量子力学概論 原子 スペ ク トル と分子スペ ク トル
理博 篠 原
正三 著
東京電機大学出版局
は
し
が
き
こ の本 は,理 工 科 系 大 学 の物 質 材 料 に 関 す る学 科 の 学 生 が,量
...
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量子力学概論 原子 スペ ク トル と分子スペ ク トル
理博 篠 原
正三 著
東京電機大学出版局
は
し
が
き
こ の本 は,理 工 科 系 大 学 の物 質 材 料 に 関 す る学 科 の 学 生 が,量
子 力 学 の基 礎 を
学 習 す る た め に書 か れ た もの で あ り,物 理 の立 場 か ら物 質 を 勉 強 す る学 生 は勿 論, 化 学 の方 面 か ら これ ら を研 究 し よ う とす る学 生 に対 して も,必 要 な 基 礎 知 識 で あ る。 最 近,大 学 の 入 試 科 目 の制 限 か ら,物 理 を選 択 しな い で 理 工 系 大 学 に入 学 す る 学 生 もた くさん いる よ う に な っ た。 これ らの 学 生 に も理 解 で き,興 味 を持 ち続 け て,量 子 力 学 の 入 門 を抵 抗 な く経 過 して ゆ く こ との で き る 内容 で あ る 。 こ の本 の読 了 後,固 体 物 理 学 や,量 子 化 学 の 教 科 書 あ る い は専 門 書 を読 む こ と を期 待 す る。 年 間25回
た らず の講 義 時 間 しか とれ な い た め,内 容 に不 十 分 な と こ ろが あ る
の は や む を得 な いが,他
の専 門 的 量 子 力 学 の 教 科 書 で知 識 を補 足 す る こ とが望 ま
れ る。 こ の本 を書 くに あ た り,多
L.I.Schiff;Quantum P.A.M.Dirac;The
くの 物 理 教 科 書 を参 考 に した 。 た と え ば,
Mechanics(1949),(McGraw Prnciples of Quantum
Hill)
Mechanics(1947), (Cambridge)
朝 永 振 一 郎:量 子 力 学 I(1948),(東
西 出 版 社)
等 で あ る。 また,予 備 的 な物 理 学 の知 識 と して,次
の本 を参 考 に す る こ と を希 望
す る。 篠 原 正 三;物 理 学 概 論(1973),(東
京 電 機 大 学 出版 局)
平 成 2年 1月25日 篠
原
正
三
目
は
し が
1.不
き
確 定 性 原 理 と シ ュ レデ ィ ンガ ーの 波 動 方 程 式 1・1断
熱 不 変 量 と 量 子 条 件
1・2ド
・ブ ロ ー イ(de
Broglie)の
1 式
3
1・3水
素 原 子 の エ ネ ル ギ ー 準 位
5
1・4不
確 定 性 原 理
6
1・5シ
ュ レ デ ィ ン ガ ー(Schrodinger
1・6波
動 関 数
10
1・7交
換 関 係
12
1・8行
列(matrix)
.)の 波 動 方 程 式
8
13
1・9波
動 関 数 の 直 交 性
16
1・10ユ
ニ タ リ ー 変 換
17
1・11δ-関
2 .角
次
数
18
1・12ハ
イ ゼ ン ベ ル グ の 運 動 方 程 式
20
1・13自
由 粒 子
21
運
動
量
2・1交
換 関 係
23
2・2角
運 動 量 の 固 有 値
25
2・3角
運 動 量 の シ フ ト演 算 子
27
2・4角
運 動 量 の マ ト リ ッ ク ス 表 示
28
2・5極
座 標 表 示29
3.水
素
原
子
3・1シ
ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式
31
3・2ル
ジ ャ ン ドル(Legendre)の
33
3・3ル
ジ ャ ン ドル の 陪 微 分 方 程 式 (associated
equation)
37
径 の 微 分 方 程 式 と エ ネ ル ギ ー 固 有 値
38
3・5動
径 の 波 動 関 数
41
3・6縮
退 の あ る と き の 固 有 状 態
45
ピ
ン
4・1ス
ピ ン(spin)波
4・2電
子 の 磁 気 モ ー メ ン ト
52
4・3運
動 の 保 存 量
54
4・42
電 子 系 の 波 動 関 数
55
4・5パ
ウ リ の 原 理
57
動
論
動 関 数
49
Ⅰ
5・1定
常 状 態 の 摂 動 論
60
5・2縮
退 の あ る と き の 摂 動 論
63
5・3ス
6.摂
differencial
3・4動
4.ス
5.摂
Legendre
微 分 方 程 式
動
ピ ン ・軌 道 相 互 作 用
論
66
Ⅱ
6・1遷
移 確 率
71
6・2電
子 と 電 磁 場 の 相 互 作 用
74
6・3光
の 吸 収 ・発 散
77
7.原
索
子分子
7・1変
分 法 近 似
83
7・22
原 子 分 子 の 振 動 エ ネ ル ギ ー
89
7・3双
極 子 放 射 の 選 択 則
95
7・42
原 子 分 子 の 回 転 エ ネ ル ギ ー
98
7・5ス
ペ ク トル 線 の 幅
引
101
104
1.不
確 定性 原理 と シ ュ レ デ ィ ンガ ー の
波動方程式
1・1 断 熱 不 変 量 と量 子 条 件 光 はヤ ン グ の 実 験 に よ り波 動 の性 質 を持 って い る。 ま た理 論 的 に は,マ ウ ェ ル の 電 磁 界 の理 論 に よ り,波 動 方 程 式 と し て表 現 さ れ,そ
ッ クス
の速 度 は光 速 度 の
実 測 値 と一 致 す る。 しか し一 方 で は,真 空 管 内 の金 属 表 面 に 光 を あ て,電 流 を観 測 す る光 電 効 果 の現 象,あ る い は X 線 を金 属 薄 膜 に 照 射 した と き,入 射 X 線 の 波 長 と異 な っ た 波 長 の X 線 が 得 られ る コ ン プ トン効 果 の 現 象 を 説 明 す る に は,光 を エ ネ ル ギ ー お よび 運 動 量 を持 つ光 粒 子 と考 え,エ ネ ル ギ ー保 存 則,運 動 量 保 存 則 を連 立 させ て解 か な け れ ば な らな い 。 した が っ て,光
は波 動 性 と粒 子 性 の二 重 の
性 質 を持 つ もの と して 取 り扱 わ ね ば な らな い 。 同 じ よ う に,電 子 は質 量 を持 つ物 質 粒 子 で あ るが,電
子 線 が 回折 現 象 を示 す こ
とか ら,波 動 と し て の 性 質 を持 つ とも考 え られ る。 これ らの 二 重 性 を説 明 す るた め に量 子 力 学 が 生 まれ た。 まず,量 子 とい う こ とか ら は じめ な けれ ばな らな い 。 糸 の 長 さ l,質 量 m の 単 振 子 が 小 さ な角 度 θで 振 動 して い る と き,ニ ュー トン の運 動 方 程 式 は, - mg
θ
mθ=
/l
(1・1)
で与 え られ る 。 g は重 力 の 加 速 度 で あ る。 この 振 子 を振 らせ な が ら,糸 の 長 さ を十 分 ゆ っ く り短 く して ゆ く。 “ゆ っ く り” とは,振 子 の 周 期 に比 べ て十 分 長 い 時 間 をか け る とい う こ とで あ る 。 こ の よ うな 糸 の長 さ の変 化 を断 熱 変 化 とい う。 熱 力 学 に お け る 断 熱 変 化 と は,体 積 の急 激 な 変 化 に 比 べ て,周
囲 へ の熱 の伝 導 が 非 常 に ゆ っ く りで あ る とい う こ とで あ る。
糸 の 張 力 をT,質
点 の速 さ を υ とす れ ば,
(1.2) で あ る。 糸 をdlだ
け短 くし た と きの 張 力 の し た仕 事dWは, (1・3)
で あ る 。 こ こで θ は 小 さ い か ら,cosθ
≒1一
ez 2'
振 子 は何 回 も振 動 して い る の で,θ2,∂2は1周 て い る° 式(1・3)の
右 辺 第2項
さ ら にdlだ
け糸 が 短 くな る問 に
期 で 平 均 した値 を用 い る近 似 を し
は,振 動 エ ネ ル ギ ー の変 化 で あ る。 第1項
は系
の全 体 が 上 に上 が っ た 重 力 の仕 事 の部 分 で あ る。 振 動 運 動 に お い て は,運 動 エ ネ ル ギ ー と位 置 エ ネ ル ギ ー の1周 期 に お け る 平 均 値 は等 しい 。 運 動 エ ネル ギ ー の 平 均 値 塑2 l2θ2=位
置 エ ネ ル ギ ー の 平 均 値mgl(1-cosB)
(1.4) こ こ でElは,振 式(1・3)か
動 の全 エ ネ ル ギ ー で あ る。 ら振 動 エ ネ ル ギ ー の 変 化 をdEと
す れ ば,式(1・4)を
用 い て,
(1・5)
とな る °
を微 分 す れ ば,
振子 の固有振動数 dレ レ
dl 21
で あ る 。 式(1・5)お
dE E
(1.6) よ び(1・6)か
dレ レ
ら,
(1・7)
これ を積 分 す れ ば, (1・8)
C は 定 数 で あ る 。 エ ー レ ン フ ェ ス ト はE/vを (Planck)定
断 熱 不 変 量 と し,こ れ を プ ラ ン ク
数 hの正 整 数 倍 に 等 しい と し た。 En=nhv(n:正
整 数)(1・9)
こ れ が 量 子 条 件 で あ り,振 動 系 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は,hvの
整 数 倍 だ け しか と
り得 な い 。 1・2
ド ・ ブ ロ ー イ(de
Broglie)の
式
一 辺 の 長 さ L の立 方 体 の 中 に 光(電 磁 波)を 閉 じ込 め た と き,空 洞 の壁 に お よ ぼ す 圧 力 P と光 の エ ネ ル ギ ー 密 度 U との 関 係 を求 め る。光 を粒 子 と考 え れ ば,自 由粒 子 と同 じ く運 動 量 を持 ち,結 果 と して 壁 に圧 力 をお よ ぼす 。 ま た,光 と考 え れ ば,壁
を波 動
に反 射 され て 空 洞 内 に 定 常 波 を つ くる。
この状 態 で空 洞 の壁 を “ゆ っ く り”動 か し,断 熱 的 に空 洞 の 体 積 を減 少 さ せ る。 壁 は光 粒 子 の 動 き に対 して ゆ っ く り動 く。 外 部 の圧 力 に よ り壁 に与 え た 仕 事 δW は空 洞 内 電 磁 波 の 固 有 振 動 数 の 変 化 δvに よ るエ ネ ル ギ ー 増 加 δEvの 和 に 等 し い。 δW=Σ δEv(1・10) 式(1・7)か
ら,
(1・11)
で あ る。 空 洞 内 にで き る定 常 波 の 固 有 振 動 数 は空 洞 の 一 辺 の 長 さ L に 反 比 例 す る。 した が っ て, (1・12)
空 洞 の 体 積V=L3か
ら,
=δV 3V
δL / L/
(1・13)
式(1・11),(1・12)お
よ び(1・13)か
ら,
=‐ δV/
δEv
(1・14)
3V
/ Ev 式(1・10)お
よ び(1・14)か
-ΣEvδV/
δW=
ら,
=‐
3V
U・ δV
(1・15)
/3
圧 力 が P で体 積 が δVだ け減 少 した と き,空 洞 に な され た 仕 事 δWは-PδV で あ る か ら,式(1・15)と U /3
P=
一 方 ,光
比 較 し, (1・16)
を粒 子 と考 え て 空 洞 内 壁 に 与 え る圧 力 P を求 め る。 光 粒 子 の 速 度 を
V(vx,vy,vz),運
動 量 をP(px,py,pz)と
す れ ば,圧 力 は単 位 時 間 単 位 面 積 あ た
り壁 にぶ つ か っ て反 射 す る光 粒 子 に与 え る運 動 量 の変 化 で あ るか ら, P=
1
Σ(2Px)・
/ L2
vx/ 2L
(1・17)
こ こで Σ は光 粒 子 全 体 の和 で あ る。粒 子 の総 数 を N と し,Σ を平 均 値 で お き換 え る。 N pxvx /V
P=
(1・18)
px
空 洞 内部 が 方 向 に よ らず一 様 で あ れ ば, / vx
=p/ で あ る 。p,v,は,そ v
動 量 お よ び 速 度 の 大 き さ で あ る 。 ま た,v2=vx2+vy2+vz2の
=vy2=vz2=
1 /3
v2で
れ ぞれ運
平 均 値 を と れ ば, vx2
あ る か ら,式(1・18)は,
(1・19)
次 に,プ ラ ン ク の仮 定 に よれ ば,振 動 数 vの光 粒 子 1個 の エ ネ ル ギ ー はhvで
あ
る か ら , 空 洞 内 の エ ネ ル ギ ー 密 度 U は, N/V hv
U=
(1・20)
で あ る 。 式(1・16)の
関 係 か ら,
p=hv/v=h
(1・21)
/λ こ こ で,振
動 数 v の 光 の 波 長 は λで あ る 。 こ の 関 係 式 を ド ・ブ ロ ー イ の 式 と い
う。 p は粒 子 的描 像 に関 す る物 理 量 で あ り,λ は 波 動 的 描 像 に 関 す る 物 理 量 で あ る。 1・3 水 素 原 子 の エ ネ ル ギ ー 準 位 水 素 原 子 は,電 荷+eの
原 子 核 の まわ りを電 荷-e,質
量 m の電子 が円運動 を
し て い る模 型 を仮 定 す る。 この場 合 は,電 子 を粒 子 とし て考 え て い る。 電 子 の運 動 を波 動 と考 え る場 合 に は,電 子 の運 動 して い る 円 周 が 波 長 の 整 数 倍 に な っ て い る と き,電 子 は定 常 状 態 を示 して い る と仮 定 す る。 電 子 の描 く運 動 の 半 径 を r,速 度 を v とす る。等 速 円運 動 を定 常 状 態 とす れ ば, 遠 心 力は
mv2
で あ っ て,こ
/r mv
e2
e2 /2r
に,電
ば,2πr=nλ(n:正
,電
1 /2
で あ る か ら,全
/r
E=
一方
と大 き さ 等 し い 。
(1・22)
これ か ら運 動 エ ネ ル ギ-
で あ る。次
e2 / r2
e2
/ r2
/r=
ギ ー は-
れ は電 荷 に よ る ク ー ロ ン 引 力
-e2/ r
mv2=
e2 /2r
と な る。ク
力 学 エ ネ ル ギ ー E は, =e/ 2r
(1・23)
子 の 運 動 を 波 動 と 考 え,円 整 数)で
子 の 運 動 量p=mvは
ー ロ ンカ に よ る位 置 の エ ネ ル
周 に沿 っ た定 常 波 の 波 長 を λ とす れ
あ る。
ド ・ブ ロ ー イ の 式 か ら
h /λ
に 等 し い の で,式(1・
22)以 下 の諸 関 係 を 用 い て,v,r 23)の
rに
λn / 2π
En=
を消 去 す れ ば λ=(
h2 / 2πme2
)nを
得 る 。 式(1・
を代 入 す れ ば,水 素 原 子 に お け る電 子 の 固 有 エ ネル ギ ー と して, -2π2me4
・l
/ h2
(1・24)
(n=1,2,3,…)
n2
を得 る。 光 の 吸 収 ・発 散 に お け る ボ ア(Bohr)の
条 件 は,
(1・25)
で あ る 。vnmは
光 の 吸 収 ・発 散 に と も な う振 動 数 で あ る 。 光 の 速 度c=λnmvnmで
あ る か ら,
(1・26)
で あ る 。Ryを 109677.581cm‐1で
水 素 原 子 の リ ッ ドベ ル グ(Rydberg)定
数 と い い,そ
の 数値 は
あ る。
水 素 原 子 ス ペ ク トル の 波 長 を 測 定 す れ ば 規 則 性 が あ り,い る こ とが で き る 。 式(1・26)に
お い て,(m=1;n=2,3,4,…)と
ラ イ マ ン 系 列,(m=2;n=3,4,5,…)は ッ シ ェ ン 系 列,(m=4;n=5,6,…)は ン ト系 列 と い う 。(図3・4参
くつ か の 系 列 に わ け す れ ば,こ
れを
バ ル マ ー 系 列,(m=3;n=4,5,…)は
パ
ブ ラ ッ ケ ッ ト系 列,(m=5;n=6,…)は
フ
照)
1・4 不 確 定 性 原 理
ニ ュ ー トン力 学 に お い て は,あ る時 刻 に お け る座 標 と運 動 量 とを与 えれ ば,運 動 方 程 式 に よ っ て,そ
の前 後 の 粒 子 の運 動 状 態 は確 定 す る。 しか し,電 子 の よ う
な質 量 の小 さ な粒 子 の 位 置 測 定 は,光
との 運 動 量 交 換 が 起 こ り,粒 子 の 運 動 量 に
不 確 定 さが 生 ず る。 図1・1の よ う に,左 側 か ら速 度 uで粒 子 を走 らせ,細 の位 置,速
度 を測 定 す る た め に,シ
隙 A を通 過 させ る。 電 子
ャ ッ タ B を用 い る。 B の 質 量 をM,速
度 をV
図1・1
とす る。 シ ャ ッ タ の 開 閉 に よ り,電 子 波(電 子 線)は 細 隙 を通 過 し た あ と,波 束 (wave
packet)と
な る 。 シ ャ ッ タ の 開 い て い る 時 間 ⊿t=
d で あ る。 電 子 の位 置 /V
を測 定 す る とき の時 間 誤 差 は ⊿tで あ る。電 子 波 の速 度 u と ⊿tの 積 が 波 束 の幅 で あ る。 波 束 の形 を簡 単 の た め ガ ウ ス 関 数 型 に近 似 す る。 (1・27)
波 束 を た くさ ん の異 な っ た波 数 kの 波 か ら成 り立 っ て い る もの と し て, (1・28)
で 表 す 。 こ の フ ー リ エ 変 換 の 係 数 は,
(1・29)
波 束 を つ くって い る波 数 の 幅 を,A(k)の ⊿kと す れ ば,A(⊿k)=
A(0) /e
,お
よび
最 大 値A(0)の
1 倍 に な る kの 値 を /e
で あ る か ら,
(1・30)
で あ る 。 電 子 の 速 度 を u,波 の 幅 は √2a=u⊿tで
長 を λ,振 動 数 を ν と す れ ば,2πk=1/λ=v/u,波
あ る か ら,
束
⊿v・
⊿t=4π
(1・31)
両 辺 に プ ラ ン ク定 数 hを か け,hv=Eの
関 係 を 用 い れ ば,
⊿E・⊿tニ4πh
(1・32)
とな る。電 子 の エ ネ ル ギ ー 測 定 に お け る誤 差 ⊿Eと,時
間 の 誤 差 ⊿tの 積 は,ほ ぼ
プ ラ ン ク定 数 hの大 き さ に な る。 こ の関 係 をハ イ ゼ ンベ ル グ(Heisenberg)の
不
確 定 性 原 理 とい う。 電 子 の 位 置 を よ り精 確 に測 る た め,シ
ャ ッタ の 速 度 を早 め る と き は,波 束 の 幅
が せ ま くな る。 す な わ ち,⊿tは 小 さ くな る が,シ ャ ッタ と粒 子 の 衡 突 に よ っ て 電 子 は 反 跳 を う け,⊿Eの MV2/2で
不 精 確 さ が 増 大 す る。 シ ャ ッ タ の 運 動 エ ネ ル ギ ー は
あ る。 B と電 子 との衡 突 に よ る運 動 エ ネ ル ギ ー の 変 化 量 はMV⊿V,運
動 量 の変 化 量 はM⊿Vで
あ る。 この 変 化 量 はエ ネ ル ギ ー保 存 則,運 動 量保 存 則 に
よ り,電 子 の そ れ ら ⊿E,⊿pに
等 しい。 式(1・32)か
ら,
h =⊿E=MV⊿V=V⊿p /⊿t
4π
(1・33)
波 束 の広 が りに よ り電 子 の位 置 x を知 る た め に は,電 子 の速 度 u と シ ャ ッ タ の 速 度 V とは ほ とん ど等 し くな け れ ば な らな い か ら,u⊿t=⊿xと ⊿x・⊿p=4πh
お い て, (1・34)
とな る。 座 標 と運 動 量 につ い て の不 確 定 性 原 理 で あ り,こ れ らの 物 理 量 は ハ ミル トンの運 動 法 則 にお け る正 準 変 数 で あ る。 1・5 シ ュ レ デ ィ ン ガ-(Schrodinger)の
波 動 方程 式
粒 子 性 と波 動 性 の 二 重 性 を取 り入 れ た状 態 に関 す る微 分 方 程 式 を決 め る必 要 が あ る。 そ の た め,古 典 力 学 に お け る波 動 方程 式 を 出 発 に採 る。 状 態 を表 す あ る関 数 を ψ(x,y,z:t)と ⊿2ψ-
す る。 この ψ の 満 たす べ き微 分 方程 式 は,
1 ∂2ψ=0 / v2 /∂t2
で あ る。 こ こで,v
(1・34)
は波 動 の速 度 で あ る。 座 標 と時 間 の 変 数 を分 離 し,時 間 に つ
い て の 振 動 解 を仮 定 して,
(1・35)
と す る 。 こ れ を 式(1・34)に
代 入 し,ψ
の 微 分 方 程 式 を と れ ば,
(1・36)
波 長 λ=ν/vの
関 係 を 用 い て あ る。
こ こで,波 動 か ら粒 子 の状 態 に移 行 す る た め,λ=h/pを
代 入 す れ ば, (1・37)
と な る。 式(1・37)を
自 由 空 間 に お け る運 動 量 p の粒 子 の定 常 状 態 を 表 す 微 分 方
程 式 と み な す 。 h はh/2π 運 動 エ ネ ル ギ ーp2/2m,ポ トニ ア ン(hamiltonian)H
で あ る。 テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ーV(r)の
粒 子 に対 す るハ ミル
