パ ワーエ レクトロニクスの 基 礎 新 しい パ ワーデ バ イス とその 応 用
岸
敬 二 著
東京電機 大学出版局
本 書 の 全部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ と は,著 作 権 ...
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パ ワーエ レクトロニクスの 基 礎 新 しい パ ワーデ バ イス とその 応 用
岸
敬 二 著
東京電機 大学出版局
本 書 の 全部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ と は,著 作 権 法上 で の例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます.小 局 は,著 者 か ら複 写 に係 る 権 利 の 管理 に つ き委 託 を受 けて い ます の で,本 書 か らの 複 写 を希 望 さ れ る場 合 は,必 ず小 局(03-5280-3422)宛 ご連 絡 くだ さ い.
ま
1947年(昭
え
和22年)12月23日,ア
実 験 机 でW.Shockley,
が
き
メ リ カ のBell
W. Brattain, J. Bardeenが
Telephone
Labolatoriesの
試 作 し た点 接 触 形 ゲ ル マ ニ ウ
ム トラ ンジ ス タ で 電 流 増 幅 作 用 を確 認 して か ら来 年 で ち ょ う ど50年 ,半 世 紀 に な る.こ の 日が 真 に 「トラ ン ジ ス タ の 誕 生 日」 で あ り,「 エ レ ク トロニ ク ス 時 代 の 幕 開 け の 日」 で あ っ た. こ の半 世 紀 を 振 り返 っ て 見 る と,集 積 回 路(IC, 展,設 計 ・製 造 技 術 の 進 歩,デ
LSI)を 含 む 半 導 体 工 学 の 発
バ イ ス の特 性 の 改 良 と種 類 の 多様 化,応
用分 野 の
拡 大 に は 正 に 目 を見 張 る もの が あ る.現 在 の わ れ わ れ の 生 活 は 半 導 体 デバ イ ス に 囲 まれ て成 り立 って い る とい っ て も過 言 で は な か ろ う.50年
前,誰
が今 日の よ
う な時 代 を予 測 した で あ ろ うか. トラ ン ジス タ は20世 紀 最 大 の 発 明 の一 つ とい え る. 筆 者 が,こ
の 図 書 と同 じ東 京 電 機 大 学 出 版 局 か ら1976年(昭
リス タ とそ の 応 用 技 術 」(昭 和52年 ょ う ど20年
和51年)に
「サ イ
度 電 気 学 会 著 作 賞)を 出 版 し て か ら今 年 は ち
に な る.こ の 「50周 年 」 に 向 け て改 め て20年
前 の この 本 を 見 る と,
そ の 内容 が あ ま りに も古 くな っ て い る こ と を痛 感 した .こ の た び,再 か ら機 会 を与 え られ,最 近 のパ ワー エ レク トロニ ク ス 技 術,特
び 同 出版 局
に デ バ イ ス の応 用
分 野 に力 点 を お い て ま とめ,「 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 基 礎 」 と改 め た.こ
の
記 念 す べ き 「50周 年 」 に 向 け て この 本 を 書 く こ とに な っ た こ と は大 変 に幸 せ で あ る. ペ ー ジ数 の 制 約 か ら,す べ て を詳 細 に解 説 し得 な か っ た が ,現 状 と将 来 動 向 を 知 る う え で参 考 に なれ ば幸 い で あ る. 1996年6月 岸 敬 二
目 次
は じめ に
第 1章
1
パ ワー エ レク トロニ クス の発 展 の経緯
1・1 パ ワー デバ イ ス の歴 史 と多 様 化 の流 れ
5
1・2 パ ワー デバ イ ス の 高 電 圧,大
6
1・3
電 流 化 の変 遷
パ ワー エ レ ク トロニ ク ス の概 要
7
演 習 問 題 〔1〕
第 2章
8
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス に 関 す る 定 義, 記 号,
2・1 電 力 変 換 に 関 す る記 号,用 語,組
合 せ
2・2
性
デ バ イ ス の 分 類,用
語,記
号,特
演 習 問 題 〔2〕
第 3章
用語 9 12
24
パ ワー デバ イスの基礎
(そ の 1)
− 動 作 原 理 とデ バ イ ス の 種 類 ― 3・1 半 導 体 の性 質
25
3・2
30
パ ワ ー デバ イ スの 動 作 原 理
3・3 パ ワ ー デ バ イ ス の 種 類,構 3・4
造,特
性 お よび 実 例
シ リコ ン単 結 晶 と ウ エ ー ハ の 特 性
3・5 デバ イ ス 製 造 プ ロセ ス と特 性 の相 関 性
41 57
63
演 習 問 題 〔3〕
第 4章
69
パ ワー デバ イスの基礎 (そ の 2) ― ゲ ー ト駆 動 回 路
,安
全 動 作 領 域,熱
抵抗―
4・1 駆 動 方 法 と駆 動 回 路
70
4・2 電 力 損 失 と安 全 動 作 領 域 お よび ス ナバ 回 路
77
4・3 各 種 パ ワ ー デ バ イ ス の特 性 比 較 と適 用 分 野
95
演 習 問 題 〔4〕
97
第 5章
電力変換回路
5・1 交 流-直 流 電 力 変 換 回 路
99
5・2 交 流-交 流 電 力 変 換 回 路
116
5・3 直 流-直 流 電 力 変 換 回 路
133
5・4 直 流-交 流 電 力 変 換 回 路
144
5・5 回 路 に 関 す る諸 事 項
157
演 習 問題
168
第 6章
〔5〕
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 応 用
(そ の 1)
− 電 力 へ の応 用 − 6・1 交 流-交 流 変 換(交 流 間接 変 換)
169
6・2
201
交 流-直 流 変 換
6・3 直 流-直 流 変 換(直 流 間接 変 換)
203
6・4 直 流-交 流 変 換
206
演 習 問題
216
〔6〕
パ ワー エ レ ク トロニ ク ス の 応 用
第 7章
(そ の 2)
−電動機への応用― 7・1 電 動 機 の原 理 と制 御
219
7・2 交 流 電 動 機 と そ の駆 動 方 法
236
7・3 一般 産 業 ・重 工 業 用 交 流 電 動 機 へ の 応 用
240
7・4
247
交 流 ・輸 送 シ ス テ ム へ の 応 用
演 習 問 題 〔7〕
第 8章
264
今 後のパ ワー エ レク トロニ クスの動 向
あ とが き
271
謝 辞
272
演 習 問 題 の 解答
273
索 引
277
は
1947年12月
じ
に
め
の ゲ ル マ ニ ウ ム トラ ン ジス タ は 画 期 的 な 発 明 で あ っ た が,ベ
ル研
究 所 で は 実 験 と理 論 に よ る裏 付 け お よ び応 用 機 器 を試 作 した の ち正 式 に発 表 し た の は1948年7月1日
で あ っ た.こ
トラ ンジ ス タ(Transistor)と
の年 が トラ ン ジ ス タ 元 年 と され て い る.
い う名 前 は,2 本 の針 の 間 で 電 流 を増 幅 し て伝 え
る可 変 抵 抗 とい う意 味 で,transferとresistorを
縮 め た 新 造 語 で あ る*.
この 年代 の半 導体 用 材 料 と し て ゲ ル マ ニ ウ ム単 結 晶 が 使 わ れ て い た が,す に シ リ コ ン単 結 晶 が 開 発 され た.シ で きる の で,こ
ぐ後
リコ ン トラ ン ジ ス タ の ほ うが 動 作 温 度 を高 く
の 時 代 以 降,半 導 体 の 基 本 材 料 は シ リコ ン単 結 晶 に な っ た.
この 時代 の トラ ン ジ ス タ は極 め て小 さ な信 号 を取 り扱 う程 度 で あ った が,電
子
管 増 幅 器 に 取 っ て換 わ る もの と して大 い に期 待 され た. 一 方,こ
の 時 代 の 電 力 変 換 用 の機 器 と して は,真 空 中 の水 銀 蒸 気 の ア ー ク放 電
を利 用 した 多 極 また は単 極 の 水 銀 整 流器 が 広 く使 用 され て い た.し
か し,逆 弧,
通 弧,失 弧 な どの特 有 の放 電 現 象 の た め 使 い に くい 点 が あ っ た.
1956年
に ア メ リ カGE社
ス イ ッ チ をSCR(Silicon
が シ リ コ ン を基 材 と し て 三 つ の 接 合 面 を もつ 半 導 体 Controlled
Rectifier)と
い う 名 前 で 発 売 し た.
こ の 時 の ピ ー ク 繰 返 し オ フ ・逆 電 圧 は200∼400V,オ で,大
電 力 を ス イ ッ チ さ せ る 能 力 は な か っ た が,小
SCRの
*
IEEE
のSCRの
特 性,動
作 が
れ を 契 機 と し て シ リ コ ン 単 結 晶 の 高 品 質 化,
設 計 ・製 造 技 術 の 向 上 に よ り, SCRの
Spectrum
程 度
さな 直 流 電 動 機 の速 度 制 御 お
よ び 小 型 の 電 子 ス イ ッ チ と し て 用 途 が 開 け て い っ た.こ 極 め て 魅 力 的 で あ っ た た め,こ
ン 電 流 は5∼16A
January1973,p.24-34
ピ ー ク 繰 返 し オ フ ・逆 電 圧 お よ び
オ ン電 流*は 年 ご とに増 加 した. このSCRと
い う呼 称 は,1963年
用 語 に変 更 さ れ,広
の 国 際 会 議 で サ イ リス タ(Thyristor)と
く使 わ れ て い る.
サ イ リス タ の 動 作 は,外 部 信 号(電 流,電 へ,ま
いう
圧,光)に
よ り,オ
フか ら オ ン 状 態
た オ ン か らオ フ状 態 に マ イ ク ロ秒 の オ ー ダ ー で 移 行 す る超 高 速 の 電 子 ス イ
ッチ で あ る. 初 期 の サ イ リス タ の応 用 は,機 械 的 ス イ ッ チ お よ び水 銀 整 流 器 の代 替 で あ っ た. サ イ リ ス タ の定 格 の 増 加 お よび 信頼 性 の 向 上 に よ り,ま ず 製 鉄 用 大 型 直 流 電 動 機 の速 度 制 御 に,次 な った.特
に50/60Hzの
電 力 変 換 お よ び直 流 送 電 に応 用 され る よ う に
に,高 電 圧 ・大 電 流 を取 り扱 う変 換 装 置 に は,光 で タ ー ン オ ン す る
8kV,3500A
級 の光 ト リガサ イ リス タが 使 わ れ て い る.
サ イ リス タ の優 れ た 特 性 に よっ て ベ ク トル 制 御 法 が 考 案 され,電
動機 と して か
つ て の直 流 電 動 機 か ら現 在 で は小 型 ・軽 量 で 整 流 子 の な い誘 導 電 動 機 に置 き換 え られ つ つ あ る.最 近 の 大 型 圧 延 機,送
風 機 お よ び新 幹 線 の 新 型 車 両 はす べ て誘 導
電 動 機 が 用 い られ て い る. 一 方,デ バ イ ス 内 の 電 子,正 孔 の 挙 動 が コ ン ピ ュ ー タ シ ミュ レー シ ョ ン に よ っ て明 確 に な り,よ り適 切 な デバ イ ス デ ザ イ ンが 可 能 とな っ た.さ
ら に,集 積 回 路
の 微 細 加 工 技 術 が サ イ リス タ に応 用 され て大 電 流 を タ ー ン オ フ で き るゲ ー トター ンオ フ サ イ リス タ(GTO)が
開 発 さ れ,各 種 イ ンバ ー タ に使 用 され て い る.
これ ら技 術 の進 歩 に よ っ て,ナ MOSFET(電
ノ秒 の オ ー ダ ー の超 高 速 ス イ ッチ ング が 可 能 な
界 効 果 トラ ン ジ ス タ の 一 種)やIGBT(絶
ン ジ ス タ)が 開 発 さ れ て,イ
ン バ ー タ の 高 効 率 化,小
縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ トラ 型 化 に貢 献 し,特 性 の 向 上
と と もに新 し い応 用 分 野 を開 拓 しつ つ あ る. 「パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス 」 とい う言 葉 は,1960年 に な っ た が,こ
*専
門 用 語 は,
の意 味 は 「パ ワ ー(電 力,電
第 2 章 2・
2 節 参照.
代 に 入 っ て使 わ れ る よ う
力 機 器)」 と 「エ レ ク トロ ニ ク ス(半
導体 デバ イ ス)」 と,そ れ を 「コ ン トロー ル(制 御)」 の 三 つ の技 術 で 構 成 され た 広 い技 術 分 野 で あ る. 本 書 は,「 トラ ン ジ ス タ発 明50周
年 」 に 当 た り,紙 面 の許 す 限 り,パ ワ ー エ レ
ク トロニ ク ス の 発 展 の 歴 史 を概 説 し,現 在 の 技 術 を で き る だ け広 く詳 し く解 説 す る と と も に,今 後 の発 展 動 向 を 予 測 し て い る.
第
1章
1947年12月
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 発 展 の 経 緯
に発 明 さ れ た トラ ン ジス タ は,従 来 の 電 子 管 の よ う な ヒー タ ー 電
源 お よ び余 熱 時 間 は不 要 で,振 動 に強 く,小 型 で ソ リ ッ ド構 造 の デ バ イ ス で あ る こ とが 最 大 の 特 徴 で あ っ た.半
導体 を材 料 と し て増 幅,ス
イ ッチ機 能 を も っ た 固
体 素 子 を総 称 して 半 導 体 デ バ イ ス(略 して デ バ イ ス)と い い,電 力 を 扱 うデ バ イ ス をパ ワー デバ イ ス と呼 ん で い る. 1950年 代 の トラ ン ジス タ の応 用 は,ラ
ジオ な どの 小 信 号 の増 幅 が 主 で あ っ た.
1956年 に,二 つ の トラ ン ジ ス タ を組 み 合 わ せ た構 造 と等 価 の,三
つ の接合 を
もつ デバ イ ス の 論 文 が 発 表 され た.こ れ は,信 号 を加 え る こ とに よ り,オ フ状 態 か らオ ン状 態 にス イ ッ チ して,オ
ン電 流 を 自己 保 持 で き る機 能 を もち,現 在 の サ
イ リ ス タ の構 造 と動 作 を示 唆 す る最 初 の 理 論 的 な論 文 で あ った. 1957年 に,ア はSCRと
メ リカGE社
が 初 め て 小 電 力 を ス イ ッチ で き るサ イ リス タ(当 時
呼 ば れ た)を 発 売 す る と と も に,頻 繁 に 「SCR Manual」
イ リス タ の特 徴 と その 応 用 分 野 を啓 蒙 した.ト
を出 版 し,サ
ラ ン ジ ス タ と と もに,サ
イ リス タ
の将 来 性 は 多 くの 企 業 に イ ンパ ク トを与 え,日 本 の 各 会 社 は積 極 的 に ア メ リカ か ら技 術 導 入 を行 った. そ の 後,日
本 で も小 型 の トラ ン ジ ス タ,サ
イ リス タ が 製 造 で き る よ う に な っ
た.初 期 の トラ ン ジ ス タ の 基 材 は ゲ ル マ ニ ウ ム で あ っ た が,そ わ っ て か らシ リコ ン単 結 晶 の物 性 お よび 高 純 度 化 の 研 究,結 を 介 して の電 子 と正 孔 の挙 動 の 研 究,接
の後 シ リコ ン に変
晶 内 に形 成 した 接 合
合 構 造 と不 純 物 濃 度 プ ロ フ ァイ ル の 設 計
と製 造 技 術 な どの 進 歩 に よ り,ト ラ ン ジ ス タ,サ イ リス タ の 特 性 は徐 々 に 向 上 し た. 1960年 代 は,日 本 のパ ワー エ レ ク トロ ニ クス の 黎 明 期,揺 そ の 後,パ
藍 期 と い え る.
ワー エ レ ク トロニ ク ス の核 とな る トラ ン ジ ス タ,サ
イ リス タ,す
な
わ ちパ ワ ー デ バ イ スの 進 歩 と と も に発 展 期 に入 り,日 本 のパ ワー エ レ ク トロニ ク ス 技 術 とそ の 応 用 分 野 は大 き く成 長 した . 現 在 の 日本 のパ ワー デバ イ ス の 性 能 お よび パ ワー エ レ ク トロニ クス 技 術 は世 界 の トッ プ レ ベ ル に あ る.
1
・
1
パ ワーデバ イスの歴史 と多様 化 の流れ
図 1・1は,シ
リコ ン を基 材 と した 半 導 体 デバ イ ス の 発 展 過 程 の 概 要 を 示 す .
図
図 中 の 上 部 は,パ
1・1
半導 体 デ バ イ スの 発展 の 歴 史
ワ ー トラ ン ジ ス タ,各 種 サ イ リス タか らな るパ ワー デバ イ ス
の 流 れ で あ る.図 中 下 部 の太 い 流 れ は,1961年
ご ろIC構
造 の 発 明 に よ り,上 部
の パ ワ ー デ バ イ ス の 流 れ か ら別 れ た 支 流 で,超 微 細 加 工 技 術 等 の 進 歩 と と もに IC,LSI,VLSIと
し て発 展 して い る.現 在 で は,支 流 の ほ う の製 造 個 数,売 上
金 額 が 本 流 の そ れ ら よ り も遥 か に大 き くな りつ つ あ り,将 来 に向 か っ て ます ま す
技 術 開 発 競 争,コ
ス トダ ウ ン競 争 は 熾 烈 に な っ て い る.
二 つ の 流 れ を結 ぶ 上 ・下 の 線 は,技 術 の転 用,波 及,応 用 を 示 す 流 れ で あ る. 例 えば,GTO, 形 成 技 術,微
MOSFET,
IGBTの
電 極 パ ター ン の製 造 に は, IC, LSIの 接 合
細 加 工 リゾ グ ラ フ ィー(写 真 食 刻)技 術 を応 用 し て い る.
・
2
1
パ ワーデバ イス の高電圧,大 電流化 の変遷
サ イ リス タ の 応 用 分 野 が 広 が る に従 っ て ます ます 大 きな 電 力 を取 り扱 う用途 が 増 え,こ の た め,サ
イ リ ス タ が制 御 し得 る電 圧,電
流 を増 加 させ る 強 い要 求 が あ
った. サ イ リス タ 1個 が 耐 え 得 る電 圧 を高 くす る ほ ど直 列 に接 続 す る個 数 を減 らす こ とが で き,ま た オ ン電 流 を大 き くす る ほ ど並 列 に 接続 す る個 数 を減 らす こ とが で き る.こ の た め,サ
イ リス タ 1個 当 た りの 電 圧 ・電 流 定 格 を増 加 す る ほ ど高 電
圧 ・大電 流 の 電 力 変 換 が 可 能 と な り,同 時 に変 換 装 置 を小 型 で,か を減 らす こ とが で き る利 点 が あ る.パ
つ,電 力 損 失
ワ ー デ バ イ ス の 例 と し て,図1・2(a)に
常 の サ イ リス タ 1個 の 定 格 オ フお よ び 逆 電 圧,定 格 オ ン電 流 の 変 遷 を,図(b)に
図1・2 代 表 的パ ワー デバ イス の電圧 ・電 流特 性 の変 遷
通
ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ(GTO)1
個 の定 格 オ フ お よ び逆 電 圧,定
格 ゲー ト
タ ー ンオ フ 電 流(負 の ゲ ー ト電 流 で タ ー ン オ フ し得 る定 格 オ ン電 流)の 変 遷 を 示 す. この 電 圧 ・電 流 定 格 の 増 加 は,デ バ イ ス の 設 計,製
造 技 術 の 向上 の ほ か,デ バ
イ ス の 基 本 材 料 で あ る シ リコ ン単 結 晶(特 に,FZ(Floating
Zone)法
で製 造 した
単 結 晶)の 品 質 向上 と大 口径 化 が大 き く貢 献 し て い る. サ イ リス タ の 高 電 圧 ・大 電 流 化 に よっ て,現 在 で は大 電 力 送 電 系 統 に直 接 接 続 した電 力 変 換 装 置 が 多 数 運 転 され て い る.
1・3 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 概 要
「パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス 」 と い う 概 念 は,1973年
図1・3
に,ア
メ リ カ のNewell
パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス と エ レ ク ト ロ ニ ク ス との 関 係
氏 が提 案 した 言 葉 で,「 パ ワー(電 力)と エ レ ク トロ ニ ク ス(半 導 体 デバ イ ス)お よ び コ ン トロー ル(制 御)の 三 つ の技 術 領 域 を結 びつ け る学 際 的 な 技 術 分 野 」 を意 味 して い る. 一 方,パ
ワ ー エ レ ク トロニ ク ス は,エ
レ ク トロ ニ ク ス全 体 か ら見 れ ば ほ ん の 一
部 で あ って,両 者 の 関 係 を明 快 に 図 示 す るの は は な は だ 難 しい. あ えて 図 示 す る と,図1・3の とい っ て もIC, LSI, VLSIを
よ うに な る.現 在 の エ レ ク トロ ニ ク ス の 中心 は何 使 用 した マ イ ク ロ コ ン ピ ュ ー タ,シ
グナル プロセ
ッサ と ソ フ トウ ェ ア技 術 で あ る.こ れ らか らそ れ ぞ れ の応 用 分 野 に 適 した信 号 処 理 ・伝 送 技 術,画 術 が 生 れ,そ
像 処 理 技 術,セ
ンサ ・ア ク チ ュエ ー タ技 術,電
力 ・動 力 制 御 技
れ ぞれ の 分 野 の発 展 の 原 動 力 に な っ て い る.
演
習
問
題
〔1〕
〔 問 題 〕 1.世 界 で 初 め て トラ ン ジ ス タ を 開 発 した の は,い
つ,誰
〔 問 題 〕 2.サ
イ リス タ の 起 源 に つ い て 述 べ よ.
〔 問 題 〕 3.パ
ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス と は どの よ う な 技 術 分 野 か?
〔 問 題 〕 4.サ
イ リス タ が 高 電 圧,大
電 流 化 し た 背 景 は何 か?
が,ど
こで か?
第 2章
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス
に関 す る定 義, 記 号, 用語
・
2
1
電力変換 に関す る記号, 用 語, 組合せ
パ ワ ー デ バ イ ス を 用 い て 電 力 の 変 換 を 扱 う技 術 を(半 導 体)電 力 変 換 技 術 とい い,パ
ワー エ レク トロ ニ ク ス の 中核 技 術 で あ る.パ ワ ー デ バ イ ス の機 能 は 損 失 の
小 さい 高 速 の電 子 ス イ ッチ で あ り,そ れ 自身 で はエ ネル ギ ー を蓄 積 で き な い . パ ワー デ バ イ ス を所 定 の機 能 で 動 作 させ て電 力 変 換 を行 うた め に は,パ
ワー デ
バ イ ス と と も に制 御 回 路,保 護 回 路 ,冷 却 装 置 が 必 要 で あ り,こ れ ら を収 納 した 装 置 を(半 導 体)電 力 変 換 装 置(ま た は 変 換 ユ ニ ッ ト)とい う. 電 力 変 換 の 信 頼 性 を 強 く求 め る用 途,す
な わ ち無 停 電 電 力 変 換 装 置 で は蓄 電 池
また は大 容 量 コ ン デ ン サ をバ ッ クア ップ電 源 と して補 助 的 に用 い る. パ ワー エ レク トロニ ク ス の 電 力 変 換 シ ス テ ム を,供 給 側 電 力,応 御 に よ り大 別 す る と,図2・1の
よ うに な る.同 図 で,タ
1・
2
図
電 力変 換 シス テム の概 要
用,目
イ プ-1は,供
的,制
給 側電 力
(交流 ま た は直 流)が 安 定 して お り,電 力 の 流 れ が 順 方 向(順 変 換)お よ び逆 方 向 (電力 回 生;逆
変 換)可 能 の場 合 で あ り,タ イ プ-2 は,供 給 側 電 力 が 不 安 定 の場
合 で あ る. 電 力 変 換 装 置 と その 組 合 せ を記 号 で 示 す と図2・2と な る.図(a)の
「チ ョ ップ
部 」 は,デ バ イ ス に よ りオ ン ・オ フ の み を行 う装 置 で あ る.
(b)電 力機 器 の 記号
(a)順 ・逆 変 換 装 置 の 記号 図2・2電
力 変 換,電 力機 器 に 関す る記 号
四 角 の 中 の 斜 め の 線 は,左 上 か ら右 下 に 記 号 の よ う に電 力 が 変 換 され て 流 れ る こ と を示 して い る.図(b)は
供 給 側 お よび 負 荷 側 の 電 力 機 器 を示 して い る.
商 用 電 力 の 電 源 と して交 流 と直 流 が あ り,負 荷 が 要 求 す る電 力 と して 交 流 と直 流 が あ る.ま た,交
流 の場 合,両
者 に は,電 圧,周
波 数,力
率,波
形 に含 ま れ る
高 調 波 な どの 条 件 が 異 な るた め,入 力(電 源)側 と出 力(負 荷)側 を結 ぶ 電 力 変 換 装 置 に は種 々 の 方 式 が あ る.図2・3に
代 表 的 な変 換 方 式 を示 す.
直 流 を 交 流 に変 換 す る逆 変 換(イ ンバ ー タ)で は,確 実 な転 流 動 作 が 運 転 上 必 要 条 件 で あ る.転 流 と は,回 路 に複 数 の デ バ イ ス が接 続 さ れ て い て,デ バ イ ス 間 で 同 時 に電 流 を通 じ る期 間 を も っ て行 わ れ る電 流 の移 り変 わ りを い う. 例 え ば,二
つ の デ バ イ ス の 陰 極 が共 通 に接 続 さ れ て い て 電 源 か ら両 方 に交 流 電
圧 が 印加 され て い る と き,陽 極 の電 圧 が 高 い ほ うの デバ イ ス に電 流 が 転 流 す る.
図2・3電
力変 換 の基 本 方 式
これ を電 源 転 流 とい う.例 え ば,負 荷 側 が直 流 機 の と き,そ の逆 起 電 力 に よ り陰 極 の 電 位 が 陽極 よ り も高 くな る と,デ バ イ ス の 電 流 は転 流 す る こ とな し に消 滅 し (こ れ を消 流 とい う),陽 極 の電 位 が 高 い ほ うの デバ イ ス に 電 流 が 移 る.こ れ を 負 荷 転 流 とい う.ゲ ー ト電 流 に よ りタ ー ン オ ンす る通 常 の サ イ リス タ の よ う に,オ ン電 流 を 自 分 自身 で オ フで きな い,す で は,L
な わ ち 自己 オ ン ・オ フ機 能 が な い デ バ イ ス
と C か らな る振 動 回 路 を例 え ば サ イ リス タ に 並 列 に 接 続 す る.そ の 振
動 電 流 に よ って サ イ リス タの オ ン電 流 を強 制 的 に ゼ ロ に して オ フ 状 態 に し,他 の デバ イ ス に 電 流 を移 す.こ
の よ うな 補 助 回路 と デバ イ ス の 機 能 を組 み合 わ せ た転
流 を イ ンパ ル ス 転 流 とい う. 自 己 オ ン ・オ フ 機 能 を も つ デ バ イ ス,例
え ば,ト
ラ ン ジ ス タ,ゲ
フ サ イ リ ス タ で 行 う転 流 を デ バ イ ス 転 流 と い う.図2・4に
図2・4 転 流方 式 の分 類
ー トタ ー ンオ
転 流 方 式 を 示 す.
転 流 方 式 は,交 流 電 源 に よ る他 励 式 転 流 と デバ イ ス の機 能 に よ る 自励 式 転 流 に 分 け られ る.
2
・
2 デバ イス の分 類, 用 語,
記 号,
特性
パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス,す な わ ち電 力 変 換 装 置 の 主 役 は 半 導 体 デ バ イ ス で あ る.半 導 体 デ バ イ ス と は,半 導 体 材 料 を 用 い,一
方 向 のみ非 可制御 の導通 機 能
(整流 ダ イ オ ー ド)を もつ か,一 方 向 の可 制 御 の オ ン機 能(通 常 の サ イ リス タ)あ る い はオ ン ・オ フ 機 能(ス イ ッ チ モ ー ドで 動 作 さ せ る トラ ン ジ ス タ,ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リス タ)を もつ 単 体 の 半 導 体 素 子 の 総 称 で あ る.本 書 で は,以 後 略 し て デ バ イ ス と い う こ と にす る.代 表 的 デバ イ ス の分 類,構
造 は次 の よ うで あ る.
2 ・2・ 1 デ バ イ ス の分 類 ① 整 流 ダ イ オ ー ドは,シ
リコ ン単 結 晶 ウ エ ー ハ に一 つ のpn接
合 面 を形 成 さ
せ た構 造 の通 常 の ダ イ オ ー ドと,n 形 半 導 体 に金 属 被 膜 を接 触 させ た 構 造 の シ ョ ッ トキ ー バ リア ダ イ オ ー ドが あ る(と もに 陽極,陰 ② バ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ は,シ npnの
3層 を 形 成 し,そ
のpn,npの
極 の 2端 子 構 造).
リ コ ン 単 結 晶 ウ エ ー ハ にpnpあ
二 つ の 接 合 で の 電 子 と正 孔 の 挙 動 で ス
イ ッ チ 動 作 を す る 自 己 オ ン ・オ フ機 能 を も っ た デ バ イ ス(べ ー ス,エ コ レ ク タ の 3端 子 構 造)で あ る.ス
号 と し て,べ
ー ラ トラ ン ジ ス タ と,ゲ Oxide
Semiconductor
号 を止 め る とオ
ー ス 電 流 に よ っ て オ ン ・オ フ 動 作 す る バ イ ポ
ー ト電 圧 で オ ン ・オ フ 動 作 す るMOSFET(Metal
Field Effect
ス タ),IGBT(Insulated
ミ ッ タ,
イ ッ チ モ ー ドで オ ン ・オ フ 動 作 さ せ る 程
度 の 信 号 を べ ー ス に 流 し て い る 期 間 の み オ ン 状 態 と な り,信 フ状 態 に な る.信
る い は
Gate
Transistor;金
Bipolar
属 被 膜 電 界効 果 トラ ン ジ
Transistor;絶
縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ
ト ラ ン ジ ス タ)が あ る.
③ サ イ リス タ は,シ npn,pnpの
リ コ ン単 結 晶 ウ エ ー ハ にpnpnの
4層 を形 成 し,そ の
三 つ の 接 合 面 で の 電 子 と正 孔 の 挙 動 で ス イ ッ チ 動 作 をす る デバ
イ ス(陽 極,ゲ
ー ト,陰 極 の 3端 子 構 造)で あ る.正 の ゲ ー ト信 号 に よっ て オ
ンの み動 作 す る転 流 タ ー ンオ フ形 の通 常 の サ イ リス タ と,正
と負 の ゲ ー ト信
号 に よ っ て オ ン とオ フ の両 方 の 動 作 を す る 自己 オ ン ・オ フ機 能 を もっ た ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ(「ゲ ー ト」 を 省 略 す る こ と が あ る;略 称GTO)が あ る. ゲ ー ト信 号 の代 わ りに光 を 照射 す る こ とに よ っ て オ ン動 作 す る光 トリガサ イ リス タ(陽 極,光 ④
入 力 端 子,陰 極 の 3端 子 構 造)が あ る.
この ほ か,単 体 の パ ワ ー デ バ イ ス と して,ト
ラ イ ア ッ ク,静 電 誘 導 サ イ リ
ス タ,静 電 誘 導 トラ ンジ ス タ が あ る.ま た,一
つ の ウ エ ー ハ に整 流 ダ イ オ ー
ドとサ イ リス タ を一 体 化 した逆 導 通 サ イ リス タ あ る い は トラ ン ジ ス タ とサ イ リス タ を組 み 合 わ せ た 複 合 デ バ イ ス が あ る. 電 力変 換,特 圧,電
に 逆 変 換 に とっ て,転 流 は必 要 条件 で あ る た め,そ
流,動 作 周 波 数 の デバ イ ス を選 択 す る必 要 が あ る.図2・5に
れ に適 した電 転 流 方 式 と適
す る デ バ イ ス とそ の 記 号 を示 す.
図2・5転
流 方式 とデバ イス とその 記号
デバ イ ス を タ ー ンオ ンあ る い は タ ー ンオ フ させ るた め に は,ゲ ー トあ る い はべ ー ス に信 号 を与 え な け れ ば な ら な い.図2・6に 号,制 御 信 号 波 形 の 例 を示 す.
代 表 的 な デバ イ ス の 接 合 構 造,記
*ゲ ー トパ ル スは幅 が 狭 くて もよいが,軽 ため 広 い幅 の ほ うが よい 場合 が 多い 。
図2・6デ
負荷 で も オン状 態 を保 つ
バ イ スの接 合 構 造,記 号,制 御 信号 波 形 の例
変 換 装 置 を設 計 す る場 合,デ バ イ ス の 特 性 を表 す 用語,記 な けれ ば な ら な い.表2・1に,例
号,波 形 を知 っ て い
と し て通 常 の サ イ リス タの 特 性 を表 す 用 語,記
号 を 示 す.個 々 の デ バ イ ス の 定 格 と特 性 は,電 圧 阻 止 特 性(静 特 性),動 (動特 性),熱
的 ・機 械 的特 性 で 表 示 され る.ゲ ー トタ ー ンオ フ サ イ リス タ で は,
ター ン オ フ機 能 を表 す特 有 の 用 語,記
2
・2・
2
作特性
サ イ リ ス タ の 定 格,
特 性,
号 が あ る.
用語
定 格 と は,デ バ イ ス が 所 定 の機 能 を発 揮 す るた め,電 気 的,熱
的 お よ び使 用 条
件 に つ い て 製 作 者 が 指 定 した 値 で,そ れ ぞ れ の デバ イ ス に表 示 さ れ て い る. い か な る瞬 間 で も,こ の 定 格 値 を超 え て使 用 す る とそ の デ バ イ ス は 破 壊 す る こ とを意 味 す る.次 に,通 常 の サ イ リス タ の ス イ ッチ動 作 の順 序 に従 い,(1)オ 状 態,(2)オ
フ状 態 か らオ ン状 態 へ,(3)オ
ン状 態,(4)オ
フ
ン状 態 か ら オ フ状 態
へ に つ い て波 形 と用 語 を説 明 す る. (1)オ
フ状 態
図2・7に,陽
極 電 圧 ・電 流 特 性 と用 語 を示 す.順
・逆 方 向
とも所 定 の 電 圧 ま で電 圧 を阻 止 し,温 度 に依 存 した わ ず か の 陽 極 電 流(オ フ電 流,
表2・1サ
イ リス タ の特 性 を表 す用 語,記 号 (JEC-189,
名 称(和文)
記
号
オ フ電 圧
Off-state
voltage
電 圧
ピー ク オ フ電 圧
VDM
Peak off-state voltage
ピー ク動 作 オ フ電 圧
VDWM
Crest(peak)working
ピー ク繰 返 し オ フ 電 圧
VDRM
Repetitive
ピー ク非 繰 返 しオ フ電 圧
VDSM
Non-repetitive
ブ レー ク オ ー バ電 圧
V(BO)
Breakover
ス パ イ ク電 圧
VDSP
特
ピ ー ク電 圧
off-state voltage
peak
off-state peak
VTM
voltage
on-state
性
Reverse
voltage
voltage
ピー ク逆 電 圧
VRM
Peak
ピー ク動作逆電圧
VRWM
Crest(peak)working
ピーク繰返 し逆電圧
VRRM
Repetitive
ピー ク非 繰 返 し逆 電 圧
VRSM
Non-repetitive
臨 界オ フ電圧上昇率
dυ/dt
Critical
オ フ電流
ID IH
reverse voltage
peak
current
Holding
current
電 流
IT
On-state
ITM
Peak
平 均オ ン電流
IT(AV)
Average
実効 オ ン電流
IT(RMS)
RMS
過 負荷 オ ン電流
voltage
voltage
current on-state
current
on-state
on-state
特 性
ITM(OV)
Overload
ピー ク繰 返 しオ ン電 流
ITRM
Repetitive
サ ー ジ オ ン電 流
ITSM
Surge
ラ ッチ ン グ電 流
IL
Latching
可制御 オ ン電流
ITQ
Controllable
繰返 し可制御オ ン電 流
ITQRM
Repetitive
非繰返 し可制御オ ン電 流
ITQSM
Non-repetitive
Itai〓
Tail current
IR
Reverse
テイ ル 電 流
reverse
of rise of off-state
Off-state
ピー クオ ン電 流
reverse voltage
peak reverse voltage
rate
オ ン電 流
逆電 流
voltage
voltage
On-state Peak
VR
保 持電流
voltage
off-state
Spike voltage VT
逆 電圧
ら抜 粋)
名 称(英文) VD
オ ン電圧
JEC-2401か
current
current
on-state peak
current on-state
current
(non-repetitive)on-state
current
current on-state
current
controllable
on-state
controllable
blocking
current
current
on-state
current
電流特性 ゲート特性
名 称(和文)
記
ピー ク繰 返 しオ フ電 流
IDRM
Repe titive peak
ピ ー ク繰 返 し逆 電 流
IRRM
Repetitive
臨界 オン電 流上昇率
dit/dt
Critical rate of rise of on-state
ピ ー ク ゲ ー ト電 圧
VPGM
Peak
ゲ ー ト逆 電 圧
VRG
Reverse
ゲ ー ト トリガ 電圧
VGt
Gate
i FG
Forward
ゲ ー ト順 電 流
号
名 称(英文) off-state current
peak reverse
forward
current
gate
gate voltage voltage
trigger voltage gate current
タ ー ンオ ン特性
電力損失
ゲ ー ト トリガ 電 流
IGT
Gate
trigger current
ゲー ト順電 流上昇率
diG/dt
Rate
of rise of forward
(ゲ ー ト制 御)遅 れ 時 間
tgd(td)
Gate-controlled
delay
(ゲ ー ト制 御)立 上 り時 間
tgr(tr)
Gate-controlled
rise time
(ゲ ー ト制 御)タ ー ン オ ン時 間
tgt
Gate-controlled
turn-on
オ ン損(失)
PT
On-state
dissipation
power
Reverse
逆損(失) オ フ損(失)
PD
平 均 ゲ ー ト順 損(失)
PFG(AV)
周囲温度 ケース温度
current
power
Off-state
gate
current
time
time
dissipation
power
dissipation
Average
forward
Ta
Ambient
temperature
gate
Tc
Case
power
dissipation
temperature
熱的特 性 ゲ ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ スタ
接合温度
Tj
Virtual junction temperature
接合-周囲 間熱抵 抗
Rth(j-a)
Thermal
resistance(junction
to ambient)
接 合-ケ ー ス 間 熱 抵 抗
Rth(j-c)
Thermal
resistance(junction
to case)
ケ ー ス-周 囲 間 熱 抵 抗
Rth(c-a)
Thermal
resistance(case to ambient)
過 渡 熱 イ ン ピー ダ ン ス
zth(t)
Transient
熱抵抗
Zth
Thermal
ゲ ー トタ ー ン オ フ電 圧
υGQ
Gate
turn-off voltage
ゲー トタ ー ン オ フ電 流
iGQ
Gate
turn-off current
ピー ク ゲ ー トタ ー ンオ フ電 流
IGQM
Peak
gate turn-off current
ゲー トタ ー ン オ フ電 流 上 昇 率
diGe/dt
Rate
of rise of gete turn-off current
(ゲー ト制御)ゲ ー トター ンオ フ電 荷
QGQ
Gate
controlled
(ゲ ー ト制 御)蓄 積 時 間
tes(ts)
Gate-controlled
storage
(ゲ ー ト制 御)下 降 時 間
tgf(tf)
Gate-controlled
fall time
(ゲ ー ト制 御)タ ー ンオ フ時 間
tgq
Gate-controlled
turn-off
thermal
impedance
resistance
gete turn-off time
time
charge
名 称(和文)
記
号
名 称(英文)
(ゲ ー ト制 御)テ イ ル時 間
tgtail (ttail)
Gate-controlled
ゲ ー ト逆 バ イ ア ス時 間
tgw
Gate
reverse
tail time biased
time
逆 阻 止 電 流)し か 流 れ な い.順 方 向 の 電 圧 が あ る 限 界 を超 え る と ブ レー クオ ー バ を起 こ して オ ン状 態 に移 行 し,逆 方 向 で は急 激 に逆 阻 止 電 流 が 増 加 す る.こ の と きの 電 圧 をブ レ ー ク オ ー バ 電 圧 お よ び逆 降 伏 電 圧 とい う.こ の 限 界 を超 え る と, サ イ リス タ は特 性 劣 化 も し くは 永 久 破 壊 す る.定 格 ピ ー ク 非繰 返 しオ フ電 圧 お よ び 逆 電 圧 の値 は,こ れ らの 限 界 以 下(例 え ば,限
界 値 の80∼90%)に
設 定 され て
い る. オ フ状 態 と は,デ バ イ スが 同 図 の 原 点 0と ブ レー ク オ ーバ 点 との 間 に相 当す る 順 方 向 電 圧 の 阻 止 状 態 を い う.
図 (2)オ (a)タ
2・7
陽極 電 圧 ・電流 特 性
フ状 態 か らオ ン状 態 へ ー ン オ ン時 間 ゲ ー ト-陰極 間 に オ ン用 ゲ ー ト トリガ 電 流 を 流 す と,
極 め て 短 時 間 で オ フ状 態 か らオ ン状 態 に切 り換 わ る.光 サ イ リス タ で は,ゲ ー ト トリガ 電 流 の代 わ りにサ イ リス タエ レ メ ン トの ゲ ー ト部 に赤 外 の パ ル ス 光 を照 射 す る こ とに よ り同様 にオ フ か らオ ン に切 り換 わ る.こ
の切 り換 え に要 す る時 間 を
(ゲ ー ト制 御)タ ー ン オ ン 時 間 と い い,遅 8(a)に
れ 時 間 と立 上 り時 間 の 和 で 表 す.図2・
タ ー ン オ ン 時 の 波 形 と 用 語 を 示 す.
(a)タ ー ン オ ン 時 の 波 形
(b)オ
ン電 流 上 昇 率,タ
ー ンオ ン損 とその 抑制 法
図2・8 ター ンオ ン時 の 波形,臨 界 オ ン電 流 上昇 率 とそ の抑 制 法
(b)タ
ー ン オ ン損,臨
ー ダ で あ るが ,オ
界 オ ン電 流 上 昇 率 タ ー ンオ ン時 間 は マ イ ク ロ秒 の オ
フ電 圧 とオ ン電 流 が 時 間 的 に変 化 す る の で,そ れ らの 積 が 電 力
損 失 と し て発 生 す る.こ れ を ター ンオ ン損 とい う.タ ー ン オ ン損 の発 生 は短 時 間 で あ るが,エ
レ メ ン トの ゲ ー ト近 傍 に 集 中 す る た め,こ れ が過 大 に な る と接 合 を
熱 的 に破 壊 して デ バ イ ス は機 能 を失 う.サ イ リス タ が 有 害 な影 響 を受 けず に耐 え 得 る こ とが で き る 最 大 の オ ン 電 流 上 昇 率 を 臨 界 オ ン 電 流 上 昇 率 と い う.図2・ 8(b)に タ ー ン オ ン損 を 示 す.電 流 上 昇 率 を低 減 す るた め,サ リア ク トル を接 続 す る.
イ リス タ に 直 列 に
(3)
オ ン状 態
(a)
ラ ッチ ング 電 流,保
持電 流
サ イ リ ス タ の タ ー ン ド ン 過 程 に お い て,ゲ
ー ト電 流 を 除去 した と き にオ ン状 態 に移 行 す る に必 要 な最 小 の 陽 極 電 流 を ラ ッ チ ング 電 流,ま
た サ イ リス タ を オ ン状 態 に維 持 す る に必 要 な最 小 の陽 極 電 流 を保 持
電 流 とい い,図2・9に
示 す.
両 者 は,サ イ リス タ を確 実 に タ ー ンオ ン状 態 を維 持 す る た め に必 要 で あ る.
(a)電 圧-電 流 特 性
(b)電 流 波 形
図
(b)
オ ン電 流
ラ ッチ ン グ電 流,保 持 電 流
2・9
トイ リス タが オ ン状 態 に あ る と きの 陽 極 電 流 を オ ン電 流 と い
い,商 用 周 波 の 正 弦 半 波 の 1サ イ ク ル に わ た る平 均 値 を平 均 オ ン電 流 とい う.平 均 オ ン電 流 は,最 高 許 容 接 合 温 度125℃(シ い)を 想 定 し,図2・10の
リ コ ンエ レ メ ン トの 温 度 と考 え て よ
よ う に,そ れ ぞれ の サ イ リス タ に つ い て 商 用 周 波 交 流 半
波 の 導 通 角 をパ ラ メ ー タ と し て平 均 オ ン損 失(発 熱 量)と の 関係 で 与 え られ る.導 通 角 を小 さ くす る ほ ど平 均 オ ン電 流 を低 減 しな けれ ば な らな い. (c)
過 負 荷 オ ン電 流,サ
ー ジ オ ン電 流
サ イ リス タお よ び 冷 却 フ ィ ン に は 熱
容 量 が あ る た め,定 格 平 均 オ ン電 流 よ り大 きな電 流 を流 して も直 ぐに は接 合 温 度 は最 高 許 容 温 度 に達 しな い.過 負 荷 オ ン電 流 の許 容 値 は,そ の直 前 の 電 流 値,通 電 時 間,冷 却 フ ィ ン温 度 に依 存 す る. サ ー ジオ ン電 流 は極 め て まれ な事 故 電 流 を想 定 した 電 流 で,そ の 定 格 値 は商 用 周 波 の 正 弦 半 波 の ピ ー ク値 で 定 義 され て い る.サ ー ジ オ ン電 流 通 電 後 は最 高 許 容 接 合 温 度 を遥 か に超 え る こ とが あ り,通 電 後 の サ イ リス タ の陽 極 電 圧 ・電 流 特 性
図2・10
図2・11
平 均 オ ン電 流 の例
定格 サ ー ジ オン電 流 の例 (サ-ジ
は 保 証 さ れ て い な い.図2・11は,商
オ ン 電 流 は,交
流 半 波 の 最 大 値 を示 す)
用 周 波50Hz,60Hzの
と き,通
電 し得 る
正 弦 半 波 の サ イ ク ル 数 と サ ー ジ オ ン電 流(ピ ー ク 値)の 例 を 示 す.
(d)オ
ン電 圧,オ
ン損 サ イ リス タが オ ン状 態 に て オ ン電 流 を通 電 して い る
とき,陽 極-陰 極 間 に 生 じ る電 圧 を オ ン電 圧 とい う.オ 物 プ ロ フ ァイ ル,デ ぐら い で,過
ン電 圧 は ウエ ー ハ の 添 加
バ イ ス の 構 造 に よ っ て 多 少 の 差 が あ る が,通
電 流 通 電 中 に は 3V 以 上 に な る こ とが あ る.オ
の 積 をオ ン損 とい う.
常1.0∼1.5V
ン電 圧 とオ ン 電 流
大 電 流 を 通 電 中 の サ イ リス タ で は エ レ メ ン トに 数kWの
損 失 が 発 生 し,発 熱
す る.こ の 熱 を冷 却 フ ィ ン に伝 え て風 冷 また は水 冷 で 冷 却 し,エ
レメ ン トの温 度
を許 容 限度 内 に抑 え る. (4)
オ ン状 態 か ら逆 阻 止 状 態 ・オ フ状 態 へ
(a)
逆回 復 特 性,逆
移 る(転 流)か,ま
回復電荷
通 電 中 の オ ン電 流 は,他
のデバ イスに電流 が
た は転 流 に よ らず 電 流 の消 滅(消 流)に よっ て 0に な る.オ
ン状
態 に あ る とき,電 源 ま た は 転 流 回路 に よ っ て逆 電 圧 を加 え る とオ ン電 流 は 0に な る が,そ の 直 後 一 時 的 に逆 電 流 が 流 れ,や が て は消 滅 し て 陽 極 一陰 極 間 に 逆 電 圧 が 加 わ る.こ の過 程 を逆 回復 特 性 とい い,逆 い う.こ の 現 象 は,エ あ って,キ
回復 電 流 の 時 間 積 分 を逆 回 復 電 荷 と
レ メ ン トの接 合 部 近 傍 の残 存 キ ャ リヤ の 消 滅 に よ る もの で
ャ リヤが 消 滅 後 サ イ リス タ は 回路 で 定 まる逆 電 圧 を 阻 止 す る よ うに な
る. 逆 回 復 電 流 は,エ たき く依 存 す る.逆
レメ ン トの構 造,オ
ン電 流,オ
ン電 流 減 少 率,接
合 部 温度 に
回復 過 程 で逆 電 流 と逆 電 圧 の 積 の 逆 損 が 発 生 す る.逆 電 流は 最
大 値 を超 え る と急 激 に 減 少 し,こ の 電 流 変 化 率 と回 路 の イ ン ダ ク タ ン ス に よ り 高い過 渡 過 電 圧 を発 生 す る .こ の よ うな 過 渡 過 電 圧 か らサ イ リス タ を保 護 す る た め,コ ンデ ンサ と抵 抗 か らな る ス ナバ 回 路 をサ イ リス タ に並 列 に接 続 しな けれ ば まらな い.図2・12に,逆
図
2・
回 復 時 の 電圧 ・電 流波 形,逆 損 と逆 回 復 電 荷 を示 す .
12
逆 回復 時 の電 圧 ・電 流 波形 お よび逆 回 復電 荷
(b)転
流 ター ン オ フ 時 間 逆 回復 過 程 が 進 行 して 逆 電 圧 を 阻 止 で きる よ う に
な っ て も,エ
レ メ ン ト内 各 接 合 の オ フ電 圧 阻 止 能 力 が 完 全 に回 復 す る ま で に は ま
だ若 干 の 時 間 を要 す る. オ ン電 流 が 0に な っ た 時 点 か らオ フ電 圧 阻 止 機 能 を回 復 し て,逆 電 圧 が ゼ ロ線 と交 差 して 順 方 向電 圧 とな る まで の 時 間 を転 流 ター ンオ フ時 間 とい う.「 転 流 」 とい う言 葉 を っ け る の は,後 述 す る ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リス タ の ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ フ時 間 と区 別 す る た め で あ る .転 流 タ ー ン オ フ 時 間 は,上 述 した(a)の 逆 回復 特 性 に及 ぼ す 要 因 の ほ か,逆 電 圧,オ
フ電 圧 上 昇 率,オ
フ電 圧 値 に も依 存 す
る. 図2・13に,オ
フ状 態 ― オ ン状 態 ― オ フ状 態 か らな る オ ン ・オ フ動 作 の 波 形,
用 語 を総 括 して 示 す.
図2・13サ
上 記 は,通 つ い て は,タ 特 性,波
イ リ ス タ の オ ン ・オ フ 動 作 の 波 形
常 の サ イ リ ス タ に つ い て 述 べ た が,ゲ ー ン オ フ 動 作 以 外 は 上 述 し た(1)か
形 は 基 本 的 に 同 じ で あ る.
ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ に ら(4)(a)ま
で の 用 語,記
号,
2
・
2 3 ・
ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ の タ ー ンオ フ 時 の 用 語,
ゲ ー トタ ー ンオ フサ イ リス タ の場 合,オ
記 号,
特性
ン状 態 か らオ フ状 態 に 切 り換 え る に
は,オ ン状 態 の 接 合 部 に あ る キ ャ リヤ を急 峻 で 大 き な負 の ゲ ー トパ ル ス電 流 を 流 して 外 部 に吸 い 出 して 消 滅 させ,接 図2・14の よ うに,負
合 部 の オ フ電 圧 阻 止 能 力 を 回復 させ る.
の ゲ ー ト電 流 の10%の
時 点 か らオ ン電 流 に くび れ(負 の
ゲ ー ト電 流 の ピー ク値)が 生 じ る時 ま で をゲ ー ト制 御 タ ー ンオ フ 時 間tgqと い い, ゲ ー ト制 御 蓄 積 時 間tgs(ts)(オン電 流 が90%に 時 間tgf(tf)の和 で 表 す.ゲ
な る ま で の 時 間)と ゲ ー ト制 御 下 降
ー ト制 御 タ ー ンオ フ時 間 以 降 小 さ な オ ン 電 流 が 流 れ る
が,こ の 電 流 が 負 の ゲ ー ト電 圧 に よ っ て 消 滅 す る ま で(オ フ電 圧 阻 止 機 能 の 完 全 な 回復)の 時 間 をゲ ー ト制 御 テ イ ル 時 間ttailと い う.ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ フ時 間 は,オ
ン電 流 お よび オ ン電 流 減 少 率 の増 加 と と もに増 加 し,負 の ゲ ー トパ ル ス電
流 の ピー ク 値 の 増 加 と と も に減 少 す る.負 の ゲ ー ト電 流 の ピー ク 値IGQMに
達す
る まで の 電 流 ・時 間 積 分 を ゲ ー トタ ー ンオ フ 電 荷QGQと
ー ト
い う.QGQは,ゲ
ター ンオ フ時 の オ ン電 流 の増 加 と と もに増 加 す る.指 定 の 条 件 の も とで,ゲ ー ト 制 御 に よ りタ ー ンオ フ可 能 な ピー クゲ ー トター ンオ フ電 流 をIGQMと
図2・14ゲ
ー トタ ー ン オ フ 時 の 波 形
い う.
ゲ ー トター ンオ フ時 間 直 後 に ス パ イ ク 電 圧VDSPが 期 間 の オ ン電 流 減 少 率,ス
発 生 す る が,こ
れ はtgf(tf)
ナ バ 回路 に流 れ る電 流 の変 化 率 と その 回路 の イ ン ダ ク
タ ンス に よ る.テ イ ル 時 間 中 に ス ナ バ 回 路 の コ ン デ ン サ が 充 電 さ れ て 高 い オ フ電 圧VDMが
陽極 に加 わ る.図2・14に,ゲ
ー トタ ー ンオ フ時 の 波 形 を 示 す.
ゲ ー トター ン オ フ過 程 の オ ン電 流 とオ フ電 圧 の 積 に よ りタ ー ン オ フ損 が 発 生 す る.こ の ター ン オ フ損 は,エ
レ メ ン トの 極 く一 部 に集 中 す る の で,こ
れが過大 に
な る とエ レ メ ン トを 熱 的 に破 壊 す る.こ れ を 防止 す るた め,ス ナ バ 回路 を接 続 し て オ フ電 圧 上 昇 率 を抑 え,タ ー ンオ フ損 を軽 減 して安 全 動 作 領 域 内 で 動 作 す る よ う にす る. 以 上 は,通 常 の サ イ リス タ とゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ に つ い て 説 明 し た が,ト
ラ ン ジ ス タの 用 語,記
号,特 性 に つ い て は3・3・2項 で 解 説 す る.
演
〔 問 題 〕 1. 「 転 流 」 とは 何 か,そ
習
問
題
〔2〕
の 転 流 方 式 の 分 類 に つ い て 説 明 せ よ.
〔 問 題 〕 2.転
流 方 式 に適 し た デバ イ ス の 名 称 を説 明 せ よ.
〔 問 題 〕 3.サ
イ リス タ を 動 作 さ せ る に あ た っ て,超
え て は な ら な い 電 圧 と は 何 か?
ま た,電 圧 ・電 流 特 性 と用 語 を 説 明 せ よ.
〔 問 題 〕4・ サ イ リス タ の タ ー ン オ ン時 の 波 形 を 書 き,用
語 を記 入 す る こ と.転 流 タ ー
ンオ フ時 の 波 形 と,ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ の タ ー ン オ フ時 の 波 形 を 書 き,用 語 を 記 入 の う え波 形 の 差 を 説 明 せ よ.
第3
パ ワ ー デ バ イ ス の基礎 (そ の 1)
章
−動 作原理 とデバ イスの種類 −
商 用 送 配 電,家 庭 用 電 源 に 直 接 あ る い は間 接 に 接 続 して 電 力 を伝 送,変
換 した
り,電 動 機 の駆 動 制 御 を扱 う半 導 体 デバ イ ス を総 称 し てパ ワ ー デ バ イス とい う.
3
・
1
3.1.1
半導体の性質
真性半導体
半 導体 とは,電 気 的 良 導 体 で あ る金 属 と絶 縁 物 との 中 間 に存 在 す る抵 抗 率(比 抵 抗)約0.01∼104Ω
・cmの 物 質 を い い,そ の 代 表 的 な 半 導 体 デ バ イ ス 用 材 料 は
シ リ コ ン,ゲ ル マ ニ ウム で あ る. 図3・1に
抵 抗 率 と 元 素 の 例,図3・2に
図3・1抵
元 素 の 周 期 表 を 示 す.
抗率 と元素 の 例
4価 の元 素 で あ る シ リコ ン は地 球 上 に豊 富 に 存 在 す るが,高 度 の 高 純 度 化 技 術 を 経 て 精 製 され た不 純 物 の 極 め て少 な い シ リ コ ン単 結 晶 は,そ の物 理 特性,デ イ ス プ ロ セ ス 技 術,経
バ
済 的 優 位 性 か らパ ワ ー デ バ イ ス の基 本 材 料 で あ る .
不 純 物 が 限 りな く少 な い か,ま
た は含 ま な い半 導体 材 料 を真 性 半 導 体 とい う.
図3・2 元素 の 周期 表
元 素 は原 子 で 構 成 され て い る.原 子 は 原 子 核 とそ の 周 囲 を 回 っ て い る い くつ か の 電 子 か ら成 り立 っ て い る.こ の 電 子 は,定
め られ た エ ネ ル ギ ー の 状 態 に対 応 し
た そ れ ぞ れ の軌 道 を 回 っ て お り,か つ,こ の 軌 道 に入 り得 る電 子 の 数 は き まっ て い る.多 数 の 電 子 が あ る場 合 は,原 子 核 に 近 い軌 道 に所 定 の個 数 の 電 子 が 満 た さ れ,順 次 外 側 の 軌 道 に電 子 が 収 ま った 状 態 で 物 質 を形 成 し て い る.シ
リコ ン の 原
子構 造 の モ デ ル と物 性 を図3・3に 示 す.
(a)原 子 構 造(シ リコ ン(Si)原 子 の モデ ル,電 子 の数14)
(b)物 性
図3・3 シ リ コンの 原子 構 造 の モデ ル と物 性
図 の よ う に,電 子 の配 列 は 原 子 核 に近 い K 軌 道 に 2個 の 電 子,次
の L軌 道 に
8個 あ り,最 外 殻 の M 軌 道 に は 8個 の 電 子 が 入 り得 る の に 4個 しか な い.K 軌
道,L 軌 道 に あ る10個
の 電 子 は原 子 核 か ら強 い 拘 束 を受 けて い る.し
か し,M
軌 道 の 4個 の 電 子 は 強 い 拘 束 を受 け て い な い の で,ほ か の 電 子 と結 合 した り,エ ネ ル ギ ー を 得 て 軌 道 か ら離 れ,自 は 電 子 4個 分 の 空 席 が あ る の で,他
由電 子 と し て 電 気 伝 導 に 関 与 す る.M
軌道に
の 原 子 の M 軌 道 か ら そ れ ぞ れ 1個 の 電 子 を
受 け取 っ て 空 席 を埋 め,互 い に結 合 す る.こ れ を共 有 結 合 と い う.図3・4(a)の よ う に,共 有 結 合 に よ りシ リコ ン原 子 が 立 体 的 に広 が っ て 真 性 シ リ コ ン単 結 晶 を 形 成 し て い る.
(a) 真 性 シ リ コ ン 図3・4
(b) n形 シ リ コ ン
(c) p形 シ リ コ ン の 結 合 模 型
真 性 シ リ コ ン と添 加 物 シ リ コ ン の 結 合 模 型
真 性 シ リ コ ン で は,こ の 共 有 結 合 の 電 子 は比 較 的 に 弱 い エ ネ ル ギ ー(1.1eV) に よ っ て拘 束 され て い る の で,こ れ を超 え る エ ネ ル ギ ー,例
え ば熱,光,電
界が
外 部 か ら与 え られ る と,電 子 の い くつ か は結 合 か ら離 れ て 自由 に動 け る よ うに な る.電 子(負 の電 荷)が 抜 け た あ と は 正 孔(正 の 電 荷)と な る.M
軌道 の正 孔 の傍
に弱 い エ ネル ギ ー の 電 子 が く る と,ク ー ロ ンカ の作 用 で 電 子 は正 孔 に引 き込 ま れ 再 び共 有 結 合 を形 成 す る.こ れ を再 結 合 とい う.
3・1・2 不 純 物 半 導 体 不 純 物 を(実 質 的 に)含 まな い真 性 半 導 体 に微 量 の 3価 また は 5価 の 元 素 を人 工 的 に添 加(ド ー ピ ン グ とい う)し た 半 導 体 を不 純 物 半 導 体 * とい い,デ バ イ ス用 と
*他 の元 素 とそ の量 を人 工 的 に添 加 す るの で あ るか ら 「 添 加 物半 導 体 」 とい うべ きで あ ろ う .
して n形 半 導 体 と p形 半 導体 が あ る. (1)n
形 半導 体
図3・4(a)の 4価 の 真 性 シ リ コ ン に 5価 の 元 素(最 外 殻
軌 道 に 5個 の 電 子 を もつ)で あ る P(リ ン)あ る い はSb(ア し,シ
ン チ モ ン)を 微 量 添 加
リ コ ン を溶 解 して 単 結 晶 を つ く る とシ リコ ンの M 軌 道 の 四 つ の 空 席 は す
べ て 5価 の元 素 の電 子 で埋 ま り,さ ら に 1個 の余 剰 電 子 が生 じ る.こ
の余 剰 電 子
に対 す る 5価 の 原 子 核 か らの 拘 束 力 は極 め て 弱 い の で,外 部 か らの 電 界 な どに よ り容 易 に動 き回 る こ とが で き る 自 由電 子 に な る.5 価 の 元 素 を添 加 した シ リ コ ン は 過 剰 な電 子(negative;負
の 電 荷)を もっ て い る の で n形 シ リ コ ン とい い,図
(b)に 示 す.添 加 した 原 子 が 電 子 を放 出 す る よ うな場 合,添
加 原 子 を ドナー とい
う. (2)p
形 半導 体
4価 の 真 性 シ リ コ ン に 3価 の 元 素(最 外 殻 軌 道 に 3個 の
電 子 を も つ)で あ るGa(ガ
リウ ム)あ る い は B(ホ ウ 素)を 微 量 添 加 し,シ
を溶 解 し て単 結 晶 を つ く る と,シ 埋 ま らず,電
リコ ン
リ コ ン の M 軌 道 の 四 つ の 空 席 の う ち三 つ しか
子 1個 が 不 足 して 空 席(正 孔)が 一 つ余 っ た ま ま と な る.こ
他 の共 有 結 合 か ら 出 た 自 由電 子 が 入 る と安 定 す るが,そ
の正 孔 に
の 電 子 が 出 た 跡 に は正 孔
が生 じ る.こ の よ うな 正 孔 の移 動 は電 気 伝 導 に関 与 す る.3 価 の 元 素 を添 加 した シ リ コ ン は過 剰 な 正 孔(positive;正 い,図(c)に
示 す.左
の 電 荷)を も っ て い る の で p形 シ リコ ン とい
孔 を生 じ させ る 3価 の 添 加 元 素 をア ク セ プ タ とい う.
n形 お よ び p形 シ リ コ ン単 結 晶 内 部 の 電 気 伝 導 は電 子 と正 孔 の 移 動 に よっ て 行 わ れ る.電 流 は電 子 の 流 れ と正 孔 の 流 れ の和 で あ り,電 流 の 方 向 は電 子 の 流 れ と は逆 で 正 孔 と は同 じ方 向 で あ る.電 流 す な わ ち過 剰 の 電 子 と正 孔(過 剰 キ ャ リヤ とい う)の 移 動 は下 記 に よ る. ①
電 界に よる移動
電 子 の移 動 は,電 子 の 移 動 度,自
る.正 孔 の移 動 は,正 孔 の 密度 と移 動 度,電 ②
密 度 差 に よ る移 動
由電 子 密 度 の 関 数 に よ
界 拡 散 定 数 に よ る.
電 子 密 度 お よ び正 孔 密 度 は高 い ほ う か ら低 い ほ う に そ
れ ぞ れ の 拡 散 定 数 に した が っ て 移 動 す る. ③
再 結 合 に よ る移 動
過 剰 の電 子 と正 孔 が結 合 し,電 子 ・正 孔 の対 はキ ャ リ
ヤ ラ イ フ タ イ ム に よっ て 指 数 関 数 的 に減 衰 し,消 滅 す る.
サ イ リス タ や トラ ンジ ス タ の タ ー ン オ ン動 作 は主 と して 「電 界 に よ るキ ャ リヤ の移 動 」 が,タ
ー ンオ フ 時 に は主 と して 「電 界 お よ び再 結 合 に よ る キ ャ リヤ の移
動 」 が 関 与 して い る. n形 あ る い は p形 の シ リコ ン単 結 晶 に 5価 あ るい は 3価 の元 素 を 拡 散 法 や 気 相 成 長 法 な どの 技 術 で 接 合 面(pn接
合 あ る い はnp接
さ の n層 あ る い は p層 を 形 成 さ せ る.そ の 後,そ の 接 合 面 を通 って 電 子,正
合 と い う)と 所 望 の 濃 度 と厚 れ ぞれの 層 に電極 を付 けて そ
孔 が 流 れ る よ う に した構 造 が デ バ イ ス の 基 本 で あ る .
パ ワー デバ イ ス の代 表 的 構 造 と は,次 の よ う な こ とで あ る. ①
シ リ コ ン ウ エ ー ハ に p層,n て,過
②
層 の 接 合 面 が 一 つ ま た は複 数 形 成 さ れ て い
剰 キ ャ リ ヤ が あ る こ と.
製 造 工 程 で ウエ ーハ へ の添 加 元 素 の濃 度,す
なわ ち電 子 密 度,正
孔 密度 と
そ の 層 の 厚 さが 制 御 で きて い る こ と. ③pn接 ④
合 を 通 っ て注 入 され るキ ャ リヤ量 に よ り電 気 伝 導 度 が 変 化 す る こ と.
p層,n 層 に 電 極 端 子 を 付 け る た め に ア ル ミ な ど の 薄 い 金 属 層 が あ る こ と.
添 加 元 素 の 量 と抵 抗 率 の 例 と し て,シ を 添 加 す る と,シ を 増 や し,シ
リ コ ン 単 結 晶 の 抵 抗 率 は 5Ω ・cmの
リ コ ン 原 子104個
そ の 層 の 抵 抗 率 は ∼0.03Ω ま た,シ
リ コ ン 原 子107個
リ コ ン 原 子106個
抵 抗 率 は ∼ 2Ω ・cmの
に ア ン チ モ ン 原 子 1個
n 形 結 晶 と な る.さ
に ア ン チ モ ン 原 子 1個 を 添 加 し た 層 を つ く る と,
・cmと
な り,通
常n+で
表 す.
に ホ ウ 素 原 子 1個 を 添 加 す る と,シ
p 形 結 晶 と な る.さ
リ コ ン単 結 晶 の
ら に 量 を 増 し て シ リ コ ン 原 子104個
ホ ウ 素 原 子 1個 を 添 加 し た 層 を つ く る と そ の 層 の 抵 抗 率 は ∼0 .05Ω ・cmと 通 常p+で
ら に量
に
な り,
表 す.
n+お よ びp+の
表 面 に 薄 い ア ル ミ層 を付 け,そ
の層 に ア ル ミ線 を超 音 波 で ボ ン
デ ン グ して電 流 の 端 子 とす る. 今 後,本
書 で は,接 合 を も た ず 製 造 工 程 に入 れ る 前 の n形 あ る い は p形 の シ
リ コ ン単 結 晶 の 円 板 を ウ エ ー ハ と呼 び,製 造 工 程 に よ っ て そ の ウ エ ー ハ に p層 あ る い は n層 の 接 合 を形 成 し て デ バ イ ス と して の機 能 を もっ た シ リ コ ン単 結 晶
円 板 を エ レ メ ン ト と呼 ぶ こ と に す る.
