バイオメカニズム ・ライブラリ―
表面筋電図
パ イオ メカ 二ズム学会 編
木塚朝博+増田 正+木竜 徹+佐渡山亜兵―【共著】 Biamechanism
Library
Practical Usage of Surface E...
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バイオメカニズム ・ライブラリ―
表面筋電図
パ イオ メカ 二ズム学会 編
木塚朝博+増田 正+木竜 徹+佐渡山亜兵―【共著】 Biamechanism
Library
Practical Usage of Surface Electrqlnyogram Kizuka Tomohiro Masuda
Tadashi
Kiryu Tohru Sadoyama
Tsugte
東京電機大学出版局
本 書の 全 部 また は一 部 を 無 断 で複 写 複製(コ ピー)す る こ とは,著 作 権 法上 で の 例外 を除 き,禁 じ られて い ます。 小 局 は , 著者 か ら複写 に係 る 権利 の 管理 につ き 委 託 を受 けて い ます の で,本 書 か らの 複 写を 希 望 され る場 合 は,必ず小 局(03‐5280‐3422)宛 ご連 絡くだ さい。
バ イオメ力ニズム ・ ライブラリー 発 刊 の 趣 旨
バ イ オ メ カ ニ ズ ム と は,人 間 を含 む生 物 の 形 態 ・運 動 ・情 報 お よ び機 能 と の 関 係 を,工 学 や 医 学 ・生 物 学 な ど の さ ま ざ ま な方 法 論 で 解 析 し,そ の 応 用 を図 る 学 問 分 野 で す.同
様 の研 究 領 域 を持 つ バ イ オ メ カ ニ クス と対 比 させ れ ば,単
な る力
学 的 解 析 で は な く,生 物 が 本 質 的 に 内 在 して い る 「機 構 」 が キ ー ワー ドに な っ て い る とい え ま す.こ
の こ だ わ りが,そ
の 後,ロ
ボ ッ ト工 学 や リハ ビ リテ ー シ ョ ン
工 学 に大 き く発 展 す る こ と に な りま した. バ イ オ メ カニ ズ ム学 会 の 創 立 は1966年
で,こ
の 種 の 境 界 領 域 を扱 う学 会 と し
て は も っ と も古 く,隔 年 で 出 版 さ れ る 「バ イ オ メ カ ニ ズ ム」 は,こ の 分 野 を 先 導 す る と と も に,そ の と き ど きの 興 味 と学 問水 準 を表 す 貴 重 な 資 料 に も な っ て い ま す. バ イ オ メ カ ニ ズ ム ・ライ ブ ラ リー は 多 岐 に わ た る バ イ オ メ カ ニ ズ ム の 方 法 論 や 応 用 例 を わ か りや す く解 説 し,こ れ まで に蓄 積 さ れ た さ まざ ま な成 果 を社 会 に還 元 して さ ら に新 た な挑 戦 者 を養 成 す る た め に 企 画 さ れ ま した.こ
れか らの高齢化
社 会 で 必 要 と さ れ る 身近 な 介 護 一 つ を と っ て も,バ イ オ メ カ ニ ズ ム の 方 法 が 負 担 の軽 減 や 新 た な 商 品 開発 に 多 くの 示 唆 を も た ら します.生 ラ イ ブ ラ リー が,こ
物 の 仕 組 み を学 ぶ この
れ か らの 社 会 に求 め られ る よ り柔 軟 な発 想 の 源 泉 に な れ ば 幸
い で す.
バ イ オ メ カ ニ ズ ム学 会 ラ イ ブ ラ リー 編 集 委 員 会
は じめ に
ヒ トが 歩 い た り走 っ た り とい う運 動 を行 っ て い る と き,そ の も と に な っ て い る 駆 動 力 は 筋 の 収 縮 に よっ て 生 み 出 さ れ る.こ して,筋
電 図 法(Electromyography:EMG)が
の よ う な 筋 の 活 動 状 態 を 知 る方 法 と あ る.動 作 解 析 で 主 に用 い られ
る の は,皮 膚 上 に電 極 を貼 り付 け る 表 面 筋 電 図 で あ る.電 極 を通 して 筋 電 位 を導 出 し,そ れ を 筋 電 図 と して視 覚 化 す る こ と に よ り,動 作 に対 応 して どの 筋 が どの 時 点 で,ど の 程 度 活 動 して い るか を知 る こ とが で きる. 筋 電 位 で は な く,ビ デ オ カ メ ラや 関節 角 度 計 を用 い た 動 作 解 析 か ら 関節 トル ク を算 出 し,さ ら に筋 張 力 を推 定 す る こ と も で き るが,こ
れ に は,筋 張 力 が 何 らか
の 基 準 の も とで 最 適 に調 整 さ れ て い る と い う条 件 が 必 要 で あ る.た 筋 が 同 時 に働 い て い る場 合 や 等 尺 性 収 縮 の場 合 に は,外 は生 じな い が,筋
と え ば,拮 抗
部 か らみ え る よ う な運 動
は 活 発 に活 動 して い る.こ の よ う な違 い は,筋
電位 を計測 すれ
ば識 別 で きる. 近 年,筋
電 位 計 測 装 置 が 高 性 能 化,低
勝 手 も 向 上 した た め,筋
コス ト化 し,ソ
フ トウ ェ ア も含 め た 使 い
電 位 の 計 測 自体 は 容 易 に な っ て き た.ま
た,汎 用 の 信 号
処 理 ソ フ トを 用 い る こ とに よ り,パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ(Personal
Computer
: PC)を 用 い て さ ま ざ まな 信 号 処 理 も簡 単 に 実 行 で き る よ う に な っ て き た.そ の 結 果,従
来 か ら用 い られ て きた ス ポ ー ツ 動 作 解 析 や リハ ビ リテ ー シ ョ ン分 野 で の
応 用 に 加 え て,工
業 製 品 の 人 間 工 学 的 評 価 に お い て も利 用 で きる よ う に な っ た.
しか し なが ら,こ の 副 作 用 と して,日
頃 筋 電 図 に馴 染 み の な い 利 用 者 が,不
適切
な条 件 で 計 測 を行 っ た り,不 適 切 な処 理 を行 っ た り,あ る い は不 適 切 な結 果 の解 釈 を行 っ た り とい う事 例 も多 くな っ て きた.
そ こ で,本 書 は,そ
の よ う な筋 電 図 の利 用 者 に対 して,的 確 な計 測 が で きる よ
う に,基 礎 か ら種 々 の ノ ウハ ウ まで を と りま とめ て,バ
イオメ カニズム学会誌 に
4回 に わ た っ て 連 載 した解 説 記 事 を も とに,大 幅 に加 筆 修 正 を 加 え て 作 成 した も の で あ る.こ の な か で,著
者 らが 研 究 を行 っ て き た,電 極 と神 経 支 配 帯(神 経 筋
接 合 部 が 集 中 して い る筋 内 の 領 域)と
の 関係 に つ い て は,こ
れ まで 十 分 に注 意 が
払 わ れ て い なか っ た の で,重 点 を お い て 説 明 した. 国 際 電 気 生 理 学 的 動 作 学 会(International Kinesiology:ISEK)の Electromyography
機 関 誌 で,筋
Society of Electrophysiological
電 図 関 係 の 論 文 が 掲 載 され るJournal
and Kinesiology(JEK)に
計 測 法(Standards
for Reporting
め て あ る.こ の な か に は,フ
EMG
of
は,毎 号 巻 末 に筋 電 位 の 標 準 的 な Data:以
ィル タの 選 択 や,ス
下EMG
Standards)が
まと
ペ ク トル 解 析 に お け る 窓 関 数 の
適 用 な ど,こ れ ま で の 筋 電 図 の 利 用 者 に と っ て は見 慣 れ ない 事 項 も含 ま れ て い る. 本 書 で は,こ のEMG
Standardsの
この 内 容 を理 解 で き れ ば,論
内容 が 十 分 に理 解 で き る よ うに 説 明 を行 っ た.
文 と して も批 判 を 受 け な い よ う な 的確 な筋 電 位 計 測
を実 践 す る こ とが で きる よ う に な る と期 待 さ れ る.ま
た,筋 電 位 の 計 測 手 法 を さ
ら に発 展 させ た い 方 々 の た め に,最 近 の研 究 動 向 や 計 測 装 置 の 開発 につ い て も述 べ た. 神 経 筋 疾 患 の 臨 床 診 断 に 用 い られ る針 筋 電 図 につ い て は,教 科 書 と呼 べ る 本 が 多 数 出版 され て い る が,表
面 筋 電 図 につ い て は,心 電 図 や 脳 波 を含 め た 生 理 計 測
関 係,あ
る い は動 作 分 析 な ど の本 で 一 部 取 り上 げ られ て い る の み で,内 容 的 に 上
記EMG
Standardsが
理 解 で きる程 度 に掘 り下 げ た もの は み られ な か っ た.日 常
の研 究 や 開発 に 筋 電 図 を用 い て い る方,特
に 体 育 ・ス ポ ー ツ分 野 に お け る運 動 の
仕 組 み,リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン分 野 に お け る 動作 の 改 善,人
間工 学 や 感性 工 学 分 野
に お け る筋 負 担 の 評 価 に 関 係 す る 方 々 に はぜ ひ活 用 して い た だ き た い.ま 間 を 対 象 と した種 々 の 計 測 手 法 の1つ
た,人
と して 筋 電 図 を用 い る必 要 が あ る 場 合,と
りあ え ず 筋 電 図 が 利 用 可 能 か ど う か を知 りた い 場 合 な どに も本 書 を活 用 し て い た だ け れ ば幸 い で あ る. 本 書 の 執 筆 に あ た っ て は,以 下 の 方 々,研 究 機 関,企 業 か ら快 く資 料 や 写 真 を
提 供 し て い た だ い た:C.J.De Luca(NeuroMuscular Boston
University,USA),R.Merletti(Laboratory
Neuromuscular Torino,
Research
System
Italy),Delsys
and
Motor
学 理 工 学 部),白
田 守 彦(帝 石 恵(元
of the
Rehabilitation(LISiN),Politecnico
田 正 樹(大
京 工 業 大 学 精 密 工 学 研 究 所),真
ィ ア 研 究 所),岡
for Engineering
di
Inc.(Boston,Massachusetts,USA),Noraxon
Inc.(Scottsdale,Arizona,USA),吉 小 池 康 晴(東
Center,
USA
阪 電 気 通 信 大 学 医 療 福 祉 工 学 部), 鍋 宏 幸(NTT
DoCoMoマ
京 平 成 大 学 ヒ ュ ー マ ン ケ ア 学 部),斎
筑 波 大 学 体 育 科 学 系),熊
ま た,本
書 の 出 版 に あ た っ て は,東
い た.深
く感 謝 し た い.
井 敏 文(松
ルチ メデ
藤 健 治(佐
賀大
本 歯 科 大 学 大 学 院).
京 電 機 大 学 出版 局 石 沢 岳 彦 氏 に ご尽 力 い た だ
平 成18年2月 著者一 同
目 次
第1章 表面筋電図 とは
1
1.1 筋 収 縮 の メ カ ニ ズ ム
2
1.2 筋 電 位 の 発 生 メ カニ ズ ム
5
1.3 筋 活 動 を と ら え る
5
1.4 表 面 電極 の し くみ
6
1.5 ダ イ ナ ミッ ク な運 動 時 で の 計 測
8
1.6 な に が 計 測 で きる の か
10
1.7
ま とめ
11
第2章 計測 とその準備
13
2.1 電 極 を貼 る前 に
13
1 動作 に対応 する被験筋 を選ぶ 2 正 規 化 の 方 法 を考 え て お く
14 15
3 同 期 させ る力 学 的 信 号 を考 えて お く 4 筋 電 図 活 用 の 方 向性 に つ い て 2.2 記 録 方 法 の 選 定 と設 定 1 電 極
3 周 波数特性
23 24
4 入 力 イ ンピ ー ダ ンス 5
同相除去比
19 20
21
2 増 幅器の感度
17
25
25
6 記録器
26
2.3 電 極 の貼 付
28
1 神 経支配帯 を探 す
28
2 筋腹 と筋線維 方向 を確 認す る 3 皮膚抵 抗 を低減す る 4 電極 を固定す る
30 31
5 ア ー ス 電極 を貼 る
32
2.4 諸 問 題 対 策
33
1 振 幅 が 小 さ い
33
2 交 流 雑 音 を除 く 3
33
接 地 コ ネ ク タ を疑 う
4 基線 が揺 れ る
34
35
第3章 処理 と解析 3.1
39
フ ィ ル タの 種 類
40
3.2 平 均 振 幅
43
1 平 均振 幅の特徴量
43
2 平 滑 化 区 間 の 長 さ と 配 置
3 集 合平均
46
47
4 ク ロ ス トー ク
47
5 ア ー チ フ ァ ク ト
48
6 収 縮 力 との 比 較
48
7 関節角 度の変化
49
3.3 パ ワ ー ス ペ ク トル
50
1 パ ワ ー ス ペ ク トル の 計 算
2 ゼ ロ詰 め 3 窓 関 数
29
50
51 53
4 ス ペ ク トル の特 徴 量
55
5 ス ペ ク トル の 形 を決 め る要 因 6 デ ィ ップ 関 数
55
56 58
3.4 筋 線 維 伝 導 速 度
1 筋線維伝 導速度 とは
58
2 筋電位信 号 間の時 間差 の計算 方法
58 59
3.5 筋 疲 労
1 筋疲労 に伴 う振幅 の増大 と周 波数 の徐 波化 2 多点 表面電極 と筋線 維伝導 速度
60
62
3.6 ま と め
第4章 応 用の事例
63
65
4.1 感 じ られ な い筋 活 動 の 認 識
65
4.2 過 剰 な 筋 活 動 の 定 量 化
67
4.3 筋 線 維 組 成 と筋 線 維 伝 導 速 度
70
4.4 各 種 ス ポ ー ツ競 技 選 手 の 筋 線 維 伝 導 速 度
73
4.5 操 作 に 対 す る上 肢 上 方 作 業 域
74
4.6 厨 房 作 業 に お け る 最 適 作 業 面 高
78
4.7 感 性 工 学 分 野 に お け る筋 電 図 の 利 用
81
4.8 自転 車 エ ル ゴ メ ー タの 負 荷 制 御
84
4.9 ス キ ー 運 動 に み られ る運 動 形 態 の 違 い
87
第5章 適用 とその限界
93
5.1 運 動 時 の 筋 活 動
93
5.2 動 作 を識 別 す る
95
5.3 運 動 単 位 の 分 離
96
5.4 ス ペ ク トル解 析 の 限界
98
5.5 筋 張 力 の減 少 と筋 疲 労 との 区別
101
5.6 表 面 筋 電 図 は 万 能 で は な い
103
5.7
104
ま とめ
第6章 開発 の動向 6.1
107
プ ロ ジ ェ ク ト研 究 1 SENIAMプ 2 NEWプ
108
ロジ ェク ト ロ ジェク ト
108 110
3 ボ ス トン大 学神 経 筋 研 究 セ ン タ ー
4 人間感覚計 測応用技術 6.2
112
115
計測 装置
116
1 計 測 の マ ル チ チ ャ ンネ ル化 2 計 測 の ウ ェ ア ラ ブ ル化
116 118
6.3 最近 の信 号処 理法
123
6.4 新 た な応 用
125
1 動作 情報 を使 う
126
2
無発 声音声 認識
127
3 さ ま ざ ま な 時 間ス ケ ー ル か ら運 動 を探 る
第7章 役立つ情報 7.1 ISEKのEMG
128
133
Standards
7.2 神 経支 配帯 の実際の位置
133 145
参考文献
159
索引
165
第1章
表面筋 電 図 とは
著 名 な 数 学 者 で あ っ た ノバー ト ・ウ ィナ ーが「 サ イ バ ネ テ ィ ッ ク ス,動 物 と機 械 に お け る 制 御 と通 信 」 を著 した の は,今 か ら約60年 前 の1948年
の こ とで あ る.
彼 は,「 筋 電 流 を 利 用 して 動 く義 手 」 の研 究 を医 学 者 と共 同 で 行 っ た.そ で,筋
の なか
の 活 動 を シ ス テ マ テ ィ ッ ク に と ら え,人 工 の筋 運 動 知 覚 の 考 え か ら新 しい
概 念,サ
イ バ ネ テ ィ ック ス を登 場 させ た の で あ る.筋 電 流 を利 用 して動 く義 手 は,
後 に ボ ス トン ア ー ム と して 具 体 化 す る1,2).ノ バー ト ・ウ ィ ナ ー が 注 目 した筋 運 動 知 覚 で の 中枢 制 御 系 に か か わ る情 報 が,筋 電 流 あ る い は 筋 電 位(Myo‐Electric potential:ME
potential)で
(ElectroMyoGram:EMG)で 筋 電 位 の 導 出 法 は,用
あ り,こ
れ を 記 録 ・表 示 し た も の が 筋 電 図
あ る. い る 電 極 に よ っ て 大 き く2つ に 分 か れ る.1つ
表 面 に 取 り付 け る表 面 電 極(surface
electrode)を
記 録 ・表 示 さ れ た もの を表 面 筋 電 図(surface
用 い る も の で,こ
EMG)と
呼 ぶ.表
は,皮 膚 れ に よ って
面 筋 電 図 法 は,
侵 襲 性 が な い の で,体 育 ・ス ポ ー ツ,リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン,人 間 工 学 な どの 分 野 にお い て 主 に 用 い られ る.も 針 筋 電 図(needle の の,筋
EMG)と
う1つ は,筋 呼 ぶ.針
内 に刺 入 す る針 電 極 を用 い る もの で,
筋 電 図 法 は,人 体 に 対 して 侵 襲 性 が あ る も
内 の 電 位 変 化 を高 い空 間 分 解 能 で 識 別 で き る の で,神
経筋疾患 の診 断な
どの 臨 床 分 野 で 用 い られ る. 表 面 筋 電 図 に 関 して は,1970年 や 動 作 識 別 を 目的 と して,パ
代 後 半 頃 か ら1980年
代 に か け て,義 手 の 制 御
ラ メ トリ ッ ク な ス ペ ク トル 解 析 や,多
チ ャンネルの
筋 電 位 信 号 に よ る多 変 量 解 析 を用 い た 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ た.1990年
頃 になる
と,人 工 ニ ュ ー ラ ル ネ ッ トワー ク を 利 用 す る研 究 が盛 ん に な り,バ ー チ ャ ル リア リ テ ィ や 手 話 な どで,指
の 動 作 をPCに
取 り込 む 際 に も表 面 筋 電 図 が 使 わ れ る よ
う に な っ た. こ の よ う に現 在,表 面 筋 電 図 は電 気 生 理 学 的 な基 礎 研 究 や 臨床 医 学 だ け で な く, 体 育 ・ス ポ ー ツ や リハ ビ リ テ ー シ ョ ン,さ
らにバ ー チ ャ ル リ ア リテ ィ の 分 野 へ と
応 用 範 囲 を広 げ て き て い る.
1.1 筋 収 縮 の メ カ ニ ズ ム 筋 収 縮 の メ カ ニ ズ ムや 筋 電 位 の 発 生 メ カ ニ ズ ム に つ い て は,す で,詳 細 に 述 べ られ て い るの で3),こ
こ で は,い
で に 多 くの書 物
くつ か の キ ー ポ イ ン トだ け を お
さ え て お く.筋 活 動 は,脊 髄 の なか に あ る α運 動 ニ ュ ー ロ ン(α‐MotoNeuron: α‐MN)の
興 奮 か ら始 ま る(図1.1).α
運 動 ニ ュ ー ロ ンが,脳
か らの 指 令 や 脊 髄
を経 由 す る種 々 の 反 射 に よ っ て 興 奮 す る と,そ の 興 奮 イ ンパ ル ス が 神 経 軸 索 を経 由 して 目指 す 筋 に伝 え られ る.
図1.1 運 動 単 位 の構 成
1つ の 運 動 ニ ュ ー ロ ン か ら 生 じ る 神 経 軸 索 は 筋 の な か で 枝 分 か れ し,多 線 維(muscle fiber)に
神 経 筋 接 合 部(neuromuscular
筋 接 合 部 は 神 経 終 板(endplate)と
も呼 ば れ る.神
junction)を 経 筋 接 合 部 は,筋
数 の筋
作 る.神
経
に よ っ て,
ま た個 人 に よ っ て さ ま ざ まな 分 布 を して い る.上 腕 二 頭 筋 や 僧 帽 筋 な どの よ う に, 神 経 筋 接 合 部 が 狭 い 範 囲 に 集 中 して い る場 合 が あ る.こ の 集 中 し て い る 部 位 を神 経 支 配帯(innervation 筋 線 維 は,筋
zone)と
を構 成 す る細 長 い細 胞 で,1つ
経 筋 接 合 部 が 存 在 す る.す る.1つ
呼 ぶ.
な わ ち,運 動 ニ ュ ー ロ ン と筋 線 維 は1対 多 の 関 係 に あ
の 運 動 ニ ュ ー ロ ンに 支 配 され た 筋 線 維 群 の活 動 は1つ の 単 位 と し て機 能
す る.1つ (Motor
の 運 動 ニ ュ ー ロ ン と,そ れ に支 配 され る 筋 線 維 群 を ま と め て 運 動 単 位
Unit:MU)と
呼 ぶ.た
と え ば上 腕 二 頭 筋 は,約700個
成 さ れ,そ れ ぞ れ の 運 動 単 位 に は 平 均700本 一方
の 筋 線 維 上 に は,通 常1カ 所 の 神
の 運 動 単 位 か ら構
の筋 線 維 が 含 ま れ る と され て い る4).
,顔 面 の 筋 な どは 支 配 比 が小 さい の で,細 か な活 動 が 可 能 とな る.
運 動 神 経 の 興 奮 は,神 経 イ ンパ ル ス列 と して,神 経 筋 接 合 部 に 到 達 す る.神 経 筋 接 合 部 で は,神 経 終 末 か ら化 学 伝 達 物 質 で あ る アセ チ ル コ リ ンが 放 出 され,そ れ に よ っ て 筋 線 維 側 の 電 気 的 な興 奮,す が 生 じる(図1.2).筋
な わ ち筋 線 維 膜 上 の 脱 分 極(depolarization)
線 維 膜 上 の興 奮 は筋 小 胞 体 か ら の カ ル シ ウム 放 出 を
引 き起 こ し,そ れ に よ っ て筋 線 維 内 に 存 在 す る ミオ シ ン分 子 とア ク チ ン分 子 の 相 互 作 用 が 可 能 に な り,ミ オ シ ン線 維 と ア ク チ ン線 維 の 滑 り運 動 が 生 じ,筋 張 力 が 発 生 す る. 筋 張 力 は,個
々 の 運 動 単 位 が 発 生 す る張 力 の 総 和 で あ る.運 動 単 位 は興 奮 す る
か しな い か(全
か 無 か の 法 則:all‐or‐none law)の
デ ジ タ ル 的 な ふ る ま い をす る
の で,筋 張 力 を変 化 させ る場 合 に は,運 動 単 位 の 発 射 頻 度(firing る か,活
rate)を
変え
動 す る 運 動 単 位 の 数 を 変 化 させ る.筋 張 力 を上 昇 させ て い っ た と き に,
新 た な運 動 単 位 が 活 動 を始 め る こ と を活 動 参 加(recruitment)と 筋 張 力 を 漸 増 させ て い く と,通 常 は,決
い う.
まった順序で運 動単位 の活動参 加が起
こ る.初 期 に活 動 を始 め る の は,運 動 ニ ュー ロ ンの サ イ ズ が 小 さ く筋 線 維 数 の少 な い 運 動 単 位 で あ る.こ れ とは 逆 に,後 期 に活 動 を始 め る の は,サ 筋 線 維 数 の多 い 運 動 単 位 で あ る.こ れ を サ イ ズ の 原 理(size 発 射 頻 度 と活 動 参 加 の ど ち らの 制 御 を使 うか,あ
イズが大 きく
principle)と
い う.
る い は優 勢 に な る か は筋 に よ
っ て,ま た 収 縮 レベ ル に よ っ て 異 な る.手 先 な どの 小 さ な筋 で は,精
密 な制 御 が
図1.2 筋 電位 の 発 生 メ カニ ズ ム
必 要 と な る の で,発
射 頻 度 に よ る張 力 制 御 が 優 勢 で あ る こ とが多 い.一
方,姿 勢
の 保 持 や 抗 重 力 筋 は,活 動 に参 加 す る 運 動 単 位 の 数 を増 す こ とに よ っ て 制 御 を行 っ て い る. 筋 張 力 の 発 生 は筋 内 に あ る 固 有 の セ ンサ ー(筋
紡 錘 や 腱 器 官)で
反 射 や 中 枢 神 経 系 を 介 した 筋 張 力 の 調 節 が 行 わ れ る.身 体 運 動 は,さ もの 筋 の 協 調 的 な活 動 に よ っ て 実 現 す る.こ れ が,筋 あ る.
と ら え られ, らに い くつ
活 動 の大 まか な シ ナ リ オ で
1.2 筋 電 位 の 発 生 メ カ ニ ズ ム 筋 電 位 は,筋 が 収 縮 した 結 果 と して 発 生 す る もの で は な く,筋 を 収 縮 させ る原 因 で あ る.し た が っ て,弛 緩 して い る 筋 を押 して も,圧 電 素 子 の よ う に電 位 が 発 生 す るわ け で は な い.筋 電 位 は 筋 を収 縮 させ る 電 気 信 号 が 筋 に到 達 して初 め て観 測 さ れ る もの で あ る.筋 線 維 の 活 動 は,運 動 神 経 細 胞 か らの 神 経 パ ル ス列 が こ な い と電 気 的 に は み えな い こ とに な る. 神 経 筋 接 合 部 は通 常,筋
線 維 の 長 さ方 向 の ほ ぼ 中 間 に 存 在 す る.神 経 筋 接 合 部
か ら 開 始 した 電 気 的 興 奮 は,筋 線 維 の 両 端 に 向 か っ て3∼6m/sの
速 さ で伝 播 し
て い き,筋 線 維 の 末端 に到 達 した 時 点 で消 滅 す る.筋 線 維 上 の 脱 分 極 は,細 を 通 る膜 電 流 を引 き起 こ し,膜 電 流 は 周 囲 の 容 積 導 体(volume
conductor)を
れ て 電 位 変 化 を生 じ る.こ の 電 位 変 化 を導 出 した もの が 筋 電 位 で あ る.ま 位 変 化 を 時 系 列 信 号 と して と ら え た 場 合 に は 筋 電 位 信 号(myoelectric と呼 ぶ.こ
れ に対 し て,個
運 動 単 位 活 動 電 位(Motor
流
た,電 signal)
々 の 運 動 単 位 が 発 生 す る 電 位 を強 調 し た い 場 合 に は, Unit Action Potential:MUAP)と
個 々 の 運 動 単位 活 動 電 位 は,一 定 の 波 形 で,ほ 動 単 位 活 動 電 位 列(MUAP
胞膜
train)と
呼 ぶ.
ぼ 一 定 の 時 間 間 隔 で 発 生 す る運
し て観 察 され る.運 動 単 位 活 動 電 位 列 は,
通 常 は,針 電 極 で 導 出 す る.し か し,表 面 電 極 を用 い て も,ご
く弱 い 随 意 収 縮 時
にお い て は,導 出す る こ とが で き る. 運 動 単 位 は,通 常 は,互
い に 独 立 に 興 奮 す る の で,表
面電極 で筋電位 を導 出す
る と,多 数 の 運 動 単 位 活 動 電 位 が 時 間 的 ・空 間 的 に重 畳 し た干 渉 波 形 とな る.筋 張 力 が 上 昇 し干 渉 の程 度 が 強 くな る と,筋 電 位 信 号 は 不 規 則 波 形 と な り,個 々 の 運 動 単位 活 動 電位 を識 別 す る こ と は で きな くな る.
1.3 筋 活 動 を と らえ る さ て,こ の よ うな発 生 メ カ ニ ズ ム を頭 に 入 れ な が ら,筋 電位 の計 測 法 を 考 え て
み よ う.先 に 述 べ た よ うに,筋 電 位 の計 測 法 とい っ て も,大 法 と表 面 筋 電 図 法 が あ る.針 筋 電 図 法 は,ま
き く分 け て針 筋 電 図
さ に運 動 神 経 細 胞 か ら筋 線 維 へ 至 る
経 路 で 観 測 され る神 経 パ ル ス列 か ら情 報 を取 り出 そ う とす る計 測 法 で あ る.実 際 に は,筋
に針 を刺 入 して筋 線 維 に伝 わ っ て きた信 号 を観 測 す る.一 方,表
面筋電
図 法 は,皮 膚 表 面 か ら電 気 信 号 を と らえ る計 測 法 で あ る.対 象 とす る筋 を 覆 う皮 膚 上 に 表 面 電 極 を 配 置 して筋 電 位 を計 測 す る.な お,誘 に 近 い位 置 に あ る 部 位(モ
ー タ ー ポ イ ン ト,motor
発 筋 電 位 は,神 経 が皮 膚
point)で
計 測 す る.
以 上 の よ う に,筋 電 位 は種 々の 電 極 を 通 して 計 測 す る こ と が で き る.身 体 運 動 の 解 析 な ど の 目的 で 広 範 囲 な情 報 を薄 く広 く集 め る際 に は 表 面 電 極 で 比 較 的容 易 に 計 測 で き る 表 面 筋 電 図 法 が 適 して い る.特 定 の 筋 線 維 や 運 動 単 位 の 活 動 を探 る よ う な,よ り狭 い 範 囲 で 限定 した 情 報 を集 め る 場 合 に は,針 筋 電 図 法 が よい.電 極 は,筋
で起 き て い る電 気 的 変 化 を と らえ る ア ンテ ナ の よ う な もの で あ る(図1.3).
ア ン テ ナ に 電 気 的 特 性 が あ る よ う に,電 極 に も特 性 が あ り,計 測 の 際 に は 大 い に 注 意 が 必 要 と な る.
図1.3 表 面 筋 電図 の 計 測 モ デ ル
1.4 表 面 電 極 の しくみ ア ンテ ナ の 役 割 をす る 表 面 電 極 は,ど の よ う に 設 計 した ら よ い の か? 表 面 筋 電 図 の ほ とん ど は,双 極(bipolar)の
現 在,
電 極 構 成 を用 い た 差 動 増 幅 器 で 計 測
さ れ て い る.さ
ら に,皮 膚 を通 じて 筋 電 位 を計 測 す る た め,電 極 と皮 膚 表 面 間 で
の 高 イ ン ピ ー ダ ンス(電 気 的 信 号 を 通 し に くい状 態)対 表 面 電 極 に は,受 動(passive)電
策が 必 要 と な る.
極 と能 動(active)電
極 とが あ る.受 動 電極
は最 も一 般 的 に使 わ れ て い る も の で,電 極 と皮 膚 表 面 間 の接 触 イ ン ピー ダ ンス を 下 げ る た め は,使 用 に あ た って 貼 付 部 位 の 準 備 や 電 極 ペ ー ス トを必 要 とす る.こ れ は,高
イ ン ピー ダ ンス の ま ま で は 温 度,湿
度,動
き の 影 響 を受 け て 分 極 電 圧 が
変 化 し,ダ イ ナ ミ ック な 運 動 時 に 電 極 と皮 膚 表 面 との 間 を 密 接 に接 触 で きな い た め に ア ー チ フ ァ ク ト(artifact,人
工 的 に発 生 す る雑 音)が 発 生 す るか らで あ る.
こ れ に対 し て,電 極 側 で皮 膚 に 近 い 高 イ ン ピ ー ダ ンス を電 気 的 に作 り出 し て, ア ー チ フ ァ ク トの 発 生 を防 い で い るの が 能 動 電 極 で あ る.能 動 電 極 は 電 極 端 子 ご とに バ ッ フ ァア ン プ を 内 蔵 し,皮 膚 表 面 で の 高 イ ン ピ ー ダ ンス や 電極 リ ー ド線 の 揺 れ に起 因 す る 問 題 を解 決 す る.能 動 電極 の 場 合 に は,皮 膚 表 面 をか る くア ル コ ー ル で ふ き取 る だ け で ,ダ イ ナ ミ ッ ク な 運 動 時 で あ っ て も電 極 コー ドの 揺 れ に よ る ア ー チ フ ァ ク トが 発 生 しに くい 計 測 が 可 能 と な る.こ の よ う に,能 動 電 極 は表 面 筋 電 図 の 利 用 を フ ィー ル ド実 験 へ と広 げ て い く際 に 欠 か せ な い技 術 で あ る.な お,時
間 につ れ て 表 面 電 極 と活 動 す る 筋 線 維 との 相 対 的 位 置 関係 が 変 化 す る.こ
の 場 合,多
チ ャ ンネ ル 能 動 ア レイ 電 極 を利 用 す る と よい.
図1.4は,表
面 電 極 を双 極 差 動 導 出 す る際 の 接 続 方 式 を示 した もの で あ る5).
電 源 雑 音 な ど電 極 端 子 に 同相 で 混 入 す る雑 音 を 取 り除 くた め,表 面 筋 電 図 計 測 で は 差 動(Single
Differential:SD)接
の 活 動 を探 る に は ダ ブ ル 差 動(Double
続 が 用 い られ て い る.一 方,小 Differential:DD)接
図1.4 表 面 電極 で 双 極差 動 導 出 す る際 の 接 続 方式
さ な筋 だ け
続 が 好 ま し い.
DD接
続 は,隣 接 す る筋 か ら の活 動 電 位 の 漏 れ(ク
ロ ス トー ク, crosstalk)を
抑
えた 計 測 を 可 能 にす る. こ の よ う に便 利 な双 極 差 動 導 出 で あ る が,利 用 す る際 に 注 意 す べ き い くつ か の 周 波 数 特 性 が あ る.な
お,筋
電 図 が い くつ もの 周 波 数 成 分 の 和 で 表 され る こ と を
ご存 じの 方 も多 い と思 うが,フ
ィル タ を用 い る こ とに よ り特 定 の 周 波 数 の信 号 を
通 過 させ た り,遮 断 した りで きる.こ れ をそ の フ ィル タの 周 波 数 特 性 と呼 ぶ. さて,皮 膚 か らの 深 さ 方 向 の フ ィル タ特 性 は ロ ーパ ス フ ィル タ で あ り,深 い位 置 に あ る筋 線 維 の 活 動 ほ ど低 域 周 波 数 成 分 が 強調 さ れ る6).こ タ は活 動 す る筋 線 維 の 解 剖 学 的 位 置 が 関 与 す る た め,手 れ 以 外 は 周 波 数 特 性 の 設 計 が 可 能 で あ る.特 の パ ワ ー ス ペ ク トルP(ω)は,電
ま た,P(ω)に
の 下 し よ うが な い が ,こ
に,双 極 差 動 導 出 に よ る 表 面 筋 電 図
極 間 隔 とMUAPの
意 が 必 要 で あ る6).す な わ ち,P(ω)は
の皮膚効 果 フィル
伝 導 速 度 の 関 数 で あ る点 に注
電 極 間 隔 に よ っ て 変 わ る.
は 一 定 周 波 数 間 隔 で デ ィ ッ プ(利 得 が 急 峻 に 減 少 す る こ と)が
存 在 し,電 極 間 隔 が 狭 い ほ ど最 初 の 周 波 数 デ ィ ップ は 高 い周 波 数 へ 移 行 す る(図 3.8参 照).こ の と きの 周 波 数 デ ィ ッ プか ら伝 播 速 度 を逆 に 推 定 す る こ とが で きる. した が っ て,電 極 間 隔 を狭 くす る こ と で,高 周 波 数 成 分 ま で 計 測 で き る よ うに な り,MUAP波
形 の分 離 に は好 都 合 と な る.た だ し,狭 い 電 極 間 隔 は比 較 的 浅 い 部
分 の筋 線 維 の 活 動 しか と らえ て い な い 点 に注 意 が 必 要 で あ る.ア
レイ 電 極 や マ ト
リ ック ス 電極 は,こ の よ うな 目的 に使 わ れ るの で あ る.
1.5 ダ イ ナ ミ ックな 運 動 時 で の計 測 表 面 筋 電 図 に 関 して 行 わ れ た 数 多 くの 研 究 の 結 果,静 的 な運 動 時(等 尺 性 収 縮) で は,筋 電 図 解 析 か ら得 られ る種 々の 評 価 指 標 が どの よ うな 生 理 学 的 要 因 と関 係 が あ るの か が,か で は,ま
な り明 らか に な って きた.し か し,実 際 に ダ イ ナ ミ ック な運 動
だ十 分 に 生 理 的 な 要 因 との 関 連 性 が 解 明 さ れ て い な い.ダ
運 動 時 の 表 面 筋 電 図 計 測 で は,ア
イナ ミックな
ー チ フ ァ ク トの 混 入 と,活 動 して い る筋 線 維 に
対 す る 表 面 電 極 の 位 置 に注 意 を払 わ な け れ ば な ら な い.そ
こ で,多
チ ャ ンネ ル 能
動 ア レイ 表 面 電 極 を計 測 や 解 析 に 利 用 す る7). さ ら に,双 極 差 動 導 出 に 与 え る神 経 支 配 帯 の 影 響8)も 無 視 で き な い.神 経 支 配 帯 を避 け て 電 極 を貼 付 す る こ とが 理 想 的 で あ る が,ど
の 時 点 で どの 神 経 支 配 帯 が
影 響 を与 え て い る か は 計 測 して み ない とわ か らな い の が 現 状 で あ る.こ こ で,神 経 支 配 帯 とい っ て い る の は解 剖 学 的 な意 味 もあ る が,活 動 して 表 面 筋 電 位 に 影 響 を 与 え る神 経 支 配 帯 と理 解 す る の が 正 しい.し
た が っ て,ダ
イ ナ ミ ッ ク な運 動 時
で は,筋 の サ イズ や 解 剖 学 的 な理 由 で 神 経 支 配 帯 の 影 響 を ど う して も避 け られ な い 場 面 が あ る(図1.5)9).
図1.5 ダイ ナ ミッ クな 運動 時 で の神 経 支配 帯 分 布 のa'か らaへ の 移動 (詳細 は文 献8)を 参 照)
そ こ で,多
チ ャ ン ネ ル ア レ イ電 極 を使 い,神 経 支 配 帯 の 影 響 を 受 けて い な い い
ず れ か の双 極 差 動 導 出 ペ ア を選 択 す る方 法 が提 案 さ れ て い る10).す な わ ち,電 極 と 神 経 支 配 帯 との 相 対 的 位 置 関 係 が,チ EMG:IEMGi(t))や
ャ ン ネ ルiの 積 分 筋 電 図(Integrated
表 面 筋 電 図 の平 均 周 波数(MeatN
に 与 え る 影 響 を調 べ た 実 験 結 果 に よ れ ば,各 IEMGi(t),MNFi(t)に
Power
Frequency:MNFi(t))
双 極 差 動 導 出 ペ ア か ら推 定 さ れ た
対 して
(1.1) (1.2) の よ う に 比 較 す る こ と で,神 経 支 配 帯 の 影 響 を抑 え たIEMGc(t)とMNFc(t)が
得
ら れ る.
1.6 な にが 計 測 で き る の か 等 尺 性 随 意 収 縮 時 と ダ イ ナ ミ ッ ク な運 動 時 とで,表 面 筋 電 図 か ら評 価 で きる も の が 変 化 す る.表 面 筋 電 図 は,い
くつ も のMUAPが
時 空 間 的 に重 畳 した もの で
あ る か ら,筋 張 力 の 変 化 に よ る活 動 運 動 単 位 数 の 増 減,筋 変 化,お
疲 労 に よる 伝 播 速 度 の
よび そ の 原 因 と な る もの を評 価 で きる こ と に な る(図1.6)11).
図1.6 表 面 筋電 図 に関係 す る もの(文 献4),10)を
さて,ト
参照)
レー ニ ン グや リハ ビ リ テ ー シ ョ ンの場 面 で は,筋 張力 が 低 下 した 際 に,
意 図 的 に力 を弱 め た の か,筋
疲 労 に よ る もの なの か の 違 い を評 価 す る こ と が 必 要
と思 わ れ る.こ の 違 い を表 面 筋 電 図 か ら評 価 で き る で あ ろ う か? 実 際 に は,と て もむ ず か しい が,表
面 筋 電 図 か らそ の 情 報 は手 に 入 れ られ そ う で あ る.筋 張 力
や パ ル ス オ キ シ メ ー タ に よる 血 液 中酸 素 飽 和 度 で は計 測 で きな い 神 経 筋 活 動 の 情 報 を筋 電 図 は 与 え て くれ る.
1.7
ま とめ
表 面 筋 電 図 に 関 して,何
が 計 測 で き て い るの か の 問 い に対 し て は,計 測 上 の 注
意 点 を よ く理 解 して お く こ と が肝 要 で あ る.ま
た,何 が 計 測 で きる の か で は,図
1.6の 特 徴 を よ く理解 す る こ とが 必 要 とな る. 表 面 筋 電 図解 析 は個 々 のMUの ロ な展 開,ま
た,一
発 射 時刻 を調 べ る 方 法 に代 表 さ れ る よ う な ミク
方 で は 人 工 ニ ュ ー ラ ル ネ ッ トワ ー ク に よ る 動 作 識 別 に代 表 さ
れ る よ う に複 数 の 筋 活 動 を統 合 した マ ク ロ な展 開 が あ る.さ
らに,フ
ィー ル ドで
の 計 測 を よ り簡 単 に か つ 信 頼 性 の 高 い もの とす るた め の技 術 と して,無
線通信技
術 や 装 置 の小 型 化 に よ る新 た な ウ ェ ア ラ ブ ル 計 測 法 が 登 場 しつ つ あ る.
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Biomechanics,13,135‐163(1997)
子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌DⅡ,J74‐DⅡ,426‐433(1991) of
surface
electromyography
in
biomechanics,J
Appl
第2章
計測 とその準備
最 近 は 計 測 機 器 の 改 良 や 進 歩 に よ り,昔 に 比 べ る と格段 簡 便 に筋 電 図 が 利 用 で き る よ う に な っ た.さ
ら に,筋 電 図 解 析 ソ フ トの 普 及 に よ っ て デ ー タ処 理 時 の負
担 が 軽 減 し,動 作 特 性 な どの 計 測 ・評 価 に も手 間が か か らな く な り,体 育 ・ス ポ ー ツ科 学 ,人 間 工 学,心
理 学,リ
ハ ビ リ テ ー シ ョ ン医 学 な どの 分 野 に お い て も,
気 軽 に筋 電 図 が用 い られ る 環 境 が 整 っ て き た. しか しな が ら,表 面 電 極 を筋 の 直 上 の皮 膚 に貼 る場 面 は依 然 と して 手 作 業 で あ り,大 変 重 要 な プ ロ セ ス で あ る.電 極 を貼 る 所 作 は基 本 中 の基 本 な の で,こ
れま
で の 筋 電 図 マ ニ ュ ア ル な どに は書 か れ て い な い こ とが 多 く,導 出 して し ま っ た解 析 に 耐 え ない 筋 電 図 を前 に 時 間 を 費 や す こ と も よ く見 受 け られ る.だ か ら とい っ て,必 要 以 上 に むず か し い と思 い 込 ま な くて も よ い環 境 が 整 い つ つ あ る こ とを 強 調 して お きた い.
2.1 電極 を貼 る 前 に や み く も に た くさ ん の 電 極 を貼 っ て,PCの
性 能 を活 か し,力 ず くで 解 析 して
し ま う こ とが 現 代 で は 可 能 で は あ る.し か しな が ら,膨 大 な デ ー タ を前 に す る と, い ろ い ろ な現 象 が 目 に入 っ て く る の で,逆
に焦 点 を見 失 っ て し ま う こ と もあ る.
ま た,関 係 が あ りそ うな 筋 群 の す べ て か ら筋 電 位 を導 出 して お く と安 心 か も しれ な い が,導
出 チ ャ ンネ ル 数 が 増 え れ ば 高 額 な 筋 電 図計 測 機 器 が 必 要 に な り,計 測
準 備 に要 す る時 間 も延 び て し ま う.し
たが っ て,筋 電 図 を検 討 す る 目的 や 現 実 の
実 験 環 境 を考 慮 しな が ら,予 備 的 な計 測 を繰 り返 し,筋 電 位 を 導 出す る 筋,部 位 を 十 分 に 吟 味 しな け れ ば な らな い. さ らに,電 極 を貼 る 前 に考 え て お か な け れ ば な らな い こ とは,筋 電 位 の解 析 区 間 を決 め られ る よ う に,動 作 局 面 が 理 解 で き る信 号 も同 期 させ て お くこ と,被 験 者 間,被 験 筋 間 で 比 較 す る た め に 正 規 化 の 方 法 を 考 え て お くこ と,な ど い くつ も あ る.以 下 に 順 次 述 べ る こ とに す る.
1 動作に対応する被験筋を選ぶ ま ず 吟 味 しな け れ ば な ら な い こ と は,ど の 筋 に 電 極 を貼 るか で あ る.基 本 的 に 表 面 筋 電 位 は,皮
下 に あ る表 層 筋 か らの み 導 出 可 能 で あ る.ま ず,検
討 した い動
作,動 作 場 面 とそ れ に か か わ る筋 群 の 関 係 を明 確 に す る た め に は,解 剖 学 の 成 書 1∼3)と 睨 め っ こす る こ とが 「始 め の 一 歩 」 で あ る .解 剖 学 の 成 書 に つ い て は,巻 末 に 参 考 文 献 を挙 げ コ メ ン トを付 した の で,参
照 して い た だ き た い.そ れ らをみ
な が ら,自 分 の 体 で そ の 動 作 を繰 り返 し,ど の 筋 群 が 使 わ れ て い るか を 「感 じ る」 こ と も重 要 で あ る.ど
の 筋 が 使 わ れ て い る の か 数 回 の 動 作 で 判 断 で きな けれ ば,
軽 く筋 疲 労 を起 こす ま で動 作 を繰 り返 して み る こ と も一 計 で あ る. そ の 際 に,動
きの 大 き い 関 節 周 りの 筋 に 目を 奪 わ れ て し ま う こ とや,筋 負 担 に
お け る 先 入 観 に対 して 注 意 し な け れ ば な ら な い.た 棚 に入 れ る際 の 筋 負 担 を と ら えた い場 合,腰
と え ば,床 の 物 体(負 荷)を
部 だ け の 筋 電 図 か ら評 価 す る こ と は
危 険 で あ る.負 荷 を担 う た め に 膝 関節 を 中 心 と し た 下 肢 の 筋 群 も,上 肢 や肩 の 筋 群 もか か わ る か らで あ る.も
し,膝 の伸 筋 群 を 効 果 的 に 使 っ て い れ ば,あ る い は
上 肢 や 肩 の 筋 力 が 強 け れ ば,負 荷 が 重 くな っ て も,棚 の 位 置 が 高 くな っ て も,腰 部 の 筋 活 動 量 は変 わ ら な い こ と もあ り得 る. 一 方,筋
電 位 は 導 出 チ ャ ンネ ル 数 が 少 な い 方 が 計 測 も解 釈 も楽 だ が,導
出す る
被 験 筋 を 絞 りす ぎ る と,一 見 して 同 じ動 作 で も筋 の 使 い 方 に個 人 差 が あ る場 合 に は対 処 で き な くな る.た
と え ば,椅 子 か らの 立 ち 上 が り動 作 に お け る膝 関節 伸 筋
群 の 筋 負 担 を と ら え た い 場 合,外
股 ぎみ で 立 ち上 が る場 合 と,内 股 ぎみ で立 ち 上
が る 場 合 で は,大 腿 四 頭 筋 の 使 わ れ 方 が 微 妙 に 異 な る.図2.1は,あ
る被験 者が
外 股 ぎ み(つ
ま先 が 外 を 向 い た 姿 勢)で
(つ ま先 が 内 を 向 い た 姿 勢)で
立 ち 上 が る場 合(右
図 か ら一 見 して わ か る よ う に,つ (振 幅)が
立 ち 上 が る場 合(左 側)の
側)と,内
股 ぎみ
筋 活 動 パ タ ー ンで あ る.