は,
(1・38)
こ こ で E は,運 動 の 全 エ ネ ル ギ ー の 大 き さ で あ る 。p2=2m{E-V(r)}で ら,式(1・37)に
あるか
代 入 す れ ば,
(1・39)
式(1・39)を
ポ テ ン シ ャ ルV(r)中
に お け る質 量 m の 粒 子 の定 常 状 態 にお け る シ
ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 と い う 。 通 常, (1・40) と 表 示 す る 。 ハ ミル トニ ア ン 演 算 子 H は 系 の 全 エ ネ ル ギ ー を あ る 微 分 演 算 子 で お き換 え た もの で あ る。
(1・41)
量 子 力 学 に お い て は,古
典 力 学 に お け る 物 理 量 の 中 で,運
動 量p(px,py,pz)を
-ih
grad
に お き換 え,相 当 す る物 理 量 の 演 算 子 と
す る 。
式(1・35)に
お い て,E=hvと
す れ ば,
(1・42)
式(1・42)を
ih
∂/∂tす れ ば, ∂ ψ =Eψ(r,t) /∂t
式(1・39)に
(1・43)
右 か らexp(-iEt/h)を
か け れ ば,
(1・44)
式(1・43),式(1・44)を
it
比 較 し て,
∂ ψ =Hψ(r /∂t
,t)
(1・45)
を得 る。 この 式 は粒 子 の時 間 変 化 す る状 態 に対 す る,シ
ュ レ デ ィン ガ ー の波 動 方
程 式 で あ る。 1・6波
式(1・45)の
動
関
数
解 ψ(r,t)は 粒 子 の状 態 を表 す 関 数 で あ る が,一 般 に は複 素 数 の場
合 もあ る。 した が っ て,実 数 で あ る物 理 量 と の 関係 を規 定 しな けれ ば な ら な い。 一次元 の場合 ,式(1・45)を 具 体 的 な 微 分 方程 式 の形 に書 け ば, (1・46)
上 式 の 複 素 共 役 を と れ ば{*記
号 は ア ス テ リ ス ク(asterisk)ま
た はス タ ー
(star)}, (1・47)
{ψ*× 式(1・46)一
式(1・47)×
ψ}を
つ く れ ば,
(1・48)
式(1・48)を
三 次 元 に 拡 張 す れ ば,
(1・49)
ベ ク ト ル 解 析 に お け る 公 式div(⊿2ψ)=⊿2ψ
,お
よ びdiv(ψ*⊿
ψ)=ψ*div(⊿
ψ)
+⊿ ψ ・⊿ ψ*を 用 い れ ば,式(1・49)は,
(1・50)
の形 に書 き換 え られ る。 流体 力 学 にお い て,ρ を密 度,i
を流 れ とす れ ば,連 続 の式 に よ り,
(1・51)
で あ る 。 式(1・50)お
よ び(1・51)を
比 較 す れ ば,波
動 関 数 の 意 味 を 決 め 得 る。 (1・52)
(1・53)
量 子 力 学 にお い て は,波 動 関 数 の 絶対 値 の二 乗 は粒 子 の 密 度 を表 す と仮 定 す る。 密 度 を空 間 全 体 に つ い て 積 分 す れ ば粒 子 数 とな るが,こ れ を 1に 規 格 化 し,ρ を確 率 密 度 とす る。
(1・54)
式(1・54)か
ら ψ は空 間 の 全 領 域 で発 散 せ ず , また,無 限 遠 にお い て は零 に な ら
な け れ ば な ら な い。 式(1・53)は
量 子 力 学 に お け る電 流 密 度(電 磁 場 の な い と き)
で あ る。 ψ は,一 般 に波 動 状 態 を表 す 関 数 で あ り,そ の 中 に位 相 を示 す パ ラ メ ー タ が あ る が,│ψ│2を
つ く っ て ρ を 求 め れ ば,位
相 の 部 分 が 消 え て し ま う 。 し た が っ て,粒
子
数 を決 定 す るた め に は,位 相 が 全 く不 明 に な る。 これ ら二 つ の量 の 問 に は不 確 定 性 原 理 が 成 立 して い る。 定 常 状 態 に お け る式(1・40)を
解 く こ と は,固 有 関 数 ψ(r),お よ び固 有 値 E を
求 め る こ とで あ る。あ る関 数 ψ に微 分 演 算 子 H を演 算 した と き に,関 数 形 は変 わ らず に全 体 が E 倍 に な る よ う な 関 数 を見 つ け る こ とで あ る。 式(1・40)に
左 か ら ψ*を か け て 空 間 積 分 を行 え ば,
<H>=〓
ψ*Hψdr=E〓
ψ*ψdr=E
こ こで , 波 動 関 数 ψ の規 格 化 条 件 〓ψ*ψdr=1を 式(1・55)は,ψ
(1・55)
用 い て あ る。
状 態 に つ い て の エ ネ ル ギ ー H の 期 待 値 は 固 有 値 E に 等 しい
と い う こ と を意 味 して い る。 粒 子 の全 エ ネ ル ギ ー の 実 側 値 と比 較 され る 量 子 力 学 的 理 論 値 はE で あ る。 一 般 に,あ る物 理 量 に対 す る量 子 力 学 的 演 算 子 を A とす れ ば,ψ とい う状 態 に お け る この 物 理 量 の期 待 値 は, <A>=〓 ψ*Aψdr
(1・56)
で 表 す 。ψ*ψ=ρ で あ る か ら,期 待 値 は密 度 を重 み に と っ た加 重 平 均 値 の よ うな も の で あ る。 光 に よ る ヤ ン グ の 干 渉 実 験 に お い て,細 隙 の前 に フ ィル タ を 重 ね て お き,単 位 時 間 に 1個 の粒 子 が 入 射 す る程 度 に エ ネ ル ギ ー を減 少 させ て も,十 分 長 い 時 間 を か け て 干 渉 を さ せ れ ば,明 暗 の 縞 模 様 の 像 を得 る こ とが で き る。 第 1の ス リ ッ ト を入 っ た光 は そ れ が ど ん な に 弱 く と も,す な わ ち 1個 の光 粒 子 に対 応 す る程 度 で あ っ て も,第
2の ス リ ッ トを通 る と き は二 つ に分 か れ て い る こ と を示 して い る。
この こ とは光 の進 行 に対 して は,統 計 的 な描 像 で 解 釈 す る の が 妥 当 で あ る。 1・7交 交
換
関
係
1・5節 にお け る よ うに,量 子 力 学 で は運 動 量Pi(i=x,y,z)を
微分演 算子
に お き 換 え る 。xiとpiと
ら,r
の交 換 関 係 を 調 べ る。 と も に 演 算 子 で あ る か
の あ る 関 数 ψ(r)に 演 算 す る も の と す る 。
し た が っ て,(xipi-pixi)は
固 有 値ihを
持 つ 。 こ れ を 次 の よ う に 書 き,交
換 関係
は非 可 換 で あ る と い う。 〔xi,pj〕=ih 同 様 に し て,i,j
(1・57)
成 分 の 交 換 関 係 を つ くれ ば,
〔xi,pj〕=ihδij δijは,ク ま た,座
ロ ネ ッ カ ー の δ記 号 で あ っ て,i=jの
標 相 互,運
(1・58) と き 1, i〓jの
と き 0で あ る 。
動 量 相 互 の 交 換 関 係 は可 換 で あ る 。
〔xi,xj〕=0,
不 確 定 性 原 理 に よ り,xiとpiと
〔pi,pj〕=0
(1・59)
は 実 験 に よ り同 時 に は 確 定 値 を 測 定 し得 な い 。
こ の よ う な 物 理 量 は 相 互 に 非 可 換 な 関 係 が あ る 。 ま た,可
換 な 二 つ の物 理 量 は 同
時 固 有 値 を 持 つ と い う。 ψ が 物 理 量 A お よ び B の 固 有 関 数 で あ っ て,そ の 固 有 値 が そ れ ぞ れ a,b で あ る とす る。 (1・60)
(1・61)
す な わ ち,同 時 固 有 値 を持 つ物 理 量 A,B は互 い に独 立 に 測 定 で き る量 で あ る。 また 式(1・57)の
よ うに,非 可 換 な量 の 関 係 は,こ れ らが マ トリ ッ ク ス(行 列)
に対 応 さ せ て 計 算 を行 う こ とが で き る こ とを示 し て い る。 1・8行
列(matrix)
物 理 量 演 算 子 A を マ ト リ ッ ク ス で 表 示 す る と き,A
の 固 有 値 は実 の 値 で な け
れ ば な ら な い の で,こ
の マ ト リ ッ ク ス は エ ル ミー ト行 列 で あ る 。 ま た,シ
ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式Hψ=Eψ
が そ の ま まの 形 で は解 け な い と き変 数 変 換 を行
う。そ の マ ト リ ッ ク ス 表 示 を T と す れ ばTHT‐1Tψ=ETψ =Eψ
′ と し,こ
と な る 。こ れ をH′
ψ'
の 形 で あ れ ば 解 く こ とが で き る場 合 が あ る 。 こ の と き用 い ら れ る
変 換 マ ト リ ッ ク ス は ユ ニ タ リ ー 行 列 で あ る 。 し た が っ て,こ 2,3
ュレデ
れ らの 行 列 の性 質 を
説 明 す る。
エ ル ミ ー ト行 列 の 定 義 は(aij)=(aji*)で
あ る。 これ を
A=A*
(1・62)
で 表 す 。 記 号 ∼ は リ ン ク ル(wrinkle)と
い い,行
ユ ニ タ リ ー 行 列 の 定 義 は(Tij-1)=(Tji*)で
と列 と の 交 換 を 意 味 す る 。
あ る か ら,こ
れ を
T-1=T*
(1・63)
と表 示 す る 。 エ ル ミー ト行 列 を ユ ニ タ リ ー 変 換 し て 得 ら れ る 行 列 は エ ル ミ ー ト行 列 で あ る 。 A′=TAT-1
(aij1)=(Tik)(akl)(Tlj-1)
A は エ ル ミー ト行 列 で あ る か ら,alk*=akl,T
(1・64)
は ユ ニ タ リー 行 列 で あ る か ら,
Tjl*=Tlj*=Tlj-1,Tkj-1*=Tjk-1*=Tjk
で あ る 。 こ れ ら の 式(1・64)の
複 素 共 役 * を と っ た 項 に 代 入 す れ ば,
(1・65)
し た が っ て,A′
はユ ニ タ リー で あ る。
二 つ の ベ ク トル の 内 積 は 次 の よ う に 定 義 す る 。
(1・66)
式(1・66)の
* を と れ ば,積
の 順 序 が 逆 に な る。
(U・V)*=(Σ
U,お
よ びVが
¶iα*V;)*rΣi罵*rΣiレ
あ る ベ ク トル,Aが
σ ・AV=Aσ
肇*ひ
′V・U
(1・67)
エ ル ミー ト行 列 と す れ ば,
・V
(1・68)
す な わ ち,
で あ る。 これ らの マ トリ ッ クス の積 の性 質 を用 い て,エ ル ミー ト演 算 子Aの 値 は 実 数 で あ る こ とが 示 され る。Aの
AV′
式(1・69)を
有 値 を α とす る。
αV ・(1・69) マ ト リ ッ ク ス で 表 現 し 連 立 方 程 式 に 直 せ ば,
allOl十aiz?lz十.・
α21z/1→
・…
一a2z7Jz一}一
十a,nvn=av,
●●.●.● 十a2nvn=αZ/2
a麓1〃1十
v,,?Jz,…
固 有 ベ ク トル をV,固
固有
十annvn=avn
…,〃 。が 同 時 に はOで
/
(1・70)
な い 解 が 存 在 す る た め に は,次 の 固 肩 値 万 程 式
が 成 立 し な け れ ば な ら な い。
(1・71)
こ の 方 程 式 の 根(α 、,Q'2… α。)を 式(1・70)に
入 れ て 求 め た,(v,,υ2,…
…)が 固
有 状 態 を表 す 解 で あ る。 い ま,こ の 中 の 一 つ の 根 αごに 対 す る 固 有 状 態 を ベ ク トル 表 示U;で AUK′atv; 左 か らU:を 式(1・68)お
か け,内
あ る とす る 。
(1・72) 積 を とる。
Oi・Aυi=aiUi・Oi=αilOi│2 よ び(1・67)の
関 係 か ら,
(1・73) (1・74)
こ の こ とか ら固有 値 αiは実 数(real)で
あ る。 量 子 力 学 に お け る測 定 可 能 な物
理 量 に対 応 す る演 算 子 は エ ル ミー ト演 算 子 で あ る。 1・9 波 動 関 数 の 直 交 性
エ ル ミ ー ト演 算 子Aの
異 な っ た 固 有 値 をa.,a2と
し,こ れ に 対 す る 固 有 関 数 を
ψ1,ψ2と す る 。 (1・75)
式(1・75)の
複 素 共 役*を
とれ ば,
(1.76) Aの
エ ル ミ ㌣ ト性 か ら,
{式(1・76)を
用 い る}
こ の 関 係 か ら,
a,キa2で
あ る か ら,
(1・77)
す な わ ち,異
な った 固 有 値 に属 す る固 有 関 数 は直 交 す る。
同 一 固 有 値aに
属 す る 固 有 関 数 を ψ1,… …,ψ.と
して い る と い う。こ の 場 合,{ψi}(i′1…
…n)の
す る 。 こ の 場 合,n重
に縮退
任 意 の 一 次 結 合 は 同 一 固 有 値aの
固 有 関 数 で あ る。 (1・78) す な わ ち,A(.Σaiψ
∂=Σ
あ る 。
こ れ ら の 一 次 結 合 の 関 数 を 適 当 に n個 選 べ ば お 互 い に 直 交 さ せ る こ と が で き る 。{ψi}(i=1…n)の
中 の 任 意 の 一 つ を ψ1と す る 。 た と え ば, (1・79)
ψ1=〓1
つ ぎ に,{〓i}の
中 の も う 一 つ の 関 数 を 〓2と し,〓1と
の 一 次 結 合 を と れ ば, (1・80)
ψ2=a1〓1+a2〓2
〓ψ1*ψ2dr=a1*〓
〓1*〓1dr+a2〓〓1*〓2dr=0
の 条 件 を満 足 す る よ うに 係 数 を決 め る。 (1・81)
ま た,規 格 化 条 件 を 用 いれ ば, (1・82)
式(1・81)と
式(1・82)か
同 様 の こ と を(n-1)回
らa1,a2を
繰 り返 せ ば,規
決 め る こ とが で き る。
格 直 交 さ れ た{ψi}(i21…n)の
組 を得 る
こ とが で き る 。
こ の こ と に よ り,A
の す べ て の 固 有 関 数 を規 格 直 交 化 す る こ とが で き,こ ん ど
は こ の よ う な解 の組 を選 ん だ もの とす る。 1・10
ユ ニ タ リー 変 換
H〓=E〓 の 固 有 値,固
(1・83)
有 関 数 の 組 を{Ei},{〓i}と
す る 。 〓iは 規 格 直 交 化 さ れ て い る 。
(1・84)
〓〓i*〓jdr=δij 式(1・83)を
マ トリ ッ ク ス T に よ り変換 す る 。
THT-1T〓=ET〓 H′=THT-1,
と お け ば,
(1・85)
ψ=T〓
(1・86)
(1・87)
式(1・87)の
解{ψn}が
規 格 直 交 系 で あ る と き は,T=(Tnm)は
ユ ニ タ リー マ ト
リッ ク ス で あ る。 式(1・86)を
各 成 分 で 書 け ば, (1・88) (1・89)
同 様 に, (1・90)
{ψn}は規 格 直 交 系 で あ る か ら,
(1・91) (1・92)
す な わ ち,T
はユ ニ タ リー で あ る。
1・11δ-関
数
規 格 直 交 関 数 系 を{〓i}と した と き,任 意 の rの関 数 ψ(r)は 〓iの一 次 結 合 で 表 す こ とが で きる 。 (1・93)
ψ(r)が 規 格 化 され て い る とす れ ば,
│ai│2は
ψ状 態 の 中 に 〓i状 態 が ど の く ら い 含 ま れ る か を 表 し て い る 。
式(1・93)に
左 か ら 〓j*を か け て 空 間 積 分 す れ ば,
〓〓j*(r)ψ(r)dr=Σai〓 式(1・94)を
式(1・93)に
(1・94)
〓j*〓idr=aj 代 入 す れ ば,
ψ(r)=〓〓∑ψs*(r′)〓i(r)ψ(r′)dr′
式(1・95)か
(1・95)
ら右 辺 の 積 分 を実 行 して 左 辺 に す るた め に は,
∑〓i*(r′)〓i(r)=δ(r′-r)
と お き,右
(1・96)
辺 の デ ィ ラ ッ ク(Dirac)の
れ ば 良 い 。 式(1・96)は
δ-関 数 を,r′=rの
完 全 性 の 条 件(closure
と き 1で,他
property)と
い い,固
は 0 とす 有状態 の
全 体 に つ い て の 和 で あ る。
デ ィ ラ ッ クの δ(x)関 数 は,他
の関 数 との 積 を積 分 す る と き,次 の よ う に 用 い
る。 (1・97)
〓f(x′)δ(x′-x)dx=f(x)
フー リエ級 数 の 理 論 に よれ ば,
(1・98)
で あ る。 式(1・86)に
お い て,任
意 の 規 格 直 交 系{ψi}のH′
に つ い て の マ ト リ ック ス 要
素 を と る。
式(1・89)お
よ び(1・90)を
用 い て,
(1・99)
式(1・83)の
よ う に,{〓i}がH
の 固 有 関 数 で あ れ ば,式(1・99)は
対 角行列
のマ ト リ ッ クス 要 素 とな る。 =Elδkl
(1・100)
ユ ニ タ リ ー 変 換 T に よ っ て,マ {El}は,ハ
ト リ ッ ク スH′
が 対 角 化 さ れ た と き,対
角成 分
ミ ル トニ ア ン H に 関 す る シ ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 を 解 い て 得
ら れ た 固 有 値{Ei}に
等 し くな る。
1・12 ハ イ ゼ ン ベ ル グ の 運 動 方 程 式
時 間 変 化 に対 応 す る シ ユ レデ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 は式(1・45)か ih
ら,
∂ψ/
=Hψ
(1・101)
∂t
式(1・101)の
複 素 共 役 を と れ ば,
-ih ∂ψ* =(Hψ)*
(1・102)
/∂t
tを陽(あ らわ)に 含 ん で い な い 任 意 の 物 理 量 を A と す れ ば,そ の ψ状 態 に お け る期 待 値 は, <A>=〓 ψ*Aψdr
(1・103)
時 間 微 分 を とれ ば,
上 式 に 式(1・101)お
よ び(1・102)を
代 入 す れ ば,
あ る か ら, 期 待 値 の 時 間 変 化 を <dA >と表 示 す れ ば,
∂A/ =0で ∂t
/ dt
す な わ ち,
ih
/
dA dt
=〔A
,H〕
(1・104)
この型 をハ イ ゼ ンベ ル グ の 運 動 方 程 式 とい う。 Aが H と可 換 で あ れ ば A は時 間 的 に保 存 さ れ る。す なわ ち,運 動 の保 存 量 で あ り,ま た,H
と A と は同 時 固 有
値 を持 つ こ とに な る。 1・13自
由
粒
子
ポ テ ン シ ャル が 一 定 で あ る 空 間 を運 動 して い る粒 子 を 自 由粒 子 とい う。 簡 単 の た め,ポ
テ ン シ ャル を 0 とす る。 質 量 を m,速 度 を υ,運 動 量 を p とす れ ば,古
典 力 学 に お け る粒 子 の エ ネ ル ギ ー は, (1・105)
量 子 力 学 に お い て は,p を-ihgradで
お き換 え,ハ
ミ ル トニ ア ン 演 算 子 と す れ
ば,
(1・106)
し た が っ て,シ
ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 は,
(1・107)
方 程 式 の解 を得 る た め に は, (1・108)
とお い て,式(1・107)に
代 入 す れ ば,
(1・109)
k を波 動 ベ ク トル と い う 。 式(1・109)と あ る。k,pの
大 き さ を そ れ ぞ れk,pと
な る た め,k
を 波 数 ベ ク トル と もい う。
式(1・108)お
式(1・105)と
の 関 係 を 用 い れ ばk=2π/λ
と
ら 固 有 状 態,固
有 値 を 決 め る た め に は,境
界
子 が 十 分 大 き な 空 間 に あ る と し,ボ
ル ン ・カ ル マ ン(Born・Kar-
よ び(1・109)か
し,p=h/λ
の 比 較 か らk=p/hで
条 件 を定 め な け れ ば な ら な い。 例 と し て,粒
mann)の
周 期 条 件 を採 用 す る。 す なわ ち,体 積V=L3の
が 繰 り返 して い る場 合 を仮 定 す る。 式(1・108)か
立 方 体 を周 期 に,状 態
ら, (1・110)
∴kL=2πn n(nx,ny,nz)は 111)をx,y,z成
(1・111) 整nx,ny,nzの
組 を ベ ク ト ル 表 示 し た も の で あ る 。 式(1・
分 で 書 け ば,
(1・112)
さ ら に,規 格 化 して 係 数 C を 決 め る。
規 格 化 され た 固有 関 数 は, (1・113)
ψkに 対 す るエ ネ ル ギ ー期 待 値 E は, (1・114)
式(1・109)に
お い て,k
の 正 負 に つ い て 同 一 エ ネ ル ギ ー と な り縮 退 し て い る
と い う 。 k の 正 を進 行 波 とす れ ば 負 は 後 退 波 で あ る 。 縮 退 が あ る 場 合 は,こ
