<Φ>=0か
μ2>0,
の と き,Φ
a>
の真空期
ら得 ち れ て,
(5.48) と な る. こ のΦ
の 真 空 期 待 値 の も た せ 方 を 工 夫 し て,電
を も 同 時 に 起 こ す こ と は 可 能 で あ ろ うか.答 の 中 に はW, 1/2"の
形 を し て い る が,ヘ
形 と な る.フ
表 現 は 表5.1に
は ノ ー で あ る.理
質 量 を も た せ る の に 必 要 な"カ
成 分 が 存 在 し な い(表5.1参
ψRψL+h.c.の +h.c.の
Zの
弱相互作 用の対称 性 の破 れ
照).ま
リ シ テ ィLの
ェ ル ミオ ン は5*,
ラ ー1重
た,フ
由 の 第1は,24
項か つア イソス ピン
ェル ミオ ンの 質 量 項 は
状 態 で 書 き 直 す と,(ψcL)TCψL
10に 属 し て い る か ら,質
量 項 のSU(5)
よ り,
(5.49) の どれ か と な る の で,24と た質 量 を獲 得 で き な い.そ
は 結 合 で きな い.し
た が って,フ
こで,前 述 した よ う に第2段
ェ ル ミオ ン も ま
階 の 対 称 性 の破 れ が 必
要 とな るの で あ る.こ の 第2の 対 称 性 の 破 れ を起 こす ヒ ッ グス 場 の 表 現 は,上 式 を参 照 す れ ば5お 5を 使 う.5次
よ び45が 候 補 に な り うる.最
元 表 現 のH5はI=1/2を
含 む か ら,
も簡 単 なSU(5)モ
デル では
(5.50)
と とれ ば,標 準 理 論 で必 要 な質 量 ス ペ ク トル を獲 得 させ る こ とが で きる.質 量 を与 え る相 互 作 用 は 次 の よ うな 形 と な る.
(5.51) 具 体 的 な 形 は後 で 与 え る 〔(5.59), (5.60)〕. 以上 の 議 論 の 結 論 は,標 準理 論 を部 分 と して含 む 大 統 一 理 論 の 構 成 は 可 能 と い う こ とで あ る.そ の理 論 が 自然 を記 述 す る か ど うか は別 問 題 で あ り,そ れ を 検 証 す る こ とが わ れ わ れ の 次 に 直 面 す る 問題 で あ る.
5.2.5
SU(5)の
予 言 と破 綻
a. ワ イ ン バ ー グ 角 さ て,(5.30),
(5.33),
(5.34)の
各 相 互 作 用 の 結 合 定 数 間 の 関 係 式 は,大
一 ス ケ ー ル の エ ネ ル ギ ー 領 域(E∼MGUT∼1015GeV)で 低 エ ネ ル ギ ー で は 放 射 補 正(5.9)を
統
成 り 立 つ 関 係 式 で あ り,
受 け る.μ=MGUTから
発 展 させ て 低 エ ネ
ル ギ ー で は ど の よ う な 値 を と る か を 見 る た め に,βiに
各 群 で の値 を入 れ る
と1),
(5.52a) (5.52b)
(5.52c) こ こ で,ngは
ゲ ー ジ ボ ソ ン の 放 射 補 正 ル ー プ に 現 れ るmf<μ
の 世 代 数,NHはmH<μ て,上
式 を書 き換 え る と
の ヒ ッ グ ス2重
項 の 数 で あ る.ng=3,
の フ ェル ミオ ン NH=1と
し
(5.53a) (5.53b) αEM(mW),
α3(mW)は
体1015GeV程
求 め ら れ て い る か ら,(5.53b)か
度 と な る.こ
統 一 理 論 に よ るsin2θW(mW)が
の 値 を(5.53a)に
決 ま り,大
入 れ る こ と に よ り,SU(5)大
計 算 で き る.最
よ り精 密 な 計 算 式 が あ る の で,そ
らMGUTが
近 は,2-ル
ー プ 効 果 を も入 れ た
れ を 使 え ば,
(5.54a)7) (5.54b)8,9) とい う結 果 が 得 られ る.こ れ は,最 近 のLEP精
密 デ ー タに 対 す る最 適 値
(5.54c)10) と は 合 わ な い. b. 陽 子 崩 壊 も う 一 つ の 実 験 デ ー タ,陽
子 崩 壊 の 考 察 を行 う こ と と し よ う.フ
の ゲ ー ジ 相 互 作 用 項 は,(5.23),(5.24)で (5.16)を
ェル ミオ ン
与 え ら れ て い る の で,(5.15),
使 っ て 具 体 的 に 書 き下 ろ す と,X,
Yの
関 与 す る と こ ろ は,
(5.55) で 与 え ら れ る.た (5.55)に
だ し,ijk=1∼3は,カ
対 応 す るX,
の 起 こ す 相 互 作 用 は,バ
Yの
ラ ー 自 由 度 の 和 を 示 す.図5.4に
相 互 作 用 フ ァ イ ン マ ン 図 を 示 す.こ リ オ ン 数Bと
は 保 存 し て い る こ と が わ か る.陽
レ プ ト ン 数Lを
子 や 中 性 子 は,図5.5に
を 仲 介 に し て レ プ トン な ど へ 崩 壊 を 起 こ す.p→e+π0の
が で き,陽
外 の モ デ ル で も,上
Y
示 す よ う にX,
Y
図 が容 易 に書 け る と
い う こ と は 起 こ りや す い 反 応 で あ る こ と を 意 味 し,SU(5)の る.SU(5)以
れ か らX,
と も に 破 る が,B-L
特 徴 とな って い
記 と同 じ よ う な相 互 作 用 を書 き下 ろす こ と
子 の 種 々 の 崩 壊 モ ー ドが 計 算 で き る.た
いていの モデルが
(5.56) を 予 言 し1),e+π0モ
ー ドへ の 崩 壊 が 優 勢 と い う 事 実 は か な り一 般 的 に 成 立 す
る.
(a)
図5.4
(b)
(c)
X(Q=4/3)とY(Q=1/3)ボ
ソ ン と フ ェ ル ミオ ン の結 合 でB-Lは
(a) X, (a),
Yボ (b)
(e)
保 存 され る
(c)
(b)
図5.5
ゲ ー ジ ボ ソ ンX,
(d)
ソ ン を介 す る 陽 子 崩壊 の フ ァイ ンマ ン図 ρ→e+π0
(c)
ρ→νeπ+
Yの 質 量 が 大 き い と き,陽 子 崩 壊 は フ ェ ル ミ型 相 互 作 用
とな る か ら,陽 子 が 電 子 と π0に壊 れ る式 は,ミ
ュー オ ン崩 壊 の 式 と ま っ た く
同 じ よ うに書 け て,
(5.57a) Fは,陽
子 内 の クォ ー ク波 動 関 数 に起 因 す る補 正 因 子 で,か
的 不 定 性 を伴 うが,∼1の
オ ー ダー で あ る.計 算 に よ る と1),
年 で あ る が,最
な り大 きな 理 論
(5.57b)
近 の デ ー タ は11), τp(p→e+π0)>1.6×1033年
(90%信
頼 度)
(5.58)
で あ るの で,こ れ も実 験 値 に合 わ な い. c.
質量の スケール依存性
大 統 一 理 論 で は ク ォー ク と レプ トンが 同一 多重 項 内 に あ るの で,質 量 につ い て の 関 係 式 を導 くこ とが で き る.特 に(5.51)に
よ っ て 質 量 を発 生 させ た 場 合
の 質 量 項 を書 き下 ろす と,
(5.59) と な る.ヒ
ッ グ ス の 真 空 期 待 値 を(5.50)の
よ う に と れ ば 上 式 第2項
は
(5.60) と な っ て,me=mdが
結 論 で き る.す
な わ ち最 も簡 単 なSU(5)大
統一 理 論 で
は
(5.61) が 成 立 す る.し か し,こ の 関 係 式 は大 統 一 の エ ネ ル ギー ス ケー ル で 成 立 す る式 で あ る.ヒ
ッ グ ス機 構 に よ る質 量 は湯 川 結 合 定 数 と真 空 期 待 値 の積 で あ り,結
合 定 数 は ス ケ ー ル に依 存 す る の で,実 験 と比 較 す る に は 繰 り込 み 群 方 程 式 を 使 っ て低 エ ネ ル ギー まで外 挿 し な け れ ば な ら な い.計 算 に よ れ ば12)
(5.62) μ1∼10GeV,
μ2∼MXと
く合 う.ms/mμ, md/meは
し て 計 算 す る と上 記 の 値 は〓2.5と な り,実 験 値 と よ 合 わ な い が,こ
れ は ス ケー ル が 小 さ す ぎ て 非 摂 動
効 果 が 大 きい た め と考 え ちれ る.い ず れ にせ よ こ う した 計 算 は,種 々 の モ デ ル を構 築 す る と きに 役 立 つ 情 報 と な る. 以 上 の 三 つ の 例 の う ち少 な く も二 つ の 実 験 デー タか ら,SU(5)を 小 限 の 大 統 一 理 論 で は実 験 デー タ を再 現 で きず,何 とが わ か る.
使 った最
らか の工 夫 が 必 要 で あ る こ
5.3
SO(10)
5.3.1 左 右 対 称 の 世 界 SU(5)の
欠 点 を修 復 す る前 に,SU(5)以
外 の モ デ ル の 可 能 性 に ふ れ て お く.
現 象 論 的 に よ り魅 力 的 に す る試 み で あ るが,SU(5)の
と こ ろ で 議 論 した 基 本
的 な性 質 は 継 承 し て お り,大 統 一 の 大 き な立 場 か ら はSU(5)の
バ リエー シ ョ
ンの 一 部 と見 なす べ き も の で あ る. 標 準 理 論 はSU(2)Lを
含 み,弱 相 互 作 用 が パ リテ ィ を破 る.こ の左 右 非 対 称
性 は 自然 界 の 本 質 的 性 質 なの で あ ろ うか.そ れ と も,自 然 は 本 来左 右 対 称 で, 対 称 性 が破 れ て い る の は見 か け だ け なの だ ろ うか.こ
の 問 い か け は非 常 に興 味
あ る テー マ で あ る.後 者 の 立場 を とる な らば,大 統 一 ス ケ ー ル で は左 右 の 対称 性 が 回復 して い る可 能 性 が あ る.左 右 対 称 性 を回 復 す る最 も簡 単 な方 法 は,第 4章 で議 論 し た よ うに,標 準 理 論 のSU(2)Lを
拡 大 し て,SU(2)L×SU(2)R対
称 性 を要 求 す る こ と で あ る.右 巻 き粒 子 に 結 合 す る ゲ ー ジ ボ ソ ンWRの を左 巻 きゲ ー ジ ボ ソ ンWLの 矛 盾 しな い.こ
質量
数 倍 以 上 重 くす れ ば,現 象 論 的 に は 実 験 デ ー タ と
のSU(2)L×SU(2)Rを
部 分 群 と して 含 む 大 統 一 群 の 中 で,よ
く引 き合 い に 出 さ れ る の がSO(10)とE6群 間 の 長 さ を不 変 に す る 変 換 で あ る.Eは の よ うな 一 定 の 規 則 性 は な い.E6は
で あ る.SO(10)は10次
元 の実空
例 外 群 と呼 ば れ,SU(N)やSO(N)
超 紐 理 論 の低 エ ネ ル ギー 極 限 と し て 実 現
し う る とい うの で人 気 の あ る群 で あ る.こ の 二 つ の群 は
(5.63) な どい ろ い ろ な分 解 の 仕 方,い が あ る.第1の
い換 えれ ば 対 称 性 を破 る方 法 に い ろ い ろ の道 筋
道 筋 で は,SU(5)を
経 過 す る の で,こ
議 論 した こ と は そ の ま ま成 立 す る.第2の は
れ ま でSU(5)に
つ いて
道 筋 の よ う に,分 解 の 仕 方 に よ って
を通 る の で,左 右 の 対 称 性 つ ま りパ リテ ィの 保 存
が 高 エ ネ ル ギー で 回 復 す る可 能 性 が あ る.
SO(10)の
利 点 の 第2は,16次
元 の ス ピ ノ ー ル 表 現 を 含 む こ と で あ る.こ
16次 元 表 現 を,SU(5)×U(1)ま
た はSU(2)L×SU(2)R×SU(4)cで
の
分 解 して
み る と,
(5.64a) (5.64b) と2通
り に 分 解 で き る.こ
フ ェ ル ミ オ ン に,未
れ を 表 の 形 で 示 せ ば 表5.2と
知 の 右 巻 きニュートリノνLcを
な り,既
知 の15個
の
加 え て一 つ の 表 現 の 中 に お
さ め る こ と が で き る.
第3の
利 点 は,こ
のνLcを シー ソー メ カ ニ ズ ム の パ ー ト ナ ー と 考 え て,
ニ ュ ー トリ ノの 質 量 問 題 に解 答 を与 え る可 能 性 が あ る こ とで あ る. 第4の
利 点 はSU(5)と
違 い,ビ
させ たバ リオ ン数 非 対 称 が,電
ッ グバ ン大 統 一 期 にSO(10)に
よって発生
弱相 互 作 用 相 転 移 を経 て も生 き残 る可 能 性 が あ
る こ とで あ る(後 述 §6.5). 表5.2
SO(10)の16次
この よ う にSO(10)は,い
元 表 現 のSU(5)分
解 とSU(2)L×SU(2)R分
解
ろ い ろ魅 力 あ る利 点 を もつ の で,大 統 一 理 論 を問
題 にす る と きは 常 に 取 り上 げ られ る モ デ ル で あ る. SO(10)は,道
筋 に よ っ て は 対 称 性 の破 れ る段 階 がSU(5)に
比 べ て一 つ 増 え
るの で,対 称 性 を破 るエ ネ ル ギー ス ケ ー ル と して,μ1<μ2≒MGUTと2通 上 選 べ るの で調 整 能力 が 増 加 す る.例 え ば,ワインバーグ
り以
角 や 陽 子 崩 壊 率 を実
験 と矛 盾 しな い よ うに合 わ せ る こ とが 可 能 で あ る.
5.3.2
新 し い 中 性 ゲ ー ジ ボ ソ ン:Z'13)
大 統 一 の 群Gが,SU(3)×SU(2)L×U(1)Y以
外 の 部 分 群 を 含 め ば,そ
付 随 す る ゲ ー ジ ボ ソ ン と 相 互 作 用 が 存 在 す る.例
え ば,左
れに
右 対 称 モ デル は
SUR(2)を
含 む の で,ゲ
ー ジ ボ ソ ンWR±,ZRを
る 中 性 カ レ ン トデ ー タ(K0-K0混
もつ.現
合 な ど)か
ら,右
象 的 に は,香
りの変 わ
巻 きゲ ー ジ ボ ソ ンの 質 量
は 左 巻 き ボ ソ ン に 比 べ て 数 倍 以 上 大 き くな け れ ば な ら な い こ と は す で に 議 論 し た.た
い て い のGは,標
(以 下U(1)Eと す る.こ
準 理 論 のU(1)Yの
書 く.E=EXTRA),γ,Zの
ほ か に 余 分 のU(1)を
含 む の で
ほ か に 新 しい 中 性 ボ ソ ン が 存 在
の と き 中 性 カ レ ン ト相 互 作 用 は 次 の よ う に 書 け る.
(5.65) た だ し,Z10,JZ1μ
は,標
準 モ デ ル に お け るZ,中
性 カ レ ン ト を 表 し,
(5.66a) (5.66b) (5.66c) と 書 け る.(5.65)の
第3項
が 新 し い 中 性 ボ ソ ン に 伴 う新 し い 相 互 作 用 を 表 す.
Z20に 結 合 す る 中 性 カ レ ン トは
(5.66d) (5.66e) の よ う に 書 け る.最
後 の 式 を 導 く の に,
Y(fL),
巻 き フ ェ ル ミ オ ンfL, fLcの
Y(fLc)は,左
を 使 っ た. も つ(群U(1)Eに
付 随 す る)
超 電 荷 で あ る. Z10, Z20は
同 じ フ ェ ル ミ オ ン 対 に 結 合 す る の で 混 合 が 起 こ り,そ
理 的 な 質 量 固 有 状 態Z1,
Z2は
の 結 果,物
次 の よ う に 表 さ れ る.
(5.67a)
(5.67b) この と き,現 在観 測 され て い るZ0はZ1と
解 釈 す る.Z2は
しば しばZ'と
も書
く.対 応 す る質 量 行 列 は
(5.68) M0, MEは
混 合 が な い と き のZ10, Z20の 質 量 で あ る.Z1,
Z2の
質 量 をM1,
M2と
し,混 合 角,非 対 角行 列 要 素 を質 量 で 表 す と
(5.69a) (5.69b) の よ う に書 け る.こ れ らの 式 か ら,新
しい ボ ソ ンの 顕 著 な影 響 は次 の 三 つ に現
れ る こ とが わ か る. (1) 既 知 のZボ
ソ ン の 結 合 定 数 が 変 わ る.
(2) 既 知 のZボ
ソ ン の 質 量 が 小 さ く な る.
(3) 新 し い ボ ソ ンZ'の Z1, Z2の
交 換 項 が 加 わ る.
フ ェ ル ミオ ンfLと
の結 合 定 数 は
(5.70a) (5.70b) で与 え られ,fRと
の 結 合 定 数 は 上 式 をL→Rと
して 得 られ る.標 準 理 論 の 実
験 デ ー タ再 現 性 は 非 常 に 良 い の で,
と考 え られ
るか ら
(5.71) とな り,既 知 のZの
結 合 定 数,質
量 に 対 す る補 正 は わ ず か で あ る.
結 合 定数gEは,対
象 とす る大 統 一群Gの
種 類 に よ っ て変 わ る量 で あ る.一
般 的 な考 察 をす るに はパラメター が 多す ぎ る の で,通 常 は特 定 の モ デ ル につ い て 考 慮 す る.Gの
例 と して よ く使 わ れ る の は,超 紐 の理 論 の低 エ ネ ル ギー 極
限 と して 出現 す るE6で,対
称 性 の 破 れ 方 に よ っ て は,
(5.72a) の よ う に,種
々 の 中 性 ゲ ー ジ ボ ソ ン,Zψ,
Zx, Zη が 現 れ る.
(5.72b) と 書 け ば,
(5.73) の よ う に ま と め る こ と が で き る.Zβ
の 結 合 す る フ ェ ル ミ オ ン(E6の27次
元
表 現 に 属 す る)は =0
超 電 荷Yβ((5.66)のY)を
も つ.Zx,
, π/2,
に 対 応 す る.こ
Zψ, Zη は,そ
れぞ れ β
の と き,
(5.74) と 書 き 表 す こ と が で き る.λ
は モ デ ル(対
ル μ に よ り変 わ る 量 で あ る.大 λ=1と
お け ば,gEはgWに
称 性 の 破 り 方)や
エ ネ ルギー ス ケ ー
統 一 ス ケ ー ル で は
等 し い.表5.3に,E6群
左 巻 き フ ェ ル ミ オ ン の,SO(10),
SU(5)に
で あ る の で, の27次
よ る 分 類 と,お
元 表 現 に属 す る のお のの場 合 の超
電 荷 を 与 え る13). 表5.3
Z'(=Z2)交
E6か ら分 解 した各 種 モ デ ル で の フ ェ ル ミオ ンの 超 電 荷
換 項 を考 慮 に 入 れ る と,e-e+→ll,
e-e+→
ハ ド ロ ン で は,標
準 理 論 に 比 べ て,Rllを
減 少 さ せRを
着 目 し,世
ラ イ ダ ー の 精 密 デ ー タ を 使 っ て 間 接 的 にZ'を
界 のe-e+コ
押 し 上 げ る 効 果 が あ る*4).こ
探 す試
み が 行 わ れ,下
限 値(mZ'>779GeV)を
こ で は,ハ
ドロ ン コ ラ イ
ダ ー に よ るZ'の
直 接 生 成 の 試 み に つ い て 簡 単 に ふ れ る15).E6モ
デ ル を使 う場
合 は,Z'生 る(た
成 の 断 面 積 は θEとmZ'を
だ しmHな
得 た14).こ
の事実 に
パ ラ メ タ ー と して 計 算 す る こ とが で き
ど は 適 当 に 仮 定 す る).検
存 在 す れ ば 不 変 質 量m(ll)のmZ'に を 使 う.図5.6(a)に,ハ
しZ'が
時 点 で の 試 み は,テ
を 使 っ て 行 わ れ てい る.CDFグ の デ ー タ 中 に は,m(ll)の
μμ で,Z'が
対 応す る ところに共 鳴の 山が現 れ るこ と
ド ロ ン コ ラ イ ダ ー で,も
う に 見 え る か と い う 想 定 図 を 示 す.現
*4)
出 信 号 は,Z'→ee,
ル ー プ は,全
存 在 す れ ば どの よ ヴ ァ ト ロ ン
ル ミ ノ シ テ ィ
山 が 存 在 し な か っ た こ と か ら,σ(pp→
(a)
図5.6
(b)
(a) 大 型 ハ ド ロ ン コ ラ イ ダ ー で, ,104Pb-1の 成 信 号 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン.理 き,m(μ+μ-)に (b) テ ヴァ
ル ミ ノ シ テ ィ と し た と き のZ'生
論 はSp(6)×U(1)で,mZ'=0.5, 1.0, 2.0,
トロ ン
のCDFデ
崩 壊 分 岐 比[Z'→(ee+μμ)]の95%上 デ ル,E6のx,η,ψ
限 値.Z,
モ デ ル の 値16).CDFは
ー タ15).Z'の
LR,
x,η,ψ
得 た.こ
れ か ら,各
得 ら れ る が(図5.6(b))15,16),実
験 グ ル ー プ は,Z'の
生成断
は,λ=1,左
こ れ よ り,mZ'>690GeVと
Z')・BR(Z'→ll)〓0.04pb-1を
じ(gE=gW)と
5.0TeVの
と
山 が 見 え る.
種 のZ'の
面 積 × 右 対 称 モ
し て い る.
質 量上 限値 が
結 合 定 数 を標 準 理 論 と同
お い た と き の 質 量 上 限 値 を 与 え て い る.こ
の と き は,
(5.75a) と な る.W±'→eν,
μνの σ ・BRに
つ い て も同 様 な値
(5.75b) を得 て い る.
5.4 階
大 統 一 理 論 に は, ギー ス ケー ル が 存 在 す る.比 は
層
問
題
の二 つ のエ ネ ル で あ るか ら,非 常 に ス ケー ル
の 違 う現 象 を 同一 理 論 の 枠 内 で 処 理 す る 必 要 が あ る.こ れ が 階 層 問 題 で あ る. なぜ こ の よ う に大 きな 階 層 が 存在 す るか とい う本 質 的 な原 理 につ い て は 答 え ら
れて い な い が,階 problem)が
層 に 付 随 す る 技 術 的 な 問 題 と して 微 調 整 問 題(fine
あ る.ヒ
ッ グ ス の 質 量 を考 えて み よ う.標
tuning
準 理 論 の トリー 近 似 で
は
で 与 え ら れ る が,放
射 補 正(図5.7(a)∼(c)の
ル ー プ 図)の
寄 与 は,
(5.76) の よ う に切 断 パ ラ メ ターΛ の2次
に 比 例 す る.フ ェル ミオ ンや ゲ ー ジ ボ ソ ン
の 質 量 に 対 して は,カ イ ラル 対 称 性 や ゲ ー ジ対 称 性 が あ る おか げ で発 散 をせ い ぜ いlnΛ 程 度 に 抑 え られ るの で,2次 る.大 統 一 理 論 で はHとΦ す るの で,ヒ
発 散 は ス カ ラー 粒 子 に特 有 の 現 象 で あ
との 相 互 作 用(例 え ば,LINT∼Φ2H2)*5)が
ッグ ス の 質 量 補 正 に はΦ の ル ー プ も寄 与 す る が,こ
Λ2∼m2(Φ)∼1030GeV2と
な る.ヒ
ッ グ ス の質 量 はmH2≒
るか ら,こ の 寄 与 を相 殺 す る メ カ ニ ズ ム は26桁
存在
の と き は,
υ2≒(250GeV)2で
あ
の 精 度 の微調 整 を必 要 とす る.
しか も,こ の微 調 整 を摂 動 の 各 次 で行 わ なけ れ ば な ら ない.こ れ は大 変 不 自然 な 論 理 で あ る.こ の 微調 整 問題 は大 統 一 理 論 で あ れ ば 必 ず 直 面 す る 問題 で あ っ て,モ
デ ル の 如 何 に関 わ らな い 本 質 的 な 問 題 で あ る.こ の 微 調 整 問題 を避 け る
に は 大 き くい って2通 第1は,そ
りの方 法 が あ る.
もそ もは じめ か ら素 粒 子 と して の ス カ ラー粒 子 は存 在 しな い とす
る立 場 で あ る.ヒ ッ グ ス機 構 が 範 と した 超伝 導 現 象 で は ヒ ッ グ ス粒 子 は 電 子 の クー パ ー 対 で あ っ た.こ の類 推 で,ヒ
ッ グス 粒 子 は フ ェ ル ミオ ン対 の 束縛 状 態
と見 な す 立 場 が 成 り立 つ.複 合 粒 子 の場 合 は,Λ
が束縛 エ ネル ギー のス ケー
ル を越 え る と,構 成 フ ェ ル ミオ ン を束 縛 状 態 か ら開 放 して 自由 粒 子 に し よ う と す る力 が 強 くな る."形 状 因 子F(Λ2)に
よ る抑 圧 因 子 が 働 い て 発 散 を防 ぐ"と
い うい い方 を す る こ とも で き る.こ の フ ェ ル ミオ ン を既 知 の粒 子 の 中 に求 め る と トップ ク ォー ク縮 退 モ デ ル とな るが17),新 種 の フ ェ ル ミオ ン とす る方 が 新 し い 可 能 性 を引 き出 せ る .こ れ の 典 型 的 例 が §3.5で議 論 した テ クニ カ ラ ー 理 論 で あ る.テ
クニ カ ラー 理 論 は あ ら ゆ る現 象 をQCDと
*5) こ の 種 の 相 互 作 用 は と 現 れ る.X,YはΦ,H双
,も
の 類 推 で解 決 し よ う と試
と も と の ラ グ ラ ン ジ ア ン に 存 在 し な く て も,放 方 に 結 合 で き る の で,Xも し く はYを2個
に よ り実 効 的 に 存 在 す る.
射 補 正 を入 れ る 交換 す ること
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
図5.7 標 準 モ デ ル に よ る2次 ナ ー(d),(e)な
み る.QCDで
ヒ ッ グ ス質 量 の放 射 補正 項 発 散 の 補 正 項(a)∼(c)は,超
粒 子 パー ト
ど に よ りキ ャ ンセ ル され る.
は,ク ォー ク対 に カ ラー力 が 働 い て で き る 束 縛 状 態 の 凝 縮 に よ
りカ イ ラル 対 称 性 が破れ る.す な わ ち,σ メ ソ ン と呼 ばれ る フ ェ ル ミオ ン 対 が 対 称 性 を破 る ヒ ッ グス メ ソ ンの 役 割 を 果 たす.テ
クニQCDで
は,テ
クニ フ ェ
ル ミオ ン対 が テ クニ カ ラー 相 互 作 用 に よ り"テ ク ニ π"メ ソン をつ く る.こ の テ クニ πが 標 準 理 論 の ヒ ッ グ ス粒 子 の 役 割 を果 た す と考え るの で あ る.ヒ
ッ
グ ス の 真 空 期 待 値 υ(=250GeV)と,σ
の
崩 壊 定 数=132MeV)が
モ デ ル の真 空 期 待 値
対 応 す る の で,テ
ク ニQCDは
通 常 のQCDを
∼ υ/fπ
≒1000の 因 子 分 だ け エ ネ ル ギ ー を ス ケー ル ア ップ し た もの と考 えれ ば よ い. し た が っ て,QCDの
共 鳴群(ρ,ω …)に 対 応 し て テ クニ 共 鳴 群(テ
クニ ω…)の 存 在 が 予 言 され るな ど,非 常 に 豊 富 な 内容 を もつ.こ 非 常 に 魅 力 的 で あ るが,今
ク ニ ρ,テ の考 え 方 は
ま で の とこ ろす べ て の 現 象 を矛 盾 な く説 明す る モ デ
ル 建 設 に 成 功 して い な い18).し か し,モ デ ル 構 築 は で きて い な くて も,背 後 に あ る基 本 的 な考 え 方 が 有効 で あ る可 能 性 は 十 分 あ る. 第2の 考 え方 は,ル ー プ の発 散 を個 々 に潰 し て し ま う方 法 で あ る.フ ェル ミ オ ン ル ー プ に よ る放 射 補 正 は,フ ェ ル ミ統 計 の お か げ で ボ ソ ンル ー プ と逆 符 号 の 寄 与 を与 え る の で,も
し質 量 と結 合 定 数 が 同 じフ ェ ル ミオ ンが 存 在 す る な ら
ば,ボ
ソ ン に よ る 寄 与 を 相 殺 す る こ と が で き る(図5.7(d)∼(f)).す
なわ ち
フ ェ ル ミ オ ン-ボ ソ ン 入れ 替 え の 対 称 性(超
対 称 性:super
すれ ば よ い.結
を組 む フ ェ ル ミオ ンの 質 量 が 多少 異
合 定 数 が 同 じ で あれ ば,対
symmetry)が
存在
な っ て も,
(5.77) と 抑 え られ る の で(Oは ま っ て いれ ば,観
オー ダー の 意 味),質
量 差 が 大 体〓1TeV程
測 現 象 とは 矛 盾せ ず に微 調 整 問 題 を解 決 で き る.
こ の 手 法 が 人工 的 に過 ぎ る と懸 念 を抱 く人 に は,こ じめ て で は な い こ とを指 摘 して お こ う.香 抑 圧 す る た め に,チ たGIM機構
度 に納
う した 手 法 が 歴 史 的 に は
り を保 存 しな い 中性 カ レ ン ト効 果 を
ャー ム ク ォー ク を導 入 してuク
ォー クの 寄 与 を相 殺 させ
を思 い 出 して み るが よ い.質 量 が 同 じで あれ ば 相 殺 は 完 全 な は ず
で あ るが,相
殺 が 完 全 で な い 部 分 を現 象 と合 わ せ る た め に 調 整 し た チ ャー ム
クォ ー クの 質 量 は大 体 予 想 通 りの とこ ろ に 存 在 した の で あ る.
5.5 超
5.5.1
称
symmetry:
SUSY)は
今 ま で に で て き た どの 対 称 性 と も異
空 対 称 の 演 算 子 と し て われ われ が 知 っ て い る も の は,平
す 運 動 量Pμ,回
転 や ロ ー レ ン ツ ブ ー ス ト を 起 こ すMμν
ツ ベ ク トル な い し は テ ン ソ ル で あ る.ア ロ ー レ ン ツ ス カ ラ ー で あ る.これ
対 称 演 算 子Qαiは
指 標 を示 し,iは 演 算 すれ ば,それ
で,これ
行 移 動 を起 こ らは ロー レ ン
イ ソ ス ピ ン な どの 内 部 対 称 演 算 子 は
ら の 演 算 子 は 場 の 量 で 書 け る が,場
ル 場 と ス ピ ノ ー ル 場 が あ る こ と を 考 えれ ば,ス よ い.超
性
超 対 称 性 と は
超 対 称 性(super な る.時
対
ピ ノー ル 量 の 演 算 子 が あ って も
正 に そ の よ う な 量 で あ る.こ
内 部 自 由 度(1≦i≦N)を
にテ ンソ
表 す.し
こ で,α
は ス ピ ノー ル
た が っ て ボ ソ ン 状 態│B>に
は ス ピ ノ ー ル と し て 変 換 す る か ら フ ェ ル ミ オ ン場 と な る.す
な わ ち,
(5.78) し た が っ て,超
対 称 演 算 は ボ ソ ン と フ ェ ル ミ オ ン を 入れ 替 え る 演 算 と な る.
Qαiは,反 交 換 関 係 を満 たす か ら,生 成 演 算 子 の 従 う リー 代 数 を 反 交 換 関 係 を 含む よ うに拡 張 しな けれ ば な ら な い.こ
う した 演 算 に は,通 常 の掛 算 や 積 分 と
違 う規 則 に従 う"超 空 間 内 に お け る超 変 数"の 代 数 を扱 うの で,詳
し くは 専 門
書19)を見 て も ら う こ と と し,こ こ で は,超 対 称 性 理 論 の 結 果 と し て で て くる 一般 的 な規 則 や ,そ の 現 象 論 に 対 す る効 果 を推 定 す る に 止 め る. 簡 単 の た め,超
対 称 演 算 子 と して ス ピ ン1/2の
とに す る.内 部 自 由 度N=1と
し 指 標iは
ス ピ ノー ルQα を考 察 す る こ
省 略 す る と,Qα の 従 う 交 換 関 係
は19),
(5.79a) (5.79b)
(5.79c) (5.79d) で 与 え られ る.た
だ し,σ μν=(1/2i)[γμ,γν], Q=Q†
Qα が ス ピ ノー ル と して 変 換 す る こ と を 示 し,第2行 Qα"が 保 存 量 で あ る こ と を示 す.こ こ と を意 味 す る か ら,Qα
γ0で あ る.第1行 は こ の"ス
の こ とはQα が,m2=PμPμ
の 演 算 は質 量 を変 え な い.す
は,
ピ ノー ル 荷 と も交 換 す る
な わ ち,同
じ超 対 称 多
重 項 に属 す る フ ェ ル ミオ ン と ボ ソ ン の質 量 は 同 じで な け れ ば な らな い.第3行 は,Qを2回
演 算 す る と運 動 量 す な わ ち時 空 で の 座 標 移 動 演 算 子 とな る こ と
を示 す.Qを2回 い うな ら ば,デ
演 算 す る と座 標 移 動 の 演 算 に な る と い う こ とは,比 喩 的 に ィ ラ ッ ク方 程 式 が ク ラ イ ン-ゴ ル ドン方 程 式 の 因数 分 解 と解 釈
で きた よ うに,Qは に,超
運 動 量 演 算 子 の 因数 分 解 で あ る と解 釈 で き る.こ の よ う
対 称 演 算 は 時 空 座 標 の 演 算 を含 む の で,超 対 称 変 換 を局 所 化(ゲ ー ジ
化)すれ
ば 一 般 座 標 変 換 とな る.こ の こ とは超 対称 性 の 中 に は 重 力 が 内在 す る
こ とを 意 味 す る.し
たが っ て,超 対 称 ゲー ジ理 論 は 重 力 を含 む 統 一 理 論 の 候 補
で あ る(super-gravity理
論=SUGRA).重
力 との 結 合 は低 エ ネ ル ギー で は 弱
く無 視 して 差 し支 え な い の で,現 象 論 的 に は,重 力 の み を他 か ら切 り離 して 大 域 的 な対 称 性 と して 扱 う大 域 超 対 称 理 論 と超 重 力 理 論 とは ほ とん ど区 別 で きな いが,モ
デ ル 建 設 に はSUGRAを
指 針 とす る こ とが 多 い.
超 対 称 性 理 論 は,実 験 的 に は 証 拠 が 皆 無 に もか か わ らず,物 理 学 者 が 魅 力 的
と考 え る最 大 の 理 由 は,場 の 理 論 に 固有 の 無 限 大 の発 散 を著 し く軽 減 で き る こ と,場 合 に よ って は 繰 り込 み をせ ず に 回 避 で き る可 能 性 が あ る こ とに よ る.繰 り込 み 可 能 性 とい う道 標 が わ れ わ れ を統 一 理 論 に導 い て くれ た歴 史 的 教 訓 に 学 ぼ う と して い るわ け で あ る.発 散 が 軽 減 す るか も しれ な い とい う一 つ の ヒ ン ト は,次 の よ うな考 察 よ り く る.繰
り込 み の処 方 で は,場 の理 論 に 特 有 の真 空 の
無 限 大 は,観 測 量 に は 現 れ な い か ら とい う理 由 で 引 き算 を して,無 限 大 は は じ め か ら なか っ た よ うな ふ り をす る.し か し,ボ ソ ン は無 限個 の 調和 振 動 子 の零 点 振 動 に 起 因 して 真 空 に 正 の無 限 大 の エ ネ ル ギー を もた らす が,フ
ェル ミオ ン
は 無 限個 の 負 の エ ネ ル ギー 粒 子 の 詰 ま っ た デ ィ ラ ッ ク の海 に起 因 して 真 空 に負 の無 限 大 の エ ネ ル ギ ー を もた らす こ とに 注 意 し よ う.ボ ソ ン とフ ェ ル ミオ ン の 間 に き ちん と した対 称 性 が あ る と,こ れ らの発 散 は 逆 符 号 で あ る こ とか ら,発 散 が 相 殺 す る こ とが予 想 され るの で あ る. 超 対 称 性 の 存 在 は,ボ
ソ ン とフ ェ ル ミオ ン が別 個 の 粒 子 で は な く,一 つ の 粒
子 の異 な る量 子 状 態 と考 えね ば な らぬ こ とを 意 味 す る.超 対 称 性 が 自然 界 で実 現 して い る な ら ば, (1) 既 存 の ボ ソ ン に は超 対 称 性 フ ェ ル ミオ ン が,フ
ェ ル ミオ ン に は 超 対 称
性 ボ ソ ンが 対 とな っ て 存 在 して い な け れ ば な らな い.以 下,こ 対 称 性 粒 子 を超 粒 子 も し くはSUSY粒
れ らの 超
子 とい う こ と にす る.
(2) 超 対 称 性 が 成 立 して い る な ら ば,粒 子 とそ の 超 粒 子 は 同一 多重 項 に 属 し,同 一 の質 量 を も たね ば な ら な い. (3) 超 粒 子 は,既 存 の 粒 子 と対 と な っ て 一 つ の 表 現 を つ く るか ら,超 粒 子 のSU(3)×SU(2)×U(1)に
関 す る 量 子 数 は,対
とな る既 存 の 粒 子 と
ま っ た く同 じで あ り,か つ 結 合 定 数 もま た 同 じで あ る. 以 上 の 条 件 は,大 統 一 に お け る微 調 整 問題 を解 決 す る要 因 で あ っ た.現 実 に は質 量 の 縮 退 した ボ ソ ン ・フ ェ ル ミオ ン の対 は 存 在 しな い か ら超 対 称 性 は破 れ て い な け れ ば な ら な い.し か し,破 れ の 度 合 い が 小 さ く,超 粒 子 と の 質 量 差 が,O(1TeV)以
下 な らば,微 調 整 問題 解 決 手 段 と して 依 然 有 効 で あ る.局 所
超 対 称 性 が 重 力理 論 に 結 び つ くこ と を考 え る と,超 対 称 性 の 存 在 理 由 は,単 な る微調 整 問 題 を越 え て 自然 の もつ 本 質 的 な 内在 要 素 と して 追 求 す るに 値 す るで あ ろ う.以 下,超 対 称 性 の 結 果 と して 生 じ る規 則 や 現 象 を考 察 して,新 現 象 追
求 へ の 手 が か り と し よ う.
5.5.2
超 粒 子 の 性 質
Qαi2=0で
あ る の で,N=1の
で 表 現 は 閉 じ る.た
場 合 は,ヘ
だ し,ヘ
変 性 に よ り(-h, -h-1/2)の
リ シ テ ィ が1/2違
リ シ テ ィ(h,
h+1/2)の
う粒 子 状 態 の み
ペ ア が あ れ ば,CPT不
ペ ア も 存 在 し な け れ ば な ら な い.N=2な
Qα1Qα2≠0で
あ る の で,ヘ
リ シ テ ィ が1/2お
よ び1違
含 み う る.重
力 の ゲ ー ジ 粒 子 グ ラ ビ ト ン の 存 在 を仮 定 す れ ば,基
ン は,0か
ら 最 高2ま で な け れ ば な ら な い.こ
≦h≦2)を
す べ て 同 一 多 重 項 に お さ め る に はN=8が
論 と し て は,N=1と 合 ス ピ ン1/2の
物 質 場 と そ の 仲 間(カ
本粒 子の ス ピ
リ シ テ ィ 状 態h(-2
必 要 と な る.こ
こでの議
1/2)),ヒ
ピ ン(0, 1/2)),ゲ
の場 ー ジ
ッ グ ス と そ の 仲 間((1/2,
0),
ラ ヴ ィ ト ン と そ の 仲 間 グ ラ ヴ ィ テ ィ ー ノ(2,
3/2)
と して標 準 理 論 に超 対 称 性 を必 要 最 小 限 に取 り入 れ て拡 張 した
小 限 の 超 対 称 標 準 理 論=minimal
略 し てMSSM)の
超 粒 子 種 を 表5.4に
こ の 表 に 関 し て は,い (1) ス ピ ン1/2の て,そ
の と き,ヘ
イ ラ ル 多 重 項,ス
ー ジ 多 重 項,(1,
カ イ ラ ル 多 重 項 の 一 つ),グ
場 合(最
う粒 子 を 同 一 多 重 項 内 に
し超 対 称 性 の 現 象 的 性 質 を 理 解 す る に と ど め る.こ
ボ ソ ン と そ の 仲 間(ゲ
が 存 在 す る.例
ら ば,
super-symmetric
model,
示 す.
くつ か 注 釈 が 必 要 で あ る.
フ ェ ル ミ オ ン の 左 巻 き と右 巻 き の2種
れ ぞ れ 独 立 な ス カ ラ ー 超 粒 子 が 存 在 し(qLとqR,
は 質 量 も 異 な る.N=1の
standard
超 対 称 性 で は ヘ リ シ テ ィ が1異
類 の状 態に対 応 し lLとlR),一
般 に
な る粒 子 は 同 一 多 重
項 に は 入 れ な い こ と に よ る. (2) 標 準 理 論 で は ヒ ッ グ ス 粒 子 は2重 称 性 を 要 求 す る と最 低2個
の ヒ ッ グ ス2重
湯 川 相 互 作 用 ラ グ ラ ン ジ ア ン は((2.2)参
項 が 一 つ と 仮 定 す る.し 項 が 必 要 と な る.質
か し,超
対
量 項 を発 生 す る
照),
(5.80a) (5.80b) の 形 を して い る.標 準 理 論 で は,H2=H1c(か
つ
表5.4
で あ る が,超 は,ヒ
ッ グ スH1に
はH1の
対 称 理 論 で は,H2はH1cで 対 応 す る 超 粒 子h1は
エ ル ミ ー ト共 役 で あ る の で,対
を もつ こ と に よ る.N=1の
る.そ
こ で,uク
グ スH2の2重
し て,超
ェ ル ミ オ ン)が
対 称 理 論 で は2重
Z0に
粒 子(H±,
が,ま
たγ,
A0)存
電 荷Y=-1を
う 一 つ の 理 由 は,2重
あ る と8個
項 が2個
ない とヒッ
りの5個
対 称 ヒ ッ グ ス 粒 子(ヒ
在 す る.SU(2)L×U(1)対 混 合 す る の で,こ
チ ャ ー ジ ー ノ(chargino, X1,2±)お
う
存 在 しな け れ ば な らな は
が物理 的 な ヒッグス
し て 現 れ る こ と は す で に 述 べ た(§3.4参
Z°, H0, h0が
もつ ヒ ッ
の 独 立 成 分 が 存 在 す る.3個
質 量 を 与 え る た め に 吸 収 さ れ る が,残
H0, h0,
X20,…)と
使 うわ け に は いか な いの で あ
項 の ヒ ッ グ ス が 少 な く も2個 項 が2個
H0, h0, A0)と
異 な るヘ リ シ テ ィ
つ く る 三 角 異 常 項 発 生 を 防 げ な い の で あ る.こ
個 の ヒ ッ グ ス 粒 子 に 対 応 し て,超 類(H±,
応 す るh2はh1と
ォ ー ク に 質 量 を 与 え る た め の,超
い こ と が わ か っ た.2重
の理 由
決 ま っ た ヘ リ シ テ ィ を も つ が,H1c
じ ヒ ッ グ スH1を
項 が 必 要 と な る.も
グ シ ー ノ(フ
あ っ て は い け な い.そ
超 対 称 理 論 で はヘ リシ テ ィの 異 な る フ ェ ル ミオ ン
は 別 の 多 重 項 に 属 す る の で,同
W±,
現 存 粒 子 と超 粒 子 の 対 照 表
照).こ
グ シ ー ノ)も
称 性 が 破 れ る と,W±
の5
ま た5種 とH±
れ ら の 混 合 粒 子 に 対 し て,通
常
よ び ニ ュ ー ト ラ リー ノ(neutrarino, X10,
い う 名 称 を 与 え る.
(3) 超 対 称 性 が 破 れ る こ と に 伴 い,ゴ
ー ル ドス トー ン 粒 子 が 発 生 す る.超
対 称 演 算 子 は ス ピ ン1/2で テ ィ ー ノ(goldstino)と は 質 量0を
あ る の で,こ 呼 ば れ る.超
の 粒 子 は ス ピ ン1/2を
対 称 性 が 大 域 対 称 性 で あ る な ら ば,こ
も つ 物 理 的 な 粒 子 で あ る が,超
重 力 理 論 で は,ス
テ ィ ー ノ に 質 量 を 与 え る た め に 吸 収 さ れ る の で,こ (4) 超 粒 子 の も つ 量 子 数 は,対
あ る が,グ ×U(1)で
の 量 子 数(カ
の 量 子 数 を 見 れ ば,い
関 し て は,
の こ とか ら既 知 の 粒 子 の仲 間 同
ク ォ ー ク 数 を もつ が,ヒ
え ば,qL, qR,
ラ ー8重
項),W±,
Z,
γのSU(2)
ず れ も 超 粒 子 パ ー トナ ー で は あ り え な い.さ
仲 間 で あ る が,レ
グ シ ー ノ で は あ りえ な い.な
ぜ な ら,こ
プ トン も し くは ク ォ ー ク は ヒ ッ
の と き,ヒ
ッ グ ス は レ プ トン も し くは
ッ グ ス が 真 空 期 待 値 を もつ こ と に よ っ て,こ
が 保 存 し な く な る の で,観
グ ラビ
ー ジ ボ ソ ン の 超 対 称 パ ー トナ ー で あ る 可 能 性 は
ル ー オ ン のQCDで
ッ グ ス はSU(2)の
れ
の 表 に は 載 せ て い な い.
対 称 多 重 項 を 形 成 す る こ と は 不 可 能 な こ と が わ か る.例
lL, lRは ス ピ ン だ け か ら は,ゲ
ら に,ヒ
ピ ン3/2の
称 群SU(3)×SU(2)L×U(1)に
対 を 組 む 粒 子 と ま っ た く 同 じ量 子 数 を もつ.こ 士 で,超
も ち ゴ ー ル ドス
測 現 象 と 矛 盾 を 生 じ て し ま う の で あ る.か
超 粒 子 は 既 存 の 粒 子 以 外 に そ の 候 補 を 見 つ け ね ば なら ず,超
れら の 数 く し て,
対 称 性 を要 求 す る
こ と に よ っ て 素 粒 子 の 数 は 倍 増 す る. (5) MSSMを Rパ
含 む た い て い の 超 対 称 性 モ デ ル で,Rパ
リ テ ィ が 保 存 す る.
リテ ィ は
(5.81) で 定 義 さ れ る.た 数 で あ る.既 る.こ
だ し,Sは
ス ピ ン,B, Lは
知 の 粒 子 のRは
の 結 果,超
lightest super
そ れ ぞ れ ク ォ ー ク 数,レ
す べ て 正 で あ り,超
粒 子 のRは
粒 子 は 必 ず 対 生 成 さ れ る こ と,最
particle)は
安 定 で あ る こ とが わ か る.宇
プ トン
す べ て 負 で あ
も 軽 い 超 粒 子(LSP: 宙 論 の 制 限 か ら,電
荷
も し くは カ ラ ー を も つ 未 知 の 安 定 な 粒 子 の 存 在 す る 余 地 は な い の で,LSPは 中 性 粒 子,す る.た
な わ ちν, γ, h0, H0の
だ し,γ,
Z0,
態 ニ ュ ー ト ラ リー ノ(Xi0;i=1∼4)を あ ま り 意 味 が な い.一 あ る.
ど れ か と い う こ と に な る.通
2個 の 中 性 ヒ グ シ ー ノ(H0,
h0)は,混
つ く る の で,γ
とかZ0と
番 軽 い ニ ュ ー ト ラ リー ノ(X10)がLSPの
常 はγ
に と
合 して 質 量 固 有 状 いった区別 は 最 有 力 候補 で
5.5.3 超 対 称 大 統 ― 理 論(SUSY-GUT) ゲ ー ジ階 層 の微 調 整 問 題 は す べ て の 大 統 一 理 論 に共 通 の 欠 点 で あ っ た が,超 対 称 性 を組 み 込 む こ とに よ り消 滅 す る こ とは す で に述 べ た とお りで あ る.大 統 一 に 超 対 称 性 を組 み 込 ん だ理 論 は ,観 測 され て い る粒 子 スペ ク トル に 関 す る限 りMSSMと
ほ とん ど同 じで あ る.し か し,大 統 一 理 論 の 階 層 問 題 を解 決 す る
の み な らず,先
に 述 べ たSU(5)の
少 な か れ もつ)を,無
現 象 論 的 な 欠 点(他 の 大 統 一 理 論 も多 か れ
理 な く修 復 して しま う とい う点 で魅 力 的 で あ る.
a. ワ イ ンバ ー グ角 超 対 称 性 は破 れ て い るに せ よ,エ ネ ル ギー ス ケ ー ル が,∼1TeVを た りで 回 復 す る とす るの が 自然 な考 え で あ る こ とは,ヒ 論 から 導 か れ た.超 粒 子 の 質 量 が〓1TeVで
寄 与 を考 慮 しな け れ ば な ら な い.し
ッグ ス粒 子 の 質 量 の議
あ る な らば,エ
ル が そ れ よ り大 き な と こ ろ(μ>MSUSY∼1TeV)で
ネ ル ギ ー ス ケー
の 放 射 補 正 に は,超
た が っ て,SU(5)の
種 ゲ ー ジ群 の 放 射 補 正 に対 す る β関 数(5.52)は
超 えるあ
粒子の
と こ ろ で 議 論 した 各
次 の よ うに 補 正 され る20).
(5.82a) (5.82b) (5.82c) 括 弧 内 の 第1項 す.ngは
は,既
述 し たSU(5)の
世 代 の 数(3と
す る)を
示 す.超
α2の 勾 配 を 小 さ くす る の で,αiの ∼2×1016GeVと
す る .ア
慮 し た 式 を 使 い,LEPの
(図5.8).こ
が 超 粒 子 の 寄 与 を示
粒 子 の 寄 与 は,減
ど は2次
れ に と も な っ て,ワ
取 り入 れ たSU(5)で
者 が き れ い に1カ
大 き く し,Mss
の ル ー プ 補 正 を も考
精 密 デ ー タ を 解 析 し た 結 果20),通
で 変 わ り,三
衰 関 数 で あ る α3,
一 致 す る 大 統 一 点(Mss)を
マ ル デ ィ(Amaldi)な
個 の αiが 一 致 す る 点 は な い が,SUSYを 傾 斜 が
β 関 数 で,第2項
常 のSU(5)で
は3
は発 展 方程 式 の
所 で 合 流 す る こ と を示 し た
イ ン バ ー グ角 の 発 展 の 仕 方 も変 更 さ れ21)
(5.83) と な り,実
験 値 を 再 現 す る こ と が 可 能 と な る.図5.9は,SUSYを
入 れ な い
(a)
(b) 図5.8
SU(i)群
結 合 定 数 の 繰 り込 み ス ケ ー ル μ に よ る発 展 図
出 発 点 にLEPのDELPHIデ (a) SU(5)の
(b) SU(5)+SUSY,
SU(5)理
論 とSUSYを
ー タ16,20)を使 用 した.
み MSUSY=1TeV
入 れ たSU(5)理
論 の αs(mZ2)とsin2θW(mZ2)の
想 値 を 示 し た も の で あ る16,20).ま た,SUSY-GUTに で あ り,超
対 称 性 を 使 わ な い 値
計 算予
よ れ ば,
と 異 な る.
b. 陽 子 崩 壊 大 統 一 の エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ル が 大 き くな る こ と に と も な い 陽 子 崩 壊 を 媒 介 す るX,
Y粒
子 の 質 量 も 大 き く な る.そ
は(以
下ss:SUSY,
ns:non-SUSYの
一 の陽子寿命 τ pnsに 比 べ て,
の 結 果,SUSYを
入 れ た 陽 子 寿 命 τpss
指 標 を 使 う),SUSYを
入 れ な い大 統
図5.9
大 統 一理 論 に よ る αs(mZ)-sin2θW(mZ)の
通 常 のSU(5)とSUSY-SU(5)の
理 論 値 を示 す.3本
数 値 は,エ ネ ル ギー ス ケー ル10nGeVのnを 表 す.古 たが,最 近 の デ ー タはSUSY-SU(5)に 合 う16).
(a)
い1981年
の デ ー タで は通 常 のSU(5)と
(b) 図5.10
合致 し
(c)
SUSY-SU(5)に
(a) 通 常 のSU(5)過
計算予想値
の 線 に よ る帯 は 理 論 の不 定 性 を 表 し,帯 の 中の
よ る 陽 子 崩壊 過 程
程,(b)
ヒ ッグ ス 媒 介 過 程
(c) 超 粒 子 ル ー プ 中間 状 態 に よ る過 程
(5.84) と長 くな り,実
験 と矛 盾 し な く な る.こ
対 称 モ デ ル で は,X, グ シ ー ノH0を る 過 程 は,結
Yの
れ は 観 測 不 可 能 な 値 で あ る が,実
は超
寄 与 に よ る 崩 壊 の ほ か に ヒ ッ グ ス 粒 子HSU5,ヒ
ッ
仲 介 す る 過 程 が あ る(図5.10).図5.10(b)の
ヒッグス交換 よ
合 の 大 き さ が フ ェ ル ミオ ン の 質 量 に 比 例 し,Hの
す る と い う 理 由 に よ っ て,mHを 可 能 な 値 に な ら な い の で,興 ン で あ る の で,振
幅 はX交
い ま で 小 さ く し な い と検 出
味 あ る の は(c)の
過 程 で あ る.H0は
換 の 場 合(∝MX-2)と
違 いM(H0)-1に
移 確 率 が は る か に 大 き くな る.た 量 に 比 例 す る の で,こ
∼1011GeVくら
だ し,通
質 量 に逆 比 例
フ ェ ル ミオ 比 例 し,遷
常 の ヒ ッ グ ス と 同 じ く結 合 定 数 が 質
れ に よ る 抑 圧 因 子 で 相 殺 す る.し
メ タ ー の 不 定 性 が 大 き く,正 確 な 予 想 は 困 難 で あ る が,パ
た が っ て,こ
れ らパ ラ
ラ メ ター を適 当 に と
れ ば,こ
の過 程 が 超 対 称 大 統 一 で の 優 勢 モー ドとな り,実 験 の 観 測 範 囲 に 入 る
可 能 性 が あ る22).ヒ グ シー ノが 重 い粒 子 に結 合 す るの で,崩 壊 モー ドは (5.85) が優 勢 と な る.超 対 称 性 を入 れ な い大 統 一 理 論 で は,一 般 に,π0e, 勢 で あ るの で,も
し崩 壊 が観 測 され た 場 合,超
π+νが 優
対称 性 モデル か そ うでな いか
は,崩 壊 モー ドに よ っ て 区 別 が つ け られ る. 以上 を ま とめ る と,超 対 称 性 を取 り入 れ た大 統 一 理 論 は い ま の とこ ろ実 験 と 矛 盾せ ず,理 論 的 な利 点 を考 え る と大 い に 魅 力 の あ るモ デ ル で あ り,十 分 追 求 に値 す る とい う結 論 に な る.