最 近 の パ ワ ー デバ イ ス は,一 つ の エ レ メ ン トに 複 雑 で 多 数 の 接 合 を も った 構 造 に な っ て い る が,主
た る電 流 が 流 れ る経 路 の 構 造 を見 る と,次 の よ うに 分 類 で き
る.ま た,接 合 の数 に よっ て デ バ イ ス の 機 能 が 決 ま る. ①
主 た る電 流 の経 路 に一 つ の接 合 一 整 流 ダ イ オ ー ドー 整 流 作 用 の み
②
主 た る電 流 の経 路 に二 つ の接 合 − トラ ン ジ ス タ
− 増 幅 お よび ス イ ッチ ン
グ動作 ③
主 た る電 流 の経 路 に 三 つ の接 合 一 サ イ リス タ
− オ ン の み また はオ ン ・
オ フ動 作
(a)タ
イオー
ド
(b) トラ ン ジ ス タ 図3・5一
図3・5(a)∼(c)に
(c)サ イ リス タ
(d)逆 導 通 サ イ リス タ
つ お よ び 複 数 の 接 合 を もつ デ バ イ ス
多 数 の 結 合 を も つ デ バ イ ス の 例 を 示 す.図(d)は
逆 導通 サ
イ リス タ と い い,1 枚 の ウ エ ー ハ に サ イ リ ス タ と ダ イ オ ー ドの 機 能 を 入 れ た 複 合 デ バ イ ス の 例 で あ る.
2 3
・
パ ワー デバ イス の動作 原理
3・2・1ー
つ の 接 合 が あ る デ バ イ ス(整 流 ダ イ オ ー ド)
図3・6の よ うに,p 層, n層 が 形 成 され,過 剰 キ ャ リヤ が あ る状 態 を考 え る. p層 の 電 極(陽 極 端 子)に 正,n 層 の 電 極(陰 極 端 子)に 負 の 電 圧 を加 え る と,p 層
(a)順 方 向 (注 入が 起 こ る)
(b)逆 方 向 (空乏 層 が広 が る)
図3・6一
(c)整 流特 性
(d)通 電 直 後 の 電 流 ・電圧 波 形
つ の 接 合 を も つ デ バ イ ス(整 流 ダ イ オ ー ド)の キ ャ リヤ の 挙 動
の 正 孔 は 負 電 位 に 引 か れ て n層 に移 動 し,再 結 合 す る.同 様 に,電 子 も p層 に 移 動 して 再 結 合 す る.こ の 状 態 で は,電 源 電 圧 と負 荷 抵 抗 で き ま る電 流(電 子 電 流 と正 孔 電 流 の和)が 陽 極 か ら陰 極 に 流 れ る.こ の と き陽 極-陰 極 端 子 間 に約1V の順 電圧 降 下 が 生 じ る.こ の 電 圧 と電 流 の 関係 を順 方 向 特 性 とい う. これ と は逆 に,印 加 電 圧 の 極 性 を反 転 して逆 電圧 を加 え る と,今 度 は電 子 も正 孔 も 自分 自身 の電 極 に 引 か れ る だ けで 接 合 面 を通 って 流 れ るキ ャ リヤ は極 め て 少 い.し か も,電 子,正
孔 が 両 側 の電 極 に引 き寄 せ られ る の で,接 合 部 の 近 傍 に は
電 子 も正 孔 も極 め て少 な い 空 乏 層 とい う絶 縁 部 分 が 生 じ る.絶 縁 部 分 とい っ て も 極 くわ ず か の キ ャ リヤ が残 っ て い るの で,小
さな逆 阻 止 電 流 が 流 れ る.こ の状 態
を逆 阻止 状 態 とい う.逆 電 圧 と逆 阻止 電 流 の関 係 を逆 方 向 特 性 とい う. 逆 電 圧 を さ らに 高 くす る と,空 乏 層 の わ ず か の キ ャ リヤ が 高 電 圧 で加 速 さ れ て シ リ コ ン原 子 に衝 突,電 離 し,ア バ ラ ン シ ェ(雪 崩)を 起 こ して 逆 阻 止 電 流 が 急 に 増 加 す る.こ の電 圧 を逆 降 伏 電 圧 とい う.こ の領 域 で は,逆 降 伏 電 圧 と逆 阻 止 電 流 の積 の 電 力 損 失 が 発 生 し,こ れ が あ る限 度 を超 え る と ダ イ オ ー ドは逆 阻 止 能 力 を失 い,永 久 破 壊 に至 る場 合 が あ る.逆 降 伏 電 圧 は 温度 の 上 昇 と と もに増 加 す る 傾 向 を示 す. 通 常,回
路 か ら決 ま る ピー ク動 作 逆 電 圧 は余 裕 を もっ て ダ イ オ ー ドの 逆 降 伏 電
圧 以 下 とな る よ う型 名 を選 定 す る.
順 電 流 が 流 れ て い る状 態 で 急 に逆 電 圧 を加 え る と,接 合 近 傍 に 充 満 して い る キ ャ リヤ(蓄 積 電 荷)は 逆 電 圧 に よ っ て 外 部 に 引 き 出 さ れ,過 渡 的 な 逆 電 流 が 流 れ る.こ
の 逆 電 流 の 時 間 積 分 を逆 回 復 電 荷Qrrと
は,蓄 積 電 荷 は す べ て外 部 に 引 き 出 され,同
い う. 時 間tstg(蓄 積 時 間)後 に
時 に空 乏 層 が 広 が り は じめ てttr(遷
移 時 間)後 に は完 全 に 逆 電 圧 を 阻 止 す る よ う に な る.こ の 蓄 積 時 間 と遷 移 時 間 の 和 を逆 回 復 時 間trrと い う.逆 回復 時 間 が 小 さ い ほ ど高 周 波 用 に適 す る.上 記 の 特 性 お よび 接 合 近 傍 の キ ャ リヤ の 挙 動 は デ バ イ ス の 基 本 で あ り,接 合 が 複 数 あ っ て もそ の 動 作 は 同 じで あ る.
3・2・2 二 つ の 接 合 が あ る デ バ イ ス(ト ラ ン ジ ス タ) p 層,n
層 に も う 一 つ の 層 を 付 け,そ
ジ ス タ ま た はnpnト
ラ ン ジ ス タ と な る.電
ャ リヤ で 行 わ れ る の で,こ 正 方 向 に 対 し て,n
の 中 間 の 層 に 電 極 を 付 け る とpnpト
流 の 流 れ が 電 子 と 正 孔 の 2極 性 の キ
の よ う な デ バ イ ス を バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ と い う.
と p と の 接 合 を コ レ ク タ 接 合,そ
中 間 の p 層 を べ ー ス,p
の n層 の 電 極 を コ レ ク タ,
と n と の 接 合 を エ ミ ッ タ 接 合,そ
タ と し た 構 造 がnpnト
ラ ン
ラ ン ジ ス タ で あ る.キ
の n層 の 電 極 を エ ミ ッ
ャ リ ヤ(npn構
構 造 で は 正 孔)を 放 出 す る領 域 を エ ミ ッ タ 領 域 と い い,キ
造 で は 電 子 を, pnp ャ リヤ を 集 収 す る領 域
を コ レ ク タ 領 域 と い う. 電 極 を 接 地 す る 方 式 と し て,図3・7の ミ ッ タ 接 地 が あ る.パ
よ う に,ベ
ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス で は,通
き な 電 流 を オ ン ・オ フ で き るnpnト
ー ス 接 地,コ 常,小
レ ク タ 接 地,エ
さ なべ ー ス 電 流 で 大
ラ ン ジ ス タ の エ ミ ッ タ 接 地 が 使 用 さ れ る.
エ ミ ッ タ 接 地 のnpnト
ラ ン ジ ス タ に つ い て 考 え る. pべ ー ス-n エ ミ ッ タ 間 に
正 の 電 圧 を 加 え る と,添
加 物 濃 度 の 高 い,す
な わ ち 電 子 密 度 の 高 い n層 の 多 数
の 電 子 は エ ミ ッ タ 接 合 を 越 え て p 層 の べ ー ス 領 域 に 入 り,そ が 増 え る.コ
レ ク タ は 正 の 電 圧 の た め,p
越 え て n層 の コ レ ク タ 領 域 に 入 り,べ コ レ ク タ か ら エ ミ ッ タ に 流 れ る.p 接 合 に と っ て 順 方 向 な の で,べ
の領 域 の キ ャ リヤ
べ ー ス に 入 っ た電 子 は コ レ ク タ接 合 を
ー ス 電 流 と電 流 増 幅 率 β で 定 ま る電 流 が
べ ー ス-n エ ミ ッ タ 間 の 正 の 電 圧 は エ ミ ッ タ
ー ス-エ
ミ ッ タ 間 の イ ン ピ ー ダ ン ス は 低 く,わ
ず
(a)べ
ー ス接 地
(b)コ
レ クタ接 地
(c)エ
ミ ッタ接地
図3・7 トラ ンジ ス タの構 造 と接地 方 式 か な 制 御 電 圧 に よ る べ ー ス 電 流 で 大 き な コ レ ク タ 電 流 を 制 御 で き る. べ ー ス 電 流 が 0の と き,コ る.こ 流Icの
レ ク タ の正 の電 圧 に よ っ て わ ず か な 漏 れ 電 流 が 流 れ
れ を コ レ ク タ 遮 断 電 流IcBOと 割 合 を α で 表 し,べ Ic=αIE+IcBO,
い う.エ
ー ス 電 流IBと
対 す る コレクタ電
の 関 係 は 次 の よ う に な る.
IB=(1-α)IE
α を べ ー ス 接 地 の 電 流 増 幅 率 と い い,通 エ ミ ッ タ 接 地 のnpnト
ミ ッ タ 電 流IEに
(3・1)
常,α
ラ ン ジ ス タ で は,べ
に 対 す る コ レ ク タ 電 流 は αIEで あ る か ら,エ
は 1に 近 い 値 で あ る.
ー ス 電 流 は(1-α)IEで
あ り,こ
れ
ミ ッ タ 接 地 の 電 流 増 幅 率 β は,次
の よ う に な る. β=α/1 -a
β は,ト
(3・2)
ラ ン ジ ス タ の n,p, n の 各 層 の キ ャ リ ヤ 濃 度 お よ び 層 の 厚 さ な ど構
造 に よ っ て 変 わ り,通
常10∼300程
度 の 間 に あ る.
ベ ー ス 電 流 を パ ラ メ ー タ と し て コ レ ク タ 電 圧 と コ レ ク タ 電 流 の 関 係 は,図3・8 の よ う に な る.
図3・8
コ レ ク タ電 圧 と コ レ ク タ 電 流 の 関 係(エ
べ ー ス 電 流 が 0 また は負 の領 域 を遮 断 領 域,コ 領 域 を飽 和 領 域,そ
ミ ッ タ接 地)
レ ク タ接 合 が 順 バ イ ア ス と な る
の 中 間 の領 域 を能 動 領 域 とい う.ト ラ ン ジ ス タ を ス イ ッチ 動
作 させ る 時 は遮 断 領 域(オ フ状 態)と 飽 和 領 域(オ ン状 態)を べ ー ス電 流 に よ り切 り 替 え て動 作 させ る.図3・8で,べ
ー ス 電 流IB=0の
と き の動 作 点 は遮 断 領 域 の A
点 に あ る.べ ー ス電 流 を増 加 させ る と能 動 領 域 を経 て 飽 和 領 域 に移 る.能 動 領 域 と飽 和 領 域 の境 界 のべ ー ス 電 流IBSを 流 す と,動 作 点 は B 点 に な る.電 源 電 圧 を V,負 荷 抵 抗 を R,コ
レ ク タ 電 流(負 荷 電 流)をIc,べ
ー ス電 流 をIB,エ
ミ ッタ
接 地 の電 流 増 幅 率 を β(β=hFE)と す れ ば,飽 和 領 域 す な わ ち オ ン状 態 に移 行 さ せ るた め のべ ー ス 電 流IBは,次
の よ う に な る. (3・3)
この 式 か ら,β が大 き い ほ ど小 さ な べ ー ス電 流 で 大 き な負 荷 電 流 を オ ン ・オ フ す る こ とが で き る. また,べ ー ス接 地 の と きの 電 流 増 幅 率 α との 関 係 は,β=α/(1-α)と
な る.
トラ ン ジ ス タ を 動 作 させ る とき の 注 意 す べ き点 は,接 合 温 度,二 次 降 伏 と安 全 動 作 領 域(SOA)で
あ る.二 次 降 伏 と は,動 作 中 に 接 合 部 の 局 部 に 電 流 が 集 中 し
て温 度 上 昇 が 起 こ り,コ レ ク タ ーエ ミ ッ タ 間 の 電 圧 が 電 子 雪 崩 降 伏 を起 こ して 瞬 時 に電 圧 ・電 流 特 性 が 低 下 す る現 象 で,デ バ イ ス は使 用 不 能 と な る.ト
ラ ンジス
タ で装 置 を設 計 す る場 合 は,ま ず この 二 次 降 伏 現 象 を 考 慮 に入 れ て コ レ ク タ-エ ミ ッタ 間電 圧 とコ レ ク タ電 流 通 電 幅 で定 ま る 「順 バ イ ア ス安 全 動 作 領 域 」 内 で 動 作 させ る. この ほか,タ
ー ンオ フ の際 に べ ー ス を 逆 バ イ ア ス させ る場 合 に は 「逆 バ イ ア ス
安 全 動 作 領 域 」 が,ま た 事 故 電 流 に対 して 「短 絡 電 流 安 全 動 作 領 域 」 を考 慮 す る 必 要 が あ り,こ れ ら は それ ぞ れ の トラ ン ジ ス タ の特 性 表 お よ び デ ー タ に記 載 され て い る.図3・9に,二
次 降 伏 現 象 と順 バ イ ア ス安 全 動 作 領 域 を示 す.
(a)二 次 降伏 現 象
(b)順 バ イ ア ス安 全 動作 領 域
図3・9 二 次 降伏 現 象 と順 バ イア ス安 全動 作 領域
上 述 の よ うに,ト
ラ ン ジ ス タ をス イ ッチ 動 作 さ せ る と き,定 格 コ レ ク タ電 圧,
定 格 コ レ ク タ電 流,定 格 コ レク タ損 失 の ほ か,こ
れ ら三 つ の 安 全 動 作 領 域 を考 慮
す る必 要 が あ る. npnト
ラ ンジ ス タ の動 作 原 理,特 性 を述 べ たが, npnト
ランジス タでは電流 が
コ レク タ領 域 か らエ ミ ッタ領 域 に向 か っ て 流 れ る の に 対 し,pnpト
ラ ンジスタで
は エ ミ ッ タ領 域 か ら コ レ ク タ領 域 に流 れ る こ と以 外 は基 本 的 に 同 じで あ る. な お,べ
ー ス接 地 方 式 は電 圧 増 幅 に,コ
に 用 い ら れ る.
レ ク タ接 地 方 式 は入 ・出力 の 抵 抗 変 換
3 2 3 ・
・
三 つ の 接 合 が あ るデ バ イ ス(サ イ リス タ)
三 つ の 接 合 を も つpnpn構 10の(a),(b)の
造 は サ イ リ ス タ の 基 本 で あ る.サ
よ う に,ゲ
ー ト端 子 が n 層 に あ れ ば N ゲ ー トサ イ リ ス タ,p
層 に あ れ ば P ゲ ー トサ イ リ ス タ と い う.通 ス タ で あ る.P
常 の サ イ リ ス タ は,P
ゲ ー トサ イ リ ス タ は,図(b)の
よ う に, pnpト
ト ラ ン ジ ス タ が 組 み 合 わ さ っ て い る の と等 価 で あ る.こ よ びpBnE(J3)接 nBPcお
合 は,そ
よ びncPB(J2)接
イ リ ス タ は,図3・
れ ぞ れpnp,npnト
ゲ ー トサ イ リ
ラ ン ジ ス タ とnpn
の 図 で,PEnB(J1)接
合 お
ラ ン ジ ス タ の エ ミ ッ タ 接 合 と な り,
合 は コ レ ク タ 接 合 と な る.サ
イ リ ス タ は,こ
の ように二
つ の トラ ン ジ ス タ の コ レ ク タ を 互 い に 相 手 の べ ー ス に 接 続 し た 構 造 と み な せ る.
(a)N
(b)P ゲ ー トサ イ リ ス タ と そ の 等 価 的 な 構 造
ゲ ー トサ イ リス タ
図3・10サ
サ イ リ ス タ の 電 子,正 (1)
オ フ状 態
イ リス タの構造
孔 の 挙 動 は,図3・11の
状 態 に 分 け る こ と が で き る.
ゲ ー ト電 流 を 流 さ ず に,PE側(陽
極)に 正,nE側(陰
極)に
負 の極 性 の電 圧 す な わ ち 順 電 圧 を 印 加 す る と,中 央 のJ2接 合 は 高 い 電 界 で 逆 バ イ ア ス さ れ て 空 乏 層 が 生 じ,極 め て小 さい オ フ電 流 が 流 れ る.こ れ が オ フ 状 態 で あ る. オ フ 電 圧 を 高 くし て ブ レ ー ク オ ー バ 電 圧 に 達 す る と,J2接 じ て オ フ電 流 が 急 増 し,オ
合 で電 子 雪崩 が生
フ電 圧 阻 止 能 力 を失 って 電 源 と負 荷 抵 抗 で 定 ま る オ ン
電 流 が 流 れ る よ う にな る.こ の 状 態 を セ ル フ ター ンオ ン とい い,こ
の状 態 で 大 き
な オ ン電 流 を流 す とサ イ リス タエ レ メ ン トの 局 部 に電 流 が 集 中 し,特 性 劣 化 あ る
(a)オ
フ状 態
(b)オ フ状 態 か らオ ン状 態 へ の移 行
(c)オ ン状 態 か ら逆 阻止 状 態へ の 移 行
(d)逆 阻止 状態
図
3・11
サ イ リス タの動 作
い は破 壊 に至 る こ とが あ る. (2)
オ フ状 態 か らオ ン状 態 へ の移 行(ゲ ー ト制 御 ター ン オ ン)
と き,PB層
の ゲ ー ト端 子 に 正 の 電 圧 を 加 え る と,図3・11(b)の
トラ ン ジ ス タ で は,J3接 通 っ てncに
流 れ る.二
合 のnEか
て い る の で,npnト
らPBに
よ う に,ncpBnE
電 子 の 注 入 が 起 き,電
子 がJ2接
合 を
つ の トラ ン ジ ス タ の べ ー ス と コ レ ク タ が 互 い に 接 続 さ れ
ラ ン ジ ス タ の コ レ ク タ 電 流 はpnpト
ラ ンジス タのベ ー ス電
流 と な り,こ
の トラ ン ジ ス タ の コ レ ク タ 電 流 が 増 加 す る.こ
加 は,npnト
ラ ン ジ ス タ の ベ ー ス 電 流 の 増 加 と な る.こ
イ リ ス タ の 内 部 で 増 幅 さ れ,多 孔 はJ3接
量 の 電 子,正
つ の トラ ン
さ な ゲ ー ト電 流 で も サ
孔 が 発 生 す る.こ
の 電 子 はJ1接
合
合 を 通 っ て 陰 極 に 引 き つ け ら れ 電 流 が 流 れ る.こ
の タ ー ン オ ン 過 程 を 経 て オ フ 状 態 か ら オ ン状 態 に 移 行 し,電 る オ ン 電 流 が 流 れ る.ゲ
の コ レ ク タ電 流 の 増
の よ う に,二
ジ ス タ は 正 の フ ィ ー ドバ ッ ク 回 路 を構 成 し て い る の で,小
を 通 っ て 陽 極 に,正
オ フ状 態 の
源 と負 荷 抵 抗 で き ま
ー ト電 流 に よ る タ ー ン オ ン を ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ ン と い
う. こ の タ ー ン オ ン 過 程 を 数 式 で 示 す と,次 陽 極 電 流 をIA,陰 幅 率 を α1,npnト
極 電 流 をIK,ゲ
ー ト電 流 をIG,pnpト
ラ ン ジ ス タ の 電 流 増 幅 率 を α2と す る.こ
11(b)の
よ う に な る.陽
な り,一
方,陰
極 か ら 陰 極 に 向 か っ てJ2を
極 か ら陽 極 に 向 か っ てJ2を
の ほ か わ ず か な オ フ 電 流IDが 流 をIGと
の よ う に な る. ラ ンジスタの電流 増 れ ら の 記 号 は,図3・
通 過 す る 正 孔 電 流 は α1IAと
通 過 す る 電 子 電 流 は α2Icと な る.こ
流 れ て い る.ゲ
ー ト信 号 に よ りPBに
注 入 され る電
す れ ば, Ic=IA+IG
(3・4)
J2を 通 過 す る 電 流 はIAに
等 し い か ら,
IA=α1IA+ID+α2Ic
二 つ の 式 か らIcを
(3・5)
消 し てIAを
求 め る と, (3・6)
と な る.分
母 の α1+α2が
1に 近 づ く に つ れ てIAは
大 き く な り,α1+α2=1に
な
る と,IAは
数 式 で 無 限 大,す
な わ ち電 源 電 圧 と負 荷 抵 抗 で 定 ま る 電 流 まで 増 加
し,サ イ リス タ は ター ンオ ン す る.タ ー ン オ ンの 条 件 は α1+α2≧1
と な る.式(3・6)は,タ
(3・7)
ー ン オ ン 直 前 ま で 通 用 す る 式 で あ る.
α1,α2は電 流 依 存 性 が あ っ て,式(3・7)の
条 件 の と き,ゲ
ー ト電 流 が な く て も オ
ン状 態 は 持 続 す る. ま た,J2接
合 に お け る 電 流 増 倍 係 数(正 孔 と電 子 に 対 す る 値 を 簡 単 の た め 等 し
い と す る)を M 同 じ く正 孔,電
と し,pnp,npnト
ラ ン ジ ス タ の エ ミ ッ タ 効 率 を γ1,γ2,お よ び
子 の 到 達 率 を αT1,αT2と す る と,
α1+α2=M(γ1・
αT1+γ2・
αT2)
(3・8)
の 関 係 が あ る.こ れ ら の 係 数 はす べ て 各 層 の 添 加 元 素 の 量(過 剰 な 電 子,正 密度),層
の 厚 さ とそ の横 方 向抵 抗,密 度 の勾 配 に 関係 が あ る.図3・12に
を示 す.上 述 した 過 程 を経 て 電 子,正
孔の
そ の例
孔 が 流 れ オ フ状 態 か らオ ン状 態 に移 行 す る
た め に μsの オ ー ダ の 時 間 を要 し,こ れ が タ ー ンオ ン時 間 とな る.
図3・12 層の構 造 と添加 物 濃度 の例
(3)
オ ン状態
陽 極 に正 の 電 圧 が 加 わ り,電 源 と負 荷 抵 抗 で 定 ま る 電 流
(オ ン電 流)が ラ ッチ ン グ電 流 以 上 で あ れ ば電 流 に応 じた 量 の電 子,正
孔が各接合
を通 っ て 注 入 さ れ,電 流 の担 い手 と な っ て 電 子 は 陽極 に,正 孔 は陰 極 に 流 れ る. この と き,陽 極-陰 極 間 に オ ン電 圧 が 発 生 す る.オ
ン電 圧 とオ ン電 流 の 積 の オ ン
損 が 発 生 し,接 合 部 の 温 度 が 上 昇 す る. (4)
オ ン状 態 か ら逆 阻 止 状 態 へ の 移 行(転 流 夕一 ン オ フ)
ゲ ー トタ ー ン オ
フサ イ リス タ を除 き,通 常 の サ イ リス タ をオ ン状 態 か ら逆 阻止 状 態 に す る に は, まず ゲ ー ト電 流 を停 止 し,同 時 に 何 らか の 方 法 で オ ン電 流 を 0に し な け れ ば な ら な い.こ
の た め,電 源転 流 か また はオ ン電 流 を保 持 電 流 以 下 に す る か あ るい は 図
3・13の 強 制 転 流 回路 を使 用 す る.電 流 が 0に な っ た 直 後 のt0か ら陽 極-陰 極 間 に 逆 電 圧 が 加 わ る. 図3・11(c)の
よ う に,t0か
らt1の 期 間 A で は オ ン 電 流 の 名 残 に よ り三 つ の 接
合 の キ ャ リ ヤ 密 度 は 極 め て 高 く,逆
t1以 降 の期 間 B で は,J3の
電 流 と な っ て 外 部 回 路 に 流 れ る.
キ ャ リヤ が 消 滅 し,J3は
逆 バ イ アス され て空 乏層
が 広 が り逆 電 圧 を受 け持 つ よ うに な る.
図3・13 強制 転 流 回路 の 例
t2以 降 の 期 間 C で は,キ
ャ リヤ が 消 滅 して 逆 電 流 の 減 衰 と と も にJ1の 空 乏 層
が広 が っ て逆 電 圧 阻 止 能 力 が 回 復 して い く. t3で は,逆 電 流 が 消 滅 し て逆 電 圧 阻 止 能 力 は完 全 に 回 復 す る.し か し,J2近 のnB層
傍
に残 存 す る キ ャ リヤ の た め,こ の 時 点 で も し順 電 圧 が 加 わ る とタ ー ン オ
ン して し ま っ て 順 方 向電 圧 の 阻 止 能 力 はな い. t4で は,キ
ャ リヤ は 完 全 に 消 滅 してJ2の 順 方 向 電 圧 の 阻 止 能 力 は完 全 に 回 復
す る.t0∼t4を
転 流 タ ー ン オ フ 時 間 と い う.転
流 タ ー ン オ フ は,逆
電 圧が加 わ る
こ と と 同 時 に, α1十 α2<1
(3・9)
お よ び残 存 キ ャ リヤ が消 滅 す る こ とが 条件 で あ る. サ イ リス タ を 高 周 波 で動 作 させ る た め に は ター ン オ フ時 間 を 小 さ くす る必 要 が あ り,こ れ に適 す る よ うpnpn構
造 と キ ャ リヤ濃 度 お よ び ラ イ フ タ イ ム を設 計 し
て あ る. (5)逆
阻 止 状 態 逆 阻 止 状 態 で は,図3・11(d)の
逆 バ イ ア ス さ れ,J2は
順 バ イ ア ス さ れ る.特
わ る.こ の 状 態 で は,わ ず か の 電 子,正 る.こ の 状 態 で,さ
に,J1に
よ う に,J1お
よ びJ3は
は 高 い 逆 方 向 の 電 界 が加
孔 がJ1,J3を 通 っ て 逆 阻 止 電 流 が 流 れ
らに 高 い 逆 電 圧 を加 え る とつ い に は電 子 雪 崩 が 起 こ り,逆 阻
止 電 流 が 急 増 して サ イ リス タ は破 壊 に至 る.
3
・
3
パ ワー デバ イスの 種類, 構 造, 特性 および実例
前 項 で 述 べ た 構 造 と動 作 を基 本 に 多 種 類 の デバ イ ス が 開 発 さ れ 実 用 さ れ て い る.次
3・3
に,そ の 主 な デバ イ ス につ い て解 説 す る.
・
1
整流 ダ イ オ ー ド
整 流 ダ イ オ ー ドに は,次 の 三 つ の技 術 的 な 流 れ が あ る. (1)高
電 圧 大 電 流 ダ イ オ ー ド FZシ
化 と,ウ エ ー ハ 端 面 のpn接
リコ ン ウ エ ー ハ 面 内 の 抵 抗 率 の 均 質
合 の露 出 部 の 電 界 緩 和 技 術 の 発 達 に よ り高 耐 圧 化 が
可能 に な り,ウ エ ー ハ の 大 口径 化 お よ び平 形 セ ラ ミッ クパ ッケ ー ジ と シ リコ ンエ レ メ ン トの 圧 接 構 造 に よ る熱 抵 抗 の 低 下 に よ り大 電 流 化 が 可 能 に な った.大 電 流 ダ イ オ ー ドの 最 大 定 格 接 合 温 度 は150゜ C で あ る. 通 常,最
大 定 格 ピー ク繰 返 し逆 電 圧 の10%
増 の 電 圧 が 最 大 定 格 ピー ク非 繰 返
し逆 電 圧 と な っ て お り,い か な る場 合 も この電 圧 を超 え て は な らな い. この種 の 大 電 流 ダ イオ ー ドは,主 に商 用 周 波 を電 源 と した 整 流 装 置 に使 用 さ れ
最大 定格 ピー ク繰 返 し逆 電圧
4000V
ピー ク非繰 返 し逆電 圧
4400V
平均 順 電 流
2500A
ピー ク 1サ イ クルサ ー ジ電 流(50Hz半 平均 順 電圧(8000A,25℃)
波)50kA
最 大2.0V
主 た る用 途:電 力整 流用 (a)高 電 圧 大電 流 ダ イ オー ドの例
最大 定格 ピー ク繰 返 し逆 電圧
4500V
ピー ク非 繰返 し逆電 圧
4700V
平均 順 電 流
1200A
ピー ク 1サ イ クルサ ー ジ電 流(50Hz半
波)21kA
ピー ク順 電圧(所 定 の 条件 の 時)最
大2.8V
逆 回復 電 荷(所 定 の条 件 の時)最 大1700μC 主 た る用 途:高 速 インバ ー タ,フ ライ ホ イー ル ダ ィオー ド (b)高 速 ダ イ オ ー ドの 例
最 大 定格 ピー ク繰 返 し逆電 圧40V ピー ク非 繰 返 し逆 電圧45V 平均 順 電 流150A ピー ク 1サ イ クル サー ジ電 流(50Hz半
波)2400A
ピー ク順 電圧(所 定 の 条件 の 時:最 大)最 大0.V 主 た る用 途:ス ィ ッチ ン グ電 源用 低 電 圧 側 整 流 ダ イ オー ド (c)シ
ョ ッ トキ ー バ リア ダ イ オ ー ド
図
3 ・ 14
各種 整 流 ダ イオー ドの例
る.図3・14(a)に,例
と し て4000V,2500A級
高速 ダ イオー ド
(2)
上 記(1)の
の ダ イ オ ー ド を 示 す. ダ イ オ ー ドで は,そ
の デバ イ ス 設 計 に よ
り逆 回 復 電 荷 が 大 きい の で,高 周 波 用 に は適 さ な い.高 周 波 イ ンバ ー タ 用 の フ イ ー ドバ ック ダ イ オ ー ド と して 数kHz以
上 で 動 作 させ るた め,逆 回 復 電 荷 をで き
るだ け小 さ く した構 造 と製 法 を採 用 して お り,こ れ を高 速 ダ イ オ ー ドとい う.こ の 種 の 高 速 ダ イ オ ー ドの 最 大 定 格 接 合 温 度 は125゜Cで て4500V,1200A,逆
回 復 電 荷1700μCを
合 を使 わ ず,金
とし
示 す.
シ ョ ッ トキ ー バ リ ア ダ イ オ ー ド(SBD)
(3)
あ る.図(b)に,例
上 記(1),(2)の
よ うな 接
属 薄 膜 と n形 半 導 体 を接 触 させ て で き る電 位 障 壁 を利 用 して 整
流作 用 を行 わ せ る.逆 回 復 電 荷 が極 め て小 さ く,順 電 圧 降 下 が 小 さ い特 長 が あ る た め高 周 波 の 整 流 に 適 す る が,構 造 上,電 る.こ の種 の ダ イ オ ー ドは,主 る.図(c)に
3 3 2 ・
・
流,ピ
ー ク繰 返 し逆 電 圧 に 限 界 が あ
と し て比 較 的 低 い直 流 電 圧 の整 流 回 路 に使 用 さ れ
そ の例 を示 す.
トラ ン ジ ス タ (自 己 オ ン ・オ フ 機 能(デ バ イ ス 転 流)を も つ デ バ イ ス) ダ ー リン トン形 バ イ ポ ー ラ パ ワー トラ ン ジ ス タ ベ ー ス電 流 の オ ン ・
(1)
オ フで ス イ ッチ 動 作 す る トラ ンジ ス タ は あ ら ゆ る用 途 に使 用 され て い る.特 パ ワー 用 に適 す る よ うに,次
①
従 来 のnpn構
の構 造 に して あ る.
造 で は,電 力 の ス イ ッ チ に対 して 安 全 動 作 領 域 が 狭 く誘 導
性 負 荷 の と きは破 壊 しや す い の で,こ の ν層 を入 れ,npνn構
②
に,
れ を改 善 す る た め コ レ ク タ層 に 高 抵 抗
造 に し て あ る.
高 精 細 リ ゾ グ ラ フ ィ技 術 を応 用 して nエ ミ ッタ を 微 細 な構 造 と し,エ
ミ
ッ タ 接 合 の 蓄 積 キ ャ リヤ を短 時 間 に 外 部 に 吸 い 出 して オ フ機 能 を 高 め て い る. 一 段 の パ ワ ー ト ラ ン ジ ス タ で は エ ミ ッ タ 接 地 の 電 流 増 幅 率hFEは
③
通 常 約10以
下 で あ る.hFEを
大 き く す る た め,ト
ー ド に し た ダ ー リ ン ト ン構 造(複 合 デ バ イ ス)と
小 さ く
,
ラ ン ジ ス タ を二 段 カ ス ケ し て 総 合 的 なhFEを
大 き く
し て い る.前 hFEは
段 と 後 段 の 電 流 増 幅 率 を そ れ ぞ れhFE1,hFE2と
近 似 的 にhFE≒hFE1×hFE2と
す る こ と が 可 能 で,小
の 構 造 で は,hFEを400以
合
上 に
さ な べ ー ス 電 流 で 大 き な コ レ ク タ 電 流 を オ ン ・オ フ 動
作 で き る 利 点 が あ る.し な っ て 損 失 が 増 し,蓄
な る.こ
す る と,総
か し,コ
レ ク タ-エ ミ ッ タ 間 の 飽 和 電 圧 が 若 干 高 く
積 時 間 が 増 加 して ス イ ッ チ ン グ 時 間 が 長 く な る の で 高
周 波 用 と し て 難 点 が あ る. 図3・15に,デ
バ イ ス の 構 造 を 示 す.
(a)
図
後 述 す るMOSFET, (2)MOSFET(金
3・ 15
構造
(b)
ダー リ ン ト ンバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ の 例
IGBTの
性 能 向 上 に よ り,応
図3・16の
子 を 受 け 取 る 電 極)と,n
の 間 の p ウ エ ー ハ の 表 面 に 極 め て 薄 い(1000A程
た ゲ ー ト(G)電 極 を 配 置 す る.ゲ に,ソ
用 分 野 は 減 少 し つ つ あ る.
属 酸 化 膜 電 界 効 果 ト ラ ン ジ ス タ)
形 ウ エ ー ハ に n 形 ド レ ー ン(D;電 し,そ
等価回路
よ う に,p
形 ソ ー ス(S)を 形 成 度)SiO2絶
縁 膜 を介 し
ー ト に 電 圧 を 加 え な い と き は,図(a)の
よ う
ー ス-ド レ ー ン 間 は 空 乏 層 で 分 離 さ れ て い る た め ド レ ー ン に 電 圧 を 加 え て
も電 流 は 流 れ ず,オ え る と,図(b)の
フ 状 態 に あ る.ゲ よ う に,絶
縁 膜 に 面 し た p基 板 表 面 に n 形 反 転 層 が 生 じ,電
子 が 流 れ る チ ャ ン ネ ル が 形 成 す る.こ レ ー ン に,す
ー トに 正 の 電 圧 を 加 え そ れ が し き い 値 を 超
の チ ャ ンネ ル を通 っ て 電 子 が ソー ス か ら ド
な わ ち 電 流 が ド レ ー ン か ら ソ ー ス に 流 れ,オ
化 と チ ャ ン ネ ル の 抵 抗 を 減 ら す た め,チ
ン 状 態 に な る.大
ャ ン ネ ル 幅 を 広 く,長
電流
さ を短 くす る 必 要
(a)
図
3・16
VG=0
(b) VG>VT
MOSFETの
記 号,構
造,動
(c)
VG>VT,
VD
作
(nチ ャ ン ネ ル エ ン ハ ン ス メ ン トMOSFET)
が あ り,LSI並
の微 細 加 工 技 術 を応 用 す る.
ゲ ー ト電 圧 を一 定 に し た と き,電 流 の 増 加 に 従 っ てチ ャ ンネ ル の 抵 抗 に よ る 電 圧 降 下 が 生 じて ドレー ン に近 い 反 転 層 の 厚 さ を減 少 させ る こ と にな り,図(c)の よ うに,反 転 層 は 消 失 し て ピ ンチ オ フ が 生 じる.こ の状 態 で は,ド
レー ン電 圧 を
高 く して も電 流 は増 加 し な い.ゲ ー ト電 圧 の 増 加 と と も に ドレ ー ン電 流 は増 加 す る.同 時 にオ ン電 圧(チ ャ ンネ ル の電 圧 降 下)も 増 加 す る.ゲ ー ト電 圧 を 0に す れ ば 電 流 も 0と な り,オ フ状 態 に な る. ゲ ー ト電 圧 をパ ラ メ ー タ と した 特 性 は,図3・17の
よ うに,非 飽 和 領 域,飽
領 域,降 伏 領 域 が あ る.ス イ ッ チ動 作 は極 め て 速 く,波 形 の例 を 同 図 に 示 す .
図
3・17
MOSFETの
静 特 性,オ
ン ・オ フ 動 作 波 形
和
MOSFETの
①
例 を 図3・18に,そ
の 特 徴 を 次 に 示 す.
ゲ ー ト絶 縁 膜 を介 して制 御 す る の で,ゲ ー トの イ ン ピー ダ ン ス は 極 め て 高 く電 圧 駆 動 源(た だ し,膜 を形 成 す る ス トレー キ ャパ シ タ ン ス の 充 ・放 電 電 流 が 流 れ る)で オ ン ・オ フ動 作 が で き る.
②
タ ー ンオ ン時 間 は,ゲ ー ト電 圧 に よ る絶 縁膜 の キ ャパ シ タ ン ス の 充電 時 間 と,ゲ ー ト し きい値 電 圧 を超 えて か ら所 定 の ドレ ー ン電 流 を流 す の に必 要 な 電 圧 まで の 充 電 時 間 で き ま る.タ ー ン オ フ時 間 は これ ら の 放 電 時 間 で き ま る.
③
多 数 キ ャ リヤ デ バ イ ス の た め キ ャ リヤ蓄 積 時 間 が な い の で,タ 間,タ
④
ー ンオ フ 時 間 は極 め て 早 く,100MHz程
ー ンオ ン時
度 ま で の 動 作 が 可 能 で あ る.
オ ン電 圧 降 下 は比 較 的 大 き く,電 流 密 度 を 大 き く取 れ な い 欠 点 が あ っ た. 最 近 で は,微 細 加 工 技 術 な どの 進 歩 に よ リオ ン抵 抗 は 大 幅 に 減 少 し,電 流 密 度 が 増 加 す る方 向 に あ り,特 性 改 善 に よ り将 来 期 待 で き る デ バ イ ス で あ る.
最大定格 および電気的特性 ドレ ー ンーソ ー ス 間 電 圧
1000V
ドレ ー ン 電 流(DC
12A
ゲ ー ト し き い値 電 圧(所
定 の 条 件 の 時:最
ドレ ー ンーソ ー ス 間 オ ン 抵 抗(所
大)
定 の 条 件 の 時:最
タ ー ン オ ン 時 間(所
定 の 条 件 の 時:標
準)
タ ー ン オ フ 時 間(
〃 :〃)
3.5V 大) 1.0Ω 140ns 500ns
主 た る用 途:電 子 機 器 用 ス イ ッチ ン グ電源
図
(3)IGBT(絶
3・18
MOSFETの
例
縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ)
前 述 したMOSFETと
バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ の 良 い点 を組 み 合 わ せ た 複 合 デ バ イ ス で,MOSFETの 電 圧 駆 動 と,大 電 流 バ イ ポ ー ラ トラ ン ジス タの 低 い オ ン電 圧 降 下 の利 点 を生 か し た構 造 で あ る.図3・19の 等 価 回路 に な る が,サ
よ う に,サ イ リス タ の ゲ ー トにMOSFETを
接続 した
イ リス タ部 が オ ン し っ ぱ な しに な ら な い よ うに す るた め,
(a)構 造
(b)等 価 回路 図3・19IGBTの
npnト
(c)記 号
構 造 と等価 回路
ラ ン ジ ス タ は動 作 し な い よ う に して あ る.す なわ ち,エ
トラ ン ジス タ のベー ス にMOSFETを タ ー ンオ ンの 場 合 は,MOSFETの
ミッ タ 接 地 のpnp
付 けた デバ イ ス で あ る. ゲ ー トに そ の しき い値 以 上 の 電 圧 信 号 を加
え る と,絶 縁 層 を介 し て ゲ ー ト電 極 直 下 の p層 に nチ ャ ン ネ ル が 形 成 さ れ ,n層 に電 子 が 注 入 され て 電 流 が 流 れ る.同 時 に,p+層
と n-層 の 接 合 が 順 バ イ ア ス
され て p+か ら n-に 正 孔 の 注 入 が 起 こ る.こ の結 果,n-層 変 調 に よ り極 端 に 小 さ くな る.こ の 動 作 の た め,高
の 抵 抗 値 は,電 導 度
い電 流 密 度 が 可 能 と な り,バ
イ ポ ー ラ トラ ンジ ス タ と同 等 の 低 い オ ン電 圧 降 下 が 得 られ る. タ ー ンオ フ の場 合 は,MOSFETの
ゲ ー ト電圧 を しき い 値 以 下 に す れ ば,チ
ンネ ル は 消 滅 てて 電 子 の 注 入 は停 止 す る.n-層 の 正 孔 は 消 滅 て, pnpト
ャ
ラ ンジ
ス タ の 電 流 はオ フ状 態 に な る. ス イ ッチ ン グ速 度 は,主
と し てpnpト
ラ ン ジ ス タ に よ っ て定 ま り,コ
レ ク タ-
エ ミ ッタ 間 飽和 電 圧 を 低 下 さ せ つ つ オ ン,オ フ時 間 を小 さ くす る よ う に デ バ イ ス を設 計 し,キ ャ リヤ の 消滅 を早 め る よ うな製 造 プ ロ セ ス を 用 い て い る. 電 流 の オ ン,オ
フ動 作 はpnpト
ラ ン ジ ス タ で 行 う た め,ス
イ ッチ ン グ 損 失,
安 全 動 作 領 域 の 考 え方 は通 常 のバ イ ポー ラ トラ ン ジ ス タ と基 本 的 に 同 じで あ る . 図3・20に,代
表 的IGBTの
波 形 と特 性 を示 す.
(a)60A級IGBTの
エ レ メ ン トパ タ ー ン
最大 定 格 およ び量 気 的定 格(複 数 のIGBTエ コ レ ク タ-エ
コ レ ク タ 電 流(直
2500V
流)
1000A
コレ ク タ遮 断電 流
200mA
(所定 の 条件 の時) (
〃
ゲ ー ト-エ ミ ッ タ間 遮 断 電 圧 コ レ ク タ-エ
レ メン トを同一 平 型 パ ッケー ジに 入れ た構 造)
ミッタ間電 圧
ミ ッ タ 間 飽 和 電 圧 ( 〃
ター ン オン 時 間
(
(c)2500V,1000 図3・20IGBTの
5μs
)標 準 1μs
種 チ ョ ッ パ,イ
(b)2500V,1000
5V
)最 大 5μs
〃
逆 回復 時 間 主 た る 用 途 : 各種 電 動 機 制 御,各
〃
(
8V
〃 )標 準 )最 大
(
ゲ ー トタ ー ン オ フ 時 間
)最 大
ンバ ー タ
A IGBTの
A IGBTの
特 性 お よび 外形
ス イ ッチ 波 形
波 形 と特 性 の 例
3 ・3・ 3
サ イ リス タ
サ イ リス タ の接 合 構 造 と動 作 原 理 につ い て は3・2・3項 で 解 説 した.こ
こで は,
サ イ リス タの 種 類 と特 徴 お よ び そ の 実例 に つ い て述 べ る . サ イ リス タ を使 用 す る にあ た っ て,そ の 定 格 表 を見 る と きの 必 要 な項 目は. ①
ピー ク繰 返 しオ フ電 圧 お よ び逆 電 圧
②
ゲ ー ト ト リガ 条 件
③
平 均 オ ン電 圧
④
ピー ク オ ン電 圧
⑤
ピ ー ク 1サ イ ク ル サ ー ジオ ン電 流
⑥
タ ー ンオ フ 時 間
⑦
臨界 オ ン電流上 昇率
⑧
臨界 オ ン電圧上 昇率
⑨
接 合-冷 却 フ ィ ン間 の 熱 抵 抗
⑩
冷 却 フ ィ ン との 圧 接 力
な どの 最 大 定 格 お よ び そ の 使 用 条件 で あ る. (1)
通 常 の サ イ リス タ (ゲ ー ト電流逆 阻止 3端 子 サ イ リス タ; 転 流 タ ー ン オ フ催 能)
最 大 級 の 高 電 圧,大 高 い直 径125mm級
電 流 サ イ リス タ で は,3・4・2項 で 述 べ る よ う に,抵 抗 率 の
のFZ中
性 子 照 射 シ リ コ ン単 結 晶 ウ エ ー ハ を使 用 して い る.
ウ エ ーハ の 物 理 的 特 性 とサ イ リス タ の電 気 的 特 性 は,そ の 製 造 プ ロ セ ス も含 め て 互 い に複 雑 に 影 響 し合 う の で,特 性 の トレー ドオ フ が難 しい.最 大 級 の サ イ リス タで は,オ
ン電 流 上 昇 率 を高 め るた め,ゲ ー トの 位 置 を サ イ リス タエ レメ ン トの
中 央 に配 置 し(セ ン タ ー ゲ ー ト),ゲ ー トパ タ ー ン を放 射 状 に してPB層
の オ ン領
域 を急 速 に広 め て タ ー ンオ ン時 の電 流 集 中 を避 け る よ うに し て い る.高 電 圧 ・大 電 流 サ イ リス タ ほ ど蓄 積 電 荷 が 大 き く,こ の た め タ ー ン オ フ時 間 が 長 い の で,オ ン ・オ フ動 作 の 周 波 数 は 1kHz程
度 ま で で あ る.図3・21に,4000V,3000A
級 サ イ リス タ例 を 示 す. (2)
高 速 サ イ リス タ (逆阻 止 3端 子 サ イ リス タ; 転 流 タ ー ン オ フ機 能)
オ
ン ・オ フ動 作 の 周 波 数 を高 め るた め,サ イ リス タ の構 造 と製 造 プ ロ セ ス を工 夫 し て 逆 回 復 電 荷 を極 力 減 ら して あ る.2500V,400A ター ンオ フ 時 間 は約40μsで サ イ リス タ の 約1/10に
あ る.こ の 値 は,ほ
級 で は,規 定 の 条 件 の と き ぼ同 じ電 圧 ・電 流 定 格 の 通 常 の
小 さ くな っ て い る.動 作 周 波 数 は,20kHz程
度 まで の
最大 定格 お よび 電気 的 特 性 ピー ク繰返 し オフ電 圧 お よび ピー ク繰 返 し逆 電 圧 ピー ク非繰 返 し逆電 圧
4000V 4400V
平 均 オ ン電 流
3000A
ピ ー ク 1サ イ ク ル サ ー ジ 電 流(50Hz半
波)
保持電 流
60kA 300mA
ター ン オ ン時 間(所 定 の 条件 の 時) 〃
タ ー ン オ フ 時 間(
最大 10μs
)
最 大400μs
臨 界 オ ン電 流上 昇 率
300A/μs
臨 海 オ フ電圧 上 昇 率(所 定 の 条 件 の時)
2000V/μs
主 た る用 途 :電 力変 換 用
図3・214000V,3000A級
サ イ リス タ
高 周 波 イ ンバ ー タ装 置 に適 して い る が,ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リス タ との 特 性 の 勘 案 に よ り応 用 分 野 は減 少 てつ つ あ る. (3)逆
導 通 サ イ リス タ(逆 導 通 3端 子 サ イ リス タ;転 流 タ ー ンオ フ機 能)
電 力 変 換 装 置,特
にイ ンバ ー タ,チ
ョ ッパ で は,サ
イ リス タ が 転 流 後,回
路の
エ ネ ル ギ ー を フ ィー ドバ ック させ る た め サ イ リス タ に逆 並 列 に 整 流 ダ イ オ ー ドを 接 続 す る場 合 が あ る.こ の サ イ リス タ とダ イ オ ー ドを 1枚 の シ リコ ン ウ エ ー ハ に 配 置 した の が 逆 導 通 サ イ リス タ で,一 種 の 複 合 デバ イ ス で あ る.ウ エ ー ハ 面 内 の サ イ リス タ部 とダ イ オ ー ド部 の間 に分 離 帯 を設 け る.逆 導 通 サ イ リス タ は,逆 電 圧 を阻 止 す る能 力 は な い が,逆 方 向 に も順 方 向 と同等 か また は1/3程
度 の平 均 電
流 を流 す こ とが で き る.逆 電 圧 を 阻 止 す る必 要 が な い の で,特 性 の トレ ー ドオ フ に よ り,ほ か の 特 性(例 え ば,転 流 タ ー ンオ フ時 間)を 改 善 す る こ とが で き る.逆 導通 サ イ リス タ を使 用 す れ ば 部 品 点 数 を減 らせ る ので,装
置 を小 型 ・軽 量 化 で き
る利 点 が あ る.変 換 装 置 の 回 路 構 成 に よ っ て はサ イ リス タ に逆 電 圧 が か か る場 合 が あ り,こ の と き は逆 導 通 サ イ リス タ で な く,通 常 の 逆 阻 止 サ イ リス タ を使 用 す る.逆 導 通 サ イ リス タの 構 造 と定 格 の 例 を 図3・22に 示 す.
最大定格および電気的特性 ピー ク繰 返 し オ フ電 圧
2500V
ピー ク非繰 返 し オフ電 圧
2500V
平均 オ ン電 流
400A
平 均 逆 電 流
150A
ピ ー ク 1サ イ ク ル サ ー ジ オ ン 電 流(50Hz半 ピ ー ク 1サ イ ク ル サ ー ジ 逆 電 流(同
波)
7kA
上)
臨 海 オン電 流 上昇 率
2.5kA
200A/μs
ピー クオ ン電 圧(所 定 の 条件 の時)
最 大
3V
ピー ク逆 電 圧 ( 〃 ) 最 大 2.3V ター ンオ ン時 間(
〃 ) 最 大 6μs
ター ンオ フ時 間(
〃 ) 最 大 40μs
転 流 時 臨 界 オフ 電圧 上 昇率(同 上) 最 小 350V/μs 主 た る 用 途:電
力 変 換,イ
図3・22
ンバ ー タ用
逆 導通 サ イ リス タの例
(4) 光 ト リガ サ イ リス タ(ト リガ 信 号 を電 気 か ら光 に換 え た転 流 タ ー ン オ フ 形 サ イ リス タ)
通 常 の サ イ リス タ で は,ゲ ー ト ト リガ電 流 を流 してPB層
ャ リヤ を発 生 させ て ター ンオ ン させ る.シ
にキ
リコ ン原 子 の M 軌 道 の 電 子 は弱 い 結
合 の た め,光 エ ネ ル ギ ー を 受 け て 電 離 す る の で,あ 0.8∼1.05μmに
ピー ク感 度 が あ る)をPB層
る 強 さ の 光(近 赤 外 波 長
に照 射 す れ ば タ ー ン オ ン す る.サ イ
リス タ エ レ メ ン トの 中 心 部 を光 に対 して 感 度 を電 気 的 トリガ感 度 の 1桁 以 上 高 め る よ う に設 計 し,エ レ メ ン ト全 面 を直 ち に ター ン オ ン させ る た め の パ タ ー ン を付 け る. 光 で タ ー ン オ ン す る メ カ ニ ズ ム は,図3・23の
(a)光 信 号
よ う に な る.オ
(b)補 助 サ イ リス タ の ター ン オ ン
フ状 態 に あ る光
(c)主 サ イ リ ス タ の ター ン オ ン
(d)ゲ ー トパ ター ン
最大定格および電気的特性 ピー ク繰返 しオフ電 圧 お よび逆 電圧 平均 オ ン電 流
8000V 3500A
ピー ク 1サ イ ク ル サ ー ジ オ ン 電 流(50Hz)
60000A
臨界 オ ン電 流 上 昇率
200A/μs
光 ト リガ パ ワ ー
オ ン電 圧
図
3・
8mW (所定 の 条件 の 時)
2.7V
ター ンオ ン時 間 ( ″ )
10μs
ター ンオ フ時 間 ( ″ )
400μs
23
光 に よ る タ ー ン オ ン過 程 と8000V,
3500A
級 光 サ イ リス タ
ト リ ガ サ イ リ ス タ に 電 離 に 必 要 な 光 エ ネ ル ギ ー をPB層 に 電 子,正
孔 が 発 生 す る.こ
に 拡 散 す る.横 はPBとnEの
の う ち,正
に 拡 散 す る と,PB層
接 合J3に
孔 は,図(a)の
に 照 射 す る と,そ よ う に,PB層
の 抵 抗 に よ り電 位 差 を 生 ず る.こ
対 し て 順 バ イ ア ス と な り,こ
の近 傍
を横 方 向 の電 位 差
れ が あ る値(約0.7V)を
超 え
る と補 助 サ イ リ ス タ が 通 電 状 態 に な る.こ
の 補 助 サ イ リ ス タ に よ り増 幅 さ れ た 電
流 が,図(b)の
の 結 果,導
よ う に 横 方 向 に 広 が る.こ
に 広 が り,図(c)の
よ う に タ ー ン オ ン す る.例
通 部 分 が エ レ メ ン ト全 面 積
と し て,8000V,3500A
ガ サ イ リ ス タ の 特 性 お よ び ゲ ー トパ タ ー ン を 図(d)に (5)ゲ
ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ(略 称GTO;Gate
通 常 の サ イ リ ス タ で は,正
示 す. Turn-Off Thyristor)
の ゲ ー トパ ル ス 電 流 に よ っ て タ ー ン オ ン し,電
負 荷 で 定 ま る オ ン 電 流 が 流 れ る.い 電 流 を 遮 断 で き ず,オ
光 トリ
源 と
っ た ん オ ン 状 態 に な っ た ら ゲ ー ト電 流 で オ ン
ン 電 流 を 保 持 電 流 以 下 に す る(消 流)か,ま
た は転 流 回 路 で
オ ン 電 流 を 強 制 的 に 0(転 流 タ ー ン オ フ)に し な け れ ば オ フ状 態 に で き な い. ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ は,正
の ゲ ー トパ ル ス 電 流 で タ ー ン オ ン さ せ,負
の ゲ ー トパ ル ス 電 流 で そ の オ ン 電 流 を 遮 断 し て オ フ 状 態 に す る 機 能 を も た せ た デ バ イ ス で あ る.ゲ
ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ ス タ の タ ー ン オ ン 動 作 は,3・2・3項
(2)で 説 明 し た 通 常 の サ イ リ ス タ と 同 じ で あ る.そ
の
の タ ー ン オ フ 動 作 を 図3・24
で 説 明 す る. オ ン電 流 が 流 れ て い る と き は,電 る.オ
ン 電 流 を 遮 断 す る た め,ゲ
電 圧 を 加 え る と,PB層 れ る.ゲ
の 電 子 の 供 給 は 停 止 し,逆
のJ3接
合 は 逆 バ イ ア ス さ れ る の で, nEか
ら
孔 は 再 結 合 に よ っ て 消 滅 し, J3接 合 の 逆 阻 止 能 力
は 完 全 に 回 復 す る と と も に,J2接
合 は オ フ 電 圧 阻 止 能 力 を 回 復 す る よ う に な る.
ー ト に 負 の 電 圧 を 加 え 続 け る こ と に よ っ てJ2接
残 存 キ ャ リ ヤ を 消 滅 さ せ る と,ゲ し続 け る よ う に な る.
ー ト電 源 に よ っ て ゲ ー ト-陰 極 間 に 負 の パ ル ス
阻 止 能 力 が 回 復 す る よ う に な る.
域 の 電 子,正
さ ら に 再 結 合 と,ゲ
孔 は陰 極 に 向 か っ て 流 れ て い
の 正 孔 が 外 部 に 吸 い 出 さ れ て 負 の ゲ ー トパ ル ス 電 流 が 流
ー ト電 源 に よ っ てPB-nE間
そ の 後,PB領
子 は 陽 極 に,正
合近 傍 の
ー ト に 負 の 電 圧 を 加 え な くて もオ フ電 圧 を 阻 止
(a)オ
ン状 態
(b)ゲ 図3・24
ー トター ン オフ過 程
ゲ ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ ス タ の ター ン オ フ 動 作
負 の パ ル ス 電 圧 を 加 え て か らJ3接 を 蓄 積 時 間tgs(ts),そ 下 降 時 間tgf(tf)と
こ か らJ3接
し て,ゲ
(c)タ ー ン オ フ 波 形
合 の逆 阻 止 能 力 が 回 復 し始 め る ま で の 時 間
合 の 逆 阻 止 能 力 が 完 全 に回 復 す る ま で の 時 間 を
ー トタ ー ン オ フ 時 間tgqはtgf(tf)とtgs(ts)の
ゲ ー トタ ー ン オ フ 時 間 以 降 極 め て わ ず か な オ ン 電 流 が 流 れ る が,負
和 で 表 す. の ゲ ー ト電 圧
に よ っ て 消 滅 す る ま で の 時 間 を テ イ ル 時 間tg tailと い う . ゲ ー トタ ー ン オ フ 時 間 直 後 に ス パ イ ク 電 圧VDSPが 期 間 の オ ン電 流 降 下 率,ス タ ン ス に よ る.テ 圧VDMが
発 生 す る が,こ
ナ バ 回 路 に 流 れ る電 流 の変 化 率 とそ の 回 路 の イ ン ダ ク
イ ル 時 間 中 にス ナバ 回路 の コ ン デ ンサ が 充 電 され て 高 いオ フ電
加 わ る.コ
ン デ ン サ 容 量 を 大 き く す る ほ どVDMは
回 路 の 電 力 損 失 は 増 加 す る 欠 点 が あ る.ゲ
減 少 す る が,ス
ナバ
ー ト タ ー ン オ フ 時 間 内 に ゲ ー ト端 子 か
ら 流 れ 出 る ゲ ー ト電 流 の 時 間 積 分 を ゲ ー トタ ー ン オ フ 電 荷QcQと tgqとQGQは
れ はtgf(tf)
い う.
タ ー ン オ フ 時 の オ ン 電 流 が 大 き い ほ ど 大 き く,tgqは
パ ル ス 電 流 が 大 き い ほ ど 小 さ く な る .図3・25に,タ
負 のゲ ー ト
ー ン オ フ 時 の 波 形 を 示 す.
図3・25ゲ
ー トタ ー ン オ フ 時 の 波 形 (4000V,3000A,GTOの
PB領 域 の 電 子,正
孔 は,キ
オ フ 状 態 に 移 行 す る が,こ
ャ リ ヤ ラ イ フ タ イ ム に よ る 再 結 合 に よ っ て 消 滅 し, の と き,ゲ
層 の 横 方 向 抵 抗 が 大 き い と,正 が 困 難 と な る.こ
場 合)
ー ト電 極 と 陰 極 の 距 離 が 遠 く,か
孔 の 吸 い 出 しが し に く く な り,ゲ
ー トタ ー ン オ フ
の た め 陰 極 を 小 さ な 長 方 形 の セ グ メ ン ト に し,そ
トで 取 り 囲 む 構 造 と し て,PB層
つ,PB
の 回 りを ゲ ー
の 横 方 向 抵 抗 を で き る だ け 小 さ くす る.
負 の ゲ ー トパ ル ス 電 流 が 小 さ くて 正 孔 の 吸 い 出 し が 不 十 分 で あ る と,セ トの 局 部 に オ ン 電 流 が 集 中 し て 過 熱 し,ゲ
ー トタ ー ン オ フ 失 敗 し て,デ
グメ ン
バ イスは
破 壊 す る. い か な る 運 転 条 件 で も十 分 大 き な 負 の ゲ ー トパ ル ス 電 流 を 流 せ る ゲ ー ト電 源 を 接 続 し,確
実 に 正 孔 を 吸 い 出 す こ と が ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ を 破 壊 か ら防
ぐ 絶 体 必 要 条 件 で あ る.ゲ 合 せ と 等 価 で あ る.い ジ ス タQ2の
ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ も二 つ の トラ ン ジ ス タ の 組
ま,pnpト
ラ ン ジ ス タQlの
そ れ を α2,陽 極 電 流(Q1の
い 出 す 電 流 をIGと
し て, Q2の
電 流 増 幅 率 を α1, npnト
エ ミ ッ タ 電 流)をIA,ゲ
べ ー ス 電 流IBQ2は,
ラ ン
ー ト電 極 か ら 吸
IBQ2=α1IA-IG
一 方
,陰
極 電 流(Q2の
(3・10)
エ ミ ッ タ 電 流)をIkと
す る た め のQ2の
べ ー ス 電 流 は,
IBQ2=(1-α2)(IA-IG)
で あ る.従
っ て,ゲ
(3・11)
ー トタ ー ン オ フ の 条 件 は, (3・12)
(α1IA-IG)≦(1-α2)(IA-IG)
に す れ ば よ い.ゲ
ー ト タ ー ン オ フ に 必 要 な 負 の ゲ ー ト電 流IGは,
(3・13)
と な る.タ
ー ン オ フ 可 能 の 臨 界 条 件 のIA/IG,す
な わ ち タ ー ン オ フ 利 得Gqは,
次 式 と な る.
(3・14)
Gqを し,Gqを
大 き くす れ ば 負 の ゲ ー トパ ル ス 電 流 源 を 小 さ くで き る 利 点 が あ る.し 大 き くす る た め 設 計 上 で は α2を で き る だ け 大 き く,し
1 よ り わ ず か に 大 き くす れ ば よ い こ と に な る が,他
5前 後 で あ る.
負 の ゲ ー ト電 流 で タ ー ン オ フ で き る最 大 の オ ン 電 流,す ,ゲ
ト を た く さ ん 並 列 に 接 続 す れ ば よ い.例 ー ク ゲ ー ト タ ー ン オ フ 電 流4000A 160μm)か
ら な る セ グ メ ン ト を,直
円 状 に 配 置 し て あ る.陰
な わ ち ピー クゲ ー トタ
ー ト と陰 極 の 対 か ら な る微 細 な セ グ メ ン え ば,1994年
で は
,長
に 開 発 さ れ た6000V,ピ
方 形 の 陰 極(長
径 約90mmの
さ 約 3mm,幅
ウ エ ー ハ に 約3800個
極 セ グ メ ン トの 幅 を 狭 く し,同
ン サ 容 量 を 大 き くす る ほ ど,図3・26の
か も(α1+α2)が
の 特 性 と の ト レ ー ドオ フ に よ
り高 電 圧 大 電 流 ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ で は,Gqは
ー ン オ フ電 流 を 大 き くす る た め に は
か
よ う に,ピ
約
を同 心
時 にスナバ回路 の コンデ
ー ク ゲ ー トタ ー ン オ フ 電 流 は
増 加 す る傾 向 に あ る.
ゲ ー トタ ー ンオ フ サ イ リス タ の構 造 と して,通 常 の サ イ リス タ の よ う に 高 い 逆 電 圧 を 阻 止 す る機 能 を もっ た 逆 阻 止 形 と,せ い ぜ い15V
程 度 しか 逆 阻 止 能 力 の
な い陽 極(エ ミ ッタ)短 絡 形 の 2種 類 が あ る.前 者 は,電 流 形 イ ンバ ー タ に,後 者 は電 圧 形 イ ン バ ー タ に使 わ れ る.図3・27は,陽
極 短 絡 形 の 構 造 で あ るが,オ
フ
図3・26
ゲ ー ト ター ン オ フ 能 力
最大定格および電気 的定格 ピ ー ク繰 返 し オ フ 電 圧
6000V
ピー ク繰 返 し逆 電圧
17V
ピー ク ゲ ー トタ ー ン オ フ 電 流(所
6000A
〃 )
2700A
実 効 オ ン電 流(
定 の 条 件 の 時)
ピー ク 1サ イ クル サ ー ジ 電 流(50Hz半 タ-ン
オ ン 時 間(所
波)
46kA
定 の 条 件 の 時)最
大 12μs
ゲ-ト ター ンオ フ時 間(
〃 )最 大 44μs
ター ンオ フゲー ト電 流(
〃 )最 大 1500A
主 た る用 途:電 力用 お よび電 車 用 インバ ー タ 図3・27
電 圧 はJ2接
6000V,6000A
級エ ミッタ短絡 形 ゲ ー トター ン オ フサ イ リス タ
合 で 阻 止 す る け れ ど も,逆
い.図3・27に,6000V,6000A
電 圧 を 阻 止 す るJ1接
合 はそ の能 力 が低
級 エ ミ ッ タ 短 絡 形 ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス
タ の 特 性 を 示 す.
3・4 シ リ コ ン単 結 晶 と ウ エ ー ハ の 特 性
パ ワ ー デバ イ ス の 基 本 材 料 は,IC,LSIと
同 様 に,薄
い 円 板 状 の シ リコ ン単
結 晶 ウエ ー ハ で あ り,単 結 晶 の 品 質,特 性 が デ バ イ ス の 特 性 に大 き な影 響 を与 え
る.
IC,LSIで
は,ウ エ ー ハ の 表 面 に近 い 層 の 結 晶 の 品 質 が 微 小 な セ ル を形 成 す
るた め重 要 で あ るが,パ 形 成 す る の で,厚
ワー デバ イ ス で は ウ エ ー ハ の厚 さ方 向 に複 数 の 接 合 面 を
さ 方 向 の 結 晶 の 品 質 が 重 要 で あ る.
シ リコ ン単 結 晶 の原 料 は シ リコ ン多 結 晶 で あ り,ま た そ の 出 発 原 料 は地 中 か ら 産 出 され る天 然 の珪 石 で あ る.天 然 の 珪 石 に は多 種 多 様 の 不 純 物 が 含 まれ て い る の で,シ
リ コ ン の み を取 り出 す高 純 度 化 技 術 が 極 め て 重 要 で あ る.
図3・28に,天
然 の 珪 石 か ら多 結 晶(ポ リ)シ リ コ ン を製 造 す る工 程 を示 す.
図 3・28 天 然珪 石 か ら 多結 晶 シ リコ ン まで の製 造工 程
天 然 珪 石 に炭 材 を 加 え て多 量 の 電 力 を使 っ て ま ず金 属 シ リコ ン を製 造 す る.日 本 で は電 気 料 金 が他 国 に比 べ て 高 い た め,金 属 シ リ コ ンの ほ とん ど を輸 入 して い る. 次 に,金 属 シ リ コ ン に塩 酸 を加 えて 3塩 化 シ リ コ ンガ ス に して 多 結 晶 製 造 リア ク タ に送 り,核 とな る多 結 晶 シ リコ ン棒 を 通 電 加 熱 しつ つ 長 時 間 か けて,そ
の棒
に ガ ス 中 の シ リ コ ン を堆 積 さ せ て 太 い多 結 晶 シ リ コ ン ロ ッ ドを造 る.ガ ス化 す る こ と と不 純 物 の な い リア ク タ 内 で 堆 積 さ せ るの で,シ
リコ ン は格 段 に高 純 度 化 さ
れ,純
度 は10ナ
イ ン 以 上 に な る.リ
晶 で あ る た め,こ
ア ク タ で 製 造 さ れ た シ リ コ ン ロ ッ ドは多 結
の ま ま で は パ ワ ー デ バ イ ス やLSIに
は 使 え ず,単
結 晶 にす る
必 要 が あ る.
3・4・1 シ リ コ ン 単 結 晶 多 結 晶 シ リ コ ン を デ バ イ ス,LSIに 法 が あ る.そ
の 一 つ はFZ(Floating
(1) FZ法 工 程 を示 す.図
適 す る単 結 晶 シ リコ ンに す る の に 二 つ の 方 Zone)法,他
はCZ(Czochralski)法
に よ る シ リ コ ン単 結 晶 図3・29に, FZ法
で あ る.