れ ら
の 波 動 関 数 の 一 次 結 合 は同 一 エ ネ ル ギー に属 す る 固有 状 態 に な る 。 す な わ ち,(eikr±e-ikr)はcos(k・r)ま に 対 し対 称 関 数 で あ り,後 る。
た はsin(k・r)に
比 例 し,前 者 は 原 点
者 は反 対 称 関 数 で あ る。 また これ らは お 互 い に 直 交 す
2. 角 運 動 量
2・1交
換
関
係
座標 を r,運 動 量 を p とす れ ば,古 典 力 学 に お け る角 運 動 量 は, (2・1)
で 定 義 さ れ る 。 量 子 力 学 に お い て は,p た が っ て,角
運 動 量 演 算 子 のx,y,z成
を 微 分 演 算 子-ihgradで
お き換 え る 。 し
分 は,
(2・2)
で あ る。 r,pの
交 換 関 係 を 用 い て,lx,ly,lzお
よ びl2=lx2+ly2+〓z2の
相 互 の 交 換 関 係
を 求 め る。
(2・3)
同 様 に, (2・4) (2・5)
角 運 動 の 大 き さ の 二 乗 と そ のx,y,z成
分 と の 交 換 関 係 は,式(2・3),(2・4)
お よ び(2・5)を
用 い て,
[l2,lx]=[l2,ly]=[l2,lz]=0 す な わ ち,可
(2・6)
換 で あ る 。 これ ら の こ と か ら,lx,ly,lzは
な い が 、l2と
相 互 に 同 時 固 有 値 を持 た
は ど れ か 1つ の 成 分 だ け 同 時 固 有 値 を 持 つ 。 し た が っ て,そ
と 決 めl2とlzは
れ をlz
同 時 固 有 値 を持 つ もの とす る。
中 心 力 場 中 の 質 量 m の 粒 子 の 全 エ ネ ル ギ ー は運 動 エ ネ ル ギ ー と 位 置 エ ネ ル ギ ーの和で ある
。 こ の 場 合 の ハ ミ ル トニ ア ン は, - h2 /2m
H=
p2+V(r)
(2・7)
とな る。 ニ ュ ー トン力 学 にお い て は,中 心 力 場 に お け る,角 運 動 量 は保 存 され る 。 量 子 力 学 にお い て の 角 運 動 量 の 性 質 を問 題 と して取 り上 げ る 。 この 場 合,H
と
l2お よ びlzと の交 換 関 係 を 求 め る。
[px2,lz]=px2(xpy-ypx)-(xpy-ypx)px2 =px(xpx-ih)py-ypx3-xpx2py+yp x3 =(xpx-ih)pxpy-ihpxpy-xpx2p y=-2ihpxpy [py2,lz]=2ihpxpy,[pz2,lz]=0 ∴[P2,lz]=[px2+py2+pz2,lz]=0
(2・8)
同 様 に,r2=x2+y2+z2とlzと
の 交換 関 係 を求 め る。
[x2,lz]=-2ihxy,[y2,lz]=2ihxy,[x2,lz]=0 し た が っ て,
[r2,lz]=0
(2・9)
p2=p2x+py2+pz2,r2=x2+y2+z2の +y2+z2)1/2で
べ き 級 数 もlzと
は あ る が,(x2+y2+z2)の
に 考 え れ ば,lzは
式(2・7)の
H
は 可 換 で あ る 。 γ=(x2
関 数 で あ る か ら 可 換 と仮 定 す る 。 こ の よ う
と可 換 に な る 。
l2に つ い て も 同 様 の 交 換 関 係 を 計 算 す れ ば, [H,l2]=0
す な わ ち,H,l2,お
(2・10)
よ びlzは
同 時 固 有 値 を 持 つ こ と が で き る 。 ま た,ハ
ン ベ ル グ の 運 動 方 程 式 に 代 入 す れ ば,H,l2,lzは
イゼ
と も に運 動 の保 存 量 と な る
。角
運 動 量 ベ ク トル lは z軸 の まわ りに,“ こ ま”の よ うに 才差 運 動 を して い る描 像 が 対 応 さ れ る。
図2・1
2・2角
運 動 量 の固 有 値
l2とlzと
は 同 時 固 有 値 を 持 つ の で,そ
す る 固 有 関 数 をYlmと
れ ぞ れ の 固 有 値 をkl,kmと
す る。
l2Ylm=(lx2+ly2+lz2)Ylm=klYlm
(2・11)
lzYlm=kmYlm 式(2・12)に
左 か らlzを
(2・12)
演 算 す れ ば,
lz2Ylm=km2Ylm 式(2・11)お
よ び(2・13)か
(2・13) ら,
(lx2+ly2)Ylm=(kl-km2)Ylm lx,lyは
し,そ れ に 対
エ ル ミー ト演 算 子 で あ る か ら,(lx2+ly2)の
(2・14)
固 有値 は負 に な ら な い。 す な
わ ち, k1≧km2
次 に,(lx±ily)の
(2・15)
性 質 を 調 べ る,lx,ly,lzの
交 換 関 係 を 用 い て,
lz(lx+ily)=lxlz+ihly+ilylz+hlx=(lx+ily)(lz+h) lz(lx-ily)=(lx-ily)(lz-h) 式(2・16)お
よ び(2・17)をYlmに
演 算 す る。
(2・16) (2・17)
lz(lx+ily)Ylm=(lx+ily)(lz+h)Ylm=(km+h)(lx+ily)Ylm (2.18) lz(lx-ily)Ylm=(km-h)(lx-ily)Ylm (lx±ily)Ylmはlzの
固 有 関 数 で あ っ て,固
有 値 は そ れ ぞ れ hだ け増 減 し て い る。
(lx±ily)を 角 運 動 量 の シ フ ト演 算 子(shift l2は(lx±ily)と 有 値 はklで
(2.19)
operator)と
い う。
可 換 で あ る か ら,(lx±ily)Ylmはl2の
あ る 。(lx±ily)を
固 有 関 数 で あ り,そ の 固
繰 り返 し演 算 す れ ば,l2の
固 有 値 がk1で,lzの
固有
値 が ……k
m-2h,km-h,km,km+h,km+2h,…
…
(2・20)
で あ る 状 態 の 組 が 得 ら れ る 。 そ れ を …Ylm-2,Ylm-1,Ylm,Ylm+1,Ylm+2…
式(2・15)か km″
ら 式(2・20)のkzの
固 有 値 に は 上 限,下
と お く。
限 が あ る か ら,そ れ ぞ れkm′,
と お け ば, (lx+ily)Ylm′=0
(2・21)
(lx-ily)Ylm″=0 式(2・21)に
(2・22)
対 し て 右 か ら(lx-ily),式(2・22)に
対 し て は 左 か ら(lx+ily)を
演
算 す れ ば, (lx-ily)(lx+ily)Ylm′={lx2+ly2+i(lxly-lylx)}Ylm′ =(l2-lz2-hlz)Ylm′=(kl-km′2-hkm′)Ylm′=0 ∴kl-km′2-hkm′=0
(2・23)
(lx+ily)(lx-ily)Ylm′=(l2-lz+hkm″)Ylm″=(kl-km″2+hkm″)Ylm″=0 ∴kl-km″2+hkm″=0 式(2・23)お
(2・24)
よ び(2・24)か
ら,
km′=-km″
下 限km″
(2・25)
に h を つ ぎ つ ぎ に 加 え,上
し くな る た め に は,kmは km′=lh(l
h の 整 数 倍 か,半 は 正 の 整 数,ま
と お け ば,式(2・23)か
kl=l(l+1)h2 kmは,
限km′ に な っ た と き,そ
れ らの絶 対 値 が 等
整 数 倍 で な け れ ば な らな い。
た は 正 の 半 整 数)
(2・26)
ら, (2・27)
km=lh,(l-1)h,…
…,-(l-1)h,-lh
の 値 を と り得 る 。kmは(2l+1)個 +1)重
(2・28)
の 値 を と り得 る 。 固 有 値klに
対 し てkmは(2l
に 縮 退 し て い る。
角運 動 量 に対 す る固 有 状 態 の 関 数 型 は第 3章 で 計 算 す るが,球 面 調 和 関 数 で あ る 。 固 有 値,固 有 状 態 を整 理 す れ ば, l2Ylm=l(l+1)h2Ylm(l
は 正 の 整 数,ま
lzYlm=mhYlm
た は半 整 数)
(2・29)
1≧│m│
で あ る。
2・3角
運 動 量 の シ フ ト演 算 子
シ フ ト演 算 子(lx±ily)をYlmに 数Ylm±1に
演 算 す れ ば,lzの
固 有 値 が ±hだ
け増 減 した 関
比 例 した 関 数 に な る。 (2・30)
(lx±ily)Ylm=N±Ylm±1
Ylm-1,Ylm,Ylm+1が
そ れ ぞ れ 規 格 直 交 関 数 で あ る と き のN±
を決 定 す る。
(N±)2=(N±)2〓Ylm±1*Ylm±1dΩ
=〓{(lx±ily)Ylm}*{lx±ily)Ylm}dΩ
=〓Ylm*(lx〓ily)(lx±ily)YlmdΩ
=〓Ylm*{lx2+ly2〓i(lxly-lylx)}YlmdΩ
=〓Ylm*(l2-lz2〓hlz)YlmdΩ
=h2{l(l+1)-m2〓m}
平 方 根 の 正 だ け を と って, (複号 同順) 上 式 の積 分 はYlmの
定 義 さ れ て い る空 間 の積 分 を示 して い るが,次 章 に 示 され
る よ う に,dΩ=sinθdBdψ
は 曲座 標 に お け る微 小 立 体 角 で あ る。
式(2・30)に
代 入 す れ ば, (2・31)
2・4角
運 動 量 の マ トリック ス表 示
角 運 動 量 演 算 子 は 式(2・31)を 例 と し て,量 -1で
子 数l=1で
用 い て,マ
あ るp-状
トリ ッ ク ス で 表 示 す る こ とが で き る。
態 を 例 に と る 。 こ の 場 合,量
子 数 m は1,0,
あ り
-1と し,こ
,3 つ の 状 態 が 縮 退 し て い る 。 こ れ ら の 状 態 を そ れ ぞ れ,Y11,Y10,Y1
れ ら の 状 態 関 数 は 規 格 直 交 化 さ れ て い る 。 こ れ ら の 3つ の 関 数 は 式(2・
29)に よ っ て, lzY11=〓Y11,lzY10=0,lzY1-1=-hY1-1
こ の 3 つ の 式 を 合 わ せ,マ
(2・32)
ト リ ッ ク ス 表 示 で 書 け ば,
(2・33)
し た が っ て,lzは
対 角 行 列 で 表 示 で き る。
(2・34)
式(2・31)に
お い て,量
子 数 をl=1,m=1,0,-1の
(lx+ily)Y11=0
これ らを行 列 表 示 す れ ば,
場 合 を 書 き下 せ ば,
(2・35)
同 様 に,(lx-ihy)を
行 列 表 示 で 書 け ば,
(2・36)
{(2・35)±(2・36)}に
よ っ て,
(2・37)
(2・38)
式(2・29)か
らl2は
対 角 行 列 で あ る。基 底 状 態 と し て,上
と 同 様Yl1,Y10,Y-1
を と れ ば,
(2・39)
とな る。
2・5極
座 標
表 示
角運 動 量 演 算 子 を 直 交 座x,y,zか
ら極 座 標 表 示 γ,θ,ψ
に変 換 す る。
座 標 変 換 の 式 は, (2・40)
この 逆 変 換 は, (2・41)
図2・2
これ らの 関 係 式 を用 い て,
(2・42)
(2・43)
(2・44)
l2=lx2+ly2+lz2に
っ い て は 十 分 長 い 計 算 の 結 果,
(2・45)
式(2・29)に 式 を と け ば,固 れ る。
お い て,l2,lzに
対 して 式(2・45)お
有 関 数 と し て 球 面 調 和 関 数(spherical
よ び(2・44)を harmonic
用 い て微 分 方 程 function)が
得 ら
3.
3・1シ
水
素
原
子
ュ レデ ィ ンガ ー の波 動 方程 式
水 素 原 子 H の 原 子 核 は電 子 の質 量 の 約2000倍
で あ る か ら,静 止 して い る も の
と仮 定 し,電 子 だ け が 核 の まわ りを 回 っ て い る場 合 の シ ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波動 方 程 式 を解 く。 この 系 の ハ ミル トニ ア ン演 算 子 H を直 交 座 標(x,y,z)で
表 示 す れ ば, (3・1)
で あ る 。 m は 電 子 の 質 量,e とす れ ば,シ
は 電 荷 で あ る 。 し た が っ て,波
動 関 数 を ψ(x,y,z)
ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 は,
(3.2) (x,y,z)を 式(2・40)を
極 座 標(γ,θ,ψ)に
変 換 す る。
用 い て,
等 を用 い て長 い 計 算 を す れ ば,式(3・2)は
次 の極 座 標 表 示 と な る。
(3・3)
式(3・3)を
変 数 分 離 す る た め, (3・4)
ψ=(r,θ,ψ)=R(r)Y(θ,ψ) と お き,式(3・3)に
代 入 す る 。 変 数 分 離 定 数 を λ と す れ ば,動
径 座 標rに
つい
て は, (3・5)
角 θ,ψ に つ い て は,
(3・6)
式(3・6)の
角 θ,ψ に 関 す る 微 分 演 算 子 は 式(2・45)のl2の
微 分 演 算 子 の-h2
を除 い た もの と同 一 で あ る 。 さ ら に,式(3・6)に
お い て,θ,ψ
Y(θ,ψ)=〓(θ)・
の 変 数 を 分 離 す る た め,
Φ(ψ)
と お け ば, (3・7)
(3・8)
を得 る。 こ こで v は変 数 分 離 定 数 で あ る。 式(3・4)の
ψ(r,θ,ψ)は
原 点 に お い て 発 散 せ ず,ま
た 無 限 遠 で 零 に な る境
界 条 件 で 解 を求 め る。 式(3・8)の
一 般 解 は,
Φ(ψ)=Aei√
vψ+Be-i√vψ
Φ(ψ)に 対 す る 境 界 条 件 を Φ(0)=Φ(2π),
(3・9)
と お い て連 続 の 条 件
を入 れ る。
(3・10)
式(3・8)の
解 は, (3・11)
式(3・11)の
直 交 関 係 お よ び規 格 化 の 条 件 は,
式(3・8)の
固 有 関 数 は,
(3・12)
こ こ で,m
3・2
を 磁 気 量 子 数(magnetic
ル ジ ャ ン ドル(Legendre)の
式(3・7)に (2・45)か number)と
お い て,ま ら l(l+1)で
ずv=0(m=0)の
quantum
number)と
い う。
微 分 方 程 式
場 合 を 解 く。 λ は 式(2・29)お
あ る 。 lを 正 の 整 数 と し 方 位 量 子 数(azimthal
い う。 さ ら に,変
quantum
数 を θ か ら ω に お き換 え る。 (3・13)
(3・14)
式(3・14)を
ル ジ ャ ン ドル の 微 分 方 程 式 と い う 。
こ の 方 程 式 の 解 は,次 図3・4に -yで
の 母 関 数 z を 用 い て,得
お け る △ABCに
あるか ら
よび
る こ とが で きる 。
お い て,b2=x2+y2,c2=(a-y)2+x2,ccosθ=a
, (3・15)
図3・1
1 と お け ば,式(3・15)は, /z
こ こ で,cosθ=ω,c=1,a=ρ,b= z=(1-2ρ
ω+ρ2)-
1/ 2
(3・16)
zを ρの べ き級 数 に展 開 す れ ば,
(3・17)
Pl(ω)は polynomial)と
式(3・14)の
解 で あ り,こ
れ を ル ジ ャ ン ド ル 多 項 式(Legendre
い う 。 方 位 量 子 数 lの 小 さ い も の は 次 の 多 項 式 で 表 さ れ る 。 (3・18)
ω=cosθ
で あ る か ら,θ
を 横 軸 にPl(θ)を
る。
図3・2
グ ラ フ に 描 け ば 図3・2の
ようにな
式(3・17)を
ω で 微 分 す る。
Pl′ は ω に よ るPlの
1階 微 分 で あ る 。上 式 を 次 の 形 に して,両
辺 を ρの べ き級
数 に展 開 す る。
す な わ ち, ΣPl・
ρl=Σ{Pl′
・ρl-1-2ωPl′
・ρl+Pl′
・ρl+1}
両 辺 の ρlの係 数 を等 し い とお け ば, Pl-Pl′+1+2ωPl′-Pl′-1=0
次 に,式(3・17)を
(3・19)
ρで微 分 す る。
ρlの 係 数 を 比 較 し て, (l+1)Pl+1-(2l+1)ωPl+lPl-1=0
式(3・20)を
(3・20)
ω で微 分 す る。
(l+1)・Pl′+1-(2l+1)・Pl-(2l+1)・
式(3・19)に(l+1)を l・Pl-ω
式(3・19)と
掛 け,式(2・21)を
式(3・22)を
(3・22)
加 え,そ
の 後 lをl-1に
式(3・24)を
お き換 え る 。
・Pl′-1=0
ω を 掛 け,式(3・23)を (1-ω2)・Pl′+l・
(3・21)
加 え る。
・Pl′+Pl′-1=0
l・Pl-1-Pl′+ω
式(3・22)に
ω ・Pl′+l・Pl′-1=0
(3・23) 引 く。 (3・24)
ω ・Pl-l・Pl-1=0
ω で 微 分 し,式(3・22)×lを
減 ず れ ば,
(3・25)
式(3・25)は
式(3・14)と
同 一 式 で あ る 。 し た が っ て,〓=Pl(ω)で
あ る。
次 に,P1(ω)の
直 交 関 係 を求 め る。 m 次 の ル ジ ャ ン ドル微 分 方 程 式 は, (3・26)
式(3・25)にPmを
掛 け,式(3・26)にPlを
に つ い て 積 分 を と る 。 ω の 変 域 は 式(3・13)に
掛 け て 差 引 き を と る。 さ らに ω よ り-1か
ら+1の
範 囲 で あ る。
第 1項 を部 分 積 分 す れ ば,
し た が っ て,
(3・27)
ω=cosθ
で あ る か ら θ の 積 分 に 変 換 す れ ば,
(3・28)
ル ジ ャ ン ドル 多項 式 の直 交 関 係 で あ る。 この関 数 を規 格 化 す る た め に は,
(3・29)
を 用 い,Pl(ω)に
ま た,式(3・18)の
2l+1 /2
(
1 /2
)
を乗 じ れ ば よ い 。
多 項 式 は,
(3・30)
と表 現 す る こ とも あ る。
3・3
ル ジ ャ ン ドル の 陪 微 分 方 程 式(associated
Legendre
differencial
equation)
ル ジ ャ ン ドル の 微 分 方 程 式(3・14)を
書 き な お し,
(3・31)
この 式 を ω で m 回微 分 す る。
(3・32)
式(3・32)を
ル ジ ャ ン ドル の 陪 微 分 方 程 式 と い う。 方 程 式 の 解 は,
(3・33)
Plm(cosθ)を
量 子 数 の 小 さ い も の か ら 例 示 す れ ば,
(3・34)
で あ る 。Plmの
〓
直 交 条 件 は,
Plm*(ω)Pl′mg′(ω)dω=0
m〓m′,l〓l′
(3・35)
規 格 化 の 条 件 は,
(3・36)
を 用 い て,式(3・34)の
それ ぞれに
を乗 ず れ ば 良 い 。
規 格 直 交 化 され た球 面 調 和 関 数 は次 の よ うに な る。
(3・37)
〓
〓Yl│m│*Yl′│m′│sinθdθdψ=0
l〓l′,m〓m′
(3・38)
(3・39)
〓 〓│Yl│m││2sinθdθdψ=1
(3・40)
3・4動
径 の 微 分 方 程 式 とエ ネ ル ギー 固 有値
動 径 r に つ い て の 微 分 方 程 式 は 式(3・5)か
ら,
(3・41)
r の 十 分 大 き い と こ ろ で は,
とな る。 この 式 の解 は
(E<0)と
お く こ とが で き る 。
r を無 限大 に す れ ば R は 0と な る。 式(3・41)に
お い て,
(3・42)
と お け ば,
さ ら に,
Br0=n,
x=
2r/ r0
(3・43)
(3・44)
と お け ば,
(3・45)
u(x)=xsΣavxv=xsL(x)s≧0 と お い て,式(3・45)に
代 入 しxs-2で
(3・46)
割 れ ば,
x2L″+x[2(s+1)-x]L′+[x(n-s-1)+s(s+1)-l(l+1)]L=0 (3・47)
x=0と
お け ば,
S(S+1)-l(l+1)=0 ∴s=lま
た は-(l+1)
sを-(l+1)と s=lを
お け ば,式(3・46)は,x→0に
(3・48)
お い て 発 散 す る 。 し た が っ て,
採 用 す る。
式(3・47)にs=lを
代 入 す れ ば,
xL″+[2(l+1)-x]L′+(n-l-1)L=0 式(3・46)か
(3・49)
ら,
L(x)=Σavxv
(3・50)
を 式(3・49)に
代 入 す れ ば,
Σ[av{v2-v+2(l+1)v)2xv-1-av(v-n+l+1)xv]=0
xvの
係 数 を 比 較 し,
(3・51)
avに
つ い て の 漸 化 式 が 得 られ る。
式(3・51)に
お い て,v
を 十 分 大 き くす れ ば,
(3・52) 一 方
り,v→
,ex=Σxv/v!に
お い て,xv+1とxvの
∞ に す れ ば1/vに
式(3・50)が
係 数 の 比 を と れ ば,v!/(v+1)!と
な
な る。
無 限級 数 で あ れ ば,x の 大 きい と こ ろでexと
同様 の 関 数 型 に な
る の で,発 散 す る。 した が っ て,波 動 関 数 が発 散 しな い た め に は,級 数 展 開 が 有 限 項 で な け れ ば な ら な い。 す なわ ち,式(3・51)に
