理工 学講 座
統計力学演習 桂 重 俊 ・井 上 真 共 著
TDU 東京電機大学出版局
本 書 を 無 断 で 複 写(コ ピ ー)す る こ と は,著
作 権 法 上 認 め られ た 場
合 を除 き,禁
者 か ...
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理工 学講 座
統計力学演習 桂 重 俊 ・井 上 真 共 著
TDU 東京電機大学出版局
本 書 を 無 断 で 複 写(コ ピ ー)す る こ と は,著
作 権 法 上 認 め られ た 場
合 を除 き,禁
者 か ら複 写(コ ピ ー)に
じ られ て い ます 。 小 局 は,著
係 る権 利 の 管 理 に つ き委 託 を受 け て い ま す の で,複 は,必 ず 小 局 宛 ご 連 絡 くだ さ い 。
写 さ れ る場 合
Uber der Buste steht die Formel, die ihre Gultigkeit behalten wird, wenn
einmal alle diese Grabmaler unter dem Schutt der
Jahrtausende versunken sind. Engelbert
Broda
こ
の
墓
の
千
年
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塵 の
に 理
埋 り
も は
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も も 残 E・
ら
む
ブ ロ ー ダ
ま
え
が
き
現 代 物 理 学 は,物 理 現 象 を ミク ロ な立 場 か ら把 握 す る根 本 と して,そ の 基 礎 を 量 子 力学 と統 計 力 学 に お い て い る.量 子 力 学 と統 計 力 学 は,応 用 物 理 学,情 報 科 学,化 学,生
物 学,工 学 等 を学 ぶ 上 で欠 くこ との で きな い もの に な っ て い る.
本 書 は,統 計 力 学 お よ び こ れ を解 く上 で 必 要 な 数 学 的付 録 の 部 に分 れ て い る. 読 者 は古 典 力 学 と電 磁 気 学 お よび 量 子 力 学 の 初 歩 を学 ん で い る こ とを仮 定 して い る.熱 力学 につ い て は簡 単 に ま とめ て お い た.標 準 的 な教 科 書 に あ る よ う な事 項 は ほぼ 含 め たつ も りで あ る. 本 書 で は 主 と して 平衡 系 の 統 計 力 学 が 扱 わ れ る.し
たが っ て δQ=Tdsが
成立
す る と きの み議 論 され て い る(こ の 式 の 意 味 は後 に 明 らか と な る).目 次 に 各 章 の 内 容 事 項 を 簡 単 に列 挙 して お く. 読 ん で い て 比 較 的 数式 が 多 い と感 ぜ られ るか も知 れ な いが,こ
れ は 数 式 を使 う
こ とに よ る思 考 の 節 約 を意 図 した か らで あ る.数 学 に お け る存 在 定 理 で 大 切 な こ とは証 明 で あ るが,物 理 学 に お け る存 在 定 理 で大 切 な こ と は事 実 で あ る.数 式 は, こ の 結果 を納 得 す る た め に 用 い られ て い る. 本 書 は 演 習 書 の 形 式 を と って は い るが,問 題 ・方 針 ・解 答 ・補 ・注 まで 含 め て 読 ん で 理 解 して い た だ け れ ば よい. 各 章 の は じめ に短 い解 説 を も う け た が,舌 足 らず の とこ ろ もあ る の で,問 題 の 解 答 部 分 に 解 説 を加 え た とこ ろ もあ る.問 題 を厳 選 して,一 つ ひ とつ を 詳 し く説 明 したつ も りで あ る. 本 書 は 同 時 に 出版 され る 「量 子 力 学 演 習 」 の 姉 妹 編 を な す もの で,同 書 を引 用 した と こ ろ が 多 い.併 せ て読 まれ る こ とを 希 望 す る.
廣 川 書 店 廣 川 節 男 氏 に は,筆 者 の 旧著 『 統 計 力 学 』 の一 部 の 転 載 を御 承 諾 い た だ い た.廣 川 氏 に謝 意 を表 す る. 東 京 電 機 大 学 中 野 朝 安 名 誉 教 授 お よび 同 出 版 局 に は本 書 出版 の機 会 を与 え て い た だ き感 謝 して い る.同 朝 武 清 實 氏 に は大 変 お 世 話 に な っ た.
1993年5月
著
者
目
第1章
気 体 運 動 論
1
ベ ル ヌ ー イの 関 係 式
マ ッ クス ウ ェル の 速 度 分 布 関 数
エ ネル ギ ー の 分 布 第2章
熱
力
相対速 度の平均
学
10
熱 力学 の 第1法 則
熱 力学 の 第2法
ル ジ ャ ン ドル 変 換 真 空 膨 張
次
ギ ブ ス‐デ ュエ ム の 関係
ク ラウジウスの式
断 熱 圧縮 と等 温圧 縮
ビ リアル 係 数
ミク ロ力 ノ ニ カ ル 集 合 の方 法
S=klogW
示 量 変 数 と示 強 変 数
カ ラ テ オ ドリの 原 理
フ ァ ンデ ル ワ ール ス の 式 第3章
則
41
ボ ル ツマ ン分 布
サ ッカ ー‐テ トロ ー ドの 式
マ ッ クス ウ ェル の 規 則
理 想 気 体
ギ ブ ス の パ ラ ドッ ク ス と熱 力 学 第3法
則
調 和 振 動 子2準 位 系 第4章 力 ノ ニ カ ル 集 合 とグ ラ ン ド力 ノニ カル 集 合 の 方 法 ボル ツ マ ン分 布
状 態 和
logΞ の 物 理 的 意 味 第5章
log Zの 物 理 的意 味
ゆらぎ
カ ノ ニ カ ル集 合 の 応 用
全 系 と部 分 系 2準 位 系 対 称 数
85
理 想 気 体 断 熱 消磁
実在 気 体
70
調 和 振 動 子 4状 態 系
多 原 子 分 子
圧 縮 率
3準 位 系 気 体 の誘 電 率
2原 子分 子
固 体 の ア イ ン シ ュ タ イ ンモ デ ル 第6章
固 体 の デバ イ モ デ ル
フ ュ ル ミ粒 子 とボ ー ズ 粒 子
球 な らべ
平 均 粒 子 数
中 間 統 計
フ ュル ミ準 位
黒 体 放 射
理 想 ボ ー ズ 気 体
120 量 子統 計 に お け る大 きな状 態 和 自由 電 子 の比 熱
熱 電 子 放 射
2次 元 量 子 気 体
量 子 統 計 に お け るゆ ら ぎ 第7章
磁
性
153
フ ァ ン リ ュー ウ ェ ンの 定 理 パ ウ 系の 常 磁 性 高 温 展 開
ブ リル ア ン関 数
ラ ン ダ ウの 反 磁 性
低 温 展 開
第2近 接 相 互 作 用
臨 界 温 度
1次 元 イ ジングモデル
ゼ ー マ ン効 果
イ ジ ン グ モ デ ル 厳 密解 と臨 界 指 数 相 関 関 数
帯磁 率
分 子 場 近 似 第8章
確 率 分 布 と確 率 過 程
確 率 分 布
200
特 性 関 数
大 数 の 弱 法 則
チ ェ ビ シ ェフ の 不 等 式
中 心 極 限 定 理
エ ー レ ンフ ェ ス トの 壷
キ ュム ラ ン ト
遷 移確 率 行 列
モ ン テ カル ロ シ ミ ュ レー シ ョン 第9章
カ オ ス と フ ラ ク タル
相 似 次 元 付
録
パ イ こね 変 換
最 終 状 態 へ の 到 達
グ ラ ウ バ ー モ デ ル
神 経 回路 網
243 ロ ジ ス テ ィ ック 変 換
倍 分岐 点
256
A. 数 学 的 補 遺 N次 元 空 間 の 球
2原 子 分 子 の ハ ミル トニ ア ン
剛体 の 回転 とオ イ ラー の 角 パ ッ フ形 式 B. 公
式
剛 体 の ハ ミル トニ ア ン
ベ ル ヌ ー イ数 格子振動
参 索
考
書
284
引
286
1
第 章 気 体 運 動 論
物 質 構 造 に 対 す る 原 子 論(atomistics)*が う に な っ て か ら,統
計 的,確
率 論 的 方 法 が 欠 く こ との で き な い も の と な っ た.統
計 力 学 は マ ック ス ウ ェル(Maxwell),ボ theory
of gases)に
物 理 学 に お け る主 要 な 役 割 を 占 め る よ
ル ツマ ン(Boltzmann)の
気 体 運 動 論(kinetic
始 ま る.気 体 は 分 子 か ら 成 り立 つ の で,そ
の 分 子 の 運 動 の法 則
か ら気 体 の 熱 力 学 的 性 質 を 導 く の が 気 体 運 動 論 で あ る. 実 在 の 気 体 の 分 子 間 に は 近 く で 斥 力,遠 無 視 し た も の を 理 想 気 体(ideal 圧 力p,絶
対 温 度T,エ
gas)ま
ネ ル ギ ーEの
く で 引 力 の 相 互 作 用 が 働 くが,こ
た は 完 全 気 体(perfect
gas)と
い う.体
れ を 積V,
関係 を
(1.1) (1.2) と 表 し た と き,式(1.1)を 熱 状 態 式 と い う.分
圧 力 状 態 式(pressure
equation
子 間 力 が 与 え ら れ た と き,f1やf2の
of states),式(1
.2)を
この 形 を求 め る こ とが 気
体 運 動 論 や 統 計 力 学 の 問 題 で あ る. 空 間 の 等 方性 の み を用 い て 理 想 気 体 に お け る関 係 式
(1.3) が 得 ら れ る.こ
れ を ベ ル ヌ ー イ(Bernoulli)の
分 子 の 速 度 がυ
とυ+dυ
式 と い う(問1.1).
と の 間 に あ る分 子 の 数 をdNυ
と す る と,空 間 の 等 方 性
* ここ で は現 象論(phenomenology)に 対 立 す る語 と して 用 い る,力 学 や 電 磁 気 学,熱 力学 は 現 象論 的物 理 学 で あ り,統 計 力 学 や量 子 力 学 は原 子 論 的物 理 学 で あ る.
から
(1.4) を 得 る(問1.2).こ
れ を マ ッ ク ス ウ ェ ル の 速 度 分 布 則 と い う.こ
‐シ ャ ー ル(Boyle‐Charles)の
の 結 果 と,ボ
イル
経験 則
(1.5) (Nは
分 子 数,kは
る(問1.2の
ボ ル ツ マ ン 定 数)を 用 い る と,式(1.4)の
パ ラメ ー タ α が 定 ま
式(24)).
問 1.1 古 典 理 想 気 体 の圧 力pは,平
均 運 動 エ ネ ル ギ ーEの2/3倍
に等 しい(式
(1.3)).こ れ をベ ル ヌ ー イ の 関 係 式 とい う.こ の こ と を初 等 気 体 運 動 論 的 に証 明 せ よ. 方 針 1辺lの
立 方 体 内 の 気体 を考 え る.気 体 の 圧 力 は気 体 の分 子 が 容 器 の 壁 に
当 た っ て は ね 返 る と き に壁 に及 ぼ す 反 作 用 に よ る もの で あ る.単 原 子 分 子 を完 全 弾性 球 と考 え,壁
をな め ら か な平 面 と し,衝 突 は 完 全 弾 性 衝 突 と して 気 体 の 圧 力
を計 算 す る. 解 分 子 が 壁 に ぶ つ か る と き,壁 に平 行 な 速 度 成 分 は変 化 しな い.壁
に力 を及
ぼ す の は壁 に垂 直 な 速 度 成 分 の 変 化 だ け で あ る.一 つ の 分 子iの 質 量 をmと そ のx方
し,
向 の 速 度 成 分 をuiと す る.衝 突 に よっ て壁 か らはね 返 る と きは−uiの
度 成 分 を もつ こ とに な る か ら,1回
の 衝 突 に よ りこ の分 子 は2muiの
を うけ る.反 作 用 の 法 則 に よ り壁 は分 子1個
の衝 突 ご と にx方
速
運 動 量 の変 化
向 には2muiの
撃力
を うけ る.分 子 運 動 は 活 発 で あ って 短 時 間 に非 常 に 多 くの 分 子 が壁 に衝 突 す る. 平 均 と して 壁 に働 く力,す な わ ち圧 力pに 当 た りに起 き る衝 突 の 回数 に2muiを
壁 の 面 積Sを
か け た もの は,単 位 時 間
か け れ ば 得 られ る.各 分 子 は時 間2l/uiで1
往 復 し,そ の 間 に 片 方 の 壁 に1回 衝 突 す る. した が っ て,単 位 時 間 に は分 子1個
あ た り壁 は
(1)
だ け の 運 動 量 変 化 を受 け る.ゆ え に圧 力pは,こ
れ をすべ ての分 子 につ いて 加
え,面 積l2で 割 っ て
(2) と な る. y 方 向,z方
向 の 速 度 成 分 をυi,wiと
し,分
子 の 速 度 をciと
す る と
(3) 分 子 の 総 数 をN,気
体 の体 積 をV=l3と
す る.ui2の 平 均 をu2と す る と空 間 の 等
方性 よ り
(4) が 成 立 す る.ゆ
え に 式(3)か
ら
(5) を得 る.一 方 , 分 子 の 平 均 の 並 進運動 の エ ネル ギ ー はE=1/2Nmc2で
あ るか ら
(6) よ って,証
明 され た.
注1 後 に(問5.3)理 想 気 体 の 諸 性 質 を分 配 関 数 か ら求 め る.そ の 結 果,pV= NkT,E=3/2NkT(理
想 気 体 の 基 本 式)を 得 るので,直 にベ ル ヌ ー イ の 関係 式 が 得
られ る. 注2 ベ ル ヌ ー イの 関係 式 は量 子 力学 的 理 想 気体 に つ い て も成 立 す る(問6.9). 注3 実在 気 体 に は分 子 間 に相 互 作 用 が 存在 す るた め,理 想 気 体 の 性 質 と差 異 を 生 ず る.こ の差 異 は低 温 や 高 密 度 の 場 合 に著 しい.
問1.2 理 想 気 体 に お い て分 子 の 速 度 をc,そ
のx成
分,y成
分,z成
分 をそれ
そ れu,υ,wと 数 をdNc,速
す る.分
子 の 総 数 をN,速
度 分 布 をF(c)と
す る.す
度 がcとc+dcと
の 間 に あ る分 子 の
なわち
(1) とす る.さ らに 速 度 のx成
分 がuとu+duと
の 間 に あ る分 子 の 数 をdNu,速
度u
の分 布 をf(u)と す る.す な わ ち
(2) υ ,wに
つ い て も 同 様.こ
の と き,空
間 の 等 方 性 よ りF(c)が (α:定
数)
(3)
と な る こ と を証 明せ よ. 方 針 f(u)f(υ)f(w)とF(c)と 解 速 度 のx成
の 関 係 を利 用 す る.
分 がuとu+duの
よ ら な い と仮 定 す る.速 度 のx成 とυ+dυ
間 に あ る確 率 は,y成 分 がuとu+duの
との 間 に あ り,か つz成
分υ とz成 分wと
間 に あ る と同 時 にy成
分 がwとw+dwと
に
分 がυ
の 間 に あ る確 率 は
(4) で 与 え ら れ る.速 υ2+w2)の
度 空 間 の 球 対 称 性 に よ り,こ
み に よ るは ず で あ る
.ゆ え にc2の
の 確 率 は 速 度 の 大 き さc(c2=u2+
み を 変 数 と す る あ る 関 数g(c2)を
用 い
て
(5) とか け る.こ の 関 数 方 程 式 を解 くた め に 式(5)をuで
偏 微 分 して
(6) 式(5)と
式(6)よ
り
(7)
同様 に (8)
(9) を 得 る.ゆ
えに
(10) が 成 立 す る.こ の 関 数 が す べ て のu,υ ,wに 辺 が 定 数 で な け れ ば な ら な い.こ
つ い て 成 り立 つ た め に は,式(10)の
の 定 数 を−α
各
とお き
(11) これ を積 分 して
(12) と し てf(u)が
求 ま る.し
た が っ て,式(2)と
あわ せ て
(13) を 得 る.f(u)duは
確 率 な の でAは
次 の よ うに 規 格 化 条 件 に よ り き ま る.
(14) y ,z方
向 に つ い て も同 様 に して 求 め,式(4)に
代 入す ると
(15) を得 る. 極 座 標 に移 ろ う.
で あるか ら
(16) ゆ え に式(16)と
式(1)を 比 較 してF(c)は
c0
(17) と求 め ら れ る.F(c)の
曲 線 を 図2.1に
示 す.
:最 も確 か ら しい 速 度 , c:算 術 平 均 速 度, cs:平 図1.1
補 こ こ で 速 度 の 種 々 の 平 均 値 を 求 め て お こ う.F(c)が も確 か ら し い 速 度(most
均 二乗 速 度
マ ク ス ウ ェル の 速 度 分 布 関 数
probable
velocity)と
い う.こ
極 大 値 を と る速 度 を最 れ をc0と
し るす と
より
(18) で あ る. 算 術 平 均 速 度(arithmetic
mean
velocity)cは
(19) で 定 義 され るか ら式(16)よ
り
(20) (21) 平 均 二 乗 速 度(root
mean
square
velocity)をcsと
す る と
(22) (23) 式(21),(23)が
最 も確 か ら し い 速 度,算
る(図1.1参
術 平 均 速 度,平
均 二 乗 速 度 の 関 係 を与 え
照).
以 上 の 速 度 分 布 則 よ り,も う 一 度 気 体 の 圧 力 を 考 え て み よ う.問1.1の c2に 式(22)を
入 れ,実
式(5)の
験 結 果 の 式(ボ イ ル-シ ャ ー ル の 法 則)pV=NkTを
用い る
と
と な る.ゆ
えに
(24) と な り 式(11)の
定 数 が 定 ま っ た.こ
れ を 式(13)と
式(16)に
入 れ ると
(25) (26) 式(25)と
式(26)を
- Boltzmann)の
理 想 気 体 に 対 す る マ ッ ク ス ウ ェ ル(-ボ
速 度 分 布 則(velocity
distribution
law)と
ル ツ マ ン)(Maxwell
い う .こ
こ で述 べ た速 度
分 布 則 の 導 き 方 は マ ッ ク ス ウ ェ ル の 最 初 の 方 法 に よ る もの で あ る.こ 度 の 三 つ の 成 分 を 独 立 と 仮 定 し て い る.マ
の方法 は速
ッ ク ス ウ ェ ル は こ の 仮 定 に 不 満 を も ち,
の ち に 粒 子 間 の 衝 突 を 考 慮 し て 第 二 の 証 明 を 行 っ た. 注 ボ イ ル-シ ャ ー ル の 法 則 に お け るkは
ボ ル ツ マ ン 定 数 で あ る.nモ
を 考 え,ア ボ ガ ド ロ 数 をNA=6.022045×1023と mol・deg普
遍 気 体 定 数)pV=nRTと
erg/deg)はkBと
な る.ボ
ルの気体
す る と(kNA=R=8.3144×107erg/ ル ツ マ ン 定 数k(=1.38066×10-16
も書 く.
問 1.3 理 想気 体 におい てマ ックスウ ェルの 速 度 分 布 則 か らエネル ギーの分 布Ψ(E)
を求 め よ.Nを
分 子 の 総 数 とす る と,エ ネル ギ ー がEとE+dEと
子 数 はNΨ(E)dEと
な る.
方 針 前 問 の 式(26)よ ーEへ
の 間 に あ る分
り出 発 す る.分 布 関 数 の 独 立 変 数 を速 度cか
らエ ネ ル ギ
変 換 す る.
解 問1.2の
式(17)と 式(24)よ
り分 布 関 数F(c)は
(1) で 与 え られ る.〓
よ りcか
らEの
変 数 変 換 を行 う.
(2) よ り
(3) を得 る. 注 √Eの
因 子 が つ くこ とに 注 意 す る.
問 1.4 二 種 の 理 想 気 体 を考 え る.そ れ ぞ れ の 気 体 の 分 子 の 質 量mA, mB,速 度 をυAi,υBjと した と き,混 合 気 体 の相 対 速 度 の 大 き さの 平 均gABを
解 理 想 気 体 で あ るか らそ れ ぞ れ 問1.1の
求 め よ.
式(5)と 式(6)お よび ボ イ ル シ ャ ール
の法 則 よ り,
(1) が成 立 す る( は 平 均 を示 す). した が っ て相 対 速 度 をgAB≡υA−υBと す る と
(2) 粒 子A,Bの り
運 動 は 互 い に 独 立 で あ る の でυAi・υBj=υAi・υBi=0で
あ る.こ
れ よ
(3) を 得 る. mA=mBの
場合 は
とな り
(4) を 得 る.
第2
章
熱
力 学
この 章 で は熱 力 学 の 簡 単 な復 習 を し よ う. 気体 や 液 体 や 一 様 で 等 方 な固 体 を考 え る.そ の 熱 力 学 的状 態 は熱 力 学 的 変 数 で あ る圧 力pと Bを
体 積Vな
どで記 述 され る.こ の よ うな 物 質 か らな る二 つ の 系Aと
接 触 させ る と一 般 に熱 力学 的 変 数 に変 化 が 起 こ るが,時 間 が 十 分 たつ と一 定
の状 態 と な り,変 化 が これ 以 上 進 行 しな くな る.こ の と き二 つ の 系 は熱 平 衡 の 状 態 に あ る とい う. 系Aと
系Bが
熱 平 衡 の状 態 に あ り,系Bと
系Cも
Cも 熱 平 衡 に あ る.こ れ は経 験 法 則 で あ るが,こ 系AとBの
熱 平 衡 に あ れ ば,系Aと
れ を熱 力 学 の 第0法 則 とい う.
圧 力 お よび体 積 を そ れ ぞ れpA,VA,pB,VBと
特 徴づ け る熱 力 学 的 変 数 を θ とす る.系Aと あ る関 数f(p,V)が
系
系Bが
す る.熱 平 衡 状 態 を
平 衡 に あ れ ば,pとVと
の
存 在 して
(2.1) が 成 り立 つ.f(p,V)=θ(一 と い う.摂 う.式(2.1)は
氏 温 度 をtと
般 に はF(p,V,θ)=0)を し た と きt+273.15をTと
θ をTに
状 態 方 程 式,θ 記 し,こ
を経 験 温 度
れ を絶 対 温 度 とい
お き か え て も 成 り立 つ.
体 系 の 熱 平 衡 状 態 の そ れ ぞ れ に 応 じ て 定 ま る 物 理 量 を状 態 量 ま た は 状 態 変 数 と い う.状
態 変 数 の う ち 体 系 を分 割 し て も 変 ら な い もの,た
場 な ど を 示 強 変 数(intensive
variable)と
とえ ば 温 度 や 圧 力 や 磁
い う.こ れ に 対 し て 体 系 を構 成 す る 物 質 の
量 に比 例 す る もの,た とえ ば 体 積 や 内 部 エ ネ ル ギ ー や 磁 化 な ど を 示 量 変 数(extensive variable)と
い う.状
態 を指 定 す る の に 必 要 か つ 十 分 な 個 数 の 独 立 変 数 の 組(こ れ
を 自然 な独 立 変 数 の 組 とい う)を 選 ぶ こ とに よ り,他 の 状 態 変 数 を そ れ らの 関 数 と して表 す こ とが で き る. 系 が状 態1か くる熱 量Qの
ら状 態2へ
変 化 す る場 合,体 系 にな され る仕 事Wと
和 は 状 態1と2に
体 系 に入 っ て
よ り定 ま り,途 中 の経 路 に よ らな い.こ の こ と は
状 態 に は 内 部 エ ネ ル ギー とい う熱 力学 的 量Uが
存 在 し,
(2.2) で あ る こ と を意 味 す る.微 小 変 化 の 場 合 に は,
(2.3) と書 け る.式(2.2),(2.3)は と い う.δQは
エ ネ ル ギ ー の 保 存 を 意 味 し,こ
一 般 に はQの
体 系 が 圧 力pの
全 微 分 で な い(問2.1参
下 で 体 積V1か
らV2ま
れ を 熱 力 学 第1法
照)の でdQと
で(V2−V1=dV<0)圧
則
書 か な い. 縮 さ れ る と き,外
界 が 体 系 に な した仕 事 は
(2.4) で あ る.磁 場Hの
下 に あ る磁 性 体 で 磁 化MがdMだ
け増 加 す る と き は,
(2.5) で あ る.一
般 に
(2.6) と書 け る.Xiを
一 般 化 さ れ た 力,xiを
一 般 化 され た変 位 とい う.
物 質 の 量 が 変 化 す る場 合 に は,式(2.3)を
拡 張 してj種 の 成 分 の粒 子 数 がdNjだ
け増 加 す る と き
(2.7) (2.8)* と な る.μjを
成 分jの
化 学 ポ テ ン シ ァ ル(chemical
potential)と
い う.
熱 量 と力 学 的 な 仕 事 は 共 通 の 単 位 で 表 す こ と が で き る.
* 〓は,変数yが
一 定 の も とでfをxで
偏微 分 す ること を意 味 す る.
で あ る.4.18605J/calを
熱 の 仕 事 当 量 と い う.
あ る体 系 が 一 つ の 状 態 か ら 出 発 し て い ろ い ろ な 状 態 を 通 っ た の ち も との 状 態 に も ど る と き,こ
の 体 系 は サ イ ク ル(cycle,循
系 が サ イ ク ル を 行 い,か
つ 外 界 も同 時 に も と に も ど す こ と が 可 能 で あ る 場 合,こ
の 過 程 を(広 義 の)可 逆 過 程(reversible 過 程 を 不 可 逆 過 程(irreversible 変 化 の 途 中,系
環 過 程 と も い う)を 行 っ た と い う.体
process,可
process)と
逆 変 化)と
い う.可
逆 でな い
い う.
と 外 界 と が 常 に 熱 平 衡 状 態 を 保 つ と見 な さ れ る 理 想 的 な 過 程 を
準 静 的 な 過 程(quasi‐static
process)と
い う.こ の 過 程 は 変 化 を 十 分 ゆ っ く り行 わ
せ る こ と に よ り近 似 的 に 実 現 で き る.準 静 的 過 程 は 逆 行 可 能 で(こ れ を 狭 義 の 可 逆 過 程 と い う)あ る. 経 験 法 則 と し て 熱 力 学 の 第2法 則 の 同 等 な 表 現 で あ る(問2.1参
則 が 存 在 す る.次
の 四 つ の 原 理 は 熱 力 学 第2法
照).
(1) ク ラ ウ ジ ウ ス(Clausius)の
原 理
体 系 が サ イ ク ル を 行 っ て,低 温 の 物 体
か ら 熱 を う け と り高 温 の 物 体 に こ れ を 与 え る 以 外 に,何
の 変化 も残 さ な い よ うに
す る こ と は 不 可 能 で あ る. (2) トム ソ ン(Thomson)の
原理
ケ ル ビ ン(Kelvin)の
の 温 度 に あ る 物 体 か ら熱 を 受 け と り,こ
原 理 と も い う.一
定
れ を す べ て 外 界 に 対 す る 正 の 仕 事 に か え,
他 に な ん ら の 変 化 も残 ら な い よ う な サ イ ク ル は 存 在 しな い. (3) カ ラ テ オ ド リ(Caratheodory)の 状 態 か ら 断 熱 過 程(adiabatic
原 理
process)で
(4) オ ス 卜ワ ル ド(Ostwald)の
原 理
体 系 の 一 つ の 状 態 の 近 傍 に,そ の
は 到 達 で き な い 他 の 状 態 が 存 在 す る. 第2種
永 久 機 関 は 存 在 し な い.ト ム ソ
ン の 原 理 に よ っ て そ の 存 在 を 否 定 さ れ た サ イ ク ル を 第2種 熱 力 学 に は 第3法
則 と よ ば れ て い る も の が あ る が,こ
永 久 機 関 と い う*. れ に つ い て は 問3.2の
補
を 参 照 の こ と. 体 系 が 熱 平 衡 状 態P0か り受 け 取 る 熱 量 をQiと
ら 出 発 し て サ イ ク ル を 行 う途 中,温 度Tiの す る.1サ
イ ク ル の 後,も
と の 熱 平 衡 状 態P0に
外 界(熱 源)よ もど る とす
* これ に対 してエ ネル ギ ー を注 ぎこむ こ とな しに限 りな く仕 事 をす る機 関 を第1種 永 久機 関 とい う.熱 力 学 の 第1法 則(エ ネル ギーの 保 存 の法 則)に よれ ば,こ の よ う な機 関 は存 在 しな い.
る.外
界 の 状 態 は 変 っ て い て も よ い(図2.1).こ
図2.1
サ イ ク ルP0→P1→P2…
の と き
→P0
(2.9) が 成 立 す る(問2.4).こ
こ で等 号 は可 逆 過程(準 静 的 過 程)の 場 合 で あ る.変 化 を無
限 小 変 化 の 積 み 重 ね とす れ ば 式(2.9)は 積 分 形 で
(2.10) と 書 け る. サ イ ク ル をP0∼P1ま
で とp1∼P0ま
で の 二 つ に 分 解 す る.可
逆 過 程 の 場 合,式
(2.10)で 等 号 が 成 立 し て い る こ と よ り
(2.11) で あ る.し
たが って
(2.12) とな る.す な わ ち可逆過 程 で は〓
は経 路 に依 存 せ ず 両 端P0とP1の
みによ
る.〓
と書 く と
(2.13) と な る.Sを
エ ン ト ロ ピ ー(entropy)と
い う.式(2.13)は
微 小 変 化 に対 して
(2.14) と書 け る.不 可 逆 過程 を含 め た 一 般 の 過程 に対 して は 不 等 式
(2.15) が 成 立 す る(問2.4の 一 般 にx,y,…
補). を 自然 な 独 立 変 数 の 組 と し,Lを
(内 部 エ ネ ル ギ ー,エ
ン ト ロ ピ ー,エ
示 量 変 数 で あ る熱 力学 的 関 数
ン タ ル ピ ー な ど)と す る と き,全
微分 方程 式
(2.16)
(2.17) が 成 り立 つ.{X,Y,…}は …等のペ アの中で の 積xXな 新 た にLと
そ れ ぞ れ が{x,y,…}の
,xかXか
関 数 で あ り,(x,X),(y,Y),
の ど ち ら か 一 つ が 示 強 変 数,他
方 が 示 量 変 数 で,そ
ど は 示 量 変 数 で あ る. い う関 数 を
(2.18) に よ り定 義 す る と
(2.19) を 得 る.す
な わ ち,い
ま ま で 独 立 変 数 と み な し て い た{x,y,…}か
,z…}を 独 立 変 数 に か え た こ と に な る.Lは
ら 今 度 は{X,y
し た が っ て,
(2.20) と 書 か れ る.xの
代 わ り にx,y,z,…
の うち の 一 つ ま た は 複 数 を用 い て 同様 の 変 換
が で き る.こ 式(2.17)よ
の 変 換 を ル ジ ャ ン ドル(Legendre)変
換 と い う.
り
(2.21) xとyの 微 分 の 順 序 を入 れ か え て も同 じだ か ら,
(2.22) な ど が 得 ら れ る.こ
問 2.1
れ を 相 反 定 理(reciprocal
theorem)と
い う.
トム ソ ン の 原 理 か ら カ ラ テ オ ド リ の 原 理 を 導 き 出 せ.
方 針 カ ラ テ オ ド リの 原 理 が否 定 され る とす れ ば,ト ム ソ ンの 原 理 も否 定 され る こ と を示 す. 解 あ る熱 的 に一 様 な体 系 が 等 温 的 に状 態1か っ た とす る(図2.2).そ
ら2に 正 の 熱 量Qを
吸 収 して 移
れ ぞ れ の 状 態 で の 系 の 内部 エ ネ ル ギ ー をU1とU2と
の と き うけ と る仕 事 をW1と
す る と,第1法
し,こ
則により (1)
が 成 り立 つ.次
に状 態2か
ら1に 断 熱 的 に体 系 を移 す.カ
ラ テ オ ド リの 原 理 を否
定 したの で これ は 可 能 で あ る.こ の 断熱 過 程 で うけ とる仕 事 をW2と
図2.2
カ ラ テ オ ド リの 原 理 に よ り否 定 さ れ る サ イクル
す る と,第1
法則 よ り
(2) が 成 り立 つ.式(1)と
式(2)よ
り
(3) この 循 環 過 程1→2→1で
体 系 は,一 つ の 温 度 の 物 体(外 界)か ら正 の 熱 量Qを
うけ と り,こ れ と等 しい量 の 仕 事 一(W1+W2)を
外 界 に な した こ と に な る.こ れ は
トム ソ ンの 原 理 に矛 盾 す る. 補 カ ラ テ オ ド リの 原 理 は,系 に対 して 外 界 か ら任 意 の 微 小 量 の 熱 量dQを る こ とが で きな い こ と を意 味 す る.こ の こ とが 熱 量 をdQと
与え
記 さ な いで δQと 記 し
た 理 由 で あ る. カ ラ テ オ ド リの 原 理 の 数 学 的 側 面 に触 れ て お こ う.微 分 方 程 式 に お け るパ ッ フ (Pfaff)の 問題 とい わ れ る もの と関係 す る.体 系 が 微 小 な状 態 変 化 をす る と き,外 か ら与 え られ る熱 量 δQは 適 当 な い くつ か の状 態 変 数{xi}を 用 い て,
(4) の 形 に表 す こ とが で き る.Xiは{xi}の
関 数 で あ る.こ の よ う な表 式 をパ ッフ の 微
分 形 式 ま た は 単 にパ ッフ 形 式 とい う. あ る点A(x1,xa,…)を
考 え よ う.「 こ の 点Aの
線 にそ っ て 達 す る こ との で きな い 点Bが
ら δQ=0を
満 たす曲
存 在 す る」 とい うの が カ ラ テ オ ドリの 原
理 で あ る.物 理 的 に い う と,系 の 状 態 が 点Aで ら断 熱 変 化 δQ=0で
近 傍 にAか
指 定 さ れ た と考 え,そ の状 態Aか
は 到 達 す る こ との で きな い状 態Bが
存 在 す る とい う こ とで あ
る. パ ッ フ 形 式 の 理 論 か ら,次 の こ とが わ か っ て い る.あ ψ(x1,x2,…,xn)に
つ
る全微 分 可 能 な関 数
い て
(定数)
(5)
が成立 し
(6) を満 たす よ うな 関 数 μ が 存 在 す る とき,δQ=0は
積 分 可 能 で あ る と い う.こ の と
き式(5)を
δQ=0の
解(ま た は積 分)と い う.関 数 μ を積 分 分 母 と い い,そ の 逆 数
1/μ を積 分 因 子 とい う.次 の 定 理 が あ る. 定 理 「任 意 の 点Aの との で きな い点Bが した が っ て,カ な る.特
近 傍 にAか
ら δQ=0を
存 在 す る と き,δQは
満 たす曲線 にそって到達 す るこ
積 分 因 子 を もつ.(証
明 略)」
ラ テオ ド リの 原 理 は積 分 因 子 が 存 在 す る こ とを 主 張 す る もの と
に熱 力 学 の 場 合 φ=S(エ
ン トロ ピー),μ=T(温
度)と して
(7) と な り式(2.14)と
な る.
例 を あ げ て お こ う.
(8) の と き,δQ=0を
解 くと
(9) と な る.
図2.3
δQ=0の
曲線
(10) で あるか ら
(11) を 得 る.x2が
積 分 因 子 と な る.φ(x,y)=cを
√c の 円 で あ る か ら,点Aか 付9に
ら 点Bへ
図2.3に
δQ=0の
示 す.δQ=0の
曲線 は 半径
条 件 の も と に は 移 動 で き な い.問
積 分 因 子 の 存 在 し な い 例 を あ げ て お く.
問 2.2 1モ ル の 気 体 を 考 え る.こ の 気 体 の 圧 力 をp,体 部 エ ネ ル ギ ー をUと
す る.ボ
イ ル(Boyle)の
積 をV,温
度 をT,内
法 則
(1) (Rは 気 体 定 数)お よび ジ ュー ル(Joule)の 法 則(内 部 ネル ギ ー は温 度 一 定 の と き体 積 に依 存 しな い)
(2) を み た す と き,こ し,Cp/Cv=γ
の 気 体 を 理 想 気 体 と い う.定
と し た と き,断 熱 過 程 で はpVγ=一
の 系 の エ ン ト ロ ピ ー を 求 め よ.た CvとCpと
だ し,変
積 比 熱 をCv,定 定
圧 比 熱 をCpと
と な る こ と を 示 せ .ま
た こ
化 は 準 静 的 に 行 わ れ る も の とす る.
は 次 の よ う に 定 義 さ れ る.
(3) 解 第1法 則
(4) と
(5) を 用 い,式(2)に
注 意 して
(6) を 得 る.式(1)よ
り
(7) が 成 り立 つ か ら,定 圧 比 熱 は
(8) と表 わ さ れ る. 理 想 気 体 に 断 熱 変 化 を 行 わ せ る と(δQ=0),式(4)よ
り
(9) 式(7)と
式(9)よ
りdTを
消 去 して
(10) と な る か ら,Cp/Cv=γ
を 用 い て 式(10)を
解 くと
(11) を 得 る. 式(6)に
式(1)よ
り得 ら れ るp=RT/Vを
入 れて
(12) こ れ よ りエ ン ト ロ ピ ー
(13) を得 る.S0は
積 分 定 数 で 温度 や 体 積 に は よ らな い.
注 同 様 に断 熱 過程 で は
(14) も 成 立 す る.
問 2.3 理 想 気 体 に図2.4の 温 度T1の
よ うな準 静 的(可 逆)過 程 を行 わせ る.過 程1→2は
熱 源 に 接 触 した 等 温 膨 張,2→3は
の 熱 源 に接 触 しな が らの等 温圧 縮,4→1は 吸 収 した 熱 量 をQ1,温
度T2の
断 熱 膨 張,3→4は
温 度T2(T1>T2)
断 熱圧 縮 で あ る.温 度T1の
熱 源 か ら吸収 した熱 量 をQ2と
熱源 か ら
すると
(1) が 成 立 つ こ と を 示 せ.こ ル,式(1)を
れ(過 程1-2-3-4-1)を
可 逆 な カ ル ノ ー(Carnot)サ
ク ラ ウ ジ ウ ス の 等 式 と い う.−Q2>0が
イク
低 熱 源 に 放 出 され る熱 量 で あ
る.
図2.4
カ ル ノ ー サ イ クル
解 理 想 気 体 の 等 温 過程 で は 内 部 エ ネル ギ ー の 変 化 は な く,吸 収 され る熱 量 は 気 体 が 外 部 に なす 仕 事∫pdVに
等 しい.ゆ
え に過 程1→2で
は
(2) 3→4で
は
(3)
で あ る. V2>V1,V3>V4だ
か らQ1>0,Q2<0で
程 な の で 問2.2の
式(14)よ
あ る.一
方,2→3と4→1は
断熱過
り
(4) が 成 立 す る.よ
っ て 式(2),(3),(4)よ
り
(5) を得 る. 注 この 証 明 に は 第2法 則 は 用 いて い な い こ と に注 意 せ よ.pV面 ‐ 4‐1の 面積∮pdVは られ る仕 事Wで
内 の1‐2‐3
気 体 が 外 部 に な す仕事,す な わ ち カ ル ノ ー サ イク ル に よ り得 あ る.
補 一 般 の 気体 に対 す る可 逆 な カル ノ ー サ イ クル で は,高 熱 源 か ら熱 量Q1を 収 し,低 熱 源 へ 熱 量−Q2を
放 出(Q2<0を
吸
吸 収)す る.外 界 に対 して 気 体 が す る仕
事Wは
(6) す な わ ち,気 体 が 外 界 へ 仕 事W>0を 源 か らQ1の
す る こ とに な る.カ ル ノ ー サ イ ク ル は高 熱
熱 を吸 収 し,そ の 一 部Q1−│Q2│を
仕 事 に変 え る.熱 を仕 事 に 変 え る
装 置 を熱 機 関 と い い,得 られ た 仕 事 と高熱 源 か ら奪 った 熱 量 の 比 η を熱 機 関 の 効 率 と い う.可 逆 な カル ノー の 熱 機 関 で は式(1)よ り
(7) とな る. ま た前 記1→2→3→4→1の ル と い う(図2.5).カ
逆 過 程1→4→3→2→1を
カル ノー逆サ イク
ル ノ ー 逆 サ イ ク ル で は外 界 か ら気 体 へ 仕 事 が な され,低 熱 源
か ら熱 を吸 収 して 高 熱 源 に与 え る.こ れ を熱 ポ ンプ とい う. カ ル ノ ー サ イ クル は トム ソ ンの 原 理 に 矛 盾 す る もの で は な い.カ ル ノ ー サ イ ク ル は熱 を仕 事 に 変 え るが,高 熱 源 か ら得 た 熱 の 一 部 を低 熱 源 に捨 て た残 りを仕 事 にか え る の で あ る.ト ム ソ ンの 原 理 は 効 率 η=1の 完 全 な熱 機 関 を禁 止 す るの で,
(a) 図2.5
(b)
カル ノー サ イクル とカル ノー逆 サ イ クル
カ ル ノ ー サ イ ク ル で は 常 に η<1で 一 般 に は 二 つ の 熱 源 か ら熱Q1,Q2を
あ る. と り,外 界 に 仕 事W=Q1+Q2を
な す機
関 を 広 義 の カ ル ノ ー サ イ ク ル と い う(可 逆 で な く と も よ い).
(a) 図2.6
(b) 一 つ の カルノ ーサ イ クルの二 つ の カル ノー サ イクル への 分解
温 度 がT1とT2の 考 え る(図2.6).こ 一 つ は 温 度T
二 つ の 熱 源 の 間 に 働 くカ ル ノ ー サ イ ク ル1→2→3→4→1を の カ ル ノ ー サ イ ク ル を 二 つ の カ ル ノ ー サ イ ク ル に 分 解 し よ う.
1とT3(T1>T3>T2)の
間 で 働 き,も う 一 つ は 温 度T3とT2の
間で働
く.第1の −
サ イ ク ル は 温 度T1に
Q56>0を
放 出 す る.第2の
吸 収 し,温 度T2に 仕 事 はQ12−Q65で
お い て 熱 量Q12を サ イ ク ル は 温 度T3に
お い て 熱 量−Q34=Q43を あ り,第2の
度T3に
お い て 熱 量Q65=−Q56>0を
放 出 す る .第1の
熱 量Q12>0を
放 出 し,Q12−Q43=Q12+Q34の
サ イ ク ル で 得 られ る
吸 収 し,温 度T2で
熱 量−Q34
仕 事 を す る.
任 意 の サ イ ク ル は 等 温 線 と断 熱 線 を 細 か く 引 く こ と に よ り,多 イ ク ル の 合 成 さ れ た も の に 分 解 す る こ とが で き る(図2.7).そ す る 二 つ の カ ル ノ ー サ イ ク ル は,一
数 の カル ノ ー サ
の 際,等 温 線 を 共 有
方 で 放 出 す る熱 量 は そ の ま ま 他 方 で 吸 収 す る
熱 量 と な る か ら,各 カ ル ノ ー サ イ ク ル で 成 り立 つ 式(1)を 境 界 上 の 熱 量 は 打 ち 消 し合 い,残
お い て熱 量
サ イ ク ル で 得 ら れ る 仕 事 はQ65−Q43=Q65+Q34で
あ る.全 体 の サ イ ク ル で は 温 度T1で (>0)を
吸 収 し,温
加 え 合 わ せ た と き,内 部
る の は 周 辺 の 境 界 の 熱 量 の 出 し入 れ だ け で あ る.
ゆ え に 準 静 的(可 逆 な)サ イ ク ル に お い て 式(1)の
拡 張 と して
(8) が 成立 す る.連 続 的 極 限 を考 え る と
(9) と な る.
図2.7
任 意 の サ イ クル の カ ル ノ ー サ イ ク ル へ の 分 解
可 逆 カ ル ノ ー サ イ ク ル をT‐S平 TdSで
あ る か らQ12=長
面 に 書 く と図2.8の
形12BA1の
り,Q12+Q34=12341の
面 積 >0,Q34=−43BA4の
面 積 >0で,こ
れ る仕 事 で あ る.Q1/T1+Q2/T2=0は
よ う な 長 形 と な る.い ま δQ= 面 積 <0と
な
れ が 準 静 的 カ ル ノ ー サ イ ク ル に よ り得 ら 図 よ り 自 明 で あ る.
カ ル ノ ー サ イ ク ル は 準 静 的 変 化 で □1234=Q12+Q34=Q12−(−Q34)=W. 準 静 的 変 化 で な け れ ば □1234>Q12−(−Q34)=W,矢 の 向 きを 逆 に す れ ば カ ル ノ ー 逆 サ イ クル と な る. 図2.8
カ ル ノ ー サ イ ク ル のT-S図
準 静 的 変化 で な い(不 可 逆 変化 の)場 合 に は,得 い.こ
られ る仕 事 は こ の 面 積 よ り小 さ
れ が 第2法 則 の 内 容 で あ る.
問 2.4
広 義 の カ ル ノ ー サ イ ク ル を 考 え る.
1) 温 度T1の る熱 量 をQ1,Q2と
高 熱 源 と温 度T2の
低 熱 源 の 間 で 働 かせ た と き,熱 源 か ら吸 収 す
すると
(1) が 成 り立 つ こ とを示 せ.等
号 は 可 逆 サ イ クル の 場 合 で あ る.
2) 一 般 的 なサ イ クル(図2.7)を 行 わ せ,温 度Tiの とす る と
熱 源 か ら吸 収 す る熱 量 をQi
(2)
(等号 可 逆) と な る こ と を 示 せ. 方 針 1)や2)を
否 定 す る と,ト
ム ソ ン の 原 理 に 矛 盾 す る こ と を い う.
解 1) あ る カ ル ノ ー サ イ ク ル(可 逆 で な く て も よ い)を
で 表 す.Wは
サ イ クル に よ っ て機 関 が な す 仕 事 の 量,Q1は
した熱 量,Q2は 界 へ,左
温 度T1で
機 関 が吸 収
温 度T2で 機 関 が 放 出 した 熱 量 で あ る.矢 印 は,右 向 きで 系 か ら外
向 き で 外 界 か ら系 へ 出 入 して い る こ と を示 し,そ の 長 さ で量 を表 す.ま
ず 第1法 則 に よ りQ1=W+Q2が
成 立 す る.
同 じ温 度 で 働 く二 つ の カ ル ノー サ イ ク ル を次 の よ う に組 み 合 わ せ て み る.た だ し第2の
カ ル ノ ー サ イ クル は 可 逆 とす る.
(3)
可 逆 とは 限 らない す な わ ち,第2の
可 逆
機 関 を 逆 運 転 し て 熱 ポ ンプ と し て 用 い,第1の
を こ れ に つ ぎ こ む の で あ る.Q1−Q2=Q1'−Q2'=Wで Q2で
機 関 の な す仕 事
あ る か らQ1'−Q1=Q2'−
あ る.
高 温T1に
お け る 放 出 熱Q1'−Q1(=Q2'−Q2:低
ら ば ク ラ ウ ジ ウ ス の 原 理 に 反 す る か らQ1'≦Q1.し
温 に お け る 吸 収 熱)が も し正 な た が っ て,
(4)
左 辺 お よび 右 辺 は それ ぞ れ 第1お
よび 第2の 機 関 の 効 率 で あ る.
第1の 機 関 が 可 逆 の と き等 号 が 成 り立 ち,不 可 逆 の と き不 等 号 が 成 り立 つ.式 (4)の右 辺 は可 逆 機 関 の 効 率 で あ る.し た が っ て,不 可逆 機 関 の効 率 は 可 逆 機 関 の 効 率 よ り小 さい.す
なわ ち
(5) とな る.こ れ か ら,系 に入 る熱 量 を すべ て 正 と と る記法 で 書 く と
(6) が 得 られ る. 2) 一 般 の 過 程 で は こ れ を 多 数 の カ ル ノ ー サ イ クル に分 解 す る こ と に よ り(問 2.3の 補 参 照),
(7) が 成 り立 つ. 補 P0か らP1ま で を 不 可 逆 的 な ,P1か らP0ま で を可 逆 的 なサ イ クル を行 わせ る.
で あ るか ら
(8) で あ る.右
辺 はS(P1)−S(P0)=ΔSで
あ る か ら,不
可逆過程 で は
(9) とな る. 状 態P0か
らP1へ の 変 化 が 断 熱 的 に行 わ れ れ ば,δQ=0で
あ るか ら
(10)
す な わ ち,断 熱 不 可 逆 過 程 で は エ ン トロ ピー は増 大 す る.