に よる単結 晶の製造
の よ うに,多 結 晶 シ リコ ンの ロ ッ ドの 下 部 に単 結 晶 シ リコ ン の種
(シ ー ド)を 付 け,炉
内 を 高純 度 不 活 性 ガ ス に置 換 し,高 周 波 加 熱 コイ ル で 単 結 晶
化 温 度 まで 加 熱 す る.こ の 際,ロ
ッ ドを 回 転 しつ つ コ イル を下 部 の シー ド部 か ら
上 に 向か っ て ゆ っ く り移 動 させ る.こ の工 程 に よ り,多 結 晶 シ リコ ン ロ ッ ドは下 部 の シ ー ド取 付 け部 を 出発 点 と し て上 に 向 か っ て単 結 晶 化 が 進 展 し,ロ ッ ド全 体 が 抵 抗 率 の 高 い シ リ コ ン単 結 晶 に な る.高 純 度 ガ ス の 雰 囲 気 で 単 結 晶 化 す る の で,シ
リコ ン に不 純 物 が 入 る 可能 性 は極 め て 少 な い.雰 囲 気 ガ ス の種 類 と濃 度 に
図3・29 FZ法 に よる単 結 晶化 工 程 の概 念図
よ っ て 単 結 晶 を p形,n 形 お よ び そ れ らの 濃 度 を制 御 す る こ とが で き る.FZ法 に よ る単 結 晶 は,現 在 で は 直 径 約150mmま
で 市 販 さ れ て お り,よ
り大 口 径 の
単 結 晶 は技 術 的 に は 可 能 で あ る. (2) CZ法
に よ る シ リコ ン単 結 晶 図3・30に,単
結 晶 引 上 げ機 に よ る 単
結 晶 の 製造 工 程 を示 す.多 結 晶 シ リ コ ンの 塊 を引 上 げ 機 に セ ッ ト した 高 純 度 石 英 る つ ぼ に 充 〓 し,蓋 を閉 め て 引 上 げ機 内 部 を ア ル ゴ ンガ ス に置 換 して か ら ヒー タ ー で約1450℃
に加 熱 し て 多結 晶 シ リ コ ン を溶 解 す る.溶 け た シ リ コ ンの 入 っ た
図3・30 CZ法
に よ る単 結 晶 化 工 程 の概 念 図
るつ ぼ と上 か ら垂 ら した単 結 晶 シ リコ ン の シー ドは互 い に逆 方 向 に ゆ っ く り回 転 させ て お く.単 結 晶 シ ー ドを下 ろ して 溶 融 面 に 接 触 させ て単 結 晶 化 の き っ か け を つ くる.溶 融 シ リコ ン が シー ドの近 傍 で 単 結 晶 にな り始 め た ら,シ ー ドを 回 転 さ せ なが ら ゆ っ く りシー ドを引 上 げ て 単 結 晶 の ロ ッ ドを つ くる.ロ ー ド とる つ ぼ の 回 転 数 ,シ ー ドの 引 上 げ速 度 で き ま る.ロ
ッ ドの直 径 は シ
ッ ドが 冷 え て か ら引 上
げ機 の蓋 を開 け て ロ ッ ドを取 り出 す.CZ法 容 易 に製 造 で き るが,抵 抗 率 をFZ法
の 特 徴 は,大 口径 の 単 結 晶 を比 較 的
の よ う に高 くし に く く,石 英 るつ ぼ の酸 素
が 単 結 晶 に微 量 に 溶 け込 む こ とで あ る.石 英 るつ ぼ に 多結 晶 シ リコ ン を充 填 す る 際,微
量 で 高 純 度 の ア ン チ モ ン(5 価 の 元 素)を 添 加 し て溶 解 す れ ば 単 結 晶 は n
形 に な り,ホ ウ素(3 価 の 元 素)を 添 加 す れ ば p形 に な る.添 加 す る量 に よ っ て p 形,n 形 の 濃 度 を制 御 す る. パ ワ ー デ バ イ ス 用 と し て 直 径 約150mmま さ れ て い る.LSIに 将 来 直 径 約300mmが
一 般 に,FZ法
は 直 径 約200mmま
で のFZお で のCZウ
よ びCZウ
エーハ が使 用
エ ー ハ が 使 用 さ れ る が,近
い
考 え ら れ て い る.
に よ る シ リ コ ン単 結 晶 は抵 抗 率 を 高 く製 造 で き る の で,高
パ ワー デバ イ ス に適 して お り,CZ法
電圧
に よ る単 結 晶 は 抵 抗 率 を高 く しに くい の で
中 ・低 電 圧 用 パ ワ ー デ バ イ ス お よ びLSI用
に使 用 され る.
3・4・2 ウ エ ー ハ 化 プ ロ セ ス
シ リコ ン単 結 晶 ロ ッ ドの 結 晶 特 性 を 測 定 した 後,薄
い 円板 状 のパ ワー デバ イ ス
用 シ リコ ンウ エ ー ハ にす る に は,概 略 次 の 工 程 で 進 め る.こ の 工 程 は,FZ法 も,CZ法
で
で も単 結 晶 ロ ッ ドの ウ エ ー ハ 化 は 同 じで あ る.
結 晶 方 位 の 測 定 … … X 線 測 定 器 で 方 位 を 測 定 し,印 ス ライス
をつ け る.
内周 刃 の ブ レー ドを高 速 回転 させ,仕 上 が りウ エ ー ハ 厚 さ の約 倍 の 厚 さで ロ ッ ドを輪 切 りに して粗 ウエ ーハ を取 る.
ラツプ
粗 ウ エ ー ハ 表 面 に残 る ブ レー ドに よ る破 砕 層 を 回転 定 盤 に 挟 ん で ラ ッ プ油 と と も に研 磨 して 取 り除 く.
ベ ベル
ウエ ーハ 外 周 部 の 端 部 を研 磨 して 所 定 の丸 み をつ け る.
ケ ミ カ ル ポ リ シ ュ … 薬 液 に よ る エ ッ チ ン グ で,さ
らに細 か い破 砕 層 を ウ エ ー ハ
両 面 か ら取 り除 く. ポ リシ ュ
研 磨 定 盤 と研 磨 液 に よ り両 面 を磨 く.
ミ ラ ー ポ リ シ ュ … … パ フ に て ウ エ ー ハ の 片 面 ま た は 両 面 を 鏡 面 研 磨 す る.数
の研 磨 工 程 に よ りウ エ ー ハ 表 面 の キ ズ,平 り 除 き,ウ
坦 度,反
次
りを取
エ ー ハ 厚 が 所 定 の 厚 さ と な る よ う に す る.
ウ エ ー ハ 測 定 … … … 自動 測 定 器 に よ る抵 抗 率,厚
さ,反
りを 測 定 し,合 否 を判
定 す る.
洗 浄
特 殊 な薬 液 に浸 け,超 音 波 で 入 念 に 洗 浄 す る.
目視検 査
暗 室 で ウ エ ー ハ 表 面 に ス ポ ッ トラ イ トを 当 て,肉
眼で表面
の キ ズ等 をチ ェ ック し,最 終 の 合 否 を判 定 す る. 出 荷 ・保 管
ウエ ー ハ を特 殊 な容 器 に 密 封 し,デ バ イ ス プ ロ セ ス に投 入 す る直 前 まで 清 浄 な状 態 で 保 管 す る.
現 在 の パ ワー デ バ イ ス 用 シ リ コ ン ウ エ ー ハ の 最 大 の 直 径 は150mmで
あ る が,
これ は需 要 側 の 要 求 と製 造 側 の設 備 か ら この よ う な直 径 に な っ た.将 来,需
要側
の 強 い 要 望 が あ れ ば製 造 側 の設 備 を新 設 して さ ら に大 きな 直 径 の ウ エ ーハ が 実 用 され る で あ ろ う.図3・31に
ウ エ ー ハ 直 径 の変 遷 を示 す.FZウ
増加 はパ ワ ー デ バ イ ス の 電 流 定 格 の増 加 に,CZウ
エ ー ハ の 直 径 の 増 加 は 中 ・小
電 力 用 デバ イ ス の 低 価 格 化 に貢 献 し て い る とい え る.
図3・31
FZ,CZウ
エ ーハ の直 径 の
エー ハ の直 径 の 変遷
下 記 に,高 電 圧 大 電 流 サ イ リス タ 用 ウ エ ー ハ の 仕 様 の例 を示 す. ウ ェ ー ハ 仕 様 FZ,
n形, ND*
直 径
150±0.5mm
厚
さ
1000±15μm
反
り
20μm以
抵抗 率
下
500∼1000Ω
・cmの
内 の
指定 した値 ウ エ ー ハ 面 内 の 抵 抗 率 の バ ラ ツ キ
5
3 ・
±10%以
デバ イス製造 プ ロセス と特性 の相関性
製 造 プ ロセ ス の 要 点
3・5・1
(1)接
合 面 の 形 成 前 項 で 述 べ た n形 また は p形 シ リ コ ン ウ エ ー ハ を 出
発 ウエ ー ハ と して デバ イ ス の 製 造 プ ロ セ ス ラ イ ン に投 入 す る.ト npnま
内
た はpnpの
3層,サ
イ リス タ で はpnpnの
形 あ る い は p形 の ウ エ ー ハ に,① オ ン注 入 法,④
接 着 法,ま
ランジス タでは
4層 が 基 本 構 造 で あ る た め, n
拡 散 炉 に よ る加 熱 拡 散 法,②
合 金 法,③
イ
た は ⑤ 気 相 成 長(エ ピ タ キ シ ャル)法 に よ っ て 複 数
の p形 あ る い は n形 の 添 加 元 素 の 層 を形 成 し,接 合 面 を つ くる. ① は,拡 散 炉 用 高純 度 石 英 管 に ウ エ ー ハ と添 加 元 素(3 価 あ る い は 5価 の 元 素) を入 れ,炉 の 温 度(例 え ば,約1000℃)を
設 定 して加 熱 す る.蒸 気 化 した 添 加 元
素 あ る い は ウエ ー ハ 表 面 に一 様 に塗 布 した 添 加 元 素 が ウエ ー ハ 内 に拡 散 し,添 加 元 素 の 層 と接 合 面 を形 成 す る.層 の 厚 さ と添 加 元 素 の濃 度 は,そ の 元 素 の 拡 散 係 数 と添 加 量,炉
の 温 度 と時 間 で定 ま る.こ の 方 法 は,比 較 的 厚 い層 を形 成 す る の
に適 し て い る. *NDと
は
,ニ ュー トロ ン ・ ドー プ処 理 の 略 で, FZ単 結 晶 を原 子 炉 に入 れ て 中 性 子 を 照射 す る
と,単 結 晶 内 の抵 抗 率 が一 様 に な る こ とを利 用 した処 理 法 で あ る.FZ単
結晶 の ままではウ
エ ー ハ 内の 抵抗 率 が面 内 で不 均 一 な の で,高 電 圧 用 サ イ リス タ に は使 用 しに くい.
② の合 金 法 は,ウ
エ ー ハ に あ らか じめ 濃 度 を設 定 した添 加 元 素 を含 む箔 を載 せ
て 加 熱 合 金 化 し,添 加 元 素 の 層 と接 合 面 を形 成 す る方 法 で あ る. ③ は,ガ
ス状 に した添 加 元 素 を イ オ ン化 し,注 入 す る元 素 を磁 場 に よ り分 離 し
た の ち電 界 で加 速 して ウエ ー ハ に衝 突 させ て注 入 す る.こ
の方 法 は,層 の 濃 度 と
厚 さ を精 密 に制 御 で き る利 点 が あ る. ④ は,n 形 シ リコ ン ウエ ー ハ の p形 シ リコ ン ウ エ ー ハ の 表 面 を平 坦 か つ 清 浄 に して,そ れ ら表 面 同 士 を加 圧 接 触 させ,特
殊 雰 囲 気 中 で加 熱 して 2枚 の ウ エ ー ハ
を接 着 させ る 方 法 で あ る. ⑤ は,気 相 成 長 炉 内 に平 面 状 に ウ エ ー ハ を並 べ て 加 熱(例 え ば,約1150℃) し,還 元 ガ ス に 四 塩 化 ケ イ 素 ガ(SiCl4)と ーハ 表 面 に気 相 成 長 させ る と p層 が,ま
ジ ボ ラ ン(B2H6)ガ
ス を混 合 して ウ エ
た ホ ス フ ィ ン(PH3)ガ
ス を混 合 して 気 相
成 長 さ せ る と n層 の 単 結 晶 が 形成 し,接 合 面 が で き る. 気 相 成 長 層 の 厚 さ,p 層,n 層 の 濃 度 は,混 合 ガ ス の 種 類 と濃 度,温 度 と時 間 で定 ま る.こ の 方 法 は,接 合 の境 界 面 が 均 一 に形 成 さ れ る利 点 が あ り,比 較 的 薄 く,か つ,精 度 の 高 い層 の 形 成 に適 して い る. 特 に,こ
の気 相 成 長 法 は,IGBTの
製 造 プ ロセ ス に とっ て 重 要 な技 術 で あ る.
現 在 の パ ワ ー デ バ イ ス の 製 造 プ ロ セ ス に は ①,③,⑤
が 使 用 さ れ て い る.
(2) パ タ ー ン ニ ン グ ゲ ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ ス タ の ゲ ー トー陰 極,バ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ の べ ー ス-エ ミ ッ タ
,MOSFETの
イポ
ゲ ー ト-ソ ー ス,IGBTの
ゲ
ー ト-エ ミ ッ タ に は オ ン ・オ フ 動 作 に 必 要 な 微 細 な パ タ ー ン の p層 ,n 層 お よ び 接 合 を 形 成 す る.こ
の 微 細 な パ タ ー ン を 形 成 す る た め,LSIの
光 露 光 技 術(リ ゾ グ ラ フ ィ ー(写 真 食 刻);Photo
Lithography)を
製 造 で 開 発 され た 利 用 す る.
光 露 光 技 術 と は,ま ず,透 明 で ひ ず み の な い ガ ラ ス に ク ロ ム 系 の 薄膜 を付 け, そ の 薄膜 に所 望 の 電 極 パ ター ン を書 い た 「マ ス ク」 を用 意 す る.一 方,ウ
エーハ
のパ タ ー ン を形 成 した い p層 また は n層 の 面 に 紫 外 線 に感 度 の 高 い高 分 子 ホ ト レ ジ ス ト溶 液 を均 質 に塗 布 し た感 光 膜 を用 意 して お く. マ ス ク とホ トレ ジ ス トを塗 っ た ウ エ ー ハ を重 ね 合 わ せ た の ち,マ ス ク に高 圧 水 銀 ラ ン プの 紫 外 線 を 照射 して マ ス ク の 電 極 パ タ ー ン を感 光 膜 に露 光 し,感 光 部 分
(あ るい は光 が 当 た らな い 部 分)の 膜 質 を変 質 さ せ る.照 射 後,感
光膜 の ついた ウ
エ ー ハ を現 像 用 溶 剤 に 漬 け,不 要 の膜 部 分 を洗 い流 して 電 極 パ タ ー ン ど お りの膜 を ウエ ー ハ 面 上 に残 す.こ
の よ う な プ ロセ ス に よ っ て ガ ラ ス マ ス ク の電 極 パ タ ー
ン を ウエ ーハ 面 上 に転 写 す る. こ の あ と は,膜 た り,拡
の つ い た ウ エ ー ハ を エ ッチ ン グ して ウ エ ー ハ 表 面 に溝 を加 工 し
散 炉 や エ ピ タ キ シ ャ ル 炉 に 入 れ て パ タ ー ン ど お り の p 層,n
て べ ー ス,ゲ
ー ト ま た は エ ミ ッ タ 電 極 を 造 る.
現 在 の パ ワ ー デ バ イ ス 用 リ ゾ グ ラ フ ィ ー 技 術 の パ タ ー ン精 度 は,ゲ オ フ サ イ リ ス タ で は 約5μm,IGBTで い わ れ て お り,将
(3)ベ
層 を形 成 し
は 約1μm,MOSFETで
ー トター ン
は1μm以
下 と
来 は さ ら に 高 い 精 度 が 要 求 さ れ る と思 わ れ る .
ベ ル 構 造(ウ エ ー ハ 表 面 の 電 界 緩 和)
デバ イ ス の オ ン ・オ フ動 作 の
際,デ バ イ ス を構 成 す る接 合 に は オ フ電 圧 あ る い は 逆 電 圧 が加 わ る が,接 合 部 が 薄 いた め そ の 電 界 強度 は極 め て 大 き くな る. 接 合 部 の 耐 電 界 強 度(ブ レー ク ダ ウ ン電 圧)は,エ い る端 面 の ほ うが 低 い.こ
レメ ン ト内部 よ り も露 出 して
の た め,デ バ イ ス に過 電 圧 が 加 わ る と露 出 して い る接
合 部 が 局 部 的 に ブ レー ク ダ ウ ンが 起 こ り,電 流 が 集 中 して 接 合 が 破 壊 され る よ う に な る.こ れ を防 ぐた め,露
出 して い る接 合 部 に傾 斜 を付 け た加 工 に よ って 電 界
を和 ら げ る よ う にす る.電 界 を和 ら げ る形 状 をベ ベ ル 構 造 とい う. 図3・32(a)の よ うに,pn接 場 合 をポ ジ テ ィブ ベ ベ ル,そ
合 で,強
く ドー プ した り領 域 が 広 が る よ う に した
の逆 をネ ガ テ ィブベ ベ ル とい う.端 面 の 傾 斜 角 を変
え た と きの 端 面 の 電 界 強 度 は 図(b)と な る.こ の 図 で,ネ
ガ テ ィブベベ ル が約
45゜の と き電 界 強 度 は 最 大 と な るの で,こ れ を避 け て90゜ に近 い 値 ま で傾 斜 をつ け た加 工 をす る.ポ
ジ テ ィ ブベ ベ ル は同 程 度 の電 界 強 度 を もた せ る と し て30゜ 程
度 の傾 斜 をつ け る.オ
フ電 圧 と同等 の逆 電 圧 に耐 え られ る よ う に した サ イ リス タ
の べ ベ ル構 造 の 例 を図(c)に 示 す.電 界 が 加 わ る ベ ベ ル 面 を電 気 的 に保 護 す るた め,絶 縁 性 シ リコ ン ゴム を塗 布 す る. 図3・32(c)の 構 造 で は,陰 極 側 の 面 積 が 陽 極 側 よ り小 さ く な っ て 電 流 密 度 か ら不 利 とな る.こ れ を改 善 す る た め,図3・33の
よ うな ダ ブ ル ポ ジ テ ィ ブ ベ ベ ル
(a)ポ
ジ テ ィ ブ/ネ ガ テ ィ ブ ベ ベ ル
(b)ベ ベ ル角 と電 界強 度
(c)具 体 例
図3・32 電 界強 度 緩和 の ため のベ ベ ル構 造
構 造 を 用 い る.こ
の 構 造 は,サ
ッ チ ン グ(破 砕 層 の 除 去),シ
ン ド ブ ラ ス ト(ト レ ン チ 加 工),コ
ン タ リ ン グ とエ
リ コ ン ゴ ム 塗 布 の 工 程 に よ っ て 加 工 す る.
(a)
図3・33
(b) ダプ ル ポ ジテ ィブベ ベ ル構 造
図3・34 デバ イス 製造工 程 の概 略 (高電 圧大 電 流陽 極 短 絡形 ゲ ー トター ン オ フサ イ リス タ)
デ バ イ ス製 造 プ ロセ ス の 例
(4)
製 造 ラ イ ン に ウエ ー ハ を投 入 し て か ら デ
バ イ ス が で き る まで の 工 程 に 最,先 に 述 べ た接 合 面 の 形 成 ,リ
ゾグラ フィーの ほ
か エ ッチ ン グ,電 極 形 成 な どの 要 素 技 術 が 各 工 程 で繰 返 し利 用 され て い る.設 計 どお りの 特性 を得 る た め に 最,各 要 素 技 術 が 確 立 し精 度 よ くデ バ イ ス を加 工 で き な けれ ば な らな い.
図 3・ 34 に,デ バ イ ス の製 造 工 程 の概 略 を 示 す.
3 5 2 ・
・
特性の相関性
デ バ イ ス の 電 気 的 諸 特 性 は,シ
リコ ン ウエ ー ハ の特 性 も含 め て複 雑 に絡 ん で い
る.デ バ イ ス の 設 計 に 最,特 性 の トレ ー ドオ フ を知 っ た う えで 目的 に適 した 条 件 を選 択 す る.図3・35(a)は
トラ ン ジ ス タ の 場 合,図(b)最
サ イ リ ス タ の場 合 の
概 念 的 な 特 性 の相 関 性 を示 す.
(a)
バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ の 相 関 性
図 3 ・ 35
(b)通 常 の サ イ リス タの相 関 性
デ バ イス の構 造 と特 性 の相 関性 の概 念 図
図 中,右 上 りの 矢 印〓 は 増 加 の傾 向 を,右 下 りの矢 印〓 は 減 少 の傾 向 を,空 欄 は 極 め て 弱 い相 関性 か もし くは 無 関 係 を示 す.こ
の 図 に は,シ
リ コ ン ウエ ー ハ
の抵 抗 率 との 関 係 も示 した.具 体 的 な デ バ イ ス の 特 性 は,pnp, npn, pnpn各 の厚 さ と配 置,各 ほ か,ゲ
層
層 の 添加 元 素 濃 度 とそ の 濃 度 勾 配 お よ び縦 お よび 横 方 向 抵 抗 の
ー ト-陰極,ベ
ー ス-エ ミ ッ タ お よ び ゲ ー ト-ソ ー ス の 寸 法 と配 列 な ど 多
くの パ ラ メ ー タ に依 存 す る.
演
習
問
題
〔3〕
〔 問 題 〕 1.通 常 の サ イ リス タ の オ フ 状 態 か らオ ン状 態 へ の 移 行(タ ー ン オ ン)お よ び オ ン 状 態 か ら 逆 阻 止 状 態 へ の 移 行(転 流 タ ー ン オ フ)の 際 の 電 子 と正 孔 の 挙 動 を 説 明 せ よ.
〔 問 題 〕 2.光
ト リガ サ イ リス タ の 光 に よ る タ ー ンオ ン過 程 を説 明 せ よ.
〔 問 題 〕 3.シ
リコ ンFZ単
結 晶 とCZ単
結 晶 の 製 法 上 の 違 い と単 結 晶 の 特 性 の 差 を 述 べ
よ.
〔 問 題 〕 4.MOSFET,
IGBTの
構 造 の 違 い と特 性 の 共 通 点,相
違 点 を説 明 せ よ.
第
パ ワ ー デ バ イ ス の基礎 (そ の 2)
4章
− ゲ ー ト駆 動 回 路
, 安全 動作領 域, 熱抵 抗−
パ ワ ー デ バ イ ス が もつ 機 能 を十 分 に発 揮 し,確 実 か つ長 期 信 頼 性 を もっ て ス イ ッチ動 作 させ る た め に は 個 々 の デ バ イ ス の デ ー タ 表 に記 載 され て い る諸 定 格 を超 え な い よ う に所 定 の 条 件 で 使 用 しな けれ ば な らな い.
4
・
1
駆動方法 と駆動回路
パ ワ ー デ バ イ ス を ス イ ッチ 動 作 させ るた め に,そ の ゲ ー トま た は べ ー ス の駆 動 方 法 は重 要 で あ り,そ れ ぞ れ の デバ イ ス に適 した 駆 動 回 路 が あ る.
4
・1・
1
(1)パ
トラ ン ジ ス タ ワ ー トラ ンジ ス タ(ス イ ッチ モ ー ド) トラ ン ジ ス タ を 高速 か つ低 損
失 で オ フ か らオ ン に ス イ ッチ させ るた め に は,べ ー ス電 流 の立 上 りを速 くか つ ピ ー ク値 を大 き くす る.オ 以 上 あれ ば よい.オ
ン状 態 で の べ ー ス 電 流値 は,コ
レ ク タ電 流/電 流 増 幅 率
ンか らオ フ に高 速 に切 り換 え る に は,べ
の電 流 を瞬 間 的 に流 す.図4・1に,2
ー ス 電 流 と は逆 方 向
電 源 方 式 の べ ー ス駆 動 回路 とオ ン,オ フ の
波形 の例 を示 す. 駆 動 回 路 のQ3に
オ ン 信 号 を 与 え る とQ1は
オ ン 用 べ ー ス 電 流Ib1が を与 え る とQ2が R2で
抗R1で
制 限 され る
主 トラ ン ジ ス タ に 流 れ て オ ン 状 態 に な る. Q3に
オ ン と な り, Q1に
オ フ信 号
逆 バ イ ア ス を与 え な が ら主 トラ ン ジ ス タ に
制 限 さ れ る オ フ 用 べ ー ス 電 流Ib2が
に よ っ てQ1, Q2は
オ ン と な り,抵
速 く タ ー ン オ ン,タ
流 れ て オ フ 状 態 に な る・ コ ン デ ン サ C ー ン オ フ す る.
(a)駆 動 回路 (b)オ 図4・1
(2)MOSFET(金
ン ・オ フ 波 形
トラ ン ジ ス タ の 駆 動 回 路 と 波 形
属 酸 化 膜 電 界 効 果 トラ ンジ ス タ)
MOSFETの
特 徴 は,
キ ャ リヤ の 蓄 積 効 果 が な い た め 高 速 の オ ン ・オ フ が可 能 で,か
つ,ゲ
ー ト-ソ ー
ス間 は酸 化 膜 で 絶 縁 さ れ て い る た め イ ン ピー ダ ン ス は 高 く,正
・負 の 電 圧 駆 動 で
ス イ ッチ動 作 が 可 能 な こ とで あ る. タ ー ンオ ンの 遅 れ 時 間td(on)は,正
の ゲ ー ト電 圧 信 号 に よ っ て ゲ ー ト-ソ ー ス
間 の キ ャパ シ タ ン スが ゲ ー ト し きい 値 電 圧 まで 充 電 され る時 間 で あ り,立 上 り時 間trは そ の し き い値 を超 え て 能 動 領 域 に 入 り,ド レ ー ン電 流 が 流 れ る ま で の 時 間 で あ る.タ ー ンオ フ の 遅 れ 時 間td(off)は,ゲ
ー ト電 圧 が 高 い 値(オ ー バ ー ドラ
イ ブ電 圧)か ら能 動 領 域 の ゲ ー ト電 圧 ま で そ の キ ャパ シ タ ン ス が 放 電 し て 低 下 す る ま で の 時 間 で あ り,下 降 時 間tfは 能 動 領 域 の電 圧 か ら し き い値 電 圧 ま で 放 電 す る に要 す る時 間 で あ る.MOSFETは
電 圧 駆 動 で あ るが,オ
ン,オ
フ時 に は デ
バ イ ス 内 部 の キ ャパ シ タ ン ス の た めパ ル ス状 の充 ・放 電 電 流 が ゲ ー ト回路 に流 れ る.ス イ ッ チ動 作 時 間 は,ゲ ー ト回 路 の 内 部 イ ン ピー ダ ンス と この キ ャパ シ タ ン ス の時 定 数 で 定 ま る の で,ゲ 要 で あ る.MOSFET用
ー ト回 路 は 電 圧 源 とパ ル ス 電 流 源 と して の 機 能 が 必
の ゲ ー ト回路 の 例 を図4・2に 示 す.図(a)は,パ
圧 器(オ ン用)と トラ ン ジス タ(オ フ用)を 用 い た 回 路 で,図(b)は き くす る ほ どス イ ッチ ング 時 間 が短 くな る こ と を示 す.
ル ス変
逆 バ イ ア ス を大
(a)ゲ
ー ト回 路 の 例 (b)逆 図4・2
(3)IGBT(絶 同 様,電
MOSFETの
バ イ ア ス 電 圧 と ス イ ッ チ ン グ時 間
ゲ ー ト回 路 と ス イ ッ チ ン グ時 間
縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ)
圧 駆 動 の デバ イ スで あ る.MOSFETと
ー ラ トラ ン ジ ス タ の た め にIGBTの
比 べ,主
IGBTはMOSFETと た るスイ ッチはバ イ ポ
ほ うが オ ン電 圧 降 下 が 小 さ く
,従 っ て 同 じ
電 流 で は損 失 が 小 さ く,ま た オ ン電 流 密 度 を大 き く取 れ るの で 大 電 流 の 高 周 波 動 作 が 可 能 で あ る.し か し,バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ の た め 動 作 周 波 数 はMOS FETよ
り低 い.
タ ー ンオ ン させ る に は,ゲ ー トし き い値 電 圧 よ り も高 い 正 の 電 圧(例 え ば15 V)を 加 え る と電 流 が増 加 して コ レ ク タ側 か ら正 孔 の 注 入 が 起 こ り,キ ャ リヤ 蓄 積 が 始 ま る.タ ー ン オ フ させ る に は,ゲ ー トに 負 の 電 圧 を 加 え て ゲ ー トし き い値 電 圧 以 下 に す る と正 孔 は 消 滅 す る. 図4・3に,IGBTの は,±15V
ゲ ー ト回 路 と オ ン,オ
フ の 波 形 の 例 を 示 す.こ
の 回路
の 2電 源 方 式 で,信 号 系 との 電 位 差 と ノ イ ズ 侵 入 防 止 の た め ホ トカ プ
ラ を 用 い て い る.Q1の のオ ン状 態 に な り,Q2の
オ ン に よ りIGBTの
ゲ ー トに正 の 電 圧 が 加 わ っ てIBGT
オ ン に よ り負 の 電 圧 が 加 わ っ てIGBTは
る.ノ イ ズ に よ る誤 動 作 を 防 ぐた め,15V
オ フ状 態 に な
程 度 の 負 バ イ ア ス を オ フ期 間 に 加 え
て お くの が 無 難 で あ る.ゲ ー ト抵 抗Rgは50∼200Ω
程 度 で あ る.
図4・31GBTの
4
・1・
2
(1)通
ゲ ー ト回 路 と オ ン,オ
フ波 形
サ イ リス タ 常 の サ イ リス タ(転 流 タ ー ンオ フサ イ リス タ)
サ イ リス タ の ゲ ー ト
に所 定 の ト リガ 電 流 を 流 す とタ ー ン オ ンす る.ゲ ー ト ト リガ電 流 の10%の の 時 間 か らオ フ電 圧 が 下 が り始 め て90%に 時 か らオ フ 電圧 が10%に
な る まで の 時 間 を遅 れ 時 間td,そ
な る まで の 時 間 を立 上 り時 間tr,そ
とき の
の和 をター ンオ ン
時 間tgtと い う. こ の 遅 れ 時 間 は,主 間 で あ り,立
と し て ゲ ー ト-カ ソ ー ド接 合 部 に 電 子 が 注 入 さ れ て い る 期
上 り時 間 は 主 と し て 注 入 に よ る 電 子,正
ャ リヤ が 増 加 し て い る 過 程 で あ る.ゲ 間 は 長 く な り,つ
ー ト電 流 を 小 さ く し て い く と タ ー ン オ ン 時
い に は タ ー ン オ ン し な く な る.ゲ
ー ンオ ン時 間 は あ る値 に落 ち 着 く
孔 の 雪 崩 現 象 が 起 こ り,キ
.図4・4に,4kV,3000
ー ト電 流 を 増 や し て い く と タ A 級 サ イ リス タ の ゲ
(a)ゲ ー ト ト リ ガ の 範 囲 図4・4
ー ト トリガ 特 性 を 示 す 図(a)で,す
(b)ゲ ー ト ト リ ガ に 関 す る 用 語
4kV,3000A
サ イ リ ス タ の ゲ ー ト ト リガ 特 性
.
べ て の サ イ リ ス タ の ゲ ー ト イ ン ピ ー ダ ン ス は 直 線 A,B
に 入 っ て お り,曲
の範 囲
線 C は 許 容 し う る ピ ー ク ゲ ー ト損 失 を 示 す.
ゲ ー ト端 子 の電 圧 の 上 限 は ピー クゲ ー ト順 電 圧 で,電 流 の 上 限 は ピー ク ゲ ー ト 順 電 流 で規 定 さ れ て い る.ま た,ゲ ー ト接 合 部 の 逆 阻 止 電 圧 能 力 か ら,ピ ー ク ゲ ー ト逆 電 圧 が 規 定 さ れ て い る.斜 め の 直 線 は,ゲ ー ト回 路 の 推 奨 す る出 力 特 性 で あ る.ア
ミ点 部 分 は,所 定 の 温 度 範 囲 で す べ て の サ イ リス タが トリガ し得 る範 囲
を示 す が,低
温 時 に も確 実 に タ ー ンオ ン させ るた め に,線
範 囲 で ゲ ー トに な る べ く高 い トリガ電 圧,大
A, B,C で 囲 まれ た
きい トリガ 用 パ ル ス電 流 を加 え る の
が よ い. さ ら に,ゲ
ー ト ト リ ガ 特 性 に は,図(b)の
よ う に,タ
大 ゲ ー ト電 圧 ・電 流 を 定 義 す る ゲ ー ト ト リ ガ 電 圧,ゲ
ー ンオ ン させ るた め の最 ー ト ト リガ 電 流,お
よ び所
定 の 条 件 で タ ー ン オ ン さ せ る こ とが で き な い 最 小 ゲ ー ト電 圧 ・電 流 を 定 義 す る ゲ ー ト非 ト リ ガ 電 圧
,ゲ
ー ト非 ト リ ガ 電 流 と い う用 語 が あ る.
図4・5は ゲ ー ト回 路 の例 で,ト
ラ ン ジ ス タの オ ンで コ ン デ ンサ が 放 電 し,絶 縁
変 圧 器 を 介 して 二 次 側 に パ ル ス電 圧 が 誘 起 し,D1,R ト ト リガ 電 流 が 流 れ る.D2は
を通 っ て パ ル ス状 の ゲ ー
ゲ ー ト逆 電 圧 保 護 用 で,C2は
ノイズのバ イパ ス用
で あ る.変 圧 器 を直 流 偏 磁 しな い よ うに設 計 して お け ば,ト る まで の 期 間,広 電 流 は,軽 一 般 に,タ ほ ど,ま
ラ ンジ ス タ をオ フ す
幅 の ゲ ー ト ト リガ 電 流 を流 す こ とが で き る.広 幅 ゲ ー ト トリガ
負 荷 時 の オ ン電 流 の ラ ッチ ング に とっ て 有 利 で あ る. ー ン オ ン 遅 れ 時 間tdは
ゲ ー ト トリ ガ電 流 の ピー ク値 を大 き くす る
た そ の 立 上 り を 大 き く す る ほ ど 小 さ く な る が,タ
ー ン オ ン立 上 り時 間
trは ほ と ん ど変 わ ら な い.
(b)ゲ ー トピー ク順 電 流 をパ ラ メー タに した と きの ター ン オン波 形
(a)ゲ ー ト回 路 の 例 図4・5
(2)
ゲ ー ト回路 の 例 と タ ー ン オ ン 波 形
光 ト リガ サ イ リス タ(ト リガ 信 号 を電 気 か ら光 に 変 え た 転 流 タ ー ンオ フ
形 サ イ リ ス タ) シ リ コ ン 原 子 の M 軌 道 の 電 子 は 弱 い 結 合 の た め 光 エ ネ ル ギ ー を 受 け て 電 離 す る の で,あ 外 光)をpB層
る 強 さ の 光(波 長0.8∼1.05μmに
ピー クのあ る近赤
に 照 射 す れ ば タ ー ン オ ン す る.6000V,2500A
ト リガ パ ワ ー は パ ッ ケ ー ジ の 光 入 力 端 子 で 最 大 8mWで
光 サ イ リス タ の 光 あ る.
発 光 ダ イ オ ー ドと し て,発 光 波 長 が 近 赤 外光 で,か つ,発 光 出 力 が大 き く,長 期 信頼 性 の高 い もの を使 用 す る.光 入 力 端 子 で の光 が 強 い ほ ど タ ー ンオ ン遅 れ 時 間 は 短 くな り,あ
る値 に な る.確 実 に タ ー ンオ ン さ せ るた め,最 初 の光 を強 く し
そ の 後 は光 を弱 く して 所 要 の 通 電 幅 の 光 パ ル ス波 形 をPB層
に 加 え る.発 光 ダ イ
オ ー ドに は,発 光 ダ イ オ ー ドと光 フ ァイバ との 結 合 損 失 お よ び 光 フ ァイ バ の 伝 送 損 失 を考 慮 し,か つ,光 入 力 端 子 で 所 要 の光 の 強 さ と光 パ ル ス 波 形 とな る よ う な 電 流 を流 す.図4・6に,発
光 ダ イ オ ー ドと光 フ ァ イバ か ら な る光 トリガ シス テム
図4・6光
を示 す.光
トリガ シス テム
の 強 さ は,通 常 ホ トダ イ オ ー ドの 出 力 で測 定 す る.
この光 ト リガ シ ス テ ム は,従 来 の ゲ ー トパ ル ス変 圧 器 を用 い た 電 磁 ト リガ シ ス テ ム と比 較 して,絶 縁 設 計 が極 め て容 易 で,ノ
イ ズ の 影 響 を受 け に く く,か つ,
部 品点 数 を大 幅 に減 らす こ とが で き る.こ の た め,高 電 圧 大 電 流 変 換 装 置 に最 適 で あ り,装 置 を小 型 ・軽 量 に で き る大 き な利 点 が あ る. (3)
ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ(自 己 オ ン ・オ フ 機 能 を も っ た サ イ リ ス タ)
タ ー ン オ ン時 の 用 語,波
形,ゲ
ー ト特 性,ゲ
ー ト回 路 は,上
述 の(1)と
同 じで
あ る.ゲ
ー ト と 陰 極 の 対 か ら な る 小 さ な セ グ メ ン ト を 1枚 の ウ エ ー ハ 上 に 多 数 形
成 し,そ
れ ら を 並 列 に 接 続 し て い る 構 造 の た め,通
常 の サ イ リス タ に比 べ て タ ー
ン オ ン 用 の ゲ ー ト ト リ ガ 電 流 は 少 し 大 き く な り,タ る.ま
た,保
持 電 流,ラ
ー ンオ ン時 間 も少 し長 くな
ッ チ ン グ 電 流 も 大 き く な る.
ゲ ー トタ ー ンオ フ させ る た め に は,デ バ イ ス 内部 に 蓄 積 さ れ た オ ン電 流 に相 応 す る量 の 蓄 積 キ ャ リヤ を で き る だ け早 くデ バ イ ス外 に 吸 い 出 さ な けれ ば な ら な い.こ の た め,タ ー ン オ フ 時 に は蓄 積 キ ャ リヤ に相 当 す る大 きな パ ル ス 電 流 を カ ソー ドか らゲ ー トに向 け て 流 し得 る パ ル ス電 流 源 を も った ゲ ー ト回路 が 必 要 で あ る. ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ で は,タ の ゲ ー ト電 流 が 異 な る た め,ゲ
ー ン オ ン 用 の ゲ ー ト電 流 と タ ー ン オ フ 用
ー ト回 路 に は 二 つ の 独 立 し た 電 源 が 必 要 と な る.
ピ ー ク ゲ ー ト タ ー ン オ フ 電 流2500A
図4・7に,
図4・7大
電 流 ゲ ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ ス タ用 ゲ ー ト回 路 の 例
ホ トカ プ ラ 1 を通 っ た オ ン 信 号 に よ りQ1,Q2が ン オ ン 用 電 流 が 流 れ る.こ で 定 ま り,そ
級 用 の ゲ ー ト回 路 を 示 す.
の と き,タ
の 平 坦 部 の 電 流 はR5で
オ ン し,独
立 電 源 1か ら タ ー
ー ン オ ン用 ゲ ー ト電 流 の ピ ー ク 値 はC1,R6 定 ま る.
ホ トカ プ ラ 2を通 っ た オ フ信 号 に よ りQ3が
オ ン し,並 列 のQ4群
が 同時 にオ
ン して 独 立 電 源 2に よ り充 電 され た コ ン デ ン サ が 瞬 時 に放 電 し,大 きな パ ル ス 電 流 とな って カ ソー ドか らゲ ー トに流 れ て,ゲ
ー トタ ー ンオ フサ イ リス タの 蓄 積 キ
ャ リヤ を一 気 に 外 に吸 い 出 す. ゲ ー トの 負 バ イ ア ス と して 独 立 電 源 2の 電 圧 がR12とR7に ゲ ー ト-カ ソー ド間 に加 わ る.オ る た め,ゲ
よ っ て 分 圧 され て
ン お よ び オ フ用 ゲ ー ト電 流 の 立 上 りを大 き くす
ー ト回 路 を ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リス タ に で き るだ け接 近 させ て取 り
付 けて 配 線 の イ ン ダ ク タ ンス を小 さ くす る.ゲ ー トタ ー ンオ フ の失 敗 は デバ イ ス の破 壊 に つ な が るの で,ゲ ー ト回 路 に は信 頼 性 の 高 い部 品 を使 用 す る.
4
・
2
電力損失 と安全動作領域およびスナバ回路
パ ワ ー デ バ イ ス が オ ン,オ
フ の ス イ ッ チ 動 作 を す る 際,図4・8の
よ う に,(1)
(a)サ
イ リス タ
(b)ゲ ー ト ター ン オ フ サ イ リ ス タ
図4・8 ス イ ッチ動 作 時 の 損失
タ ー ン オ ン す る 過 程,(2)オ で 電 力 損 失 を 発 生 し,熱
一般 に
ン 状 態,(3)タ
ー ン オ フ す る 過 程,(4)オ
と な っ て デ バ イ ス エ レ メ ン トの 温 度 を 高 め る.
,デ バ イ ス は温 度 が 過 度 に高 くな る と ほ とん どの 特 性 が 低 下 す る.こ の
た め,最 大 定 格 接 合 温 度 は トラ ン ジ ス タ で は150℃,サ 規 定 さ れ て い る.も
し,エ
イ リス タ で は125℃
使 用 す る と き は,そ (SOA;Safty
・
・
っ て,パ
の 機 能 を 十 分 に 発 揮 さ せ る た め,下
Operation
と
レ メ ン トの局 部 に 電 流 が 集 中 す る と ホ ッ トス ポ ッ トが
生 じて接 合 が 破 壊 し,デ バ イ ス の 機 能 は 失 な わ れ る.従
4 2 1
フ状 態
ワーデバ イス を
記 の安全 動作領域
Area)の 特 性 表 を順 守 す る必 要 が あ る.
安全動作領域
トラ ン ジ ス タ の場 合,エ
レメ ン ト内部 の 接合 の 欠 陥,層
の 横 方 向 の温 度 分 布 の
不 均 一 な どに よ り,局 部 的 に電 流 が 集 中 し て熱 暴 走 し,そ れ が 原 因 で二 次 降 伏 現 象 を起 こ して デ バ イ ス は破 壊 す る.コ ク タ-エ ミ ッ タ 間 電 圧VCEと 流Icの
関 係 で,VCEを
レ
コ レ ク タ電
大 き くす る と,
図4・9の よ うに 二 次 降 伏 現 象 を起 こす. こ の よ うな現 象 を起 こ さ な い電 圧 ・電 流 の範 囲 で トラ ン ジ ス タ を動 作 させ な け れ ば な らな い.動 作 さ せ る に あ た っ て放 熱 設 計 と と も に,べ ー ス(あ る い は ゲ ー ト)の 「 順 バ イ ア ス 安 全 動 作 領 域 」,「逆
図4・9 二次 降 伏 現 象
バ イ ア ス安 全 動 作 領 域 」 お よ び 「短 絡 安 全 動 作 領 域 」 を 考慮 す る必 要 が あ る. (1)
通 常 の トラ ン ジ ス タ
(a)
順 バイアス安全動 作領域
べ ー ス に順 電 圧 を加 えた 状 態 で の 順 バ イ ア ス
安 全 動 作 領 域 の例 を図4・10に 示 す.順
図4・10
バ イ ア ス の場 合,(1)コ
順バ イア ス安 全 動作 領 域 の例 斜 め の線 は 電 力損 失 と 接合 部 温 度 で決 ま る上 限
(
)
レ ク タ電 流 の 上
限 値,(2)VCEo(sus)電
圧 上 限 値,(3)
最 高 接 合 温 度 か ら許 容 され る電 力 損 失 の 上 限,(4)二
次 降 伏 で 決 ま る二 次 降 伏
電 圧 ・電 流 曲線
に よ って トラ ン ジ ス タ
の 動 作 範 囲 が 決 ま る,順 合,接
バ イ ア ス の場
合 部 の 温 度 上 昇 が 支 配 的 な制 限 要
素 の た め,ト
ランジスタの特性 デー タに
接 合 部 温 度Tc=25゜Cに 形,特
お け る電 流 波
にパ ル ス 幅 をパ ラ メ ー タ と して 同
図 の よ うに安 全動 作 範 囲 が示 され て い る. 従 っ て,冷 却 条 件 を考 慮 して,接 合 部
図4・11デ
ィ レー テ ン グの 例
温 度 が 最 大 定 格 を超 え な い よ う に電 流 値 を デ ィ レー テ ン グ し な け れ ば な らず,接 合 部 動 作 温 度 が 高 くな る ほ ど安 全 動 作 領 域 は狭 くな る.図4・11に,デ (b)
ィ レー テ ン グ した 安 全 動 作 領 域 の例 を示 す.
逆 バ イアス安全動作領域
通 常,ト
ラ ン ジ ス タ の べ ー ス に負 の電 圧 を加
えて コ レ ク タ電 流 をオ フ しよ う と し て もイ ンバ ー タ や チ ョ ッパ 回 路 の イ ンダ ク タ ンス の た め 電 流 は 流 れ 続 け る.べ ー スが 負バ イ ア ス され て い るの で,に の電 流 は べ ー ス か ら遠 い エ ミッ タ の 中央 に 集 中 し,こ の 部 分 で デバ イ ス が 破 壊 す る場 合 が 多 い.こ
の場 合 の安 全 動 作 領 域 は,接 合 温 度 で は な く,逆 バ イ ア スの 増 加,イ
ン
ダ ク タ ン ス の 増 加 と と も に狭 くな る傾 向 に あ る.べ ー ス に逆 電 圧 を加 え た状 態 で の逆 バ イ ア ス安 全 動 作 領 域 の 例 を図4・12に 示 す. (c)
短絡安 全動作領域
変換 装置が故障 あ るいは短 絡 な どの事故時 の際,短
時 間 に大 き な電 流 を流 して も耐 え られ る破 壊 限 界 が あ る.図4・13に,短 動 作 領 域 の試 験 回 路 と破 壊 に至 る まで の 時 間 を示 す.こ
絡安 全
の 条 件 で は,デ バ イ ス の
電 力 損 失 は極 め て 大 き く,コ レ ク タ-エ ミ ッ タ問 の電 圧 が あ る値 を超 え る と(図 で は600V)急
激 に限 界 耐 量 が 低 下 し,短 時 間 の通 電 損 失 で 破 壊 す る.変 換 装 置 の
事 故 電 流 が 短 絡 安 全 動 作 領 域 内で あ り,か つ,制 御 回 路 に 事 故 電 流検 出 ・遮 断 機
図4・12逆
バ イア ス安 全動 作 領域 の 例
図4・13 短絡 安 全動 作 領域 の 試験 回路 と破 壊 に 至 る まで の時 間
能 が つ い て い れ ば,デ バ イ ス は 破 壊 す る こ とな く運 転 を継 続 で き る.
( 2 ) MOSFET (a )
順 バ イ ア ス 安 全 動 作 領 域 MOSFETは
構 造 的 に電 流 集 中 が な い の で,
バ イ ポ ー ラ トラ ン ジス タ の よ うな 二 次 降 伏 現 象 は な く,デ バ イ ス の 熱 抵 抗 で制 限 され る 等 電 力 線 で,電 流 の幅 を パ ラ メ ー タ と して 図4・14の よ う に表 され る.
図4・14MOSFETの
順 バ イア ス安 全 動 作領 域 の例
(斜め の 線 は,電 力 損失 で決 まる上 限)
(b)
逆バ イアス安全動作領域
MOSFETは,多
的 に キ ャ リ ヤ 蓄 積 効 果 が な い た め,ゲ
数 キ ャ リヤ デ バ イ ス で 本 質
ー ト-ソ ー ス 間 の 逆 バ イ ア ス を 大 き くす る
こ と に よ っ て バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ の よ う に 逆 バ イ ア ス 安 全 動 作 範 囲 が 狭 く な る こ と は な い.図4・15に,逆
バ イ ア ス 安 全 動 作 領 域 の 比 較 を 示 す.
(3)
IGBT
(a)
順 バイ アス安全 動作領域
IGBTに
た め,安 全 動 作 領 域 を理 解 し,IGBT回 例 と し て1500V,40A
IGBTの
も二 次 降 伏 と同様 の 現 象 が 見 られ る
路 を適 切 に 設 計 す る必 要 が あ る. 順 バ イ ア ス 安 全 動 作 領 域 を 図4・16に
示 す.
接 合 部 の 温 度 上 昇 と と も に領 域 を低 減 しな けれ ば な らな い. (b)
逆バ イアス安全動作 領域
IGBTで
た場 合 は大 きな 電 力 損 失 が発 生 す るが,バ
は逆 バ イ ア ス に よ り大 電 流 をオ フ し イ ポ ー ラ トラ ン ジス タ の よ う に す ぐ に
図4・15MOSFETの
図4・16 IGBTの
破 壊 す る ので はな く,MOSFETの
逆 バ イ ア ス安 全動 作 領域 の例
順 バ イア ス安 全 動 作 領域 の 例
アバ ラ ン シ ェ降 伏 と同 じ よ う に あ るエ ネ ル ギ
一 量 を 自 己 ク ラ ン プ す る能 力 を も っ て い る.逆 バ イ ア ス 安 全 動 作 領 域 の 保 証 値 は この ク ラ ン プ 電圧 以 下 と し て い る.図4・17に,1500V,40A
IGBTの
逆バ イ
ア ス 安 全 動 作 領 域 を示 す.
図4・17IGBTの
(c)短
絡安全動 作領域
逆 バ イ ア ス安 全 動作 領 域 の例
バ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ で は コ レ ク タ-エ
電 圧 が あ る限 度 を超 え る と急 激 に破 壊 に至 るが,IGBTで ー 定 の 限 界 耐 量 を示 す
ミ ッタ 間
は電 圧 が 高 くて も電 力
.パ ル ス 幅 を広 げ る と動 作 領 域 が 広 が るの で,過
電流 を高
速 で 検 出 して ゲ ー ト遮 断 す れ ば 破 壊 か ら保 護 で き る. 図4・18に,IGBTの (4)ゲ
特 性 と バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ との 比 較 の 例 を 示 す.
ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ
ゲ ー トタ ー ンオ フ過 程 の 終 期 に は カ ソ
ー ドセ グ メ ン トの 局 部 に オ ン電 流 が 集 中 す る.こ の と き,オ フ 電 圧 が 急 激 に立 ち 上 が る と,微 小 部 分 に 電 力 損 失 が 発 生 して ホ ッ トス ポ ッ ト とな り,そ れ が あ る 限 度 を超 え る と デバ イ ス は 破 壊 す る.こ の現 象 は負 の ゲ ー ト電 流 が 不 十 分 で ゲ ー ト ター ン オ フ失 敗 し た と き に も起 こ る. ゲ ー トタ ー ン オ フ 時 の 電 力 損 失 を 低 減 す る た め,図4・19の 抵 抗,ダ
よ う な コ ン デ ン サ,
イ オ ー ドか ら な る ス ナ バ 回 路 を 接 続 し て オ フ 電 圧 の 立 上 り を で き る だ け
低 く抑 え る.
図4・18IGBTの
短 絡安 全 動 作領 域 の例
(a)ス
(b)タ ー ン オフ 波 形 とスナ バ電 流
ナ バ 回路
(c)ゲ
ー トタ ー ンオ フ サ イ リス タのSOAと
図4・19 ス ナバ 回 路 と安 全動 作 領 域
動 作 曲線
コ ン デ ンサ を 大 き くす る ほ ど電 圧 の 立 ち 上 が りは 低 くな る が,ス
ナバ 回路 の
充 ・放 電 に よ る電 力 損 失 は大 き くな る.ま た,動 作 周 波 数 が 高 くな る ほ どデ バ イ ス の ター ン オ ン損,タ
ー ン オ フ損 お よ び ス ナバ 回路 の 電 力 損 失 は増 加 す る.ス ナ
バ 回 路 と安 全 動 作 領 域 は 密 接 な 関係 が あ り,回 路 定 数 は動 作 周 波 数 に対 す る安 全 動作 領 域 に入 る よ う に選 定 す る.
4 ・2・ 2
スナバ回路
パ ワー デ バ イ ス の オ ン ・オ フ動 作 は 過 渡 現 象 で あ る た め,デ 用 変 圧 器,配
バ イ ス側 か ら電 源
電 系 統 を見 た 回 路 の イ ン ダ ク タ ン ス お よ び ス トレー キ ャパ シ タ ン ス
に よ っ て 立 上 りの大 き い振 動 性 の 過 電 圧,過
電 流 を発 生 す る.こ の 過 電 圧,過
電
流 は デバ イ ス の ス イ ッチ ン グ 損 失 を増 大 させ,そ れ らが 定 格 値 を超 え る とデ バ イ スの 特 性 は 劣 化 し,破 壊 す る場 合 が あ る.こ れ ら過 渡 現 象 か らデバ イ ス を保 護 す るた め,陽 極 に イ ン ダ ク タ ンス を接 続 して タ ー ンオ ン時 の オ ン電 流 上 昇 率 と電 力 損 失 を抑 え,ま た デバ イ ス に並 列 にス ナバ 回路 を接 続 して蓄 積 キ ャ リヤ 消 滅 後 の 振 動 性 逆 方 向過 電 圧 の抑 制 と,オ フ電 圧 上 昇 率 お よ び電 力 損 失 を抑 え る.ス ナ バ 回 路 に よ っ て デ バ イ ス の 安 全 動 作 領 域 内 で動 作 す る よ う に す る.そ
の 例 を図4・
20に 示 す.
(a)通 常 の サ イ リ ス タ (b)ゲ 図4・20ス
ナ バ 回 路 と波 形
ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ
ス ナ バ 回路 の抵 抗Rsお
よ び コ ン デ ンサCsは
無誘 導構 造で イ ンダ ク タ ンスが
で き るだ け小 さい もの を使 用 す る.ダ イ オ ー ドDsは,抵
抗 を短 絡 し て オ フ電 圧
上 昇 率 を 抑 え る.同 図 の 回路 は,す べ て の パ ワー デ バ イ ス に必 要 で あ る. タ ー ン オ ン時 に,定 格 オ ン電 流 上 昇 率di/dtを 得 る た め の イ ン ダ ク タ ン スLa は,タ ー ンオ ン直 前 の 電 源 電 圧V1,負
荷 抵 抗 をR〓 と して,近 似 的 に (4・1)
タ ー ン オ フ 直 後 の オ フ電 圧 をV3,コ
ン デ ンサ の 容 量 をCsと
す れ ば,定 格 オ
フ電 圧 上 昇 率dν/dtを 満 足 す るCsは, (4・2)
と な る.通
常Csは0.1∼0.3μF程
さ く な る.抵 と し て,次
抗Rsは10∼30Ω
度 で,で 程 度 で,抵
きる だ け小 さ い ほ う が電 力 損 失 は 小 抗 の 電 力 損 失 p は,動
作 周 波数 を f
式 と な る.
(4・3)
電 源 転 流 直 後 の オ フ電 圧V1の
電 圧 上 昇 率(dν/dt)cは,近
似 的 に次 式 と な る .
ゲ ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ ス タ 用 ス ナ バ 回 路 で は,
①
コ ン デ ンサCsに
は,タ ー ン オ フ時 に オ ン電 流 と同 じ ピ ー ク値 の パ ル ス電
流 が 流 れ る の で,内 部 イ ン ダ ク タ ン スが 極 め て小 さ く,か つ,パ
ルス電流 に
耐 え られ る構 造 の もの を使 用 す る. ②
抵 抗Rsが
大 き い と ゲ ー ト タ ー ン オ フ 時 のVDSPが
フ 損 失 が 増 加 す る.Rsが な り,タ
③
大 き く な り,タ
小 さ い と タ ー ン オ ン 時 にCsの
ー ンオ
放 電 電 流が 大 き く
ー ン オ ン 損 失 が 増 加 す る.
ダ イ オ ー ドDsは パ ル ス 電 流 耐 量 が 大 き く,逆 回復 時 間 が 小 さ い 高 速 形 を 使 用 す る.
2個 直 列 のMOSFETあ
る い はIGBTで
は,図4・21の
回 路 の 例 が あ る.
(a)
(b) 図4・21
(c)
4・2・3
パ ワ-デ
(1)パ 損,オ
IGBTの
バ イ ス の パ ッ ケ-ジ
ッケ ー ジ と熱 抵 抗
ン損,タ
2個 直 列 の ス ナ バ 回 路 の 例
と放 熱
デバ イ ス が オ ン ・オ フ動 作 す る と,タ ー ンオ ン
ー ンオ フ損 が 発 生 し て,接 合部(エ レ メ ン ト)の 温 度 が 上 昇 す る.
エ レ メ ン トの 発 熱 は パ ッ ケ ー ジ を通 っ て取 り付 け られ た 放 熱 フ ィ ン を経 て外 気 に 放 散 され,冷
却 さ れ る.熱 の 流 れ は電 気 の分 布 抵 抗 回路 と 同 じ よ う に扱 う こ とが
で き る.デ バ イ ス が安 定 運 転 状 態 の と き の接 合 部 か ら外 気 ま で の 温 度 勾 配 に対 応 す る抵 抗 を熱 抵 抗Zthと
い う.
負 荷 電 流 が 時 間 的 に変 化 す る とき は,熱 抵 抗 の ほ か 各 部 分 の 熱 容 量(コ ン デ ン サ に相 当)か らな る分 布RC回
路 で 扱 え る.負 荷 が 急 変 時 の 熱 的 過 渡 応 答 を過 渡
熱 イ ン ピ ー ダ ン スZth(t)と い い,こ
れ の 長 時 間 後 の 飽 和 値 が 熱 抵 抗 と な る.
定 常 動 作 時 の デ バ イ ス の 最 大 定 格 接 合 温 度 が 規 定(例 え ば,整 流 ダ イ オ-ド は150℃,ト の 定 格 電 圧,電
ラ ン ジス タ,通 常 の サ イ リス タで は125℃)さ
で
れ て い る.デ バ イ ス
流 の 大 き さ に よ っ て種 々 の パ ッケ ー ジが 採 用 され て お り,そ の外
形 の例 を 図4・22に 示 す.
(a)樹 脂 モ ー ル ド形
(b)ス 図4・22
図(a)で は,エ
タ ッ ド形
(c)平 形(最 新 の パ ッ ケ ー ジ)
デ バ イ ス の パ ッ ケ ー ジ の 外 形 の 例(外
形 は 同 じ 寸 法 で は な い)
レ メ ン トの 陽 極 を冷 却 兼 取 付 け用 の 金 属 板 に 接 着 し,陰 極 とゲ
ー トの ア ル ミ線 は そ れ ぞ れ の 金 属 端 子 に超 音 波 で ボ ンデ ン グ す る
.そ の 後,全 体
を絶 縁 性 の 樹 脂 で モ ー ル ドす る. 図(b)は,シ
リ コ ン に近 い 熱膨 張 係 数 を も った タ ング ス テ ン あ る い は モ リブ デ
ン の 円板 に合 金 層 を介 して エ レ メ ン トの 陽 極 側 を 接 着 し,機 械 的 に補 強 す る.モ リブ デ ン板 は ネ ジ付 きの 銅 ス タ ッ ドに 合 金 接 着 す る.陰 極 は 可 と う性 の 銅 の 編 線 を合 金 接 着 し,機 械 的 ひ ず み を吸 収 す る.こ の構 造 で は,合 金 層 と金 属 材 料 を 通 過 して熱 が 流 れ るの で 熱 抵 抗 を極 度 に 小 さ くで きず,300A 合-パ ッ ケ ー ジ間 の熱 抵 抗 は0.10℃/W程
級 サ イ リス タ で は 接
度 で あ る.こ の構 造 を ス タ ッ ト形 とい
う. 図(c)は,平 直 径 は100mm程
形 と い い,400A
級 以 上 の デ バ イ ス に 用 い ら れ る.エ
度 ま で,図(b)と
レ メ ン トの
同 様 に 金 属 円 板 を 合 金 接 着 さ せ て 補 強 す る.
この金 属 円板 の 板 厚 は,直 径 の 増 加 と と もに 大 き くす る.広 トか ら電 流 と熱 を取 り出 す た め,銅
い面 積 で エ レ メ ン
ポ ス トの直 径 を大 き く し,か つ,銅
ポ ス トと
エ レ メ ン トを 強 い 力 で 加 圧 接 触 させ る.直 径 が 大 き くな る に伴 い,通 電 に よ りエ レ メ ン トに熱 変 歪 が 生 じる の で,最 近 の 大 電 流 ゲ ー トタ ー ンオ フサ イ リ ス タ で は 薄 い 熱緩 衝 円板 を挟 んで 銅 ポ ス トを加 圧 接 触 さ せ,多 数 の微 細 な陰 極 セ グ メ ン ト を並 列 に接 続 させ て 大 電 流 と熱 を 取 り出 して い る.こ の 構 造 で は,接 合-冷 却 フ ィ ン間 の 熱 抵 抗 は0.01℃/W程 (2)
度 で,図(b)よ
過 渡 熱 イ ン ピー ダ ン ス,熱 抵 抗
の等 価 回 路 と3000A
り 1桁 程 度 小 さい. 図4・23に,過
渡熱 イ ンピー ダ ンス
級 サ イ リス タ に 直 流 電 流 を流 した と き の過 渡 熱 イ ン ピ ー ダ
ンス と熱 抵 抗 の例 を示 す.
(a)等 価 回 路
(b)過 渡 熱 イ ン ピー ダ ン ス (接合 部 温度-外 気 温度 間) 図4・23過
渡 熱 イ ン ピー ダ ン ス
時 間 的 に 変 動 す る電 流 に対 す る接 合 部 温 度 を 求 め る に は,図4・24の
よ う に,
パ ル ス状 の 電 力 発 生 パ タ ー ン を想 定 し,オ フ状 態 の と きは 負 の 電 力 発 生 パ ター ン を重 ね て接 合 部 温 度 の時 間 的 変 化 を推 定 す る.
(a)パ ル ス 電 力 波 形
(b)ス テ ップ波 形 の重 ね 合 わせ
(c)接 合 温 度 図4・24 パ ル ス電 力 に対 す る接 合 部 の 温度 上 昇
4・2・4 モ ジ ュ ー ル (1)モ
ジ ュー ル の 構 造 と特 長 前 項 で は,一 つ の エ レ メ ン トを一 つ の パ ッ
ケ ー ジ に入 れ た デバ イ ス の 構 造 を説 明 した.1970年
代 後 半,複
数 のエ レメ ン ト
を一 つ のパ ッケ ー ジ に 入 れ た モ ジ ュー ル構 造 が 考 案 さ れ,現 在 で は小 ∼ 中 容 量 の 電 力 変 換 に必 要 な デ バ イ ス と回 路 を 封 入 し た モ ジ ュ ー ル が 多 種 類 市 販 され て い る.モ
ジ ュ ー ル に 入 っ て い る デ バ イ ス の 種 類 は ト ラ ン ジ ス タ,MOSFET,
(a)内 部 構 造 の例
(b)内 蔵 され る回路 の例 図4・25モ
ジュー ルの 例
IGBT,一
般 用 サ イ リス タ,ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リス タ,整 流 ダ イ オ ー ドで,
これ ら を組 み 合 わ せ 若 干 の 電 子 部 品 も加 え て 変 換 回 路 に 必 要 な ユ ニ ッ トを構 成 し て い る.図4・25に
モ ジ ュー ル の 構 造 とそ の 内 部 の 変 換 回 路 の例 を示 す.
モ ジ ュー ル の特 長 は, ①
換 言 す れ ば 「集 積 化 され たパ ワー ユ ニ ッ ト」 で,変 換 電 力,動
作 周波数 に
応 じた モ ジ ュ ー ル を広 い 種 類 か ら選 択 で き る. ②
デ バ イ ス相 互 の 絶 縁 はモ ジ ュ ー ル 内 部 で 取 られ て い る.絶 縁 性 が よ く,か つ,熱 伝 導 の よい 窒 化 ア ル ミニ ウ ム(AIN)の
セ ラ ミ ック 基 板 の 片 面 に デ バ イ
ス エ レ メ ン トを接 着 し,そ の片 面 に冷 却 用 の 金 属 板 を接 着 して い る. ③
陽極,陰
極,コ
レ ク タ,エ
ミ ッ タ,ゲ ー ト,ベ ー ス の 電 極 端 子 は す べ て モ
ジ ュ ー ル の 上 面 に 配 置 され て い る の で 配 線 が容 易 で あ る. モ ジ ュー ル の下 面 の金 属 板 を 冷 却 フ ィン に取 り付 け る こ とに よ っ て 多 数 の デバ イ ス を一 括 して 冷 却 で き る.こ の た め変 換 回 路 の取 付 け ・配 線 作 業 が 極 め て容 易 で あ る. ④
モ ジ ュー ル の直 列 接 続 は 困 難 で あ るが,並 列 接続 は容 易 な た め比 較 的 大 電 流 の電 力 変 換 装 置 をモ ジ ュー ル で構 成 で き る.
(2)窒
化 ア ル ミニ ウ ム 基 板(AIN基
板)
無機 質 で安定 的 か つ優 れ た電 子
用 絶 縁 材 料 と して 酸 化 物 セ ラ ミ ッ ク ス が あ る.特
に,酸 化 ア ル ミニ ウ ム(Al2O3)
基 板 は金 属 との 接 着 性 が よ く安 価 の た め 広 く使 わ れ て い る.各 種 セ ラ ミ ッ ク ス の 熱 伝 導 率 を 表4・1に 示 す. ベ リ リア(BeO)基 は有 毒 性,SiCは
板 と炭 化 け い 素(SiC)基 板 は優 れ た熱 伝 導 性 を 示 す が, BeO
絶 縁 性,誘
電 率 に 難 点 が あ る. AlN基
板 は, Al2O3基
板 よ りも
優 れ た 熱 伝 導率 を示 す が,デ バ イ ス エ レ メ ン ト相 互 を接 続 す る銅 回 路 との 接 着 性 に以 前 は難 点 が あ った.最 る こ とに よ っ てAlN基
近 の 技 術 開 発 に よ り,酸 素 含 有 雰 囲 気 中 で 加 熱 処 理 す
板 の表 面 に1∼3μm程
度 の 厚 さのAl2O3層
を形 成 す る と
銅 との 接 着 性 が十 分 に得 られ る こ とが わ か っ た. 図4・26にAlN基 AlN基
板 に デ バ イ ス を 実 装 し,ボ
ン デ ン グ した 例 を示 す.ま
た,
板 は シ リ コ ン に 近 い 熱 膨 張 係 数 を 示 す の も利 点 で あ る.最 近 で は,17
表4・1熱
伝 導 率 の比 較
*純 度 に依 存
複 数 の デ バ イ スエ レ メ ン トをマ ウ ン ト し, ワ イヤ ボ ン デ ン グ したAIN基 板 図4・26AIN基
kV/mm程
度 の 絶 縁 性,190
係 数4.5×10-6/℃ AlN基
板 は,シ
多 層 の 金 属 層,合
W/mKの
の モ ジ ュ ー ル 用AlN基
板 の例
熱 伝 導 率,誘
電 率8.8(1 MHz),熱
膨 張
板 が 広 く使 わ れ て い る.
リ コ ン の 熱 膨 張 係 数 に 近 い た め,従
来 のAl2O3基
板 の よ うに
金 層 を 介 し て 接 着 す る 必 要 が な い.こ
の た め,デ
バ イスエ レメ
ン トか ら ヒ ー ト シ ン ク ま で の 熱 抵 抗 を 小 さ く で き,接 る の が 大 き な 利 点 で あ る.
合 温 度 を下 げ る こ とが で き
3
4 ・
各種 パ ワー デバ イスの特性 比較 と適用分 野
4・3・1特
性 比較
第 3章 以 降 で各 種 パ ワー デバ イ ス の 動 作 原 理,特 性,駆 事 項 な ど を解 説 した.ま
動 方 法,使
用 上 の注 意
とめ と して,現 在 の 自己 オ ン ・オ フ機 能 を も った パ ワ ー
デ バ イ ス の 特 性 を比 較 す る と表4・2の よ う に な る.