ま先 が 外 を 向 い て い る 場 合 は 内 側 広 筋 の 活 動
大 き く,つ ま先 が 内 を 向 い て い る場 合 は外 側 広 筋 の 活 動 が 大 き い傾 向
に あ る.も
し,1つ
の 筋 だ け か ら筋 電 位 を 導 出 して い た と した ら,こ の 相 違 は 観
察 で きな い の で あ る.
図2.1 椅 子 か らの立 ち 上 が り動 作 時 に お け る筋 活動 パ ター ン
2 正 規化 の方 法 を考 えて お く 筋 電 図 か ら筋 活 動 の オ ン ・オ フや 活 動 パ ター ン を検 討 す る だ け な ら,原 波 形 そ の ま ま を 用 い て も構 わ な い.し 測 し た場 合,筋 す る.な
か し,異
な る 被 験 者,異
活 動 量 の 計 算 値 を個 人 間,筋
ぜ な ら,個 人 間,筋
な る 筋,異
なる電極 で計
間 で 直接 比 較 す る と きに は 注 意 を 要
間 で 皮 下 脂 肪 の 厚 さ,皮 膚 イ ン ピー ダ ンス な ど が 異
な る と,筋 線 維 レベ ル で 発 生 して い る 電 位 は 同 じだ と して も,電 極 レベ ル で 記 録 さ れ る 電 位 は異 な る か ら で あ る.し
た が っ て,あ
る 筋 活 動 量 を,基 準 と な る筋 活
動 量 に対 す る 割 合 で 示 す 正 規 化(規
格 化,基
準 化,標
準 化,相
対 値 化 と も い う)
とい う作 業 が 必 要 に な る.正 規 化 の 方 法 に は そ れ ぞ れ 長 所 短 所 が あ り,ど の 正 規 化 法 を用 い る の か,筋
電 図 を 検 討 す る 目的 に よ っ て あ らか じめ 決 め てお か な け れ
ば な らな い. 代 表 的 な正 規 化 法 は,あ (Maximal
Voluntary
100%MVC法
る 動作 局 面 の筋 活 動 量 を 対 象 と な る筋 の 最 大 随意 収 縮
Contraction:MVC)時
で あ る.図2.2に,100%MVC時
よび15%MVCに
の 筋 活 動 量 に対 す る割 合 で 示 す の 筋 活 動 量,そ
相 当す る筋 活 動 量 の イ メ ー ジ を示 した.た
の50%MVCお
だ し,MVCの
発揮
は,不 慣 れ な 被 験 者 に は む ず か しい の で,休 憩 を入 れ な が ら練 習 を行 い,さ 実 際 の 計 測 も2,3回 随 意 収 縮 は,ま
繰 り返 し,バ
ラ ツ キ が 小 さい こ と を確 認 す る.ま
らに
た,最 大
さ に 随 意 的 な 最 大 努 力 の も とに 出 力 さ れ る もの なの で,生 理 的 に
は も っ と 出力 で き る の に知 らず 知 らず の う ち に抑 制 し て し ま う,つ ま り最 大 筋 力 を 出 し切 れ て い な い とい う心 理 的 限界 の 問 題 が つ き ま と う.ま た,高 齢 者 を対 象 とす る場 合 な ど,最 大 値 を求 め る こ と に危 険 を伴 う場 合 に は 適 さ な い . 筋 出 力 と筋 活 動 量 の 関係 は,ほ ぼ 線 形 性(直 が10%以
下 の よ う に低 い 場 合 と90%以
線 性)が
保 た れ て い るが,筋
出力
上 の よ うに 高 い 場 合 で は,線 形 性 が 崩 れ
図2.2 筋 出 力 と筋 活 動量 の 相対 的 イ メー ジ
図2.3 筋 出力 と筋活 動 量 の 関係(一 般 的 概 念 図)
る 局 面 が あ る(図2.3).ま
た,こ
のS字 状 の カ ー ブ の 形 は,小 筋 群 と大 筋 群 で は
異 な る 場 合 も あ る.い ず れ に し ろ,100%MVC時 打 ち)を 起 こ して い る の で,よ 量 を2倍
の筋 活 動 量 は レベ ル オ フ(頭
り正確 に正 規 化 す る た め,50%MVC時
した値 を基 準 値 とす る50%MVC法
の筋 活 動
も あ る.た だ し この 方 法 も,心 理 的
限 界 の 問 題 は拭 え な い. 心 理 的 限 界 の 問 題 を 払 拭 す る た め に,最 大M波
法 もあ る.こ れ は,最 大 上 の 電
気 刺 激 を対 象 と な る 筋 を 支 配 す る神 経 束 に与 え,そ れ に よ って 現 れ る誘 発 筋 電 位 反 応(こ
れ を 最 大M波
と呼 ぶ)の
振 幅 を基 準 値 とす る 方 法 で あ る.た だ,神 経 束
を 最 大 上 で 電 気 刺 激 で きる 環 境 とテ ク ニ ッ クが 必 要 と な る の で,一
般 的 とは い え
な い. 正 規 化 法 の も う1つ の代 表 例 は,動 作Aの
と きの 筋 活 動 量 を動 作Bの
活 動 量 に対 す る 割 合 で 示 す とい う課 題 間 比 較 法 で あ る.た に 示 した 筋 電 図 か ら,つ
と え ば,前
と きの 筋 述 の 図2.1
ま先 が 外 の と きの 筋 活 動 量 をつ ま先 が 内 の と きの筋 活 動
量 に対 す る割 合 で 示 せ ば よい の で あ る.た だ しこ の 方 法 で は,筋 力 な どの個 人 の 能 力 差 な ど に言 及 す る こ と は むず か し くな る.
3 同期させる力学的信号を考えておく 動 作 時 の 筋 負 担 や 動 作 特 性 な どの 計 測 ・評 価 の た め に筋 電 位 を 記 録 す る 際 に は,動 作 と の 整 合 性 を保 つ た め,力 学 的 信 号(動 作 の 情 報)を て お く こ とが 必 要 で あ る4).た
同 期 させ て 記 録 し
と え ば,ビ デ オ な どに よ る 画 像,関
節角 度計 な ど
に よ る屈 曲 ・伸 展 な どの 動 作 方 向,力
量 計 や フ ォー ス プ レ ー トな ど に よる 出力,
反 応 の 開 始 時 点 や 歩 行 動 作 の 離 着 床 時 点 に お け る ス イ ッチ 信 号 な どの な か か ら, 必 要 な力 学 的信 号 を筋 電 位 と合 わ せ て記 録 して お け ば よ い.各 筋 の 活 動 が 動作 の どの 局 面 にか か わ る もの な の か を同 定 で き る よ うに し な け れ ば,被 験 者 間,被 験 筋 間,動 作 間 な ど の条 件 で 比 較 す る こ とが む ず か し く な る の で あ る.図2.1で
は,
膝 関 節 に 取 り付 け た 角 度 計 の 出力 も示 し,立 ち上 り開 始 時 と立 ち上 が り完 了 時 が 判 別 で き る よ うに な って い る. 一 方,ビ
デ オ 画 像 の信 号 の サ ンプ リ ン グ レー ト(サ ン プ リ ング 周 波 数)は一
的 に30∼60Hz,高 1000Hz以 じる.こ
速 度 カ メ ラ で200Hzな
般
どで あ り,筋 電 位 の サ ン プ リ ン グ は
上 が 望 ま し く(詳 し くは 後 述),両
者 を合 わ せ て 記録 す る に は 問 題 が 生
の よ う な場 合 に は,ビ デ オ画 像 と筋 電 図 の 両 者 に 同 期 信 号 を記 録 して お
き,解 析 時 に デ ー タ の補 間 な どに よ っ て 時 間軸 を 合 わせ る よ う に す る こ とが 現 実 的 で あ ろ う. ま た,筋 電 図 と力 学 的 信 号 を 同 期 させ て み る と き,筋 放 電 開 始 か ら力 学 的信 号 の 変 化 開 始 ま で の 時 間 遅 れ で あ る 電 気 力 学 的 遅 延(ElectroMechanical EMD)が
あ る こ と を知 っ て お くべ きで あ る.つ
Delay:
ま り,筋 収 縮 が 開 始 され,筋 張 力
が 生 じ,自 重 や 初 期 張 力 に勝 って 張 力 信 号 や 角 度 信 号 が 変 化 し出 す ま で,あ
るい
は 筋 放 電 が 停 止 して 張 力 信 号 や 角 度 信 号 の 変 化 も収 束 す る まで に は,約30∼ 100msのEMDが
存 在 す る の で あ る.こ
下 肢 な ど の大 筋 群 で は 長 い.ま
た,筋
のEMDは
手 指 な ど の 小 筋 群 で は 短 く,
収 縮 速 度,運
動 制御 能 力 な ど の個 人 差 に よ
反 応 時 間課 題 に お け る筋 電 図 と力 量 計 の 信 号,さ
らに ス イ ッチ信 号 の 時系 列 パ
って も異 な る.
タ ー ン を 図2.4に 示 し た.筋 Time:EMG‐RT)はPreMotor れ る こ と も あ る.機 EMG‐RTとEMDの が み られ,EMDが
電 図 反 応 時 間(ElectroMyoGraphical Time(PMT),EMDはMotor
械 的 反 応 時 間(Mechanical 合 計 値 と な る.つ
Reaction
Time(MT)と
Reaction
呼ば
Time:M‐RT)は,
ま り,反 応 刺 激 に対 して 筋 電 図 上 に筋 活 動
あ っ て か ら力 量 計 の信 号 が 立 ち上 が る.さ
力 が発 揮 さ れ て か らス イ ッチ ン グが 開 始 さ れ るが,こ
らに,あ
る程 度 の
の 時 間差 は計 測 に 用 い る ス
図2.4 反応 時 間 課 題 の筋 電 図
イ ッ チ の 応 答 特 性 に よ る.た 用 い る と,当
と え ば,バ
ネ の 強 い,ス
トロー ク の 長 い ス イ ッチ を
然 こ の 時 間 差 は 延 長 す る の で あ る.
4 筋電図活用の方向性について 筋 電 図 は 通 常,ど
の よ う に 活 動 が み られ る か,ど
期 待 して用 い られ る こ とが 多 い.し
れ く らい 活 動 が み られ る か を
か し なが ら,ど れ く らい 活 動 が み ら れ な い か
とい う こ と に焦 点 を あ て て 筋 電 図 を利 用 す る こ と も あ る.た や 光 に 変換 し て,過
緊 張 状 態 を認 識 させ,音
頼 りに リラ ッ ク ス状 態 へ 誘 導 す る方 法(バ
が しな い,あ
と え ば,筋 電 位 を音
る い は光 ら な い こ と を
イ オ フ ィー ドバ ッ ク法)が
あ る.ま た,
動 作 学 習場 面 に お い て,円 滑 な動 作 遂 行 を 阻害 す る無 駄 な力 を認 識 させ る た め に, 無 駄 な 筋 活 動 を 筋 電 図 に して み せ,そ
の 無 駄 な力 を抜 くよ うに ア ドバ イ ス す る こ
と も有 効 で あ る場 合 が あ る. 図2.5に,肩 板 筋 群(棘
の 外 旋 動 作 にお い て,イ
上 筋,棘
し た(右 側).こ
下 筋,小
円筋)を
ン ナ ー マ ッス ル と呼 ば れ る深 層 に あ る腱 選 択 的 に活 動 させ て い る場 面 の 筋 電 図 を示
の 図 の 筋 電 位 波 形 は全 波 整 流 した もの で あ る.五
十肩 やス ポー
ツ障 害 な ど リハ ビ リ トレ ー ニ ン グ初 期 で は,三 角 筋 な ど の ア ウ タ ーマ ッス ル を活 動 さ せ な い で,イ
ンナ ー マ ッス ル を 選 択 的 に 活 動 させ る レベ ル の 低 負 荷 ト レー ニ
ン グ が 必 要 と さ れ て い る5).た だ,図2.5に
示 した イ ンナ ー マ ッス ル の 筋 電 位 は,
筋 内 に埋 入 させ る ワ イ ヤ ー 電 極 を 用 い な い と導 出 で きず,当 然,侵 襲 的 な計 測 とな る.し か し,ア ウ ター マ ッス ル だ け か ら筋 電 位 を導 出 して,筋
活 動 が み られ な い
の に 筋 出力 が み られ る低 い負 荷 レベ ル で トレー ニ ン グ を行 え ば,結 果 と して そ れ は イ ンナ ー マ ッ ス ル の 選 択 的 トレー ニ ン グ に な っ て い る の で あ る6).
図2.5 肩 の低 負 荷 トレー ニ ングに お け る筋 活動 パ ター ン
こ の よ う に,筋 活 動 が み られ な い こ と に焦 点 を あ て て 筋 電 図 を 利 用 す る 際 に重 要 な こ と は,微 妙 な筋 活 動 量 を取 り扱 うの で,よ
りノ イ ズ レ ス な 筋 電 図 を得 る こ
とに 労 を 惜 し ま な い よ う に しな け れ ば な ら な い.い ず れ に して も,計 測 を 始 め る 前 に,な
ぜ 筋 電 位 を 計 測 す る の か,ど
の よ うに 筋 電 図 を活 用 す る の か,ど
のよう
に解 析 お よ び評 価 す る の か を十 分 に 吟 味 して お くべ きな の で あ る.
2.2 記録方法 の選定 と設定 電 極,増
幅 器 お よ び記 録 器 の選 定 や 設 定 を行 う前 に,筋 電 図 を どの よ うに 役 立
て る の か を よ く考 え て お か な け れ ば な ら な い.た
と え ば,①
筋 放 電 開 始,持
続,
停 止 をみ て,動 作 に 関 与 す る 筋 が 活 動 して い るか 否 か(オ 動 順 序 な どの 筋 放 電 パ タ ー ン を検 討 す る,②
ン ・オ フ)や 各 筋 の 活
どの 程 度 使 われ て い るか な ど の 定 量
的 解 析 をす る,③ あ る い は筋 電 図 の周 波 数 解 析 も行 う,な どの 目的 が 考 え られ る. こ れ は,筋 電 図 解 析 の 目 的 に よ っ て 用 い る 電 極 の 種 類 が 異 な る だ け で な く,増 幅 器 の 設 定 もい ろ い ろ で あ る か ら で あ る.具 体 的 に は 後 述 す る が,要 す る に,手 持 ち の 機 器 に よ っ て研 究 の 目的 と 内 容 が 制 限 され る場 合 も あ り,逆 に,研 究 の 目的 と 内 容 に よ っ て は 高 機 能 の機 器 で な くて も用 が足 りるの で あ る.
1 電極 電 極 や 増 幅 器(生 か に よ っ て,用
体 ア ン プ)に は,多
くの 種 類 が あ る.筋 電 図 を ど う解 析 す る
い る機 種 を 選 ぶ こ とが で き る.で
密 に筋 電 位 を導 出 す る に こ した こ と は ない が,そ
きれ ば 高精 度 の 機 種 を用 い,精 の 環 境 に 恵 まれ て い な くて も,
限 界 を わ き ま え れ ば 筋 電 位 の 導 出 をあ き ら め る必 要 は な い.ま
た,PCに
搭載 さ
れ た波 形 解 析 ソ フ トに フ ィ ル タな ど の機 能 が 充 実 して い れ ば,高 機 能 の生 体 ア ン プ で な くて も解 析 に耐 え る筋 電 図 を得 る こ とが 可 能 で あ る. 電 極 の 種 類,電
極 間距 離,フ
ィ ル タ設 定 な どに よ る波 形 へ の 影 響 の 詳 細 は,論
文 や 成 書4,7,8)にあ る の で 割 愛 す る が,第7章 Electromyography for Reporting
and EMG
Kinesiologyの
Data」
で 詳 し く述 べ る よ うに,Journal
of
巻 末 に 記 載 され て い る記 述 「Standards
に は 一 度 目を 通 して お く こ と を勧 め る.こ
こ で は,
基 本 の 設 定 の み を簡 単 に 記 して お く. 一 般 に,電 極 直 径 や 電 極 間 距 離 が 長 くな る と,高 い周 波 数 帯 域 の 筋 電 図 を記 録 しづ ら くな り筋 電 位 波 形 が 平 坦 化 す る,あ が 混 入 す る危 険 性 が 高 くな る.た
る い は隣 接 す る筋 か らの ク ロ ス トー ク
だ し,あ る 程 度 長 い 方 が,対
象 と な る 筋 の 全体
的 な 筋 活 動 を導 出 で き,筋 線 維 方 向 に 対 す る 電 極 の わ ず か な ズ レの 影 響 を抑 え ら れ る.逆
に,電 極 直 径 が 小 さす ぎる と皮 膚 と電 極 との接 触 イ ン ピー ダ ンス(接
抵 抗)が
増 え,ノ
触
イ ズ を多 く含 ん だ 波 形 に な っ た り,電 極 間 距 離 が 短 す ぎる と発
汗 に よ っ て2極 が 短 絡 して し ま う こ と もあ る.そ 動 電 極(図2.6(a),(b))を
用 い る 際 は,露
こ で現 在 の と こ ろ,一 般 的 な受
出 金 属 部 の 直 径5∼10mmの
電極を
図2.6 電 極 の種 類
用 い,電
極 中 心 間 距 離 を10∼20mmと
す る の が 標 準 で あ る.下 肢 な どの 大 筋 群
か ら筋 電 位 を導 出 す る 際 は,直 径,間
隔 と も に大 き い電 極 を用 い て 構 わ な い.し
か し,手 指 な どの 小 筋 群 か ら導 出 す る際 は小 さな 電 極 を用 い る こ と を勧 め る. 市 販 され て い る デ ィス ポ ー ザ ブ ル 電 極 で は,皮 小 さい も の で20mm,導
膚 と の 接 着 部 を 含 め た 直 径 が,
通 部 も小 さい もの で 直 径12mmで
あ る(図2.6(c)).こ
の 種 の 電 極 は 着 脱 が 便 利 で あ り,接 触 面 積 が 大 き く抵 抗 が 小 さ くな るの で,ノ イ ズ 成 分 が 少 な い波 形 を得 る こ とが で き る.し か しな が ら,必 然 的 に 電 極 間距 離 が 大 き くな る こ とに よ る 問 題 や,ク
ロス トー クの 問 題 が 生 じや す い の で,前 腕 や 手
指 な どの 小 筋 群 に は避 け た 方 が よい. 能 動 電 極 は 金 属 バ ー が10mm間
隔 で 並 ん で い る も の が 多 い(図2.6(d),(e)).
実 際 に 使 っ て み る と非 常 に便 利 な 電 極 で あ る.能 動 電 極 は ア ンプ 部 分 を 含 め 商 品 化 が 進 み,小
型 軽 量 化 を 中 心 に ま だ ま だ進 化 中 で あ る.ま た,多
イ 電 極(図2.6(f))で る.
は,筋 電 位 の伝 播 パ ター ン(図3.4参
照)を
チ ャンネルア レ 探 る こ とが で き
2 増幅器の感度 多 用 途 筋 電 計 は,以
前 は大 型 冷 蔵 庫 の よ う な 大 き さ で あ っ たが,小
な され て きた(図2.7).今
型軽量 化が
後 は 電 極 と一 体 化 され た り,身 体 に装 着 す る ウ ェ ア ラ
ブ ル タ イ プ や,無 線 タ イ プ の普 及 が 期 待 さ れ る.
図2.7 生 体 信 号計 測 装 置 の 変遷
増 幅 器 の感 度(ゲ
イ ン),時
定 数 お よ び フ ィル タ は,表
面 筋 電 位 の特 性 を 考 慮
して 設 定 し な け れ ば な ら な い,筋 内 で 発 生 した 電 位 は,皮 下 の 組 織 を伝 導 して 体 表 に 到 達 す る ま で に1/1000以 き さ は 数 十 μV∼ 数mVほ
下 に 減 衰 す る とい わ れ,体
どで あ る.こ
れ を100∼10000倍
シ ロ ス コ ー プ や ペ ン レ コー ダ な ど の 記 録 器 上 で1mV/cm程 を調 節 す る.ま
表 で得 ら れ る 電 位 の 大 に 増 幅 し,通 常,オ 度 に な る よ う に,感 度
た,計 測 を始 め る 前 に,校 正(Calibration:CAL)ス
イ ッチ を
操 作 して,校 正 値 を記 録 し てお く.校 正 値 が な い と,筋 電 位 振 幅 の 絶 対 値 を 計 算 した り比 較 し た りす る こ とが で きな くな る.増 お け ば,計
幅 器 や 記 録 器 の ゲ イ ン を記 録 して
算 に よ っ て絶 対 振 幅 値 を求 め る こ と も原 理 的 に は可 能 で あ るが,往
々
に して こ の よ う な 記 録 を 紛 失 した り,記 録 が あ い まい に な っ た りす る の で,校 正 値 の 記 録 は習 慣 と して 身 につ け るべ きで あ る.
3 周波数特性 周 波 数 特 性 の う ち,帯
域 通 過 の 下 限 周 波 数 は時 定 数 で 表 現 さ れ る こ とが 多 い.
時 定 数 τ〔s〕 か ら遮 断 周 波 数fc〔Hz〕へ の 変 換 式 はfc=1/(2π τ)であ る.時 定 数 の 設 定 で は,表
面 筋 電 図 の周 波 数 成 分 は5∼500Hzに
標 準 的 に は0.03sを 用 い る.0.03sで
分 布 す る と い わ れ て い る の で,
は,5.3Hz以
下 が カ ッ トさ れ る こ と に な る.
時 定 数 の 設 定 機 能 が な く,ハ イ パ ス フ ィル タ(低 域 遮 断 フ ィ ル タ,ロ
ー カ ッ トと
表 示 さ れ る こ と もあ る)機 能 を もつ 機 種 で も,表 面筋 電 図 の 周 波 数 帯 域 を参 考 に 設 定 す れ ば よい. ロ ーパ ス フ ィル タ(高 域 遮 断 フ ィ ル タ,ハ 1kHz以
上 が 望 ま し い.一
方,ア
ナ イ キ ス トの 定 理 に よ り,サ
イ カ ッ ト)に つ い て は,標 準 的 に は
ナ ロ グ / デ ジ タル(AD)変
換 す る 場 合 に は,
ンプ リ ン グす る観 測 信 号 の 最 高 周 波 数 成 分 が,サ
プ リ ン グ周 波 数 の 半 分 以 下 で な け れ ば な らな い.そ
ン
うで な い と,元 の信 号 の 周 波
数 成 分 と異 な る 周 波 数 の パ ワ ー が 現 れ る こ とに な る.こ れ は エ イ リア ス と呼 ば れ る.エ
イ リア ス と は,「 別 名,偽
名 」 の 意 味 で あ る.こ
こ で は,ア
ナ ロ グ 的 な連
続 信 号 を デ ジ タル 的 な 離 散 値 に 不 十 分 に サ ン プ リ ン グ した 場 合 に 現 れ る,も
との
デ ー タ に は含 まれ て い な い周 波 数 パ ワ ー の虚 像 成 分 の こ とで あ る. そ れ で は,サ は,フ
ン プ リ ン グ周 波 数 を どの程 度 に設 定 す れ ば よい か で あ る が,こ れ
ィル タ の 減 衰 の 傾 き(dB/Octave)と,そ
ワー が あ るか に 依 存 す る.高 域 遮 断1kHzで,サ まっ た く問題 は な い が,そ
も そ も元 の信 号 に どれ だ け の パ ン プ リ ン グ 周 波 数5kHzな
れ で は デ ー タ の 量 が 多 くな るの で,も
らば
っ と低 いサ ンプ
リ ン グ周 波 数 で も よ い.実 際 に 表 面 筋 電 図 の場 合 は,そ の 周 波 数 成 分 は5Hzか 500Hzま
で とい わ れ て い る の で,高
域 遮 断1kHz,サ
ンプ リ ン グ周 波 数2kHzが
よ く用 い られ て い る.た だ し,こ こ で 遮 断 周 波 数1kHzと ィ ル タに よ り減 衰 が 始 ま る周 波 数 で あ って,入
ら
い う の は,あ
力 信 号 に よ っ て は,そ
くま で フ
れ 以 上 の周
波 数 に お い て もだ ん だ ん 弱 くな りなが ら も信 号 の パ ワ ー が 残 っ て い る可 能 性 が あ
る.そ
の 場 合 に は,単 純 にサ ン プ リ ン グ周 波 数 を倍 の2kHzと
が 生 じる.い
ず れ に して も,一 度,サ
す る とエ イ リ ア ス
ン プ リ ング した筋 電 位 信 号 を周 波 数 変 換 し
て,ど の よ う な周 波 数 成 分 を 含 ん で い るか を確 認 して お くこ とが 望 まれ る.
4 入 力イ ン ピーダ ンス 増 幅 器 の 選 定 に あ た っ て は,入 力 イ ン ピー ダ ン ス が 重 要 で あ る.増 幅 器 の 入 力 側 に 電圧 を加 え た と きに,ど で あ る.イ
れ だ け 電 流 が 流 れ る か の 比 率 が 入 力 イ ン ピー ダ ンス
ン ピー ダ ンス は 電 気 抵 抗 を一 般 化 した もの で,電 圧 と電 流 が 比 例 す る
抵 抗 要 素 に加 えて,コ
ンデ ンサ や コイ ル な どの 位 相 変 化 を含 ん で い る.増 幅 器 の
場 合 に は,抵 抗 成 分 と コ ンデ ンサ に よ る電 気 容 量 が 並 列 に結 合 され た もの とみ な して よ い の で,何
メ ガ オ ー ム(MΩ),何
オ ー ム の 法 則 に よ っ て,体
ピ コ フ ァラ ド(pF)の
よ う に表 示 され る.
内 で 発 生 した 電 位 変 化 は 直 列 に接 続 さ れ た皮 膚 抵 抗
と増 幅 器 の 入 力 抵 抗 に 分 配 され る.ま た,交 流 成 分 につ い て は 電 気 容 量 の 大 き さ が 影 響 す る.入 力 抵 抗 が 皮 膚 抵 抗 に比 べ て 小 さ く,入 力 容 量 が 大 き い と,体 内 で 発 生 した 電 位 変 化 の 多 くが 皮 膚 側 に加 わ り,増 幅 器 で 検 出 され る 電 圧 は小 さ くな る.こ
こ で,皮 膚 イ ン ピー ダ ン ス は状 況 に よ っ て 変 化 す る こ と に も注 意 が 必 要 で
あ る.以 上 の こ とか ら,筋 活 動 を 正 し く取 り出 す に は 増 幅 器 の 入 力 イ ン ピ ー ダ ン ス は で き るだ け大 き い 方 が よ い. 一 般 的 な生 体 増 幅 器 の 場 合 に は,入 力 イ ン ピー ダ ンス の 抵 抗 成 分 は10∼100 MΩ 程 度 の も の が 多 い.装
置 に よ っ て はマ ニ ュ ア ル をみ て も,入 力 イ ン ピー ダ ン
ス が 明 記 され て い な い こ と もあ る.増 幅 器 入 力 イ ン ピ ー ダ ンス は簡 単 な テ ス タ ー で 計 測 で き る よ う な もの で は ない の で,そ の よ う な場 合 に は メ ー カ ー に確 認 す る 必 要 が あ る.
5 同相除去比 増 幅 器 の 特 性 を表 す 指 標 の1つ Ratio:CMRR)が
と して 同 相 除 去 比(Common
あ る.理 想 的 な差 動 増 幅 器 の場 合,2つ
Mode
Rejection
の 入 力 端 子 間 に発 生
す る電 位 差 だ け を 増 幅 し,ア ー ス に対 して2つ の 入 力 端 子 に 同 じ振 幅 で 入 力 され
た 電 位 は 増 幅 され ない.し
か しな が ら,実 際 に は,こ
の 同相 成 分 の 電 圧 も出 力 に
幾 分 か の影 響 を及 ぼす. た と え ば,2つ
の 入 力 端 子 間 の 電位 差 が1mVで
の 信 号 が 出 力 さ れ た とす る.こ に1Vの
これ を1000倍
れ と 同 時 に,同 相 成 分 と して ア ー ス と入 力 端 子 間
電 位 差 が あ り,そ の 成 分 が 出力 端 で0.1Vと
相 除 去 比 は,出
力 端 で の 値 を 同 じ1Vと
差 動 成 分1mVな
の で,10/0.001=10000と
と,20log104dB=80dBと
に増 幅 して,1V
して,入
して 出 力 さ れ た とす る と,同 力 端 に換 算 して 同 相 成 分10V,
な る.こ
れ を デ シベ ル 〔dB〕 で 表 す
な る.
同 相 除 去 比 は,増 幅 器 に 固有 の 特 性 で,装 置 を購 入 して し ま っ た ら変 更 し た り 設 定 で き る も の で は な い の で,あ
くま で購 入 す る 前 の 目安 で あ る.ま
た,同 相 除
去 比 だ け で 装 置 の性 能 が 規 定 さ れ るわ け で は な い の で,数 値 そ の もの よ り も,自 分 が 普 段 使 用 す る 環 境 下 で,筋
電位 が 正 常 に計 測 で き れ ば,さ
ほ ど気 に す る必 要
も な い で あ ろ う.た だ し,重 要 な特 性 の1つ な の で,値 が 不 明 な場 合 に は メ ー カ ー に 問 い 合 わ せ て確 認 して お くの が よ い .特 に,メ
ー カ ー に よ っ て は カ タ ロ グや
マ ニ ュ ア ル に,こ の よ うな 数 値 が 記 載 さ れ て い ない こ とが あ る.
6 記録器 ひ と昔 前 は,記 録 方 法 とい う とオ シ ロ ス コ ー プ に表 示 され た 筋 電 位 波 形 を写 真 に撮 り,振 幅 を ノ ギ ス な どで 直 接 計 測 し,評 価 して い た.あ
る い は,ペ
ンレコー
ダ を用 い て 記 録 紙 に 画 か れ た 筋 電 位 波 形 を計 測 ・評 価 して い た.最 近 は 筋 電 位 信 号 をす ぐ にAD変
換 してPCに
取 り込 み,解
析 ソ フ トに よ りほ ぼ リ ア ル タイ ム で
計 測 ・評 価 で きる よ う に な っ た.電 極 が 正 確 に貼 付 さ れ,増 幅 器 の 設 定 も適 切 で あ れ ば,こ
の 方 法 で な ん ら問 題 は な い が,AD変
リー ズ)す
る こ と も皆 無 で は な い.何
学 習 効 果 を検 討 す る場 合 な ど1回1回
換 中 にPCが
ハ ン グ ア ップ(ブ
度 も試 技 を 繰 り返 せ る場 合 は 必 要 な い が, の 試技 に 重 要 性 が 高 い と き は,一
度デ ー タ
レ コー ダ に精 度 よ く記 録 して お く こ と を勧 め る. AD変
換 の 際 の サ ン プ リ ン グ 周 波 数 に 関 して は,も
し 「3.2平 均 振 幅 」 で 詳 述
す る よ う な振 幅 情 報 の 定 量 的 評 価 を した い の な ら ば,で
きれ ば2kHz以
上,少
な
く と も1kHz以
上 で 行 う必 要 が あ る.周
波 数 解 析 を した い の な らば,前
位 信 号 の周 波 数 特 性 や 増 幅 器 の 設 定 を考 慮 し,で き れ ば5∼10kHz,少 2kHzで
記 録 で きる 環 境 が 必 要 で あ る.逆
て い るか 否 か)だ
述 の筋電 な くとも
に,関 与 す る 筋 の オ ン ・オ フ(活 動 し
け を モ ニ ター し,力 学 的 信 号 の 検 討 を 主 に行 う場 合 に は,あ
り勧 め られ な い が,力 学 的 信 号 を記 録 す る 際 の500Hz以
ま
下 で 筋 電位 信 号 もAD変
換 して し ま う前 例 もあ る. ペ ン レ コー ダや オ シ ロ ス コ ー プ は も う必 要 な い と思 い 込 む こ と は 早 計 で あ る. 筋 電 位 記 録 中 は,ど の よ う な ア ー チ フ ァ ク トが,ど る か 予 測 で き な い.常
の よ うな タ イ ミ ン グ で 混 入 す
に,原 波 形 をモ ニ ター し,導 出 さ れ て い る筋 電 位 波 形 が 解
析 に耐 え られ る もの か,シ
グ ナ ル対 ノ イ ズ 比(Signal
to Noise
は 十 分 か,高 い 筋 電 位 が 出 現 した と き に振 り切 れ な い か(オ
ratio:S/N比)
ー バ ー しな い か)な
ど を,目 を 光 らせ て チ ェ ッ ク して お くべ きで あ る.そ の 手 段 と して,こ れ まで は ペ ン レ コ ー ダあ る い は 周 波 数 応 答 特 性 の 優 れ た サ ー マ ル ア レイ レ コ ー ダ な ど を活 用 す るの が 一般 的 で あ っ た.こ
れ か ら は デ ジ タル オ シ ロ ス コ ー プ や 波 形 解 析 ソ フ
トの オ シ ロス コー プ機 能 を用 い る方 法 が 一 般 的 に な る で あ ろ う(図2.8). 最 後 にペ ン レ コー ダ や オ シ ロス コ ー プ の 設 定 で あ るが,増
図2.8 記 録機 器 の 変遷
幅 器 の 設 定 と は別 で
あ る.筋
電 位 波 形 の 表 示 速 度(ペ ー パ ー ス ピー ド)は,5∼25mm/s程
度 が標 準
的 で あ る.こ れ らの 感 度 は,表 示 す る チ ャ ンネ ル 数 な ど を考 慮 して み や す い よ う に 設 定 して 構 わ な い.
2.3 電 極 の 貼 付 よ う や く電 極 を貼 付 す る段 で あ る.た
だ し,実 際 に計 測 を始 め る前 に,ま だ ま
だ 下 準 備 が 必 要 で あ る.ま ず,電 極 貼 付 の 位 置 を 決 め る た め に,神 経 筋 接 合 部 の 位 置 と筋 線 維 の 走 行 方 向 を確 認 しな けれ ば な らな い.次
に,ノ
イ ズ を 少 しで も低
減 させ る た め に,皮 膚 抵 抗 を低 減 させ る た め の処 理 を しな け れ ば な らな い.さ に ア ー ス 電 極 を 貼 付 す る 位 置 を決 め,そ
ら
の位 置 の 皮 膚 抵 抗 も低 減 させ な け れ ば な
らな い.
1 神経支配帯を探す まず,筋
電 位 を 導 出 した い 筋 の ど こ に 電 極 を 貼 付 す る か で あ る.こ れ ま で は,
電 極 の 貼 付 位 置 は 筋 腹,あ
る い は運 動 点(モ
ー タ ー ポ イ ン ト:一 定 強 度 の 経 皮 的
電 気 刺 激 に よ っ て 最 大 の 筋 収 縮 が 得 られ る 点)と
して い る 場 合 が 多 い.し か し,
運 動 点 は神 経 終 末(神 経 筋 接 合 部)が 筋 に付 着 して い る部 分,つ に あ た り,筋 腹 付 近 に 分 布 して い る.仮 の 電 極 を貼 付 して し ま う と,図2.9に 位)へ
ま り神 経 支 配 帯
に,神 経 筋 接 合 部 を挟 ん で等 距 離 に2つ
示 し た よ う に,接 合 部 か ら両 側(近
筋 内 を伝 播 す る電 位 が お 互 い を相 殺 して 記 録 され,振
位 と遠
幅 が 小 さ い,あ
図2.9 神 経 筋接 合 部 と電 極 との位 置 関 係 に よ る筋 電位 波 形 の違 い
るい
は 平 坦 な 波 形 に な っ て し ま う9).し た が っ て,筋 腹 付 近 で,2つ
の電 極 で 神 経 筋
接 合 部 を挟 ま な い よ う に貼 付 す る よ うに 注 意 を払 うべ きで あ る. とは い っ て も,神 経 支 配 帯 が 視 認 で き る わ け で は な い.厳 密 に い え ば,多 チ ャ ン ネ ル ア レイ 電 極(図2.6(f))を
用 い て 神 経 筋 接 合 部 を 同 定 した り,電 気 刺 激 に
よ り運 動 点 を 同 定 した り,あ る い は神 経 筋 接 合 部 は皮 膚 抵 抗 値 が 低 い の で皮 膚 抵 抗 を 調 べ て最 も低 い部 位 を 同定 し な け れ ば な ら ない.し ャ ンネ ル ア レ イ電 極,電
気 刺 激 装 置,皮
か しなが ら,通 常 は 多 チ
膚 抵 抗 計 が な い 場 合 の 方 が 多 く,実 際 に
行 う に は テ ク ニ ック も要 す る の で あ る. そ の よ う な と き に は,筋 腹 付 近 を や や 外 して 思 い き っ て 電 極 を貼 っ て し ま う. た だ し,そ の ま ま 計 測 を始 めず,図2.10に
示 した よ う に安 静 レベ ル の 振 幅 と最 大
筋 出力 時 の 振 幅 の 差 が 十 分 に あ り,筋 出 力 の増 大 と と もに 筋 電 位 振 幅 も増 大 して い る か ど うか を確 か め て お く こ とが 大 切 で あ る.2極 (図2.6(d))を
が 一体 化 され た能 動電 極
用 い る場 合 で も,上 記 の作 業 は 同 様 で あ る.
さ ま ざ ま な 筋 に お け る神 経 支 配 帯 の 位 置 を,第7章
に 示 した.神 経 支 配 帯 の 位
置 や 分 布 に は個 人 差 が あ る が,実 例 と して参 考 に な る はず で あ る.
図2.10 良好 な筋電 図の 例(筋 出力 の 増大 に伴 う筋 電 位 振 幅 の増 大)
2 筋腹と筋線維方向を確認する さて,で
は ど の よ う に して 筋 腹 や 筋 線 維 方 向 を み つ け て い くの か.対 象 者 が 筋
肉 質 で あ る 場 合 は わ か りや す い が,形 な い こ とが 多 い.ま
態 的特 徴 に よ っ て は,み
ず は そ の 筋 の 起 始 と停 止(筋
るだ け で は わ か ら
と骨 の 付 着 部),紡
錘筋 で ある
か 羽 状 筋 で あ る か な ど の筋 の 形 状 を解 剖 学 の成 書1∼3)で 調 べ て お く.筋 線 維 の 長
軸 ラ イ ン と2つ の 電 極 の ラ イ ンが ず れ る(角 度 が つ く)と 筋 電 位 波 形 も歪 ん で し ま うか らで あ る.次 に,被 験 者 に筋 を 収 縮 した り弛 緩 した りを繰 り返 して も らい, そ の 筋 の 幅(端)を
手 で 触 りなが ら中 央 部 を確 認 す る.そ
の 筋 幅 の 中 央 部 で,収
縮 させ た 際 に筋 が 最 も盛 り上 が る付 近 に 目印 を つ け,筋 線 維 方 向 に沿 っ て,そ 目印 を挟 ん だ と こ ろ に電 極 を置 く.こ の よ う に,目
の
と手 と知 識 を駆 使 し なが ら電
極 貼 付 位 置 を探 っ て い くの で あ る(図2.11).
図2.11 上 腕 二 頭 筋 に お ける筋 線 維 走行 お よび神 経 筋 接 合 部 の分 布 例 と電極 貼付 例
さ らに,関 節 角 度 の 変 化 を 伴 う動 的 収 縮 の 際 に は,筋 収 縮 に よ り皮 膚 上 の 電 極 位 置 と神 経 支 配 帯 の 位 置 とが 相 対 的 に ず れ る こ とに よ っ て 影 響 が 出 る10).周 波 数 解 析 をす る場 合 に は 特 に考 慮 しな けれ ば な らな い が,対
処 法 に つ い て は,「1.5ダ
イ ナ ミ ッ ク な 運 動 時 で の 計 測 」 を読 み 返 して ほ しい.
3 皮膚抵抗を低減する モ ー シ ョ ン ・ア ー チ フ ァ ク トに よ る基 線 揺 れ や 交 流 雑 音 な どの ノ イ ズ 成 分 を抑 え,S/N比
を 高 く保 つ た め に,電 極 貼 付 部 の 皮 膚 抵 抗 を低 減 させ,電 極 と皮 膚 の
接 触 イ ン ピ ー ダ ンス をで き る か ぎ り低 く しな け れ ば な ら な い.皮 膚 抵 抗 の 低 減 に は,昔
は 紙 ヤ ス リな どで 擦 っ て い たが,皮
膚 へ の ダ メ ー ジ もあ る の で,現 在 で は
ほ と ん ど行 わ な い. 受 動 電 極 を用 い る 際 は,コ
ンパ ウ ン ドを混 ぜ た ペ ー ス トが あ る の で,そ れ を脱
脂 綿 な ど につ け て擦 り,ア ル コー ル で よ く拭 く.さ
ら に乾 い た 脱 脂 綿 な どで 乾 か
す な ど,十 分 に 仕 上 げ て か ら電 極 を貼 付 す る.最 近 は 機 器 の 進 歩 に よ り,こ こ ま で で 十 分 に ノ イ ズ レス な波 形 を得 る こ とが で き る.そ れ で も基 線 の揺 れ や ノ イ ズ 成 分 が 残 る場 合 は,プ
リパ レー シ ョン を行 う と よ い.プ
の 先 で,電 極 中 央 部 に あ た る皮 膚 の 表 組 織1枚 程 度 で あ る か ら 当然 なが ら出 血 は しな い.能
リパ レー シ ョ ン と は,針
を 剥 が す 作 業 で あ る.表 組 織1枚
動 電 極 を用 い る 場 合 は,ア ル コ ー ル
で 拭 くだ け で も十 分 で あ る が,念 の た め 皮 膚 処 理 用 の ペ ー ス トな どで擦 る こ とを 勧 め る.
4 電極を固定する デ ィ ス ポ ー ザ ブ ル タ イ プ 以 外 の 受 動 電 極 で は,カ (高 い 導 電 性 を もつ 糊 状 の もの)を
注 入 す る タ イ プ が 多 い.ペ
な か に 過 不 足 な く注 入 しな け れ ば な ら な い.カ りで も,カ
ップの な かに電極 ペ ー ス ト ー ス トは カ ッ プ の
ップ にす り き り一 杯 注 入 した つ も
ップ の 隅 にペ ー ス トが 詰 ま っ て い な い 隙 間 が あ っ た り,皮 膚 に吸 収 さ
れ た り して,貼
付 後 カ ップ 内 にペ ー ス トが 満 た さ れ て い な い 状 態 に な る と接 触 イ
ン ピ ー ダ ン ス が 大 き くな っ て し ま う.表 面 張 力 が 効 い て い る 状 態 の よ う に,カ
ッ
プ か らペ ー ス トが微 妙 に盛 り上 っ て い る 程 度 が ち ょ う ど よい. 次 に,電 極 を貼 付 位 置 に 置 き,テ ー プ な どで 皮 膚 に 固 定 す る.テ ー プ は サ ー ジ カル テ ー プ な ど,粘 着 力 が 強 くて 薄 い も の を用 い る こ とを勧 め る.各 電 極 に専 用 の 両 面 固 定 シ ー ル を用 い る の も便 利 で あ る. こ れ で と りあ えず 完 了 で あ る.し か しな が ら,ペ ー ス トが 皮 膚 に な じむ前,つ ま り接 触 イ ン ピ ー ダ ン ス が 落 ち着 く前 に計 測 を始 め て し ま う と最 初 の 筋 電 図 は ノ イ ズ 成 分 が 残 り,基 線 が 太 く な る場 合 が あ る(図2.12).そ 貼 付 後10∼15分
経 て か ら計 測 を 開 始 した 方 が よ い.ま
の よ う な と きに は,
た,確 認 作 業 と して,電
図2.12 受動 電 極 貼付 直 後 の 筋電 図の例(基 線 が比 較 的 太 い)
極 間 抵 抗(電
極 間 イ ン ピー ダ ンス)を
測 定 して お く.一 般 に20kΩ 以 下 で,で
き
れ ば5kΩ 以 下 で あ る こ とが 望 ま しい.機 器 の種 類 に よ っ て は 抵 抗 計 測 機 能 が 付 属 さ れ て い る もの もあ る.
5 アース電極 を貼 る 筋 電 位 を 導 出す る筋 の 直 上 に貼 付 す る電 極 は 導 出 電 極(記 探 査 電 極 と も呼 ば れ る)と ス 電 極(接
録 電 極,信
号 電 極,
い い,そ
の筋 と は無 関係 の 部 位 に 貼 付 す る電 極 をア ー
地 電 極 と も呼 ば れ る)と
い う.ア ー ス 電 極 に も,導 出 電 極 と 同様 に電
極 ペ ー ス トを用 い る タ イ プ,円 板 状 の金 属 板 を 固定 す る タイ プ,板 状 の 導 電 ゴム を 固 定 す る タ イ プ,帯 状 の 金 属 板 や 水 を含 ませ た布 を巻 きつ け る タイ プ な ど さ ま ざ ま な種 類 が あ る.い ず れ に しろ,導 出 電 極 を貼 付 す る 場 合 と 同 じ く,ア ー ス 電極 貼 付 部 位 の 皮 膚 抵 抗 を低 減 す る処 置 を し っか り と施 して お か な け れ ば な らな い. ア ー ス電 極 貼 付 位 置 は,一 般 に は手 首,足 首,肘 な ど,皮 膚 直 下 に 筋 が な い,あ
部,膝
蓋 骨 上,第7頸
椎付 近
る い は 筋 か ら遠 い 部 位 に貼 付 す る の が 望 ま しい.