問 2.5 理 想 気 体 が 体 積V1の の 状 態2に
状 態1か
ら断 熱 的 に真 空 膨 張 して体 積V2(>V1)
な る と きの エ ン トロ ピー の 変 化ΔS=S2−S1を
求 め,こ の 過程 が 不 可
逆 過程 で あ る こ とを 示せ. 解 真 空 中へ の断 熱膨 張 で あ るか ら仕 事dWお した が っ て,内 部 エ ネ ル ギー の 変化dUも0で nCvd
T(nは
モル 数)よ りdT=0と
理 想 気 体1モ
よび 熱 δQは
と もに0で
あ る.
あ る.理 想 気 体 で あ るか らdU=
な り,こ れ は等 温 変 化 で あ るこ とが 分 る.
ル の エ ン トロ ピーSは
問2.2の
式(12)よ
り
(1) ゆ え に(T,V1)→(T,V2)の
変 化 に お い てnモ
ル の 気 体 を考 え る と
(2) V2>V1で
あ る か らΔS>0.ゆ
え に,こ
の 断 熱 過 程 で は エ ン トロ ピー が 増 大 す
る.
図2.9 理 想 気体 の真 空膨 張
次 に,こ の 過 程 が 不 可 逆 過 程 で あ る こ と を証 明 す る. この 現 象 が 可 逆 で あ る とす る.す な わ ち膨 張 して し ま っ た状 態 を気 体 と真 空 に 分 れ た初 期 状 態 に も ど し,自 分 自身 も も とに も どる 装 置Cが 系 が状 態2の と き装 置Cを 働 らかせ る.Cは
あ る とす る.
気 体 を圧 縮 す る こ と に よ り仕 事 を
行 い系 を状 態1に
も どす.こ の 間 気 体 が 発 生 す る熱 は す べ てCに
よ り気 体 自身 を
圧縮 す る こ と に使 用 され る. 以 上 の 過 程 に よ り理 想 気 体,容 器 と装 置Cと 体 自身)か ら熱Qを
か らな るサ イ クル に よ って熱 源(気
と り,こ れ をす べ て仕 事 に 変 え る こ とが で きた こ と に な り,
トム ソ ンの 原 理 に反 す る.ゆ
え に理 想 気 体 の 真 空 へ の 自 由膨 張 は 不 可 逆 過 程 で あ
る.
問 2.6 熱 力 学 的 関係 式
(1) か らル ジ ャ ン ドル 変 換 に よ り,以
下 の 関 係 式 を 導 け.
エ ン タ ル ピ ー(enthalpy)
(2) に対 し
(2') へ ル ム ホ ル ツ(Helmholtz)の
自 由エ ネル ギ ー
(3) に対 し
(3') ギ ブ ス(Gibbs)の
自 由 エ ネル ギ ー
(4) に対 し
(4') また
(5) とお く と
(5') こ こ で 関 数 内 に あ ら わ に 記 した変 数 は,そ れ らを独 立 変 数 と見 なす こ と を明 示
し た も の で あ る. 解 エ ン タ ル ピ ーHを
全 微 分 し て 式(1)を
使 う と 式(2)を
得 る.
(6) 以 下同様 に
(7)
(8) (9) とな る. 補 式(1)∼ 式(4)よ
り熱 力 学 的 関 数 の1階 微 分 と して
(10) な どを得 る. さ らに2階 微 分 の 関係
を用 い て
(11) な どを得 る.こ れ らは マ ック ス ウ ェル の 関 係 式 また は 相 反 定 理 と呼 ば れ る. ま た式(1)よ
り
(12) で あ る か ら,こ れ に対 して以 下 の よ うな ル ジ ャ ン ドル 変 換 を行 う こ と に よ りさ ま ざ ま な熱 力 学 的 関 数 を得 る こ とが で き る.
マ ソ ー(Massieu)関
数
Ψ.
(13) (14) プ ラ ン ク(Planck)関
数Φ.
(15) (16) ク ラ マ ー ス(Kramers)関
数q.
(17) (18) これ ら熱 力 学 的 関 数 式(2)∼ 式(5),式(13)∼
式(17)は
問 題 に応 じて 使 い や す い
もの を使 い わ けれ ば よ い.
問 2,7 異種 の 粒 子 の 混 合 した 系 に お い て,j種 テ ン シ ャ ル を μjと す る と き,ギ
の 粒 子 の 粒 子 数 をNj,
化学 ポ
ブ ス の 自 由 エ ネ ル ギ ーGは
(1) と表 せ る こ とを証 明 せ よ. 解 ギ ブ ス の 自 由エ ネル ギー の 独 立 変 数 はT,p,{Nj}で けが 示 量 変 数 な の で,各Njを
λ倍 した もの はGを
あ る.こ の うち{Nj}だ
λ 倍 した もの と等 しい.
(2) 両 辺 を λ で 微 分 して
(3) と な る.化
学 ポ テ ン シ ャ ル μjは
(4) で あ る か ら式(1)が 注 式(1)を
得 ら れ る.
ギ ブ ス‐デ ュ エ ム(Gibbs‐Duhem)の
関 係 と い う.式(1)と
問2.6の
式(8)と あ わ せ て
(5) が 成 立 す る.さ
ら に 式(1)と
問2.6の
式(5)か
ら
(6) 式(1)と
式(6)お
よ び 問2.6の
式(17)か
ら
(7) を得 る.式(6)は,後
に大 分 配 関 数 の 物 理 的 意 味 を与 え る と き重 要 な 関係 と な る.
問 2.8 断 熱 圧縮率〓
と等 温 圧縮率〓
の間 に
は
(1) の 関係 の あ る こ と を示 せ.た 解 エ ン トロ ピーSの
だ し,系 の 変 化 は 準 静 的 に行 わ れ る もの とす る.
全 微 分 は準 静 的断 熱 変 化 でTdS=δQ=0よ
り(解 説 参 照)
(2) で あ るか ら,UをpとVの
関 数 とみ て 全 微 分 した もの
を式(2)に 代 入 して
(3)
が 成 立 す る.ゆ え に
(4) さ ら にUをU(T(p,V),V)と
みて
(5)
U(T(p,V),p)と
みて
から
(6) た だ し,こ
こで
と
(7) を 用 い た.式(4),(5),(6)よ
り
(8) を得 る. 一 方 温 度TはpとVの
関数だか ら
(9) より
*
(10) が 成 り立 つ. よ っ て 式(8)と
式(10)よ
り
(11) を 得 る.左
辺 は−1/(VκS)で
あ り,右
辺 は−(CP/CV)/(VκT)で
あ る の で,式(1)
が 成 り立 つ.
問 2.9 準 静 的 過 程 に お い て磁 性 体 の 磁 場 をH,磁 磁 率〓
と等 温 帯磁率〓
化 をMと
した と き,断 熱 帯
に対 して
(1) (2) を証 明せ よ.た だ しCMは
磁 化M一
定 の も とで の 比 熱,CHは
磁 場(外 場)H一
定
の も とで の 比 熱 で あ る. 解 式(2.3)の 次 に 述 べ た よ う に,磁 性 体 に お い て はdW=HdMで 前 半 は前 問 でV→M,p→−Hと
す れ ば 得 ら れ る.ま
あ る か ら,
た 次 の よ う に して も よ
い.
(3)*
(4)
(5)
式(2)を
証 明 し よ う.
(6)
(7) ゆ え に式(5)に 式(7)を 代 入 して
(8) を 得 る.た
だ し式(6)を
導 く と き,
(9) を 用 い た.式(9)は,磁
性 体 に 対 す る 問2.6の
式(7)に
相 当 す る 式(dNj=dV=0と
す る)
(10) に対 し
(11) とル ジ ャ ン ドル 変 換 を 行 い,
(12) に 対 し て マ ッ ク ス ウ ェ ル の 相 反 定 理 を 用 い る こ と に よ り得 ら れ る.
問
2.10
次 の 量 の 次 元 を 記 せ.[]で
ロ ピ ーS,定 F,ギ
積 比 熱Cv,定
そ の 量 の 次 元 を 表 す こ と に す る.エ
圧 比 熱Cp,圧
ブ ス の 自 由 エ ネ ル ギ ーG,化
力p,へ
ン ト
ル ム ホル ツ の 自 由 エ ネ ル ギ ー
学 ポ テ ン シ ャ ル μ.
解
(1) ergは
エ ネ ル ギ ー の 単 位 で1erg=1×10-7J(ジ
注1
ボ ル ツ マ ン(Boltzmann)の
ツ マ ン 定 数kの
ュ ー ル). degは
関 係 式S=klog
W(第3章
温 度 の 単 位.
解 説 参 照)よ りボ ル
次元 が
(2) と求 ま る. 注2
一 般 に,d次
元 空 間 の 系 に お け る圧 力 を 考 え る 場 合 に は[p]=erg/(cm)dと
な る.
問 2.11
不 完 全 気 体 に 対 す る フ ァ ン デ ル ワ ー ル ス(van
式 は ρ を圧 力,Vを
体 積,Tを
温 度,Nを
der
Waals)の
状 態方程
粒 子 数 と して
(1) で 与 え られ る.こ の 系 の 臨界 温 度,臨 界 体 積,臨 方 針 実 在 気 体 は粒 子 間 に近 くで 斥 力,遠 れ を現 象 論 的 に説 明 しよ う とい うの が,こ
界 圧 力 を求 め よ.
くで 引 力 と い う相 互 作 用 が 働 く.そ
の フ ァ ンデ ル ワ ール ス の 状 態 方程 式 で
あ る.こ こにaは
引 力項 に関 す る定 数,bは
斥 力 項 に 関 す る定 数 で あ る.理 想 気 体
と比 較 して,こ の 気 体 は粒 子間 の 引 力 の た めa/V2だ
け 圧 力 が 小 さ くな る.ま た体
積 は粒 子 間 の斥 力 の た め 絶 対 零 度 で も0に な ら な い で最 小 値bを 式(1)で 与 え られ るpは,T>TCに
お い てVに
で は(∂p/∂V)T=0と(∂2p/∂V2)T=0が 存在 し,図2.10の
もつ.
対 して 単 調 減 少 とな り,T=TC
同 時 に成 り立 つ ような臨 界 点F(pC,VC)が
よ う に な る.
図2.10
フ ァンデル ワール ス 気体 の状態 図
図 に お い て破 線 の 右 側 が 気 相,左 側 が 液 相 で あ る.破 線 の 内 部 で は 気 相 と液 相 が 共 存 して い る.気 相 か ら液 相 へ 移 りか わ る と き(一 般 に は,二 つ の 相 の 間 で 移 り か わ る場 合),潜 熱 が あ る場 合 を1次 転 移 と い い,潜 熱 が な い場 合 を2次 転 移 と い う.Eか
ら破 線AFEの
上 方 を 通 っ てAに
行 け ば 容 器 の 中 の 気 体 は相 変 化 を起 す
こ とな くいつ の 間 に か 液 体 な る.
解
すなわち
(2) とな る.臨 界 点 は 方針 で 説 明 した よ う に
(3) に よ り与 え ら れ る か ら,式(2)を
微 分 して
(4) (5) と な る.式(4)と
式(5)を
み た す ρ,T,pが
ρc,Tc,pcで
あ る か ら,
(6) を 得 る.も
との 変 数 に もど して
(7) と な る. 注 フ ァ ン デル ワ ー ル ス の 方程 式 は,種
々提 案 され て い る不 完 全 気 体 の 状 態 方
程 式 の うちの標 準 的 な ものであ る.1モ ルの 気 体 を扱 うときは(1)の 右 辺 はRT(R= 気 体 定 数=NAk,
問 2.12
NA=ア
ボガ ドロ数)と な る.
フ ァ ンデ ル ワ ー ル ス の 圧 力 状 態 方程 式
(1) に従 う気 体 が 断 熱 変 化 を す る と き,
(2) の 関係 式 が 成 り立 つ こ と を示 せ. 方 針
熱 力学 的 関 係 式
に断 熱 変 化 の条 件TdS=0を 解 内 部 エ ネ ル ギーUの
代 入 す る. 全微 分 は
(3)
問
で 与 え られ る.ヘ
ル ム ホ ル ツ の 自 由 エ ネ ル ギ ー をFと
で あ る か ら相 反 定 理(式(2.17))に
す ると
よ り,
(4) を得 る.式(4)を
式(3)に 代 入 して 式(1)の 関係 を用 い る と
(5) た だ し〓
で あ る.よ
って
(6) とな る.断 熱 変 化 で はTdS=0で
あ るか ら
(7) す なわ ち
(8) と な る.
2.13 1モ ル の 不 完 全 気 体 に対 す る フ ァ ンデル ワー ル ス の状 態 方 程 式(問2.11 の 式(1))は
(1) で 与 え られ る.こ の 系 の ビ リア ル係 数 を求 め よ. 方 針 不 完 全 気 体 の状 態 方程 式 を体 積 の逆 べ きで 展 開 した と き,V-nの
係数を
第nビ
リア ル(virial)係
数 と い う.す
なわ ち
(2) と し た と き,B(T),C(T),D(T)…
が 第2,3,4…
す べ て の ビ リ ア ル 係 数 が0な
ら ば,理
ビ リア ル 係 数 で あ る.こ
れ ら
想 気 体(完 全 気 体)の 状 態 方 程 式 と な る.
解
(3)
を1/Vで
展 開 して
(4) と求 め ら れ る.
問 2.14 図2.10の
よ う な フ ァ ン デ ル ワ ー ル ス 型 状 態 図 に お い て,Aを
を気 相 とす る と,気 相 と液相 の 共 存 状 態AEは
面積ABC=面
積CDEに
液 相,E
よ り定 ま
るこ と を示 せ. 方 針 液 相(点A)と
気 相(点E)が
気 体 を等 温 圧 縮 して 点Eに
熱 力 学 的 平 衡 に あ る と き,両 相 は共 存 す る.
達 す る とAの
状 態 の 液 相 が現 れ は じめ る.さ らに圧 縮
す る と共 存 状 態 の ま ま気 相 と液 相 の体 積 比 を か え なが らECAの
直 線 を た どっ て 点
Aま
で ゆ く.さ ら に圧 縮 す る と液 相 の 状 態 式 に そ っ て圧 力 が 上 昇 す る.点Eか
Aま
で の 変 化 は 等 温 等 圧 変 化 で あ る の で ギ ブ ス の 自 由 エ ネ ル ギ ーGは
ら
一 定で あ
る. 解 この 変 化 に お い てGは
一 定 で あ るか らδG=0,す
な わ ち,
(1) で あ る.気
相 と液 相 そ れ ぞ れ の 粒 子 数 と化 学 ポ テ ン シ ャ ル をN',μ',N",μ"と
す る と,
(2) 気相 と液 相 の分 子 数 の和 は 一 定 で あ り,ま たpとTは 値 で あ るか ら,
点A,点C,点Eで
同じ
(3) し た が っ て δG=0よ
り
(4) で な け れ ば な ら な い.ゆ
え に,
(5) これ は 図2.10でABCとCDEの
面 積 が等 しい こ と を述 べ て い る.
注 こ れ で 水 平 線 の 引 き方 が一 意 的 に き ま るわ け で,こ れ を マ ッ クス ウ ェル の 規則 と い う.
第3 章
ミク ロカ ノニカル集合の方法
熱 力 学 は,熱 力 学 の 第0∼3法
則 を も とに して 巨 視 的 な物 理 量(系 の 圧 力,体 積,
温 度 な ど)と 巨視 的 な 物 理 量 との 間 の 関 係 を導 く.統 計 力 学 は,系 の 微 視 的 な 量(粒 子 間 の 相 互 作 用 な ど)か ら巨視 的 な物 理 量 を求 め る こ と を 目的 とす る.わ れ われ が 考 え な けれ ば な らな い の は粒 子 数N∼1023個
とい う対 象 で あ る.力 学 的 ま た は量
子 力 学 的 に1023個 の連 立 方 程 式 を立 て て 解 くこ とは不 可 能 で あ る し,も し解 け た と して も,そ れ を 巨視 的 に観 測 され る物 理量 に対 応 させ な け れ ば な ら な い.実 際, わ れ わ れ に興 味 が あ るの は 巨視 的 な 物 理 量 で あ る. 以 下 で は熱 平 衡 に あ る系 の み を考 え る.温 度 や 圧 力 な どは 準 静 的 に変 化 し,変 化 は可 逆 的 で あ る.よ
って 第2章
の 式(2.14)TdS=δQが
成 立 して い る.
微視 的 な状 態 の 定 義 か ら 出発 しよ う.量 子 力学 で は,体 積Vの め られ たN個
の 粒 子 か らな る系 の 状 態r は シュ レーデ ィ ンガ ー 方程 式 を解 くこ と
に よ って 求 め られ る.こ の 状 態rが エ ネル ギ ー がEか V,E)δEで
容 器 内 に 閉 じ込
らE+δEの間
微 視 的 な 状 態 で あ る.こ れ らの 状 態 の うち, に あ る 状 態 の 数 をW(N,V,E,δE)=Ω(N,
表 す こ とに す る.Ω(N,V,E)は
れ る.微 視 的 状 態 数Wの
状 態 密 度(density
こ と を熱 力 学 的 重 率(thermodynamic
of states)と 呼 ば weight)と
もい
う. 一 方,古 典 力 学 で は,N個 量(P1,P2,…,PN)を
の 粒 子 の状 態 は各 粒 子 の座 標(x1,x2,…,xN)と
指 定 す る こ と に よっ て定 まる.3次 元 で は各 座 標 と運 動 量 はそ
れ ぞ れ3成 分 ず つ 自 由度 を もつ の で 全体 で3Nの 量 を合 わ せ た6N次
運動
自由 度 が あ る.こ の 座 標 と運 動
元 空 間 を(q1,q2,…q3N,p1,p2,…,p3N)と
書 くこ とに す る.こ
の 空 間 を γ 空 間 ま た は位 相 空 間(phase
space)と 呼 ぶ*.系 の状 態 は γ空 間 の1点
で 表 さ れ る.と こ ろ が 古 典 力学 で は座 標 や 運 動 量 は 連 続 的 に 変 化 で き るの で,と りう る状 態 の 数 は 常 に 無 限 大 とな りそ の 意 味 を 失 う.こ れ を避 け るた め に γ 空 間 を体 積h3Nご
とに一 つ の 状 態 と して 離 散 化 す る.こ こ でhは
定 数 で あ る.γ 空 間 で微 小 体 積dq1…dq3Ndp1…dp3Nを 次 元 の 量(不 確 定 性 原理ΔpΔq〓hを
プ ラ ン ク(Planck)の
考 え,こ れ をh3Nで 割 っ て無
思 い 出 そ う,h=h/2π)を
つ くる.
(3.1) こ れ を微 小 体 積dq1…dp3N中
に含 まれ る微 視 的 な状 態 の 数 とす る.h3Nで 割 っ た の
は こ う して お い て求 め た 熱 力 学 的 諸 量 が 量 子 論 的 に求 め た結 果 と漸 近 的 に 高 温 で 一 致 す る た め にで もあ る.式(3.1)よ
り古 典 系 の 場 合 の微 視 的 状 態 の 数 は
(3.2) とな る. さて,外 界 か ら孤 立 して い る体 系 を考 え よ う.こ の 系 の 粒 子 数N,体 ネ ル ギーEが
積V,エ
与 え られ て い る とす る.こ の 条 件 の も とで 系 が と り う るす べ て の 微
視 的 な状 態 の 出現 確 率 はすべ て等 しいこ とを要 請す る.これ を先 験 的 等確 率(a priori probability,等 重 率)の 原 理 と い う.こ の 原 理 を よ り根 本 的 な 仮 定 か ら導 く試 み も 行 わ れ て い るが,こ
こで は この 原 理 を承 認 して 先 へ 進 もう.微 視 的 状 態rの
確 率 を ρ(N,V,E,δE;r)と
出現
す る と,こ の 原 理 は
(3.3) と表 され る.こ れ を ミク ロカ ノニ カル(micro‐canonical)分
布 また は小 正 準 分 布 と
呼 び,こ の この よ うな 分 布 を す る統 計 集 合 を ミク ロカ ノニ カル 集 合(小 正 準 集 合) と い う. 先 験 的 等 確 率 の 原 理 に従 え ば,系 の エ ン トロ ピーSは微 存 せ ず,そ
の 数Wの
視 的 状 態r自
体 に は依
み に依 存 す る.こ の こ とか ら ボル ツ マ ンの 関 係
* (x,y,z,px,py,pz)の6次 元 空 間 を μ 空 間 と い う,μ は μ 空 間 のN個 の 点 の 集 合 に 対 応 す る.
空 間 も位 相 空 間 と い う.γ
空 間 の1点
(3.4) が 得 られ る(問3.1).kは
ボル ツ マ ン定 数 で あ る.式(3.4)は
巨 視 的 な量 で あ る左
辺 と微 視 的 な 量 で あ る右 辺 を結 び つ け る 重 要 な 役 割 を も っ て い る. エ ン トロ ピーSが
求 め られ れ ば後 は 熱 力 学 の 関係 式(式(2.14))
から
(3.5) に従 い,温 度 や 圧 力 な ど が求 め られ る.熱 力学 で は 内部 エ ネル ギ ー をUと とが 多 い が,統 計 力 学 で はEと
記す こ
記 す 方 が 一 般 的 と な っ て い る.
補1 情 報 理 論 で は ρrを状 態rの
現 れ る確 率 と して エ ン トロ ピーSIを
(3.6) と して 定 義 す る.さ
て 式(3.3)を
仮 定 せ ず に この エ ン トロ ピー が最 大 とな る よ う な
確 率 分 布 ρrを 求 め て み よ う.た
ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法(補2参
だ し,Σ
ρr=1と
規 格 化 さ れ て い る も の と す る.
照)に よ り− α を未 定 乗 数 と して
(3.7) と な り,ρrはrに
依 存 し な くな る.そ
して,こ
の と きΣρ γ=1よ
り α を求 め て
(3.8) と して 式(3.4)を
得 る.す
さ れ る エ ン ト ロ ピ ーSIを (3.4))を
補2
な わ ち 先 験 的 等 確 率 の 原 理(式(3 最 大 に し,そ
.3))は
式(3.6)で
定義
の 最 大 値 と し て ボ ル ツ マ ン の 関 係 式(式
与 え る. ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法(method
of Lagrange
multipliers)
あ る 関 数f(x1,x2,…,xn)を る こ と を 考 え よ う.あ
条 件g(x1,x2,…,xn)=0の
る{x10,x20,…,xn0}に
お い てfが
も と に 極 大(極
小)に す
極 値 を と るな らば
(3.9) が 成 立 す る.一
方,条
件g=0か
ら
(3.10) が 成 り立 つ. も しg=0の
条 件 が な け れ ば{x1,…,xn}が
独 立 な の で,fを
極 大(小)に
す る条 件
は
(3.11) か ら決 定 さ れ る.い を 意 味 す る.以
ま の 場 合,条
件g=0は
下 で は{x1,…,xn-1}を
独 立 変 数 の 数 をn−1個
独 立 変 数 と し,xnを
に減 ず る こ と
そ れ ら の 関 数 と考 え よ
う. 式(3.9)と
式(3.10)よ
りパ ラ メ ー タ λ を 導 入 し て
(3.12) が 成 立 す る.パ
ラメー タ λ を
(3.13) が 成 立 す る よ う に 定 め よ う.こ
う決 め た こ と に よ り式(3.12)は
(3.14) と な り,n−1個 の 係 数 は0に
の 独 立 変 数{x1,…,xn-1}に
つ い て の 微 分 と な る.し た が っ て 各dxk
な ら な け れ ば な ら な い の で,
(3.15) を 得 る.式(3.13)と
式(3.14)よ
り,結
局,k=1,2,…,nに
対 して
(3.16)
が 成 立 す る こ と に な る.こ れ は パ ラ メ ー タ λ を 導 入 す る こ と に よ り条 件g=0の とで も す べ て の 変 数{x1,…,xn}を λ は 式(3.16)を
独 立 に 扱 っ て よ い こ と を 意 味 す る .パ ラ メ ー タ
解 い た 後 で 条 件g=0を
こ こ で は 条 件 と し てg=0た ー タ λ をm個
満 た す よ う に 決 め れ ば よ い.
だ 一 つ だ け 考 慮 し た が,条
導 入 す れ ば よい
multiplier)と
も
.パ
件 がm個
あ れ ばパ ラ メ
ラ メ ー タ λ の こ と を 未 定 乗 数(undetermined
い う.
問 3.1 エ ン トロ ピー の 相 加 性 と微 視 的状 態 数 の相 乗 性 よ り,ボル ツ マ ンの原 理 S=klogW(式(3.4))を
導 け.
解 2個 の 系AとBが
接 触 し,そ の 相 互 作 用 の エ ネ ル ギ ー が お の お の の 内 部 エ
ネ ル ギ ー に 比 べ て 無 視 で き る 場 合 に は,合 れ,SAとSBの
成 系 の エ ン トロ ピ ーSABは
部分系 の そ
和 で あ る(相 加 性).
(1) エ ン トロ ピーSと
微 視 的状 態 数Wが
あ る関 数fで
関係 づ け られ て い る と仮 定
す る.
(2) 系Aと
系Bと
の 間 の 相 互 作 用 が 無 視 で きる と き,合 成 系 の 微 視 的状 態 数 は部 分 系
の そ れ の 積 で 与 え られ る(相乗 性)か ら,
(3) ゆ え に 式(1),(2),(3)よ
り
(4) を得 る.式(4)を
任 意 の 系A,Bに
る.両 辺 をWAで
偏 微 分 して
つ い て 成 り立 つfに
つ い て の 関 数 方程 式 とみ
(5) さ ら にWBで
偏 微 分 して
(6) と な る.WAB=WAWB=Wと
お くと
(7) を得 る.両 辺 を積 分 して
(8) こ こ でk0,k,k'は
積 分 定 数 で あ るが,式(4)に
よ りk'は0で
あ る(証 明 終 り).
補 オ ー ス ト リア の ウ ィー ンの 中 央 墓 地 に あ る ボル ツマ ンの 墓 碑 の 胸 像 の 上 に S=klog Wと
刻 まれ て あ る.ブ ロ ー ダ(E.Broda)は,「
こ の 墓 石 が 何 千 年 もの 歳
月 に よっ て 瓦 礫 に 化 す る と きが きて も,こ の公 式 は 相 変 らず 成 立 して い るで あ ろ う」 と述 べ て い る(口 絵 参 照).
問3.2 相 互 作 用 の な いN個
の 自由粒 子 よ りな る気 体 の 体 積 をVと
す る.ミ ク
ロカ ノニ カル 集 合 の 方 法 を用 い て,平 均 エ ネ ル ギ ー と比 熱 の 温 度 依 存 性 を求 め よ. 方 針 まず エ ネ ル ギ ー がE∼E+δEの
間 に あ る状 態 の 数 を求 め よ.
解 系 の ハ ミル トニ ア ン は
(1) で あ る.エ ネル ギ ーがE以 下 の状 態 数 は,条 件H〓Eの
も とに位 相 空 間 を積 分 して
(2) と な る.Ω
は状態密度
元 球 の 体 積 な の で,問
で あ る.こ 付1を
エ ネ ル ギ ー がE∼E+δEの
こ で∫dp1…dp3Nの
用 い た.式(2)を
積 分 は 半 径√2mEの3N次
状 態 体 積 と呼 ぶ.
間 に あ る と き の 状 態 数W(N,V,E,δE)は
(3) で あ る か ら,式(2)を
微分 す るこ とに よ り
(4) と求 ま っ た.こ
れ は 無 次 元 の 量 に な っ て い る こ と に 注 意 せ よ.
あ と は 式(3.5)を し,Nは
用 い て 温 度,平
非 常 に 大 き な 数 ∼1023な
均 エ ネ ル ギ ー,比
熱 を 計 算 す れ ば よ い .た
の で3N/2±1〓3N/2と
し て よ い .温
だ
度 は
(5) と な る.こ
れ か らエ ネ ル ギ ー
(6) お よび定積 比熱
(7) を得 る. 注 式(5)の 計 算 で 式(4)に
あ っ たδEを 無 視 した.こ れ につ いて は 問3.3の
脚
注 を参 照 の こ と. 補 本問 の エ ン トロ ピー は
(8) で 与 え ら れ る.エ と,ス
* n!に
ネ ル ギ ー や 体 積 は 示 量 変 数 で あ る か らE=εN,V=υNと
タ ー リ ン グ(Stirling)の
対 す る近 似n!〓nne-nを
証 明 :〓
公 式*Γ(n)〓nne-nを
用 いて
ス タ ー リ ン グ の 公 式 と い う.
お く
(9) とな り,NlogNの
項 の た めSが
示 量 変数 と な らな い.こ れ は 古 典 統 計 力 学 で 粒
子 を 区 別 し う る もの と して 扱 っ た か らで あ る.粒 子 は そ もそ も区 別 しえ な い もの で 本 来 量 子 統 計 力 学 の対 象 た るべ き もの なの で あ る.古 典 統 計 力 学 に対 して 粒 子 は 区別 しえ な い と い う補 正*を 行 う と式(4)のWをN!で
わ って
(10) と な る.こ
のWを
用 い てSを
求 め る と(N≫1)
(11) と な り,Sは
示 量 変 数 と な る.古 典 統 計 力 学 に お け るWをN!で
ス(Gibbs)の
補 正 と い う.式(10)を
式(11)に
式(6)よ
用 い て も式(6)と
り求 め た ε=3/2kTを
式(7)の
わ る補 正 を ギ ブ 結 果 は 変 わ ら な い.
入れ る と
(12) と な る が,こ れ で はT→0でS→∞ と い う 熱 力 学 第3法
則 に 矛 盾 す る.ギ
と な り,絶 対 零 度 で エ ン トロ ピ ー は0と
ブ ス の 補 正 を用 い て も古 典 統 計 力 学 の もつ
内 部 矛 盾 は 本 質 的 に は 解 決 し え な か っ た の で あ る.は い れ ば エ ン トロ ピ ー の 示 量 性 お よ び 熱 力 学 の 第3法 6.2の
式(20),問6.8の
な る
じめ か ら 量 子 統 計 力 学 を 用
則 は と も に 満 た さ れ て い る(問
式(17)).
* 粒 子 が 区別 しえ な い とい うこ とは,粒 子 の 入 れ か え に対 して状 態 は 変 わ らな い こ とを意 味 す る.粒 子 の 入れ か えはN!通
り可能 で あ る.式(4)で
して数 え上 げ られ て い るの で,こ れ をN!で とにな る.
は粒 子 を入 れ か え た状 態 は異 な っ た状 態 と 割 れ ば この 入 れ か え た状 態 は すべ て 同 じと考 え るこ
な お 式(12)のυ
をpυ=kTに
よ り圧 力pで
表 す と,
(13) と な る.こ れ を サ ッ カ ー‐ テ ト ロ ー ド(Sackur‐Tetrode)の す る 化 学 定 数(chemical
constant)と
ン ト ロ ピ ー,平
単 原 子 気 体 に対
い う.
問 3.3 1次 元 古 典 調 和 振 動 子N個 合 の 方 法 に よ り,エ
式,iを
か らな る系 につ い て,ミ
均 エ ネ ル ギ ー,比
クロカ ノニカル集
熱 を そ れ ぞ れ 温 度Tの
関数
と し て 求 め よ. 方 針 ハ ミル トニ ア ン は
(1) と し て 与 え ら れ る.そ る.エ
れ ぞ れ の 振 動 子 の エ ネ ル ギ ー を εiと す る とE=Σ
ネ ル ギ ー がEとE+δEの
解 状 態 数Wは
間 に あ る 状 態 の 数W(N,V,E,δE)を
εiであ 求 め よ.
次 の 式 で 与 え ら れ る.
(2) 変数 変換
(3) 右 辺 は2N次
元 空 間 の 半 径√Eの
球 の表 面積S2N(E)(問
付1参
照)を 用 い て
(4) と表 さ れ る.よ
って
(5) よ り
(6) を 得 る.エ
ン トロ ピ ーSは
(7)
(8) と な る.た だ しlogδEの
項 は 無 視 で き る*.温 度Tは
熱 力学の関係式 よ り
(9) と 求 ま る.ゆ
え に エ ネ ル ギ ーEと
エ ン トロ ピ ーSはN≫1と
して
(10) 定積比熱Cvは (11) と な る. 補 ギ ブ ス の 補 正 を 行 わ な か っ た に も か か わ ら ず,エ し て 正 し く振 る 舞 っ て い る.ギブ
ン トロ ピ ー は 示 量 変 数 と
ス の 補 正 を 行 う か 否 か の 指 導 原 理 は,エ
ピ ー が 正 し く示 量 変 数 と し て 振 る 舞 う か 否 か で あ る.た だ し式(10)のSは の 式(12)と
同 じ く熱 力 学 第3法
則 は 満 た し て い な い.こ
ン トロ 問3 .2
の矛 盾 の 解 決 に は 量 子 統
計 力 学 を ま た ね ば な ら な い(問3.4).
問3.4
角 振 動 数 ω を もつ 調 和 振 動 子 を考 え る.N個
の 独 立 な 振 動 子 よ りな る
系が全 エネル ギー
* 心 配 な の はδE→0の 場 合 で あ る.こ の と きlogδE→−∞ とな って しまいNlog(E/μ)と 比 べ 無 視 で きな くな る.し か しなが ら δE→0と はな らな い.こ れ も量 子 力 学 の おか げ で あ る.不 確 定性 関係 δEδt〓hに よ りδEは 系 を観 測 す る時 間δtに 依 存 して 下 限 を もつ.δt∼1010秒 で も δE∼10-44Jだ か らNlog(E/N)∼1023に 対 してlogδE∼−102の 寄 与 しか ない .
(1) を もつ 場 合,そ 度 を求 め,エ
の 微 視 的状 態 数 を求 め よ.ま た,こ れ よ りエ ン トロ ピー お よび温
ネ ル ギ ー を温 度 の 関 数 と して 表 せ.
方 針 一 つ ひ とつ の調 和 振 動 子 の エ ネ ル ギ ー は 量 子 力 学 に よれ ば
(2) で 与 え ら れ る.た
だ し
(3) よ り
(4) とい う関 係 が 成 立 しな くて は な らな い.こ れ よ り微 視 的 状 態 数 を求 め よ. 解 式(4)が 成 立 す る{ni}の 場 合 の 数 が 微 視 的 状 態 数Wで は0か
らMま
あ る.た だ し,各ni
で の 値 を と りう る.
図3.1
これ は 図3.1の
よ う にM個
M個 の球 のN個 の 箱へ の分 割 数 字 は箱 の名前(番 号) の球 をN個
−1個 の し き りを合 わ せ たN+M−1個
に分 割 す る仕 方 で あ る.M個
の 球 とN
の物 の順 列 組 合 せ を考 え,そ れ を球 ど う し
の 入 れ か えの 数 と し き り ど う しの 入 れ か えの 数 で わ る.よ っ て
(5) と な り,エ
ン トロ ピ ー は これ か ら
(6) と な る.た
だ し こ こ でM,Nが
十 分 大 き い と して ス タ ー リ ン グ の 公 式
を使 っ た. さて 温 度 は
(7) で 与 え ら れ る.こ
こ で 式(1)よ
りM=E/hω−N/2を
用 い た.し
た が っ て,エ
ネ
ル ギ ー は 温 度 の 関 数 と して 求 め ら れ る.
(8) エ ン ト ロ ピ ーSを
温 度 の 関 数 と して 求 め よ う.式(1),式(6),式(8)か
ら
(9) を 得 る.し
た が っ て エ ン ト ロ ピ ー は 示 量 変 数 と な っ て い る.ま
たT→0で
式(9)
は
(10) とな る か ら,熱 力 学 第3法
則 を も満 た して い る.こ れ は量 子 力 学 的 に 扱 っ た こ と
に よ る.
問 3.5 N個
の 独 立 な 区 別 し う る粒 子 か らな る体 系 が あ る.各 粒 子 は−ε0,+ε0
の 二 つ の エ ネ ル ギ ー 状 態 を と り う る と す る.全 −
N+2,−N+4,…,N)の
エ ネ ル ギ ーE=Mε0(M=−N,
と き の 微 視 的 状 態 数Wを
求 め,エ
ン ト ロ ピ ー,温
度,エ
ネ ル ギ ー の 関 係 を 求 め よ.こ
解 N_個
が− ε0の準 位 に,N+個
の 系 を2準 が+ε0の
位 系 と い う.
準 位 に あ る と す る.
(1) (2) (3) で あ る.ゆ
え にN_とN+はNとMを
用 い て 以 下 の よ う に 表 せ る.
(4) N個
の 粒 子 の 内 エ ネ ル ギー が− ε0の状 態 に あ るN_個
状 態 数Wで
を選 ぶ 方 法 の 数 が 微 視 的
あ るか ら
(5) と な る.よ
って エ ン トロ ピー は
(6) で あ る.式(6)は
(7) の よ うに書 くこ と もで き る. 熱力学 の関係式
よ り,エ
ン ト ロ ピ ーSと
エ ネ ル ギ ーE=Mε0を
使 っ て 温度 が 求 ま る.
(8) ゆ えに
(9) (10) (11) (12) エ ン ト ロ ピ ー は 温 度Tの
関 数 と して
(13) と な る.こ
れ も 図3.2に
図3.2
示 す.
エ ン トロ ピ ー とエ ネ ル ギ ー の 温 度 依 存 性 (た だ し,ε0=1と
式(12)よ
りEはTの
補 式(8)よ
りM<0す
お い た.)
関 数 と し て 図3.2の な わ ちE<0で
よ う に な る.
はT>0で
あ る が,M>0す
な わ ちE>
0で はT<0と
な り,こ れ は 非 正 常 な状 態 で あ る.上 の レベ ル に あ る粒 子 数 が 下 の
レベ ル に あ る粒 子 数 よ り も多 い状 態 を負 の温 度 の 状 態 とい う.熱 平 衡 の 状 態 で は こ の よ う な状 態 は 実 現 さ れ な い が,過 渡 的 な 状 態 と して は あ り得 る.た
とえば レ
ー ザ 光 な ど は こ の 現 象 を利 用 して い る.
問3.6 N個
の1次
れ て 全 体 でM個
元 的 に並 ん だ 箱 が あ る.一 つ の 箱 に た か だ か1個 の 球 を 入
の球 を入 れ た い.た だ しN〓2M−1と
い に相 隣 らな い よ う に入 れ る入 れ 方 の 数Wを
す る.1)こ
求 め よ.2)ま
い と き一 つ の箱 当 りの エ ン トロ ピー を求 め よ.3)箱
の とき球 が 互
た この 系 が十 分 大 き
が リ ング状 に並 ん だ と き,1)
の 問題 を考 え よ. 解 1) 空 箱 を□,球 の 入 っ た箱 を〓 で 示 す(図3.3).左
端 の 箱 が □ の と き と〓
の と き に分 け て考 え その 和 を とる.前 者 の 場 合 を考 え る.空 箱 はN−M個 はM個
あ る.□ を な らべ て そ の う ちM個
図3.3
N=7,N1=3の
あ り〓
の □ の 右 隣 りに〓 を一 つ お くこ と にす
と き,W=10通
り
れ ば〓 は と な り合 わ な い.こ い て は 左 端 が〓
の よ う な お き 方 の 数 はN-MCM通
り と な る .後 者 に つ
と き ま っ て い る の で,こ れ を 一 つ 削 っ て(N−1)−(M−1)=N−M
個 の □ の う ちM−1個
の □ の 右 側 に〓 を お く お き 方 の 数 はN-MCM-1と
な る.ゆ え
に 求 め る数 は
(1) 別 解 空 箱 を□,球 の 入 っ た 箱 を〓 で示 す.左 端 に □ を一 つ 補 っ てN−M+1個 の 空 箱 の 右 にM個
の 球 を お くお き方 の 数 を求 め れ ば よい.ま ず □ をN−M+1個
を1列 に 並 べ る.こ の うちM個 べ 方 が で き る.し
の □ の右 側 に〓 を挿 入 す れ ば,題 意 を満 足 す る並
たが っ て,場 合 の 数 は
(2) で 与 え ら れ る. 2) M/N=ρ
とお きス タ ー リング の 公 式 を用 い て
(3) とな る. 3) 箱 が リ ング状 に並 ん だ と き. あ る箱 を端 と名 づ け る.端 が 空 の と きはN− M個
の 箱 の 右 に 球 を お くお き方 の 数 はN -MCMと
N−M−1個
な り,端 に 球 が 入 って い る と きは
の 箱 の 右 に球 をお くお き方 の 数 はN-M-1CM-1と
求 め る もの に な る.ゆ
な るか ら,そ の 和 が
えに
(5) 別 解 右 端 と左 端 に 球 の 入 っ た い れ 方 の 数N-M-1CM-2を (式(1))か
ら 引 く こ と に よ っ て も 式(5)を
得 る.
リ ング で な い場 合 の 数
問 3.7 N個
の ス ピ ン*を
考 え る(図3.4).各
ス ピ ン は│α> と│β>の2通
りの 状
態 を と り う る.│α> 状 態 を ス ピ ン が 上 を 向 い た 状 態,│β> 状 態 を ス ピ ン が 下 を 向 い た 状 態 と い う こ と に す る.1個 し た と き,相 互 作 用 の な いN個
の ス ピ ン が 上 を 向 く確 率 をp,下
の ス ピ ン か ら な る系 の エ ン ト ロ ピ ー は1個
ン か ら な る 系 の エ ン トロ ピ ー のN倍 定 義 と し て 式(3.6)を
のス ピ
に な る こ と を 示 せ .た だ し,エ ン ト ロ ピ ー の
用 い よ.
図3.4 解
を 向 く確 率 をqと
ス ピンの状態
系 の エ ン トロ ピ ー は
(1) で 与 え られ る.た だ しρiは状 態iを
と る確 率 で
(2) を満 た す. 1個 の ス ピ ン に対 して は
(3) で あ る か ら,
(4) と な る.p=q=1/2の N個
と きS=−klog2〓0
の ス ピ ン か ら な る 系 に つ い て,l個
状 態 を 考 え よ う.こ
.69314kで
あ る.
が 上 を 向 き,N−l個
が 下 を向 い て い る
の よ うな 状 態 を と る確 率 は
(5) と な る.lが
与 え ら れ た と き 同 じρl=plqN-lを
与 え る 状 態 の 数 はNCl個
あ るか ら
* ス ピ ンにつ いて は量 子 力 学 演 習 を参 考 に して いた だ きた いが ,こ こで は粒 子 と読 み か え て さ しつ か えな い.
,
(6) い ま,
(2項 定 理) で あ るか ら
(7) ゆ え にx=p/qと
おいて
(8) 式(4)と
式(8)よ
問 3.8 n個 だ かp個
り題 意 は 証 明 さ れ た.
の 区 別 し え な い球 をg個
の 箱 に 入 れ る.た だ し,一 つ の 箱 に は た か
ま で しか 入 らな い とす る.入 れ 方 の 場 合 の 数 をA(n,g,p)と
す る.さ らに
母 関 数 と して
(1) を 考 え る. 1) A(4,3,2),
A(4,5,2)を
2) A(n,g,1),
F(x,g,1),
3) A(n,g,p),
F(x,g,p)を
方 針 i個
求 め よ. A(n,g,∞),
F(x,g,∞)を
求 め よ.
球 が 入 っ て い る 箱 の 数 をmiと
す る と
求 め よ.
(2) が 成 立 し な くて は な らな い.式(2)を
満 たす あ る{mi}の
の 数 を考 え て み よ.次 に 式(2)を 満 た す{mi}の 解
1) A(4,3,2)に
つ い て.式(2)よ
組 が 定 ま っ た と して 場 合
組 を考 え る.
り
(3) が 成 り立 つ.こ 図3.5の
れ を 満 た す{mi}の
よ う に6通
A(4,5,2)に
た は(0,2,1)で
あ る.す
なわ ち
りあ る.
図3.5
組 は(1,0,2)ま
つ い て.同
A(4,3,2)可
能 な状態
様 に
(4) を 満 た す{mi}の
組 は(1,4,0),(3,0,2),(2,2,1)で
(1,4,0)で
あ る場 合 の 数 は
(3,0,2)で
あ る場 合 の 数 は
(2,2,1)で
あ る場 合 の 数 は
よ っ て 計45通 2) A(n,g,1)に
あ る.
り に な る. つ い て.
(5)
よ りm1=n,m0=g−nと
な る.し
た が っ て,A(n,g,1)は
(6) す な わ ち2項 係 数 で あ る.こ れ よ り
(7) を 得 る. A(n,g,∞)に
つ い て.一
A(n,g,∞)はn個
つ の 箱 に 何 個 で も球 が 入 っ て よ い の で あ る か ら,
の 球 をg個
の 箱 に 入 れ る 入 れ 方 と な る.よ
って
(8) こ の と き
(9)
(10) 3) 一 般 のn,g,pの
場合
あ る{mi}の 組 が 指 定 され た と きの 場 合 の 数 は
(11) で 与 え ら れ る.し た が っ て,A(n,g,p)は な{mi}の
式(11)と
式(2)を
満足 す るすべ ての可能
組 に つ い て 加 え た も の で あ る.
(12)
さ て(1+x+x2+…+xp)gの (1+x+x2+…+xp)g
展 開 を 考 え て み よ う.
(13) と な る.こ れ はg個
の(1+x+x2+…+xp)の
中 か ら,そ れ ぞ れ 一 つ ず つ 項 を 取 り
出 し て 乗 算 す る こ と を 考 え れ ば わ か る.す を 取 り 出 し た も の がm1個,…,xpを 指 数 は0m0+1m1…+pmpと
な わ ち1を
取 り 出 し た も の がm0個,x
取 り 出 し た も の がmp個 な る.ま
あ っ た と き の,xの
た そ の 取 り 出 し方 は
(14) で 与 え ら れ る.し
た が っ て,式(13)に
お いて
(15) を 満 た す と こ ろ,す
な わ ちxnの
係 数 がA(n,g,p)を
(1)お よ び 上 記 の 議 論 よ り式(13)そ
与 え る.ま たF(x,g,p)は
の も の で あ る こ とが わ か る.よ
式
って
(16) 注 p=1が
フ ェ ル ミ統 計,p=∞
が ボ ー ズ 統 計 の 場 合 で あ る(問3.11お
よび 第
6章).
問3.9 N個
の 区 別 で き る粒 子 の 集 りを考 え る.粒 子 間 の相 互 作 用 は な く,全
系 の エ ネル ギ ー は個 々 の それ の和 で表 され る とす る.N個
の 粒 子 の う ち,エ ネ ル
ギー Eκ を もつ 粒 子 の 数 をnκ で 表 そ う.κ で 指 定 され た こ の状 態 を粗 視 的 状 態 (coarse‐grained states)と い い,こ の状 態 の 中 にgκ個 の微 視 的 な粒 子 状 態 が存 在 す る.全 系 の エ ネ ル ギーEが
指 定 され た と き{nκ}で指 定 され た系 の微 視 的 状 態 数
w({nκ })はい く らに な る か.ま たwを
最 大 とす る"粒 子 の 分 配 の仕 方"{nκ }を求
め よ. 方 針 w({nκ})は,N個
の 粒 子 を{nκ}に 分 配 す る仕 方 の 数 と,各 粗 視 状 態 κ の
中 でgκ 個 の 状 態 にnκ 個 の粒 子 を分 配 す る仕 方 の 数 の 積 で 与 え られ る.ま た
(1)
とい う制 限 の 下 でwの
最 大 値 を求 め る に は ラ グ ラ ン ジ ュの 未 定 乗 数 法 を使 用 す る
の が よい.N,V,Eが
指 定 され た と きの微 視 的 状 態 数 は〓
で あ る. 解 N個
の 粒 子 を{nκ}に 分 配 す る仕 方 は
(2) で あ り,各 粗 視 状 態 κ の 中 でgκ個 の状 態 にnκ 個 の 粒 子 を分 配 す る仕 方 の 数 は
(3) あ るか ら,{nκ }が 与 え られ た と きの 微 視 的 状 態 の 数 と して
(4) を 得 る. さ て,式(1)の
制 限 を つ け て ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法 を 使 お う.以
と し て ス タ ー リ ン グ の 公 式〓 せ た と き のlogwの
を 用 い る.nκ
下,nκ≫1
を δnκだ け 変 化 さ
変化 は
(5) で あ り,式(1)の
変化 は
(6) で あ る.し
た が っ て,ラ
グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 を そ れ ぞ れ −1,α,β
と して
(7) とな る.こ れ よ り微 視 的 状 態 数wを
最 大 とす る{nκ}は
(8) と得 ら れ る.α
と β は 条 件 式(1)よ
り
(9)
の解 と して 決 定 され る. 式(8)の
分 布 を(マ
ッ ク ス ウ ェ ル-)ボ
ル ツ マ ン分 布 と い い,系 の も っ と も 確 か ら
し い 状 態 を 与 え る.