表4・2
各 種 デバ イ ス転 流形 パ ワー デ バ イ スの 特性 比 較
パ ワ ー デ バ イ ス の 動 向 と し て,そ ー トター ンオ フ サ イ リス タ
,IGBT,
の 大 き な 特 長 を も つ 光 ト リ ガ サ イ リ ス タ,ゲ MOSFETの
特 性 改 善 が 進 み,今
後 のパ ワ
ー エ レ ク トロニ ク ス の 主 役 とな ろ う
4 3 2 ・
・
.
適用分野
電 力 変 換 側 か らパ ワ ー デ バ イ ス を比 較 す る と き,ス イ ッ チ 可 能 な 電 力(陽 極 電 圧 とオ ン電 流 ま た は 可 制 御 オ ン電 流 との積)を 縦 軸 に,ス イ ッ チ 動 作 周 波 数 を横 軸 と し て整 理 す る と,そ れ ぞれ の デ バ イ ス の 特 徴 お よび 適 用 範 囲 が 明 快 に な る.
図4・27パ
図4・29に,代
ワー デ バ イ スの 適 用 範囲
表 的 パ ワ ー デ バ イ ス の 適 用 範 囲 を 示 す.こ
の 図 か ら,
①
通 常 の サ イ リス タ は,商 用 周 波 の 中容 量 ∼ 大 容 量 の 電 力 変 換 に,
②
ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リス タ は,1kHz程
③
バ イ ポ ー ラ パ ワ ー ト ラ ン ジ ス タ は,数kHz程
度 ま で の 中容 量 の 電 力 変 換 に, 度 ま で の 小 ∼ 中 容 量 の電 力
変 換 に, ④IGBTは,数kHz∼ ⑤MOSFETは,数10kHz∼1 適 して い る こ と が 分 か る.
数10kHz前
後 で 小 容 量 ∼ 中容 量 の 電 力 変 換 に, MHz程
度 まで の 小 容 量 の 電 力 変 換 に,
今 後 の パ ワー デ バ イ ス の 技 術 開 発 の 動 向 は,「 よ り高 い 動 作 周 波 数 で よ り大 き い 電 力 の オ ン ・オ フ を よ り低 い 電 力 損 失 で,か
つ使 い や す い デ バ イ ス」 に 要 約 さ
れ る.
演
習
問 題
〔4〕
〔 問 題 〕 1.ゲ
ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ に と っ て何 故 ス ナ バ 回 路 が 必 要 か 説 明 せ よ.
〔 問 題 〕 2.モ
ジ ュ ー ル の 特 長 は何 か?
〔 問 題 〕 3.各 種 自 己 オ ン ・オ フ 機 能 を も っ た デ バ イ ス の 特 性 を 比 較 せ よ.
第 5章
電力変換回路
電 気 エ ネル ギ ー を あ る 目的 の た め に交 換 す る場 合,第
3章,第
4章 で 述 べ た デ
バ イ ス と と も に 目 的 に適 した 回 路 と組 み 合 わ せ て 電 力 変 換 を 行 う.「 電 源 側 」 に は,商 用 周 波 の送 配 電 お よび 動 力 用 の 「交 流 」 と,そ れ を整 流 した 「直 流 」 お よ び 各 種 電 池 が あ る.一 方,「 負 荷 が 要 求 す る電 力 」 に は,例 び交 流電 動機 駆 動 用 の 「交 流 」 と,直 流 電 動 機,電 る.こ れ らの 組 み合 わ せ は,表5・1の
表5・1電
えば無停 電電 源 お よ
気 化 学 用 な どの 「直 流 」 が あ
よ う に な る.
力 変換 の 組合 せ
本 章 で は,同 表 の 四 つ の 部 分 につ い て 回路 の 動 作 と特 徴 を解 説 す る が,回 路 の 選 択 に あ た っ て は,次 の 点 が 条 件 に な る. ①
使 用 す るデ バ イ ス の 機 能 と特 性 が 発 揮 で き る こ と.
②
回 路 の電 力 変 換 効 率 が 高 い こ と.
③
デバ イ ス の使 用 個 数 が 少 な い こ と.
④
波 形 の高 調 波 成 分 が 小 さ い こ と.
5
・
交流-直流電力変換回路
1
代 表 的 な単 相 お よび 三 相 の 順 変 換 回 路 に つ い て 解 説 す る.使 用 す る デ バ イ ス は,ダ イ オ ー ド と通 常 の サ イ リス タ(オ
単相交流電源
5・1・1
(1)
ン機 能 の み)と す る.
単 相半波回路
通 常 の サ イ リ ス タ を使 用 す る場 合,電
源電圧 の ゼロ点
か らの ゲ ー ト トリガ の位 相(制 御 遅 れ 角 α と い う)を 大 き くす る こ と に よ っ て 直 流 電 圧 を最 大 値 か らゼ ロ ま で制 御 す る こ とが で き る.ダ イオ ー ドの 場 合 の 直 流 電 圧 お よび 波 形 は α=0と 同 じ で あ る.電 源 の イ ンダ ク タ ン ス を 無 視 し,交 流 電 圧 (実効 値)を
V とす れ ば,制 御 角 が0° の と き の直 流 電 圧(平 均 値)Vdは,抵
抗負
荷 の と き, (5・1)
と な る.こ
の0.225は,こ
α=0° の と き のVdをVd0と
の 回 路 の 交-直 電 圧 変 換 係 数 で あ る. す れ ば,最
大 値 はVd0=0.45Vと
な る.
直 流 側 に イ ンダ ク タ ン ス が あ る誘 導 負 荷 の と き, (5・2)
こ こ で,θ1は tan-1(X/R)と
電 流 の 継 続 時 間 で,負 す る と,次
荷 の リ ア ク タ ン ス を X,抵
抗 を R,φ=
の 関 係 が あ る. (5・3)
コ ン デ ン サ 負 荷 の と き は,コ が,コ
ン デ ン サ C の 端 子 電 圧(最 大 値)は √2V とな る
ン デ ン サ に 並 列 に抵 抗 R が あ れ ば,端
電 の正 の 半 波 ま で 減 衰 す る.図5・1に,負
子 電 圧 はCRの
荷 とそ の 波 形,制
時 定 数 で,次
の充
御 角 α と電 圧 制 御
特 性 を示 す. この 回 路 は,単 相 交 流 電 源 か ら直 流 を得 る の にた だ 1個 の デ バ イ ス(整 流 ダ イ
(a)回
路
(b)波 形
(c)特 性
図5・1単
相 半波 回 路
オ ー ドまた は サ イ リス タ)で す む利 点 は あ るが,負 荷 の種 類(抵
抗 負 荷,誘
荷,コ
電期 間 が変化 す
ン デ ン サ 負 荷)に
る.特 に,コ
よ っ て デ バ イ ス に 加 わ る 電 圧 波 形,通
導負
ン デ ン サ 負 荷 で は,変 圧 器 直 流 巻 線 電 圧 V の 最 大 値 の 2倍 が デ バ
イ ス の 逆 電 圧 と して 加 わ る の で,デ バ イ ス の 選 択 に注 意 が 必 要 で あ る.ま た,変 圧 器 直 流 巻 線 に は直 流 電 流 が 流 れ るの で,鉄
心 の 偏 磁 に 注 意 す る必 要 が あ る.こ
(a)回 路
(b)波
形
(c)特 性 図5・2
単相 セ ン タ タ ップ回路
の 回 路 は,ダ (2)単
イ オ ー ドを用 い た比 較 的 小 容 量 の 高 電 圧 電 源 に採 用 され て い る.
相 セ ン タ タ ップ 回 路
変 圧 器 の 二 次 側 直 流 巻 線 に 中 点 タ ッ プ を付
け,そ れ と 2個 の サ イ リス タ の共 通 陰 極 の間 を員 荷 で結 ぶ. 制 御 角 α と直 流 電 圧 の 関 係 は,抵 抗 負 荷 の と き, (5・4) α=180゜
でVd=0と
な る.
誘 導 負 荷 の と き, Vd=0.90Vcosα α=90゜
でVd=0と
(5・5) な る.
こ の0.90は,こ
の 回 路 の 交-直 電 圧 変 換 係 数 で あ る.図5・2に,回
路,波
形,
制御 特 性 を示 す. 直 流 リア ク トル が 大 きい と き,サ イ リス タ に流 れ る電 流 の 通 電 期 間 は180゜ で, そ の 最 大 値 はIdと な る.変 圧 器 の 交 流 巻 線 と直 流 巻 線 の 中 性 点-端 子 間 の巻 線 比 が 1の とき,交 流 線 路 電 流(実 効 値)Iaは 次 式 に な り,交-直
電 流 変 換 係 数 は 1で
あ る. Ia=1・Id
(5・6)
変 圧 器 の 容 量Pacは,α=0゜
の と き,
Pac=1.11VdId と な り,交-直
(5・7)
電 力 変 換 係 数 は1.11と
な る.
この 回 路 で は,変 圧 器 の巻 線 に交 流 電 流 が 流 れ るの で 偏 磁 す る こ と は な い. (3)単
相 均-ブ
な り 角u=0゜)考
リ ッ ジ(全 波)回 路
電 源 の イ ン ダ ク タ ンス を無 視 して(重
え る.
直 流 電 圧(平 均 値)Vdは,抵
抗 負 荷 の と き, (5・8)
α=180゜
でVd=0と
な る.
誘 導 負 荷 の と き,次 式 に な る.
Vd= α=90゜
でVd=0と
こ の0.90は,こ
2√2/πVcosα=0
.90Vcosα
(5・9)
な る.
の 回 路 の 交-直 電 圧 変 換 係 数 で あ る.
サ イ リス タ に 流 れ る電 流 は(2)と 同 じで あ る か ら,交 流 線 路 電 流 の 交-直 電 流 変 換 係 数 お よ び 変 圧 器 の交-直 電 力 変 換 係 数 も同 じで あ る. 誘 導 負荷 の と き,電 流 通 電 期 間 φ=60゜ の と き は,α=60゜
を境 と し て電 圧 波 形
が 変 わ る の で,制
御 特 性 は α=60゜ で 不 連 続 と な る.図5・3に,回
御 特 性 を示 す.こ
の 回 路 は,単 相 セ ンタ タ ッ プ 回路 に 比 べ て,サ
必 要 とす るが,直
流 電 圧Vdを
電 圧 は1/2と
路,波
形,制
イ リス タ を 4個
同 じ と した と きサ イ リ ス タ に加 わ る オ フ お よび 逆
な り,サ イ リス タの 定 格 電 圧 の 選 択 の 際 に 有 利 で あ る.
直 流 電 圧 に含 まれ る高 調 波 の 基 本 波 は電 源 周 波 数 の 2倍 で あ る.
(a)回 路 (b)波
(c)特 性 図5・3単
相 均一 ブ リッジ 回路
形
三相交流電源
5・1・2
波 形 と数 式 を簡 単 化 す る た め 電 源 の イ ン ダ ク タ ン ス を 無 視 し(重 な り角u= 0゜),か つ,直 (1)三
流 リア ク トル が 大 き く(誘 導 負荷)直
流 電 流 は連 続 とす る.
相星 形 回 路 図5・4(a)の よ う に,変 圧 器 直 流 巻 線 側 の 各 相 に サ イ
リス タ を付 け,一 括 した 陰 極 と変 圧 器 中性 点 の間 に負 荷 を接 続 す る. 直 流 巻 線 相 電 圧 をVsと
して,直 流 電 圧(平 均 値)Vdは, (5・10)
α=90゜
でVd=0と
こ の1.17は,こ
な る.
の 回 路 の 交 一直 電 圧 変 換 係 数 で あ る.
抵 抗 負 荷 の と き,α ≧30゜ で は 誘 導 負 荷 の と き と波 形 が 変 わ り,α=150゜ =0と
なる
でVd
.
サ イ リ ス タ の 電 流,す そ の 最 大 値 はIdで
な わ ち 変 圧 器 直 流 巻 線 の 電 流 は,通
あ る.交
流 側 巻 線 の 電 流(実
効 値)1ι
電 期 間 は120゜ で,
は,変
圧 器巻 線 比 を 1
と し, 1ι=0.47Id
こ の0.47は,こ
(5・11)
の 回 路 の 交-直 電 流 変 換 係 数 で あ る.
α=0゜ の と き の 変 圧 器 交 流 巻 線 の 容 量Pacは, Pac=1.21VdId
この1.21は,交-直
(5・12)
電 力 変 換 係 数 で あ る.
同 図 の 回路 で は,サ イ リス タ に加 わ る逆 電 圧(最 (最大 値)に
等 しい.オ
大 値)は
ン電 流 の最 大 値 はId(=Vd/R;Rは
通 電 期 間 は120゜(=2π/3)で あ る.従
っ て,オ
直 流 巻 線 の 線 間電 圧 負 荷 抵 抗)で,そ
ン電 流 の 平 均 値 はId/3と
の
な る.こ
の直 流 成 分 の電 流 が 直 流 巻 線 に流 れ るの で,鉄 心 が偏 磁 す る お それ が あ る.こ れ を 防 ぐた め,直 流 巻 線 を三 相 千 鳥 と して 直 流 成 分 を打 ち消 す よ う に す る. 直 流 電 圧 に含 まれ る高 調 波 の 基 本 波 周 波 数 は,電 源 周 波 数 の 3倍 とな る.
(a)回
路
(b)波
形
(c)特 性
図5・4三
(2)三
相(均 一)ブ リッジ 回路
相 星 形 回路
サ イ リス タ 6個 の う ち,陽 極 を共 通 と した
3個 の 群 と陰 極 を共 通 した 3個 の 群 とが あ り,そ の 陽 極-陰 極 間 に 負 荷 を接 続 す
る.変 圧 器 直 流 巻 線 は星 形 で も三 角 で も よい. 直 流 巻 線 の線 間 電 圧(実 効 値)を V と し て,誘 導 負荷 の と きの 直 流 電 圧Vdは, (5・13)
こ の1.35は,こ a=90゜
の 回 路 の 交-直 電 圧 変 換 係 数 で あ る.
でVd=0と
な る.
抵 抗 負 荷 の と き は,a=150゜ サ イ リ ス タ の 電 流 波 形 は,通 る.変 値)I2は
でVd=0と
な る.
電 時 間 は120゜,そ
の 最 大 値 はIdの
圧 器 の 交 流 側 と直 流 側 の 磁 脚 の 巻 線 比 が 等 し い と き,直 交 流 線 電 流(実 効 値)と 等 し く,こ
よ う に0.816と
方 形 波 とな
流 巻 線 電 流(実 効
の 回 路 の 交-直 電 流 変 換 係 数 は,次
式 の
な る. (5・14)
a=0゜
の と き の 変 圧 器 交 流 巻 線 の 容 量Pacと
直 流 電 力Pdcの
関 係 は,
(5・15)
この1.05は,こ 制 御 特 性 を 示 す.こ
の 回 路 の 交-直 電 力 変 換 係 数 で あ る.図5・5に,回
路,波
形,
の 回 路 は,三 相 星 形 回路 を 2組 直 列 に した の と等 価 で,交
流
側 電 圧 が 同 じで あれ ば,三 相 星 形 の 2倍 の直 流 電 圧 が 得 られ る.ま た,直 流 電 圧 を同 じ と した と き,サ イ リス タ に加 わ る電 圧 は三 相 星 形 の1/2で
す む.従
っ て,
この 回 路 は直 流 高 電 圧 を得 る場 合 に適 して い る. この 回 路 は,単 相 ブ リ ッ ジ 回 路 と同 様 に,サ
イ リス タ が 直 列 に な っ て い る の
で,2 個 の サ イ リス タ が 同 時 に オ ン状 態 に な らな けれ ば電 流 は 流 れ な い.こ
のた
め,60゜ の 位 相 差 を も っ た ダ ブ ル パ ル ス か ま た は120゜ の 幅 を も っ た パ ル ス 電 流 を各 サ イ リス タの ゲ ー トに与 え る必 要 が あ る.陽 極 が 共 通 の サ イ リス タ 群 の ゲ ー ト回 路 は,互 い に直 流 巻 線 の線 間 電 圧(最 大 値)以 上 の 絶 縁 が 必 要 で あ る.こ の 回 路 の 直 流 電 圧 に 含 まれ る高 調 波 の 基 本 波 周 波 数 は電 源 周 波 の 6倍 とな る.
(a)
回路
(b) 波 形
(c )特
図
5・5
性
三 相(均 一)ブ
リッジ 回路
(3)
三相混 合ブ リッジ回路
図5・6の 三 相 均 一 ブ リッ ジ 回 路 で,陽 極 が 共
通 の 3個 の サ イ リス タ をダ イオ ー ドに置 き換 えた 回 路 で,ダ
イ オ ー ドの採 用 と ゲ
ー ト回 路 の簡 略 化 に よ り装 置 が 経 済 的 とな る .
(a)
回路
(b) 波 形
図 抵 抗 負 荷 の と き,a≧60゜
5・6
三 相混 合 ブ リ ッジ回 路
で 直 流 電 圧 波 形,サ
三 相 星 形 回路 と同 じに な る.図5・6に,三 (4)
三相 二重星形 回路
イ リ ス タ に加 わ る電 圧 波 形 は,
相 混 合 ブ リ ッ ジ回 路 と波 形 を示 す.
2組 の 三 相 星 形 回 路 の 中性 点 を互 い に相 間 リア ク
トル で 接 続 した 回路 で,60゜ の位 相 差 の あ る三 相 星 形 回 路 を 並 列 に接 続 し た構 成 で あ る. 誘 導 負 荷 の と き の 直 流 電 圧Vdは,相
電 圧Vs,制
御 角 αと して三 相 回路 の
(1)と 同 じで, vd=1.17Vscosα
従 っ て,交
(5・16)
一直 電 圧 変 換 係 数 は(1)と 同 じで あ る.サ イ リス タ に加 わ る電 圧 の
最 大 値 は,直 流 巻 線 の 線 間 電 圧(最 大 値)に 等 しい.直 ス タの 電 流 の 通 電 期 間 は120゜,そ の 最 大 値 はId/2の
(a)
回路
(b) 波 形
(c)
図
5・7
特性
三 相 二 重星 形 回 路
流 電 流 がIdの
と きサ イ リ
方形 波 と な り,そ の オ ン電
流(平 均 値)はId/6で
あ る.
交 流 線 電 流I〓 と直 流 電 流Idの 関 係 は, (5・17)
こ の0.408は,こ
の 回 路 の 交-直 電 流 変 換 係 数 で あ る.変 圧 器 交 流 側 の 電 力
Pacと 直 流 側 の電 力Pdcの
関係 は,変 圧 器 の磁 脚 の 巻 線 比 が 等 しい と き,
Pac=1.05Pdc こ の1.05は,こ
図5・7に,三
(5・18)
の 回 路 の 交-直 電 力 変 換 係 数 で あ る.
相 二 重 星 形 回 路 と波 形 お よび 制 御 特 性 を示 す.相 間 リア ク トル の
励 磁 電 流 よ りも負 荷 電 流 が 小 さ くな る と,相 間 リア ク トル が正 常 に動 作 せ ず,六 相 星 形 回路 にな っ て直 流 電 圧 は約10%上
昇 す る.こ れ を防 ぐた め,相 間 リア ク
トル が 正 常 に動 作 す る程 度 の 小 さ い 負 荷 を接 続 して お く. 直 流 電 圧 に含 まれ る高 調 波 の基 本 波 周 波 数 は電 源 周 波 の 6倍 で あ る. こ の 回路 は,二 つ の三 相 星 形 回路 が 並 列 の た め大 電 流 が 得 られ る と同 時 に,直 流 電 圧 波 形 に含 まれ る高 調 波 の周 波 数 が 高 く,か つ,そ の 振 幅 が 小 さ くな る利 点 が あ る. (5)
上 述 した 電 力 変 換 回 路 の 直 流 側 の パ ル ス数 p は,
多相電 力変 換回 路
単 相 回 路 の(1)はp=1,(2)と(3)はp=2,三 =6
,(3)は
α=0゜
の と きp=6,a>0゜
相 回 路 の(1)はp=3,(2)はp と きp=3,(4)はp=6で
あ る.
こ れ らの 回 路 よ り も直 流 電 圧 波 形 お よ び 交 流 電 流 波 形 に含 まれ る高 調 波 を減 ら す た め に は,直 流 側 の パ ル ス数 pを増 や す 方 法 が と られ る.例
え ば,図5・8の
よ う に,変 圧 器 の巻 線 を 互 い に 位 相 をず ら し た 十 二 相 変 換 回 路(p=12)を る方 法 が と られ る.図(a)は した 回路,図(b)は
構成す
二 つ の 三 相 ブ リッ ジ を相 間 リア ク トル で並 列 に接 続
二 つ の三 相 ブ リッ ジ を直 列 に接 続 した 回路,図(c)は
二つ の
二 重 星 形 を相 間 リア ク トル を 介 して 並 列 に 接 続 した 回 路 で あ る.図(b)は,例 ば,高 電 圧 大 電 力 の 直 流 送 電 お よび 周 波 数 変 換 に,図(c)は
え
低 電圧大電 流の電解
工 業 用 電 源 に使 用 され る. さ らに,高 調 波 成 分 を減 ら した い場 合 は,さ
らに 変 圧 器 直 流 巻 線 の相 数 を増 や
(a)三
相 ブ リッ ジの並 列
(b)三
相 ブ リ ッジの 直列
(c)二 重 星 形 の並 列 図5・8十
して 二 十 四 相(p=24)に
二相 電 力 変換 回路 の 例
す る.
主 な 電 力 変 換 回 路 の特 性 比 較 を 表5・2に 示 す.
5・1・3重 (1)重
な り角 を 考 慮 した 直 流 電 圧(平 均 値)の 一 般 式 な り角 前 述 した 各 種 の 電 力 変 換 回 路 の 波 形 お よ び 電 圧 制 御 特 性
は,変 圧 器 お よ び交 流側 の イ ン ダ ク タ ン ス を無 視 して説 明 した.実
際 に は,変 圧
器 お よ び交 流 系 統 に イ ン ダ ク タ ンス が 存 在 し,ま た 事 故 時 の サ ー ジ 電 流 抑 制 の た め,あ
る程 度 の イ ン ダ ク タ ン ス を 入 れ て お か な けれ ば な らな い.
この イ ン ダ ク タ ン ス に よ っ て,電 源 転 流 時 に サ イ リス タ の オ ン電 流 は急 に は 0 に な らず,重
な り角 μ を経 て次 の サ イ リス タ に 転 流 す る.こ の 現 象 を 図5・9で
説 明 す る.L1∼L3は,変
圧 器 お よ び 交 流 系統 の一 相 当 た りの イ ン ダ ク タ ン ス の
和 を直 流 巻 線 側 か ら見 た イ ン ダ ク タ ンス で,転 流 イ ン ダ ク タ ンス とい う. 図(a)の 三 相 星 形 回 路 で,通 電 中 の サ イ リス タS1の 電 流 をS2に 移 す べ く制 御
表
〔注 〕 V:交 流 電 圧(実 効 値),Id:直 δ:全
5・2
主 な電 力 変
流 電 流(平 均 値),α:制
振 幅 脈 動 率(α=μ=0),ka=√1−
α/π,Pdo=Vdo
御 角, Id
換 回 路 の特 性 比 較
μ:重 な り角,X:転 *印:直
流 リア ク タ ン ス, f:電 源 周 波 数,
流電 流 平 滑 の場 合
(a)回 路
(b)重 な り期 間 中 の 波 形
(c)α と μの 関 係
図5・9
遅 れ 角 αでS2を ず,図(b)の
転 流 イ ン ダ ク タ ン ス と重 な り 角(三 相 星 形 回 路)
オ ン さ せ る と,転 流 イ ン ダ ク タ ン ス の た め 電 流 は直 ち に転 流 せ
よ う にS1とS2が
同 時 に通 電 す る期 間,重
な り角 μ を経 て 電 流 は
S2に 移 る.こ の 重 な り期 間 中 は U 相 と V 相 が 短 絡 と な る の で,直 U 相 と V 相 の 平 均 値,す 順 変 換 の場 合,図(b)の
な わ ち(eu+eυ)/2と
流 電 圧 波形 は
な る.
斜 線 の 面 積 だ け転 流 イ ン ダ ク タ ン ス を 無 視 した場 合 よ
り も直 流 電 圧(平 均 値)は 低 くな る.こ の 面 積 を 1サ イ ク ル 当 た りの 平 均 値 に した 値 が 転 流 リア ク タ ン ス 降 下dxと な る. 一般 に ,転 流 イ ン ダ ク タ ンスL と重 な り角 μ と の 関 係 は,転 流 リア ク タ ンス X=ωL(ω
は電 源 周 波 数),直
流 電 流 をId,直
流 側 の パ ル ス 数 を p,無 負 荷 無 制
御 時 の 直 流 電 圧(平 均 値)をVd0と
す れ ば, (5・19)
式(5・19)の 右 辺 を K とす れ ば,K
をパ ラ メ ー タ と して,制 御 角 α と重 な り角
μ の 関係 は 図(c)の よ う に な る.な
お,こ の 図 に は逆 変 換 領 域(α ≧π/2)の 関 係
も示 して い る. 制 御 角 を一 定 と した と き,転 流 イ ン ダ ク タ ン ス の増 加 と と もに,ま
た直流電 流
の 増 加 と共 に 重 な り角 は増 加 し,転 流 リア ク タ ンス 降下 は増 加 す る. (2)直
流 電圧(平 均 値)の 一 般 式 直 流 側 の イ ンダ ク タ ン ス が 大 き く,直 流
電 流 が 平 滑 で あ る と して 次 式 とな る. Vd=Vd0
cos α-dx-dr-da
(5・20)
こ こ で,
Vd0;無
負荷 無 制 御 時 の 直 流電 圧(平 均値)〔V 〕 (π/p)
Vs;変 圧 器 直 流 巻 線 の星 形 電 圧 〔 V〕 p;直 流 側 の パ ル ス 数(表5・1参
照)
α;制 御 遅 れ 角 dx;転
流 リア ク タ ン ス に よ る電 圧 降 下 〔 V〕
X;X=ωL(ω
は 電 源 の 周 波 数, L は変 圧 器 直 流 巻 線 側 か ら電 源 側
を 見 た 一 相 当 た りの転 流 イ ン ダ クタ ンス)〔Ω〕 Id;直
流 電 流 〔A 〕
μ;重
な り角
dr;変
圧 器,電 源 系 統 の抵 抗 分 の 電 圧 降下 〔V〕
da;サ
イ リ ス タ(ダ イ オ ー ド)の オ ン 電 圧 〔V 〕
5・2 交 流-交 流電 力変換 回路 交 流 電 源 か ら負 荷 側 に所 望 の 交 流 電 力 を供 給 し,そ の電 力 を制 御 す る場 合 は 次 の 回 路 が あ る.こ の 場 合,「 電 源-負 荷 」 の 間 で相 数,電 圧,周
波 数 が 異 な る場 合
も あ る.
① 交 流電力 調整 回路 ② 交 流電力直 接変換 回路 ③ 交 流電力 間接変換 回路 ま た,「 電 源-負 荷 」 の 問 の 周 波 数 変 換 と そ の制 御 に,次 の 方 式 が あ る. ①CF-CF(Constant-Frequency-Constant-Frequency)変 例 え ば,ヨ
換
ー ロ ッ パ の50Hz-16・2/3Hz鉄
道 電 化
②CF-VF(Constant-Frequency-Variable-Frequency)変 主 な 用 途 は,交
流 誘 導 電 動 機 お よ び 交 流 同 期 電 動 機 の速 度 制 御
③ VF-CF(Variable-Frequency-Constant 例 え ば,航 ④
換
Frequency)変
換
空 機 の エ ン ジ ン に 直 結 し た 交 流 発 電 機 か ら定 周 波 の 交 流 へ 変 換
VF-VF(Variable-Frequency-Variable-Frequency)変 主 な 用 途 は,②
換
と同 じ
負 荷 側 の 周 波 数 制 御(一 定 また は可 変)と 同 時 に,負 荷 側 の交 流 電 圧 も同時 に 制 御(一 定 また は 可 変)す る方 式 が あ る. 負 荷 側 の電 圧 と周 波 数 を同 時 に 制御 す る た め に次 の 方 式 が あ る. ⑤ CVCF(Constant 主 な 用 途 は,無 ⑥ VVVF(Variable 主 な 用 途 は,交
Voltage, Constant
Frequency)制
御
停電電源装 置 Voltage, Variabule 流 誘 導 電 動 機,同
Frequency)制
御
期電動 機の速度制 御
5・2・1 交 流 電 力 調 整 回 路 図5・10の
よ う に,ト
ラ イ ア ッ ク また は サ イ リス タ を 逆 並 列 に す れ ば
制 御 交 流 ス イ ッ チ 」 と な り,ト IGBTを
「オ ン 可
ラ ン ジ ス タ ま た は ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ,
逆 並 列 す れ ば 「オ ン ・オ フ 可 制 御 交 流 ス イ ッ チ 」 と な る.
図5・10
交 流 スイ ッチ の例
(1) オ ン可 制 御 交 流 ス イ ッ チ に よ る単 相 電 力制 御 (a) 抵 抗 負 荷 図5・11の(a)の
単 相 回 路 で,オ
ン可 制 御 交 流 ス イ ッチ の 制
(a) 回 路
(c) 波 形
(b) 制御特性 図5・11 単 相 回路(抵 抗 負荷)の 制御 特 性 と波 形
御 角 α に よ って 負 荷 側 の 交 流 電 圧 を制 御 で き る.交 流 電 源 電 圧 の 実 効 値 をVs, 負荷 側 の そ れ をV〓 とす れ ば, (5・21)
と な る.制
御 角 α とV〓/Vsの
関 係 は 図(b),波
形 は 図(c)と
な る.
制 御 角 αの制 御 に よ り負 荷 へ の 電 力 を 0か ら最 大 まで 連 続 的 に制 御 で き る. (b) 誘 導 性 負 荷 負 荷 の イ ン ダ ク タ ン ス を L,抵 と す れ ば,基
本 波 力率 角
φ は φ=tan-1(2πf・L/R)と
の 大 小 関 係 で 波 形 が 変 わ る.α<φ α≧ φ で は,負 は 制 御 角,負
の と き は,無
抗 を R,電 な り,こ
制 御(α=0)と
荷 電 流 が 断 続 す る 波 形 と な り,図5・12(a)の 荷 力 率 角(tanφ)に
源周 波 数 を f
の φ と制 御 角 α 同 じ波 形 と な る .
よ う に な る .図(b)
対 す る 負 荷 電 流 比I〓/I〓0の 関 係 を 示 す .
(b) 負荷 電 流 比 (a) 波 形
図5・12 単 相 回路(誘 導 性 負 荷)の 波 形 と負荷 電 流
(c) 容 量 性 負 荷 交 流 回 路 の コ ン デ ン サ に流 れ る電 流 は,電 圧 に対 して90° 進 ん で い る.こ の た め,制 御 角 で 位 相 制 御 す る と突 入 電 流 が 流 れ る の で,デ バ イ ス の オ ン位 相 を電 源 電 圧 の ピー ク時 点 に 固 定 す る.回 路 と波 形 を図5・13に 示 す. この 回路 は,電 源 周 波 で の コ ンデ ンサ の 高 速 多 頻 度 開 閉 が で き るの で,交 の 無 効 電 力 補 償 装 置 に使 用 され る.
流系統
図5・13 単相 回路(容 量 性 負 荷)の 波 形
(2) オ ン 可 制 御 交 流 ス イ ッチ に よ る 三 相 電 力 制 御 三 相 回路 の 場 合 の 回 路 の 例 を 図5・14に 示 す.図(a),(b)の
よ う に,単 相 交 流 ス イ ッチ を星 形 また は
三 角 形 に接 続 す る.星 形 回路 で 抵 抗 負 荷 の と きの 波 形 と制 御 特 性 を 図(c) ,(d) に示 す. 応 用 例 と して,直 流 高 電 圧 を制 御 す る場 合,変
圧 器 の二 次側 の 三 相 ブ リッ ジ 回
路 で 制 御 す る よ り も一 次 側 の 交 流 ス イ ッチ で 制 御 す る ほ うが 経 済 的 な 場 合 が あ る.図5・15に,回
路 と制 御 特 性 を示 す.
(3) 通 電 サ イ クル 可 変 に よ る電 力 制 御 を説 明 した が,あ
前 項 まで は位 相 角 に よ る電 力 制 御
る期 間 中 の 通 電 サ イ クル 数 と休 止 サ イ クル 数 の比 の制 御 に よ っ
て も負 荷 へ の電 力 を 制 御 で き る.こ の 方 式 に は,図5・16の
よ うに,交 流 ス イ ッ
チ の オ ン状 態 の連 続 サ イ ク ル 数 制 御 と,オ ン とオ フ と を交 互 に行 い そ の比 率 を制 御 す る 方 法 が あ る. 電 源 電 圧 をVs,負
荷 側 電 圧 をV〓,周
波 数 をf,オ
ン ・オ フ動 作 の 周 期 を T,
T 秒 間 に オ ン状 態 を続 け る サ イ クル 数 を n とす る と,負 荷 側 の電 圧V〓 は,
(a) 星 形 回 路
(b) 三 角 回路
(c) 波 形
(d) 制御特性 図5・14 三 相 交 流電 力調 整 回路 と波 形,制 御特 性 の例
(a) 回
路
(b) 電 圧 制 御特 性
図5・15 交 流 ス イ ッチ に よ る直 流電 圧 制御
(a)連 続 式制 御 図5・16通
(b)間 欠 式制 御 電 サ イ クルに よ る電 力制 御
(5・22)
(た だ し,1≦n≦f・T)
とな る.変 圧 器 を 介 し て この 方 式 で制 御 を行 う とき は,正 の 半 波 と負 の 半 波 の 数 が 同 じ に な る よ う に し て直 流 分 を な くす 必 要 が あ る. (4)
オ ン ・オ フ 可 制 御 交 流 ス イ ッチ に よ る 電 力 制 御
交 流 チ ョ ッパ と いわ
れ る この 方 式 の 回 路 と波 形 の例 を 図5・17に 示 す.
図5・17オ
ン ・オ フ 可 制 御 交 流 ス イ ッ チ
オ ン ・オ フ 動 作 時 の 比 率Ton/(Ton+Toff)に
よ っ て 電 力 を 制 御 す る.こ
の比 が
大 き い ほ ど負 荷 へ の 電 力 は大 き くな る.
5・2・2
交流電力直接変換回路
交 流 電 力 直 接 変 換 と は,5・1節
で 解 説 した 変 換 回 路 2組 を,図5・18の
よう
に,「 正 群 」,「負 群 」 と して 逆 並 列 に接 続 し,電 圧 の 零 線 に対 して 上 下 対 照 的 な 位 相 制 御 に よ っ て 電 源 の 交 流 電 圧,周
波 数 と は異 な っ た 交 流 電 圧,周
波数の電力
を負 荷 に供 給 す る方 式 で あ る.こ の よ うな 回 路 構 成 と,電 源 周 波 に対 す るゲ ー ト
(a)循 環電 流方 式
(b)非 循 環 電 流 方式 図5・18サ
イ クロ コンバ ー タの基 本 回 路
位 相 の 変 調 制 御 に よ っ て 出 力 電 圧 と周 波 数 を 別 々 に 変 換 す る 方 式 を サ イ ク ロ コ ン バ ー タ(Cycloconverter)と
い う .サ
環 電 流 の 処 理 に 関 し て,(1)循 (1)
循環 電流方 式
イ ク ロ コ ン バ ー タ に は,同
環 電 流 方 式,(2)非
図 の よ う に,循
循 環 電 流 方 式 が あ る.
循環 電流方式 は,正 群 変換 回路 と負群変換 回路 の間 に
リア ク トル を 接 続 し,循 環 電 流 を常 に流 しな が らゲ ー トの 位 相 変 調 制 御 に よ り変 調 周 波 数 の 正 弦 波 出力 電 圧 を得 る方 式 で あ る.リ ア ク トル の た め 両 群 の電 圧 瞬 時
値 の 差 が リ ア ク トル で 平 均 化 さ れ て,図5・19(c)の
出 力 電 圧 波 形 と な る.
(a)正 群 コ ン バ ー タの 出 力 電 圧
(b)負
群 コンバ ー タの 出 力電圧
(c)破 線 が 合 成 出力 電 圧(正 弦 半 波) 図5・19 循 環 電 流方 式 の 出 力電 圧 波形
出 力 電 圧(実 効 値)V〓 は,正
群 の 電 源 電 圧(実 効 値)Vp,負
群 をVnと
し て,次
の よ う に な る.
(5・23)
この 方 式 の特 徴 は, ①
リア ク トル の ほ か,変 圧 器 に は 2組 の二 次 巻 線 が 必 要 とな る.
②
非循環電流 方式 のよ うな正群 と負群の極性切換 時間が不 要 なので,安 定 な 電 流 制 御 が 可 能 と な る.
③
出 力 周 波 数 の 上 限 は,電 源 周 波 数 の約1/2ま
での低 周 波領 域 で制 御 で き
る.
④
正 群 と負群 の鋸 歯 状 出 力 電 圧(瞬 時 値)の 差 は リア ク トル で 分 圧 さ れ るの で,非
循 環 電 流 方 式 に比 べ 低 周 波 出 力 電 圧 に 含 まれ る 高 調 波 の 振 幅 は少 な
い (2)
非循環電流 方式
負 荷 電 流 の 極 性 に応 じて 正 群 また は負 群 の ど ち らか
一 方 の み を 動 作 させ るの で,循 環 電 流 は 流 れ な い.正 群 ← → 負群 の切 り換 え に は一 定 の 電 流 休 止 期 間 を必 要 とす るの で,極 性 検 出器 を用 い位 相 制 御 を行 う. 出 力 電 圧(実 効 値)V〓 は,図5・20の 電 圧(実 効 値)Vpと
よ う に,出 力 電 流 が 正 の と き は正 群 の 交 流
な り,出 力 電 流 が 負 の と き は 負群 の交 流 電 圧(実 効 値)Vnと
な
る.
図5・20 非 循 環電 流 方 式 の 出 力電 圧 波 形
この 方 式 の 特 徴 は,
①
正群 と負群 の極性切 換時間 が必 要で あ る.
②
出 力 周 波 数 の 制 御 範 囲 は,電 源 周 波 数 の 約1/3を
上 限 と した 低 周 波領 域 で
あ る.
③
出 力 電 圧 は 正 群 と負群 の 差 の鋸 歯状 電 圧 と な る の で,循 環 電 流 方 式 に 比 べ て低 周 波 出力 に含 ま れ る高 調 波 の振 幅 は大 き い.
(3)
定比式サ イ クロコンバー タ
電 源 周 波 数 の1/2サ
イ ク ル を単 位 と し て
1/2サ イ ク ル の n倍 ご と に 正 群 と 負 群 の 出 力 を 切 り換 え る こ と に よ り,図5・ 21(a)の よ う な電 源 周 波 数 の整 数 分 の 1の 低 周 波 交 流 出 力 が 得 られ る.多 相 の 電 源 を用 い れ ば,図(b)の
よ うな 台 形 状 の低 周 波 交 流 出 力 が 得 られ る.ヨ ー ロ ッパ
の 鉄 道 は,こ の 原 理 で50Hzの で 電 化 さ れ て い る.
六 相 の 電 源 か ら単 相16・2/3Hzに
変換 した交 流
(a)n 分 周 波 の 波 形
(b)162/3Hz波 図5・21定
5・2・3
形
比 式 サ イ ク ロ コ ン バ ー タの 出 力 電 圧 波 形 の 例
交流電力間接変換回路
交 流 電 力 間 接 変 換 回 路 とは,5・1節
で解 説 した 変 換 回 路 2組 を 図5・22の よ う
に直 流 回路 を介 し て逆 並 列 に接 続 した構 成 で あ る.そ れ ぞ れ の変 換 回 路 の ゲ ー ト 位 相 を独 立 に,か つ,相
関 性 を もっ て制 御 す る こ と に よ り,異 な っ た 交 流 電 圧 と
周 波 数 の 2つ の 系 統 を電 気 的 に結 ん で電 力 の 流 れ る方 向 と大 き さ を制 御 で き る. また,独
立 した 発 振 装 置 か らの ゲ ー ト信 号 に よ り,順 変 換 あ る い は電 池 を直 流
電 源 と し て独 立 し た電 圧,周
波 数 の 交 流 出力 を得 る こ とが で き る.
(a)
基本構成 (b) 交 流系 統 の連 携
(他励 自制 式)
(c)
独 立 した 交 流 出力 (自 励 他制 式)
図
(1)
5・22
間接変換 回路 の分類
交 流 電 力 間接 変 換 回路 の 購 成
この構 成 で,片 方 の 変 換 回路 を順 変 換,も
方 を 逆 変 換(イ ンバ ー タ)で 運 転 す る場 合,こ
う一
の構 成 の 動 作 を 別 の 視 点 で 分 類 す る
と次 の よ う に な る. (a)
直流回路
平 滑 コ ンデ ン サ また は電 池 が あ る場 合 は,直 流 電 圧 とそ の 極
性 が確 立 して い る た め 定 電 圧 源 とな り,逆 変 換 の 動 作 は電 圧 形 とな る.こ れ を電 圧 形 イ ンバ ー タ とい う. 直 流 リア ク トル が あ る場 合 は,直 流 電 流 の時 間 的 変 化 が妨 げ られ るの で定 電 流 源 とな り,逆 変 換 の 動 作 は電 流 形 とな る.こ れ を電 流 形 イ ン バ ー タ とい う. (b)
転流方式
①
他 励 式;出
力 側 交 流 系 統 の 電 圧 に よ る 「電 源 転 流 」
②
自励 式;補
助 回 路 に よ る通 常 の サ イ リス タ の 「イ ンパ ル ス 転 流 」,ま た は
自 己 オ ン ・オ フ機 能 を も った デバ イ ス に よ る転 流 お よ び回 路 の オ ン ・オ フ ゲ ー ト位 相
(c)
①
自制 式:出
②
他 制 式:独 立 した 発 振 装 置 で ゲ ー トを制 御
進相 電力
(d)
①
力 側 交 流 系 統 の 電 圧 に同 期 して ゲ ー トを制 御
転 流 ター ン オ フ時 間 の あ る通 常 の サ イ リス タ を使 う と き は,出 力 交 流 系統 また は転 流 コ ン デ ンサ か ら得 る.
②
自 己 オ ン ・オ フ 機 能 の あ る デ バ イ ス(GTO,MOSFET,IGBT)を
使 う
と き は 不 要 で あ る.
(2)順
変 換-逆 変 換(イ ンバ ー タ)動 作
逆 変 換 動 作 を 理 解 す る た め,サ
イ
リス タ を 使 用 し た三 相 星 形 回 路 を例 に と り,ゲ ー ト制 御 角 と各 部 の 波 形 を 図5・ 23に 示 す.順
変 換 動 作 領 域 で は,制 御 角 αの 増 加 と共 に 直 流 電 圧(平 均 値)Vdr
は減 少 し,交 流 系 統 か ら直 流 負 荷 へ の 電 力 は α=90゜ で 零 と な る.さ 大 き く(α=180゜-β;β
図
5・23
ら に,α を
を 制 御 進 み 角 とい う)す る と逆 変 換 動 作 領 域 に入 っ て,
ゲー ト制 御 角 と各部 の 波 形(三 相 星 形;重 な り角 を無視)
変 換 回路 の 直 流 端 子 電 圧 の 極 性 が 反 転 し,見 掛 け の直 流 端 子 電 圧Vdiと
な る.こ
の と き,こ の 極 性 の直 流 電 源(例 え ば,直 流 機 の 逆 起 電 力)が あ り,か つ,Vdiよ り高 け れ ば直 流 電 源 か ら交 流 系統 に電 力 が 流 れ 逆 変 換 動 作 とな る.こ の 領 域 で の サ イ リス タの 転 流 は,交 流 系 統 の 電圧(電 源 転 流)で 行 わ れ る. 通 常 の サ イ リ ス タ の 逆 変 換 運 転 に は,転 β=0゜ で は 運 転 で き ず,タ 位 相 の 限 界 と な る.自 必 要 な い.こ
流 タ ー ン オ フ 時 間 を 必 要 と す る た め,
ー ン オ フ 時 間 以 上 の 時 間(余
裕 角 γ と い う)が
己 オ ン ・オ フ機 能 の あ る デ バ イ ス で は,こ
の よ う に,ゲ
ゲー ト
の よ うな 時 間 は
ー トの 位 相 制 御(0゜ ≦ α≦180゜ − β)に よ っ て 順 変 換-逆
変 換 を 行 う こ とが で き る.順
変 換,逆
変 換 時 の 直 流 電 圧 は,次
式 と な る.
順変換 時の直流電圧 Vdr=Vd0cosα
−dx−dr−da
(5・24)
逆変換時 の直流電圧 Vdi=Vd0cosβ+dx+dr+da
(5・25)
こ こで,
(3)
Vd0;無 負 荷 制 御 時 の直 流 電 圧
dx;転
流 リア ク タ ン ス
α;制 御 遅 れ 角
dr;回
路 の抵抗降 下
β;制 御 進 み 角
da;デ
バ イ ス の オ ン電 圧
転 流 電 圧,ゲ
ー ト位 相,運 転 特 性
図5・22(b)の
他 励 自 制 式 で は,
転 流電 圧 お よ び所 要 進 相 電 力 は逆 変 換 側 の大 容 量 交 流 系 統 か ら と り,ゲ ー ト位 相
表 5・3
逆変換の分類 と運転特性 の要点
は そ の交 流 電 圧 に 同期 し て制 御 す る. 図(c)の 自励 他 制 式 で は,強 制 転 流 回路 の付 加 また は デ バ イ ス 自身 の オ ン ・オ フ機 能 に よ り逆 変 換 運 転 を行 う.交 流 出力 周 波 数 は ゲ ー ト制 御 装 置 の発 振 周 波 数 で 決 まる.従
っ て,高 精 度 の 周 波 数 一 定 制 御(CF)あ
るい は可 変 周 波 数 制 御(VF)
が 可 能 で あ る.逆 変 換 の 運 転 特 性 の 要 点 を 表5・3に 示 す. 逆 変 換 の 応 用 分 野 の 大 部 分 は,図5・22(b),(c)の
た め,略
し て 他 励 式,自
励 式 と い う 場 合 が 多 い. (4)
差,す
力 率,無
効電 力
図5・23の 波 形 で,交 流 電 圧 とデ バ イ ス 電 流 の 位 相
な わ ち力 率 お よ び所 要 無 効 電 力 を
見 る と,制 御 遅 れ 角 α の 増 加 と と も に 遅 れ 力 率 は 減 少 し,α=90゜(制 御 進 み 角 β=90゜)で 直 流 電 圧 は 0,遅 れ 力 率(進 み 力 率)は 0,遅 れ 無 効 電 力 は最 大(進 み 無 効 電 力 は最 大)と な る.α ≧90゜(β≦90゜) で は,変 換 回路 の 出 力 直 流電 圧 の極 性 は 反転 し,β の 減 少 と と も に進 み 力 率 は 1 に近 づ き,進 み 電 力 は 減 少 す る.図5・ 24に 制 御 角 と直 流 電 圧,図5・25(a)に 制 御 角 と所 要 遅 れ ・進 み電 力,図(b)に 順 変 換,逆 変 換 運 転 時 の ベ ク トル 図 を示 す.通 常,遅
れ電 力 は交 流 系 統 か ら,進
み 電 力 は交 流 系統 お よ び コ ン デ ンサ か ら
図
5・24
制 御 角 と直 流電 圧
得 る. (5)
電 力の流 れ,電 力の制御(他励 式電 力変 換)
換 回 路 に お い て,二
つ の 変 換 回 路 A,B
他励式 の交流電 力間接 変
の 動 作 に よ っ て,電
力 は 図5・26図
の よ
う に 流 れ る. 変 換 回 路 A,B
の ゲ ー ト制 御 角 を そ れ ぞ れ0゜ ∼180゜ の 間,互
て 制 御 す る こ と に よ り,電
い に協 調 を もっ
力 の 流 れ の 方 向 と大 き さ を 制 御 す る こ とが で き る.
(a)
制御 角 と無 効電 力
(b) ベ ク トル 図
図
5・25
制御 角 と遅 れ ・進 み 電 力
図(c)の 直 流 短 絡 は避 け な け れ ば な らな い(A
と B を定 格 電 流 以 内 で 通 電 試
験 す る と き に使 用 す る場 合 が あ る). 交 流 電 力 間 接 変 換 回 路 は,大 容 量 の 直 流 送 電,周
波 数 変 換 の ほ か,無 停 電 電
源,直 流 回路 に接 続 した 直 流 電 動 機 の 可 逆 運 転 に使 用 され て い る. (6)
電 圧 形 イ ン バ ー タ,電 流 形 イ ンバ ー タ(自 励 式 電 力 変 換)逆
変換 回路
の 出 力 側 が大 き な交 流 系 統 に接 続 され て お らず,逆 変 換 に よ り独 立 した 交 流 電 力 を発 生 す る 自励 式 の場 合 は,次 の特 性 を示 す. (a)
電 圧 形 イ ンバ ー タ
電 圧 形 イ ンバ ー タ は,二
つ の 変 換 回路 を結 ぶ 直 流部
(a)A
を 順 変 換,B を 逆 変 換 VdA>VdBの とき電 力は A か ら Bに 流 れ る。
電 圧 差 が 大 きいほ ど流 れ る電 力は 大 きい。 <VdBの とき電 力 は 流 れ ない 。 VdA (b)A
を逆 変 換,B を順 変 換 <VdBの とき電 力 は B VdAか ら >VdBの
A に 流 れ る。 と き電 力 は VdA流 れ な い 。
(c)A を順 変 換,B を順 変 換 直 流 短絡 電 流が 流 れ る。
(d)A
を逆 変 換 、B を逆 変 換
電 流 は流 れ な い。
直:流回路 の〓 は 順 変換 した出 力直 流 電圧 の 極性 を示 す 。 直流 回路 の〓 は 逆 変換 動 作 の 見掛 け の 直流 電圧 の極 性 を示す 。 実際 には,変 換 回路 A,B は 直 流 回路 で接 続 され て い るが,上 図 で は 理 解 しや す い よ うに 回 路 を開 いて 説 明 した 。 図 5・26二 つ の 変 換 回路 の動 作 と電 力 の流 れ(他 励 式 電 力 変 換)
分 に 平 滑 コ ンデ ン サ あ る い は蓄 電 池 を接 続 し,極 性 を 固 定 した 直 流 定 電 圧 電 源 か らな る回 路 構 成 で あ る. この 構 成 で は, ①
負 荷 が誘 導 性 の と き,逆 変 換 回 路 の ス イ ッチ ング デバ イ ス に逆 並 列 に帰 還 ダ イ オ ー ドを接 続 し,負 荷 の イ ン ダ ク タ ン ス の エ ネ ル ギ ー を処 理 す る.
②
図5・26(b)の よ う に,直 流 電 圧 の極 性 反 転 は で き な い.直
流電 流 の方 向
を可 逆 に し な け れ ば,電 力 の 流 れ の 方 向 を可 逆 制 御 で きな い.可 逆 制 御 の た め に は,表5・4の ③
よ うに,直 流 回 路 に逆 変 換 回路 を接 続 す る.
逆 変 換 回 路 の 出 力 電 圧 波 形 は,抵 抗 負 荷 で も誘 導 負 荷 で も,定 電 圧 化 さ れ た 直 流 電 圧 の た め 方 形 波 に な る.出 力 電 流 波 形 は,負 荷 が 抵 抗 の とき は電 圧
波 形 と同 じ方 形 波 とな り,誘 導 性 の と き は正 弦 波 状 に な る.
④
定 電 圧 直 流 電 源 の た め,負 荷 変 動 に対 して 出 力 交 流電 圧 の 変 動 は小 さ い.
(b)
電 流 形 イ ンバ ー タ
電 流 形 イ ンバ ー タ は,直 流 部 分 に大 き な 直 流 リア ク
トル を接 続 して電 流 の 変 動 を抑 え た直 流 定 電 流 電 源 か らな る 回路 構 成 で あ る.こ の構 成 で は,
①
図5・26(a),(b)の
よ う に,直
流 電 流 の 方 向 は 一 定 で あ る が,制
御 角 を
電 気 角0゜∼180゜の 範 囲 で 制 御 す る こ と に よ り直 流 電 圧 の 極 性 を 可 逆 に で き る の で,電 力 の 方 向,大
②
き さ を制 御 で き る.
定 電 流 化 さ れ て い るた め 出 力 電 流 波 形 は方 形 波 とな る.出 力 電 圧 波 形 は負 荷 が 抵 抗 の と きは 方形 波 とな り,誘 導 性 の とき正 弦 波状 に な る. 表5・4電
圧 形 イ ン バー タ,電
流 形 イ ンバー タの比 較
③
出 力 側 の 負荷 変 動 に対 し て交 流 出 力 電 圧 の 変 動 は 大 き い.
電 圧 形 イ ンバ ー タ,電 流 形 イ ンバ ー タ の 比 較 を表5・4に 示 す.特 機 を駆 動 す る際,ど
に,交 流 電 動
ち ら の形 式 を採 用 す るか に よっ て 運 転 特 性 が 変 わ る.
この 項 で は,通 常 の サ イ リス タ を用 い て 電 源 転 流 お よ び強 制 転 流 回 路 に よ る転 流 動 作 に よ っ て 行 わ れ る逆 変 換 に つ い て説 明 した. 最 近,高
周 波 で オ ン ・オ フ動 作 す る機 能 を も った 高電 圧 大 電 流 の デ バ イ ス が 大
き く進 歩 して お り,そ れ を応 用 した 多 くのパ ル ス 動 作 の 変 換 回路 が考 案 ・実 用 さ れ て い る.こ れ らパ ル ス 動 作 の 変 換 回 路 は,5・2・5項 の 「直 流-交 流 変 換 回 路 」 の 項 で説 明 す る.
5
・
3
直流-直 流電力変換回路
直 流 電 源 か ら負 荷 側 が 必 要 とす る電 圧 の 直 流 電 力 を供 給 す る場 合,次
の回路が
あ る.
① 直流直接 変換 回路 ② 直流 間接 変換 回路 両 回路 と もデ バ イ ス を 高 周 波 で オ ン ・オ フ動 作 させ て電 力 変 換 させ るの が 基 本 の た め,主 MOSFETを
5 3・ 1 ・
と し て 自 己 オ ン ・オ フ機 能 が あ る トラ ン ジ ス タ,GTO,IGBT, 使 用 す る.
直流直接変換回路
(チ ョ ッパ 回 路)
直 流 電 源 と負 荷 の 問 に上 記 デバ イ ス を含 む チ ョ ッパ 部(Chと
略 す)を 接 続 し,
そ の チ ョ ッパ の オ ン ・オ フ動 作 と回路 構 成 に よ り,次 の 直 接 変 換 回 路 が あ る.
① 直流電源 よ りも低 い電圧範 囲で出力電圧 を制御 す る
(降圧 チ ョ ッパ)
② 直流電源 よ りも高 い電圧範 囲で出力電圧 を制御 す る
(昇圧 チ ョ ッパ)
③ 直 流電 源 に対 して広 い電圧 範 囲 で出力 電圧 を制 御 す る
(昇 ・降 圧 チ ョ ッ
パ)
④
複 数 の チ ョ ッパ に よ り電 力 の可 逆 制 御 を行 う (多象 限 チ ョ ッパ)
⑤
出 力 直 流 電 圧 の 高 調 波 成 分 を低 減 す るた め,こ れ らの 方 式 を多 数 組 み 合 わ せ る(多 相 多 重 チ ョ ッパ)
また,直 流 電 圧 の 可 変 制 御 に は,次 の 方 式 が あ る.
①
パ ル ス幅 変 調(PWM)方
②
パ ル ス 周 波 数 変 調(PFM)方
式 式
③ オ フ時間一定 制御方式 ④ 混合 変調方式 (1)
降 圧 チ ョ ッパ 回 路
図5・27(a)に
そ の 回 路 を 示 す.同
図の ダ イオ ー
ド D は,負 荷 が誘 導 性 の と き そ の イ ンダ ク タ ンス の エ ネ ル ギ ー を 還 流 さ せ る た め で あ る.
(a)基 本 回 路
(b)制 御 方 式 と波 形(抵 抗 負荷) 図5・27降
チ ョ ッパ 部 の オ ン,オ
圧 チ ョ ッパ 回路 と制 御 方 式に よる 直流 電 圧 波 形
フの 期 間 とそ れ らの 動 作 周 期 を制 御 す る と,図(b)の
う に,抵 抗 負 荷 へ の 直 流 電 圧(平
均 値;図
よ
で は破 線)を 制 御 で き る.
負 荷 電 流 は抵 抗 負 荷 で は断 続 と な る が,誘 導 負 荷 で は ダ イオ ー ドの 還 流 に よ り 連 続 とな る. 直 流 電 源 電 圧 をVd,チ 期 をT(=Ton+Toff)と
ョ ッ パ 部 の オ ン 期 間 をTon,オ す れ ば,直
フ 期 間 をToff,そ
接 変 換 に よ る 出 力 直 流 電 圧V〓
は,
の周
PWM方
式 の と き, (5・26)
と な り,V〓 PFM方
はTonに
比 例 す る.α
を 通 流 率 と い う.
式 の と き,
(5・27)
こ こ で,f
は オ ン ・オ フ 動 作 周 波 数,f=1/T,T≧Tonと
な り,V〓
は f に比
例 す る. (2)
昇 圧 チ ョ ッパ 回 路
図5・28(a)の
回 路 で,チ
コ ン デ ンサ C は電 源 電 圧 で 充 電 され て い る.チ
(a)基
(b)波
ョ ッパ 部 が オ フ の と き
ョ ッパ 部 を オ ン す る と,直 流 電
本 回路
形
(c)昇 圧特 性 図5・28昇
圧 チ ョ ッパ 回路 と昇圧 特 性
源Vdは る.あ
イ ン ダ ク タ ン ス L で 短 絡 さ れ て電 流 が 流 れ,L る期 間Ton後
にエ ネル ギー が蓄積 す
チ ョ ッパ 部 をオ フ す る と,オ フ期 間Toff中
は,蓄 積 エ ネ ル
ギ ー と電 源 か らの 電 流 は負 荷 電 流 とコ ン デ ンサ の 充 電 電 流 と な り,コ ンデ ンサ の 端 子 電 圧 が 上 昇 す る. オ ン ・オ フ の 周 期 を T とす れ ば,電 源 電 圧Vdと
出力 直 流 電 圧V〓 の 関係 は, (5・28)
とな る.T/Toffを
昇 圧 比 とい い,そ
の 逆 数 を β と す れ ば,β
とV〓/Vd関
係 は図
(c)と な る.同 図 の特 性 を利 用 して直 流 電 動 機 の 回 生 制 動 に応 用 され て い る. (3) 昇 ・降 圧 チ ョ ッパ 回 路 る と電 流 が 電 源 →Ch→
図5・29(a)の
L を 通 っ て 流 れ,リ
回 路 で,チ
ョッパ部 を オ ンす
ア ク トル L に エ ネ ル ギ ー が 蓄 積
(a)基 本 回 路 (b)昇 図5・29昇
す る.期 間Ton後
・降 圧 特 性
・降 圧 チ ョ ッパ の 基 本 回 路 と 昇 ・降 圧 特 性
チ ョ ッパ 部 を オ フ す る と,蓄 積 した エ ネ ル ギ ー は,リ
アク ト
ル L → 負 荷 → ダ イ オ ー ド を通 っ て 流 れ,負 荷 の 直 流 極 性 は反 転 す る.L
が十
分 大 きい と き,次 の関 係 が あ る. (5・29)
チ ョ ッ パ 部 の 流 通 率 を α と す る と,α+β=1の
関 係 が あ る の で,
(5・30)
と な る.α 下,す (4)
とV〓/Vd関
係 は 図(b)と
な り,α
な わ ち 電 源 電 圧 に 対 し て 昇 圧,降
多 象 限 チ ョッ パ 回 路(直
に よ っ てV〓/Vdを
圧 の 広 い 範 囲 で 出 力 電 圧 を制 御 で き る.
流 電 動 機 の 正 ・逆 転,加
の チ ョ ッ パ 部 を 用 い た 図5・30(a)の
回 路 で,Ch1とD1は
行 運 転 を 受 け も つ 降 圧 チ ョ ッ パ 回 路 で,Ch2とD2は 昇 圧 チ ョ ッパ 回 路 で あ る.Ch1とCh2を
二つ
・減 速 運 転)
負荷 の 直流電 動機 の力 回 生 ・減 速 運 転 を 受 け も つ
同 時 に オ ン させ る と直 流 電 源 短 絡 とな る
(a)加 速 ・減 速 チ ョ ッ パ
(b)正
図5・30
1以 上 か ら 1以
・逆 転,加
・減 速 用 チ ョ ッ パ
多象限 チ ョッパ 回路
の で 避 け な け れ ば な らな い.こ の 回 路 で は,直 流 電 動 機 の一 方 向 の加 ・減 速 運 転 が 可 能 で あ るが,正 転 ・逆 転 お よ び加 ・減 速 運転 を行 う と き は,図(a)の 図(b)の よ う に 2組 並 列 と し,Ch1∼Ch4を (a)を 二 象 限 チ ョッパ,図(b)を (5)
多 相 チ ョ ッパ 回 路
回路 を
互 い に 協 調 を も っ て 制 御 す る.図
四 象 限 チ ョ ッパ とい う. 例 え ば,降
圧 チ ョ ッ パ 回 路 を,図5・31(a)の
よ
う に複 数 個 並 列 し て,そ れ ぞ れ を協 調 を もっ て 制 御 す る と負 荷 電 流 の 高 調 波成 分 を低 減 す る こ とが で き,誘 導 障 害 の 軽 減,直 る.
流 リア ク トル の 小 型,軽
量化 がで き
(b)出 力直 流電 圧
(a)多 相 チ ョ ッパ 回 路 図5・31
5・3・2
多相 チ ョ ッ パ 回 路
直流間接変換回路
自己 オ ン ・オ フ機 能 の あ る デ バ イ ス を 用 い て直 流 電 源 電 圧 を い っ た ん 交 流 電 圧 に 変 換 し,再 び希 望 す る出 力 直 流 電 圧 に変 換 す る直 流-交 流-直 流 変 換 回 路 を 直流 間 接 変 換 回路 とい う.主 た る応 力 分 野 は電 子 機 器 用 定 電 圧 直 流 電 源 で あ り,標 準 的 な 出 力 直 流 電 圧 は数10V
程 度 まで,1
ユ ニ ッ トの 直 流 出 力 は 数kW程
で あ る.中 間 の 交 流 周 波 数 は,回 路 を構 成 す る変 圧 器,リ
ア ク トル,平
度 まで 滑用 コ ン
デ ンサ を小 型 ・軽 量 化 し,電 力 損 失 を最 小 にす る た め 高 い ほ うが 望 ま し く,現 在 で は20∼500kHzが タ,IGBT,
一 般 的 で あ る.デ バ イ ス と し て は,バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス
MOSFET,
GTOを
動 作 させ て直 流 出 力 電 圧,直
使 用 し,通 常,パ
ル ス 幅 変 調 方 式 で オ ン ・オ フ
流 電 力 を制 御 す る.
交 流 か ら直 流 に変 換 す る際,高
周 波 の 整 流 に適 し,か つ,順 損 失 の小 さい シ ョ
ッ トキ ー バ リア ダ イオ ー ドを使 用 す る. 直 流 間 接 変 換 回 路 を大 き く分 類 す る と,次 の よ うに な る.
電圧 ・電 流 波形 変圧 器 の動作 回 路構成 非 共振 形 (昇圧 お よび降圧 形
一 石 フ ォ ワ ー ド形
フ ォワー ド
二 石 フ ォ ワ ー ド形 プ ッシュプ ル形
プ ッシュ プル
直 流間接
ハ ー フ ブ リ ッ ジ形
変換 回 路
フルブ リッジ形
共振 形
直 列共 振形 並 列共振 形
回 路 構 成 を電 流 波 形 か ら分 類 す る と,
①
電 流 オ ン ・オ フ形;デ
バ イ ス のパ ル ス 幅 変 調 制 御 で 直 流 電 流 を オ ン ・オ フ
す る.
②
電 流 共 振 形;回
路 を共 振 条 件 と して電 流 波 形 に ゼ ロ点 をつ く り,そ の ゼ ロ
点 で 電 流 を オ ン ・オ フ す る.
また,デ バ イ ス を一 石 使 うか 複 数 使 うか に よ っ て,直 流 出力,変 問 題,波 形,高
圧 器 の偏 磁 の
調 波 成 分 が変 わ り,最 適 の 回 路 構 成 が 決 ま る.
直 流 間 接 変 換 回 路 は 多 数 開 発 ・実 用 され て い る が,こ
こ で は代 表 例 を 説 明 す
る. (1) (a)
電 流オ ン ・オ フ形間接 変換回路 一 石 フ ォ ワ ー ド形 間 接 変 換 回 路
回 路 と各 部 の 波 形 を 図5・32に 示 す.
デバ イ ス Q が オ ンす る と,変 圧 器 一 次巻 線 に 直 流 電 源 電 圧 V が 加 わ り,巻 線 比 で 決 ま る電 圧 が 二 次 巻 線 に誘 起 す る.こ の電 圧 をD1で
整 流 し直 流 に 変 換 す る.
Q が オ フ し て い る期 間 に変 圧 器 を リセ ッ トし な けれ ば な ら な い の で,オ 1サ イ ク ル の1/2以 (b)
下 とな る.
プ ッシ ュプル形 間接変換 回路
回 路 と各 部 の 波 形 を 図5・33に 示 す.中
点 タ ッ プ付 き変 圧 器 の 一 次 側 の デバ イ スQ1,Q2を イ オ ー ドD1,D2で
ン期 間 は
交 互 に オ ン させ,二
次側 の ダ
整 流 して直 流 に変 換 す る.二 次 側 に は,デ バ イ ス の オ ン ・オ
フ周 期 の 2倍 の 周 波 数 の電 圧 が誘 起 す るの で,直 流 フ ィル タ を 小 型 ・軽 量 化 で き る.二 つ の デバ イ ス の オ ン期 間 を等 し く しな い と変 圧 器 が 偏 磁 す る場 合 が あ る.
(a)回
路
(b)波 図5・32
(a)回
形
一 石 フ ォ ワ ー ド形 間 接 変 換 回 路
路
(b)波 図5・33
(c)フ
形
プ ッ シ ュプ ル形 間接 変 換 回路
ル ブ リ ッジ お よ び ハ ー フ ブ リッ ジ形 間 接 変 換 回路 フ ル ブ リ ッ ジ形 回
路 を 図5・34(a)に 示 す.プ
ッ シ ュ プ ル 形 と比 較 し て変 圧 器 一 次 巻 線 の 中 点 端 子
を省 略 し,四 つ の デバ イ ス を用 い る.一 次 巻 線 電 流 は,1/2サ
イ クル ご とに 二 つ
の デバ イ ス を直 列 に流 れ る.デ バ イ ス個 数 は倍 を要 す る けれ ど も,デ バ イ ス の電 圧 定 格 は プ ッ シ ュ プ ル形 の1/2で
す む.
(a)フ
ル ブ リ ッ ジ 形 回 路 と波 形 図5・34
(b)ハ ー フ ブ リ ッ ジ 形 回 路
フ ル ブ リ ッ ジ 形,ハ
ハ ー フ ブ リッ ジ形 回路 は,図(b)の
ー フブ リ ッジ 形間 接 変換 回路
よ う に,直 流 電 源 側 を コ ン デ ン サ 2個 とデ
バ イ ス 2個 で構 成 す る.変 圧 器 一 次 巻 線 に コ ン デ ン サ で 分 圧 さ れ たV/2の が加 わ る.コ
電圧
ン デ ン サ を 経 て 一 次 巻 線 電 流 が 流 れ る の で,直 流 分 は カ ッ トされ ,
変 圧 器 の偏 磁 は起 こ りに くい.出
力 側 の 波 形 は フル ブ リ ッ ジ 形 回 路 と同 じ で あ
る. (d)フ
ラ イ バ ック 形 間 接 変 換 回 路(リ
ン ギ ン グ チ ョー ク コ ンバ ー タ)回
路
と各 部 の 波 形 を 図5・35に 示 す.