ア ー ス 電 極 を1つ 貼 付 し て も ノ イ ズ 成 分 が 十 分 に 除 去 で きな い と き は,面 積 の大 き い ア ー ス 電 極 を用 い た り,複 数 個 を貼 付 す る.皮 膚 と電 極 との 接 触 面積 が 大 き くな れ ば,当 然 接 触 抵 抗 も小 さ くな り,ノ イ ズ 成 分 も小 さ くな る.裸 足 に な っ て 接 地 コ ネ ク タ に接続 さ れ た 大 き な導 電 板 の 上 で動 作 す る こ と も一 案 で あ る.た だ し,ア ー ス 電極 を複 数 個 用 い る 際 は,機 器 側 の 同 一 ア ー ス 端 子 に接 続 す る.
2.4 諸 問題 対 策 よ く直 面 す る 具 体 的 な 問 題 と,そ の 解 決 方 法 を い くつ か挙 げ て み た い.
1 振幅が小 さい 増 幅 器 や 記 録 器 の ゲ イ ン を上 げ て も,筋 電 位 の 振 幅 が 小 さ い と 感 じる と き は, 電 極 の 位 置 を 変 え て み る と解 決 す る場 合 が 多 い.前 述 の よ う に 電 極 間 距 離 が 広 す ぎ る こ と,2つ
の 電 極 の ラ イ ンが 筋 線 維 方 向 とず れ て い る こ と,た
また ま神 経 筋
接 合 部 の 直 上 付 近 に電 極 を貼 っ て し ま っ た こ と,な どが 原 因 とな っ て い る場 合 が 多 い か らで あ る.
2 交流雑音を除 く 交 流 雑 音(ハ
ム)が 混 入 した 筋 電 図 の 例 を 図2.13に 示 した.交 流 雑 音 の 除去 に
はハ ム ・フ ィル タ も有 効 で あ るが,で き る だ け用 いず 最 後 の 手段 と した 方 が よい. ハ ム ・フ ィル タ は,50Hzあ
る い は60Hz付
近 を選 択 的 に 減 衰 させ る の で,筋 電 位
成 分 に も影 響 を与 え て し ま うか らで あ る.特 に 周 波 数 解 析 を 行 い た い場 合 は,ハ ム ・フ ィル タ を用 い な い で 記 録 で きる よ う に工 夫 しな け れ ば な ら な い. 交 流 雑 音 が み られ る場 合 は,最 初 に ア ー ス 電 極 の 接 続 を再 確 認 す る.ア ー ス 電 極 の リー ド線 は,通 常,計
測 機 器 の ア ー ス ・コ ネ ク タ につ な が り,最 終 的 に は 実
図2.13 交 流 雑音 の入 っ た筋 電 図 の例
験 室 の 壁 な ど に あ る接 地 コ ネ ク タ に接 続 さ れ る.こ れ らの 各 接 続 部 が,確
実 に固
定 さ れ て い る か 確 認 す る の で あ る.バ ネ の 緩 い ワ ニ グ チ ・ク リ ッ プ な どで 接 続 し て い る と,ア ー ス 機 能 を果 た して い な い場 合 も あ る. そ れ で も ノイ ズ成 分 が 残 る場 合 は,以 下 を参 考 に あ り と あ らゆ る方 策 を 実 行 す る.① 皮 膚 に 添 付 す る ア ー ス 電極 の接 触 面 積 を増 や す.②
電 極 か らの リー ド線 お
の お の が シ ー ル ド され て い る タ イ プ の もの を用 い る.③ 計 測 時 に使 用 す る椅 子, 机,ベ
ッ ドな どの 金 属 部 分 を接 地 コ ネ ク タ に つ な ぐ.④ 周 辺 に あ る計 測 に は 関 係
の な い す べ て の 電 気 機 器 をOFFに
す る.⑤
関係の ない電 気機 器の電 源 コー ドも
抜 い て お く.⑥ 磁 界 が 生 ず る可 能 性 が あ る の で 電 源 コ ー ドを グ ル グ ル ま る め た り し な い.⑦
蛍 光 灯 もOFFに
(分 岐 器 な ど)か
して み る.⑧
電 源 コー ドをつ な い だ 同 じ コ ン セ ン ト
ら,他 の機 器 類 が 発 生 す る ノ イ ズ を拾 っ て い る場 合 もあ る の で,
筋 電 位 計 測 関 係 の 機 器 と他 の 機 器 の コ ンセ ン トを別 系 統 に して み る.⑨ 運 動 負 荷 装 置 の モ ー タ ー な どが ノ イズ 源 で,OFFで ざ け る,あ
きず に 困 る場 合 は,少
る い は そ れ を小 型 シ ー ル ド箱 へ 入 れ て し ま う,な
しで もそ れ を遠
ど で あ る.た
電 極 自体 の 不 良,機 器 自体 の メ カニ カ ル な異 常 の 場 合 もあ る の で,日
だ し,
頃のメ ンテ
ナ ン ス も大 切 で あ る.
3 接地 コネ クタを疑 う 壁 や床 に埋 め 込 ま れ て い る接 地 コ ネ ク タが,隣 用(同
系 統)で
あ る場 合,他
っ て し ま う こ と も あ る.こ
りや 上 下 階 な ど他 の 実 験 室 と共
の 実 験 室 に あ る機 器 か ら発 生 す る ノ イ ズ を逆 に も ら の よ う な場 合 は,別 系 統 の接 地 コ ネ ク タ を利 用 す る.
実 験 室 の 接 地 コ ネ ク タの 数,あ
るい は性 能 が 十 分 で な い と き は,市 販 の ア ー ス 棒
を購 入 し,実 験 室 近 くの 地 面 に穴 を掘 っ て 埋 め,そ れ を用 い る と効 果 が あ る と き もあ る.た
だ し,可 能 な か ぎ り筋 電 位 の 導 出 に 関 係 す る アー ス は1つ に統 合 した
方 が よ い.な ぜ な ら,複 数 の 機 器 や 身 体 に接 触 す る装 置 の ア ー ス 電 位 を 同 じに 揃 え る こ と に よ り,そ れ らの 間 を行 き交 う交 流 電 流 を低 減 させ,ノ
イズ を小 さ くで
き るか らで あ る. さ らに,別 系 統 の 接 地 コネ ク タ を複 数 同 時 に使 用 す る こ と は,ノ
イズ 源 を特 定
で き な く な る の とい う 意 味 で も避 け た 方 が よ い の で あ る.ノ 用 い る と効 果 が あ る と き も あ る が,最
イ ズ 除 去 に水 道 管 を
近 は 本 管 が 非 金 属 だ った り,危 険 な 場 合 も
あ る の で,安 易 に利 用 し な い方 が よ い.
4 基線が揺れる 電 極 リ ー ド線 が 動 作 に伴 っ て 揺 れ る,あ
る い は引 っ 張 ら れ る こ と に よ り,モ ー
シ ョ ン ・ア ー チ フ ァク トが 混 入 し,筋 電 位 の 基 線 が 揺 れ る場 合 が あ る(図2.14). ま ず は 関節 可 動 域 を 妨 げ な い よ う に 注 意 し なが ら,サ ー ジ カ ル テ ー プ な ど で リー ド線 を皮 膚 上 に とめ る と よい.ま た,こ の種 の ノ イ ズ の周 波 数 は比 較 的低 い の で, フ ィ ル タ を用 い10∼20Hz以
下 を カ ッ トす れ ば,主
く基 線 揺 れ を除 くこ とが で き る(図2.14下
図2.14
な筋 電 位 成 分 を 損 な う こ と な
段).
モ ー シ ョ ン ・ア ー チ フ ァ ク ト入 りの 筋 電 図 の 例(基
す ば や く 大 き な 動 作 中 に お け る 筋 電 図 に は,20Hz以 ー シ ョ ン ・ア ー チ フ ァ ク トが 残 る こ と が あ る .こ る か,時
定 数 を0.03sか
ら0.003sに
線 揺 れ)
下 で は カ ッ トで き な い モ
の 場 合,フ
変 え る 方 法 が あ る.多
ィル タ の 設 定 を 変 え く の 製 品 は,0.3,
0.03,0.003sな 時 定 数0.003sを
どの 間隔 で 時 定 数 が 設 定 で き る よ うに な っ て い る.し か しな が ら, 用 い る と53.1Hz以
下 が カ ッ トさ れ る こ とに な る の で,筋 電 位 の
低 周 波 成 分 の 一 部 も損 な わ れ る 問 題 が あ り,マ イ ナ ス 面 をわ き まえ て 用 い な け れ ば な ら な い.そ
の ほ か に も,前 述 し た プ リパ レ ー シ ョ ンに よ っ て皮 膚 抵 抗 を下 げ
た り,能 動 電 極 を用 い る と基 線 揺 れ を抑 え る こ とが で きる. 大 胸 筋 や 僧 帽 筋 な ど体 幹 の 筋 か ら筋 電 位 を導 出 す る と,規 則 的 に基 線 が 揺 れ る 場 合 が あ る.だ
い た い0.8秒 か ら1秒 に1回 の ペ ー ス で 現 れ て い るの な ら,そ れ
は心 電 位 で あ る.導
出 電極 と ア ー ス 電 極 で心 臓 を挟 ま な い よ う に,ア ー ス 電 極 の
位 置 を 変 え れ ば 消 え る場 合 が 多 い. 表 面 筋 電 図 に 混 入 した ア ー チ フ ァ ク トの特 殊 な 除 去 法 に つ い て さ ら に詳 し く知 りた い 場合 は,参 考 文 献 に載 せ た 論 文 や 著 書 を照 会 さ れ た い11∼13). 筋 電 図 中 の 波 形 が ノ イ ズ か 信 号 か,現 判 読 に 自信 を もつ た め に は,ノ
れ た ア ー チ フ ァ ク トの原 因 は何 か な どの
イ ズ を嫌 わ ず,む
し ろ数 多 く体 験 し,ノ イズ 源 を
推 理 し てみ る こ とで あ る.故 意 に さ ま ざ ま な アー チ フ ァ ク トを起 こ して 体 験 して お く こ と も良 策 で あ る.そ
うす れ ば,本 番 の 計 測 の 際,慌
て ず 騒 が ず,す
ばや く
ノ イ ズ 成 分 を 除 去 で きる よ う に な る は ず で あ る.
参考 文献 1) 栗 山 節 郎(監
修):身
2) 河 上 敬 介,小
林 邦 彦:骨
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動 作 角 度 範 囲 の 検 討,バ 7) 熊 本 水頼:筋 8) Basmajian
松 薫:肩
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イ オ メ カ ニ ズ ム,15,213‐223(2000)
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10) 斎 藤健 治,岡 田守 彦,佐 渡 山亜 兵,増 田正:筋 長 増加 に と もな う表面 筋 電図 の徐 波 化 と そ の 機 構,脳 11) 南 茂 夫:科
波 と筋 電 図,24,317‐324(1996)
学 計 測 の た め の 波 形 デ ー タ処 理,84‐110,CQ出
12) 金 子 秀 和,木
竜 徹,牧
野 秀 夫,斉
藤 義 明:表
版 社(1986)
面 筋 電 図 に 混 入 す る ア ー チ フ ァ ク トの
一 除 去 法 ,電 子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌D,J71,1832‐1838(1988) 13) 木 竜 徹:筋
電 図 計 測 で の 注 意 点,Jpn
J Sports
Sci,11,545‐549
(1992)
第3章
処理 と解析
前 章 で は,き
れ い な 表 面 筋 電 図 を得 る 方 法 を述 べ た.検
ャ ー トに 書 き 出 し て,原
波 形(raw
EMG)を
出 した 筋 電 位 信 号 をチ
眺 め る こ と の 重 要 性 も指 摘 し た.
原 波 形 を眺 め る だ け で も,動 作 の どの タイ ミン グ で,ど
の 筋 が 活 動 した か は,十
分 に確 認 で き る1).こ
ム も アー チ フ ァ ク トも原
れ は 定 性 的 分 析 法 と呼 ば れ る.ハ
波 形 をみ れ ば わ か る こ とが 多 い た め,あ 性 的 分 析 の 方 が 確 実 な こ と もあ る.も
れ これ 処 理 した 波 形 を 眺 め る よ りも,定 し,原 波 形 を じっ く り眺 め て 問 題 が解 決 す
れ ば,そ れ が 一 番 よ い. しか しな が ら,多
くの 場 合 に は,そ
の 波 形 を処 理 し,振 幅 や,発 射 の タ イ ミ ン
グ,周 波 数 な どの 特 徴 量 を 計 算 して 抽 出す る こ とに な る2).さ 徴 量 を,種
々の 条 件 下 や さ ま ざ ま な被 験 者 間 で 比 較 して,何
らに,そ
れ らの 特
らか の 結 論 を導 くこ
と に な る.「 こ の 動 作 で は 筋 活 動 が多 い 」 とか,「 熟 練 者 群 に比 べ て 初 心 者 群 で は こ の タ イ ミ ン グ の 筋 活 動 が み られ る」 とい っ た結 論 を 導 き 出 す た め に は,統 計 的 な処 理 が 必 要 に な る.そ の よ う な場 合 に は,統 計 的 な比 較 の対 象 に で き る よ う な 特 徴 量 を,筋 電 位 信 号 か ら抽 出 す る必 要 が 出 て くる. 筋 電 位 信 号 の 特 徴 量 と して,最 も重 要 な もの が 放 電 量 す な わ ち平 均 振 幅 で あ る. 次 に は,や
や 専 門 的 に な る が,筋
電 位 信 号 の パ ワ ー ス ペ ク トルが あ る.さ
らに,
ス ペ ク トル の 変 化 を理 解 す る う えで 重 要 に な る筋 線 維 伝 導 速 度 が あ る.こ れ らに つ い て 説 明 した 後,最 後 に,こ れ ら を総 合 した 筋 疲 労 の解 析 につ い て も紹 介 す る.
3.1 フ ィル タ の 種 類 計 測 装 置 の フ ィル タの 設 定 につ い て は2.2節 の 「3周 波 数 特 性 」 で説 明 した.こ こ で は,筋 電 図 信 号 処 理 の最 初 の 段 階 と して の フ ィル タに つ い て 説 明 す る .増 幅 さ れ た 信 号 か ら,解 析 の 対 象 外 と な る 周 波 数 成 分 を取 り除 くた め に,フ
ィル タ を
か け る.増 幅 器 に付 属 の フ ィ ル タ です で に 目的 とす る周 波 数 範 囲 の 信 号 だ け が 増 幅 され て い る の で,そ しか し,AD変
れ で 問 題 な け れ ば,さ
ら に フ ィ ル タ を か け る 必 要 は な い.
換 した 信 号 にお い て,基 線 が 揺 らい で い る とか,高
が 重 畳 し て い る場 合 に は,こ
れ ら をPC内
周波 の ノイズ
で フ ィ ル タ処 理 して,目
的 とす る信 号
成 分 だ け を抽 出 す る. フ ィ ル タ に は多 くの 種 類 が あ る.増 幅 器 に付 属 の フ ィル タ を使 う場 合 に は,フ ィル タ の 種 類 は 固定 され る.こ
れ に 対 して,信
号 をAD変
換 して か らPCを
使っ
て信 号処 理 す る場 合 に は,目 的 に あ っ た フ ィル タを 適用 す る こ と が で き る. 通 常 用 い られ る フ ィ ル タ は,バ
タ ー ワ ー ス(Butterworth)フ
ィル タ で あ る.
増 幅 器 に 付 属 の フ ィ ル タ も多 くの 場 合 は バ タ ー ワー ス フ ィル タ で あ る.バ
ター ワ
ー ス フ ィ ル タ は抵 抗 とコ ンデ ンサ を使 っ て 回路 的 に も容 易 に構 成 す る こ とが で き る.バ
ター ワ ー ス フ ィ ル タは,信
化 が 単 調 で あ る.バ
号 の 周 波 数 を 変化 させ た と き に振 幅 や 位 相 の 変
タ ー ワー ス フ ィ ル タに は次 数 が あ り,次 数 が 大 きい ほ ど,フ
ィル タ の特 性 は急 峻 に な る.た
とえ ば,ロ
ー パ ス(ハ イ カ ッ ト)フ ィル タ の場 合
に は,遮 断周 波 数 よ り も信 号 の 周 波 数 が 大 き くな る と,急 激 に振 幅 が 小 さ くな る. こ の よ う な特 性 は,増 幅 器 な どで はdB/Octaveで 周 波 数 が2倍
に な っ た と き に,フ
表 され る.オ
ィル タ を 通 した信 号 の 振 幅 あ る い はパ ワー が ど
れ だ け 小 さ く な る か を 対 数 値 で 示 し て い る.振 20dB低
下 に な る.パ
幅 の 場 合 に は1/10に
ワ ー の 場 合 に は1/100で20dB低
ー ス フ ィ ル タ で は ,6dB/Octaveの Octaveに
な る.図3.1に
は,2次
クターブす なわち
割 合 で 低 下 す る.2次
下 で あ る.1次
な る と,
の バ ター ワ
の フ ィル タ で は,12dB/
と4次 の バ ン ドパ ス フ ィル タの 特 性 を示 した.
他 に は チ ェ ビ シ ェフ(Chebyshev)フ
ィル タが あ る.図3.1に4次
のチ ェ ビシ
図3.1
ェ フ フ ィ ル タの 特 性 も示 し た.同 て,チ
フ ィ ル タの 特 性
じ次 数 で あ れ ば,バ
タ ー ワー ス フ ィル タに 比 べ
ェ ビシ ェ フ フ ィ ル タの 方 が 周 波 数 の低 下 が 急 峻 に な る.そ の 代 わ りに,振
幅 特 性 の 信 号 通 過 部 分 にお い て 凹 凸(リ 一 般 に,フ
ッ プ ル)が 生 じる.
ィル タを 通 す と位 相 の ず れが 生 じる.そ の 結 果,元
の 信 号 の ピー ク
の 位 置 が ず れ る こ とが あ る.こ れ を 避 け る た め に は,フ ィ ル タ を一 度 か け て か ら, そ の 出 力 信 号 の 時 間 を 反 転 して,同
じ特 性 の フ ィ ル タを 再 度 通 して,最
後 に時間
を も う一 度 反 転 させ る 方 法 が あ る.こ の よ うに す る と,最 初 に フ ィ ル タ をか け た 際 に 生 じた位 相 ず れ が,2回 相 ず れ が な くな る.こ phase
目の 時 間軸 を反 転 した フ ィ ル タで 元 に戻 る の で,位
の 方 法 で 構 成 し た フ ィル タ を ゼ ロ 位 相 ず れ フ ィル タ(zero
shift filter)と 呼 ぶ.
図3.2に ゼ ロ 位 相 ず れ フ ィ ル タの 例 を示 す.元 イ ンパ ル ス 波 形 で あ る.こ
れ を帯 域10∼100Hzの2次
の 信 号 は 時 刻0だ
け で 振 幅1の
の バ ター ワ ー ス フ ィ ル タ
に 通 す と,中 段 に示 す よ う に,ピ ー ク が な ま り,ピ ー ク の後 ろ に 裾 を ひ い た 波 形 に な る.こ の と き,ピ
ー ク の 位 置 も わず か で は あ る が 後 方 に ず れ て い る.こ の 信
号 を時 間反 転 して,ま
っ た く同 じ フ ィ ル タ に通 して か ら再 度 時 間 反 転 した もの が
下 段 の 波 形 で あ る.波 形 が 時 間軸 に 対 して対 称 に な り,ピ ー ク位 置 も中 央 に戻 る. た だ し,周 波 数 帯 域 に よ っ て は必 ず し も,対 称 な波 形 に な る と は か ぎ ら な い.こ こ で 注 意 し な け れ ば な ら な い の は,フ
ィ ル タ を2回 通 して い る の で,1回
が2次
の フ ィル タで あ れ ば,全 体 で は4次 の フ ィル タ に な る こ とで あ る. 筋 電 図 信 号 処 理 に お い て は,特 別 な 目的 が な い か ぎ り,バ ター ワ ー ス フ ィル タ
図3.2 ゼ ロ位 相 ず れ フ ィル タの原 理
を用 い れ ば よ い.た
だ し,フ ィ ル タの 次 数 に よっ て 信 号 の 減 衰 が異 な る の で,次
数 を 明 記 す る必 要 が あ る.増 幅 器 に付 属 の フ ィル タ を使 用 した 場 合 に は,増 幅 器 の 型 番 を 明 記 す れ ば,特 性 は 明 らか に な るが,日 特 性 が 記 載 し て い ない マ ニ ュ ア ル も多 い.そ
本 製 品 の 場 合 に は,フ
の よ う な場 合 には,メ
ィル タ の
ー カーに問 い
合 わ せ た うえ で,自 分 で 正 弦 波 信 号 を入 力 し て周 波 数 特 性 を確 認 して お け ば 間 違 い が な い.
3.2 平 均 振 幅 動 作 分 析 な どの 手段 の1つ 平 均 振 幅 が 対 象 と な る.筋 の 時 点 で,ど
と して 表 面 筋 電 図 を用 い る場 合 に は,筋 電 位 信 号 の
の放 電 量 お よ び放 電 の タ イ ミ ン グ か ら,ど の 筋 が,ど
の 程 度 活 動 し た か を知 る こ と が で き る.筋 が 活 動 す る状 況 に は,ス
ポ ー ツ な どの ダイ ナ ミ ッ ク な動 き の場 合 も あ る し,身 体 は 動 か ず 姿 勢 を 維 持 す る た め に 筋 が 緊 張 を続 け て い る場 合 もあ る.あ
る い は精 神 的 な緊 張 に 伴 っ て 額 や肩
の 筋 に持 続 的 な緊 張 が 生 じて い る よ う な場 合 も考 え られ る. 平 均 振 幅 の 特 徴 量 と して は,自
乗 平 均 平 方 根(Root
効 値 と もい う)と 整 流 平 滑 化(Average た,ARVに
Mean
Square:RMS,実
Rectified Value:ARV)の2つ
関 連 して,積 分 筋 電 図(Integrated EMG:IEMG)と
が あ る.ま い う量 も あ る.
1 平均振幅の特徴量 (1)
RMS
RMSは,一
定 の 時 間 範 囲 の 筋 電位 信 号 を二 乗 して,範
囲 内 の平 均 を 求 め た 後,
平 方 根 を と っ た量 で あ る.式 で 書 く と,以 下 の よ うに な る.
こ こ で,e(t)は は0,す
筋 電 位 信 号 で,(−T,T)が
な わ ち 平 均 値 が0で
計 算 区 間 に な る.筋 電 位 信 号 の基 線
あ る か ら,信 号 の 標 準 偏 差 で もあ る3).よ
に,積 分 を 計 算 す る 際 に 重 みh(τ)〓0を
掛 け て,
り一 般 的
と 書 く こ と も で き る.こ
こ で,∫-∞∞h(τ)dτ=1に
(τ)の取 り方 に よ っ て,積
分 区 間 を(−T,0)と
対 象 と す る 区 間 を,少
しず つ 時 間 的 に ず ら し な が らRMSを
り,RMSの
時 間 変 化 が 得 ら れ る.RMSは,ア
倒 な の で,通
常 はAD変
な る よ う にh(τ)を
設 定 す る. h
す る こ と も で き る. 計 算す る ことによ
換 し て か らPCで
ナ ロ グ 回 路 で 処 理 す る の は 少 し面 処 理 し て 求 め る.
(2)ARV 振 幅 の 絶 対 値 を 求 め る こ と を 整 流 化(rectification),整 (rectified
wave)と
い う4).整
流 波 を,一
フ ィ ル タ を か け て 平 滑 化 し た も の が,ARVで
流 化 した 波 形 を整 流 波
定 の 時 間 範 囲 で 積 分 す る か,ロ あ る.対
時 間 的 に ず ら し な が らARVを
計 算 す る こ と に よ り,ARVの
ARVは,rectified&filtered
EMGと
書 く と,以
ーパス
象 とす る 区 間 を少 しず つ 時 間 変 化 が 得 ら れ る.
呼 ば れ る こ と も あ る5).RMSと
同 様 な式 を
下 の よ う に な る.
ポ リ グ ラ フ(多
用 途 生 体 計 測 器)に
み 込 む と,ア ナ ロ グ 的 にARV信
は積 分 器 ユ ニ ッ トが あ り,こ れ を 本体 に組
号 が 得 られ る.ユ
ニ ッ トの 切 替 ス イ ッ チ で,原
波 形 を 絶 対 値 に変 換 して か ら平 滑 化 す る全 波 整 流 と,正 極 性 あ る い は負 極 性 の 部 分 だ け を用 い て 平 滑 化 す る 半 波 整 流 を 選 べ る.ど
ち らで も大 差 は な いが,情
報量
か らい え ば 全 波 整 流 の 方 が 有 利 で あ ろ う. 図3.3に,断
続 的 に 肘 関節 を屈 曲 さ せ て,上 腕 二 頭 筋 か ら計 測 した 筋 電 図 と,
そ れ と同 時 に記 録 し た収 縮 力 の 波 形 を示 す.図3.3(b)は 波 整 流 で,平
滑 化 の 時 定 数 は0.1sと
積 分 器 の 出 力 で あ る.全
し た.収 縮 力 に応 じ てARVも
収 縮 力 の ピー ク値 が 一 定 で あ る の に対 して,ARVの
変 化 す るが,
ピー ク は 変 動 が 大 きか っ た.
力 は 同 じで も,筋 へ の 力 の 入 れ 方 の 微 妙 な差 で 筋 電 図 に 変 化 が 出 る. RMSとARVの
性 質 は 似 て い て,ど
な 意 味 づ け か らはRMSは
ち ら を使 っ て も大 差 は な い.信 号 の 物 理 的
パ ワ ー に な る の で,ス ペ ク トル との 対 応 はつ け や す い.
(a)表 面筋 電 図 の 原波 形
(b)整 流 平 滑 化 波形
(c)収縮 力 図3.3 表 面 筋電 図 の整 流 平 滑化 と収縮 力
(3)IEMG あ る時 間範 囲 に わ た っ て の 整 流 波 の 積 分 値,す 呼 ば れ る.こ の 場 合,単
位 は 電 圧 ×時 間 〔V・s〕 に な る3).一 方,ARVの
分 筋 電 図 と表 現 す る 例 も あ る.ARVは,積 等 し い の で,単
なわち総放電量 は積分 筋電図 と こ と を積
分 筋 電 図 を積 分 時 間 で 割 っ た もの に
位 は 電 圧 〔V〕に な る3).論
文 な どで は,混
乱 を招 か な い よ う に,
用 語 を定 義 して 使 う必 要 が あ る.い ず れ の 意 味 の 場 合 で も,IEMGやiEMGと
書
く場 合 が多 い.
2 平滑化区間の長さと配置 RMSに
して もARVに
して も,平 滑 化 す る 区 間の 長 さ,あ る い は ロ ー バ ス フ ィ
ル タ の時 定 数 に よ っ て,得 数 は,通 常0.03∼0.3sが
ら れ る 信 号 が 異 な っ て くる.ロ
用 い られ る.平 滑 化 の 区 間 を 短 くす る と,発 射 の パ タ
ー ン は 的確 に と らえ ら れ る が 形 に は な らな い.逆
ー パ ス フ ィル タの 時 定
,原 波 形 に あ る波 形 の 不 規 則 さ が 残 り,滑
らか な波
に,平 滑 化 の 区 間 を長 くす る と,収 縮 の 変化 に追 い つ か な い
緩 や か な波 形 に な る.ど
の 程 度 の平 滑 化 の 長 さ にす る か は,解 析 し た い 運 動 の種
類 に合 わ せ て 決 め る こ とに な る.い ず れ に し て も,論 文 な どで 報 告 す る場 合 に は, 平 滑 化 の 区 間の 長 さや,ロ
ー パ ス フ ィル タの 時 定 数 を 明 記 す る必 要 が あ る.
平 滑 化 に 関す る も う1つ の 問 題 は,平 滑 化 の 区 間 を,(−T,T)の
よ うに基 準 と
す る 時 間 の 前 後 に 取 る か,(−T,0)の
ナログ回路で
ARVな
よ うに 前 に取 る か で あ る.ア
ど を求 め る と,対 象 とす る時 点 よ り も未 来 の 信 号 ま で 取 り込 ん で 平 滑 化
す る こ と はで きな い か ら,平 滑 化 さ れ た 信 号 は,過 去 の 変 化 だ け を 反 映 す る.そ の 場 合 に は,平 滑 化 後 の ピ ー ク が,原 波 形 の ピ ー ク よ り も遅 れ て現 れ る可 能性 が あ る.ピ ー ク の 遅 れ は,ロ ー パ ス フ ィ ル タ の 時 定 数 に よ っ て異 な る. こ れ に対 し て,AD変
換 した 後 にPCで
過 去 と未 来 の 区 間 の 信 号 か らRMSやARVを
処 理 す れ ば,あ
る 時 点 か ら み て,そ
計 算 す る こ とが で きる.こ
す れ ば,原 波 形 と平 均 振 幅 波 形 の 間 の ず れ は な くな る.た
の
の よ うに
だ し,活 動 の 開始 時 点
を,平 均 振 幅 波 形 の 立 ち上 が りか ら推 定 した い 場 合 に は,原
波 形 の活 動 開始 時 点
よ りも,平 滑 化 後 の 方 が 早 く変 化 が現 れ る よ うに み え るの で,注 意 が 必 要 で あ る.
す な わ ち,平 均 振 幅 の 波 形 に お い て,ピ ー ク をみ た い の か,立 の か に合 わ せ て,平
滑 化 の 区 間 を設 定 す る必 要 が あ る.な
ち上 が りを み た い
お,筋
電位 信 号 の ピー
ク に ず れ が 生 じ な い よ う に 配 慮 して も,力 の 発 生 が 電 気 力 学 的 遅 延 に よ っ て ず れ て い る の で(2.3節
「3同 期 させ る力 学 的 信 号 を考 え て お く」 を参 照),す
動作 を対 象 とす る 場 合 に は,タ
ばやい
イ ミ ング の 解 釈 に は注 意 す る 必 要 が あ る.
3 集合平均 も し,対 象 とす る動 作 が,歩 行 や,サ 繰 り返 し動 作 な らば,動
イ ク リ ング,水
泳 な どの 一 定 した 周 期 の
作 に合 わ せ て整 流 化 さ れ た 筋 電 位 信 号 を加 算 平 均 す る こ
とが で き る.こ れ を集 合(集
団)平 均(ensemble
average)あ
るいは同期加算 と
い う.こ の よ う に す れ ば,積 分 区 間 を 短 く して,か つ 滑 らか な 振 幅 波 形 を得 る こ とが で きる.ま
た,平
均 せ ず に 単 に重 ね 合 わせ て 波 形 を 描 画 す る だ け で も,ア ー
チ フ ァ ク トの検 出 に 用 い る こ とが で きる.
4 ク ロ ス トー ク 筋 電 位 を検 出 し て い る筋 か ら放 電 が み られ て も,本 当 に そ の 筋 の 活 動 を と ら え て い る の か ど うか,不
安 に な る こ と も多 い.他 の 筋 か ら の信 号 を 検 出す る こ と を
図3.4 多 点 表面 電 極 列 に よ って計 測 した 筋 電位 伝 播 パ ター ン
ク ロ ス トー ク とい う.肘 の 屈 曲 動 作 を 考 え て み て も,1つ 立 っ て い る の で は な い し,関 与 す る筋 は,同
の筋 の 収 縮 だ け で 成 り
じよ うな タイ ミン グ で放 電 す る の で,
得 られ た 筋 放 電 が ク ロス トー ク に よる もの か ど うか は,簡 単 に は見 分 け が つ か な い. こ れ に対 す る1つ の方 法 は,近
くの 筋 か ら同 時 に筋 電 位 を 導 出 し,特 定 の筋 だ
け に力 を入 れ る よ う に努 力 させ て信 号 を み る こ とで あ る.他 の 方 法 と し て,筋 電 位 の 伝 播 パ ター ン を計 測 す る こ と も考 え られ る(図3.4).伝
播 パ ター ンが 検 出 で
きれ ば,確
だ し,ど の 筋 で も伝
か に 目的 とす る 筋 の活 動 で あ る こ と が わ か る.た
播 パ タ ー ンが み られ る わ け で は な い の で,適 用 は か ぎ られ る.
5 ア ー チ フ ァ ク ト 筋 電 位 信 号 に ア ー チ フ ァ ク トが の る と,RMSやARVが
大 き くな る.ア
ーチ フ
ァ ク トが 入 っ た こ とは,原 波 形 をみ れ ば あ る程 度 は わか る が,平 滑 化 処 理 した信 号 か ら は,も は や確 認 す る こ と はで きな い.原 波 形 が大 切 で あ る1つ の理 由 で あ る. ア ー チ フ ァク トが 小 さい 場 合 に は,原
波 形 を み て も筋 電 位 自体 の変 動 に 隠 れ て
識 別 で きな くな る.こ の よ う な場 合 に も有 効 な の が,伝 播 パ タ ー ンの検 出 で あ る. ア ー チ フ ァク トが な い状 態 で 明 確 な伝 播 パ ター ンが 検 出 で きて い れ ば,ア ー チ フ ァ ク トが 混 入 す る と,伝 播 パ ター ンに 乱 れ が 生 じて,容 易 に検 出す る こ とが で き る.
6 収縮力との比較 筋 電 位 信 号 は,振 幅 や 周 波 数 成 分 が 収 縮 力 に応 じて 変 化 す るの で,収 縮 力 や ト ル ク を規 定 す る必 要 が あ る.こ た め に,収
の と き,異 な っ た被 験 者 間 で の 比 較 を 可 能 に す る
縮 力 を 最 大 随 意 収 縮 力(MVC)で
正 規 化(normalize)す
る.MVC
の 計 測 手 法 につ い て は2.1節 の 「2正 規 化 の 方 法 を 考 え て お く」 を読 み 返 して ほ しい. 動 作 解 析 で 筋 電 図 を利 用 す る 目的 と して,筋 電 図 か ら筋 収 縮 力 を推 定 した い と い う こ と も多 い.こ
の よ う な場 合 に は,MVC時
目 的 動 作 の 平 均 振 幅 波 形 を 正 規 化 す る.た た め に 目的 動 作 時 のRMSをMVC時
に 得 られ たRMSやARVの
と え ばRMSを
のRMSで
用 い る 場 合,正
除 し,こ の 値 を%RMSと
値 で, 規化 の して 表
す.ARVを
用 い る 場 合 に も 同様 に,正 規 化 した値 を%ARVと
ダ イ ナ ミ ッ ク な動 き で は,動 で あ ろ うか ら,MVC計
作 時 とMVC計
測 時 で,関
して 表 す.
節角 度が異 なってい る
測 時 の 関節 角 度 や 筋 長 を記 録 す る.ま
た,MVCを
非等尺
性 で 記 録 す る場 合 に は,関 節 角 度 や 筋 長 の範 囲,変 化 速 度 を 記 録 して 明 記 す る.
7 関節角度の変化 関 節 角 度 が 変 わ る と,皮 膚 に貼 り付 け た 電 極 と,筋 の 相 対 的 な位 置 関係 が 変 化 す る.神 経 支 配 帯 が ち ょう ど2つ の 電極 の 中 間 点 に 来 る と,両 側 に伝 播 す る 筋 電 位 が 同相 に な り,互 い に 打 ち消 し合 っ て 振 幅 が急 に 小 さ くな る可 能 性 が あ る(図 3.5).も
ち ろ ん,こ
の よ う な 状 況 が 起 こ る の は,神 経 支 配 帯 が 狭 い 範 囲 に 集 中 し
て い る特 定 の 筋,特
定 の 被 験 者 に か ぎ られ る.し か し,こ の よ う な 可 能 性 を頭 の
隅 に入 れ て お か な い と,動
き の 途 中 で急 に筋 力 が 低 下 した とい う 誤 っ た解 釈 に な
りか ね な い.
(a)神 経 支 配 帯 が電 極 の 中 間 点 にあ る と,電 位 が打 ち消 し合 って 出力 が小 さ くな る
(b)神 経 支 配帯 が 中間 よ り少 しず れ て い る と,等 価 的 に 電極 間隔 が小 さ くなる 図3.5 神 経 支 配 帯 と電 極 の 位 置 関係 に よって 変 化す る筋 電位 振 幅
関 節 角 度 の 変 化 に 伴 って 神 経 支 配 帯 か ら電 極 が 離 れ る と,神 経 支 配 帯 か ら開 始 した 興 奮 が 検 出 さ れ る ま で の 時 間 が 延 長 す る.反
射 の研 究 な ど で,関 節 を 伸 展,
屈 曲 す る と,反 射 潜 時 が 短 くな る,あ る い は長 くな る とい う,こ れ ま た誤 っ た 解 釈 が 生 じか ね な い の で 注 意 が 必 要 で あ る.
3.3
パ ワ ー ス ペ ク トル
持 続 的 な 収 縮 を続 け て い る と,筋 電 位 が だ ん だ ん 緩 や か な波 形 を示 す よ うに な る2).こ
れ は筋 疲 労 の影 響 とい わ れ て い る.表 面 筋 電 図 は 多 数 の 運動 単 位 活 動 電
位 の 和 を 時 空 間 的 に計 測 した もの で あ り,そ の重 畳 波 形 は ラ ンダ ム な 変 化 を示 す の で,波 形 を眺 め る だ け で は,緩 や か に な っ た 変 化 を定 量 化 す る こ とは で き ない. こ の よ う な場 合 に は,ス ペ ク トル解 析 を行 う. ハ ムの 混 入 が ない こ と を確 認 す る た め に も,ス ペ ク トル をみ て お くこ と は有 用 で あ る.逆 に,入 れ た つ も りが な い ハ ム除 去 フ ィ ル タが オ ンに な っ て い る こ と も, ス ペ ク トル をみ れ ば す ぐ にわ か る. な お,ス
ペ ク トル(spectre)は
は ス ペ ク トラ ム(spectrum)で
フ ラ ン ス 語 で あ っ て,英 あ る.パ
が 混 在 して い る.英 語 で 統 一 す れ ば,パ は,周
波 数1Hzあ
Density
ワ ー ス ペ ク トル は,英
語 と フ ラ ン ス語
ワ ー スペ ク トラ ム に な る.さ
た りの パ ワ ー な の で,パ
Spectrum:PDS)と
語 で は な い.英 語 で
ら に厳 密 に
ワ ー ス ペ ク トル 密 度 関 数(Power
呼 ぶ.
1 パ ワー スペ ク トルの計 算 ス ペ ク トル の 計 算 に は,フ
ー リエ 変 換 を用 い る.ま
た,線 形 予 測 法 で 計 算 す る
方 法 もあ る.ス ペ ク トル の 計 算 は,生 体 信 号 処 理 用 の専 用 シ グ ナ ル プ ロ セ ッサ や, PC用
の 信 号 処 理 ソ フ トで 行 え る.フ
ー リエ 変 換 した ス ペ ク トル は,強
度 と位 相
に 分 か れ るが,問 題 に な るの は強 度 の 方 で あ る.そ の た め 強 度 を パ ワー で 表 した, パ ワ ー ス ペ ク トルが 用 い られ る.
2
ゼロ詰め
パ ワ ー ス ペ ク トル に お い て,横
軸 の 最 大 値,す
し た と き の サ ンプ リ ン グ周 波 数 に な る.一 た 信 号 の 長 さで 決 ま る.た
と え ば,AD変
な わ ち最 大 周 波 数 は,AD変
方,周 波 数 の 刻 み は,フ 換 を4096Hzで
ー リエ 変 換 し
行 い,2048点,す
ち0.5秒 間 の信 号 を フ ー リエ 変 換 す る と,最 大 周 波 数 は4096Hzで,周 み は2Hzに
換
なわ 波数 の刻
な る.周 波 数 の刻 み を細 か くし た け れ ば,信 号 を長 くす る 必 要 が あ る.
誘 発 筋 電 位 の スペ ク トル を 求 め る場 合 な どで は,元 の 信 号 の 持 続 時 間 が 短 い.こ れ をそ の ま ま フ ー リエ 変 換 す る と,周 波 数 の 刻 み が 粗 くな る.そ こ で,対 象 とす る信 号 の 後 に0を つ な げ て 長 くす る と,周 波 数 の 見 か け 上 の 分 解 能 が 上 が る.こ れ をゼ ロ詰 め(zero
padding)と
い う.
図3.6に 合 成 波 形 を基 に した 例 を示 す.図(a)は 波 形 で あ る.信 号 は1ms刻
み で,100msの
長 さ と した.図(b)は
の を,横 軸 を 延 長 して 示 した も の で あ る.こ っ て,信
号 の 長 さ を400msと
単一MUAPに
れ に対 して,図(a)に
し た もの が 図(c),こ
似 せて合 成 した 図(a)と 同 じ も ゼ ロ詰 め を行
れ らを フー リエ 変 換 して パ ワ
ー ス ペ ク トル を 求 め た もの が 図(d) ,(e)で
あ る.サ
の で,そ
れ で は 細 か い 部 分 が よ くわ か ら な い の
で,さ
の 半 分 の500Hzま ら に は じめ の100Hzの
は 周 波 数 の刻 み が10Hzで
で を示 した.こ
ン プ リ ン グ周 波 数 が1kHzな
範 囲 を 拡 大 した もの が 図(f),(g)で
あ る.図(f)で
ピー ク付 近 の 変 化 が 滑 らか で は な い の に 対 して,ゼ
詰 め して 信 号 の 長 さ を4倍 に した 図(g)で は,周
波 数 の 刻 み が2.5Hzに
ロ
な り,ピ
ー ク付 近 も滑 らか に な って い る . ゼ ロ詰 め の 場 合 に は,こ る が,元
の よ う にパ ワー ス ペ ク トル の 見 か け の 細 か さ は 向 上 す
の 信 号 に0を 付 け 加 え た だ け な の で,情 報 量 が 増 え て い る わ け で は な い.
ゼ ロ 詰 め す る 前 の ス ペ ク トル の 波 形 を,滑 す る必 要 が あ る.
らか に補 間 した だ け で あ る こ と に 注 意
(a)
(c)
(d)
(e)
(f)
図3.6
(b)
(g)
パ ワ ース ペ ク トル 計算 にお け るゼ ロ詰 め の効 果
3 窓関数 時 系 列 信 号 をス ペ ク トル 解 析 す る 場 合 に は,そ い.一
の 前 に窓 関 数 を か け る場 合 が 多
般 に フ ー リ エ 変 換 に よ っ て信 号 の パ ワー ス ペ ク トル を計 算 す る場 合 に,元
の 信 号 か ら,た
と え ば1秒 間 の信 号 を取 り出 して,フ
ー リ エ 変 換 す る.フ
ー リエ
変 換 す る側 か らみ る と,こ れ は1秒 間 の 信 号 を変 換 して い る の で は な くて,1秒 間 の 信 号 が 無 限 に 繰 り返 して い る無 限信 号 を変 換 して い る こ と に な る.こ の た め, 取 り出 し た信 号 の 両 端 で不 連 続 に な る な ど して,信
号 の 周 期 性 が完 全 に満 足 され
て い な い と,元 の 信 号 が 本 来 もっ て い な か っ た周 波 数 にパ ワー が 生 じ る. こ の よ う な 不 都 合 を解 消 す る た め に,窓 関 数 を用 い る.窓
関 数 は,切
り出 し た
信 号 の 中央 部 分 を 残 し,両 端 に い くに従 っ て 徐 々 に 振 幅 を小 さ くす る よ う な効 果 を もつ.代 表 的 な 窓 関 数 と して,ハ チ ュ ー キ ー(Tukey)な
ニ ン グ(Hanning),ハ
どが あ る.図3.7に,こ
ミ ン グ(Hamming),
れ らの 窓 関 数 を適 用 した 効 果 を
示 した. 元 の 信 号 は10.5Hzの
正 弦 波 と,そ れ の1/100の
わ せ た もの で あ る.窓
関 数 を用 い な い と,10.5Hzの
波 数 に 広 が る た め に,20Hzの
振 幅 の20Hzの
正 弦 波 の パ ワ ー が,他
正 弦 波 の ピ ー クが み え な くな る.こ
関 数 を 用 い る と,周 波 数 の広 が りが 小 さ くな っ て,20Hzの られ る よ う に な る.こ
正 弦 波 を足 し合 の周
れ に対 して 窓
正 弦 波 の ピ ー クが み
の よ うに,近 接 した ピ ー ク を識 別 した い と きに は 窓 関 数 が
必 要 に な る. 筋 電 位 信 号 の 場 合 に こ の よ う な特 徴 的 な ピー ク が 現 れ る の は,MUAPの 同期 した 成 分 で あ る の で,発
発射 に
射 の 頻 度 を検 出 した い よ う な場 合 を 除 い て,特
に窓
関 数 を気 に す る 必 要 は な い が,窓
関数 の 使 用 の 有 無 や種 類 を明 確 に して お く必 要
は あ る.元 の 信 号 が 長 け れ ば,窓
関 数 の 影 響 は あ ま りな い.自 分 で い ろ い ろ 試 し
て,ど
の よ う な結 果 に な る の か を調 べ て お くと よい.
以 上 の よ う な 処 理 方 法 は ス ペ ク トル に大 な り小 な り影 響 を与 え る の で,論
文な
ど を書 く と きに は,計 算 に 使 っ た デ ー タ 区 間 の 長 さ,ゼ ロ 詰 め の 長 さ,窓 関 数 の 種 類 を 明記 す る.
(a) ハ ニ ング
(b) ハ ミ ン グ
(c) チ ュ ー キ ー
図3.7 窓 関 数 と周 波 数特 性
4 スペク トルの特徴量 パ ワ ー ス ペ ク ト ル は 波 形 な の で,そ ク トル の,こ で,ス
れ だ け を み て い て も,た
と え ば2つ
の スペ
ち ら の 方 の 低 周 波 成 分 が 多 い な ど の 定 量 的 な 比 較 は で き な い.そ
ペ ク ト ル を 処 理 し て,特
平 均 周 波 数(MeatN Frequency:MDF)が
power
徴 的 な 数 値 を 計 算 す る.こ
Frequency:MNF)6)や
あ る.平
中 央 周 波 数 の 頭 文 字 もMPFに
の よ う な 特 徴 量 に は,
中 央 周 波 数(MeDian
均 周 波 数 だ け な ら ばMPFと
な っ て し ま う の で,両
こ
power
書 く の が 素 直 だ が,
方 使 う 場 合 に はMNF,MDF
と 表 記 す る.
(1)
MNF
MNFは,以
下 の 式 で表 され る.
こ こ で,P(f)は
パ ワ ー ス ペ ク トル,fは
周 波 数 を 表 す.MNFは,ス
分 布 の 重 心 に な る.ス ペ ク トル全 体 が低 周 波 に変 化 す る とMNFは
(2)
ペ ク トル 小 さ くな る.
MDF
MDFは,以
MNFと つ は,MDFが
下 の 式 で 表 され る.