補 ミク ロカ ノニ カ ル 分 布 の 方 法 で は,粒 子 数Nと ル ギ ーがEで
あ る微 視 的 状 態 の 数W(N,V,E)を
体 積Vが
問 の よ うな場 合 それ を実 行 す るの は難 しい の で,か わ りにwを 態{nκ}の組(式(8),以
与 え られ,エ ネ
数 え る こ とが基 本 で あ っ た.本 最 大 とす る粗 視 状
下 これ を{nκ*}と 書 こ う)を 求 め,
(10) と して エ ン トロ ピ ー を 計 算 す る こ と が あ る.こ W(N,V,E)とw({nκ*})の
れ を最 大 項 の 方 法 とい う.
差 が 無 視 で き れ ば 式(10)が
成 立 す る わ け だ か ら,
こ の 差 を 見 積 も っ て み よ う. い ま{nκ*}は
最 大 値w({nκ*})を
与 え る か ら,こ
の ま わ りで 展 開 して
(11) 式(4)か
ら
(12) を用 い て
(13) を 得 る. し た が っ て,エ
ン トロ ピー は
(14) と な る.こ こ で Σ の 和 をnκ≫1と
し て積 分 に な お し,〓
と し た.式(14)の〓1項 の 項 で あ り,〓2項 の 結 果 式(10)を
結 局,わ
はlognr*の
はnκ*lognκ*の
オ ー ダ ー で あ る か ら,〓2項
オーダー
は 無 視 し て よ い.そ
得 る.
れ わ れ は 本 問の よ う に微 視 的 状 態 数w({nκ })を最 大 とす る{nκ*}を 求
め,そ れ を 用 い て式(10)に 代 入 しエ ン トロ ピー を計 算 す れ ば よ い.以 上 の こ とを 裏 返 せ ば,w({nκ })は{nκ*}に 非 常 に鋭 い ピー ク を も っ た関 数 で あ る とい え る.鋭 い か らこ そ 式(14)で〓2項
問 3.10
が 無 視 で き るの で あ る.
前 問 に お い て,外 界 か ら熱 量 δQを 加 え た と き粗 視 状 態{nκ*}が{nκ*+
δnκ}へ と 変 化 す る.こ れ に よ る エ ン トロ ピ ー の 変 化 と熱 力 学 的 関 係 式δQ=TdSと を 比 較 す る こ と に よ り,ラ
グ ランジュの未定乗数 β は温度 と
(1) の 関係 が あ る こ と を示 せ.た
だ し系 の体 積 は一 定 とす る.
方 針 δnκの 変 化 に よる エ ン トロ ピーSの
変化 を 問3.9の
式(10)を 用 い て求 め
よ.ま た 全 系 の エ ネル ギ ー の 変 化 は
(2) で あ る こ と を 用 い る.
解 まず 粗 視 状 態 の 数 の 変 化 に よ るlogwの
変 化 は 問3.9の
式(5)に
より
(3) と な る.こ
こ で〓(問3.9の
い ま全 粒 子 数Nは
一定だ か ら
式(8))を
用 い た.
(4) ま た,エ
ネル ギ ー の 変 化 は
(5) で あ る.こ
れ ら を 式(3)に 代 入 して
(6) を 得 る.そ
して こ のδEは
式(2)よ
り δQに
ほ か な ら な い.し
た が っ て,
(7) と な る.こ れ を熱 力 学 的 関係 式 δQ=TdSと
比 較 して 式(1)が 結 論 され る.
注 系 の体 積 が 一 定 で な くと も式(1)の 結 果 は成 立 つ.た
とえ ば 参 考 文 献6)桂
重 俊 参 照.
問3.11
問3.9に
お い て個 々の 粒 子 が 区 別 で きな い と き,{nκ}で指 定 さ れ た微
視 的 状 態 数w({nκ })はい く ら に な るか.た だ し,1)一
つ の 微 視 的 な粒 子 状 態 に最
大1個 の 粒 子 しか 入 れ な い場 合(こ れ をフ ェル ミ-デ ィラ ッ ク統 計 とい う)と,2)何 個 で も入 り う る場 合(ボ ー ズ-ア イ ン シ ュ タイ ン統 計)に つ い て 考 え よ.1)と2)の 場 合 のwを
そ れ ぞ れwFD,wBEと
書 く.
方針 個 々 の粒 子 が 区 別 で きな い と い うこ とは,個
々 の粒 子 を 入 れ か え た状 態
は 同 じ と考 え る こ と で あ る.エ ネ ル ギ ー εκ で 区別 され た粗 視 状 態 を κ と い う名 前 のつ い た 箱 と考 え,こ の 箱 に球 を 入 れ る問 題 と して 考 え よ う. 解 ボ ー ズ-ア イ ンシ ュ タ イ ン統 計 の 場 合.ま ず,gκ 個 の 固有 状 態 か らな る一 つ の 系 に対 して,nκ 個 の個 性 の な い粒 子 を分 布 させ る仕 方 の 数 を考 え よ う.1次
元
に並 ん だnκ 個 の球 と,gκ−1個 の 仕 切 りが 並 ん で い る と考 え る. このgκ−1個 の 仕 切 りに よ り,nκ個 の球 がgκ個 の部 屋 に分 配 され て い る と考 え よ う.1個 の部 屋 に何 個 は い っ て もよ い.球 と仕 切 り をい っ し ょに したnκ+gκ −1個 の もの の 置 換 は(nκ+gκ −1)!個 あ る.と こ ろ で,こ の う ち球 ど う しの 置 換 と仕切 りど う しの 置 換 は 同 じ状 態 を表 す か ら,求 め る分 布 の 数 は
(1)
個 で あ る.全 系 に つ い て は
(2) と な る.
フ ェ ル ミ-デ ィ ラ ック統 計 の 場 合.1個
の 状 態 に1個 以 上 の 粒 子 が 入 れ な い と
い うこ とか ら,粒 子 数nκ は系 の 固 有 状 態 数gκ よ り も大 き くな りえ な い.ま ずnκ 個 の 粒 子 が 区別 しう る とす る.最 初 の1個
が と り う る状 態 数 はgκ,次 の1個
がと
り得 る状 態 数 はgκ−1,… で あ るか ら,こ の 系 に対 してnκ 個 の 粒 子 は
(3) 個 の 状 態 を と り う る.と こ ろ で,nκ 個 の 粒 子 は 実 は区 別 しえ な い の で あ っ た か ら,こ の 系 の と り うる状 態 の 数 は
(4) で あ り,し
たが っ て 全 系 で は
(5) と な る. 補 量 子 力 学 に よ る と,電
子 な ど ス ピ ン が 半 奇 数(1/2,3/2,…)で
あ る粒 子 は
フ ェル ミ-デ ィ ラ ッ ク 統 計 に従 う.こ れ らの 粒 子 を フ ェル ミ粒 子 とい う.光 子(photon) な ど ス ピ ン が 整 数 の 粒 子 は ボ ー ズ-ア イ ン シ ュ タ イ ン統 計 に 従 い,ボ ー ズ 粒 子 と い う.
問3.12
前 問 の 結果 を用 い て,ボ ー ズ-ア イ ン シ ュ タ イ ン統 計 の 場 合 とフ ェル ミ
-デ ィラ ッ ク統 計 の場 合 そ れ ぞ れ に対 し,微 視 的 状 態 数 を最 大 とす る粗 視 状 態 の 分 布nκ を求 め よ.さ 方 針 問3.9で
ら にエ ン トロ ピーSも
計 算 せ よ.
行 っ た よ うに ラ グ ラ ン ジ ェの 未 定 乗 数法 を用 い れ ば よ い.エ
ン
トロ ピー は 「最 大 項 の 方 法 」 に も とづ き計 算 で き る. 解 ボ ー ズ-ア イ ン シ ュ タイ ン統 計(以 下 ボー ズ統 計 と略 す)の 場 合 の微 視 的 状 態
数 は 問3.11の
式(2)で
与 え られ る か ら,
(1) と な り,フ ェ ル ミ 第デ ィ ラ ッ ク 統 計(以 式(5)よ
下 フ ェ ル ミ統 計 と 略 す)の 場 合 は 問3.11の
り
(2) と な る.こ
こ でnκ,gk,g.±nκ
グ の 式 を 用 い た.式(1)と
は い ず れ も1に
式(2)を
比 べ 十 分 大 き い と し,ス
ター リン
ま とめ て
(3) と 書 く.た
だ し
フ ェル ミ統 計
(4)
ボ ー ズ 統 計 で あ る.
さて 式(4)を 制 限
(5) の も とで 最 大 とす る{nκ}を求 め る た め に,ラ
グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法 を用 い る.
未 定 乗 数 を α と β と して
(6) と な る.こ
れ を解 い て
(7) を得 る.こ れ が 量 子統 計 力学 に お け る分 布 法 則 で あ る.
(8) を フ ェ ル ミ分 布,
(9)
を ボ ー ズ 分 布 とい う.特 に ボ ー ズ分 布 に お い てnκ >0で あ るた め に は
(10) を満 た さね ば な らな い こ とに 注 意 し よ う. パ ラ メ ー タ α と β は
(11)
図3.6
図3.7
(a):ボ
ーズ統 計
(b):マ
ックス ウ ェル統 計
(c):フ
ェル ミ統 計
分 布 関 数f(ε)の 比 較
フ ェル ミ分 布 関 数 の 温 度 依 存 性(T=0,kT∼ μ,kT≪ μ の 比 較 ,T =0の μを ε0と記 号 し ,フ ェル ミ準 位 と い う.)
を 満 た す よ う に 決 め ら れ る.問3.10と
同 じ議 論 を 進 め れ ば,β=1/kTと
して温 度
の 逆 数 で あ る こ とが わ か る. さ て エ ン ト ロ ピ ーSは
問3.9の
式(10)で
示 し た よ う にw({nκ
})の最 大 値 を 用 い
て
(12) と な る.た 補 α=−
だ し{nκ*}は
式(7)で
与 え ら れ る.問6.2,6.8参
照.
βμ と お い て,
(13) を そ れ ぞ れ の 場 合 の 分 布 関 数 と呼 ぶ.ま
た γ≪eβ(μ-ε)の 場 合,
(14) とな り,問3.9で
求 め た マ ッ クス ウ ェ ル-ボ ル ツ マ ン分 布 に漸 近 す る.そ れ ぞ れ の
場 合 の 温 度 依 存 性 を図3.6に
示 した.特
を い くつ か の 温 度 につ い て 図3.7に
に フ ェル ミ分 布 関 数 の エ ネ ル ギ ー依 存 性
示 した.T=0で
(15) とい う階 段 関 数 に な るこ と に注 意 せ よ.
第4章 カ ノニ カル集 合および グ ラン ドカ ノニカル集合の 方法
前 章 で は エ ネル ギ ーEを
指 定 して 系 の と りう る状 態 数 を数 え る こ とに よ り,系
の 巨視 的 な熱 力 学 的 諸 量(温 度 な ど)を求 め た.本 章 で は,ミ ク ロカ ノ ニ カ ル(小 正 準)集 合 の 方 法 よ り もっ と使 いや す い 方 法 で あ るカ ノニ カル(正 準)集 合 とグ ラ ン ド カ ノニ カル(大 正 準)集 合 の 方法 につ い て 扱 う. カノ ニ カル 集 合(canonical
ensemble):温
度Tの
熱 浴 との 間 で エ ネル ギー を交
換 して い る系 の 集 合 を考 え る.こ れ が カ ノニ カル 集 合 で あ る.熱 浴 を十 分 大 きい とす る と,こ の 系 は粒 子 数Nと
温 度Tで
ミク ロ カ ノ ニ カ ル 集 合 で は,NとEが
指 定 され た系 と考 え る こ とが で き る.
指 定 され て い た こ と を思 い起 こ そ う.カ ノ
ニ カル 集 合 で は系 の 一 つ が エ ネ ル ギ ーEを
もつ確 率 は,
(4.1) に 比 例 す る(問4.1参
照).系
が と り う る 全 微 視 的 状 態iに
わ た っ て 式(4.1)の
和 を
とっ た もの
(4.2) を カ ノ ニ カ ル な 分 配 関 数(partition
function)ま
た は 状 態 和(sum
over
states,Zustandssumme
独)と い う.こ れ は 母 関 数 の 一 種 で あ る.こ れ を 用 い て へ ル ム ホ ル ツ の 自 由 エ ネ ル ギ ーFは
(4.3) で 与 え られ る(問4.4参 数Nと
温 度Tが
照).こ れ か ら熱 力 学 的 関係 式(第2章
参 照)を 用 い て,粒 子
与 え られ た と きの 平 均 エ ネル ギ ー 〈E〉や 圧 力pが
求 め られ る.
グ ラ ン ドカ ノ ニ カ ル 集 合(grand
canonical
ensemble):温
度Tで
化 学 ポテ ン
シ ャ ル μ を もつ 熱 粒 子 浴 と の 間 で エ ネ ル ギ ー と粒 子 を 交 換 して い る 系 の 集 合 を 考 え よ う.こ
れ が グ ラ ン ドカ ノ ニ カ ル 集 合 で あ る.系
粒 子 数 がNで
の 一 つ が エ ネ ル ギ ーEを
もち
あ る確 率 は
(4.4) に比 例 す る.カ ノニ カ ル 集 合 の場 合 と同様 に
(4.5) が 定 義 さ れ,こ
れ を 大 分 配 関 数(grand‐partition
カ ル な 状 態 和 と い う.熱
力 学 的 量 で あ る 圧 力pと
function)ま 体 積Vと
た は グ ラ ン ドカ ノ ニ は
(4.6) の 関 係 を もつ(問4.5).こ
の 集 合 は 温 度Tと
を扱 うの に適 して い る.そ の 意 味 でT-μ そ の他,温 度Tと られ る.多
圧 力pが
化 学 ポテ ン シ ャル μ が 与 え られ た系 集 合 と も呼 ば れ る.
与 え られ た と き に便 利 なT-p集
く利 用 され て い るの は ミク ロ カ ノ ニ カ ル,カ
合 な ど数 多 く考 え
ノ ニ カ ル,グ
ラ ン ドカ ノ
ニ カ ル 集 合 で あ る. 以 上 は,微 視 的 な状 態iが 1個2個
は っ き り決 ま る と き,い い か え る と状 態iが 離 散 的 で
と数 え られ る と き に は 問 題 が な い.し か し,古 典 力学 の よ うに状 態 が 連 続
的 に 変 化 す る よ うな 場 合 に は,第3章
で 導 入 した 「位 相 空 間 をh3Nで
が 必 要 と な っ て くる.こ れ に つ い て は 問4.2を
参 照 の こ と.
第3章 の ミク ロカ ノニ カル 集 合 の 方 法 で は,粒 子 数Nと れ,そ の と きの 微 視 的状 態 数W(N,V,E,δE)を 求 め た.カ ノニ カル 集 合 の 場 合 式(4.2)の
割 る」操作
エ ネル ギーEが
指定 さ
求 め ることによって熱力学 的量 を よ う に全 微 視 的 状 態iに つ い て和 を と る
わ け だ か ら,こ れ をエ ネ ル ギ ー の積 分 に 変 数 変 換 して
(4.7) と して求 め れ ば よ い.Ω
は第3章
で 定 義 した状 態 密 度 で あ る.こ のΩ を
(4.8)
と し て エ ネ ル ギ ーEま 照).グ
で 積 分 したJ(N,V,E)を
状 態 体 積 と い う(問3 .2の
ラ ン ドカ ノ ニ カ ル 集 合 の 方 法 に お い て も,エ
式(2)参
ネル ギ ー に 関 す る部 分 は 同 じ
議 論 が 成 り立 つ. 式(4.8)を
エ ネ ル ギ ーEで
微 分 す る とdJ/dE=Ω
で あ る か ら,式(4.7)は
(4.9) と書 け る.こ
の 式(4.9)は
エ ネ ル ギ ー が 離散 的 な と き
(4.10) す な わ ち,式(4.2)を
意 味 し,エ
ネ ル ギ ー が連 続 的 な値 を と る と き は
(4.11) す な わ ち,式(4.7)を
意 味 す る.式(4.9)の
積 分 は ス チ ェ ル チ ェ ス(Stieltjes)積
分
で あ る(補 参 照).
量 子 力 学 に お い て,Hを
ハ ミル トニ ア ン,Eiと|i>を そ の 固 有 値 と固 有 ベ ク トル
とす れ ば
(4.12) と な る.し
たが って,分
配 関 数Zは
行 列 の 対 角 和trを 用 い て
(4.13) と書 くこ とが で き る.演 算 子
(4.14) を密 度 行 列 とい い,
(4.15) を 規 格 化 さ れ た 密 度 行 列 と い う. 補 ス チ ェ ル チ ェ ス(Stieltjes)積 区 間[a,b] に お い てΨ(x)を [a,b]を
分
単 調 増 加 関 数 と し,被
小 区 間 ωi=[xi1,xi](i=1,…,n,a=x0,b=xn)に
∈ ωiを と り,和
積 分 関 数f(x)を
有 界 と す る.
分 割 し て 任 意 のξi
(4.16) を つ く る.こ
こ でΔ ≡max(xi−xi-1),i=1,2…nと
く してΔ →0と
す る.分 割 数 を 限 りな く大 き
し た と きsΔ の 極 限 が 存 在 す る な ら ば,こ
れ を ス チ ェル チ ェス の積
分 といい
(4.17) と書 く.積 分 の上 限 と下 限 はxの (1) Ψ(x)=x
値 を入 れ る.2,3の
な ら ば リ ー マ ン(Riemann)積
特 別 な 場合 と して
分 に 帰 着 し,
(2) Ψ(x) が微 分 可 能 な らば
(3) {xn}が 与 え ら れ て い る と きΨ(x)=n(xn-1〓x<xn)の
階 段 関 数 な らば
と な る.
問4.1
カ ノ ニ カ ル 集 合 を 考 え よ う.各
系 は 温 度Tの
熱 浴 に 接 し て い て,エ
ル ギ ー を 相 互 の 間 お よ び 熱 浴 と 交 換 し て い る.エ ネ ル ギ ーEを がexp(−
βE)に
比 例 す る こ と を 示 せ(式(4.1)).
方 針 温 度Tの
熱 浴 に 接 触 す る二 つ の 系Aお
aに あ りエ ネ ル ギ ーEaを もつ 確 率 をf(Eb)と ぞ れ 状 態aとbに ル ギ ーEabはEaとEbの
も つ 確 率 をf(Ea),Bが
す る.AとBを
もつ 系 の 存 在 確 率
よ びBが
あ る と す る.Aが
状 態bに
あ りエ ネ ル ギ ーEbを
合 わ せ て 一 つ の 系 と み た と き,AとBが
あ る と き の エ ネ ル ギ ー をEab,そ 和 で あ り,確
の 確 率 をf(Eab)と
率f(Eab)はf(Ea)とf(Eb)の
ネ
状 態
それ
す る.エ
ネ
積 と な る.
(1) (2) 式(1)の 条 件 の も とに 関 数 方 程 式(2)を 解 けば よ い.
解 式(2)の 両 辺 をEaで
と な る か ら,こ
れ を 式(2)で
微分 す ると
割 り
(3) 同様 に (4) で あ る.し
た が っ て,式(3)と
式(4)よ
り
(5) を 得 る.式(5)がEa, け れ ば な ら な い.こ
Ebの
値 に か か わ ら ず 成 立 す る た め に は,こ
の比 は定 数 で な
の 定 数 を − β と お く.
(6) 式(6)を
解 いて
(7) す な わ ち,系 が エ ネ ル ギ ーEを
と る確 率 はe-βEに 比 例 す る.こ れ を ボル ツ マ ン
分 布 ま た は カ ノ ニ カ ル 分 布(正 準 分 布)と い う. 注1 二 つ の 系 が 平 衡 にあ れ ば温 度 が 等 しい.本 問 の 結 果 に よ り,平 衡 に あ る二 つ の 系 は β が 等 しい か ら,β は温 度 に 関 す る量 で あ るこ とが 想 像 され る.β=1/kT に な る こ と を後 に導 く(問4.4の 式(8)). 注2 グ ラ ン ドカ ノニ カ ル 分 布 の場 合.二 つ の 系A,Bが
熱 粒 子 浴 に 接 して い て
エ ネ ル ギ ー お よび 粒 子 数 を変 化 し う る.こ の 場 合 も本 問 と同 様 に,エ E,粒
子 数Nを
ネル ギ ー
もつ 系 の 存 在 確 率f(E,N)が
で あ る こ と を 導 く こ と が で き る.後
に β=1/kT,α=−
μ/kT(k:ボ
ル ツ マ ン定
数,μ
:化 学 ポ テ ン シ ャ ル)で あ る こ と が 示 さ れ る(問4.5の
問 4.2 温 度Tを
式(6)).
もつ 外 界(熱 浴)と 接 し て い る 系 が あ る.系
の 平 均 エ ネ ル ギー
を 〈E〉 とす る と
(1) と な る こ と を示 せ. 解 分 配 関 数Zの
対 数 を と り,そ れ を β で微 分 す る と
(2) と な る.エ ネ ル ギ ー がEiを
と る確 率 はe-βEiに比 例 す る か ら式(2)は ま さに この 系
の 平 均 エ ネ ル ギ ー で あ る. 注 第3章
で議 論 した よ うに古 典 統 計 力学 で は エ ネル ギー(一 般 に状 態)は 連 続 し
た 値 を とる.自 由 度fの
系 にお け る位 相 空 間 の 体 積 をhf(hは
プ ラ ン クの 定 数)で
割 っ た もの が 量 子 力 学 に お け る一 つ の 状 態 に 対 応 す る と考 え られ る.し た が って, 古 典 統 計 力 学 に お け る分 配 関 数 は
(3) と書 け る.考
え られ る とい う こ と は,そ
う考 え る こ とに よ っ て 古 典 統 計 力 学 の 結
果 が 漸 近 的 に 量 子 統 計 力 学 の 結 果 と一 致 す るか らで あ る(問5.2参
問 4.3 系 の ハ ミ ル トニ ア ン をH(p,q),状 す る.積
態 密 度 をΩ(E),状
照).
態 体 積 をJ(E)と
分(式(4.7))
(1) が位相 空間での積分 (2)
と等 しい こ と を示 せ.こ
こ にfは
系 の 自 由 度 で あ る.
方 針 状 態 体 積J(E)はH(p,q)〓Eを れ,Ω(E)はE<H(p,q)<E+dEを して 定 義 され る.と も にhfを
満 た す 位 相 空 間 の 体 積 と して 定 義 さ 満 た す位 相 空 間 の体 積 がΩ(E)dEで
あ ると
単位 と して い る(これ は古 典 統 計 力 学 の 結 果 が漸 近 的
に量 子 統 計 力 学 の 結 果 と一 致 す る よ う に 定 め た(第3章)).し
た が っ て,
(3) で あ る.式(3)を 解 式(3)を
式(1)に 式(1)に
代 入 し て 部 分 積 分 に よ っ て 変 形 す る.
代 入 す る.
(4) 第1項
は消 え る.第2項
で 積 分 順 序 を変 更 す る と
(5) とな る.dEの
積 分 を 実 行 して
(6) を得 る. 注 分 配 関 数 に 位 相 積 分(phase
integra1)と
い う別 名 が あ る の は,こ
の表 式 に も
とつ く.
問4.4 カ ノ ニ カ ル 分 布 の 分 配 関 数(状 態 和)Zは の間 に
自由 エ ネル ギ ーFと
圧 力p と
(1) お よび
(2) の 関 係 が あ る こ と を 示 せ. 方 針 分 配 関 数Zの
定 義 式(式(4.2))か
らdlogZと
問2.6の
式(14)
(3) との対 応 を つ け る(Uは
内部 エ ネ ル ギ ー).
解 カ ノ ニ カ ル 分 布 の分 配 関 数 は
で あ るか ら,こ れ の対 数 の 全 微 分 を求 め る と
(4) (5) と な る.e-βEiが 状 態iの
現 れ る確 率 で あ る か ら,ΣEie-βEi/Ee-βEiはEiの
で あ り,Σ(∂Ei/∂V)e-βEi/Σe-βEiは
∂Ei/∂Vの
平均値
平 均 値 で あ る.こ の 平 均 を< >で
示 す と
(6) と 書 け る.<E>は
熱 力 学 に お け る 内 部 エ ネ ル ギ ーUで
系(気 体)の 圧 力 がpで ギ ー は 増 加 し,そ ∂U/∂V=−pで
あ る と き,体 積VをV−dVま
の 増 加 分 δUは
あ る.こ
れ を 式(6)に
あ る. で 圧 縮 す れ ば 内 部 エ ネル
δU=−pdVで
あ る.ゆ
え に〈∂E/∂V〉=
代入 し
(7) を得 る.式(7)を 熱 力学 の 関 係 式(3)と 比 較 す る と,Fが 対 温 度 に反 比 例 す る量 で あ る こ とが わ か る.こ
−logZに
比 例 し,β は絶
こで 比 例 定 数 を1/kと
して
(8)
とお くと
(9) とな る. 注 系 の エ ネ ル ギ ー が 系 の 粒 子 数Nに
も依 存 す る と き,式(3)は
(10) と な る(問2.6の
式(14)参
照).式(5)は
この とき
(11) と な り,〈 ∂E/∂N〉 が 化 学 ポ テ ン シ ャ ル μ と な る(式(2.8)参
問4.5 Z(β,V,N)と
粒 子 数Nで
温 度 がT(β=1/kT),体
す る.ZNの
積Vの
照).
系 の 分 配 関 数 をZN=
母 関 数 をΞ と す る.
(1) x=e-α
とお くと
(2) Ξ は大 分 配 関 数(大 きな状 態 和)で あ る.大 分 配 関 数 の 対 数 お よび そ の微 分 係 数 の 物 理 的 意 味 を述 べ よ. 方 針 dlogΞ
をつ く り各 項 の 意 味 を考 え る.Ξ の 定 義 式(2)か ら出 発 す る.
解 全微 分dlogΞ
は そ の 定 義 式 に従 っ て
(3)
e-βEi-αNは 粒 子 数 がNで
エ ネ ル ギ ー がEiで
あ る確 率 で あ る.こ の確 率 に よ る平
均 を《…》で示 す と
(4) 式(4)を
熱 力 学 に お け る ク ラ ー マ ー ス 関 数q(問2.6の
式(17)参
照)の 微 分 関 係 式
(5) と 比 較 す る こ と に よ り,
(6) (7) (8) で あ る こ と が わ か る.α
と な り,初
問4.6
をΞ の 定 義 式(2)に
め に 定 義 し た 式(4.5)に
代入す ると
一 致 す る.
量 子 力 学 的 体 系 に お い て,状 態nの
系 が 量 子 状 態nに
エ ネ ル ギ ー をEnと
す る.pnを そ の
存 在 す る確 率 とす る と き,系 の エ ン トロ ピーSは (1)
で 与 え ら れ る こ と を 証 明 せ よ. 方 針 F=−klogZ=E−TSを
用 い て 式(1)の
右 辺 が エ ン トロ ピ ー に 等 しい こ
と を い う. 解 分 配 関 数 をZと
す る と,
(2)
(3) で あ る.こ
れ を 式(1)に
代 入 して
式(1)の
右 辺
(4)
と な り,F=E−TSの
定 義 に 合 致 す る.
注 量 子 統 計 力学 の 記 法 を 用 い れ ば ρ を密 度 行 列,ρ
を規 格 化 した 密 度 行 列 と
して
(5) (6) と な る.式(4.11)と
式(4.12)を
参 照 の こ と.
問 4.7 古 典 力 学 的 体 系 に お い て,系 が γ 空 間 の1点(q1,…, qf,p1,…,pf)の りの 微 小 空 間dq1…dqf
dp1…dpfの
まわ
中 に 存 在 す る確 率 を
(1) で 表 す こ と に す る.こ
の と き エ ン トロ ピ ーSは
(2) で 与 え ら れ る こ と を 示 せ.た
だ し,〓
解 カ ノ ニ カ ル 分 布 で は,確率
で あ る.
ρΓ dΓはexp(−
βH(q,p))に
比 例 す る.し
たが
っ て,
(3)
が 成 立 す る.こ れ は〓 一 方 ,分 配 関 数 は
と規 格 化 され て い る.
(4) で 与 え られ る. 式(3)を 式(2)の 左 辺 に代 入 して 式(2)の
左 辺
(5)
を 得 る.こ
れ は ま さ に エ ン トロ ピ ーSに
ほ か な ら な い.
問 4.8 カ ノ ニ カ ル 分 布 に お け る エ ネ ル ギ ー の ゆ ら ぎ 〈(ΔE)2〉 と,グ ラ ン ドカ ノ ニ カ ル 分 布 に お け る 粒 子 数 の ゆ ら ぎ《(ΔN)2》 を 求 め,〈(ΔE)2〉1/2/〈E〉=O(1/√N) と《(ΔN)2》1/2/《N》=O(1/√N)で
あ る こ と を 示 せ.
方 針 〈(ΔE)2〉と《(ΔN)2》をそ れ ぞ れ につ いて 示 量 変 数 と示 強 変 数 を用 い て表 す こ とに よ り,粒 子 数N依 解 状 態 和Zは
存 性 を調 べ よ.
定 義 よ り〓
で あ る.こ れ か らエ ネ ル ギ ー とそ の ゆ ら ぎ
は そ れ ぞ れ,
(1) (2) と な る.と
こ ろ で 式(2)は
(3) と して 比 熱CVを か らNに
用 い て 表 され る.エ ネ ル ギーEと
比 例 して 大 き くな る.し
比 熱CVは
そ れ ぞれ 示 量 変 数 だ
たが っ て, (4)
が 示 さ れ た.
同様 に大 分 配 関 数〓
を用 い て,粒 子 数 の期 待値 とその ゆ らぎ を表
現すると
(5)
(6) と な る.こ こ で α=−μ/kTで
あ り,温 度 と体 積 を 一 定 に 保 ち 微 分 す る こ と に 注 意
せ よ. 一 方
,問4.5の
式(6)よ
り,kTlogΞ=pVを
用 い る と
(7) と表 せ る.式(6)と
式(7)よ
り粒 子 数 の ゆ ら ぎ は
(8) と な る. 同 様 に し て
(9) を 得 る.た
だ し最 後 の 等 号 は 問2.7の
式(5)
(10) を 用 い た.式(10)を
用 い て 式(8)も
(11) と 書 き な お し て お こ う. 式(11)を ま,粒
等 温 圧 縮 率 κT=−(∂V/∂p)T/V(問2.8)で
子 数Nはp,T,Vの
表 す こ と を 考 え る.い
関 数 で あ り 示 量 変 数 で あ る か ら,N=Vf(p,T)と
い う 形 に 書 け る は ず で あ る .つ ま りN/VはpとTだ
け の 関 数 に な っ て い る.し
た が っ て,
(12) が 成 り立 つ.式(12)の
左 辺 は 式(10)を
考 慮 して
(13) と書 き表 せ,式(12)の
右 辺は
(14) と な る.こ
れ ら を用 い て
(15) を得 る.こ
こで 等 温 圧 縮率 κTは
(16) で あ り,V/NはpとTだ
け の 関 数 で あ るか ら
(17) が 成 立 す る こ と に 注 意 せ よ. 以 上 よ り,等
温 圧 縮 率 κTはO(1)で
あ る か ら,
(18) が 結 論 され る. 注 こ こで 示 した こ とは,CVや
κTが 有 限 な値 を もつ と き に は成 立 し,ゆ ら ぎ
は小 さな値 とな る が,CVや
κTが 発 散 して い る よ うな特 別 な状 況 下 で は1/√Nの
係 数 が発 散 す る た め,ゆ ら ぎが 非 常 に大 き くな る.問2.11で ール ス気 体 の 場 合 を考 え る と,臨 界 点(p=pc,V=Vc)で れ は ∂p/∂V→0に
扱 っ た フ ァ ンデ ル ワ
は κTが 無 限 大 とな る.こ
な る こ とに起 因 して い る.こ の 点 で は式(12)の 右 辺 は 発 散 し,
したが っ て ゆ ら ぎが 無 限 大 とな る.こ の ゆ ら ぎが 無 限大 とな る こ と は臨 界 点 に お いて の 普 遍 的 な特 徴 で,そ の 結 果 さ ま ざ まな興 味 深 い物 理現 象 が 観 測 さ れ る.た と えば 水 の 臨 界 点 で は,密 度 の ゆ らぎが 非 常 に 大 き くな る こ と に よ り光 を強 く散 乱 させ,い
わ ゆ る光 の 臨 界 散 乱 とい う現 象 が現 れ る.
5 第
カ ノニカル集合の応用
本 章 で は,相 互 作 用 の な い 系 に対 しカ ノ ニ カ ル 分 布 の 方法 を具 体 的 に適 用 す る. 相 互 作 用 の な い 古 典 系 で は,全 系 の 分 配 関 数ZNは1粒 い てZN=Z1Nと
な る こ とが 問5.1で
子の 「 分 配 関 数 」Z1を 用
示 さ れ る.た だ し,第3章
で も触 れ た 「ギブ
ス の補 正 」 を考 え な くて は な らな い.古 典 系 の 場 合,各 粒 子 に個 性 が あ り区 別 で き るか 否 か が 重 要 で,そ
の 結 果 と して エ ン トロ ピー な どが 示 量 変 数 と して 正 し く
振 舞 うか ど うか が 問 題 とな る.ギ ブ ス の補 正 を 行 いZN=Z1N/N!と く行 わ れ て い る.多
くの場 合,こ
す るこ ともよ
れ で 物 理 量 が 示 量 変数 とな っ て くれ る が,例 外
も存 在 す る.ま た 熱 力学 第3法 則 は み た さ れ な い.結 論 をい え ば,古 典 論 で は導 び か れ る物 理 量 に熱 力学 に 反 す る矛 盾 が 含 まれ て し まい,量 子 論 的 に正 し く扱 わ な い と解 決 しな い.ゆ
え に本 書 に お い て,古 典 論 で粒 子 間 に相 互 作 用 の な い 系 の
分 配 関 数 を 求 め る場 合 に はZN=Z1Nを 第3章
に お い て,N個
V,E)と,そ 問3.2を
用 い る こ とに す る.
の粒 子 系 が エ ネ ル ギ ーEに
の 積 分 で あ る状 態 体 積J(N,V,E)を
参 照).こ れ に対 して,1個
あ る と きの 状 態 密 度Ω(N,
定 義 した(第3章
の 解 説 部 お よび
の粒 子 が エ ネ ル ギ ー ε を もつ と きの状 態 密 度
をφ(ε)で定 義 す る.同 じ く1個 の 粒 子 につ い て の 状 態 体 積 をj(ε)と す る.当 然 の こ とで は あ るが 前 者 でN=1と
す れ ば,E=ε,Ω(1,V,E)=φ(E),J(1,V,E)=
j(E)と な る.本 章 お よび 次 章 で扱 わ れ る よ う な粒 子 間 に相 互 作 用 の な い 系 に お い て は1粒 子 当 た りの状 態 密 度φ(ε)や 状 態 体 積j(ε)を 用 い る. 問5.1 古 典 統 計 力学 にお い て相 互 作 用 を して い ない 同 一 種 の 粒 子N個
を考 え
章
る.全
系 の ハ ミル トニ アンHNは1個
の 粒 子 の そ れH1の
和 で 表 され る.
(1) 粒 子1個
の 分 配 関 数 と して
(2) を 定 義 し よ う.全 系 の 分 配 関 数ZNをZ1を
用 い て表 せ .
解 ZNを 定 義 どお り書 け ば
(3) で あ る.こ
れ に 式(1)を
代 入 す る こ とに よ り
(4) を 得 る. こ れ か ら全 系 の エ ネ ル ギ ーENは,1個
の 系 の エ ネ ルギ ーE1を
用 いて
(5) とな り,示 量 変 数 に な っ て い る. 一 般 の 多 体 系 の 場 合 に は 式(5)は 成 り立 た な い.全 系 の ハ ミル トニ ア ン に は粒 子 間 の 相 互 作 用 が 含 まれ る の で,式(1)の
よ う に分 解 で きな い か ら で あ る.
問5.2 1個 の 自 由粒 子 の 系 につ い て,古 典 力 学 で 求 め た 状 態 体 積jc(E)と 量 子 力学 で 求 め た状 態 体 積jQ(E)はEが し,系 は 体 積V=l3の
大 きい と き漸 近 的 に等 しい こ とを示 せ .た だ
立 方 体 内 に 閉 じ こめ られ て い る とす る.
解 古 典 力学 に お け る この 系 の ハ ミル トニ ア ンは
(1)
で あ る.H=E以
下 の 位 相 空 間 の 体 積jc(E)は 運 動 量 空 間 に お け る半径√2mEの
球 と,実 空 間 に お け る体 積Vの
部 分 との積 空 間 で あ る.し た が っ て,
(2) と な る.も
ち ろ ん こ れ は 問3.2の
式(4)で
求 め た 状 態 体 積(N=1と
す る)で あ る.
量 子 力 学 的 に は シ ユ レ ー デ イ ン ガ ー 方 程 式 か ら 出 発 す る.
(3) この固有関数 は境 界条件
(4) の も と で,定
在波
(5)
で あ り,固
有 エ ネル ギー は
(6) と な る.(n1,n2,n3)空
間 を 考 え る と,こ
の3次
元 格 子 空 間 の 第1象
0)の 格 子 点 の 一 つ 一 つ が 各 固 有 状 態 に 対 応 す る.ゆ 有 状 態 の 数 はEが
限(n1,n2,n3>
え に エ ネ ル ギ ー がE以
下の 固
十 分 大 き い と き に半 径 が
(7) で与 え られ る球 の 体 積 の1/8で
あ る.す な わ ち,
(8) と な り,こ れ は 古 典 統 計 力 学 的 に 求 め たjc(E)と 一 致 す る.
ま た状 態 密 度φ(E)はj(E)を
微 分 して
(9) と な る. 注 箱 に 入 っ た 境 界 条 件 の 代 わ り に 周 期 的 境 界 条 件 を 用 い て も よ い.こ 式(5)の
代 わ り にexp(2nπx/l),n=0,±1,±2,…
の とき
等 が 現 れ る.図5.1の(a),(b)
を 参 照 せ よ.
(a) 固定 壁境 界 条件 の場 合
(b) 周 期的 境 界条 件の 場 合
図5.1 量子 力学 に おけ る状態 体積 と古典 力学 に おけ る状態 体 積の 対応(図(b)の 格 子間 隔 は図(a)の2倍)
問5.3 NkTを
カ ノニ カル 分 布 の分 配 関 数ZNよ
導 け.ま た 定 積 比 熱CVと
解 分 配 関 数ZNは
問5.1よ
り,古 典 理 想 気 体 の 状 態 方程 式pV=
定圧 比 熱Cpを
求 め よ.
り
(1) と し て 求 め ら れ る.こ
こ にH(x,p)は1粒
子 の ハ ミル トニ ア ン で
(2) で あ る.dxの
積 分 は 系 の 占 め る 体 積Vを
与 え る.dp=dpxdpydpzの
積 分 より
(3) を 得 る.さ
て
よ り
(4) を 得 る.エ
ネ ル ギ ーEは
(5) で あ る. 次 に 定積 比 熱CVお
よび 定 圧 比 熱Cpを
考 え る.熱 力 学 よ り
(6) を 用 い,式(4)と
式(5)を
用 い て,
(7) お よび
(8) を 得 る.
補 式(3)の 分 配 関 数 か らエ ン トロ ピーSを
求 め ると
(9) よ り
(10) と な る.こ の 解 はNklogVの た して い な い.分
た め エ ン トロ ピー が 示 量 変 数 で あ る と い う 要 請 を 満
配 関 数 と し て 式(1)の
代 わ り に そ れ をN!で
割 っ た もの
(11) を 用 い る と,logN!〓NlogN−Nと
して
(12) と な り示 量 性 の 要 請 は 満 た す. 式(12)を
認 め れ ば,比
熱 は エ ン トロ ピー よ り
(13) と,CpはV=NkT/p
を 式(12)に
代 入 して
(14) と た だ ち に 得 ら れ る. 注 な お 式(12)が
熱 力 学 の 第3法
則 を 満 た さ な い こ と に つ い て は,問3.2の
補
を み よ.
問 5.4 古 典 理 想 気 体 の 断 熱 圧 縮率 κTは,そ
κSと 等 温 圧 縮 率 κTを 求 め よ.た だ し,κSと
れぞれ
(1) と定 義 され る. 解 古 典 理 想 気 体 の圧 力pと エ ン トロ ピーSは,そ
れぞれ
(2)
(3) で あ る(問5.3の
式(4)と
式(12)).こ
の エ ン トロ ピー は ギ ブ ス の補 正 を行 った もの
で あ る. よ っ て体 積 は
(4) と な る か ら,こ
れ を 圧 力pで
微 分 し,κsと
κTが 求 め られ る.た
トロ ピ ー 一 定 の も と で の 微 分 で あ る(す な わ ち,温
度Tはpの
だ し,κsは
エ ン
関 数 と な る)の で
(5) 式(3)に
式(4)を
代 入 し,エ
ン トロ ピ ー の 全 微 分 を 求 め る と
(6) よ っ て,S一
定 の条 件 よ り
(7) を 得 る.し
た が っ て,式(5)に
式(4)と
式(7)を
使 って
(8) を 得 る.一
方,等
温 圧 縮 率 κTで は 温 度 一 定 で あ る か ら,式(4)を
その ま ま微 分 し
て,
(9) を 得 る. 注 一 般 に 比 熱CVとCpに
つい て
(10) の 関係 が あ る(問2 .8参 照).古 典 理 想 気 体 の 場 合 も
(11) と 式(8)と
式(9)を
用 い て,式(10)が
成 立 し て い る こ と を 確 か め ら れ る.
問5.5 調 和 振 動 子 の 状 態 密 度φ(E)お
よび状 態体 積j(E)を
求 め よ.古 典 統 計 の
場 合 お よび 量 子 統 計 の場 合 に分 けて 答 え よ. 解 古 典 統 計 の 場 合.ハ
ミル トニ ア ンは
(1) で 与 え られ る.H=Eを q=√2E/mω2で
与 えた と きの エ ネ ル ギ ー面 は,軸 の 長 さがp=√2mEと
あ る楕 円 で あ る.状 態 体 積 は この 楕 円 の 面 積 をhで 割 っ た もの で
与 え られ るか ら
(2) と な り,状 態 密 度φcは そ の 微 分
(3) で あ る.
量 子 統 計 の場 合.シ
ュ レ ー デ ィ ンガ ー 方程 式
(4) の固有値 は (5) で あ る.エ ネ ル ギ ー がE以
下 の 固 有 状 態 の 数jQ(E)は
(6) で 与 え られ る 階 段 関 数 で あ る.「x」 はxを
超 え な い 最 大 の 整 数 を 示 し,ガ ウ ス(Gauss)
の 記 号 と い う.エ ネ ル ギ ー が 大 き い と き,零 点 エ ネ ル ギ ー1/2hωを 無 視 す る とjQ(E) 〓
E/hω
と な り古 典 統 計 の 結 果 と一 致 す る.
問5.6 1次 元 の 調 和 振 動 子 系 を古 典 統 計 力 学 で 扱 い,分 配 関 数Z,平 ギーE,比
熱Cを
均エ ネル
求 め よ.
解 状 態 密 度 は前 問 で す で に求 め て い るの で(問5.5の
式(3)),分
配関数 は
(1) と求 ま り,こ
れか ら
(2) (3) を得 る.N個 N倍
とな る.
問5.7 数,エ
の調 和 振 動 子 の 系 の エ ネ ル ギ ー と比 熱 は,そ れ ぞ れ 式(2)と 式(3)の
1次 元 調 和 振 動 子 を量 子 統 計 力学 で 扱 い,こ の 系 の 状 態 体 積,分
配関
ネル ギ ー,比 熱 を求 め よ.
解 量 子 力 学 的 調 和 振 動 子 の シ ュ レー デ ィン ガ ー 方程 式 は
(1) で あ り,こ の 固 有 値 は
(2) で あ る.し
た が っ て,分
配 関 数 は 次 の よ う に 求 ま る.
(3) これ か らエ ネ ル ギ ー は
(4) と な り,比
熱 は
(5) と な る.N個
の 振 動 子 の 系 のE,Cは
式(4),式(5)のN倍
で あ る.
注 高 温 の 場 合(β →0),古 典 力 学 に近 づ い た と き(h→0),低 振 動 数 の と き(ω→ 0)は いず れ も古 典 的 結 果C=kに
近 づ く.図5.2に
調 和 振 動 子 の 比 熱 の 古 典 論 と量
子論 の 比 較 を示 す.
図5.2
調 和 振 動 子 の 比 熱,Tvib=hω/k
別 解 古 典 論 で の 取 扱 い と同 じ よ う に状 態 密 度 か ら分 配 関 数 を求 め て もよ い. 問5.5の
式(6)で 量 子 的 に取 り扱 っ た場 合 の状 態 体 積 が 与 え られ て い る か ら,
(6) こ こ
で
(7) し た が っ て,式(6)は
部分積分 に よ り
(8) と な る.第1項
は1/2で
あ る.
さ て[…]を 注 意 し て 取 り扱 わ ね ば な ら な い.図5.3の 義 し よ う.す
よ う に εl(l=1,2,…
)を 定
な わ ち,
(9)
図5.3
と す る.こ
の εlが
(10) を 満 た す こ とは 明 らか で あ ろ う.図5.3の
よ うに積 分 区 間 を分 割 した の だ か ら,
式(8)は
(11) とな る.各 項 を積 分 して
(12) こ れ に εl(式(9))を
代 入 して,
(13)
を得 る.も ち ろ ん 式(3)と 一 致 す る. さて どち らの 解 き方 が 簡 単 か とい えば もち ろ ん 前 者 の 式(3)で あ ろ う.わ ざわ ざ カ ノ ニ カル 集 合 を導 入 した の は,微 視 的 状 態 密 度φ が 求 ま ち な くて も分 配 関 数 が 求 ま る とい う理 由 に よ る.
問5.8
1次 元 調 和 振 動 子 を古 典 統 計 力 学 で 扱 い,そ の座 標 の 平 均 位 置 か らの ず
れ の 自乗 の 期 待 値 を求 め よ.ま た運 動 量 の 平 均 値 か らの ず れ の 自乗 は ど うな る か. 座 標 の 平 均 位 置 か らの ず れ の 自乗 の期 待 値,運
動 量 の 平均 値 か らの ず れ の 自乗 の
期 待 値 は,そ れ ぞ れ
(1) で 与 え られ る. 解 まず 座 標 の 方 を求 め よ う.定 義 に従 っ て,
(2) を 得 る.同
様 に して 〈q 〉=0で
あ る か ら,
(3) とな る. 運 動 量 に つ い て も同 様 に
(4) で あ るか ら
(5) を 得 る.ま
た 式(2)と
式(4)か
ら
と い う関 係 が あ る こ とが わ か る.す な わ ち,運 動 エ ネ ル ギ ー お よび 位 置 エ ネ ル ギ ー の 平 均 が そ れ ぞ れkT/2と る.1自
な っ て い る.こ れ は エ ネ ル ギ ー 等 分 配 則 の 一例 で あ
由度 当 た りの エ ネル ギ ー はkT/2で,全
エ ネル ギー はその和 で与 え られ
る.
問 5.9 N個
の 独 立 な 粒 子 よ り な る 系 が あ る.お の お の の 粒 子 は ε1と ε2の二 つ
の 準 位 し か と り え な い と し,ε1< ε2とす る.こ の 系 の 平 均 エ ネ ル ギ ー と比 熱 を 温 度 の 関 係 と し て 求 め よ.
解 分 配関数ZNは (1) (2) と 求 ま る.し
た が っ て,内
部 エ ネ ル ギ ーEは
(3) で あ る.T=0で
はE=Nε1す
はE=N(ε1+ε2)/2,す
な わ ち,す
べ て の 粒 子 は 最 低 準 位 に あ る.T=∞
な わ ち 粒 子 は 両 準 位 に 一 様 に 分 布 す る.比
で
熱 は
(4) で あ る.エ
ネ ル ギ ー と 比 熱 を 図5.4に
示 す.こ
型 比 熱 と い う.式(4)は1/x=2kT/(ε2− 0.4392を
問5.10
の 比 熱 を シ ョ ッ トキ ー(Schottky)
ε1)〓0.8335に
お い て 極 大 値Cmax/Nk〓
も つ.