5.6 超 対 称 モ デ ル19)
5.6.1 超 粒 子 の 相 互 作 用 超 対 称 性 の 破 れ が,対 称 性 の 自発 的破 れ に 基づ く もの な らば,通
常 粒 子 と超
粒 子 との質 量 の縮 退 は解 け て も,粒 子 間 の相 互 作 用 の 形 や 結 合 定 数 は 変 わ らな い.例 え ば,フ れ ば,fと
ェ ル ミオ ンfと
ス ピ ン1/2の
ゲ ー ジ ボ ソ ンVと
ゲー ジ ー ノ(V)と
の 結 合 定 数 がgで
ス フ ェ ル ミオ ン(f)と
指 定 され
の結合 は
(5.86) で 与 え ら れ る.こ
こ に,fa(fa)=fL(fL), fLc(fR)で
の ス カ ラー 粒 子 で あ るが,fLも 種 類 が 存 在 す る.fLとfRは
あ る.faは,ス
し くはfRの 超 対 称 伴 侶 と し て のfL,
ピ ン0 fRの2
一 般 に 混合 す るの で質 量 固有 状 態 で は な い.し
か し,混 合 率 は フ ェ ル ミオ ンfの 質 量 に 比 例 す る の で(後 述(5.100)),第3世 代 以 外 の 混 合 は 通 常 無 視 す る.図5.11に
い くつ か の 相 互 作 用 例 を 図 示 す る.
上 記 の 議 論 で 明ら か な よ うに,超 対 称 性 に よ り規 制 され る相 互 作 用 の形 と強 さ は 対称 性 が 破 れ て も変 わ らず,質
量 だ け が 変 わ るの で,質 量 スペ ク トル が わ か
れ ば 生 成 崩 壊 率 が 予 言 で き る こ とに な る. 現象 論 的 な制 限: 質 量 スペ ク トル を得 る た め に は具 体 的 な モ デ ル が 必要 と な る.モ デ ル 構 築 に 当 た って は既 知 の 現 象 と矛 盾 しな い た め い くつ か の制 限 が
(a)
(b)
(d)
(e) 図5.11
(a) 通 常 粒 子V(ゲ 作 用.点
(c)
超 粒 子 の 相 互 作 用 の例
ー ジ ボ ソ ン)-ff(フ
ェ ル ミオ ン)の 相 互
線 を か ぶ せ て2重 線 と した とこ ろ が 超粒 子
(b) V-f-f,
(c) V-f-f
(d) H-f-f,
(e) H-f-f
つ け られ る.超 粒 子 が 存 在 す れ ば,既 知 の 現 象 に対 して 中 間 状 態 と して寄 与 し う る.例
え ば,香
な ど),KL-KS質
りの 変 わ る 中 性 カ レ ン ト過 程 の 反 応 率(μ →eγ, KL0→ 量 差 やCP非
μμ
保 存 パ ラ メ ター に 影 響 が 及 ぶ23).実 験 に 矛 盾
しな い た め に よ く採 用 され る処 方 箋 は,質
量 ス ペ ク トル が 香 りに 関 して ほ ぼ 縮
退 して い る とい う条 件 で あ る.
(5.87) こ こ にa=Lも
し くはRで
あ る.た だ し,第3世
り条 件 が 緩 い.ま た,uとdに 退 し て い な い と(m(uL)≒m(uR),
代 に 関 して は 第1,
2世 代 よ
つ い て は,左 右 カ イ ラ リテ ィの 質 量 が ほ ぼ 縮 dも
同 じ),原 子 遷 移 で の パ リ テ ィ 非 保 存
成 分 が 大 き くな りす ぎ る.
5.6.2 最 小SUGRAモ
デル
a. 隠 れ た 領 域
超 対 称 性 を破 る方 法 は種 々 あ る.MSSMは し て 決 め た が,MSSMの
現 象 論 的 制 約 と簡 単 さ を指 針 と
み で は ま だ 制 限 が 緩 くパ ラ メ ター が 多 す ぎ る(124
個!→
文 献10参
照).そ の ためSUGRAを
指 針 と して パ ラ メ ター数 を減 らす
と い うの は 魅 力 的 な 考 え 方 で あ る(SUGRA-GUT24)).
SUGRAで
は,重 力 の
分 化 と繰 り込 み 群 方 程 式 に よ る発 展 が 電 弱 相 互 作 用 を も規 制 す る とい う見 方 を す る.す
な わ ち,重 力 を含 む 超 大 統 一 対 称 性(仮
の分 化)が,プ
にGと
す る)の 破 れ(重 力
ラ ン クエ ネ ル ギー よ りや や 低 い と こ ろ(∼MX)で
よ う.こ の 段 階 に お け る各 種 粒 子 の 質 量 と結 合 定 数 は,群Gに る共 通 の値 を もつ が,エ
ネ ル ギ ー ス ケ ー ル μ<MXで
よ り規 制 さ れ
は放 射 補 正 を受 け,粒
ご と に 異 な る発 展 を す る.特 に ヒ ッ グ ス 粒 子 の 質 量mH2は,電 ∼O(GF-1/2)で
発生 した と し
子
弱 ス ケ ー ルQ
は負 とな り,電 弱 相 互 作 用 の 自発 的 破 れ が 繰 り込 み 群 発 展 の 帰
結 と して 自然 に 発 生 し,わ れ わ れ の観 測 す る 相 互 作 用 を再 現 す る.超 対 称 性 Gの 破 れ が 既 存 の(見 え て い る)粒 子 群 とは相 互 作 用 しな い新 領 域(隠 れ た領 域,hidden
sector)に
あ る粒 子 群 の み で起 こ る と し よ う.こ れ ら の 粒 子 と見
え て い る粒 子 とは 重 力 相 互 作 用 で の み つ な が っ て い る とす る と,超 対 称 性G の 破 れ の起 き る エ ネ ル ギ ー ス ケー ル は ∼MXで 分 で は 重 力 結 合 の 小 さ さ に よ って,こ ∼O(MX2/Mplanck)∼O(GF-1/2)と ば よ い.こ
あ っ て も,わ れ わ れ に 見 え る部
の エ ネ ル ギ ー ス ケー ル が 実 効 的 に
な る.こ の た め に は,MX∼1011GeVと
の 結 果 実 現 す る実 効 的 対 称 性 は,GUTに
大 域 超 対 称 性(と そ の 破
れ)を 入 れ た もの に ほ とん ど等 し く,低 エ ネ ル ギー で はMSSMを る.以
下 はSUGRAで
とれ
ほぼ実 現す
も最 も簡 単 な 仮 定 を す るmSUGRA(minimal
super
gravity)に 話 をか ぎ る.実 効 ラ グ ラ ン ジ ア ンは,超 対 称 性 を保 存 す る項 と破 る 項 に 分 け て 次 の よ う に書 け る.
(5.88a) (5.88b) δLの クq,ス
第1項
は,カ
イ ラ ル 多 重 項 の ス カ ラ ー 場(ヒ
レ プ ト ンl)の
の 質 量 項,第3項 シ ャ ルW3で
質 量 項,第2項
は ヒ ッ グ ス 混 合 項,第4項
あ る.A,
Bは
ッ グ スH1, H2と
ス クォー
は 超 対 称 フ ェ ル ミ オ ン(ゲ ー ジ ー ノ) は ス カ ラ ー 場 の3次
多項式 ポテン
質 量 の 次 元 を も つ パ ラ メ タ ー で あ る.な
お,ヒ
グ ス 質 量 項 は 超 対 称 性 保 存 項 の 中 に も 存 在 す る の で そ の 質 量 を μ と 書 く.m0 は カ イ ラ ル ス カ ラ ー の,m1/2は
ゲ ー ジ ー ノ の 共 通 質 量 で,
(5.89a)
ッ
(5.89b) で あ る.δLは,超
対 称 多重 項 の 一 部 に の み 他 の メ ン バ ー とは 異 な る質 量 や 結
合 を 付 加 す る こ と に よ り超 対 称 性 を 破 る.破 TeV)で
な け れ ば な ら な い か ら,m0, m1/2,
δLは,超
対 称 性 は 破 る が2次
る 項(soft
breaking
term)と
れ の ス ケ ー ル は た か だ かO(1
A, Bも
ま た 同 程 度 で あ る.上
の 発 散 は 起 こ さ な い の で,対 呼 ば れ て い る.MSSMで
記の
称 性 を 柔 ら か く破
は 上 記 パ ラ メ ター が 各
粒 子 ご と に 異 な る. b. 電 弱 対 称 性 の 破 れ 超 対 称 性 を 破 る 項 の 中 の ヒ ッ グ ス に 関 す る パ ラ メ タ ー は,式(3.50)の
超対
称 ヒ ッ グ ス ポ テ ン シ ャ ル の μ12,μ22,μ32と は 次 の よ う に 関 係 づ け ら れ る.
(5.90) 上 式 は,μ12=μ22>0で,自 しか し,こ
れ は,プ
発 的 に 対 称 性 を破 る た め の 条 件 を 満 た し て い な い.
ラ ン ク ス ケ ー ル 付 近(Q〓MX)で
補 正 効 果 を 入 れ る と,m0,
μ, m1/2, A,
し て 粒 子 ご と に 違 う 発 展 を す る.そ
Bは
成 り立 つ 式 で あ る.放
す べ て,τ=ln(Q2/MX2)の
射
関数 と
し て 低 エ ネ ル ギ ー(Q∼O(mZ))で
は,電
弱 対 称 性 の 破 れ を 正 し く再 現 し な け れ ば な ら な い.そ
のための必要条件 は ヒッ
グ ス の 質 量 行 列 式 が 負 に な る こ と(μ12μ22-μ34<0)と
ポ テ ン シ ャル に 下 限 値 が
存 在 す る こ と(μ12+μ22-2│μ3│2>0)で (式(3.50))が
あ る.具
体 的 に 超 対 称 性 ポ テ ン シ ャ ルV
極 値 を も つ と い う条 件(∂V/∂υi=0,
i=1,
2)を 書 き下 ろ す と
(5.91a) (5.91b) (5.91c) が 得 ら れ る が,こ ス ケ ー ル で のm02か で あ る.上
れ ら の 式 は 上 記 の 必 要 条 件 を 満 た す.mHd2,mHu2は,GUT ら,繰
式 を 使 え ば,μ2と
わ ち,mSUGRAで
り込 み 群 方 程 式 に よ り発 展 さ せ た ヒ ッ グ ス の 質 量 μ32=-Bμ
はmZ2とtanβ
で 書 き 直 せ る.す
な
は (m0, m1/2, A, tanβ,
の 五 つ の パ ラ メ タ ー を 指 定 す れ ば,す
μ の 符 号) べ て の 超 粒 子 の 質 量mi2を
放射 補正 に
よ る発 展 結 果 と して 導 くこ とが で き る こ と を意 味 す る.
(5.92) 上 に 述 べ た よ う に,SU(2)×U(1)の ヒ ッ グ ス の 質 量 の ど ち ら か,す
自発 的 対 称 性 の 破 れ が 起 き る た め に は, な わ ち μ12も し くは μ22の 値 が 負 に な れ ば よ い.
ト ッ プ の 質 量 が 十 分 大 き け れ ば,ト り込 み 群 方 程 式(5.92)の 関 数 と な り,プ
右 辺 が 正 と な り,値
質 量 μ22の 満 た す 繰
も大 き い の で,μ22は
τの 増 加
ラ ン ク ス ケ ー ル で は 正 で あ っ て も電 弱 ス ケー ル で 負 に で き
る23,24)(図5.12参 け な い.バ
ップ と 結 合 す るH2の
照).た
だ し,ス
フ ェ ル ミ オ ン の 質 量 の 自乗 を 負 に し て は い
リ オ ン 数 や レ プ ト ン数 が 保 存 し な くな る か ら で あ る.こ
の よ うに し
て 標 準 理 論 に お い て は 手 で 入 れ て やら ね ば な ら な か っ た 対 称 性 の 破 れ が,プ
ラ
ン ク ス ケ ー ル で の 超 対 称 性 の 破 れ か ら 放 射 補 正 と し て 導 け る と い う 点 で, SUGRAは GeV)予
進 ん だ 理 論 で あ り,し 言 し た こ と で,大
図5.12
か も ト ップ の 質 量 を ほ ぼ 正 確 に(100∼200
き な 注 目 を 集 め て い る.
各種 粒 子 の 質 量 がMXか
ら発 展 す る様 子25)
ト ップ の 質 量 が 大 き い た め,μ22が 負 の 勾 配 を もち,電 で は 負 に な る. c. 質
量
公
弱 スケール
式19)
ゲ ー ジー ノの 質 量 は,対 応 す る結 合 定 数 と同 じ発 展 をす るか ら,
(5.93a) (5.93b) (5.93c) が 予 言 で き る.こ
こ で,M3=M(g),
が っ て,Q〓mZの
電 弱 ス ケ ー ル で は,
M2=M(W), M1=M(B)で
あ る.し
た
(5.93d) と な り,グ
ル ー イ ー ノ の 質 量 は,ウ
ィ ー ノ(W)や
ビ ー ノ(B)に
比べ 相 当大 き
い こ と を 意 味 す る. ウ ィ ー ノ は,電
荷 を も つW±
対 称 性 が 破 れ る と,荷 ジ ー ノ(ウ ィ ー ノW0と 混 合 し,チ
と 中 性 のW0に
電 ゲ ー ジ ー ノW± ビ ー ノB)と
分 け ら れ る.SU(2)×U(1)
と荷 電 ヒ ッ グ シ ー ノH±
が,中
中 性 ヒ ッ グ シ ー ノ(h0とH0)が
ャ ー ジ ー ノ(X1±,X2±)と
それぞれ
ニ ュ ー ト ラ リー ノ(xi0,i=1∼4)と
番 号 は 質 量 の 小 さ い 順 に つ け る.質
性ゲー
な る.
量値 は
(5.94) │μ│≫M2,
mWで
は,X1±
∼W±, X2±
∼H±
で あ り
(5.95a) (5.95b) で 与 え ら れ る.ε=sign(μ)で
あ る.
ニ ュ ー トラ リー ノ に つ い て は,ゲ
ー ジ 固 有 状 態 ψ0=(B,
W,
Hd0, Hu0)で
の
質量行列
(5.96)
を対 角 化 す れ ば,質 で,│μ│≫M2, mZの
量 固有 状 態Xi0と
質 量 値 が得 られ るが,複 雑 な 式 とな る の
と き成 り立 つ 近 似 式 の み を あ げ て お く.
(5.97) │μ│≫M2,
mZの
と き,X10∼B, X20∼W0で
あ
り,こ
の 関 係 式 が 成 立 す る.逆 X1 ,20, X1± は ヒ ッ グ シ ー ノh0,H0,H±
に 近 い.
の 近 似 に│μ│≪M1,
で は 質 M2の
量 間 に, と き は,
ス ク ォ ー クqと
ス レ プ ト ンlの
具 体 的 に 書 き 下 ろ せ ば 得 ら れ る.小
質 量 は,繰
り 込 み 群 発 展 方 程 式(5.92)を
さ い 係 数 を 省 略 す れ ば,第1,2世
い て は 近 似 的 に 次 の よ う に 表 せ る .Q1=(uL,dL), eL),
L2=(ν
代 につ
Q2=(cL,sL), L1=(νeL,
μL,μL)と し て
(5.98a) (5.98b) (5.98c) (5.98d) (5.98e) K1, K2, K3は,U(1),
SU(2),
SU(3)の
ゲ ー ジ ー ノ ル ー プ の 寄 与 で,次
式 で与 え
ら れ る.
(5.99a) Q0は
出 発 点 の ス ケ ー ル で あ る.(5.98)に
チ ャ ー ジ(Y/2)2で
あ る.Δ
お け るK1の
比 例 係 数 はハ イパー
は 電 弱 相 互 作 用 の 破 れ に 伴 う超 微 細 構 造 で あ り,
(5.99b) (5.99c) と 表 せ る の でSU(2)×U(1)の
で あ り,uLとdLが
縮 退 を 解 く効 果 が あ る .例
分 離 す る.mfは
Q0=MX≒2×1012GeVと
第1,2世
あ る.こ
の 質 量 を 決 め る 大 き な 要 因 はm0とm1/2で る と,ま
ず 第1,2世
代 で は無 視 で き る.
して 数 値 計 算 す る と,Q∼1TeV付
す な わ ち,K3≫K2≫K1>0で
え ば,
の こ と か ら,ス
近 で は,
ク ォー ク とス レ プ トン
あ る こ と が わ か る.よ
り詳 細 に み
代 に つ い て は す べ て の ス ク ォ ー ク は ほ ぼ 縮 退 す る こ と,
ス ク ォ ー ク は ス レ プ トン よ り一 般 に 大 き い 質 量 を も つ こ と が い え る.ス ン の 質 量 はm0に
近 い,m0が
非 常 に 小 さ け れ ば,ス
レプ ト
カ ラー 粒 子 全 体 の 質 量 が
小 さ くな る と と も に ス レ プ ト ン の 縮 退 が 解 け る. 上 記 の 質 量 公 式 は 左 右 混 合 の 効 果 を 無 視 し た も の で あ る.ト (ス ト ッ プ と い う)tの
質 量 固 有 状 態(t1,t2)は,(tL,tR)を
ップ ス クォ ー ク 基 底 と した 質 量
行 列,
(5.100) を 対 角 化 し て 得 ら れ る.m2(tL,R)の と し て 得 ら れ る.Atはtク ス ピ ンI3=-1/2の
式 は,(5.98)のm2(uL,R)か
ォ ー ク のAパ
質 量 行 列 は,し
tanβ と し て 得 ら れ る.混
ラ メ タ ー で あ る.b,τ
か し,第3世
な どア イ ソ
か る べ き 質 量 に 置 き 換 え さ ら にcotβ
合 は ヒ ッ グ ス を 仲 介 と す る 湯 川 結 合 で 生 じ,強
ク ォ ー ク も し く は レ プ ト ン の 質 量 に 比 例 す る の で,第1,2世 る.し
らmu→mt
そ の も の を 押 し 下 げ る.特
さが
代 では無視 で き
代 の ク ォ ー ク や レ プ トン は 質 量 が 大 き く,湯
繰 り 込 み 効 果 が 大 き い の で,左
→
川結合 に よる
右 混 合 を起 こ し て 質 量 を 分 離 す る と と も に 質 量
に
そ し て た ぶ ん,m(b1)≪m(b2), m(τ1)≪m(τ2)も ス ク ォ ー ク の 中 で はm(t1)が,荷
成 立 す る.こ
の 結 果 と し て,
電 ス レ プ ト ン の 中 で はm(τ1)が
お そ ら く最
も軽く な る.
こ れ ら の 質 量 公 式 は,不 要 なFCNC(香 せ な い と い う(5.87)の
り を混 ぜ る中 性 カ レ ン ト)を 発 生 さ
条 件 を満 た して い るが,そ
れ はQ∼MXで
共 通 の質量
を もつ と い う要 請 か らで て き た もの で あ る.
5.6.3
GMSBモ
デ ル26,27)
超 対 称 性 を 柔 ら か に 破 る も う 一 つ の 有 力 な モ デ ル で あ り,mSUGRAと よ う な 効 果 を だ せ る 機 構 で あ る.GMSBと breakingの
略 で あ る.mSUGRAと
見 え る 領 域 と は 重 力 で な く,メ 用 に よ っ て 結 合 す る.
は,gauge
同 じ く,隠
mediated
同 じ symmetry
れ た 領 域 で 超 対 称 性 を 破 る が,
ッセ ン ジャ ー 粒 子 を介 して 既 知 の ゲ ー ジ相 互 作
a. メ ッ セ ン ジ ャ ー 粒 子 こ の た め に,メ U(1)Y)を
ッ セ ン ジ ャ ー と し て 標 準 理 論 の 量 子 数(SU(3)c×SU(2)L×
も つ 新 し い カ イ ラ ル 多 重 項Φ ∼(Q,L,Qc,Lc)を
導 入 す る.最
も簡
単 な仮 定 は 量 子 数
を もつ とす る こ と で あ る.(Q,L), な し て も よ い.こ
こ で,見
(Qc,Lc)をSU(5)の5と5*に
属 す る と見
え る領 域 とは 相 互 作 用 を し な い が,隠
れ た領 域 で
メ ッセ ン ジ ャー とは次 の よ うな超 対 称 性 ポ テ ン シ ャ ル を通 じて結 合 す る超 対 称 カ イ ラ ル 多 重 項Tを
導 入 す る.こ の 多 重 項 は一 つ の 粒 子 とい う よ りは,超 対
称 性 を破 る 力 学機構 を象 徴 化 した もの と見 なす べ き量 で あ る.
(5.101) yjは 湯 川 結 合 定 数 で あ る.超 対 称 性 が 破 れ てTの 補 助 場FT*1)が
ス カ ラー 成 分 とTに
真 空 期 待 値 〈T〉,〈FTΥ 〉を もつ と,Q, Lの
と ス カ ラー 成 分Φsが,そ
伴う
フ ェ ル ミオ ン成 分f
れ ぞ れ 質 量 を獲 得 す る.
(5.102a) (5.102b) Mが
メ ッセ ン ジ ャ ー の ス ケー ル を表 し,Λ
はSUSYの
破 れ に伴 い現 れ る質 量
分 岐 を表 す.こ の メ ッ セ ジ ャ ー が 見 え る領 域 の粒 子 と通 常 の ゲ ー ジ相 互 作 用 を す る こ とに よ り,超 粒 子 に質 量 を与 え る の で 見 え る領 域 の超 対 称 性 が 破 れ る. b. GMSBの
質量公 式
ゲ ー ジ ー ノ(λi)は メ ッ セ ン ジ ャ ー の1ル す る(図5.13).ス
カ ラ ー 粒 子(q, l)へ
ー プ 相 互 作 用 を 通 じ て 質 量 を獲 得
の1ル
ー プ 寄 与 は な く,2ル
作 用 を通 じて 質 量 を 獲 得 す る(図5.14).〈FT〉≪yi〈T〉2と 寄 与 に よ り,メ
ープ相 互
す ればルー プか らの
ッセ ン ジ ャ ー ス ケ ー ル 領 域 で ゲ ー ジー ノ は
(5.103a) ス カ ラ ー粒 子 は *1) 超 対 称性 を保 存 す るため に 導 入 され る ,カ イ ラル 多重 項 に付 随 す るス カ ラー 場 で,質 量 の 自乗 の 次元 を もつ.時 空 を伝 播せ ず,運 動 方 程 式 を使 え ば カ イ ラル 多重 項 に 属 す る場 で書 き直 す こ とが で き る.
(5.103b) だ け の 質 量 を 獲 得 す る.Nは はN=1と
す る.Caδab=(Σtiti)abは
現 れ たKaの C2は
メ ッ セ ン ジ ャ ー 多 重 項 の 組 の 数 で 最 小GMSBで 群 の カ シ ミヤ 演 算 子 係 数 で,式(5
係 数 と 同 じ も の で あ る.C3は
電 弱2重
る.SUSYの
項 で は3/4,
カ ラ ー3重
1重 項 は0で,YはU(1)ハ
破 れ の ス ケ ー ル は ∼O(1TeV)な
要 求 さ れ る が,そ ∼O(1/2)な
項 で は4/3,
.99)に
1重 項 は0,
イ パ ー チ ャー ジ で あ
の で,Λ
∼O(10∼100TeV)が
れ 以 外 は メ ッ セ ン ジ ャ ー の 質 量 に 対 す る 制 限 は な い.M
ら ば 超 対 称 性 の 破 れ に よ る 分 岐 ス ケ ー ル
T>が104∼105GeV2
程 度 に 小 さ い 状 況 も あ り う る.
図5.13 ゲ ー ジー ノに 質 量 を与 え る メ ッセ ン ジャ ー の1ル ー プ 寄 与 ル ー プ の 実 線 が フ ェ ル ミオ ン,ダ ッ シ ュ線 が ス カ ラー 部 分,Xは 超 対称 性 の破 れ に伴 う質 量 項 を 示 す.
図5.14 1ル
ス ク ォー ク(q)と
ー プ は 寄 与 し な い.〓
分)が
メ ッ セ ン ジ ャ ー,f(〓)がq, lを,λ(〓)が
式(5.88)に
質 量 を与 え る2ル ー プ の寄 与 ス カ ラ ー 部 分,―
フ ェ ル ミオ ン部
ゲ ー ジ ー ノ を 表 す.
掲 げ た 超 対 称 性 を ソ フ トに 破 る 五 つ の 項 の う ち,Aパ
に 対 す る 寄 与 は2次
ル ー プ で そ の 上 に αiが か か る の で,メ
ケ ー ル で は 無 視 し て よ い.Bパ う にtanβ
ス レプ トン(l)の
は ゲ ー ジ 粒 子,Ф(〓
ラ メ タ ー は,SUGRAの
で 置 き換 え ら れ る の で,GMSBで
ラ メ ター
ッセ ン ジ ャー ス
ところで議 論 した よ
のパ ラ メ ター は
(tanβ,M,Λ,μ
の 四 つ と な る.N≠1と
c. GMSBの
特徴
mSUGRAと
比 較 し た 場 合,GMSBの
ル がmSUGRAに
(5.104)
の 符 号)
す れ ば も う 一 つ パ ラ メ タ ー が 増 え る.
第1の
特 徴 は,対 称 性 を破 る ス ケー
比 べ て 非 常 に 小 さ い と い う こ と で あ る.第2の
特 徴 は,
メ ッ セ ン ジ ャー は ゲー ジ相 互 作 用 を通 じて 見 え る領 域 と相 互 作 用 をす る の で, 香 りに よ る差 が で な い とい うこ とで あ る.mSUGRAで
は手 で 入 れ な け れ ば な
ら な か っ た香 りを変 え る相 互 作 用 の 抑 圧 機 構 が,GMSBで
は,モ
デル の 中に
自動 的 に 組 み 込 まれ て い る. GMSBの ジ ー ノ,ス
第3の
特 徴 は 出 発 点 と な る メ ッ セ ン ジ ャー ス ケー ル で,各
ゲー
クォ ー クや ス レプ トン の各 種 超 粒 子 に す で に質 量 差 が あ る こ と で あ
る.し か し,エ ネ ル ギー ス ケ ー ル の 大 き な と こ ろ(Q∼MX∼MGUT)で さ れ て い て,繰
は統 一
り込 み 群 方 程 式 に よ りこ こ ま で発 展 して き た と考 え る こ と も可
能 で あ る(そ の と き は統 一 を実 現 す る ため に た ぶ んN>1が の 階 層 を表 す 式(5.93)は,GMSBで
も有 効 で あ る.メ
必 要).ゲ ー ジー ノ ッセ ン ジャ ー よ りエ ネ
ル ギ ー の 低 い ス ケ ー ル へ 行 くに は さ ら に繰 り込 み 群 方程 式 で発 展 させ る.そ の 結 果 は,電 る.ス
弱 ス ケ ー ル でHuの
質 量 を 負 に 追 い込 み 電 弱 対 称 性 の 破 れ を実 現 す
カ ラー 粒 子 に 対 す る質 量 公 式(5.98)は,GMSBで
はm0=0と
す るが,
出 発 点 の メ ッセ ン ジ ャー ス ケ ー ル で す で に分 岐 して い るの で,Kaの
大小 は 多
少 変 更 さ れ る も の の,質
量 の 階 層 関 係 に つ い て はmSUGRAと
ほぼ同様 な結
果 を与 え る. が1010∼1011GeVに き な く な り,そ GeVを
近 づ け ば,M∼Mplanckと
の 効 果 も 混 入 し て く る が,通
仮 定 し 重 力 効 果 を 無 視 す る .こ
質 量 が 非 常 に 小 さ くな る28).グ
な るの で重 力 が 無 視 で
常 のGMSBで
の 結 果 と し て,グ
は, ラ ヴ ィ テ ィ ー ノGの
ラ ヴ ィ テ ィ ー ノ の 質 量 は 通 常m3/2と
書 く.
(5.105) した が っ て モデ ル の つ く り方 に も よ る が,GMSBで
の最 も軽 い 粒 子(LSP)は
通 常 は グ ラ ヴ ィ テ ィー ノ とな る.こ れ が,GMSBの
第4の
の特 徴 で あ る.一 方mSUGRAで
は,
そ し て た ぶ ん最 大
で あ るので グ ラヴ ィ
テ ィ ー ノ の 質 量 は 他 の 超 粒 子 と同 程 度(∼O(1TeV))あ
り,かつ
相 互作用 の強
さ は 重 力 程 度 で あ る の で 加 速 器 実 験 で は そ の 存 在 を 無 視 で き る*2).GMSBで は グ ラ ヴ ィ テ ィ ー ノ がLSPと たX10は,第2番
な る た め,mSUGRAで
目 に 軽 い 粒 子(NLSP)と
τRがNLSPに
有 力 なLSP候
な る.た
な る 可 能 性 も あ る.NLSPは
だ し,モ
補 と され
デ ル に よって は
グ ラ ヴ ィテ ィー ノ に 次 の よ う な
反 応 で 壊 れ る.
(5.106) X10がBに
近 け れ ば,こ
の 崩壊 の 寿 命 は,
(5.107a) で与 え られ る.数 値 を評 価 す る と崩壊 距 離 が (ミ ク ロ ン)
(5.107b)
と計 算 さ れ て い る28,29).グ ラ ヴ ィ テ ィ ー ノ の 質 量 が 小 さ け れ ば 寿 命 は 短 い.放 出 フ ォ ト ン は 測 定 上 は 孤 立 フ ォ ト ン と な る の で,超
粒 子 検 出 の 際 の 有 力 な手 段
と な る.
5.6.4
質 量 ス ペ ク トル の ま と め19)
モ デ ル 構 築 に も よ る の で 例 外 は あ る が,mSUGRA, し た 解 析 を ま と め る と,ほ (1) 最 GMSBで
(5.93)参
も 軽 い 超 粒 子LSPは,mSUGRAで
照).電
ャ ー ジ ー ノや ニ ュ ー トラ リー ノ よ り は か な り重 い(式
質 量 は,第1,2世
代 で は ほ と ん ど 縮 退 し て い る.
り込 み 群 方 程 式 に よ る 大 き な 付 加 項 は ゲ ー ジ ー ノ ル ー プ か ら な の で
各 項 に 共 通 し て い る か ら で あ る.qLはqRよ (W±)か
は ニ ュ ー ト ラ リ ー ノX10,
あ る.
弱 ス ケ ー ル で は,
(3) ス ク ォ ー ク(q)の 理 由 は,繰
ど を指 針 と
ぼ 次 の よ う な こ と が い え る.
は グ ラ ヴ ィ テ ィ ー ノGで
(2) グ ル ー イ ノ は,チ
GMSBな
ら の 寄 与(K2項)が
りや や 重 い.理
由 は ウ ィー ノ
ア イ ソ ス ピ ン で 差 が つ く か ら で あ る.同
*2) 宇 宙論 では 暗 黒物 質 の 有 力候 補 とな る .
じ理 由
で 第1,2世
代 の ス レ プ トン(l)も
ほ と ん ど縮 退 を し て お り,lLはlRよ
りや
や 重 い. (4) qはlよ
り 重 い.式(5.98)に
典 型 的 に 示 さ れ て い る よ う に,繰
り込
み 群 方 程 式 に よ る 発 展 で グ ル ー イ ー ノ の 寄 与 が 大 き い か ら で あ る. (5) 第1,2世 80%よ
代 の ス ク ォ ー クqは,mSUGRAで
り軽 く は な く,GMSBで
は グ ル ー イー ノ質 量 の
は グ ル ー イ ー ノ の 約60%で
あ る.こ
れ は,ス
ク ォ ー ク の 質 量 に 占 め る グ ル ー イ ー ノ 質 量 の 寄 与 が 大 き い こ と に よ る. (6) 第3世
代 は,質
量 が 大 き く ヒ ッ グ ス に 強 く結 合 す る の で,ヒ
通 じ た 左 右(qLとqR)の
混 合 が 大 き く,tLとtRは
別 れ る(た ぶ んbとτ
も).質
こ の た め ス ク ォ ー クqの
質 量 固 有 状 態t1とt2に
量 差 が 大 き く,か
中 で はt1が
ッグス を
つ 質 量 を 大 き く押 し 下 げ る.
最 も軽 い と考 え ら れ る.
(7) 超 対 称 性 が あ る と き の 中 性 ヒ ッ グ ス 粒 子 の う ち 軽 い 方(h0)は,150 GeVよ
り は 軽 く,さ
図5.15に
ら に120GeVよ
一 つ の モ デ ル を 指 定 し た と き,す
を 入 れ た と きのmSUGRAス
図5.15 (m0=600GeV, 第1列
り軽 い確 率 が 高 い(§3.4.1参
は,第2世
照).
な わ ちパ ラ メ ター に特 定 の 数 値
ペ ク トル 例 を あ げ る25).
mSUGRAに M(g)=160GeV,
よ るSUSY粒
子 の質 量 の予 言例25)
tanβ=1.73,
代 ま で の ス クォ ー ク と ス レ プ トン,第2列
Atop=0.0, は 第3世
μ<0と
した)
代 の ス クォー ク,第3列
は
チ ャ ー ジー ノ とニ ュー トラ リー ノ(軽 い順 に番 号 を振 る)を 示 す.第4列 は ヒ ッ グ ス の 質 量 で あ る.こ の 表 は 各 超 粒 子 質 量 の 相 互 関 係 を知 るた め の ガ イ ドで,数 値 は単 な る 目安 と見 な す べ きで あ る.
5.7 超 粒 子 探 索
以 下 で こ れ ま で の 超 粒 子 探 索 状 況 を 概 観 し て み よ う.超 判 っ て い る の で 質 量 ス ペ ク トル が わ か れ ば,実 が 観 測 さ れ る か は,モ
デ ル の 範 囲 内 で 予 言 可 能 と な る .通
軽 い ニ ュ ー ト ラ リー ノ(x10)を 見 な す.x0は
が,Rパリ
テ ィ保 存 よ り 中 間 状 態 と し て 質 量 の 大 き いqも
番
super
一 般 に他 の 粒 子 と電磁 相 互 作 用 をす る こ とが で き る
応 断 面 積 は,∼(α2/m(q)4)sに
強 さ は 弱 相 互 作 用 以 下 と な る.つ 相 互 作 用 を ほ と ん どせ ず,検 は グ ラ ヴ ィ テ ィ ー ノ がLSPで
常 の 解 析 で は,一
安 定 で 一 番 軽 い 超 粒 子(LSP: lightest
particle)と
の で,反
粒子 の相 互作 用 は
際 に どの よ うな生 成 崩 壊 モー ド
比 例 す る.m(q)が
ま りLSPは,ニ
し く はlを
通 る
大 き い の で反 応 の
ュ ー ト リ ノ と 同 じ く物 質 と
出 信 号 は 見 え な い エ ネ ル ギ ー と な る.GMSBで あ り,x10がNLSPで
あ る の で,x10→γGが
可 能 で 見 え な い エ ネ ル ギ ー と孤 立 フ ォ トン が 検 出 信 号 と な る.
5.7.1
チ ャ ー ジ ー ノ,ニ
ュ ー トラ リ ー ノ,ス
レプ トン
a. 生 成 機 構 LEPIで
は,Zの
生 成 断 面 積 が 大 き い に も か か わ ら ずZ崩
の 生 成 物 が な か っ た こ と か ら,チ ニ ュ ー ト リ ノ に 対 しm(ν)>43GeVが 値 がmZ/2よ
りや や 小 さ い の は,チ
く位 相 体 積 が 不 足 す る か ら で あ る.ス や や 弱 い.こ い.混
壊 の 中 にこれ ら
ャ ー ジ ー ノ に 関 し てm(x±)>mZ/2,ス い え る10).ス
ニ ュ ー ト リノ の 質 量 下 限
ャ ー ジ ー ノ に 比 べΓZへ
の寄 与が やや 小 さ
レ プ トン へ の 制 限 は ス ニ ュ ー ト リ ノ よ り
れ に 反 し ニ ュ ー ト ラ リー ノ の 質 量 に 対 し て は 制 限 が つ け ら れ な
合 具 合 に よ っ て は(例 え ば 純 粋 な フ ォ チ ー ノγ
の 場 合),Zに
少 な くも
ト リー 近 似 で は 結 合 し な い 場 合 も あ る か ら で あ る. e-e+反
応 の 重 心 系 エ ネ ル ギー
sチ ャ ネ ル でγ,Z交 (図5.16(b)(e)).結
換 に よ り,tチ
がmZを
超 え る と,チ
ャ ー ジ ー ノXi±
は
ャ ネ ル で ス レ プ トン 交 換 に よ り生 成 で き る
合 定 数 は わ か っ て い る の で,質
成 断 面 積 や 崩 壊 分 岐 比 が 計 算 で き る.生
量 と混 合 比 を与 え れ ば 生
成 断 面 積 は1∼10pb程
度 で あ る.
ニ ュ ー ト ラ リ ー ノ や チ ャ ー ジ ー ノ が ゲ ー ジ ー ノ に 近 い と き((X10, X20, X1±) ∼(B
, W0,
W±)),tチ
ャ ネ ル 交 換 の 質 量 が 大 き け れ ば 干 渉 効 果 は 小 さ い が,
質 量 が 小 さ い と 干 渉 効 果 が 大 き く,チ ニ ュ ー ト ラ リー ノ 生 成 断 面 積 は,も 優 勢 で あ る の で,断
ャ ー ジ ー ノ 生 成 断 面 積 を 小 さ く す る.
と も と ス レ プ トン 交 換 のtチ
面 積 が 大 き くな る.ヒ
ャネ ル 寄 与 が
ッ グ シ ー ノ 成 分 が 大 き い と き は,断
面 積 は 全 体 的 に 大 き くか つ ス レ プ ト ン 質 量 に ほ と ん ど 依 存 し な い,ス の 質 量 は ほ と ん どm0に プ トン の 質 量(あ こ と,ま e(電
等 し く,ス
る い はm0)を
ク ォ ー ク の 質 量 は も っ と大 き い の で,ス
大 き く と れ ば,ス
生 成 はSチ
ニ ュ ー ト ラ リー ノ 交 換 で 生 成 さ れ る(図5 タ ウ(τ)に
関 し て はSチ
レ
フ ェ ル ミオ ン が 生 成 さ れ な い
た そ れ らへ 崩 壊 し な い こ と を 意 味 す る の で,解 子 の 超 粒 子 パ ー ト ナ ー)の
レ プ トン
析 は 容 易 に な る.
ャ ネ ル γ,Z交
.16(c),(f)),ス
換 とtチ
ャネル
ミ ュ ー オ ン(μ)や
ャ ネ ル の γ/Z交 換 項 の み 効 く の で,モ
ス
デル に依 存 し
な い 質 量 下 限 が 得 ら れ や す い. 実 験 的 に は,親
粒 子 とLSPと
ル ギ ー が 小 さ く な り,い る.Δmが10GeV以
の 質 量 差Δmが
小 さ く な る と,見
えないエネ
わ ゆ る2γ 過 程 か ら の 雑 音 事 象 と の 分 離 が 困 難 に な
上 あ る と き は 効 率 良 い 選 別 が 可 能 で あ る が,∼5GeVく
ら い 以 下 に な る と む ず か し い.ニ
ュ ー ト ラ リ ー ノ や チ ャ ー ジ ー ノ の 質 量 は,
μ, M2, tanβ の 関 数 で あ る の で,こ
れ ら の パ ラ メ ター 領 域 に 除 外 領 域 が 生 じ
(a)
(b)
(d) 図5.16 (a)∼(c)はSチ
(c)
(e) e-e+→
ャ ネ ル で γ, Zを
ニ ュ ー ト ラ リー ノ,チ 交 換 す るX10X10, X2-X1+,
(f) ャ ー ジ ー ノ,ス e e対
生 成,(d),
レ プ トン 生 成 (e), (f)はtチ
ャ ネ ル 振 幅.
る こ と に な る.以 上 の 考 察 の 意 味 す る と こ ろ は,実 験 で 正 確 に決 め られ るの は,超 粒 子 の 生 成 断 面 積 と崩 壊 分 岐 比 の 上 限 で あ り,そ れ らの 値 を超 粒 子 の 質 量 下 限 に翻 訳 す るに は,一 般 に モ デ ル が 必 要 とな る とい う こ とで あ る. b. 生 成 信 号 と質 量 下 限 生 成 さ れ た チ ャー ジー ノ,ニ ュー トラ リー ノや ス レ プ トン は,X10がLSP の場 合 は
(5.108a) (5.108b) (5.108c) な ど に よ り レ プ ト ン も し く は ジ ェ ッ ト とX10を
放 出 す る.LSPは
出 さ れ な い の で,超
に 満 た な い(運 動 量 が バ ラ ン ス
し な い)レ はNLSPで
粒 子 信 号 は 開 口 角 が180度
プ ト ン 対 と ジ ェ ッ ト対 で あ る.GMSBで あ る の で,さ
測 定器 に検
はLSPがGで
あ り,X10
らに
(5.109) の 崩 壊 を し て フ ォ トン を 放 出 す る.し
た が っ て,フ
を 見 る こ と に よ り,GMSBとmSUGRAと NLSPで
も,崩
の 区 別 が つ け ら れ る.X10が
壊 寿 命 が 大 き い とLSPと
非 常 に 特 徴 的 な 信 号 を だ す の で,こ あ る.CERNのe-e+衝
ォ トン が 付 随 す る か ど うか
同 じ振 る 舞 い を す る.い
ず れ にせ よ
れ らの超 粒 子 が 生 成 さ れ れ ば検 出 は容 易 で
突 型 加 速 器LEPII
で は,超
粒 子 は発
見 さ れ な か っ た. ニ ュ ー ト ラ リー ノ や チ ャ ー ジ ー ノ は ハ ド ロ ン コ ラ イ ダ ー で も,W,
Z交
換
も し く は ス ク ォ ー ク や グ ル ー イ ー ノ の 崩 壊 に よ り 生 成 可 能 で あ る.特
に
X1+X20生 よ り3個 る.し LEPを
成 を 通 す チ ャ ネ ル は(後
の 孤 立 レ プ ト ン を 放 出 す る の で,見
か し,一
般 にQCDバ
つ け や す い チ ャネ ル と され て い
ッ ク グ ラ ウ ン ドが お お き い の で,今
超 え る 上 限 値 を だ し た 例 は 限 ら れ て い る.た
す れ ば(GMSB),γ で,エ
述 §5.7.2),X1+→X10lν, X20→X10llに
γ+見
までの ところ
だ し,X10→
γGを
仮 定
え な い エ ネ ル ギー とい う特 徴 的 な信 号 が 得 ら れ るの
ネ ル ギ ー の 高 い 利 点 を 使 い,大
種 々 の デ ー タ を ま と め る と,今
き な 質 量 下 限 値 を得 て い る.
まで の と こ ろ以 下 の よ う な値 が 得 ら れ て い
る10,30∼32).無条 件 の 質 量 下 限 値 を 得 る の は 困 難 で,典
型 的 な 条 件 を併 記 し て あ
る.
(5.110a)
(5.110b) (5.110c) (5.110d) (5.110e)
図5.17 チ ャー ジ ー ノ,ニ ュ ー トラ リー ノ生 成 か ら得 ら れ た μ-M2平 面 で の 除外 領 域31) M2はSU(2)ゲ ー ジー ノ質 量,μ は 超 対 称 ヒ ッ グ ス ポ テ ン シ ャル の 混 合 パ ラ メ ター,灰 色 部 分 が LEP1(Z崩
壊)で 得 ら れ,LEP2の
共 通 質 量 で,左 側 がm0=1TeV,右 グ ル ー イ ー ノ質 量 を 目盛 っ た.
実 験 で 除 外 領 域 が 黒 色 部 分 へ と拡 張 さ れ た.m0は 側 がm0条
件 を は ず した 図.テ
ス レプ トン の
ヴ ァ トロ ン と の 比 較 の た め 右 側 に
モ デ ル に 依 存 す る質 量 値 で 表 す 代 わ りに,ニ の 質 量 はtanβ
とm0を
与 え れ ば,μ
とM2で
ュ ー トラ リー ノ と チ ャ ー ジ ー ノ 書 け る の で,μ
とM2の
除外領域
と し て 表 す こ と も 多 い(図5.17)31,33). な お,質 GeVで
量 ス ペ ク トル はtanβ
あ る こ と,GUTス
に も 依 存 す る.ト
ケ ー ル で も トッ プ の 湯 川 結 合 が 極 端 に 大 き く な ら な
い と の 条 件 を 要 請 す る とtanβ〓1.2,同 な ら な い と要 請 す る とtanβ〓60が 範 囲 に 設 定 す る こ とが 多 い.典
5.7.2
じ くボ トム の 湯 川 結 合 が 極 端 に大 き く 言 え る.し
た が っ てtanβ
型 的 な 値 はtanβ=mt/mb≒35で
の 値 は通 常 この あ る.
ス ク ォ ー ク とグ ル ー イ ー ノ
強 い 相 互 作 用 を す る の で,エ い れ ば,次
ッ プ ク ォ ー ク の 質 量 が175
ネ ル ギ ー が 十 分 高 く て 生 成 の し き い 値 を超 え て
の よ う な 反 応 に よ りハ ドロ ン コ ラ イ ダ ー で 大 量 に 生 成 可 能 で あ る.
(5.111) qの 質 量 がgの
質 量 よ り大 きけ れ ば(通 常 のmSUGRA)
(5.112a) (5.112b) (5.112c)
(5.112d) (5.112e) gの 質 量 がqの
質 量 よ り大 きけ れ ば
(5.113a) (5.113b) の よ う に 崩 壊 す る の で,特 立 レ プ ト ン+見 現 在,テ
徴 的 な 検 出 信 号 は,"n(≧1)個
え な い エ ネ ル ギ ー"と
な る.
バ トロ ン で は 発 見 さ れ て お ら ず,ス
の 質 量 除 外 領 域 は 図5.18の
の ジ ェ ッ トま た は 孤
ク ォ ー クqと
よ う に な っ て い る34).
グ ル ー イ ー ノg
図5.18 ス クォ ー ク(q)と グル ー イー ノ(g)質 量 除外 領 域34) テバ トロ ンで の ジ ェ ッ ト+見 え な い エ ネ ル ギ ー 信 号 に よ るq, g探 し,X10をLSPと の 領 域 は 最 小SUGRAモ mq<mgは
最 小SUGRAで
mq=50∼150GeV,
は 実 現 困 難 な 領 域.こ
mg〓250GeVの
穴 は,こ
出 効 率 が 下 が る こ と に よ り生 じる.他
お
こ で はMSSMとM(l)=350GeV/c2を
こ で はmqが
の実 験UAI,
5.8
第4章
仮 定 .mq>mg
デ ル使 用. 小 さ く,見
MARK Ⅱ,
わ
り
LEPIに
仮定 . え ない 運 動 量 が 小 さ い た め 検 よる 除 外 領 域 も示 す.
に
お よ び こ の 章 で は,標 準 理 論 を越 え る可 能 性 をい ろ い ろ探 っ た.標 準
理 論 が 出 現 して30年
あ ま り,こ の期 間 は ほ とん どす べ て の 実 験 が 標 準 理 論 の
検 証 に 費 や され 標 準 理 論 は それ に ほ ぼ 完璧 に答 え て きた.標 準 理 論 の検 証 で 欠 け て い る と こ ろ は,ヒ
ッ グス の 存 在 とCPの
は,e+e-に
ァ ク ト リー(も
よ るBフ
破 れ の 解 明 で あ る.CPに
し くは テ バ トロ ン,LHCで
関 して
のB実
験)
に待 た ざ る を え な い.し か し,こ れ らの検 証 結 果 が 標 準 理 論 を追 認 す るだ け に 終 わ るか,そ
れ と も越 え るか は や っ て み な い とわ から な い.そ の点 で,ヒ
ッグ
ス粒 子 の 存 否 お よ び そ の性 質 の 解 明 は標 準 理 論 の 限 界 を知 る上 で最 も重 要 な検 証 事 項 で あ る. 標 準 理 論 を越 え る理 論 の 第一 の候 補 は大 統 一 理 論 で あ る.大 統 一 が 正 しけ れ ば どの よ う な兆 候 が あ るか を この 章 で は探 っ た.陽
子 崩壊,天
体 現 象 な ど大 統
一 理 論 の 直 接 検 証 は ,非 加 速 器 素 粒 子 実 験 に頼 る こ とが 多い が,大 統 一 現 象 に
対 して 開 い て い る実 験 工 場 の 窓 は非 常 に小 さい.そ
れ で も,標 準 理 論 を越 え る
最 初 の 実 験 デ ー タが,大 気 ニ ュー トリ ノな ど天体 現 象 か ら得 られ た こ とは 注 目 に値 す る. 標 準 理 論 の 限 界 を探 り将 来 へ の 手 が か り を得 る上 で,最 性 が 大 きい の は,第3章 れ る.高
も述べ た よ うに,ヒ
も直 接 的 で か つ 可 能
ッ グ ス粒 子 の 追 求 で あ る と考 え ら
エ ネ ル ギ ー の 電 子 陽 電 子 コ ラ イ ダー やLHCで
し,そ の性 質 を明 らか に す る こ とは重 要 で あ る.ヒ
ヒ ッ グ ス 粒 子 を発 見
ッグ ス が 比 較 的 軽 い と こ ろ
に あ り,素 粒 子 で あ る こ とが わか れ ば,超 対 称 性 の 存 在 は 必 然 的 で あ ろ う.こ の と き は,ヒ
ッ グ ス の 質 量 の 値 に 対 す る 論 理 的 自 然 さ の 議 論 か ら,
∼O(1TeV)付
近 に 超 粒 子 が 見 つ か る可 能 性 が 高 い.超 対 称 性 の 可 否 そ の もの
は,軽
い 中性 ヒ ッ グ ス の 存 否 を チ ェ ッ クす る こ とに よ り比 較 的 早 期 に検 証 が 可
能 か も しれ な い.も
し,超 対 称 性 の 存在 が 否 定 的 で あ れ ば,複 合 モ デ ル を採 用
せ ざ る を え な い.し か し,超 対 称 性 自身 は,非 常 に魅 力 的 な考 え方 で あ り,ま た い ま の と こ ろ,重 力 統 一 の ため の 唯 一 の 手 段 で あ る こ と を考 え る と十 分 生 き 残 る可 能 性 は あ る.素 粒 子 の 原 形 態 は 点 で な く1次 元 的 に 広 が っ た紐 で あ る と す る超 紐 理 論 な ど,そ の 方 面 の理 論 的 活 動 は か な り活発 で あ る.ヒ くて(実 験 的理 論 的検 出 限 界 は〓1TeV)発 ル(テ
見 で き な い と き も ま た,複 合 モ デ
クニ カ ラー な ど)が 正 しい可 能 性 が 大 い に 増 す.こ
が 強 結 合 に な る の で,テ
ッ グ スが 重
クニ カ ラー 共 鳴群 な どが,や
の と き は,ヒ
は りO(1TeV)付
ッグス 近 で発
見 され る 可 能 性 が 大 い に あ る. 標 準 理 論 の 成 功 が あ ま りに 大 き く,過 去30年
間 で 標 準 理 論 を 越 え る実 験 事
実 は,ニ ュ ー トリ ノ振 動 現 象 以 外 に は い まだ 発 見 さ れ て い な い.こ れ は あ る意 味 で,高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の危 機 で あ る.理 論 的 な 可 能 性 は い ろ い ろ検 討 され た もの の,こ れ 以 上 進 め る手 が か りが 少 な いの で あ る.そ の 意 味 で,再
び実 験
が 新 事 実 を 提 供 し,理 論 の 道 標 に な る べ き と き が き て い る と い え よ う. LEPII,フ
ェ ル ミ研 究 所 の テ ヴ ァ トロ ンの 増 強,B-フ
近 で あ るの で,標
準理 論 を越 え る何 らか の ヒ ン トが得 られ る 可能 性 は あ る.し
か し,本 格 的 な 手 が か りは,TeV級 LHC実
ァ ク トリー の 開 始 も 間
の 加 速 器 に 期 待 す る と こ ろ が 大 き い.
験 開 始 は 予 定 に は の っ て い る もの の,TeV級
の 電 子 リニ ア コ ラ イ
ダ ー,ミ
ュ ー オ ン コ ラ イ ダ ー,
の スー パ ー ハ ドロ ン コ ラ イ ダ ー
の 早 期 建 設 が 望 ま れ る.