お い て,右 辺 の分 子 が 0と な
る必 要 が あ る。 n=v+l+1
(3・53)
こ の 条 件 に よ り,av+1=0と l=0,1,2,3,…
な り,そ
…,v=0,1,2,… n=1,2,3,…
式(3・42)お
れ 以 後 の 式(3・50)の … で あ る か ら,n
係 数 は 0 とな る。 は 正 の 整数 だ け を と る。
…
(3・54)
よ び(3・43)か
ら,
(3・55)
aHは
ボ ア 半 径(Bohr
ほ ぼ0.5×10-8cmで
radius)で
あ り,n=1の
と き の 電 子 軌 道 半 径 で あ っ て,
あ る。
エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は 式(3・42)か
ら,
(3・56)
式(3・56)お
よ び(1・24)と
は 同 一 で あ る 。 n を 主 量 子 数(principal
quantum
number)と
い う。
3・5動
径 の波 動 関 数
ラ ゲ ー ル 多 項 式(Laguere
polynomial)Lq(x)を
次 の母 関 数 の ρ に つ い て の べ
き級 数 展 開 係 数 と し て 定 義 す る 。
(3・57)
式(3・57)を
∂/ す る。
∂ρ
ρqの 係 数 を比 較 す れ ば, Lq+1-(2q+1-x)Lq+q2tLq−1=0
式(3・57)を
∂/ ∂x
(3・58)
す る。
こ の 式 の ρq-1の 係 数 を 比 較 し て, qLq-1-qLq−i+Lq′=0
式(3・59)に
(3・59)
お い て,qを(q+1)に
す れ ば,
(q+1)Lq−(q+1)Lq′+Lq+1=0
式(3・58)を
∂ /∂x
(3・60)
す る。
Lq+i=(2q+1-x)Lq′
式(3・61)お
−Lq−q2Lq−1
よ び(3・60)に
代 入 す れ ば,
qLq+(q-x)Lq-q2Lq-i=0 式(3・59)を -q2Lq
∂/ ∂x
してqを
(3・61)
(3・62)
乗 ず れ ば,
-1+qLq〃+q2Lq-i=0
(3・63)
∂
式(3・62)を
す る と,
/∂x
qLq+(q-x)Lq"Lq-q2Lq-1=0 式(3・63)お
よ び(3・64)か
(3・64) ら,
qLq-xLq"-Lq′-q2Lq-1=0 式(3・62)お
(3・65)
よ び(3・65)か
ら,
xLq"+(1-x)LQ+qLq=0 式(3・66)を
ラ ゲ ー ル の 微 分 方 程 式 と い い,そ
(3・66)
の 解 が ラ ゲ ー ル の 多 項 式Lqで
あ る。 さ ら に,次
の ラ ゲ ー ル の 陪 多 項 式(associated
Laguere
polynomial)を
定 義 す
る。
(3・67)
Lpq (x)は 次 の母 関 数 の ρの べ き級 数 展 開 の 係 数 で あ る。
(3・68)
P=1 の 場 合,
式(3・66)を
∂/ ∂x
す る。
Lq"+xL1q"+(1-x)Lq"-Lq+qLq=0 ∴xL1q+(2-x)L1q+(q-1)L1q=0
P=2の
(3・69)
場 合,
式(3・69)を
さ らに
∂
/∂ x
す る。
xL1q”+L1q"+(2-x)L1q"-L1q′+(q-1)L1q′=0 ∴xL2q”+(2+1-x)L2q′+(q-2)L2q=0 ∂p/ ∂xp
を演 算 す れ ば,
(3・70)
(3・71)
式(3・49)と
式(3・71)と
を 比 較 す れ ば, (3・72)
こ の と き,Lpq(x)は
式(3・49)の
解 で あ る 。P=2l+1,q=n+lで
あ る か ら,
(3・73)
を得 る こ とが で き る。 水 素 原 子 の 波 動 関 数 にお け る動 径 部 分 は, (3・74)
を規 格 化 す れ ば よ い。
(3・75)
式(3・75)を
用 い て,
(3・76)
た だ し,
式(3・76)の 量 子 数n=1,2,…
で あ る。
固 有 値 は 式(3・56)で …l=0,1,2,…
あ る。 … に つ い て の動 径 関 数 は次 の よ う に な る 。
図3・3
ls-状 態
2s-状
(3・77)
態
(3・78)
2p-状 態
(3・79)
結 果 と して,水 素 原 子 内 に お け る電 子 の 定 常 状 態 にお け る 波 動 関 数(固 有 状 態) は, ψnlm(γ,θ,ψ)=RnL(γ)Ylm(θ,ψ)
(3・80)
そ の 固 有 値 は,
(3・81)
主 量 子 数n=1,2,3,… 磁 気 量 子m=整
… 方 位 量 子 数l=0,1,2,3,…
…,
数(│m│≦l)
水 素 原 子 の 原 子 ス ペ ク トル の 波 長 は,式(1・26)の
図3・4
ボ ア の 法 則 に よ っ て 決 ま る。
3・6縮
退 の あ る と きの 固 有 状 態
い くつ か の 縮 退 した 固 有 状 態 が あ る場 合 に は,そ れ らの 任 意 の 一 次 結 合 も同 一 司有 値 を持 つ 固 有 状 態 に 属 す る 。 分 子 あ るい は固 体 内 に お け る電 子 状 態 に つ い て は,原 子 配 列 に よ る 弱 い ポ テ ン シ ャル の対 称 性 に適 応 し た形 の 波動 関 数 を,縮 退 した波 動 関 数 の 一 次 結 合 の中 か ら選 び だ して 固 有 関数 と して用 い る こ とが 多 い。 例 と して,量 子 数 がn=2,l=1す 式(3・80)の
な わ ち,2p− 状 態 を選 ぶ 。
中 か ら 次 の 3つ の 縮 退 し た 状 態 を と る 。
(3・82)
(3・83)
(3・84)
これ ら の一 次 結 合 の 中 で,次
の 3つ の 波 動 関 数 を と り上 げ る。
(3・85)
(3・86)
(3・87)
式(3・85)を
変 数 x に つ い て 図 示 す れ ば,図3・5の
よ う に な る 。│x│が
大 き
くな る に つ れ,rが
大 き く な る 。 こ の と き,
は急 激 に 減 少 す る関 数 で あ る。同
様 に,式(3・86)は
y軸 方 向,式(3・87)は
z軸 方 向 に対 し同様 の 変 化 を示 す。
波 動 関 数 の絶 対 値 の 2乗 が電 子 密 度 に比 例 す る の で,そ れ ぞ れ 軸 方 向 に,原 点 か
図3・5
ら2aHの
距 離 の 範 囲 内 で 電 子 雲 が 広 が っ て い る状 態 を表 し て い る。
式(3・81)に
お い て,n=2の
場 合 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値E2に
た 状 態 が 属 し て い る 。電 子 状 態 と し て は2s,2p-状
は,4
個 の縮 退 し
態 で あ る。これ らに 属 す る波 動
関 数 は そ れ ぞ れ,
(3・88)
(3・89)
(3・90)
(3・91)
CH4(メ
タ ン)のC原
子 の 4個 の 外 殻 電 子 の 波 動 関 数 は ψ2s,ψ2pz,ψ2pxお
ψ2Pyの 波 動 関 数 の 一 次 結 合 を と る こ と に よ っ て,4
よび
個 の 水 素 原 子 の 方 向 に電 子 雲
を ひ ろ げ た波 動 関 数 を つ くる こ とが で きる。
メ タ ン分 子 は正 四 面 体 の 構 造 を持 ち,中 心(原 点)に C 原 子,頂 点 に H 原 子 が 存 在 す る。x,y,z軸
は,C の あ る位 置 を原 点 に して,3 つ の 稜 の 中 心 をx,y,
z軸 が 通 る よ う に直 角 座 標 軸 を 選 ぶ 。 そ の 軸 方 向 に ψ2Pz,ψ2px,ψ2ρyの 波 動 関 数 を と り,そ れ に 球 対 称 で あ る ψ2sを 加 え,4
つ の 独 立 な 波 動 関 数 と す る 。 こ れ ら の 次 の 一 次 結 合 を と れ ば,ψ1,ψ2,ψ3,
ψ4は 中 心 の C 原 子 か ら H 原 子 方 向 に 電 子 分 布 を 延 ば し た 波 動 関 数 と な る 。
図3・6
ψ1=1/√4(ψ2s+ψ2Px+ψ2py+ψ2P2)
(3・92)
ψ2=1/√4(ψ2s+ψ2Px-ψ2Py-ψ2pz)
(3・93)
ψ3=1/√4(ψ2s-ψ2Px+ψ2Py-ψ2Pz)
(3・94)
ψ4=1/√4(ψ2s-ψ2Px-ψ2py+ψ2Pz)
(3・95)
原 点 を共 通 の 頂 点 と して,そ
れ を囲 む 8つ の 立 方 体 の うち 1つ お き の 4つ の 立
方 体 の原 点 か ら引 い た 4つ の 対 角 線 の 方 向 に電 子 雲 は延 び て い る。 遷 移 金 属 原 子 を取 り扱 う と きは,そ の外 殼 電 子 は3d-状 態 に あ る。これ ら は 5重 に縮 退 し,そ の 波 動 関 数 は次 の よ う に与 え られ る。 ψ322=R32(γ)Y22(θ,ψ)
(3・96) ψ321=R32・Y21=F(1)(γ)・sinθ
・cosθeiψ=d+1
(3・97)
(3・98)
(3・99)
ψ32-1=R32・Y2-1=F(1)(γ)・SinθCOSθe-iψ=d_1
(3・100)
ψ32-2=R32・Y2-2=F(1)(γ)・Sin2θe-i2ψ=d-2
結 晶 内 に あ る遷 移 金 属 原 子 に対 し,結 晶 の対 称 性 に該 当 し た比 較 的 弱 い ポ テ ン シ ャル が 作 用 す る場 合 が あ る。結 晶 が 立 方 晶 型 の対 称 性 を持 つ と きは,式(3・96) ∼(3・100)の
波 動 関 数 の一 次 結 合 の うち,次
あ る γ の 関 数 部 分 を の ぞ き,θ,ψ
の形 の もの が使 用 され る。 球 対 象 で
に関 す る部 分 だ け を 示 す 。
do∼(3cos2θ-1)∼(3z2-γ2)=dz2
(3・101)
1/√2(d +1+d-1)∼sinθcosθCosψ
-i/√2(d
∼xz=dxz
+1-d-1)∼sinθcosθsinψ
-i/√2(d+2-d
∼yz-dyz
-2)∼sin2θsin2ψ
∼xy=dxs
(3・102)
(3・103)
(3・104)
1/√2(d +2+d-2)∼sin2θcos2ψ
例 と し て,dxy,dx2-y2の る 。 電 子 密 度 は,原
∼x2-y2=dx2-y2
電 子 密 度 をx,y面
点 か ら3aH以
(3・105)
で 切 っ た 状 態 は 図3・7の
上 は な れ る と指 数 関 数 的 に 減 少 す る 。
図3・7
ようにな
4・
4・1ス
ピ ン(spin)波
ナ トリウ ムNaの
ス
ピ
ン
動 関 数
黄 色 の光 D 線 は,波 長 の わ ず か に 異 な る,2 本 の ス ペ ク トル
線 が 重 な っ た構 造 を持 っ て い る。 こ の よ うな も の を原 子 ス ペ ク トル の 微 細 構 造 (finestructure)と い う。Naの
D 線 は,Na原
子 の最 外 殼 電 子 がp-状 態 か らs-状
態 へ 遷 移 す る と き放 射 さ れ る光 で あ る。電 子 の 軌 道 運 動 だ け に よ る,p-状
態 とS−
状 態 のエ ネ ル ギ ー 差 で 波 長 を決 め た の で は,微 細 構 造 を説 明 す る こ と はで きな い 。 し たが っ て,エ
ネ ル ギ ー の も う 1つ の 担 い 手 に な る 自 由度 を電 子 に付 与 し な け れ
ばな らな い 。 ま た,銀
原 子 線 を 一 様 で な い 磁 場 の 中 を 通 過 さ せ る と,銀
原 子 線 は 2つ に 分 離
す る 。 こ の 実 験 は 最 初 に こ れ を 行 っ た 人 の 名 を と っ て シ ュ テ ル ン ・ゲ ー ル ラ ッ ハ (Stern
and Gehlrach)の
実 験 と い う,銀
原 子 の 1個 の 外 殼 電 子 が,小
し て の 性 質 を 持 っ て い て そ の 磁 気 モ ー メ ン トの 方 向 が 一 方 向 と,そ 2つ の 向 き し か な い と 考 え る こ と に よ り,2
さな磁石 と の反 対 方 向 と
つ に 分 離 す る こ と が う ま く説 明 さ れ
る。
ユ ー レ ンベ ック と グ ー ドシ ュ ミ ッ ト(UhlembeckandGroudsumit)は,ス
ペク
トル の微 細 構 造 等 を説 明 す る た め に,電 子 状 態 を表 す た め 新 た な 自 由度 と して, ス ピ ンを 導 入 した。 ス ピ ン は磁 気 モ ー メ ン トを 示 す ので,角
運 動 量 と似 た性 質 を
持 つ物 理 量 と して定 義 す る。 電 子 は電 荷 一 e を持 ち,核 の ま わ り を軌 道 回転 運 動 を して い る。 この 回 転 運 動 を軌 道 角運 動 量 lに よ っ て表 示 す る。 こ の電 荷 の 運 動 に と もな っ て 磁 気 モ ー メ ン トが現 わ れ る。 電 子 は さ ら に ス ピ ン に よ る磁 気 モ ー メ ン トを持 っ て い る。 この磁 気 モ ー メ ン トは電 子 の電 荷-eが
電 子 表 面 に 分 布 し,そ の 自転 に よ っ て 生 ず る と
模 型 的 に仮 定 され る。 この 電 子 の 自転 運 動 を表 示 す る物 理量 を ス ピ ンs(Sx,Sy, Sz)と す る。 量 子 力 学 で は,s に対 す る定 義 は,角 運 動 量l と同 一 交 換 関 係 を有 す るベ ク トル量 と し て定 義 す る。 [Sx,Sy]=SxSy−SySx=ihsz
[Sz,Sx]=SzSx
式(2・13)お
(4.1)
}
[Sy,Sz]=SySz−SzSy=ihsx −SxSz=ihsy
よ び(2・14)の
関 係 と 同 様 に,式(4・1)か
らS2とSx,Sy,Szと
は可 換 で あ る 。
[s2,sx]=[S2,sy]=[s2,Sz]=0 し た が っ て,S2とSzと 式(2・27)を
(4・2)
は 同 時 固 有 値 を 持 つ と定 め る 。
参 照 し て,s2の
固 有 値 はS(S+1)h2,Szの
固 有 値 はmshと
と が で き る 。 た だ し,s は 正 の 整 数 ま た は 半 整 数,msは│ms│〓sの 整 数 で あ る 。 す な わ ち,sh,(s-1)h,… 電 子 の 場 合 は,ス
・ また は
説 明 す る た め に,
整 数 ま た は半
…-(S-1)h,-shの
ペ ク トル の 微 細 構 造,シ
お くこ
値 を と り得 る 。
ュ テ ル ン ・ゲ ー ル ラ ッ ハ の 実 験 等 を とす る。
ス ピ ン波 動 関 数 は次 の よ う に定 義 す る。 の状 態 を
の状 態 と す る 。 δ は ク ロ ネ ッ カ ー(Kronecker)の δi,j=1
=0
(i=j)
(i〓 j)
}
(4・3)
δ記 号 で あ る。
}
(4・4)
α,β は規 格 直 交 化 され て い る。 波 動 関 数 ψ(r)の規 格 直 交 性 は,空 間 積 分 を定 義 され た全 空 間 内 で 行 う こ とに よ り条 件 づ け られ る が,α(σ),β(σ)に つ い て は,ス ピ ン空 間 に つ い て の積 分 で あ る。ス ピ ン空 間 は,そ の値 が 定 義 され て い るか ら,ス 和 を とる こ とで あ る。
と
の 2点 だ け で
ピ ン空 間 の 積 分 と は,こ の 2点 に お け る値 につ い て だ け
α(σ),β(σ)の 規 格 化 条 件 と は,
(4・5)
α(σ),β(σ)の 直 交 条 件 と は,
(4・6)
で あ る。 Sx,Sy,Szの
マ ト リ ッ ク ス 表 示 は,角 運 動 量lx,ly,lzと
式(4・1)か
同 様,交
ら 得 ら れ る 。 ス ピ ン に つ い て の シ フ ト演 算 子(sx±isy)を
関 数 α,β に 作 用 さ せ た と き,そ
ス ピ ン波 動
の z成 分 の大 き さが h だ け異 な っ た 固有 状 態 に
変 換 す る 。 一 電 子 ス ピ ン 関 数 に お い て は,msはh/2−h/2の な い の で,そ
換 関 係 を表 す
・つ の 値 し か と り得
れ ぞ れ に対 し (Sx+iSy)α=0,(Sx+iSy)β=hα(4・7) (Sx-iSy)α=hβ,(Sx−iSy)β=0(4・8)
と お く こ とが で き る 。 式(4・3)か
ら,α,β
はSzの
固 有 状 態 で あ っ て,そ
の 固 有 値 はmshで
あ る。 (4・9)
式(4・9)の
成 立 す る α,β を 1列 マ ト リ ッ ク ス で 表 示 す れ ば,
(4・10)
式(4・10)を
式(4・9)に
入 れ,szを
2行 2列 の マ ト リ ッ ク ス 表 示 で 表 せ ば,
(4.11) α,β がSzの 式(4・10)を
固 有 状 態 で あ る か ら,Szは 式(4・7)お
ク ス 表 示 を と れ ば,
よ び(4・8)に
対 角 表 示 と な る。 代 入 し て,シ
フ ト演 算 子 の マ ト リ ッ
01
Sx+isy=〓(
sx-isy=〓(
式(4・12)お
00
)
(4・12)
00 10
)
(4・13)
よ び(4・13)か
ら,
(4.14) 式(4・14)お
よ び(4・11)の
マ ト リ ッ ク ス は,式(4・1)の
し て い る 。 シ フ ト演 算 子 に つ い て は,た
とな り,式(4・8)が
と え ば,
得 られ る。
ス ピ ン演 算 子 を σ で表 示 す る場 合 もあ る。s= σx=(
01 10
)
,σy=(
σx2=σy2=σz2=1(単
と表 現 され,パ
交 換 関 係 を満 足
0-i i0
),
σz=(
〓/ σ で あ る か ら, 2 10 0-1
)
}
位 行 列)
(4・15)
ウ リの ス ピ ンマ トリ ッ クス で あ る。
ス ピ ン の 自 由度 は,軌 道 運 動 の 自 由度 と独 立 で あ る と仮 定 した か ら,sはr,p と可 換 で あ る。 自 由空 間 に お け る 1電 子 系 の定 常 状 態 を表 す 波 動 関 数 は, ψ(r)・x(s)
で あ る 。x(s)は がh/2ま
(4・16)
ス ピ ン の 状 態 を 表 す 波 動 関 数 で あ る か ら,そ の z成 分 の 固 有 値 ms
た は-h/2に
対 し て,そ
ス ピ ン 上 向 き ↑状 態,後
4・2電
れ ぞ れ ψ(r)・ α ま た は ψ(r)・ β と表 示 す る 。 前 者 は
者 は ス ピ ン 下 向 き ↓状 態 で あ る 。
子の磁気モー メン ト
古典 論 に お い て は,水 素 原 子 の 電 子 は,核(陽 子)の まわ りを軌 道 角 運 動 量 lで まわ って い る。 電 子 は電 荷 −eを 持 っ て お り,こ の軌 道 回転 運 動 の た め,磁 気 モ ー メ ン トを生 ず る。 そ の大 き さ を,次 の よ うに近 似 的 に見 積 る。
電 子 の 軌 道 円 運 動 の半 径 を γ,速 度 を υ とす れ ば,電 子 の 公 転 運 動 に お け る電 流 iは, (4・17)
電 流 iが 内 面 積 A の 円周 を回 っ て い る と きの磁 気 モ ー メ ン ト μeは,
(4・18)
た だ し,C
は 光 速 度,電
い る 。 式(4・18)を
子 の 運 動 量P=mυ,角
運 動 量 の 大 き さ1=γpと
近 似 して
ベ ク トル で 表 示 す れ ば,
(4・19)
で あ る。
ス ピ ン に と もな う電 子 の磁 気 モ ー メ ン トの 大 き さ は,実 験 値 と数 値 を あ わ せ る た め に は,
μs=
mc/e
S
(4・20)
と お か ね ば な ら な い 。 式(4・19)お
よ び(4・20)で
は1/2の
係 数 が 異 な る。 こ
れ を ベ ク トル で 表 せ ば,
(4・21)
eh/ 2mc
を ボ ア 磁 子(Bohr
magnetron)と
い う。
た とえ ば,水 素 原 子,ま た は ナ トリ ウム 原 子 が 最 低 エ ネ ル ギー 状 態 に あ る と き, 磁 場 H を加 え る と,電 子 の磁 気 モ ー メ ン ト と H との 相 互 作 用 に よ り,電 子 の エ ネ ル ギ ー は, − μs・H=
eh/ 2mc
σ ・H
だ け変 化 す る。 電 子 は基 底 状 態 に あ るた め,方 位 量 子l=0で
(4・22)
あ り,式(4・19)
の μl=0と
な る た め,軌
道 運 動 に よ る 磁 気 モ ー メ ン トは 零 で あ る か らで あ る 。
H を z方 向 に と り,そ ehH/ 2mc と な る。1s-状
の 大 き さ を H と す れ ば,式(4・22)は, eh/ 2mcH
σz=±
(4・23)
態 に あ る 電 子 は,磁 場 中 で は,2
つ の 異 な っ た エ ネル ギ ー 状 態 に分
離 す る。 こ の 現 象 を ス ピ ン に よ る ゼ ー マ ン 効 果(Zeemaneffect)と l〓0で
あ る 励 起 状 態 に つ い て は,μ1が
い う。