(a)回 路 図5・35
(b)波 形 フラ イバ ッ ク形 間接 変 換 回路
変 圧 器 一 次 巻 線 と二 次 巻 線 を逆 極 性 に して お く.デ バ イ ス を オ ンす る と変 圧 器 が励 磁 さ れ,励 磁 エ ネ ル ギ ー が 蓄 積 され る. デ バ イ ス を オ フす る と蓄 積 され た エ ネ ル ギ ー が 放 出 され,ダ
イ オ ー ドを通 っ て
表5・5代
P:出
力電 力
Ton:ト
表 的 な 電流 オ ン ・
ラ ン ジス タの オ ン期 間
コ ン デ ンサ を充 電 す る.一 石 フド ワ ー ド形 に比 べ て部 品 点 数 が 少 な くて 済 む利 点 が あ る が,デ バ イ ス 電 流 は三 角 形 で,ピ
ー ク値 が 大 き く,デ バ イ ス の 利 用 率 は低
い.
代 表 的 な 電 流 オ ン ・オ フ形 間 接 変 換 回路 の 要 点 を ま とめ る と表5・5と な る. (2)
共振 形間接 変換回路
(a)
直列共振 形 間接変 換回路
回 路 と 波 形 を 図5・36に
Q1を オ ンす る と,直 流 電 源 → L →C1→
変 圧器 一次 巻線
(a)
図
5・36
直列共振形間接変換回路
(b)
示 す.t1で
デバ イ ス
を通 っ て 共 振 電 流 が
オ フ形間 接 変 換 回路 の要 点
Toff:す
べ て の トラン ジ ス タの オ フ期 間
流 れ て変 圧 器 二 次 側 に電 圧 を誘 起 し,そ れ を整 流 して直 流 出 力 電 圧 を得 る.t2で 共 振 電 流 は0と な り,こ こ でQ1を オ ン させ る と,C1は
オ フ す る.電 流 が 小 さ いt3で デ バ イ スQ2を
一 次 巻 線 を通 っ て 放 電 し,同 様 に 直 流 出 力 電 圧 と な る.常
に電 流0点 近 傍 で デバ イ ス はオ ン ・オ フ す るの で,オ
ン ・オ フ時 の 損 失 が極 め て
小 さ い利 点 が あ る. (b)並
列共振 形間接変換 回路 基本
構 成 を図5・37に 示 す.共 振 用 コ ン デ ン サC3と
変圧器 一次 巻線が 並列 共 振 回路
を形 成 す る.変 圧 器 の一 次 側 に は正 弦 波 電 圧 が 加 わ る.出 力 直 流 側 の フ ィル タ は チ ョー ク イ ンプ ッ トとす る.基 本 動 作 は 直 列 共 振 形 と同 じ で あ る.
図5・37 並 列 共 振形 間 接 変 換 回路
5・4 直流-交 流電 力変換 回路
す で に5・2・3項 の 交 流 電 力 間 接 変 換 回 路 で 他励 自制 式 電 力 変 換,お
よ び 自励 他
制 式 電 力 変 換 と し て電 圧 形 イ ンバ ー タ,電 流 形 イ ンバ ー タ を解 説 した. こ こで は,各 種 直 流電 源 と自励 他 制 式 電 力 変 換 回路 に つ い て説 明 す る.
5・4・1 直 流 電 源 通 常,電
力 変 換 回 路 の 直 流 電 源 と して,次
の種 類 が あ る.
(1)商
用 交 流 系 統 か ら順 変 換 回 路 で 変 換 し た 直 流 電 源 サ イ リス タ で は
5・1節 で 説 明 した 位 相 角 の制 御 で 可 変 直 流 電 圧 を 得 る が,ダ
イ オ ー ドで は無 制
御 の 一 定 直 流 電 圧 とな る. 順 変 換 回 路 の 出 力 側 に平 滑 用 コ ン デ ンサ あ る い は蓄 電 池 を接 続 す れ ば定 電 圧 直 流 電 源 とな り,逆 変 換 の動 作 は電 圧 形 イ ンバ ー タ の特 性 を 示 す. 順 変 換 回 路 の 出 力 側 に大 きな イ ン ダ ク タ ン ス を接 続 す れ ば 定 電 流 電 源 とな り, 逆 変 換 の動 作 は電 流 形 イ ンバ ー タの 特 性 を示 す. (2) 直 流 機 直 流 回路 に 直 流 機 が 接 続 され て 回 転 して い る とき は,電 機 子 端 子 に逆 起 電 力 が発 生 して い る.逆 起 電 力 す なわ ち直 流 誘 起 電 圧 は回 転 数,界 磁 電 流 で 変 化 し,界 磁 の 極 性 を切 り替 え る と直 流 誘 起 電 圧 の 極 性 が 変 わ る.直 流機 を 回 生 制 動 す る と き は,こ の逆 起 電 力 を直 流 電 源 と して 交 流 系 統 に電 力 を変 換 す れ ば よ い. (3)太
陽 電 池 太 陽 電 池 の 直 流 出 力 は 晴 天 と曇 りで は大 き く変 動 す る.通
常 の シ リコ ン太 陽 電 池 で は天 候 で 定 ま る 出 力 電 圧 ・電 流 特 性 に最 適 動 作 点 が あ る.多 数 の 太 陽 電 池 エ レ メ ン トを 直列 接 続 して構 成 した パ ネル を直 ・並 列 に接 続 して 所 望 の 直 流 電 圧 と電 力 を得 る.変 動 の 少 な い 直 流 電 源 にす る た め,電 池 パ ネ ル の 直 流 出 力 端 子 に蓄 電 池 ま た は フ ィル タ用 コ ン デ ン サ を並 列 に接 続 す る.こ の た め 太 陽 電 池 は定 電 圧 源 と な り,逆 変 換 の 動 作 は 電 圧 形 イ ン バ ー タの 特 性 を示 す.
太 陽 電 池 1セ ル 当 た り の 晴 天 時 の 出 力 電 圧 は 約0.4V(負 力11mW/cm2程
度,変
図5・38(a)に
換 効 率 は16%程
荷 の あ る と き),出
度 と い わ れ て い る.
太 陽 電 池 エ レ メ ン トの 構 造,図(b)に
日射 量 と最 大 出 力 点 の 関
係 を 示 す.
(a)構 造
図5・38太
(4)燃
料電池
(b)特
性
陽 電 池 エ レ メ ン トの 構 造 と特 性
改 質 器 に天 然 ガ ス を通 して水 素 を取 り出 し,そ の 水 素 と空
気 中 の酸 素 を電 解 質 と電 極 を介 して 接触 させ て電 気 化 学 反 応 で 直 流 電 力 を得 る. 燃 料 電 池 本 体 で あ る 「酸 素 ・空 気 一直 流 電 圧 変 換 器 」 の構 造 を 図5・39に 示 す. そ の直 流 出力 は,セ ル の 数(1セ
ル 当 た りの 直 流 出 力 電 圧 は 約0 .7V)と
水 素,
酸 素 の ガ ス 流 量 に 依 存 し,流 量 を 一 定 に す れ ば変 動 の な い 直 流 電 源 と な る. 1m×1mの
セ ル を 6直 列 ×3並 列 と し,水 素 約66%の
酸 素 約21%の
空 気 約1650kg/hの
流 量 に て670kWの
ガ ス 約445kg/hお
よび
出力 が 得 られ る.
燃 料 電 池 は,定 電 圧 直 流 電 源 の た め に逆 変 換 回 路 を動 作 させ る と電 圧 形 イ ンバ ー タの 特 性 を示 す (5)蓄
電池
. 代 表 的 蓄 電 池 で あ る鉛 電 池 は,鉛
とそ の 酸 化 物 を電 極 材料 と
し,電 解 液 中 に 電 極 を配 置 した 充 ・放 電 可 能 な電 池 で あ る. 1セ ル 当 た りの直 流 電 圧 は約2Vの
た め 多 数 の セ ル を直 ・並 列 と して 所 要 の 直 流 電 源 と す る.1 セ
ル か ら取 り出 し う る電 気 量 は,ア
ンペ ア 時 容 量 〔Ah〕あ る い は ワ ッ ト時 容 量 〔Wh〕
(a)原 理
(b)セ
ル の構 造
図5・39 燃 料電 池 の 発電 部
で 表 示 さ れ て い る.電 池 を直 流 電 源 と して 逆 変 換 回路 を動 作 させ る と電 圧 形 イ ン バ ー タ の特 性 を示 す.電 池 と逆 変 換 回 路 の 間 に大 きな リア ク トル を付 けれ ば電 流 形 イ ンバ ー タ の 特 性 を 示 す.
5・4・2 自 励 他 制 式 逆 変 換 回 路 先 の5・2・3項 の 図5・22で,逆
変 換 回路 の 出 力 が大 き な交 流 系 統 に結 ばれ て い
て,そ の 系 統 か ら転 流 源 とゲ ー ト位 相 を とる 「他励 自制 式 」 と,出 力 を 独 立 した
負 荷 の み に供 給 し,独 立 した ゲ ー ト装 置 で位 相 を制 御 す る 「自励 他 制 式 」 を説 明 した.自 励 他 制 式 の動 作 特 性,出 用 す る デ バ イ ス,ゲ
力側 の電 圧 ・電 流 波 形 は,回 路 構 成,負
荷,使
ー ト制 御 法 に 関係 し,次 の よ うに 分 類 さ れ る.
共振 形逆 変換 回路 自励他 制 式 逆変 換 回路
直列 共振 逆 変換 回路 並 列 共振 逆変 換 回路
方形 波逆変 換 回路
電 圧 形 逆 変 換 回 路(電
圧 形 イ ン バ ー タ)
電 流 形 逆 変 換 回 路(電
流 形 イ ンバ ー タ)
特 に,方 形 波 逆 変 換 回 路 は,近 年 の 自 己 オ ン ・オ フ機 能 の あ る デバ イ ス の 進 歩 と と も に,電 力 の パ ル ス 制 御 を基 本 と した 多 くの新 しい 回路 や 方 式 が 開 発 ・実 用 さ れ,パ
ワ ー エ レ ク トロニ ク ス の発 展 の 原 動 力 に な っ て い る .
自 己 オ ン ・オ フ機 能 の あ る デバ イ ス を使 用 した 回 路 に つ い て は,後 述 す る と し て,通 常 の オ ン機 能 の み の デ バ イ ス を使 用 した 回 路 の例 と波 形,動
作 を次 に説 明
す る. (1) 共 振 形 逆 変換 回 路 (a) 直 列 共 振 逆 変 換 回 路 図5・40(a)は 直 列 共 振 回 路 で,負 荷 R に 直 列 に コ ン デ ン サ C と イ ン ダ ク タ ン ス L を 接 続 し,直 列 共 振 回 路 とす る.サ イ リ ス タ
(a)回 路 (b)波 形
図5・40 直列 共 振 逆変 換 回路
Q1を オ ンす る と共 振 波 形 の 正 の 半 波 を,サ イ リス タQ2を 発 生 し,図(b)の
オ ン す る と負 の 半 波 を
よ うに 負 荷 に共 振 周 波 数 の 交 流 正 弦 波 の 電 流,電
圧 が加 わ る.
直 列 共 振 の周 波 数f0は, (5・31)
で あ る か ら,Q1, Q2の ゲ ー トオ ン,オ
フ周 波 数 をfgと す れ ば, f0とfgの
で波 形 は図(b)の よ う に変 わ る.fg=f0の 路 の 欠 点 は,R≧2√L/Cで
関係
と き出 力 電 圧 は正 弦 波 とな る.こ の 回
は 非 振 動 と な っ て 動 作 不 能 と な る の で,特 殊 用 途 し
か 応 用 され な い. (b)並
列 共 振 逆 変 換 回 路 図5・41(a)の よ う に,直
流 回 路 に 大 き な リア ク
トル を接 続 し,変 圧 器 の 直 流 巻 線 に転 流 コ ンデ ンサ を接 続 す る.変 圧 器 の 二 次 側 に 負 荷 を接 続 し,ゲ ー トを独 立 電 源 の 周 波 数 で 制 御 す る.こ の構 成 は電 流 形 自励 他 制 逆 変 換 回路 で あ る. Q1を オ ンす る と電 流iQ1がQ1に る.次 に,Q2を れ てQ1を
流 れ,転 流 コ ン デ ンサ は 図 の よ う に充 電 さ れ
オ ンす る と コ ン デ ン サ はQ2を
通 っ て 放 電 し, iQ1と 逆 向 き に 流
タ ー ン オ フ させ る.換 言 す れ ば強 制 転 流 回 路 で あ る.
出 力 側 の電 圧 波 形 は転 流 コ ン デ ン サ との 関 係 で,図(b)の
(a)回 路
(b)波
形
図5・41 並 列共 振 逆変 換 回 路
よ う に,抵 抗 負荷 の
(c)変
形 回路
と き は三 角 波 また は矩 形 波 状 に,誘 導 負 荷 で は正 弦 波状 に な る. 直 流 電 圧Vd,出
力 交 流 電 圧(実 効 値)V〓,制 御 進 み 角 β,変 圧 器 巻 線 比 kの と
き, (5・32)
の 関 係 が あ る.()は
直-交 電 圧 変 換 係 数 で,k
とVdが
一 定 の と き,重 負 荷 に
な る と β が小 さ くな っ てV〓 が低 くな る.通 常 の サ イ リク タ の場 合,β
が小 さ く
な っ て サ イ リス タの 転 流 タ ー ンオ フ時 間 よ り小 さ くな る と転 流 失 敗 を起 こ して 動 作 不 能 とな る.軽 負 荷 に な る ほ ど出力 電 圧 は 高 くな る の で,こ た め転 流 コ ン デ ンサ を調 節 す るか,図(c)の
の電 圧 変 動 を 防 ぐ
よ う に 出力 電 圧 を電 源 側 に フ ィー ド
バ ッ クす る. サ イ リス タ の転 流 失 敗 を防 ぐた め β を一 定 と して 制 御 周 波 数 を 出 力 側 か ら と れ ば,す
な わ ち 自励 自制 式 で 運 転 す る と,負 荷 の 変 動 と と も に 周 波 数 が 変 化 す
る. 自 己 オ フ機 能 の な い通 常 の サ イ リス タ を用 い た 自励 式 逆 変 換 回路 の 動 作 は, 制 御 周 波 数 を 固定 す る と(自 励 他 制 式),負
荷 変 動 に よ り出力 電 圧 は変 動 し,重 負
荷 で は β が 小 さ くな って 転 流 失 敗 を起 こす.出
力 電 圧 波 形 は,転 流 コ ン デ ン サ
と誘 導 負 荷 条 件 に よ り正 弦 波 状 に な る. β を固 定 す る と(自 励 自制 式),負
荷 に よ っ て 出 力 周 波 数 が 変 動 す る.出 力 電 圧
波 形 は,転 流 コ ン デ ンサ と誘 導 負 荷 条 件 に よ り正 弦 波状 に な る. (2) 方 形 波 逆 変 換 回路 (a) 電 圧 形 方 形 波 逆 変 換 回 路(電 圧 形 イ ンバ ー タ)直 た は蓄 電 池 を接 続 す る と定 電 圧 電 源 とな る.こ る.通 常,負
流 電 源 に コ ン デ ンサ ま
の た め 出 力 電 圧 波 形 は方 形 状 とな
荷 は誘 導 性 の た め帰 還 ダ イ オ ー ドを ス イ ッチ ン グ デバ イ ス に逆 並 列
に接 続 す る.こ の た め ス イ ッ チ ン グ デ バ イ ス は 逆 電 圧 阻 止能 力 が な くて よ い. ⅰ)単
相 回 路 図5・42(a)に デ バ イ ス 2個 の セ ン タ ー タ ッ プ単 相 回 路,図
(b)に 2個 の ハ ー フ ブ リ ッ ジ回 路,図(c)に
4個 の フル ブ リ ッ ジ 回路 と誘 導 負 荷
の と きの 波 形 を示 す.出 力 電 圧 は方 形 状 で あ るが,電 流 は正 弦 波 状 とな る.
(a)セ
ン ター タ ッ プ 単 相 回 路
(b)ハ ー フ ブ リ ッ ジ 回 路
(c)フ ル ブ リ ッ ジ 回 路 と波 形
図5・42 単 相 電圧 形方 形 波逆 変 換 回路
デバ イ ス 電 流 が オ フ した 後,オ
フ電 圧 阻 止 能 力 回復 に 時 間 を 要 す る.直 列 の デ
バ イ スが 同 時 に オ ンす る と直 流 短 絡 とな るの で,こ
れ を避 け る た め 直 列 の デ バ イ
スの オ フ とオ ンの 間 に わ ず か の 時 間差 ⊿tを お く.出 力 電 圧 の 周 波 数 は ゲ ー ト制 御 の 周 期 T で 定 ま る.デ バ イ ス の 通 電 期 間 を π とす れ ば,出 値)V〓 は,次 式 とな る.()は
力 交 流 電 圧(実 効
交-直 電 圧 変 換 係 数 で あ る. (5・33)
ⅱ) 三 相 回 路 図5・42(c)を 組 み合 わ せ た 三 相 電 圧 形 方 形 波 逆 変 回 路 と出 力 波 形 を 図5・43に 示 す. この 回 路 で は,各 相 の ハ ー フ ブ リ ッ ジ の 通 電 期 間 が180° の と き,直 流 電 源 の 中点ODC∼ U, V, W 間 の 電 圧 の振 幅 はVd/2で,π
幅 の 方 形 波 と な り,線 間 電
圧 は ±Vdの 振 幅 を も つ2π/3幅 の 方 形 波 と な る.負 荷 の 相 電 圧 は,6
ス テ ップ
の階 段 状 波 形 と な る.通 電 期 間 が 上 記 の と き線 間 電 圧(基 本 波 実 効 値)V〓 と直 流
(a)回
路 (b)波
形
図5・43 三相 電 圧 形 方 形波 逆 変換 回路
電 源 電 圧Vdの
関 係 は 次 式 とな る.()は
交-直 電圧 変 換 係 数 で あ る. (5・34)
平 滑 コ ン デ ンサ の 直 流 電 圧 極 性 は 変 わ ら な い の で,負 荷 の 電 力 回 生 に は こ の コ ンデ ンサ に並 列 に 逆 変 換 回路 を付 け て 直 流 電 力 を商 用 交 流 系 統 に 変 換 す る. (b)電
流 形 方 形 波 逆 変 換 回 路(電 流 形 イ ンバ ー タ)直
流 電 源 に大 き な リア ク
トル を接 続 す る と定 電 流 源 とな る.こ の た め出 力 電 流 波 形 は 方形 状 とな る.直 流 電 流 は常 に一 方 向 に流 れ る の で,電 圧 形 に必 要 で あ った 逆 電 流 用 帰 還 ダ イオ ー ド は 不 要 で あ る が,ス イ ッチ ン グ デバ イ ス に は逆 電 圧 阻 止 能 力 が必 要 で あ る. ⅰ)単
相 回 路 図5・44に 単 相 フ ル ブ リ ッジ 回路 と波 形 を示 す.図(a)で,デ
バ イ スQ1とQ2,
Q3とQ4を
任 意 の 周 波 数 に て 交 互 に180゜ の 期 間 で オ ン さ せ て
負 荷 に方 形 波 状 の 交 流 電 流 を流 す.負 荷 に並 列 の コ ンデ ンサ は,転 流 コ ン デ ンサ と して デバ イ ス の転 流 動 作 を行 う. Q3,
Q4が
通 電 し て い る と き, Q1,
Q2を
オ ン さ せ る と, Q3,
の 端 子 電 圧 で 逆 バ イ ア ス さ れ て 瞬 時 に タ ー ン ォ フ し,電
Q4は
コ ンデ ンサ
流 の 方 向 が 反 転 す る.負
(a)回
路
(b)波
形
図5・44 単 相電 流 形方 形 波 フル プ リ ッジ 回路
荷 電 流 の 方 向 が 切 り換 わ るた び に コ ンデ ン サ にパ ル ス 状 の 電 流icが 流 れ,誘
導
負 荷 に は そ の 端 子 電 圧 よ り遅 れ た 電 流i〓が 流 れ る.抵 抗 負 荷 の と き の 出 力 電 圧 は電 流 波 形 と同 じ方 形 状 とな る が,誘
導 負 荷 で は正 弦 波 状 に な る.電 圧 波 形 の
Tqの 時 間 は デバ イ ス が 逆 バ イ ア ス され て い る期 間 で,通 常 の サ イ リス タ を使 う と き は,サ イ リス タ の タ ー ン オ フ 時 間 はTqよ ⅱ)三
り十 分 小 さ くな けれ ば な らな い.
相 回 路 図5・45(a)に サ イ リス タ に直 列 に ダ イ オ ー ドを,ま た線 間 に
転 流 コ ン デ ンサ を接 続 した 三 相 ブ リ ッ ジ回 路 を 示 す.こ
の ダ イ オ ー ドは,コ
ンデ
ンサ の充 電 電 荷 が 失 わ れ る の を防 ぎ,サ イ リス タ の 転 流 を確 実 に す る た め で あ る.図(b)は
ゲ ー トタ ー ンオ フ サ イ リス タ を用 い た 回 路 で あ る.
出 力 電 流 す な わ ち直 流 電 流 の制 御 は順 変 換 回 路(図 で は示 して いな い)の 位 相 制 御 で 行 う.出 力 の周 波 数 はゲ ー ト制 御 回 路 で定 ま る. 各 デ バ イ ス に 流 れ る電 流 波 形 は,三 相 均 一 ブ リ ッ ジ と 同 じ く ピ ー ク値Id, 120゜通 電 の 方 形 波 で,出 力 電 流(基 本 波 実 効 値)I〓 と直 流 電 流Idの な る.()は
交+直 電 流 変 換 係 数 で あ る.図(c)に
波 形 を示 す.
関係 は 次 式 と
(a) 直 列 ダ イ オ ー ド付 イ ン バ ー タ 回 路
(c) 図(b)の 波 形(誘 (b) ゲ ー ト タ-ン
導 負 荷)
オ フサ イ リス タ回路
図5・45 三 相電 流 形 方 形波 逆 変換 回路
(5・35)
直 流 電 流 の 流 れ る 方 向 が 変 わ らな い か ら,順 変 換 側 の制 御 角 α を90° 以 上 に し て 逆 変 換 動 作 を させ れ ば,直
流電 力 を商 用 交 流 系 統 に変 換 で き る.
電 圧 形 イ ン バ ー タ と 電 流 形 イ ン バ ー タ の 比 較 を5・2・3項
の 表5・4に
示 して あ
る.
5・4・3 パ ル ス に よ る 電 力 制 御 回 路 自 己 オ ン ・オ フ機 能 を もつ デ バ イ ス の 歴 史 を み る と,1960年
代 に電 力用 ダー
リン トン トラ ン ジ ス タ が 電 動 機 速 度 制 御 に 実 用 され た の を初 め と して,1970年 代 半 ばか らゲ ー トタ ー ンオ フ サ イ リス タ の 高電 圧,大 電 流 化 は飛 躍 的 に発 展 し, 応 用 が 広 が っ た.こ 速 度 の改 善,高
れ と同 時 に,MOSFET,IGBTが
開発 さ れ,ス
イ ッチ ン グ
電 圧 ・大 電 流 化 が 進 ん だ.
これ らの デ バ イ ス の 応 用 分 野 は図4・27の よ うで あ る.こ れ らデ バ イ ス の発 展 の 背 景 に は,次
に述 べ る 「パ ル ス に よ る電 力制 御 」 の 特 徴 が 認 め られ,応
らの 強 い ニ ー ズ が あ った た め と言 え る.こ の よ う な技 術 の 動 向 は,あ
用側か
た か もオ ー
デ オ ・ビ デ オ機 器,通 信 ・情 報 機 器 の信 号 処 理 が ア ナ ロ グ式 か ら デ ジ タル 式 に 移 行 した の と よ く似 て い る と言 え よ う. パ ル ス に よる 電 力 制 御 の 特 徴 は,次 ①
直 流 直 接 変 換(チ
ョ ッパ)回
の よ う に な る.
路 で,パ
ル ス幅(PWM)制
御 に よ り出 力 直
流 電 圧 を直 流 電 源 電 圧 よ り昇 圧,降 圧 で き る.(5・3・1項 参 照) ②
直 流 間 接 変換 回 路 で,パ
ル ス に よ る高 周 波 交 流 電 圧 を介 在 させ るた め電 圧
の 変 換 が 容 易 で,装 置 を小 型 ・軽 量,高 ③
効 率 化 で き る.(5・3・2項 参 照)
電 圧 形 イ ンバ ー タ の 変 換 回路 をパ ル ス 制 御 す る こ とに よ り,出 力 側 の 電 力 を 電 源 側 に 回 生 で き る.
④
通 常 の順 変 換 回 路 で は,交 流 電 源 波 形 に対 す る ゲ ー ト位 相 に よ っ て 直 流 出 力 電 圧 を(ア ナ ロ グ 的)に 制 御 す るが,電 化 す る.パ ル ス で(デ
圧 と電 流 の 位 相 差 で あ る力 率 も変
ジ タル 的)に 制 御 す る と力 率 1を保 ち な が ら電 圧 を制
御 で き る. ⑤
出 力 側 の電 圧 ・電 流 波 形 はパ ル ス の集 合 で 形 成 され て い る た め,電
圧,電
流 波 形 を正 弦 波 に近 似 させ る た め の 高 調 波 フ ィル タ が 必 要 で あ る. (1)パ
ル ス 制 御 と イ ンバ ー タ 出 力 電 圧 ・電 流 波 形
流 を 制 御 す る場 合,チ 5・46に 示 す.一
(a)PAM方
ョ ッパ 回 路 と同 様,次
般 にPWM方
式
パ ル ス に よ っ て電 圧,電
の 方 式 が あ る.そ
の波形 の例 を図
式 が 使 わ れ て い る.
(b)PWM方
式
(c)PFM方
式
図5・46 変 調 方式 と電圧 ・電 流 波 形(近 似 的 な交 流 出 力電 圧(半 波)を 示 す)
①
パ ル ス 振 幅 変 調(PAM;PulseAmplitudeModulation)
②
パ ル ス 幅 変 調(PWM;Pulse
Width
Modulation):単
一パ ルス または多パ
ルス幅 の変調 ③
パ ル ス 周 波 数 変(PFM;Pulse
Frequency
Modulation):オ
ン時 間 一 定
また は オ フ時 間 一 定 制 御 例 え ば,PWM方 ン,オ
式 で 正 弦 半 波 を 形 成 す る た め に は,所 定 の タ イ ミ ン グ で オ
フ の信 号 を デバ イ ス に 与 え て ス イ ッ チ動 作 させ,電
力 をパ ル ス化 す る.
タ イ ミン グ を決 め る た め,制 御 回路 内 で 変 調 波(希 望 す る 出 力 の 正 弦 波 形)と 三 角 波 状 の 搬 送 波 を発 生 さ せ,両 波 の二 つ の 交 点 間 で 変 調 波 の ほ う の振 幅 が 高 い期 間 の とき に デ バ イ ス を オ ン状 態 に す る.PWM方
式 に よ る 波 形 の形 成 の 例 を 図
5・47に 示 す.
(a)変 調 原 理
(b)PWM波
形
図5・47PWMに
よ る波 形 の 形成
(2) 自 励 式 電 圧 形 イ ンバ ー タ で 電 力 を 可 逆 制 御 さ せ る方 法 (6)で,電
圧 形 イ ンバ ー タ で は,電 力 の 可 逆 制 御 の た め に は直 流 回路 に逆 変 換 回
路 を接 続 す る必 要 が あ る こ とを述 べ た.こ た め で,電
5・2・3項の
れ は 直 流 電 圧 の 極 性 が 固定 され て い る
力 の 可 逆 制 御 に は直 流 電 流 の 方 向 を 可 逆 に し な けれ ば な らな い.
チ ョ ッパ の 原 理 とPWM制
御 を電 圧 形 イ ンバ ー タ の 順 変 換 側 デ バ イ ス に 応 用
す る と,逆 変 換 回 路 の付 加 を必 要 とせ ず に電 力 の 可 逆 制 御 が で き る. 図5・48に,電
力 の 可 逆 制 御 を説 明 す る た め の 単 相 ブ リ ッ ジ電 圧 形 イ ンバ ー タ
図
を示 す.電
自励 式 四象 限電 圧 形 イ ンバ ー タ
5・48
力 は,交 流 電 源Vsか
コ ン デ ンサCdを
整 流 し,直 流
充 電 す る.直 流 電 力 は,変 換 回 路 B の デ バ イ スQbで
て 負荷 B に 交 流 電 力 を 流 す.各 か,あ
ら変 換 回路 A の ダ イ オ ー ドDaで
逆 変換 し
デバ イ ス に ダ イ オ ー ドを逆 並 列 に接 続 して お く
る い は 逆 導 通 ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ を使 用 す る.
負 荷 の 交 流 電 力 を 回 生 す る 場 合,変 し,直 流 コ ン デ ン サCdを は,直 流 電 圧Vdを
換 回 路 B の ダ イ オ ー ドDbで
直 流 に変換
充 電 す る.こ の 直 流 電 力 を 交 流 電 源 側 に 変 換 す る に
交 流 電 源 電 圧Vsよ
り も高 くす れ ば よ い.こ
の た め,交 流 電
源 に イ ン ダ ク タ ン スLsを
接 続 し て,「 交 流 電 源 → イ ン ダ ク タ ン スLs→
スQa→
ダ イ オ ー ドDa」 の 回路 で 昇 圧 チ ョ ッパ 回 路 を形 成 し,
コ ン デ ン サCd→
QaをPWM制
御 し て コ ン デ ン サ 電 圧Vdを
√2Vsよ
デバ イ
り高 め る(昇 圧 チ ョ ッパ の
動 作 は5・3・1頃 の(2)参 照). この コ ン デ ン サ を電 源 と し て デ バ イ スQaをPWM制 瞬 時 値 よ り高 く,か つ,Qaが こ の 回 路 構 成(三
御 す れ ば,VdがVsの
相)とPWM制
オ ンの 期 間 の と きに 交 流 電 源 側 に電 力 が 流 れ る. 御 方 式 は 高 速 鉄 道 用 電 動 機 の 正 ・逆 転,回
生 力 行 の速 度 制 御 に応 用 さ れ て お り,自 励 式 四 象 限 電 圧 形 イ ンバ ー タ と い う. (3)PWM方 圧,力
式 に よ る 力 率 の 制 御5・2・3項
の(4)で,制
御 角 と直 流 電
率 の 関 係 を説 明 した.こ れ は,電 源 転 流 に よ る電 圧 と電 流 の ア ナ ロ グ 的 な
位 相 関係 に よ り,制 御 角0゜ の と き は力 率 は1,90゜
の と き は 0 とな る.
図5・49(a)の 自己 オ ン ・オ フ機 能 の あ る デ バ イ ス を用 い た 単 相 均 一 ブ リ ッ ジ 順 変 換 回路 で,図(b)の
ように電気 角 α
で デ バ イ ス をオ ン さ せ,正 弦 波 の 中 心 線 を対 称 と し て π-α で オ フ さ せ る と,出 力直 流 電 圧 は制 御 され る が,電 流 は常 に 電 圧 と同 相 の た め力 率=1を
(a)
回路構成
維 持 で き る.
従 っ て,遅 れ 電 力 は必 要 と し な い. デ バ イ ス をPWM制
御 す れ ば,波
形
は 図(c)の よ う に な り,同 様 に電 圧 と電 流 は同 相 と な っ て,力 率=1を
(b) 対称 ゲ ー ト幅 制 御
維持でき
る.こ の よ う な動 作 を させ る と,直 流 電 圧 お よび 交 流 電 流 の 高 調 波 成 分 が 増 加 す るの で,直 流 側,交 流 側 に フ ィル タが 必 要 で あ る.こ の 方 式 は,逆 変 換 回路 で も 動 作 で き る の で,制 御 進 み 角 と所 要 進 み
(c)
多パ ル ス幅PWM変
図
5・49
調制御
パ ル ス制 御 に よ る 力率
電 力 の 関 係 は な く,進 み電 力 は必 要 と し な い.
5
・
回路に関する諸事項
5
高調波
5 5 1 ・
・
自己 オ ン お よび オ フ機 能 を もつ デ バ イ ス は,電 力 損 失 の小 さ い電 子 的 超 多頻 度 ス イ ッチ で あ り,そ の 動 作 は極 め て 早 く μs∼nsの オ ー ダ ー で あ る.回 路 に デ バ イ ス を接 続 して動 作 させ る と,負 荷 に は電 源 波 形 の 一 部 が 断 片 的 に加 わ る た め 高 調 波 を 含 む 波 形 とな り,か つ,オ 一般 に
,電 圧,電
ン,オ
フ時 に過 渡 振 動 電 圧 を発 生 す る.
流 の 瞬 時 値 を数 式 で 表 し,そ れ を フー リエ 展 開 す る こ と に よ
り基 本 波 と高 調 波 を 求 め る こ と が で き る. (1)
順 ・逆 変換 回路 の直 流 高 調 波
変 換 回 路 の 直 流 出 力 電 圧 お よび 交 流 電 流 に含 まれ る 高調 波 は,変 換 回 路 の相 数 と制 御 角 に よ っ て 定 まる.順 変 換 回路 で は,制 御 角 αの 増 加 と と も に 直 流 電 圧 波 形 は 振 幅 の 大 き い 鋸 歯 状 と な り,a =90゜ で最 大 とな る. 高 調 波 の 次
数n は 整 数 1,2,3,… を
図
k,直 流 回 路 の パ ル ス 数 を p と し て,
5・50
制御 角 と高調 波 の関 係
n=kp±1
(5・36)
重 な り角 を無 視 し,基 本 波 の 実 効 値 を V〓,第 n次 高 調 波 の それ をVnと
す れ ば, (5・37)
の 関 係 が あ る.例
え ば,三
相 均 一 ブ リ ッ ジ 回 路 はp=6で
圧 波 形 に 含 ま れ る 高 調 波 は,基 11次,第13次
… と な る.各
1/7,1/11,1/13…
と な る.す
本 波V1の
ほ か,第
5 次 のV5,第
次 数 の 高 調 波 の 実 効 値 は,基 な わ ち,変
あ る か ら,出
力直流 電
7 次 のV7,第
本 波 実 効 値V1の1/5,
換 回路 の直 流 側 パ ル ス 数 pを増 す ほ ど
高 調 波(実 効 値)は 大 幅 に 減 少 す る.
無 負荷 無 制 御 直 流 電 圧 をVd0,直
流 電 圧 の 最 高 値(瞬 時 値)と 最 低 値 の差 を ⊿V
とす る と,脈 動 率 は (5・38) と な る.
交 流電 流 波 形 の 高 調 波 は,電 流 波 形 を 方 形 状,階 に な る.図(a)は,方
段 状 と し て,図5・51の
よう
形 波 の 通 電 幅 に対 す る 基 本 波 と高 調 波 の 実 効 値 の比 を 示
(a)
方形 波 の通 電 幅 と高 調 波の 関 係
(b) 波 形 と計 算式
図
す.図(b)は,波
5・51
波 形,基 本 波,高 調 波の 関 係
高 値 を 定 数 A で 表 して い るの で,電
用 で き る.転 流 リア ク タ ンス の 増 加,す
圧 に も,ま
た 電 流 に も適
な わ ち重 な り角 の 増 加 と と もに 波 形 は丸
味 を帯 び るた め,直 流 電 圧 お よ び 交 流 電 流 波 形 に含 まれ る高 調 波 の 実 効 値 は減 少 す る. 変 換 装 置 の制 御 上,直
流 電 流 は軽 負荷 で も連 続 して い る こ とが 望 ま しい.
高 調 波 を含 む直 流 電 圧 に対 し て直 流 電 流 を連 続 す るた め に必 要 な直 流 リア ク ト
図
5・52
制 御 角 とf(a)の
関係
ル の イ ン ダ ク タ ン ス L は,制 御 角 αの 関 数 を 図5・52のf(a) 線 間 電 圧(実 効 値)(三 相 半 波 で は相 電 圧(実 効 値))Vs,連
,電 源 周 波 数 を f,
続 と な るた め の 直 流 電
流Idは, (5・39)
逆 変 換 領 域 で は,波 形 的 に対 称 な の で,上 述 した 図,式 (2)
交流電 力調整回路 の高 調波
荷 の場 合,高
5・2・1項 で 説 明 し た 単 相 回 路 で,抵
5・53
抗 負
調 波 次 数 を n と して,制 御 角 α と電 圧 波 形 の 高 調 波 の 関 係 は,図
図 図
が 適 用 で き る.
交 流電 力 調整 回路 の高 調 波
5・54
多相 チ ョ ッパ の 相数 と 出 力電 流 に含 まれ る高 調 波分 の 比
5・53と
な る.
次 数 は,基 =1 ,す
本 波 をn=1と
し て,n=3,5,7,9
… の 奇 数 が 存 在 す る.α=0°
でn
な わ ち 基 本 波(実 効 値)は 電 源 の 交 流 電 圧(実 効 値)と 等 し い.
(3)チ
ョ ッパ 回 路 の 出力 電 流 高 調 波
フ 期 間 をToff, はm=1,二
Ton/(Ton+Toff)を
相 で は 2,三
流 通 率 α,チ
相 で は 3),電
の 比 を リ ッ プ ル 率 と し た と き,流 5・54に 示 す.リ
チ ョ ッパ 回 路 で オ ン 期 間 をTon,オ ョ ッ パ の 相 数 を m(単 相 の と き
流 平 均 値 に対 す る 高 調 波 電 流 の 脈 動 幅
通 率 α と リ ッ プ ル 率 の 比(m=1を
基 準)を
図
ッ プ ル 率 の 最 大 値 は 相 数 に 逆 比 例 し て 減 少 す る.
相 数 を増 す ほ ど直 流 リア ク トル は小 さ くて す む. (4)自
励 式 電 圧 形,電 流 形 イ ンバ ー タ の 高 調 波
この 回 路 は,5・4・2項 で
述 べ た よ う に,電 圧 形 で は 出 力 電 圧 は方 形 波 とな り,電 流 形 で は 出力 電 流 は方 形 波 とな る.負 荷 が 抵 抗 で あ れ ば,前 者 の電 流 お よ び後 者 の 電 圧 も方 形 波 と な る. また,負 荷 が誘 導 性 で あ れ ば,前 者 の電 流 お よ び後 者 の 電 圧 は 正 弦 波 状 に な る. 方 形 波 に含 まれ る高 調 波 は,図5・51に (5)他
示 した.
励 式逆変 換回路 の高調波
に接 続 され て い るの で,出
この 回 路 は,出 力 側 が 商 用 交 流 電 力 系 統
力 電 圧 は交 流 系 統 の 正 弦 電 圧 波 形 と な る.逆 変 換 回 路
の 直 流 側 に 直 流 リア ク トル が あ れ ば 出力 電 流 は方 形 状 とな る が,こ
の 波 形 に含 ま
れ る高 調 波 は交 流 系 統 に 吸収 され る. (6)PWMイ
ン バ ー タの 高 調 波 期 間 π の 半 サ イ クル の 間 に 複 数 回 オ ン ・
オ フ して通 電 幅 を制 御 して 電 圧 また は電 流 の 実 効 値 を制 御 す る.波 形 が 複 雑 の た め高 調 波 の 計 算 は容 易 で は な い. 例 と し て,半
サ イ ク ル の 期 間 に 1,3,5パ ル ス の オ ン 期 間 を も つ 櫛 状 波 形 と高 調
波 の 計 算 式 を 図5・55に
示 す.こ
の 式 の 右 辺 の 第 1項 は 正 弦 波 の 振 幅 を 示 し,第
2項 は 位 相 を 示 す.こ
の 式 か ら,例
去 す る た め に はn=5と
し,[]内
い.1
パ ル ス の と き は,図5・51の
第 3次 高 調 波 は な く な る が,第
え ば 5パ ル ス のPWMで
第 5次 高 調 波 を 消
を 0 と す る た め の α1と α2を 設 定 す れ ば よ よ う に,パ 5次,第
ル ス 幅120°
にすれ ば振幅 の大 きい
7次 高 調 波 は 残 る.
図5・55PWMイ
5・
5・ 2
ン バー タの高 調 波
高 調 波 フ ィル タ
高 調 波 フ ィル タ を設 計 す る 前 に,経 済 性 が 許 さ れ る限 り回路 の 相 数 を増 す か, 動作 周 波 数 を高 くす るか,PWMの
α1 α2を制 御 して 高 調 波 の 次 数 を 高 め る必 要
が あ る.次 数 を高 くす る ほ ど周 波 数 は高 く,そ の振 幅 は小 さ くな るの で フ ィル タ を小 型 ・軽 量 化,経 (1)
済 的 にで き る.
直流 回 路 の フ ィル タ
通 常,図5・56の
よ う に,イ
ンダ クタ ンス L と
キ ャパ シ タ ンス C の 逆 L 形 フ ィル タで 高 調 波 を低 減 させ る. 直 流 電 圧 の基 本 高 調 波 周 波 数 をパ ラ メ ー タ と して,リ
ップル減衰 率 と L と C
の 積 の 関 係 は同 図 の よ う に な る。 さ ら に,リ
ッ プル を 減 ら した い 場 合 は,フ
大 き くす る ほ ど リ ップ ル は低 減 す るが,直
ィル タ を多 段 直 列 に す る.L,C
を
流 短 絡 事 故 の 際 の エ ネ ル ギ ー の 処 理,
お よび 直 流 出 力 の速 応 制 御 性 に 問題 が 出 る。
図5・56
(2)
直 流 回 路 用 フ ィル タ
交 流 回 路 の フ ィル タ 低 減 させ よ う とす る 高 調 波 周 波 数 に 同 調 さ せ た
L,C の 共 振 回 路 を星 形 また は三 角 結 線 し た三 相 フ ィル タ を交 流 系 統 に接 続 す る. 三 相 ブ リ ッジ 回 路 の場 合 は,図5・57の
よ う に,第
5,第
7,第11,第13次
用
の 三 相 フ ィル タ群 を交 流 系 統 に接 続 す る.こ の フ ィ ル タ 用 コ ン デ ンサ は順 変 換 運 転 時 の 遅 れ 力 率 改 善 用 と して,ま
た逆 変 換 運 転 時 の 進 み電 力 供 給 源 と して 作 用 す
る.
図5・57交
流 回 路 用 フ ィル タ
5・5・3転 流 時 の過 渡 振 動 電 圧 の 抑 制 デ バ イ ス が 転 流 す る際,デ び転 流 回路(主
バ イ ス の蓄 積 キ ャ リア の 減 衰 過 程 の 時 間 的 変 化 お よ
と して 変 圧 器)の 転 流 す る相 の イ ンダ ク タ ン ス とそ の ス トレ ー キ
ャパ シ タ ンス に よ り過 渡 振 動 電 圧 を発 生 す る. こ の振 動 電 圧 の ピー ク が デ バ イ ス の 非繰 返 し ピー ク逆 電 圧 を超 え る と特 性 の 劣 化 を招 き,ま た 誘 導 障 害 の 発 生 源 とな るの で 抑 制 す る必 要 が あ る.こ の た め,デ バ イ ス に並 列 に コ ン デ ン サ C と抵 抗 R か らな る 図5・58の ス ナ バ 回 路(4・2・2項 参 照)を 接 続 す る.ス ナ バ 回 路 の C は順 変 換 回 路 の構 成 に した が い 1サ イ ク ル 中 に複 数 回 充 ・放 電 す る の で,電 力 損 失 を軽 減 す るた め に で き るだ け小 さ い値 を選 ぶ.
図5・58ス
ナ バ 回 路 と波 形
三 相 均 一 ブ リ ッ ジ 回路 を例 に と り,変 圧 器 直 流 巻 線 の 一 相 当 た りの イ ンダ ク タ ンス をLp,転
流 す る相 の 間 の ス トレー キ ャパ シ タ ン ス をCs,お
よ び等 価 制 動 抵
抗 を γ,各 デ バ イ ス に 並 列 の ス ナバ 回 路 の コ ン デ ンサ と抵 抗 をCAK,RAKと ば,ブ
リ ッ ジ 回路 の デ バ イ スD1が
見 た 等 価 回路 は図5・59と な る.
すれ
オ フ し た 瞬 間 の 陽 極-陰 極 端 子 か ら電 源 側 を
(a)オ
(b)図(a)の
フ直 後 の 回路
図5・59ス
(c)等 価 回路
単純 化 回路
ナ バ 回路 の 設計 法 の例(三 相 ブ リッジ 回路)
図(c)の 等 価 回 路 で,Co,Roを
接 続 す る こ とに よっ て端 子A-K問
の 電 圧 を非
振 動 とす る た め の 条 件 は,
と な る.こ CAKは
の 条 件 は,CAKお
よ びRAKを
求 め る 一 つ の 手 法 で あ っ て,例
使 用 す る デ バ イ ス の 蓄 積 キ ャ リ ヤQrrの
変 換 回 路 で は,CAK=0.01∼0.5〔
値 を 考 慮 し て 定 め る.通
え ば,
μF〕,RAK=10∼100〔
常 の順
Ω〕の 範 囲 で あ る.
5・5・4 事 故 電 流
変 換 回 路 の 設計 の 際,予
想 され る事 故 を想 定 して 保 護 策 を と り,デ バ イ ス を選
択 し な けれ ば な ら な い.三 相 均 一 ブ リ ッジ順 変 換 回 路 を例 に と り,事 故 電 流 と保 護 対 策 を考 え る. (1)直
流短 絡電流
図5・60(a)の
ブ リ ッ ジ 回 路 で,交
交 流 側 に 等 価 的 に 集 中 し た 一 相 当 た り の 抵 抗 をR〓,リ
流 線 間 電 圧 をV〓,
ア ク タ ン ス をX〓
と し
制 御 角 α=0° の と き の 直 流 短 絡 電 流(こ の と き が 電 流 は 最 も 大 き い)波 形 は,図 (b),(c)と
な る.当
然 の こ と な が らR〓 が 小 さ く,従
ど事 故 電 流 の ピ ー ク値 は 大 き い.事
っ て,X〓/R〓
が大 きいほ
故 時 に 通 電 中 の サ イ リ ス タ に は 図(c)の
電流
(a) 回 路
(b) 直 流 電 流id
(c) サ イ リ ス タ電 流ia
図5・60 直 流短 絡 時 の事 故 電 流 (図(b),(c)の
波 形 は,直
流 回路 の イ ン
ダ ク タ ン ス と抵 抗 が な い と き を 示 す 。)
が 流 れ るの で,サ
イ リス タ の 定 格 サ ー ジオ ン電 流 は この 電 流 に対 して 十 分 余 裕 が
な け れ ば な らな い. (2)
サ イ リス タの電 圧 阻止機 能 の喪 失
図5・61(a)の
回 路 で,サ
イ リス
タ 3が オ ン状 態 に な っ た と き に サ イ リス タ 1が 電 圧 阻 止 機 能 を失 っ て 導 通 状 態 に な る と(こ の と き が 電 流 は最 も大 き い),交 タ 3,5 に短 絡 電 流 が 流 れ る.図(b)に (3)
流 線 間 短 絡 とな っ て健 全 な サ イ リス
そ の 電 流 波 形 を示 す.
サ イ リス タ変換装 置の事故 電流保護対 策
変 換装置 の外部 お よび内部
回路 の 事 故 に対 し て過 電 流 検 出 に よ るゲ ー ト遮 断,電 源 交 流 遮 断 器 の 開 放 あ るい は高 速 限 流 ヒ ュー ズ に よ り事 故 電 流 を速 や か に遮 断 し,続 流 を 阻 止 す る.過 電 流 に対 す る保 護 強 調 の例 を図5・62に 示 す. サ イ リス タ につ い て の 限 界 曲 線 は,長
時間 通電 に よる許容 接合 部温 度 特性 −
A,定 格 非 繰 返 しサ ー ジオ ン電 流 − B,I2t特
性 −C が あ る.
(a)回
路
(b)
図5・61サ
図5・62保
護 強 調 曲線
事 故 電 流 が これ ら の 曲線 以 内 に な る よ うに,大 ュ ー ズ で,低 る:
波形
イ リス タ電圧 阻止 機能 の 喪 失時 の 事 故電 流
き な事 故 電 流 に対 して は 高 速 ヒ
い過 電 流 に対 し て は ゲ ー ト遮 断 お よび 遮 断 器 の 動 作 で 多 重 に保 護 す
演 〔 問 題 〕 1.電
習 問
源 側 が 交 流 お よ び 直 流,負
題
〔5 〕
荷 側 が 交 流 お よ び直 流 の と き,電
力 変換 回路
と して どの よ う な組 合 せ が あ る か?
〔 問 題 〕 2.順
変 換 回 路 に つ い て,制
御 角 α と直 流 出 力 電 圧(平
cosα の 項 が 入 っ て くる の か?
例 と して,三
な く,直 流 電 流 は 平 坦 と して,直
流 電 圧(平
均 値)の
関係 に な ぜ
相 星 形 順 変 換 回 路 で,重 均 値)を
な り角 は
求 め る式 と αが30° の と き
の 各 部 の 波 形 を示 せ.
〔 問 題 〕 3.三
相 均 一 ブ リ ッ ジ 回 路 で,制
力 電 力Pacと 角=0,重
御 角 α=0,重
直 流 出 力 側 電 力 の 比 が1.05で な り角u=0,回
路 の 抵 抗 損 失,デ
な り角u=0の
と き,交 流 側 入
あ る こ と を 説 明 せ よ.た
だ し,制
御
バ イ ス の オ ン損 失 は無 視 す る.
〔 問題 〕 4.他 励 自制 式 と自励 他制 式 逆 変換 の回路 構 成 お よび運 転 特性 の差 異 な ら び に 応 用 例 を 述 べ よ.
〔 問 題 〕 5.電
圧 形 イ ンバ ー タ と電 流 形 イ ンバ ー タ の 差 異,特
〔 問 題 〕 6.二
象 限 チ ョ ッパ,四
徴 を述 べ よ.
象 限 チ ョ ッパ と は 何 か?
〔 問題 〕 7.直 流 間接 変換 回路 で,中 間 の交 流 の周 波数 を高 くす る理 由 は何 か?
〔 問 題 〕 8.パ
ル ス に よ る 電 力 変 換 の 特 徴 を述 べ,パ
制 御 方 式 を述 べ よ.
ル ス に よ る ゲ ー トま た は べ ー ス の
第 6章
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 応 用(
そ の 1)
−電力 への応用 −
パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス の 応 用 分 野 は 多 岐 にわ た っ て い て 明 解 に分 類 す る こ と は困 難 で あ るが,あ
えて 大 別 す る と 「電 力 へ の 応 用 」 と 「回転 機 へ の 応 用 」 とな
り,そ の 大 分 類 は表6・1の よ う に な る.特 に,電 動 機 へ の 応 用 は,重 工 業 ・一 般 産 業 用,交
通 ・輸 送 機 器 用 か ら家 電 機 器 用 な ど,極 め て 広 い.
表6・1パ
ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 応 用 分 野 の 分 類 の 例
この第 6章 で は 「電 力 へ の 応 用 」 を,次 の 第 7章 で は 「電 動 機 へ の 応 用 」 に つ き代 表 例 につ い て 説 明 す る.
6
・
1
交流-交 流変換(交 流 間接 変換)
こ こで,わ
が 国 の送 ・配 電 お よ び 電 力 応 用 の歴 史 を概 説 す る と,次 の よ う に な
る.
1770年
代,電
1869年,電
気 に 関 す る 知 識 は オ ラ ン ダ か ら 伝 わ っ た と さ れ て い る.
気 の最 初 の 応 用 は電 灯 で は な く,輸 入 電 信 機 に よ る 東 京-横 浜 間 の
電 信 回 線 が 開 通 し た. 1878年,東
京,虎
反 響 を 呼 ん だ.こ
1886年,東
の 門 で 初 め て 直 流 電 源 に よ り ア ー ク 灯 が 点 灯 さ れ,大
の 日,3
月25日
きな
は 電 気 記 念 日 に な っ た.
京 電 燈 会 社 が電 灯 電 力 と して 直 流 式 の 発 ・送 電 で 営 業 を開 始 し た.
す な わ ち,最 初 の発 電,送 1890年,浅
・配 電 は直 流 式 で あ った.
草 凌 雲 閣(12階)で,直
流 電 動機 に よ るエ レベ ー タ運 転 が 始 ま っ
た.短 期 間 で 運 転 が 中 止 さ れ た が,最 初 の 動 力 へ の応 用 で あ っ た. 同 年,上 野 公 園 の博 覧 会 で 特 設 の遊 覧軌 道 で 電 車 を運 転 し た.最 初 の 交通 へ の 応 用 で あ った. 1891年,京
都,蹴
上 水 力 発 電 所 で,60Hzほ
か複 数 の周波 数 の発 電機 に よる
交 流 式 発 ・送 電 が 始 ま っ た.本 格 的 な 水 力 発 電 所 で あ った. 1897年,東
京 電 燈 は,浅 草 火 力 発 電 所 に ドイ ツ製50Hz発
た た め,東 京 地 区 を中 心 に50Hz電 同 年,大
化 地 域 が広 ま った.
阪 電 燈 会 社 は,幸 町 発 電 所 に ア メ リカ 製60Hz発
た た め,大 阪 ・京 都 地 区 を中 心 に60Hz電 今 か ら100年 本 は60Hzに
1923年,関
前,こ
電機 を多数 設 置 し
電 機 を多 数設 置 し
化 地 域 が 広 まっ た.
の 二 つ の 地 区 の 独 自 の 電 化 に よ っ て 東 日 本 は50Hz,西
日
2分 割 さ れ る 原 因 と な っ た.
東 大 震 災 後,東 京 電 燈 に残 っ て い た 直 流 式 送 ・配 電 は す べ て 交 流
式 に な っ た. 終 戦 当 時 の 地 方 に は 周 波 数 の異 な る小 地 域 が 混 在 し て い た が,徐
々 にその地方
の周 波 数 に統 一 さ れ,現 在 の よ う に本 州 中部 の 富 士 川 を境 と して 東 側 が50Hz, 西 側 が60Hzの
二 大 系 統 が 一 つ の 国 に存 在 す る とい う世 界 に例 を 見 な い 電 力 送 ・
配 電 系統 と な っ た.
6・1・1
周波 数 変換 用 サ イ リス タ変 換 装 置
戦 後 の1950年 が,こ
代 後 半 か ら,日 本 は 本 格 的 復 興 期 に 入 り,電 力 需 要 が 急 増 し た
の 時 代 で は50Hz-60Hz系
統 を結 ぶ 大 容 量 の 周 波 数 変 換 技 術 は な か っ た .
1964年 に 開 業 した 東 海 道 新 幹 線 の 架 線 電 圧 は 単 相 交 流25kVと
した が,電
は50Hz,60Hz地
「三 相 同 期 電
区 を 通 過 す るた め,横 浜 市 綱 島 に60MVAの
動 機-三 相 同 期 発 電 機 」 3セ ッ トか ら な る180MVAの
回転 機 周 波 数 変 換 装 置 を
設 置 し,単 相 変 換 して 現 在 も東 京 駅 まで 全 線 を60Hzで 1965年,静 300MW(直
車
電 化 して い る.
岡 県 佐 久 間 に ス エ ー デ ンか ら輸 入 した 高 電 圧 水 銀 整 流 器 を 用 い た 流 ±125kV)の
この 主 回 路 構 成 は,第
本 格 的 周 波 数 変 換 設 備 が 運 転 に入 っ た .
5章 の5・2・3項 で 解 説 した 「他 励 自制 式 電 流 形 交 流 間 接
変 換 」 で あ る.こ の設 備 は,水 銀整 流 器 の た め逆 弧 な どの水 銀 ア ー ク特 有 の現 象 が あ っ た が,そ は,1970年
の 運 転 実 績 か ら多 くの 技 術 的 知 見 を 得 た .こ れ らの 知 識,経
代 後 半 以 降,50Hz-60Hz周
験
波 数 変 換 用 お よ び直 流 送 電 用 の 大 電 力
サ イ リス タ変 換 設 備 の計 画,設 計 な らび に建 設 に大 い に役 に立 っ た . 現 在,国
内各 所 で 大 電 力 周 波 数 変 換 設 備 が 運 転 さ れ て い るが,そ
て は文 献 な どで紹 介 され て い るの で,こ
の詳細 につ い
こ で は 国 内 で の運 転 中 お よび建 設 中 の サ
イ リス タ 変 換 装 置 の概 要 を説 明 す る. (1)新
信 濃 サ イ リス タ周 波 数 変 換 所(第
50Hz系
統 と60Hz系
1期,第
2期 合 計600MW)(1),(2),(3),(4)
統 の 境 界 に 近 い 長 野 県 塩 尻 地 区 に,東 京 電 力(株),中
部 電 力(株)が 両 系 統 の連 系 を 目的 と し て,高 電 圧 大 電 流 サ イ リス タ を使 用 した 第 1期(150MW×2;1977年),お (300MW;1993年)設
よ び 光 ト リ ガ サ イ リ ス タ を 用 い た 第 2期
備 が建 設 さ れ,最 大600MWの
周 波数変換 設備 が運転 し
て い る.こ の主 回路 構 成 は,前 述 し た 「他 励 自制 式 電 流形 交 流 間 接 変 換 」 で あ っ て,直 流 回 路 は変 換 所 内 の た め極 め て短 い . 主 回 路 を 図6・1に,そ
(a)電 の275kV系
力 系 統50Hz側
の 概 要 を 表6・2に
示 す.
は東 京 電 力 の275kV系
統 に,60Hz側
は中部 電力
統 に結 ば れ て い る.交 流 側 に は,進 相 無 効 電 力 源 お よ び電 流 高 調 波
(a)主 回 路
(b)サ
図6・1新
イ リ ス タバ ル ブ
信 濃サ イ リス タ周 波数 変 換 設備(第 1期,第
2期)の
主 回路 とサ イ リスタバ ル ブ(資料 提 供;東 京 電 力㈱,㈱ 東 芝)
表6・2新
(資 料 提供;東
信 濃 サ イ リス タ周 波 数 変換 設 備,第
京 電 力(株),(株)東
1期,第
2期 の 比 較
芝)
抑 制 用 と して コ ン デ ン サ バ ン ク と高 調 波 フ ィル タ群 が 接 続 され て い る. (b)電
力制 御 変 換 電 力 量 とそ の 方 向,お
よ び どち らか の 交 流 系 統 が 何 らか
の 原 因 に よ り擾 乱(電 圧 変 動,周 波 数 変 動)が
発 生 した場 合 は,中 央 制 御 指 令 に
よ り,第 5章 の5・2・3項 で 述 べ た ゲ ー ト制 御 角 αお よ び β の 協 調 制 御 に よ り電 力 量 と方 向,擾 乱 の 安 定 化 を行 う.ま た,ど
ち らか の 交 流 系 統 ま た は 直 流 回路 の
事 故 時 に は ゲ ー ト遮 断 に よ り瞬 時 に事 故 電 流 を処 理 す る. (c)サ 格,使
イ リス タ 変換 装 置 第 1期 と第 2期 で は使 用 して い るサ イ リス タ の 定
用個 数,ゲ
ー ト トリガ 方 式 な ど,約16年
最 も大 きな 技 術 的 進 歩 は,第 イ リス タ の 採 用 で あ っ て,そ
間 の 技 術 の進 歩 が 見 られ る.
3章 の3・3・3項 で 述 べ た 高 電 圧 大 電 流 光 ト リガ サ
れ に よ っ て直 列 数 が 大 幅 に減 少 し,同 時 に 「直 接 光
トリガ 方 式 」 に よ り高 耐 圧 絶 縁 設 計 が 大 幅 に 簡 単 化 し て部 品 点 数 が 減 少 した こ と,お よ び サ イ リス タ モ ジ ュ ー ル構 造,空 気 絶 縁,循 環 式 水 冷 冷 却 式 に よ って 装 置 の 構 造 が 簡 単 にな り,保 守 が 容 易 にな っ た こ と な どが あ げ られ る.図6・2に, サ イ リス タ変 換 装 置,サ す.
イ リス タバ ル ブ,モ
ジ ュ ー ル,光
トリガ サ イ リス タ を示
(a)サ
(b)第
イ リス タ変換 装 置
2期 光 ト リガ サ イ リ ス タ モ ジ ュ ー ル (6kV,2.5kV7
個 直 列)
(c)6kV,2.5kV光
トリガサ イ リス タ
と光 フ ァ イバ,発
図6・2
第 2期 の50Hz側 (資 料 提 供;㈱
(2)佐
光 ダ イオー ド
サ イ リ ス タ変 換 装 置,モ
ジ ュ-ル,光
サ イ リス タ
東 芝)
久 間 サ イ リス タ 周 波 数 変 換 所(300MW)(5)
50Hz系
統 と60Hz
系 統 の境 界 に 近 い 静 岡 県 佐 久 間 に,両 系 統 の 連 系 を 目的 と し て,1965年 開 発(株)が 建 設 した300MW周
波 数 変 換 設 備 の水 銀 整 流 器 を1993年
サ イ リス タ に 置 き換 え て運 用 して い る.こ の 主 回 路 は,(1)と 式 電 流 形 間 接 変 換 」 で,そ
図6・3佐
に 光 トリガ
同様 に 「他 励 自制
れ を図6・3に 示 す.
久間サ イ リス タ周 波数 変 換装 置(300MW)の
に電 源
主 回路
水 銀 整 流 器 を置 換 した 光 トリガ サ イ リ ス タ は6000V,2500A
で,光
リガ 方 式 で あ る.図6・4に
直接 ト
サ イ リス タバ
ル ブ を示 す. (3)東
清 水 サ イ リス タ周 波 数 変 換 所
(300MW;1998年
運 転 開 始 予 定)
中 部 電 力(株)の275kV,60Hz系
統
と東 京 電 力(株)の154kV,50Hz系
統
を連 系 す るた め,静 岡 県清 水 市 広 瀬 に300 MW(直
流125kV,2400A)サ
イ リス
タ周 波 数 変 換 設 備 を 現 在 建 設 中 で あ る. こ の 設 備 の 目 的 は,50Hz系
と60Hz
図6・4 佐 久 間サ イ リス タ変 換 装 置 (資料提 供;電 源 開 発㈱,㈱ 東 芝)
系 の 境 界 に 近 い清 水 市 近 郊 の電 力 需 要 増 へ の 対 応 と,周 波 数 連 系 拠 点 の複 数 化 で あ る.図6・5に,東
清 水 サ イ リス タ 周 波 数 変 換 所 付 近 の 系 統 図 と主 回 路 を 示 す.
(a)系
統
(b)主
回路 図
図6・5 東 清 水サ イ リス タ周 波数 変 換 設備 の 系統 図 と主 回路 (資 料提 供;中 部 電 力㈱)
6・1・2
交 流 系 統 連 系 用 サ イ リス タ変 換 装 置(6)
南 福 光 サ イ リ ス タ 連 系 所(300MW;1999年
運 転 開 始 予 定)は,周
波 数 変換
で も直 流 送 電 で も な く,同 一 周 波 数 の 電 力 幹 線 を直 流 で 連 系 す る た め で あ る. 中部 電 力(株)と 北 陸 電 力(株)は,相
互 の 電 力 供 給 の安 定 度 と信 頼 性 の 向 上 を計
る た め,共 同 で 富 山県 西 砺 波 郡 福 光 町 に300MW(直
流125kV,2400A)の
統 連 系所 を建 設 中 で あ る.使 用 す る光 ト リガ サ イ リス タ は6000V,2500A
系 で,
1ア ー ム 当 た り28個 直 列 に接 続 さ れ て い る.こ の よ う な 同 一 の 周 波 数 系 統 を サ イ リス タ 変 換 装 置 で 連 系 す る こ とに よ り,電 力 の 方 向 と大 き さ を ゲ ー ト位 相 制 御 に よ り瞬 時 に制 御 で き る.ま た,ど 場 合,ゲ
ち らか の 交 流 系 統 に事 故 また は擾 乱 が 生 じた
ー ト制 御 に よ り事 故 の 波 及 ・拡 大 を瞬 時 に抑 制 す る と と もに,緊 急 電 力
融 通 お よび 電 圧,周 図6・6に,南
波 数,位 相 の 変 動 を 直 ち に安 定 化 さ せ る こ とが で き る.
福 光 サ イ リス タ 系 統 連 系 所 付 近 の 系 統 図 と主 回 路 を示 す.
(a)系 統 図
図6・6 南 福 光サ イ リス タ連 系所 の 系統 図 と主 回路 (資料提 供;中 部 電 力㈱) (b)主
回路
6・1・3
直 流送 電 用 サ イ リス タ変 換 装 置
直 流 送 電 方 式 が交 流送 電 方 式 に比 べ て 有 利 な点 は,次 の よ うで あ る. ①
交 流 電 圧,周
波 数 が 異 な る交 流 系統 を 「他 励 自制 式 電 流 形 交 流 間 接 変 換 」
で直 流 回 路 を介 して 連 系 す るの で,電
力 量 とそ の 方 向 を瞬 時 に,か
に制 御 で き る.ま た,相 手 系 統 の 事 故 等 に よ る擾 乱 の 影 響,波
つ,自
由
及 を 防 ぎ,系
統 を安 定 化 で き る. ②
送 電 距 離 は,交 流 系統 の よ うな 安 定 度 の 問 題 は な く,限 界 は な い.
③
交 流 送 電 で の 電 線 の表 皮 効 果 に よ る抵 抗 増 加 は な く,抵 抗 損 失 は小 さ い. また,交
④
流 ケ ー ブル の と きの 充 電 電 流 に よ る送 電 容 量 の制 約 と損 失 は な い.
送 電 電 力 に よ るが,送
電 距 離 は,架 空 線 で は400∼500kM以
は ケ ー ブル で30∼40kM以
上,あ
るい
上 に な る と,直 流 送 電 の ほ うが 建 設 費 が 経 済 的
に 有 利 に な る とい わ れ て い る. 次 に,運 転 中 お よ び 計 画 中 の 直 流 送 電 用 サ イ リス タ変 換 装 置 の 概 要 を 説 明 す る. (1)北
海 道-本 州 サ イ リス タ 直 流 送 電 設 備(第
1期,2
期,3
期 合 計600
MW)(6),(7),(8) 北 海 道 の 電 力 と本 州 の 電 力 を相 互 に融 通 し,予 備 電 力 を合 理 化 して 電 力 の有 効利 用 を は か る こ と を 目 的 と し て,北 海 道-本 州 間 の連 系 送 電 計 画 が検 討 さ れ た.そ
の結 果,津
直 流 送 電 方 式 が 決 定 され,電
軽 海 峡 を直 流 海 底 ケー ブル で結 ぶ,わ
源 開 発(株)が 建 設 ・運 用 を担 当 して い る.
直 流 送 電 の ル ー トは,図6・7の
よ うに,青
(株)上 北 変 電 所 の 交 流275kV,50Hzを タ 変 換 所[第 1期150MW(直
森 県 上 北 郡 東 北 町 に あ る東 北 電 力
北 海 道 に送 電 す る場 合,上
流125kV,1200A,1979年);第
(第 1期 を 含 め て 直 流-250kV,1200A,1980年);第 250kV,1200A,1993年)]に 線97.4kMで
が国初 めての
て 最 大600MWの
北 サ イ リス 2期300MW
3期300MW(直
流+
直 流 電 力 に 変 換 し,直 流 架 空
本 州 側 佐 井 直 流 海 底 ケ ー ブ ル ヘ ッ ドに送 電 す る.
そ こ か ら44.4kMの
直 流 海 底 ケ ー ブ ル(直
径125 mm,600mm2,OF)で
津
軽 海 峡 を横 断 し,北 海 道 側 古 川 ケ ー ブ ル ヘ ッ ドか ら再 び 直 流 架 空 送 電 線26 .7
図6・7北
kMで
海 道-本 州 直 流 送 電 ル ー ト
北 海 道 亀 田郡 七 飯 町 の 函 館 サ イ リス タ変 換 所 に 送 電 され,そ
に 変 換 さ れ て 北 海 道 電 力(株)の 交 流187kV,50Hz系
こで 交 流 電 力
統 に接 続 され て い る.