い う数 学 的 に 素 直 な 量 が あ る の に,な ぜMDFを
使 うか とい う理 由 の1
高 周 波 成 分 に 含 ま れ る ノ イ ズ の 影 響 を 受 け に くい こ とで あ る.本
来 筋 電 位 信 号 が な い 周 波 数 に,ア ー チ フ ァ ク トや 計 測 器 や信 号 線 か ら高 周 波 の 雑 音 が 乗 る と,MNFは る が,MNFよ
高 周 波 側 に 引 きず られ や す い. MDFも
もち ろ ん影 響 を受 け
りは受 け に くい と され て い る.
5 スペ ク トルの形を 決め る要因 ス ペ ク トル の 形 を 決 め る の は,1つ1つ
の 運 動 単 位 活 動 電 位(MUAP)の
波形
と,そ れ らの 発 射 パ ター ンで あ る.ス ペ ク トル の40Hz以 で 決 ま り,40Hz以
上 の 部 分 はMUAPの
形
下 の 部 分 に発 射 頻 度 な どの 発 射 パ ター ンの 影 響 が 表 れ る とい
わ れ て い る2). 双 極 電極 が 神 経 支 配帯 を挟 む よ う な位 置 に あ る と,検 出 さ れ る 電位 が 打 ち消 し 合 っ て 振 幅 が 小 さ くな る.こ の こ と は,等 価 的 に 電 極 間 隔 が 小 さ くな って い る た め と考 え られ る の で,ス
ペ ク トル に も影 響 が 出 て,通 常 は,周
波 数 が 高 くな る .
関節 角 度 が 変 化 す る よ う な動 的 な運 動 で は,電 極 が た ま た ま 神 経 支 配 帯 を挟 ん だ 位 置 に な る 関節 角 度 で,急
にMNF,MDFが
高 くな っ た よ うに み え る こ とが あ る.
この 点 も解 釈 を誤 ら ない よ うに 注 意 す る必 要 が あ る.
6 デ ィップ周波 数 双 極 導 出 に 用 い る2つ の 電 極 の 下 を 筋 電 位 が 一 方 向 に 伝 播 す る 場 合 を考 え る (図3.8).伝
播 す る波 を空 間周 波 数 に 分 解 して,1つ
の 周 波 数 の 正 弦 波 を み る と,
電 極 間 隔 と波 の ピー ク 間 隔 が 一 致 す る よ う な 空 間周 波 数 の場 合,検
出 され る波 が
同 相 に な り,互 い に 打 ち 消 し合 っ て 出力 は0に な る.こ れ が パ ワ ー ス ペ ク トル の デ ィ ップ(dip,窪 と,f=n・v/dに (1,2,3,…),vは
み)で
あ る2).こ の 周 波 数 をデ ィ ップ 周 波 数 と呼 ぶ.式
デ ィ ップ 周 波 数 が 生 じる.こ
こで,fは
で書 く
周 波 数 〔Hz〕,nは 自然 数
筋 線 維 伝 導 速 度 〔m/s〕,dは 電 極 間距 離 〔m〕 で あ る.
等 尺 性 の 一 定 随 意 収 縮 条件 下 で 記 録 した 筋 電 図 を 図3.9に,そ
れ のパ ワー ス ペ
図3.8 デ ィ ップ周 波 数 の発 生 伝 播 す る活 動 電位 の空 間 的 な波 長 と電極 間隔 が 一 致 す る と筋 電位 信 号 の 出力 が0に な る.こ れ が,パ ワー スペ ク トル で はデ ィ ップ(窪 み)と して現 れ る
ク トル を 図3.10に
示 す.パ
ワ ー ス ペ ク トル は,4096Hzで
長 の 信 号 に ハ ニ ン グ 窓 を か け て フ ー リ エ 変 換 し,そ 図3.10(b)に の 例 で は,デ
示 す よ う に,Logス
サ ン プ リ ン グ し た1s
れ を10回
分 平 均 し て 求 め た.
ケ ー ル に す る と デ ィ ッ プ 周 波 数 が 明 瞭 に な る.こ
ィ ッ プ 周 波 数 が100Hzで
あ っ た の で,伝
デ ィ ッ プ 周 波 数 が 前 述 の 式 で 計 算 で き る の は,双
導 速 度4m/sと
極 電 極 が 神 経 支 配 帯 か ら み て,
図3.9 パ ワー ス ペ ク トル の計 算 に用 い た 表面 筋 電 図(一 部)
(a) 最 大 値 で 正規 化
(b) さ らに デ シベ ル 表示 に変換 図3.10
推 定 さ れ る.
図3.9の 表 面 筋 電 図 か ら 計 算 し た パ ワ ー ス ペ ク トル
ど ち らか 一 方 の 側 に あ り,電 極 の 間 に神 経 支 配 帯 が な い 場 合 で あ る.図3.5の
よ
う に,神 経 支 配 帯 を 挟 ん で 電 極 を 配 置 す る と,振 幅 が 小 さ くな る だ け で な く,デ ィ ップ も別 の 周 波 数 に移 る.
3.4 筋線維伝導速度 1 筋線維伝導速度とは 神 経 筋 接 合 部 か ら 開始 した 筋 線 維 上 の 電 気 的 な興 奮 が,筋 速 度 を,筋 線 維 伝 導 速 度(Muscle 筋 線 維 伝 導 速 度 は,3∼6m/sの 的 な 筋 収 縮 時 に,筋
Fiber Conduction
線 維 に沿 っ て 伝 わ る
Velocity:MFCV)と
い う.
速 さ で,神 経 伝 導 速 度 に 比 べ る と1桁 遅 い.持 続
電 位 信 号 の パ ワ ー ス ペ ク トル が 低 周 波 化 す る原 因 の1つ は,
筋 線 維 伝 導 速 度 の低 下 とい わ れ て い る.表 面 筋 電 図法 にお い て も,多 点 電 極 を用 い れ ば,筋
電 位 の伝 播 が 検 出 で き,こ れ か ら筋 線 維 伝 導 速 度 を算 出す る こ とが で
き る.筋 線 維 伝 導 速 度 を 求 め る た め に は,通 常,神
経 支 配 帯 か ら離 れ,神 経 支 配
帯 か らみ て 同 じ側 に位 置 す る2カ 所 で 計 測 した 筋 電 位 信 号 の 間 の 時 間差 を求 め, 伝 播 距 離 を こ の 時 間 差 で 割 っ て 求 め る. 図3.4に 示 し た,上 腕 二 頭 筋 か ら導 出 し た筋 電 位 伝 播 パ タ ー ンの 記 録 で は,近 位 寄 り に 電 極 を 配 置 した た め,伝 播 の 開 始 点 が チ ャ ンネ ル3∼4の が,実
際 に は,こ
た の で,近
間 に み られ る
の 伝 播 の 開 始 点 が 筋 腹 の 中 央 に あ た る.電 極 間 隔 を5mmと
位 側 に11チ
ャ ン ネ ル分,約55mmの
し
距 離 に わ た っ て,活 動 電 位 が 一
定 速 度 で伝 播 して い る こ とが わ か る.
2 筋 電位信号 間の時間差 の計算方法 2つ の信 号 間 の 時 間差 は,相 な る の は,時
互 相 関 関 数 の ピー ク か ら求 め る.こ の と き 問題 に
間 差 の 分 解 能 で あ る.筋 線 維 伝 導 速 度 の 推 定 に お い て,記 録 点 間 の
距 離 を20mm,伝
導 速 度 を4m/sと
号 の サ ン プ リ ン グ周 波 数 を5kHzと 点 に す ぎ な い.し
た が っ て,相
仮 定 す る と,時
間差 は5msに
な る.筋 電 位 信
高 め に 設 定 して も,時 間差 は サ ンプ ル 数 で25
関 関 数 の ピー ク位 置 が1点 ず れ る と4%の
変化 に
な る.筋 線 維 伝 導 速 度 を推 定 す る場 合 は,疲 労 度 の推 定 な ど,微 妙 な変 化 を対 象 とす るの で,こ
た が っ て,1%以
下 の刻 み で 伝 導 速 度 を求 め
ン プ リ ング 周 波 数 を さ らに 上 げ る か,あ
る い は,相 関 関 数 の ピー ク を
る に は,サ
の 変 動 は 大 きい.し
求 め る 際 に,何
らか の 補 間 を す る必 要 が あ る.
サ ン プ リ ン グ 周 波 数 を上 げ る とデ ー タが 大 き く な る.ま
た,表
面 筋 電 図 に は,
そ も そ も5kHzで
サ ン プ リ ン グ す る ま で も な く,よ
れ て い る の で,こ
れ 以 上 サ ン プ リ ン グ周 波 数 を 上 げ て も,実 質 的 な 情 報 は増 え な
い.一
方,相
関 関 数 を 補 間 す る に は,ピ
ー ク付 近 を何 らか の 関 数 に あ て は め る こ
と が 考 え られ る が,数 学 的 な根 拠 が 薄 い.時 ら相 関 関数 を 求 め る こ と もで き るが,相
り低 い周 波 数 成 分 か ら構 成 さ
間軸 上 で 筋 電位 原 波 形 を補 間 して か
関 の 計算 が 大 変 に な る.こ れ らに対 し て,
フ ー リエ 変 換 した 後 の周 波 数 軸 上 で の 補 間 方 法 がMcGillとDorfmanに 案 され て い る の で,こ 波 形 に対 して,チ
れ を使 うの が 適 当 で あ る7).こ
ャ ン ネ ル5∼10の
よ っ て提
の 方 法 を 用 い て,図3.4の
間 で 計 算 した 筋 線 維 伝 導 速 度 は3.7m/s,相
関 係 数 は0.89で あ っ た. 筋 線 維 伝 導 速 度 を求 め る た め に は,2つ と を述 べ た.と
こ ろがAD変
の 筋 電 位 信 号 の 時 間差 が 重 要 に な る こ
換 器 に よっ て は,そ
チ ャ ン ネ ル 間 に ず れ を 生 じる もの が あ る.こ ャ ンネ ル 数 だ け 並 べ る か,サ AD変
もそ もサ ン プ リ ン グ した と きに
れ に 対 処 す る に は,AD変
ン プ ル ・ホ ー ル ド回 路 をAD変
換 器 をチ
換 器 の 前 に置 い て,
換 器 が チ ャ ン ネ ル を 走 査 し て い る 間 ア ナ ロ グ電 圧 を保 持 す る必 要 が あ る.
確 認 の た め に は,デ ー タ レ コ ー ダ に記 録 した 波 形 を再 生 して,AD変 す る チ ャ ン ネ ル を 入 れ 替 え て,同
換 器 に接 続
じ時 間 遅 れ が 得 られ る か ど う か を 試 し て み る と
よ い.
3.5
筋 疲労
筋 を 長 く使 っ て い る と疲 れ を感 じる.こ
れ が 筋 疲 労 で あ る.筋 疲 労 に は,大
く分 け て,中
労 が あ る.中 枢 性 疲 労 は,脳 や 脊 髄 レ
枢 性 疲 労 と末 梢 性(局
所)疲
き
ベ ル で の 神 経 イ ンパ ル ス 列 に み られ る 疲 労 の 現 象 で あ る.こ れ に対 して,局 所 疲
労 は,効 果 器 で あ る筋 そ の もの の疲 労 で あ る. 中枢 性 疲 労 の 状 態 で は,筋
は疲 れ て い な い状 態 も想 定 さ れ る.神 経 イ ンパ ル ス
列 に 代 わ っ て 電 気 刺 激 を加 えれ ば筋 は 収 縮 し,疲 労 して い な い 状 態 と同 様 な表 面 筋 電 図 を得 る こ とが で き る.一 方,局
所 疲 労 の 状 態 で は 筋 線 維 の 疲 労 で あ り,運
動 神 経 細 胞 か ら筋 線 維 へ 至 る 経 路 で 観 測 さ れ る 神 経 パ ル ス 列 に 対 して筋 線 維 が 十 分 に 反 応 しな い.ま
た,筋
線 維 上 を電 気 的 興 奮 が 伝 播 す る際 の 伝 導 速 度 も代 謝 産
物 の 蓄 積 に よ っ て低 下 す る.な お,代
謝 産 物 は血 液 の 流 れ に よ っ て も変 化 す る.
こ の よ う に,筋 疲 労 を計 測 す る場 合 に は,中 枢 性 か 末梢 性 か に よ っ て,観 測 部 位 が 異 な る.こ
こで は,表 面 筋 電 図 を基 に,末 梢 性 筋 疲 労 に 伴 う変 化 を検 出す る方
法 に つ い て 説 明す る. 末梢 性 筋 疲 労 と 表 面 筋 電 図 の 関係 は,随 意 的 な等 尺 性 筋 収 縮 を持 続 す る こ とに よ っ て,表 面 筋 電 図 の 振 幅 や 周 波 数 成 分 が 変 化 す る こ とが 見 出 され た こ と に始 ま る.こ
れ ら に 関 して は,Lippold8)に
Sato10)に
よ る振 幅 の増 大, KogiとHakamada9)や
よ る徐 波 化 や 低 周 波 数 側 へ の シ フ トと い っ た現 象 が 報 告 され,そ
の後
も数多 くの 報 告 が あ る.
1 筋疲 労 に伴 う振 幅の増 大 と周 波数の徐 波化11) 肘 関 節 を直 角 に 保 ち,上 腕 二 頭 筋 の等 尺 性 収 縮 を 最 大 筋 力 の70%で
疲 れ切 る
ま で い っ た と きの 上 腕 二 頭 筋 にお け る 筋 電 位 信 号 の ス ペ ク トル 変 化 を 経 時 的 に示 した もの が 図3.11で
あ る.定 性 的 にみ て,70Hz付
近 に ピー ク を もつ ス ペ ク トルが
図3.11 最大 筋 力 の70%を 等 尺性 に保 持 した と きの上 腕 二頭 筋 の正 規 化 した スペ ク トル の時 間的 変化
時 間 経 過 に 伴 っ て,周 波 数 ピー クが50Hzに
シ フ ト して い る こ とが うか が わ れ る.
こ の周 波 数 ス ペ ク トル か ら筋 電 位 信 号 の 積 分 値 に相 当 す る トー タ ルパ ワー と平 均 周 波 数 を算 出 し,時 間軸 を最 大 耐 久 時 間 で基 準 化 して 疲 労 性 変 化 を み た もの が 図3.12で た.ま 50%で
あ る.ト
た,平
ー タ ル パ ワー は初 期 値 に比 べ,お
均 周 波 数 は お よそ100Hzか
ら70Hzへ
も ほ ぼ 同 様 の傾 向 で あ っ た.ま た,膝
よ そ5倍 直 線 的 に増 加 して い と漸 減 して い た.最 大 収 縮 の
関 節 を伸 展 す る等 尺 性 収 縮 に お け る
大 腿 直筋 の 疲 労 性 変 化 につ い て も,上 腕 二 頭 筋 と 同様 に 筋 電 位 信 号 の トー タ ルパ ワー は筋 疲 労 と と も に漸 増 し,平 均 周 波 数 は漸 減 した.し
か しそ の 変化 は 上 腕 二
頭 筋 ほ ど著 し くは なか っ た(図3.13).
図3.12 最 大 筋 力 の50%(●)お よび70%(○)の 収 縮 レベ ル を保 持 した ときの 上腕 二 頭 筋 の 筋電 図パ ラ メー タ(ス ペ ク トルパ ワー,平 均 周 波 数)変 化
図3.13 最大 筋 力 の50%(●)お
よび70%(○)の
筋 電 図 パ ラ メ ー タ(ス
収縮 レベ ル を保 持 した と きの大 腿 直 筋 の
ペ ク ト ル パ ワ ー,平
均 周 波 数)変
化11)
筋 疲 労 に伴 っ て 生 じる筋 電 位 の振 幅 増 大 と,周 波 数 の低 周 波 数 側 へ の シ フ トが, どの よ う な メ カ ニ ズ ム に よ っ て 起 こ るか に つ い て は,十 分 に 明 らか に され て い る と は い え な い.振 幅 の 増 大 に つ い て は,活 の 増 加,さ
動 に 参 加 す る運 動 単 位 の 数 や 発 射 頻 度
ら に は発 射 活 動 の 同 期 化 が 主 な 原 因 とさ れ て い る.他 方,周
波 数 の徐
波 化 に つ い て は活 動 電 位 の 持 続 時 間 の 延 長 や伝 導 速 度 の 遅 延 が 主 な原 因 と さ れ て い る.ま
た,持 続 時 間 の 短 い 活 動 電 位 が 衰 退 し,持 続 時 間 の 長 い 活 動 電 位 に交 代
し た た め だ と い う解 釈 もあ る.
2 多点表面電極 と筋線維伝導速度 局 所 的 な筋 疲 労 に伴 っ て 筋 線 維 伝 導 速 度 が 低 下 す る.図3.14は4,8,12kgの 3種 類 の 重 りを1,2,4分 度 で あ る.12kgの
間 そ れ ぞ れ 保 持 し た と き の上 腕 二 頭 筋 の筋 線 維 伝 導 速
重 りの と き は 伝 導 速 度 が20%低
Arendt‐NielsenとMills13)が
下 し て い た.同
大 腿 四 頭 筋 で 行 っ て お り,60%MVCで
で 収縮 を保 持 した と き,伝 導 速 度 が20%低
様 な実験 を 疲労 す るま
下 した こ と を報 告 して い る.
図3.14 3種 類 の 異 な っ た重 りを保 持 した ときの 上腕 二 頭 筋 の筋 線 維伝 導 速 度 変 化
こ う した筋 疲 労 に伴 う筋 線 維 伝 導 速 度 の低 下 は,乳 酸 な どの 代 謝 産 物 が 蓄積 し, 筋 の細 胞 外pHが
変 化 し た こ と に よ り,筋 線 維 を伝 播 す る活 動 電 位 の 伝 導 速 度 を
低 下 させ る と い う も の で あ る14).も
う1つ の 考 え方 は,筋 線 維 タ イ プ あ る い は 運
動 単 位 タ イ プ の 疲 労 特 性 に 関 連 した もの で あ る.す な わ ち,耐
久 性 に 劣 る速 筋 線
維 が 疲 労 に よ っ て 収 縮 力 を 失 う と同 時 に活 動 を停 止 す る.一 方,耐
久 性 に優 れ た
遅 筋 線 維 は活 動 を続 け る.筋 疲 労 に よ っ て速 筋 線 維 が 活 動 を停 止 して も遅 筋 線 維 が 活 動 を持 続 して い るた め に,筋
全 体 と して は伝 導 速 度 が 低 下 し た よ う に観 測 さ
れ る とい う もの で あ る.こ の 考 え 方 の 背 景 に は,速 筋 線 維 の伝 導 速 度 は遅 筋 線 維 の そ れ よ り速 い とい う こ とが 前 提 に あ る. これ らを 考 え あ わ せ る と,筋 疲 労 に伴 う活 動 電 位 の 伝 導 速 度 の 低 下 は,乳 酸 な どの 代 謝 産 物 の 蓄 積 に よ り細 胞 外pHが
変 化 し,そ れ に よ り活 動 電 位 の伝 導 速 度 が
低 下 した こ と と,速 筋 線 維 が 疲 労 しや す い性 質 の た め に活 動 を停 止 し,遅 い 伝 導 速 度 の 遅 筋 線 維 が 活 動 し続 け る とい う こ とが 同 時 に 起 こ っ た た め だ と考 え ら れ る.
3.6
ま とめ
筋 電 位 信 号 を処 理 す る とい う こ と は,時 系 列 と して の 波 形 デ ー タ を,振 幅 値 や, 平 均 周 波 数 な ど の 数 値 に 変 換 す る こ と で あ る.こ れ は,1次
元の 波形 デー タを数
値 デ ー タに 縮 約 す る 過 程 と い え る.数 値 デ ー タ と な っ て は じめ て,さ
まざまな収
縮 条 件 や 被 験 者 間 で の 比 較 が 可 能 に な る.そ
して,こ
の よ う な 比 較 を通 して,筋
の 活 動 パ タ ー ンや,疲 労 な どの 内 部 変 化 を調 べ る こ とが で き る よ うに な る.
参考 文献 1) 吉 澤 正尹:筋
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久 保堯 夫(編):初
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H:Frequency
J Appl
J Appl
contractions
J:The
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Anthrop
contraction,Eur
14) Viitasalo
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T,Miyano
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Sadoyama
of
Inst
contractions,J
muscle 12)
T:Slowing
fatigue,Rep
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during
velocity,mean
submaximal
Physiol,58,20‐25 of
EMG
during
power
fatiguing (1988)
fatigue,Eur
J
Appl
第4章
応用の事例
体 育 ・ス ポ ー ツ や リハ ビ リテ ー シ ョ ン な どの伝 統 的 な 表 面 筋 電 図 の 応 用 分 野 に 加 え て,人
間 工 学 や労 働 科 学 さ ら に は 最 近 の 感 性 工 学 の 領 域 で,表 面 筋 電 図 を使
っ て 作 業 負 担 の 評 価 や 製 品 の使 い 勝 手 を評 価 す る研 究 が 報 告 さ れ,応 用 面 で 利 用 価 値 が 高 い とい う こ とが 明 らか に さ れ て きた.本 章 で は,そ
れ らの研 究 報 告 例 を
紹 介 しなが ら,ど の よ う に筋 電 図 を利 用 す れ ば よ い か を解 説 す る.た の な か に は デ ー タ処 理 の 仕 方 に 古 い もの が 含 まれ て い る.そ
だ し,事 例
れ らは 最 新 の デ ジ タ
ル 処 理 の 手 法 に 読 み 替 えて,筋 電 図利 用 の 方 法 や 考 え方 を理 解 して い た だ きた い.
4.1 感 じられ な い 筋 活 動 の認 識 剣 道 で の 小 さ くす ば や い 正 面 打 突 を 行 うた め に竹 刀 を 振 上 げ る 局 面(図4.1) に お い て,大 4.2に 示 す.小
胸 筋,三
角 筋 前 部,僧
帽 筋 中 部 か ら導 出 した 筋 活 動 パ タ ー ン を 図
さ くす ば や い 正 面 打 突 と い う の は,素 振 りの よ う に竹 刀 を 頭 上 ま
で 振 りか ぶ っ て 面 を打 つ の で は な く,試 合 の と きの よ う に振 り幅 を小 さ く,い わ ゆ る「 刺 す 」 よ う に打 つ 面 の こ と で あ る.一 見 す る と,あ ま り振 り上 げ な い の で 肩 周 囲 の筋 を 使 っ て い ない よ う に み え るが,剣
道 の熟 練 者 は肩 周 囲 筋 を よ り効 果
的 に使 って い る. 図4.2左 側 は あ る 大 学 の レギ ュ ラ ー 選 手 で 全 国 レベ ル の大 会 で 優 勝 す る よ うな 者,右 側 は剣 道 三 段 以 上 の猛 者 で は あ るが レギ ュ ラー に は1歩 届 か な い 者 で あ る. 筋 電 位 の 導 出 に は,小 型 筋 電 図計 測 シ ス テ ム(Bagnoli‐4,Delsys)を
用 い,電
図4.1 剣 道 にお け る小 さ くす ばや い 正 面打 突
図4.2 小 さ くす ばや い正 面 打 突時 の 筋 活 動パ ター ン
極 に は 能 動 型 を用 い た.感 度 は1000倍,高
域 遮 断 周 波 数 は1kHzで
あ っ た.電
極 は,筋 出 力 と振 幅 が 対 応 関 係 に あ る こ と を確 認 し なが ら,筋 腹 付 近 に貼 付 した. 各 信 号 を サ ンプ リ ング周 波 数2kHzでAD変 Ⅱ ,GW
Instruments)で
換 し,波 形 解 析 ソ フ ト (Super Scope
解 析 ・表 示 し た.
筋 活 動 パ タ ー ン を比 較 す る とい くつ か の 特 徴 が み られ る.そ の な か で 最 も明確 な差 異 は,「 構 え」 か ら打 ち 出 そ う と竹 刀 を振 り上 げ る 瞬 間(図 帽 筋 中 部 の活 動 で あ る.レ ギ ュ ラ ー群 で は こ の筋 活 動 が10名 非 レギ ュ ラー 群 で は10名
中4名 に しか み られ ず,み
中 の 円 内)の 僧
中9名 で み られ るが,
られ て も筋 活 動 時 間 が 短 い.
振 り上 げ るた め に は三 角 筋 前 部 が 中 心 的 な 働 きを す るが,そ
の 瞬 間 に僧 帽 筋 中 部
も活 動 させ て 肩 甲骨 を内 転 させ て い れ ば,上 腕 を挙 上 しや す くな る.し た が っ て, レギ ュ ラ ー 群 は 三 角 筋 前 部 の 筋 活 動 を よ り有 効 に 上 腕 の挙 上 動 作 へ と結 び つ け ら れ る の で あ る. と こ ろ が,こ
の 僧 帽 筋 中部 の筋 活 動 を 認 識 して い る か ど うか レギ ュ ラ ー 選 手 に
聞 い て み た と こ ろ,誰 一 人 と して 認 識 で き て い な か っ た.筋 電 図 で 筋 活 動 をみ せ な が ら動 作 を さ せ て み て も,「 や は り僧 帽 筋 を使 っ て い る と は 感 じ られ な い 」 と 答 えが 返 って きた の で あ る. こ の こ とは,正 面 打 ち の指 導 をす る 際,以 け な い こ とを 示 唆 して い る.す の 筋 を使 う こ と は 重 要 で,特
な わ ち,小
下 の よ う な こ とに 注 意 しな け れ ば い
さ くす ば や い 面 を打 つ と きで も肩 周 囲
に僧 帽 筋 中 部 に よ り肩 甲 骨 を 内転 させ る こ とが 大 切
だ とい う こ と を知 識 と して 伝 え る.実 際 の 動 き を指 導 す る 際 は,「 僧 帽 筋 中 部 を 使 え!」
とい っ て も結 局 は わ か らな い し,感
じ られ な い.そ
こ で,僧 帽 筋 中部 を
結 果 的 に 使 え る よ う な 誘 導 的 指 導 を工夫 す べ きな の で あ る.
4.2 過剰 な筋活動の定量化 サ ッ カ ー の ク ッ シ ョ ン コ ン ト ロ ー ル 時(図4.3)に 内 側,内
側 広 筋,大
腿 直 筋 の 合 計4カ
示 す.ク
ッ シ ョ ン コ ン ト ロ ー ル と は,空
お い て,前
脛 骨 筋,腓
腹 筋
所 か ら 導 出 し た 筋 活 動 パ タ ー ン を 図4.4に 中 を飛 ん で きた ボ ー ル に 対 して片 足 を上
図4.3
図4.4
げ て 迎 え,そ
サ ッ カ ー の ク ッ シ ョ ン コ ン トロ ー ル
ク ッ シ ョ ン コ ン トロ ー ル 時 の 筋 活 動 パ タ ー ン
の足 の 甲 の 部 分 に ボ ー ル を上 手 に乗 せ て体 に 引 き寄 せ,そ
の乗 せ た
ボ ー ル を思 い どお りの所 へ そ っ と置 く よ う に落 とす技 術 で あ る.特 に この 図 で は, ボ ー ル が足 の 甲 の 部 分 に乗 っ て い る局 面 に 注 目 して 話 を進 め た い(図4.4の
網か
け部). 筋 電 位 の 導 出 方 法 は,前 節4.1と
同 様 で あ る.図4.4左
側 は サ ッカ ー で は 有 名
な 大 学 の レ ギ ュ ラ ー 選 手 の 筋 活 動 パ ター ン,右 側 は体 育 学 部 の 大 学 生 の 筋 活 動 パ ター ンで,比 較 す る と い くつ か の特 徴 が み られ る.ま ず 足 関節 の 角 度 変 化 をみ る と,サ
ッ カ ー 選 手 は 一 度 底 屈 して ボ ー ル を迎 え,背 屈 し た とこ ろで ボ ー ル を足 の
甲 の 部 分 に乗 せ,そ
の 足 関 節 角 度 を 一 定 に保 っ て い る.前 脛 骨 筋,腓 腹 筋 内 側 の
筋 活 動 パ タ ー ン も動 作 イ メ ー ジ に よ く対 応 して い る.一 方,体
育学 部の学生 はサ
ッ カ ー 選 手 で は な い と は い え,そ れ な りに運 動 能 力 は 高 い の で ボ ー ル を足 の 甲 に な ん とか 乗 せ る こ とは で き るが,足 腓 腹 筋 の 筋 活 動 を比 較 す る と,サ で あ るが,体
関 節 角 度 を一 定 に 保 て て い な い.こ の 局 面 の ッ カー 選 手 で は わ ず か に筋 活 動 が み られ る の み
育 学 部 の 学 生 で は 断 続 的 な筋 活 動 が み られ る(図4.4の
円 内).こ
れ
は足 関 節 角 度 を 一 定 に保 て な い こ と につ なが る過 剰 な筋 活 動 と考 え られ る. この 局 面 の 腓 腹 筋 の 筋 活 動 量 を 最 大 筋 収 縮 時 の筋 活 動 量 で 基 準 化 す る と,サ ッ カ ー 選 手 群 で は 平 均 約4%RMS,体 た.そ
の 差 は わ ず か3%で,動
育 学 部 の 学 生 群 で は 平 均 約7%RMSで
あっ
作 中 に 感 じ とる に は非 常 に小 さ な違 い で あ る.さ
ら に,こ の 局 面 に お い て 膝 関節 の 伸 展 や 固 定 に 関 与 す る 内 側 広 筋,大 活 動 量 も,体 育 学 部 の 学 生 群 で は サ ッ カ ー選 手 群 よ り約3∼5%RMSほ
腿 直筋の筋 ど高 か っ
た.こ
れ らの こ と は,こ の 動 作 に 関与 す る 筋 群 で の 過 剰 な 筋 活 動 が 無 駄 な 力 を生
み,そ
れ が ボ ー ル を上 手 に コ ン トロ ー ル す る こ と を妨 げ,そ
れ で も な ん とか コ ン
トロ ー ル し よ う とす る と さ らに 過 剰 な筋 活 動 が み ら れ て し ま う とい っ た 悪 循 環 に 陥 る こ と を 示 唆 して い る. た だ し,指 導 現 場 で は過 剰 な筋 活 動 に よ る無 駄 な力 を抜 くた め に 「も っ と リラ ッ ク ス せ よ」 とか 「も っ と力 を抜 い て 」 と ア ドバ イ ス す る こ とが よ くあ るが,抜 か な け れ ば な ら な い筋 活 動 量 は わず か 数 % な の で,そ
れ を しっ か り認 識 し,実 際
に抜 くこ とは と て も む ず か しい こ と な の で あ る1).し
た が っ て,無 駄 な 力 を抜 く
た め に は,身 体 の 他 の 部 分 に 意 識 を 置 い た り,逆 に 力 を入 れ させ た り,結 果 的 に 抜 け る よ う誘 導 す る こ と が 大 切 で,優 れ て い る と い わ れ る指 導 者 は い ろ い ろ な 誘 導 方 法 を も っ て い るの で あ る.
4.3 筋 線 維 組 成 と筋 線 維 伝 導 速 度2) 筋 は多 数 の 筋 線 維 が 束 に な っ て 構 成 さ れ て い る.運 動 単 位 を機 能 的 に 分 類 す る と FF
(Fast twitch,Fatigable),FR
(Slow
Twitch)に
(Fast twitch,fatigable
分 け られ る.こ
のFTタ
Resistant),ST
イ プ (FFとFR)やSTタ
イ プの運動
神 経 に つ なが る 筋 線 維 は,原 則 と し て速 筋 線 維 と遅 筋 線 維 で あ り,収 縮 張 力 や 収 縮 速 度,疲
労 特 性 と 関連 す る.特
にFTタ
イ プ の 運 動 単 位 は 筋 線 維 自体 が 太 く,
収 縮 力 が 大 きい が す ぐに 疲 労 し て し ま う タ イ プ で あ る.他 方,STタ
イプの運動
単 位 は,そ れ につ な が る筋 線 維 も細 く,収 縮 張 力 は小 さい が 疲 労 しに くい タ イ プ で あ る. FTタ
イ プ とSTタ
を表4.1に 示 す3).こ の 融 合 頻 度 や,軸
イ プ に分 け て 単 収 縮 の 速 さ とそ の 他 の 諸 特 性 を ま とめ た もの の 特 性 の な か で,筋
索 の 伝 導 速 度,後
電 位 の波 形 に 関 係 す る 項 目は 反 復 収 縮
過 分 極 持 続 時 間 で あ る.す
な わ ち ,反 復 収 縮
の 融 合 頻 度 は筋 電 位 の スパ イ ク波 形 の 発 射 頻 度 と関 係 し,軸 索 の伝 導 速 度 は筋 線 維 伝 導 速 度 と 関係 す る.ま た,後
過 分 極 持 続 時 間 は 単 一 運 動 単 位 の筋 電 位 の周 波
数 に 関 係 が あ る と考 え られ る. 表4.1
運動 単 位 に おけ る単収 縮 の 速 さ と他 の 諸 特性 との 関係 (ネ コ,下 腿 三頭 筋)3)
速 筋 線 維 の比 率 が 高 い と力 強 く収 縮 す るが 疲 労 しやす い.逆 が 低 い と ゆ っ く り収 縮 す る か わ りに 疲 労 し に くい4).同
に速筋線維 の比率
じ筋 で あ っ て も,収 縮 特
性 や 疲 労 特 性 は 人 に よ っ て も異 な る.筋 線 維 の 組 成 を 知 る こ とは 個 人 の 運 動 適性 の 一 側 面 を評 価 す る こ とが で き る とい う点 で 非 常 に 重 要 な こ とで あ る. これ ま で,筋 線 維 組 成 は バ イ オ プ シ(生 検)に きた.し
よ っ て 組 織 化 学 的 に 調 べ られ て
か し,バ イ オ プ シ 法 は 生体 組 織 の 一 部 を切 り取 る とい う外 科 的 な手 術 を
必 要 とす る.そ
の た め に そ う した 侵 襲 的 な 方 法 に よ ら な い で,筋 線 維 組 成 を推 定
す る方 法 の 開発 が 望 ま れ て い る. 筋 線 維 を伝 播 す る 筋 電 位 の 伝 導 速 度 は,収 縮 力 や 筋 疲 労 と関 係 す る こ とが 明 ら か に さ れ て い る.こ れ ら は,運 動 単 位 の活 動 参 加 や 発 射 頻 度 と密 接 な 関 係 に あ り, 筋 線 維 組 成 との 関 連 も高 い と考 え られ る.そ こ で,筋 線 維 伝 導 速 度 と筋 線 維 組 成 と の 関係 につ い て 調 べ た.で き る だ け 筋 線 維 組 成 の バ ラ ツ キ の 幅 が 大 きい と考 え ら れ る 陸上 競 技 の 短 距 離 と長 距 離 の 選 手 を 選 び,大 腿 部 の 外 側 広 筋 を 対 象 に調 べ た. 筋 線 維 組 成 の 計 測 は ニ ー ドル ・バ イ オ プ シ 法 で 採 取 し,組 織 化 学 的 に染 色 した. 染 色 の 結 果 に基 づ い て,線
維 をFTとSTの
タ イ プ に分 類 した.FTとST線
維の
平 均 面 積 を デ ジ タ イザ で 測 り,筋 線 維 の 断 面 を 円 形 と仮 定 し て面 積 か ら線 維 の直 径 を計 算 した.筋 線 維 組 成 はFT線
維 の 面 積 比 で 表 した.
筋 線 維 伝 導 速 度 は膝 関 節 伸 展 中 に,外 側 広 筋 の 筋 電 位 信 号 か ら計 測 した.筋 電 位 信 号 の 誘 導 は13本 は,太 5mm間
の ス テ ン レ ス 線 で で き た ア レ イ 電 極 を 用 い て 行 っ た.電 極
さ1mm,幅10mmの
ス テ ン レス 線 を厚 さ2mmの
隔 で 配 列 した もの で あ る.筋
導 した.こ
電 位 信 号 は 隣 り合 っ た 電 極 か ら双 極 性 に 誘
の ア レ イ電 極 を筋 の 長 軸 に 沿 っ て,バ
幹 側 に貼 り付 け た.電
塩化 ビ ニ ー ル の シ ー トに
イ オ プ シ を行 っ た 位 置 の や や体
極 は 皮 膚 を ア ル コ ー ル で きれ い に した後,電
極 ペ ー ス トを
付 け な い で皮 膚 表 面 に 貼 り,粘 着 テ ー プ で 動 か な い よ う 固定 した.ア
ー ス電 極 は
当該 脚 の 膝 蓋 骨 に つ け た. 増 幅 器 の 周 波 数 帯 域 は53∼1000Hzで,さ 50Hzの
フ ィル タ を使 用 した.12ビ
ら に 交 流 信 号 を徐 去 す る た め に
ッ ト分 解 能 を もつAD変
プ リ ング 周 波 数 で デ ジ タ ル 化 し た.サ
換 器 で5kHzの
ン プ ル 数 は チ ャ ン ネ ル あ た り4096点
お よ そ0.8秒 間 に相 当 す る.二 つ の 筋 電 位 信 号 の相 関 関 数 を計 算 し た.伝 は 電 極 間 距 離5mmと
サン
筋 電 位 信 号 の 時 間 差 か ら計 算 した.時
で,
導速度
間差 は2チ ャ ン ネ ル
の筋 電 位 信 号 の相 互 相 関 関 数 の最 大値 か ら算 出 した. FT線
維 の 面 積 比 は被 験 者 に よ っ て か な りバ ラ ツ キ が あ り,22.6∼93.6%の
囲 に わ た っ て い た.短 距 離 走 者 のFT線 93.6%)と
維 の 面 積 比 は 平 均70.1%(範
高 く,他 方 長 距 離 走 者 の そ れ は 平 均36.4%(範
囲47.1∼
囲22.6∼61.3%)と
低 か っ た.こ
の違 い は統 計 的 に も有 意 で あ っ た(p<0.01).平
∼5 .20m/sの
範 囲 に わ た っ て い た.短 距 離 走 者 の 伝 導 速 度 は4.84±0.24m/sで
距 離 走 者 の そ れ(4.31±0.10m/s)よ 伝 導 速 度 とFT線
り有 意 に(p<0.01)速
維 の 面 積 比 の 関 係 を 図4.5に
(r=0.84,p<0.01)が
認 め られ た.す な わ ち,FT線
速 度 も速 く,反 対 にFT線
示 す.両
範
均 伝 導 速 度 は4.13 長
か っ た. 者 の 間 には正 の 相 関
維 面 積 の比 率 の高 い 人 は 伝 導
維 面 積 の 比 率 の 低 い 人 は伝 導 速 度 が 遅 か っ た.伝 導 速 度
と線 維 組 成 との 相 関 はFTやST線
維 の膜 の 興 奮 性 の 違 い に よる もの と思 わ れ る.
図4.5 筋 線 維伝 導 速 度 と速 筋 線 維 の比 率 との 関係2) ●短距 離 走 者,○ 長 距 離 走 者
非 侵 襲 的 に 計 測 可 能 な,筋 線 維 組 成 と相 関 の 高 い 筋 線 維 伝 導 速 度 と い う生 理 学 的 な 指 標 を見 出 した.す
な わ ち,こ の 伝 導 速 度 に よ っ て 筋 線 維 組 成 を評 価 で き る
可 能 性 が 示 唆 され た.筋 線 維 構 成 とス ポ ー ツ種 目 との 関 連 性 が 適性 や トレー ニ ン グ に 強 く影 響 され る こ と は疑 い な い.そ
こで 短 距 離 や 長 距 離 の 選 手 の適 性 を 早 期
に 見 出 す た め に は 筋 線 維 組 成 を知 る こ とが 重 要 で あ る.非 侵 襲 計 測 で あ るた め, こ の 手 法 は ス ポ ー ツ科 学 の 分 野 や神 経 筋 疾 患 な どの 臨 床 診 断 に も応 用 可 能 で あ ろ う.
4.4 各 種 ス ポー ツ競 技 選 手 の筋 線 維 伝導 速 度5) ス ポ ー ツ選 手 を対 象 と した 筋 バ イ オ プ シ に よ っ て 筋 線 維 の 組 成 が 調 べ ら れ て お り,短 時 間 に高 い 運 動 強度 が 要 求 され る ス ポ ー ツ種 目の 選 手 は 速 筋 線維 を含 む 割 合 が 多 く,持 久 性 の 高 い ス ポ ー ツ種 目 の選 手 は遅 筋 線 維 の 割合 が 多 い と報 告 され て い る.こ う した 研 究 の 主 なね らい は,筋 線 維 組 成 の 偏 りを 調 べ る こ とに よ っ て, そ れ ぞ れ の種 目に 属 す る選 手 の 適 性 を 知 る こ とに あ る. ス ポ ー ツ種 目に よ っ て筋 線 維 組 成 に 偏 りが あ る の で あ れ ば,筋 が 活 動 す る と き の 筋 電 位 の伝 導 速 度 に もそ う した 違 い が 存 在 す る こ とが 予 想 され る.ま た,筋 線 維 組 成 を調 べ る方 法 は バ イ オ プ シ に よ る侵 襲 的 な方 法 で あ る.筋 線 維 組 成 と伝 導 速 度 の 関 係 が 明 らか に なれ ば,線 維 組 成 を推 定 す る非 侵 襲 的 な 方 法 が 開発 で き る 可 能 性 も出 て くる. そ こ で,各 種 の ス ポ ー ツ種 目の 外 側 広 筋 にお け る筋 電 位 の伝 導速 度 を計 測 した. 大 学 に 在 学 す る 男 子 ス ポ ー ツ競 技 者57名 い 一 般 男 子 学 生7名 (Spr‐12名),長
(Bod‐7名)と
を 計 測 対 象 に 選 ん だ.各
距 離(Dis‐8名),投
ボ ー ル(Han‐8名),サ
と,特 別 な ス ポ ー ツ活 動 を行 っ て い な
て き(Thr‐8名).ボ
ッ カー(Soc‐7名).そ
水 泳(Swi‐7名)で
種 競技 種 目は陸 上競 技 の短 距 離
あ っ た.こ
ー ル ゲ ー ム で はハ ン ド
の 他 の種 目 と して,ボ
デ ィ ー ビル
う し た種 目の 競 技 選 手 の ほ と ん どは
レギ ュ ラ ー ク ラス で あ っ た. 下 肢 外 側 広 筋 に お け る筋 線 維 伝 導 速 度 の 計 測 は前 節 で 述 べ た 方 法 と 同 じ で あ る. 図4.6は ス ポ ー ツ種 目別 に み た外 側 広 筋 の 筋 線 維 伝 導 速 度 で あ る.陸 上 競 技 の 短 距 離 走 者 が 平 均4.84m/sと
最 も速 く,や や 離 れ て投 て き選 手,サ
これ に つ づ き,そ れ ぞ れ4.59,4.56m/sで
あ っ た.ハ
ン ドボ ー ル 選 手,ボ
ビ ル ダ ー,非 鍛 練 者 が 中 間 に位 置 して お り,そ れ ぞ れ4.47,4 っ た.ま
た,伝
ッカ ー 選 手 が デ ィー
.44,4.42m/sで
あ
導 速 度 の 遅 い グ ル ー プ は 陸 上 競 技 の 長 距 離 選 手 と水 泳 選 手 で,そ
れ ぞ れ4.32,4.10m/sで
あ っ た.
図4.6 競 技 種 目別 にみ た 最大 筋 力発 揮 時 の外 側 広 筋 に お け る平 均伝 導 速 度 と 範 囲(最 大,最
小 値)5)
水 泳 に も短 距 離 と長 距 離 の 種 目が あ るが,陸
上 競 技 の よ う に 瞬発 的 な ス ポ ー ツ
適 性 で は な くて,水 泳 の 短 距 離 は 持 久 的 な種 目 に属 す る もの と考 え られ る.こ した伝 導 速 度 の種 目特 性 はあ く まで も平 均 値 に基 づ く もの で,同
う
じ種 目 の選 手 の
な か に も個 人 差 が あ る.陸 上 競 技 の 短 距 離 選 手 の なか で も4.5m/sか
ら5.2m/sま
で か な り幅 が あ っ た. FoxとMathews6)に
よ っ て ま とめ られ た 各種 ス ポ ー ツ にお け る筋 線 維 組 成 と比
較 して み る と,競 技 ご と に特 徴 的 な 傾 向が あ り,陸 上 競 技 の 短 距 離 や 投 て きの 選 手 は 速 筋 線 維 の 比 率 が 高 い.ま
た,持 久 的 な 能 力 を 要 求 さ れ るマ ラ ソ ンや 長 距 離
の 選 手 は遅 筋 線 維 の 比 率 が 高 い.こ の よ うに,伝 導 速 度 の傾 向 と比 較 して,非 常 に類 似 性 が 高 い と い え る.
4.5 操 作 に対 す る上 肢 上 方 作 業 域7) 人 間 工 学 の領 域 で,作
業 域 の 設 定 は お もに2つ の 面 か ら検 討 さ れ て い る.1つ
は作 業 の 上 限 と して の 到 達 可 能 な 範 囲 か らみ て い く方 法 で あ り,も う1つ は 最 適 動 作 範 囲 を求 め る もの で あ る.し か し,作 業 域 の 上 限 を考 え る場 合 に,生 体 寸 法 の 計 測 か ら行 わ れ る 到 達 域 の 内 側 に,機
能 や 筋 疲 労 か らみ た 許 容 域 が 存 在 す る.