0で な い た め,縮 退 し た エ ネ ル ギ ー 状 態
は複 雑 に 分 離 す る 。 こ の 分 離 の 状 態 を 定 量 的 に 説 明 す る た め に は,式(4・19)お よ び(4・21)と
の 間 に1/2の
差 が 必 要 とな る。
電 子 が 核 の まわ りを 角運 動 量 lで 回 っ て い る と き,電 子 か らみ れ ば,核 が 角 運 動 量 lで 回転 し て い る よ うに み る こ とが で き る。 この核 は+eの
電 荷 を持 っ て い
るの で,中 心 の 電 子 の場 所 に磁 場 H を生 ず る。 この H と電 子 の磁 気 モ ー メ ン ト μsと 相 互 作 用 し,電 子 の エ ネ ル ギ ー は, -μs・H=λl・s
(4・24)
だ け 変 化 す る 。 λ は 式(4・24)が ら れ た 係 数 で あ る か ら,ス 決 定 さ れ る 。 式(4・24)の プ リ ン グ(coupling)と
4・3運
エ ネ ル ギ ー の デ ィ メ ン シ ョ ン に な る よ うに つ け
ペ ク トル の 微 細 構 造 を定 量 的 に 説 明 す る よ う に 数 値 は 相 互 作 用 を ス ピ ン ・軌 道 相 互 作 用 あ る い はl-sカ
ッ
い う。
動 の保 存 量
ハ ミ ル トニ ア ン H と 可 換 な 物 理 量 は 運 動 の 保 存 量 で あ る 。 ス ピ ン s は r,p と 可 換 で あ る か ら,H し,ス H
の 中 に ス ピ ン 変 数 が な け れ ばszは
運 動 の 保 存 量 で あ る。しか
ピ ン ・軌 道 相 互 作 用 が ハ ミル トニ ア ン H の 中 に あ れ ば,lz,szは
と は 可 換 で な く な る 。l・sと
可 換 な量 は全 角運 動 量 J で あ る。
J=l+s J とl・sと
(4・25)
の 交 換 関 係 を計 算 す る 。
[lx,l・s]一
それ ぞれ
〔lx,lxsx+lysy+lzSz] =(lylx+ihlz)sy+(lzlx-i〓
ly)Sz-lylxSy-lzlxSz
=i〓(lzsy-lysz)
(4・26) (4・27)
[sx,l・s]=i〓(lysz-lzsy) ∴[lx+Sx,l・s]=[Jx,l・S]=0
同様 に
(4・28)
y成 分,z 成 分 の 交 換 関 係 は, (4・29)
[Jy,l・s]=[Jz,l・s]=0
し た が っ て, (4・30)
「J,l・s]=0
H が(P2,r2,l・s)の り,同
関 数 で あ る な ら ば,H
時 固 有 値 を 持 ち,J2,Jzは
Jx,Jy,Jzの
はそれぞれ可換 にな
運 動 の 保 存 量 と な る,
相 互 の 交 換 関 係 は,lx,ly,lzま
る 。 し た が っ てJ2の
とJ2,Jzと
た はsx,sy,szの
そ れ と同様 で あ
固 有 値 は, (4・31)
j(j+1)〓2
jを内 量 子 数 とい う。 S=1/2の
と き は,j=l±1/2(l=1,2,3,…)で
状 態 は 二 重 に 縮 退 し て い る 。l=0の
と き はl・s=0と
あ り,与
え られ た lに 対 し
な り,ス ピ ン ・軌 道 相 互 作 用
の な い場 合 で あ る。
4・42電
子 系 の波 動 関 数
水 素 分 子 H2に お い て は 2個 の 電 子 が 存 在 して い る。 原 子 核 は,電 子 の 質 量 の 約2000倍
の 大 きさ で あ るか ら,静 止 して い る もの と仮 定 す れ ば,そ れ ら の 運 動 エ
ネ ル ギ ー は零 で あ る。し たが っ て,こ の系 の ハ ミル トニ ア ン は電 子 の 質 量 を m と す れ ば, (4・32)
で あ る。 右 辺 第 1項 は第 1電 子 の運 動 エ ネ ル ギ ー,第 ル ギ ー,第
2項 は第 2電 子 の 運 動 エ ネ
3項 は核 同 士 の クー ロ ンポ テ ン シ ャル エ ネル ギ ー で 電 子 の座 標 を含 ん
で い な い項,第
4項 は第 1電 子 座 標 だ け を含 む ポ テ ンシ ャル エ ネ ル ギ ー,第
は第 2電 子 座 標 だ け を含 む ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギー,第
5項
6項 は 2つ の 電 子 座 標 を
含 む ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー で あ る。 ス ピ ン に関 係 す るエ ネ ル ギ ー は小 さ い もの と し省 略 して あ る。 2電 子 系 の 波 動 関 数 を ψ(1,2)と す れ ば,シ ュ レデ ィ ンガ ー の 波 動 方 程 式 は, (4・33)
で あ る。 2つ の 水 素 原 子 が お 互 い に 十 分 離 れ て い る と き は,V0=0,V12=0と
お くこ とが
で き る 。 こ の と き は 2つ の 電 子 は お 互 い に 独 立 で あ る 。 も し,2 に 寄 っ て い て も,電 (4・32)の
H は,第
関 す る 部 分H(2)と
つの原子が近 く
子 同 士 が お 互 い に 独 立 で あ る と近 似 で き る も の と す れ ば,式 1電 子 座 標 γ に 関 す る 部 分H(1)と,第
2電 子 の 座
γ2に
に分 け る こ とが で き る。 (4・34)
この 場 合 の 式(4・33)の
波動関数 を (4・35)
と お け ば,
(4・36)
で あ る 。 た だ し, (4・37)
で あ る 。す な わ ち,2 と な り,そ
つ の 粒 子 が 独 立 で あ る と き は ψ(1,2)は
分 離 さ れ,ψ(1)・ ψ(2)
の 固 有 値 は そ れ ぞ れ の エ ネ ル ギ ー を加 え た も の に な る 。
式(4・37)に
お い て,固
有 値 がEa,Ebに
属 す る 固 有 関 数 を ψa,ψbと
す れ ば,
(4・37)′
(4・37)″
こ の 場 合,電 値 はE=Ea+Eb,固
子 1が a状 態,電
子 2が b状 態 に あ る こ と が 区 別 で き,そ
有 状 態 ψ(1,2)は
の固有
ψa(1)ψb(2)で あ る 。 2つ の 電 子 が 接 近 し,
お 互 い に 全 く 区 別 で き な い 場 合 に は,ψ(1,2)=ψa(2)・
ψb(1)は 固 有 値E=Eb+Ea
を 持 ち,ψa(1)ψb(2)と
縮 退 し て い る 。 し た が っ て,こ
れ らの 一 次 結 合 も同 一 エ ネ ル
ギ ー 固 有 値 を持 つ状 態 で あ る。
一 方
,電 子 密 度 の ほ うか ら考 察 す る。 2つ の 電 子 が 十 分 接 近 した 場 合,電
がr1に
あ っ て 同 時 に電 子 2がr2に
子 1
あ る状 態 ψ(1,2)の 電 子 密 度 は,両 電 子 を交
換 した状 態 ψ(2,1)の 電 子 密 度 と は全 く同 一 で 区別 で き な い。
(4・38)
す な わ ち,2
電 子 系 の 波 動 関 数 は1,2の
電 子 の 座 標 の 交 換 に 対 し て,対
は 反 対 称 の 性 質 を 持 つ 。 し た が っ て,ψa(1)ψb(2)と 称 ま た は 反 対 称 と な る 関 数 は,次
ψa(2)ψb(1)と の 一 次 結 合 で 対
の とお りで あ る。
対称
ψ+=ψa(1)ψb(2)+ψa(2)ψb(1) (4・39)
反対 称
ψ-=ψa(1)ψb(2)-ψa(2)ψb(1)
4・5パ
称 また
(4・40)
ウ リの 原 理
一電 子 系 に お い て の 波 動 関 数 は
,軌 道 運 動 の座 標 r と,ス ピ ン座 標 s とが 互 い
に独 立 な 自由 度 で あ る と き, (4・41)
で あ る 。 す な わ ち,ス
ピ ン上 向 き の 状 態 き に つ い て ψ(r)α,ス
ピ ン下 向 きの 状 態
に つ い て は ψ(r)・βで あ る 。 核 に よ る ポ テ ン シ ャ ル が ク ー ロ ン ポ テ ン シ ャ ル で あ る と き は ψ(r)は 水 素 原 子 の 波 動 関 数 で あ っ て,量
子 数n,l,mに
区 別 さ れ る 。 そ れ に さ ら に x が 掛 か っ て い る の で,ス
よ っ て状 態 が
ピ ン量 子 数ms,す
なわ ち
が 加 わ り,4 つ の 量 子 数 に よ って 状 態 が 決 定 さ れ る。電 子 に 関 す る種 々 の 実 験 事 実 を説 明 す る た め,パ
ウ リ(Pauli)は 次 の こ と を規 定 し た。 「同一
ポ テ ン シ ャル 内 に あ る 電 子 は 同 一 量 子 数 を持 つ こ と はあ り得 な い 」 す な わ ち 2つ の 電 子 は 同一 状 態 に は あ り得 な い 。 こ の こ と をパ ウ リの 原 理 とい う。 パ ウ リの原 理 に よ り,元 素 の周 期 律 表 を う ま く説 明 す る こ とが で きる 。 第 3章 の 水 素 原 子 の状 態 にお い て,エ 量 子 数 を順 次 調 べ る。
ネ ル ギ ー の低 い 内 殻 軌 道 か ら外 殼 軌 道 へ 向 か っ て
主 量 子 数n=1。 0,ス
この場 合,方 位 量 子 数 lは 0以 外 と り得 な い 。磁 気 量 子 数m= 軌 道 は電 子 2個 で 閉殼 とな る。 す な わ ち,元
ピ ン 量 子 数ms=+
素 名 は H,Heで
あ る。
状 態 数 2個Li,Be(元
素 名)
状態 数 6個 元 素 名B,C,N,0,F,Ne周
期 律 表 の L 系 列 で あ る。
パ ウ リの 原 理 を 2電 子 系波 動 関 数 に適 用 す る。ψaと ψbと が 同 一状 態 ψ0であ る と仮 定 す れ ば,式(4・39)の
し か し,式(4・40)の
対 称 関 数 は,
反 対 称 関 数 は,
とな り,2 つ の電 子 が 同 一 状 態 に は あ り得 な い とい うパ ウ リの原 理 を 充 足 す る 。 2電 子 系 の 波 動 関 数 は ス ピ ン座 標 も含 め て,1,2の 称 で な けれ ば な らな い 。 式(4・40)は
電 子座 標 の交 換 に対 し て反 対
ψa,ψbが 規 格 化 され て い る と き は,規 格 化 の よ う に も 書 き得 る 。
さ れ た 形 と し て,
ハ ミ ル トニ ア ン H の 中 に お け る λ1・sの 項 は,一 般 に 他 の 項 よ り も 非 常 に 小 さ い 。 ま た,電
子 同 士 の ス ピ ン が 平 行 の と き と,反
大 き な 差 が あ る 。 こ の こ と か ら,2
あ る 。 最 後 に,ス
ネル ギー に
電 子 系 の ス ピ ン ・ス ピ ン 結 合 は 強 い と 考 え,
状 態 を 決 め る の は,合 成 ス ピ ンS=s1+s2で +l2で
平 行 の と き で は,エ
あ り,そ
ピ ン ・軌 道 相 互 作 用 λL・Sが
の 次 に,合 き い て,エ
成 角 運 動 量L=l1 ネルギー状態 が
定 ま る。
2電 子 系 ハ ミル トニ ア ン の 中 に ス ピ ン変 数 が 含 まれ て い な い と きは,ス
ピン と
軌 道 運 動 と は独 立 で あ る か ら,そ の 波 動 関 数 は次 の よ うに お き得 る。 (4・42)
2つ の電 子 の軌 道 が 交 錯 して い な い と きは,軌 道 関 数 もス ピ ン関 数 もそ れ ぞ れ
独 立 で,積 で 表 し得 る。 ス ピ ン関 数 に つ い て は上 向 き ↑,下 向 き ↓の組 合 せ は次 の 4通 りで あ る。 α(1)α(2),β(1)β(2),α(1)β(2),β(1)α(2)
これ らの 一 次 結 合 の うち,1,2の 称 の波 動 関 数 で,4
(4・43)
電 子 の ス ピ ン座 標 の 交 換 に対 し,対 称,反 対
個 が ス ピ ン空 間 に お い て,互
い に 規格 直 交 す る もの と して 次
の よ う に決 め る こ とが で き る。 対 称
α(1)α(2),1/√2{α(1)β(2)+β(1)α(2)},β(1)β(2) 1/√2
反対称 1,2の
(4・44)
{α(1)β(2)-β(1)α(2)}
(4・45)
電 子 の 交 換 と は,軌 道 座 標 rお よび ス ピ ン座 標 s も同 時 に 交換 す る こ
とで あ り,こ の と きパ ウ リ の原 理 を満 足 す る よ う,全 体 と して反 対 称 関 数 で な け れ ば な ら な い。 した が っ て,次
の 2通 りの 組 合 せ が 決 定 す る。 α(1)α(2)
{
{α(1)β(2)+β(1)α(2)}
ψA∞{ψa(r1)ψb(r2)-ψa(r2)ψb(r1)}・
(4・46)
β(1)β(2)
ψs∞{ψ α(r1)ψb(r2)+ψa(r2)ψb(r1)}・{α(1)β(2)-β(1)α(2)}
2電 子 系 ス ピ ン 波 動 関 数,式(4・44)お
ま び(4・45)の
成 ス ピ ン 変 数 S の 大 き さ と,そ の z成 分Szの
(4・47)
状 態 を 表 示 す る に は,合
固 有 値 を 用 い る 。大 き さ1/2の
2つ
の ス ピ ン ベ ク トルs1とs2の
ベ ク トル 和 が S で あ る か ら,そ の 大 き さ S は,s1と
s2と が 平 行 の と き は+1,反
平 行 の と き は 0 と な る 。 ま た,Szは(±1/2,±1/2)
の 組 合 せ で あ る か ら,1,0,-1お
よ び 0の 4通 り と な る 。 し た が っ て,ス
ピ ン量
子 状 態 を 表 示 す れ ば, 1重 項S=0
Sz=0
3 重 項S=1
Sz=+1,0,-1
α(1)β(2)-β(1)β(2) α(1)α(2) α(1)β(2)+β(1)α(2) β(1)β(2)
の 対 応 が 成 立 す る。
(4.48)
}
(4・49)
5.
5.1定
摂 動 論
Ⅰ
常 状 態 の摂 動 論
時 間 を含 ま な い シ ュ レ デ ィ ンガ ー 方 程 式 に お い て,ハ
ミル トニ ア ン が 2つ の 部
分 に分 け て 表 示 され る場 合 を 問題 にす る 。 (5・1)
λH′ はHoに
比 べ て 十 分 小 さ く,摂
る も の と す る 。ま た,無 摂 動 項Hoに て い て,そ
の 固 有 値,固
動 項(perturbedterm)と
み な す こ とが で き
関 す る シ ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 は解 け
有 関 数 をEn,ψnと
す れ ば, (5・2)
無 摂 動 系 の固 有 関 数 の 組{ψn}は 完 全 規 格 直 交 系 で あ り,そ れ に対 す る 固 有 値 の 組 を{En}で
表 す。 (5.3)
r の 任 意 の 関 数 をf(r)と
す れ ば,{ψn}の
一 次 結 合 で 表 す こ とが で きる 。 (5・4)
式(5・1)の
摂 動 系 の シ ュ レ デ ィ ン ガ ー 方 程 式 は, (5・5)
式(5・5)の し か し,ハ
微 分 方程 式 は,一 般 に は簡 単 に解 け る とい うわ けに は い か な い。 ミル トニ ア ンが,す
で に解 け て い る無 摂 動 系 の ハ ミル トニ ア ンか ら
わ ず か に 異 な っ て い る程 度 で あ るな ら ば,そ の 固 有 値,固
有 状 態 は無 摂 動 系 の そ
れ か ら少 々 異 な っ て い る もの で あ ろ う と仮 定 す る こ とが で きる。 摂 動 系 の 波 動 関 数 とエ ネル ギ ー 固 有 値 を λの べ き級 数 で展 開 す る。 (5・6) (5・7)
式(5・1),(5・5),(5・6)お
よ び(5・7)か
(H0+λH′)(ψ0+λ
ら,
ψ1+λ2ψ2+…)=(E0+λE1+λ2E2+…)(ψ0+λ
ψ1+λ2ψ2
+…)
両 辺 の λの 同 じべ きの 係 数 を比 較 し て, λ0次H
0ψ0=E0ψ0
)λ1次H0ψ
1+H′
λ2次H0ψ2+H′
ψ0=E0ψ1+Elψ0
(5.9)
ψ1=E0ψ2+E1ψ1+E2ψ0
式(5・8)は,無 ψ0,E0は
(5・8)
(5・10)
摂 動 系 の シ ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式(5・2)で
無 摂 動 系 の 固 有 関 数,固
あ る か ら,
有 値 で あ る 。 無 摂 動 系 に お い て,状
動 エ ネ ル ギ ー λH′ が 加 わ っ た た め 状 態 が ど の よ う に 変 化 す る か,と
態 ψmが 摂
い う形 で 摂 動
系 を 解 く。 式(5・2)お
よ び(5・8)か
ら,摂
動 の 第 0次 に お い て は,
ψ0=ψm
(5・11)
E0=Em
(5・12)
ただ し,ψmは
縮 退 して い な い もの と仮 定 す る。
摂 動 の 第 一 次 に お い て は,式(5・9)の
ψ1を 式(5・4)のf(r)と
ψ1=Σan(1)ψn
式(5・13)を
式(5・9)に
Σan(1)H0ψn+H′
式(5・14)に
こ こ で,k=mと
代 入 し,式(5・11)お
よ び(5・12)を
ψm=EmΣan(1)ψn+E1ψm
km=〓
間 積 分 を 行 え ば,式(5・3)を
ψk*H′
ψmdr=H′km
用 い れ ば,
(5・14)
用 い て,
(5・15)
お け ば, E1=H′mm
k≠mの
(5・13)
左 か ら ψk*を 掛 け,空
ak(1)(Em-Ek)+E1δ
と れ ば,
場合
(5・16)
H′km/
ak (1)=
(5・17)
Em-Ek
摂 動 の 第 二 次 に お い て は,式(5・10)の
ψ2を{ψn}で
展 開 す る。
ψ2=Σan(2)ψn
式(5・10)に
(5・18)
代 入 し て,
Σan(2)H0ψn+Σan(1)H′
ψn=EmΣan(2)ψn+H′mmΣan(l)ψn+E2ψm (5・19)
と な る 。 ψk*を 掛 け 空 間 積 分 を 行 え ば, ak(2)(Em-Ek)=Σan(l)H′kn-ak(1)H′mm-E2δkm
k=mと
(5.20)
お け ば, E2=Σan(1)H′mn-am(l)H′mm=Σ
′an(l)H′mn
(5・21)
た だ し,Σ ′はm=nの
項 を 除 い て,n の す べ て の 状 態 に つ い て 和 を と る こ と を 意
味 し て い る。
k〓mの
場合 (5・22)
さ らに,ψ
は規 格 化 さ れ な け れ ば な らな い 。
第 零 次 の 摂 動 で は,ψ0=ψmで
あ る か ら,自
〓ψ0*ψ0dr=1
動 的 に規 格 化 され て い る。 (5・23)
第 一 次 の摂 動 の規 格 化 条 件 は, 〓(ψ0*+λ
ψ1*)(ψ0+λ
ψ1)dr=1
λ2の 項 を 無 視 す れ ば,式(5・23)を
用 い,
〓(ψ0*ψ1+ψ1*ψ0)dr=0 式(5・11)お
よ び(5・13)を am(1)+am(1)*=0
(5・24) 用 い れ ば, (5・25)
こ の式 か らam(1)の 実 数 項 が で 決 ま る。虚 数 項 は 波 動 関 数 の位 相 に 関 す る項 で あ
り,こ
の 項 を 0 と す れ ば, am(1)=0
(5・26)
第 二 次 の 摂 動 につ い て は,同 様 の取 扱 い で, am(2)+am(2)*+Σ│an(1)│2=0 am(2)=-1/2Σ│an(1)│2
さ ら に,λ=1と
(5・27)
お け ば,摂 動 エ ネ ル ギ ー がH′ で あ る と き,波 動 関 数 と固 有 値 が 近
似 的 に 次 の よ うに な る。
(5・28)
(5・29)
5・2縮
退 の あ る と きの摂 動 論
縮 退 の あ る 場 合 は,式(5・17)に
お い て,H′km=0の
母 が 0 に な る 。 k 状 態 に つ い てak(l)は
特 別 な k状 態 を 除 い て 分
発 散 す る 。 し た が っ て,縮
退 の あ る場 合 は
別 な 取 扱 い を しな けれ ば な らな い 。 た と え ば,無 摂 動 系 に お け る エ ネ ル ギ ー 固 有 値Emに,2
つ の状 態 が 縮 退 して い
る も の と す る 。 こ れ ら を ψm(l),ψm(2)と す る 。 H0ψm(1)=Emψm(l),H0ψm(2)=Emψm(2) 1・9節
に よ り,ψm(l),ψm(2)は
(5・30)
規 格 直 交 化 さ れ て い る 。 λ=1と
し て,
(H0+H′)ψ=Eψ
(5・31)
ψ=alψm(1)+a2ψm(2)
(5・32)
式(5・30),(5・31)お
よ び(5・32)か
ら,
(Em+H′)a1ψm(1)+(Em+H′)a2ψm(2)=Ea1ψm(l)+Ea2ψm(2)
(5・33)
左 か ら,ψm(l)*ま
た は ψm(2)*を 掛 け て,空
間 積 分 す れ ば,
(Em+H′11)al+H′12a2=Ea1
(5・34)
H′12a1+(Em-H′22)a2=Ea2
(5・35)
こ こ で,H′kmは
式(5・15)で