参 考 文 献
1) P.Langacker:Phys.Rep.,72C(1981)185 G.G.Ross:Grand
Unified
Theories,Benjamin
R.N.Mohapatra:Unification 2) H.F.Dylla
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Inc.(1984)
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J.G.King:Phys.Rev.,A7(1973)1224
3) S.Adler:Phys.Rev.,177(1969)2426 J.Bell
and
R.Jackiw:Nuovo
4) H.Georgi,H.Quinn
Cimento,51A(1969)47
5) H.Georgi
and and
S.Weinberg:Phys.Rev.Lett.,33(1974)451
S.L.Glashow:Phys.Rev.Lett.,32(1974)438
6) L.F.Li:Phys.Rev.,D9(1974)1723 A.J.Buras
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7) P.Langacker,1986
WEIN'86(Proc.Int.Symp.Weak
and
Electromagnetic
Int.in
Nuclei,Heidelberg.p.879) 8) W.Marciano
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A.Sirlin:Phys.Rev.,D22(1980)2095;Nucl.Phys.,B189(1981)
442 9) C.H.Llewellyn-Smith 10)
PDG(Particle
11)
K.Hirata
et Data
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Group):Phys.Rev.,D45(1992);D54(1996);EPJ
C3(1998)
et al.:Phys.Lett.,B220(1989)308
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et al.:Phys.Rev.D42
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13)
L.S.Durkin
et al.:Phys.Rev.Lett.,81(1998)3319 et
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と し て は,E.Farhi,L.Susskind:Phys.Rep.,74(1981)277
最 近 の 発 展 に つ い て は B.Holdman:Phys.Rev.,D24(1981)1441;Phys.Lett.,B150(1983)301
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Strathedee:Fortschr.Phys.,26(1978)57
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S.Ferrara:Phys.Rep.,32(1977)249
H.P.Niles:Phys.Rep.,110(1984)1 H.Haber "Perspectives
and
G.Kane:Phys.Rep.,117(1984)76 on Supersymmetry"in
Advanced
Physics,Vol.18,ed.G.L.Kane,World 20)
U.Amaldi
21)
L.E.Ebanez
22)
N.Sakai
and
J.Ellis T.Inami
and
Directions
in High
Energy
も参 照
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T.Yanagida:Nucl.Phys.,B197(1982)533
J.Ellis,D.Nanopoulos 23)
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Series
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S.Rudaz:Nucl.Phys.,B202(1982)43
D.V.Nanopoulos:Phys.Lett.,B110(1982)203 and
C.S.Lin:Nucl.Phys.,B207(1982)533
M.Suzuki:Phys.Lett.,B115(1982)40 J.Donoghue R.Barbieri
and and
H.P.Nilles
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D.Wyler:Phys.Lett.,B128(1983)55
G.Gatto:Phys.Lett.,B110(1982)211
B.A.Campbell:Phys.Rev.,D28(1983)209 24)
L.E.Ibanez:Phys.Lett.,B118(1982)73:Nucl.Phys.,B218(1983)514 K.Inoue,A.Kakuto,H.Komatsu
and
S.Takeshita:Prog.Theor.Phys.,68(1982)
927,71(1984)413 A.H.Chamseddinne,R.Arnowitt
and
J.Ellis,D.V.Narroponlos 25)
and
J.A.Swieca
Summer
and
R.Arnowitt
H.P.Nilles:Phys.Lett.,B125(1983)457
P.Nath:SSCL-Preprint-503,CTP-TAMU-52/93,Lectures School,Campos
G.Kane,C.Kolda,L.Roszkowski 26)
P.Nath:Phys.Rev.Lett.,49(1983)970
do and
Jordao,Brazil,1993 J.Wells:Phys.Rev.,D49(1994)6173
M.Dine,A.E.Nelson:Phys.Rev.,D48(1993)1277 H.Dine,A.E.Nelson H.Dine,A.E.Nelson,Y.Nir
and
Y.Shirman:Phys.Rev.,D51(1995)1362 and
Y.Shirman:Phys.Rev.,D53(1996)2658
27)
S.Dimopoulos,S.Thomas,J.D.Walls:Nucl.Phys.,B488(1997)39
28)
S.Dimopoulos,M.Dine,S.Raby
and S.Thomas:Phys.Rev.Lett.,76(1996)3494
at Ⅶ
29)
S.Deser
and
E.Cremmer 30)
B.Zumino:Phys.Rev.Lett.,38(1977)1433 et al.:Phys.Lett.,B79(1978)231
OPAL;K.Acker
Staff
ALEPH:R.Barate L3;Adrian 31)
et et
et
OPAL;K.Ackerson
et
ALEPH:R.Barate 32)
D0;B.Abbott J.Ellis
34)
CDF;F.Abe
et et
et
al.:EPJ
C4(1998)47
al.:Phys.Rev.Lett.,236(1993)1
DELPHI;P.Abreu
33)
et
al.:Phys.Lett.,B407(1997)377
al.:EPJ al.:EPJ al.:EPJ
C1(1998)1 C2(1998)213 C2(1998)417
al:Phys.Rev.Lett.,80(1998)442
al.:Phys.Lett.,B388(1996)97,B394(1997)354 et
al.:Phys.Rev.Lett.,69(1992)3439,ibid.76(1996)2006,Phys.Rev.,
D56(1997)R1357,DO;S.Abachi
et
al:Phys.Rev.Lett.,75(1995)618
6 ア
ア ク シ オ ン とは,1977年
ク シ オ ン
に い わ ゆ る強 いCP問
題(strong
CP
problem)の
解 決 策 と し て提 案 さ れ た粒 子 で あ る1).非 常 に 軽 くて(数 十eV∼10-6eV),物 質 とは 非 常 に 弱 く しか 相 互 作 用 せ ず,数
々 の 探 索 実 験 に もか か わ らず 未 だ に発
見 さ れ て い な い 粒 子 で あ る.長 年 の探 索努 力 の 結 果,ア
ク シ オ ン の パ ラ メ ター
(質 量 と結 合 定 数)の 残 さ れ て い る許 容 範 囲 は か な り絞 られ て き た.ア ン の 存在 理 由 の 背 景 に は 軸 性 ベ ク トル異 常,θ 真 空,イ 論 的諸 問 題 が複 雑 に絡 ん で い る.ま た,ア
クシオ
ン ス タ ン トン な どの 理
ク シオ ン 自身 が,ニ
ュ ー ト リ ノ,超
対 称 粒 子 と並 ん で宇 宙 暗 黒 物 質 の 最 有 力候 補 の 一 員 で あ り,宇 宙論 の 中 で も重 要 な地 位 を 占め る な ど,ア ク シ オ ン 問題 は,多 少 の スペ ー ス を さ く価 値 の あ る トピ ッ ク で あ る. θ真 空,イ
ン ス タ ン トン な どは 非 摂 動 論 的 内容 を含 み,こ
れ ま で に解 説 して
きた摂 動 論 的 取 扱 い とは 異 質 の 概 念 で あ る.し たが っ て,以 下 で は 多少 回 り道 に は な るが,ま め て,ト
ず,ソ
リ トン と は何 か とい う物 理 的 概 念 を把 握 す る こ とか ら始
ポ ロ ジ ー 保 存 量(巻 つ き数)の 導 入,4次
元 ユ ー ク リッ ド空 間 で の ソ
リ トン と し て の イ ン ス タ ン トン お よ び そ の 物 理 的 意 味 と θ真 空 との 関 わ り を 述 べ る.次 に,θ 真 空 とカ イ ラ ル 異 常 項 との 関 連 を述 べ る.こ れ ら は 理 論 的 テ ー マ と して は お も しろ い が,ア
ク シ オ ンの 現 象 論 とは 直 接 関 わ りは な い の
で,現 象 に の み 興 味 あ る 人 は,§6.1,§6.2を も ら って 結 構 で あ る.
飛 ば して 直 接 §6.3か ら始 め て
6.1 ソ
6.1.1 1+1次
リ
ト
ン2,3)
元 の ソ リ トン
ソ リ トン(solitary
wave)と
は 簡 単 に い え ば,空
に 安 定 な 波 の こ と を い い,通 常,非
間 的 に 局 在 しか つ 時 間 的
線 形 波 動 方 程 式 の 非 摂 動 解 と して 現 れ る.
通 常 の 線 形 波 動 方 程 式 に 従 う波 が 分 散 を も ち(周 波 数 ω,波 数k,定 して,ω2=k2+m2を
満 たす),時 間 と と もに い ず れ は形 を崩 す の に 対 して 本 質
的 に安 定 で あ る とい う特 徴 を もつ.ソ 手 は じめ に まず1+1次
数mと
リ トンの 物 理 的 描 像 を理 解 す るた め に,
元 の 古 典 的 な ス カ ラー 場 の 方程 式 を考 察 す る.
a. ソ リ トンの 存 在 条 件 次 の よ う な ラ グ ラ ン ジ ア ン密 度 を考 え る.
(6.1) こ こ で,xμ=(t;x)で,V(φ)は
非 線 形 な ポ テ ン シ ャ ル を 表 す.V(φ)は,極
小 値 を少 な く も一 つ 以 上 も ち,か つ 最 小 値 はV=0に
な る よ うに適 当 に 定 数 を
調 整 して お く もの とす る.運 動 方 程 式 に 必 ず し も静 的 解 が あ る とは 限 らず,ま た静 的 で な い解 もあ り う るが,簡 単 の た め こ こ で は静 的 な 解 の み を考 え る こ と に し よ う.静 的 解 と し て φ=f(x)が ン ツ変 換 し て得 られ る.す
見 つ か れ ば,時
間 に 依 存 す る解 は ロー レ
な わ ち,
(6.2) が 望 む 解 と な る.γ=(1-υ2)-1/2は
ロ ー レ ン ツ 因 子 で あ る.静
的 な解 の 満 たす
運 動 方 程 式 は ハ ミル トン の 原 理 よ り,
(6.3) エ ネ ル ギー 密 度Hは
(6.4) 全 エ ネ ル ギ ー は,
(6.5)
で 与 え ら れ る.全
エ ネ ル ギ ー 第2式
ソ リ ト ン 解 が 存 在 す れ ば,そ
の 正 当 化 は 後 述 の(6.7)で
行 う.
の 解 は 有 限 な エ ネ ル ギ ー を も た ね ば な ら ず,し
た が っ て エ ネ ル ギ ー 密 度 は 空 間 的 に 局 在 し て い な け れ ば な ら な い.(6.4), (6.5)を
見 れ ば,x→
± ∞ で φ が,∂ φ/∂x=V(φ)=0を
な っ て い な け れ ば な ら な い こ と が わ か る.次 V(φ)の →x
形 を 考 察 し て み よ う.こ
, V→-Vの
に,ソ
の た め に,運
置 き換 え を 行 え ば,質
リ トン が 存 在 し う る た め の
動 方 程 式(6.3)が,x→t,
量m=1と
転 ポ テ ン シ ャ ル は 図6.1の
± ∞ で φ=φ0に
φ
お い た ニ ュー トン 力 学 の
ポ テ ン シ ャ ル 問 題 に 帰 着 す る こ と に 注 目 す る.Vが け も つ と き は,反
与 え る よ う な φに
φ=φ0で
最 小 値 を一 つ だ
形 を し て い る.境
な る こ と を 要 求 す る が,x=-∞
界 条 件 は,x→
か ら ス タ ー トす る と し て,
φ が 少 し で も φ0の 位 置 か ら 外 れ れ ば φ は 逆 転 ポ テ ン シ ャ ル の 坂 を 転 げ 落 ち て し ま う の で,x→+∞
で φ=∞
ま た は-∞
に な る し か 行 き 場 が な い.し
が っ て,φ=φ0に
留 ま っ て 静 止 し て い る 以 外 の 解 は 存 在 し な い.
一 方,V=0を
与 え る 最 小 値 が2個
以 上 存 在 す れ ば ど う な る か.例
が 自 発 的 に 対 称 が 破 れ る ヒ ッ グ ス ポ テ ン シ ャ ル と 同 じW字
た
え ば,V
形 を して い た と し
よ う(図6.2(a)).
(6.6) こ の 場 合 の 反 転 ポ テ ン シ ャ ル は,図6.2(b)の →-∞
で φ=-vで
あ っ た と し,xの
形 を し て い る.こ
増 大 に 伴 い φ を 右 方 に 動 か し た と き,
(a) 図6.1
最 小 値 が1個
の と き,x
あ る と きの ポ テ ン シ ャ ル(a)と
(b) 逆 転 ポ テ ン シ ャ ル(b)
(a) 図6.2
x→+∞ の 場 合,φ
(b)
自発 的 に対 称 性 が 破 れ た ポ テ ン シ ャ ル(a)と
反 転 ポ テ ン シ ャ ル(b)
で φ=υ に な る解 が 存 在 す る.逆 の 解(φ=υ →-υ)も は漸 近 的 に φ=υ に 到 達 す る の で あ っ て,決
こ とは な い し,φ=υ
存 在 す る.こ
し て φ=-υ
に も どる
を超 え て い くこ と もな い.以 上 の考 察 か ら,ソ
が 存 在 す る た め に は,少
リ トン解
な く も2個 以 上 の縮 退 し た真 空 の 存在 が 必 要 で あ る こ
とが わ か る.こ の こ とは,自 発 的対 称 性 の破 れ と ソ リ トン の 存 在 は 密 接 に結 び つ い て い る こ と を示 唆 す る. 上 記 の よ う な境 界 条 件 が 設 定 され た と きの(6.3)の
一 般 解 は 直 ち に求 め ら
れ る.∂ φ/∂xを両 辺 に掛 け て積 分 す れ ば,
(6.7) x→-∞
で ∂φ/∂x=V(φ)=0で
あ る の で,積
分 定 数 は と も に0で
あ る.こ
れ
か ら,
(6.8) こ の 式 を 使 え ば,ポ
テ ン シ ャ ルVが(6.6)で
ン 解 が 存 在 す る こ と を示 せ る(演
演 習6.1
V(φ)が(6.6)で
与 え ら れ た と き,2個
の ソ リ ト
習6.1).
与 え ら れ る と き,υ2=m2/λ
と し て,ソ
リ トン解 は
(6.9)
で与 え られ る こ とを示せ. b. サ イ ン-ゴ ー ドン方 程 式 縮 退 した 真 空 が 無 限 に あ る例 と して,次
の サ イ ン-ゴ ー ドン 方程 式 を考 察 す
る.
(6.10) この 方 程 式 を与 え る ポテ ン シ ャ ル は,
(6.11) で,図6.3(a),
(b)の
よ う な 形 を し て い て,
(6.12) で 与 え られ る と こ ろ に無 限個 の 縮 退 した真 空 状 態 を もつ.解
は(6.8)を
使え
(b)
(c)
(a)
(d)
図6.3
(a) サ イ ン-ゴ ー ドン方 程 式V(φ)をx-φ =+1の ソ リ トン解
面 の 立 体 鳥 瞰 図 と して 表 す.太
(b) φ-V(φ)面 で の切 り口 (c) x-φ 面 へ の 投 影 図.φ=0か
らbφ=±2π
(d) ソ リ トンの もつ エ ネ ル ギー 密 度 分 布
へ い くソ リ トン解
線 は 図(c)のQ
ば 直 ち に 求 め ら れ て,
(6.13) 定 数a, bの 物 理 的 意 味 を見 るた め に,V(φ)を
φ=0の
まわ りに展 開 す れ ば
(6.14) と な る の で,m2=ab,
λ=ab3と
数 λ を も つ 場 と 解 釈 で き る.い か ら,x=+∞
お け ば,こ ま,x→-∞
で 他 の ゼ ロ 点(例
れ は 質 量m,自
己相 互 作 用 結 合 定
で 一 つ の ゼ ロ 点(例
え ばn=±1)に
向 か い,途
え ばn=0) 中,x=x0で
と な る よ う な 境 界 条 件 を 設 定 し た と き の 解 は,
(6.15) で 与 え ら れ る.こ
れ を 図6.3
(c)に
描 い た.
ソ リ ト ン の も つ エ ネ ル ギ ー 密 度 分 布(図6.3(d))を リ ト ン の 存 在 位 置,1/mが
と φ-1は い ろ い ろ な 意 味 で,粒 エ ネ ル ギ ー は,(6.5)よ
眺 め れ ば,x=x0は
ソ
ソ リ ト ン の 空 間 的 大 き さ を示 す こ と が わ か る.φ+1 子 と反 粒 子 の 性 質 を もつ.こ
の ソ リ トンの もつ
り容 易 に 計 算 で き て
(6.16) φの 形,φ の もつ エ ネ ル ギ ー は,結 合 定 数 λが0に 示 す.す
な る極 限 で発 散 す る こ と を
な わ ち,結 合 定 数 が どん な に小 さ くと も非 線 形 解 と して の ソ リ トンが
存 在 す る わ け で あ り,摂 動 的 に得 られ る解 で は な い.ソ
リ トン が 安 定 な の は,
二 つ の 異 な る真 空 に ま た が って い るか ら で あ る(図6.3(a)を ギー は,有
参 照).エ
ネル
限 な領 域 に集 中 して い るが,一 つ の解 を連 続 的 に変 形 して 他 の解 に
変 換 す るに は無 限 の エ ネ ル ギ ー を必 要 とす るの で あ る. こ の こ と を直 観 的 に理 解 す る に は 次 の よ う な単 純 な モ デ ル を考 えれ ば よ い. 非 常 に(無 限 に)長 い す だ れ を高 い とこ ろか ら吊 し,上 端 と下 端 を 固 定 す る. n=±1の
真 空 は,す
だ れ を右 巻 き(n=0→1)も
に ひ とひ ね り した状 態 に 相 当 し,キ ン ク(kink)と
し くは 左 巻 き(n=0→-1) 呼 ば れ る(図6.4).す
だれ
を ゆ さ ぶ れ ば,こ あ り,ひ
の ひ ね り は 蛇 行 す る 波 と な る が,明
ね っ て い な い 状 態(n=0の
トン が 安 定 な の は,ト
図6.4
ポ ロ ジ ー(空
真 空)に
崩 壊 す る こ と は で き な い.ソ
間 的 構 造)の
リ
もつ 性 質 に よ る の で あ る.
キ ン ク:長 い す だ れ を一 巻 き した状 態 は 別 の 真 空 をつ く る.
上 の 議 論 は 整 数 の 差 で 表 さ れ る 保 存 量Q(ト ge)の
らか に この 状 態 は安 定 で
存 在 を 示 唆 す る.次
ポ ロ ジ ー 荷:topological
式 で 定 義 さ れ る保 存 カ レ ン トJμ(μ=0,1)を
char 考 え よ
う. εμνは 反 対 称 テ ン ソ ル で ε01=1
(6.17)
(6.18) こ の カ レ ン ト は,ラ
グ ラ ン ジ ア ン の 対 称 性 か ら 得 ら れ る も の で は な く,ネ
タ ー カ レ ン トで は な い.そ
の 保 存 性 は トポ ロ ジ ー す な わ ち 境 界 条 件 の 相 違 か ら
発 生 し た も の で あ る こ と を 認 識 し て お く必 要 が あ る.(6.15)の =±1の
ー
ソ リ ト ン と 反 ソ リ トン に 対 応 す る こ とが わ か る .ソ
二 つ の 解 はQ リ トン の 安 定 性 は
トポ ロ ジ ー 荷 の 保 存 と い い か え る こ と が で き る.
6.1.2
1+2次
元 の ソ リ トン:う
前 節 の 議 論 を1+2次
ず糸
元 空 間 に お け る 複 素 ス カ ラ ー 場 に 拡 張 し て み よ う.ラ
グ ランジアンは
(6.19)
で あ り,V(φ)と る.V(φ)の
し て は,(6.6)を2次
形 か ら,境
元 に 拡 張 し た もの を採 用 す る もの とす
界 条 件 と して
(6.20) を満 たす 静 的 解 を探 して み よ う.φ が 微分 方 程 式 を満 た す ため に は連 続 で あ る とい う条 件 が 必 要 で あ るか ら,
(6.21a) す な わ ち,
(6.21b) (6.21c) で あ る.r→
∞ で の ハ ミル トニ ア ン は
(6.22a) で あ る の で,全
エ ネルギー
(6.22b) は 対 数 発 散 す る.実 際,超
流 動 ヘ リウ ム 液 体 の うず 糸 は こ の よ うな数 学 の 式 で
表 され る.う ず 糸 の もつ 単 位 長 さ あ た りの エ ネ ル ギー 密 度 は 容 器 の 大 き さL に対 してln Lの 依 存 性 を もつ.ゲ
ー ジ理 論 で はLは
の で,前 節 で得 られ た よ うな ソ リ トン解 は2次 は で き な い こ とが わか る.そ こで,ゲ
常 に 無 限 大 に もっ て い く
元 空 間 に その ま ま拡 張 す る こ と
ー ジ場 を付 加 し,微 分 を共 変 微 分 に変 え
て み よ う.ラ グ ラ ン ジ ア ンは,
(6.23a) (6.23b) と変 わ る.こ
れ は よ く知 ち れ て い る2次
元 空 間 で の 超 伝 導 状 態 を表 す ギ ン ツ ブ
ル グ-ラ ン ダ ウ の 自 由 エ ネ ル ギ ー の 式 と な っ て い る.い ゲ ー ジ 場 をr→
ま,α(θ)=nθ
と し,
∞ で,
(6.24) の 形 に 選 ぼ う.こ れ は全 微 分 の 形 を して お りゲ ー ジ 変 換 で 消 せ る量 で あ る.逆 に い う と真 空 か らゲ ー ジ変 換 で得 られ るゲ ー ジ場 で あ る.こ の よ うな場 を"純
粋 ゲ ー ジ 場"と
い う.純
粋 ゲ ー ジ 場 はFμ ν=0を
満 た す.上
記 の 純 粋 ゲー ジ場
に対 し て
(6.25) が 成 立 す る.静
的 な 解 で は,H=-Lで
→ ∞ で,H→0で
あ り,全
あ る の で,(6.23)を
エ ネ ルギ ー は 有 限 と な り,ソ
参 照 す れ ば,r リ トン 解 が 存 在 し う
る こ とが わ か る. こ の 問 題 をz方
向 に 一 様 性 の あ る3次
す る と磁 束 が 存 在 し う る.な
元 問 題 と し て 見 直 し て み よ う.そ
ぜ な ら,r=0を
囲 む 十 分 大 き な 円(r=R)の
う 中
の全 磁 束 を計 算 す る と
(6.26) す な わ ち,r〓0の
近傍 で
(6.27) こ の 場 合,Aμ は,r→
はr=0を
含 む 近 傍 で 純 粋 ゲ ー ジ 場 で は あ り得 な い.式(6.24)
∞ で 成 り 立 つ 式 で あ り,こ
続 の 条 件 を 満 た さ な い.ま れ ば な ら な い.し r〓0でO(r2),r→
の ま ま で はr=0が
た(6.25)か
た が っ て,実 ∞ で1に
ら,r→0で
量 子 化 さ れ る こ と が わ か る.3次
真 空 で な い か ら,ソ
か かって
リ トンが 有 限 な エ
の ソ リ ト ン の 磁 束 は,(6.26)に
よ り
元 空 間 で 考 え て 磁 束 の う ず 巻 き が 直 線 上 にz
位 長 さ あ た り有 限 な エ ネ ル ギ ー を も っ て い て,場
方 向 に 一 様 で あ る とす れ ば,上
記 の 解 は2次
カ ラ ー 場 の 存 在 を 別 に す れ ば,こ
称 の 破 れ た ス カ ラ ー 場 を 表 し,φ の 波 動 関 数 に 対 応 す る.第2種
はz
元 問 題 に そ の ま ま 適 用 で き る.ス
れ はⅡ-§2.2で
効 果 に お け る ソ レ ノ イ ド磁 場 と 同 じ で あ る.ポ
フ(Abrikosov)の
ま た成 立 し な け
な る よ う な 連 続 有 限 の 関 数 がAθ(r)に
ネ ル ギ ー 密 度 を も つ 領 域 が 存 在 す る.こ
果 が 完 全 に は 働 か ず,磁
φ →0も
際 に 実 現 さ れ る 物 理 条 件 に 合 わ せ る た め に は,
い る と 考 え な け れ ば な ら な い.φ=0は
方 向 に 伸 び て い て も,単
特 異 点 とな る の で 連
議 論 し た ア ハ ロ ノ フ-ボ ー ム テ ン シ ャ ルV(φ)は
自発 的 に 対
は 物 理 的 に は 超 伝 導 に お け る凝 縮 ク ー パ ー 対
の 超 伝 導 体 で は,磁
束 が 強 い と きマ イ ス ナ ー 効
束 が 超 伝 導 体 を 貫 く現 象 が 知 ら れ て い て,ア
磁 束 線 と 呼 ば れ る.磁
ブ リコ ソ
束 が 実 際 に 量 子 化 され て い る こ と も
実 証 され て い る. 上 記 の ラ グ ラ ン ジア ンか ら導 か れ る運 動 方 程 式 の 正 確 な解 析 解 は発 見 さ れ て い な い が,
(6.28) と い う 条 件 を 満 た し,か
つX(r)≒υ
の と き の 近 似 解 は 知 ら れ て い る4).
(6.29a) (6.29b) (6.29c) K0, K1は
変 形 ベ ッ セ ル 関 数 で あ る.図6.5にBと
導 体 に 侵 入 す る 深 さ δ は,δ
φ の 形 を 描 く.磁
∼1/eυ で 与 え ら れ る.
(a) 図6.5
6.1.3
(b)
2次 元 超 伝 導 体 内 の 磁 束 ソ リ トンBと ス カ ラー 場 φ(ク ー パ ー 対 凝 縮 体)の 空 間 的 分 布.侵 入 の 深 さ δ∼1/evで あ る.
巻 つ き 数(winding
number)
上 で 議 論 し た 真 空 は,φ=υexp(-iα)の 一 致 させ られ る よ うに 見 え る .そ か.こ
束が超伝
の 理 由 は,キ
形 を し て お り,連
続 変換 で互 い に
れ な らば ソ リ トン は な ぜ 安 定 な の で あ ろ う
ン ク が 安 定 で あ っ た 理 由 と ま っ た く同 じ で あ り,真
空配位
の 違 い が や は り トポ ロ ジ ー に 基 づ くの で あ る. a. U(1) 上 の 例 で は,真
空 に お け る 場 φ の 条 件(6.20)は,U(1)群
の表 現 となって
お り,真 空 を表 す 時 空 か ら群 の 表 現 空 間 へ の 射 影 を表 す 式 で あ る.真 空 条件 を 課 す 時 空 の 領 域 は,2次
元 空 間 の 球(半 径r→
∞)の 境 界,す
な わ ち 円(S1)
で あ る.時 空 変 数 と して角 変 数 θ を使 え ば,φ の 連 続 条 件 か ら,θ=0と 2π が 同 一 点 で な け れ ば な ら な い.表 現 群 の 空 間 も ま た 円(S1)を
θ=
構 成す るの
で,こ の 射 影 を
の よ う に 書 く.群
の 変 数 α(θ)は 例 え ば α(θ)=nθ+β(θ)と
の 連 続 関 数 で あ り β(2π)=β(0)を 量 で あ る が,nの き な い.こ
満 た す の で,適
表 さ れ る .β
は θ
当な連 続変換 で消 去 で き る
異 な る α同 士 は θ の 連 続 変 化 で 互 い に一 致 させ る こ とは で
の 様 子 は 模 式 的 に 図6.6の
よ う に 表 す こ と が で き る.
巻 つ き数n 図6.6
S1(時
空)→S1(U(1))射
す な わ ち,群 類 され,そ
影 の ホ モ ト ピー ク ラ ス分 け.巻
の 射 影 がnに
つ き数nに
よ っ て 別 々 の グ ル ー プ(homotopy
よ り指 定 さ れ る.
class)に 分
れ ぞ れ の グ ル ー プ の 中 で は θ の 連 続 関 数 とな っ て い るが,nが
異
な る グル ー プ へ は θ の連 続 変 換 で は 移 れ な い.こ の と き,真 空 条 件 を満 た し か つ 連 続 変 換 で は 互 い に一 致 させ る こ との で き な い整 数nで
区 別 さ れ る複 数
の φ,す な わ ち 縮 退 真 空 が 存 在 す る.こ れ を数 学 用 語 で
(6.30) と書 く(付 録A参 い い,群
照).nは
巻 つ き数,数
学 用 語 で は ポ ン ト リャー ギ ン指 数 と
の表 現 要 素 で一 般 的 に 書 く と
(6.31) と 表 さ れ る.UdU-1は の 体 積 で あ る.こ
群 の 変 数 を 取 り 出 す 操 作 で あ り,VUは こ で,時
空 で のS1を
た 直 線 と し 無 限 に 長 く伸 ば し て も,両 な せ ば,す
な わ ち,α
をxの
円 で な く,円 端(x=-∞
変 数 と し て,Uをxで
を1カ
群 の表 現 空間
所 で切 って 伸 ば し
とx=+∞)を
同 一 点 と見
書 き 直 し,U(-∞)=
U(+∞)を
要 求 す れ ば,ト
に あ るU∂xU-1は,群
ポ ロ ジ ー と し て は 同 等 で あ る.(6.31)の
変 数 α のxへ
最 後 の式
の 変 換 の ジ ャ コ ビ ア ン に ほ か な ら な い.
こ の よ うな例 と して
(6.32) を あ げ て お く.λ は 任 意 の 定 数 で あ る.こ n=1を
与 え,U=υ(x)mを
のU=υx)を(6.31)に
入 れ れ ば,n=mを
入 れ れば
与 え る こ と は 容 易 に 示 せ る.
b. SU(2) 後 の た め に,こ SU(2)変
こ でSU(2)群
換 は,一
の 巻 付 き 数 を 導 入 し て お く.
般 に
(6.33) と 表 さ れ る.a2+b2=1で し,3個
あ る か ら,こ
の 角 度 で 表 す こ と が で き る.ト
S3(SU(2))の
射 影 は や は り,巻
れ は,4次
元 空 間 の 超 球 表 面S3を
ポ ロ ジ ー の 議 論 か ら,S3(時
表
空)→
つ き数
(6.34) に よ る ホ モ ト ピ ー ク ラ ス に 分 け ら れ る こ と が 知 ら れ て い る.nμ に 埋 め 込 ま れ た3次 U(1)の
元 超 球 面S3に
の 角 の か わ り にr=(x1,x2,x3)を
元 全 空 間 と 見 立 て て も よ い.た
遠 点 は 同 一 点 と 見 な さ な け れ ば な ら な い.こ (6.32)を
元 空間
お け る 外 向 き 法 線 ベ ク トル で あ る.
と き と 同 じ議 論 に よ っ て,3個
て,S3を3次
は4次
だ し,こ
使 っ
の ときはすべ て の無 限
の と き のUの
表 式 の 例 と し て,
一 般 化 した
(6.35) を あ げ る こ と が で き る.こ
の と き,U=υmは
巻 つ き数mを
与 え る変 換 で あ
る.
6.1.4
ソ リ ト ン の 存 在 す る時 空
デ リ ッ クの 定 理5)
静 的 ソ リ トン の 存 在 条 件 は,1,2次
い て はす で に 扱 っ た が,D≧2次
元 空間 の場合 につ
元 を含 め て も簡 単 な議論 で次 の 場 合 に 限 られ
る こ とが わ か る. 1次 元:
ス カ ラー 場 の み
(キ ン ク や サ イ ン-ゴ ー ドン 方 程 式)
2次 元:
ス カ ラ ー 場+ゲ ー ジ場
3次 元:
ス カ ラー 場+ゲ ー ジ場
4次 元: 純 粋 ゲー ジ場 の み 証 明
D次
(超 伝 導 体 の磁 束 線) (磁 気 単 極 子) (イ ン ス タ ン トン)
元 空 間 の 静 的 解 に 限 る.ヤ
る ゲ ー ジ(temporal
gauge)で
考 え る.こ
ン-ミ ル ズ ゲ ー ジ 場 はAa0=0と
す
の 場 合 ハ ミル トニ ア ン は ラ グ ラ ン ジ
ア ン の 符 号 を 変 え た も の で あ る.
(6.36a) (6.36b) 第1項
は ス カ ラー 場 の 運 動 エ ネ ル ギー(た だ し空 間 の 共 変 微 分 を含 む),第2
項 は ゲ ー ジ場 の 運 動 エ ネ ル ギー,第3項
は ス カ ラー 場 の ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル
ギ ー で あ り,適 当 に定 数 を選 べ ば 各 項 はす べ て正 値 を とる.す な わ ち
(6.37) φ,Aは
運 動 方 程 式 の 解,す
な わ ち ハ ミ ル ト ン の 原 理 に よ り φ やAの
し て,ラ
グ ラ ン ジ ア ン が 極 値 を と る と こ ろ と す る.こ
Ai(x)→
λAi(λx)と
→xと
変 換 し て 微 分 を す ま せ た 後,エ
変 分 に対
の と き φ(x)→
φ(λx),
ネ ル ギ ー 積 分 の 変 数 を λx
置 き換 え る と
(6.38) を 得 る.エ
ネ ル ギ ー は λ=1で
極 小 の は ず で あ る か ら,Hを
λ で 微 分 し λ=1
とお け ば
(6.39) (6.37)の
条 件 を 入 れ る と,ゲ
ー ジ 場 の な い と き(KA=0)は,D=1の
カ ラ ー 場 が な い と き(Ks=V=0)は,D=4が D=2,3の る.
み,ス
唯 一 の 解 で あ る こ と が わ か る.
と きは ス カ ラー 場 と ゲー ジ場 の 共 存 す る解 が あ りえ る こ と も わ か (証 明 終 わ り)
トポ ロ ジ ー の 議 論 は 非 常 に一 般 的 で あ り,ラ グ ラ ン ジア ン の 構 造 を調 べ て, ソ リ トン存 在 の 必 要 条 件 を満 たす か 否 か の検 定 に 非 常 に 有 用 な道 具 で あ る.
6.1.5
イ ンス タ ン トン
a. SU(2)ゲ
ー ジ 場 に お け る縮 退 真 空
イ ン ス タ ン トン とは 上 の議 論 で示 した4次 元 ユ ー ク リッ ド空 間 で の 純 粋 ゲ ー ジ場 ソ リ トン に付 け られ た名 前 で あ る.し か し,イ ンス タ ン トン の 議 論 を始 め る前 に,SU(2)純
粋 ヤ ン-ミ ル ズ場 が 存 在 す る と きの3次
元 空 間 で の縮 退 真 空
の存 在 を説 明 して お く必 要 が あ る.静 的 な3次 元 空 間 で の 真 空 配位 を考 慮 す る に は,時 間 成 分A0が0で
あ る よ うな ゲ ー ジ(temporal
gauge)を
採用 す るの
が 便 利 で あ る.こ れ を実 現 す るた め の ゲ ー ジ変 換Uは
(6.40) を 解 い て 得 ら れ る が,こ
の 条 件 を 課 し て も,∂0Ω=0で
な い ゲ ー ジ 変 換 の 自 由 度 Ω が ま だ 残 っ て い る.真 ルGμν=0と
な る 配 位 と す れ ば,r→
∞ で,真
あ る よ う な時 間 に よ ら
空 を,r→
∞ で場 の テ ン ソ
空 を ゲ ー ジ 変 換 し て得 られ る
純粋 ゲー ジポテン シャル
(6.41) も又 時 間 に よ らな い.こ
こ で 空 間 の 無 限遠 方 で ゲ ー ジ場 が 消 滅 す る とい う条件
(6.42) を 課 す と,す 空 間 は,ト
べ て の 無 限 遠 点 を 同 一 点 と 見 な す こ と が で き る か ら,こ
ポ ロ ジ ー 的 に はS3と
の 射 影 群 と 見 な し た と き,巻 に 分 類 で き る.数
同 等 とな る.(6.41)をS3(時
つ き数nに
学 用 語 で 書 け ば(付
の3次 元
空)→S3(SU(2))
よ って 区 別 で き る ホ モ トピー ク ラ ス
録A参
照)
(6.43) こ の と き,Ω
はnで
こ れ に 対 応 し て,ゲ
指 定 さ れ る Ωnの 集 合 で あ る.す ー ジ ポ テ ン シ ャ ル も ま たnで
な わ ち,Ω(r)={Ωn(r)}.
指 定 さ れ る.こ
の ときの純
粋 ゲ ー ジ 場Anは,
(6.44a) で 与 え ら れ る.こ
の よ う な 変 換 群 でn=1を
たυ を あ げ る こ とが で き る*1).こ
*1)
与 え る例 と し て,(6.35)に
の と き,Ωn=υnで
も よ く使 わ れ る.
あ る.ゲ
導入 し
ー ジ変 換 に よ っ
てAnをAn+1に
変 え る こ と は 可 能 で あ り,こ
容 易 に 察 しが つ く.実
の ゲ ー ジ 変 換 がυ で あ る こ と は
際 に計 算 して み る と
(6.44b) で あ る の で,υ は真 空 の巻 つ き数nを1だ
け 変 え る 演 算 子 で あ る.す な わ ち
(6.45) 以 上 の 議 論 に よ っ て,SU(2)ヤ
ン-ミ ル ズ ゲ ー ジ群 が 存 在 す る と き は,巻
つ
き 数nに よ っ て 区 別 で き る縮 退 真 空 が3次 元 空 間 に 存 在 す る こ と が わ か っ た. b. 4次 元 空 間 で の ソ リ トン の 存 在 デ リ ッ ク の 定 理 は,物
質 場 の 存 在 し な い 純 粋 ヤ ン-ミ ル ズ 場 に お い て は,4
次 元 ユ ー ク リ ッ ド空 間 に お い て ソ リ ト ン が 存 在 し う る こ と,4次 ド空 間 以 外 に は 静 的 ソ リ ト ン は 存 在 し な い こ と を 示 し て い る.ま ル ズ ゲ ー ジ 群 に お け る ソ リ ト ン の 存 在 条 件 は,SU(2)の と が 証 明 さ れ て い る.つ 部 分 群 と し て 含 むSU(2)群 存 し て い れ ば,3次
ま り,任
ン-ミ
議 論 に集約 され るこ
お,ヤ
ン-ミ ル ズ 場 に 物 質 場 が 共
元 空 間 で も ソ リ ト ン解 は 存 在 し う る.ト
コ フ の モ ノ ポ ー ル 解2,3)は そ の 例 で あ る が,モ
・フ ー フ ト-ポ リヤ
ノ ポー ル に つ い て は 改 め て 次 章
元 ユ ー ク リ ッ ド空 間 に お け る ソ リ ト ン は,
時 間 的 に も局 在 し て い る こ と を 意 味 す る か ら,ト ン ト ン と い う 名 を 与 え ら れ た .ポ
た,ヤ
意 の ヤ ン-ミ ル ズ 場 に お け る ソ リ ト ン 解 は,
の 数 だ け あ る.な
で 詳 細 に 議 論 す る こ と に す る.4次
元 ユ ー ク リッ
・フ ー フ トに よ っ て イ ン ス タ
リヤ コ フ は 疑 似 粒 子(pseudo-particle)と
名
づ け て い る. ユ ー ク リ ッ ド4次
元 空 間 に ヤ ン-ミ ル ズ ゲ ー ジ 場 が 存 在 す れ ば,自
発 的 に対
称 性 の 破 れ た 場 が な く と も イ ン ス タ ン トン が 存 在 し う る こ と は 注 目 に 値 す る. こ の こ と が,QCD議 い る の で あ る.ユ
論 に お い て イ ン ス タ ン トン を避 け て 通 れ な い対 象 と して ー ク リ ッ ド4次
元 空 間 の ソ リ トン は,ミ
は 虚 数 時 間 で の ソ リ ト ン を 意 味 す る.こ こ と と し,こ
ン コ フス キー 空 間 で
れ に つ いて の物 理 的解 釈 は 後 で述 べ る
こ で は ま ず 数 学 的 な 定 式 化 を 行 お う.
ユ ー ク リ ッ ド空 間 の 場 の 理 論 は,時 さ れ る 以 外 は,す
空 変 数 がxμ=(x1,x2,x3,x4=ix0)で
表
べ て ミ ン コ フ ス キ ー 空 間 の 表 式 と 同 じ よ う に し て 表 さ れ る.
た と え ば,作 -iA4の
用SEは,ミ
ン コ フ ス キ ー 空 間 の 作 用Sか
置 き換 え に よ り ,か
つx4を
ら,x0→-ix4,A0→
実 数 の よ う に 扱 っ て 得 ら れ る.
(6.46a) (6.46b) (6.46c) taは 群 の 生 成 子 表 現 行 列 で あ る.た -1)で
あ るので
,反
だ し,計
量 はgμ ν=gμν=(-1,-1,-1,
変 テ ン ソ ル と 共 変 テ ン ソ ル は,形
が 実 際 の 区 別 は な い.4次
式 的 に は 区別 して 書 く
元 ユ ー ク リ ッ ド空 間 の 長 さ を
(6.47) と し て,s→
∞ で ゲ ー ジ場 が
(6.48a) で あ れ ば,
(6.48b) で あ り,ユ ー ク リ ッ ド空 間 の 作 用 は有 限 とな る の で,ソ
リ トン存 在 の境 界 条 件
を 満 たす. こ こ で,次 の 量 を定 義 す る.
(6.49a) (6.49b) こ の被 積 分 関数 は,全 微 分 の 形 に 書 き直 す こ とが で き る.
(6.50a) (6.50b) し た が っ て,ν
は
(6.51) と 書 き 直 せ る.ゲ (6.50b)に 数nに
ー ジ 場 が(6.48)の
お け る 第1項
一 致 す る*2).こ
境 界 条 件 を 満 た せ ば,s→
は 積 分 に 寄 与 せ ず,ν
は(6.34)に
こ で の 巻 つ き 数 ν は,4次
元 ユ
∞ に お い て,
与 え られ た 巻 つ き ーク リ ッ ド空 間 で の 超
球 の 表 面S3か
らS3(SU(2))へ
の射 影 の ホ モ トピー ク ラ ス を 表 し,前 節 で 与 え
た3次 元 空 間 か ら の 射 影 に よ る巻 つ き数n(S3(3次
元 空 間)→S3(SU(2)))と
は別 物 で あ る こ と を注 意 して お く. 上 記 の 境 界 条 件 を満 た す ソ リ トン解(イ
ン ス タ ン トン)は 見 つ け られ て お
り,一 例 が 次 式 で与 え られ る.ま ず,ゲ ー ジ変 換Uを
次 式 で 定 義 す る.
(6.52a) こ こ に,Ω
μνは 反 対 称 テ ン ソ ル で,
(6.52b) で 与 え ら れ る.こ
の と き,
(6.52c) (6.52d) は イ ン ス タ ン ト ン と し て の 条 件 を 満 た す.た は 任 意 の 定 数 で,そ
だ し,yμ=xμ-aμ
で あ る.aμ,λ
れ ぞ れ イ ン ス タ ン トン の 存 在 場 所 と大 き さ を 表 す.こ
ン ス タ ン ト ン 解 が 境 界 条 件(6.48)を
満 た し,次
の 性 質 を も つ こ と は,実
の イ 際 に
計 算 を し て み れ ば 証 明 で き る. ○ 自 己 共 役 で あ る.つ
ま り
(6.53) ○Gμ νは ヤ ン-ミ ル ズ 場 の 運 動 方 程 式 を満 た す. 証 明 に は,DμGμν い)こ
が 恒 等 的 に0で
あ る(ヤ
ン-ミ ル ズ 場 の 源 の な い 式 に 等 し
と を 使 う.
○ 巻 つ き 数 ν は1で ○ ν=1の
あ る.
と きの 作 用 は
(6.54) ○ 巻 つ
き 数-1の
反 イ ン ス タ ン
*2) ア ー ベ ル ゲ ー ジ 場 に お い て は お く.
,Aν
ト ン は,U→U†,Ω
とAρ
μν→
は 交 換 す る の で,ν=0に
Ω μν(Ω μν=Ω μν,μ,
な る こ とに 注 意 して
ν=1∼3,Ω4ν=-Ω4ν)と ○ ν=mの
し て 得 ら れ る.
イ ン ス タ ン ト ン は,U→Um=(U)mと
す る こ と に よ り 得 ら れ る.
証 明:
(6.55a) と極 座 標 を使 って 書 き直せ ば,
(6.55b) と 書 き 直 せ る か ら,U→(U)mは,ω 転 す る よ う に 動 け ば,任
→mω
意 の 回 転 軸nに
に 等 し く,xμ
がS3上
つ い て 巻 つ き 数 はmと
を1回
な る.
c. イ ン ス タ ン トン の 物 理 的 解 釈 さ て,イ て,図6.7の 式(6.49a)は Aμ(A4=0)を に 必 ずA4を
図6.7
ン ス タ ン ト ン の 物 理 的 解 釈 を 行 う た め に,s→ よ う なx4軸
を 中 心 と す る 円 筒 形 の 境 界 面(Sc)を
ゲ ー ジ 不 変 で あ る か ら,こ 採 用 す れ ば,円 含 み0と
∞ の 境 界 を変 形 し
な る.円
こ で,A4=0と
考 え る.ν
の表
な る よ うな ゲー ジ
筒 の 側 面 か ら の 寄 与 は 式(6.50)か 筒 の 上 面 お よ び 下 面 は,x4→
らわ か る よ う ± ∞ で の3次
元
イ ン ス タ ン トンの 巻 つ き数 を決 め る境 界 面(4次 元 空 間 内 の3次 元 超 球 面)を 円 筒 形 に 変 形 す る.x4軸 を 中心 とす る円 筒 の 上 面 をx4→ ∞ に,円 筒 の 下 面 をx4→-∞ に対 応 させ る. イ ン ス タ ン トンの トポ ロ ジー 荷 の定 義 さ れ るS3→S3(SU(2))の さ れ る3次 元 空 間D3→S3(SU(3))の の 関係 に あ る.
巻 つ き数=ν
巻 つ き数m(x4=+∞)とn(x4=-∞)と
と,真 空 の 定 義 は,ν=m-n
体 積 で あ りか つ 周 縁 がr→ そ の ま ま適 用 可 能 で,巻 A4=0と
す るUの
得 ら れ て,次
∞ に 対 応 す る の で,先 つ き数m,nを
解 は,(6.40)の
に行 っ た 縮 退 真 空 の議 論 が
も つ 真 空 配 位 と な っ て い る. 式 に(6.52)のA4の
表 式 を代 入 す れ ば
の 式 で 与 え ら れ る2,3).
(6.56a) (6.56b) (6.56c) こ のUは,x4→+∞ はυnに
で 先 に議
論 し た(6.35)のυn+1に
一 致 し,x4→-∞
で
な る こ と が わ か る.
(6.57) ま た,こ
の と き,x4=±
たAn,iに
∞ で,巻
な る こ と も示 せ る.す
つ き数nに
対 応 す るAn,iが,(6.44)で
与 え
な わ ち,
(6.58a) (6.58b) (6.58c) こ の と き,ν
は
(6.59) 一 般 に 巻 つ き数 νの イ ン ス タ ン ト ン が 存 在 し た 場 合 は 空 間 の 真 空 の 巻 つ き数 をm,nと
,x4=±
∞ で の3次
元
して
(6.60) が 成 立 す る. こ れ か ら,イ +∞
でmに
ン ス タ ン ト ン は,x4=-∞
変 え る働 き を し,そ
ち イ ン ス タ ン トン の 存 在 は,異
で の 真 空 の 巻 つ き 数nを,x4=
の 差 が ν で 与 え ら れ る こ と が わ か る.す
なわ
な る巻 つ き数 を も つ 真 空 へ の 遷 移 を 意 味 す る.
d. 虚 数 時 間 古 典 力 学 で は,粒
子 の も つ エ ネ ル ギ ーEよ
突 す る と跳 ね 返 さ れ て,障
り高 い ポ テ ン シ ャ ル 障 壁Vに
壁 を 越 え る こ と は で き な い.量
衝
子 力学 で は トン ネ ル
効 果 に よ り,障
壁 を 越 え る確 率 が 存 在 す る.粒
p=[2m(E-V)]1/2を
も ち,場
子 は 進 行 波 に よ り表 さ れ,波
所 に よ る 依 存 性 はexp(ipx)で
と こ ろ で は 波 数 が 虚 数 と な り,p=i[2m(V-E)]1/2と ン シ ャ ル 障 壁 を 越 え る遷 移 振 幅 は,半
数
あ る.V>Eの
な り減 衰 波 を 表 す.ポ
古 典 的 取 扱 い のWKB手
テ
法 に よ る と,
(6.61) 一 方
,E>Vの
と き に,aか
全 エ ネ ル ギ ーEが0に
らbに
い た る 道 筋 の 作 用Sを
評 価 し て み よ う.
な る よ う に 規 格 化 す る と,
(6.62) と な り,こ
れ は,(6.61)のSEと
はE-Vの
符 号 が 変 わ る の み で あ る.一
方,
運動 方程 式は
(6.63) で 与 え ら れ る が,虚
数 時 間x4=itを
こ と と は 同 等 で あ る.し 作 用 と み な せ る.場
導 入 す る こ と と ポ テ ン シ ャ ル を反 転 す る
た が っ て,(6.61)で
定 義 さ れ たSEは,虚
数時 間での
の 理 論 で は ユ ー ク リ ッ ド空 間 で の 作 用 と な る.す
な わ ち,
ユ ー ク リ ッ ド空 間 で の ラ グ ラ ン ジ ア ン の 経 路 積 分
(6.64) が,そ
の 経 路 の 遷 移 振 幅 を与 え る.WKB法
の 結 果 を使 わ ず 虚 数 時 間 の 作 用 を
使 う の は場 の 理 論 で の一 般 化 が 容 易 だ か らで あ る.量 子 場 の 理 論 で は,遷 移 振 幅 を計 算 す るの に経 路 積 分 の 方 法 を使 う こ とが 多 い.経 路 積 分 は可 能 な す べ て の 経 路 に つ い て 積 分 しな け れ ば な ら な い が,古 典 的 な 経 路(作 用 を 最小 に す る 経 路)を 大 き く離 れ た 経 路 の 寄 与 は通 常 小 さ く,半 古典 的 な計 算 で よ い近 似 で あ る. イ ン ス タ ン トン の 作 用 積 分 は,す
で に(6.54)で
求 め た.
(6.65) した が っ て,巻 つ き数 の 異 な る真 空へ の 遷 移 確 率 は,
(6.66)
の程 度 で あ る.QCDの
場 合 これ は 決 し て小 さ い 数 で は な い.
イ ン ス タ ン トン は,空
間 的 に も時 間 的 に も局 在 し て い る状 態 を記 述 す るが,
ミン コ フ ス キ ー 空 間 の ソ リ トンで は な い の で,い わ ゆ る粒 子 で は な い.イ
ンス
タ ン トンが 存在 す る と,そ こに は 巻 つ き数 の 異 な る真 空 へ 通 じ る道 が あ り,遷 移 の 起 き る可 能 性 が 生 じる こ とが わ か る.し か し,ポ テ ン シ ャ ル 障 壁 の ため, 遷 移 確 率 は,ν=1の
イ ン ス タ ン トン1個
当 た りexp(-8π2/g2)程
度であると
い う こ とが 結 論 づ け られ る. しか し,イ ン ス タ ン トンは 通 常 の 粒 子 に似 た 性 質 を もつ 側 面 もあ る.粒 子 と 同 じ くイ ン ス タ ン トン は 多数 存 在 し うる.非 常 に 多数 存 在 して,な
おかつイ ン
ス タ ン トン 間 の 平 均 距 離 が イ ンス タ ン トン の サ イ ズ に比 べ て 大 き い と き,イ ン ス タ ン トン の希 薄 ガ ス とい う こ と にす る.さ
らに 多数 存 在 して 平 均 距 離 が短 く
な り,イ ン ス タ ン トン の サ イ ズ と同 程 度 に な る と相 関 が で て きて 液 体 の よ うに 振 る舞 うで あ ろ う.こ の よ うな イ ン ス タ ン トン媒 体 が 存 在 す る とき の物 質 の状 態(イ ン ス タ ン トン相)は,カ
イ ラル 対 称 性 の 自発 的 破 れ と密 接 に 関 連 す る と
議 論 され て い る6).
6.1.6 さ て,イ
θ
真
空
ン ス タ ン トン の 存 在 に よ り,巻
あ り う る こ と が わ か っ た.こ 状 態 で あ る こ と を 示 す.先 を1だ
の こ と は,真
つ き数nの 空 がnの
異 な る真 空 間 の 遷 移 が 異 な る真 空 の 重 ね合 わせ
の 議 論 で,Ω=υ(6.35)は,真
け 変 え る こ と を 見 た((6.45)参
空 に 演 算 す る と,n
照).
(6.67) す な わ ち真 空 は 一 般 に は ゲ ー ジ不 変 で な い.た だ し,ゲ ー ジ不 変 な真 空 は 次 の よ うに して容 易 に つ くれ る.こ れ を θ真 空 とい う.
(6.68) (6.69) 任 意 の θ の 値 に対 し,θ が 異 な れ ば 違 う真 空 を与 え る.つ 空 は ま っ た く別 の 世 界 を構 成 し交 わ る こ とが な い.こ
ま り θの 異 な る真
れ を見 る ため に,ゲ ー ジ
不 変 な 場 の 演 算 子 の伝 播 関 数 の 期 待 値 を計 算 して み る.
(6.70a) Jiは ゲ ー ジ 不 変 で あ る か ら, ず,こ
の こ と は,上
が 成 立せ ね ば な ら
式 右 辺 がν=m-nに
の み 依 存 す る こ と を 示 す.し
たが っ
て,
(6.70b) す な わ ち,ゲ ー ジ不 変 な 摂 動 で は θは 変 え られ な い こ と を意 味 す る.θ 真 空 は 外 の 世 界 とは 相 互 作 用 し な い の で,θ を決 め る手 段 は な い.θ 真 空 が 存 在 す る場合 の一 般 的 な遷 移 振 幅 は
(6.71) で あ る の で 異 な っ た巻 つ き数 を もつ 真 空 間 の 遷 移 の和 と な る.し か も,各 遷 移 振 幅 に はexp(iν θ)と い う位 相 因子 が か か る こ とが わ か る.こ の 効 果 は,ラ
グ
ラ ン ジ ア ン に 次 のLθ を付 加 す る こ とに よ り 自動 的 に取 り入 れ ら れ る こ とが, 経 路 積 分 の 方 法 を使 え ば 容 易 に証 明 で き る.
(6.72) す な わ ち,θ 真 空 な る複 雑 な 内容 の真 空 が 存在 し,θ な る余 分 の パ ラ メ ター が 理 論 の 中 に 入 っ て きた. θ真 空 と は,上 記 の(6.68)で
与 え られ る真 空 で あ る が,θ の 値 如 何 に か か
わ らず一般 に 存 在 し う る もの で あ る.Lθ
は θ〓0の と き に,θ=0の
遷 移振幅
を θ真 空 間 の 振 幅 に転 換 す る ため の付 加 項 で あ る.
6.2 強 い 相 互 作 用 に お け るCPの
6.2.1 QCDに
異 は,本
例 え ば,uク U(2)Rグ
*3) m
常
破れ
項
来 の カ ラ ーSU(3)対 ォ ー ク とdク
称 の ほ か に さ ま ざ ま の 対 称 性 が 内 在 す る.
ォ ー ク の 質 量 が0と
ロ ー バ ル 対 称 が 成 立 す る*3).こ
見 な せ る 極 限 で は,U(2)L×
の ベ ク トル 部 分U(2)R+L=U(1)R+L×
sを 無 視 す るSU(3)flavor対 称 性 が よ い 近 似 で あ る と き はU(3)×U(3)対 こ で は,U(2)×U(2)に 話 を 限 る.
称 に な る.こ
SU(2)R+Lに
対 応 す る保 存 量 は,バ
リオ ン数 と強 い 力 の ア イ ソ ス ピ ン で あ り,
自 然 界 で は か な りの 精 度 で 実 現 し て い る.し U(1)R-L×SU(2)R-Lは,mu, md≠0な
か し,軸 性 ベ ク トル 部 分 の
る事 実 に よ り破 れ て い る.
一 般 的 に い って,対 称 性 の破 れ 方 に は 次 の よ う な種 類 が あ る. (1) 対 称 性 を あ ら わ に 破 る.対 称 性 を破 る項(し ば しば 摂 動)を ジ ア ン に付 加 す る.例 え ば,QCDラ り,uク
ォー ク とdク
ラグ ラン
グ ラ ン ジア ン に 電 磁 相 互 作 用 を付 加 し た
ォー クの 質 量 差 を導 入 す る こ と に よ り,ア イ ソ ス ピ ン
対 称 が破 れ る の は こ の例 で あ る. (2) 対 称 性 が 隠 さ れ る,あ
る い は 自発 的 に 破 れ る.ラ グ ラ ン ジ ア ンは 対 称
性 を もつ に もか か わ らず基 底 状 態(真 空)が 対 称 性 を破 り,実 現 さ れ る物 理 現 象 に 対 称 性 が 見 え な い.こ れ に は 電 弱 相 互 作 用 の よ うに,ス
カ ラー 粒 子 を導 入
して 真 空 期 待 値 を 自発 的 に もた せ る こ とに よ り対 称 性 を破 る場 合 と,相 互 作 用 の 結 果 力 学 現 象 と して 対 称 性 が 破 れ る場 合 が あ る.QCDに
お い て は,ク ォー
ク対 が 凝 縮 して 実 効 的 に ヒ ッ グ ス粒 子 を形 成 し,SU(2)R-Lの
カ イラル対称 を
破 る. (3) 異 常 項 に よ り破 れ る.ラ
グ ラ ン ジア ン が 対 称 性 を も ち,古 典 的 な考 察
で は 現 れ な い に もか か わ らず 量 子 効 果 を導 入 す る と対 称 性 が 破 れ る例 で あ る. QCDに
現 れ るU(1)R-L(軸
性 と い う意 味 で 以 下UA(1)と
記 す)対 称 性 の 破 れ
は こ の例 で,以 下 の議 論 の 対 象 で あ る. 下 記 の カ イ ラ ル変 換
(6.73) を 考 え る.カ
イ ラ ル 変 換 と は,γ5qR=qR,γ5qL=-qLを
位 相 変 換 が,右
考 慮 す る と,通
常 の
巻 き と左 巻 き粒 子 の 位 相 を 同 方 向 に 回 転 す る の に 反 し,逆
方向
に 回 転 す る 演 算 で あ る.微
小 カ イ ラ ル 変 換,δq=-iδ
αγ5qを 行 う と き の ラ グ
ラ ン ジ ア ン の 変 化 量 は,
(6.74a) で 与 え られ る.第1項
は オ イ ラ ー の 運 動 方 程 式 で0に
な り,第2項
は
(6.74b) を 与 え る.質
量 項(Lmass∼mqq)が
存 在 し な い と き は,QCDラ
グ ラ ン ジア ン
は こ の 変 換 で 不 変 で あ る の で(後
が 存 在 し,軸
性 電 荷(axial
述 §6.2.2),保
存 す る ネ ー タ ー カ レ ン トJ5μ
charge)
(6.75) と い う 保 存 量 が 定 義 で き る.場 算 子 で あ る.ク
の 量 子 論 で はQ5は
ォ ー ク質 量 が あ る と,す
り立 た な く な る の で,以
軸 性 変 換(6.73)の
生成 演
ぐ後 に 述 べ る よ う に カ イ ラ ル 対 称 は 成
下 の 議 論 は 特 に 必 要 な い 限 り は,ク
ォ ー ク の 質 量 を0
と し て 扱 う. さ て,以 と,三
上 は ラ グ ラ ン ジ ア ン レ ベ ル で の 話 で あ る.量
角 図(第5章,図5.2参
照)か
ら の 寄 与 が0に
子 補 正 項 を考 慮 す る
な ら な い こ と が 示 せ る.