ス ピ ン1/2の
粒 子 が 磁 場Hの
中 に お か れ る と,ゼ ー マ ン(Zeeman)効
果 に よ っ て そ の エ ネ ル ギ ー 準 位 は −μHと+μHの
二 つ に 分 か れ,そ れ ぞ れ 磁 場 の
図5.4
エ ネ ル ギ ー と 比 熱(ε1=0.1,ε2=1.0の
場 合)
方 向 に磁 気 モ ー メ ン トμ また は− μ を もつ.こ の よ う な粒 子N個 様 な磁 場 の 中 に お か れ 温 度Tに ル ギーE,エ
ン トロ ピーS,比
か らな る系 が一
保 た れ て い る場 合,自 由 エ ネ ル ギ ーF,内 熱C,平
均 の磁 気 モ ー メ ン トMを
部エ ネ
求 め よ.
解 分 配 関数Zは
(1) で あ る か ら 以 下 自 由 エ ネ ル ギ ーF,内 C,平
均 の 磁 気 モ ー メ ン トMは,そ
部 エ ネ ル ギ ーE,エ
ン ト ロ ピ ーS,比
熱
れぞれ
(2) (3) (4) (5) (6) と求 め ら れ る.エ H>0,T→0と
ネ ル ギ ー,比 し てSを
熱,エ
ン トロ ピ ー を 図5.5に
展 開す ると
示 す.
図5.5
相 互 作 用 の な い2ス 比 熱,エ
ピ ン 系 の エ ネ ル ギ ー,
ン トロ ピ ー
(7) と な る.よ
っ てH≠0の
と き,T→0でS→0に,T→
∞ でS→Nklog2に
近
づ く. 注 H=0で
は,Tの
い か ん に か か わ ら ずS=Nklog2と
な っ てT→0で0に
な ら な い.現 実 の 系 で は,粒 子 間 の 相 互 作 用 な ど に よ り縮 退 が と け て 熱 力 学 第3法 則 が 満 た さ れ て い る と考 え ら れ て い る. 補 本 問 の 結 果 よ り,エ
ン トロ ピ ー を 磁 場Hを
図5.6
断 熱 消磁
一 定 と してTの
関 数 と して 書
くと,Hの
大 き い値H1とHの
は じめ 系 が状 態A(磁
小 さ い値H2に
場H1,温
対 して図5.6の
よ う に な る.
度T1)に あ っ た と しよ う.外 界 と平 衡 状 態 を保 ち
な が ら,す な わ ち 温度 を 一 定 の ま まで磁 場 を強 く して い く と,系 は等 温 過程ABを 通 り状 態Bに
達 す る.次 に外 界 との接 触 を断 ち磁 場 を弱 く して い くと,断 熱 過 程
δQ=0,δQ=TdSよ
りdS=0な
法 に よ り系 の 温 度 をT1か 呼 ば れ,1Kよ
問 5.11 ε,ε,2ε
の で,系 は 過 程BCを
らT2へ
通 りCに
達 す る.こ の 方
と下 げ る こ とが で き る.こ の 方法 は断 熱 消磁 と
りず っ と低 い温 度 をつ く る有 力 な 方 法 で あ る.
4状 態 を と り う る 系 を 考 え る.各 とす る.こ
状 態 の エ ネ ル ギ ー レ ベ ル をE=0,
の 系 の 比 熱 を 求 め よ.
解 分 配 関 数 は
(1) し た が っ て,エ
ネ ル ギ ーE,比
熱Cは
(2) (3) す な わ ち,
(4) で あ る. 注 こ の 系 の 比 熱 は,問5.9の
問5.12
比 熱 の ち ょ う ど2倍
エ ネ ル ギ ー レ ベ ル が0,E1,E2(0<E1<E2)で
め よ.E1≪E2の
と な っ て い る.
あ る3準
位 系 の 比 熱 を求
場 合 の 結 果 を 考 察 せ よ.
解 分 配 関 数Zは
(1) で あ る か ら,エ
ネ ル ギ ーEは
(2) で あ り,比 熱Cは
(3) と な る.こ
E1≪E2の
こ でx=βE1,y=βE2と と き はe-x≫e-yと
お い た. して
(4) とな る.こ れ は2準 位 系 の比 熱 で あ る.
図5.7
実 線 はE2=10E1の 破 線 は 式(5)を
図5.7に
と き の 比 熱(式(3))を
エ ネ ル ギ ー が0,E1,E2=10E1で
破 線 は エ ネ ル ギ ー が0とE1お
表 し,
表 す.
よ び0と10E1と
あ る3準
位 系 の 式(3)の 比 熱 を 示 す.
で あ る2準
位 系 の 比 熱(式(4))を
二
つ重 ねた関数
(5) を 横 軸1/xに
対 して プ ロ ッ ト し た も の で あ る.式(3)と
式(5)が
よ くあ っ て い る の
は興 味 深 い.
問5.13 二 つ の 質 点 の 重 さの な い棒 で つ な い だ もの を剛 回 転 子(rigid rotator) と い う.こ れ は二 原 子 分 子 の 回 転 部 分 の模 型 で あ る.古 典 統 計 力 学 を 用 い て,剛 回 転 子 の分 配 関数,平
均 エ ネル ギ ー,比 熱 を求 め よ.
方 針 重 心 を 原 点 に選 び 極 座 標 を用 い る.Iを
重 心 に対 す る慣 性 能 率 とす る と,
ハ ミル トニ ア ンは
(1) で 与 え ら れ る(問 付.2参 解 exp(−
βH)を
照).e-βHを
積 分 す る.
全 立 体 角 に つ い て 積 分 し た も の をZ0と
す る と
(2) 正 しい分 配 関 数ZはZ0を
系 の 対 称 数 σ で 割 らな け れ ば な らな い(注 参 照).
(3) エ ネ ル ギ ーErotお
よ び 比 熱Crotは
それぞれ
(4) (5) で あ る. 注 分 子 が 異 な っ て い る 原 子 か ら 成 り立 っ て い る と き(異 核 分 子,heteronuclear molecule)で
は,式(2)は
正 し い 分 配 関 数 を 与 え る が,等
い る と き(等 核 分 子,homonuclear
molecule)で
は,核
し い 原 子 か ら成 り立 っ て の 対 称 性 を考 慮 しな けれ ば
な らな い.異 核 分 子 で は(θ,φ)が 異 な れ ば 異 な る状 態 で あ るが,等
核分 子で は
(θ,φ)と(π − θ,φ+π)は 同 一 の 状 態 で あ る(付 図1参 照).こ の と き式(2)は 同 じ 状 態 を二 度 数 え て い る か ら2で 割 っ て お く必 要 が あ る.全 立 体 角4π の 回転 中,同 じ状 態 の現 れ る数 を σ で 表 し,こ れ を対 称 数 とい う.異 核2原 等 核2原
子 分 子 な ら σ=2で
子 分 子 な ら σ=1,
あ る.古 典 回転 子 の 分 配 関 数ZはZ0/σ
で 与 え られ
る.こ れ もギブ ス の 補 正 の 一 種 で あ る.ま た こ こ で は軸 と垂 直 な 回 転 しか 考 え な か っ た が,全 分 配 関 数 と して は,こ の 回 転 子 の並 進 運 動 や 軸 の ま わ りの 回転 も考 慮 しな くて は な らな い.問5.15の
問5.14 CH4分 解 CH4はC原 る(図5.8).4面
補 を参 照 せ よ.
子 の 対 称 数 はい く らか. 子 を 中心 とす る正4面 体 の 各 頂 点 にH原
体ABCDを
子 の 存 在 す る分 子 で あ
不 変 に す る回 転 は
OAの
まわり の2/3π,4/3π の 回 転:
CA3,CA32
OBの
ま わ りの2/3π,4/3π の 回 転:
CB3,CB32
OCの
まわり の2/3π,4/3π の 回 転:
CC3,CC32
ODの
ま わ りの2/3π,4/3π の 回 転:
ABの
中 点 とCDの
中 点 を 結 ぶ 直 線 の ま わ りの π の 回 転 : CAB-CD
ACの
中 点 とBDの
中 点 を 結 ぶ 直 線 の ま わ りの π の 回 転:
CAC-BD
ADの
中 点 とBCの
中 点 を 結 ぶ 直 線 の ま わ りの π の 回 転:
CAD-BC
E
恒 等: の12個
で あ る.し
注 ABCDを
た が っ て,σ=12で
あ る.
互 い に 入 れ か え る 置 換 は4!=24個
達 し う る も の が12,回 あ る.対
CD3,CD32
あ る.こ の う ち 回 転 だ け で 到
転 と反 転 と を 必 要 と す る も の が12で,前
者 の 数 が対 称 数 で
称 数 と は 分 子 の 対 称 性 を 記 述 す る 点 群 に お け る 回 転 の 数 で あ る.
そ の 他 の 分 子 の 対 称 数 は,た
と え ば,CH3Cl,CH2Cl2,H2CO2,CHCl3な
どで
は そ れ ぞ れ3,2,2,3で
図5.8
あ る.
CH4分
子 の 構 造(A,B,C,Dの
位 置 にH原
子,
Oの 位 置 にC原 子 が存在 す る正 四面 体 であ る.) 問5.15
2原 子分 子 の 回転 の 分 配 関 数 を量 子統 計 力 学 に よ っ て求 め よ.二 つ の
原 子 が 同 じ核 を もっ た 場 合 と異 な っ た核 を もっ た 場 合 を分 け て 考 察 せ よ. 方 針 ハ ミ ル トニ ア ンHは
(1) (2) で あ る.こ
1/mb),r
こ にI=1/2mr2は
は原 子 間 距 離),lは
慣 性 能 率(mは
原 子 の 換算質
量(1/m=1/ma+
角 運 動 量 演 算 子 で あ る.l2の 大 き さはlを 方 位 量 子
数 と して
(3) で あ る(量 子 力 学 演 習 の 問4.3参
照).
式(1)の 固 有 エ ネ ル ギ ー を 用 い て つ くっ た分 配 関 数 をZ0と す る.等 核 分 子,異 核 分 子 の 波 動 関 数 の 対 称 性 を量 子 力 学 的 に考 慮 す る. 解 方 位 量 子 数lが 与 え られ た と き,磁 気 量 子 数mは
の2l+1個
の 値 を と る.し
た が っ て,Hの
固 有値
(4) の そ れ ぞ れ は2l+1重
に縮 退 して い る.し た が っ て,分 配 関 数Z0は
(5) と な る.こ
こで
とお い た. 2原 子 分 子 の 原 子 核 をaとb
とす る.原 子核 に も電 子 と同 様 にス ピ ンの 自 由度 が
あ る.こ れ に よ り縮 退 を生 ず るの で,回 転 の分 配 関 数 は こ れ を 考慮 しな け れ ば な らな い.2原 子 分 子 の 全 波 動 関数 は回 転 波 動 関 数 と核 ス ピ ンの波 動 関 数 の 積 で あ る (量子 力学 演 習 第5章 参 照). 異 核 分 子 の 場 合,核aの
ス ピ ンの 自 由度 を ρa,核bの
す る と,回 転 の 分 配 関 数rn(T)は(添
字nはnuclearの
ス ピン の 自由 度 を ρbと
意 味)は,ス ピ ンの 縮 退 度 が
ρaρbとな るの で
(6) と な る.
等 核2原
子 分 子 の 場 合 は,核 ス ピ ン の 自由 度 を ρ とす る と1/2ρ(ρ −1)個 の
(7) 型 の 反 対 称 核 ス ピ ン波 動 関 数(r,S=1,2,…
ρ)が あ る.また1/2ρ(ρ−1)個
の
(8) 型 の対 称 核 ス ピ ン波 動 関 数 と ρ個 の
(9) 型 の 対 称 核 ス ピ ン波 動 関 数 が 存 在 す る.ゆ え に,対 称 核 ス ピ ン波 動 関 数 の 数 は合
わ せ て1/2ρ(ρ+1)で
あ る.
回 転 の 波 動 関 数 は 球 面 調 和 関 数Ylm(θ,φ)で 照),l=0,2,4,…
表 さ れ(量 子 力 学 演 習 第3章
の と き は 核 の 交 換(θ,φ)→(π
あ り,l=1,3,5,…
− θ,φ+π)に
参
対 して対 称 で
の と き は 核 の 交 換 に 対 し て 反 対 称 で あ る(Y2lm(θ,φ)=Y2lm(π−
θ,φ+π),Y2lm+1(θ,φ)=−Y2lm+1(π−
θ,φ+π)).
核 が フ ェル ミ粒 子 の 場 合(質 量 数 奇 数*1)は 反 対 称 核 ス ピ ン波 動 関 数 と対 称 回 転 波 動 関 数Y2lmの り,全
積 と,対
称 核 ス ピ ン波 動 関 数 と反 対 称 回 転 波 動 関 数Y2lm+1の
体 の 波 動 関 数 が 反 対 称 と な る.ゆ
積 に よ
えに
(10) 核 が ボ ー ズ粒 子 の 場 合(質 量 数 偶 数)に 対 して は,核 の 交 換 に対 して は波 動 関 数 は対 称 と な る か ら
(11) と な る.高
温 の 場 合 に は,式(10)と
式(11)の
中のΣ につ いて
(12) とみ な せ る か ら*2,
(13) (14)
*1 陽 子や 中性 子 は フ ェル ミ粒 子 であ るの で,そ の 奇数 個 か らな る核(質 量 数 奇数)は フ ェル ミ 粒 子 で あ り,偶 数個 か らな る核(質 量 数 偶 数)は ボー ズ粒 子 で あ る. *2 級 数の 和 をオ イ ラー-マ ク ロ ー リンの公 式(問5.16の 式(2))で 求 め る と,積分 とそ の 補 正 に よ り表 す こ とが で きる.Σ
も Σ
も高 温 で は第0近 似 と して同 じ積 分 で近 似 で き る.
に こ こ
と書 け る.
(15) で あ る.式(13),(14)よ
り等 核 分 子 の 場 合 も異 核 分 子 の 場 合 も共 通 に σ を対 称 数
と して
(16) と書 け る.こ れ は,古 典 的 回転 分 配 関 数 が 核 の場 合,対
称 数 で わ られ た こ との 量
子 力学 的 な 証 明 に な って い る. 図5.9に
古 典 力学 的 に 求 め た 剛 回 転 子 の比 熱(問5.13の
式(5))と,量 子 論 的 に 求
め た比 熱 を示 す.低 温 で の 違 い に注 意.
図5.9
2原 子 分 子 の 回 転 比 熱(Trot=h2/2kI)
補 実在 気 体 は量 子 力 学 的 体 型 であ り,こ れ を正 しく扱 お う とす るとtre-β(K+V) (K:運 KとVは
動 エ ネル ギ ー,V:
ポ テ ン シ ャ ル エ ネル ギ ー)を 求 め な け れ ば な らな い.
非 可 換 で あ る か ら,運 動 量 に よ る積 分 と座 標 に よ る積 分 の 分 離 が で
きな い.す な わ ち,e-β(K+V)≠e-βKe-βVであ る.こ の効 果 が 問 題 とな るの は 電 子 ガ ス や 極 低 温 の 場 合 で あ る.こ の 効 果 が 問題 に な らな い もの を古 典 気体 とい う.古 典 気 体 に お い て は運 動 量 積 分 は分 離 さ れ るが,一 般 に は分 子 間 相 互 作 用 が あ っ て 空 間 積 分 が 問 題 とな る.こ の 場 合 を 不 完 全 気 体(imperfect
gas)と い う.分 子 間相
互 作 用 を無 視 して よ い場 合,完
全 気 体(perfect gas)と 呼 ぶ.完 全 気 体 に お い て は
系 の エ ネル ギ ー は,分 子 の並 進 の 運 動 エ ネ ル ギ ー,回 転 の エ ネ ル ギ ー,振 動 の エ ネ ル ギ ー,電 子 的 エ ネ ル ギ ー,核 の エ ネ ル ギー な どの 和 に 分 離 で き る.こ の う ち 並 進 の エ ネ ル ギ ー 以 外 を 内 部 エ ネ ル ギ ー と呼 ぶ.エ るか ら,分 配 関 数 は,並 進 の 分 配 関数,回 の 分 配 関 数,核
ネル ギ ー が 和 の 形 に分 離 で き
転 の 分 配 関 数,振
の 分 配 関 数 そ れ ぞ れ の積 に な る.す
動 の分 配 関 数,電
子
なわち
(17) こ こ にυ0は 電 子 の最 低 状 態 の 縮 退 度,σ は 対 称 数,П ρiは核 ス ピ ンの 自 由度 の 積 で あ る. た と え ば,水
素 分 子(2原
温 で はC振 動,C回 転,C並
子 分 子)の 実 際 の 比 熱Cは,図5.10の
進の 和 で あ る が,温
消 え て ゆ く.低 温 部 で の3/2kTか
よ う に な る.高
度 が 下 が る に つ れ てC振 動,C回 転の 順 に
らの ず れ は 量 子 効 果 に よ る・高 温 部 で は振動 の
非 調 和 性 や 電 子 励 起 な どの 影 響 が 見 られ る.
図5.10
水素 分子 の比 熱
問5.16 2原 子 分 子 の 量 子 統 計 力学 に よ る分 配 関 数 (1) の 高 温 展 開 を求 め よ.た だ し,こ のZ0は
対 称 性 が 考 慮 され て い な い と きの 分 配 関
数 で あ り,Iは
慣 性 能 率,lは
方 針 Z0の
Σ の 中 の 各 項 をf(l)と
式(1)の
方 位 量 子 数 で あ る. 記 す.
和 を オ イ ラ ー-マ ク ロ ー リ ン(Euler‐McLaurin)の
公 式
(2) に よ り 求 め る.Bmは
ベ ル ヌ ー イ(Bernoulli)の
数(問 付3),RNは
古 典 統 計 力 学 に お け る分 配 関 数 が1/τ で あ る か ら,高
剰 余 項 で あ る.
温 展 開 は1/τ(1+a1τ+a2τ2+
…)の 形 に な る は ず で あ る . 解 式(2)の 右 辺 第1項
はf(x)=(2x+1)e-u(x)τ, u(x)=x(x+1)と
して,
(3) で あ る.式(3)は
古 典 統 計 力学 にお け る 結果 に等 し く,式(2)の
第2項
以 降が量子
力学 的補 正 で あ る.
(4) とお くと
(5) と表 せ る.ま
た,
(6) で あ る. g(x)を2重
級 数 に展 開 して
(7) と す る.g(x)のx2kの
係 数 を 求 め る(x2k+1の 係 数 は0で
あ る).
と お い て,
(8) した が っ て,
(9) と な る.f(2m-1)(∞)=0で
あ る か ら,オ
イ ラ ー-マ
ク ロ ー リ ン の 公 式 の 第4項
は,N=∞
と と っ て
第4項 (10) 和 は 図5.11の
白 丸 の 部 分 に つ い て と る.m=p−jと
お い て,pとjに
つ いての和
に置 き換 え て も よい か ら 式(10)
(11)
を 得 る.式(11)のp=1の
て τ0の係数
は1/3と
項 は −1/6τ0を 与 え る.こ れ と1/2f(0)=1/2τ0の
な る.し
項 を加 え
た が っ て,
(12)
(12') と な る. 注 通 常 オ イ ラ ー-マ ク ロー リンの 公 式 は,関 数 の 積 分 が 解析 的 に得 られ な い 場 合 に,こ れ を数 値 計 算 に よ り求 め るた め に用 い る.こ こ で は 逆 に用 い た.式(12)
図5.11 を ム ロ ー ラ ン ド(Mulholland)の
式(10)の
総和
式 と い う.
問 5.17 多 原 子 分 子 の 回 転 分 配 関 数,平 均 エ ネ ル ギ ー,比 熱 を古 典統 計 力 学 的
に求 め よ. 方 針 多 原 子 分 子 を剛 体 とみ な し,そ の 運 動 をオ イ ラ ー の 角 で記 述 す る.問 付 6の 結 果 を 用 い る. 解 慣 性 能 率 をIx,Iy,Izと
す る と,ハ
ミル トニ ア ン は 問 付6の 式(6)よ り
(1) ここに
(2) (3) (4) で あ る. 対 称 数 を考 慮 しな い分 配 関 数Z0は
(5) ヤ コ ビ ア ン は 問 付6の
式(4)のUtを
用 いて
(6) で あ る.ゆ
えに
(7) を得 る.こ れ か らエ ネル ギーEと
比 熱Cは
(8) と な る.
問5.18
一 定 の 双 極 子 モ ー メ ン トμ0を もち,か つ 電 場Eに
比 例 して 電場 に平
行 な誘 導 モ ー メ ン ト αEを もつ分 子 よ りな る気 体 を考 え る.こ の 気 体 の 誘 電 率 を 求 め よ. 方 針 量 子統 計 を用 い て も古 典 統 計 を用 い た と き と同様 の 結 果 が 得 られ るの で, こ こで は古 典 統 計 で 考 え る. 解 分 子 が 電 場 と θの 方 向 をな して い る と き,モ ー メ ン トの 電場 の 方 向 の 成 分 μeは (1) で あ る.α ア ンHは
を 偏 極 度 ま た は 分 極 率(polarizability)と
い う.電
場 に よ る ハ ミル トニ
(2) で あ る か ら,電 場 に よ る分 配 関 数Zはe-βHを
全 立 体 角 で積 分 して
(3)
(3) と な る.こ れ か らモ ー メ ン トの 電 場 方 向 の 成 分 の 平 均 〈μe〉は
(4) こ こ にL(x)は
ラ ン ジ ュ バ ン(Langevin)関
数
(5) で あ る.xが
小 さ い と きL(x)〓1/3xで
あ るの で,通 常 の温度 で 電場 が 小 さ けれ ば (6)
と な る.し
た が っ て,気 体 の 電 気 分 極(electric
polarization)Pはnを
分 子密度 と
す る と
で あ り,電 気 変 位 はD=E+4πP=εsEで
あ る.し た が っ て,気 体 の 誘 電率 εsは
(7) と な る. ゆ え に 電 気 感 受 率(elecoric
susceptibility)χeは
(8) と な る. 注 式(8)を
ラ ン ジ ュバ ン(Langevin)の
式 と い う.永 久 双 極 子 モ ー メ ン ト を もた
な い分 子 を無 極 性 分 子 と い う.無 極 性 分 子 に お い て は μ0=0な の で
(9) とな る.式(9)を
ドル ー デ(Drude)の 式 とい う.
上 に現 れ た分 子 に働 く電 場Eは,気
体 の 場 合 に は 外 部 電場 と考 え て 差 し支 え な
い.し か しな が ら液 体 の 場 合 に は,密 度 が 大 き く双 極 子 間 の 相 互 作 用 が 外 場 に 比 べ て 無視 で きな い か ら,Eを
実 際 に分 子 に働 く電場 と と らな け れ ば な ら な い.こ
の 場 合 を扱 うた め に デバ イ(Debye)は,式(6)のEを
ロー レ ン ツ(Lorentz)場
(10) に等 しい と仮 定 した(E0は 外 部電場).ま
わ りの 分 子 か らの 影響と して4π/3Pを 加
え た わ け で あ る.こ れ を用 い る と式(7)に 代 わ っ て
(11)
図5.12 双極子 能率 および 分極率 の 測定(HC1) と な る.こ
れ を デ バ イ(Debye)の
式 と い う.無
極性分 子の場合 に は
(12)
と な る.こ
れ を ロ ー レ ン ツ-ロ ー レ ン ツ(Lorentz‐Lorenz)の
物 質 の 誘 電 率 を 温 度 を 変 え て 測 定 し,横 軸1/Tの
式 とい う.
グ ラ フ と し て そ の 勾 配 か ら分
子 の 永 久 双 極 子 モ ー メ ン ト μ0を 得 る こ と が で き る.ま たT-1→0の 率α
外 挿 よ り分 極
を 知 る こ と が で き る(図5.12).
問 5.19
固 体 の 模 型 と して,す べ て の 原 子 が 同 一 の 振 動 数νEで
る と い う模 型(ア イ ン シ ュ タ イ ン(Einstein)模
調 和 振 動 して い
型)を 考 え る.こ の 模 型 に お け る 比 熱
を 求 め よ. 解 固 体 の 原 子 数 をNと て,こ
の 固 体 の 比 熱 は1個
と,問5.7の
式(5)の
す る と,こ
の 固 体 の 自 由 度 は3Nで
の 調 和 振 動 子 の 比 熱 の3N倍
あ る.し
たが っ
で あ る .hνE=hωEと
す る
結果 よ り
(1) と な る.hωE=kΘEに
よ り,ア
イ ン シ ュ タ イ ン の 特 性 温 度ΘEを
導 入 して
(2) と な る.し
た が っ て こ の 模 型 で はCは
高 温 で3Nkに,低
温 で はe-ΘE/Tで0に
近
づ く.
問5.20 固 体 を連 続 体 の よ うに 考 え,原 子 の連 成 振 動 を弾 性 波 内 の 音 波 で近 似 す る.波 の 速 さυ は横 波(自 由 度2)と 縦 波(自 由度1)で 異 な る が,こ れ を一 種 の 平 均 値υ0で 近 似 す る.角 振 動 数 が ω と ω+dω との 間 に あ る基 準 振 動 のg(ω)dω ωD< ω で0と
を
す る.こ の と き ω< ωDの と き
(1) で あ る こ と を示 せ.ま た基 準 振 動 の 総 数 は3Nで
あ る こ と よ り最 大 振 動 数 ωDを 求
め よ. 解 媒 質 が 一 辺lの
立 方 体 の 箱 に 入 っ て い る と す る.原 子 の 振 動 波u(z,y,z)は
境 界 条 件u(0,y,z)=u(l,y,z)=0,…
を考 慮 して
(2) と な る.こ
こ で 波 数kはkx=πnx/l,nx=1,2,…
な ど で あ る.波
長 λ と 波 数k
との 関 係 か ら
(3) で あ る.よ
っ て波 長 が λ0よ り長 い 振 動 の波 の 数 は
(4) を 満 た す 正 の 整 数 の 組(nx,ny,nz)の 径2l/λ0の
球 の 体 積 の1/8に
数 で 与 え れ ら る.こ
等 し い.す
れ は 各nが
な わ ちn0=2l/λ0と
大 きければ半
して
(5) と近 似 して よい.波 長 を角振 動 数 に な お す と
で あ る か ら,角
振 動 数 が ω よ り小 さ い 波 の 数,す
な わ ち(nx,ny,nz)の
組の 数は
(6) と な る.し
た が っ て,角
振 動 数 が ω と ω+dω
と の 間 に あ る{n}の 組 の 数 は,式(6)
をω で 微 分 して
(7) と して得 られ る.基 準 振 動 の 総 数 は3Nで
あ るか ら,最 大 角 振 動 数 をυ0と して
(8) とな る.ゆ
え に角 振 動 数 の 上 限 ωDは
(9) で 与 え ら れ る.こ
れ を 用 い る と式(7)は
(10) と 表 せ る.振
動 数ν を 用 い る と,
(11) と書 け る. 注 縦 波 の 速 度υlと 横 波 の 速 度υtを 区 別 した と きは,そ の モ ー ドの数 が それ ぞ れ1お
よび2で
あ る こ とを 考 慮 して
(12) に よ っ て 定 ま るυ0を 用 い る. 固 体 を 連 続 体 と して 近 似 し な い で,結 め る 試 み は モ ン ト ロ ー ル(Montroll)や 付.7,問
付.8を
問5.21
晶 構 造 な ど か ら き ち ん と振 動 数 分 布 を求 ジ ョ イ ス(Joyce)ら
に よ っ て 行 わ れ た(問
参 照 の こ と).
固 体 中 の 原 子 の 振 動 は,問5.19の
ア イ ン シ ュ タ イ ン模 型 で仮 定 した よ
うに すべ て の 原 子 が 同一 の 振 動 数 で 振 動 して い るわ け で は な く,問5.20で
求めた
よ うにg(ν)と い う分 布 を もっ て い る.こ の 考 え を も とに して 固体 の 原 子 の 振 動(格 子 振 動 と もい う)に よ る比 熱 を求 め よ.こ の 理 論 を デ バ イ模 型 と い う. 方 針 振 動 数νiを もつ1個 の振 動 子(調 和 振 動 子)の 比 熱C(νi)は 問5.7で
すで に
求 め られ て い る.し た が っ て,全 系 の 比 熱 は そ れ らの 和
(1) と な る.た だ し,各 振 動 子 はg(ν)に 従 っ て分 布 して い る. 解 振 動 数νiを もつ1個
の振 動 子 の 比 熱C(νi)は 問5.7の
式(5)よ
り
(2) で あ る.こ
れ がg(ν)に
従 っ て 分 布 し て い る の だ か ら,全
系で は
(3)
を 求 め れ ば よ い.こ
こ でνD最
大 振 動 数(問5.20の
式(9))
(4) で 定 義 さ れ て い る. さ て 式(3)を
計 算 し よ う.式(2)と
問5.20の
式(11)を
式(3)に
代 入 して
(5) とな る.βhν=xと
おいて
(6) とす る.こ
の積分
(7) は 初 等 関 数 で は 表 さ れ な い が,t=βhνD→
∞ の と き,す
な わ ち 温 度T→0の
とき
は
(8) とい う定 数 に な る. デバ イ 温 度
(9) を 定 義 す る.式(7)と
式(9)か
ら式(6)は
(10) と表 せ る.式(8)よ
り温 度T→0の
とき
(11) とな り,比 熱 は低 温 で温 度 の3乗 図5.13に 則(式(11))は
に比 例 す る.
ア イ ン シ ュ タ イ ン模 型 の比 熱 とデ バ イ模 型 の 比 熱 を示 す.低 温 で のT3 実 際 の 物 質 の 原 子 振 動 に よ る比 熱 の振 舞 い を よ く と らえ て い る.図
5.14は ア ル ミニ ウ ム の 実 験 値 で あ る.
図5.13
ア イ ン シ ュ タ イ ン比 熱 と デ バ イ 比 熱 の 比 較 (Θ は そ れ ぞ れ に 対 しΘEま た はΘD)
図5.14
ア ル ミニ ウ ム の 比 熱 とデ バ イ模 型 に よ る 計 算 値 の 比 較(ΘD=398〔K〕)
章
6 第
フ ェル ミ粒 子 とボ ー ズ 粒 子
前 章 まで で 古 典 統 計 力学 と その 限 界 が 示 さ れ た.粒 子 は 本 来 区別 しえ な い もの で あ る と い う こ とが 示 さ れ た わ け で あ る.こ の 立 場 で 状 態 を数 え る こ とに よ っ て 論 理 を組 み な お した もの が 量 子 統 計 力 学 で あ る.量 子 力 学 に よ れ ば,粒
子は フェ
ル ミ粒 子 と ボ ー ズ粒 子 に種 別 で き る.フ ェル ミ粒 子 はパ ウ リの 排 他 律 の ため に2個 以 上 の 粒 子 が 同一 の 量 子 状 態 を取 りえ な い.ボ
ー ズ粒 子 は,一 つ の 量 子 状 態 に何
個 で も入 る こ とが で き る.本 章 で は こ れ らの 粒 子 か らな る系 を 中心 に扱 う. フ ェル ミ粒 子 の 従 う統 計 は フ ェル ミ-デ ィラ ッ ク統 計(FD統 粒 子 の 従 う統 計 は ボ ー ズ-ア イ ン シ ュ タ イ ン統 計(BE統
計)で あ る.そ れ ぞ れ フ ェ
ル ミ統 計,ボ ー ズ統 計 と簡 略 す る こ とが 多 い.電 子 や3Heな 粒 子 は フ ェル ミ統 計 に従 い,光 子 や4Heな
計)で あ り,ボ ー ズ
どの ス ピ ンが 半 整 数 の
どの ス ピ ンが整 数 の 粒 子 は ボー ズ統 計 に
従 う(問3.11).
問6.1
グ ラ ン ドカ ノニ カル 集 合 の 方 法 を 用 い て,量 子 統 計 に従 うN個
の相互
作 用 の な い粒 子 系 の大 分 配 関 数 を求 め よ. 方 針 量 子統 計 で は個 々 の粒 子 の 区 別 が つ か な いの で,「どの粒 子 が どの 状 態 に」 とい う こ とは 問題 に な ら ず,「 どの 状 態 に何 個 の 粒 子 が 」 と い う こ とが 重 要 に な る.N個
の 相 互 作 用 の な い系 で は,全 系 の 微 視 的 状 態 Φは1体
問題 の そ れ|k>の
直積 と して表 され る.す な わ ち
(1)
で あ る.フ
ェ ル ミ粒 子 で は│k> の 状 態 を と り う る 粒 子 数nkは0か1か
ー ズ 粒 子 で はnk=0
,1,2,…
で あ る.
一 粒 子 の 固 有 状 態│k> の エ ネ ル ギ ー を εkと し よ う. H1│k>=εk│k> る.全
で あ り,ボ
系 の ハ ミ ル トニ ア ン はH=ΣH1で
で あ
あ る か ら,
(2) が 成 立 す る.粒 子 数Nが
指 定 され た カ ノ ニ カ ル 集 合 の分 配 関 数 か ら グ ラ ン ドカ ノ
ニ カ ル 集 合 の 大 分 配 関 数 を作 る. 解 カ ノニ カル 集 合 の 分 配 関 数Z(β,V,N)は
(3) で あ る.和
Σ'は 式(2)の
制 限 の も と で の 和 で あ る.
大 分 配 関 数Ξ(α,β,V)は,問4.5の
式(2)に
よ り
(4) で 与 え られ る か ら,こ れ に式(3)を 代 入 して
(5)
図6.1
Φ=│1>|2> で の 和 の と り方
の と きの 式(5)と
式(6)
これは
(6) と,制
限 の な い Σ の 和 で 表 さ れ る.図6.1を
参 照 の こ と.
さて 式(6)に お い て Σ とΠ を交 換 して
(7) を 得 る.フ
ェ ル ミ粒 子 で はnk=0と1が
可 能 で あ る か ら,
(8) と な り,ボ
ー ズ 粒 子 で はnk=0,1,2,…,∞
が可能 で あるか ら
(9) と な る.こ
の二 つ を ま とめ て
(10) と書 こ う.こ
こで γ は フ ェ ル ミ粒 子
(11)
ボー ズ粒 子 と し て 定 義 し た.式(10)よ は,問4.5の
式(6)と
式(8)を
り,全
系 の 粒 子 数 の 平 均 値 《N》
と エ ネ ル ギ ー 《E》
用 いて
(12) (13) と求 め られ る.こ れ らは 任 意 の εkの分 布 に対 して 成 立 す るの で,微 視 的 状 態│k> の平均粒 子数 は
(14) とな る. 式(10)に
お け るΣ は カ ノ ニ カル 集 合 の 場 合 と同様(第5章
参 照)に,1粒 子 当た り
の エ ネ ル ギ ー が ε で あ る と きの状 態 密 度φ(ε)を 用 い て
(15) と積 分 形 で 表 す こ とが で き る. 注 式(14)を
問3.12の
式(7)と
比 べ て み よ.
問6.2 自 由 電 子 の 熱 力 学 的 性 質 を調 べ よ.特 に低 温 に お け る比 熱 の 温 度 依 存 性 は ど うな る か. 方 針 大 分 配 関 数Ξ(α,β,V)を 用 い て,圧 力p,平
均 粒 子 数N,エ
ネ ル ギ ーE
はそれぞれ
(1) に よ り求 め られ る.こ
の と き ア ッペ ル(Appell)関
数 の 性 質 を 用 い る.
ア ッ ペ ル 関 数 φ(z,s)は
(2) に よ り定 義 さ れ る.こ
の 関 数 の 性 質 は 補 を 参 照 の こ と.
解 フ ェ ル ミ粒 子 の 大 分 配 関 数 をΞ(α,β,V)と
す る と,問6.1の
式(10)よ
り
(3) で あ る.状
態kに
つ い て の 和 を,エ
ネ ル ギ ー が ε と ε+dε
ネ ル ギ ー ε に つ い て の 積 分 に お きか え る.エ
と の 間 に あ る 状 態 数 ψ(ε)dε は
(4) で あ る(問5.2参
照.た だ し,g(=2)は
電 子 の も つ ス ピ ン 自 由 度 に よ る)か ら,式(3)
は
(5) とな る.右 辺 の 積 分 は 部 分 積 分 に よ り
と書 き か え られ る.右 辺 第1項
は0.ア
ッペ ル 関 数 を 用 い て 第2項
を表 す と
(6) で あ る.こ
こ でdφ(z,s)/dz=z-1φ(z,s−1)を
用 い て,粒
子 数 とエ ネ ル ギ ー は そ
れぞれ
(7) (8) と な る. 式(7)よ
り,N/VがT=0で
φ(−e-α,3/2)→−T3/2と
も 有 限(非 零)な 値 に な る た め に は,T→0で, な っ て い な く て は な ら な い.ア
ッ ペ ル 関 数 の 性 質 よ り,
こ れ は α → − ∞ と な る こ と で 満 た さ れ る.よ
っ て α=− μ(T)/kTと
式(29)と
展 開 す る こ とに よ り
式(30)を
用 い て,式(7)と
式(8)を
お く.補
の
(9) (10) を 得 る.化 学 ポ テ ン シ ャ ル μ は 温 度 の 関 数 で あ る.T=0の お く と,式(9)よ
と き の 値 μ(0)を ε0と
り
(11) で あ る.こ
の ε0を フ ェ ル ミ準 位 ま た は 絶 対 零 度 の フ ェ ル ミ ポ テ ン シ ャ ル と 呼 ぶ.
εFと も 記 す. 絶 対 零 度T=0に か ら式(11)を
お け る 全 系 の エ ネ ル ギ ー をE0と
す る と,式(9)と
式(10)の
比
用いて
(12)
を得 る. 式(7)をNとVが う.N/Vは
与 え られ た ときに,α の温度 依 存 性 を与 え る式 だ と解 釈 しよ
式(11)よ
り
(13) と表 せ る か ら,式(9)=式(13)よ
り,
(14) が 成 立 す る.こ
れ を μ に つ い てT〓0と
し て 解 く と,T2の
項 まで で
(15) を得 る.こ れ で μ(T)の 温 度 依 存 性 が 求 め られ た. さ て 式(10)に
式(15)を 代 入 して
(16) こ れが エ ネ ル キ ー の 温 度 依 存 性 で あ る.こ れ を温 度 で 微 分 し式(11)を 考 慮 す る こ とに よ り,定 積 比CVは
(17) と求 ま る.す な わ ち電 子 比 熱 は低 温 で絶 対 温 度 に比 例 し,T=0で0と 圧 力 は ベ ル ヌ ー イの 式(問6.9の
式(1))に
な る.
よ り絶 対 零 度 で は
(18) と な る. 注1
T=OKで
の フ ェ ル ミポ テ ン シ ャ ル μ(T)の
値 ε0は,N個
の 電 子 を最 低 の
エ ネル ギ ー 状 態 か ら順 次 に つ め て い っ た と き に到 達 す る最 大 の エ ネ ル ギ ー で あ る .銅 の 原 子 の 場 合N/V=8.5×1022cm-3よ き,α=−
βμ〓− βε0〓−300で
り ε0〓7eVで あ る.
あ る.温 度T=300Kの
と
注2
エ ン トロ ピー は
(19) よ り
(20) と な る.し たが っ て,エ み たす.熱
ン トロ ピー はT→0で,0に
近 づ き,熱 力 学 第3法 則 を
力 学 第3法 則 は ギ ブ ス の 補 正 と関 連 して古 典 統 計 力 学 で は説 明 の つ か
な か っ た もの で あ る(問3.2). 補 ア ッペ ル 関 数
(21) で 定 義 さ れ る 関 数 を ア ッペ ル 関 数 と い う.│z│<1の き に,そ
れ ぞ れzに
│z│ <1の
と き,z∼1の
と き,|z|≫1の と
関 し て 以 下 の よ う に 展 開 で き る.
とき :
(22) z∼1の
と き:
メ リ ン(Mellin)変
換F(s,σ)を
以 下 の よ う に 定 義 す る.z=e-α
と して
(23) こ れ に 式(22)を 代 入 す る と
(24) と な る.こ
こ で ζ(s)は
リ ー マ ン(Riemann)の
ζ(s)は留 数 が1で あ る1次 の 極s=1を
ζ関 数(ζ(s)≡Σ1/ls)で
あ る.
除 いて全 平 面 で 正 則 な解 析 関 数 で あ る(証 明
図6.2 略).式(4)の
式(25)の
積 分路
逆変換 は
(25) で あ る.積
分 路Cを
る.ζ(s+σ)は 1,2,…)留
を 得 る.も
図6.2の
σ=1−sに
留 数+1の1次
数(−1)n/n!の1次
と のzに
よ う に と れ ば,R→
∞ で 半 円 上 で の 積 分 は0と
の 極 を も ち,Γ(σ)は
な
σ=−nに(n=0,
の 極 を も つ か ら,
もどす と
(26) と 表 さ れ る.式(26)はz∼1の
と き 用 い ら れ る.1<zの
と き,右
辺 第1項
は虚 数
部 を 与 え る.
z∼ ∞ の と き(漸近 展 開):証 明 略(た と え ば参 考 文 献6)桂 重俊 の 付 録 に あ る).
(27)
(28) こ こ でBnは 特 に(z→
ベ ル ヌ ー イ 数 で あ り,mは
展 開 の 次 数 で あ る.
∞ の と き),
(29)
(30) で あ る.図6.3にs=半
奇 数 でzが
図6.3
問 6.3
実 数 値 の と き の φ(z,s)を
φ(z,s)の 実 のz(横
示 す.
軸)に 対 す る 関 数 値
絶 対 零 度 に お け る 自 由電 子 の 平均 エ ネ ル ギ ー を εとす る と,ε=3/5ε0で
あ る こ と を 示 せ.た
だ し,ε0は
フ ェ ル ミ準 位(問6.2の
式(11))で
解 自 由 電 子 の 状 態 密 度φ(ε)は ε1/2に比 例 す る か ら(問5.2の
あ る. 式(9)),
(1) を得 る. 注 種 々の 解 法 が あ る が この 方法 が 一 番 簡 単 で あ ろ う.
問6.4 量 子 統 計 力 学 が 完 成 され る以 前,黒 体 放 射 の エ ネ ル ギ ーUに つ の 理 論 が 存 在 して い た.ウ
つ いて二
ィー ン(Wien)に よれ ば
(1) で あ り,レ
ー リ ー-ジ
ー ン ズ(Rayleigh-Jeans)に
よ れ ば
(2) で あ っ た.aν,bν,cν れ1/(d2S/dU2)を
は 振 動 数ν
求 め,こ
に 依 存 す る 定 数 で あ る.式(1)と
れ を 補 間 す る こ と に よ り,プ
解 熱 力 学 に よ り(問2.6の
式(2)か
らそ れ ぞ
ラ ン ク の 放 射 式 を導 け .
式(10))
(3) で あ る.こ
こ で 式(1)よ
り
で あ るか ら,こ れ を微 分 して
(4) を 得 る.一
方 式(2)よ
りは
(5) す な わ ち,ウ ィ ー ン お よ び レ ー リ ー-ジ ー ン ズ に よ れ ば1/(d2S/dU2)は,そ
れぞれ
(6) (7) と な る.式(6)と
式(7)を
合 わせ て
(8) と お い て み よ う.そ
うす る と
(9) とな る.こ れ を積 分 して
(10)
T→
∞ でUν → ∞ よ り積 分 定 数 γ=0.よ
って
(11) すなわ ち
(12) を得 る.こ れ が プ ラ ンク の 放 射 式 で あ る.そ
して これ は 次 問 で 量 子 統 計 を用 い て
正 し く導 か れ る結 果 と一 致 す る. 注 プ ラ ン クが 黒 体 放 射 式 を得 た端 緒 は こ こ で 示 した 方法 に よ っ て で あ っ た. プ ラ ン ク は こ の 補 間 式 が 実験 と一 致 す る こ とを確 か め て か ら,そ の 意 味 づ け を考 え て エ ネ ル ギ ー 量 子 の 概 念 に 到 達 した の で あ る.な お 上 記 の 定 数 は量 子 統 計 を 用 い て導 く と
(13) で あ る(分 母 のcは
問6.5 温 度Tで
光 速 度,問6.5の
体 積Vの
式(23)参
照).
空洞 内 の 熱 放 射(黒 体 放 射)を 考 え る.1)こ の系 の大
分 配 関 数Ξ を求 め,2)振
動 数ν を もつ 光 子 の 平 均 粒 子 数 《nν》 が
(1) で あ る こ と を 示 せ.3)ま
た,圧
力pで
平 均 エ ネ ル ギ ーEの
とき
(2) が 成 立 す る.こ
の(定 数)を 求 め よ.
方 針 光 子 は ボ ー ズ粒 子 な の で ボ ー ズ統 計 に従 う.た だ し,光 子 は空 洞 内 で 吸 収 さ れ た り生 成 され た りす るの で 粒 子 数Nは 与 え られ た 条 件(問6.1の
式(2))の
す る.す な わ ち,問3.12の
一 定 で は な い.こ の こ とは 問6.1で
うちN=Σnν
とい う条 件 が な い こ とを 意 味
式(6)で ラ グ ラ ン ジ ュの 未 定 乗 数 α=− μ/kT=0と
れ ば よ い.結 局 光 子 気 体 の 化 学 ポ テ ン シ ャル μ は0で
す
あ る.
解 1) 大 分 配 関 数 は
(3) と して 求 め ら れ る.い
まNは
一 定 で な い.こ
れ か ら
(4) を 得 る. さ て,logΞ
を 求 め よ う.式(4)よ
り
(5) で あ る.振 動 数ν を もつ 光 子 の 状 態 密 度g(ν)は,本 問 の補 の 式(27)で 与 え られ る か ら,
(6)
と な る.こ
こ で 振 動 数ν の 光 子 の エ ネ ル ギ ー εν は
(7) で 与 え られ る こ とを用 い た. 式(6)の 積 分 は
(8) とな るの で(付 録B参
照),
(9) を 得 る.
2) 振 動 数ν を もつ 光 子 の 平均 粒 子 数 《nν》 は
(10) か ら,直 接 式(4)を 代 入 して
(11) と な る. 3) エ ネ ル ギ ー は
(12) よ り
(13) と な る.
圧 力pは
(14) よ り
(15) を 得 る.式(13)と
式(15)よ
り
(16) の 関係 式 を得 る(自由 粒 子 に対 す るベ ル ヌ ー イの 関 係 式 はpV=2/3Eで
あ る(問6.9
参 照)).
補1 式(13)は 温 度Tに
お け る黒 体 放 射 の エ ネル ギー 密 度E/Vが,T4に
比例
す る こ と を示 して い る.
図6.4
空洞 放射
い ま空 洞 の 表 面 に小 さな 穴 を あ け て,単 位 面 積 単 位 時 間 当 た りに,こ して 角 度 θの 方 向 の 単 位 立 体 角dΩ に 出 て ゆ く放 射 の 流 れ をdJと
の 穴 を通
す る と(図6.4)
(17) で あ る(cは
光 速 度).し
た が っ て,穴
か ら もれ る 全 放 射 は
(18) と な る.こ
こに
(19) で σ を ス テ フ ァ ン-ボ ル ツ マ ン(Stefan‐Boltzmann)定
数 と い う.式(18)のJ=σT4
の 関 係 を ス テ フ ァ ン-ボ ル ツ マ ンの 法 則 と い う(式(13)のE/V=aT4の こ と も あ る).
こ とをい う
エ ネル ギ ー
εν=hν=hω
を もつ 放 射 の 密 度 をμ(β
,εν)とす る と
(20) と な る こ と,お
よび
(21) で あ る こ とを用 い て
(22) と表 さ れ る.こ れ を振 動 数ν で表 せ ば
(23) と な り,プ
ラ ン ク の 式(問6.4の
式(12))が
得 ら れ る .問6.4のUν
図6.5 黒 体放 射 の種 々の温度 におけ る振動 数 に対 す るエネ ル ギー
が本 問 の
u(β,ν)で あ る.図6.5にu(β,ν)を 補2
示 す.