上 北 サ イ リス タ 変 換 所 と函 館 サ イ リス タ変 換 所 は通 信 回線 で 結 ば れ,最 大 電 力 600MWの (a)
電 力 量 と方 向 の 制 御 を行 って い る.図6・8に 第 1期(1979年)の
主 回 路 を示 す.
サ イ リス タ 変 換 装 置 当 時 は,高 電 圧 大 電 流 光 ト
リガ サ イ リス タ が な か っ た た め,上 北 変 換 所 で は三 相 ブ リ ッ ジ回 路 の 1ア ー ム 当 た り通 常 の 電 気 トリ ガ 式 サ イ リス タ4kV,1500A
を112個
直 列 に接 続 し て あ
る.こ れ らサ イ リス タ全 数 を同 時 に タ ー ンオ ン させ る た め,ゲ ー ト用 の電 源 は ア ー ム の 陽 極-陰 極 電 圧 を グ ル ー プ 毎 に分 圧 して 利 用 し,そ の トリガ 信 号 は大 地 か ら光 信 号 で 高 電 圧 部 に送 る 「間 接 光 トリガ 方 式 」 を採 用 し て い る. (b)
第 3期(1993年)の
性 の あ る6kV,2500A
サ イ リス タ 変 換 装 置 こ の 年 代 に は,す で に 信 頼 光 ト リガ サ イ リス タ と光 ト リガ シ ス テ ム が 開 発 さ れ,
「直 接 光 ト リガ 方 式 」 に よ るサ イ リス タ変 換 装 置 が 採 用 さ れ た.高 性 能 の 酸 化 亜 鉛 非 直 線 抵 抗 体 避 雷 器 に よ る制 限 電 圧 の 低 下 と,こ の光 ト リガ サ イ リス タ の採 用
北 海 道 と本 州 を結 ぶ唯 一 の電 力 系統
図6・8北
海 道 は本州 600MW直
流 送電 設 備 の主 回路
に よ っ て 1ア ー ム 当 た りの サ イ リ ス タ 直 列 数 は54個
と,第
1期 に比 べ て 約 半 分
に減 少 し て い る.同 時 に,直 接 光 トリガ 方 式 に よ っ て部 品 点 数 は大 幅 に 減 少 して い る.こ の結 果,装
置 全 体 の絶 縁 設 計 が 容 易 と な り,小 型 ・軽 量 で信 頼 性 の あ る
サ イ リス タ変 換 装 置 に な った. 図6・9に,上
北 変 換 所 と そ の サ イ リス タ変 換 装 置 を示 す.
(a)上 北変 換 所全 景
(b)サ
イ リス タバ ルブ
図6・9 北海 道-本 州 直流 送 電 設備(上 北 変 換 所)
紀伊水道 サ イ リスタ直流連 系設備 (第 1期,第
(2) 設 中)(9)
四 国 の 徳 島 県 阿 南 市 の 橘 湾 に,四
で,2001年
まで に 合 計 出 力2800MWの
2期 合 計2800MW;建
国 電 力(株)と 電 源 開 発(株)が 共 同
石 炭火力 発電 所 の建設 が 進 め られて い
る.こ の 電 力 の一 部 を関 西 地 区 の 需 要 地 に送 電 す るた め,電 力 の 潮 流制 御 が 容 易 な 直 流 送 電 方 式 の特 徴 を生 か し,紀 伊 水 道 を直 流 海 底 ケ ー ブ ル で 横 断 して 和 歌 山 県 の 送 電 幹 線 に接 続 す る直 流 連 系 設 備 を 関 西 電 力(株),四 (株)が 共 同 で 建 設 して い る.図6・10に
国電 力(株),電
源開発
紀 伊 水 道 直 流 連 系 設 備 の送 電 ル ー トを示
す. この 直 流 連 系 設 備 の 要 点 は,次 の よ う で あ る.
①
連 系 容 量 す な わ ち直 流 送 電 容 量 は,当 初 直 流 ±250kV,2800A
MWと
し,将
来 の 増 設 後 は ±500kV,2800
MWを
の1400
計 画 す る.
② 橘 湾石 炭火力発電所 に近 い徳 島県阿南市 の阿南 サイ リス タ変換所 で交 流 を 直 流 に変 換 し,そ
にか ら約51kmの
直 流 地 中 ・海 底 ケ ー ブ ル で 紀 伊 水 道 を
横 断 し て 和 歌 山 県 の 由 良 開 閉 所 で ケ ー ブ ル か ら直 流 架 空 線 に して 約51km 離 れ た 紀 北 サ イ リス タ変 換 所 に直 流 電 力 を送 る.そ
こで直 流 か ら交 流 に変 換
図6・10 紀伊 水 道横 断直 流 連 系ル ー ト
し て関 西 系 統 に 接続 す る.全 直 流 送 電 区 間 は約100kmで
③
海 底 ケ ー ブル は,現 在 の 設 備 能 力,工 事 方 法 の 技 術 的 制 約 か ら3000mm2 とな り,送 電 容 量 は2800A 長 を海 底 地 下2∼3m
④
あ る.
将 来 の500kV化
と な る.ま た,漁 業 へ の 影 響 や 外 傷 防止 か ら,
に埋 設 す る.
の 際,サ
イ リス タ バ ル ブ の 高 さ を低 く して 耐 震 性 を 増
し,同 時 に建 屋 を小 形 化 す るた め,高 電 圧 大 電 流 の 光 ト リガ サ イ リス タ を使 用 す る.具 体 的 に は直 径150mmのFZウ kV,3500A
⑤
エ ー ハ を使 用 した 世 界 最 大 級 の8
の光 トリガ サ イ リス タ を使 用 す る(図3・23参 照).
塩 害 対 策 と変 換 所 の コ ンパ ク ト化 の た め,SF6を
使 用 した 直 流 ガ ス 絶 縁 開
閉 装 置 を採 用 す る.
⑥ 避 雷器 の非直線抵 抗体 の特性 を改善 して制 限電圧 を下 げ,機 器 の絶縁 レベ ル を 低 減 す る. 上 述 した 紀 伊 水 道 直 流 連 系 設 備 の 第 1期 は橘 湾 石 炭 火 力 の 稼 働 と併 せ て2000 年 7月 か ら運 転 開 始 す る予 定 に な っ て い る.図6・11に
その主回路 を示す.
図6・11 紀伊 水 道 直 流 連 系設備 の 主 回路
6 1 4 ・
(1)
・
世界の直流送電用および周波数変換用サイリスタ変換装置 設置 点 と変換電 力の累計
前 項 お よび 前 々 項 で 説 明 した サ イ リス タ変
換 装 置 は 日本 国 内 で の 実 例 で あ るが,世
図6・12運
界 を見 る と図6・12の よ う に各 地 で 架 空
転 中 、建 設 ・計 画 中の世 界の 直 流送 電 お よ び周 波数 変 換 設備 (資料 提供;㈱ 東 芝)
線 に よ る長 距 離 直 流 送 電,ケ 転,建
ー ブル に よる直 流送電 お よび周波 数変 換 設備 が 運
設 また は計 画 され て い る.
また,図6・13の っ た が,1972年,イ
よ う に,1970年
代 以 前 で は水 銀 整 流 器 が 電 力 変 換 の 主 役 で あ
ー ル リバ ー 計 画 で 初 め て サ イ リ ス タ が 使 わ れ た 以 降 は す べ
て サ イ リス タ の 時 代 と な っ た.特
に,わ が 国 で は1980年
代 以 降 光 トリガ サ イ リ
ス タ が そ の 主 役 を担 っ て い る.
図6・13世
界の 主 な電 力 変 換設 備 の建 設 年 と設備 容 量の 累計 (資料 提供;㈱ 東 芝)
(2)
60Hz系
電 力変換設備 の例;国 際 間の周波数連 系設備 とア ル ゼ ン チ ンの50Hz系
電 流3000A,変
換 容 量50MWの
例 と して,ブ
ラ ジル の
を国 際 間 で 連 系 す る直 流 電 圧17 .9kV,直
流
ウル グ ア イ ア ナ ・サ イ リス タ周 波 数 変 換 所 が
1994年 か ら運 転 に入 っ た. 図6・14(a)に
設 置 点,図(b
)に サ イ リ ス タ 変 換 装 置,図(c)に
主 回路 を示 す .
(a)設
(b)サ
置点
イ リス タ変換 装 置
(c)主 回 路 図6・14
ブ ラ ジ ル-ア ル ゼ ン チ ン間 周 波 数 連 系 設 備
6・1・5 高 電 圧 大 電 流 サ イ リ ス タ 変 換 装 置 の た め の 技 術 高 電 圧 大 電 流 サ イ リス タ変 換 装 置 に は,そ の 電 気 的 機 能 に つ い て 高 い信 頼 性 が 要 求 され るが,同
時 に,電 力 損 失 が 小 さ く,小 型 ・軽 量 で,保 守 ・点 検 しや す い
こ とが求 め られ る.
(1)サ
イ リス タの 定 格 電 圧,定
格 電 流 の 増 加(10) サ イ リ ス タ変 換 装 置 の
高 電 圧 ・大 電 流 化 に は,直 列 接 続 の個 数 を減 らす た め 1個 の サ イ リス タ の 定格 電 圧,定
格 電 流 の増 加 は必 要 条 件 で あ る.パ
圧 大 電 流 デ バ イ ス の例 と して,光 15(a)に,同
(a)サ
ワー エ レ ク トロ ニ クス を代 表 す る高 電
ト リガ サ イ リス タ の 定 格 の 増 加 の 歴 史 を 図6・
じ くゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ を図(b)に 示 す.
イ リ ス タ ・光 ト リ ガ サ イ リ ス タ
図6・15パ
(b)ゲ
ー トター ン オフサ イ リス タ
ワ ー デ バ ィ スの 高 電 圧 ・大 電 流 化 の 歴 史(資
ND処
理(3・4・2項 参 照)し た 大 口 径FZウ
mm)の
使 用,高 精 度 イオ ン注 入 技 術,ベ
研 究 が 進 め られ て い るが,他
料 提 供;㈱ 東 芝)
エ ー ハ(現
在 の 最 大 直 径 は150
ベ ル 技 術 な どに よ っ て 定 格 電 圧 増 加 の
の 特 性 との 相 関 性 が あ るた め,現 在 の 8kV級
を超
え て バ ラ ン ス の よい 特 性 を も った 高 電 圧 サ イ リス タの 実 現 は容 易 で は な い. 一 方,定 格 電 流増 加 は ウ エ ー ハ の大 口 径 化 に依 存 す るが,結 物 濃 度 プ ロ フ ァイ ル の 一 様 性,発
晶 の 均 一 性,添
加
熱 歪 み の 処 理 お よび パ ッケ ー ジ の 熱 抵 抗 の極 小
化 な どの 技 術 的 問 題 が あ り,現 在 の 直 径150mmで
オ ン電 流(平
均 値)は3500
A 程 度 で あ る.従 っ て,高 電 圧 電 力 変 換 へ の 応 用 の技 術 課 題 は, ①
高 い 定 格 ピ ー ク繰 返 しオ フ お よ び 逆 電 圧 の サ イ リ ス タ の 開 発 とそ の 直 列
接続 ②
絶 縁 性 が 良 く,サ ー ジ電 圧 の 影 響 を受 けな い ゲ ー ト トリガ シ ス テ ム
③
外 来 サ ー ジ電 圧 に対 す る サ イ リス タ の保 護(特
④
大 電 流 電 力 変 換 で はサ イ リス タの 並 列 接 続 技 術 が 必 要 とな る.
(2) サ イ リス タ の 直 列 接 続 直 流 送 電,大 ジ 回路 が 使 用 され,そ
性 の 良 い避 雷 器 の開 発)
容 量 周 波 数 変 換 で は三 相 ブ リッ
の 1回 路 当 た りの 出 力 直 流 電 圧 は125kVが
一応 の標準 に
な っ て い る. 避 雷 器 の 制 限 電 圧 特 性 お よ び サ イ リス タの 定 格 電 圧 に よ り,三 相 ブ リッ ジ 回 路 の 1ア ー ム 当 た り50個 程 度 の 直 列 接 続(定
格 電 圧6kVを
使 用 した 時)が
必要
とな る.こ れ ら高 電 圧 大 電 流 サ イ リス タ 変 換 装 置 は超 高 圧 送 電 幹 線 に 接続 され る の で,各
サ イ リス タ に並 列 に分 圧 回路(ス
ナバ 回路 を含 む)を 接 続 して サ ー ジ性
急 峻 波 電 圧 か ら商 用 周 波 の 電 圧 ま で均 等 に分 圧 す る よ うに す る. 直 列 接 続 に必 要 な事 項 は,次 の よ うで あ る. (a)動
作 温 度 に お け る サ イ リス タの 静 特 性,動 特 性
①
ゲ ー トタ ー ン オ ン時 間 が 揃 っ て い る こ と.
②
オ フ状 態 お よ び逆 阻止 状 態 の 電 圧,電
③
電 源 転 流 時 の 逆 回復 電 荷 量 が 揃 っ て い る こ と.
④
電 源 転 流 時 の タ ー ンオ フ時 間 が 揃 っ て い る こ と.
す なわ ち,サ (b)分 ①
流 特 性 が 揃 っ て い る こ と.
イ リス タ の諸 特 性 は揃 っ て い る こ とが必 要 条 件 で あ る.
圧回路
分 圧 抵 抗 は電 力 損 失 の軽 減 の た め, 高 抵 抗 で,か つ,無 誘 導構 造 とす る.
②
ス ナ バ 回 路 の コ ン デ ンサ は,パ ル ス 状 の 充 ・放 電 電 流 に対 す る構 造 強 度 と無 誘 導 構 造 と し,そ の容 量 はサ イ リス タの 逆 回復 電 荷 量 を考 慮 して 決 め る.電 力 損 失 を軽 減 す るた め で き る だ け小 さ い容 量 とす る.
図6・16
分 圧 回路 の例
③
ス ナ バ 回 路 の 抵 抗 は無 誘 導 で,か つ,十 分 な 冷 却 構 造 で あ る こ と.
④
コ ロ ナ シー ル ドを 含 め サ ー ジ性 電 圧 か ら商 用 電 圧 ま で 分 圧 特 性 が 良 い こ と.
図6・16に,直 表6・3に,主
流 送 電 用 サ イ リス タ変 換 装 置 の 分 圧 回路 の例 を示 す. な 変 換 装 置 の サ イ リス タ に関 す る 数 値 の 変 化 を示 す.こ
ら,サ イ リス タ の み な らず,ゲ 図6・17(a)に,サ
の表 か
ー ト トリガ シス テ ム な どの 技 術 の進 歩 が わ か る.
イ リス タ の 電 気 的 容 量(定
格 オ フ ・逆 電 圧 × 定 格 オ ン電 流
平 均 値)の 増 加 と と もに ブ リ ッ ジ回 路 を構 成 す るサ イ リス タ装 置 の 容 積 は小 さ く な る傾 向 を示 す.ま
た,図(b)に
サ イ リス タ使 用 数 の 減 少 と と もに サ イ リス タ 装
置 の 電 力 損 失 が減 少 す る傾 向 を示 す.
(a)
(b)
図6・17 サ イ リス タの 電気 的容 量 と装 置の 容積,電 力損 失 の傾 向 (資料 提 供;㈱ 東 芝)
(3)ゲ
ー ト ト リガ シ ス テ ム(11) 例 え ば,直 流 送 電 用 サ イ リス タ 変 換 装 置
は,交 流275kVま
た は500kV級
して 接続 す る た め,常
超 高 圧 送 電 幹 線 に直 接 ま た は 一 次 変 圧 器 を介
に雷 サ ー ジ,開 閉 サ ー ジ に 曝 され る.ゲ ー ト トリガ シ ス テ
ム は,サ ー ジ電 圧 の 影 響 を 受 けず,十 ス タ に 同 時 に与 え,か
つ,高
分 なゲ ー ト電 流 を直 列 接 続 され た 各 サ イ リ
い信 頼 性 が必 要 で あ る .代 表 的 な ゲ ー ト ト リガ シ ス
テ ム を図6・18に 示 す. 図(a)は 変 流 器 形 「電 磁 ト リガ 方 式 」 で,通 常 の電 気 ト リガ式 サ イ リス タ の 同
表6・3主
*こ
な変 換 装 置 の
の 値 が大 き い ほ ど,サ イ リス タの 定 格 電 圧 に対 して 低 い電 圧 で ブ リ ッ シジ を 動 作 させ て い る。 す なわ ち,サ
イ リス タ の 定 格 電 圧 に対 して余 裕 が 大 き い。 換 言 す れ ば,サ
イ リス タの 電 圧 阻 止
能 力 の 利 用 度 が低 い。 **こ
の 値 が小 さ い ほ ど,サ イ リス タの 電 圧 阻 止 能 力 の 定 格 値 に近 い とこ ろ で 動作 させ て いて,利 度 が 高 い こ と を 意 味 す る。 避 雷 器 の 制 限 電 圧 が 低 く,か つ,そ ば,こ
の値 を 低 くで き,結 果 と して サ イ リ ス タ の 直 列 個 数 を減 らす こ と が で き,変 換 装 置 を小
型 ・軽 量 化,据 (注)上
用
の 電 流 ・電 圧 特 性 が 平 坦 で あ れ
付 け面 積 を小 さ くで き る。
記 の 数 値 は公 表 さ れ て い る デ ー タか らの 概 略 計 算値 で,交
流 電 圧 変 動,過
渡 過 電 圧,電
圧分担
の 不 平 衡 分 な ど は考 慮 して い な い 。
(a)電 磁 ト リガ 方 式 図6・18
(b)間 接 光 トリガ方式
(c)直 接 光 ト リ ガ 方 式
高 電圧 サ イ リス タ変換 装 置用 ゲー ト トリガシ ス テム
サ イ リス タ に関 す る 数 値 の 変 化
時 ト リガ に使 用 す る.こ の 方 式 で は,一 次 と二 次 の 巻 線 間 に 十 分 な絶 縁 構 造 を と る必 要 が あ るた め,外 形,重 量 が大 き くな る.ま た,構 造 上,立 上 りの大 き い ゲ ー トの 電 流 の伝 送 ・分 配 が 困 難 で,雷 サ ー ジ,開 閉 サ ー ジ の 影 響 を受 け や す い の で サ イ リス タ を誤 動 作 させ る可 能 性 が あ る. 図(b)は,ゲ
ー ト電 源 を各 サ イ リス タ の 陽 極-陰 極 間 電 圧 か ら取 り,ト リガ 信
号 は絶 縁 性 光 フ ァ イ バ を介 して光 で伝 送 ・分 配 す る 「間 接 光 トリガ方 式 」 で,通 常 の サ イ リス タ を使 用 で き る.こ の 方 式 は,図(a)に
比 べ て 絶 縁 設 計 は容 易 で,
ゲ ー トへ の サ ー ジ電 圧 侵 入 の 可 能 性 は低 く,シ ス テ ム は小 型 ・軽 量 に な るが,難 点 とし て高 電 圧 部 の部 品 数 が 増 加 し,ま た サ イ リス タ に電 圧 を印 加 せ ず に ゲ ー ト 回 路 を チ ェ ッ クす る こ とは難 しい. 図(c)は,高
電 圧 大 電 流 光 トリガ サ イ リス タ と信 頼 性 の あ る高 輝 度 発 光 ダ イ オ
ー ドの 開 発 に よ っ て達 成 され た 究 極 の ト リガ シ ス テ ム とい え る 「直 接 光 ト リガ 方 式 」 で あ る.こ の 方 式 は,絶 縁 設 計 が容 易 で,サ 部 品 数 は図(a),(b)に
ー ジ電 圧 の影 響 を受 け に く く,
比 べ て最 も少 な く,ト リガ シ ス テ ム を小 型 ・軽 量 に構 成
で き る利 点 が あ る. ト リガ シ ス テ ム の動 向 を見 る と,図(a)は
新 信 濃 サ イ リス タ 周 波 数 変 換 所 の 第
1期 に採 用 さ れ た が,光
ト リガ サ イ リス タ の進 歩 に よ り,そ の後 図(b)を 経 て 図
(c)に な った.図(b)は,北
海 道-本 州 直 流 送 電 サ イ リス タ変 換 装 置 の 第 1期 に
採 用 され た.図(c)は,1989年
以 降 の直 流 送 電 用(北 海 道-本 州 第 3期,紀
道(予
信 濃 第 2期,佐
定)),周
波 数 変 換 用(新
電 力 補 償 用 サ イ リス タ変 換 装 置 に採 用 され,現 図6・19に,サ
久 間,東 清 水(予
伊水
定))お よび 無 効
在 で は この 方 式 が 定 着 して い る.
イ リス タ用 トリガ ・モ ニ タ回 路 を示 す.
図6・19光
図 の よ う に,ト
ト リ ガ シ ス テ ム と光 ト リ ガ サ イ リ ス タの モ ニ タ
リガ シス テ ム の 信 頼 性 を高 め る た め に 発 光 ダ イ オ ー ド 2個 を別
電 源 で通 電 して 発 光 さ せ,両 者 を絶 縁 性 光 フ ァ イバ で ひ と ま とめ に して 光 サ イ リ ス タ の入 力 端 子 に導 い て い る.光 サ イ リ ス タ の 故 障(陽 極-陰 極 間 の 短 絡)は, 分 圧 回 路 の 高 抵 抗 に直 列 に接 続 した 発 光 ダ イオ ー ドの 発 光 停 止 に よ っ て大 地 側 で モ ニ タ す る.光
ト リガ 方式 に よ っ て,従
来 の 電 磁 トリガ 方 式 と比 べ て 高 電 位 部 の 部 品 点 数 は図6・20の よ う に 大 幅 に減 少 し,そ れ だ け変 換 装 置 の信 頼 性 は 向 上 し て い る.
図6・20
部 品点 数 の 減 少 (資料 提 供;㈱ 東 芝)
(4)避
雷 器(12) 超 高 圧 送 電 系 統 に直 接 ま た は一 次 変 圧 器 を 介 し て サ イ リ
ス タ変 換 装 置 を接 続 す る とき は,系 統 か ら侵 入 す る雷 サ ー ジ,開 閉 サ ー ジ の過 電 圧 を避 雷 器 で 保 護 す る 必 要 が あ る.通 常,避
雷 器 は,図6・21(a)の
よ う に,変
圧 器 の 一 次側 お よ び三 相 ブ リ ッジ 回 路 の各 アー ム,直 流 出力 端 子 に並 列 に接 続 す る. 過 電 圧 に対 す る保 護 性 能 は,酸 化 亜 鉛(ZnO)非
直 線 抵 抗 体 か らな る避 雷 器 の 制
(a)避 雷 器 の接 続
(b)避 雷器 の 制 限 電圧 特 性 図6・21
三相 ブ リッジ 回路 の避 雷 器 とその 特性 (資料 提供;㈱ 東 芝)
限 電 圧 特 性 に 大 き く依 存 す る.制 限 電 圧 特 性 が 良 い ほ どサ イ リス タ の 直 列 個 数 を 減 らす こ とが で き る.図(b)に
制 限 電 圧 特 性 の 例 を示 す.最 近 の 例 で は,サ イ リ
ス タ 1個 当 た りの分 担 動 作 電 圧(最 大 値)は,そ
の 定 格 ピー ク繰 返 しオ フ電 圧 お よ
び 定 格 ピ ー ク繰 返 し逆 電 圧 の 約80% に相 当 して い る. 図6・22に,現
在 国 内 で 運 転 中 お よ び建 設 中 の 高 電 圧 大 電 流 サ イ リ ス タ 変 換 設
備 を示 す.50Hz系
統 と60 Hz系
合 計 変 換 電 力 は1998年
に1200MWに
統 を連 系 す る サ イ リ ス タ 周 波 数 変 換 設 備 の 総 達 す る.ま た,2000年
の 第 1期 紀 伊 水 道
直 流 連 系 設 備 の 稼 働 を含 め,北 海 道 か ら九州 まで わ が 国 を縦 断 す る電 力 幹 線 網 は 着 々 整 備,強 化 さ れ て お り,北 海 道-本 州 お よ び 紀 伊 水 道 の 直 流 連 系 設 備 は そ の 重 要 な 役 割 を担 っ て い る.
図6・22 日本 の電 力 系統 概 略 図 とサ イ リス タ変換 装 置 の 設 置点
上 述 の よ うに,超 高 圧 送 電 系統 に 直 接,ま 接 続 してMW級 ①
た は 間 接 的 に サ イ リス タ変 換 装 置 を
の 電 力 変 換 を行 う場 合 に要 求 され る事 項 は,
取 り扱 う変 換 電 力 の 大 き さ と その 使 命,お
よび 機 能 の 高 い信 頼 性
②
雷 サ ー ジ,開 閉 サ ー ジ を含 む高 電 圧 技 術 と絶 縁 技 術
③
サ イ リス タ変 換 装 置 は絶 縁 上 高 い構 造 物 とな る の で,そ
の耐震構 造設計
とい う点 で,一 般 産 業 用 の 「パ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス 」 と は大 き く異 な る. こ の よ うに,通 常 の 「パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス」 よ りも さ らに 広 い技 術 分 野 を 包 含 し結 集 した 直 流 送 電 用 お よび 周 波 数 変 換 用 高 電 圧 大 電 流 サ イ リス タ 変 換 装 置 は,正 に 「ウ ル トラ ・パ ワー エ レ ク トロ ニ クス 」 とい え る.
6・1・6 無 効 電 力 補 償 用 サ イ リス タ 装 置 (1)原
理 交 流 系 統 に変 動 の 激 しい 負荷,例
え ば ア ー ク炉 な どが あ る と,
その 負 荷 電 流 と系 統 の リア ク タ ン ス に よ っ て 受 電 端 の交 流電 圧 は大 き く変 動 し, ブ リッ カ(電 燈 照 明 の チ ラ ツ キ)が 生 じる場 合 が あ る. この 電 圧 ・電 流 関 係 を 図 示 す る と,図6・23に
(a)系 統 図 図6・23系
な る.
(b)ベ
ク トル 図
統 の イ ン ピ ー ダ ン ス とベ ク トル 図
図(a)は 交 流 系 統 の 単 線 図 で,系 統 の イ ン ピ ー ダ ンスZsは, (Rs, Xsは
電 源 の 抵 抗 お よ び リ ア ク タ ン ス)
で あ る.受 電 端 の電 圧V〓 に 対 す る 負 荷 電 流 Iの位 相 角 を ψ とす る と,系 統 の 電 圧,電 流 の ベ ク トル 図 は図(b)と な る. 送 電 端 電 圧Vsと
受 電 端 電 圧V〓 の 電 圧 差,す
⊿V≒IRs COSψ +IXs sinψ
な わ ち系 統 の電 圧 降 下 ⊿Vは,
と な る.有
効 電 力 P,無
電 圧 降 下 ⊿Vは
効 電 力 Q は,P=VIcosψ,Q=VIsinψ
で あ る か ら,
次 式 と な る.
⊿V≒1/V(RsP+XsQ)≒XsQ 一 般 に,RsはXsに
比 べ て 極 め て 小 さ い の で,⊿VはXsQに
比 例 す る と考 え
て よ い.
従 っ て,系 つ,そ
統 の電 圧 変 動 ⊿Vを 抑 制 す る に は 負 荷 の 無 効 電 力 Q を補 償 し,か
れ が で き るだ け小 さ くな る よ うに 制 御 す れ ば よ い.こ
の た め,通 常 は,系
統 に コ ンデ ン サ バ ン ク を 開 閉 し て遅 れ 無 効 電 力 を 大 き く補 償 し,一 方,同 一 系 統 に接 続 した リア ク トル とそ れ に直 列 の サ イ リス タ 交 流 ス イ ッチ の位 相 制 御 に よ る 「サ イ リス タ 式 可 変 リア ク トル 」 で 無 効 電 力 を微 調 整 す る方 法 が と られ る. コ ン デ ンサ バ ン ク の開 閉 に は,機 械 的 ス イ ッチ で は投 入 位 相,応
答 性 と機 械 的
寿命 が あ るた め,最 近 で は5・2・1項 で述 べ た サ イ リス タ ス イ ッ チが 使 用 され る. 三 相 の コ ン デ ン サ ・サ イ リ ス タ ス イ ッ チ 回 路 と電 圧,電
流 の 関 係 を 図6・24に
示 す.
I:サ イ リスタユ ニ ッ トの 電 流(実 効 値) 図6・24三
相 の コ ン デ ンサ ・サ イ リ ス タ ス イ ッチ 回 路
サ イ リス タ ス イ ッチ に 流 れ る電 流(実 効 値)を
I とす れ ば,△ 結 線 の ほ う が
大 き な進 相 無 効 電 力 が 得 られ る.こ の 回路 で は,サ イ リス タ の ゲ ー トを オ フ して コ ン デ ン サ 電 流 が 0に な る と,サ イ リス タ に は線 間 電 圧(実
効 値)の2√2倍
の
順 方 向 また は逆 方 向 電 圧 が 加 わ る.コ
ン デ ンサ の 突 入 電 流 を避 け るた め,サ
イリ
ス タの トリガ 位 相 に 注 意 す る必 要 が あ る. コ ン デ ンサ バ ン ク とサ イ リス タ可 変 リア ク トル を組 み合 わ せ,連 続 的 に 進相, 遅相 電 力 を制 御 す る回 路 が無 効 電 力 補 償 回 路 で あ る. (2)交
流 式 無 効 電 力 補 償 装 置(交
(SVC;Static
Var Compensator)は,負
流 電 力 制 御)無
効 電 力補償 装 置
荷 に流 れ る無 効 電 力 を高 速 度 で 補 償 す
る装 置 で,通 常 は三 相 の コ ンデ ンサ とサ イ リス タ式 可 変 リア ク トル か ら な る. 図6・25は そ の 例 で,三
相22kV,60Hz系
統 に50ト
ン ア ー ク 炉 用35MVA
変 圧 器 2基 が あ り,そ の 系 統 に フ ィル タ兼 進 相 電 力 供 給 源 と して コ ン デ ンサ バ ン ク,遅 相 電 力 用 の53MVAリ
ア ク トル お よ び4000V,3000A
光 ト リガ サ イ リ
ス タ を用 い た 無 効 電 力 補 償 回 路 か らな る.サ イ リス タ の制 御 角 に よ っ て遅 相 電 力 を瞬 時 に,か
つ,連 続 的 に制 御 し,受 電 電 圧 変 動 を最 小 に な る よ う制 御 す る.
図6・25無
(a)な 図6・26無
効電 力補 償装 置
し 効 電 力 補 償 装 置 あ り,な
(b)あ
り;電 圧 変 動 は(a)よ
しの 比 較(10Hz付
り小 さ い 。
近 の 電 圧 変 動)
通 常,コ
ン デ ンサ バ ン ク の 進 相 容 量 は リア ク トル の遅 相 容 量(サ
御 角 αが0゜ で 遅 相 電 流 が 最 大 の 時)と
等 し くす る.図6・26に,無
イ リス タ の 制 効 電力補償 装
置 の効 果 の 例 を 示 す. (3)自
励 式 無 効 電 力 補 償 装 置(13)ゲ
ー トター ン オ フ サ イ リス タ とダ イ オ
ー ドで三 相 均 一 ブ リ ッジ 回路 を構 成 し,そ の 直 流 回路 に コ ンデ ンサ を負 荷 と し て 接 続 す る.ゲ ー トタ ー ンオ フ サ イ リス タ をPWM制 系 統 電 圧 の 安 定 化 制 御,電 力 動 揺 抑 制 制 御,無
御 す る こ と に よ っ て,交
流
効 電 力 一 定 制御 を行 う.こ の 回 路
構 成 は,系 統 電 圧 が 大 幅 に低 下 した時 は電 圧 安 定 化 に動 作 し,ま た リア ク トル が 不 要 とい う特 長 が あ る. 図6・27に,±50MVAの
自励 式 無 効 電 力 補 償 装 置 の例 を 示 す.
各 ユ ニ ッ トの 構 成
図6・27±50MVA無
効 電 力補 償装 置
図 は三 相66kV,50Hz系 ±10%の
統 に接 続 され,そ
範 囲 に お い て 進 相50MVA∼
の 二 次 側 に三 相8.75kVの
の無効電 力制御容 量 は定格電 圧 の
遅 相50MVAで
あ る.変 圧 器50MVA
4巻 線 が あ り,そ れ ぞ れ が ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リ
ス タ を 用 い た 三 相 ブ リ ッ ジ回 路 に接 続 し,そ の 直 流 側 を 4組 並 列 に し て大 容 量 コ ンデ ン サ に接 続 す る. 一 組 の ブ リ ッ ジ は12.5MVAを V,2500A
受 け 持 ち,そ
の ブ リ ッ ジ の 各 ア ー ム は6000
の ゲ ー トタ ー ンオ フ サ イ リス タ と逆 並 列 の ダ イ オ ー ドの ユ ニ ッ ト 8
個 直 列 で 構 成 して い る.図6・28に PWMで
そ の 装 置 を示 す .交 流 系 統 の 電 圧 安 定 化 は
位 相 制 御 して 交 流 系 統 と有 効 電 力 を授 受 し,直 流 電 圧 を一 定 に制 御 す る
こ とに よ っ て 行 う.
図6・2850MVA無
効 電 力補 償 装 置
(資 料提 供;㈱ 東 芝)
(4)ア
ク テ ィブ パ ワ-フ
ィル タ(Active
Power
Filter)ア
クテ ィブパ
ワ ー フ ィル タ は負 荷 が 発 生 す る高 調 波 電 流 と逆 位 相 の電 流 を発 生 させ,そ
の高調
波 電 流 を相 殺 す る こ とで 交 流 系 統 の 高調 波 を実 用 上 影 響 の な い程 度 に 抑 え る 方 法 で あ る.こ
の装 置 の特 長 は 次 の よ うで あ る.
①
低 次 か ら高 次 ま で の 高調 波 を一 挙 に相 殺 ・補 償 す る.
②
力 率 改 善 装 置 と して も動 作 す る.
③
変 動す る無効 電力 や高調 波電 流 に対 してPWM即
応制 御 に よ り高精 度 の
補償 特性 を示 す. 図6・29に,IGBTを を 示 す.補
使 用 した 一 般 工 業 用 ア ク テ ィ ブパ ワ ー フ ィル タ の 主 回 路
償 高 調 波 次 数 は 二 次 ∼ 十 三 次,高
十 三 次 の 総 合)の
調 波 補 償 率 は80%以
性 能 を示 す.
図 6・30 に,ク レ ー ン用 電 源 に 応 用 した場 合 の 効 果 を 示 す.
図
6・29
IGBTを
使 用 した ア クテ ィブパ ワー フ ィル タの 主 回路
(a)電 圧 変動 の 抑制 の例
上(二
次∼
(b)高 調波 成 分 の低 減 の例 図6・30
ク レ ー ン 用 電 源 へ の 応 用 例(資
料 提 供;㈱ 東 芝)
6・2 交 流-直 流 変 換
6・2・1 重 工 業 用
電 気 化 学 工 業 で直 流 大 電 流 を必 要 とす る業 種 と して,ア ル ミニ ウム 電 解,食
塩
水 の電 解 な どが あ る. アル ミニ ウ ム は氷 晶 石 に ア ル ミナ粉 末 を 溶 か して 電 解 液 と し,陽 極-陰 極 間 に 直 流 電 流 を流 して電 解 し,陰 極 に 高純 度 の ア ル ミニ ウ ム を析 出 さ せ る.ア ル ミニ ウム の 電 解 に は直 流 電 圧800∼1200V
で,約16000kWh/tの
電 力 が 必 要 とい わ
れ て い る. 食 塩 水 の電 解 に よ っ て,陽 極 か ら塩 素 を取 り,陰 極 か らあ る工 程 を経 て 苛 性 ソ ー ダ と水 素 を取 る .直 流電 圧 は200∼600V で あ る.電 解 用 直 流 電 源 装 置 の 1プ ラ ン トの 規 模 は,ア ル ミニ ウ ム の 電 解 用 で は 約200MW,食 40∼70MWと
塩水電解用 で は
い わ れ て い る.
すず メ ッ キ,亜 鉛 メ ッ キ,ア ル マ イ ト処 理 な どの各 種 金 属 の表 面 処 理 に はサ イ
リ ス タ で 定 電 流 制 御 さ れ た 直 流 電 源(8∼30V,500∼1500
A)が
使 用 さ れ る.
これ らの直 流 電 源 の 順 変 換 回 路 は,相 間 リア ク トル 付 二 重 星 形 サ イ リス タ回 路 また は三 相 ブ リ ッジ サ イ リス タ回 路 で,交 流 電 流 の高 調 波 を低 減 さ せ るた め,一 二 相 あ る い は そ れ以 上 の相 数 の 回 路 を使 用 す る. サ イ リス タ を 並 列 接 続 して 電 流 分 担 を平 衡 化 す る に は,次
の こ とが 必 要 で あ
る. ①
デ バ イ ス の電 気 的 特 性,す
な わ ち サ イ リス タ につ い て は タ ー ンオ ン特 性 と
オ ン電 圧 特 性 を,ダ イ オ ー ドで は 主 とし て順 方 向 降 下 を揃 え る. ②
巻 線 導 体 の 配 置,デ
バ イ ス の配 置 に よ っ て 自己 イ ンダ ク タ ンス をで き る だ
け小 さ く,相 互 イ ン ダ ク タ ンス を大 き くす る.
6・2・2 電 車 用 直 流 き 電 電 源 直 流 電 化 の電 車 用 架 線 電 圧 は公 称1500V
また は750V
で あ る.通 常,三
相交
流受 電 電 圧 を変 圧 器 に よ り三 相 ブ リッ ジ また は相 間 リア ク トル 付 二 重 星 形 整 流 回 路 で 直 流 に変 換 して直 流 電 力 を き電 線 経 由 で架 線 に送 り,電 車 を運 行 す る. 最 近 で は,ピ ー ク繰 返 し逆 電 圧5000V,平
均 順 電 流3000A
沸騰 冷 却 式 と し た ユ ニ ッ トを組 み合 わ せ る こ とに よ っ て,直 に て2000kWか
ら6000kWま
例 え ば,最 新 の3000kWの
の ダイ オー ドを 流 出力 電 圧1500V
で直 流 電 力 が 得 られ る. 整 流 装 置 で は,上 記 の高 電 圧 大 電 流 ダ イ オ ー ドの
採 用 と新 しい 沸 騰 冷 却 方 式 に よ っ て,以 前 の装 置 に比 べ て,体 積 比 で約1/2,据 付 け面 積 比 で 約3/4,重
量 比 で約3/4に
小 型 ・軽 量 化 さ れ た.
地 上 変 電 所 間 の距 離 が 長 い 地 区 で,そ
の 中 間 点 で 電 車 が 力 行 す る と,架 線,き
電 線 の 抵 抗 降 下 お よび 順 変 換 回 路 の 転 流 リア ク タ ン ス 降 下(重
な り角)に
架 線 電 圧 は低 下 す る.通 常,変
の 電 圧 降 下 を補 償
圧 器 一 次 側 の タ ッ プ切 換 で,こ
す る.過 負 荷 時 の 電 圧 降 下 を補 償 す る別 の 方 法 と し て,図6・31(a)の ダ イ オ ー ド整 流 器 出 力 回 路 ス イ ッチSlを
よ り,
よ う に,
開 き,そ の端 子 間 に サ イ リス タ 装 置 の
制 御 さ れ た 直 流 出 力 電 圧 を カ ス ケ ー ドに して き電 線 の 直 流 電 圧 を高 め る. 図(b)に き電 線 の 電 圧 ・電 流 特 性 を示 す.こ
の 方 式 は,JR西
日本 紀 勢 本 線 の
(a)ダ
ィ ォ ー ド ・サ イ リス タ 順 変 換 回 路
図
6・31
(b)直 流 電圧 ・電 流 特性
電 車 用 直流 き電電 源 の例
和 深 変 電 所 で 運 転 さ れ て い る.
6
・
3
6 ・3
・1
直流-直 流 変換 (直流間接変換)
直流定電圧電源
(ス イ ッ チ ン グ レ ギ ュ レー タ)
公 共 用 の 多 種 多 様 の 金 融 ド ン ラ イ ン用 機 器,情 器,交
通 用 制 御 機 器,分
析 ・測 定 用 機 器,信
ン,ワ ー プ ロ,AV・CD機
器,自
報 ・通 信 機 器,各
種 医療 用機
号 ・画 像 処 理 用 電 子 機 器,パ
動 車 用 電 子 制 御 回 路 な ど,お
ソコ
よそ半 導体 デバ
イ ス が使 用 され て い る電 子 回 路 で あ れ ば必 ず直 流 定 電 圧 電 源 が 必 要 で あ る.携 帯 用 電 子 機 器 の うち,電 池 の み を電 源 と し て い る もの を除 き,電 源 がAC/DC兼
用
の もの は直 流 定 電 圧 電 源 を 回 路 に組 み 込 んで あ る. 電 子 機 器 の標 準 の 直 流 電 源 電 圧 は,搬 送 無 線 用 で は21V,電 48V で あ り,一 般 用 電 子 機 器 で は 5V,12V
話 交換 機 用 で は
な どが 多 い.
こ れ ら 電 子 機 器 用 と し て 多 種 多 様 の 直 流 定 電 圧 電 源 ユ ニ ッ トが 市 販 さ れ て お り,そ
の 標 準 電 圧 は 2,5,12,15,24,48V(正
ニ ッ トで 正 ・負 両 極 性 付)で
あ る .こ
ま た は 負,あ
るい は同 一 ユ
れ ら 市 販 さ れ て い る ユ ニ ッ トの 標 準 出 力
は,プ
リ ン ト板 実 装 用 で は0.25∼3W,独
種 類 あ る.ユ 外 形 は,モ
立 ユ ニ ッ トで は5∼300W
程 度 まで 多
ニ ッ トを 並 列 に 接 続 す れ ば さ ら に 大 き な 電 流 が 得 ら れ る. ー ル ド型,ピ
ン 実 装 型,別
シ ー ル ド 箱 型 な ど が あ る.図6・32(a)に
置 き の オ ー プ ン フ レ ー ム 型,穴
開 き鋼 板
高 周 波 化 に よ る 小 型 化 の 傾 向 を,図
(b)に 代 表 的 外 形 を 示 す.
(a)小
(b)外
型 化の 傾 向
図6・32直
形の例
流定 電 圧電 源
直 流 定 電 圧 電 源 ユ ニ ッ トに は,5・3・2項 で 解 説 した 各 種 の直 流 間 接 変 換 回 路 が 使 わ れ て い る.回 路 と直 流 出 力 の お お よ そ の 関 係 は,一 石 フ ラ イ バ ッ ク形 で は 50W 程 度 ま で,一 石 フ ォ ワー ド形 で は150W 300W
程 度 まで,フ
ル ブ リッ ジ形 で は1.5kW程
程 度 まで,ハ
ー フブ リッジ形で は
度 とい わ れ て い る.
高 周 波 変 圧 器 の 二 次 側 に複 数 の 巻 線 を 配 置 し,一 つ の ユ ニ ッ トで複 数 の 直 流 電 圧 を取 り 出 す マ ル チ 出 力 形(例
え ば,+5,+12,-12,+24V)が
あ る.図6・33
に マ ル チ 出 力 形 の 回 路 の例 を 示 す. マ ル チ 出 力 定 電圧 直 流 電 源 で は,通 常,一 を ス イ ッチ ン グ デバ イ ス のPWM制
つ の 出 力 電 圧 の 偏 差 を検 出 し,そ れ
御 に フ ィー ドバ ッ ク して 定 電 圧 化 し て お り,
図6・33マ
ル チ出 力直 流 定電 庄電 源 の 例
他 の 出力 電 圧 は オ ー プ ン制 御 に な っ て い る.ス イ ッチ ン グ デバ イ ス は,主 MOSFETが
使 用 さ れ て お り,そ の 動 作 周 波 数 は200kHzが
定 電 圧 化 は,こ
の周 波 数 で のPWM制
多 い.出
力電 圧 の
御 で 行 っ て い る.主 販 さ れ て い る 直 流 電
源 の特 性 の例 は,負 荷 変 動 に 対 す る 出 力 直 流 電 圧 の 変 動 は0.3∼0.6%以 力 変 換 効 率 は,出 力 電 圧 ・電 流 に よ るが,85∼92%程 直 流 定 電 圧 電 源 の 技 術 課 題 は,(1)機 (3)高 効 率 化,(4)低
とし て
内,電
度 で あ る.
能 の 長 期 信 頼 性,(2)小
型 ・軽 量 化,
価 格 化 で あ る.こ の課 題 に対 し,高 周 波 用 フ ェ ラ イ トお よ
び アモ ル フ ァス 磁 性 材 料,高
周 波 用 チ ップ コ ンデ ンサ,無 誘 導 コ ンデ ンサ,低 損
失 ス イ ッチ ング デバ イ ス,シ
ョ ッ トキー バ リア ダ イオ ー ドな ど の部 品 の 特 性 向上
と低 価 格 化,お
よ び組 立 の 低 価 格 化 が 進 め られ て い る.
6・3・2 医用 機 器 用 直 流 高 電圧 電源 装 置 CTス
キ ャ ナ 用 X 線 電 源 装 置 に は,直 流 最 大 電 圧150kV,5∼60kWの
負 荷 に 対 応 で き,か つ,小
型 ・軽 量 化 が 要 求 さ れ る.IGBTを
級 電 源 装 置 の 回路 を図6・34に 示 す.図
間欠
使 用 し た36kW
の よ う に,商 用 電 源 を整 流 し て直 流 と し,
チ ョ ッパ で 直 流 電 圧 を制 御 す る.そ の 電 圧 を高 周 波 変 圧 器 の イ ン ダ ク タ ン ス と共 振 用 コ ン デ ンサ で電 圧 共 振 型 イ ンバ ー タ を構 成 し て15kHz以
上 の高 周波 に変換
図
6・34
CTス キ ャナ 用 X 線 電源 装 置
し,変 圧 器 二 次 側 の 高 電 圧 を整 流 して最 大150kVの
X 線 管 用 直 流 電 源 とす る.
回路 構 成 は 自励 他 制 式 電 圧 共 振 型 イ ンバ ー タ で あ る.可 聴 周 波 の 限界 の 共 振 周 波 数 を使 用 す る た め 装 置 を低 騒 音 化 で き,か つ,装 置 の 小 型 ・軽 量 化 が 可 能 とな った.
6
・
4
直流-交 流変換
直 流 電 力 を得 る に は,(1)交 逆 起 電 力,(3)半
流 電 力 の順 変 換,(2)直
流 発 電 機 また は 電 動 機 の
導体 の 光 反 応 に よ る直 流 電 力,(4)電
気 化 学 的 反 応 に よ り発 生
す る直 流 電 力(各 種 電 池)が 述 べ た が,こ
あ る.(1)は
「交 流 間 接 変 換 」 の項 で 多 くの 実 例 を
こで は 前 項 で は触 れ な か っ た例,お
よ び 各 種 電 池 を電 源 と した 交 流
電 力 変 換 の 実 例 を述 べ る.
6・4・1
無停電電源装置
金 融 オ ン ラ イ ン シ ス テ ム,情 報 ・通 信,放 院 手 術 室,化
送 シ ス テ ム,航 空 管 制 シ ス テ ム,病
学 プ ラ ン トな ど公 共 性 の高 く,か っ,重
要 な設 備 に とっ て商 用 電 源
の 一 瞬 の電 圧 降 下,停 電 は許 さ れ な い.停 電 か ら重 要 な シ ス テ ム の 機 能 を守 り, 維 持 す るた め,商 用 交 流 電 源 と電 子 機 器 の 間 に無 停 電 電 源 装 置 を 接続 す る.
無 停 電 電 源 装 置 は,5・2・3項 で 述 べ た よ うに,順
変 換 回 路,蓄 電 池,逆
路 か ら な る 自励 他 制 式 電 圧 形 イ ンバ ー タ 回 路 で あ る.図6・35(a)に
変換 回
回 路 構 成 を,
図(b)に 標 準 的 装 置 の停 電 後 の 負 荷 低 減 率 と交 流 電 力 供 給 可 能 時 間 の 関 係 を 示 す.
(a)
回路 構 成 の例
(b) 標 準的 な 電 力供 給 可能 時 間
図
図6・36に,標
6・35
無 停電 電 源 装置 の 例
準 化 さ れ た無 停 電 電 源 装 置 を示 す.こ
れ ら無 停 電 電 源 装 置 は ま
す ます普 及 す る と思 わ れ る. この 「無 停 電 電 源 」 と6・3・1項 の 「直 流 定 電 圧 電 源 」 と そ の技 術 は,第
1章 の
図1・3で 図 示 し た そ れ ぞ れ の エ レ ク トロ ニ ク ス 分 野 の 「電 源 」 に 応 用 さ れ て お り,重 要 な 役 割 を果 た して い る.
図
無 停 電電 源 装 置の 例(資 料提 供;㈱ 東 芝)
6・36
無 停 電 電 源 装 置 はCVCF(定
電 圧 ・定 周 波 数)イ
ンバ ー タ で あ っ て,そ
の標
準 仕様 の 要 点 は,次 の よ うで あ る.
①
出力容量 の多様化
近 年 の大 型 ∼ 小 型 コ ン ピ ュー タ,パ
も に,無 停 電 電 源 は 出 力300VAか 及 しつ つ あ る.こ
ら20kVAま
で 多 種 類 が 標 準 化 され て 普
の ほ か,特 別 仕様 の もの もあ る.
② 電力供給 可能 時 間 負荷100%の は,1.4kVA以
ソ コ ンの 普 及 と と
とき,停 電 発 生後 の電 力 供給 可 能 時間
下 で は 5分 間,1.5kVA以
上 で は10分
間 とい う標 準 系 列 が
あ る.特 別 仕様 に よ り蓄 電 池 を増 加 す れ ば さ ら に供 給 時 間 を長 くで きる.さ ら に,長 時 間 の 停 電 に 対 応 す る に はエ ン ジ ン付 き交 流 発 電 機(自 家 発 電 機)で 電 力 を供 給 す る.
③
出力電圧波 形
逆 変 換 回 路 にIGBTを
使 用 し,数kHz以
上 のPWM制
御
とフ ィ ル タ 回路 の 最 適 化 に よっ て,出 力 電 圧 波 形 を限 りな く正 弦 波 に近 くな っ て い る.標 準 仕 様 で 電 圧 波 形 歪 み 率 は3%以
④
出力周波数
内 で あ る.
他 制 式 で あ る か ら,出 力 周 波 数 の 精 度 は 制 御 回路 で き ま る.
通 常,安 定 度 の 高 い水 晶 発 振 器 を基 準 と して い るた め,出 力 電 圧 の周 波 数 の 変 動 は ±0.1%以
⑤
下 で あ る.
出力 電 圧 の 過 渡 変 動
フ ィー ドバ ッ ク 回路 とPWM制
御 に よ り,負 荷 急
変 時 お よび 停 電 時 ・復 電 時 の 出 力 電 圧 変 動 は ±5%以 ⑥
順 変 換 回路 い てPWM制
内 で あ る.
順 変 換 回 路 を ダ イ オ ー ド,サ イ リス タで は な く,IGBTを
用
御 す れ ば,装 置 へ の 入 力 電 流 波 形 を改 善 し,力 率 を 1に保 ち
な が ら直 流電 圧 を制 御 して 蓄 電 池 を浮 動 充 電 す る こ とが で きる. 商 用 交 流 のバ イ パ ス 回路 と無 停 電 電 源 装 置 を並 列 に接 続 し て装 置 を常 に ス タ ー ト準 備 状 態 に して お く使 い 方 が あ る.無 停 電 電 源 装 置 の 出 力 側 に 3巻 線 変 圧 器 を 接 続 す れ ば,バ イ パ ス商 用 交 流 と無 停 電 電 源 の 出 力 交 流 との 間,お 間 は 相 互 に絶 縁 され る.バ
よび 負 荷 との
イパ ス商 用 交 流 が 停 電 した と き は,そ の 回 路 の ス イ ッ
チ を開 け ば,負 荷 へ の電 力 は瞬 時 に 無 停 電 電 源 装 置 か ら供 給 され る.商 用 交 流 が 復 電 し てバ イ パ ス 回 路 と並 列 運 転 す る場 合 は,無 停 電 電 源 装 置 の 出 力 電 圧 の 位 相 を検 出 し て 同期 させ,ス
イ ッチ を閉 じ る.
6・4・2 車 両 用 補 助 電 源(14)
直 流 き電 で運 転 され る電 車 に は,冷 房 用 な どの 電 源 と して 三 相 交 流 が 必 要 で あ る.車 両 に搭 載 す るた め,イ
ンバ ー タ は小 型,軽
ー で 低 騒 音 で あ る こ とが 要 求 さ れ る.210kVAの
(a)補 助 電 源装 置 図6・37電
量,高 効 率,メ
ンテナ ンス フ リ
補 助 電 源 を 例 に 取 る と,図6・
(b).主 回 路
車 用 補助 電 源装 置 とそ の主 回 路(資 料提 供;㈱ 東芝)
37の
よ う に,架
線 か ら 直 流1500V
バ ー タ の 直 流 電 源 と す る .従 る.イ
を パ ン タ グ ラ フ で 受 電 し,そ
っ て,補
助 電 源 は 自励 他 制 式 電 圧 型 イ ン バ ー タ で あ
ンバ ー タ は 帰 還 ダ イ オ ー ド付 き1.7kV,400A
相 ブ リ ッ ジ 回 路 を 構 成 し,変 IGBTは
のIGBT12個
御 す る.1990年
ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ が 使 用 さ れ て い た が ,IGBTの
kVAの
で 2組 の 三
圧 器 で 合 成 し て 三 相200V,50/60Hzに
ス イ ッ チ ン グ 周 波 数4.5kHzでPWM制
年 頃 か らIGBTに
の電圧 をイ ン
置 き 換 っ た.4.5kV,1000A
変 換 す る. 代初 期 ではゲ
高 耐 圧 化 に 伴 い1995
級 のIGBTが
で き れ ば210
補 助 電 源 を 6個 で 構 成 で き る.
直 流 回路 の コ ンデ ン サ は,走 行 中 の パ ン タ グ ラ フが 離 線 し た 時 の 電 力 供 給 源 と な る.
6 4 3 ・
・
航空機整備用交流電源
航 空 機 は,主 エ ン ジ ン あ る い は 補 助 エ ン ジ ンで 駆 動 され る400Hz交 を搭 載 し,飛 行 中 は その 電 力 で 自動 操 縦,油 ほか,客 室 の 空 調 ・換 気,客
圧 駆 動,コ
ン ピ ュ ー タ,無 線 通 信 の
室 サ ー ビス を行 っ て い る.
地 上 で の整 備 に は,商 用 交 流 系 統 か ら航 空 機 用 の115/200V,400Hz,三 線 式 に変 換 す る電 源 が 必 要 と な る.図6・38は,400Hz交
6・38
航 空 機地 上 整 備用400Hz交
相 4
流 電 源 の 主 回 路 で,自
励 他 制 式 電 圧 イ ンバ ー タ で あ る.商 用 交 流 電 圧460/420/400V(国
図
流発電機
流 電 源装 置
に よ っ て電 圧
が 異 な る)の 変 圧 器 と ダ イ オ ー ド に よ り直 流 に 変 換 した の ち,PWM制 IGBTブ
リ ッ ジ イ ンバ ー タ に よ り400Hzに
波電 圧 に整 形 して 交 流115/200V 所 要 電 源 容 量 は120kVA級 と し,そ のPWMの
御の
変 換 し,高 調 波 フ ィ ル タ に よ り正 弦
を 出 力 す る.
の た め,大 電 流 のIGBTを
動 作 周 波 数 は数10kHz程
応 答 は良 く,装 置 の 効 率 は92%
1個 ま た は複 数 個 並 列
度 で あ る.負 荷 の 変 動 に対 し て
程 度 で あ る.
商 用 交 流 系 統 と航 空 機 内 の 配 線 は,整 流 器 用 変 圧 器 とイ ンバ ー タ 出 力 変 圧 器 に よ り絶 縁 し,電 磁 波 ノ イ ズ,高 周 波 ノ イ ズ が機 内 に侵 入 しな い よ う に フ ィル タ と 遮 蔽 に考 慮 して い る.
新 エ ネ ル ギ ー 源 の 電 力 変 換(15)
6・4・4 (1)
太陽光発 電シス テム 太陽光発電 システムの余剰電 力 を配 電系統 を通
じて 電 力 会 社 が 積 極 的 に 買 い 取 る施 策 が1992年
に始 ま っ た.そ
の 後,シ
ステム
の価 格 が 低 下 し,ま た シ ス テ ム 設 置 に対 す る補 助 金 制 度 も加 わ っ て,住 宅 用 太 陽 光 発 電 シ ス テ ム が 急 速 に普 及 して い る. 5・4・1項で 解 説 した よ うに,シ
リコ ン太 陽 電 池 エ レ メ ン トを 直 ・並 列 に 接 続 し
た パ ネ ル を多 数 接 続 し て直 流 電 源 とす る.太 陽電 池 に は出 力 最 大 とな る動 作 点 が あ り,こ の 動 作 点 は 日射 強 度 や 太 陽電 池 温 度 な どの 気 象 状 況 に よ り変 化 す る. 通 常,配 電 系 統 に 連 系 す る太 陽 光 発 電 ユ ニ ッ トは,太 陽 電 池 パ ネ ル,イ タ 回路,絶
縁 変 圧 器,お
ンバ ー
よび 最 大 電 力 点 追 従 ・連 系保 護 の 機 能 を もっ た 制 御 装 置
で構 成 され た 他 励 他 制 式 電 圧 形 イ ンバ ー タで あ る.他 励 式 とい っ て も,通 常 は 自 己 オ ン ・オ フ機 能 を も っ たIGBTを
使 用 す る の で,交 流 系 統 か ら転 流 電 圧,進
み電 力 を得 る必 要 は な く,自 励 式 動 作 とな る. 絶 縁 変 圧 器 は,電 圧 の 変 更,単
相 2線 式 と 3線 式 の変 換 な ど系 統 連 系 へ の 自 由
度 は あ るが,こ
の変 圧 器 は個 人 住 宅 用 と し て小 型 ・軽 量 化,低 価 格 化 に 問題 が あ
っ た.最 近,変
圧 器 を省 略 した いわ ゆ る トラ ン ス レス イ ンバ ー タ ユ ニ ッ トが 市 販
され て い る.図6・39に,太 トの主 回路 を示 す.
陽 光 発 電 ユ ニ ッ トと トラ ン ス レ ス イ ンバ ー タ ユ ニ ッ
図6・39 太 陽光 発電 シ ステム と主 回路
ユ ニ ッ トの 出 力 を配 電 線 に 連 系 す る と き,イ
ンバ ー タ の 出 力 電 流 に直 流 分 が 含
まれ る と柱 上 変 圧 器 を直 流 偏 磁 させ る恐 れ が あ る.こ
の た め 高 精 度 の 直 流 分検 出
回路 で 直 流 電 流 分 を極 小 化 す る必 要 が あ る. 直 流 電 力 の う ち一 つ は太 陽 電 池 パ ネル か ら直 接 に,も
う一 つ は 太 陽 電 池 を入 力
定 格電 力 3,5kW 定 格 入力電 圧 直 流200V 入力電 圧 範 囲 直 流160-350V 定 格交 流 出 力電圧 101V(単 相 3線) 出力 周波 数 50/60Hz 電 力変 換効 率 93% 以 上 付 加機 能 系統 電圧 バ ラ ン ス制 御
系統電圧上昇抑制機能 冷 却 方式 外 形
系統 連 系の ため の諸 機 能 自然冷却 580W ×330H ×180mmD
重
20.5kG
量
取 付け 方 法
壁 面固定
図6・40 配 電線 に 連 系 で きる住 宅 用太 陽 光 発電 シ ステ ム(資 料 提 供;㈱ 東芝)
と した コ ンバ ー タ 回 路 か ら供 給 さ れ る.イ
ンバ ー タ 回 路 はIGBTを
の単 相 ハ ー フ ブ リ ッ ジ 回 路 で 単 相 3線 出 力 と し,IGBTは よ り出力 電 圧,電
流 お よ び波 形 を制 御 す る.負 荷 が50%
換 ユ ニ ッ トの 効 率 は93%
高 周 波PWM制
御に
か ら定 格 出 力 まで の 変
以 上 とな っ て い る.太 陽 電 池 パ ネ ル の 端 子 と交 流 3線
の 中 線 を 接 地 し て 電 位 を 固 定 して い る.図6・40に,太 3.5kWト
用 い た 2組
陽 電 池 パ ネ ル と住 宅 用
ラ ンス レ ス イ ンバ ー タ を示 す.
(2) 燃 料 電 池 を電 源 と した電 力 シ ス テ ム 5・4・1項で 述 べ た よ うに,燃 料 電 池 は 天 然 ガ ス か ら水 素 を取 り出 し,そ れ と空 気 中 の酸 素 と電 解 質 の 電 極 を介 し て電 気 化 学 的 に 反 応 させ て直 流 電 力 を取 り出 す 方 法 で,硫 黄 や 窒 素 酸 化 物 の放 出 は な く,高 い 発 電 効 率 の た め,将 来 の 普 及 が 期 待 さ れ て い る.す で に11MW, 1MW級 は200kW級
の 大 型 燃 料 電 池 プ ラ ン トを試 作 し,実 証 試 験 して 実 績 を得 た が,現 在 の オ ンサ イ ト型 燃 料 電 池 プ ラ ン トの普 及 が 進 め ら れ て い る.
燃 料 電 池 プ ラ ン トは,燃 料 電 池 本 体,イ
ンバ ー タ とそ の 交 流 出 力 を配 電 系 統 に
連 系 す るた め の 制 御 装 置 か らな る シ ス テ ム で,自 己 オ ン ・オ フ 機 能 を もつIGBT あ るい は ゲ ー トター ンオ フ サ イ リス タ を使 用 した 自励 自制 式 電 圧 形 イ ンバ ー タ で あ る.図6・41に,200kW燃
料 電 池 用 三 相PWMイ
直 流 電 圧 運 転 範 囲(燃 料 電 池 の 出 力)は165∼224V,交
図6・41燃
ン バ ー タ の 主 回 路 を 示 す. 流 出 力 は三 相210V,
料 電 池 を電源 と した電 力 シス テム(資 料 提供;㈱ 東 芝)
変 換 効 率 は94%
で あ る.使
用 し て い るIGBTは600V,800A
の ス イ ッ チ ン グ 周 波 数 は1.98kHzで (3)
を36個,PWM
あ る.
蓄 電 池 を電 源 と した 交 流 電 力 供 給 シ ス テ ム(16) 1日 の 時 間 経 過 で 電
力 の 需 要 の変 化 を見 る と,夜 間 の 電 力 需 要 は 1日 の平 均 値 を下 回 り,昼 間 は上 回 る.こ の よ うな需 要 の 変 動 に 対 して は 発 電 機 の 出 力 制 御,揚
水 発 電 機,他
の系統
か らの電 力 の 融 通 で対 応 して い る. 電 力 の 需 要 変 動 へ の 対 応 策 の 一 つ と し て,5・4・1項 で 述 べ た 充 ・放 電 可 能 な 蓄 電 池 を電 力 源 と した大 容 量 の電 力 貯 蔵 実証 試 験 設 備 が 大 阪 市 生 野 区 に あ った . これ は通 産 省 の ム ー ン ラ イ ト計 画 に基 づ き,新 エ ネ ル ギ ー総 合 開 発 機 構 の 委 託 を受 け て 関西 電 力(株)が 建 設 した 巽 電 力 貯 蔵 試 験 所 で,現 在 で は そ の 目 的 が 完 了 し,徹 去 さ れ て い る. 電 力 源 は,端 子 電 圧 2V,7500Ahの 流1025V
新 開 発 鉛 蓄 電 池526個
を直 列 接 続 して 直
の 電 源 を構 成 して い る.夜 間 は充 電 期 間 と し,昼 間 は4000 kWh(1
000kW(約500世
帯 の 電 力 需 要 に 相 当)×4時
間)の
電 力 を放 出 す る .逆 変 換
回 路 は ゲ ー トタ ー ンオ フサ イ リス タ を用 い た 自励 式 電 圧 形1000kWイ で,1200kVAの
出 力 変 圧 器 を介 して6.6kVの
要 の 変 動 に対 応 して い る.図6・42に
図
6・42
ンバ ー タ
市 街 地 配 電 線 に連 系 し,電 力 需
その 実 験 時 の 主 回路 を示 す.
蓄 電 池 を電 源 とした電 力貯 蔵 実 証試験 設備 の 主 回路
東 京 電 力 で は,上 記 の 電 力 需 要 の 変 動 対 策 と して,鉛 電 池 で は な く,ナ ム ・硫 黄 電 池 を電 源 と して,6000kWの
トリ ウ
設 備 を設 置 す る計 画 を進 め て い る.
引 用
文
献
(1)
桜 井 ほか ;「新 信 濃 周 波 数 変 換 所 」,P.1-9,7
月,昭51,OHM
(2)
桜 井 ほ か ;「新 信 濃300MW周
(3)
沢 ;「新 信 濃 変 電 所 」,P.61-70,6
(4)
田中 ;「新信 濃 2号FCの
(5)
水 野 ;「周波 数変 換設備 へ の適 用」,平 成 7年,電 気 学会全 国大 会
(6)
関 田 ほか ;「系統 間連 系設備 へ の適用 」,平 成 7年,電 気学 会全 国大 会
(7)
竹 之 内 ;「北 海 道 ・本 州 間 電 力 連 系 設 備 の概 要 」,P.43-50,8
波 数 変 換 設 備 」, P.52-57,昭53,東
芝 レ ビュー
月,'91,OHM
建 設 」,平 成 5年,電 気学 会全 国大会
月,昭55,電
気学会雑誌 (8)
鯉 沼 ;「北 本 増 設 設 備 の建 設 」,S.15-3,平
(9)
長 谷 川 ほ か;「 紀 伊 水 道 直 流 連 系 設 備 の 計 画 」,P.61-65,5
(10)
松 林 ほか
(11)
小 林 ほ か ;「光 サ イ リス タ の 直 流 送 電 へ の 応 用 」 P.419-23,5
;「パ ワ ー デ バ イ ス 技 術 」,P.7-10,6
成 5年,電
月,'94,東
気学会 全 国大 会 月,'96,電
気 評論
芝 レビ ュー
月,'83,東
芝
レ ビュー
(12)
石 崎 ほ か ;「交 直 変 換 所 用 酸 化 亜 鉛 形 避 雷 器 」,P.13-3,平
成 4年,電
気学会
全国大会 (13)
金 井 ほ か ;「電 力 シ ス テ ム へ の 自 励 式 イ ン バ ー タ の 適 用 」,P.10-15,4 '96
(14)
,東
月,
芝 レビュー
末 吉 ;「パ ワ ー デ バ イ ス の 開 発 と鉄 道 車 両 の 動 向 」,P.7-11,1
月,'95,
東芝 レ ビュー
(15)
横 山 ほ か ;「新 ・省 エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム へ の 自励 式 イ ン バ ー タ の 適 用 」,P.16-
21,4
(16)
月,'96,東
芝
レ ビ ュ ー
国 吉 ほ か ;「電 池 電 力 貯 蔵 シ ス テ ム と変 換 装 置 へ の パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス の
適 用 」,P.65-68,2
月,'89,OHM
演
習
問 題
〔6〕
〔 問題〕1.直 流 送電 方 式が 交流 送電 方 式 に比 べ て有利 な点 は何 か.
〔 問 題 〕2.直
列 に接 続 した サ イ リス タ を ト リガ す る と き の 方 法 を述 べ,ど
の 方法 が よ い
か そ の 理 由 を説 明 せ よ.
〔 問 題 〕3.無
効 電 力 補 償 装 置 の 回 路 構 成 を述 べ,そ
〔 問 題 〕4.無
停 電 電 源(UPS)の
の 動 作 と効 果 を説 明 せ よ.