こ れ は 最 初 に π0→ γγ遷 移 の 研 究 過 程 に お い て 発 見 さ れ,ア -ジ ャ ッ キ ュ ー(Adler-Bell-Jackiew)の ラ ル 異 常 項 は 軸 性 カ レ ン トに,二
ド ラ ー-ベ ル
カ イ ラ ル 異 常 項 と 呼 ば れ た7) .カ
イ
つ の 極 性 ベ ク トル カ レ ン トも し く は 二 つ の 軸
性 カ レ ン トが 結 合 す る と き に 一 般 的 に 現 れ る.グ
ル ー オ ン 場 が 結 合 す る と きの
寄 与 を計 算 す る と
(6.76a) Nf:フ
ェル ミオ ンの数
(6.76b) とな る.こ の 式 の 右 辺 は,三 角 異 常 項 図 を実 現 で きるす べ て の フ ェル ミオ ン の 寄 与 の 和 で あ り,ル ー プ を構 成 す る フ ェ ル ミオ ンが 質 量 を もっ て いて も変 わ ら な い.(6.76a)式
は,θ 真 空 で 導 入 し た ラ グ ラ ン ジ ア ンLθ(6.72)を,最
初
か ら実 効 的 ラ グ ラ ン ジ ア ン と して 入 れ て計 算 して も得 られ る. 異 常 項 が 存 在 す る と,ラ グ ラ ン ジ ア ン か らつ くっ たUA(1)ネ トは,質 量 項 が 存 在 しな い場 合 で も保 存 しな い.こ
ー ター カ レ ン
の結 果 と して,繰
り込 み 可
能 条 件 と して 必 須 条 件 で あ っ た ワ ー ド-高橋 の 恒 等 式 も ま た 成 立 しな い か ら, 軸 性 カ レ ン トが ゲ ー ジ カ レ ン トの 場 合 は深 刻 な 問 題 とな る.た だ し,ル ー プ に 関 与 す るす べ て の フ ェ ル ミオ ン に つ い て 足 し上 げ れ ば 異 常 項 が消 え る よ うな理 論 構 成 に な っ て い れ ば 問 題 は な く,標 準 理 論 は ま さ に そ の よ うに な っ て い る
(§5.2参
照).一
き な い.実
方,カ
際,π0→
イ ラ ル 対 称 が グ ロー バ ル で あ る な ら ば 深 刻 な 問 題 は起 γγの 崩 壊 率 を 説 明 す る に は,こ
の 項 の 存在 が 必 要 な こ と
が わ か っ て い る1). さ て,微
小 カ イ ラ ル 変 換,δq=-iδ
化 量 は 式(6.74b),(6.76)に
αγ5qを 行 う と き の ラ グ ラ ン ジ ア ン の 変
よ り,
(6.77) で 与 え られ る.右 辺 の 寄 与 はQCD実
効 ラ グ ラ ン ジア ン,
(6.78a) (6.78b) の 中 のLθ の 係 数 θが,カ
イ ラ ル 変 換q→e-iαγ5qで
θ→ θ+2αNfと 変 わ る
こ と を意 味 す る.
6.2.2 カ イ ラ ル 変 換 と質 量 項 ク ォー クに 質 量 が あ れ ば,異 常 項 を 入 れ な く と も軸 性 カ レ ン トは 保 存 しな い.運 動 方程 式 か ら
(6.79) とい う関 係 式 が 導 け る.ラ グ ラ ン ジア ンの 質 量 項 は,カ
イ ラル 変 換 に よ っ て
(6.80a) と 変 換 さ れ る.こ
こ に,γ0と
γ5は 反 可 換 で あ る こ と を 使 っ た.な
は 一 般 に 異 な る 軸 性 電 荷 を も つ の で,カ
おqLとqR
イ ラ ル変 換 は
(6.80b) の よ う に,書
き 表 す こ と も で き る.
(6.81) に(6.80b)を
適 用 す れ ば,
(6.82) で あ る の で,二
つ の カ イ ラ ル 変 換(6.80a)と(6.80b)は,α=(αR-αL)/2で
結 び つ い て い る.ま が 可 能 で あ り,互
た,Lθ
と位 相 を もっ た 質 量 項 は カ イ ラ ル 変 換 で相 互 転 換
い に 同 等 な こ と が わ か る.す
なわ ち
(6.83) 標 準 理 論 で は,ク
ォー ク の 質 量 は 対 称 性 が 自発 的 に 破 れ る と き に 生 じ,
クォ ー クの 結 合 定 数 と ヒ ッグ ス の真 空 期 待 値υ の 積 で 表 さ れ る.真 空 期 待 値 は,一 般 に は 実 数 で は な い.小 林-益 川 行 列 を導 く と きの議 論 で わか る よ うに, 対角 化 す るた め に はqLとqRで
別 の 変 換 を施 す の で,一 般 に は 質 量行 列Mは
エ ル ミー トで な く,質 量 値 は複 素 数 で あ る.m=│m│eiβ
と書 く と,ク ォー ク質
量 項 は,
(6.84a) と表 され る.物 理 的 な質 量 を表 す た め に は,miを
実 数 にす る 必 要 が あ るが,
これ は お の お の の クォ ー クに カ イ ラル 変 換 を施 す こ とに よ り達 成 で き る.し か し,お の お の の クォー クに カ イ ラ ル 変 換 を施 す た び に,Lθ の θが,θ → θ+βi とな るか ら,す べ て の 質 量 の虚 数 部 を消 去 した 後 の θの 変 化 量 は
(6.84b) とな る.す な わ ち,QCDと
電 弱 相 互 作 用 全 体 の ラ グ ラ ン ジ ア ンに 含 まれ るべ
きLθ の 中 の θは,θ 真 空 の θ を θ と書 き直 せ ば,実 は
(6.85) な の で あ る. 以 上 の 議 論 か ら,θ は,QCDの
多 重 真 空 効 果 と電 弱 相 互 作 用 に 起 因 す る
クォー クの 質 量 位 相 との 二 つ の 寄 与 を含 むこと が わ か る.両 者 は,完 全 に独 立 な 二 つ の要 因 と考 え ら れ,互
い に 相 殺 す る理 由 は な く,一 般 的 に はLθ ≠0と
見 な さ なけ れ ば なら な い. Lθ の 項 は,電 磁 場 で い え ばE・Bの は保 存 す る.し た が っ てCPも
破 る.C
破 る.こ の 項 は,全 微 分 で あ るか ら通 常 の 議
論 で は 寄 与 しな い はず で あ るが,先 る と この 項 は0で
よ う な 項 で あ り,PとTを
に議 論 した よ うに イ ン ス タ ン トンが 存 在 す
な い.
この 項 が 存 在 す る と電磁 カ レ ン トJEMμ と結 合 させ た
(6.86a) が,中
性 子nの
電 気 双 極 子dnに
寄 与 す る.計
算 に よ れ ば8),
(6.86b)
と な り,実
験 上 限 値0.9×10-25e・cmを
入 れ れ ば,
(6.87) を 得 る.す
な わ ち,Lθ
の θ を 恣 意 的 に0に
常 に 小 さ い 値 を と る.な CP問
題"で
6.2.3
す る理 由 が な く し か も 実 際 に は 非
ぜ θ が か く も 小 さ い 値 を と る か と い う の が,"強
い
あ る.
U(1)問
題
θ の 値 は 不 定 で あ る に し て も,θ
真 空 が 存 在 す る と懸 案 問 題 が少 な く も一 つ
は 解 決 す る. QCDに
は,u,
dク
ォ ー ク の 質 量 が0の
×U(2)L対
称 が あ る.現
U(2)R-L対
称 が 自 発 的 に 破 れ,そ
と ηが 発 生 す る.こ
実 に は,ク
の う ち,π
ロ ー バ ル な 香 り のU(2)R
の 結 果 の ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン と し て π はSUR-L(2)の
ゴ ー ル ド ス トー ン ボ ソ ン で あ る*4).ク を も 考 慮 す る と,π
極 限 で,グ
ォ ー ク 対 の 凝 縮 と い う力 学 的 要 因 に よ り,
η はUR-L(1)=UA(1)対
称 の
ォー クの 質 量 が 有 限 で あ る とい う効 果
と ηの 間 に は 一 定 の 関 係 が 存 在 し,
の関係 が
成 立 す る こ と が い え る7).実 際 の 質 量 は こ の 関 係 を 大 き く破 っ て い る の で9),η を ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン と は 見 な せ な い と い う の がU(1)問 は,UA(1)カ
レ ン トに は,異
題 で あ る.こ
れ
常 項 が 存 在 す る の で イ ン ス タ ン ト ン効 果 に よ り
(6.88) と な り,保
存 カ レ ン トに は な り え ず,し
ン で は な い と い う解 釈 で 解 決 が つ く.し
た が っ て η は ゴ ー ル ド ス トー ン ボ ソ か し,UA(1)カ
レ ン トを次 式 に よ っ て
再 定 義 す れ ば ど う で あ ろ う か?
(6.89) J5μ は カ イ ラ ル カ レ ン ト,Kμ 定 義 し たJ5μ
は(6.50)で
定 義 さ れ た カ レ ン トで あ り,上
式 で
お よび 対 応 す る カ イ ラル 荷
(6.90) *4) U(3)
flavor対称 の と き は,π,K,η
に 対 応 す る.
がSUA(3)の,η'がUA(1)の
ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン
は保 存 量 で あ るの で,問 題 が 再 燃 す る よ うに 見 え る.新 対 称 操 作 は何 を変 え る の で あ ろ うか.こ
のQ5量
よる
子 数 は保 存 量 で は あ るが ゲー
ジ不 変 量 で は な い(∂ μKμは ゲー ジ不 変 で あ るが,Kμ 実 際,(6.44),(6.50b)を
しい保 存 量Q5に
は ゲー ジ不 変 で は な い).
参照 すれば
(6.91a) (6.91b) で あ る の で,(6.69)と(6.91b)を
使 えば
(6.92) こ れ を(6.69)と
比 較 す れ ば,Q5は
θ真 空 の θ値 を変 え る演 算 子 で あ る こ と
が わ か る.
(6.93) こ の よ うに,Q5は
正 当 な 対 称 演 算 子 と して の 資 格 は もつ もの の,ゲ ー ジ不 変
で な い の で,ゲ ー ジ不 変 な物 理 量 な い しは遷 移 振 幅 に は影 響 を及 ぼ さ な い.し た が って,Q5演
算 に 基 づ く対 称 性 が 破 れ て も物 理 的 な ゴー ル ドス トー ン ボ ソ
ン は生 じな い.す な わ ち,η は ゴー ル ドス トー ン ボ ソ ン で は あ りえ な い10).し たが っ て,U(1)問
題 は 存 在 し な い(解 決 す る).
U(1)問 題 は,θ 真 空 が 実 在 す る こ と の 有 力 な 実 験 的 証 拠 を与 え る もの で あ る.
6.3
6.3.1
PQ対
も し,ど 在 し,す
ア クシ オ ンの モ デル
称 性 と標 準 ア ク シ オ ン
れ か の ク ォ ー ク が 質 量 を も た な け れ ば,カ
べ て の θ は 同 等 と な る か ら,θ
θ 問 題 は 存 在 し な い,し
か し,一
を0に
イ ラ ル 変 換 の 自由 度 が 存
す る こ と が で き る.す
番 軽 い と 目 さ れ て い るuク
ソ ン や バ リオ ン に お け る低 エ ネ ル ギ ー 現 象 論 か ら,有
な わ ち,
ォ ー ク で も,メ
限 質 量 を も た な い と具 合
の 悪 い こ と が わ か っ て い る11).
(6.94)
現 在 強 いCP問
題 を解 決 す る方 法 と し て 最 も有 力 視 さ れ て い る の が,ペ
チ ャ イ-ク ィ ン(Peccei-Quinn)に 対 応 す る保 存 量 をQ5(PQ)と
よ る新 し い 対 称 性(PQ対
称 と呼 ば れ る.
書 くこ とに す る)の 導 入 で あ る1,12).その 処 方 は,
自発 的 対 称 性 が 破 れ る 前 の 電 弱 相 互 作 用 に,す に加 え て,さ
ッ
ら に カ イ ラ ル 対 称 性UA(1)の
で に も って い るUY(1)対
称性
存 在 を要 求 す る の で あ る.カ
ル 対称 性 を もて ば,θ の値 は任 意 に 変 え られ るか ら消 去 で き る.PQ対
イラ
称が弱
い相 互 作 用 の 自発 的破 れ に 伴 っ て破 れ る と,ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン と して の ア ク シ オ ン が 発 生 す る13).最 初 に提 案 され たPQ対 (標 準 ア ク シ オ ン)は,実 ク シ オ ン(invisible
称 の処 方 に従 うア ク シ オ ン
験 的 に 否 定 さ れ た の で,現 在 は い わ ゆ る 見 え な い ア
axion)が
可 能 性 と して 残 さ れ て い るが,ア
ク シ オ ン の相
互 作 用 を理 解 す る に は,標 準 ア ク シオ ン を学 習 し,見 え な い ア ク シ オ ン は そ の 変 更 モ デ ル と し て理 解 す るの が 便 利 で あ る.以 下 は 簡 単 の た めuとdの 代 表 的 に考 察 し,他 の フ ェ ル ミオ ンは 適 宜,式
みを
の 中 に 加 え て い く もの とす る.
標 準 モ デ ル の フ ェ ル ミオ ン と ヒ ッ グ ス の湯 川相 互 作 用
(6.95) を カ イ ラル 不 変 に す る た め に は,u,dの
位相 の変化
(6.96a) (6.96b) を,Φ1,2が
吸 収 で き な け れ ば な ら な い.こ
じ く カ イ ラ ル 荷Q5を
も ち,PQカ
の た め に は,Φ1,2も
ま たu,
dと
同
イ ラ ル変 換 に よ り
(6.97a) (6.97b) と変 換 され な け れ ば な らな い.す
な わ ち,カ
イ ラル 位 相 変 換 の 対 象 を フ ェ ル ミ
オ ン の み な ら ず ヒ ッ グ ス ス カ ラー に まで 広 げ た の がPQ対 デ ル で は,Φ2=Φ1c=iτ2Φ1† で あ る が,PQ対
称 で あ る.標 準 モ
称 性 が 成 立 す る た め に は,独 立
の ヒ ッ グ ス2重 項 を最 低2組
必 要 とす る.さ て,Φi中
に,Q5(PQ)を
ク シオ ン)が 混 じ ら な い よ う に し な け れ ば な ら な
担 う部 分(ア
い.な ぜ な ら対 称 性 が 自発 的 に 破 れ る とYを 第3成
分 に 吸 収 さ れ る か ら で あ る.PQ対
で は,こ
の成 分 は 中性 ヒ ッ グ スAと
の 超 電 荷Yを
担 う部 分
担 う部 分 は 中 性 カ レ ン トZμ の
称 の な い 通 常 の2-ヒ ッ グ ス モ デ ル
な る部 分 で あ り,
(6.98a) (6.98b) と い う 形 を し て い る(§3.4.1,式(3.53)を 期 待 値 で あ る.以 利 で あ る.こ
下 の 議 論 で は,ア
の 場 合Φiが
参 照).こ
こ に,υiは
Φiの 真 空
ク シ オ ン を Φkの 位 相 場 と し て 考 え る と 便
真 空 期 待 値 を もつ と き,他
の 成 分 と は 切 り離 せ て,
(6.99) の 形 に 書 く こ とが で き る.こ
の 場 合(6.97)のPQ変
換 は,
(6.100) と い う 形 を と る. 各 フ ェ ル ミ オ ン に ど の よ う なQ5(PQ)を る.元
論 文 で は,す
はΦ1にuRはΦ2に
割 り当 て るか は モ デ ル の 選 択 で あ
べ て の 左 巻 き フ ェ ル ミオ ンfLは,Q5(PQ)=0を の み 結 合 す る と し た.こ
も ち,dR
の とき
(6.101) と し て 矛 盾 な くお さ ま る.Q5(PQ)荷
を 運ぶUA(1)カ
レ ン トは,容
易 に計算 で
きて
(6.102) この カ レ ン トは カ ラー 異 常 項 を もつ か ら
(6.103) ア ク シ オ ン とLθ
と の 関 連 を 調 べ る に は,ラ
グ ラ ン ジ ア ン の 中 で 形 式 的 にΦk
か ら ア ク シ オ ン を 消 去 す る 変 換 を行 え ば よ い.そ
うす る と フ ェ ル ミ オ ン は,
(6.104) の変 換 を受 け る.こ の こ とに よ っ て質 量 項 に 位 相,
(6.105) が 導 入 さ れ る が,(6.84)の
議 論 に よ っ て,こ
れ はLθ
の θを
(6.106)
とす る こ と と同 等 で あ る.Nは
モ デ ル に よ り異 な る係 数 で あ る.ラ グ ラ ン ジ
ア ンの 中 の
(6.107) は,aに
対 す る ポ テ ン シ ャル を提 供 す る か ら,aの
励 起 は0か
らで は な くポ テ
ン シ ャ ル を最 小 に す る停 留 点 か らの 差 とな る.し た が っ て,
(6.108a) (6.108b) aphysが 物 理 的 に 観 測 さ れ るア ク シオ ン を表 す.以 く.こ の こ とは,カ
ラー 異 常 項 が,ヒ
え,そ の 結 果 水 平 で あ っ た 回転W字
下 は,aphysを
改 め てaと
書
ッ グ ス ポ テ ン シャ ル に 余 分 な 寄 与 を与 形 の ポ テ ン シ ャ ル が 傾 き,ア
ク シ オ ン場
が 新 た に生 じ た ポ テ ン シ ャ ル の 最 低 点 に 向 か っ て 動 くこ と を 意 味 す る.θ ≠0 で あ っ て も,ア ク シ オ ン が 存 在 す れ ば,力 学 的 要 因 で も って 真 空 を最 小 に す る よ うに場 の値 が 再 調 整 さ れ θ=0が 保 証 され る とい う こ とで あ る. (6.104)を
フ ェル ミオ ン カ レ ン トの部 分 で 見 れ ば,そ
ル ミオ ン との相 互 作 用 を 与 え る.結 局,ア
れ は ア ク シオ ン と フ ェ
ク シ オ ン の 関 与 す る ラ グ ラ ン ジア ン
は,運 動 エ ネ ル ギー 項 と カ ラ ー 異 常 項 結 合 部 分(6.107)と
を も合 わ せ て 書 き
下 ろす と
(6.109) (6.110a) (6.110b) とな る.こ こ に は,す べ て の フ ェ ル ミオ ン の寄 与 を取 り入 れ た.す 1行 の 大 括 弧[…]に 書 き,第2行
な わ ち,第
は こ れ ま で の 議 論 をす べ て の クォ ー ク に拡 張 した 結 果 を
の 大 括 弧[…]に
け 加 え て お い た.Ngは
は 同様 の 議 論 か ら導 け る 電 弱 異 常 項 の 寄 与 を付
世 代 数,Bμν はU(1)ゲ
(FEMμν)とZ(FZμν)の 混合 で表 せ,θWは
ー ジ 場 テ ン ソ ル で,電
ワ イ ンバ ー グ角 で あ る,N,
Eは
磁場 モデ
ル に よ り変 わ る量 で あ る. ア ク シ オ ン と フ ェル ミオ ン との 結 合 定 数 は, か ら,基 本 的 に 弱 い相 互 作 用 で あ る.ア して 獲 得 す る の で,(6.109)のaの
で 与 え られ る
ク シ オ ン の質 量 は カ イ ラル 異 常 項 を通
係 数 の 期 待 値 が ア ク シ オ ン の 質 量 を与 え
る.質 量 の計 算 は低 エ ネ ル ギ ー の カ レン ト代 数 ま た は低 エ ネ ル ギー 実 効 ラ グ ラ ン ジア ンの 処 方 で 計 算 す る こ とが で き る.結 果 の み を 記 す と14),
(6.111) とな る.Fπ ≒93MeVは
π の 崩 壊 定 数 で あ る.aは,π
や η と量 子 数 が 同 じ
で あ り混 合 が 可 能 で あ る.粒 子 が ア ク シ オ ン を含 む 相 互 作 用 の遷 移 確 率 も同様 に計 算 可 能 で あ る. 標 準 ア ク シ オ ン の 存 在 は,実 験 室 で の 探 求 や 天体 物 理 の議 論 に よ りほ ぼ 否 定 さ れ て い る.最
も堅 固 な テ ス トは 次 の 実 験 か ら くる. 表6.1
標 準 ア ク シオ ン を否 定 す る実 験
現 在 ま で の実 験 結 果 は,標 準 ア ク シ オ ンの 存 在 可 能 性 をほ ぼ 完 全 に 否 定 して い る.ま た 後 に 述 べ る天 体 物 理 学 の 考 察,例 こ れ を裏 づ け て い る.PQ対
えば 赤 色 巨 星 の 冷 却 速 度 の議 論 も
称 の 破 れ の ス ケー ル υPQが電 弱相 互 作 用 の ス ケ ー
ル υで表 され る 限 り,ア ク シオ ン の 存 在 す る余 地 は な い.し た が っ て,も Lθ の 消 去 をPQ対
し,
称 性 に求 め る な らば,υPQを 非 常 に大 き くす る必 要 が あ る.
υPQを十 分 大 き く とれ ば,こ れ ま で の 地 上 の 実 験 で は検 出 は まず 不 可 能 とな る の で,見
え な い ア ク シオ ン(invisible axion)と
い う名 を与 え られ て い る.
6.3.2
見 えないアクシオ ン
見 え な い ア ク シ オ ン に も い ろ い ろ モ デ ル が あ る が,共
通 点 と して次 の性 質 を
共 有 す る ス カ ラ ー 場 σ の 存 在 を 仮 定 す る. (1) Q5(PQ)を
担 い,非
(2) SU(2)×U(1)に UPQ(1)対 第2の
常 に 大 き な 真 空 期 待 値 υPQを もつ.
関 し て は1重
項 で あ る.す
な わ ち,通
常 の 粒 子 と は,
称 性 を通 じ て の み 相 互 作 用 を す る.
性 質 が 必 要 な の は,通
の を 防 ぐ た め で あ る.通
常 の 相 互 作 用 に 大 き な ス ケ ー ル υPQが 入 り込 む
常 の フ ェ ル ミ オ ン に ど の よ う なQ5(PQ)を
か に よ り さ ら に モ デ ル の 相 違 が 生 じ る.代
割 り当 て る
表 的 な モ デ ル と し て 次 の2種
をあ げ
る. (a) 通 常 の フ ェ ル ミ オ ン はQ5(PQ)を (多 分 重 い)ク
ォ ー クXが
も た な い が,Q5(PQ)を
存 在 す る(KSVZア
もつ 新 種 の
ク シ オ ン17)).
(6.112a) (6.112b) XRの
み がQ5(PQ)を
もつ とす れ ば 前 と同 じ議論 か ら,異 常 項 を通 じて通 常 の
粒 子 と結 合 す る こ とが い え る.
(6.113) QXEMはXの は,υ
電 荷 で あ り,FEMμ νは 電 磁 場 を 表 す テ ン ソ ル で あ る.相
→ υPQに な っ た 以 外 は 前 と ほ と ん ど 同 じ で あ る.こ
リー レ ベ ル で は,電
互 作 用
の ア ク シオ ンは ト
子 に 結 合 しな い こ とか らハ ドロ ン 的 ア ク シ オ ン と呼 ば れ
る. (b) 通 常 の フ ェ ル ミ オ ン はQ5(PQ)を 同 様 に2個
の ヒ ッ グ ス 場 を 必 要 と す る.た
直 接 は 結 合 で き ず.ヒ (DFSZア
も つ.し
たが って標準 ア クシオ ン と
だ し,通
常 の フ ェ ル ミオ ン は σ に
ッ グ ス ポ テ ン シ ャ ル を 通 じ て の み σ と 結 合 す る.
ク シ オ ン ま た の 名 はGUTア
σ は 通 常 の ヒ ッ グ ス と4次
ク シ オ ン18))
の 結 合 を 通 じ て 結 合 す る.
(6.114) υPQ≫ υ の 極 限 で は,3個
の ヒ ッ グ ス 場 は 次 の よ う な 形 を と る.
(6.115a) (6.115b) (6.115c) (6.116) 上 の 結 合 形 は,a→a+α と の 結 合 は,υ
υPQのPQ対
→ υPQ, x→X2,
と 同 じ 形 を し て お り,相 い る.こ
称 操 作 で 不 変 な 形 を して い る.他
1/x→X1の
の粒 子
置 き換 え 以 外 は 標 準 ア ク シ オ ン
互 作 用 の 大 き さ の み が(2υ1υ2/υυPQ)だ け 小 さ く な っ て
の ア ク シ オ ン は レ プ トン と ト リー レベ ル の 相 互 作 用 を もつ.
最 後 に ア ク シ オ ン の 現 象 を 議 論 す る と き に 必 要 な 質 量 と結 合 定 数 の 値 を 与 え て お く.こ
れ ら は カ レ ン ト代 数 な ど を使 い ト リー 近 似 を 精 密 化 し た 現 象 論 的 ラ
グ ラ ン ジ ア ン で あ る19,20).質 量 に つ い て は,(6.111)よ
り
(6.117a) (6.117b) ア ク シ オ ン と フ ォ トン γ,フ ェ ル ミオ ンfと
の 相 互 作 用 を 次 の 形 に ま と め る.
(6.118a) (6.118b) (6.118c) (6.118d) Nお
よ びEは
カ ラ ー 異 常 項 と 電 磁 気 異 常 項 に 現 れ る 係 数 で あ り,モ
存 す る 量 で あ る.Q5(PQ)jは 荷,Ncjは
カ ラ ー 自 由 度(ク
結 合 に カ ラ ー 異 常 項 係 数Nが *5) 微 分 結 合
,Laff=faf∂ つ い て い る.
フ ェ ル ミ オ ン のPQ荷,Qjはeを ォ ー ク で3,レ
プ トン で1)で
現 れ る の は,ア
デ ル に依
単 位 と した 電 あ る.フ
ォ トン との
ク シ オ ン が π0や η と 混 合 す る か
μaψfγμγ5ψfで 定 義 す る と き の 結 合 定 数 と は,gaf=2mffafで
結び
ら で あ る.現 象 解 析 に 使 用 さ れ る数 値 の 例 を 表6.2に
掲 げ る.こ
れ か ら,
KSVZモ
デ ル は 電 子 と は 直 接 は 結 合 し な い こ と,フ ォ ト ン に 対 す る 結 合 が
DFSZモ
デ ル に 比べ ほ ぼ10倍 表6.2
DFSZ,
強 い こ とが わ か る. KSVZモ
デ ル にお け る ア ク シ オ ン結 合 定 数19)
無 次 元 の 結 合 定 数 を,gγ=gaγγ(πfA/α),gaj=cjmf/fA(j=e,p,n)に す る.E/Nは
フ ェ ル ミオ ン の もつPQ荷
大 統 一理 論 の値E/N=8/3を β=υ2/υ1,定 数1.92や
よって導 入
や 電 荷 に依 存 す る項 で あ る.DFSZは
採 用 した 値.β
は ヒ ッ グ ス真 空 期 待 値 の 比 で,tan
ハ ドロン との 結 合 値 は カ レ ン ト代 数 計 算 か らで て くる値
で あ る.
6.4 宇 宙 に お け る ア ク シ オ ン
ア ク シ オ ン は,も な らず,暗
し存 在 す れ ば 宇 宙 の歴 史 に お い て 重 要 な役 割 を果 た す の み
黒物 質 の 有 力 な候 補 で も あ る.小
さな 質 量 を も ちか つ 非 常 に 弱 い相
互 作 用 をす る とい う性 質 をニ ュー ト リ ノ と共 有 す る た め,星 ニ ュー トリ ノが 果 た す 役 割 は,ア
の進化 に おい て
ク シ オ ン に もほ とん ど そ の ま ま適 用 で き る.
しか し,ア ク シオ ンが ボー ス凝 縮 体 とい う特 異 な性 質 を もつ た め,暗 黒 物 質 と して の性 質 は正 反 対 で あ る.ニ ュー トリ ノが 熱 い 暗 黒 物 質(相 対 論 的 速 度 で動 く粒 子)と な るの に 反 し,ア ク シ オ ン は冷 た い 暗 黒 物 質(非 相 対 論 的 運 動 の粒 子)を 構 成 す る.
6.4.1 星 の 冷 却 剤 星 の進 化 の 過 程 で,ア
ク シ オ ン がつ くられ る とエ ネ ル ギー をそ の ま ま星 の外
へ 逃 が して し ま う ため 有 効 な冷 却 剤 と して 作 用 し,星 の進 化 を早 め 寿 命 を短 く す る.冷 却 効 果 に効 くア ク シ オ ン の 反 応 は, コ ンプ トン散 乱:γ+e→e+a
ア ク シ オ ン制 動 放 射:e+Z→e+Z+a プ リマ コ フ効 果:γ+Z→Z+a な ど で あ る.ア ク シ オ ン 反 応 が 既 知 の 星 の 進 化 過 程 を乱 さ な い とい う条 件 か ら ア ク シ オ ンの 結 合 定 数 も し くは 質 量 に 関 して 制 限が つ く.星 の 進 化 過 程 に 寄 与 す る反 応 を選 択 考 慮 す る こ とに よ り,そ れ ぞれ 電 子,核
子,フ
ォ トン に対 す る
結 合 定 数 に制 限 を与 え る. ア ク シ オ ン の 結 合 定 数 に対 す る天 体 物 理 学 的 制 限 の 議 論 をい くつ か 紹 介 して お こ う20).太 陽程 度 の 比 較 的 軽 い星 が,水 素 の 燃 え て い る主 系 列 星 か ら,ヘ ウ ム が 燃 え る段 階 に な る と赤 色 巨星 とな る.ヘ
リ
リウム フ ラ ッシ ュ を起 こす と絶
対 輝 度 を急 速 に 下 げ て ヘ ル ツ ス プ ル ン グ-ラ ッセ ル 図 で水 平 分 岐 と呼 ば れ る 時 期 を経 て ふ た た び 巨 星 化 す る.こ の 時 期 は芯 でヘ リウム が 燃 え る過 程 とヘ リウ ム 芯 の外 で 水 素 が 燃 え る過 程 が 微 妙 な バ ラ ン ス を保 ち,表 面 温 度 が 変 化 す る の に 全 光 度 は 不 変(名 前 の 由 来)に 保 た れ る.こ の 時 期 は ニ ュー トリ ノ に よ る冷 却 作 用 も効 果 的 に働 い て お り,ア クシ オ ン の 存 在 は そ れ を乱 す(加 速 す る)の で あ る.中 心 の 温 度 は108k(∼10keV)程 オ ンが 冷 却 作 用 に 寄 与 す る.こ よ り生 産 さ れ る.ヘ
度 で あ る の でma〓10keVの
ア クシ
こ で は ア ク シ オ ン は もっ ぱ らプ リマ コフ効 果 に
リウ ム フ ラ ッ シ ュ が起 き る時 期,星
が水 平 分 岐 に と ど ま っ
て い る期 間(す なわ ち そ こ に あ る星 の 数)や 光 度 な どが ア ク シオ ン の 存 在 と結 合 の大 き さ に 応 じて 敏 感 に変 化 す る.特 に球 状 星 団 で は 多 くの 星 が さ ま ざ ま な 進 化 状 態 に分 散 分 布 を して お り,星 の 進 化 率 との 比 較 か らア ク シオ ン とフ ォ ト ン の結 合 定 数 に対 す る制 限 が 得 られ る.
(6.119a) (6.119b) 同 様 な 制 限 が,超 新 星SN
1987 Aで 観 測 され た ニ ュー ト リ ノバ ー ス トが 数 秒
間 あ っ た とい う事 実 か ら得 られ る21).た だ し今 度 は 芯 に あ る 中性 子 星 の ア ク シ オ ン閉 じ込 めや 開 放 過 程 を問 題 にす るの で,制 合 定 数 に か け られ る.ア
限 は ア ク シオ ン とハ ドロ ンの 結
ク シ オ ンが あ れ ば ニ ュ ー ト リ ノ の演 じる役 割 を 増 幅
し,バ ー ス ト時 間 を縮 め て し ま う.こ れ は 結 合 定 数 が小 さい と起 き る現 象 で あ る の で 結 合 定 数 に 対 す る下 限 を与 え る.一 方,結 合 が大 き くな る と,芯 に 捕 獲 さ れ る量 が 多 くな り冷 却 作 用 が 減 少 す る の で,あ
ま り大 き くて もい け な い .制
限は
(6.120a) と な る.し
か し,も
っ と 強 く な る と今 度 は ア ク シ オ ン そ の も の が ニ ュ ー ト リ ノ
と 同 じ く観 測 に か か る は ず で あ る の で 観 測 数 の 制 限 か ら22)
(6.120b) こ れ ら 結 合 定 数 の 制 限 は,(6.118)や る 制 限 に 換 算 で き る.天
図6.8
表6.2を
使 え ばfAも
体 物 理 学 に よ る 制 限 を 図6.8に
し く はmaに
対す
ま と め る19).
ア ク シ オ ン 質 量 の 実 験 や 天 体 物 理 学 の 考 察 か ら 禁 止 さ れ る 領 域(斜
線)
と許 され る領域19)(後 者 をア ク シオ ンの 窓 と い う).白 抜 きの 箱 は計 画 中 の 実 験 の 検 出可 能 領 域(§6.4.3参 照).
6.4.2
宇 宙 の 残 存 ア ク シ オ ン*6)
質 量 が10-2∼10-3eV以
上 あ る ア ク シ オ ン が 存 在 す れ ば,他
の粒 子 との 熱 的
平 衡 状 態 に お い て 生 成 さ れ て 今 日 ま で 残 っ て い る 可 能 性 は あ り(熱 ン),そ か し,宇
の 場 合 の 残 存 数(100/cm3)は 宙 を 閉 じ る に は ∼100eV程
*6) こ の §は
的 ア クシオ
背 景 輻 射 の フ ォ トン と 同 程 度 で あ る.し 度 の 質 量 が 必 要 で あ る が,そ
,宇 宙 論 の 知 識 を 必 要 と す る.宇 8.1∼8.4を 先 に 読 む こ と を薦 め る.
の く らい 重
宙 論 に 習 熟 し て い な い 人 は 第8章,特
に §
い と宇 宙 年 齢 よ り速 く崩 壊 して し ま うの で,熱 的 ア ク シ オ ン が 宇 宙 密 度 に相 当 程 度 寄 与 す る とい う可 能 性 は特 別 な ケ ー ス以 外 は 除外 され て い る.よ
り興 味 深
い の は,次 に 説 明 す る非 熱 的過 程 に よ る生 成 の 可 能 性 で あ る23). この 場 合,ア 階 は,宇
ク シ オ ンが 宇 宙 に 関 与 す る過 程 は2段 階 に分 け られ る.第1段
宙 温 度Tが
∼ υPQの と き に,σ の つ く るポ テ ン シ ャ ル
(6.121) に よ っ て,UPQ(1)対
称 を 担 う ヒ ッ グ ス σ が 真 空 期 待 値 を も つ と き で あ り,第
2段 階 は,T〓ΛQCDで
ア ク シ オ ン が カ ラ ー 異 常 項 を 感 じ始 め る と き で あ る.こ
の と き の実 効 ラ グ ラ ン ジ ア ン は
(6.122) の 形 を と る.θeffは
第1段 階 で 獲 得 し た 真 空 期 待 値 に 電 弱 相 互 作 用 相 転 移 に 伴
い 付 加 さ れ る ク ォ ー ク質 量 の 位 相 を 含 め た も の で あ る .ア
クシオ ンの質 量発
生 はT∼ΛQCDの
量 値 が確 定 す るの
はT≪ΛQCDに る.aは
頃 で あ り,質
量 は 時 間 と と も に 変 化 し,質
なっ て か ら で あ る.第1段
位 相 場 で あ る の で,真
値 を と り う る が,第2段
空 期 待 値/fAは-π
表 され る形 を と ∼+π
テ ン シ ャ ル の 谷 底((6.108b)を
ま り θeff)に 向 か っ て 動 き 始 め る の で あ る(熱
傾 斜 ア ク シ オ ン(misalignment
axion)と
満 た すの
的 ア ク シ オ ンに 対 比 して
い う23)).し
か し,勢
留 点 θ=θeffを 行 き過 ぎ て し ま い 振 動 運 動 を 始 め る.は わ ち 多 量 の ア ク シ オ ン の 集 団 的 運 動 に 対 応 す る.ア 常 項 に よ る ポ テ ン シ ャ ル に は,巻 が あ り,ど =0が
まで の 任 意 の
階 で ア ク シ オ ン に 質 量 が 発 生 す る と同 時 に 異 常 項 に よ
る ポ テ ン シ ャ ル を 感 じ て,ポ 値,つ
階 で σ は(6.112b)で
つ き数nに
テ ン シ ャ ル の 谷 底 の 付 近 で はΘ
古 典 的 な場 す な
クシ オ ンが 感 じ るカ ラー 異
よ り指 定 さ れ る だ け の 数 の 谷 底
こ に 向 か っ て 転 げ 落 ち る か は 不 定 で あ る が,こ
現 在 の 世 界 に 対 応 して い る こ と にす る
い あ ま っ て停
こ で は 簡 単 の た めn
.Θ(x)≡/fAと
お け ば,ポ
の 運 動 を 記 述 す る ラ グ ラ ン ジ ア ン は近 似 的 に
(6.123) と表 され よ う.膨 張 宇 宙 の も と で は 空 間 の ス ケー ルRも
また時 間の関数 であ
るが,そ
と変 え てΘ に対 す る
の 効 果 を 取 り入 れ る に は,作 用 を
運 動 方 程 式 を導 け ば よい.こ
こ にR(t)は
長 さ の 次 元 を もつ 量 で あ る.Θ
の膨
張 宇 宙 に お け る運 動 方 程 式 は
(6.124a) (6.124b) と書 け る.H(t)は,時 をTと
す れ ば,宇
∼T-1∼t1/2
,背
∼T-1∼t2/3の
刻tの
宙 初 期 の 輻 射 優 勢 の 時 代 は,ρ(エ
ネ ル ギ ー 密 度)∼R-4,
R
景 輻 射 が 切 り離 さ れ て 後 の 物 質 優 勢 の 世 界 で は,ρ∼R-3,
た,時
R
は,maは0で
あ り(6.124)の
解 はΘ=定
数 で
間 的 に 定 数 の み な ら ず 空 間 的 に も座 標 に よ ら な い 完 全 な 定 数 で
あ る こ と が い え る.な
ぜ な ら,場
エ 成 分 の 波 数kは,宇
所 依 存 性 を も っ て い た と し て も,そ
宙 膨 張 に 伴 っ て,T∼
完 全 に 赤 方 偏 移 して し ま う か ら で あ る.こ 0の ボ ソ ン の 集 合 体,す
υPQか らT∼ΛQCDに の 時 点 で,ア
め る.ma(t)≒H(t)でΘ (断 熱 近 似;dma/dt≪ma2),Θ
を 掛 け て,λ
クシ
ら有 限 に 成 長 し始
ゆ っ く り と成 長 す れ ば
は 減 衰 振 動 を す る.断
期 の 平 均<Θ2>=λ(t),
る.(6.124a)にΘ
ク シオ ン場 は運 動 量 が
値 は0か
は 振 動 を 開 始 す る が,maが
の フー リ
到 る まで に
な わ ち ボ ー ス 凝 縮 体 と 見 て よ い.T∼ΛQCDで,ア
オ ン が カ ラ ー 異 常 項 を 感 じ始 め る と と も に,maの
は,Θ2を1周
宙 温度
よ う に 変 化 す る こ と が 宇 宙 論 の 議 論 か ら 知 ら れ て い る(第8章
お よ び 文 献23)).T≫ΛQCDで あ る.ま
ハ ッ ブ ル 定 数 で 宇 宙 の 膨 張 率 を 表 す.宇
熱近 似 が成 立 す る とき
λ=(Θ2+ma2Θ2)/2で
置 き換 え れ ば 解 け
で 書 き直 す と
(6.125a) (6.125b) す な わ ち,ア
ク シ オ ン は 振 幅 が 宇 宙 の 膨 張 に 伴 っ て ∼R-3/2の
減 衰 振 動 を す る.ア
ク シ オ ン場 の もつ エ ネ ル ギ ー 密 度 は,振
よ うに 変 化 す る 動 の は じ ま る時 刻
をtoscと す る と,
(6.126a) CはΘ(0≦Θ<2π)の 0に 設 定 す る が,こ
初 期 値 で 決 ま る オ ー ダ ー1の こ で は こ の 値 が 重 要).t>toscで
数 で あ る(通
常 は便 宜 的に
は,
(6.126b)
で与 え られ,さ
らにT≪ΛQCDでmaの
=nama∼ma/R3の す な わ ち,ma(t)が ケー ルR3あ
値 がT=0の
値 に 落 ち つ い た 後 は,ρa
よ うに変 化 す る. 変 化 す る 時 期 を通 じ て,宇 宙 と と もに 膨 張 す る体 積 ス
た りの 数 は一 定 に保 た れ て い る こ とに な る.先 に 述 べ た よ う に,
ア ク シオ ン場 は運 動 量〓0の ボー ス 凝 縮 体 と して 振 る舞 い,振 動 は 多体 の 協 同 現 象 と して行 わ れ る*7).こ の 時 代 は ま だ 輻 射 優 勢 の 時 代 で あ り,宇 宙 の エ ネ ル ギー 密 度 は,∼R-4で
減 衰 す る の で,ア
め る相 対 比 が 急 速 に 成 長 し,fAが
ク シ オ ン の宇 宙 エ ネ ル ギー 密 度 に 占
大 き い と きは 現 在 の 宇 宙 エ ネ ル ギー 密 度 へ
の 寄 与 が 無視 で き な い.体 積 当 た りの 数 が 一 定 に保 たれ て い る の で 現 在 時 刻 と 温 度 をt0, T0と す る と,
(6.127) toscは,運
動 方 程 式 を 眺 め れ ば,
(6.128a) で 定 義 して よ いか ら,
(6.128b)*8) と し,ma∼mπFπ/fA((6.117)参
照),Tosc∼ΛQCD∼200MeVを
の ア ク シ オ ン の エ ネ ル ギ ー 密 度 ρaは,大
入 れ る と現 在
ざ っ ぱ に 見積 って
(6.129a) と な る.こ
の 密 度 が 現 在 の 宇 宙 の 臨 界 密 度 ρc=3H2(t0)/8π GNewton=11h2
keV/cm3を
超 え な い と い う条 件 か ら,
(6.130a) と い う制 限 が つ く.も
う 少 し詳 し い 議 論 に よ れ ば19,24),
(6.129) こ こ にΩa=ρa/ρc,Θ る.Θ2F(Θ)〓1と
は(6.124)のΘ と る と,fAへ
*7) ア ク シ オ ン 反 応 に よ O(eV)で
の 初 期 値 でF(0)=1,
F(π)=∞
で あ
の 制 限 は,
っ て,凝 縮 体 が 崩 れ て 熱 平 衡 状 態 に な ら な い か と の 心 配 は,ma〓 な い 限 り無 用 で あ る.凝 縮 体 か ら ア ク シ オ ン が 吸 収 さ れ て も,凝 縮 体 の 存 在 ゆ
え に 再 放 出 さ れ る25). *8) §8 .2式(8.25)参 照.
ま た は,
(6.130b)
で あ る.現 在 ア ク シオ ンの もつ 速 度 υaは,振 動 開 始 時 に もっ て い た ∼ma程 度 の 運 動 量poscが 赤 方 偏 移 し たposc(T0/Tosc)をmaで
割 った 量 で 与 え られ るか ら,
(6.131) で 与 え られ,完 全 に 静 止 状 態 に あ る とい え る.
6.4.3 ア ク シ オ ンの 探 索 a. ア ク シ オ ンの 所 在 地 ア ク シ オ ン の質 量 につ い て は,ま ず加 速 器 実 験 でO(keV)以 定 さ れ,そ れ 以 下 で も ∼1eV以
上 あ る と,前 節 で 議 論 した よ うに 種 々 の 天 体
現 象 と矛 盾 す る の で(図6.8),以
下 の 議 論 は,質
シ オ ン探 索 に 限 る.質 量 が0.1eV以 優 勢 で あ るが,そ
上 の質 量が否
量 が ほ ぼ ∼1eV以
下の ア ク
上 で は,熱 的 に 生 産 され る ア ク シ オ ンが
れ 以 下 で は傾 斜 ア ク シオ ンが 優 勢 とな る.ま た,太 陽 中心 で
は ア ク シオ ン が大 量 につ く られ て い る可 能 性 が あ る.質 量 が10-3eV以 れ ば 暗 黒 物 質 と して 存 在 す る可 能 性 が あ り,特 に10-5eV以
下 であ
下 の ときは 優 勢 な
暗 黒 物 質 とな る.質 量 は非 常 に ゼ ロ に近 い に もか か わ らず 非 相 対 論 的 で あ るの で冷 た い 暗 黒 物 質 と して振 る舞 う.輻 射 が 切 り離 され る以 前 で もア ク シオ ンは 輻 射 とほ とん ど相 互 作 用 を しな い か ら,物 質 優 勢 の 時代 に 入 れ ば重 力 作 用 に よ る ゆ ら ぎの 成 長 が 進 行 す る.し た が って,輻 射 が切 れ た と きは す で に ゆ ら ぎが 進 行 し,か な り強 い重 力 場 が 形 成 され て い る の で,バ
リオ ンが 急 速 に この 重 力
場 に捉 え られ て 銀 河 な どの構 造 形 成 が 進 行 す る の で あ る.冷 た い 暗 黒 物 質 で あ る か ら,現 在 の 銀 河 に も捉 え られ て い て ハ ロー と して 存 在 す るは ず で あ る.銀 河 の 回 転 運 動 か らハ ロー の エ ネ ル ギー 密 度 が 計 算 で きて,
(6.132) で あ り26),数 以 下,質
と し て は ∼3×1013/cm3×(ρa/450MeV/cm3)(10-5eV/ma)あ
量 領 域 で 異 な る検 出 法 の い くつ か を 述 べ る.熱
る.
的 ア ク シ オ ン の場 合
は,ア
ク シ オ ン 崩 壊 か ら の 単 色 γ を 見 る 方 法 が 可 能 で あ る.10-5eV以
は,ア
ク シ オ ン が 高 周 波 強 磁 場 の 中 で プ リマ コ フ 効 果 に よ り転 換 さ れ て で き る
フ ォ ト ン の 検 出 法 が 有 力 で あ る が27),そ
れ 以 上 で は,太
下 で
陽 中 心 で大 量 に 生 産 さ
れ る と 目 され る ア ク シ オ ン をや は り磁 場 の 中 でX線
に転 換 して検 出 す る 方 法
が 可 能 で あ る28,29). b. 望 遠 鏡 に よ る探 索 熱 的 ア ク シ オ ンの 宇 宙 エ ネ ル ギー に 対 す る寄 与 は 小 さ い が(Ω ∼0.01(ma/ eV)),寿
命 が 十 分 短 い の で(τ(a→2γ)∼1025sec(ma/eV)5),そ
れ る単 色 の 光 を探 索 す る.ア
の と き放 出 さ
ク シ オ ン は ビ リア ル 運 動(付 録B.4参
照)を す
る の で 完 全 な単 色 とは な らず 幅 を もつ が,Δ λ/λ∼10-2程 度 で あ る.予 想 され る強 度 は ほ ぼ地 表 で の夜 光 強度 と同程 度 で あ る.夜 光 雑 音 を除 去 す る ため 銀 河 集 団 に 捕 捉 さ れ て い る ア ク シオ ンに 注 目す る.こ の ア ク シ オ ンは 銀 河 集 団 と同 じ赤 方 偏 移 を示 す はず で あ り,銀 河 集 団 外 か らの光 を引 き算 す れ ば 雑 音 は消 え る が ア ク シ オ ンか らの 光 は残 る.キ 8300Aで3組 結 果,ア
ット 山 頂 望 遠 鏡 を 用 い,波
の 密 集 銀 河 団 を観 測 した が 単 色 光 は 見 つ か ら なかっ た30).こ の
ク シ オ ンの 質 量 領 域ma=3∼8eVで
た(図6.9参
長 領 域3100∼
モ デ ル を 否 定 す る結 果 が 得 られ
照).
c. 太 陽 ア ク シ オ ン探 索 太 陽 の 中 で は ア ク シ オ ンが プ リマ コ フ効 果 に よ り大 量 に 生産 さ れ る.地 球 で の フ ラ ッ クス 強 度 は太 陽 モ デ ル に あ ま り依 存せ ず に ∼1012cm-2s-1(ma/eV)2と 見 積 も られ て い る.こ の ア ク シ オ ン を 強 磁 場 の 中 に 通 す とプ リマ コ フ 逆 過 程 で,2∼20keV,平
均 ∼4keVのX線
を放 出 す る.電 磁 場 とはE・Bの
形で
結 合 す る の で,磁 場 の フ ォ トン の 偏 極 方 向 成 分 が 放 出 に 寄 与 す る.し た が っ て,太
陽 の 方 向 に対 して 垂 直 磁 場 をつ く り,ア ク シ オ ン が そ こ を通 り抜 け る際
転 換 され て放 出 す るX線
を検 出 す れ ば よ い.転 換確 率Pγ は 磁 場 の フー リエ 成
分 に 比 例 す る28).ほ ぼ 一 様 な磁 場 の場 合
(6.133a) Δqは
ア ク シ オ ン か ら フ ォ ト ンへ の 縦 運 動 量 移 行 で あ る.エ
る の で,pγ=ω=Eaと
ネ ル ギー は保 存 す
おいて
(6.134a)
と な る.ΔqL≫1で
は 振 動 が 激 し く な り転 換 率 は 小 さ く な る の で,観
な 長 さ はΔqLeff〓1で
与 え ら れ る.ω=4keVの
測 に有効
場合
(6.135) こ れ か ら,検
出 範 囲 は ほ ぼma〓0.03に
限 ら れ る が,ア
ク シ オ ン の 通 過 路 を誘
電 体 に す れ ば 質 量 の 大 き い 範 囲 ま で 拡 張 可 能 で あ る29).こ りpγ →npγ
と な る か ら,(6.134a)の
の場 合 誘 電 効 果 に よ
代 わ りに
(6.134b) を 使 用 し な け れ ば な ら な い.ωp2=4π で あ る.し (eV)く
た が っ てωp∼maに
ら い ま で は,有
な っ て,転
αne/meは
プ ラ ズ マ 振 動 数,Γ
は吸収率
な る よ う に 気 体 を 適 当 に 選 べ ば,maがO
効 長Leffを
実 用 的 な 長 さ に 保 持 で き る.こ
れ に とも
換率 も
(6.133b) に変 更 さ れ る.1気
圧 の ヘ リ ウ ム(ωp∼0.3eV)を
東 京 大 学 グル ー プ は,L∼2mの
使 っ て 実 験 し た例 が あ る31).
磁 石 を真 空 容 器 に 入 れ,太
き る 回転 台 に 載せ た磁 石 望 遠 鏡 を製 作 して,ア
陽の運動 に追随 で
クシ オ ン を探 索 した が信 号 は検
出 で き な か っ た32).こ の結 果 結 合 定 数 の 上 限 値 と して
(6.136) を 得 た.こ
れ は 球 状 星 団 の 水 平 分 岐(HB:
horizontal
れ て い る フ ラ ッ ク ス 制 限 に は 及 ば な い も の の,実 eV領
域 で 最 良 の 値 を与 え る(図6.9参
な お こ の ほ か に,ゲ
branch)考
察 よ り得 ら
測 デ ー タ と し て は10-1∼10-6
照).
ル マ ニ ウ ム の 結 晶 を使 い ブ ラ ッ グ 反 射 に よ り検 出 効 果 を
高 め た 検 出 器 を 用 い て 進 行 中 の 実 験 の 暫 定 デ ー タ を も 載 せ て あ る33). d. マ イ ク ロ 波 検 出 器 太 陽 ア ク シ オ ン と 同 じ く強 い 磁 場 の 中 で ア ク シ オ ン の 転 換 フ ォ ト ン を 検 出 す る が,10-5eV以 プ(増
幅 器)の
下 の 質 量 領 域 で 有 効 で あ る.こ
の 場 合,信
号 を抽 出す る ア ン
雑 音 レ ベ ル を ど こ ま で 下 げ ら れ る か が 勝 負 と な る.ア
て 高 速 電 子 移 動 トラ ン ジ ス タ ー(HEMT: を 使 用 し た 実 験 が 行 わ れ,限
high
electron
mobility
ら れ た 範 囲(ma=2.77∼3.3×10-6eV)で
ンプ と し transistor) は あ る
がKSVZモ
デ ル を 否 定 す る だ け の 感 度 を 得 た34).こ
子 干 渉 計SQUID
(super
conducting
quantum
の グ ルー プ で は 超 伝 導 量
interference
device)を
た 低 雑 音 の ア ン プ35)を 開 発 し た 改 良 実 験 が 進 行 中 で あ る.ま プ も,転 し,こ
た,京
使 用 し 都 グルー
換 フ ォ トン を励 起 し て リ ドベ リー 原 子 と し た 上 で 検 出 す る 方 法 を 開 発
れ ま た 実 験 が 進 行 中 で あ る36).ど
ち ら もKSVZの
ル 限 界 ま で 到 達 で き る 感 度 を 備 え て お り,近
図6.9
デ
い うち に ア ク シオ ンが 暗 黒 物 質 の
有 効 成 分 か ど う か を 検 証 で き る で あ ろ う.図6.10に 数 が 大 き い 原 子;n〓40)の
み な ら ずDFSZモ
リ ドベ リー 原 子(主
量 子
遷 移 を 利 用 す る 検 出 器 を 示 す36).
ア クシ オ ン探 索 か ら得 られ た結 合 定数gaγγの 上 限値
ア ク シ オ ン の 記 述 を 終 え る に あ た り,ア
ク シ オ ン の 主 な性 質 を ま とめ て お
く. (1) 強 いCP問
題 の 解 決 策 と し て 理 論 的 な 存 在 理 由 が あ る.
(2) ス ピ ン パ リ テ ィ0-の (3) 真 空 期 待 値fAを
擬 ス カ ラ ー 粒 子 で あ る.
決 め れ ば,ア
(4) 質 量 はma∼Fπmπ/fAで
ク シ オ ン の 基 本 的 性 質 は ほ ぼ 決 ま る.
与 え ら れ る.