空 洞 内 の 熱 放 射 は 波 数 ベ ク トルkλ,振
動 数 ωλ=ckλを もつ 単 色 平 面 波
(24) の 重 な り と し て 表 さ れ る.こ ieλ・kexp{i(kλ
こ でeλ は 偏 り の 方 向 を 表 す 単 位 ベ ク トル で,diνA=
・r-ω λt)}=0よ
独 立 なeλ と し てkλ と 直 交 し,か
りkλ と 直 交 して い な け れ ば な ら な い.し
たが って
つ 互 に 直 交 す る 二 つ の 方 向 を 選 ぶ こ と が で き る.
周 期 的 境 界 条 件 を 課 す と,kλ の 各 成 分 と ωλと は 離 散 的 な 値
(25)
を と る.振 動 数ν 以 下 の 固 有 振 動 の 数 は偏 りを考 えて 半径Lν/c(L3=ν)の 体 積 の2倍
に等 しい.ゆ
球の
えに
(26) とな る.こ れ をν で 微 分 して
(27) と な る. この 結 果,式(27)を
問5.20で
求 め た固 体 内 の 原 子 の 基 準 振 動 の 数g(ν)
(28) (問5.20の
式(7))と 比 べ る と,音 速ν0を 光 速 度cに
変 え2/3倍
した もの に な って
い る.こ れ は 原 子 の 振 動 は1原 子 当 た り三 つ の 自 由度 を もっ て い る の に対 し,光 で は上 で 述 べ た よ う に二 つ の 自 由度 しか な い(縦 波 が な い)た め で あ る. 補3 μ(β,の を最 大 な ら しめ るν の値 をνmと す る と式(23)よ
り
定数 が 得 られ る.す な わ ちνmは 温 度 に比 例 す る.こ の 定 数 をxと す る とxは
(29)
の 根 と してx〓2.822と λm
T=定
数
与 え られ る.式(29)は
ウ ィー ンの 変 位 則(displacement
law)
を λ の 代 わ り にν で 表 し た も の で あ る.
問 6.6 光 子 気 体 に お い てUを
エ ネ ル ギ ー,μ
トロ ピ ーと す る と き,μ=0,S=4U/3Tで 解 T,V,Nを
を 化 学 ポ テ ン シ ャ ル,Sを
エ ン
あ る こ と を 示 せ.
変 数 と し た と き,へ ル ム ホ ル ツ の 自 由 エ ネ ル ギ ーFの
微 少 変
化dFは
(1) で あ る.い
ま温 度 一 定,体 積 一 定 とす る と熱 平 衡 の 条 件 は (2)
で あ る.光
子 気 体 で はTとVが
え に μ=0で
一 定 で も粒 子 数 が 変 化 し う る か らdN≠0.ゆ
な け れ ば な ら な い.μ=0で
ま た,問6.5よ
りpV=U/3.ゆ
あ る か らG=μN=U−TS+pV=0.
えに
(3) を 得 る.
問6.7
量 子 統 計 力 学(フ ェル ミ粒 子,ボ ー ズ粒 子)の 場 合,状 態kに
お け る粒 子
数nkの ゆ ら ぎ は (上号 フ ェル ミ統 計,下 号 ボ ー ズ統 計)
(1) と表 せ る こ と を証 明 せ よ. 解 大 分 配 関 数 をΞ の 定 義 は
(2) で あ る.た お よ びnk2の
だ し,Σ
はΣnk=Nの
条 件 の も と に と る 和 で あ る.nkの
平 均 値 《nk》
平 均 値 《nk2》 は そ れ ぞ れ
(3)
(4) で 与 え ら れ る.こ
こ で 《nk》 を μ で 微 分 し て
(5) と い う 関 係 を 得 る.一
方,式(6.14)よ
り
(6) とな るか ら,式(5)と
式(6)よ
り求 め る結 果 を得 る.こ の 証 明 は分 母≠0と
る か ら,ボ ー ズ 統 計 の 基 底 状 態(k=0)に
して い
対 して は適 用 され な い.
問6.8 理 想 ボ ー ズ 気 体 に お け る α の 温 度 依 存 性 を求 め 、熱 力 学 的 性 質 を調 べ よ.特 に 理 想 ボ ー ズ 凝 縮 に つ い て知 る と ころ を記 せ. 方針 問6.2の
フ ェル ミ分 布 を ボ ー ズ 分 布 に変 更す れ ば よ い が,こ
の と き基 低
状 態(ε=0)を 特 別 扱 い に す る必 要 が あ る.ボ ー ズ気 体 の化 学 ポ テ ン シ ャ ル μ は μ 〓0で あ る こ と,い い か え る と α=− βμ〓0で
あ る こ とに 注 意 せ よ(問3.2の
式
(10)). 解 まず フ ェル ミ気 体 の場 合 と同 様 に 考 えて み よ う.大 分 配 関 数 は 式(6.10)と 問5.2の
式(9)を 用 い て
(1) とな る.こ れ を部 分積 分 す る こ と に よ りア ッペ ル 関 数 を用 い て
(2) と表 され る.し た が っ て,粒 子 数Nと
エ ネル ギ ーEは
そ れ ぞれ
(3) (4) と な る. さ て,式(3)を,密
度N/Vが
与 え ら れ た と き に 温 度Tを
し よ う.温 度 を 下 げ て い く とN/Vを ら な い(図6.3参
照).と
こ ろ がα〓0よ
一 定 に 保 つ に はe-α が 大 き く な らな け れ ば な りe-α の と り う る 最 大 値 は1で
と き の ア ッペ ル 関 数 は φ(1,3/2)=ζ(3/2)〓2.612と い う有 限 な 値 で あ る.こ
決 め る 式 で あ る と解 釈
の と き の 温 度 をT0と
あ る.こ
の
φ(1,5/2)=ζ(5/2)〓1.341と し よ う.
(5) で あ る.温 度T=T0で
φ(e-α,3/2)は
と り う る 最 大 値 に 達 し て し ま っ た の で,も は
や こ れ 以 上 温 度 を 下 げ る こ と は で き な い.こ
れ は 明 らか に お か し い.
原 因 は ボ ー ズ 粒 子 の 特 性 に あ る.ボ
ー ズ 粒 子 は 同 一 の 量 子 状 態 に 何 個 で も存 在
し う る.こ の 場 合,エ
基 底 状 態 を多 数 の ボ ー ズ粒 子 が 占 め て し ま
ネ ル ギ ー ε=0の
っ た の で あ る.式(1)の
Σ を 積 分 に 移 行 さ せ た と こ ろ が 正 し く な い.ε=0の
度φ(ε)はφ(ε)∝√ε
よ りφ(0)=0で
(ε0=0)の
あ り,積
のk=0
寄 与 が 落 ち て し ま っ て い る.
こ の 点 を 正 し く取 り扱 う た め にk=0とk≠0を て,
分 に 寄 与 し な い の で,Σ
粒子 密
区 別 して 取 り扱 お う.し た が っ
(6) か ら 出 発 す る.第2項
は 上 に 述 べ た 理 由 か ら積 分 で 表 し て よ い.k=0(ε0=0)の
与 は 積 分 に 入 ら な い の で,ま
さ に 第2項=式(2)で
寄
あ る.よ っ て 正 しい 大 分 配 関 数
は
(7) で あ る.粒 子 数 と エ ネ ル ギー もそ れ ぞ れ
(8) (9) と な る.た で,式(4)は
だ し エ ネ ル ギ ー に つ い て は〓
であ るの
変 更 さ れ な い.
さ て 基 底 状 態 ε=0に
あ る ボ ー ズ 粒 子 の 数Nε=0を
こ の 数 を表 し て い る の だ か ら,こ
れ を 式(5)を
評 価 し よ う.式(8)の
第1項
が
用 い て 書 き直 す と
(10) (11) と な る.し
た が っ て,T<T0の
と きe-α〓1を
用 いて
(12) と な る. T>T0の
と き は α は0で
項 の 寄 与 は 第2項
な い 有 限 な 正 の 値 を と る.し
に 比 べ て 無 視 し う る.よ
た が っ て,式(8)の
っ て こ の 場 合,式(8)は
式(3)に
第1 帰 着す
る.
αの温 度依 存性 は
(13) か ら φ-1を φ の 逆 関 数 と して
(14) に よ っ て 与 え ら れ る.α(T)を
図6.6に
示 す.T〓T0の
と き 式(14)は
で あ る.
図6.6 T>T0の
理 想 ボ ー ズ 気 体 に お け る αの 温 度 依 存 性
と き は 式(14)の
α を,T<T0の
ネ ル ギ ー の 温 度 依 存 性 が 求 め ら れ る.こ れ に つ い て は 問6.9,問6.10を 補1
T<T0で
は,ε=0と
の 粒 子 が 占 め て い る.ア
と き は α=0を れ よ り状 態 式,比
い う量 子 状 態 を 全 粒 子 数Nの
熱 が 求 め ら れ る が,そ
オ ー ダ ー の 数Nε=0個
イ ンシ ュ タ イ ンは これ を運 動 量 空 間 に お い て 凝 縮 が 起 こ
-ア イ ン シ ュ タ イ ン凝 縮 と い い,T0を 凝 縮 は ロ ン ド ン(London)に
あ る状 態)と 考 え た.こ れ を ボ ー ズ
転 移 温 度 と い う.ボ
ー ズ-ア イ ン シ ュ タ イ ン
よ って 液 体 ヘ リウム の相 変化 に対 す るモ デ ル と して議
リ ウ ム の 場 合T0=3.14Kと
大 分 異 な っ て い る.理
入 れ れ ば,エ
参 照 の こ と.
っ て い る状 態(ほ と ん ど す べ て の 粒 子 がp=0で
論 さ れ た.ヘ
式(4)に
な る.し か し,ヘ
リウ ム の 実 際 の 相 図 は
想 ボ ー ズ 気 体 に 粒 子 間 相 互 作 用 を と り入 れ る こ と に よ り,
不 完 全 ボ ー ズ 気 体 の 相 変 化 と して 液 体 ヘ リウ ム の 性 質 を 説 明 し よ う とす る努 力 が 続 け ら れ て い る.
補2 低 温 に お け るエ ン トロ ピー は
(15) にα=0を
代 入 し て,式(7)と
式(9)を
用 いる と
(16) と な り,式(9)を
入れ る と
(17) を得 る.こ れ はT→0で0に
近 づ き,熱 力 学 第3法 則 を満 足 す る.
問 6.9 ベ ル ヌ ー イ の 式
(1) が,理 想 量 子 気 体(フ ェル ミ統 計,ボ ー ズ統 計 に従 う気 体)に 対 して 成 立 す る こ と を 示 せ.特
に ボ ー ズ凝 縮 の 起 きて い る と きは ど うか.
解 まず フ ェル ミ統 計 の場 合,状
態式 は
(2) で あ り,エ
ネル ギ ー は
(3) で あ っ た(問6.2の
式(6)と(8)参
照).し
た が っ て,
(4) が 成立 す る. ボ ー ズ 統 計 の場 合,状 態 式 は
(5) で あ り,エ
ネル ギ ー は
(6) で あ っ た(問6.8の
式(7)と
式(9)参
照).し
た が っ て,こ
の場合
(7) が 成 立 す る.さ
てN/V=一
的 極 限 と い う.こ 問6.8の
定 に 保 ち,N→
の 極 限 で 式(7)の
第1項
∞ ,V→
∞ と し よ う.こ
れ を熱 力 学
が 無 視 で き る こ と を 示 す.
式(8)
(8) の 各項 の 熱 力学 的 極 限 を考 え よ う.ボ ー ズ気 体 の 場 で あ る.左 辺 も有 限で あ る か ら,右 辺 第1項 め に はeα−1=a/Vで
あ れ ば よい.aは
α〓0よ り上 式 第2項
は有 限
も有 限 で な くて は な ら な い.こ の た
定 数 で あ る.し た が って,式(7)の
第1
項は
(9) と評価 で き る.式(7)の
右 辺 も左 辺 第2項
も と もに 示 強 変 数 で あ り,体 積Vに
比
例 す る項 で あ るか ら,こ れ らの項 に比 べ 式(9)は 無 視 で き る. 以上 よ り,熱 力 学 的 極 限 で は フ ェル ミ気 体 で もボ ー ズ 気 体 で も(ボー ズ凝 縮 が 起 きて い て も)式(1)が 成 立 す る こ とが 結 論 され る. 式(4)に 式(3)を 代 入 した式 と問6.2の
式(7)か
ら α を消 去 す れ ば フ ェル ミ気 体
の 状 態 図 が 得 られ る.温 度 が 高 け れ ば 古 典 理 想 気 体 の 状 態 式pV=NkTに
近づ
く. ボー ズ気 体 の 場 合,T>T0な
らば式(2)に 問6.8の(13)の
得 る.温 度 が 高 くな れ ば 古 典 理 想 気 体 の 状 態 式pV=NkTに ば
α=0を
に 示 す.
式(6)とPV=2/3Eに
α を入 れ て状 態 式 を 近 づ く.T<T0な
ら
入 れ て圧 力一 定 の状 態 式 を得 る.こ れ を図6.7
理想 ボ ー ズ気体 の等 温線 (斜線 はボ ー ズ凝縮 の起 こ って い る状 態)
図6.7
問6.10 理 想 ボ ー ズ気 体 の 定 積 比 熱 お よび 定 圧 比 熱 を求 め よ.ボ ー ズ 凝 縮 の 起 き る温 度T0(問6.8の 方 針 問6.8の 定積 比 熱Cvと
式(5))よ
結 果 を用 い れ ば よい.ま 定 圧 比 熱Cpは
(Hは と し て 求 め る.さ
式(3)と
たpV=kTlogΞ
式(4)で
に も注 意 せ よ.
それぞれ
(1)
エ ン タ ル ピ ー)
ら に ベ ル ヌ ー イ の 関 係 式(問6.9の
解 ま ずT>T0の 6.8の
り高 温 の 場 合 と低 温 の場 合 に分 け て 考 え よ.
式(1))を
用 い る.
と き を 考 え よ う.こ の と き の 粒 子 密 度 と エ ネ ル ギ ー 密 度 は 問 与 え ら れ る.し
た が っ て,
(2) (3) で あ る.以
下 φ(e-α,s)を
φsと 書 く こ と に す る.式(2)よ
り定 積 比 熱Cvは
(4) と な る.こ
こ で
φs'=eα
φs-1お
よ び 式(3)の
微 分
(5) から
(6) を用 い て
(7) を 得 る. 一 方
,定
圧 比 熱 は,エ
ン タ ル ピ ーHは
問6.8の
式(2)∼
式(4)を
用い て
(8) と 表 せ る こ と か ら,
(9) と な る.こ
こ で 式(8)と
式(3)よ
り得 ら れ る 関 係 式
(10) よ り
(11) を用 い て(注 参 照)
(12) が得 られ る.こ れ か ら式(9)は
(13) と な る. T<T0の 式(9)を
と き は,e-α〓1よ
り φ(e-α,s)=ζ(s)で
あ る.問6.8の
式(5)と
式(8)と
用 いて
(14) と表 せ る か ら,
(15) で あ る. エ ン タ ル ピ ーHは
ベ ル ヌ ー イ の 関 係 式(問6.9式(1))を
用 いて
(16) と な る.し
た が っ て,定
圧 比熱 は
(17) と な る. 両 比 熱 を 図 示 し た も の が 図6.8で CpはT=T0で
あ る.Cvに
はT=T0で
不 連 続 と な る.ど ち ら の 比 熱 と もT<T0で
折 れ 曲 りが 存 在 し, は 温 度 の3乗
る.液 体 ヘ リ ウ ム の 実 験 値 を 図6 .9に
示 す.
注 ベ ル ヌ ー イ の 関 係 式(問6.9の
式(1))を 用 い て エ ン タ ル ピ ーHを
に 比例 す
書 き直 す と
(18)
図6.8
定 積 比 熱Cvと (CpはT=T0で
図6.9 と な る.し
た が っ て,pを
定 圧 比 熱Cpの
温 度依 存性
無 限 大 の 値 に 飛 ぶ.)
液体 ヘ リウム の比熱
一 定 に し た ま まH/V=5p/2を
温度Tで
微分 す れば
(19) で あ る..
問6.11 1辺Lの
正 方 形 の 容 器 の 中 に質 量mの
自 由粒 子 よ りな る2次 元 気 体 が
存 在 して い る. 1) 粒 子1個
に つ い て エ ネ ル ギーE以
下 の 量 子 状 態 の 数 を求 め よ.
2) この 気 体 が 古 典 統 計 学 に従 う気体 で あ る と して平 均 エ ネル ギー と定 積 比 熱 を 求 め よ. 3) こ の 気 体 が 量 子 気 体 で あ る と して 平 均 エ ネ ル ギー を求 め,2次 元 フ ェル ミ気 体 と2次 元 ボ ー ズ 気 体 の定 積 比 熱 は等 しい こ とを示 せ. 方 針 3次 元 の場 合(問5.2)と
問6.2,問6.8を
参 考 に して 同様 の計 算 を行 え ば
よ い.た だ し,2)に お い て古 典 気 体 の 微 視 的 状 態 の状 態 体 積j(E)は
量 子気 体 と同
じで あ る こ とに 注 意 せ よ. 解 1) 平 面 波 の 波 動 関 数 は 箱 に入 れ る境 界 条 件 の も とに, (1) で あ る.こ
こ でn1とn2は
量 子 数 で,n1,n2=1,2,3…
を と る.エ
ネ ル ギ ーEは
(2) と な り,エ
ネ ル ギ ー がE以
下 の 固 有 状 態 の 数j(E)はn1とn2が
(n1,n2)平 面 に お け る 半 径(2mEL2/h2π2)1/2の
円 の 面 積 の1/4で
十分 大 きい と き 与 え ら れ る.す な わ
ち,
(3) こ の 答 は 気 体 が 古 典 力 学 に 従 う と し て も 同 じで あ る.問5.2参 2) 分 配 関 数 をZと
す る とφ(E)=dj(E)/dEよ
照 の こ と.
り
(4) と求 め られ る.こ れ か ら,全 系 の 平 均 エ ネ ル ギ ーEと
比 熱Cは
(5) で 与 え ら れ る. 3) 量 子 統 計 に お い て 状 態kの
粒 子 数 をnk,エ
ネ ル ギ ー を εkとす る と
(6) 上 号FD統 式(6)を
計,下
号BE統
計.以
下 同 様.し
た が っ て,全 エ ネ ル ギ ーEは
式(3)と
用 いて
(7) { }内 第1項
は0と
な る.e-α-x=tと
変 数 変 換 して
(8) を 得 る. 一 方
,粒
子数 は
(9) で あ る.し
た が っ て,式(9)を
逆 に解 い て
(10) を 得 る.式(10)が 式(8)よ
式(8)の
積 分 範 囲 を 決 定 す る.
り フ ェ ル ミ気 体 の 場 合 の エ ネ ル ギ ー は
(11) と表 さ れ る.こ
こ でt0=exp(2πmV/h2β)−1と
お い た.変
数 変換
(12) を す る と,式(11)の
積分 は
(13) とな る.た だ し
(14) で あ る.
以 上 よ り
(15) が 導 か れ る.EFDとEBDの
差N2h2/4πmVは
温 度 に 依 存 し な い 一 定 値 で あ る か ら,
フ ェル ミ気 体 と ボ ー ズ 気 体 の 比 熱 は 等 し い こ と が 結 論 さ れ る. 注 こ の 結 果 は メ イ(May)に
よ る.
ボ ー ズ 粒 子 の 場 合 の 式(9)を3次 6.8の
式(8)に
元 の 場 合(問6.8の
式(8))と
比 べ て ほ しい.問
は ボ ー ズ 凝 縮 の 原 因 と な っ た 第1項1/(eα−1)Vが
に は そ の よ う な 項 は 存 在 し な い.α
は 自 由 に0∼
∞ と な り う る.そ
あ る が,式(9) し て こ の 結 果,
2次 元 ボ ー ズ 気 体 に は ボ ー ズ 凝 縮 が 存 在 し な い こ と が 導 か れ る.
問6.12
金 属 中の 自 由 電 子 は 外 界 に対 して −wの 位 置 エ ネル ギー を もち,OKに
お け る フ ェル ミ準位 ε0は外 界 よ り φ だ け低 い とす る(図6.10).電 子 は フ ェル ミ分 布 に従 うか ら,有 限 の 温 度Tで
はwよ
り高 い運 動 エ ネル ギ ー を もつ 電 子 が 存 在
し,こ れ らの 電子 は 金 属 表 面 か ら外 部 に流 出 す る こ とが で きる.温 度Tに
おい て
単 位 時 間 に単 位 面積 当 た り外 部 に流 出 す る電 流 を求 め よ.こ れ を飽 和 熱 電 子 流 と い う.た だ しwは
温 度 に依 存 せ ず,ま た 十 分 な数 の 電 子 が あ っ て 電流 が 外 部 に流
出す る に もか か わ らず 金 属 内 部 は熱 平 衡 状 態 に保 た れ て い る と仮 定 して よ い.
図6.10
熱電 子放 射
方 針 自由 電 子 の 運 動 エ ネ ル ギーEは
(1) で あ る.金 属 の 表 面 に垂 直 な 方 向 をxと
しよ う.電 子 が表 面 に衝 突 して外 へ 飛 び
出 した とす る と,飛 び 出 した後 の 運 動 エ ネル ギ ーE'は
(2) とな る.pyとpzは
運 動 量 保 存 則 に よ り変 化 しな い.運 動 エ ネ ル ギ ー の 変 化 分 は金
属 表 面 を の りこ え る の に使 用 され た わ けだ か ら
(3) が成 立 す る.式(1)と
式(2)を 式(3)に 代 入 す れ ば,電 子 が 外 に飛 び 出 す ため の 条
件 が わ か る.そ の 条 件 を満 た す 電 子 の 数 を求 め れ ば よ い. 解 式(1)と 式(2)を 式(3)に 代 入 す る と (4) を得 る.px'〓0な
の で,外
に 飛 び 出す こ との で き る 電 子 の 条 件 と して
(5)
を得 る. 単位 時 間 に 単位 面 積 当 た り表 面 か ら流 れ 出 る電 子 数 をNと υ
=(x方
向 の 速 度=〓)×(単位時
す る.
間=1)×(単位面積=1)
(6)
の 体 積 中 に含 ま れ る電 子 が金 属 表 面 に到 達 し,外 へ 流 れ 出 る こ とが で き るの で, Nは
(7) と し て 求 め ら れ る.n(E)は
運 動 エ ネ ル ギ ーEを
(5)の 条 件 の も と に 行 う.し
も つ 電 子 の 密 度 で あ る .積 分 は 式
た が っ て,
(8) と な る.Eは
式(1)で
与 え ら れ る.ま
た2は
電 子 の ス ピ ン 自 由 度 で あ る.
py とpzに 関 す る積 分 は
(9) と変 数 変 換 して 行 え ば よい.
(10) と な る.こ
こで
(11) と 置 い た.さ
ら に,
(12) とおいて
(13)
を 得 る. μ(T)〓
ε0,φ ≡w−
ε0≫kT,exp(β
件 の も と で 展 開 し,第1項
μ− βε)≪1と
仮 定 し よ う.式(13)を
こ の条
のみ求め る と
(14) を得 る.電 流 は,電 子 の 電 荷 ×Nで
与 え られ るか ら,結 局,
(15) を 得 る.式(15)を (work
function)と
た 大 き い.I/T2を
リ チ ャ ー ドソ ン(Richardson)の い う.普
式 と い い,φ
通 の 金 属 で は φ ∼ 数eVく
を金 属 の 仕 事 関 数
ら い でkTに
比 べ1∼2け
種 々 の 温 度 に 対 して 半 対 数 方 眼 紙 に プ ロ ッ ト し,そ の 傾 斜 か ら
仕 事 関 数 を 測 定 す る こ と が で き る.
章
7 第
磁
性
物 質 の 電 気 的 性 質 と磁 気 的 性 質 は 平 行 に 扱 え る点 と扱 え な い 点 が あ る.も っ と も大 きな相 違 は,誘 導 体 の 性 質 は お お む ね 古 典 統 計 で も説 明 で きる が,古 典 統 計 で は い か な る糸 も磁 性 を も ち え な い こ とで あ る.こ れ を フ ァ ン (Van
Leeuwen)の
定 理 と い う(問7.1参
リュ ー ウ ェ ン
照).
固体 内 の 電 子 を考 え る と き,電 子 が特 定 の 原 子 に 束 縛 され ず 固 定 全 体 をめ ぐっ て い る とい う描 像 を遍 歴(itinerant)電 子 モ デ ル とい い,電 子 が 主 と して 特 定 の 原 子 に 束縛 され て い る と考 え る描 像 を局在(localized)電 子 モ デ ル とい う.前 者 は金 属 に 対 して,後 者 は化 合 物 に対 して よ い近 似 で あ る と考 え られ て い る.問7.1∼7.4は 前 者 の 立 場 で 扱 い,問7.5以 磁 性 体 の,簡
降 で は後 者 の 立 場 で考 え る.
単 で は あ る が 重 要 な モ デ ル で あ る イ ジ ン グ(Ising)模 型 を説 明 す
る.こ れ は局 在 電 子 の 立 場 で の モ デ ル で あ る.結 晶 の 各 格 子 点 の 原 子 に 一 つ ず つ ス ピ ン を もっ た 電 子 が 局在 して い る と考 え る.こ の 結 晶 に 外 部 磁 場Hが
か か って
お り,ス ピ ン は磁 場 の 方 向 ま た は そ の 反 対 方 向 の み を と り う る とす る.こ れ を以 後,上
向 きス ピ ン,下 向 き ス ピン とい う こ と にす る.系 の エ ネ ル ギ ー は最 近 接 ス
ピ ン間 の み に働 く相 互 作 用 の エ ネル ギ ー と,磁 場 に よ るゼ ー マ ンエ ネ ル ギー の 和 で 与 え られ る(量 子 力 学 演 習 問5.8参
照).ス
りあ った ス ピ ンが 向 きの そ ろ っ た と き−J,反
ピ ン間 の相 互 作 用 エ ネル ギ ー は とな 対 方 向 の と きJと
す る.mを
ンの磁 気 能 率 とす る と きゼ ーマ ンエ ネル ギー は上 向 きス ピ ンに対 して −mH,下 きス ピ ン に対 してmHと N2,N1と
スピ 向
す る.上 向 きス ピンの 数,下 向 きス ピ ン の数 を それ ぞれ
す る.最 近 接 ス ピ ンが と もに上 向 きで あ る対 の 数 をN22,と もに 下 向 きで
あ る 対 の 数 をN11,上 N,一
向 き と下 向 き で あ る 対 の 数 をNl2と
つ の 格 子 点 の 最 近 接 格 子 点 の 数 をzと
立 で は な く,次
す る.格
子 点 の総数 を
す る と,N1,N2,N11,N22,N12は
独
の 関 係 が あ る.
(7.1) 上 に述 べ た こ と よ り,系 の エ ネル ギ ーEは
(7.2) で 与 え ら れ る. J>0な
ら,す べ て の ス ピ ン の 向 き が そ ろ っ た 状 態 が 最 低 エ ネ ル ギ ー 状 態 で,こ
れ を 強 磁 性(ferromagnetic)状
態 と い う.J<0な
ら,と な りの ス ピ ン が 互 い に 反 対
方 向 を 向 く状 態 が(そ れ が 可 能 な 格 子 で あ れ ば,注 参 照)エ ネ ル ギ ー が 最 低 で,こ れ を狭 義 の 反 強 磁 性(antiferromagnetic)状 は ラ ン ダ ム な 配 向 を と る.こ
態 と い う.高
温 で は熱 運 動 の た め ス ピ ン
れ を 常 磁 性 状 態 と い う.中
間 の あ る温 度 で 強 磁 性 状
態 ま た は 反 強 磁 性 状 態 か ら 常 磁 性 状 態 へ の 転 移 が 起 こ る こ と が あ る.こ
の転 移 は
相 転 移 の 一 例 で あ る.こ
たは臨界
の 温 度 を 転 移 温 度(transition
temperature)ま
(critical)温 度 と い う.
系 の 磁 気 的性 質 は式(7.2)よ
り分 配 関 数
(7.3) を 求 め る こ と に よ っ て 得 ら れ る.こ こ にg(N1,N12,N)はN,N1,N12が
与 え られ た
と き 系 の と り う る 配 置 の 数 で あ る. 格 子 点jに
お け る上 向 き ス ピ ン,下
向 き ス ピ ン を そ れ ぞ れsj=1,sj=−1で
し,す べ て の 格 子 点 に つ い て の 和 を Σj,す Σ
で表す と
表
べ て の最 近 接 格 子 点 対 に つ い て の 和 を
(7.4) と な る.βJ=K,βmH=Cと
お く と 分 配 関 数Zは
(7.5) で 与 え られ る.磁 性 体 の こ の モ デ ル を イ ジ ン グ モ デ ル とい う. 注 狭 義 の 反 強 磁 性 状 態 が 可 能 で あ るの は格 子 点 が 二 つ の 副 格 子a,bに れ,a格 子 の 格 子 点 の とな りがb格
子 の格 子 点 に,b格 子 の 格 子 点 の とな りがa格
子 の 格 子 点 に な り う る格 子 に お い て で あ る.1次 六 角 格 子,単
分か
元 格 子,2次
元 正 方 格 子,2次
元
純 立 方格 子,体 心 立 方格 子 は狭 義 の反 強磁 性 状 態 が 可 能 で あ るが,
2次 元 三 角 格 子,面 心 立 方 格 子 に お い て は不 可 能 で あ る. 2状 態 を と るス ピ ンは 量 子 力 学 の表 記 で は〓で
あ るが,こ
の 章 で はs=
±1と す る.イ
ジ ング モデ ル に お け るス ピ ン変 数 の 表 記 は著 者 に よって 異 な り,σ=
±1やs=±1/2な
どが 用 い られ る.他 の本 を読 む と き は,定 義 の仕 方 に よっ て 物
理 量 が 少 し変 わ っ て くるの で 注 意 をす る こ と.ま た イ ジ ン グモ デ ル の ハ ミル トニ ア ン も,磁 気 能 率 をm=1と
して(式(7.5)参
照),
(7.6) と 書 く こ と に す る.
問7.1 古 典 統 計 で は,い か な る 電子 系 も磁 性 を もち え な い こ と を示 せ(フ ァ ン リュ ー ウ ェ ンの 定 理). 方 針 磁 場 中 に お け る電 子 系 の ハ ミル トニ ア ン を使 って,古 典 統 計 に よ る分 配 関 数 を計 算 して み よ. 解 磁 場 中 で の 電子 系 の ハ ミル トニ ア ンHはi電
子 の 座 標 と運 動 量 をxi,piと
すると
(1) と書 け る(補 お よび 量 子 力 学 演 習 問1.13参 は ポ テ ン シ ャ ル,A(xi)は
照).eは
電 子 の 電 荷(<0),U(x1,…xN)
ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ル で あ る.こ れ を 古 典 統 計 に お け る
分配 関数
(2) に代 入 す る.piの
積 分 範 囲 は− ∞ ∼ ∞ で あ るの で 変 数 変 換
(3) を 行 っ て もZの
値 は 不 変 で あ る.よ
って
(4) とな る.ゆ え に分 配 関 数 す な わ ち 自 由エ ネル ギー は,磁 場 に 無 関 係 に な る.し た が って,磁 性 は も ち え な い.フ
ァン
リュ ー ウ ェ ンの 定 理 は,磁 性 が 本 質 的 に量
子 力学 的 現 象 で あ る こ と を示 す もの で あ る.量 子 力 学 演 習 問5.13を
参 照 せ よ.
補 電 磁 場 中 の 電 子 の ハ ミル トニ ア ン は,ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAと
ス カ ラー
ポ テ ン シ ャル φ を用 い て
(5) で 与 え られ る.磁 場Hと
電 場Eは
(6) で あ る が,
(7)
(uは 任 意 の 関 数) と 変 換(こ の 変 換 を ゲ ー ジ(gauge)変
換 と い う)さ れ たA'と
φ'を 用 い て 式(6)の
右 辺
を計 算 して も
(8) と な りEとHは,変
わ ら な い.し
た が っ て,Aと
の 分 だ け 自 由 度 を もつ.本 問 の 式(1)の
φ の と り 方 は い つ で も 関 数u
場 合,こ の 任 意 性 を 用 い て φ=0と
い う"ゲ
ー ジ"を
と っ た わ け で ,式(1)の
問7.2 量 子状 態kに
中 に ス カ ラ ー ポ テ ン シ ャ ル φ は 現 れ な い.
あ る 自由 電 子 の エ ネ ル ギ ー は,外 部磁 場Hに
よ るゼ ー マ
ン効 果 で
(1) に 分 裂 す る.εk0はH=0の (magneton)で
と き の エ ネ ル ギ ー で あ る.μBは
あ る(量 子 力 学 演 習 の 問5.8).こ
帯 磁 率xpを
い う.系 の 平 均 磁 気 モ ー メ
求 め よ.
方 針 自 由 電 子 に 対 す る 大 分 配 関 数 の 計 算(問6.2)を る.磁
磁 子
の 結 果,全 体 と し て 平 均 磁 気 モ ー メ
ン トを も つ.こ れ を パ ウ リの 常 磁 性(paramagnetism)と ン トMと
ボ ー ア(Bohr)の
気 モ ー メ ン ト と帯 磁 率 は,そ
磁 場 の ある場合 に拡 張す
れ ぞれ
(2) と して 求 め ら れ る.こ こ でnk± は そ れ ぞ れ εk± の エ ネル ギ ー 状 態 に あ る電 子 数 で あ る. 解 大 分 配 関 数 は 全 状 態 がk+とk-で
表 さ れ る か ら,式(1)よ
り
(3) と な る.自 由 電 子 の 場 合 と同 様 に ア ッペ ル 関 数 を用 い て,
(4) を得 る.こ れ よ り平 均 粒 子 数 は
(5) 磁 気 モ ー メ ン トは
(6) と求 め られ る. し た が っ て,1粒
子 当 た りの磁 気 モ ー メ ン ト
(7) が 求 め られ た. 帯 磁 率(式(2))を 求 め る た め に,式(7)を
磁 場H=0の
ま わ りで 展 開 す る(問6.2
補 参 照).
(8) を式(7)に 代 入 してHの1次
の項 まで 求 め る と,
とな る か ら,こ れ よ り帯 磁 率
(9) を 得 る. 自 由 電 子 系 のα=−βμ(T)(問6.2の
式(15))を
用 い,T〓0で
展 開 す るこ とに よ
り
(10) と,低 温 に お け るパ ウ リ常 磁 性 帯 磁 率 の 温 度 依 存 性 が 得 られ る.
問7.3 角 運 動 量Jを
もつ 原 子N個
る とす る.こ の 系 の分 配 関 数Z,磁 互 作 用 は無 視 す る.ま
よ りな る系 が一 様 な 外 部 磁 場Hの
化M,帯
中にあ
磁 率xを 求 め よ.た だ し原 子 間 の 相
た原 子 の 運 動 も無 視 し,磁 場 との相 互 作 用 の み 考 えれ ば よ
い.
方 針 各 原 子iが
と り う る状 態 は,磁 気 量 子数miに
よ って 表 され
(1) の2J+1通
り あ る(量
子 力 学 演 習 問4.3の
式(41)参
照).
原 子 と外 部磁 場 との相 互 作 用 ハ ミル トニ ア ンHは
(2) で 与 え られ る.gを
ラ ン デ(Lande)の
因 子 と い い,こ
こ で は 定 数 と考 え て 差 し支 え
な い.
解 全系 の分配 関数 は
(3) とな る. こ れ よ り磁 化Mは
(4) と な る.こ
れ を ブ リル ア ン(Brillouin)関
数BJ(x)
(5) を用いて
(6) と表 す.図7.1に
ブ リル ア ン 関 数 を 示 す.
図7.1
J
=1/2の
と き,た
ブ リル ア ソ 関 数BJ(x)と ラ ン ジ ュバ ン 関 数L(x)=B∞(x)
と え ば 電 子 を 考 え る とg=2
(7) と な る.ま
た 磁 場Hが
弱い とき
(8) と展 開 して
(9) と な る.
一 方
,磁 場Hが
十分 強い ときは
(10) より
(11) と一 定 の 値(飽 和 値)を とる.こ れ は 電 子 が す べ てmi=Jの 磁 場H=0で
の 帯磁 率xは 式(9)よ
状 態 で あ る.
り
(12) で あ る・ す な わ ち 温度T=1/kβ 注 J→
に 反 比 例 す る.
∞ で ブ リル ア ン関 数 は
(13) に 収 束 す る.L(x)を
ラ ン ジ ュ ヴ ァ ン(Langevin)関
数 と い う.ま た 式(7)で
す でに示
し た が,
(14) で あ る. 原 子 の 運 動 を無 視 した が,考 慮 して も磁 化 や 帯磁 率 は 変 わ らな い.磁 場 が な い と きの分 配 関 数 をZ0と
す る と,全 系 の 分 配 関 数 は式(3)と
あわせ て
(15) と な る.Z0に
はH依
存 性 は な い の で 式(11)や
問7.4 体 積V(=LxLyLz)の に磁 場Hを
式(12)は
箱 の 中 に あ るN個
変 わ ら な い.
の 電 子 を考 え よ う.い まz方 向
か け る と,系 の エ ネル ギ ー は1粒 子 当 た り
(1) と な る(量 子 力 学 演 習 問2.15).こ
の 系 の 帯 磁xdを
が 負 で あ る こ の 現 象 を 反 磁 性(diamagnetism)と 方 針 量 子 力 学 演 習 問2.15で 化 さ れ,z方
示 し た よ う に,電
子 の 運 動 は 磁 場Hに
内 で 調 和 振 動 を 行 う.こ
子 力 学 演 習 問2.15の
の 中 の ど こ に あ っ て も よい.す な わ ち,式(1)に
した が っ て大 分 配 関 数Ξ は,
し よ う.
磁率
よ り量 子 の調和振
式(4))を 満 た す か ぎ り,体積V お い て 同 じpzで 同 じnの 値 で あ
っ て も中 心 の 位 置 とい う 自由 度 が 残 っ て い る た め,各nに 退 して い る.こ の 縮 退 度 をg(n)と
示 せ.帯
い う.
向 に 対 し て は 自 由 運 動 を し,xy面
動 の 中 心 はy0=−c/eHpx(量
求 め,xd<0を
対 して エ ネ ル ギー は縮
(2) で 与 え られ る. 解 まず縮 退 度g(n)を
求 め る.有 限 な 空 間Vの
中 で 考 え て い る の で,pxはh
ご とに離 散 化 さ れ,間 隔Δpxの 中 に あ るpxの 数 は
(3) で 表 さ れ る.一
方,y0=−c/eHPxと,y0は0∼Lyの
範 囲 を と り う る こ とか ら
(4) が得 られ る.し た が っ てg(n)は
(5) とな る.は 式(5)を
じめ の2は 式(2)に
電 子 の ス ピ ン 自 由度 を考 慮 した もの で あ る.
代 入 して 大 分 配 関 数Ξを
求 め よ う.∫dz=Lzよ
り
(6) で,βpz2/(2m)=tと
変 数 変 換 を 行 い,
(7) とな る.こ れ を部 分 積 分 す る と,
(8) を 得 る.式(8)は
ア ッ ペ ル 関 数 φ(z,s)を 用 い て
(9) と表 さ れ る. 式(9)の
Σ の 和 を オ イ ラ ー-マ
ク ロ ー リ ン の 総 和 公 式(問5.16の
式(2))で 求 め
る.
(10) とな る か ら,大 分 配 関 数Ξ が
(11) と して 得 られ た. Ξ が 求 め られ たの で磁 化Mと
平 均 粒 子 数Nが
(12) (13) と得 ら れ る.式(12)と
式(13)か
ら1粒
子 当 た りの 帯 磁 率xdが
求 め ら れ る.結 果 は
(14) とな り,パ ウ リの 常磁 性 帯 磁 率(問7.2の
式(9)お よび 式(10))の1/3倍
で,負 符 号
を もつ.帯 磁 率 が 負 とい うこ と は,磁 場 と逆 方 向 に磁 化 が 発 生 す る こ と を意 味 す るの で,こ
れ を反 磁 性 とい う.磁 場 中 の 電 子 の 全 帯 磁 率xは パ ウ リの 常 磁 性 の 部
分 と式(14)の 部 分 との和 に な っ て い て,
(15) と な る. 補 式(14)は
ラ ン ダ ウ(Landau)に
い う.有 限 の 磁 場H(≠0)に
よ っ て 導 か れ た も の で,ラ ン ダ ウ の 反 磁 性 と
対 す る 帯 磁 率 を求 め る と,磁 場 に 対 して 振 動 す る 振 舞
い を す る こ とが 示 され る.こ れ を ドハ ー ス-フ ァ ン アル フ ェ ン(deHaas‐VanAlphen)
効 果 とい い,金 属 の フ ェル ミ面 な ど を実験 的 に調 べ る一 つ の 手 法 と して利 用 さ れ て い る.
問7.5 2次 元 正 方 格 子 上 の イ ジ ング モ デ ル を考 え る(図7.2参 数 をNと
し,磁 場H=0と
ギ ーf=F/Nのuに
す る.u=tanhKと
して1ス
照).格 子 点 の 総
ピ ン 当 た りの 自 由 エ ネ ル
よ る 展 開 を 求 め よ.こ れ を 高 温 展 開 と い う .た だ し周 期 的 境
界 条 件 を 用 い る こ と.
図7.2
方 針 磁 場H=0で
2次 元 正 方 格 子
の分配 関数 は
(1) と 書 け る.eKsisj,を べ き展 開 して,si2n=1,si2n+1=siで
あ る こ と を 用 い,展
開項 の
う ち Σ を と っ て も 消 え な い 項 を 集 め る. 解 eKsisjを べ き 展 開 す る と,
(2) と 書 け る.よ
っ てu=tanhKを
用 い て,
(3)
とな る.〈ij〉は最 近 接 格 子 点 対(ボ ン ド)を表 す か ら,2次 元 の 正 方 格 子 の 場 合2 N個 あ る.よ って,
(4) で あ る. さ てΠ(1+sisju)を のumの
展 開 し よ う.こ れ はuに
つ い て2N次
の 多 項 式 と な り, そ
係 数 は,
(5) で あ る.こ こ にiとjな
どは互 い に 隣 の 格 子 点 で あ る.iとi'な
あ る場 合 も現 れ る.式(5)の(sisj)に り,式(5)はm本
対 応 して格 子 上 でi点
どは 同 じ格 子 点 で
とj点 を 結 ぶ こ と に よ
の ボ ン ドよ りな る グ ラ フ で 表 さ れ る.
た とえ ば,図7.2の
例 では
(6) と な る(図7.3).こ
こ でsi=±1に
つ いての和 を とると
(7) で あ る の で,端 点 を もつ グ ラ フ と奇 数 個 の ボ ン ドが つ な が れ た 点 を もつ グ ラ フ の 寄 与 は消 え る.す な わ ち式(6)の 中 で 同 じsiの 奇 数 個 の 乗 積 に な って い る項 の 寄 与 は な い.残 っ た グ ラ フ は
(8) を 与 え る.し
た が っ て,umの
2N ×(m本 と な る.u,u2,u3の
係 数は
の ボ ン ドか ら な る 閉 じた多 辺 形 の 数) 係 数 は す べ て0で,0で
な い 係 数 の 現 れ る の はu4か
(9) らで あ
図7.3
(a)
u4の
ど.こ
(d)
図7.4a
な わ ち,図7.2の
(e)
高 温 展 開 でu6,u8の
係 数 で 消 え な い の は,こ
で あ る.す
展 開の 各項 の例
(b)
(c) る.
式(6)の
の 格 子 上 に4本
(f)
寄 与 をす る グ ラフ の ボ ン ドで 作 ら れ る 閉 じ た 四 辺 形
グ ラ フ で は(1,2,6,5,1),(2,3,7,6,2),(3,4,8,7,3)な
れ らの 四 辺 形 の お き 方 の 数 は 各 格 子 点 に 四 辺 形 の 左 上 端 を お い て よ い か ら
全 体 でN個
あ る.u5の
係 数 と な る グ ラ フ の 寄 与 は す べ て 消 え る.
u6の 係 数 と な る グ ラ フ で 消 え な い もの は 図7.4aの(a),(b)の 数 は 図(a)がN個,図(b)がN個,あ u8の
わ せ て2N個
係 数 で 消 え な い も の は 図7.4aの(c)∼(f)に
個,図(d)は
縦 向 き と横 向 き で2N個,図(e)は
六 辺 形 で,そ
で あ る. 示 し た もの で あ る.図(c)はN
か ぎ の 向 き が4通
り あ る か ら4N
の
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
(g) 図7.4b
個 で あ る.図(f)は 個,次
高 温 展 開 でu10の
寄与 の残 るグラ フ とその数
四 辺 形 二 つ の 組 で あ る.は
じめ の 四 辺 形 の あ り う る場 所 がN
の 四辺 形 は は じめ 四 辺 形 と重 な る こ とが で きず,ま
うこ とが で きな い か らN−5個
の 配 置 が可 能 で あ る.は
形 は 同 等 で あ るか ら,相 離 れ た二 つ の 四 辺 形 の る.結 局u8の (N+9)/2と
係 数 は 図(c)∼(e)の
た 辺 を共 有 して隣 り合 じめ の 四 辺 形 と次 の 四 辺
る あ り方 はN(N−5)/2個
であ
和 を と っ てN+2N+4N+N(N−5)/2=N
な る.
u10の係 数 で 消 え な い もの は10本 の ボ ン ドで 作 られ る グ ラ フ(図7.4b)で
あ る.
図(a)∼(f)は 向 きを そ の ま まに して 数 え る と,各N個 を考 え る と図(a)と(b)は N個,図(e)と(f)は
縦 と横 で 各2N個,図(c)と(d)は
あ る.回 転 と反 転 の 対 称 性 上,下,左,右
で 各4
長 方 形 よ り欠 け た部 分 を ど こ に と る か を 考 え て 各8N個
あ
る. 図(g)は 六 辺 形 と,四 辺 形 よ りな る離 れ た グ ラ フ で あ るが,そ の 数 は 六 辺 形 の あ り方 が2N個,四
辺 形 の あ り方 は 独 立 に 数 えれ ばN個
と辺 を 共 有 す る8個 る.図(a)∼(g)ま
を除 くの でN−8個
で あ るが,こ の う ち六 辺 形
とな る.し た が っ て,2N(N−8)個
で 加 え る と合 計28N+2N(N−8)と
であ
な る.
した が って,分 配 関係 は 以 上 ま とめ て
(11) と な る.
(12) の 形 式 的 展 開 を 行 う と(x>1に
対 して も),N2,N3等
の項 はすべて消 えて
(13) が 得 られ る.結 局1ス
ピ ン 当 た りの 自由 エ ネ ル ギ ーf≡F/Nの
高温展 開は
(14) と な る.u=tanh(J/kT)で 収 束 の よ い 展 開 で あ る.
温 度 が 高 く な る とu≪1で
あ る の で,式(14)は
高温 で
注 自由 エ ネル ギー は示 量 変 数 で あ るか らNに
比 例 す る.よ っ てN2,N3,…
の係 数 が 消 え るの は物 理 的 に 当 然 で あ る.し た が っ て,log(1+x)の は 行 わ ず に,式(13)の N2,N3,…
な か のNに
展 開 を実 際 に
比 例 す る 項 の み を と り出 せ ば よ い.た
だし
の 係 数 が 消 え る こ と を確 認 す る こ とは計 算 に誤 が な い こ とを チ ェ ック
す る一 つ の 方 法 で あ る.
問7.6 2次 元 正 方 格 子上 の イ ジ ング モデ ル の 自 由 エ ネル ギーfの 合 の 展 開 を求 め よ.低 温 でx≪1と
な る独 立 変 数x=e-2Kを
温 度 が低 い場
用 い よ.こ れ を低 温 展
開 と い う. 解 低 温 の と きはZを
次 の よ うに 変 形 す る.
(1)
(2) 定 数 項 を前 に 出 して
(3) さ て1−sisjは(si,sj)=(+,−)ま の と き0と け る.+−
な る.こ
た は(−,+)の
れ を そ れ ぞ れ+−
と き2と
ボ ン ド,++ボ
す べ て の 格 子 点 が+ス
ピ ン で あ っ た 状 態 よ り 出 発 し,次
べ て の ス ピ ン が+1の
転 して− に す る と,+− 左 欄).こ
で あ る.+−
ボ ン ドが6本
で あ れ ばx8を
つ な が る か(c),カ
総 和 を 行 っ た こ と に な る.