構 成 と動 作 を説 明 し,そ
の 主 た る 用 途 を述 べ よ.
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 応 用
第 7章
(そ の 2)
−電動 機 への応 用−
戦 後 の 日本 の復 興 期 を先 導 した 製 鉄 ・製 鋼 業 界 で は,1960年 の 圧 延 設 備 の主 機 と補 機 の 駆 動 電 源 は電 動 発 電 機(ワ 銀 整 流 器(静
止 レ オ ナ ー ド)で あ っ た.
1960年 に入 っ て 実 用 し得 る サ イ リス タ が 開 発 さ れ,そ が2500V,500A
に 達 した1965年
の 定 格 電 圧,定
イ リス タの 性 能 向上 と併 行 して,自
ー タ,GTOイ
ンバ ー タ, IGBTイ
銀整 流器 は消滅 し
己 オ ン ・オ フ機 能 を持 っ た パ ワ ー トラ
ン ジス タ,ゲ ー トタ ー ンオ フサ イ リス タ(GTO), は,電 力 の デ ジ タ ル 化 で あ るPWM制
格電 流
以 降 は サ イ リス タ(サ イ リス タ レ オ ナ ー ド)
が 主 役 の 座 を 占 る よ う に な り,そ れ と同 時 に 電 動 発 電 機,水 た.サ
代 半 ば まで はそ
ー ドレ オ ナ ー ド)お よ び 水
IGBTが
開 発 され た.一
御 に よ る チ ョ ッパ,電
方で
圧 ・電 流 形 イ ン バ
ンバ ー タ お よ び サ イ ク ロ コ ンバ ー タ な ど,応
用 回路 が 開 発 され て,電 動 機 の 出 力 1kW以
下 か ら数10 MW以
上 まで,需
要家
が 期 待 す る制 御 ・運 転 特 性 に応 え られ る よ う に な った. 電 動 機 の 種 類 と駆 動 方 法 の例 を図7・1に,わ
が国の圧延用電動機 駆動 システム
の 歴 史 の概 要 を 図7・2に 示 す.
図7・1 各種 電動 機 の駆 動 方 法
図
7
・
2
電 動機 の種 類,圧 延 機 駆動 シ ステ ム とデ バ イ スの 歴 史
1970年 後 半 に 入 っ て,従 来 の 直 流 機 に代 わ っ て誘 導 電 動 機 の ベ ク トル 制 御 法 が 実 用 され る よ う に な り,圧 延 機 の補 機 に採 用 さ れ た.現 在 で は,圧 延 機 主 機 の 数1000kW級
の 誘 導 電 動 機 を サ イ リス タ とベ ク トル 制 御 で 駆 動 す る交 流駆 動 シ
ス テ ム が 実 用 され て い る.図7・2に,わ
が 国 の圧 延 用 電 動 機 駆 動 シス テム の歴 史
を示 す. この よ う に,電 動 機 駆 動 へ の パ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス の 応 用 は,1960年
代後
半 か ら主 役 の座 を 占 め て お り,今 後 も続 く こ とは疑 い な い. 一 方,電 動 機 の応 用 面 か ら見 る と,そ の 電 動 機 出 力 と回 転 数 の 関 係 は,図7・3 の よ う に右 下 りの傾 向 に な る.例 は10MW以
えば,熱 間 圧 延(ホ
ッ ト ミル)用
電動機 の出力
上 に 達 す る が 回転 数 は低 く,一 方,研 磨 機 な ど は 出 力 は小 さ い が 回
転 数 は50000rpm以
上 に な る.
図7・3は 一 例 で あ るが,こ は,製 鉄 ・非 鉄,製
の よ う なパ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス の 電 動 機 へ の応 用
紙,化 学 の 重 工 業 の ほ か一 般 産 業,工
の み な らず,電 車,昇
作 ・加 工 機 な どの 分 野
降 機 な どの 交 通 シ ス テ ム 分 野 に も広 が り,さ らに 多 方 面 に
発 展 しつ つ あ る.こ の よ うに,パ
ワー エ レク トロニ ク ス は我 々 の 生 活 と経 済 活 動
図
7・
3
電動 機 応用分 野 の電動 機 出力 と回転数 の 関係
に 密 着 し て い る.
7
・
1
電動機の原理 と制御
電 動 機 の種 類 を大 別 す る と,直 流 電 動 機,誘
導 電 動 機,同
期 電 動 機 に な る.
これ らの 電 動 機 の 運 転 形 態 は,回 転 方 向 と トル ク の方 向 に よ っ て,図7・4の う に四 つ の 象 限 が あ る.一 方 向 の電 動 機 運 転,す 象 限 運 転,そ 転,逆
よ
な わ ち加 速 ・可 変 速 制 御 は第 一
の 回転 エ ネ ル ギ ー を 電 源 に戻 す 発 電 制 動 ・回 生 運 転 は 第 二 象 限 運
方 向 の加 速 ・可 変 速 制 御 は第 三 象 限 運 転,そ
の 発 電 制 動 ・回 生 運 転 は 第 四
象 限運 転 と な る.正 転 ・逆 転 を含 む電 動 機 の加 減 速 ・回 生 運 転 は 四 つ の 象 限 を通 過 す る運 転 に な る. 次 に,こ れ ら電 動 機 の 動 作 原 理,運 転 形 態 に適 した 回 路 と制 御 に つ いて 説 明 す る.
図
7・1 ・1
(1)
7・4
電動 機 の四 象 限運 動
直流電動機 基本特性
サ イ リス タ 順 変 換 装 置 に よ っ て,界 磁 巻 線 が 独 立 した 分 巻
直 流 電 動 機 を運 転 す る場 合 の 回 路,直 図7・5に
流 電 動 機 の 等 価 回 路,電
示 す.
(a)
(b)
原理 図 図
7・5
運動方程式
直流 電動 機 の 原理 と運 動 方程 式
圧-電 流 方 程 式 を
こ こで,φfは
界 磁 が 作 る 有効 鎖 交 磁 束 で,
φf=Mif Teは
(7・1)
発 生 トル ク で,p
を 磁 極 対 数 と し て,
Te=pφfia
(7・2)
従 っ て,電 機 子 電 流iaと 界 磁 電 流ifの 一 方 あ る い は 両 方 を制 御 す る こ とに よ り発 生 トル クTeお
よ び 回転 角 速 度 ωrを 制 御 で き る.
電 動 機 と し て 回転 中 の誘 導起 電 力emは, υa=em+Raia=(pωrφf)+Raia
υa>emで
あ れ ば,電
電 動 機 は 減 速 ・回 生(第
(7・3)
動 機 は 力 行(第 二 象 限)運
一 象 限)運
転 で あ り,υa<emで
あ れ ば,
転 を 意 味 す る.
回転 速 度 n は,電 機 子 導体 総 数 を z,電 機 子 回 路 対 数 を a とす る と, (7・4)
直 流 電 動 機 の 回 転 数 と電 機 子 電 圧,界 磁 電 流,ト
ル ク の 関 係 を図7・6に 示 す.
この 図 で,界 磁 電 流 が 一 定 の 領 域 で は, 回 転 数 に 関 係 な く電 機 子 電 流 と発 生 トル ク は比 例 した 定 トル ク領 域 を示 し,逆 起 電 力 が 一 定 な 領 域 で は 回転 数 に関 係 な く 電 機 子 電 流 と出 力 が 比 例 す る定 出 力 領 域 図7・6 他 励 直 流電 動 機 の特 性
とな る.
(2) 直流電 動機の 可変速運転 お よび可逆運転 (a) 可 変 速(非
可 逆)運
転(第 一 象 限 運 転)
サ イ リス タ と直 流 電 動 機 を組
み合 わ せ た 回転 数 制 御 シス テム をサ イ リス タ レ オ ナ ー ドとい う.そ の 基 本 的 制 御 系 を 図7・7(a)に 示 す.直 流 電 動 機 の 回転 数 は,軸 に 直 結 し た 速 度 検 出器 か ら速 度 に比 例 した 電 圧 また はパ ル ス 数 を比 較 信 号 と して制 御 回路 に入 れ て速 度 指 令 信 号 と比 較 し,両 者 の 差 が 0とな る よ うに サ イ リス タ の ゲ ー ト位 相 を制 御 し,直 流 電 圧 す なわ ち 電 機 子 電 圧 を制 御 す る.
(a) サ イ リ ス タ レ オ ナ ー ド
(b) チ ョ ッ パ
(c) トラ ン ジ ス タ レ オ ナ ー ド
図7・7 直 流電 動 機 の 可変 速(非 可 逆)運 転 の主 回 路 と制 御 系
この 図 で は,界 磁 電 流,電 機 子 電 流 と も に一 方 向 な の で,逆 転 ・回生 運 転 は で きず,第 一 象 限 の み の 可 変 速 運 転 しか で き な い.電 機 子 回 路 に ス イ ッチ と抵 抗 を 付 け れ ば 発 電 制 動 に よ る減 速 はで き る. 同 図 の サ イ リス タ ブ リ ッ ジ の 代 わ りに,PWM制 MOSFET,IGBTか で き る.図(a)で
御 した チ ョ ッパ,あ
るいは
ら な る可 変 直 流 電 源 を使 用 して も同様 な第 一 象 限 の 運 転 が は,サ イ リス タ の制 御 角 に よっ て 交 流 電 源 の 所 要 無 効 電 力 は 変
化 す る が,図(b),(c)で
は 力 率 を ほ ぼ 1に 保 ち な が ら電 機 子 電 圧 をPWM制
御 で 可 変 で き,直 流 電 動 機 の 回 転 数 を制 御 で き る.
(b) 可逆運転(全 象限運 転) 1) サ イ リス タ ブ リ ッジ 回 路 直 流 電 動 機 を 四象 限運 転,す 加 速 ・減 速(回 か,ま
な わ ち正 ・逆 転,
生 制 動)運 転 す る た め に は,電 機 子 端 子 電 圧 の 極 性 を切 り換 え る
た は界 磁 端 子 電 圧 の極 性 を切 り換 え る必 要 が あ る.こ の た め に は図7・8の
方 法 が あ る.図(a)は
2組 の サ イ リス タ ブ リ ッ ジ を循 環 電 流制 限 用 リア ク トル を
介 し て十 字 結 線 と し,一 方 を順 変 換 動 作,他 流(通 常 は 定 格 電 流 の数 % 程 度)を
方 を逆 変 換 動 作 させ て小 さ な循 環 電
両 ブ リッ ジ 回 路 に 流 す こ と に よ っ て 直 流 電
動 機 を 円 滑 に全 象 限 の運 転 を行 う.図(b)は
循 環 電 流 制 限 用 リア ク トル を省 略 し
(a) 十 字結 線 式
(b) 逆 並 列結 線 式
(c) 電 機子 切 換 式
(d) 界磁 切換 式
図7・8 直流 電動 機 の 可逆 運 転 の 主 回路
て二 つ の ブ リ ッ ジ回 路 を 逆 並 列 に接 続 し た 方 法 で,両
回路 が 短 絡 しな い よ うに 互
い にゲ ー ト位 相 を制 御 す る.こ の制 御 上 の デ ッ ドタ イ ム の た め に 象 限 の 移 行 に わ ず か の 時 間 を要 し,可 逆 運 転 の 円 滑 さ は図(a)よ り劣 る.図(c)は
電 機 子 回路 に
機 械 的 切 換 ス イ ッ チ を接 続 し,運 転 指 令 に よ りス イ ッチ を動 作 さ せ て 電 機 子 電 圧 の極 性 を切 り換 え て可 逆 運 転 させ る方 法 で あ る.1 組 の 三 相 ブ リ ッジ 回 路 は切 換 指 令 に よ り順 変 換,逆 変 換 の 両 方 の 動作 を す る.1 組 の ブ リ ッジ 回路 で 済 む利 点 は あ るが,機 械 的 ス イ ッチ の 切 換 動 作 時 間 遅 れ,騒 音,保 る例 は見 な い.図(d)は
守 の た め 実 用 され て い
界磁 巻 線 に 2組 の サ イ リス タ ブ リッ ジ回 路 を逆 並 列 接 続
して 界 磁 電 流 の 方 向 を切 り換 え る方 法 で あ る.電 機 子 電 流 を通 電 中 に 界 磁 電 流 を 切 り換 え る と,一 時 的 に 弱 め界 磁 と な っ て 回転 数 が 異 常 に高 くな る恐 れ が あ る た め,電 機 子 電 流 を い っ た ん 0に して か ら切 り換 え る. 2) 可 逆PWM回
路 図7・9の よ う に,自 己 オ ン ・オ フ機 能 を持 っ た デ バ イ
ス(バ
イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ,MOSFET,IGBT,ゲ
タ)を
ブ リ ッ ジ に接 続 し,そ の 中間 に直 流 電 動 機 を接 続 す る.こ の ブ リッ ジ 回路
の 出 力 電 圧,す
ー トタ ー ン オ フ サ イ リス
なわ ち電 機 子 電 圧 の極 性 は,正 転 ・逆 転 の 指 令 に応 じて 正 ま た は
負 に な る よ う にPWM制
御 す る.
図7・9 可 逆PWM制
ブ リ ッ ジ 回路 の 出 力 電 圧,出 直 流 電 動 機 の 回 生 制 動,逆
御 に よ る直流 電動 機 の 可 逆運 転
力 電 流 は いず れ の 方 向 も と る こ とが で き る の で,
転 が 可 能 で あ り,四 象 限運 転 が 可 能 で あ る.
デ バ イ ス の 特 性 に よ るが,PWM周 る の で,サ
波 数 を1∼20kHz程
度 に選 ぶ こ とが で き
イ リス タ レオ ナ ー ド方 式 に比 べ て電 動 機 の 速 応 制 御 性 に 優 れ て い る.
3) PLL(Phase で は,PWM制
Locked Loop;位
相 同 期 ル ー プ)速 度 制 御 図7・9の 回 路
御 に よ り トル ク,す な わ ち電 機 子 電 流 を精 度 よ くか つ 応 答 よ く制
御 で き る.PLL速
度 制 御 と は,回 転 位 相 指 令 と実 際 の 回 転 位 相 の 差 に比 例 した
トル ク を発 生 させ る こ と に よ り,回 転 位 相 指 令 に 同期 して電 動 機 を回 転 さ せ る も の で あ る.PWM制
御 の 特 徴 で あ る機 能 にPLL制
御 を 加 え て,電
動 機 を高 精 度
パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス に よ る 誘 導 電 動 機 の 速 度 制 御 は,1970年
代 に実用 化
の 回 転 数 制 御 を行 う 方法 で あ る.
7・1・2 誘 導 電 動 機
が 始 ま っ た.こ able Frequency)イ
の 頃 は,可
変 電 圧 可 変 周 波 数(VVVF;Variable
ン バ ー タ と し て,交
流出力電圧
Voltage Vari-
V と そ の 周 波 数 f の 比V/f
を 一 定 に し つ つ f を 可 変 と し た 誘 導 電 動 機 の 電 源 と し て 応 用 さ れ た.
1970年 代 後 半 に,自 己 オ ン ・オ フ機 能 を もっ た 大 電 力 の デ バ イ ス が 開 発 さ れ, それ を使 用 したPWM制
御 電 圧 形 イ ンバ ー タが 誘 導 電 動 機 の駆 動 に 実 用 さ れ る
よ う に な っ た.こ の 頃,誘
導 電 動 機 を直 流 電 動 機 並 に応 答 よ く トル ク制 御 で き る
「ベ ク トル 制 御 」 が 開 発 さ れ た.こ
の技 術 が 電 圧 形 イ ンバ ー タ と結 び 付 い て,従
来 の サ イ リス タ レオ ナ ー ドに よ る直 流 電 動 機 駆 動 シ ス テ ム か ら,ベ ク トル 制 御 の 誘 導 電 動 機 駆 動 シ ス テ ム が 重 工 業,一
般 産 業 用,交 通 ・輸 送 用 な ど広 い 分 野 に応
用 さ れ る よ う に な っ た.現 在 で は,こ の シス テ ムが パ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス の電 動 機 へ の 応 用 の 主 役 に な っ て い る.
(1)誘 導電動機 の等 価 回路 か ご形誘 導電動 機 の原理 と等価 回路 を図7・ 10に 示 す.
(b)等 価 回路
(a)構 造 の原 理
(c)図(b)の
ベ ク トル 図
図7・10 か ご形誘 導 電動 機 の 原理 と等価 回路
か ご形 誘 導 電 動 機 の場 合,固
定 子 巻 線 に 三 相 交 流 電 圧 を 印 加 す る と電 流 が 流
れ,磁 束 φMの 回 転 磁 界 が 生 じ,励 磁 リア ク タ ン ス をXM,励
磁 電 流 をIMと
す
れ ば, (7・5)
φM=XMIM
と な る.誘 導 電 動 機 が 無 負 荷 の と き,そ の 電 流 はIMに は,φMは
ほ ぼ 等 し い(直 流 機 で
界 磁 電 流 に よ る磁 束 に相 当 す る).
この 励 磁 電 流IMに
よ る回転 磁 界 を か ご形 回 転 子 の 導 体 バ ー が 横 切 る と回 転 子
に 起 電 力 が 誘 起 して 二 次 電 流I2が 流 れ る.こ の 電 流 と回 転 磁 界 との 間 に,フ ミ ン グの 法則 に よ っ て トル クがTeが
発 生 す る(直 流 機 で は,I2は
レ
電機子 電流 に
相 当 し,こ の 電 機 子 電 流 と界 磁 磁 束 に よ り トル ク を発 生 す る). この トル ク は,回 転 子 導 体 バ ー の 鎖 交磁 束 と二 次 電 流 の積 に よっ て 決 ま り,ト ル ク を発 生 す るた め に はIM,I2が 必 要 で あ る. 交 流 電 源 か ら電 動 機 に流 れ る電 流I1は,ベ
ク トル 表 示 す れ ば,
I1=IM+I2
(7・6)
I1の 絶 体 値 と,そ の 角 度 を θ とす れ ば,次 の 式 とな る. (7・7)
(7・8)
二 次 電 流I2が 流 れ る た め に は,回 転 磁 界 の 周 波 数(交 回転 子 の 回転 周 波 数frに 差 が な けれ ば な ら な い.そ
流 電 圧 の 周 波 数)f
と
の差 が す べ り sで あ り, (7・9)
とな る.s=0,す
な わ ちf=frで
は,回 転 子 導 体 バ ー は 回転 磁 界 を横 切 らな い の
で トル ク は発 生 し な い.同 期 速 度 N は,電 動 機 の 極 数 を p とす れ ば (7・10)
ま た,回
転 子 の 回 転Nrは,s=(N-Nr)/Nか
ら,次
式 と な る.
Nr=N(1-s) 従 っ て,回
転 数Nrを
(7・11)
制 御 す る に は,f
あ る い は s を 制 御 す れ ば よ い.
トル クTeは,定
数 をK1,K2, K3,電
動 機 出 力 を P と し て,次
の 関 係 が あ る.
(7・12)
(2)
か ご形誘導 電動機 の可変速運転
(a)
基本特性
交 流 電 圧,周 波 数 が 定 ま っ た 交 流 電 源 で 誘 導 電 動 機 を駆 動 し
て い る時 の 特 性 を 図7・11(a)に 示 す.負 荷 を 駆 動 す る に 必 要 な トル ク に達 す る と こ ろ まで 電 動 機 電 流 が 増 加 して トル ク を発 生 し,電 動 機 は そ の 時 の 回 転 数,す べ り sで 回 転 す る.同 期 速 度 で は,ト ル ク は 0で あ る. 電 動 機 の 回転 数 が 同 期 速 度 で 決 ま る回 転 数 よ り も高 くな る と,ト ル ク は 負 とな って 制 動 力 が 生 じ る.電 源 回 路 に 回 生 能 力 が あ れ ば 回 転 エ ネ ル ギ ー は電 源 に 回生
(a)基 本特 性
(c)V/f一
図
定制御 7・11
(b)端 子 電圧 特 性
(d)V/f一 定+端 子電 圧 制 御 誘 導電 動 機 の 回転 数-ト ル ク特 性
さ れ て 減 速 す る.従 っ て,イ
ンバ ー タ回 路 の 出 力 周 波 数 を電 動 機 の 回 転 数 で 決 ま
る 周 波 数 よ り も下 げ る よ うに 制 御 す れ ば,電
動 機 に制 動 トル クが 生 じ,減 速 す
る. (b)
す.発
電 動機 の端 子電 圧制 御
図(b)に 端 子 電 圧 を 制 御 し た と き の特 性 を 示
生 トル ク は端 子 電 圧 の ほ ぼ 2乗 に比 例 す る.こ の 制御 法 は送 風 機 の よ う な
負 荷 に は適 す るが,定 V/f一 定 制 御
トル ク負 荷 で は狭 い範 囲 で の 回転 数制 御 しか で き な い. こ の 方 法 で は,図(c)の
よ う に,周 波 数 の 低 下 と共 に
最 大 トル ク は減 少 す る.こ の 方 法 は,送 風 機,ポ
ン プ な ど,低 速 度 で所 要 トル ク
(c)
が 小 さ くて済 む 用途 に適 す る.工 作 機,ク
レ ー ンの よ う に低 速 度 領 域 で も大 きな
トル ク を必 要 とす る よ うな 用途 に は,電 動 機 の端 子 電 圧 を高 め て,図(d)の
よう
に,低 速 度 で も最 大 トル ク が で る よ うな 制 御 法 を用 い る. 回転 数 制 御 に 当 た っ て,電 動 機 の 軸 か ら検 出 した 回 転 数 信 号 を制 御 シス テ ム に 加 え て 回転 数 補 正 した のが(セ
ンサ 付 き)ベ ク トル 制 御 で,一 方,回 転 数 信 号 の
代 わ り に電 動 機 電 流 か ら回転 数 を推 測 して 回 転 数 補 正 した の が セ ンサ レス ベ ク ト ル 制 御 で あ る. (3)
巻 線形誘導 電動機の可 変速 運転 (サ イ リス タセ ル ビウ ス 方 式)
形 誘 導 電 動 機 で は,か
巻線
ご形 と同様 に電 動 機 端 子 電 圧 また は そ の 周 波 数 に よ っ て,
あ る い は二 次 側 の巻 線 に誘 起 す る電 圧 を制 御 す る こ とに よ っ て 回 転 数,ト
ル クを
制 御 す る.巻 線 形 誘 導 電 動 機 が す べ り sで 回 転 し て い る と き,そ の 二 次 巻 線 に は sに 比 例 した 二 次 電 圧 が 誘 起 し,負 荷 トル ク で 定 ま る二 次 電 流 が そ の 巻 線 に 流 れ る.従
っ て,こ の誘 起 電 圧 を二 次 巻 線 に 接 続 した 外 部 回 路 に よ っ て制 御 す れ
ば,負 荷 トル ク に見 合 った 回転 数-ト ル ク特 性 で 回 転 す る.す な わ ち,図7・12の よ う に,二 次 巻 線 に 接 続 した 抵 抗 の 制 御,あ
る い は 二 次 誘 起 電 力 を 交 流-交 流 変
換 で 交 流 電 源 に 回生 す れ ば効 率 よ く回 転 数 を制 御 す る こ とが で き る. この よ うな 回 転 数 制 御 方 式 を セ ル ビ ウス 方 式 とい い,ポ
ン プ,送 風 機 な どの 比
較 的 大 容 量 の 巻 線 形 誘 導 電 動 機 を狭 い 回 転 数 制 御 範 囲 で 運 転 す る の に適 す る.
図
(4)
7・12
巻線形誘導電動機の可変速運転
電圧 形イ ンバ ー タによるか ご形誘導電 動機の可 変速運転
交 流 電 力 間 接 変 換 電 圧 形 イ ン バ ー タ(イ 主 回路 と制 御 回 路 の構 成 を示 す.イ
ンバ ー タ をPWM制
御 しな い場 合)の
ンバ ー タ の 交 流 出力 電 圧 は直 流 電 圧 に比 例 す
る の で,順 変 換 回 路 の位 相 角 制 御 に よ る直 流 可 変 電 圧,ま のPWM制
図7・13に,
御 に よ る直 流 可 変 電 圧 で 制 御 す る.イ
た は直 流 チ ョ ッパ 回路
ンバ ー タ の 出 力 周 波 数 は 制 御
回路 の 周 波 数 指 令 に よ っ て 決 ま る.電 圧 形 イ ンバ ー タで あ るか ら交 流 出 力 電 圧 波 形 は矩 形 波 状 とな り,電 流 波 形 は正 弦 波状 とな る.
図
7・13
電 圧 形 イ ンバ-タ に よるか ご形誘 導 電動 機 の可 変速 運 転 の 回路構 成
始 動 の 際 は,電 動 機 の 電 流 が 規 定 値 を超 え な い よ う に徐 々 に 周 波 数 を高 め て い く.電 動 機 の イ ン ダ ク タ ン ス の エ ネ ル ギ ー を電 源 に帰 環 させ るダ イ オ ー ドを イ ン バ ー タ 用 デ バ イ ス に 逆 並 列 に 接 続 す る. 電 動 機 の 制 動 に は,直 流 回路 に接 続 した デバ イ ス(ス イ ッチ)と 抵 抗 か らな る 制 動 回路 に よ り電 動 機 の エ ネ ル ギ ー を 消 費 させ る.さ
ら に大 きな エ ネ ル ギ ー を電
源 に 回生 させ るた め に は,順 変 換 回路 に 逆 並 列 に イ ンバ ー タ 回路 を接 続 す る. 電 動 機 の 正 転 ・逆 転 は リ ング カ ウ ンタ の シー ケ ンス,す
なわち出力三 相交流 の
相 回転 を切 り換 え る こ と に よ り行 う. 電 圧 形 イ ンバ ー タ は,そ
の直 流 回路 の 大 き な コ ンデ ンサ に よ って 電 動 機 側 か ら
電 源 側 をみ た イ ン ピー ダ ン ス が 小 さ い た め,負 荷 側 に 多 数 の誘 導 電 動 機 を並 列 に 接 続 して も相 互 干 渉 や 自己 励 磁 現 象 が 起 こ りに く く,誘 導 電 動 機 の グ ル ー プ制 御 に適 して い る. (5)
電流 形 インバ ー タによ るか ご形誘 導電動機の 可変速運転
図7・14は,
交 流 電 力 間 接 変 換 電 流形 イ ンバ ー タ の 主 回 路 で,電 流 検 出 信 号 を制 御 回 路 に入 れ る以 外 は 動作 は基 本 的 に電 圧 形 と同 じで あ る.
図7・14 電 流 形 イ ンバ ー タに よ るか ご形 誘導 電動 機 の 可変 速 運転
誘 導電 動機 の 漏 れ イ ンダ ク タ ン ス の エ ネ ル ギ ー に よ っ て転 流 コ ン デ ンサ の 電 圧 が 高 くな るの で,こ
れ を 吸 収 す るた め の付 加 回 路 を必 要 とす る.
電 流 形 イ ンバ ー タ で は,順 変 換 側 お よ び 逆 変 換 側 の ゲ ー ト位 相 制 御 に よ り電 力 の 流 れ る方 向 を変 え られ るの で,誘 導 電 動 機 の 制 動,回 生 運 転 が 可 能 で あ る.
電 流 形 イ ンバ ー タ で あ る か ら交 流 出 力 電 流 波 形 は矩 形 波 とな り,電 圧 波 形 は正 弦 波 状 とな る. 正 転 ・逆 転 は相 回転 を変 え る こ と に よ っ て 制 御 す る. 電 流 形 イ ンバ ー タ で は,直 流 回路 の 大 きな リア ク トル のた め に 電 動 機 側 か ら み た 電 源 側 の イ ン ピ ー ダ ン スが 大 きい の で,誘
導 電 動 機 群 の グ ル ー プ 制 御 に は適 さ
な い.こ の た め,こ の 回 路 は主 と して 電 動 機 の 単 機 可 変 速 運 転 に 用 い られ る. (6)PWM制 運転
御 電 圧 形/電 流 形 イ ン バ ー タ に よ る誘 導 電 動 機 の 可 逆 ・可 変 速
誘 導 電 動 機 を駆 動 す る場 合,負
荷 転 流 に よ りオ フす る通 常 の サ イ リス タ
で は な く,自 己 オ ン ・オ フ機 能 を もつMOSFET,IGBT,ゲ イ リス タ(GTO)を PWM制
使 っ てPWM制
ー トタ ー ン オ フ サ
御 す る と主 回路 の 選 択 の幅 が 広 が る.
御 に よ る 電 圧 形 あ る い は 電 流 形 イ ンバ ー タ は誘 導 電 動 機 の 駆 動 に適 し
て い る.PWM制
御 電圧 形 イ ンバ ー タで,電
動 機 の電 流 を検 出 して フ ィ ー ドバ ッ
クす る電 流 制 御 方 式 が あ る.こ の電 流 制 御 方 式 は,次 項 の 「ベ ク トル 制 御 」 で 説 明 す る. 図7・15に,単
相 のPWM制
御 電 圧 形 イ ンバ ー タ 回 路 と波 形 を 示 す.こ
の 動 作 は,5・4・3項 で説 明 した よ うに,イ る こ とに よ り誘 導 電 動機 の 可 逆,可 か ら,出 力 電 圧 は ゼ ロ とVdの る.PWMの
ンバ ー タ側,順
変 換 側 をPWM制
の回路 御す
変 速 運 転 が で き る.電 圧 形 イ ンバ ー タ で あ る
間 をPWMの
パ タ ー ンで 往 復 す る櫛 状 の 波 形 と な
動 作 周 波 数 を高 くす る ほ ど電 圧 波 形 に含 まれ る低 次 高調 波 成 分 は 減
少 し,残 存 す る高 次 高 調 波 成 分 は小 型 の 高 調 波 用 フ ィル タで 除 去 で き る.
図7・15単
相PWM制
御 電圧 形 イ ンバー タ
図7・16に,直 形 を 示 す.こ
流 電 圧 に 中 点 を つ け た 三 相PWM電 の 回 路 で は,合
正 弦 波 に 近 く な る.こ Clamped)方
圧 形 イ ン バ ー タ の 回 路 と波
成 し た 線 間 電 圧 は 段 の あ る 櫛 状 の 波 形 と な り,よ
の イ ン バ ー タ 回 路 構 成 を 3 レ ベ ルNPC(Neutral
式PWMイ
り
Point
ン バ ー タ と い う.
(a)回
路
(b)波 形 図7・163
レベ ルNPC式PWM制
御 電 圧 形 イ ンバ ー タ
電 動 機 を 回生 制 御 させ る と き は イ ンバ ー タ の 出 力 周 波 数 を電 動 機 の 回転 周 波 数 よ り低 く し,誘 導 起 電 力 を電 流 とし て電 動 機 か ら取 り出 せ ば よい. 電圧 形 で は,誘 導 起 電 力 は帰 還 ダ イ オ ー ドを通 っ て直 流 回 路 の コ ンデ ン サ を充 電 し,直 流 電 圧 を高 め る こ とに よ っ て電 動 機 は減 速 す る.こ
の コ ン デ ンサ の端 子
電 圧 が 規 定 値 よ り高 くな る場 合 は,直 流 回路 に イ ンバ ー タ回 路 を接 続 して 誘 導起
電 力 を交 流 電 源 に 回 生 す る.電 流 形 で は,順 変 換 回 路 に可 制 御 デ バ イ ス を使 用 し,そ れ を イ ンバ ー タ動 作 させ る こ と に よ り交 流 電 源 側 に誘 導 起 電 力 を 回 生 し て 減 速 す る.順 変 換 側 をPWM制
御 す れ ば,交
流 入 力 電 流 の 力 率 を1.0に
が ら直 流電 圧,電 流 を制 御 で き る.電 動 機 の可 逆 運 転 は,PWM制
保 ちな
御 シー ケ ン ス
に よ っ て 出 力 電 圧 の相 回 転 を逆 にす れ ば 四 象 限 運 転 が 可 能 とな る. (7)ベ
ク トル 制 御 に よ る誘 導 電 動 機 の 可 変 速 運 転
「ベ ク トル 制 御 」 は,
か ご形 誘 導 電 動 機 を直 流機 と同等 の 特 性 を もた せ る こ と を 目的 と して い る.ベ ク トル 制 御 とは,先
に述 べ た誘 導 電 動機 の トル ク発 生 原 理,す
ク に応 じた 電 動 機 電 流(直
な わ ち 所 要 負 荷 トル
交 す る励 磁 電 流 と二 次 電 流 の ベ ク トル の 和)と
(a)ベ
ク トル 図
(b)制 御 ブ ロ ッ ク 図 図7・17ベ
ク トル 制 御 法 の ベ ク トル 図 と 制 御 ブ ロ ッ ク 図
周波
数,お
よ び位 相 を イ ンバ ー タが 出力 して 電 動 機 を駆 動 す る,い わ ば 「電 動 機 の 特
性 とイ ンバ ー タの 機 能 を一 体 化 した トー タル 制 御 シ ス テ ム 」 とい え る.こ の一 体 化 制 御 シ ス テ ム が 単 な る可 変 電 圧 可 変 周 波 数(VVVF)電
源 と異 な る点 で あ る.
図7・17(a)に ベ ク トル 制 御 の 原 理 を示 す.速 度 指 令 信 号 と速 度 セ ンサ か らの フ ィー ドバ ッ ク信 号 に よ り速 度 制 御 を行 い,ト 磁 束 演 算 に よ り磁 束 電 流 基 準IMを 一 次電 流 基準
得 る.こ れ らの 値 か ら,式(7・7)の
よ うに,一
次 電 流 位 相 θ=tan-1(I2/IM)の
よ び 式(7・12)の 負 荷 トル ク に 見 あ っ た ス リ ッ プ周 波 数fsを 演 算 し,こ
れ と速 度 セ ンサ か ら の電 動 機 の 回 転 周 波 数frと f=fr+fsを
よ う に,
の 演 算 を 行 い ,「 ベ ク トル 演 算 回 路 」 に 入 力 す る.
「ベ ク トル 演 算 回 路 」 で は,式(7・8)の 演 算,お
ル ク 電 流 基 準I2を 得 る.一 方,
得 て,一
を加 算 し て,電 動 機 一 次 周 波 数
次 電 流 基 準I1を 出 力 す る.
この よ うな 演 算 に よ り,PWM信
号 を介 して 電 流 制 御 信 号 と周 波 数 制 御 信 号 を
デ バ イ ス に与 え て誘 導 電 動 機 を イ ンバ ー タ で 可 変 速 運 転 す る. 図7・17(b)に,ベ
ク トル制 御 法 の 制 御 ブ ロ ッ ク 図 を示 す.
7・1・3 同 期 電 動 機 同 期 電 動 機 は,電 源 周 波 数f〔Hz〕,極
対 数 を p と して,同 期 速 度 N で 回 転 す
る. (7・13)
従 っ て,同 期 電 動 機 を可 変 速 運 転 す る た め に は,脱 調 し な い よ う に電 動 機 の 電 圧 と電 流 を制 御 しな が らイ ンバ ー タ あ る い は サ イ ク ロ コ ンバ ー タの 出 力 周 波 数 を 可 変 制 御 す る. 同 期 電 動 機 の可 変 速 駆 動 に あ た っ て,回 路 を構 成 す る デバ イ ス の 転 流 動 作 か ら,次 の 方 式 が あ る. ①
同期 電 動 機 の 逆 起 電 力 で通 常 の サ イ リス タ を 負荷 転 流 させ る他 励 式
②
自 己 オ ン ・オ フ機 能 を も った デバ イ ス の 転 流 で 交 流 電 圧 を発 生 させ る 自励 式
また,そ ①
の ゲ ー ト制 御 に は,次
の 方 式 が あ る.
界 磁 の位 置 に 関 係 な く,イ ンバ ー タ制 御 装 置 の 可 変 周 波 数 で駆 動 す る他 制 式
②
回転 磁 界 形 同 期 電 動 機 の軸 に直 結 した セ ン サ で界 磁 の 位 置 を検 出 し,そ の 位 置 に応 じて 交 流 出 力 電 圧 の 周 波 数 を変 え て駆 動 す る 自制 式
(1)他
励 自制 式PWM電
圧 形 イ ンバ ー タ に よ る同 期 電 動 機 の 可 変 速 駆 動
基 本 的 に は,7・1・2項 の(4)で 述 べ た誘 導 電 動 機 の 可 変 速 運 転 と同 じ主 回路 で あ る.電 圧 形 イ ンバ ー タ で駆 動 す る と電 動 機 電 流 は正 弦 波 に 近 くな る の で,回 転 界 磁 の 位 置 を正 確 に セ ン サ で 検 出 して駆 動 す れ ば,電 流 は す べ て有 効 な トル ク と な る.こ の 回路 で は,直 流 回 路 の ス イ ッチ と制 動 抵 抗 に よ り回 生 エ ネ ル ギ ー を 消 費 させ て電 動 機 を減 速 で き る が,誘 導 起 電 力 の交 流電 源 へ の 回 生 は で き な い. 電 源 へ 回 生 させ る た め に は,順 変 換 回路 に並 列 に イ ンバ ー タ 回 路 を 接 続 す る必 要 が あ る. 電 動機 が 減 速 ・停 止 した 後,PWM制
御 パ ター ン に よ っ て交 流 出 力 電 圧 の 相 回
転 を変 えれ ば逆 転 が 可 能 で あ る. (2)他
励 自 制 式 電 流 形 イ ンバ ー タ に よ る 同 期 電 動 機 の 可 変 速 運 転
図7・
18の よ う に,電 流 形 交 流 電 力 間 接 変 換 回 路 の順 変 換 ブ リ ッ ジ 回 路 で 直 流 電 圧 を 制 御 す る.一 方,回
図7・18同
転 磁 界 位 置 検 出信 号 を制 御 回路 に入 れ,イ
ンバ ー タ の デバ イ
期 電 動機 の可 変 速運 転(無 整 流子 電動 機;サ イ リス タモー タ)
ス を オ ン ・オ フ制 御 して所 望 の 周 波 数 の 交 流 電 圧 を発 生 させ て 同期 電 動 機 を 可 変 速 運 転 す る.順 変 換 ブ リッ ジ とイ ンバ ー タ ブ リ ッジ の ゲ ー ト位 相 を協 調 して 制 御 し,か つ,相
回 転 を制 御 す れ ば,正 転 ・逆 転,加
速 ・減 速 の 四 象 限 運 転 が で き
る.こ の よ うな 駆 動 方 式 を 無 整 流 子 電 動 機 また はサ イ リス タモ ー タ と い う.こ の 方 式 は,例 え ば,大 容 量 の 水 力 発 電 機 を揚 水 用 ポ ン プ と して 始 動 させ る た め の 可 変 周 波 交 流 電 源 と し て実 用 され て い る.
2 7
・
交流電動機 とその駆動方法
7・2・1 交 流 電 動 機 の 利 点 現 代 で は,パ 機,同
ワー エ レク トロニ ク ス で 駆 動 さ れ る電 動 機 の ほ とん どが誘 導 電 動
期 電 動 機 で あ り,そ の 出 力 は数100W
こ の 主 た る 理 由 は,次
①
か ら10MW以
上 に お よぶ.
の よ う で あ る.
直 流 機 に必 要 な コ ミュ テ ー タ と ブ ラ シが 不 要 で,保 守 ・点 検 が 容 易 とな る.
②
直 流 機 と同 等 の 回転 数 精 度,応 答 性 が 得 られ,か 容 量 の 出 力 が 可 能,過 GD2が
つ,電 気 的 に は 単 機 で 大
負 荷 耐 量 が 大 き く,効 率 が よ い.機 械 的 に は外 形,
小 さ く,重 量 が 軽 い の で 基 礎 工 事 が 経 済 的 で,騒 音 ・振 動 が 小 さい.
図7・19に,例
と し て サ イ ク ロ コ ンバ ー タ で 駆 動 され る4180kW級
の主 圧延
機 駆 動 用 の 同期 電 動 機 と,そ れ と同 等 の 直 流 電 動 機 との 比 較 を示 す. この よ う に,電 動 機 の 出力 が 等 し い時,GD2,外
形,全
重 量,kW当
た りの重
量 で誘 導 電 動 機 お よび 同 期 電 動 機 の ほ うが 直 流 電 動 機 よ り有 利 で あ る.直 流 電 動 機 は単 基 の 製 作 限 界 は 低 く,中
・高 速 機 で2∼3000kWを
直 結 した構 成 とな るが,交 流 電 動 機 で は,10MWで
超 え る と,2∼3台
も単 基 で製 作 可 能 で あ る.
を
直 流 電 動 機(2 台 直 結) 出 力4180kW GD2 41540 kgm2 トル ク 2377kW・s ロー タ重 量 29.5t 固 定 子 重 量 44.1t 1kW当
た りの 乗 量19 kg/kW
同 期 電 勤 機(単
基)
出 力4370kW GD2
29300 kgm2
トル ク 2377kW・s ロ ー タ 重 量 21.8t 固 定 子 重 量 27.2t 1kW当
た りの 重 量12 kg/kW
図7・19 大 容 量 同期 電 動機 と直 流電 動 機 の 比 較
7・2・2 交 流 電 動 機 と駆 動 回 路 (1)電
動 機 の 出 力 と駆 動 回 路 パ ワ ー エ レ ク ノ ロ ニ ク ス を電 動 機 に応 用 す
る に 当 た っ て,用 途 に適 した 「交 流 電 動 機 の 種 類(誘
導 電 動 機,同
期 電 動 機)と
出 力 」 が あ り,そ の 出 力 に 適 し た 「イ ンバ ー タ 回路 とパ ワー デバ イ ス 」 が あ る. 主 な用 途 と交 流 電 動 機 の 出 力 に対 す る イ ンバ ー タ 回 路 お よ び パ ワ ー デバ イ スの 種 類 の関 係 の 概 略 を図7・20に 示 す.○ 図7・20は,出
は代 表 的 回 路 の記 号 で あ る.
力 電 圧,出 力 容 量 と イ ンバ ー タ回 路 の 関 係 を示 した が,回 転 数,
出 力 容 量 と イ ンバ ー タ 回路 の 関 係 は図7・21の よ う に な る. (2)用
途,駆
動 回 路 とパ ワー デ バ イ ス 多 様 な 用 途 と,そ れ に適 す る電 動
機 の種 類 と出 力,そ
の 電 動 機 を駆 動 す る回 路 とデ バ イ ス を表7・1に 示 す.
図7・20
出 力 電 圧,出
力容 量 と インバ ー タ回路 の 関係
図7・21 出 力周 波数,出 力 容 量 と イ ンバー タ回路 の 関係 (○ は 前 図の 回路 の 記号)
表7
7
・
3
7 ・3 ・1
1
・
用途,電 動機 駆 動 回 路 とパ ワー デ バ イ ス
一般産 業 ・重工 業用交 流電動機 への応 用
一般産業用交流電動機の可変速運転
次 に,具 体 的 な 用 途,電
動 機 出力 と回 路 構 成,使
用 して い るパ ワー デ バ イ ス に
つ い て 実例 を解 説 す る. (1)工
作 機 械 用 高 周 波 イ ン バ ー タ(∼1500Hz,30kVA)マ
シー ニ ン
グ セ ンタ な ど の高 性 能 ・高 速 工 作 機 械 で は,超 高速 の ス ピ ン ドル 回転 で 被 加 工 物 を研 削,研 磨,仕 上 げ 加 工 す る場 合 が あ る.こ の よ う な用 途 に は,高 周 波 イ ンバ ー タ に よ る電 動 機 の 広 範 囲 な 可 変 速 駆 動 が 必 要 とな る. 図7・22は そ の 回路 の例 で,順 ョ ッパ 回 路,IGBTを
変 換 回 路,ダ
イ ナ ミッ ク ブ レ ー キ 回 路,直
使 用 し た 電 圧 形PWMイ
ンバ ー タ 回 路,同
流チ
期 電 動機 界 磁
用 チ ョ ッパ 回 路 で 構 成 され て い る.
図
商 用 周 波 の 三 相200V PWMイ
7・22
工 作 機械 用 高 周 波 イ ンバ ー タの主 回路
を 変 圧 器 を 介 し て 整 流 し,そ の 直 流 電 力 を 電 圧 形
ンバ ー タ 回 路 で 三 相,120V,最
て 同 期 電 動 機 を可 変 速 運 転 す る.チ
高 周 波 数1500Hz,30kVAに
変換 し
ョ ッパ 回路 は,直 流 電 圧 の制 御 と同 時 に,電
動 機 の 回生 エ ネ ル ギ ー を昇 圧 さ せ て 制 動 抵 抗 で 消 費 させ て 電 動 機 を 減 速 させ る た め の 昇 ・降 圧 チ ョ ッパ の 機 能 を も た せ て い る.チ
ョ ッ ピ ン グ 周 波 数5kHzの
こ
の チ ョ ッパ 回路 に よ り,電 源 電 圧 変 動,負 荷 変 動 に対 して直 流 電 圧 を一 定 に制 御 し,一 方,イ
ンバ ー タ 回 路 はPWMス
波 数 と出 力 波 形 を 制 御 し て い る.イ を,チ
ョ ッパ 回路 に は1200V,400A
(2)汎
用 三 相400V,160kW級
7・23に 回 路 を 示 す.三
イ ッ チ ン グ 周 波 数5∼8kHzに ン バ ー タ 回 路 に は600V,400A のIGBTを
よっ て周 のIGBT
用 い て い る.
イ ン バ ー タ(∼75Hz,160kVA)図
相 商 用 電 源 を ダ イ オ ー ド ブ リ ッ ジ で 整 流 し,電
解 コ ンデ
図
三 相400V,160kW級IGBT電
7・23
圧 形PWMイ
ン サ を 充 電 して 電 圧 形 イ ンバ ー タ とす る.PWM制 各 ア ー ム は1200V,300A IGBTは
のIGBTを
ンバ ー タ
御 三 相 ブ リ ッ ジイ ンバ ー タ の
3個 並 列 し て い る.
可 聴 周 波 の 限 界 に近 い20kHz程
度 でPWM制
御 し,か ご形 誘 導 電 動
機 に対 してV/f制 御 す る.こ の結 果,出 力 波 形 お よ び 騒 音 レベ ル は従 来 の バ イ ポーラ トラ ン ジ ス タ イ ンバ ー タ に比 べ て 大 幅 に改 善 さ れ て い る .電 動 機 の 回生 エ ネ ル ギ ー が 小 さ い場 合 は,直 流 回路 のIGBTス
イ ッ チ で 投 入 され る制 動 抵 抗 で
消 費 さ せ る.負 荷 が 多 数 の 電 動 機 で 回生 電 力 が大 き い場 合 は,順 変 換 回路 に逆 並 列 の サ イ リス タ 三 相 ブ リ ッ ジ を接 続 し,そ の 電 力 を商 用 電 源 に変 換 す る. この 装 置 の 性 能 は,最 高 出 力 周 波 数 は75Hz,速 度 制 御 精 度 は ±0.01%,速
度 制 御 範 囲 は0∼100%,速
度 制 御 応 答 は60rad/s,定
負 荷 トル ク特 性 が 得 られ
て い る. (3)
一 般 産 業 用 三 相 イ ン バ ー タ(0∼120Hz
例 え ば抄 紙 機,鉄 る300kVA級
・非 鉄 圧 延 の 補 機,コ
,300kVA)一
ンベ ア,ク
の ベ ク トル 制 御 三 相PWMイ
般 産 業 用,
レ ー ンな どの 用 途 で 用 い られ
ンバ ー タ に よ る誘 導 電 動 機 の 可 変 速
駆 動 回 路 を図7・24に 示 す. 主 回 路 は 電 圧 形 イ ンバ ー タ で,順 換 した 後,IGBTを 数0∼120Hz可
使 用 したPWM制
変 換 回 路 に よ り交 流 入 力 を直 流600V 御 の三 相 ブ リ ッ ジ 回路 で 交 流400V,周
変 の電 力 に 変 換 す る.ベ
に変 波
ク トル 制 御 の た め,電 流 セ ン サ に よ り
イ ンバ ー タ の 出力 電 流 の 瞬 時 値 を検 出 し,一 方,速 度 セ ンサ に よ り電 動 機 の 回転
図
一 般 産 業 用300kVAベ
7・24
速 度 を検 出 して 両 者 をPWM制
ク トル 制 御 イ ン バ ー タ
御 回 路 に フ ィ ー ドバ ッ ク し,最 適 な トル ク を 発
生 させ て 電 動 機 を所 望 の 回転 数 で駆 動 す る. 回転 数 の 制 御 精 度 は ±0.01%,回
転 数 制 御 応 答 は60rad/sで
あ る.出 力 電 流
波 形 は正 弦 波 に近 い た め,ト ル ク リ ップ ル は極 め て 小 さ い. 順 変 換 回路 は,電 動 機 か らの 電 力 回 生 を 行 わ な い 場 合 は ダ イ オ ー ドを 使 用 す る.回 生 を行 う場 合 はPWMイ
ンバ ー タ機 能 を もっ た逆 変 換 回路 を接 続 す る.
イ ンバ ー タ ブ リ ッジ の 各 ア ー ム は1200V,400A して あ る.IGBTの 較 的 低 い1.5kHz程
級 のIGBTを
数個 並列接 続
ス イ ッチ ン グ損 失 を低 く抑 え る た め, PWM動
作周 波数 を比
度 に して い る.ス イ ッチ ン グ 時 の 電 流 変 化 率 が 大 き い の で
過 渡 振 動 電 圧 と誘 導 障 害 を発 生 しや す い.こ
れ を抑 制 す る た め,IGBTに
は適 切
な ス ナ バ 回 路 を最 短 配 線 で 接 続 し,ま た デバ イ ス 周 辺 の配 線 を短 く,振 動 電 圧 を 誘 起 しな い よ う配 置 お よ び シ ー ル ドして あ る.
7・3・2重 工業 用 交流 電 動機 の 可変 速 運 転 (1)形
鋼 仕 上 げ 圧 延 用 三 相 イ ンバ ー タ(2500kW)H形,L
げ圧 延 す る場 合,通
常,複
数 の 圧 延 ス タ ン ドを 通 過 さ せ て 形 状,寸
る.ゲ ー トター ンオ フ サ イ リス タ(GTO)を ー タ で 仕 上 げ圧 延 用2500kW三 る.
形 鋼 を仕 上
使 用 したPWM制
法 を整形 す
御 電 圧 形 イ ンバ
相 誘 導 電 動 機 を可 変 速 運 転 し て い る 例 を述 べ
回 路 構 成 は,製 鉄 所 内 の三 相 交 流 をNPC(Neutral PWM制
御GTOに
るPWM方
式の
よ る順 変 換 回 路 で 中 性 点 付 の 直 流 電 圧 に 変 換 す る.
逆 変 換 回 路 は,順 変 換 回 路 と同 様 に,3 御GTO電
Point Clamped)方
レ ベ ル のNPC方
圧 形 イ ン バ ー タ 回 路 を形 成 し て い る.こ のNPC方 式 に比 べ て,交
流 電 圧,電
式 に よ るPWM制 式 に よ っ て,単
な
流 波 形 は さ ら に正 弦 波 に近 くな り,高 調
波 フ ィ ル タ は小 型 ・軽 量 とな り,ま た トル ク リ ップ ル も小 さ くな る利 点 が あ る. NPC・PWM電
圧 形 イ ンバ ー タ の 各 ア ー ム に は4500V,4000AGTOを
して あ る.PWMス は1kHzの
接続
イ ッ チ ン グ の 位 相 を 互 い に ず らす こ とに よ って,電
動機 側 で
高 調 波 を含 む波 形 に し,容 量 に フ ィル タ で高 調 波 を除 去 して い る.
負 荷 は2500kW,過
負 荷175%1
分 間 の 三 相 か ご形 誘 導 電 動 機 で あ る.こ
圧 延 設 備 の 制 御 性 能 は,停 止 状 態 か ら トッ プ速 度 ま で10∼20秒,速 は約30rad/sで
の
度 応答 時 間
あ る.
こ の 回 路 構 成 で は,誘 導 電 動 機 の 急 速 な 減 速,制
動 お よ び電 力 回 生 が 可能 で あ
る. こ の 圧 延 設 備 に も し直 流 電 動 機 を使 う とす れ ば,GD2は 倍 で,速
度 応 答 時 間 は10∼15rad/sが
誘 導 電 動 機 の 約1.5
予 想 さ れ る.
も し圧 延 機 用 電 動 機 が 比 較 的小 さ く,か つ,多
数 あ る場 合 は,圧 延 ラ イ ン に対
して 順 変 換 回 路 を一 括 し て ま とめ る場 合 が あ る.
図 7・25 に,3
レベ ルNPC方
式PWM電
圧 形 イ ンバ ー タ に よ る2500kW誘
導電動機 の可変速運転 の主 回路 を示す.
図
7・25
型 鋼 仕 上 げ 圧 延 用2500kW,NPC・PWMイ
ンバ ー タ
(2)熱
間 圧 延 用 三 相 サ イ ク ロコ ンバ ー タ(10MW,可
逆 ・可 変速 運 転)
熱 間 圧 延 設 備 の 粗 ス タ ン ド用 電 動 機 は,比 較 的 低 速 で あ るが,大 か つ 急 速 な可 逆 運 転 を行 う.例
と して,熱
容 量 で,頻 繁
間圧 延 粗 ス タ ン ド用 大 容 量 電 動 機 可 逆
運 転 設 備 に つ い て 述 べ る. 10MW同
期 電 動 機 は 過 負 荷 耐 量225%1
路 構 成 は,図7・26の で72あ
分 間,回 転 数 は100rpmで
サ イ ク ロ コ ンバ ー タ で,三
る.各 ア ー ム に は6kV,2.5kAの
あ る.回
相 ブ リッジのアー ムの数 は合計
光 ト リガ サ イ リス タ が 接 続 され て い
る. GD2は
同 容 量 の 直 流 電 動 機 の 約1/2の
た め 応 答 は よ く,速 度 制 御 応 答 は25
rad/s程 度 で,正 転 の トッ プ速 度 か ら逆 転 の トッ プ速 度 まで 約 4秒 で あ る. 図7・26に,大
(a)
型 同 期 電 動 機 の 例 と駆 動 用 サ イ ク ロ コ ンバ ー タ の 回 路 を示 す.
大型誘導電動機の例 図
(3)340MW級 て,340MW級
7・26
(b) 10MW誘
導電 動 機 用 サ イク ロ コンバ ー タ
大 型 誘 導 電動 機 と駆動 用 サ イ クロ コンバ ー タ の例
大 容 量 水 力発 電 電 動 機 の 可 変 速 運 転(1)揚
水 発電所 におい
の 発 電 電 動 機 を可 変 速 運 転 し て 系 統 の 周 波 数 制 御 を行 う可 変 速
揚 水 発 電 シス テ ム が1996年
に運 転 に入 っ た.
発 電 電 動 機 は巻 線 形 誘 導 電 動 機 と基 本 的 に 同 じ構 造 で あ り,そ の 二 次 巻 線 を低 周 波 三 相 交 流 電 源 で励 磁 す る こ と に よ り,発 電 電 動 機 を電 力 系 統 に同 期 させ た ま ま回 転 数 を 可 変 させ る もの で あ る. 通 常 の揚 水 発 電 所 で は,揚 水 時 は同 期 電 動 機 と てて 同期 速 度 で 回 転 す るが,こ の 方 式 は次 の特 徴 が あ る. ①
水 力 発 電 運 転 時 の落 差 変 動 に 対 して高 効 率,広
範 囲 の運 転 が 可 能
②
揚 水 運 転 時 の 入 力 調 整 が 可 能 で,系 統 の周 波 数 調 整 に有 効
③
同 期 調 相 機 と して系 統 の 有 効 電 力,無 効 電 力 を高 速,か
つ,独
立 して制 御
可能 ④
他 の 揚 水 用 電 動機 と同様,二
次 励 磁 装 置 で滑 らか な始 動 が 可 能
図7・27に 可 変速 揚 水 発 電 シ ス テ ム の 構 成 を示 す.
図7・27 可変 速 揚 水発 電 システ ムの 構成
こ の 可 変 速 シ ス テ ム は,(1)商
用 周 波 交 流 電 力(16.5kV,50
力 に 変 換 す る ゲ ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ ス タ(GTO)を
Hz)を
使 用 し たPWMコ
直 流電 ンバー
タ,(2)直
流 電 圧 の 過 電 圧 を 抑 制 す るGTOチ
流 電 力(3040V,2.5Hz)に イ ンバ ー タ,(4)水 (a)GTOコ
ョ ッパ,(3)直
流 電 力 を低 周 波 交
変 換 して 電 動 機 の 二 次 巻 線 を励 磁 す る低 周 波GTO
力 発 電 ・電 動 機 で構 成 さ れ て い る.
ン バ ー タ 交 流 入 力 電 圧(16.5kV)を
変 圧 器 で 2グ ル ー プ の
単 相 巻 線 群 に分 割 し降 圧 す る.単 相 ブ リッ ジ 3組 を並 列 に 接 続 した 回路 の 二 つ を 1グ ル ー プ と して 直 流 電 圧 の 正 を,も
う一 つ の グル ー プ で直 流 電 圧 の 負 を受 け持
ち,全 体 で 四 つ の 回 路 群 で構 成 さ れ て い る.順 変 換 部 の 定 格 容 量 は5MW×4で 20MWで
あ る.
各 単 相 ブ リ ッ ジの 各 ア ー ム は4500V,3000 あ る.各GTOの
A のGTOを
ス イ ッチ ン グ周 波 数 は500 Hzで
交 流 側 か ら見 れ ば2kHzの 常 に 交 流 側 の 力 率 を1.0に
2個 直 列 に接 続 して
あ る が,四 つ の 回路 群 の た め,
ス イ ッチ ン グ と等 価 と な る. GTOのPWM制
御で
して い る.
(b)GTOチ
ョ ッパ 発 電 機 の 出 力 交 流 系 統 に事 故 が 発 生 す る と,故 障 電 流
が変 圧 器,発
電機 を通 っ て 直 流 回 路 に侵 入 し,直 流 コ ンデ ンサ を充 電 し,そ の電
圧 を高 め る.直 流 電 圧 が規 定 値 を超 え な い よ う にGTOチ
ョ ッパ で コ ン デ ンサ の
電 荷 を放 電 させ て 直 流 電 圧 の 上 昇 を 防 ぐ. (c)GTOイ ルNPC式
ンバ ー タ部
直 流 電 圧 の 中 点 を ゼ ロ電 位 に ク ラ ン プ す る 3レベ
イ ン バ ー タ を 6回 路 並 列 に 接 続 し て全 体 と して 高 調 波 を低 減 し て い
る.各 ア ー ム は4500V,3000 (d)発
4個 直 列 に接 続 して あ る.
電 電 動 機 の 定 格 発 電 電 動 機 の 定 格 は,発 電 機 の と き345MVA,電
動 機 の と き340MVA,定 は ±5%,周
A のGTOを
波 数50Hzで
格 電 圧16.5kV,回
転 数407∼450 rpmで,可
変速 幅
あ る.
7・4 交 通 ・輸 送 シ ス テ ム へ の 応 用
物 資 の 大 量 か つ 高 速 輸 送,お
よ び旅 客 の 安 全,高
速 で快 適 な 旅 行,良 好 な サ ー
ビス は 国 の 経 済 発 展 お よ び 国 民 の 活 力 の 源 泉 で あ る.戦 後,わ
が 国の鉄 道 事業
は,こ れ ら を念 頭 に お き,国 を あ げ て技 術 開 発 と建 設 に 多大 な 努 力 を傾 注 し て,
1964年10月
に東 京-新 大 阪 間 を 4時 間 で 結 ぶ 新 幹 線 「ひ か り」(0系;最
210km/h)が
開 業 した.そ
み 」(300系;同270km/h)に
の 後 もた ゆ まぬ 努 力 が 続 け られ,1992年 よ り 2時 間30分
高速 度
に は 「の ぞ
に短 縮 され た.
現 在 で は,営 業 運 転 を 目指 した 多 数 の 新 型 超 高 速 電 車 が 開 発,試
運 転 され つ つ
あ り,さ ら に21世 紀 に期 待 され る超 電 導磁 気 浮 上 列 車 へ と夢 が 膨 らん で い る. これ ら超 高 速 電 車 の 駆 動 シ ス テ ム は,そ の 時 代 の 最 新 パ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス で 構 成 され て い る.
7・4・1 最 新 型 電 車 の 駆 動 シ ス テ ム(2),(3),(4)
例 え は,本 格 的 にパ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス を応 用 した1981年 東 北 ・上 越 新 幹 線 電 車 で は,単 相 交 流25kV,50Hzの
開 業 の200系
架 線電 圧 を床下 の単相 変
圧 器 の 一 次 側 に加 え,二 次側 の 複 数 の低 圧 巻 線 に接 続 し た単 相 サ イ リス タ ブ リッ ジ を互 い に カ ス ケ ー ドに接 続 し て各 サ イ リス タ を位 相 制 御 す る こ とに よ っ て直 流 出 力 電 圧 を可 変 と し,駆 動 用 直 流 電 動 機 を可 変 速 運 転 し て い た. その 後,300系 たPWM制
で は,こ れ まで に な い最 新 の パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス を応 用 し
御 のVVVF電
圧 形 イ ンバ ー タ に よ る三 相 か ご形 誘 導 電 動 機 駆 動 シヌ
テ ム を採 用 した.こ
の 方 式 を採 用 した理 由 は,次 の よ うで あ る.
① 力 率1.0制
流 回 生 ブ レ ー キ に よ る省 エ ネ ル ギ ー
御,交
② 電 動 機 の 高 速 化,制 御 機 器 の 集 約 化 に よ る小 型 ・軽 量 化 ③ 直 流 機 の よ うな 整 流 子,ブ
ラ シ を な く し,主 回 路 の 無 接 点 化 に よ る保 守 ・
点 検 の省 力 化 ④ PWM制
御 に よ る架 線 側 高 調 波 電 流 の低 減
⑤ 空 転 時 の 再 粘 着 特 性 の 改 善 ⑥ 誘 導 電 動 機 の駆 動 シ ス テ ム に は技 術 的 発 展 性 が 期 待 で き る. (1) 東 海 道 新 幹 線 「の ぞ み 」 の 駆 動 シ ス テ ム 歴 代 の東 海 道 新 幹 線 用 超 高 速 電 車 の要 点 と駆 動 シス テ ム の 変 遷 を表7・2に 示 す.
300
表 7・2
*現 在(1996年)で
は 3台
**現 在(1996年)で
は 2台
系 「の ぞ み 」
東海道新幹線用超高速電車の要点 と駆動 システム
特 に,電 気 関 係 で は,同
じ16両 編 成 で も初 期 の 0系 と約28年
を比 べ る と,1 編 成 当 た りで は,総 重 量 は約27%軽
経 過 後 の300系
量 化 し,最 高 速 度 が1.23倍
に な った に もか か わ らず 所 要 電 力 は ほ ぼ 同 じ,主 電 動 機 の 数 は64台(直 電 動 機)か
ら40台(三
相 か ご形 誘 導 電 動 機)に
減 少 し,パ
流直 巻
ン タ グ ラ フ の数 は 技
術 開 発 と騒 音 防 止 の た め 8台 か ら 2台 に 減 少 した.電 動 機 駆 動 シ ステ ム は,低 圧 タ ッ プ切 換 段 制 御 か らPWM制 (a)
御VVVFイ
ンバ ー タ に変 わ っ た.
「の ぞ み 」 の 電 動 機 駆 動 シ ス テ ム 300系16両
テ ム の車 両 配 置 を 図7・28に 示 す.こ 線 電 圧 単 相 交 流25kV,60Hzを
の 図 で,1
受 電 し,そ れ をVVVFイ
変 換 す る主 変 圧 器 な ど を床 下 に 取 り付 け た変 圧 器 車,そ ぞ れ の車 両 の 電 動 機 4台 を駆 動 す るVVVFイ 車(M1,2)で 車,こ
あ る.す
な わ ち,16両
図7・29に,変
図7・28
明,制
の 両 側 のM1,M2は
御 用 な どのCVCF補
300系
が イ ンバ ー タ
編 成 で あ る.床 下 の 7台 の[SC]は,6・4・ 助 電 源 で あ る.
「の ぞ み 」16両 の 機 能 別 車 両 編 成(現
図7・29
それ
ンバ ー タ を 取 り付 け た イ ン バ ー タ
圧 器 車 1両 と イ ン バ ー タ 車 2両 か ら な る300kW電
300系
架
ン バ ー タ用 の 電 圧 に
の う ち 5両 が 変 圧 器 車 で10両
れ に付 随 車 を加 え て10M6Tの
2項 で 述 べ た 空 調,照
編 成 に お け る駆 動 シ ス
号 車 の T は付 随 車 で,Tpは
動 機 8台 の
在 は パ ン タ グ ラ フ 2台)
「の ぞ み 」 の 電 動 機 駆 動 シ ス テ ム
可 変 速 駆 動 シ ス テ ム の 主 回路 を示 す. (b) 「の ぞ み 」 の 主 要 機 器 の 要 点 1)主
変 圧 器 パ ン タ グ ラ フ で 受 電 し た 電 圧 は,2900kVA,一
116A,二
次(885V,706A)×4,(三
次 は 省 略)の
の 分 割 4巻 線 は 等 し い 電 圧(885V)に PWM制
次25kV,
主 変 圧 器 に よ っ て,二
な る よ う に 変 圧 し,そ
次側
れぞ れの巻線 には
御 単 相 ブ リ ッ ジ 順 変 換 回 路 を 接 続 す る.
2)順 頃変 換 部 順 変 換 回 路 の ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リ ス タ(GTO)のPWM 制 御 と,変 圧 器 の漏 れ リア ク タ ン ス に よ って,昇 圧 チ ョ ッパ の動 作 を させ て 直 流 電 圧 を得 る.二 つ の 順 変 換 回 路 を 並 列 に して 直 流 電 力1900V,708A(主 機 が定 格 の 時)に 変 換 し,直 流 フ ィ ル タ で 平 滑 化 して 電 圧 形VVVFイ
電動 ンバ ー タ
の 電 源 とす る.順 変 換 回 路 を 2組 並 列 に接 続 し て い る の は,順 変 換 回 路 間 で PWMの
位 相 差 運 転 を行 っ て架 線 電 流 に含 まれ る高 調 波 電 流 を低 減 す る た め で あ
る.PWM制
御 に よ り直 流 出 力 電 圧 一 定 制 御,交
流 側 力 率1.0制
主 電 動 機 が 定 格 の と き,順 変 換 部 の変 換 効 率 は95%以 単 相 ブ リ ッ ジ の 各 ア ー ム は 1個 の4500V,3000A ス タ(GTO)と,そ
れ に逆 並 列 の4500V,800A
構 成 さ れ て い る.各 々 の 順 変 換 部 は,回 PWM制
上 で あ る. ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ
フ ラ イ ホ イ ー ル ダ イ オ ー ドで
生 ブ レ ー キ 時 に は こ れ ら のGTOを
御 す る こ とに よ っ て力 率 を ほ ぼ-1.0に
保 ち な が ら直 流 電 力 を 架 線 に 回
生 す る イ ンバ ー タ の 機 能 を も っ て い る.す な わ ち,GTOの て,力 行 と回生 運 転,前 3)PWM制
御 を行 う.
ゲ ー ト制 御 に よ っ
進 と後 進 運 転 が 自 由 に行 え る.
御 電 圧 形VVVFイ
ンバ-タ
け て,三 相 の 定 格 出 力 電 圧1430V,同
順 変 換 部 出 力 の直 流1900V
出 力 電 流620A,周
波 数0∼200Hzに
換 す る.三 相 ブ リッ ジ 回路 の 各 ア ー ム は 1個 の4500V,3000AGTOと 逆 並 列 の フ ラ イ ホ イ ー ル ダ イ オ ー ド4500V,800A
を受 変 それ に
で構 成 され て い る.
これ らの デ バ イ ス は 2)の デ バ イ ス も含 め,塩 素 を含 め な い フ ロ リナ ー トを冷 媒 とし て沸 騰 冷 却 方 式 で 冷 却 して い る. PWM制
御 の よ りV/fー
定 制 御,す
制 御 を行 っ て い る.こ のPWM制
べ り補 正 に よ る定 電 流 制 御,空
転 再 粘着
御 に よ る 四 象 限 電 圧 形 イ ンバ ー タ の 動 作 は,
5・4・3項に説 明 した.主 97%以
電 動 機 が 定 格 運 転 の と き,イ
上 で あ る.