た め の 条 件 と し て,固
あ る 。a1,a2が
同 時 に は 0に な らな い解 を持 つ
有 値 方 程 式 を得 る。
(5・36)
(5・37) 式(5・37)の
2 つ の 根Em(1),Em(2)はH0に
お い て 縮 退 し て い た 系 が,H′
わ る こ と に よ っ て 縮 退 が 解 け た こ と に な る 。こ の 2 つ の 根 を 式(5・34)お 35)に
代 入 し て(a1(1),a2(l))あ
る い は(a(2),a2(2))を
得 れ ば,波
が 加
よ び(5・
動 関 数
ψ(1),ψ(2)
が 得 られ る。
例 とし て,水 素 原 子 の 一 次 シ ュ タル ク 効 果(Stark の 原 子 スペ ク トル を撮 影 す る 際,強
effect)を 取 り上 げ る。 水 素
い電 界 が か か っ て い る場 所 に お け る ス ペ ク ト
ル は,2p-状 態 の 縮 退 が 電 界 に よっ て 解 け た影 響 が 現 わ れ る。z方 向 に 強 さ E の電 界を か け た も の と す る 。 水 素 原 子 内 電 子 に つ い て の ハ ミ ル トニ ア ン は, H=H0+H′
こ こ で,無
(5・38)
摂 動 系 の ハ ミ ル トニ ア ン は,
(5・39)
摂 動 項 は, H′=-eEz=-eErcosθ
(5・40)
で あ る。 水 素 原 子 に お い て は,主 量 子 数n=2の 系 に お け る 各 状 態 の 量 子 数(n,l,m)は,2s-状 態 に っ い て は,(2,1,0),(2,1,1),(2,1,-1)で
励 起 状 態 は 四 重 に 縮 退 し て い る 。無 摂 動 態 に つ い て(2,0,0),2p-状 あ る 。 式(3・80)か
ら,
(5・41)
(5・42)
(5・43)
(5・44)
また,無 摂 動 系 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は, (5・45)
で あ る。
式(5・36)に
対 応 す る固 有 値 方 程 式 は,4 行 4列 の行 列 式 で 表現 さ れ る。
(5・46) こ こ で, (5・47)
た だ し,i,j=1∼4で
あ る。
摂 動 項 の マ ト リ ッ ク ス 要 素 の 対 角 項H′ii(i=1∼4)は,θ
θ=ω と積 分変 数 を変 換 す れば,〓
に つ い て の 積 分 をcos
ωf(ω2)dω の型 に な っ て ω に つ い て の 奇 関
数 の積 分 に な り,結 果 は零 と な る。 ま た,H′
の マ ト リ ッ ク ス 要 素 の 非 対 角 項 の う ち,変 数 ψ を 含 ん で い る 項 は,sin
ψ ま た はcosψ ス 要 素 は,
を 0か ら2π ま で 積 分 す る の で,こ
れ も零 と な る 。残 る マ ト リ ッ ク
H′12=H′21=-eE〓
ψm(1)* γcosθ
ψm(2)dr
(5・48)
式(5・47)お
よ び(5・48)を
E=Em(2),Em2)お と な る 。 縮 退 が 一 部 解 け,電 こ の こ と は,ψm(1),ψm(2)の
式(5・46)に
代 入 し て 固 有 値 を 求 め れ ば,
よ びEm(2)±3eEaH
(5・49)
界 の 強 さ に 比 例 す る ス ペ ク トル の 分 離 が 得 ら れ る 。 波 動 関 数 の 代 わ り に,ユ
ニ タ リー 変 換 行 列
(5・50)
に よ っ て ハ ミル トニ ア ン行 列 を直 交 化 し,そ れ に対 す る。 新 しい 状 態 は次 の 表 示 とな る。
(5・51)
5・3ス
ピ ン ・軌 道 相 互 作 用
水 素 原 子 中 の電 子 の ハ ミル トニ ア ン の 中 に,ス
ピ ン ・軌 道 相 互 作 用 が 摂 動 エ ネ
ルギ ー と して 加 わ っ た 場 合 を取 り扱 う。2pー状 態 を例 と して と り上 げ る。2s-状 態 は方 位 量 子 数l=0で
あ るか ら,ス ピ ン ・軌 道 相 互 作 用 は零 とな る。 摂 動 項 のハ
ミル トニ ア ン は式(4・24)で
あ る。 水 素 原 子 中 の 電 子 の ハ ミル トニ ア ン は,
H=H0+H′
こ こ で,H0は
(5・52)
式(3・1)で
与 え られ,H′
は,
H′=λl・s=λ(lxsx+lySy+lzSz)
=λ/2(1+s
-+1-s+)+λlzsz
(5・53)
で あ る 。l±=lx±lyは,2・3節 は,4・1節
の 角 運 動 量 シ フ ト演 算 子 で あ る 。 ま た,s±=Sx±Sy
の ス ピ ン シ フ ト演 算 子 で あ る 。
無 摂 動 系 の エ ネル ギ ー 固 有 値Em(2)に 属 す る縮 退 した 6個 の 波 動 関 数 は次 の よ うに な る。 ψ1=ψ1α=R21Y11α} ψ2=ψ0α=R21Y1Oα ψ3=ψ1β=R21Y11β
(5・54) ψ4=ψ0β=R21Y10β ψ5=ψ-1α=R21Y1-1α ψ6=ψ-1β=R21Yl-1β
上 記 の状 態 の 順 序 は,式(5・53)の ニ ア ン に加 わ っ た た め,全
ス ピ ン ・軌 道 相 互 作 用 が 無 摂 動 系 ハ ミル ト
角 運 動 量 J の z成 分Jz=ml+msが
運 動 の保 存量 と
な り,し た が っ てJzの 大 きさ の 順 序 に 並 べ て あ る。 式(5・54)はH0の
固有 状 態 で はあ るが,H
した が っ て,{ψi}i=1…
す な わ ちH′ の 固有 状 態 で は な い。
…6の 一 次 結 合 に よ り,H′ の 固 有 状 態,換 言 す れ ばH
′の マ トリ ッ ク ス を対 角 化 す る表 示 を求 め る。 シ フ ト演 算 子 お よ び 角 運 動 量 の z成 分,ス
ピ ン の z成 分 の 演 算 公 式 は第 2章 お
よび第 4章 に よ っ て, (5・55)
(5・56)
である。 (l・s)を
ψiに 演 算 す れ ば 次 の よ う に な る 。
(5・57)
次 に,マ
トリ ッ ク ス 要素
ただ し,波 動関数 の規格 直交性
を 用 い る 。 結 果 を マ ト リ ッ ク ス 表 示 す れ ぼ,次
の 6行 6列 の マ ト リ ッ ク ス が 得 ら
れ る。
(5・58)
無 摂 動 系H0に
お い て,縮 退 して い る 波 動 関 数{ψi}の 一 次 結 合 に よ り,摂 動 項
H′ の マ トリ ッ クス を対 角化 され た表 示 を求 め れ ば よ い。 す なわ ち,式(5・58)
に お い て,
の部 分 を対 角 化 す る ユ ニ タ リー変 換 マ ト リ ッ ク ス T
を求 め る 。 は じめ に次 の固 有 値 方 程 式 を計 算 す る。
(5・59)
し た が っ て,新
し い 固 有 値 と し て,
(5・60)
を得 る。
(5・61)
この 方 程 式 か ら,
(5・62)
T が ユ ニ タ リ ー 変 換 マ ト リ ッ ク ス で あ る か ら, (5・63)
で あ る。 こ れ ら を 用 い,
(5・64)
(5・65)
T に よ る波 動 関 数 の 変 換 は,ml+ms=+1/2の
状 態 に 対 し,
(5・66)
ま た,ml+ms=-1/2の
状 態 に 対 し て は,
(5・67)
で あ る 。 式(5・66)お 固 有 値 は,式(5 後 の 状 態 は,互 〓Em(2)+λ/2〓
よ び(5・67)の
・61)を
参 照 し て,そ
右 辺 に お け る 状 態 の 1行 目 2行 目 に 対 す る れ ぞ れ,ー
λ〓 で あ る。変
換 され た
い に 規 格 直 交 化 さ れ て い な け れ ば な ら な い 。 結 果 は,固
有 値 が
に属 す る 固 有 状 態 は,
(5・68)
す な わ ち,四 ま た,固
重 に縮 退 して い る。
有 値 がEm(2)ー
λ〓 に 対 し て は,
(5・69)
す な わ ち,二 重 に縮 退 して い る。 六 重 の縮 退 がH′ に よ っ て 分 離 した こ と に な る。2p-状 態 か らls-状 態 へ の 遷 移 に よ っ て放 射 され る,光 の 波 長 は 2本 に分 離 し, 微 細 構 造 が 得 られ る。
図5・1
6.摂
動
論II
6・1 遷 移 確 率 状 態 が 時 間 変 数 tを含 ん で い る と きの シ ュ レデ ィ ンガ ー の波 動 方 程 式 は,式(1
・45)から,(6.1)
無 摂 動 系 に お け るハ ミル トニ ア ン をH0,摂
動 項 ハ ミル トニ ア ン をH′ と す れ
ば,
(6・2) で あ る。
無 摂 動 系 に お け る波 動 関 数 を Φ(r,t)と
お け ば, (6・3)
式(6・3)に
お い て,時
間 に 関 し振 動 解 を 仮 定 し,
(6・4)
と お い て,式(6・3)に
代 入 す れ ば, (6・5)
を 得 る 。 こ の 式 は,無 状 態 の 組{ψi}お に,式(6・4)か た が っ て,摂
摂 動 系 に お け る 定 常 状 態 の 波 動 方 程 式 で あ っ て,そ
よ び そ れ に 対 す る 固 有 値 の 組{Ei}は,解
け て い る も の と し,さ ら
ら,{ψie-i/hEit}の 組 は 無 摂 動 系 式(6・3)の 動 系 式(6・1)の
の固 有
状 態 ψ(r,t)を{ψie-i/hEit}で
固 有 状 態 で あ る。 し 展 開 す る。 (6・6)
式(6・6)を
式(6・1)に
代 入 す る。
(6・7)
式(6・7)に,左
か ら ψj*を 掛 け 空 間 積 分 を す れ ば,{ψi}の
規 格 直 交 性 を 用 い,
(6・8)
こ こ で,
H′ji=〓 ψj*H′ ψidr
(6・9)
で あ る。 t=0に
お い て,系
ai=0(i〓O)で
は ψ0状 態,エ
あ る。 そ こ で,エ
ネ ル ギ ー はE0で
ネ ル ギ ー にH′ 項 が 加 わ り,状 態 が 変 化 し た も の と
す る 。時 刻 tが 十 分 小 さ い と き は,ai(i〓0)は 8)に
お い て,一
あ っ た も の と す れ ば,a0=1,
小 さ な 値 で あ る 。し た が っ て,式(6・
次 の 微 小 量 だ け を 残 し他 の 項 を 省 略 す れ ば,
(6・10)
(6・11)
C は積 分 定 数 で あ り,次 の 条 件 か ら決 ま る。 式(6・11)に
お い て,t=0に
得 る 。 こ れ を 式(6・11)に
お い て はaj=0で
あ る か ら,C=-
H′j0
/ E0-Ej
戻 せ ば,
(6・12)
(6・13)
を
式(6・13)は,t=0に
お い て 始 状 態 ψ0に あ っ た も の が,時
刻 tに お い て,終
状 態 ψjに あ る 割 合 に 比 例 す る 量 で あ る 。
終 状 態 と ほ とん ど同 一 エ ネ ル ギ ー を持 っ た状 態 が 連 続 分 布 して い る と きは,積 分 型 に拡 張 す る。 E と(E+dE)と 状 態 密 度 で あ る。始 状 態E0か
の 問 に あ る終 状 態 の数 を ρEdEと す る。 ρEは
ら終 状 態 へ の 遷 移 確 率 は,単 位 時 間 に つ い て の割 合
で あ る か ら,
(6・14)
で あ る。 式(6・14)に
お い て,(E-E0)t/〓=xと
お け ば,
(6・15)
で あ る。
図6・1
はx=0の
近 傍 だ け 1の 値 に近 く,x の他 の値 に お い x は ほ とん ど零
の 値 の 近 くで 振 動 す る。し る の は E がE0に
た が っ て,式(6・14)の
積 分 に お い て,主
に効 い て く
等 し い 値 の 近 傍 だ け で あ る 。 積 分 範 囲 を-∞ 。 か ら+∞
拡 張 し て も 近 似 的 に 許 さ れ る 。 ま た,|H′j0│2ρEもE0。 に 等 し いEjの
までに
値 の とこ ろだ
け を と れ ば,
(6・16)
の 結 果 を用 い た 。
と な る 。 こ こ で,
式(6・16)は,t
に 無 関 係 で あ り,始
状 態E0か
ら終 状 態Ejへ
の遷 移 確 率 で あ
る。
6・2電
子 と電 磁 場 の 相 互 作 用
光 の 吸 収 発 散 を と もな っ た,電 子 状 態 の遷 移 を取 り扱 うた め に は,電 子 と電 磁 場 の相 互 作 用 に よ るハ ミル トニ ア ンの摂 動 項 を決 定 しな けれ ば な らな い 。 は じめ に,電 子 と電 磁 場 が 共 存 して い る とき のハ ミル トニ ア ン を古 典 力 学 の立 場 か ら決 定 す る。 電 子 の質 量 を m,電 荷 を-eと
す る。電場 をE,磁 場 を B とす れ ば電 子 に対 す
るニ ュ ー トン の運 動 方 程 式 は, (6・17)
で あ る。 ハ ミ ル ト ン の 原 理 に よ っ て,式(6・17)の
運 動 方 程 式 へ 導 くた め の ラ グ ラ ン ジ
関 数 は,
(6・18)
で あ る 。 こ こ で,ベ
ク トル ポ テ ン シ ャ ル A,お
よ び ス カ ラ ー ポ テ ン シ ャ ル ψ は,
B=rotA
(6・19)
E=-∂A/∂t-gradψ
(6・20)
で あ る。
ラ グ ラ ン ジの 運 動 方程 式(オ d / dt 式(6・18)を
∂L
∂L =0
/∂x-
/∂x
イ ラ ー方 程 式)か
ら, (6・21)
用 い,式(6・17)の
x 成 分 を 求 め る。
(6・22)
(6・23)
(6・24)
(6・25)
こ れ ら 4式 を 式(6・21)に
代 入 す れ ば,
mx+eEx+e(yBz-zBy)=0
同 様 に,y,z成
(6・26)
分 を 求 め れ ば,式(6・17)
mr=-eE-e(r×B) が 得 られ る 。 ラ グ ラ ン ジ 関 数 式(6・18)か ∂L =mx-eAxで
つ い て はpx=
ら,r
と正 準 共 役 な運 動 量 p を求 め る。 x成 分 に
あ る 。
/∂x
す な わ ち, p=mr-eA
(6・27)
ハ ミ ル トニ ア ン H は,
(6・28)
古 典 力 学 の ハ ミ ル トニ ア ン,式(6・28)を
量 子 力 学 の ハ ミ ル トニ ア ン 演 算 子 に
お き 換 え る と き は,運
お き換 え る(1・5節)な
動 量 p を-i〓gradで
ら ば,
(6・29)
(6・29)′
(CGS単
で あ る。 た と え ば,一
様 な 磁 場B(0,0,B)が
ン シ ャ ル を 零 と す る。 式(6・19)か
z 方 向 に 作 用 し,電
場,ス
位 系) カ ラーポテ
ら,
(6・30)
式(6・30)を
式(6・29)に
代 入 す れ ば,
(6・31)
磁 場 が 非 常 に強 い と き は, (6・32)
と お く こ と が で き る。 電 子 線 を 一 様 な 磁 場 に 導 い た 場 合 で あ り,も (一 定)で
あ れ ば,電
子 運 動 の 軌 跡 のxy面
磁 場 が 十 分 弱 い と き は,式(6・31)で り大 き く な る 。 し た が っ て,
しx2+y2=a2
へ の 斜 影 は半 径 aの 円運 動 で あ る。 B の 一 次 の 項 の ほ う が,B
の 二 次 の項 よ
(CGS単
水 素 原 子 中 の 電 子 に 対 して,弱
位 系) (6・33)
い磁 場 を加 え た もの とす れ ば,原 子 核 に よ る ク
ー ロ ン ポ テ ン シ ャ ル ψ が 式(6・33)に
加 わ るので, (6・34)
(6・35)
(6・36)
は ボ ア 磁 子 で あ る。 無 摂 動 系 の 固 有 関 数 あ り,そ
固有関数 で
の 固 有 値 をE(0)nlと お け ば, (6・37)
で あ る 。磁 気 量 子 数mは│m│〓lの
条 件 が あ り,E(0)nlの エ ネ ル ギ ー に 対 し(2l+1)
重 の 縮 退 が あ る が,式(6・37)で の よ う に,磁 normal 10000ガ 6・3光
は,mに
よ る。 エ ネ ル ギ ー の分 離 が 生 ず る。 こ
場 に よ る エ ネ ル ギ ー の 分 離 を,ゼ
Zeeman
effect)と
ウ ス に 対 し 約2cm程
ー マ ン 効 果(正
ン 効 果,
い う。 分 離 は磁 場 の 強 さ に 比 例 し,1 ウ ェ ー バ ー/m2= 度 波 長 の ず れ が 観 測 さ れ る。
の 吸 収 ・発 散
真 空 中 の マ ッ ク ス ウ エ ル の 電 磁 方 程 式 に お い て,ス お き,光
常 ビ-セ
カ ラー ポ テ ン シ ャル を零 に
の 場 を ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル A だ け で 表 せ ば,
(6・38)
(6・39)
で あ る。 こ の方 程 式 の解 と して,
(6・40)
を 採 用 す る 。 式(6・39)か
ら,
E0・k=0
とな り,式(6・40)は 動 ベ ク トル,ω
(6・41)
横 波 を表 す。 式(6・40)のE0は
分極 方 向 を表 す。 k は 波
は光 の角 振 動 数 で あ る。
水 素 原 子 に よ る光 の発 散 ・吸 収 を取 り扱 う た め に は,光 に よ る電 磁 場 と電 子 と の相 互 作 用 を 考 慮 に入 れ た ハ ミル トニ ア ン を用 い る。 光 に よ る ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル を十 分 弱 い と仮 定 す れ ば, (6・42)
で あ る 。H′ は 式(6・40)を
代 入 し,
(6・43)
こ こ で,簡
単 の た め,p=-i〓gradと
置 き換 え て あ る
電 磁 場 の 存 在 に よ っ て 電 子 状 態 が 時 間 的 に 変 化 す る。 式(6・10)に
お け るH′j0は,式(6・43)を
用 い,
(6・44)
こ こ で,
(6・45) H′j0。に tが 含 ま れ て い る の で,式(6・10)は
書 に 換 え ら れ,
(6・46)
時 間 tで積 分 して,初 期 条 件 を代 入 す れ ば,
(6・47)
│aj│2は,t=0に
お い て ψ0状 態(エ
tに お い て ψj状 態(エ
ネ ル ギ ー 固 有 値E0)に
ネ ル ギ ー 固 有 値Ej)に
あ っ た 電 子 が,時
刻
遷 移 した確 率 に比 例 す る。
右 辺 第 1項 は, Ej-E0=〓
ω=hν
(6・48)
に 相 当 し た 振 動 数 ν の 光 量 子 吸 収(photon ーE0か
ら 終 状 態Ejに
absorption)に
よ り,始
状態 エネル ギ
遷 移 した こ と を表 す 。
(b)
(a) 図6・2
右 辺 第 2項 は, E0-Ej=hν
(6・49)
に 相 当 し た 振 動 数 υ の 光 量 子 発 散(photon よ り低 い エ ネ ル ギ ー 状 態Ejに
emission)に
状 態E0か
ら,
遷 移 した 場 合 を表 す 。 問 題 と して い る現 象 が 光 の
吸 収 か 発 散 の ど ち ら か を と も な う か に よ り,式(6・47)の 採 用 す る 。 光 の 強 さ は振 幅 の 2乗 に 比 例 す る の で,1 14)の
よ り,始
第 1項 ま た は 第 2項 を 周 期 の 平 均 を と り,式(6・
ρE,を 次 の よ う に お く。
(6・50)
ま た,光 +〓 ω)と
の 発 散 を 取 り扱 う と き は,式(6・14)の お き,光
の 吸 収 の 場 合 は 式(6・14)の
+〓 ω)と お け ば 良 い 。 し た が っ て,式(6・14)の い て は,変
終 状 態 の エ ネ ル ギ ー E を(E 初 状 態 の エ ネ ル ギ ーE0を(E0 エ ネ ル ギ ー に つ い て の積 分 に お
数 を (E-E0±〓
ω)
と お い て,x に つ い て-∞
t/〓 =x
か ら+∞
(6・51)
ま で の 定 積 分 を 行 う 。そ の 結 果,遷 移 確 率 は,
(6・52)
と な る 。n0は
光 の 分 極 方 向 の 単 位 ベ ク ト ル で あ る 。 遷 移 確 率 は 式(6・45)の
マ ト
リッ ク ス 要素 に よ っ て 決 ま る。 光 の 発 散 吸 収 は,原
子 の大 き さ の範 囲 内 に お け る電 子 の運 動 に よ っ て 生 ず るの
で,r の 大 き さ は10-8cm程 波 数 程 度 で あ る か ら,ほ く ら い で あ り,十 式(6・45)に
度 の 範 囲 内 で あ る 。 ま た,波 動 ベ ク トル k の 大 き さ は ぼ10+4く
ら い で あ る 。 し た が っ て,k・rの
大 き さ は10-4
分 小 さ い とみ な せ る 。 お い て 平 面 波 を 表 すeikrを
べ き級 数 に展 開 す る。
(6・53)
こ の式 の 第 1項 だ け を採 用 す る近 似 にお い て は, (6・54)
とな る。 さ て,原
子 双 極 子 モ ー メ ン ト(atomic