特 に,産 業 場 面 に お い て は,操 作 に か か わ る姿 勢 の 保 持 や 手 指 ・足 先 の 細 か い調 整 の た め に,上 下 肢 の 保 持 を必 要 と され る こ とが 多 い.作 業 現 場 に お け る 人 間 工
学 的 な 配 慮 は 反 応 時 間や 操 作 力,操 作 時 間,操 作 誤 差 な ど の 要 因 の ほ か,局 所 疲 労 も考 え に 入 れ て お く必 要 が あ る. た とえ ば,つ
ま み や レバ ー を持 続 的 に操 作 す る よ うな 場 合,上
肢 をある特定 の
位 置 に保 持 す る努 力 が 必 要 で あ り,保 持 に対 す る 筋 収 縮 の 活 動 の 度 合 は,操 作 位 置 に よっ て 異 な り,ま た 時 々 刻 々 と変 化 す る もの で あ る.上 肢 の 上 方 作 業 域 は そ の 最 も端 的 な例 で あ る.天 井 作 業 な どが,た
とえ 到 達 可 能 域 内 で あ っ て も,特 別
の 苦 痛 を伴 う こ と を体 験 す る.こ の よ うに 手 肢 の保 持 に よ る筋 疲 労 との 関連 で 作 業 域 を考 え て い く場 合 に は,単 に 到 達 域 や 動 作 域 か ら の検 討 の み で は不 十 分 で あ り,操 作 の 位 置 ご と に 静 的 な筋 負 荷 を計 測 し,操 作 の 持 続 時 間 に対 応 して過 労 現 象 の 出 現 しな い 範 囲 を 実 験 的 に 求 め て い く必 要 が あ る. 筋 疲 労 に伴 っ て,表
面 筋 電 図 の 振 幅 が 増 加 し,同 時 に徐 波 成 分 の 増 大 が 起 こ る
こ とが 知 られ て い る.筋 電 位 変 化 を筋 疲 労 の 量 的 な 判 定 に 応 用 す る こ とが で きれ ば,過
労 現 象 の 出 現 に着 目 した作 業域 の 設 定 に 役 立 て る こ とが で きる.そ の た め
に 筋 電 図 の 積 分 値 を 容 易 に記 録 す る 方 法 を 考 案 し,筋 の 過 労 現 象 を ど う把 握 し, そ れ に 対 応 した作 業 域 を どの よ う に 設 定 す るか につ い て 検 討 した. 筋 電 位 を量 的 に 表 現 す る た め に,積 分 装 置 を 製 作 した.皮 膚 表 面 よ り導 出 した 筋 電 位 を整 流 積 分 し,積 分 値 が 一 定 に 達 した と き放 電 させ,そ ス を発 生 させ,そ
の パ ル ス を1秒 ご と に カ ウ ン トして 印 字 させ る もの で あ る.こ
の パ ル ス 数 が 筋 活 動 の 量 的 な 表 示 に あ た る.図4.7は 40,70,100%で
れ に 同期 した パ ル
最 大 収 縮 に対 す る 筋 力 比10,
等 尺 性 に 収 縮 した と きの 三 角 筋 の 筋 電 図 と積 分 パ ル ス の例 で あ
る.収 縮 力 の 上 昇 に伴 って 三 角 筋 の 筋 電 図 の 振 幅 が 増 大 し,積 分 パ ルス 数 も増 え て い る こ とが わ か る. この 積 分 パ ル ス を用 い て,三
角 筋 の 収 縮 力 と筋 電 位 の 関 係 を 調 べ る と図4.8の
よ う に,ほ ぼ 線 形 な 関係 が 成 立 した.こ
う した 関係 が 成 立 して い れ ば,外 部 へ の
筋 出力 測 定 が で き な い場 合 に も,筋 電 位 の積 分 値 や積 分 パ ル ス に よ って 筋 活 動 度 を 有 効 に表 現 で き る.最 近 で は,信 号 の デ ジ タ ル処 理 技 術 が 進 み,整 ど は筋 電 位 を デ ジ タル 信 号 に変 換 して お け ば,ソ 積 分 して,瞬
流,積
分な
フ トウ ェ ア で 絶 対 値 変 換 した後
時 に 結 果 を 出 力 で き,筋 活 動 の量 的 比 較 が 高 精 度 に で きる よ う に な
図4.7
最 大 収 縮 比10,40,70,100%で
(a)右 三角 筋
収 縮 し た と き の 三 角 筋 筋 電 位 の 例7)
(b)左 三 角筋
図4.8 筋力 と積 分筋 電 図 の 関係7)
っ て い る. 上 肢 前 方 挙 上 時 に肩 峰 点 を中 心 と し て,作 業 点 か らの 距 離,角 角 筋 の 活 動 を計 測 した.図4.9は
そ の 記 録 例 で あ る.こ
度 別に左右 の三
の 測 定 に あ た っ て は測 定
時 間 の 短 縮 と,筋 疲 労 の 影 響 を 除 くた め に,各 角 度 別 に肩 峰 点 に近 い と こ ろ か ら 毎 秒2.5cmの
ゆ っ く り した 一 様 な 速 度 で 第Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ
指 の 指先 位 置 を移 動 させ た.
こ の と き の 積 分 筋 電 図 は,そ れ ぞ れ の 位 置 で 純 粋 に 静 的 保 持 を させ た と きの積 分 値 と差 が な か っ た の で,各 保 持 位 置 を通 過 す る と きの 積 分 筋 電 図 を計 測 値 と した. 各 計 測 値 を被 験 者 各 人 の 最 大 収 縮 時 積 分 値 に 対 す る 比 率 に換 算 した う え で,被 験 者5人
に つ い て 平 均 した もの が 表4.2で あ る.肩 峰 点 近 位 の 下 方 で は三 角 筋 の 収
縮 は ほ とん どみ られ な い が,遠
位 の 水 平 方 向 お よ び 直 上 方 で は,か
な り強 い 収 縮
図4.9 上 肢前 方 挙 上 に おけ る 三角 筋 の筋 電 位7)
表4.2 上肢 前 方 挙 上 に おけ る 各位 置 で の三 角 筋 活動 度7)
を示 した.水 30%を
平 方 向 で も遠 位 で は,最 大 収 縮 時 の10%を
超 え,直
上 方 で は平 均
超 え て い た.
こ れ を等 活 動 度 線 と して 表 示 し た もの が 図4.10で
あ る.10%の
等活動 度線 は
ほ ぼ 頭 頂 と水 平 前 方 の 手 を 伸 ば した 位 置 を結 ぶ 線 に あ た る.こ
れ と平行 して約
20cm上
方 に20%等
超 え て い た.こ
活 動 度 線 が あ り,直 上 方 に 手 を 伸 ば し た と こ ろ で は30%を
の 図 は 上 肢 保 持 の 筋 負 担 か らみ た上 肢 上 方 作 業 域 を示 して い る.
作 業域 を筋 負 担 か ら検 討 す る場 合,ま
ず 筋 負担 を保 持 姿 勢 の 状 態 の ま ま わ か り
や す く,有 効 に 表 示 す る こ と.次 に 筋 負 担 の 大 き さが 作 業 域 の 限 界 づ け を必 要 と す る大 き さで あ るか ど う か の 評 価 を す る こ とが 必 要 で あ る.筋 電 図 の 利 用 は筋 の 負 担 の大 き さや 限界 づ け を有 効 に表 現 で き る指 標 で あ る.
図4.10 上肢 前 方 挙上 にお け る 三角 筋 活 動度 の 等 高線 図7)
上 肢 の 前 方 挙 上 にお け る 三 角 筋 の 活 動 に つ い て,三 30%を
角筋 の活動 が最 大筋 力 の
超 え る 天 井 作 業 域 は,操 作 時 間 を考 え た場 合1∼2分
域 で あ る とい え る.ま た 肩 か ら20∼30cm近
で 筋 痛 が 発 生 す る領
位 で も上 方 で は 筋 負 荷 が10%を
超
え,筋 痛 出 現 を 目安 に す れ ば,許 容 持 続 時 間 は数 分 とみ られ る. 上 肢 の 上 方 作 業 域 と して,数
分 程 度 の 上 肢 保 持 を要 す る場 合 に は,頭 頂 と上 肢
の 水 平 到 達 域 と を結 ぶ 線 よ り下 に作 業 点 が あ るべ き で あ る.ま た作 業 時 間 との 関 係 で 作 業 域 を考 え る場 合,従
来 は あ ま り考 え て い な か っ た作 業 に伴 う疲 労 感 や筋
痛 を 考 慮 に入 れ る必 要 が あ る.
4.6 厨 房 作 業 にお ける 最 適 作 業 面 高8) 立 位 の 作 業 姿 勢 に 関 す る最 適 作 業 面 高 を筋 電 図 に よ っ て 人 間 工 学 的 に 検 討 し た.す
な わ ち 高 さの 異 な っ た作 業 台 で手 作 業 を す る 際 の 作 業 姿 勢 に対 す る 姿 勢 保
持 の 筋 が どの よ う に使 わ れ て い る か を 計 測 し,定 量 的 に表 現 す る こ と に よ っ て,
立 位 姿 勢 の保 持 に か か わ る筋 負 担 の 大 き さか ら,最 適 な作 業 台 の 高 さ を導 き出 そ う とす る もの で あ る. 被 験 筋 は,作 下,広
業 姿 勢 に 関 す る8つ の 筋(三
背 筋,大 腿 二 頭 筋,腓
腹 筋)を
47,50,53,56,59%の7段
角 筋,上
腕 二 頭 筋,僧
帽 筋 上,中,
選 ん だ.作 業 面 の 高 さ は,身 長 の41,44,
階 と し た.作 業 負 荷 は す べ て の 被 験 者 に 一 定 の 負
荷 を与 え る た め に,直 径25cmの
円 盤 状 エ ル ゴ メ ー タ を 製 作 し,使 用 し た.作 業
は 皿 洗 い に似 せ た 回 転 作 業 を負 荷 と した.筋 電 位 の 計 測 は そ れ ぞ れ の 筋 の ほ ぼ 中 央 部 に 直 径10mmの
銀 板 電 極 を貼 付 し,双 極 誘 導 法 に よ り記 録 した.筋 電 位 を積
分 装 置 に 入 力 し,パ ル ス 変 換 した.作 収 縮 時 の積 分 筋 電 図(IEMG)に
業 中の 活 動 度(%IEMG)は,各
筋 の最大
対 す る比 で 表 した もの で あ る.
作 業 面 高 を 変 えて 筋 の 活 動 を対 応 させ て み る と,作 業 面 が 高 くな る に した が っ て 筋 電 位 が 増 加 す る筋 の グ ル ー プ と筋 電 位 が 減 少 す る グル ー プ に 分 類 で き た.す な わ ち,作 業 面 が 高 くな る に し た が っ て 筋 電 位 が 増 加 す る筋 グ ル ー プ は,僧 帽 筋 上,上
腕 二 頭 筋,三
角筋 で あ っ た.一 方,作
業 面 の上 昇 に伴 っ て 筋 電 位 が 減 少 す
る グ ル ー プ は僧 帽 筋 下,僧 帽 筋 中,広 背 筋,大 腿 二 頭 筋,腓 腹 筋 で あ っ た.図4.11 (a),(b)は
そ れ ぞ れ の 筋 グ ル ー プ別 に 作 業 面 高 と各 筋 の 活 動 度 を 示 して い る.
調 理 の よ う な立 位 姿 勢 に よ る作 業 は,作 業 面 が 低 い 場 合 に は,姿 勢 が 中腰 姿 勢
(a) 図4.11 作 業 面 高 と各 筋 の活 動 度(%IEMG)8)
(b)
や前 屈 み と な り,重 力 に抗 して腰 や 下 肢 の 筋 活 動 が 増 大 す る.こ に か か わ る筋 は 作 業 面 高 が 身長 の50%を 一 方,作
う し た直 立 姿 勢
超 え る と活 動 が 増 加 し ない.
面 高 が50%を
業 面 が 高 くな る に した が っ て筋 電 位 が 増 大 す る こ とに つ い て は,作 業 超 え る と上 肢 を持 ち 上 げ て 作 業 す る こ と に な り,そ の 分 上 肢 の 筋
や 上 肢 を保 持 す る 三 角 筋 や 僧 帽 筋 上 部 の 活 動 が 漸 増 す る こ と に な る.特
に僧 帽 筋
上 部 の 活 動 が 顕 著 で あ っ た. 以 上 の よ う に,調 理 作 業 の よ うな 立 位 姿 勢 にお け る最 適 作 業 面 を筋 負 担 と い う 側 面 か ら検 討 す る 場 合,特
定 の筋 に 負 担 が 偏 ら な い こ と が 好 ま しい.作 業 面 高 を
身長 に 対 す る比 率 で 表 し,作 業 面 が 高 くな る に した が っ て筋 電 位 が増 加 す る グ ル ー プ と減 少 す る グ ル ー プ に分 け て 活 動 量 を平 均 し,プ
ロ ッ ト した もの が 図4.12で
あ る.
図4.12 作 業面 高 と筋活 動 度(%IEMG)8)
厨 房 作 業 の よ うな 持 続 的作 業 に お い て は,特 定 の筋 の み に 活 動 が偏 る こ と は筋 疲 労 や筋 痛 な ど の結 果 を 引 き起 こ しや す い.し
た が っ て,最
も筋 負 担 の 少 な い作
業 姿 勢 は 筋 活 動 が 少 な く,か つ 一 部 の 筋 に偏 る こ と な く平 均 的 に筋 が 参 加 す る こ とが 合 理 的 な作 業 姿 勢 で あ る とい え る.こ の 点 か ら,作 業 面 が 高 くな る に した が っ て,筋
電 位 が 増 加 す る グ ル ー プAと 減 少 す る グ ル ー プBが
筋 電 位 が 平 均 的 で か つ 少 な い 最 適 作 業 面 高 は 身 長 の50%前 きる.こ
交 わ る 点,す
なわち
後 と み なす こ とが で
の 高 さ の 比 率 は 主観 的 な使 いや す さ と も一 致 して い た.
4.7 感 性 工 学 分 野 にお け る筋 電 図 の 利 用9) 咀嚼 活 動 は食 べ 物 の 噛 みご た え とい っ た 嗜 好 に 関 す る課 題 で あ り,感 性 工 学 の 分 野 に応 用 で き る.咀嚼
運 動 に 関 す る 筋 電 図学 的 な研 究 は,関 連 す る筋 活 動 を振
幅 や 周 波 数 に よ っ て解 析 す る とい う方 法 が 行 わ れ て きた.こ
れ らの 解 析 的 方 法 は
咀嚼 運 動 の 動 的 側 面 を直 感 的 に 把 握 で き な い とい う傾 向 が あ っ た.こ
れ に 対 し咀
嚼運 動 に 伴 う 下 顎 の 変 位 を セ ンサ ー に よ っ て機 械 的 に ト レー ス す る方 法 が 考 案 さ れ た.セ
ンサ ー の 軌 跡 に よ っ て 下 顎 運 動 を動 的 に 表 現 す る こ とが で き る.し か し,
こ の 方 法 は計 測 装 置 の 調 整 が複 雑 で,自
然 な 咀嚼 運 動 が 妨 げ られ,等 尺 性 に収 縮
した 場 合 に は筋 電 位 が 計 測 で き な い とい う 問 題 が あ っ た.そ
こで 左 右 の 咬 筋 の積
分 筋 電 図 をベ ク トル 表 示 し,そ の リサ ー ジ ュ 図 形 か ら顎 運 動 を観 察 す る とい う方 法 が 考 案 され た. 正 常 な 歯 列 を有 す る 被 験 者 に 各 種 の 食 品 を 咀嚼 させ た.左 右 の 咬 筋 の 中 央 部 に 直 径10mmの
表 面 電 極 を,電 極 間距 離40mmで
貼 付 し,双 極 誘 導 した.筋
信 号 を整 流 し,時 定 数0.5sで 平 滑 化 し た.12msの 換 を し,21秒
間 記 録 した.導
間 隔 で1800ポ
電位
イ ン トのAD変
出電 極 の 貼 付 位 置 や 増 幅 器 の 感 度 は左 右 の チ ャ ンネ
ル に差 が 生 じ な い よ う細 心 の 注 意 を払 っ た.左 右 の 平 滑 筋 電 位 はXYプ
ロ ッ タの
X軸 とY軸 に そ れ ぞ れ プ ロ ッ トす る こ と に よ り リサ ー ジ ュ図 形 と して 表 現 した. 用 い た 食 品 はチ ョ コ レー ト(4.7g),ビ せ ん べ い(2.5g),キ た.一
ャ ンデ ィー(4.3g),チ
部 の 例 外 を 除 い て,咀嚼
ス ケ ッ ト(3.5g),ア
ュ ー イ ン ガ ム(3.1g)の6種
過 程 は 一 般 に 裁 断,粉
る.筋 電 位 の 計 測 は,裁 断 過 程 を省 略 し,粉 砕,臼 図4.13(a)は
ー モ ン ド(1.3g),
砕,臼
類 とし
磨 の 三 相 に分 類 され
磨 の 相 で 行 っ た.
せ ん べ い を 咀嚼 した と き の左 右 の 咬 筋 の 積 分 筋 電 図 の 例 で あ る.
咀嚼 運 動 の リズ ム性 や 筋 活 動 の 大 き さ を よ く表 現 して い る.し か し この 記 録 か ら は左 右 の 筋 活 動 の 相 互 関連 性 につ い て は理 解 しに くい.そ
こで,左
ベ ク トル 合 成 し,リ サ ー ジ ュ 図形 と して 表 現 した の が 図4.13(b)で
右 の 筋 電位 を あ る.咀嚼
ス
トロー ク が 多 数 集 ま っ た もの で,全 体 と して 遠 心 領 域 の膨 らん だ扇 形 を示 して お
(a) 積 分 筋電 図
(b) リ サ ー ジ ュ 筋 電 図
(c) リサー ジュ筋 電 位 の10個 の副 分割 図
図4.13 せ んべ い を咀嚼 した際 の左 右 咬 筋 筋電 位 の3種 類 の表 現 方 法9)
り,ほ ぼ45度
の 線 対 称 と な っ て い る.大
ま か に は45度
の 比 較 的 線 形 な 軌 跡 と,
そ の 両側 にあ る先 端 の 広 が っ た 軌 跡 とに 分 け る こ とが で き る.45度
の 直 線 的 な軌
跡 は左 右 の 咬 筋 が 同 時 に 均 等 に 活 動 して い る こ と を意 味 し,下 顎 の 上 下 運動 に 関 係 して,咀嚼
前 期 の粉 砕 相 に 出 現 す る パ タ ー ンで あ る.ま た,弧
を描 くよ うな 軌
跡 は左 右 の 筋 力 バ ラ ンス が 連 続 的 に変 化 し て い る こ と を意 味 し,下 顎 の 側 方 運 動 に関 係 して い る.こ れ は 咀嚼 が 臼 磨 運 動 に な った と きに 出 現 す るパ ター ン で あ る. こ う した リサ ー ジ ュ 図 形 を時 分 割 し,個 々の 咀嚼 ス トロ ー ク を観 察 で きる よ う に す る と,さ
ら に は っ き り した 咀嚼 の 特 徴 が 把 握 で きる.図4.13(c)は
パ ター ン を時 間 経 過 に し た が っ て10等 分 した もの で あ る.図 の1か
図(b)の ら3の 直 線 的
な 軌 跡 は か み 砕 く運 動 で あ り,図 の4か ら10の 先 端 が 扇 形 に広 が っ た軌 跡 は す り つ ぶ す 動作 に相 当 す る. 種 々の 食 品 に対 す る咀嚼 の リサ ー ジ ュ筋 電 図 を 図4.14に に よ っ て 咀嚼 パ タ ー ンが 異 な っ て い た.柔
示 す10).食
らか い も の は リサ ー ジ ュパ ター ンが 描
く面 積 が 小 さ く,咬 筋 の 活 動 が 少 な い こ とが うか が わ れ る.チ 典 型 で あ っ た.一
品の種類
方 ア ー モ ン ドや せ んべ い はや や硬 い が,か
ョコ レー トは そ の
み 砕 い て し ま う とす
図4.14 6種 類 の食 品 に お ける左 右 咬 筋 の リサ ー ジュ筋 電 図9)
りつ ぶ す 動 作 に 変 わ り,広 が っ た複 雑 なパ ター ン とな っ た.他 方,咀嚼 状 が 変 化 しに くい 食 品 はパ ター ンが左 右 二 つ の 部 分 に 分 離 した.こ
して も形
れは特 にチュ
ー イ ンガ ム の パ ター ン で顕 著 に み られ た . ビス ケ ッ ト,せ ん べ い,ア
ー モ ン ドな どの 食 品 は粉 砕 パ ター ン と臼 磨 パ ター ン
が 時 間 経 過 を 追 っ て は っ き り変 化 した.咀嚼 パ ター ン とな るが,後
の 初 期 は 食 品 を か み 砕 くと い う粉 砕
半 は す りつ ぶ す とい う臼 磨 パ ター ンへ と変 化 して い く様 子
を 区分 で き る. この よ う に 咀嚼 を左 右 の 咬 筋 活 動 に よっ て 表 現 で き る こ とが 明 らか に な り,咀 嚼の 相 を認 識 で き る こ とか ら食 品 の 特 徴 を 把 握 す る こ と に よ っ て,噛 み こ た え な ど の 感 性 工 学 的 な 利 用 が 期 待 で きる.
4.8 自転 車エ ル ゴメ ー タ の負 荷 制 御 健 康 の 維 持,増 場 合,加
進 の た め の 運 動 を支 援 す る機 器 が 普 及 して き た.中 高 年 齢 者 の
齢 や トレー ニ ン グ に よ っ て 体 力 が 徐 々 に 変 化 して い くた め,体 力 に応 じ
た 適 度 な 負 荷 を 実 現 す る に は,定 で は,運
期 的 な 負荷 制 御 情 報 の更 新 が 必 要 で あ る .こ こ
動 時 の 表 面 筋 電 図 と心 拍 数 をモ ニ タ リ ング す る こ とで,個 人 差 の 大 きい
中 高 年 齢 者 で も効 果 的 に健 康 増 進 が 図 ら れ る よ う に研 究 を進 め て い る 自転 車 エ ル ゴ メ ー タの フ ァ ジー 負 荷 制 御 プ ロ セ ス11)に つ い て解 説 す る. 自転 車 エ ル ゴ メ ー タの フ ァ ジー 負 荷 制 御 プ ロセ ス で は,最 初 に,漸 増 負 荷 テス トを行 い,無
酸 素 性 作 業 閾 値 を 求 め る.ま
た,心 拍 数 と筋 疲 労 関 連 の 指 標 か ら な
る 散 布 図 を作 り,こ の 分 布 を3つ の領 域 に 分 割 す る.そ ンバ ー シ ッ プ 関数 を 設 計 す る.さ の Ratings
of Perceived
の う え で,領 域 ご とに メ
らに,主 観 的 指 標 で あ る 自覚 的 運 動 強 度(Borg
Exertion:RPE12))と
ル ー ル を設 定 す る.こ の 状 態 で,5サ
の 関 係 か ら,好 ま しい フ ァジ ー
イ ク ル ご とに 求 め た 心 拍 数 と筋 疲 労 関連 の
指 標 か ら次 の5サ イ ク ル で の 負 荷 を決 定 す る.実 際 に は,体 力 に あ っ た 基 本 的 な 負 荷 制 御 パ ター ン(図4.15)を
決 め て お き,約30分
の 運 動 の 間 に 生 体 情 報 に基
づ く負 荷 制 御 区 間 を 設 け る.基 本 的 な 負 荷 制御 パ タ ー ンで の負 荷 レベ ル の 最 大 ・ 最 小 値 は,漸 増 負 荷 テ ス トで 求 め た無 酸 素 性 作 業 閾 値 で の 数 値 を用 い る.個 人 ご と に最 適 な負 荷 を提 供 す る に は,こ
の負 荷 制 御 パ タ ー ンの 負 荷 の 大 き さ や 生 体 情
報 に 基 づ く負 荷 制 御 区 間 長 を調 整 す る.
図4.15 基 本 的 な負 荷 制御 パ ター ン(漸 増 負 荷 区 間 と負 荷 制御 区間 を交 互 に設 け る)
さて,自 転 車 エ ル ゴ メ ー タ負 荷 制 御 で は心 拍 数 を利 用 す る こ とが 多 い.こ は,さ
こで
らに,過 度 な疲 労 や 関 節 障 害 を引 き起 こ さ な い よ う筋 疲 労 を う ま く調 整 す
る こ と を 目的 とす る.つ
ま り,適 度 な疲 労 感 は 達 成 感 が 得 られ 運 動 意 欲 の 維 持 に
と っ て重 要 で あ る が,過
度 な筋 疲 労 で 膝 を 痛 め て し ま う と運 動 に対 す る 恐 れ が 生
まれ,逆 効 果 と な る.そ
こで,中
高 年 齢 者 向 け の負 荷 制 御 で は,表
面筋電 図で筋
活 動 状 態 もモ ニ タ ー しな が ら,心 拍 数 と合 わ せ て 負 荷 を制 御 し よ う と し て い る. これ は,そ の基 礎 研 究 の 紹 介 で あ る. 最 初 に,電 極 の 貼 付 につ い て 説 明 す る.図4.16は 電 位 を電 極 間 隔1cmと
した4本 線 の バ ー 電 極(直
に よ り計 測 し た例 で あ る.こ
の3チ
運動時の外側 広筋 での表面筋 径1mmの
白 金 線)で
ャ ンネ ル の 表 面 筋 電 図 か らARVを
双極 導 出 求 め,漸
図4.16 4バ ー 電極 で運 動 時 の外 側 広 筋 で の表 面 筋電 図 を計 測 した場 合 の,チ ャ ンネル ご と のARVの
時 間 変 化(1つ
図4.17
電 極 間 隔1cm,15チ
の フ レ ー ム は5s)
ャ ン ネ ル の フ レ キ シ ブ ルア レ イ 電 極 を
外側広筋に貼付 した例
増 負 荷 時 の 変 化 を調 べ る と,第1チ か で あ る の に対 し て,第3チ
ャ ン ネ ル で はARVの
ャ ン ネ ル で は,そ
増 加 が強 い負荷 で明 ら
れ ほ ど増 加 し て い な い.第3チ
ャ
ン ネ ル の 特 徴 は神 経 支 配 帯 の 影 響 と考 え られ る.そ の 対 策 と して は,「1.5 ダイ ナ ミ ッ ク な 運 動 時 で の 計 測 」 で 述 べ た神 経 支 配 帯 の 影 響 を抑 え る方 法 で,筋
活動
評 価 指 標 を 推 定 す れ ば よ い.あ
る い は,多
経 支 配 帯 の 位 置 を推 定 して,そ
の 影 響 を 避 け る よ うに 電 極 貼 付 位 置 を決 定 して お
く.図4.17は
電極 間 隔1cmで15チ
チ ャ ンネ ル ア レ イ 電極 で あ らか じめ神
ャ ン ネ ル の 差 動 導 出 が 可 能 な フ レキ シ ブ ル ア
レ イ電 極 を外 側 広 筋 に 装 着 した 例 で あ る.こ
の 状 態 で 自転 車 エ ル ゴ メー タ運 動 時
で の 表 面 筋 電 位 を計 測 し,神 経 支 配 帯 の 影 響 を 受 け て い な い最 適 なチ ャ ンネ ル位 置 を求 め る こ とが で き る.こ の 計 測 は 一 度 だ け 行 え ば よ く,そ の 後 の 表 面 筋 電 図 計 測 に は最 適 な位 置 で,実 用 的 な2本 線 の バ ー電 極 を用 い る こ とが で き る.な お, こ れ らの 電 極 に つ い て は 「6.2 計 測 装 置 」 で 詳 し く紹 介 す る. 図4.18は,漸
増 負 荷 テ ス トで の 心 拍 数 と筋 疲 労 評 価 指 標 の経 時 変 化 の 例 で あ る.
筋 疲 労 評 価 指 標 は,一 定 の時 間 区 間 ご と に求 め たARVとMNFの
相 関係 数 で あ る.
筋 疲 労 評 価 指 標 の 経 時 変 化 の 特 徴 か ら,だ い た い3つ の グ ル ー プ に分 割 した13,14). こ こ で,負
荷 の 増 加 に 対 して,心
拍 数 の 増 加 が み られ な い 例 が あ る.Subj.MS
図4.18 漸 増負 荷 テス トでの 心拍 数 と筋疲 労 評 価 指標 の経 時 変 化 Subj.MSは 心 拍 数 に 変 化 が み られ な いが,筋 疲 労 評 価 指 標 か ら は筋 疲 労 に伴 う 特 徴 が み え る.筋 疲 労 評 価 指 標 の 経 時 変 化 か ら,3つ の タイ プ に分 け る(タ イ プA:Subj.TH,MS,YY;タ
イ プB:Subj.EH;タ
イ プC:Subj.KY)
は 高 血 圧 を抑 え る薬 を服 用 して い た た め,心 拍 数 で負 荷 を制 御 す る こ とが で きず, 筋 疲 労 の進 み 具 合 か ら負 荷 を制 御 す る必 要 が あ る. 負 荷 制 御 に筋 活 動 を加 え た 例 を 述 べ た が,重 な 生 体 信 号 が 好 ま しい か で あ る.ま
要 な こ とは,負 荷 制 御 に どの よ う
だ まだ 筋 電 位 を負 荷 制 御 に用 い る こ とは 計 測
法 か ら して ハ ー ドル が 高 い 印 象 が 強 い し,計 測 技 術 や 評 価 法 が 進 展 し な け れ ばそ の とお りで あ ろ う.し か し,た
と え ば,ク
ラ ン ク トル ク で はペ ダ ル に加 え られ た
力 しか 表 し て い な い.筋 電 図 は筋 が 加 え て い る 力 だ け で な く,筋 の 疲 労 情 報 を含 む 点 で 有 利 で あ る.さ が 必 要 と な る.そ
らに,継 続 的 な運 動 を維 持 す る に はエ ネ ル ギ ー 代 謝 の 情 報
して,運 動 意 欲 の 継 続 が 運 動 に は欠 か せ な い.こ の よ う にみ て
く る と,個 人 向 け の 運 動 負 荷 制 御 を十 分 に提 供 し よ う とす る と,よ 情 報 が 必 要 に な る.し
か し,実 用 的 な場 面 で利 用 す る に は,ど の 生 体 情 報 を制 御
に 結 び つ け る か の 判 断 が 重 要 とな る.ま た,こ 桁 違 い で あ る た め,な
り多 くの 生 体
れ らの 生 体 情 報 は 時 間ス ケ ー ルが
か な か 総 合 的 に活 用 し き れ て い な い の が 現 状 で あ る(図
6.15参 照).
4.9 ス キ ー 運 動 にみ られ る運 動 形 態 の 違 い ス ポ ー ツ な どの 運 動 を繰 り返 し長 時 間 行 う と疲 労 が 蓄 積 し,ケ ガ な ど を引 き起 こす 可 能 性 が 高 くな る.特 は,多
くの 場 合,リ
に 高 齢 者 の レ ジ ャー と して 復 活 しつ つ あ る ス キ ー 運 動
フ ト搭 乗 と主 運 動 で あ る 滑 走 が 一 日 中交 互 に繰 り返 され,一
度 リ フ トで 山 に 上 っ て し ま う と必 ず 滑 り降 りな くて は な らな い た め,自 る 以 上 に危 険 度 が 高 い.こ
の よ う に,繰
覚 して い
り返 し運 動 で は運 動 の 継 続 か休 息 か を判
断 す る こ と が 重 要 で あ り,心 拍 変 動 か らみ られ る 自律 神 経 系 の 情 報 や筋 疲 労 か ら 適 切 な 判 断 が で き る よ う にす る 必 要 が あ る.こ
こ で は,ゲ
レ ンデ ス キ ー に お け る
自律 神 経 系 活 動 と筋 活 動 か ら運 動 機 能 の 変 化 を探 る研 究 を紹 介 す る. 筋 は 姿 勢 の維 持 と滑 走 や ター ン の 運 動 を作 り出 して い る.自 転 車 運 動 よ り も さ ら に ダ イ ナ ミ ッ ク な 運 動 で あ る.さ
ら に,ボ ー ゲ ン に代 表 され る受 動 的 な運 動 と
ウ ェ ー デ ル ン に代 表 され る 能 動 的 な 運 動 に 分 け る こ とが で き る.受 動 的 な運 動 ほ
ど姿 勢 を維 持 し よ う とす る 筋 活 動 が 強 く,収 縮 の 連 続 に よ っ て 筋 疲 労 が 現 れ や す い で あ ろ う.一 方,能 動 的 な運 動 で は,筋
は 姿 勢 を維 持 す る と と もに収 縮 と弛 緩
を繰 り返 し,こ の タ イ ミ ン グで 十 分 な 血 流 が維 持 さ れ て い れ ば 筋 疲 労 が 現 れ に く い と思 わ れ る. フ ィー ル ド実 験 を 行 っ た ゲ レ ンデ は,妙 1364m,前
高 高 原 池 ノ平 ス キ ー 場 で あ る.全 長
半 部 分 が 中斜 度(最 大 傾 斜 約20度),後
で あ っ た.こ
こ で,約20分
半 部 分 が 緩 斜 面(傾 斜 約7度)
間 隔 で リ フ ト搭 乗 とス キ ー滑 走 を 繰 り返 した 際 の 下
肢 の 筋 活 動 と心 電 位 を計 測 した.な
お,ス
キ ー 運 動 で は,表
面電極 をつけていて
もウ ェ ア に 隠 され る の で,周 囲 の 目が 気 に な ら な い. 図4.19は パ ラ レル ター ン を繰 り返 した 際 の外 側 広 筋 と前 脛 骨 筋 で の筋 疲 労 評 価 指 標 の 経 時 変 化 の例 で あ る.ゲ
レ ンデ の ス ロ ー プ に対 して,ほ
ぼ 同 じ場 所 で 筋 疲
労 評 価 指 標 が 負 の値 へ と変 化 して い る こ とが わ か る.こ の よ う な筋 疲 労 チ ェ ッ ク ポ イ ン トが あ れ ば,筋 疲 労 の 評 価 も しやす くな るで あ ろ う.
図4.19 パ ラ レル ター ンを繰 り返 した 際 の外 側 広 筋 と前 脛 骨筋 で の筋 疲 労評 価 指標 の経 時変 化 ARVとMPFの
心 電 図 のR波
相 関 係 数 を10s間
ご と に 求 め,0.25sず
つ シ フ トさ せ た
の 時 間 間 隔 は 自律 神 経 系 の 支 配 を受 け て 変 動 す る た め,RR間
隔
時 系 列 に 対 して ス ペ ク トル解 析 を施 し,そ の 高 周 波 数(High Frequency:HF) 成 分 と低 周 波 数(Low
Frequency:LF)成
動 を推 定 す る こ とが で き る.図4.20は1日,14ト た と きのLF/HFの 半,さ
らに,リ
経 時 変 化 を,1つ
分 と か ら交 感 神 経 や 副 交 感 神 経 の 活 ラ イ ア ル の ス キ ー 滑 走 を行 っ
の トラ イ ア ル ご と に ス キ ー 滑 走 の 前 半 と後
フ ト搭 乗 時 で の 前 半 と後 半 で 分 けて 求 め た も の で あ る15).
図4.20
1日 1つ
の ス キ ー 運 動 ト ラ イ ア ル で のLF/HFの の ト ラ イ ア ル ご と に ス キ ー 滑 走(■)の
経 時 変化 前 半 と 後 半,さ
ら に,リ
フ ト搭 乗
時(□)で の前 半 と後 半 で わけ て 求め た もの
明 らか に,昼 食 時 の 前 後 でLF/HFは
増 加 し,夕 方 に か け てLF/HFは
減少 し
て い る. 図4.21は
こ の 結 果 を筋 疲 労 評価 指 標 と比 較 した 散 布 図 で あ る.す
の ス キ ー 滑 走 を10秒 ご との セ グ メ ン トに分 割 して,1日 走 ご とでLF/HFと
な わ ち,1つ
に わ た る各 々 の ス キ ー滑
筋 疲 労 評 価 指 標 との 関 係 を 図 示 した もの で あ る.筋 疲 労 評 価 指
標 は トラ イ ア ル数 の 増 加 に つ れ て減 少 した.特
に,13回
ンプ ルが 負 の 値 を 示 した.ま た,昼 食 前 後 で のLF/HFの
め 以 降 で は ほ とん どの サ 増加 や筋疲労評価 指標の
値 に よ っ て トラ イ ア ル ご と に散 布 図 が 特 徴 的 な 変 化 を示 して い る こ とが わ か る.
図4.21 1日 に わ た るス キ ー滑 走 ご とで のLF/HFと 筋疲 労 度 との 関係 1つ の ス キー 滑 走 を10sご との セ グ メ ン トに分 割 して サ ンプル を求 めた もの
さ て,必
ず し もLF/HFが
この よ う なパ タ ー ン を 常 に 示 す わ け で は な く,天 候
や フ ィ ー ル ド実 験 の コー ス 設 定 の 曖 昧 さが 影 響 を与 え て くる こ と を考 慮 して お く 必 要 が あ る.し
か し,フ ィ ー ル ドで の運 動 で は,み ず か ら疲 労 状 態 を客 観 的 に知
る 手 段 は な く,情 報 通 信 技 術 を用 い た 何 らか の 支 援 シス テ ム が ほ し く な る.こ
こ
で は,ス キ ー 運 動 時 で の 生 体 情 報 の フ ィー ドバ ック を 目的 と し た計 測 支 援 シ ス テ ム(図4.22)の
例 を紹 介 す る16).計 測 装 置 は被 験 者 に 余 分 な ス トレス を 与 え ず い
つ で も ど こで も計 測 で きる よ うに,被 験 者 が 身 につ け る も の と し,さ ら に,計 測 開 始 の制 御 や 計 測 デ ー タ,解 析 結 果 の や りと りを無 線 で 行 え る もの と し た.計 測 装 置 は生 体 信 号 増 幅 器,AD変
換PCカ
ー ド,無 線LANつ
き ノ ー トブ ッ クPC,
トラ ンシ ー バ か らな る.記 録 ・表 示 した生 体 信 号 は左 右 外 側 広 筋,前
脛骨筋 の筋
電 図 と心 電 図 で あ る.ま た,外 気 温 と被 験 筋 の 皮 膚 温 をサ ー モ レ コー ダ で計 測 し た.計 測 デ ー タ の信 頼 性 を高 め る こ と と,解 析 結 果 の オ ンサ イ トで の フ ィ ー ドバ ッ ク を 目的 に,無 線LANに ラ イ ア ル 終 了 時 に(次
よ る計 測 支 援 シ ス テ ム を構 築 した.こ
の リ フ ト搭 乗 前 に),計
テ ム の ア クセ ス ポ イ ン トで 受信 し,さ
測 デ ー タ を約80m離
こで,1つ
のト
れ た 支 援 シス
らに,無 線 接 続 され た解 析 用PCへ
と送 る.
解 析 用PCで
は 一 連 の 解 析 を 実 行 し,そ の解 析 結 果 を 図 表 に して サ ー バ のサ イ ト
へ 送 る.こ
の よ う に し て 得 ら れ た 解 析 結 果 は,再
び,フ
ィ ー ル ドでPDA
図4.22 ス キー 運 動 時 で の生 体 情報 の フ ィー ドバ ック を 目的 と した 計 測 支援 シス テ ム
(Personal
Digital
Assistant)な
ど の 情 報 端 末 で 閲 覧 す る こ と が で き る.
計 測 シ ス テ ム が さ ら に小 型 化 さ れ,疲 労 の状 態 を う ま く表 現 で き る評 価 指 標 が 決 ま り,デ ー タ通 信 の 容 量 が携 帯 端 末 で も利 用 で き る環 境 に な れ ば,ス が み ず か ら体 調 を 判 断 して,安 だ ろ う.ま た,計 す れ ば,過
キー ヤー
全 に ス キ ー 運 動 を 楽 し む こ とが で き る よ う に な る
測 デ ー タ や解 析 結 果 を個 人 個 人 の 履 歴 デ ー タベ ー ス と して 蓄 積
去 の デ ー タ を参 照 しな が ら,現 在 の 状 況 や そ の 後 の 変 化 を判 断 で き る
よ う に な る だ ろ う.も
ち ろ ん,こ の 計 測 支 援 シ ス テ ム は そ の 他 の フ ィー ル ド運 動
へ も展 開 す る こ とが 可 能 で あ る17).
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第5章
適 用 とその限界
前 章 まで 読 み進 ん だ 読 者 の 方 々 に は,表 面 筋 電 図 が わ り と身 近 な存 在 に感 じ ら れ て きた だ ろ うか.し 信 号(ア
か し なが ら,表 面 筋 電 図 に は,期 待 して い る筋 活 動 以外 の
ー チ フ ァク トや ク ロ ス トー ク)も 含 まれ て い る.そ
活 動 を 手 に入 れ る た め の解 析 法,評 測,動
こ で,"本
物"の
筋
価 法 が 必 要 とな る.こ
こ で は,運 動 時 で の 計
作 識 別,運 動 単 位 の 分 離 を 例 に解 説 す る.ま た,さ
まざまな方法が提 案 さ
れ て い る ス ペ ク トル解 析 法 で 表 面 筋 電 図 の 周 波 数成 分 が ど の よ う に 表 現 さ れ て く る の か を示 す.最
後 に,筋 張 力 の 減 少 と筋 疲 労 との 区 別 につ い て 考 え て み る.
読 者 は,表 面 筋 電 図 か ら検 討 した い もの が 何 で あ る の か 意 識 しな が ら読 ん で み て ほ しい.そ
れ に は,表
面 筋 電 図 が 含 ん で い る情 報 が,ど
う に現 れ て くるの か を よ く理 解 して お く必 要 が あ る.つ
の よ う な場 面 で どの よ
ま り,計 測 に よ っ て 得 ら
れ た 情 報 が"本 物"か ど うか,解 析 結 果 の 評価 が行 え る 力 を養 って お く必 要 が あ る.
5.1 運動 時 の 筋 活 動 解 析 や 評価 を行 う前 に,何 が 計 測 さ れ た か を押 さえ て お く必 要 が あ る.表 面 筋 電 図 を利 用 す る場 面 で,研
究 や 医 学 的 な側 面 が 強 い 場 合 に は,等 尺 性 の 一 定 随 意
収 縮 が 多 く用 い られ る.一 方,フ
ィー ル ドや 工 学 的 な 側 面 が 強 い 場 合 に は,動 的
運 動 が 対 象 と な る こ とが 多 い.運
動 に伴 う さ ま ざ まな 変 化 は,ア ー チ フ ァ ク トも
含 め,そ
れ 自体,情
報 と な る か も しれ な い.し か し,"本 物"の
表 面筋 電 図をね
ら う な らば,収 縮 の 程 度 を変 え た 一 定 随 意収 縮 運 動 時 の表 面筋 電 図 を よ く観 察 し,
どん な 波 形 が 観 測 され て くる の か よ くみ て お こ う.こ れ が,動
的運動時 の表面筋
電 図 を検 討 す る うえ で 役 立 つ. 表 面 筋 電 図 は,神 経 イ ンパ ル ス が 表 面 電 極 に到 達 す る まで の 間 に,さ
ま ざ まな
情 報 が 加 わ っ た り,減 衰 させ られ た り して 観 察 さ れ た もの で あ る.こ の 経 路 で 関 与 す る 情 報 に は,役 立 つ 情 報 もあ れ ば,雑 音 と な る 情 報 もあ る.た い て い の 場 合, 表 面 筋 電 位 と そ れ 以 外 の 雑 音 と は周 波 数 成 分 が 異 な る の で,判 別 が つ く こ とが 多 い.問
題 は,動
的 運 動 時 に,こ れ らの 情 報 が,い
つ どの よ うに して 関与 す るか で
あ る. 静 的 な 運 動,す
な わ ち等 尺 性 の 一 定 随 意 収 縮 で は,比 較 的,こ れ まで の章 で 述
べ ら れ て きた 方 法 を 実 現 しや す い .つ が つ く.し か し,最 近,さ
ま り,"本 物"が
どれ か は た い て い 見 分 け
ま ざ ま な分 野 で 利 用 さ れ て い る 関 節 角 度 が 変 化 す る よ
う な 動 的 運 動 時 の 表 面 筋 電 図 計 測 で は,計 測 の 条 件 を厳 密 に満 足 させ る こ とが む ず か しい.特
に,こ れ ま で の 章 で 幾 度 と な く登 場 した よ うに,ア
ー チ フ ァ ク トの
混 入 と,活 動 して い る筋 線 維 や 神 経 支 配 帯 に対 す る 表 面 電 極 の 位 置 に注 意 を払 わ な け れ ば な らな い. アー チ フ ァ ク トを取 り除 くに は,通 常 の ハ イパ ス フ ィ ル タで 十 分 な場 面 も多 い. こ の 場 合,対
象 とす る 表 面 筋 電 位 の 周 波 数 成 分 が ど れ くら い の 周 波 数 範 囲 で存 在
して い る の か を,事 前 に探 っ て お く必 要 が あ る.な お,激
しい 運 動 で は,フ
ィル
タ係 数 を信 号 の 局 所 的性 質 に よ っ て 制 御 す る 非 線 形 フ ィル タ1)の 導 入 を検 討 して ほ しい. 一 方,双
極 表 面 筋 電 図へ の 神 経 支 配 帯 の 影 響 を避 け る に は,筋 活 動 を 広 い 範 囲
で と ら え る 多 チ ャ ン ネ ル ア レ イ電 極 が役 立 つ.す 帯 と の 相 対 的 位 置 関 係 が,表 と を利 用 す る.つ
な わ ち,ア
レ イ電 極 と神 経 支 配
面 筋 電 図 の 評 価 指 標 に与 え る影 響 が わ か っ て い る こ
ま り,多 チ ャ ン ネ ル ア レ イ電 極 を構 成 す る チ ャ ン ネ ル ご との 評
価 指 標 を 比 較 す る こ とで,神 経 支 配 帯 の 影 響 を 受 け な い"本 物"の に入 れ る こ とが で き る.こ
の際,神
評 価 指 標 を手
経 支 配 帯 が 評 価 指 標 に ど の よ う な影 響 を 与 え
る か,事 前 に調 べ て お こ う.な お,動 的 運 動 時 に,厳 密 に 神 経 支 配 帯 の 影 響 を補 正 す る に は,時 間 につ れ て 変 化 す る神 経 支 配 帯 の位 置 を知 る 必 要 が あ る2).
5.2 動 作 を 識 別 す る 現 在,表
面 筋 電 図 の 応 用 の 多 くは,対 象 と した 単 一 の 筋 の 筋 張 力 や 運 動 に伴 う
複 数 の 筋 の 活 動 を探 る も の で あ る.こ れ らの 研 究 は,基 本 的 に はバ イ オ メ カ ニ ク ス の 範 疇 で あ り,表 面 筋 電 図 は 筋 張 力 や トル ク を推 定 す る た め に使 わ れ る.ま た, 伸 張 反 射 の よ う な 筋 運 動 制 御 系 の 解 析 で は,α 運 動 ニ ュ ー ロ ンや 筋 紡 錘 の 働 き を 議 論 す る.こ
の よ うな ス ト レー トな研 究 とは 別 に,実 用 的 な側 面 か らの ア プ ロ ー
チ も多 い. 1970年 代 後 半 か ら1980年
代 に か け て の 義 手 制 御 で は,表 面 筋 電 図 に よ る動 作
識 別 が 話 題 とな り,表 面 筋 電 図 の パ ラ メ トリ ッ ク な ス ペ ク トル解 析3)あ るい は 多 変 量 解 析4)が 成 果 を上 げ た.パ
ラ メ トリ ック な ス ペ ク トル解 析 と は,音 声 信 号 処
理 な ど で 発 達 した 線 形 予 測 法 で あ る.線 形 予 測 モ デ ル に よ っ て,表 面 筋 電 図 が も つ 周 波 数 成 分 の特 徴 を,数 個 か ら数 十 個 程 度 の パ ラ メ ー タで 表 現 で き る点 は 魅 力 的 で あ る.ま
た,こ
れ らの パ ラ メ ー タ と生 理 的 要 因 との 関 係 を示 唆 す る研 究 も あ
る.し か し,線 形 予 測 モ デ ル は工 学 的 に は 有 効 で あ っ て も,厳 密 な 表 面 筋 電 図 の 生 成 モ デ ル と して は 適 当 で は な い で あ ろ う.い ず れ に して も,複 数 の 筋 の 表 面 筋 電 図 か ら得 られ る情 報 を整 理 し て,動 作 識 別 に利 用 す る に は,主
成分分析 や判別
分 析 な ど の多 変 量 解 析 が 必 要 と な る. 1990年
頃 に な る と,人 工 ニ ュ ー ラ ル ネ ッ トワ ー ク(Artificial
work :ANN)を と え ば,表
Net
利 用 し た運 動 制 御 機 構 の 非 線 形 シ ス テ ム の研 究 が 登 場 す る.た
面 筋 電 図 と関 節 トル ク間 の複 雑 な 非 線 形 シス テ ム をANNで
す る 方 法 で あ る.ま る5).こ
Neural
た,動 作 と複 数 の筋 活 動 と をANNで
れ に よ っ て,ど
モ デル化
関 係 づ け る こ と もで き
の 時 点 で ど の 筋 が 主 に 活 動 して い る の か を推 定 で き る.