と き はΠe-K(1-sisj)=1と
の − ス ピ ン1個
な る.1個
を 選 ぶ 選 び 方 がN通
と な る の は2個
の ス ピ ン を反
で き る の でx4と
な
り あ る か ら 全 体 でNx4
の − ス ピ ン が 隣 り合 っ て い れ ば よ い.こ
あ る の で 寄 与 は2Nx6で
与 え,こ
ン ド また は
々 に格 子 点 の ス ピ ン を
ボ ン ドは そ の 最 近 接 格 子 点 と の 間 に4本
る(図7.5の
の 配 置 の 数 が2Nで
あ り,++ボ
あ る.
反 転 し て す べ て の 状 態 を つ く す と 式(3)の ま ず,す
た は(++)
ン ド,−− ボ ン ド と 名 前 を つ
ボ ン ドの と きexp{−K(1−sisj)}=e-2K=xで
−− ボ ン ドの と きexp{−K(1−sisj)}=1で
な り,(−−)ま
あ る(図7.5の(b)).+−
う な る の は 図7.5の(c)∼(f)の
ギ 型 に つ な が る か(d),4個
ボ ン ドが8個
よ う に − ス ピ ン が3個
横 に
の − ス ピ ン が □ 型 に つ な が るか
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
図7.5 低 温展 開 で寄 与 す る グラフ(左)と その数, お よび対応 す る高 温展 開の グ ラフ(右) (e),2個
の − ス ピ ン が 隣 り 合 っ て い な い 場 合(f)で あ る.こ
温 展 開 の 場 合 と 同 様 に2N,4N,N,N(N−5)/2で
れ ら の 配 置 の 数 は,高
あ る.し
た が っ て,
(4) と な る.再
びlog(1+x)の
形式 的展 開を行い
(5)
を得 る. 注 前 問 と本 問 で は磁 場H=0の
場 合 を扱 っ た が,低 温 展 開,高 温 展 開 の 方 法
は 磁 場 が 有 限 の 場 合 に も拡 張 す る こ とが で き る,正 方格 子,六 単 純 立 方 格 子,体 心 立 方 格 子,面
角格 子,三
角 格 子,
心 立 方 格 子 な ど,各 種 格 子 につ い て 自 由 エ ネル
ギ ー の 高 温 低 磁 場 展 開,低 温 高 磁 場 展 開 の 展 開 係 数 が得 られ て い る.参 考 文献16 をみ よ.
問7.7 磁 場H=0の
と きの2次 元 正 方格 子 上 の イ ジ ン グモ デ ル を考 え る.こ の
モ デ ル の 自由 エ ネ ル ギ ー をu=tanhKに 数 をamと
す る.ま たx=e-2Kで
am=bmを
示 せ.ま
つ い て展 開 した と きのumの
展 開 した と きのxmの
た これ よ り転 移 温度Tcを
高 温展 開 係
低 温 展 開係 数 をbmと
す る.
求 め よ.
方 針 高温展 開 に現 れ る グ ラ フ と低 温展 開 に 現 れ るグ ラ フ に1対1の
対 応がつ
け られ る こ と に注 目 す る. 解 高温 展 開 に お け るumの Nの
係 数 で あ る(Nは
図7.6
係 数amは,問7.5よ
り辺 の 数 がmの
全格 子 点 数).低 温展 開 に お け るxmの
表 格 子 と裏 格 子(実 線 は表 格 子,破
多辺形の数の
係 数bmは,問7.6よ
線 は 裏 格 子 を 表 す.)
Kc=
り+ス
ピ ンで 埋 め られ た2次 元 格 子 の うち い くつ か の ス ピ ン を − ス ピ ン に置 きか
え た と き,+− ボ ン ドの 数 がmで
あ るグ ラ フの 数 のNの
係 数 で あ る.
2次 元 正 方 格 子 の各 正 方 形 の 中 心 の 点 で作 られ る正 方 格 子 を裏 格 子 とい う(図7. 6).各+−
ボ ン ドを そ の 中 点 で 切 る裏 格 子 上 の グ ラ フで − ス ピン を囲 む 多辺 形 を作
る と,こ の 多 辺 形 は 高 温 展 開 に お け るm辺 対 応 を示 した.こ
形 と同 等 の もの に な る.図7.5に
れ で 高 温展 開 の グ ラ フ と低 温 展 開 の グ ラ フ が1対1に
られ る.す な わ ち,amはbmに
その
対応づ け
等 しい.
した が っ て,
高温 展開
(1)
低温 展開
(2)
ただ し
(3) と書 け る.す な わ ち,高 温 展 開 の 級 数 と低 温 展 開 の級 数 は 変 数 の 異 な った あ る 同 じ関 数g(t)で
与 え られ る.ゆ
え に相 転 移 を 与 え る温 度 が た だ 一 つ 存 在 し,そ れ が
g(t)の 特 異 点tcで 与 え られ る こ と を仮 定 す る と
(4) を満 た す 点 が 転 移 温 度 で あ る.式(4)よ
り
(5) すなわ ち
(6) 1/2sinh-1=0.44068よ
り強 磁性体
の 転 移 温 度 で あ る キ ュ リ ー(Curie)温度Tc
が,kTc/J〓2.26918,e-2J/kTc=tanhKc=√2−1〓O.41412と 注 裏 格 子 の 考 え を 用 い て2次
求 め ら れ た.
元 正 方格 子 の 臨 界 温 度 を得 た の は ク ラー マ ー ス
と ワ ニ エ(Kramers,Wannier,1941年)で 角 格 子 の 転 移 温 度 を 求 め る こ と が で き る.
あ る.こ の 方 法 を 拡 張 し て 三 角 格 子 や 六
反 強 磁 性(J<0)の 場 合 に は,低 温 展 開 は強 磁 性 の場 合 とは別 に考 え な けれ ば な ら な い が,高 温 展 開 の 式 は そ の ま ま成 立 す る.g(tanhK)は 0の ときのKN=−1/2sinh-1が
偶 関 数 で あ るの で,K<
反 強磁性 体 の 転移温 度 であ るネール(Neel)温度TN
を与 え る. 補 1944年,オ
ン サ ー ガ ー(Onsager)は
ル の 厳 密 解 を 得 る こ と に 成 功 し た.結
磁 場H=0の 果 はN→
と きの2次
元 イ ジ ン グモ デ
∞ にお い て
(7) で あ る.微
視 的 な 相 互 作 用 の 仮 定(式(7.6))か
ら 出 発 し,磁 性 体 の 相 転 移 現 象 を 厳
密 に 示 し た 例 と し て 画 期 的 な も の で あ っ た.ま た オ ン サ ー ガ ー(1949年)*お ン(Yang,1952年)に
よって 同 じモ テル の 自 発 磁 化(spontaneous
よび ヤ
magnetization):Ms
(8) も導 か れ た.転 移 点(臨 界 温度Tc)を 境 に して,磁 化 が 自発 的 に 現 れ る こ と(対称 性 の 自発 的 破 れ(spontaneous
symmetry
breaking)が
彼 らは 巧 妙 な 方法 で こ れ らの 美 しい 結 果 を導 い たの で,多 グ 病 患 者"と
示 さ れ た わ け で あ る. くの 研 究 者 が"イ
ジン
な り,こ れ らの 問題 に取 り組 む よ う に な った.現 在 で は よ り複 雑 な
相 互 作 用 を もつ モ デ ル な ど で厳 密 に解 け る もの が 発見 され て い る. 上 の 結 果 よ り,物 理 量 の 臨 界温 度 近 傍 で の振 舞 い を調 べ て み る と, エ ネル ギ ー
比
熱
(9)
磁化 の特 異 性 を もっ て い るこ とが わ か っ た.こ れ ら は そ れ まで の 近 似 理 論 で は 求 め ら れ なか っ た もの で あ る.帯 磁 率xは *
L.Onsanger,
知 ら れ て い な い.
Nuovo
Cimento,
Suppl.,
6,
N o.2,261(1949).こ
の10行
の 論 文 は あ ま り
(10) と さ れ て い る.一
般 にC,M,xな
ど のT∼Tc近
傍 の特異性 が
(11)
と な る と仮 定 し た と き,α,β,γ,α',γ'を
臨 界 指 数(critical index)と
い う.こ
れ ら
の 指 数 に よ っ て 相 転 移 の 種 類 が 区 別 さ れ る. 式(1)か
ら得 ら れ る エ ネ ル ギ ー を 図7.7に,比
る 自 発 磁 化 を 図7.9に
図7.7
図7.8
示 す.図7.10は
熱 を 図7.8に,式(8)か
ら得 られ
級 数 展 開 か ら得 られ た強 磁 性 帯 磁 率 の 逆
2次 元正方 格子 上 の イ ジソ グモ デルの エ ネルギ ー
2次 元正 方格 子上 の イ ジン グモ デル の比 熱
数,図7.11は
反 強磁 性 帯磁 率 で あ る.
図7.9
図7.10
2次 元 正方 格子 上の 強磁 性 イ ジソ グ モ デルの 自発磁 化
2次 元正 方格 子上 の強磁 性 イ ジ ング モ デ ルの 帯磁 率の逆 数
図7.11
2次 元正 方格 子上 の 反強 磁性 イ ジン グ モ デル帯 磁率
格 子 気 体 イ ジ ング モ デ ル は また次 の よ うに気 体-液 体 の 相 転 移 の モ デ ル と して も用 い られ る. 格 子 点 上 に上 向 き,下 向 きの ス ピ ン を お く代 わ りに,分 子 が 存 在 す るか , 存在 しな いか の二 つ の 状 態 を考 え る.隣
り合 っ た 二 つ の 格 子 点 に共 に分 子 が きた と き
の み相 互 作 用 の エ ネ ル ギ ー が 負(力 が 働 く),その 他 の場 合 の エ ネ ル ギ ー を0と す る モ デ ル を考 え る.こ の モ デ ル は気 体,液 体 転 移 の モ デ ル で,格 子 気 体(1attice gas) モ デ ル とい う.磁 性 体 の 場 合 の 自発 磁 化 曲線 か ら,気 体 一液 体 転 移 に お け る気 圧p と,そ の 比体 積(1分 子 当 た りの 体 積)υgお よび この 蒸 気 と平 衡 に あ る液相 の 比 体 積
υlとの 関 係 が 得 ら れ る.図7.12に
2次 元格 子 気体 の蒸 気圧 曲線(実 線) と等温 線(破 線)
図7.12
問7.8
こ れ を示 す .
外 部 磁 場Hの
も と に お け る 正 方 格 子 上 の イ ジ ン グ モ デ ル を 考 え る.最
近 接 ス ピ ン 間 の 相 互 作 用 をJ1,第2近 度 に お け る基 底 状 態 は 図7.13に れ て い る(問7.9).J1,J2,Hを
示 す(a),(b),(c),(d)の
系 全 体 の 磁 化Mの
(a) 図7.13
四 つ の 型 に 限 る こ とが 知 ら
化 過 程(magnetization
process)と
対 す る依 存 性 はJ1,J2,Hの
面 で 最 低 エ ネ ル ギ ー の 状 態 を探 す.
(b)
対零
た 系 の磁 は外部磁
関 係 で あ る.
方 針 エ ネ ル ギ ーEのJ1,J2,Hに J1/H,J2/H平
す る.絶
変 え た と き の 各 状 態 の 存 在 領 域 を 示 せ.ま
化 過 程 に ど れ だ け の 種 類 が あ る か.磁 場Hと
接 ス ピ ン 間 の 相 互 作 用 をJ2と
(c)
(d)
第1,第2近 接 相互 作 用 を もつ2次 元正方 格 子上 の イ ジソ グモデ ル におけ る基底 状態 の型
比 の み に よ るか ら
解 系 の エ ネ ル ギ ー を 考 え る.格 子 点 の 総 数 をNと 総 数,第2近
接 ス ピ ン対 の 総 数 は と も に2Nで
と す る.型(a),(b),(c),(d)に
す る と,最 近 接 ス ピ ン 対 の
あ る.+と−
お け る++,−−,+−
N(i)+-は 最 近 接 格 子 点 間(i=1),第2近
接 格 子 点 間(i=2)で
の ス ピ ン 数 をN+とN_ ス ピ ン対 数N(i)++,N(i)--, 表7.1の
よ う に な る.
表7.1
全 エ ネ ル ギ ー は
(1) で あ る か ら,表7.1よ
り各 状 態 の エ ネ ル ギ ー は
(2) (3) (4) (5) とな る.各
状 態 の エ ネ ル ギ ー が 等 し く な る と こ ろ を 求 め る と,
(6) (7) (8) (9)
(10) (11) とな る.こ れ を 図 示 す る と図7.14の
図7.14
J1/H−J2/H平
直線(破 線 部 と実 線 部 を含 む)と な る.
面 に お け る 第1,第2近
接 相 互 作 用 を もつ2次
正 方 格 子 上 の イ ジ ン グ モ デ ル の 基 底 状 態a,b,c,dの
第1象
限で はEaが
最 低 で あ る.Ea=Eb直
Ec直 線 の 上 部 で はEaがEcよ い.し た が っ て,ABCDの
り低 く,Ea=Ed直 右 上 部 で はEaが
状 態 で あ る.同 様 に してABEFの が基 底 状 態,三 角 形BECの
第4状
り低 く,Ea=
線 の右 上 部 で はEaがEdよ
り低
最 低 エ ネ ル ギ ー,す な わ ち(a)が 基 底
左 部 で は(b)が 基 底 状 態,FECDの
下 部 で はEc
内 部 で は(d)が 基 底 状 態 で あ る こ とが わ か る.こ れ らの
境 界 を太 い 実線 で 示 して お く.aが 反 強磁 性,dを
線 の 右 で はEaがEbよ
元
存 在領 域
強 磁 性 状 態,bが
反 強 磁 性 状 態 で あ る.cを
超
態 とい う こ とに す る.
J2/J1を 一 定 に 保 ち磁 場 を増 加 して ゆ くこ とは,図 の 中 に 原 点 か らJ2/J1の 傾 きを もっ た 半 直 線(鎖 線)を 引 き,こ の 直 線 上 を無 限遠 か ら中心 に 向 か って 進 む こ とで 表
(a)α 図7.15
(b)β,ε
第1,第2近 接相 互作 用 を もつ2次 元正 方格 子上 の イ ジン グモ デルの 磁化 過 程
(a)SQ
(b)SC
(c)BCC 図7.16
(c)γ,δ
第1,第2近
(d)FCC 接 相 互 作 用 を も つ 正 方 格 子(SQ),単
立 方 格 子(BCC),面
心 立 方 格 子(FCC)の
純 立 方 格 子(SC),体
基底 状態 とその存 在 領域
心
され る.こ の 途 中 相境 界 の 線 分 を よ こ ぎ る と き磁 化 が 変 化 す る.強 磁 性 状 態 の磁 化 を1に 規 格 化 す る と反 磁 性 状 態,超 反 強 磁 性 状 態,第4状 れ0,0,1/2で
あ るか らα-O,β-O,γ-O,δ-O,ε-O
態 の磁 化 は,そ れ ぞ
の 磁 化 過 程 は 図7.15の
よ
に な る. 注 磁 場0の (図7.13(d)は 磁 場0の
と きの 基 底 状 態 はJ1-J2平 面 に書 くと,図7.16の(a)の
よ うに な る
現 れ な い).
と き,第1,第2近
接 相 互 作 用 ま で 考 え た 単 純 立 方格 子,体
心 立 方格
子,面 心 立 方格 子 そ れ ぞ れ の イ ジ ング モ デ ル の基 底 状 態 は,図7.16(b)∼(d)の
よう
に な る こ とが 知 られ て い る. 交 換 エ ネ ル ギ ーJが 正 で あ る強 磁 性 体 と負 で あ る反 強 磁 性 体 は,図7.7と
図7.
8に 見 られ る よ う に,磁 場0の 場 合 に エ ネ ル ギ ー と比 熱 は 等 しい が,磁 化 特 性 は ま った く異 な っ て い る.第2近
接 相 互 作 用 が な い場 合,絶 対 零 度 で は,図7.15の(a)
と(b)の よ うに な る.有 限温 度 の磁 化 特 性 は 問7.10で1次 る.こ れ は,図7.20と
図7.21に
元 格 子 につ いて 求 め られ
与 え られ て い る.
強 磁 性 体 と反 強 磁 性 体 を混 合 す る と,J>0の
ボ ン ドとJ<0の
ボ ン ドが ラ ンダ
ム に 混 っ て い る系 が作 られ る.こ の よ う な系 に お い て は,強 磁 性 で も反 強 磁 性 で もな い新 た な 性 質(相)が 現 れ る こ とが あ る.こ れ を ス ピ ン グ ラ ス相 とい い近 年 の 重 要 な話 題 と な っ て い る.
問7.9 第1,第2近
接 相 互 作 用 を も った2次 元 正 方 格 子 上 の イ ジ ング モ デ ル に
お い て,基 底 状 態 は問7.8(図7.13)に
お け る四 つ に 限 られ る こ と を証 明せ よ(カ ー
ル,Karl). 方針 第1近
接 相 互 作 用 の み の イ ジ ング モデ ル の エ ネ ル ギ ー は,そ の ユ ニ ッ ト
で あ る単 位 正 方 形(図7.17)の エ ネル ギ ー の 和 の 半分 で あ る.第2近
接相互作 用の
あ る系 に 対 して も,全 エ ネ ル ギ ー が各 正 方 形 の エ ネ ル ギ ー の 和 の2倍
にな るよ う
工 夫 す る.そ の と き各 正 方 形 の エ ネル ギ ー を最 小 に す れ ば,全 体 の エ ネ ル ギ ー も 最 小 に な る. 解 まず 第1近 接 相 互 作 用J1の み存 在 す る場 合 を考 え る.格 子 点(i,j)に あ る ス
第1近 接相 互作 用 のみ もつ2次 元平方 格子 上 の イジ ングモ デ ルの単 位正 方 形 へ の分 割
図7.17
ピ ン をsijと す る と,系
の ハ ミ ル トニ ア ンHは
(1) (2) 式(2)の()内
は,一 つ の 単 位 正 方 形 の エ ネ ル ギ ー で あ る.い
を 定 め,sij,si+1,j,si+1,j+1,si,j+1をsa,sb,sc,sdと に分 け て,そ の 半 分 を(sa,sb,sc,sd)の 半 分 は(sb,sa,sd,sc)の
す る.格
ま 一 つ の 格 子 点(i,j)
子 全 体 を市 松 模 様 で 二 つ
繰 返 しで お お う.こ の と き 市 松 模 様 の 残 り の
繰 返 し で お お わ れ る(図7.17).各
正 方 形 の エ ネル ギ ー は どち
ら に対 して も
(3) で あ り,す べ て の 単 位 正 方 形 の エ ネ ル ギ ー の 和 は,各 辺 を2回 数 え て い るの で 全 エ ネ ル ギ ー の2倍
とな る.し た が っ て,一 つ の 正 方 形 の エ ネ ル ギ ー を最 小 にす る
配 置 は全 体 の エ ネ ル ギ ー を最 小 にす る. 次 に,本 題 の 第1近
接 相 互 作 用J1と 第2近 接 相 互 作 用J2の あ る正 方 格 子 を考 え
る.こ の と き各 正 方 形 に 対 して 第2近 接 相 互 作 用 を二 重 に数 え て お け ば,そ の エ ネル ギーは
(4) と な り,す べ て の 単 位 正 方 形 の エ ネ ル ギ ー の 和 はや は り全 エ ネル ギー の2倍 る(図7.18).す
とな
な わ ち,一 つ の 正 方 形 の エ ネ ル ギー を最 小 とす る配 置 の繰 返 しが
全 エ ネ ル ギ ー を最 小 とす る.ゆ え に全 エ ネ ル ギ ー を最 小 にす る 配 置 は 図7.19の
配
第1,第2近 接 相互 作用 の あ る2次 元平 方格 子上 の イ ジン グモデ ルの 単位 正方 形 への 分割
図7.18
置 の い ず れ か の 繰 返 しに 限 られ る. 磁 場 が 存 在 す る と きは1ス
ピ ン 当 た りの ゼ ー マ ン エ ネ ル ギ ー は―Hsで
あ り,各
格 子 点 は 四つ の 正 方 形 に共 有 され るか ら
(5)
(a) 図7.19
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
2次 元正 方格 子上 の イ ジン グモ デルの 基底 状態 とな り うる 単位 正方形 の 候 補
A
B
C1
C2
C3
D1
D2
D3
E1
E2
E3
E4
E5
E6
図7.20
3次 元単純 立 方格 子 上の イジン グモ デル の基底 状態 と な りうる単位 立 方体 の 候補
が 一 つ の 正 方 形 分 の エ ネル ギー と な る.こ れ を 図7.19の(a)∼(d)の
四つの配置 に
つ い て比 較 す れ ば,最 小 エ ネ ル ギ ー の状 態 を求 め る こ とが で き る.(図(e),(f)は 図 (a),(d)の 反 転 で あ る).こ れ に よ り前 問 の仮 定 が 証 明 せ られ た. 注 同様 の 方 法 で,第3近 2×2×2の
接 相互 作 用 まで あ る 単純 立 方 格 子上 の 基 底 状 態 は,
単位 立 方 体 の 配 置 の繰 り返 しで与 え られ る こ とが 示 され る(図7.20).
問7.10
N個
1) Nが
十 分 大 きい と き,1ス
比 熱,磁 化,帯
の ス ピ ン よ りな る1次 元 イ ジ ン グ モ デ ル を解 け. ピ ン当 た りの 自由 エ ネ ル ギ ー,平 均 エ ネ ル ギ ー,
磁 率 を それ ぞ れ 求 め よ.
2) 強 磁 性的 相 互 作 用(J>0)の 場 合 と反 強 磁 性 的 相 互 作 用(J<0)の 場 合 に つ い て,1)で 求 め た 量 に 違 いが 出 るか.た だ し,ハ
ミル トニ ア ン は
(1) と し,周
期 的 境 界 条 件SN+1=S1を
課 す もの と す る.
方 針 転 送 行 列 の 方 法(transfer
matrix
method)に
つ い て 述 べ よ う.次
の量 を
定 義 す る.
(2) こ こ でK=βJ,C=βHで
あ る.和
はsi=±1に
つ い て と る.分
配関数 は
(3) で 与 え ら れ る こ と は 明 白 で あ ろ う.す
な わ ち,AN(s1,s1)を
さ てAn(sn+1,s1)か
作 る こ と を 考 え る.定
らAn+1(sn+2,s1)を
求 め れ ば よ い. 義 よ り
(4) が 成 り立 つ. こ れ で 漸 化 式 が で き た わ け だ か ら,こ 解 式(4)を2行2列
れ を 解 け ば よ い.
の 行 列 で 表 現 す る こ と を 考 え よ う.S1,Sn+1,Sn+2が
それ ぞれ
±1と
な り う る.式(4)よ
り,
(5) こ れ か ら
(6)
を得 る.こ れ を行 列 で表 現 して
(7) を 得 る.Anで
こ の 行 列 を 表 す こ と に し よ う.す
な わ ち,式(7)は
(8) と な る.こ
の 行 列Vを
転 送 行 列 と い う.式(4)に
お い て〓
の 和 が 式(8)で
は行
列 の 乗 算 と な っ て い る 点 が 重 要 で あ る. さ て 式(8)を
解 こ う.
(9) で あ る.A1は
式(2)の
定 義 に 従 っ てA1(s2,s1)=exp(Ks1s2+Cs1)で
あ る か ら,
(10) と な る.よ
っ てANが
求 め ら れ た.す
な わ ち,
(11) で あ る. 式(3)を 用 い て 分 配 関 数 は
(12) と な る.VNの
対 角 和 を 求 め る に は,Vの
固 有 値 を 求 め れ ば よ い.式(8)のVに
対 して
(13) と な る 正 則 行 列Pは
一 般 に存 在 す る.λ1と
λ2がVの
固 有値 で あ り
(14) と 求 め ら れ る.こ
の 固 有 値 を 用 い て 式(12)∼
式(14)よ
り
(15) を 得 る. い まN→
∞ と す る と,│λ1│>│λ2│よ り
(16) と して,最 大 固 有 値 λ1のみ が 寄 与 す る.こ れ か ら 自由 エ ネル ギ ー は
(17) と求 ま る.式(17)の
よ う に系 が 十 分 大 きい と きの1ス
ピ ン 当 た りの 物 理 量 を求 め
る こ と を熱 力学 的極 限 を と る とい う. 以 下,平 均 エ ネ ル ギー はH=0の
とき
(18) H=0の
と きの 比 熱CHは
(19) 磁 化Mは(C≠0のlogλ1を
用 い て)
(20) 帯磁率χ は
よ り磁 場H=0で
(21) と な る. 2) 式(19)よ る.エ
り,比 熱 の 温 度 に 対 す る 依 存 性 はJの
ネ ル ギ ー も 式(18)よ
符 号 に よ らな い こ とが わ か
り,E/(N│J│)をkT/│J│の
関 数 と し て み れ ばJの
符号
に よ ら な い. 次 に 磁 化 を 考 え る.J>0の ≫ 第2項
と き,十 分 低 温 で は 式 は(20)の
と な り,M/N〓sgn(H)と
J<0の
と き は,十
な る.*
分 低 温 に な る と│H│>2│J│な
sgn(H),H<2│J│な
ら 第1項≪
2│J│で 磁 化 は0か
ら1へ
に そ ろ う が,H<2│J│で
分 母 の 括 孤 内 第1項
第2項
と ぶ.こ
ら 第1項≫
と な り,M/N〓0と
れ はH>2│J│で
は,ス
第2項
でM/N〓
な る.T=0で
はH=
ピ ンは す べ て磁 場 の 方 向
は ス ピ ン が 交 互 に 反 転 した 反 強 磁 性 状 態 と な る こ と を 示 し
て い る. 帯 磁 率χ は 式(21)よ →0と
りJ>0で
はT→0で
発 散 す る が,J<0で
な り,ま
た 有 限 の あ る温 度 で 極 大 を も つ .
図7.21にJ>0の
と き の 磁 化 特 性,図7.22にJ<0の
にJ>0の
*
場 合 の 帯 磁 率χFの 逆 数,図7.24に,比
符 号 関 数 :sgn(x)=
x/│x│ 0
(x≠0) (x=0)
はT→0でχ
と き の 磁 化 特 性,図7.23 熱 お よ びJ<0の
場 合 の帯 磁 率
図7.21
図7.22
1次 元強 磁性 イジ ソグモ デル に おけ る磁 化-磁 場特 性
1次 元 反強 磁性 イ ジソ グモ デ ルに おけ る磁化-磁 場特 性
χAを 示 す. 注 こ の 転 送 行 列 方 法 は,ク 年),久 保(1943年)に
ラ ー マ ー ス-ワ
よ る.イ ジ ン グ(1925年)は
関 数 の 方 法 を 併 用 し て 式(17)の
ニ エ(Kramers-Wannier,1941 こ の 問 題 を 順 列 組 合 せ の 方 法 と母
結 果 を 導 い て い る.
転 送 行 列 の 方法 は一 般 の 次 元 につ い て も適 用 で き る.1944年
にオンサーガ ーが
2次 元 イ ジ ン グ モ デ ル を解 い た の は,ま さ に こ の 方 法 に も とず い た もの に よっ て で あ っ た.た だ し,次 元 が上 が る につ れ転 送 行 列Vの
次 元(大 き さ)も 大 き くな り,
3次 元 以 上 につ い て この 固有 値 は まだ 求 め られ て い な い.
図7.23
図7.24
1次 元 強 磁 性 イ ジ ン グ モ デ ル に お け る 帯 磁 率χFの 逆 数
1次 元強磁 性 お よび反強 磁性 イ ジン グモ デル に おけ る比熱C , お よび1次 元 反強磁 性 イジソ グモ デル におけ る帯 磁率χA
問7.11
イ ジ ン グ モ デ ル に お い て,ス
関 関 数(correlation
function)と
呼 ぶ.1次
ピ ン対SkSlの
熱 平 均 値 を 〈SkSl〉 と書 き,相
元 イ ジ ン グ モ デ ル の 相 関 関 数 〈SkSk+r〉を
求 め よ.
方 針 熱 平 均 値 の 定 義 よ り,
(1) で あ る.後 の便 利 の た め に Σ の 取 り方 を少 し工 夫 した.分 母 は 前 問 で求 め た か ら 分 子 につ い て 考 察 し よ う.こ
こで も転 送 行 列 の 方 法 を使 う.
解 ま ず 前 問 に な ら っ てAn(sk,sl)を 定 義 し よ う.い
まの 場 合,
(2) と一 般 化 して お こ う.こ
れ か ら
(3) で あ るか ら,行 列ANは
(4) とな る.こ
こで 転 送 行 列Vは
(5)
で 与 え ら れ る. さ て 式(1)の
分 子 を 考 え よ う.Σiの
を 書 き か え て,
分子
中 に は 当 然skとsk+rも
含 ま れ て い る.分 子
(6) と し よ う.式(2)で
定 義 さ れ たAn(sk,sl)を
用 い て こ れ を表 す と
分 子=
(7) と な る.こ
こ で 周 期 的 境 界 条 件 よ りsN+1=s1で
あ る.式(7)の
う ちskの
含 まれ る
項 に 注 目 して
(8) と お く.Bは
変 数 と し てsk+rとs1し
か も た な い.前
問 で 行 っ た よ う に,こ
の式 を
行 列 で 表 す と,
(9) と 書 け る.こ
れ を 行 列A,B,σzを
用い て
(10) と 表 そ う(σzは
パ ウ リ(Pauli)行
列 のz成
同 じ こ と をsk+rに 対 して も行 う.そ
分,量
子 力 学 演 習 問4.5参
照).
の 結 果,式(7)は
分 子
(11) と な る.こ
こ でAn=Vn(式(4))と
は 単 に 行 列 演 算 と し て 式(11)を
対 角 和 の 性 質trABC=trBCAを 計 算 す れ ば よ い.
用 い た.後
転 送 行 列Vを
対 角 化 す る と式(11)が 楽 に求 め られ る.式(5)で 与 え られ たVは
実 対 称 行 列 だ か ら直 交 行 列Pを
用 い て,
(12) と対 角 化 で き る.ど うい う方 法 で対 角 化 して もか ま わ な い が,い まPは
直交行列
で あ る か ら,
(13) とお い てP-1VPを ろ う(付 録B2参
計 算 し,こ れ が 対 角 行 列 に な る よ うに θ を決 め るのが 簡 単 で あ 照).結 果 は
(14) の と きVは
対 角化 され,固 有 値 と して
(15) で あ る.こ
の 固 有 値 は も ち ろ ん 前 問 で 求 め た も の と 等 し い(問7.10の
式(12),(13)を
用 い て 式(11)を
式(14)).
計 算 し よ う.
分子
(16) こ
こで
(17) と な る か ら,
分 子=
(18) を 得 る.た 式(1)の
だ し,θ
は 式(14)か
ら求 め ら れ る.
分 母 で あ る 分 配 関 数Zは
前 問 で 求 め た(問7.9の
式(15))の
で,結 局,相
関 関数は
(19) と して求 め られ た.右 辺 はrの
み に依 存 しkを 含 まな い こ とに注 意 し よ う.相 関
関 数 は一 般 に二 つ の ス ピ ンskとsk+rの
間 の 距 離 の 関 数 で あ り,ス ピ ンの絶 対 的 な
位 置 に は依 存 しな い.た だ し周期 的 で な い境 界 条 件 の 場 合 に は こ の 限 りで は な い.
N→
∞ と して式(19)の
熱 力 学 的 極 限 を 求 め よ う.r≪Nと
す る.│λ2│<│λ1│よ
り,
(20) で あ る.外 部磁 場H=0の
ときは
(21) と な り簡 単 に な る. 補 相 関 関 数 〈sksk+r〉は ス ピ ンskとsk+rの な い. 一般 に
間 の 距 離rに
依 存 し,kに
は依 存 し
(22) と して 相 関 距 離(correlationlength)ξ で あ り,二
を 定 義 で き る.ξ は も ち ろ ん 温 度Tの
関数
つ の ス ピ ン間 の 距 離 が どれ だ け 離 れ れ ば ス ピ ンの 間 の 相 関 が 小 さ くな
る か の 指 標 で あ る.た
と え ば 式(21)の
場 合,
(23) で 与 え ら れ る.温 小 さ い.T→0に
度 が 高 い と き は ξ は 小 さ な 値 で あ り,二 近 づ く に つ れ ξ は 大 き く な り,T=0で
き ス ピ ン 間 の 相 関 は 大 きい とい う.T=0で rで あ る.1次
元 イ ジ ン グ モ デ ル の 場 合,T=0で
グ モ デ ル な ど の よ う に 臨 界 温 度Tc(≠0)が て ξ=∞
は 式(21)よ
つ の ス ピ ン間 の相 関 は ξ=∞
と な る.こ
の と
り(sksk+r)=±1=(sgn(J))
ξ=∞
と な っ た が,2次
存 在 す る場 合 に は,こ
元 イ ジン
のT=Tcに
おい
と な る.常 磁 性 状 態 か ら 強 磁 性 状 態 へ 相 転 移 す る た め に は,す べ て の ス ピ
ン が 互 い に 大 き な 相 関 を も つ こ と が 必 要 で あ る .こ ス ピ ン な ど)が
子,
協 力 的 に作 用 し合 って 要 素 単 独 で は 見 られ な い質 的 に異 る性 質 を
示 す 現 象 を 協 力 現 象(cooperative
問7.12
の よ う に 個 々 の 要 素(分
phenomena)と
い う.
イ ジ ン グ モ デ ル の 一 般 の 次 元 の格 子 上 の 帯磁 率 は,相 関 関 数 を 用 い て
表 され る こ とを 示 せ. 方針 帯磁率 の定義
(1) と,相 関 関 数 の 定 義
(2) を 使 用 す る. 解 ハ ミ ル トニ ア ン は
(3) で あ るか ら,分 配 関 数 は
(4)
で あ る . 帯 磁 率 の 定 義 に従 っ て
(5) を得 る.こ の 第1項
は相 関 関 数 で あ る.第2項
は磁 化 の 自乗 で あ る.
前 問 で注 意 した よ うに,一 般 に相 関 関 数 はス ピンsiとsjの間 の 距 離r=│i-j│の み(一
般 に はr=i−j)に
<s0> と して よ い.よ
依 存 す る.ま た磁 化 も系 全 体 の 平 均 値 で あ るか ら<si>=
って
(6) と な る. 磁 場H=0で,自 な り,第2項
問7.13
発 的 に 対 称 性 が 破 れ て い な い と き(常 磁 性 状 態)は,〈s0〉=0と は0と
な る.
一 般 の 格 子 上 に定 義 さ れ た イ ジ ン グ モ デ ル を考 え る.あ るス ピ ンsiに
着 目 した と き,こ の ス ピ ン に は まわ りの ス ピ ンか らの 相 互 作 用―Jsisjと 外 部 磁 場 の 影 響―Hsiが
及 ん で い る.ま わ りの ス ピ ンか らの 影 響 を近 似 的 に 有 効 場Heffと
磁 場 の 中 に く り込 む こ とは 可 能 で あ ろ う.Heffは の 平 均 的 な 向 き<s>に 比例 す るは ず だ か ら,zを
まわ りの ス ピ ンの 数zと
して
それ ら
最 近 接 格 子 点 の 数 と して
(1) と お け る.た だ し<s>は,後 っ て,ス
ピ ンsiに
で 矛 盾 が な い よ う に(self-censistent)に
決 め る.し
たが
つ い て の ハ ミル トニ ア ン は
(2) と 書 け る.こ
の 議 論 を 平 均 場 近 似(mean
field approximation)と
い う.こ
の近似
を用 い て,磁 化 を温度 と外 場 の 関 数 と して 求 め よ. 方 針 全系 の ハ ミル トニ ア ンは 式(2)を 用 い てH=ΣiHiと ニ ア ン を用 い て分 配 関 数Zを
求 め ,そ れ か ら磁 化Mを
の ス ピ ンの 平 均 的 な向 き,す な わ ち1ス
な る.こ のハ ミル ト
求 め よ.一 方,<s>は1個
ピ ン当 た りの磁 化Mだ
か ら,
(3) が成 立 しな くて は な らな い.こ れ が<s>を 矛 盾 が な い よ う に決 定 す る式 で あ る. 解 さ て分 配 関 数 は式(1)と 式(2)を 用 い て
(4) と簡 単 に 求 ま る.こ
れ が こ の 方 法 の よ い と こ ろ で あ る.磁
化Mは
し た が っ て,
(5) と得 ら れ る. さ て 式(3)を,こ
れ に あ て は め て<s>を
決 定 す る 式 を 得 る.
(6) こ れ を磁 場 につ い て 解 く と
(7) と な る.<s>を
横 軸 と し,H/Jzを
プ ロ ッ ト し た も の が 図7.25で
大 き け れ ば<s>はH/Jzの
単 調 増 加 関 数 で あ る が,1/βJzが
3価 関 数 と な っ て い る.そ
の境 界 は
あ る.1/βJzが
小 さ い と き に は<s>は
(8) で 与 え られ る か ら
(9) と な る.こ れ が 転 移 温 度(臨 界 温 度)で あ る.こ れ よ り低 温 で はH=0で な る 解,す
も<s>≠0と
な わ ち 自 発 磁 化 が 存 在 す る.
補 こ の 平 均 場 近 似 を,分 似 と も い う.
子 場(molecular
field)近 似 あ る い は ワ イ ス(Weiss)近
図7.25
平 均 場 近 似 に お け る 磁 場 −磁 化 特 性
平 均 エ ネ ル ギ ー は 〈H〉で 与 え ら れ る か ら式(1)と
式(2)よ
り
(10) とな る.正
しい(近 似 前 の)値
(11) に お い て 〈sisj〉〓<s>2と 近 似 す る と,
(12) とな り,式(10)の
相 互 作 用 の エ ネ ル ギ ー の 半 分 だ け少 な い.こ の 点 は,こ の 近 似
の す っ き り しな い と こ ろで あ る.こ れ を補 正 す る た め エ ネ ル ギ ー を計 算 す る場 合
に は前 もっ て
(13) とす る必 要 が あ る.こ のHiを
用 い て新 た に分 配 関 数 を求 め る と
(14) と な る.こ
れ か ら1ス
ピ ン 当 た りの エ ネ ル ギ ー は
(15) と な り,式(12)と 磁 場H=0の
一 致 す る よ う に な る. と き,
(16) と な る. つ い で にH=0の
も と で,い
う.ま ずt=(Tc-T)/Tcを の で 式(6)を
くつ か の 物 理 量 のT〓Tc近
定 義 し よ う.│t│≪1と
す る.こ
傍 の 振 舞 い を調 べ よ の 近 傍 で は<s>は
小 さい
展 開 す る.
(17) こ れ よ りt>0で
は(低 温 側,<s>≠0)
(18) と な る.t〓0で 式(18)と(16)を
は<s>=0で
あ る.
合 わ せ て,エ
ネル ギ ー は
(19)
これ か ら比 熱 が
(20) と 求 ま る.す
な わ ち,比
熱 に はT=Tcに
帯 磁 率 を 求 め よ う.式(6)を
磁 場Hで
おいて
「と び 」 が あ る .
微 分 して
(21) これか ら
(22) を 得 る(全 温 度,全
磁 場 で 正 し い).さ
てTc近
傍 でH=0で
は,式(18)よ
り
(23)
図7.26
磁 場H=0で
の物理 量 の温 度変 化
(た だ し,J=k=1,z=4と
した.)
と な りt-1で 磁 場0の
発 散 し て い る. と き の エ ネ ル ギ ー,比
熱,自
注 無 次 元 化 し た 温 度 τ,磁 場h,磁
発 磁 化,帯
磁 率 の 逆 数 を 図7.26に
示 す.
化 σ,帯 磁 率χ エ ネ ル ギ ー ε,比 熱cを
次
の よ う に 導 入 す る.
と す る と 式(14),(6),(22),(15),(9)は
そ れ ぞ れ
(24) (25) (26) (27) (28) と か け る.τ〓
τc=1付
近 の比 熱 お よび 帯磁 率 は
(29) (30)
(31) と な っ て い る.
8 第 章 確率分布と確率過程
本 章 で は,確
率 分 布 と確 率 過 程 の 初 歩 を 扱 う.
確 率 変 数Xが る.こ
の と き,平
あ る 確 率 分 布P(X)に 均 値(mean)と
従 っ て,値a1,a2,…,an,…
分 散(variance)が
を と り う る とす
次 の よ うに 定 義 され る.
平均値:
(8.1)
分散 : こ こ で,pnはX=anと
σ=√V[x]を Xが
(8.2)
な る 確 率P(X=an)=pnで
あ る(0〓pn〓1,Σnpn=1).
標 準 偏 差 とい う.
連 続 変 数 の 場 合 は,a<X<bで
れ は確 率 分 布 関 数(密 度 関 数)p(X)を
あ る確 率 をP(a<X<b)と
書 く.こ
用 いて
(8.3) と表 せ る.
(8.4) で あ る.式(1)と
式(2)は
(8.5) (8.6) と な る.
代 表 的 な 確 率 分 布 に は,次 1) 正 規(normal)分
布(ま
の よ う な もの が あ る. た は ガ ウ スGauss分
布)N(m,σ2)
(平 均 値m,
分 散 σ2を も っ)
Xがa<X<bと
な る碓 率 と して
(8.7) 密 度 関 数 で 定 義 す る と
(8.8) 2) 2項(binomial)分
布 B(n,p)
(8.9) 3) ポ ア ッ ソ ン(Poisson)分
布
(8.10) 4) コ ー シ ー(Cauchy)分
布
(8.11) 5) 指 数(exponential)分
布
(8.12) 確 率 変 数Xと る.こ
実 数tを 使 っ て,複
素値 変 数eitXを 作 る.こ れ も確 率 変 数 で あ
の平均値
(8.13) を 特 性 関 数 と 呼 ぶ.こ 同 様 に し て,n次
れ は 確 率 分 布 の フ ー リ エ 変 換 に ほ か な ら な い. の モ ー メ ン ト(moment)
(8.14) が 定 義 さ れ る(μ1=mで
あ る).式(8.13)よ
り
(8.15) と 展 開 し た と き,展
開 係 数 κnをn次
の キ ュ ム ラ ン ト(cumulant)と
呼 ぶ .μnや
κn
は,確 率 分 布 を特 徴 づ け る量 で あ る.た
と えば 正 規 分 布 は3次 以 上 の キ ュム ラ ン
トが0の 分 布 で あ る. 確 率 分 布P(X,Y)に
従 い,E[X]=mxとE[Y]=mYで
あ る 確 率 変 数XとYが
存 在 し た と き,E[(X-mx)(Y-mY)]をXとYの Cov(X,Y)と
表 す.す
共 分 散(covariance)と
い い,
な わ ち,
(8.16) した が っ て,Cov(X,X)=V[X]で
XとYの
あ る.
標 準 偏 差 を σx,σyと
す る と き,相
関関数
(8.17) が 定 義 さ れ る. パ ラ メ ー タ と し て 時 刻 を も つ 確 率 変 数 を 確 率 過 程 と い う.時 刻 は-∞<t< の 実 数 値 を と る こ と も あ る し,n=0,1,2,…
∞
と い う整 数 値 を と る こ と も あ る.
本 章 で は 状 態 も 時 刻 も 離 散 的 な 場 合 を 考 え る. 系 が 時 刻nに
お い て 状 態j(j=1,2,…N)に
(n)のみ に よ っ て(pj(n-1)
,pj(n-2),…
あ る 確 率 をpj(n)と す る.pj(n+1)がpj
に よ ら な い で)
(8.18) と 定 ま る と き,こ
の 過 程 を マ ル コ フ(Markov)過
移)確 率 行 列 と い う(AjiをAijと
程 と い い,A={Aji}を
遷 移(推
書 く流 儀 も あ る).
(8.19) で あ る.式(8.18)よ
り
(8.20) と 書 く こ と が で き る.
(8.21) (tは 転 置 行 列 を 示 す)を
分 布 ま た は 状 態 ベ ク トル と い う.p(∞)=limn→∞p(n)=limn→∞An
p(0)が 存 在 す る と き,こ れ を 最 終 分 布 と い う.limn→∞Anが 存 在 す れ ば 最 終 分 布 が 存 在
す る.式(8.18)を
書 き換 え て
(8.22) を 得 る.第1項
は 状 態iか
る確 率 を表 し て い る.こ
ら状 態jに
入 る確 率 を,第2項
れ を マ ス タ ー(master)方
系 の と り う る す べ て の 状 態 をM={π1,π2,… A(n)ji≠0で あ る と き,状 態iか に す る.図8.1に
お い て,矢
図8.1
らjへ
部 分 集 合S={
で な い と き,す な わ ちSに る と い う.Sの
程 式 とい う. πN}と す る.あ るn(n≧1)に
らjに
ら ば(Sに
の分 割
属 す る 状 態 か らSに
外 か ら入 っ て もSか
真 部 分 集 合S1が
対 して
ゆ け る.
πr1,πr2,…,πrk}を考 え る(M≠S).∀
(πj)であ る と き,πj∈Sな
出
分 解 不 可 能 な 集 合Si(i=1,2,…,m)と
残 りの 部 分Tへ
Mの
ら状 態iに
到 達 可 能 で あ る と い い ,(πi)→(πj)と 書 く こ と
印 に そ っ てiか
全 状 態Mの
は 状 態jか
ら外 に は 出 な い と き)Sを
閉 じ て い る と き,Sを
が 閉 じ て い る 真 部 分 集 合 を も た な い と き,Sは
πi∈Sに 対 し て(πi)→ 属 さな い状 態 へ は 到 達 可 能 閉 じて い
分 解 可 能 で あ る と い う .S
分 解 不 可 能 で あ る と い う.
次 の こ と が 成 立 す る. 1) (πi)→(πj),(πj)→(πk)な ら ば(πi)→(πk)で あ る. 2) 集 合Sが
分 解 不 可 能 な た め の 必 要 か つ 十 分 な 条 件 は ∀ πi,πj∈Sに
対 して
(πi) →(πj)が 成 立 す る こ と で あ る. 3) 二 つ の 分 解 不 可 能 な 部 分 集 合 は 一 致 す る か ま た は 全 然 共 通 要 素 を も た な い.
し た が っ て,Mを
分 解 不 可 能 な 部 分 集 合S1,S2,…Smと
残 りの 部 分Tと
に分
解 す る こ とが で き る(図8.1). (8.23)
(φ は空 集 合) Slの 中 の す べ て の 要 素 は(πi)→(πj)→ …(πi)と し て 自 分 に も ど っ て く る の で,再 帰 的(recursive)と
呼 ば れ る.一
移 的(transitive)と
い わ れ る.
方Tの
中 の 要 素 は 自 分 に も ど っ て こ な い の で,推
分 解 不 可 能 な 真 部 分 集 合 が 存 在 し な い と き,こ
の マ ル コ フ過 程 は既 約 で あ る と
い う. 以 上 の 議 論 か ら,遷
移 確 率 行 列Aは
適 当 に行 と列 を 入 れ か え て
(8.24)
の 形 に書 け る.こ こ にRiは
も はや 式(8.24)の 形 に分 解 さ れ な い.AnもAと
同じ
形 にブ ロ ッ ク化 され るこ とに注 意.Riは それ 自身 で遷 移 確 率 行 列 の条 件(式(8.19)) を満 た して い る. 状 態 πiか ら出 発 して ふ た た び 状 態 πiに戻 っ て くる遷 移 を考 え よ う.こ の 遷 移 は
(8.25) と し て 表 さ れ る.こ
の と き状 態 πiの 周 期d(πi)は
次 の よ う に 定 義 さ れ る.
(8.26) GCDは
最 大 公 約 数(greatest
common
divisor)で
あ る.次
の こ と が 成 立 す る.
(8.27)
た だ しSlは
式(8.23)で
分 解 し た{Si}の
う ち の 一 つ の 集 合 で あ る.
証 明 : Aji(n)≠0,Aij(m)≠0,Ajj(l)≠0と Aij(n+m+l)〓Aij(m)Ajj(l)Aji(n)≠ で,lもd(πi)の
す る と,Aii(n+m)〓Aij(m)Aji(n)≠0,
0.し た が っ て,n+mもn+m+lもd(πi)の
倍 数 と な る.d(πj)=GCD({…,l,…
が い え る.同
様 に してd(πi)〓d(πj)も
式(8.24)の
行 列Rlが,さ
い え る.証
倍 数
})であ る か ら,d(πj)〓d(πi) 明 終.