ば,式(6・54)は,原
dipole
moment)M=-erを
子 双 極 子 モ ー メ ン ト の マ ト リ ッ ク ス 要 素Mj0で
定義 すれ お き換 え る
こ とが で きる。 jお よ び 0状 態 の 波 動 方 程 式 は, Hψj*=Ejψj*,Hψ0=E0ψ0 で あ る 。 両 式 に そ れ ぞ れrψ0,rψj*を
掛 け て 差 を と り,十
分 大 きい 空 間 内 で 積 分
を行 う。 (Ej-E0)〓 〓2
H=
〓2+V(r)で
ψj*rψ0dr=〓rψj*Hψ0dr-〓rψ0*Hψjdr
あ るが
/2m
,右
辺 に お い て は,V(r)の
(6・55)
項 は,差
し引 き消 去
され る。 〓2
式(6・55)の
さ ら に,グ
右 辺=-
リー ン の定 理,お
/2m
〓r(ψj*〓2ψ0-ψ0〓2ψj*)dr
(6・56)
よ び 十 分 大 きい 表 面 に お け る表 面 積 分 に お い て,
波動 関 数 は 0で あ る こ と を用 いれ ば,
式(6・56)
(6・57)
と な る 。 式(6・56)か
ら式(6・57)へ
の 変 化 を 一 次 元 の 場 合 で 示 す な ら ば,
で あ る。 式(6・55)お
よ び(6・57)と
か ら,
(6・58)
を 得 る 。 式(6・54)お
よ び 式(6・58)と
か ら,
(6・59)
こ こ で,式(6・48)ま
た は式(6・49)を 用 い た。 この こ とは電 子 の 運 動 に よ り,
その 平 均 電 子 の位 置 が,正 電 荷 で あ る原 子 核 の 位 置 か らず れ て,原 子 が 電 気 双 極
子 モ ー メ ン トを 持 つ と き に,光
の 吸 収 ・発 散 が あ る も の と考 え られ,光
放 射 と称 す る 。 ま た,式(6・59)の わ る 。 す な わ ち,反 ば,そ
r は 座 標(x,y,z)の
対 称 関 数 で あ る 。 し た が っ て,ψj,ψ0が
の双極子
反 転 に 対 し符 号 が 変 と も にs-状
態 であれ
の 積 は 対 称 関 数 と な り,双 極 子 モ ー メ ン トの マ ト リ ッ ク ス 要 素 は 零 に な る 。
こ の よ う な 状 態 間 の 遷 移 は 存 在 し な い 。 し た が っ て,2s-状 遷 移 は お こ ら な い 。 光 の 吸 収 発 散 に と も な い,2p-状
態 と1s-状 態 と の 間 の
態 と1s-状 態 と の 問 の 遷 移 は
生 ず る。 この こ と を選 択 則 とい う。 式(6・53)に 代 わ り に,(r2)の
お い て,右
辺 第 2項 の(ikr)の
マ ト リ ッ ク ス 要 素 が 現 わ れ る 。 こ れ に よ る 光 の 吸 収 発 散 は,四
重 極 子 吸 収 ま た は 発 散 と い い,摂 り,小
項 を 採 用 す れ ば,式(6・59)の
動 エ ネ ル ギー 項 の二 次 の マ ト リ ッ クス 要 素 とな
さ な 値 と な る 。 双 極 子 放 射 が 禁 じ ら れ て い る 状 態 で も,中
遷 移 が お こ る こ とが あ る。
間 状 態 を通 じて
7.2原 7・1変
子分子
分 法 近 似
分 子 は多 数 の荷 電 粒 子 か ら成 立 して い る の で,波 動 方 程 式 を完 全 な形 で 解 く こ とは,非 常 に複 雑 で あ り,困 難 で あ る。 した が って,近 似 法 に よ っ て得 られ た 解 で,分 子 の 性 質 の概 要 を知 る こ とに す る。 は じめ に 仮 定 さ れ た 波 動 関 数 ψ の 中 の パ ラ メ ー タ を少 しず つ 変 化 させ,そ の 形 の 波 動 関 数 と して は最低 の エ ネ ル ギ ー期 待 値 を得 る もの とす る。 この こ と は,仮 定 され た形 の ψ と して は,一 番 実 際 の エ ネル ギ ー に 近 い状 態 で あ る と思 わ れ る。 こ の よ うな 手 法 を変 分 法 と い う。 シ ュ レ デ ィン ガ ー の 波 動 方 程 式 が 簡 単 に は解 け な い と き,摂 動 展 開 の収 敷 が 悪 い と きな ど に この 方 法 が 用 い られ る。 2原 子 分 子 の シ ュ レデ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 を, Hψ=Eψ
(7・1)
とす る。 左 か ら,ψ*を 掛 け て空 間 積 分 す れ ば,
(7・2)
ψ を,す
で に 関 数 型 の わ か っ て い る{ψi}に
よ っ て 展 開 で き る も の と仮 定 す る 。 (7・3)
Ciは パ ラ メ ー タ ー で あ る 。式(7・2)の 3)を
式(7・2)に
E が 極 小 と な る 条 件 を 考 慮 す る 。式(7・
代 入 す る。
(7・4)
こ こ で,
H・ 一fit・H・
・d・
(7・5)
⊿ ・一 ∫ ・・*・・d・
(7・6)
ψiは お 互 い に 直 交 す る と は 限 ら な い 。 し た が っ て,⊿uはi=jで
あ っ て も零 に
な る と は 限 ら な い 。 こ れ を 重 な り積 分 と い う 。 式(7・4)に
お い て,CkeCk*を
独 立 と考 え,ま
ずCk*で
(k=1,2,…
偏 微 分 す る。
。.∴・。・)
(7・7)
Eの 極 小 条 件 は, aE =o ack*
(k=1,2,.・,,・
で あ る か ら,式(7・7)か
ら,
Σ(H如-E⊿
幻)Cj=0
式(7・9)の
(7・8)
・)
(k=1,。
・・と・・・・・n)
の条 件 は,次
連 立 方程 式 に お い て,変 数{Ct}が
(7・9)
同 時 に は零 で な い根 が あ る た め
の 固有 値 方 程 式 が 成 立 す る こ とで あ る 。 Hll-Edu
Hiz-Ed,z
。・・と.。Hln-E⊿1π
HZ,一Eda,
=o
Hnt-Edni
このn次
(7・10)
Hnn-Ednn
方 程 式 の根 が 求 め る もの で あ る。
例 と し て,水 素 分 子 を取 り上 げ る。 この2つ と仮 定 す る 。2つ の 電 子 を そ れ ぞ れ1,2で
の 陽 子A,Bは
静 止 して い る もの
表 す 。 式(4・26)の
ハ ミル トニ ア ン は,
(7・11)
で あ る 。 γA1,γB1,γA2,γB2,γ12よ
び γABは,2
つ の 陽 子 と 2つ の 電 子 の そ れ ぞ
れ の 間 の相 互 距 離 で あ る。 固 定 さ れ て い る 2つ の 陽 子 は 相 互 に 区 別 で き る が,動 道 が 交 叉 す る と,相
互 に 区 別 す る こ と が で き な い 。 は じ め に,2
お 互 い に 適 当 に 離 れ て い る と き は,γABお (7・11)に
お い て,こ
い て い る 電 子 は,そ
の軌
つの水素原子 が
よ び γ12は 大 き な 距 離 に な る の で,式
の 項 は 無 視 す る こ とが で き る 。 2 つ の 電 子 が A ま た は B の
原 子 核 の ど ち ら に つ い て い る か 区 別 で き な い と い う こ と を 考 慮 す れ ば,
(7・12)
ま た は,
(7・13)
の 2つ の 場 合 が 考 え ら れ る 。 水 素 分 子 の 最 低 エ ネ ル ギ ー 状 態 を 取 り扱 う に は,2 と き,そ れ ぞ れ の 電 子 がls-状 数 を,A
つ の原 子 が 十 分 離 れ て い る
態 に あ る も の と 考 え る の が 妥 当 で あ る 。そ の 波 動 関
原 子 に つ い て は ψ1sA,B 原 子 で は ψ1sBと す る.
式(7・12)ま
た は 式(7・13)の
固 有 状 態 は そ れ ぞ れ,
ψ1=ψlsA(1)・ ψlsB(2)
(7・14)
ψ2=ψlsA(2)・ ψlsB(1)
(7・15)
とお き得 る。 A,B原
子 が 十 分 近 づ い て 分 子 を つ く り,1,2の
な れ ば,式(7・14)お
よ び(7・15)の
電 子 の軌 道 が 交 錯 す る よ う に
一 次 結 合 と して 分 子 の 最 低 エ ネル ギ ー 状
態 の 波 動 関 数 が つ く ら れ る と仮 定 す れ ば,式(7・3)の
ψ は,
ψ=C1ψ1+C2ψ2 =C1ψ1sA(1)ψ1sB(2)+C2ψ1sA(2)ψ1sB(1) と採 る こ とが で き る 。ψlSは そ れ ぞ れ 規 格 化 さ れ て い る が,ψ1sAと が 異 な っ て い る の で,直 は,
交 は し て い な い 。 こ の 場 合 の 式(7・10)の
(7・16) ψ1sBは核 の 位 置 固 有値方程 式
(7・17)
で あ る 。 こ こ で,
で あ る 。 H は 式(7・11)で 式(7・17)の
あ る。
エ ネ ル ギ ー 固 有 値 E の 解 は,
または 式(7・21)のESま
た はEAを
式(7・9)の
(7・21)
E に 代 入 し,C1お
よ びC2を
する。
(7・22)
式(7・22)の
連 立 方 程 式 か ら,
C1s=+C2sま
式(7・16)の
た はC1A=-C2A
波 動 関 数 は,固
固 有 値EAに
有 値ESに
(7・23) 対 し て, (7・24)
対 し て は,
式(7・24)は1,2の 反 対 称 関 数 で あ る。
(7.25) 電 子 座 標 の 交 換 に 対 し て 対 称 関 数 で あ り,式(7・25)は
決定
C1S,C1Aは
ψs,ψAが
〓
そ れ ぞ れ,規
ψs*ψsdr1dr2=〓
格 化 条 件 をみ た す よ う に決 め られ る。
ψA*ψAdr1dr2=1
(7 ・26)
す な わ ち,
(7・27)
(7・28)
+符 号 だ け を採 用 して い る。 規 格 化 され た対 称 関 数,反 対 称 関 数 は それ ぞ れ, (7・29)
(7・30)
で あ る 。 ス ピ ン 関 数 を も 考 慮 に 入 れ れ ば,式(7・29)お は,そ
れ ぞ れ 式(4・42)お
式(7・29)に
よ び(4・41)と
よ び(7・30)に
同 様 に 取 り扱 え ば よ い 。 す な わ ち,
は 2電 子 系 の 反 対 称 ス ピ ン 関 数 を 掛 け,式(7・30)に
ン 関 数 を 乗 じ て,1,2の
1重 項 の 状 態 に 対 応 し,EAは
状 態 に 対 応 す る 。 式(7・21)の
エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は,水
3重 項 の エ ネ ル ギ ー
素 原 子 の波 動 関 数 お よび
そ の 固 有 値 か ら 数 値 計 算 さ れ る 。 ψ1sに つ い て は,式(3・80)の 式(3・81)の
は対 称 ス ピ
電 子 の交 換 に対 して全 体 とし て反 対 称 関 数 に しな け れ ば
な ら な い 。 し た が っ て,Esは
固有低
ついて
ψ1s,お よ び そ の
を 用 い る。 i=1,2 (7・31)
a=A,B ハ ミル トニ ア ン の 対 角 マ ト リ ッ ク ス 要 素 は,
(7・32)
た だ し,
(7・33)
(7・34)
ハ ミ ル トニ ア ン の 非 対 角 マ ト リ ッ ク ス 要 素 は,
(7・35)
た だ し,
(7・36)
(7・37)
で あ る。式(7・34)は,eρA(1)は 度,eρB(2)は
1の 電 子 が A 陽 子 の ま わ り に あ る と き の 荷 電 密
2 の 電 子 が B 陽 子 の ま わ り に あ る と き の 荷 電 密 度 で あ る か ら,こ
ら の 電 子 内 の ク ー ロ ン 相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー(direct electron
interaction)で
energy
energy
of electron-
あ る。
こ れ に 対 し て,式(7・37)は,ク Coulomb
Coulomg
of electron-electron
こ れ ら の 結 果 を 用 い て,式(7・21)か
ー ロ ン の 交 換 相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー(exchange interaction)で
れ
あ る。
ら,
(7・38)
(7・39)
を 得 る。 数 値 計 算 に よ る,基
底 状 態 のEsお
内 原 子 間 距 離 は,0.74×10-8cm,解
よ びEAの
理 論 値 は,図7・1で
離 エ ネ ル ギ ー は3.14eVで
あ る。 分 子
あ る。
図7・1
水 素 分 子 の 原 子 間 距 離 お よ び 解 離 エ ネ ル ギ ー の 実 験 値 は そ れ ぞ れ0.74× 10-8cm,3.2eVで
ある。
水 素 分 子 の励 起 状 態 を 求 め る た め に は,ψ1sだ け で はな く,ψ2S,ψ2p等 との 組 合 せ を とれ ば よ い 。励 起 状 態 の エ ネ ル ギ ー は,図7・1の
点線 の よ う にな る。分 子 の
発 光 は,こ の 励 起 状 態 か ら基 底 状 態 へ電 子 が 遷 移 す る と きに と もな われ る,発 散 スペ ク トル で あ っ て,可 視 光 線 の波 長 程 度 に な る。Esは 2電 子 系 の 全 ス ピ ンの 大 きさ S が 0(1 重 項)で で は,EA←
7・2
→Es間
あ り,EAは
S が 1(3 重 項)で
あ る か ら,通 常 の 条件
の遷 移 はお こ らな い 。
2原 子 分 子 の 振 動 エ ネ ル ギ ー
気 体 の 原 子 ス ペ ク トル を観 測 す る場 合 よ り も,放 電 管 の 中 の 気 体 の圧 力 を少 し
高 め に して放 電 させ る と,分 子 ス ペ ク トル(バ
ン ドスペ ク トル)が
得 られ る。 特
徴 は等 間 隔 の 波 長 差 を持 っ た スペ ク トル線 が あ る こ とで あ る。 この 波 長 差 が 赤 外 線 の 波 長 程 度,す なわ ち ほ ぼ10-4cmの
もの は,分 子 内 2つ の 原 子 の 相 対 的 振 動 運
動 に と もな っ た エ ネ ル ギ ー 状 態 問 の 遷 移 に よ って 得 られ る も の で あ る。 これ ら振 動 運 動 に よ るス ペ ク トル の 閲 に 波 長 差 が 遠 赤 外 線 程 度 の ス ペ ク トル 線 が何 本 も見 られ,こ
れ らが い くつ か ま と ま って 繰 り返 して い る よ うに み え る 。 こ れ ら の ス ペ
ク トル 線 は分 子 内 の 2つ の 原 子 の 相 対 的 回転 運 動 に よ る エ ネ ル ギ ー 状 態 か ら得 ら れ る スペ ク トル で あ る 。 放 電 管 中 の イ オ ンの 平 均 自 由行 程(mean
freepath)が
比 較 的 小 さ く,衝 突 前
の イ オ ンの 電 場 に よる加 速 エ ネ ル ギ ー が小 さ くて,分 子 を解 離 す る ほ どで な い場 合,分 子 の ま ま で励 起 され,そ
れ が 基 底 状 態 に も どる と き,分 子 ス ペ ク トル を放
射 す る。 分 子 内 原 子 の振 動 運 動 は,分 子 構 造 の対 称 性 に よ って 振 動 す る 方 向 が 決 ま るが, こ こで は簡 単 に,2 つ の原 子 を結 ぶ x 方 向 だ けで 振 動 して い る も の と仮 定 す る 。 核 の質 量 は電 子 の質 量 に比 べ十 分 大 き く,核 の運 動 は電 子 に比 較 し て 非 常 に ゆ っ く りで あ る。 した が っ て,核
の 運 動 を問 題 にす る と き は,電 子 は核 に あ る種 の 平
均 的 ポ テ ン シ ャ ル を与 え る だ けで あ る と考 え る。 す な わ ち,断 熱 近 似 を用 い る 。 2原 子 分 子 に お い て,2 質 量 を それ ぞ れm1,m2,そ
つ の 核1,2は
平 衡 位 置 を中 心 に振 動 して い る。 核 の
の 座 標 をxl,x2,1,2の
距 離 を ρ とす る。 こ の 系 の
シ ュ レ デ ィ ン ガ ー の 波 動 方 程 式 は, (7・40)
U(ρ)は,ρ=ρ
。に お い て 極 小 値 を 持 つ,2
エ ネ ル ギ ー で あ っ て,式(7・1)に る 。 式(7・40)を,変
数xl,x2か
つ の粒 子 間 の相 互 作 用 ポ テ ン シ ャル
お け る E で あ る 。 ま た ρ は 図7・1の
γABで あ
ら 2つ の粒 子 の 重 心 座 標 X と相 対 座 標 ρへ 変
換 す る。
(7・41)
座 標 変 換 の 結 果 は, (7・42)
変 数 を分 離 す る た め, ψ=X(x)・P(ρ) とお き,式(7・43)を
(7・43)
式(7・42)に
代 入 する。変数分 離定数 を W
とお け ば,
(7・44)
(7・45)
を得 る。 式(7・44)は,分 る。 式(7・45)の
子 の重 心 の運 動 で 平 面 波 で あ る。 古 典 力 学 で は並 進 運 動 で あ 相 対 運 動 につ い て は,
(7・46)
と お け ば,
(7・47)
I は 分 子 の 慣 性 モ ー メ ン ト(moment
of inertia),μ
は 換 算 質 量(reduced
mass)
で あ る。 U を 平 衡 点x=0の
近 く で,x
の べ き級 数 に 展 開 す れ ば,
(7・48)
U0は
ポ テ ン シ ャ ル 極 小 の 値,k 2I / h2
(E-W-U0)=λ,
は あ る 定 数 で あ る。
α2
=Ik / h2
(7・49)
と お け ば,式(7・47)は, d2P / dx2
+(λ-α2x2)P=0
さ ら に,y=√αxと d2P / dy2
(7・50)
お け ば,
-y2)P=0
+(λ/a
P(y)=
(7・51)
と し て,χ(y)の 微 分 方 程 式 に 変 換 す れ ば, (7・52)
式(7・52)の た と き,Snの
微 分 方 程 式 の 解 は,次 係 数Hn(ξ)で
の 母 関数S(ξ,s)を
sの べ き級 数 に展 開 し
あ る。
(7・53)
式(7・53)を
ξ お よ び sで 微 分 す る 。
(7・54)
(7・55)
式(7・54)お
よ び(7・55)に
お い て,s
の 同 一 べ き の 係 数 を 比 較 す れ ば,
Hn′=2nHn-1
(7・56)
Hn+1=2ξHn-2nHn-1
(7・57)
式(7・56)の
n を(n+1)に
お き換 え れ ば,
Hn+1′=2(n+1)Hn
式(7・56)お
よ び(7・57)を
(7・58)
ξ で 微 分 す れ ば,
Hn″=2nHn-1
(7・59)
Hn+1′=2Hn+2ξHn′-2nHn-1
(7・60)
式(7・58),(7・59)お
よ び(7・60)か
ら,エ
ル ミ ー トの 微 分 方 程 式
Hn″-2ξHn′+2nHn=0
(7・61)
を得 る。 式(7・52)と
式(7・61)を
2n=
とお け ば,Hnと 式(7・61)の
比 較 し,
λ/-1 α
(7・62)
χ と は同 一 で あ る。 解 は,エ
ル ミー
ト 多 項 式(Hermitian
Polynomial)
(7・63)
で あ る。 また エ ル ミー ト多 項 式 は次 の 性 質 を持 つ。
(7・64)
(7・65)
式(7・53)の
sの べ き級 数 展 開 か らエ ル ミー ト多 項 式 の次 数 の 小 さい もの を書
け ば, H0(ξ)=1,
H1(ξ)=2ξ,
H2(ξ)=4ξ2-2,
H3(ξ)=8ξ3-12ξ,H4(ξ)=16ξ4-48ξ2+12
(7・66)
で あ る。 式(7・52)と
式(7・61)を
比 較 し,ξ=yと
お け ば,規
格 直 交 系 ど し て, (7・67)
を得 る。 式(7・47)の
固 有 値 E は,式(7・49)お
よ び(7・62)か
ら λを 求 め れ ば よ い 。
同 じ結 果 は 次 の よ う に し て も得 ら れ る。 式(7・52)の
解 χ を yの べ き級 数 に展 開 す る。 (7・68)
こ の 展 開 を 式(7・52)に
代 入 す れ ば,
ynの 係 数 を比 較 して,
(7・69)
n+2=μ
と お け ば,右
ら始 ま る の でaμ-2=0で
辺 は,aμ-2に
比 例 す る 。 式(7・68)は
あ る 。 式(7・69)の
n を μ-2と
yの μ乗 べ きか
お け ば,(n+2)(n+1)
は, μ(μ-1)=0 μ=0の
∴
μ=0ま
と き は,a0〓0,a1=0と
た は μ=1(7・70)
と る こ と が で き,式(7・69)か
は偶 数 べ き の 展 開 に な る。 式(7・69)に
ら式(7・68)
お い て n が 大 き く な っ た と き,右
辺 にお
い て,
(7・71)
と な る n が あ る 。 そ の と き右 辺 のan+2=0と
な り,以 下an+4=an+6=…
…=0と
な
り偶 数 べ き の 有 限 多 項 式 と な る 。 μ=1の