4)電
動 機
定 格 電 圧1430V,定
回 転 数3825rpm(130Hz,す で,他
ン バ ー タ部 の 変 換 効 率 は
の 0 系,100系
格 電 流155A,定
べ り1.9%),H
格 出 力300kW,4
極,
種 絶 縁 の 三 相 か ご形 誘 導 電 動 機
の 電 動 機 に 比 べ て 単 位 出 力 当 た り の 重 量 は 表7・3の
よ うに
最 も小 さ い.
1台 当 た りの体 積 も最 も小 さ く,ま た ブ ラ シ な ど の 点 検 スペ ー ス も不 要 な の で,台
車 に 電 動 機 を コ ンパ ク トに収 納 して あ る.「 の ぞ み 」 で は,こ の 電 動 機 を
1編 成10両
の イ ン バ ー タ車(M
車)の
駆 動 輪 す べ て に,す な わ ち 合 計 で40台
取 り付 け て あ る. 表7・3新
幹 線 用電 動 機 の 比 較
な お,「 の ぞ み 」 と同 様 な駆 動 方 式 に さ ら に 改 良 を 加 えたJR東 「START 21」 は,1993年 試 作 車 は443km/hの 図7・30に,主
上 越 新 幹 線 で425km/hを,1996年
世 界 第 2位 の 記 録 を出 した.
な駆 動 用 電 気 ・電 子 ユ ニ ッ トを示 す.
日本 の 試 験 車
にJR東
海(株)の
図7・30
(2)通
300系
「の ぞ み 」 の 電 気 ・電 子 ユ ニ ッ ト
勤 電 車 「209系 」 の 駆 動 シ ス テ ム(5),(6) 東 京 圏 の 通 勤 人 口 は,1960
年 代 の 高 度 経 済 成 長 期 と共 に 増 加 の 一 途 をた ど っ て きた.東 1987年 の 国鉄 民 営 化 に よ り,JR東 代 化 の コ ン セ プ トは,軽 量 化,省
京 圏 の通勤 輸送 は
日本 が そ の 業 務 を引 き継 い だ.通 エ ネル ギ ー,メ
勤電車 の近
ン テ ナ ン ス フ リー 化,空
調など
の快 適 さ,コ ス トダ ウ ン と い え る. 通 勤 電 軍 の近 代 化 は,1960∼70年
代 に か けて 量 産 され た101系,103系
り,現 在 の201系(中
央 線),205系(山
線)へ 続 い て い る.こ
こで,こ
手 線)を
経 て 最 新 の209系(京
に始 ま 浜東北
の最 新 の 通 勤 電 車 で あ る 「209系 」 の 駆 動 シ ス テ
ム に っ い て 説 明 す る. (a)通
勤 電 車 の 駆 動 シ ス テ ムの 動 向 表7・4に 駆 動 シス テ ム の 動 向 を示 す.
チ ョ ッパ を 応 用 し た駆 動 シ ス テ ム は,1981年 1986年 にPWM制
御 のVVVF電
に採 用 さ れ た.そ
圧 形 イ ンバ ー タ が207系
さ らに技 術 的 改 良 が 加 え られ て1991年
の よ うで あ る.
の 後,
に 採 用 さ れ,そ
れに
か ら209系 が 運 転 され て い る.
(b) 「209系 」 の 駆 動 シ ス テ ムVVVFイ を採 用 した 理 由 は,次
に201系
ンバ ー タ に よ る誘 導 電 動 機 駆 動
表7・4 通 勤 電 車 の要 点 と駆 動 シス テ ム の動 向
①
高 粘 着 特 性 が 期 待 で き る.
②
1編 成(10両)の
総 重 量 と して軽 量 化 が 期 待 で き る*(表7・4参
③
省 エ ネ ル ギー が期 待 で き る.
④
メ ン テ ナ ン ス フ リー が 期 待 で き る**.
ま た,VVVFイ
ンバ ー タ に よ る誘 導 電 動 機 駆 動 に,次
照).
の三 つ の 方 式 が 試 作 さ
れ た. ①1200V,300A
パ ワ ー ト ラ ン ジ ス タ に よ る 電 動 機 4台 の 個 別 制 御
②4500V,500A
GTOに
③2500V,2000A
GTOモ
よ る電 動 機 4台 の 分 散 制 御 ジ ュ ー ル を 使 用 し,3
レベ ル イ ンバ ー タ に よ る
電 動 機 4台 の一 括 制 御 これ ら の方 式 を性 能 確 認,走 力 回 生 ・省 エ ネ ル ギ ー 性,乗 *線 **メ
行 比 較 試 験 した結 果,力 行 性能,再 り心 地,保
粘 着 性 能,電
守 な どか ら③ の 駆 動 方 式 を209系
の量産
路 の メ ン テナ ンス費 の低 減 に効 果 が あ る. ンテ ナ ン ス削減 のた め の トの 達 成.
「13年 間,200万km走
行 まで オ ーバ ー ホ ー ル不 要 」 の コ ンセ プ
車 と し た.図7・31に,10両 置 を示 す.イ
編 成(4 M 6T)の 京 浜 東 北 線209系
の動 力車 の配
ンバ ー タ駆 動 の動 力 車 は 4両 で あ る.
図7・31京
図7・32に,GTOを
浜 東北 線
「209系 」 の 動 力 車 の 配 置
使 用 し た 3 レ ベ ルNPC式
三 相PWM制
御 電 圧 形 イ ンバ
ー タの 主 回路 を示 す. パ ン タ グ ラ フ か ら 受 電 し た 直 流1500V
に 対 し て,GTOと
ド を 封 入 し た モ ジ ュ ー ル を 4個 直 列 に 接 続 し て い る.そ 500V
逆 並列 のダ イオ ー の 2個 直 列 の 端 子 は,1
を フ ィ ル タ コ ン デ ン サ で 二 分 し た 中 性 点 に ク ラ ン プ ダ イ オ ー ドで 接 続 し て
い て,モ GTOの
ジ ュ ー ル に は750V
の 電 圧 が 加 わ る.
定 格 は2500V,2000
A,ダ
イ オ ー ド の 定 格 は2500V,500A
で あ
る. こ れ ら の モ ジ ュ ー ル は 塩 素 を 含 ま な い パ ー フ ロ ロ カ ー ボ ン を使 用 し た ヒ ー トパ イ プ で 冷 却 し て い る. 誘 導 電 動 機 の 定 格 は,出 4個 をVVVFイ
力95kW,電
圧1100V,電
ン バ ー タ 1セ ッ トで 可 変 速 駆 動 す る.
流68A
で,こ
の 電動 機
図7・32
「209系 」 の PWM電
圧 形VVVFイ
ンバ ー タの主 回 路
7・4・2 そ の 他 の 輸 送 機 器 (1)山
梨 超 電 導 磁 気 浮 上 リニ ア 実 験 線 の 駆 動 シ ス テ ム(7) 1972年 に,わ
が 国 最 初 の超 電 導 磁 気 浮 上 ・推 進 モ デ ル 車 が 約200m 実 用 化 に 向 け て 研 究 開 発 が 進 め られ て い る.1979年 験 線(7km)に
お い て,無
400.8km/hを km/hの
人 に て517km/hを,1987年
達 成 し た.現 在,21世
の 実 験 線 で 走 行 し て 以 来, に,宮 崎 県 日 向 市 の 宮 崎 実 に は人 間 が 乗 車 して
紀 の 実 用 化 を 目指 し て,目 標 最 高 速 度550
磁 気 浮 上 鉄 道 の 開 発 が 進 め られ て い る.こ の た め,山 梨 県 甲府 市 を始 点
とす る約43kmの (a)浮
実 験 線 が 選 定 され た.
上 ・推 進 の 原 理 磁 気 浮 上 鉄 道 の構 造 を 図7・33に 示 す.U
型 の軌道
の両 壁 面 に浮 上 コイ ル と推 進 コ イ ル を規 則 正 し く配 置 し,推 進 コイ ル 群 に 順 次 電 流 を流 す こ とに よ っ て車 両 の 側 面 に付 けた 超 電 導磁 石 と作 用 して 車 両 は 浮 上 し,
推 進 す る.
図7・33 軌 道 の構 造 と浮 上 ・推 進 の 原理
(b)浮
上 ・推 進 用 電 力 シ ス テ ム 図7・34に 電 力 シ ス テ ム の 概 要 を 示 す.電
力 シ ス テ ム は順 変 換 装 置,チ
ョ ッパ 装 置,逆
変 換 装 置 で 構 成 さ れ て い る.
山梨 磁 気 浮 上 リニ ア 実 験 線 で は走 行 コイ ル を 3系 統 に区 分 し,3 系 統 の 逆 変 換 装 置 か ら順 次 電 力 を供 給 す る こ とに よ って 車 両 の 走 行 を制 御 す る. 1) 順 変 換 装 置 順 変 換 装 置 は66kVの
交 流 電 力 か ら6000V,2500A
ト リガ サ イ リス タ を使 用 した 二 十 四相 の 整 流 回 路 で 直 流 電 圧 ±3450V,直 流10000A
の直 流 電 力69 MWに
変 換 す る.
図7・34 山梨 磁気 浮 上 リニ ア 実験 線 の 駆動 シス テム の概 要
の光 流電
2)チ
ョ ッパ 回 路 チ ョ ッパ 回路 は,車 両 側 か ら の 回 生 電 力 を チ ョ ッパ 回 路
を通 して 抵 抗 器 で 消 費 させ て 制 動 力 を確 保 す る役 目 を もつ.こ 定 格 は,直 流 電 圧7110V,直
流 電 流2672A,容
ス イ ッチ と し て,4500V,3000A
のGTO2
量19MWで,チ
ョ ッパ 回 路 の
個 直 列 の ユ ニ ッ トを 5ユ ニ ッ ト並
列 と し,キ ャ リア周 波 数300HzのPWM制 3)逆
の チ ョ ッパ 回路 の
御 で 制 動 力 を確 保 す る.
変 換 回 路 逆 変 換 回路 は,PWM制
御 単 相 ブ リ ッ ジ 回 路 を三 相 4段 で
構 成 し,こ の 4段 を 出 力 変 圧 器 で 縦 続 接 続 して い る. 1系 統 当 た りの 出 力 は,出 力 電 力38MVA,出 960A,出
力 周 波 数 は0∼56.6Hzで
主 回 路 は,1
力 電 圧3530V
×4,出 力 電 流
あ る.
ア ー ム4500V,3000A
のGTO4
個 直 列 か ら な る単 相 ブ リ ッ ジ
イ ンバ ー タ を 三 相 と し,そ れ を 4段 縦 続 に構 成 し て 1系 統 に し て あ る.各 々 の GTOは
キ ャ リア周 波 数500 HzでPWM制
御 し て お り,単 相 の 各 ア ー ム お よ び
4段 縦 続 構 成 の ス イ ッ チ ン グ位 相 をず ら し て 等 価 的 に4kHzと
して出力側 の 高
調 波 を低 減 し て い る. (2)高 い,エ
層 ビル 用 高 速 エ レベ ー タ(8),(9) 近 年 の オ フ ィ ス ビル の 高 層 化 に 伴
レベ ー タ に は 高 速 で 乗 り心 地 の よ く,大 量 輸 送 可 能 で,高
効 率,高
い安
全 ・信 頼 性 が 要 求 さ れ る. 従 来 の上 昇 ・降 下 の 最 高 速 度 は540m/min程 換 と逆 変 換 の両 方 にIGBTを 最 高600m/minで
度 で あ っ た が,現
在 で は,順 変
使 用 し,三 相 誘 導 電 動 機 を 可 逆 ・可 変 速 制 御 し て
運 転 す る エ レベ ー タ が あ る.図7・35に
その 主 回 路 を示 し,そ
の特 徴 は次 の よ うで あ る. ①
従 来 の バ イ ポ ー ラ パ ワー トラ ンジ ス タ(PWM周 に代 え て 周 波 数 を8kHzに
波 数1.2kHz)をIGBT
高 周 波 化 す る こ と に よ り高 調 波 成 分 を 低 減 す る
と と も に フ ィル タ を小 型 ・軽 量 化 して い る. ②
③
順 変 換 側 のIGBTモ
ジ ュー ル を 3並 列,逆
よ り電 動 機 容 量100kWま
で制 御 で き る.
変 換 側 を 5並 列 に す る こ とに
モ ジ ュー ル を ヒー トパ イ プ に よ る沸 騰 冷 却 ・強 制 冷 却 す る こ とに よ り,デ バ イ ス の 温 度 上 昇 は 最 大 負 荷 で の 連 続 運 転 で も規 定 値 以 内 に 維 持 され て い
図7・35600m/min級
高 速 エ レベ ー タ の 主 回 路
る.
④16ビ
ッ トCPUに
よ る全 デ ジ タル 信 号 化 に よ っ て,順 変 換 側,逆
PWM制
御 し て い る.ベ
PWM制
御,電
ク トル 制 御 に よ る 速 度 制 御 の ほ か,電
変 換側 を 流 制 御,
圧 制 御 を デ ジ タ ル化 す る こ と に よ っ て運 転 の 安 定 性 と精 度 が
向 上 し,全 走 行 範 囲 で優 れ た 乗 り心 地 が 得 られ て い る. 図7・36に,高
速 エ レベ ー タ 用 巻 上 機 と誘 導 電 動 機 お よ び そ の 駆 動 回 路,そ
の
走 行 特 性 を 示 す. (3)電
気 自動 車(10) 1970年 代 に入 って 環 境 汚 染 と省 エ ネ ル ギ ー 対 策 の た
め に,電 気 自動 車 の 開 発 の機 運 が 高 まっ た が,エ 能 向上,蓄
ン ジ ン 自動 車 の 排 ガ ス 対 策 の 性
電 池 性 能 の 制 約 な どか ら下 火 に な っ た.1980年
代 後 半 に な る と,再
び 自動 車 の大 気 汚 染 が世 界 規 模 で 問 題 に な り,そ れ に カル フ ォル ニ ア規 制(販 車 両 全 体 に対 す る無 公 害 車 販 売 割 合 の%規 制)が 加 わ って,再
売
び 電 気 自動 車 開 発
に拍 車 が か か った. 電 気 自動 車 の 性 能 は蓄 電 池 の 性 能 に大 き く依 存 し,重 量 当 た りの エ ネ ル ギ ー 蓄 積 量 が 大 き く,充
・放 電 寿 命 が 長 く,短 時 間 充 電 が可 能 な蓄 電 池 が 要 求 さ れ る.
現 在,高 性 能 の 鉛 電 池 お よ び ニ ッ ケ ル ・水 素 電 池 の研 究 開 発 が 進 め られ て い る. 電 気 自動 車 の 車 輪 駆 動 系 お よび 車 載 機 器 を概 説 す る と,次 の よ う に な る.
(a)巻 上 機,誘 導 電動 機,駆 動 回路
(b)走 行 特性 の 例 図7・36高
速 エ レベ ー タの主 要 機 器 と走行 特性 の例
①
車 輪 駆 動 系 と し て 図7・37が 考 え られ て い る.図(a)は
現 在 の エ ン ジ ン車
の 変 形 で,1 組 の 「イ ンバ ー タ ・電 動 機 」 で駆 動 す る 方 法,図(b)は 「イ ンバ ー タ ・電 動 機 」 で 別 々 に車 輪 を駆 動 す る 方 法,図(c)は
2組 の
図(b)の 変
形 で,各 車 輪 に電 動 機 を組 み込 ん だ 構 造 で あ る.
(b)
(a)
図
②
7・37
電 動 機 出 力 は数10kW級 ッパ+直
(c)
電 気 自動 車 の車 輪 駆動 系 の例
で あ る.車 輪 を駆 動 す る電 動 機 に は,(a)「 チ ョ
流 電 動 機 」,(b)「 イ ンバ ー タ+誘
導 電 動 機 」,(c)「 イ ンバ ー タ
+同 期 電 動 機 」 が あ る.現 在 開 発 中 の 電 気 自動 車 の 多 くは(b)方 式 で あ る. 高 磁 束 密 度 の 希 土 類 永 久 磁 石 を使 用 した(c)方 式 は将 来 性 が あ る.
③
直 流 電 圧 は蓄 電 池 エ レメ ン トを何 個 直 列 ・並 列 に接 続 す る か で 決 ま り,そ の最 大 直 流 電 圧 は 充 電 時 の 電 圧 で 決 ま る.例 の と き,最 大 電 池 電 圧 は448V程
え ば,公 称 電 池 電 圧 が336V
度 に な る.主 蓄 電 池 は 変 動 の 大 き い 直 流
電源 で あ る.
④
直 流-交 流 変 換 は,出 力 数10kWの
三 相PWM制
御 電 圧 形 イ ンバ ー タ で
あ る.デ バ イ ス と して オ ン ・オ フ ス イ ッチ ン グ損 失 お よ び オ ン損 失 が 小 さ い 600∼700V級IGBTを
⑤
補 助 電 源 と して,エ
使 用 す る. ン ジ ン車 と同 じ12Vの
蓄 電 池 を積 載 し,こ れ を電 源
と して計 装,照
明,エ
ア コ ン(1 ∼ 2kW)を
の 大 き い 主 蓄 電 池 電 圧 を 安 定 化 し た12V PWMコ
⑥
操 作 す る.こ の た め,電 圧 変 動 に 変 換 す る約 1kWの
直 流-直 流
ンバ ー タ を心 要 とす る.
1回 の充 電 で 走 行 で き る距 離 と最 高 速 度,お 動車 普 及 の 重 要 項 目 で あ る.図7・38に
図
よ び充 電 所 要 時 間 は,電 気 自
走 行 距 離 と最 高速 度 の関 係 を示 す .
1回の 充電 走 行 距離 と最 高速 度 の関 係
7・38
充 電 時 間 を短 縮 す る ほ ど充 電 電 力 の 最 大 値 は 大 き く(現 状 で は15∼30分 100kVA程
度)な
る.家 庭 用 の100/200V
時 間 充 電 率 で は 1kW程
度 の 単 相PWMコ
コ ン セ ン トか ら の10時
で
間 充 電 率∼5
ンバ ー タ(充 電 器)が 必 要 とな る.
この コ ンバ ー タ は 車 載 部 品 の 一 つ で あ る. 電 気 自動 車 の普 及 ・発 展 に は,蓄 電 池 の 性 能 向上 を初 め と して,駆 動 シス テ ム の高 効 率 化 と電 気 シス テ ム 全 体 の 軽 量 化,低
価 格 化 と と も に,社 会 全 般 の整 備 が
必 要 条 件 で あ る. 以 上,特
に 「7・4交 通 ・輸 送 シ ス テ ム 」 で 解 説 した パ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス
の 応 用 は,小 型 ・軽 量,高 特 に,7・4節
効 率,高 性 能 の 制 御 性 を追 求 した 実 例 で あ る.
の 実 例 は,す べ て 「人 を 乗 せ て 動 く機 器 」 で あ る た め,通
据 置型 の 電 動 機 駆 動 と異 な り,ま ず 第 一 に,(1)人 シ ス テ ム ・部 品 の 冗 長 度,信
頼 性,次
に,(2)乗
常の
命 に対 す る安 全 ・保 護 機 能 と り心 地 の 良 さ,快 適 さ,楽
し
さ,(3)激
し い加 ・減 速,振 動 に対 す る低 振 動,低 騒 音 の機 械 設 計,(4)あ
らゆ
る気 象 条 件 に対 す る機 器 の 安 全 確 保 な ど,「 交 通 ・輸 送 シ ス テ ム 」 は 多 くの 関 連 す る技 術 分 野 を結 集 した 「ス ー パ ー ・パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス 」 とい え る.
引
用
文
献
金 井 ほ か;「 可 変 速 揚 水 発 電 電 動 機 励 磁 用GTO変
(1)
No.4,'96,東
(2)
石 川 ほ か;「 110巻
芝
換 器 」, P.10∼12, Vol.51,
レ ビ ュ ー
新幹 線
2号,'90,電
「ス ー パ ー ひ か り」 のACド
ラ イ ブ シ ス テ ム 」, P.105∼112,
気学 会雑 誌
小 林 ;「世 界 の 高 速 鉄 道 」,P.238∼243,114巻
(3) (4)
4号,'94,電
大 山 ;「 高 速 鉄 道 の 電 車 シ ス テ ム 」,P. 11∼14,
気学 会雑 誌
Vol. 50, No.1,'95,東
芝
レ ビュー (5)
由 川 ;「通 勤 電 車 の 新 し い
'95 ,電
ト レ ン ド を 作 る 」,P.102∼105,115巻
2号,
気学 会雑 誌
古 賀 ;「鉄 道 車 両 用 機 器 の 技 術 動 向 と当 社 の 取 組 み 」,P.844∼848, Vol.46,
(6)
No.11,'91,東
(7)
武 政 ほ か;「
芝
レ ビ ュ ー
山 梨 リ ニ ア 実 験 線 シ ス テ ム 」,P.38∼42,
Vol.50,
No.1,'95,東
Vol.49,
No.9,'94,東
芝 レ ビュー (8)
中 川 ほ か;「 超 高 速 エ レ ベ ー タ の 技 術 」,P.620∼623, 芝 レ ビュー
(9)
門 倉 ;「エ レ ベ ー タ 制 御 装 置 」,P.52∼53,
Vol.33,
No.10,'91,電
(10)
木下 ;「電気 自動 車 と電気 自動車 用電 力 変換 器 の現 状 と動 向 」 9月 2日,'94
第 7回電気 自動車 用パ ワー エ レク トロニ クス調査 専 門委 員会 資料
子技術
演
習
問
題
〔7 〕
〔 問 題 〕1. 電 動機 の 四象 限運転 とは何 か? 直流 電動機 の場 合 に つい て説 明せ よ.
〔 問 題 〕2. 3レベ ルNPC式PWM制
御 部 は 何 か?
波 形 を書 い て 説 明 せ よ.
〔 問 題 〕3. ベ ク トル 制 御 と は何 か?
〔 問 題 〕4. 直 流電 動機 が誘 導電 動機 に変 わ りつ つあ る理 由は何 か?
第 8章
( 1)
今 後 の パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 動 向
1947年 に ゲ ル マ ニ ウム 点 接 触 トラ ン ジ ス タ が 発 明 さ
わ が国 の立場
れ て 以 来,ち
ょ う ど半世 紀 が 経 過 した.こ
の 間,わ
早 くか らパ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 有 用 性,将
が 国 で は産 業 界,電
力業界 は
来 性 に着 目 し,デ バ イ ス/装 置 を
作 る立 場 の メ ー カ ー と,装 置 を使 う立 場 の ユ ー ザ ー が 互 い に 刺 激 し,協 力 し合 い,た
ゆ まぬ 努 力 の結 果,こ
の分 野 で 世 界 の トッ プ レベ ル の技 術 と実 績 を もち,
指 導 的 立 場 にな る に 至 った. そ の 現 れ と し て,1983年,電 tronics
Conference)が
気 学 会 主 催 のIPEC(International
東 京 で 開 催 さ れ た の を 初 め と し て,電
通 信 学 会 お よ びIEEE(The
Institute
of
が 協 力 し 合 い,ISPSD(International Devices
and
ICs),
Synposium
PESC(Power
INTELEC(International
Electronics
Telecommunications
が 国 主 導 の も と,多
く の 国 際 会 議,シ
質,討
く,毎
論 の 内 容 は高
Electrical
and on
Power 気 学 会,電
Electronics
Elec 子 情 報
Engineers)
Power
Semiconductor
Speciarist
Conference),
Energy
Conference)な
ン ポ シ ウ ム が 日 本 で 開 催 さ れ,そ
ど,わ の 論 文 の
回 盛 会 で あ っ た.
1985年,科
学 技 術 庁,資
源 調 査 会 の 「電 力 周 波 数 の 変 換 利 用 に 関 す る調 査 報
告;第105号
」 で は,わ が 国 と諸 外 国 との 技 術 比 較,わ
が 国 の進 む べ き方 向 と施
策,諸
外 国 へ の 技 術 協 力 につ き調 査 ・研 究 し,答 申 書 を科 学 技 術 庁 長 官 に 提 出 し
た.こ
の答 申 書 に は,「 こ れ か ら の 世 界 の エ ネ ル ギ ー の需 要 を考 え る と き,わ が
国 の パ ワ ー エ レ ク トロニ クス 技 術 を国 内 だ け に温 存 す るの で は な く,さ ら に技 術 を 高 め る と と も に,こ の 分 野 の技 術 を発 展 途 上 の 国 々 に広 め て世 界 の 省 エ ネ,省 資 源 に貢 献 す べ き で あ る」 と提 案 して い る.
(2 ) 21%(2000年
エ ネ ル ギ ー の需 給 の 予 想)を
現 在,東
占 め る 中 国,お
南 ア ジ ア諸 国 を は じ め,世 界 の人 口の 約 よ び 約16%(同)を
占 め る イ ン ドは 急
速 に経 済 発 展 を遂 げ つ つ あ る.そ れ に 伴 い,エ
ネ ル ギ ー 消 費 が 急 増 し て世 界 的 需
給 ア ンバ ラ ン ス と近 い将 来 の 化 石 燃 料 の 枯 渇 が 強 く懸 念 さ れ て い る. 一 方 で は,排 ガ ス 増 加 に伴 う大 気 汚 染 お よ び地 球 温 暖 化 に よ り,人 類 の生 活 へ の影 響,動
・植 物 生 態 系 の 変 化 も懸念 され て い る.
電 気 エ ネル ギ ー に関 して は,発 電 効 率 を少 しで も高 め,送
・配 電 系 統 お よび 末
端 の電 力 機 器 の 電 力 損 失 を少 しで も減 らす と同 時 に,脱 化 石 エ ネ ル ギ ー 源(例 ば,太 陽 エ ネ ル ギ ー,風
え
力 ・波 力 エ ネ ル ギ ー の 利 用,電 気 自動 車 の普 及 な ど),
お よび新 エ ネ ル ギ ー 源 の 開 発 と経 済 的 に受 け入 れ られ る装 置 の 開 発 ・実 用 化 とそ の普 及 は,各 国 の 緊 急 か つ21世 紀 の テ ー マ で あ る.こ の よ う な エ ネ ル ギ ー 動 向 は,今 後 のパ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 方 向 を示 唆 して い る. (3)
デ バ イ ス お よ び それ を使 用 し
電力変換 装置の 電力損失低減,省 材料
た電 力 変 換 装 置 で は,高
い電 力 変 換 効 率 で あ る こ と は言 う まで もな く,装 置 に は
ス ペ シ ア リ テ イ 材 料(金,銀,ニ
ッ ケ ル,コ バ ル ト,タ ン グ ス テ ン,モ
ン,チ タ ン な ど)を で き る だ け使 わ ず,コ
モ デ テ イ 材 料(鉄,銅,ガ
子材 料 な ど)で 構 成 して 省 資 源,省 材 料 で,か リサ イ クル 可 能 で あ る こ とが 望 まれ る.例
リブデ
ラ ス,高 分
つ,装 置 更 新 時 に は 材 料,部
え ば,図3・33の
品は
断 面 図 の よ う に,従
来 の 方 法 の 厚 い タ ン グ ス テ ン板 を ウ エ ー ハ に合 金 接 着 す る代 わ りに,図3・34の よ うに,薄 るが)は,ス 通 常,変
い モ リブ デ ン板 で 圧 接 した構 造(大
口径 と熱 歪 み を 改 善 す る 目的 で あ
ペ シア リテ イ 材 料 の節 約 とい え る. 換 装 置 を小 型 ・軽 量 に 設 計 で き る と言 う こ と は,部
品 の 発 熱 は小 さ
く,電 力 変 換 効 率 は 高 くて冷 却 の た め の スペ ー ス が 小 さ い こ とを意 味 す る.例 ば,高 電 圧 大 電 力 変 換 装 置 に つ い て は,図6・17の
え
よ うに,1 個 の サ イ リス タ の
定 格 電 圧 が 高 くな る ほ ど,直 列 接 続 の 個 数 を減 ら し得 る の で,電 力 損 失 お よび 変 換 装 置 を小 さ くで き,省 電 力,省
材 料 とな る.
変 換 装 置 で発 生 す る 電 力 損 失 の大 部 分 は デ バ イ ス の 分 圧(ス
ナ バ)回 路 で あ
る.デ バ イ ス の オ ン ・オ フ動 作 に 伴 い,分 圧 回 路 の コ ンデ ンサ の充 ・放 電 エ ネ ル ギー は デバ イ ス と,コ ン デ ンサ に 直 列 の抵 抗 で 消 費 され,発 の 容 量 は,高 電 圧 の 光 ト リガ サ イ リス タ で は1∼5μF,大
熱 す る.コ
ンデ ンサ
電 流 ゲ ー トタ ー ンオ フ
サ イ リ ス タ で は3∼6μFで
あ る.コ
ンデ
ンサ の 容 量 を小 さ くす る た め に は,デ バ イ ス の デ ザ イ ン を改 良 す る必 要 が あ る. 図8・1の よ うに,付 加 コ ンデ ンサ に エ ネ ル ギ ー を蓄 積 し,そ のエ ネ ル ギー を回 生 回路 で 電 源 に フ ィー ドバ ッ ク し て電 力 損 図8・1 スナ バ 回路 の 電 力 回生
失 を減 ら す方 法 もあ る. パ ワ ー エ レ ク トロニ クス の応 用
(4)
4・3・2項 の 図4・28に
現 在 の応 用 分
野 を 示 した.応 用 分 野 の 動 向 は,主 と し て ユ ー ザ ー 主 導 で 進 め られ るが,そ
れを
経 済 性 を もっ て機 能 と性 能 を実 現 させ る た めに は,そ れ に適 し た デ バ イ ス が 必 要 で あ る.「 応 用 」 と 「デ バ イ ス 」 は車 の 両 輪 とい え る. 今 後 の発 展 す るで あ ろ う分 野 は,① の た めの 高 電 圧 大 電 流 変 換 装 置(直 電 力 制 御,ア
両,通
勤 電 車,電
高性 能,低
波 数 変 換,交
り有 効 な 系 統 運 用
流 系 統 の 連 系,無
効
一 般 産 業 用 順 ・逆 変 装 置 の 高精 度 制 御 と
電 力 損 失 の 交 通,輸
送 機 器(新 幹 線 用 新 型 高 速 車
気 自動 車 な ど)が 考 え られ る.
こ の よ う な 予 想 か ら,デ 図8・2の
流 送 電,周
ク テ ブ フ ィル タ な ど),②
低 電 力 損 失 化,③
電 力 系 統 の整 備 と,よ
バ イ ス に 要 求 さ れ る 電 気 的 特 性 を 図4・28に
加 え る と,
よ う に な る.
これ らの 電 力 変 換 装 置 に要 求 され る事 項 は,① 信 頼 性 と制 御 の安 定 性,③ 響 を 与 え な い,④
無 騒 音,無
小 型 ・軽 量,省
振 動,電
材 料,⑤
高 い電 力 変 換 効 率,②
装置 の
磁 波,誘 導 障 害 な ど,環 境 に影
メ ン テ ナ ン ス フ リー,⑥
低 価格 で
あ る. 電 力 変 換 回路 と し て は,高 調 波 成 分 が 少 な く,交 流 側 の 力 率 が よ い 3 レベ ル NPC式PWM制
御 を主 体 と して,デ バ イ ス の 高 周 波 動 作 特 性 の 向 上 と共 に,よ
り高 度 の 波 形 整 形 で,か う.
つ,ス イ ッチ ング 損 失 の小 さい 方 式 が 使 用 さ れ るで あ ろ
図
(5)
8・2
応 用 分野 の 動 向か ら予 想 され るパ ワー デバ イ スの 特性
パ ワ ー デ バ イ ス に 要 求 さ れ る事 項 は,①
パ ワ ー デ バ イ ス(1),(2)
オ フ お よび 逆 電 圧 阻 止 能 力,② 動 作 領 域,④
低 電 力 損 失(ス
大 き い オ ン電 流 と過 電 流 通 電 能 力,③ イ ツ チ ン グ損 失,オ
ン電 流 損 失),⑤
のた め の 短 い キ ャ リヤ ラ イ フ タ イ ム とタ ー ンオ フ 時 間,⑥ き ま た は保 護 の容 易 さ 今 後,特
ー ト タ-ン
高電 圧化
高周 波動 作
デ バ イ ス保 護 機 能 付
後 述 す るIEGTで,次
オ フ サ イ リ ス タ,MOSFETで
これ らの 電 気 的 特 性 の相 関 関 係 は,図3・34の (a)
広 い安 全
で あ る.
性 改 善 の 可 能 性 が あ る デ バ イ ス はIGBTと
光 ト リ ガ サ イ リ ス タ,ゲ
高い
に
あ ろ う.
よ う に複 雑 で あ る.
電 気 的 特 性 との トレー ドオ フ に 依 存 す るが,現 在 の サ イ リス
タ で は定 格 ピ ー ク繰 返 しオ フ電 圧 お よ び逆 電 圧 は8kVで,こ
れ 以 上 の電 圧 阻 止
能 力 の 向上 は期 待 で き よ う.特 性 の トレー ドオ フ に よ って は,直 列 接 続 を利 用 す るほ うが 変 換 装 置 と し て有 利 の場 合 が あ ろ う. IGBTで
は2.5∼5kV級
が 開 発 され,例
電 動 機 駆 動 用 イ ンバ ー タ に使 用 され る.
え ば,き 電 電 圧1500V
の電車 の誘 導
(b) 大 電 流 化 現 在 の 最 大 級 の オ ン電 流(平 ウエ ーハ を使 用 した8kV級
均 値)は,直
径150mmのFZ
の 光 ト リガ サ イ リス タ で3500A
の 大 き い電 流 に対 して は,①
で あ る.こ れ 以 上
サ イ リス タ を複 数 並 列 に接 続 す る,②
さ ら に,大
口径 の ウ エ ー ハ を使 用 す る 方 法 が あ る.② は ウエ ー ハ に つ い て は技 術 的 に可 能 で あ ろ うが,デ
バ イ ス メー カ ー に とっ て は大 きな 設 備 投 資 を必 要 と し,か つ,面
内 均 質 な製 造 プ ロ セ ス,電 極,熱 て,②
歪 み な ど解 決 す べ き技 術 的 問 題 点 が 多 い.従
っ
は そ れ な りの必 要 理 由 が な け れ ば実 現 は 先 と な ろ う.
(c)タ
ー ン オ フ タ イ ム の 短 縮 高 周 波 の イ ンバ ー タ運 転 お よ びPWM制
御
に とっ て,デ バ イ ス の キ ャ リヤ ラ イ フ タ イ ム を 短 く,逆 回復 電 荷 量 を小 さ くす る 必 要 が あ る.逆 回 復 電 荷 量 の 減 少 に よ っ て,ス ナ バ 回路 の コ ン デ ン サ容 量 を小 さ くで き,同 時 に ス ナ バ 回 路 の 損 失 を低 減 で き る.サ イ リ ス タ の 場 合,nB層
にプ
ロ トンや ヘ リウ ム の イ オ ン を照 射 す る こ とに よ り,局 部 的 に そ の 層 の キ ャ リヤ ラ イ フ タ イ ム を制 御 す る方 法 が 効 果 を上 げ て い る. (d) 自 己 オ ン ・オ フ 機 能 を も っ た パ ワ ー デ バ イ ス ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ(GTO)はIGBTよ 常,1
り デ バ イ ス 構 造 が 簡 単 の た め,大
ウ エ ー ハ 1デ バ イ ス で あ る.現
は 近 い う ち に8kV,8kA程 め,大
在 の 直 径150mmウ
度 に は な る で あ ろ う.IGBTは
電 流 用 で は 1 ウ エ ー ハ 1デ バ イ ス に な り に く い.多
に 圧 接 ・接 続 し た 構 造 の パ ッ ケ ー ジ で2500V,1000A
電 流GTOで
は,通
エ ー ハ の6kV,6kA パ タ ー ンが 微 細 な た 数 の エ レ メ ン トを 並列 が 開 発 さ れ て お り,こ
の 方 法 で 電 流 増 加 は 可 能 で あ る(3). 最 近,ト
レ ン チ 構 造 のMOSゲ
(Injection Enhanced
Insulated Gate Bipola Transistor)が
の 電 圧 阻 止 能 力 を も ち,電 こ のIEGTは,電
ー ト を 微 細 加 工 で 多 数 埋 め 込 ん だIEGT(4)
流 密 度100A/cm2で
オ ン 電 圧2.5V
開 発 さ れ,4500V の 特 性 を 示 し た.
子 の 注 入 効 率 を 高 め る エ ミ ッ タ 構 造 を 持 ち,オ
リ ス タ と 同 様 な キ ャ リ ヤ 分 布 が 得 ら れ る の で,ト
ン状 態 で サ イ
ラ ン ジ ス タ な が ら この よ うに オ
ン電 圧 が 低 い 特 徴 が あ る. こ のIEGTは,GTO,IGBTと 一 つであ る
.
ともに将来期 待 しうるハ イパ ワー デバ イ スの
高 電 圧,大
電 流 の 高 速 ス イ ッチ ン グ を行 う ほ ど誘 導 障 害,電
原 因 とな り,電 子 機 器 に影 響 を 与 え る.対 策 と して,ス
磁波 ノイズの発生
イ ッチ ン グ回 路 の ス トレ
イ ン ダ ク タ ン ス を小 さ く,配 線 が 電 磁 結 合 し な い よ う に す る と と も に,発 生 部 分 を電 磁 波 シ ー ル ド材 で 遮 蔽 す る必 要 が あ る. (6) SiC(シ
リコ ン カ ー バ イ ド)基 板 材 料 最 近,昇
た 直 径30mmの6H-お
よ び 4H-SiCウ
の ウエ ー ハ の 絶 縁 破 壊 電 界 強 度 は,シ
エ ー ハ が 市 販 さ れ る よ う に な っ た.こ リ コ ン単 結 晶 ウエ ー ハ よ り も 1桁 大 きい.
さ ら に,特 殊 な ス テ ッ プ エ ピタ キ シ ア ル 法 に よ っ てSiC面 せ る こ とが で き る よ う に な っ た.こ タ,ト
ラ ン ジ ス タ,ダ
華 法 に よ って 製 作 し
上 に単結 晶 を成長 さ
の技術 に よっ て高 温度 で動作 す るサ イ リス
イ オ ー ドが 報 告 さ れ て い る.
SiC基 板 は,最 大 降服 電 界 強 度,キ
ャ リヤ 移 動 度,高
温度動作 の点 で魅力 あ る
基板 材 料 と い え る.
引用 文献
(1)中
川;「
パ ワ ー デ バ イ ス は こ こ ま で 進 ん だ 」,P.161∼166,Vo1.114,No.3,'94,電
気 学会 雑誌
(2)電
子 デ バ イ ス 技 術 委 員 会;「 先 端 技 術 セ ミ ナ ー テ キ ス ト」3月27日,'96,電
気 学会
(3)関
ほ か;「
芝 レ ビ
自 己 消 弧 デ バ イ ス と そ の 応 用 動 向 」,P.4∼9,Vol.51,No.4,東
ユ ー (4)Kitagawa,etal;「 tor」
Technical
A 4500V Digest,
IEGT
International
Operating
in
Electron
Device
a
Mode
Simular
Meeting,
to IEDM,1993
a
Thyris
あ
浅 学 非 才 の 身 を顧 み ず,多
と
が
き
くの 方 々 か らの 励 ま し,ご 支 援 を 得 て,一 応 の 目標
とす る枚 数 を超 え る まで ま とめ る こ とが で きた. 筆 者 と して は,読 者 が 「パ ワー エ レク トロニ ク ス 」 を理 解 し,興 味 を も ち,親 しみ を感 じや す い よ う に,歴 史 的 背 景,技 術 発 展 の経 緯 を折 り込 み な が ら,入 手 し得 た 最 も新 しい 資 料,情
報 を も と に,多
くの 図,表,写
真 を 掲 載 し,解 説 し
た.
一 般 産 業 へ の 応 用 を 「パ ワー エ レ ク トロニ ク ス」 とい う な らば,交 通 ・輸 送 機 器 へ の 応 用 は人 命 に直 接 ・間 接 に 関 係 す る た め,特 段 の 信 頼 性 が 要 求 され る の で,「 ス ー パ ー ・パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 」 と し,ま た,高 電 圧 ・大 電 力 を取 り 扱 う周 波 数 変換,直
流 送 電 へ の 応 用 は,雷 サ ー ジ,開 閉 サ ー ジ の 過 電 圧 に 耐 え,
か つ,電 力 の安 定 供 給 の 責 務 を 果 た す た め,さ
ら に 多 くの 技 術 分 野 を 包 含 し た
「ウル トラ ・パ ワ ー エ レク トロ ニ ク ス 」 と位 置 付 け た.
本 書 で は,デ バ イ ス の 種 類 と原 理,シ の 動 作 ・波 形 を解 説 した.さ
表 的 回 路 とそ
ら に,実 例 と して わ が 国 の 周 波 数 変 換,直
は じめ,重 工 業,一 般 産 業,交 に力 点 を置 き,多
リコ ン ウ エ ー ハ の 製 法,代
流送電 を
通 ・輸 送 機 器 へ の パ ワー エ レ ク トロニ ク ス の 応 用
くの ペ ー ジ を割 い て紹 介 した.そ
の結 果,残 念 な こ とに,家 電
用 機 器 へ の応 用 に つ い て 割 愛 せ ざ る を え な か った. 記 述 に お い て,説
明 不 足,間
機 会 に よ り正 確 に,ま た,よ りで あ る.
違 い が あ る と思 わ れ る が,次
の改 訂 版 を 出版 す る
り広 い 分 野 か ら多 くの実 例 を厳 選 し,解 説 す るつ も
謝 この 著 書 を ま と め る に あ た っ て,次
辞 の 方 々 を始 め,多
くの 方 か らの ご支 援,有
益 か つ 新 しい 資 料,ご 助 言,ご 教 示 を頂 き,ま た,文 献,資 料 の 引用 を さ せ て 頂 い た. 特 に, 周 波 数 変 換 と直 流 送 電 に つ い て,
東京電 力株式会 社殿
電源 開発株 式会社殿
中部電 力株式会 社殿
関西電 力株 式会社殿
四 国雷 力株式会 社殿 JR東 日本 株式会社殿 JR東 海株 式会社殿
交 通 関係 に つ い て, 全 般 に つ い て,
豊 田工 業大学 今井 孝二 教授殿 佐 伯 修 三 技監殿
竹 内 南 主幹殿
〃
大橋 弘通 技監殿
小 宮山富雄部 長 附殿
芝
関 長 隆 技 監殿
小林 淳 男技監殿
〃
堀 内 恒 郎 主幹殿
国吉 真 照主査殿
〃
羽片 日出夫 主査殿
デバ イ ス に つ い て,東
電 力 変 換 に つ い て,東
交 通 機 器 に つ い て,東
芝
芝
山屋 貴 嗣事業 部長殿
高原 英 明主幹殿
こ こ に改 め て 皆 様 に 深 く感 謝 とお 礼 の 意 を表 す. 1996年9月
岸
敬二
演習問題 の解答
第 1章 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 発 展 の 経 緯 〔問 題 〕1.1947年12月23日,ア Brattain(1956年 確 認 し,ト
メ リ カ,ベ
ノ ー ベ ル 賞)が
ラ ン ジ ス タ と名 づ けた.(IEEE
〔 問 題 〕2.pnpnの
ル 研 究 所 に てShockley,
Bardeen,
ゲ ル マニ ウム 点接 触 形 デバ イ ス で増 幅 作 用 を Spectrum, January,1973,
P.24-33)
4層 構 造 に て ゲ ー ト電 流 に よ り電 流 が ラ ッ チ ア ッ プ す る現 象 を論 文
発 表 し た の は1956年.ア
メ リカ のGE社
売 開 始 し た.1963年,SCRと
は,1957年
い う 呼 称 は,サ
にSCRと
い う商 品 名 で 発
イ リ ス タ(Thyristor)に
変更 さ
れ た. 〔 問 題 〕3. 「パ ワ ー(電
力,電
力 機 器)」 を 「エ レ ク トロ ニ ク ス(半
よ っ て 「コ ン トロ ール(制 〔 問 題 〕4.サ れ,よ
イ リス タ の 特 徴(低
損 失 で 高 速 の ス イ ッ チ 動 作,高
り高 い 電 力 へ の 応 用 の 強 い 要 望 が あ っ た こ と.こ
ン単 結 晶 の 大 口径 化,高
導 体 デ バ イ ス)」 に
御)」 す る 三 つ の 分 野 で構 成 さ れ た 広 い技 術 分 野. 信 頼 性 な ど)が 認 知 さ れ に 応 え る た め,シ
品 質 化 技 術 の ほ か デ バ イ ス の 設 計 ・製 造 技 術,応
リコ
用技 術
が 進 歩 し,実 績 を積 み 重 ね て き た た め.
第 2章
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス に 関 す る定 義,
〔問 題 〕1.転 流 と は(一
記 号,
用語
つ の 回 路 に 複 数 の デ バ イ ス が 接 続 さ れ て い て),同
時 に電 流 を
通 じ る期 間 を も っ て 行 わ れ る 電 流 の 移 り変 わ りを い う. 転 流 方 式 の 分 類 は,図2・4参 〔 問 題 〕2.図2・5参
照
〔 問 題 〕3.順 方 向;ピ 逆 方 向;ピ
照.
ー ク非 繰 返 し オ フ 電 圧 お よび ブ レ ー ク オ ー バ 電 圧. ー ク 非 繰 返 し逆 電 圧 お よ び 逆 降 伏 電 圧.
(電 圧 ・電 流 特 性 は,図2・7参 ゲ ー ト;ピ ー ク ゲ ー ト電 圧,ゲ 〔 問 題 〕4.タ
ー ン オ ン 時 は 図2・8(a),タ
照)
ー ト逆 電 圧 お よ び ゲ ー ト ト リガ 電 圧 ー ン オ フ時 は 図2・13お
よ び 図2・14を 参 照.
第 3章
パ ワ ー デ バ イ ス の 基 礎(そ
〔 問 題 〕1.図3・11の(b)お 〔 問 題 〕2.図3・23参 〔問 題 〕 3.製 FZ法
の 1)― 動 作 原 理 と デ バ イ ス の 種 類 ―
よ び(c)参 照.
照.
法 上 の 違 い は 図3・28お
よ び 図3・29参 照.
で は 不 純 物 の 混 入 は ほ とん ど な く,抵 抗 率 は 比 較 的 高 い 値 を 製 造 で き
る.た だ し,直 径 の 大 口 径 化 は や や 困 難. CZ法
で は,石
英 る つ ぼ か ら の 溶 け込 み が あ り,高 い 抵 抗 率 の も の を 製 造 す る
の は比 較 的 に 困 難.大 〔問 題 〕4.構
口 径 化 は 比 較 的 に 容 易.
造 上 の 違 い は 図3・16と
共 通 点 は,両
図3・19.
者 と も電 圧 駆 動.相
違 点 は,MOSFETは
多 数 キ ャ リヤ デ バ イ ス
の た め キ ャ リヤ 蓄 積 時 間 が な い の で ター ンオ ン,タ ー ン オ フ 時 間 が 短 く,高 周 波 の ス イ ッ チ ン グ が 可 能 で あ る. 特 性 比 較 は 図4・28参
照.
第 4章 パ ワー デ バ イ ス の 基礎(そ の 2) ― ゲ ー ト駆 動 回路 〔 問 題 〕1.図4・19の
よ う に,ス
ナ バ 回 路 が な い と,オ
,安 全 動 作 領 域,熱
抵抗 ―
ン電 流 が 減 少 す る 過 程 で 電 源 回
路 の イ ン ダ ク タ ン ス の た め に 高 い 過 渡 電 圧 が 発 生 し,そ れ が 陽 極-陰 極 間 に 加 わ る.オ
ン電 流 と この 電 圧 の 積 が 電 力 損 と な っ て エ レ メ ン トの 局 部 に 集 中 して ホ ッ
トス ポ ッ トが 発 生 し,そ れ が あ る 限 度(図4・19の バ イ ス は 特 性 劣 化,破
壊 に 至 る.オ
安 全 動 作 領 域)を
超 え る とデ
フ電 圧 上 昇 率 を抑 え,こ の 領 域 内 で 動 作 す る
よ う ス ナ バ 回 路 の定 数 を選 定 し,接 続 す る. 〔 問 題 〕2.デ バ イ ス 単 体 お よ び 多 種 類 の 回 路 が 互 い に絶 縁 され て モ ー ル ド さ れ て お り, 「集 積 化 さ れ た パ ワ ー ユ ニ ッ ト」 で あ る.回 路 お よ び 電 圧,電 い.モ
流 の選 択 の幅 が 広
ジ ュー ル の上 面 に は電 極 端 子 とゲ ー ト/べ ー ス の 制 御 端 子 が 付 い て お り,
そ の 下 面 に は一 括 した ヒー トシ ン ク が 付 い て い て,こ け る こ とに よ っ て組 立 配 線,交 〔 問 題 〕3.図4・28参
照.
の 面 を 冷 却 フ ィ ン に取 り付
換 作 業 が 極 め て 容 易 と な る.
第 5章
電 力 変 換 回路
〔 問 題 〕1.表5・1参 〔 問 題 〕2.商
照.
用 周 波 正 弦(sin)波
cosと な り,式 にcosの
の 一 部 分 に つ き積 分 し て 平 均 値 を 求 め る た めsinが
項 が 入 る.
解図 1 三 相 星 形 の と き の 波 形 は,図5・4参
照.
〔 問 題 〕3.交 流 側 線 間 電 圧(実 効 値)をVas,同
線 電 流(実
効 値)をIacの
と き,交
流側
電 力Pacは,
直 流 電 圧 をVd,直
流 電 流 をIdの
と き,直 流 電 力Pdcは,
Pdc=(3√2/π)VacId
上 式 か ら,
と な る(表5・2参
照).
〔 問 題 〕4.回 路 構 成 は 図5・22,運 道-本 州 直 流 送 電 設 備,新
転 特 性 は 表5・3参 信 濃50/60Hz周
照.応
用 例 は,他
波 数 変 換 設 備.自
励 自 制 式 は北 海
励 他 制 式 は大 形 コ
ン ピ ュ ー タ 用 無 停 電 電 源 装 置. 〔 問 題 〕5.表5・4参 〔 問 題 〕6.図5・30参
照. 照.
〔 問 題 〕7.交 流 回 路 の 動 作 周 波 数 を,例 ①
え ば20kHz以
人 間 の 可 聴 周 波 の 限 界 で あ る 約20kHzよ
上 に す る の は, り も高 くす る こ と に よ り可 聴 騒
音 を 減 らす. ②
高 周 波 化 す る ほ ど部 品 お よ び 装 置 を小 形 ・軽 量 化 で き,ま
た変換 効率 を高
め ら れ る. ③
電 圧 駆 動 で 高 速 動 作 のMOSFET,
IGBTの
電 圧,電
流 定 格 が 増 加 し,ス
イ ッ チ ン グ 性 能 が 向 上 し た. 〔 問 題 〕8.電 力 変 換 の 特 徴 は5・4・3項 参 照. 制 御 方式 は
第 6章
①
パ ル ス振幅 変調
②
パ ル ス幅変 調
③
パ ル ス周波 数変 調
パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス の 応 用(そ
の 1)― 電 力 へ の 応 用 ―
〔 問 題 〕1.6・1・3項 参 照 〔 問 題 〕2.図6・18お
よ び 図6・20参 照
〔 問 題 〕3.6・1・6項 参 照 〔 問題 〕 4.6・4・1項 参 照 お よ び 図6・35参 照
第
7章
パ ワ ー エ レ ク
ト ロ ニ ク ス の 応 用(そ
〔問 題 〕1.7・1節,図7・4,図7・7,図7・8参 〔問 題 〕2.図7・16参 〔問 題 〕3.7・1・2項
照 の(7)参
〔問 題 〕4.7・2・1項,表7・3参
照 照
照
の
2)― 電 動 機 へ の 応 用 ―
索 引 あ行 IGBT
オ ン電 流
19
遅 れ時 間
73
12,46,72,82
ア ク セ プ タ ア ク テ ィ ブパ ワ ー フ ィル タ 安全 動作 領域
28 199 34,78
か行 か ご形 誘 導 電 動 機 の 可 変 速 運 転
227
可 逆PWM回
223
転
可 逆運 転 イ ンパ ル ス転 流
11
位相 遅 れ角 一 石 フ ォ ワ ー ド形 間 接 変 換 回 路
99 139
一 般 産 業 用 三 相 イ ンバ ー タ
242
医 用 機 器 用 直 流 高 電 圧 電 源 装 置
205
222,231
重 な り角 過 渡 熱 イ ン ピー ダ ン ス
111 89,90
過 負 荷 オ ン電 流
19
可 変速運 転 221, 227, 229, 230, 231, 233, 235, 240, 243, 245
ウエーハ
29
ウエーハ 化 プ ロセス
61
運転 特性
128
間接 変換 回路
126
紀 伊 水 道 サ イ リ ス タ 直 流 連 系 設 備
182
逆 回復 時 間 AIN基
93
逆 回復 電 荷
59
逆 回復 特 性
32
逆 降伏 電 圧
np接 合
29
逆 阻 止 3端 子 サ イ リス タ
N ゲ ー トサ イ リ ス タ
36
逆 阻止 状 態
n形 シ リ コ ン
28
逆損
n形 半 導体
28
逆 導 通 3端 子 サ イ リス タ
SBD
43
逆 導 通 サ イ リス タ
FZ法 npnト
板 ラ ンジ スタ
SCR
1
逆 バ イア ス安全動 作領 域
エ ミ ッ タ接 地
32
逆 方向 特性
エ ミ ッタ 領 域
32
共振 形 逆変換 回路
エ レ メ ン ト
30
共 有結 合
32 21,32 21 17,31 49 31,41 21 50 13,30,50 80,82 31 147 27
金 属 酸 化 膜 電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ44,71 オ フ状 態
14,36
オ ン状 態
19,39
空 乏層
オ ン損
20,40
駆 動 シ ス テ ム
オ ン電 圧
20
31 248
ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ53,76,84
さ行
ゲ ー トタ ー ン オ フ トラ ン ジ ス タ 13,23 ゲ ー トタ ー ン オ フ 電 荷
23,54
ゲ ー ト ト リガ シ ス テ ム ゲ ー ト位 相
189 127,128
3レベ ルNPC方
式PWMイ
ンバ ータ
232
サー ジオ ン電流
19
ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ フ 時 間
23
サ イ ク ロ コ ンバ ー タ
ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ ン
38
サ イ リス タ
ゲ ー ト制 御 テ イ ル 時 間
23
サ イ リス タ セ ル ビ ウ ス 制 御
228
サ イ リス タ ブ リ ッ ジ 回 路
222
サ イ リス タ モ ー タ
236
形 鋼 仕 上 げ 圧 延 用 三 相 イ ンバ ー タ 243
2,12,36,49,73
コ レ ク タ遮 断 電 流
33
サ イ リス タ レ オ ナ ー ド
コ レ ク タ接 地
32
サ イ リス タ 変 換 装 置
32
再 結合
コ レ ク タ領 域 降 圧 チ ョ ッパ 回 路
133,134
122
221 173,180 27
佐 久 間 サ イ リ ス タ周 波 数 変 換 所
175
航 空機 整備 用交 流電 源
210
三 相 ブ リ ッ ジ回 路
105
工 作 機 械 用 高 周 波 イ ン バ ー タ
241
三相 交 流電源
104
高 層 ビル 用 高 速 エ レベ ー タ
258
三 相 混 合 ブ リ ッ ジ回 路
108
高 速 サ イ リス タ
49
三相 星形 回路
104
高 速 ダ イ オ ー ド
43
三相 電 力制御
119
三相 二 重星形 回路
108
高 調波
157
高 調 波 フ ィル タ
162
高 電 圧 大 電 流 サ イ リス タ 変 換 装 置
186
高 電 圧 大 電 流 ダ イ オ ー ド
41
CZ法
59
GTO
53
交 流 回 路 用 フ ィ ル タ
163
シ ョ ッ トキ ー バ リア ダ イ オ ー ド 12,43
交 流間 接変換
169
シ リコン単結 晶
交 流 系 統 連 系 用 サ イ リス タ変 換 装 置177
事故 電流
交 流式 無効電 力補 償 装置
197
写真 食刻
交 流-交 流 電 力 変 換 回 路
116
車両 用補助 電 源
交 流-交 流 変 換
169
遮断領 域
交 流-直 流 電 力 変 換 回 路
99
59,60 165 64 209 34
周 波 数 変 換 用 サ イ リス タ変 換 装 置
交 流-直 流 変 換
201
交 流 電 力 間 接 変 換 回路
125
循環電 流 方式
交 流 電 力 供 給 シ ス テ ム
214
順 バ イ ア ス 安 全 動 作 領 域
交 流電力 制御
197
順 変 換-逆
交 流電力 調整 回路
117
順 方 向特性
交 流電力 直接 変換 回路
122
昇 ・降 圧 チ ョ ッパ 回 路
133,136
昇 圧 チ ョ ッパ 回 路
133,135
171,184
変換 動 作
122 79,81,82 127 31
消流
11
端 子 電 圧 制 御(電
動 機 の)
228
自励 式
126
単 相 セ ン タ タ ップ 回 路
102
自励 式 四 象 限 電 圧 形 イ ンバ ー タ
156
単 相 均 一 ブ リ ッ ジ回 路
102
自励 式 電 力 変 換
130
単相 交流電 源
99
自励 式 無 効 電 力 補 償 装 置
198
単相電 力制 御
117
自励 他 制 式 逆 変 換 回 路
146
単相 半波 回路
新 信 濃 サ イ リス タ 周 波 数 変 換 所
171
短絡安 全動 作領 域
進相 電力
127
スイ ッチ ング レギ ュレー タ
203
スナバ 回路
86
セル ビウス方式
228
セ ル フ タ ー ンオ ン セ ン サ レ ス ベ ク トル 制 御
36 228
制御進 み角
127
整 流 ダ イ オ ー ド
12,30,41
99 80,84
チ ョ ッパ 回 路
133
蓄電 池
145
窒 化 ア ル ミニ ウ ム 基 板
93
直 流-交 流 電 力 変 換 回 路
144
直 流-交 流 変 換
206
直 流-直 流 電 力 変 換 回 路
133
直 流-直 流 変 換
203
直 流 回 路 用 フ ィル タ
162
直流 間接 変換
203
静 電 誘 導 サ イ リス タ
13
直流 間接 変換 回路
138
静 電 誘 導 トラ ン ジ ス タ
13
直 流機
144
直 流 送 電 用 サ イ リス タ変 換 装 置179,184
絶 縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ 46,72
た行
直 流短絡 事故
165
直 流直接 変換 回路
133
直 流定電 圧電 源
203
ダー リ ン トン形 バ イ ポ ー ラ パ ワ ー トラ ン
直 流電源
144
ジ ス タ
直 流電動 機
220
直 流電動 機 の可逆運 転
221
タ ー ンオ ン時 間
43 17,73
タ ー ンオ ン損
18
直 流電動 機 の可変速 運転
221
ダ イ オ ー ド
12
直 列 共 振 逆 変 換 回路
147
直 列 共 振 形 間 接 変 換 回路
142
通 勤電車
253
太 陽 光 発 電 シ ス テ ム
211
太陽 電池
144
多 象 限 チ ョ ッパ 回 路
133,137
多 相 チ ョ ッパ 回 路
137
多 相 多 重 チ ョ ッパ
134
多相 電力変 換 回路
110
立 上 り時 間 他励 式 他励 式電 力変換
73
「209系 」 駆 動 シ ス テ ム
通 流率
135
テイ ル時間
54
デ ィレー テ ング
80
126
デ バ イ ス
129
デバ イス転流
4 11
定 比 式 サ イ ク ロ コ ン バ ー タ
124
転流
10
転 流 イ ン ダ ク タ ンス
111
転 流 タ ー ン オ フ サ イ リス タ
73
転 流 タ ー ンオ フ時 間
22,41
転 流電 圧
ネ ガ テ ィ ブベ ベ ル
65
熱 間 圧 延 用 三 相 サ イ ク ロ コ ンバ ー タ 245 熱抵抗
88,90
燃料電 池
145
能動領域
34
128
転 流方 式
126
電 圧 形 イ ン バ ー タ
126,130,149
は行
電圧 形 方形 波逆 変換 回路
149
電 気 自動 車
259
ハ ー フ ブ リ ッ ジ 形 間 接 変 換 回 路
電 車 用 直 流 き電 電 源
202
バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ
電動 機駆 動 回路
237
パ タ ー ンニ ン グ
139
パ ルス周 波数 変 調
155
パル ス振 幅変 調
155
パル ス制御
154
パル ス幅 変調
155
電 流 オ ン ・オ フ形 間 接 変 換 回路 電 流 共 振 形 間 接 変 換 回 路 電 流 形 イ ンバ ー タ
139,142
126,130,151
電 流形 方形 波逆 変 換 回路
151
電 流増 幅率
33
140 12 ,32 64
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス
電 力 シ ステム
213
パ ワ ー デ バ イ ス
電 力 の制御
129
パ ワ ー トラ ン ジ ス タ
電 力 の流れ
129
半 導 体 デ バ イ ス
電 力制御
121
汎 用 三 相400V,160
電 力制御 回路
153
電力 変換 回路
98
2 4,25 70 4
kW級
イ ンバ ー タ 241
電力 変換 技術
9
PLL速
電力 変換 装置
9
度制 御
224
pn接 合
29
P ゲ ー トサ イ リ ス タ
36
ドナ ー
28
p形 シ リ コ ン
28
トラ イ ア ッ ク
13
p形 半 導 体
28
トラ ン ジ ス タ
1,32,43,70
ピー ク ゲ ー トタ ー ン オ フ電 流
23
東 海 道 新 幹 線 「の ぞ み 」 駆 動 シ ス テ ム
光 ト リガ サ イ リ ス タ
13,51,75
248
光露 光 技術
同期電 動機
234
東 清 水 サ イ リ ス タ周 波 数 変 換 所
176
同 期電 動機 の可 変速 運転
235
非循 環電 流 方式
123
避雷 器
193
V/f一 定 制 御
228
プ ッ シ ュ プ ル 形 間 接 変 換 回 路
139
64
な行 二 次降伏 二 象 限 チ ョ ッパ
34 137
フ ラ イ バ ッ ク形 間 接 変 換 回 路
141
無効 電力
フル ブ リ ッ ジ形 間 接 変 換 回 路
140
無効 電力 補償 装置
197
129
ブレー クオ ーバ電 圧
17
無 効 電 力 補 償 用 サ イ リ ス タ装 置
195
不純物 半 導体
27
無停 電電 源装 置
206
負荷 転流
11
負性 半導体
25
MOSFET
複 合 デ バ イ ス
13
モ ジ ュール
ベ ー ス接 地
12,44,71,81 92
や行
32
ベ ク トル制 御
228,233
ベベ ル構造
山 梨 超 電 導 磁 気 浮 上 リニ ア 実 験 線 駆 動 シ 65
並列 共振 逆変換 回路
148
並 列 共 振 形 間接 変 換 回 路
143
変 換 ユ ニ ッ ト
ス テ ム
256
誘 導電動 機
224
余裕 角
128
四 象 限 チ ョ ッパ
137
9
ポ ジ テ ィブ ベ ベ ル
65
保持 電流
19
方形 波逆 変換 回路
ら行
149 34
ラ ッ チ ン グ電 流
19
179
リソグラ フィー
64
飽和 領域 北 海 道 − 本 州 サ イ リス タ直 流 送 電 設 備
ま行 巻線 形誘 導電動 機 の可 変速 運転
228
リ ン ギ ン グ チ ョ ー ク コ ンバ ー タ
141
力率
129
力率 の制御 臨界 オ ン電流上 昇率
156 17,18
〈 著 者 紹 介〉
岸 学
敬二 歴
職
歴
慶 応 義 塾大 学 工 学部 電 気 工学 科 卒 業(1952) 工 学博 士(1969) 東 芝鶴 見工 場 東 芝研 究 開発 セ ンター 次 長 東 芝材 料 本 部材 料 企 画 室長 東 芝 セ ラ ミッ クス株 式 会社 取 締 役 中央 研 究所 長 チ ェ コ共 和 国 プ ラハ 市Czech Technical University教 授 日本工 業 大 学教 授
理工学講座 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 基 礎 ―新 しいパ ワー デバ イ ス とその応用 ― 1996年11月10日
2003年5月20日
第 1版 1刷 発 行
著 者
岸 敬二
発行者
学校法人 東 京 電 機 大 学 代 表者 丸 山 孝 一 郎
発行所
東 京 電 機 大 〒101-8457
第 1版 3刷 発 行
学 出 版 局
東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町2-2 振 替 口 座00160-5-71715
印刷 三 美印刷㈱ 製本 渡辺製本㈱
電 話 (03)5280-3433(営
業)
(03)5280-3422(編
集)
〓Kishi Printed
Keiji 1996 in Japan
*無 断 で転 載 す る こ とを禁 じます 。 *落 丁 ・乱 丁 本 は お取 替 え い た し ます。 ISBN4-501-10710-3
C3054
電気工学図書 理工学講座 基礎 電気 ・電子工学
理 工学 講座
宮 入 庄 太/磯 部 直吉 監修 前 田明志 他 著 A5判308頁 2色刷
宇 野 辛 一/磯 部 直 吉 共 著 A5判318頁
改 訂 交 流 回 路
電 気 ・電子技術 全般 を理解 で きるよ うに編集 した。 大学理 工学 部の基礎課程のテ キス トに最適。 2色刷
交流現象の理論的な解説 と計算法を詳述 した名 著 「 交 流回路」 を,時 代の要求に沿っていて親 しみや すく, かつ理解 しやすい よ うに全面的 に見直 した改訂版。
新 テキ ス ト
新 テキ ス ト
電 気 回 路 I 直 流 回路 ・交 流 回 路
電 気 回 路II 四 端 子 回路 ・波形 応答 ・過渡 現 象
専 門 教育 研 究 会 編 A5判 198頁
専 門 教育 研 究会 編 A5判188頁
電気工学の基礎理論をや さしく,正確 に解説 した 「 新 テ キス ト」シ リー ズの 1冊。 回路理論の基 礎につい て,身 につ き使 い こなせ るよ うに解説。
電気回路の うち四端子回路,波 形応答,過 渡現象 を 豊富な例題 によってや さしく解説 した。短大,高 専, 専修学校のテキス トに最適。
理 工学講 座
新 テキス ト
電 磁 気 学
電 磁 気 学
東 京 電機 大 学 編 A5判266頁 理 工系大学の 基礎課 程の ための教科 書 として編 集。 講義 と学生 の演 習の便宜を考 えて,豊 富に例題や演 習問題 を用意 した。 理 工学講 座
専 門教 育 研 究会 編 A5判224頁 短大,高 専,専 修学校の学生を対象 に,電 磁現象の理 解に重点をおいてや さ しく,し かも正確 に解説 した。
電磁気学の基礎
高 周 波 電 磁 気 学 P.ハ モ ン ド 著 秋 月影雄 他 訳 A5判192頁
三輪 進 著 A5判228頁 電磁気学 を基礎 に,ア ンテナ,電 波伝搬,高 周波回 路等 を理解す るのに必要 な理論 を簡潔 に解説。
高度 な数 式演 算に終始 している従 来の電磁気学 を改 め,ベ ク トル を用 いず に物理 現象 の理解に重点 をお いて解説 した良書 の翻訳 書。
理工 学講 座
理工学講 座
照明工学講義 新訂版
電 気 機 器 要 論 磯部直吉 著 A5判370頁
関 重 広 著 A5判210頁 長 年読者か ら愛用 され信頼 を得てい る前著 を最新 ・ 最良の資料 をと り入れて全面的 に見直 した。
大学における著者の20年 余の電気機 器の講義 と研 究 から得た経験 を基 にして執筆 した。 大学専門学科 の 教科書 と して最適であ る。
*定 価,図 書目録 のお問い合わせ ・ご要望 は出版局 までお願い致 します. A-54