ら に 行 と列 の 番 号 を つ け か え て 次 の 形 に 分 解 さ れ る 場
合 が あ る.
(8.28)
こ こ にRl(1),Rl(2),…,Rl(d)の
次 元 は 等 し い.こ
の 場 合,〓
は存 在 しな いが〓
は そ れ ぞ れ 異 っ た 行 列 と して 存 在 す る. 例1
遷 移 確 率 行 列 が 次 の よ う に 与 え ら れ て い る系M={π1,π2,…,π7}を
考 え る.
(8.29)
行 と列 を入 れ か え る と
(8.30)
図8.2 こ の 系 は 図8.2の
遷移 図 の例
よ う な 遷 移 図 で 表 す こ と も で き る.矢
こ と が で き れ ば(πj)→(πi)でAij(n)≠0で (π6),(π6)→(π3)で
あ る か ら,Mは
分 集 合 で あ る.同 様 にS2={ る.S3={π2,π4}を
あ る.S1={
分 解 可 能 でS1は
π1,π5,π7}もMの
に 従 っ てjか
らiに
ゆ く
π3,π6}を 考 え る と(π3)→
その一つの分解 不可能 な真部
一 つ の分 解 不 可 能 な 真 部 分 集 合 で あ
と る と(π4)→(π2)で あ る が,(π2)か
ら(π4)へ ゆ く道 は 存 在 し な
い.し
た が っ て,S3はMの
分 解 不 可 能 な 真 部 分 集 合 で は な い.S4={π3,π6,π1}と
す る と(π3)→(π6),(π6)→(π3)で S4は 閉 じ て い な い.S1とS2は 例2
あ る が,(π1)か
ら(π3)に も(π6)に も ゆ け な い か ら
閉 じ て い る の でS4はS1とS2に
遷 移 確 率 行 列 が 式(8.24)の
形 に 与 え られ た と き,そ
分 解 可 能 で あ る. の 中 の 一 つ のRが
(8.31)
で 与 え られ る系 を考 え る.Rlは
番 号 をつ けか え る と,
(8.32)
と な る.こ
問8.1
れ は 式(8.28)で
周 期2の
確 率 変 数XとYに
例 で あ る.
つ い て 以 下 の 式 を 証 明 せ よ.aとbは
任意 の実数 と
す る.
1) E[aX+bY]=aE[X]+bE[Y]. 2) XとYが
独 立 な確 率 変 数 の と き
(1)
E[XY]=E[X]E[Y]. 3
) │
(2)
E[X]│〓E[│X│].
4) Y=aX+bの
(3)
と きV[Y]=a2V[X].
方 針 X=am,Y=bnと
(4)
な る 確 率 をP(X=am,Y=bn)=pmnと
P(X=am)=pm,P(Y=bn)=pnと
お き,平
す る.同
様 に
均 値 の 定 義 を 使 う.
解 1) 左 辺 は
(5) 〓ぐあ る か ら
で あ る.
(6) が い え る. 2) XとYが
互 い に 独 立 変 数 な ら ばpmn=pm・pnが
成 り立 つ.し
た が っ て,
(7) が 成 立 す る. 3) 定 義 よ り
(8) 4) 定 義 よ り
こ こで
〓を代 入 す る と
(9)
問8.2 正 規 分 布N(m,σ2)の
特 性関 数が
(1) で 与 え られ る こ とを示 せ.
解 特 性 関 数 の 定 義 式(式(8.13))に 正 規 分 布 の密 度 関 数(式(8.8))を 代 入 す れば よ い
(2) と な る.
問8.3
チ ェ ビ シ ェ フ(Chebyshev)の
不 等式
(1) を 証 明 せ よ.た
だ し確 率 変 数Xに
つ い てE[x]=m,V[X]=σ2と
す る.cは
任
意 の 正 の 実 数 で あ る.
方針 確 率 変 数xを
新 た に定 義 す る.
(2) こ の 変 数xの
平均値 は
(3) と な る.こ
こ で θ(x)は ス テ ッ プ 関 数 で あ る.
解 任 意 のXにつ
いて
(4) が 成 立 す る.し
た が っ て,
(5) を得 る.こ の 両 辺 をc2で われ ば 与 式 が 証 明 され る.
問8.4
シ ュ ワ ル ツ(Schwarz)の
不等式
(1) を 示 せ. 方 針 任 意 の 実 数 λ に つ い てE[(λX+Y)2]を
計 算 し,E[(λX+Y)2]〓0が
必
ず 成 立 す る こ と を 使 う. 解 E[(λX+Y)2]を
展 開 す る.
(2) これ は 必 ず 非 負 だ か ら,λ に つ い て の 判 別 式 は0か
ま た は 負 で あ る.す な わ ち,
(3) が 成 立 す る.し た が っ て与 式 が 示 され た.
問8.5
X1,X2,…,Xnを
互 い に独 立 で 同 一 の 確 率 分 布 に従 う確 率 変 数 とす
る. と す る.こ
の と き,
(1) につ い て
(2) で あ る こ と を 示 せ. 方 針 こ こ で,XkとXは
互 い に 独 立 で な い こ と に 注 意 す る.E[(Xk-X)2]=
E[{(Xk-m)-(X-m)}2]と
分 け てE[S2]を
計 算 す る.
解 平 均 値 につ い て は 明 らか.
(3) E[S2]に
つ い て は 方 針 に 従 い,
(4) 第1項
は
(5) で あ る.第2項
につ い て はXの
うちXkと
等 しい もの だ けが 残 るの で
(6) 第3項
に つ い て も同 様 に
(7) 以 上 を ま とめ る と
(8) を得 る.
問8.6
X1,X2,…,Xn,…
V[Xk]=σ2(k=1,2,…)と
を 互 い に 独 立 な 確 率 変 数 と し, E[Xk]=m, す る.こ
の と き任 意 の 正 数
ε(>0)に
対 し,
(1) が成 立 す る こ と を証 明 せ よ.こ れ を大 数 の 弱 法 則 とい う. 方 針 チ ェ ビ シ ェ フの 不 等 式 が 使 え る(問8.3参
照).た だ しcを
ε に お きか え
る. 解 新 し く確 率 変 数Xn≡(X1+X2+…+Xn)/nを
導 入 す る.こ の 変 数 の 平 均
値 と分 散 は,
(2)
(3) と な る.こ
こ で,各Xkが
互 い に 独 立 な こ と よ り,k≠jの
m)]=0で
あ る こ と を 使 っ た.
式(2)と
式(3)よ
りXnに
と きE[(Xk-m)(Xj-
対 しチ ェ ビ シ ェ フ の 不 等 式 を 使 う と
(4) を 得 る.し
問8.7
た が っ て,n→
∞ と す れ ば,式(1)が
証 明 さ れ る.
以 下 に 述 べ る 定 理 を 証 明 せ よ.
定 理 X1,X2,…,Xn,… る.E[Xk]=m,V[Xk]=σ2と
を 同一 の確 率分 布 に従 う互 い に 独 立 な確 率 変 数 とす す る.こ
の と き任 意 のa,bに
対 し(a<b),
(1) が成 立 す る.Xnは
(2) で 定 義 さ れ る.た
だ しE[│Xkl│]<K<
(Lindeberg-Levi)の 方 針 式(1)の し た が っ て,中
∞ と す る.こ
中 心 極 限 定 理(central
1imit theorem)と
右 辺 は 標 準 正 規 分 布N(0,1)の 心 極 限 定 理 は"Xnはn→
れ を リ ン デ ベ ル グ ーレ ビ ー い う.
区 間(a,b)に
∞ でN(0,1)に
お け る 確 率 で あ る.
従 う"と
い い か え られ
る. Yk=Xk-mと
お け ば,E[Yk]=0,V[Yk]=σ2で
す れ ば 十 分 で あ る.い 関 数〓(t;Xn)がn→ し,分
い か え る とm=0の ∞ でN(0,1)の
あ る.こ
の {Yk} に対 し証 明
と き を 証 明 す れ ば よ い.こ 特 性 関 数(問8.2参
布 が 正 規 分 布 に な る こ と の 証 明 と す る.
こで は特 性
照)に 収 束 す る こ と を 示
解 Xkは
同一 の 確 率 分 布 に従 うの で,φ(t;Xk)=E[eitXk]に
はk-依 存 性 が な
く,す べ て 同 じ値 で あ る. 一 方Xnの
特性 関 数は
(3) と な る.こ
こ で,Xkが
互 い に 独 立 な 確 率 変 数 で あ る こ と を 使 っ た.
X kの 特 性 関 数φ(it/√nσ;Xk)をtに
つ い て2次
ま で テ ー ラ ー 展 開 す る.
(4) こ こ でR3は
剰 余 項 で あ り,0<
θ <1と
して
(5) で あ る.し
た が っ て,式(4)はE[Xk]=0,E[Xk2]=σ2を
使 って
(6) と な る.仮
定 よ りE[R3]を
評 価 す る と,
(7) で あ るか ら
(9)
(8) が 成 立 す る. n →∞ で は
で あ るの で 結 局,
(10) を得 る.右 辺 は ま さ し く標 準 正 規 分 布 の特 性 関 数(問8.2の
式(1))で あ る.し た が
っ て 中 心 極 限 定 理 が 証 明 され た. 注 この 定 理 は数 値 計 算 の 分 野 で も よ く使 わ れ る.た
と えば,一 様 な乱 数 か ら
正 規 分 布 乱 数 を作 る に は以 下 の よ う な 手 続 き を と る. ① 一 様 乱 数Xkをn個
発 生 させ る.
② ① で作った 乱 数 か ら〓 は,上 の 定 理 に従 え ばn→
問8.8
に 従って,Xnを
作 る.このXn
∞ で 正 規 分 布 して い る.
確 率 分 布 関 数p(X)に 対 して モ ー メ ン トμnとキュ ム ラント κnを考 え
る. 1) κ1はXの
平 均 値 で あ るこ と を示 せ.
2) p(X)とp(X−X1)に
対 す るκnの 関係 を求 め よ.
解 1) 特 性 関 数 式(8.13)に お い てeitXを 展 開 して
(1) 式(1)の 対 数 と 式(8.15)を κ 1はXの
比 較 してκ1=μ1を
得 る.式(8.14)よ
平 均 値 で あ る.
2) p(X−X1)に
対 す る 特 性 関 数 をφ1(t)と す る.
り μ1=E[X]だ
か ら
(2) (3) す な わ ちp(X−X1)に だ け増加
対 す るキュ ム ラント はp(X)の
し,κ2,κ3,…は
注 キュ
不 変 で あ る.
ム ラント を 半 不 変 数(semi
布 に 対 して は 奇 数 次 のキュ ント が0の
invariant)と
ム ラント は0で
あ る.正
分 布 と し て 特 徴 づ けら れ る(問8.4参
平 均 値 の 存 在 し な い 分 布 も あ る が,特 c|t| )).3次
のキュ
そ れ に く らべ る とκ1がX1
ム ラント
い う の は こ れ に よ る.対 規 分 布 は3次
照).ま
称分
以 上 のキ ュ ム ラ
た,コ ー シ ー 分 布 の よ う に
性 関 数 は 存 在 す る(φ(t)=exp(imt−
は 分 布 の 左 右 の 非 対 称 度 を 表 す 目 安 に,4次
のキュ
ム
ラント は 分 布 の ピ ー ク の 鋭 さ を 表 す 目 安 に な る.
問8. 9 1) 正 規 分 布
(1) 2) 2-δ 分 布
(2) 3) 矩 形 分 布
(3) その 他 の そ れ ぞ れ に つ い て,4次
ま で のキュ ム ラントκ1,κ2,κ3,κ4を
求 め よ.
解 い ず れ の 分 布 に 対 し て も,前 問 に よ りκ1は 平 均 値 す な わ ちκ1=X0で と は 明 ら か な の で,以 1) 正 規 分 布
下X0=0と
す る.
あるこ
(4) ゆ え に
(5) 2) 2−δ 分 布
(6) よ っ て
(7) 3) 矩 形 分 布
(8) j0(x )は0次
の 球 ベ ッ セ ル 関 数 で あ る.
(9) よ っ て
(10) 注 キュ 照).分
ム ラント の3次
ま で の 近 似 で は 上 の 三 つ の 分 布 は 等 価 で あ る(図8.3参
布δ(X−X0)はκ1=X0,κ2=κ3=…=0で
問8. 10 あ る系 が 単 位 時 間 に状 態jからiに 散 時 間n=0,1,2,…を
考 え る).行 列Aを
特 徴 づ けら れ る.
うつ る確 率 をAijと す る(時 間 は離 遷 移 確 率 行 列 とい う.Aは
確 率 であ
(a)
(b) 図8.3
正 規 分 布 と2次
ま で のキュ ム ラント の 等 しい 矩 形 分 布(κ2ま で),
破 線 は2− δ分 布(κ2ま で),実 線 は3− δ分 布(κ4ま で)(本 3−δ分 布に ふ れ て い な い が3− δ分 布 を も示 した .)
文 には
るの で
(1)
で あ る.2番
目の 式 は,あ る状 態 に あ った もの は必 ず ど こか の 状 態 に ゆ くこ と を意
味 す る.こ の と き 1) Aの
固有 値 の 絶 対 値 は1に 等 しい か そ れ 以 下 で あ り,
2) 固 有 値1に 属 し,そ の 要 素 が す べ て1で
あ る左 固有 ベ ク トル が 存 在 す る.
以上 を証 明せ よ. 解 Aの
左 固有 ベ ク トル をυiL,固 有 値 をλ とす る と
(2) で あ る.υjLの 最 大 成 分 をυjMLとす る と
(3) j=jMの
と き式(2)の 両 辺 の 絶 対 値 を とる と
(4) υiLを最 大 の 成 分υjMLで お きか え て Σiの和 を と る と
(5) 式(4)と 式(5)よ
り
を 得 る. 次 に 式(2)に
お い て す べ て のiに
つ い てυiL=1と
を得 る.し た が って,υiL=[1,1,…,1]は
お く とΣiAij=1と
固 有値1に
な り,式(1)
対 す る左 固 有 ベ ク トル で あ る.
よ って2)が 証 明 され た.
問8.11 遷 移 確 率 行 列Aの
固 有 値 をλiと す るλiは 一 般 に 複 素 数 で あ る.λi=
1と な る もの が ただー つ で 他 の λiは│λi│<1を
み たす と き,分 布 は最 終 分 布 に 到
達 す る こ と を示 せ. 方 針 行 列 のジョル ダ ン(Jordan)標 準 形 を用 い る(補参 照). 解 適 当 な 行 列Pに
よ りAはジョル
ダ ン標 準 形 に変 換 で きる.
(1) す なわち
(2) と な る.こ
こに
(3)
で,1,0は
そ れ ぞ れ 単 位 行 列 お よび 零 行 列 で あ る.Λiは
(4)
で,固
有 値 は│λi│<1で
あ る.
こ れ か ら
(5)
(6) │λi│<1よ
り, 〓0(i=1,2,…,q)と
な る.ゆ
え に
(7)
(8) で,式(8)は
初 期 分 布 に応 じた最 終 分 布 を与 え る.
注 |λi|=1と
な る λ が 二 つ 以 上 あ る場 合 は 問8.16を
補 ジョル ダ ン標 準 形
複 素 数 の 成 分 か らな るn次
み よ.
の 正 方 行 列Aの
値 を λ1,λ2,…λnと す る.適 当 な右 固 有 ベ ク トル 行 列Rと
相異 る固有
左 固 有 ベ ク トル 行 列L
が 存 在 して(AR=ΛR,LA=LΛ)
(9)
とな る.式(9)をジョル 胞 と い う.Rお
ダ ン標 準 形,Λm(p)をλmに 対 す るAのp次
よびLは
前 出 のPお
固 有 値 λmに 対 す るAの
のジョル ダ ン細
よびP‐1で あ る
固有空 間の次元 は
(10) で 与 え られ る.式(10)は
また固 有 値 λに対 す るジョルダ ン細 胞 の個 数 に等 しい(証 略).
問8.12
1か ら2Rま
っ て い る.一 方,1か ド を 抜 き 出 し,こ
で の 番 号 を つ け た 球 が,二
ら2Rま
い ず れ か に入 のカ ー
の 番 号 の つ い た 球 を い ま 入 っ て い る 壼 か ら他 の 壼 に 移 す .抜
出 し た カ ー ドは も と に も ど す(図8.4).こ Aに
つ の 壼A,Bの
で の 番 号 を 記 し た カ ー ドが あ る .任 意 の1枚
入 っ て い る球 の 数 をn0と
の 過 程 を 毎 秒1回
した と き,時
刻s(s=1,2,…)に
き
繰 り返 す.時 刻s=0で お け るAに
入 って
い る球 の 数 の 平均 の 数 を求 め よ.
壼 A,Bと カ ー ド箱 が あ る .カ ー ド5が 選 ば れ た ら 球5は い ま 入 っ て い る 壷Aか ら他 の 壷Bに 移 され る.カ ー ド5は も とに も どす . 図8.4
エ ー レ ン フ ェス トの 壺
方 針 帰 納 法 で 考 え て み よ う.ま ず,s−1回 にns−1個
の 球 が 入 っ て い た と す る.次
解 s−1回
の 試 行 でAの
数 がns−1で
中 に あ る球 の カ ー ドを 引 け ばAの る.Bの 2Rで
た が っ て,s回
壼の 中
ど う与 え られ る か .
あ っ た と す る.s回
目 の 試 行 に よ り,Aの
数 は(ns−1−1)に な る.こ の 確 率 はns−1/2Rで
中 の 球 の カ ー ドを 引 け ばAの あ る.し
の 試 行 が 終 っ た 時 点 でAの
の 試 行 でnsは
後 のAの
数 は(ns−1+1)と
あ
な り,そ の 確 率 は(2R−ns−1)/
平 均 の 球 の 数nsは
(1) (2) と な る.
この 非斉 次 定差 方程 式 を解 く.Rが 二 つ の壼 に 同 数 個(R個)入
十 分 大 き い と き十 分 時 間 が た て ばA,Bの
っ て い る こ とが期 待 され るの で
(3) と お き,こ
れ を 式(2)に
代 入 す る.
(4) した が っ て
(5) と な る.bは
初 期 条 件 か ら定 ま る.s=0の
とき
(6) で あ る か ら,
(7) を得 る.球 の 数 が十 分 多 けれ ば
(8) とな り,AとBの 初 期 値n0−Rが
中の 球 の 数 の 平 均 値 は 時 間 が た つ につ れ 同 数 に近 づ い て い く. あ る時 間 の後1/e倍
う.本 問 で は 式(8)よ り τ=Rで
に な る と き,こ の 時 間 の こ と を時 定 数 τ とい
あ る.
補 しか し,こ の こ とは再 帰性 と矛 盾 す る もの で は な い.時 刻0に にn個 の球 が あ る と き,時 刻sに 刻sに
お い て は じめ て壺Aの
お い てm個
球 の 数 がmと
お い て壺A
の 球 が あ る確 率 をP(n|m;s),時 な る確 率 をP'(n│m;s)と
す る と,定
義より
(9) で あ る.再 帰 性 とは 試 行 を く り返 して い れ ば 必 ず 初 期 状 態 に も ど る こ と を い うの
で,再 帰 性 は
(10) で表 され,本
問 の 場 合 は これ を証 明 す る こ とが で き る.ま た 平 均 再 帰 時 間 θnは
(11) で 与 え られ るが,本
問 の場 合
(12) とな る こ とが 示 さ れ て い る.式(7)で 与 え られ た壺Aの (n|m;s)を
時 刻sに
お け る平 均 値 はP
用 い ると
(13) と 書 く こ とが で き る.R=10,n0=20と 定 数 τ=10秒,平 2.77時
均 再 帰 時 間 θ=12.13日
間,θ=106000年
1.5×1010年
の 試 行 に1秒
と な る.R=10000,
か か る と す る と,時 n0=20000な
ら τ=
の オ ー ダ ー と な る(ビ ッ グ バ ン以 来 現 在 ま で の 宇 宙 の 寿 命 は
と い わ れ て い る).
本 問 を エ ーレン の 問 題 は,遷
し,1回
フ ェ スト(Ehrenfest)の壺
の 問 題 と い う.エ
ーレン
フ ェ スト の 壷
移 確 率 行 列Aが
(14)
で 与 え ら れ る確 率 過 程 で あ る.Aij(i,j=0,1,…,2R)は,壼Aがj個
の 状 態 か らi
個 の 状 態 に移 る遷 移確 率 で あ るか ら式(9)のP(n|m;s)は
(15) で あ る.
問8.13 エ ーレン フ ェスト の壼 の 問題 を遷 移 確 率 行 列Aを け.た だ し球 の 数2R=4と
対 角 化 す る方 法 で解
せ よ.ま た初 期 状 態 で は す べ て の 球 がAの壺
に入 って
い た とす る. 方 針 遷 移 確 率 行 列 、Aは問8.12式(14)よ
り
(1)
で 与 え られ る か ら,こ れ を対 角 化 す れ ば よ い. 解 P−1AP=Λ
を満 足 す る行 列Pは
(2)
で あ り,固 有値 行 列Λ は
(3)
と な る. s=0でAの
壺 に4個
全 部 入 っ て い る 分 布 はp(0)=[0,0,0,0,1]tで
与 え ら れ る.
s時 間 後 の 分 布p(s)は
(4) よ り求 ま る.し
た が っ て,
(5) と して 得 ら れ る.こ
れ に 式(2)と
式(3)を
代 入 し て,
(6)
と求 ま る.結
局
sが 偶 数 (7)
sが 奇 数 で あ る.時 刻sに
お け るAの
中 の 球 の 平 均 値nsは,sが
偶 数 で も奇 数 で も,
(8)
と な り,先
に 求 め た 結 果(問8.12の
式(7))と 一 致 す る(い ま2R=4).
さ てs→
∞の と き の 分 布p(∞)を
よ い が,偶
数 と奇 数 で 結 果 が 異 な る.す
考 え よ う.こ れ は 式(7)に お い てs→
∞ とす れ ば
なわち
(9) (10) で あ る.こ の こ とは,系は
永 久 に最 終 分 布 に達 しな い こ とを意 味 して い る.
問8. 14 遷 移 確 率 行 列Ajiが,次
の行 列 で 与 え られ た と き の最 終 分 布 は ど うな
る か.
(1)
方 針 Aは
実 対 称 行 列 で あ る の で,こ
解 固有 方程 式 AP=PΛ
れ を対 角 化 す る 直交 行 列Pが
存 在 す る.
を解 い て
(2)
を得 る.Pは
直交 行 列 だ か ら
(3) で あ る.Λ
は
(4)
とな り
(5)
し た が っ て
(6) とな るの で,最 終 分 布 は 初期 分 布 の い か ん に よ らず 一 様 分 布
(7) とな る.
問8. 15 遷 移確 率 行 列Aが
(1)
で 与 え られ る系 の 最 終 分 布 を考 察 せ よ. 解 Aは
下 三 角 行 列 で あ るか ら,固 有 値が1/4,1,2/3で あ るこ とは ただ ち に わ か
る.こ の 固有 値 に対 応 す る固 有 ベ ク トル 行 列Pを
求め る と
(2)
これ よ り
(3)
よ っ て
(4)
ゆ え に 初 期 分 布p1(0),p2(0),p3(0)の 0,p3(∞)=1で,状
問 8.16
態3が
い か ん に か か わ ら ず,最
終 分 布 はp1(∞)=p2(∞)=
最 終 状 態 と な る.
遷 移 確 率 行 列Aが
(1)
で 与 え られ る系 の 最 終 状 態 を 調 べ よ. 方 針 Aの
固 有 値 を 求 め る とλ1=λ2=1,λ3=λ4=1/4で
ran k(A−1/41)=2で (10)).し
あ る の で,2次
あ る.rank(A−1)=2,
以 上 のジ ョルダ ン細 胞 は 現 れ ない(問8.10の
た が っ て,L=P−1とR=Pを
用 い てAを
解 を解 くこ と に よ り,固 有 値 は λ=1お
式
対 角 化 す る こ と が で き る. (2)
よびλ=1/4で,こ
れ に属 す る 固 有ベクトルは
(3)
で あ る こ と が わ か る.式(3)よ
り任 意 定 数c1,c2,c3,c4を
適 当に とって
(4)
とす る とP−1は
(5)
と な り,
(6)
と対 角 化 さ れ る.こ れ か ら
(7)
(8)
(9)
を得 る. した が っ て,最 終 分 布p(∞)は 存 在 す る が初 期 分 布 に依 存 す る.た と えば 初 期 分 布 が〓
な ら〓 な ら〓
とな る.
注 最 大 固有 値 λ=1が 布 に依 存 す る.λ=1が1個
と な り,〓
二 つ 以 上 存 在 す る ときは,最 終 分 布 は存 在 す るが 初 期 分 で も|λ|=1を み た す 複 素 数 の 固 有 値 がd個(1と−
1の 場 合 も含 む)あ れ ば,最 終 分 布 は 存 在 しな い .し か し,〓 は存 在 す る.問8.13が もとの 行 列(式(1))Aの
そ の 例 で あ る.
行 番 号 と列 番 号 を入 れ か え て,こ
れ をA'と
す ると
(10)
と な る.式(10)は
上 三 角 行 列 で あ るので,固
有 値 が λ=1,1,1/4,1/4で
あ るこ と
は た だ ち に わ か る.
問 8.17
遷 移確 率行列Aが
(1)
で 与 え ら れ る系 の 時 間 変 化 を 調 べ よ. 解 固 有 値 はλ1=1,λ2=q,λ3,4=ω1,2qで い た .固
有 ベ ク トル 行 列 は 任 意 定 数c1,c2,c3を
あ る.た
だ し,〓
とお
用 い て 次 の よ う に 表 せ る.
(2)
また 逆 行 列 は
(3)
と な る.し
た が っ て,Aは
次 の よ う に 対 角 化 さ れ る.
(4)
よ っ て
(5)
(6)
(7)
これ よ り
(8)
(9)
(10)
と な る.ゆ
え に,分
布p(n)は
(11)
(12)
(13)
し た が っ て,p(n)は
周 期3の
減 衰 振 動 を しな が ら最 終 分 布p(∞)=[1,0,0,0]tに
近
づ く.
問 8.18
第7章
で 定 義 し たイ ジ ング モ デ ル を 考 え る.ハ
ミルト ニ アン は
(1) で 与 え ら れ る.N個
の ス ピ ン が 時 刻tに
お い てs1,s2,…,sNを
と る確 率 を
(2) と す る.ま
た{Si}の
う ち,あ
る 一 つ の ス ピ ンsjが反
転し てsj→−sjと
な る遷 移 確
率 を
(3) と す る.以
下 式(3)をw(sj)と
確率p(s1,…:t)は
そ の 任 意 の ス ピ ンが 反 転 す る こ と に よ り変 化 す る.場 が 一s,と
反 転 す れ ばp(s1,…,sj,…;t)は て,次
書 く こ と に し よ う.
減 少 し,p(s1,…,−sj,…;t)は
増 加 す る.し た が っ
の 式 が 成 立 す る.
(4) こ れ は マ ス ター(master)方 程 式 で あ り,確率p(s1,…;t)の あ る状 態{sj}か
時 間 変 化 を 定 め る.
ら始 め て 十 分 時 間 が た っ た後(t→ ∞),系が
熱 平 衡 状 態 に達 す
る よ うに した い.す な わ ち確 率pが
(5) に近 づ くよ うな 遷 移 確 率w(sj)を 求 め よ.た だ しw(sj)は 一 意 で は な い. 方 針 平 衡 状 態(式(5))で は確 率pに な る.こ
時 間 依 存 性 はな いの で,式(4)の 左 辺 は0と
うな る ため の十 分 条 件 と して は
(6) が 成 り立 て ば よ い.こ れ を 詳 細 釣合(detailed
balance)の
条 件 と い う.式(6)に
式
(5)を 代 入 し,遷 移確 率w(sj)を 決 定 す る. 解 式(6)に 式(5)を 代 入 す る.
(7) こ こ で 式(1)を 用 い てsjの 影 響 の な い項 を分 子 と分 母 で キ ャ ンセ ル させ る と,
(8) とな る.〓 はsjと 相 互 作 用Jで
結 び つ い た 隣 りの ス ピ ンsj+4に つ いて 和 を と る こ
とを意 味 す る. 局 所 的 な エ ネ ル ギ ー と してEj(sj)を 定 義 し よ う.
(9) と お く.Σj(sj)は
相 互 作 用 を二 重 に 数 え るの で,全 エ ネル ギ ー の2倍
とな る.式
(9)を 用 い て 式(8)は
(10) と表 せ る.こ れ か ら遷 移 確 率w(sj)と
して
(11) と とれ ば よ い.こ れ が 第1の
と り方 で あ る.
ス ピ ンsjを−sjに 反 転 した ときの 局 所 的 なエ ネ ル ギ ーEj(sj)の 増 加 を〓Ejと す る と
(12) と な る.こ
れ を 用 い て 式(8)は
(13) と表 され るか ら
(14) と と る こ と も で き る.こ
れ が 第2の
と り方 で あ る.そ の 他 多 く のw(sj)の
と り方が
あ る. 補 w(sj)を
式(11)の
バ ー(Glauber)モ
よ う に と り,式(4)に
従 っ て 時 間 発 展 さ せ る.こ れ を グ ラ ウ
デ ル と い い,イ ジ ン グ モ デ ル の 動 的 な 振 舞 い を 研 究 す る た め の 重
要 な モ デ ル と な っ て い る. ま た,式(4)を
す べ て の ス ピ ン の 自 由 度 に 対 し て 和 を と る と,
(15) と な り,第2項
でsj→−sjへ
る こ と が わ か る.し
と 変 数 変 換 す る と 第1項
と同 じにな って キ ャ ンセル す
た が っ て,
(16) と な る.Σ{s}p(s1…sN;t)=1で
問8.19
あ る か ら こ れ は 当 然 の 結 果 で あ る.
前 問 に お い て,ス
ピ ンsjの
時 刻tで
の 期 待 値 〈sj〉 を
(1) で 定義 す る.〈sj〉の 時 間 変 化 は
(2) で 与 え ら れ る こ と を 示 せ.ま 8.18の
式(11)で
た 特 に1次
元 イ ジ ン グ モ デ ル で,遷
移 確 率w(sj)が
問
与 え ら れ た と き,式(2)は
(3) と い う 形 に な る こ と を 導 け.こ
こ にx,y,zは
磁 場 と 温 度 の 関 数 で あ る.
解 式(2)の 左 辺 を 求 め よ う.問8.18の
式(4)の 両 辺 にskを
か け て,す
べ ての ス
ピ ン 自 由 度 の 和 を と る.
(4) 右 辺 の Σjの和 をj=kの
部分 とj〓kの
部 分 に分 け よ う.
式(4)
(5) と な る.式(5)の
第2項
で ス ピ ンsjを−sjへ
るの で 値 は 変 化 し な い.同
じ く第4項
と お き か え る.こ う し て も Σ{s}で 和 を と
で もsk→−skと
お き か え る.そ
うす る と
(6) を 得 る.第1項
と 第2項
は 等 し く,打
ち 消 し合 う.ま
た 第3項
と 第4項
も等 し い
の で,
(7) を 得 る.し さ て,遷
た が っ て,式(2)が 移 確 率w(sk)と
示 さ れ た.
し て 問8.18の
式(11)を
採 用 し よ う.式(7)に
代 入 して
(8) と な る.1次
元イ ジ ング モ デ ル の 場 合,問8.18の
式(9)よ
り
(9) で あ る.C=βH,K=βJと
お こ う.式(9)を
用 い てsktanh{(βEk(sk)}を
計 算 す る.
(10) に お い て右 辺 は
(11) で あ る か ら,skの
値 に か か わ りな く
(12) が 成 立 す る.式(12)を て2次
テ ー ラ ー 展 開 し た と す る と,s2=1よ
以 上 の 項 は 存 在 し な い.よ
りsk−1とsk+1に
つい
っ て 次 の よ う に お け る.
(13) こ こ で,x,y,zは{sk−1,sk+1}が よ う に 決 め る.{sk−1,sk+1}に
ど う い う 値(±1)で は4通
あ っ て も 式(13)が
成立 す る
り の 場 合 が あ る.
(14) 式(14)の 解{x,y,z}が
式(13)を 恒 等 的 に満 た す こ とが で き る.式(14)を
解 いて
(15)
を得 る. 以上 よ り式(8)は
(16) と な る.よ
っ て 式(3)が
特 に 磁 場 が0の
示 さ れ た.
と きC=0よ
り式(15)か
ら
(17) とな る た め,式(16)は
(18) と1体 の相 関 関 数 だ け で 閉 じた形 に な る. 注 1963年 にグラウ バ ー は 前問 で求 め た 遷 移確 率w(sj)を 定 義 し,式(18)を い た.磁 場 が あ る と きや,2次 元3次 な い.こ れ は式(16)で
元 のイ ジ ング モデ ル で は 厳 密 解 は 得 られ て い
もわ か る とお り,〈sk〉 の 運 動 方程 式 を解 くに は〈sk−1sk+1〉 と
い う2体 の相 関 関 数 が わ か らな け れ ば な らな い.こ れ に は3体
の相 関 関 数 を含 む
運 動 方 程 式d/dt〈ss〉=f(〈s〉,<ss>,<sss>)を 解 く必 要 が あ る.3体には4体が,と う よ う に結 局N体
解
い
の 相 関 関 数 を す べ て解 か ね ば な らな い た め で あ る.
補1 モ ン テ カ ル ロ シ ミュ レ ー シ ョ ン 近 年 の計 算機 の 発 達 に と もな い,理 論 や 実 験 的 手 法 に加 え,い わ ゆ る計 算 物 理 学 な る方 法 が 発 展 して きた.こ
れ は 対 象 とす る物 理 系 を計 算 機 上 に模 型 と して 実
現 し,そ の 性 質 を“ 実験 的” に調 べ よ う とい う もの で あ る.実 際 の 実験 で は技 術 的 にむ ず か しい こ と も,計 算 機 上 の模 型 な らば 比較 的 容 易 に 実 行 す る こ とが で き る.磁 性 体 の 研 究 分 野 で代 表 的 な ものの 一 つ がモ ンテ カル ロシ ミュ レー シ ョン(Monte Carlo simulation)で あ る. イ ジ ング 模 型 を考 え よ う.問8.18で 確 率 の 条 件(問8.18の
述 べ た確 率 方程 式(問8.18の
式(4))と 遷 移
式(6))に 従 って系 を 時間 発 展 させ る.こ れ を計 算 機 の アル ゴ
リズ ム と して ま とめ る と,次 の よ う にな る. ア ル ゴ リズ ム ① あ る ス ピ ンsjを 決 め る. ② 一 様 乱 数r∈(0,1)を
作 る.
∝
③ も し遷 移 確 率 がw(sj)>rな
ら ばsj→−sjと
ス ピ ン を 反 転 させ る.w(sj)〓
rな ら ば 何 も しな い. ④ ① に も ど る. こ こ でw(sj)は
た は 式(14)で
あ る.w(sj)を
とす る 方 法 を メ ト ロ ポ リ ス(Metropolis)法,問8.18の
式(14)と
と い う.こ
問8.18の
式(11)ま
の ア ル ゴ リ ズ ム の1サ
問8.18の
式(11)
す る 方 法 を 熱浴 法
イ ク ル を モ ン テ カ ル ロ ス テ ッ プ(MCS)と
呼ぶ こ
と に し よ う. 問8.18で る 場 合,十
示 し た よ う にw(sj)が
詳 細 釣 合 いの 条 件 を満 た す よ う に決 め られ て い
分 時 間 発 展 させ た 後 で は,系の
状 態 確 率pは
(19) とな る.す な わ ち,あ る状 態 はボルツ マ ン分 布 の 重 み(確 率)を もっ て 実 現 され て い るこ とに な る. 物 理 量Q(た
と え ば エ ネ ル ギー)の 期 待 値 は
(20) で あ る.こ こで Σ{s}を と るか わ りに,適 当 な 時 間 間 隔Tの ルゴ リズム に従 って 時 間発 展 させ,そ
の 間 の 平 均 値Qで
あ い だ系 を上 に述 べ たア 期 待 値 〈Q〉を近 似 す る.
す な わ ち,
(21) とす る.こ こで ΣMCSはT時 間 モ ンテ カ ル ロ ス テ ップ で の和 を意 味 す る.系 は確 率p e−β〓 で あ る状 態 が 実 現 され て い るわ けで あ る か ら,
(22) で あ る. こ う して系 を時 間 発 展(シ ミュ レー ト)させ,物 理 量 を観 測 して系 の 性 質 を調 べ る こ とが で き る.よ
り詳 し くは参 考 文 献7)田 中他 編,を
参 照 の こ と.
補2 神 経 回 路 網 人 間 の脳 は神 経 細 胞(ニ ュー ロ ン)か ら構 成 さ れ て い る.個 々 の ニ ュー ロ ンは,他
のた く さん の ニ ュ ー ロ ンか らの 出力 電 気 信 号(パ ル ス)を,シ ナ プ シス とい う結 合 部 分 を通 して 受 け と る.そ
して,そ れ らのパ ル スの 和 が あ る し きい 値 を超 え る と,
興 奮 状 態 とな り 自 らパ ル ス を出 す よ うに な る.そ の パ ル ス が 他 の ニ ュ ー ロ ン に シ ナ プ シ ス を 通 じて伝 え られ,ま た 別 の 信 号処 理 が 繰 り返 され る.網 目構 造 を なす この よ うな ニ ュー ロ ンの 集 団 に 生 ず る電 位 パ ター ンの 時 間 変 化 で,学 習 や 記憶 な どの 脳 の 活 動 を説 明 し よ う と試 み られ て い る. 神 経 回 路 の モ デ ル に ホ ップ フ ィー ル ド(Hopfield)モ デル が あ る.神 経 回路 を形 成 す るN個
の ニ ュ ー ロ ンの状 態 を
(23) で 表 す.各
ニ ュ ー ロ ン は 興 奮 し て い る か,抑
止 さ れ て い る か の 二 つ の状 態 の 一 つ
に あ り,こ れ をイ ジ ング ス ピ ン のsi=1とsi=−1に
対 応 さ せ る .こ の 状 態 は2N個
あ り,各 状 態 の 時 間 変 化 は ニ ュ ー ロ ン 間 の 相 互 作 用 に よ り定 ま る.ニ ュ ー ロ ンiと ニ ュ ー ロ ンjの
相 互 作 用 をJijと す る .す な わ ち,ニ
iが 興 奮 す る 寄 与 をJijと す る.Jijは
ュ ー ロ ンjに
よ りニ ュ ー ロ ン
正 の 場 合 も(興 奮 性 シ ナ プ シ ス),負(抑
止 的 シ
ナ プ シ ス)の 場 合 も あ る. ニ ュ ー ロ ンiに
対 す る 作 用 は,他
か らの作 用 の 和
(24) で あ る.Viが
し きい値Uiを
超 え た と き,ニ ュ ー ロ ンiは 興 奮 す る.神 経 回 路 の 定
常状 態 は,各
ス ピ ンが 各 有 効 場hi=Vi−Uiに
従 って
(25) と な る よ う に+1ま ミルト ニ アン を
と す る と,こ
れは
た は−1を
と る 状 態 で あ る.Jij=Jji,Ui=ΣJijを
仮 定 す る .ハ
(26) と な る.式(25)は 神 経 回路 の 定常 状 態 が 式(26)で 与 え られ るハ ミルト ニ アン の 局 所 的 極 小値 で あ る こ とを意 味 す る. 学 習 と記 憶 を 扱 うた め に は,神 経 回路 の 定常 状 態 は学 習 過 程 に よっ て き ま るあ る{Jij}の
分 布 を もつ こ とが 必 要 で あ る.こ れ に はJijを
(27) とす る.ξiμ は+1ま
た は−1を と り,そ の値 は学 習 過 程 に よって 定 まる凍 結(quench)
され た 値 とす る. ホ ップ フ ィー ル ドモ デ ル の 時 間 的 発 展 はT=0に 力学 で あ る.任 意 の 初 期 条 件 よ り出発 して,エ
お け るグラウ バ ー モデ ル の
ネ ル ギ ー の減 少 を起 こ す よ うに ス ピ
ン反 転 を繰 り返 しなが ら,そ の 極 小 に近 づ く.そ
して こ の極 小 値 を もつ 状 態 が 一
つ の 記 憶 を現 す と され て い る.ノ イ ズ を と り入 れ る た め温 度1/β を導 入 した一 般 化 した ホ ップ フ ィー ル ドモ デ ル(こ れ をボルツ マ ンマ シー ン とい う)も研 究 され て い る.
第9章
カオス とフラクタル
常微 分 方 程 式 や 差 分 方 程 式 系 の解 は,初 期 条 件 に よ り一 意 に定 ま り,こ れ を 力 学 系 また は決 定 論 的 な系 と い う.こ れ に対 して系 の 時 間 的 発 展 が 与 え られ た 確 率 に よ って 定 ま る もの を確 率 過程 とい う.力 学 系 で あ って も,そ の 解 が複 雑 な確 率 過 程 の よ う な予 測 の つ か な い様 相 を示 す こ とが あ り,こ れ を 力 学 系 の カ オ ス と い う.こ の ほ か カ オ ス に は散 逸 系 の カ オ ス も あ る.本 章 で は,単 純 な モ デル で カ オ ス を示 す 例 を と りあ げ る. n次 元 空 間 の あ る領 域Eを
直径 が ε>0よ り も小 さ い 可算 個 の 球 に よ って お お
う.各 球 の 直 径 をd1,d2,…dkと
に よ っ て集
す る.D>0と
合Eの ハ ウ ス ドルフ(Hausdorff)測
フ測 度MD(E)が0か
ら ∞ に か わ るDの
す る とき
度MD(E)を
値 を ハ ウ ス ドルフ 次 元 と い う.ハ
ルフ 次 元 を 相 似 次 元 あ る い は フ ラ ク タ ル(fractal)次 い 集 合 を フ ラ ク タ ル と い う.問9
.1で
定 義 す る .ハ ウ ス ドル
元 と も い い,こ
そ の 例 を あ げ る.フ
ウス ド
れ が整 数 で な
ラ ク タル 次 元 に は 必 ず
し も等 価 で な い 他 の 定 義 も あ る.
問9. 1 あ る 図 形 が 長 さ で 全 体 を1/aに る と き,b=aDに 1) 線 分. 2) 正 方 形.
よ り相 似 次 元Dを
縮 小 した 相 似 形bに
定 義 す る.次
よ っ て 成 り立 っ て い
の 図 形 の 相 似 次 元 を 求 め よ.
Ⅲ Ⅱ Ⅰ
図9.1 コッホ
曲 線(実 線 部 分)
3) A=(-3/2,0),B=(√3/2,0),C=(0,3/2)を (-1/2,0),E=(1/2,0)をBと 作 とす る.線 分AB,BCに を 作 る.こ
結 び,ADBECを
結 ぶ 三 角 形 を 考 え る.D= 作 る.こ れ を 線 分ACに
対 す る操
対 して 図 の よ う に こ の 操 作 を 施 し てAFDGB,BHEJC
の 操 作 を 無 限 回 繰 り返 し て 得 ら れ る 図 形(コッホ(Koch)曲
線,図9.
1). 4) 正 三 角 形 を 各 辺 の 中 点 を 結 ん で 四 つ の 正 三 角 形 を 作 る.こ
の う ち,中
三 角 形 を 除 い た 残 り の 三 つ の 三 角 形 に つ い て 同 じ こ と を 繰 り返 す.こ 続 け て 得 ら れ る 図 形 を シ ェ ル ピ ン キ ー(Sierpinski)の
れ を無限 に
詰 め 物(gasket)と
9.2). 解 1) 1/2に
し た 線 分 を2個
央の
集 め て も と の 線 分 に な る か ら,2=21でD=1.
い う(図
図9.2 (図 は7回
2) 1辺 を1/2に
シ ェ ル ピ ン ス キ ー の 詰 め もの
操 作 を行 った 段 階 ま で を 示 して あ る.)
し た 正 方 形 を4個
集 め て も と の 正 方 形 に な る か ら,4=22でD
=2 . 3) 1/√3に
縮 め た もの を2個
集 め て も と ど お り に な るか ら,2=√3D,D=log4/
log3〓1.2618. 4) 1/2に 縮 め た 三 角 形 を3個
集 め て も との 三 角 形 に な る か ら,3=2D,D=log3/
1og2〓1.585. 注 本問 の 例 で は,相 似 次 元 が ハ ウ ス ドル フ次 元 と等 しい こ と を証 明 す る こ と が で き る.ハ ウ ス ドル フ次 元 は,相 似 次 元 が 定 義 され な い集 合 に対 して も定 義 さ れ る.
問9.2 1辺 が1で し,高 さ が 半 分,幅
あ る正 方 形 が あ る(図9.3).こ
の 正 方 形 を上 か ら押 しつ ぶ
が倍 の 長 方 形 を作 る.こ の 長 方 形 を縦 に半 分 に切 っ て右 半分
を上 下 反 対 に して((1,1/2)を 中 心 と して 回 転 して)左 半 分 の 長 方 形 の 上 にのせ て 正 方形 を作 る(図9.3).こ
の 操 作 を繰 り返 す.こ の 変 換 はパ イ 生地 を こ ね る よ うな操
作 な の で パ イ こ ね 変 換(baker's Pn(xn,yn)は,n+1回
transformation)と
目 の 試 行 でPn+1(xn+1,yn+1)に
図9.3
1) xn+1=f(xn)と 2) xnをx0の
し,f(xn)を
い う.n回
な る 点x*を
4) 初 期 値x0が
うつる.
パ イ こね交換
求 め よ.
固 定 点 と い う.こ
の 変 換 の 固 定 点 を 求 め よ.
有理 数 の と き{xn}が 周 期 的 な 数 列 と な る こ と を 示 せ.
解 1) (xn,yn)は
半 分 に お しつぶ し た と き(2xn,yn/2)と
を 上 下 反 対 に し て 左 半 分 の 長 方 形 に の せ る とxn+1はxn〓1/2な
以 下xnに
試 行 で 点
関 数 と し て 与 え よ.
3) x*=f(x*)と
ら2(1-xn)と
目の
な る.yn+1はxn〓1/2な 着 目 す る.xn+1=f(xn)と
らyn/2,xn〓1/2な す る と
な る.左 半 分 の 長 方 形 ら2xn,xn〓1/2な ら(1-yn/2)と
な る.
図9.4
パ イ こね交換 におけ る 写 像 関 数(a)
図9.5
パ イ こね 交 換 に お け る 写 像 関 数(b)
(1)
と な り,xn+1とxnの
関 係 は 図9.4の
(xn)に 達 す る 点 よ り水 平 線 を 引 き,こ の 横 座 標 がxn+1と
破 線 の よ う に な る.xnか れ が(0,0)と(1,1)を
ら立 て た 垂 線 がf
結 ぶ 対 角 線 に達 した 点
な る.こ れ を 繰 り返 す こ と に よ り,グ ラ フ か らxnの
列 を知 る こ
と が で き る(図9.5). 2)
(2)
を 考 え る.0〓xn〓1/2の
と き は0〓2πxn〓
π でxn+1=2πxnと
と き は π〓 πxn〓2π で あ る の でxn+1=2(1-xn)と は 式(1)と
等 価 で あ る.式(2)をn=0か
な る(注1を
ら 始 め てn回
な る.1/2〓xn〓1の み よ).ゆ え に,式(2)
繰 り返 す こ と に よ り
(3) が 得 ら れ る. 3) 固 定 点x*は
(4)
を満 た す.ゆ
えに
こ れ を解 い て 〓また は
〓 (5)
を 得 る.こ れ が 固 定 点 で あ る.x*=2/3は n→ ∞ で εnは0に
不 安 定 な 固 定 点 でxn=x*+εnと
4) 初 期 値x0が
収 束 し な い .x*=0は
安 定 な 固 定 点 で あ る.
有 理 数 x0=q/p(p,qは
既 約 な 自 然 数)と す る と,〓
整数 2p)の
と り う る 数 は,0,1,2,…2p-1の
〓で あ る.2nq(mod い ず れ か に か ぎ ら れ て い る.し
こ の 変 換 を な ん ど も繰 り返 して い く と,以 一 度xn x0が
1=xn2と
な れ ば,そ
す ると
た が っ て,
前 に 現 れ た 数 と等 し い 数 が 必 ず 現 れ,る.
の 後 は 先 の 系 列 を 繰 り返 す.