と き は,a1〓0,a0=0と
開 に な る 。 前 と 同 様 に,n
と る こ と が で き,式(7・68)は
奇 数 べ きの 展
が 大 き く な っ た と き,
(7・72)
と な る n が 存 在 し,an+2=an+4=… 式 と な る 。 式(7・71)お
…=0と
よ び(7・72)を
な る 。す な わ ち,奇
数 べ きの 有 限 多 項
1つ に ま と め,
(7・73)
と な る 。 こ の 式 は,式(7・62)と 49)を
考 慮 に 入 れ て,
一 致 し,固
有 値 E を 決 め る 関 係 で あ る 。 式(7・
振 動 運 動 の エ ネ ル ギ ー だ け を取 り上 げれ ば よ い の で,W+U0=0に
エ ネル ギー
の基 準 を とれ ば,
(7・74)
とな る。 等 間 隔 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 が 得 られ る。
は固 有 振 動 数 で あ る。
図7・2
式(7・74)を
式(1・9)と
量 子 数n=0に
比 較 す れ ば,1/2hω
だ け 異 な る 。 こ の エ ネ ル ギ ー は,
お け る エ ネ ル ギ ー で あ っ て,零 点 振 動 エ ネ ル ギ ー と い う 。量 子 力 学
に お け る不 確 定 性 原 理 を み た す た め,エ
ネル ギ ー の値 が 決 定 され た と き
,位
置 も
は っ き り と決 定 さ れ るわ け に い か ず ポ テ ン シ ャ ル の極 小 点 近 くを振 動 して い る こ と を 示 し て い る 。 ω の 測 定 に よ り,U
す な わ ち 式(7・1)の
E を 近 似 的 に知 る こ
とが で きる。
7・3双
極 子放 射 の選 択 則
一 次 元 振 動 系 の 古 典 力 学 に お け る ハ ミル トニ ア ン は
,粒 子 の質 量 を M,固 有 振
動 数 を ω とす れ ば,
(7・75)
d/
で あ る 。 こ こ で,pxを-ih
dx
に お き換 えれ ば,量 子 力 学 にお け る ハ ミル トニ ア
ン演 算 子 を得 る。 (7・76)
シ ュ レ デ ィ ンガ ー の波 動 方程 式 は, (7・77)
で あ る 。 こ こ で,
2M/ E=λ, h2
Mω/ =α と お け ば, h (7・78)
と な り,式(7・36)と
pxを-ih
d/ dx
同一 で あ る。
と お く こ と は,x
とpxと
の 交 換 関 係 を規 定 す る こ と と同 一 で あ
る。
[x,px]=xpx-pxX=ih
次 に,H
と x お よ びpxと
(7・79)
の 交 換 関 係 をつ くる。
(7・80)
(7・81)
次 に,H
を 対 角 化 す る 固 有 状 態 に つ い て,式(7・80)お
よ び(7・81)の
リ ッ ク ス 要 素 を つ く る 。 2つ の マ ト リ ッ ク ス の 積 の 関 係 を 用 い て,m,n要
マ ト 素 は,
(7・82)
同 様 に し て, (Hpx−pxH)mn=(Em-En)<m│px│n>=ihMω2<m│x│n> こ こ で,各
演 算 子 の マ ト リ ッ ク ス 要 素 と し て,デ
(7・83)
ィ ラ ッ ク の ブ ラ ッ ケ ッ ト記 号
を 用 い て い る 。 た と え ば,
<i│H│j>=〓
ψi*Hψjdr
(7・84)
で あ る。 式(7・82)お
よ び(7・83)か
ら,<m│Px│n>
を 消 去 す れ ば,
{(Em −En)2−h2ω2}<m│x│n>=0
∴(Em−En−hω)(Em−En+hω)<m│x│n>=0
(7・85)
し た が っ て, xmn=<m│x│n> 74)か
ら,Eπ=hω
〓0で
な い 場 合 は,Em-En=±hω 1
の 場 合 だ け で あ る 。 式(7・
(n+ ) /2
で あ る か ら,Em-En=hω(m‐n)=±hω
で あ る。
∴m=n±1
(7・86)
xmn=<m│x│n> す る の で,振 る,と
は,式(6・41)の
電 気 双 極 子放 射 の マ ト リ ッ ク ス要 素 に該 当
動 系 に お い て は,量
子 数 が 1だ け 異 な る 状 態 の 間 に だ け 遷 移 が お こ
い う選 択 則 が 得 られ る。
式(7・75)に
お け る 変 数x,Pxか
ら新 し い 変a,a*に
変 換 す る。
(7・87)
(7・88)
a,a*の
変 換 関 係 は 式(7・79)か
ら,
[a,a*]=aa*−a*a
=1 /2Mωh
[(Mωx+ipx)(Mωx−ipx)-(Mωx-ipx)(Mωx+ipx)]
=i (pxx-xpx)=1 /h
(7・89)
式(7・87)お
よ び(7・88)の
逆 変 換 は,
(7・90)
(7・91)
で あ る か ら,式(7・75)の
H
は,式(7・89)の
交 換 関 係 を 用 い て,
(7・92)
式(7・49)と
式(7・92)の
比 較 か ら,
a*a=n と お く こ とが で き る 。a*aは と き,こ
7・4
の よ う な 変 数a,a*を
(7・93) 正 整 数 を 表 し,数 演 算 子 と い う 。多 粒 子 系 の 取 扱 い の 用 い る と便 利 で あ る 。
2原 子 分 子 の 回 転 エ ネ ル ギ ー
2原 子 分 子 の 回 転 エ ネ ル ギー を,簡 単 な鉄 亜 鈴 モ デ ル を仮 定 して計 算 す る 。 質 量m1,m2の
原 子 が 相 対 距 離 ρ0を変 化 す る こ とな く,重 心 の まわ り に回 転 して い
る もの とす る。 そ の 回転 部 分 だ け の 運 動 エ ネ ル ギー を求 め る° 2粒 子 系 の シ ュ レデ ィ ン ガー の波 動 方 程 式 は, (7・94)
U は,2 粒 子 間 の相 互 作 用 に よ るポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー で あ っ て,7・1節 E に該 当 す る。 粒 子 間 の相 対 距 離 ρを U の極 小 値U0に (7・94)に
固 定 し,ρ0と お く。 式
次 の座 標 変 換 を適 用 す る。
相 対 座 標R(X=x1-x2,Y=y1-y2,Z=z1-z2)
重心座 標
の
(7・95)
(7・96)
式(7・94)の
ψ を変 数 分 離 す る。 (7・97)
RGの 運 動 は重 心 の 並 進 運 動 で あ っ て,式(7・31)と
同 等 で あ る。 この部 分 の エ
ネ ル ギ ー は 分 子 状 態 の遷 移 に よ る,光 の 吸 収 発 散 の 波 長 に は あ ま り効 い て こ な い た め,R
の 運 動 だ け を 問題 にす る。
変 数 分 離 定 数 をWtと
す れ ば, (7・98)
相対 座 標(X,Y,Z)を
極 座 標 に 変換 す る。 Z=ρ0cosθ(7・99)
ま た, (7・100)
と お け ば,式(7・98)は,
(7・101)
と な る 。 式(7・101)は
式(3・6)と
同 等 で あ る 。 し た が っ て 固 有 値 は,
(7・102)
で あ る。 式(7・100)に
お い て,Wt+U0は
あ る 定 数 で あ る か ら,こ
れ を 零 と お き,回
転
状 態 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 だ け を と り出 せ ば,
(7・103)
で あ る。量 子 数 J の 1だ け の差 に よ る エ ネ ル ギ ー の差 は遠 赤 外 線 の 波 長 程 度 に な る。 こ こで は,2 原 子 分 子 の運 動 を は じ め か ら,並 進 運 動,振
動 運 動,回
転運動 と
別 々 に分 離 し て取 り扱 っ た が,本 来,三
次 元 の運 動 とし て綜 合 的 に処 理 しな けれ
ば な らな い 。 2電 子 系 波 動 関 数 で は,パ
ウ リの原 理 に従 う よ う に,電 子 の 交 換 に 対 して 反 対
称 に しな けれ ば な らな い。 水 素 分 子 の 波 動 関 数 につ いて も同様 の 条 件 が あ る。 水 素 原 子 の 核 は 陽子 で あ っ て,ス
ピ ン は1/2の 大 きさ を持 つ フ ェ ル ミ粒 子 で あ
る。 した が っ て,水 素 分 子 は 2つ の フ ェル ミオ ン に よ っ て つ くら れ て い る か ら, パ ウ リの 原 理 を満 足 す る よ う に,核 の交 換 に対 し て反 対 称 に し な け れ ば な ら な い 。 2個 の 電 子 は核 の 運 動 に対 し非 常 に 早 い の で,こ れ ら は ポ テ ンシ ャル U に効 い て い る もの と考 え て い る。 水 素 分 子 の 状 態 は,2 個 の陽 子 に つ い て だ け考 え れ ば よ い。 水 素 分 子 の ス ピ ン波 動 関 数 χsは,2 電 子 系 の ス ピ ン波 動 関 数 と全 く同 様 に とる こ とが で きる。 全 ス ピ ン S に つ い て, S=0
α(1)β(2)-α(2)β(1)反
対称 関数
一 重項
(7・104) S=1
α(1)α(2),α(1)β(2)+α(2)β(1),β(1)β(2)対
称 関数
三 重項
(7・105)
こ こで,1,2は
2つ の 陽 子 の番 号 で あ る。
2つ の 陽 子 の軌 道 運 動 に 関 す る 波 動 関 数 は,重 心 運 動,振 動 か らな り,お 互 い に独 立 で あ れ ば,そ
動運動 お よび回転運
れ ぞ れ の波 動 関 数 の 積 で 与 え られ る。
ψ=ψt・ψv・ ψr
(7・106)
ψt,ψvお よび ψrは,そ れ ぞ れ 重 心 の 並 進 運 動,振 動 運 動 お よ び 回転 運 動 の 状 態 を表 す 波 動 関 数 で あ る。 2つ の 陽子 の 交 換 に対 し て,重 心 の 位 置 は不 変,ま
た,陽 子 間 の相 対 距 離 の大
き さ も不 変 で あ る。 し たが っ て,ψtは 重 心 の 位 置 の関 数,ψvは 陽 子 間 相 対 距 離 だ けの 関 数 で あ るか ら,陽 子 の交 換 に対 して 不 変 で あ る。 これ に対 し,ψrは 式(7・101)の
Фに 該 当 す る関 数 で,球 面 調 和 関 数 で 表 さ れ
る。 た と えば, J=0
の と き
ψr=定 数
(7・107)
(7・108)
で あ る 。 式(7・108)に
お い て,X,Y,Zは,2
つ の 陽 子 の 相 対 座 標 のx,y,
z成 分 で あ る 。 式(7・95)が,X=x1-x2,Y=yl-y2,Z=z1-z2で
あ る か ら,2
2の 交 換 に 対 し て は,x2-x1,y2-yl,z2-z1,と す る 。 式(7・105)か
ら,量
な り,X,Y,Zは
子 数J=1に
つ の 陽 子 1, 符 号が変化
対 す る ψrは 核 の 交 換 に 対 し て 反 対 称 で
あ る。 J=2に
対 す る ψrは,X,Y,Zの
は 対 称 的 で あ る 。 し た が っ て,陽 数 は,2
二 次 式 で 表 さ れ る の で,核
の 交 換 に対 して
子 の ス ピ ン も 考 慮 に 入 れ た,水
素分 子 の波 動 関
つ の 陽 子 の 変 換 に 対 し て 反 対 称 に な ら な い た め,次
そ れ ぞ れ パ ラ 水 素,オ
の よ うな 形 とな る。
ル ソ水 素 とい う。
オ ル ソ水 素 は,パ ラ水 素 の 3倍 の状 態 量 とな り,水 素 分 子 の 回 転 エ ネ ル ギ ー に 関 す るス ペ ク トル は,1 本 お きの 強 度 が3:1に
7・5ス
な っ て い る。
ペ ク トル 線 の 幅
1本 の ス ペ ク トル線 は単 一 波 長 λ0だけで は な く,λ0を 中 心 に ⊿λの 中 の範 囲 内 に あ る種 々 の 波 長 を持 った 光 の集 合 で あ る。 この 原 因 は,発 光 粒 子 が,状 態 の遷 移 に よ りλ0の波 長 の光 を発 散 す る と き,粒 子 の 熱 運 動 に とも な う ドップ ラ-効 果 (Doppler effect)に よ り,実 際 に発 散 す る光 の 波 長 λが λ0と少 し異 な る こ とに 原 因 す る。 この 際 の粒 子 の 運 動 が,重
心 の 並 進 運 動 で あ っ て,ス ペ ク トル 線 の幅 に
効 い て く る。 スペ ク トル 線 の幅 に効 く原 因 は他 に もあ るが,こ
こで は ド ップ ラー
効 果 だ け を問 題 に す る。 光 の 波長 を観 測 す る に あ た り,x 方 向 か ら来 る光 を ス ペ ク トル に と る もの と し, ドッ プ ラ ー 効 果 を う け た発 散 光 の 波 長 λは,
(7・109)
で あ る 。 υxは 粒 子 の 速 度 の x 成 分,C
は光 の速 度 で あ る。
図7・3
温 度 T で 熱 平 衡 状 態 に あ る n個 の質 量 m の 理 想 気 体 粒 子 を 仮 定 す る マ ッ ク ス ウ ェ ル ・ボ ル ツ マ ン の 分 布 則 を と る も の と し,υxと
υx+dυxと
の 間 に あ る粒 子
か ら 出 る 光 の 強 度 は, I(υx)dυx=αf(υx)dυx こ こ で,a
(7・110)
は 粒 子 1個 あ た り光 を 発 散 す る 割 合 を 表 す 定 数 で あ る 。 ま た,f(υx)
は マ ッ ク ス ウ ェ ル ・ボ ル ツ マ ン の 分 布 関 数 で あ る 。
(7・111)
kBは
ボ ル ツ マ ン定 数 で あ る。
式(7・109)か
ら,
(7・112)
微 小 変 化 を とれ ば, dυx=
C /λ0
dλ
式(7・111),(7・112)お
(7・113)
よ び(7・113)を
式(7・110)に
代 入 す れ ば,
(7・114)
た だ し,中 心 波 長 λ0にお け る光 の 強 度 は, (7・115)
式(7・114)に
お い て,λ=λ0+⊿
1 λ の と きI(λ)/I(λ0)= /2 で あ る か ら,
(7・116)
上 式 の 対 数 を とれ ば, (7・117)
スペ ク トル線 の 幅 と温 度 の 関 係 で あ る。
索
あ
引
規 格 直 交 系
行
ア ス テ リス ク
10
12,83
逆 変 換
29
吸 1重 項
59,87
収
77
球 面 調 和 関 数 行
運 動 の 保 存 量
24
l-sカ
54
ッ プ リ ン グ
18
期 待 値
エ ー レ ン フ ェ ス ト
30,38
列
13
極 座 標
31
極 座 標 表 示
29
銀原 子線
49
グー ドシ ュ ミ ッ ト
49
クー ロ ン相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー
88
3
エ ネ ル ギ ー 固 有 値
40
エ ル ミー ト演 算 子
15,25
エ ル ミー ト行 列
13
クー ロ ンの 交 換 相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー 88 ク ロ ネ ッカ ー
エ ル ミー ト多 項 式
93
エ ル ミー トの 微 分 方 程 式
93
オ イ ラ ー 方 程 式
75
50
原子 間 距 離 オ ル ソ水 素
101 か
行
6,49,89
原子 双極 子 モ ー メ ン ト
80
コ ンプ トン効 果
ガ ウ ス 関 数
7
解 離 エ ネ ル ギ ー 角 運 動 量
89
原子 スペ ク トル
89 23,27,28
1
交 換 関 係
12,96
合 成 角 運 動 量
58
合 成 ス ピ ン
58
角 運 動 量 シ フ ト演 算 子
67
光 電 効 果
角 振 動 数
78
固 有 状 態
確 率 密 度
11
固 有 振 動 数
重 な り積 分
84
固 有 値
換 算 質 量
91
固 有 値方 程 式
慣 性 モ ー メ ン ト
91
完 全 性 の 条 件
19
1 44,45 2 44 15,64,65,68,84,85 さ
3重 項
行 59,87
索
引
才 差 運 動
25
遷 移 金 属 原 子
座 標 変 換
29
全 角 運 動 量
47,48 54
選 択 則 CH4(メ
タ ン)
46
シ フ ト演 算 子
双 極 子 放 射
26,27,51
シ ュ タ ル ク効 果
64
シ ュ テ ル ン ・ゲ ー ル ラ ッ ハ シ ュ レ デ ィ ン ガ ー
82,95,97 95
相 対 座 標
49
90,98 た
1,8,9,10
行
磁 気 モ ーメ ン ト
49,52
対 角 行 列
28,29
磁 気 量 子 数
33,44
対 角 表 示
51 57
四重 極 子
82
対
始 状 態
73
多 粒 子 系
周 期 律 表
57
断 熱近 似
終 状 態
73
断 熱不 変 量
重 心 座 標
90,98
自 由粒 子
21
縮
退
主量 子 数
16,45,46,47,63 40,44
称
98 90 1,3
断 熱変 化
1
直 交座 標
31
直 交性
16
ス ター
10
D
ス ピ ン
49
δ-関 数
18,19
デ ィ ラ ッ ク
19,97
ス ピ ン ・軌 道 相 互 作 用
54,66
線
49
ス ピ ン シ フ ト演算 子
67
電 気 双 極子 放 射
97
ス ピ ン波動 関 数
50
電 子 雲
46
ス ピ ンマ ト リッ クス
52
電 子 軌 道 半 径
40
電 磁 場
74
電 流 密 度
11
スペ ク トル線 の 幅
101
水 素 原 子
31
水 素 分 子
55
数 演 算 子
98
ドップ ラ ー効 果
101
ド ・ブ ロ ーイ ゼ ー マ ン効 果 正 四 面 体 正 準 共 役
54,77 46
3
ド ・ブ ロ ーイ の 式
5
動 径 座 標
75
32 な
行
摂 動 系
60,71
摂 動 項
60
ナ ト リウム
49
摂 動 論
60
内 量子 数
55
零 点 振 動 エ ネ ル ギ ー
95
流
11
遷 移 確 率
71,74,79
れ
2原 子 分 子
83
ボ
2電 子 系
55
ボ ア 磁 子
2電 子 系 波 動 関 数
58
ボ ア 半 径
ニ ュ ー トン
74 は
ハ イ ゼ ンベ ル グ パ ウ リ パ ウ リの 原 理
陪 微 分 方 程式 波
束
発
散
行
波 動方 程 式
40
ボ ル ツ マ ン定 数
102 33,34,44
母 関 数
8 ,20
33,41,42,92
保 存 量
54
52,57 ま
57,100 6
行
マ ッ ク ス ウ ェ ル ・ボ ル ツ マ ンの 分 布 則
102
90
マ ト リ ッ ク ス
13
37
マ ト リ ッ ク ス 表 示
28
密
11
7 77
波 動性 波 動 ベ ク トル
6 53,77
方 位 量 子 数
パ ッ シ ェ ン系列 バ ン ドスペ ク トル
ア
度
1 78
無 摂 動 系
60,71
1,8,9,31 や
行
反 対称
57 ユ ー レ ンベ ッ ク
49
光 の 吸収
79
ユ ニ タ リ ー 行 列
14
光 の双 極 子 放 射
82
ユ ニ タ リ ー 変 換
17
光 の発 散
79
ユ ニ タ リ ー 変 換 マ ト リ ッ ク ス
68
微 細構 造
49,70
ユ ニ タ リ ー マ ト リ ッ ク ス
18
横
78
フー リエ変 換
7
波
ブ ラ ッケ ッ ト記 号
97
ブ ラ ッケ ッ ト系 列
6
プ ラ ンク定 数
3
ラ イ マ ン系 列
フ ン ト系 列
6
ラ グ ラ ン ジ
不 確 定 性 原 理
1,6,8,12,95
ら
行 6 75
ラ グ ラ ン ジ 関 数
74
複 素 共 役
16
ラ ゲ ー ル 多 項 式
41
分 子 ス ペ ク トル
90
ラ ゲ ー ル の 陪 多 項 式
42
平 均 自由 行 程
90
リ ッ ド ベ ル グ
変 数 分 離
32
リ ン ク ル
14
変 数 分 離 定 数
32
立 方 晶 型
48
変 分 法
83
粒 子 性
6
1
量 子 条 件
1,3
ル ジ ャ ン ドル
33
ル ジ ャ ン ドル 多 項 式
34
励 起 状 態
89
連 続 の 式
11
― <著者紹介> ― 篠
原
正
三
北海道帝 国大学 理学部物理学科卒業(1942年) 北海道大学理学 部助教授(1949年) 理 学博 士(1962年) 東京電機大学工学部教授(1967年) 工学部第一部長(1972年) 大学院工学研究科委員長(1972年) 名誉教授(1989年) 主 な著書
「物理学概論」(東京電機大学 出版 局)
量 子 力学 概 論 1990年 4月20日
〓Shozo
Shinohara1990 1990
第 1版 1刷 発行
著 者
篠 原 正 三
学校法人 東 京 電機 大学 代 表 者 廣 川 利 男
発行者
発行所 東京電機大学 出版局 著者承認 検印省略
〒101 東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町 2-2 振 替 口座 電
東
Printed
印刷 三功 印刷(株) *本
京6-71715
話03(294)1551(代)1551(代) in Japan
製本 (株)徳 住製本所
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ISBN4-501-61230-4C3042 -4C3042