(5) ク ォ ー ク と の 結 合 の 強 さ は∼mq/fAで
あ る.
(6) 電 磁 場 と はE・Bの
形 で 結 合 し,そ
の 強 さ はgaγγ∼ α/(πfA)で あ る.
(7) 電 子 と の 結 合 は モ デ ル に 依 存 す る が,最 る.ク
低 限(6)を
通す結 合 は存在す
ォ ー クと 同 程 度 に 結 合 が 強 い モ デ ル も 存 在 す る.
(8) ma=10-5∼10-6eVの
と き は ア ク シ オ ン が 暗 黒 物 質 の優 勢 な成 分 の 可
能 性 が あ る.
図6.10 ア ク シ オ ン は 生 成 用 空 洞(Conv.
ア ク シ オ ン検 出器 の例36) cavity,共 鳴 周 波 数2.5±20%GHzで7Tの
場 中 に あ る)内 で フ ォ トン に 転 換 さ れ,検 出 用 空 洞(det. cavity)に リ ドベ リー 原 子(主 量 子数n)を 励 起 す る.励 起 さ れ た 原 子(n+1)は さ れ,Ceratronで
検 出 され る.リ
ドベリー 原 子 は,ま
磁 移 さ れ て, イ オ ン化
ず イ オ ン源 か らの 原 子 を
加 速 し た後,Neutralizerで 中性 原 子 に も ど し レー ザ ー に より3段 階 で,n≒40 の 準 位 に励 起 され る.励 起 準 位 は電 極 に より シュ タル ク効 果 で 微 調 整 を行 う.全 空 洞 は10mKに 冷 や され,検 cel. coil)を 巻 い て あ る. 8〓ma〓12μeVの
範 囲 のKSVZは
出用 空 洞 に は磁 場 を消 す ため の補 正 コ イ ル(Canも ち ろん の こ とDFSZア
る に 十 分 な 感 度(g2aγγ〓10-30GeV-2)を
有 す る.
ク シ オ ン を も検 出 す
6.5 電 弱 相 互 作 用 の 相 転 移 とバ リ オ ン 数 非 保 存22,37)
イ ン ス タ ン トン効 果 の 興 味 あ る一 つ の 帰 結 は,電 弱 相 互 作 用 に お け る相 転 移 に お い て,バ
リオ ン数 保 存 が 成 立 しな くな る こ とで あ る.電 弱 相 互 作 用 で は,
バ リオ ン数(ク
ォー ク数)お
よ び レプ トン数 の グ ロー バ ル 対 称 が 存 在 す る.し
か し,電 弱相 互 作 用 が カ イ ラ ル カ レン トに 結 合 す る こ とか ら,カ イ ラル 異 常 項 に よ りバ リオ ン数 お よび レプ トン数 保 存 が 破 れ る.バ
リオ ン お よび レプ トン カ
レ ン トは,
(6.137) で 定 義 さ れ る.カ き る が,ア ジ(Y)を
レ ン トは,∂ μJμ=∂μJLμ+∂μJRμと カ イ ラ ル 成 分 に よ り分 解 で
イ ソ ス ピ ン ゲ ー ジ カ レ ン トはJLμ に の み 結 合 す る.ハ 担 う ゲ ー ジ ボ ソ ンBμ
も ま た,Y=2(Q-I3)と
ア イ ソ ス ピ ン 部 分 がJLμ に 結 合 す る.JLμ
イパ ー チ ャ ー
い う関 係 式 を通 じて
は カ イ ラ ル 異 常 項 を 含 む か ら,
(6.138)
(6.138)の
右 辺 は 全 微 分 の 形 で 書 け る の で((6.50)参
の 寄 与 は な い が,非
照),ア
ア ー ベ ル ゲ ー ジ 場 の 場 合 に つ い て は,イ
ー ベ ル ゲ ー ジ場 ン ス タ ン ト ン効 果
に よ り,
(6.139) た だ し,J4=iJ0,
x4=itを
使っ た.こ
る 空 間 を バ リ オ ン が 運 動 す る と,Ng=3と
の こ と か ら,イ
ン ス タ ン トンが 存 在 す
して
(6.140a) とバ リオ ン 数 が 保 存 さ れ な い.レ
プ トン に つ い て も ま た バ リ オ ン と 同 じ議 論 が
で き る か ら,
(6.140b) た だ し,
(6.141)
は 成 立 し て い る. イ ン ス タ ン トン に よ る 遷 移 確 率 は,
(6.142) 程 度 で あ る か ら,バ
リオ ン 数 も し くは レ プ トン 数 保 存 が 破 れ る 確 率 は 非 常 に 小
さ く,物 理 的 に あ ま り意 味 は な い.し 状 態 で の 遷 移 確 率 で あ り,エ
か し,イ
ン ス タ ン ト ン は,温
ネ ル ギー が 電 弱 相 互 作 用 ポ テ ン シ ャ ル に 比べ て 大
き い と き は 遷 移 確 率 も 大 き い と考 え ら れ る38).興 ∼1TeVの 際,ポ
頃で
,イ
度T=0の
味 が あ る の は,宇
宙 初 期T
ン ス タ ン ト ン の 励 起 状 態 も た く さ ん あ る と考 え ら れ る.実
テ ン シ ャ ル の 頂 上 に 位 置 す る ス フ ァ レ ロ ン(sphaleron)と
つ け ら れ て い る39).も ΔB≠0の
統 一 期(エ
述 §8.5.1)は
保 存 す る の で,B-Lを
(た と え ばSO(10)大
い う解 が 見
宙 が 熱 平 衡 状 態 に あ る と き に,こ
反 応 が 存 在 す る と,大
バ リ オ ン 非 対 称(後 B-Lは
し,宇
のよ うな激 しい
ネ ル ギ ー ∼1015GeV)に
完 全 に 失 わ れ る.し
生 まれ た
か し,こ
の 場 合 で も
破 る よ うな 過 程 で 生 まれ た バ リオ ン 数 非 対 称
統 一)は
生 き 残 る 可 能 性 が あ る.ま
に バ リ オ ン 数 非 対 称 の 生 成 を 求 め る 動 き も あ り,非
た,こ
の相 転移 時期
常 に 活 発 な研 究 の 対 象 と
な っ て い る.
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7 磁 気 単 極 子(モ
ノ ポ ー ル)1∼3)
磁 石 の 北 と南 は分 け られ な い もの で あ ろ うか?
こ の素 朴 な 疑 問 は,電 磁 気
を学 習 す る と き,磁 荷 を導 入 す る と磁 気 の 法 則 と電 気 の法 則 が ほ とん ど1対1 に 対 応 す る こ と を知 る と一 層 強 くな る.単 独 の 磁 荷(磁 気 単 極 子 ま た は モ ノ ポ ー ル と もい う)を 探 そ う とす る試 み は,デ
ィ ラ ッ クが 磁 荷 が あ る と電荷 が 量
子 化 され る こ とを示 して か ら急 速 に 高 ま っ た.宇 宙 線 の 中 か ら探 し た り,物 質 に捕 捉 さ れ て い る可 能 性 を探 っ て古 い鉱 石 や隕 石,月 ろ 試 み ら れ た.1974年 Polyakov)が
に,ト
・フー フ ト(G.
の 石 を採 取 し た りい ろ い
t'Hooft)と
ポ リヤ コ フ(A.M.
大統一 対称性 の破 れに伴 いモ ノポール が必然 的 に出現 す る こ と
を 示 し て4),モ ノ ポー ル に 対 す る認 識 が 大 い に 変 わ っ た.大 統 一 モ ノ ポー ル は,質 量 が ∼1016GeVと
素 粒 子 と して は極 端 に 重 くバ ク テ リア 並 の質 量 を も
つ の で,地 表 付 近 程 度 の重 力 で も原 子 か らの 電 磁 力 に勝 つ.し
た が って,モ
ノ
ポー ル は 物 質 に 捕 獲 さ れ る こ とは な く,地 球 に 降 っ て き た モ ノ ポ ー ル は その ま ま 自由 落 下 す る.物 質 と束 縛 状 態 を つ くれ ば 物 質 は モ ノ ポー ル に 付 着 して 動 く.モ ノ ポー ル をつ な ぎ止 め られ るの は地 球,星,銀
河 な ど の 巨大 天体 の み で
あ る.こ の モ ノポ ー ル は 空 間 的 に 広 が りを もち,デ
ィ ラ ッ ク モ ノ ポー ル す なわ
ちマ クス ウ ェ ル 方程 式 の 中 の 点 電荷 に 対 応 す る点 磁 荷 とは 大 い に異 な る構 造 を もつ.そ
こ で,ト
・フー フ ト-ポ リヤ コ フ の モ ノ ポー ル を学 ぶ 前 に,デ ィ ラ ッ ク
モ ノポール につ い て 学 習 して両 者 の 類 似 点 と差 をみ よ う.つ い で,大 統一 モ ノ ポ ー ル が 存 在 す べ き理 由 を調 べ,モ
ノ ポー ル 探 索 状 況 を概 観 す る.古 典 的
(デ ィ ラ ッ ク)モ ノ ポー ル探 索 結 果 につ い て は 省 略 す る.
7.1
デ ィ ラ ック モ ノポ ール
磁 荷 を導 入 す る とマ クス ウ ェ ル 方程 式 の電 場Eと る.デ
ィ ラ ッ ク は,も
し点 磁 荷gが
対 称 性 が よ くな
存 在 す れ ば 点 電 荷eと n=整
な る 関 係 に あ る こ と を 証 明 し た5).こ 原 点 に あ る と し よ う.磁
磁 場Bの
数
(7.1)
れ を 見 る た め に,い
ま 大 き さgの
磁荷 が
場Bは
(7.2) この 解 は点 電 荷 に よ る 電場 と同 じ く動 径 方 向 を向 き,強 さ は クー ロ ン法 則
(7.3) で 表 され る.r=r/rで
あ る.こ の と き原 点 を通 り半 径rの
球 面 を 貫 く全 磁 束
Φ は,
(7.4) で 表 され る.い ま,こ の 磁 場 中 の 道 筋cを
通 って 運 動 す る電 荷eの
粒 子波動
関 数 を考 え る.電 磁 場 が な い と きの シ ュ レー デ ィ ン ガー 方 程 式 の解 をψ(r)と す れ ば,電 磁 場 が あ る と き の シュ レー デ ィ ン ガ ー 方 程 式 は,p→p-eAと き換 え て得 られ,対
置
応 す る波 動 関数 は
(7.5) と な る こ と は,実 筋cと
し て,原
え よ う.一
際 に シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 方 程 式 に 代 入 し て み れ ば わ か る.道 点 か ら 見 て,半
*1) ガ ウ ス 単 位 系 で は
曲 線cで
φ≦2π の 閉 曲 線 を考
囲 ま れ る 面 を 貫 く磁 束)≡eΦ(r
,eg=h(n/2)で
と す れ ば よ い.MKS有 cm2ま
角 θ,方 位 角0≦
周 し て 元 に 戻 っ た と き の 位 相 変 化Δ α は,
=e×(閉
表 す)の
径r,極
値 は4.14×10-15ウ た は20.6KeV/G/cmと
あ る.有
(7.6)
理 単位 系 か らガ ウ ス単位 系 に移 るに は
理 単 位 系 で は,n=1の エ ー バ ー で あ り,ま も 書 け る.Gは
,θ)
磁 荷(以
下 デ ィ ラ ッ ク 磁 荷 と い いgDで
た 適 当 に 単 位 を 選 ぶ とgD=4.14×10-7G ガ ウ ス で あ る.
θ=0の
と き は,面
を 貫 く磁 束 は な い か ら
(7.7a) で あ る.一
方,θ
→
π に も っ て ゆ く と(7.4)か
ら,
(7.7b) とこ ろ で θ→ π の極 限 で 閉 曲 線 は点 に 縮 む か ら,磁 束 が 有 限 値 を もつ 事 実 は ポ テ ン シ ャ ルAが
θ=π で 特 異 点 とな って い る こ とを 意 味 す る.上 の 議 論 は
rの い か な る値 に も成 り立 つ か ら,結 局 特 異 点 は,負 の全z軸
に沿 って存在 し
て い るこ とに な る.こ れ は デ ィ ラ ッ クの 紐 とい わ れ る.空 間 の 回 転 対 称 性 か ら 紐 は どの 方 向 に あ っ て も よ く,ま た連 続 で あ る限 り必 ず し も直 線 で あ る必要 も な い. 波 動 関 数 の 連 続 性 を 要 求 す る とΔαは2π の 整 数 倍 で な い とい け な い か ら, eg=2πnと
な り,デ ィ ラ ッ クの 量 子 化 条 件(7.1)が
ル ゲ ー ジ群U(1)の
導 け た.電 荷eは
ア ーベ
保 存 量 で あ り原理 的 に連 続 値 を と る こ とが 許 さ れ るの に 自
然 界 で は量 子 化 され て い る.点 磁 荷 が 自然 界 に存 在 す れ ば,デ は これ に対 す る説 明 を 与 え る.た だ し,今
ィ ラ ッ クの条 件
日で は む し ろ,電 磁 気 を生 む 対 称 性
が 非 ア ー ベ ル 群 の 一員 で あ る こ とに よ り量 子 化 さ れ る と考 え ら れ て い る(§ 5.1.2参 照). 磁 荷 が つ くる磁 場 を与 え るベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル は次 式 で 与 え られ る.
(7.8) 極座標 表示 では
(7.9a) こ れ は,期 待 した よ う にr=-zに
沿 っ て正 則 で な い.デ
間 回転 に よっ て 移 動 で き る.特 異 点 を 移 動 して,r=zに
ィ ラ ッ ク の紐 は 空
沿 っ た 線 に も って ゆ
くこ と も可 能 で あ る.そ の 場 合 の ポ テ ン シ ャ ル は
(7.9b) で 与 え ら れ る.し た が っ て,デ
ィ ラ ッ ク の 紐 は 物 理 的 に 意 味 の あ る量 で は な
い.物 理 的 に 意 味 の あ る特 異 点 は 磁 荷 が 存 在 す る と こ ろ,す
な わ ちr=0で
あ
る.デ ィ ラ ッ ク の紐 に よ る特 異 点 を除 くため に 次 の よ う に考 え る6).磁 荷 を囲
む 球 面 を,そ
れ ぞ れ 南 極 と北 極 に 穴 の
空 い た 二 つ の 領 域SaとSbと る(図7.1).空
間Sa(Sb)上
ル ポ テ ン シ ャ ルAa(Ab)は (7.9a) す る.明
(7.9b)で
に分 け のベ ク ト そ れ ぞ れ
定 義 さ れ て い る と
らか に ど ち らの ポ テ ン シ ャル
も そ れ ぞ れ の 領 域 内 で 正 則 で あ る.重 な る領域 で は二つ の 異 な っ た ポ テ ン 図7.1 デ ィ ラ ッ クの 紐 の 特 異 点 を避 け る方 法 SaとSbで 囲 ま れ る二 つ の 領 域 に 分 け,重 な
シ ャ ル が 存 在 す る こ と に な る が,同
る領 域 で は ゲ ー ジ変 換 でつ な ぐ.
物 理 を 記 述 す る な ら ば 両 者 は ゲ ー ジ変
じ
換 で つ な が って い る は ず で あ る.変 換 式 は容 易 に計 算 で きて
(7.10a) (7.10b) Uが
φ→ φ+2πnで1価
で あ る こ とを 要 求 す れ ば,デ
ィラックの量子化 条件
を再 現 す る. (7.9)が 確 か に 磁 荷 の つ くるベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル とな っ て い る こ と を示 す た め,磁 荷 を 囲 む 球 面 を貫 く全 磁 束Φ が 正 し い値gを み る.領 域SaとSbの
与 え る こ と を確 か め て
重 な りを な くし,赤 道 面 で 接 す る と し よ う.そ の と き
(7.11) す な わ ちポ テ ン シ ャ ル に 特 異 点 は な い が,θ=π/2の
平 面(よ
り一 般 的 に は 磁
荷 を含 む 平 面)で 不 連 続 に な って い る.こ れ を(ゲ ー ジポ テ ン シ ャ ル の)ト ポ ロ ジー の 欠 陥(defect)と
い う.磁 荷 は トポ ロ ジー の 欠 陥 が あ る と こ ろ に 生 じ
る とい う言 い 方 をす る こ と もあ る. 磁 荷(デ
ィ ラ ッ ク モ ノ ポー ル)は 存 在 す る とT保
これ は,電
流 に よ り生 成 さ れ る磁 場 がT変
に よ り生 成 さ れ る磁 場 は 式(7.3)を か らわ か る.P変
存 則 とP保
存 則 を 破 る.
換 で 方 向 を変 え るの に反 し,磁 荷
見 れ ば わ か る よ う に 方 向 を変 え な い こ と
換 に 対 して も同 様 な考 察 が で き る.こ れ は 次 に 述 べ る ト ・
フー フ トーポ リヤ コ フ の モ ノポ ー ル が 有 限 な サ イ ズ を も ちP, T対 す る の と大 い に 異 な る.デ
称 性 を尊 重
ィ ラ ッ クの モ ノポ ー ル は,電 荷 の 量 子 化 条 件 や 存 在
す れ ば マ ク ス ウ ェ ル の 方 程 式 が,e〓g,
E〓Bの
双 対 称 性 を もつ な ど の 審 美
的 な理 由 に よ り,昔 か ら探 索 され て き た.し か し,デ ィ ラ ッ ク モ ノ ポー ル に は 存 在 し なけ れ ば な ら な い とい う必 然 性 は な い.一 方,ト
・フー フ ト-ポ リヤ コ フ
モ ノポ ー ル は大 統 一 理 論 が 正 しい な ら ば 存在 し な け れ ば な ら な いの で,実 験 的 に 追 求 す る価 値 が あ る.
7.2
ト ・ フ ー フ トーポ リ ヤ コ フ モ ノ ポー ル
7.2.1 は りね ず み ポ テ ン シ ャル 前 章 で2+1次
元 空 間 に ヒ ッグ ス 場 と電 磁 場 が 共 存 して,ゲ ー ジ不 変 性 が 破
れ る と ソ リ トンが 現 れ,そ て3+1次
れ が 量 子 化 さ れ た磁 束 を表 す こ とを見 た.し た が っ
元 空 間 の ソ リ トン と して モ ノ ポー ル が 現 れ る で あ ろ う とい う期 待 を
抱 か せ る.ソ
リ トンが 存 在 す る た め に は,縮 退 真 空 が 存 在 しな い とい け な い.
縮 退 真 空 をつ くるた め に 自発 的 に 対 称 性 を こわ した後 に も,電 磁 場 が 存 在 す る ため に はU(1)対
称 性 が 残 っ て い な い とい け な い か ら,モ ノ ポー ル と電 磁 場 が
共 存 す る た め に は,出 発 点 と して はU(1)よ
り大 きい 対 称 性 を もつ 場 を採 用 し
な け れ ば な らな い.す な わ ち 非アーベルゲージ
場 を考 慮 しな け れ ば な ら な い.
3次 元 空 間 に 物 質 場 とヤン-ミルズ 場 が 共 存 し,対 称 性 の 自発 的破 れ が 発 生 す る と,ソ
リ トン場 と し て の モ ノ ポー ル が 出 現 す る こ と を,SO(3)対
合 に つ いて 示 そ う.ア イ ソ ス ピ ン1を ア イ ソ ス ピ ン1を
称 性 の場
もつ ヒ ッ グ ス場 φa(a=1,2,3)と
やは り
もつゲージ 場Faμν が 共 存 し縮 退 真 空 をつ くる と き の ラ グ ラ
ン ジ ア ン は,
(7.12a) (7.12b) (7.12c) (7.12d)
で 与 え ら れ る*2).こ
れ よ り運 動 方 程 式 を つ く る と,
(7.13a) (7.13b) 静 的 な 解 を 扱 う た め ゲ ー ジ 場 の 時 間 成 分 を ゼ ロ と お く ゲ ー ジ(temporal gauge)を
採 用 す る.ゲ
ー ジ 場 を こ の よ う に 設 定 で き る こ と は §6.1.5で
し た.ソ
リ トン が 存 在 す る た め に は,エ
い.r→
∞ で,V(φ), Faμν,
た さ れ る の で,次
議 論
ネ ル ギー 積 分 が有 限 で な け れ ば な ら な
Dμ φaの 各 項 がO(1/r2)で0に
の よ う な 境 界 条 件 を 設 定 し,関
なれ ば条件 は満
数G(r),
H(r)を
次式 で定義
す る.
(7.14a) (7.14b) r≡r/rは
動 径 方 向 の単 位 ベ ク トル で あ る.H,
Gは 境 界 条 件
(7.15a) (7.15b) を 満 た す も の と す る.こ
の φ やAμ
は 動 径 方 向 を 向 き,ア
イ ソス ピン空間 の
成 分 と時 空 の 成 分 が 混 合 す る と い う き わ め て ユ ニ ー ク な 特 徴 を も つ.rの に と も な っ て ア イ ソ ス ピ ン 空 間 で も あ ら ゆ る 方 向 を 向 く.ポ 針 ね ず み(hedgehog)と FaμνはO(1/r2)で
呼 ん だ.ゲ
あ る.r→
リヤ コ フ は こ れ を
ー ジ ポ テ ン シ ャ ル はO(1/r)で
∞ でDiφa=0と
な る こ と は,実
動 き
あ るか ら
際 に 計 算 して み
ると
(7.16) で あ り,確
か に そ う な っ て い る.これ
の 存 在 の た め の 必 要 条 件(縮 と は,G(r), こ こ で,Faは
H(r)の
で,r→
∞ で φ→ 定 数 と な り ソ リ トン
退 真 空 とエ ネ ル ギ ー の 有 限 性)が
設 定 で き た.あ
満 た す 運 動 方 程 式 を 解 く問 題 に な る.
ヤ ン-ミ ル ズ 場 で あ り ア イ ソ ス ピ ン 空 間 で3成
分 を も つ が,
対 称 性 が 自 発 的 に 破れ た と き通 常 の 電 磁 場 に な る よ う に 設 定 す る.物 解 しや す い よ う に,以
下 φ(r→
∞)=φU=(0,0,υ)と
*2) 非 ア ー ベ ル 場 ゲ ー ジ 変 換 の 詳 細 に つ い て はⅡ-第2章
理 的 に理
設 定 す る ユ ニ タ リー ゲ ー を参 照 せ よ
.
ジ で 考 察 す る.こ
の と き ア イ ソ ス ピ ン 第3軸
の 周 りの 回 転 は 真 空 を不 変 に 保 つ
か らF3μν が 電 磁 場 と な る.F1,2μν は 電 荷 を も つ ゲ ー ジ 場 で(W± に す る),ヒ
ッ グ ス の 第1,
ジ でF3μν を 拾 い だ し,か
2成 分 を 吸 収 し て 質 量 を 獲 得 す る.ユ
と呼 ぶ こ と ニ タ リー ゲ ー
つ アー ベ ル 電 磁 場 に な る よ う にす るた め に
(7.17) と お く,ユ
ニ タ リー ゲ ー ジ で は
とな る の で,第3項
を除 去 す る た め ユ ニ タ リー ゲ ー ジ でA3μ の み が 拾 い 出せ
る よ うな 組 み 合 わせ
(7.18) を つ く り,Fμν と の 関 係 式 を 求 め る と
(7.19) が 得 られ る.通 常 の 電磁 場 の 関係 式 とは第3項
の付 加 項 だ け 異 な るが,対 称 性
が 自発 的 に破 れ て φ が ア イ ソ ス ピン 空 間 で 固定 され れ ば 消 え るの で,こ
のAμ
とFμνを もっ て 電 磁 場 と同 一 視 して よい で あ ろ う. こ こ で 設 定 し た φ=φUは,(7.14)で な るが,両
与 え た φ=φc=υ(x/r,y/r,z/r)と
異
者 は φ空 間 の 回 転 す な わ ち ゲ ー ジ変 換
(7.20a) (7.20b) で 結 び つ い て い る.taはSO(3)の で の ポ テ ン シ ャ ル を,(7.9)で い と お い て,AU1,2μ=0,
生 成 演 算 子 行 列 で あ る.ユ
定 義 し た デ ィ ラ ッ ク ポ テ ン シ ャ ルADμ
AU3μ=ADμ, g/4π=1/eを(7.20b)に
ね ず み ポ テ ン シ ャ ル が 得 ら れ る.針
の 電 磁 場 が い くつ あ る の か,ど
に等 し
入 れ れ ば,針
ね ず み ポ テ ン シ ャ ル は,∂iAai=0を
す か ら ク ー ロ ン ゲ ー ジ で の ポ テ ン シ ャ ル で あ る.ク
い が,ユ
ニ タ リー ゲ ー ジ
ー ロ ン ゲ ー ジ で は,質
満 た 量0
の組 み合 わ せ が 電 磁 場 に な る の か な ど明 確 で な
ニ タ リ ー ゲ ー ジ で は 物 理 的 解 釈 が 容 易 で あ る.(7.17)で
Fμνは ゲ ー ジ 不 変 な 形 を し て い る か ら,ユ
定 義 した
ニ タ リー ゲ ー ジ で 物 理 的 描 像 を 理 解
した 後 で計 算 は クー ロ ンゲ ー ジ で行 っ て も物 理 的 結 果 は変 わ らな い. こ こ で,漸
近 形(7.14)を
入 れ る とAμ=0と
ヒ ッ グ ス場 か らの み とな り,電 磁 場 のr→
な るの で電 磁 場 へ の 寄 与 は
∞ での漸近形 は
(7.21) とな る.す な わ ち,電 場Eが
存 在 せ ず,動 径 方 向 の磁 場
(7.22) が 存 在 す る.磁
荷 の 値 はg=4π/eで
倍 の 値 で あ る が,こ
れ はSO(3)が2重
で(付
照)一
録(A.18)参
ば,SO(3)対 は,ア U(1)変
あ る.デ
連 結 の 群 構 造 を もつ こ とに 由 来 す るの
般 的 に 成 り 立 つ 話 で は な い.物
称 性 が 破 れ て φ=(0,0,υ)に
イ ソ ス ピ ン 空 間 第3軸 換exp
ス ピ ン1/2の
(iαQ)を
与 え る か ら,Q=I3で
理 的 な 言葉 で 言 え
な っ た と き残 って い る対 称 性 演 算
の 周 り の 回 転exp
物 質 場 が も つ 電 荷Q=e/2と
な る の で あ る.一
ィ ラ ッ ク モ ノ ポ ー ル 磁 荷gDの2
(iαI3)で あ る.こ あ る.電
な る の で,磁
れが電磁 場の
荷 の最 小 単 位 は ア イ ソ 荷 の 最 小 単 位 が2gDに
般 に 磁 荷 の 最 小 単 位 は ゲ ー ジ 群 の 構 造 に 依 存 し,可
能な最小
電 荷 の 逆 数 の2π 倍 と な る*3).
7.2.2
モ ノポ ー ル の 質 量
こ の モ ノ ポ ー ル は デ ィ ラ ッ ク の モ ノ ポ ー ル と は 違 う.r→∞
で 磁 荷 と同 じ
磁 場 を つ く る か ら モ ノ ポ ー ル と い う名 前 を 与 え ら れ て い る が,r〓1/eυ 磁 荷 と は 異 な る 磁 場 を つ く る.ま
た,ト
領 域 で 正 則 で あ る こ と を 示 し た.λ →0の る7).す
な わ ち,デ
・フ ー フ トはG(r),
の磁 場 をつ くるポ テ ン
お い て も正 則 で あ る.特
で ヒ ッ グ ス 場 に 吸 収 さ れ た こ と に な る.モ
変数 の全
極 限 で は 解 析 的 な 解 も求 め ら れ て い
ィ ラ ッ ク の モ ノ ポ ー ル と 違 い,こ
シ ャ ル は 特 異 点 を も た ず,r=0に
H(r)が
では点
異点 はゲー ジ変換
ノポ ー ル の 質 量 は数 値 的 に 計 算 す る
こ と が で き て8), (ベ ク トル ボ ソ ン の 質 量)
*3) 閉 じ 込 め が あ れ ば こ の 限 り で は な い .
(7.23)
で 与 え ら れ る.こ
こ で ベ ク トル ボ ソ ン とは,対
得 し た ゲ ー ジ 粒 子W±
を 指 す.も
に 大 統 一 ス ケ ー ル ∼1015GeVで GeVと
称 性 の 破 れ に と もな い 質 量 を獲
し対 称 性 の 自 発 的 破 れ が,後 起 き る な ら ば,モ
に述べ るよ う
ノ ポ ー ル の 質 量 は ∼1017
な り 非 常 に 大 き い.
7.2.3 磁
流
も と も との ラ グ ラ ン ジア ン に は 電荷 しか 存 在 し な い の に,ど ル が 存 在 す る よ うな場 の 配 置 が 構 成 で き た の で あ ろ うか? を探 る た め に,磁
う して モ ノ ポ ー
モ ノポ ー ル の起 源
流(磁 荷 の 流 れ)を 次 式 で定 義 す る9).
(7.24) これ は,マ
ク ス ウ ェ ル の 方 程 式 で 電 流Jμ が
を 満 た す の で,E〓Bの 方 程 式 で は,Kμ
置 換 に よ り磁 流 を 定 義 す る の で あ る.マ
は 恒 等 的 に ゼ ロ で あ る.(7.19)か
クスウェル
ら,
(7.25) が 導 け る.こ
こ で,φ=φ/│φ│を
さ せ て い る こ と が わ か る.し
定 義 し た.す
な わ ち,磁
流 は ヒ ッ グ ス場 が 発 生
か も 上 の 形 か ら わ か る よ う に,磁
流 は 保 存 す る.
(7.26) こ れ は,前 章(6.18)で
導 い た キ ン ク の トポ ロ ジー 荷 と同 じ く トポ ロ ジー す な
わ ち境 界 条 件 で保 存 す る カ レ ン トで あ り,対 称 性 の 存在 か ら導 け る ネー ター カ レ ン トで は な い.モ
ノポー ル は 二 つ の 真 空 に ま た が る解 な の で トポ ロ ジ ー 的 に
安 定 な 構 造 を もつ の で あ る.保 存 量 をQMと
書 きg=4π/eを
入れ れば
(7.27) こ れ は,(A.13)で QM=ngを (7.25)を
定 義 し た ホ モ ト ピ ー ク ラ ス を 指 定 す る 巻 つ き 数 で あ り,
与 え る.φ=φUの
と きn=0,φ=φcの
眺 め れ ば 磁 流 は3個
る こ と が わ か る.ユ
と きn=1を
与 え る.
の ヒ ッ グ ス粒 子 の 複 合 体 に よ りつ く ら れ て い
ニ タ リー ゲ ー ジ で 考 え れ ば,モ
ノ ポ ー ル はW±
ヒ ッ グ ス 粒 子 の 複 合 体 で あ る とい う イ メ ー ジ が は っ き りす る.
と中性
7.2.4 モ ノポ ー ル の 存 在 条件 上 記 の議 論 は,SO(3)対
称 性 が 自発 的 に 破 れ てU(1)対
称 性 が残 る と き,モ
ノ ポー ル が発 生 す る こ と を示 した もの で あ る.し か し,残 念 なが ら 自然 の 尊重 す る ゲ ー ジ対 称 性 はSO(3)で
は な い.そ
こ で,モ
ノ ポ ー ル が 存 在 す る ため に
対 称 性 に 課 せ られ る 条 件 を 調べ て み よ う(付 録Aの
議 論 参 照).モ
ノポー ル が
存在 す る た め の 条 件 は縮退真空 が 存 存 す る こ と,す な わ ち
(7.28) を 満 た すυ の 値 が 複 数 個 存 在 す る こ と で あ る.今,対 場 と ヒ ッ グ ス 場 が あ り,対 る と き,残
称 性Gが
さ れ た 対 称 性 をHと
分 だ け あ る.こ
す る.υ
・φ=υ2を
間 で あ る.し (S2)へ
の 選 び 方 はGか 呼 びG/Hで
取 り除 い た
表 す.G=SO(3)で
は, の 空 間 は,
な わ ちSO(3)/U(1)はS2と
は 時 空 の 球 面 で あ る か ら,そ
た が っ て(7.28)は,SO(3)/U(1)の
の 写 像 を 表 す.異
らHを
満 た す φ の 自 由 度 だ け あ っ た.そ
3次 元 φ 空 間 の 中 の 球 面 で 表 さ れ る.す ロ ジ ー を もつ.r=∞
満 たす ゲー ジ
自発 的 に 破 れ て φ が 上 記 の 真 空 配 位 を と
れ を 剰 余 空 間(coset)と
真 空 配 位 の と り方 は,φ
称 性Gを
同 じ トポ
の 自 由 度 は や は りS2の 場 合,時
空(S2)→
空
群 空 間
な る 写 像 が 連 続 変 換 で 互 い に 一 致 さ せ ら れ る と き,
同 じ ホ モ ト ピ ー ク ラ ス に 属 す る と い う.す
べ て の 写 像 が一 つ の ホ モ トピー ク ラ
ス に 属 す る と き は モ ノ ポ ー ル は 存 在 し え な い.こ
れ を
(7.29a) と書 く.S2→S2の
写 像 は(7.27)で
定 義 さ れ る 巻 つ き 数(整
数)で
指 定 され
る ホ モ ト ピ ー ク ラ ス に 分 け ら れ る の で,
(7.29b) と書 く.こ れ らの 議 論 か ら,モ
ノ ポー ル の 存 在 条 件 は 時 空 のS2か
ら群 へ の 射
影 が 異 な る ホ モ トピー ク ラ ス を もつ こ と,す な わ ちπ2(G/H)≠0で
あ る こ とが
わか る.以 下 の 議 論 で 必 要 に な るの は ホモ トピー 論 に お け る次 の定 理 で あ る.
(7.30a) (7.30b) πn(Sm)は,Sn→Smへ わ ち 円(S1)の
群Hへ
の ホ モ ト ピー 分 け を 表 す.π1は2次
元 空間の球 面す な
の 写 像 の ホ モ ト ピ ー ク ラ ス 分 け で あ る.H=U(1)の
合 に つ い て は す で に §6.1.3で
議 論 し た.整
場
数 で表 され る巻 つ き数 で ク ラ ス分
け で き る.す
なわ ち
(7.31) で あ る.こ れ か ら(準)単
純 で コ ンパ ク トな群Gの
対 称 性 を満 た す 非 ア ーベ
ル ゲ ー ジ場 と ヒ ッ グス 場 が共 存 し,対 称 性 が 自発 的 に 破 れ てU(1)が
残 る とき
は,常 に モ ノ ポー ル が 発 生 す る条 件 が 整 う こ とが わ か る.標 準 理 論 で は モ ノ ポー ル が発 生 しな い が(付 録A参 群Gと
照),大 統 一 が 存在 してSU(5)の
よ うな単 純
し て の 対 称 性 を 満 たす な ら ば,最 初 に(す な わ ち 大統 一 エ ネ ル ギー で)
対 称 性 が 自発 的 に破 れ てU(1)が
残 る と きに モ ノ ポー ル が 発 生 す る の で あ る.
デ ィ ラ ッ クの モ ノポー ル と違 い,大 統 一 が 存 在 す るな らば,モ
ノ ポー ル は 存在
し なけ れ ば な ら な い の で あ る.
7.3 大 統 一 モ ノポ ー ル の 性 質
7.3.1 質 量 と サ イ ズ 大 統 一 モ ノ ポー ル は対 称 性 の 破 れ た ヒ ッ グ ス場 す な わ ち質 量 を獲 得 し た ゲー ジ 場 の 複 合 体 で あ り,質 量 は 大 統 一 の ベ ク トル ボ ソ ン(X, Y;第5章
参 照)
の もつ 質 量 に磁 荷 の 強 さの 逆 数 を掛 け た程 度 で あ る.
(7.32) こ こに,α5は 大 統 一 の結 合 定 数 の 大 き さ で あ る.素 粒 子 と し て は 異 様 に 大 き な値 で あ り,加 速 器 で つ くる こ とは不 可 能 で あ るが,ビ
ッ グバ ン 時 に 生 成 され
て残 っ て い る可 能 性 は あ る. モ ノ ポー ル は点 粒 子 で は な く複 合 体 で あ り,そ の 大 き さは ベ ク トル ボ ソ ンの コ ン プ トン波 長 程 度 す な わ ち
(7.33) く ら い に 広 が っ て い る.実 (-eυr)の
際,式(7.13)の
漸 近 形 を もつ こ と が 証 明 で き る.こ
ソ ン が 閉 じ 込 め られ て い て,し
解Gが,r→∞
の 小 さ な 空 間 の 中 に ベ ク トル ボ
か も 自 ら の100倍
で あ る か ら 非 常 な 高 温 状 態 で あ る.中
で1-exp
心(r=0)で
もの 質 量 を生 み 出 して い るの は φ=0で
あ る か ら対 称 性
が 回復 して い る.外 の 真 空 との 間 に は 中 間 温 度 層 が 存 在 す る は ず で あ るか ら, そ こ に はWやZボ
ソ ンが,さ
存 在 す る で あ ろ う(図7.2).モ え られ る.(7.33)の
ら に 外 側 に は ク ォー ク グル ー オ ン プ ラ ズ マ も ノ ポー ル は 非 常 に複 雑 な 構 造 を して い る と考
値 は,大 統 一 ゲー ジ ボ ソ ンX, Y粒
子 で構成 され る芯の
サ イ ズ で あ り,全 体 と して は ハ ドロ ン程 度 の 大 きさ を もつ と考 え ら れ る.外 皮 が クォー クや グ ルー オ ン の 集 合 体 な らば,強
い力 が働 くで あ ろ う.す な わ ち モ
ノ ポー ル は 物 質 と強 い相 互 作 用 をす る 可 能 性 が あ る と考 え られ る.
図7.2 中心 にX,
Yな
用 の 領 域,閉
7.3.2
触
媒
モ ノ ポ ー ル はW,
大 統 一 モ ノポ ー ル の 玉 ね ぎ構 造
どが あ り,外 側 に い くに つ れ 温 度 が 下 が り,電 弱 相 互 作 じ込 め の領 域 が 続 く.
作
用
Z, X,
Yゲ
ー ジ ボ ソ ン を 内 包 し て い る か ら,物
作 用 を す る と 弱 い 相 互 作 用 や 大 統 一 に よ る 相 互 作 用 を 誘 発 す る.特 の は 後 者 で,モ
に興味 ある
ノ ポ ー ル が 物 質 と 反 応 し て 核 子 崩 壊 を 引 き起 こ す(ル
カ ラ ン 効 果)10).モ と こ ろ で11),
質 と相 互
ノ ポ ー ル の 触 媒 作 用 に よ る 陽 子 崩 壊 断 面 積 は,β
バ コフ − の小 さい
陽子 Z>1の β は モ ノ ポ ー ル と 陽 子 の 相 対 速 度,σ0は F(Z,β)は
核 で 小 さ い.た
え ば27Al)で
だ し,モ
定 性 が 大 き い.ゼ
7.3.3
原 子核
(7.34b)
典 型 的 な 強 い 相 互 作 用 断 面 積 で あ り,
反 応 相 手 の 原 子 核 に よ り変 わ る 因 子(10-2-10-6)で
ン を もつ 原 子 核(例
り,不
(7.34a)
比 較 的 大 き く,酸
あ る.奇
数 スピ
素 の よ う な ス ピ ン0の
原子
ノ ポー ル の触 媒 断 面積 に 関 して は い ろ い ろ な 計 算 が あ ロ 値 を 与 え る モ デ ル も あ る.
ア イ ソ ス ピ ンの ス ピ ンへ の 転 化
こ の ほ か に も モ ノ ポ ー ル は い ろ い ろ 興 味 あ る性 質 を もつ.例 ポ テ ン シ ャ ル が 示 す よ う に,モ る性 質 を もつ.ア
え ば,針
ねずみ
ノ ポ ー ル は ア イ ソ ス ピ ン 空 間 と 時 空 を 混 合 させ
イ ソ ス ピ ン1/2の
ボ ソ ン を捕 獲 す る と そ の 束 縛 状 態 は,フ
ェ
ル ミオ ン が 存 在 し な い に も か か わ ら ず 半 奇 数 の ス ピ ン を もつ3,12).
7.4 モ ノ ポ ー ル と天 体 物 理 学
7.4.1 モ ノポ ー ル の 速 度 ビ ッ グバ ンか ら取 り残 され た モ ノ ポー ル が 宇 宙 に 存在 して い る と して,そ
の
速 度 分 布 と数 分 布 に対 す る制 限 を 天 体 物 理 学 を使 っ て考 察 す る.他 か ら力 を受 け な い とす れ ば,温
度 は ∼10-5mK∼10-12eVで
あ る の で,質 量 を1016GeV
とす る と β∼10-18と な る.し た が っ て実 際 の速 度 は 外 部 の 重 力 も し くは磁 力 に よ り加 速 さ れ て 得 られ た もの で あ り,銀 河 も し くは銀 河 団 な ど の 天体 に 束 縛 さ れ て い る可 能 性 が あ る.重 力 に よ る ビ リア ル 速 度(付 録B.4参
照)は
束縛
中 心 の 天 体 質 量 に 依 存 す る.銀 河 や 銀 河 団 の ビ リア ル 速 度 は β∼10-3程 度 で あ る.銀 河 中 心 か ら 太 陽 系 の 距 離 の 周 回 速 度 が ほ ぼ β∼10-3で あ るが,こ は 銀 河 か らの 脱 出速 度 の80%で
れ
あ り,ま た銀 河 団 か らの 脱 出 速 度 よ りほ ん の
少 し小 さい 程 度 で あ る.し た が っ て,モ
ノポー ル は 大 体 こ の程 度 の 速 度 を も っ
て い る と考 え られ る.も ち ろ ん 銀 河 磁 場 の加 速 な どに よ りこ れ よ り大 き くな っ て い る可 能 性 は あ る.も
し,太 陽 に 束 縛 され て い る とす る と β∼10-4,地 球 に
束 縛 さ れ て い る とす る と β∼4×10-5程 た っ て は,速
度 で あ る の で,モ
ノ ポー ル 探 索 に あ
度 範 囲 を 広 げ る の が 望 ま し い.
7.4.2 フ ラ ッ クス 制 限 a. 銀 河 磁 場13) 銀 河 内 に は2∼5μG(ガ
ウ ス)の 磁 場 が 存 在 す る.こ れ は フ ァ ラ デ ー 回転 や
ダ ス トに よ る光 の偏 極,宇
宙 線 に よ る シ ン ク ロ トロ ン電 波 な どで 見 積 も る.磁
場 構 造 は うず 巻 きに 沿 う傾 向 が み られ る.う ず 巻 きの腕 の 回 転 速 度 の 違 い が磁 場 を 引 き延 ば して さ らに磁 場 を新 し くつ くるの で,磁 場 の再 生 周 期 は銀 河 の周 回 周 期(τG∼1億
年)程 度 で あ る.モ
ノ ポー ル が 存 在 す れ ば銀 河 磁 場 に よ り加
速 さ れ る.逆 に 言 う と銀 河 磁 場 の エ ネ ル ギー が 消 費 さ れ磁 場 が 弱 くな る.銀 河 内 に磁 場 が 存 在 す る事 実 が モ ノ ポー ル フ ラ ッ ク ス に制 限 を与え る. 一 様 な磁 場 が 存 在 す る領 域 の 大 き さLは,大
体1021cm(300pc:パ
ー セ ク)
程 度 と見積 もられ て い る.モ ノ ポー ル が この 領 域 を通 過 す る と加 速 も し くは減 速 され,エ
ネ ル ギー 差ΔE=gBLを
生 む.銀
河(半 径rG)を
横 断 す る 間 にN
個 の 領 域 を通 過 す る とす れ ば,全 体 と して は乱 雑 に加 速 も し くは 減 速 さ れ,平 均 と して は ΔEだ
け の エ ネ ル ギー を 奪 う で あ ろ う.す な わ ち1個
のモノ
ポー ル が 銀 河 を横 断 す る と き銀 河 の失 うエ ネ ル ギー 損失δEは,
(7.35) モ ノ ポ ー ル フ ラ ッ ク ス をFと
す れ ば,銀
は(4πF)(πrG2)で
∼rG/L∼30kpc/300pc∼100程
あ る.Nは
河 を 通 過 す る モ ノポー ル の 数 の 割 合 度 で あ る か ら,
モ ノ ポ ー ル 通 過 に よ る全 エ ネ ル ギ ー 損 失 率 は
(7.36) で 与 え ら れ る.こ
れ が 銀 河 磁 場 エ ネ ル ギ ー 生 成 率(B2/2)(4πrG3/3)/τGを
い と い う 条 件 か ら,次
超 えな
の パ ー カ ー 制 限 を 得 る.
(7.37) こ の 式 は,磁
場 に よ る 加 速 で 得 た 速 度Δυ=(gBL/(Mυ))が
程 度 に 強 い と き に 成 立 す る.モ
ノ ポ ー ル が1016GeVよ
元 の 速 度υ
と同
り重 い とΔυ≪υ と な
り,エ
ネ ル ギ ー 損 失 は2次
効 果 と な る.こ
の 依 存 性 を も つ の で,M>1016GeVで
の場 合
はF→F×(M/1016GeV)と
な るが,
こ の 領 域 で は 次 に 述 べ る 宇 宙 の エ ネ ル ギ ー 密 度 か ら の 制 限 の 方 が きつ くな る . 銀 河 団 内 に す な わ ち 銀 河 間 に 磁 場 が 存 在 す れ ば,パ だ け で 全 く同 じ議 論 が で き る.実 観 測 デ ー タ は,銀 の 場 合,rc→ し て,制
際,密
河 間 に も0.01∼1μGの
銀 河 団 サ イ ズ,L→
限 は2∼3桁
ラ メ ター を ス ケー ル す る
集 銀 河 団 か ら の 拡 散(diffuse)電
波 の
磁 場 が 存 在 す る こ と を示 唆 す る.こ
銀 河 サ イ ズ,τG→
銀 河 年 齢(∼109年)と
ほ ど き つ く な る14).
b. 宇 宙 の エ ネ ル ギ ー 密 度 宇 宙 の 相 対 エ ネ ル ギ ー 密 度 をΩ(=ρ/ρc)と
書 く.
(7.38)
G:万
有引力定数
H0は ハ ッブ ル 定 数 で あ り,hは
不 定 性 を表 す .宇 宙 の エ ネ ル ギー 密 度 はΩ 〓1
(よ り正 確 に はh2Ω 〓1が わ か っ て い る),バ と見 積 も られ て い る(第8章
参 照).モ
リ オ ン 密 度 はh2ΩB=0.02±0.004
ノ ポー ル は,ト ポ ロ ジー の 欠 陥 と し て
現 れ るの で生 成 当 時 の 地 平 線 内 に1個 程 度 はつ くられ た で あ ろ う.非 常 に 重 い の で 消 滅 しに く く,標 準 的 な宇 宙 論 で 計 算 す る と少 な く もバ リオ ン と同程 度 に 存在 しな け れ ば な らな い が,上 の 数 字 は宇 宙 論 に よ るモ ノ ポー ル数 密 度 推 定 値 が14桁
以 上 大 きす ぎ る こ と を示 して い る.こ の事 実 は,イ
ン フ レー シ ョン モ
デ ル 提 案 の 動 機 とな っ た. モ ノ ポー ル が 速υ,数
密 度Nで
ル フ ラ ッ ク スFはNυ/4π
で 与 え られ る.モ
な い条 件(h2ΩM<1)が
乱 雑 に 運 動 して い る とす れ ば,モ
ノ ポー
ノ ポー ル が 現 在 の宇 宙 密 度 を超 え
一 つ の制 限 を与 え る.
(7.39) M>1016GeVで
は パ ー カ ー 制 限 よ り き び しい 制 限 を与 え る.た
だ し,あ ま り
質 量 が 大 き くな る と磁 場 に よ る加 速 が小 さ くな り,宇 宙 年 齢 を もっ て して も β
∼10-3に
ま で 到 達 さ せ る こ と は で き な い の で ,上
記 の 制 限 は,M<1019GeV
で 有 効 で あ る. c. 中 性 子 星 内 の モ ノ ポ ー ル 触 媒 作 用 時 間 τ の 間 に 中 性 子 星 に 捕 捉 さ れ る モ ノ ポ ー ル の 数NMは,半
径 をRと
し
て
(7.40) で 与 え ら れ る.βesc(∼0.3)は
表 面 か ら の 脱 出 速 度 で あ り,β∞ は 星 か ら 十 分 離
れ た と こ ろ で の 速 度 で あ る.β∞=10-3と
す る と 括 弧 内 の 数 は∼105と
と ん ど の モ ノ ポ ー ル は 芯 に 定 着 す る.モ
ノ ポ ー ル に 触 媒 作 用 が あ る と し,物
と の 反 応 断 面 積 をσcと す る と,触 で 与 え ら れ る.NAは
質
媒 作 用 に よ る 物 質 の 核 子 崩 壊 率 はNAρυ σc
ア ボ ガ ド ロ 数,ρ
∼0 .3, ρ=3×1014g/cm3と
な る.ほ
は 物 質 の 密 度 で あ る.σc=1mb,β
設 定 す る と,中
性 子 星 の 芯 の 中 で の1個
の モ ノ
ポ ー ル 触 媒 作 用 に よ る エ ネ ルギ 一発 生 率 は, (ギ ガ ワ ッ ト)
(7.41)
モ ノポ ー ル は 大量 の エ ネ ル ギ ー を発 生 す る こ とが わ か る.こ の う ちの 一 部 また は相 当部 分 が 光 も し くはX線
な どの 形 で 放 出 さ れ る は ず で あ る.中 性 子 星 の
X線 輝 度 の 年 齢 依 存性(若 け れ ば 中性 子 の エ ネ ル ギー は も っ ぱ らニ ュ ー ト リノ が持 ち去 る)や 上 限値 か ら,モ ノ ポー ル フ ラ ッ ク スへ の制 限 が 得 られ て,
(7.42) と 見 積 も ら れ て い る15).β ∼0 .1∼0.3,γ(1∼104)は
は 年 と っ た 中 性 子 星 内 の モ ノ ポ ー ル の 速 度 で,β
光 輝 度 の 全 エ ネ ル ギ ー 放 出 に 占 め る 割 合 で あ る.モ
ノ ポ ー ル の 質 量 が 小 さ くな る と重 力 よ り 電 磁 力 が 勝 ち,中
性 子 星 の もつ磁 場 に
より モ ノ ポ ー ル の 軌 道 は 曲 げ ら れ て 捕 獲 さ れ な く な る の で,上 1014GeVで
は 成 立 し な い.
7.5
モ ノ ポ ー ル の 検 出 に は,モ 度 β∼10-3を
の 値 は,M<
モ ノ ポ ー ル 探 索2)
ノ ポ ー ル の もつ 特 徴 す な わ ち 磁 荷g=2πn/eと
もつ と い う 事 実 を 利 用 す る.モ
速
ノポー ル が コイ ル の 中 を通 過 す る
と きに 電 流 が 誘 起 され る事 実 を使 う磁 気 誘 導 法 とモ ノ ポー ル と物 質 との 相 互 作 用(イ オ ン化 損 失 な ど)を 検 出す る方 法 とに 大 別 され る.前 者 は モ ノポ ー ル の 質 量,速 度 そ して 電 荷*4)に よ ら ず 磁 荷 の 存 在 の み を検 出 す る とい う利 点 を も つ が,大
き な コ イル はつ く りに くい,後 者 に は β〓10-3の と き の イ オ ン化 損 失
に理 論 的 不 定 性 が あ る もの の 大 立 体 角 の とれ る大 型 検 出器 をつ く りや す い とい う利 点 が あ る.
7.5.1 磁 気 誘 導 検 出 器 Δtの 間 に モ ノポ ー ル1個
が コ イ ル の 輪 を通 り抜 け る と フ ァ ラ デー の 法 則 に
よ り,
(7.43) で 与 え られ る だ け の 電 流Iが は コ イ ル の 面 積,Vは
発 生 す る.ΔΦ(ΔB)は
誘 起 電圧,Lは
aの 針 金 で つ くっ た 半 径Rの
磁 束(密 度)の 変 化,S
コ イ ル の イ ン ダ ク タ ン ス で あ る.半 径
コ イ ル の イ ン ダ クタ ン ス は
(7.44) で 与 え ら れ る.例 =gD=4
.14×10-15ウ
る16).こ quantum
え ば,a=250μm,
R=1mと
device)を
電 流 が 流 れ
伝 導 量 子 干 渉 計SQUID
(super
使 え ば 検 出 可 能 で あ る*5).し
変 化 は 地 球 磁 場(0.3G)が10-11程 で,厳
な り,Δ Φ
エ ー バ ー に 対 し て,0.4nA(nA=10-9A)の
れ は 小 さ な 値 で あ る が,超 interference
す る とL=10μHと
か し上 記 の 磁 束
度 変 化 し た と き と 同程 度 の 信 号 を与 え る の
重 な磁 場 遮 蔽 が 要 求 さ れ る.1982年
に カ ブ レ ラ(B.
の 方 法 で 信 号 を 検 出 し て 大 き な 話 題 と な り,世 探 索 を始 め る き っ か け と な っ た.そ
conducting
Cabrera)17)が,こ
界 中 で 大 が か りな モ ノ ポー ル
の 後 の 追 試 で は,単
独 コ イル で信 号 を得 る
こ と は あ っ て も二 つ の コ イ ル の 同 時 計 測 で の 信 号 は つ い に 得 ら れ な か っ た.磁
*4) 電 荷 を もつ モ ノ ポ ー ル を ダ イ オ ン(dyon)と
い う . *5) 超 伝 導 は ク ー パ ー 対 に よ り 引 き起 こ さ れ る.超 伝 導 体 ル ー プ の 中 の 磁 束 は 量 子 化 さ れ て い る,ク ー パ ー 対 は 電 荷2eを もつ の で,SQUIDの 中で量 子化 さ れ る磁 束 の最 小 単 位 は φ0=g/2で あ る.し 起 さ れ る.
た が っ て 磁 荷gを
も つ モ ノ ポ ー ル の 通 過 に よ り2φ0の 磁 束 飛 躍 が 誘
気 誘 導 法 に よ り得 ら れ た モ ノ ポ ー ル フ ラ ッ ク ス の 限 界 は,図7.4に
他 の 実験
デ ー タ と と も に 与 え て あ る18).
7.5.2
イ オ ン化 損 失 を使 う方 法
a. シ ン チ レ ー シ ョ ン カ ウ ン タ ー と 比 例 係 数 管 速 度 β で 動 く モ ノ ポ ー ル は,軌
道 に 垂 直 な 方 向 に 電 場 を つ く り,物
分 子 原 子 を 励 起 な い し は イ オ ン 化 す る.イ
質 中 の
オ ン化 に よ るエ ネ ル ギー 損 失 は
(7.45) で 与 え られ る19).添 字 は磁 荷(m)も を表 す.(g/e)2=4700で
し くは 電 荷(e)に
よ るエ ネ ル ギー 損 失
あ るの で,相 対 論 的 モ ノ ポー ル は 非 常 に大 き な イ オ ン
化 損 失 を 与 え る.通 常 の 荷 電 粒 子 に よ る イ オ ン化 損 失 の 式(べー の 式)は,β
が0.03程
7.3(a)).特
に 以 下 に 述 べ る ドレ ル-ペ ニ ン グ効 果 は,モ
テ-ブ ロ ッ ホ
度 よ り小 さ い と成 立 し な い の で 計 算 が し 直 さ れ た(図
な手 段 を提 供 す る20)(図7.3b).ド
ノ ポー ル 探 索 に 有 力
レ ル 効 果 と は モ ノ ポー ル が 通 り過 ぎ る と,
近 傍 の 電 子 の もつ 角 運 動 量 が 変 化 し,こ の 結 果 と して 生 じる原 子 内 電 子 の レベ ル 混 合 に よ って 励 起 され る こ とを い う.角 運 動 量 が変 化 す る こ とは 次 の よ うに し て い え る.電 荷q,質
量mを
もつ 粒 子 が 原 点 に あ る モ ノ ポー ル の 近 傍 を動
く と き,受 け る力 は
し たが っ て 軌 道 角 運 動 量 変 化 は
最 後 の 式 を導 く と きに デ ィ ラ ッ ク の量 子 化 条 件 を使 っ た.こ れ か ら保 存 量 と し て の 全 角 運 動 量Jと
して は,次 式 を使 わ な けれ ば な ら な い こ とが わ か る.