こ こ で 注 意 しな け れ ば な らな い の は,正 確 に 表 面 筋 電 位 を 計 測 しな くて も,あ 程 度,表
面 筋 電 図 を処 理 して か らANNで
運 動 時 の 人 工 的 な雑 音(ア
動 作 を識 別 で き る こ とで あ る.つ
る
ま り,
ー チ フ ァク ト)な どの 筋 活 動 以 外 の さ ま ざ ま な情 報 を
含 ん で い て も,そ の 情 報 が 動 作 の 識 別 に役 立 っ て い れ ば,ANNは
動作 を識別 し
て くれ る.た だ し,こ れ は 目的 と して い る もの が 神 経 筋 系 の 情 報 で は な い か ら許 さ れ る 話 で あ る. 実 際 に,動 作 識 別 に 必 要 な"本 物"の 情 報 が 何 で あ る か を意 識 した 対 応 が 必 要 で あ る."本 物"の 情 報 は,こ の場 合,有 効 で 再 現 性 の あ る 情 報 と読 み 替 え られ る .
5.3 運 動 単 位 の 分 離 運 動 の 指 令 は脳 や 脊 髄(反
射 の場 合)か
らや っ て くる.つ
動 野 か ら発 す る 錐 体 路 ニ ュ ー ロ ン の活 動(ス
パ イ ク数)は
ま り,大 脳 皮 質 の 運 筋 張 力 と関 係 が あ る .
したが っ て,表 面 筋 電 図 の 本 質 は神 経 筋 制 御 系 の ふ る ま い に 関 す る情 報 で あ る. た と え ば,ほ
ぼ一 定 の筋 張 力 が 観 察 され て い て も,運 動 単 位(MU)レ
ベ ルで
の 活 動 が 一 定 で あ る保 証 は な い.さ らに複 数 の 筋 が 関 係 す る関 節 トル ク と な る と, 関 節 トル ク一 定 に対 して さ ま ざ まな 運 動 単 位 発 射 テ ー ブル(MU バ リエ ー シ ョ ン が存 在 す る.し 力 が 減 少 した 場合 に,こ
firing table)の
た が って ,漠 然 と筋 力 をみ て い る か ぎ りで は,筋
れ が 筋 疲 労 に よ る もの なの か,随 意 的 に筋 張 力 を減 少 さ
せ た こ とに よ る もの な の か を判 断 す る こ とは で き な い. こ の よ う な場 合,運
動 単 位 の 発 射 テ ー ブ ル を手 に 入 れ た くな る.筋
が収 縮 す る
と きに は2つ の 生 理 的 要 因 が 主 に 関係 す る.神 経 イ ンパ ル ス 発 射 頻 度 の 増 加 と運 動 単 位 リク ル ー トメ ン トで あ る.個 々 の 運 動 単 位 活 動 電 位(MUAP)波
形 は,支
配 され る筋 線 維 の 数 や 電 極 か らの 相 対 的 距 離 に よ っ て 波 形 が 異 な る.表 面 筋 電 図 は,こ
の よ う な 数 多 くのMUAP波
形 を時 空 間 的 に 重 畳 して観 察 した もの で あ る
こ とを 思 い 出 そ う. さて,筋
の 収 縮 に つ れ て,い
くつ か の 種 類 の 筋 線 維 が 順 番 に 活 動 す る こ とが 知
ら れ て お り,新 た に 参 加 す るMUAP波 複 合 筋 電 位 を複 数 のMUAP波
形 を順 に ラ イ ブ ラ リ化 す る こ と に よ っ て,
形 へ と分 解 す る こ とが で き る.そ の 結 果,運
位 ご と に 神 経 イ ンパ ル ス の発 射 テ ー ブ ル が 求 ま る.こ
れ に よ っ て,さ
動単
ま ざ ま な条
件 下 で の複 数 の 運 動 単 位 の ふ る まい を調 べ る こ とが で きる. LeFeverとDe
Luca6)は,計
測 法 の 工 夫 と統 計 的 手 法 で,針 筋 電 図 で観 測 し た
(a) 表面 筋 電 図
(b) 運 動単 位 ご との発 射 テ ー ブ ル
(c) 運 動単 位 ご とのMUAP波 図5.1
複 合 筋 電 位 を複 数 のMUAP波 こ の 方 法 で は,1本
運動 単 位 デ コ ンポ ジ シ ョ ン
形 へ と分 解(MU
decomposition)し
縮 時 に 出 現 す るMUAP波
は,そ
た(図5.1).
の 注 射 針 に4本 の ワ イ ヤ ー 電 極 を通 し て異 な る3方 向 か ら複
合 筋 電 位 を計 測 し,そ の 観 測 位 置 に よ るMUAP波
MUAP波
形
形 か ら 順 に リ ス トア ッ プ す る.こ
形 の 発 射 時 刻 を調 べ て い く.2つ れ ま で に リス トア ッ プ したMUAP波
音 に な る よ う に す る.こ
形 の 違 い を み な が ら,弱 い 収
の 際,す
以 上 のMUAP波
の 際,類
形 が 重 畳 した 部 分 で
形 を順 に 差 し引 い て,誤
で に 出現 し たMUAP波
似 する
差 が 白色 雑
形 の イ ンパ ル ス 時 間間
隔 を 参 考 に 差 し引 く候 補 を決 め る.ま 異 な るMUAP波
形 が 出現 した 場 合,こ
よ う に して,"本
物"のMUAP波
る.こ
た,こ
れ まで のMUAP波
形 とは まった く
れ を新 た に ラ イ ブ ラ リに 加 え る.以 上 の
形 の種 類 を識 別 し な が ら,複 合 筋 電 位 を分 解 す
れ に よっ て分 離 で き る運 動 単 位 数 は 十 数 個 程 度,収
で 可 能 で あ る.こ の よ う に,複 合 筋 電 位 をMUAP波
縮 力 は100%MVCま
形 と神 経 イ ンパ ル ス 列 の ラ
イ ブ ラ リへ と分解 す る に は,生 体 信 号 計 測 の経 験 や 生 理 的 な 知 識 が 必 要 と な る. さ て,運 動 単 位 発 射 テ ー ブ ル へ の 分 離 で は針 電 極 を使 う こ とが 一 般 的 で あ る. しか し,針 電 極 は一 般 に は 簡 単 で は な い.実
は,電 極 間隔 を狭 く した 双 極 差 動 導
出 に よ る表 面 筋 電 図 で も,あ る 程 度 は針 電 極 と 同 じよ う な 波 形 を 計 測 で き る7). た だ し,皮 膚 か ら比 較 的 浅 い 部 分 の 運 動 単 位 の 活 動 が 対 象 で あ る.こ れ が 可 能 と な る の は,双 極 差 動 導 出 の 電 極 間 隔 が 空 間 フ ィル タ の 役 割 を して い る か らで あ る. つ ま り,電 極 間 隔 を狭 くす る こ とでMUAP波 周 波 成 分 を 強 調 で き る.こ られ る の で,あ
の場 合,針
形 同 士 が 重 な り合 わ な い よ う に 高
電 極 で計 測 した 波 形 と似 た よ う な信 号 が 得
る 程 度,同 様 な方 法 で 分 解 で きそ う で あ る.De
た4本 の ワ イ ヤ ー を入 れ た 針 電 極 と同 様 な 計 測 が で きれ ば,さ
Lucaら
が使用 し
らに 分 解 能 力 を高
め る こ とが で き る で あ ろ う.
5.4 スペ ク トル 解 析 の 限 界 表 面 筋 電 図 の ス ペ ク トル解 析 の 目的 は何 だ ろ う? 実 際 は,神 経 生 理 学 的 な 意 味 の 探 求 や,動
作 識 別 の た め の パ ラ メ ー タ抽 出 な どが 目的 で あ ろ う.そ
目 的 が 決 まっ た と して,さ い の か?
れ で は,
ま ざ ま な解 析 方 法 の ど れ を ど ん な基 準 で 選 択 した ら よ
つ ま り,ス ペ ク トル 解 析 に は さ ま ざ ま な 方 法 が 開 発 され て き て お り,
選 択 す る方 法 に よ っ て は,十
分 な情 報 が 得 られ な か っ た り,間 違 っ た 結 果 が 得 ら
れ る こ と に注 意 が 必 要 と な る. 1960年
頃 に始 ま っ た 表 面 筋 電 図 の パ ワ ー ス ペ ク トル 推 定 法 と して,生
理学 的
な 研 究 で は フ ー リエ 変 換 が 用 い ら れ,義 手 制 御 で の 表 面 筋 電 図解 析 で は モ デ ルパ ラ メ ー タか らのパ ワー ス ペ ク トル 推 定 が 行 わ れ て きた.フ
ー リエ 変 換 が 支 持 さ れ
る の は,他 の 方 法 に比 べ そ の理 論 の わ か りや す さに あ る.一 方,モ
デ ルパ ラ メ ー
タ を用 い る最 大 の 理 由 は,時 間 につ れ て 変 化 す る場 面 で の 推 定 が 可 能 で あ る こ と, つ ま り,短 時 間 で 周 波 数 成 分 を推 定 で き る こ と,モ デ ル パ ラ メ ー タ を動 作 識 別 や 制 御 に使 え る こ と な どで あ る. そ の よ うな な か,1990年
前 後 に,時
推 定 す る た め の さ ま ざ ま な 方 法(時
間 につ れ て 変 化 す る パ ワー ス ペ ク トル を
間 周 波 数 表 現)が 提 案 さ れ,表 面 筋 電 図 の動
的 運 動 時 で の 解 析 に も試 み られ る よ う に な っ て きた.す 変 換(Short‐Term
Fourier Transform:STFT),ウ
Ville :WV),ウ Matching
エ ー ブ レ ッ ト変 換(Wavelet
Pursuit(MP)法
な わ ち,短
時 間 フー リエ
イ グ ナ ー ・ビ レ分 布(Wigner Transform:WT),さ
らに
な ど の さ ま ざ まな 方 法 が登 場 した8).こ れ らの うち ど
れ を使 うか の 選 択 基 準 は,表 面 筋 電 図 を利 用 し よ う とす る 目的 に か な う結 果 を わ か りや す く示 して くれ る か ど う か とい う点 で あ る. 注 目す べ きは,こ
の よ うに い ろ い ろ な方 法 がMathematica(http://www.wolfram
.com)やMATLAB(http://www.mathworks.com)な ェ ア,さ
どの 市 販 の ソ フ トウ
らに 方 法 を提 案 して い る研 究 者 の ウ ェ ブサ イ トか ら入 手 で き る こ とで あ
る.手 軽 で あ るが ゆ え に,利 用 した 解 析 法 が 目的 とす る対 象 を う ま く表 現 して い る の か 否 か,常
に 注 意 し な け れ ば な ら な い.
図5.2は ス キ ー 運 動 時 の ター ンを 行 っ て い る と きの 表 面 筋 電 図(前 STFT,WT,MPで
脛 骨 筋)を
解 析 した もの で あ る.す べ て,横 軸 を時 間,縦 軸 を周 波 数 と し
た 時 間周 波 数 表 現 で あ る.な
お,こ
の タ ー ンは 滑 走 開 始 後 約60秒
もの で,大 体 こ の あ た りで 筋 疲 労 に よ る きつ さが 自覚 され,転
後 で 計 測 した
倒 し やす くな る.
時 間 周 波 数 表 現 に よ れ ば,紡 錘 状 の筋 活 動 の前 半 と後 半 と で周 波 数 成 分 に違 い が み ら れ,STFT法
に比 べ てMP法
して い る の で あ ろ うか?"本 た とえ ば,Boxtelら9)は,表 ー ス ペ ク トル の概 形 はMUAP波
で は この 特 徴 が 顕 著 で あ る.こ 物"の
れ は,何
を意 味
運動 単 位 の活 動 と関 係 は あ る の だ ろ うか?
面 筋 電 図 の フ ー リエ 変 換 に よ っ て 推 定 され るパ ワ 形 に よっ て 決 ま り,イ
ンパ ル ス頻 度 は 低 い周 波
数 帯 域 で わ ず か に ピ ー クが み え る程 度 で あ る と記 述 して い る.し ペ ク トル か らイ ンパ ル ス 頻 度 を推 定 す る方 式 は,あ
か し,パ
ワー ス
ま り期 待 し な い 方 が よい.そ
図5.2 ス キー 運動 時 で の 表面 筋 電 図(前 脛 骨 筋)の スペ ク トル解析 上段 か ら表 面 筋 電 図,STFT,WT,MPで の解 析 結 果.MPに よる結 果 は,STFT とWTに
よ る 結 果 の 双 方 の 特 徴 を も っ て い る よ う に み え る.な
お,こ
の ター ンは
滑 走 開 始 後 約60秒 後 で,急 斜 面 の 終 わ りに相 当す る場 所 で あ る.転 倒 は この あ た りで起 きる こ とが 多 い
の 理 由 は,実 際 に は,数 多 くの 筋 線 維 が リ クル ー トメ ン トの順 序 に した が っ て活 動 し(時
間 につ れ て 変 化 して い る),MUAP波
ま た,MUAP波
形 も1種 類 で は な い か らで あ る.
形 の 形 状 に 大 き く影 響 を与 え る伝 導 速 度 も1種 類 で は な い.こ の
よ う に 神 経 生 理 学 的 な 仕 組 み と計 測 され る 表 面 筋 電 図 との 関係 は,細 か い 点 で複 雑 で あ る.そ
こ で,こ れ らの 制 約 を取 り除 く方 法 と して,解 剖 学 的 知 識 と電 磁 界
の 電 気 生 理 学 的 知 識 と を加 え て,よ
り精 密 な 表 面 筋 電 図 シ ミ ュ レー シ ョンモ デ ル
で 解 析 を進 め よ う とす る研 究 が あ る10).
現 在,高
性 能 なPCの
登 場 に よ っ て,表
面 筋 電 図 シ ミュ レ ー シ ョ ンの 流 れ は加
速 し そ うな 気 配 が あ る.そ の 根 底 に は,表 面 筋 電 位 に影 響 を 与 え る 要 因が 出 そ ろ っ て き て お り,そ れ らの 要 因 が 評 価 指 標 に どの程 度 影 響 を 与 えて い る の か を,シ ミュ レ ー シ ョンで す ば や く予 測 した い 願 望 が あ る の だ ろ う.た 月 に札 幌 で 開 催 され た 電 気 生 理 運 動 学 の 国 際 会 議ISEK2000の た SENIAM
ProjectのCD‐ROMに
は,ヨ
とえ ば,2000年6 会 場 で配布 され
ー ロ ッパ 各 国 の研 究 者 が 持 ち寄 っ た 表
面 筋 電 図 シ ミュ レー シ ョ ン プ ロ グ ラ ムが 収 め られ て い た.た だ し,表 面 筋 電 図 シ ミュ レ ー シ ョン は あ くま で も神 経 イ ンパ ル ス か ら表 面 筋 電 位 まで の観 測 プ ロ セ ス を真 似 て い る だ け で あ っ て,た
とえ ば,運 動 単 位 の 数 や 発 射 テ ー ブ ル な ど実 際 の
運 動 時 の 生 理 デ ー タ を入 れ な い と"本 物"に 近 づ け な い.
5.5 筋張力 の減 少 と筋疲 労 との区別 表 面 筋 電 図 に,研 究 者 が 最 初 に期 待 した もの は,筋 張 力 の推 定 で あ る.す で に 1950年 代,IEMG(あ そ の 後,い
る い はiEMG)を
評 価 指 標 とす る 筋 張 力 の 推 定 が 始 ま り,
くつ か の 評 価 指 標 と筋 張 力 と の 関 係 が 調 べ られ た.そ の 結 果,筋 張 力
の 発 現 か,主 張 力 とRMSと
に 運 動 単位 リク ル ー トメ ン トで 行 わ れ る サ イ ズ の 大 きな筋 ほ ど,筋 の 間 の 線 形 性 が くず れ る こ とが わ か っ た11).一 方,筋
筋 電 図 か ら探 ろ う とす る 試 み は,1960年
代 に 始 ま る.幸
疲 労 を表 面
い な こ と に,表
面筋 電
位 の パ ワー ス ペ ク トル は 筋 疲 労 につ れ て 低 域 周 波 数 に そ の 成 分 が 集 中 す る特 徴 が あ り,多
くの研 究 者 が そ の こ と を報 告 し て きた.し
か も,筋 疲 労 しや す い 筋 線 維
は 浅 層 に あ り,表 面 電 極 で と ら え る こ とが 容 易 で あ っ た.筋 疲 労 時 で は,活 動 し て い るMUAP波
形 の 形 状(振
影 響 を受 け て 変 化 す る(図1.6参
幅 や 持 続 時 間 な ど)は,時 照).特
間 につれ て さま ざまな
に 等 尺 性 の 一 定 随 意 収 縮 で は,MUAP
波 形 の持 続 時 間 が 長 くな る現 象 が 簡 単 に計 測 で き る.持 続 時 間が 長 くな る こ とが, 表 面 筋 電 図 の パ ワ ー ス ペ ク トル を 低 域 周 波 数 に シ フ トさせ る と い わ れ て い る.し か し,筋 疲 労 に よる 周 波 数 の 低 下 は,活 動 す る 運 動 単 位 数 の 減 少 で も あ る.こ で,個
々 のMUAP波
形 に は 違 い が あ る た め,運
こ
動 単 位 数 の 減 少 もパ ワー ス ペ ク
(a) 故 意 に 筋張 力 を減少 させ る場 合
(b) 筋 疲労 に よる 場合 図5.3 筋 張 力 の 低 下 を もた らす要 因 の識 別 上段 よ り,最 大 随 意収 縮 の 割 合で 表 示 した筋 張 力,MNF,ARV.筋 点 以 後 のMNF,ARVの 変 化 の様 子 は よ く似 て い る
張 力 変化 時
トル に 影 響 を 与 え る こ とに な る.こ れ らの こ と を 考 え る と,筋 疲 労 時 で は,パ
ワ
ー ス ペ ク トル が低 域 に集 中 す る と記 述 して お い た 方 が よ さそ うで あ る. と こ ろ で,活 動 す る運 動 単 位 数 の 減 少 は,筋 疲 労 で は な くて も意 図 的 に力 を減 少 さ せ た場 合 で も同 じで あ る.故 意 に 筋 張 力 を 減 少 させ る 場 合 と,筋 疲 労 に よ る 筋 張 力 の低 下 で は,評 価 指 標 に違 い は み られ る の で あ ろ うか? 実 際 に は,表 面 筋 電 図 の 振 幅 値 情 報(ARV,
RMSな
ど)や 周 波 数 情 報(MDF,MNF)に
立 っ た 違 い が み られ な い(図5.3).こ
の識 別 に,2チ
ャ ンネ ル の 表 面 筋 電 図 を主
成 分 分 析 す る 方 法 が 有 効 で あ る と報 告 さ れ て い る12).す な わ ち,表 ARVとMNFを
求 め,2チ
分 析 を行 っ て,固
は際
面 筋電 図 の
ャ ン ネ ル2種 類 の 時 系 列 か ら一 定 区 間長 ご と に 主 成 分
有 値 時系 列 を 比 較 す る 方 法 で あ る.主 成 分 が 筋 活 動 に か か わ る
生 理 的 変化 を 直接 的 に 表 す わ け で は な い だ ろ うが,多
次 元 評 価 指 標 に含 まれ て い
る 相 関性 の 強 い 情 報 を 整 理 し,単 独 の 評価 指 標 で は見 出 せ な い特 徴 の違 い を探 る 方 法 と して,今
後 も検 討 して い く必 要 が あ ろ う.さ
独 立 成 分 分 析 も注 目 され て い る.こ
ら に,主 成 分 分 析 を 拡 張 した
れ ら は,周 波 数 分析 と は異 な る ア プ ロー チ で
観 測 信 号 をそ の構 成 要 素 で あ る 主 要 成 分 へ と分 解 す る方 法 と して 魅 力 的 で あ る.
5.6 表面筋 電図 は万能 ではな い 最 後 に,表 面 筋 電 図 が 万 能 で は な い,す
な わ ち,い
くつ か の もの は 他 の方 法 で
も推 定 で きる こ と を示 す こ と に よ っ て,表
面 筋 電 図 の 得 意 とす る対 象 を 明 らか に
し て お きた い. 運 動 単 位 発 射 テ ー ブ ル に 関 し て は,1980年
頃 か ら報 告 が 多 くな っ て き て い る
筋 音13)が対 抗 馬 で あ る.筋 電 図 とは 異 な り,筋 線 維 の 収 縮 に伴 う振 動 を マ イ ク ロ フ ォ ンや 加 速 度 セ ンサ ー で と らえ た も の が 筋 音 図 で あ る.振 動 の伝 わ り方 は,筋 電 位 の 電 磁 界 の 伝 わ り方 と異 な る.ま
た,速 筋 線 維 や 遅筋 線 維 とい っ た筋 線 維 の
種 類 に よ っ て 振 動 の 仕 方 が 異 な る.こ
の特 性 が,運
動 単位 の リ クル ー トメ ン トや
筋 疲 労 と 関係 が あ る の で は ない か とい わ れ て い る. 他 の 筋 疲 労 評 価 法14)につ い て は,近
赤 外 光 が よ く知 られ て い る.近 赤 外 光 オ キ
シ メー タは,非
観 血 的 に 動 脈 血 中 の酸 素飽 和 度 を 計 測 す る.な
的 な変 化 で は な く,バ イ オ メ カ ニ クス 的 な 変 化 と して,筋
お,筋
の生 理 機 能
そ の もの の 振 え や筋 の
機 械 イ ン ピー ダ ンス を計 る方 法 もあ る.こ れ ら は,手 軽 さ の 点 で は 筋 電 図 と同様 で あ ろ う. 以 上,2つ
の 例 を挙 げ た が,ま
方 法 は 実 用 性,有
効 性,精
だ ま だ ほ か に もあ る.筋 疲 労 を 調 べ よ う とす る
度 な ど の観 点 か ら,対 象 と す る 課 題 へ どれ が 適 用 で き
るか を調 べ て お く必 要 が あ る. 表 面 筋 電 図 は 万 能 で は な い が,最 だ 生 体 信 号 で あ る.特 に 関 連 した 情 報,動 (筋張 力,筋
5.7
に,筋
も手 軽 に計 測 で き て,さ
ま ざ ま な情 報 を含 ん
を特 定 す る 場 合 は神 経 イ ンパ ル ス,筋
張 力 ,筋 疲 労
作 時 の 複 数 の 筋 を 対 象 とす る場 合 は 動 作 へ の 筋 ご との 寄 与
疲 労 に 関 連 した情 報)を
明 らか に す る こ とを 得 意 とす る.
ま と め
ダ イ ナ ミ ック な運 動 時 の 複 雑 な生 体 機 能 の変 化 を表 面 筋 電 図 か ら検 討 す る こ と は,バ
イ オ メ カ ニ ズ ム,生 理 学,生
ポ ー ツ科 学,さ
体 工 学,リ
ハ ビ リ テ ー シ ョ ン工 学,体
ら にバ ー チ ャ ル リ ア リテ ィ な ど 幅広 い 分 野 に役 立 つ.発
ズ ム は異 な る が,表
育 ・ス
生 メ カニ
面 筋 電 位 は 音 声 や 脳 波 と似 て い る.そ の た め,音 声 や脳 波解
析 で 導 入 さ れ た い ろ い ろ な 生 体 信 号 処 理 技 術 が 応 用 され て きた.当 然 で はあ るが, 表 面 筋 電 図 の 信 号 処 理 で は,神 経 筋 活 動 で あ る こ と を し っ か り とわ き ま え た解 析 ・解 釈 が 必 要 で あ る.生 体 信 号 処 理 に よ る解 析 結 果 を議 論 す る際 に は,生 理 的要 因 が 結 果 に 影 響 を 与 え て い る 証 拠 を,利 用 した 解 析 法 とは 別 に押 さ え て お く必 要 が あ る.た と え ば,第1章
の 図1.6な
ど を場 面 場 面 に 応 じて 作 成 し なが ら,結 果 を
検 討 して い く こ と を勧 め る. こ こ ま で 読 み 終 えた 読 者 に と って,表
面 筋 電 図 は 心 電 図 同 様 に 生 体 機 能 を探 る
ツ ー ル と して 使 え そ う に 思 われ た こ と で あ ろ う.こ の ツ ー ル を活 か して次 の ス テ ップへ と考 え を め ぐ ら して ほ しい.た
とえ ば,運 動 そ の もの につ い て は筋 活 動 だ
け に こだ わ るべ き で は な く,脳 を意 識 した解 析 が 今 後 は 必 要 で あ ろ う.脳 は 運 動
指 令 を 出 す だ け で な く,運 動 に対 す る 生 体 機 能 の 調 節(自 け まで)に
律 神 経 活 動 か ら動 機 づ
さ ま ざ ま な レベ ル で 関 与 して い る.
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zone
the
distortion
movement,IEICE
of bipolar Trans
surface
Inf
Syst,E79‐D
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G,Cline
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the
S,Stalberg
unit
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Trans
JV,De
Biomed
Luca
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firing
rate
spectrum,IEEE
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Trans
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contraction
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LRB:Motor
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8
集 運 動 時 の 代 謝 量 の 測 定,BME8(11),22‐29
(1994)
会
第6章
開発の動 向
表 面 筋 電 図 の 応 用 が 広 が りを み せ て き て い る.2002年 たISEK(International 議 で は,プ
Society of Electrophysiology
レ シ ンポ ジ ウ ム と して ヨ ー ロ ッパ で 約10年
発 プ ロ ジ ェ ク ト(SENIAM
Project)の
に ウ ィ ー ン で 開 催 され
and Kinesiology)1)国
際会
を か け て 実 施 した研 究 開
成 果 が 紹 介 さ れ た.そ
の 場 で 感 じた こ と
は,表 面 筋 電 図 を よ り多 くの 研 究 者 が 活 用 で きる よ う に底 上 げ を図 る活 動 で あ り, ま た,実 SENIAMプ
際 の 製 品 化 に 向 け た 積 極 的 な 取 り組 み で あ っ た.後 ロ ジ ェ ク トは,そ
の 後2000年
述 す る よ う に,
か ら開 始 さ れ たNEWプ
ロ ジ ェ ク トと
して 引 き継 が れ て 発 展 して い る. ISEK国 れ る.こ パ,ア
際 会 議 は2004年
に ボ ス トンで 開 催 され,2006年
に は トリ ノ で 開 催 さ
こで は,表 面 筋 電 図 を巡 っ て どの よ う な流 れ が 起 きて い る か,ヨ
メ リ カ,日 本 に お け る最 近 の状 況 に つ い て説 明 す る.ア
ーロッ
メ リ カか らは ,表
面 筋 電 図 を応 用 した さ ま ざ ま な研 究 を進 め て い る ボ ス トン大 学 の 神 経 筋 研 究 セ ン ター で 取 り組 ん で い る研 究 を紹 介 す る.日 本 につ い て は,表 もの で は な い が,経
面 筋 電 図 に 限定 した
済 産 業 省 が 主 導 して実 施 し た人 間 感 覚 計 測 応 用 技 術 プ ロ ジ ェ
ク トに つ い て 説 明 す る.こ れ らは 手 に入 れ る こ とが で き た範 囲 の 情 報 で は あ るが, 筋 電 図 を巡 っ て どの よ う な 流 れ が 起 きて い るか を感 じ取 る こ とが で き る と思 う.
6.1 プ ロ ジ ェク ト研 究 1 SENIAMプ
ロジ ェク ト
SENIAM(Surface
EMG
エ ク ト2)は,ECに
for
Non‐Invasive
して 行 わ れ た.そ
お け るBIOMED Ⅱ
Assessment
of
Muscles)プ
ロ ジ
プ ロ グ ラ ム の な か で の大 きな 活 動 の1つ
と
の 目的 は,ヨ ー ロ ッパ の 基 準 と して 表 面 筋 電 図 に 関 す る基 礎 研
究 と実 用 化 研 究 を統 合 し,ヨ ー ロ ッパ で の 共 同研 究 を確 立 す る た め に,デ ー タや 臨 床 経 験 を交 換 す る 際 に妨 げ とな っ て い る 問 題 点 を解 決 す る こ とに あ っ た.ト ッ ク は,以 下 の3項
ピ
目か ら な る.
① 電極 と電極 位置決 めの手順 ② 表面筋 電図の信号処 理 ③ 表面筋 電図のモ デ リング 表6.1は
プ ロ ジ ェ ク トに 参 加 し た16の
研 究 グ ル ー プ で あ る.
プ ロ ジ ェ ク ト成 果 と し て,
① 電極 と電極 位置決 めの手順 に対す る勧 告 ② 表面筋 電図の計測 と処 理に対す る勧 告 ③4種
類 の 表 面 筋 電 図 の モ デ リ ング
④17種
類 の 表 面 筋 電 位 テ ス ト信 号
⑤8つ
の 表 面 筋 電 図 関 連 の 配 布 物 あ るい は本,そ
してCD‐ROM
を世 に 送 り出 した. こ の プ ロ ジ ェ ク トが 成 功 した 理 由 は,参 加 グ ル ー プの 問題 意 識 の 高 さ,合 意 事 項 作 りへ の 徹 底 した プ ロ セ ス に あ る.た
と え ば,電
極 と電 極 位 置 決 め の 手 順 に対
す る勧 告 の 作 成 で は,最 初 に ヨー ロ ッパ 諸 国 の 研 究 室 で 実 際 に 使 わ れ て い る電 極 や 電 極 配 置 を 調 査 す る た め にSENIAMパ の 研 究 者 に よ る140も
ー トナ ー へ 質 問状 を送 り,ヨ ー ロ ッパ
の 出版 物 を調 べ る こ とか ら始 まっ た.
調 査 結 果 は トリ ノ で の ワー ク シ ョ ップ の 間 に発 表 さ れ,SENIAM し て ワー ク シ ョ ップ の 論 文 集 に 掲 載 さ れ た.調
1(1996)と
査 に よれ ば,非 常 に広 範 囲 の 表 面
筋 電 図 の 応 用,装
置,計
測 や 処 理 の 方 法 が み られ,多
くの 場 合,著
電 図 の 記 録 結 果 を 報 告 す る 方 法 が あ い まい で あ っ た.そ ラ ン ダ)の
ワ ー ク シ ョ ップ で,表
者 らが 表 面 筋
の 翌 年,Enschede(オ
面 筋 電 位 の 特 性 に 関連 す る電 極 や 電 極 配 置 に 関
す る議 論 を ま と め る こ と に成 功 し,成 果 はSENIAM5(1997)と
して 出版 され た.
この ワ ー ク シ ョ ップ で は,電 極 や 電 極 配 置 と表 面 筋 電 位 の 特 性 に 関 連 す る 関係 が2次 元 の 表 で ま と め られ た.な お,電 勧 告 は 論 文 集8(表 とSENIAM
極 と電 極 配 置 手 順 に 関 す る ヨー ロ ッパ の
面 筋 電 図 に 関 す る ヨー ロ ッパ で の勧 告:SENIAM
CD‐ROM(SENIAM
9(1999))に
表 面 筋 電 位 の導 出 に用 い る電 極 へ の 勧 告,個 関す る勧 告,さ
含 まれ て い る.2つ
8(1999))3) の論 文 集 に は
々の筋へ の表面筋 電図電極 の配置 に
らに 表 面 電 極 の 配 置 手 順 へ の勧 告 を含 ん で い る.
表 面 筋 電 図 の 信 号 処 理,表 面 筋 電 図 の モ デ リ ン グ に 関 し て も同 じよ う な 手 順 で 合 意 が 形 成 さ れ,最 い る.特
に,SENIAM
終 的 な 成 果 はSENIAM CD‐ROMに 表6.1
8とSENIAM
CD‐ROMに
含 まれ て
は勧 告 だ け で な くモ デ ル プ ロ グ ラ ム や テ ス ト
SENIAMの
参加 研 究 グル ー プ
信 号 が 掲 載 さ れ て お り,実 際 に デ ー タ を処 理 す る こ とで研 究 者 が 内 容 を理 解 で き る よ う に な っ て い る.モ て の モ デ ル(そ 資 料(モ
デ ル プ ロ グ ラム に 関 して は,評 価 と検 定 の た め に,す べ
し てユ ー ザ ー マ ニ ュ ア ル も)を 収 集 し,精 度,使
デ ル に 関 す る 記 述 とユ ー ザ ー マ ニ ュ ア ル)に
合 意 の 得 られ た4つ の モ デ ル がSENIAM の 配 布 物 はSENIAMパ
CD‐ROMに
ー トナ ー やSENIAMク
用 勝 手,バ
関 して 調 べ た 後,開 掲 載 さ れ た.な
グ,
発者 の
お,こ れ ら
ラ ブ メ ンバ ー に配 布 さ れ て お り,
プ ロ ジ ェ ク トの 事 務 局 で 入 手 で きる.
2 NEWプ
ロジ ェク ト
NEW(Neuromuscular
2001年
assessment
in the
に 開 始 さ れ た プ ロ ジ ェ ク トで,表6.2の
Elderly
Worker)プ
ロ ジ ェ ク ト4)は
研 究 グ ル ー プ か らな る.取
り組 ん
で い る 課 題 は,高 齢 者 にお け る就 労 に関 連 した 神 経 筋 の 障 害 を 特 定 した り,モ ニ ター す る こ とで, ① 最 も傷 つ きや す い 人 々 に最 大 限 の 保 護 を与 え る こ と で影 響 を抑 え る
② 神 経筋の加齢 と就労 条件 との関係 を特定す る ③ 神 経 筋 系 の状 態 を評 価 し た り,休 息 が 十 分 で な か っ た り,慢 性 疲 労 に陥 ろ う とす る 際 に警 告 を与 え る 方 法 を 開発 す る こ と にあ る. そ こ で,NEWプ な く,注
ロ ジ ェ ク トで は,就 労 関 連 の 神 経 筋 障 害 の 診 断 の た め だ け で
目 して い る メ カ ニ ズ ム を よ りよ く理 解 す る た め,就
労環境 で高齢 者の機
能 評 価 を無 侵 襲 に行 え る 道 具 と して,表 面 筋 電 図 の 開 発 に重 点 を置 い て い る. 人 間工 学 と産 業 医 学 に応 用 す る に は,信 頼 性 が 高 く,ウ ェ ア ラ ブ ル で 心 地 よ く, す な わ ち就 労 環 境 で も使 え る 装 置 や 電 極 を用 い て,表 を手 に 入 れ る こ とが 必 要 で あ る.NEWプ
面 筋 電 図 か ら最 大 限 の情 報
ロ ジ ェ ク トで は,こ れ らの 点 に 大 きな
努 力 を 注 い で お り,開 発 さ れ た技 術 の 実 際 的 な活 用 は 国 際 的 に評 価 さ れ て い る. そ の 結 果,得
られ た 知 識 の 最 初 の 応 用 例 と して,バ
ア プ ロー チが,就
イ オ フ ィ ー ドバ ック の 新 た な
労 環 境 に依 存 した 障 害 を もつ 人 々の 治 療 の た め に 開 発 さ れ た.
表6.2
NEWプ
ロ ジ ェ ク トの 参 加 研 究 グ ル ー プ
プ ロ ジ ェ ク トは 以 下 の パ ッ ケー ジ で構 成 され て い る. ① 仕 事 や 評 価 指 標 の 選 択 の 定 義,ア
ンケ ー トや プ ロ トコ ル の 定 義,研
究に適 し
た筋の 選択 と被験 者の選択 ② 筋 電 図 や 筋 音 図 の た め の セ ンサ ー の 開発 ③ 計 測 装 置 と ソ フ トウ ェ ア の 開発,計
量,最 適 化,そ
して既 存 の シ ス テ ム の ア
ツプ グ レー ド
④ 研 究 室 内 や フ ィー ル ドで の 計 測,デ
ー タ収 集
⑤ デ ー タ処 理
⑥ 筋 電図や筋音 図 におけ る新 たな信号処理 に基づ く情報抽 出システムの開発 ⑦ 信 号 の 解 釈,エ
ル ゴ ノ ミス トや 作 業 に よる 健 康 指 導 専 門 家 に 対 す る教 育,さ
らに 普 及 と報 告 の た め の ツ ー ル の 開発
⑧ 家 庭や作 業環境 での既存 の遠隔医療 と遠 隔診断 システ ム との融合 技 術 的 な 成 果 はMedical&Biological (July Applied
2004)5)に
掲 載 さ れ て い る.ま
Physiologyの
的 な 成 果 は,表
Engineering&Computingの た,臨
特 集号
床 上 の 成 果 はEuropean
特 集 号 に 掲 載 さ れ る と の こ と で あ る.プ
Journal
of
ロ ジ ェ ク トの 工 学
面 筋 電 図 か ら重 要 な 生 理 学 的 情 報 を 抽 出 で き る 可 能 性 を 示 し,身
体 に 障 害 を 引 き起 こす 可 能 性 の あ る筋 活 動 パ タ ー ン を無 侵 襲 な 方 法 で み つ け 出 す 手 助 け と な っ て い る.こ
れ ら は,SENIAMな
ど で 初 め て 開 発 さ れ た も の で あ る.
NEWプ
ロ ジ ェ ク トは 同 時 に無 侵 襲 で 筋 の 特 性 を さ ぐる 新 た な 道 具 を 臨 床 研 究 者
に使 え る よ う に して い る.こ れ は,産 業 衛 生 分 野 を超 え た 幅広 い 分 野,た 神 経 学,リ
ハ ビ リテ ー シ ョ ン,体 育 ・ス ポ ー ツ科 学,そ
とえ ば,
して 注 目す る神 経 筋 機 構
の 無 侵 襲 研 究 を必 要 とす る分 野 を含 ん で い る.プ ロ ジ ェ ク トで 開 発 され たハ ー ド ウ ェ ア や ソ フ トウ ェ ア は神 経 筋 の パ フ ォー マ ンス の 定 量 的 指 標 を提 供 し,さ ら に, ヨ ー ロ ッパ 宇 宙 機 構 の 支 援 の も とで 進 め られ て い るMESMプ
ロ ジ ェ ク トの な か
で 無 重 力 が 骨 格 筋 に与 え る影 響 に関 す る 研 究 に 応 用 され て い る.特 定 の応 用 に合 う よ う に 調 整 す れ ば,こ れ らの 装 置 や 技 術 は フ ィー ル ドだ け で な く研 究 室 で も使 え る と考 え られ,エ ル ゴ ノ ミ ク ス や 産 業 衛 生 の 分 野 で 潜 在 的 な ヨー ロ ッパ の 市 場 が あ る こ と を 示 して きた.フ
ィー ル ド試 験 は 引 き続 き実 施 さ れ て い る が,臨
運 動 生 理 学 者,理 学 療 法 士,労
床,
働 環 境 に お け る作 業 と神 経 筋 系 の 条 件 の 関係 ,運
動 リハ ビ リテ ー シ ョ ンで の 治 療 と神 経 筋 の 回 復 との 関 係,ス
ポー ツ医学や運動学
に お け る訓 練 と筋 のパ フ ォ ー マ ンス や 制 御 との 関 係 をモ ニ タ ー す る た め に,こ れ らの ル ー チ ンの 正 しい使 い 方 を教 え る必 要 が ま だ あ る と され て い る.
3 ボ ス トン大学神 経筋 研究 セ ンター ボ ス トン 大 学 神 経 筋 研 究 セ ン タ ー(NeuroMuscular は 表 面 筋 電 図 の 研 究 で は 世 界 的 な セ ン タ ー の1つ の 発 射 パ タ ー ン を 求 め る 手 法(Precision back
pain)を
評 価 す る 装 置 を 開 発 し て い る.そ
代 のPrecision
で あ る.こ
Decomposition
電 図 関 係 の 研 究 開 発 事 例 と し て,NMRCに 最 初 に,第2世
Research
れ ま で に も ,筋 System)や
こ で,ア
Systemが
あ る.計
ッ プPCか
ス テ ム は パ ネ ルPC(図6
ら構 成 さ れ て い る.パ
ネ ルPCは
測 した 筋 電 位
々 の 運 動 単 位 の 発 射 に 相 当 す る)に
は 過 去 の シ ス テ ム の 制 約 を 乗 り越 え る も の で あ り,臨
つ も の と し て い る.シ
腰 痛(low
メ リカにお ける表面筋
分 解 す る新 し い 自 動 シ ス テ ム を 開 発 し て い る7,8).新 た なPrecision System Ⅱ
活 動
お け る最 近 の 研 究 を紹 介 す る.
Decomposition
信 号 を そ の 成 分 と す る 運 動 単 位 活 動 電 位(個
Center:NMRC)6)
.1)と
Decomposition 床 の 場 面 で役 立
そ れ に接 続 され た ラ ップ ト
デ ー タ 収 集 装 置 と ソ フ トウ ェ ア か ら
な る.ラ
ッ プ トッ プPCは
活 動 電 位 分 解 の た め の ア ルゴ リ ズ ム を含 む.筋
電位信
号 は,小 型 の 前 処 理 ユ ニ ッ トを 通 じて,接 続 さ れ た針 電 極 で 計 測 さ れ る.こ の 際, シ ー ム レス な デ ー タ収 集 や 信 号 処 理,そ
して 表 示 の た め の ユ ー ザ ー イ ン タ フ ェ ー
ス を もつ.活 動 電 位 分 解 ア ル ゴ リズ ム は,IPUSと
呼ば れる最近 開発 され た知識
ベ ー ス の 人 工 知 能 言 語 を使 っ て完 全 に書 き直 さ れ た.新 た な シ ス テ ム の 仕 様 は 以 下 の とお りで あ る. ① 活 動 電 位 分 解 作 業 に必 要 とす る時 間 が 大 幅 に 短 縮 さ れ た.6∼8個 位 の 系 列 を含 む20秒 間 の筋 電 位 信 号 を2∼4分 ② 活 動 電 位 を 自動 的 に 分 解 す る 際 の精 度 が65%か よ る編 集 を行 え ば,100%に
図6.1
の運 動単
で処 理 す る ら97%に
向 上 した.人
手に
達す る
ボ ス トン 大 学 神 経 筋 研 究 セ ン タ ー で 開 発 さ れ たPrecision
Decomposition
System Ⅱ
③ 静 的 運 動 状 態 だ け で な く,動 的 運動 状 態 か ら も信 号 を 分 離 で き る NMRCで
は,こ
の 手 法 を 使 っ て,さ
ま ざ ま な 運 動 障 害 を もつ 患 者 の デ ー タの
解 析 を進 め て い る. 次 に,微 少 重 力 に よ る運 動 機 能 の 低 下 を神 経 筋 の レベ ルで 理 解 す る研 究 が あ る. こ れ は,微
少 重 力 の 影 響 に 対 す る 運 動 プ ロ グ ラ ム を設 計 す る こ とが 目的 で あ る.
さ らに,微 少 重 力 環 境 に対 す る 地 上 で の モ デ ル を同 定 し,検 証 す る こ と に も役 立 つ.そ
の 結 果,宇
よ う に な る.こ
宙 空 間 で 試 み る 前 に可 能 な対 策 を地 上 で研 究 す る こ とが で きる
の プ ロ ジ ェ ク トの 最 終 目標 は微 少 重 力 が 筋 活 動 制 御 へ 与 え る 影 響
を 理 解 す る こ と に あ る.そ
の方 法 と して,運 動 単 位 の発 射 活 動 の 調 整 や 関節 周 り
の 制 御 に 関 与 す る複 数 の 異 な る筋 の 関 係 を研 究 し よ う と して い る. この 研 究 で は 針 筋 電 位 を 第一 背 側 骨 間筋 と 内側 広 筋 か ら,ま た,関 節 ま わ りの 筋 群 か ら表 面 筋 電 位 を 計 測 す る.被 験 者 に は,PCス を 追 っ て 筋 を 収 縮 す る よ う に 指 示 す る.針 Systemで
解 析 す る.特
ク リー ンに 表 示 され る軌 跡
筋 電 位 はPrecision
に 注 目 して い る の は,運
Decomposition
動単位 の発射 頻度 や リクルー ト
メ ン トの ふ る ま い の 制 御 に 変 化 が 現 れ な い か ど う か で あ る.表 面 筋 電 図 か らは, 微 少 重 力 が 関節 ま わ りの 筋 の制 御 に 与 え る 影 響 を調 べ る.こ
れ に よ っ て,加 齢 に
よ る 筋 へ の 影 響 と 同 じ こ とが 微 少 重 力 下 で も起 きて い る の か ど うか を探 ろ う と し て い る. 第3に,患
者 の 機 能 的 能 力 を,簡 単 に,そ
して 自動 的 に 家 庭 で もモ ニ ター で き
る よ う に す る 手 法 の 開 発 を 行 っ て い る9).機 能 的 能 力 の 評 価 は,支 援 サ ー ビ ス や 長 期 に わ た る ケ アで 必 要 な もの を決 定 す る こ と に 使 え る.運 動 能 力 の 定 量 的 か つ 客 観 的 数 値 は,現 在,リ
ハ ビ リテ ー シ ョ ンで 主 流 の 自 己 申 告 に た よ る機 能 的 な 器
具 を検 証 す る こ と に も役 立 つ.い ろ い ろ な種 類 の 活 動 モ ニ タ ー が市 場 に はあ るが, ほ とん ど は 一 般 的 な筋 活 動 に 限 定 され て い る.そ
こで,筋
電 図 と加 速 度 計 を 基 礎
とす る 機 能 的 活 動 モ ニ ター を 開発 中 で あ る.こ
の シ ス テ ムで 対 象 と して い る の は
脳 血 管 障 害 の あ る 患 者 で あ る.解
層 人工 ニ ュー ラル ネ ッ トワー ク
(ANN)に 行 う.こ
析 で は,多
よ る 特 徴 抽 出 と適 応 ニ ュ ー ロ ・フ ァ ジ ー推 論 ネ ッ トワ ー ク を結 合 して こ で は,ア
ル ゴ リズ ム を11種 類 の機 能 的 筋 活 動(食
事,歩
行 な ど)に
適 用 し,そ の 検 証 を 機 能 的 に は 異 な るが 同 様 な11種 て の8チ 98%の
ャ ン ネ ル の 節 電 図 デ ー タ で11種
類 の も の と比 較 した.す
べ
類 の 機 能 的 筋 活 動 を 定 義 した 場 合 は,
デ ー タ を識 別 で きた.予 備 実 験 で は あ るが,節
電 図 だ けで な く加 速 度 デ ー
タ を 加 え た こ と に よ り,判 別 率 は 有 意 に増 加 した. 第4に 腰 痛 の研 究 が あ る10).背 筋 の 表 面 筋 電 図 解 析(図6.2)は,等
尺性 収縮
時 で の背 筋 の 筋 疲 労 の 考 え方 を基 礎 と して い る.収 縮 時 の 表 面 筋 電 図 の 初 期 で の MDFの
ふ る ま いやMDFの
減 少 率 は筋 の 機 能 と関 係 が あ る.し か し,患 者 で は最
大 随 意 収 縮 時 の 数 値 は信 頼 性 に 欠 け る.そ
こ で,背 筋 を 最 大 下 随 意 収 縮 で も評 価
で き る よ う に す る 新 た な パ ラ メ ー タ を提 案 して い る.こ れ らのパ ラ メー タ は 背 筋 間 で 分 散 す る筋 へ の 負 担 を反 映 す る も の で,背 筋 の 障 害 に 関 す る重 要 な情 報 を 医 師 に 提 供 す る.こ の 情 報 は,直 接,患
者 の 治 療 法 を カ ス タマ イ ズ す る こ とや,リ
ハ ビ リテ ー シ ョ ンプ ロ セ ス の 異 な る フ ェ ー ズ で生 じる変 化 を詳 細 に モ ニ タ ー す る こ と に役 立 つ.