無 理 数 の 場 合 は こ の よ う な こ と は な く,{xn}は
周 期 性 を も た な い.こ
合 も計 算 機 で 数 値 計 算 す れ ば 扱 い う る桁 数 が 有 限 で あ る た め,見
の場
かけの周期性が
必 ら ず 現 れ る.
図9.6 パ イ こね変換 におけ る周 期 の非 常 に長 い周 期解 の例
図9.6にx0=466666668/700000003=2/3-2/2100000009空2/3-1.0×10第9の
場
合 の パ イ こ ね 変 換 のxnを ら周 期 は1で
与 え る.こ
の 場 合,周
期 は37837836で
あ る(x0=2/3な
あ る.
注1
に 注 意 せ よ.
図9.7
注2
式(3)のxnを
ワ イ エ ルシュ
トラ ス関 数
用 いて
(6) を 定 義 す る と,W(x0)は[0,1]で,連 こ れ を ワ イ エ ルシュ
続 で い た る と こ ろ 微 分 不 可 能 な 関 数 で あ る.
トラ ス(Weierstrass)の
関 数 と い う(一 般 に は〓
で 与 え ら れ る.図9.7).
問9. 3 写 像
(1) を 定 義 す る.znをnの
関 数 と し て 求 め よ.こ れ を ロ ジ ス テ ィ ッ ク(logistic)変
換 と
い う(図9.8).
図9.8
ロ ジステ ィック変換
zn +1=f(zn)=4zn(1-zn)
方 針 変 数 変 換 に よ りパ イ こ ね 変 換 に帰 着 させ る.
(2) と お こ う.問9.2の
式(2)よ
り
(3) で あ る.aとbを 解 式(2)を
求 め よ. 式(3)に 代 入 し てznとzn+1の
関 係 式 を 求 め る と,
(4) と な る.こ
れ が 式(1)に
一 致 す る た め に はa=-2,b=1で
あ れ ば よ い.す
な わ
ち,
(5) 前問 の 解(問9.2の
式(3))よ
りξnをnの
関 数 と して 表 す と
(6) で あ る か ら,
(7) を 得 る. さ てx0をz0で
表 そ う.ξ0=−2z0+1=cosπx0で
あ る か ら,
(8) と な る.式(8)を
式(7)に
代 入 し て,
(9) を 得 る. 注 前問 で 示 し た よ う にsin-1√z0が 固 定 点 はz*=3/4で
π の 有理 数 倍 で あ れ ばznは
周 期 を もつ.
あ る.
問9. 4 写 像
(1) に お い て,0<a<a1な a1<aと
な る とx(1)の
ら ばxnは
固 定 点 と し て 周 期1の
ほ か に 周 期2の
固 定 点x(2)が
め て 固 定 点 と い う こ と に す る).x(1),x(2),a1を 解 周 期1の
固 定 点x(1)に
固 定 点x(1)の
み を もつ が,
現 れ る(周 期 的 に 現 れ る 点 も含
求 め よ.
対 して はxn=xn+1=x(1),す
なわ ち
(2) よ り式(2)を
解 いて
また は
(3)
で あ る. 周期2の
固定点 は
(4) とお い て
(5) か らyを 消 去 して
(6)
式(6)は 因 数 分 解 で き て
(7) と な る.第1因
子=0お
第3因
り
子=0よ
よ び 第2因
子=0は
周 期1の
固 定 点x=y=x(1)を
与 え る.
(8) を 得 る.上 号 がx,下 と な り,こ 補1
れ が 周 期2の
た は 逆 で も よ い)と な る.式(8)はa>a1=3で
な る.2)1≦a<2で
収 束 す る.3)2≦a<3で
近ずく
,た だ し(x,y)は
に お け るxnの 期… と2n周 point)と
の こ と が わ か る.1)0≦a<1で はxnは
はxnは
4)3<a〓1+√6〓3.449でxnは2周 →yに
減 衰 振 動 を しな が らxn→1−1/aと
な る.
期 振 動 に漸 近 す る.す な わ ち,x2n→x,x2n+1 式(8)で
期 が 次 々 と 出 て くる.2n周
よ う に な る.黒
はxnは
単 調 に 増 大 し な が らxn→1−
与 え ら れ る.5)1+√6<a<4.こ
固 定 点 の 分 布 は 非 常 に 複 雑 で あ り,aの
い う.と
実 数
固 定 点 で あ る.
さ ら に 詳 し く調 べ て み る と,次
単 調 減 少でxn→0と 1/aに
号 がy(ま
増 加 と と も に4周
期 が 現 れ は じめ るaの
り う る 固 定 点 の 値 をaの
の領域 期,8周
値 を倍 分 岐 点(bifurcation
関 数 と して 図 示 す る と,図9.9の
くぬ り つ ぶ さ れ た と こ ろ は 固 定 点 が稠 密 に分 布 し て い る.白く
け た 部 分 は 窓 と 呼 ば れ て い る.2∞
図9.9 zn+1=azn(1−zn)の
周 期 が 現 れ る(す な わ ち 非 周 期 解 の 現 れ る)aの
ぬ
固 定 点 をaの
関 数 と して 画 い た 図
値 は お よ そa∞〓3.517で 期,…も
あ る.aがa∞
現 れ て く る.6)a=4の
め 振 動 的 で あ っ て も,結 補2
a,zを
局xnは
よ り大 き く な る と,3周
場 合 は 問9.3で
期,5周
扱 っ た.7)a>4の
期,7周 場合 は は じ
発 散 す る.
複 素 数 と して
(9) の 写 像 を 考 え る.こ の と き,n→ に な ら な いz0の
∞ に 対 して│zn│→ ∞ に な るz0の
集 合 の 境 界 を ジ ュ リ ア(Julia)集
集 合 と,│zn│→
∞
合 とい い,一 般 に フ ラ ク タ ル に な
っ て い る. ま た写 像
(10) に つ い て,n→∞
に な っ て も│zn│→
ル に な っ て お り,こ
問9.5
∞ に な ら な い μ の 集 合 も複 素 平 面 で フ ラ ク タ
れ を マ ンデル ブ ロ ー(Mandelbrot)集
合 と い う.
前問 と 同 じ 写 像xn+1=axn(1−xn),(0≦a≦4)を
3の 固 定 点 を も ち は じ め る と きのaの 方 針 前問 で 周 期2の zと お き,連
考 え よ う.こ れ が 周 期
値 を 求 め よ.
固 定 点 を 求 め た.同
じ よ う にx3n=x,x3n+1=y,x3n+2=
立 方 程 式 を 立 て て 解 く.
解 写 像 か ら,
(1) とい う連 立 方程 式 が立 て られ る.こ れ か らyとzを
消 去 して,
(2) を 得 る.こ れ を 解 け ば よ い.た だ し,式(2)の 9.4の
式(3))が
と お こ う.
含 ま れ る の で,x(ax−a+1)で
中 に はx=y=zの
周 期1の
固 定 点(問
割 っ て そ れ を と り除 く.こ れ をf0(x,a)
(3) で あ る.3は2で
わ り切 れ な い の で 周 期2の
解 はf0=0に
は含 まれ な い こ とに 注 意
せ よ. さ てf0(x,a)が0<x<1に る.こ
れ はf0(x,a)が
てf0(x,a)を る.こ
お い て,根 を も ち は じめ る と き のaを
重 根 を も つ 条 件 で あ る.す
グ ラ フ に 描 け ば,ち ょ う ど あ るaの
の と き,f0(x,a)のx軸
な わ ち,aの
さが す わ け で あ
い ろいろの値 に対 し
値 の と き にf0(x,a)はx軸
と 接 し た と こ ろ の 傾 き(f0の 微 分)も0に
と接 す な る.
(4) と お こ う.f0(x,a)=0の
重 根 をx0と
す る と
(5) が成 り立つ. 以 下 の よ うに 関 数 を定 め る.f0をf1で
わ っ た 余 りをf2と お く. (6)
た だ し,f0,g1,f1,f2は
す べ てxの
多項式
{bn}はaを 含 ん だ 定 数 の 形 を し て い る.ま よ う にg1(x,a)を
た,f2(x,a)のxの
選 ぶ も の と す る.本問
最 高 次 数 はf1(x,a)よ の 場 合,式(6)を
(7)
り一 つ 以 上 低 くす る
具体 的 に書 くと
(8) と な る.式(6)に
重 根x0を
代 入 す る と,式(5)に
よ り
(9) した が っ て,f2もx=x0で0と
な る.
以 下 同 様 に
(10) に 従 っ て 関 数fk+1(x,a)を
定 義 す る こ と に よ り,
(11) 等 と し て,f3(x0,a)=f4(x0,a)=…=0と 最 後 にf6(x0,a)はxを
な る こ と が 示 せ る.
含 ま な い 関 数 と な り,
(12) と な る.ゆ え にf6(x0,a)=0の0<a≦4で 値 で あ る.
あ る 実 根a=1+√8〓3.828427が
求 め る
A
問付.
付録 数 学 的 補 遺
1 N次
元 空 間 の 半径Rの
球 の体積〓
で
表 され る こ と を示 せ.
方 針 で 表 さ れ る.θ
(1)
は ス テ ッ プ 関 数(x<0で
θ(x)=0,x>0で
θ(x)=1).数
学的帰納
法 を 用 い る. 解 N=1でV1=2Rが
成 り立 つ.Nで
成 り立 つ と す る とN+1で
は
(2)
積 分 は オ イ ラ ー(Euler)のB関
数 と な る か ら(注2参
照)
(3)
Γ (z)はガ
・マ関数,Γ(z+1)=zΓ(z),Γ(1)=1,Γ(1/2)=√π
て,N+1で
で あ る.し
たが っ
も成 り立 つ.帰 納 法 よ り与 式 が 証 明 され た.
別 解 半 径RのN次
元 球 の 体 積 をVN(R),表
面 積 をSN(R)と
す る.ま
ず
(4) と お く.
(5) で あ る.一
方,体
積VN(R)はRNに
が っ て,表
面積 は
比 例 す る か らVN(R)=CNRNと
お け る.し
(6) これ を用 い て
(7) 式(5)お
よ び 式(7)を
比較 して
(8)
と な り,す
なわ ち
(9)
を得 る. 注1 い ろ い ろ な 証 明 法 が あ る.N次
元 空 間 の 直交 座 標 か ら極 座 標 へ の 変 換
た
(10) の ヤ コ ビア ンJを
求 め て,こ れ を用 い るの も面 白 い 方 法 で あ る.
注2 オ イ ラー のB関
数B(p,q)は
(11) で定義 され (12) の性 質 を有 す る.
問付.2 2原 子 分 子 の 古 典 力 学 で のハ ミルトニ アン を求 め よ.た だ し,極 座 標 表 示 を使 う こ と.古 典 力 学 に お け る2原 子分 子 は振 動 運 動 を無 視 す れ ば,剛 回 転 子(rigid rotator)で 表 され る. 解 運 動 エ ネ ル ギ ーTは,
(1) で 与 え られ る.こ る.2原
こでm1,m2は
子 間 の 距 離Rは
各 原 子 の 質 量,xi,yiな
ど はi原 子 の 座 標 で あ
一 定 で あ る.座 標 原 点 は ど こ に とっ て も よい が,簡 単 の
た め 二 つ の 原 子 の 重 心 にす る.す な わ ち(付 図1),
(2) こ こ で,
(3) で あ る. 二 つ の 原 子 の 相 対 距 離Rは あ る.し た が っ て,
時 間 依 存 しな い(一 定).時 間依 存 す るの は θ と φ で
付 図1
2原 子分 子
(4) と な り,結 局,運 動 エ ネ ル ギ ーTは
極 座 標 表 示 で,
(5) と 表 せ る.慣
性 モ ー メ ン トIは,
(6) で あ る か ら,
(7) と な る. ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ーUをU=0と
す る と,ラ グ ラ ン ジ ュ ア ン(Lagrangean)
Iは,
(8) と な る.よ
っ てハ ミルト ニ アンHは,
(9) をpθ とpφ で 表 せ ば よ い.ラ
グ ラ ン ジ ュ 方程 式
(10) よ り,
(11) を 使 う と,結
局 ハ ミ ル トニ ア ンHと
し て,
式(9)
(12)
を 得 る. 注 量 子 力 学 に お け る2原 式(1)のTをp1x,…p2zで
子 分 子 の 極 座 標 表 示 の ハ ミ ル トニ ア ン を 求 め る に は,
現 し,p1x→(h/i)∂/∂x1…を
相 対 運 動 に 分 離 し,相 対 運 動 の 部 分 を式(2)を りpθ→(h/i)∂/∂
問付 .3 〓
θ,pφ →(h/i)∂/∂
をtで
ベ ル ヌ ー イ(Bernoulli)の
行 い,そ
の 後,重
心運動 と
用 い て 極 座 標 表 示 と す る.式(12)よ
φ と し て は な ら な い(量 子 力 学 演 習 問3.1).
展 開 し た と き の 展 開 係 数 を 次 の よ う に と っ た とき,Bn 数 とい う.
(1) B1 ,B2,…を
求 め よ。
方 針 マ ク ロー リ ン(McLaurin)展
開 を 行 う の が 正 攻 法 で あ る が,多 項 式 の 除 算
で 求 め る 方 法 も あ る.
解
(2)
よっ て
(3) こ れ よ り〓,…
を
得 る. 注 Bの ー カ ー-ワ
番 号 の つ け 方 に は い ろ い ろ の 流 儀 が あ る.こ こ で は 参 考 文 献22)ホィッテ トソ ンに よ っ た
問付 .4 剛 体 がz軸 る.静
.
を 軸 と し て 正 方 向(x軸
止 座 標 系 をr=(x,y,z)t(tは転置
系 をR=(X,Y,Z)t,回 と きR=0を
用 い てr=Ωrと
転 角 をψ
よ りy軸
に む け て)に 回 転 し て い
行 列 を 示 す),剛
体 に 固 定 され た座 標
と す る(付 図2).υ=r=(υx,υy,υz)tと
な る よ う な 変 換 行 列Ω
を 求 め よ.
す る
付 図2
解 R=Arと
式(1)の
回転
す る とAは
(1)
で 与 え られ る.Rは
剛 体 に固 定 した座 標 系 で あ るか らR=0.す
な わ ち, (2)
ゆ え に
(3) と な る.
ゆ え に
(5)
で あ る.よ
って
(6)
とな る.
問付 .5 xyz座
標 を 静 止座 標 系 とす る.こ の系 をz軸
の まわ りに 付 図3の
よう
に φ だ け 回 転 させ る.こ れ を ξη ζ座 標 とす る.続 いて η軸 の ま わ りに θだ け 回 転
付 図3
イ ギ リス 流 の オ イ ラ ー 角
させ た も の を ξ'η'ζ'座標,さ 座 標 と す る.X,Y,Z軸
ら に ζ'軸 の ま わ り に ψ だ け 回 転 さ せ た もの をXYZ
は 剛 体 に 固 定 し た 座 標 系 と す る.剛
と して 運 動 し て い る と き,そ
の 角 速 度 ωX,ωY,ωZを
体 が 原 点 を固 定 点
φ,θ,Ψ,φ,θ,Ψ
で表
せ. 方 針 前問 の 一 般 化 で あ る.前問 本問 で は ひ きつ づ き φ,θ,Ψ
で はz軸
の ま わ りのΨ
の 回 転 を 行 う の で,変
だ け で な く三 つ 必 要 と な る.そ れ をD(φ),C(θ),B(Ψ)と
解
回 転 だ け で あ っ た が,
換 行 列 は 問 付.4の
式(1)のA
す る. (1)
とす る. r とr'の 関 係 は前 問 の 一 般 化 と して
(2) に よ っ て 与 え ら れ る. た だ し,B,C,Dは3行3列
の 変換行列 で
(3)
(4)
(5)
で あ る.Rは 列 をAと
剛 体 に 固 定 した座 標 系 で あ るか らR=0で
して
あ る.前問 と同 様,変 換 行
(6)
こ れ を時 間 で微 分 して (7) ゆ え に
(8) と な る.逆
行 列B-1,C-1,D-1は
D-1(φ) =D(-φ)で
あ る か ら ,問
そ れ ぞ れB-1(ψ)=B(-ψ),C-1(θ)=C(-θ), 付.5の
式(5)と
同 様 に して
(9)
(10)
(11)
こ れ ら を 式(8)に 代 入 して
(12)
を 得 る.角
速 度 ベ ク トル を ω と す る とr=ω×r,す
なわ ち
(13)
で あ る か ら,式(12)と
式(13)を
比 較 し て,
(17)
(18)
とな る. ω をXYZ座 BCD)を
標 で 表 わ そ う.xyz表
示 か らXYZ表
示 に うつ る変 換 行 列A=
用 いて
(19)
と な る.式(18)と
式(6)よ
り
(20)
を 得 る. 注 φ,θ,ψ
を イ ギ リス 流 の オ イ ラ ー の 角 と い う.オ
流 と ヨ ー ロ ッパ 流 の 二 つ の 流 儀 が あ る.付
図3は
イ ラー の 角 に は イ ギ リス
イ ギ リ ス 流 の オ イ ラ ー の 角 であ
る .付
図4に
ヨ ー ロ ッ パ 流 の オ イ ラ ー の 角 を 示 す.ヨ
ー ロ ッパ 流 で は 第2操
作 が
ξ軸 を軸 とす る 回 転 に な っ て い る.
(c)
(b)
(a) 付 図4
問付 .6 前 問 の 結 果 よ り,剛
ヨ ー ロ ッパ 流 の オ イ ラ ー 角
体 のハ
ミ ルト ニ アン を オ イ ラ ー の 角 を 用 い て 表
せ. 解 剛 体 に 固 定 し た 座 標 系(XYZ)で ル ωX,ωY,ωZと
考 え る.回 転 エ ネ ル ギ ーTは
慣 性 モ ー メ ン トIX,IY,IZを
角速 度 ベ ク ト
用 いて
(1) と な る.一
般 運 動 量Pφ,Pθ,Pψ
はTを
そ れ ぞ れ φ,θ,ψ
で 微 分 して
(2)
ここに
(3)
と表 さ れ る.こ
こ でUは
問 付5の
式(20)で
あ り,
(4)
で あ る.式(3)よ
り
(5)
し た が っ て,ハ
ミ ルト
ニ アン
は 式(1)の
ωX,ωY,ωZをpφ,pθ,pψ
で 表
して
(6)
(7)
で あ る(こ の ξ,η,ζ
問付 .7 付 図5の
は 前問 の そ れ とは 異 な る こ と に注 意 せ よ).
よ う に1次 元 的 に並 ん だ 質 量MのN個
Kのば ね で結 ば れ て い る.角 振 動 数 が ω と ω+dω 数 をNg(ω)dω
の 粒 子 が,ば ね 定 数
との 間 に あ る振 動 の モ ー ドの
とす る.こ の系 の 振 動 数 の 分 布g(ω)を 求 め よ.
方針 運 動 方 程 式 を解 き,境 界 条 件 を用 い る と各 振 動 モ ー ドの 振 動 数 が 定 ま る.
付 図5
1次 元格 子 の格 子振動(上 は平 衡位 置)
境 界条 件 と して は 固 定 端 境 界 条 件 と周 期 境 界 条件 が あ る が,系が
十 分 大 き けれ ば
どち らで も同 じ結果 を与 え る.こ こ で は周 期 的境 界 条 件 を 用 い る. 解 粒 子 をl=1,2,3,…,Nと
名 づ け,l=Nの
次 にl=1が
つなが れて いる
とす る(周期 的 境 界 条 件).粒 子lの 平 衡 位 置 か らの ず れ をulと す る と(付 図5),粒 子lの 運 動 方程 式 は
(1) と な る.ulを
(2) と お く.ω は 角 振 動 数,kは (n =0,1,2,…,N−1)で
波 数 で あ る.周 期 的 境 界 条 件uN+l=ulよ あ る .式(2)を
式(1)に
りk=2πn/N
入 れ る と 波 数kと
角振 動数 ωの
問 の 関係 式
(3) を 得 る.こ
の よ う な 関 係 式 を 分 散 関 係(dispersion
relation)と
い う.式(3)よ
り
(4) を得 る.0<ω,〓 波 数kを
で あ る の で 式(4)に± は つ けな い.
ω の 関 数 と して 表 す と
(5) と な る.ω
と ω+dω
の 間 に あ る 波数kの
個 数 が 振 動 モ ー ドの 数 で あ る か ら,
(6) で 与 え ら れ る.た ら,振
だ し,こ
動 モ ー ドの 数 は2倍
こ で 式(4)に
お い てnとN-nは
さ れ て い る こ と に 注 意 す る.さ
同 じ ω を与 え る か て微 分 を 実行 して
(7) を 得 る.g(ω)は0<
ω<ωmに
動 モ ー ドの 総 数 はNで
存 在 し,ω=0で
有 限,ω→
ωmで 発 散 す る,ま
た振
あ るか ら
(8) で あ る.g(ω)を 付 図6に
示 す.
付図6
1次 元 格子 のg(ω)
問付 .8 2次 元 正 方 格 子 を考 え る.格 子 点(l,m)に
お け る 原 子 の 変 位 をulmと
し
た とき,系の
運 動 エ ネ ル ギ ーTお
よび ポ テ ン シ ャル エ ネ ル ギ ーVが
(1)
(1') の 形 に 与 え ら れ る もの と す る.こ
の 格 子 の 角 振 動 数 が ω2と ω2+d(ω2)の
振 動 の モ ー ドの 数 をG(ω2)d(ω2)=g(ω)dω
間 にあ る
とす る と
(2) で 与 え られ る こ と を示 せ. 方針 前問 の2次
元 の 場 合 で あ る.周 期 的 境 界 条 件(uN+l,m=ul,m,ul,N+m=ul,m)
下 で 固有 状 態 を求 め,角 振 動 数 ω が ω 以 下 の状 態 の 数 を数 え る. 解 ラ グ ラ ン ジ ュ の 運 動 方程 式
(3) よ り
(4) こ こ で
(5) と お い て 式(4)に
代 入 して,
(6) を 得 る.さ
らに
と お い て 式(6)に
入 れ る と,
(7) を得 る.
周 期 的 境 界 条 件uN+l,m=ul,N+m=ul,mを
課す と,kx(l+N)=kxl+2π×
整数
とな
る か ら,
(8) が 許 さ れ るkx,kyの
値 と な る.式(7)よ
り 次 の 分 散 関 係 を 得 る.
(9) ωの最大
値 ωmはkx=ky=πの
式(9)をω2(kx,ky)と
と き で ωm2=8K/Mで
書 く こ と に す る.角 振 動 数 が ω2と ω2+d(ω2)の
動 モ ー ドの 数 を 求 め た い の で あ る か ら,ま こ れ をN2J(ω2)と
あ る.
ずω2<
間 に あ る振
ω2を 満 た す 状 態 の 数 を 求 め る.
す る と
(10) と表 せ る.こ
れ か ら,J(ω2)とG(ω2)と
の 関 係 は,
(11) で あ る.い
ま
(12) を 考 え る.こ
れ を ω2で 積 分 す る と,ス
テ ップ 関 数 θ を用 い て
(13) と な る.ゆ
えに
(14) で あ る.す
な わ ち(2)が
補 式(14)の
得 ら れ た.
計 算 を 実 際 に 行 っ て お こ う.次
の 積 分 を 定 義 す る.
(15) 量 子 力 学 演 習 の 問 付.2の 式(2)か ら式(14)は この 積 分 を用 いて
(16) と表 せ る.さ
て 積 分Iを
求 め よ う.
(17)
(17')
積 分 変 数 をkxとkyか
ら,ξ=(kx+ky)/2と
こ こ に,D={(kx,ky):0〓kx〓
π,0〓ky〓
付 図7
η=(ky-kx)/2に
π}は,0〓
ξ〓 π,0〓
kx,ky平 面 か ら ξ,η平 面 へ の 変 換
変 数 変 換 す る.
η〓 π の 半 分 に 移
さ れ る(付 図8)こ
と を 用 い た.ゆ
え に
(17")
が 成 立 す る.dη の 積 分 を行 う と
(18)
と な る.さ
ら にξ'=π/2-ξと
変 換 さ れ る か ら,ξ'を
変数変換
す る .〓と
改 め て ξ と書 い て
(19)
こ こ でkは
次 の よ う に 定 義 す る(波 数kx,kyと
混 同 し な い こ と).
(20) 1/k2〓1な
ら,こ の 積 分 は た だ ち に 第1種
せ る の で あ る が(式(25)),こ
完 全 楕 円 積 分Kを
こ で は1/k2>1で
あ る の でk2〓1の
用 い て, K(1/k)と
表
と き母 数kを1/k
に 変 換 す る 公 式(補 参 照)
(21) を用 い て
(22) を 得 る.し
た が っ て,式(16)か
ら
(23) と な る.g(ω)は
(24)
で 与 え ら れ る.付
図8にg(ω)を
示 す.
付図8 2次 元格 子 のg(ω)
注 3次 元 単 純 立 方 格 子 に お け るg(ω)は 付 図9の
よ う に な る.
補 第1種 完 全 楕 円 積 分K(k)は
(25) に よ り定 義 さ れ て い る.k∼0で
の展 開は
(26) で 与 え ら れ る.2F1(a,b;c;z)は
ガ ウ ス の 超 幾 何 級 数 で 次 式 で 定 義 さ れ る.
付 図9 単純 立 方格 子 のg(ω)
(27) ただ し
で あ る(こ れ をポッホ
ハ ン マ ー(Pochhammer)の
記 号 と い う) .K(k)のk〓1で
の
展開 は
(28) に よ っ て 与 え られ る.〓 う.こ れ は整 数 値 お よび 半 奇 数 値 に対 して
をデ ィ ・ガ ンマ(di-gamma)関
数 とい
(オ イ ラ ー の 定 数),
(29)
で あ る. 次 の漸 化式
(30) で
(31) が 計 算 で き る(証 明 略).数 式(28)を
用 い る か,ま
式(21)の
値 計 算 で 第1種
た は 式(31)を
証 明.k2<1と
完 全 楕 円 積 分 の 値 を求 め る に は 式(26),
用 い る.
す る.
(31)
(32)
と分 解 す る.第1項
はsinθ=ksinφ
と 変 数 変 換 し て,
(33) と な る.第2項
はsinθ=√1-(1-k2)sin2φ
と 変 数 変 換 す れ ば,
(34) と な る.証
明終.
式(17)の
積 分 に類 似 の 積 分
が 固 く結 合 さ れ た 電 子 系 の 問 題,不 れ る.aは
(1次 元),
(35)
(2次 元),
(36)
(3次 元).
(37)
純 物 原 子 の 問 題,そ
の 他 の 問 題 に しば し ば 現
多 くの 場 合 エ ネ ル ギ ー の 意 味 を も つ.式(35),(36),(37)の
G(a)と 記 し た と き,G(a)daは な る.付 図10∼12に 場 合 のG(a)を
エ ネ ル ギ ー がaとa+daと
そ れ ぞ れ1次
元 格 子,2次
虚 数部分 を
の 間 に あ る状 態 密 度 と
元 平 方 格 子,3次
元 単純立 方格子 の
示 す.
問付 .9 Q=Q(x,y,z)と
す る.パ ッ フ 形 式 (k:定
数)
(1)
に お い て δQ=0は
積 分 分 母 を も た な い こ と を 示 し,空 間 内 の 任 意 の 点 か ら他 の 任
意 の 点 にδQ=0の
道 筋 を 通 っ て ゆ きつ くこ と が で き る こ と を 示 せ .(問2.1補
参
照). 解 δQ=0が
積 分 分 母 μ(x,y,z)を
も つ と仮 定 す る.
(2) こ れ か ら
(3) と な る.式(3)の
第1式
よ りφ はxに
れ と 式(3)の
第2式
(3)の 第3式
の 左 辺 は(y,z)の
依 存 し な い こ と が わ か る か らφ=φ(y,z).こ
よ り μ はxμ'(y,z)の
形 を して い な け れ ば な ら な い.と こ ろ が 式
関 数 で あ りxに
依 存 し な い.し
た が っ て,式(3)を
す べ て 満 た す μ は 存 在 し な い. さ て 任 意 の 点Aか と を 示 そ う.付 図13で
ら任 意 の 点Bへ 原 点Oか
δQ=0の
道 を通 って ゆ きつ くこ とがで き るこ
ら 出 発 す る.y方
向 にbだ
け進 ん で もx=0,dz=
付 図10
付 図11
1次 元 格 子 のG(a)
付図12
3次 元 格子 のG(a)
2次 元 格 子 のG(a)
0だ か らδQ=xdy-kdz=0で で)aだ
け進む.こ
れ もdy=dz=0だ
な が らdz/dy=a/kの 0で あ る.た
あ る.さ
ら に そ こ か ら,今
か ら δQ=0.最
直 線 に そ っ てy=b+cの
度 はx軸
後 に,そ
に 平 行 に(z=0
こ か らx=aを
保 ち
点 ま で 進 む.や は り こ の 道 も δQ=
ど りつ い た 点Pは
(4) で あ る.さ て この 方法 で 原 点Oか
ら空 間 内の すべ て の 点 に 到 達 で き る こ とは 明 ら
か で あ ろ う.な ぜ な ら ば,a,b,cは Aも点Bも
原 点Oか
任 意 に とっ て よ いか ら.こ の こ と は任 意 の 点
ら δQ=0の
て 任 意 の 点Aは,A→O→Bと
道 を通 じて た ど りつ け るこ とを意 味 し,し たが っ い う道 を た どれ ばδQ=0の
条 件 の 下 にA点
から
B点 ま で た ど りつ け る.
付 図13 (矢 印 に そ っ て0か
パ ッフ 形 式 の 積 分 らPま
で 進 む と δQ=0で
あ る.)
補 ま た 次 の こ と も 知 ら れ て い る. 変 数 が2個
の 場 合,ψ(x,y)=cは
変 数 が3個
の 場 合,δQ(x,y,z)=0が
必 ず 存在 す る. 積 分 可 能 で あ る必 要 十 分 条 件 は
(5) とお い た と き
(6) が成 立 す る こ とで あ る(証 明 略).
B
付録 公
B1 積
式
分
1. 楕 円 積 分 u =sinθ,x=sinφ
と して
第1種 楕 円積分
第2種 楕 円積分
第3種 楕 円積分
完全楕 円積 分
2.
3. ア ッ ペル(Appell)関
数
(ツェ ータ(zeta)関
B2 2行2列
の エ ル ミー ト行 列Hの
数)
対 角化
(1) とす る.Hを
対 角 化 す るユ ニ タ リー行 列Sを
(2) と な る よ う に 作 ろ う.
(3) と お く と,Sは
ユ ニ タ リー行 列
で あ る.式(3)のsinθ は,φ=0の
と きS-1=Sな
とcosθ
を通 常 の 回 転 行 列 と異 な る よ う に と っ て あ る の
ら しめ る た め で あ る.
(4) か ら,式(4)の
非 対 角 要 素 が0と
な るた め に は θ を
(5) と な る よ う に 決 め れ ば よ い.こ
れ よ りsinθ
とcosθ
は
(6) (7) 固 有 値 は,
(8) と求 め ら れ る.
参
以 下 に 掲 げ る 教 科 書 は,著
考
書
者 が 本 書 を 執 筆 す る と き参 考 に し た 本 で あ る.こ
れ
以 外 に も 多 くの 良 書 が あ る. 統計 力学 1) 伏 見 康 治,量 2) 原 島 鮮,熱
子 統 計 力 学,共
立 出 版(1967,初
力 学 統 計 力 学,培
3) 久 保 亮五,統
計 力 学,共
風館(1978).
立 出 版(1971).
4) 高 橋康,統
計 力 学 入 門,講
5) 市 村 浩,統
計 力 学,裳
華房(1971).
6) 桂 重俊,統
計 力 学,廣
川 書 店(1969).
7) ラ ン ダ ウ(E.Landau),リ 富 永 五 郎,浜
下),吉
談 社(1978).
フ シッ ツ(E.M.Lifshitz),(小
田 達 二,横
8) ラ イ フ(F.Reif),(中
版1948).
田 伊 佐 秋訳),統 山 寿 夫,小
計 物 理 学,岩
林祐 治訳),統
林 秋 男,小
川 岩 雄,
波 書 店(1980).
計 熱 物 理 学 の 基 礎(上,中,
岡 書 店(1977).
9) ラ イ シ ェ ル(L.E.Reichl),(鈴
木 増 雄 監 訳),現
代 統 計 物 理 学 上 ・下,丸
(1984). 10) 久 保 亮五 編,大 11) 広 池和 夫,田
学 演 習 熱 学 統 計 力 学,裳 中 実,演
習 熱 力 学 統 計 力 学,サ
12) 市 村 浩,熱
学 演 習 統 計 力 学,裳
13) 原 島 鮮,熱
学 演 習 熱 力 学,裳
14) 小 口 武 彦,磁
華房(1961).
華房(1979)
イ エ ン ス 社(1979) .
華房(1979).
性 体 の 統 計 理 論,裳
華房(1970)
.
.
善
15) キッテル(C.Kittel),(宇 学 入 門 上 ・下,丸
野 良清,津
リー ン(M.S.Green)編,Phase
Phenomena,vo1.3,Academic
14)は,本
て お り,最
体物理
and
Critical
堂(1988)
.
で 扱 っ たイ ジ ング 模 型 な ど ス ピ ン系 の 統 計 力 学 の 代 表 的 な 教 科 よ り現 実 の 物 質 に つ い て 記 述 さ れ て い る.16)は
近 の 話 題 が ま と め ら れ て い る.大
う に な っ て き た.こ
シ リー ズ に な っ
学 院 生 や 研 究 者 向 け で あ る.近
年 の
理 現 象 を解 明 す る手 段 と して 計 算 機 が 使 用 され る よ
れ に つ い て は17)が
参 考 と な ろ う.
学
18) アル
フ ケン(J.Alfken),(権
学1,2,3,講
平 健 一 郎,神
田 川銈久,一
20) 河 田 敬義,確
率 論,共
Cambridge 23) 白 尾 恒 吉,確
山 直 人 訳),基
礎物理 数
松 信,数
学 公 式Ι,Ⅱ,Ⅲ,岩
波 書 店(1987)
.
立 出 版(1948).
ピ ア ス(B.O.Peiece),(川
22) E.T.Whittaker
原 武 志,小
談 社(1977).
19) 森 口繁 一,宇
21)
Transitions
算 物 理 学 と計 算 化 学,海文
計 算 機 の 発 達 に と も な い,物
数
下 次 郎 訳),固
Press(1974).
本 良 一 編,計
書 第7章
書 で あ る.15)は
田 章,山
善(1978).
16) ドム(C.Domb),グ
17) 田 中 実,山
屋昇,森
下 研 介訳),簡 and
易 積 分 表,文精
G.N.Watson,Modern
Univ.(1935). 率 ・統 計,朝
倉 書 店(1979)
.
社(1944) Analysis
.
,4th
Ed.,
索
あ 行 ア イ ン シ ュ タ イ ンの 特 性 温 度 ア イ ン シ ュ タ イ ン模 型 ア ッ ペル 関 数 圧 力 状 態 式
115
115
123,124,126
70
カノニカ ル 分 布
74
カ ラテオドリ の 原 理
12
カ ル ノ ー 逆 サ イ ク ル
21
完 全 気 体
102
イジ ング 模 型
カノニカ ル 集 合
カ ル ノ ー サ イ クル
1
異核 分 子
引
γ 空 間 153
20,21
1,108 42
気 体 運 動 論
1
位 相 空 間
42
ギブ ス-デュ エ ム の 関 係
位 相 積 分
76
ギ ブ ス の 自 由 エ ネ ル ギ ー
1次 転 移
36
ギブ ス の 補 正
48
キュム ラント
201
ウ ィ ー ンの 変 位 則 裏 格 子
136
172
キ ュ リー 温 度
液 体 ヘ リウ ム
140
強 磁 性 状 態
エ ネ ル ギ ー の 等 分 配 則
97
エ ーレン フ ェ スト の 壷 の 問 題 エン タ ル ピー
28
エ ン トロ ピー
14
オ イ ラ ー の 角
266
オ イ ラ ー のB関
数
オ ンサ ーガ ー
カ オ ス 化 学 定 数
12
173
192
49
確 率 過 程
243
確 率 分 布
200
109
193 153
11
12
クラ マース 関 数
30
グ ラ ン ドカノニ カ ル 集 合 ゲ ー ジ 変 換
243
化 学 ポ テ ン シ ャル
202
協 力 現 象
クラウ ジウス の 等 式 20 グラウ バ ー モ デ ル 236
258
か 行 ガ ウ ス の 記 号
172
クラウ ジウス の 原 理
の 原 理
28
154
局在 電 子 モ デ ル
オ イ ラ ー-マ ク ロー リ ンの 公 式 オ ストワルド
共 分 散 223
31
156
ケ ル ビ ン の 原 理 高 温 展 開
164
剛 回 転 子
102,258
格 子 気 体
175
黒体 放 射
129,130
コッホ曲 線
244
12
70,71
さ 行 再 帰 的
12
17
遷 移 行 列
最 大 項 の 方 法
63
算 術 平 均 速 度
97
202
先 験 的 等 確 率 の 原 理
サ ッ カ ー-テ トロ ー ドの 式
3準 位 系
17
積 分 分 母
ゼ ー マ ン 効 果
204
サ イ ク ル
積 分 因 子
49
相 関 関 数
6
100
シ ェル ピ ン キ ー の 詰 め 物
244
相 関 距 離
193
相 似 次 元
243
相 反 定 理
15,29
磁 化 過 程
176
示強 変 数
10
仕 事 関 数
152
対 称 数
自発 磁 化
173,174
対 称 性 の 自 発 的 破 れ
自 由 電 子
123
大 数 の 弱 法 則
た行
ジュリァ 集 合
253
ジ ュ ー ル の 法 則
第2種
18
102
210
楕 円積 分
12 234
常磁 性 状 態
154
小 正 準 集 合
42
小 正 準 分 布
42
断 熱消磁
275 31,90 100
断 熱 帯 磁 率
33
チェビシ ェ フ の 不 等 式 中 心 極 限 定 理
状 態 体 積
86
超 幾 何 級 数
状 態 変 数
10
調 和 振 動 子
状 態 密 度
41
低 温 展 開
状 態 和
70
シ ョ ッ トキ ー 型 比 熱 ジョルダ ン細 胞
49,93 169
デバ イ模 型
220
ジョルダ ン標 準 形
275
デ ィ ・ガ ン マ 関 数 デバ イ の 式 114
97
218
転移温 度
154,171
電 気 感 受 率
真 空 膨 張
27
電 気 分 極
113
転送行列
183
240
204 56
等 温 帯磁 率
スチェル チ ェ ス 積 分
72
等 核 分 子
ステフ ァ ン‐ボルツ マ ン定 数 ステフ ァ ン‐ボルツ マ ン の 法 則 ス ピ ン グ ラ ス 正 準 分 布
74
113
等 温圧縮 率
ス タ ー リ ン グ の 公 式
180
133 133
276
117
10
神 経 回 路 網
209
212
示 量 変 数
推 移 的
12
71
断 熱 圧 縮 率
詳 細 釣合 の 条 件
173
211
永 久 機 関
大 分 配 関 数
シ ュ ワ ル ツ の 不 等 式 循 環 過 程
42
188
31,82,90 33 102
特 性 関 数 201 ドハ ース‐フ ァ ンアルフェン トム ソ ン の 原 理 ドルーデ の 式
12 114
効 果
163
プ ラ ンク 関 数 な 行
30
プ ラ ンク の 定 数
42
2次 転 移
36
プ ラ ンク の 放 射 式
129
2準 位 系
53
ブ リル ア ン関 数
159,160
熱 状 態 式
1
分 極 率
熱 の 仕 事 当 量 熱 ポ ン プ 熱浴 法
12
分 散
分 散 関 係
21 240
269
分 子 場 近 似
熱 力 学 的 極 限
142
熱 力 学 的 重 率 熱 力 学 の 第0法
112 200
分 配 関 数
41
195 70
平 均 二 乗 速 度
6
則
10
平 均 値
200
熱 力 学 の 第1法
則
12
平 均 場 近 似
熱 力 学 の 第2法
則
12
ベ ル ヌ ー イ の 数
熱 力 学 の 第3法
則
48,99,126
ベ ル ヌ ー イ の 関係 式
ネ ー ル 温 度
173
194
ベ ル ヌ ー イ の 式
109,260 2
1,141
ヘルムホルツ の 自 由 エ ネ ル ギ ー は 行
偏 極 度
倍 分 岐 点 252 ハ ウ ス ドルフ 次 元
243
ボ ー ア の磁 子
ハ ウ ス ドルフ 測 度
243
ボ イル-シ ャール の 法 則
パウ リ行 列
遍 歴 電 子 モ デ ル
190
153 157
157
パウ リの 排 他 律 パ ッ フ 形 式 16
120
65,120 ボ ーズ 粒 子
66
16
ホ ップ フ ィー ル ドモ デ ル
反 強 磁 性 状 態
154
ポッホ ハ ン マ ー の 記 号
161
半 不 変 数
ボルツ マ ン 定 数 ボルツ マン 分 布
39
フ ァ ンデルワ ールス の 状 態 方 程 式 フ ァ ンリュ ーウェン の 定 理 フ ェ ル ミ準 位
フ ェ ル ミ粒 子 負 の 温 度
66
ま 行 マ ス タ ー 方 程 式 マソー 関 数 30
203,234
マ ッ ク スウェル の 規 則
55
マ ッ ク スウェ ル-ボルツ
7 243
フ ラ ク タ ル 次 元
242
マ ッ ク スウェル の 関 係 式
107
普 遍 気 体 定 数 フ ラ ク タ ル
65,120
35
74
ボルツ マン マ シ ー ン
124
フ ェ ル ミーデ ィ ラ ッ ク統 計
不 完 全 気 体
35
153,155
241 276
7
ボルツマ ン の 関 係 式
215
ビ リアル 係 数
243
140
ボ ーズ-ア イ ン シ ュ タ イ ン統 計
パ ッ フ の 問 題
反 磁 性
2
ボ ーズ-ア イ ン シ ュ タ イ ン凝 縮
パウ リの 常 磁 性
28
112
則 7 マ ル コ フ 過 程
202
29 40
マ ンの 速 度 分 布
マ ンデル ブ ロ ー 集 合
253
ミク ロカノニ カ ル 集 合
ラ ン ダ ウ の 反 磁 性
42
ラ ンデ の 因 子
密 度 行 列
72
理 想 気 体
未 定 乗 数
45
理 想 ボ ーズ 凝 縮
ムロ ー ラ ン ドの 式 メ ト ロ ポ リス 法
111
モ ー メント
137
リー マ ンの ζ関 数 6
201
モンテ カ ルロ シミュ レーション モンテ カ ル ロ ステップ
240
35
臨 界 温 度
35,154
臨 界 手指 数
174
臨 界 点
ら 行
152 126
35 84
ル ジ ャ ン ドル 変 換
136
ラ グ ラ ン ジ ュ の 未 定 乗 数 法
238
臨 界 圧 力
臨 界 体 積
や 行 ゆ ら ぎ
1
リチ ャ ー ドソン の 式
240
最 も確 か ら しい 速 度
163
159
15
ロ ジ ス テ ィ ッ ク 変 換
249
ローレン ツ-ローレンツ
の 式
115
わ 行
43
ラ ン ジ ュバ ン 関 数
113,161
ワ イ エ ルシュ
ラ ン ジ ュバ ン の 式
113
ワ イス 近 似
トラ ス の 関 数 195
249
〓
<著者紹介> 桂
重俊
学
歴
東北帝国大学工学部通信工 学科卒業(1944年) 東 北 大 学 大 学 院 第2期 特 別 研 究 生 終 了(1949年) 理 学 博 士(1958年)
職
歴
東 北 大 学 教 授(1961年) 東 京 電 機 大 学 教 授(1986年) 東 北工 科 情 報 専 門 学 校 校 長(1993年)
井上
真 学 歴
千 葉 大 学 理 学 部 物 理 学 科 卒 業(1983年) 東 京大 学大 学 院 理 学 系 研 究 科 修 了(1988年) 理 学 博 士(1988年)
職
歴
東 京 電機 大 学 理 工 学 部 助 手(1988年)
Shigetoshi
統 計力学演 習 1993年9月10日
Makoto 第1版1刷
発行
Katsura
1993
Inoue
著 者
桂 井
重 上
俊 真
発行者 学校法人 代 表 者 廣 東 京川電 機 利大 男 学 発行所 東 京 電 機 大 学 出 版 局
著者承認 検 印省略
〒 1O1 東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町2-2 振替 口 座 東 京6-71715 電 話 03(5280)3433(営
業)
03(5280)3422(編
集)
Printed
印刷 三立工芸(株)
製本 (株) 徳住製本所
*無 断 で 転 載 す る こ と を禁 じ ま す 。 *落丁 ・乱丁 本 は お 取 替 え いた し ます 。 ISBN
in Japan
4-501-61330-0 C
3042
情報科学図書 情報科学の基礎
ス イ ッチ ン グ理 論 と応 用 足 立 暁 生 著
足 立 暁 生 著
A5判 210 頁 集合,関 数,束/ 組合せ解析/群,半 群/ グラ フ/形式言語の認識装置/ 自然数の体系 と帰納
A5判 200頁 論理代数/ブ ール代数/ 論理回路(組 合せ回路) 組合せ回路 の故障診断/ 順序機械
的関数/環,体/ 数論/決定問題 と計算可能性
Pascalに
よる デ ー タ 構 造
数理科学概論 桜 井 明 著
古 東 馨 著 A5判 226頁 プ ロ グ ラ ミン グ と考 え 方/ アル ゴ リズ ム の評 価 / Pascalに
お け る構 造 型 の デ ー タ/ 線 形 リ ス
A5判 186頁 自然現象 や社会現象 を数式 化 して硬究す る学問 である数理科学 の全体像 を初めて明 らかにする.
ト/木 構 造/ 並 べ 換 え/ 検 索/ 記 憶 方 式 と管 理
数理科学 の基礎/数理科学 の方法/実際
スプ ラ イ ン関 数 入 門
マル チ スプ ライ ン
桜 井 明 編 著 A5判 184頁 任意のデータ点を滑 らかに結ぶ曲線を容易に描 く ことができるスプライン関数の理論を,初 歩的な 性質か ら応用までわか りやす く解説
パ ソコンによる ス プ ラ イ ン 関 数 デ ー タ 解 析/CG/
微 分方程式
チ ャ ー ル ズ.K.チ 三次 元CADやCG,デ
ュ ウイ 著
A5判 208頁 ー タ解 析 に 期 待 さ れ る
多次 元 ス プ ラ イ ン関 数(マ ル チ ス プ ラ イ ン)に つい て,最 先 端 研 究 成 果 を盛 り込 ん で 解 説
ニユ ーラル
コ ン ピ ュー タ
脳 と神 経 に学 ぶ
吉 村 和 美/ 高 山 文 雄 著
合 原 一 幸 著
A5判 236頁 ス プ ライ ン関数 を パ ソコ ンの 上 で 実 現 し,デ ー
A5判 ニ ュ ー ラ ル コ ン ピュ ー タ と は 何 か?/
タや 曲 線 を 自 由 自 在 に あ やつ れ る強 力 な 機 能 を 持 った プ ロ グ ラム とと もに解 説 した.
る情 報 処 理/ 脳 の モ デ リ ン グ/ ニ ュー ラ ル コ ン ピュ ー タ開 発 に向 けて/ 夢 の 続 き
信頼性概論
信頼性の基礎数学 高木 昇 監 修/ 塩 見 弘 著
A5判 200頁 序論/信頼性 の基礎数理/ システムの信頼性 と 保全/信頼性設計/ 信頼性試験/ 故障物 理/信 頼性のデー タ/信頼性管理
*定 価,図
188頁 脳 におけ
高 木 昇 監 修/ 斎 藤 嘉 博 著 A5判
270頁
概 念/ 分 布 関 数/ 管 理 法/ 分 析 手 法/ 信 頼 度 配 分/ ネ ッ トワ ー ク信 頼 度/ 信 頼 度 と アベ イ ラ ビ リテ ィ/ シ ミュ レー シ ョ ン/ コス ト
書 目録 の お問 い合 わせ ・ご要 望 は出 版 局 まで お願 い 致 し ます. J-11
マ ッ ク スウェル の 方 程 式(真 空 中)
(cgs)
(MKS) ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルA,ス
カ ラ ー ポ テ ン シ ャル φ
(cgs) (MKS) 物理定数
CODATA
1986