(7.46) 第2項
は 電磁 場 の 角 運 動 量 が 電 子 に移 され る こ とに よ り生 じる効 果 で あ る.原
子 内 の 電 子 の 静 止 系 で,モ
ノ ポー ル がz=-∞
か ら+∞
角 運 動 量 移 行 が 生 じ,原 子 が 励 起 さ れ る の で あ る.シ
に 動 け ば,ΔJ=1の ン チ レー シ ョン カ ウ ン
ター は原 子 が イオ ン化 さ れ た 場 合 に しか 感 じな い.し か し,あ る種 の 比例 係 数
(a)
(b)
図7.3 (a) Ahlen, (b) Drellら G0は
モ ノ ポー ル の エ ネ ル ギ ー 損 失 Lindhard, の 計 算(実
Ritsonの
計 算19)
線)20)とRitsonの
計 算
励 起 状 態 との エ ネ ル ギ ー ギ ャ ップ
管 は 封 入 気 体 と し て ヘ リウ ム と クエ ン チ 用n-ペ
ン テ ン な ど の混 入 気 体 を使 用
す る.こ の 場 合 励 起 ヘ リウム(励 起 エ ネ ル ギー>20eV)とn-ペ に よ り励 起 エ ネ ル ギー がn-ペ
ンテンの衝突
ン テ ン に移 行 す る(ペ ニ ン グ効 果).n-ペ
は浅 い イ オ ン化 ポ テ ン シ ャ ル を も っ て い る の で(∼10eV),結
ン テン
果 的 に イ オ ン化
電 子 が 放 出 さ れ検 出可 能 と な る.し た が っ て ドレル-ペ ニ ン グ効 果 の 使 用 可 能 な比 例 係 数 管 と シ ンチ レー シ ョ ン カ ウ ン ター は分 け て考 察 す る必 要 が あ る.シ ン チ レー シ ョ ン カ ウ ン ター(主 た る素 材 は 炭 素)で は,β〓10-3付
近 が ほ ぼ検
出 限 界 とな る が,比 例 計 数 管 で は ペ ニ ン グ効 果 を使 え ば β〓10-4ま で 到達 可 能 で あ る. b. エ ッ チ ン グ軌 跡 検 出器 粒 子 が 固体 物 質 を通 過 す る と放 射 線 損 傷 を残 す こ とを利 用 す る イ オ ン化 損 失 検 出器 の 一 種 で あ るが,電
子 回 路 な どの 能 動 素 子 を使 わ な い の で大 面 積 をつ く
りや す い こ と,過 去 の 記 憶 を蓄 積 す る こ とが 可 能 な どの 利 点 が あ る.損 傷 部 位 が 長 期 間 残 る こ と,し たが っ て大 き な イ オ ン化 作 用 を もつ 粒 子(Zの
大 きな 原
子 核 な ど)に 対 し て検 出効 果 が大 き く,ま た電 気 的 に不 良導 体 も し くは 絶 縁 体 で あ る こ とが 条 件 で あ る.実 際 に 使 わ れ る素 材 と して は,ニ (硝 綿)と か 高 分 子 炭 水 化 物 の レ キ サ ン(lexan), ポー ル の 場 合 は,基 対 象 とな るが,CR39に
本 的 に は β の 大 きい場 合 かZの
CR39な
トロ セ ル ロー ズ ど が あ る.モ
ノ
大 き な原 子 との 束 縛 体 が
対 して は 重 イ オ ン加 速 器 を使 って,β〓10-3ま
で検 出
能 力 が あ る こ とが 実 証 され て い る21). 実 際 の 使 用 に あ た っ て は,大 面 積 のCR39の
板 を地 下 の 宇 宙 線 バ ッ ク グ ラ
ウ ン ドの 小 さ い と こ ろ に長 時 間据 え 置 き し た の ち,化 学 的 処 方 で エ ッ チ ン グ を 行 う と,軌 跡 に 沿 って 円 錐 状 に穴 が あ け られ る.軌 跡 方 向VLと
軌跡 に直角 な
方 向VTで
エ ネ ル ギー 損
エ ッ チ ン グ 速 度 が 違 い,円 錐 の 頂 角tan-1(VT/VL)は
失 量 の 増 加 関 数 で あ る.板 の 両 側 か らの エ ッチ ン グ孔 が 貫 通 す れ ば,孔 の ス キ ャ ン は 容 易 に 行 え る.東 京 グ ル ー プ は2000m2のCR39を 洞 窟 に2年
間 据 え 置 い て,モ
大 谷 石採 石場 の
ノ ポー ル探 索 を行 っ た.結 果 は 否 定 的 で あ っ た
が,パ ー カ ー 極 限 を超 え る フ ラ ッ クス上 限 が 得 ら れ た21)(図7.4). イ オ ン化 損 失 を 使 う方 法 で現 役 最 大 の検 出器 は,イ 設 置 さ れ たMACROで
あ る.MACROはdE/dxを
タ リア の グ ラ ンサ ッソ に 使 う上 記 三 つ の 方 法 を組
み 合 わ せ た 検 出 器 で,現 在 ほ ぼ パ ー カー 制 限 に 達 す る上 限 を与 え て お り22), デ ー タ が 蓄 積 され れ ば,さ
ら に1桁
くらい は 改 良 さ れ る と見 込 まれ る.
エ ッ チ ン グ を使 っ た 興 味 あ る使 用 法 と して,雲 母 に 残 され た軌 跡 を調 べ た実 験 が あ る.雲 母 は エ ッチ ン グ法 軌 跡 検 出器 と して は感 度 が 高 い 方 で は な い が, β∼10-3付 近 の モ ノ ポー ル は 大 きな磁 気 能 率 を もつ 原 子 核(27Alな して,十
分 検 出 可 能 な軌 跡 を残 す こ とが で き る.地
記 憶 を 残 す 雲 母 を抽 出 して 調 べ た結 果 で は,モ
ど)を 捕 獲
中 に あ って5∼9億
年近い
ノ ポー ル の 痕 跡 は 見 つ か ら な
図7.4 磁 気 単極 子 の フ ラ ッ クス 上 限 値 大 谷 はCR39使
用,磁
荷gD,
2gD, 3gDに
つ い て 求 め て あ る21).他
は す べ てgDを
仮 定. 磁 気 誘 導18),大
KGF27),
谷21),MACRO22),雲
母23),原
ら24),UCSD225),
SOUDAN226),
BAKSAN28)
雲 母 の 陽 子 束 縛 率 と は モ ノポ ー ル が 地 表 に 到達 した と きに す で に 陽 子 と束縛 状 態 に な っ て い る確 率.
か っ た23).雲 母 測 定 は 特 定 の β範 囲 で 最 も厳 し い 制 限 を 与 え る が(図7.4), 探 索 の 前 提 条 件 に い くつ か の 不 定 性 が あ る.例 えば モ ノポ ー ル が 地 球 に 降 っ て き た と きす で に 陽 子 を捕 獲 して い る と,地 殻 で はAlを ク ス上 限 が 大 き く変 わ る.図
で は 捕 獲 率fを
捕 獲 しな い の で フ ラ ッ
パ ラ メ タ ー と し て い る.ま た モ
ノ ポー ル に よ り生 じる放 射 線 損 傷 の 回復 時 間 の 不 定 性 も解 決 す べ き問 題 と して 残 っ て い る.さ
ら に,モ
ノ ポー ル に触 媒 作 用 が あ れ ば 雲 母 に軌 跡 を残 す ほ ど長
時 間束 縛 状 態 は維 持 で きな いか ら この 方 法 は 無 効 とな る.
c. 触 媒 効 果 検 出 法 モ ノ ポ ー ル に 触 媒 作 用 が あ れ ば,物 す で に 述 べ た.捕 1(10-3)の
と き,水
獲 断面積
質 と反 応 し て 核 子 崩 壊 を誘 起 す る こ と は
σc=σ0/β と し,σ0=1mb(10-27cm2)で
の 中 を10m動
く間 に 平 均0.6(600)回
の 反 応 を 起 こ す が,
酸 素 原 子 核 と の 断 面 積 が 非 常 に 小 さ け れ ば 反 応 率 は1/9に よ,陽
あ れ ば,β=
な る.い
子 崩 壊 検 出 器 は モ ノ ポ ー ル の 有 力 な 検 出 器 で も あ る.神
の 巨 大 水 チ ェ レ ン コ フ 検 出 器 で 陽 子 崩 壊 が1例 か ら,モ
岡29)やIMB30)
も 見 つ か っ て い な い と い う事 実
ノ ポ ー ル フ ラ ッ ク ス の 上 限 が 直 ち に 求 め ら れ る.図7.5上
を パ ラ メ タ ー と し て1∼100mbに
ず れ にせ
設 定 し た 場 合 と,σc=σ0/β2,
半 部 に σc
σ0=10-4mbと
設 定 し た 場 合 に つ い て 神 岡 の デ ー タ を 図 示 し た. モ ノ ポ ー ル 触 媒 作 用 の 興 味 あ る 応 用 と し て,太 ク ス を 測 る こ と が 示 唆 さ れ た31).太 を 捕 獲 し,中
に よ り,平
陽 が 誕 生 以 来45億
心 部 に 貯 蔵 し て き た と す れ ば,中
均 エ ネ ル ギ ー35MeVの
をfと
推 定 で き る.太 し,地
年 に わ た りモ ノ ポ ー ル
心 部 の モ ノポー ル 反 応
ニ ュ ー ト リ ノ を 放 出 す る.し
子 ニ ュ ー ト リ ノ(νe)を 検 出 し て や れ ば,太 数NMが
陽 か らの ニ ュ ー ト リ ノ フ ラ ッ
たが って電
陽 の 中 心 に 存 在 す る モ ノ ポー ル の
陽 中 心 で の モ ノ ポー ル に よ る電 子 ニ ュー ト リノ生 成率
球 に 到 達 す る フ ラ ッ ク ス をIν とす る と
(7.47) で 与 え ら れ る.υrel=1.7×10-3c,ρH(=55g/cm3)は ド ロ 数,dは
太 陽 地 球 間 の 距 離,Rπ(=0.57;
π メ ソ ン 生 成 分 岐 比,Aπ(=0.2)は ウ ム と の 反 応 は 無 視 で き る.神
陽 子 密 度,NAは SU(5)モ
デ ル)は
ア ボガ
陽子崩 壊 での
太 陽 中 心 で の π の 吸 収 確 率 で あ る.ヘ
リ
岡 グ ルー プ は ニ ュー トリ ノフ ラ ッ ク ス の 観 測 上
限値 か ら モ ノ ポー ル 数 上 限 と して
(7.48) を 得 た29).NMを
フ ラ ッ ク ス に 換 算 す る 式 は,式(7.40)で ,βesc=2×10-3, τ=4.5×109年,σc=σ0/β2(式(7.34)
与 えら
れ て い る.
参 照)と 置 き換 え て
(7.49) とな る.た だ し,モ ノ ポー ル の 質 量 が1017GeVよ
り大 き い と,太 陽 に 捕 獲 さ
れ る確 率 が 小 さ くな るの で 値 は 悪 くな る.こ れ は パ ー カー 極 限 を は る か に 超 え,中 性 子 星 内 の触 媒 効 果 か ら推 定 され る値(式(7.42))と 7.5下 半 部).現 在100倍
同 程 度 で あ る(図
近 く大 きい 体 積 を もつ スー パ ー カ ミオ カ ン デ が 稼 働
中 で あ るか ら,こ の 上 限 値 は さ らに 改 良 さ れ る と期 待 さ れ る.
図7.5
カ ミオ カ ン デ検 出器 に よ る磁 気 単 極 子 探 索 デー タ29)
核 子 崩 壊 触 媒 作 用 か ら求 め た磁 気 単 極 子 フ ラ ッ クス 極 限 値.上
方 曲線 は検 出器 で
核 子 崩 壊 が 見 つ か らな か っ た こ とか ら く る上 限.σc=0.1∼100mbと
設 定 した 場
合(実 線)と,σc=σ0/β2, σ0=10-4mbと 設 定 し た 場 合(ダ ッシ ュ線)に つ い て 与 え て あ る.下 方 の 右 上 り曲 線 は 太 陽 ニ ュ ー ト リ ノフ ラ ッ ク ス 測 定 に よ る もの. 触 媒 反 応 断 面 積 σc=σ0/β2, σ0=1mbと
して,質
量Mを
パ ラ メ ター と し て い る.
中 性 子 星 とは 中性 子 星 の 輝 度 よ り求 め られ る 上 限 の 計 算 値(本 文 式(7.42)15)参 照).
7.6
お わ
り に
ト ・フ ー フ ト-ポ リヤ コ フ の モ ノ ポ ー ル 予 言 以 来,20年
に わ た る探 索 が 続 け
ら れ て い る に もか か わ らず モ ノ ポ ー ル は い ま だ 見 つ か っ た とい う証 拠 は な い.最 も 信 頼 で き る 磁 気 誘 導 法 に よ る フ ラ ッ ク ス 上 限 は,10-12cm2sr-1s-1程 る.dE/dxを
使 う 方 法 は こ れ よ り 厳 し い 制 限 を 与 え,パ
cm2sr-1s-1を
超 え る フ ラ ッ ク ス 制 限 を 与 え る.触
し い 制 限 が 可 能 で あ る が 不 定 性 が 大 き い.こ は 見 つ か ら な い と い う こ と は,イ
度 で あ
ー カ ー 制 限 ∼10-15
媒 作 用 を仮 定 す れ ば も っ と 厳
の よ うに実 験 的 に は 存在 す る証 拠
ン フ レー シ ョ ン モ デ ル(後
述 第8章)が
い こ と を 強 く示 唆 す る.
参 考 文 献
1) 理 論 的 な レ ビ ュ ー と し て,J.Preskill:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,34(1984)461-530 2) 実 験 的 な レ ビ ュ ー と し て,D.E.Groom:Phys.Reports,C140(1986)323 3) L.H.Ryder:Quantum
Field
K.Huang:Quarks,Leptons Chapter
Theory,2nd and
G.t'Hooft:Nucl.Phys.,B79(1974)276
5)
P.A.M.Dirac:Proc.Roy.Soc.,A133(1931)60
6)
T.T.Wu
7)
E.Bogomol'nyi:Sov.J.Nucl.Phys.,24(1976)449
A.M.Polyakov:JETP
Lett.,20(1974)194;Soviet
and
S.Coleman
Press,1996
Scientific,Singapore,
Physics
JETP,41(1976)988
C.N.Yang:Nucl.Phys.,B107(1976)365
et
M.Prasad
al.:Phys.Rev.,D15(1977)544
and
C.Sommerfeld:Phys.Rev.Lett.,35(1975)760
T.W.Kirkman
and
C.K.Zachos:Phys.Rev.,D24(1981)999
9) J.Arafune,P.G.Freund 10)
University
Fields,2nd.ed.,World
5
4)
8)
ed.Cambridge
Gauge
and
V.Rubakov:JETP
C.J.Goebel:J.Math.Phys.,16(1975)433
Lett.,33(1981)644;Nucl.Phys.,B203(1982)311
C.G.Callan:Phys.Rev.,D25(1982)2141;Phys.Rev.,D26(1982)2058 W.P.Trowers:Acta
Phys.Austr.Suppl.,25(1983)101
11)
J.Arafune
and
M.Fukugita:Phys.Rev.Lett.,50(1983)1901
12)
R.Jackiew
13)
M.S.Turner,E.N.Parker
14)
Y.Rephaeli
15)
E.W.Kolb
16)
H.J/Frisch:Proc.NATO
J.Ellis,D.V.Nanopoulos and
P.Hasenfratz
83)at
and
and and
Ann
and
K.
Olive:Phys.Lett.,B116(1982)127
C.Rebbi:Phys.Rev.Lett.,36(1976)1116 G.t'Hooft:Phys.Rev.Lett.,36(1976)1119 and
T.J.Bogden:Phys.Rev.,D26(1982)114
M.S.Turner:Phys.Lett.,B121(1983)115 M.S.Turner:Ap.J.,286(1984)702 Advanced
Arbor,ed.J.L.Stone,Plenum
17)
B.Cabrera:Phys.Rev.Lett.,48(1982)1378
18)
S.Bermob
et
al.:Phys.Rev.Lett.,64(1990)839
Research
Workshop Publishing
on
Menopole(Monopole'
Corp.,NY,1984,p.515
正 し
19)
S.P.Ahlen
and
K.Kinoshita:Phys.Rev.,D26(1982)2347
D.M.Ritson:SLAC-Pub-2950(1982),文 20)
S.D.Drell
et
N.M.Kroll
献15に
引 用
al.:Phys.Rev.Lett.,50(1983)644
and
V.Ganapathi:Inst.Phys.conf.ser.No.71,paper
1984,Knoxville,Tenn.,16020
April
presented
at
RIS
1984
V.Patera:Phys.Lett.,A137(1989)259 21)
S.Orito
22)
MACRO:S.Ahlen S.Ahlen
et
al.:Phys.Rev.Lett.,66(1991)1951 et
et
al.:Nucl.Instr.Methods,A324(1993)337
al.:Astrop.Phys.,1(1992)11-25;Phys.Rev.Lett.,72(1994)608
M.Ambrosio
et al.:Astrop.Phys.,4(1995)33;ibid.,6(1997)113;Phys.Lett.,B406
(1997)249 23)
P.B.Price,Shi-lun
Guo,S.P.Ahlen
and
R.L.Fleisher:Phys.Rev.Lett.,52(1984)
1265 P.B.Price D.Ghosh
and and
24)
T.Hara
25)
UCSD2:K.N.Buckland
et
26)
SOUDAN2:J.L.Thron
27)
KGF:H.Adarkar
28)
BAKSAN:E.N.Alexeyev
M.H.Salamon:Phys.Rev.Lett.,56(1986)1226 S.Chatterjea:Europhys.Lett.,12(1990)25
al.:21st
ICRC,Adlaide(1990),p.79 et et et
al.:Phys.Rev.,D41(1990)2726 al.:Phys.Rev.,D46(1992)4846
al.:21st
ICRC(1990),p.95 et
al.:Nuovo
Cimento
Lett,35(1982)413,21st
et
al.:J.Phys.Soc.Japan,54(1985)4065
(1990),Adlaide,p.83 29)
KAMIOKANDE:T.Kajita
30)
S.Errede
31)
J.Arafune
et
al.:Phys.Rev.Lett.,51(1983)245
and
M.Fukugita:Phys.Lett.,B133(1983)380
ICRC
8 宇
宙
8.1
論1,2)
フ リ ー ドマ ン 方 程 式
a. 宇 宙 原 理 宇 宙 に お け る物 質(星,銀
河)の 分 布 は,空 間 的 に一 様 か つ 等 方 的 で あ る と
い う仮 定*1)を 宇 宙 原 理 と い う.宇 宙 論 の 最 も基 本 的 な仮 定 の 一 つ で あ る.こ の 仮 定 を お くと,宇 宙 の 計 量 は 次 式 で 表 さ れ る(ロ バ ー トソ ン-ウ ォー カ ー の 計 量).
(8.1) (r,θ,φ)は 無 次 元 で 共 動 座 標 と呼 ば れ る.kはR, +1,0,-1の
rを 適 当 に 規 格 化 す れ ば,
値 を と り,そ れ ぞ れ 閉 じた宇 宙,平 坦 な 宇 宙,開
れ る(付 録B.1参
照).R(t)は
宇 宙 の ス ケ ー ル を表 す.共 際 の 距 離 は これ にR(t)を 宇 宙 で はRは
い た宇 宙 と呼 ば
長 さ の 次 元 を も ち 時 間 と と もに 変 化 す る 量 で,
動座 標 系 で 計 算 した 距 離lは 掛 け たR(t)lで
宇 宙 の 半 径 と見 なせ る.閉
時 間 に よ ら な い が,実
表 さ れ,時 間 の 関数 で あ る.閉 じた 宇 宙 で は 曲率 が 正,Rは
じた
現在 は
増 加 しつ つ あ るが,最 高 値 に達 した後 減 衰 しや が て は0に な る.平 坦 な宇 宙 で はRは
増 加 し続 け るが,t→∞
負 で,Rは
でdR/dt=0と
な る.開 い た宇 宙 で は 曲 率 が
際 限 な く増 加 し続 け る.こ の 計 量 を使 っ て ア イ ン シ ュ タ イ ン の 一
般 相 対 論 方程 式 を書 き下 ろ す と フ リー ドマ ン方 程 式 を得 る.
(8.2)
*1) 非 常 に 大 き な ス ケ ー ル(>100Mpc)で
は 観 測的 に も真実 であ る
.
H(t)は す.Gは
ハ ッ ブ ル 定 数 と 呼 ば れ るが,実
際 は 時 間 の 関 数 で 宇 宙 の 膨 張 率 を表
万 有 引 力 定 数 で,ρ は 宇 宙 の エ ネ ル ギー 密 度 で あ る.Λ
呼 ば れ る量 で,イ
は宇 宙 項 と
ン フ レー シ ョン を問 題 にす る と きや 最 新 の 宇 宙 論 で 重 要 な役
割 を果 た す が,簡 単 の た め こ こ で はΛ=0と る密 度 を臨 界 密 度 とい い,現 時 点(t=t0)で
し て 話 を進 め る.Λ=k=0に
す
の 臨 界密 度 ρcは,現 時 点 で の ハ ッ
ブ ル定 数 の値 を入 れ て3,4),
(8.3a)
(8.3b) 1 parsec=3.26光
年
(8.3c)
(太 陽 質 量) hは 観 測 量 の 不 定 さ を 表 し,0.6∼0.8で
(8.3d) あ る.な
お,Ω=ρ/ρcな
タ ー が エ ネ ル ギ ー 密 度 と と も に よ く使 わ れ る.Ω=1が い た 宇 宙 で あ る.式(8.2)はΛ=0で 量M(=4π
ρR3/3)に
あ れ ば,半
径Rの
るパ ラ メ
平 坦 宇 宙,Ω<1が
開
球 の 中 に 含 ま れ る質
よ る ニ ュ ー トン の 方 程 式
(8.4) に 形 の 上 で は一 致 す る こ とに 注 意 しよ う.覚 えて お く と便 利 で あ る. 宇 宙 論 で 重 要 な も う一 つ の 式 は,エ
ネ ル ギー 保 存 の 式 で あ る.圧 力 をPと
して
(8.5) で与 え られ る. b. 光 の 赤 方偏 移
(8.6a) を 定 義 す る.光
の 行 路 はds2=0で
与 え られ るか ら
(8.6b) 共 動 座 標r=r1か
ら 時 刻t1∼t1+δt1に
+δt0に 受 け 取 っ た と す れ ば,(8.6b)の
放 出 さ れ た 光 を,r=0で,時
刻t0∼t0
右 辺 は 時 刻 に よ ら な い か ら,δ η(t0)=
δη(t1)が 成 立 す る.ゆ
え に,
(8.7) 光 の 波 長 と 振 動 数 を λ とν と 書 き,δtと
し て1/ν
を とれ ば,
(8.8) す な わ ち遠 方 に あ る銀 河 か ら放 出 さ れ る光 は 常 に赤 方 に(λ0>λ1)に 偏 移 す る. c. 粒 子 の 統 計 と分 布 宇 宙 の 時 間 変 化 は,上 記 の2式(8.2),(8.5)に
状 態 方 程 式 が 与 え られ れ ば
ほ ぼ 記 述 可 能 で あ る.そ の ため,熱 力 学 に お け る状 態 変 数 を い くつ か 計 算 して お く.粒 子iが
熱 平 衡 状 態 に あ る と きの,数
密 度niお
よ び エ ネ ル ギー 密 度 ρi
は,粒 子 の もつ 自由 度 をgi(フ ォ トンや 通 常 の フ ェル ミオ ンはg=2)と
して
(8.9) ボ ー ス-ア イ ン シ ュ タ イ ン(BE)統 フ ェ ル ミ-デ ィ ラ ッ ク(FD)統
計 計
マ ク ス ウ ェ ル-ボ ル ツ マ ン(MB)統
計
(8.10a) 非相対論 粒子
(8.10b)
BE FD
(8.11a)
MB
非相対論非縮 退粒子
(8.11b) 温 度Tは
エ ネ ル ギ ー で 表 す も の とす る.温
を 掛 け て エ ネ ル ギ ー に 換 算 す る.μ 合 は0で
あ る.粒
度 で 表 す と き は ボ ル ツ マ ン 定 数kB
は 化 学 ポ テ ン シ ャ ル で あ り,フ
子 と反 粒 子 の 化 学 ポ テ ン シ ャ ル が 違 う と,粒
ォ トン の 場
子 数 と反粒 子数
に 差 が で る が,初
期 宇 宙 の 粒 子 数 の 非 対 称 度 は 小 さ い の で μ≒0と
して よ い
(後 述 §8.5.2).現
在 の 宇 宙 背 景 輻 射 温 度 は,Tγ0=2.728±0.002°Kと
測 定 され
て い る5).宇 宙 の フ ォ トン数 は 背 景 輻 射 の フ ォ トン の 寄 与 が圧 到 的 に 大 きい か ら,現 在 の 宇 宙 の 全 フ ォ トン数 密 度 は,nγ ≒400/cm3と
計 算 で き る.圧 力P
は,単 位 時 間 あ た り単 位 面積 を通 過 す る運 動 量 の 面 に垂 直 な成 分 で あ るか ら
(8.12a) と な り,
で 与 え ら れ る.エ
相対論的粒子
(8.12b)
非 相 対 論 非 縮 退粒 子
(8.12c)
ン ト ロ ピ ー(密
度)S(s)は,
(8.13a) (8.13b) で 与 え られ る.μ は化 学 ポ テ ン シ ャ ル で あ るが,先 μ=0と
に 述 べ た よ うに 宇 宙 論 で は
して よ い近 似 で あ る.た だ し,元 素 合 成 や フ ォ トン再 結 合 時 の 計 算 な
ど特 別 に 問題 とす る と き も あ る.相 対 論 的粒 子 が 熱 平 衡 状 態 に あ る時 の エ ン ト ロ ピー 密 度 とエ ネ ル ギ ー 密 度 は
(8.14a) (8.14b) (8.15a) (8.15b)
g*s, g*は (mi≪T)の
温 度Tに
お け るgの
実 効 値 で,熱
自 由 度 を 考 慮 し た も の で あ る.温
準 理 論(SU(3)×SU(2)×U(1))に g*s=g*で
平衡 に あ る す べ て の 相 対 論 的 粒 子
あ る が,T≪me(す
(後 述 §8.4a)補
お け る 概 略 を 図8.1に な わ ち 現 在)で
正 因 子 が 入 り,g*s>g*と
ニ ュ ー ト リ ノ が あ る と し た と き の 値 で あ る. 共 動 体 積 内 の 全 エ ン トロ ピ ー
度 と と も に 変 わ る 量 で あ り,標 示 す.T≫meで
はTν=(4/11)Tγ な る.(8.15b)の
は,
で あ るの で 値 は3種
の
(8.16) は 不 変 に 保 た れ る.エ
ン ト ロ ピ ー 密 度 は,(8.10a),
的 粒 子 の 数 に 比 例 す る 量 で あ る こ と が わ か る.現
(8.14)を
見 れ ば,相
在 の エ ン ト ロ ピ ー 密 度s0は,
ほ ぼ 背 景 幅 射 の フ ォ ト ン と ニ ュ ー ト リ ノ の 数 で 決 ま り,s0∼7nγ 103/cm3で
対論
∼2.8×
あ る.
図8.1 標 準 理 論SU(3)×SU(2)×U(1)に g*とg*sを
温 度Tの
お け る実 効 的 粒 子 の 自 由 度
関 数 と して 表 し た もの.
8.2 ビ ッ グ バ ン 宇 宙 論
宇 宙 は過 去 の あ る 時期,高
温 高 密 度 の 状 態 か ら始 ま っ た とす る.そ
こ で は,
非 常 に 高 温 の た め あ らゆ る種 類 の 粒 子 と反 粒 子 が 熱 平 衡 状 態 に あ り,す べ て の 粒 子 数 は 同 程 度 に あ っ た.宇 宙 は フ リー ドマ ン の 運 動 方 程 式(8.2)に こ で,よ
従 い,
H-1で
決 ま る時 定 数 で膨 張 す る.こ
く誤 解 さ れ る の で 注 意 し て お く
が,宇
宙 は誕 生 して か ら何 もな い無 の 空 間 に 向 け て 膨 張 して い くの で は な く,
空 間 そ の もの が 膨 張 す るの で あ る.膨 張 に伴 い 宇 宙 温 度 が 下 が る と と もに 各 種 の 相 転 移 を起 こす.ま
た 粒 子 の もつ 質 量 と相 互 作 用 で決 ま るあ る時 刻 に 熱 平 衡
状 態 か ら切 り離 され て い く(decouple).熱 子 数 密 度),υ(温
平 衡 に 関 与 す る反 応 率Γ はn(粒
度 に よ り決 ま る平 均 速 度),σ(反
応 の 断面 積)に
よ っ て,
(8.17) と表 さ れ る か ら,切
り離 しの 温 度 をTdcと
す る と,
(8.18) が 成 り立 つ. 現 在 想 像 し う る 限 り の 最 高 温 度 は,プ で あ る.温
度Tが
∼1015GeVの
ラ ン ク 温 度=G-1/2∼1.22×1019GeV
頃 大 統 一 に よ る 相 転 移 が 起 こ り,強
用 と電 弱 相 互 作 用 の 分 離 が 起 こ る.T∼GF-1/2=250GeVで 離,T∼ΛQCD∼200MeVで
い相互作
電弱相 互作 用の分
ク ォ ー ク の 閉 じ 込 め 相 が 生 じ る.T∼1MeVで
ニ ュ ー ト リ ノ の 切 り離 し が 起 き,T∼0.1MeVで
重 水 素 の 光 分 解 が 止 ま り水
素 ヘ リ ウ ム な ど の 軽 い 元 素 合 成 が 進 む.T∼0.3eVで,フ
ォ トン は 原 子 を プ
ラ ズ マ 状 態 に 保 持 で き な く な り,陽
子 と電 子 は 結 合 して 原 子 をつ くる
(recombination=再
の 結 果 物 質 は フ ォ ト ン に 対 し透 明 と な
結 合 と も い う).こ
る の で こ れ を 宇 宙 の 晴 れ 上 が り と い う.こ 在 のT=2.7度
の と き切 り 離 さ れ た フ ォ トン が,現
の 背 景 輻 射 と し て 残 っ て い る.標
準 ビ ッ グバ ン宇 宙 論 の 観 測 証
拠 も し く は 成 果 を い くつ か 列 挙 す る1,2).
(1) 宇 宙 は い ろ い ろ な レベ ル で 構 造 は もつ もの の,大 Mpc)で
き な ス ケ ー ル(>100
見 れ ば 銀 河や 電 波 源 は 一 様 か つ 等 方 的 に分 布 し て い る.
(2) 遠 方 に あ る銀 河 ほ ど光 スペ ク トル が 大 きな 赤 方 偏 移z=(λ0− λ)/λを示 す. (3) 宇 宙 の 背 景 輻 射 が 存 在 す る. (4) 宇 宙 のH/He/D/Liの 宇 宙 原 理(1)と
元素 組 成 比 を正 し く再 現 す る.
膨 張 宇 宙(2)は
フ リー ドマ ン方 程 式 の 根 拠 で あ り,(3),
(4)は ビ ッグバ ン 宇 宙 論 を支 持 す る証 拠 で あ る. a. 輻 射 優 勢 と物 質優 勢 宇 宙 エ ネ ル ギー 密 度 ρへ の 寄 与 が も っぱ ら相 対 論 的 粒 子 の と き(宇 宙 初 期) 輻 射 優 勢 とい い,非 相 対 論 的粒 子 の場 合(現 在)を 物 質 優 勢 とい う.輻 射 優 勢 の と き はP=ρ/3,物
質 優 勢 の と き はP≪
ρ≒mnで
あ る の で,(8.5),
(8.11)
よ り直 ち に 輻 射 優勢
(8.19a)
物 質優 勢
(8.19b)
(8.2)式
右 辺 のk, Λ
き る.そ
の 項 は(8.19)を
の 場 合(8.2),
が 導 け る.H-1をハッ
b. 地
平
(8.19)か
考 慮 す れ ば 宇 宙 初 期 で は小 さ く無 視 で
ら容 易 に,
輻射優 勢
(8.20a)
物質優 勢
(8.20b)
輻射優 勢
(8.21a)
物質優 勢
(8.21b)
ブ ル 時 間 と い う.
線
観 測 者 に影 響 を及 ぼ す こ との で き る(因 果 関 係 に あ る)事 象 位 置 の最 大 半 径 値 を地 平 線(particle
horizon)と
い う.こ れ はr方
向に伝播 す る光 の到達 距
離 と し て 得 られ る.実 際 の 距離 は 共 動 座 標 で の 距 離 に ス ケー ル 因 子Rを て得 られ る か ら,計 量 お よび光 の 径 路(ds2=0)を
掛け
考 慮 す る と,
輻射優 勢 物質優 勢
(8.22) た だ し,teqは 輻 射 優 勢 か ら物 質 優 勢 に変 わ る時 刻 で あ る. c. 輻 射 優 勢 の 時 代 わ れ わ れ に興 味 あ るの は も っぱ ら輻 射 優 勢 の 時 代 で あ る.後 の 計 算 に 必要 な 諸 量 をい くつ か 計 算 して お く.宇 宙 の エ ネ ル ギー 密 度 ρrは(8.11)を
使 え ば,
(8.23) 第2式
は(8.2)に(8.20)を
入 れ れ ば 導 け る.g*が
定 数 と見 なせ る温 度 領 域
では
(8.24) ま た,(8.2),
(8.23)を
使 え ば,
(8.25a) (8.25b) MPl=G-1/2=1.22×1019GeVは
プ ラ ン ク 質 量 で あ る.
d. 宇 宙 年 齢 とバ リオ ン密 度 現 在 は Λ=0,
k=0な
らば 物 質 優 勢 の 時 代 で あ る.現 在 の宇 宙 を特 徴 づ け る
数 を い くつ か あ げ て お く.宇 宙年 齢 の 大 部 分 は物 質 優 勢 の 時代 で あ るか ら,現 在 の 宇 宙年 齢 をt0と す れ ば,k=0の
とき(8.2)は
す ぐ解 け て
(8.26) が 導 け る. 典 型 的 な 星 に は 大 体 ∼1057個 あ り,そ
し て 宇 宙 に は ∼1011個
数 は ∼1079で Mpcで
あ る.今
あ る の で,バ
∼400/cm3で
あるか ら
の 核 子 が あ り,1個 の 銀 河 が あ る.し
の 銀 河 に は ∼1011個 た が っ て,バ
の星が
リオ ン数 の 総
日 観 測 可 能 な 宇 宙 の サ イ ズ は ∼1028cm(=ct0)∼3000 リ オ ン 数 密 度nBは ,バ
∼10-6/cm3と
な る.フ
ォ ト ン数nγ
リ オ ン 数 対 フ ォ トン 数 比 は
(8.27a) とな る.標 準 ビ ッ グバ ン 宇 宙 論 を使 え ば よ り詳 しい値 が得 られ る(後 述 §8.5)
(8.27b) (8.27c) ΩBは バ リオ ン の 宇 宙 全 体 に 占め るエ ネ ル ギ ー 密 度 比 で あ る. e. 輻 射 優 勢 → 物 質 優 勢 転 換 時 期 物 質 エ ネ ル ギー 密 度 と輻 射 エ ネルギー密 度 が ほ ぼ 拮 抗 す る時 間teqを 計 算 し よ う.物 質/輻 射 の エ ネ ル ギー 密 度(ρm/ρr)とRは
そ れ ぞれ
(8.28a) (8.28b) の 関 係 を 満 た す か ら,ρm(teq)=ρr(teq)と
す れ ば,
(8.29a) T0は 現 時 点 の 宇 宙 背 景 輻 射 温 度 で あ り,g*0の 値 は(8.15b)で
与 えられて い
る.輻 射 と物 質 エ ネ ル ギー が 同 等 に な る この 時 期 の 温 度 は,
(8.29b)
に相 当 し,輻 射 が 切 り離 され て宇 宙 が 晴 れ 上 が る と き(付 録B.2)
(8.29c) の 少 し前 で あ る.
8.3
イ ン フ レー シ ョン
8.3.1 宇 宙 の 急 速 膨 張 ビ ッ グバ ン宇 宙 論 は 今 日観 測 され る宇 宙 の状 態 を再 現 す る の に 非 常 に成 功 を お さめ た が,概 念 的 な 困 難 を い くつ か 抱 え て い た.主 な もの を 四 つ あ げ る. (1) 地 平 線 問 題 (2) 平 坦 性 問 題 (3) モ ノ ポー ル 問 題 (4) 宇 宙 項 問 題 で あ り,(1)∼(3)の
解 決 策 と して考 案 さ れ た の が イ ン フ レー シ ョン 宇 宙 論 で
あ る.イ ン フ レー シ ョン とは,宇 宙 初 期 の あ る時 期 に宇 宙 が 急 速 に膨 張 す る こ と を い う.こ れ は真 空 が エ ネ ル ギー 密 度 ρυ=const.を も っ て い た とす る と可 能 で あ る.(8.2)を
見 れ ば,こ れ は宇 宙 項 に相 当す る.輻 射 優 勢 時 代 の エ ネ ル
ギ ー 密 度 は,
(8.30) い ま,ρυ≫
ρrと
し よ う.そ
う す る と 式(8
.2)は,
(8.31a) で あ り,
(8.31b) tiは イ ン フ レー シ ョ ンの 始 ま る時 刻 で あ る.す な わ ち,宇 宙 は指 数 関 数 的 に膨 張 す る. ρυは,大 統 一 場 が 自発 的 に対 称 性 を破 る と き に生 じ る.対 称 性 を破 る 相 転 移 温 度 をTcと
す る と,T≫Tcで
ポ テ ン シ ャ ルV(φ)の く(図8.2).φ=0は
は,対 称 性 が破 れ て お ら ず 大 統 一 ヒ ッ グ ス
最 小 値 は φ=0に あ る.T≪Tcで
真 空 は φ=σ に 落 ちつ
偽 の 真 空 と な り,真 の 真 空 に 向 け て 移 動 を 開 始 す るが,
図8.2
イ ン フ レー シ ョン モ デ ル (slow
rollover
図8.3
イ ン フ レー シ ョン シナ リ オ で の 温 度Tと 宙 サ イ ズRの
model)
φ=0∼ φ1で は1次 相 転 移 で 偽 真 空 の 中 に 真 の 真 空 の 泡 が 発 生 す る.φ=φ1∼ φ2で は ゆ っ
t〓10-36秒
宇
時間変化
は イ ン フ レ ー シ ョ ン 前 期 でR∼T-1∼t1/2,
く り と滑 り落 ち る(イ ン フ レー シ ョ ン期).φ
10-36〓t〓10-34秒 は イ ン フ レ ー シ ョ ン 期 で,R∼T-1 ∼eHt .こ の 期 間 に 宇 宙 は,e100∼1043倍 と な る.イ
ン
>φ2で は 急 速 に σ に 到 達 し た 後,σ
フ レ ー シ ョ ン 終 了 後 再 加 熱 が あ り,再
な
りの 減 衰 振 動(ヒ
の まわ
ッグ ス の 生 成 と崩 壊)で 再
加 熱 し最 終 的 に は σに 落 ちつ く.
びR∼t1/2と
り,t=teq≒tdc∼1010秒 で 物 質 優 勢 の 世 界 と な り,R ∼T-1∼t2/3で 進 行 す る(ス ケ ー ル は 任 意) .
φ∼0に あ る と き は,真 の 真 空 φ=σ に 比 べ て ρυだ け の エ ネ ル ギ ー を もつ.φ の 宇 宙 膨 張 を取 り入 れ た 運 動 方 程 式 は φの 作 用
とし
て 得 られ る.
(8.32) Γφは,φ
と他 の粒 子 の 相 互 作 用(φ が粒 子 対 に 転 換 す る)を 取 り入 れ る こ と に
よ り生 じ る減 衰 因 子 で あ る.こ れ は減 衰 振 動 の 方 程 式 で あ るか ら,図8.2の
ポ
テ ン シ ャ ル の 形 を仮 定 す れ ば*2),次 の よ うな定 性 的 な 議 論 が で き る. (a) slow rolling(摩 擦 力 が 大 き く,第1項
≒0):宇 宙 の 膨 張 が 実 質 的 な 摩
擦 力 を提 供 し,φ は この ほ ぼ 平 らな ポ テ ン シ ャ ル の坂 を摩 擦 力 に よ りゆ っ く り *2) こ の よ うな特 別 の形 を した ヒ ッグス ポ テ ン シャ ル は ,大 統 一 ゲ ー ジ場 が 自発 的 に対 称 性 を破 る と きに求 め ら れ る(素 粒 子 論 の 立場 か らの)性 質 と必 ず し も整 合 しな い.こ の 場 合,大 統 一群 の一 重 項 に属 し通常 の粒 子 とは弱 くしか相 互 作 用 し な い特 殊 な ヒ ッグ ス場 イ ン フ ラ トンが イ ンフ レー シ ョン を引 き起 こす と考 え る.
と 滑 り 落 ち る.φ
の 粒 子 と の 相 互 作 用 は ま だ 働 い て い な い*3).φ=φ1と
間 で ポ テ ン シ ャ ル の 傾 斜 が 緩 く長 け れ ば,φ で あ ろ う(τ≫H-1: ル 障 壁 は,も 移)が,こ
slow
rolling).な
し存 在 す れ ば,ト
が φ2に 向 け て 滑 る 時 間 τ も長 い
お,φ=0→
φ2を 過 ぎ る と,φ
り 落 ち て い き,φ=σ
初 に 提 案 さ れ た イ ン フ レー シ ョン モ デ ル
は深 い井 戸 ポ テ ン シ ャ ル の 底 に 急 激 に 滑
の ま わ り で 振 動 を 始 め る.こ
て 十 分 速 い(ω2∼ ∂2V/∂ φ2,ω≫H).振
動 開 始 は,質
エ ネ ル ギ ー ヒ ッ グ ス 粒 子 の 出 現 を 意 味 し,急 な わ ち,こ
こ で Γφ≫3Hと
な る.振
膨 張 時 間 に 比 べ る と は る か に 短 い.こ
の 振 動 は 膨 張 率Hに 量m=ω
比べ
∼1015GeVの
高
速 に 粒 子 反 粒 子 対 な どへ 崩 壊 す
動 は減衰 振動 であ るが減衰 時 間 は
れ ら の 粒 子 が 熱 化 す る と,指
よ り冷 や さ れ た 宇 宙 は 再 び 加 熱 さ れT∼1015GeVの の 後 は,バ
相 転
相 転 移 を 主 と し て 想 定 し た.
(b) 再 加 熱:
る.す
φ1へ の 小 さ な ポ テ ン シ ャ
ン ネ ル 効 果 に よ る 遷 移 で 潜 熱 を 出 す(1次
こ の 議 論 で は 無 視 す る.最
で は こ の 形 の1次
φ2の
リ オ ン 非 対 称 生 成 な ど を 経 て,標
数的膨 張に
大 統 一 温 度 に も ど り,そ
準 宇 宙 論 の シ ナ リオ に 復 帰 す る
(図8.3). σ を 大 統 一 エ ネ ル ギ ー1015GeVに
と る と,ρυ ∼ σ4で あ る か ら,
(8.33a) で あ り,ti∼10-36secに
イ ン フ レ ー シ ョ ン が 始 ま る.slow
τ=100H-1lnf∼10-34secと
し よ う.こ
そ の 間(10-36→10-34sec)に,宇
rollingの
時 間 を,
れ は 非 常 に 短 い 時 間 の よ う に 見 え る が,
宙 は
(8.33b) 倍 に 膨 張 す るの で あ る. 次 に 最 初 に 述 べ た 問題 点 と イ ン フ レー シ ョン宇 宙 に よ る解 決 策 を解 説 す る.
8.3.2 地 平 線 問 題 議 論 を 簡 単 に す る た め に,地 平 線 をdH(t)=ctで の 地 平 線dH(t0)≡R0=ct0∼1028cmで *3) こ の 時 点 で は 空 間 依 存 性(フ k≒0.し
,V≒const.で ーリエ 成 分k∼
定 義 す れ ば,現
時 点t0で
あ り,観 測 可 能 な宇 宙 の 最 大 値 を 与 え
あ る か ら φ の もつ 質 量(m2=∂2V/∂
φ2)は ≒0.φ
の もつ
λ−1)は宇 宙 膨 張 に よ り薄 め ら れ 赤 方 移 動 し て し ま う の で
た が っ て φ は 質 量 ≒0,運
動 量 ≒0の
ボ ー ズ 粒 子 の 凝 縮 体 と し て 振 る 舞 う.
る.現
在 の 地 平 線 は 時 刻tに
お い て は,dH0(t)と
表 さ れ る も の と す れ ば,
(8.34) ゆ え に,
(8.35) 背 景 輻 射 が 切 り離 さ れ る 時 刻tdcは,物 (teq∼1010)に
質 と輻 射 エ ネ ル ギ ー が 等 し く な る 時 刻
ほ と ん ど 等 し い から,(8.20)よ
り
(8.36) した が って,輻 射 が 切 り離 され た と き の地 平 線dH(td)は,
(8.37) 現 在 の 宇 宙 背 景 輻 射 は,非 常 に よ い 近 似 で,T=2.728±0.002の
温度 のプ ラ ン
ク熱 放 射 の スペ ク トル 分 布 で表 され る.か つ全 天 ど の方 向 で 見 て も温 度 ゆ ら ぎ が ≒10-5と い う非 常 に 小 さ い 範 囲 に お さ ま っ て い る.こ の こ とは,背 景 輻 射 が 十 分 よ くか き混 ぜ られ た 状 態 で あ る こ と,す な わ ち す べ て が 地 平 線 の 中 に あ っ た こ と を意 味 す る.一 方,(8.37)に
よ れ ば,現
在観 測可 能 な宇宙 の大 き
さ は過 去 に さか の ぼ れ ば,そ の 時 刻 に お け る地 平 線 の100倍
もあ っ た こ と,逆
に い う と,切 離 し時 に お け る 背 景 輻 射 の 地 平 線 は 現 時 点 で 観 測 す れ ば,視 ∼1 .8度(=180/100)の
角
範 囲 に しか 及 ば な い こ と を意 味 す る.す な わ ち,全 天
に わ た る背 景 輻 射 の 一 様 性 は 説 明 で きな い.こ れ が 地 平 線 問 題 で あ る. 解 決 策:
tfを イ ン フ レー シ ョン が 終 了す る時 間 とす る と
(8.38) tを
イ ン フ レ ー シ ョ ン が 始 ま るti=10-36secと
す る とtf=10-34sec=τ
を 入 れ
て,
(8.39)
と な り,背 景 輻 射 切 離 し時 の 地 平 線 は 現 在 観 測 可 能 な 全 天 よ りは る か に 大 き く,地 平 線 問題 は 解 決 す る.
8.3.3
平
坦
性
問
題
宇 宙 の 物 質 密 度 は 観 測 に よ れ ば,Ω0=0.1∼0.3で リー ドマ ン 方 程 式(8.2)の こ と は な い.こ
中 で,曲
の こ と は,相
率 項(kの
あ り非 常 に1に
掛 か る 項)は
近 く,フ
極 度 に優 勢 とい う
当 に 不 自 然 な 状 態 で あ る こ とが 次 の よ う に し て い
え る.ρc=3H2/8πGを(8.2)に
入 れ る と,
(8.40) (8.20)を
使 え ば,
(8.41) で あ る か ら,
(8.42) こ れ よ り,
(8.43)
す な わ ち,時
間 を さ か の ぼ れ ば Ω は 限 り な く1に
ネ ル ギ ー の 時 刻(t∼MPl-1∼10-44sec)に,│Ω-1│が い た と す る と,k>0で
あ れ ば,あ
縮 に 転 じ て い た で あ ろ う し,k<0で に ∼10-11秒
に,プ
有 限 な 値 ∼O(1)を
っ と い う 間 も な く(∼10-43秒)宇 あ れ ば,現
ラ ン クエ
在 の 宇 宙 温 度3度
も って 宙 は再収
に達 す るの
も か か ら な か っ た で あ ろ う2).こ の よ う な 微 調 整 は 不 自 然 で あ り,
Ω は 正 確 に1で い.こ
近 づ く.仮
あ っ た か,何
ら か の 理 由 でΩ →1と
な っ た と考 え ざ る を え な
れ が 平 坦 性 問 題 で あ る.
解 決 策:平
坦 問 題 は,(8.40)を
書 き 換 え る と,
(8.44) と な る.イ
ン フ レー シ ョ ン が あ る と,R-2∼exp(-2Hinfτ)→0で
Ω は 限 り な く1に
近 い値 と な っ て解 決 す る.
あ る の で,
8.3.4
モ ノポ ー ル 問題
宇 宙 が 高 温 でT∼1015GeVの 立 し て い れ ば,温 れ る が,こ
時 期,大
統 一(GUT,た
と え ばSU(5))が
度 が 下 が る と 対 称 性 が 破 れ てSU(3)×SU(2)×U(1)に
の と き に,ト
量 は ∼MGUT/αGUT∼10-8grで
非 常 に 大 き い.何
成 時 刻 で の 地 平 線 内 で1個
と後 は,標
準 的 な 宇 宙 膨 張 と熱 平 衡 の 理 論 か ら,モ
ト ロ ピ ー 比 は,nMP/s>10-10と
の質
す る
ノ ポー ル の数 密 度 の 対 エ ン 方,モ
ノ ポー ル の 宇 宙
界 値 を 超 え な い と い う条 件 から,nMP/s<10-23
と い う条 件 が つ く.モ
ノ ポ ー ル は 非 常 に 重 い の で,消
ム が 考 え つ か な い.す
な わ ち,モ
の で あ る.モ
参 照) .そ
よ り は 多 くつ く ら れ た で あ ろ う.と
な る こ と が い え る7).一
エ ネ ル ギ ー 密 度 へ の 寄 与 が,臨
トポ
個 くらい 生 成 され るか は わ か ら
な い が,生
リ オ ン と 同 じ く ら い)存
わか
・フ ー フ トーポ リヤ コ フ(t'Hooft-Polyakov)の
ロ ジ カ ル な モ ノ ポ ー ル が 発 生 す る こ とが 知 ら れ て い る6)(第7章
成
滅 させ る う ま い メ カ ニ ズ
ノ ポ ー ル は 理 論 上 は 現 在 の 宇 宙 に 豊 富 に(バ
在 し な け れ ば な ら な い に も関 わ らず 見 つ か っ て い な い
ノ ポ ー ル 問 題 は,イ
ンフ レー シ ョン時 に数 密 度 が 十 分 に 薄 め られ
る こ と で 解 決 す る. イ ン フ レ ー シ ョ ン を 経 過 す る と,宇 な っ て し ま う.指
宙 の 初 期 状 態 の 違 い は,ほ
数 関 数 的 膨 張 に よ っ て,宇
薄 め ら れ て し ま う の で あ る.イ た 宇 宙 サ イ ズ が,イ
とん どな く
宙 の 曲 率 と粒 子 密 度 は ほ ぼ 完璧 に
ン フ レー シ ョ ン 開 始 時 に は ∼10-25cmで
ン フ レー シ ョ ン 終 了 後 に は ∼1018cmに
の 観 測 宇 宙 の サ イ ズct0∼1027cmは,大
な る.一
方,現
あっ 在
統 一 の 時 代 に は,
(8.45a) と 計 算 で き る.t=10-36秒
を入 れ る と
(8.45b) と な る.す
な わ ち,観
さ で あ り,わ
測 宇 宙 は 大 統 一 の 時 代 は た か だ か ∼1cmく
らいの大 き
れ わ れ は イ ン フ レ ー シ ョ ン で 肥 大 し た 真 の 宇 宙 の ご く一 部 し か 見
て い な い こ と に な る.
8.3.5 宇 宙 項 問 題 現 時 点 で の宇 宙 の エ ネ ル ギ ー 密 度 は,た か だ か 臨 界 値 ρcの程 度 で あ る.
(8.46) 一 方
,イ
ン フ レ ー シ ョ ン モ デ ル に よ れ ば,ρ=ρυ=const.の
時 代 が あ っ た.す
な わ ち宇 宙 項 と して
(8.47) を も って い た こ と に な る.力 学 的 に安 定 な真 空 に 落 ち込 ん で い くに 従 い ρυ → 0に な るに して も,量 子 ゆ ら ぎの オー ダ ー は 大 統 一 エ ネ ルギー ス ケ ー ル で 与 え ら れ るか ら,素 粒 子 論 的 に考 え て 自然 な真 空 エ ネ ルギー の値 と,実 際 に観 測 さ れ て い る 真 空 エ ネ ル ギー の 値 とは10100以 上 の 差 が あ る.こ れ が 宇 宙 項 問 題 で あ り最 も先 鋭 な微調 整 問 題 を提 供 す る.何 え な い が,そ
らか の 相 殺 機 構 が働 くと考 え ざ る を
の よ うな機 構 を与 え る対 称 性 は知 られ て い な い.
で は,宇 宙 項 は正 確 に0な の で あ ろ うか.歴 み られ た.第1回 が,膨
史 的 に は宇 宙 項 は2回 導 入 が 試
は ア イ ン シ ュ タ イ ンが 定 常 宇 宙論 をつ くろ う と して 導 入 した
張 宇 宙 の 発 見 に よ り放 棄 し た.第2回
目は ビ ッ グバ ン宇 宙 論 に 対 抗 し
て,完 全 宇 宙 原 理(宇 宙 は 空 間 的 の み な らず 時 間 的 に も一 様 と い う原 理)を 成 立 させ る た め に ボ ン デ ィ-ゴ ー ル ド-ホ イル に よ り導 入 され た が,宇 宙 背 景 輻 射 の 発 見 に よ り放 棄 を余 儀 な くさ れ た.こ の よ う な歴 史 的 背 景 に もか か わ らず, 今 日再 び宇 宙 項 を復 活 し よ う と い う議 論 が 盛 ん で あ る.理 由 は,最 近 の ハ ッブ ル 定 数(H0=80±5kms-1Mpc-14))か 109年)が
ら 計 算 さ れ る宇 宙 年 齢(8.2Gyr;
球 状 星 団 の 分 布(16±3Gyr)や
Gyr=
銀 河 内 の 白色矮 星 の 年 齢 か ら推 定 さ
れ る値 と 矛 盾 す る こ と,ハ ッブ ル 法 則 を光 度 距 離 対 赤 方 偏 移 の 関 数((B.17) 参 照)と
して み る とき,Ⅰ 型 超 新 星 の デー タが 宇 宙 項 の 存 在 を示 唆 す る こ と8),
現 在 の 宇 宙 の大 規 模 構 造 形 成(後 述)な
ど冷 た い 暗 黒 物 質 の み で は 説 明 し きれ
な い こ と,ま た密 度 ゆ ら ぎ の ス ケ ー ル(密 度 差 を とる2点 間 の 距 離)依 存 性 な ど い ろ い ろ な こ とが,バ
リオ ン,暗 黒 物 質 の ほ か に宇 宙 項 を加 え て三 者 の エ ネ
ル ギー 密 度 の バ ラ ンス を とる と う ま くゆ くか らで あ り,最 近 の 話 題 とな っ て い るが,こ
こ で は あ くまで も0と
*4) イ ン フ レ ー シ ョ ン モ デ ル は
,正
して 議 論 を進 め る*4).