図6.2 表 面筋 電 図 を用 い た腰 痛 の解 析 (Oddson
LI,De
Luca
CJ:J
Appl
Physiol,200310)よ
り転 載)
4 人間感覚計測応用技術 日 本 で はSENIAMに
相 当す る よ うな 筋 電 図専 門 の研 究 プ ロ ジ ェ ク トは ない が,
筋 電 図 を含 め た 生 体 計 測 の プ ロ ジ ェ ク トと し て,経 済 産 業 省 が 主 導 して1990年
か ら1998年 トが あ る.こ
の8年 間 に わ た っ て 実 施 した 「人 間 感 覚 計 測 応 用 技 術 」 プ ロ ジ ェ ク れ は,人
間 の 感 性 に訴 え る よ う な製 品 開 発 を促 進 す る た め に,温
熱 ・光 ・音 な どの 環 境 条 件 や 生 活 関連 製 品 が 人 間 の 心 身 状 態 に 及 ぼす 生 理 的 影 響 (ス ト レス や 疲 労)を
評 価 す る生 理 指 標 化 技 術,環
境 や 製 品 と人 間 との 適 合 性 を
生 理 量 や 心 理 量 に 基 づ い て評 価 す る環 境 ・製 品 適 合 性 指 標 化 技 術 の 開 発 を 目指 し た もの で あ る.家 電 や 住 宅 関係 の 企 業 と産 業 技 術 総 合 研 究 所(当 究 所)が
参 加 し て,社
時 は 製 品科 学 研
団法 人 人 間生 活 工 学 研 究 セ ン タ ー(HQL)11)が
と り ま とめ
機 関 とな って 実施 し た. 具 体 的 に は,脳 波 の 計 測 に よ っ て快 適 度 や 覚 醒 度 を 定 量 化 した り,近 赤 外 線 分 光 に よ っ て 疲 労 度 を 定 量 化 す る技 術 の 開 発 を行 っ た.筋 電 図 に つ い て は,筋 線 維 伝 導 速 度 の 変 化 か ら筋 の 局 所 的 な疲 労 度 を推 定 す る こ と を試 み た.し
か し,筋 線
維 伝 導 速 度 は体 温 や 筋 収 縮 力 の 影 響 を大 き く受 け る こ とが 明 らか に な り,疲 労 度 の影 響 を抽 出 す る た め に は,こ れ らの 要 因 を一 定 に す る な どの 措 置 が 必 要 で あ る こ とが わ か っ た. こ の プ ロ ジ ェ ク トは,終 と して 受 け継 が れ,感
了 後 に 「人 間 行 動 適 合 型 生 活 環 境 創 出 シ ス テ ム技 術 」
覚 レベ ルか ら よ り複 合 した 行 動 レベ ルへ の 研 究 開 発 と して
展 開 され た.
6.2 計測 装 置 1 計測 の マル チチ ャンネル化 表 面 筋 電 位 をマ ル チ チ ャ ンネ ル で 計 測 す る技 術 は,1980年
代 か ら報 告 が あ る.
マ ル チ チ ャ ン ネ ル の 最 近 の 展 開 は フ レキ シ ブ ル ア レ イ 電 極 に 代 表 され る .図6.3 は トリ ノ 工 科 大 学(イ
タ リ ア)が
開発 した 双 極15チ
の フ レキ シ ブ ル ア レ イ 電 極 で あ る12).直 径1mmの
ャ ン ネ ル(電
極 間 隔1cm)
穴 が あ い て お り,穴 の 脇 に銀
塩 化 銀 の コ ン タ ク ト部 分 と リー ド線 が プ リ ン ト基 板 の 技 術 で 作 られ て い る.使 用 す る に は,両 面 テ ー プ状 の ウ レ タ ン フ ォー ム で フ レキ シ ブ ル 電 極 を対 象 とす る筋 の皮 膚 表 面 に貼 付 し,こ の 穴 か ら電 極 ペ ー ス トを注 入 す る.配
置 し た フ レキ シ ブ
図6.3
フ レキ シブ ルア レイ電 極
さ ま ざま なサ イ ズ,チ ャ ン ネル数,電 極 間 隔の 電 極 が あ る
ル 電 極 を 増 幅 器 か ら の リー ド線 と ア ダ プ ター を介 して 結 ぶ こ と に よ って,差 チ ャ ンネ ル ま で の 表 面 筋 電 位 の 計 測 が 可 能 と な る.し
動15
た が っ て,皮 膚 表 面 を伝 播
す る表 面 筋 電 位 の 広 が りを計 測 す る こ と を 目 的 と し た 電極 で あ る.な お,ウ ン フ ォー ム は,そ
の つ ど交 換 が 必 要 で あ る が,フ
レタ
レ キ シ ブ ル ア レ イ電 極 は 約10
回使 用 で きる. フ レ キ シ ブ ル ア レ イ 電 極 とウ レ タ ンフ ォー ム を 用 い た こ とで,さ ズ,チ
まざまなサ イ
ャ ン ネ ル 数,電 極 間隔 の 電 極 を簡 単 に 作 り出 す こ とが で きる.こ れ に よ っ
て,対 象 とす る筋 ご と に最 も適 した 形 状 の 電 極 選 択 が 可 能 とな っ て い る.な お, 電 極 そ の もの に は 増 幅 器 は 埋 め 込 ま れ て い な い.生 ル ま で の 同 時 計 測 が 可 能 で あ る.実 際 に は,生 AD変
換 器 でPCへ
取 り込 み,計
体 信 号 増 幅 器 は15チ
ャ ンネ
体信 号 増幅器 か らの出力信 号 を
測 条 件 の コ ン トロ ー ル,計
測 信 号 の モ ニ タ ー,
そ して さ ま ざ ま な信 号 処 理 を行 う.用 意 さ れ て い る信 号 処 理 プ ロ グ ラ ム に は,表 面 筋 電 図 評 価 指 標 と してRMS,ARV,MNF,MDF,伝
導 速 度 を推 定 す る機 能 が あ
り,表 示 方 法 と して チ ャ ン ネ ル ご との 時 間軸 プ ロ ッ トと,指 定 した時 間 に お け る チ ャ ン ネ ル ご と の特 性 値 の プ ロ ッ トが あ る.ト
リ ノ工 科 大 学 で は,さ
らに,表
面
電 極 の プ ロ ー ブ に加 速 度 セ ンサ ー を埋 め 込 む な ど して,筋 音 図 も 同時 計 測 で きる よ う な タ イ プ を 開 発 して い る. 産 業 技 術 総 合 研 究 所(当
時 は製 品科 学研 究 所)で
開 発 した 格 子 状 電 極(図6.4)
は,神 経 支 配 帯 の 重 要 性 を最 初 に 明 らか に した こ とで有 名 で あ る13).電 極 間隔 は 5.12mmと
狭 く,1つ
の プ ロ ー ブ に30×24ピ
ン の 電 極 が 並 ん で い る.こ
れ と同
図6.4 神 経 支 配帯 の推 定 に 用い られ た格 子 状電 極13)
様 な格 子 状 電 極 はHelmholtz‐Institute
Aachen(ド
イ ツ)14)も 開 発 して い る.し
か し,そ の 目的 は 異 な り,格 子 状 電 極 に よ っ て 表 面 筋 電 位 の 伝 播 を空 間差 分 す る こ とで,針 電 極 と同 じ よ う な情 報 を得 よ う とす る もの で あ る.日 本 で は,大 阪 電 気 通 信 大 学 の グ ル ー プ が よ り小 型 な マ ル チ ア レ イ能 動 電 極 の 開 発 を 進 め て い る. 以 上 の よ うに マ ル チ チ ャ ンネ ル 計 測 の 目的 は,表 面 筋 電位 の 伝 播 パ タ ー ン を探 る こ とに あ る.さ
ら に,計 測 ユ ニ ッ トが マ ル チ チ ャ ンネ ル化 した こ と か ら,容 易
に よ り多 くの 部 位 か ら よ り多 くの 情 報 を 同 時 に計 測 で き る よ う に な っ た.今 後, 表 面 筋 電位 にか ぎっ た もの で は な く,さ ま ざ ま な 生 体 情 報 を 同時 に 計 測 す る セ ン サ ー が 常 識 とな るで あ ろ う.
2 計測 の ウェアラ ブル 化 ウ ェア ラ ブル 計 測 へ の 流 れ は1990年 用 語 は ウ ェ ア ラ ブ ルPCの
代 の 後 半 か らみ られ る.ウ
デ モ ン ス トレ ー シ ョ ン に よ っ て 広 まっ た が,こ
な概 念 を 最 も必 要 と し て い るの が 生 体 計 測 の 分 野 で あ る.た 工 科 大 学(ア 呼 吸,体
メ リ カ)で
はSmart
Shirtを 開発 し,ウ
と え ば,ジ
の よう ョー ジ ア
ェ ア ラ ブ ル状 態 で 心 電 図,
温 な ど が 計 測 で き る シ ャ ツ を 開 発 した.な お,日
に よ るNPO法
ェ ア ラ ブ ルの
本 で も通 信 系 グル ー プ
人 が こ の 分 野 の 活 動 を行 っ て い る.こ の よ う に,ウ
ェ ア ラ ブ ル計
測 をデ ー タ ロ ガ ー と し て と ら え る な らば,生 体 信 号 で は心 電 図 を 中 心 に 多 くの 計 測 装 置 が 開 発 さ れ て き た.こ
こ で は,表 面 筋 電 図 計 測 に お い て,腰
につ け る ポ ー
チ 程 度 の サ イ ズ で 開 発 が 進 む シ ス テ ム の 開発 事 例 を紹 介 す る. ウ ェ ア ラ ブ ル 計 測 を 意 識 した 表 面 筋 電 位 の 計 測 装 置 と し てDelsys(ア
メ リ カ)
図6.5
DelsyのMyoMonitor(8チ
ャ ン ネ ル の 例)
表 面 筋電 図 のほ か に 関節 ゴニ オ メー ター な どの セ ンサ ー をつ け られ る
のMyoMonitorシ
ス テ ム が あ る(図6.5)15).こ
の シス テ ム の 特 徴 は,使 い 勝 手 の
よ い バ ー 状 の 能 動 電 極 と小 型 ユ ニ ッ トで あ る.1cm間 (2バ ー)あ
る い は ダ ブ ル 差 動 接 続(3バ
隔 の バ ー 状 電 極 で差 動接 続
ー)の 計 測 を 行 う.電 極 を皮 膚 表 面 に 固
定 す る に は両 面 接 着 シ ー トを使 う.し た が っ て,電 極 本 体 は使 い 捨 て で は な い. さ ら に,電 極 は能 動 電 極 で あ り,電 極 か ら小 型 ユ ニ ッ トまで の リー ド線 は 柔 軟 性 が あ る.ア ナ ロ グ 計 測 の 部 分 は 生 体 側 で 閉 じて お り,ウ ェ ア ラ ブ ル 状 態 に 近 づ い て い る.計 測 の 際 に は,PCカ タル 化 に 対 応 し て い る.し ポ ケ ッ トPCか
ー ドのAD変
換 器 とポ ケ ッ トPCを
使 う こ とで デ ジ
か し,信 号 処 理 に は メ モ リ ー カ ー ド(CFカ
ー ド)を
ら取 り外 す 必 要 が あ る.な お,電 極 間 隔 が 固 定 さ れ た1チ ャ ンネ
ル 差 動 接 続 に よ る 計 測 が 基 本 で あ り,事 前 に,マ ル チ ア レ イ電 極 な どで 皮 膚 上 の 最 適 な貼 付 位 置 を決 定 し て か らバ ー電 極 を使 用 す る と よい. 一 方,ト
リ ノ工 科 大 学 の別 の グ ル ー プ で は,さ
き る小 型 ユ ニ ッ ト(STEP32)を 底 圧,加
ま ざ ま な生 体 信 号 を同 時 計 測 で
開 発 した16).こ れ は,歩 行 の 際 の 関 節 角 度,足
速 度 な ど と 同 時 に表 面 筋 電 図 を得 る こ とが で き る 小 型 ユ ニ ッ トで あ る.
プ ロ ー ブ は コ ネ ク タ に セ ンサ ー を差 し込 む 形 式 とな っ て い て,1つ
のプ ローブで
さ ま ざ ま なセ ンサ ー を交 換 で き る.た だ し,表 面 筋 電 位 に か ぎ っ て い え ば 基 本 は 皿 型 電 極(直
径5mm)に
よ る1チ ャ ンネ ル の 差 動 接 続 で あ り,表 面 筋 電 位 の マ
ル チ チ ャ ン ネ ル 計 測 を1つ の 電 極 で 実 現 す る形 式 で は な い.な 1000∼50000倍
お,プ
ローブ には
の 増 幅 器 が 内 蔵 さ れ て い る.プ ロ ー ブ と小 型 ユ ニ ッ トはLANケ
ー ブ ル と同 じ仕 様 で 接 続 さ れ て お り
,小 型 ユ ニ ッ トは ま さ に 生 体 信 号 の ハ ブ とい
っ た 感 じで あ る.た だ し,ア ナ ロ グ 計 測 の 部 分 は生 体 側 だ け で 閉 じて い な い.こ の小 型 ユ ニ ッ トに 集 約 さ れ た 生 体 信 号 はAD変 サ ン プ リ ン グ周 波 数1000∼5000Hz)さ
れ,さ
換(16チ
ャ ン ネ ル,12,14ビ
ッ ト,
らに,光 ケ ー ブ ル でPCへ
と送 ら
れ て い く.し た が っ て,計 測 中 も表 面 筋 電 図 をモ ニ ター で き る よ う に デ ジ タ ル化 へ の 対 応 が な さ れ て い る が,PCと
ユ ニ ッ ト間 は ケ ー ブ ル で接 続 さ れ た ま まで あ
る.用 意 さ れ て い る信 号 処 理 に は,さ
ま ざ ま な 計 測 デ ー タ の時 間 軸 表 示,周
波数
解 析 が あ る. ま た,大
阪 電 気 通 信 大 学 は独 自 に 開 発 した 能 動 電 極 とUSB接
続 ユ ニ ッ トを組
み 合 わ せ た表 面筋 電 位 の 計 測 装 置 の 開発 を 進 め て い る(図6.6).
(a) (b)
図6.6 能動 電 極 とUSB接 続 ユ ニ ッ トを組 み合 わせ た 表面 筋 電 位 の計 測 装置
ICカ ー ドに 蓄 積 す る方 式 は 以 前 か ら あ る. TEACは8チ ャ ン ネ ル 計 測 の小 型 デ ー タ ロ ガー(DR‐C2)を プ リア ンプ を外 部 接 続 し,PCメ
ャンネルのマ ルチチ
市 販 して い る.生 体 信 号 計 測 用 の
モ リ カ ー ドに 計 測 デ ー タ を蓄 積 す る こ と で,ア
ナ ロ グ 計 測 か ら計 測 デ ー タ の デ ジ タ ル 化 ま で を1つ の ユ ニ ッ トで ま か な う.し か し,ICカ
ー ドを 小 型 デ ー タ ロ ガ ー か ら取 り外 し,PCに
挿 入 して か ら計 測 デ ー タ
を確 認 す る方 式 で あ る た め,計 測 中 は デ ー タ の 欠 落 が な い よ うに 十 分 に注 意 す る 必 要 が あ る.
こ こ ま で 紹 介 し た ウ ェ ア ラ ブ ル 化 で は,計
測 ユ ニ ッ ト と解 析 用PCと
測 デ ー タ の 取 り扱 い が ネ ッ ク と な っ て い る.さ に 関 す る"Ware 2003)17)に
it well"の
よ れ ば,ウ
生 体 情 報 を 無 線ITシ い る.つ
特 集 号(IEEE
て,生 EMBS
体情 報の ウェア ラブル計測 Magazine,Vol.22,No.3,
ェ ア ラ ブ ル 計 測 ユ ニ ッ ト とPDAな ス テ ム で 管 理 す るPersonal
ま り,計 測 デ ー タ をPCへ
ど の 情 報 端 末 を 用 い て,
Area
Networkの
転 送 す る 部 分 を リ ー ド線 やICカ
無 線 通 信 を 利 用 す る 方 式 で あ る.デ
を モ ニ タ ー で き る よ う に な る.表
い て い る た め,MyoMonitorⅢ 数 は8な
い し16で
ゲー ジ,加
速 度,足
この
は無 線 通 信 に よ
る い は 計 測 済 み デ ー タ の 転 送 を 行 え る.PC お,計
測 ユ ニ ッ トに は カ ラ ー 液 晶 パ ネ ル が つ
単 体 で も 計 測 状 態 を モ ニ タ ー で き る.チ
あ る た め 筋 電 位 以 外 の さ ま ざ ま な 補 助 入 力(ゴ ス イ ッ チ,心
測 中 の信 号
面 筋 電 図 計 測 で は,DelsysやNoraxonが
っ て 計 測 中 の 信 号 の モ ニ タ ー か,あ ー ドを 使 う.な
ー ド と せ ず に,
面 筋 電 位 だ け で な く計 測 時 の トラ ブ ル
方 式 の 開 発 を 行 っ て い る.DelsysのMyoMonitorⅢ(図6.7)で
側 に は 無 線LANカ
研 究が進 んで
ー タ 通 信 を 無 線 化 す る こ と で,計
を 離 れ た 場 所 で 観 察 で き る こ と に な り,表
の 間の計
拍 数)に
も 対 応 し,運
ャンネル
ニ オ メ ー タ,力
動 時 で の さ ま ざ ま な生 体
信 号 と 筋 電 位 と の 同 時 計 測 が 十 分 に 可 能 で あ る.
図6.7
NoraxonのTELEMYO
Delsysの
無 線 式MyoMonitorⅢ
2400T(図6.8)で
は,計
測 中 の8チ
ャ ンネルの信 号
(筋 電 位 だ け で な く,同 様 に 他 の 信 号 も計 測 で き る セ ンサ ー が 用 意 され て い る) を 無 線 通 信 で モ ニ ター す る18).表 面 電 極 は,ア
ク テ ィブ リ ー ドと称 す る500倍
の
プ リ ア ン プ を 内 蔵 した ケ ー ブ ル で 小 型 送 信 ユ ニ ッ トに 接 続 され る.計 測 デ ー タは, 無 線LANカ
ー ドに よ っ てPCに
直接 受 信 で き る.し
た が って,計
測 状 態 はPCで
モ ニ ター す る こ と と な る.
図6.8
な お,LabVIEWのPDAモ
Noraxonの
換 器 が 利 用 で き る た め,PDAの
無 線 式TELEMYO2400T
ジ ュ ー ル を使 う こ とで,PDAでPCカ 無 線LAN機
ー ドのAD変
能 と併 せ て,既 存 のユ ニ ッ ト と組 み
合 わ せ た ウ ェ ア ラ ブ ル 計 測 ユ ニ ッ トを 組 み 上 げ る こ と もで き る(図6.9).
(a) (b)
図6.9 ユ ニ ッ トとPDAを 組 み合 わ せ た表 面 筋 電 図 の ウ ェ ア ラブ ル計 測装 置
6.3 最 近 の 信 号 処 理 法 個 々の 運 動 単 位 の 発 射 パ ター ン を と らえ る 運 動 単位 の 分 離 で は,ダ イ ナ ミ ッ ク な運 動 時 で の 計 測 が むず か しか っ た.し ス の 処 理 法 を導 入 して,50%MVCを の 解 析 が 可 能 に な っ た(「6.1プ
か し最 近 で は,パ
ター ン認 識 に 知 識 ベ ー
超 える高い等尺 性の一 定随意収縮 の場面 で ロ ジ ェ ク ト研 究 」 参 照).こ
の よ う に,計 測 技 術
の 進 展 とあ い ま っ て 信 号 処 理 の恩 恵 を受 け る場 面 が 広 が っ て き て い る.こ れ は, 多 くの シ ス テ ム で,計 測 デ ー タがExcelな
どで 取 り扱 え る 形 式 で保 存 で き る よ う
に な っ た こ と と,計 測 装 置 に付 属 す る ソ フ トウ ェ ア以 外 にMATLAB19),Mathe matica20),LabVIEW21)な
どの 汎 用 の ソ フ トウェ アが 一 般 的 と なっ た お か げ であ る.
さ て,最 近 の信 号 処 理技 術 の 高 度 化,特
に 時 間 につ れ て 変 化 す る パ ワ ー ス ペ ク
トル を推 定 す る た め の さ ま ざ ま な 方 法(「5.4ス ペ ク トル解 析 の 限界 」 参 照)に っ て,統
よ
計 的 に 定 常 で は な い 信 号 の 取 り扱 い が で き る よ う に な っ た.運 動 時 の 表
面 筋 電 図 は,筋 活 動 様 式 の 変 化 や 筋 疲 労 に 至 る 変化 が 現 れ,ま で は な い信 号 の 例 で あ る.こ 運 動 が あ る.ジ
こで,ダ
さ に統 計 的 に 定 常
イ ナ ミ ック な 運 動 とい っ て も,さ ま ざ ま な
ャ ン プ の よ う に 強 い収 縮 が1回 だ け現 れ る もの もあ れ ば,自 転 車
の よ う に筋 収 縮 と弛 緩 を繰 り返 す もの もあ る.こ
れ を 生 理 学 的 な神 経 筋 活 動 レベ
ル で 解 析 しよ う とす る と,時 間 につ れ て さ ま ざ ま な運 動 単 位 が どの よ うに 活 動 し, ま た,MUAPが
どの よ う な影 響 を 受 け て変 化 す る か の情 報 が 必 要 とな る(表 面 筋
電 図 に 影響 を与 え る 要 因 に 関 して は 図1.6を 参 照). 一 方,実
用 的 な評 価 指標 レベ ル で 解 析 す る場 合 は,筋 活 動 様 式 の 変 化 や 筋 疲 労
に 至 る 変 化 を 的確 に表 現 して くれ るパ ラ メ ー タ を推 定 す る こ とに な る.こ の パ ラ メ ー タ推 定 に ダ イ ナ ミ ッ ク な運 動 時 で の 時 間 周 波 数 表 現 が 利 用 さ れ て い る. 通 常,時
間 周 波 数 表 現 は,周 波 数 成 分 の パ ワ ー の 時 間 軸 上 で の分 布 で あ る.こ
の 時 間 周 波 数 表 現 で,あ 方 式 が,短
く まで も表 面 筋 電 図 を周 期 的 な信 号 で 分 解 し よ う とす る
時 間 フ ー リエ 解 析(STFT)で
あ る.フ ー リエ 変 換 が 意 味 を もつ の は
観 測 信 号 が 定 常 な と き で あ る か ら,ダ イ ナ ミ ック な 運 動 時 で の 解 析 で は,解 析 に 必 要 とす る 時 間 帯 を制 限す る 時 間 窓 を観 測 信 号 に施 し,こ の 時 間 窓 の な か で は 定
図6.10 窓 関 数 を か け た解析 区 間(局 所 定 常性 を仮 定)を時 間軸 上 に シ フ トしなが ら解析 す る STFTや 時変 性 パ ラメ ー タ推 定 な どで利 用 され る
常 と仮 定 す る(局 所 定 常).そ
の う え で,時
間 窓 を 時 間 軸 上 で 移 動 して,時
信 号 の ス ペ ク トル構 造 を 推 定 す る(図6.10).な
お,表
変性
面筋 電 図の計測 モデル を
シ ス テ ム 関 数 で 表 現 す る 方 法 で も,時 間 窓 を 時 間 軸 上 で 移 動 して時 変性 信 号 の ス ペ ク トル構 造 を推 定 で きる.こ
の 方 法 で は,さ
ー タ を逐 次 推 定 す る 方 法 もあ る .1980年
らにシス テム関数 の時変性パ ラメ
代 頃 か らの 義 手 の 制 御 に か か わ る表 面
筋 電 図 を用 い た研 究 で は,シ ス テ ム 関 数 の 時 変 パ ラ メー タ推 定 が 盛 ん に行 わ れ た. こ れ に対 して,エ
ネ ル ギ ー 分 布 を 直接 変 換 す る こ とで 時 間周 波 数 表 現 を得 よ う と
す る 方 法 が あ る.す
な わ ち ウ ィ グ ナ ー ・ビ レ(WV)分
布 で は,時
間関数であ る
自己 相 関 関 数 を フ ー リエ 変 換 し て エ ネ ル ギ ー 分 布 の 時 間 周 波 数 表 現 を 得 る(図 6.11).
図6.11
WV分
布 に よ る ス ペ ク トル 推 定
特 殊 な 自己 相 関 関数 を フ ー リエ変 換 してエ ネル ギ ー分 布 の 時 間周 波 数 表現 を得 る
一 方,運
動 単 位 の 分 離 の よ う に基 本 と な るMUAP波
形 を用 意 し,基 本 波 形 を
時 間 伸 縮 した 波 形 の ク ラ ス を時 間 軸 上 に シ フ ト して 観 測 信 号 に 似 た 波 形 を探 し, 基 本 波 形 の 周 波 数 構 造 の 時 間分 布 か ら時 間 周 波 数 表 現 を得 よ う とす る方 法 が 連 続 ウ ェ ー ブ レ ッ ト変 換(CWT)で
あ る(図6.12).さ
基 本 波 形 の ク ラ ス を拡 張 した もの がMatching は,よ
らに,ウ
ェ ー ブ レ ッ ト変 換 の
Pursuit(MP)法
で あ る.MP法
り生 理 的 な 意 図 を組 み 入 れ る こ との で きる展 開 とな っ て い る が,時
間周 波
数 表 現 の 推 定 に か な りの 時 間 を要 す る.こ れ らの 時 間 周 波 数 表 現 の 比 較 は図5.2 を参 照 の こ と.
図6.12
CWTに
よ る ス ペ ク トル 推 定
MUAPの
よ うな基 本 波 形 を使 って 時 間周 波 数 表現 を得 る. MP法
で は さ らに多 彩 な 波
形 を用 意 す る
6.4 新 た な 応 用 最 近,Rehabilitation
EngineeringやNeuroengineeringの
新 た な流 れ に よ っ て,筋
の 動 き を神 経 筋 制 御 系 の 情 報 源 と し て利 用 しよ う とす る
動 きが 出 て き た.も れ て き た の で,そ
用 語 で 代 表 され る
と も と,筋 電 図 は電 動 義 手 の コ ン トロー ル信 号 と して利 用 さ
れ ほ ど驚 くこ とで は な い が,み
ず か らの 動 作 を伝 え る直 接 的 な
表 現 方 法 と して 注 目 さ れ て きて い る.身 体 の 動 き を変 換 す る とは,そ れ ほ どむ ず か しい 話 で は な く,ピ ア ノ演 奏 で は 指 の動 作 で ピア ノ の鍵 盤 を通 じて 脳 で 描 い た 音 楽 の イ メ ー ジ を実 際 の 演 奏 へ と変 換 して い る.ま た,自
転 車 の ギ アチ ェ ン ジで
は筋 張力 の感 じ方 に応 じて ギ ア を手 で 変 化 させ る.つ ボ タ ンが 存 在 して い る.こ れ に対 して,レ 令 を筋 電 図 で と ら え る こ とで,直
ま り動 作 を伝 え る レバ ー や
バ ー や ボ タ ン を介 せ ず に,脳 か らの 司
接,身 振 りか ら音 楽 を演 奏 した り,ギ ア を 変 え
た り しよ う とす る試 み が 進 ん で い る.
1 動作情報を使 う 表 面 筋 電 図 に よる 動 作 識 別 は,1970年
代 か ら見 受 け られ る.動 作 識 別 は,線
形 処 理 の 範 囲 で さ ま ざ ま な 方 法 が 義 手 制 御 の研 究 を 中 心 に 開 発 さ れ た.1990年 頃 に な る と,ANNを
利 用 した 運 動 制 御 機 構 の 非 線 形 シ ス テ ム の研 究 が 登 場 し,
表 面 筋 電 図 か ら取 り出 した 動 作 情 報 で,さ
ま ざ ま な ロ ボ ッ トを操 作 した り,音 楽
を 演 奏 した りとい っ た こ とが 行 わ れ る よ う に な って きた.た 学 で は ロ ボ ッ ト(AIBO)の
とえ ば,東 京 工 業 大
動 きを 身 体 に つ け た 表 面 電 極 で 遠 隔 操 作 し た り,身
振 り手 振 りで 音 楽 を演 奏 した りす る 試 み を 行 っ て い る(図6.13)22,23).こ 関 節 角 度 を推 定 す る に は非 線 形 処 理 が 必 要 と な り,ANNが お,ボ
ス トンで のISEK国
こ で,
利 用 され て い る.な
際 会 議 の 際 に も腕 の 筋 活 動 で 音 楽 を演 奏 す る デ モ ンス
トレー シ ョンが 行 わ れ た.
図6.13 表 面 筋 電 図 に よる ロ ボ ッ トの遠 隔操 作
表 面 筋 電 図 か ら取 り出 した 動 作 情 報 は,こ れ まで カ メ ラ な どで 関 節 部 位 につ け た標 点 の動 き と して光 学 的 に 計 測 され て い た 身 体 の 動 きの 情 報 で あ る.カ
メラか
ら得 る情 報 が外 見 の情 報 とす る な らば,表 面 筋 電 図 か ら得 られ る 情 報 は 力 の 情 報
で あ り,さ ら に,内 部,す
な わ ち脳 か らの 指 令 で あ る.そ の 意 味 で,表
に よっ て光 学 式 に よ らな い 方 法 で 脳 か らの 指 令 を取 り出 し,何
面筋電 図
らか の対 象 を 身体
の動 きで 操 作 で きる 方 法 と して 注 目 さ れ る.
2
無発声音声認識
表 面 筋 電 図 を 音 声 認 識 に 応 用 す る 研 究 は,1980年
代 か ら行 わ れ て きて い る.
主 に発 話 障 害 者 向 け に 行 わ れ て きた が,最 近 に な っ て 幅 広 い 応 用 を視 野 に入 れ た 研 究 が な さ れ て き て い る.こ れ ま で に,い
くつ か の 研 究 機 関 が こ の 方 法 を発 表 し
て い る が,基 本 的 に は 筋 電 図 か ら得 られ る情 報 を音 声 に 対 応 づ け る た め に,こ で もANNに 音 声 認 識(無
よ る 非 線 形 処 理 が 使 わ れ る. NTT DoCoMoで 発 声 音 声 認 識)を
を 出す こ とな く
行 うた め に,指 輪 型 表 面 電 極 を使 い,顔
の 筋 へ 指 を あ て る こ と で(図6.14)計 の 発 話 動 作 を90%以
は,声
こ
面 の3つ
測 した 表 面 筋 電 図 を 用 い て,日 本 語5母 音
上 の 精 度 で 認 識 で きる と報 告 し て い る24,25).し か し,認 識
精 度 も,通 常 の 音声 認 識 が 達 成 して い る レベ ル に は ま だ到 達 して い な い.
(b)
(a) 図6.14 表 面筋 電 図 に よ る無声 音 声 認 識
表 面 筋 電 図 を用 い た音 声 認 識 技 術 は発 話 障 害 者 向 け の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン ツー ル だ け で な く,雑 音 環 境 下 で の 音 声 認 識 率 の 向 上 に も役 立 つ .た
とえ ば,音 声 信
号 と筋 電 位 信 号 を 用 い る こ と に よ り,雑 音 環境 下 に お け る 認 識 精 度 の劣 化 を大 幅 に抑 え られ る こ とが 報 告 さ れ て い る.さ
らに,発 話 内 容 の 秘 匿 性 を高 め る こ と な
どへ の 期 待 が あ る.
3 さまざまな時間スケールから運動を探る マ ル チ チ ャ ンネ ル計 測 で,表
面 筋 電 位 を含 め た さ ま ざ ま な生 体 信 号 の 計 測 が 可
能 に な る と,運 動 を多 角 的 に探 る こ とが で き る よ う に な る.こ に は,バ
れ ま で 運 動 を探 る
イ オ メ カ ニ ク ス 的 に 関 節 を中 心 と した 動 きや トル ク に よ る動 作 の 表 現,
表 面 筋 電 図 に よ る脳 か らの神 経 筋 制 御 系 の 時 間 情 報 や 周 波 数 情 報,そ 神 経 系,循
環 器 系,エ
して,自 律
ネ ル ギ ー 代 謝 な どの 情 報 が 対 象 と な っ て い た.し
れ らは 別 々 の 計 測 や解 析 が 行 わ れ,統
か し,こ
合 した解 析 は 十 分 で は な か っ た.そ の 理 由
の1つ が 時 間 ス ケ ー ル の 違 い とマ ル チ 計 測 が 十 分 で な か っ た こ と に よ る. 長 時 間 の マ ル チ チ ャ ンネ ル計 測 が 可 能 と な る と,運 動 機 能 の変 化 を解 釈 す る た め の 手 段 と して 筋 電 図 だ け で は な く,心 電 図,関 総 合 的 な 判 断が で き る よ う に な る.こ
節 角,加
速 度 な どの 情 報 に よ る
れ ら を総 合 的 に取 り扱 う に は,さ
まざ まな
時 間 ス ケ ー ル を設 定 して,階 層 的 に 解 析 す る 必 要 が あ る(図6.15).第1に
表面
筋 電 位 の 数100msオ な どで あ る.一 あ る.た
ー ダ ー の 変 化 と対 比 で き る の は,関
方,エ
ネ ル ギ ー 代 謝 の 場 合,数10sに
と え ば,60rpmの
続 時 間 は 約500msで く と も数10msの
節 角,ト
ル ク,加 速 度
わ た る 変 化 を調 べ る 必 要 が
サ イ ク リ ン グ の 場 合,1つ
の ス トロ ー クで 筋 活 動 の持
あ り,こ の 間 の ダ イ ナ ミ ッ ク な 神 経 筋 活 動 を探 る に は 少 な
時 間変 化 を識 別 で きな け れ ば な らな い.一
方,筋
る場 合,エ
ネ ル ギ ー 代 謝 が 変 化 す る時 間 ス ケ ー ル を考 慮 して,表
数100ms∼
数10sの
疲労 を評価す
面筋電 図か らも
区 間 内 で 数 秒 ご と の 変 化 で 十 分 意 味 の あ る 評 価 指 標 を 使 う必
要 が あ る. 表 面 筋 電 図 は,神 経 筋 系 の 制 御 情 報 とMUAPに
影 響 を与 え る エ ネ ル ギ ー代 謝
の 情 報 で あ るた め,運 動 を統 合 的 に解 釈 す る に は 十 分 で は な い .今 後,計
測 や処
図6.15 運動 に関 与す る要 因 脳 か らの 運 動指 令 は筋へ 向 か い,表 面筋 電 図 と して計 測 さ れ る.運 動 の 維 持 に は循 環 器 系 を制 御 す る 自律 神 経系 が 関与 す る.神 経 筋活 動 と 自律 神 経 活動 とで は時 間 ス ケー ル が1000倍 も違 う.さ らに,運 動 の動 機 づ け が その外 側 にあ る
理 シ ス テ ムの 高性 能 化 に よ っ て,さ
ら に心 電 図 か ら得 られ る 自律 神 経 情 報 や エ ネ
ル ギ ー 代 謝 そ の もの との 統 合 的 な 解 析 が 容 易 に で き る 時 代 に 入 ろ う と し て い る. そ こ で 求 め られ る こ と は,基 本 的 な計 測 と解 析 法 の導 入 は も ち ろ ん の こ と,神 経 科 学 や運 動 生 理 を考 慮 した 解 釈 が 可 能 な 計 測 と解 析 法 の 開 発 で あ る.
参 考文献 1) ISEK(http://www.isek‐online.org) 2) SENIAMプ 3) Hermens
ロ ジ ェ ク ト(http://www.seniam.org/) HJ,Freriks
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Comput,42,429‐508
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SH,Wotiz R,Hochstein
multi‐channel
TX,October 8) Nawab
signals,Proc
R,De
a knowledge‐based
9) De
EMBS,San
Luca
Int
Conf
Luca
system
for
P,Roy
functional
Austria,June
CJ:Improved
decomposition
IEEE
of
EMBS,36‐37,Houston,
EMG
resolution
SH,Moore
motor
of pulse
decomposition,Proc
Francisco,CA,September
CJ,Bonato
identifying
superpositions
26th
Ann
Int
in
Conf
(2004) J,Vadnais
activities,Proc
A:EMG‐based XIVth
Congress
approach
to
ISEK,Vienna,
(2002)
10) Oddsson LI,De Luca
presence
CJ:Next‐generation
Ann
(2002)
SH,Wotiz
IEEE
L,De Luca
EMG
CJ:Activation
of chronic
low
back
imbalances
pain,J Appl
in
lumbar
spine
muscles
in
the
Physiol94,1410‐1420(2003)
11) 人 間 生 活 工 学 研 究 セ ン タ ー(http:www.//hql.or.jp/gpd/jpn/www/) 12) Pozzo
M,Bottin
A,Ferrabone
acquisition
system
electrode
arrays,Med
13) Masuda
T,Sadoyama
motor
units measured
for
R,Merletti
long‐term
Biol Eng
surface
channel
electromyogram
wearable
recording
with
Comput,42,455‐466(2004)
T:Topographical
with
R:Sixty‐four
map
a grid surface
of
innervation
electrode,IEEE
zones
within
Trans
Biomed
single
Eng,
BME‐35,623‐628(1988) 14) Helmholtz‐Institute
Aachen,Biophysical
Measurement
Techniques
(http://www.ame.hia.rwth‐aachen.de/research/bpmt/indexE.html) 15) Delsys
Inc.(http://www.delsys.com)
16) DemItalia 17) Ware
s.r.l.(http://www.demitalia.com/demitalia/index.htm)
it well,Ed.Bonato
18) Noraxon
P,IEEE
19) MATLAB(Mathworks 20) Mathematica
Med
Biol
Mag,22,18‐132(2003)
Inc.:http://www.mathworks.com/) (Wolfram
21) LabVIEW(National
Research Instruments
22) 辛 徳,嶋 田 修,佐 藤 誠,小 池 康 晴:筋 の 推 定,電
Eng
Inc.(http://www.noraxon.com/)
Inc.:http://www.wolfram.com/) Corporation:http://www.ni.com/)
肉 骨 格 系 の 数 式 モ デ ル に よ る腕 の ス テ ィ フ ネス
子 情 報 通 信 学 会 論 文 誌,J87‐D‐(9),1860‐1869(2004)
23) 小 池康 晴,広 瀬秀 顕,飯 島敏夫:筋 電 信号 を用 い た腕 の運動 制御,日 本神 経 回路 学
会誌
10(1),2‐10(2003)
24) Manabe Mime
H,Hiraiwa Speech
25) Manabe 26th
A,Sugimura
Recognition,CHI2003,794‐795
H:Evaluations Ann
T:Unvoiced
Int Conf
of the IEEE
ring
speech
recognition
using
EMG:
(2003) shaped
EMBS:2188‐2191(2004)
EMG
measurement
system,Proc
第7章
役立 つ情 報
筋 電 図 を利 用 した り,筋 電 図 の 研 究 をす る た め に有 用 と思 わ れ る情 報 を本 章 に ま とめ た.ま ず,本
書 を執 筆 す る動 機 の1つ で あ っ たISEKの
を転 載 して翻 訳 した.次
筋 電位計測 の標準
に,筆 者 らが 関 係 して 明 らか に した 神 経 支 配 帯 の 分 布 図
を掲 載 し た.
7.1 ISEKのEMG
Standards
ISEKの
学 術 論 文 誌 で あ るJournal
(JEK)に
は,毎
of Electromyography
面 筋 電 図 関 係 の 論 文 が 掲 載 さ れ る 主 要 な 学 術 雑 誌 の1
つ で あ り,他 の 雑 誌 へ 投 稿 す る場 合 も含 め て,こ して 論 文 を作 成 す る 必 要 が あ る.ま
EMG
Standardsを
Standardsに
のEMG
Standardsを
よ く理 解
た,論 文 作 成 な ど研 究 を 目的 と しな い 場 合 で
参 考 に して 計 測 を 行 う こ とが 重 要 で あ る.
記 載 して あ る 事 項 は,あ
波 数 帯 域 な ど,特 別 な理 由 が あ れ ばEMG い.し
Kinesiology
号 の 巻 末 に 筋 電 位 の 計 測 結 果 を報 告 す る う え で 考 慮 す べ き点 が
ま と め て あ る.JEKは,表
も,こ のEMG
and
か し,そ の 場 合 で も,EMG
く まで 標 準 的 な もの で あ っ て,周
Standardsと
Standardsを
異 な って い て も問 題 は な
押 さ え た う え で,改
善や修正 を
行 うべ きで あ ろ う. EMG
Standardsの
含 ま れ て い て,医
な か に は,フ
ィ ル タの 種 類 や 窓 関 数 な ど,工 学 的 な 内 容 も
学 や 体 育 ・ス ポ ー ツ科 学,人
間工 学 な どの 分 野 の 方 に は馴 染 み
の な い 項 目が あ る と考 え られ る.こ れ らの 点 は,本 書 の な か で解 説 し た の で,参 照 して い た だ きた い.
International
Society
Standards
of Electrophysiology
for Reporting
EMG
and
Kinesiology
Data
Electrodes:
Reports on surface recording of EMG ‐ electrode
material(e.g.,Ag/AgCl)
‐ electrode
geometry(discs,bars,rectangular)
‐ size(e.g.,diameter,radius,width × ‐
use
of
gel
or
should include:
length)
paste,alcohol
applied
to
cleanse
skin,skin
abrasion
,shaving
of
hair,etc. ‐interelectrode ‐ electrode
distance location,orientation
point
Intramuscular ‐
wire
wire
‐insulation ‐length
to
tendons
,motor
should
be described
by:
steel)
tip needle)
of insertion or bipolar
‐location
of insertion
‐interelectrode
Needle
respect
material
‐if single
‐ type
electrodes
of insertion(e.g.,hypodermic
‐ depth
with
multi‐strand
of exposed
method
muscle
fibers direction.
materials(e.g,,stainless
‐if single‐or
‐
and
over
in the
muscle
distance
of ground
electrode
electrodes
material,size
wire
and
used,location.
their
of conductive
application contact
points
should
be
described
at the tip ,depth
and
include
of insertion
and
accurate
location
in the muscle.
Amplification:
Amplifiers should be described by the following: ‐if single,differential,double ‐input ‐
impedance
Common
Mode
Rejection
‐signal‐to‐noise ‐ actual
gain
Filtering ‐low
Since
Ratio(CMRR)
ratio
range
used.
of the raw
and/or
‐ filter ‐low
differential,etc.
high
EMG pass
should
be specified
by:
filters
types(e.g.,Butterworth,Chebyshev,etc.) and/or
the
pass
power
frequency in
of
which
350Hz
as
as
at
EMG
band
of the
should
be
be
made
EMG
contains
most
extremes,the filtered
of
above
10Hz
kept
in
only
in
power mind
as
or
50‐350Hz,for
above
150Hz
when
rare
will a low
that
accept
cut‐off,and for
surface
example,is and
designing
cases
in the
not
is preferred
10‐150Hz
signal's
of its power
journal
cut‐off;e.g.,10‐350Hz
the
portions
the
was
high in
will
of the
5‐500Hz
the
eliminated.This Exceptions
spectra
surface
recording.Filtering acceptable
cut‐off frequencies.
density
range
reports below
high
a
below
50Hz
study's
carry
full
not are
protocol. scientific
justification.
Intramuscular high
recordings
frequency
therefore
required.
cut‐off
should to
a minimum
be
made
with
450Hz.A
the
appropriate
bandpass
filter
increase of
of the
10‐450Hz
is
Needle
recording
should
Rectification:A
carried
EMG the
note
should
Processing:There signal
with
a low
described
Absolute
pass
filter
filter used.
Also
acceptable
should
Integrated
can
if full
or
EMG
accumulated
information
the
half‐wave
period
rectification
EMG as
Density
‐type
of window
it as
which
time
or voltage
it was
reset.
for
presentation each
used
to
of the EMG
taking
Mean
and
order
Square"or
constant
allows
should
.Authors
integrated
the
presented integrator
‐ number
padding
applied
with and
segment the
Fast
Fourier
Transform(FFT)(e.g.
algorithm(e.g.,FFT)
of zero
of
include:
Hamming,Hanning,Tukey,etc.) the
.
observation
be
reset
low‐
calculated
is actually
should to
of the
was
of
Mean
RMS
RMS
signal
used
a time
ms)
envelope"or"the
procedure
was
50‐250
with
type
time,and
calculation
prior
a"linear
the
smoothed. Such
to whether
used
filter
the average
reported,but
over
Spectra
epoch
a low‐pass
activity
threshold
‐time
‐taking
was
processing.Smoothing
constant(normally
time constant
over
just
of EMG
time
of the"Root
is sometimes than
methods
describe
giving
the time
time,rather
Power
made
with
is determination
include
at what
of 10‐1,500Hz.
of a given
as"smoothing
Value",while
pass
the
be
are several
ms".Alternatively,one
over
a bandwidth
out.
is best x
have
in the
epoch
and
the
resultant
resolution
,
‐ equation
used
to
calculate
the
Median
Frequency(MDF),Mean
Frequency
(MNF),etc. ‐the
muscle
Other
length
or
processing
accompanied
Computer
processing
important
into
is advisable
sampling
of recording.
techniques,are
is encouraged
rate
(350×2),and
encouraged
if authors
a
employed
twice
smoothing
sampling drastically
the
is also
the
if
observe
these
amplification
and
to
in
least
store
the
the future.In
this
the of
the
the
50‐100Hz
computer
should
not
performed
are
minimal
cut‐off
used,the
case
of the
minimal be
700Hz
and resolution.Sampling
will
computer,
in
case,the
was
accuracy
was
analysis
frequency
10‐350Hz
cut‐off
filter
in
highest
in
to improve
a low‐pass
of
further
signal
frequency
data
before
twice filter
higher
storing
differential
computer
bandpass
reduced.Rates the
in
highest
with
and
EMG(e.g.,after
is at
preferably
below
raw
is required
rate
sampling
be
accepted.
with
the
hardware
sampling
sufficient
to
recording
the
prior
rate
could
introduce
to be
smoothed
computer.
advisable
bandpass
filtering)in
or
could
bandpass
the
protocol
filter,e.g.,if
above
novel
EMG
stored
bandpass
into
time
Computer:
of the
that
of the
acceptable
3.It
the
filtering)be
modification
EMG
at the
factors:
bandpass
2.If
angle
by full scientific description.
EMG
rates
joint
techniques,especially
Sampling
1.It
fixed
be
that the
authors computer;in
used.Yet,to
filtering(written
consider
in
such avoid
software)in
cases
aliasing the
range
a of
raw
sampling
EMG(prior rate
of 2500Hz
high‐frequency prescribed
to
noise, above
should
be
performed
allows
prior
authors
to any
to perform
maximal flexibility.Yet,it and
may
recording be
of the with
at the expense
of bits,model,manufacturer
the computer
should
Normalization:In EMG,it
relative be
EMG
processing
signal.
This
approach
minimal
hardware
of computer
memory
and space
speed.
4.Number
the
further
is common
obtained reports
true
MVC
used
to sample
could
training.The
subjects
were
not
properly
force/torque
force/torque
from
MVC
appropriate
in which
the
the
voluntary
training,the
after
Normalizing
at maximal
obtaining
training.Without
where
to normalize
values
that
card
data
into
be given.
investigations
to the
aware
of A/D
and
with MVC
as 100%
expressed
as the appropriate
associated with 100% MVC
correlated
its respective
contraction(MVC).Authors subjects be
as
requires much
some
as
trained
EMG,
20‐40%
preliminary less
of that
not
accept
to elicit true MVC.
of force/torque,and percentage
to
should
journal,therefore,will
the force/torque with respect to its MVC
performed
was
value is commonly other force levels are
of MVC.Similarly,the
is designated as 100%.Both
EMG
force/torqueand EMG
normalization should include other relevant information such as joint angle(s) and/or muscle length(s)in isometric contractions,and range of joint angle, muscle length,velocity of shortening/elongation,and
load applied for non
isometric contractions.
Normalization of data collectedfrom one experimental condition with respect to other contractileconditions can be performed for comparative purposes and will be accepted by the journal only if full descriptionis given.
In
sum,the
‐ how
following
subjects
‐ joint
were
angle
‐ angles
of rise
‐ velocity
provided
when
normalizing
data:
MVC
shoulder
joints
studies
on
should
be
elbow flexion,the
position
of the
provided
of force
in
muscle
applied
EMG
obtain
joint,e.g.,for
and
ofjoint
‐load
to
be
of shortening/elongation
‐ changes ‐ ranges
should
muscle
of adjoining
‐ rate
length
angle/muscle
length
in non‐isometric
in non‐isometric
contraction
contractions.
Crosstalk:
Authors
should EMG
the
interelectrode carefully
demonstrate
crosstalk
contaminate
that
from
recorded
tightly
s uperfcial/thin Fuglevand
and
employed
when as
al.1)
should
recording
it is known
that
of
when
gathered
effort the
Selecting
location
was
muscle
the
recordings
working
on
trapezius).The be
consulted
surface
EMG
adipose
tissue
from
areas
enhances
of
over
the
area
where
did
muscle
not size,
should
many
be
narrow
working
with
et al.3)and also
subcutaneous
crosstalk2).
determine
electrode
of Winter
exist.Care with
to
interest
when work
if doubts
made
appropriate
(e.g.,forearm),or
muscles(e.g., et
near
signal.
distance
are
significant
muscles
planned,especially
muscle
tissue
trained
and/or
wrist
that
information
should adipose
be
筋電図データを報告するための標準 電 極:
表面筋 電図 の報 告 には以下の点 を記す こ と: 電 極 素 材(例,銀
/塩 化 銀)
電極 形 状(円 型,棒 型,四 大 き さ(例,直
径,半
角 型)
径,幅
電 極 ペ ー ス トの 使 用,皮
×長 さ)
膚 清 浄 用 ア ル コー ル,角
質 除 去,体
毛除去 など
電極 間隔 腱,運
動 点,筋 線 維 走 行 に対 す る 電極 の 位 置 お よび 方 向
筋 内 ワ イヤ ー 電 極 に 関 して は以 下 の点 を 記 す こ と: ワ イ ヤ ー 素 材(例,ス
テ ン レス)
単 一 撚 りあ るい は多 重 撚 り
絶縁素材 先端露 出部の長 さ 挿 入 方 法(例,皮
下 注 射 針)
挿入深 さ 単 極,双 極 の 別
筋への 挿入位置 電極 間距離 不 関電 極 の 種 類,位
置
針 電 極 とそ の適 用 に つ い て は,材 質,先 端 接 触 部 の 大 き さ,挿 入 深 さ,筋 内 の 正 確 な位 置 に つ い て記 載 す る こ と.
増幅: 増 幅 器 につ い て は 以 下 の 点 を記 す こ と: 単極,差
動,二
重 差 動 な どの 別
入 力 イ ン ピ ー ダ ンス
同 相 除去 比(CMRR)
信 号雑音 比 増幅率 の範 囲
原 波 形 の フ ィ ル タ処 理 に つ い て は 以 下 の 点 を記 す こ と: 低 域,高
域 通 過 フ ィル タ
フ ィ ル タ の 種 類(例,バ
タ ー ワ ー ス,チ
ェ ビ シ ェ フ な ど)
低 域,高 域遮 断周 波数
筋 電 位 信 号 の パ ワ ー ス ペ ク トル密 度 は,両 端 が5∼500Hzの ほ とん ど のパ ワー を 有 す る の で,低 域 遮 断 周 波 数 が10Hz以 が350Hz以
周 波数範 囲にその 上 や,高 域 遮 断周 波 数
下 の 報 告 は 受 理 しな い.表 面 筋 電 位 につ い て は,た とえ ば10∼350Hz
の 範 囲 が 望 ま しい.た
と え ば,10∼150Hzや50∼350Hzと
フ ィル タ は信 号 に含 ま れ る150Hz以
上 や50Hz以
い った 周 波 数 範 囲 の
下 の成 分 が 除去 され て い る の で
受 け 入 れ られ な い.実 験 計 画 を 策 定 す る場 合 に は,以 上 の 点 を念 頭 に置 くべ きで あ る.こ の 対 象 外 と な る の は科 学 的 な 正 当 化 が な され た まれ な場 合 の み で あ る.
筋 内 記 録 を行 う場 合 に は 高 域 遮 断 周 波 数 は最 低 で も450Hzに な い.し た が っ て,帯 域 通 過 フ ィル タ と して は10∼450Hzが
針 電 極 に よ る 記 録 で は10∼1500Hzの
上げ なければ な ら 要 求 され る.
周 波 数 帯 域 を含 むべ きで あ る.
整流化: 整 流 化 を行 う場 合 に は,全 波 整 流 か 半 波 整 流 か を記 す こ と.
筋電 図の処理: 筋 電 図 の 処 理 に は い くつ か の 方 法 が あ る.一 定 の 時 定 数(50∼250ms)の
低域
通 過 フ ィル タ で信 号 を 平 滑 化 す る こ と は,「 時 定 数x〔ms〕 の 低 域 通 過 フ ィル タ で 平 滑 化 した」と記 述 す る の が よ い.別 な 言 い 方 と して,低 域 通 過 フィル タの 時 定 数 の タ イ プ や 次 数 を記 し た う え で,「 線 形 包 絡 線 検 出 」あ る い は 「平 均 絶 対 値 」と記 述 す る こ と もあ る.
他 に可 能 な量 的 表 現 と して,RMSが
あ る.こ
れ につ い て も平 均RMSを
計算
し た際 の 時 間 範 囲 を記 す 必 要 が あ る.
積 分 筋 電 図が 時 々 報 告 され る.こ
の場 合 に は,信 号 は一 定 の 時 間 範 囲 に わ た っ
て(フ ィル タ され た の で は な く)積 分 され た もの で あ る.つ
ま り,あ る時 間 範 囲 に
わ た っ て 累 積 した筋 活 動 を 観 察 す る もの で あ り,積 分 器 を リセ ッ トす る際 に 時 間 を 基 準 と した の か,電 圧 を 基 準 と し た の か,さ
らに は リ セ ッ トの 閾値 につ い て の
情 報 を示 さ な け れ ば な ら ない.
パ ワー 密 度 ス ペ ク トル に つ い て は 以 下 の 点 を記 す こ と: ス ペ ク トル計 算 に用 い た 時 間範 囲 高 速 フ ー リエ 変 換(FFT)を ニ ン グ,チ
行 う前 に用 い た 窓 関 数 の種 類(例,ハ
ミ ング,ハ
ュ ー キ ー な ど)
ア ル ゴ リ ズ ム(例,FFT)
ゼ ロ詰 め の長 さ と そ の 結 果 と して の 分 解 能 中 央 周 波 数(MDF),平
均 周 波 数(MNF)な
どを計 算 した 際 の 数 式
計 測 時 の 筋 の 長 さ あ る い は 関節 の 固 定 角 他 の 処 理 手 法,特 で の み推 奨 され る.
に新 規 な 手 法 につ い て は,十 分 に科 学 的 な記 載 を行 っ た うえ
筋 電 図 の コ ン ピ ュ ー タ へ の 取 り込 み: 筋 電 図 の コ ン ピ ュ ー タ処 理 に お い て は,以 下 の 重 要 な点 を考 慮 す べ きで あ る.
1. 将 来 的 に 実 験 手 順 が 修 正 さ れ る可 能性 が あ る 場 合 に は,信 号 処 理 を進 め る前 に(た と え ば,増
幅 な らび に帯 域 通 過 フ ィル タ後 の),原
存 す る こ と を推 奨 す る.こ
の場 合 に は,サ
過 フ ィ ル タ の 最 高 周 波 数 の2倍 して10∼350Hzを
ン グ周 波 数 は700Hz(350×2)に
ン プ リ ン グ周 波 数 は,最 低 で も帯 域 通
とす べ き で あ る.た
用 い た 場 合 に は,コ
波 形 を コ ン ピ ュ ー タ に保
と え ば,帯 域 通 過 フ ィル タ と
ン ピ ュ ー タへ 取 り込 む 際 の 最 低 サ ン プ リ
な る.さ
らに 精 度 と解 像 度 を改 善 す る に は,こ
れ 以 上 の 周 波 数 とす る こ とが 望 ま しい.最 高 遮 断周 波 数 の2倍 以 下 の サ ンプ リ ン グ周 波 数 を 用 い る こ と は,受 け 入 れ られ な い.
2. コ ン ピ ュ ー タ に デ ー タ を 取 り込 む 前 に ハ ー ド ウ ェ ア の 低 域 通 過 フ ィ ル タ に よ
る平 滑 化 を 行 っ た場 合 に は,サ ンプ リ ン グ周 波 数 を 大 幅 に低 減 す る こ とが で き る. 平 滑 化 され た筋 電 図 を コ ン ピ ュ ー タに取 り込 む に は50∼100Hzで
十分 で あ る.
3. ま た,(帯 域 通 過 フ ィル タ を か け る 前 に)原 波 形 を コ ン ピ ュ ー タ に記 録 す る こ と も推 奨 さ れ る.こ しか し なが ら,さ
の 場合 に は,2500Hz以
上 の サ ン プ リ ン グ 周 波 数 を用 い る.
ら に信 号 処 理 を進 め る 前 に,高 周 波 数 ノ イ ズ の エ イ リ ア ス を避
け る た め に,上 記 の周 波 数 範 囲 につ い て(ソ フ トウ ェ ア で 記 述 した)帯 域 通 過 フ ィ ル タ をか け る必 要 が あ る.こ
の 方 法 を用 い れ ば,最 小 限 の ハ ー ドウ ェ ア と最 大 限
の 柔 軟 性 で 筋 電 位 の 記 録 を行 う こ と が で き る.し か しな が ら,コ ン ピ ュ ー タ の メ モ リー 空 間 と処 理 速 度 が 必 要 に な る.
4. コ ン ピ ュ ー タ へ の 取 り 込 み に 使 用 し たAD変
製 造 者 も記 す こ と.
換 カ ー ド の ビ ッ ト数,モ
デ ル,
正規化: 力 / トル ク と筋 電 位 を 関 係 づ け る研 究 に お い て は,最 大 随 意 収 縮(MVC)時 を基 準 と して,力
の値
/ トル ク とそ れ に 対 応 す る筋 電 図 を正 規 化 す る こ とが 普 通 で あ
る.被 験 者 に本 来 の最 大 随 意 収 縮 を行 わ せ る に は 予 備 的 な練 習 が 必 要 で あ る こ と に 注 意 す べ きで あ る.練 習 な し で は,適 切 な練 習 後 に比 較 して20∼40%低
い収
縮 力 しか 得 られ な い 場 合 もあ る.本 雑 誌 で は,被 験 者 が 本 来 の 最 大 随 意 収 縮 力 を 発 揮 す る よ う に訓 練 さ れ な か っ た報 告 は 受 けつ け ない.
最 大 随 意 収 縮 力 を基 準 に して 力 /トル ク を 正 規 化 す る 場 合 に は,最 力 を100%と
大随 意収縮
して 用 い るの が 通 常 で あ り,発 揮 され た 力 の レベ ル は %MVCで
示 され る.同 様 に,筋
電 位 に つ い て も100%MVC時
の 筋 電 位 を100%と
表
し て示
す.力 / トル ク に して も筋 電 位 に して も,等 尺 性 収 縮 の 場 合 に は 関 節 角 度 や 筋 長, 非 等 尺 性 収 縮 の 場 合 に は 関 節 角 度 や 筋 長 の 範 囲,短 縮 伸 張 速 度,負
荷 荷 重 な どの
関 連 情 報 を記 す べ きで あ る.比 較 の た め に,あ る 実 験 条 件 で 得 られ た デ ー タ を別 の 収 縮 条 件 に 関 して 正 規 化 す る こ と は可 能 で あ る が,そ
の場合 には詳細 を記載す
る必 要 が あ る.
ま とめ る と,デ ー タを正 規 化 す る場 合 に は以 下 の 情 報 を 記 す べ きで あ る: 最 大 随 意 収縮 力 を得 る た め に被 験 者 を どの よ う に訓 練 した か 関 節 角 度,筋
長
隣 接 す る 関 節 の 角 度 な ど,た
とえ ば,肘 の 屈 曲 を研 究 す る 場 合 に は 手 首 や
肩 関 節 の 状 態 も記 す べ きで あ る
力 の上昇率 短縮伸 張速度 筋 長の変化 非等尺 性収縮 の場合 の関節角 度や筋長 の範囲 非等尺性 収縮 の場合 の負荷 荷重
ク ロ ス トー ク(混 信):
記 録 され た 信 号 が 対 象 筋 の 近 傍 の 筋 か らの ク ロ ス トー ク で 汚 染 さ れ て い な い こ と を確 認 す る た め に 努 力 を払 っ た こ と を示 す べ きで あ る.適 切 な電 極 サ イ ズ,電 極 間 距 離,筋
上 の 計 測 位 置 の 選 択 につ い て 注 意 深 く検 討 す る 必 要 が あ る.特 に 小
さ な筋 が 密 集 して い る場 所(例,前
腕)や,表 層 の 薄 い筋(例,僧
帽 筋)に つ い て は
注 意 が 必 要 で あ る.疑 念 が あ る場 合 に はWinterら3)やFuglevandら1)の
仕事を
参 照 す る.皮 下 脂 肪 組 織 の 多 い領 域 か ら表 面 筋 電位 を導 出 す る 場 合 に も注 意 が 必 要 で あ る2).
7.2 神経支配帯 の実際の位置 筋 電 図 の 本 の なか に は,電 極 位 置 を写 真 や 図 で 示 した もの も多 い.こ れ らで は, これ まで の 表 面 筋 電 図 計 測 の 常 識 に基 づ い て筋 腹 に電 極 を 配 置 す る よ う に 指 示 さ れ て い る.し か し なが ら,本 書 で 強 調 して い る よ う に,筋 腹 に は神 経 支 配 帯 が 位 置 して い る場 合 が あ り,神 経 支 配 帯 を 挟 ん で双 極 電 極 を 配 置 す る と,振 幅 や 周 波 数 成 分 に 歪 み を も た らす 可 能 性 が あ る. そ こで,こ
れ まで 筆 者 らが 関係 して 発 表 して きた,四 肢4)な ら び に 体 幹5)の 筋
の 神 経 支 配 帯 の 分 布 図 を 掲 載 した.こ
れ らの 図 は,本 書 で も解 説 し た よ う に,多
点 表 面 電 極 で筋 電 位 を 導 出 し,筋 線 維 に沿 っ て伝 播 す る筋 電 位 信 号 の 起 始 点 か ら 神 経 支 配 帯 位 置 を推 定 して 描 い た もの で あ る. 通 常 の 表 面 筋 電 図 計 測 で は,筋 腹 に 電 極 を 配 置 す る とい う原 則 に 従 っ て 問 題 は な い が,関 節 角 度 が 変 化 す る場 合 や,ス ペ ク トル 解 析 を行 う場 合 な ど で,計 測 結 果 に 予 期 しな い 変 化 が 現 れ た場 合 に は,こ
こ に 掲 載 した神 経 支 配 帯 の分 布 図 を参
照 して,電 極 配 置 に 問 題 が な い か を検 討 して い た だ きた い.
図7.1 三 角筋 の 神 経 支 配帯4)
図7.2 上 腕 二頭 筋 の神 経 支 配 帯4)
図7.3 上 腕 三 頭 筋 の神 経 支 配帯4)
図7.4 前 腕屈 筋 群 の 神経 支 配 帯4)
図7.5 尺 側 手根 屈 筋 の神 経 支 配帯4)
図7.6 腕橈 骨 筋 の 神経 支 配 帯4)
図7.7 前 腕伸 筋 群 の 神経 支 配 帯4)
(a)
(b)
図7.8 手の 筋(母 指球 筋,小 指 球 筋,第 一 背側 骨 間筋)の神 経 支 配 帯4)
図7.9 外 側広 筋,大 腿 直筋,内 側 広 筋 の神 経 支 配帯4)
図7.10 縫 工筋 の神 経支 配 帯4)
図7.11 大 腿 筋 膜 張筋 の 神 経支 配 帯4)
図7.12 半腱 様 筋,大 腿 二 頭 筋 の神 経 支 配 帯4)
(a)
(b) 図7.13
前 脛 骨 筋,ヒ
ラ メ 筋(SOL),長
腓 骨 筋(PL),短
腓 骨 筋(PB)の
神 経 支 配 帯4)
図7.14 ヒラメ筋,腓 腹 筋 内側 の 神 経 支 配帯4)
図7.15 腓 腹 筋 の 神 経 支配 帯4)
(a)
(b)
(c) 図7.16
足 の 筋 の 神 経 支 配 帯4)
図7.17 僧 帽筋 の 神 経支 配 帯5)
図7.18 広 背 筋 の神 経 支 配 帯5)
参考文献 1) Fuglevand
AJ,Winter
action
potentials
DA,Patala with
spacing,Biological 2) Solomonow
and
surface
D:Detection
electrodes−influence
of
of
electrode
motor
units' size
and
Cybernetics,67,143‐153(1992) M,Baratta
wire
AE,Stashuk
R,Bernardi
EMG,crosstalk
M,Zhou
in neighbouring
B,Lu
Y,Zhu
muscles,J
M,Acierno
Electromyography
S:Surface
Kinesiol,
4,131‐142(1994) 3) Winter
DA,Fuglevand
theoretical
and
AJ,Archer practical
SE:Crosstalk
estimates,J
in
surface
Electromyography
electromyography: Kinesiol,4,15‐26
(1994) 4) Saitou
the EMG,
K,Masuda
upper
and
J Human
T,Michikami
lower
limb
D,Kojima
muscles
R,Okada
estimated
by
M:Innervation
using
multichannel
zones
of
surface
Ergol,29,35‐52(2000)
5) 白石恵,岡 田守 彦,増 田正,佐 渡 山亜 兵:筋 電 位多 点計 測 に よる体幹 背 部 の神 経支 配 帯 の 分 布,バ
イ オ メ カ ニ ズ ム,17,193‐203(1992)
参考文献
筋 電 位 の 計 測 と信 号 処 理 に 関 す る 参 考 資料 を以 下 に 挙 げ る.一 般 的 に,筋 電 図 と題 した 本 に は,内 容 の 大 部 分 が針 筋 電 図 を中 心 と した 医学 的 な もの が 多 い.そ の よ う な場 合,一
部 で 表 面 筋 電 図 につ い て 記 載 さ れ て い る こ とが あ るが,ペ
ージ
数 が 少 な く,掘 り下 げ た 記 述 や 実 際 に知 りた い ノ ウハ ウ まで は触 れ られ て い な い. た だ し,筋 電 位 の 発 生 機 序 な どは,針 筋 電 図 も表 面 筋 電 図 も変 わ ら な い の で 参 考 に な る. 一 方,医
用 計 測 や 体 育 ・ス ポ ー ツ,人 間 工 学 関 係 の 本 で は,心 電 図 や脳 波 な ど
の 電 気 生 理 学 的 計 測 の 一 部 と して 筋 電 図 が 取 り上 げ られ て い る こ とが 多 い.た
だ
し,電 気 生 理 学 的 計 測 も,そ の他 の 計 測 法 の な か の1つ にす ぎ ない の で,筋 電 図, 特 に 表 面 筋 電 図 に 関 す る 記 述 は,か
ぎ られ た もの に な る.
周 波 数 分 析 な どの 信 号 処 理 に 関 して は,一 般 的 な 時 系 列 信 号 処 理 の本 が あ るが, 筋 電 位 を対 象 と した も の は ほ と ん どな い.し 周 波 数 帯 域,計
た が っ て,サ
ン プ リ ング 周 波 数 や,
測 時 間 の 長 さ な どを,筋 電 図 の 例 に あ て は め て 各 自で 適 切 な解 釈
を加 え る 必 要 が あ る.
●表面筋 電図関係 [1] Basmajian
JV,De
Luca CJ:Muscles
Electromyography(5th ISEKの
Alive:Their
Revealed
by
ed.),Williams&Wilkins(1985)
創 始 者 で あ るJ.V.Basmajianと,そ
た 筋 電 図 の 名 著.表
Functions
の 弟 子 のC.J.De
面 筋 電 位 の 計 測 法 や ス ペ ク トル 解 析 を 始 め,針
運 動 単 位 発 射 パ タ ー ン の 分 離(Decomposition)な 筋 電 図 を 使 い た い 人 向 け で は な く,じ
Lucaが
執筆 し
筋電 位 に よる
ど が 解 説 さ れ て い る.す
っ く り と読 み た い 人 向 け.第5版
ぐに
以 後,新
版 が 発 行 さ れ て い な い の で,内 [2] De
Luca
CJ,Knaflitz
容 は 少 し古 く な っ て い る.
M:Surface
Electromyography:What's
New?
,CLUT,
(1992) 表 面 筋 電 位 の モ デ ル,計 事 項 を ま とめ た もの.小 は,ISEK
1990で
[3] Merletti
測 法,解
析 法 に つ い て1990年
冊 子 な の で 読 み や す い が,ほ
容
の ワ ー ク シ ョ ッ プ で 配 布 され た 資 料 が 基 に な っ て い る .
R,Parker
P:Electromyography:Physiology,Engineering
Applications,IEEE
Press,Series
and
on Biomedical
ヨ ー ロ ッパ に お け る 中 心 的 な研 究 者 の 一 人 で あ る,イ のR.Merlettiら
頃 ま で に 明 らか に な っ た と ん ど 手 に 入 ら な い.内
が ま とめ た 表 面 筋 電 図 の 本.計
NonInvasive
Engineering(2004) タ リ ア ・ トリ ノ工 科 大 学
測 法 の 基 礎 か ら応 用 ま で ,多 数 の
執 筆 者 が そ れ ぞ れ の 専 門 分 野 を 担 当 して い る. [4] 内 山 靖,小
林 武,間
瀬 教 史:計
測 法 入 門 計 り 方 ・計 る 意 味,協
同医書出版社
(2001) 理 学療 法 士 ・作 業療 法 士 向 けの 計測 法 の解 説 書.表 面筋 電 図 を 中心 として,図 や写 真 を用 い概 要 的 に記 述 されて い る.機 器 の特 性,動 作 筋 電図 ,筋 電 図反 応 時 間,疲 労筋 電 図,誘 発 筋 電 図,筋 線 維 伝導 速度 な どに も言及 され てい る. [5] Kumar
S,Mital
A:Electromyogram
in Ergonomics,Taylor&Francis(1996)
人 間工 学 的評 価 の道 具 と して の表 面 筋 電図 を,基 礎 か ら応 用 まで を幅広 く解説 して い る.特 に上肢 や肩 の作 業負 担,筋 疲 労 や腰 痛 の評 価 は参 考 に な る.豊 富 な 参考 文献 は研 究者 に はあ りが たい. [6] 米 国 保 健 福 祉 省 ・公 衆 衛 生 局 ・疾 病 予 防 セ ン タ ー ・国 立 産 業 安 全 保 健 研 究 所(著),
瀬 尾 明彦,小 木 和 孝(監 訳),井
谷徹,城
憲 秀,武 山 秀 麿,鶴 見 邦 夫,川 上 剛
(訳):表 面筋電 図の 人 間工学応 用,財 団法 人労 働科 学研 究所 出版 部(2004) ア メ リカ,カ ナ ダ,ス ウェ ーデ ンの筋 電 図 関係 者 に よって 執筆 され た本 を 日本 の労働 科 学研 究 者 が翻 訳 した もの で あ る.筋 電位 の波形 に関係 す る神 経 支配 帯 に つ い て の記 述 に欠 け るが,表 面 筋電 図の ため の解 剖 学 と生 理学 の 基礎 ,お よ び人 間工 学 的 な応 用 につ いて は参考 にな る.
●筋電 図関係(針筋電図 を含 む) [7] 千 野 直 一(編):臨
床 筋 電 図 ・電 気 診 断 学 入 門(第3版),医
学 書 院(1997)
ほ とん どが針筋 電 図 に関す る記 述 で,実 例 も医学 的内容 で あ る.解 剖 図,用 語, 図書 に 関す る付 録が あ り,参 考 に なる. [8] 廣 瀬 和 彦:筋
電 図 判 読 テ キ ス ト,文 光 堂(1992)
表 面 筋 電 図 に 関 し て は 簡 単 に 触 れ られ て い る だ け で,ほ あ る が,図
と説 明 が 対 に な っ て い て わ か りや す い.ま
とん どは 医学 的 内容 で
た,生
理 学 的基 礎 もわか り
や す く解 説 され て い る. [9] 堀 浩,他:脳
波 ・筋 電 図 用 語 辞 典,永
日本 臨床 神 経 生理 学 会(旧:日
井 書 店(1999)
本 脳 波筋 電 図学 会)の 関係 者 が まとめ た,脳 波
と筋電 図 に 関す る用 語 の 解 説.特 に 日本語 で 論文 を まとめ る場 合 に は,標 準 的 な 用語 に合 わせ る うえで参 考 にす る とよい.
●解 剖学 [10] 栗 山 節 郎(監
修):身
体 運 動 の 機 能 解 剖,医
道 の 日本 社(1997)
各筋 の機 能,神 経 支 配,触 診 の説 明に加 え,起 始停 止 部位 が イ ラス トで わか り や す く説 明 され て い る.ま た,ど の よ うな動作 を行 え ば対象 の筋 を収 縮 させ るこ とがで きるか,エ クサ サイ ズ方法 を例 に解 説 されて い る. [11] 河 上 敬 介,小
林 邦 彦: 骨 格 筋 の 形 と触 診 法,大
各 筋 の 起 始,停
止,作
用,神
い て 詳 し く解 説 さ れ て い る.ま
峰 閣(1998)
経 支 配 の 説 明 に 加 え,各 た,豊
筋 の形 お よび触 診法 につ
富 な 献 体 の 解 剖 写 真 お よ び イ ラ ス トは,各
筋 の 線 維 方 向 を 理 解 す る の に 役 立 つ. [12] 足 立 和 隆(訳):よ
くわ か る 筋 の 機 能解 剖,メ
デ ィ カ ル ・サ イ エ ン ス ・イ ン タ ー ナ
シ ョ ナ ル(2000) 各 筋 の 付 着,神
経 支 配,機
能 の 説 明 に加 え,起 始 停 止 部 位 が イ ラ ス トで 示 さ れ,
そ れ を 基 に 筋 形 を 書 き込 む よ う に な っ て い る ワ ー ク ブ ッ ク.ま
た,対
象 の 筋 の働
きを 確 か め る た め の 方 法 が 簡 単 に 説 明 さ れ て い る. [13] 栢 森 良 二(訳):筋
電 図 の た め の 解 剖 ガ イ ド第3版,西
各 筋 の 神 経 支 配,起
始,停
止,検
て も イ ラ ス トで 説 明 され て い る.針 で あ る が,表
村 書 店(1997)
査 肢 位 の 説 明 に 加 え,電
極 の 挿 入位 置 につ い
電 極 で 筋 電 位 を 導 出 す る た め の ガ イ ドブ ッ ク
面 電 極 を用 い る 場 合 に も参 考 に な る.
●生体計測全般 [14] 桜 井 靖 久(監
修):ME早
分 か りQ&A,南
山 堂(1993)
針筋 電図,表 面 筋電 図,誘 発 電位 の 導出 法がQ&A方
式 で記 述 され てい る.導 出
法 に 関 して は針 筋 電位 が 中心 で あ るが,針 筋 電位 と表面 筋 電位 の 波 形 の比 較 に も 触 れ られて い る. [15] 加 藤象 二郎,大 久 保発 夫(編): 初 学者 のた めの生 体機 能 の計 り方,日 本 出版 サー
ビ ス(1999) 筋 電 図 に か ぎ らず,電
気 生 理 学 的 計 測 の 基 礎 が 記 述 さ れ て い る.ま
活 動 度 を測 る 」 と して,表
面 筋 電 図,針
た,「 筋 肉 の
筋 電 図 に 関 す る解 説 が あ り,ま
さ に初 学
者 に わ か りや す い 内 容 に な っ て い る.
[16] 産 業技 術 総合 研 究所 人間福 祉 医工 学研 究 部門(編):人
間計測 ハ ン ドブ ック,朝 倉
書 店(2003) 経 済産 業 省 が主 導 した 「人 間感 覚計 測応 用 技術 」 プ ロジ ェ ク トの 関係研 究 者 が 中 心 とな って まとめ た総 合的 な解 説.こ の プ ロ ジェ ク トで は,使 い やす さな どの 主観 的 な感 覚量 を定量 化 した り客 観 的 な生 理 量 で代 替 す る こ とに よ り,感 性 を産 業 に取 り入 れ よ う と した もの.こ の本 で は,こ れ らの手 法 の基 礎 か ら研 究 成 果 ま で を,多 数 の専 門家 が執 筆 した.こ れ らの手 法 をユ ーザ ー と して使 う方 では な く, 手法 自体 を研 究対 象 にす る研 究 者向 け. [17] 深 代 千 之,平
野 裕 一,桜
井 伸 二,阿
江 通 良:ス
ポ ー ツ バ イ オ メ カ ニ ク ス,朝
倉書
店(2000) ス ポ ー ツ 関 係 で 筋 電 図 を取 り扱 っ た 書 籍.ス 容 な の で 量 的 に は そ れ ほ ど多 くは な い が,表
ポ ー ツバ イ オ メ カニ クス中心 の 内
面 筋 電 位 の 計 測 お よ び処 理 に 関 して
コ ンパ ク トに ま と め られ た 記 述 が あ る.
[18] 臨床歩 行 分析 懇談 会(編): 臨床 歩 行分析 入 門,医 歯 薬 出版(1989) 整 形 外 科 や リハ ビ リテ ー シ ョ ン の 臨 床 家,研 の 手 法 の1つ
究 者 を対 象 に し た 本 で,歩
と して 筋 電 図 が 取 り上 げ られ て い る.筋
行 分析
電 図 一 般 で は な く,歩 行 分
析 との 関 連 で 筋 電 図 の 使 い 方 を 知 る に は 適 して い る.
●信 号処理 [19] 佐 藤 俊 輔,木
竜 徹,吉
川 昭: 生 体 信 号 処 理 の 基 礎(ME教
科 書 シ リ ー ズ),コ
ロナ
社(2003) 日本 語 で 書 か れ た,生 [20] Semmlow,JL:Biological
Applications(Signal
体 信 号 処 理 の 教 科 書. and
Biomedical
Image
Processing:Matlab‐Based
Processing and Communications,22),
Marcel
Dekker
Inc.(2004) 例 題 を通 じて生体 信 号 や医 用 画像 にお け る信号 処 理 の さ ま ざま な方 法 を比 較 す るこ とで,理 解 を深 める こ とが で き る.ス ペ ク トル解析 や フ ィル タ設 計 の基 礎 か ら時 間周 波 数解 析,適 応 信 号 処理,多 変量 解析,画 像変 換 や再 構 成 につ い て述べ られ て い る.CD‐ROMに
は掲 載 されて い る図 をす べ てMATLABで
再 現 で きるプ
ロ グ ラ ム が 入 っ て い る た め,容
易 に,他
の生 体信 号 や画像 に対 して も解析 を適 用
す る こ とが で き る. [21] Northrop,RB:Signals
Press
and
Systems
Analysis
in Biomedical
Engineering,CRC
(2003)
内 容 は,ス
ペ ク トル 解 析 の 基 礎 か ら時 間 周 波 数 解 析 ま で を含 み,信
解 析 や 生 理 学 的 シ ス テ ム の 特 徴 が 解 説 さ れ て い る.CD‐ROMこ い が 図 が 豊 富 で 理 解 しや す く,特 やMATLABに
に,LabVIEWに
号 と雑 音 の
そ添付 され て い な
よ る時 間周 波 数解 析 の ツー ル
つ い て 解 説 が あ る.
[22] Devasahayam,SR:Signals
and
Processing
and
Publishers
(2000)
Physiological
Systems
Systems
in Biomedical
Engineering:Signal
Modeling,Kluwer
Academic/Plenum
解 析 法 は 基 礎 か ら時 間 周 波 数 解 析 まで 網 羅 して い る 一 般 的 な も の で あ る が,生 体 信 号 の モ デ ル 化 や シ ス テ ム 論 的 な ア プ ロ ー チ が 解 説 さ れ て い る.生 の 本 で は 珍 し く,筋 他,神
経 活 動 電 位,感
あ る.基 ROMに
体 信 号処 理
収 縮 や 筋 電 位 の モ デ ル の 解 説 に2つ の 章 を さ い て い る.そ 覚 系,瞳
孔 調 整,循
環 器 系,免
の
疫系 な どのモ デ ルの 解 説が
礎 を 理 解 す る た め の 実 行 形 式(Windows OS上)の
プ ロ グ ラ ム がCD‐
入 っ て い る.
[23] Bruce,EN:Biomedical
Signal
Processing
and
Signal
Modeling,WileyInterscience
(2000) 生 体 信 号 処 理 の 基 礎 に 加 え て,特
に,雑
音 と は 何 か,生
体 信号 の確 率過 程 と し
て の 取 り扱 い や 非 線 形 モ デ ル に つ い て 解 説 が あ る.
●関 連 ウ ェ ブペ ー ジ [24] 国際電 気生 理運動 学 会 http://www.isek‐online.org/ 表 面 筋 電 図 や 動 作 解 析の 研 究 が 発 表 さ れ る 国 際 電 気 生 理 運 動 学 会(International Society
of Electrophysiological
Kinesiology:ISEK)の
サ イ ト.本
書 で も取 り上
げ た 筋 電 位 計 測 の 標 準 が 掲 載 さ れ て い る. [25] ボ ス ト ン 大 学 神 経 筋 研 究 セ ン タ ー(NeuroMuscular
Research
Center:NMRC)
http://nmrc.bu.edu/ "Muscles
Alive"の
の 研 究 所 で,こ られ な い.針
共 著 者 で も あ るC.J.De
Luca教
授 が 率 い る研 究 所.工
学系
れ ほ ど 大 規 模 に 筋 電 図 関 係 の研 究 を して い る と こ ろ は ほ か で は み
筋 電 位 の 運 動 単 位 発 射 へ の 分 解(Decomposition)の
解 説 も あ る.
[26] SENIAM
Project(Surface
Electromyography
for the
Non‐Invasive
Assessment
of Muscles) http://www.seniam.org/ ヨ ー ロ ッパ に お け る表 面 筋 電 図 研 究 の プ ロ ジ ェ ク トの サ イ ト.電 極 の 選 定 や 設 置 位 置 に 関 す る 推 奨 事 項 が ま と め られ て い る. [27] LISiN‐Centro
di biongegneria
del Politecnico
http://www.lisin.polito.it ヨー ロ ッパ の 中 心 的 な 研 究 者 で あ るR.Merletti教 図 の 活 用 を 目指 し て,さ [28] 新 潟 大 学 EMGウ
授 が 率 い る 研 究 所.表
面 筋電
ま ざ ま な解 析 法 や 装 置 の 開 発 を行 っ て い る.
ェブサ イ ト
http://earc.bsp.bc.niigata‐u.ac.jp/emg.html 本 書 の 執 筆 者 の 一 人 で あ る 木 竜 徹 が 解 説 し た 表 面 筋 電 図 の サ イ ト.表 関 係 の 情 報 源 ポ ー タ ル を 目 指 し て い る.
面筋 電 図
索
引
■ あ
■ 英 数字 100%MVC法 ANN(人
ア ース 電極
16
50%MVC法
工 ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク ) 95,114,126,127
ARV(整
流 平 滑 化)
CAL(校
正)
CMRR(同
電 図)
19
入 力―
18
25
皮 膚―
133
25
25
1
電 図 反 応 時 間)
ウェ ア ラ ブル 計測
18
118
I EMG
43,46
運 動単 位(MU)
I SEK
107
運 動単 位 活 動 電位(MUAP) 運 動 単位 活 動 電位 列 5
LF/HF MDF(中 MFCV(筋 MNF(平 M‐RT(機 MU(運 MUAP(運 MVC(最
88 央 周 波 数)
均 周 波 数)
運 動 点
58
96
28
エ イ リア ス
18
24
3
動 単 位 活 動 電 位) 大 随 意 収 縮)
ワ ー ス ペ ク ト ル 密 度 関 数)
乗 平 均平 方 根) 覚 的運 動 強 度)
43 84
127
運 動 ニ ュ ー ロ ン)
50
■ か 課 題 間 比較 法
27
グ ナ ル対 ノイ ズ比)
α運 動 ニ ュ ー ロ ン(α‐MN)
音 声 認識
5
16
RMS(自 RPE(自 MN(α
5
55
械 的 反 応 時 間) 動 単 位)
3
運 動 単位 発 射 テ ー ブ ル
55
線 維 伝 導 速 度)
PDS(パ
S/N比(シ α‐
116
イ ン ピ ー ダ ン ス
気 力 学 的 遅 延)
EMG‐RT(筋
20
7,9,22,29,71,86,94
イ ン ナ ー マ ッ ス ル
25
97,112
Standards
EMG(筋
ア レイ電極
フ レ キ シ ブ ル―
43
相 除 去 比)
EMG
7,27,30,35,48,55,94
ア ウ ター マ ッスル
23
decomposition EMD(電
32
ア ー チ フ ァ ク ト
17
2
活 動 参加 感 度 23
17
3
2
機 械 的 反応 時 間(M‐RT) 義手 1 義手制御
95
18
基 線
35
記 録 電 極
32
主観 的 指標
84
受動電極
7,21,31
筋 音 図
103
自律 神経 系 活 動
筋 線 維
2
神経筋接合部 2
筋 線 維 組 成
71
神 経 軸索
筋 線 維 伝 導 速 度(MFCV) 筋 張 力
39,58,62,70,71,73,116 3,10,18,101
筋 電 位
1
信 号電 極
32
5
95,114
筋 電 図(EMG)
1
スペ ク トル解 析
9,43,46
50
1 1
―反 応 時 間(EMG‐RT) 筋 疲 労
2
神経支配帯 3,9,28,49,56,58,86,94,117 神経終板 2 人 工 ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク(ANN)
筋 電 位 信 号
積 分― 針― 表面―
87
18
10,39,59,71,74,85,87,101,115
筋 疲 労 評 価 指 標
86
正 規 化 15,48 生 検 71 整 流 化
44
整 流積 分
75
空 間 フ ィ ル タ
98
整 流 波 44 整 流 平滑 化(ARV)
ク ロ ス トー ク
8,21,48
積 分 筋 電 図(IEMG)
43 9,43,46
接続 ゲ イ ン
23
差 動―
原 波 形
39
ダ ブ ル差動―
格 子状 電 極
7
接地 電 極 32 ゼ ロ位 相 ず れ フ ィル タ ゼ ロ詰 め 51
117
校 正(CAL) 交 流雑 音 33
7
23
全 か 無 か の法 則
3
線 形 予 測モ デ ル
95
41
■ さ サ イズ の 原理
双 極 6 速 筋 線維
3
最 大M波 法 17 最 大 随 意収 縮(MVC) 最 大 随 意収 縮 力 差 動 接続 7 ダブ ル―
16
■た
48 脱分 極 3 ダブ ル差 動接 続
7
サ ンプ リン グ周 波 数
26
多用 途 生 体計 測 器 探査 電 極
自覚 的運 動 強度(RPE) 84 時 間周 波 数 表現 99,123 シグ ナ ル対 ノ イズ 比(S/N比) 自乗 平 均 平 方根(RMS) 実効 値
43
時定数 24,46 集合平均 47
70
43
7 44
32
チ ェ ビ シ ェ フ フ ィ ル タ
27
遅筋 線維
40
70
中央 周波 数(MDF) チ ュ ー キ ー
53
中枢性 疲 労
59
55
表 面電 極
電 極
21
格 子状― 117 受 動― 7 能 動― 7 表 面― 1 ―ペ ー ス ト
127 127 59
59中枢性 ― 59 末梢性
31
フ ィル タ ゼ ロ位 相 ず れ
指 輪型 表 面― 127 電 気 力学 的遅 延(EMD)
18,47
― 41
チ ェ ビ シ ェ フ― ハ イ パ ス―
40 24
バ ター ワー ス
同 期 化 62 動 作 識 別 95,126 導 出電極
1
指輪 型― 指輪型
︱ 59
疲労 疲労筋︱
定 性 的分 析 法 39 デ ィ ップ 8,56
― 40
ハ ム ・―
33
ロ ー パ ス―
32
同 相 除 去比(CMRR) 特 徴 量 39
24
フー リエ変 換
25
負荷 制御
50
84
プ リパ レ ー シ ョ ン
■ な ニ ー ドル ・バ イ オ プ シ 法 71
平 均周 波 数(MNF)
入 力 イ ン ピー ダ ンス
平 均振 幅
能 動 電極
25
116
9,55
39,43
ポ リグ ラ フ
7,22,29,31,36,119
■ は
44
■ ま
バ イオ プ シ
71
ハ イパ ス フ ィ ル タ
末 梢性 疲 労 窓 関 数 53
24
バ タ ー ワ ー ス フ ィ ル タ
59
40
発射頻度 ハ ニ ング
3 53
モ ー ター ポ イ ン ト
ハ ミング
53
■や
ハ ム
31
フ レキ シ ブル ア レイ電 極
6,28
33
ハ ム ・フ ィ ル タ
33
針筋電図 1 パ ワー ス ペ ク トラ ム
指輪型表面電極 127 容積導体 5
50
パ ワ ー ス ペ ク トル
■ ら
8,39,50,56,57,58,101,123 パ ワー ス ペ ク トル推 定 法
98
パ ワ ー ス ペ ク トル 密 度 関 数(PDS)
皮 膚 イ ン ピー ダ ンス 表 面 筋 電 図
1
50
力 学 的信 号 17 リサ ー ジ ュ図 形
81
25 ロー パ ス フ ィ ル タ
24,44
<著者紹介>
木 塚 朝 博 学 歴 筑波 大学大 学院体 育科 学研究科博士課程修 了(1995年) 博士(体 育科学) 現 職 筑波大学大学 院人間総合科学研究科助教授 独立行政法人産業技術総合研 究所人間福祉医工学部 門協力研究員 著 書 「運 動 と高 次 神 経機 能」(杏 林 書 院)ほ か 増 田 正 学 歴 東京大学工学系研究科情報工学修士課程修了(1978年) 工学博士 現 職 東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部生命 システムモデリング分野教授 著 書 「筋運 動 制 御 系」(昭 晃 堂)ほ か
木 竜 徹 学 歴
新潟大学大学院工学研究科修士課程修了(1977年) 工学博士 現 職 新潟大学大学院自然科学研究科教授 著 書 「 生 体 信 号 処理 の 基礎 」(コ ロナ社)ほ か
佐 渡 山 亜兵 学 歴
東京教 育大 学体育学部健 康学科 卒業(1966年) 学術博士 現 職 信州大学繊維学部感性工学科教授 著 書 「 感 性 工学 へ の 招待 」(森 北 出版)ほ か
バ イ オ メ カ ニ ズ ム ・ラ イ ブ ラ リ ー
表面筋電 図 2006年3月10日
第1版1刷
発行
編 著
著 バ イ オ メ カニ ズム 学 会 者 木 塚 朝 博 増 田 正 木 竜 徹 佐 渡 山亜 兵 学校法人 東京電機大学
発 行 所 東 京 電 機 大 学 出 版 局 代 表 者 加藤康 太郎 〒101‐8457 東 京都 千代 田区神 田錦 町2‐2 振 替 口座 00160‐5‐71715 電 話 (03)5280‐3433(営 業) (03)5280‐3422(編集)
印刷 三立工芸(株) 製本 渡辺製本(株) 装丁 右澤康之
〓 Society
of Biomechanisms
Printed in Japan
*無 断 で転 載 す るこ とを禁 じます 。 *落 丁 ・乱 丁 本 は お取 替 えい た します。 ISBN
4‐501‐32510‐0
C3047
Japan
2006