確 に はΩ=1で
は な く,
も し くは を 予 言 す る.最 近 の デ ー タ で は,Ω ≒0.3(超 Ω+Ω λ=1(背 景 輻 射)が 定 着 し,k=0, Λ〓0は
銀 河 団 な ど よ り),Ωλ ≒0.7(Ia型 大 前 提 と な りつ つ あ る.
超 新 星),
8.4
残 存 ニ ュー トリノ
a. ニ ュ ー トリ ノ温度 宇 宙 初 期 は,い
ろ い ろ な粒 子 が 熱 平 衡 状 態 に あ る が,宇
い,漸 次 熱 平 衡 か ら切 り離 され て い く(decouple).宇 ∼1sec)で
宙 が 膨 張 す る に従
宙 温 度T≒
数MeV(t
は,熱 平 衡 に あ る主 た る反 応 は ニ ュ ー トリ ノ反 応 と電 子 対 生 成 消 滅
反 応 で あ る.
(8.48a) (8.48b) (8.48c) (8.48d) T≒0.72MeVで,ニ
ュ ー ト リ ノ の 反 応 率Γν ≒Hと
離 さ れ(付
録B.3参
照),T≒me/3≒0.17MeVで
行 す る.対
消 滅 反 応 の 前 後 の エ ン ト ロ ピ ーSは
な りニ ュー ト リ ノ が 切 り 電子対 消 滅が一 方方 向 に進
保 存 す る の で,(8.14)を
参 照
す れ ば,
(8.49) が 成 立 す る.V∼R3,
ρe-+ρe+=2(7/8)ργ
を 考 慮 す る と,エ
ン トロ ピー 保 存 の
条 件 は
あ る い は,
(8.50) と 書 き 直 せ る.こ
の 時 点 で,ニ
ニ ュ ー ト リ ノ 温 度 はTν ∼R-1の Tγ で あ る が,以
ュ ー ト リ ノ は す で に 自 由 粒 子 で あ る の で, よ う に 変 化 し て い る.消
滅 反 応 以 前 はTν=
後 は,
(8.51) と な る.す し,ニ
な わ ち,電
子 対 消 滅 の エ ネ ル ギ ー が,フ
ォ トン 温 度 を 高 め る の に 対
ュ ー ト リ ノ に は 全 然 寄 与 し な い 分 だ け ニ ュ ー ト リ ノ温 度 は フ ォ トン 温 度
よ り低 い.現
在 の ニ ュ ー ト リ ノ 温 度 は,
(8.52) で あ る.
b. 赤 方 偏 移 ニ ュー ト リ ノは,切
り離 し以 降 は 熱 平 衡 状 態 に な い.運 動 量pが,p∼R-1
に よ っ て赤 方 偏 移 して い くの み で あ る.こ れ は 次 の よ うに して示 せ る.エ ネ ル ギーEを
もつ 粒 子 が 共 動 座 標 の 微 小 距 離 δxを 飛 ぶ 速 度 をυ とす る と,実 際
の 距 離 はR(t)を
掛け て
(8.53a) 一 方
,距
ら,ロ
離 がR(t)δx離
れ て い る と,膨
張 に よ り相 対 速 度 η=Rδxを
もつか
ー レンツ変換す れば
(8.53b) ゆ え に運 動 量 変 化 δp/pは,
(8.53c) と な り,
pR=一
定
(8.54)
が 成 立 す る. c. ニ ュ ー ト リ ノ 質 量(mν≪1MeV) ニ ュ ー ト リ ノ は 切 離 し の と き(T∼1MeV)は 大 部 分 はp>mν
で あ る.こ
維 持 す る の で(温 ちp≪mν)と
の 部 分(E≒p)は,切
度 は 変 わ る),仮
相 空 間の
り離 し時 の 数 分 布(8.9)を
に ニ ュ ー ト リ ノ が 非 相 対 論 的 粒 子(す
な っ て い て も,式(8.10)を
の 数 密 度 は 自 由 度2の
相 対 論 的 で あ り,位
そ の ま ま 使 っ て よ い.ニ
なわ
ュー トリ ノ
ニ ュ ー ト リ ノ種 あ た り
(8.55) と な る.ニ
ュ ー ト リ ノ の 宇 宙 エ ネ ル ギー 密 度 へ の 寄 与 が 臨 界 密 度 ρcよ り小 さ
い と い う条 件 か ら,ニ
ュ ー ト リ ノ質 量 に は 次 の 制 限 が つ く.
(8.56)
d. ニ ュ ー ト リ ノ 質 量(mν≫1MeV) mν≫1MeVで
あ れ ば,熱
な っ て い る.こ
平 衡 か ら切 り離 さ れ ると き は す で に 非 相 対 論 的 に
の と き の 数 密 度 は(8.10)か
ら
(8.57) と な る.消
滅 反 応(ν+ν→X)の
断 面 積 は,
(8.58) で 与 え ら れ る.こ
こ にAは,開
あ る.H>Γν=nν<συ>に
け て い る チ ャ ネ ル に も よ る が,O(1)の
な る と,消
の ニ ュ ー ト リ ノ 数 が 凍 結 さ れ(freeze 密 度 がR-3で
減 る の み で あ る.凍
と きTfr∼mν/20と MeVのと
大 幅 に 超 え て し ま う.一
方,mν
な り,ρν ∼mνnν は 減 少 す る.ニ な い た め に は,mν
out),そ
れ 以 後 は,宇
結 時 の 温 度 をTfrと
し て よ い.mν
き の 数 に 近 づ く の で,ニ
滅 反 応 が 起 き な く な る の で,こ
が1MeV程
の時点 で
宙 膨 張 に従 っ て 数
す ると,mν〓1GeVの
度 に 小 さ い と,nν
はmν≪1
ュ ー トリ ノの エ ネ ル ギー 密 度 が 臨 界 密 度 を が 非 常 に 大 き い と生 き 残 るnν の 数 が 少 な く ュ ー トリ ノの エ ネ ル ギー 密 度 が 臨 界 値 を超 え
は あ る 一 定 の 値 以 上 で あ る 必 要 が あ り,こ
と 計 算 さ れ て い る.す
定数 で
の 値 は9)
(デ ィ ラ ッ クニ ュ ー ト リ ノ)
(8.59a)
(マ ヨ ラ ナ ニ ュ ー ト リ ノ)
(8.59b)
な わ ち,宇
宙 論 を 使 え ば,100eV〓mν〓8GeVは
安定
な ニ ュ ー ト リ ノ に 対 す る 質 量 禁 止 領 域 とな る.
8.5 宇 宙 の 物 質 組 成
8.5.1 バ リ オ ン 創 生 大統 一理論 発達 以前 の標準 宇宙 論 では初期 仮定 として与 え なけれ ば な らな か っ たバ リオ ン数 非 対 称,す (B)が,反
バ リオ ンの 数(B)よ
な わ ち 宇 宙 初 期,何ら
か の 理 由 で バ リオ ン の 数
りわ ず か に 多か っ たと い う事 実*5)
(8.60) *5) T≫ ΛQC
D〓200 MeVで は,バ リ オ ン は ク ォ ー ク に 分 解 さ れ て い る の で,本 当 は クォー ク数 を 扱 う の が 正 し い が,歴 史 的 な 理 由 で バ リオ ン数 と い う名 称 を そ の ま ま 使 う.
は大 統 一 理 論 を 使 えば 自然 な 帰 結と して 説 明 で き る.ΔB/BのΔBは 宙 に 存 在 す る物 質 粒 子 の 密 度 よ り推 察 で き る.Bは
今 日宇
宇 宙 が 熱 平 衡 に あ っ た初
期 に お け るバ リオ ン数 密 度 で あ り,そ れ は現 在 残 って い る宇 宙 背 景 輻 射 よ り計 算 可 能 な初 期 フ ォ トン数 密 度nrと リオ は い くつ か あ る.第1は,は 解 答 に は な ら な い.第2は,初
同 程 度 で あ る.こ の 非 対 称 を説 明 す る シ ナ じめ か ら非 対 称 が 存 在 した とす る もの で真 の
期 条 件 はΔB=0と
す るが,同
じだ け あ る物 質
と反物 質 が ビ ッ グバ ン以 後 の いつ か の 時 点 で分 離 したと す る説 明 で あ る.こ の 議 論 の 難 点 は,物 質 と反 物 質 を空 間 的 に 分 離 す る機 構 を 未 だ見 出 し え な い こ と,こ の 宇 宙 の ど こか に 反 物 質 が 大 量 に存 在 す る証 拠 が な い こと で あ る.宇 宙 線 に よ る観 測 デー タは 宇 宙 の あら ゆ る とこ ろ で(少 なく もア ン ドロ メ ダ 星 雲 近 辺 ま で は),反 物 質 の物 質 に対 す る 存 在 比 が1万 分 の1以 上 で は な い こ と を示 し て い る10).第3の 説 明 が 大 統 一 理 論 に よ る も の で,宇 宙 が 大 統 一 温 度(T ∼1015GeV)か ら冷 え る際 に ,バ リオ ン数 非 保 存 過 程 に よ りバ リオ ン数 過 剰 が 発 生 し たと い う もの で あ る.た だ し,バ
リオ ン数 非 保 存 過 程 が 存 在 す る だ け で
は バ リオ ン数 過 剰 は 発 生 しな い.反 バ リオ ン数 過 剰 が 同 じだ け 生 じて,全 体 と して は バ リオ ン数と 反 バ リオ ン数 は 均 衡 して し ま うか らで あ る.バ
リオ ン数 過
剰 が 生 じる た め に は 次 の 三 つ の 条 件(サ ハ ロフ の3条 件11))が 必 要 で あ る. (1) バ リオ ン数 を破 る基 本 過 程 の 存在 (2) CP非
保 存の存在
(3) バ リオ ン数 を破 る過 程 が 進 行 中 に,熱 平 衡 が破 れ る 条 件(1)の
必 要 性 は 自明 で あ ろ う.条 件(2)が
め,非 常 に 重 いXボ
ソ ンが バ リオ ン数B1とB2で
岐 比bお
崩 壊 す る と し よ う.
よび1-bで
必 要 な 理 由 を明 ら か に す る た 特 徴 づ け られ る 過 程 に,分
(8.61a) こ の と き,Xは
(8.61b) CPT定
理 より
(8.62)
で あ るか ら,最 初 にXとXの
数 は 等 しか ったと す れ ば
(8.63) B1≠B2は
バ リオ ン数 非 保 存 を必 要と し,b≠bはCP非
件(3)は
次 の よ うに い え る.CPT保
保 存 を意 味 す る.条
存 とユ ニ タ リテ ィ条 件 の み を使 い,
(8.64) 最 後 の 等 式 は和rお
よ びrは
粒 子と 反 粒 子 す べ て に わ た るか ら,同
き換 え て よ い とい う事 実 を使 っ た.上 式 にCPT変
じrで
置
換 を施 せ ば
(8.65) 熱 平 衡 状 態 で は すべ て のr状
態 は 同 じ数 だ け 存 在 す るか ら,仮 に 条 件(1)
(2)
が 成 立 し て も非 対 称 は 生 じな い の で あ る.し たが っ て,宇 宙 の 膨 張 に よ り熱 平 衡 が 破 れ ると い う条 件 が 不 可 欠 なの で あ る.具 体 的 な数 値 は モ デ ル に依 存 す る が,大 統 一 理 論 を使 えば,バ
リオ ン数 非 保 存 の 妥 当 な値と 現 在 のCP非
保存の
実 験 値 を採 用 す る こ とに よ っ て,上 記 のΔB/nγ を再 現 で き る こ とが 指 摘 され た12). た だ し,せ っ か くつ くられ たバ リオ ン数 非 対 称 が,電 ン トン効 果 に よ り相 転 移 時 に失 わ れ る可 能 性,も
弱相 互 作 用 の イ ン ス タ
し くは そ こ でバ リオ ン 非 対 称
自身 が生 成 され る可 能 性 が あ る こ と は §6.5で ふ れ た.し か し,こ の場 合 で も, B-Lは
保 存 して い る の で,バ
例 え ばSO(10)で
リオ ン 非 対 称 がB-Lを
生 成 され た とす れ ば,ヒ
破 る 大 統 一 モ デ ル,
ッ グ ス凝 縮 に よ る 電 弱 相 互 作 用 相 転
移 を経 て も生 き残 る. こ の宇 宙 論 の 議 論 は,逆
に素 粒 子論 に対 して 一 つ の 指 針 を与 え る.バ
数 発 生 が 本 当 に上 記 の機 構 に よ るな ら ば,CP非 在 す る とい う こ とで あ り,CP非
リオ ン
保 存 は 大 統 一 ス ケー ル で も存
保 存 を対 称 性 の 自発 的 破 れ に 帰 す る モ デ ル な
どに 対 して相 当 の制 限 を課 す こ とに な る.
8.5.2 元 素 合 成(nucleo-synthesis)2,13) 宇 宙 初 期,温
度 がT≪
ΛQCD∼200MeVに
下 が る と,前 節 で 議 論 し た わ ず か
な 生 き残 りの ク ォー クの凝 縮 が 起 こ りハ ドロ ン が 形 成 され る.し か し,温 度 が
10MeVを
大 き く上 回 る とき は,陽 子 と中性 子 は 遊 離 し て お り,自 由粒 子 と し
て飛 び 回 っ て い る.温 度 が 原 子核 の 結 合 エ ネ ル ギ ー 程 度 に下 が って くれ ば元 素 合 成 が 行 われ る よ うに な る.陽 子pと
中性 子nか
ら原 子 核Aを
合 成 す る とき
の熱平衡 式 は
で あ る の で,化
学 ポ テ ン シ ャ ル に つ い て は μA=Zμp+(A-Z)μnが
成 立 す る.
し たが っ て
(8.66) こ こ で,バ
リオ ン 数nBを
(8.67) と し,各 粒 子 の バ リオ ン数 に対 す る重 量 比 を
(8.68) で定 義 す る.各 粒 子 の 温 度Tに
お け る数 密 度((8.10b)参
照)
(8.69) を入 れ て,化 学 ポ テ ン シ ャル を消 去 す れ ば,
(8.70a)
を 得 る.[…]A-1の
中 の 指 数 関 数 の 係 数 は, を 入 れ て 計 算 す る と,
(8.70b) とな っ て,BA/[(A-1)T]因 1∼0.1MeV)に
子 に よ り指 数 関 数 が こ の 数 を相 殺 す る低 温(T=
な る ま で は 元 素 合 成 が 進 ま な い.以 下,も
う少 し系 統 的 に 段
階 を追 っ て み よ う. 第1段
階:
T≫10MeV,
この 時 期,m≪10MeVの
t≪1秒 粒 子(ニ ュー トリノ,電 子,陽 電 子)は 相 対 論 的 で
あ りか つ 豊 富 に 存 在 す るが,バ
リオ ン の数 は わ ず か で あ る.こ の 段 階 で は まだ
弱 い相 互 作 用 反 応 が 活 発 で あ り,核 子 は次 の よ うな 反 応 で 熱 平 衡 状 態 に あ る.
(8.71a) (8.71b) (8.71c) (8.72) (8.71)の
反 応 を 考 え る と化 学 ポ テ ン シ ャ ル 間 に は
(8.73) が 成 立 す る.非 相 対 論 的 な粒 子 の 温 度Tに
お け る数 密 度(8.10b)を
使 って
μnと μpを 消 去 す れ ば
(8.74) レプ トン の化 学 ポ テ ン シ ャ ル は無 視 す る.そ の 理 由づ け は,宇 宙 は 電 気 的 に 中 性 で あ る とす ると
ま た,平
衡 式(8.72)か
ら,μ(e+)+μ(e-)=0が
成 立 す る.し
たが っ て
(8.75) か ら,2μe/T∼
ηBと な っ て 無 視 で き る こ と が わ か る.ニ
は 推 測 す る し か な い が,電
ュ ー ト リ ノに つ い て
子と 同 じと 考 え れ ば や は り 無 視 で き る で あ ろ う.
レプ トン の化 学 ポ テ ン シ ャル を無 視 す れ ば
(8.76) T≫Qで
あ る か ら,
(8.77a) 重 水 素 に つ い て は,(8.70a)でA=2と
お いて
(8.77b) を入 れ る と
(8.78) で あ る の で,陽 子 や 中性 子 に 比 べ 重 水 素 の成 分は 無 視 で き る. 第2段
階:
T〓0.72MeVで
秒 弱 い 相 互 作 用 に よ る 熱 平 衡 反 応 が 切 り離 さ れ る(付 録
B.3).そ
の 直 後(T〓me/3)に,e+e-→
と な る(8.51).こ
γγ が 一 方 的 に 進 みTγ=(11/4)1/3Tν
の 時 点 で
(8.79) 重 水 素は 合 成 さ れ て も,光 増 え な い.ト 第3段
分 解 反 応γ+D→p+nの
リ チ ウ ム や ヘ リ ウ ム の 数は さ ら に 少 な い.
階:
T=0.3→0.1MeV,
こ の 段 階 で は,重
t=1秒
0.07MeVに
→3分
水 素 や そ れ よ り重 い 核 は 反 応 速 度 は 十 分 あ る も の の 合 成 の
た め の 材 料 の 数 が 小 さ く て((8.70)式 増 え な い.こ
方が圧倒 的 に優勢 で数 が
の ηBA-1因 子),合
の 間 は 中 性 子 は 平 均 寿 命 τ=887±2secで な る と,温
成 され る核 子 の 数 は 崩 壊 し て ゆ く.T=
度 が 十 分 低 く な り軽 い 核 の 中 で は 束 縛 エ ネ ル ギ ー が 大
き く て(B(He)=28.3MeV)安
定 なヘ リウム をつ くる反 応
(8.80) が 一 方 的 に か つ 急 速 に進 む.ヘ 6の 安 定 核 が ない こと,素
リ ウ ム よ り重 く安 定 な核 も存 在 す る が,A=5,
材 とな る軽 い核 の 数 が そ もそ も少 な い こ と,温 度 が
低 くな る と クー ロ ン 障 壁 が 大 き くな る な ど の理 由 で そ れ 以 上 重 い核 が合 成 さ れ
図8.4
元 素 合 成 の 発 展 す る様 子2,13)
横 軸 は 温 度 で あ るが,矢 印 を つ け た とこ ろ に は 時刻 も示 し て あ り,そ れ ぞ れ1, 3分, 1時 間 で あ る.縦 軸 は水 素 に対 す る 成 分 比.
る こ と は な い.こ
れら の 様 子 を 図8.4に
示 す.
ヘ リ ウ ム が 合 成 さ れ る 段 階 で の 中 性 子(陽 は ∼1/7で
あ る.こ
子)の
数 をn(p)と
す る と,n/p
れ か らヘ リ ウ ム 成 分 の 重 量 比 は
(8.81) と な る.宇 宙 の 元 素 組 成 の75%が 裏 づ け られ て い る.ビ
水 素 で25%が
ヘ リウ ム で あ る こ と は観 測 に
ッグバ ン元 素 合 成 の 提 唱者 ガ モ フは,当 初 ビ ッ グバ ン 時
に す べ て の 元素 が つ く られ ると 提 案 した が14),今 日で は,ヘ
リウ ム よ り重 い元
素 は 星 の 中 で,ま た 超 新 星と し て 爆 発 す る際 に つ く られ る こ とが 知 られ て い る.ビ
ッグ バ ン 時 に つ くら れ る の は軽 い 元 素 の み で あ る.D,
3He, 7Liは つ く
られ るが 圧 倒 的 に 少 な い.し か し,こ の わ ず か な量 を上 記 の シナ リオ を精 密 化
図8.5
ビ ッ グバ ン宇 宙論 で 計 算 した 軽 い 元 素 の 組 成 比
バ リ オ ン 密 度 ρB∼3×10-31∼4×10-31grcm-3とと
る とこ こに の せ た 原 子 核 組 成
の 観 測 値 が 再 現 で き る13).横 線 と 矢 印 は 観 測 値 を 示 す. 3He:Y=0 .239±0.015, D:Y>1.6×10-5, D+He3:Y〓6∼10×10-5,7Li1.1×10-10
し て 計 算 し た と こ ろ 実 に 観 測 値 と よ く合 う こ と が わ か り(図8.5),ビ
ッ グバ
ン 宇 宙 論 を 正 当 化 す る 大 き な 証 拠 と な っ て い る. さ ら に,こ
れ ら の 計 算 量 は ηB=nB/nγ
わ か る よ う に,ηBの
を パ ラ メ タ ーと し て 含 む が,図
か ら
許 容 範 囲 は 狭 く絞 ら れ て お り13)
(8.82a) (8.82b)
このΩBの 値 が 宇 宙 論 で 最 も正 確 なバ リオ ン数 密 度 を表 す もの とさ れ る.
8.6 宇 宙 構 造 の 進 化
8.6.1 ジ ー ンズ 質 量 宇 宙 原理 に よ れ ば 宇 宙 構 造 は一 様 で 等 方 的 な は ず で あ る.し か し,銀 河 や 銀 河 団 の 存 在 で 知 ら れ る よ うに,実 際 の 宇 宙 密 度 は一 様 で な く構造 を もつ.図 8.6は 地 球 か ら150Mpcの
半 径 内 に あ る銀 河 分 布 で あ り15),現 在 ま で に観 測 さ
れ て い る 非 一 様 分 布 の な か で最 大 の ス ケ ー ル を もつ.200Mpcよ
り大 きな ス
ケ ー ル で な ら した 密 度 分 布 は一 様 で あ る とみ て よ い. 非 一 様 性 を定 量 的 に 定 義 す る た め に,ま ず 宇 宙 の体 積 で なら した 平均 密 度 (8.83) か らの ず れ を問 題 に す る.宇 宙 空 間 か ら直 径 λの 球 を あ ち こ ち か ら抽 出 し, 球 内 の 平 均 密 度 ρ1の宇 宙 全 体 の 平 均 密 度 ρ0か ら の ず れ の 相 対 値 の 自乗 平 均, す な わ ち, と
す ると き,λ>200Mpcな
で あ る.も
え ば,超
っ と小 さ い ス ケ ー ル,例
ら ば δρ/ρ≪1
銀 河 団 の ス ケ ー ル(λ〓20Mpc)
で は δρ/ρ∼1で あ る.す な わ ち宇 宙 平 均 の2倍 程 度 の 物 質 集 中 が 観 測 さ れ て い る(後 述(8.110)).そ
れ よ り小 さ い ス ケ ー ル で は δρ/ρ>1で 非 線 形 段 階 に
入 って お り,物 質 は互 い に 強 く結 びつ い て い る.ち な み に典 型 的 な 銀 河 サ イ ズ は30kpcで
あ り,典 型 的 な質 量MG∼2×1011M〓
を
と表 し,宇 宙 の 平 均 密 度 で こ れ だ け の 重 量 を包 含 す る ス ケ ー ル λGを 定 義 す る
地 球 か ら150h-1Mpc(∼5億
図8.6 宇 宙 の 大 規模 構 造15) 光 年)内 の6112個 の 銀 河 の 分 布.円
球.9時 ∼16時 ま でつ ら な っ て い る の が 巨 大 な壁(great な ど も見 え る.
wall)で
の 中心 が地 あ り,泡 構 造
と
で あ る.こ の ス ケ ー ル で は密 度 ゆ ら ぎ δρ/ρ≫1で あ るの で,い
っ た ん δρ/ρ>1
に な る と非 線 形 度 が 急 速 に上 が るこ とが わ か る.標 準 宇 宙 論 で は,こ れ ら銀 河 や 銀 河 団 な どの 現 在 観 測 され る宇 宙 構 造 は,最 初 は 一様 で あ っ た質 量 分 布 に ゆ ら ぎが 生 じ,時
と と もに 成 長 して現 在 の よ うに な っ た と考 え る.
以 下 膨 張 宇 宙 全 体 の ス ケ ー ル 因子R(物 よ うに 変 化 す る)と,あ
質優 勢 な らば 時 間 と と もに ∼t2/3の
る時 刻 で の 共 動 座 標 系 上 で の宇 宙構 造 物 サ イ ズ を 表 す
ス ケ ー ル λ(こ れ は 時 間 に 無 関 係)と2種
類 の ス ケー ル を 使 い 分 け る.以 下,
こ の 節 で は 特 に 断 らな いか ぎ り現 在 の ス ケ ー ルR0=R(t0)=1と 系 を使 用 す る.こ の と きの ス ケ ー ル λは現 時 点(t=t0)に ケ ー ル に 等 しい,例
と る共 動 座 標
焼 き直 した と き の ス
えば,背 景 輻 射 切 り離 し時 の 地 平 線 の 大 き さがdH(tdc)と
い う と き,共 動 座 標 変 数 は宇 宙 の膨 張 に と もな い 不 変 で あ るの で ,現 時 点 で の 実 際 の大 き さ は,R0dH(tdc)=dH(tdc)で
あ る.す
在 な らば こ の大 きさ に な っ た で あ ろ う値 を扱 う.
な わ ち 宇 宙 膨 張 に と もな い現
質 量 ゆら ぎ が成 長 す る ため に は,ゆ
ら ぎ を分 散 させ よ う とす る圧 力 に 打 ち勝
つ だ け の 引 力 す な わ ち質 量 の 塊(ジ ー ン ズ 質 量MJ)が い.別
存 在 しな け れ ば な らな
の い い 方 を す れ ば,重 力 に よ る 落 下 速 度 が 音 速υsよ り大 き くな る質 量
と もい え る.直 径λJ'の 球 内 で圧 力 に よ る運 動 エ ネ ル ギー が 重 力 に 負 け る とい う条 件 を書 く と
(8.84) (8.2),
(8.21)を
使 え ば,
(8.85) と な る.(8.85)の
最 後 の 式 は 輻 射 優 勢 の 時 代 に 成 立 す る.詳
し くは ニ ュ ー ト
ン力 学 の流 体 方程 式 を解 い て ゆ ら ぎ が 増 加 す る条 件 を決 め る.こ の場 合λJ'の 代 わ りに
(8.86) が 得 られ る の で,以 下 は こ の 定 義 を使 う こと に す る.λJは ジー ン ズ 質 量 を含 む 領 域 の 大 き さ で ジー ン ズ波 長と 呼 ば れ る.(8.85)の
最 後 の 式 か ら,物 理 的
に は ジー ン ズ 波 長 とは ハ ッブ ル 時 間H-1に
音 速 で 走 れ る 距 離と 定 義 で き る.
ま た こ れ か らバ リオ ン の ジー ン ズ質 量MJが
推 定 で き る.
(8.87) λJを実 際 の 距 離 に 直 す に は ス ケ ー ル 因 子Rを
掛 け な け れ ば い け な い が,質
量 で表 す とス ケ ー ル に依 存 しな い 量 と な る の で便 利 で あ る. 輻 射 優 勢 の 時 代 は,(8.84),
(8.12)よ
り
と求 め られ る か ら,λJ∼
で あ る.す な わ ち,密 度 ゆ ら ぎ を成 長 させ る の に 必 要 な ジー
ン ス 波 長 は そ の 時 点 で の 地 平 線 よ り大 きい.こ
の よ う な 長 大 ス ケ ー ル で は,
ニ ュー トン近 似 式は もは や 適 用 で き な い が,い ず れ に し ろ密 度 ゆ ら ぎ を 成 長 さ せ る こ とは で き な い.輻 射 が 切 り離 さ れ て い な い状 態 で は,バ
リオ ン の 密 度 ゆ
ら ぎが 発 生 して もフ ォ トンの 圧 力 に よ り成 長 で きず 音 波 と して伝 播 す るの み で あ る. 一 方,切
り離 し以 降は,圧
力 は バ リオ ン 自身 の 運 動 エ ネ ル ギ ー に よ り提 供 さ
れ る の で,υs2=(5/3)TB/mと 温 度 で あ る.一
な る((8.10b),
使 え).TBは
バ リオ ン
旦 輻 射 と切 り 離 さ れ る とバ リ オ ン 温 度(∼)はR-2∼T2の
よ う に 振 る 舞 う か ら,TB=T2/Tdcで (8.10a)を
(8.12)を
あ る.再
結 合 後 は ρ≒ρBと
し て(8.82)
使 えば
(8.88) と な り,MJの
式(8.87)に
入 れ れ ば,
(8.89) と な る.M〓 (globular
は 太 陽 質 量 で あ る.こ cluster)の
こ の よ う に,質
の ジ ー ン ズ 質 量 の 大 き さ は,ほ
質 量 に 匹 敵 し,銀
河 質 量 ∼1011M〓
量 ゆ ら ぎ が 成 長 す る た め に は,バ
ぼ球 状星 団
よ り は る か に 小 さ い.
リオ ン が 背 景 輻 射 か ら 切 り離
さ れ る こ と が 基 本 的 に 必 要 で あ る こ とが わ か っ た.次
に 質 量 ゆ ら ぎが 十 分 成 長
す る だ け の 時 間 が あ っ た か を チ ェ ッ ク す る.
8.6.2 ゆ ら ぎ の 成 長 ま ず,質 量 ゆ ら ぎ は,宇 宙 膨 張 と と も に∝Rの う.こ れ は 次 の よ うに 考 え れ ば よ い.あ
よ うに 成 長 す る こ と を 示 そ
る と こ ろ で 平 均 密 度 ρ0よ り濃 い とこ
ろ(ρ1)が 局 所 的 に生 じ,そ こ で は 重 力 が 膨 張 に勝 って 収 縮 に 向 か う と仮 定 し よ う.二 つ の領 域 が と もに 同 じハ ッブ ル 速 度 で 膨 張 して い る とす れ ば,密 度 の ゆ ら ぎ は 曲率 の ゆ ら ぎ と見 な す こ とが で き る.
ゆえに
(8.90) 物 質 優 勢 時 は ρ0∝R-3で あ るか ら,δ ρ/ρ∝Rと な る.密 度 ゆ ら ぎ δρ/ρが1程 度 以 上 に 大 き くな る と,ゆ
ち ぎの 進 行 は 非 線 形 と な り構 造 形 成 は 急 速 に進 む.
こ の 事 実 と背 景 輻 射 の 一 様 性 は 直 ち に 問 題 を提 起 す る.す で に述 べ た よ う に,背 景 輻 射 が 切 り離 され る以 前 はバ リオ ン の密 度 ゆ ら ぎは成 長 す る こ とが で き な い.バ
リオ ン の密 度 ゆ ら ぎ発 生 は フ ォ トン切 り離 し以 後 で あ る.現 在 の 密
度 ゆ ら ぎ は 少 な く も ∼1で
あ る か ら,tdcの
と き の密 度 ゆ ら ぎは
(8.91) で な け れ ば な ら な い.一 方 観 測 され た 背 景 輻 射 の 温度 ゆ ら ぎ は ≒10-5で あ る の で,背 景 輻 射 の 密 度 ゆ ち ぎは 断 熱 的 とす れ ば
(8.92) で あ る.バ
リ オ ン の 密 度 ゆ ら ぎ はt=tdcの
じ は ず で あ る か ら,こ る.も
し,フ
れ は 矛 盾 で あ る.こ
と きは 背 景 輻 射 の 密 度 ゆ ら ぎ と同 の 解 決 は 暗 黒 物 質 に よ っ て 与 え られ
ォ ト ン と相 互 作 用 し な い 粒 子 が 宇 宙 に 大 量 に 存 在 し て い れ ば,輻
射 の 切 り離 し 以 前 で も,物
質 優 勢 に な っ た 時 点(teq)で
密 度 ゆ ら ぎ を 発 展 させ
る こ と が 可 能 で あ る.R(teq)/R(t0)=(1+zeq)-1∼10-4((8.29))は
ち ょ う ど欲
し い だ け の 密 度 ゆ ら ぎ を 与 え る の に 適 正 な 値 を も つ.輻
射 が 切 り離 さ れ る と,
バ リ オ ン は す で に発 達 して い た 暗 黒 物 質 の 密 度 ゆ ら ぎ に よ る重 力 場 に 捕 捉 さ れ,バ
リオ ン の 密 度 ゆ ら ぎは暗 黒 物 質 の 密 度 ゆ ら ぎに 急 速 に追 いつ い て 等 し く
な る.
8.6.3
暗 黒 物 質(dark
matter)の
役 割16,17)
暗 黒 物 質 の 存 在 証 拠 は た く さ ん あ る.暗 互 作 用 を す る 粒 子(WIMPS=weakly ら れ て い る.電
interacting
気 的 に も カ ラ ー(QCD)的
近 く ま で,一
massive
い相
particles)と
考 え
に も 中 性 で な け れ ば な ら な い.
(1) う ず 巻 銀 河 の 周 辺 に あ る 物 体(水 の 大 き さ の10倍
黒 物 質 は バ リ オ ン で は な く,弱
素 分 子 雲 な ど)は,光
定 の 回 転 速 度 を も つ.こ
っ て い る銀 河
れ は物 質 密 度 の 一
定 な 領 域 が 同 程 度 に 広 が っ て い る こ と を 示 す. (2) ヴ ィ リ ア ル 定 理(付 団 の 発 す るX線 銀 河 団 の100倍
録B.4)を
使 っ た 超 銀 河 団 の 運 動 計 算 や,超
ス ペ ク トル の 強 度 か ら推 定 さ れ る 発 光 源 の 質 量 が,光
る
近 く大 き な 質 量 を もつ こ と を 示 唆 す る.
(3) 標 準 宇 宙 論 に よ る 総 バ リ オ ン 密 度ΩBの る が,観
銀 河
測 は Ω0∼0.1∼0.3を
示 す.す
リ オ ン で は な い と の 推 定 が で き る.
予 測 はΩB=0.02±0.00413)で
あ
な わ ち 暗 黒 物 質 の 存在 とそ れ が バ
ニ ュ ー ト リ ノ の ジー ン ズ 質 量: る.こ
暗黒 物 質 の 一 つ の候 補 は ニ ュー ト リノで あ
の 場 合 の ジ ー ン ズ 質 量 を 計 算 し て み よ う.ニ
い の で 衝 突 は ほ と ん ど な い(free 度 で 置 き 換 え て よ い.一
streamingと
し,ジ
い う).こ
の場合 音速 は分散 速
旦 物 質 優 勢 に な れ ば ゆ ら ぎ の 成 長 が 始 ま る の で,
ニ ュ ー ト リ ノ の ジ ー ン ズ 波 長λJνは,t≦teqで 距 離 と 見 な し て よ い.ゆ
ュ ー トリノ の相 互 作 用 は 弱
え に,tNRを
ニ ュ ー トリ ノの 飛 べ る最 大 到 達
ニ ュー ト リノ が 非 相 対 論 的 に な る時 刻 と
ー ン ズ 波 長 を共 動 座 標 で 書 く と
(8.93) t>tNRで
はυ=p/mν
∼R-1で
変 化 す る か ら,υ(t)=CRNR/R(t),ま
は 輻 射 優 勢 時 代 で あ る か ら,t=tNR(R(t)/RNR)2を
たt
入 れ て 計 算 す る と,
(8.94) を 得 る.TNR=mν/3と
す れ ばtNRは(8.23)か
ら
(8.95a) (8.95b) Tν/Tγ=0.71は λJνにR(t0)を tNR)≒3と
ニ ュ ー ト リ ノ 温 度 と フ ォ ト ン 温 度 の 差 の 補 正 項 で あ る.上
の
掛 け て や れ ば 現 時 点 で の 長 さ に 換 算 し たλJνが 得 ら れ る.ln(teq/
お き,
(8.96) とΩνh2=(mν/100eV)を
使 え ば,h=0.7と
して
(8.97) を得 る.こ れ は 超 銀 河 集 団 ス ケー ル の 大 き さ で あ る. 上 の 議 論 か ら,暗 黒 物 質 構 成 粒 子 が 相 対 論 的(熱 い 暗 黒 物 質)で
あ れ ば,
ジー ン ズ 質 量 が 大 きい こ とが わ か る.暗 黒 物 質 が ニ ュー ト リノ の場 合,30eV 程 度 の 質 量 を もて ば まず 超 銀 河 団 が 形 成 され,ゆ
ら ぎが 発 達 す るに つ れ 銀 河 集
団 か ら銀 河 へ と分 裂 して い く(上 か ら下 へ の シナ リオ).も 相 対 論 的(冷
し,暗 黒 物 質 が 非
た い 暗 黒 物 質)で あれ ば ジ ー ン ズ波 長 の 大 き さ は 暗 黒 物 質 の 種 類
に よ りさ ま ざ ま で あ るが,球 状 星 団程 度 に 小 さ い領 域 か ら出発 す る こ と も可 能
で あ る.こ の と き は,ま ず 銀 河 が で き銀 河 団 へ と成 長 して い く(下 か ら上 へ の シナ リオ).種 々 の シ ミュ レー シ ョン 結 果 は,冷 た い 暗 黒 物 質 に 有 利 で あ る. ま た,銀 河 や2重
銀 河 な どの ス ケー ル の小 さ い暗 黒 物 質 は ニ ュー トリ ノで は 説
明 で き な い の で,暗 黒 物 質 の す べ て が ニ ュ ー ト リノ とい う可 能 性 はす で に 否 定 され て い る.し か し,100Mpcに 暗 黒 物 質 の み で は 説 明 で きず.冷
も及 ぶ 大 規 模 構 造(図8.6)の
存在 は冷 たい
た い 暗 黒物 質 と熱 い 暗 黒 物 質 を混 ぜ る シ ナ リ
オ が検 討 さ れ て い る. 熱 い 暗 黒 物 質 の 代 表 的候補 が ニ ュー ト リノで あ り,冷 た い 暗 黒 物 質 の候 補 は ニ ュ ー トリ ノ以 外 の ほ とん どす べ て の粒 子 を含 む .代 表 的 な 冷 た い暗 黒 物 質 と して は ア ク シ オ ン と超 対 称 性 粒 子 の 仲 間 ニ ュ ー トラ リー ノ が あ げ られ る.ア シ オ ン は 質 量 が 非 常 に小 さ い が,運 動 量0の い 暗 黒 物 質 の 仲 間 で あ る(第6章
ク
ボ ー ス 凝 縮 体 と して 振 る舞 い冷 た
参 照) .暗 黒 物 質 の 正 体 は 不 明 で あ り,現 在
活 発 な探 索 活 動 が行 われ て い る.
8.6.4
銀 河 分 布 とパ ワ ー ス ペ ク トル
こ こ で は,現 る.密
在 の 観 測 デ ー タ を 照 合 し て,ゆ
度 ゆ ら ぎ を場 所 の 関 数 ρ(r)と 表 し,ゆ
ら ぎ の ス ペ ク トル構 造 を調 べ ら ぎ δ(r)を
(8.98) で定 義 して,波
の重 ね合 わせ と して フー リエ 展 開 す れ ば,
(8.99)*6) 実 際 に定 量 化 す る の は 密 度 の ゆ ら ぎの 自乗 で あ る.
(8.100) こ こ で 等 方 性 よ り δ(k)=δ(│k│)≡
δkと し た.
(8.101)
*6) Vは 規 格化 の ため に 導 入す る体 積 で あ り ,便 宜 上V→∞ と再 定義 す る.
連 続 極 限 で δ(k)→V-1δ(k)
で 定 義 さ れ るΔk2は あ る)無
パ ワ ー ス ペ ク トル と 呼 ば れ る 量 で(│δk│2自 身 を 指 す こ と も
次 元 の パ ラ メ タ ー で あ る.Δkは
を 表 す.今
実 空 間 の ス ケ ー ル λ=2π/kの
宇 宙 空 間 の 任 意 の 点x=riで,半
そ の 中 に お け る 総 重 量 をMiと
す る.次
径r0=λ/2の
ゆ らぎ
球 を サ ン プ ル し,
式 で 定 義 さ れ る ウ ィ ン ド ウ 関 数W(r)
を 使 う と,
(8.102a) (8.102b) と表 す こ とが で き る.こ の平 均 値Mは,半
径r0の 領 域iを
あ ち こ ちか ら拾 っ
て きて,そ の 平 均 値 とい う意 味 で あ る.ス ケー ル λで の 質 量 ゆ ら ぎδMを 次 式 で定 義 す る と,
(8.103) (8.104) と 表 さ れ る か ら,δMは す こ と が わ か る.こ
ス ケ ー ル λ=2r0で こ で,δ(r)の
平 均 し た 密 度 ゆ ら ぎ
フ ー リ エ 変 換 式(8.99)と
を表
ウ ィ ン ドウ 関 数
の フ ー リエ 変 換 式
(8.105) を入 れ れ ば,
で あ る か ら,(8.100)式
でδk→
δkWkと
す る だ け で δ2→δM2と
な る.す
な わ
ち
(8.106) (8.102a)で
表 さ れ る ウ ィ ン ド ウ 関 数 の フ ー リ エ 変 換 は,
(8.107a) (8.107b)
と 表 さ れ る.パ
ワ ー ス ペ ク ト ル を 表 現 す る 際 よ く使 わ れ る モ デ ル は,Δk2=
Akn+3(│δk│2∼kn)で
あ る が,こ
の と き,
(8.108) し ば し ば,
の と き,3j1(z)/z=1(0)と
い う近 似 を 使 う.そ
の場合
(8.109) す な わ ち,n>-3な お,k→∞ -1の
ら ば 質 量 ゆ ら ぎ は パ ワ ー ス ペ ク トル に 直 接 比 例 す る .な
でWk2∝k-4で
条 件 が つ くが
,こ
あ る か ら,短
波 長 成 分 が 無 視 で き る た め に は,n<
の 条 件 は ウ ィ ン ド ウ 関 数 を 適 当 に 選 べ ば(例
ス 関 数W(r)=exp(-r2/2r02)を使 観 測 に よ れ ば,r0=8h-1Mpcで
え ば)除 δM=1と
えば ガ ウ
け るの で通 常 は 気 に し な い. な る18).す
なわ ち
(8.110) 銀 河 相 関 関 数: 相 関 関 数 ξ を次 式 で定 義 す る.
(8.111) (8.112) こ こで 銀 河 の 質 量 密 度 が光 を 出 す 銀 河 の 数 密 度n(r)に
比 例 す る とい う も っ と
も ら しい仮 定 をす る と,あ る 銀 河 を 中心 に,半 径r,体
積 δVの 球 殻 の 中 に あ
る銀 河 の 数 は
(8.113) で 与 え ら れ る.等
方 性 の 仮 定 か ら ξ(r)=ξ(r)と
し た.観
測 か ら は(図8
.7)
(8.114a) (8.114b) こ こ に,ξGGは 銀 河 の 個 数 の 相 関 係 数 で あ る.ξCCは 銀 河 団 の個 数 の相 関 関 数 を表 し ξGGよ りは大 きい ス ケ ー ル を み て い るの に もか か わ らず 相 関 係 数 の べ キ が 等 しい とい うの は興 味 あ る こ と で あ る. │δk│2=AVknと
す ると
(8.115)
図8.7 図 は 須 藤 靖 著:ダ
銀 河分 布 の2体 相 関 関 数19)
ー クマ ター と銀 河宇 宙(パ
リテ ィ物 理 コー ス)図2.3
を修 正 転 載 し た も の.
で あ る の で,
(8.116) を 意 味 す る.相 関 関 数 を│δk│2に変 換 す る に は,0
の全 領 域 で の 値 を必
れ は 困 難 で あ るの で次 のJ3(r0)が よ く使 わ れ る.
(8.117) 以 上 の 議 論 か ら,あ る ス ケー ル で の 質 量 ゆ ら ぎや 相 関 関 数 の 観 測 値 を使 っ てパ ワー スペ ク トル が 推 定 で き る.λ〓200Mpcの
ス ケ ー ル で は,観 測 上 宇 宙 に は
目だ つ 構 造 が な く,宇 宙 は大 き な ス ケー ル で は一 様 で あ る とい う標 準 宇 宙 論 の
仮 定 を裏 づ け て い る. 原 始 ゆ ら ぎ: 上 に 述 べ た よ う に観 測 デー タか ら は,現 が,λ〓20Mpcな
時点 での スケール
ら ば ゆ ら ぎ は 発 達 の 線 形 領 域 に あ る の で,過
去 に さか の
ぼ って 原 始 ゆ ら ぎ を推 定 す る こ とが あ る程 度 可 能 で あ る. R∝tα(α=2/3物 質 優 勢,=1/2輻 射 優 勢)の と き,地 平 線 はdH=t(1 -α)-1(式(8 .22))で 与 え られ る.し たが っ て,現 時 点 で あ る λ とい うス ケ ー ル を指 定 した と き,λ∝t2/3, dH(t)∼tで
あ る か ら,十 分 過 去 に さか の ぼ れ ば,
こ の ス ケー ル λは 地 平 線 よ り大 き くな る.つ
ま り地 平 線 の 外 に 出 る.地 平 線
の外 で は 因果 律 が 効 か な い か ら重 力 に よ るゆ ら ぎの 発 達 は な く原 始 の ゆ ら ぎの ま まで あ る.地 平 線 の 中 に 入 って も輻 射 優 勢 で あ れ ば ゆ ら ぎの 発 達 は ほ とん ど な い.物 質 優 勢 に な れ ば ゆ ら ぎは 成 長 す る が,先
に 述 べ た よ うに バ リオ ン はt
=tdcま で 輻 射 に 結 合 し て い るの でバ リオ ン ゆ ら ぎは 成 長 し な い.し か し,輻 射 と相 互 作 用 しな い暗 黒 物 質 で あ れ ば,輻 射 優 勢 が 物 質 優 勢 に 変 わ るteq以 降 に 地 平 線 に 入 っ て きた ス ケ ー ル で の ゆ ら ぎ は 成 長 す る.こ の 意 味 でt=teq時 点 に お け る地 平 線 の 大 きさdH(teq)が 重 要 な役 割 を演 じ る. い ま原 始 の ゆ ら ぎ を考 え るた め に,ゆ
ら ぎに伴 う局 所 重 力 の 強 さ を考 察 して
み よ う.一 般 相 対 論 で は 計 量 テ ン ソ ル の ゆ ら ぎ で あ るが,非
相対論的には
ニ ュー トン の 重 力 ポ テ ン シ ャ ル φ を考 え る.厳 密 に い え ば,ス
ケー ル が 地 平
線 程 度 に な る と きは 一 般 相 対 論 を使 わ な い とい け な いが,定 性 的 議 論 は こ れ で 十 分 で あ る.ス
ケー ル λ=2π/kの 球 内 の 物 質 に よ る重 力 ポ テ ン シ ャル は φ
∼(π/6)Gρλ3/λで 与 え られ るか ら,曲 率 ゆ ら ぎは
(8.118) こ こ で,δ λ∝Δk(式(8.109))と 使 っ た.n=1な
ら ば 曲 率(計
フ リ ー ド マ ン 方 程 式H2∼(8π/3)Gρ0を 量)ゆ
ら ぎ は ス ケ ー ル λ に 依 存 し な い.こ
ハ リ ソ ン-ゼ ル ド ヴ ィ ッ チ の 等 曲 率 ス ペ ク ト ル と い う.こ
れ は,イ
れ を
ン フ レー
シ ョ ン モ デ ル の 予 言 す る と こ ろ で も あ る.(8.118)を
み れ ば,δxは
の と き のΔkに
平 線 に入 る と きは ス
等 し い か ら,n=1の
ス ペ ク トル は,地
λ=dH
ケ ー ル に よ ら ず 常 に 一 定 の ゆ ら ぎ の 大 き さ を も つ と い う性 質 を も っ て い る.t >teqに
地 平 線 に 入 っ た ゆ ら ぎ に つ い て は,宇
宙 膨 張 に 伴 い δ∼R,
ρ0∼R-3,
λ2∼R2の
よ う なR依
存 性 を も つ か ら,δxはRす
い 換 え れ ば,λ>dH(teq)の つ.一
方,λ
よ ら ず ほ ぼ 一 定 値 を と る.す を 採 用 す る と,パ
な わ ち 時 間 に よ ら な い.言
ス ケ ー ル に つ い て は,Δk∼
λ-2∼k2と
い う形 を も
で は 成 長 で き な い か ら,ス
な わ ち,ハ
ケー ル に
リ ソ ン-ゼ ル ドヴ ィ ッ チ の ス ペ ク トル
ワ ー ス ペ ク トル│δk│2は 大 ざ っ ぱ に い っ て
(8.119a) (8.119b) (8.119c) と い う 形 を も つ.熱
い 暗 黒 物 質(HDM)の
場 合 は,ニ
ュ ー ト リ ノの ジ ー ン
ズ 質 量 の と こ ろ で 述 べ た よ う に,λJ-ν ∼20Mpc(mν/30eV)-1で ワ ー ス ペ ク トル は,λ<λJ-ν こ の よ う な 切 断 は な く,ス
で 切 断 さ れ る.冷
た い 暗 黒 物 質(CDM)の
ペ ク トル は 下 ま で 伸 び て い る.現
は す で に 述 べ た よ う に,λ〓100Mpcで│δk│2∼k-1.2で 展 を 追 跡 す る に あ た っ て は,t〓tdcを
図8.8 横 軸 は波数kす
あ る の で,パ
時 刻(t0)で
あ る.実
出 発 点 と し,ΩM=ΩB(バ
場合 は の観 測 で
際 に宇宙構造 発 リオ ン)+ΩCDM
銀 河 分 布 の パ ワー スペ ク トル19)
な わ ち波 長 に 逆 比 例 す る.k=1は
お よ そ7Mpcに
相 当 す る.縦
軸 はゆ ら ぎの 自乗. 実 線 は冷 た い 暗 黒 物 質 モ デ ル で標 準 的 な パ ラ メ タ ー を設 定 して 得 られ る. 一 番 左 の 四角 がCOBEに よ る 背景 輻 射 の ゆ ら ぎ よ り,他 の 四角 も種 々 の 温 度 ゆ ら ぎ よ り得 た デ ー タ の許 容 範 囲,● す.
はCfa,
IRAS,
APMな
ど に よ るデ ー タ を 表
+ΩHDM, Ω=ΩM+Ω
λ(宇 宙 項(B.5)参
ラ メ タ ー を 適 当 に 設 定 し た う え で,ゆ 体 シ ミュ レ ー シ ョ ン 計 算 を 実 行 す る.こ の 試 み は,か
照)や
ハ ッ ブ ル 定数H0な
ど種 々 の パ
ら ぎ の 位 相 は 乱 雑 ガ ウ ス 型 を仮 定 し,N う し た 宇 宙 の 銀 河(団)分
な り の 程 度 成 功 し て い る が,各
布 構造再 現
パ ラ メ タ ー の と り方 で い ろ い ろ な
選 択 が 可 能 で あ る20,21)(図8.8).
8.6.5 宇 宙 背 景 輻 射(CMB)の 宇 宙 背 景 輻 射(CMB: は,ホ
cosmic
ゆ らぎ microwave
background
radiation)の
ッ トビ ッグバ ン宇 宙 論 の最 大 の 根 拠 で あ る.T0=2.728±0.002Kと
に よ い精 度 で黒 体 輻 射 の スペ ク トル を再 現 して い るが,そ
存在 非常
の ゆ ら ぎ につ い て の
観 測 デ ー タ はつ い最 近 ま で上 限 しか 得 られ な か っ た.こ の ゆ ら ぎの 小 さ さが 暗 黒 物 質 の 理 論 的 ・観 測 的 な 証 拠 を与 え る こ とは す で に 議 論 した.最 近 のCOBE に よ る観 測 で,角 分 解 能σ=10度
の 温 度 ゆ ら ぎ が δT/T∼10-5と
求 め られ,
イ ン フ レー シ ョン モ デ ル と ほ ぼ整 合 す る こ とが確 か め られ た.宇 宙 背 景 輻 射 の 温 度 ゆ ら ぎ は宇 宙 論 に お け る種 々 の 重 要 パ ラ メ ター を決 め る の に最 適 で あ るの で,よ
り精 密 測 定 を 目指 し て次 々 と観 測 衛 星 が 打 ち上 げ られ る予 定 で あ る.こ
こ で は,背 景 輻 射 の ゆ ら ぎの 現 象 論 を述 べ るに と どめ る. 天 空 の あ る方 向 をr(θ,φ)と して,温 度 ゆ ら ぎ δT/T(r)を
次 の よ うに 展 開
す る.
(8.120) T0はTの
平 均 値 で あ る.異 方 性 が 統 計 的 に等 方 的 で あ れ ば,φ に は よ らず
(8.121) が 成 り立 つ.β は 地球 の 宇 宙 背景 輻 射 に対 す る速 度 で あ る.観 測 に よ れ ば,第 1項 が 第2項
以下 に 比 べ て圧 倒 的 に大 き く,
(8.122) を 与 え る22).温 (8.9)を
度 ゆ ら ぎ の 式(8.120)の
右 辺 第1項
ロ ー レ ン ツ 変 換 す れ ば で て く る.し
系 の 量 に 直 す た め,通
常 は こ のl=1成
分(双
は,黒
た が っ て,背 極 子 成 分)を
体 輻 射 を表 す 式
景 輻 射 に 対 す る静 止 差 し 引 い たl≧2の
成 分 を 問 題 に す る.COBEの
観 測 デ ー タ は23,24)
(8.123) を与 え る.cosθ=r1・r2だ
け 離 れ た 方 向 の ゆ ら ぎ の 非 等 方 性 を次 式 で定 義 す
る と,
(8.124) 第2式 は,角 あ る25).ル
分 解 能 σ*7)を も つ 二 つ の ア ン テ ナ で 望 ん だ と き得 ら れ る 式 で
ジ ャ ン ドル 関 数Plが-1
考 え れ ば,cl2=(2l+1)│al│2は
の ゼ ロ点 を もつ こ と を
視 角 ス ケ ー ル θ〓180°/lで 見 た ゆ ら ぎ に 相 当 す
(a)
(b) 図8.9 角 度 ス ケー ルθ〓180°/l(lは 係.い
宇 宙 背 景 輻 射 の 温 度 ゆ ら ぎ19,20)
球 面 調 和 関 数Yl(θ,φ)で
ろ い ろ な デ ー タ と モ デ ル の 比 較.図8.9(a)で
展 開 し た と き の 多重 極 度)と
温度 ゆ らぎの関
は ゆ ら ぎの 初 期 条 件 と し て ハリ ソ ンーゼ ル ド
ヴ ィ ッチ ス ペ ク トル を仮 定 し,COBEの 観 測値 に 絶 対 値 を合 わせ て い る.図8.9(b)はn(パ ワー ス ペ ク トル の べ き乗 数),ハ ッブ ル 定 数H0,密 度 パ ラ メ タ ーΩ,バリ オ ンの 密 度ΩBを 変 え た と き ス ペ ク トル が ど う変 化 す るか を示 し て い る.図 l〓200の 山 は,背
*7) 検 出器 の ウ ィ ン ドウ関 数 を ,
と す る.
中 の 数 字 は三 つ の 曲 線 をl=100の
景 輻 射切 り離 し時 の音 波 の 第1の
腹 に相 当 す る.第2,第3の
位 置 で 上 か ら順 に 表 す. 腹 も見 え る.
る.COBEは,σ=10°
で
(8.125) を 与 え た23,26).こ れ に 反 し1° よ り小 さ な ス ケ ー ル で は 非 常 に ば ら つ き が 大 き く今 の と こ ろ は 不 正 確 な値 し か 得 ら れ て い な い. 宇 宙 背 景 輻 射 の 温 度 ゆ ら ぎ(δT/T)2の
観 測 デ ー タ を 図8.9(a)に
実 線 は 冷 た い 暗 黒 物 質 優 勢 な 宇 宙 モ デ ル に 基 づ い た 計 算 をCOBEの 絶 対 値 を 合 わ せ た も の で あ る.輻 い え ば θ〓1°に 相 当 す る.そ 線 の 外 に あ る.こ 移 を 表 し(ザ (δT/T〓
射 切 り 離 し 時 の 地 平 線 の ス ケ ー ル は,視
角 で
れ より 大 き な ス ケ ー ル は 輻 射 切 り離 し時 に は 地 平
ッ ク ス-ウ ォ ル フ ェ(Sacks-Wolfe)効
果),ス
熱 ゆ ら ぎ を仮 定 す れ ば,切
振 動 し て お り,切
ケー ル に よ ら な い
り離 し 前 の ゆ ら ぎ は 音 波 と し て
り離 し 時 の 地 平 線 ス ケ ー ル を 最 大 波 長 と す る 定 在 波 モ ー ドが
観 測 さ れ る こ と に な る.θ〓1° る.第2,第3の
の 最 初 の 山(l∼200)は
第1の
定在 波 に対 応す
定 在 波 に 対 応 す る 山 や 谷 も 見 え る(100
え て よ か っ た が,切
り離 し 時 に は,フ
程 はLf∼1/(σT・nBXe)程 こ る よ う に な る.こ 消 え て し ま う.こ す.切
デー タで
の 場 合 の 温 度 ゆ ら ぎ は 重 力 ポ テ ン シ ャ ル ゆら ぎ に よ る赤 方 偏
定 数).断
一 方,フ
示 す21).
ォ ト ン の トム ソ ン 散 乱 に よ り平 均 自 由 行
度 と な り,時
間tの
れ に し た が っ て λ
間 にLs∼(ctLf)1/2の
り 離 し 時 の 地 平 線 の 大 き さ が,音 の と こ ろ に あ る.な
拡 散 が起
下 の スケール のゆ らぎは完全 に
れ を シ ル ク 減 衰 と呼 び,l〓2500で
θdcは だ い た い
合 体 を理 想 気 体 と して考
は 音 波 の 減 衰 を 引 き起 こ
波 の 腹 や 節 に 反 映 さ れ る と す れ ば, ぜ な ら,音
波 の 地 平 線 をDと
す れ
ば,
(8.126a) こ こ で, b)で
と(8.22),(B.12c)を
使 っ た.こ
れ を 角 径距離dA(B.18
割 れ ば,
(8.126b) た だ し,(B.18b)はΩ は む し ろΩ0+Ω
λ=0を
仮 定 し て い る.よ
λに 敏 感 で あ る.山
り 詳 し い 計 算 に よ れ ば,θdc
の 高 さ は バ リオ ン と 暗 黒 物 質 の 量 に依 存 す
る の でΩBに(H0に
も)敏
感 で あ る.図8.9(b)に
想 値 が パ ラ メ タ ー に よ り,お MAP
(Millimeter
Planck ば,宇
お よ そ ど う変 動 す
Anisotropy
Surveyer
は,温
(ESA:ヨ
Probe;
度 ゆ ら ぎ の 計 算 予
る か を示
NASA,
2000年
ー ロ ッ パ 宇 宙 局:2007年
し た27).観
測 衛 星
打 ち 上 げ 予 定)*8)や
打 ち 上 げ 予 定)が
宙 背 景 輻 射 の 精 密 値 が 得 ら れ る と 期 待 さ れ,ハ
動 け
ッ ブ ル 定 数 も含 め て こ こ
数 年 で 宇 宙 論 の パ ラ メ タ ー 決 定 に は 大 き な 進 展 が 期 待 さ れ る*8).
参 考
1) 佐 藤 文 隆,原
哲 也:朝
佐 藤 文 隆:岩 2) E.W.Kolb
波 講座 and
文 献
倉 現 代 物 理 学 講 座13,宇
現 代 の 物 理 学11,宇
M.S.Turner:The
Early
宙 物 理 学,朝
宙 物 理,岩
倉 書 店,1983
波 書 店,1995
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3) PDG:Phys.Rev.,D54(1996),EPJ,C3(1998) 4) M.Fukugita,C.J.Hogan W.Freedman
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6) G.t'Hooft:Nucl.Phys.,B79(1974)276 A.M.Polyakov:Sov.Phys.JETP 7) 佐 藤 勝 彦:月
8) B.Schwarzshild:Physics 9) B.W.Lee
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刊 フ ィ ジ ッ ク ス,27(8)(1983)493 Today,51(6)(1998)17
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10) G.Steigman:Ann.Rev.Astron.Astrophys.,14(1976)339 11) A.D.Sakharov:Pisma
ZhETF,5(1967)32
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ZhETF,13(1970)335
Y.Zeldovich:Comm.Nucl.Part.Phys.,6(1976)69
12) M.Yoshimura:Phys.Rev.Lett.,41(1978)281 A.Y.Ignatiev S.Dimopoulos *8) MAP(改
et al.:Phys.Lett.,B76(1978)436 and
L.Susskind:Phys.Rev.,D18(1978)4500
称 し てWMAP)は
発 表 し,種々
,2001年6月 に 打 ち 上 げ て2003年2月 に最 初 のデ ー タ を の 宇 宙 パ ラ メ タ ー の 精 密 値 を 与 え た28).Ω0=0.27±0.04, ΩB=0.04±0.004,
ΩA=0.73±0.04, ΩTOT=Ω0+Ωλ=1.02±0.02, zdc=1089±1, t0=137±2億 年,h=0.71 ±0.04,θdc=0.598±0.002… 等.他 の 種 々 の 観 測デ ー タ と 総 合 す る と,ΩTOT=1(平 坦宇 宙),Ω
λ≒0.7, Ω0≒0.3が
確 定 し,宇
宙 論 は 新 た な 転 回 点 を 迎 え た と い え る.
S.Weinberg:Phys.Rev.Lett.,42(1979)850 13)
D.N.Schramm
14)
G.Gamow:Phys.Rev.,70(1946)572;74(1948)505;Nature,162(1948)680;Phys.
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M.S.Turner:Rev.Mod.Phys.,70(1998)303
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M.Geller
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照 et
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28)
http://lambda.gsfc.nasa.govl
and
M.White:Physics
Today,50(11)(1997)32
Matter
in
the
付
録
A ホ
ホ モ ト ピー:
自 由 度nの
式 の 解 φa(xμ)は,4次 で あ れ ば,xμ
ト ピ ー
内 部 対 称 性Gを
元 時 空 か らn次
が 時 空 の 点Pか
らQへ
ま で 連 続 的 に 動 く.P→Qの う(図A.1).通
モ
もつ 場 φa(a=1,2,…,n)の
連 続 的 に 動 く と き,φ は φ空 間 で 点Aか
経 路 が 変 化 す れ ば,A→Bの
い い,経
こ の と きΦ
の と き,二
路変 換 す る連 続
関 数 を ホ モ ト ピー と い う.φ 空 間 が 特 殊 な 構 造 を し て い る場 合,例えば
い が,ホ
らB
経 路 も変化 す るで あろ
常 二 つ の 経 路 は 連 続 変 形 で 一 致 させ る こ とが で き る.こ
つ の 経 路 は 同 じ ホ モ トピー ク ラ ス に 属 す る(homotopic)と
の よ うな トー ラ ス の 場 合 は 経 路Φ
運動方程
元 φ空 間 へ の 写 像 と見 なせ る .φ が 連 続 関 数
図A.1(b)
とψ は 連 続 変 換 で は 一 致 させ る こ とは で き な い .
と ψ は 異 な る ホ モ ト ピー ク ラ ス に 属 す る と い う.物 理 的 に は 区 別 で き な
モ トピー ク ラ ス の 異 な る 真 空 が 存 在 す れ ば,ソ
リ トン が 存 在 し う る.実 際
に ソ リ トン が 存 在 す る こ と を示 す に は し ば し ば 運 動 方 程 式 を解 か な け れ ば な ら な い が,存
在 の た め の 必 要 条 件 を 一 般 的 に 議 論 し,ク
ラ ス 分 け す る の に ホ モ ト ピー の 議
論 が 役 に 立 つ.
(a) 図A.1
(b)
(a) 二つ の径 路 φABとφ'ABは 連 続 に 曲げ て 互 い に一 致 させ られ る. (b) Φ と ψ は 連 続 変 形 で 互 いに 一 致 させ る こ とは で きな い の で 異 な る ホ モ トピー クラ ス に 属 す る.
S1とR1:
リー群Gの
表 現 行 列 は変 数{ωa}で パ ラ メ タ ー 化 で き る.変
る空 間 を群 の 多 様 体 と い い,こ
数 ωの 張
の 多 様 体 の体 積 が 有 限 で あ る と き群 は コ ン パ ク トで
あ る と い う. 例1.
実数xの
集 合R1は
加 減 算 に よ る群 をつ く る.変 数 領 域 は-∞<x<∞
無 限 で あ り コ ンパ ク トで な い. 例2.
1次 元 複 素 数 空 間 の 位 相 変 換U(1)も
し く は2次
元 実 空 間 の 回 転(SO(2))
は
は,位
相 も し くは 回転 角 を θ と して,0≦
体 の 体 積 は2π と な る.こ
れ は 円(1次
点 とA点
を 同 一 視 す れ ば,A≦x
の で,同
じ ト ポ ロ ジー を もつ.A(B)を
に な るか ら,こ
θ<2π で あ る か ら コ ンパ ク トで あ り,多 様
元 空 間 の 球S1)と 連 続 関数f(x)に
限 遠 点 を 同 一 視 し たR1
な る.同 様 に 無 限 遠 点 を 同一 視 し た2次
平 面R2(3次
元 空 間R3)は,2(3)次
S2(S3)と,ト
ポ ロ ジ ー と して は 同 一 で あ る.
元 の 球(3(4)次
例3:SU(2)とSO(3):
よって θに変換 可能 で あ る
±∞ と とれ ば,無
の 条 件 つ き のR1はS1と
多 重 連 結:
同 じ トポ ロ ジー を もつ.B
SU(2)変
元
元 空 間 に 埋 め 込 ま れ た 球 面)
換 は 次 の よ うに 表 され る.
(A.1) こ れ は,4次
元 空 間 に 埋 め 込 ま れ た 超 球 面(S3)を
ル ー プ は 一 点 に収 縮 させ る こ とが で き る.こ connected)と
表 す.明
れ をSU(2)群
らか に球 面 上 の任 意 の閉 は単 連 結 で あ る(simply
いい
(A.2) と書 く.π1と はS1のSU(2)多 様 体 へ の 射 影 の ホ モ ト ピー ク ラ ス分 け で あ る. 一 方 ,SO(3)は3次 元 実 空 間 の 回 転 を 表 し,オ イ ラ ー 角 を使 えば
(A.3) と 表 せ る.R(θ+π)=R(θ-π)=-R(θ), U(θ)=-U(θ+2π)で
あ る.ス
R(θ)=R(θ+2π)で
あ る が,SU(2)で
は
ピ ノー ル は2π 回 転 で 符 号 を変 え るの に 反 し,ベ
ク
トル は 符 号 を変 え な い 事 実 は これ が 原 因 で あ る. 3次 元 空 間 の 回転 は,回 方 向 を 向 き,大 な る.こ
転 軸 と 回 転 角 を決 め て パ ラ メ タ ー 化 で き る の で,回
き さが 回 転 角 に 等 し い ベ ク トル の 張 る 空 間 が,SO(3)群
れ は,半
径 π の 球(R3)で
あ る.た
だ し,π 回 転 と-π
転軸の
の 多様 体 と
回転 とは 等 し いか
ら,半 径 π の 球 面 の 各 点 と原 点 の 向 こ う側 の 対 向 点 は 同 一 視 し な け れ ば な ら な い. こ の 多 様 体 は2重
連 結 で あ る.な ぜ な ら,一
られ る(図A.2).経 属 す る.一
方,経
連 の 回 転 を表 す 線 と し て2種
類 が考 え
路g1は 一 点 に 収 縮 させ ら れ る の で 点 と 同 じホ モ ト ピー ク ラ ス に 路g2は
瞬 間 向 か い 側 のA'に
回 転 角 θ が π を 超 す 場 合 で,A点
飛 び 出 す.g2の
モ ト ピー ク ラ ス に属 す る.回
に 到 達 し て π を超 え た
線 は 一 点 に 収 縮 す る こ と は で きず,線
と同 一 ホ
転 角 が2π を超 え る と再 び 向 か い側 に 跳 躍 して 元 に 戻 る
の で ホ モ トピー ク ラ ス と して は 再 び 点 と 同 一 に な る.g1を0に,g2を1に
対 応 させ
る と,0+0=0, 成 す る.こ
0+1=1+0=1,
1+1=0の
代 数 を 満 た す 整 数2個
よ り な る群Z2を
構
れ を
(A.4) と 書 く.SO(3)群
とSU(2)群
は 同 じ リー 代 数 を 満 た し と も に コ ン パ ク トで あ る が,
SU(2)が
単 連 結 で あ る の に 反 しSO(3)は2重
SO(3)の
被 覆(covering)と
て は,1とexp(iπ))を =SU(2)/Z2の
い う.SO(3)群
1, …, N-1)を
図A.2
は,SU(2)の
の と き,SU(2)は
中 のZ2群(群
恒 等 変 換 と 同 一 視 す る こ と に よ り得 ら れ る.こ
よ うに書 く .一 般 にSU(N)群
(i2πn/N)(n=0,
連 結 で あ る.こ
は,す
の要 素 と し れ を,SO(3)
べ て の 群 の 要 素 と交 換 す るexp
部 分 群 と して 含 む.
3次 元 空 間 の 回転SO(3)は
回 転 軸 と 回 転 角 で パ ラ メ ター 化 で き る.回
転 角 の長 さ を も ち任 意 の 方 向 を向 くベ ク トル の 張 る空 間 は 半 径 πの3 次 元球(R3)の
内部 で あ る.+π
回 転 と-π
回転 は等 しい の で 半径 π の
球 面 上 の各 点 と球 面 の 対 向 点 は 同 一 点 で あ る.連
続 回 転 は 一 つ の径 路
をつ くる.径 路g1は 無 回 転(原 点O)に 縮 小 で き る が,回 転 角 が π を 超 す径 路g2は 連 続 変 換 でg1と 一 致 させ る こ とは で きな い.
縮 退 真 空 と巻 つ き 数:
静 的 運 動 方 程 式 の 解 と して の ソ リ トン の 存 在 条 件 は,
ホ モ ト ピー ク ラ ス の 異 な る 縮 退 真 空 が 存 在 し,か つ 有 限 エ ネ ル ギ ー を も つ こ と で あ る.縮 退 真 空 は ポ テ ン シ ャ ル をV(φ)と
するとき
(A.5) を満 た す φ の 値υ が 二 つ 以 上 存 在 す る と き に 出 現 す る.す
な わ ち φが 内 部 対 称 性G
を もつ と き,
(A.6) が 多 価 関 数 で あ る条 件 を探 す こ とが 課 題 とな る.時 次 元 空 間 でS1,3次
元 空 間 でS2の
空 に お い て γ→∞
トポ ロ ジ ー を もつ の で,時
写 像 が ど う対 応 す る か を知 る必 要 が あ る.
の 空 間 は,2
空 か ら群 の 多様 体 へ の
a.
2次
元 空間
2次 元 空 間 でU(1)対
称 性 を 満 た す ヒ ッ グ ス 場 φ(x)=(φ1±iφ2)を 考 え る.真
位 が φ(γ→∞)=υexp[-ig(θ)], g(2π)=g(0)+2πnを =(x2+y2)1/2→∞ る.上
は 円S1と
満 た す と し よ う.空 間 内 の γ
同 じ トポ ロ ジ ー を も ち θ(θ=0と2π
の 議 論 か ら φ は 実 空 間 で のS1か
て 次 の 関 数 を考 え よ う(図A.3参
空配
ら φ空 間 のS1へ
は 同 一 視)で
の 射 影 を 表 す.群
表せ
変数 とし
照).
(A.7a) (A.7b) (A.8a) (A.8b)
(a)
(b)
(c)
(d)
図A.3 時 空 の 点 をS1(0〓
S1→S1へ
の写 影 の ホ モ トピー ク ラス 分 け
θ<2π)で 表 し,写 影gi(θ)が や は り1次 元 の 閉 曲 線 も し くは
端 点 を 同 一視 した 直 線 と な る場 合.(a)∼(d)は
g1は 恒 等 変 換 を 表 す.g2は トピー ク ラ ス に 属 す る.し でg1に
そ れ ぞ れ のgiを 表 す.
明 ら か に連 続 変 形 でg1に か し,g3は
変 え る こ と は で き な い.同
モ ト ピー ク ラ ス に属 す る.ト
円S1の
様 にg4は2回
も って ゆ け る か らg1と 同 じホ モ
周 りに1回
巻 きつ い て お り,連 続 変 形
巻 き つ い て お り,g1, g3と は 違 う ホ
ポ ロ ジー 指 数 も し くは 巻 つ き数nを
(A.9) で 定 義 す る.VGは
群 の 多 様 体 の 体 積 で い ま の 場 合 は2π で あ る.被
積 分 関 数 はUか
ら群 の 変 数 を 抽 出 す る 演 算 で あ り,θ が0→2π る.n(g1)=n(g2)=0, n(g3)=1,
n(g4)=2を
真 空 が 存 在 す る こ と に な る.S1→S1の
の と き,群
変数gは0→2nπ
与 え る の で,整
であ
数nで
区 別 さ れ る縮 退
射 影 が ホ モ ト ピー 指 数nに
よ り区別 され る
ホ モ ト ピー ク ラ ス に 分 け られ る と き,数 学 用 語 で は,
(A.10a) と 表 し,第1種 る.扱
の ホ モ トピー 群 と呼 ぶ.Zは
う群Gを
加 減 算 に よ る 整 数 の 群 の 集 合 を構 成 す
表示 す る ときは
(A.10b) と も 書 く.一
般 にSn→Sm, Sn→Gの
πn(Sm), πn(G)と
射 影 の 場 合 の ホ モ
ト ピ ー ク ラ ス 分 け を,
書 く.
b. 3次 元 空 間 SO(3)対
称 性 を 満 た す ア イ ソ ス ピ ン1の
φ(φa:a=1,
2, 3)が,γ
→∞
で真 空配位
(A.11) を満 た す もの とす る.φ
は長 さυ の 任 意 の 方 向 を 向 くベ ク トル と な る.φ ベ ク トル
を 中 心 軸 と す る 回 転(SO(2)も SO(3)対
し くはU(1))に
称 性 が 自発 的 に 破 れ てU(1)対
よ っ て 真 空 の 値 は 変 わ ら な い か ら,
称 性 が 残 る問 題 を 扱 って い る.φ の 配 位 は ア
イ ソ ス ピ ン 空 間 の 球 面 と し て 表 さ れ る か ら,φa(γ →∞)は
時 空 のS2か
ピ ン 空 間 のS2へ
ロ ジ ー の数 学 か ら
の 射 影 を 表 す.こ
れ をπ2(S2)と 書 き,トポ
らア イ ソス
(A.12)
図A.4 3次
元 空 間(x,
y, z)の
球 面(S2)か
(φ1, φ2, φ3), φ2=φ12+φ22+φ32=1と
S2→S2の
ホ モ トピ ー
ら ア イ ソ ス ピ ン 空 間 へ の 写 影 φ(x, y, z),
φ=
す る 単 位 ベ ク トル を と る.
(a) φ=(0, 0, 1), (b) φ=(ξ, η, ζ) ξ=ξ/r, …, ア イ ソ ス ピ ンベ ク トル を球 面 上 すべ て の 点 で連 続 的 に(a)へ とは で き な い. (c) 南 極 に穴 を あ け,そ
こ を除 け ば 連 続 移 行 可 能 で あ る.
移 行 させ る こ
で あ る こ と が 知 ら れ て い る1).こ の 直 観 的 な 説 明 を 図A.4に φ=(0,0,1),図A.4(b)は 方 向(失 印)か
φ=(x/r,y/r,z/r)に
配 位 を もつ φ の
ら,球 面 上 の す べ て で 連 続 的 な 変 換 関 数 を使 って,(a)の
て ゆ く こ と は で き な い.し A.4(c)の
示 す.図A.4(a)は,
対 応 す る.(b)の
配位 に もっ
か し,南 極 点 で だ け は 連 続 で な く て よ い と す れ ば,図
よ う に 連 続 変 換 で(a)の
配 位 に も っ て ゆ け る.す
な わ ち,(a)の
配位 と
(b)の 配 位 は 異 な る ホ モ トピ ー ク ラ ス に属 す るの で あ る. ホ モ トピー ク ラ ス を指 定 す る指 数(巻 つ き数)は 次 式 で 定 義 され る.
(A.13a) こ れ が,整
数nを
与 え る こ と を見 る た め に,εijkの 反 対 称 性 か ら
で あ る こ と を 使 っ て 表 面 積 分 に 直 し,
次 に,角 変 数 θ,αで書 き換 え る.jk平
面 の 面 積 要 素(変 数 変 換 の ジ ャ コ ビア ン)
(A.14) を使 う と
(A.13b) Qの
こ の 定 義 は,U(1)に
お け る 巻 つ き数(A.5)と
同 じ く,群 の 変 数 を取 り出 す 演
算 に な っ て い る.被 積 分 関 数 の う ちdθdα 以 降 は φ→(θ,α)の ジ ャ コ ビ ア ン で あ る か ら,上 式 は φ空 間 で の 積 分 に 直せ る.
(A.13c) φ 空 間 のS2は Qは
半 径 が1の
表 面 積 で あ る か ら,xiが
φ 空 間 の 表 面 積 を 被 う 回 数nを
位 はn=1に
全 表 面 を 動 く と き,
配 位 はn=0,
(b)の
配
対 応 す る.
剰 余 群:
SO(3)演
算 は,回
した 真 空 配 位 φ・φ=1は はU(1)対
時 空 のS2の
与 え る.図A.4(a)の
転 軸 を 選 び 回 転 角 を 与 え る こ と で 決 ま る.上
で考 察
回 転 軸 を 決 め る と き の 制 限 で あ る.回 転 軸 の ま わ りの 回 転
称 性 を もつ か ら,真 空 はU(1)演
は,SO(3)か
らU(1)を
た と き,Hに
属 さ な い 要 素 をMiと
算 で 不 変 で あ り,真 空 の 決 め 方 の 自 由 度
除 い た 演 算 の 自由 度 だ け あ る.群Gか 書 く と,群Gは
ら,群Hを
取 り出 し
形式 的 に
(A.15) と書 け る.Miの
張 る 空 間 を 剰 余 空 間 と い い(商 空 間 と もい う)G/Hと
書 く.上 の 考
察 か ら,SO(3)/U(1)は,ト
ポロ ジ ー と して はS2に
モ ノ ポ ー ル の 存 在 条 件: が 自 発 的 に 破 れ てU(1)を 元 空 間 の 無 限 遠 点)か
同 形 な こ とが わ か る.
モ ノ ポー ル を電 磁 場 と共 存 す る ソ リ トン とす る.群G
含 むHが
らG/Hへ
残 っ た と き の ソ リ ト ン の 存 在 条 件 は,S2(3次
の 射 影 が,複
数 の ホ モ トピ ー ク ラ ス を もつ こ と,す
なわ ち
(A.16) で あ る.こ
こ で,再
○ 群Gが
単 連 結 の 場 合(例:SU(n)),
び 数 学 の 助 け を借 り る と1)
(A.17a) SU(N)の
対 称 性 が 破 れ てU(1)が
残 る と き は,
(A.17b) で あ り,モ
ノ ポ ー ル 存 在 の 必 要 条 件 を満 た す.
○ 群Gが2重
連 結 の 場 合(例:G=SO(n))
(A.18a) 単 連 結 の 場 合 と 同 じ く必 要 条 件 を満 た す が,親 位 へ の 射 影 は2:1と
の 群 が2重
連 結 で あ る の で,真
空配
な り,
(A.18b) こ の 場 合 モ ノ ポー ル の 磁 荷 は,デ ○ そ の 他,い
ィ ラ ッ ク磁 荷 の2倍
とな る.
くつ か の 式 をあ げ て お く.
(A.19)
特 別 な 場 合 と して,π3(SU(2))=Zは ワ イ ン バ ー グ-サ ラ ム 理 論:
イ ン ス タ ン トン 存 在 条 件 で あ る. ワ イ ン バ ー グ-サ ラ ム モ デ ル は,上
と モ ノ ポ ー ル を も っ て も よ さ そ う で あ る が,電 の 埋 め 込 み 方 が,正
則 的 で な くU(1)EMが
理 由:SU(2)×U(1)Yの る.電 磁 気 のU(1)は
U(1)群
磁 気U(1)EMのSU(2)×U(1)の
中へ
コ ンパ ク トで な い た め もて な い.
中 に は 二 つ のU(1)部
分 群 が あ り,生 成 子 はI3とYで
あ
そ の 直 積 演 算 で あ る.
の パ ラ メ ター 領 域 は,円
も し くは 両 端 点 を 同 一 視 し た 直 線 で あ る.し
て 直 積 群 の パ ラ メ タ ー 領 域 は,図A.5で とDC,辺ADとBCを
の 定 理 か らす る
たが っ
表 さ れ る よ う に 長 方 形ABCDで,辺AB
同 一 視 して 得 ら れ る.電 磁 気 の ゲ ー ジ 変 換 の 位 相 α は,
図A.5
標 準 理 論 の群 変 数 α の 多様 体 の体 積 は無 限 に 大 き い
I3回 転 の 変 数 U(1)回
で,ABとDCは
転
でADとBCは
θWβ+cosβWγ,θWは
同 一 β を 表 す.ハ 同 一 γ を表 す.電
ワ イ ンバ ー グ角.Aか
向 辺 に飛 ぶ の でAaa'bbcc'…
イ パ ー チ ャー ジ の
磁 気 の ゲ ー ジ変数 α=sin
ら出 発 した α は 辺 に 到 達 す る と対
の 道 を描 く.tanθWは
有 理 数 で な い の で,α
のた ど
る道 は関 じな い で 永遠 に 続 く.
(A.20) で 与 え ら れ る の で,図A.4に
お け る よ う な 経 路 上 を 動 く.勾 配 が γ/β=(I3/Y)tan
θWが 有 理 数 で な い た め,Aか の 長 さ を もつ.す
な わ ち,ワ
ら 出発 す る線 が 閉 じ る こ と が な く α の た ど る線 は 無 限 イ ン バ ー グ-サ ラ ム 理 論 に お け るU(1)群
限 大 の 体 積 を も ち コ ンパ ク トで な い.し は 存 在 し え な い.し
の よ う な 単 純 群 が,最 U(1)が
初 に(す
示 す よ う に,大
ノ ポー ル
残 る な ら ば モ ノ ポー ル が 発 生 す る.
N.Steenrod:The (邦 訳)大
2)
な り,モ
統 一 理 論 が 正 し く,SU(5)
な わ ち 大 統 一 エ ネ ル ギ ー で)自 発 的 に 破 れ る と き に
参
1)
た が っ て π1(G/H)=0と
か し,式(A.17)が
の 多様 体 は 無
Chan
Topology 口 邦 夫:フ
Hong-Mo
World
of
and
Tsou
Sheung
ロ バ ー
文
献
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ト ポ ロ ジ ー,吉
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Elementary
Gauge
Theory
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B
B.1
Fibre
ァ イ バ ー 束 の
考
宇
宙
の
幾
ト ソ ン-ウ
何
宇
宙
論
補
足
学
ォ ー カ ー の 計 量
の 幾 何 学 を考 察 す る. k=0の
場 合:
ロバ ー トソ ン-ウ ォー カー 計 量 が 平 坦 な ユ ー ク リ ッ ド空 間 を 表 す こ と は 明 ら か で あ
る. k=+1の
場 合:
で あ る の で,
と す る と,
(B.1) とお け ば,
(B.2) こ れ か ら,点r(x,y,z,u)は,4次 こ と,し
た が っ て,こ
元 空 間 に 埋 め 込 ま れ た 半 径Rの
の3次
元 空 間 は 閉 じて お り,Rが
超 球 表 面 を表 す
空 間 の サ イ ズ を 表 す こ とが
わ か る. k=-1の
場 合: とお け ば,
で あ る の で,
(B.3) とお け ば,
(B.4) こ れ か ら,点r(x,y,z,u)は,4次 か る.す
元 空 間 に 埋 め 込 ま れ た 回 転 双 曲 面 を 表 す こ とが わ
な わ ち空 間 は 開 い て い る.
フ リ ー ドマ ン方 程 式:
パ ラ メ ター を い くつ か 定 義 す る.
ハ ッブ ルパ ラ メター 臨界 密度 密 度 パ ラ メター 曲率 パ ラ メター 減 速 パ ラ メター
(B.5)
宇 宙 項 パ ラ メ ター これ らの パ ラ メ タ ー を使 え ば,フ
リー ドマ ン方 程 式(8.2)は,
(B.6) フ リー ドマ ン 方 程 式 を微 分 し て,エ
ネ ル ギー 方 程 式(8.5)を
使 え ば,
(B.7) を得 る.現 在t=t0で
は,物 質 優 勢(P=0)で
あ るか ら,
(B.8) を 意 味 す る.Ω0とq0は kとΛ
観 測 量 で あ る か ら,K0と
Ωλ0が決 め ら れ,R0を
決 め れ ば,
が 決 め られ る.
長 さ:共 動 座 標 で,r=一 で 積 分 し て,そ
定 の 円 周 の 長 さ と球 面 積 は,dr=0と
れ ぞ れ2πr, 4πr2と な るが,半
して φ も し くは θ
径 の 長 さlは,
(B.9) で 与 え ら れ る.例 半 径rの
と して 閉 じ た 空 間(k=+1)の
円 を描 く と き 円 周 は2πrで
場 合,北
あ る が,円
極 を通 る 中 心 軸 の まわ りに
の 中 心 か ら 円 周 ま で の 距離lは
lの 円 弧 で あ り,極 付 近 で はl〓rが
成 立 す る が,一
rは よ く で て く る 量 で あ る が,観
測 量 に 結 び つ け る と きは,光
う.こ の と き,(8.8)を
般 に はl>sinl=rで
極角
あ る.
の 行 路ds2=0を
使
使 えば
(B.10) で あ る.H(t)は
次 の よ う に し て 求 め ら れ る.
物 質 優 勢 の と き,ρR3=ρ0R03で
あ る の で,フ
リ ー ドマ ン 方 程 式(8.2)よ
り
(B.11a) (B.11b) こ れ に,R0/R=1+zを
入 れ,(B
.5)を
使 えば
(B.12a) で あ る.こ
れ よ り,Ω
λ0=0の
と き
(B.12b) 1+z≫Ω0-1の
とき
(B.12c) が 成 立 す る.(B.12a)を(B.10)に
入 れ,(B
.9)と
比 較 す る と,Ω
λ0=0の
と き,
(B.13a) Ω0z≪1の
と こ ろ で は,
(B.13b) (B.13a)式
はΩ λ=0と
し て 導 い た が,(B.13b)式
は 一 般 のq0=Ω0/2-Ω
λの と き に
も成 立 す る. 距 離 の 定 義: る.こ
t=一 定 の 超 平 面 で は,共 動 座 標0∼rの
れ が 距 離 の 定 義 と して 使 え そ うで あ る が,膨
距 離 はR(t)lで
与 え られ
張 宇 宙 で は あ ま り役 に 立 つ 量 で
は な い.実
際 に 観 測 に 結 び つ く距 離 の 定 義 と して 次 の 三 つ を あ げ て お く.
光 度 距 離(luminosity か っ た と して,そ た とす る.ユ
distance):
遠 くの 距 離dに
れ を わ れ わ れ が 単 位 面 積,単
あ る 銀 河 の 絶 対 光 度Lが
位 時 間 あ た りの 光 量Fと
わ
して観 測 し
ー ク リッ ド幾 何 学 で は,
(B.14) が 成 立 す る の で,こ で,共
動 座 標rで
れ で 光 度 距 離dLを
時 刻t∼t+δtに
定 義 す る.実 際 に は 宇 宙 は 膨 張 し て い る の
光 が 放 出 さ れ,地 球(r=0)で
観 測 し た とす る.r=一
定 の 球 の 表 面 積 は,t=t0で4π(R0r)2で
フ ォ トン の 数 密 度nrは
∼T3∼R-3で
時 刻t0∼t0+δt0に 与 え ら れ る.一 方,
あ り,共 動 体 積 の 中 の 全 フ ォ ト ン 数Nγ ∼Eγ/
(hν)が 保 存 さ れ る の で,
(B.15) ν/ν0=δt0/δt=1+zを
入 れ,(B.14)の
定 義 式 を使 え ば
(B.16) Ω0z≪1な
らば
(B.17) が 成 立 す る. 角 径 距 離(angular 知 と し て,そ
diameter
distance):
視 線 方 向 に 直 角 な 天 体 の 大 き さDが
れ を 見 込 む 角 を δθ と す る と き,dA=D/δ
とい う.ユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 が 成 立 す れ ば,dA=dLで Dを
共 動 座 標rが
れ る時 刻t1で
与 え られ た と きの 円 弧 の 長 さsと
の 長 さ で あ る か ら,D=R(t1)s,し
既
θで定 義 す る距離 を角径 距離 あ る が 膨 張 宇 宙 で は 異 な る. す る とs=rδ θ,Dは
光 の発 せ ら
たが って
(B.18a) 1+z≫Ω0-1の
と き,
(B.18b) 銀 河 数 密 度 距 離:
銀 河 の 数 密 度ngが
積 中 の 銀 河 の 数 は,(B.10),
(B.12b)よ
共 動 座 標 系 で は 一 定 とす る と,微 小 共 動 体 り
(B.19) し た が っ て,銀
河 の 数 密 度 を 赤 方 偏 移zの
関 数 と し て 表 し,zΩ0≪1の
とき
(B.20)
B.2 再 結 合 温 度 晴 上 が り時(再 子,陽
結 合:recombination)の
温 度 は 次 の よ う に し て 計 算 で き る.電
子 と水 素 は フ ォ トン と次 の よ う な 平 衡 状 態 に あ る とす る.
(B.21) フ ォ トン の 化 学 ポ テ ン シ ャル は ゼ ロ で あ る の で,平
衡 状 態 に あ れ ば,化
学 ポテン
シ ャ ル につ い て 次 の 式 が 成 立 す る.
(B.22) 宇 宙 は電気 的 に中性 で あ るとす れ ば,
(B.23) 非相対 論 的粒子 の数 密度
(B.24) を使 っ て(B.22)か
ら化 学 ポ テ ン シ ャ ル を消 去 す る と,
(B.25a) (B.25b) こ こ で,
(B.26a) (B.26b) を 導 入 し,gH=4,
gp=ge=2を
入れ れば
(B.27) と な る.こ 2.73(1+zrec)と
れ を 熱 平 衡 状 態 に お け る イ オ ン 結 合 の サ ハ の 式 と い う.T=T0(1+zrec)= し て,Xe=0.1に
な る 温 度 を 再 結 合 温 度Trecと
す る と,
(B.28) を 得 る.T=0.308eVを
超 え る とXeは
で,X∞〓10-4∼10-5く
ら い に 落 ち つ く.
こ れ を 切 り離 し 時 刻tdcと
急 速 に 減 少 し,T〓0.26eV=3030Kあ
た り
す る と,
(B.29) B.3 ニ ュ ー ト リ ノ切 り離 し温 度 ニ ュ ー ト リノ 切 り離 し の 温 度 を 計 算 す る た め に,ま
ず ニ ュー ト リ ノ と核 子 の 散 乱
断面積 を計算 す る.
(B.30) 反 応 の 散 乱 振 幅 をTfiと
書 くと
(B.31) 中 性 子 と陽 子 は 動 か な い も の とす る と μ=0成
分 の み 効 く.
(B.32a) (B.32b) 行 列 要 素 を 自乗 し て 中 性 子 の ス ピ ン平 均 を と る と(ニ ュ ー ト リ ノの ス ピ ン 平 均 は と ら な い)
(B.33) θ は 電 子 とニ ュ ー ト リ ノが 張 る角 度 で あ る.断
面 積 は,散
乱 振 幅 の 自 乗 を始 状 態 フ
ラ ッ クス で 割 り,終 状 態 位 相 体 積 を掛 け て 得 ら れ る.
(B.34) 次 に,弱 eze)温
い相 互 作 用 に よ る熱 反 応 が 切 離 さ れ,中 度 をTFと
す る.TFの
値 は,反
等 し い とお い て得 ら れ る.Γ=nσυ
性 子 や 陽 子 の 数 が 凍 結 さ れ る(fre
応 率Γ(νen→e-p)が,宇
宙 膨 張 速 度H-1に
で あ る か ら,
(B.35) 最 後 の 式 は,(8.10),
(8.11)か
ら 得 ら れ る〈E〉〓
ρ/n〓3.2Tを
使 っ た.
(B.36) を 使 い, 1.1MeVを
を 入 れ て 計 算 す る と,TF〓 得 る.
な ど を も取 り入 れ た よ り詳 し い計 算 に
よ れ ば,
で あ る1).
参考 文 献
1) D.N.Schramm E.W.Kolb
and and
M.S.Turner:Rev.Mod.Phys.,70(1998)303
M.S.Turner:The
Early
Universe,§4.1,Addison-Wesley,1990
B.4 ヴ ィ リ ア ル 定 理 ヴ ィ リア ル 定 理 は,空
間 的 に 孤 立 し た 系 で そ の 構 成 要 素 間 に 働 く力 が 座 標 の 同 次
関 数 で あ る保 存 力 の と き,全 系 の 運 動 エ ネ ル ギ ーKと
ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ーU
の 時 間 的 平 均 量 に 関 す る 関 係 式 を与 え る.簡 単 の た めN個
の 質 量mの
質 点 から な る
系 を考 え る.各 粒 子 の 位 置 をriと す る と
(B.37) Uがriのn次
の 同 次 関 数 で あ る な ら ば,U(ar1,…)=anU(r1,…)で
あ る の で,
(B.38) が 成 立 す る.Kを
変 形 す れ ば,
(B.39) こ こ で 長 時 間 平 均 を とれ ば,孤
立 系 で あ る の で,左
辺 第2項
は0と
な り,
(B.40) エ ネ ル ギー 保 存 則 よ り
(B.41) で あ る の で,上
の2式
よ り
(B.42) Nが
大 き く十 分 に 時 間 が 経 過 し て い る と き は,系
え られ る.温
度 をTと
は 熱 力 学 的 平 衡 状 態 に あ る と考
す ると
(B.43) (B.43)で
定 義 さ れ る 温 度 を ヴ ィ リア ル 温 度 と い い,完 全 な 熱 力 学 的 平 衡 状 態 と い え
な い 系 に も適 用 す る. ポ テ ン シ ャ ル が 重 力 に よ る場 合 はn=-1で
あ り,
(B.44) 系 の 全質 量 がMで
半 径Rの
球 状 に一 様 に広 が った銀 河 団 を考 え る.熱 力学 的 平 衡
が 成 立す る とい う条 件 で,
(B.45) した が っ て,銀
河 団 内 の 平 均 速 度 分 散<υ2>,平
全 体 の質 量 を計 算 で き る.
均 距 離Rを
測 る こ とに よ り,銀 河 団
索
引
LHC ア Rパ
行
LSP
リ テ ィ 203
ア イ ソ ス ピン 2 ア ク シ オ ン 230, ―
257, 263, 264, 334
の 検 出 270
91, 93, 94, 103 217,
97, 98, 100, 203, 208
MSSMヒ
ッ グ ス 粒 子 100
mSUGRA
214, 216, 217, 219
MSW効
果 144 218
熱 い 暗 黒 物 質 156, 333,
334, 339
NLSP
ア ブ リ コ ソ フ の磁 束 線
238
SN1987A
暗 黒 物 質
264, 270,
332∼334
218, 220, 222
MSSM
156
SO(10)
190, 194
SU(2)×U(1) E6
190
SU(3)
イ オ ン 化 損 失 295, 296 異 常 項
SU(5)
251
―
2, 4
2 175,
194
の 予 言 186
エ ッ チ ン グ 軌 跡 検 出 器 298
Ⅰ 型 超 新 星 160, 318 1次 宇 宙 線 152 イ ン ス タ ン ト ン 242∼244, イ ン ス タ ン ト ン 効 果 275, イ ン フ レ ー シ ョ ン 305,
246, 247 323
音 速 330 温 度 ゆ ら ぎ 340, 342
312 カ
イ ン フ レ ー シ ョ ン モ デ ル 293, 332, 338
行
階 層 問 題 195 ウ ィ ー ノ 212
カ イ ラ ル 異 常 項 253
ヴ ィ リ ア ル 温 度 332, 358
カ イ ラ ル 固 有 状 態 2
ヴ ィ リ ア ル 速 度 291
カ イ ラ ル 対 称 性 1, 106, 252, 258
ヴ ィ リ ア ル 定 理 358
カ イ ラ ル 変 換 252, 254
ウ ィ ン ド ウ 関 数 335
香 り の 固 有 状 態 129
ウ ォ ル フ ェ ン シ ュ タ イ ン の 表 式 21, 26, 56
化 学 ポ テ ン シ ャ ル 306, 324, 325, 356
薄 め 因 子 64, 65
角 径 距 離 342,
宇 宙 原 理
隠 れ た 領 域 208
304
宇 宙 項 305, 312,
317, 318, 353
355
神 岡 実 験 138
宇 宙 構 造 328
カ ラー 2
宇 宙 年 齢
カ ラ ー 異 常 項 260,
310
宇 宙 の バ リ オ ン 数 68
ガ リ ウ ム 実 験 140
宇 宙 背 景 輻 射 → 背 景 輻 射
カ レ ン ト代 数 263
LEP200
QCD
90, 102, 222
2
263, 268
QCDラ グラ ンジ ア ン 7 球 状 星 団 265
サ
行
強 結 合 理 論 104
CMB→
共 動 座 標 304, 310, 329, 333, 354, 355
再 加 熱 314
共 鳴 振動 141
再 結 合 309, 331, 356
曲 率 項(パ ラ メ タ ー) 316, 353
サ イ ン-ゴ ー ドン方 程 式 234
虚 数 時 間 248
ザ ック ス-ウ ォル フ ェ効 果 342
切 り離 し 309, 329, 356 切 り離 し(ニ ュ ー トリ ノ) 319, 357
サ ハ の 式 356
銀河磁場
292
銀 河 数密 度距 離 355
背景 輻 射
サ ハ ロ フ の3条 件 322 サ ブ ク ォー ク 171
銀 河 相 関 関数 336
左 右 対 称 モ デ ル 67, 122, 190 三 角異 常 項 172, 174
銀 河 分 布 334
残 存 ニ ュ ー ト リノ 319
キ ン ク 235, 239 CNOチ
ェ イ ン 136, 158
ク ォ ー ク の 閉 じ込 め 9
CPパ
グ ラ ヴ ィテ ィー ノ 201, 217, 218
CP非 保 存 322
繰 り込 み 群 方 程 式 7, 78, 82, 175, 209, 210, 213, 217
CPT保
グル ー イ ー ノ 218, 224 ― の 質 量 212 グル ー オ ン融 合 91
ラ メ ター 31 存 323
CR39 298 GIM機 構 18 GMSB
214∼218
σモ デ ル 106 θ真 空 250, 253, 255
Kの 稀 崩 壊 50 KSVZア ク シ オ ン 262, 264 傾 斜 ア ク シオ ン 270 ゲ ー ジセ ク ター 3
磁 気 単 極 子 242 磁 気 能 率(ニ ュ ー トリ ノ) 127, 151, 164 磁 気 誘 導 法 295 軸 性 電 荷 253
ゲ ー ジー ノ 207, 209, 212, 215
シー ソー メ カニ ズ ム 120, 156
ゲ ー ジ 不 変性 2
実効結合定数 8
ゲ ー ジ ボ ソ ン 188
質 量 下 限 222
原 始 星 157
質 量 行 列(ク ォー ク) 29, 40, 46, 116
原 始 ゆ ら ぎ 338
質 量行 列(ニ ュー トリ ノ) 214
減 速 パ ラ メ ター 353
質 量公 式 211, 215
元 素 合 成 323, 326, 327
質量 固 有状 態 16, 129, 212, 214 質量 ス ペ ク トル 218
格 子 ゲ ー ジ理 論 83
質量 の ス ケ ー ル 依存 性 189
光 度 距 離 355 COBE 340∼342
質量 ハ イ ラ ー キ ー 122 自発 的対 称 性 の破 れ 3, 233
小 林-益 川 行 列 2, 16 孤 立 フ ォ トン 218 ゴ ー ル ドス テ ィ ー ノ 203
弱 固 有状 態 16
ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン 106, 119, 256
縮 退 真 空 243, 347
ゴ ー ル ドス トー ン粒 子 202
主 系 列 星 158, 265 出 現 の実 験 133
混 合 33 ―
の 効 果 214
混 合 パ ラ メ タ ー 29, 35 コ ンパ ク ト(群) 345, 347, 352
重 水 素(宇 宙 の) 325 縮 退 圧 159
準 真 空 解 146 純 粋 ゲ ー ジ場 237 純 粋 ゲ ー ジ場 ソ リ トン 243 純 粋 ヤ ン-ミ ル ズ場 243, 244 消 滅 の 実 験 133
剰 余 空 間 288, 350
多 様 体(群 の) 345, 346 単 純 群 352
剰 余 群 350 触 媒 効 果検 出 法 300 磁 流 287
炭 素 燃 焼 過 程 158
シ ル ク減 衰 342
断 熱 近 似 144, 145
真 空 振 動 141
単 連 結 346, 347
真 空 の 安 定 77 ジ ー ンズ 質 量 328, 330, 333
地 平線 310, 312, 317, 329, 330, 338
ジ ー ンズ 波 長 330, 333
地 平 線 問 題 314
断 熱 解 145
チ ャー ジー ノ 202, 212, 218, 220 slow rolling 304, 313
中性 子 星 294
SQUID
超 弱 相 互 作 用 53, 67
SUGRA
272, 295 172, 199, 216, 218
SUGRA-GUT SUSY
209
超 重 力 理 論 172 超 新 星 157
198
超 新 星SN1987A
SUSY-GUT 204 SUSY粒 子 99, 200
265
超 新 星 ニ ュー トリ ノ 156, 160
随 伴 表 現 179
超 対 称 性 170, 198, 207 超 対 称 大 統 一 理 論 204
水 平 分 岐 265 ス カ ラー 粒 子 215
超 対 称 ヒ ッ グ ス 96 超 対 称 粒 子 99
ス ク ォー ク 224
超 伝 導 量 子 干 渉 計 273
ス ニ ュ ー トリ ノ 220 ス ー パ ー カ ミ オ カ ンデ 139
超 粒 子 探 索 220
ス フ ァ レロ ン 276
超 粒 子 の 相 互 作 用 207
ス フ ェル ミオ ン 207
直 接 の 破 れ 53
超 粒 子 の 性 質 201
ス レプ トン 220 冷 た い 暗 黒 物 質 333, 334, 339 Z' 191
強 いCP問
制 動 放 射 85
題 256, 258, 273
強 い 相 互 作 用 のCPの
破 れ 68, 251
赤 色 巨 星 265 赤 方 偏 移 305, 309, 318, 320
D0中 間 子 の 混 合 40 DFSZア
漸 近 自由 7, 175
クシ オ ン 262, 264
低 エ ネル ギ ーSUGRA ソ リ トン 231 タ
行
tanβ 214, 224 WとZの 質量項 5 WW融 合 92 ダ イオ ン 295
デ ィ ラ ッ クの 紐 281 デ ィ ラ ックの 量 子 化 条 件 281 デ ィ ラ ックモ ノ ポ ー ル 280 テ ク ニ カ ラー 理 論 108, 196 デ リ ッ クの 定 理 241
大 気 ニ ュ ー トリ ノ 152
電弱相互作用 2 天 頂 角 153
対 称 性 の 自発 的 破 れ 1 大 統 一 170
等 価W近
―
208
低 エ ネル ギ ー 定 理 105, 106
の ス ケー ル 175
似 86
等 価 定 理 105
大 統 一 温 度 322
閉 じ た宇 宙(空 間) 304, 353
太 陽 ア ク シオ ン 271
トッ プ ク ォー ク縮 退 モ デ ル 196
太 陽 ニ ュ ー トリ ノ 135, 138, 140 太 陽 モ デ ル 解 149
ト ・フ ー フ トーポ リヤ コ フモ ノ ポー ル 283, 317 トポ ロ ジ ー 236, 239, 241
多 重 連 結 346
トリ ヴ ィア リテ ィ 82
ヒ ッ グ ス 1, 72
ト リ ー 図 58 ド レ ル-ペ
ニ ン グ 効 果 296 ナ
行
― ―
の 質 量 75 の 崩 壊 分 岐 比 75
―
の ポ テ ン シ ャ ル 99
Ⅱ型 超 新 星 159
ヒ ッ グ ス機 構 2
2重連結
ヒ ッ グ スセ ク ター 3
2体
346, 347
の 相 関 59
ヒ ッ グス 相 互 作 用 6
ニ ュ ー トラ リ ー ノ 202, 212, ニ ュ ー ト リ ノ 温 度 319,
218, 220, 334
333
ニ ュ ー ト リ ノ切 離 し 309,
ヒッ グ ス 場 16 ヒ ッ グ ス ポ テ ン シ ャ ル 97, 210, 312
320, 356
ビ ッ グ バ ン 318,
327
ニ ュ ー ト リ ノ 混 合 129
ビ ッ グ バ ン 宇 宙 論 308, 312,
ニ ュ ー ト リ ノ 質 量 114 , 320
ビー ノ 212
ニ ュ ー ト リ ノ振 動 131 , 134, 150, 154
標 準 ア ク シ オ ン 257, 261
ニ ュ ー ト リ ノ 天 文 学 135
標 準 太 陽 モ デ ル 135
ニ ュ ー ト リ ノ の 電 磁 形 状 因 子 126
開 い た 宇 宙(空
340
間) 304, 353
ニ ュ ー ト リ ノ ル ミ ノ シ テ ィ 162 フ ェ ル ミオ ン質 量 項 5 熱 的 ア ク シ オ ン 267,
270
ハ BABAR
輻射優
物 質 振 動 141 66
物質優
背 景 輻 射 307∼309,
勢 309, 310, 338
不 自 然 な 論 理 196 行
311, 315, 318,
332, 340
勢
309, 311, 331, 338, 353
不 毛 の(ニ
ュ ー ト リ ノ) 155
ハ イパ ー チ ャー ジ 2
プ ラ ズ モ ン 128
パ ー カ ー 制 限 292,
プ ラ ン ク エ ネ ル ギ ー 176
298
白 色矮 星 158
プ ラ ン ク ス ケー ル 120, 210
箱 型 図 41
フ リ ー ドマ ン 方 程 式 304, 308, 316, 353, 354
ハ ッ ブ ル 時 間 330
プ リ マ コ フ 効 果 265, 270, 271
ハ ッ ブ ル 定 数 293
, 313, 353 ハ ド ロ ン 的 ア ク シ オ ン 262 パ ー トン 3
BELLE
66
β 関 数 8
ハ ミ ル ト ン の 原 理 242
平 坦 性 問 題 315
バ リ オ ン数 非 対 称
平 坦 な 宇 宙 304, 353
321
バ リ オ ン 数 非 保 存 275 バ リ オ ン 数 密 度 310, 328,
ヘ リ ウ ム 合 成 326, 327 332
ヘ リ ウ ム 燃 焼 過 程 158
バ リ オ ン 創 生 321
ヘ リ ウ ム フ ラ ッ シ ュ 265
ハ リ ソ ン-ゼ
ペ ン ギ ン 図 44, 58
ル ド ヴ ィ ッ チ の 等 曲 率 ス ペ ク トル
338, 341 針 ね ず み 284
放 射 補 正 75, 196
晴上が
星 の 死 159
り 312, 356
パ ワ ー ス ペ ク ト ル 334 , 339
補助 場
215
ボ ー ス 凝 縮 体 268 Bフ ppチ PQ対
ァ ク ト リ ー 66 ェ イ ン 136, 158 称 性 257
非 対 称 パ ラ メ タ ー 55 非 対 称Bフ
ァ ク ト リ ー 59, 65
ボ ソ ン 融 合 86 ホ ー ム ス テ イ ク 実 験 136 ホ モ ト ピ ー 345 ホ モ ト ピ ー ク ラ ス 240, 241, 348, 350
非 断 熱 解 146
ホ モ ト ピ ー 群 349
微 調 整 問 題 196
ポ ン ト リ ャ ー ギ ン 指 数 240
ヒ ッ グ シ ー ノ 202, 203, 212
246, 287, 288,
345,
マ MACRO
誘 電 効 果 272 行 湯 川 結 合 214 ユ ー クリ ッ ド空 間 352
298
マ イ ク ロ 波 検 出 器 272 巻 つ き 数 239, ∼350
240, 244,
245,
267, 287,
288, 347
ユ ニ タリー
ゲ ー ジ 284
ユ ニ タリー
三 角 形 26, 49
ユ ニ タリ テ ィ 25, 80, 120
マ ヨ ラ ナ 質 量 116
ユ ニ タリ テ ィ 極 限 107
マ ヨ ラ ナ 粒 子 114
ゆ ら ぎ の 成 長 329∼332
マ ヨ ロ ン 119, 125 陽 子 崩 壊 187, 205 見 え な い ア ク シ オ ン 258,
262 ラ
見 え な い エ ネ ル ギ ー 224 右 巻 き ボ ソ ン 122
行
リ ド ベ リ ー 原 子 273
密 度 パ ラ メ タ ー 305,
353
臨 界 密 度 269, 305, 321,
353
密 度 ゆ ら ぎ 329, 331∼335 ル バ コ フ-カ
ラ ン 効 果 290
メ ッ セ ン ジ ャ ー 215 レ プ ト ン数 非 保 存 123 モ ノ ポ ー ル 244, 351
―
― の 質量 286 の 質量 とサ イズ 289
― の触 媒 作 用 290, 294 ― の速 度 291 モ ノ ポ ー ル 問題 316
ρ-パ ラ メ タ ー 6 ロ バ ー ト ソ ン-ウ ォ ー カ ー の 計 量 304, ワ ワ イ ル 解 114 ワ イ ン バ ー グ 角 4, 171,
ヤ U(1)問 題 256
行
行
ワ イ ン バー グ-サ 惑 星 型 星 雲 158
182, 186, 204
ラ ム 理 論 351
352
著 者 略歴 長
島 順
清
1938年 東京都 に生 まれる 1965年 東京 大学大 学院数物 系研究 科 博士 課程修 了 現 在 大阪 大学名 誉教授 理学 博士
朝倉物理 学大系6 定価 はカ バー に表 示
高 エ ネル ギ ー物 理 学 の発 展 1999年6月20日 2008年4月20日
初 版 第1刷
第3刷
著
者 長
島
順
清
発 行 者 朝
倉
邦
造
発 行 所 株式会社 朝
〈 検 印省 略 〉 C1999〈 ISBN
無 断 複 写 ・転 載 を 禁 ず 〉 978-4-254-13676-0
倉
書
店
東京都 新宿 区新 小川 町6-29 郵 便 番 号 162-8707 電 話 03(3260)0141 FAX 03(3260)0180 http://www.asakura.co.jp
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